仮面ライダークウガ-青空と笑顔の戦士再び- (芹沢春輝)
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青空の行方
青空の行方①


俺が世界を旅するようになったのは何故かって?それは色んなたくさんの人たちの笑顔をみたいから…かな。

 

と、その男は言い歩き出す。青く澄み渡った空を慈しむように眺めながら。

 

                                         

僕は…僕も貴方のような青空のような人になる、見上げた青空に誓うのだった━━━━━━━━。

 

                                                                   

西暦2020年、日本国内にて都市伝説が民間に広まる。内容は「怪物と怪物が争い暴れまわる」「怪物が人間の言葉を話す」「怪物に襲われそうになったところを違う怪物が助けてくれた」など、    「即ち、どれもこれも訳の分からん話だって事ね。」                    僕はボソッと呟きながら、仕事先に向かっていた。スマホでニュースを見ながら通勤するのが日課であるためつい独り言が出てしまうことがある。   

「ん?」                   ニュースに気になる記事が有ったのでつい立ち止まってしまった。内容は「人型の怪物現る?!」って、人なのか怪物なのかどっちだよ。

その時スマホに着信が入った。        

「もしもし、おはようさん、一条君。急な話なんだが例の遺跡にて妙なモノが発見されてね、悪いんだが直接現場に向かってくれんかね。頼んだよ。」  電話の主は僕の上司である夏目博士である、ちなみに博士は考古学者で僕こと一条カオルはそのアシスタントである。  

「わかりました、直ちに向かいます。博士はもう現場に?」                   

「私は別の遺跡の件で手が放せなくてね、すまないが…」

ということらしいので、ひとりで現場に直行した…正直別の遺跡の件も気になるが、致し方ない。     

遺跡に到着し、発見されたという「モノ」をこの目に拝借しようと採掘の担当者を探していると、近くで悲鳴があがった。                                   

「かっ怪物だ!!怪物が出た!!うわっやめ!?うっ…!?」

血飛沫が辺りを覆う。怪物が人間をやったのだ。 

「都市伝説なんかじゃなかったのか!?」                    

…クウガ                              

怪物が何かをしゃべった気がした、と同時に怪物が目を向けた先に逃げ遅れた女性がいた。女性は何かを抱えている。               

「クウガ…クウガ!!!」              

怪物はそう叫び女性に襲いかかる。       

と、同時に僕も女性のところに走る。      

「させるかっ!!」              

なんとか女性をかばい、怪物の攻撃をかわした僕は、何となく気づいたことがあった。      

「これが狙いか…?」

女性が手にしていたモノ。おそらく遺跡で発見されたという例のモノ。何となくベルトのような、しかし石のような素材の謎のモノ。怪物がそれを見つめクウガと叫んでいたことからするとおそらく何かあるに違いない。 女性からそれを預かると、怪物は僕を執拗に襲いかかる。            

「ったくどうしろってんだッッ!!?」     

僕がそう叫んだ矢先、              

「それは手放すべきだ、君は使うべきじゃない!」

僕が手にしているモノと同じ形をしたモノを腰に巻いている男が言い放つ。            

「あなたは?!いったい?!」         

次の瞬間、謎の男はこう叫ぶ。         

「変身ッッ!」                

これが彼との出会いだった。

 

目の前で繰り広げられる怪物同士の争いに気が動転していたのか、僕こと一条カオルは逃げることも出来ないでいた、というよりも何故か解らないがその戦いを見ていなければ、見届けなければいけない気がしたのだ。

「何してるんだっ?!早くそのレイセキを置いて逃げて!」

レイセキ?霊石?このベルトみたいなこれのことか?僕は手に持っている遺跡から発見されたであろう霊石?を見る。

「早く逃げて!」

その声にようやく我に戻った僕は、「それを持って」走り出す。

怪物同士の争いに巻き込まれるのが怖くて嫌で?違う。この霊石を守らなければ。

そういう意志に至ったからだ。何故かはわからない、だけどひたすら走った。怪物同士から離れるように。

すると爆発音が響いた。先ほど怪物同士が戦っていた方からだ。振り返ると煙が上がっていた・・・ 「あの人大丈夫かな?」

人?確かに人だ、姿が変わるまでは。三十過ぎたくらいの男の人だった。 人なのか。

 

「クウガ」

 

声がした方を見ると先程の怪物とは違う姿をした怪物がいた。

「ゲゲルカイシ!」 と同時に僕目掛けて突進してくる。

 

すんでのところで横に飛び突進してくる怪物をかわす…がその時手にしていた霊石を落としてしまう。

 

「しまっ!!ってあれ、うわぁ!?」 霊石にヒビが入った。 ヤバい、ヤっちまった…と途方に暮れてるところじゃない僕がとった行動は、霊石を拾わなければならないわけで、逃げるよりも優先して霊石のもとに走る。 怪物はその僕めがけて突進してくる。 「クソっ!」 霊石に手が届くと同時に怪物の突進をくらい、吹っ飛ばされ大木に体を打つ。

あっこれ死んだわ。

最後にしっかり怪物の姿を見ておくかと消えゆく意識の中で気づいたことがあった。霊石が腰に巻かれている。僕の腰に。突進されたときに偶然腰にはまったのか?こんな事もあるんだな・・・意識が視界が消えていく、そして同時に腰の霊石も体の中に消えていく。

 

えっ・・・?

 

同時に腹部に激痛が走る。その激痛で意識が戻っていく。

「痛てぇっっっ!!なんだよっ!?これ・・・」  

怪物が突進してくる。こんな時に、やめてくれよ。 あれ体が動く?意識も戻っていく? 次の瞬間、体に消えたはずの霊石が腰に現れる。石ではなく機械的なベルトになって。

あの謎の男と同じ様に。

 

 

 

 



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青空の行方②

痛みが消えていく。同時に現れる腰の機械的なベルト。

何なんだこれは?自分の体に何が?

 

考えている暇もなく怪物が襲ってくる。

気付いたことがあるとすれば、怪物の頭には鋭い角があること、あれが刺さるとまずい、さっき突進されたときに刺さらなかったのは奇跡的だ…その角が再び襲ってくる。体が軽い気がする。

すぐに反応し避けることができた。

「逃げるか…戦うか…」

戦う…?逃げることだけ考えていたはずなのに?

怪物は急激に接近し肉弾戦を仕掛け始めた。

ここで幸いしたのは、学生の頃武術をやっていたことで、受け流す事よりもかわすことに専念出来たためダメージを受けずに応戦することができた…何故最初よりも身体が軽いんだろうか…?

少しずつ怪物との距離をとり、戦うか、逃げるか自問自答をしている僕が選んだ答えは…

「伏せて!!」 「答え」を行動に移そうとしたとき、背後から気配を感じ横に飛ぶようにして落ち葉の集る地面に突っ伏した、と、その時 。 「ウォリャーッ!!!」 謎の男が変貌した赤色の体をした怪物が空中で一回転し、火を纏った右足で角が有る怪物に跳び蹴りを喰らわす。

そして、角が有る怪物の体に文字のような物が浮かび爆発。

案の定近くにいた僕は吹っ飛ばされる。

今日は吹っ飛ばされてばかりだ。

ここで僕の意識は途絶え、不思議な夢?を見ることになるのだった…

 

赤、青、緑、紫、そしてこの四色に金が混ざり、そこに黒が混ざる。そして最後は黒だけになり唯一目だけが赤いままの姿に…走馬燈のように駆け巡るあの男が変貌した怪物の姿…それが戦う姿は正に怪物そのものだ。その戦う姿を僕はただひたすら見ていた。急に場面が変わり、「一条さん、俺なります。黒に…黒になります。大丈夫!俺は大丈夫ですから。」           

先程の謎の男が笑顔でそう誰かと話している。一条?今一条さんと言ったか?僕は一条だ、だけど彼を知らない。僕は彼を知らない。ここで気付いた、これは夢だと。

「大丈夫、俺はクウガだから!」        

クウガ、謎の男が確かに言った。          

「五代、頼んだぞ…。」             

声の主を見るとスーツ姿の男の人が分厚い上着を羽織り謎の男を五代と呼んでいる。        

周りを見渡すと雪景色でしかも吹雪の中に二人はいた「だから見てて下さい、俺の最後の変身。」     そして五代と呼ばれた男は姿を変貌させる。   

ただし赤ではなく黒に、唯一目だけが赤いままで。そこで夢?のシーンは移り変わり、一条さんと呼ばれた男が、街の中で一人つぶやくシーンになる。    

「五代、みんなおまえの帰りを待ってるぞ。」

青空を見上げ、そうつぶやく男の顔は少し悲しそうだった。

「一条さん!」                  

急に誰かに呼ばれた気がして、振り向くと、そこには誰もいない。                     「一条さん!」                

再び声が聞こえたかと想うと青空に吸い込まれるように僕は何かに引っ張られ?目を覚ます。

「一条君っ!」

「カオルっ!しっかりしてっ!」         

ふと目を開けるとそこは知らない天井で、ベッドに横たわっているのであろうか、僕は。声の主は夏目博士とその愛娘で僕の幼なじみの桜子だった。  

「おはよう…ここどこ?」

僕はとりあえず現状を聞かねばならない。    

「病院!カオル、あんた怪物に襲われてそれでっ」

桜子が取り乱しながらも説明してくれたおかげで記憶が鮮明になりつつあった。          

「一条君、すまないね私のせいで…」       

夏目博士は僕に謝りながら泣いていた。     

「大丈夫ですよ博士、僕はたぶん…」       

クウガだから、とお腹をさすりながら僕は答えなかった。                   

そうだ…僕にはあの謎の男と同じモノが体内にある。

僕は…

「僕、行かなきゃ。」             

体を起こそうとする僕を桜子が取り押さえる。  

「何考えてんのっ!?あんた怪物に胸のあたりを刺されて重傷なんだよっ?!動いちゃだめ!」   

えっ何だって…刺された?胸を?見てみると確かに包帯が巻かれていた。しかし痛みが全くない。    

「一条君、お願いだから安静にしててね。命を取り留めただけでも奇跡的なんだから。」      

「母さんの言う通りよ、動くな!」       

余談だけどお気づきの方もいたかもしれないが夏目博士は綺麗な女性で母親である。        

「わかった、解りました…でもひとつきいていいですか博士?僕をこの病院に連れてきてくれた、運んでくれた30代位の男性はどこに?」        

「気を失ってたはずなのになんであの男の人を?」

やはりか。やはりあの謎の男が僕を助けてくれたんだ。「どうしても彼に聞きたい話があるんです。」

僕は夏目親子を見据え、そしてあの時の自分の出した…

「答え」を心に誓うのだった、そう、きっとあの人も待っている…

 



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青空の行方③

「いなくなった?いったいどこに?」

 

               

謎の男は瀕死の僕を担いで夏目博士の前に現れ、僕を引き渡し忽然と姿を消したという事だった。

「博士、その男性は五代って名乗りませんでしたか?」

博士は首を横に振った。            

「いいえ、名乗りこそしなかったけど一条君に伝言が有るみたいで、ねえ桜子?」     

「うん、えっとね、(君の答えは正しい)だったかな。」                    

僕は少し怖くなった、彼は…おそらく五代というあの男は…やはり普通ではない、いや違う、まるで僕を知っているかのような、僕が知らない僕を知っているような、よく解らないが、とにかく普通ではない、そうだ普通ではない。彼は怪物になった、(変身)した。僕も同じ様になれるのか?なるのか?僕はどうしたい?

「君の答えは正しい…?」           

彼は僕の答えを知っている、

そうか。

そういうことか…

僕が怖いのは彼と同じだからじゃない。知らない自分が怖いからだ。彼と同じ姿に(なれるかもしれない)自分が怖いんだ。            

 

「カオル、大丈夫?」             

 

桜子が僕を怪訝な顔で見つめているのにようやく気付いた頃には夏目博士はいなくなり、桜子だけが病室に残っていた。               

「大丈夫、僕は…」

と言いながら体に巻かれている包帯をはずし始める僕。「って、あんた何やってんの?!えっ…?」

当然、桜子に止められるが、僕は気にせず包帯を外す。 確信があった、間違いなく包帯なんて必要ない事を。 「そういうこと。桜子、僕は行かなきゃならないんだ、傷はもう大丈夫、博士はどこに?」      

 

桜子は驚愕している。             

 

「そう言う事って…!?あんた傷が無くなって…?!どういうこと?!」

「それを確かめるために行かなきゃ、彼に会いに。五代っていうあの男性に。」

「五代…?母さんは電話で何か研究所に呼び出されて急ぎ足で行ったわ、何かまた怪物が出たらしくて、例の遺跡の辺りがどうとか話してたけど…でも母さんもその五代ってひとの場所は解らないと想うよ?」

研究所?遺跡と怪物は何らかの関係が有るのは間違ないいが、夏目博士が研究所に急いだという事は遺跡から何か見つかったという事か…?     

「桜子、悪いけど病院の手続きお願いできる?僕も急がなきゃ、行かなきゃならない。」

「手続きは良いけど本当に体大丈夫なの?」

桜子は心配そのものの顔でつぶやく。

「大丈夫、僕は…そう僕はクウガだから!たぶん大丈夫!じゃ、あとよろしく!」

と言いながらダッシュで病室もとい病院を後にする。

「クウガって?あっ、ちょっとカオル!!待ってよ?!」   

桜子の声は青い空と病室の窓から入る風にかき消されるのだった…  

 

 

 

 

-遺跡付近-

 

 

 

 

曇り空の中、俺は遺跡に向かっていた。久しぶりに感じたあの嫌な感覚。

もう10年ほどになるのか、戦いから離れ旅に出てから。

 

あの人は元気だろうか、みんなも元気でやっているんだろうか。そうだったら嬉しいし少し会いたい気もする。

 

しかし、今はまだダメだ。

間違いようのないこの感覚は…この意識は…そして忘れようとしていた戦いは今再び始まろうとしている。

そもそも何故奴らがまた現れたのか?

10年前に倒したはずのあの角の未確認生物、通称グロンギ。

間違い無く同じ姿をしていた。     

 

「あの子はそろそろ目を覚ますかな。」     

 

何かのイメージというか、声…?何かに引き寄せられるように俺はあの遺跡に気付けばいて、すぐそこでグロンギと戦った。その後逃がしてしまったグロンギを追い何体かのグロンギと交戦しそれを色んな人に見られたが、

新聞の記事やニュースでは怪物としか書かれなかったが

 

…おかしかった、

 

あれから10年はたったが俺やグロンギを「怪物」と取り上げたマスコミや巷。何故「未確認」「未確認生命体」「未確認4号」と呼ばないのか…?

ここは日本で間違いないハズだが、

たった10年で忘れ去られる物だろうか?           

「やっぱり何か違う、何かがおかしいんだよなぁ…」                       

 

曇り空を見上げ、あの人の笑顔をポケットにしまい、                      

「一条さん、いったい俺は今どこにいるんでしょう?」                    

やはり曇り空は答えてくれなかった。                              

それとあの遺跡で出会ったあの子、霊石を体に宿した、宿してしまった彼の事が気になる。                           

角のグロンギに襲われて重傷を負いながらも生きていた。俺と同じ霊石を体に宿したおかげで。                          

あの霊石は人をグロンギと同じように変異させ、身体の運動能力の超上昇、回復、修復の促進、そして人間を超越した視覚、聴覚、嗅覚を与える。   

古代の生物兵器みたいなもの。                                

意識を失いながら譫言のようにつぶやいていた彼の「クウ…ガ」「一条さん」そして「五代」このワードを俺が聞き逃すはずがなかった。

その彼を背負い、俺が向かったのは彼のポケットに入っていた研究所かなんかの住所が記されている(彼の名刺か?)そこに向かった。

そしてあの夏目博士という人にたどり着き病院を手配してもらいその最中事情を説明(夏目博士の娘さん)し彼への伝言を頼んだ。  

 

「君の答えは正しい」             

 

ただそれだけ言い残し、俺は今遺跡に再び戻っている至大である。                                   

彼は霊石を宿しながら、おそらく角のグロンギとそして自分と葛藤したのだろう。          

不幸中の幸いで霊石を宿したおかげで角で刺されはしたが死ななかった。             

自分と葛藤、すなわち自分でどうするか悩んでいたはず

だ。戦うか、逃げるか。そして恐れたはずだ。俺の変身をみた後、同じものを宿した自分に。                         

彼は逃げることを選んだ。俺はそう思う。迷いのせいでベルトが現れはしたが…だが逃げようとしたはずだ。    

何故か?それは、彼が彼のままでいたからだ。  

俺は過去に霊石を身に宿し強くなりたいと願ったときに体が変異した、さらに強くなろうと心に誓うと色が変わり始めた。              

つまり彼は、「人間でいたい」と思い至ったため体が変異しなかった。戦わないことを選んだ。   

俺からしてみると、正しい答えでしかならない。 

戦いのつらさ、人でなくなるあの感覚、失いかけた心。どれも酷いものだから。          

だから、だからこそ俺が                                    

 

「俺が戦う、ですか?クウガ…いや…五代さん。」                                            

後ろを振り向くと彼が立っていた。                   

           

「僕、戦いたくないです、怖いし…だけど…考えて決めました、戦います、僕もあなたと同じだから。また奴らは現れますきっと。だから」                             

「違うよ、君はクウガじゃない、俺とは違う。君はその力を使っちゃだめなんだよ。」                           

「どういう…ことです?」                         

 

━━━━━━━━━曇り空がそんな2人を見下ろしていた。                                     

 



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青空の行方④

遺跡に五代さんを追う少し前のこと、

病院を後にした僕が向かう先は、夏目博士が向かった考古学関係の研究所だ。                                   

「おっ、えっ、いっ一条君っっ?!」                             

「はい、一条です。ニコッ」                                   

研究所に入ってすぐ目当ての博士を発見した。                         

「君怪我は!?具合は大丈夫なの?そんなはず無いよね?まさか」                                        

おもむろににスマホで電話を駆け出す夏目博士。 

 

「もしもし!?桜子!?あんた今病院?今目の前に一条君がいてねっ、そのまさかお化けとかじゃないよね?」                                            

「あの博士…」                

 

「なんかつぶやいてるの。」          

 

「博士、話聞いてもらえません?」       

 

「えっ、走って出て行った?そんなあの怪我でそんなまさか…ええ、わかった、はいはい。」                           

電話を切った博士は僕を見るなり手を合わせ     

 

「南無阿弥陀物」            

 

「いや、今の桜子との電話からして間違い無く僕生きてるでしょ?!」              

 

「そのツッコミは間違いなく一条君だね。うんうん。でもホントに体大丈夫?傷と出血量からして君は普通なら重体か最悪死んでる。」                               

普通なら…

 

その言葉が少し心に刺さる感じがして少し後ろめたい気持ちになるが、普通ではないのは確かに確かなのだ。               

「はい、病院からここまで走ってきましたから。」

 

身体に異常が無いか確認も兼ねて約10キロほど走って辿り着いた。

異常はなかった、いや本当の事を言うとあった。

正直走るのはあまり得意ではないし長距離をノンストップでけっこうなスピードで走るのは初めてだったにも関わらずほとんど息切れしなかった。

明らかに身体が少し強くなっている。

異常なほど正常以上なのだ。            

 

「彼の言っていたとおりだよ…いったい何者なのだろうね…彼。」                

 

彼。おそらく五代さんだ。           

 

「彼…それで博士、僕はこの通りピンピンしてるわけですが」                    

 

「うん、超状現象だね、一条君。君はお化けなワケだ。」                    

 

「それもう飽きました。」           

 

「あらっ。まぁ冗談はさておき、本当に大丈夫…なんだね…有り得ないことなんだけどなぁ。一条君だから大丈夫だって思っちゃうんだけどね。」   

 

「怪我が早く治った理由…その事で話をしに来た訳なんですが。」                 

 

「聞かせてもらおうか。」                                  

僕は遺跡で起きた事、恐らくだが霊石の事、自分の体の

変化、強化。そしてあの夢で見た五代さんの事、それらを博士に話すことにした。                                            

「なるほど…彼の言っていた話と同じだね…普通じゃなくなる、戦う本能、身体の変化、強化、霊石…うん、さっぱりだ。」                   

 

 

 

僕は、でしょうね。と相づちを打つと同時に、  

 

 

「で、さっきから話に出てくる彼ってのは僕を運んでくれた彼、五代さんですよね?」       

 

「うん、そだよ。さっきまで此処にいたんだけど」                       

「さっきまで此処にいたんですか!?」          

少し遅かったか。                

 

「いたよ?んでね、彼が居るときあの遺跡を警察が取り締まるって電話があって、関係者以外立ち入り出来なくなるって連絡が入ってね。それで彼、足早に出て行ったよ。」              

 

つまり遺跡に向かったわけか。         

 

「ん?でも五代さんは何でここにいたんです?」 

 

なぜ五代さんはこの研究所に居たのか?     

 

「それはね、これを調べてほしいって持ってきたからだよ。」                 

 

博士は手元にあったアタッシュケースを開く。                         

 

「これは…何かの石版ですか…?」                              アタッシュケースに入っていたのは、文字の刻まれた石版だった。                                       

 

「この文字を解読してほしいって。」                             

古代の文字だろうか?

見たことのない文字が刻まれた石版を見つめていると、意識が少し遠のき、2人の怪物が殴り合う姿が見えた。独りは笑い独りは涙を流しながら、両者血反吐を吐き続けながら。そして両者ともに倒れ…青空が…

 

すると、声が聞こえた。                        

「ちょっと一条君大丈夫?」                        

         

その声で我に戻った僕を心配そうに見つめる博士。                       

 

「大丈夫ですよ、そんな見つめないで下さい、恥ずかしいです。」                

 

 

「はいはい、そういうことは桜子に言ってあげなさい。」                    

 

 

「言いませんよ?!」             

 

 

「冗談。それでこの石版は私が預かることにしたのさ。それから」               

 

と、博士はアタッシュケースからもう一つ何かを取り出す。                                           

「これは…何です?」                                    

 

「五代っていう彼が言うには、霊石のかけらなんだって。」                   

 

これを聞いた瞬間はっとする僕。間違いない、これは僕が霊石を落としたときにかけた部分だ。    

 

「これを一条君に渡してくれって。はい。」   

 

と手渡され、僕はそれを受け取り、ポケットにしまう。                     

 

「それから伝言も有るよ、全く私は伝言板かってのよ。えっと一条君へ…君は君に出きることをすればいい、他は俺に任せて。だって。意味わかんないね。」

 

                    

いや、確信した。君に出きること、俺は逃げようとした。それが出きること。他は任せて、つまり他にも怪物がいてそいつらは任せてってことだ。     

 

「博士、五代さんは遺跡に向かったんですね?」 

 

「うんおそらくね。」             

 

「行ってきます!」              

 

 

僕は再び走り出す。もちろん遺跡に。       

 

 

「えっ一条君?!」              

 

博士の声も入らないほど僕は必死だった。    

 

任せろ?そんなのは嫌だ、あんな怖い思いを独りで抱えるなんて辛い、きっと辛い。だから行かなきゃ。

僕は逃げようとした、でも今は、今の気持ちは。戦う。ただそれだけだ。

走る僕の脳裏に浮かぶのは先程の石版を見た時に浮かんだ、血反吐を吐きながら涙を流し戦う五代さんの姿で、

 

 

遺跡付近に辿り着き、彼=五代さんのその姿を見つけたとき、

彼は曇り空を見つめ一条さんとつぶやいた。               

 

 

「俺が戦うですか?クウガ…いや、五代さん。」                       

 

その時の五代さんの顔は少し悲しそうだった…

 

そして今に至る。

 

 

                        

「助けてくれてありがとうございます五代さん。」                           「怪我はもう治ったんだね、良かった。」      

 

五代さんは僕を見つめ笑顔で答えてくれた。                              「どうして…そんな笑顔で居られるんですか?泣きながら戦ってまで痛みをこらえてまで…そんなことをしてまでどうして…」                                           五代さんは空を見上げながら                                    

「みんなの笑顔を見たいからだよ、ただそれだけ。笑顔を守りたいってだけじゃなくて。ただ自分がやりたいからやってる感じかな。」                                       「また、変身するんですか?戦うんですか?そのために?」                                                「うん、俺がただやりたいことだから。だから君はここに来るべきじゃないよ。君のやることはこれじゃない。君の答えは正しかった。それでいいんだよ。」                             「僕は…最初は確かに逃げようと思いました、だけど気を失ってる間夢を見たんです。それでそんな大それた理由はないですけど…戦おうって決めて。」                               「夢?」                                              「五代さんが戦ってる夢です。血反吐を吐きながら涙を流しながら戦ってる姿を、そしてそれを見守る人達を。」                                                 「そうか…」                                            「あんな辛い戦いを独りで抱えるなんて無理ですよ。」                         「そう…だね。でも俺は独りじゃなかった。みんなが居てくれた。」                                            「だからたぶん僕もやりたいんです、あなたと同じ。でもあんな風に涙を流しながら戦うあなたの姿は見たくない、確かに…戦うわけだから…怖いですよ。でも、」                                         

「うん。」                                             「やろうって…今また思いました。今のあなたの哀しそうな顔…それこそ違いますよ。僕は五代さんの笑顔が見たいから。五代さんは笑顔が似合いますよ。」                            

 

「…本当に似てるなぁ。名前、一条君だよね。」                            「僕は一条カオルです、よろしく」                                  

「名前が一緒なんてぐうぜんにも程があるな…」                            「えっ?」                                             「俺が昔一緒に戦った刑事さんがいてね。その人も一条薫って名前なんだ。あっ、俺は五代、五代雄介よろしくね。」                                                                

                         と笑顔で答えてくれた。その時の空は先程までの雲が嘘のように青く澄み渡っていた。                                           

 



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青空の行方⑤

年を重ねた五代雄介って、まんま今のオダギリジョーの風貌な気がする。


 

「でも…やっぱり君は今はクウガにならない方が良いよ。」                          

五代さんはやはりそう続ける。                                 

「どうしてです?」                                         「あの夏目博士って女の人に渡した石盤と、ベルトの欠片、君も見た?」                                          「あっ、僕そういえば霊石を落として少し壊しちゃって…」                                                「知ってる。君を運ぶときに確認したからね。」                            「どうやったらあのベルトを出せるんですか?」                            「えっ?それは…自分で解るときがくると思う。その時こそがクウガになるとき…かな。」                                     

「だから今はって事…ですか。」                                   「…うん、だから今はとりあえず俺に協力してくれないかな?あの怪物はグロンギって言って…」                              

 

僕は五代さんから、怪物の事、クウガの事、そして一条薫という刑事さんの話を聞きながら共に遺跡に向かう。刑事さんの話をしているときの五代さんはとても楽しそうだった、

そして確信した。

夢で見た雪山での五代さんの戦いを見守る男性、それが一条薫だと。

                        

「それで五代さん、どうやって遺跡の中にはいるんです?警察官がいっぱいだし、下手なことしたら公務執行妨害で捕まりますよ?」                                        「その辺は、考えてなかったなぁ。」                                   

「あー…えっ、ちょっ、えっ?」                                      

「うん!ニコッ」                                           笑顔+サムズアップでとても爽快だが…いや爽快すぎる。                                                  「どうするんですか…」                                       「うーん、大丈夫、きっと何とかなるよ!」                                 

ふと思う、五代雄介という人は生粋の自由人なのだろうと。                                                 

 

「何とかって…それに遺跡に何を調べに行くんです?奴ら、グロンギでしたっけ?それの封印されていた場所が遺跡付近だったのは解りますよ?さっきの話でね?」                          

 

グロンギについて説明をすると奴らは過去にクウガによって遺跡に封印され、封印が解かれ再び解き放たれる、そして戦いが、殺し合いが始まる、対象は人間及び闘うもの。                                                 「その話、おかしいとは思わなかった?」                              

「えっ?」                                             「封印されていたグロンギが再び世に解き放たれた時、俺はクウガになって戦た。10年前にね。」                                    

「ええ。ん、あれ?」                                       

「気付いたね。そう、俺は今向かってる遺跡をこの間まで知らなかったしし、あの場所で戦ったのも君を助けた時が初めて。まぁ近くで最初戦って取り逃がしたけど、それと君はグロンギを…未確認を知らない。たった10年前に俺や仲間が戦った奴らを、世間は知らないようだしクウガの事、当時は未確認4号と呼ばれたけどそれも今はない、と言うか怪物扱い。」

                         

 

「えっ、ちょっと待って下さい。訳が分からないです…五代さんがクウガになったの10年前、当時僕は14歳だから…えっ、そんな話ありました?未確認…とか。」                           

 

「やっぱり色々とおかしいんだ、繋がらない…俺が戦いを終えて旅に出てそして10年余り月日はたった。でも10年であの悲惨な戦いや事件を忘れるなんて…有り得ない。それと、いつの間にか気付いたら俺はあの遺跡の中にいてね。何かに呼ばれた気がして。そして出てみればここはどこ?な状態だったし、取り逃がしたグロンギを追って街に出るとグロンギを見つけて戦って、遺跡に戻ったら君に出会った。」

                                 

「えっと、つまり五代さん。遺跡に向かってる理由は…」                                                 「グロンギの気配が濃い。だから何か解るかなと。」                          「戦いに向かってる訳ですか…」                                   「怖い…よね?君はやっぱり行かない方が」                              「行きます、僕は五代さんの笑顔を守りますから。何か解らないけど誰かに戦えって言われてるような気がして…」

                          

「…わかった。とりあえず一緒に行こう。」                              五代さんもおそらく同じ経験(過去のクウガの幻影?声?)があるのだろうか、それを最後に僕達2人は足早に遺跡へと向かう。                               

森林が開け、遺跡が見えてくる頃には警察官や考古学の研究者らしき人がたくさん見受けられた。                               物陰からそっと覗くと、血が飛び散っているところの現場検証、少し離れたところには地面に穴が空いている、そこの現場検証もされていた。                                    「あれって…」                                           「俺がグロンギを倒した時の爆発でできた穴だね。」                          「あんな穴が空くって何をしたんです?」                               「二度目に君を助けたときと同じさ。」                                「あぁ…」                                             

                         蹴るときに封印の力を足で注入する、五代さん曰わくそうらしい。他にも方法はあるとか。                                  「出来れば君には味わってほしくないけどね。あの感覚はやっぱり好きになれないから。」                                  「僕はやりますよ?皆を守るなんて大それた事はできなくても、人独り守る位はしたいから。」                                五代さんは何も言わず、僕に笑顔をくれた。                              その時、遺跡の方を見ると、ある女性が目に入る。                            「あの女の人…うーん?僕の中にある霊石を持ってた人じゃないですか?」                                             

と、横を見ると五代さんは単身その女性の元に向かうべく、検問突破を試みる、が。                                    

警察官に思いっきり捕まってしまった。何か言われてるな…                       

 

仕方ない一か八か…僕は自分の所属する研究所の名刺を手に五代さんにかけよる。                                      「ちょっと五代博士、待って下さいよ。あっすみません、ここの担当になってる夏目博士の助手の一条カオルといいます、こちらは夏目博士の代理の五代博士でして」                         と、警察官に名刺とついでに研究所の許可証を見せると、難なく入ることができた。                                     「やるねー、カオル君。」                                      「もうちょっと考えましょうよ?てか初めて名前で呼んでくれましたね。」                                         「一条さんは一条さん。カオル君はカオル君ということで、どう?」                                            

 

よく解らないがそういうことらしい。                                 「あっ、五代さんあの女性ですよ!うーん?」                                 

「行こうっ!」                  

 

「ちょっと待って!?」

 

                         青空の下、僕達2人は再び歩み出す。

 

 

 

 

 

 

五代の心中━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

俺の予想通り、

 

 

「助けてくれてありがとうございます五代さん。」  

 

やはり彼は俺を追ってきた。来ると思っていた、と言った方が正しいか…                                     

無事で良かった。いや…無事なのは解っていた、彼は俺と同じなんだから。良かったのだろうか?本当に良かったのだろうか?                  

 

 

一条さん、俺どうすればいいんでしょう。こんな時あなたならどうするのか、教えて下さい。ふと見上げた青空は何も答えてくれなかった。                                     「それでもやっぱり君は戦わない方が良いよ。」                            あんな辛い戦いを痛みを苦しみを誰にも味わってほしくない。

それに彼のベルトには亀裂が入って欠けている部分がある。

間違いなく危険な状態に間違いない。

体の一部と同じベルトにもう傷があると言うことは…もしもの時…伝説の闇…黒の力にのまれてしまう可能性もある。                                    

「僕は皆を守るなんて大それた事はできないけど、人独り位は守りたい」                 

 

「五代さんが皆の笑顔を守るなら僕は五代さんの笑顔を守ります。」                                            彼の言葉に俺は何も言えなかった。

一条カオル、俺の大切な人と同じ名前。彼は彼なりの戦う覚悟がある。

まるで昔の自分を見ているようだ…

彼が夢で見た俺の過去の戦い、その悲惨な姿を見たから…彼は俺を助けようとしてくれている、昔の自分と同じ。誰かの笑顔のために。

独りでは抱え切ることは到底無理な戦いの重さと痛みと傷み。

きっと辛いはず、そう思うから…だから彼は今、俺に協力してくれようとしている。だったら俺の出来ることは。                                       

「一条さんは一条さん、カオル君はカオル君ということで!」                                               彼の戦いを見守ろう、そして共に分かち合おう、戦いの辛さ、苦しさ、そして悲しさを。

彼が苦しいときは俺が戦い、俺が辛いときは彼に助けて貰おう…そっか…きっとそうだ。

10年前のあの戦いの時、一条さんは今の俺と同じ気持ちだったんだ。

ごめんね一条さん、

解ってるつもりで全然解ってなかったです。俺、もっと頑張らなくっちゃ、

一条さんに怒られちゃいますね。

                                 

だから、今俺の出来ることは。                                    「よし、行こうっ!」                                        ただ前に進むこと!ですよね一条さん!                                見上げた空が笑ってくれたそんな気がした。                              歩いみても走っても同じ場所にはたどり着くけど、走り出さなくちゃ変わらない。                                     

君を連れていこう、悲しみのない未来まで…

 

君がくれた笑顔だけポケットにしまって。

 

 

いつかカメラで撮った写真をポケットにしまうとまた少し寂しかったが、道が拓けるような気がした。   




そろそろ戦闘パート入りますが…描写上手くできるかな…


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青空の行方⑥

唐突ですがオリジナルキャラ一人追加です。今後割と重要人物に…


 

「あのう…すみません。ちょっと聞きたいことが…」

 

 

僕こと一条カオルと五代雄介は例の遺跡にて調査を開始した所で早速目に入った、あの女性。霊石を運んでいる最中グロンギに襲われたあの女性に話を聞くことにした。。

 

 

「えっあっはい?あっ?!あなたたちは!」

 

女性は驚きの声を上げ、取り乱し周りがざわつく。

 

「ちょっとあっちで話しません?」

 

五代さんが機転を利かせ女性をエスコートし人の目から少し離れた所にやってくる。

 

すると女性は今度は落ち着いた様子で話し出す。

 

 

「お二人ともあの時はありがとうございました…生きてるって思うだけで本当に幸せです!助けてくれて本当にありがとうございます。あっ、申し遅れました、私この遺跡の取締役兼研究団体の総括やってます、小田桐と言います。みんなからは小田嬢とか小田桐お嬢とか言われますね、ええ。」

 

 

この人喋り出すと止まらない人だっ!

と僕と五代さんは目で相槌を交わし先に五代さんが自己紹介する事に。

 

「俺は五代雄介って言います、笑顔を探す旅が生きがいの中年に差し掛かった若造です。よろしく!」

 

面白い、ちょっと笑ってしまう。

 

「あっはい、よろしくお願いします!えっとあなたは?」

 

えっ、五代さんに突っ込みなし?!

あっ、ほらちょっとショボーンになってるジャナイデスカ!

 

「あっ、ぼっ僕は考古学者の夏目実加博士の助手の一条カオルと言います。どうも。歳はもうすぐで24になります!」

 

五代さんをフォローするつもりで年齢を交えた自己紹介…

 

「夏目博士の助手っ…?一条カオル…?えっまさかあなた…カオルン!?」

 

 

「はい?」

 

 

「覚えてない?私だよ?子供の頃よくこの遺跡で一緒に遊んでたじゃない!」

 

キョトンとする僕を五代さんが見つめ笑ってショボーンってしてる、器用だな…そうじゃなくて

 

「うーん…小田桐さん…いやちょっと覚えがないと言うか…」

 

白衣を着て丸眼鏡をかけ髪はポニーテール、身長は低く華奢な体つきのこの女性、小田桐さん。

 

誰かわからない、、、が…

 

 

あっ、と小田桐さんが声を上げたかと思うとメガネ外しポニーテールを崩し始める。

 

 

「これで解るでしょ?」

 

 

…………っ?あれ?

 

 

「ん…?んあっ!?まさか!ひっ輝ちゃん?!」

 

 

「ご名答。」

 

 

子供の頃この遺跡で、桜子と輝ちゃんとよく遊んだ。ちなみに輝ちゃんは僕よりも2つ年上のはずだ。

 

 

「桜子元気にしてる?もう10年会ってないけど…」

 

 

「元気にしてるよ、今は幼稚園の先生をしてる。」

 

 

「へぇあの子がね〜、変わるもんだ。」

 

 

五代さんがショボーンってなってる事を思い出して、話題を戻す。

 

 

「怪我はしてないんだね、良かった。」

 

 

「カオルンが助けてくれたから…あっ五代さんでしたね!あなたいったい…?何者なの?姿が変化してましたよね。あれっていったい…」

 

 

五代さんは気を取り直し話し始める。

 

 

「あなたが持っていたあの霊石には装着したものを変化させる力があるんです。そしてそれを俺は宿していた。」

 

「あれ以外にもあの採掘品はあったと言うこと?私が持っていたあの霊石?は今どこに?」

 

 

「ここっ。いやこの辺かな。」

 

 

五代さんが僕のお腹の辺りを指差す。

 

 

「へっ?」

 

 

「つまりカオル君が装着しているわけです。」

 

 

「です。」

 

 

僕も頷く。

 

 

 

「エーッッ!?」

 

 

その声はおそらく周りに響いたのであろう、

 

 

「どうしました小田桐お嬢?」

 

と近くを通りかかった男性がやってくる。

 

 

その時僕と五代さんの目があった。この感覚は…何だ…?

