聖霊の軌跡 (常葉樹)
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プレリュード
1 はじまりの旅立ち


トールズ士官学院に着くまでのプロローグです。
話を一部、書いている流れに通じるように改定しました。



いつも見る暗い、怖い夢。

 

私にとっては判らない記憶。

 

ノルドとはまるっきり正反対の場所に私はいた。

私が経験した集落の焼き討ちではない場所。

周りは次々と建物は崩されて、争いの中。

全ては炎に包まれて、人は炎に追われる。

私は若葉色の髪に青竹色の瞳でいつも着ているノルドの民族衣装を身にまとっていた。

 

「くそぅ、ユエはどこなんだよ。」

 

「ユエはお前と一緒じゃないのか?   」

 

「あんたのところにもいないのかよ…ユエを探してくる。待ち合わせはいつもの場所でだよな?」

 

確認するように青年が聞くと、男性は苦渋の顔を浮かべながら、頷いた。そう、あの青年は私の兄弟子だ。

 

「気をつけろ、   」

 

男性は左太股に装着している銃を手渡した。

 

それを受け取ると青年は走り出した。

 

私を呼ぶ男の人と青年。

あんたと呼んでいるが、顔見知り以上の関係だと思う。

聞き取れない、空白の名前。

思い出すなと誰かが止める。

思い出せと誰かが囁く。

 

 

それはまるで警告。

 

「どこにいるんだ!?ユエ」

 

姿も欠落している。私を呼ぶ青年は姿が真っ黒の状態で私の視界には認識される、まるで靄がかかっている。

だけど、青年は必死に叫んで探している。

「おっさん、ユエを見なかったか?」

 

「   、ユエは諦めろ。あの子は俺達、     のために  した。」

 

「ざけんなよ!今、どこにいるんだよ」

 

「もうここには…」

 

「許さねえ。あの野郎、ユエは俺が取り戻す…絶対にだ」

 

「ユエちゃんからこれを預かった…お前にだそうだ。」

 

何かを男から手渡され、それを腰につけたポーチにしまう。

 

毎日、繰り返されるこの夢には慣れていた。あぁ、これでいつも目が覚めるだろうと意識していた。

 

だが、いつもとは違った。

 

「待ってろ、ユエ…必ず迎えにいく。」

 

そこで目が覚めた。いつもと同じ朝の筈が違っていた。

目の前には褐色肌で黒髪の青年がいた。

見慣れた青年の名を口にした。

 

 

「おはようございます、ガイウス。待たせてしまいましたね?」

 

「おはよう、珍しいな。ユエがオレよりも起きるのが遅いなんてな」

 

彼はガイウス・ウォーゼル。私の幼なじみであり、家族でもある。

私は7年前に怪我をしていたところをガイウスに発見されて私は新しくウォーゼル家に迎えられた。

 

「またあの夢か?随分、うなされていたようだが大丈夫か?」

 

「そうみたいです、ゴメンなさい、すぐに着替えて食事の手伝いにいきます」

 

「あまり無茶をするなよ、ユエ。母さん達も気にしていないから。」

 

「大丈夫ですよ、ガイウス。その時はちゃんとガイウスに先に言いますから。」

 

そう言った後に彼はゲルを後にした。

枕元にある緑色の制服にピンクのスカーフがついた民族衣装とは違う衣装―学生服―を緊張しながら見つめた。

 

少ししてから意を決して身につけていた民族衣装から学生服に着替えた。

着替え終わると先程、起こしに来たガイウスも民族衣装からデザインが少し似ている学生服に着替えていた。違うのは彼の制服は夕日のように赤いことだ。

 

「改めて、おはようございます。ガイウス」

 

「あぁ、おはよう。よく似合っているな。」

 

「ありがとうございます、ガイウスは背が高いし、髪を結んでいる紐と同じ赤だからアクセントになってるし、似合います。それにかっこいいです」

 

素直な感想をお互いに述べると少し照れくさい感じになりつつ、ゲルに入った。

 

「おはよう、父さん、母さん」

 

「おはようございます」

 

中にいた男性と女性に挨拶をする2人に男性は声を掛けた。

そちらの男性はラカン・ウォーゼル。ガイウスのお父さんであり、ガイウスや私の武の師匠でもある。

その隣で朝食の準備をしているのはファトマ・ウォーゼル。ガイウスのお母さんで私に料理などを教えてくれた師匠ともいえる。

 

「おはよう、ガイウス、ユエ。制服がよく似合っている。いつ、ここを発つ?」

 

「明日の朝に入学式があるため、最低でも今日の昼には発とうと思います。」

 

 

「あぁ、暫く寂しくなるが身体には気をつけるように」

 

「はい、肝に免じておきます。」

 

「ガイウスに少し話がある。ユエ、ファトマと一緒に朝食の準備を手伝ってくれ。」

 

「分かりました。失礼します」

 

ユエはすぐに女性の元へ向かった。ガイウスとは外に出て、ノルド草原の北側に向かった。

 

「ガイウス、トールズ士官学院にいる間、ユエのことを頼む。ユエはとてもしっかりしているが、あの子はまだ、あの事を気にして、我々に遠慮しているのかもしれない。お前がユエに何かあったら、しっかりと支えてやってくれ」

 

「分かっています。オレも気になってましたから、学院にいる間はユエを支えたいと思ってます。幼なじみとして家族として」

 

 

「頼んだぞ、ガイウス」

 

「はい」

 

「ガイウス…そちらにいたんですね?」

 

「ユエか…すまない。もしかして探してくれたのか?」

 

「えぇ、食事の準備が出来たので呼んでお二人を呼んできて欲しいと」

 

男同士の会話が終わった頃にユエは駆け足で駆け寄り、話をするとガイウスとラカンが急いで向かい、後からユエも後から追うようにウォーゼル家のゲルに向かった。

 

ゲルの中では料理が並ばれていた。

ゲルに入ってきたガイウスとラカンとユエのことを料理を囲んで待っていたのはファトマと自分より年齢が下の少年と少女が2人だった。

 

少年の名前はトーマ・ウォーゼル。ガイウスの弟でとてもしっかりしている男の子。

 

その隣にいるのはシーダ・ウォーゼル。ガイウスの妹で周りに気遣いが出来る優しい女の子。

シーダの隣にいるのはリリ・ウォーゼル。ガイウスの妹で明るく遊び盛りな元気な女の子。

 

 

「あんちゃん、早く!」

 

「分かった、リリ。」

 

ガイウスは急いで座ると、その左隣にユエが座る。ラカンが全員、座ったことを確認する。

 

「頂くとしよう、ガイウスとユエの門出を祝い、風と女神の祝福があらんことを」

 

号令と共に食べ始め、食べたらすぐに向かう準備を始めた。

 

「ユエねえたんの制服、緑だ。ガイウスあんたんは赤いね」

 

「そうだね、もしかしたらガイウスは炎のように強い信念が伝わったから赤だったのかもしれないね。赤もガイウスは似合うからね。私達は緑と青と白だから見慣れない分、よく似合っててかっこいいと思う」

 

「うん、だけどねえたんもかわいい!」

 

「ありがとう、リリ。もう行かないと。しっかり皆の言うことを聞いてね」

 

「うん、やくそく」

 

約束の指切りをして、すぐにゲルを後にした。

 

「ゼン、お待たせ。私がいない間、シーダ達のことを宜しくね」

 

「フゲン、宜しく頼む」

 

ゼンと呼ばれたのは古傷が目立つ馬だった。返事をするようにブルっと唸るとユエはゼンの背中に乗った。

ガイウスもフゲンと呼ぶ黒馬の背に乗ると、すぐに金属で出来た鉄壁の門、ゼンダー門へと走らせた。

 

「ハイヤー!」

 

「ゼン、帰る時は必ず知らせは風に乗せるね。だから、風を走らせてその身に感じながら待ってて」

 

「ヒーン」

そう会話をしながら、向かう先はゼンター門と呼ばれた軍の駐屯地だった。

 

 

「ユエ、もうすぐだ。」

 

「はい、もうすぐですね。」

 

緊張しながら、ゼンダー門前にたどり着くと、そこには案内役であろう兵士がいた。それぞれ乗っていた友馬から降り、荷物を卸すと、ゼンとフゲンは集落の方へ走っていった。

 

「2人とも入学おめでとう」

 

「ありがとうございます。」

 

「今日は中将は帝都に向かわれている関係でいないんだ。」

 

「お会いしたかったのですが、残念です」

 

「あぁ、中将も残念がってたぜ。あっちに用意してあるから、すぐに乗ってくれ。」

 

「分かりました、行こう、ユエ。」

 

2人はゼンダー門の中へ入り、案内役と共に進んだ。

進んだ先の軍用貨物列車に乗り込んだ。

 

揺られる電車の中、2人は外を見つめていた。 

窓の近くにはルーン文字が刻まれた石が置かれている。

 

「試験以来だな」

 

「そうですね、あの時は驚きました。大きな建物に街並み、迷子になったらどうしようかと思いました。」

 

「そうだな、それは俺も一緒だった…そういえば、ユエは俺と同じ十字槍や太刀ではないんだな」

 

布で包まれた長物はガイウスと違っていた。ガイウスより刃が横に長いため何度も布で包んだためか刃の部分が広がっていた。

 

「太刀は儀礼用演舞位なので戦いで扱うには少し構え方を直さないといけません。ガイウスと同じ十字槍では武器の弱点を互いの共闘では補えないので…それに長老から私がいた場所は大鎌を使うのが主流と聞いたので何かきっかけになると思って選択しました。それにガイウスが私を見つけてくれた時に唯一持っていたものですから」

 

「そうか、たまにでいいんだが、鍛錬に付き合ってくれるか?」

「勿論です、十字槍も持ってきていますから、私の方からもお願いします」

 

「あぁ、話しているうちにルーレ駅での乗り換えみたいだな。」

 

「そうですね、行きましょうか?」

 

列車から降りる準備をして、先にガイウスが列車からホームに降りると、ユエも続いて降りようとした時に声を掛けた。

 

「ユエ。足元には気をつけてくれ。」

 

「ありがとうございます。あの時のことを気にしてくれたんですね…面目もありません」

 

「いや、いいんだ。まさか隙間に落ちるなんて予想出来なかったんだ。怪我がなくて良かった」

 

ユエは列車とホームの隙間から落ちてしまい、運が悪く、荷物で落ちた場所を蓋された状態になってしまい、ガイウスがユエを隙間から救出作業を行うことになった。

それを言われて思い出し、慎重にホームへ降りた。

 

「後はトールズ士官学院方面に向かうだけだな。」

 

「そうですね、階段を上って、移動ですよね?」

 

「急ごうか、試験に来てから2回目とはいえ、迷う可能性もないとは言えない」

 

「そうですね、急ぎましょうか」

 

そして反対側のホームにある学院方面の列車に乗り換えて、一息着いた。

はじまりの地にたどり着くまで窓を開けて車窓を眺めた。

はじまりの地の風を聞きながら

 

はじまりの旅立ち FIN

 




読んで頂きありがとうございます。

修正等があったり、のろのろだったりしますが、宜しくお願い致します。

1016 少し追加修正をしました。


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2 はじまりの分かれ道

大分、長くなってしまいました。
そして遅くなってしまい、申し訳ないです。


トリスタに着いて駅から街へ向かった時に見たのは白い花びらの花が入学生の門出を迎えてるようだった。

 

「綺麗…何の花でしょうか?」

 

「ライノの花だ。ユエは初めてか?」

 

「ええ、初めてだと思います。ガイウスは物知りなんですね。色々と助けて頂いてばかりです」

 

思わず感嘆で漏れてしまったユエの言葉を聞き逃さずにガイウスは答えた。

 

「そんなことはない。俺の知らないことをお前が教えてくれている。困った時や知らないことを教え合うのはお互い様だ。」

 

「そうですね、この2年間、お互い、切磋琢磨出来るといいですよね。助け合いながら、進めると嬉しいです。」

 

「ああ、ユエ、宜しく頼む。」

 

「こちらこそ至らない部分もありますが、宜しくお願いします。ガイウス、入学式まで時間があるみたいです。」

 

「あそこに礼拝堂があるみたいだ。良ければこれからいい風が吹くことを祈りに行かないか?」

 

「はい、ご一緒させてください!」

 

ガイウスが指差す方向には十字架が屋根に立てられた建物を指差した。

2人は礼拝堂を目指して歩き始めた。

 

