(習作)とある転生者たちが作ったさいきょうのニホンの異世界戦記 (ハルゼー)
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プロローグ

西暦 1939年 4月1日

この日、大日本帝国は、勢力圏諸国とともに地球上から消えることとなる

 

世界有数の大国、大日本帝国の首都たる帝都東京にいる首脳たちは大混乱の渦中にあった。

 

「近衛首相お耳に入れたいことが」

首相補佐官のひとりが慌てて入室してきた。

 

「何事かね?尾方君」

近衛と呼ばれた男が発言を促すと

 

「自国の領土以外のユーラシア大陸が消えました」

と呆然とした表情で尾方が言った。

 

「何!?それは真か?」

近衛はあまりに驚天動地の出来事に驚きのあまり大声を出してしまった。

 

「はい・・・にわかには信じられませんが、何度も何度も繰り返し欧州や大陸に対し連絡を取ろうと試みていますが返信が来ません」

 

「エイプリルフール・・・・なわけないか」

いまだ驚いた様子を隠しきれずに呟くように近衛は言った。

 

「航空隊や艦隊から構成される周辺の捜索隊を至急編成し周辺を調査するよう伝えたまえ

なんにせよ我々にはより多くの情報が必要だ」

 

「了解しました。そのように伝えます」

 

(至急評議会を開かねばならんな・・・仲間たちと協議して早急に対策をとらなければ)

 

帝都東京 某所

 

「いやはや困りましたな近衛さん」

 

「米内さん史実では後1年ほどで首相になりますね?どうです今から経験してみるというのは?」

と近衛が冗談交じりに言うと

 

「いやいや遠慮させていただきます。自分にはそこまで利害調整能力はないんで」

転生者で前世はサブマリナーだった男が心底いやそうに首を振った

 

「ふむ・・過去に転生したかと思えば異世界か・・なかなか我々も愉快な経験をしているな」

と高野が顔を歪ませて呟いた

 

「しかし実際に経験するとなると・・・厄介ごとしか起こりませんな」

と南条が迷惑そうなそぶりでいった

 

「で?対策はどうします?」

仕切りなおすように近衛は言った。

 

「「「う~む」」」」

 

全員が唸りしきりに何かを呟いては首を振ったりしていた。

 

「とりあえずはまずは近衛さんが指示したように情報が必要だ、我々は現在目隠しされたも同然の状態だ

いきなり嵐に突っ込むという事態は避けたい」

と会合のまとめ役である大高が言った

 

「確かにそうですな・・まだ現状では打てる手は少ない」

 

「それに帝国の構成諸国とは連絡がついているのだろう?ならまだ希望はある。」

 

「そうだな・・当座は何とか凌げそうだ・・・しかし根本的解決のためにはやはりどんな国とであれ交流が必要だ」

 

「ほかに国が存在していればの話だがな」

 

「それを確認するためにも調査をするんだ」

 

「さてどんな結果になるのやら」

 

「ドラゴンが飛んでいたりして?」

 

「ファンタジーか・・・ドラゴンが出るのなら魔法はデフォでしょう。」

 

「いやいや案外船が空を飛んでいたりして」

 

「まあ調査の結果次第だな」

 

周辺海域を航空機や艦艇が次々と探索していったがすぐに問題が発生した。

 

曰く航法がまるでうまくいかないと

 

そんな馬鹿なと何度も何度も検証したが航法がずれていくのである。

そうまるで地球が球体でなく平らであるように・・・・

このことに対し空海軍や海運業や航空会社はとても頭を抱え悩むことになり1から航法を構築することとなる。

 

そして調査隊はいくつかの成果を上げることとなる。

 

日本領布哇諸島から北へ調査へ向かった超重爆撃機富嶽がまさに驚天動地のものを発見する。

 

「な・・なんだこの巨大な滝は!?」

 

全高は1000mはありそして長さは地の果てまで続いているかのように長かった。

あまりにも非常識的な光景だったがしっかりと映像に収め本国へ帰還した。

 

その後も調査を続けこの世界の人類とのファーストコンタクトを果たすこととなる

 

帝紀1343年 8月 メスス島沖合

 

広大な青い空の中一機の航空機がポツン飛んでいた。

よく見るとパイロットはまだ中学生程度の少年東洋系の顔だちをした少年で後ろに同年代の西洋系の顔立ちをした少女を載せていた。二人の少年少女は言い争いをしていた。

 

「やめようよ清顕!おじさんの言いつけを破って海に出るなんて!」

 

「大丈夫だってミオ!ばれなければ問題ないんだから・・もしかしてビビってる?」

 

「何言ってるのよ!もうどうなっても知らないからね!」

 

今日清顕少年は『海に行っちゃいかんぞ』という父の言いつけを破り海に繰り出していた。

行っちゃダメと言われたら行きたくなるというのがこの年代の子供の特徴の一つなのだが

 

そのまま言い争いを続けていると、ミオが不意に話をやめた

 

「あれ?ミオどうしたの?」

 

「あれ何?」

 

「え?う~んと・・・・」

 

目を細めてよく見ると黒い点のようなものがどんどん近づいてくるのが見えた。

 

「あれは飛行機じゃない?」

 

「そうだね・・・よし近づいてみてみよう」

 

見知らぬ航空機が通過すると思われる地点へ先回りし見てみると

 

その航空機はとても大きかった。今まで清顕が見たどの航空機よりも大きくそして早かった。

 

翼は水平ではなく斜めに後退しており6基のエンジンが轟音を鳴らし信じられないスピードで飛んで行った。

 

「す・・すごく大きくて速かった・・軍の新型機かな?」

 

「何言ってるのよ!あんな赤い点のマーク秋津、ハイデラバード、セントヴォルト、ウラノスのどこのものでもないわ」

 

「じゃあ・・未確認の勢力?・・・メスス島の方に飛んでいったね・・」

 

「あ・・危ないんじゃないの?メスス島」

 

「い・・急いで戻ろう!」

 

そして慌ててメスス島へ戻った。もちろん清顕少年は言いつけを破ったことがばれて父から大目玉をくらったことは言うまでもない

 

同時刻 富嶽機内

 

「機長!前方に未確認航空機発見!」

添乗員が報告すると

 

「何?」

よく見ると複葉機がこちらに近づいてくるのが見えた

 

「どうやら軍用機ではないようです」

 

「だとすると民間機か・・・・」

 

「パイロットは…少年?」

複座型の複葉機の操縦席には中学生程度の少年が座っており後ろには少女が座っていた。

二人は大層こちらに驚いた様子で凝視していた。

 

「ふむ・・少女を連れて飛行機でデートでもしているのかな?」

 

「機長、この先に島がありますがどうします?」

 

「ふむ・・・虎穴に入らずんば虎子を得ずというからな・・・よしこの先の島の様子も見てみよう燃料に余裕はあるんだろう?」

 

「わかりました。」

 

さて・・・どんなものを拝むことができるのだろうか…

 

 

数十分後 メスス島

 

一人の男が農作業にいそしんでいた。男の名は坂上正治 かつては秋津連邦のパイロットで撃墜数100を超える超エースだった男だ

 

息子の帰りが少し遅いことを訝しみつつ農作業をしているとふと轟音が聞こえた。

ふと空を見上げると一基の航空機が飛行機雲をたなびかせながら飛んでいるのが見えた。

エンジンの数は6基あり翼は斜め後ろに後退しておりとても速いスピードで航行していた。

 

「む・・あのような航空機は確かまだどこにも配備されていないはずだ…」

 

すると軍の戦闘機とおもわしき航空機が例の航空機に近づこうとするが軍の戦闘機を簡単に振り払い

空の彼方へと消えていった。

 

今度軍の伝手を使いこのことを聞いてみようと思いつつ、おそらく言いつけを破ったであろう息子を

どうやって叱ろうか考えながら家へ帰って行った。

 

富嶽機内

 

「機長・・迎撃機が飛んできましたね」

 

「ああ・・だがえらく旧式の機体だったな」

 

「だいたい・・87式(史実の96式戦闘機)くらいの性能だったと思います」

 

「しかし今回はとても実りの多い調査だったな至急帰還してこのことを報告しなければ・・映像や写真もちゃんと取っているよな?」

 

「ええ大丈夫です」

 

 

この2日後再び評議会が開かれることとなる

 

帝都 東京 某所

 

「いやはや驚きの連続ですな」

 

「ああ、特に驚いたのは巨大な滝の存在だな」

 

「高さは軽く1000mを超え地の果てまで続く滝か…」

 

「地表が平らなことと言いまるで天動説の世界だ」

 

「それに我々似た文明の存在も確認できた。さてこれからどうするべきか…」

 

「交渉団を・・特使を派遣するのはどうでしょう?」

 

「確かにそれがいいだろう・・問題はだれを特使にするかだ」

 

「白洲さんか吉田さんかのどちらかでしょう」

 

「ふむ・・吉田さんにしましょう。ここは彼の能力に期待しましょう。」

 

「では不測の事態に備え護衛艦隊をつけて向かわせることとしましょう」

 

 凶と出るか吉と出るかそれはまだわからないことであった。

 

1か月後 吉田を中心とした交渉団を乗せた艦隊が呉を出港しメスス島へ向かうこととなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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登場人物設定(今後登場予定も含む)

評議会メンバー

 

近衛文麿

 

現内閣総理大臣 前世ではオタクな大学生であり、歴史に詳しく決断力に富んでいる。

変人奇人の多い評議会メンバーの中では常識人

 

伏見宮博恭王

 

皇族であり海軍のドン 前世では航空機製造会社に勤めており、航空機マニアだった。

通称『宮様』高野や平賀と手を組み「ぼくがかんがえたさいきょうのせんとうき」を作るべく暗躍している。

平賀とともに暴走して時々とんでもないものを作ることがある。

 

米内光政

 

前世は、サブマリン707や青の6号、沈黙の艦隊の愛読者であり海自に務めていて有能なサブマリナーだった。潜水艦による通商破壊などを研究していたため、会合の中では『THEサブマリナー』や『日本版デーニッツ』と呼ばれている。リアル紺碧の艦隊を作るべく日々奮闘している。

 

高野五十六

 

統合空軍司令長官 前世では空自のパイロットであり空将まで勤め上げた。航空機の戦術や編成に詳しい

航空隊の父と呼ばれている。通称『空将閣下』

 

 

大高弥三郎

 

政治経済軍事に詳しく徹底したリアリスト。優秀だがどこかおかしい旭日会のメンバーのまとめ役

近衛とともに「旭日会の良心」と呼ばれている。前世では某政治家のブレーンだった。

近衛が倒れた際の次期首相と目されている。

 

 

嶋川繁次郎

 

