NARUTO~千手間取忍法帖~ (神爪 勇人)
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第1話 千手間取‼

昔、妖狐ありけり。

その狐、九つの尾あり。

その尾、一度振らば山崩れ津波立つ。

これに困じて人共、忍の輩を集めけり。

僅か一人の忍の者、生死をかけ、これを封印せしめるが、その者死にけり。

その忍の者、名を、四代目火影と申す。

 

◆◆◆

 

「・・・・・・こんな所か」

 

地に転がる傀儡人形を軽く蹴り、一息吐く。

俺——————千手(せんじゅ) 間取(まどり)は、この木ノ葉隠れの里に住む忍者候補生。

つまりは、忍者学校(アカデミー)の生徒である。

普通は学校で授業を受けている所だが、俺にとっては意味がない。

あそこは退屈過ぎる。

此処で修行に明け暮れている方が、有意義というモノだろう。

 

「まったく、またこんな所で学校をサボっておるのか」

 

年を感じさせる声に振り返る。

そこにいたのは、小柄な老人だった。

 

「ヒル爺・・・・・・」

 

ヒル爺こと、猿飛ヒルゼン。

またの名を、三代目火影。

かつては教授(プロフェッサー)と呼ばれた、今の木ノ葉で最強の忍者。

 

「どうしたよ三代目火影様、わざわざこんな所僻地に?」

「お前を連れ戻しに来たに決まっとるじゃろう。イルカの奴も頭を抱えておる、あまり困らせてやるな」

「イルカ先生の頼みか。火影ってのは意外と暇なのか?」

「ほっとけ」

 

現在、里を統治しているのが、この三代目火影だ。

基本的には火影屋敷で職務をこなしているのだが、時折息抜き(サボりとも言うが)であっちこっちに顔を出している。

そんなことをする暇があるのなら、修行の一つでも付けて欲しいものだが。

 

「それにこの場所は立ち入り禁止じゃと何度も言っとるじゃろう」

「良いだろ別に、どうせ誰も入ってこねーし、誰かが困る訳でもねぇだろ?」

「そういう問題じゃないわい」

 

俺が修行に使っているこの場所。

名を、赤ヶ原。

赤ヶ原は、かつての中忍試験の会場となっていた、トラップだらけの危険な場所。

だから立ち入り禁止になっているのだが、俺には関係ない。

 

「危険だからこそ、修行に丁度良いんだよな」

「中忍の試験場を修行に使うのはお前くらいじゃろうな・・・・・・」

 

三代目は頭痛がするように頭を押さえる。

かつて中忍試験が行われたトラップだらけの場所で修行する。

この場所を苦も無く行き来出来るという事は、この場所を突破できるレベルであるということ。

それはつまり、並の下忍をとうに超えているという意味でもある。

 

「流石は二代目様の直系というべきか・・・・・・性格は初代様に似てるがの」

「会った事も無い先祖の話を振られてもな」

 

俺はどうやら二代目火影の子孫らしい。

目つきの悪さと白髪が二代目様そっくりとは三代目の言だ。

ただ千手家の血を色濃く現わしている所は、どちらかというと初代に似ているらしい。

まぁ初代と二代目は兄弟らしいから、元が同じ血を引いている以上、そういうこともあるのだろう。

 

「間取よ、お主はもう少ない千手の血を引く生き残りじゃ。少しは初代様や二代目様の顔に泥を塗らず、真面目に生きる事は出来んのか?」

「真面目ってのが大人しく退屈な授業を聞く事なら無理だな、時間の無駄だ」

「・・・・・・」

「暇なんだよ、実際。座学だって学年首位、実技に至っては中忍の先生相手でも、最近じゃ簡単に勝っちまう。同世代で俺とやり合える奴は、良いとこサスケとシノ、後は一つ上の日向の分家くらいだ。それでもあくまで同世代の中では、だ」

 

本気を出すまでもなく勝ってしまう。

 

「退屈なのよなぁ、マジで・・・・・・」

「・・・・・・やれやれじゃな」

 

嘆息する俺に対して嘆息する三代目。

ホント、さっさと忍者になりたいぜ。

 

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第2話 うずまきナルト‼

実際の所、なんで『千手一族』って『うちは一族』惨殺事件みたいに大人数が亡くなった事件があった訳でもないのに、現代で出てこないんだ?
一応血を引いてる綱手くらいしかいなくないか?


