魔法科高校でも俺の青春はまちがっている (Lチキ)
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まだ
プロローグ


かつて超能力と呼ばれたそれが魔法と名をかえ、現代社会に浸透され数十年

 

今や世界位各国は魔法を扱う魔法師の育成に重きを置いている

 

寒気やらエネルギー事情だがは良く知らんが、第3次世界大戦が核熱戦争にならなかったのはこの魔法師達の活躍が大きいらしい、と言っても漫画や小説みたいな『魔法の力で悪を打つ!』みたいな事ではなく、

 

 

単純に強力な魔法師の力と旧現代兵器とでは、圧倒的とまで言えるほどの差があったからだ。

 

 

初期の戦争で旧現代兵器でフル武装した一個大隊が魔法師一個小隊に全滅させられたとか、

 

 

戦略兵器を一人の魔法師が返り討ちにしたとか、そんくらいの武力が魔法にはあったのだ。要は強力な力にはより強力な力で制すといありふれたものだ。そのことから魔法師の技能=その国の力という構図が完成した

 

 

そして20年続いた世界大戦が終結してから35年、西暦2095年

 

魔法技能師養成のためのエリートが集う国策高等学校の一つ、ここ国立魔法大学付属第一高校 通称一校。

 

魔法という特質な才能を持ち合わし、この学園に入学したその瞬間から彼らは国の誇るエリートである。

この入学した瞬間から生徒たちは優等生と劣等生に分けられる。

 

エリートの中でも将来を約束されたエリート『1科生』とその補欠『2科生』

 

しかしこの学校にはエリートである1科生にも関わらず、2科生よりも劣等生が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことの初めは俺が中学卒業まじかになったある日の事。共働きの両親が珍しく朝から家にいて、さらに珍しくこの俺に話があるとのことだ。

 

 

「八幡もうすぐ卒業だが、進路は決まったの?」

 

 

家族4人で朝食をとるのはいつ振りだろうか。いつもは妹の小町と2人で食べている食卓も4人いるだけで狭く感じる。

目玉焼きにパンと牛乳、母さんが作ってくれた飯を食べながらふときいてくる。

この会話だけで聞くとそれは随分と普通の親子の会話だが、俺は違和感しか感じなかった。

 

それも、うちの家庭で俺の話をすること自体あんましないからだ。

基本的な力関係は一位に母、二位に小町、3位にカマクラ(飼い猫)そして4位に働いてるということで親父だ。

 

無論俺は最下位である。つーか家の男性陣は猫に負けるのかよ…

 

そんな感じで小町か母さんの話が主な会話内容で、俺の話なんて小町が振らなければ永遠に訪れないのだ。

 

それゆえ、母さんの言った言葉に違和感を感じるのは至極真っ当な事であり、家では異常事態と言っていい。

 

その証拠に小町も唖然としている。

 

なにこれいっててすごく悲しんだけど

 

 

「なに、俺に頼みごととかあんの?」

 

つまりそういうことなのである。俺の話なんかしない母さんがいきなり普段と違う行動に出るということは、転変地異の前触れか何か頼みごとがあるはずだ

ただ、どっちにしてもこれは厄介そうだ。俺に頼みごとなんてそれこそ天変地異といってもいいだろう、いつもは命令であり俺に拒否権は存在しない。

 

 

「やっぱわかる?」

 

 

なん…だと…

俺の頼みごとという言葉を肯定した。それはつまり、本当に頼みごとが俺にあるということなのだ。こんなこと今まで一度もなかったのに

 

 

「実は家の事なんだけど」

 

 

「え!?まさかお父さん借金でもしたの!」

 

 

それを聞いて、今まで思考停止していた小町が反応する。

家の事、俺に対し命令じゃなくお願い、このことから親父が何らかの問題をお越したという連想にいたったのだ。

この糞親父いったいなにしやがった!!

 

 

「違うから、別にお父さん何もしてないし」

 

 

「なんだ違うんだ」

なんだ違うのかよ

 

 

「お前ら…普段から俺の事なんだと思ってるんだ」

 

 

「いやーはははは」

 

糞親父だと思ってる。それにしても小町は笑ってごまかしてる時でも可愛いな

 

 

「小町はいいとして、八幡はあとで屋上な」

 

 

なぜ言葉に出してない俺が屋上なのか?親子だから言葉にしなくても伝わっちゃうの?なにそれ、マジキモイんだけど

 

「実は、比企谷の家の事で話があるんだ」

 

 

「は?比企谷の家…?」

 

 

母さんが話始めるが、比企谷の家って内の事だよな?

 

 

「そもそも比企谷の家は魔法師の家系なのよ」

 

 

「「…は!?」」

 

 

突然の発言で俺と小町は2人そろって、素っ頓狂な声を上げ立ち上がった

 

 

「ちょお母さんそれどういうこと!?」

 

 

「まあ 落ち着きなさい。順を追って話すから」

 

 

俺と小町を右手で制止しさせ、座るように促す。こちらも椅子に座り直し話を聞く体制を整えると、母さんは続きを話始める

 

 

「比企谷は母さんの家の苗字なんだけどこれでもそこそこ名家だったのよ。でもね時代と共にすたれ始めた、いわば落ちぶれ貴族みたいなもんよ。そんなある日母さんとお父さんは恋に落ちて駆け落ち同然に家から離反したのよ」

 

 

またもや爆弾発言を…つうかこの親父にそんな甲斐があったとは…信じられん

 

 

「言っとくが本当の事だぞ」

 

 

俺の思考を呼んだように親父が答える。だからなんで分かんだよ?

 

 

「でね、この間比企谷の本家から連絡が来て、家の方で魔法師の素質を持った子が生まれてこなかったらしいの。そうなると、家が取りつぶしになるから困るっていう内容だったんだけど…」

 

 

「そりゃあ…大変だな。でもそれと家に何の関係があんだよ」

 

そう元はどうだが知らないが、今や家は立派な中小家庭だ、正直離反してるなら関係ないと思うが…なにより俺も小町も魔法師じゃないし

 

「それがいつの間にか比企谷の本家で血筋の近い者から遠いものまでで審査みたいなのをして、その中で唯一魔法師としての適性があったのがあんただけだったのよ」

 

 

「は…!?」

 

 

「で、ほらあんた昔は魔法師とかになりたいとかいっておかしな恰好とかしてたじゃない」

 

 

やめてくれ、それは俺がまだ未熟で中学2年といった特殊環境があり発現した、黒歴史なんだから

 

 

「本家の人から言われちゃってこっちも色々迷惑かけて強引に出てきちゃったし、断わり切れなかったのよ」

 

 

おいおい、それってつまり

 

 

「だからちょっと一校の入学試験行ってきてくんない。必要なものは全部本家がそろえるらしいから」

 

と、物凄く大事なことを軽く流し母さんは話を終えた

そして俺はその後家の前でスタンバイしていた黒服のお兄さんたちに真っ黒な車に乗せられ、大体の説明とCADを渡され一校の入学試験に行き 

 

 

見事、合格したのである



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入学編1

入学式当日

 

数日前まではどこにでもいるプロボッチの俺はなぜか、国のエリート達が通う魔法科高校に入学した

 

この学校は筆記よりも技能実技の評価を優先するらしく、そのおかげで筆記ほぼ最下位近くの俺は実技で優秀だったらしく1科生として入学した

 

 

優秀といってもつい最近まで、こことは全く別の世界にいた俺が比較対象の基準を理解しているわけもなく、入試実技学年3位という結果だけを見た感想にほかならない

 

入学式というのもあり新しい生活に心躍らせ、明るい表情の奴らが多い。

 

 

もし俺が普通の高校に通っていたらこいつら同様、期待に胸焦がし一時間くらい前から登校した挙句、車に引かれそうな犬を助け全治2か月の怪我を負いボッチになるところだった。

 

しかし、この一校とは魔法とか以前に特殊な学校で通う生徒にはいくつかのパターンがある。

 

 

まず家が古くからの名家みたいな金持ちエリート

 

 

次に親が軍および魔法関係に携わっているエリート

 

 

で、最後が俺みたいな突然変異型だ

 

俺みたいなのは、この学校ではぶちゃっけ浮いている。それはもう一科生とか関係なくボッチになる運命なのだ。

 

本当に鬱だ…

 

 

そんな事を考えて背中が丸まっている俺の後ろから、不意に声が聞こえた

 

 

「納得がいきません!」

 

なにやら新入生2人が言い争いをしているようだ。一人は身長170以上ありそうなイケメン。エンブレムを見る限り2科生

 

 

もう一人は黒髪を腰のあたりまで伸ばした少女こっちは一科生。言い争いのさなか男の方が少女の名前を呼ぶ。どうやら深雪というらしい。

 

あれ、この名前どっかで見たような…まあいいか

 

 

男の方をお兄様と呼んでいることから、兄妹なのだろう

 

しかし、少女の方も可愛いな。妹というのは小町しかりどうしても可愛く生まれてきてしまうさがなのだろうか。なにそれマジ天国じゃん

 

 

まさに美男美女という感じだ…こいつらは間違いなくリア充だろう。

むしろあの顔でリア充じゃないとかケンカ売ってるレベルだし

 

 

うお!あいつら公共の面前でアスナロ抱きしやがった、俺でもやらんぞあんなの、あいつさては、シスコンか?

 

 

だが、俺のシスコンセンサーが発動しないな

シスコンセンサーとは、八幡108の秘密技の一つで兄弟愛がある一定以上、上回る者に反応する特殊センサーだ ちなみに魔法とか関係はない

 

むしろ、あっちの妹の方にセンサーが発動している。

 

しかも、10万20万…まだ上がるだと!?くらいな感じで発動している。間違いないあいつはブラコンだな

 

 

一方兄の方はそうでもないな。つーかなんか感情がないみたいな仮面をつけたような感じだな

 

 

まあいいか。そんな事よりそろそろ、会場に行っとくか

 

 

早めに行ってなるべく壁か側か通路側の席を取らねば、万階一にもリア充どもに両サイドを占領されるなんてことが起こらないようにしなければ…ただでさえ鬱なのにこれ以上何かあったら自主的休養を取る自身があるぞ

 

 

 

 

入学式会場

 

結構速い時間ということもあり、予想道理席はまばらだ。しかし、見た感じ前列に1科生、後列に2科生といった感じだな。

 

 

えーなにこれ、そういう感じに座んなきゃいけないわけ?

俺後ろの目立たない席がよかったんだが…まあ 2科生に混ざって一人だけ後ろに行ったら絶対目立つだろうししかたないか

 

 

俺は通路側でまだ人が少ない席に腰を下ろす。

 

 

このまま数分もすれば始まるだろうし、それまでは目でもつむってれば誰も話しかけてこないだろう。

 

 

中学までの俺ならば、脱ボッチを掲げ友達を作ろうとしただろうか、ぶっちゃけこの学校の奴らとどう付き合っていいのかわからんし、金持ちを下手に怒らすと後が怖いんだよな

 

 

だからこの3年間は、ボッチとして過ごすと決めているのである。…別に寂しくなんかないんだからね!勘違いしないでよ!!

 

 

‥‥ふう 虚しい

 

 

「隣いい?」

 

 

突然声をかけられ、ついつい目を開け声のする方に目をやってしまった。しまった、これじゃあ寝たふりができない

 

 

俺に声をかけてきたのは小柄な女の子だった。え これ俺に話しかけてるの?

 

 

突如として声をかけてきた少女の出現により冷静な判断能力が著しく、失われた八幡は

 

 

「ど どうじょ」

 

 

キョドッた挙句 盛大に噛んだ

 

 

うおおおおッ!恥ずかしい、なんだどうじょってあああああ!!!

 

 

平静を装う仲、心の中では、盛大に悶絶していた

 

 

「ありがとうございます。私は光井 ほのか」

 

 

気づかなかったが後ろにもう一人いた。彼女は八幡の目を見て一瞬びっくりしたようだが、すぐさま平静を取り戻し、自己紹介を始めた。さっきのはスルーしてくれてるみたいだ

 

 

「こっちの子は友達の雫です」

 

 

「北山 雫…よろしく」

 

 

初めに声をかけてきた方もそれに続き自己紹介‥‥あれこれって俺もしなきゃいけない流れか

 

 

「‥‥比企谷 八幡だ」

 

 

本人的にはちゃんとできているようだが、今彼の顔はひくついており、正直あまり自己紹介としてはいいと言えない

 

 

 

 

そうこうしている間に式が始まったようで、その後俺達は会話もなく黙って式を見ていた

 

 

俺は始まって3分くらいで寝たけどな

 

 

 

 

 

 

 

 

式が終わり各自教室へいき、HRが始まる ちなみに俺は1年A組だ

 

 

驚いたことに、朝のブラコンこと、入試成績1位の司波 深雪と入学式であった北山 雫、三井 ほのかと同じクラスだった。

 

 

といっても、ただの偶然でちょっと知り合った連中が同じクラスだからと言って何かが起きるわけでもないし。司波に至っては、話したことすらない。

 

 

 



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入学編2

しかし驚いた、あのブラコンもとい司波の名前をどこかで聞いたと思ったら、入試主席の奴じゃん!式が終わりに近づき目が覚めた俺は新入生総代としてスピーチをしている司波を見つける。

 

ただのブラコンではないと思ったが、そんなにすごい奴だったのか…

つーかブラコンとか言ってるのばれたら、確実に殺されるな俺

 

 

 

その後入学式は滞りなく終わり、今はそれぞれ自分のクラスに向かっているところだ。ただ周りの連中はそれぞれ中のよさそうなやつらと、つるんでおり当然のことながら俺は一人で向かっている。

 

もともとこの学校に知り合いいねーし、いたとしても中学時代の知り合いとか碌なもんじゃない。

あれ結局どっちでも同じじゃん

 

 

「ねえ 比企谷さん…」

 

 

そこでまた俺に話しかけてきたのは、北山だ

え ていうかなんで話しかけてくんのこの子達。俺に気があるの?ないない

 

 

「えーと、なんかようか」

 

 

「もしよかったら、クラスまで一緒に行かない?」

 

 

えーこれってマジで気があるんじゃ!?落ち着け俺!中学時代を思い出せ、そんなことあるわけないだろ!

 

 

「さっきの光井と一緒に行けばいいだろ?なんで俺と…」

 

 

「ほのかは追っかけで時間がかかるから」

 

 

「追っかけ?」

 

 

そういうと北山は少し離れた人が集まっているところを指さす。その中心にいるのは司波 深雪だ

 

上級生っぽい人となにやら話しており、その取り巻きというか野次馬連中の中に光井がいた

 

 

「なにやってんだあれ」

 

 

「ほのかは入試の時、司波さんの事を知って憧れてるみたい」

 

 

「じゃあ 話しかければいいだろ?上級生と話してるからってなんであんな遠くから」

 

 

「今はなしてる人が、生徒会長の七草先輩だから」

 

 

「え?生徒会長?」

 

 

まじか。寝てたから知らんかった。それも七草ってもしかして、あの七草か

 

 

この国の魔法社会のトップには、戦時中もっとも強力な魔法を使っていた一族たちが今も権力を有している。

 

彼らは苗字に数字が入ってることでナンバーズと呼ばれている。

氷菓の桁上がりの4名家みたいなものだ、そのナンバーズの中でも特に特質した力を持っていたのが1から10までの数字を名前に入れた通称『十師族』である

 

七草ということは彼女もまた、その十師族の一員であり、国のトップカーストに位置する存在というわけだ

入試主席、学年総代と生徒会長、十師族が話している中、割り込もうとか混ざって話そうとかいうのは無理な話か

 

「なるほど、確かにそんなんじゃあ取り巻きとしてみるしかないわけだ」

 

 

「会長、式でも話してたのに、寝てるから」

 

 

「うっ…すいません」

 

 

なんとなく謝ってしまった。北山の目まさにジト目となり、俺を見つめる

 

 

「とにかくいこ」

 

 

北山は制服の裾を引っ張りる

 

 

「お おう」

 

 

いちよう言っておくが、ここでキョドるのは別にやましい事を考えているからではない

ただ身長の問題で上目遣いになってる女の子に制服の裾を引っ張られるとかキョドっても仕方ないと思う。

 

 

 

俺は北山と当たり障りのない会話を続ける。そういっても質問されたことに俺があたりさわりのない返しをしているだけで、俺から話しかけたりはしない。

 

ぶっちゃけ何話していいかわからんし

 

 

気が付くと1-Aの前までついていた。

 

 

 

 

次の日の昼

 

 

HR?何のことかわからんな

 

 

ある意味予想道理、彼はHRの自己紹介でまたも失敗してしまったのだ。内容は皆さんの想像にお任せする

 

 

 

そして俺はなぜか、北山と光井の3人で飯を食うことにした。というか誘われた

普段なら孤独なランチにピッタリなベストプレイスに行くところだが、入学したてであり、そんな場所をまだ見つけられておらず、行くところを見つけられていなかった俺はなし崩し的にその誘いを受けることにした

 

 

「あ!あそこあいてますよ」

 

 

光井は昼食の入ったトレーを持ち、満面の笑みでテーブルを指す

 

 

「それにしても、光井の奴は元気だな。俺と北山みたいな低いテンション相手に、よくここまで元気がでるな。」

 

 

「ほのかとは、昔からの友達。私のテンションにもなれてる。あと、勝手に一緒にしないで」

 

なるほど幼馴染というやつか。つーか勝手に俺と同率にしたのは悪いがそんなはっきり言わなくても

ハチマンのライフはもう0よ!

 

 

「私は夜型なだけ、夜になれば元気」

 

 

「はいはい そうですか」

 

 

「それと八幡と違って目も濁ってない」

 

 

「濁っちゃねーがジト目だろ。大差ねーよ」

 

 

あれ?というか、今こいつ俺の事名前で呼ばなかったか?

 

 

「八幡、自分で濁ってるって認めるんだ…あと半目なだけでジト目?とかいう変な目じゃない」

 

 

いや、今の目がそのままジト目なんだが…そういやここにいる奴って、こういうネタしらねーのか

あとやっぱり、名前呼びになってるし

 

 

「えーと‥北山なんで俺の事名前呼びなんだ」

 

 

「私、人のこと苗字で呼ぶの嫌い。だから八幡のことも八幡て呼ぶ。私の事も北山じゃなくて雫って呼んでいいよ」

 

 

「お おう‥‥そんじゃあ…し」

 

 

「2人ともこっちですよー」

 

雫と呼ぼうとしたところで、席を取っていた光井に呼ばれる

 

別にいいんだけど…別にいいんだけどさ‥‥

 

 

光井のいた場所は、4人席が2つ並んだテーブルでその一方で光井は座っている

 

だが、そのもう一方にいるのは朝のブラコン妹の兄、司波含め男2女2のグループが座っている

見るからに、リア充グループだな

 

 

しかし、光井に続き北…雫もその席に座り、しかたなく俺もそこに座る

隣は司波か…妹のほうは見るからに優等生でなんかあれだが、こいつもなんか得体が知れないしなんかあれなんだよな‥‥

 

 

「隣、いいか?」

 

 

「ああ」

 

 

いちよう断りも入れ、その席に座る。

それにしても、こいつら一人は筋肉質で180は有にあろうかという体育会系男子

女子の方も、一人はメガネをかけたおっとり系の巨乳、もう一人は赤髪が目立つ活発そうな少女

 

うん どいつもこいつも、リア充だな。なんかめっちゃリア充ぽい

 

 

「お兄様」

 

 

そこに司波妹がやってくる

 

「し 司波さん!?」

 

となぜか兄ではなく光井が反応する。

そういやこいつ、ファンなんだっけ

 

「ご一緒してもよろしいですか」

 

「深雪 ここあいているよ」

 

「ありがとう エリカ」

 

 

ふむどうやらこいつらは知り合いらしーなそして、赤毛の名前がエリカと判明した。

まあ別に俺らには関係ねーか

 

 

「えーと…誰?」

 

「司波深雪、妹だ」

 

「ほーん」

 

司波兄が体育会系に説明をしている。

あれ、知り合いじゃねーの。まあ兄貴のクラスメイトのこととかよくわかんなくても当たり前もしくは、この体育会系がこのグループに入ってからそんなにたってないかのどっちかか

 

 

「貴方達は、たしか光井 ほのかさんと北山 雫さん…比企谷君ね?」

 

 

「は はい!そうです」

 

 

頬を染、オーバーリアクションで答える光井。どんだけ好きなんだよ

 

あと俺のとこで少し言いよどんだのはもはや、ご愛嬌である

 

 

「お兄様とはいつのまに?」

 

 

兄と自分のクラスメイトが同じ席で食事をしているということに疑問を持ち笑顔で問う。

ただ俺は見逃さなかった。司波妹の声は普通じゃわからないくらい微妙に下がり、笑顔だがその顔は笑っていない。

 

大好きな兄に女の影が、近寄って警戒しているということだろう。うむ ブラコンだな

まあ だが、そんな事をつゆ知らない、光井からしてみれば憧れのクラスメイトに笑顔で話しかけられ喜んでいるな…

 

温度差がすごい開いてることに、気づいていない

さすがにこのままでは気の毒だな

 

 

普段の俺なら出会って2日ほどの相手にここまでしないのだが、飯に誘ってもらった恩もあるし、すこしフォローしとくか

 

 

「俺ら3人は、飯食うとこ探しててたまたま開いていた席がここだっただけだ。ついでに言うならまだ自己紹介とかもしてないただの他人だ。」

 

最後にお前の心配していることはない。と付け加える

 

それに気が付いたのか、司波妹は一瞬ビックリとした後軽く会釈を返した

 

 



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入学編3

その後、俺達は自己紹介する流れになったのだが…

 

 

省かせてもらう。え…なんでかって?そりゃあ読者も何回も同じ失敗をするとこなんて、見ても楽しくねーからだ。

 

 

・・・読者って誰だよ?それと、また自己紹介で失敗したのかよ、俺

 

 

八幡が落ち込み、エリカが盛大に吹き出し足をばたつかせ、それを見ていたレオが呆れて、光井と柴田がオロオロとしながら慰め、司波妹は静観し、兄の方は無表情でトレーに残ってる食事を食べ続け、最後に雫が

 

 

「これは八幡のアイデンティティーだから」

 

 

と、占めた。

 

そんな個性持った覚えはないぞ。それとエリカ、お前は俺の絶対に許さない奴ノートに書いとくからな…

 

 

 

 

 

なんだかんだと和んでいた彼らのもとに思わぬ乱入者がやってきた。

 

 

「司波さん」

 

 

そこには男子と女子が数人おり司波のことを呼んだ。というか、こいつらうちのクラスの連中じゃん。

 

たしか名前は、も 森‥‥‥‥‥森本君?だっけか

 

 

「もっと広いところに行こうよ」

 

 

「邪魔しちゃ悪いよ」

 

 

どうやら森本達は司波妹と一緒に昼食をとるために彼女を呼びに来たようだ

流石は学年主席。引く手数多ということか、でも…

 

 

「いえ…私はこちらで」

 

 

司波妹の様子から、森本達は事前に了解などを取らずにやってきたようだ。

 

 

こいつらは、分かっとらんな。

 

 

普通昼食なんかは仲のいい奴らで囲んで食べればいい。だが相手がカースト最上位の人気者だと訳が違う

 

 

人気者であるが故、そいつと一緒にいたい同性。そいつに好意を寄せる異性の数は多く、そんな奴と一緒に食べたいのなら2限目か3限目くらいにはすでに予約を入れておかなければならない。

 

 

いくらクラスが同じでも、一緒に食べられるとは限らないのだ。

 

 

そして、あくまで決定権は人気者にゆだねられ

 

人気者(司波妹)が選んだのはこっちということだ。こっちというかこっち(司波兄)なんだろうがな、これはあらかじめ約束してない森本達が悪い

 

 

ちなみに予約は、当日するのが基本だ。前日や数日前にすると周りの奴らから叩かれる恐れがありさらに、いきなり先生に呼び出されるなどして一緒に食べれない場合になると、グループ内での自分の立場が悪くなる、要注意だ。ただ、一緒に食べていて流れで「じゃあ、明日も一緒に食べよ!」というのは例外としてOKだ。

 

 

だいたい一人の俺にはあまり関係ない事だがな…

 

 

「司波さん…ウィードと相席なんてやめるべきだ」

 

 

「はぁ…」

 

 

ウィードという言葉にその場にいた全員が反応する。その中でもエリカは明らかに不機嫌になり顔をしかめる。

 

ウィードというのは二科生の俗名というか、差別用語だ

一科の事をブルームと呼ぶ者もいる。

それは、一科の制服にのみ、花のエンブレムが施されているためであり、それがない二科生をウィードつまりは雑草と差別している。

 

もちろんこの呼び方は、生徒会並びに学校自体も推奨したわけではなく、あくまで一部の生徒間のみで呼ばれてる隠語だ。

 

しかし、その呼び方は入学したての俺達でさえ知っているほどであり、それだけ一科生と二科生の差別意識が強い証拠でもある

 

俺(一般人)にしてみれば司波妹みたいな例外的に強力な奴以外、大した差なんてわからんがな

 

 

「一科と二科のけじめは、つけたほうがいい」

 

 

「なんだと」

 

 

さらに森本の後ろの奴が油を注ぎ、今度はレオに引火する

 

立ち上がり、臨戦態勢を整えるエリカとレオ。

まさに一触即発というところだ

 

しかしこいつらは馬鹿かなんかなのか…?

レオとエリカがわかりやすすぎる挑発に乗るっていうのは今回目をつぶるとして、この森本達

 

普通に考えて、後からきた自分たちが明らかに邪魔だっていう認識がないのか

それにわざわざこんな喧嘩を売るような真似して、これでもし司波妹と一緒にいれても絶対空気悪いだろ

 

 

「あ あの…」

 

 

それにほら、等の司波妹は明らかに困ってるし。

本当のリア充だったら、ここでしつこく誘わず「じゃあ 明日は一緒に食べようよ」とでも言っとけば明日もそれ以降も、司波妹といられる時間も好感度も確実に上なのに

 

 

と、冷静に分析してる場合じゃないな。このままでは少しやばい

何がやばいって目の前にいる雫の表情だ。めちゃくちゃ怒ってんじゃん・・・

 

あっちの2人が怒ってるのは、要は自分たちが馬鹿にされたことに対しての怒りだ。

別にそれが悪いというわけではない、馬鹿にされたら怒るのは当然だ。俺だって許せない奴のことは事細かにメモってるしな・・・

 

そういう怒りはその場がどうにかなれば、何とかなるタイプの根に持ちにくい怒りだ

それはこの2人が直情型っていうのもあると思うが

 

だが、雫のこのあえて無表情を作り、怒りを抑え込む怒り方は後々になっても尾を引くことが多々ある。

そもそも怒ってる理由が、自分のためではなく他人のために怒ってる。

 

 

それが困ってる司波妹のためか、今まで楽しく話していた相手を馬鹿にされたためか、せっかく憧れの人と話せて喜んでる親友の邪魔をしたからかは知らんがな

 

 

雫や光井はこいつらとクラスも一緒で否が応でも関わり合いになる可能性が高い

それをここで敵に回すのは良くない。雫の性格ならそんなのへでもないだろうが、多勢に無勢だしな

 

なにより、知り合いの女の子がそんな目に合うとか目覚めがわりーしな

 

 

そこで俺は残りの飯を一気に食べきった

 

 

「深雪、俺はもう済ませたから先に行くよ」

 

 

おっと、どうやら司波兄も俺と同じ結論を出したようだ。ならここは、

 

 

「俺もごっそさん」

 

 

そういい席を立つ司波と俺。それに続くように残りのメンバーも席を立ちあがり後を追う。

 

 

「おい、達也待てよ」

 

 

「達也君!」

 

 

「ほのか、私達もいこ」

 

 

「え・・・う、うん」

 

 

光井はチラチラと後ろを振り向きながら、雫に手を引かれその場を後にする

まあ、また今度一緒に食べれるだろ。ドンマイ

 

 

俺は心の中で光井に合掌を捧げる



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入学編4

なんやかんやあったがこの魔法科高校を3年間、平和にすごし今日は卒業式だ!

 

いやーほんと色々な事があったな~考え深いものだ・・・結局俺はボッチのままダッタナー

 

 

「いい加減に諦めたらどうなんですか」

 

 

「僕たちは彼女に相談することが、あるんだ!」

 

 

「そうよ少し時間を借りるだけなんだから!」

 

 

まあ、そんな訳もなく今は入学2日目で、昼の騒動があった日の放課後だ

 

授業が終わり、いざ帰ろうーと、意気込んでいたが例により雫たちから一緒に帰ろうと誘われる。もうこれ相手が、俺じゃなかったら勘違いして告って振られて入学2日目で不登校になるレベルだ。

 

 

つーか振られちゃうのかよ・・・自分ながら卑屈だな、おい

 

光井は司波妹の追っかけで、妹は兄とその友達と帰ろうとしてそこに森本達が昼の時みたいに突っ込んでいき、

俺と雫はやや離れたとこから静観していた。

 

 

いやだって俺達、とくに俺なんてこの騒動に関わってねーし。

 

 

図で表すと憧れのクラスメイトを追っかけてるクラスメイトとその友達のただのクラスメイト ←ここが俺である

 

 

うん、遠いな。遠すぎて普通に赤の他人だなこれ

これはもう知らぬ存ぜぬで早々に帰っていいだろ俺。だが、

 

隣にいるこの追っかけの友達こと雫さんがなぜか、制服の裾をちょこんっと、もっていて動けないのである。

 

ちなみにこのちょこんっっていうのがポイントである

 

 

「おい、何もってんだよ」

 

 

「八幡が一人だけ逃げようとしてたから、捕まえてた」

 

 

「別ににげねーから。とりあえず離せ」

 

 

何なのこの子?出会って2日の女の子が俺の思考をトレースしてる!?

なんかラノベのタイトルにありそうだな

 

 

「とにかく深雪さんはお兄さんと一緒に帰ろうって言っているんです。何の権利があって2人の中を裂こうというんですか!」

 

 

おとなし系の柴田も語調が上がり、一科生に対し抗議に出る

 

これはまずいな。こういう場合関係者の中には冷静でなおかつ気が高ぶってる連中を止める役が必要だ。それがなかったら周りもどんどんヒートアップしてくる

 

 

あのグループの中でその役目は司波兄と柴田2人だろう。でも、今柴田は止める側にいない

。司馬兄は妹の前に出て、とりあえず様子見ってところか・・・?

つーか妹の方、柴田の言葉で顔を赤らめるなよ。ブラコンかよ・・・ブラコンだな

 

 

つか、司波のグループと森本達は言いあいの末なにやら不穏な空気になってきやがった…

 

なにこれ、なんで俺こんなとこいんの?

光井もなんかどうしたらいいかわからず、戸惑いの表情を浮かべてるし

 

 

「これは1-Aの問題だ!ウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!!」

 

 

うっわ…なにあれ、同じ1年でどうしてあそこまで差別意識が強いわけ?

つーかごときとか何様なの?金持ちなのエリートなの

 

これだから金持ちでエリートなやつは扱いに困る

 

金持ちではないにしても、入試3位でたしか男の中じゃトップの成績の俺もエリートってい名乗っていいかな。いいよね?

 

 

「…同じ新入生じゃないですか‥貴方達ブルームが今の時点でどれだけすぐれてるというんですか!!」

 

 

 

肩をやや震えさせ、それでも目前の一科生に向かい柴田は言い放つ。

その顔には強い意志を感じられ、もうこれは冷静になるとか周りを止めるとかは無理だろう。しかし、それは彼女の確固たる意志のもと、言われた言葉であり

 

森本達の言うウィードとブルームなどという、ただの優越感におぼれた愚か者共の言葉とは重みが違う

 

 

森本は一瞬顔をしかめさせ、すぐ後に歪な笑みを浮かべる

 

 

「どれだけ優れているか知りたいか?」

 

 

「おもしれい、ぜひとも教えてもらおうじゃねーか」

 

 

その言葉に反応したのは、レオは足を肩幅に広げ、飛び出す準備を整える。それとその後ろでエリカも黒い棒状のものを取りだし、臨戦態勢を整える

 

周りにいる一科生も、距離を置き2人が戦うリングを形成すし

 

森本は懐から銃型のCADを取りだし、レオに向かう

 

 

「これが…」

 

「才能の差だ!」

 

 

森本の周りにサイオン波が出現し、それを合図にけたたましい雄叫びと共にレオが一直線に突っ込んでくる。

 

 

「うおおおおお!!」

 

 

「やめろつの」

 

 

俺は、森本の後ろ斜めに移動しひざ裏を蹴りぬく。

 

要はひざカックンと同じで、いきなりの事で対応できなかった森本はバランスを崩しその場で尻もちをつく形で倒れてしまう。

発動しようとしていた魔法も術者異状事態により消える

 

 

「な!?」

 

 

「うお!?」

 

 

両手を地面につき座る形になっている森本といきなりの乱入者に驚き、急ブレーキをかけたレオは素っ頓狂な声を上げる。

 

 

始めは何が起こったかわからない様子の森本は、次第に自分の状態と後ろにいる俺を見つけ状況を理解したらしく、怒りに満ちた顔で俺を睨みつける。

 

 

「貴様!何の真似だ!!」

 

 

急いで立ち上がり、怒鳴り声をあげる。つか貴様って…

こいつは一体いつの時代の人間だよ。つか何様の人間だよ

 

 

「はあ…何のつもりは、こっちのセリフだ。この馬鹿が」

 

 

「なっ!?なんだと!」

 

 

「お前いま自分が何しようとしたかわかってんのか?」

 

 

俺の声は低く、ジトリと森本の目を睨む

その目を見た森本は、一瞬背筋が凍りつき勢いもそがれ

逆に冷静さを取り戻しつつあった

 

 

「自衛目的以外の魔法の使用。それも今のは確実に対人向けだったよな?」

 

「校則違反どころか、完全に犯罪だ」

 

それを聞いた森本の目は見開き言葉を詰まらせる

冷静さを取り戻し、今の状況を確認する。頭に血が上って完全に我を忘れていた

 

相手がウィードだからと、自分の自尊心が傷ついたからと、自分は今攻撃魔法を放とうとしていた。

 

 

「仮に俺が止めなくて、レオに魔法が当たってたら」

 

 

追い打ちをかけるように八幡は言う

真剣な眼差しで森本を見、一つ一つの言葉を丁寧に

 

 

「お前つーかおまえんち、どう責任とるつもりだ?」

 

 

「っ!」

 

 

森本の顔は完全に青くなりその目には、先ほどまでの余裕も怒りもなくただただ、自分の軽はずみな行動を顧みる。

 

もちろんある程度、加減をした魔法を選んだつもりだった。でも、加減したと言い魔法とは兵器に分類される力だ。

 

その取扱いや所有するものに対する責任も重大なものである。

森崎の本家に連なる自分ももちろんのこと、その責任は本家にも関わり、むしろ本家に連なる自分がしてしまった今回の失態は

 

稼業としてボディーガードをしてる森崎家の威信を失墜させるものにほかならない。

 

冷静に考えれば考えるほど自分はなんということをしてしまったのだという自己嫌悪に陥る。

 

どうすればいいかの答えも出ず言いよどむしかできなかった

 

 

そんな時、幸か不幸か少し遠くから声が聞こえる。

 

 

「貴方達何をしているの」

 

 

その声の主は、七草生徒会長だ。しかしその顔は入試の時にスピーチをしていた凛とした優しいものではない

 

 

「風紀員長の渡辺 摩利だ。事情を聴きます皆ついてきなさい」

 

 

さらにその隣にいるのは風紀委員長だ。この時森崎は、思考が止まり

そんな中一言だけ思い浮かんだ言葉があった

 

 

終わった‥‥



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入学編5

「すいません。悪ふざけがすぎました。」

 

 

司波兄だ。今まで静観を貫いていた兄は生徒会長と風紀委員長の前にでる

悪ふざけという言葉から、この状況を有耶無耶にする腹らしい

 

 

「わるふざけ…」

 

 

しかし風紀委員長は納得がいかないようで、しかめっ面で返す

 

 

「はい。森崎一門のクイックドローは有名ですから、後学のため見せてもらだけのつもりだったんですが、あまりにも真に迫っていたので思わず手が出てしまいました」

 

 

「っ」

 

 

あまりにも白々しく嘘を言う司波兄、それもかなり強引で無茶がある言い分だ。でも、その言葉を聞きそれまで俯いていた森本が顔を向ける

その顔は、先ほどまでの青白く絶望した顔より若干だが、色を戻した印象を受ける

 

 

つか、森崎って誰?…え、もしかしてこいつ森本…じゃなくて森崎っていうの?

 

どこか場違いな驚愕の事実に唖然とする八幡を尻目に話は続き、司波妹も兄に加勢する形で謝罪をし最終的に

 

 

「もういいじゃない摩利?達也君本当にただの見学だったのよね」

 

 

「生徒同士で教え合うのはかまいませんが、魔法の行使には細かな制限があります。魔法の発動を伴う自習活動は控えたほうがいいでしょうね」

 

会長が占め、それに続き風紀委員長も

 

 

「…会長がこう仰せられることでもあるし、今回は不問にします。以後このような事がないように」

 

 

どうやら見逃してくれる様子だ、まあこのままじゃ帰るのも遅くなるしなによりだ

最後に風紀委員長と司波兄が名前を聞いて覚えておこうみたいな会話をしていたが、なんかかっこいいな

その後会長たちは校舎のほうへ、戻り一科生の奴らも各自帰宅するようだ、

 

そんななか、森…森崎は司波兄を呼び止め

 

 

「‥‥ありがとう。お前のおかげで助かった」

 

 

と、頭を軽く下げた

 

先ほどまで、緊張した面持ちだったこいつも今はどこか安心したような顔で素直に礼を述べる

それを聞いた周りは、あまりの態度の急変に驚きの表情をしたが、とうの司波兄はいつも通りに

 

 

「別にお前のためにじゃない。気にするな」

 

 

俺でも驚いたのに、こいつはクールだな。クールというかどちらかというと、無関心のような印象を持てる。本人的には森崎を助けるつもりもなく、どちらかというと俺と同じで面倒とか時間がかかるとかの理由でやった行動のように見える。

しかし、森崎本人はというと

 

 

「僕の名前は森崎 峻。森崎の本家に連なる者だ。どんな思惑があるにせよ受けた恩は必ず返す。司波 達也なにかあったら相談してくれ力になる」

 

 

随分と律儀な奴だな。まあ あいつの今さっきまで、家やあいつ本人も少なかれず、ピンチでありそれから救ってくれた司波兄はまさに恩人ということだろう

そうして、その場を後にする森崎達

 

残ったのは司波グループと雫たち、そんで俺だ

 

ここで雫たちと俺をわけたのはあくまで俺と雫たちは同じグループではないということだ。

なんせ俺はボッチだからな

さてとボッチの俺も帰るとするか。こんな状況だし一緒に帰ると空気でもないだろうしな

 

 

「あの‥比企谷さん」

 

 

俺を呼び止めたのは柴田だ。

なんか用なの?そんな上目で見られるとドキドキしちゃうんだけど

 

 

「先ほどはかばっていただきありがとうございました。おかげで大事にならずに済みました」

 

 

「ああ…別に。それに俺がしゃしゃりでなくても、エリカとかが何とかしただろ。こっちこそ悪かったな。余計なお世話しちまって」

 

 

「そんな!余計なんかじゃありません。比企谷さんが森崎君を止めてくれて本当に助かりました」

 

 

「そうだぜ。感謝されてるんだから、素直に受け取ってけよ」

 

 

柴田に続いてレオも俺に声をかける

つーか、肩組むのやめてくれない。友達だと勘違いしそうになるじゃん

 

しかし、感謝か…ここ数年感謝なんてされたこと小町以外になかったことで、どうすればいいか分からないんだよな‥‥

 

 

「…そんじゃそうするわ。で、そろそろ帰りたいんだけど離してくんない」

 

 

「おいおいつめてーな。なんならこの後、一緒に帰らないか?」

 

 

なんなのこいつは?俺の友達かなんかか!

フレンドリーすぎるだろ…これがリア充のコミュ力ってやつなのか

 

だが、生憎だがそんなコミュ力も、ボッチを極めすぎてプロボッチへ進化を遂げた俺には屁でもない

 

…進化じゃなくて退化のような気もするが、気のせいだなうん

 

 

「この後、予定あるし帰る方向違うんで」

 

 

予定があると言えば、いけなくて残念感を出しなおかつ、向こう側もしつこく誘うことは謀れる。その上変える方向が別ということで、今後も誘われる可能性は極端に下がる

 

これぞ俺がプロボッチとして培ってきた経験に基づき

 

 

「八幡さっき暇だって言ってたよね?」

 

 

雫さん!?

心の中で口上を言ってる途中、俺の言葉に反応して雫が疑問をかける

つか、そんな事言ったけ?

 

 

「ああ…そ、そうだっけかー雫の気のせいじゃ」

 

 

「帰る時教室で話してた時」

 

 

『はあー…帰って早く昼寝してー』

 

 

どうやら、雫は俺の独り言を聞いていたようだ

つかなんで聞いてるの?席とか割と離れてたよな俺ら

 

 

「それに、駅まで同じ方向だよ」

 

 

止めの一撃と言わんばかりに、補足を付け加える

事実、この学校に通う生徒のほとんどは駅から通学してくる

一校に入学するということで千葉にある家から通いやすいアパートに移り住み、一人暮らしをしている俺も、駅から通学している

 

ここにきて、俺の言ったことは全否定され打開策を練る時間もない

 

 

「‥‥お供します」

 

 

つまり、ここは黙って従うしかないのである。

くっ!まんまとリア充の罠にはまってしまった八幡の運命やいかに!?

つーか、光井はともかく雫は何でそんなに嬉しそうなの?

 

あと、そのドヤ顔やめてくんない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺と司波一行は駅前にある某有名チェーン店にて、飲み物を購入し店外スペースにて腰を下ろしていた。

 

一緒に帰るって一緒に買い食いとかすることなわけ

普通に駅までついたら解散するんじゃないの?

 

 

リア充について、俺は得意の観察眼ヒッキーアイをつか奴らの、学校での生態は大方把握している。

なんせ人のコミュニケーションとは3割が言語、それ以外の7割は仕草や目の動きといったことから情報を集める。つまり、いかにボッチでも相手を見てさえいれば大体のことはわかるということだ。

 

だが、それは逆説的に言えば見ていなければ何も分からないということに他ならない

人知れず教室を後にし。誰にもきずかれることなくつーかきずかれないように最大限の注意を払い下校する俺にとり、リア充どもが何をするかなんて知る余地がないのである。

 

 

「じゃあ深雪さんのCADを調整しているのは、達也さんなんですか」

 

 

「ええ、お兄様にお任せするのが一番安心ですから」

 

 

光井はいつの間にか、憧れの司波妹と仲良くなり兄の方は名前で呼んでいるレベルだ。

本当こいつら皆、リア充だよな。なんでこんな短時間で仲良くなれるわけ?司波グループに光井を加えた先頭集団は、和気あいあいと話をしている。

内容と言えば、大方が司波兄妹の話であり総合すると

 

妹のCADを兄が調整(普通はプロの業者任せ)

 

兄はCADの知識が豊富(パソコンを部品から組み立てるレベルのハイクオリティ)

みたいな感じだ

 

 

そんで、俺はというとその輪に入れず一人コーヒーを啜っている。

残念なことにMAXコーヒーがなかったので備え付けの甘味を一通り吟味した八幡ブレンドを制作。うん甘い。ひたすら甘くだが、そこがいいむしろいい

 

でもやっぱMAXコーヒーの方がいいな。小町に頼んで2ケースくらい送ってもらうか…それとも練乳を購入するかだな

 

と、一人好みのコーヒーについて考えている俺に周りの目が集まっていることにきずく

ボッチにとり、こういう人の視線は毒と同じであり見つめすぎると最悪命の危険すらある行為だ。よい子の皆はボッチを見つけてもじっくり見ちゃいけないよ

 

一定の距離を置き、最低限の会話しかせず、話すときは目を見てはいけない…あれ?これただの虐めじゃね

 

って今はこんな事考えてる場合じゃないな。それになんか泣きそうになるし

 

 

「…えっと、なに?」

 

 

「だーかーらー、なんでさっき私がなんかするのが分かったのか聞いてるの!」

 

 

どうやら何かを質問されていたようだ、気が付かんかった

あとさっきてなんだ?話についていけないんだが…

状況が分かっても何を答えていいかわからず、戸惑っている俺に隣に座っている雫が助け船を出した

 

 

「森崎君達との事、美月にお礼言われた時エリカがどうにかするとか言ってた」

 

 

「ああ。あれか」

 

 

「聞かれてるのに八幡、変な顔で笑ってた」

 

 

「というか、気持ち悪い顔してたわよ」

 

 

「おい、エリカ気持ち悪いってなんだよ」

 

 

まったく失礼な、俺別にそんな顔してねーだろちょっと、MAXコーヒーの事や小町の事にそれから小町の事考えてただけで‥‥してたかもな。そんな顔

 

 

「で、なんでなのよ?」

 

 

「いやだって、あん時お前なんか棒っぽいの構えてただろ。詳しくは知らんがCADだろ」

 

 

「…へーこれがCADだって分かるなんてすごいじゃん」

 

 

懐から黒い棒状のCADを取りだし、警棒のように収納されているものを伸ばす

 

 

「よく知らんがあんま見たことない形だな」

 

 

「まあね、これ刻印型の術式処理がされてるのよ」

 

 

「刻印型…?」

 

 

確か刻印型って術式を幾何学紋様化して、感応性の合金に刻み、サイオンを注入することで発動するやつだよな

 

簡単に言えば、サイオンでスイッチを入れる懐中電灯みたいなものか

 

 

「そうよ、だから柄以外は全部空洞なの」

 

 

「てことはサイオンを注入し続けるってことだろよくガス欠にならねーな」

 

 

「振出と打ち込みの瞬間だけサイオンを流せば、そんなに消耗しないは兜割の原理と同じよ」

 

 

さも当然のようにいうエリカに周りも唖然と息をのむ、確か兜割って奥義とか秘伝とかに分類される奴だよな

ゲームとじゃそこそこ上の必殺技でよくあるし

 

 

「エリカ兜割って秘伝とか奥義とかに分類される技術だと思うのだけれど、サイオン量が多いよりよほどすごいわよ」

 

 

周りの反応を変に思っていたエリカに司波妹が、説明をする。

剣術とか詳しくないが、やはり兜割とは相当すごい物らしい。

 

 

「もしかして、内の高校って一般人の方が珍しいのかな」

 

 

単純に疑問に思ったのだろうか、柴田は小首を傾げそう呟く

そこに雫が答える。

 

 

「魔法科高校に一般人はいないと思う」

 

 

その言葉に周りもああっと声を上げる

魔法師事態、十分珍しい物でありその育成機関に通う生徒もまた一般人ではないということだろうが、

 

 

「いやいや、俺は一般人だから」

 

 

だって、ついこの間まで普通の友達がいないボッチで、数々のトラウマを抱えて目が腐っててシスコンの一般人だし俺。これ一般人か?