 

「何でもないわ。ごめんなさい」

 

と言うと男性は離れていった。

 

 

「五代さん、今の。あれがそうですか?」

 

 

「あぁ。」

 

 

「「グロンギだ。」ですね。」

 

二人の声が重なる。

 

もちろん小田桐輝は何も気付いていないので、ただキョトンとするだけだった。

 

 

 

 

カオルと五代が遺跡で調査をしている頃、夏目博士の所属する研究所では五代からの「預かり物」の研究及び解読が行われていた。

 

「五代雄介…いったい何者なんだろう…」

 

夏目博士の手元には彼から託された石版?が置かれている。

 

「この石版の文字…どこかで似たものを見たような気がするんだけどなぁ…」

 

 

そんな事を呟いている博士の回りに数人の助手が解読に従事していた。

 

「あっ、お母さん。カオルは?」

 

そこに娘の桜子がやってくる。

 

「あら桜子、病院の手続き終わったの?」

 

「うん、何か凄く驚いてたよ、カオルの回復力がどうとか、何か名刺を渡されたし。」

 

「…一条君、あの五代って人を追いかけて遺跡に向かった所よ、凄く急いでた…けど」

 

「もう、本当に訳わかんない。クウガとか何とか言ってたけど何なのかな?」

 

「五代って人も言ってたけど、自分はクウガだ、おそらく一条君もクウガになる運命にあるって。」

 

石版を桜子に見せると桜子は思いも寄らない一言を放つ。

 

「この文字見たことあるよあたし。これカオルのご両親の遺留品に似たのがあったよ…うな?」

 

夏目博士ははっとする。そういえば一条君の両親=私の友人達の研究していた古代文明の文字に類似していた、そしてもう一つ。気付いたことがある、あの遺跡は一条君の両親の研究対象になっていて、そして10年前。その遺跡の調査を最後に二人は消息を絶ち、「亡くなった」事になった。いくら何でも線の結び目が遺跡に集中しすぎている。それよりも

 

「みんな!一条夫妻の研究資料を急いで集めて!!この文字、何か解るかも。」

 

助手は急いで作業に取りかかる。唯一ラッキーだったのは夏目博士の研究所に一条夫妻が所属していたことだ。資料はサクサク集められていく。

 

 

一時間後、

 

 

「お母さん…これって…もし本当なら、緊急事態だよね?どうなの?」

 

「…そんな事…まさか…」

 

研究所の助手達もざわつき始める。

 

五代雄介と名乗る男が夏目博士に手渡した石版を一条夫妻の研究資料で解読すると、次の文章ができあがった。

 

 

 

 

 

封印解かれし時、人は消え失せ、暗闇に包まれん

選ばれし者現れん時、闇を焼き払い、夜が明けん

封印し時、次なる選ばれし者現れん

 

 

 

 




さて、次でいよいよ戦闘入ります。あっ、オリジナルキャラの小田桐輝はオダギリヒカルと読みます。


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青空の行方⑦

遂に主人公変身。


「五代さん、どうします?」

「俺が後を付けるよ。カオル君は…」

「僕はとりあえず、ちょっと事情を彼女に説明してから合流します…その方が良いかなと。五代さん気をつけて下さい。」

キョトンとした輝ちゃんを横目に見ながら僕は言う。

「ありがとう。わかった、後で合流しよう。」

それだけ言うと五代さんは走ってヒトの姿をしたグロンギであろう男を追いかけた。

「で…どこから説明しようか…。僕の体内に例の霊石が有るんだけど…」

五代さんから聞いた、クウガのこと、グロンギ、過去の戦い、それらを簡潔に輝ちゃんに説明する。

「到底信じられる話ではないけど…つまりあの霊石の力で五代さんとカオルンはクウガと呼ばれる戦士になれる、人類の味方でありグロンギと呼ばれる怪人と戦える同等、叉はそれ以上の力がある…とりあえずそれはわかった…それともう一つ。」

ポケットに手を入れ写真を取り出す。

「これは…?」

「カオルンのお母様から預かっていたんだけど、昔ここで発掘された、石盤の写真だよ。

いつだったか、紛失…だったかに有ったらしいんだけど…

たぶんもしかしたらだけど、現物は夏目さんのとこにあるんじゃないかな。ついさっき博士から電話があってね…いろいろ聞かれたわ。

あっでね、この石盤に書いてある文字ね、うろ覚えなんだけど、世界の終末について書かれてるらしかったんだけど…

つまりね、書いてある事と現状が少し似てると言うか…グロンギだっけ?それが復活して、人がたくさん殺されて、戦士がグロンギを焼き払う…倒すってことかな?

その内容が、今のあなたがいる状況に近い気がするのよ。

新たな守りし者現れんだったかな、五代さんが過去の守りし者でカオルンが新しい守りし者、世界の終末には新たな守りし者が現れるってことだと思うんだ、

つまりカオルンが新たな選ばれし者=クウガになる力を得た=世界の終末…戦いが近いってこと。

その石版の文字をずっとカオルンのご両親は熱心に研究してたみたいよ?知らなかった?」

そんな事が…僕の両親は死ぬまでこんな大切な事を研究していたと思うと少し嬉しかった、僕にやるべき事を残してくれた気がして。

「知らなかった…でも、そうか…だとしたら僕がやるべき事は…」

うん、と輝ちゃんは頷く。

「またあとで、ゆっくり話そうよ。とりあえず行ってくるね。」

笑顔で輝ちゃんの元を離れ五代さんを追いかける、気配を追ってようやく見つけたとき、ちょうど五代さんは変身するところで、少し先にグロンギもいた。

 

 

 

「変身ッッ!!」

 

周りにいた研究者や警察官がざわつきはじめ、僕は人々の避難の手助けに従事する事にした。

「カオル君!」

「五代さん!こっちは僕に任せて!思う存分やって下さい!怪我しないで下さいよ!」

「ありがとう!」

そうだ、僕に今出来ることがあるとしたら、五代さんを手助けし、カバーをする。今は…今出来るのはこれしかない、と思う。

近くで足を引きずる男性が居たので肩を貸す。

「なるべくここを離れて下さい。」

その時警察官が僕に近づいてきた。

「あっ警官さん、この人をお願いします!」

「あぁっっ!!わかった!君は?!」

「僕は彼を…あの赤い方をカバーするんで、見逃してもらえませんか?」

赤い方=つまりクウガ。

「なにっ?!いやしかしっ…っ君、夏目さんとこのヒトだね?」

頷くと

「後から事情は聞かせて貰う、あの赤い方は味方なんだな!?わかった、行きなさい!まずいと思ったら逃げるんだぞ!」

怪我をした男性を預けるとダッシュで五代さんの元に戻る。

予想外だった、五代さんが押されている様子…そして五代さんが何かおかしいのだ、ふらついている?嘘だろ…?

「五代さん!」

叫んだ瞬間五代さんの変身が解ける。

「えっ、そんな…くそっ!」

五代さんに襲いかかるグロンギに飛び蹴りを決め、何とかこちらに気を引く事が出来た、が…

「五代さん!大丈夫で…はないですね…」

「カオル君…逃げろ、俺…ちょっと調子が悪いみたいだ…でも何とかするから君は…」

「逃げませんよ、五代さん。前に人1人守るくらいはしたい。僕は言いましたよね、あなたの笑顔のため戦う、何故か解らないけどそう誰かにお願いされてる気がするんですよ、

だから。今なら解ります、どうすれば良いのか、どうすればクウガになれるのか、

中途半端に関わるんじゃない、ちゃんと五代さんに関わりたい。だから見ててもらえませんか?僕の最初の…」

その言葉と同時に腰の当たりにベルトが出現するのを僕は解っていた。そうか簡単じゃないか。

 

 

「最初の…変身ッッ!!」

 

そうか…変身するために必要なのは、守りたいと言う強い気持ちが必要なんだ。

五代さんと同じ動作でクウガに変身する、僕のクウガとしての初戦は幕を開ける。

「カオル君…すまない…」

五代さんが小さな声でつぶやいたと同時に僕の変化は始まった。

変化していく身体、この感覚は当然ながら経験したことのないものだった。正直とても嫌な感じがした。

「お前もクウガだったのか、面白くなりそう…でもないか?ふん。」

先程まで五代さんと戦っていた怪物、通称「グロンギ」が僕に言う。

「何故、何故戦う必要がある!?」

「ゲーム…いや…さだめといった方が良いか?」

「ゲーム…?そんな事のために…?そのせいで五代さんや輝ちゃんは危険な目にあったのか…そんな事で犠牲者が…血が流れるのか…」

抑えられそうもない「黒い何か」の感情と波動が僕を襲う。

「ダメだカオル君ッッ!!自分を見失うなッッ!!君は一条カオルだろうッッ!?」

弱々しいが力強い意志の五代さんの声が聞こえ、何か危なかった?なんだ今のは…我に返る僕。

「面白くなりそうかと少し期待したが…さぁ始めるか…もう1人のリントノセンシクウガ!!」

次の瞬間、僕はグロンギに殴り飛ばされていた。

「イッテェッ…」

殴られた場所を見るとあることに気付く。

「体の色が五代さんと違う?どういう事なんだ…」

五代さんは赤、僕は白。

「カオル君…君の体はまだ戦うには不完全なんだ!無理をしない方が良い!」

よろめきながら立ち上がる五代さんが言う。

「不完全?そんな…」

「俺も最初はそうだった、とにかく今は出来る範囲で戦うんだ。もう少ししたら俺もまた変身出来るはずだから、頼む!」

「分かりました!」

そうだ、僕は今は五代さんのカバーをする、そう決めたんだ、だから。

僕に出来ることを。

グロンギに向かって走る僕。

「ハァッ!」

右足で跳び蹴りを入れ着地し、左足で再び蹴りを横腹に、その次は右拳でストレートを胸の辺りに、そして右足で回し蹴り。この流れでグロンギに攻撃を開始するが中々致命傷となる威力のある攻撃は与えられない、グロンギの動きが速いのだ。避けられたりガードされたり…散々だ。

「どうした?息が上がっているぞ?」

グロンギが僕に言う。

「さぁてこっちもやらせて貰おうか。」

グロンギの蹴りや拳が休む間を与えず僕を襲う。

「かはっッッ…」

蹴りが腹部に当たり又も吹っ飛ばされる。少し血が飛び散る、口の中が切れたのか…?同時に変身も解かれてしまった。もちろん血は赤い…赤…?

「カオル君ッッ!!」

「五代さん、大丈夫です!!まだいけます!!」

確かに息は上がって来たが同時に「戦い方」も少しずつ得られてきている。学生の頃の武術の経験が生かされたのはこれが二回目か。

「変身が解けたのは危険な証拠だ!下がって!俺が!」

五代さんが言うが、

「解けたんですよ、問題の答えが。」

「えっ?」

「仕切り直しです、次また僕がヤバかったらお願いします。」

口についた血を右拳で拭きながら言う。

「人1人の笑顔を守れないでみんなを守れるもんか…五代さんだけじゃない…僕も五代さんと一緒に皆の笑顔を守ります!!」

グロンギに向かって再び走り出す僕。

「変身ッッ!!」

と同時にグロンギ目掛け飛び上がり、最初と同じ飛び蹴りを放つ。

「同じ技が効くと思うか?」

違う、最初とは違う。グロンギに降下するときに再び僕はこう叫ぶ。

「変身ッッ!!」

「何ッッ?!」

蹴りが命中する直前、僕の体の色が白から赤になった。

「ハァッ!」

ドスっと言う音とともに、グロンギの身体に不思議な紋章のようなものが浮かび上がる。

「僕のこの赤い身体は赤い血の色だ。誰かが血を流し死んでいくなら、その人のために僕が血を流してでもその人を助け出す…」

「くっおもしろい奴だな…ヤられた…お前、中々やるなあ。これは…あいつも楽しくなるだろうな…」

その言葉を最後にグロンギは爆発し蒸発したかのように消えた。

「カオル君!!凄いよ!!大丈夫かい?」

「はい何とか…」

変身を解き五代さんに倒れ込む僕。

「五代さん…」

「どこか痛むかい?」

「腹減りました…」

「俺もぉ…」

五代さんに抱えられ輝ちゃんのもとに戻ることにした。

「無理させちゃったな…」

僕の意識が遠退く中、五代さんが呟いたのを僕は聞き逃さなかった…

無理はお互い様でしょ…

 

 




五代の赤は炎と言う正義の象徴の赤だとしたら、カオルの赤は誰かの血が流れるのを見たくない=血反吐を吐きながら戦う五代を見たくない、と言う拒絶の赤。と言うところかな…


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青空の行方⑧

 

 

夏目考古学研究所にて━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「はい、夏目研究所、あっ、小田桐さん。先程はどうも。ええ、エェッ!?」

 

 

小田桐輝からの電話により空気が一転。先程、石版の解読に成功し、空気が静まり返っていた研究所に夏目博士の声が響きわたる。

 

 

 

「どうしたの、お母さん?大きな声出して。」

 

 

桜子が怪訝な顔をしながら寄ってくる、周りの研究員も少し戸惑い顔だ。

 

 

 

「それで二人は今まだそこに?えっ倒れた?!」

 

 

 

尚も電話でやり取りをする夏目博士と桜子の顔色が変わる。

 

 

「わかりました、ええありがとう。引き取りに行くわ。すみません、ちょっと待ってて。ええ、じゃあ後ほど。」

 

 

小田桐輝との電話のやり取りを終えると、夏目博士は桜子を見つめ、答える。

 

 

「例の遺跡付近で怪物がまた現れて、五代君と一条君が戦ったらしいわ。」

 

 

桜子は目を見開き、動揺を隠せない。

 

「えっ!?カオルが戦ったの!?」

 

 

 

博士は頷く。

 

 

 

「それで2人は無事なの!?」

 

 

「五代君が気を失った一条君を担いで帰ってきたんですって…でも2人共々ひどい怪我はしてないそうで、少ししたら五代君も気を失ったらしいわ、とりあえず2人を引き取りに行くけど、あんたも来る?」

 

 

 

「カオル無事なんだよね…?もちろん行く!!」

 

 

「はい、じゃ支度して。」

 

 

桜子は急いで支度を始める…

 

 

 

 

遺跡付近研究員用施設内にて━━━━━━━━━━━━

 

 

 

小田桐輝は長椅子にカオルと五代を寝かせ、外傷の手当てを終えた所で、夏目博士に状況を電話で連絡し、2人を迎えに来るという事なので、

それまでカオルや桜子と昔遊んでいた子供の頃の写真を眺めていることにした。

 

 

 

「懐かしいなぁ…私が12歳位だから、カオルンと桜子は10歳位かな…」

 

 

アルバムをめくる度、当時の記憶が蘇る。

 

 

と、ある写真に目が止まる。

 

 

 

「これは…カオルンのご両親か…」

 

 

今より10年前、この遺跡の研究中にカオルの両親は突如行方不明になりその後死亡したと言うことで、終幕を迎えたあの悲劇。

 

 

「カオルン…泣かなかったねー。」

 

 

眠るカオルを見つめながらボソッと呟く輝。

 

 

カオルの両親とカオル、桜子、そして自分が写る写真を眺め、少し鼻をすする。

 

 

「カオルン、強がりだったからなぁ…きっと相当無理したんでしょ?」

 

 

眠るカオルは答えない。

 

 

 

「桜子を心配させて…桜子泣かせたら、私が許さないよぉ?」

 

 

やはりカオルは眠っている。

 

 

 

「はぁ、もう本当にどうしちゃったの、この世界。意味わかんないよ。」

 

 

カオルからのクウガとグロンギの説明と古代文字の一件、そしてグロンギが研究員になりすましていたこと。

 

 

 

「この遺跡にまだ何か秘密があるのかしら…」

 

 

 

そして数分後、夏目博士と桜子が来訪し、夏目博士が五代を背負い、桜子がカオルを背負って、車に押し込むのを見送ると、桜子が輝に声をかける。

 

 

 

「輝姉ちゃん久しぶり!」

 

 

「おひさー。元気そうだね、桜子」

 

 

「うん、毎日元気に頑張ってます!」

 

 

2人は笑顔で話す。

 

 

「で、カオルンとはどこまでいったの?」

 

 

いきなり輝がとんでも発言を桜子に放つ。

 

 

「何言ってるの!?べ、カオルと私は別にそんな関係…」

 

 

顔を真っ赤にしながら答える桜子に笑顔で輝は切り返す。

 

 

「冗談よ、仲良くやってるなら良かったわ。あんた達いつも一緒だったもんねー。チュウくらいわした?」

 

 

「もうっっ!!」

 

 

「ごめんごめん、桜子。でもその元気でさ…きっとカオルンは支えられてるんだよ、今までも…これからも。」

 

 

「輝姉ちゃん…」

 

 

「カオルン…戦って、相当無理したんだと思うの。だから支えてやって、あんたにしかきっと出来ないから。」

 

「うん…必ず。」

 

 

「よしっ、じゃまたね。」

 

 

「うん、また今度!」

 

 

桜子はカオル達を乗せた車に乗り込む。すると、夏目博士が足早に寄ってくる。

 

 

「ありがとうね、小田桐さん…」

 

 

「昔みたいに輝ちゃんて呼んで下さいよー。」

 

 

「そんな歳でもないでしょー?」

 

 

「うわ、ひっどいんだー、実加さんひっどいんだー。」

 

 

「変わらないね、輝ちゃん(笑)」

 

 

輝は笑いながら

 

 

「皆変わってませんよ、これからも変わりません、カオルンもね。」

 

 

夏目博士は頷く。

 

 

「実加さん、とりあえずこの遺跡の調査で何か判ったら、すぐ連絡します。」

 

「ええありがとう。私の方も何か判ったらすぐ連絡するわ。」

 

「はい。じゃあまた今度。」

 

「ええまたね。」

 

 

2人は笑顔で別れる、昔と変わらない笑顔で。

 

 

 

 

車に乗り込み、自身の研究所に車を走らせる最中、桜子がカオルの手を握り片時も離さなかったのを、夏目博士は微笑ましく眺めていたのを誰も知らない━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦うことの出来ない人達のストーリーこそちゃんと描ければと思います。


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青空の行方-終-

本作第一章の 青空の行方 は これにて終幕です。青空の行方というタイトルの意味は、あの五代雄介のその後の行方、状況と言う意味と、カオル達の平和だったはずの世界に雲がかかり始める、雲行きが怪しくなる、の二つの意味があります。彼らを待ち受けるのは、晴れ渡る青空か…それとも…


 

ここは…僕はどこにいる…これは…

 

 

青空が晴れ渡る不思議な空間に僕は佇んでいた、いくら見渡しても、ずっと先まで青い空しかない。

 

 

すると、先の方に人が一人立っているのが判る。

 

 

あれは…五代さん?

 

 

そう思った瞬間、先程までの青い空が嘘のように、真っ黒な雲に覆われる。

 

 

 

僕の意識と身体は空を包む闇に包囲され、そしてすぐそばに、目の前に、真っ黒な身体をしたクウガが…

 

 

僕の身体も闇に包まれ、目の前にいる真っ黒なクウガを殴り飛ばす。

 

 

拳が痛む。

 

 

拳を見ると真っ黒に染められた僕の手…そして身体も真っ黒に染まり…いやこの闇に包まれた、この場所にいるのか、この闇そのものが僕なのか?

 

 

解らない、ただ怖い、ただそれだけだ。

 

 

もう自分の腕も脚も闇に包まれ見ることが出来ない。

 

 

僕はどこにいるんだ、怖い怖い怖い怖い、

 

 

 

怖い━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウワァァッッ!?」

 

 

目を覚ますと見覚えのある風景が目の前にあった。

 

 

「カオル!!目が覚めたんだね!!お母さん!!カオルが!!」

 

 

桜子が耳によく響く声で母である夏目博士を呼んでいる。

 

 

「おぉー、おはよう一条君!!体は大丈夫?」

 

 

何やら書類を片手に顔をこちらに向ける夏目博士。

 

 

「大丈夫です!あの五代さんは?」

 

 

 

「彼なら…」

 

 

指を指す方を見ると五代さんは横になって寝ているようだ。

 

先の戦闘でだいぶダメージがあったようだ…

 

 

 

あの戦いの後、五代さんに担がれて僕ら2人は何とか遺跡の責任者の小田桐輝の元に戻ることができ、そこで五代さんも眠るように気を失ったらしい、と桜子が教えてくれた。

 

 

「どっちが無理してるんだか…」

 

 

五代さんを見ながらつぶやいた僕に桜子が続ける。

 

 

「そういえば何か怖い夢でも見たの?随分怯えたような感じで目を覚ましたようだけど?」

 

 

「あぁ…何というか…何かとても嫌な夢を…」

 

 

「よく解らないけど…さ、あんまり無理しないでよ?詳しい話は輝姉ちゃんから聞いたけど…あんた戦ったんでしょ?たぶんそれのせいで怖い夢見たんだと思うし…」

 

 

「そっか輝ちゃんから聞いたのか…ごめんな、心配させて…でも大丈夫だから。」

 

 

「うん…」

 

 

桜子との会話を聞いていたのか、横から夏目博士がとんでもないことを言った。

 

 

「あのさ、お二人さん。仲良いのは良いけど、あんたらいつ結婚すんの?」

 

 

 

「ちょっ何言ってんの博士!!?」「ちょっとお母さん!?」

 

 

 

顔が赤くなっているのを隠すため僕はとりあえず身体を起こし外の空気を吸いに行くことにした。

 

 

 

「ちょっ、ちょっと外行ってきます!!」

 

 

ぜんぜん隠せなかったんじゃないだろうか…

 

 

 

「あ、ちょっとカオル!!」

 

 

桜子の声は僕に届かなかった。

 

 

 

「もうお母さん!!」

 

 

「しーっ、五代君起きちゃう」

 

 

「もう…!!」

 

 

桜子はカオルを追いかけた。

 

 

 

「あらあら。」

 

 

走り去る桜子を見送る夏目博士は笑っていた。

 

 

 

「うーん良い笑顔ですね。」

 

 

声の主は五代だった。

 

 

 

「あら起こしちゃった?ごめんなさいね?」

 

 

体を起こしながら五代は言う。

 

 

「起きてましたよ、カオル君の目覚めの声で。」

 

 

ふんふんと頷きながら

 

 

「無理させちゃったな…」

 

と五代は言う。

 

 

「同じ事を一条君も言ってたね(笑)本当に君たちは似てる。君を他人に思えないのはそれでか、初めて有った気がしないのよねー。」

 

 

「ですね(笑)俺も何か、夏目博士をずっと前から知ってるような…」

 

五代の言葉が止まる。

 

 

「五代君、君なにかあったんじゃない?」

 

 

「どうしてそう思うんです?」

 

 

「初めて会ったときより何か不安?そうというか…そんな顔してるから…かな?いや…何というか…」

 

 

「そっか…顔に出ちゃってましたか…」

 

 

「良かったら話を聞くよ?君の事を知りたいからね、正直謎だらけだし。何度も言うけど、君が他人に感じられないのよ。」

 

 

「そっか…ありがとうございます、じゃあ俺の話聞いてもらえますか?」

 

 

 

「どうぞどうぞ。」

 

五代は一呼して、

 

 

「あの遺跡で戦った怪物、グロンギから言われたんです。何故お前がここにいる?この世界の者ではないお前が何故戦う?何のために?どうやって来た?…戦う前に言われて正直混乱しました…」

 

 

「この世界の者ではない。とはどういうこと…なのか…?」

 

夏目博士も考える。

 

 

 

「俺、気付いたらあの遺跡の中にいて、グロンギがいるのが解ったから追いかけて…そしてカオル君に出会って…確かに何であそこにいたのか自分でも解っていなくて…」

 

「難しい話になりそうだねぇ、、、」

 

 

夏目博士は頬をポリポリかきながら聞いている。

 

 

「混乱したせいで上手く戦えなかった…というのは確かなんです。ただおかしいことにも気付きました。」

 

「おかしいこと?」

 

「はい。変身する度に何かに身体を奪われそうになる…いや…自分に似た気配みたいな何かに、意識を奪われそうになる…みたいな。」

 

 

「ふむふむ…変身、つまりは一条君にも有るというあの霊石の力による身体の変化の異常が五代君に今あるわけね…?」

 

「はい。」

 

「一条君は大丈夫なの…?」

 

「たぶん、彼も夢の中で似たような状況を…ほら、さっき叫んでたでしょ?」

 

「なるほど確かに、もしかすると異常は一条君にも有るのかもしれないね。」

 

夏目博士はコーヒーを入れながら話を聞いていたが、会話のほとんどの意味を理解できてはいない。

 

 

「一条君に無理はさせられない事はよく解った。それと五代君がとても優しい人だって事もね。そうだ、君が昨日初めてここに来た時に言ってた「県警の未確認生命体対策本部」とか、「九郎ヶ岳遺跡」とか「未確認四号」とか、色々調べを手配したんだけど…何も判らなかった…だとしたら逆に説明着く。君はこの世界の人じゃないって話の。」

 

 

「やっぱりそうなりますか、まぁおかしいなと思ってたんで期待はしてなかったんですけど…お手数かけました。」

 

 

五代は笑いながら言う。

 

 

 

「気にしない、気にしない。本当に何度も言うけど、何故だか…君を他人に思えない、これも何かの縁なんだろう…君の言っていた「県警の一条薫」はここにいないけど、この世界の一条カオルがここにいる、何とか色々上手くやって行けそうな気がするでしょう?」

 

笑顔で答える夏目博士、その笑顔で五代に笑顔が戻ったのは致し方ないことであった。

 

 

 

あの夢はいったい何だったのか…?

 

 

研究室を離れ僕が向かった先は屋上の広場だ。

 

 

曇り空からはちらちらと太陽が見え隠れしている。

 

 

太陽を見ていると先程夢に見たあの黒い姿を少し思い出す。

 

 

「自分を見失いかける…ってことなのか…?」

 

 

 

 

最初は逃げようとした、二回目に変身までして戦い、三回目は…この先はどうなるんだろうか…?また奴らと戦うのなら…

 

 

「変わらないよ、カオルはカオルだもん。」

 

 

どうやら声に出ていたようでいつの間にか声の主、隣に桜子がいた。

 

 

 

「桜子…僕は僕のままいられるのかな。また戦うのかな…ちゃんと守れるのかな…五代さんの代わりになれるかな…あっ」

 

 

 

遂に本音が出てしまい…声が詰まる。

 

 

「やっぱり、あんた昔から変わらないよね、そういう所。おじさんとおばさんが行方不明になって亡くなった事になって…それでもそんなときでもあんたは自分が一番辛いはずなのに、先に泣いちゃった私やお母さんを慰めてくれたもんね。誰かを助けてるよね、あんたはいつも。」

 

 

「そんな事もあった…そう…だな。確かに僕は誰かを助けたい…戦いたくないけど…きっと五代さんもそうだったんだろうし…だからこそ、五代さんも助けたいよ。きっと辛かったと思う、一度しか僕は変身してないけど、あの感覚はとても辛いはず…なのに五代さんは何度も戦ってるんだからね、きっと辛いはずだよ。」

 

 

「だから代わりにあんたがなるの?戦うの?それは少し違うんじゃない?」

 

「えっ?」

 

 

「きっと五代さんも同じ事考えてるよ、カオルには戦わせたくないってね。」

 

 

 

無理させちゃったな…

 

 

五代さんが言った言葉が脳をよぎる。

 

 

「そうか…だから五代さんは…戦いなれてないからじゃなくて、戦いなれて欲しくないから…」

 

 

「あんたはあんたよ、カオル。自分に出来ることをやりたいことをやればいいんだよ。」

 

 

「僕に出来ることやりたいことを…?」

 

 

「そっ、あんたにしかできないこと!あっ、カオル見てよ!虹が出てる!」

 

 

桜子が指を指す方を見ると、七色の橋が綺麗に延びていた。

 

 

その虹の色に黒は無い、当たり前だが何だか少し救われた気分になる。

 

「桜子、ありがとう。桜子が今まで僕のそばにいてくれて本当に良かった。」

 

 

「違うよ、カオル。」

 

 

「えっ」

 

 

「これから先もずっとそばに居て下さい。でしょ?」

 

 

顔を赤らめながら桜子が言う。

 

 

「…これからも僕のそばにいて下さい。」

 

 

「しゃーないから居てあげる!」

 

 

青く澄み渡る空に、七色に輝く虹を見つめる2人の手が繋がれているのを陰から見つめている男女がいることを二人は知る由もなく、

 

 

 

 

「なんだかいい感じですね(笑)若いって良いなぁ。」

 

 

「そうだねー、とっととくっついちゃえばいいのに。」

 

 

それが五代と夏目博士であることを二人が知ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

青空の行方−終−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて青空の行方、完結。次回は第二章突入、青空の破壊者編です。


彼を出します、というかその「彼」の一言がどうしても本作に必要なんです。





「クウガの世界か…?



次章お楽しみに!」


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青空の破壊者
青空の破壊者①


第二章突入に際しまして、第一章青空の行方の大まかなストーリーを前書きにて紹介します。



あらすじ


考古学者、夏目実加博士の助手 一条カオル は10年前に両親を亡くし、それでも何とか平和に平凡に生きてきた。幼なじみの桜子(夏目博士の愛娘)の支えもありやってこれたと言うのもあるかもしれない。
そんなカオルが生きる世界に都市伝説「怪物同士の争い」が噂され、カオルも少し興味を持つが、我関せず。
その後夏目博士の依頼でとある遺跡の調査を頼まれ、向かった先の遺跡で噂の「怪物」が現れ、襲われている女性を救うべく、怪物に猛進。間一髪女性を救い出す。怪物が狙っているのは女性の持つ遺跡から発見された石で出来た何か、では?と考えたカオルは石を自らが匿い怪物の意識を自らに集中させる…その時謎の男=五代雄介が現れ、噂の「怪物」に変貌。五代はカオルに石を置いて逃げるよう宣告するが、カオルは聞いてか聞かずか、石を持ったまま走り去る。
直後別の「怪物」にカオルは再び襲われ、「怪物」の攻撃で吹っ飛ばされ、その時偶然、手にもつ石が腰にはまってしまう。意識を失うなか、痛烈な痛みを伴い意識を取り戻すカオルの身体に異常が…
その後謎の男=五代雄介と共に再び遺跡に調査に向かい、カオルが助けた女性を発見し、話を聞くことに。
助けた女性=小田桐輝はカオルと桜子の古き友人だった。
調査をするカオルと五代の前にヒトの姿をした「怪物」の気配のする男=グロンギが現れ、五代が応戦。しかしまさかの苦戦を強いられ、カオルの初めての「変身」の時が来る。
その戦いの後、五代は自身に異常が見られる事、別の世界から来た可能性、等々夏目博士に相談し、カオルと共にこの世界の謎を追う。


 

「ここは…」

 

 

 

 

首からマゼンタ色のカメラをかける男が呟く。

 

 

 

「クウガの世界…なのか…?」

 

 

 

と。

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

男は町を歩いていたがふとガラスに映る自分の姿に足と目が止まる。

 

 

 

「ここでは俺は警察官か。ん?令状…?面白い。」

 

 

何やら紙のような物を胸ポケットにしまい再び歩み出す。

 

 

「さて…今回の役割は何なのか…まっ、また破壊者とかそんな所か…」

 

 

 

 

 

 

この男の名が、「門矢士」ということを、この世界の住人はまだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カオルの最初の変身から翌日の朝。

 

 

 

 

 

夏目研究所には カオル、五代、桜子、輝、夏目博士、の五人の姿がありコーヒー片手に談話していた。

 

 

「それでね、カオルは全然泣かなくて、むしろ私とお母さんが泣いちゃって」

 

 

 

カオルの両親の亡くなった時の話をしていた。

 

 

 

「そうそう、桜子が鼻水なのか涙流してるのかカオルンがハンカチで拭いてあげたりね。」

 

 

「輝姉ちゃんも拭いてもらってたじゃん!ねっ、カオル?」

 

 

「うん、そうだったな。」

 

 

 

とカオルは相槌をうつ。

 

 

 

「ウソー?」

 

 

「本当本当。」

 

 

 

と三人の会話を五代と博士は笑いながら聞いている。

 

 

「五代さんのご両親…ご家族は?」

 

 

と、カオルが五代に問う。

 

 

 

「俺も…俺も両親を小さい頃亡くしてね、あっでも みのり っていう妹が一人居るよ。もう10年会ってないけどね。」

 

 

 

未だ五代は自分がこの世界の住人ではない可能性の話を博士以外にはしていなかった。

 

 

 

「ごめんなさい、変な話聞いちゃって、」

 

 

カオルは謝るが、

 

 

「全然!むしろ聞いてくれて嬉しかったよ。俺が何者かなんて殆ど皆解ってないのにこんなに優しくしてくれてる。俺の方が謝らなきゃ。」

 

 

「はいはい、そんな話こそなし!五代君は私が責任を持ってここで面倒みようと決めたから、そういう話しはなし!」

 

 

と、夏目博士は話を切る。

 

 

 

「実加さん、ありがとうございます。」

 

 

「だから、そういうのナシー?解った?五代君?」

 

 

 

 

五代は頷く。

 

 

 

「そういえば…あの霊石のことなんだけど。」

 

 

と輝が話し出す。

 

 

「カオルンが身に宿した霊石ね、何か似たものを過去にも発見されていたんだって、しかもその霊石を見つけたのはカオルンのご両親だったとか。何か聞いてないのカオルン?」

 

 

 

「聞いてないっつか、その霊石はどこにあるの!?」

 

自分や五代さん以外にもクウガが?

 

 

「それがその霊石はヒビやら傷やらがいっぱいでね、その後紛失したそうだよ。盗まれたらしいとか。」

 

 

盗まれた…?

 

 

「そういえば、遺跡でクワガタのような形をした大きな石みたいな物は発見されてませんか?」

 

 

 

「ん?そんな話しは聞いてないですよ?五代さん何か知ってるの?」

 

輝はきょとんとなる。

 

 

 

「あーいや、無いんなら良いんです。」

 

 

「そういえば…そろそろかな。」

 

 

と、カオルは呟く。

 

 

 

「五代さんそろそろ準備しておいた方が。」

 

 

「だねー。」

 

 

カオルと五代以外の女性三人は、?となり、

 

 

「どっか行くのカオル?」

 

 

桜子が聞いてくる。

 

 

 

「行くというか…お迎えがね。」

 

 

 

 

 

 

「失礼します。」

 

 

 

 

 

噂をすると何とやら。

 

 

 

「県警のものです。一条カオル君早速だが、昨日のとおり、ご同行願う。」

 

 

 

「えっ何で?!」

 

 

 

 

桜子が叫ぶ。

 

 

 

 

「昨日の遺跡での件での事情聴取です。邪魔されますと執行妨害になります。ご了承下さい。」

 

 

 

 

桜子は黙り込み

 

 

 

「大丈夫、桜子。すぐ帰ってくるから。」

 

 

 

桜子はただ頷く。

 

 

「俺も一緒に、カオル君と一緒に居ましたんで同行させて下さい。」

 

 

 

五代が警官に問う。

 

 

 

「君は?」

 

 

 

「彼が、僕の言っていた、あの赤い奴です。」

 

 

 

警官ははっとした顔になり、

 

 

 

「二人とも同行願う。」

 

 

 

 

「「行ってきます」」

 

 

 

カオルと五代が最後に口にした言葉と共に、研究所内は一気に静まり返る。

 

 

 

 

「お母さん…」

 

 

 

 

「大丈夫」

 

 

 

「桜子、大丈夫だよ。」

 

 

取り残された三人の女性は少し哀しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






第二章一発目いかがでしたか?感想待ってます!


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青空の破壊者②

 

 

 

 

警察所内━━━━━━━━━━━━━

 

僕と五代さんは取り調べを受けている。無論昨日の遺跡での件だ。

 

 

「それで、君達は何者なんだ?」

 

 

戦いの時、僕が助けた足を引きずっている男性を預けた警察官が聞いてくる。

 

 

 

「えっと僕は夏目博士の助手で…一条カオルと言います」

 

 

「俺は世界中を旅して回ってる五代雄介です、よろしく!」

 

 

 

警察官はため息を付き、

 

 

「そうじゃなくて…君達戦っていたよな!?つまり民間人の君達が戦うのは…いや違うな…なぜ戦える…こうでもないな…」

 

何やら混乱しているよう様子の警察官。

 

その時、取り調べ室の扉が開く。

 

 

変わった色のカメラを構えながら若い警察官が現れた。

 

 

カメラ?僕と五代さんがきょとんとしていると、

 

 

 

「取り調べは俺がする。あんたは出て行ってくれ。」

 

「何だお前は?!」

 

 

警察官が声を荒げるも、平然とした顔でカメラを構えるのをやめ若い男は胸ポケットから何かを取り出した。

 

 

 

「警視総監の令状!?なっ…何故!?」

 

 

「この紙が見えないのか?早く出て行け。」

 

 

「なっ…失礼する…」

 

 

困苦顔で出て行く警察官を見送ると、若い警察官の男がとんでもないことを言い放つ。

 

 

 

「で…五代雄介、なぜあんたがこの世界にいる?」

 

 

 

その一言で僕は完全に身構えた。

 

 

 

「俺を知ってるの?君はいったい?」

 

 

五代さんが問う。

 

 

「俺は門矢士。ちょっとした用事…野暮用でこの世界に来た。」

 

 

「この世界に…?あぁ君も旅をしてるのか。俺と同じだねよろしく。」

 

 

と手を出し握手を求めるが男はそれを払いのける。

 

 

「馴れ合いはいい。俺が聞きたいのはあんたがこの世界にいる理由だ、そしてもう一つ。そこのもう1人のクウガ…もう1人の一条カオルについてだな。何なら解っていることを教えてやらなくもない。」

 

 

最後に僕を見据え言い放つと同時に僕は口火を切った。

 

 

「おい…あんた。失礼にも程があるだろ。」

 

 

「まぁまぁカオル君。ここは一つ、じっくりと話そうじゃない。」

 

 

五代さんが僕を押さえながら言う。

 

 

 

「で…士君だっけ?君はどうやってこの世界に?」

 

 

「何だ…?あんた、ここが自分の居た世界じゃないことに気付いてはいるのか。」

 

 

「薄々ね、戦うときに違和感を感じていたから。」

 

 

「ちょっ、えっ?話について行けてないんですが?!」

 

 

士ははっきりと言い放つ。

 

 

「五代雄介はこの世界の人間…いや…クウガではない、と言うことだ、云わばイレギュラーなようなもんだな。」

 

 

この言葉と同時に五代さんと出会った時に話した過去の戦いと、今が上手く「繋がらない」理由がはっきりした。

つまり五代さんは別の世界から来た…?

