TERRAFORMARS 英雄の名持つ二人 (ルノア)
しおりを挟む

プロローグ

俺たち2人は、17年前に孤児院の前に捨てられていたらしい。

そこの孤児院を運営していたシスターに俺たちは、拾われた。

しかも2人、揃いも揃って、同じ年の同じ場所に捨てられていた。

とりあえずシスターは、俺たちの親を探してくれたらしいが見つからなかったそうだ。

それで俺たちが育てられることになった孤児院にはシスターを含め、

従業員が5人しかいない小さな孤児院だった。

俺たちは物心がつくとすぐに2人でつるみ始めた。

寝る時も遊ぶ時も喧嘩するときもずっと一緒だった。

小学校、中学校には通ってはいなかったが、

そのLEVELの授業はシスターとほかの従業員4人がすべて教えてくれた。

運動の時間は、特別楽しかった。

従業員は全員それぞれ一つの格闘技を制覇した、日本でいう強者というたぐいの人間だった。

合気道、空手、中国拳法、剣道、棒術と色々な格闘技を極めた人たちだった。

シスターや職員は1通り、技を見せると決まってこう言った。

「これはあくまで見世物として見せただけだ。

べつに無理やりやらせようとは思ってない、

だからやるか、やらないかは、自由だし、やるからには最後までやれとも言わない。

だから教えてほしいときはいつでもいいに来な」

多分、やることが違ってきたのはここぐらいからだろう。

この俺、シオンは、合気道と剣術を習うことにし、

そしてシルヴィーは、俺と同じく合気道と中国拳法を習うことにし、

次の日から俺たちはそれぞれ別の師範の下でそれぞれの武術を習い始めた。

週3回2時間の時間をフル活用し、自らを鍛え上げた。

動くのに無駄な筋肉をつけずに最善の体作りを行う。

同じ孤児院の子には、まるで軍人みたいだと言われたこともあった。

まさにそのとうりである。

師範たちは技や技術を教えてくれても基礎は教えて話くれなかった。

だから自分で見つけたのである技や技術の基盤を。

そして16になった、俺の体つきは無駄な筋肉がほとんどないしなやかな体になっていた。

俺もシルヴィー16になったが学校は通ってなかった。

特に通う理由がないからである。

俺の場合は、欲しい知識はほとんど調べ上げ覚えたし、

運動能力でもそこらの奴に負けるほど弱くはない。

シルヴィーの方はどうか知らないが、あいつも負けたりはしないだろう。

俺たち以外の孤児院の仲間たちも病気にも負けない元気な体に育っていった。

だが、シスターだけは違った。

ある日、シスターは何の前触れもなく倒れた。

少しの間、慌てふためいたがすぐに正気に戻った俺たちはすぐに病院に連絡した。

そして病院に運ばれたシスターに告げられたのは、

「あなたは、宇宙から飛来した未知のウイルス。

『エイリアン・エンジン・ウイルス』に感染してしまったようですね」

曰く、そのウイルスには、明確な治療法がないと、

曰く、かかれば最後、死を待つだけになってしまうと。

そんな絶望の言葉を聞いてもシスターはうろたえることはなかった。

それどころか即座に付き添いに来ていた、

俺とシルヴィーに「私のためにつらい思いまでして頑張るのやめて」なんて言ったんだ。

シスターは入院することになった。

そして、俺たちはシスターの眼を盗んで治療法を探し続けた。

俺たちは資料を読み漁り少しでも情報を集めた。

その時、U-NASAでエイリアン・エンジン・ウイルスの患者を受け入れを行っていることを知った。

そして、治療法を見つけるために火星に行くことを知った。

さらにその船員を募集中ときた。

こうなれば、一刻も早く治療法を見つけるために行こうと思い、

すぐに孤児院に帰り、荷支度をしていると。

自分の部屋の扉の向こうからノックが聞こえた。

扉を開けてみると、そこにはシルヴィーがキャリーバックに座っていた。

「まさか、自分ひとり犠牲になろうなんて考えてないよね?」

シルヴィーは俺が扉を閉めないように木材を扉の端に置き、俺に問だした。

「おまえ、どこまで知ってるんだ?」

俺は自分の情報の出所は教えない主義だ。

だからシルヴィーがどこまで知っているのか気になった。

「私はシオンと同じく、シスターを助けたいと思ってる。

だから、シスターの言葉を無視してでも助ける方法を探した。

そしたら見つけたんだよ。

U-NASAの計画を見つけたんだよ。

私が見つけれたんだよ?