中に入ると、空の女神などがステンドグラスで表現されていた。

中へ進み、2人はしゃがんで横に荷物を置き、膝を立てて、両手を組んだノルド式で祈り始めた。

黙祷という形ではあるため、沈黙が続く。

“空の女神様…どうかガイウスのことをお願いします。”

 

ただ、それだけを祈った。

 

礼拝堂の扉を開く音がこちらに近付いてくる音が聞こえた。ガイウスの近くで音は止み、ガイウスは立ち上がり、振り向いた。

「すまない、邪魔をしたか?」

 

ガイウスに声を掛けてきたのは黒髪の青年だった。

 

「大丈夫だ、それでは失礼する。」

 

ガイウスが簡単に言葉を交わると私はそれに習い、一礼してガイウスの後を追った。黒髪の青年は微笑んで一礼してくれたのを見て、少しだけ不安が解けた感じがした。

礼拝堂を出るとガイウスは歩きながら少し考え込んでいた。

「ガイウス、どうかなさったのですか?」

 

「すまない、先程の青年と話した時に硬くなっていて無愛想すぎたのではないかと少し悩んでな」

 

「確かにそうかもしれませんが、ガイウスと制服の色が一緒だったのでもしかしたら同じクラスの方かもしれませんよ。その時にお話をして自分を知ってもらえれば大丈夫ですよ」

 

「そうだな、すまない。」

 

「いいえ、ガイウスは門のところで武器を預けるんでしたっけ?」

 

「ああ、ユエは今から仕舞うのか?」

 

「今は近くにフォルティスがいるので預けて貰うので大丈夫です。フォルティス、お願いします」

 

ユエはそう言って武器の入った包みを地面に置くと一瞬で消えてしまった。

 

「彼はもう着いていたのか?速いな…」

 

「いい風が吹いていてな!一刻も早く着かねばと思っていたのだ。春はやはりいい!いい風が吹いて気持ちがいい」

 

目の前に現れたのは背に先程のユエが地面に置いた武器を背負った大型の狼だ。

毛の色は白だが僅かに緑と茶色のメッシュがかかっている。

 

「そうか…。フォルティスが言うならよっぽど気持ちがいいんだな。今度は俺もユエ達の負担にならなければ風を渡りながらノルドには帰郷したいと感じてしまうな。」

 

ガイウスも同意して機嫌がいいのかフォルティスと呼ばれた狼は空中で一回転してみせた。

 

「ガイウス、負担なんてなってませんよ。私もそう思いますが、相変わらずですね…フォルティス。着いて早々に申し訳ないのですが、こちらはあまり心を許した人以外は触らせたくないので宜しくお願いします」

 

「承知した」

 

その一言でまた姿を消してしまった。

 

「そういえば、フォルティスはユエの護衛精霊(フェリシア)なんだろ?大丈夫なのか」

 

「大丈夫ですよ、フォルティスとは極端に北南、東西と極端に端と端という距離ではなくこの地からは離れていないので問題はありませんよ。ルーレのような機械や人工物がいっぱいなところでは駄目かもしれませんが…」

 

彼の言葉通り、フォルティスは護衛精霊(フェリシア)と呼ばれる私の一族にしか伝わらない方法で契約を結んだ精霊(ジン)。困った時に精霊(ジン)の力を借りることが出来る。彼は私より長くこの地で生きているため、私にとってもう1人の兄のような存在だ。フォルティスは通常、姿が見えない状態で私の側にいることが多く、“護衛”という言葉がつく以上は一定の距離は離れられない。だが、彼はノルドで生まれ、長年見守ってきたため、トリスタという地を見て回りたい。風は知っているが、この地を知りたいと彼がこちらに頼んできた。

その役目によって縛ることはしたくない、寧ろ、対等でありたいため、あくまでも名目上でつけている役目だ。

 

今、もう風に乗ってここを一周してるかもしれない。

 

「さて行くとするか…」

 

「はい、宜しくお願いします」

 

橋を渡り、目の前には花を飾られた校門と入学式の書かれた看板が目立つ。

 

「ご入学おめでとーございます!」

 

校門をくぐった瞬間に少女の声が聞こえた。

目の前に現れたのは作業着を着たふっくらした体型の青年と制服に左腕に腕章を着けた小柄な少女だった。

 

「ガイウス・ウォーゼルくんでいいのかな?」

 

「そっちはユエ・ウィンゲルさんで大丈夫かな?」

 

「はい、ガイウス・ウォーゼルです。」

 

2人に聞かれ、ガイウスは答えたが、ユエはガイウスの後ろで頷いてから口を開いた。

 

「は、初めまして、先輩方…」

 

「どうして自分やユエの名前を知っているんですか?」

 

「まあ、それは…後々判るから」

 

小柄な少女は、はぐらかしてしまうが話を逸らすように作業着の青年が声を掛ける。

 

「ガイウス君、それが申請した品かい?」

「はい、宜しくお願いします」

 

ガイウスは作業着の青年に十字槍が入ったケースを手渡した。

 

「確かに…ちゃんと後で返されるとは思うから心配しないでくれ」

 

青年の言葉を聞き、ガイウスの強ばっていた顔が少し緩む感じがしたのを感じた。

あの槍はガイウスが物心ついた時から今まで背を預けてきた相棒のような存在だ。

誰だって不安になるのも仕方ない。

逆に自分は入学式の一週間前に寮に配達する手続きはあったが、不安になり断ってしまった。

その証拠につい先程もフォルティスに武器を預けた。

 

「入学式はあちらの講堂であるから、このまま真っ直ぐどうぞ…ガイウス君にユエさん、トールズ士官学院へようこそ!」

 

「入学おめでとう。充実した2年間になるといいな」

 

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「そんなに緊張しないで大丈夫だよ、何か困ったらなんでも相談してね。私はトワ・ハーシェル。この学院の生徒会長をしているんだ、講堂とは反対側を位置する場所の2階にある生徒会室にいるからいつでも遠慮なく来てね」

 

 

「式に遅れるといけないから、早めに行くといいよ。少しでもユエ君の緊張がほぐれるようにね」

 

先輩方に温かく迎えられたので不安が少し和らいため、お礼を言おうとした時に限って又、声が緊張で引き吊ってしまった。

それを聞いて、逆に気を遣わせてしまい、逆に申し訳なくなった。

 

「お気遣いありがとうございます、ユエ、講堂へ向かおう。先輩方、失礼します。」

「先輩方、ありがとうございます。」

 

今度はきちんと言えたと少し嬉しそうにしたらガイウスも嬉しそうに微笑んでいた。

ガイウスとユエは一礼して講堂に向かった。

振り返った矢先にガイウスは手を繋いでくれた。年頃の男の子なら恥ずかしいと思うだろうに彼はいつも不安な時に手を繋いでくれる。

 

「あの、ガイウス…」

 

「すまない、大丈夫か…ユエ?」

 

「ありがとうございます。少し落ち着きました」

 

正直な気持ちを言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。憧れの幼なじみである彼のさりげない優しさに嬉しくなった。

目の前には校舎より高さは劣るが、立派な建物が見えた。中に入ると、今まで見たことがない位の人が沢山いた。

 

恐らく、今回の入学生だろう。

 

「人が多いですね…」

 

「確かに。入学試験は校舎の教室でやったから余計に感じてしまうな。ノルドの羊達よりは少ない位かもしれないが、集落よりは多いかもしれないな」

 

 

「ご入学おめでとうございます、席は自由席なっているのでお好きな場所に座ってください」

 

腕章をつけた制服の生徒に言われ、2人は後ろの空いている場所を見つけて座った。

司会進行により、新入生の代表の生徒が壇上に上がった。三つ編みを後ろで結った赤い制服の生徒だ。

少しだけ羨ましいと思ってしまった。

代表の言葉を言い終えると、教官達に一礼して席に戻った。

「続きまして、学院長の言葉…一同、礼」

壇上に上がったがたいのいい男性に向かって進行役の教官の指示で椅子に座ったまま一礼をする。

話しはじめから数分たった頃、終盤に差し掛かろうとしていた。

 

「…最後に君達に1つの言葉を贈らせてもらおう、本学院が設立されたのは、およそ220年前のことである。創立者はかの《ドライケルス大帝》は《獅子戦役》を終結させたエレボニア帝国、中興の祖である。即位から30年あまり、晩年の大帝は帝都から程近いこの地に兵学や砲術を教える士官学校を開いた。…近年、軍の機甲化と共に本学院の役割も大きく変わっており、軍以外の道に進む者も多くなったが。…それでも大帝が遺した“ある言葉”は今でも学院の理念として息づいておる」

「若者よ…世の礎たれ!“世”という言葉をどう捉えるのか、何を持って“礎”たる資格を持つのか。これからの2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手がかりにして欲しい。ワシの方からは以上である」

 

“にゅーがくおめでとう”

 

いきなり、声が聞こえたと思ったら、上から色とりどりの春の花が降ってきた。

 

「毎年毎年、誰だ!花を降らせているのは!?」

 

壇上に上がっていた司会進行役の教官が怒鳴り声をまき散らしている。

 

ユエは降ってきた花を一輪受け取ると、手でくるくると遊んでいる。

 

「ユエ、もしかして?」

 

「この土地の|精霊(ジン)《ジン》からのお祝いみたいです。“にゅーがくおめでとう”と言っていたので」

 

「そうか、事情が知らない入学生は驚いたかもしれないな。」

 

「ええ、この土地の精霊(ジン)からのサプライズですからね」

 

ガイウスはそっと壇上にいる教官にバレないようにひそひそと話をした。

そしてそっと微笑んだのだった。

 

そこへ淡い光がユエの目の前に現れ、その光にそっと言う。

 

「素敵な贈り物をありがとうございます、精霊(ジン)さん」

 

「とても素晴らしかった」

 

その言葉が嬉しかったのかユエとガイウスの周りを何回も回り、通り道に花を拾われた花以外を乗せて退場した。

 

「お花の精霊(ジン)さんだったみたいですね」

 

 

通り道を見て、ユエは胸ポケットに花を挿した。祝福に感謝を込めて

「綺麗だったよね!あの花のシャワー」

 

「ああ、導力魔法の応用かな?」

 

「毎年って教頭言ってたけど誰がやってるんだ?」

 

「分からないわね、教官じゃないの?」

 

花のシャワーについては色んな説が立てられていたが、答えを知るのはユエとガイウスのみだった。

 

「ガイウスのクラスが結局、分からなかったですね。入学式後にてっきり分かると思っていたのですが…」

 

「君達もクラスについて入学式案内に送られてきたか?」

 

 

「いや、彼女の分はあったが、俺のは無かったはずだ。てっきりこの場で発表されると思ってたんだが…」

 

 

先程、礼拝堂で会った黒髪の青年に聞かれ、ガイウスは答えた。

 

「やっぱり、ユエのクラスは分かっていて俺だけ分からないのはおかしいと思っていたが。」

 

 

そう同封された案内書にはユエのクラスは記載されていたが、ガイウスは書かれていなかった。

 

 

「はいはーい。赤い制服の子達は注目~!」

 

 

声の方向へ振り向くと、紫に近い赤い髪の女性がいた。

 

「どうやらクラスが分からなくなって戸惑ってるみたいね?実はちょっと事情があってね。君達にはこれから『特別オリエンテーリング』に参加してもらいます」

 

その宣告にそれぞれ反応が違った。

 

「まあ、すぐにわかるわ。それじゃあ全員、私について来て」

 

「ふむ…。まさかこんなことになるとは思わなかったな」

 

「そうですね…でも良かったです。ガイウスのクラスが気掛かりだったので…判りそうですね」

 

「そうだな、このまま教官についていく。ユエは教室に向かうんだったな。」

 

「はい!」

 

 

赤い髪の女性は講堂から出て行ってしまった。

 

「ガイウス、自分の意志を曲げずに真っ直ぐ貫いてくださいね…今日もガイウスに風と女神の導きを」

 

「ああ、行ってくる」

 

ガイウスはすぐに列の先頭近くまで走っていった。

この言葉の意味はこの時は判らなかったが、後に判ることになった。

 

Ⅳ組の教室に向かうと、窓側の一番後ろの席が空いている。

そこへ座ると、隣の席にいたピンク色の髪に声を掛けられる。

 

「私はヴィヴィ、あなたの名前は?」

 

「ユエ・ウィンゲルです。宜しくお願いします」

 

「宜しく!私のこと、ヴィヴィって呼んで!後、敬語はなし!前にいるのがお姉ちゃんのリンデだよ」

 