連合艦隊司令長官 前世は造船メーカーに勤めており様々な船に詳しい。航空機免許も持っており航空機を操縦することもできる。一度熱中すると止まらないらしく若かりし頃は、とある造船士官と熱く戦艦について語り合い「ぼくがかんがえたさいきょうのせんかん」をともに設計したことがある。戦艦や空母といった大型艦にロマンを感じており巨大空母や巨大戦艦で編成した艦隊を夢見ている。

 

 

平賀譲

前世では航空機メーカーに勤めており航空機の構造にとても詳しく無類の航空機マニアである。

研究者気質で一度熱中すると周りを気にせず突っ走る。二宮や中島とともに旭日会の後援を受け泰山航空機を設立、日本一の航空機メーカーであり高い技術力を誇る。

現在は会社の経営からは一線を引き、伏見宮や職人たちとともに好き勝手に航空機を開発している。

 

岸信介

 

大蔵省官僚 前世のことはよくわかっていない。 経済にとても詳しく優れた財政家で高橋是清の後継者と目されている。世界恐慌の際は八面六臂の大活躍をした。『大蔵省の妖怪』と呼ばれている。

旭日会の金庫番を務めている。

 

北雲忠一

 

前世は海保に勤めていた。 その関係から通商護衛戦の研究を行っており『通商護衛の鬼』と呼ばれている。なんでも卒なくこなすことができ少し押しが弱いため貧乏くじを引きがちである

 

南条英樹

前世は普通の会社員だった。ミリタリーマニア・・・特に戦車マニアで軍の機械化に尽力し『装甲部隊の父』と呼ばれている。

 

 

鳩川一郎

 

政党政治家達の抑え役 前世は防衛省の官僚だった。ほかの議員たちが私益を優先しすぎて国益を損なう馬鹿をしないように見張る役割を担っている。政界のフィクサーであり熱烈な愛国者でもある。

旭日会の代弁者である『帝国党』の総裁を務める。

 

綾森真帆

 

帝国党議員 

前世は普通の大学生であったが旧家出身で厳しく教育されその影響で政経軍の優れた見識を持っており鳩川と同じく熱烈な愛国者でもある。女版大高と呼ばれている。とても怜悧な美人で20代末だが20代前半から10代後半位しか見えない。かなりの若手だがその見識と能力ゆえに次世代の評議会メンバーと目されている。

 

一般人(政治の中枢から遠い人々)

 

綾森美帆

空軍士官学校を卒業したばかりの新任空軍士官

綾森真帆の歳離れた妹でかわいがってもらっていた。小さいころから空にあこがれており

晴れて空軍士官となった。布哇基地に配属されている。

 

 

 

 

 



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第2話 コンタクト

帝紀1343年 10月 メスス島沖 50㎞

 

海原に一機の飛行艇が飛んでいた。

 

「今日も何もありませんね」

と20台になったばかりの若い少尉が言った。

 

「気を抜くなよ・・最近ウラノス共が活発化しつつあると聞くからな」

20代後半の大尉が油断している様子の若い少尉を注意した。

 

「そんなことあまり聞きませんが?」

 

「本土の外務省に勤務している兄から聞いたんだ」

 

「ここで襲われたらひとたまりもありませんね」

 

「鈍足な飛行艇だからな」

 

「ホントですよ、まだ結婚もしてないましてや親より先に死ぬなんて嫌ですよ」

 

「そうだな・・親不孝者にはなりたくないものだ」

 

「そうですよ・・ん?」

不意に若い少尉は話を止めた

 

「どうした?何か見つかったのか?」

話をやめた少尉の様子を疑問に思いつつ何事かと聞いた

 

「あれ・・なんでしょう?」

そういって若い少尉は指をさした

 

「何?・・・あれは軍艦だな・・・」

 

「海軍の連中ここらで演習を行う予定なんてありましたっけ?」

 

「いやなかったはずだ…だとするとあれは!?」

 

「て・・敵襲ですか!?」

かなり慌てた様子で少尉は叫んだ

 

「とにかく基地に連絡しろ!それと「うわ!」

雲の隙間から突然戦闘機が急降下をかけ飛行艇の前を遮った。

そのことで会話が遮られた。

 

「どこの国の連中だ!?」

前を遮った戦闘機の主翼を見ると大きな赤い丸が描かれていた。

 

「あんな国籍のマークの連中なんて知らんぞ?」

 

「あ!」

と素っ頓狂な声を若い少尉はあげた。

 

「どうした?何か知っているのか?」

何か知っている様子の少尉に聞いた

 

「ほら!大尉殿!一か月前のあの未確認航空機と同じマークですよ!」

 

「何!?わが軍の最新鋭戦闘機をまるで相手にせずあざ笑うように簡単に振り切った奴らの仲間ということか…」

 

「とにかく基地に連絡だ」

 

こののち秋津連邦と大日本帝国の交渉が始まることとなる。

 

最初オデッサ要塞に本拠を持つメスス島守備隊司令部は最初この謎の集団(大日本帝国派遣艦隊)が、このメスス島を侵略しに来たと判断した。しかしこの一報を持ってきた飛行艇が戦闘機に包囲されながらも情報を流し続けることができていることでその判断に疑問を持つことになる。だが艦隊の規模が大きく目を離すことは到底できないためそのまま監視させることにし、全守備隊に臨戦態勢をとるよう命令した。

何しろ謎の艦隊の規模が戦艦1 巡洋艦4 駆逐艦16 空母1 軽空母1もあったからだ。

その後謎の艦隊から1隻の内火艇が発進し島に上陸してきた。その後付近の守備隊が包囲しどのような目的でこの島に来たのかと問うと大日本帝国という国から外交交渉のためにやってきたと謎の集団が説明したため

ひとまず謎の艦隊を港に入れ本国に指示を仰ぐこととなった。

その後秋津本国から外交交渉団がやってくることが決定しメスス島にて交渉が行われることとなった。

 

1週間後メスス島内の迎賓館において交渉が行われ、ひとまず互いのことをよく知るために互いの国に外交視察団を送ることとなった。

 

日本の視察団は、一昔前の自分たちの国の景観に似た光景を見ることとなった。自分たちと似たような文化を持つ秋津連邦と良い関係を持てそうだと希望を抱いた。何しろいきなり見知らぬ世界に放り出されつい最近まで予報に暮れていた中自分たちに似た存在と巡り合えたのだから。そして空飛ぶ船の存在に驚き情報を可能な限り収集することとなる。

 

見知らぬ世界に放り出され日本国民は孤独を感じたが、自分たちに似た文化を持つ国が存在することを知りとても喜び秋津連邦の外交視察団が訪問した際は大々的な歓迎式典を行った。

その後、元の世界でも一位2位を争う大国に相応しい幾つもの天高くそびえる摩天楼や鉄筋コンクリートのビルディングが並び立ち大量の自動車が行き交うとても大きく発展した帝都東京、全国に整備された高速道路網や鉄道網や巨大なタンカーや豪華客船を簡単に収容できる港湾、アメリカのニューポートニューズ造船所に匹敵する規模を持つ横須賀海軍造船所やアメリカにも劣らぬ巨大な工場が立ち並ぶ工業地帯などを見せつけられることとなった。

空中船を持っていないことを訝しんだがこの国が自分たちの国と比べ経済力や工業力、軍事力が格段に優れているを大いに見せつけられることとなった秋津連邦視察団

 

「これがこの国の底力ということか」

 

「ひとたび戦争となるとあの巨大な工場地帯から膨大な兵器が吐き出されることとなるのか・・」

 

「あんなに発展した都市や工業地帯はセントヴォルトにもないぞ」

 

「技術力だって半端ないものだった」

陸軍工廠や航空機工廠に立ち並ぶ数々の高性能戦車や航空機を思いだしながら言った。

 

「我々は対抗できるのか?」

 

「いや現状では仮にセントヴォルトと手を組んでも無理だろう。」

 

秋津連邦視察団はこの大日本帝国の強大な国力や軍事力を目の当たりにし恐怖した。

そして本国に戻りこのことを数々の資料とともに報告すると秋津本国も震撼することとなる。

 

数週間後

 

帝都 東京 某所

 

現在、視察団が秋津連邦から持ち帰った資料や報告書を見つつ評議会が開かれていた

 

「ふむ・・まるで戦前の日本のようだ」

資料を見ながら大高が言った。

 

「最近は経済政策に失敗して軍部が影響力を拡大しつつあるらしい」

若干表情を歪め嶋川が言う

 

「我々への脅威度は?」

 

「この空飛ぶ軍艦には驚きましたが速度はそんなに速くないそうです。」

 

「それに空中艦は水上艦に比べ装甲が薄いそうです。まあ某デブの元帥のごとく急降下爆撃や現在試験中の対艦ミサイルで対応可能です。」

鳩川が問い高野達が応答する。

 

「だが空飛ぶ空母というのは是非ともほしい、遠くへの航空戦力の投入が容易になる。」

 

「ほかの兵器については?」

 

「だいたい1930年代程度の兵器レベルです。各種技術も我々が圧倒していますし脅威にはあまりなりえないかと」

 

「彼らと技術交流はすべきでしょう。井の中の蛙ではいずれ我々は追い抜かれることとなる。」

 

「貿易相手としても魅力的です。交流はすべきでしょう。」

 

その後も議論を続け一定の方針を定めると評議会は閉会した。

 

数週間後 再びメスス島において再び外交交渉が行われ、様々な取り決めを決めると大日本帝国と秋津連邦間で交流が始まった。

 

 

 

 

 



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第3話 オデッサインパクト

大日本帝国と秋津連邦間の交流が始まり一年近くが経った。

両国間の交流は徐々に活発化しつつあり交流の拠点としてメスス島は急速に開発されていった。

技術交流も促進され秋津は空中船に必要な技術などを日本は、秋津の技術でも作ることができる航空機用や自動車用エンジンの技術などを交換した。

これにより停滞していた秋津連邦の新型戦闘機開発の状況は打破されることとなった。

日本帝国もこの技術を模倣し自らの空中船を建造していった。

 

この状況を快く思わなかったのはハイデラバード連合体である。

なにしろ2年ほど前から秋津との戦争を始めていたが、戦況は泥沼化して膠着状態に陥り

現在は「まやかし戦争」状態であったが、秋津連邦とは戦争状態にあり大日本帝国の秋津を助ける行為は到底看過することができなかった。

ハイデラバードの独裁者であるディジーオズボーンは、ウラノスに援軍を要請しウラノスはこれを受諾

大規模な増援を得たハイデラバード軍は、メスス島へ大規模空襲を行うことを決定した。

 

 

 

 

帝紀1344年 西暦1940年 8月

 

私 綾森真帆は帝国党に所属する議員である。

 