 

 

「そういえばまだ、比企谷に聞きたいことがあったんだが」

 

 

と、いきなり司波兄が話を振る。なんだいきなり?

 

 

「さっきの騒動の時、魔法を発動してただろ」

 

 

確かに、あの時俺も魔法を発動していた。だが、なぜそれをこいつが知っている

本来、魔法師はサイオンを音波や光線みたいな感じに知覚することができる。

だから、先ほどエリカが使おうとした刻印魔法などの例外を除けば、種類は無理でも発動したかどうかはわかる仕組みだ。

 

 

しかし、俺の使った魔法は特徴としてそういった知覚がしにくい筈だ。なので普通の魔法師には分からないはずなんだが…

 

 

「なんで、そんなこと分かんだ?」

 

 

「………俺は展開された起動式を読み取ることができるんだ」

 

 

「な!?」

 

 

起動式って確か、基礎単一のやつでもアルファベット3万字相当の情報量があるはずあるはずだぞ…まじか

 

 

「…達也さんその話さっきもしてたよ」

 

 

と、驚いている俺に雫が語りかける。

なんか話す前に間があったと思ったらそういうことかよ

聞いてなかった…まじか‥‥

 

 

「比企谷の魔法は発動したことはわかるんだが、見たこともない魔法式だったんでな、なにを発動したかまでは分からなかった。ただ、一瞬比企谷の姿を認識できなかったんだが」

 

 

一瞬この質問に答えるか迷ったが…まあ別にいいかと思い

できるだけ簡潔にところどころ伏せて説明する

流石に出会って数日の奴らに、自分の魔法の全容を教えるのは気が引けるし、俺自体まだあんまり魔法そのもになれてないということも起因する

 

 

「それであってる。俺の得意魔法は、人の認識を外す魔法だからな」

 

 

「認識を外す?…そりゃあつまり系統外魔法ってことか?」

 

 

レオは少し考え、自分の中で出した答えを俺に聞く

系統外魔法 は、物質的な事象ではなく精神的な事象を操作する魔法の総称であり、今の説明だけならそう思っても無理はないか

 

 

「いや違う。今のは俺の説明が悪かったな。俺の魔法は知覚的な認識を外すんだ」

 

 

「えっと…どういうことだ?」

 

 

どうやら分からなかったらしいな

だが、どう説明するべきか…先に言った通り俺自体この魔法を詳しく知らないしな‥‥

 

 

「つまり、精神的事象を操作するのではなく、視覚的に姿が見えなくなる又は、何らかの誘導でほかの場所や物に意識をそらす…ということか?」

 

 

どう説明したらいいかあぐねっていた俺に代わり司波兄が、説明する。

大体それであっている、これだけの説明でそこまでわかるってすごいなこいつ

 

ちなみに正解は後者の方が近く、魔法を発動しても俺の姿は消えない。簡単に言うと石ころ帽子みたいな魔法なのだ

 

 

「まあ、そんな感じだ。分類でいえば、系統魔法のいくつかを複合した複合魔法だな」

 

 

「ほーなるほどな‥‥ん、でも待てよ?その魔法って要は見えなくなるってだけだよな」

 

 

レオが何かを疑問に思ったようで話を続ける

つか、だけとか言うなよ。これでも俺の一番と得意な魔法だぞ

 

 

「それって、あの場面で必要か?」

 

 

「お前みたいなタイプだと不要かもしれんが、俺は生憎腕っぷしが強くないんでな。正面切っての勝負とか苦手なんだよ。それに、ああいう時は下手に制止するより思いがけない事をして驚かした方が、効果的なんだよ」

 

 

「なるほどな‥‥お前、以外と考えてるんだな」

 

 

「意外とってなんだ意外とって」

 

 

 

まるで、俺が普段なにも考えてないみたいじゃないか失礼な。

これでも色々と考えてるんだぞ、今晩のメニューとか小町の事とかあとは‥‥世界平和とか考えてるんだぞ!




次回、八幡のCADと魔法の詳しい説明が入ります

CADのご要望がありましたが、私の独断で決めさせていただきます。

ご要望内容が反映されなかった方へ、謝罪申し上げます


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入学編6

完全にオリジナル設定です。

ニワカ知識なので矛盾とかあったらすいません


今現在俺は、場所は何処だか知らんがなんかホテルの一室みたいなところにいる。

 

あいつらと別れて、家に着いたとき時間は1800時を周っており飯作るのめんどいなーとか思いながら帰路についていた。家の前までつくとそこには高そうな高級車が止まっており、

その中にいた、黒服でグラサンかけたスーツ姿の男たちに拉致られた。

 

 

何がなにやら分からなかったが、CADを取られ両隣に怖いお兄さん達がいる状況で俺に何かができるはずもなく、黙って連れて行かれた

 

せめてもの抵抗でこいつらの事を観察していたが、こいつら確か俺を一校の入試に連れて行った奴らじゃねーか!

 

 

(つーことは比企谷本家の関係者か…?)

 

 

とりあえず身の安全は大丈夫のようだ‥‥たぶん

で、そのまま何十分か車は走り、止まったと思ったらいきなり目隠しをされこの今いる部屋に連れてこられた。

なんか黒服の中でも、一人だけ白髪でどこか、気品?に溢れる初老の男性がざっくりと説明する

 

 

「私は比企谷本家の執事を仰せつかる者です。本日は比企谷 八幡様に本家より重大な話があり、お連れした次第です。乱暴な真似をし誠に申し訳ございません。詳しい事はこれより来る方が話されますのでどうぞ、ご寛ぎを」

 

 

それならそうと言えばいいんじゃないんだろうか?あれお連れっていうか完全に誘拐だろうが!

後ろに黒服達が控えてるからそんな事、口が裂けても言えないが、つか怖いんだけど

心の中で叫びあげ、無言のまま軽く会釈をした

 

 

それから数分後、俺や黒服達は一言も話さず気まずい沈黙が続く

普通の人間ならこういう時、気を利かせる一言を言うか、それができなくても何らかの質問、又は「ちょっとトイレ…」みたいな方法で打開しようとするだろう

 

 

でも俺は仮にもボッチ、それも進化し続けてプロとまでなった一流のプロボッチだ

そんな俺にはこんな沈黙なんてことない。ただただ黙ってその時が来るのを静かに待つ!いっそのこと貫録と言えるレベルだ

 

 

変な汗を大量に掻いてるのも、体が小刻みに震えてるのも、目がさっきから泳いでるのも別になんてことない。だから…だから、誰だか知らんが来るなら早く来い!マジで!!

 

 

「待たしてしまったね。所要が長引いてしまってね」

 

 

突如として扉が開かれ、そこから一人の女性が入ってくる。

スーツの上に白衣を着た、黒髪ロングで巨乳の美人

 

 

「平塚様、お待ちしておりました。お手数ですが事情は平塚様の方から説明のほどお願いいたします。彼が比企谷 八幡様です」

 

 

執事と名乗った男が平塚と呼ばれた女性に対し、俺の紹介をする。

その後、黒服達は部屋の外に出ていき2人きりの状態になる

 

 

「初めまして、私は平塚 静だ」

 

 

「は、初めまして比企谷 はひゅまんでしゅ‥‥」

 

 

噛んでしまった。こんな状況という以上に目の前の女性に緊張してしまい盛大に噛んだ。なんだよでしゅって…

なんか最近自己紹介をするたびに俺の黒歴史が増えてる気がする。

 

 

「フフ 君は話に聞いていた通りなんだな」

 

 

おいこら一体誰がどんなこと話したんだ?絶対いい事じゃねーだろそれ?

 

 

「自己紹介も済んだところだし、さっそく本題に入らしてもらおう。突然だが君には私の所属する組織に入ってもらう」

 

 

あれで済んだといっていいのか?これ以上何か言えって言ってもなんも言えないけどさ…

 

 

「お断りします」

 

 

「即答か…念のため理由を聞こうか」

 

 

「いやだって、明らかに怪しいじゃないですか?黒服、誘拐ときて組織に入れってどこのヤクザですか。それに、俺みたいな一般人にできることなんてお茶くみくらいですし、そもそも何の組織か分からないのに入るわけないじゃないですか」

 

 

正論である。これがもし本当にヤクザだったら有無も言わさずはいか、YESなのだがさっきの連中も一様は家の関係者だし、この平塚 静という女性もなんかフレンドリーだし、

 

最悪いきなり蟀谷にパーン!みたいな事にはならないだろう。

 

 

「とりあえず却下だが」

 

 

却下なのか…しかもとりあえずで

 

 

「まずは私と組織について話そう」

 

 

「私は日本軍国防陸軍所属する平塚 静、階級は少佐だ」

 

 

「軍人…ですか?」

 

 

「そして私が務める独立総合諜報武装連隊の隊長でもある。これでも、大越紛争にも参加している」

 

 

大越紛争って確かンドシナ半島南進を目論む大亜細亜連合相手にベトナム軍が繰り広げていたゲリラ戦で、日本は大亜細亜連合のインドシナ半島南進を妨害してたみたいなやつだよな?

 

 

「名前を聞けば大体予想はできると思うが、国内における諜報活動が主な任務で魔法武装の携帯及び所持を認められているが、破壊工作などの謀略活動は原則として認められていない。」

 

 

なんか小難しい話になってきたが、要はスパイみたいな感じなのか?

というかこの人、フランクだが相当偉い人なのではないのだろうか、やっべ…そう考えるとやたら緊張してきた

 

だが、聞けば聞くほど分からない事もある。

 

 

 

「で…その隊長さんがなんでまた俺のところに?」

 

 

 

つい数か月くらい前まで、ただの一般市民であり特殊な訓練どころか運動もそこそこの素人である俺になぜこんな勧誘みたいなことを

 

今日だってこんなめんどい事をして俺と話をしているし、本家の人間が何らかの政治的要因とかで、とか考えるがそれはないだろう

 

比企谷の家の事は知らんが要は取り壊しまじかの没落家だ。

いくら魔法師がいないからといい、俺みたいな素人を進んで軍に差し出したりはしない。それは森崎に言ったように、家を代表するものがポカを仕出かしたらその皺寄せは家にまで来る。そんな中、貴重な魔法師である俺を手放すことも、素人の俺が国家権力の中でミスを仕出かす恐れがあり、その結果家が滅ぶ恐れもある。

そんなハイリスクな真似はしないだろう。

 

 

そうなると、後考えられるのは軍自ら言いだしたとか…?まさかな

 

 

 

「私は君の魔法に大変興味をひかれている。」

 

 

 

「ミスディレクションですか?」

 

 

 

「加速、移動、振動、吸収4つの系統魔法の複合魔法ミスディレクション。

 つい先日、比企谷家よりインデックスに登録された新魔法でありその効果は、自分と周囲の環境情報に干渉し、姿を隠匿する迷彩効果。ミスディレクション本来の用途との複合により認識されている場合でも一定時間の効果が発動する」

 

 

「さらにこの魔法の驚異的なところは、起動から発動までのラグがコンマ数秒であり、それゆえ魔法発動時に可視化されるサイオンを魔法師は知覚することが非常に困難であるということ。ただ例外を上げれば知覚系魔法はそれに含まれない場合がある」

 

 

「そして最後にもっとも驚愕すべきは、この魔法の製作者は名目上比企谷本家の名義で登録されているが、実際はついこの間まで魔法とは無縁の一般中学生、そう、君がこの魔法を作ったということだ」

 

 

彼女の言うとおり、この魔法は偶然にも俺が発見してしまった物だ。あの日俺は、本家の人間が雇った家庭教師により、魔法についての基礎知識と実技特訓を義務ずけられ

 

 

特訓中、疲れ果て限界になった俺は逃げようとしたが警備が厳重で断念しどうにか隠れようと模索しているうちにたまたま見つけたのがこの魔法だ

 

 

ステルスヒッキーをイメージし、なんやかんやしてるうちになんかできてしまったという、何ともアレな理由で誕生してしまったのだが‥‥

 

 

先ほどまでフランクに話していたが、俺の中で警戒レベルが跳ね上がった

 

本家の方針でなるべく悪目立ちを避けるためと俺自身がこの魔法を使えるが、説明とか理解は無理という事実から開発者欄に俺の名前を使うのは避けたが、その事は俺と本家の連中しか知らないはずだ。



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入学編7

「おいおい、そんなに警戒しないでくれ。目がすごい事になってるぞ?」

 

 

むしろこの状況で、警戒するなとは無理だと思う。

 

 

「目は生まれつきなんで、ほっといてください。つーかなんでそのこと知ってるんですか」

 

 

「先ほど言った通り、私の組織は国内の不穏分子の摘発や監視もしているその延長で、新魔法なんかの情報もあらかたくる。そんな下り、我が隊にピッタリの魔法があるではないかと調べたところ。君の事や比企谷家の現状を知ったわけだ」

 

 

「いくら軍でもそんなこと‥‥」

 

仮にも本家の人間が隠してることだぞ?国家権力だからってそんなのこと不可能ではないのか?

 

 

「我が隊は軍内部でも新参の部類だし、権限や信頼もスズメの涙といったとこだ。相手がそこそこの企業やナンバーズだったらまず不可能だろうな。それこそ崖っぷちで潰れそうな元名門相手ぐらいしかできない芸当だ」

 

 

崖っぷちで潰れそうって…さんざんな言われようだな

しかも、情報がだだもれとか終わってるな…

 

 

それにしても、勧誘しようとしてる相手にそんな内情をいっていいのだろうか

 

 

「…ですが、なんで俺なんです?調べたら知ってる通り、ただの一般人ですよ。いくら魔法が使えたって実戦とかじゃ使えないでしょう?」

 

 

「実戦?…ああ、なるほど!」

 

 

突然なにか分かったといった感じに、声を上げる平塚…さん

 

 

「君は勘違いしているよ」

 

 

「勘違い?」

 

 

「君の言うとおりいくらんでも、元一般人を現場や戦場に出すなどしないさ」

 

 

「え…でも、軍に入れって」

 

 

「軍はなにも戦うだけが仕事ではないよ。それに、君が軍に入っても今すぐどうこうという話ではない。むしろ保護目的のためといったほうが近いかもしれない」

 

 

「保護って…いったいなにから?」

 

 

え、俺誰かに狙われてるの?なにそれ笑えない

 

 

「色々あるさ、君の家の情報管理なんてざるもいいとこなんだし新魔法開発に目を付けた国内企業や、他国のスパイそんなやからが君や君のご家族に危害を及ぼさないなんて保障どこにもないからな。」

 

 

どうやら入隊とか言っても、それは名目上の物だけらしい。なにより家族という言葉に反応する。

 

つまりそれは、妹の小町に何かしらの危害が俺のせいで降り注ぐという事か…そうなると俺はもちろん、本家なんかも役には立たないだろう。

なんせぼろくそ言われてるしな…それならいっそ平塚さんに言われた通り守ってもらえば

 

 

「さらに君も一校で学び将来的に正式に軍に入ることも視野に入れての申し込みだ。今から学べば大学を卒業するころには、魔法の扱いにも慣れてるだろう」

 

 

一瞬それもいいかもと思ったが

何気なく言われた爆弾発言に思わず立ち上がり講義をする

 

 

「は!?ちょと、俺軍に入るなんて」

 

 

「ちなみに、今から大学卒業まで名目上君の軍入隊を認め、その後正式に入隊することを条件に、比企谷本家に対し軍は支援金を支払う契約をした。君が断ればその話もなしになるな」

 

 

「はあああああ!?」

 

 

それで、本家の人間が俺を連れてきたのかよ!

つーかおいコラ、本家!勝手に何してんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあー…」

 

 

昨日は散々だった。結局あの後、断ろうとしたら部屋の外で待機してた黒服達が入ってきてめっちゃ睨んでくるし、うっかり口が滑り年の事の触れたら大昔流行ったアニメの必殺技をやられるし、つーかなんなのあの人の怪力?あれを魔法なしでやるとか人間業じゃねーよ…

 

 

お詫びとか言って夕飯をごちそうになったら、なぜか普通のラーメン屋に連れて行かれた。こういう場合ってどこか高い店とか行くんじゃないのか…いや、詳しく知らんが

 

 

ちなみにラーメンの味はうまかった。近いし今度行ってみるか

そんな事を思ってる俺に後ろから声がかかる

 

 

「おはよう八幡」

 

 

「おはようございます。八幡さん」

 

 

雫と光井だ、なんだがこうしてると普通の友達のようだが、朝の校門前さらに同じクラスなのだからこうして会うことも珍しくない。

別にあんたと一緒に行きたいわけじゃないんだからね!的な展開はないのである

 

 

「なんか疲れてる?」

 

 

「あん?別に普通だが」

 

 

挨拶をした後なぜか2人は俺の隣を歩き、登校している。そんな中俺の顔を凝視していた雫が聞いてきた。

雫のその言葉を聞いた光井も俺の顔をみて「そういえば目が…」と小声で言っていた

 

ラノベ主人公でもあるまいし近距離での小声が聞こえないわけはないのである。

 

 

と、そこで俺を見ていた雫の目がジトーという効果音を上げる

 

 

「…なんだ?」

 

 

「八幡、嘘ついてる」

 

 

「そんなことねーって」

 

 

「嘘」

 

 

最近分かったことだが雫はやたら頑固なところがある。一度言い出したら聞かなんだよな特に、この目の時は絶対ひかない

 

 

「はあ…別に昨日ちょっと家の事で色々あってな。その疲れが出てるだけだ」

 

 

昨日の軍の事や平塚さんの事は口外しないようにと釘を刺されている。今までの俺ならそんなものする相手なんていないと、一周してたとこだが最近になってそういうことを聞きそうな連中が俺のまりにいるから用心に越したことはない

 

そこで最低限の事しか言わず、雫に返した

 

 

「そう。無理してるなら一度保健室にいったほうがいいよ」

 

 

ジト目をとき、今度は心配してるような目をする。

 

 

「生憎無理してまで、授業に出ようなんて殊勝な心がけ持ってないんでなそうするよ」

 

 

雫の目線にいたたまれなくなり、つい悪態をついてしまう。ボッチは同情される目線には案外慣れているが、そんな本当に心配されてるような目には耐性がないのだ

 

 

「それならいい…無理はしないでね」

 

 

本当にやめてもらいたい。ついつい惚れてしまいそうになる。

つーかこいつ何気に男前だよな

そうこうしてる間にクラスにつき俺と雫たちはそれぞれの席に行く

 

来る途中、司波兄妹が生徒会長に呼ばれていたが、まあ俺には関係ないか



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入学編8

放課後なぜか俺は生徒会室の前にいた。朝から心配されている目は見てはいないが物凄い勢いで濁っていることだろう。虫なんて食ったことないが苦虫を食ったらこんな顔になるんだろうなー、みたいな顔をしているに違いない

 

そして隣にはその原因だと思われる

 

 

「どういうことだ、司波兄?」

 

 

「なんのことだ?」

 

 

「とぼけるな、なんで俺が生徒会に呼び出されなきゃならんのだ」

 

 

「なぜそれを俺に聞く?」

 

 

「朝お前らと会長が話してるのを見たし、妹の方が昼を生徒会室で食べるといい出ていくのを見た。」

 

 

実際は光井が司波妹を昼食に誘ったが生徒会に呼ばれているからそこでいただくという旨で断られ、俺と雫はそんな光井の愚痴を聞かされたのだ

 

 

「その2つに今日の呼び出し、極めつけはお前がここにいるという事。これでなんも知らんわけないよな」

 

 

さらにもう一つ。口には出さんが昼から帰ってきた司波妹が俺に向かい親の仇を見るような目で見てくることだ

 

ギロリと一睨み、司波兄に向ける

 

 

「とりあえず中に入ればわかるだろう」

 

 

逆に睨まれ、俺は反射的に身を後退させる

それは、小型犬が大型犬に威嚇された時のような感じで、キャインと言いそうになる

 

小町~・・・イケメンには勝てなかったよ‥‥

 

 

司波兄はコンコンと2回ノックをし扉を開けるとクラスと名前を言いそれに続き妹も名前を言う

 

 

「よ、来たな」

 

 

「いらっしゃい深雪さん。達也君もご苦労様、そっちの彼が比企谷君ね」

 

 

昨日の風紀委員長の先輩だ…なんか昨日会った時と打って変わって、随分とフランクな感じだ。

そして、それに続き会長が出迎えの言葉を言った後、目線を俺に向ける

 

 

「…どうも、比企谷っす」

 

 

「なんだ?元気がないな」

 

 

俺の挨拶を聞いた渡辺先輩がなんかめんどい感じに絡んでくる。

 

この人みた感じもそうだが、中身も体育会系だな…苦手なんだよな、あの元気がないもう一度みたいなノリ。挨拶くらい普通にしたい

 

 

「そんなことないっすよ。ところで俺はなんで呼ばれたんですか?なんかした覚えは…ないっすよ」

 

 

一瞬考えてしまった。昨日は魔法の無断使用をしちゃったが、まあ状況が状況だし自衛の一環に入るだろ…たぶん。

そもそも俺が魔法を使ったことはばれてないはずだしな

どこぞの誰かも言っていたなイカサマはばれなきゃイカサマにならにとかなんとか

 

 

「別に君に問題があるとか言うわけじゃない。そうだな…まず昼の事について話そうか」

 

 

そういい先輩は今日の昼、生徒会室で起きたことについて話した

 

まとめるとこうだ、

 

伝統として、学年主席は生徒会メンバーとして役職に就く。そのため妹が呼ばれ成り行きで兄も同行することになった。

 

妹が兄のいいところを力説、兄は実技は二科生だが筆記は主席らしい。そのため自分ではなく兄を生徒会に推薦。流石俺が認めたブラコン、ぶれないな

 

でも生徒会は一科生から選ばれる規則があり断念

 

そんな時、風紀委員長が生徒会推薦枠で風紀員に席があるとのことで、兄を風紀員にいれようとする

 

兄はそれに反対、色々口論した結果

「俺よりも比企谷の方が、風紀員として責務を果たせます」

などと、苦し紛れに俺に火の粉を投げつける。何してくれてんだこん野郎…

 

そこで昼休みは終わり、話の続きは俺を交えて放課後またここでという事になり

 

冒頭に戻る

 

 

話を聞き終えた俺は目をパチクリさせ、ことの発端に目を向ける

 

 

「やっぱ、お前のせいかよ。つーかなんだよ風紀委員て」

 

 

トンファーもってリーゼントとか従えるわけ、それとも足に鉄釘装備してジャッジメントですの!とでもいうわけ?

 

 

「風紀員は学校の風紀を維持し、主な任務は魔法使用に関する校則違反の摘発、魔法を使用した騒乱行為の取り締まり、だそうだぞ」

 

 

と、司波兄が他人事のように説明する。つーかそれ、バリバリ危険じゃん

こいつ本気で俺に厄介ごとを押し付ける気だな

あとあれか、妹の方が俺に敵意を向けるのはそれが原因かよ。兄の活躍の場を奪ってみたいな

 

俺まったく関係ないじゃん。とばっちりも甚だしい

 

 

「生憎俺はそういう体を使った系のやつとは無縁な生活送ってたんで、足手まといにしかなりません。丁重にお断りします。それじゃあさよなら」

 

 

入ってきた扉に体を向け、駆け足で出ようとする。だが先回りしていた司波兄によって阻止される。つーか今の前にいたよな?なんで俺より早いんだよ

 

 

「まあ、待て。そんなに早く帰っては先輩たちの顔に泥を塗ることになるぞ?もう少し話そうじゃないか」

 

 

こいつ、先輩っていうとこを強調しやがって…

実際会長や風紀員長の顔に泥を塗ることになんてならない。よくて失礼な後輩くらいの認識だ。だが、こいつの一言であたかも今、出ていくことで先輩の顔をつぶしてしまう。そんな空気を作り出した

 

 

司波妹は、そのやり取りをみてギリッと歯をかみしめる。そんな顔すんじゃこいつ止めろよ

会長と委員長は兄の意図が理解でき、それでも静観を貫く。悪い笑いをしてるのは気のせいか?

先輩…?ぽいロリっ子はどうすればいいかわからない様子でおどおどとしている…先輩だよな?

その後ろの髪の長いなんか真面目っぽい女性は興味がないような感じで紅茶を啜る。

この人たちじゃあ、司波のいったようなことは思わないだろうし、妹にしてはここで俺が退出すれば満面の笑みで送り出すに違いない

 

 

だが、会長の椅子の隣にいる男、役員唯一の男と思われるこいつは俺らが入ってきてからずっと俺と司波兄に敵意を向けている

 

その上でさっきの司波兄の言葉を真に受けたようで、出て行こうとする俺を睨んでいる。何あの人怖いんだけど…

 

 

そしてそんな男の様子を見、勝ち誇ったようなしたり顔をする司波兄…クソ、完全にこいつの術中に嵌っちまってんじゃねーか

 

 

俺に残された手は、退室を諦めるか土下座するかの2択しかない

俺が少し本気を出せば、衆人看取のもと土下座だろうが靴舐めだろうがなんだってするが…それはあくまで、最終手段としてとっておこう

 

というわけで、必然的に退室を諦めるしかなかった



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入学編9

入学編いつまで続くのか…

切のいいとこで終わっていいですかね?それともどんなに長くても続けた方がいいですかね?


軽い舌打ちを聞こえないようにし、目の前の司波兄を睨みつける

そして思考を巡らせる、今ここで必要なのはこいつの糾弾ではない。いかにこの場を切り抜けるかだ

 

 

「話は聞くが‥‥さっき言った通り俺には喧嘩の仲裁なんてやる度胸も力もないぞ?」

 

 

「何を言っているんだ、森崎達との悪ふざけでは見事その場を仲裁したじゃないか。」

 

 

白々しい、昨日の嘘でわかっていたがあくまでアレは喧嘩ではなく悪ふざけにしたいらしい。わざわざその言葉を使うというところからも伺える

 

だがこのことにより俺にはもめ事の仲裁、それもCADを使用したもめ事を解消したという実績が残ってしまった。

 

このままでは非常にまずい、普通なら目が腐ってなければイケメンの俺とイケメンの司波では誰がどう見ても司波を選ぶ。だが、昨日の事の発端からうかがえるにこの学校では一科生と二科生というだけで、カーストの入れ替わりが起きる。

 

 

森崎は容姿、言動、カリスマなど、どうみてもカースト中層のモブ崎が3つとも持っておりなおかつその周りも美男美女ぞろいで埋まっているトップカースト司波グループに喧嘩を売ったのはそれが原因ともいえる。

 

 

つまり、一科の俺と二科の司波では俺の方が断然有利であり偶然にも風紀員の活動と同じ問題に取り組んだ実績が一つある分さらに形勢は俺に傾く

 

 

「あんなのただ、膝カックンして駄目なんじゃねーのっていただけだろ?」

 

 

「必要最低限の被害と言葉だけであの場を鎮圧できるなんて十分すぎるだろ?あんなまね俺にはできないな」

 

 

事実を曲げず、できる限り幼稚な言葉を使ってあたかもあんなのなんでもありませんよ?みたいな雰囲気を出すがそれも駄目だった。

俺とは逆に、不自然にならない程度の難しい単語を並べたうえ、最後に自分は下げて俺を持ち上げやがった

 

このままでは俺の評価は上がってしまう。どうにか下げなくては

だが、守りに入っててはこいつには勝つことができないならば…

 

 

「まねできないのはこっちだぜ、確か起動式を直接読み取ることができるんだって?その上大体の魔法は起動式だけでわかるんだろ。すごい目と頭脳だよな。風紀員の事情は知らんが、今までも罪状が分からない未遂犯ってやつはいるんだろ?」

 

「そういうやつらにしてみたら、お前の存在そのものは強力な抑止力になる。」

 

 

恐らくこれが、司波が風紀員として選ばれそうになってる理由の一環だろう。

後ろでさっきまで睨んでいた男役員はそんなのありえないと、騒いでいるがその他に変化はない

 

やはりな、ブラコンの司波妹は兄を生徒会に押し規則でそれを阻まれた。そんな中出たのが風紀員という座だ。

生徒会には劣るがそれでもその座はどうしてもほしい物だろう。ならばあいつは兄のセールスポイントを押してくるに違いないと睨んでいたが

どうやらあたりらしい

 

 

「それは俺はもちろん、ほかの生徒だって、できない芸当だろ?なら俺よりお前の方が風紀員に選ばれるべきだ。」

 

「なーに心配はいらないだろ?魔法の実技が苦手だそうだが、そんなのほかの役員がカバーしてくれる。適材適所ってやつだ」

 

 

これでどうだ!司波を前面に押し立て、さらに来るであろう反論にあらかじめ釘を打っておく。形勢は一気に司波有利に進んだはずだ!

 

 

心の中でほくそえみながら、手を広げ扉側にいる司波を生徒会の方に促す。これで司波が乗り扉から離れれば俺はそのまま下校、司波は晴れて風紀員。イケメンの司波が来ることで風紀員長も幸せ言わずもながら妹も満足するだろう。

 

さあ、こい!お前が来れば皆幸せになれる。お前の犠牲は忘れないだからくるんだ!来るんだ司波ーッッ!!!

 

 

内心勝利を確信した俺の後ろから、突如待ったの声が掛かる

 

 

「渡辺先輩、待ってください」

 

 

それは先ほどまで俺ら2人を敵視していた男の生徒会役員だ

 

 

「なんだ服部 刑部少丞 範蔵副会長」

 

 

名前長ッ!

 

「フルネームで呼ばないでください!」

 

 

「じゃあ服部 範蔵副会長」

 

 

「服部 形部です!そんなことが言いたいのではなく」

 

 

「じゃあなんだ?」

 

 

「その一年生を風紀員にするのは反対です」

 

 

服部なんちゃら副会長は事もあろうに、司波兄に指をさし告げる

 

 

「過去ウィードを風紀員に任命した例はありません」

 

 

となにやら、渡辺先輩と揉めているようだが…ふざけるなよ!今の流れ完全に俺は助かる流れだったのにこのままじゃせっかくの作戦がパーじゃねーか!

 

空気呼めよ!服部なんちゃら!!

 

だがまずい、この服部KYのせいで流れが断ち切られた。さらにこいつもウィードと、言う言葉を使っていることから、森崎と同じタイプだ…いや、むしろ森崎よりはるかに厄介と言ってもいいだろう

 

新入生のあいつと違い、この人は相当根深く差別意識がねずいているに違いない。さらに生徒会副会長という確固たる立場、権力があり、まさにエリート中のエリートといったところか

 

 

エリート(笑)の森崎とは周りに対する発言力の重さが違うだろう。

そしてそんな人が、司波の風紀員任命に対し待ったの声をかけたのだ

 

 

さっきまで俺と司波は色々言い合っていたが結局は何も決まっていない

当人の司波がうんと言ったわけでも、会長と先輩が決定を下したわけでもない。

 

もしこの場にいたのが司波兄だけなら会長や先輩も擁護するかもだが、一応俺もいるのであからさまにどちらに付くような真似はできない

 

最悪このまま俺でゴリ押しされかねないし何より、当人の司波はやる気がないのだ。形勢はまたも一気に逆転した。



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入学編10

まずい、多少無理をしてでも、この流れを止めるべきか?

だがそうすると、俺が目をつけられる恐れがある。司波(二科生)に対する擁護や援護をすること自体こういう人種は嫌うかもしれない。それも今まで見下していたやつらに権力(風紀員)を与えることなど言語道断といったところか。

 

 

最悪、二科生の見方をするお前もあいつらと同じだ!比企谷の癖に生意気だー!!

などという展開になる恐れが十分にある。

 

 

司波に対してそういった+の感情を向けているのは、司波妹は別としてこの場にいる自分より権限が上な生徒会長とこれも恐らくだが、権限が上、もしくは生徒会とは別の権限を持っている風紀員長だけだ。

 

なので服部の野郎が自分より権限のしたの物に対して、どういった反応をするかは、予測不可能

 

 

 

「そもそも、風紀員はルールに従わない生徒を実力で取りしまる役職です。実力で劣るウィードには務まらない!」

 

 

こいつ、さらに畳みかけてきやがった!本格的にまずいなこりゃあ…

仕方ない、そもそも初めからここではボッチでいようと決意していたことだ。

目をつけられ虐められようと今更の事、小中学校と虐めという暴風雨で鍛え上げられた俺には金持ちの坊ちゃん程度の虐め耐えられるだろう

 

あ…でも、こういうのって金持ちとかのほうが陰湿だったりするんだよな…嫌だな…

 

 

「まっ」

 

「待ってください!」

 

 

ため息混じりの覚悟を決め、いざ抗議しようとした時。先ほどから沈黙していた、司波妹が荒々しい口調で服部の前に立つ

 

 

「兄は確かに魔法実技の成績が芳しくありませんが、それは評価方法に兄の力が適合していないだけの事なのです。実戦ならば兄は誰にも負けません!」

 

 

司波妹は言い放つ。それは一見劣等生の兄を優等生の妹が必死に取り繕っているようにも聞こえる、暴論だ

 

漫画しかりアニメしかり、道場剣術は苦手だが実戦剣術は俺の方が強い!みたいなことを言う負け惜しみ、みたいなものだ

 

 

「司波さん、魔法師は事象をあるがままに、冷静に論理的に認識しなければなりません。不可能を可能とする力を持つべき者とし、社会の交易に奉仕するものとし、自らを厳しく律する事を求められています。魔法師を目指す者は身びいき目を曇らせてはならないのです」

 

 

と、なんか長ったらしい事を、諭すような声色で司波妹に語る

名前も長ければ言う事も長ったらしいなこいつ…

 

 

どうやらこいつも同様の事を考えたらしい…途中から長くて聞いてなかったが多分そんな感じだ。ここで妹がいくら言ってもまさに身びいきと捉えられ子供をあやす様に流されるのが落ちだし俺でもそうする…

 

 

だが、それは普通の妹と兄の関係の場合だ。こいつは俺と同様に重度のブラコンである。その愛は、自分の兄妹が世界で一番かわいくまさに、天使という言葉を体現しているといっても過言ではない。と、本気で思っているほどだ

 

司波妹のほうも同様、お兄様が世界で一番カッコいいみたいな事を思ってるに違いない。だがここで多くの者が勘違いしていることを、訂正しよう。

 

 

俺らみたいなタイプは、身びいきを確かにする。それはもうめっちゃするが、それはあくまで俺らの内側での話だ。小町は確かに世界一可愛い、その可愛さを知り合いに三時間くらい語り尽くしてもいいと思えるレベルだ

 

 

だが、仮に小町の可愛さを三時間語った知り合いに、じゃあアイドルデビューしちゃえよと言われても俺はそれに同意しない

 

 

なぜならアイドルになって一番になる、どころか成功すかと聞かれれば……答えは否だからだ

確かに小町の可愛さならラブライブやアイマスに出ていてもおかしくはない。だが、それは世間の共通認識ではないのだ。誠に遺憾だが

 

 

つまりいくら俺の中で世界一可愛い小町でも世間的にはそれは違う、キャパシティーというものがあるのだ、

 

キャパシティーを超える無理な事を他人の前でいえば、それはそのまま小町の重みになり、それができなければ傷になる。そんなこと断じてしてはいけないのだ。

 

 

故に我々は誰よりも身びいきをするが、誰よりも身内の事を冷静に冷酷に分析し理解しているのだ。

 

それができないようじゃ真のブラコン・シスコンとは言えない

そしてこいつ司波妹はそれができないわけではないだろう、俺のシス魂が共鳴していることからもそれは伺える。

 

 

つまりさっき言ったのは司波兄のキャパシティーを超えていない事柄という見方をして間違いない。

 

ならばここは司波妹(ブラコン)にかける!

 

 

「はっ!目を曇らせてるのはどっちだか」

 

 

わざとらしく、全員に聞こえるように鼻を鳴らし言う。

突然の俺の言葉に、ほとんどの奴らが目を向ける

そして、服部の目が鋭く俺を射る

 

 

「なんだと」

 

 

「いえ、ただ目を曇らせてるのはどっちなのかと思っていっただけですよ?別に他意はありません」

 

 

「目を曇らせてるのはこちらほうだとでも言うつもりか!」

 

 

感情のままに俺の言葉に反応する服部に対し俺は、顔をそらし盛大に吹き出した

そしてそれを見た、服部はさらに怒りをます

 

 

「なにが!おかしい!!」

 

 

「いえ~そういえばさっき、魔法師は冷静を心がけるべきだとかなんとか言ってた人がいたなーと思いましてね」

 

 

「な!?」

 

 

今度はおどける口調で片手を口に当て、笑うしぐさをしながら言う。

自分を馬鹿にするそれを観て見るからに顔をゆがませ、先ほどまで長ったらしい演説をしていた男の姿はどこにもなくなっていた

 

 

「一年生!言葉に気負つけろよ。それ以上言えば!」

 

 

「言えばなんです?もしかして…」

 

 

言葉をためる間際、服部の後ろにいる先輩方を見やる。ロリっ子と会長は服部の怒り狂った姿に困惑し、多分もう一人の委員長みたいな人も困惑しているが、それでもまだ冷静といった感じで、風紀委員長は念のためだろうかCADに手を伸ばしている

 

どうやら誰も俺の思惑に気付いてはいないようだな

 

 

「俺に魔法でも使うんですか?確かに生徒会メンバーはCADの常時携帯を認められてますもんねー。でもそれって職権乱用じゃないんですか」

 

 

「ック!」

 

 

「そもそも、副会長ってそれほどの実力があるんですか?さっきからやたら偉そうなこと言ったり風紀員の人選に口をはさんだり、これで二科生の司波より弱いとかだったら笑い話もいいとこですよ?なんなら模擬戦でもして証明してみます?」

 

「二科生よりも一科生の方が実力で勝ると」

 

 

両手を上げ、ヤレヤレというポーズを取りながら体の方向を司波妹に向けその目を見る。

しばらく何か分からなかったようだが、俺の一言を聞き。

理解したようで軽く首を縦に振る

 

 

よし、大丈夫そうだな。あとは服部が話に乗れば…

 

 

「…思い上がるなよ!一年の分際で!!!」

 

 

肩を震わせ、怒り心頭といったご様子だ、おう怖い

 

 

「いいだろう!その挑発受けてやる!!身の程をわきまえる事の必要性をたっぷり教えてやる!!」



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入学編11

模擬戦をするのは、この学校にいくつかある魔法耐性が部屋一面に施されている特殊な部屋だ。ここは屋内演習場といい、主に実技魔法の練習や今みたいな模擬戦なんかに使われる。

 

といっても、普通の生徒ではなかなか許可が下りずまた、教職員などの監視があるか許可を取らないと使えないのだ。

 

今回は生徒会と風紀員長という絶対的な信頼を持つ生徒からの要請ということもあり、生徒だけでの使用許可が得られた。権力まじパネーっす…

 

そして今ここにいるのは、生徒会長含めた役員と委員長、帰ろうとしたところ必死で呼び止めた司波兄そんで俺と、目の前で鬼の形相をしている

 

 

「準備はいいか1年」

 

 

この副会長だ。

もうなんか準備万端という風に腕に付けたCADを触りながら仁王立ちしている

だが、このまま始まってはせっかくの計画がおじゃんだ…どうにか時間を稼がないと

 

 

「待ってください副会長、まだ司波妹が来てませんよ?」

 

 

「それがどうした、会長が見届け人としていてくださり、審判は渡辺先輩が務めてくださる。このまま初めても何ら問題はない。司波さんには悪いがこのような些事で多忙な先輩方を長々と突き合わせるわけにはいかない。それにどうせ、勝負は一瞬だ…結果だけを伝えれば問題はない!」

 

 

なげーよ…よくそんな長いの噛まずにいえるな‥‥‥要約するとあれだろ

 

いつでも準備OK

 

仕事が忙しい

 

お前はもう死んでいる

みたいな事だろ?3行で説明できることをどんだけ長ったらしく言ってんだよ

しかも、早口で全く時間稼ぎになってないし、本当駄目だなこいつ。マジ空気読めよ

 

 

「…この模擬戦は生徒会認可のもとあの場にいた全員が承諾したんすよ?それなのに一人だけはぶるとか、生徒会の格がしれますね」

 

 

「っ!いい加減にしろよ、先ほどからの無礼な言動、それに加え今度は生徒会を侮辱するつもりか!!」

 

 

やっべ…これマジギレだ‥‥言い過ぎたが?なんかもう今にも飛び掛かってきそうで怖いとにかく怖いんですが

 

 

「待て、服部副会長。開始を指示した覚えはないぞ」

 

 

「渡辺先輩‥‥」

 

 

ここで風紀員長の渡辺先輩が助け船を出してくれた。

凛とした、立ち姿で副会長と俺の間に入り止める姿はもうなんか男前すぎる

そういえば、光井が渡辺先輩はファンクラブがありそれはほかの魔法科高校にもあってとかなんとか言ってたな…それを聞いたときはそんな馬鹿なと内心思い適当に相槌を打っていたが

 

こんな姿を見せられれば納得がいくな…

 

 

「比企谷のいう事も一理ある。この模擬戦はあの場にいた全員が納得した上で成り立っている。公平を期すためにも司波を待つべきだ、本人もすぐに来ると言っていたわけだし」

 

 

その言葉に、反論を出せない服部は眉間に皺をよせ渋々承諾した

 

 

 

そして、演習場の扉が開かれ息を乱している司波妹がやってきた。

その手にはアタッシュケースが抱きしめられており、それを見た司波兄は驚いたように妹に事情を聴く

 

 

「深雪…いったい何をしていたんだ?それにそれは…」

 

 

片手を胸のところにやり大きく深呼吸を一回、息を整え兄に向い微笑みを向け司波妹は

 

 

「はい、勝手で申し訳ありませんがお兄様のCADを持ってこさせていただきました」

 

 

「なぜ、そんな事を‥‥?」

 

 

疑問を出す司波兄だがその額には一筋の汗が流れ、このあと妹が言うであろう事を薄々分かってはいるようだ。

その証拠にほんの一瞬だが俺の方を見ていた。それも確実に怒っている感じの目で

 

 

「もちろん、模擬戦で必要になると思いまして勝手に持ち出してしまい誠に申し訳ありません」

 

 

申し訳ないとか言いながら、その顔に反省の色はなくただただ純粋に眩しいくらいの笑顔がそこにあった。

これには兄の司波も言葉がでない。いや言葉を失うとか言う方が正しいか…?

 

妹のブラコンぶりがあれだが兄のほうも間違いなくシスコンであると言える。

違いはその兄妹愛がlikeに近いかloveに近いかだろう。

 

妹は確実にloveだろうが、兄はおそらくlikeだ。でもlikeはlikeでもベクトルが違うだけでその重さ大きさは妹に引きを取らないと言える。

 

ただこのlikeとloveが違えば、微笑ましいと狂気的にその光景は変わるので注意が必要だ

 

 

「司波さん?今なんと…」

 

 

司波妹の言葉に一番最初に口を開いたのは服部だった。兄の方は相変わらず、何を言ったらいいか分からないといった感じだ。

 

 

「服部副会長との模擬戦で必要になるだろうと思い、兄のCADを取ってきていました」

 

 

「な!?司波さん…これは私とそこの一年との模擬戦であり」

 

 

一瞬驚いた後、すぐさま生徒会室の時のように諭すような口ぶりで何かを言いそうになるがその言葉は全部言い終える前に妨げる

 

 

「俺は模擬戦なんてしませんよ。」

 

 

ちなみに、言葉を遮る理由はまたなんか長い話をしそうだったんで、なんとなく遮った。別に悪意しかないのである…おっと、間違えた悪意はないのであるだ、ついつい本音が出てしまった

 

 

「なにを言っている!この模擬戦はお前から言い始めたことだろうが!」

 

 

「模擬戦云々は俺が言いましたが、何も俺が出るとは言ってませんし。むしろ俺は出られません」

 

 

困惑気味に怒っている服部を尻目に俺は淡々と言い放つ。

しかし、流石に訳が分からないと周囲の人たちも困惑しているようだ。そして、渡辺先輩が代表として真意を確かめる

 

 

「どういう事だ、比企谷?」

 

 

両手を胸の高さまで上げ手のひらを上に向けると、ヤレヤレといった動作を取り

できるだけ意識したうえで悪い顔を作り

口元をニヤつかせながら言う

 

 

「どうもこうも俺は初めから言ったじゃないですか、副会長は実力があるんですか?模擬戦で実力を証明してください。‥‥二科生より一科生の方が強いと、ってね」

 

 

最後の言葉を理解したのか、その場にいる全員がハッとした顔になる

 

そう、俺は初めから言っていたのは何も俺と服部が戦って実力を確かめるという事ではない。俺が言ったのは一科生と二科生で強いのはどっちだという事なのだ。

 

一科生VS二科生これがこの模擬戦の構図だ。

 

一科生は無論服部なのだが、同じ一科生である俺はこの模擬戦に参加資格が端からない

では、誰が出るのか?

あの場にいたものは俺と司波妹さらに生徒会メンバー全員一科生だ、二科生であの場にいたのはただ一人

 

 

「つまり服部副会長の相手はこの司波 達也がするっていう事です」

 

 

全員の視線が司波兄に降りかかり、本人は頭を抱えながら片目で俺を睨む

だがその目には先ほどまでの覇気がなく、むしろ恨みがましいという感じの目をしている

 

っふ。いくら睨もうが無駄だ、初めに俺を巻き込んだのはお前なんだしこれはその仕返しだ

 

厄介ごとを押し付けようとしたこいつ(達也)に対し、罪悪感なんてものはないのだ。

押し付けられた厄介ごとをさらに厄介ごとを増して押し付ける。これぞ本当の倍返しだ!!である

 

 

「そんなふざけた事認められるわけがない!!」

 

 

相も変わらず副会長はお怒りで、まあ俺が怒らしてるんだがな。

俺がやったのは端から見ればふざけた言葉遊びなのだろうが、れっきとした討論技術だ。まず相手を挑発し冷静な判断をできなくし、その上でわざと相手が誤解するように言葉巧みに誘導する。

 

そして、本人がはめられていることに気付けないからその周りにいる人もそのまま誤解するという寸法だ。

 

これは相手が信頼されていればしてるほど、周りの人間も騙されやすい。その分服部はやりやすかったな。

 

これが仮に司波兄相手だったら、また違っていただろう。そもそもあいつが本気で怒ったら有無も言わさず消されそうだな…流石にそんなことはないか‥‥ないよね?