「はじめまして、ヴィヴィから紹介あったと思うけど、私はリンデ、ヴィヴィとは双子の姉妹なの。宜しくね」

 

「宜しく、ヴィヴィ、リンデ」

 

席が近く同士で軽く挨拶をしていると、教室の前方のドアが開く音が聞こえた。

 

入ってきたのは白衣を着た男性だった。

それを合図に一斉に座った。

簡単に自己紹介をしていると、最後はユエの番だった。

 

「はじめまして、ユエ・ウィンゲルです。出身地はノルド高原です。ここに来たのは今日で2回目で判らないことがあったら、度々聞くかもしれませんが、宜しくお願いします」

 

自己紹介を終えると、席に座った。

 

それから入学式の司会進行役の教官が言っていた通り、カリキュラムや規則の説明と生徒手帳、エニグマなど配布物が渡されたが、生徒手帳に使い方等が書いてあるため、よく読めと言われた。配布されたエニグマという導力機器の使い方も教わったことを思い出す。通信も出来る最新型でとても便利だということにクラス中、とても喜んでいた。

これは卒業後も使っていいらしく、中退や退学にならない限りは持っていていいらしい。

 

後は自由に校内探索となり解散となった時に事件が起きた。

 

 

 

配布されたエニグマをポケットに仕舞おうとした時に起こった。

 

勢いよくバチッと火花が大きく音を立て、更にエニグマに触れた部分が熱くなったため、すぐに机の上に置いた。

 

私にはよくある出来事だが、その出来事にクラス中が注目した。

 

私には1つ問題がある。

バチっとエニグマから発せられたのは静電気のような電流であり拒絶が先程、起こったことである。

 

今までは何とか大丈夫だったため、久しぶりに起きたそれにやっぱりかと内心思ってしまう。この現象は“エルベルト共鳴”

 

導力エネルギーを使うための機械エニグマに使われているとある人工金属が導力エネルギーを通しすぎてエニグマから僅かに漏れ出してしまい、その人工金属や人工宝石の元々、持つ導力エネルギーを調整するための電磁波とのアレルギー反応で起こる現象。

 

 

そのおかげで現在流通されているエニグマは酷い場合、導力機関がエルベルト共鳴でショートして全く使えない。

そのため、私は旧型で通信機能付きと自己流にカスタマイズしたエニグマを使っていた。

 

カスタマイズはこちらに来たエニグマに詳しい方に聞いて、その都度、いじっている。

元々、この現象が分かる前は何かを作ったり、何かの仕組みを知るために機械をいじるのが昔から好きだったため、作業的には苦ではない。最近はその人工金属は使用した細かい部品などにも流通されてしまい、今は相性がいい部品を詳しい方にお願いして注文して貰ってからいじるためいじる機会が減ってしまった。この現象を名付けた一族の長老曰く一族の中でも見たことないが、導力エネルギーとは誰でも使えるように加工してあるため、人工物が合わないのだろう。

 

少し面倒なアレルギーでエニグマを使う実技があるにも関わらず、よく入学出来たと思ってしまう。

 

 

「ウィンゲル!?大丈夫か」

 

「大丈夫です。いきなりバチっときたのにはびっくりしました」

 

「ちょっと借りるぞ。あー、ショートしてんな…これ。ただ触れただけだろ、ウィンゲル?」

 

「はい…

 

カバーを外して見てみるとマカロフは眉間に皺を寄せていた。見てみると、殆どの部品が電磁波焼けしており、素人から見ても判る位、部品が焼けて駄目になっているようだった。

 

「ウィンゲル、残念だが、これは中の基盤も取り替えないと使えそうにないな。代わりのエニグマはお前、持ってるか?旧型でもなんでもいい。」

 

「持っています…」

 

腰につけたポーチから取り出したのは傷だらけの黒いカバーのエニグマで見た瞬間に察したのだろうか、マカロフは手袋をはめて丁寧に受け取り、中の機能を見ている。

自分のエニグマを取り出し、通信テストを行うと確認出来たのかすぐに手渡した。

 

「ウィンゲル、とりあえず暫くはそれを使ってくれ。機能的には配布されたエニグマと変わらないから問題はない。他の教官にも言っとく。あんま気にすんなよ、たまたま不良品だっただけかもしれないしな」

自分のエニグマを取り出し、通信テストを行うと確認出来たのかすぐに手渡した。

 

「ありがとうございました、失礼します」

「おーお、広いから迷うなよ」

 

後ろを向きながら片手を振り、マカロフは教官室に向かった。

 

「ユエ、大丈夫?」

 

「うん、びっくりした」

 

「だよね…エニグマ、使うときは気をつけないとね」

 

その後はリンデとヴィヴィと一緒に校内探索をしていた。探索中にリンデもヴィヴィも気になった部活を見つけたようで一通り、見終わり、明日の放課後に入部届を出すそうだ。2人は街に買う物があり、そのまま校門で分かれた後、私は屋上に向かった。

屋上に向かうと、すぐにエニグマを取り出した。

 

取り出したエニグマは傷がついていて、カバーには黒で赤い三日月をバックに白い狼が描かれて“Tsukitachi”と彫られていた。

これは兄弟子の名前だ。

これは兄弟子から貰ったお下がりではあるが、エルベルト共鳴を起こらないように兄弟子がカスタマイズしてくれたものだ。

今はその兄弟子はどこにいるか判らない。

「お帰り、フォルティス」

 

「ああ、持ってきたぞ。それにしても酷い火傷になっているな。またあれか?」

 

「ありがとう、仕方ないと思いますよ。こればかりは体質ですから。寧ろ、兄さんから貰ったエニグマで起こらないのが不思議な位です」

 

フォルティスから受け取った大鎌の包んだ包みから手袋を取り出し、装着する。

 

 

「さて、ガイウスは今、あの旧校舎の魔獣と戦っているようだが、どうする?」

「判らない程度に援護します…あそこから約4人位、様子見をしている人がいるから。」

 

指を指した方向には旧校舎近くの崖の上から4人の姿が見えた。

2人は校門で案内してくれた男女のペアでもう2人は見覚えがない人物だった。

 

 

「まあ、賢明だな。さて、もうそのタイミングが来てしまっているようだな」

 

「分かりました、行きましょう」

 

一瞬にして、姿は旧校舎の校門へと移し、すぐに入っていってしまった。

 

next はじまりの心構え




お久しぶりです。常葉です。
間違えて消してしまったり付け足していたら、更新が遅くなってしまいました。

書き上げる際に構成を変更した関係で削ってしまった部分を後で活動報告にアップさせようと思います。

・式が始まる前にガイウスと講堂で紙飛行機を作ってやりとりする話

上の話だけなのですが、ガイウスは器用そうなので構成に入れていた話でしたが、姉妹とクラス内で接触させたかったのでNGにしました。
それに見つかったら怒られますし、講堂という神聖な場所で彼はやらないと思いますから。

おまけ程度に考えて頂けたら、嬉しいです。



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3 はじまりの心構え

大分、遅くなってしまいました。
詰め込みすぎたので近日に修正予定ありです。

先日、閃の軌跡Ⅱをクリアしました。
マクバーンが強い。敵キャラの中でダントツで好きです。

刀剣乱舞やってますが、鶯丸と長曽祢が来ません。6-2にはまだ行ってません。6-1のマップが長すぎて…




はじまりの心構え

 

 

私は覚悟を決めて、すぐに扉を開け、フォルティスが入ったのを確認すると、扉を閉めた。建築の構造上、帝都に近いからか貴族が住んでいそうな様式の建物で辺りを見回すと、1つの扉があり、その方向へ更に進んだ。開く前にエニグマにセットされているクォーツを確認する。

私のエニグマにセットされているマスタークォーツは時属性の“カーディス”と呼ばれるマスタークォーツで大鎌が2本交えたマークが描かれている。

 

このマスタークォーツだけは自分が相性がいいだろうと思い、このエニグマを譲り受けた時と同じ時期に探してからの相棒とも言える。

 

学院で用意していたマスタークォーツは確か、クサナギだった筈。マカロフ教官が壊れたエニグマと一緒に持って行ってしまったため、少し曖昧だ。

セットされているエニグマのクォーツを確認してポーチに仕舞うと、扉を更に開けて、中へ進んだ。

 

 

一方、ユエが旧校舎に入っていくのを旧校舎近くの崖から見つめていたのは4人の男女だった。

 

「トワ、彼女の名前は判るかい?」

 

紫色の髪にライダースーツを着た中性の容姿を持つ者が指差す方向に見えた少女のことを小柄な少女に聞いた。

 

「新入生でⅣ組のユエ・ウィンゲルさん、どうして旧校舎へ!?」

 

 

「恐らく、何かを察知したんじゃないか?確か例のクラスの奴の1人と同じノルド高原出身なんだろ?俺がちょっくら見てくるぜ、武器を見ても前衛だしな」

 

驚きを隠せない小柄な少女に対して、バンダナをつけた青年は答えると、その場から飛び降りて一気に降りると、すぐに旧校舎に向かってしまった。

 

「あっ、クロウ君…行っちゃった」

 

「せっかく、知り合う機会をクロウの奴…よくも…。」

 

「アン、とりあえずクロウに任せてみよう。クロウは戦闘でのフォローも上手いし…見た限りの大鎌の武器属性は斬属性と剛属性、アンの武器は突属性と剛属性だから武器属性的に補うのが難しいから、クロウが適任だ」

 

作業着の青年が中性の容姿を持つ人物を宥めると、小柄な少女は旧校舎を心配そうに見つめていた。

 

旧校舎では…

「入る前から少し思ったのですが、不気味ですね…フォルティス」

 

「そうだな…ノルド高原にある石切場や遺跡などと同じ位かそれ以上だな。」

 

「入った瞬間に感じた嫌な予感が当たらなければいいですが…」

 

ユエはフォルティスと共に進んでいた。

 

背には包みから外した大鎌を右手に持ち、左手には腰につけたポーチの中にあるエニグマをすぐに取り出せるように構えていた。

 

「ユエ、中に入ったのはいいが、何をするつもりだ?」

 

「ガイウスに傷薬を渡そうと思いまして…ここにいるのは恐らく、…!?」

 

言いかけた時に目の前に現れたのは植物型の魔獣。

 

「この特別オリエンテーション、何かを試されています。なら、私が出来ることをするだけです。彼の道を阻まない程度に彼の進む道を進めるようにサポートをすること…それが今、私が出来ることであり、約束ですから」

 

言いながらも襲いかかる蔓を切り、更に本体の花に向かって、大鎌を投げつけ、止めをさした。

魔獣の断末魔が虚しく響きわたるが、姿と共に断末魔も終わりを告げた。

 

「あいつとお前の母にはまだ劣るが、大鎌の扱い方が様になってきたんじゃないか?」

「本当ですか!?フォルティスにそう言って頂けて嬉しいです!」

 

「ああ、ただもう少ししなやかさを持て。動きが少し硬い。ガイウス達はこの先約200アージュ地点だな。」

 

 

「判りました、行きましょう」

 

嬉しそうに喜んでいたが、追いつくためにその場から駆け出した。

 

 

あれから飛び猫という魔獣にも遭遇し、エニグマの火炎系の導力魔法を駆動させ、一気に片をつけ、再び走り出す。

 

襲いかかろうとした魔獣にはエニグマでフィールド攻撃を駆動させ、威嚇した所為かよっぽど強気な魔獣ではない限り近付かない。

 

走って距離を縮めた先にはガイウスと見慣れぬ少年が3人いたのが見えた。だが、上から2体の昆虫型魔獣が降りてこようとしていたのが目に入るとすぐにエニグマを駆動させ、火炎系の導力魔法で作った火の玉を天井へ向かって、投げつけた。

「ガイウスとそこの人達、伏せて!」

 

響きわたるのはガイウス以外には聞き慣れていない少女の声だった。

 

その声ですぐに彼らはしゃがんだ瞬間に声の方向に注意を向けた魔獣はユエの方へ振り向いて襲おうとしたが、ユエの火炎玉が昆虫型魔獣に当たり、燃えていく。

 

「ユエ、すまない。助かった」

 

「無事で良かった…ガイウスに何かあったら、ラカンさんに怒られてしまいますから」

 

「ガイウス、知り合いなのか?」

 

「確か幼なじみって言ってたよな。」

 

安心したユエに対して、緑色の髪の少年が尋ね、黒髪の少年は入学式後のことを振り返り、聞き返した。

「あぁ、リィンは入学式前に彼女と面識があって、マキアスとエリオットは知らなかったな。彼女の名前はユエ・ウィンゲル、俺の幼なじみだ。ユエ、どうしてここに?」

 