 

「で、俺が聞きたいのはまさに今あんたが言ったこの世界に来た方法と理由だな。」

 

 

と、士は五代さんを見据え答える。

 

 

 

うーん…

 

 

 

と、五代さんは思い出すような、考え込むような仕草をして

 

 

「そのどちらもよく解ってないんだよね、何かこう…引っかかってて、もう少しで思い出しそうなんだけど…遺跡の中に気付いたらいた…グロンギの気配を追って戦って、また遺跡に戻ると人がたくさん居て、カオル君と出会って…」

 

 

「あー、だいたいわかった。つまり、よく解っていないんだな。」

 

 

五代さんの話を遮るように士は歯止めをかける。

 

 

やはりいけ好かない男だと僕は正直思った。

 

ふと僕は、

 

 

「門矢士…あんたは何者なんだ?本当に世界を越えてきたとして、何のために?」

 

 

と言うと、

 

 

「俺は…破壊者らしい。そう誰かが言っていたな。ただ、俺は自分の世界を探しているだけなんだがな、ここに来た理由はただ一つ。異常が有ると解ったからだ、五代雄介が居るべき世界にな。」

 

 

「俺がいた世界が!?」

 

 

五代さんが声を荒げて言う。

 

 

「ざっと教えてやろう。今あんたのいる世界は再びグロンギが活動を再開している。あちらにも、もう1人クウガが現れたようだな。」

 

 

「何だって?グロンギはまだ居たのか…もう1人のクウガ?そんな事が…」

 

 

 

僕を見ながら五代さんは言う。

 

 

士は五代さんを見据え、

 

 

「単刀直入に言おう。五代雄介、あんたは早く帰るべきだ、自分の世界のピンチに何もしないあんたじゃないだろう…?そうだな…俺が連れて帰ってやる、と言ったら?」

 

 

 

五代さんは黙り込む。

 

 

 

と、ちょうど取り調べ室の外がざわつき始めた。

 

 

また死体が出たらしいぞ。

血を抜かれていた。

首がない。

息がある被害者が怪物に襲われたと

今怪物が近くに現れた

 

そんな声が聞こえてくる。

 

 

 

 

「あの五代さん…僕行きます、近くに現れたみたいだし…」

 

 

「カオル君…」

 

 

士は黙っている。

 

 

「大丈夫、戦い方は解ってきたし、僕にも出来ると思うんです、昨日みたいに。それにまだよく解ってないけど、この世界のクウガは僕だから、五代さんは…そのよく考えて下さい…じゃあ僕行きます!」

 

 

 

それだけ言い残し僕は走り出す。

 

 

 

 

「この世界のクウガ…か……それでその、士君。まさか君も戦える人なのかい?」

 

 

「一応このベルトとカード達を使って変身して戦ってきたな、色んな世界で。」

 

 

士はポケットからベルトとカードを取り出し見せる。

 

「そうか…俺以外にも戦える人が居るのか…」

 

 

「五代雄介、もう一度言う。あんたは早く帰るべきだ。おそらく、あんたの世界の一条薫もあんたの帰りを待っているぞ。」

 

 

「一条さんが…」

 

 

「俺が思うにだが、この世界は五代雄介、という人間が居なかった場合の世界なんじゃないかと思っているんだが、あんたはどう思う?」

 

 

「言われてみるとそうかもしれない。俺が自分の世界に居たときに、出会った人たちと同じ名前の人が多いし…似て非なる世界…とか?」

 

 

「ifの世界、だからこそだ…あんたは早く帰るべきだ、とは思わないか?」

 

 

「思わない。」

 

 

はっきりとした五代の声が取り調べ室に響くが騒ぎの中カオルには届かなかった…

 

 

 

 

 

 

 

静まり返る取り調べ室、外は騒がしくパトカーが数台出て行く最中だった。

 

 

 

「何故だ?早く帰らないとあんたの世界がまずいことになるかもしれないぞ?」

 

 

門矢士は淡々と五代に答える。

 

 

「カオル君に俺と同じ思いはさせたくない…それに…」

 

 

黙り込む五代。

 

 

「それに…?」

 

 

「実は俺は今…戦えない。言ってないけどたぶんカオル君はそれに気付いてる。だから彼は…」

 

 

 

「先に行ったわけか。しかし、何故戦えない?」

 

 

「単刀直入に言うと変身さえもたぶん…」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

 

一息おいて五代は昨日の戦いの話を始める。

 

 

 

「昨日カオル君が戦う前に俺が先に戦ってね、その時に異変があった。何かに意識を奪われそうになったんだ。」

 

 

「戦っていたグロンギの仕業じゃないのか?」

 

 

「違う…黒い何か…戦ったことのあるような嫌な気配、そして恐怖。そんな感じの得体の知れない何かが…俺を操ろうとした…グロンギだとしても相当強い力の持ち主だ。よく解らないけど…」

 

 

 

「なるほど…で、変身したら次は確実に体を乗っ取られるだろうと?」

 

 

 

「あぁ…この世界に来て最初に戦ったときも少しだけ感じたけど、変身するたびにそれが強くなってね、たぶん次かその次にはもう押さえきれなくなると思う…」

 

 

 

「ちなみに乗っ取られたとして、やりそうなことはなんだ?」

 

 

「感だけど…究極の闇への変身、俺が元居た世界での最後の変身した姿…よりもさらに…上の闇、だと思う。」

 

 

 

「…究極の闇か」

 

 

門矢士は外を眺めながら呟く。

 

 

 

「だいたい判った。どうやら俺の今回の役目はあんたを連れ戻すだけのようだな、でもあんたは帰らないと。判った、気は乗らないが、俺も協力しよう。」

 

 

 

「何が解ったんだい?」

 

 

 

「あぁ、可能性の話だが…この世界にグロンギが現れたのはおそらくあんたが原因だろうな。またはグロンギ復活のきっかけを作った。」

 

 

「俺が…」

 

 

 

「まだ解らんがな、可能性の話だ。よし、とりあえずカオルの様子を見に行くとしよう。気になってしょうがないんだろう?戦いは慣れていないようだしな。」

 

 

「そうだね。うん、心配だ。君は…士君は本当は優しい人なんだね(笑)カオル君と仲良くやれそうだけどな。」

 

 

「言ってろ、馴れ合いは俺の趣味じゃない。」

 

 

そう話ながら取り調べ室を後にし警察署から出て行く2人が走る姿を桜子と夏目博士が目の当たりにする。

 

 

「今の五代さんと誰だろう、カオルは居なかったけど…あの警察官なんか変わったカメラ?持ってなかった?ねえお母さん?」

 

 

「そうだったね、鑑識の人かね?うーん何かあったのかな。」

 

その時夏目博士の携帯が鳴る。

 

 

 

「はい夏目です、はい、はい、えっ?今近くですよ。えっ!?」

 

 

桜子はじっと母の電話が終わるのを待っていた。

 

 

「分かりました!」

 

夏目博士が電話を切ると桜子に言う。

 

 

「この先のあんたの勤めてる幼稚園の近くで怪物同士が戦ってるそうよ。」

 

 

「えっ、怪物同士?」

 

 

「てことはたぶん…」

 

 

桜子ははっとする。今、五代さんとすれ違ったと言うことは、

 

 

「怪物と戦ってるのはカオル!?」

 

 

「そうかもしれない。」

 

「ちょあたし行ってくる!!」

 

 

「…待ちなさい、危ないのよ?一条君が心配なのも解るけどかえって一条君を心配させるだけだと思う。」

 

 

「私はカオルに頼まれたの!!そばにいてくれって!だから!」

 

 

「…解った、解ったから…。私も一緒に行くわ、ただし本当に危ないと思ったら急いで逃げる良い?」

 

 

「ありがとうお母さん!」

 

 

そして2人もカオルの元へと急ぐ。

 

 

 



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青空の破壊者③

主人公戦闘パートになります、描写上手くやりたいんですが、、、難しいです…


 

 

取り調べ室を出た僕は、所内を急いで外にでる。

 

 

「君!夏目さんとこの助手の一条君君!待ちなさい!」

 

 

警察署を出たすぐの所で最初に僕を取り調べ室に招いた警察官…刑事さんが呼び止める、しまった見つかってしまった。

 

 

「このバイク!これを使いなさい!」

 

 

「えっ?」

 

 

「この先の幼稚園の近くに奴らは現れた!だからこのバイクを貸す!早く行きなさい!私は車で追う!」

 

 

「えっあっ、はい!ありがとうございます!」

 

 

「早く行きなさい!後から話しをさせて貰うよ!」

 

 

「はいっ!」

 

 

 

僕はそのスポーツバイクにまたがりエンジンをかける。免許は一応有るが、乗るのは久しぶりだ。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

それだけ言い残し、僕はバイクで走り出す。

 

 

 

 

 

 

数分バイクを幼稚園の方に走らせると、人々の悲鳴が聞こえ、走って逃げる人々の姿を確認した僕はバイクから降りてその人達の波をを登るように自分の足で走る。

 

そういえば…

 

「刑事さん…奴らって言ってたな…グロンギは複数…なのか…五代さんは戦えないはずだから…僕1人で何とか…なるかな…」

 

 

 

五代さんはおそらく変身も出来ないくらいの状態なんじゃないかと僕は思っている。

昨日のあの戦いの時もう一度変身しようとしてふらついて結局しなかった…いやたぶん出来なかったんじゃないか…?

 

 

そもそも、何故グロンギは現れた?

五代さんは別の世界から来たらしい…

クウガとは何だ?

グロンギとは?

何故グロンギは人を襲う?

五代さんから聞いた話ではゲーム感覚で奴らは人を殺すらしい。

どうかしてる、有り得ない。

そしてそんな奴らの1人を僕は昨日倒した、

いや…殺した。

つまり僕も奴らと同じ?

五代さんはこの苦しみを味わってきたのか…

そして今も戦おうとする意志が有る…そんなのって…絶対辛いよ、五代さん。

 

この世界のクウガが僕なんだったら…

 

 

自問自答を繰り返す僕のすぐそばにいた。

 

 

ただそこにいた。

 

 

血を流し倒れている数人の人々、そしてそれを見下ろす奴ら。

 

 

「…何故…殺す必要がある?何故…血が流れる…お前ら…一体何なんだよ…!!どうしてこんな事を!?」

 

 

僕の声に気付いた奴ら。僕の目線の先には2体のグロンギがいた。

 

 

 

「ゲーム…だって…?ふざけるなよ…その人達の未来を奪うのがゲーム…?そんな権利はお前らに無いはずだろ!?」

 

 

 

グロンギ2体がゆっくりと僕に近づいてくる。

 

 

 

「…そうか…お前らは何も言うことなんて無いんだな…ただ戦い殺し合う…わかった…なら僕がやることはただ一つだ…」

 

 

 

グロンギから逃げ惑う人々の前に立ちはだかる僕。

2体のグロンギを見据え、戦う意思と共に腹部に霊石もといベルトが現れる…

 

 

 

「僕に出来ること…みんなの笑顔を守る事、五代さんと同じ…それしかない!!だからっ僕はッッ…!!戦うッッ!!流れる誰かの涙血を止めるためにッッ!!」

 

 

「変身ッッ!!」

 

 

五代さんと同じ動きでクウガへの二度目の変身と共に僕の1人の戦いは幕を開ける。

 






カオルは「自らが血を流してでも、誰かの流れる血を止める凄まじき」紅き戦士、というオリジナル設定といいますか、イメージで書いてます。


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青空の破壊者④

 

 

 

 

 

 

飛蝗のような触角の有るグロンギと

 

 

 

 

 

狼のような風貌のグロンギ。

 

 

この2体のグロンギに僕は圧倒されていた。

 

 

飛蝗の方は脚力=スピード、狼の方は剛力=腕力。

 

 

つまるところ、手も足も出ない。

 

 

「このままじゃ…」

 

 

息が上がり少し間合いを取る。

 

 

すると飛蝗のグロンギが呟く。

 

 

「もっと楽しもうぜ…」

 

 

狼のグロンギも呟く。

 

 

「リントの戦士よ、楽しませてくれ。」

 

 

 

なんだ…普通に話せるんじゃないか、

それよりも…

リントの戦士…五代さんが言ってた気がする。

つまり人間の戦士…僕か。楽しむ…?

人を痛めつけて殺して、血が流れて…それが楽しい?

娯楽だというのか…この戦いが…

目の前で倒れているあの人達の流れる血や涙が…

そんな事の為に流れるのか…

 

 

「楽しいのに、流れるのが血なのか…それがお前らの楽しいってことなのか?僕が知っている楽しいってのは笑い声と笑顔、そして普通に流れる時間…喧嘩したり悲しいことがあって流れる涙が有っても、いつかまた笑いあえる時が来る!その時間を…この世界を…もうこれ以上壊されて…破壊されてたまるか!」

 

 

 

僕は意を決し、どちらか一体でも倒せば勝機が有ると信じ、前に走り出す。

 

 

僕が一か八かにかけ、先に倒すべきは飛蝗の方だ。スピード対決で体力を削られるのはまずい、

よって奴を先にねらう。しかも本当に一か八かの蹴りにに込めて。

 

 

 

飛蝗のグロンギめがけ高く飛び上がり、両足に力を込める。両足が炎に包まれ、そのまま飛蝗のグロンギにその片方の右足で蹴りを入れる。

 

が、

 

 

「甘い…」

 

飛蝗のグロンギは呟きながら少し後退…

 

少し浅いヒットになったため、飛蝗のグロンギは再び立ち上がる。

 

 

「そっちこそ甘いんだよ…人間を舐めるなよ…ハァッ!!」

 

 

僕は着地した瞬間、後退したグロンギに向かってダッシュ。

飛蝗のグロンギが立ち上がろうとする無防備になる瞬間を待っていた。

高く飛び上がったとき、僕は「両足」に封印するための力を込めたのだ。

 

 

飛蝗のグロンギが立ち上がろうとする時には僕の「左足」が待機していた。

その左足で顎の当たりを蹴り上げ、宙を舞う飛蝗のグロンギと共に僕も飛び上がり、

落下しながら再び右足で腹部にけりを打ち込む。

 

「グァォッッ!!」

 

苦痛の叫び声をあげる飛蝗のグロンギ。

 

僕の右足に踏みつぶされながら地面に落下した飛蝗のグロンギはその後爆発し消滅した。

 

 

 

「はぁはぁ…」

 

 

僕の息は完全に上がっている、

狼のグロンギがもう目前まで迫ってきているのに、

僕の身体は僕の言うことを聞いてくれそうにもなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━五代side━━━━━

 

 

 

 

「変身するつもりか?」

 

 

門矢士が五代に問う。

 

 

「行くよ、俺は。クウガだし。」

 

 

淡々と応える五代の目線の先にはカオルが変身したクウガと2体のグロンギ、そして犠牲者も見える。

 

 

「自分が自分じゃなくなるかもしれないんじゃないのか?」

 

 

「確かに…そうだね。でもカオル君一人に辛い思いはして欲しくないよ。」

 

 

そう言っていると、後ろから声をかけられる五代。

 

 

「たぶんカオルも五代さんと同じ事考えてますよ。きっと。」

 

 

声の主の桜子ちゃんとその母親の夏目博士がそこにいた、そして桜子ちゃんは続ける。

 

 

「あの赤色の…あれがカオルなんですか?」

 

 

「そう。あれがカオル君、必死に戦っている、辛いはずだよ。あっ、」

 

 

その時カオルが一体のグロンギに攻撃を仕掛ける。

 

 

「ほう…」

 

 

士は呟く。

 

 

 

高く飛び上がったカオルを見つめながら五代も呟く。

 

 

「カオル君…」

 

 

次の瞬間炎を纏った右足の蹴りがグロンギに炸裂するが…

 

 

「外したか…」

 

 

士は呟く。

 

 

「いや…違う。あれは…」

 

五代も呟く。

 

カオルはグロンギが再び立ち上がろうとする瞬間に炎を纏った「左足」で蹴り上げた。

 

 

そして蹴り上げたグロンギより少し上を飛び、再び炎を纏った右足で蹴りを入れともに落下する。

 

 

 

「ほう…なかなか考えたな。」

 

士が頷きながら少し感心している。

 

 

落下したグロンギは爆発し消滅、しかし…

 

 

 

「カオル君はもう戦う体力は残ってない、もう俺が行くよ。」

 

 

 

五代が一歩踏み出す、その時。

 

 

「待って、五代君。」

 

 

「えっ」

 

 

五代を呼び止めたのは、夏目博士だった。

 

 

 

「彼を…一条君をもう少しだけ戦わせてあげて…見守ってあげて。」

 

 

「私からもお願いします五代さん!たぶんまだカオルは大丈夫だと思います…たぶん」

 

 

夏目博士と桜子ちゃんは続ける。

 

 

「一条君から頼まれたの、君をなるべく戦わせたくないから引き止めてって。」

 

 

「五代さん…調子良くないんですよね?カオルが刑事さんに連れて行かれる前に言ってたんです。なるべく僕が戦うって…だから…」

 

 

「カオル君…やっぱり気付いてたのか…」

 

 

膝を着き肩で息をするカオルにもう一体のグロンギが迫っている。

 

 

「さぁて、五代雄介。あんたはどうしたい?」

 

 

 

 

士は冷徹で冷酷にしかし冷静で静寂な声で問う。

 

 

 

「俺は…」

 

 

 

その時、膝を着いていたはずのカオルがゆっくり立ち上がり、いきなり叫んだ。

 

 

 

「五代さん!!この世界のクウガは僕です!!だから僕が出来るだけ戦って、みんなを守ります!!だから五代さんはみんなの笑顔を守って下さい!!五代さんの帰りを待つ人達のために今出来ることをして下さい!!」

 

 

「カオル君!!」

 

 

五代も叫ぶ。

 

 

 

「だからまた見てて下さい!!僕の変身ッッ!!」

 

 

 

 

 

その叫び声と共にカオルの姿が赤色と紫色の身体に変異する。上半身が紫色、下半身が赤…何とも奇抜だが…

 

 

「あれは…あの色は見たことがない…」

 

 

五代は驚きを隠せない。

 

 

混色のクウガは狼の姿をしたグロンギ目掛け走る。

 

 

同じく狼のグロンギもクウガに向かい走る。

 

 

 

お互いの拳がぶつかる瞬間凄まじい爆発と火柱が舞いグロンギは消滅し混色から「白」に戻ったクウガが取り残され、次の瞬間には、変身が解けながらカオルが地面に倒れ込む。

 

 

 

「カオル君!!」

 

 

「カオル!?」

 

「一条君!!」

 

五代、桜子、夏目博士はカオルの下へ走る。

 

 

 

少し違う気配を感じ、

一人違う方向を向く士の目線の先には、

 

 

 

「あいつは…?何故だ…どういう事だ…?」

 

 

驚愕の人物がいた。

 

 

 

「待てッ!」

 

 

士は呼び止めるがその人物は去っていった。

 

 

 

「どうやらこの世界のことを少し勘違いしていたのかもしれんな…」

 

 

士は青空を見上げ呟くのだった…




オリジナル設定、二色に変身するクウガ、あっさり描写ですが、、、今後重要になる予定です。


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青空の破壊者⑤





 

 

 

身体が重たい…意識が遠い…でも何とか1人で2体のグロンギを倒せた。

 

 

「あれっ…?」

 

 

 

次の瞬間僕の身体は地面と接触する。

 

 

この感じは…変身も解けたのか…

 

 

 

…オル!!

 

 

 

 

 

…ルッッ!!

 

 

 

 

 

しっか…て…カオ…ッッ!!

 

 

 

何か聞こえるが、瞼が重く耳も遠いのかよく解らない。

 

 

 

次の瞬間には誰かに背負われたのか、妙に暖かさを感じる。

 

 

きっとこれは五代さんだ…これはこれだけは解る、五代さんに違いない。

 

 

 

僕、何とかなりましたよ…五代さん。見てくれてました…?戦うってこういう事なんですね…辛かったでしょう五代さん…これからは僕が…

 

 

 

ここで僕の意識は完全に途絶える━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カオル君ッッ!」

 

 

「一条君!」

 

 

「しっかりしてカオルッッ!!」

 

 

 

 

 

地面に倒れるカオル、彼の口や拳に少し血がついていた。

 

 

 

 

 

 

「とりあえず病院!!実加さん病院!!」

 

 

 

五代が博士にあわて気味に言う。

 

 

 

「あぁっはいはいはい!」

 

 

慌てて博士と桜子も電話をさがす。

 

 

 

「あっ!!」

 

 

桜子がポケットからなにやら名刺と電話を取り出す。

 

 

 

「この前カオルが運ばれた病院すぐそこだよ!この名刺に書いてある先生に電話してみる!」

 

 

 

カオルが先日運ばれた病院の医師に桜子が電話をしている間、五代がカオルを背負う。

 

 

「急患として扱うから来てくれって!」

 

 

 

五代は頷き、

 

 

「じゃあ桜子さん!じゃなかった、桜子ちゃん!案内して!俺がカオル君をこのまま背負うから!病院近いんだろう?」

 

 

「オッケ!ここから数百メートルだからっ!こっちこっち!こっちです!」

 

 

 

 

 

桜子の後を、博士とカオルを背負う五代が追う。

 

 

 

「そういえば五代君、さっきの変なカメラ持った警察官…あれ何者?」

 

 

足早の桜子を追いながら、博士が五代に問う。

 

 

 

「彼は…俺を元の世界に帰らせるためにこの世界に来た旅人らしいです、名前は門矢士君。ん?そういえば士君何処にいったんだろ。」

 

 

「へぇ…帰らせるために…つまりは彼も(何者)って事か。あぁ、さっきまで後ろに居たはず何だけどね。ハテ?」

 

 

桜子のペースが上がり五代も辛そうだ。

 

 

 

「まぁたぶんまた僕らの前に現れますよ近いうちに…」

 

 

五代は背中のカオルを見据えながら言う。

 

 

そのカオルが寝言のように呟く言葉を五代は一生忘れないだろうと思った。

 

 

 

「僕、何とかなりましたよ…五代さん。見てくれてました…?戦うってこういう事なんですね…辛かったでしょう五代さん…これからは僕が…」

 

 

そう呟くカオルはやはり眠っている。

 

 

 

 

…昔の俺もきっと君と同じだった…いや今も変わらない。痛い苦しい辛い思いをしてでも誰かを守ろうと思う、それでも誰かに見てて欲しいよね、でもきっと誰かは見てくれてるよ。君は1人じゃないし桜子ちゃんや実加さん、小田桐さん。ずっと君を見てくれてるよ。もちろん俺も見てる。俺も1人じゃなかったから。だから今の俺は生きてるんだ、そうだよ、君も生きてる。だから俺が…君を連れていこう、悲しみのない未来まで。それを気付かせてくれた、君に。そしてあなたにまた会う時笑顔でいられるように。一条さん、カオル君。俺は2人のためにみんなの為にまだまだ頑張ります。戦います、俺はクウガだからっ!

 

 

 

 

五代の目の前に病院が見えてきた。

 

 

 

 

「到着ッッ!!」

 

 

桜子が叫ぶとその声に気付いた人が居た。

 

 

 

 

「おぉ!!早かったね!担架こっちにあるからさっ早く!!」

 

 

 

桜子が電話した医者が出迎えてくれる。

 

 

 

五代はカオルを担架に乗せて、運ばれていくのを後からついて行く。もちろん博士と桜子も。

 

 

 

 

 

「カオル君…今はゆっくりお休み。君が戦えないなら…俺がいるから…俺達は1人じゃないよ。」

 

 

 

五代の呟いた言葉を桜子と博士が聞いていたのか、

 

 

「「私達もね!」」

 

 

 

…ほらね、カオル君、ちゃんと見てくれてるよ。きっと誰かが…1人じゃないんだよ!

 

 

 

 

 

カオルが病室に入る頃には夕暮れ時…

 

 

 

その淡い赤色は何故か少し戦いを忘れさせ、一条さんとの思い出が蘇る、とても良い時間だと五代は心底思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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青空の破壊者⑥



ようやく過去のカオルの両親関連の出来事と現在の遺跡関連の謎が繋がる話に入ります。キーパーソンはズバリ、ゴダイ です。何故この表記になるのかは…読んでいただければ後々解ります。現にこの作品の登場人物で1人だけ限りなく「答え」に近づいた人物がいました。これ以上は…止めときます(笑)


 

 

 

僕は何回目かの夢を見ていた。

赤い目の体が黒いクウガになり、

吹雪の中あの「一条さん」に見送られ

戦いに赴く五代さん。

その後雪景色の中血を吐きながら戦う五代さんと…

そういえば、相手はずっと笑っている?

五代さんが戦っているグロンギは…笑っている。

嬉しそうに笑顔で戦っている。

五代さんは…泣いていた、血と涙を流しながら…

そうだ、僕はこの夢を見たからクウガに…なれたのかもしれない。

こんな事はあってはならない、そう思ったから。

五代さんは言っていた、戦う相手によって身体の色を変え戦いやすい形状にしていた、と。

僕は今の所、白、赤。そしてあの時のあれは…

たぶん僕は五代さんが変身するクウガとは少し違うんじゃないだろうか…?

そんな気が薄々している。

五代さんは戦う相手によって形態を変化(そういえばまだ赤しかみていない)し、僕は…

 

たぶん…感情で変化するんじゃないか…そう思うんだけど…

 

血を見ると赤色になった。

何か、こう何というか。心の底に火がつくというか、

こういう感情になると白から赤色に…

何故そう思うか、その理由はあの時の「混合二色」だ。あの時僕は、自分一人で血を流してでも、という強い決意の思いと、グロンギのあいつらのせいで…という怒りの感情がせめぎ合っていた。正直、「殺してやる」と…思った。

 

 

紫色は赤と青の混ざった色。僕の中では、赤=血。

そして青=青空…笑顔の五代さんというイメージ…

自分が血を流して戦いの辛さがあっても笑顔を失わない五代さんを僕は助けたい、こう思った。

だから赤と赤と青の混ざった紫…になった?

 

怒りの感情は…おそらく「黒」になってしまう原因…いや…方法だと、思う。

 

 

「黒」は危険だと五代さんから聞いた、いや…夢の中でそれは経験した。

 

 

自分ではなくなる。

 

 

戦うだけの存在。

 

 

では、この夢の五代さんは何故「黒」でも自分でいられたのか…

 

 

 

今の所何も解らない。

 

 

 

グロンギやクウガ、古代遺跡関連…それらはまだ殆どよく理解できていない。

霊石の見つかった古代遺跡関連は僕の亡き両親が長く調査をしていたらしく…

 

 

ん?

 

 

 

そうか…

 

 

 

そうじゃないか!

 

 

 

父さんと母さんの遺留品や関連の調査書類なり調べれば色々出るんじゃ…実際、博士達が僕の両親の調査書類によって解読した石版(五代さんが博士に渡した)も有るし…確か「世界の破滅」について書かれていた。

 

 

だからやっぱり僕の両親がヒントをくれる。

 

 

 

 

 

「そうだ!!」

 

僕は眠りから目覚めた━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

病室で眠っているカオルの看病を桜子に任せ、五代は夏目博士と研究所に戻り調べ物をしていた。

 

 

 

「五代君、見てこれ。」

 

 

 

「これは…」

 

 

夏目博士が五代に見せたもの。

 

 

それは過去にカオルの両親が発見した霊石の写真だった。

 

 

「これと似たものが君や一条君の腹部に有るんだね?」

 

 

「そうです。」

 

 

博士は続ける。

 

 

「実はこれは棺に入っていたミイラの腹部に装着されていたそうで、最初はそのままの状態で調査が開始されて、でその後…その霊石をミイラから外そうとした…これをやっていたのが一条君のご両親な訳ね、しかも2人の最後の仕事になってしまった…」

 

 

 

五代は固まってしまう…

 

 

「まさか…カオル君の両親が行方不明になったのはその時…」

 

 

「書類にはそう書いてあるし、私が知っている限り間違いない。」

 

 

 

五代は自分の元居た世界のあの戦いの「始まり」を思い出す。

 

 

つまり…カオル君の両親がグロンギの封印を解いた?

 

士君が俺が原因だと言っていたのとは全く違う展開だ。

 

 

いや…カオル君がクウガになる原因を作ったのは俺だ…俺があの時止めていられれば…

 

 

 

「そういえば、そのミイラはどうなったんで…ん?まさか…」

 

五代は途中で口を閉ざす。

 

 

「何か気付いたみたいだね?たぶんそれは当たってる、君の思っているとおり…」

 

五代は頷き、続ける。

 

「小田桐さんが言っていた、霊石が盗まれた…あれは盗まれたんじゃない…霊石を装置したミイラごと消えた…?カオル君の両親と共に…?」

 

 

夏目博士は頷きながら、

 

 

「そう…かもしれない。もしかしたらミイラはミイラではなく…まだ生きていた可能性がある。クウガとして。つまり霊石の力でね。」

 

 

 

棺に封印されていて…そのミイラ=クウガ?は眠っていた?そして棺が開放され眠りから封印から目覚めた…?

 

そしてそれをやってしまったのは、カオル君の両親。

 

 

 

それをきっかけにグロンギ復活に至ったのだとしたら…

 

 

「おかしいと思わない?五代君。」

 

 

「確かに、カオル君の両親が亡くなったのは10年ほど前なんですよね?だとすると…しっくりきませんね。」

 

 

「御名答、その10年間の間、クウガやグロンギ、それらは全く確認されてない。」

 

 

まさに未確認だ。夏目博士は続ける。

 

 

「ここ2、3週間だよ。怪物やら怪人やらと言われ出したのはさ。でね、それが君がこの世界に来た辺りと重なるわけ。」

 

 

 

「つまり…えぇっと?」

 

 

五代は解らない。

 

 

「これは推測だけど…君がここに来るのを待っていた…叉は一条君がクウガになるのを待っていた奴がいた、そいつが、10年前のあのミイラだとしたら…何かあり得そうな展開じゃないかなぁと。そう思ってるんだけど。」

 

 

 

「となると…確かに…10年の間何もなかった理由にはなりますね…でもそれだと…」

 

 

 

「それだと?」

 

 

 

「俺が来なければ…どうなっていたのか…とか思います。いや…待てよ…?これは…これから話すことは推測ですよ。」

 

 

 

「ふむふむ訊こうか。」

 

 

 

 

「俺はその(何者か)に呼ばれた?そしてこの世界に俺は…と言うことです。」

 

 

 

 

 

 

「なるほど…」

 

 

 

 

丁度その時、夏目博士の携帯が鳴る。

 

 

 

「ありゃ?桜子だ。はいはいもしもし。うん、あらそう!目ぇ覚めた!了解!五代君と輝ちゃんに伝えとくわ。えっ?検査?ふーん。えっ刑事さんも一緒?へー、うんわかった、一条君に宜しく。じゃね。」

 

 

 

夏目博士は五代に目を向ける。

 

 

 

「一条君目を覚ましたって!丸一日寝てるって相当体力の消耗があったのね…何かとりあえず刑事さんが付き添いで身体検査がこれから有るみたい。」

 

 

「大丈夫そうで良かった…」

 

 

五代は安堵のため息を付く。

 

 

 

「あっ、私輝ちゃんに電話するね。あの話はまた後で。」

 

 

 

 

五代は笑顔と共に相槌をうつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、この世界に俺を呼び出した何者かがいるのなら、会ってみたい、話してみたい。何故俺を呼んだのか。何故棺に居たのか?

 

グロンギの復活がその何者かの仕業だとしたら、色々な事が結び付いてくる。

 

 

 

 

が、まだまだ謎だらけで推測の域を出ない。

 

 

カオル君、無事で良かった。とりあえず今はそれだけで良い、ただそれだけで良い━━━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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青空の破壊者⑦

今回は劇場作品の昭和vs平成にちょっとだけリンクしているお話です。よって門矢士再登場。


「そうだッ!」

 

 

 

「うぇっ、えっ、何?!」

 

 

ビクッとなりながら開口一番の僕の方を見る桜子。うぇっ、は女性としてどうだろうか、とか思うけど。

 

 

「あぁ!カオル!目が覚めたのね!良かった!あっ、先生呼ばなきゃ、あとお母さん達に電話!」

 

 

「桜子、僕どれくらい眠ってた?」

 

 

「えっ、昨日の夕方から…今何時だっけ、あっ20時間近くかな、たぶん?」

 

 

「そうか…」

 

 

 

つまりグロンギ2体相手に今の僕1人で戦うと、その後は20時間ほど戦えない、今のままじゃ…ダメだ。

 

それとなるべく混合二色はやめた方が良い…リスクが多すぎる。今もちょっと身体が重たい気がする。

 

 

「とりあえず先生を呼び」

 

 

「失礼するぞ。」

 

 

 

桜子が言いかけた所に病室に来訪者が現れた。

 

 

「あっ、昨日の五代さんといた方ですね。警察の方ですか?」

 

 

「あぁ、だいたいまぁそんな所だ。」

 

 

例のいけ好かない(あいつ)だった。

 

 

「一条カオル君にちょっと訊きたいこと…検査というか、があってな、勝手だが来させて貰った。」

 

 

「そうですか、じゃアタシその間に先生呼びに行ってきますね。カオルをお願いします!」

 

 

「あぁ、わかった。」

 

 

桜子が病室から出るなり、椅子に腰掛けるいけ好かない(こいつ)が語り出す。

 

 

 

「お前、随分無理してるようだな。身体の方は?」

 

 

僕はベッドに座り込みながら話す。

 

 

「身体はまだちょっと、だけど別に…無理はしてない。ただ出来ることをやろうとしてるだけさ。」

 

 

「出来ることを…ね…。」

 

 

「で、えっと?門矢士だっけ。僕に何の用なんだ?」

 

 

(あいつ)(こいつ)こと門矢士は怪訝そうな顔をして語り出す。

 

 

「俺だって人間だ、人の心配くらい人並みにはする。まぁ、確かに…お前に用が有ってきたわけだが…」

 

 

「それで?」

 

 

「この世界の謎が少し解けそうだ、というより俺は少し解けた気がしている。」

 

 

「どういうこと?何か遺跡関連で解ったことが?」

 

 

士は単独で調べていたのか?

 

 

「いや…遺跡関連は俺はノータッチだ。ただ一つ、ある可能性を見つけ出した。」

 

 

「可能性?詳しく訊かせてもらおうか。」

 

 

軽く士は頷くと続ける。

 

 

「俺はたくさんの世界を旅してきた…いろんな物を見てきた…でだ、この世界は(五代雄介がクウガではなく、存在さえもしない)ifの世界だ、と俺は思い込んでいた。」

 

 

「うん、だから五代さんはこの世界の住人ではないと、別の世界から来たって…エッ、思い込んでいた…?」

 

 

「あぁ、違った、間違い無く違う。」

 

 

士は断言した。

 

 

「えっとつまり、ええっと?」

 

 

よく解っていない僕によく解る日本語でお願いします。

 

 

「この世界の(五代雄介)を俺は見た、いたんだ、この世界にも。昨日のお前の戦いを遠くから見ていたようだった。俺に気付いたあいつは姿を消した。あの顔、姿方、間違い無く(五代雄介)だった。」

 

 

この世界にもいたんだ…五代雄介という存在が…

 

 

 

「この世界の五代さん…」

 

 

「あぁ、間違い無くな。遺跡関連を調べるより、この世界の五代雄介を探して話を訊いた方が案外答えを…この世界の謎を解明できるかもしれん。それと唐突なんだが、お前に頼みたいことがあってな。」

 

 

急に話題を変える士に少し怪訝な顔になる僕。

 

 

会って間もない人物に士は何を頼み事するつもりなのか?

 

 

 

「実はこの世界と五代雄介の元居た世界、以外の世界で大きな戦いが起ころうとしている。」

 

 

「大きな戦い?」

 

 

「あぁ、大集合って所だ。で、その大集合、に近いうち、お前にも協力して貰いたい。」

 

 

 

「戦えって事?別の世界で?僕が?いやいや、この世界がグロンギっていう謎の生命体の脅威に晒されてるのに、そんなの無理だし、それに…本当は戦いたくなんかないよ、僕は…きっと五代さんも、戦えるのが僕だけだから戦っているってだけで…その大集合ってのが何なのかよく解らないし。」

 

 

 

「まぁ、そう言うとはだいたい解っていた。まだ猶予があるんでな…俺も今は仲間集めをしている所なんだが。」

 

 

 

「仲間集め…?戦える存在が他にも有るってこと…?…やっぱり士、君も戦えるのか?そういうことだろう?」

 

 

「あぁ、そうだ。これを使ってな。たくさんの仲間たちに出会ってきた。」

 

 

士はベルトの様なものとカードを数枚取り出した。

 

 

「へぇ…これで戦うのか…」

 

 

どうやって使うのだろうか?