三代目とちょっとばかり実戦訓練を行ってから、俺は三代目に連れられてアカデミーに戻ることになった。

かなり渋々だがな。

だって戻っても暇なんだもの。

そしてその道中に、騒がしい声が聞こえてきた。

 

「バーカッ‼ うっせんだってばよ‼」

 

太陽の様な金髪に、髭の様な模様が頬にある、額にゴーグルを付けた俺と同い年の少年。

名を、うずまきナルト。

俺と同じアカデミーの生徒であり、そしてこの木ノ葉で有名な男。

 

「アカデミー一の落ちこぼれか・・・・・・」

 

俺と同期のアカデミー生で、座学・実技共に最底辺な落ちこぼれ。

それが、あのうずまきナルトである。

チラリと見ると、この里の名所である火影岩で歴代の火影の顔が掘られた絶壁で、ナルトが騒いでいた。

顔岩にペンキで落書している。

 

「ナルトも相変わらずじゃのう・・・・・・」

 

三代目が呆れたように溜息を吐く。

毎日毎日、里を騒がせる悪戯ばかりを行う問題児だからな。

サボりまくりの二代目火影の子孫の俺が言うのもなんだが。

ナルトの所業にキレた里の忍者達が逃げるナルトを追いかけ回しているが、逃げ足は中々に早く、中忍でもとらえきれない。

 

「あ、イルカ先生」

 

なんとなしに逃げるナルトを眺めながらアカデミーに向かっていると、俺らの担任であるイルカ先生が凄まじい怒りの形相で駆けて行くのが見えた。

流石は中忍でありながらとAランク任務も熟す、上忍級の忍。

ナルトの性格もよく把握している為か、動きを先回りして追い込む。

基礎がしっかりしているからか、瞬身の術もすさまじいスピードだ。

イルカ先生が怒気による引き攣った笑顔でナルトに近づいた。

ナルトが恐怖による引き攣った笑みで後退る。

・・・・・・イルカ先生の笑顔の圧力が凄い。

そして盛大な怒声と共に放たれた拳骨が、ナルトの脳天に突き刺さり、絶叫が里中に轟いた。

 

「ホント懲りねぇな、アイツは・・・・・・」

「お主も似たようなもんじゃろうが・・・・・・」

 

嘆息する三代目。

何故俺がナルトと同じ扱いなのか。

解せぬ。

 

◆◆◆

 

その後、俺は三代目に連れられてアカデミーの教室へと戻った。

そして変化の術の復習テストをやらされたりしたが、何も問題はない。

今更あんな基本忍術で躓くはずもない。

それは他のアカデミー生も同様だ。

ナルト?

アイツはボンッキュッボンッなねーちゃんに変化してイルカ先生にシバかれたよ。

今頃は火影岩の悪戯の後始末に奔走しているだろう。

 

「さて、と」

 

俺は放課後、相も変わらず赤ヶ原で修行に励んでいた。

明日はアカデミーの卒業試験。

アカデミーで学ぶ程度の忍術で出てくる卒業試験などたかが知れているから、今更復習も何もない。

というか、俺は既に卒業試験には受かっているので関係がない。

卒業試験に受かっても今期中はアカデミーに居なくてはならないのが微妙に面倒である。

てか、試験で出てくるのは分身の術、変化の術、瞬身の術とか、そんな所だ。

合格したらさっさと卒業させてくれればいいのに、こんな基本忍術で躓いて卒業出来ない奴なんぞ・・・・・・あ、一人いたわ。

 

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第3話 アカデミー卒業

アカデミーの卒業がよく分からんから勝手に考えてみた。
兵の書等を参照。


 

卒業試験は分身の術だった。

特に苦労する事無く、生徒達はアカデミーを卒業していく。

・・・・・・唯一人を除いて。

言うまでもなくナルトだ。

聞けばみんな最低でも三人には分身で来ているのに、あいつはたったの一人、しかもフニャフニャの足手まといを増やしただけ。

流石にこれでは合格は出来ないとの事で、不合格で留年する事になる。

アカデミーの卒業試験は年に三回行われ、その三回中一度でも合格すれば卒業出来る。

戦時下かどうかにもよるが、今では基本的に5歳から入学出来、六年間のカリキュラムをこなせば卒業試験を受けられる。

このカリキュラムも優秀なら短縮する事も以前は出来ていたらしいが、そこそこ平和になった現代では、育成カリキュラムをみっちりと行っている。

基礎段階で器を作り、演習段階でスキルを注ぎ、応用段階で熟成させる。

この三段階の教育を六年間行うわけだ。

そんな感じでじっくりやっているからか、卒業試験課題は基本忍術から選出される上に合格人数の制限も無い為、合格ラインはクソ甘かったりする。

もっとも、そんなクソ甘卒業試験ですら合格出来なかった奴がいる訳だが。

 