ユエは名乗ろうとした時にガイウスが代わりに紹介すると、ユエは簡潔に紹介と要件を言う。

 

「ガイウスから紹介があった通り、私はユエ・ウィンゲルです。宜しくお願いします。ガイウスにこれだけ渡すのを忘れてしまって、届けに来たんです。」

 

ユエはポーチから回復薬を取り出し、ガイウスに手渡すと、ガイウスはユエから回復薬を受け取った。

 

「わざわざすまない。」

 

「ありがとう、助かるよ。こんなに貰っていいの?」

「君は1人で大丈夫なのか?良ければ出口まで一緒に向かった方がいいんじゃないか?」

 

 

紅茶色の髪の少年と緑髪の少年がユエに聞いた。

 

「はい、良ければ使ってください。私はここから来た道へ戻ろうと思っていますので、お気持ちだけ受け取っておきますね。その方が特別オリエンテーション中の皆さんの邪魔になりませんし、単独で帰る時は敵をよく知っていて安全ですから。ガイウスと皆さん、ここから先、ここにいる魔獣とは違う敵の風を感じますから気をつけて下さいね。」

 

「あぁ、お前なら大丈夫だと思うが…ユエ、何かあったらすぐに知らせるんだ。すぐに駆け付ける。」

 

ユエは先にある道から流れる空気で気配を感じながら、そう言った。

それに対して少し心配しながらユエに声を掛けるガイウス。

 

「ありがとうございます、ですが、ガイウス、役目を放棄したらそれこそラカンさんに怒られてしまいますよ。その気持ちだけで凄く嬉しいです。ガイウスも何かあったら呼んでくださいね。皆さんに風の導きがあることを」

 

 

ユエはすぐに来た道を歩くと、ガイウスはその後ろ姿を見送っていると、ユエの横にいたフォルティスの存在に気付く。

 

「心配だが、彼もいるなら心配ないか。」

 

「おーい、ガイウス。行こうよ~」

 

「ああ、今、行く。」

ガイウスは少し先に歩いたリィン達と合流しにいった。

 

一方、後から入ったバンダナの青年はユエの行方を探していた。

 

「ちっ、進むのが早すぎる…奥に進んでるんじゃないのか?それとも俺が早いのか?」

やや焦りを見せていたバンダナの青年は入り口の方へと戻るユエの姿を見つけた。

 

「あっ、いたな。後は何とか…合流しないといけないな。」

 

キシャアアアア

 

矢先に入口の前には大型の植物型魔獣が立ち塞がっていた。

 

「うげ…マジかよ。さっきはあんなのいなかっただろ…ここらへんじゃ見ない魔獣だ。さっき倒した魔獣の大ボスか?」

 

とバンダナの青年はユエに気付かれない位の声で口に出した。

 

「大きい…」

 

「ここにいる魔獣と違い、桁違いの強さだ…どうする、ユエ?」

 

「ガイウス達に被害がいかないためにも倒します」

 

「やはりか…言うと思ったが、そこはお前もあいつもお前の母親も変わらんな。」

 

目の前の討伐対象を見上げて構えを戦闘態勢に切り替えるユエに懐かしみを込めて呑気に聞き返すフォルティス。

 

「フォルティス、下がっていてください。それと姿を見えないようにして…足音が微かだけど聞こえたから」

 

 

「了解した。」

 

フォルティスは出口近くに控えた。

 

あれを1人で挑むつもりか…武器は大鎌、相性は良いが、1人だと分が悪い。なら、俺が先輩として力を貸すまでだ。

バンダナの青年はタイミングを伺った。

 

「立ちはだかるなら迎え討つのみです」

 

構えから電光石火で後ろに回り込み、魔獣の蔓を切り落とした。

 

「おい、新入生!」

 

「!?」

 

いきなり声を掛けられ驚くユエに対して、お構いなしにバンダナの青年は姿を表した。

 

「名乗るのは後だ!こいつを倒すぞ」

 

「はい!」

 

バンダナの青年はユエの後ろで二丁拳銃を構え、ユエは大鎌を構え直した。

 

「ちっ、サラの奴には後でたっぷり言わないとな。環境を整えとけってな…いいか、俺がお前の呼吸を合わせるから一気に倒すぞ、頼んだぞ!後輩ちゃん」

 

「分かりました、先輩、私があの全ての蔓を封じます。先輩はあの毒を出す花の部分を一時的に止めることは可能ですか?」

 

「ああ、可能だ。いいぜ、その案に乗った!ヘマすんなよ」

 

「はい!」

 

「散って下さい!」

 

ユエは魔獣に向かって突進し、大鎌の刃がまるで舞を見せるかのように連撃し、大鎌を下から上へ振り上げたと同時に宙へと飛び、大鎌に力を込めて投げつけた。

その大鎌は旋回して全ての蔓を切り落とした。

 

「先輩、今です!」

 

「こいつで凍えな!」

 

その合図と共に拳銃で撃たれた弾丸によって魔獣の花の部分が凍る。

 

「これはちょっとしつこいですよ、弐の舞…猟犬!」

 

大鎌の斬空波の姿が獲物を追う猟犬のようになり、軌道を示した。その当たった場所に吸い込まれるように大鎌の一撃で止めをさした。

 

「ヒュゥー!やるじゃん!後輩ちゃん」

 

「先輩も流石ですね…。先程はありがとうございました。改めまして私はユエ・ウィンゲルと申します。先輩はどうしてここに?」

 

「そいつはご丁寧に俺はクロウ・アームブラスト。宜しくな、後輩ちゃん。ここで行われている特別オリエンテーションの手伝いをしているんだ。もし何かあった時の“助っ人”だ。」

「そうだったんですね…それでは私が勝手に入ったことでご迷惑をお掛けしていたんですね。申し訳ありません」

 

「いや、別にいい。無事ならな。ただ、本当はこの場所は許可ないと入れねえから次は気をつけろよ」

 

本当に心配していたようでクロウは少し怒りを含んで言う。

 

「判りました。」

 

「だが、さっきのはなかなかだったぜ、手足を封じて頭を封じる、それでもいいが、ああいう奴は指揮系統である頭を封じてからの方がいい。再生がはぇえ奴がいるから意味がない奴もいるからな…だが新入生にしては度胸あるな、お前」

 

「ありがとうございます、とても勉強になりました。アームブラスト先輩」

「いいんだよ、そんじゃ、外に出るとするかね?」

 

さっきとは違い、クロウは少し嬉しそうに言っていた。

ユエはそう言うと、大鎌をしまい、エニグマだけ構えておき、クロウの先導の元、共に外を出た。

外へ出ると安全が確保されたと判ったのかすぐにポーチに仕舞った。

 

「ごくろうさん、んじゃ帰るとするかね~」

 

「あ、あの…アームブラスト先輩?」

 

「どうした?」

 

「寮の場所って判りますか?」

 

「寮の場所が判らねえのか?確か案内の紙が入っていた筈じゃ…あ、…」

 

「何かあったんですか?」

 

クロウはふと脳裏にある出来事が浮かんだ。

それは約数ヶ月前に遡る。

 

「ちっ…サラ、お前、どんだけサボってたんだよ」

 

「ゴメン、ついつい、後回しにしちゃってね」

 

「ついついじゃねえだろ、この量は」

 

「確かにこの量を溜めようと思えるサラ教官はある意味、強者だな」

 

「あははは、ちょっと早めに言って欲しかったですね」

 

「まさか、教頭からの依頼がサラの入学案内発送の手伝いで報酬が俺の単位の免除とは思わなかったぜ」

 

「良かったじゃない?」

 

「複雑すぎるわ!」

 

「確かに複雑すぎるよな…クロウに取っては」

 

サラとクロウとのやり取りを苦笑いしながら、ジョルジュが言った。

「はいは~い!提案!くじ引きでどこの地域の入学者をやるか決めな~い?」

 

そう、サラの提案でトリスタの西側と東側と少人数の地域をまとめた物で分かれてやることになった。

 

俺とトワがトリスタから東側で入学者が多い地域、ゼリカとジョルジュが西側で入学者が多い地域、言い出しっぺのサラが数が少ない少人数の地域をまとめた地域だった。

 

恐らく、サラの担当した地域にノルド高原があった筈だ。

それが今、偶然にも自分の目の前に先程まで共闘した初対面の後輩であり、サラの提案の被害者として出会うとは思わなかった。縁であれども出来すぎとも思えてしまうが、内心、少し諦めてから言う。

 

「いや、お前の寮の案内には心当たりがある…しゃあない、案内してやるよ。これも何かの縁だしな。」

 

「すみません、先程からお世話になりっぱなしですね。」

 

「いいって、後でそいつには言っとくからよ」

 

そう、ユエは悪くない。悪いのは全て手抜きのサラのため、論破して奢らすと決めた。

 

「ありがとうございます、アームブラスト先輩」

 

「クロウでいいぜ、アームブラストは長げぇだろ?」

 

「分かりました。宜しくお願いします、クロウ先輩」

 

旧校舎から校門、校門から寮を目指し、2人は歩き出した。

 

 

「ああ、宜しくな。寮はここから近いからな。男子は一階と二階、女子は三階と四階だが、今回、寮長から例外を聞いたな。女子の入学者人数が1人多いから屋根裏を改良して部屋にしたある意味、ラッキーな奴が確か…」

クロウは説明をしながら、胸ポケットから折り畳んだプリントを取り出すと、入学者で部屋が判らなかったら、必ず案内すること。屋根裏はユエ・ウィンゲルと寮内地図と名前が書かれたプリントだった。

 

「お前は屋根裏って書いてあるな」

 

「屋根裏、了解です。」

 

「間取りは変かもしれないが、部屋は少し広いと思うぜ。さて、着いた。ここがⅢ組~Ⅴ組クラスの奴らが2年間、世話になる第2学生寮だ。」

 

校門を出て、少し歩いて別れ橋の左へ行くと、そこには立派な建物が目の前に映った。

 

「大きい…建物です。」

 

「確かに学院内以外の周りの建物に比べたら、でかいかもな」

 

「クロウ先輩、案内して頂き、ありがとうございました」

 

「いいってことよ!そんじゃ、俺は2階だからまたな。」

 

クロウは2階の男子フロアへと姿を消した。

 

「私は4階の上で梯子に登るんだったよね…フォルティス?」

 

「ここにいるぞ」

 

「梯子に登れる?」

 

「無論…風を使えばいいだろ?」

 

「そうだったね、行こうか?」

 

フォルティスの答えに無意味な質問だったなと思いつつ、ユエは自室へと向かった。

4階の廊下の丁度真ん中辺りに梯子がつけられており、そこが自室だと気付く。梯子を登り、扉を開けた先には一通り生活が出来るスペースが整えられていた。

ベッドと調理器具と机と収納家具が部屋に配備されており、ベッドの近くの窓を開けると、そこからはトリスタが一望出来ていた。

 

「なかなかだな…」

 

「そうだね、ちょっと1人が使うには広いかもしれないね」

 

「いいんじゃないか?この寮の部屋を窓から見た限りでは他の利用者の部屋も大体そんな感じだぞ。ユエ、机の上に何か紙があるぞ」

 

フォルティスが一息吹くと、紙が舞い、舞うと同時にユエの元へと届けられる。

 

内容にはこう書かれている。

 

1年Ⅳ組 ユエ・ウィンゲルさん

入学おめでとうございます。

今回、女子の入学者が多かったため、厳選な抽選の中からあなたがこの部屋の利用者になりました。ご了承下さい。

トールズ士官学院 学生寮管理担当

 

 

「ユエ、どうした」

 

「いえ、この部屋であってるみたいですが…誰かここに来る際には判りにくいかもしれませんね。」

 

「そうか…まあお前には必要ないだろうが、ガイウスがお前に用があった際には困るか…まぁ、連絡して待ち合わせればいいんじゃないか?」

 

「そうですね、ガイウスのオリエンテーリングは無事に終わるといいのですが…」

 

「それよりもケルディックに買い出しに行くのだろう?急がなくていいのか?」

 

フォルティスに急かされてユエは慌てて準備をすると急いでケルディック方面の街道へ向かった。それから数刻後、荷物を抱え嬉しそうに寮へと向かうユエの姿が見えた。

相棒であるフォルティスはこの少女が少しだけ浮かれているのに少し引いていた。

 

「嬉しそうだな…」

 

「えぇ、荷物で送れなかった分の調味料と材料が買えたのと後、ハーブの苗と野菜の苗、これさえあればなんでも作れますから。」

 