 

 

「まぁ、いずれ俺も戦わなきゃならんだろうからな…その時に御披露目してやる。で、どうだ?協力の方は。」

 

 

正直、無理だ。この世界を何とかしなきゃいけない、五代さんの世界も危機が迫っている。

 

 

「そもそも、士。君はこの世界に五代さんを連れ戻しに来たんじゃないのか?」

 

 

「あぁ、そうだ。で、大集合に協力して貰おうと思っていた、五代雄介にな。」

 

 

「なるほどそういうことだったのか…士、君はいったい何者なんだ?」

 

 

僕はずっと気になっていた…

 

 

「俺か?俺は通りすがりの仮面ライダーだ、覚えなくていい。」

 

 

士は外を眺めながらただ呟いた。

 

 

 

「まっ、また近いうちにお前に会いに来る、その時返事をくれたらいい。今から俺は他の世界の仮面ライダーに協力をしてもらえるよう頼みに行こうと思ってな、今回は…探偵のあいつの所にでも行くとしよう。じゃあまたな。」

 

 

そう言いながら病室を後にする士。

 

 

「仮面ライダー…って何だろう。」

 

 

 

この後僕は医者の検診を受けることになるが、士の言った、(仮面ライダー)という言葉が脳裏を離れることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

あっ、ちなみに無傷で済んだ僕を興味深そうに舐めるように見ていた男性医師(椿先生だったか?)の名前と顔は

 

たぶん今後脳裏を離れることはないと思う。

 

 

たぶん、いや本当に恐怖心とかじゃないから、うん本当に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






カオルが眠っている間だ門矢士は別の世界で仲間集めを再開、そしてまたやってきたという…


次回は五代&カオルの特訓パートに入ります。


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青空の破壊者⑧

青空の破壊者残りあと3話です。今回でいろんな登場人物の名前や例の遺跡の名称が明かされます。


病院を退院し、平和な日々が数日続いていた。

 

入院中も含めると、10日間もグロンギと戦っていない。

 

そんな僕の今日という、とある一日の始まりの朝、目を覚ますと五代さんが台所に立って朝食を作ってくれていた。

一人暮らしの僕の自宅に退院後から五代さんに泊まって貰っている。

 

 

「おはようカオル君~」

 

 

笑顔で何やら手際良く作っている五代さん。料理が上手らしい。

 

「おはようございます、すいません朝食作って貰っちゃって…」

 

 

先日五代さんが士から聞いた話によると、

「大集合」の世界同様、五代さんの世界の危機もまだ少し猶予が有るらしく、それを聞いた五代さんは、

「そっか、じゃとりあえずこの世界を手伝ってから」

と軽く言い退け、今日を迎えてる次第である。

 

朝食を作っている五代さんを見ると本当に凄い人だなと思う、料理が上手ってだけじゃなく、焦りがないというか…凄く強い人だなと…

 

 

「はい!出来上がり!」

 

 

「うわっ、旨そう…」

 

 

朝食からカレー、サラダ、トースト、スクランブルエッグ…豪華過ぎる…

 

 

「さっ、カオル君。顔洗ってきなよ。朝食朝食~」

 

 

五代さんは笑顔で料理をテーブルに運んでいる。

 

エプロン姿が本当に様になっている。

 

 

顔を洗いに洗面所に向かい、鏡の前に立つ僕。

 

 

「笑顔か…」

 

 

ニッ、ニッ、ニッ?ニコッ!

 

 

五代さんの様な笑顔ってどうすれば出来るのか?最近僕は笑っただろうか?

 

五代さんの笑顔を見る度思う。

 

 

 

笑顔の無い五代さんは存在するのか……と。

 

 

「カオル君~?朝食冷めちゃうよー?」

 

 

「あっ、すみませんすぐ行きますから!」

 

 

僕は急いで顔を洗い朝食のもとへ。

 

 

「頂きます!」

 

 

手を合わせ僕が食べる姿を笑顔で眺める五代さんを見るとまた思う、笑顔の無い五代さんは存在するのか……と。

 

 

 

 

 

ちなみに五代さんの作ってくれたカレーは五代さんの元居た世界で旅から帰る度五代さんが働いていた「ポレポレ」という喫茶店でのメニューらしい。

 

とてもおいしい、いや…何か懐かしいようなそんな味だった。

 

朝食を食べながら五代さんの世界の話を聞いた。

五代さんに妹がいること、両親は他界していること、一条さんのこと、驚いたことがあるとすれば、「名前」だ。

一条さんと僕はもとい、夏目という博士があちらの世界にもいたこと。

そしてその娘さんが実加というらしい。

沢渡さんという女性が桜子という名であるらしく、五代さんの世界とこの世界は似ている。

とても環境が似た状態なのだ。

 

僕と五代さんを警察所に同行した刑事さんは杉田さんというのだが、五代さんの世界にも刑事さんで杉田という名前の人が居たらしい。

 

椿という医者の友人も居たらしく、よくよく考えてみれば僕が入院した病院で僕を検診したのは確か椿という名の先生だった、

思い出すと背筋が寒い…気がするのは何故だろうか?

 

 

 

 

朝食を食べ終えた僕は今日も研究所に出勤だ。

 

研究所のみんなは僕がクウガで有ることを知っている。よって何ら問題なくいつも通りだ、今の所は。

 

退院後二日目に刑事の杉田さんが研究所を訪ね、僕と五代さんに、

「怪物の事件に関して私は君達2人の関与を隠しておく事にする、君達もその方が戦いやすいだろう?もし何か困ったりピンチの時は私に直接連絡をくれたらいい。番号を渡しておこう。怪物が何なのかはよく解らんが、1人でも多くの命を守りたい、私はそう思っている、君達もそうだろう?だから私に出来ることが有れば何でも言ってくれ。」

 

この言葉を言い残し、去っていく刑事さんに頭を下げながら僕は内心まだまだこの国の警察組織も捨てたもんじゃないなと思った。

 

 

 

出勤方法は今まで徒歩だった。

 

 

しかし五代さんから言われた一言「基礎的な体力作り」と、自分が思っていた「このままじゃダメ」が合致し、五代さんと共に走って通勤だ。特訓といえば特訓だが本当に基礎中の基礎、効果があるか解らないが、これまでよりもっと強いグロンギが現れたときに備え体力作りに励む。走行距離14㎞…長っ!!

 

走りながら五代さんが話す。

 

「こうやって、あっちの世界で一条さんとよく走ったよ、一条さん全然スタミナ切れしないんだよなー。」

 

「へー、一条さんって普通の人?ですよね?そんなに凄いんですか?」

 

「凄い人だよ、俺達みたいに変身は出来ないけど、それでも身一つでグロンギに対峙したり。」

 

 

スゲェー…生身でグロンギと…

 

 

 

「僕ももっと強くならなきゃ!!」

 

 

「そう、その意気だ!」

 

 

研究所に走り着いた時、正直息はかなりあがっていた。まだまだ足りない、頑張らなきゃ。

 

 

ちなみに五代さんといえば、走り着くなり研究所に駆け込んで、

「実加さん、お腹すいたんですが、何かありません?」

 

と余裕な感じだった。

 

 

 

「えっ、無いけど?」

 

 

 

「何だって…?」

 

 

夏目博士のその一言で倒れ込む五代さんを夏目博士は軽くスルーし、

 

 

「はい、一条君おはよう。この研究書類、今日中に纏めといて。」

 

 

「えっ、こんなに!?」

 

 

 

「何か言った~?」

 

 

 

「はい…了解しました…ん?」

 

 

 

五代さんのように倒れ込むつもりだったが、書類の内容を見るとどうやら僕の両親が生前調査していた例の遺跡関連だった。

 

夏目博士が気を利かせてくれたのだろう。

 

丁度良い、自分なりにあの遺跡を調べよう。

 

クウガ、グロンギ、遺跡、霊石…これらは何なのか…

 

 

「正式名称、栄水(えみな)遺跡…?」

 

 

遺跡の名称は栄水遺跡という名であることをその時初めて知った。

 

研究者名、一条信吾  一条みのり

 

僕の両親の名前が記されていた。

 

 

古代文字、ヒトではないもう一つの存在について、殺戮、戦い、聖なる泉、血と血の争い、などなど気になるワードが沢山ご登場。

 

 

 

 

どうやら僕の一日はこの研究書類の纏めだけで終わりそうだ…一日で終わるよね…?━━━━━━━━━━━━。

 

 




新登場人物名紹介


椿…カオルを舐めるように検診する医者、医者としての能力、腕は確か。検診中、患者が何故か背筋が寒くなるときがある。(カオル談)


杉田…凶悪犯罪課の刑事、実は熱いハートの持ち主。人々をグロンギから守りたい気持ちは誰にも負けない。(本人談)


一条信吾…カオルの父親、10年前栄水遺跡にて消息不明に。夏目研究所のメンバー、栄水遺跡の専門研究者。


一条みのり…カオルの母親、10年前夫の信吾と共に栄水遺跡にて消息不明に。夏目研究所のメンバー、信吾と夏目博士の助手として働いていた。




さて、そろそろ黒幕登場の予定。カオルの少しずつの成長を見届けてやってください。感想など有れば是非とも下さいませ。





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青空の破壊者⑨

青空の破壊者残り2話。少しずつ破壊されていく何か?お気付きでしょうか…?それに気付いた方は読解力強し!


「ただいま~」

 

 

書類の整理に追われ、その声に気付いた時、時計を見ると18時を過ぎていた。

 

声の主は桜子だった。

 

 

「おかえり、桜子。」

 

 

僕は書類片手に顔だけ桜子に 向けた。

 

 

「ただいま~、何その書類?凄い量ね…」

 

 

「あぁ、コレ?」

 

 

栄水遺跡の調査書類だよ、何それ?えーと…

 

 

 

こんな他愛のない会話が僕は本当に嬉しかった。

 

クウガになってから覚悟していた、普通の日々からの離脱。

 

五代さんがいなければ、桜子や博士、みんなに…もし出会っていなければ…僕はきっともっと辛い戦いになってたはずだ。

 

 

生身も入れれば、グロンギと戦ったのは四回だ。

 

そしてクウガとして戦った実戦はそのうち二回。

 

 

これだけなのに…数日前までこれだけ身体が悲鳴をあげるほど辛かったってことは…あちらの世界での五代さんの戦いはどれだけ辛かったのだろうか…とか考えてしまう。

 

 

 

「あら、桜子おかえり。」

 

 

「あっ、おかえりー桜子ちゃん。」

 

 

研究室の奥から夏目博士と五代さんが現れる。

 

 

「ただいま~」

 

桜子は書類から手を離し、2人に駆け寄る。

 

「一条君、それ終わった?」

 

 

夏目博士が僕の方を見て書類を指差す。

 

 

「はい、もう纏め終わります。あの博士、この研究書類…もうちょっと個人的に調べたいので僕に預からせてもらえませんか?」

 

 

「あぁ、良いよ?来月学会に発表になるからそれまでなら。」

 

 

「あれ?そんなに期限が有ったのに何で今日中に?」

 

 

「あぁ、それはね。一条君、君は明日から一週間、有給だからだよ。今日中にそれを終わらせれば君の仕事は約一週間無いからね~」

 

 

 

 

「はい?何ですそれ?有給?僕が?言いましたっけ?」

 

 

僕は呆然と問う。

 

 

「それさ!実は、俺が頼んだんだ。勝手なことしてごめん。」

 

 

五代さんが頭を下げる。

 

 

「エッ?ちょっと五代さんやめてくださいよ、でも何で僕が有給?」

 

 

「その…一緒に調べないかい?あの遺跡…えっと栄水遺跡だっけ?そこで住み込みで調査したいんだけど…よかったら…」

 

 

夏目博士が続

 

 

「今日、小田…こほんっ、輝ちゃんに調査依頼と協力を要請しといたから、荷物や機材やらはうちのを使いなさい。」

 

 

「あり…ありがとうございます!」

 

五代さんと博士に気を使わせてしまった僕はただお礼しか言えない。

 

 

「じゃあ明日から2人で特訓もかねて行こうか!」

 

 

特訓とか聞こえたけど気のせいであってください。

 

「とりあえず今日はうちの家に泊まりなさい、その方が遺跡も近いし。」

 

 

「えっでも着替えやら何も…」

 

 

「それは大丈夫!カオル君が仕事している間、君の家に一度戻って荷造りして持ってきたから!」

 

 

五代さんはキメ顔でそう言った。

 

 

「そうなんですか!すみません…じゃあとりあえず博士の家に…」

 

 

 

そこで桜子が声をあげる。

 

 

「ちょっと待って!」

 

 

「うちに来るなら…その…夕飯、私が作るから!」

 

 

ガタッ!(僕の逃げる足の音)

 

 

ガシッ!(たぶんグロンギよりも強い力の桜子に捕まれた音)

 

 

「どこ行くのカオル…(笑)?」

 

 

「…世界を救いに…」

 

 

桜子に料理はやらせたくない。本当に大変な事になる、いや本当に。

 

 

「じゃあ俺も手伝うよ桜子ちゃん!こう見えて料理得意なんだ!」

 

「ほんとですか!?じゃあ何にしましょう?」

 

 

「そうだね~うーん」

 

 

五代さんが手伝うなら安全だ、大丈夫だきっと。

たぶん…いや絶対…

 

 

ふと横を見ると青ざめた顔で出前のチラシを読み漁る博士が居た…愛娘の料理の被害者第一号…ちなみに僕は未確認だがおそらく四号らしい、未確認四号…

 

あと二人の犠牲者のご冥福をお祈りします。

 

 

 

 

 

 

その後結局、五代さんの活躍で夕飯は無事済み、とても満足したものとなった。

 

五代さんの機転で桜子はとりあえずご飯を炊く作業、それと皿洗いに担当され難を逃れた、僕達が。

 

 

当の桜子は不満そうだったが五代さんの料理を口にすると途端に笑顔になり機嫌は元通り、良かった、本当に良かった!

犠牲者が出なくて。

 

 

味がやばいのではなく、すべてがやばいのだから。

 

 

 

 

時計が22時を回る頃、リビングで昔の写真のアルバムを皆で見ていた。

 

特に僕と桜子、輝ちゃんが3人で遊んでいる写真が多かった。

 

 

その中には僕と僕の両親と博士そして桜子が集まって映っている物もあった。

 

 

「この人たちがカオル君の?」

 

 

「はい。両親です。」

 

 

 

「これは驚いたなぁ…」

 

 

「何がです?」

 

 

五代さんの呟きの意図がつかめない、桜子と博士もどうしたの?という感じ。

 

 

五代さんは続ける。

 

 

 

「いやー、カオル君のお母さん確か、みのりさんだっけ?俺の妹にそっくりなんだよ、びっくりだ。ちなみに俺の妹の名前もみのりって言うんだ。」

 

 

 

「…それは又…びっくり飛び越えて…何でしょう唖然?」

 

僕はただそう応えるしかなかった。

 

やはりこの世界は五代さんの居た世界と似て非なる世界のようだ、それも限りなく近い環境の。

 

 

「みのり、元気にしてるかな…?」

 

 

五代さんは写真の僕の母親を身ながらつぶやく。

 

 

 

「あっ、ごめんなさい!しんみりしちゃって!」

 

 

五代さんはすぐさま笑顔で謝る。

 

 

「良いの良いの。写真はそういう時のための物なんだから。」

 

博士が五代さんの肩をたたきながら言う。

 

 

五代さんはただ笑顔で頷く。

 

 

「そうだ、ずっと気になってたんですけど…その、実加さんの旦那さん…は?良かったら聞かせてもらえませんか?」

 

 

五代さんが博士に問う。

 

 

「あっ、ああそうか。言ってなかったっけ?私の旦那はね、えーと写真写真。」

 

 

博士はアルバムを漁る。

 

 

「あった!こいつこいつ!」

 

 

 

昔聞いたことがある、桜子の父親であり博士の旦那に(なる予定だった)人。

 

本名、葛城喜多郎 元古代文明研究組織教授。

古代文字研究の会議で博士と出会い、その後二人の間に桜子が生まれる。

桜子が一歳を迎える直前に急にどこかの世界へ旅立ち消息不明に。

それから20年以上も連絡が付かず今に至る。

博士も桜子もあまり気にしていないらしく、もう別にどうでも良い人らしい。よって夏目博士は旦那さんの姓を名乗らず、自分の姓で今までやってきた。

 

と、博士が五代さんに説明。

 

 

「何か…実加さん、本当に強いですね!」

 

 

「そう?まぁ、一時期でもこいつを愛しちゃったからねー、まっ私は桜子が居れば良いからさ。どこほっつき歩いてるんだか。旅が好きだったのよ、こいつはさ…」

 

 

写真の旦那さんにデコピンをしたかと思えば、さっと写真をしまう博士。

 

 

「さっ!お風呂入ってきなさい若い衆!私は最後で良いから。」

 

 

「じゃあ桜子、一緒に入ろうか?」

 

と、冗談混じりで僕が桜子を誘うと、

 

 

 

「んっ、えっ!?…うん……。じゃあ…」

 

 

えっ、あれ、ちょっと違う、予想と違う反応で僕の調子が狂いそうだ。

 

 

「じょ、冗談冗談、桜子冗談だから!」

 

 

 

その様子を博士と五代さんが見ていて一言ずつくれた言葉は、

 

 

「あのさー、もうさー、あんたたち早く結ばれろよー。」

 

 

「俺も…思うよ。二人はお似合いだよ。挙式には呼んでね?」

 

 

 

桜子は顔を真っ赤にして固まっている。

 

 

そして僕はといえば、僕もまた顔を真っ赤にして固まっていた。

 

 

すんません、何か…すんません━━━━━━━━━━。

 

 

 




桜子は幼稚園の先生という設定ですがなかなかストーリーに絡めにくいです、何かいい方法無いかな…


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青空の破壊者⑩

次で青空の破壊者は終了します、久々に門矢士も登場予定です。タイトルの青空の破壊者の「破壊者」は門矢士にもかけていますが、実は色々意味が有りまして、次章「青空の消失」で明かされます。では今回は小田桐輝の暴走をお楽しみ下さい。


 

明くる日、博士と桜子に見送られ、五代さんと二人で歩いて栄水遺跡に向かった。

到着したときに輝ちゃんが出迎えてくれて、嬉しかったけど、正直言うと、なんかちょっと疲れた…輝ちゃん元気すぎだよ…恐るべし、話し出すと止まらない病。

 

 

 

 

栄水遺跡…ここは…約一月前僕と五代さんが出会った場所、僕の両親が失踪した場所、そして…僕が初めてクウガになった場所。

 

 

その場所で僕は真実、真相に迫ろうとしている。

 

 

この世界の謎、古代文明の謎、もしかすると両親の失踪した理由も解るかもしれない。

 

 

そして気になっている事項。

 

 

僕の両親が失踪直前に発見したとされる、霊石を身に宿し棺に眠っていた何者か。

おそらくその何者かが、今僕達が直面しているグロンギの襲撃の謎と僕の両親の失踪の謎、の鍵を握っているに違いない。

 

 

遺跡の奥深くにあるという現場へと向かう途中、僕は唐突に五代さんに聞いてみた。

 

 

「五代さん聞きたいことがあるんですが。」

 

 

 

「うん?何だい?」

 

 

「五代さんが自分の世界で最後に戦った、あのグロンギ。この世界にもいると思います?」

 

 

「あー…カオル君は知ってるんだったね、夢で見たんだっけ?いるかどうかは解らないけど、もしいるとしたら…いや居ないとしても正直に言うと二度と会いたくない。」

 

 

「…ですよね。ごめんなさい変なこと聞いて。」

 

 

「いやいや、良いんだ。ただ会いたくない理由はというか…俺が今はおそらく戦えない状態だろ?

だから、君が戦ってくれてる。だからこそ、カオル君にあのグロンギと戦って欲しくないんだよ。

正直に言うとさ、あの最後の戦いの時、俺は怒りで狂いそうだった。

戦いを楽しそうにやっている奴が目の前にいて、そいつがたくさんの人を殺したことも事実で…

怒りと憎しみに泣きながら、それを堪えてただ皆の笑顔のためにって想いながら戦った。

戦い終えて気付いた事があった…このままじゃみんなの笑顔を見ることは出来ない、自分が笑えない状態なんだと気付いた。

だから自分が心から笑顔になれるまでは仲間の元には帰らないでおこうってね。

つまり、それくらい辛い戦いをカオル君にはして欲しくないんだ。俺がこんな状態じゃなかったら、君は戦わずにすんだかもしれないから…そう思ってる

本当はね…」

 

 

「そんな!僕は大丈夫ですよきっと!もっと強くなりますから!それにグロンギも最近出ないし!」

 

 

「それでも…ね。いないで欲しい。」

 

 

「五代さん…」

 

 

そんな話をしながら、栄水遺跡の内部、古代文明の文字が大量に刻まれた、僕の両親が失踪したその場所まで初めてやってきた。

 

 

 

「ここが…」

 

 

 

「そう、俺が目が覚めた場所、そして」

 

 

「僕の両親の失踪場所…全ての始まりの場所?」

 

 

 

話には聞いていたが。

 

 

人が50人ほど入れる場所、そして周りの壁の一面は古代文明の文字でぎっしり埋められ、この場所の中央に棺が「2つ」有る事。

 

 

「アレッ?棺が2つ有るね、俺のいた世界はどうだったんだろう?」

 

 

「うーん、そもそもこの棺が2つ有るなんて僕初耳というか…初見というか…だから、どうなんでしょう?」

 

 

到着してから一息ついているときに輝ちゃんから遺跡内部の話を聞いた。

 

 

その時聞かされた棺の話、2つ有るとは聞いていなかった。

昨日博士に収集依頼された僕の両親が残した書類に記載されていただろうか…?

 

この棺が発見されたのは10年前。

 

 

そして、2つ有るうちの一つを僕の両親が開放した。

 

そしてその後僕の両親は消失した、そこまでは調査書類で解っている。

 

 

 

「まぁ、とりあえず何から調べましょう?僕の両親が古代文字の解明はしてくれていたみたいなんで、壁の文字は一週間も有れば全部解読できそうです、それに途中まで解読してたみたいで、ほら。」

 

 

僕は博士から預かった、いや…両親から託されたヒントである古代文字の書類を五代さんに見せる。

 

 

 

「どれどれ…聖なる泉が枯れ果てた者が現れるとき、世界は空を失い人は恐怖する、光を統べた者が現れるとき、それを光と炎で打ち払い、世界は光を取り戻す、か…」

 

 

「あと、博士達が五代さんから預かってたあの石版の文字、世界の終末を書いていたとか。」

 

 

「あぁ、実加さんから聞いたよ。君のこと何じゃないかとか言ってたね、何だっけ?新たな選ばれし者?だっけ?聖なる泉…これは俺も知ってるよ、俺のいた世界にも同じ文字があったから。」

 

 

「へー、でも聖なる泉って何なんですかね?」

 

 

「たぶん…心…じゃないかな。」

 

 

「心?心が枯れ果てる?」

 

 

「つまり、自分を見失い、何のために何をするのか?自我を失うということかな…何となく解る、今ならね。」

 

 

「なるほど…(思うところがある…のかな?)」

 

 

 

「それはそうとカオル君。」

 

 

「えっはい?」

 

 

「もう一つの棺、あれも開放されてるって話も聞いた?」

 

 

「聞いてないですね、さっき見たとき、あれーおかしいなー二つ有るなーてか、開いてるなー何でかなーなんて思う余裕は持ちたかったんですけど。色々スルーしてました。」

 

 

「いやー、本当本当。俺もあえてスルーしてたけど。」

 

 

 

2つ棺があって2つとも開いてる。

 

それが事実。

 

 

「帰ってから輝ちゃんに聞いてみましょう…」

 

 

五代さんは頷いて調査の準備を始める。

 

 

 

輝ちゃん話し出すと止まらなくて重要な事忘れちゃうんだよな…昔から…

 

 

「変わらないな…みんな…」

 

 

輝ちゃんも博士も桜子も、僕は…

 

 

「ん?何かいった?」

 

 

「あっ、何でもないです!さっ、始めましょう!」

 

 

「ん?ああ!とりあえず解読されていない文字から手を着けていこうか。」

 

 

「はいっ!」

 

 

 

そこから今何時だろう?と腕時計を見て驚く時間まで作業し、遺跡の付近に有る関係者用の施設に戻る事にした。

 

時刻は20時を回ろうとしていて外は真っ暗だった。季節は夏を終えようとしている時季、少し肌寒い風が吹いていた。

 

 

 

「もう!遅い!心配したでしょ!」

 

 

施設の玄関先で僕と五代さんを待っていた輝ちゃんが叫ぶ。

 

 

「ごめんなさい。」

 

 

五代さんが謝ると、輝ちゃんは続けて

 

 

「はぁ…とりあえず、中入ってからお説教です。」

 

 

「エッ?」

 

「何か言った?(一条君)?」

 

僕を一条君と言うときはだいたいあれで、あのいけ好かない門矢士の言葉を借りるならこうだろうか…だいたいわかった。

 

始まります、キレキレのずっと輝ちゃんのターン…やめて、僕のライフはもう0だよ…?

 

 

 

 

それから約一時間後、五代さんの作った夕食により機嫌が直り、笑顔だけでなく口も止まらなくなった(しゃべる方の意味で)輝ちゃんに聞かなければならないことがある。

食事中だが別にいいだろう。

 

 

「輝ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

 

 

「何?あぁもしかして、桜子との子供の作り方?」

 

 

ゴフッ(五代さんの咽せる音)

 

 

ブフッ(僕が食べていた物を吐き出す音)

 

 

 

「やだっ、ちょっと二人とも汚い!」

 

 

「だって輝ちゃんが変なこと言うから!」

 

 

「そうだよ!さすがにカオル君もそれくらい知ってるよ!」

 

 

「えっ、そこ五代さん!?」

 

 

「なーんだ、カオルン知識は有るの、良かったわー。」

 

 

「良かないわ!僕と桜子はまだそういう関係じゃ!」

 

 

 

「「まだ?」」

 

 

最後に五代さんと輝ちゃんの声が重なり、2人ともニヤニヤしてる。

 

 

「…もうやだ…」

 

顔が真っ赤なのを隠すためテーブルに顔を落とす。

 

ゴンッ(勢い余って額をぶつけた音…痛いよぉ…)

 

 

「あぁ、ごめんごめん(笑)で、何よ?聞きたいことがあるんでしょ?」

 

 

「じゃあ俺が変わりに、遺跡の中にある棺の話でね。」

 

 

五代さんが僕に変わって聞いてくれた。

 

 

「あぁ、カオルンのご両親が開放したやつですか?」

 

 

「そう、でもそれじゃなくて。もう一つ棺が有るだろ?あの棺はいつ開放されたのかなって。」

 

 

「はい?ん?えっ…ちょっ、ちょっと待って下さい五代さん、えっ?もう一つの棺?あそこに?何の話です?私そんなの見たこと無いけど…?」

 

 

「「えっ?」」

 

 

五代さんの声と驚いて顔を上げる僕の声が重なる。

 

 

輝ちゃんは続けて

 

 

「あの場所が発見されたときから今に至るまでに、壁一面の古代文字と棺が一つ、そしてその棺の中にいた何かと霊石が2つ、それしか発見されてませんよ…?」

 

 

「いやでもっ!確かに有ったよ!?ねえ五代さん!」

 

 

「あぁ…間違いないよ…どういうこと…?」

 

 

「ちょっと待って…あっ有った。はい、これみてこの写真。最近撮った遺跡内部の写真ね。」

 

 

輝ちゃんはファイルらしき物から写真を取り出す、食事中でも仕事を手放さない研究者らしい一面でもあるがそんな事より、

 

 

「よく見なくても一つしか棺は無いでしょ?」

 

 

と、輝ちゃんは問うが、

 

 

「五代さん…」

 

 

「あぁ…」

 

 

 

次に口にした僕と五代さんの答えは同じだった。

 

 

 

「「2つ有る。」」

 

 

 

「ごめん、意味わかんない。」

 

 

と、輝ちゃんが口にしたのを最後にその場は沈黙を迎え、時刻ももう直ぐ明日を迎えようとしていた━━━━━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 




今回のお話で五代雄介が何故仲間の元から離れ旅に出たのか…も筆者の勝手な解釈で書きました。なのでオリジナル設定とは少し違うかもしれませんのでご理解を。
あと、今思案中なのが当初は「行方」→「破壊者」→「消失」→「旅立ち」の順の四部作の予定だったんですが、「足跡」という章を追加しようかと…
「旅立ち」→「足跡」で終わりにしようかと思ってます。うーんまだまだ長くなりそうだ…読んでくれている皆様どうか最後までおつきあい下さい。


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青空の破壊者━終━

門矢士、久々の登場。そして今作にて初変身回です。
そして青空の破壊者、これがラストになります。次章は第三部「青空の消失」となります。



しばらくの沈黙の後、輝ちゃんからとりあえず今日は遅いからお開きにしようと提案され、それぞれ寝床に着いた。写真もとい2つの棺の件は翌日に持ち越された。

 

翌朝、時刻は8時。少し遅い目覚めになってしまった僕は慌てて寝間着から着替え、昨晩食事を取った研究者用の休憩室に向かった。

 

 

 

「おはようございます、遅くなり…あっ」

 

 

まで言いかけた僕の視界に写る休憩室内には輝ちゃん、五代さん、そして…通りすがりのいけ好かないあいつがいた。

 

「おはよう、カオル君。」

 

「カオルンおそよー。」

 

 

五代さんと輝ちゃんが手を上げならが迎えてくれた。

 

「よう、また会いに来てやったぞ。」

 

コーヒーを啜りながら、声だけで迎えてくれやがった士がそこにいた。

 

「…今日は何のようだ?」

 

僕は怪訝な顔を解るように士に見せながら問う。

 

 

「おいおい、そんな朝から機嫌悪そうにするな、コーヒーが不味くなる。五代雄介のいれたコーヒーは中々旨いんだからな。」

 

 

確かに五代さんのいれたコーヒーは美味しいが、意外だった。門矢士という人間は人を誉める事を言える奴なのかと、その時ふと脳裏に浮かんだ先日の病院でのやり取り、士はこう言っていた。

 

 

「大丈夫か?俺だって人間だ、人並みに心配だってする。」

 

と。

 

 

そうか、そういう奴なんだ。

 

 

「悪かったよ。で、今日はどうしたのさ?もう(大集合)の時が来た?」

 

 

「いや、まだ少し猶予は有る。今日俺がここに来た理由、それはお前に強くなってもらうために来た。」

 

 

「僕に強く?」

 

 

輝ちゃんと五代さんは僕と士の会話を黙ったまま聞いている、おそらく士からこの話は聞いているのだろう。

 

 

「あぁ、(大集合)の時にお前だけ弱かったら足手まといにしかならんし、大勢の命がかかった戦いでもあるからな。それに五代雄介が戦える可能性が低い今、お前が強くなければ次グロンギが現れたら…だろう。」

 

 

「確かに僕はまだまだだけれど…でも…何をするの?具体的には?五代さんも特訓するって言ってましたよね?」

 

 

と、五代さんに振ると、

 

「実は士君にお願いしてたんだよ。この前君が病院で士君に会った後、士君が俺の元を訪ねてくれてさ、その時に。戦ってほしくないって思ってるけど、君は戦う意志を持ってるから。だからせめて少しでも強くなる方法をね?この遺跡付近は人が少ないからそこでお願い出来ないかと、そしたら、」

 

 

まで五代さんがいいかけた所に士は割ってはいる。

 

 

 

「単刀直入に言う、一条カオル、いや仮面ライダークウガ、世界の破壊者である俺、仮面ライダーディケイドと戦ってもらおう。」

 

 

「はい?僕と士が戦う?」

 

 

「そうだよカオル君!これが俺が言っていた特訓だ!」

 

 

「…マジで…?」

 

 

 

「カオルン!ファイト!」

 

 

五代さんと輝ちゃんが同時にサムズアップで笑顔を向ける。

 

 

「陳情だな…」

 

 

士は何か呟きコーヒーを啜りだした。

 

 

 

戦うの…?マジで…?

 

 

 

かくして、士と戦うというハードスケジュールから僕の一日は幕を開けた…そもそも、よく士が口にする「仮面ライダー」って何なんだろう?

 

 

 

 

 

 

採石場にて━━━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

輝ちゃんは仕事があるため別の場所へ、そして僕と五代さんと士は施設から少し離れた採石場にやってきた。

 

 

「さて、始めるか。準備は良いか?」

 

 

僕に対峙する士はどこからか取り出したベルトのような物を腰回りに装着。

 

 

 

同時に僕も腹部に力を込め、ベルトを出現させる。

 

 

 

「準備オーケー!」

 

 

「んじゃ行くぞ?変身ッ!」

 

 

 

士はカードを取り出し、ベルトに差し込む。すると不思議な電子音が聞こえたかと思うと、次の瞬間に士はマゼンタ色の戦士の姿へと変身していた。

 

 

 

「これがディケイド…」

 

 

五代さんが呟いた。

 

 

 

「じゃあ僕も!見てて下さいよ五代さん!変身ッ!」

 

 

 

五代さんの動きを真似た変身に至までの動作、少しはまともになったかな?

 

「ってあれ?」

 

僕の身体の色はまさかの白だった。

 

 

「やはりか…」

 

 

士…ディケイドが続ける。

 

 

「カオル!そんなんじゃあダメだ!俺を殺す気になれ!そうすれば赤になれるだろう。」

 

 

「そんな…」

 

 

僕は悩むしかない。

 

 

 

「仕方ないそのままどれだけやれるか試してやる、行くぞ?ハァッ!」

 

 

ディケイドはダッシュで僕へと間合いをつめ蹴りの体制へはいる。

 

 

 

「くっ…」

 

 

ディケイドが目の前に来た瞬間、僕はそれをかわし無防備になっているディケイドの背中に蹴りをいれようとするが…

 

 

「かわす速さは中々早いが、攻撃の威力と速さが足りないな。」

 

 

すぐさま振り返るディケイドの蹴りによって相殺され、右の拳を顔面に打け数メートル飛ばされてしまった。

 

 

「嘘だろ…」

 

 

たった数十秒戦っただけで解る明らかな戦力差。圧倒的な格差。膝を着きながら立ち上がると、殴られた場所を手でさすると手に少し血が着いているのに気付く。

 

 

「カオル君大丈夫かい?」

 

 

五代さんが駆け寄ってくる。

 

 

「はい!見てて下さい!これからですよ!」

 

 

 

「よし!その意気だ!」

 

 

と、五代さんが少し背中を押してくれた気がする。

 

 

「行くよ士!変身ッ!」

 

 

僕の身体が白から赤に変わる。

 

 

手に着いた血の色のイメージ、この血を見ないためにも僕は強くなる!と、思った瞬間赤色に変貌した。

 

 

「さて、本番はこっからのようだな。行くぞ!」

 

 

 

 

そこからどれくらいの時間、ディケイドと戦っただろうか?

 

 

 

動きを止め唐突にディケイドが言う。

 

 

 

「カオル。」

 

 

 

「何?」

 

 

 

「体力的にはどうだ?」

 

 

 

「まだ行けるよ!」

 

 

 

「そうか、ならば…お前の必殺技、俺にぶつけてろ。」

 

 

 

「必殺技?」

 

 

 

「敵を確実にしとめられる技、クウガは封印の文字を蹴りやらで打ち込む、それを俺に見せてみろ。遠慮はいらん!」

 

 

「わっ、解った!」

 

 

 

僕はディケイド向けて走り少し飛び上がりながら封印の飛び蹴りを打ち込む、が。

 

 

 

「ちょえっ!?」

 

 

 

ディケイドは僕の蹴り出した右足をうまく掴みそのまま投げ飛ばす。

 

 

 

「ウワァァァッ!?」

 

 

そのまま再び数メートル飛ばされてしまう。

 

 

 

「いててて…」

 

 

 

ディケイドがつめより語りかける。

 

 

 

「カオル、今のがもし本当の戦いならお前の命はここで終わっていたぞ、お前の命が終わる、つまりこの世界の終わりだ。」

 

 

「うん…」

 

 

 

「威力が足りなさすぎる、五代雄介、あんたのあれ、教えてやったらどうだ?」

 

 

と、ディケイドは五代さんに問う。

 

 

 

「俺の奴か…まぁカオル君に合うかどうか解らないけど…やってみるかい?」

 

 

 

「もしかして、空中で一回転?ですか?」

 

 

 

ディケイドと、五代さんが頷く。

 

 

 

「やってみます!」

 

 

 

右足に力を込め空中で前回転しそのまま右足で蹴りを打ち込む。

 

 

それを何度かディケイド相手に繰り返し、様になってきた頃にディケイドは急に士の姿へと戻る。

 

 

 

「えっ、どうしたの士?」

 

 

 

士は服を正しながら、言う。

 

 

「そろそろ、締めのテストと行こうか。」

 

 

 

と、士が見つめる先に、一体のグロンギがいた。

 

 

「俺たちの気配に釣られて現れたんだろう。」

 

 

士は冷静に答える。

 

 

 

「カオル!」

 

 

 

「カオル君!」

 

 

 

「はいっ!」

 

 

 

そのグロンギの姿がどんな奴なのかも見ることすらせず僕はグロンギ目掛け駆け出す。

 

 

 

「ここだっ!」

 

 

 

と、少し飛び上がり、空中で前回転し、グロンギ目掛け蹴りを打ち込む。

 

 

 

「ウォリャッー!!」

 

 

叫んだりもしてみた、よく考えたら五代さんと同じかも。

 

 

ドンっという鈍い音と共にもうそこにはグロンギはいなかった。

 

 

 

 

「上出来だ。」

 

 

 

士は呟き五代さんはサムズアップと笑顔で喜んでくれたりして、少し嬉しかった。

 

 

 

 

「この技、名前を付けるなら何が良いかな…」

 

 

と、僕が言うと士はすかさずこう答えた。

 

 

 

「ライダーキック…ってのはどうだ…?」

 

 

 

「良いねぇ、ライダーキック。カオル君言いと思わない?」

 

 

「ライダー…キック…」

 

 

バタッ(僕の倒れる音)

 

こうして僕の今日という一日は終わった。

 

 

 

遠い意識の中、士と五代さんの会話が聞こえていた気がする。

 

 

 

「ったく、世話の焼ける奴だ。五代雄介、後は頼んだぞ?」

 

 

「あぁ、士君今日はどうもありがとう。」

 

 

「気にするな、どこかの旅人も言っていた、ライダーは助け合いでしょってな。」

 

 

「その…ライダー?仮面ライダーって何なんだい?」

 

 

「そうだな、俺達みたいな命知らずの冒険家の事を言うんじゃないか?」

 

 

「そうか…」

 

 

「まっ、また近いうちにこの世界の様子を見にくるから、またそん時にな。」

 

 

「あぁ、またね。」

 

 

士は歩き出し、手を振る。

 

 

五代もカオルを背負い歩き出す。

 

 

それぞれ反対方向へ。

 

 

 

「五代雄介、あんたのコーヒー旨かったぞ」

 

 

 

五代が振り返るがそこには士の姿はなかった。

 

 

 

「門矢士…面白い人だな(笑)」

 

 

と、呟きながら空を見上げると、眩しいくらいの青空がこの先の不安を破壊してくれた、そんな気が五代はしたのだった━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

青空の破壊者━終━

 

 

 

 




門矢士の成長した姿を書きたくて書いたお話ですがどうでしたか?今回、門矢士が破壊したもの、それは門矢士自身の人物像と、主人公カオルの戦い方の甘さです。
ほんとねー、士はね、良い奴なはずなんですよ、たぶん!