前世は国内最難関の大学に通う大学生で政治や経済のことについて学んでいた。

前世の実家は古武術などもしている裕福な旧家だった。厳しくも優しく自分を育て上げてくれた両親には今でも感謝している。大学4年就職も決まり気の置けない友人たちとともに街へ繰り出した時に事件は起きた。

通行人の一人が突然刃物を振り回し周りに襲いかかったのだ・・・もちろん最初は逃げようとしたが、友人が追いつかれ襲われようとしているのが見えたため私は阻止しようとした。一応家が古武術をやっていた影響で護身術程度ならばできたためそれなりに勝算があったが、返り討ちに遭い私は致命傷を負ったようだ。

その後すぐ男は取り押さえられた様子が見えたが意識が朦朧とし、友人たちが呼び掛けている様子が何とかわかったがそのまま意識を失ってしまった。

そして目が覚めると赤ん坊になっていた。その時は驚いたものだ・・・最初は夢かと思ったがどうやら現実らしく困惑したものだ。その後私はすくすく成長して妹ができた。妹のことはよくかわいがったものだ・・・そこそこおとなしかったあの子が小さいころから空にあこがれていてまさか軍人になるとは思いもしなかったが・・・。そして母校の前身となる大学へ入学することができた。史実の日本とはだいぶ歴史が違っており男女の性差があまりなかった。ちょっと出来心ができてしまい大学でときおり未来の知識を織り交ぜた論文を書き提出した。するとある日自分に会いたい人がいると教授に言われ着いていき自分が今所属している旭日会のメンバーと接触することとなった。そしてこの人物から自分の同類が結構居ることを知り自分の力をこれからの日本のために貸してほしいと言われ、すぐに了承した。このことが縁となり帝国党に入党し私は国会議員になることができた。まあ私の身の上話はこの際おいておくこととしよう。

 

約1年前から交流を開始した秋津連邦との交流拠点であるこのメスス島がどのような場所か自分の目で見るために視察団の一員としてメスス島に訪問していた。私たちはバラけて護衛とともにメスス島各所を視察していた。秋津の人々の農業の様子を視察していて農業用機械が売れそうだと考えていた時に事は起きた・・・・

ウラノスと名乗る連中が突然このメスス島に大規模な空襲を仕掛けてきたからだ。

幸い私たちはすぐに山の洞穴に逃げることができた。

メスス島の防衛拠点であるオデッサ要塞は激しく燃え上がっており、港湾施設や兵舎、飛行場といった軍事施設は残らずユンカースに似た爆撃機による急降下爆撃により廃墟と化していた。

そして奴らは信じられないことに一般市民を面白半分に追廻し機銃掃射を行っていた。私はこのことに激しく憤りを覚えたがどうすることもできなかった。半日ほどたった後ようやく奴らは引き返していった。

オデッサ周辺は徹底的に破壊されひどい混乱に陥っていた。私たちが乗っていた車ももちろん破壊され私たちの宿舎のある市街へ帰ることは難しいだろうし、今日迎えが来ることはないだろうと考え、視察していた村の後片付けを屈強な護衛とともに手伝い一晩を過ごした。村の人々には感謝されたが申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

翌日の早朝私はよく眠ることができず気を紛らわせるために村の周辺を散歩していた。

周りを見るとやはり空襲の被害が生々しく残っていた。

憂鬱な気持ちになりつつ歩いているとふと泣き声が聞こえてきた。

居ても立ってもいられず鳴き声のする方向へ若干小走りになりつつ近づくと、一人の中学生程度の少年が泣いていた。少年の前には父親、母親そして姉と思われる遺体がきれいに並んで横たわっていた。おそらくこの空襲で家族をすべて失ったのだろう。

少年は慟哭し、この世の理不尽を恨み、生きる気力を失いかけているように見えたが、私はかける言葉が見つからなかった。私は当事者ではなく少年にとって他人に過ぎないからだ

だが私はこの光景が脳裏に焼き付けられ一生忘れることはできないだろう・・・・

数日後迎えが来て私はこの島を離れることとなった。

視察団の議員は幸い死傷者はいなかったが、随員である護衛には何人かの死者が出ることとなった。

しかしこれだけでは戦争の理由には弱すぎるため、せいぜい良くて物資の援助で義勇軍の派遣ができればおの字だろう。だが働きかけてみようと私は思った。

 

 

 

 

 

このメスス島襲撃から1か月後、大日本帝国吉田外相が秋津連邦に電撃訪問すると物資の支援を確約した。

「我が国はハイデラバードの侵略を受けている秋津連邦への支援を実施する」と

帝国議会では電撃訪問の翌日『武器貸与法』が全会一致で可決され、さらに義勇軍の派遣も決定した。

自分たちに似た容姿と文化を持つ人々が面白半分に虐殺されていったことに多くの人間が眉をひそめていたからだ。

そして『武器貸与法』から1か月後『両用艦隊法』が可決され空海軍の大軍拡が始まることとなり以後戦時体制へ急速に移行していき大日本帝国は着実に戦争の準備を進めていくこととなる。

この大軍拡を容認した理由はメスス島襲撃が大きく関係しており自分たちも襲われるかもしれないと恐怖感に駆られたことが大きな理由である。

 

帝都 東京 某所

 

「これで我々も戦争に片足突っ込むことになります。」

 

「本来はここまではしないのだが…何分ここにきてから実績(戦争の勝ち負け)がないからな」

 

「どうやら帝国主義全盛のようですので何より力を実際に示すことが我々が交渉を行う際に有利になります」

 

「これで舐めた真似をどこの国もできなくなるだろう。」

最初に近衛が発言し高野、鳩川、嶋川と発言が続いたがやはり表情はあまりさえていなかった。

そう彼らは不安に思っていた。何せ異世界初の実戦に臨むことになるからだ。

 

「まずは義勇軍を派遣してノウハウを蓄積しましょう。」

 

「まさかアメリカのような真似をすることになろうとは。」

南条が言い、大高が若干顔をしかめながら言う。

 

「まあまだ戦争に参加することができないから有効な方法ではあるがな」

 

「それに在庫の一斉処分もできますしね、旧式の兵器がよく売れることとなるでしょう。」

 

「我々には旧式でも彼らに取っては最新鋭機よりも性能が高いだろうからね」

 

「ええこれから軍備の拡張に莫大な金を使うことになりますからね、少しでも金はほしいです。」

岸など経済畑の人間たちが顔をしかめつつも若干嬉しそうに言う。

 

「小沢君には頑張ってもらわないとな」

 

「義勇軍はかなりの規模ですからね。」

 

遣秋義勇艦隊

 

戦艦 比叡 

空母 蒼龍 飛龍

軽空母 龍驤

工作艦 明石

重巡洋艦 妙高 那智

軽巡洋艦 最上 三隈

駆逐艦 12隻 (秋月型 陽炎型)

 

義勇航空隊『飛虎』

1個航空戦隊 144機 補機72機

 

義勇師団

一個装甲師団

 

「いやあ、かなりの戦力ですね。」

 

「機動艦隊を派遣するようなものだからな」

 

「田舎海軍程度ならこれだけで楽々殲滅できますね」

 

「派遣先はどこに?」

 

「おそらく最前線たるメスス島でしょう」

 

「小沢さんの健闘を祈り・・・・乾杯」

 

「「「乾杯」」」

 

その後も飲み食いしながら評議会は続いた・・・



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第4話 バトル オブ メスス

秋津連邦はオデッサ襲撃を受けて発生した甚大な損害に頭を抱えていたが、大日本帝国の『武器貸与法』の可決によって得られるようになった膨大な物資は連邦を喜ばせた。

戦時において不足しがちな物資を日本帝国が提供してくれることになったからだ。

もちろんこの物資の支援だけではすべてを賄うことはできず少なからぬ数日本帝国に発注することとなるが、それでもこの支援は連邦にとってありがたいものだった。

大量の物資を積載した輸送船が次々と秋津連邦の港へ入港していった。

 

帝紀 1344年 秋津連邦 河南港

 

秋津連邦海軍の根拠地の一つであるこの港には首都箕郷にある箕郷軍港に匹敵する

港湾施設が整っており濃緑色を基調とした塗装が施されている秋津海軍の軍艦が多数停泊していた。

 

そして今日輸送船の一団が入港し港に接舷すると次々と船内から物資を吐き出し始めた。

 

「すごい物資の量だよな・・・」

中から缶詰や燃料といった軍需物資が次々と搬送されていった。

 

「ああ・・製品の質も高い、オイルや部品の質は自国製よりも段違いに高いらしい」

作業員がぼやくようにつぶやいた

 

「これだけのものをポンと出せる日本って国は金持ちなんだろうな」

 

「この物資があることでウラノス共となんとか戦うことができているからな」

 

「今もメスス島とその周辺は激戦が続いているって聞くしな」

 

その後作業員たちは会話をしつつ作業を続けた。

 

 

帝紀 1344年 11月 メスス島

 

メスス島は、オデッサ空襲以来最前線として小競り合いが続いていた。

秋津連邦は、オデッサ空襲が起きた後すぐにメスス島守備隊に対し援軍と工兵隊を送り

防衛体制を整えようとした。大日本帝国軍も秋津に対し遣秋義勇軍を派遣、派遣部隊はすべてメスス島への増援として配備された。そしてアメリカ軍工兵隊に匹敵する能力を持つ帝国陸軍工兵隊によって

飛行場の建設や拡張、軍事施設の修理やレーダーサイトの設置、陣地の構築などが行われた。

秋津連邦軍設営隊は、機械化された帝国陸軍工兵隊の作業の速さに唖然としそしてその装備を羨ましがった。

 

そして再びハイデラバードは大規模な空襲を意図して空母6隻を含む大規模な艦隊を編成メスス島へ向かわせることとなった。

これに対し秋津連邦も艦隊を編成し迎撃しようとするが、先日海軍の根拠地の一つが大規模な空襲を受けて大損害を被りメスス島へ向かわせることができる艦船が不足していた。

それでも空母2隻を中核とする艦隊を抽出することができたが、明らかに敵に対して不足しているため秋津海軍単独では到底敵う筈はなかった。そこで秋津海軍は苦渋の決断で(ほんとは海軍単独で迎撃を行いたかった)義勇軍と基地航空隊に協力を要請した。

 

メスス島沖において空母対空母の大規模な海戦が行われた

戦力

ウラノス=ハイデラバード連合艦隊

正規空母 6隻

軽空母 3隻

戦艦 6隻

巡洋艦 12隻

駆逐艦 24隻

 

秋津 日本機動艦隊

戦力

正規空母 3隻

軽空母 2隻

戦艦 3隻

巡洋艦 12隻

駆逐艦 30隻

メスス島基地航空隊 150機

 

ウラノス=ハイデラバード軍は、オデッサ基地の復旧はそこまで進んでいないと判断し

艦載機120機近くの空襲部隊を編制しオデッサ基地へ襲撃をかけた。

 