そう語る中、エニグマの通信機能から呼び出し音が鳴ったため紙袋の荷物を右腕に持ち替えて左手でエニグマを取り出した。

 

「はい、ユエ・ウィンゲルです」

 

「ユエか?」

 

「ガイウス、無事に終わったのですね!」

 

エニグマの通信機能越しに聞こえる幼なじみの声に安心した。

 

「あぁ、ユエに言わないといけないことがある。」

 

「大丈夫ですよ、言わなくとも。貴方が進むべき道を見つけたのでしょう?」

 

ガイウスが切り出した話にユエは穏やかな声で彼に聞いた。

 

「ああ、俺はⅦ組に所属する旨を教官に伝えた。だから少しだけお前と違う道に行くかもしれないんだ」

 

それからガイウスはオリエンテーションで何があったのか語り出した。

ユエはそれをしっかり聞いていた。

 

「私は止めません。ですが、約束してください。無茶はしない。抱え込まない。って…」

 

「判ってる。お前との約束だ。」

 

「約束じゃなくとも親友として心配してるんです。約束でもしないとガイウスはいつも無茶したり1人で悩んでますから。勿論、ガイウスとの約束が私にとって一番大事です。だから私も守ります」

ユエがそう言うと、ガイウスは切り出した。

 

「心配かけてすまない。ユエは今、どこにいるんだ?」

 

「ケルディック方面の街道です。もうすぐトリスタに着きますよ。」

 

「今、俺がいるのがⅦ組の寮が駅の近くなんだ。そちらに向かう。」

 

「了解です。ですが…」

 

「大丈夫だ。目の前にお前がいるのを確認した。荷物は俺が持つから気にしないでいい。」

 

エニグマの通話機能が切れたと同時に目の前にはガイウスがいた。会話に夢中になり障害物以外は視界に入らなかったことが気付かなかった要因に気づいた。右腕で抱えていた紙袋の荷物をガイウスに取られてしまった。

 

「ガイウス、大丈夫ですから」

 

「今日、回復薬を届けてくれたお礼だ。それに身の危険があるかもしれない場所に君はためらいもなく来てくれたことは嬉しかった。だから黙って持たせてくれ」

 

彼が頑固なのはユエも知っている。だが、ガイウスもユエも天然が入った頑固というのは更に質が悪い。

フォルティスは2人とは付き合いが長いため今までの状況を振り返る。一歩も譲らないかお互いが譲歩を続けて刻々と時が過ぎるのかと思い出して溜め息をつきそうになったが、流れが変わった。

 

「判りました。ですが、私の生活用品を運んで貰うのですから夕飯、食べていってください」

 

「ああ、だが、夕飯の準備は手伝わせてくれ」

さらりとガイウスは交わした。

ユエの最大の譲歩を見事に交わした。

相変わらずユエはガイウスには弱い。

 

「………判りました。ですが、ガイウスは魔獣と戦ったのですから、簡単なことだけにしてください。私の住む第二学生寮は学園には近いですが、ガイウスの寮からは遠いので」

 

その証拠にガイウスは又、最大の譲歩を交わし、ようやくやり取り合戦が終わった。

 

それから、ガイウスはユエの部屋に来た時には驚いていた。階段を上り、更に梯子の先にあるのだからあいつの言葉を借りるなら訳あり物件ならぬ訳あり部屋にユエはこれから住むことになったのたが、本人は至っては訳ありとは考えていない。寧ろ気に入ってるようだ。

「カバブや香草焼きが食べられるなんて思わなかったな」

 

「調味料を行くときに頂いたんです。ガイウスが作る時用に多めに渡されているので分けて、明日、渡しますね」

 

「ああ、助かる。いい風が吹いているな」

 

「そうですね」

 

夕飯を作り終えて、並ぶのはノルドで作り慣れた料理で気持ちがいい春の夜を楽しむために窓を全て開けて食事を取っている。

「俺の部屋はユエの部屋より高い場所にはないから少し羨ましいな」

 

「良ければ又、来てくださいね。」

 

「ああ、甘えさせて貰おう。」

 

「ええ、ガイウスでしたらいつでも歓迎です」

 

「ノルドのようにはいかないが、お前と又、星が見たいな」

 

「私もです。ただ、クラス離れちゃっているので難しいですよね」

 

「なら、自由行動日の前日の夜に見ないか?」

 

まさか、ガイウスから話が出るなんて思わなかった。

 

「いいんですか……?ガイウス」

 

恐る恐る、間を置いて聞き返した。

 

 

「ああ、ノルドにいた頃にもお前と過ごしてきたあの時間を大切にしたいんだ。お互い悩んでいることがあったら、星を見ながらよく話していたあの時間は正直に助かっていた。」

 

 

「ガイウス、私も同じです…。いつも背中を預けられ、色々なことを話せるのはガイウスだけです。だからガイウスの時間が大丈夫の時に少しだけ時間をくれませんか?」

「じゃあ、決まりだ。お互い何もない限り、自由行動日前夜に星を見ながら話そう。本当はノルドにいた頃のように毎日でもいいんだが、学院生活に慣れないと難しいからな」

 

「そうですね。第一優先は学院生活に慣れることですから。」

 

それから、ガイウスと学院でやりたい事を話した。自分達がここに来た理由の他にもここに最初に来た時から興味があるものばかりだったため色々と挑戦したいと考えていたことを話すと、ガイウスは集落でやっていた絵を本格的に勉強したいと言っていた。自分は我流でやっていたから、基礎から学びたいらしい。

マカロフ教官が部活についても言っていた筈で確か、近日中にリストを渡すと言っていたのを思い出して言うと、ガイウスはそれは少しでも早く見たいな。と言っていたのでもし、早めに貰えたらガイウスにも共有を申し出ると、礼を言う。

話が盛り上がり、22時過ぎになってしまっていた。謝罪をすると、また笑顔で「気にしないでくれ、お前と話せて良かった」と言い、ガイウスは自分の寮へと帰宅した。

 

もうすぐはじまりの今日が終わる頃、私はガイウスに渡す調味料と朝食と昼食の準備をしてから、毛布を持って天窓から屋根へと登った。

 

 

「dia peqxe elfa Gillisu…」

 

「ガイウス、振り返らずに進めか。」

 

「フォルティス…」

 

「夜風もいいな。あいつは無事に寮に着いた。少し過保護ではないのか?」

 

隣に来たフォルティスはガイウスがいる第三学生寮の方向を見て、言う。

 

「否定はしません。彼は大事な家族ですから…」

 

「明日、ガイウスに朝食と昼食を置くために早いのだろう?もう寝てくれ、お前が星を見ると、本格的な天体観測でこちらが寝不足だ」

 

「そうですね。天体観測はもう少しこの地に馴れたらにします、おやすみ。フォルティス」

 

「待て、そこで眠るのか?」

 

フォルティスの声に反応はなく、眠るユエ。

 

はじまりの心構えはひっそり胸の内に

 

はじまりは何度でもやってきて終わりははじまりの数だけやってくる

 

next…学院の4月




ユエ・ウィンゲル
在籍;トールズ士官学院1年Ⅳ組
部活;?
武器;大鎌
斬:A 突:- 射:- 剛:A
初期属性弱点
炎;30 時;15
水;15 幻;15
風;15 空;15
地;15

初期状態異常
毒;10
封技;10
暗闇;10
睡眠;10
炎傷;30
凍結;10
石化;10
気絶;10
混乱;10
即死;10
悪夢;10
遅延;0
消滅;10
能力低下;10
崩し
斬1/突2/射1/剛1

今回出てきたクラフト
弐の舞;猟犬
狙いを定めた敵に対して必ず外さないダメージを与える。単体のみ一定確率で封技・封魔効果
※使用時は命中率低下効果無効
かかっていた時に使用した場合+1ターンマイナス効果がプラスされる。

備考
ノルド高原出身でガイウスの幼なじみ。
マスタークォーツ:カーディス


今回の解説
dia peqxe elfa Gillisu…

dia peqxe elfa はこちら、細音啓先生著書の黄昏色の詠使いシリーズにある讃来歌“オラトリオ”と詠唱に使われるセラフェノ音語を使用しています。
引用サイトはセラフェノ音語Wikiから。

dia peqxe elfaは作中にフォルティスが訳した振り返らずに進めという意味を持ちます。

gillisuはこちらの話でのオリジナルですが、ガイウスと読ませています。
この単語は今後も出てくるので、気になる方は意味を調べておくと納得するかも知れません。
原作で知りたい方は黄昏色の詠使いの2巻をご覧ください。



次回は日常編です。


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4 はじまりの学院生活

これは入学後のとある1日の話

 

「おはようございます、フォルティス。こちらに朝食を置いておきますね」

 

「すまない。」

 

「ちょっとガイウスに朝食を渡してきますね」

 

「気をつけて行ってこい」

 

4月、入学式が終わり、学院生活が始まった。クラスの皆とは少しずつだがコミュニケーションを取っていた。

 

早朝、私の日課には朝食とお弁当、いつものように大鎌の鍛錬も欠かさない。

集落では、ガイウスと同じ十字槍を主流にしていたが、ここでは大鎌を主要にすることを決めていた。

私の一族ではガイウスの住む集落とは違い、槍ではなく大鎌を使うのが主流。

理由としては自分が死ぬ時にこの地への未練や魂を断ち切る半身として大鎌を扱われていた。

つまり、風習や言い伝えから武器が大鎌になった。

折れたり、刃が欠けても幼い時に最初に習うことの1つにそれが組み込まれていた。

そのお陰でガイウスの十字槍も一度、折れた時に直すことができた。

 

ガイウスが起きる前に届けに行く。

第三学生寮のリビングにお邪魔、して机の上に置いていく。

“ガイウスへ”と書き置きを残して、私はすぐに後にする。

 

第三学生寮を後にすると、私はすぐに部屋へ戻り、荷物を取りに行く。

 

「ただいま、フォルティス」

 

「あぁ、旨かったぞ」

 

「お粗末様…窓とか開けとくから好きにしてて大丈夫です。お昼は後で渡すからいつもの場所でお昼頃に来てくださいね。4時限目が調理実習だからちょっと遅れるかも」

 

「ああ、そうさせて貰おう。多少の遅れは気にしないから気にするな。」

 

フォルティスは身体を伸ばして再び休むとユエは荷物を持って、向かった。

 

 

 

 

Ⅳ組ではリンデとヴィヴィの姉妹が委員長、副委員長で私は書記に任命されている。

理由としては、真面目そうだからその一点だけだったらしい。

私の仕事は、委員長達の補佐とホームルーム等の記録係でホームルームの時間はちょっと忙しい。

終了時間後に記録したノートをまず、時間担当の教官に内容の確認、次にクラスの担当教官からサインを貰い、クラスに戻る。

それを5分以内に終わらせないといけない。休み時間は10分、移動になると遅れると遅刻扱いになるため、付き合おうかと言ってくれるリンデやヴィヴィ、コレットには申し訳ないが、お断りをしている。コレットは夕飯の買い物をしていた時にお店で会ってからよく話す機会が多くなった。

 

家庭科の時間

Ⅴ組との合同授業は“お弁当”だった。Ⅳ組の女子はⅣ組の男子達に差し入れをするために“胃袋がっつり弁当”というテーマで作ることになった。

男子は確か、コンピューターを使った情報学を受けている最中だ。

 

女子も男子は同じ授業を受けるが、他クラスとの交流も行うという一貫がこの男女入れ替わりでの交流授業。

 

普段、集落でも作っているが、今回は父の故郷である東方風にしようと思い、父が残したレシピをフォルティスが前に見つけてくれ、それを見ながら今、作っている。

亡くなった父は料理が母より上手かった。だが、唯一父でも作れなかったあの料理のみ父にも褒められていたが、このメニューは今回の“お弁当”というテーマには難しいため、没にした。魚の塩焼きなどの具を入れたおにぎりと甘めのだし巻き卵、唐揚げは東方風とスパイスを効かせた物の2種類に東方風のポトフである肉じゃが、野菜は多めにしてバランスよくしたつもりだ。

 

そしてあるレシピを開いた。オリジナルレシピと父の字で書かれたレシピだ。そのレシピには文字と色が褪せてしまった写真を貼り付けたノートだった。それを見てデザートにしようと考えていた。