「あ、でも次の試験(・・・・)で落ちる奴は多いかもな」

 

これは調べでもしない限り分からず、アカデミーでは教えてくれない事なのだが、アカデミーを卒業したからといって、直ぐに忍者に成れるわけではない。

忍者の最下級の階級である『下忍』になるは、アカデミーを卒業した後に『下忍認定試験』を受けて合格しなければならない。

つまり、二度の試験を合格しなければ忍者にはなれないという事だ。

それが出来なければアカデミーに強制送還され、もう一年留年する事になる。

・・・・・・それを嫌って、送還された奴は忍者を諦めることもよくある。

恥晒しみたいな感じになるからな。

 

「俺には関係ない話だが」

 

上忍が相手でも負ける気は無い。

次の試験も俺が落ちる事はないだろう。

倒せば良いだけだし、下忍未満に倒されれば文句も言えまい。

 

「修行でもするか」

 

いつもの様に、やることは何も変わらない。

・・・・・・修行する場所もな。

そろそろ赤ヶ原から違う場所に移りたいな。

死の森とか修行のし甲斐がありそうなんだが、流石に厳重に封鎖されてて簡単には入り込めない。

何処かいい場所はないものか。

 

◆◆◆

 

 

翌日に忍者登録書の証明写真を撮り、書類を提出したその翌日。

俺はアカデミーに来ていた。

俺だけではなく、何人ものアカデミーを卒業した元生徒達がこの教室に集っている。

というのも、忍者として活動するにあたり今後の為の説明会の集まりだ。

まぁ、ホントは此処から忍者になる為のふるい落としがあったりするのだが。

そんな事を知っている奴は、此処には多分俺以外にはいない。

いったい何人が下忍に成れるのやら。

 

「アレ? ナルトォ! 何でお前が此処に居んだよ!? 今日は合格者だけの説明会だぜ」

「お前さ、お前さ。この額当てが目に入んねーのかよ」

 

そして意外や意外、なんとナルトがここにいる。

昨日、いつものように修行していたらフラリとやって来たヒルゼンの爺から色々聞いたのだ。

卒業試験の夜にナルトが禁術が書かれた『封印の書』を中忍のミズキに唆されて持ち出したとか、そして分身の術の上位版とも言える影分身の術を身に付けて補欠合格したとかなんとか。

いや、何やってんの?ってのが正直な感想だ。

初代火影・・・つまり俺の曽祖父さんの兄が記した、危険な術が書かれた封印の書。

いくら唆されたとはいえ、そんなモノをよく盗み出そうと思ったものだ。

初代火影の禁術の書・・・・・・そんなモノを覚えようなどと・・・・・・まったく、何故そんな面白そうな事に俺を誘わないのか。

そう言ったらヒル爺に呆れられつつ殴られた。

どうやらその封印の書とやらは、初代火影が記していると言われているが、その大半は弟である二代目火影・・・つまりは俺の曽祖父さんが開発したものが殆んどなのだとか。

多重影分身の術も曽祖父さんが開発した術らしい。

なら何で初代火影の封印の書とか呼ばれてるのか、詳しい事は知らん。

ま、何か色々あるんだろう、たぶん。

 

「今日から君達は、めでたく一人前の忍者になった訳だが・・・しかし、まだまだ新米の下忍。本当に大変なのはこれからだ!」

 

いつの間にか時間になっていたようで、イルカ先生の説明会が始まっていた。

アカデミーを卒業し忍者になった俺達は、これからは下忍として任務が与えられて働くことになる。

今後は3人1組・・・スリーマンセルの班で行動することになる。

そして各班ごとに1人ずつ担当の上忍の先生が付く。

その先生の指導の下、任務をこなしていくのだ。

・・・・・・という説明がされた。

 

「班は力のバランスが均等に成る様、コッチで決めた」

 

イルカ先生のその言葉に、みんなが「「「えー!?」」」と不満の声を上げる。

なるべく仲いい奴と組みたいよな。

気持ちは分かるぜ。

 

「よーし、それじゃあ1班から順に発表する!」

 

さて、俺はいったい誰と何班になるか・・・・・・。



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第4話 班結成?