「レーダーに感あり」

 

「至急基地へ連絡せよ!数はおよそ120!方位11より接近!とな」

 

この報告を受けるとすぐさま飛行場から次々と迎撃隊が発進していった。

 

ウラノス軍基地攻撃隊は油断していた。上からは先日の被害からまだ立ち直っておらず

けなげに基地を復旧させようとする敵の掃討だと聞かされていたからだ。

しかし帝国工兵隊と連邦設営隊の不断の努力でレーダーサイトと対空陣地の構築そして飛行場の復旧は

ほとんど完了しておりレーダーに捕らえられた空襲部隊を迎撃すべくすぐさま100機近い迎撃隊が発進していた。

 

「ふっ・・残敵の掃討か」

 

「また野蛮人の『狩り』ができそうですね」

狩りとは民間人を追い回し機銃掃射によって殺すことである。

 

「はは!お楽しみってやつだな!」

 

「「ハハハハハハッ!!!」」

 

しかしその余裕も長くは続かなかった。

そうこの直後太陽を背に義勇航空隊および秋津陸軍航空隊による迎撃隊が編隊急降下を行い奇襲を仕掛けたからだ

 

「うわぁああ!?」

 

20㎜機銃弾のシャワーを浴び奇襲であったこともあり一基に20機近くの攻撃隊が撃墜されることとなる。そしてその中に攻撃隊隊長機が含まれていたため指揮系統が混乱さらに被害を拡大させることとなる。

 

「くそ!全然追いつけない」

 

「な!?いつの間に後ろに!?」

 

「ふっ振り切れない!?誰か助けてくれ!」

 

「くそ!指揮官は誰だ!?」

 

さらにウラノスと日本の戦闘機の性能差は天と地ほどの大きな差があった。

ウラノスのイドラ戦闘機はだいたいbf109E程度の性能だが、義勇軍の主力戦闘機94式艦上戦闘機『電征21型』は日本本国ではすでに零式艦上戦闘機が開発され旧式化したが、同軸2重反転プロペラを装備し最高速度は850㎞/hを誇り武装も20㎜機関砲4門を装備し防弾性能も高く自動空戦フラップを装備し格闘戦性能も高いため『究極のレシプロ艦上戦闘機』ともいえる性能を誇っている。

 

「よし!奇襲が成功した!」

 

「遅すぎるぜ!」

 

「連中動きが鈍いな。まるで鴨撃ちでもしているようだ」

 

結局ウラノス空襲部隊は8割以上が撃ち落され大損害を被った。

この報告を受けすぐさま復旧した飛行場と基地航空隊を打ち破るべく第2次攻撃隊を編制

母艦航空隊の総力を挙げてメスス島空襲を仕掛けようとした。

しかしこの時ウラノス攻撃隊の後を追う日本機の姿があった。

 

「奴らの母艦の位置を暴いてやる」

 

そして母艦の位置が判明するとすぐさま基地航空隊司令部へ連絡した

 

このことが日本=秋津艦隊に知らされるとすぐさま攻撃隊が発進した。攻撃隊は分けることなく直掩機を除きすべて出撃させた。

数はおよそ160機程度で、制空隊70 艦爆隊60 艦攻隊30 だった

しかし日本と秋津の艦載機の間には速度差があるため結果的に2つに分かれることとなる。

日本 制空隊 48 艦爆隊 36 艦攻隊 16

義勇軍の艦爆隊、艦攻隊両方とも94式艦上戦闘機32型を装備していた。

これは21型の戦闘爆撃機タイプで制空、爆撃、雷撃の三つをこなすことができるため『万能戦闘機』

と呼ばれていた。

艦爆隊は500㎏を3つもしくは14発のロケット弾、艦攻隊は魚雷を装備していた。

 

 

日秋の攻撃隊が発進し終え30分ほど経ったころ偶然ウラノスの偵察機が日秋の艦隊を発見した。

 

空母を含む敵艦隊発見との報告にウラノス艦隊司令部は喜んだ。第2次攻撃隊の装備を直ちに陸用爆弾から魚雷へ換装する作業を始めた。爆弾では空母を沈めることは難しいからだ(戦闘力を奪うことは可能)

このことが命取りとなる。

 

ウラノス機動艦隊がようやく陸用爆弾から魚雷へ換装作業が完了しようとしたとき

秋津攻撃隊より一足早く日本攻撃隊がウラノス機動艦隊上空に到達した。

 

ウラノス軍は慌てて直掩機隊で日本攻撃隊を追い払おうとするが、攻撃隊の制空隊に阻まれることとなった。

通常日本軍はまず艦爆隊によって駆逐艦や巡洋艦を攻撃して防空戦力を減らした後

艦攻隊によって大型艦にとどめを刺すという戦法を使うが、今回は敵空母が甲板に艦載機や弾薬を乗せたままであるため、今回は例外的に艦爆隊は空母を狙った。

 

「まさに天佑というべきか・・全機空母へ攻撃を開始せよ!」

 

艦爆隊指揮官の号令のもと一斉に次々と空母へ向けて急降下爆撃を開始した。

日本艦爆隊の高い錬度もありおおよそ5割の爆弾が命中した。

次々と500㎏爆弾が空母に命中していき飛行甲板の上にあった艦載機や弾薬が次々と誘爆あっという間に空母6隻は火だるまになった。

さらにロケット弾搭載の艦爆隊が艦隊外周の駆逐艦や巡洋艦にロケット弾攻撃を仕掛け

対空砲を沈黙させると艦攻隊がその穴から次々と輪形陣中央に位置する敵空母にとどめを刺すべく侵入

それを阻止すべく対空砲火を上げるが艦攻隊の速度は味方の戦闘機よりも速い為次々と艦攻隊の後方に対空砲火を上げることとなり阻止することができず、魚雷を次々と投下し14本中4本が命中した。

さらにその数十分後秋津攻撃隊も犠牲を払いつつダメ出しの攻撃を行った。

この結果ウラノス=ハイデラバード連合軍は、投入した正規空母の全てを失うという多大な損害を被り

制空権確保が絶望的になったため撤退を開始した。

 

この一連の戦いは『メスス島沖海戦』と呼ばれることとなる

 

ウラノス ハイデラバード

損害

 

空母6隻 駆逐艦1隻沈没

駆逐艦2隻 巡洋艦1隻中破

航空機 300機以上

 

日本 秋津

航空機 約100機(修理不能機も含む)

 

 

決定打を失ったウラノス軍は、次の大規模な増援が来るまでメスス島への攻撃は

サントス島からの嫌がらせの爆撃にとどめられることとなる。

 

ちなみに戦闘詳報をみた某旭日会評議会メンバーは『まるでミッドウェーだ』と発言したとされる。

 

これから1年間程度小競り合いが続くこととなる。

 

 



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第5話 イーグルデー

帝紀1346年 7月

 

今日もメスス島周辺では熾烈な航空戦が行われようとしていた。

 

 

『レーダーに感あり!方位12 数およそ200!』

 

レーダーサイトから情報が入るとすぐに迎撃隊が発進の準備を始める.

 

「敵襲!敵襲!」

 

「回せ!回せ!」

 

次々とパイロットたちが機体へ向かって走り梯子を上って次々と飛び込むように操縦席に座っていく

エンジンをかけると轟音と共に同軸2重反転プロペラが回り滑走路から次々と迎撃隊の機体が離陸していく。

 

エンテ型の形状に推進式のプロペラが特徴的なこの95式局地戦闘機『蒼莱』は最高時速900㎞オーバー

武装も30㎜4門ととても強力である。

 

メスス島各地の飛行場から次々と迎撃隊が飛びあがっており上空で各迎撃隊が合流しその数は、100機を超える数となった。

 

そして地上の司令部の指示に従い敵を迎撃する最適のポイントへ移動を開始した。

 

「すごい数だな」

 

「ああ最近敵さん再び気合を入れて此処を攻め始めたからな」

 

「だが何度でも返り討ちにしてやるぜ」

 

与太話を続けていると司令部の指示したポイントへ到着した。

 

「敵機発見」

 

「突撃陣形をとれ」

 

陣形を構築し終えると

 

「攻撃開始!」

一斉に迎撃隊が敵爆撃機体へ急降下を開始した。

 

ハイデラバードはウラノスから再度大規模な増援を受け取り、今度こそメスス島を攻略すべく大規模なメスス島攻略作戦を立てた。その露払いとして絶え間なく攻撃を仕掛け日本=秋津の航空戦力を漸減しようとしていた。

 

「全機警戒を怠るな!」

ウラノス戦闘機隊隊長は、そう言って部下たちに警戒を促した。

爆撃機を守るように戦闘機が布陣していた。

 

「了解!」

 

「どこにいる?」

 

「どこからくる?」

 

「ん?」

一瞬上空に太陽光が反射したような光が見えた!

 

「敵機だ!」

そのあとすぐに敵機の群れがまるで一本の矢のように爆撃隊に突入していくのが見えた。

 

「潜り込まれるぞ!迎撃しろ!」

何とか伏せh号とするが敵機の方が早く機関砲の掃射により次々と爆撃隊が解けていくのが見えた!