あなたが見つけられないわけがない。

だからこそ思ったんだよ、

シオンなら絶対に誰にも言わずにU-NASAにいくって。

まぁ、ざっと推理はこんなものだけどあってた?」

どうやら、バレバレのようだ。

「で、止めるのかそれとも・・・」

「もちろん、ついていくに決まってんじゃん。

私は最愛の家族が一人で火星に行くのなんて黙ってられないし、

一人より二人の方が効率がいいでしょう?」

どうやら、俺だけではなかったらしい。

「俺たちは、シスターのいいつけを破っちまう悪い子だな」

「だけど、それでシスターが元気になるのなら」

俺たちは荷物をまとめた後、日没と同時にU-NASAへと足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旅立ち

「バスと列車を乗り継いで3日か」

「どうするどこかで車でも捕まえて最寄りのバス停か駅まで連れてい行ってもらう?」

「いいや、たしか倉庫にバイクが置いてあったはずだ」

そういって倉庫まで足を運ぶ。

するとそこにはガレージを開けて待っている少年が一人いた。

「兄ちゃん、姉ちゃん、どこに行くつもり?」

「おいおい、英司。まだ午前2時だぜ」

「そうだよ英司。健全な男の子はまだ寝てる時間だよ」

「どうせシスターの眼を盗んでなんかしに行くんだろ?」

はぐらかしてもよくなさそうなので真実を口にする。

「シスターが未知のウィルスに感染した」

「それの抗体を作るためにちょっと火星まで足を運ぶつもりなの」

「姉ちゃん、それはちょっとていうような場所ではないと思うんだが」

英司はガレージから退いた。

「シスター助けに行くためならバイク使ってもいいぜ」

「シスターには、長期海外旅行中とでも言っといてくれ」

「あぁ、わかったよ。だけど兄ちゃんたち絶対無事に帰って来いよな」

「大丈夫だ。仕事内容はただコケとか拾ってくるだけらしいから」

ガレージの中に入ってサイドカー付きのバイクのエンジンをいれる。

「10年以上も動いてなかったはずなのにエンジン動くんだな」

「あたりまえだ。俺が5年間ずっと整備してたんだから」

英司がうちに来たのが3つの時だから。

「おまえ、8つの時からいじってたのか?」

「シスターに教えてもらったんだ」

「あの人、ほんと何でもするな」

そう言いながら俺は二人分の荷物をサイドカーに入れる。

「シルヴィー、後乗れ」

俺は運転席の後ろにシルヴィーを乗せたことを確認するとバイクを走らせた。

「ちゃんと帰って来いよな!」

英司が後ろから声をかけたので俺たちは手だけ振っておいた。

それから1時間、休むことなくバイクを走らせる。

「あとどれぐらいで着くの?」

シルヴィーの質問に答える。

「あと1時間ぐらいでU-NASAの近くまで行ける駅に着く」

「ありがと—」

走り続け駅に着く。

「バイク、どうするの?」

「孤児院に送る」

「どうやって?」

「先生を使う」

シオンは携帯電話を取り出した。

そしてアドレス帳から名前を探し出し電話を掛ける。

「もしもし、先生ですか」

はて、先生とはどちらだろうか。

シオンは剣術と合気道を孤児院で教わっていた。

「はい、今駅の前にいます」

その言葉から十数秒後、目の前にトラックが止まる。

「シオン、何を運んでほしいんだ?」

トラックの窓から顔を出したのはシオンに剣術を教えてくれていた先生だった。

「このバイクを孤児院まで運んでほしいんですが」

「べつにいいぜ」

「ありがとうございます、ジョニー先生」

「べつにいいってことよ」

ジョニー先生はバイクをトラックの荷台に乗せると車を走らせていった。

「それじゃ列車に乗るぞ」

「ジョニー先生、何も聞かなかったね」

「あの人はそんな人だ。陽気なように見えて深くには絶対入ってこない」

「変な先生だね」

「俺の師匠はどっちも変な人だったぜ」

「シスターも?」

「あぁ、そうだ。あと乗車券だ」

シオンから乗車券を受け取る。

「もうすぐ列車が来るぞ」

私たちは急いで乗車券を見せ列車に乗る。

「UーNASAまで6時間だ。寝れる時に寝ておけよ」

「あんたもね」

俺たちは個室に入って目覚ましをかけ睡眠をとる。

『・・・・・』

あれから何時間たっただろう。

大きな音が聞こえる。

まだ寝ぼけているせいかうまく聞き取れない。

「シオン、もうすぐ目的地だよ!」

今度はシルヴィーの声が聞こえる。

「あぁ、・・・すまない。ちょっと寝すぎてた」

目覚ましを見ると時間は過ぎていて音はなっていなかった。

たぶんシルヴィーが止めてくれたのだろう。

「あと、一駅か」

「なに、ビビってんの?」

「別にそう言うわけじゃないが」

「なら、いいけど」

あと少しでシスターを助けてあげられる。

だが、コケ取りに行くだけなのにここまで大きな募集をする必要があるのか?