 

とにかく、今更いくら言っても遅いのだ。はめられた奴が何を言おうとまさに、負け犬の遠吠え、後の祭り、最後のあがきだ

 

 

「副会長さっきも言ったじゃなないっすか。この模擬戦はあの場にいた全員が納得した上だと…それを今更曲げるのは生徒会の威信に関わります。それに何をそんなに焦ってるんですか、副会長は相手が俺でも司波でもただ単に勝てばいいんですから変わらないでしょう」

 

 

それとも勝てないんですか、と駄目押し紛いに語りかける。さっきの渡辺先輩との会話にあったように俺の言ったことは捻くれているが、何も間違えではない。

それに騙されたのは自分なのだから何も言えまい。

 

 

 

「もちろん、司波が負ければ土下座でもなんでもして身の程を弁えない発言の数々償いますよ」

 

 

 

これぞ本当の駄目押しだ。ここまで言われれば服部の答えは一つしかない

 

 

「…分かった、いいだろう」

 

 

同意した服部を見て、次に司波兄を見やる。俺の考えではこいつの説得が一番骨が折れると思うんだよな…さっきも言ったがこいつは一筋縄ではいかないし、俺のペースに持っていくなんて至難の業だ

 

生徒会室でも奇跡的に追いつめることはできたが、それは俺の手の内を知らなかった初見だからこそできた事で、今まで散々俺の手の内をさらしてしまったんだ次もうまくいくわけがない

 

 

 

 

 

そんな事を考えていた俺だが、以外にも司波兄は素直に模擬戦に出るそうだ。本人も別にやる気があるわけではないがどうやら妹に色々言われたらしい。

 

 

色々というのは別に「さっさと行って蹴散らしてきなさい!」みたいなのではなく、「お兄様頑張って」といった内容の事だそうだ、

 

 

分かるぞ司波、妹の期待を受ければそれに応えてしまいたくなるそれが、兄という生物の生態なのだからな

 

それに後日聞いた話だが、司波本人も妹の目が曇っているなんだの言われて不愉快に思っていたそうだ

 

 

そんな訳で服部なんちゃら副会長と司波 達也の模擬戦が始まった

俺はとりあえず、ほかの面々と同じで観客に周り、司波の事を応援していた

 

 

「妹のためにも頑張れー」

 

 

普通聞こえないだろ、というレベルの小声にギロリと司波の目が光る

あいつマジ怖いんだけど‥‥



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入学編12

時計の針が12時を周り、俺と雫たちは又も一緒に昼食を食べる事となる。つーか、昼になると雫が有無も言わさず制服の裾を掴んで連行するのだ

 

色々あってベストプレイスもまだ見つけられていないし、断る事も出来ないので俺もそれに従う。一回断ろうとしたら理由を聞かれ、理由がないならそのまま強引に事を進めるんだよな…

 

雫と強引という言葉が合わないかもだが、恐らくイメージしてる強引とは違う

例えるならハルヒのテンションの高い強引ではなく、長門 有希の無言の圧力みたいな強引さだ。例えが分からん?…なんとなくニュアンスで感じろ

 

 

といっても基本は雫と光井の2人が話をしてたまに俺に振られるが当たり障りのない返しをするっていう感じだ。ただ今日は昨日の生徒会の事を聞かれ、俺もついつい余計なことまで言ってしまい結果、今日の会話の主が俺になってしまった

 

 

「それで、達也さんはどうなったんですか!」

 

 

物凄いくい気味な光井、もうなんか体も乗り出して顔が近いです…

つーかこいつは妹だけじゃなく兄の方にもただならぬ執着がありそうだな、取り合えず司波兄は爆発すればいいのに

 

 

「とりあえず近い、少し離れろ」

 

 

「あ…す、すいません!」

 

 

顔を真っ赤にさせおずおずと自分の席に戻る光井

ちなみに席の割り当ては4人掛けのテーブルで俺が一人で雫と光井がその対面に座っている感じだ。

 

それにしてもあんなに顔を真っ赤にさせるほどの事じゃないだろうにそんな縮こまって赤面する姿はまさに女の子って感じだ。

俺ぐらいになれば、あれ位でそこまで動揺はしない。そんな事ではボッチとしてやっていけないからな…いやこいつはボッチじゃないからいいのか

 

 

「八幡も顔赤いよ?」

 

 

雫が首をコテンとさせ、指摘するがハチマン何のことか分からないなー

…いやだって、俺だって健全な男の子だし近づいてきたときなんかいい匂いしたししょうがないじゃん

 

 

「ゴホッ…で、アレだ。その後司波兄と副会長が模擬戦したんだが以外にも一瞬で勝負が決まった」

 

 

気を取り直して話を続ける俺。雫は興味深そうに聞き、赤面していた光井は今の一言で顔を上げる

その顔は青く血の気が引いたような顔色だ。赤かったり青かったりほんと光井は表情が豊かだな俺や雫なんかには真似できんぞそれ

 

 

「一瞬って…まさか達也さんが」

 

 

「あー違う違う。その逆だ」

 

 

「逆?…ってもしかして達也さんが勝ったんですか!それも一瞬で!」

 

 

またも俺に詰め寄り、顔をやたら近づけてくる光井。テンションが上がりすぎて自分が何をしてるのかわかっていないのかこの子?

だが今度は隣にいる雫が、制止し落ち着ける。流石は親友だけあってなれた感じでなだめる

 

一通り落ち着いたところで今度は雫が今の話の真意を確かめる。このまま光井に話を続けさせると聞ける話も聞けないという配慮なのだろう

 

 

俺としてもありがたい事この上ない

 

 

「達也さんが勝ったの」

 

 

「ああ、それもホント一瞬で勝負が決まった」

 

 

改めて言う俺の言葉に、2人は心底驚いている様子だ。この2人から聞いたことだが服部副会長は入学してから負けなしで有名な超が付くレベルのエリートのこと

 

そんな人が一年生それも2科生に負けたという事実は衝撃的な物なのだろう。

一応言っとくがこの2人は別に差別意識が強いとかそういうわけではないのだが

 

 

それでも実技の成績が悪い事で2科生にいる人間が1科生のそれも実技の成績がトップクラスの人間に勝てば嫌でも驚いてしまうのは必然と言える

 

 

 

「いったいどういう試合運びでそうなったの?」

 

 

俺が嘘を言ったとか思っているわけではないのだろが、どうしても信じられないという感じで詳しい事を聞く雫

 

まあ、その気持ちはもちろん分かる。俺だってこの目で見ずに話を聞いただけなら同じ反応をしたことだろう

 

だが、いったいどう説明したものか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日はあれから服部がやたらうるさかったがその他のメンツが問題なしと判断し、司波兄と服部の試合は問題なく開始することになる

 

これぞ、数十年前から今の今まであり続けた力、数の暴力『民主主義』である。大半がYESと言えば残りの少数は従わざるを得ない。いくらそれが間違えでも数で押し切るこれぞ現代の社会の秩序である。

 

この力に俺は散々苦しめられてきたが、味方になればこうも頼もしい奴もいない

ただし、この力を虐めなどで使うとやられる方はきついのでやめましょう。ソースは俺

 

「わかってると思うが審判は私が勤める。ルールは相手を死に至らしめる術式並びに回復不能な障害を与える術式の禁止。直接攻撃は相手に捻挫以上の負傷を与えない範囲であること。武器の使用は禁止ただし、すでによる攻撃は認める。」

 

 

「勝敗は一方が負けを認めるか審判である私が、続行不能を判断した場合に決する。ルール違反は私が力ずくで処理するから覚悟しろ。―――――――以上」

 

 

そういった渡辺先輩と会長の顔はこれからどんな展開になるか楽しみにしているといった風な笑みをし、市原先輩は冷静に事のなりいきを見定めるといったところで、ロリっ子は司波が心配なのか不安げな顔を司波に向ける。

 

 

んで、司波妹はというとなんだろ‥‥…期待のこもったでもどこか不安げみたいな顔してるな。でも、その様子から察するに負ける心配はしていないという感じで怪我とかしいか心配してるみたいだな‥‥‥といっても司波兄の顔を見る限りその心配もいらなそうだ

 

 

司波兄とは仲良くないしむしろ厄介ごとを押し付けられるくらいに嫌われている感がある。生徒会室でもさっきまでも、言葉を交わし交わさなくてもお互い相容れない関係であることは明白と言える。

 

 

だからこそ分かることもあり敵対していて尚且つこいつを観察した結果、感情表現が淡泊だが雫や俺ほどでもない司波の顔色は結構わかりやすい

と言っても基本何考えてるか分からんしリア充のイケメン様の思考なんて知ったこっちゃないがな

 

 

今の司波の顔はひどく冷たい目をしているがその表情は余裕が感じられる。つか、よくそんな感じでいられるなまるで戦争を潜り抜けた歴戦の勇士みたいだぞ‥‥いやそんな奴見たこともないけどさ

 

一方の服部もなんか余裕の顔をしているが、司波とは決定的に違う。これは慢心だ

人に限らず生物とは自分が優位に立っていると慢心し油断する。

 

 

例えば、肉食動物と草食動物みたいなもんで圧倒的に強く自分が優位にいる肉食動物は獲物を見つけ仕留めようと考える。逆に圧倒的に不利な草食動物はただただ逃げ惑うしかない。そこで一つの慢心が生まれる。これは言わずもながら肉食動物の慢心で、逃げ惑う獲物は自分のごちそう、追いつけば食えると…

 

 

まさに今の服部だ。自分(一科生)は司波(二科生)より優れており、始まる前から勝負はついている、魔法での戦いは銃や真剣と同じで最初に当たれば勝てる。そして魔法発動速度で負けるはずはない

 

 

考えてることもせいぜい、試合開始直後にスピード重視の単純な魔法で相手より早く展開を完了し、相手を倒す。流石になんの魔法を使うか分からんが俺だったらどうするか…

 

 

加速系魔法で相手を減速、隙ができたら障壁魔法で攻撃、又はミスディレクションで死角にはいり移動系魔法で相手を吹き飛ばし壁にぶつけるとか、振動系魔法を使い目くらましした後で移動系魔法で相手に接近とかか

 

しかし、今言った魔法もかなり簡易化しものだが服部は警戒心も抱かずこれよりも単純な方法を取ることだろう、

 

だが忘れてはいけない逃げ惑う動物にも自分よりは劣るが確かな牙と爪があるという事を

逃げ惑う中彼ら草食動物は一瞬の付きを突き彼らに一太刀いれるその瞬間を待っているのだ

 

 

服部は思うだろう自分は肉食獣で司波は取るに足らない捕食対象だと…だからこそ気が付けないその慢心が目を濁らせる、今の司波の顔はただ食われる草食獣の物ではないということを

 

 

「準備はいいか?」

 

 

渡辺先輩は2人に確認を取り、2人もそれに同意。首を縦に振る。一息吸い込み右手を挙げ、それに伴い服部は腕のCADを司波は銃型のCADを構え渡辺先輩の手が下がり試合が開始する

 

 

「始め!」

 

 

その直後のことだった司波はいつの間にか服部の後方に移動しており、その服部は声もなくその場に倒れた。

 

その場にいた者の多くは何が起こったか分からないというのと、ただただ驚愕しており唯一まともなのは妹と俺くらいだ、といっても妹の目の輝きは今までの比ではなくある意味一番やばい状況なのだが‥‥…

 

 

唖然としていた渡辺先輩はすぐに正気を取り戻し、審判としてのジャッジを下す

 

 

「しょ、勝者…司波 達也!!」



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入学編13

その後は司波兄が忍者の弟子だったり、波の合成だとかトーラスシルバーだのいろいろあって最終的に服部が司波妹に謝って事なきを得た

 

 

「なんで最後がそんな適当なわけ」

 

 

色々はしょった説明に雫がツッコミを入れる。

といってもそれも仕方がないんだよ。なんせその後の話は専門的すぎて俺にはさっぱり理解できなかったし、本当に一瞬の出来事で判断なんてできなかったのだ。

 

 

ただ言えることとしたら服部ざまwwくらいのものだ

 

 

「まあ、要約すると『流石ですお兄様!』ってことだ」

 

 

 

「…それ、深雪のモノマネ?」

 

 

「みょ、妙に似てますね」

 

 

雫と光井があからさまに引いた反応をする。いや、まあ…俺もやってから何やってんだとは自分でも思ったけどそんなにひかなくても…

 

光井に至っては引き攣った笑顔に目が全然笑ってないし、むしろ怒ってるか?

司波信仰のあついこいつの前でやるべきではなかったな。なんつーかだんだん怖くなってくる

あれだ、普段怒らない奴が怒るとやたら怖いみたいなあれだ。

 

それから、変な空気のまま昼食は終了する

 

ちなみに俺の風紀員入りの話はもちろん流れた。そもそも俺にやる気がない上に、服部(笑)を倒したことで、司波兄の実力が証明され生徒会推薦枠はそのまま決まったから俺は用無しってことだ。ただそれで、そのまま俺を無視するんじゃあれってことでなんか会長からフォローっぽく2科生と1科生の溝を埋めるためだとかの説明があったが

 

 

正直気にしてないしむしろありがたい話だから軽く聞き流したからぶっちゃけよく覚えていない。まあ、あれだ会長お疲れ様ですってことで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

 

生徒会室からやや離れているここ、風紀員会本部ではこれから始まる部活・クラブの新人勧誘イベントのため集会が開かれた

 

普段CADの学内携帯を許されてるのは生徒会と風紀委員のみとされてるが、この新人勧誘では部活のデモのため特別に一般生徒もCADの携帯使用が許される。

 

 

それだけなら別段問題はないようだが、有望な新人を勧誘するためいささかむちゃな勧誘をする連中が毎年いるそうだ。有望な新人=部活連での勢力図に大きな変化が出るらしくもはや無法地帯化するとかしないとかって話だ

 

 

その上、学校側もそれを黙認しているので否応なきに風紀員の仕事が増えるイベントということだ。

 

 

さて、俺こと八幡は中学の頃より帰宅部でそういった物に所属するつもりも力もない。

ここでいう力とは魔法や優秀云々というはなしではなはなく単純にコミュ力の問題である。

なので、このままどこにも所属しないつもりだ

 

 

だがこれまた厄介なことに、入試の成績順位というのが出回っているらしく普段空気な俺でも、入試実技3位ということで勧誘される恐れがある

 

 

いや本当に俺を勧誘するとこなんてあるわけないとは思うが、雫達が聞いた話では部活連の中には強引な勧誘をするとこもあるそうで、そういったところは個人の希望や適性といった物を眼無視してとりあえず優秀な連中を手元に置きそでもそりが合わない人は他の部活との間で高額で取引されるらしい

 

 

おい、高校生がそれでいいのか?金銭の取引とか教育上やちゃいけないだろ

 

そんな訳で、コミュ力5な俺にもそういうのがある可能性が大いにある。そういうのは…めんどくさいし、関わり合いになりたくない。

だから、なるべく平穏に暮らすため部活は入らずこの大騒ぎなイベントにも関与せずを決め込むつもりだ。

 

最悪ミスディレつかって下校しようとか考えていたのだが、どうやらそれは杞憂に終わるらしい

 

 

 

 

「今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやってきた。有力な部員の獲得は各部の勢力図に直接影響を及ぼす重要課題であり」

 

 

「殴り合いや魔法の打ち合いになることも残念ながら珍しくない。今年は幸い卒業生分の補充が間に合った」

 

 

渡辺先輩は見るからにゴツイ感じの風紀委員の中、毅然とした態度で進行を進める。そして、卒業生分である2人の生徒の紹介に移るべく2人の一年生に立つように言う。

 

ていうか、この明らかに男所帯なところに渡辺先輩は入ろうと思ったな…男である俺ですら躊躇してしまうことは請け合いなのに本当にすごいと思う。

その上、委員長とかもうなんか…凄いです

 

でも、そんなマジ凄い委員長、略してMSIに一言言いたいのですが

 

 

「1-Aの比企谷 八幡と1-Fの司波 達也だ。さっそくパトロールに加わってもらう」

 

 

いったいなぜこうなった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、委員長の出動の一言で先輩方は胸の前に握った拳を掲げる。敬礼みたいなものつーか進撃的な巨人みたいな話の心臓を捧げよ!みたいなポーズだ

 

ぞろぞろと委員会本部を出ていき、残ったのは渡辺先輩と司波、そんで俺だけとなる。

 

 

「まずはこれを渡しておく」

 

 

3人になり渡辺先輩は先ほどまでの毅然とした態度から、どことなく柔らかい感じになり風紀員の腕章を俺達に渡す

 

黒字に赤の刺繍‥‥‥ていうかこれ色違いなだけでジャッジメントだよね?ちょっとデザインが違うっぽいけどジャッジメントの腕章だよな?

 

いや、どっちも風紀員だしなんか分からんがつながりがあるんだろ…そういうことにしておこう

 

 

「次にCADについてだ、風紀員会はCADの学内携帯を許可されている。使用についてもいちいち誰かの許可を仰ぐ必要はない」

 

 

「だが不正使用が発覚した場合は委員会除名の上一般生徒から厳重な罰が下る。甘く考えない事だ」

 

 

一瞬、不正使用とやらをすればいいんじゃねと思ったがなんか怖いし辞めとこ

っと、今はそんなんじゃなくとにかく聞かなければ

 

 

「あの…質問いいっすか?」

 

 

「ん?どうした、お前から質問なんて意外だな」

 

 

それは質問するような意欲向上があるとは意外といういみなのか?俺だって向上心くらいあるぞ‥‥…多分、もしかしたら、あるかもだからな!

 

 

 

「いやなんで俺がここにいるんですか?」

 

 

「お前が風紀員だからだろ」

 

 

渡辺先輩はどこか悪さをするときのような顔になり答える

いやいやそういうことではなくて、てか絶対わかって言ってるでしょ

 

 

「副会長との模擬戦で司波が風紀員になったんでしょ?んで俺はそこでお役御免だったのに」

 

 

「ああ、だから司波は生徒会推薦枠で風紀員になり、お前は教職員推薦枠で風紀員に入れることにした」

 

 

「は?」

 

 

俺は意味が分からず、唖然とする

教職員推薦枠ってなんだよ。意味事態は分かるがなぜ、俺が選ばれたのかが分からない

確かに入試の実技成績は良かったが、筆記は散々で総合すると中のやや上って感じ、授業も不真面目ではないにしろ発言も全くしない俺が選ばれる理由が思いつかん

 

 

「本当は教職員枠では森崎が選ばれる予定だったが、急きょ森崎が辞退してな。職員に相談されお前の名前を言っておいた」

 

 

渡辺先輩はそんな俺の思考を察したのか、経緯を説明してくれた。

つまりその森‥‥‥森本のやつのせいと、先輩が俺を推薦しやがったのか‥クソがこれじゃあ司波とやり合った(生徒会室での口論)意味がまったくねーじゃねーか。むしろ生徒会の時よりも明らかに断りずらいし

 

 

ん?待てよ。その名前って確か…そうなると‥‥‥

 

思考を終わらせた俺は隣にいる司波を睨む

 

 

「質問は以上か?」

 

 

渡辺先輩が聞くと司波はそっと手を挙げる。

俺に睨まれてるのは分かっているんだろうけど、あえて気にしないように話を進める

むしろ本当に気にしてない感じがするな…そういえば前に同じように睨み付けたら睨み返され目をそむけたことがあったな

 

おそらくそれで俺の睨み=取るに足らないみたいな感じに思われるのか

まあ事実だからしょうがないんだが

 

 

「CADは委員会の備品を使用していいでしょうか?」

 

 

「かまわないがアレは旧式だぞ?」

 

 

司波は整頓されてる戸棚にしまってある、CADに近寄る

詳しくは知らんが確かに最新のカタログにはどれも載っていない型だ

それと偏見だろうけど支給品や備品という言葉にはどことなく品質が落ちてる感じられるのは俺だけだろうか?

 

司波は戸棚の前まで来るとっフと一笑い

ていうか、銃の形のCAD持っていたはずなのだがあれはいいのか?

 

 

「確かに旧式ではありますがエキスパート仕様の高級品ですよ」

 

 

え?マジでそれ高いの?

これまた偏見だが備品という言葉に高級品という言葉が加わると一気に一級品みたいな感じがするのは俺だけではないはずだ

 

先輩達風紀員の人を見た感じなんか体育会系な感じがしたが、その割にここは随分と片付いていると思ったが、そんな高級品があるというならうなづける

 

 

「そういうことなら好きに使っていけ。どうせ今まで埃をかぶっていた代物だ」

 

 

おいコラ、高い物なら大切に扱えよ!これだから金持ちというやつは‥‥‥

 

心の中で貧乏人丸出しのことを考え愚痴をいうが、それも仕方がない事だと思う。なんせ俺の家は中流家庭で貧乏ではないにしろ普通の家だ。そんな奴が金持ち共のかようエリート学校にいきなり入れられたんだから金銭感覚の違いに頭を傾げるのも当たり前と言える

 

とくに後日、整頓したのが司波であることを聞いたときに一緒に聞いたCADの値段を知った時なんか唖然としたものだ

仮に俺の小遣いを1年貯めても到底手に入らん値段だぞ、それに埃をかぶらせるなんて

 

これだから金持ちは‥…と声に出して毒づいたほどだ

 

 

「ではこの2機をお借りします」

 

 

司波はブレスレット型のCADを2つ取る

でも、確かCADを2機同時につかうと魔法が発動しないんじゃなかったか?

まあ、こいつの事だしそれを知らない訳もないだろうから、またなんか知らんが流石ですお兄様をするつもりなのだろう。

渡辺先輩も少し首を傾げたがすぐに面白い奴と微笑んでいるところからするに俺と同じ結論にいたったのだろう



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入学編14

俺と司波は一通りの説明を受け委員会本部から廊下に出る

これからやりたくもない仕事をしなければいけないが、その前にどうしても確かめておかなきゃいけないことがある。

 

 

「おい司波、どういうことだよ」

 

 

「またその質問か、これで2回目だぞ」

 

 

廊下に出てすぐ、俺は司波にやや苛立ちが入った声で言う。

それに対する司波は軽くため息を吐く。以前生徒会室で行った質問と同じという事に対してのため息なのだろうが俺からすると、そのため息は白々しいにもほどがある

 

俺の質問の意図は当に分かっているだろうし、その答えも経緯もすべて知っているであろうことは、もはや明白だ。

 

 

それなのにここまで、自分は関与していない風な態度ができるとかどんだけ顔の皮が厚いんだよ

むしろ、感情があるのか疑うレベルだ。

 

 

「一応聞くがなんのことだ」

 

 

「森崎の事だ。付き合いなんて同じクラスってだけでそこまで詳しくねーけどそんな俺でもあいつの性格は大体わかる」

 

 

森崎のやつは、1科生と2科生の差別意識を強く持つ。その根幹にはやたら強い自尊心がある。

 

森崎という家の本家にいて、幼いころから魔法に携わり今この時1科生になり、自分の他人より少し優秀であるということを勘違いしたかわいそうな男だ

 

そのプライドや思い込みの強さが以前の騒ぎを起こした原因と言っていい

そんな勘違い野郎が自ら風紀員を下りたというのには違和感を感じる

 

 

事前に聞いた話では大事に至らなかったが、問題を起こした責任とか言っているそうだがあいつに限ってそんな殊勝な心がけを持つわけがない

 

 

むしろあいつなら、問題を全て司波や2科生のやつのせいだと思い込みふてぶてしく風紀員に入り、恩がある司波に対し暴言を吐くくらい普通にしそうだ

 

 

「あいつが自分から名誉(風紀員)を捨てるなんてありえん」

 

 

「風紀員は成績に影響しないはずだが」

 

 

俺の言い回しに疑問を思ったのか司波が聞いてくる。しかし、そういうことではないのだ。いくら成績に関係しないからと言っても、風紀員とは一つの象徴かまたはブランドと言っていい

 

 

「生徒を取締り、CADの携帯を許されてるそういう特別って響きがあいつにとっては名誉や名声になんだよ。それに風紀員での経験はあいつの家の仕事にそのまま役立てる言わば、疑似体験で実戦ができるちょうどいい練習だ」

 

 

それなのにあいつが自ら断るなんてことはありえない

なにかしらの第三者による介入があって初めて自分から辞退するという決断をするだろう

 

 

「それでなぜそれを俺に聞く?俺はただの2科生だ。森崎をどうこうする権利も権限もないぞ」

 

 

「権限がなくとも約束ならあるだろう」

 

 

そう、それはあの事件の最後に森崎の言った

 

『受けた恩は必ず返す。司波 達也なにかあったら相談してくれ力になる』

 

という一言。

プライドが高く自意識過剰なあいつの性格を考えればこの約束は必ず守るはずだ

それもその相手が自分を助け、なおかつ見下してる相手に自分から言った約束ならなおさらだ

 

そして、森崎を排除した後の根回しも不自然なくらいスムーズだ

教師の推薦枠なのに渡辺先輩に相談するってのもまあおかしいが、それ以上に渡辺先輩が俺を推薦するなんてありえるのか?

 

答えは否だ。なにせ俺と渡辺先輩の絡みなんかほとんどない上、俺の実力も魔法も先輩は知らない

 

つまり、渡辺先輩に助言した者がいる事になる。可能性のあるのは俺の魔法を知ってる雫、光井、レオ、エリカ、美月、司波兄妹

 

このなかで風紀員または生徒会に関係があるのは司波兄妹

 

妹の方は兄が風紀員になれた事により満足しているはずだ、これ以上の口出し手出しをこの件に関してはしないだろう。

 

 

そうなると必然的に残るは司波 達也お前だけになる。そもそも俺に厄介ごとを押し付けたこいつ意外に下手人がいるとも思えん

 

 

つまり、流れを予想するとこういうことだ

1、司波風紀委員に就任

 

2、森崎と接触、風紀員辞退を促す

 

3、推薦枠が空き先生が風紀委員に相談

 

4、渡辺先輩に俺の事を話し推薦するよう促す

 

5、なぜか先輩が承諾、先生に推薦

 

6、俺が風紀員に就任

 

とまあ、こんな流れで事が運んだのだろう

 

 

司波は俺に目を合わせることなく澄ました面で明後日を方向を見る

 

 

「森崎にいったい何を言って、どうやって先輩をけしかけ、なんでそこまで俺を巻き込みたがる?納得のいく説明をしてもらおうか」

 

 

フンと鼻を鳴らし、腕を組み問いかける俺に対し観念したのか司波は少しの間を開け重い口を開ける

 

 

「別に大したことはしていない。森崎には生徒会での一件を話、比企谷が随分落ち込んでいたどうにかならないかと話をしただけだし」

 

 

誰が落ち込んでいただ、むしろあの時ガッツポーズして喜んだだろうが

 

                   ・・・・

「先輩は先生方から相談されてるところにたまたま遭遇してそれとなくお前の事を言っただけだ」

 

 

今、たまたまのニュアンスがおかしかったぞ

絶対確信犯だろコラ!

 

 

「それと最後の質問は昨日の仕返しだ」

 

 

「最後の最後で直球だなおい」

 

 

 

言い終えるやいなや司波は先ほどから背けていた目を俺に向け何を考えてるのか分からない目を向ける。

分からんと言っても多分これ怒ってるんだろうがな

 

 

「仕返しも何も最初に厄介ごと押し付けたのはお前だろ」

 

 

「俺と副会長の模擬戦を誘導したことでそれはチャラだろ?」

 

 

本当にふてぶてしい態度でそう答える。いや、確かにそうかもだがだからといってまたお前からやり返すってどうなんだよ

 

司波の話を聞くかぎり、そんなに怒られるようなことをした覚えはないはずなのだがこの司波の怒りようはなんだ

わざわざ森崎や先輩に根回ししてまでやるレベルか?

服部との模擬戦もふたを開ければ圧勝だったし怪我の一つもしてないし、なぜここまでめんどい事をやったんだよ

 

 

そんな事を思っていた俺の答えは目の前にいる司波からすぐ聞かされるのだが

その内容がもはや呆れるレベルだ

 

正直こいつに対する認識が間違っていたのは間違いない

 

 

「お前はそれに加え、あの時深雪を利用したな?そのことに対する報復だ」

 

 

その目からもう二度とするなという無言の圧力が放たれ、なんか殺気みたいなのがビシバシ叩きつけられてくる

俺はそんなこいつに気おされ今までの態度から一変し委縮する

その中で俺は

 

本当に呆れるレベルのシスコンだな‥‥

 

と、内心思っていたがもちろん口には出さない。もし出そうものならなんかもう言葉で表せないくらいの恐怖が襲ってきそうだ

 

それと、もう絶対に司波を怒らせないようにと心に誓った

 

怒れるシスコン恐ろしや‥‥‥



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入学編15

今回は優等生をしらないと少し困惑するかもです


「ほらきりきり歩け!」

 

 

新人勧誘期間中のため校内を巡回してる中、風紀員委員長、渡辺 摩利は一人の男子生徒の首根っこを掴み連行していた。

 

 

先も言った通り、風紀員はこの期間とても忙しくその理由は勧誘に伴い起こる生徒同士の喧嘩が主な原因だ。

 

 

ただ、喧嘩と言っても中には魔法を打ち合い、本人達や周りに被害をもたらすので軽く見ることはできない。と、いってもそんなのはむしろ少数で、ほとんどの場合が殴り合いによるものや、取っ組み合いといった単純な肉体言語である

 

 

風紀員はそんな生徒たちに対し大体は一人から数人で取り押さえ、魔法が使用された場合はそれを記録・無力化することで事態の収集に努める

 

 

取り押さえられた生徒たちは校内にいくつか設置された仮本部にて事情調書が行われ、場合によってその罰が決められる。

罰と言っても本物の警察ではないので厳重注意・反省文などが主だ

 

 

そのため風紀員の生徒は武術か拘束系の魔法などといった物に優れている場合が多い

 

渡辺先輩も委員長を任されているだけあって相当な手練れだ。なんでも日本屈指の剣術家、千葉流の門下生だとかなんとからしい

 

なので女性と言っても、一人で男子生徒を連行することなど造作もなく

連行されている方も抵抗らしい抵抗をせず、なすがままに引きずられていた。

 

まあ、その連行されているのが

 

 

「まったくいい度胸だな、比企谷!」

 

 

俺なのだがね‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、司波はそのまま去っていたのだが俺は少しの間動けずにいた。それほどあいつの放つ怒気がすさまじくもうなんか、蛇に睨まれたカエル状態だった。

 

 

それから意識が覚醒するまで2分くらいかかり、そのまま俺も見回りに行ったのだがさっきのやり取りに加え、勧誘で熱気を放つ先輩方の群れで軽く酔ってしまい

 

 

人気のないところでちょっと一服(コーヒー)していた。

 

腰を下ろしコーヒーを啜る俺の姿は同じ風紀員からしてみればさぼっていると勘違いされる可能性もあるのだが、それでも休まずにはいられないそんな状況だったのだ。

 

 

そして、そんな状況が10分くらい続いた時、見回りに来ていた渡辺先輩に見つかりそのまま首根っこを掴まれ連行、もとい見回りに同行することになったのだ

 

 

「初日からさぼりとは、どういうつもりなんだ?」

 

 

後ろ襟をつかみ、引きずる形だったが先ほど解放され今俺は渡辺先輩より2歩ほど離れて歩いている。

 

そんな俺を軽くにらみ、前を歩きながら問う先輩は相当お怒りであるとお見受けする。

といっても俺の自業自得なのでしょうがないのだが

 

 

「ですから、さぼりじゃなくてちょっとした休憩ですよ。人酔いってやつです」

 

 

嘘ではない、実際俺は人の多さに酔っていた。たださぼっていたかどうかと言われると・・・正直さぼっていた。

始めは少し休んだら見回りを続けようと思っていたのだが、後1分だけ、もう1分、あと少しと休んでるうちにだんだんと立つのがめんどくくさくなり

 

逆に座っているときの心地よさに心奪われ気が付いたときには大分時間が過ぎてしまっていた。ただでさえ忙しいのだから、一人さぼっている俺に対しその怒りは正当なものだ。

 

 

もちろん俺も反省はしている。いくら俺の意思と関係なく無理矢理入れられたしゃらめんどくせ―委員会でも、さぼっていい訳はないのだ。ただ言い訳くらいする権利はあるのでしておく、じゃないとなんか後が怖いし

 

 

「そう簡単に人酔いするわけないだろ。もう少しましな言い訳くらいしたらどうだ?あん?」

 

 

「いやいやホントですって、こう人でごった返していればそんくらいしますよ」

 

 

青筋立てる先輩に必死になり、いい訳をしているのだがどうにも信じてもらえない

まあ、さぼっていた新人がいい訳なんかしても、上司が聞く耳を持つわけないというのは社会の性なので致し方ない やれやれだぜ(そもそも自業自得です)

 

 

「ほう・・・仮にその話を信じたとしよう。人に酔ったやつが人気のないところで休むのもうなずけるし、軽く飲み物でも飲んでいたとしても仕方がない。だが、その地面にからの缶が3本あったのはどういう事なんだ?」

 

 

足を止め腕を組み頷きながらその時の事を思いだしながら語る先輩は

始めはニコニコとしていたがだんだん額に怒りマークをつけ、眉間に皺を寄せている

 

 

そう、俺はあの時飲んでいたコーヒーがなくなり少し離れた場所に設置されていた自動販売機まで足を運びお代わりをしていた。それも4回も。

 

これは、動かぬ証拠というやつなのか、これ以上のいい訳が無意味になるレベルの物的証拠だ

 

 

仕事をほっぽりだし、一服どころか四服もしていた人間が少し休んでいただけ、真面目にやるつもりだったといくら言っても聞いてもらえるわけがない。

 

 

俺の顔から一粒の汗が流れ、表情がだんだんと歪み顔色も悪くなる

 

それと対照に目の前の先輩はとてもいい笑顔でニコニコしている‥‥額についてる青筋が邪魔だが

 

そんな絶体絶命のピンチは良く知った声で九死に一生を得ることになる。

 

 

「ひあああああああああああー!?」

 

 

悲鳴が聞こえその方向を見るとジャージ姿の女性2人がスケボーのようなものにのり、制服姿の女生徒を一人ずつ脇に抱えて猛スピードで走っていた

 

 

「って雫と光井!?」

 

 

「な!あれはバイアスロン部のOGの萬谷と風祭!」

 

 

「知り合いっすか?」

 

 

「とうに卒業した不良どもだ!好き勝手やられちゃ風紀員の名が廃る。行くぞ比企谷!」

 

 

「行くってどうやって!?めっちゃ早いっすけど・・・」

 

 

「とにかく走れ!!」

 

 

そういうと渡辺先輩は加速系魔法を発動させ四人の後を追う。唖然となったが見過ごすわけにもいかずすぐに移動系魔法を使用し、後を追う

 

 

「つーかあのスケボーみたいなのはいったい」

 

 

普通なら人一人を抱えて移動するのだから一人のこちらの方が断然有利なはずだが、あのスケボーはまさにコナン君に登場する法定速度を完全無視した違法改造された電動スケボー並みの馬力が出ており、

 

 

追いかけてるのはいいがその差は縮まらない

 

 

「あれはSSボードといって、スケボーとスノボーをくっつけたようなものだ。バイアスロン部は簡単に言うと、あのボードで移動しながら的を射撃する競技で、動力はもちろん奴らの魔法で動いている」

 

 

「OGっていってましたが、先輩の知り合いですか?」

 

 

一方は腰のところまで伸びた髪にウェーブがかかっているどことなく大人な雰囲気の女性らしい女性であり

 

もう片方は逆に髪が短く、女性にしてはがっしりとした体つきでその雰囲気はどことなくエリカに似ておりなんというか子供っぽいというか悪がきみたいというか男の子っぽい女性で、不思議とこちらも違った意味でお姉さんという感じだ

 

 

2人を見る渡辺先輩は苦虫をつぶしたような顔になり、先ほどの顔よりさらにすごい形相になる

その顔からするに過去になにかあったのだろうか?

 

 

「ああ、ショウトカットのほうが萬谷 颯季、加圧系統の局所地形変動魔法を得意とし同時に気体加圧魔法も得意とする。性格は男勝りで自由奔放な問題児だ」

 

 

OGということはもちろん俺や先輩より年上なのだろうが、そんな人を問題児というのもおかしな話だがこの状況を見るにピッタリって感じだな

 

 

「長髪の方が、風祭 涼歌、気体流動制御術式に強い耐性を持つ『風使い』だ。追い風を作り自分や味方のサポートをしたり、敵の邪魔をするという使い方をよくして・・・その力を悪用したスカートめくりが得意技のただのバカだ!」

 

 

一瞬言いよどんでから何かを思い出したように突然、語尾を上げ怒鳴る口調になる渡辺先輩。

馬鹿呼ばわりとは問題児以上のあれだが、この様子を見るにもしかして渡辺先輩はその得意技というのをくらったことがあるのだろうか

 

 

それはつまり先輩のスカートがあれでその中身がアレしたという‥‥

 

 

「おい、比企谷変な想像をしていうなら今すぐやめろ・・・さもなければ、分かっているな?」

 

 

鋭い眼光で睨むように微笑む先輩の顔はもう完全に笑っているのに怒っていた。

もうその顔を見るだけで、それ以上の言葉はいらないという威圧感を放っている

 

 

本日二度目のヒキガエル君状態になる俺

 

というよりなぜこの高校の連中はそろいもそろってこんな怖い奴らばかりなのか

そしてなぜ俺の考えは常に見透かされているのか・・・多々疑問があるが、今言えることは一つだけな俺にはもはやそれを聞くこともできず、力なく口を開く

 

 

「い、イエスマム・・・」

 

 

「よろしい!無駄口もその辺にしてスピードを上げるぞ!いいな」

 

 

「…YESマム!!」

 

 

もうなんかヤケだった



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入学編16

「あー・・・酷い目にあった・・・」

 

 

「えっと・・・大丈夫ですか?比企谷さん」

 

 

「…なんとか、つーか光井達のほうは大丈夫だったのか」

 

 

あの後、渡辺先輩と共にOG達に拉致られてた雫と光井を追いかけ、右に左と大追いかけっこをしたのち、バイアスロン部の前で2人は解放された。

 

渡辺先輩はそのまま逃げたOG2人を追いかけ、体力の限界に達した俺は2人に事情聴取するという名目でその場に残った。

 

 

いくら、魔法を使って移動してたとしても疲れるものは疲れるし、もともとが帰宅部なんだししょうがない。

 

 

俺の事はいいとして、とりあえず今は雫と光井だ

逃走中に飛ぶは跳ねる、さらには高速回転するなど色々とむちゃしていたし、怪我やそうでなくとも気分が悪くなったりしていたら保健室まで2人を連れて行かなければならない

 

 

その2人だが、まず光井のほうは疲れてるようだが、怪我もしていない様子だしこの分だと問題はなさそうだ

 

次に雫の方だが‥‥なんか頬を染め、あらぬ方向を観ながらうっとりとしている。いつものジト目もすごい光を放ち怪我とかではないようだが‥‥これは重症だ

 

 

「つーか、あいつどうしたんだ・・・?」

 

 

「あー・・・雫はさきほどの追いかけっこがどうやら爽快だったらしく心を惹かれちゃったぽいです、それでさっきからあんな感じです」

 

 

つまり、遊園地のジェットコースターに初めてのったらはまっちゃったという感じか

意外と言えば意外だが、人それぞれ好き嫌いはあるからな

 

 

俺?俺は絶叫系とか無理だ。なんか前乗ったら気分が悪くなった

遊園地に行ったらコーヒーカップかお化け屋敷にでも入っていれば楽しめる

 

 

ただ、前お化け屋敷に入った時は、なぜかみんな俺の顔を見るなり絶叫した挙句、設定してないお化けが出たという事でスタッフが大慌で結局一時的に、点検とかいって立ち入り禁止になったことがあるし、

 

コーヒーカップも恋人や家族連れがいる中一人でのってると違う意味で気分が悪くなるから遊園地なんて二度と行かないと心に誓っている。

 

ただし、小町に誘われたときは別だがな

 

 

 

 

 

 

バイアスロン部はこれから新入生勧誘のデモがあるという事なので、俺達もそれについて行っている。

 

自分の世界から戻ってきた雫に聞くと、2人はこの部に入部を決めたらし

 

 

「じゃあ2人はここに入るのか?」

 

 

「はい、雫と一緒ですし」

 

 

「うん」

 

 

雫はいつもと同じように平坦な感じだが、その後ろにはやる気の炎がメラメラと燃えていた。

 

本当にいつもの雫と比べると珍しい、

光井もそんな親友が珍しいのかやや戸惑い気味だ。しかし、そこは長い付き合いなのだろう。すぐにいつもと変わらない様子に戻る。

 

 

話してる間に、通信機より小体育館のほうで魔法の不適正使用があり応援を要請する旨の連絡が入ったので、その場で彼女たちと別れ体育館のほうに向け歩き出す

 

 

本来なら急いでいくところだが、通信の発信者の声が司波のものだったので、まああいつなら大丈夫かと思い歩くことにする。

 

ただでさえ、だるい追いかけっこをしたあとなのだから少しでも楽をしたいと考えるのは人の性なのでしかたがない

 

 

そもそも、司波がいるってことはつまりはこういうことだ。金田一さんのお孫さんや見た目は子供中身は大人の少年や世界一の名探偵と名高いワイミーズハウス出身の彼らがそろい踏みしてる場所で事件が起こったようなものだ

 

そんなすでに事件が解決される5秒前みたいなところに行く意味があるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で案の定って感じか」

 

 

「比企谷か、早いな」

 

 

体育館に付くとそこには大勢のギャラリーの中、深い青色の道義を着た男たち十数人が倒れておりその中心には司波が颯爽と立っていた

 

あまりに予想通りな光景にもはや呆れるなこれ…つーかこいつは本当になにものなんだよ?

 

 

「たまたま、近くにいたんでな。それよりどういう状況なんだよこれ?」

 

 

「剣道部の新観デモに割り込んだ剣術部の桐原先輩が殺傷ランクBの魔法を発動、剣道部の壬生先輩に対し使用したので取り押さえた」

 

 

「実に簡潔な現状報告だな、でもそうするとそのほかの倒れてる連中はなんなんだ?」

 

 

「桐原先輩を拘束した後、異論があったようで襲いかかられたので鎮圧しただけだ。一応言っとくが、桐原先輩以外には手はだしていないぞ」

 

 

と、乱れたタイをを直しながら随分余裕に言ってくれるが、倒れているのは全員上級生で、体つきだけをみてもかなりの実力があると見える。少なくとも全員俺より強そうだ

 

 

そんな連中を手を出さずに、どうやって鎮圧したんだよ…

あるものは、床に両手両膝を付き息も絶え絶えで、またある者は大の字に倒れ伏し、ほかにも口に手を押え顔を青くするものや立とうとするも力がうまく入らないのか片膝をつくなど本当にどうやったらこんな多種多様な倒し方をするというのか

 

 

「はあ………まあいいか」

 

 

八幡は学習した。こいつの事に関しては難しいことは考えない。どうせなるようになると、八幡は考える事を放棄した。

 

 

「で、その桐原先輩とやらは大丈夫なのかよ?お前が手を出したんなら五体満足ではいられないだろう…」

 

 

憂うような表情で、眼を閉じ下を向く。その手は誰かしらない哀れな桐原先輩に、合掌を捧げる。

 

 

そんな俺を見て司波は、ため息交じりに俺の方も見る

 

 

「‥‥‥お前は俺を狂戦士か殺し屋とでも思っているのか?」

 

 

割と本気でそうなのではないかとは思っている。むしろ「え?違うの?」っと言ってやりたい気分だ

いっそ胸のところに北斗七星の傷があって『お前はもう死んでいる』とか言っても違和感0なんだけど

 

 

「桐原先輩は拘束する際、肩のところを強打したが別段問題はない。数時間安静にしていれば元に戻る。担架も呼んだからもうすぐ来るだろう」

 

 

みるとそこには一人だけ肩を押え地面に倒れてる人が一人いる。おそらくこの人が桐原先輩なのだろう

 

見た感じすんげー痛そうだが、まあ大丈夫か…五体満足だし

 

 

この件はあと応援の風紀員がついたら、剣術部はとりあえず事情聴取で桐原先輩は保健室に運ばれた後になんらかのお咎めが下る事だろう

 

 

最悪停学もありうるが、渡辺先輩の性格からして素直に非を認めれば厳重注意という感じでなあなあってところか

 

 

と、もう終わった事はいいとして、今現在俺は一人の人物がいささか気になっていた。もちろん色恋沙汰の事ではないが

 

この体育館にいる連中はこの事件を最初から見ていた連中で、司波に対して大なり小なり意識を向けている。

 

 

おそらく史上初の2科生の風紀員、その上俺は見てはいないが司波の無双っぷりに驚愕する者がほとんどだ

 

 

そんな中、おかしな視線の野郎が一人いる

 

道場着だが、剣術部の連中とは違い袴は薄い青色で上は白い。おそらく剣道部の人間か。

今どき珍しい角刈りで、メガネの真ん中をクイッと上げるどことなく大物感がある立ち振る舞いだ

 

 

そいつの顔には笑みがこみ上げ、興味深い物を見るような目で司波を見ている

 

 

中学時代には、ほとんど役に立たなかった俺の感がなにやら危険信号を上げてる‥‥ような感じがする。

 

ただ、この感は嫌な事に俺が面倒事に巻き込まれる時に限りやたら高性能だったりするからなぁ…

 

まあいいや、とりあえず今は今しがた到着した風紀委員の面々と一緒にここを片付けなければならない。まったくこれだから社畜はいやなんだ

 

 



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入学編17

ただ今俺は、1-Aの教室でタブレット型の端末を操作しながら物思いにふっけていた。

やたらラスボス臭を漂わす角刈りメガネ、司 甲剣道部の主将で三年生の2科生

 

 

3年間特に問題も起こさず、部活の主将をするほど真面目な生徒

これだけ見ると、至って普通のやつみたいだな…あの時感じた変な視線の正体につながるものはないか……

 

 

「難しい顔してどうしたの?」

 

 

「ん?雫か、別にただ風紀員関係でちょっとな」

 

 

雫は顔を覗き込むように屈んでいる。それは意図せず上目遣いとなり、ついつい顔をそむける。

 

それが気に食わなかったのかちょっと、ムっとした顔をするがスルーする。こういう話題は自分から振ると墓穴だし、相手から振られるとそれも墓穴になるのでスル―が一番いい。

 

 

「忙しい?」

 

 

「まあ、それなりに‥‥どうしたなんか用か?」

 

 

そこでようやく、雫がなにかしらの用事があるという事に気が付く。風紀員になってから、雫は何かと気を使ってくれてるらしく、休み時間や放課後なんかに話しかけるのを避けている。

 

肉体労働が基本の風紀員は、俺にとってハードワーク以外のなにものでもなく、休み時間はとにかく疲れてなにもやる気がせず机に突っ伏してるし、放課後も集まりとかで忙しいのでなぜか恒例になりつつあった一緒に下校もできない。それを察しての事だろう。

 

 

本当に雫さんには頭があがらないです。

 

それに比べ、どこぞの森何とかときたら自分が引いてまで風紀員になったのだからもっとシャキッとしろだの、風紀員は一体どうだのとやたら話しかけやがって…

 

 

こっちは疲れてるんだよ!察しろよ!!