 

「くそ!」

 

「何としても奴らを叩き落とせ!」

そう言って敵戦闘機隊の方へ機体を繰り出していった。

 

数ではウラノス戦闘機隊が勝っているが、質では日本戦闘機隊の方が勝っていた。

ウラノスの戦闘機が後ろをとってもいとも簡単に逃げられ、その逆だと決してウラノス戦闘機体は逃げることができなかった。最高速度が200キロ以上も違うし加速力も歴然とした差があるからだ。

しかし空戦を生業としているだけに錬度は高くよく食らいつこうと頑張ったがしかし精神論では埋めがたい差があった。

 

この日の損害はウラノスは7割近い損害をだし、迎撃隊は3割(故障機や修理不能機)を含むの損害を出した。

日本側も連日の襲撃で疲労が蓄積しかつハイデラバード海軍の意地の通商破壊戦で修理するための部品も不足するようになった。ちなみに一度潜水艦部隊で義勇艦隊に襲撃をかけたことがあるがソナーによって簡単に発見され改良ヘッジホッグや対潜誘導魚雷そして艦載機によってほとんど何も出来ぬまま全滅している。

メスス島周辺は義勇艦隊によってカバーできるが道中は秋津海軍によって護衛されていたが大戦中の日本海軍ほどではないが次々と撃沈されていった。そのため稼働機が次第に少なくなっていった。

 

そしてついにハイデラバードはメスス島の海上および航空戦力の撃滅作戦「アドラー・ターク」

を開始した。ウラノスの持つタ東海方面の兵力の半分以上を投入する大作戦だった。

飛空要塞 1

正規空母 5

軽空母 5

巡洋艦 12

駆逐艦 30

基地航空隊 500機

参加航空機数 1500機

凄まじい兵力である。これをメスス島に叩き付け一気呵成に敵戦力を撃滅させることが目的である。

 

対する日本義勇軍=秋津連邦だがそこまで兵力を集中させることができなかった。

ハイデラバード潜水艦隊が捨て身の秋津の主力艦への攻撃を行った結果多くの空母や戦艦がドッグへ

向かうこととなったからだ。

それでも何とか戦力を抽出した。メスス島が陥落すると絶対国防圏の一つであるツルギ島が攻められることになるからだ

戦艦 2

正規空母 4

軽空母 4

巡洋艦 10

駆逐艦 24

基地航空隊(実働) 250機

参加航空機数 550機

敵との数の差はおよそ3倍!絶望的である。

 

そして「第2次メスス島沖海戦」が起きることとなる。

 

まずウラノスのメスス島攻略艦隊に先立って基地航空隊がメスス島へ襲撃をかけたことから始まった。

およそ500機もの大編隊がメスス島へ向かっていることを知り空母部隊の戦闘機隊の3分の一が基地航空隊の救援へ向かった。この時を狙い澄ませたかのようにウラノス艦隊から発艦した攻撃隊約500機が日秋艦隊へ襲い掛かることとなる。

 

日秋艦隊の輪形陣は2つありそれぞれ所属国家ごとに分かれていた。

 

「レーダー感あり!方位12 数およそ500!」

かなり驚いた様子でレーダー観測員が言った。

 

「何!?500だと!?」

 

「連中・・我々を本気で潰しにかかったな」

 

ウラノス艦隊第一波攻撃隊は義勇艦隊に狙いを定め向かいつつあった。

 

「何としてでも敵機の艦隊への侵入を阻止するぞ!」

 

「「了解!」」

 

「9時の方向下方に敵機の編隊を発見!」

 

「よし!これより突撃を開始する!戦闘機の相手はできる限りするな!艦爆隊や艦攻隊を狙うんだ!行くぞ!」

直掩機隊が敵編隊に奇襲を仕掛けるが多勢に無勢でありそこまで効果はなかった

 

「くそ!邪魔をするな!」

そしてウラノスの戦闘機隊が攻撃を阻止しようと必死に喰らいついてきた

敵戦闘機との数の差は、2倍ほどありなかなか敵攻撃隊に打撃を与えることはできなかった。

 

「やはり数の差は大きいか…」

 

「対空戦闘用意!」

 

直掩機隊の迎撃をくぐり抜けたウラノス攻撃隊のパイロットたちが見たのは中心に戦艦1隻 正規空母2隻

軽空母1隻を中心に輪形陣を組んでいる20隻の艦隊であった。

 

「この前の仕返しだ覚悟しやがれ!」

 

「全機突撃陣形をとれ!」

 

「すべてここで海の藻屑にしてやる!」

 

「仇討だ!」

 

ウラノス攻撃隊はこの前の空母6隻を失った戦いの仕返しができると戦意旺盛であった。

しかしそう簡単にやられるほど日本艦隊も軟ではなかった

 

「うわ!?」

いきなり閃光が上がったと思うと10機近くの爆撃機や雷撃機がバラバラになったり翼をもがれ水面へ落ちて行った。戦艦比叡から発射された改良型3式弾の斉射だった。改良型3式弾は近接信管が装備されておりかつ

着火性を大幅に向上させた焼夷弾子が搭載されていた。

 

さらに近づくと20.3cm砲の3式弾も次々と着弾していきウラノス攻撃隊は数を削られていった。

 

「ひるむな!敵空母へ向けて突撃!」

 

この地獄の空の道を進みつつ敵空母へ急降下爆撃を試みるだがここから先の道は更なる苦難が待ち受けていた。そう高い技量を持つ優秀な日本海軍将兵が対空砲座につき手薬煉を引いて待ち構えていたからだ。

 

「来るなら来い!まとめて撃ち落してやる!」

 

「覚悟しやがれ!」

 

「撃ち方はじめ!撃て!」

指揮官の号令のもと対空射撃が始まった。義勇艦隊すべての艦はレーダーおよび優れた防空火器が大量に装備されており防空能力はとても高いものであった。

 

「くそ!なんだ!この対空砲火は!」

 

「まるで火の壁だ!「うわ!?」」

 

「連中の砲弾は目でも着いていてかつ超人的な技量を持つ対空砲手が無数にいるのか?」

そうウラノスの急降下爆撃隊のパイロットが言うくらい次々と爆撃隊が対空砲火に絡め捕られ

海面へ落ちて行った。彼らの想像する対空砲火の砲弾はタイマー信管であり滅多なことでは命中しない

しかし日本軍は近接信管であり砲弾の命中性はとても高くかつ優秀なレーダーや射撃管制装置そしてそれを扱う優秀な将兵もいるためウラノス急降下爆撃隊に命中していった。

 

「しかしここで止まることはできん!突撃!皆の犠牲を無駄にはするな!」

 

12.7cm砲弾の洗礼を潜り抜けると次は7.6cm砲弾や40㎜弾の洗礼を浴びることとなる。

次々と対空砲火に絡め取られ堕ちていくウラノス爆撃隊しかし無数の味方の屍を超え着実に日本空母へ近づいていき、ついにその眼下に日本空母をとらえた!

 

「喰らえ!」

 

500㎏爆弾が日本空母へ投下され近づいていく・・・・しかし日本海軍の優れた操艦でその爆弾をかわしていく!

 

「くそ!ちょこまかと!」

 

何とかかわし続けたがついに限界が訪れた!

 

「喰らえ!」

ウラノス急降下爆撃隊員の執念のこもった一撃が日本空母を捉えた!

 

「蒼龍被弾!」

命中した蒼龍は飛行甲板に穴をあけられたが戦闘の続行に支障はなかった・・

その後も攻撃は続き、最終的に蒼龍に6発、飛龍に2発、龍驤に2発、比叡に1発爆弾が命中した。

他にも巡洋艦妙高、最上に1発ずつ命中した。

爆弾を6発受けた蒼龍は傾斜が拡大しており予断を許さない状況であった・・

 

そんな状況の中ウラノス艦攻隊が突入を開始した。

急降下爆撃隊以上の苦難をウラノス雷撃隊は味わうこととなった。

 

「は!鴨撃ちだ!」

 

「撃て撃て!撃ち落せ!奴らを空母に近づけるな!」

 

雷撃隊は魚雷が確実に作動するようにある程度落とさざるを得ず(改良によって改善は可能)かつ

まっすぐに飛ばざるを得ないため、まるで射的ゲームの的のように次々と翼をもがれ撃ち落されていくこととなる。

 

「くそ!進め!進め!急降下爆撃隊の努力を無駄にするな!」

 

無数の仲間の屍を超えついに空母を射程に捕らえた!

 

「よし!喰らえ!」

艦攻隊の投下した魚雷は蒼龍を捉え次々と命中した!

 

「ああ!蒼龍が!」

蒼龍は左右に5本の魚雷が命中し急速に傾斜を拡大させていった

その後龍驤、妙高に2発、比叡、飛龍、駆逐艦1隻にも1本ずつ魚雷が命中した。

蒼龍は乗員の必死の努力もむなしく海中に没しようとしていた。

 

「総員退艦!」

 

ウラノス攻撃隊が去った2時間後蒼龍は海中に没することとなった。

 

ちなみにウラノス攻撃隊は爆撃隊は五割強、雷撃隊は8割近くが撃墜され双方ともに損傷していない機体はないというくらい甚大な被害を受けていた。

 

「なに!?あれほどの攻撃隊を出して空母1隻、駆逐艦1隻しか仕留められなかっただと!?」

 

「砲弾に目がついている?馬鹿も休み休みにいえ!」

 

「第2次攻撃隊はどうしますか?再びニホン義勇艦隊を攻撃しますか?」

 

「いや次は秋津艦隊だ!準備は?」

 

「すでに完了しています!」

 

「よし!向かわせろ!」

 

第2次攻撃隊500機が秋津艦隊へ向けて出撃していった。

 

秋津艦隊は、将兵は高い錬度を持っていたが日本艦隊のようにVT信管も優れた電探と射撃管制装置も持っていないため日本艦隊ほど濃密な対空砲火を形成することはできず甚大な被害を被った。

 

最終的に秋津艦隊は正規空母2隻 軽空母2隻 戦艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦4隻を失うこととなる。

秋津艦隊は事実上壊滅状態となった。

 

日本艦隊は、その後龍驤と妙高は機関室に浸水をゆるしたため自沈処分となり、魚雷が命中した駆逐艦も静かに海中に没しようとしていた。

 

最終的には正規空母1隻、軽空母1隻、駆逐艦1隻、巡洋艦1隻を失い

飛龍が大破、比叡、最上が中破、駆逐艦3隻が小破した。

義勇艦隊は事実上壊滅状態となり真珠湾への帰還を余儀なくされた。

 

メスス島上空の航空戦も、ウラノス戦闘機体が何とか迎撃隊を抑えているうちに迎撃隊の迎撃をくくりぬけた爆撃機数十機が飛行場を爆撃、飛行場も甚大な損害を被った。しかし2週間後には機能が復旧した。

航空隊自体も3割以上損耗した。全滅判定だった。

 

ウラノスは、艦船の被害こそなかったものの航空隊の損耗は甚大なものだった。

修理不能機を含めると7割以上の航空機を失うこととなったからだ。パイロットの損耗も決して無視できるものではなかった。

 

しかし作戦目標である航空及び海上戦力の撃滅は、自身も壊滅的被害を受けたが達成しており

ウラノス=ハイデラバード連合の勝利と言える。

 

2か月後

海上の邪魔する戦力を排除したウラノス=ハイデラバード連合軍はついにメスス上陸作戦を開始することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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設定(国、兵器など)

大日本帝国

 

領土 北海州(ウラル山脈以東のロシア) 台湾 アラスカ、蓬莱自治州(カリフォルニア、テキサス) ニューギニア 豪州自治州 新日本自治州(ニュージーランド)布哇諸島

 

政体 立憲君主制

 

人口 2億1000万人

 

国力 史実アメリカと同等かそれ以上

 

概要 転生者たちが協力し合い『ツヨイニホン』を目指した結果このような形となった。

それぞれの自治州は高い自治権を持っている。

元の世界では有色人種で唯一の列強であり大英帝国に並ぶ超大国だった。

第一次世界大戦では、連合国側に参戦し世界初の機械化部隊を使い末期のドイツのカイザーシュラハト攻勢を

完全に封殺した。

史実とは違い第一次大戦時に陸空海の3軍体制となった。

史実とは違い3軍を統括する兵部省が存在する。

世界より10年程度科学技術が進んでいるといわれる技術大国だった。

転移当時は、おおむね1950年代程度で一部は1970年代程度の科学技術を誇っている。

 