考え事をしていると目的地に到着した。

俺たちが列車から降りると目的地は見える場所にあった。

「あれがU-NASAの基地」

「あれがシスターを助けられるかもしれない場所」

二人は目的地へとまっすぐにむかっていく。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

志願

今回は地の文が少なめです。


U-NASAの基地にたどり着き俺たちはカウンターまで行った。

「火星探査の志願がしたい」

「お帰りください」

なぜか断られた。

「特別な事情がない限り未成年の志願は禁止しております」

「俺たちは人助けのために志願したいんだ!」

「それでも志願はできません」

「なら、俺が志願者より強いってことを証明すればいいだよな」

「そうですね、強いかどうかはともかく有能であると判断すればですが」

「あんたが選んでくれていいぜ。俺は負ける気はないからな」

「なら、ちょうどあそこにいる男の人が最も強いであろう人なので彼に勝てれば」

「よし」

俺はその男の前まで歩いていく。

「俺は火星探査にいきたい。だから力を示す。俺と試合をしてくれ」

「火星探査に行きたいってことは何か理由があるのかな?」

「育ての親がウイルスに侵されている。それを治すためだ」

「待つという選択肢はなかったのかい?」

「そんな悠長にしてられるほど気は長くない」

「そうか、そうだね、僕に一撃でも与えられたら考えてあげるよ」

「あまり、ガキだからってなめてもらったら困るぜ」

俺は荷物をシルヴィーに預け、構えをとる。

むこうは構えてないように見えるがすきが見当たらない。

「後悔すんなよ!」

隙が見えないなら自分で切り出せばいい。

一気に目の前まで詰め寄る。

そして一歩下がって、拳を放つ。

だがそのフェイントをよまれむこうも一歩下がることにより回避する。

「なら!」

さらに早く詰め寄り最速のパンチを繰り出す。

だが少しそれることにより回避された。

それを体を回し腕で薙ぎ払いをかける。

だがまた回避される。

「あんたもせめて来いよ」

「いいのかい?いまだ一発たりともあてれたないのに?」

「べつにいいさ」

「なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

次の瞬間、腹に衝撃が走る。

「早すぎだろ」

気を失いそうになったが口内の肉を噛んで痛みで意識を保つ。

「立ってるなんてすごいじゃないか、手加減したとはいえ相当なダメージのはずだよ」

「俺は恩返しのために助けるんだ」

「たとえ、本人が望んでなかったとしても?」

「当たり前だ。それぐらいの覚悟ぐらいしてきてるつーの」

また、認識できない一撃に襲われる。

「あー、もう!見てらんない!シオン!」

後方から飛んできたものを受け止める。

「なんで持ってきてるんだよ」

「私の勝手でしょう」

「一撃当てればいいだけだよな?」

「そうだよ。武器の有無は問わないよ」

「なら、勝たせてもらう」

俺は木刀を構える。

そして一歩踏み込む。

後は全力で振るうだけ。

何の変哲も無い一撃だからこそとてつもない速さと威力で振るわれる。

「おっと」

渾身の一撃は相手の薄皮に触れた程度だった。

「びっくりしたよ。君にそこまでの技量があるとは」

「技量?俺はただ振っただけだ」

「だが、やみくもに振るったわけではなく最善のルートで叩き付けに来た」

「あっそ、次は当てるぞ」

「まちなよ!もう当たったよ!」

「薄皮めっくった程度で当たった内に入るか」

「こら、シオン!」