次章「青空の消失」もお楽しみに!


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青空の消失
青空の消失①


第三部突入です。「消失」というタイトル自体がかなり重要になってきます。そしてこの第三部で、幾つかの謎やら伏線を回収予定です。「五代が何故世界を越えてきたか?」「門矢士が見た、もう1人の五代雄介の正体」「カオルの腹部にある霊石の傷」これらの種明かし!お楽しみ下さいませ!


 

 

 

「俺が変身すればどうなるか、かい?」

 

 

「ええ、前に聞いてから気になってましてね。過去の調査ファイルやデータ、文書を調べたんですけどね、クウガという存在がクウガでは無くなるとき封印されるべき存在になる。っていう文字が書かれている文字が有ったみたいなの。どう思います五代さん?」

 

 

遺跡の施設に士君との特訓とグロンギとの戦闘によって疲れ果てたカオル君をつれて帰ると、輝さん…輝ちゃんが出迎えてくれた、輝「ちゃん」って言わないと怒られるんだよな…

 

 

「そんなことが書かれていたのか…今の俺みたいな感じ?クウガになれないクウガ…いや、でも少し違うかな、俺は変身してから少し時間が経つと、意識を持って行かれるというか…いや…持って行かれた先か…」

 

 

俺は知っている、黒き闇に包まれし凄まじき戦士を。もしそれが「封印されるべき」存在だとすれば…

 

 

「何か心当たり有ります?」

 

 

 

「まぁ…ね。ただまだ確信はない。」

 

 

「…?とにかくカオルンは今眠ってるし、この話の件と昨日のもう一つの棺の件、今日の調査はこの二つで行きましょう。」

 

 

「了解、そういえばカオル君はどこで寝てるの?」

 

 

「あ、他の研究員に医務室に運んでもらいました。この施設にはそういう場所が最近出来て…その…1ヶ月ほど前私達がここでグロンギに襲われた後に。」

 

「そうか、それで…あっそういえばこの辺りはグロンギの気配が多いんだ、よくよく考えてみるとこれもおかしいんだよな…」

 

 

「気配が多い…おかしいって何がです?」

 

 

「他の場所でグロンギに会うより、ここで会う数が多い気がする…いや違うな、俺やカオル君が行く場所の近くに誘き出されるように現れる、ついさっきも現れたし。」

 

 

士君が言っていた「気配に釣られて」は強ち間違いではない…?

 

 

「この栄水遺跡はグロンギやクウガが眠っていた場所だろうから、たぶん何かあるな…と。」

 

 

輝ちゃんは俺の話をメモに取っていた。

 

 

「あぁ、すみません、気になったらついこの癖が…」

 

 

「いやいや、でも何をメモしたの?」

 

 

「グロンギの気配が多い、つまり危ないって事じゃないですか!」

 

 

「あぁ、うん。」

 

 

取り乱したように叫ぶ輝ちゃんに少し俺は驚いた。

 

 

「警察に協力要請やっぱりしてもらおうかと…」

 

 

あぁ…そうか。

 

輝ちゃんは怖いんだ、謎の存在が…それが当たり前なんだ。

 

 

俺も最初はそうだった、ただ怖かった、ただ一心で戦い抜いてきた、笑顔のために。

 

 

「その方が良いかもしれないね。そうだ、俺とカオル君が知ってる刑事さんに頼んでみるよ、その件は俺たちに任せてよ。」

 

 

「本当ですか!?良かった…じゃあその件はお任せします、とりあえず作業始めましょうか!」

 

 

 

安堵のため息をつく輝ちゃんは作業に取りかかり始めた。

 

 

「とりあえず、遺跡の中に行って棺を確認しないと。」

 

 

「了解、じゃあ俺準備してくるからちょっと待ってて!」

 

 

数分後、準備が出来た俺は急いで輝ちゃんのもとへ。

 

「お待たせ、それじゃ行こうか!」

 

 

カオル君には置き手紙を一応しておいた。

 

(お疲れ様、もし目が覚めてこれを読んでいるなら今日は安静にしておくように、とりあえず輝ちゃんと遺跡に昨日の棺の件調べにいくからさ、あっ今日の晩御飯何が良い?俺が作るから、メニュー考えといて下さい。by五代)

 

と。

 

 

施設から遺跡内部の目的地までは徒歩15分程の距離にある、俺はその移動中にちょっと気になっていた(ある事)を輝ちゃんに聞いてみた。

 

 

「ねえ、輝ちゃん聞きたいんだけど?」

 

 

「はい?何ですか?」

 

 

「輝ちゃんさ、カオル君の事、好きだよね?たぶん。」

 

 

「ちょえっ!?なっにゃにお!?」

 

 

盛大に噛んだところを見ると図星のようだ。

 

 

「カオル君の事異性として好きなんじゃないかなーって、昨日からちょっと思っててさ。違う?」

 

 

 

「…うぅっ…むっ、昔ですよ!昔好きになっちゃう様なことがあったんです!認めます!」

 

 

顔を真っ赤にしながら俯き歩く輝ちゃんは続ける。

 

 

「あの時…10年前カオルンのご両親が死亡認定されたあの時、当時私は高校生で…カオルンや桜子は中学生でしたから、そりゃもう皆泣いてました。カオルン以外は。泣かなかったんですよ、カオルン。その時にカオルンが私に言った一言がね、もう惚れてまうやろーってやつで、なんて言ったと思います?」

 

「うーん、何だろう。俺そういうの疎いからなぁ…」

 

と、目線を下に向けたまま輝ちゃんは言う。

 

 

 

「僕はいなくならないから、大丈夫!だから泣かないでよ輝ちゃん、輝ちゃんは笑ってる顔が一番素敵だし可愛いよ、デスヨ?こいつ両親亡くして自分が一番辛いはずなのに、何でそんなことを年上の女に言えるんだ?押し倒して襲うぞ?とか、当時本気で思ってました…」

 

 

「最後の方は…穏やかじゃなかったけど…カオル君、モテる男は罪だなー、ははっ。」

 

 

つい笑いが出てしまった。

 

 

「カオルンには秘密ですからね!もちろん桜子にも!」

 

 

つまり「今も好き」なんだなー。

 

 

「解ってるさ、まぁ頑張りなよ!」

 

 

 

「解ってますよ!…って、違います違います違いますから!今は昔!違った昔の話ですから今はもうほら桜子にぞっこんでしょ!?カオルンわっ!」

 

 

「それは解らないよ、うん。解らない!」

 

 

「…マジで…?脈有る…?」

 

 

口調が崩壊している輝ちゃんが面白すぎてついついからかいたくなるが、そろそろ目的地に到着だ。

 

 

 

「輝ちゃん、話の途中だけど、着いたよ?」

 

 

 

「えっ、あっはい!私ったらごめんなさい!で、棺だ、棺は…」

 

 

俺は棺の方へ歩き出し、2つの棺の間で立ち止まる。

 

 

「おそらく、輝ちゃんはこの棺は見えてるはずだ。」

 

と、輝ちゃんと向き合い俺は自分の左側の方を指さす。

 

 

「はい、蓋の開けられた棺ですね。でも…」

 

 

俺が右側を指さすと、

 

 

「見えません…ホントに有るんですね?そこに?」

 

 

 

やはりか、やはり見えないのか…

 

 

 

「左側の棺は真っ黒だけど、輝ちゃんの見えていない方の棺は白だね、真っ白なんだよ。」

 

 

 

「どういうことなんでしょう…?」

 

 

 

「さぁ…?仮説だけど、俺やカオル君みたいな特殊な存在にしか見ることの出来ないもの…とか?」

 

 

「とりあえず、今日はカオルンの代わりに私が調べますから…何か解ればいいんですけど…見えない以上どうしようもないなー…」

 

 

「まぁ良いじゃない!俺には見えるんだからそれを旨く伝えられるよう頑張るよ!」

 

 

2つの棺には僅かだが古代の文字が刻まれている。

実は、カオル君の両親が棺の文字を調べていない事が昨日判明したため、今日はその作業に取りかかる予定だった。

 

 

「えーと、こんな感じかな?」

 

 

 

俺は白い方の棺に刻まれている古代の文字をノートに書き写し、輝ちゃんに見せる。

 

 

「ふむふむ。」

 

 

輝ちゃんは資料を広げ古代文字の解読を始める。

 

その間に俺は黒い方の棺の文字を解読する。

 

 

 

 

━━━━━━━━数時間後。

 

 

 

「五代さん…この棺ってもしかして…」

 

 

 

「どちらもクウガの眠る棺なのか…?」

 

 

 

 

黒い棺の文字は以下の通り

 

「究極の闇の凄まじき戦士がここに眠る時、地上に光が持たされる」

 

 

白い棺の文字は以下の通り

 

「究極の光の凄まじき戦士がここに眠る時、地上は闇に包まれる」

 

 

 

俺の知らない文字、「究極の光」とは何か?

「究極の闇」に対する存在なのか?

 

 

「いったい…どういうことなんだ…?」

 

 

 

俺はただ呟く事しかできなかった━━━━━━━。

 

 

 

 



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青空の消失②


遂に物語が急展開を迎えます。今回は久々に登場「杉田刑事」と遂に謎の存在、そしてこの物語のキーパーソンで黒幕がセリフのみで登場。でわお楽しみ下さい。



士との特訓の後、たぶん僕はまた夢を見ていた。

 

 

たぶん…何故夢なのが解るかというとそれは今はもう、

 

 

二度と会う事の出来ない人達が目の前に…

 

懐かしい暖かい光のような、そんな光景が目の前に有るからだ。

 

「久しぶり。」

 

目の前に両親が居た。

 

 

父、一条信吾が語りかけてくる。

 

 

「久しぶりだなカオル。」

 

 

母、一条みのりも続けて語りかけてくる。

 

 

「元気そうで良かったわ…」

 

 

二人は笑顔で僕を見ていた。

 

 

「父さん、母さんどうしていなくなったの?ずっと思ってた、2人は生きてるんじゃないかって…」

 

 

母が話し出す。

 

 

「私達はいつもあなたと共にある、それを忘れないで。」

 

 

父も続けて話し出す。

 

 

「もしこれから先、どんなに辛いことが起ころうとも、お前なら乗り越えられる。お前は1人じゃないし、みんながきっと助けてくれる。」

 

 

「そして、そのみんなをあなたが守るの、あなたならやり遂げられる、母さんは信じてるわ、カオル!」

 

 

「解った…任せて。ちゃんと見ててよ、僕が生きていく今を、これから先の未来を。だから最後に教えて欲しい。2人はどうして居なくなったの?」

 

 

母さんが話し出す。

 

 

「それは…カオル、真実はもうすぐそこにあるわ。あなたが自分自身で確かめなさい。」

 

 

「俺から言えることが有るとすれば、カオル。この先、遠くない未来。世界から光が失われたとき、お前が光となり世界を照らす、その未来がもうすぐやってくる、忘れるな。俺も母さんも実加さんや桜子ちゃん、それに輝ちゃん。みんながお前を助けてくれる。だからお前はただ前に進め、これが俺と母さんの願いだ。」

 

 

父さんの言葉に母さんも頷いた。

 

 

「僕が光に…?真実はもうすぐ解るんだね?解ったよ、じゃあ聞かない、2人がどこにいるのかもう聞かない。傍にいてくれてるんだろ?それでいいや、うん…」

 

 

僕は涙を堪えながら二人を見据え言う。

 

 

「それじゃあ又なカオル。」

 

 

「元気でねカオル。」

 

 

「うん、またね。」

 

 

 

両親は僕の目の前から消えた、懐かしく暖かい光を、僕だけを残して━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

 

遺跡から戻った俺と輝ちゃんの行動といえば、輝ちゃんが調査結果を実加さんに電話で報告し、俺はカオル君のいる医務室へと来ていた。

 

 

カオル君はまだ眠っていた、置き手紙は必要なかったか、、、

 

 

「父さん…母さん…」

 

 

カオル君が確かに呟いた。

 

 

よく見ると泣いているようだ、見ない方が良かったかな…

 

 

「またね…」

 

 

そのカオル君の言葉と同時に俺は有る不思議な現象を目の当たりにした。

 

 

「光…?」

 

 

カオル君の腹部に有る霊石が光り輝きだしたのだ。

 

 

「いったいこれは…!?」

 

 

見たことがない、こんな事は俺の身には起こらなかったはずだ…

 

 

ふと、先ほどまで調べていたあの古代文字を思い出す。

 

 

「光の凄まじき戦士…」

 

 

光輝いているカオル君の霊石から少しずつ光は消えていき、もとに戻った所で見てみるとまたしても驚かされた。

 

 

 

「傷が…欠けている部分が修復された…!?」

 

 

回復した…のだろうか?

 

 

確かに俺の霊石も年を追うごとに少しずつ回復していたが…

 

 

約一月前だ、カオル君の霊石に傷が入ったのは…

 

まさか今の光が…一瞬で…?

 

 

光の凄まじき戦士…が、カオル君ということか…?

 

 

 

ならば、闇の凄まじき戦士は…

 

 

 

究極の闇の凄まじき戦士が眠るとき地上は光に満たされ、究極の光の凄まじき戦士が眠るとき地上は闇に飲まれる。

 

 

棺の文字から仮定すると、今この世界は…どちらなんだ…どちらも眠りについていないので?

 

 

眠り=封印だとすればの話だが…

 

 

何か掴めそうな気がする、グロンギが現れた理由、この世界の謎のヒントが…そういえば昨日の朝、訪ねてきて早々に、士君が見たと言っていた、「俺」。

 

 

この世界の「俺」は何故遠くから俺たちやカオル君の戦いを見ていた?

この遺跡に「俺」が関与しているんじゃ…

 

 

 

ドクン…

 

 

 

ドクン…

 

 

 

「何だこの感覚…」

 

 

急に動悸が激しくなり、目眩と幻聴が現れた。

 

 

「……よ…っ…」

 

 

 

何か聞こえる、幻聴のはずだが…?

 

 

ドクン…

 

 

 

この感覚は…!?まさか…!

 

 

「…来いよ、こっちだ…」

 

 

 

俺は息苦しさを堪え、声のする方へ走り出す。

 

 

 

ごめんねカオル君、俺ちょっと行ってくる!

 

 

眠っているカオル君に小声でそれを言い残し、俺は医務室をあとにした━━━━━━━━━。

 

 

 

 

翌朝━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

「…ん…んあっ、夢だったか…当たり前か…ん?今何時…てかここどこだっけ?あっ、医務室か…」

 

 

「あっ!カオルン起きた!」

 

バンッと扉を蹴り開けるように入ってくる輝ちゃん。

 

「ぬぉっ!?」

 

 

僕の変な声が医務室に響き渡る。

 

 

「とっ、とりあえず早く着替えて!実加さんの研究所に急いで戻って!」

 

 

「何をそんなに慌ててるの輝ちゃん、研究所に戻れって?」

 

 

「実は実加さんの研究所にグロンギが現れたって今警察の杉田さんって人から電話が!警察がすぐ来て対処してるけど全然ダメみたいなの!」

 

 

 

「はあっ!?わっわかった!」

 

 

 

着替えなんかしてられるか、と寝間着姿に上着を羽織り外へと駆け出す。

 

 

「待ってカオルン!はいこれ!私の車を使って!」

 

 

輝ちゃんから車のキーを貰うと、僕は急いで発車した。

 

 

「頑張ってカオルン…実加さん大丈夫だと良いけど…」

 

 

遺跡から研究所までどれだけ車をとばしても恐らく10分以上はかかる。

 

 

「博士…桜子…無事でいくれよ…」

 

 

 

今日は休日のはずだから恐らく桜子も研究所にいる。

 

頼む無事でいてくれっっ…!!

 

あれっ…そういえば五代さんは…?

 

 

 

夏目研究所━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 

 

 

「負傷者、死亡者多数!杉田さん!まだですか!?噂の彼らは!」

 

 

「ついさっき、小田桐氏に連絡した!後もう少しだ、それまで発砲を続けろ!」

 

 

「わかりましたッッ!!」

 

 

夏目博士から直接私の携帯に連絡が来た、グロンギが…怪物が研究所に現れたと、そして研究所内にて保管していた石版を奪って出て行ったと。

 

 

たまたま近くにいた警官がすぐ駆け付け、怪物を追いながら応戦。研究所付近の民間人に被害はなく、避難させるのに成功した。

 

 

警官の負傷者が10名、死亡者が13名…現状は芳しくない状況だ。

 

 

怪物が一体だけでこれだけ被害者が出るということはやはり人間では太刀打ち出来ないのか…?

 

頼む、一条君達早く来てくれ…

 

 

ここで倒さないと次の被害者が出てしまう…!

 

 

 

研究所から200メートル程離れただろうか…?住宅街で怪物に応戦するのはもう限界だ。1人、又1人と負傷者、死亡者が増えていく。私も、もう行くしかないか…

 

 

 

「杉田さんッ!!遅くなりました!!」

 

 

 

 

「一条君っ!来てくれたか!奴はすぐそこだ!頼む!」

 

 

「わかりました!!」

 

 

 

あんな若者にすべてを託さなければならないとは…世の中非情なものだ本当に…

 

 

そういえば、五代雄介君の姿が無いが━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

「博士っ!桜子大丈夫!?」

 

 

車を研究所横に止めると、人の気配の少なさにいやな予感がしたが、急いで研究所内に駆け込んだ僕、研究所内は至る所に書類やらが散乱し、数人の研究者達が横になって倒れている…

 

 

「手遅れだったって事か…!?」

 

 

 

僕は倒れている研究者に駆け寄り体を起こして声をかける。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

が間違いなく息はなかった…

 

 

「何でだよ…」

 

 

すると研究所の奥から声がした。

 

 

 

「カオル…?」

 

 

 

と。

 

 

この声は!

 

 

 

「桜子無事だったか……!えっ…」

 

 

 

声が聞こえてきたのは夏目博士の研究室で、

 

 

 

桜子と、夏目博士がそこにいた。

 

 

夏目博士が傷だらけで。

 

 

血の海に座り込む桜子とその母。

 

 

ただそれだけだ。

 

 

「博士……?」

 

 

 

「…おぉ、一条君…おかえり」

 

 

 

博士が声を出すと同時に、その口から血が流れ出す。

 

 

 

「さっ、桜子!早く救急車!」

 

 

「呼んだよ…もうすぐ来てくれると思う…」

 

 

鳴きながら桜子は声を絞り出す。

 

 

「ごめんね、お母さん私のせいで」

 

 

「…娘を…子供を守るのが…母親の仕事なのよ…」

 

 

 

「ごめん、ごめんね…」

 

 

桜子は泣き崩れる。

 

 

「…一条君」

 

 

「えっ?」

 

 

「すぐそこにまだグロンギはいるはず…行きなさい…杉田さんが待ってるから…」

 

 

博士は肩で息をしながら何とか話している状態だ。

 

 

「そんな…博士を放ってなんて…」

 

 

「…行きなさい…」

 

 

「でも…」

 

 

「…ングッ一条カオルッ!!お前は何だ…!?何をするためにここへ帰ってきたッ…!?ゴホッ」

 

 

血を吐きながら声を荒げる博士の顔を見ると泣いていた。

 

 

「博士…行きます…僕…」

 

 

 

「それでいい。」

 

 

 

僕は室内を出るとき桜子と博士の顔を見ることはせず、ただこう言った。

 

 

 

「僕は一条カオル…そしてクウガだから…!行ってきます!」

 

 

 

走り出す僕の心は怒りで一杯だった。

 

 

振り返るわけにはいかない、僕がみんなを守るんだから。僕は外へ向かって走り出す。

 

 

 

 

 

 

「お母さん…死なないよね?」

 

 

「…どうだろうね、この出血は…」

 

 

「お願い、私を一人にしないでよ!」

 

 

「桜子、あんたは1人じゃないでしょ?一条君、五代君、輝ちゃん、研究所のみんなや勤め先の幼稚園の人達がいる…そしてきっと、その人達を一条君や五代君が守ってくれる、だからあんたはその二人を見守りなさい…」

 

 

「お母さん…」

 

 

 

「…ハァ、疲れた…いい仕事したわぁ私…あんたを守れて良かった…」

 

 

だんだん母の体が冷たくなってくるのを感じていた桜子は涙を止めることが出来ない。

 

 

「お母さん…?お母さんッ!お母さん!!」

 

 

 

桜子の叫び声が、ただ空しく研究所に響き渡る━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 




実はここまでしか書き溜が無いため夏目博士の処遇をどうするかだけは決まってません。
これから考えながら物語を終わらせに向かうので、更新遅くなると思いますが、又読んで貰えるとうれしいです。でわまたノシ


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青空の消失③

意外と更新早くできました…が、今回はかなり短いです。


杉田さんの前に出るとそれはもう悲惨な状況だった。

 

1、2、3、4…数えるのが億劫になる程の警官が倒れ血を流している。

 

 

 

「なんて事を…」

 

 

倒れている人を割けるように足を進める僕の身体が少しずつ変わり始める。視線の先にコウモリの姿をしたグロンギがいた。

 

 

「よくも…」

 

 

両腕が変化する。僕の気配を感じ、コウモリのグロンギが僕めがけ飛来、奇襲を仕掛けてきた…だが…

 

 

両腕だけがクウガに変化した僕のその右拳が飛来したコウモリのグロンギの腹部に直撃する。

 

 

「ンガァ!」

 

 

コウモリのグロンギは奇声をあげながら痛みにもがき、その場に倒れ込む。

 

 

「よくも…博士を…!」

 

 

もがいているコウモリのグロンギに間髪入れず、ボールを蹴るように腹部を蹴り飛ばす…と、同時に僕の両足がクウガへと変化。

 

5メートル程蹴り飛ばしたコウモリのグロンギは再びもがき苦しんでいる。

 

 

「僕の大切な人達を…これ以上悲しませるのなら…」

 

 

 

そいつ目掛けゆっくり足を進める僕の胴体が赤い色のクウガへと変化した。右足が炎に包まれる

 

 

 

「俺が殺す…変身…」

 

 

その言葉と同時に僕の顔がクウガへと変化した。

膝がふるえながらも立ち上がるコウモリのグロンギに向かって少し飛び上がり、空中で前回転し、

 

 

 

「死ねえッッッ!!!」

 

 

 

僕の炎を纏った右足がコウモリのグロンギの腹部に3度目の正直と言わんばかりに直撃。

 

 

 

「ンギッ!!!」

 

 

奇声をあげそのまま炎に包まれ、消滅した。

 

 

 

「博士…死んだら恨みますからね…桜子を一人にしたら…あっそういえばっ」

 

 

 

いつの間にか変身も解け、早く倒れている人の安否を確認しなきゃと振り返ると、救急車やらパトカーやらが沢山押し寄せてくる。被害者が救急車に運び込まれ始めた頃に、杉田さんが僕に血相を変えて駆け寄ってきた。

 

 

 

「一条君!怪我はないか!?助かったよありがとう!それよりも!」

 

一息おいて続ける。

 

「夏目博士が搬送された、かなり危険な状態らしい、出血が酷く意識不明だそうだ…」

 

 

 

「ッッッ!!!わかりました!!!搬送先は!?」

 

 

「この前君が運ばれた例の病院だ。」

 

 

 

それを聞いた僕はもう走り出していた。

 

 

 

僕の足下に、研究所に有るはずの石板が落ちているがそんなの構っていられない。

 

 

走れ、前に走れ、ただ前を見ろ。

 

 

自分に語りかけるようにそして人混みをかき分け、ただ前に走る。

 

 

人混みの中には、生きていた研究所の職員や、野次馬や警官救急隊員に、五代さんが

 

 

 

「んえっ?五代さん?」

 

 

 

走っていた僕の足が止まる、今確かに五代さんが…

 

 

「五代さん…?」

 

 

振り返って周りを見回しても、人混みのせいで五代さんの姿を捉えることが出来なくなった。

 

 

「…行かなきゃ!」

 

 

 

今は五代さんを探している場合じゃない。

 

 

早く博士の…桜子のところへ行かなきゃ!

 

 

 

「ただ、前を向いて。

 

 

下を向いて生きるくらいなら、上を向いて欠伸でもしてろ。

 

 

前へ進め、誰かのために、自分のために。

 

 

泣きたきゃ泣け、前向いて泣き叫べ。

 

 

それが男ってもんだ。」

 

 

 

 

 

この言葉は僕の両親が亡くなった後、博士が僕に言ってくれた一言だった。

 

 

この一言で僕はかなり変わった。

 

 

少しでも強くなれた、だから今の僕はある。

 

 

僕の「もう」独りのお父さんでお母さん、

 

 

それが夏目実加博士。

 

 

頼むよ、神様仏様、何様でも言い。

 

 

 

博士を助けて下さい…

 

 

僕の大切な人を連れて行かないで下さい━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 




次回、五代雄介視点の話になります。


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青空の消失④

更新少し遅くなりました、今回のお話は全回の話のビギンズナイトの出来事、そして黒幕の正体…そして新キャラクター2人にしてその2人が全ての始まりという、キーパーソンであるという、重要な回になってます。つまり五代雄介が世界を越えてしまった理由、グロンギ…クウガという存在は何か…一条カオルの世界の古代文明の謎が開かされます。この作品で一番書きたかった、笑顔を失い戦うだけの兵器に成ってしまったクウガの物語。かなり長い文章や台詞のせいで読み辛いですが読んで貰えるとうれしいです。


「…来いよ…こっちだ…」

 

 

その声を追って俺が向かった先は、

 

 

 

「遺跡の中からか…?」

 

 

 

俺は遺跡の中に足を進める。

 

つい先ほどまで調査していた場所は暗やみに包まれていた。

 

 

時刻は20時を回ったところだったと思う。

 

 

 

声に導かれた場所は予想通り、棺の間(輝ちゃんがそう呼んでいた)だった、つまり先ほどまで俺と輝ちゃんが調査をしていた2つの棺が有る場所。

 

 

棺の間には明かりが灯されていた。

 

 

そしてその灯りの中に、声の主はいた。

 

 

 

「君だね、俺を呼んだのは。」

 

 

 

俺がそれを問う相手の風貌は、黒い羽織と頭にはフードを深々とかぶっていた。

 

 

 

「あぁ、俺だよ?久しぶりだな、五代雄介。いや…別の世界の戦士クウガ。」

 

 

フードを深くかぶっているため顔がよく見えないが、彼は(俺)と言ったことから男なのだろうか。

 

 

「久しぶり…?君は俺に会ったことがあるのか?なんで俺がクウガだと知っているの?」

 

 

俺がそう問うと、彼はため息をつくように答えた。

 

 

 

「やはり忘れているようだな、10年前の出来事を…良いだろう…全て話してやる。今から話すことはすべて事実だ、あんたの真実、この世界のな。」

 

 

 

10年前…?この世界の10年前…?真実…?

 

 

 

彼は続ける。

 

 

「10年前、この場所。戦士の眠りし場所、ここで俺は、2人の人間により棺から開放された。俺が目覚めるとその2人の人間は少し驚きながらも笑顔で俺に(おはよう)と言った、おはようという言葉の意味が解らず、俺はただ無言でいることしかできなかった。ただある事を思い出した、棺に入る前に聞いたことがあった事…2つの棺のうち一つが開放される時、もう一つの棺も開放され…戦いが再び始まるということを。」

 

 

「グロンギの復活…?」

 

 

と、俺が問うと、彼は少し鼻で笑うような仕草のあとまた続ける。

 

 

「復活…だと?進化…変化だと思うが…?本当に何もかも忘れているようだな。いや知らないのか。」

 

 

俺が忘れている…?知らない…いったい何を…?彼は一息おき続ける。

 

 

「あんたの世界のクウガやグロンギその他諸々はどうだかは知らない。だがこの世界の2つのクウガという存在は…そうだな、天使と悪魔、グロンギに成る者達…それはヒトだ。」

 

 

俺は最後の言葉に驚きを隠せない。

 

 

「…人間がグロンギに成る…!?」

 

 

「そうだ、そして…俺の親友…いや話を戻そう、10年前にこの場所で、2人の人間がグロンギに慣れ果ててしまった。何故か?それはこの遺跡が人をヒトではなくす物の保管場所だからだ。今の世間が言っている(古代文明の遺産)の塊がこの場所なのさ…俺が此処に封印されたのはもう何千年も前だ、その頃この場所は作られた。ヒトが二度と争いを行わぬように、血肉の争いが起こらぬように。」

 

 

俺は黙って彼の話に集中している。

 

 

「俺が封印される前、幾数のグロンギが他の世界からやってきた、この遺跡を通じてね、ここはそういう場所だったんだろう。」

 

 

 

「他の世界からグロンギがやってきた?」

 

 

 

「そう、何故やってきたのかは解らず終いだったが…グロンギは人々を殺し始める、今の世間で言うゲーム感覚で。人々はグロンギを神だとか、神の怒りの象徴だと言ったりしていた、そんな事を言うだけで何もせず、ただ殺されていった。俺はそんな何もしない笑顔の失われた世界に耐えられなくなり、ある行動に出た。グロンギに立ち向かうために、人々の笑顔を取り戻すために。幼なじみ…親友と共にある研究を始めた。」

 

 

彼はまるで俺と同じようなヒトなのだろうか…俺も身に覚えのある似たような話を経験しているが。

 

 

「運が良かったのか悪かったのか、古代文明は今よりも技術が進歩していた、のかもしれない。俺と俺の親友2人で、ある力の秘められた石を2つ作り出した。昔からこの場所の付近には不思議な力を持つ石が有ると言われていて、それを見つけだし、ヒトを限りなく奴ら…グロンギに近しい存在に変化させるその石を作り出した。その石を身体に身に付けると、身体が強化される、それはあんたがよく知ってるな。」

 

 

「霊石のことだね、つまりこの世界のクウガ、霊石は君とその親友が作った。」

 

 

「そういうことだ、そしてその霊石を俺と親友は自ら身に付け、グロンギに立ち向かった。この世界にやってきた幾数のグロンギを俺達はただひたすら殺す日々に追われた。」

 

 

「幾数…それなりの数がいたってことか…」

 

 

「最初にやってきた数は知れていたが…ここで話は少し戻る、ヒトがグロンギになる、という話だ。」

 

 

「まさか…」

 

 

そこで俺は有る考えにたどり着く、と同時に彼は続ける。

 

 

「ヒトはグロンギを神だと言っていた、つまり自分がグロンギになれば神になれる、と思う奴らが現れた。

そして、俺達同様にヒトを変化させる石を、俺達とは違う方法で身に付けた者達がグロンギへとなり始め、奴らは殺し合いを始めた。

巷に話は広がり始め、それによって人々は力を求め、力の石を奪い合う。そしてグロンギは減るどころか日に日に増えていき、ついに俺達の身体には限界が近づいていた。

グロンギは俺たちをクウガと呼び、人々はそのクウガこそ神だと、守護神だと言い始めた。

そのクウガを我先に殺そうとグロンギ達が手を組み始め、戦いはさらに血肉の絶えないものとなった…

そして俺の親友は流れゆく血を見ることに耐えきれなくなり…心を捨て、ただ闘いに生きる者になり果てた。

それは究極の闇と言わんばかりの黒い身体、全てを闇の炎で焼き払い血も残さず破壊する破壊神。破壊する者の中に普通の人間も含まれ、人々は俺の親友を闇を統べるもの…破壊神と呼んだ。

俺は親友の心を取り戻すために戦った、忘れかけていた笑顔を取り戻すために。

戦いが収束を迎える頃、人間はほとんど残らなかった、ほとんどがグロンギへとなりお互いに殺し合い、俺も親友も奴らを殺した、そして…親友と俺の2人だけが異形の者として生き残り…戦いは終わったかに思えた、が…親友にはもう戦う本能しか残っていなかった…親友は俺を殺そうと、ただ拳を振るうのみ。

話を聞いてもくれやしなかった…意を決し、生き残った人々を守るため、俺は親友の闇を焼き払おうと、必死に戦い…俺は勝利した…闇を焼き払い、生き残った人々は俺を光の守護神と呼んだ。

俺は…親友を殺した…はずだったが、致命傷を負わしただけで、親友はかろうじて生きていた。

それで俺は親友をこの場所に封印する事にした、俺の甘さのせいで殺せなかった、そう…俺はもう殺したくなかったから。

その後の人々への戒めのために、そして俺と親友のために。残っていた、ヒトを変化させる石を石版にしてとある文字を彫り明日への人々への希望と共に親友と共にこの場所の棺、普通のヒトには見ることのできないこの棺と俺が入っていた棺にクウガのまま安置された。」

 

 

と、2つの棺に指を指す彼。そしてまた続ける。

 

 

 

 

「そして今から10年前、俺は再びこの世界に解き放たれた…2人の人間により。しかも先に俺の親友の入っていた棺を開けてしまっていた、何故普通の人間に見ることのできない棺を見ることが出来て、しかも開けられたのか…答えは簡単だ。解るか?」

 

 

彼が俺に問う、これは…俺には解った、恐らく…

 

 

「古代文明の時グロンギに成ってしまった者の中にも戦いを望まなかった、あるいはヒトとして再び生きることを選んだ…その人々の子孫…つまりグロンギは人間社会に溶け込み、血を受け継いでいる人々がいる、そして君と君の親友の封印を解いた2人の人間…それはグロンギの血を少しでも受け継いでいた…だと思う。」

 

 

恐らく、カオル君のご両親だ。叉は片方どちらか…つまりカオル君はグロンギの血を引いている?