 

各国国力比

ウラノス 10

大日本帝国 10

セントヴォルト 3.5

秋津連邦 1.5

ハイデラバード 1

ハルモンディア 2

ズウンジン朝 1.5

 

おまけ その他の飛空士世界の国力比

恋歌世界 6

レヴァーム 8

天ツ上 1

 

現戦力比(帝紀1344年時点 西暦1940年)

 

ハイデラバード(外注戦力も含む)12

大日本帝国 12

秋津連邦 8

セントヴォルト 8

 

大日本帝国は軍備拡張途中であるためこうなっている

ハイデラバードは飛空要塞を借りることができているためこれだけ高い

セントヴォルトもいまだ戦争準備中であるため低い

 

 

 

地図(大まか)

                 ハイデラ 

北海州        アラスカ     バード           ハルモンディア皇国               

                   連合体

                           大瀑布   セント   ズウンジン朝

   日本本土        秋津                ヴォルト

                連邦   メスス島

  台湾

                布哇諸島   

                           蓬莱

         ニューギニア             自治州    

      

           豪州

      

               新日本 

               

 

ハイデラバード連合共同体

ハイデラバード戦役参加国の中では一番国力が低い

軍事力もそこまで強くないためウラノスに『外注』している。

 

秋津連邦

 

ハイデラバード戦役参加国の中では2番目に国力が低い

技術力はそこそこあるが、工業力はそこまで高くない

軍事力もハイデラバード単体よりは高いが『外注』されたウラノスの戦力を含まれると見劣りする

 

セントヴォルト帝国

『誓約』世界の周辺諸国の中では最も国力が高いであろう存在

しかし突出して高いわけではなくかつ背後に緊張関係にあるズウンジン朝と強力な陸軍で有名なハルモンディア皇国が存在するためその警戒のために一定の戦力を張り付けなければならないため多島海方面には全力を注げない

 

ウラノス

飛空士世界では最も力を持っているであろう存在

しかし国是と思想の結果周りの国々にケンカを売りまくり敵対関係となっているため

常に多大な軍事費がかかりその軍事力を各地に分散せざる負えない状況になっている。

(例、第2次イスラ艦隊の襲撃)

 

96式重爆撃機『富嶽』

 

外見はtu-95を6発にした感じ

 

全長50m

全幅75m

航続距離 17000㎞

最大ペイロード 32t

最高速度 870km/h

武装 20㎜機銃 6門

 

平賀が富嶽を再現すると言って作りあげた爆撃機

宮様も参加し悪乗りして作った結果当時としてはとんでもない性能を持つにいたった。

 

96式早期警戒機『連山』

 

全幅:44 m

全長:31 m

最高速度 580㎞/h

 

旧式化した92式重爆撃機連山を早期警戒機として改造した機体

元となった機体『連山』はb-50並の優秀な性能を持っていた。

他にも空中給油機型なども存在する

 

93式艦上戦闘機『電征』21型

 

全幅:11.24m

全長:11.20m

最高速度 850㎞/h

武装 20㎜機関砲

 

電征シリーズの一つで次期主力艦上戦闘機のつなぎとして開発された。

究極のレシプロ戦闘機を目指し開発されたためきわめて性能は高い。

 

93式艦上戦闘機『電征』32型

 

電征シリーズの一つで制空、爆撃、雷撃をこなすことができ『万能戦闘機』と呼ばれている。

主翼下には多数のハードポイントがあり多彩な兵装を施すことができ3t近いペイロードを誇る。

戦闘機としての性能は22型に劣る。

 

 

 

96式局地戦闘機『蒼莱』

 

全長:11m

全幅:12m

 

最高時速 920㎞/h

武装 30㎜機関砲4門

 

外見はより角度をきつくした後退翼を採用した震電

究極のレシプロ迎撃機を目指して開発された。

 

零式艦上戦闘機『烈風』

 

全幅: 11.9m

全長: 11.1m

最高速度 1200㎞/h

武装 30㎜機関砲2門

百式空対空赤外線誘導弾 4発

 

機首にエアインテークととんがった鼻のようなレーダーレドームを持つ全天候型戦闘機

外見はf-86d

 

零式艦上攻撃機『輝星』

 

全長: 12.22 m

翼幅: 8.38 m

最高速度 1100㎞/h

武装 30㎜機関砲2門

百式空対艦誘導弾

百式誘導爆弾

 

5トン近いペイロードを誇る新型の艦上攻撃機。攻撃機と銘打っているが急降下爆撃も普通にこなすことができる。

外見はa-4 スカイホーク

 

 



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第6話 バーニングアイランド!

チハ無双あるいは或る少佐の物語


帝紀 1346年 9月

 

ついにウラノス=ハイデラバード連合はメスス島攻略作戦『アイアンフィスト』を発動させた。

 

先日の『アドラーターク』作戦によって敵海上戦力は一掃することができたためこの作戦が可能となった。

制海権は確保できたが制空権はいまだ完全に確保はできていなかった。

どうやら作戦開始前に大量に機材が補充されたようだった。しかし自分たちが制海権を握っているこの好機を利用して一気に叩き潰そうとハイデラバードは考えた。

現在無数の上陸用舟艇がメスス島海岸へ向けて向かっていた。後方の敵重砲群へ向け艦砲射撃が開始された。

海面へ落ちてくる敵重砲の砲弾は次第に減っていった。しかし沿岸の中口径砲が次々と上陸用舟艇に対し射撃を始めた。最初は狙いが正確でなかったが上陸用舟艇が距離を詰めるにつれ次々と命中するようになった。

 

「畜生!敵の狙いがどんどん正確になってやがる!」

 

轟音!そして衝撃!

どうやら隣の上陸用舟艇が砲弾の直撃を受け大破したようだ。これでは助かるまい

 

砲弾の破片により乗員が負傷したり命を刈り取られたり、あるいは撃破されたり転覆する船も相次いだがそれでも海岸を目指しただ只管進んでいく上陸用舟艇群

 

「海岸が近づいてきたぞ!上陸用意!」

 

兵士たちは、聖アルディスタに祈ったりして自身の幸運を祈り覚悟を決めた。

そしてついに上陸用舟艇が海岸へ乗り上げた!

扉のようになっている船首が開いた瞬間海岸線に配置されている機関銃群が一斉に射撃を開始した。

満足に身動きをとれないうちに次々とハイデラバード軍将兵は撃ち殺されていった。

さらに沿岸に配備されていた迫撃砲群も射撃を開始した。

あっという間に海岸線付近の海の色は青から赤となったが、それでもハイデラバード軍は前進をやめない

正確に言うならば前進しか活路がない、だからただ只管前進する。

海岸付近への艦砲射撃は行われない。上陸部隊を誤射する可能性がとても高いからだ。

 

「くそ!このままでは全滅だ!」

 

「援護を!援護を!」

 

海岸線の周りには、無数の兵士の遺体が転がっていた。

するとイドラ戦闘機やアクタイオン爆撃機が迫撃砲陣地や機関銃陣地へ爆弾を投下したり機銃掃射を行った。

 

「よし!突撃!」

 

機関銃陣地や迫撃砲陣地が沈黙してできた穴へ指揮官を先頭にして突撃を開始した。

穴に侵入して内部から突き崩すことを意図してのものだ

さらに第2派も上陸を開始し増援を得るとますます勢いづいた。

 

秋津軍の沿岸防衛隊は、4時間にわたり防衛戦を展開し後退を開始した。その時すでに、防衛隊の戦闘力はかなり消耗していた。

 

ハイデラバード軍は海岸の制圧を完了すると橋頭保を構築し始めた。

そして戦車を含む上陸部隊第3陣が到着した。

 

ハイデラバード軍の主力戦車は、主砲47㎜ 正面装甲30㎜ 最高速度40㎞/hとだいたい大戦初期の戦車と同程度の性能を誇っていた。

 

海岸を一望できる丘からその様子を見ているものたちがいた。

 

「奴らの戦車…まるで玩具みたいだな」

そう言って日本軍の野戦将校であり丘に布陣する戦車大隊指揮官である西住少佐は不敵に笑った。

この戦車大隊には増援として機動歩兵1個中隊などがついていてミニ独立戦車旅団のような編成になっていた。

 

「我々だって10年くらい前はあんな戦車に乗っていたぞ」

師団司令部にいる広瀬中佐は言う

現在二人の左官が話している場所には大隊本部小隊と戦車一個中隊が布陣しており

少し後方に戦車2個中隊と機動歩兵1個中隊が布陣していた。

その部隊の指揮は副大隊長である逸見大尉がとっていた。

 

「過去の話ですよ、今の97式中戦車チハという鋼鉄の軍馬はとても頼もしいものです。」

 

97式中戦車チハは主砲は海軍の旧式砲を改造した65口径100㎜砲、最大装甲厚130㎜、最高時速50㎞/hととても強力なものだった。

 

「しかし制空権が確立されてないとはきついな」

現在も島の上空では航空戦が繰り広げられているが双方互角のようだ

だがこの状況がいつまで続くかはよくわからない

 

「わが軍自慢の軍馬も上からの攻撃には弱いですからね」

残念そうに西住少佐は言う

 

少し考えるそぶりを西住少佐はして

 

「襲撃をかけるとしたら夜だな、あたりが暗いから航空機も出張ってはこれまい」

 

「そういう状況も許されなさそうだ」

西住少佐がいい広瀬中佐はそれは無理そうだと答えた。

 

敵の戦車を中核とした機械化部隊が徐々にこちらへ向かってくるのが見えた。おそらく戦果を拡大するために進撃を再開したのだろう。どうやらこちらには気づいていないようだ

 

戦車の車体は土で埋まっており砲塔はうまく樹木で偽装されていた。それなりに近くから見ないと気付かないだろうと予想できるぐらいうまく隠されていた。

 

「空襲ならばまだ味方戦闘機隊がいるからどうにかなるが艦砲射撃だけはどうにもならんな」

区画ごと吹き飛ばす艦砲射撃だけはどうにもならない、このままここに座していても状況は好転しない。

ジリ貧になるだけだ・・・事態を打開するためには…

 

「やるしかないのか・・・いやしかし…」

西住少佐は、その決断は現状では最善手かもしれないが部隊も壊滅する可能性が極めて高かった。なのでこの方法は正しいのかと悩んでいると通信兵が入ってきた。

 

「少佐殿司令部より電文です」

そういって渡された電文を少佐が見た

 

「味方主力が展開するまであらゆる手段を使い時間を稼げ・・か」

電文を見て少佐はそうつぶやいた。

まるで自分の決断を後押ししているかの如くのタイミングだった

時間を稼ぐには確かにその方法しかなかった。

 