 

終いの果てにはどんなに話しかけられても寝たふりを決め込んでたのに、体を揺するは、耳元で大声出すは‥‥ほんとあいつは駄目だわ、もう何回あいつに対して殺意を抱いたか分からねーよ、マジで

 

森何とか…もう森でいいやこれからあいつの呼び名は森で統一するから

 

まあいいや、森の事などほっておいて今は雫だ。

 

 

「うん…あれ」

 

 

雫が指をさしたのは廊下の窓だった。そこには窓の外を眺め顔をひきつらせている光井がいる。俺も窓際までいき、覗き込むとそこには、新入生は誰一人として逃がさないという意気込みを放つ先輩方の長蛇の列があった。

 

 

それは玄関から校門まで数十メートルにわたりできており、上からみると隙間なくびっしりと人が詰まっていた

 

 

「あれだな…まるで人がゴミのようだ…だな」

 

 

「何言ってるの?」

 

 

俺が日本アニメ界の不朽の名作に出てくる、有名なセリフをいったら何言ってんだ?見たいな顔で見られた。つーか実際言われた。

 

光井もきょとんとしてるし…もしかしてお前らジブリ知らねーの?え、マジで?

そりゃあ何十年も前のアニメだけど、今でもたまに土曜とか金曜にやってるのに知らねーの?

 

まさかこんなことで、一般人と魔法科高校との差を知ることになるとは思わなんだ‥‥

 

 

「どうやって帰ろうかって今話してて…」

 

 

「忙しいなら無理は言わないけど、できたら手伝ってほしくて」

 

 

ジブリを知らないというあまりのギャップに呆然としていたが、2人の声で我に返る。

そういやこの2人はバイアスロン部に入部することが決まっているし、迷惑な勧誘がただの迷惑になってるわけか

 

そこで、風紀員の俺に白羽の矢を立てたというわけだ。

 

 

「別に無理じゃないが…ちと難しいな」

 

 

風紀員は強引な勧誘に対しては指導することができるが、勧誘そのものに対して何かをいう権限はない。また、すでに入るクラブが決まっていても正式な入部は勧誘期間が終わった後になるので、心変わりなんかを狙って勧誘する連中もいる。

 

つまりこの2人をつれて、あの群れに突っ込んでも俺では勧誘の嵐から2人を守ることはできないのだ。

 

仮に職権を乱用しこの2人に対する勧誘をしないようにしたら、部活連より風紀員に苦情が来るだろうし、ほかのもう入るところが決まっている1年生から文句が殺到する事は安易に想像できる

 

 

そうすると俺はもちろん雫と光井にも周りから異質な目で見られる恐れがあるので、することはできない

ここは断る事が最良だろう

 

 

「そっか…ごめん。ありがとう自分たちでなんとかする」

 

 

「比企谷さんも風紀員頑張ってくださいね」

 

 

雫はシュンという効果音をさらしながら、どうにかするので気にするなと言い

光井もやや残念そうだが逆にこちらに大変だけれど頑張ってという……

 

 

まったくこいつらは…わざとやっているのか疑いたくなるな‥‥

 

生憎俺はこんな顔をする知り合いをそのまま放っておけるほどの根性がないのだ。直接助けることは頭を貸すことぐらいはできるのだ。

 

 

「はぁ…‥あーあれだ、光井って確か光関係の魔法が得意なんだよな」

 

 

「はい、そうですけど?」

 

 

光井は俺が何を言いたいのが分からないようで疑問系で答える

 

 

「じゃあ、意識をそらしたり姿を隠したりする術式とか使えるのか?」

 

 

「ほのかは得意だよ。でも魔法を勝手に使うのはルール違反」

 

 

雫は意図に気が付いたらしいが、それでも違反行為に他ならないので疑問を出す

だが、そこはほら違反行為を取り正すのが俺だし問題はない。これも立派な職権乱用に他ならないが

 

 

「今更だろ?校内限定だが今はあちらこちらで魔法が飛び交ってんだ。それにこれも一種の自衛だろ」

 

 

「えー…でも、そういうのって」

 

 

「なるほど、一理ある」

 

 

「えっ」

 

 

光井は気が引けるらしいが雫は乗り気だ。流石はなしが早い

 

 

「喧嘩しようってんじゃないんだし」

 

 

「攻撃魔法でもないから」

 

 

「虎穴に入らづん場虎児を得ずとも言うし」

 

 

「蛇の道は蛇ともいう」

 

 

「「だから、問題なし」」

 

 

俺と雫は同時に親指を立て、OKサインを作り光井に向ける

 

 

「2人ともなんでこういう時ばっかり息がぴったりなんですか!?」



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入学編18

どさくさに紛れてCADの紹介です。分かる人はいると思いますが電極です


光井は魔法で疑似的に大きな鏡を作り勧誘してる先輩方の後ろの植木の中を移動する。そうすることで反対側では植木の奥で作業してる風に見えるというわけだ。逆に手前の人が振り向くとすぐばれてしまうのだが、校門までの間だし問題ないだろう

 

 

「で、なんで俺まで一緒にいかなきゃいけないんだよ」

 

 

「みんなで行ったほうが心強い」

 

 

「そうだろうけどさ…風紀員あるし」

 

 

「その間、風紀員の仕事さぼれるよ?」

 

 

「よし、なら一緒に行こう」

 

 

雫と結託してさぼッ……この2人が無事に行けるよう見守るためついていくことにする。

つーか、雫は日に日に俺の扱いを分かっていってるな。なんか俺ちょろくね?

 

 

そんな俺と雫のやり取りを見ていた光井はやれやれといった感じでため息をこぼし

ややジト目になりながら、こちらを見る

 

 

「2人とも大声出すとばれちゃいますよ?」

 

 

「平気だよ、八幡が声が周りに聞こえないようにしてるし」

 

 

「おう…って、お前よく気が付いたな」

 

 

確かに周りに防壁を作りこちらの声をシャットアウトしている。だが、忘れられているかもだが、俺の魔法は特性上、発動したことが分かりずらい筈なのだ

 

 

この特性は強力で、あの司波兄でさえ発動したのは分かったが何をしたのかまでは分からないと言っているのだ。

現に光井はあたりを見渡し、いつの間にか張られていた防壁に驚いている。

 

 

それなのに雫はいつ魔法を発動したかに気が付き、その魔法の内容までも言い当てたのだ。

 

つまりそれは、俺の魔法の要ともいえる特性を看破したという事なのか?

 

 

先ほどまでとは打って変わり、背中に嫌な汗が出る。流石に俺も唯一の強みともいえる物を脅かされては気が気ではない

 

 

「別に、私は八幡の動きを見てただけ」

 

 

「は…どういうことだよ?」

 

 

「八幡のCADってその首のでしょ?さっきそれのスイッチを入れてたから」

 

 

確かに俺のCADはチョーカー型で、今首につけているこれだ。

見た目は何処にでもあるような黒いチョーカーだか、チョーカーの右隣にはスイッチといくつかのボタンがありそれを操作することにより魔法の切り替えをする

 

 

以前あった平塚 静に仮入隊のお祝いにCADをくれるという事で、初めは警戒し断ったが彼女のあまりの強引さで押し切られてしまい結局お世話になる事にしたのだが、

 

 

今まで使用してたブレスレット型のCADでは魔法の切り替えの際に両手がふさがり動作に遅れが生じるという理由で排除

 

 

携帯端末型のCADは俺自身があまり携帯を携帯しないのでうっかりどこかに忘れてしまう恐れがあるので排除

 

 

銃型のCADは俺の魔法に合わないという事で排除し

なんやかんやで俺専用のオーダーメイドCADを作ってくれたのだ。

 

 

それがこのチョーカー型である。魔法との相性はもちろん片手で操作できるし、身に着けているものだから忘れる心配もない。さらに専用のイヤホンをつける事によりプレーヤーにもなる優れものだ

 

 

雫は俺が首に手を回すのが見え、魔法を使ったのを察知したのだ。しかし、それでは、まだ説明ができない。

 

 

「じゃあなんで、効果まで分かったんだよ」

 

 

魔法が発動されて、障壁を視認できたとしてもその障壁が何を遮るものかまでは分からないはずだ。

 

それなのに雫は声と断言している。これは別に特性がどうとか言うわけじゃない。

 

 

俺の特性はあくまで、発動のタイミングのみに有効でそれ以後の継続系の通常魔法ではほかの人にも知覚されてしまう。

 

 

だが、今回の場合障壁魔法という幅広い物の中で声を遮ると正しい答えを断言したことは純粋に興味がわいた。

 

 

司波みたいに展開術式を見てどういった用途の魔法が発動されるのか分かるっていうなら頷けるが、俺が知る限り雫にはそんなはちゃめちゃチートスキルはない筈だ

 

まさか雫にもそういう裏設定的なものがあるのかと想像したが

 

 

「八幡ならそうするだろうなって予想しただけだよ」

 

 

と、雫から帰ってきた答えは想像したものとは全く別だった

 

 

「八幡て普段から周りに対する警戒心が強いでしょ。それに人の視線にも敏感だし、そんな八幡がこの状況で普通に話してるし多分そういうのかなって思っただけ」

 

 

あたってる?と小首を傾げる雫だが…つまりそれはこの一連のなかで雫は俺の動作、思考、性格の全てを理解したということなのか‥‥‥?

 

 

以前にも俺の思考を読んでいる風な事を言っていたがこれは本当にこれはシャレにならんぞ、むしろ特性が看破されたほうがましなレベルだ

 

 

なんせ、雫は俺が知らないうちに俺の考えや動きを把握しているという事だ。それはもはや掌握される少し手前ぐらいの距離感だ

 

 

今まで自分と他人の間に壁を作り溝を深め続けていたのにいったいどうしたというのだ。

 

なにか異様なまでの緊張感が押し寄せ、頭がうまく回らない

そこでとっさにでた軽口は某シリーズで某委員長が絡むと必ず言うお決まりのお約束

 

 

「…お、お前はなんでも知っているな」

 

 

もちろん雫はこんなネタを知らないので首を傾げるが、俺の方を見て微笑みながら言う言葉は偶然にも元ネタに沿う形となる

 

 

「なんでもは知らないよ、八幡の事だけ」

 

 

と言う雫の言葉はもはや告白ととっても過言ではない凶悪なセリフになったが、

 

 

相手が俺なのでそんな勘違いは起きない。よかったな相手が俺で、変な誤解は生まれないですむ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当に危ないところだった‥‥‥



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入学編19

そんな話をしている中、前方の光井がいきなり足を止め雫は光井の背中に衝突する

鼻を押さえながらどうしたのか確認すると、光井は呆けたように前を見ていた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「あれ」

 

 

「あれは、司波か」

 

 

そこには2人の男子生徒が取っ組み合いをしているのを制止する、司波の姿があった。

風紀委員の仕事のようで、俺も行ったほうがいいかと思ったが司波だし大丈夫だろうとそのまま傍観することにする。

 

 

言っておくが、さぼっているわけではない。取っ組み合いをしてる2人は体格から見てもそれほど強そうではなく、今のところ魔法を使う様子もない。こういった場合素手による鎮圧が最善だろうが俺にそんなことできるわけもなく、逆に司波の専門分野と言っても過言ではない。

 

 

ならば俺が下手に参入するより司波1人に任せた方が安全で効率がいい、何もしていないようだがしていない事をしている。いわばこれも一種のチームプレーというやつなのだ。うん、違うな

 

 

といっても邪魔になるというのは本当なので、とりあえず支給されたレコーダーの電源を入れ、なりゆきを見る。

 

制止を聞かぬ男子生徒の間に入りつかみ合っている手を手刀ににより払いのける。

その時だ、司波の死角から空気の弾丸が襲い掛かる。

 

あれは圧縮した空気を打ち出す魔法エア・ブリット(空気弾)!?

 

咄嗟に魔法を発動させそれを防ごうとしたが、もともと透明な攻撃でスピードもあるので反応が一呼吸遅れてしまう。

 

 

結果エア・ブリットは司波のすぐ後ろまで迫り直撃するかと思われた。が

 

 

「うおっ!あれを躱しやがった」

 

 

紙一重と言うところで体をずらし、攻撃をかわす。

 

 

「雫ッ今の…!」

 

 

「わざとだね」

 

 

雫と光井の2人は表情を曇らせ今の攻撃を分析、その結果あれがわざとであると断言する。

 

 

 

 

 

 

 

「今のは偶然なんかじゃない。どう見てもわざとだった!」

 

 

「私にもそう見えた。でも前の2人に邪魔されて達也さん犯人を追いかけられないでいる」

 

 

「それじゃあ全員グルなの…!そんな、なんで‥‥‥」

 

 

ほのかの顔からは血の気が引いたように、真っ青になりこの状況が理解できないと困惑している。

 

それもそのはずだ、なんせ達也さんは風紀員でそんな彼が狙われたという事は普通なら考えづらい。違反を取り締まる人間に違反をして攻撃を加え、あまつさえ搖動をしていた人間は実行犯を逃がすために時間稼ぎをしている

 

こんなどう見ても計画された犯行が起きるという事は、達也さんに恨みがあるという事だろうけど、彼の人となりをしっている以上それは考えづらい

 

 

しいてそんな人物を上げるならこの学校では八幡くらいなものだ。ただ八幡は私達と一緒にいたのでもちろん犯人ではない。そうなると

 

 

「やっかみかもね…」

 

 

「えっ何が?」

 

 

「達也さんのことはかなり噂になってるから、先輩たちは一年生のくせに生意気だと思ってるかも」

 

 

先日の剣術部での乱闘騒ぎやその他にもいくつもの功績をたった数日であげている。

そのためここ最近では鬼のように強い風紀員がいるとか、人外の力を持った正体不明の風紀委員がちぎってはなげちぎっては投げの大暴れなどという噂話をよく耳にする。

 

ただ、脚色がすごくい上、あながち間違ってはないのでなんとも言えないけどね。

さらに達也さんの容姿もあり女子の間では黄色い声が上がることも少なくない。

 

 

でも、それ以外にも達也さんが二科生という事もあり上級生だけではなく同学年の一科生からもだいぶ僻みを受けているらしい、聞いた話だと特に男子からは多いそうだ。

 

ちなみにそういう僻みの入った話を教室ですると深雪により急激な寒波が発生するのでうちのクラスではそういった話はあまりきかない。

 

そういったことから今回のこれも、そういった類のものだと思われる

 

 

「な!嫉妬して闇討ちなんて卑怯すぎる、許せない!!」

 

 

ほのかの怒りも分かるし、私も同意見だ。こんな理不尽を許してはいけない。

あまつさえこの犯人たちは達也さんの力をしり、正面からいどんでも勝てないと集団での闇討ちと言う卑怯極まりない事をしている

 

そんな臆病者に達也さんが狙われ気づ付けられ貶められようというのなら友人として見過ごすことは絶対にできないだが、

 

 

「でも具体的にどうするの?」

 

 

「うーん…生徒会に届けるとか?」

 

 

問題はその方法だ。犯人たちは相当周到に計画を立てたようで実行犯はもう見当たらない。そうなると証拠不十分という事で生徒会でも取り合ってはもらえないだろうし、言い逃れをされたらそれまでだ

 

それに生徒会に知らせるというのはつまりは深雪の耳にもこのことが伝わるという事で

 

 

「‥‥‥深雪にしらせるのは…ちょっと」

 

 

「うん…こんな事を知らせたら何人の犠牲者がでるか…」

 

 

2人して顔を見合し仮に深雪が知ったあとの行動を予測し、肩が震える。

これは過大解釈ではないく、割と真剣な問題だ。深雪は普段おとなしい優等生だが、達也さんが関わると人が変わる。それも彼女の個性なのだし、しょうがないが流石に友達が人を氷漬けにするところなど見たくはない

 

 

「あ!それじゃあ比企谷さんにお願いするのは…」

 

 

ほのかの考えでは同じ風紀委員である八幡なら、こういう場合でも犯人たちを捕まえる事ができるというものだ。

 

 

権限的にはもちろん可能だが、八幡はこういう感じの事が嫌いだと思う。そもそもめんどくさい事を嫌う彼の性格なら見て見ぬふりはしないだろうけど、関わるなら最低限にとどめるはずだ

 

 

まあ、レコーダーの電源を入れていたので証拠はとれていはずだし、そのまま八幡が風紀員に報告すれば生徒会に連絡がいかずに事態を鎮静できるだろう。

 

だが、今それを頼むのは難しい

 

 

「また明日なら頼めるけど今日は無理だと思うよ」

 

 

「え?」

 

 

「八幡さっきからいないし」

 

 

「ええ!?」

 

 

ほのかはあたりを見わたすが、八幡の姿を確認することができない。私もついさっき気が付いたがいつのまにか八幡の姿は消えており、さっきの事を頼むことができない

 

 

私が最後に八幡を見たのは、エア・ブリットが放たれる少し前までで

その時に達也さんの方に注意がむき数秒意識をそらしたらその時にはもういなかった。

恐らくだけど、魔法を放った実行犯の後を追いかけているんだと思う

 

 

八幡も達也さんとの間に色々あったようだけど、こういう理不尽な事が好きなタイプではないと思うから八幡なりにどうにかしようとしているのだと私は考えている

 

 

なので、私達がお願いする必要もなく彼は動いてくれると思うのでこの件に関しては心配はいらないだろう。なにより彼は普段の性格がだいぶ捻くれてるが頭の回転は私達より早いのだと思う。そのため彼の事を分かることができずに歯がゆさを感じてしまう

 

 

私達に黙って姿を消したという事は、つまりは私達をあてにしていないか、巻き込みたくないという考えなのだろう。

 

 

その考えは多分彼の優しさからくるものだと思うがそれでも、頼ってもらえないという事はいささか不愉快だ

 

 

別に慢心してるわけではないけど、それでも私の魔法実技の成績は1年の中でも上位に位置しており深雪にだって負けないという気概を持っている

 

 

入試の成績だけでも八幡より上の順位で、少しは私の力を信じてほしい物なのだが…もしこのような事を言ってしまえば彼は私から距離を取るだろう。私の彼との距離と言うのは所詮その程度のものだ

 

 

ついさっき彼と話しており知っているのは八幡のことだけなどという事をいったが実際に理解できるのは彼の人となり行動、思考の一部程度しかない

 

 

別に八幡に対して恋愛感情を持っているわけではない。持っているのは好奇心や興味それから、親近感という感情だろうか‥‥‥

 

そんな不思議な感情の正体を見極めるため彼と行動を共にしていて、その親近感の正体は彼も私と同様に自分と周りに線引きをしていることだと分かった。

 

 

他人と自分の間に確固たる線が引かれており、家族や幼馴染のほのかはその線の内側にいて大切な存在として認識している。

 

逆に線の外側にいる人に対してはあまり興味はない。それはクラスの友達だとしても私によくしてくれる近所の人にしても変わらない

 

 

ただそれだと日常生活に支障もきたすので最低限のお付き合いはしているし、よくしてくれたら感謝するし何かされたら怒りもする。それと内側の人の友人とも仲良くすることにしている。

 

 

それは大切な人の大切な存在ということで、今回の達也さんにしてもほのかの憧れである深雪のお兄さんという事でどうにかしたいと思う

 

 

八幡は私と違い線引きがあまりにも極端で人を拒絶している。そのためか彼は友達作りなんかが苦手なようだ

 

 

だが、そんな彼はあの日の放課後に思いもよらない行動に出た。一科生の人が深雪と達也さんの邪魔をし森崎君が魔法を使おうとした。私はその時一科生の横暴な態度に腹を立てていたがそれ以上の興味はなかった。なので、森崎君の奇行にも対応できず傍観していた

 

 

そんな中、八幡は誰よりも早くそれを止めた。

誰よりも人との距離を作り、友人一人満足に作れない彼が咄嗟の判断で人助けを選択したのだ。そんな彼の姿はやり方も言い方も方向も全く違うが、いつも一人でいた私に声をかけてくれたほのかの姿とダブり

 

 

その時理解した、彼はとても優しい人なのだと。

 

私と同じなのに私と全く違う彼に一種の憧れを抱き、彼の近くで誰よりも彼を見ていたい思った。そのためいつの間にか彼の思考を一部だけだが理解できた

 

 

だが、まだこれだけでは足りないのだろう。八幡の事をもっともっと知る必要がある。それと、彼の引く線の内側にも入りたい。彼の大切な存在になりたい

 

 

憧れの人を理解し近くにいたいというこの感情は恋愛感情ではないと思う。そもそもこれまで恋愛をしたことがないのでそれがどういう物かは分からないけどね

 

 

「てうわ!いつの間にか魔法が解けてるっ」

 

 

気が付くと後ろにはクラブの勧誘の人たちが押し寄せていた。

ようこそと書かれた看板をもった数十人を前に反射的に私達の足が動く

 

 

「とにかく今は逃げないと…」

 

 

「きゃああああっ」

 

 

逃げる私達に向かい後方ではテニス部に興味はないですか、射的やってみないとか色々な声をかけながらすごい勢いで追いかけてくる。

 

 

「ま、まにあってますーッ!」

 

 

ほのかは目をまわしながら叫ぶが残念なことに彼らの耳には届かずその後、校門まで壮絶な追いかけっこが続いたのだった



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入学編20

なんか八幡て探偵とか刑事とか向いてそうなイメージがあります。

それと相棒13が始まりました!いや~これから水曜が楽しみです


雑木林の中2人の男子生徒が話しており、その雰囲気はただことではない様子だ

一人は、司波を狙った空気弾を使った犯人

 

もう一人はメガネをかけた角刈りがトレードマークの司先輩。相変わらずメガネを中指でクイッとさせる姿はラスボス臭がすごいな

 

 

「すいません…まさか、あれをよけられるとは‥‥」

 

 

「かまわないよ。おかげで色々と観察ができた」

 

 

「しかし、これでは当初の目的の彼の実力を測ることが…」

 

 

「分かっている。次は俺がいこう」

 

 

メガネをクイッとさせそう宣言する。

 

こんな風貌事態が黒幕っぽい奴も昨今珍しい限りだが、今の会話を聞いたらあからさまな黒幕である。もしこの会話を第三者が聞いたら間違いなくそう答えるだろう。

 

 

そして彼ら2人のすぐ近くでこの会話を聞いていた八幡も同様のことを考える

 

 

今現在彼はミスディレクションを発動させ2人から5メートルほど離れた木の陰でこの会話を盗聴&録音している。

 

 

空気弾を撃った犯人をすぐさま追いかけ、隙を見て捕まえようとしてこの現場まで尾行したのはいいが思いもよらない人物を見つけ捕まえる事を放棄し情報収集に変更したのはいいが、

 

 

どうやら物凄くめんどくさい事を計画してるようで、その顔はもはやげんなりとしていた。

違反行為の取り締まりに来てみればそれを指示した人間の特定および次回の犯行予告まで判明し、普通ならお手柄なのだがそこは彼、比企谷 八幡なのでこういう厄介ごとを嫌い、できれば関わりたくはないと心の底から思っている

 

 

しかし、一度受けた仕事はきっちりする性質なのでとにかく今は情報収集に徹する

この情報を持ちかえればめんどくさい事に巻き込まれるのは必死だろう。なんせ聞く限りただの違反行為ではなく、なんらかの目的を遂行するためにやった集団行動なのだ

 

 

目的の部分はどうでもいいし興味はないが集団行動の部分が厄介だ。今確認するだけでこの2人と喧嘩をしていた連中もグルだと考えれば4人、さらに司先輩のつけているブレスレット

 

白い帯に赤と青を縁取ったデザインのものだが目の前にいるもう一人もつけているしなんらかのシンボル的な物の可能性がある。

 

 

ユニフォームみたいな感じだな。自分たちの仲間を区別するためにつけるそれは彼らがそれなりの集団である可能性を提示する

 

 

正確な人数は分からないが不特定多数の人間がこの件に関与している可能性がある。人数が多ければ多いほど厄介きわまりなく、さらに人に向かって魔法を使用する連中がいっぱいいるなど、風紀員としてめんどくさい事このうえない

 

 

最悪の場合は刑事ドラマで見るような大捕り物に発展しかねない‥‥ほんとうにめんどくさい

 

流石にそんなフィクションの世界みたいなこと起きるわけはないと思うが、念のためもう少し調べる必要がある事には違いない

 

 

なので司波には悪いがおとりになってもらうことにする‥‥‥…別に今までの仕返しとかじゃないぞ?ほんとだって本当!八幡はそんな事をしませんことよ!‥‥‥

 

 

‥‥‥本当にヤバそうならなんかするけど司波だし平気だろ多分

 

 

「四日目の放課後しかけるほかのメンバーは手を出さないよう言っておいてくれ」

 

 

「はい」

 

 

司先輩らは話が終わったようでその場を移動する。

一人は今来た道の逆を、司先輩は俺の前を通り過ぎ校門まで歩いて行った

 

前を通り過ぎた時に一瞬、ヒヤッとしたがどうやら気が付かれなかったようだ。これぞまさにステルスヒッキー!キリッ……うん、やめよう。緊張がとけおかしなテンションになってるんだよ

 

 

とりあえず、今は家に帰るとしよう。本当はこのあと司先輩を尾行でもすればもっと詳しい事も分かるかもだが、俺のメンタルが持ちそうにない

 

 

あ…そういや雫達に何も言わずに来ちゃったんだよな‥‥‥まあ、いいか明日にでも詫びいれればどうにかなるだろう

 

なにやら騒がしいが俺はそんなことを気にも留めずに帰宅する。

ただ、翌日に風紀委員の事を忘れて帰ってしまったため、渡辺先輩よりこっぴどく叱られ森からすんげー嫌味を言われその日一日は放課後までずっと消沈するはめになるのだが

 

 

「あ、そういやコーヒー切れてたっけ…買っていこ」

 

 

今はまだそれをしらないのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勧誘期間四日目 放課後

 

あれから2日が立ちとうとう、司波襲撃計画の実行日となった。そして今俺は風紀員の仕事をしながら司波を観察している。

 

本当は司先輩が自分のクラスから出て行ったところから尾行できればよかったのだが、つい昨日の事だが委員長よりさぼりに付き説教されたうえで念を押されたためどうしても委員会の顔出しに行かねばならずそれがかなわなかった

 

2回目のさぼり発覚という事で、すごい剣幕で怒られた‥‥‥

鋭い眼光で睨みつけられ胸倉をつかみ顔を近づけ、ささやくように言われた

 

 

「いいか比企谷‥‥‥………次はないぞ?」

 

 

渡辺先輩みたいな美人と至近距離で顔を見合わせ、ささやかれるなんて本来なら思春期真っただ中の男としてうれしい事この上ないのだが

 

 

本当に怖かった…とくにあの名前を呼ばれた後の妙な間、あの時なんて生きた心地がせず、時間にすると5秒程度なのに10分くらいあのままだったような感覚になり、足や手が小刻みに震えていた

 

 

しかもその後、森の野郎がどこから聞きつけたのか分からないがやたらと絡んできて

うざいのなんのと

 

 

「貴様なにをしている!俺がお前のためにゆづってやった風紀委員をさぼるなんて!」

 

 

「そもそもお前は、気概が足りないんだ!」

 

 

「いいか我々は選ばれし一科生であり…」

 

 

「名門、森~の名に泥をつけるつもりか!!」

 

 

最後のほうは眠くてよく聞いてなかったが、本当になんなんだあいつは?そもそも俺は別に頼んでねーんだっつうの、まったく

 

 

説教もさることながらこれが止めとなり、その日の授業の記憶がほとんどないはめになり、放課後は放課後で渡辺先輩じきじきに俺の監視をしてくださり、もうほんと…お腹いっぱい過ぎて胃もたれしましたよほんとにね

 

 

その日真面目にやったおかげで、今日は一人で回ることを許されたので、今はじっくりと張り込み中だ。司先輩は見失いどこにいるかわからないが、司波を襲撃するつもりなのでその周りにいれば向こうからやってくるだろう

 

 

「乱闘だー!!」

 

 

誰に向けたわけではない大声がし、そちらの方向を見ると2人の男子生徒が今まさに魔法を発動させようとしていた。

 

司波はすぐさまその場に駆けつける

 

 

「風紀委員です。今すぐやめてください」

 

 

司波は制止を呼びかけるが、そのうちの一人がその声に反応し、くるりと司波の方に転換し、発動された魔法はそのまま司波にむけ発射される

 

 

「クッ」

 

 

顔めがけて発射された魔法は司波が首を動かしなんとか交わした。だがその隙に先ほど魔法を使ってた生徒2名は逃亡した。すぐさま追いかけようとするが

 

 

「痛ッ!きおつけろ!」

 

 

その方向にいた先輩に行く手を阻まれ追いかける事ができず、ついに見失ってしまった。

 

一見魔法の誤爆のようだが怪しいな、行く手を邪魔した方は司波に見えないように笑っているし……どうやら司先輩とは関係ないがあいつに嫌がらせをしているようだ。

 

 

まったくもって人間てやつは何処にいてもやることは変わらんな。

 

 

小学校、中学校と色々な嫌がらせをされたことを思い出したが感傷してる暇もないので、今の4人の顔を映したものを委員会に報告しておこう。

 

 

司波にも気が付かれずに尾行しているので、もちろんほかの連中も気が付いておらず先ほどの喧嘩から、司波に向けられた悪意のある笑いまでバッチし録画することに成功した。

 

 

俺のトラウマを掘り起こした罪、しっかりと償え

 

 

ちなみに彼らは後日、魔法の不適正使用及びそれの補佐で厳重注意され反省文の提出を命じられることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『風紀委員各自に連絡、西側通路にて2年生どうしが喧嘩をしていると通報があった。近くにいる者は直ちに急行せよ。繰り返す~・・・』

 

 

「一年の司波 達也です。すぐにいきます」

 

 

無線により告げられた場所は俺たちのいる場所から遠くない所で、司波は応答後すぐにはしりだしその場所まで移動する。

 

すぐにその後を追いかける。途中ちかみちであるあの時の雑木林を通るようなので魔法で加速しながら木々の間を抜け、司波と一定の距離を取り後を追う

 

 

もうすぐ雑木林の出口にたどり着くというところで司波は急に足を止め、俺とは逆の方の木に体を向けすばやく腕を交差する

 

 

そこには魔法を発動させようとしている司先輩がいたが、司波の手から複数のサイオンの波があらわれ先輩の魔法をかき消す。

 

 

「待てッ!」

 

 

そのまま逃げる先輩を司波は追いかけるが、先輩は魔法による高速走行を使用し一目散に逃げ、司波はそこで追いかけるのを諦めたようで、ヤレヤレといった感じで片手を腰に当てため息を一つ

 

 

司波はそのまま先ほどの喧嘩の現場に行くようだ。

 

 

俺はと言うと、現在進行形で司先輩を追跡中である。雑木林を抜け100mほど走った先輩はそこで魔法をやめ、徐々にスピードを落としながら乱れた息を整える

 

 

そのやや後方から息を多少切らしてそれを追う。本来なら剣道部の主将と風紀員とはいえもと帰宅部の俺では持久力にスピードと差がでるのだが、魔法による追いかけっこでは一科生の俺にやや分があった。

 

 

司先輩は何食わぬ顔で体育館のほうに引き換えし、途中の渡り廊下であった女生徒となにやら話をしている。

 

 

二科生でポニーテールの女生徒確かあれは‥‥壬生先輩だったか?

今や司波の代名詞ともなった、剣術部乱闘事件の剣道部の方の当事者だった人だ。

同じ部活の2人が話をしているだけなので、対して問題もない様子だ。

 

 

壬生先輩はあのリストバンドもつけてないようだし

そのまま先輩達2人は少しして話を終え、お互い別々の方向へいく。俺の予想ではこの後司先輩は仲間とあつまるかして今回の襲撃の報告をするはずだ

 

 

その場面を目撃できれば、相手の人数や戦力もわかり風紀員も動きやすくなる。願わくば目的とやらもわかればいいのだが…

 

贅沢は言わないし興味もたいしてないので別にいいがな

 

 



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入学編21

「勧誘期間、お疲れ様」

 

 

俺の肩に手を乗せそう話しかけるのは雫だ。朝のHR前、この時間に俺に話しかけるのなんて雫か光井しかいない、さらにこの簡潔な文は光井ではない。

 

というか別に声で分かるんだけどな

 

 

「…おう、お前らもなんか大変だったな」

 

 

「別に平気。八幡なんか疲れてる?」

 

 

「別に…」

 

 

「嘘。見るからにすごいよ、特に目がいつもの倍くらい濁ってる」

 

 

「おいコラ、それは普段から目が濁ってるて言いたいのか」

 

 

「濁ってるよ」

 

 

「お前そこは、もう少し包んで言えよ。真実をありのまま告げることは優しさじゃないんだぞ」

 

 

「‥‥‥濁ってる」

 

 

「考えた結果それかよ。つーか、より直球になってんじゃねーか」

 

 

やっと勧誘期間が終わり、風紀員の仕事も一段落が付いたので、別段疲れているわけではない。筋肉痛とか腰痛が時間差でやってきてはいるが一応想定の範囲内だ

 

 

だが、雫がそういうという事は自分でも知らない間に疲れが出ているのだろう。心当たりがあるとすればそれはあれだろう。司 甲

 

 

勧誘期間4日目、司波襲撃後の司先輩の後を尾行したが、同じ部活の壬生先輩と少しの会話をした後は、ほかの仲間と落ち合う事もせずそのまま部活をして帰っていった。

 

 

俺の予想は外れ、その間に費やした時間が丸々無駄となり無駄にテンション高めだった俺の心は一気に消沈した。

 

 

だって、普通こういうのって作戦が終わったすぐ後に集まるもんじゃねーの?

刑事ドラマしかり、スーパー戦隊の悪の幹部しかりみんなそうしてたじゃん!

 

 

「現実とフィクションはやっぱり違うってことか‥‥‥」

 

 

「フィクション?」

 

 

「いやなんでもない。ただの独り言だ」

 

 

「話してる途中に独り言もないと思うけど」

 

 

「はいはい。すいません。」

 

 

「はいは、一回」

 

 

なんか小学校でこんな事あったな。つーか雫さんなんか楽しんでませんか?

 

 

「‥‥‥はい」

 

 

「うん、よろしい」

 

 

と、雫は悪さをした子供のようにニコリと笑い自分の席まで戻る。

 

朝っぱらからいいもん見れた…って違う違う。朝っぱらから疲れる話を終えただ。べ、別にあんたの笑顔にときめいたりしてないんだからね!

 

 

まあ、多少はドキリとしたがな。

 

 

 

 

 

 

 

見事なまでに八幡の勧誘期間尾行大作戦が失敗した今日この頃、数日にわたる疲れと失敗したことによる気落ちでしばらくの間、行動不能だったが雫との他愛のない会話によるアロマ効果的ななにかで何とか動けるようになった俺は、一科生のクラスがある塔とは逆にある二科生のクラス塔にきている

 

 

昼休みという事もあり廊下にはかなりの数の生徒が出ている。もちろんだが全員二科生だ。

溝が大きいという影響と基本的にこちらに来る用事がないという事で、一科生の姿はなく仮に、ここに一科生がこようものならちょっとした騒ぎになるだろう。

 

 

俺がこちらに来たのは勿論、司先輩の内情を知るためだ。なのでそんな目立つようなことをしてしまったら調査ができなくなるので、それは避けたい

 

 

なので一番手っ取り早い方法である、変装をするという結論に至った。俺は風紀員という立場にありながら、司波がやたら派手に動いてくれたおかげで、一般生徒から風紀員として認識されていない。というか、クラスメイトからもたまに認識されていないので、制服を変えただけで簡単に潜入できるだろう

 

 

ちなみに言っておくが、別に魔法を使ったとかではなくガチで認識されていない。雫と光井が話しかけてくれて周りの連中も俺がそこにいる事に気が付くみたいな感じだ

 

 

たまに光井は素で俺の事を忘れてる時があるがな…

あ、あと司波妹とはもちろん話なんてしていない。トップカースト中のトップと話をするなど論外である。森‥‥‥誰それ?

 

 

しかし、一科生である俺が二科生の制服を持っているなんてことはないし、それを借りるような友達もいない。一応知り合いはちらほらといるが、いきなり制服を貸してくれとたのんで

 

「いいよ」というような奴はいないだろ。よって俺は一科の制服のままこちらにきている。

 

 

だが、周りは特に気にする様子もない。別に俺の存在が限りなく空気とか言うんではないぞ?

簡単な話、花が邪魔ならそれをなくせばいい。

 

光学系魔法の応用でエンブレムの花の部分を黒塗りにしてあるのだ。さらに普段は梳かしてない髪をそろえ目元までおろしている。その上で変装の代名詞ともいえるメガネを着用

これで俺が誰なのかわかるやつはまずいないだろう。

 

えっ、勧誘期間でもないのに校内で魔法使っていいのかって?

 

‥‥‥どこぞのギャンブラーが言ってたろ。イカサマはばれなきゃイカサマではないと、つまりそういうことだ

 

 

こちらの校舎も作りは一科のほうと同じようなので、とりあえず先輩のクラスがある階まで行くことにして廊下を進む。すると前方にお目当ての角刈りメガネを発見し、すかさず物陰に隠れ、様子を見る。

 

何をしてるのかと思えば女子生徒と話をしているようだ。

 

 

「ッチ」

 

 

休み時間に女子と仲良く話すとかなにそのリア充?

ついつい舌打ちしちまったぜ……ッケ

どこぞのラノベみたいな展開だと爆発しろとか羨ましいとか思うけど、こういうナチュラルなのってただただイラつくよな ッチ

 

 

しかし、あれだよな。司波兄にしろこいつ(司)にしろ、二科生にやたらリア充多いよな?

一科と二科の関係は一科>二科みたいな構図のはずなのに全然勝ってる気がしない

 

初日から校則違反をする森ほか1-Aの面々に、司波に完封された服部空気読めない副会長、勧誘期間に剣道部(二科)にちょっかい出して返り討ちに合いキレて違反行為に及んだ桐原先輩と剣術部(一科)の皆さん‥‥‥

 

 

むしろ何が勝ってるというんだこれ?魔法云々以前に、人間性に問題ありすぎるだろ一科生、とくに男子。副会長(笑)にしてみれば、魔法で負けてたし……ざまぁ

 

 

…今日はなんかやたら病んでるな、疲れてるのかな?

 

 

 

 

 

目標(司)は話を終えたようで、その場を離れる。目標がほかの階に移動したのを確認し、さきほど彼と話してた生徒を探す。

 

 

見つけた、彼女は確か…壬生先輩だったか?

 

ポニーテールが印象に残る彼女の対面から近づき、通り過ぎ様に肩をぶつけそのまま横転する。

 

 

「っわ!だ、大丈夫君!」

 

 

壬生先輩は倒れた俺に驚いたのか少し声が張る

 

 

「は、はい大丈夫です。ぶつかっちゃてすいません」

 

 

「こちらこそごめんなさい。考え事してたから気が付かなくってごめんさい。えっと…一年生かな?」

 

 

「は、はい。一年の曳田 八(ひきた はち)です」

 

 

一応捜査なので偽名を使ってみるが、これ調べられたらすぐばれるよな?そんな生徒多分いないし…ま なんとかなるか

 

 

「そう八君。本当にごめんね、私は―――」

 

 

「あ、あの!剣道部の壬生先輩ですよね?勧誘期間の時拝見しました!あの時すごくかっこよかったです!」」

 

 

「あははは、そういわれると照れるなー」

 

 

先輩は顔を若干赤くし頭の後ろに手を回す。

 

 

「そ、それであの!剣道部に興味があってお話を聞きたいんですけど、少しお時間いただけませんか?」

 

 

「ん―放課後でいいなら大丈夫だけど」

 

 

「じ、じゃあ、あの、お願いします!」

 

 

腰を90℃に曲げお願いをし、その後カフェでの待ち合わせを約束を取り付け壬生先輩はその場を後にする。

 

ほかのところも周り、司先輩のクラスと学年での素行調査を実行、これにより大体の人と成り、あと数人だけどあのリストバンドをした奴らも確認できた。それと放課後に部活での様子を聞くことができれば、なんとか調べられるだろ

 

 



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入学編22

最近なんか迷走してるLチキです

このまま進んでいいのでしょうか?なんだか自分がなにしてるのか分からなくなりつつあります。もしよければこのまま進んでいいのか、悪いのか感想をお願いします(書き方、内容、キャラなど)

その他にも感想、ご意見、疑問点などありましたらどうぞ、答えられる物でしたらお返事します

















放課後になり壬生先輩から話を聞け、それとなく司先輩について話を振るなどして部活での様子も知ることができた。リストバンドをしてる連中とも数人話ををして感じたことだが、どうやら彼らは魔法科高校について、もっと言えば一科生と二科生について含むところがある連中らしい

 

もちろん二科生のほとんどは思うところがあるんだろうが、こいつらの場合その態度が露骨すぎる。そこから導き出した結果どうやら壬生先輩もこいつらの仲間と言っていいだろう

ためしに

 

「俺も一科の連中に馬鹿にされて…」

 

 

「魔法が苦手だからって俺の全てが否定されるのはまちがっている」

 

 

などと言ってみたが、壬生先輩は結構な食いつきを見せた。同意にさらに自分の思う節なども聞けた。

 

魔法科高校に入る前から剣道では相当強いらしく、剣の腕に誇りを持っていたが、勝負を挑んだ相手に二科生というだけで手ひどくあしらわれたみたいな内容でそれから魔法科高校について思うところがあるらしい。

 

 

相変らず一科生は人間として問題があるな。

そこまで聞いた時、俺は一種のアクシデントに見舞われた。

 

 

「えっと、改めて先週はありがとうございました」

 

 

「あれは仕事でやったことですから」

 

 

それは毎度おなじみの司波兄こと司波 達也だ

壬生先輩は司波とも放課後話をする約束をしてたらしく、なぜか今俺とこいつは相席状態だ。

 

 

窓側のテラスにおかれた丸テーブルの一方に壬生先輩、その対面に司波、2人の真ん中が俺という座り方だ

 

 

「そちらは?」

 

 

「あ、彼は八君て言って、剣道部に興味があるみたいだから一緒にって思って」

 

 

「‥そうですか、どうも司波 達也です」

 

 

司波は俺の方をまじまじと見た後、一瞬鼻で笑いお辞儀をする。

こいつ、俺だってこと分かってるな

 

 

「ど、どうも八です…」

 

 

またも一瞬鼻で笑い壬生先輩に向き直る

事情を察したのか面白がってるのか分からんが、どうやら俺の正体をばらす気はないようだ。

ありがたいがなぜこうも、こいつに感謝の気持ちを持つのに拒否反応がでるのだろう。不思議だ

 

 

「それで彼が同席という事はお話の内容はもしかして、剣道部の勧誘ですか?」

 

 

「ええ、そのとうりよ。司波君剣道部に入りませんか?」

 

 

「せっかくですが、お断りします」

 

 

「…理由を聞かせてもらってもいい」

 

 

「逆に俺を誘う理由をお聞かせ願いたいです」

 

 

ため息を一つ吐き神妙な顔つきになり、先輩は話し始める

 

 

「魔法科高校では魔法の成績が最優先される。でも、それだけで全部決められるのはまちがってると思わない?」

 

 

壬生先輩の話す内容はまさに俺が知りたい情報の一つだ。

司波のほうを向くと、あいつもこちらの方を見ていたのでとりあえず頷いてみた。

特に意味はない

 

 

「続きをどうぞ」

 

 

「二科生は魔法実技の指導は受けられない、でも授業で差別されるのは仕方ない。私達に実力がないだけだから…魔法がうまく使えないからって私の剣まで侮られるのは耐えられない。無視されるのは我慢できない。魔法だけで私の全てを否定させはしない」

 

 

先輩の持つドリンクのプラスチック容器は音を立てる。もう片方の何も持っていない手を見ればどれだけ力が入ってるかが分かる。

 

 

「壬生先輩?」

 

 

険しい顔をして俯く先輩に対し司波は、声をかけた

すると先輩は、取り繕うように明るい声をだし話を続ける

 

 

「だから私達は、非魔法競技系のクラブで連帯することにしたの。今年中に部活連とは別の組織を作って、私達の考えを学校に伝えるつもり」

 

 

「魔法が私達の全てじゃないって…そのために司波君と八君にも協力してもらいたいの」

 

 

一通り話し終え先輩は息を整える。

 

つまりこういうことだ、二科生のなかで勇士を募りデモのようなものを起こす。

ある意味でこれは正しい方法だと言える。自分達の掲げる正義を組織に伝えるにこれ以上の方法はないだろう

それは多くの歴史が証明してる

 

 

だが、同時にこれは確実に間違った方法の一つだ

それに先輩の話には穴がいくつかある

 

 

まず、考えを伝えたうえでどうするかという問題だ。

授業の事は教師不足でどうしようもないし、本人もそこは自分たちの実力不足を認めている様子だし

 

 

部活関係で言えば、部費などだろう。だが司先輩を調べるついでに各部の部費についても調べてみた。なんでかって?なんかこういう金の話って面白いからだよ、文句あるか?