決まったのは父がよく作ってくれた抹茶ブラウニー。

自分が久々に食べたかったというのもあるが、お腹に溜まりかつくるみなどのナッツ類や砂糖で煮た小豆や豆類を入れた物、ナッツ類とチョコレートを入れた物、ナッツ類のみを入れた物同じ物だが、3種類工夫して栄養価も高いようにしてる。

瑞々しさが少し足りなかったなと反省しつつ、次の機会があったらミルク寒かベリー寒にしようと次回の調理自習に頭を膨らませていた。

 

「ユエ、早ーい」

 

「ヴィヴィも早かったね。」

 

「アタシもリンデも家にいた時は手伝ってたから馴れてるの。リンデとコレットもさっき出来上がったみたいよ」

私は完成したお弁当のお重箱を確認していると、いつの間にか3人はバスケットの中に入れた物を見せ合っていた。

 

リンデとヴィヴィはなるべく作る物は被らないようにしたらしい。

サンドイッチ系を作っているヴィヴィは、シーチキンを使ったサラダ感覚でマフィンに挟んだサンドイッチが中心でリンデは東方のカツという揚げ物を使ったガッツリしたサンドイッチが中心、メインはヴィヴィは鶏肉のピカタ、リンデは魚の香草焼きがメインだ。

 

コレットは自炊を始めたばかりでサンドイッチの具のレパートリーを増やしている。サンドイッチはロールパンにハンバーグ系をメインに置いて、ウインナーやうずらの卵など細かく盛りつけている。

 

「じゃあ、片付けをしてから食べよう。」

 

「よし、早く片付けよう!お腹空いちゃった~」

 

「食べるのは待って、男子や先生のも入ってるし、評価用のもあるから」

 

コレットの号令の元、片付けが始まったが、リンデが慌てて止めた。

そう、女子は2チームに分かれて作っていて、男子はアランさんとカズパルさんで今回の班長がコレットでじゃんけんに負けてマカロフ教官の分も追加している。ある意味、炭水化物が多いため、栄養価的に心配になってきた。

Ⅴ組みたいに分担式にすればよかったと内心、後悔した。

片付けが一段落してから、片付けのために避難させていた完成品を調理机の上に置いて、広げた。

 

「ユエのはあまり見てなかったけど、豪華そう!」

 

「ユエはノルド料理作るのかなと思ったけど、東方の料理なんだね」

 

「東方だからバスケットよりはこっちかなって。昨日、ケルディックで骨董市がやってて偶然、見つけたんだ。お重箱って言うんだって。母さんはノルド出身なんだけど父さんが東方の出身なんだ。いつも集落にいた時はノルド料理だけど、今回、どうしても挑戦したくてね」

 

「そうだったんだ。じゃあ、この料理はお母さんのレシピ?」

 

「………残念ながら、母さんは料理がほぼ壊滅的でね。父さんが毎日、作ってくれてたんだ。父さんがマメな人だったからきちんとレシピに書いてくれたんだ」

 

コレットに聞かれ、答えると、リンデの質問に答えにくそうに答えた。

 

「成程ね。話、変わるけどⅡ組とⅢ組の調理実習…ちょっと怖いことが起きたらしいから気をつけた方がいいわよ。」

 

「あの話ね。確か、あれでしょ?Ⅱ組のとある方の料理が独創的だけどちょっと何か違う何かが出来たって話でしょ?」

 

「私も聞いたことある。クッキーの筈が紫だったという話」

 

「う~ん、紫芋や紫色の人参が東方であると聞いたからそれなのかな。」

 

「変な物じゃなくてそうだと良いよね。」

たわいのない噂で盛り上がっていた。

 

「ここはお昼休み終了まで開放するので、ゆっくりしていってくださいね」

 

メアリー教官の一声と同時にⅣ組とⅤ組の男子達が乗り込んできた。

 

「いやっほ~!メシだぁぁぁぁ!」

 

「腹減った」

 

「お邪魔するよ。」

 

 

「お疲れ様」

 

「カスパル君とアラン君だ」

 

「委員長、副委員長、書記とコレットは色んなのがあるな。多分、書記が東方関連だな。」

 

「俺もそう思う。」

 

今日の午前中の授業はこの時間で最後のため、ゆっくり食べることが出来る。

書記の仕事も昼休み中に済ませればいいため、食べたらメアリー教官にサインを貰い、更にマカロフ教官を探さなければならない。大体は屋上だからまだ助かる。

その前にフォルティスにご飯を渡す約束をしたため、昼休みでもぎゅうぎゅうの予定だ。

 

「おー、お前ら行くの早すぎだ」

 

「マカロフ教官…遅いですよ。私達も作ってお腹空いてるんです」

 

「お~お、すまん。すまん。うちの姪を見習わせたい位の出来だな。」

 

ゆっくり調理室に入ってきたのはⅣ組の担当教官であるマカロフ教官だった。

その動作にコレットは頬を膨らませながら言った。

 

教官の姪はⅢ組のミントさんという方で教官の姉の娘さんらしい。

教官曰わくお姉さん似のため、家事が壊滅的ということで、この授業で何とか出来ないかと思うこともあるらしい。

 

「ウィンゲルさん、ブラウニーを作ったんですね。」

 

「はい、父がよく作ってくれたんです。緑色のは東方のお茶である抹茶を使っています。少しほろ苦いですが、父との思い出の味です。抹茶が大丈夫でしたら、召し上がってみてください」

 

メアリー教官が別にしているバスケットをそっと覗いていた。

 

「1つ頂いても宜しいですか?」

 

「えぇ、宜しければどうぞ」

 

メアリー教官がバスケットから一切れ取ると、口に運んだ。

 

「ほろ苦いですが、チョコレートの甘さでカバーしてて美味しいですね。ユエさん、先日、配布された資料にあったレシピノートに記録をつけてみてくださいね」

 

「ありがとうございます」

 

ユエはブラウニーのレシピをレシピノートに記録した。

ユエは抹茶ブラウニーが得意料理になった。

 

抹茶ブラウニー

ユエの父が自分の故郷の味を身近で知って欲しいという目的で考案した東方風ブラウニー。

ほろ苦いが、どこか優しい父との思い出の味。携帯食としても持ち運びが出来る。

 

HP2000・CP30回復

悪夢・睡眠3ターン無効

 

「メアリー教官、すみません。こちらの記録ノートにサインとコメントを頂いても宜しいでしょうか?」

 

「はい、こちらは記載したらマカロフ教官に渡しときますね」

 

「すみません、ありがとうございます。リンデ、ヴィヴィ、コレット、ちょっと図書館で借りたい本が入荷したと連絡が来ていて、ごめん。ちょっと行ってくる」

 

「行ってこい、書記。この弁当箱、運んどく」

 

「ありがとう」

 

調理室から急いで図書館へと向かった。

図書館に行くのは嘘ではない。

 

クロスベル時報録、その中でも取り寄せが出来るもので年代が近いかつ一番古いものを取り寄せていた。

 

旧校舎近く大樹上

 

「フォルティス、お待たせしました」

 

「慌てなくてもいいぞ、先程到着したばかりだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「見ていたぞ。馴染んでいて安心した。多分、あやつ等も生きていたら喜んでいる。ツキタチは少々拗ねるかもしれないがな」

 

クッククと可笑しそうに笑うフォルティスに抹茶ブラウニーを渡した。

彼は基本、雑食だ。自然の鉱石では雲母を好むが、他は基本なんでも食べる。

渡すと、早速食べる。

 

「ほろ苦いな…だが、懐かしいな。」

 

「父さんがよく作ってくれたから…」

 

懐かしいと思うが、どこか寂しい思い出。

それはユエの中で喪失した思い出だからだ。

よく作ってくれたあの時より後と今の間が欠落している。

 

「それはクロスベル時報録だろ?載っていたか?」

 

「残念ながら、取り寄せた物には載っていないみたいです。ノルドにいた時に見た夢に出てきた場所の爆破事件については載っていないみたいです」

 

「そうか、後はクロスベル市立図書館と審査を通らないと使えないが、王立図書館しかないな」

 

「王立図書館…?」

 

聞き慣れない図書館にユエは首を傾げた。

 

「王立図書館はこの大陸のありとあらゆる本が閲覧が出来る皇族ゆかりの図書館だ。クロスベル市立図書館はこの西エレボニア大陸の中では比較的大きな図書館だ。そこならば資料はある可能性もある。」

 

「クロスベルなら行けそうだけど、問題は市民しか借りることが出来ないんですよね。」

 

クロスベル市立図書館は自分でも簡単に調べていた巡回神父であるあの方とゼクス中将ならば大丈夫かもしれないが、残念ながらゼクス中将は予定が掴めない、巡回神父のあの方は行方が掴めないので。

 

「残念ながらだ。クロスベル市民以外から借りる場合は借りたい資料と目的など細かく書類に書かないといけない。厄介なのは貴重本の場合はクロスベル市民やクロスベルでの労働者の保証人を立てないといけない。王立図書館も同様で皇族達や国や大陸に貢献した功労者が推薦しないと使えないな。後は遊撃士の中でもA級なら知識、実力、知名度的には申し分ないだろう」

 

「遊撃士か……お父さんなら何とかなったのかな。」

 

フォルティスの言葉に1人の面影が脳裏に浮かぶ。

ジオ・ランドフィールド。東方からノルドへ剣の修行にやってきたA級遊撃士でありユエの父親だ。

後にユエに剣を教え、とある事件でこの世を去った。

 

「あいつなら何とかなったかもしれないな。あいつはあいつらと共にもうこの世にはいない」

 

「そうだね、その原因もしくは手がかりを探すために来たんだから…これだけはガイウスにも内緒にしてくださいね。このことはノルドの集落の皆は関係ないから…。自由行動日とテスト期間に調べに行こうと思います。フォルティス、付いてきてくれますか?」

 

「任された。乗らないのだろう?」

 

「そうだね、乗らないで風で渡るよ。クロスベルも行きと帰りで時間もかかるし、ガイウスにバレないならこの方がいいから」

 

既に判っていても確認する上で聞いてくる。

 

「さて、次は何の授業だ?」

 

「確か、軍事学の筈です。」

 

「軍事学か…面白い。試しに受けてみるとするか。」

 

「フォルティスが興味を持つなんて珍しいですね。」

 

「軍事学は戦いの学問だろ?ゼクスとやらの話もなかなか面白くてな。前から興味があったんだ。」

 

「なら、行きましょうか。職員室に日誌を取りに行かないと」

 

そう言って木の上を降りると、エニグマが鳴った。

すぐにエニグマを取ると、聞こえてきたのはコレットの声だった。

 

「はい、ユエ・ウィンゲルです。」

 

「ユエ?コレットだけど、ごめんね。男子達がお弁当を全部食べちゃって残ってないのと先生達から日誌預かってるよ」

 

「大丈夫、お腹空くもんね。今、教室に向かうよ。お重箱はどうなってる?」

 

「男子達に洗わせたから大丈夫。」

 

「了解。今から教室に向かうよ」

 

そう言ってユエとフォルティスはⅣ組の窓近くの木へと向かい、窓から入った。

 

「ユエ!いきなり窓から入ってきてからびっくりした…」

 

「ごめん、ちょっと間に合うか判らなかったからこっちの方が早いからね」

 

いきなり、窓から入ってきたことに驚いたのはリンデだった。

 

「次は軍事学だったよね?確かテキストと資料集は既に配布していて忘れたら連帯責任で訓練セットと反省文だったよね?」

 

「そうだったわね…」

 

「ヤベッ、忘れた」

 

「私も忘れた…」

 

「ちょっと…何で置き勉しなかったの」

 

「はい、皆。ちょっとだけで良いから時間と教室に教官を入れさせないで。後、何人忘れてる?」

 

手を挙げたのは5人だった。

 

「あれをやるのだな…有効だが触媒はどうする?」

 

フォルティスの問いにユエはいくつかの七燿石の欠片―セピス―を取り出してみせた。

 

「妥当だな」

 

机の上に出したテキストと資料集の色を確認する。

テキストと資料集の色と同じセピスを握りしめた。

 

「Es eposion leya…」

 

セピスが砕けた瞬間に現れたのは軍事学のテキストと資料集だった。

 

「1日しか持たないから自室に帰ったらすぐにライン写しなおして」

 

そう言ってユエは教科書類を忘れたクラスメイトに手渡した。

 

「これ、本物?」

 

「中身まで完璧だよ」

 

「えぇ、これでも精密に真似たと思う。昔、母さんから教わったことの応用だから」

 

中身を見比べてみても見破れない位によく出来ていた。

 

「タネも仕掛けも御座いません。ただ手元にあるのは今から1日しか形を保てない贋作のテキストと資料集で御座います!」

 