「君の武運長久を祈るよ西住少佐」

気遣うような表情で広瀬中佐は言った。

 

「ええそちらこそ広瀬中佐殿」

 

広瀬中佐は上空を気にしつつ司令部の方向へ向かった。

 

その20分後 敵は我々の陣地の近くまで近づいてきた。

 

おおよそ大隊規模だと西住少佐は見切りをつけた。

 

敵との距離はおよそ1000m・・・まだだ・・まだ撃つのは早い

 

距離が600mくらいになって敵が不意に止まった。

 

気づいたのか?と疑問に思い、いつでも射撃命令を出せるよう準備した。

 

こちらを敵の戦車兵が注視しているのが見えた。そして後ろに振り向き手を上げるのが見えた。

どうやら見つかったらしい、ならばやるべき手段はただひとつ

 

「撃ち方はじめ!」

 

一斉射撃を行い一気に敵の戦車10両近くが吹き飛んだ。

かなり驚いている様子だった。そして敵は反撃を開始した。

こちらに次々と砲弾を当ててきたがどれも硬い前面装甲ではじかれることとなった。

少佐は少し声を上げ笑った。

敵の方もこちらに砲弾を当ててきたことから錬度は高いかもしれない。しかし戦車の性能が圧倒的に違いすぎて勝負にならなかった。

 

「次弾急げ!」

 

「撃て!」

その後も射撃を続け多数の敵戦車や兵員輸送車を破壊した。

少佐は少し興奮していた。敵より少数である我らが多数である敵を翻弄していると

敵の約半数ほどを撃破したころ敵は後退を開始した。このままここに座していても敵の空爆か艦砲射撃によって我々は撃破されるだろう。

ならばとるべき手段はただ一つしかなかった

少佐はキューポラから上半身を乗り出し右手を前方に振り下ろして若干興奮しつつ言った。

 

 

「戦車前へ!」と

 

 

彼らは突撃を開始する。生きるための活路を見いだせるのは前へ進むしかないからだ

その最終的に行き着くであろう海岸を西住少佐の双眸は睨みつけていた。

 

 

 

 

 

帝紀 1346年 9月

 

平地を十数両の鋼鉄の軍馬が疾駆していた。

そして先ほど交戦した無数の敵の戦車や装甲車の残骸や敵の死骸を避けあるいは踏み潰しながら

先ほど後退した敵を追っていた。

 

そして目の前に敵が進撃してきたと思われる海岸へ続く道路があった。

鋼鉄の軍馬たちは縦列の隊形をとりながら道路を疾駆した。

 

「大隊長より全車、敵の待ち伏せに注意せよ」

道路の側面には待ち伏せに最適のポイントがいくつもあったからだ

 

数分ほど進軍を続けていると不意に10個ほどの閃光が走ると先頭車両や他数両にに鈍い音と共に衝撃が走った。敵の砲弾だったが見事にはじき返された。

後続のチハが待ち伏せをしてきた敵戦車に対し発砲した。

砲弾の命中した敵戦車は砲塔が吹っ飛んだ。2分ほどで敵待ち伏せ部隊は全滅した。

 

上陸したばかりでおそらく敵は砲兵が展開できてないだろう、敵航空戦力も現在味方の戦闘機隊が健在なおかげでそこまで気にしなくて良い、艦砲射撃も誤射を恐れて撃ってこないだろうし観測機を飛ばすことができないだろうからあまり気にしなくて良い・・・

現在自分が率いている戦力は一個中隊強だが、少し後方からは逸見大尉率いる大隊の主力が向かっている

状況は最高とまではいかないが、なかなか整っているのではないかと西住少佐は思った。

西住少佐は獰猛な肉食獣のような微笑を浮かべていた。

 

ハイデラバード軍の先鋒を務めていた機甲大隊は、現在潰走に近い退却をしていた。

まさかあんな化け物のような戦車に出くわすとは思わなかったからだ。

先ほどの交戦で大隊長は戦死し、現在は大隊の中の最先任の中隊長が指揮を執っていた。

そして今足止めを命じた部隊が全滅したことを知った。

 

「くそ!どうなっている。あんな戦車がいるなんて聞いてないぞ」

ハイデラバードに日本の航空機については何度も交戦しているのでデータは集まっていた。(データが集まったからと言ってそれに匹敵する機体を作ることはできない)

しかし戦車と言った陸上戦力は今回が初めての地上戦なのでまったくデータがなかった。

(諜報員が何度も日本に潜入しようとするがイギリスやソ連と長年にかけて渡り合い互角の争いを繰り広げた

優秀な防諜機関内務省の『特別高等警察』や軍の『国家憲兵隊』によって次々と消されていった。)

 

「おそらく秋津の戦車ではないだろう・・・だとすると奴らに手を貸しているニホンの戦車か」

今まで交戦した自軍より貧弱な秋津の戦車を思い浮かべながらそう言った。

秋津軍の主力戦車は短砲身57㎜砲搭載の史実のチハのような戦車だった。

 

「畜生め!・・・援護はまだ来んのか!このままでは我々は全滅してしまうぞ!」

 

さっきから援護要請を出しているがどうやら敵戦闘機隊の反撃が始まったらしく爆撃機を出すことはできないと返信が来た。それどころか踏み止まれもしくは反撃しろとの命令が来た。

そのため即席の陣地もどきを作っていた。しかし中隊長は容易に突破されると思っていた。

 

「冗談じゃない!おれたちはあれに敵わない!」

正にそうだった。しかし後方には司令部や物資の集積所がある。ここで踏み止まらないといけないのも事実だった。しかしそうだとしても

「増援を!戦車部隊を!航空支援を!それがないと踏み止まることはできない!」

しかし相変わらず答えは変わらなかった。

そうこうしているうちに敵戦車部隊接近との報があった。これ以上の押し問答は無駄だと思った。

通信兵から連絡があった。どうやら増援の戦車部隊が向かっているらしい。

だが自分たちがその時生き残っている自信は全くなかった。

 

 

先ほど待ち伏せしていた戦車部隊の残骸を通り越してしばらくすると、最初に撃破した機甲大隊の残存兵力と思わしき部隊が脆弱な防衛線らしきものを構築しているのが見えた。

 

「全車戦車突撃陣(パンツァーカイル)をとれ」

 

「了解!」

 

「腕が鳴りますな」

 

西住少佐率いる戦車隊は槍の穂先のようにとんがった陣形をとると敵の防衛線へ向け突撃を開始した。

敵は果敢に反撃して砲弾を放つがすべてチハの装甲にはじかれ逆にチハの反撃によって沈黙していった。

敵は再び後退を開始した・・いや潰走だったバラバラになり逃げて行った。戦意は完全に粉砕されたことだろう。

しかし一部の歩兵が勇猛果敢にも突撃を仕掛けてきたが、戦車隊についてきていた機動歩兵や自走高射機関砲によって撃退された。

バラバラになり潰走した敵は追わなかった。そんな余裕はなかったからだ。

もちろんハイデラバード戦車部隊中隊長は戦死していた。

 

パンツァーカイルのまま進軍していると前方に先ほど壊滅させた敵の増援らしき戦車部隊が見えた。

 

「飛んで火にいる何とやらだ」

そう言って西住少佐は前方の敵戦車部隊の撃破を命令した。

 

「撃て!」

敵先頭車両が吹き飛んだ。

その直後指揮下の戦車隊が発砲すると次々と敵戦車が大穴を開け砲塔がびっくり箱のように吹き飛んで行った。

 

「まるでびっくり箱だな」

湾岸戦争時のt-72のように吹っ飛んで行った。

 

敵も反撃してきたがさっきと結果は変わらず全て弾かれお返しと言わんばかりにチハが発砲し敵戦車部隊は撃破されていった。敵戦車部隊は2個中隊規模だったが5分程度で全滅することとなった。

先頭が終わり周囲の状況を確認すると後方に逸見大尉率いる大隊主力が土煙を上げながら猛然と接近してくるのが見えた。

 

「さて・・これまでは序章・・これからが本番だ」

そう西住少佐は呟いた。

 

数分後 逸見大尉率いる大隊主力と合流した。

 

「諸君我々はこれより海岸にいる敵部隊に強襲を仕掛ける!諸君の奮闘が今後の戦いの趨勢を決することとなるだろう!諸君の奮闘を期待しかつ幸運を祈る!」

そう言うと大隊は進撃を開始した。

司令部にもさらなる混乱を生み出すために敵の上陸地点への突入を行う旨を発信した。

 

そしてついに西住少佐率いる大隊は海岸に到達した。

 

海岸には無数の敵歩兵やドラム缶や補給物資、車両があった。その獲物の多さに口笛を吹く者もいた。

 

「全車突撃開始!戦車前へ!」

 

そして戦車部隊が猛然と突撃を開始した。艦砲射撃も空襲も気にする必要がなかった。

確実に膨大な補給物資や味方の将兵を巻き込むことになるからだ。

敵は素人から見ても大きく混乱しているようだった。

 

そして大隊は辺り一帯のあらゆるものに対して攻撃を開始した。

 

「目標前方のドラム缶の山!撃て!」

100㎜砲が唸ると燃料の入っていたドラム缶の山は爆発炎上した。

 

ある戦車はハーフトラックと言った車両を、またほかの戦車は弾薬や火薬の詰まった箱を攻撃していき

またある戦車は海岸に上陸していた重砲をと敵陣の中央でやりたい放題していた。

 

ハイデラバード兵は何とか阻止しようとするが貧弱な火力ではどうすることもできなかった。

接近しようとしても機動歩兵や自走高射機関砲、戦車の車載機関銃によって蜂の巣にされたり物言わぬ肉塊にさせられた。

 

海岸は悲鳴と爆音と硝煙と炎そして死体に満ちた地獄と化していた。

 

大隊はやりたい放題行い地獄を増産しながら進んでいた。海岸は一時的にだが西住少佐率いる部隊が支配していた。

 

しかし西住少佐はこれは敵がひどく混乱しているからで体勢を立て直されると長く持たないことがわかっていた。それに敵補給物資は十分に破壊したと判断しより高い戦果を挙げるために敵の頭脳を潰すことにした。

敵上陸部隊の司令部を潰せばこの混乱はさらに拡大しうまくいけば敵を島からたたき出すことも夢ではないからだ。それに敵の決死の抵抗に2割という無視できない損害が発生しつつあった。

そう考えていると数分後部下の報告があった

敵の抵抗が激しく遠くを見るとひときわ大きいテントがいくつもが見えると

おそらくそこが司令部なのだろうと判断すると

 

「全車ここより10時の方向2㎞の地点に敵の司令部が存在する!全車進撃開始!」

そう言うと敵の司令部のある方向へ進撃を開始した。

 