 

 

「ほう…正解だ。俺もそう思っている、だからその2人は俺を解放した直後、身体に異変が起こり始めた。力の石に近付きすぎたからだろう。数分もしないうちに力に負け自我を失い、グロンギへとなり果ててしまった。そして…そのグロンギの気配に釣られ、俺の親友は目を覚ました。親友はその2体のグロンギを一瞬で焼き払い、俺を見たかと思うと、俺に襲いかかってきた。俺は戦うことを決め親友と再び死闘をこの場所で繰り広げた。長年の封印により俺も親友も傷はそれなりに癒え傷だらけだった腹部の石も治っていた…俺だけが。」

 

 

「親友の方は傷が癒えていなかったのか?」

 

 

「癒えるどころか真っ黒に染まり、ひび割れが目立っていた。それでも俺は親友との死闘で窮地にたたされた。親友はただひたすら俺を殺そうとし、俺はそれをやめさせ、再び封印するため…いや…己の甘さ故にまた殺せなかった、殺したくなかった。そんな気持ちで、止められるわけもなく、自分の死を覚悟した。俺は叫んだ、心の中で。願った、精一杯に(せめてもう一度、親友の笑顔がみたい)と。すると、どこからともなく君が現れた。」

 

 

「俺が…?」

 

 

「俺は驚いたよ、いや親友の方が驚いたかもしれない…君は殺されそうになっている俺を庇うように生身で親友に戦いを挑んだ。」

 

 

「自分でもそれは驚くかな…せめてクウガに変身しろよ俺…」

 

 

 

「いや…驚いたのはそこじゃあない。」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

彼は深くかぶっていたフードを取り俺に素顔を見せた。

その素顔はどこか懐かしく、何故か泣きたくなるぐらい笑顔を見せたくなるあの…

 

 

「一条…さん…?」

 

 

彼の顔は俺のいた世界の一条さんに瓜二つだった。

 

 

「10年前にも君は俺をそう呼んだ。俺の名は…ジョウ。親友の名はダイ。そしてダイの顔は…」

 

 

 

この彼=ジョウの一言でフラッシュバックのように一気に10年前の記憶が蘇る。

 

 

「ダイ…は、俺と瓜二つなんだ…思い出した…全て…!」

 

 

10年前…俺は一条さんの似た声に引かれこの遺跡…この世界にグロンギと同じようにやってきた…

そして、殺されそうになっているジョウを助けるため、まず生身で自身の身体の状態を確かめた。

行けると確信し数年ぶりの変身をして…ダイに戦いを挑むが…圧倒的な闇の力に歯が立たなかった。

そしてジョウも再びクウガに変身し俺と共にダイに立ち向かう…そしてジョウの霊石の力…究極の光と俺の究極の…あの黒い金の力でなんとかダイを再び封印する事に成功した…かに思えた直後、ダイ渾身の力で俺の霊石目掛け闇の炎を放つ…俺は避けることすら出来ずただ…立ち尽くした…その俺を庇うようにジョウが俺の前に立ち壁になり…ジョウは…ジョウは…そしてダイを再び封印するが、不完全な状態で封印したため、弱い結界と成ってしまった。

 

 

 

「ジョウ…思い出したよ…俺を助けてくれてありがとう…君はあの時死んだんだね…」

 

 

 

 

「思い出してくれたか…そうだ俺はもう死んでいる…」

 

 

 

 

「どうして俺をこの場所に呼んだの?何か理由が?」

 

 

「五代雄介、俺の最後の頼みと希望を聞いてくれるか?」

 

 

ジョウは俺を見据え問う。

 

 

「俺に出来ることなら。」

 

 

ただ俺は答える。

 

 

「五代雄介、俺の親友を…ダイを殺してやってくれ、そして俺の石を…意志を…受け継いだ一条カオルの道標となってやってくれ。これが俺の最後の願いだ。」

 

 

「…解った。この戦いを終わらせよう、人々の笑顔のために、君とダイの笑顔を取り戻すために。」

 

 

「ありがとう。そうだ、行く前に…五代雄介、君の変身出来ない理由を教えてやろう。ダイが三度に目覚めた理由、それと現代で現れたグロンギについても。」

 

 

「それはありがたい助かるよ。」

 

 

「まず君が変身し時間が経つと自我を失いそうになる…あれは、君の持つ何かへの恐怖心と、戦いの疲労によるものからだ、と思われる。

そしてダイの封印が解けた理由は簡単だ、君が目覚めたからだ…力の石の石版を持たせたまま眠るように気を失った君を俺は死ぬ直前に俺の入っていた棺に君を入れ、そして俺の身に付けていた霊石も君に託し、俺は焼失した。君は記憶を無くし、何も解らず棺を自らの力で開けたんだろう。現代に現れたグロンギは恐らくダイの影響だ。ダイの力に引かれグロンギの血を引く現代人が自我を失い、力を求め人々をゲーム感覚でおそっているんだろう。」

 

 

「何か俺よりも俺のことを知ってるねジョウ?」

 

 

「クウガの事は同じクウガが一番解る。という事さ。」

 

 

俺は内心なるほど…と思いただ頷く。

 

 

 

 

「だから俺の願いは…俺の出来なかった…ダイの死…殺してやること…そして二度と戦いの起こらない世界。」

 

 

「あぁ、解ったよ。」

 

 

「そのためには五代雄介、君の戦いの疲労を癒すため、俺が生前見つけて利用していた聖なる泉の場所を教える、そこで10日程休めば、一条カオルと共にダイと戦えるはずだ。」

 

 

「聖なる泉…?アマダム…?」

 

 

「アマダム?とは言わないが…普通の人間には入ることの出来ない場所がこの遺跡には有る。クウガになれば解りやすいだろう。」

 

 

それを話しているうちにジョウの身体が消え始める。

 

 

「ジョウ…!?身体が…!?」

 

 

 

「もう限界か…五代雄介、まず君は自分の身体を癒すことを優先しろ、大丈夫。俺の力を受け継いだ一条カオルがそんな簡単にやられはしないさ。だから…頼む、ダイを…この世界を…」

 

 

ジョウの姿が消え、声だけが俺の耳に最後に届く。

 

 

「親友を…相棒を頼む…」

 

 

その言葉と同時に、俺はこう叫ぶ。

 

 

「変身ッッ!!」

 

 

ジョウに言われたとおりクウガに変身すると、

ジョウが立っていた場所の先の壁にうっすらと光の壁がある事に気付いた。

そしてそこから光が漏れ、それに引かれて足を進め壁を越えて、その光に意識を奪われ…そして俺はそこで意識を失った━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読み辛いかったでしょう…?ごめんなさい、最大限でした…質問など有りましたら受け付けますんで何でも聞いて下さい。謎は明かされましたが、何故小田桐輝が一条カオルの見に宿る霊石を最初持っていたかという謎は…ふふふ、お楽しみに。


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青空の消失⑤

更新遅くなりました、今後も約一週間前後の間隔で更新していければと。今回は戦いはないのですが、主人公のカオルの少しの変化と失われつつある「何か」がテーマです。


 

僕は戦いの後の疲れも忘れ、必死に…いや必ず生きていると信じて…その足で病院へと駆け込み、受付け職員に急患の「夏目実加博士」の病室を聞くと

 

 

「あの…只今緊急治療室で手術中でして…」

 

 

と僕に説明してくれた。

 

 

「術室は!?どこに!?」

 

 

「えっと」

 

まで受付の職員が答えた直後

 

 

「一条君!!」

 

 

後ろから声をかけられ、振り返ると見知った…白衣の先生がいた。

 

 

「椿先生!」

 

 

 

「一条君、話は後だ。夏目博士の術室まで案内する、小田桐さんと夏目さんの娘さんも来ている!急ごう!着いてきてくれ。」

 

 

「えっ、はい!ありがとうございます!」

 

 

 

僕は急ぎ足の椿先生を追う━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「カオルン!」

 

 

「輝ちゃん!」

 

 

 

「カオルンが遺跡を離れてちょっとあとに実加さんが搬送されたって電話で警察の人から聞いてそれで急いでこの病院に来てそれで!」

 

薄暗い術室の前に着くと、仕事着のままの輝ちゃんが僕を見つけるやいなや、いきなり取り乱し混乱しはじめた。

 

 

「輝ちゃん落ち着いて…」

 

 

「っ…うん…ごめんなさい…」

 

 

 

その輝ちゃんの後ろの長椅子に、うつむき…ただ泣いている桜子がそこにいた。

 

 

 

「桜子…」

 

 

 

僕は桜子の横に座り、精一杯ただ抱き締めた。

今はそれしかできなかった。

出来ることがあるとしたら、目の前の術室で行われている「奇跡」を信じることだけだ。

 

神様なり仏様なり何様でもいるなら…何とかしてくれ…

 

正直…あの時の出血量からして、大量出血でのショック症状は間違い無く起こり得るだろう…でも…

 

 

 

「カオル…おがっ、おがあざん…助かるよね…?」

 

 

「…信じよう…博士の…いや…僕達のお母さんの力を。」

 

 

「カオル…うん…」

 

 

 

「一条君、ちょっと良いか?」

 

 

そばにいた椿先生が僕に問いかけてきた。

 

 

「何でしょう…?」

 

 

「先ほど警察の杉田の方から連絡が有ってね、」

 

 

 

「杉田さんから椿先生に?」

 

 

「あぁ、まぁあいつは学生の頃からの長い付き合いでね、それでその杉田から連絡を受けた。」

 

 

「そうなんですか!で…それで?」

 

 

「夏目研究所の職員8名、警察官25名が他の病院で死亡が確認されたそうだ。」

 

 

「そんなに…」

 

 

「杉田は最後に近隣の住人に被害はなかった、一条君のおかげだと言っていた。一条君…今…いったい何が起こっている?良ければ話を聞かせては貰えないか?」

 

 

 

「えっと…」

 

 

 

「話しづらいことなら、それ以外の話せる部分だけで良い、俺は医者だ。身体を治療したり見てきた患者たちのその後のケアも仕事のうちなんだから、何でも良い、協力させてほしい。」

 

 

「…解りました。輝ちゃん、桜子をお願い。」

 

 

「あっ、うん。」

 

 

 

桜子を輝ちゃんに任せて、そこから少し離れた場所へ、人気の無い場所で椿先生に全てを話すことにした。

自分と五代さんがクウガであること、クウガとは何か、グロンギの事、栄水遺跡の古代文明との関連、それを研究していた僕の両親の事━━━━━━━話せる全てを。

椿先生は医者としてよりも、人として信用出来ると思う。協力させてほしいと言われたら…もうこの状況は頼れる人を片っ端から頼るほか無いから。

 

 

「なるほど…ね。さっぱり俺の知識じゃ付いていけないなこれは。」

 

 

「そう…ですか…」

 

 

「ただ、いくつか協力出来ることはあるな。」

 

 

「本当ですか!?」

 

 

「あぁ、一つ目は戦いで傷を負ったら俺が五代と一条…と呼ばせてもらうが、君達を治療する。掛かり付けとしてな。二つ目は警察官である俺の友人、杉田と連携して、グロンギの身体や特徴、弱点になりそうな物を極秘で研究する、杉田に相談してみるよ。」

 

 

「あっ、ありがとうございます!!」

 

 

 

「若い人間ばかりに苦労させるわけにはいかんからな、これが年長者の努めさ。あと最後にもう一つ。」

 

 

「まだ何か協力して貰えるんですか!?」

 

 

「まぁ、協力というか…一条、小田桐さんの事なんだがな…」

 

 

「輝ちゃんが何か?」

 

 

「小田桐さんはたぶんお前の事…あぁ、やっぱりなんでもない、こんな時にする話じゃないな…とりあえずさっきの2つの件は任せろ、俺がケアさせてもらう。」

 

 

「…?はい。ありがとうございます?」

 

 

「とりあえず戻るか…夏目さんが心配だ。」

 

 

「っ、そうでした!」

 

 

僕と椿先…椿さんは術室に急ぎ足で向かった━━━━━。

 

 

 

 

 

 

術室に戻ると、未だ術室の「術中」の光は灯っていた。

 

 

「大量出血らしいからな…輸血しながら傷を塞ぐ所からだから…長くなるだろう…いったい研究所で何があったんだい…?夏目さんの娘さん…?」

 

 

戻るなり椿さんはうつむいている桜子に問いたざす。

 

「ちょっと!今そんな話は良いじゃないですか!?」

 

 

と、怒った顔の輝ちゃんが間に入る。

 

 

「大丈夫…輝姉ちゃん…私大丈夫だから…」

 

 

桜子は顔を上げ真っ赤な目を僕に向けながら続ける。

 

 

「大丈夫。」

 

 

と。

 

 

 

桜子の目を見ながら僕は頷く。そして桜子は語り出す。研究所で起きた悲劇を。

 

 

「怪物…グロンギは最初、人間の姿だったんです。だから最初は普通に研究所の来客として受付の人も疑わずに通したみたいで…今日は休日だけど職員さんも結構出勤してたから、関係者かと思われたんでしょう…栄水遺跡の件で話があると来たそうですから。」

 

 

そこでいったん僕が間に入る。

 

 

「つまり、ヒトの姿でヒトの言葉を話し栄水遺跡の事を理解しているグロンギだった可能性が有るのか…」

 

 

と、そこで椿さんが

 

 

「何かを…狙いに来た?」

 

 

 

その言葉に輝ちゃんが

 

 

「まさか…石版…?五代さんが実加さんに渡したあの石版を狙ってきたんじゃ…?そういえば…その五代さんはどこなのカオルン?」

 

 

 

その言葉に僕の記憶が少し時間を遡り始める。

 

 

 

「そうだ…さっき倒したグロンギのそばにその例の石版が落ちていたんだ、おかしいなとは思ったんだけど。」

 

 

そこに桜子が

 

 

「そう、その石版は文字が彫られているだけじゃなくて…カオル、あんたの身体の中に有る石と全く同じ物で有る可能性があるらしいの…そのグロンギが言っていたってお母さんが…だからお母さんは助けが来るまで必死にその石版と…そばにいた私を庇って…っ」

 

 

と、言ったところで再び顔を落とし少し泣き始める。

 

 

「話してくれてありがとう桜子。」

 

 

と、僕は良いながら桜子の手を握る。その手は震えていた、桜子だけじゃない。僕の手が怒りで震えていたのもある。

 

 

「しまったなあの石版…回収しておけば…」

 

 

と僕が言うと、椿さんが

 

 

「杉田に今連絡して聞いてみるよ。その石版。」

 

 

「すみませんお願いします。」

 

 

と、首を縦に振りながらこの場を離れていった。

 

 

 

「五代さん朝から遺跡の付近にいなかったみたいだけど、」

 

 

と、輝ちゃんがそこまで言ったところでもう一つ思い出したことが。

 

 

 

「そういえば…輝ちゃん。僕さ、さっき研究所の付近で五代さんを見た気がするけど…見間違いだったのかな?」

 

 

 

 

「研究所の付近で?もし五代さんなら変身出来ないとしても何かしら行動取るだろうし違うんじゃないかしら?」

 

 

 

確かにそうだ…

と、ただ頷く僕のこの少しの不安が、独りで戦う恐怖だとは気付きたくなかった、そう思うのは五代さんも同じだったのだろうか━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 




失われつつある「何か」それはカオルの笑顔、日常、そして…?


タイトルの「消失」は五代雄介不在のままストーリーが進行します。「消失」というタイトルは某アニメからイタダキ!そのストーリーを知っている。すると、この作品と少し似ているような気がしても気のせいです良きっと。


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青空の消失⑥

更新早くできました、がかなり短めです。
今回のお話は…決めかねていた夏目博士の進退といいますか…生死をどちらにするかで考えた結果、劇場作品の昭和ライダーvs平成ライダーを少しリンクさせるために…本文読んでいただければ解ります。ほんの少しだけ…「あの人」が登場。


 

 

術室の前で僕と輝ちゃん、そしてようやく泣き止みはしたが…目を真っ赤にし鼻をすすっている桜子も、約4時間近く夏目博士の無事を祈り続けた。

 

 

「…消えた…!!」

 

 

 

僕のその声と同時に術室の蛍光が消え扉が開く。

 

 

 

眩しい光の中からから執刀医だろうか…?ドクターが現れ、僕らの前に立ち止まると…こう告げた。

 

 

「まさに奇跡としか言えません…夏目さんは一命を取り留めました…」

 

 

その言葉と同時に泣き出し僕に抱きつく桜子と輝ちゃん、痛い痛いってば…でも

 

 

「博士…良かった…あれ…」

 

 

 

僕もいつ以来だろうか…の大粒の涙が零れだし止まることを知らなかった。

 

 

 

「…良かった、ほんとに良かった…!!ありがとうございます先生!」

 

 

 

僕はその執刀医?=先生にお礼を言うと、

 

 

 

「いや、自分は助手を勤めただけなので…執刀医は…あの方ですよ。」

 

 

 

とその先生が術室の中を指すと、中から50代位だろうか…?白衣の男性医師が凛とした態度で僕に歩み寄ってきた。そして話し出す。

 

 

 

「彼女…夏目実加さんだったかな…?一命を取り留めました、彼女の生命力の強さが起こした奇跡です、彼女を救えた医師として誇りに思うほどに。」

 

 

「先生、ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 

 

僕も含め桜子と輝ちゃんが先生に深く頭を下げると、

 

 

「顔を上げて下さい、私は医師として人としてしなければならない事をしたまでですから。夏目実加さんの回復を祈ります、マリ…娘を待たせていますので…私はこれで失礼します。」

 

 

 

と、だけ言うと先生はどこに向かうのか歩き去っていった。その先生が角を曲がったとき僕は大事なことを聞きそびれ、急いで追うが…

 

 

 

「あっ、先生!先生のお名前は!?っていない…?」

 

 

 

 

 

角を曲がった先にその先生の姿はもう無かった━━━━━━

 

 

 

桜子たちのもとに戻って、術室から最初に出てきた医師に消えた先生の名を聞くと「ジン・ケイスケ」という名前の医師であり、どこからか緊急で派遣されてきた医者で有るらしくこの病院(小野寺病院というらしい、初めて知った…)の所属ではないことしか解らなかった…

 

 

 

「ジン・ケイスケさん…か…いつかまた会えたらいいな…」

 

 

僕がそう呟くと同時に術室から担架に寝かされた夏目博士が他の病室に運ばれるところだった。

 

 

 

「博士…」

 

 

「お母さん…」

 

 

「実加さん…」

 

 

僕ら三人は痛々しい姿の実加さんを確認するとそう呟くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

その後、個室の病室に運ばれた夏目博士に付き添う事にした桜子と輝ちゃんから離れ僕は独り、病院の屋上にやってきた。

 

 

夕焼けに染まる空を見上げながら、深く深呼吸する。

 

 

「うーん…はぁ…五代さんどこ行っちゃったんですか…こんな時に…」

 

 

遠い夕焼け空を見つめながら独り言をただ呟く。

 

 

 

「五代さん…こんな辛いとき、どんな顔でみんなの前に立てばいいんでしょう…」

 

 

 

「父さん、母さん…僕は…みんなを守りたい…もう誰かが傷付くのは見たくない、だから僕はもっと頑張るから…」

 

 

 

「だからせめて、今は泣いて良いかな。たぶん、今しか泣けないんだ…もう僕は決めたよ、必ずグロンギからみんなを守る、だから今のうちに泣いておくよ…」

 

 

 

夕焼けから闇夜に染まる夏の夕暮れ時、流れゆく滴はキラキラと輝いて光を放ち、辛さ悲しさを流しながらいつかまた笑顔の日々が来ることを信じて…

 

僕は独り泣いた。

 

 

博士から言われた言葉の通り、「下を向いて生きるなら上を向いて欠伸でもしてろ」「泣きたいなら泣け、泣き叫べ」

 

 

今なら解る、きっと…この言葉…下を向いて生きるな、という訳じゃない、泣きたいなら泣け、も泣いたらいいんだよじゃないんだ。

 

 

下から上を見る=つまり前を向いて欠伸するくらいの余裕を持て、そしてのんびり行けということ、泣きたいなら泣け、泣き叫べ=これはたぶん博士が僕に無理をするなよと言ってたんだ…なぜなら…僕は人前で泣かないから…今なら解る、今なら…

 

 

博士、ありがとう。

 

 

博士のおかげで僕はまた強くなりました。

 

 

博士、ありがとう生き残ってくれて。

 

 

博士のおかげで桜子と輝ちゃんに笑顔が戻りました。

 

 

もちろん僕も…いや…今はやっぱり泣いときます、ちゃんと守れなかった悔しさと辛さが少しでも軽くなるように。

 

 

「僕は…!!いや、僕がクウガだ!!だから必ず…!!守り通してみせるッッ!!」

 

 

 

と、涙と鼻水を垂らしながら泣き叫ぶ。

 

 

 

 

「さて…出来るかな…」

 

 

 

どこからかそんな声がした気がした。

 

 

 

が辺りを見回すが誰もいなかった…

 

 

 

 

今の声は聞き覚えが有る。

 

 

なぜなら、

 

 

 

「今の声…五代さん…?」

 

 

 

その声は消息不明となった五代さんの声に似ていた…そんな気がするからだ━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 




なぜ「あの人」がカオルの世界に現れたのかは深い意味はありません、「あの人」は人として医者としてやるべき事をしにやってきたと思っていただければ…


次回、もう1人のゴダイユウスケ=ダイが遂に登場。
物語が急展開するかも…




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青空の消失⑦

予定変更で今回のお話書きました、変更点は急展開とゴダイユウスケ=ダイの登場はなく、そしてもう少し先で出す予定だった「彼」が登場。
かなり短めですがお楽しみいただければ嬉しいです…


手術から明くる日の朝、病室に眠る博士を桜子と輝ちゃんに任せ、僕は独り栄水遺跡に戻っていた。

理由といえば、五代さんを探しているほか無い。

 

 

 

「どこ行ったんですか五代さん…」

 

 

 

遺跡の中、近くの採石場(特訓した場所)、施設内、一応遺跡に来る前に僕の自宅や夏目研究所も探したがどこにもいないのだ。

 

正に消え失せたように…

 

そんな折り、僕の携帯の電話が鳴る。

 

 

 

電話に出ると焦り気味の杉田さんの声が聞き取れた。

 

 

「一条君!!今どこだ!?」

 

 

 

「栄水遺跡ですが?」

 

 

 

「緊急事態だ、今から急いで署まで来てくれ!!」

 

 

 

「何かあったんですか!?」

 

 

 

「怪物が、グロンギだったか!?あれが署内に現れた!」

 

 

 

その言葉と同時に、僕の身体は反応し、

 

 

「わかりました!すぐ行きます!杉田さん気を付けて!」

 

 

「あぁ!頼んだ!」

 

 

 

まず僕は遺跡の施設内に戻り、職員専用の移動用の車を借りようとするが…

 

 

 

車がない…こんな時に限って…!!

 

 

携帯を取りだし病院内にいるであろう輝ちゃんに電話をかける…頼むから病室以外にいてくれ…電源入れていてくれよ…!

 

 

「もしもーし、何、カオルン。」

 

 

出てくれた!

 

 

 

「輝ちゃん!職員専用の車、無いんだけど他になんか無いの!?」

 

 

「えっと、車がないのね?」

 

 

「グロンギが杉田刑事の所に現れたんだ!急いで向かわないと!」

 

 

「エッ!?わっわかった、じゃあ私のスポーツバイク使いなさい!」

 

 

 

「そんなの乗ってたの!?」

 

 

「まぁね、趣味で。とにかく鍵は私のデスクの一番上の引き出し、バイクは施設の裏の倉庫に有るから!」

 

 

「ありがとう!」

 

 

「良いから急ぎなさい!桜子には一応私から伝えとくから。」

 

 

「解った!ありがとう!」

 

 

 

それを最後に電話を切り、輝ちゃんのデスクの引き出しから鍵を見つけだし、急いで施設の裏に回るとすぐ目の前の倉庫の横に確かにスポーツバイクが有った。

 

 

 

「これか!」

 

 

 

エンジンをかけ、アクセルを全快で杉田さんの元へ急ぐ━━━━━━━

 

 

 

 

栄水遺跡から杉田さんのいる警察署(名前何だっけ?)まで最低でも15分はかかる。

 

 

 

急がないと、昨日の今日でまた何人の警官が死ぬかわからない…

 

 

そういえば…昨夜にも杉田さんから電話があった、内容は「研究所の付近に落ちていた石板は一旦署で預かる」とのことだった。

 

それと昨日夏目研究所を襲ったグロンギはその石板

を狙いに現れた…

 

 

つまり、今回もあの石板狙いか…!?

 

五代さんが持っていた…栄水遺跡の石板…あれはいったい…?

 

 

 

考えているうちに、思いの外少し早く目的地へたどり着き、輝ちゃんのバイクから降りて改めて署の名前を確認してみると、蝶野署とあった、知らなかった。

 

そんな事より、

 

 

 

「署内どころか…外にもかよッッ!?しかも2体も!?」

 

そう、僕の視界が捉えたのは2体のグロンギに警官達が発砲している光景、そしてそのグロンギ達が1人また1人と発砲する警官を殺していく光景だった。

 

 

そして次に僕の視界が捉えたのは蝶野署の三階辺り壁と窓ガラスが割れそこにもう一体グロンギを確認、その近くに杉田さんの姿も確認した。

 

 

 

「杉田さん!!」

 

 

まずい、外の2体を倒してから署内の1体を相手するとなると、体力的にきつい、そして時間的に間に合わない…

 

 

どうすれば…!?

 

 

 

「君がこの世界のクウガか。」

 

 

えっ?

 

 

不意に後ろから声をかけられ振り返ると、1人の青年が立っていた。

 

 

「なぜそれを…?」

 

僕が問うと、

 

 

「話している暇はないんじゃないかな、とりあえずそこの2体のグロンギは僕が引き受けよう。」

 

 

引き受け…る?と言った…?

 

 

 

「君は…」

 

 

と、僕がその青年に問うと同時にその青年はどこからか銃のようなものと、「見覚えのあるカード」を取りだし言った。

 

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えなくて良い、てのが口癖の奴のお仲間って所かな?」

 

 

「まさか…!?」

 

 

 

「さて、君はあの上のグロンギのもとへ行きたまえ。」

 

 

と、青年は良いながら銃口をグロンギ2体に向けて引き金を引いた。

 

 

攻撃を受けた2体のグロンギはその青年に標的を変えゆっくりと詰め寄ってくる。

 

 

「さぁ、君は行きたまえ。この世界のクウガ。」

 

 

 

「ありがとう!」

 

 

僕は礼を述べ急いで署内に向かおうとするが、2体の内1体が僕を確認すると、僕めがけ突進してくる。それを僕は転がってかわし、立ち上がり再び走り出そうとすると、今度は鋭い爪で襲いかかってきた。

 

 

が、

 

 

 

「君達の相手はこの僕だ。」

 

 

 

青年から放たれた銃によって危機を逃れる。

 

 

青年は僕に頷くと僕も頷いて、再び所内に走り出す。

 

 

そして、

 

 

 

「変身ッッ!!」

 

 

 

僕は赤色のクウガに変身、署内への侵入に成功する。

 

 

ちなみに遠くに聞こえた不思議な電子音と、青年の「変身。」という声に僕は振り返ることはなかった━━━━━━━━━━━━━。

 

 

 




「彼」は名乗りませんでしたが…誰だかお解り頂けたでしょうか?次回予定ではゴダイユウスケ=ダイが出ます、はい。たぶん。


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青空の消失⑧

ついに黒幕登場、ディエンドさんも色々やってくれます。そして主人公カオルが新フォームに変身。次から次への波乱と急展開、あなたは付いて来れますか(笑)


三階まで駆け上がり、辺りを見回すと先ほど外から確認した割れた壁と窓ガラスの場所だった。

それと数人の警官が出血し倒れている。

間違い無く…生きてはいないであろう…

 

 

その時、奥の会議室のような場所から発砲音が鳴る。

 

 

「今のは!?そっちか!」

 

 

 

倒れている警官達を踏まないように音のした方へ走る。

 

 

「杉田さんッッ!!」

 

 

僕が見た光景、剣のような物を左手に、そして右手は杉田さんの胸ぐらを掴み、持ち上げている…カブトムシのようなグロンギがいた。

 

 

「一条君…か…」

 

 

 

「ハァッッ!」

 

 

その声と同時に僕は一気にカブトムシのようなグロンギに間合いを詰め、そのまま体当たりしてそのグロンギのバランスを崩し、膝を付いたそのグロンギを蹴り飛ばす…その勢いで壁に打ち付けられたグロンギは少し気を失ったようだが…壁に穴が空いてしまった…まぁでも、杉田さんを助け出すのに成功したから良しとしよう。

 

 

 

「大丈夫ですか!?杉田さん!血が…」

 

 

見た所によると杉田さんの額から少し血が流れていた。

 

 

「助かったよ一条君…私は大丈夫だ、奴の攻撃をかわしているうちにぶつけてしまった程度の傷だからな…外にもグロンギが現れたらしいが…?」

 

 

「2体現れました、僕の…仲間…?が戦ってくれています。」

 

 

そう、あの謎の青年。士から聞いたあの言葉、おそらく「仮面ライダー」が。

 

 

「…仲間…か!良かった、何とかなりそうか…?」

 

 

と、杉田さんが壁に倒れ込むグロンギを見て問う。

 

 

と、その時そのグロンギが左手に持っていた剣を杖に立ち上がり始めた。

 

 

「何とかしてみます」

 

 

「わかった、おそらく奴の狙いはこの石板だろう…?これは私が匿う…他に私に出来ることは有るか?」

 

 

 

「じゃあそれを持ってここから逃げて下さい、道は僕が守ります。」

 

 

 

「わかった。」

 

杉田さんは足を引きずりながらこの場所から離れようと足を進め、それと同時に、剣を持ったグロンギが僕ではなく、杉田さん目掛けて攻撃を仕掛けた。

 

 

 

「させるか!」

 

 

 

グロンギと杉田さんの間、振り下ろされた剣の真下に入り、それを受け止める。

 

 

が、ダメージがかなり大きく、受け止めきれず、膝を付いた瞬間に蹴り飛ばされる。

 

 

 

「いてえ…」

 

 

杉田さんを逃がすのには成功した、が…

 

 

武器を持ったグロンギを相手にするのは初めてだ。

 

 

正直どう戦えばいいかわからない…

 

 

「武器を持っている分スピードがない、早さで補う…こちらも武器か早さどちらかを使えれば…」

 

 

その時僕の脳裏に、いつか見た夢の光景。色んな色をしたクウガと、そしてこの前1人で2体を相手したときのあの色の変化を思い出す。

 

 

「やってみるか…」

 

 

 

そう、五代さんからも聞いたことがある。

鉄やらで出来たものを色が変わったクウガで扱うとその鉄の塊は武器に変わると。

 

 

「スピード重視、もっと早く…もっと早くだ!」

 

 

 

やるしかない、やってみるしかない。僕を…クウガの力を信じよう。

 

 

 

僕は立ち上がり、意識を集中。

 

 

気持ちはただ「早く動けるように」だ。

 

 

 

「変身ッッ!!」

 

 

 

僕のその言葉と同時に僕の身体が赤から青になった。

 

 

「よし!行ける!」

 

 

スピードが上がった僕は素早く動き、グロンギに蹴りを入れるが…

 

 

「効いていない…?」

 

 

 

グロンギはかわす所か僕の攻撃を体に受け、それを耐えきった…

 

 

「赤の時より威力がないという事か!?」

 

 

その瞬間振り下ろされた剣をギリギリかわし、グロンギから少し間合いを取る。

 

 

「スピードが強化された分パワーが落ちていた…どうしよう…」

 

 

と、考える僕の目の前にコロコロと転がってきた鉄パイプが…

 

 

「鉄パイプ…鉄だけど…出来るのか?」

 

 

僕はその転がってきた鉄パイプを握ると…やはり何も起こらない。

 

 

「パワーが足りない分武器で補えれば…威力は少なくても…スピードでカバーできる武器…」

 

 

 

のっそりと歩み寄ってくるグロンギの右手に持ち替えられたその剣のダメージを次受ければまずいかもしれない。

 

 

「剣を相手に…あっ」

 

 

 

そうか、イメージができあがった。

 

 

 

そうじゃないか、力には力を。

 

スピードにはスピード。

 

 

目には目を、刃には刃を。

 

 

剣には剣を。

 

 

 

「!?」

 

 

歩み寄ってくるグロンギは少したじろいだのが解る。

 

 

 

「さて、本当の戦いは…こっからだ!ハァッッ!」

 

 

僕はスピードの上がった身体でグロンギに再び一気に間合いを詰め右手に持つ鉄パイプいや…少し細短い「短剣」を振るう。

 

 

「グッ…クソッ」

 

 

痛みからか、小声で声が漏れるグロンギ…ん…こいつ今喋った…?

 

 

 

なおもスピードとその素早い剣術でグロンギにダメージを与える僕。

 

 

「パワーが足りないなら手数で補えばいい、それだけだ!オリャッ!」

 

 

 

ついに膝を付き肩で息をし始めたグロンギ。

 

 

 

「あとは…どうやってしとめるか…か…」

 

 

 

正直、「赤」に戻って蹴りで封印の力を撃ち込めばいいが、この「青」でもおそらく方法は有る。

 

 

その時、握っている短剣が光り輝きだし、熱を帯び始めた。

 

 

 

「そうか…!」

 

 

 

僕はその短剣に自分の力を全て注入する(イメージ)

 

それをクナイを投げるように槍を投げるように、グロンギ目掛けて全力投球。

 

 

立ち上がりかけていたグロンギの胸をその短剣が貫通し、その貫通した場所が炎に包まれる。

 

 

そして「赤」の時と同じ様にグロンギ目掛けて走り、空中で一回転。

 

 

その炎目掛け「青」のまま蹴りを打ち込む。

 

 

「ライダーキック!!」

 

 

士が命名したその名と共に。

 

 

 

次の瞬間、グロンギは炎に包まれ消失した。

 

 

 

消失する瞬間、そのグロンギから「なぜだ」という声が聞こえた気がしたが…

 

 

「ふぅ…やれば…出来るもんだな…五代さん、僕やれましたよ…あ、手伝いに行かなきゃ」

 

 

外で戦ってくれているであろう青年は2体を相手にしている、早く行かなければ。

と、立ち上がろうとしたとき、

 

 

「いやー、ほんとよくやったね、すごいすごい。」

 

 

 

その声の方を向くと馴染んだ顔の彼がそこにいた。

 

 

「五代さん…?どこ行ってたんですか!?探しましたよ!?」

 

五代さんがそこに立っていた、服装がいつもと違う様な気がするが。

 

 

「なぁ、君はさ、なぜ戦うんだっけ?」

 

 

 

五代さんが外を見ながら呟く。

 

 

「えっ?なんでそんなこと…?」

 

 

「なぜ、守ろうとするんだい?」

 

 

 

「えっ?」

 

 

五代さんの様子がおかしい、ような?

 

 

「どうしたんですか?五代さん?」

 

 

 

「ほんとさぁ、誰かのためにとか…笑えるよ。もう、笑い方忘れたけど。」

 

 

 

「五代さん…?」

 

 

 

「さて…出来るかな…君に、…変身」

 

 

その言葉と同時に五代さんがクウガに変身する。

ただし…

 

 

「黒い…クウガ…?」

 

 

 

今、僕の目の前に夢で見た恐怖の象徴、全身が黒いクウガが現れた、五代さんはなぜ変身したのか?

 

 

 

「五代さん…変身出来るようになったんですね!?でもその姿…なんで変身したんですか?あっ、外の奴ですか?」

 

 

眼も黒く染まり闇に包まれた姿形のクウガ。

 

 

「いや、君を倒す為さ。それと…俺は五代さんじゃない。」

 

 

その言葉と同時に五代さんが僕を殴り飛ばす。

壁に打ち付けられ一瞬気を失いそうになる。

 

 

「えっ、なんで…五代さん…?」

 

 

間違いないあれは五代さんだろ?でもだからなんで?わからない、なぜ僕は五代さんの攻撃を受けた?五代さんはなぜ僕を攻撃した?思考回路がショートしそうになるくらい混乱した僕の頭を誰か助けて下さい。

 

 

「俺は五代という名ではない…はじめまして、二代目の戦士クウガ。俺の名はダイ、よろしく。」

 

 

その言葉と同時に今度は壁ごと蹴り飛ばされ、三階から地上に落下してしまう。

 

 

 

落下するとき何とか致命傷を負わずにすんだが…思考回路はショート寸前でそして落下の衝撃で士の言っていた言葉を思い出す。

 

「五代雄介にそっくりな奴を見た」と言う言葉。

 

 

 

「まさか…彼が…この世界の五代さん…!?」

 

 

三階を見上げると、黒いクウガが僕を見据えこう話す。

 

 

「俺と同じぐらいに強くなったときに改めて殺してやるさ、それまで地獄の日々を味わいな、戦いの日々を。」

 

 

それだけ言うと砂煙の中に姿を消し消えた。

 

 

「僕を殺す…?」

 

 

なぜ…クウガ同士が戦う必要が?

 

 

 

と、その時。

 

 

 

「何を座り込んでいるんだ?その姿…上の奴が済んだなら手伝ってくれたまえよ、2対1より2対2の方が楽しめそうだ。」

 

 

士が変身した「仮面ライダー」に似た姿形をしたしかし色は違う、「先程の青年」の声が聞こえる。

 

 

「あ、ごめんなさいお待たせして!」

 

 

とりあえず謝っておく。

 

 

「君はあの鞭を持っている方のグロンギを頼む、接近戦の方が君は良いだろう。」

 

 

「オーケー!」

 

 

僕は「青い」クウガのまま戦うことにする。

 

 

 

「あの、君の名前は?」

 

 

 

「こんな時に自己紹介かい?感心しないな、まぁいい、僕は海東大樹、仮面ライダーディエンド、覚えなくて良いよ。」

 

 

「ディエンド…か。よろしく!!」

 

 

「よしてくれたまえ、どこかのお人好しと一緒で僕も馴れ合いは好きじゃないんでね。さ、おしゃべりはここまでだ。クライマックスといこうか。」

 

 

どこかのお人好し…ね。

 

 

 

「うん、わかった。」

 

 

 

僕の視線の先に2体のグロンギが現れる。

 

 

鞭を持った方のグロンギに僕は対峙する。

 

 

 

鞭を持ったグロンギが僕めがけ突進してくる。

僕も一気に忍者さながらのスピードで間合いを詰めながら途中落ちていた金属棒を拾い短剣に変化させ、その短剣で攻撃を仕掛ける。

先程の戦いでなれ始めたのか、戦いは早く収束を迎えられそうだ。

 

 

「ハァッッ!」

 

 

少しグロンギから間合いを取り短剣をグロンギへ投げ、その短剣は今度は貫通せず胸元に突き刺さる。

 

もがき苦しむグロンギに間合いを詰め空中で一回転。

そして右足で蹴りをその短剣に打ち込み、その短剣が鞭のグロンギから貫通し、ディエンドが戦っていたグロンギに突き刺さる。威力が強かったのか、ディエンドが戦っていたグロンギは不意を付かれ、そのまま封印の力を注入され消失し、もちろん僕が戦っていた鞭を持ったグロンギはとっくに消失していた。

 

 

「…なかなか汚い攻撃だねえ、でも嫌いじゃない。」

 

 

その言葉と同時にディエンドは青年の姿に戻り、僕も変身を解除。

 

 

「ありがとう。」

 

 

「いや、感謝の気持ちはいらない。僕が欲しいのはお宝だけさ。だか…いていくよ…」

 

 

最後の方は聞き取れなかったが…その青年はその言葉を残し、どこかに消えていった。

 

 

 

その直後

 

 

 

「一条君!」

 

 

頭に包帯を巻いた杉田さんが、焦り顔で僕に駆け寄ってきた。

 

 

 

「あっ、杉田さん大丈夫ですか?けがの方は。」

 

 

 

「そんな事より!盗まれた!」

 

 

 

「えっ、何をです?」

 

 

 

「石板だよ、例の石板!」

 

 

 

「ええっ!?」

 

 

 

 

あっ、

 

 

 

 

「だから頂いていくよ…」

 

 

 

 

 

犯人は。

 

 

 

 

 

間違いない…彼だ。

 

 

 

 

そもそもあの石板はいったい…?

 

 

 

そして、ダイと名乗った彼…

 

 

 

僕は彼と戦わなければいけないのか…?

 

 

僕が強くなったときに…

 

 

 

彼は僕を殺す…

 

 

 

クウガがクウガを殺す…?

 

 

 

 

五代さん…

 

 

 

教えて下さい。

 

 

 

あなたならどうしますか?