イルカ先生が第一班から順に名前を上げるが、第一班に俺の名は無かった。

強いて言えばトビオという、さっきナルトの背を押してサスケと『ズキュゥゥゥゥン‼』な事を仕出かした奴がいたくらいか。

 

「次、第二班はアミ、カスミ、フキ」

 

女子三人の名前が挙がる。

誰だと思ったが、アレだ。

確かサクラを昔虐めてた奴等か。

いのに締められてからは、タフになったサクラと陰湿な舌戦を繰り広げているらしいが、女子の喧嘩はネチっこくていかんな。

忍びなら拳でケリを付ければいいだろうに。

 

「次、第四班」

 

あれ? 第三班はどうした?

何か急に飛んだんだが。

あー・・・確か中忍に昇格しておらず、班が解散してないなら次の代(俺等)の班決めには割り振られないのか。

確か第三班は一つ上の先輩らだったか。

日向の分家の天才がそこの所属だったはずだ。

そして第五班、第六班と続くが、俺の名前は呼ばれない。

 

「じゃ次、第七班。春野サクラ・・・うずまきナルト!」

「ガクっ・・・・・・」

「やったー‼」

「それと・・・・・・うちはサスケ」

「しゃーんなろー‼」

「ガクっ!」

 

イルカ先生の発表に一喜一憂するナルトとサクラ。

何やってんだこいつ等・・・・・・。

サスケは誰と組むかはあんま興味ないのか我関せずを貫いてるが。

ナルトは班分けに異議有りと叫ぶが、イルカは成績ドべのナルトが次席のサスケと組むのは自然と言う。

・・・・・・そこは首席の俺じゃねぇのかよ。

 

「次は第八班。油目シノ、犬塚キバ、日向ヒナタ」

 

・・・・・・今度は何だ、感知系に偏った班編成なのか?

性格とかバラバラ・・・・・・いや、むしろそれがバランス良いのか。

寡黙で冷静沈着なシノ、煩いが明るく前向きでリーダーシップ溢れるキバ、引っ込み思案だが協調性があり割と誰とでも合わせられるヒナタ。

・・・・・・うん、こうしてみるとバランスが良いのかもしれん。

 

「次は第十班。奈良シカマル、山中いの、秋道チョウジ」

 

呼ばれたのは木ノ葉名物三人一組の『猪鹿蝶』。

ま、これは必然な組み合わせだろう。

同世代に山中家、奈良家、秋道家がいれば組まされるくらいには。

 

「——————以上で、班の発表は終了だ」

 

・・・・・・・・・・・・うん?

 

「じゃ、みんな。午後から上忍の先生達を紹介するから、それまで解散!」

「・・・・・・あのー、イルカ先生?」

 

思わず挙手する俺。

 

「何だ、間取?」

「いや、何だじゃなくて・・・・・・俺、名前呼ばれてないんですけど」

 

俺の発言で静寂に包まれる教室。

そしてざわつく一同。

 

「何だ何だ間取ー、お前ってば留年かぁ? 卒業試験実は落ちてたんじゃねーの?」

「お前と一緒にすんな補欠合格」

 

茶化すナルトに現実を突きつける。

俺は首席卒業で、しかも最初の三回ある試験の一回目で合格が決まったのだ。

今更試験の不備などないし、仮にあったとしても事前に通告なりなんなりがあるだろう。

仮になかったとしてもそれはアカデミー側の過失であって、俺に責任なんぞない。

故にどういう事なのかとイルカ先生に問うたが、イルカ先生は「すまんすまん、忘れてた」と謝罪した。

いや、忘れんなよ。

 

「間取、お前はこのまま火影屋敷に向かってくれ」

「火影屋敷に?」

「ああ。そこでお前に話があるそうだ」

 

.




~オマケ~

サラダ「ねぇ、パパとママのファーストキスって何味だった?」
サクラ「ちょ、何よ急に?」
サラダ「いや、ちょっと気になって・・・・・・で、何味だったの? やっぱりレモン味?」
サクラ「ま、まぁ、そんなところね!」
サラダ「パパもそうだったの?」
サスケ「・・・・・・」
サラダ「パパ?」
サクラ「サスケ君? どうしt――――――あ(察し」
サスケ「味噌味・・・・・・だったかな」
サラダ「味噌?」
サクラ(ナルト、あの日の朝ごはんカップ麺か・・・・・・)

~その頃~

ヒマワリ「お父さんの初めてのキスって何味だったの?」
ナルト「・・・・・・おかか味だったってばよ」
ボルト「どういうことだってばさ?」
ヒナタ(サスケ君そういえば、おかか味おにぎりが好物だったかしら)

思いついただけ


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