 

確かに魔法競技系の方が部費の支給額が多いが、これは魔法云々その部の功績の問題だ。

現に剣道部は大会入賞なども果たしているのでそれなりに多くもらっている。他の部も魔法競技系、非魔法系関係なく成果を上げてるとこには多く支給されている

 

 

後は、生徒間における差別問題だろうけど、そもそも学校はウィードとかブルームとかの差別用語を認めていないし、風紀員でも注意はしてる。

そうなると、後は個人個人の問題であり学校側がどうこうという事ではない

 

なんせ、学校の事は実質的には生徒会が仕切っているため、上は現状を把握してるかさえ怪しいしな。

 

それに生徒会長の七草先輩に風紀員の渡辺先輩、部活連の十文字先輩はこういう一科と二科との溝に思うところがあるだろうし、部活連や風紀員といった複数の人間が所属してるところではそういう偏見や差別をしないようにと言っているほどだ

 

後この2つの組織では二科生の生徒も所属しているため、表だってそういう事を言ったりしてる奴はいない

風紀員の方は今年から司波が入ったという事もあるが、俺の見る限りほかのメンバーと司波はそれなりに交友を持っているようだしなんなら俺より遥かに馴染んでる。

 

まあ、そもそも俺がボッチで風紀員でも渡辺先輩と司波くらいしかまともに話せてないんだけどな‥‥‥うん、この話は止そう

 

 

あ、そういや生徒会にはあいつが居たな。服部空気読めない副会長!こいつは渡辺先輩の制止も聞かず司波に対して差別用語を言ったんだったな…

 

そうなるとこの話で生徒会は随分立場が悪いな。唯でさえ役員は一科生のみという決まりがあるし、校則に乗っている以上、学校側が差別を助長しているという風にも見えなくもない

その上で服部のあからさまな差別意識が乗れば割とやばいかもな。

 

だがそれでも、実質的に差別をしていると思われる学校組織は3つの内の1つだけ

その他は、個人の問題であり学校は関与しておらず逆に風紀員などに指示して抑制を図ったとかなんとか言い訳されるのがオチだろう

 

 

デモなどの行為は声をつたえるとしては一番効果的な方法であるが、逆に何かの意見を通すには限りなく無駄だと言える。

 

特に国のお役人とかはそういうので動くとかまずしないだろう。それも歴史が証明してる

デモを行い成功した例は確かにあるがそれにデモ事態はあまり関係しておらず、ほかの政治的法律的な何かをやってる人がいるから成功したか、大声で言えないような何かが起こった場合のみだろう

 

デモのもっともな効果は世間に対するプロパガンダであり相手の組織、国に対しするのではなく民衆に向け行い、味方に付けることが目的といえる

 

つまり魔法科高校という組織に対してデモを行うという壬生先輩達の考えは言うだけなら正しい方法であり、実際にやるなら間違った方法だ

 

 

考え方に違いはあるだろうが、これが失敗するというのは司波も分かってるだろう。その証拠に笑みが見え隠れしてるぞ

 

 

 

 

「なるほど」

 

 

「馬鹿にするの?」

 

 

「そんなつもりはありません。自分の思い違いがおかしかっただけですよ。先輩の事を単なる剣道美少女と思っていたのですが、俺も見る目がない」

 

 

見る目の前に周りの目を気にしろよ。何いきなり口説いてんだよこのイケメン野郎が!つーかやるならせめて俺がいないとこでしろよ。さっきから一言もしゃべってないしいないも同然だけど、俺だっているんだぞ?

 

 

「美少女‥‥」

 

 

言われた壬生先輩は顔を赤らめ膝の上で両手をもじもじさせる

 

…まんざらでもないんですね。えーえー分かってますとも、イケメンに正面切って口説かれればうれしいですよね。

 

女性ですともその気持ちわかりますよ。いや、分からないけどさ

 

 

ちなみにもし俺が、同じことをした場合は

 

「え…何言ってんの?…やめてくれないそういうの……まじで」

 

みたいな感じになるな

で、次の日にはクラス中が知っていて卒業までずっとネタにされるんだよな

つーかこれは中学時代の実体験だった…

 

 

「壬生先輩」

 

 

「な、なに?」

 

 

「考えを伝えてそれからどうするつもりですか?」

 

 

司波の顔にはもう笑みが消え、いつも道理の感情がないような冷たい目で先輩を見やる

 

 

「え…」



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入学編23

話し合いはそのまま終了、というか壬生先輩が司波の尋問のような質問に答える事が出来なかったので、考えをまとめてまた後日、改めて話し合うという事で今回は解散された。

 

 

「で、お前はそんな恰好で何をしてるんだ?」

 

 

壬生先輩が足早にカフェを出て行ったあとに、今度は俺に矛先を向ける。

 

 

「なんの事やら、俺達はついさっき初めてあって――――」

 

 

「比企谷、風紀員の魔法の不正使用は厳罰だぞ?渡辺先輩に報告したらどうなるか」

 

 

「はい、すいません!これには事情があるんだって!だから先輩には言うな、いや、言わないでください!!」

 

 

丸いテーブルに頭を打ち付け、拝むように司波に嘆願する。

さぼりの件から俺の中では渡辺先輩はすっかりトラウマの対象になっている。だってあの人怒るとすげー怖いんだぜ?

一度本気で怒らせたら、一日中追いかけてきたし…あの人はまじでバーサーカー並みだから

 

ランスロットでもヘラクレスでも追いかけられた時の絶望感半端ないだろ?あんな感じなんだぞ!?

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

壬生先輩は答えが出せず、そのまま去っていく。

 

あんな無茶で計画とも言い難い計画を彼女は本気でやろうというのだろうか?

第一印象ではそこまで無謀な人とは思えなかったが……まあそれも、答えを聞かなければ判断の仕様もないか

 

さて、残る問題はこの目の前にいる、メガネをかけ髪を下ろしている比企谷だけか。

典型的な変装…それに、エンブレムの刺繍は光波振動系の目くらましの一種か

確かに見た目は完全に2科生だが知り合いが見ればすぐにばれるレベルだな

 

勧誘期間中もなにやら嗅ぎまわっていたようだが何をしてるのやら‥‥‥

 

 

こいつの挙動や魔法に関しては普通ではない物を感じる。魔法は勿論の事だが特に生徒会室でのやりとり、深雪と利害の一致があったとはいえ、ああも易々と深雪を利用することができるのは驚異的だ。

 

俺達の事情を考えれば深雪だって警戒心を持つのは当たり前、それを一日ほども立たずに性格、言動などを理解し意思疎通を図り誘導するその技術は明らかに素人の物ではない

むしろプロでさえ、そんなことができる者がいるのかさえ疑問だというのに‥‥‥

 

だが、こちら側の人間かといわれればそれはありえない。類似する人物のデータはない。そういう仕事や組織に携わる者は何かしらの痕跡を残す。無論素人には分からない物だがな

 

例外的に言えば俺のように軍関係で秘匿されてる場合か、四葉並みの情報統制ができる者が後ろにいる場合

 

 

少なくともこの国の軍関係の者ではないことは確認しているし、諸外国の諜報員という事もない。

 

家やその他関わりのありそうな者を調べてが、比企谷家は四葉どころかナンバーズにも及ばない上、家は取り壊し寸前だという

 

結果からすると比企谷を取り巻く周囲の状況は普通の一般人といえるが、卓越した人身掌握術、魔法術式の高性能さは専用の訓練を積んだプロ並みという不自然極まりない状態だ‥‥この際だ、少し探りをいれてみるか

 

 

「で、お前はそんな恰好で何をしてるんだ?」

 

 

「なんの事やら、俺達はついさっき初めてあって――――」

 

 

この男ここまで来てシラを切るつもりか?

額から流れる汗に焦点の合っていない目、明らかに動揺している。自分でもすでに、そんないい訳が通用するとは思っていないだろうに…そういえば、こいつは渡辺先輩に苦手意識を持っていたな

 

 

「比企谷、風紀員の魔法の不正使用は厳罰だぞ?渡辺先輩に報告したらどうなるか」

 

 

「はい、すいません!これには事情があるんだって!だから先輩には言うな、いや、言わないでください!!」

 

 

ゴンという音を鳴らし頭を打ちつけ、必死に弁解する姿からは覇気も脅威も感じない

しかし、それとは裏腹に森崎との一悶着の時や生徒会室での事、実力は未知数だが曲者である事には違いない

 

実態の見えない敵というのは厄介だ。いや、まだこいつが敵かどうかすら判断できないのだがな

 

 

「その事情とやらと、お前の名前が曳き 八になるのにどういう関係があるんだ」

 

 

しかし、捻りのない名前だな

 

 

「あー‥あれだ、説明すると長いしめんどくさいんだが…」

 

 

「それじゃあ仕方ないな、渡辺先輩に」

 

 

内ポケットから携帯を取りだし、操作するふりをする。

すると比企谷は案の定慌てて説明する

 

 

要点をまとめると、乱闘騒ぎの現場で司 甲の視線に気が付き、その後調べていたら勧誘期間中に俺が受けた数々の魔法攻撃の一部に司とその仲間が関わっておりそれはただの嫌がらせではなく何らかの目的があると判明

 

同じ部活の壬生先輩から普段の司 甲の様子を聞くために接触。変装は一科で風紀員の自分では警戒される恐れがあるため致し方なかったという事だ

 

 

一応筋は通っているが本来ならば信じられない

 

 

話の内容はこのさえ置いておくが、こいつの洞察力は一体なんだ?

 

 

視線を受け相手の敵意や含みがあるというのは俺も感じられるが、あの場には多くの生徒がいてその中には俺に対し敵意や興味といった視線を向けてくる者も多くいた。

 

 

話を聞く限りあの襲撃者は司で間違いない。俺が見たのと話に出てきたリストバンドは一致している。

 

 

さらに、その白い帯に赤と青のラインが入ったリストバンドは反魔法国際政治団体『ブランシュ』の下部組織『エガリテ』のシンボルマークに違いないだろう

 

 

校内にエガリテの工作員が潜んでいることも驚きだが、なによりその存在を知らない比企谷がピンポイントで工作員達を割り出しているといことにさらなる驚きがある

 

 

この話を素直に信じるなら、不特定多数の中から特定の視線を感じとり、その人物は実は工作員の主軸的存在だったのを前情報がない状態で偶然見つけたと言っている様な物だぞ

 

 

幾つか穴があるといっても、勧誘期間から今日までの短い間でよくそこまで調べられた物だ素行調査に至っては一日で全てを終わらせてるし…これで、本人が事の重要性を正しく理解していないとは‥‥もはや、何とも言えないな

 

 

「で、お前の方はどうなんだよ」

 

 

話を終えた比企谷は今度は俺に聞き返す。

 

 

「どうとは何がだ?」

 

 

「この話を聞いてどうって事だよ。」

 

 

正直な感想を言えば、お前の能力の高さに驚愕しているし、それを本人が無自覚というとこに頭を抱えたい心境だ

 

 

 

「この話の中心がお前なんだし、今まで何もしてこなかったわけじゃないんだろ?それに壬生先輩の話を聞いた限りじゃ、あの人もソッチの人だぜ。そんな人がお前を口説こうとしてんだから何かあるだろ」

 

 

確かにあのリストバンドを見た後に調べ、ブランシュやエガリテの存在は把握している。しかし、現状では比企谷の方が俺より彼らに対して詳しいようだったがな

 

だが、この話を聞き相手の事をより知ることができたがだからといい今どうこうできるというわけでもない

 

 

「あれを口説くといういい方にするのは無理があると思うが」

 

 

「無理も何も女が赤面しながら男を誘ってるんだからあってるだろ」

 

 

言ってることはあっているが、2つの事柄をまとめたうえでのこの言い回しに悪意を感じるな

 

 

「まあいい…話を戻すが、剣道部に入るつもりもないし、彼らの目的とやらにも興味はない。現状では静観するほかないだろ」

 

 

このままいけば厄介ごとになる可能性も大いにあるが、今の状態でできることはない。勧誘期間の俺に対する魔法の使用も証拠はあるようだが、せいぜい風紀員から数日停学にするレベルの処置がされ問題の解決には至らない

 

逆に悪い状況になる可能性の方が大きいためやらない方が利口だ。なにより

 

 

「壬生先輩が一味だとして、交渉を持ちかけてる間は以前のように攻撃される心配もないだろう。精々気負つけるようにするがな。お前はどうするんだ」

 

 

「あん?‥‥俺は成り行き上もう少し調べる今度は壬生先輩あたりを」

 

 

「そうか」

 

 

今、本当に脅威なのはブランシュより計り知れないこいつの能力だ。

まさかとは思うが、俺や深雪、四葉の事を勘ぐられる可能性もある。流石にそれはないと思うが、今日の話を聞く限り完全に否定ができない

 

何より優先させるのは俺と深雪の平穏な学園生活

それを脅かす者は容赦しないし決定的に敵対するのであれば容赦なく叩き潰せる…が

 

 

美月や比企谷のように無意識に秘密を知られる恐れがあるうえ、敵対の意思がないとは、何とも質が悪い……

 

 

なるべく俺達に意識を向かないようにするのが上策か‥‥

 

 

「そういえば、エリカが言っていたが、壬生先輩は中学の頃と剣筋がまるで違うらしい」

 

 

「どういうことだよ?」

 

 

「さあ?俺もそちら方面にはあまり詳しくない。知りたいのなら本人にでも聞いてくれ。まあ、それと今回の事がなにか関係してるかは知らないがな」

 

 

 



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入学編24

日が沈み始め空が赤るみはじめるころ、俺は愛用の自転車に乗り帰路に就く

 

あの後話を終えた俺は、そのまま家に帰る事にしたが司波は妹が生徒会で遅くなるのでそれを待つと言いカフェでもう少し時間をつぶすそうだ

 

 

相も変わらずのシスコン根性だな。まあ妹のブラコンぶりよかマシだろうけど

 

俺も小町につれられ荷物持ちとかさせられるけど、ああいう待ってる時間て苦手なんだよな

特に通り過ぎる人の視線が俺の方を見てる感じが嫌だ。ボッチに人の視線は毒であり、それがたとえ実際には自分を見てないとしてもそう感じてしまうのだ。

 

そして、実際には何もないのにキョドってしまう。これがボッチがボッチである所以である

 

 

それにしても最後に言ってたのは、普通に考えれば

中学の頃より高校に上がって腕が上がったて事か?でもそれじゃあ、剣筋が違うとか言うか?

 

あれか、そうゆう、やってる奴だけが分かる業界用語の一種か何かか、シースーとか天辺回ったとか言う。多分違うな

 

剣道の事なんて知らんからが普通に考えれば単純に剣筋とやらが違うって事だよな?

 

 

 

だからなんだって言う話だが、細かい事が気になる僕の悪い癖。

 

だが、もしそうなら疑問が残るな

剣筋なんて分からんが要は癖や特徴みたいなもんだろ。それが伸びるとか洗礼されるとかいうなら分かるが違うって言うからには、野球からソフトボール、アメフトとラグビー、ピアノからオルガン、剣と魔法の黒の剣士が銃とビームソードの美少女になるくらいの差があるという事だろ

 

普通なら滅多にある事じゃない。何かしらの事情やそうなる原因が大抵あるはずだ

例えば仮想世界で撃たれると現実世界でも死んじまう死の銃の捜査のためコンバートした某黒い剣士みたいに

 

ちなみにあれで一番好みなのが銃の世界での彼だったりする。あの男声みたいな感じで女の子の口調になるところが何とも言えない萌えを生み出すのだ

 

 

……一応言っとくが、断じて俺は男が好きなわけではない。まあ、それは置いておき

 

 

 

壬生先輩の場合はあれだよな勝負を挑んだら、二科生だからって冷たくあしらわれたとか言うのだよな

 

 

 

はあ…また一科生の人格破綻者かよ、いい加減にしろよな、まったく誰だよそいつ?

先輩は2年だし…剣術部のやつか?そうすると桐原先輩あたりか

 

いや、違うな…乱闘の時の様子じゃあ、あしらうどころか、自分から食ってかかっていたらしいし

だからってその他で、壬生先輩より強い奴っていたか?

 

 

‥‥そこんとこも、明日聞いてみるか。

 

 

 

 

完全に太陽が涼む前に、今住んでる4階建てのアパートに付く。

アパート前の駐輪所に自転車を止め、八幡は自室に向かう。筋肉痛か、なれない事をしたせいか、その足取りはいささか重い。

 

その後ろ姿はまるで、一人身の40歳サラリーマンがサービス残業終わりに、誰もいない家に帰る時に哀愁が漂う背中だ。否、哀愁など生ぬるい!もはやそれは死臭の域に達している!!

 

 

 

「そういや最近、原因不明の孤独死が増えてるそうだな。……………なんで、今そんなこと考えてんだ俺?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3階の304号室、来たくもない学校に強制的に通わされることになり与えられた俺の部屋だ。

一人暮らしでも少し手狭だが、なにぶん家具がほとんどないので十分広い

 

 

階段をのぼり扉の前に付きいつものように鍵を開けて中に入ろうとしポケットの中から鍵を取り出したその時だ、異変に気が付く。

 

 

まず扉についている郵便受けを見る。朝は何かと忙しく朝刊を取ることができずそのまま郵便受けに刺さる形で入れっぱなしになり、そのほかに明細書などが入っていたりする。それが今は空っぽだ

 

 

次に、鍵が開いている

人一倍防犯意識が強い俺はどんなに慌てていても家の鍵だけは毎朝しっかりとしていき、鍵がちゃんとかかっている事を2,3確認してから家を立つ

もちろん今日の朝も鍵はちゃんとしていった。だが、今はその鍵が開いている

 

 

最後に、耳を澄まさなければ聞こえないほどの小さな音だが、中から微かに物音が聞こえる

 

 

 

 

中に誰かがいる‥‥‥

 

 

 

家の鍵はスペアを合わせて2つとも俺が管理しており、誰かに渡したりした覚えもない。つまり中にいるやつは正規の方法とは別に侵入したという事だ。泥棒か空き巣か?

 

いや、それだとおかしい。この部屋は日の光が当たらない格安物件。もちろん金目の物などなく精々ゲーム機がある程度だ。もし泥棒ならまずこんな部屋を狙わずに2つ隣にある角部屋か上の階の部屋を狙うはずだ

 

 

そもそも今は夕方だ、学生やサラリーマンに主婦がこぞって帰路に就くそんな時間帯に盗みを働くなんて、もし泥棒なら3流もいいところだろう

現にいま家主である俺がいるのだし

 

 

だが鍵穴を見るとそこには妙な傷あともなく、さらに来る時に見た部屋の窓は割られていなかった。侵入経路は玄関とみて間違いないがもしそうなら随分と腕がいい

 

 

3流の泥棒にしては違和感を感じる

そうすると中にいるのは泥棒ではない可能性がある。では一体誰何か

今一番に可能性があるとすればそれは‥‥‥司か

 

 

仮に学校での俺の行動があいつらにばれていたとする。そうすると周りを嗅ぎまわってる俺は当然邪魔者というわけだ。

その上俺には勧誘期間中に録画、盗聴したあいつらの魔法の不正使用の証拠がある

 

あいつらの目的は今日の話からすると、二科生の待遇改善を学校に要求するという物だ。まあ、成功するとは思えんがな

 

 

事を起こした時にそんな証拠がもし出回るならば、元々無茶な計画が完璧に無理になってしまうだろう

あいつら的には確保するか隠滅したいというのは当然だ

 

 

そう考えれば辻褄があう。俺の事がばれていたなら今日の放課後に壬生先輩と会う事もあっちには筒抜けだっただろう。

確実に俺の帰りが遅くなる今日に、当たりをつけ証拠の確保、隠滅にきていたとする

 

 

証拠は俺の携帯とクラスのロッカーの中に隠しているので家の中にはない。探せど探せど目的の物が見つからず、終いには郵便受けを探すとき中の物を引っ張り出してそのままにしていたのなら

 

 

鍵にしても二科生といえど魔法科高校の生徒、鍵あけくらい簡単にできるだろう。それなら泥棒にしては感じる妙な違和感の説明も付く

 

つまりこの中には、あいつらの一派がいる可能性が極めて高い

ここで遭遇してしまうのは危険でもあるが、逆に考えればこれ以上ないチャンスともいえる。現行犯で捕まえれば言い逃れはできないし、あいつらのやろうとしている事の詳細を聞き出すこともできるかもしれない

 

 

あと何より、勝手に俺の部屋に入ったことに対して文句の一つでも言ってやらなきゃ気が収まらん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中にいるのは一人か多くても2,3人、全員がCADを携帯していると予想できる

ゴクリと息をのみ込み首のCADに手を伸ばしいつでも発動できるよう準備しておく。ドアノブを静かに音をたてないように回し、息を整え勢いよくドアを開ける

 

 

人は誰しも突然、予期せぬ事態に見舞われるとその思考は一瞬停止する。人だけではなく生物であるならその瞬間は致命的な隙になり、逆に絶好の好機ともなる刹那

 

 

八幡の作戦ではこうだ。ドアをいきなり開け意表を付き、まず一番近い相手に魔法を使用し無力化する。

 

 

その後、混乱しながらも残りはこちらに対し抵抗のため攻撃をするか逃亡を図るだろう

逃げるのであればそれはそのままでいい、そもそも一人いれば十分だし初めに無力化した奴がいるなら残りは逃げようがかまわない

 

 

抵抗するならそのまま応戦する。混乱している相手の魔法なんか発動するかさえ怪しいし仮に正しく発動しても八幡の方が早く術式を展開する事ができるだろう。

 

八幡の魔法発動速度は一校だけにとどまらず全魔法科高校の中でも最速レベル。一年生は勿論、上級生を相手取ろうが、必ず先手を取ることができる

 

 

速度においては司波 深雪にも勝利することができるだろう。だが、魔法式の規模、事象干渉力においては遠く及ばず実際に戦った場合は十中八九、八幡の敗北で終わる

 

 

それでも速度に定評がありクイック・ドロウを得意とするどこぞの誰かと比べるとその差は歴然である

 

 

それに加え卓越した洞察力、咄嗟の判断力、卑屈なまでの警戒心と猜疑心を持ち合わせた八幡は知る人はいないが、一校内で屈指の実力者といえる

 

 

常人相手なら軽く無双が可能である八幡ならば、一対多数の不利な状況であっても二科生に後れを取ることはまずない(司波 達也をのぞく)

 

 

しかし、今現在、意表を突くつもりが逆に意表を突かれ思考停止に追いやられている。

開けられた扉の前で呆然とただ立っているだけの無防備な状態、CADに回されていた手は垂れ下がり、これならば誰が相手でも倒すことは容易だろう。むしろ魔法など使わずにサンドバックにし散々嬲る事も可能だ

 

 

しかしそれも仕方がないと言える。なんせいざ扉を開けてみれば中からはこちらに向かい猛スピードで接近する人影

 

気配を消し奇襲を仕掛けるつもりが、相手はこちらが来るのを待っていた。待ち伏せされていたのだ。これだけでも当初の作戦は瓦解さらに追い打ちをかけるようにその人影は衝突する目前で動きを止め

 

 

嘲笑うかのように作られた笑みから発せられる陽気とも取れる声は八幡の予想を遥かに超えた一言が紡がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっかえりなさーい!ご飯にする?お風呂にする?それとも~こ・ま・ち♪」

 

 

 

八幡は膝から崩れ落ちた

 

 

 



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入学編25

白いエプロンにTシャツ、ハーパン姿で俺を出迎えたのは我がマイシスター比企谷 小町であった。

ひまわりのような笑顔が魅力のこの妹は、どうやら母さんに言われ俺が真面目に一人暮らしをしてるのかを確認するべく派遣された調査員らしい。

 

ちなみにこの調査を落としてしまうと仕送りが減給されるとのこと、八幡大ピンチである

 

 

「いやーこの部屋テレビも漫画もないし小町退屈だったよー」

 

 

もっとも当の調査員は調査をする気が毛ほどもないらしく、現在この部屋唯一のベットの縁に座り、足をばたつかせている

 

 

「じゃあ自分でなんか持って来いよ。つか、事前に来るなら来るって言えよ」

 

 

「やだな~言っちゃたらドッキリにならないじゃん」

 

 

冗談のような口調で首を傾げ何言ってんのこいつみたいな風に言うが、その木漏れ日のような笑顔こそが本当のドッキリだよ、コンチクシヨウ

 

 

「つか、玄関どうやって入ったんだよ?」

 

 

そこで少し疑問がわく、ここの鍵は先も言ったとうりスペアを合した2本とも俺が管理しており、小町にも渡していない。なのにどうやって入ったのか?

 

 

「管理人さんに事情を話したら開けてくれたよ」

 

 

「マスターキーかよ。でも、管理人のおっちゃんお前が俺の妹だって知らないよな?よく開けてくれたな」

 

 

この部屋は俺が魔法科高校に通う事になった翌日に契約された部屋で段取りとかなんかは全部、比企谷家がやったので、俺も管理人に会ったのは入居した当日だ

 

なので小町はおろか、両親の顔も知らないはずなんだが

 

 

「初めは渋ってたけど、渋カッコいいとか褒めてたら開けてくれたよ」

 

 

「それで大丈夫なのかよここの防犯?」

 

 

「さあ?」

 

 

小首を傾げ頭に?マークを出している姿は可愛い‥‥はっ!さては管理人もこの可愛さにやられたな!?

 

 

「それよりお兄ちゃん学校どうなの?小町お兄ちゃんが学校で孤立してるのはいつもの事だけど虐めとか受けてないか心配だったんだけど、暴力とか受けてない!大丈夫?」

 

 

「なんで孤立してる事が前提なんだよ。平気だよそれなりにやってらー」

 

 

多分だけどな

 

 

「えーでも魔法科高校って校内で魔法使ったりするんでしょ?事故に見せかけた魔法がお兄ちゃんの頭にこう…どかーん!バコーン!みたないな?」

 

 

「見せかけったってわざっとて事だろうが…どんだけ俺嫌われてるんだよ。大丈夫だからそんな心配すんな……今んとこわな」

 

 

「うわぁー最後の一言で全然安心できない。相変わらずごみいちゃんはごみいちゃんダナー」

 

 

そんな凄い懐かしいやり取りをある程度した後、小町と一緒に夕食を食べお風呂に入りダラダラと過ごした

その時、俺の高校生活や魔法科高校での事を軽く話もした。ただ、司先輩とかのことは除いてな

 

流石にこれは色々ヘビーだし、ただでさえ心配かけてるのに余計な心配をかける必要もない

 

で、話は小町の提案の何か面白い事件というお題を出されとりあえず、初日の事なんかを話してる。主に愚痴だけどな。あの森の野郎とかの

 

 

「その森なんとかって人、性格に問題ありすぎでしょ‥‥」

 

 

「ありすぎじゃなくて問題しかないんだよアレは」

 

 

「そういう人って別にイケてるわけでもないのにやけに自信過剰のナルシストだったりするんだよね。小町的にないわー」

 

 

「流石は妹、俺と全く同意見だぜ」

 

 

と、八幡はキメ顔でそういった。

 

 

「ないわー」

 

 

「なんでだよ。そこはいつもみたいにポイント高いとか言えよ」

 

 

じゃないと泣くぞ!お兄ちゃん泣いちゃうからな!!

それにしてもよく断片的な事しか話してないのに森の事を言い当てる事ができるな

イケてない自信過剰のナルシスト勘違い野郎、まさにあいつのためにあるような通り名だ

 

 

「それでそれでお兄ちゃん!ほかの人特に女の人はどういう感じなの?もしかして彼女とかできたとか!」

 

 

なにやら目を輝かせながら聞いてくるが、もちろん俺に限りそんな感じの事はない

まず、雫とは何かと話すが知り合い以上友達未満って感じだし光井は司波兄妹に対するラブが強すぎて軽くストーカー気味だ

 

エリカはクラスも違うからそもそもあんま交流がない、でも雫の次に話しやすくはある

美月もあんま自己主張するタイプじゃないし話したこともあんまない、もっとも体の一部の自己主張は強いけど

 

生徒会とは服部(笑)の事件以降、風紀員つながりで割と交流があるが

会長はなんか碌でもない事をたくらんでる風な感じがして苦手で、ロリっ子先輩はCADオタクで司波と俺のCADになんか異状に興味を持っている

 

市原先輩はこの中じゃ一番まともでよく雑談とかもするけど、お互い男女の意識を持つことはない。そもそも俺じゃこんな人たちと釣り合わないんだけどな

 

 

渡辺先輩?渡辺先輩は‥‥‥‥‥‥怖い

 

 

「ないな」

 

 

「お兄ちゃんだしね」

 

 

ヤレヤレといった風でため息交じりに言うが、分かってるなら聞くなよ

 

 

 

「‥‥‥そういや小町、ちょっと聞きたいんだけど」

 

 

ふと、壬生先輩の事を思い出し、なんとなく小町に聞いてみた

 

 

「ん?なに、小町には彼氏とかまだはいないよ?」

 

 

「おう、もしできたら教えろよ。名前とか住所とか家族構成とか」

 

 

もしそんな野郎がいるなら見つけ出して色々やっちゃうぞ?

 

 

「そうじゃなくて、もしもの話なんだが例えばドラえもんののび太がいるとするだろ?」

 

 

「うんうん」

 

 

「のび太は勉強はできないけど射的は大会とかで賞をもらうくらい得意なんだ。でも中学に上がって射的の勝負を挑んだら相手に冷たくあしらわれたんだ」

 

 

「なんで?」

 

 

「その理由が勉強ができないんだから相手にならないみたいな感じで射的と全く関係ない事だったんだけど、一つの事ができないからって自分の得意な事が否定されたってすごい怒ったんだ」

 

 

「あー確かにそれは怒るね、人には得意、不得意があるんだし。でものび太君はむしろ射的と昼寝以外だめな子だよ?」

 

 

「例え話だし、そこは気にするな」

 

 

「はーい」

 

 

「のび太はそれ以降、ずっとそのことで怒ってるんだけどもし小町がのび太ならそこまで怒るか?」

 

 

「ずっとってどんくらい?」

 

 

「ん~・・・一年くらいとか?」

 

 

「それは相当だね……………ん~そうだなー普通はいくら馬鹿にされてもそこまで怒らないと思うけど、小町なら人によってはそんくらい怒るかも」

 

 

「ほう…人って例えば誰ならそんくらい怒るんだ?」

 

 

「その相手がスネ夫やジャイアンだったら、多分そこまで怒らないと思うけど相手が出木杉君ならそんくらい怒るかも」

 

 

「その心は?」

 

 

「スネ夫とかはのび太君とは結構違うじゃん。でも出木杉君て静香ちゃんが好きみたいなところでライバルみたいに思うんだよね。のび太君的には」

 

「成績とか運動とかでは絶対勝てない相手だから、唯一自分が勝てる物は負けたくないみたいに思うとおもうし。そんな相手だからこそ、自分の駄目な部分だけで全部を否定されるのは悔しいと思うな」

 

 

つまりは自分と同じベクトルに立つもの同士だからこそ生まれるライバル意識からくる相手えの劣等感

逆にあまりに自分と違ければそういう感情も起こらないって事か

 

 

もし壬生先輩もこれと同じような感じなら、その相手は剣で有名の恐らく女性だろうか

それなら相手の特定は結構簡単かもしれないな。

 

 

「で、それがどうかしたの?」

 

 

「別に、なんでもない気にするな」

 

 

「えーここまで来て、そういうごまかし入れるの小町的にポイント低いよ~ま、別にいいけどね」

 

 

流石に長い付き合いなのでお互い触れられたくない話には、深入りをしない

 

そのあと少し雑談を入れてふと、時間を見れば22:00を周っており小町に帰らなくていいかと聞くと

 

 

「え?今日はここに泊まっていくよ」

 

 

「なん…だと…」

 

 

と、引っ越したばかりで布団も一式しかないこの部屋に泊まると言いだし

 

仕方なく同じ布団で寝る事になり、長い長い夜になるのだが、それはまた別のお話

 

 

 

 



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入学編26

翌日

 

時刻はちょうど昼時で、多くの生徒が学食に向け移動を開始していた

移動してるさなか廊下で、よく知った声が後ろから聞こえる

 

 

「お!比企谷じゃなか」

 

 

 

「げっ…委員長」

 

 

渡辺 摩利風紀員の委員長であり、今現在俺が司波の次に苦手としてる人だ

そんな彼女が手を挙げ気さくな風に話しかけてきた。はたから見ると後輩に声をかける先輩というありふれた場面だが、俺の口角は引き攣る

 

 

「おい、人の顔見るなりげっとはなんだ?」

 

 

 

「あれっすよ。休みの日にたまたま上司とあった時に感じるげっであり、そんな他意はないですよ」

 

 

「むしろ他意以外ないと思うが‥‥相変わらず失礼な奴だな」

 

 

「うす…」

 

 

ため息をこぼし片目を閉じて俺を見やる渡辺先輩

その顔はもう何かを諦めたような仕方がないという顔だ

 

 

「まあいい。それより今から学食か?」

 

 

「はい。急がないと席なくなるんで失礼します」

 

 

軽く会釈をし、その場を足早に去ろうとするが、先輩に右肩を掴まれそれを阻まれる

 

 

「まあまて、そう急ぐな」

 

 

「何すか?本当に席なくなるんで失礼しますよ」

 

 

足に力を入れそのまま行こうとするが、いくら力を入れても俺の体は前進できず、肩に乗せられた手もほどくことができない。むしろ手に力が入れられ肩が凄く痛い!

 

本当にこの人の力は熊並みである。どうなっているのやら、それとも俺がただただ非力なだけか?どちらも否定できないから困る

 

 

「だからそうやって逃げようとするな!少しは話をしろ!」

 

 

「はぁ…何すか?金なら少ししか持ってないですよ」

 

 

「お前は私をなんだと思っているんだ?そしてなぜ、態度は横柄なのに言ってることは低姿勢なんだ?まあいい、せっかくだからお前も一緒に生徒会室で食べないか?」

 

 

「お断りします」

 

 

「即答か…理由を聞こうか?」

 

 

理由も何もむしろなぜ俺が生徒会室で食事をとる理由があるというのかはなはな疑問である

 

 

 

それに、今日の昼はエリカから話を聞く約束があるので本当にいけないのだが、それを言うとさらにその理由を聞かれそうだ。

 

 

壬生先輩の事とかはいずれは風紀員に報告しなくてはいけないが今はまだ話す時ではない

何よりそのことを話すとやたら勘のいい先輩や生徒会の面々にも話が広まり、余計に大事になりかねない

 

 

出来れば最小限の被害と労力でこの事を終結したい俺からするとそれは問題だ

あまつさえ、この事を俺の口から言うとこの件に対し後々に仕事を押し付けられそうで嫌だ

 

 

とにかく嫌だ。できれば働きたくないむしろ働きたくない

 

なのでここはどうにかごまかす必要があるのだ

 

 

 

「あれっすよ。俺って副会長に何かと嫌われているので、俺が行っても飯がまずくなるだけですよ。そんなの俺もごめんなのでせっかくのお誘いですが遠慮します」

 

 

 

どうだ、このあたりさわりのない回答は

行かない原因を服部に押し付けさらに誘えてもらったことに対する礼儀もとうし渡辺先輩の顔をつぶさないようにした見事な模範解答だろう

 

ちなみに服部と俺との関係は向こうからしたらそれほど悪くないが、俺の方はあいつの事が嫌いなので非常に仲が悪い

 

どれぐらい仲が悪いかというと、話は基本的に事務関係以外しないし廊下で会ってもお互い軽く会釈するだけでとうりすぎるくらいだ‥‥‥ただの、仕事上の付き合いだなこれ。そう考えるとたいして悪い感じでもないのか?

 

 

いやでも、相手側が決定的に空気を読めないのでやっぱり仲が悪いであってるのか

 

 

あの後も何度か目撃するが、生徒会の面々と司波がいる時のKY感が異常なんだよな。

会長が司波にちょっかいをかけ、司波がそれをあしらい、それが気に入らない服部が注意する(初日ほど強い口調ではない)、司波妹が不機嫌になるというのが何度かある流れだ

 

 

その度に司波は妹の機嫌を戻し、会長や先輩たちが服部を制止するという感じでやたら居心地が悪い空間が誕生する

 

 

風紀員の事務作業で渡辺先輩に同伴していた俺はその空気の中ずっと押し黙る羽目になり大変迷惑している

 

 

本当に少しは空気を読む技術を学んでほしいものだ。俺の中の魔法科高校空気読めないランキングで常に上位を独占しているんだぞ、あいつ。ちなみにほかには森とかがランクインしている

 

 

「それなら大丈夫だ。服部は今日用事があり生徒会室にいないし、今日は達也君もいるから男一人になる事もないし心配はいらんぞ」

 

 

服部以上に厄介な存在がいるのにどこをどうしたって心配しかないだろそれ?いや、まあ確かにあの面子で男一人は辛いが、それ以上に司波と一緒に食事というほうが色々辛い

 

ただでさえ昨日は見られたくない所を見られたんだ、多分先輩達に言ったりしないだろうけどなんとなく気まずいだろ

 

というよりその状況ってもしかして

 

 

「副会長、ついにはぶられましたか‥‥‥」

 

 

哀れ服部(笑)あまりの空気の読めなさにとうとう生徒会からはぶられてしまったのか…

自業自得過ぎて同情する余地がないが、とりあえず黙祷でも捧げとくか

 

 

「いやいや違うから!そういうのではなく本当に服部は用事があるだけだから!‥‥‥まったく、お前は本当に私達の事をなんだと思ってるんだ?今度じっくり話す必要があるぞ」

 

 

ふむどうやらハブではないようだ。とりあえず良かったな‥‥‥…ッチ

それと最後のほうなにやら不吉な言葉が聞こえてきたけど、先輩と2人でじっくり話すなんて俺の身が持たないから断固としてお断わりさせていただきたい

 

 

「それより、どうなんだ?お前の苦手な服部はいないし来ないのか?」

 

 

「ええ、何より今日はちょっと約束があるので」

 

 

仕方ないので全部は言わず、断片的な真実を話してどうにか逃げよう

こういえば、大抵の人は引くだろう

 

 

「お前に約束‥‥‥?」

 

 

おいこら、なんだそのありえない物を見るような目は?俺だってそれなりに人間関係を生成してるんだぞ‥‥友達はともかく知り合いなら結構いるんだからな、友達はともかく

 

 

「何か失礼な事考えてません?」

 

 

「そ、そんなことはないぞ!そうか…それなら仕方ないな。それじゃあまた今度誘うとするよ」

 

 

そのまま渡辺先輩は慈愛に満ちな眼差しで俺を見た後、生徒会の方へ歩いていく

なんだあの、出来の悪い息子の成長を垣間見たお母さんのような目は?

 

つーか、誰が出来の悪い息子だ。俺だってそれなりに出来はいいんだぞ!

勉強だってできる方だし運動神経だってそれなり、顔だって悪くないむしろなかなかのハイスペックである。ただちょっと、友達がいなくて目が濁っていると言われたりしているけどな

 

 

さて、少し時間がたってしまったし早く行くとするか

じゃないと呼び出したエリカに文句を言われること請け合いだからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い!」

 

 

学食に行くと案の定エリカは怒っていた。だけど、来る時に買ったジュースを献上することで何とかその場は怒りを収めてもらい話を聞くことができた

 

 

「剣道部の壬生先輩?」

 

 

「ああ、司波から聞いたが中学の頃と今じゃあ剣筋が違うんだろ?それってどういう事なんだ」

 

 

「そんな事も言ったけど、なんでそんなことを聞きたいのよ?もしかして気があるとか!」

 

 

なんかさっきより目を輝かせているが、小町にしても女子はなぜこういう話になると元気になるんだろうか?

 

 

「そんなんじゃない、仕事の一貫みたいなもんだ」

 

 

「ふーん」

 

 

そう答えると先ほどまでの元気はどこにやら、急に勢いが消え興味をなくしたように手元にあるジュースを飲みだした

 

 

「ま、いいわ。どっちにしても壬生先輩は達也君にお熱らしいしね」

 

 

「あん?なんだそれ」

 

 

「知らないの?昨日カフェで達也君が壬生先輩の事を言葉攻めにしたとかなんとか噂になっているのよ。なんでもそのカフェにたまたま居合わした生徒が見たんだって」

 

 

それは多分昨日の放課後の事だろう、確かに昨日の壬生先輩の様子は赤面しながらもじもじしたりとそれらしい感じだった。それに加え目の前にいるのが司波(イケメン)という事もあり、校内でも美少女と有名な壬生先輩の事だ、そういう噂の1つくらい流れるのも必然といえる。

 

 

ただもしこれを聞いたとき司波妹がどうするのか、いささか怖いな‥‥最悪巻き添えでなぜか俺に被害がこうむる可能性がある

 

それともう一つ、確かその場には俺もずっといて同じテーブルについていたのだが、なぜに俺の存在が抹消されているのか?別にそんな噂を流されたいとかいうわけではないが、ナチュラルに俺が見えていないという現状がどうしても解せぬ

 

 

まあ、いいや今はそれよりもだ

 

 

「それよりだ、どうなんだよ?俺には分からないがその剣筋とかっていうのが違うっていうのは」

 

 

「相変わらずこういう話に興味ないのね………ん~そうね、比企谷君て剣道と剣術の違いって分かる?」

 

 

少し考えてからエリカはそういったが

確かあれだろ、剣術は魔法なんかを併合したので剣道は魔法を使わないって感じだろ。これがどう関係しているのか分からないが、まあいい話を進めよう

 

 

「魔法を使うか使わないかって事か?」

 

 

 

「それもあってるけど、ちょっと違うわ。剣道っていうのは魅せる剣技っていう意味合いが強いわ、相手をいかにルールの中で倒すかそれを競うのが剣道」

 

「逆に剣術は極端な話がいかに相手を殺すかっていう競技なの。もちろん高校生の試合とかじゃそんな事起きないけど、魅せる剣と殺す剣、その本質まったく別にある」

 

「中学のころの彼女はまさに剣道を極めているって感じの綺麗な演武だったんだけど、勧誘の時にみた彼女の剣には強さを求めているような荒らしい印象を受けたわ。実力はもちろん今の方が強いわね」

 

 

「なるほど‥‥‥」

 

 

うん、なんとなくは分かるけどよう分からん。いやだって、剣道とか俺知らないしそんな専門家の意見みたいなこと言われても良く分からないのは仕方ないでしょ!

 

 

「もしかして、あんまり分かってない?」

 

 

ギクリッ

 

 

「そ、そんなことないぞ、参考になったよ…?」

 

 

「ふーん」

 

 

エリカのめはジトーと半目になり、俺の事を見る。ッグこいつ雫並みのジト目をするなんて!?

 

 

「そ、それともう一つ聞きたいんだが」

 

 

ジト目に耐え切れず、話をそらす。普段明るい奴のこういうのは結構効くんだよな…

 

 

「中学時代の壬生先輩の実力で、この高校の2,3年女子の中で対等かそれ以上の実力を持ってる奴っているか?」

 

 

「何よその質問は?そうね…それって剣道部だけで?」

 

 

「いや、剣道部でも剣術部でもそれに属してなくても剣さえやってればいい。誰かいるか」

 

 

さっきよりも真剣に考えてるようだが、なかなか該当者がいないようで結構長い時間考えている。

 

 

「そうね…剣道部も剣術部も女子じゃあそこまで有名な人はいないと思うわ、あとそれ以外って言っても公式戦に出てないんじゃね。私もそこまで詳しい訳じゃないし」

 

 

「そうか」

 

 

先輩の話だし仕方ないか、後は自力で探すしかないか

 

と、これからのめんどくさい調べものの事を考えて、肩を落とそうとしているときだ

 

 

「あ!」

 

 

エリカからなにやら、心当たりがあるようで、声が上がる

しかし、どうもばつの悪い顔だ

 

 

「誰かいるのか?」

 

 

「‥…ええ、剣術で女子の中でもトップで中学時代の壬生先輩より強いかもしれない人なら一人」

 

 

なんとも歯切れの悪い感じだが、正直今はそこまで気にしている余裕もないので、そのことにはあえて触れずに話を聞く

 

するとエリカの言ったその人物は、俺の良く知っている人物でなおかつ俺が苦手にしている人の名だった

 

 

 

 

 



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入学編27

少し久しぶりです皆さん。投稿遅くなりすいません


色々途中ですが、新しい事を始めましたよければそちらも見ていただけると嬉しいです。


感想待ってます


日は傾き、周りが鮮やかなオレンジ色に染まる始めるカフェテラス

そこの窓側の席には3人の人物が腰を下ろしていた

 

一人は、制服姿の無表情なイケメン。カップに入ったコーヒーを静かに飲んでいる。その姿はあまりに大人びて制服を着ていないなら学生とは思えない

 

その対面に座るのは3人の中唯一の女性、ポニーテールの彼女は先ほどから神妙な顔つきで目の前に座る男性を見ている。両手に握られたプラスチック製の容器の中身はアイスティーのようだ

 

その二人に挟まれるように座っているのは、目元が隠れるくらいに髪をおろしているメガネをかけている少年。初めの男性と同じ制服を着て、同じ容器でコーヒーを飲んでいる彼だがその印象はあまりに地味だ

 

目元が隠れているので顔の認識が曖昧の上、身長もイケメンよりやや低いといったところで、通常なら平均かそれより少し上といったところだろうが、なにぶんそのすぐ前にいるイケメンのせいで限りなく印象がなくなっている。総合するとやっぱ地味だ

 

司波、壬生、曳き 八の3人は以前の話し合いの中答えが出せなかった壬生先輩の答えが出たという事で依然と同じカフェの同じ席に集まっている

 

三者三様の面持ちでいるようだが、それぞれの放つ雰囲気…というより温度差が見ているだけでありありと分かる。

 

 

 

真剣な熱のこもった顔をしてる壬生先輩に比べ、司波は相変わらずの無表情で又も変装している俺は、見えないだろうが凄くめんどくさそうな顔をしている

 

 

ここに俺が呼ばれた意味があるのだろうか?壬生先輩は、前に話を聞いてくれた俺にも話を聞くように頼んできたが、俺の目的はもうほぼ完了してるし、司波のした質問も正直興味がない。

 

 

それ以上に今は色々あり疲労困憊一歩手前状態なので早く帰って寝たい‥‥‥

 

 

「この前の返事なんだけど…」

 

 

そんな俺の思いも虚しく、壬生先輩は語り始めた

せめてなるべく早く終わらして帰りたい、その辺はおそらく司波も同じだと予想できる

 

今日は司波妹の生徒会がいつもより早めに終わるという事を光井達と話していたし、恐らく…というかまず間違いなく、妹を待っている司波にはあまり時間がない

 

 

あの妹の事だから、兄と一緒に帰るためならいつまでも待っていそうだな。なんなら忠犬ハチ公並みに待ってる可能性もある。むしろ自ら進んで探しに行くな

 

 

だが、そんな事をこのシスコンが許すはずもなく話の途中だろうが、隕石が落ちてこようが妹を待たせることなく駆けつけるだろう

 

 

何こいつら、超人かなんかなの子犬守るために電車止めたり牛丼食ったりするの?