 

現在ハイデラバード軍上陸部隊の司令部はひどく混乱していた。

 

「いったい何が起きている!?」

 

「敵機甲部隊が上陸地点へ進出暴れ回っています!」

幕僚がそう答えた。

 

「何!?至急排除せよ!」

司令官は焦っていた。あまりにふがいないと本国で銃殺されかねないからだ。

 

「それが敵の火力が協力で近づくことすらままならないと!」

 

「くっ!物資が!これでは今後の作戦に支障をきたすぞ!」

少なくともスケジュールの数日の遅延は確実だった。

 

「敵の規模は?」

 

「大隊とも連隊とも師団とも言っています」

まるっきり混乱しており正確な状況が全く分からなかった。

 

「ええい!それもわからんとは!いったい何をやっている!」

司令官は味方の無能を罵倒した。

 

「味方を必ず巻き込んでしまうため艦砲射撃も空爆も要請できませんし…」

 

「ちっ!あの傭兵どもは何をやっている!給料分の仕事もできんとは!」

ハイデラバード人の司令官は金をもらっておきながら満足に仕事のできていないウラノスを嘲った。

この司令官は祖国に何かと集るウラノスのことを快く思っていなかった。

 

すると一人の将校が慌てて入ってきた

 

「何事だ!?」

 

「申し上げます!敵機甲部隊が司令部へ向け突進を開始!」

 

「何!?」

このことにかなり驚き外を見てみると数十両の味方に比べ巨大な戦車がこちらへ向け猛然と向かってくる様子が見えた。

味方は対戦車砲などで必死に敵の進軍を止めようとしているが、敵戦車は全く物ともしていない様子だった。

 

「な・・何としてでもとめろ!敵を!」

 

そう言っていると不意に敵戦車から閃光が走り近くで爆発が起きた。それにハイデラバード軍上陸部隊司令官と幕僚が巻き込まれ重傷を負い意識が混濁した。

 

これによりさらにハイデラバード軍の混乱が拡大した。

 

「し・・司令官閣下!?」

 

「うわあああ!!」

 

「ど・・どうする!?指揮権の委譲は!?」

 

「副司令官閣下も負傷なされたし幕僚の方々も大なり小なり負傷なされている」

 

「何!?」

誰が指揮を執るか指揮権の委譲のことに関して混乱していると敵機甲部隊が目前まで近づいてくるのが見えた。

 

「に・・逃げろ!」

 

「退却だ!退却!」

そう言って司令部の人間は逃げ散っていった。

意識が朦朧としていたハイデラバード軍上陸部隊司令官が見た最後の光景は戦車の履帯だった。

西住大隊が総司令部に突入し通信施設などを破壊して蹂躙したからだ。

 

『我敵司令部を制圧セリ』

 

この報告は日本義勇軍司令部を沸かせた。敵を混乱させ時間を稼ぐことはできるかもしれないと思っていたが

ここまで大きな戦果を挙げるとはだれも予想していなかったからだ。

 

日本義勇軍司令官宮崎繁三郎は、敵の海岸が混乱始めた時から3個戦車大隊、機動歩兵1個大隊、自走榴弾砲一個大隊を基幹とした独立戦車旅団規模の部隊が若干準備不足ながら進発させていた。

西住大隊の作った穴から戦果を拡張するためだ

しかし失敗する可能性のほうが高いと思っていた。なぜなら上空はまだ味方が踏ん張っているが艦砲射撃によって妨害される可能性が高かったからだ。

しかし現在は、完全に敵上陸部隊の頭脳が潰されかつ上空でも味方戦闘機部隊の活躍により艦砲射撃を行う際の観測機の妨害もなされていた。そのため正確な艦砲射撃を行うことができない。

この好機を逃さず日本軍逆襲部隊は反撃を開始した。

 

西住大隊は何とか安全圏まで離脱することに成功していた。

敵司令部突入時のハイデラバード軍の抵抗は苛烈だった。中には地雷を抱え体当たり攻撃を仕掛けてくる者もいた。しかしこれらの抵抗を受けつつも西住大隊は前進を続けついに敵司令部を蹂躙した。

その後戦果はもう十分すぎるほど挙げたと判断し全車に対し安全圏までの撤退を命じた。

撤退時も司令部の敵として何度も何度も襲撃を受けたが統一性がなく何とか撃退し逃げ切ることができた。

大隊の残存戦力は3割にも満たなかった。戦車大隊は、一個中隊程度となり機動歩兵も一個小隊ほどしか残らなかったし、自走高射機関砲も1門しか生き残らなかった。全滅判定を通り越して壊滅判定である。

だが戦果は絶大なものだった。敵の今後の作戦に必要な物資をもやし、敵司令部を制圧した。敵戦車も最終的には2個大隊以上撃破していた。

 

安全圏にまで逃げた西住少佐は言った。

「我々は生き残ってしまったな・・・死んでいった部下は私の判断を恨んでいるかな?・・・」と

 

「いえそれはないかと思われます少佐殿、敵の鼻っ柱をへし折ってやったと思っているでしょうし、そう判断を悔やまれては死んでいったものたちが浮かばれませんよ」

同じく生き残った逸見大尉はそう答えた。

 

「そうだな・・」

そう自分を納得させるように少佐はつぶやいた。

 

ふと先ほどまで激戦を続けていた地域を見た。独立戦車旅団規模の部隊が突撃を開始しており、混乱していた敵部隊が次々と撃破されていく様子が見て取れた。おそらくこのまま海岸へ突入するだろう。そして混乱し満足に航空支援と艦砲射撃による支援を受けれなくなった敵は撃破されるだろうとボンヤリ考えていた。

 

西住大隊が戦域から脱出したのとほぼ同時に独立戦車旅団が突入を開始した。先ほどの3倍はある敵の兵力に指揮官不在のハイデラバード軍上陸部隊は対応できず次々と撃破されていった。そして最終的にハイデラバードは島から上陸部隊を撤退させることとなった。

上陸部隊を務めたハイデラバード第一海兵師団はほぼ壊滅に近い損害をだし島からたたき出されることとなった。

 

 

メスス島攻略作戦『アイアンフィスト』作戦は事実上失敗した。

 

 

 



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ネクストステージイントロダクション

帝紀 1346年 11月

 

2か月前行ったメスス島攻略作戦『アイアンフィスト』作戦は、上陸後日本義勇軍の逆襲により上陸部隊である第一海兵師団の壊滅という結果で失敗した。

しかしいまだハイデラバードは制海権を握っており前回の戦いで日本義勇軍と秋津連邦の基地航空隊は

少なからぬ損害を受けており未だその損害から回復していなかった。

そして再びメスス島攻略作戦『フォレンジャー』作戦が開始された。

前回の反省を踏まえ海岸とその周辺地域に1日間徹底した艦砲射撃を行い翌日上陸を開始した。

海岸周辺地域の制空権も多大な犠牲を払いつつも確保していた。

前回のようにたった一個戦車大隊によって作戦をとん挫させられるようなことがないように徹底して行われた。

海岸地域の橋頭保を確固たるものとした。今回は隙がなく日本義勇軍機甲部隊は反撃に出ることができなかった。しかし翌日ハイデラバード軍にとって不幸が訪れる。メスス島がひどい雨に見舞われたからだ

 

ウラノス軍は悪天候での作戦遂行能力を持っていないため、地上部隊への航空支援を行うことができなくなった。これを好機として一個機甲師団規模の部隊が反撃を行った。ハイデラバード軍は、この部隊の進撃を止めることができず後方の補給地や上陸地点である海岸まで突入されたが、ハイデラバード海軍は驚きの方法を持ってこれに対処する。駆逐艦部隊が誤射の可能性を可能な限りなくすために海岸すれすれまで接近して艦砲射撃を行ったからだ。ここに戦車対駆逐艦という世にも珍しい戦いが起こることとなる。海岸に接近した駆逐艦は4隻であり海岸に突入していた部隊は戦車2個大隊規模であった。

海岸より300mという超至近距離まで近づいての駆逐艦の艦砲射撃であり日本戦車隊との熾烈な打ち合いとなった。

結果4隻の駆逐艦は浮いているのが不思議なほど大破したがその対価として日本戦車隊も甚大な被害をこうむり敵司令部への突入が不可能となった。そのため後退した。しかしハイデラバード軍は陸に上げていた物資の大部分が奪われたり焼かれたりしたかつ上陸部隊も全滅寸前の判定を受けるほど甚大な被害を被った。

結果的には陸上の橋頭保は何とか維持できたが『フォレンジャー』作戦の大幅な遅延は余儀なくされた。

日本軍は敵を再び海へたたき出すということはできなかったものの敵に甚大な被害を与え大幅に時間を稼ぐことはできた。しかしその代償として自身も2割近い損害を出した。艦砲射撃が届く地域から後退するようメスス島防衛司令部は伝えた。メスス島はかなりの面積がありかつ前々から襲撃が続いていたため島は要塞化が進んでいた。そのためその後も激戦が続くこととなる。

 

メスス島 内陸部

 

ハイデラバード軍は、防衛陣地を突破しようと機甲部隊を先鋒とした突撃を開始した。

 

「また性懲りもなく来たな」

そう陣地を防衛する歩兵中隊長は呟いた。

陣地周辺では味方の突撃を援護するために重砲部隊により準備砲撃が行われ、轟音と共にいくつものクレーターが増産されていった。

そしてひとしきり砲撃が終わると敵部隊が突撃を開始した。

幾多の戦車や装甲車が陣地を食い破らんと攻撃を開始したが陣地防衛隊もそう簡単に食い破られるほど可愛げを持っているわけがなかった。

 

「撃て!」

日本からレンドリースされた旧式の75㎜高射砲が火を噴いた。

 

陣地からは次々と対戦車砲として使われている旧式高射砲が火を噴き戦車部隊を次々と物言わぬ鉄の塊としていった。

 

戦車部隊はほぼ壊滅状態に陥ったがそれでも敵は前進をやめない

陣地からは機関銃が火を噴き迫撃砲も負けじと砲弾を吐き出し続けている。

しかしそれでも全身をやめずついに陣地に取りついた。

塹壕では、あちらこちらであるものは銃剣を手に或る者は銃尻で殴りつけまた或る者はスコップを片手に格闘を繰り広げていた。

しかしハイデラバード軍は数が足りなかったのか塹壕からおい出されることとなった。

 

このような光景がメスス島各地で行われることとなる。

 

しかしハイデラバードは制空権をほぼ握りつつあり次第にメスス島守備隊は追い詰められることとなる。

 

だが帝紀1346年 12月 ウラノス=ハイデラバード連合が飛空要塞二つを動員したある作戦を行ったことで事態は大きく急変していくこととなる。

 

 

 

 



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