そうお辞儀をしてユエは席についた。

 

「書記が強い…」

 

「何度も忘れちゃ駄目だからね…後、他クラスとか教官達には言わないでね。これ、バレたら恐らく、スパルタより酷いクラス連帯責任になりかねないから」

 

「判った…絶対に言わない。」

 

溜め息を付きながら、念を押してユエは言うと、クラスメイトは即、そう返した。

ふと思い浮かぶのは、幼き自分と母との特訓だった。

 

「い~い、ユエ。見たままの道具を真似て、詠んで強化してみて。強化の内容は何でも良いわ。硬度でも中身の精密さでも何でも」

 

それが母に教わったことだ。見たものをそのまま形まで真似て強化する。

“投影”は私が一族から受け継いだ秘術で修行していて、その中で最も得意とする力だ。

属性は時属性と幻属性。ただ投影したものが形を保つ時間は最大1日しか持たない。

 

気軽にこの力を使ってもバレなそうな学業外活動があるならやりたいと思うが、部活は把握してないから判らない。

今日の放課後のホームルームで部活動の配置されている場所のマップがエニグマ宛てに配信されるらしい。

 

「なかなか使いこなしているじゃないか?強化も精密さも前より格段に上がっているのが分かるぞ」

 

「でも、これだけじゃ半人前。ツキ兄さんは同じ時属性でも空間・重力系だから力的には圧倒的に負けている。」

少し思い出してヘコんでいるのはユエだった。

 

「ユエ、奴の言葉を思い出せ…あの馬鹿者は何と言った?」

 

「ユエ、せめて誰にでも強いお前をイメージしろよ。現実では敵わない相手ならば、想像の中で勝て。自身が勝てないのなら、勝てるモノを幻想しろ。今のおまえに出来る事は、それしかない…。それをもって強くなれ、このノルドやお前が誰かを救いたいならば決して諦めるなよ」

 

脳裏に浮かぶのは赤い短髪にくすんだ金色の瞳をした青年だ。彼は自分の憧れで常に私にこう言っていた。

 

教室に入ってきたのはがたいのいい身なりをきちんとした金髪の男だった。

ナイトハルト教官否ナイトハルト少佐は帝国正規軍・第四機甲師団から出向してきた軍人だ。

第三機甲師団であるゼクス中将の雰囲気に少し似ているが、何かが違う。

そんなことを思っていると、フォルティスは隣の席に座っている。私の右は空席で誰も座っていない。

フォルティスにも贋作の教科書と資料集を渡すと、彼は器用に風を使ってページを開いた。

 

「全員、忘れていないようだな。では、教科書28ページを開け」

 

そして口開かれるは教科書の内容だ。

 

だが、最新の軍事学でそれを含めて、私がノルド出身だからだろう現在のノルドに配備されている戦車は聞いた話も交えてくれたようだ。

配備されているのは旧型らしい。

テキストの絵を見ても動力部などで分かるが、最新型は機動力は優秀らしい。

だが、優秀故に弱点もある。

あの機動力は少し軽くしているため、防御力はあまり良くはないらしい。

 

「戦車については6月の中間テストに出すつもりでいるためよく見直すように。以上が本日の授業内容だ。次の時間は軍の仕組みと隊列についてを行う。」

 

「起立、礼」

 

リンデの号令で終了した。

 

授業中、黒板の内容をノートに写しながら、日誌にまとめる作業はなかなか難しい。

いつもなら休み時間にはまとめ終わるけど、日誌で厳しい人がいる。それが日誌三大鬼教官と伝わっているハインリッヒ教頭、トマス教官、そしてこの方、ナイトハルト教官だ。

 

Ⅴ組は日直による当番制、Ⅲ組はペア当番制でⅣ組は書記による固定でまとまっている。

ナイトハルト教官の恐ろしいところは軍形式による報告書でまとめなければならないのでマニュアルが渡されている。

 

ハインリッヒ教頭は見やすくかつ丁寧にまとめなければならないのと知事が載せるような正式文章でまとめなければならないため、こちらも見本が渡されている。

 

トマス教官は内容が授業と一致しているかつ授業に対してのコメントを書かなければならないのと文字数は2000字以上とハードな要求を求められている。

 

まあ、ノルマと思えば何とかなるかもしれない。10分の休み時間でこなすのは苦行と言える。

何故、Ⅶ組にはないのかといえば特殊カリキュラムがあるため、それ故の免除らしい。

そして役割による日誌制度はくじ引きで決まっているらしく、マカロフ教官が引いたのが固定枠である書記だった。

ただ、それだけなので仕方ないと思う。

 

「これで大丈夫かな?」

 

書き終わった日誌の誤字脱字がないか内容に相違点がないか確認すると、質問をしているクラスメイトに囲まれているナイトハルトの元へ向かった。

 

囲まれている先から突然、自分に向けて腕が伸びてきた。

 

「ウィンゲル、ご苦労だった」

 

「お気を使わせてしまい申し訳御座いません。」

 

ユエはそう一言を添えてナイトハルトに日誌を手渡した。

 

これで帰りのホームルームでクラスの1日が終わる。

 

いつもならすぐに来るはずのクラス担当教官であるマカロフが来ない。

 

代わりにエニグマの通信が鳴った。

鳴ったのはリンデのエニグマからだった。リンデはすぐに着信を取り、応答に答えた。

 

「はい、リンデです。マカロフ教官?はい、はい、はい…分かりました。皆には伝えます。」

 

「リンデ、何があったの?」

 

ヴィヴィはリンデの通話が終わると、話かけた。

 

「マカロフ教官が急な出張が入ったからホームルームはなし」

 

「じゃあ、マップは?」

 

コレットがリンデに聞くと、リンデはマカロフから受けた指示を話した。

 

「それについては今から送るから大丈夫だって」

 

その言葉と同時に一斉にエニグマの受信音が鳴った。

 

エニグマを見ると、部活一覧詳細マップというプログラムが表示され、プログラムがインストールされていた。

 

「すごーい、学院のマップと部活の詳細が綺麗にまとまってる」

 

「へえ、こんな部活、あるんだな。行ってみようぜ」

 

それから、一斉に解散になった。

ヴィヴィ達も気になった部活があるため、先程、それぞれの部活見学に向かった。

 

それから、ガイウスに向けてプログラムを配信してみる。

 

上手くいったようだ。

 

「ユエは部活の見学に行くのか?」

 

「あまり考えてなかったのが答えです。天体観察の部活はないみたいですし、少し学院散策には行くつもりです」

 

そう言い、ユエも教室を後にする。

向かった先は屋上だった。

 

屋上から見えるのは馬術部と園芸部、ラクロス部だ。

後は学生館や校舎にあるらしく、校舎から向かうことを決めた。

 

真っ先に向かったのは美術部だった。

入った先には見慣れた人物がいた。

 

 

「ユエじゃないか」

 

「ガイウスはやっぱり美術部だったんだね、最初は馬術部かなって思った」

 

「基本的なことを習いたいと思ってな、ユエは決まったのか?」

 

「天文学、星に関係する部活を探しているんだけど見つからなくって、ちょっと、迷ってるんだ」

 

「ユエから貰ったマップにはなかったな」

 

「まあ、同好会も生徒会に申請すれば可能だけど、活動が主に夜の場合は担当教官の申請も必要って話だから見送りかな。まだ期間もあるから見て回るから、またね、ガイウス」

 

そう言って、ユエは美術室を後にした。

 

 

 

それから、西から東へと見て回るが、これといった部活は見つからなかった。

 

釣りは、のんびりでいいかもしれないけど、何かが違っていたため、近くの釣り場とノルドの釣り場のスポット情報交換をした。

 

占い、星も詠むというのでいいかもしれないと思ったけど、分野が違っていて、フォルティスのことを見ていた視線に危険を感じたため、却下した。

 

チェス、派閥があるらしく、今日は活動日ではなく、見学が出来なかった。

 

馬術、ノルド高原のことで話していて、相性はいいと思って、たまに乗せてもらうまで押さえることになった。保留

 

水泳、水に入るのは好きだけど、泳ぎ方が一族特有で驚かれて、文化の違いが目に見えてしまうため、やめといた。そして、幼い時の傷跡もあるため、余計に気にしてしまいそうだ。そして、泳ぐ勢いが凄い同級生からの視線が強かった。

 

フェンシング、ルールは知っているけど、アランと貴族クラスの同級生の空気が重いため、避けることになった。フォルティス曰く私のような剣術を進んでいる者は、やってるうちに癖がつくと、直すのが大変だそうだ。せっかく褒められているので、フォルティスが認めてくれたら、考えようで保留。

 

ラクロス、うちのクラスの子からも声を掛けられたけど、紫色の髪の毛の子からの視線が痛かったため、却下した。悪い方ではないと思う。

 

園芸、ヴィヴィがいて、話しているうちに園芸部の先輩からお花さんが嬉しそう、遊びに来てねとお誘いで今度、お茶会をすることになった。保留

 

調理、噂の凄い料理をする同級生から危険な香りがしたため、フォルティスからもやめとけと言われた。却下

 

吹奏楽、アークスみたいなことが起きたら、楽器が傷んでしまうとつらいため、却下した。

 

「部活は、無理に入らないでいいかな。星は、自由開放日にクロスベルで専門のところにいくか、図書館に専門書を取り寄せようかな」

 

「自由だろう、そこは。但し、調理部はやめとけ。あの料理からは、人を惑わせる媚薬の匂いがした」

 

フォルティスが鳥肌を立てながらも忠告するのは、珍しいことだった。

 

こうして見ているうちに夕方だ。

何も決まらぬまま、何がいいか、頭に浮かぶ。

 

見ていないのは工房と呼ばれた施設を利用している技術部という部活のみだ。

技術部と聞くと、エニグマのような現象が起きる可能性が示唆される。

 

「トワ、生徒会に依頼をしてもいいかな?」

 

「何かあったの」

 

「実はカラスに大事なお守りを持っていかれて、捜索をお願いしたいの」

 

「大丈夫だよ、すぐに依頼として受理するね」

 

 

Isa da Sion ,parallel lisha

 

(さあ、教えて 、ここにはいない愛しい子達よ)

 

 

xiss yu xixic lef getie eposion…

 

(小さな時の囁きよ)

 

「(こんにちは。半人前の聖霊(アルケー)さん、この地で捜し物かい?)」

 

入学式の時に花と共に舞った精霊(ジン)3人だった。

 

「(こんにちは。そちらの方のお守り、カラスが運んだそうなんです。何か知りませんか?)」

 

ユエはラピスから映し出したのは、先程の女性の先輩だった。

 

「(ああ、あのカラスかい?あの旧校舎のところにいるよ。キラキラしたものが好きでね、カラスというよりは小型の魔獣さ。すばしっこくって、更に我ら精霊(ジン)も迷惑してたのさ。)」

 

「(半人前の聖霊(アルケー)さん、こちらから依頼を出すよ。あの魔獣と話して、和解出来るなら、その方向で勧めてくれるかい。駄目なら、せめて、精霊(ジン)と人を邪魔しないと奴らに言わせて欲しい。人が依頼を達成した際に報酬と言うのが必要なのだろう?)」

 

「(報酬は聖霊(アルケー)に必要なものを用意しとこう。なかなかこの地が不慣れで用意が出来ないだろう?もしくはユミルに暮らす聖霊(アルケー)の連絡役を買おう。)」

 

 

依頼

浮かれカラス交渉

依頼人 花舞精霊(ジン)

ミッション内容

旧校舎に暮らす小型魔獣と交渉せよ

 

クエスト達成条件

旧校舎にいる小型魔獣と交渉又は屈服

小型魔獣から奪われた御守を取り返す

 

「ユエ、恐らく、この魔獣はノルドに似たタイプがいる。交渉するなら、聖霊(アルケー)化は最低でもしておけ。舐められるぞ」

 

「判りました。半人前ですが、頑張ります」

 

「ありがとう、私達は入口にいるね」

 

旧校舎に向かい、建物を通り過ぎた森の中に入っていったそして、周りに自分以外がいないことを確認すると、ユエはゆっくりと目を閉じて、再び目を開くと、その姿は変わった。髪は白くなり、耳が少し尖り、羽根が生える。瞳は青竹色がより濃くなっていた。普段のその姿は少し違えど、ユエ・ウィンゲルだ。

 

丁度、目の前にはターゲットの小型の魔獣がいた。

烏に姿が近いその魔獣に話をかけた。

 