いや、それどころか悪魔超人相手に無双しそうな兄妹だったな

 

 

少なくともフェイス面で勝負したら悪魔超人は虐殺される事、請け合いだ

ほとんどがマスクだから顔が分からんが、多分顔面偏差値は高くないだろ

 

 

悪魔超人といえばバッファローマンとか有名だけど現代科学で言うなら音を出して戦うやつが実は最強であるとかいう説があったな

詳しくは知らんが、最高音量を出さずに周囲数メートルにいる人間の脳を破壊できるとかなんとか……

 

みんなは有名なやつが強いって思っていてもその実、無名なやつが強かった。物事は他人じゃなく自分で判断しないと本質を見失うってことだな。故にボッチこそがこの世のすべての本質を知ることができる唯一無二の存在というわけだ。

 

ボッチまじ賢者

 

 

「最初は学校側に魔法だけが私達の全てじゃないと伝えるだけでいいと思ってた。でも、やっぱりそれだけじゃダメだって分かった」

 

 

壬生先輩は司波の目を見ながら語りかける

 

 

 

「私達は学校側に待遇改善を要求したいと思う」

 

 

 

待遇改善の部分を強調するかのように語る壬生先輩の目は何かを覚悟したかのような印象を受ける。おそらく言ってることは本当でそういう趣旨を学校側に要求すると真剣に言っているのだろう。

 

 

そのためにこの話を司波に持ちかけたのだ。しかし、それではだめだ

学校側にしても司波を味方につけるにしても出した要求に具体性が皆無である。さらに待遇改善といっても何をどうするというのか?

 

 

俺が調べた限りでの話だが、一科生と二科生の間に生じる劣等感と優越感とは裏腹にその実、学校側としてはこの2つにそこまで落差を生じさせていない

 

 

日常生活でいうなら精々教師不足による授業スタイルの差くらいのものだ

二科生の授業には原則として教師が付かない。それは教師不足を補うために致し方なく取る苦肉の策といえる。そもそも国としては、いくら補欠といえどできる事なら数少ない魔法師の芽はより多く育てたいはずだ

 

 

だが、現状としてそうも言ってられないから成績順にそういう差が出る。だが、これは言わば致し方ないもので学校側もいくら要求されてもどうしようがないだろう。

 

 

そもそも学生に要求されたくらいで改善できる問題ならとうにしている、公務員は総じて融通が効かないだの言われ、何かあれば「これだから公務員は!」と悪態をつかれるがこと、保身に関して公務員をこえる者は少ない。

 

故に国立であるこの学校に関しても国防の要といえる魔法師の育成には最大限の融通を利かせている。それなのにこういった事態が起きているのだ。それは職員、学校、国の怠慢でもなくただの人材不足に他ならない

 

 

さらに言うなら教師の有無で、成績が変わるなんて一人で勉強のできない奴のいい訳だ。義務教育であるはずの中学生生活において先生達から半ば放置されてきた俺からすると、抗議する前に勉強しろと言いたい

 

 

授業で指されたことはおろか宿題を忘れても何も言われず、それどころか出席しているにも関わらず欠席扱いにされたこともある俺だが、その成績は決して悪いものではなかった(一部を除いて)むしろクラスでも上位に位置していたほどだ(一部だけ)

 

 

どうしても先生に教えてほしいなら放課後に個人的に聞きに行き、二科生だからと無下に扱われたところを録音してPTAにでもマスコミにでも抗議すれば万事解決だ……解決はしてないか

 

 

あとその他の工房見学やら備品、施設では同じものを使用しているので差がない

 

 

 

それ以外を上げるとするなら後は、部活とかだろう。確かに魔法競技系のクラブの方がその他に比べて若干多くの部費をもらっているが、それは単純に部活の成績順に優遇してるだけでありそのことを問題にするのはお門違いだろう

 

 

唯一上げる落差といえば生徒会に二科生を採用してはいけないと学校の規則で決まっている事ぐらいだ。仮にそれを撤廃したとしても壬生先輩達が言いたいのはそういう事ではないのだろうがな

 

 

それにしても皮肉な話だ。恐らく一科生の中でも二科生との溝を埋めたいと一番考えてるであろう人物が所属している組織こそが学校の中で一番溝を上長させている原因とはな

 

 

「具体的に何を改めてほしいんですか?」

 

 

案の定司波はその事に触れている。ここでもしでっち上げでもいいから何か具体的で信憑性のあることを言えればいいのだが…

 

 

「そ、それはもちろん私達の待遇全般よ!」

 

 

「全般というと例えば授業ですか?一科と二科の主な違いは指導教員の有無ですが、そうすると先輩は学校に対して教師の増員を求めているのですか?」

 

 

「そこまで言うつもりはないけど…」

 

 

「ではクラブ活動ですか?剣道部には剣術部と同じペースで体育館が割り当ててあるはずですが」

 

 

「そ、それはっ!そうかもしれないけど……」

 

 

残念なことに壬生先輩にそれは無理なようだ。そもそも具体的な物が少ない上に、見た目道理真っ直ぐな性格のこの人にはそもそもでっち上げなどという考えすらしないだろう

 

 

つまり、そんな考えがすぐ浮かぶ俺は見た目も性格も曲がっているという事だが、逆説的に考えて世の中曲がってる連中ばっかりだし彼女のような人は少数だ、すなわち民主主義的に考えれば俺こそが正しいということだ。

 

流石民主主義、またの名を数の暴力

 

 

まあ、俺の場合普段こいつを敵に回していつも戦う前から惨敗してるから嫌いなんだけどな。くたばれ民主主義

 

 

 



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入学編28

なんか書いててよく分からなくなってきました。


話の筋とか大丈夫ですかね?


壬生先輩は先ほどから顔に困惑の色を滲ませている。それもそのはずだろう、司波のいう事は基本的に正しい正論で、逆に壬生先輩の言う事は間違っちゃいねーが正しくないのだ。

 

何が正しくないというのは先に述べたとうりだが、何より説得や懐柔といった作業にあまり向いていないのだろう。こういうのは図星でもなんでも顔にだしちゃおしまいだ。

 

 

その点で、司波は先ほどから…つーか、俺の知ってる限りでいつもポーカーフェイスだし相手の持論にもっとも的確な指摘や質問を繰り返している。

 

 

なんつーかこいつは本当に俺と同い年なのだろうか?明らかに年齢サバ読んでるだろ、この年でこの落ち着きようで、壬生先輩のような美人に好意を向けられているにもかかわらず動揺のどの字も首にかけないとか

 

 

女子との会話って学生生活で最も心躍るイベントの一つだろ、俺なんて中学後半でこのイベントが発生した回数なんて片手で足りるというのにこいつは枯れてるのか?それともラノベの主人公か何かなのかよ。もしそうなら末永く爆発しろよ

 

 

 

 

「司波君は不満じゃないのっ!」

 

 

「不満ですよ。もちろん」

 

 

「じゃあ…」

 

 

「ですが、俺には別に学校側に変えてもらいたい事なんてありません」

 

 

この流れは、攻守交代って感じか。といっても今まで壬生先輩の攻撃をことごとくカウンターで返してたようなものだし、交代っていうか止めをさしに行っている感じか。なにそのマジ畜。あ、こいつマジで鬼畜だったな

 

 

「俺はそこまで教育機関としての学校に期待してません。魔法大学系列でのみ閲覧できる非公開分権の閲覧資格と、魔法科高校卒業資格さえ手に入ればそれ以上の物は必要ありません」

 

 

司波のいっている事は確かに正しいし、俺もほとんど同意できる。学校になんて期待する方が間違いだ。数十年前に生息していた熱血教師やら金八先生やらは、現代において絶滅してしまっている。仮にいたとしても今やそいつは周りの教師の和から外れ、一人孤高に生きているただのボッチだ

 

 

俺はボッチに誇りを持つが世間が持つのは差別的な視線だけ、多くのボッチはその視線にやられ毒され自分の存在意義を見失う。例えそれが正しくとも貫きとうせる奴なんてあまりいない。

だから、周りの言う正しいをあたかも自分の正しいと錯覚してしまう。

 

 

「ましてや学校側の禁止する隠語を使って中傷する同級生の幼児性まで、学校のせいにするつもりはありません」

 

 

だが、だからこそいくら正しい正論でも正しすぎる正論は間違いだ。正しくない間違ったことでも誰か一人ぐらいは正しいと言ってやれば人間は救われる。間違ったことが間違いだと誰が言った?失敗から生み出された世紀の大発明だっていっぱいあるんだ。だから間違い=間違ったではい。世間の大多数の過半数の人間が違うといってもそれは正しい事かもしれないじゃないか。

なら、それを言えるのは世間の正論にあらがうボッチしかいないのだ

 

 

 

「それは違うだろ」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

私には理解できなかった。目の前にいる彼は、同じ2科生で私と同じように魔法以外の才能を魔法だけで判断されてしまっているいるのに…

 

 

不満があるとは言っているけど、その顔は眉一つ動かさず、ただただ作業のように言葉を続ける彼の思考も考えも理解ができない。

 

 

悔しくないの?

 

 

それは私の心からの言葉だ、私は悔しい。悔しくて悔しくて仕方がない。

 

 

魔法の実力は一科生と比べると確かに乏しい。それは私も分かっている、努力もした、でも結局私の魔法の実力は2科生のままだ

 

 

だからといってそれで諦めたわけではない、そもそも昔からやっていた剣道には自信があるし魔法を使う私より剣を持つ私の方が壬生 彩加と断言できる

 

 

だからこそ私は悔しい、一年前この魔法科高校に入学してすぐの話だ。

私は一人の先輩に剣の勝負を挑んだ。その先輩は同じ女であり、同じ剣を志す者で‥‥‥私と違い魔法の才能にも恵まれた人だ

 

 

彼女の剣技を見たこともあるし、周りの多くの人々が言う彼女に武勲に憧れもした。だからこそあの日私は、ただ単純に自分の力がどこまで通用するのか知りたく、彼女に剣技をまじかで見たく勝負を挑んだ

 

 

でも、彼女はその勝負を受けなかった。理由は私が2科生だからだ

 

 

悔しかった、悔しくて惨めでどうしようもなく悲しかった私の今まで努力してきたことを魔法の有無だけで判断されどうしようもなく恨めしい

 

 

だからあれから一年剣技を磨いた、司主将に誘われて学校側に物申すために準備もした、二科生の彼も私達と同じ悩みを抱えているのだから、力になってくれると信じていた

 

 

でも、それは間違いだったのだろうか?彼の言ったことに反論できない、言葉が詰まってしまう、彼の目を見て話せなくなってしまう

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥私は間違っているの?

 

 

 

 

「それは違うだろ」

 

 

 

一瞬、それが誰の言葉か分からなかったが、発言の元はすぐに分かった。

そう言ったのは、この場にいるもう一人の男性、八君だ

いままで発言もなく私達の話を聞いていた彼は顔を上げ、司波君の方に向きなおり、しっかりと彼の目を見つめる

 

 

といっても、髪で目元が隠れているので実際にはどうか分からないけど…

 

 

 

「…違うとは、どういう意味だ?」

 

 

司波君は私から八君に顔を向きなおして質問する。顔は相変わらずだけど、その声色にはやや感情が乗せられている

 

その感情は困惑なのか、イラつきなのか怒りなのかは分からないけど多分あまりいい感情ではないと思う。

 

 

「意味も何も違っていう事は、何かが間違っている不適切である異なっているとかでしょ」

 

 

「茶化すな」

 

 

一見ふざけているような八君の言葉に司波君はすばやく最短で対応する。とういうより心なしか私と話してた時より司波君の雰囲気が若干怖い気がするのだが…きのせいかしら?

 

 

「別に茶化してないだろ?そんなに警戒すんなよ」

 

 

「…俺の言ったことに何か間違いがあるということだなでは、どこが違うか教えてもらおうか……曳き」

 

 

「俺も全部が違うって言うわけじゃないぜ、むしろお前の言ってることは正論で正しい」

 

 

一瞬息をのみ込む、彼も私の事を否定するのかという不安からくるもので無意識に私の顔は下を向いてしまう

 

 

「お前の言ったことも正論だけど壬生先輩の言ったこともある意味正しいだろ?それを一方的に詰むのは違うって事だ」

 

 

え‥‥?

 

 

「確かにそれなら、俺の言ったことは違うだろう。だが、それは壬生先輩の話した事に正当性がある場合だ。申し訳ないが俺には、学校側に対する待遇改善の抗議に正当性が見つけられないのだが」

 

 

「ああ、まそうだろうなそんなもん抗議したところで、改善なんてされないだろうな」

 

 

私には八君の言いたいことがいまいち分からなかった。八君は司波君に違うと言ってくれたが、それに加えて私の言ったことにも違うという。

 

彼は私の味方なのかそれとも逆なのか分からない

 

 

「司波、お前は同級生の幼児性は学校のせいじゃないといったな?」

 

 

「ああ、それがどうした」

 

 

「俺からすればそれは幼児性なんてもんじゃなく人間性の問題だろ」

 

 

「人間性…?」

 

 

話がよく分からず、ついつい口に出てしまう。でも八君は口元に笑みを作り話を進める

 

 

「ええ、人間性です。司波の言う幼児性はそのまま幼稚だってことだが。確かに学校側が禁止してる言葉を使って相手を馬鹿にする、まさにガキのすることだし間違っちゃいない。でもそれだけならな?」

 

 

「風の噂で聞いたが、なんでも入学当日に騒ぎを起こした一科生と2科生がいたそうだな。その中には司波もいたっていう話だが?」

 

 

確かにそんな噂があった、確か一科生と二科生の生徒同士が校門前で揉めていたって言う。生徒会が介入したけど結局大事にならずに注意だけで終わったらしいけど

 

 

 

「…確かに、その現場に俺も居合わせたが」

 

 

「その時、一科生の数人は口喧嘩の末に魔法を使おうとしたらしいな」

 

 

「え!?だ、大丈夫だったの?」

 

 

それは初耳だ。注意だけというしてっきりただの口論とかだと思っていたけど、魔法を使うなんてただ事ではないと思うけど

 

 

「ええ、問題ありません。あの時は同じ一科生の生徒がいち早く止めてくれたので」

 

 

そういう司波君は八君の方を神妙な顔つきで見て、その八君は顔を背けてるけど。どうかしたのかしら?

 

 

「それから壬生先輩」

 

 

「えっ、は、はい」

 

 

「勧誘期間の剣道部と剣術部の乱闘騒ぎの時に先輩は剣道の立会いの後、決着がついた相手から殺傷性ランクBの魔法を使用されたらしいですけど本当ですか?」

 

 

「え、ええ本当だけど…」

 

 

いきなり話を振られて若干ビックリしたけれど八君はいったい何を言いたいのか?

 

 

「今分かってるだけでも2件、一科生から2科生へ対する魔法の不適切仕様がある。これは一歩間違えれば犯罪行為になる大変危険な事だ。それも原因の根元は一科生から二科生に対する差別にある」

 

 

「もはや幼児性なんて生易しいものではない。ならばそれは学校側の責任でもあるだろう」

 

    ・・・・・

「なんせ教師の指導がある一科生の人間性に問題があるんだからな」

 

 

八君は今までにないくらい口を半月型に広げ、どこか不思議な雰囲気を出しながら言い切る

 

 



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入学編29

なんか色々間違ってたらすいません。専門的な事はよくわかりません





世の中にいる大人、それも社会人とか公務員とか言う連中は何よりも外面を気にする。

学生の内の評価にはいかに努力をしたとか、協調性がなんやらとか言う項目が存在するが、社会人の評価には仕事をいかに努力したかとか、仲間と一緒にやり遂げたとかいう項目はない。

 

大事なのは年収とか職種とかで、その内容には全く触れないのだ。

プロ意識の欠片もなくてもJリーガーはちやほやされ、人一倍頑張って働くフリーターは後ろ指を指される。そんなんだから俺は働きたくないのだけれども、今はその話は置いておこう

 

 

まあ、つまりはそんな大人達がやられたもっとも嫌な好意は自分たちが世間から非難されることだ。それを回避するためなら割と本気になるし、隠蔽だろうが土下座だろうがなんだってするレベルだ

 

 

では、どうやってそこまで持っていくのか、簡単だ全ての責任を擦り付けそれを公表してしまえばいい。事実も内容も関係ない、大事なのは実際にそういう事態が起こったという記録と、その原因が直接的でも間接的でも全く関係なくても相手が悪いといちゃもんをつけられればいいのだ

 

 

いちゃもんをつけられた相手の行動は2つ、一つは事実無根と抗議する事、二つ目はできる限り最小限の被害に収めるため示談を持ち掛ける事

 

 

そして、大多数の場合は後者を選ぶ。なぜかって?そんなの抗議なんてしたら外面が悪いだろ

だったら無理難題を吹っかけられる前に、多少の妥協をしてでも事を鎮めることこそが大人の対応である……本当これだから社会人ってやつは嫌なんだ。なので俺は社会に出ることなく専業主夫として家を守っていこう

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「なんせ教師の指導がある一科生の人間性に問題があるんだからな」

 

 

一瞬、へ?と思いついつい口を開けてポカーンとしてしまった。だって八君のいったそれは、私が、私達が抗議しようとした事とは違う事だからだ。

 

 

勇士を募り学校側に待遇改善を要求してそれを成功させる。それが私や司主将達の考えだが、八君の言い分は、2科生の待遇なんて無視して1科生の素行を抗議するという内容だ

 

 

この2つには大きな違いがあります。一番大きいのはそもそもの着眼点が、2科生か1科生かということ

 

 

私達の方は2科生で、八君の方は1科生に着眼点を置いていまる。尚且つ、私達の方は待遇改善という『要求』だけど、八君の方はまさしく『抗議』なのです

 

一応冷静に八君の言ったことを考えてみたけど、正直話についていけない。話自体は理解できるけど、自分達との見解が180°違う意見をいきなり提示されて頭の整理が追いつかない。

 

でも、そんな私を尻目に目の前にいる司波君は淡々と言葉を続けれる

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「なるほど、つまりは問題をすり替えるという事か」

 

 

「まあ、そうとも言えるな。でも別に問題はないだろ?」

 

 

普通に考えれば問題しかないだろ。そもそも壬生先輩の待遇改善の内容からどう転べばそんな明後日の方向の解がでるんだ?

 

 

あらかじめ考えていたなら分かるが、それはおそらくない。今日の集まりは壬生先輩からの呼び出しで、俺の質問の答えを言うという知り用のないものだ

 

 

俺の知らない所で比企谷と壬生先輩が事前に打ち合わせをしていたという可能性もあるが、今までの流れにすり替えのさえの壬生先輩の表情から察するにその可能性はないだろう。

 

 

つまりこいつは、今この場で壬生先輩の話を聞きその答えを出したという事か。単純に頭の回転が速い事に少し驚きだが、それ以上にその方向に問題があるのが厄介なところだ

 

 

以前から考えていたが今日で確信した。比企谷は水平思考で物事を考えている

 

 

水平思考とは多様な視点から物事を考え直感的なひらめきや発想を生み出す方法で、その逆に垂直思考または論理的思考がある

 

こちらは水平思考と異なり、一つの視点から物事を考え積み上げていき答えを求める方法だ。

そして多くの人は垂直思考で物事を考え、魔法師であるなら実に8割以上がこちらの思考だろう

 

それは論理的思考が数学、計算幾科学、哲学等に深い繋がりがあるからだ。魔法師の使う現代魔法はCADを使い演算の省略をしているが、その多くは魔法師自身による演算が施されている。そのことから、自然と考え方や思考回路が論理的、垂直思考になる

 

 

故に平行思考で事象を考える魔法師というのは、俺の知る限り存在していない。

この2つの思考のさえたる違いを上げるなら、まず垂直思考で1から10までに到達するまでの数字を求めよとすると

 

 

1,2,3,4,5,6,7,8,9、10という風に計算しかかった数字は10個という答えが出るだろう。

 

 

しかし水平思考の場合では

1,10で、かかった数字は2個という答えが出る。

 

 

垂直思考ではこの水平思考の考えが分かりにくいと思うが、この答えはどちらもあっている。まず前者は1~10までにかかる数字を順番道理に並べていく。そして出た数字は10個正解だ

 

後者の場合は1から10の数字をただの数字と捉えずに時計のように円状の図形で連想する。そうすると、1の隣には2と10が並びここから逆時計回りで数えるなら1と10の2個こちらも正解だ

 

なんせ問題文には別に数字の並びや形状などは指定されてなく1から10までの数を求めよとしか明記されていない

 

 

この事から分かるように様々な演算や工程を経て魔法を発動する現代魔法の際は垂直思考そのものだ。また世の中の多くの人は自分の今までに培った経験というデータをもとに思考、行動を決めている

よく言えば論理的悪く言えば普通の思考それが垂直思考だ。論理を深めたり、先人たちより受け継がれた伝統を継承したりするには有効だが、その一方で斬新な発想、新しい発想は生まれにくい

 

では水平思考はどうかというと、これは要するに何人かで別々の思考を一度にするようなもので新発見や斬新なアイデアを出すときに大変有効だ

 

しかし、複数人がやるような作業を一人でやるようなものなので普通の人間ならなかなか上手くいかない

 

 

それゆえ、垂直思考を秀才型と例えるなら水平思考は天才型と例えられる。天才の考えることは良く分からないと耳にするがつまりはこういう事なのだ。

そもそもの思考が異っているのだから理解できないし納得できない

 

 

それ故に非常に厄介で驚異的だ。天才といっても何もすべてが良い意味なわけではなく、昨今ではむしろ悪い意味だ。

 

常人と違う発想、それは極端な話だが犯罪に利用できる。そういった者がする犯罪は普通なら発想もできない物で、発覚や逮捕などが困難になる場合が多いつまりは非常に厄介なのだ

 

 

できる事なら関わりたくないし、敵に回したくない相手だ…

 

 

「…確かにお前の考えを実行するなら、俺が提示した疑問、問題点はなくなるな」

 

 

待遇改善の具体性、話自体が変わったのだからそんなものはもう関係ない。

要求ならばその内容の具体性、正当性、信憑性が問われるが抗議というなら正当性と信憑性さえ確立してしまえば後は、向こう側の対応を待つしかない

なら、今この場で論議する事ではない

 

 

さらに今までは、不特定多数の1科生による差別問題が題材だったのが特定された1科生の犯罪行為になりかねない素行不良が題材に上がっている。

 

 

しかも、その具体例に挙げたものには俺自身が深く関わっており知らぬ存ぜぬではまかり通らない所も出るだろう

 

 

1科と2科の差別問題に対する強制力がない勧誘から、2科から1科に対する学校側への抗議に話を変え、その主軸になる事件に俺を置くことで幾つかばかりの強制力を生み出した

 

 

これにより俺の立場は、今までの不透明な物より白か黒かをはっきりさせる立場へと変貌した。

事件の事を証明した上で1科に付けば2科から非難を受け、2科について話の中心になれば生徒会や風紀員はともあれ1科から今まで以上に目の敵にされるだろう

 

 

生徒同士の単なるもめ事から生徒から学校側への抗議という形で話を大きくさせ見て見ぬ振りができなくなり、その実、真の狙いは俺に対する間接的な攻撃にある。なんともあくどいが自身に向けられるリスクを回避し尚且つ事を円滑に進める合理的ともいえる手だ

 

 

ここで、むやみに動くのは自身の首を絞める行為だろうならば……

 

 

「だが、やはり俺の考えと先輩達とではいささかの違いがあるでしょう。しかし、先ほど言った俺の発言は撤回します。壬生先輩、先ほどはすいませんでした」

 

 

比企谷に向けていた視線を目の前に座る壬生先輩に戻し、そのままお辞儀をする。

肯定も否定もできないなら話自体を終わらさせてもらう。

 

 

「それと申し訳ありませんが、もうそろそろ妹が来るころなので失礼させていただきます」

 

 

そのまま席を立ちあがり、軽く会釈をしたのち3人分の会計を済ませ喫茶店から出ていく。

 

 

外は夕日が傾き、あと数時間もすれば空は暗く闇に染まる

 

今回ではっきりした比企谷の特性、それにあの独特の話術の一部を知れただけでも収穫といえるが、だがやはり、今だあいつの全貌はつかめないまま

 

だが、あのまま話を続けていても恐らくだが奴の策に溺れるだけだったろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

認めよう、完敗だ。そして確信した、比企谷 八幡という男は危険だ

 

 

 

 

 

 

 

 



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入学編30

気が付けば30話…

いったい、いつまで入学編やっているのだろうか?


司波のいなくなった喫茶店の中で俺は人知れず後悔していた。去り際のあいつの目、アレは確実に俺の事を敵視している目だった。まあ、前々からあいつとは仲がいい訳でもなく、むしろ苦手の部類だけれど、それでもお互いがお互いに関わり合いにならないようにしていた。

それもこれも全ては俺の平穏のためだ

 

あいつが俺の事をどう思ってるかは知らんが俺的には、イケメン、リア充、暴君と3拍子揃った関わり合いになりたくない分類の人種なのに、今日の事で確実に敵対してしまった…これは終わってね?俺のライフがもうゼロだよこれ

 

 

不覚にも深くため息が出てしまう。

 

 

「えっと…ありがとう?だよね八君」

 

 

ここでふと、顔を上げると壬生先輩が若干の苦笑いをしながら声をかけてくる。司波に意識が行っていて忘れていたがまだ壬生先輩がいたな。

 

ぶっちゃけ今回は、早く帰りたいから口を挟まず空気に徹する予定だったが、思いのほか司波の言い分が一方的すぎてついつい口を挟んでしまった。というか、挟みすぎてしまった。

 

 

その結果壬生先輩に助け船を出したような感じになっている。今のお礼はそのことに対する物だろう。

 

 

しかし、俺的にはただ思うとこがあって言っただけだし、壬生先輩に感謝される覚えはないのだが、つーか面と向かって女子に感謝されるなんて慣れてないのですんごいキョドってしまうのでやめてほしい

 

‥‥‥べ、別に赤くなんてなってねーし。……ホントウダゾ?

 

 

「い、いえ、すいません。出過ぎた事を言ってしまって…」

 

 

「そんなことなよ。正直私じゃ一方的に言われるだけだったし…八君のおかげで助かった。本当にありがとう。これは私の素直な気持ち、だからそんなにかしこまらなくてもいいよ」

 

 

最後の言葉は俺が先ほどから下を向いてるので、俺が落ち込んでいるものと思っての言葉だろう。実際は顔が赤いので‥ゲッフゲッフ!!

 

実際はちょっと考え事をしていただけなのだが

 

 

「それに司波君や八君の考えを聞いて改めて考えられた事もあったし…そこで、なんだけど八君さえよかったら一度会ってみてほしい人がいるんだけど」

 

 

「あってほしい人?誰ですか」

 

 

「うん、えっとね剣道部の司主将の事は知ってるよね?その人は主将のお兄さんで、私達のリーダーみたいな人なんだ」

 

 

これは2重の意味で予想外だ。まさか、こうも早く尻尾がつかめる機会があるとは思っていなかったし、何よりリーダーの存在だ。

 

 

司先輩達の会話を盗聴してみて、すでに司先輩のほかに組織をまとめ、指示を出している人物がいるのは予想ができていたが、てっきりこの学校の人間だとばかり思っていた。

 

 

まあ、目的も構成員も判明しているものは全部一校関係や生徒なのでそう予想するのは至極真っ当だろう

 

 

しかし、彼らのリーダーという司 甲の兄、本名司 一

先輩の身辺調査をしてるうちにこの人物の事も知っていたが、まさに予想外の人物だ

 

 

というかこの司 一は確か20代後半とのことだが、そんな奴が学生を使って学校側にデモを仕掛けるとか‥‥‥真っ当に働いているのだろうか?

社会人としてそんな事を率先するとか真面な人間ではないだろうと予想できる。というか、大人で兄貴ならこんな馬鹿な真似をする前に止めるのが普通である。それをしないという事は、相当の変人、狂人、異常者かその他に何らかの目的があるのは間違いないだろう

 

 

前者なら速攻でしかるべき所に相談するが、後者なら厄介だな。その目的が何なのか知らんが2科生の待遇改善じゃない事は明らかだ。

そして、うちの魔法科高校は国立であることから、貴重な資料やデータ、備品、装置などが保管されている。閲覧するだけでも結構手間であり、それらは情報保護のため学校外に持ち出すことは禁止されている。いくつかのプロテクトもされてるらしい。

 

 

いい大人それも、到底真面ではない大人が狙うとすればここあたりだろう。

だが、これはあくまで推測であり普通ならそんなテレビみたいな事は起きないだろう。仮にこれが的中したら最悪だがな

そこでふと、俺の頭をよぎるのは魔法科高校に入学してからの記憶だ

 

 

 

貴様とか言っちゃう自意識過剰の同級生

 

 

あまりに空気が読めない副会長を噛ませ犬の如く忍術で倒した男

 

 

同級生のそれも同性に並々ならぬ執着心を持つストーカーの彼女

 

 

度を越したブラコンの才色兼備

 

 

やたらラスボス臭を漂わす角刈りメガネ

 

 

デモを起こそうとする劣等生たち

 

 

その他にも様々な意味でキャラがこい愉快な連中

 

 

「・・・・・・・」

 

 

そこで俺は理解した

 

 

あ、これ駄目なパターンだと



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入学編31

世の中には定番だのフラグだのという言葉がある。何かをすれば高確率で何かが起こり、ある特徴を持つ見た目のやつは特定の性格や特性を持つという物で例えば、金髪ツインテールはツンデレとか金髪長髪先っぽカールはお嬢様とか貴族とかで、高飛車な性格とか

 

モヒカンの擬音がヒャッハーだの、冒頭でどこにでもいる普通の~のやつは大抵どこにもいないような奴だったりする。これらが定番というやつだ

 

だが俺はふと思う、定番とは名ばかりにこれはただの強制だ。金髪だって好きでその色になったわけじゃないだろう、だって人種だし。髪型だって女の子なんだから好きなようしたいはずだ、それなのに世の中の連中は彼女らの意思を無視して自分の好きなように性格を捏造し、それが意に沿わぬものなら否定する

 

 

人を見た目で判断するな、恰好なんて好きにさせてやれ、どんな個性でも否定するな、それすらできなくて何が自由だ人権だ

 

定番なんぞ朽ちてしまえ。

 

 

 

 

 

「やあ、初めまして。曳田 八兵衛君、話は壬生から聞いているよ、なかなか面白い考え方をもっているそうだね。おっと、自己紹介がまだったこれは失礼、僕の名は司 一だ」

 

 

壬生先輩の案内によりやってきたのは郊外にある今は使われていない、まさに悪党やテロリストなんかがアジトに使っていそうな廃墟で、そこにいたのは件の真面目に働いていない、いい年した大人こと、司 甲の兄貴の司 一だ

 

 

見た目は、ひょっろとした中肉中背のメガネをかけた青年で、髪の色は本人はカッコいいと思ってるかは知らんが、大阪のおばちゃんがしてそうな紫色で、なぜか片目を隠すような髪型をしている。

 

 

あと、メガネをしたうえであんな髪型だと下を見る時、髪が邪魔してたまに目の中に髪が入ったり、メガネ越しに変な汚れとかがついて無性にイライラする。ソースは俺、変装のため今の髪型にしてるがすぐにやめたいマジで邪魔

 

 

率直な疑問だがなんであんな髪型なんだよこいつ?

しかも何あの、膝のところまである変な宗教団体の教祖が着てそうな真っ白い服にオシャレに失敗した中学生が持ってそうなやたら長い真っ赤な首掛けは?

 

 

見た目からしてぜってーやばい人だよ。おかしな恰好しやがってもっと普通の恰好しやがれよ

あと名前も間違ってる。誰だよ八兵衛って?俺と契約して俺をヒモにしてよ!みたいな事言えばいいのかよ

 

 

 

「どもっす」

 

 

色々思うところはあるが、それをこの場で言えるわけもなくとりあえず、適当に挨拶をしておく

 

 

「そう固くならずにいいのだよ、我らは同じ意思を共有するいわば同士だ」

 

 

壬生先輩からどんな話を聞いてるか知らんが、いつの間に俺はあんたらの同士になったんだよ?それとこいつ、笑顔をしているけどすんげー嘘くさい

 

心の底から笑ってるのでも、作り笑いをしてるのでもない。これは心底相手を小馬鹿にするそんな、嘲笑う笑顔だ

しかもそれをほとんど隠そうとしていない。

 

 

「えっと…一応俺は、話だけって聞いてたんですけど。その同士とか言われても…」

 

 

「おお!そうだったね。ついつい気が急いでしまってねすまない。でも、君も僕の話を聞けばきっと同士となると信じているのだよ」

 

 

そういい、右手を挙げると先ほどまで一緒にいた壬生先輩と司 一の隣にいた男が部屋を出ていき、この部屋とも呼べない廃墟の一室に残ったのは、俺とこいつの2人だけとなりおもむろに話を始める。

 

 

話はやたら長かったので要点をまとめるとだ、まず壬生先輩らの所属している組織の名前はエガリテといい、組織は反魔法国際政治団体ブランシュの下部組織に当たるらしい

 

で、その反魔法国際政治団体が生徒を使ってデモまがいの事を仕向ける理由は魔法による社会的差別の撤廃という組織の方針の足掛かりとするためだとか

 

 

本格的な活動の前にまだ幼く、差別意識の少ない子供から攻めるという方針は戦略としてはまあ、いい方法だろう

いくら正しい事を言っても国という圧倒的な敵を前にして、下手にちょっかいを出せば即刻に潰されるのがオチである

 

 

その分、育成機関であり国立の魔法科高校は練習台としては最適といえる。なんせ生徒の自主性やらを鍛えるために学校の方針なんかは生徒会が仕切ってるし、大人から見れば高々子供、されど将来はこの国の中枢に行く人間も出るだろう。

 

 

そこを落とせれば組織として実績をつめ、失敗したとしても被害は最小限で済む

 

 

一応筋はとうっている。それを話した時のこいつの目が全くそんな事考えてませんよ?みたいな胡散臭さを醸し出してさえいなければ、納得していたところだろう

つーか、絶対ウソだろそれ?少しは作れよ顔

 

 

あまりのずさんさについついため息が出そうになるが、ここでそんなことしては色々台無しなのでぐっとこらえる

 

 

しかし、よくこんな奴に壬生先輩は従っていられるな。こいつの指導者っぷりを見たわけではないが、少し話しただけでも相当な小者であるという事が伺える

 

それは、一校が誇る三大組織の3巨頭、七草生徒会長、十文字会頭、渡辺風紀員長と比べるとその差は歴然だろう。

 

会長のようなカリスマも会頭のような柔軟な理解力も委員長のような熱意も、この男からは感じられない

 

 

精々、森よりやや上といったところか

補足しておくが、森の統率っぷりは結構凄い。初日の事件でもあいつが皆を先導していたし、一組の男子の中でもトップクラスである。

さらに、実技や筆記でも男子のなかでは上位に位置しており、授業でも積極的に発言をしていて教師からの評価も高い

 

なにが一番凄いって、そんなトップカースト並みの実力を持っているにも関わらずその性格で全てを台無しにしているところがマジで凄い

 

 

俺だったらこんなのをリーダーにするくらいなら、組織を捨てて実家で親のすね齧って悠々自適に生きていくね

んで、最終的には誰かのヒモ兼専業主夫として生きていこう

 

 

 

 

「曳田 八兵衛君、我々の仲間になりたまえ、君の独創的な発想は非常に興味深い」

 

 

「はあ、そうっすか」

 

 

なにやらまとめに入ってるようだが、いい加減に誰だよそれ?変な恰好しやがって名前ぐらい覚えろよ!

 

といっても、その名前その物が俺のじゃないし別に気にしないんだけどな。

しかし、本当に謎だ。人に感じる魅力なんか人それぞれだし、こんなのでも先輩方にとっては、立派な指導者なのかもしれんが、こいつのこの妙な自信はなんだ?

 

ただの自信過剰のナルシストならうちのクラスにもいるが、こいつのこの自信はまるで俺が必ず仲間になるとでも言いたげな感じだ

 

 

一応話は聞いたが、もちろん仲間になるつもりはない。ぶっちゃけこんなマジな感じのテロリストとかあいえない。

そりゃあ、嫌な予感はしてたし冗談半分で、「こいつらテロリストじゃね(笑)」みたいな事も思ってたけど、いざまじ物のマジに遭遇すると冗談とか言ってられない

 

潜入してちょっと情報をくすねていこうかとも思ったが、もうそんな気もない。俺があとやることはこのまま丁重にお断りして、学校に相談しよう

 

 

流石に今の状況じゃあ警察は無理だろうけど、委員長とかに言えばどうにかなるだろう。んで、俺はそのまま静観していよう。

 

 

ホント誰だよ、テロリストは廃墟をアジトにしてるとか言ったやつ、そのまんまじゃねーかよ!

 

 

「えーと、でも今すぐにはちょっと決めかねるんで少し時間をもらっていいですか」

 

 

そうと決まれば早いとこおさらばしようと思い、提案する。司 一は、なぜかある上等なソファーに腰を掛け、両足を組みメガネをくいっと上げる

 

 

メガネに光が反射しその目がどうなってるのか分からんが、雰囲気的に笑っていない事が伺える

 

 

まさかと思うが、秘密を知られたからにはただでは帰さんとかいう流れになったりしないよね?まさかね‥‥‥‥‥なんかスゲー怖いんだけど、背中に変な汗かいてきたんだけど大丈夫だよね?

 

 

神様仏様小町大明神様、どうか無事で帰れますように!!

 

 

「ふぅー‥‥分かった。いい返事を期待してるよ」

 

 

「はい、それじゃあすいません」

 

 

そういい、一度お辞儀をし入口に向かい歩き出す。心の中ではセ―フッッ!!と思いっきりガッツポーズを取っている。

 

 

いや、本当に何事もなくて良かった。流石は小町大明神様だ、今度お礼に菓子でもお供えしてやろう

 

 

そんな事を考えて歩いていくと、ふと後ろから声が掛かりその方向を向く

そこにはメガネを真上に放り投げる司 一の姿があった

 

 

「曳田 八兵衛!我が同士になるがいい!」

 

 

 

 

 



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入学編32

投稿遅れました。

全ては新発売したポケモンが悪いです!ルビーサファイアを思いだしついつい購入&プレイしてて遅れましたすみません

いやー、何年たっても面白いですね

キンセツシティの屋上にいる3人の怖いお姉さんがとても萌えました!特にエリートトレーナーといるお姉さんがかわいかったです!

でもおやじは一度死ねばいいと思います


では今回も、お目汚しですが楽しんでいただけると幸いです



昨日の一件で、比企谷 八幡に対する警戒を上げたが、その実今現在できる事は少ない。

まず、相手の事を公私ともに知ることが基本だがその程度の事はすでに終えている。なんせ、あいつは一校に入る前には、魔法と無関係な生活を送っており、その両親も以前は魔法関係の仕事についていたらしいが、結婚をさかえに一般企業に就職しており、名実ともにただの一般人である

 

一般人あいてに後れを取る事はなく、詳しい経歴から家族構成などの収集も早々に終えている。あまりにも順調すぎてなんらかの罠を疑ったが、そんなことはなかった。

 

比企谷 八幡

 

8月8日生まれ、身長171㎝ 血液型A型 好んでいる飲み物はMAXコーヒー

 

出身地である千葉で生まれ、中学生までずっと過ごしており地元愛が強いという証言もとれている。

小、中と虐めにあっているという情報もあるが定かではない、ただしあの濁っている目を見るに事実である可能性が極めて高い。

学業は得意科目と苦手科目で落差がある物の平均より上である。

部活、クラブ活動とうには入っていないが運動神経は悪くなく上の中といったほど

 

家族構成は、父親、母親、妹の4人家族。妹は兄と違い現在生徒会役員を務めており活発で社交的、広い交友関係をもつ。しかし、時折一人で行動する姿が目撃されており単独行動を好む性質があると予想される

なお、兄妹仲はいいらしいがあまりに仲がいい事により、よからぬ噂が流れる事もある。事実は不明だ

 

 

親戚との親交はあまりなく父親方の親戚と数度あったことがあるが、逆に母親方の親戚とは一度たりともあったことがない

 

しかし、母親方の比企谷本家で問題が発生しやむおえぬ事情にて、行くはずだった高校受験をやめ、魔法科高校を受験。見事合格し、1科生1年A組に所属。クラブ活動には特に入っていないが風紀員会に入っている。

 

入試でのデータは、魔法科高校管理になっているので手が出せなかったがA組に所属していることや森崎との一件で見た魔法式の発動速度から見るに実技の腕前は相当のものと予想される。本人曰く実技はそこそこだが筆記は壊滅的と委員会で話しているが、そちらも定かではない

深雪やほのかの話では、クラス内では目立ったことを避けている節があるも休み時間中に寝ている事や、いつの間にか姿が消えている事で一部の生徒の目を引いているらしい。

基本的に一人でいる事がほとんどだが、雫とほのかとは仲がいいらしくよく会話をしたり行動を共にすることが多い。ただし、自分から話を振ることや行動をすることが極端にないためいつも雫やほのかのほうからアプローチをかけている

 

たまに森崎が一方的に何かを怒鳴っている姿があるようだが、関係性がないためそれは無視しておく

 

風紀員に所属してから度々さぼっているところを渡辺委員長に目撃され折檻をくらうことがあり、委員会全体での評判はいいとは言い難い。しかし、委員長をはじめとした数人からは好印象を受けている

 

その理由は、委員会での事務方面の仕事を正確にこなしているところにある。そもそも風紀員は俗に言う体育会系であるため現場主体の先輩方がほとんどで事務をこなせるものが少なく、やったらやったで誤字脱字まみれの報告書なんかを出してくるので今までは委員長がほとんどの仕事をしていた

 

なので、俺や比企谷は事務主体で活動することが多い。俺から見ても比企谷の仕事は丁寧であり尚且つ迅速だ。先輩達と比べてもその質は劣らない

一緒に仕事をしていても無駄に会話をせず着々と作業しているのでやりやすい。あまりに静かすぎて時折存在を忘れる事があるけれど、特に問題ない

 

そのことから、今まで事務をしていた先輩達からの評価は高い。その一方で定期巡回や見回り、集会の時にさぼる事があるので肉体労働専門の先輩達からは不真面目と評価は低い

ただし、勧誘期間の時のように何らかの行動をとるために委員会をさぼるケースがあるので一様に不真面目と判断はできない

 

数日前にも委員会をさぼっていたが、その時に謹慎が解けた桐原先輩となんらかのコンタクトを取っていた模様、その内容は不明だがこのタイミングという事はなんらかの意図があるのだろう

 

これまでの調査では比企谷は少し前まではただの一般人という結果だがどうも違和感がある。魔法技術を学んでからの日数と俺の予想する比企谷の実力が釣り合わない。魔法とは技術であり、その実力は本人の適性のほかに積み重ねた時間に比例する。

魔法科高校に通う生徒には、以前から魔法を学んでいたものと適性がありこれから学んでいく物の2種類があり

 

俺や深雪に森崎などは前者であり、比企谷や美月は後者にあたる。俺なんかは特殊なケースなので除外する物の、これまでに努力をし長い年月をかけ魔法を自分の力に変えてきた者の実力は高く入試の時点でこの2種類の間には差が存在する

 

といっても、それはあくまでも学んできた者と学ぶ者の差であり正しい知識と経験を積んで行けば在学中にその実力が逆転する事も珍しくない

しかし、比企谷の場合入学時点ですでにその差がほとんど存在していなかった。森崎と対峙した時を鑑みるに、相当の実力者であるという事が伺えるがその経歴と比べるとあまりに不釣り合いである。

 

それゆえ当初は、あまりに不自然すぎて情報操作があった可能性を考えたほどだ。

さらに、生徒会室やカフェでの事より普通とは違う世界観を持っている事が伺える。変わった感性を持っている者は一般人にもいるだろうがそれ以上に違う世界で生きていた人間に多い

 

例えば軍人なんかや犯罪者なんかがそうだ

俺の知り合いの軍人にもまともだが変わった人が多いし、四葉の事情で対処した者達をとってもそうだ。

以前あったベイヒルズタワーでの強化実験体がいい例だろう

 

そのことからも比企谷が俺同様に軍関係者ではないかと疑ったわけだが、いくら調べても過去にそのような事実はなく、国内の犯罪組織もできるだけ調べたが比企谷のような人間はどこにも所属していなかった

 

クリムゾン・プリンスのように義勇軍に志願したという可能性もあったので調べたが、そちらも空振りでここまで調べて何もないという事は本当に何もないか、俺の情報網をもってしても特定できない何らかの力が加わっているという事だ

 

 

「はぁー…どちらにしても厄介だ」

 

 

 

 

 

授業合間の休み時間にこれまで調査した物を検証していると前方の方からレオに声をかけられる。どうやら俺の雰囲気を見て、心配してくれている様子で話しかけたものと考えられる。

 

 

「ん?ため息なんかついてどうかしたのか達也」

 

 

「ちょっと委員会で厄介な仕事を押し付けられてな」

 

 

「流石は風紀員、大変そうだな。手伝えることがあったら力を貸すぜ」

 

 

そこに、話を聞いていたらしく後ろからエリカ達がやってくる

 

 

「あんたじゃ逆に迷惑になるだけなんだからやめときなさいよ」

 

 

「あんだと!」

 

 

「え、エリカちゃん」

 

 

エリカがレオをからかい、それを美月がオロオロしながら声をかける。ここ最近では日常とかした光景なので、俺もおとなしく静観しておく

 

そんな当たり障りのない会話をしているとき、まだ時間でもないのに教室のスピーカーから電子音が鳴り響いた

 

 

『全校生徒の皆さん!僕たちは学内の差別撤廃を目指す勇士同盟です!』

 

 

おそらく壬生先輩らが所属しているエガリテの下部組織の連中であろうと予想ができる。近いうちに何らかの行動をとるとは思っていたが、昨日の今日とは随分と性急だな

壬生先輩の考えでは彼らが望むことは成就できないだろう。しかし、比企谷の話を吟味しての行動だとしたら面倒な事になる

 

 

『僕たちは生徒会と部活連に対し対等な立場における交渉を要求します!』

 

 

どうやら違うようだ。仮にあの案を考慮するなら要求に学校という言葉が入るはずだ。しかしそれがないという事は比企谷の話は棄却されたか、考慮されてないか

 

それ以前にあいつが彼ら側に付くという事もないか。

何も得がなくただ単に自分の首を絞める真似をする道理もない。それなら多少面倒は少なくなるはずだ。

 

あいつと正面切って事を構えるにはまだ情報の整理ができてないし、できる事なら深雪共々あいつとはできるだけ関わりたくないというのが本音なので都合がいいか

 

と、悠長に考えてる場合じゃないな

 

 

「風紀委員として行ってくる」

 

 

そう言い残し、教室から出る。

途中深雪と合流しそのまま2人で放送室に向け歩みを早める

 

 

 

 



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入学編33

始めに言っときます。八幡の出番は少し休憩して、物語を進めていく方針にします。気になると言ってくださった方々、申し訳ありませんが八幡の事はもうしばらくお待ちください。






それはある日突然の出来事だった。

 

『全校生徒の皆さん!僕たちは学内の差別撤廃を目指す勇士同盟です!』

 

授業の節目である休み時間に流された男子生徒と思わしき声がスピーカーを通じて教室中に響き渡る

 

「し、雫!これっていったい…?」

 

幼馴染であるほのかは突然の放送に相当驚いている模様で、クラスを見渡すとほのかのように驚いている人やなんのことか分からずただ単にポカーンとしてる人が大半でその多くが今の状況を理解していない。

 

斯く言う、私もあまり表情には出ていないと思うけど結構驚いているしこの放送が何かというほのかの質問にも当然答えられないでいる。

 

放送の続きを聞くと、どうやら生徒会や部活連に何かしらの不満があるらしく対等な立場で交渉することを要求するという脅迫をおこなっていた。

一体彼らがなんなのかは知らないけれどこういうやり方は、よくないと思う。道徳的な良し悪しの前にこの行動で導き出される結果が悪手か良手かと聞かれれば間違いなく悪手といえる。

 

放送をするにはもちろん放送室に行かなければならなし、放送室は教師の許可がなくては使用してはいけない。聞く限り正規の方法で放送しているわけじゃないようだし、そうすると無断でしている事になる。

 

それは間違いなく規則違反であり、罰せられる対象になる。その証拠に放送も不自然なタイミングで切れてしまったし、風紀委員に捕まったか回線を切られたのだろう

目的がなんであれ、その過程で違反をしてしまっては正しい事を言ったとしても相手にされない。

 

つまりは、悪手

導き出される可能性は最悪をさす

 

 

 

そこで、ふとある疑問が湧いた

 

この放送でおそらく、間違いなく風紀委員は何らかの関与をするはずだ。無断放送した生徒を取り締まるにしても騒ぎが大きくなる前に各教室に指示を出すにしてもやるのは風紀委員になるだろう。そうすると風紀委員に所属する生徒は召集されてしかるべきだ

 

 

 

 

 

ではなぜ、彼は今だこの教室にいるのだろうか?