 

 

 

 

僕は、

 

 

 

 

それでも誰かのために強くなって戦います。

 

 

 

 

五代さん。

 

 

 

 

いったいどこ行っちゃったんですか━━━━━━━━━━━━

 

 




カオルの新フォームのイメージは五代雄介の「流れる水の如く敵をなぎ払う」のあのフォームにロッドではなく、小太刀位の長さの剣で忍者のような戦いを主体とします、台詞にもある「手数で」ダメージを与える的な。

必殺技のイメージは仮面ライダー電王のロッドフォームの必殺技のイメージです。

そして黒幕、もうひとりの五代雄介=ダイ。笑顔を失った黒き闇の戦士クウガはとりあえずチョーTUEEEEE設定で行きます。
ディエンドさん今後も少しでます、重要なキャラクターになりますので…

次回、今回のお話から一週間後の所から始まります。
青空の消失も終盤に差し掛かってるんで、もっと頑張ります、次回、お楽しみに。


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青空の消失⑨

恐らく今年最後の更新になります、今回のお話はヒロイン桜子の視点のお話がほぼメインになってます。そしてまた通りすがります。


母、「実加」がグロンギに襲われ、その後一命を取り留めてから一週間。

未だに母の目が覚めることは叶わないでいた。

母が入院してから、自分の仕事は休んでいる…幼稚園辞めようかな…

 

「桜子~、おはよう。」

 

少し悲観的な感情になっている私に毎朝必ず会いに来てくれている輝姉ちゃん。

 

「あっ、おはよう輝姉ちゃん、今から仕事?」

 

時刻は10時前、出勤にしては少し遅い気はする。

 

「いんや、違うわよ。これから県警でグロンギ対策会議がねー。昨日も一昨日も現れたらしいから。県警がグロンギと関係の有るであろう遺跡の資料が欲しいらしくて。」

 

そう…ここの所毎日のように怪物、グロンギが人を襲い、カオルがその度に刑事の杉田さんと共に出動している。ついに都市伝説ではなく現実として社会は認識し始めたのだ。

 

「そっか…ニュースになってたもんね。人が急に暴れ出して怪物化するって奴の関連でしょ?」

 

この一週間、世間はこの話題で持ちきりなのだ。

人が自我を失ったように急に暴れ出してその直後怪物化=グロンギになるという話。しかもこれは警察の正式な公式発表のため、世間は混乱状態に陥りずつあった…

 

「まぁね、ここの椿先生も召集されるみたいだし何か動きがあったんだろうね。そういえばカオルンは?」

 

カオル…その名前を聞く度、身体がぴくっと反応してしまう。

 

「カオルは…たぶんカオルはもう対策本部にいるんじゃないかな?」

 

「あっ、そっか。」

 

ここ一週間ほとんどカオルと有っていないし話してもいない。3日…4日ほど前にこの病室に母の様子を伺いに来て他愛もない話を少し…そして昨日電話で「五代さん帰ってきた?」とか「博士は大丈夫?」とか「桜子も無理すんなよ」とか言っていた気がする。そう、いつも…あんたはいつもそうなの。

 

「あんたは…大丈夫なの…?」

 

誰にも聞かれないくらいの声で呟いてみる。

 

「えっ?」

輝姉ちゃんが顔を?としながら私を見ている。

 

「ううん、何でもない。お母さん、起きないかなーって。」

 

「本当ね…早く目を覚まして欲しいわ…あっ、やばっ、こんな時間だ!ごめん桜子このリンゴ食べちゃって。」

 

右手に下げていた袋を私に差し出すと輝姉ちゃんは足早に去っていった。

 

「私…私にも…出来ることはないのかな…?ねえ、お母さん。」

 

母は答えてくれそうもなかった。

 

「カオル大丈夫かな…」

 

この一週間で、私が知る限りカオルは、12体のグロンギと死闘を繰り広げ、世間ではその救世主をいつ頃からか「仮面ライダー」とか「クウガ」と呼ぶようになった。警察の発表で「クウガ」という存在が明かされはしたが、人類の味方である以外は何者なのかまでは発表されていないみたい。

「仮面ライダー」は…たぶん、警察の杉田さんからカオルに支給されたスポーツタイプのバイクに乗ってカオルがクウガに変身し現場に現れるため?「仮面」を被りバイクで現れる=「仮面ライダー」と呼ばれるようになったんじゃないかなとか思っている。

 

母に繋がれた沢山の管を見て思う。

こんなになってまで、私を庇ってくれた母。

こんなになるほどの致命傷を与えたあのグロンギ。

最初は普通の人の姿をしていたあのグロンギ。

いや、たぶんもとは人間なんだと思う、普通に会話することも出来ていた。

栄水遺跡の関係者として来訪した話だったので誰も何も疑わなかった。

その人もたぶん、母と同じ人なのだ。

なのになんで、

あの石板を見た途端、ニヤリと笑い。

もうその姿は人のそれではなくなっていた。

「見ーつけた、これこれ。」

この言葉とあの顔。忘れることはない。

その瞬間鮮血が舞い、母は必死で私を匿いながら石板も頑なに手放さなかった、その手は自らの血で覆われているのに。

研究所のメンバーが異変に気付き警察に通報したのか、すぐ警官が駆けつけてくれて━━━━━━

その頃には母の意識は切れ切れで、石板はグロンギに奪われ━━━━━━━━━━

混乱状態の中、救急車を呼び、母の止血を知識の範囲出来る範囲で行っている中、静まり返る研究所に足音が響く。まさか…またグロンギが戻ってきたのかと身構えた私は恐る恐る様子をうかがいにいく。

「博士!桜子!」

この声はカオルだ、来てくれたんだカオルが。

泣きそうな私を見てカオルが駆け寄ってくる。

その直後母の変わり果てた姿を見たカオルの手は震え、顔は…怒りに満ちていた…と思う。カオルのあんな顔は見たことがなかったから。

「おまえは何だッッ!?一条カオル!!」

母の懇親の一声でカオルの目に光が灯ったような気がした。

カオルを見送ったあと、母は気を失い、一時心配停止に陥るも小野寺医院にて出会った「ジン・ケイスケ」なる男性の医者が奇跡を起こしてくれた。母は一命を取り留め、今に至る━━━━━━━━━

 

ここでふと我に返ると、輝姉ちゃんがくれたリンゴをとりあえず袋から出し、カゴにおいておく。

 

「早く起きないと私が全部食べるぞー?」

 

やはり母は答えてくれそうもなかった。

 

時刻は10時30分、今の私に出来るのはただ母の傍にいることだけ━━━━━━━━━━━━五代さん、あなたの笑顔であいつをいつものあいつに戻してあげて━━━━━━━━五代さん、どこ行っちゃったんですか━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

「小田桐さんはまだのようだな、今日集まってもらったのは他でもない、奴らへの」

 

まで杉田さんが言い掛けたが…

 

警察の会議室というのはどうも僕は落ち着かない。

 

椅子に座る僕の両サイドに杉田さんと椿先生、正面に門矢士。

門矢士。

また、現れたよ門矢士。

 

「で、カオル。五代雄介は?」

杉田さんの話を遮り、士が僕に聞いてくる。

 

「行方不明、一週間程前から。」

僕と士のやりとりを黙ってみている杉田さんと椿先生。

が、ここで杉田さんが士に質問をする。

「あなたは警察の人間ではないんですね?初めてお会いしたときは令状をお持ちでしたが?」

 

「あぁ。それが?」

 

とだけ士はめんどくさそうに答える。

杉田さんはため息を付き、

「何者なんだ…」

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えなくて良い。」

士はお馴染みのその言葉を口にする。

 

そこで椿先生が

「仮面ライダー…ってつまり?あれか、今噂の一条のあの姿のことか?それと同じ存在なんだとしたら…興味深いな…ニヤリ」

 

語尾がおかしかった気がするがそんなことを気にせず士は椿先生をスルーし、僕に顔を向ける。

 

「何だカオル、お前仮面ライダーって呼ばれてるのか。」

 

「まぁ最近噂になってるよ、クウガと呼ばれる方が少ないね。」

 

「そうか…でだ…俺が聞きたいのは五代雄介の事だ。行方不明になった場所、最後に見た場所は?」

 

その時、会議室の扉が開き見知った女性が入ってくる。

「最後に見たのは私が五代さんと一緒に栄水遺跡の調査から戻って施設で別れるまで一緒だった、つまり遺跡付近で行方不明になったのかも。ひさしぶりね、門矢士君。」

 

輝が登場すると会議室には僕を含め五人が集まった。

「それから…士君に伝言と何か封筒がね、署の外で出会った変わった探偵さんに頼まれたんだけど。」

 

「探偵…ね…」

 

士は訝しげな顔で問いながら封筒を開けると写真が一枚。

「えぇ、その写真の奴が俺の住む町の…世界の脅威になるかもしれないって。風都の方で噂になってるみたいよ?」

 

 

風都…何か聞いたことのある町だな…そんなことより、その写真に写っていたのは

 

「五代さん!?」

 

僕の声が会議室に響く。

 

「探偵ね…ハーフボイルドがいい仕事をしてくれたようだ。切り札は伊達じゃないな。」

 

士が何か呟いたが今はそれどころじゃない。

 

 

五代さんが見つかった!

でも何でだろう。

この写真の五代さん…

いつもの五代さんじゃ無い気がする。

そうだ、笑顔じゃない。

この写真の五代さんはもしかしてこの間出会って戦った…

 

「ダ…」

 

僕が言いかけたその時、所内の緊急通達の警報がなり始めた━━━━━━━━

 

 




ずっと考えてまして…このクウガの世界はどこにあるのかを…設定として断言します。風都という町が存在する世界の何処か他の場所で存在するクウガと言うことを。伏線として士が探偵に会いに行くと、いつだったか台詞で言っちゃってましたが…
なので、今回登場した「探偵」は、そう…彼でした。
それではみなさん良いお年を。


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青空の消失⑩

あけましておめでとうございます。
更新遅くなりました、すみません。「青空の消失」も残り1話になりました。そして今回と次回のお話に前回に引き続き「仮面ライダーW」より2人のゲスト出演があります。ではお楽しみください


「緊急通報、栄水地区住宅街付近に数体のグロンギ出現!」

 

「またか!?」

ここ一週間毎日僕は数回にわたり戦っている。

緊急通達が会議室に響くと僕はもう、体が動きかけていた。

「なお、仮面ライダーが数体のグロンギ相手に応戦しているとの未確認情報有り。」

 

その通達で僕の体が止まり、士と目が合う。

 

「カオル…お前が行かなくても大丈夫じゃないのか?仮面ライダーとやらがいるらしいじゃないか。」

 

士は態度こそ荒っぽいがおそらく僕の体を案じているんだろう。

「それでも、僕はクウガだから。それに五代さんかもしれないし。」

士の優しさに僕なりに答えたつもりで、士は僕の言葉を聞いたかと思うと椅子から立ち上がる。

「…わかった、俺も見物にいこう。」

とだけ口にして、会議室を僕より先に後にした。

 

「じゃあ輝ちゃん、椿先生またあとで。杉田さん行きましょう。」

 

杉田さんと共に僕は士を追い会議室をあとにした。

「カオルン怪我したら、ちゅーしちゃうからね。」

何やら輝ちゃんの危険な言葉が聞こえた気がしたので足早に会議室を離れた。

 

現場には数体のグロンギを相手にしている「仮面ライダー」がいる。つまり僕や士以外の戦士に出会えるかもしれない。僕は独りじゃない、ただそう思いたいだけなのか僕は…違う、そうじゃない。

僕は、強くなりたい。色んな「仮面ライダー」に出会って、強さを学びたい。五代さんや士、この間共闘したカイトウ。僕は彼らのように強くなりたい。

ひとりでも多くの笑顔を守りたい、だから会ってみたい、たくさんの「仮面ライダー」に。

 

 

現場に到着すると、4体のグロンギが独りの仮面ライダーと対峙していた。

 

「ちょっと数が多いぜ…」

その仮面ライダーが呟いた。

目は赤く身体は黒…いや紫色か…その仮面ライダーが4体のグロンギに囲まれていた、そこである事に気付く。同時に現場に到着した士もそれに気付いたようで、

「全部同じ姿か、気持ち悪いな。」

士、確かにあの4体同じ姿だけど気持ち悪いって…

 

その士の言葉に反応したのか敵意の対象が紫色の「仮面ライダー」から僕と士に変わる、あっ言ったの僕じゃないよ、この人です!

4体のグロンギの姿は総て鳥のようなものだった。

 

「見物するつもりだったが…仕方ない、行くぞカオル。」

 

「あぁ、わかった。」

 

「「変身!」」

士はベルトを装着し、カードをベルトに装填するとディケイドへと変身した。僕も五代さんと同じあのお馴染みの動作で赤色のクウガに変身した。

 

すると4体のグロンギは自らの羽を武器にし攻撃を仕掛けてくる。いわゆる飛び道具だ。

 

僕とディケイドはそれをかわし、僕はとりあえず目の前の一体に攻撃を仕掛ける。

この一週間毎日戦ってきたせいか…いや成果と言った方がよいか、なんなく追い詰める。

ディケイドも剣を駆使しうまく立ち回っている、紫色の仮面ライダーも僕と同じ格闘スタイルでグロンギを追い詰める。

 

「さて、お片付けだ。」

 

紫色の仮面ライダーがメモリースティックのような物を腰に装填すると、不思議な電子音が聞こえた。

 

「決めるぜ、ライダーキック…!」

 

追い詰めたグロンギめがけ少し飛び上がり、右足で跳び蹴りを決めるとそのグロンギは爆発、跡形も残らなかった。

 

「僕も決めるよ、ライダーキック!」

 

僕は目の前のグロンギめがけ飛び上がり前に一回転し蹴りを打ち込む。グロンギは炎に包まれ爆砕した。

振り返るともうディケイドもとどめをさしていたようで、何やら周りを見回している。

 

「どうしたの、士。」

するとディケイドではなく、紫色の仮面ライダーが答えてくれた。

 

「一匹逃げちまったな…」

 

「本当だ…4体いたうち残り一体が…」

 

そう、いなくなってしまったのだ。そう遠くには行っていないはずだが…

鳥のグロンギ…空を飛んで逃げたか…?

僕がふと青空を見回すと、少し自分の視覚に異変が起こる。

 

「あれっ…見えた…?」

 

今、上空を飛んで逃げる鳥のグロンギが見えた気がした。

そして身体の外観にも異変が起こり始める。

「背中が何か…あれ…?」

 

気付いたときには背中に羽が生えていた。

 

「カオル、行けるか?」

 

ディケイドが、僕に語りかける。

「やってみる…よしっ、イメージオーケー!」

 

「あとはあんたに任せるぜ。」

紫色の仮面ライダーも僕に託してくれた。

僕は頷いてこう叫ぶ。

 

「超変身!」

 

五代さんが教えてくれたこの言葉、使わせてもらいますね五代さん。

 

すると僕の身体が緑色になり羽が羽ばたき身体が中を浮く。

 

「行ってきます!」

 

「ちょっとまった一条君!これを。」

 

行こうとした僕に到着した杉田さんが有る物を渡してくれた。

 

「杉田さんこれは?」

「対グロンギ用の神経断裂弾入りの拳銃さ、試しに使ってみてくれ。」

「ありがとうございます!じゃ行きます!」

 

僕は羽ばたき遥か上空にいるグロンギを追う。

 

 

「見つけたよ!」

 

グロンギを見つけた瞬間、手に持っていた拳銃がライフルのような武器に変化した、これもクウガの霊石の力だろうか。僕は弾を放ち、直撃したグロンギは降下し地面に倒れ落ちる。

 

「仮面ライダーは空も飛べるのか…!?」

 

その姿を追い、とどめを刺そうと近づくと、こちらに気付いたグロンギが言葉を放つ。話せるなら話そうじゃないか。

「どうして住宅街で暴れた?」

僕の問いに鼻で笑い答える。

「話す替わりに見逃してくれ!頼む!えーとな栄水遺跡の辺りにな、力を与えてくれる石があるって噂があってよ、それをネットの掲示板で知り合った奴らと興味本位で探しに行ったんだよ、そしたら男に出会ってその瞬間から体に変化が起こった。そしたらこのざまだ。力が手に入ったんだからどうせならと、力の石を手に入れようと仲間と探そうと思ったんだが…他の奴らが仲間割れしだした。そこにあんたら仮面ライダーの登場というわけさ。」

 

つまり、何者かの力で体が変化し、力の石を奪い合っていた?ということか。力の石…他にもあるのか?

「頼むよ、見逃してくれよ!誰もコロしてないンダッよ、タノムヨタノムヨアレナンカカラダガオカシイナ…」

そのグロンギの言葉が片言になり始め、何やら危険な気がして間合いを取るため少し離れると…

「アハハハアハハハハ」

 

そのグロンギは立ち上がり、先ほどまでの自我を失ったかのような、そんな状態でふらついている。

 

「アークウガミッケゲゲルカイシー」

 

その言葉と同時に僕の身体めがけ羽をとばしてくる。それをかわしながら銃で応戦するが…

 

「大丈夫かカオル!?」

 

後ろを見るとディケイドと、そして紫色の仮面ライダーが隣にいた。

 

「大丈夫、僕ひとりで大丈夫だから!ここは僕に任せて欲しい。」

 

僕の後ろの仮面ライダー2人はただ頷き僕を見守ってくれるようだった。

 

仮面ライダー三人相手に分が悪いと思ったのかグロンギが羽ばたき宙に消え、その姿を追って僕は意識を集中し気配を追う。

 

「…いた。」

 

この緑色の身体は…たぶん飛びたいという気持ちと連動しているようだ。意識を遠くまでとばし視覚と聴覚を最大限に生かす、感覚に優れた身体。

 

僕は翼で再び飛び上がり空を舞う。

加速し一気にグロンギを追い詰め、間近に迫ったところで手に持つ銃の引き金をグロンギめがけ引いた。

「ギャァァッッッ」

 

銃弾を受けたグロンギの身体が地面に降下し始める。

そのグロンギに再び銃弾を放ち、当たった場所が炎に包まれ始める。

 

「トドメだ!」

 

僕は落下するグロンギに急降下し蹴りの体制に入る。

「ライダーキック!」

 

僕の右足も炎に包まれグロンギに直撃、真下が海面であったため、僕はすんでの所で飛び上がり、水しぶきが舞い上がり、同時にグロンギも海底で爆発したようだ、が…

 

直後、人間の姿をした男性が海面に浮き上がってきた。

 

「今のグロンギが…人間…?」

 

そういえば前に遺跡で人間に化けていたグロンギがいたっけ?僕が初めて変身したあの時の…そんなことよりとりあえずこの男性を運ばなきゃ。

 

僕は浮き上がってきた男性を抱えて、ディケイド達の元へ戻る。

 

そこには杉田さんもいた。

 

「一条君!無事で何よりだ!その男性は?」

 

「もう息はないんですが…おそらく僕が戦ったグロンギだろうかと思います。」

 

杉田さんは携帯を取り出しなにやら電話をかけだした。

 

「一条君、私はその遺体を椿の所に運ぶ。君はどうする?」

 

「僕は2人に話がありますんで…」

 

と、2人の仮面ライダーを見て杉田さんに促す。

 

「わかった、会議はまた後日に。」

 

「はい。」

 

僕はその遺体を杉田さんに預けると同時に僕の身体は人間のその姿に戻る。

遺体をパトカーに乗せどこかに走り去る杉田さんを見送ると、2人の仮面ライダーも元の姿に戻った。

 

「あんたが、噂のクウガか?」

 

紫色の仮面ライダーだった男性が帽子をかぶりながら言う。

「僕は一条カオルです、よろしく!その…クウガです、はい。あなたは…」

 

「俺はしがない探偵…左翔太郎、仮面ライダージョーカー。相棒を探すついでにディケイドに会いに来たんだが。」

 

そこで、士が間に入る。

「大戦に協力してくれる気になったのか?」

 

左さんが首を横に降り、

 

「相棒がいない今、風都を守れるのは俺だけだからな、無理だ。」

 

「サイクロンの方が行方不明とは…何があった?」

 

「俺にも解らねえよ、ただ何か調べてたら変な場所に出たとか最後言っていたな。」

 

「変な場所?」

これは僕の問いだ、士は黙って聞いている。

「あぁ、光に包まれた不思議な場所だとか言ってたが、10日ほど前から連絡が取れない。」

 

「そういえば五代雄介も行方不明とか言ってたが…」

と、士はポケットから写真を取り出す。

 

「あ、それ!あっ、輝ちゃんが言ってた探偵って左さん!?その写真を士に届けたのも!?左さん!この写真はどこで取られたんです!?」

僕はちょっと熱くなっていた。

 

「まぁ、落ち着きな。それは風都で数ヶ月前に撮られた写真さ。この男は何やら怪しい情報を垂れ流す奴らしい。」

 

「というと?」

 

そこで士が口を開く。

 

「力が欲しい奴は栄水遺跡へ行け。」

 

「ご名答。だから栄水遺跡に行けば相棒もいるかと思ったが、まさか戦う羽目になるとはな。」

 

つまり、この写真の五代さんは五代さんじゃない。ダイは数ヶ月前から活動していた。

何のために?

 

「とりあえず俺は風都に戻る、またな一条カオル。仮面ライダークウガ。」

 

左さんはヘルメットをかぶりバイクに跨がると走り去っていった。

 

仮面ライダージョーカー、左翔太郎。

 

その相棒はどんな人なんだろう。

 

今は戦いの疲れよりもそのことが少し気になる、そしてそれよりも気になるのは。

 

「士、五代さん自分の世界に帰ったのかな?」

 

「お前、本気でそう思ってるのか?」

 

「何で?」

 

「お前に笑顔が無い以上、五代雄介が何もせず帰るわけ無いだろう。」

 

 

そうか…そうだね。

 

僕は士の言葉を飲み込み、澄み渡る青空を見渡すと、夕焼けがもうすぐそこまで迫ってきていた━━━━━━━━━━━━━━━

 




今回のお話は「昭和vs平成」の時系列内での出来事という設定です、フィリップが序盤参戦しなかった理由と言いますか…次回をお楽しみに!


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青空の消失━終━

更新すごーく遅くなりましたゴメンナサイ、これが素人の限界やー。気長に待ってまた呼んでいただける方達へまず最初に感謝の意を。でわ、お楽しみ下さいませ。


不思議な暖かい光に包まれ、それが心地良いことにその場所に俺の意識は呼び戻され、目を開けると目の前に広がる光景に驚いた。何なんだこの場所は…

 

「ここは…」

確か、さっきまでジョウと会話をして…光に導かれて…

「ん。おや…?」

 

その声のした後ろを振り向くと、声の主であろうか…?童顔の青年…だろうか?が、そこにいた…ていうか、今俺の後ろには扉のような物しか無かったはずだが…

 

「えっと…はじめまして、俺は五代雄介って…」

と、その童顔の青年に握手を求めようと手を出したとき自分がクウガの姿である事を思い出した。

 

「ごっごめんね、決して怪しいものじゃないんで!その俺は、クウ」

まで言い掛けたとき、童顔の青年が口を開く。

「クウガ、仮面ライダークウガ。ふーん、実に興味深い、地球の記憶に殆ど情報はなかったから。」

え、この子…俺を知ってる…の?

「君は…いったい…」

俺が聞くと、その童顔の青年は顎に手をかけて話し出す。

「僕は、園…いや、フィリップさ。そう呼ばれている。」

彼は何か言い掛けて止めたが、名はフィリップと言うらしい。えっとハーフ?

「そんなことより、あなたはどうやって…何故ここに?」

フィリップ君が辺りを見回しながら俺に問う。

「光に導かれて…かな。フィリップ君は?」

俺の問いに少し戸惑うような仕草をしてから話し出す。

「僕は仲間に頼まれた…昭和ライダーの情報や他の世界の仮面ライダーの情報…そして噂程度の話を地球の本棚で検索していたら…何時の間にかこの場所にいたんだ、もうどれくらいの時間経ったか解らないが…」

仮面ライダー、噂程度の話?地球の本棚…?よく解らない単語が出て来たが、要は迷い込んだ…そんな所か。

 

「五代雄介さん、あなたが仮面ライダークウガである事は知っていました。地球の本棚で丁度調べていたんで。」

 

フィリップ君はなおも辺りを見回しながら話している。

 

「しかし…」

 

「えっ?」

 

急に俺に視線を戻したフィリップ君は続ける。

「この場所は、いくら長い間いても全然辛くない、寧ろ身体が癒されていくような…そんな気がしませんか?五代雄介さん」

フィリップ君は再び顎に手をかけて考え込む。

その言葉に、ジョウから聞いた「聖なる泉」の話を思い出す。

「ここはそういう場所らしいよ、知り合いが…言ってた。」

と、だけは伝えておこう。

「…なるほどつまり…入口があり出口があるわけか…」

フィリップ君は再び辺りを見回し徘徊し始める。

俺もフィリップ君のあとを追う。

何時の間にか変身は解けていた、やはり癒やしの力が働いているのか?少し身体が軽い気がする。

 

「興味深い物を見つけたよ、五代雄介さん。あれを。」

 

フィリップ君の指す方を見ると、空間に波のような物が有りそこに何やら映像が流れている、そしてその映像は俺を凍り付かせる。

 

「実加さん!?」

 

そう、桜子ちゃんのお母さんの実加さんが血まみれで桜子ちゃんに抱き抱えられている。

「これはいったい!?早く行かなきゃ!」

 

「さぁどうやって行こうか?」

 

冷静な声でフィリップ君が俺に問う。

「どうやってって…どうしよう。」

 

「五代雄介さん、あなたは何故ここに来たんですか?」

 

「俺は俺自身の身体を癒やしに…?それが?」

フィリップ君が少し考え込む。

「僕もなるべく早く帰らないと相棒が心配するし、相棒がムチャクチャしないか心配だからね。」

と、述べまた続ける、

「これは仮定ですが、この空間がそういう場所、つまりは傷を癒す場所、であると仮定するならば。入れる者は傷を抱えたもの、出られる者はその傷を癒せたもの…こうは考えられないかな。」

 

そうか…しかしそういうこととなると…君は

 

「君も傷を抱えている…?」

 

フィリップ君は迷い込んだだけかもしれないが

、この場所が癒しの場所なら…フィリップ君も…

 

「僕は…そう、仮面ライダーである以上、傷を抱えるのは仕方がない、体に傷を負ったり心に傷を追ったり…あなたもそうでしょう?五代雄介さん…仮面ライダークウガ。」

そうか…この子も…きっと俺やカオル君と同じ「宿命」を背負っている…それが「仮面ライダー」…か。

 

目の前の映像が変わり、今度はカオル君がクウガに変身し戦っている映像が流れた。もしかすると外の世界で実際に起こっている事象なのかもしれない、そんな気がしてきた。まずい、早く行かなければ…

 

「傷を癒す…ね。行きたいけど行ったところで戦えないんじゃな…何とかなる…とはもういかないか…」

 

「さぁ?とりあえず僕は色々帰る方法を探るよ、また後程ここで会いましょう、五代雄介さん。」

 

 

 

それからどれくらいの時間その光景を見ていただろうか。

 

殆どがカオル君の戦闘シーンだった。たまにベッドで横たわる実加さんが写ったり(実加さんは一命を取り留めたのか?そうだと良いけど…)、泣いている輝ちゃんや桜子ちゃんが写ったり、杉田さんと椿先生が写ったり…

気付いたことが一つだけ有った。

 

「この映像は…カオル君の見ている世界…なのか…」

 

そして遂に…

「俺…!?…いや、ダイ…か!」

 

グロンギと戦い終えた直後カオル君の前に遂にダイが姿を現した。

圧倒的な力=黒の力で圧倒されるカオル君、とどめを刺すことをせずに去るダイ、そしてこの青い戦士…士君の…ディケイドに似た姿の戦士が写ったり…

 

その後も10数体のグロンギを相手に死闘を繰り広げるカオル君、体の色が白、赤以外にも青を使いこなせるようになったようだった、見辛かったがおそらくは体の色を使い分けて戦っていた。色と戦い方の組み合わせや武器などは俺とは少し違うようだったが…?紫と緑は…見なかった。

 

そして次のシーンで緑色のクウガにカオル君はなり…同じ場所にディケイドもいたが…再び士君は来てくれたのか、おや?今の黒…?紫色?の「仮面ライダー」はいったい…?

 

「あれは仮面ライダージョーカー、僕の相棒さ。」

 

ちょうどその時、フィリップ君が戻ってきた。

 

「翔太郎…すまない。早く戻りたいが…」

 

その紫色の仮面ライダーを見つめフィリップ君はつぶやく。

 

「ディケイドが大きな戦いが起ころうとしていると言っていたが、五代雄介さんあなたが行くんですか?それとも…」

 

「彼が、一条カオル君が行く。士君…ディケイドが呼んだのは彼だからね…最初は戦えれば俺が行こうかと思ったけど、カオル君は折れそうもないから。」

 

「戦えれば…?つまり今あなたは戦えない?」

 

フィリップ君が怪訝そうな顔で言う。

 

「過去の戦いの影響で一時的にね…知り合いが言っていたよ。」

 

フィリップ君は少し相槌をうち、

 

「その知り合いはこの場所を教えた人物で僕らと同じ、異能を持った特別な存在だった…とか。」

 

「えっ、凄い。よく解ったね、フィリップ君は探偵になれるよきっと。」

 

フィリップ君は映像を見ながら

 

「そうかな、みんな…相棒と恩人にも聞かせたかったよその言葉。きっと喜んでくれる。」

フィリップ君は最後に笑顔をこちらに向けてくれた。

俺はこの誰かの笑顔を見るために…誰かの笑顔のために…

 

「おや…これは…なるほど、どうやら僕はそろそろ帰れるらしい。」

 

その唐突な言葉に驚きを隠せない。

 

「この光は!?」

 

フィリップ君の身体に向かって光の線のような物が延びているのだ。

「これをたどれば帰れる…のかもしれない、五代雄介さん僕は行くよ。あなたは?僕と共に来ますか?出られるかもしれませんよ?」

 

俺は…

「俺は、ここでカオル君達を見守るよ、約束したからね、知り合いと。まず俺の身体が完全にならなければ、それは成し遂げられない。だから俺は。」

フィリップ君は俺の話を聞きながら顎に手を当て、何か考えているようだった。

 

「五代雄介さん、あなたに最後に聞きたい事があります。」

フィリップ君は外の世界の映像を眺めながら続ける。

「もし、もしもの話。同じ異能を持った存在が己の正義のために戦いあわなければならなくなった時、あなたなら戦いますか?いや、戦えますか?」

 

異能…つまり「仮面ライダー」と呼ばれる存在がって事だろうか、己の正義…それが反する相手…

「俺は、理由が解らないと無理、戦えない。でも…誰かの笑顔のためにならきっと戦うね。」

 

それを聞いたフィリップ君は俺とは反対方向を向き、光を追って歩き出し消えていった。

「僕の名前はソノザキ・ライト。仮面ライダーW。たまに仮面ライダーサイクロンと名乗ったことも。仲間からはフィリップと呼ばれているしがない探偵です。あなたに会えて良かった、五代雄介さん。ありがとう。外の彼にもよろしく。」

 

その言葉を言い残して…

 

「もうじき俺も出られるかなー。カオル君、ごめんね。独りにさせてしまって。」

 

この場所に来て思ったことがある。俺のもと居た世界でクウガとして戦ったあの日々。

きっとみんなは今の俺と同じ気持ちだったんじゃないかな。グロンギという存在に孤独に立ち向かう、無論手助けされながら…しかし…手助けしてくれた人たちは、きっと俺に「独り辛い思いをさせてしまっている」と少なからず思っていたと思う。現に俺がカオル君に対してそう思っているし、きっと彼も最初の変身をするまでは俺に対してそう思っていたんだろう、そんな話をカオル君とした記憶もある。

 

「ごめんなさい、一条さん。気付くの遅くなって。」

あっちに帰って一条さんにあったらこの言葉を最初に言おう。

だから帰らなきゃ、待っていてねみんな。

その時俺の身体に光が伸び始めその光の先に人影が現れる。

 

「ンッ!?五代クン!?おーい五代!!」

 

「えっ?」

 

光の先から足早に駆け寄ってくる女性。

 

「五代君こんなところで何やってんの?と、いうよりこの場所何?何で私ここにいるの?」

 

意味が解らない。なぜこの人がここに?

 

「ありゃ、あの映像に映ってるの私じゃない?へー、私寝てるときあんな顔するんだ。」

 

「いやいや、とりあえずえっ何、何で?俺混乱しちゃってますけど、えっ?」

 

俺が状況を掴みきれない状態の中その女性は続ける。

「ていうかサー。私死んじゃった?」

 

「あの映像からして生きてますよたぶん。うん、とりあえず落ち着こう俺。」

 

「五代君も取り乱すこと有るんだねー?」

 

「ええ、まぁ。俺も人間なんで。とりあえず」

 

「んー?」

 

その女性が顔を映像の方から俺に向けたとき、俺はその女性の名前を呼ぶ。

 

「実加さん、どうやってここへ?」

 

そう、やたらテンションの高いこの女性に俺は衝撃を受けている、なぜなら外の世界で傷を負い眠っているはずの夏目実加博士その物だったからだ━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 




これにて青空の消失は終わりです。次回からは「青空の旅立ち。」遂に、カオルがライダー大戦に旅立つ話なんですが、ライダー大戦の裏で「もしかしたらこんな事有ったかもよ?」みたいな話がメインになります。若干ネタバレしますが、主人公一条カオルと関わる仮面ライダーを紹介します。昭和からは、一号とX。平成からは、ファイズ、ゼロノス、ライダーではありませんが、鳴滝がメインになります。鳴滝が今後重要人物になるなんて誰が予想したものか、筆者自身も斜め上の展開になりそうです、でわ、次回をお楽しみに!


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青空の旅立ち
青空の旅立ち①


第4章突入です、そしてこの「青空の旅立ち」のメインストーリーは劇場作品昭和ライダーvs平成ライダーのリンクしています。ライダー大戦に旅立ったカオル不在の状態の五代雄介の物語と、ライダー大戦序盤と、ライダー大戦後の少し先のカオルの物語の2人の別々の物語になる予定です。では、第1話どうぞん。


ディケイド=門矢士、ジョーカー=左翔太郎との共闘を終え、その後何時間だろうかの間五代さんを探して士とバイクで2人でいろいろ回ってみた(士のバイクはマシンディケイダーと言うらしい、何それかっこいい)。しかし、甲斐はなく…再び士と共に署に戻ることにした、というのも杉田さんから急いで戻るよう電話があったからだ。僕が杉田さんに託したあのグロンギ「だったであろう」男性の遺体について聞きたいことがあるとのことらしい。遺体から何やら椿さんが見つけたとか何とか。ついでに戦いで使った杉田さんからの預かり物の銃もグロンギに効果があったと伝えた…銃、返さなきゃ。銃刀法違反とか洒落にならないし。

士と共に署に戻り会議室の扉を開けると輝ちゃんと椿さん、そして杉田さんが待っていた。

「あっ、帰ってきた!カオルン、士君お疲れさまー。怪我はない?はいコーヒー。」

輝ちゃんが僕と士にカップを差し出してくる。

「ありがとう。」

「俺はコーヒーにはうるさいぞ。」

まぁ頂くとしよう、とか呟きながら士はパイプ椅子に腰掛ける。

「一条、早速で悪いんだが…杉田から預かったあの遺体、いろいろ調べてみたんだ…これを見てくれ。」

椿さんが書類を僕に手渡す。

「どうも。これは…えーと…ふむふむ━━━━━━…ん?」

椿さんから手渡された書類には遺体の損傷具合や、出血の量、あとは…ほぼ素人の僕には解らないことがたくさん書いてあった、その中で一つ僕の目を引いたものがあった。というより、一つおかしな事があったのだ。

「気付いたみたいだな。一条、それどう思う?まだ遺体を詳しく検死した訳じゃないから何とも言えないが。」

椿さんが僕に何を求めたかと言えば、

「グロンギ…じゃない?…この男性…ヒトですね、正真正銘の。まさしく人間そのもの?」

「だな。」

椿さんはただ肯定し視線を会議室にいる全員に向ける。

「ただし、脳にある小さな石以外の話だが。」

と杉田さんが続ける。

「脳に石?」

僕が杉田さんに問うと椿さんが何やらレントゲン写真を数枚取り出した。

「このレントゲン写真は遺体の頭部を写したものだ。」

そこに写っていたのは、頭部中央にある2センチ程の大きさの小さな石の固まりのような物。

「これからその石を取り出す手術…いや検死を栄水遺跡の研究施設でやろうと思う、ちなみに遺体はもう施設で保管してもらっている。お前も来るか一条?」

椿さんが問う。

「えーと…」

つまり、今から施設に行って解剖するわけか、しかも脳?No!うん、グロいのNo!。

「疲れたんで今日はちょっと休ませて下さい。No…グロいのイヤだ…」

「ちょっと待った。」

そこに士が割って入る。

「カオル、心の声が表に出てるぞ、脳とNoをかけたのか?まぁそれは良いとして。」

良いのかよ!?

「俺も一緒に呼び戻した理由を聞こうか…杉田刑事殿?」

杉田さんが士の言葉に「ほう」と呟いたかと思うと、

「やはり…勘がいいな君、でわ…この写真の彼を知っていないか?門矢士君?」

そういって杉田さんが士に見せた写真には例の彼が写っていた。

「仮に俺が知っているとすれば?」

士の挑発的な発言にも冷静に杉田さんは答える。

「居場所を教えて欲しい、捕まえなければ。」

━━━━━彼は海東大樹。

「そいつは海東大樹、居場所は解らんが…今頃どこかで盗みでもしてるんじゃないか、お宝お宝とかいいながら。」

と、士が答える。

 

「海東さん…石版持ってっちゃったんだよね…」

僕も少し聞いていた、海東大樹という人物が例の石版の窃盗容疑で指名手配されているという話。

「だいたいわかった。そいつを見つけたら捕まえてあんた達に差し出す、で…謝礼は?」

士が悪い顔してる。

「300万。懸賞金としては高額だ。」

「よし、400万で手を打とう。」

「なっ!?350万!」

「仕方ない380万だな。」

「くっ…善処する…」

悪い顔してるよ士…

「やめろよ士…杉田さん、今度僕が海東さんに会ったら石版返してもらえないか聞いてみますから、逮捕はしないであげて下さい、海東さんのおかげで杉田さんを助けることも出来たんで。」

 

杉田さんが「そういえば戦ってくれたんだな…確かに…」と呟いているのが聞こえた。

「なっ、おいカオル、500万だぞ!?それと海東だったら600万を取るべきだろ。」

 

士が言ってる金額が少しずつ高くなっている気がするのは…気のせいだろうか。

すると、杉田さんが「コホンッ、」と仕切り直し

「とりあえず電話で話したように、神経系は人間とさほど変わらない、麻酔銃みたいな物が案外効果的だと…一条カオル君、それで間違いないね?」

と、僕に聞いてくる。

先ほどの戦いで杉田さんから預かった銃の件は五代さんを探して居るとき、電話で杉田さんと話はしていた。「効果は有る」と。

「はい、間違いないかと。でも何故?麻酔銃が効くかどうかなんてその発想は僕はなかったです。」

僕のその言葉のあとに輝ちゃんがコーヒーを啜りながら話し出す。

「あぁ、それね。私が五代さんから聞いていた話を先日杉田さんと椿さんに話したのよ。ちょっと前からグロンギの出没回数増えたでしょ?だからせめて何か出来ないかと…五代さんから(俺の世界の仲間達は神経を刺激する薬剤を混ぜた弾を仕込んで使っていた)って話を聞いたの思い出して、二人に話したのよ。」

そうか…輝ちゃんも戦ってくれてるんだ。みんな戦ってくれてるんだ。

「ありがとう輝ちゃん、杉田さんも椿さんもありがとうございます。本当に、ありがとうございます。僕は独りじゃないんですね、五代さんが居なくなって正直…辛かったです。僕は…クウガは独りなんだって。でも、今日出会った左さん…士…ここにいるみんなや、他にも…沢山の仲間が僕にはいるんですね、僕は…独りじゃないんだ。」

 

いつぶりだろうか、自然と笑顔になってしまった僕に釣られ、みんな…士までもが笑顔をほころんでいるようだった。

 

「では、今日は解散しましょう、再会議は私から連絡します。今日はお疲れさまでした。」

杉田さんのその言葉を最後に情報の交換会は終了、杉田さんはグロンギ対策本部に戻り、椿さんと輝ちゃんは共に栄水遺跡の施設へ。遺体の脳内部に有る石を取り出す手術をするようだ、輝ちゃん…吐かなければいいんだけど。

そして僕と士は、署を離れ夏目博士の入院する病院へと共に向かった。

「見舞いくらいしておく。夏目実加…くそっ、似たような名前の奴の顔を思い出したな…」

士らしいその言葉に優しさを感じる僕はただ、

「ありがとう」とだけ述べ、病院へと案内した。道中士に、先ほど述べていた博士に似た名前の人の話を聞くと、昔(光 夏実)という女性と度をともにしていたらしく…まぁ「彼女」的な何かだろうか。

「お前今俺がイラつく事を考えただろうが、それは違う。俺があいつの面倒を見ていてやっただけだ…気まぐれでな。」

満更でもない癖に、素直じゃないね全く。

そうこうしているうちに小野寺病院に辿り着く。

「小野寺ね…今日は色んな奴の顔を思い出す日だな全く。」

士は何か呟いたが、

「さて、病室はどこなんだカオル?」

もう、歩き出していた士に聞き直すことはしなかった。

病室に着くと入り口の札に夏目実加と書いてあることを確認し、一応ノックをする。

「はい、どうぞー。」

中から桜子の声が聞こえ、扉を開け士と共に入る。

 

「あっ、カオル!ってあれ?門矢さん?お久しぶりですね。」

士は会釈すると、そばにあった椅子に腰掛け、桜子に話し出す。

「あんたの母さんの様態、どうなんだ?」

桜子はきょとんとした顔で、

「目は覚ましてませんけど…一応命は取り留めました、えっと…ジン・ケイスケっていうお医者さんが頑張ってくれて何とか。」

士は少し戸惑ったようなそんな顔をし、夕暮れに染まる窓の外を眺めながら語り出す。

「そうか…大丈夫なら良かった。ジン・ケイスケ…ね…奴がこの世界に来たとはな…。カオル、今日俺がお前に会いに来た理由はな…」

士が急に僕の方に顔を向け、口を開く。

 

「ライダー同士の戦いがもう始まってしまった、じきにこの世界にも敵の一部がやってくるかもしれない。」

 

士の突然の言葉に不意を付かれ言葉を探す僕に追い打ちをかけるように、士は続けた。

 

「大集合の時だ。お前の力を貸してくれ、風都の探偵のあいつもああは言っていたが協力してくれるだろう。」

「そんな…無理だ。グロンギの出没が増えている中、別の世界で戦えって…それは…僕には…」

その僕の言葉と同時に、桜子が身体をビクつかせた。

「っえ?桜子?」

桜子は固まったまま口をぱくぱくさせている。

 

「おっ、おえっおかっっ…お母さん!?」

 

桜子の目線の先を追うと、ベッドで横たわる博士がいて、そしてその博士の目がはっきりと明いていた。

「おはよう、一条く…いや…カオル君、桜子、おや門矢士君ではないかい。」

 

士も少し驚きながらどうもとか言っている。

 

「カオル君、君に伝言が有る。」

 

博士の口調はしっかりしていて、元気そのもので正直驚愕過ぎて付いて行けていない。

 

「伝言?いや博士寝てたんだから伝言もなにも。」

 

「まぁ聞きなさいな、彼が言ってたよ。(急にいなくなってごめんねもうすぐ戻るから。)だってさ。」

まさか…まさか…!?