「すみません、私はノルドの聖霊(アルケー)、ユエと申します。あなたにお願いがあり、参りました。」

 

「審判の意味を持つ聖霊(アルケー)、しかも風の聖霊(アルケー)の半人前が俺に何のようだ。」

 

「2つ、お願いがあります。1つ、こちらに住む精霊(ジン)に何らかの妨害を与えていると聞きました。そちらをやめて頂きたい。2つ、あなたが持つその輝きの御守を返して頂きたい。それは持ち主が大切にしている御守です。」

 

聖霊(アルケー)、2つ目は返してやろう。それにはセピス塊20個と交換が必要になるがな。だが、1つ目は俺が断った場合のことはあちらの精霊(ジン)に言われているだろ。争いを好まない聖霊(アルケー)でも言われている筈だ。」

 

「ユエ、仕方ないな。セピス塊は予め、用意があるが、魔獣は血の気が多い者が多い。そこはしっかりと諦めろ。聖霊(アルケー)でも争いを好まなくとも争いは付き物だ。」

 

ユエは烏型の魔獣に交渉を持ちかけ、その魔獣から返ってきた内容を横で聞いていたフォルティスが口を開いて、告げた。

その言葉にユエは大鎌を取り出すと、構えた。だが、その魔獣は先手必勝の如くにすぐに攻撃をしてきたが、大鎌で弾き返し、攻防戦が続く一方だ。

 

「なかなか速いが、どうだ、いけそうか?」

 

「ノルドの民の槍の方が速い。」

 

そして、動きを見極めたのかユエは大鎌を魔獣に向かって投げると、大木に大鎌の刃が突き刺さっていた。一言、両手に向けて、呟き、魔獣の背後に身を移し手刀を決めた。その手刀は重く、まるで鋼鉄だった。

 

「この聖霊(アルケー)詠唱は時属性だな。大鎌を何故、囮にした?」

 

「あなたは私が大鎌を使いこなせていないこと、この瞳の色が風の聖霊(アルケー)だと知っていた。だから、動きが大きい上にスピードが速い短期決戦型な動きで狙っていた。それは聖霊(アルケー)を知っていたから、私が命と同じ位大事な大鎌を手放さず、そのまま使うと思っていたから出来たことです。私がそのままだったら、隙を生んでいて、そちらが有利でした。ですが、大鎌のリーチではあなたの錯乱する動きには懐に入られる確率が高い。なら、一瞬を狙おうとして、このようにしました」

 

「セピス塊20個との交換、精霊(ジン)の邪魔をしないということで交渉を」

 

「いいだろう、その瞳と容姿、ノルドの空気とその瞳に騙されたが、風属性ではなく、上位属性でも半人前とはいえ、時属性の聖霊(アルケー)と気付けなかったのは俺の敗北だから。」

 

ユエは行動の理由、続けざまに交渉内容を言うと、魔獣はそれを了承した。

 

セピス塊が入った袋を魔獣の側に置くと、ユエとフォルティスはすぐに離れた。魔獣もそれに習い、御守をユエとフォルティスの前に置くと、袋を持って、すぐに森の奥へと帰ってしまった。

御守を手に入れた。御守は瓶にガラス玉に似たものと折りたたんだ紙片が入っていた。

 

「交渉成立ですね。行きましょう、フォルティス」

 

「ああ」

 

ユエとフォルティスも旧校舎の方へ戻るためにその場を後にした。入口の前でフォルティスは姿を見えないようにユエは聖霊(アルケー)化を解くと、森の入口に戻った先に待っていたのは入学の朝に出会った生徒会長トワ・ハーシェルだった。

 

「あっ、ユエさん。駄目だよ、旧校舎付近は一般生徒立ち入り禁止なんだから」

 

「……申し訳ございません、こちらをお渡しします」

 

トワに御守を手渡すと、すぐに立ち去ろうとしたが、その場を制された。制した行動はユエの目の前に腕を広げていた。

 

「もしかして、これのために入ってくれたの?」

 

「……」

 

何も言わないことを肯定ととり、慌ててすぐに制していた腕を下げた。

 

「ごめんね、知らなかったから、改めてお礼を言わせて。ありがとう、助かったよ。手がかりがあまりなかったから、依頼の発注に少し困っていたんだ」

 

トワの言葉にユエは首を横に振って、答えると、トワは言葉に合わせて、首を振ったり、頷いたり反応をして、答えているのをトワは確認しながら、続けて聞いた。

 

「そっか、ありがとう。もし、緊張しているなら、そのまま聞いて貰ってもいいかな?」

 

「これは依頼主の子に渡しておくね。あのね、ちょっとお願いがあるんだ。」

 

「生徒会ではたまに依頼をこうやって発注しているの。1人はⅦ組のリィン君を代表にお願いしているんだけど、今回のような依頼はユエちゃんにもお願いしてもいいかな。これは学院公認ということもあるんだけど、今回の一件のようなことがあると、本当に助かるんだ。担任であるマカロフ教官や担当教科の教官にも私から伝えておくよ」

 

少し悩んだ素振りをとって、ユエはフォルティス、そして、自分の大鎌にゆっくりと視線を傾けて、トワに目を合わせて頷いた時、トワは目を輝かせながら、詰め寄ってきた。

 

「ありがとう!よろしくね、ユエちゃん。あっ、さっきからユエちゃんと呼んでごめんね。」

 

トワの発言にユエは首を振ると、その呼び方を肯定ととった。

そのトワが話している最中にふと浮かんだのは幼い頃の自分とガイウスだ。聖霊(アルケー)化をしていた自分はあまりにもいつもの自分と姿が違い、恐れられることを知っていた。だが、ガイウスは自分の伝えたいことを橋渡しになってくれた。

 

「それじゃあ、ユエちゃん。後日、生徒手帳にクエストメモを追加するから、生徒会室に来てね」

 

「わかりました、宜しくお願いします。トワ先輩

 

少しだけ違う自分の声にトワが驚いたが、こう続けて、手に何かを握らせてくれた。

飴だ。

 

「これ、私のおすすめの蜂蜜の飴なんだ。喉にとっても良いから、よかったら、舐めて。春っていっても風が冷たいから、体調には気をつけてね」

 

「ありがとうございます」

 

優しいその一言に何かがストンと胸に落ち着いた。

トワはその場を去った後、フォルティスが言った

 

「ユエ、良かったじゃないか。」

 

「うん、“嬉しい”ってこういうのかな。」

 

「ああ、それが“嬉しい”だ」

 

この一歩は彼女にとって、大切な一歩だろう。

ああ、その一歩をお前達にも見せたかった。

 

まだまだ頼りないが、確実にお前達の意志を継いだ一歩なのだから。

 

その理由はまた、先へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大分、時間がかかっちゃいましたが、ようやく投稿になりました。
閃の軌跡Ⅳに向けて、完結を少しでも目指したいです。


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ユエの設定1&用語まとめ

Ⅶ組のケルディックなどの課題前に纏めました。

閃の軌跡Ⅳ発売おめでとうございます!
プレイは暫く先になりそうです。

劫炎で死んでます。

2019/06/03 文章が読みづらい部分を修正しました。
近日中に次の話が更新できればと思います。


 

【挿絵表示】

 

ユエ・オラトリカ・ウィンゲル・ランドフィールド

 

ユエ・ウィンゲル

在籍:トールズ士官学院1年Ⅳ組(書記)

部活:なし

武器:大鎌

斬:A 突:- 射:- 剛:A

初期属性弱点

炎:30 時:15

水:15 幻:15

風:15 空:15

地:15

 

初期状態異常

毒:10

封技:10

暗闇:10

睡眠:10

炎傷:30

凍結:10

石化:10

気絶:10

混乱:10

即死:10

悪夢:10

遅延:0

消滅:10

能力低下:10

崩し

斬1/突2/射1/剛1

 

 

 

ノルド高原の聖霊の集落オラトリカの出身

聖霊の集落オラトリカは原因不明の焼き討ちにより、消失している。

 

学院での登録は“ユエ・ウィンゲル”

 

ユエの名前については4構成となっている。

名前(ユエ)・聖霊の集落名(オラトリカ)・集落に属しているものの聖霊側の名字(ウィンゲル)・集落に属する者の名字(ランドフィールド)の順になっている。

結婚すると、一番最後に名字が追加される。

申請書類で悩んだのは書類に収まりきれないため、どこで省略するかによる。

 

 

 

瞳:青竹色

髪:若葉色

 

現在の聖霊化の色

瞳:青竹色

髪:白(どちらかというと月白色に近い)

 

 

Ⅳ組の書記を担当していて、部活動はやっていない。

両親は他界

兄弟子にツキタチがいる。所持しているエニグマはその兄弟子のお下がりだったりする。

現在はガイウス・ウォーゼルのいる集落に身を寄せる。

まだ出てきていないが、保護者が一応、いたりするが、ノルドに向かうことが出来ないため、ウォーゼル夫婦にお願いしている。その保護者とユエの仲は良好だったりする。

 

 

クラフト

 

両断のグロリア

足があるもの全てに大ダメージを与えるが、足がないものにはダメージを与えることができない。

稀に即死効果

フィールド範囲、円型

 

弐の舞:猟犬

狙いを定めた敵に対して必ず外さないダメージを与える。単体のみ一定確率で封技・封魔効果

※使用時は命中率低下効果無効

かかっていた時に使用した場合+1ターンマイナス効果がプラスされる。

 

 

 

Ⅶ組がケルディックに行く前のステータス情報をまとめています。

 

 

用語まとめ

 

 

聖霊

アルケーと読む。古き伝承で空の女神の化身と謂れているが、それは誤りだったりする。精霊の言葉の意味で“精霊に成り損ねた精霊”、“人に成り損ねた精霊”の意味を古くから持っているため、精霊の中では一部、小馬鹿にされることもある。

普段は人の姿をしているため、全く見分けがつかない。

聖霊化すると、主属性によって羽や宙に浮かぶなど空中能力を持つようになり、髪が白くなり、耳がいつもより尖ったりするなど、特徴が出てくる。又、力の制御が出来れば、人の姿でも飛行能力を使用することができる。

 

 

聖霊化のランク

初段

まだ聖霊化の能力や主属性が定まれていないため、特化した力がない不安定な状況。自然の声、その地に住む精霊の声が聞け、コミュニケーションがとれる程度。

基本的な導力魔法程度に全ての属性を詠唱で発動出来る程度。

聖霊化は生まれた土地から離れると、聖霊化ができず、飛行能力を使用できない程度。

 

中段

主属性が定まり、聖霊としての力もはっきりしている。

この頃に護衛精霊との契約が推奨されている。

主属性の力が高まったことにより、主属性や自分の属性の性質にあったものであれば、無詠唱での発動が出来る。他の属性も他の聖霊からの加護や護衛精霊との契約でその属性の力を使用できる。

自分がいる地にて緊急性がある場合、その地に住む精霊(以下、土地精霊)の力を借りて、その地の力の使用の許可をもらえる程度の力を持つ。

聖霊化については、生まれた土地から離れても持続的に能力を使うことが出来、自分の力をコントロールできる程度、但し、護衛精霊と契約できるということで古の制約による責任能力も問われる一般的な聖霊。

現在のユエはこの段階で状況が作中にて複雑な状態になっている。

 

上段

自分の主属性以外の力を無詠唱にて使用でき、土地精霊から許可をとらなくとも、土地の力を使用できる。

その他にも権限などが付与されたりする。

又、秘術や護衛精霊を違う聖霊との一時契約を強制履行も可能にさせることができるが、リスクを背負うことが条件。

ユエの兄弟子はここにあたる。

 

主属性などの定めがなく、力と適応によっては全ての力

を使用でき、秘術の使用ができる唯一のランク。集落でいうと、族長クラスに辺り、試練を受けて乗り越えた者のみ可能とする。

ユエの母と作中で出てくるユエの書類上の保護者が現在、公開できる情報にあたる。

 

精霊

ジンと読む。ここはノルドでいう精霊信仰の話に出てきた読み方と一緒。聖霊は人の姿と聖霊の姿を持つが、精霊は精霊の姿しか持たない。稀に高位な力を持つものだと人の姿も持つ者もいるが、例外もあったりする。

 

護衛精霊

フェリシアと読む。名前の通り、主を守るために守る精霊。精霊側にも聖霊側でもどちらにもある契約。主を守りたいという気持ちによる契約と何かを条件付きで行う契約の二種類ある。

 

 

 

 

 

 




こんな感じでまとめてきます。次はノルド編で纏める予定です。


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