 

 

 

 

私の目線の先にいるのは、同じクラスであり私が絶賛興味を抱いてる(恋愛的な意味合いではない)人物であり何より風紀委員である彼だ

 

時折巡回なんかをさぼっているという事を聞くが彼の性格からしてこのような大事な時には率先して…とまではいかなくとも顔くらいは出しに行くだろう。働くことに関して否定的な彼ではあるが一度受けた仕事には責任を持っているという印象を受ける

 

そんな彼が今だ教室にいるというのはいささか不自然だ。

 

 

小首をかしげるが、本人を目の前にして悩んでいるのも馬鹿らしいので彼にそのまま聞いてみる事にする

 

 

トコトコと八幡のいる席まで歩いていき、そのまま様子を観察しながら話しかける

 

 

「八幡、風紀委員いかなくても大丈夫なの?」

 

 

率直な疑問を述べる私に彼は、顔を上げ私の顔を覗き込む。そのまま一瞬硬直するがすぐに平静を取り戻す

 

 

「あー…そうだな、ちょっと考え事しててそこまで頭が回らなかった」

 

 

というが、私にはそれが嘘であることがすぐに分かった。八幡の頭の回転は正直私より早いと思う。それは、入学初日の時を見るように突然の事態なんかにも冷静に行動が行える。

この放送には驚きはするが、私でさえここまで冷静なのだから八幡ならなおの事だろう

 

何より、彼の態度がおかしい。基本的に人と話すのが得意ではないようだ。かくいう私もそこまで得意ではないので何とも言えないが、彼は人と話すとき初めは相手の顔を見て話すがすぐに目線を別の方向に向ける。それは目を見て話すのが苦手とか、人の視線に敏感だから起こる。ソースは私、私自身ほのかや友達、家族といった親しい間柄の人と話すときは極力目を合わせるが、正直苦手である

 

家柄上そういった態度は家族に迷惑がかかるので頑張っているけど、八幡はそういったことに直球で、特に異性相手に話してるときは初めから最後まで目を合わせ続けたためしがない

 

それなのに、今の彼は私とずっと目を合して話してる。あと心なしか腐った目もいつもに比べておかしい。どこがどうと詳しく言えないが目に光がないというか、どことなく虚ろというかそんな感じだ

 

あまりに不自然だが、一見すると対した問題ではないような微妙な違和感がのこる。

そんな私を一人置いて、八幡はじゃあなと教室を出ていく

 

 

「八幡‥‥‥?」

 

 

一体、どうしたのだろうか?

 

今の私にはその答えを導き出すすべはなく、ただ遠のく彼の背を見る事しかできなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

放送室前

 

 

今ここには多くの生徒が集まっている。といっても野次馬のような連中ではなく、放送で出てきた生徒会メンバー数人と部活連の十文字会頭

それに風紀委員長率いる風紀委員たちだ

 

風紀委員のメンバーは一歩引いたところで待機していたり、廊下の突き当たりで野次馬対策で道を遮っている

 

その中心の放送室前にいるのは渡辺委員長と十文字会頭、生徒会の市原会計らが陣取っている。

そこに少し遅れる形で司波 達也及び司波 深雪の2人が合流する

 

 

「遅いぞ!」

 

 

達也の上司にあたる渡辺委員長は一喝するが、達也はあくまで冷静沈着にあたりの状況を確認する。

 

 

「すいません。どんな状況ですか?」

 

 

「電源をカットしたためこれ以上の放送はできないようにしたが、連中は内側から鍵をかけて立てこもっている」

 

 

放送室には窓がなく出入り口は1つとなっている。そのため彼らは入り口を封鎖された時点で籠城(ろうじょう)したようだ。袋のネズミではあるが、逆にそれは唯一の入り口を閉じられこちら側も立ち入ることができないということだ

 

 

「外からは開けられないんですか?」

 

 

「やつらは事に当たる前にマスターキーを盗んでいる」

 

 

達也の問いに渡辺委員長は返す。基本的に学校などの公共施設の一室には専用の鍵とすべての鍵が開けられるマスターキーが常備されている。それゆえ例え鍵を閉められてもバリケードでもないかぎり外から扉を開ける事が可能なのだ

だが、そのマスターキーを盗まれてしまっては打つ手はなくなってしまう。というよりだ

 

 

「明らかな犯罪行為じゃないですか」

 

 

今までの放送もかなり危ないラインだがそれでも精々放送室の無断使用による校則違反になるだろう。しかし、マスターキーを盗み出したそれは、明らかな窃盗だ。

魔法科高校には郊外持ち出し禁止の重要なデータなどもあることから防犯意識はそこいらの企業より上だろう

 

それらにアクセスできる端末がある部屋にもマスターキーで入れるためこの窃盗は校則を越え犯罪として扱われてしかるべきである

 

 

「そのとおりです。だから私達もこれ以上彼らを暴発させんないように慎重に対応すべきでしょう」

 

 

と、市原先輩より現在の我々がとる行動の概要が述べられる。

彼らも最低16歳を超え、犯罪に対する認識も人並みには存在するだろう。そんな中で行われた犯罪行為とは、意識して行っているという事。

下手をすれば更なる犯罪行為に手を染める可能性が極めて高く、事情はどうあれ身内である彼ら(生徒)にそれをさせるわけにはいかないということだ

 

それ故、慎重であるべきというのが市原先輩の見解だ

 

 

「こちらが慎重になったからといって、それで向こうの聞き分けが良くなるかは期待薄だがな…多少強引でも短時間の解決を図るべきだ」

 

 

一方での渡辺委員長は、できる限りの早期終結を打診する。

犯罪の誘発には、本人の意思とは別に周りの状況でそうなってしまうケースがある。例えば立てこもりなんかがそうだ。

 

イメージしにくいなら人質がある立てこもりを想像するといい。

相手側は特定の要求をとうすため立てこもりをするが、いつまでたっても要求がとおらないとなっては、段々と冷静ではいられなくなり見せしめとして人質を殺害するという強硬に走るやからも少なくない

 

犯罪行為を現在進行形でしているという非日常、それにかかるプレッシャーと緊張感は容易に人を狂わせる

 

今は冷静な彼らも時が立つごとにどう変化するかまったく不明であり、それなら早いうちに解決したほうがリスクが軽減するという見解だろう

 

 

どちらの話も分かるが、このように上の人間が対立した見解を出した場合、下の者達が動くことができず延々と時間だけが過ぎてしまうだろう。

 

ならば、ここはもう一人の上の人間に見解を聞くのがいいだろう

 

 

「十文字会頭はどうお考えですか?」

 

 

部活連代表、十文字 克人

十士族、十文字家の次期頭首であり分厚い胸板と広い肩幅、制服越しでも分かるくっきりと隆起した筋肉の付いた体をしている

 

そこにいるだけで濃厚な存在感が肌に伝わる例えるならば巌のような人だ。

 

 

 




次回は皆さんお待ちかね、まともな男子?の登場です



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入学編34

ネタにつまり、色々考えているうちにやってしまった・・・
別に悪気や悪意は一切なく純粋に思いつき形にしただけで本当に悪意は一切ない。

テンションに任せ、ノリと勢いだけでしてしまい正直反省してる‥‥‥
でも後悔はないようにしたいと思ったりしてる今日この頃です

皆さんどうか変な偏見を持たずに、恰好いい十文字先輩の姿を思い浮かべながら読んでいただけると幸いです

今回は十文字先輩回で最初から最後までオンリーです

ではどうかお楽しみに‥‥‥‥本当に‥‥なんか・・・すんませんでしたっ!!!<(_ _)>


世の中には間違っている事が多々ある。しかし、それを間違いだと指摘する事はあまりない。

相手と自分の力関係、行動を起こした後の周囲への体裁、意思はあるが度胸がない。理由はさまざまであるが誰も彼も共通するところが一つある

 

それは自分がやらなくても周りがやるという思い込みだ。面倒な厄介事に首を突っ込む者など少ないだろう。せいぜい巻き込まれたとか知らず知らずに当事者になっていたとかいう覚悟も何もない状況に陥るくらいだ

 

人として間違いではない。俺だって本当なら平和に平穏に生きていたいと思っている。

 

 

だが、それではだめなのだっ!!

 

周りがやる?巻き込まれたくない?それでは世界は変わらない!

世界を変えたいのであればまず、自分から行動を起こさなければいけない

 

例え小さな一歩でも、周りから非難され揶揄されようとも変革を求めるならば、己が正義を貫きとおすためならば、声を上げなくてはいけない。

 

それは間違っている!

 

どんなに声を荒げようとも聞き入れられる事はないだろう、ならばどうする?

そこで諦めるのか?

 

それとも…行動を起こすのか?

 

 

諦めてしまえば楽だろう、今の内ならまだ自分には何も失うものなどない。信念を曲げ膝を屈するだけでそれまでの生活は守られる

 

行動を起こせば大なり小なり失うものがある。自分の何かか、はたまた周囲の何かか、それら全てか‥‥

 

リスクが付きまとい、それに対する見返りは限りなく少ない。いや‥‥見返りなどないのかもしれない‥‥‥…

 

 

 

 

 

それでも俺は声を上げよう、無様に惨めに地に這いつくばる結果になろうとも最後の最後まで己の正義を貫こう

 

俺は常に俺である

 

 

この肉体は鋼にも引かぬ屈強なものなり

 

 

この精神はただの一度も屈することはない

 

 

あるは夢か幻か、追い求める先が奈落の底でも疾走せん

 

 

生涯に一度の悔いを残さず一生を捧げよう

 

 

俺は正義を求める、俺は自分の過ちを認めない

 

 

墓標に刻むは我が名でない

 

 

俺(正義)は常に俺(正義)である

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

俺の名前は十文字 克人

本校において、課外活動連合会 通称部活連の会頭をしており学外では十士族「十文字家」の次期当主として師族会議に当主代理として参加し、実務をこなしている。

 

自分で言うのもおかしな話だが、将来を期待されそれに答えるよう常日ごろから相応の態度をこころがけ生活しており、そのかいあってか周りからの信頼もあるほうだと自負している。

 

といっても、俺とて一高校生であり鬱憤やストレスを感じる事もしばしばである。そういう時はクロス・フィールド部(魔法戦技によるサバイバルゲームのクラブ)にて体を動かし適度なガス抜きを測っている

もちろん純粋に部活動として好んで参加している

 

心身共に充実しており、現状に満足せず精進を怠らない。勉学でも運動でも結果を出し続け、家でも学校でも重責を担うポストに就き日々せわしない毎日を送っている。

 

そんな俺にはある懸念がある。それは、自分本位であり家も学校も関係ない物だが俺、十文字 克人として到底見過ごすことのできない重大な懸念だ

 

 

懸念内容を語る前に一つ大事な事を知らなくてはいけない。それを知っていると知らないとではこれから話す内容の理解度と重要性が伝わらない可能性が出てくるのだ。

それ故にあらかじめ言っておこう

 

俺、十文字 克人は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロリコンである。

 

 

 

ロリコンとはロリータコンプレックスの略語であり、世代の離れた女子に対し性愛を抱く人々のことであり、本来は成人男性が思春期の少女・幼女に対し性的・恋愛的関心といった性的嗜好を指す言葉であったが昨今では幼児性愛者(ペドフィリア)そのもの、あるいは彼らが好む表象までも含意するようになった。

 

ただ、日本においてロリコンといのは2000年初期、俗に言うモラル崩壊時代の中で意味合いが変化している。

元々は、中年男性が14歳の少女に恋をする物語を描いた小説に出てくる、少女の愛称がロリータだった事に由来している

 

が、現在に至るまでにロリコンが差すのは必ずしも実年齢に比例するものではない。同年代や年上であろうとも見た目が幼ない女性に思いを寄せる者はロリコンとされる。それ故、実年齢があまりにも上な物に対する俗称として『ロリババア』というものもある

 

幼児性愛者とロリコンは実のところ異なり、13歳未満が対象とされる幼児性愛者と比べロリコンは実年齢でいうなら18歳未満、見た目の年齢で言うなら幼ければ制限はなくなる。

つまりは、ロリコンといっても必ずしも異状性癖者や変質者ではないのだ。

 

確かに年端もいかに少女や幼女に対し、性的感情を持ったりあまつさえ行動に移すことなどあってはならない事だがだからといい全てのロリコンがそうであるという風潮は間違っている。

ロリコンといっても俺のように性愛を抱かず、純粋に楽しそうに笑う幼女が好きで純粋無垢な少女達をいかがわしい目的なしで溺愛する人間をも偏見でみないでほしい

 

ここで重要なのは、ロリコンには

己の劣情を向ける変態と友愛や親愛にも似た感情で純粋に見守り続ける紳士が総括されているだ。前者は勿論社会的にも物理的にも存在を抹消してやりたいが後者である我々が変態どもと同じと思われるのは度し難い

 

我々紳士(ロリコン)は決して年端のいかない女子に手を出さない。愛し見守り保護する事が全てである。

もちろん、タイプの女性を聞かれれば迷いなく幼女のような人と言いきるが、仮にそういった女子と縁があったとしてもその女性が成人を迎えるまでは決して手を出さない

それこそが我らの掲げる信念

 

YESロリコンNOタッチ

 

しかし、悲しいかな世の中はそんな我らをあざ笑うように非難と圧政を続け正しい認識を持とうとしない。

そして、象徴的な条例こそがかの悪法、青少年○全育成条例だ

 

これまで幾度の改正を重ね検閲項目は書籍媒体や電子媒体に留まらず、実際に疑惑・問題ありといった者を強制収容することまで拡大し、とりわけロリコンに対する弾圧が強まっている

 

その中にはもちろんロリコン(変態)も含まれているが、紳士(ロリコン)に対する被害も少なかれづ出ているのが現状だ

 

少女たちの純情を悪漢の間の手より守るためならば、我らはいくらでも耐え忍びよう。

しかし、今の現状はあまりにも酷すぎる

 

道で転んだ少女を起こすために抱きかかえただけで通報され、少女と手をつなぎながら歩いただけで職務質問をされ、頭を撫でただけで捕まる・・・

 

こんな事、あっていいはずがない!

 

故に将来的に条例を改正させ、変態には罰を下し警戒を強めずつ少女を見守っていけるそんな世の中にするのが俺の責務であり懸念である

 

これを聞く多くの者に俺は批判を受けるだろう。それでも俺はこの心情を変えるつもりはない

これこそが俺、十文字 克人なのだから!

 

 

 

 

 

 

「十文字会頭はどうお考えなのですか」

 

 

‥‥‥‥‥‥ん?

 

我が信念を思い浮かべている時、目の前にいる司波の一言で現実に戻ってくる

いかん、ついつい思考に溺れてしまい今までの話を聞いていなかった

 

俺に対し何かを聞いているのかは分かるがそれまでの会話を聞いていないのでそれが何なのか理解できない。ここは恥を忍び一度聞き直すか?

 

いや‥‥落ち着け、落ち着いて状況を把握しろ。今は放送室前で中から鍵をかけられ立ち往生してる時だ。

現場には風紀員をはじめとして、風紀員長の渡辺に生徒会から市原も来ている。ここで俺が話を聞いていないという事になれば色々とまずい。恥どころの騒ぎでは収まらんだろう。

 

ならば、自分で答えに気が付き尚且つ、部活連会頭として明確な答えが必要になる

 

放送室の中にいる連中は学校へ不満を持ち対等な立場による交渉を持ち掛けている。そして今俺に問う質問としたらこの交渉を受けるかどうかという事になるだろう。ならば―――――――

 

 

「俺は彼らとの交渉に応じてもいいと思っている。もとより言いがかりに過ぎないのだからしっかり反論しておくことが、後顧の憂いを絶つことになろう」

 

 

一抹の不安を抱えながら答えるが、もし質問の内容が見当違いの物ならば目も当てられんな・・・

 

 

「では、この場はこのまま待機しておくべきと?」

 

 

よし。司波の返しに、とりあえず会話は成立しているようで一安心である。しかし、ここで気を抜くわけにはいかん

今俺がやるべきことの最終は、この問題を解決する事なのだから。それが終わり始めて気を抜くことができる。

 

彼らに対し思うところがない訳ではない。俺とて、世の不条理にあらがう事を決意した身。目的こそ違えど彼らと俺には通じるものがある

しかし、だからこそ彼らのやり方がいかに間違いかが分かってしまう

 

大勢を変えるにはきれいごとだけではいけない。だが、表面上だけでもきれいな言葉を並べなければ民衆の指示は受けないのだ。そのためには清廉潔白である必要がある。敵に弱みを見せず、己が正義だと主張し続ける

 

その点彼らは、放送室の無断使用、マスターキーの強奪などと校則違反はたまた犯罪行為に身を染めている。その時点で彼らの正当性など皆無だ

だからといって、今の時点での被害は少なく実質的に罪に問えるかというと微妙で焦りすぎて無意味な被害を出すのは得策ではない。ふむ…

 

 

「それについては結論しかねている。不法行為を放置すべきではないが学校施設を破壊してまで性急な解決を要する犯罪性があるとも思えない」

 

 

周りの様子を見るに、特に反論はない物と思われる。

いかんな、ついつい気を抜いてしまいあわや公務に支障をきたす恐れがあった。こんな事では条例に改正など夢のまた夢だ、俺もまだ未熟という事か‥‥

 

その時司波はおもむろに電話を手にし、壬生といわれる人物に連絡を取る

 

壬生・・・といえば剣道部の壬生 彩加だろうか?部活道でも色々と注目を集めている彼女がこのような事に関わっているというのは素直に驚きだ

それと、なぜ司波は壬生の連絡先を知っていたのかも少しだけ気になるな。噂では七草のお気に入りで渡辺やほか生徒会役員からも好意的な目で見られているらしいが

 

別にそれで問題があるかと聞かれればないが、一つだけ懸念がある。司波とは数度顔を合わせただけだがそれでも真面目な好青年であるという印象を持てる。そんなところを七草も気に入ってるようだが、他の生徒会からはどう思われているか‥‥

 

市原は今見た所だと、特に敵意もないが好意も人並みといったところ。服部からは揉めたという話を聞くが、本人曰く実力は確かであるとのこと、この事から少なくとも認められる部分があるという事が伺える

 

七草と妹の司波 深雪は言わずもながら友好的であろう

 

そして‥‥問題の中条 あずさ 

彼女と司波の接点に現在の関係性など非常に気がかりである。もし、何らかの行動により彼女に危害を加えようものなら中条 あずさを見守る会 通称あーちゃん会の副会長として黙っているわけにはいかない

 

中条 あずさ

身長は150cm、体重41kg中学生くらいに見える小柄な童顔でイメージ動物はリス、優しい微笑みで多くの生徒から慕われる見かけどおり気弱な小動物タイプ

 

重度のデバイスオタクでありそれを語る姿は生き生きとしており、稀に見せる怒った顔も愛らしい我が校影のアイドルである

 

その人気は生徒会長の七草や九校戦で活躍をしている渡辺にも引きを取らないが、事情により表だって応援することができないが一科二科ともに、ファンは多くあーちゃん会の構成メンバーは非公開活動にも関わらず数十人にわたる

 

基本は見守るだけだが、彼女に対し危険な思考を持ち合わせる輩がいた場合密かに処分を下す事が主な活動だ。

 

今のところもっとも警戒すべき男がこの司波である。我らのメンバーの調査によると司波の持つデバイスに興味を抱きことあるごとに目を輝かせている

だが、司波の方はそれを軽くあしらい茶を濁すことが多々あるらしい。この事から一見問題はないように見えるが今だ警戒は必要だ

 

 

 

それから放送室から出た彼らを一時拘束するも、七草の要望により日を改めて学校側代表と彼らの代表による話し合いの場が設けられることになった

 

 



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入学編35

:名前のない彼らの思い

 

 

放送室ジャックの翌日、一校内はどこかピリピリとした活気に満ちていた。

昨日の事件を受け、生徒会長七草 真由美は立てこもった2科生徒との交渉の末、明日の放課後に彼らとの公開討論会で雌雄を決することとした。

 

それに伴い2科生内では自分たちの支援または討論会の視聴者としての出席を促す活動を行っている。勧誘に署名活動等を行いとにかく数をそろえることで会長に対抗としようというのだ。

 

昨日の話し合いで学校側で参加するのは七草会長一人だけであると事前に通達を受け、こちら側も直接討論に参加するのは数人と通達している。数をそろえる事により相手側にはプレッシャーを与え、自分たちの意志の強さを誇示する目的がある。

 

実際の話、一校の会長にして三巨頭の一人である彼女には並大抵のやからでは太刀打ちできない事だろう。魔法良し悪しだけにとどまらず、カリスマ性や手腕により会長の座に就き、その家系も日本魔法社会のトップ十士族が一つ七草家である。

 

こんな相手に一般の高校生、それも学内では補欠、劣等生などと呼ばれてる我々2科生が正攻法で戦い勝てるわけがないのだ

 

故に我らは万全を期さなければいけない。そのためのまず一つ、学園内でより多くの同士を募る事

数とはこの現代社会において確固とした力である。いや、現代に留まらず古の昔から数とは力である。一人の秀でた者に凡人が対抗するために用意る力こそが数である。

 

特に今回の場合1科生の興味はあまりないと言えるので、強大ではあるが七草会長は実質孤立無援といえる。そこに付け入る隙がある、むしろそこにしか隙なんてないんだろうが考えても仕方ない事だ。

 

凡人にできる事はただ愚直に最善を尽くすだけしかないのだから

 

 

「2科生の皆さん!我々は学内の差別撤廃を目指す勇士同盟です」

 

 

「今朝生徒会長から発表があったように明日は1科生と2科生の待遇について公開討論会が開かれます!」

 

 

「私たち2科生が今の待遇を改善するまたとない機会です。皆さんもぜひ討論会に来てください!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

公開討論会当日

 

討論会が開始しもうすでに数十分の時間が過ぎている。2科生代表と七草会長らはその時間お互いに意見をぶつけ合いそつなく進行を進め、局面はすでに最終段階へと移っている

しかし、そんな雌雄を決する局面に突入する前から勝負の行方は目に見えていた。

 

2科生の代表たちは、それなりにやっていたと思う。部活や普段の生活環境、一科生の素行など限られた時間内で集められるだけの実情を上げたが、結果は惨敗

 

代表らに問題があったわけでもなく2~3年で構成された代表らはあくまで理性的に時に感情的に討論を進めていた。にもかかわらずこのようになったのはひとえに七草会長の手腕としか言いようがないだろう

 

どんな矛もその守りを崩す事かなわず、こちらの盾はいとも簡単に突き抜けねじ伏せる。そんな討論の果ては、七草会長の演説会といえるこの惨状

 

公開討論会は2科生の負けだ。これはどう言いつくろっても変わらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、まだ私達が完全に負けたわけではない。

討論会が開かれることが決まったその当日の夜、私達は一さんに呼ばれそこである計画とこの指輪を受け取った。

 

計画内容は討論会当日の奇襲、3巨頭と風紀員が一堂に集まるこの討論会で一校の戦力の大半を集め、その隙に魔法大学経由のこの国の最先端魔法技術を入手する

 

私の役割は一さんの直々の部下という人たちと共に特別閲覧室までの案内を任されている。

 

 

もしこれが成功すれば魔法による差別の撤廃が‥‥…撤廃が‥‥どうするんだっけ?

あれ‥‥?差別の撤廃になんで最先端資料が必要なんだっけ?確か、一さんが必要だって言って・・・でも、なんでだっけ?

 

 

「壬生!そろそろ合図だ準備を」

 

 

薄茶色の作業負を着た太身の男性の声で我に返る。この人は一さんの部下のブランシュメンバーで、今回の計画で私と共に閲覧室までいき、ハッキングをかける人だ

 

私は今までの思考をいったん斬り捨て、気合を入れなおす。今はこんな事を考えるのではなく目の前の作戦に意識を集中しなければいけない。考えるのはまた、後にしよう

 

先ほどの考えがどうにも頭から離れず渦を巻いている。少しでも気を抜けばどうして?という疑問が脳内の占拠し正常な考えができない

一体どうしたのか、自分の事なのにまるで自分の事ではないようなおかしな感覚だ

 

 

「よし、作戦開始!B隊は体育館に向かい戦力の無力化又は足止め、C隊は侵入後戦闘を開始せよ!その間に我々A隊と学生組が図書館に突入する!」

 

 

今回の総指揮を任された男性が支持をだし、各自がそれぞれに振り分けられた役割に従い持ち場に向かう。

私も、3人のブランシュメンバーと共に閲覧室まで走り抜ける

 

 

考えても分からない、ならば今は自分のやるべきことをやるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、どうしても頭の片隅から先ほどの問いが浮かび上がってくる

私は一体、何のためにこんなことをしているんだっけ‥‥‥…?

 



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入学編36

この間、ナルト・ザ・ラストを見てきました!

いや~感動しました。長い間お疲れさまと言いたいですがどうやら来年にもなんかやるみたいでとても楽しみです!

でも、ジャンプを見ても、もうナルトがないなんて寂しい限りですね・・・





ブランシュメンバーの突入により一校内は乱戦模様に差し替わる。体育館には戦力の大半がいる事より慎重を期し催涙弾を投げ込み、中庭では武装したメンバーと一校生との戦闘が開始された。

こちらには、比較的魔法が強い物を配置し搖動と足止めを経妊している。

 

そして、私達は突入早々に建物の制圧を完了させ私と3人のハッキングに特化したメンバーは特別閲覧室へ向かい、他のブランシュ及び学生メンバーはそれぞれが侵入者の迎撃のため待ち伏せをしている

 

作戦指揮の東郷さんはインカムのスイッチを入れ、指示を出す。

 

 

「こちら東郷、一階の制圧を完了した。それぞれ元場に向かえ、三島と下田は階段の上り口で待機、誰も上に上がらせるな!」

 

 

「「はい!」」

 

 

「階段の上には橋田が待機、一人だが大丈夫か?」

 

 

「はい、大丈夫です」

 

 

「よし!三島達が突破されたらそのまま迎撃、俺と山根、黒田、壬生の3人は2階特別閲覧室に向かう。全員健闘を祈る!」

 

 

「「「「ッハ!」」」」

 

 

私達4人は階段を上り廊下を進む。作戦指揮の東郷さんを先頭に左にハッキングツールの黒い箱を持った山根さん、少し太めの黒田さんが右で三角形を作りその真ん中に私がいるという陣形で行く

 

目の前の曲がり角一つ曲がれば閲覧室までは直進するだけ

 

 

「東郷さん、あそこを曲がれば閲覧室です!」

 

 

「おう!」

 

 

私の声に反応した東郷さんは前を向いたまま返事をし、角を曲がり一瞬姿が見えなくなる。

その時だ、曲がり角により一瞬だけ見えなくなった東郷さんが行きよい良く壁に叩きつけられた

肺から空気が漏れたような鈍い声を発し、そのまま動くなる東郷さんに動揺した山根さんと黒田さんは駆け寄ろうとする

 

しかし、それはあまりに無警戒であり、東郷さんを仕留めた襲撃者がいる状況での行動では下策といえる。

壁に突き飛ばされた東郷さんに駆け寄るという事はその直進にいる者に後ろを見せる事になる。どうやったかは知らないが、恐らく一撃で人一人の意識を刈り取った相手にそんな事をしたら結果は火を見るより明らかだ

 

 

「東郷さ――がッッ!?」

 

 

案の定2人は襲撃者により倒された。

山根さんは胴を一文字に切られ、その勢いのまま黒田さんに強烈な回し蹴りをお見舞し意識を刈り取る

襲撃者は一校の制服に魔法で強化され金色に輝く一本の竹刀を持ち、倒した3人には目もくれず私の方を見ている

 

でも、なんで?なんで彼がこんなところに‥‥

 

 

「よう壬生、こんな所で会うなんて奇遇だな」

 

 

彼はいつもと変わらない風な軽口で話しかける。

しかし、その目は真剣そのもので話しかける時でさえ剣術の構えを崩さずまだ結構な距離があるというのに肌にピリピリと彼の闘気が当たる

 

 

「‥‥貴方がなんでこんなとこにいるのかしら、桐原君」

 

 

桐原 武明(きりはら たけあき)剣術部所属の2年生

勧誘期間で私と対戦し、殺傷レベルBの魔法を使用し、司波君に取り合さえられ謹慎処分になった。

ただ、中学時代関東剣道大会で優勝し、2年生の中でも服部君や沢木君に並び学年トップと目されている実力者である。

 

謹慎はすでに解かれている物の、あれから学校内でもあうこともなかった彼がなぜ今ここにいるのか?

 

偶然やたまたまなどという事はない筈だ。剣術部は魔法系競技のクラブなので活動中にCADを使う事もままあるが、今の彼は制服で剣術部の道着を着ていないしこれから部活をするという訳でもないだろう。にもかかわらず腕には彼専用のの競技用CADが装着され、手に持つ竹刀は高周波ブレードとなりガラスを引っ掻いたような超音波をあたりにまき散らしている

 

見るからに臨戦態勢を整えている姿は、決して彼の言うような奇遇などと言う言葉は合わず、むしろ待ちわびたや待ち受けていたというのが妥当だろう。

 

では、なぜ彼はここで私達を待ち伏せしていたのか‥‥

 

今は、公開討論会真っ最中であり参加するにしても参加しないにしても多くの学生の関心を集めていたはずで、暇な生徒は勿論、部活道に参加したり用事がある生徒以外は体育館かその付近にいる

 

部活をしている者は自分たちの活動場所に行き、用事がある者は早々に帰っているかしてるはずでその他の生徒たちは大体が中庭か校舎内におり、ここにいる者は本当に一握りの生徒だけで、彼のように武装をした人間がいるべき場所ではなというのに

 

そんな疑問もすぐに彼の返答により知ることとなる

 

 

「なーに、ちょっとした野暮用でな」

 

 

「‥‥そんな恰好でこんな場所にいったいどういった用事があるのかしら?」

 

 

会話をしながら彼との間合いを見る。まだ彼との距離は離れているもののより実践的な剣術を使う彼にしたらこんな距離一瞬で詰められる程度で何とも心もとない

何より今現在私自身の戦闘力に問題がある。高周波ブレードは殺傷レベルBとはいえ魔法なので何とかなるはずだ。今回の作戦で事前に一さんらにもらった指輪、希少鉱石アンティナイト 

サイオンを注入することでキャスト・ジャミングの効果を持つサイオンノイズを発振し、魔法を無力化する事が出来、これを使えば高周波ブレードは勿論他の魔法だって意味をなさない。

しかし、問題は魔法だけではなく彼が剣士であるという事、魔法が使えない純粋な剣同士の競い合いなら私に分がある。それはクラブ勧誘の時を思い返しても明らかだ

 

ただし、それはあくまでお互いが剣を持っていた時の場合であり今のように無手状態では到底戦う事はできない

剣道には剣を使わない無手状態で使える技も存在するが私はそういう物が得意ではなくなにより、相手が桐原君ほどの実力者ならそんな技で対抗するなど無謀と言える

 

機動力を重視し、自分の得物を持ってこなかったことが裏目に出た‥‥

 

 

「ある奴からここにいればお前と会えるって聞いてな、この格好もそのためさ」

 

 

CADを見せるように腕を付き出し語る彼の様子から嘘を言っているわけではないようだ。

つまりは事前に私がここに来ることを知った上で武装をしてきたという事。それはつまり私の目的を知っているという事だ。この話どうりなら私達の計画は事前に外部に漏れていたという事になるが、いったい誰が‥‥?

 

 

「…いったい誰かしら?私にはそんな人心当たりがないのだけれど」

 

 

計画を知っていた上に私が配置される場所も知っていたという事は、考えたくはないが情報を漏らしたのはあの夜、あの場にいたメンバーの中にいるという事だろう。一体誰だというのか?

 

 

「名前はなんだったか忘れちまったが、なんか目が腐った風紀員だったぜ」

 

 

‥‥‥‥?

本当に誰だ、私はてっきり剣道部の皆やもしかしたら八君とかを想像していたが風紀員それも目が腐っている人物に一切の心当たりがない

 

そもそも風紀員の9割・・・というか司波君を除いた全員は1科生であり、私達の仲間になるような人はいないだろうし私が知っている人の中にも目が腐っている風紀員など存在していない

 

答えを聞こうと謎は深まるばかりである。

 

 

 



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入学編37

その目が腐っている風紀委員とい人の事は一旦おいておこう。それより今はこの窮地をどう切り抜けるかだ。現状は最悪、先行していた3人はすでに倒されしばらくの間は起きる気配がない。

後方支援も期待薄、先ほど東郷さんが各自に指示をだし持ち場につかせたことによりこっちの方に来ることはまずないだろうし、私が通信をするとか大声を出せば来るかもだけど、目の前の彼がそれを許してくれるとは思えない

 

私自身は、得物がなくまともな戦闘をすることはまず無理

と言うより桐原君はなぜここにいつのだろうか?

私に会いに来たというが、十中八九この計画を阻止しに来たという事で間違いないだろう。でもそれなら、こんな話をしている間になにかしらの行動をしてこないのは少しおかしい気がする。

 

今の状況じゃあ、私の戦力なんて前の3人と同等かそれ以下。彼ほどの腕があれば倒すなり気絶させるなりすればいいのだし、話をするという行為自体がおかしい。

それこそ、こんな有事の最中なら一刻も早く事態の収束に尽力しその後に話なりなんなりすればいい

 

ではなぜ彼は私を攻撃してこないのか‥‥?

 

 

「‥‥‥それで、桐原君?私に何の用があるのかしら」

 

 

考えても答えが出ないので本人に聞くことにした。無論この問いに答えが返ってこない事も想定しているが、とにかく今はどうにかして現状を打破しなくてはいけない。

そのために、少しの隙かそうでなくとも何らかのきっかけが必要なのだ。この問いはそのための問いであり、まともな答えなんかには全く期待していない問答だ。

 

しかし、桐原君はこの問いに真っ当にただただ愚直に答えを返す。

 

 

「そんなの決まってんだろ?馬鹿やってるお前を止めに来た」

 

 

 

単純明快、そんな言葉が今の彼にはぴったりと当てはまる事だろう。学校を襲ったテロリストの排除?秘匿されてるこの国の最先端技術の保護?

そんな些細な事は彼の頭に存在しない。あるのはただ、自分の中に存在する壬生 沙耶香(大事なもの)を止めるそれだけだ。

 

難しい事も複雑な情勢もお構いなしにこの一大事に自分事を優先して一人の少女を止めに来た、それが桐原と言う男が今現在、ここにいる理由である。

 

端から見れば何とも不思議な光景だろう。仮にその少女が恋人とか家族というなら分からなくもないが彼と少女の間にそんな感情はなく、むしろ勧誘期間での一幕で溝‥‥とまでは行かないかもしれないがお互いがギクシャクとしていたことには違いない

 

そんな相手のために危険を犯し、学校や国と言う守るべきものを度外視してまで来たというのだ。これを不思議・・・むしろ随分おかしな行動と言われても仕方ない事だろう

 

だが、そんな行動を犯しているのだというのにその本人には戸惑いも後悔もありはしない。

 

その瞳は余計な感情が一切含まれず、真っ直ぐと一人の少女を映し出している。その表情は以前のようなイラつきをただぶつけるだけの不敵な笑みなど存在せず、まさに一振りの刃を思い起こせるまでにただただ真剣。その姿は一切の油断も隙もない、あの時は突然出現した司波 達也に目にもとまらぬ早業で制圧されたが、今の彼ならそんな事はまずできない

 

それほどまでに桐原 武明はこの場に全身全霊をかけ挑んでいる。

 

 

 

 

 

 

~~~~~回想~~~~~~

 

 

 

それは、まだクラブ勧誘期間が終わりすぐの時だ

俺、桐原 武明はついこの間まで謹慎処分を食らっていたが今日からそれが解け1週間ぶりに学校にやってきた。まず職員室に行き手続きと謝罪を行い、ちょっとしたお叱りを受け謹慎中に書いた反省文の提出を行った

 

その後は、自分のクラスに行きそのまま普通に授業を受け放課後に部活。んで、そのまま帰宅と言うありふれた日常を送っている。

謹慎が解けてからしばらくはクラスの連中によくからかわれたりもしたがしばらく経ったらそれも収まり、普段となんら変わらなくなった

 

でも、俺の心中は穏やかじゃない。それは一年生の2科生にコテンパンにやられたため‥‥ではない。一応言っとくが、俺も俺なりにあの日の事は反省しているし逆恨みで司波のやつを恨むつもりもない。それに俺的に人の評価で重要な事は、1科生とか2科生とかいう事ではない。そんなもん所詮は、入学前の成績だしそれも主に魔法だけの成績だ

 

大事な物は『強さ』これに限る。親父が海軍所属の軍人という事もあり、昔から色んな強い人を見る機会があったし、俺自身いろいろと鍛えられそれなりの実力があることを自負している。その俺から見ても司波の実力は相当なものと伺える

 

単純な体術なら俺なんて足元にも及ばないほどだろう。なんせ逆上してたとはいえ、目の前に現れるまで気がつかづ、認識したらしたで何もできないまま抑えられた。その後も剣術部の連中をことごとくあしらい続け登校してきたときに聞いた噂では、並み居る運動部を連覇した謎の1年風紀委員とか言われていた。

 

1科生にいても大した実力のない連中に比べると2科生だろうと実力のある者は例外なく尊敬している。

もちろん司波もそれに含まれている、本人には絶対言わないがな。俺にも2年としてのプライドがあるんでな

 

じゃあ、何が原因でこうも不機嫌なのかと言うとそれは壬生の事だ。

 

俺が初めて壬生の事を知ったのは中学時代のころ大会で見たのが初めだ。その時見た壬生の剣技に俺は魅せられどうしようもなくきれいだと思った。

 

だが、いつのころからかあいつの剣は変わってしまった。人を斬る俺の剣とは違う、強さを技として昇華しようとしていた剣道が今では、ただただ強さを求めるためだけの物になり代わっている。

確かに中学時代に、去年の壬生と比べればその実力は断然上がっている。それは間違いない

実際に手合せした感覚では、純粋な剣技だけなら俺より断然格上と言えるだろう。

 

それでもだ‥‥以前のあいつの剣の方が俺は好きだった

 

だからこそ無性に腹が立つ、今のあいつの剣は曇っている。

いったい何があったのかなんて知らないし、どういう心境なのかも分からん。だが、これだけは確証を持って言える。

 

今の壬生は中学までの自分の剣技を否定している。技を競い合う剣道からは逸脱した力を求め、相手を斬る剣。それは剣術に近しい物だが決定的に別物だ

剣道とも剣術ともならないどうしようもなく曇った剣技

 

あのきれいな剣が、輝いていた壬生がそんなものに身を染める事に怒りすら覚える

自分を見失い過ちに気が付かない壬生にも、そんなアイツに対して餓鬼のように癇癪を起して喧嘩を売った自分が腹立たしくてしょうがない

 

 

隠しきれないやるせなさで、ついついドアを乱暴に占めてしまい、バンッという大きな音が誰もいない廊下に木霊する

 

 

「桐原先輩、少しいいですか?」

 

 

そんな時だ、誰もいないと思っていたら後ろから声をかけられた。内心相当驚いていたが、顔には出さず後ろを振り向くと一人の男子生徒がいた

 

 

「…誰だお前」

 

 

身長は俺と大体同じか少し低いくらいの中肉中背、顔に見覚えはないが腕にある腕章から風紀委員であると伺える

 

雰囲気的にあまり強そうとは思えないが、声をかけられるまで気が付かなかったことからそれなりの実力があるのではと予想できる。少なくとも気配けしに至っては司波レベルはあるだろう。

 

そして何より印象的だったのはそいつの目だ。なんと言い表したらいいか分からんがこう・・・ドロー、グワーみたいな‥…そう、例えるなら腐った目をしている

 

 

「俺は1年A組の比企谷です。先輩にちょっとお話があるんですが」

 

 

それが俺と目が腐っている風紀委員との初めての対面だった

 

 

 




次回、久しぶりに主人公登場!ただし回想です


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入学編38

人は言う、あの作品はあそこで終わっていればよかった・・・いつまでもグダグダやってんじゃねーよはよ終われ・・・もうさーいいじゃん!やり尽くしたんだしさー終わっとこうぜ?

でも私は思う。世の中にはそんなグダグダが好きな人だってたくさんいるのだ、だから過去編や回想がやたら長くグっだってきてる物でも需要があるのだ!

だから私はここに宣言する!回想はもう少し続きます!すいません。





そういえば、今週のジャン○は4.5月合併号なので来週はお休みなんですよね

ナルトは終わったけどワンピや銀魂など、見どころが付きませんね。
新連載も結構あるし、これからに期待したいですね~
あーあ早くブリー○終わらないかなー




~~~~~回想中~~~~~~

 

「そういやあいつ以外にも一年で風紀員になった奴がいるって話だったが、お前の事か」

 

 

「大変不本意ながら、そうっすね」

 

 

今年の風紀員は2科生(司波)の話題で持ちきりだが、教職員枠でもう一人一年が入っていると風の噂で聞いたことがあったな‥‥

ただ、その噂も司波の武勇伝のついでに渡辺委員長に首根っこ掴まれて連行されてる風紀委員がいるだとかいうレベルでその本人の事はまったくといっていいほど知らなかった。

 

だから正直名前とか言われてもあまりピンとこなかったので一応確認を取ったら、どうやらそうらしい

 

 

「仮にも名誉職だってのに随分な言い草だな」

 

 

「俺的にはどこぞの野郎に無理矢理入れられた仕事なんで、むしろ不名誉です」

 

 

マジ顔でそういってのけるところからすると冗談とかではなく本気でなりたくてなったわけではないようだ。

 

風紀委員は学校の取り締まりやらCADの携帯やら多くの特権が与えられているがその実、内申に直接かかわらず、これといった褒美もないうえ生徒から敵対意識を持たれる完全な名誉職であり普通のやつならあまりやりたがらない仕事だ

それをどこの誰かは知らんが、強制的に入れられたというなら相当な不平不満がある事だろう

 

そりゃあ目が腐っても不思議ではない(元からです)

 

 

「で、そんな不名誉職の風紀員が俺に何の用だ?言っとくが謹慎と反省文はとっくに終わってるぞ」

 

 

冗談・・・といより嫌味交じりな口調で問いかける

目が腐るほど過酷な環境(勘違いです)にいるんだろうが謹慎を食らった身としては処分を言い渡した側に自業自得と言っても思うところがあるのは当たり前なのだ

 

 

「そのこととは別件です。壬生先輩の事です」

 

 

「なに?」

 

 

我ながら壬生の名前が出た途端に目の色が変わったのが分かり何とも言えない感じだ。

 

 

「壬生のやつがどうかしたのかよ」

 

 

「ええ、まあ・・・ここでは何なので少し別の場所で話せますか?できるだけ人の目がないところだといいんですが」

 

 

なにやら言葉を濁し人気のないところに場所替えを提案された。どうやらこれは世間話とかの類ではなく割とマジで真剣な話のようだ。

俺は剣術部に行こうとして昇降口前にいる。今は人通りがないもののいつ人が来てもおかしくはない場所だ。どこのだれが聞き耳を立ててるか分からない場所で内密の話をするというのも気が引ける。現に目の前のこいつが近くにいるにも関わらず気が付かなかったしな

 

ならば場所を変えるという提案は至極真っ当だが・・・俺にはこれから部活があるし、気になっているとはいえ壬生とはなんら関係のない赤の他人だ。その俺がわざわざ壬生の話のために部活をさぼってまで行くかどうかと言われたら答えはNOだろう

 

じゃあ、答えは決まっている

 

 

「分かった。あっちの方に滅多に人が来ない空き教室がある。そこでいいか?」

 

 

「はい、ご足労お願いします」

 

 

「かまわん」

 

 

行くに決まってるだろ、このやろう

どんなことでも壬生の剣が変わってしまった理由に関係があるかもしれないんだ、部活なんぞよりこちらを優先するのは当り前だ

 

関係がない?赤の他人?・・・知るか!