後ろからシルヴィーに怒鳴られた。

「なんだよ?」

「私たちの目的はシスターを助けることよ。

せっかく合格って言ってるんだから素直に従いなさい!」

「えっ?御嬢さんは付き添いか何かだと?」

「言わなかったか?俺たちって」

「あっ、そう言うことなんだ」

「どうしますか?私も一撃当てた方がいいですか?」

「いやいや、もう、ハラハラは御免だよ」

「あっ、そういえば、あんた名前は?」

「僕の名前はジョセフ・G・ニュートン。気軽にジョーと呼んでくれ」

「俺の名前はシオンだ。ジョーさん、よろしく」

「私はシルヴィーです。ジョーさんよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく」

俺たちは施設の中に歩いていく。

「君たち、志願するのはいいけど。もしかしたら火星に行く前に死んじゃうかもよ?」

「どういう意味ですか?」

シルヴィーがジョーさんに問いかける。

「火星で活動できるようになるために手術を受けてもらうことになる」

「それの結果次第で俺たちは火星に行けないと」

「そうだよ。成功率はおよそ30%、それでも志願するのかい?」

「「当たり前だ(です)!」」

「おぉ、少しはためらってくれるかなって思ったんだけどなー」

「言っただろ、覚悟はできてるって」

「なら、次、会うときは二人一緒に生きていることを願うよ」

俺たちはジョーさんと別れ、病室に入って行く。

そして、手術を受けた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

手術成功

目覚めると見慣れぬ天井が視界に入った。

あまりに白くて目が痛くなったので片手で少し隠す。

「お目覚めかい?」

声の聞こえた方へ顔を向けると知らないおっさんの顔があった。

「シルヴィーは?」

「目覚めてすぐに彼女の心配とは」

おっさんは肩をすくめながら笑う。

「彼女じゃない、家族だ」

「これは失礼」

「そんなことよりもシルヴィーは!?」

起き上がろうとするが体がうまく動かない。

「彼女は大丈夫だから、おとなしくしときなさい」

「そうか」

体の力を抜いてベットに背中を預ける。

「それじゃ、これより君が受けたMO手術について簡潔に説明させてもらう」

おっさんの手には複数枚の書類をクリップで止められたものが握られていた。

「たしか火星で活動するための手術でしたよね」

「あぁ、そうだがもう一つ目的がある」

「もう一つ?」

「そうだ。火星にいるある生物を制圧するための手術だ」

「ある生物って?」

「ゴキブリだ」

「はっ?」

何今ゴキブリって言ったのかこのおっさん?

あれだろGとか略称で呼ばれてるあれだろ。

「『そんなものを制圧するために手術するのか』ってような顔だな」

「なぜまたゴキブリなんか」

「これを見れば火星のゴキブリがいかなものかが分かる」

わたされた書類を見るとそこには自分の知るゴキブリとはかけ離れた生命体の写真が写っていた。

「こいつを制圧するためにツノゼミを下地に地上の生物をベースにして人体改造を行う」

「ベースになる生物は選べたりするんですか?」

「まぁ、人によってはいくつか候補があったりするが」

「なら甲虫関係で」

「まぁ、一応頼んどいてみるよ」

「そういえば、今の俺の体はどういう状態なんですか?」

「ツノゼミの下地はすでに施してある状態だよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「どうせすぐに手術が始まると思うからゆっくり休んでおくといいよ」