俺は俺がやりたいことをするだけだ。誰かにとやかく言われる筋合いなんてねーだろ

 

 

 

 

空き教室にいく道中、自動販売機でコーヒーを2本購入する比企谷。

 

教室は夕暮れに電気もついていないという事から若干ながらくらいが、特に気にするほどでもない。中を見渡しても使われてない椅子や机があるだけで人の姿は見受けられないが、一応念には念を入れ周りに人の気配がない事を確認する。

すると、比企谷は先ほど購入したコーヒーを一つ差し出したので、ありがたく受け取り口に入れると

 

 

「ブゥゥゥゥ――――ッ!!」

 

 

盛大に噴出した。

 

口に広がるのはコーヒー特有の苦さでも風味でもなくただただ甘味のみだ。とにかく甘い

別に甘さが嫌いと言うわけではないむしろ好きな部類だが、いくらなんでもこれほどの甘さはないだろうというレベルで甘い。冗談とか大袈裟なんてもんじゃねーもっと恐ろしい何かだ。

つーか甘い

 

 

「な、なんじゃこりゃあ!?」

 

 

「何って、MAXコーヒーですよ」

 

 

入学当初の比企谷 八幡は知らなかったが魔法科高校には数多くの販売機が存在する。普通のジュースなんかがでる自動販売機や、生徒会室や職員室にある食事がでる販売機、はたまた教材の販売機なんていう物すら完備されているのだ

 

その中でも普通の販売機は種類がとにかく豊富で、日本全国の飲料水がある。その中でも今買ったのは、普及以来一部の甘党に根強い人気を誇り、2000年代中期にもとから甘い商品を極限まで甘くしたコーヒーとした発売された『MAXコーヒー 極糖』である

 

八幡曰くコーヒーとMAXコーヒーは全くの別物だそうだが、この極糖も普通のMAXコーヒーとは別物といえよう。極糖というほとんど聞き覚えのない表記をされているがその名前に偽りなくただただ甘いのだ。

 

初めてこれを飲んだ時、八幡には電撃が走り好んで飲んでいるようだが、常人であるなら口に砂糖をそのまま突っ込んだような甘さに吹き出してしまっても不思議ではない

 

そんなある種の地雷飲料を無警戒に飲んでしまった桐原は口内に残る甘味に眉を寄せ上げながら、同じものを平然とむしろ嬉々として飲んでいる比企谷に視線を向ける

 

 

「‥‥お前よくそんなの飲めるな」

 

 

「好物なんで」

 

 

「あっそ‥‥‥」

 

 

手に持つまだ中身が残っているコーヒーを机の上に置き改めて比企谷に向き直る。

無論の事だが今置いた物をこれ以上飲むつもりはない。というかあんなもん飲んでたら病気になるわ!

 

 

「前置きはいい、用件だけ言えよ。壬生の話ってのはどういう事だ?」

 

 

「壬生先輩がおかしな連中と怪しい事をしています。俺はその調査のために色々と聞きまわってるんですよ」

 

 

「なんだと?そりゃあ――――――――」

 

 

「壬生先輩の剣技、中学時代と随分変わったそうですね」

 

 

一見、前後の会話に関係性があるようには思えないが告げられたその一言に桐原はピクリと肩を震わせる。

 

本来なら脈略がなく聞いた人間は?マークを頭に上らせるだろうが、桐原にとりその言葉は頭の中で容易につなげる事が出来た

 

中学時代から変わりただ強さを求めるだけの剣におかしな連中。これだけでこの2つに関連性を持つなんて安直にもほどがあるが、今の桐原からすればそんな安直でも壬生が変わった要因かもしれないのだ。飛躍でも深読みでもしてしまうのは人の性という物だろう。

 

 

 



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入学編39

やったー(^O^)/回想が終わったどー!!

やっと本編に戻れます!


俺、比企谷 八幡は司波の言った壬生先輩の剣技が変わっただのなんだのという話を参考にエリカを始めとしたそっち方面に詳しい人に聞きまわりある真実に気が付いた。

 

壬生先輩の剣技が変わった正確な時期は高校入学から数日たってから、当時の剣道部顧問によるとある日突然苦虫をつぶしたような表情で鬼気迫る勢いで剣を振るっていたらしい

入学したてで2科生という事もあり何らかのやるせない事情でもあったのだろうと静観していたらいつの間にかそうなっていたけど、まあ、剣道の腕自体は上がっているしいいかと放置していたそうだ

 

さらに、当時から部に所属はしてないもののその剣の腕は有名だったという渡辺委員長にそれとなく聞いてみたら壬生先輩が変わったという日から2日ほど前に手合せを申し込まれたが

 

魔法なしでの私では練習相手にならないからもっと自分の実力に合った人とやったほうがいいと断ったそうだ

 

そして以前壬生先輩が言っていた、入学当初に2科生という事で私の剣を否定されたという証言

 

これらをもとに考えると

これって壬生先輩の被害妄想なんじゃねーの?という結論に至った

 

いや、ありえないと思うかもしれないがこれ以外に壬生先輩の周りで何か起こったとかなかったし壬生先輩の2科生だからって自分を否定したってのがたぶん委員長の事だろ?

 

これだけ聞くと壬生先輩の一人相撲なのだが忘れてはいけない事がある。それは壬生先輩と渡辺委員長が女子という事だ

 

ここで一つ中学時代の話をしてやろう。

その日俺は珍しい事に女子2人と朝から話をした。内容は特に中身がないようなもので俺自身何を言ったか今では覚えてないくらいの極普通の会話だった

 

その日の放課後、俺は忘れ物をしていつもは帰ってる時間に教室に戻ってきた。そうしたら中からあの2人の声が聞こえ

 

 

「つ~か比企谷、絶対カヨッチに気があるじゃん」

 

 

「ちょっとやめてよ~そういうの」

 

 

「だって朝だってカヨッチの事しきりにかわいいとか言ってたし」

 

 

「‥‥ほんとにやめてよ・・・」

 

 

その次の日なぜか俺はただ一人黒板の前に立たされ、その周りを同級生がぐるぐると囲み「しゃーざーい、しゃーざーい」と手拍子とともにシュプレヒコールを上げたあの地獄が発生した。

言っとくが俺がカヨッチにむかって可愛いなどと言葉を言ったことなんてないからな?

だから、そんな涙目で睨むなよカヨッチ‥‥あれは本当にきつかった。後にも先にも学校で泣いたのはあれだけっだた。

 

何が言いたいかというとだな、女子が2人で話をしてると過去に起きた出来事が良くも悪くも改変され、あたかもそれが本当にあった事のようになる。

だからあれだろ、これも壬生先輩と委員長の間で話が美化やら劣化やらしたんだろどうせ

 

そうとわかれば話は早い‥‥こじれてしまった人間関係を引きずっているならそんなもん捨てて新しい関係を作ってしまえばいい

 

 

 

 

 

そして今、俺は桐原先輩と対峙している。

その理由は、壬生先輩と関わる人間でちょうどいい人を探してるからだ。条件としては同じ学校で同級生か下級生、先輩と話があう・・・というか強い奴か剣が武道でもやってればいいだろう。

 

以上から条件にヒットする俺の知ってる奴らが、司波、エリカ、レオ、森、そして桐原先輩

風紀委員に所属してるメンバーは無論のこと除外されるので司波がアウト

エリカは特に問題はなが、俺があいつの事を苦手にしてるからできるだけ話したくないので後回し、レオは知り合いだがぶっちゃけよく知らんので保留

森は問題外なのでアウト。理由、そんなの必要か?

 

そんで今、桐原先輩だ。この人も以前もめ事を起こしてるけど壬生先輩の方が気にしてないので大丈夫

ちょっかいを出してきたんなら、壬生先輩の事をよく思っていないのではとも思えるがそもそも嫌いなら関わりすらしないだろう。好きの反対は嫌いではなく無関心である

 

何より部活の時間帯に壬生先輩の話を持ち出しただけでついて来た時点で問題はない

どうせあれだろ、小学生がやる好きな子にちょっかい出すガキ大将かなんかなんだろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どういうことか詳しく話せ」

 

 

どうやらビンゴのようで先ほどの一言で明らかに雰囲気が変わった。どういう意味かは分からんがこの人が壬生先輩に好意を持っているのは明らかだ

 

 

「謹慎中なので知らないと思いますが、剣術部のごたごたの後に司波が魔法による奇襲を幾度か受けましてね。調べて見た所その主犯は剣道部にいるらしいんです」

「で、そいつと壬生先輩は学校外でなにやら怪しげな連中と行動を共にしているんです」

 

 

「おい、ちょっと待て!なんか割とヤバい事を平然といってねーか?」

 

 

「まあ、やばい感じのやつらとつるんでるんで常識的にやばいでしょうね」

 

 

「そっちもだけど、司波が魔法使われたってッ」

 

 

多くの場合、桐原と言う人間は誤解されがちだが彼は割と模範的な生徒であり、剣という凶器を普段から使っている事で武力をもつ者としての意識をしっかりと持っている。それゆえ、魔法そのものに関する取り扱いもしっかりしている

 

軍人の息子なのでそれ相応な事がない限り校則違反などは侵さないし、そんな事を平然とやる人間に対し怒りを覚える事も多い

特に人の評価基準が強さである彼にとり正面からかなわないからと言い後ろから攻撃するような奴らは万死に値する

 

どこぞの自分のちんけなプライドを守るために入学早々に問題を起こした奴とは違うのだ

 

 

「…まあ、なんやかんやで実質的な被害はないんで、それにどれもこれも殺傷性Bランクの魔法よりは危険じゃないんで」

 

 

「グッ・・痛いところを・・・」

 

 

と言っても今回の事でいうなら彼もそんな奴らとたいして変わらないのが現状だ。

いくらその理由が、自分の気に入った剣技がいつの間にか歪にゆがんでしまったという強さの信奉者的に一大事であろうとも結果は同じである

 

 

「話を戻しますが、どうやらそいつらと壬生先輩の付き合いは1年のころかららしいです」

 

 

「1年‥‥」

 

 

彼女の剣技が急激に変わってしまったのも彼女が1年の頃からである。ここまでの流れからそれらには関連性があるというのは明白だ

頭の中ではそいつらと壬生の関連性やら、壬生の剣を汚染した奴らなのではという疑問が渦巻く桐原であったが、そんな時目の前の男は桐原に分からない程度に口元を釣り上げる

 

その顔はまさに餌に食いついた得物を見るような顔だ

そして、おもむろに彼は語り始める

 

 

「しかし、困った事になりましてねー」

 

 

「あん?」

 

 

「いやですね?実はこの事実は今のとこを俺しか知らないですが、どうやらそいつら近いうちに一校に何かを仕掛けるつもりみたいなんですよ」

 

 

「なっ!?」

 

 

「多かれ少なかれ被害が出てしまう可能性があるので、学校側に報告しないといけないと思うんですが‥‥そうすると、関わっていた一校の生徒にも罰があるのは当然ですよね?停学・・・いいやもしかすると退学になる可能性も少なくはないですよね?」

 

 

その言葉に反応するように桐原は八幡の胸倉を勢いよくつかむ

 

 

「てめぇ‥‥」

 

 

「別におかしな話じゃないでしょ?学園の風紀を乱そうとしてる奴らにはそれなりの罰則があるのは普通だし、風紀委員がそんな連中を取り締まるのに何か問題でも?」

 

 

確かに言っている事は極々普通であり真っ当な意見だ。自分もそうだったように過ちにペナルティーが付くのは当り前だし、桐原も頭の中ではもちろん分かっている。

 

‥‥その相手は自分が羨望し尊敬し憧れた惚れた女だ。抑えられない感情が出てしまっても仕方がないだろう。

しかし、現状から桐原自身にできる事なんてあるだろうか?

あるかも知れないが、それはあくまで一高校生ができる範囲であり多少腕が立っても大人数相手にヒーローのように学校全体を守るなんて事できるはずがない

 

なら事前に学校側に報告すればいい、そうすれば少なくとも万全の状態で事に当たれるだろう。

 

でも、そうすると壬生はどうなる

唯でさえ強さに固執した今の彼女がもし退学になんてなったら‥‥?今度こそ彼女の剣は死んでしまうかもしれない。あんなにきれいな『強さ』が死んでしまう‥‥そんなこと認められるわけがない

 

だが、自分にできる事なんてごくわずか、故に桐原は八幡の言葉にこたえる事ができない

胸倉をつかむ手は先ほどよりも力強く、その表情は自分の無力さとやるせなさから酷く歪んでいる。

でも、何も言うことができな

 

 

しばらくの間沈黙をつきとおしてる桐原に向かい、八幡はまるであざ笑うかのように言い放つ

 

 

「しっかし壬生先輩も馬鹿ですよね。せっかく剣道で強いのにそんな奴らと関わった挙句退学なんて、いやまだ退学と決まったわけではないですけどね」

 

 

「‥‥ろ‥‥」

 

 

「まあ、それもこれも自分でまいた種なんで同情の余地があるわけじゃないけど人生を棒に振ってまで何がしたいやら‥‥理解できないなー」

 

 

「や‥‥ろ‥‥」

 

 

「剣道もなんか随分と無様に変わったそうじゃないですか、まあ、俺は剣道とか知りませんけどーそれとも元から大したことなかったんですかね」

 

 

「やめろ‥‥」

 

 

「剣術小町だのとちやほやされても所詮はその程度って―――」

 

 

「やめろって言ってんだろ!この野郎がぁぁぁ――ッ!!」

 

 

咆哮と共に右拳で力いっぱい殴りつけると、八幡は机や椅子を倒しながら吹っ飛ぶ

倒れている八幡に馬乗りになり今度は両の手で胸倉をつかみ顔の目前に引っ張り上げる

 

 

「てめーに壬生の何が分かるって言うんだ!あいつはな、あいつの剣技はそんな安いもんじゃねーンだよッ何も知らねーくせに好き勝手言ってんじゃねー!!」

 

 

八幡は殴られる寸前に魔法による防御と衝撃の軽減を行っていたので実際にダメージは少ないが、痛い物は痛いので顔を顰め目の前で鼻息を荒くする鬼のような桐原に内心ビクつきながら平然を装い言う

 

 

「ッハ‥‥それじゃあそういう先輩はなんなんですか?壬生先輩が変わるまで異変に気が付かず、終いには一方的に喧嘩を売って、今度は何もせずただ見てるだけですか?」

「知ろうが知るまいが、何も行動できないんじゃ変わらねーンすよ。守ることも救うこともできずに何もせず吠えてるだけなら犬にでもできる」

 

 

「‥‥‥‥上等だ、ならやってやらー」

「学校の事なんざ知るか!誰も守れなくても誰かに被害が出ようとも知らん!すべてを捨ててでも惚れた女一人のためになんだってやってやるよ!」

 

 

今度は桐原にも分かるくらいに口元を引き上げる八幡

 

 

「その言葉に二言はないですね?」

 

 

それに肩で息をしながら目を見開き答える桐原

 

 

「ああ!桐原 武明の17年間の人生にかけて嘘偽りはねー!あいつの事は俺に全部任せろ!」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~回想終了~~~~~~~~~

 

 

 

 

資料室に連なる廊下の中、桐原と壬生はお互いに構えたまま対峙している

 

 

「随分なものいいね」

 

 

「事実だろ?それともお前は今自分がやろうとしてることが、どういうことか分かってねーのか?」

 

 

「ッ・・・」

 

 

「壬生、俺は全力でお前を止める。別に悪い事してるからとか一校生だからとかって理由じゃねー‥‥俺は今のお前が気に入らねーだから止める。例え今あるお前の思いをぶっ壊してもだ」

 

 

そういうと桐原は自分の持っている竹刀とは別の刀を壬生の足元に投げ渡す

 

それに壬生は一瞬目をやり嫌疑な顔つきで桐原に問いかける

 

 

「どういうつもり‥‥‥?」

 

 

「いったろ?お前を止めるって‥‥俺達は剣士だ。なら剣士を止めるには剣を用いる。本気でかかってこいよ壬生‥‥魔法は使わねー、純粋な剣技のみでお前をブッ飛ばす」

 

 

 



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入学編40

新年あけましておめでとうございます!

今年も皆さまよろしくおねがいします。

それでは記念すべき40話お楽しみいただけると幸いです




油断なく刀を拾い上げ、目前にいる桐原と対峙する壬生の瞳は先ほど打って変わり迷いと困惑に支配されている。

 

本来ならば、同等の実力を持った者同士が戦う時に勝負を決める際たる要因は武器にある。魔法なら魔法式の干渉規模と展開速度が同じように構成された魔法を同時に撃った場合、環境的要因が重ならない限りはぶつかり相殺されるだろう

 

だが、お互いが違うCADを使用した場合、この結果を覆せる。スペックが異なる物を使えば、両方が同じ力を入れて魔法を撃ってもその威力は変わり、本来拮抗するはずの力はよりハイスペックの方へと傾く

 

それは何も魔法に限られたことではなく、世の中の物の大抵がそうだろう。車のエンジンにパソコンのハード、競馬の馬、サイヤ人とスーパーサイヤ人、銃の口径、刀の切れ味などなど

 

今回であるなら剣の技量は壬生の方が勝っており、使う獲物も刃が入った本物の刀と竹製の竹刀

この状況でも桐原の得意魔法である高周波ブレードを使えば、竹刀とて刀と対峙することが可能だ。むしろ、凡庸性があるぶん桐原の方が有利ともいえる。

 

しかし、桐原は魔法を使用しないと言い、実際に壬生と対峙している今も魔法を発動させようとしない。これでは、唯でさえ技量が劣る桐原が勝つ事は不可能に近い

 

いざ、戦いが始まれば何の補強もされていない竹刀は一刀両断にされ、桐原自身も下手をすれば死んでしまうレベルの傷を負うことは必死

桐原に勝った壬生は自分の役目を遂行しようとするだろう‥‥

 

 

「‥‥‥」

 

 

でも、実際の彼女らは今も睨み合ったまま動こうとはしない。不利な桐原が期を狙うのは当然だが、有利で時間的余裕も少ない壬生が動かないのなぜか

 

それは単純に覚悟の問題である。

確かに、今の状況は壬生の圧倒的有利で真剣での立会や殺し合いならまず負ける事はない。それは勧誘期間での顛末から見ても間違いない。しかし、考えても見てほしい

 

 

これは殺し合いか?

 

 

壬生の目的は最初から最後まで魔法による差別撤廃であり、この行動も全てはその目的を成就するためと司 一より言われて実行した事だが、彼女自身は人をむやみに傷つけるつもりなどないのだ

 

だから目の前に敵が現れたとしても、真剣で切りつけるなんてこと進んでするはずがない。

 

達人は真剣を振り回す素人相手に木の棒で勝ってみせると言うが、それは両者の間に明確な実力差があるからできるのであり、桐原のように自分とほぼ同じ実力を持った者を相手どり傷つけないように殺さないように立ち回る事なんて今の壬生には不可能だ

 

桐原とて、自分から渦中に潜り込んできたのだ。それなりに覚悟を決めているだろう。もしかしたら死ぬ覚悟すら決めてきたかもしれない。

 

でも、だからと言って、相手に死ぬ覚悟があるから殺していいなんて事にはならない。

さらに、下手に手加減をすれば今度はこちらが負ける。何度も言うようだが、多少の誤差はあれど桐原と壬生の実力はほぼ互角、一瞬の気の緩みでも命取りに違いない

 

といっても目的の部屋にはこの廊下を渡る以外に道はないし、廊下としては広い部類だろうが剣の立会いには若干狭いこんな場所で、目の前に佇む闘気を振りまく彼をやり過ごすなんて事は到底できないだろう

 

故に、圧倒的に有利であるはずの壬生は自分から攻撃できないでいる。漫画や小説での剣同士の切り合いは、幾たびの剣劇や必殺技の応酬とかやたらと派手に見せているがそんなものはフィクションであり現実はそう甘いものでもない

 

この戦いもあの時のように一太刀で勝負は決まる。迷い手加減をすれば自分は負け、目的も果たせず最悪の結果が残る。意を決して本気で斬りにかかり万が一にでも桐原を殺してしまえばなお最悪‥‥

 

そんな悪循環の中、壬生の動きは完全に封じられていた。このまま時間が過ぎれば、外で暴れている連中を取り押さえた風紀委員たちがやってきてこの事件も終わる

ここまで考えたうえで、壬生に真剣を渡した桐原はまさに策士と言えよう

 

 

しかし、この桐原は残念ながらそんな面倒な心理戦など意に介さない戦士であり決して策士ではない。正直なところなぜ壬生が攻めてこないのか不思議で仕方がないのだ

 

というより何も考えずに相手に真剣を渡し、自分は竹刀で戦うとかただのバカではないだろうか?

 

 

「どうした壬生、来ないのか?」

 

 

これは桐原のただの質問であり疑問だ。しかし、彼の心根をしらない壬生からすればこの問いは自分への挑発にも聞こえてくる。

 

歯ぎしりをしながら桐原を見る目をより一層鋭くし、内心では舌打ちをしていた

その頭の中には苛立ちとは別にどうしようもない疑問が残っている。

 

どうして彼は私の邪魔をするの?

彼は言った

自分の目的は私を止める事で、それ以外には興味がない、今の私が気に入らないから止めると

 

1年前は、あの人に2科生であると自分を否定され、今度は私自身が気に入らないから否定される‥‥なんで?どうして私はこんなにも否定されなきゃいけないの‥‥?

 

私はただ、自分が今まで積み上げてきた物をつまらない理由で否定されないために、ただそれだけのために頑張っているのになんでみんなして私の邪魔をするの?

 

 

「どうして・・・?」

 

 

気が付いたら声が出ていた

それは私がずっと思い続けてきた疑問

続けてきた努力を、積み重ねてきた実力を、なぜ一つの事が不得意と言うだけでそれら全てが否定されなきゃならないのか、この世界の不条理に問いかける疑問

 

 

「どうして私を否定するの‥‥?ただ、私を私の剣を認めてほしいだけなのに‥‥だから、こんな事もしているのに‥‥渡辺先輩も司波君も桐原君もどうして否定するの!私の何が気に入らないって言うのよッ!」

 

 

それは、悲鳴にも似た声で今にも泣きそうな顔で告げられる答えを持たない問いかけ

壬生 沙耶香の心内を曝したような歪に折れ曲がった気持ち

 

今の彼女にあるのは、人為的に作られた記憶の摩擦によりできた困惑だ。本来の目的を見失い、自分で正常な判断を下せない彼女にできる精一杯の理論

 

経緯を知っているものが聞けば気が付ける矛盾

しかし、今の彼女にはその矛盾がどうしようもなく正常に思えて仕方がないのだろう

 

糾弾するようにすがるように出される彼女の言葉に桐原はそっと目をつむり、数秒の後に壬生の目を見つめ返し静かに、それでいてどこか熱を感じる声で言う

今から言う言葉は測らずして、ある男が多用する言い回しに酷似するが彼がそれを知るよしはない

 

 

「これは、俺の知り合いの話だ」

 

 

突然、何かを語り始めた桐原に疑問の目を向ける

 

 

「‥‥何なの突然?」

 

 

「黙って聞けよ。‥‥これは、俺の知り合いの話だ

 そいつは昔から強さってのに憧れてたんだ。親父が海兵をしていて、その関係で餓鬼の頃から周りにいる大人は百戦錬磨の強者達、そんな環境で育った男は単純にその人たちがかっこいいと思った」

 

「時間がたつにつれその思いは育ち続けやがては自分も彼らのような強い大人になりたいと思い立ち、親父に頼んで稽古をつけてもらってた。そのかいもあり実力は確実に上がり、ある時、剣術と出会ってそれからは、ずっと剣で強くなろうと寝る間も惜しんで自分を鍛え上げた」

 

「そして中学生になって出た大会で男は関東で最強となった」

 

 

ここまでの話で壬生はすでにこの話してる人物が桐原自身であるという事に気が付いている

自分もその大会に出て惜しくも優勝は逃したものの全国2位と十分な成績を残しているし、大会に出場して表彰台の上に立った人たちの事は男女関係なく覚えている

桐原は関東大会優勝とその実力は当時から、抜きんでていたし一校に入ってからも剣道の自分と比較されてる剣術の桐原の事はそれなりに知っているのだ

 

 

「強さの証明、今まで積み重ねた努力の成果、それらを前にして男に中にあったのはなんだと思うよ?」

 

 

「分からないわよ‥‥それは私が今、ほしい物そのものですもの‥‥以前はそんな思いも経験したでしょうけど、忘れてしまったわ」

 

 

喜び、うれしさ、誇らしさ、予想できる答えはあれど本当の意味でその答えを言うことができない。

忘れたなんて嘘だ。剣道を始めた事、初めて勝った事に負けた事、大会に初めて出た時の事、一昨年の全国大会で2位になった事、その時に感じた喜びも悔しさも全部覚えている。でも、今の自分にそれを思い出すことは苦痛でしかない

魔法と言う異能の力を持ち、だがその力はあまりに貧弱。

それだけで自分を評価されることがたまらなく悔しく、ついには忘れてはいけない思い出に蓋をした

 

そんな自分が語るには、彼の言う‶男‶はあまりに眩しい存在だ

 

 

一息の間を置き語る桐原はの顔は、あまりにもうれしそうでいて、なにより幼い

まるで年端もいかない少年がテレビの中のヒーローに憧れるような羨望

 

しかし、そんな表情で語るにはその内容はあまりにも不自然だった。

 

 

「きれいだ」

 

 

「きれい・・・?」

 

 

「ああ・・・男の中にあったのは大会に出てたある一人の剣士の姿だ。そいつの剣は俺の振るう剣とは全くの別物で、その在り方は敵を倒すのでもましてや殺すのでもない。技を高め合う純粋な剣道だった」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「おしくも優勝こそできなかったが、優勝した奴よりもそいつの剣に尊敬と憧れを抱いた。

 それまでは大会で優勝することが強さの証明で自分の全てだとか思ってたが、実際には違った。本当の強さってものを俺はあの大会で知ることができた」

 

 

すでに桐原の話は本人も一人称が俺になっているし、本人の話と言う事に違いはない

そしてまた、彼の話すその剣士の事の正体も気が付いている。

でも、頭ではそれがうまく処理できない

 

 

「だから、俺は許せねー‥‥そいつがどうなろうとそいつの人生だし本人の勝手だろう。でもな、俺があの時認めた強さの体現者が訳の分からねーことで自分を見失ってる姿は気に入らねー!」

 

 

その咆哮はまるで野獣のように荒々しく常人であれば確実に恐怖を抱く、それほどの迫力を曝しだしている

 

 

「そんなの嘘よ!貴方だって私を差別してたはずよッ魔法が使えない私を馬鹿にしてきたはずよ!」

 

 

「‥‥否定はしねぇよ、魔法がどうこうは関係なく俺は今のお前にいい印象なんて持ってねーしな。でもな‥‥」

 

 

勧誘期間の時のことだってそうだ、あの時も桐原はあそこまでやりすぎるつもりはなかった。

ただ気に入らなく、むしゃくしゃしてまるで小学生のようにあたり散らして立ち会って負けた

そのことに対して悔しさがあったもののそれだけだった

 

魔法を使った決定打は壬生の言った実戦ではという言葉

技を競う剣が、それを使う強くきれいな彼女がそんな事を口走った

ショックを受けて落胆して無性に苛立ち魔法を使った

 

そんな今の壬生を否定している

差別でもないし、馬鹿になんてしていないが桐原は壬生の事を否定しているのだ

なんせ彼は、この学校中で一番に

 

 

「俺はお前を誰よりも認めてる」

 

 

「ッ!」

 

 

その言葉は先ほどの咆哮と比べれば小さな声

でも、それは今まで彼が発した中で一番響きわたる言葉だった

 

心臓の鼓動がとても速い

うるさいくらいにドクドクと鳴り止まない

 

 

「話は終いだ‥‥行くぜ」

 

 

あまりにも真っ直ぐな瞳に真剣な顔つき、構える姿は一瞬の隙もなくとても静か

それとはあまりにかけ離れた荒々しい闘気に癖のある声

 

 

「これが、俺の全力だ」

 

 

その瞳に映るのは、私

瞳に反射する自分の姿は、まるで別人ではないかと疑うほどに滑稽で醜悪だ

 

向けられる剣先から伝わるのは強い意志と覚悟

そこには侮辱も嘲笑などはありもせず、私を認めてくれたこの人の思いが伝わってくる

 

 

ああ‥‥ああ‥‥

 

本当に馬鹿みたいだ

 

 

私がほしかったのは差別のない世の中なんてものじゃない

私はただ、自分一人を認めてくれる理解者がほしかっただけなんだ

 

そして、その人はこんなにも近くにいたんだ‥‥

 

 

 

 

 

 

一瞬の静寂、剣を構える2人

 

向き合う2人は何の合図もなく同時に駆け出し、自分の全力を乗せた刀を振るう

 

乾いたような音が廊下に木霊した後、向き合ってた2人は今までいた位置とは反対になり互いに背中を向けあっている

 

今なら閲覧室までの道には何の障害も存在せず、壬生は駆け込めば容易にたどり着くことができる。

でも・・・壬生はその場を一歩も動こうとはしない

 

一方の桐原も、壬生を止めようとせずその場に立ち尽くす

そして、その腕の部分の制服は出血により赤く染まる

 

 

やがてガシャンと金属が落ちたような音が立つと、壬生は利き腕をもう片方の腕で抑え込みその場で膝をつく

 

 

「‥‥私の負けね」

 

 

「ああ、俺の勝ちだ」

 

 

壬生の頬には一滴の涙がおちるが、負けを宣言したその顔はどこか清々しい

桐原は、噛みしめるように己の勝利を認める。その顔はとても優しく、彼女を見つめ声をもらす

 

 

「ああ‥‥‥やっぱりお前はきれいだな」

 

 

こうして2人の剣士の戦いは幕を閉じた

勝者と敗者がいるにも関わらず、両者はまったく別だが同じように微笑んでいる

 

 

 

 

 



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入学編41

皆さま久しぶりです、投稿再開しますね~

これからやっと主人公が活躍ですよ!

でも、今回の話に主人公は出ません


前代未聞と言える魔法科高校襲撃事件は、意外なほどにあっさりと解決した。

 

襲撃側実動部隊の壬生 沙耶香他3人が桐原 武明に敗北し、これ以上の作戦遂行が困難であることからこれ以上の作戦続行は無意味である。

 

さらに、風紀委員ほか一般生徒による抵抗でブランシュメンバーと学生の協力者のほとんどは拘束されるか戦闘不能まで追いやられた。

なので、残るメンバーは直ちに撤退を開始したのだった。

 

しかし、その時にはもう風紀委員による非常線が張り巡らされ逃走を図ったブランシュメンバーの過半数はその場で拘束された。

 

また学生協力者のリーダーであった司 甲も学校から逃げ出そうとしたところを風紀委員によって捕まり、残りの学生協力者は全員お縄となった。

 

その時、風紀委員長である渡辺 摩利がいささか褒められない特技を披露したりしたが非常事態のため特に問題になることはなかった。職権乱用とはまさにこの事である

 

今回の魔法科高校襲撃には日本に存在するブランシュの多くを投入した一大作戦であったため失敗した今では大幅な戦力ダウンという結果だけが残る

 

 

 

 

襲撃失敗の旨は、拠点として使用してる廃工場に届き、それを聞いた司 一は相当に取り乱していた

 

 

「なぜだッなぜだッなぜだ――!!計画は完璧だったはずなのに、なんでこんな事にッ!」

 

 

何を持って完璧と言う言葉が出るかは分からないが、髪をかき乱して、あたりの物を力任せにまき散らし、ヒステリックに騒いでいる。

 

その光景は、お世辞にも組織の長が見せるような姿ではなく、一言で言うなら見苦しい様である。いっそのこと無様と言ったほうが正しいのかもしれない

 

仮にこの姿を壬生を始めとした学生たちが目撃すれば、かかっている催眠も解け一斉にドン引きする事だろう

 

 

「クソがクソがクソがッ!あの役立たずの餓鬼どもがー!!」

 

 

うん、本当にドン引き

 

 

 

しばらくの時間を置き、落ち着きを取り戻した司 一は、即座に頭を回転させこれからについて考え始める

 

まず、今回の作戦失敗で多くの仲間に協力者を失う事となり

その際に彼らが所有していた武装に、貴重鉱石であるアンティナイトも戻ってくることはない。

これだけの失態でも相当の金額が無駄となり、失った人員も含めると再度作戦を行うにも相当の時間がかかる。

 

さらに、この失敗を受けパトロンからの援助はなくなるだろう。そうすると自分はブランシュ本部からの制裁を受ける可能性が高い。むしろ確実に粛清される‥‥

 

捕まった者達からここの場所もすぐに割れ、いつ警察なんかが押し寄せてきても不思議ではない。そうなった場合、今ある戦力だけでは敗北は確実

 

作戦に数十人に、連絡に数人、持ち出された極秘資料の運搬と、追手のかく乱にも少なくはない人員を配置している。

結果、拠点であるこの廃工場には現在碌な戦力はない

 

自分を含めても10人にも満たない。連絡や運搬に使うはずだった人員は作戦失敗と同時にすぐに戻るように指示を出してあるのであと20分もすれば戻るだろう

 

あまり期待はできないが、襲撃に行った実動部隊の連中も少しくらいは逃げおおせる事ができるかもしれない。そうするとさらに人員を確保できるが、問題は彼らが戻る前に警察なんかがこちらを襲撃した場合だ

 

今いる10人では、国家権力を相手取るなんてことはできないしそもそもそんな危ない事やりたくない。

 

では、ここを放棄して逃げ出せばどうだろうか?

 

 

駄目だ。今逃げてもどっちにしろこのままじゃ粛清される。

逃げるとしてもいい訳ができる何らかの成果を上げなくてはならない

 

といっても極秘資料の持ち出しができない今、そんな成果と言える物なんてありはしない。勧誘した学生も今は一人もいない、それにたかだか学生の1人や2人手見上げにしても‥‥

 

いや待て

 

そうだ!いるじゃないか、ちょうどいい手見上げが!!

 

司波 達也

彼の使うアンティナイトを使用しないキャストジャミング、それさえ持ち帰れば粛清は免れるだろうし、うまくいけば今回の失敗がチャラになるかもしれない!!

 

それほどまでに彼の持つ技術には価値がある。

 

彼を誘拐、もしくは洗脳できればこの危機的状況をどうにかできる!!

 

だが・・・一体どうやってするのか?

こちらから出向いて誘拐なりするにはリスクがデカすぎる。そのころには警察も確実に動いてるだろうし間違いなく捕まる。

 

報告では司波 達也は武術の心得がありそれも相当な実力だという。そんな相手を誘拐なんてできるだろうか‥‥

 

やはりイビルアイで洗脳したほうが確実だ。何もこの非常時に危険を犯す必要もない

 

 

「ほ、報告します!」

 

 

考えを巡らせていると、部下の一人が声を張り上げながら走ってくる。

こちらは今、重要な事を考えているのにそう騒がれては考え一つまとまらない

 

 

「ッチ、なんだ!」

 

 

「今、一校の監視をしている者から連絡がありました!現在一校から学生が数名のった車が一台こちらに向かってやってくる模様」

 

 

「何?」

 

 

その報告を聞き、いぶかしげに眼を細める

 

こちらの居場所は‥‥まあ、捕まった奴らから聞き出せるだろう。でも、なぜだ?

普通なら、テロリストの本拠地に学生らがやってくるはずはない、そもそも警察が来るまではおとなしく校舎の中で待つ物だろう

 

というよりも先ほどから警察がやけに遅い

てっきり、襲撃失敗からすぐに一校から警察に連絡が行っているものだと思っていたが、通報を受けたのだとしたらもう一校についてもおかしくないはずだ

 

そのために貴重な人員を割いて一校を監視させているのだというのに一向にそういった報告がない

 

もしかして通報してないのか?でもなぜ‥‥‥

 

 

 

 

司 一という男はテロリストの支部長を務めており、普段はそれに似合う格好と振る舞いを心がけているが正直な話この男はただの小者に過ぎない

 

魔法科高校の3巨頭と比べてもその差は明らかだ。そもそも催眠と言う特技がなければそれといってたてるところのない男である

 

だが、仮にもブランシュと言う世界規模で展開してるテロリスト集団でも、発展している日本と言う国の支部長を任されているというのも事実であり

 

実際にこれまでの成果はそれなりとある。組織のまとめ役から外国から支援される物資の運営

やっている事はそこいらのサラリーマンと同じようだが、常人と比べればうまく立ち回っている。

 

また、少なくない人数の学生の弱みに付け込み長い時間をかけ催眠し、己の手駒として利用した。人としては最低の極みだが、テロリストとしては評価されてもいいほどの成果だろう

 

小者であっても馬鹿ではない。そんな彼はこの、危機的状況かでこれまで以上の思考を巡らせていた。どうすれば自分は助かるか、なおかつ今以上の地位に就くにはどうすればいいか

 

そして、ある種この危機が彼を一時的にであるが、飛躍的に成長させ閃きを生んだ

 

 

「そうか!やつらは通報しないのじゃなく通報できないのか!!」

 

 

本来であるなら国直属の施設である魔法科高校が襲撃されたなら警察に通報が行くのは自然だ、ではなぜそれがないのか

 

それは魔法科高校自体が警察の介入に難色を示しているからだ。なんせこの襲撃は外部だけではなく内部にいる学生たちも協力している

 

このままでは、その学生らも何らかの法的罰が下されるのは必死、だが魔法科高校はそれを良く思っていない。身内からそういった物が出ると何かと体面的に問題はあるしその生徒の将来も潰すことになる

 

だからと言って、手を出されたままこちらを放置するなんて事もできるはずがない。ならば、彼らにとっての最善とは警察の介入前にすべてを終わらせておき、その成果にて襲撃に関わった生徒達の事も有耶無耶にしてしまう

 

普通なら10代の学生達でテロリストを逆に襲撃するなんてありえないが、相手は魔法師達であり特に今年の一校には十士族に関わる人間が2人いる

 

普通の非魔法師相手なら少数だけでもおつりがくるほどの戦力だろう

 

だがそれは、あくまで相手が魔法を万能とでも思っている幼い魔法師が考える事。こちらには魔法師にとり最悪とも呼べる最強の切り札がある

 

魔法が使えない奴らなら実弾兵装を保有し、なおかつ数で勝るこちらが圧倒的に有利

 

さらに運がよければその襲撃者の学生らの中にはかの司波 達也がいる可能性が大いにある。報告だけでも数々のもめ事に介入してきた彼の性格から見てもむしろ積極的にやってくるだろう

 

まさに飛んでい火にいる夏の虫とはこの事、目的の人物がわざわざこちらにやってくるのならこちらもそれ相応に対応せねばなるまい

 

 

「帰ってきた者と今いる者で、銃とアンティナイトを装備し表と裏に配置しろ。これから来る勇敢なる少年達を出迎えようではないか」

 

 

いつの間にかいつもの調子に戻っている司 一の言葉により薄茶色のつなぎを着た男たちは大慌てで指示に従う

 

これで助かると内心安堵しながら、これからやってくる者の事を考えついつい高笑いが出てしまう司 一も、そんなリーダーの言葉を疑いもせずせっせとこなしている彼らも

 

これから自分たちが何を相手にするかという本質を見る事ができる者はこの場にいなかった

それがいったいどのような結末を迎えるかでさえ

 

 

司 一は小者だが馬鹿ではない、だからと言い愚かではないという訳でもないのである

 

 



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入学編42

どうも皆様お久しぶりです。

なんだかすごく久しぶりな投稿ですね。

結構昔の作品で正直どうするのか若干忘れかけていたのですがどうにか更新できました!

お忘れの方も多いと思いますがよければ感想お待ちして下ります!





廃墟の中には数十人の武装したテロリストたちが配置される。

 

恐らく一番戦力が注がれるであろう正面には通常武器を持った者を配置した。迎え撃つのは廃墟の中でも一番広い空間。

 

裏口にも同等の武装をした者達を配置するが、こちらは壁や部屋を利用し死角からの奇襲を狙う布陣を敷く。

 

そして、裏と表両方の入り口からちょうど中心になる地点には武装とアンチナイトを持った部隊を配置。

 

限られた人材と武器で今できる最善の布陣と、司一は自信を持ち部下達に指示を送る。

 

 

「いいか、目標はあくまで司波達也1人だ!他の連中の生死は問わない!」

 

 

今はとにかく自身の保身が第一だ。報告では司波達也以外にもその妹、入試主席合格の司波深雪や十士族の十文字がいるという情報がある。

この2人を仲間に引き込む、そうでなくとも身柄を確保すれば使いようは多くある。

 

司波深雪はその才能を、十文字の次期頭首は身代金や様々な取引に使えよう。

 

しかし、今この状況においてそんな余裕は彼にはない。

 

襲撃に使用したメンバーはこの組織の中でも腕よりの猛者達。

それが今では多くの者が捕まっている。

 

魔法と言う面で多少の力があった一校生も全員捕縛された義理の弟も一緒に。

 

今いる兵も所詮は襲撃部隊に選ばれなかった者か、敗走してきた者達だ。この戦力で正体不明の魔法無効か能力を持つ司波達也、十士族の十文字、入試主席の司波深雪の3人を同時に捕えるほど余力はない。

 

作戦は簡単だ。

正面の大部屋で司波達也を迎え撃ち自身の持つ魔法『イビルアイ』で洗脳。

 

その後、司波達也の身柄を捕獲し別組織のアジトに逃げ込む。

 

司波達也と引き換えに保護を申し出る。

 

晴れて司一の失態は帳消し、司波達也の持つ技術の変容が成功すれば逆に自分の地位はうなぎ上りで上がる。

 

 

それが土壇場で追いつめられた司一が導き出した作戦の全容。

 

穴が多いざるのような作戦だ。

 

客観的に見てもこの作戦がどれほどずさんな物なのか伺える。だが、そんな作戦でもまさにこれが最良だとばかりに司一は笑う。

 

その笑みは狂気じみており、その瞳は何かを妄信するかの如く揺らいでいる。

 

追いつめられた人間は理性を失い、普段ではありえないミス、失態を犯す。それが突然の災害や火事で人が死ぬ理由の多くをしめるだろう。

 

今の彼はそれと同じだ。

仮にもこれだけの人員をまとめ1テロ組織のリーダーを務めた男の作戦とは思えない。

 

本来ならここで誰かの制止が入ったりするのが本来ある組織と言うものなのだろう。

 

だが、不幸にも・・・むしろ、自業自得であるが司一が率いるこの組織は彼の独断的な決定に皆が従う独裁体制を敷いている。トップの誤りを正す副官的な立場の人間もいない。

 

考える事を放棄し・・・いや、考え方を洗脳し従わせる。それがこれまで司一が作りだした『ブランシュ』という組織なのだ。

 

非人道的な行為により拡大してきた組織としてはある意味このずさんな作戦も因果応報の結果、自業自得である事は否めないのかもしれない。

 

 

「さあ、それでは宴を始めよう!」

 

 

笑う。

 

自身の立てた完璧と思える布陣の中心で彼は笑う。

 

これから待つ自分の勝利を疑う事もなく孤独な独裁者は1人笑う。

 

始まる宴の『主賓』と『ただの料理』がどちらなのかも分からず彼は笑う。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

時間はどれほど立っただろうか。

 

一校生を向かいうとうと配備された兵たちは、緊張感を高めながらその時を待っている。

 

正面の大部屋に配置されたこの男もそれは同様だ。

 

体格的には大柄で筋肉もそれなりについている。彼はこの部隊の現場指揮を任された今の組織の中ではそれなりの実力がある男だ。

 

と言っても見た目通りの脳筋タイプでリーダー指示に黙って従うしか能がない下っ端といって差し支えのない男でもある。

 

自分に割り当てられた任務はリーダーが魔法を使用している間に、他の学生たちが邪魔をしないようにするための牽制だ。

 

そして、洗脳が終われば目標(ターゲット)以外の他の人間を始末する。

 

子供を殺すことに全くの罪悪感がないと言えば嘘になるが、この身はもはやその程度の罪以上の悪行を積んでいる。今更何も感じる事もない。

 

自分のすることはただリーダーの意向に従うのみ。

 

そんな事を思いながら男は銃の最終確認をする。その時だ、ゴトリと後ろの方から妙な音が鳴った。

 

 

「?」

 

 

狭い空間に密集している部隊の面々は全員その音を聞き後ろを振り返る。

 

そこには拳程度の大きさの瓦礫が落ちていた。

 

それを確認すると後ろを向いていたメンバーは興味を失ったようにまた自分が直前までやっていた行動に戻る。

 

廃墟に瓦礫の1つや2つあったところで何もおかしい事はないだろう。

 

今は有事で色々とバタバタとしているからその振動で落ちたのだろう。そう思い自分も銃の確認へと戻った。

 

でも、そこでふと思う。

 

 

(あの瓦礫は一体どこから落ちたんだ?)

 

 

この大部屋は元は何かの製造工場か倉庫だったんだろう。今は機械も全て撤去されただただ広いだけの空間だ。

 

そのためか天井も高いし、鉄骨なども必要な場所にしかない。

 

瓦礫が乗るスペースなんて見た限りではないし、天井はそもそも落ちていた瓦礫とは材質が違う。

 

そもそも瓦礫が落ちていたのは部屋の中央に集まっている自分たちのすぐ真後ろだ。その直線状に瓦礫が崩れる物も、瓦礫が乗るものもない。

 

 

(ならなんであんなところに・・・?)

 

 

ふとした疑問に駆られ興味本位で再度後ろを振り向く。

 

 

「がっ!?」

 

 

その時、頭に強い衝撃を受け無意識に自分の口からは叫び声が漏れる。

 

体はよろけ冷たいコンクリートに顔から倒れる。

 

 

(何があった?まだ一校生が来たと連絡は受けていない・・・一体何が・・・)

 

 

薄れゆく意識の中で必死に頭をあげようともがく。そこで目に入ったのはさっきまで誰もいなかった空間に現れる一人の男の姿があった、男はその相手の顔を確認しようとさらに頭をあげようとするがそこで男の意識は完全に闇の中に消えるのだった。

 

その後、他の男達も1人、また1人と頭に衝撃を受け倒れ伏す。一体何が起きたのか男達は終始それが分かることはなかった。

 

なんせ、さっきまで何もいないと思った空間から突然衝撃が走り、意識を刈り取られる。

 

ふと気が付けば何もなかった空間に男が1人バールのような物を片手に立っている、が、すぐにその姿は消え代わりに誰かが倒れる。

 

それの繰り返し。

 

中にはこれが襲撃であると判断し、何らかのアクションを起こそうとする者もいたが、消えては現れる敵に見えない攻撃。

 

そんなものにすぐ適応できる者などそうはいない。敵の場所が分からなければ銃も使いようがないし仮に出鱈目に連射しようものなら味方の多くに被弾するだろう。

 

ナイフで迎撃するにも、やはり相手の位置が分からなければどうしようもない。そんなこんなで手間取っている間に1人、また1人と地面に伏していく。

 

気が付けば隣にいた仲間がよろよろと倒れ、それに近づいた自分も倒れた。

人数が減り最後まで残った方の奴らにしてみればこれはとんだ悪夢であろう。何も変わらぬまま誰が何をしたのかも理解できないまま、自分達は敗北するのだから…

 

そして、数分もしないうちに部隊は正体不明の侵入者に迎撃されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・とりあえず一段落か・・・」

 

 

男達が倒れる中心で、これを仕出かしたであろう目の濁った侵入者は1人ごちる。



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