そういっておっさんは部屋を出ていった。

「そういや、名前聞くの忘れてた」

まぁ、いいか。

次の手術が終わってからでも遅くはないだろう。

そう思い再び目を閉じ、意識を手放した。

次に意識を取り戻したのは5時間後だった。

覚醒までにかかった時間が結構早かったらしく担当医に驚かれた。

そしてすぐにジョーさんが見舞いに来てくれた。

「手術成功おめでとう」

「ありがとうございます」

「それにしても普通は丸1日ぐらい寝ていてもおかしくないのにな」

「それだけ馴染むのに時間がかからなかったていうことじゃないんですか?」

「そうだといいんですが」

「そういえば自分のベースはもう知ってるかい?」

「いえ」

「なら僕から伝えておこう、君のベースはコーカサスオオカブトだよ」

「そういえば、シルヴィーは?」

「すでに目覚めて体を動かしていたよ」

「そうですか、なら」

腕に刺さった点滴を俺はゆっくりと抜いた。

「君たちいくらなんでも元気良すぎない?」

「そうですか?」

「普通は点滴を自分で抜いたりしないよ」

「こんなことで寝てるやつはひ弱なだけですよ」

点滴を抜き終わると次は自分の性器に刺さっている管に手をかけた。

傷つけないようにゆっくりと抜いていく。

「彼女といい、君といい僕は何だい置物か何かかい?」

「羞恥如き出てを止めていたら人なんて救えないですよ」

自身の性器から管を抜き取り粗雑に投げ捨てる。

「俺の荷物ってどこにありますか?」

「君はどこに行くつもりだい?」

「ただのトレーニングですよ」

質問に回答しながら体を動かし脳を完全に覚ます。

「もし教えてくれなければ俺はこのまま病院の周りをダッシュすることになりますよ」

「笑えない冗談だね」

「ジョークじゃありませんよ。本気です」

「ベットの下にあるよ」

「ありがとうございます」

すぐにベットの下に右足を突っ込み持ち手に引っ掛けると足を引いた。

するとキャリーバックがこちらへとむかってくる。

それを足を使って鍵を開けふたを開ける。

そしてそこから服を拾い上げ動きやすいジャージに着替える。

「それでは走りに行ってきます」

病室にジョーを残して彼はかけていってしまった。

それとすれ違うような形で扉が開いた。

「いくらなんでも元気よすぎだよ」

彼は苦笑いを浮かべ扉を開けたものへと話しかける。

「そうだな、あいつの反射神経おかしすぎだよ」

扉に先にいたのは小町小吉だった。

「ちょっと安静にさせようと掴もうとしたけどまるで雲掴むような感じがしたよ」

「雲かい?」

「あぁ、僕の手をするりと避けていったよ」

そう、まさに雲のようであった。

誰の障害となることなく踊るように彼は職員たちを避けて進んでいった。

窓の外から職員がシオンとシルヴィーを必死に追いかけている姿が見える。

だが二人ともまるで職員をもてあそぶかのように紙一重で避けている。

「まったくいい人材がくわったよ。いろんな意味で」

ジョーはそういって苦笑いを浮かべながら病室を出ていった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あたえられる勝利の名

手術を受けて1年適合者たちは各々訓練で心身ともに鍛え火星へと行く準備を整えって行った。

そしてついに出発のを明日に控え俺たちはシスターの病室の前に立つ。

「どうしよシオン、シスターにあったらなんて言おう」

「だよな」

匿名でシスターをこの病棟に入院させたがそれから1年シスターとは会っていない。

定期的に孤児院の他の奴らが見舞いに来てたみたいだが俺たちはそんな時ですら顔を出していない。

「誰だか知らんが職務の邪魔だ。急用でないなら退きたまえ」

白衣の男性、おそらく医者だろう。

この部屋に用があるみたいだ。

「すみません」

俺とシルヴィは白衣の男を通すため道を開ける。

白衣の男が扉を開け切ると同時に中から声が聞こえてきた。

「先生、そこの2人中に入れてください」

それはシスターの声だった。

「わかりました」

白衣の男は俺の服の襟首をつかむと引きずるように病室へと放り込んだ。

シルヴィーは握っていた俺の手につられて中へと入って倒れこんだ。

慌てて俺はシルヴィーを抱きかかえ立ち上がった。

「話があります」

「シャルロットさん、お話しするのはいたって構いませんが診断が終わってからにしてください」

「すみません」

シスターはおとなしく寝床に就く。

「シスターがおとなしくゆうこと聞いてるぞ」

「すごい先生いったい何者?」

「あなたたちは私をなんだと思っているのですか」

「「第三者目線で言えば、頑固な婆」」

「あなたたち後で覚えておきなさい」

「シャルロットさん、篤くならないでください」

「すみません」

ちなみに家族としてみた場合は面倒見もいいし子供思いな良い人である。

白衣の男はてきぱきと診察を終わらせていく。

「診察はおわりましたが過度な運動は控えるように」

「なぁ、白衣のだんな」

「なんだね、シオン君」

「シスターの病状はどうなんだ?」

「そうだね、他の患者と比べても進行は遅いみたいだね」

「どれくらいが期限なんだ」

「どうにも彼女の体は病気に対しての抵抗がすごいですからね」

「「・・・・・・」」

俺もシルヴィーも息をのむ。

「まぁ、ざっとこのまま病院ぐらしならよゆうで5年は生きれるでしょうね」

「それでも5年なのか」

「いくら抵抗力が高いと言っても相手は未知のウイルスです」

医者はさらに話を続ける。

「一応守りを固めてはいるが長くはもたないということですよ」

「そうですか」

「だからシャルロットさんのためにも早く特効薬持ってきてくださいね」

白衣の医者はそう言うと出ていった。

「やはり、あなたたち私のために火星に行くのですか」

「シスターのためでもある」

「だけどほかの同じ病に侵されたこのためにもなるの」

「「だから俺(私)は火星に行く」」

「せめてものお守りを持って行ってください」

シスターは俺たち二人の手に紙切れがわたされる。

「その紙にあなたたちのセカンドネームを書いておきました」

「まさかお守りって」

「私たちのセカンドネーム?」

「いつまでも名前だけではやっていきにくいでしょう」

シスターは俺たち二人の手を握りしめる。

「絶対に帰ってきなさい。私が生きてる間に死ぬなんて親不孝は絶対許しません」

「もちろん」

「私たちが死んだら誰がシスターに薬を届けるのよ」

俺たちはシスターにもらった名前で約束を口にする。

「私、シオン・ペンドラゴンは必ずあなたのもとに生きて帰ってくると誓います」

「私、シルヴィー・ダルクは必ずあなたのもとに帰ってくると誓います」

「「あなたにもらった名前にかけて」」

「あなたたちに与えた名前は勝利をもたらした英雄(もの)の名前です必ず帰ってきなさい」

そういってシスターは俺たちの手を放す。

俺たちは振り返り病院を後にした。

 

 

 

出発の日が来た。

火星へと向かう隊員はみな列をなして並ぶ。

「さぁ、人類の進撃だ。首を洗って待ってろよ害虫ども」

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

つかの間の休息

長らくお待たせしましたかなり久しぶりの投稿です。
もしかしたらへたくそになってたりするかも知れませんがどうぞお読みください。


地球から旅立ちあれから数日39日で火星に到着すると聞いたが。

そんな緊迫感もなく今は膝丸やマルコス、アレックス達とキャッチボールをしている。

アレックスの投げたボールが俺のミットに吸い込まれていく。

受け止めたボールからミット越しにまで伝わるぐらいの威力が手につたわる。

「本当にこれだけは勝てる気がしないぜ」

ミットをはずし手を開いたり握ったりして感覚を治す。

「これだけとか言うなよ!」

ミットからボールを拾い上げアレックスめがけてかるく投げる。

「もういっぺん言ってみろテメェ!」

少し離れた場所から大きな声が聞こえた。

「あの金髪ってお前らの班のとこだろ?」

「ピリピリしてんなー」

「止めに入った方がよくない?」

どうやらマルコスと同じ班の人間らしい。

シーラの止めに入るっていう点には同感だ。

「じゃぁ、俺が止めてくる」

俺は走って金髪の男の前に出る。

それと同時に金髪の少女、つまりシルヴィーが黒髪の男のまえに立つ。

「おい、金髪ゴリラ。これ以上騒ぐならぶん殴るぞ」

「誰がゴリラだ!」

おや、さらに怒らせてしまっただろうか?

「そんな言い方じゃ、気持ちは伝わらないよシオン」

シルヴィーはそう言い黒髪の男に向き直る。

「そういうのはこういうんだよ」

「なんだお前もそこのゴリラと同じ親に捨てられたたちかとんだクズだなその親」

シルヴィーは無言で男の玉を蹴りぬく。

「アガァ!!?」

男は悶絶し倒れ伏す。

(シスター)を馬鹿なしたなお前」

憤怒がこもった眼で男を見下げる。

「おいゴリラ、お前もこうなりたくなかったらおとなしくしといたほうがいいぞ」

「お、おう」

金髪の男はシルヴィーの豹変ぶりに気おされ下がっていく。

「うわぁー、スゲー痛そう」

「こっちまで伝わってきそうだぜ」

思わず膝丸とアレックスは又の物を押さえる。

マルコスに関しては顔を真っ青にしてあとずさる。

「おら、なんか詫び入れろや!」

シルヴィーは男の脇腹に蹴りを決め吹き飛ばす。

「おい、止めなくていいのかよ?」

「膝丸、俺たちにとって親とは命の恩人だ」

「おう」

「故にそれを馬鹿にしたあいつの身など決して案じん」

「でもよ、あのままじゃ」

シルヴィーは男の頭を踏みにじる。

「その口は飾りか?」

シルヴィーの声は低く響く。

「大丈夫だ、任務に支障をきたすレベルの怪我はさせないだろうよ」

「なんか言ってみろよ」

シルヴィーの蹴りが男の腹へと吸い込まれようとした瞬間静止の声がかかる。

「そこらで止めておけ」

その声はアドルフ班長のものだった。

「いくらそいつがクズでもそれ以上は任務に支障が出るだろ」

「いいえ、これぐらいならあと3発は問題ないはずです」

「いいや、3発ぐらい我慢しろ」

男はその間に逃げようとする。

「わかりました」

シルヴィーは振り返り男をつかみ上げ拳を振るう。

男に吸い込まれていくはずだった拳は割り込んだ少年の顔にめり込んだ。

「イワン!?」

シルヴィーは思わず手を放しイワンを受け止める。

「何やってんの?あんな奴かばう必要はないのに」

「いや、仮にもシルヴィーさんはうちの班の人間ですしこれ以上手を汚す必要はないっすよ」

男はその隙に逃亡する。

「シーラ悪いが救急箱持ってきてくれ」

イワンの顔は鼻血で赤くなっていた。

シルヴィーはイワンを抱え背をかけれる通路のベンチまで移動する。

それに俺たちもついていく。

「全く、たいして間なんてなかっただろうによく潜り込めたな」

「待てよ、そこ褒めるとこかシオン!?」

「シオンも燈もイワンを茶化すな」

「待てよアレックス、俺は関係ないだろ!?」

「僕毎回あんなことしてるんであれぐらいなら楽勝ですよ」

「それなら受け身の摂り方とかも覚えるべきだな」

「精進します」

「だけど身をもって静止させるその勇気はかっこいいと思ったよ」

シーラのその言葉にイワンが顔を染める。

「わかりやすいなお前」

「ひ・・・他人が一目ぼれするところ初めて見た・・・」

「だってこんな優し子ロシアにいません・・・」

「でもなーイワン」

燈が言わんとしてることは予想がついた。

だから俺とシルヴィーは思わず目をそらしにやけてしまった。

「シーラに恋するなら険しい戦いになるぜぇ?」

そうだ何せ競争相手は・・・

「なんたってシーラの好きな人はあの艦長だからな」

シルヴィーはたまらず吹き出し、

マルコスとアレックスは驚いたような顔をし、

エヴァの静止は燈には届かず、

シーラは顔を染める。

「い・・今のオフレコです。書いたらもうその社終わりだから」

「遅いよ!!!」

「ていうか何で知ってんだよ」

「いや・・前にミッシェルさんが言ってた気が・・」

「部下のことを知ることはいい上司につながるていうことか」

「そういやあの人は何で知ってたんだろ・・」

「おいッしっかりしろマルコス!」

「べ・・・別に・・・?うちの方が男子力高いし」

その後、一度解散しおのおの艦内で到着までの時間を待つ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。