 

「さっきまでよく解らない場所で五代君と一緒にいてね。私が先に帰ることが出来たからそこでカオル君へ五代君からの伝言を預かったわけさ。というわけで…カオル君、桜子…ただいま!」

 

「「お帰りなさい!」」

 

僕と桜子の歓喜の声が個室に響き渡る。

 

博士の目が覚めた嬉しさで僕は忘れてしまっていた…

自分の旅立ちの日がもうすぐそこまで来ているという事を━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 




※ネタバレ注意

この作品を読んで下さる皆さんに少し今後のネタバレさせて下さい。なんかしたくなったんで。いやな方はスルーでお願いします。

この作品のメインヒロイン、夏目桜子の父親は、















あの「鳴滝」である。









以上。









次回をお楽しみに。




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青空の旅立ち②

長らくお待たせしました、今回は宿命を背負った物の恋愛事情、そして…あの鳴滝さんの過去が少し明かされます(完全オリジナル設定)仮面ライダーディケイド、門矢士とヒロイン桜子のやりとりもかなり頑張りました。ではお楽しみ下さい。


「あー、いけないんだー。門矢さん好き嫌いしちゃダメですよ?正義のヒーローのデカイド?の名が廃りますよー?」

桜子が士にお説教しはじめた。

「嫌いな物を食って調子が悪くなり、戦えなくなったらヒーローも元も子もないだろ、ちなみにディケイドな。デカイドなのはあんたの態度だろ?飯ぐらい静かに食えよ、声もデカイドなのか?」

桜子の説教もなんて事なく、士は平気な顔をして皿にナマコを残している、ナマコが嫌いなのか。

「何を~!?態度と声がデカくて悪かったですね!そうですよ、その分胸が小さいんだよコンチクショー!輝ねぇちゃんが羨ましいわ……」

桜子の発言が最後の方自滅しに向かっていたのは…輝ちゃん、その…立派に育って良かったね。

とか、考えながら僕は無言でご飯とおかずを頬ばっている、メニューは白米、減塩味噌汁、ほうれん草のお浸し(減塩醤油仕立て)、サバの塩焼き(減塩)etc.

と、減塩メニューばかりなのは今僕達が夕飯を食べている場所が、病院の食堂だからだ。

「ってね、なんで自分の嫁さんが散々言われてるのに、黙々と食べてんのよカオル!」

ほら、僕に飛び火したじゃないか。こうなることが解っていたから黙々と食べていたのに

「って、僕らまだ結婚してないじゃん!?何、桜子!?今の嫁さんて!?」

僕の盛大なツッコミに桜子の顔色が急に青ざめる。

「え…しないの…?…してくれないの…?」

桜子の言葉に危険を感じる、なんか面倒臭いことになってきた。

「その…僕は桜子と結婚したいです…はい…」

仕方ないので本音を言いましたごめんなさい、恥ずかしいもう死にたい、いっそ殺して。

桜子の顔色が青から急に赤に変わった、正直僕よりも変身巧いんじゃないかな。

「カオル、周りの目を気にしろよ、今のは公開プロポーズだ、ほら見ろ周りが拍手してるぞ。」

士が小声で僕に話しかける、ホントだ離れた席にいたお爺ちゃん達が拍手してる…一応どうもとか会釈だけしよう。

「あんたらねー、こんな所でいちゃいちゃしないの。ご飯時ぐらい静かにしなさいな?行儀悪いでしょう?」

と、ずっと黙々と食べている桜子の母、夏目実加博士は僕達三人を見ずに手元のタブレット端末機を片手に操作しながら器用におかずを口に運びながら注意してきた。博士、食事中にそれは…行儀が悪いのは誰でしょう?桜子も恥ずかしさからか遂には黙り込んで、潮らしく夕飯を終えようとしていた。

「御馳走さん。」

いの一番に食事を終えた士がちゃんと御馳走様と言った気がしたが気のせいだろう。

「カオル、お前俺に対して失礼すぎるイメージを持ってるようだが、俺も感謝ぐらい出来る、俺のために犠牲になった食い物達に感謝するのは他愛もないことだ、まぁたまにだがな。」

「たまにかよ!?」

最初の方滅茶苦茶いい感じだったのに最後の一行で台無しだよ!

「そんなことより重要な話の続きだカオル、大きな戦いが始まる、さっきも言ったが…力を貸してくれ。今回の戦いは…俺が経験してきた中で一番厄介だ。敵に昭和ライダーとバダン帝国、相当な数の相手をしなければならん。頼む、協力してくれ。」

士が僕に少し頭を下げた、それほどその戦いに味方が必要なのだろう…バダン帝国…とは何か?昭和ライダーとは?

「解らないことが多いけど…わかった、行くよ、僕。」

そこまでされたら行くしかないし、それに色んな「仮面ライダー」に会ってみたい、強くなるために。

「でも、グロンギが大量に出没してる今、すぐに…僕は行けない。」

五代さんが居てくれたら…でも…五代さんはいない、それ以前に別の世界から来た五代さんを戦わせたくないし、仮に戦ってくれるとしても変身した状態が不安定だ…どうしたものか。

「その件ならもうすぐ解決するんじゃないか、夏目博士殿?」

士が丁度夕食を食べ終えた夏目博士に話をふる。

「あぁ、五代君ね?彼曰く明日には戻れるんじゃないかって言ってた気がするね、うん。」

「だそうだが…カオル、とりあえずまた明日俺はこの世界に来ようと思う、色々とやることが多くてな、その時五代雄介が帰ってきているなら、協力してくれるか?」

士が僕に問うが、

「ちょっと待って門矢さん。カオル…帰ってこれるんだよね?絶対に?でなきゃ私はカオルを行かせない。」

僕が話し出す前に桜子が士に詰め寄る。士は博士を一瞥し語り出す。

「大切な人のその母親が傷を負ってまで守り抜いたその人を置いて、こいつがくたばるなんて事、それは俺がさせない。必ず、責任を持ってつれて帰る、約束する。」

士が桜子に力強く語りかける。

「…あんたは…カオル…あんたは本気なの?」

桜子は僕を睨むように力強い視線を向ける。

それに対し僕は桜子の目を見つめただ頷いた。

「はぁ…わかった、でも五代さんが帰ってきたらね!それと、もし旅に出たとしても必ず無事に帰ってくること!」

桜子は僕の前までやってきて手を握った。

「わかった?カオル?」

「約束する。ありがとう、桜子。」

そして僕も桜子の手を強く握り返した。

その温かな手は少し震えていたような…そんな気がしたのは気のせいだろうか…?

「そろそろさー、いちゃいちゃするのやめなさいな?」

「「ハッ!!?」」

僕と桜子は声をシンクロさせながら繋いでいた手を離す。

「とりあえず、私は病室戻るわ、検診有るし。傷が完全に癒えた訳じゃないからね~、じゃお先。」

博士はスタスタと歩き去っていった。

「あ、もうお母さん!待ってよ!もう!」

その姿を追って桜子も消えていった。

「じゃあカオル、また明日な。」

士も、いつの間にか逃げるような足取りで食堂を出て行った。

ただ独り残された僕とそして━━━━━━━━━

会計3860円税込と書かれた伝票がテーブルの上に置かれていた。

「何故!?(伝票が)置いてあるんです!?嘘だ!!ドンドコドーン(そんな事ー)!!」

最後の方取り乱しながらの僕の心からの叫びが食堂に無惨にも響き渡った━━━━━━━。

会計を済ましあいつ等絶対徴収してやるから覚えとけよ、おっといけない。冷静になるんだ僕、たかだか4000円程の出費じゃないか、うん。

そうだきっちり徴収しよう、と気を取り直し食堂をあとにした僕が向かった先は、博士と桜子がいるであろう病室には向かわない。

向かう先は、栄水遺跡の施設だ。おそらく輝ちゃんと椿さんが今も尚あの遺体の解剖を行っているだろう。

遺体の件で行くわけではない…輝ちゃんに夏目博士の意識が戻ったことを伝えるのと…まぁ、その他諸々。僕はバイクにまたがり病院をあとにした。

「ん…?」

誰かに名前を呼ばれたような気がしたが気のせいかな。

同じ頃、夏目博士と桜子のいる病室にて。

「で~、桜子?カオル君とどこまでいってんの?」

ベッドに腰掛ける母、夏目実加が桜子に問いかける。

「ちょっともう!まっまだ何も無いよ!」

実加はため息を付きつつ、

「はぁ、あんたね。もう24だっけ?もうすぐ25になるんだよ?いい加減そういうことしちゃいなさいな。彼なら私も何も言わないし、寧ろ安心だわ。」

それを聞いた桜子は顔を真っ赤にし、呻き声をあげながら語り出す。

「うぅ…その…私もね、五代さんが来てからなんだけど…そのカオルに…詰め寄ったというか…迫った…?みたいなこともあるよ?」

その発言に実加はヒューやるねー、とニヤニヤして聞いている。

「茶化さないで聞いて!」

「はいはい、でそれで?」

桜子は病室から見えたバイクで走り出すカオルを目で追いながら、小さく、カオル…と呟き、話を続ける。

「その時、カオルがね、こう言ったんだ。」

(僕はもう普通の人間じゃ…ない、今、桜子が求めていることを僕がその…それで桜子に何も起こらないとも限らない、自分自身、ほとんど何も解ってないから、だから危ない目に遭わせたくないんだ、だから少し待って欲しい。)

「だから私は…ずっと待つことにした、カオルが私を受け入れてくれるまで…待つよ。ずっと信じてるから。」

「なるほどね…」

実加はそっと娘を抱きしめ、

「はぁ…桜子、あんた良い女に育ったね、ホント誰が育てたらこんな良い女になるのかしら?」

桜子は誰だろうねー?と笑いながら母親に抱きついている。桜子は、いつまでも変わらない、この温もりを私がカオルに分け与えてあげたい、そう強く思うのだった。

「あっそういえば明日、輝ちゃんの誕生日ね、あー…なるほど。」

実加が娘から離れ目に入ったカレンダーを見ながら話す。

「あっ、ホントだ。明日何かプレゼント買いに行こうっと、って何がなるほどなの?」

実加は窓から見える夕焼けを眺めながら、

「さっき、カオル君がバイクで出て行ったでしょ?たぶん、明日自分が忙しくなるかもしれないだろうから、先にプレゼントなり渡しに行ったんでない?」

と、それを聞いた桜子の顔が急に黒になった。文字通り真っ黒。

カオル君よりも変身巧いんじゃないかな、と実加は内心思った。

「あんの、女ったらしーっ!!!」

桜子の叫びが遠くにいたカオルに嚏となって届いたことを誰も知らない。

うだうだと話す桜子を尻目に、この娘の旦那になる奴は大変だねー、と内心呟くと遠くにいたカオルは再び嚏をしていた。

「…んん?風邪でも引いたかなー、まぁすっかり秋になったし、体調管理しっかりしないと。」

無論、当のカオルもそれを知る由もなかった━━━━━━━。

遺跡にバイクを走らせること15分もう数百メートル先には施設も見えている。空は夕焼けに覆われ、綺麗な鰯雲が泳いでいた。

遺跡は山中に在るため、見晴らしの良い高台が多々設けられていた。

「綺麗な夕焼け空だなー、今日も戦ったなんて…ホント嘘みたいだ…」

左さんと士、ジョーカーとディケイド。二人の仮面ライダーと共闘した僕は、少しずつだけど強くなれてるはずだ。

「ですよね、五代さん?」

夕焼け空を眺めながら、呟く僕。

「あっ、これ写真に撮るか!ごめんね輝ちゃん、プレゼント用だけど一枚だけ!」

と、背負っていたバッグに入れていた、カメラ。包装こそしていないが、今日戦ったあと士と行動を共にしているときに買ったもので、輝ちゃんの誕生日は明日ではあるが渡しちゃいけないわけじゃないし。それに士が言っていた。

「そのカメラ、悪くないな。」

と、あんなに大事そうにカメラを首に下げている奴が言うんだから間違いない、輝ちゃん喜んでくれたらいいけど…

パシャッという言い音と共にフィルムに収められたらその景色。今度五代さんにも見せてあげよう。

カメラをバッグにしまい込み、バイクにまたがりエンジンをかけようとしたとき、帽子を深々と被り眼鏡をかけコートを羽織った独りの男性が夕焼け空を眺めているのに気付いた。

その男性がこちらを向いて、口を開いた。

「門矢士、ディケイドは世界を破壊する、いずれこの世界も破壊されるだろう。この懐かしい夕焼け空も全て。」

僕の心臓がドクンと跳ね、バイクから一端降り、その男性に問う。

「あなたは?」

その問に男性は、

「私は…鳴滝。ディケイドを追って旅をしているものだ。」

士を追う?どういうことだろうか?

「懐かしい夕焼け空と言いましたよね?でもあなたは士を追って旅をしている、つまりあなたはこの世界の人ですか?鳴滝さん。まさか仮面ライダー…とか?」

鳴滝さんは首を横に振り話し出す。

「20年以上前にこの先の遺跡の研究者として働いていたことがある、残念ながら私は違う、君が求めている同士、仮面ライダーではない。君がこの世界のクウガのようだが…君、名前は?」

「僕は一条カオルと言います、昔僕の父と母もそこの遺跡関連で研究者として働いていたんです。」

鳴滝さんは少し驚いた顔をして、

「一条…そうか…運命とは皮肉なものだ…元気にしているかね彼等は?」

「僕の両親は…10年ほど前に亡くなったんです、それから夏目実加という、両親の同僚の方に面倒見て貰いまして、今僕は夏目実加博士の助手をしてるんです。」

「そうだったのか…悪いことを聞いてしまった、申し訳ない。」

鳴滝さんはそう話すと、最後にと一言添えて続ける。

「ミカ…いや夏目実加君は…彼女は元気かね?」

鳴滝さんは視線をいっそう強くし問いかけてくる。

この間グロンギに襲われた話はしないでおこう。

「元気にしてますよ、実加さん。娘の桜子の方が元気ですが、あっその桜子と近々、僕結婚するんです。」

鳴滝さんはフッと笑ったかと思うと、くるりと反転し、山中に消えていった。

「そうか、良かった…桜子も…幸せになりなさい。そう、彼女に伝えてくれ。」

その言葉と共に━━━━━━━━━。

 

鳴滝さん、いったい何者なんだろう…?

明日士に聞いてみるとしよう。

 

 

施設に着いて、輝ちゃんにプレゼントのカメラを渡すと、大層喜んでくれて、輝ちゃんが僕と2人で写真を取りたいと言い出し、丁度帰り支度をしていた椿さんがカメラマンとして、散々こき使われていたのが、正直少し面白かったのは…秘密にしておこうと思う━━━━━━━━━━。

 




さぁこの作品の鳴滝さんの登場回数は少しずつ増えるのか!?感想よかったら下さいm(_ _)m


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青空の旅立ち③

お久しぶりです、書くペースがかなり落ちました、素人の限界を感じます。



一条カオルと小田桐輝

 

今日僕が栄水遺跡に来た理由は輝ちゃんにプレゼントを渡す他にもう一つある。輝ちゃんが遺跡の棺の文字の解読にいくつか成功したらしく(未完成ではあるが)、会議で聞こうと思っていたが、グロンギ出没により聞きそびれてしまったため、それを確認しにきたのだ。明日旅に出なければならないかもしれない身としては確認くらいはしておきたい。

「はい、これが解読文。カオルンなら普通に読めるかな?順番がまだバラバラだから今から繋げてみよう。ふふっ、二人っきりでねー。」

すこぶる機嫌の良い輝ちゃんが棺の文字を書き留めた紙を手渡してくれた。

「うん?ありがとう、助かるよ…?」

輝ちゃんに違和感を感じながらも、とりあえず解読文のつなぎ合わせをし始めた。一通り書類に目を通し終えた頃には時刻は20時を回り、職員のほとんどは残っていない状況だった。

沢山の単語や接続語といった文字がバラバラに解読されているため、作業はそれなりに難航した。

「この文字は…忘れる?とか失う…って意味かな。」

輝ちゃんが僕に問う。

「うーん、だとしたらこの文字の前は…っと、ん?これは光…輝き?つまり、輝きを失う…いや違うな…これは…もしかしたら」

僕はある言葉を思い出す。

「笑顔…」

「え?何カオルン?」

輝ちゃんがキョトンとしている。

「これは直訳するとたぶん(輝きを失う)って意味なんだろうけど、僕が思うにおそらくは、(笑顔を失う)て意味になるんだと思う。だとしたら、他の文字と合わせて文章に成り立たせたならば…」

 

〈この地(場所)は笑顔を失った者達の眠る地〉

 

「となるわけだけど。うーん…何か足りないんだよな…」

と、僕はまだ何か引っかかっている。

「何か少し違うような…」

輝ちゃんも何か引っかかっているようだ。

「この文字は私も見える方の文字でね、五代さんはもう一つの方をやってて、それは少し違う感じだったんだけど。」

「あっ、もしかしたら。」

ここで僕は有ることに気付いた。

「輝ちゃん!五代さんが調べていた文字は?」

僕の声に慌てて書類を取り出した輝ちゃん。

「はいはいはい、これ。この文字、五代さんはこれだけ置いて消えたわけだけど…あの話ホントなの?」

〈あの話〉のワードに僕は強く頷いた。

「博士が眠っている間、五代さんに会ったのはたぶん事実だと思う、僕が五代さんがいない間、戦いに追われている日々を違う場所で見守っていたって話を博士は五代さんから聞いたらしいし、それに博士が意識が無い間の出来事を博士が知っている時点で、五代さんがどこからか僕たちを見守ってくれてるっていう証拠だよ、だから事実だと思う。」

「遺跡の中にいるんでしょ?」

そう、博士曰わく五代さんが言っていたらしい。

「うん、だからたぶん…これをこの順番に…出来た!」

話ながら文字を並べ直しを進めていた僕は確信した。

〈この棺は傷を癒やす地への鍵〉

そう、普通のヒトには見えない方の棺に書かれていた文字にはそう記されていた。

つまりは。

「五代さんは、やっぱり遺跡の何処かにいるんだ。きっと傷を癒やしているんだと思う。この文字の通りなら。笑顔を失いかけたから…」

そこで輝ちゃんはうーんと唸り出す。

「うーん…五代さんが無事なら良いんだけど…でもつまりどういう事?」

此処からは僕の憶測を話すことになる。

「つまりね、おそらくここ栄水遺跡はグロンギやクウガになった者達の墓場って意味もあって、産まれてくる場所…違うか、始まりの場所なんじゃないかな。普通のヒトには見える棺と見えない棺を何故作ったか?可能性が高い理由は…おそらくグロンギが復活した際の救済措置の為なんだと思う。」

「つまりカオルン?棺が片方だけ開いちゃったらマズいわけね?」

「そう、覚えてる?光の戦士と闇の戦士の話。ヒトに見える方の棺には闇の戦士が眠っていた。」

輝ちゃんはコクコクと頷いた。

「その闇の戦士が眠りから覚め、グロンギ復活の鍵になる存在だとしたら?」

輝ちゃんが、あっ!と驚いた顔をしている。

「対になる存在!?って意味ね!?」

「そう、単に光と闇としての対の意味だけじゃなく、闇=グロンギ復活の鍵、光=戦いの傷を癒すための場所の鍵、と言うこと。現状、両方の棺が空いているんだから、中和…飽和状態なんだろうね、おそらく現状は。それと…ヒトに見えない棺を開けられるのは普通のヒトではないという条件が必要、それは即ちグロンギになってしまった、あるいは近しい存在になってしまった者…僕や五代さんみたいな?それでも戦いを望まないものが、その棺に希望を求め開く…みたいな救済措置みたいなものとして機能しているんじゃないかと思う。憶測の域は出ないけどね。」

僕の長い説明を輝ちゃんはひたすら聞いてくれていた。

「僕の父さんと母さんが誤って闇の棺を開けて、そして…彼が…ダイが目覚め…」

まで僕が言い掛けたところで輝ちゃんが「でも…」と疑問を投げかける。

「でもさ、仮にカオルンのおじさんとおばさんが闇の戦士を目覚めさせちゃったんだとしてもさ、光の戦士の棺を開けたのは誰?」

その輝ちゃんの問いの正解に、僕はもうほぼたどり着いている…と思う。

「…それは、たぶん…今日僕が戦って倒したグロンギの遺体の脳に有ったっていう霊石の欠片がヒント…それと」

輝ちゃんはポカンとしているが僕は続ける。

「それと、光の戦士の棺は普通のヒトには見えないし触れることも出来ない。この二つの話に繋がりがある、これも仮定の話だけど。もしも脳に有ったっていう霊石がヒトをグロンギに変えてしまう代物だったとして、それが僕の父さんと母さんにも有ったとしたら?それがそれこそが、父さんと母さんが死んだ…居なくなった理由だとしたら!!」

輝ちゃんの表情が一瞬陰りを見せると同時に僕を抱き寄せる、というか思いっきり抱き締められた。

「えっ、輝ちゃん?」

「カオルン…久しぶりに泣き顔見せてくれたね…?」

輝ちゃんがいきなり何を言い出したのかわからない、が次の瞬間にはもうわかった。

ポタリポタリといつの間にか僕は泣いていたのだ。気づかぬ内に涙を流していたのだ。

「おじさんとおばさんの真相にたどり着いたのが悲しかったの?カオルン?」

「父さんと母さんは…グロンギになってしまった、だけどたぶん、理性を何とか保ち闇の戦士に立ち向かった、そして力つきる前に光の戦士の棺を開けた…夢の中で父さんと母さんが言ってたんだ、もう直ぐ真実にたどり着くよって、そしてみんなを守ってやってくれって、そしたらきっとみんなが僕を見守ってくれるからって…」

僕は泣きながら話した、人前でもう泣かないと決めたのに、笑顔で居ようと誓ったのに。

「私がグロンギに襲われたとき、カオルンが助けてくれた。この私の命はあなたに救われたの。だからカオルン、大丈夫だよ。大丈夫。」

輝ちゃんはただ抱きしめてくれた、正直輝ちゃん…胸の感触が…

「カオルンのえっち。」

「正直どうもすいませんでした、僕も男ですから!」

いつの間にか僕は涙も止まり、とりあえずどうもすみませんでした。何回謝るんだろう?

もう遅いのでその日はそのまま施設の宿直室で休むことにした。寝る前に今日までに解ったことや重要事項、仮定ではあるが可能性の高い事柄を手書きで紙に書き留めてみた。自分の心の整理みたいなものかな…

1、五代さんは遺跡の何処かにいるらしい、近々戻るかも(仮定)

2、僕の両親の死の真相はダイが関係(仮定)、詳しくは未だ不明

3、倒すべき存在=闇の戦士=ダイ=五代さんに酷似

4、霊石を身に宿したヒトが霊石又は戦士に近づくと変貌してしまう(仮定)

5、僕の身に宿る霊石は古代の光の戦士の物(光の戦士はダイに負けた…?)、又はその他に存在したもの(仮定)

6、グロンギは基はヒトである可能性が高い

7、栄水遺跡は戦いの始まりの場所、そして終わりの場所である(仮定)

8、古代にもクウガは二人は存在した。

9、輝ちゃんは推定Eカップ、柔らかい(仮定)

10、ディケイド=門矢士は世界を破壊するらしい、鳴滝という男曰く、たぶん気のせい

11、グロンギには麻酔銃が効く、神経は人とほぼ同じ

12、人類社会にグロンギは溶け込んでいる?(仮定)

ここまで書いたところで僕は睡魔に勝てそうになくなり、明日に備えて寝ることにしよう。

もちろん9は消しておかないと。

そして、1~8で浮かび上がってくる謎の解明はもう直ぐ出来そうな気がする。おそらく、すべての真実はやはり、僕の両親が死んだその時に隠されているに違いない、父さんと母さんも夢に出てくるなら全て教えてくれたらいいのに、また夢で会えたらいいな、とか思っている内に何時の間にか僕は深い眠りについていたのだった━━━━━━━━

 

 

 

 

夏目実加

 

不思議な場所に私は来ていた、確か私は…大量出血のショック症状で━━━━━━

そうか、そうかな。たぶん死んでしまったのかもしれない。

その不思議な場所をフラフラ歩いていると、いきなり目の前に不思議な光の線が現れた。

「あー、お迎えって奴かしらねー。あぁ…」

私は何となく呟きながら、娘の桜子や一条カオル君の顔を浮かべて小さくごめんねと続いて呟いた。

その光の線を追ってどれほど歩いたのか解らない、よくよく考えてみれば、これほど歩いたのに全く疲れを感じない。寧ろ身体が癒され続けているような…?そんな気がして、少し違和感も感じ始めていた。

そんな矢先、少し先の方で声が聞こえた気がした。

「今の声は…」

私はその声のする方へひたすら足を進めた。

どれほど歩いたのか、前に進んでいるのか、本当はもう立ち止まっているんじゃ、ここはどこなの、何をしているの、私は誰だっけ…?

その疑心暗鬼の私を、やっと目の前に現れてくれた「彼」が救ってくれた。

「…五代君…?」

彼は前を見据え何か別れを終えたそんな表情で私の声に振り返る。

「えっ、実加さん…?」

彼は呼んでくれた、一条カオル君や桜子の親である私を。そうだ、私は━━━そう、夏目実加━━━━

 

それからどれほど五代君と話しただろうか。

他愛もない話だったが、それが本当に楽しかった。

「…どうしたの、実加さん?俺、何か変でした?」

五代君は首を傾げてキョトンとしている、無理はない、日常の話をしていて急に私が笑ってしまったからだ。

私が可笑しかったのはその話ではなく、その話をしている五代君が何となく…もう、とうの昔に忘れてきた「あいつ」、桜子の父親の喜太郎に少し似ている気がしたからだ。

この話を五代君にすると五代君は笑って、

「世界を旅して回ってるってところも俺と似てますよ、俺は世界を飛び越えちゃいましたけどね、会ってみたいな、旦那さんに。」

そう応えてくれた。

「あいつ」は何処にいるのかは解らない、正直生きてんのか死んでんのかもはっきりしない。どうでも良いと言えばどうでも良い、でもせめて桜子の大切な人である一条カオル君の事を知って貰いたいとは少し思う。

一条カオル君と桜子はいずれ結ばれる、そうあってほしい。

「死んでるんだったらせめて、二人を見守ってよね…」

「えっ、実加さん何か言いました?」

私の小言に五代君が反応したが、

「ううん、独り言。死にたくないなーって。」

嘘ついちゃった、ごめんね五代君。

「大丈夫、ここは傷を癒す場所ですから!実加さんもそのうち出られますよ。俺もね。」

実加さんも、俺も。

なるほど、さっき聞いたフィリップという青年の話か、五代君や一条君と似たような「力」を持つ者。

五代君は少し前までそのフィリップという青年とここで出会い、何やら話をしたようでその後フィリップという青年はこの場所から出て行くことが出来たらしい。

五代君曰くこの場所を出るには、傷を完治しなければ出ることは出来ないようだ。つまり私は傷を負い、意識だけこの場所に来たようだ。でも何故?

五代君は結論をこう語る。

「この場所はクウガやグロンギに近しい存在の者も入れる場所なんですよたぶん、実加さんは遺跡の調査や霊石も手にとって調べたりしてましたし…それにグロンギの遺伝子を実加さんが受け継いでいる可能性もあるんです。」

そこからはとんでもない話の連続になった。

五代君がこの世界に実は10年前に来ていたり、その時古代の戦士と死闘を繰り広げ、この世界の謎を聞かされていたこと、そして…一条君はグロンギの遺伝子を受け継いでいる事、そもそも太古の争いには他の場所からやってきたグロンギが関連していて、そのグロンギは人間社会に溶け込んだ、遺伝子という細胞を通して。それが原因で現代にグロンギが現れ始めた、つまりグロンギは人間なのだ。驚くしかないわ、全く。私も「そうなってしまう」可能性があったのだから。

「実加さんや桜子ちゃんが普通でいられるのは、おそらく耐性があったからだと思うんです、しかも最近になってその耐性は増した。カオル君がクウガだから。」

五代君はそう締めくくった。あぁ、一条君、そうか、やっぱり君が居てくれて本当に良かった。

桜子のそばに君が居てくれたから…一条君…いやカオル君、あなたは幸せになる義務がある、私が早く戻って…また元気付けなきゃね、まだまだ…私の娘を渡すには早いんだから、なんてね、嘘嘘。

あぁ、早く戻りたい、戻って二人の顔を見たい。

二人の幸せな未来を見守ってやるくらいしなさいよ…喜太郎━━━━━━━━

私は久しぶりに「あいつ」の名前を呼んだ。

「あっ、実加さん、また光が射し始めてる!」

五代君が笑顔で言い放つ。

「あり、私が先?じゃあさ、五代君、私行くけどさ、早く戻りなさいよ。みんな待ってる、二人の相棒もね。じゃね、お先に!」

この言葉を言い残し私は光を辿って駆け出した。

目覚めたら、開口一番何を話そうか。

桜子、待ってなさい、今帰るから。

カオル君、待ってなさい、背中叩いてあげるから。

二人とも覚悟なさい、あんた達2人を残してそう簡単に死んでたまるもんですか。

なんでかって?それは私が夏目実加、一条カオルと桜子の「おかあさん」だからよ━━━━━━━

 

 

 

 

 

五代雄介

 

「みんな待ってる、二人の相棒もね。」

実加さんはその言葉を残して先に行った。

二人の相棒、「一条薫」と「一条カオル」。

実加さんはこの二人のことを言ったのだろう。

一条さんとカオル君。この二人は似ている、容姿は似つかないが、人としての信念、考え方、そして悩み事も。違うことがあるとすれば、クウガになれるかなれないかだ。

俺は思う。もし一条さんがクウガになれたなら…もしカオル君がクウガになる道を選ばなかったなら、俺はどうしていたんだろうか、どうなっていたんだろうか。

この世界で俺は存分に戦えない状態に陥りカオル君に何度か戦いを任せた時に思った、「俺が戦えれば、俺がもっと強ければ、辛い思いをさせずにすんだのに。」という、悲壮に満ちた重い荷物のような何か。

この世界に来て、カオル君に出会って傷重ねて気付かされたこの思い。

俺のいた世界の「一条さん」はこの思いを抱えて戦ってきたんだと…気付かされた。非力な正義、無力な闘志、残酷な現実に。

一緒に頑張れた、頑張れてこれたのはきっと俺が気付かなかったからだ、本当の苦しみに、一番そばにいてくれたその人の心の「闇」に。

カオル君が気付かせてくれた、本当の「闇」。

あの黒い闇の力を俺は制御したと「勝手」に思っていた、制御なんかできているわけがなかったんだ、俺がここにいるのが何よりの証拠じゃないか。ジョウから頼まれたダイを倒し封印する、つまり殺すという難題を遂行するには本当の「闇」を知らなければならなかった。だから10年前は完全に封印出来なかった。

「見てて下さい、俺の最後の変身」

一条さんに言ったあの一言は、一条さんをどれほど苦しめたんだろうか…今の俺なら解る、本当の人の心の「闇」に気付いた今の俺なら…ジョウの願いを叶えられる。相棒という宿命に呪われたこの戦いと呪縛を俺とカオル君が終わらせる。

きっとやれる、心の「闇」=戦えない者の思いを知った俺なら━━━━━━

そんな事を考えながらふと、横を見ると再び外の世界の映像が流れていた。

「これは…!?この数はいったい…!?」

その映像の場所はおそらく栄水遺跡に繋がる山道の中腹の公園だろうかと思う。

10…20…30…グロンギだけじゃない…何か白黒の骸骨みたいな怪人もいたような…?

なんだこれは、遂には映像の主観であるカオル君が変身したようだった、遅れて士君=ディケイドも現れた。これは多勢に無勢、分が悪すぎる。いったい何が起こっているんだ…!?

「まさか…士君の言っていたあれか!?」

大きな戦い、それの可能性が高い。

まずい、さすがに二人だけじゃ!!

その時、辺り一面が青空色に染まりだした。

「これは…」

少し先に光の空間が現れ、そしてその場所に身体が今まで感じたことのないくらいの軽さになり落ちているのか、飛んでいるのか解らないが、少しの違和感と共に吸い寄せられていく。

「よし、行ける!」

俺は戦う、誰かの笑顔のために、そして、自分の心の「闇」に立ち向かうために。

「待っててくれ、カオル君!今行くよ、変ッ身ッ!」

その光の中に吸い込まれながら、俺はクウガに変身する、俺は…五代雄介、「仮面ライダークウガ」だ!!

 

 

 

 

夏目桜子

 

母を病室に残し、私は自宅へと帰った。

「ただいまー。」

その私の声に帰してくれる人は、最近は誰もいない。晩御飯はもう、病院で済ましているし、とりあえずテレビをつけてソファーに寝転がり、ぼーっとニュースを流し見る。

世間は専らグロンギや仮面ライダーの話題で持ちきりだった。

「仮面ライダーは人類の敵か味方か、どちらにせよ驚異の能力の持ち主で未確認な生命体で…」

などと、専門家か何か知らない中年男がそう語っているのを私は憤りを感じながら、テレビの映像を見ている。今は何時だったか撮影されたカオル…クウガとグロンギの死闘の映像だ。

あんな風にカオルは戦ってるんだ、独りで。

私は何もしてあげられない、グロンギ出没の頻度が増した今日は会話をするのもままならない。

昔はそばにいるのが当たり前だったのに。

どちらからというわけもなく、気付いたら何時の間にか2人で一緒にいた。春も夏も秋も冬も。そう、それが当たり前だった。

「寂しいな…」

自分の呟いたその一言にはっとさせられる。

母が意識を取り戻したことに気が緩んでいるんだろうか。

私がカオルに恋心を抱いたのは、何時だっただろうか?小学4年生の時に、同級生にいじめられてそれを真っ向から批判し私を守ってくれたとき?それとも中学2年の時、カオルのご両親の葬儀の時に、私に言ってくれた「僕には桜子がいるから」?まさか、高校三年生の時にクラスの連中に色々と冷やかされたときに「好きだから側にいるんだ、文句有るか!?」と野次馬達を一蹴したあのとき?

ふふ、いつだってそう、カオルは私を考えてくれてた、そして私もカオルのことを考えてきた。

子供の頃はこの気持ちがよく解らなかったりした。今ならハッキリと解ってる、私は一条カオルの事を愛してる、好きというキモチだけでは伝えきれない、誰かのために必死になっているカオルの顔が私は大好きで愛おしい。だからせめて、わがままになりたい、カオル…少しで良いから顔を見たい、辛かったら私の前で泣いてほしい、少し大人になったこの心のわがままをどうか聞いてほしい。

一滴の水滴とともに私は独り、テレビをつけたまま、そのまま眠りに落ちてしまった━━━━━学生時代の思い出とともに━━━━━。

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?それぞれの人物にスポットを当てたオムニバス形式で書いてみました、次回は遂にライダー大戦に関連するお話です、頑張るぞー!


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青空の旅立ち④

このお話から昭和vs平成の物語にリンク要素が増えます、客演キャラクターが増えていくんで、書き手としては楽しい限りです!!(テコ入れじゃないよ、ホントいやホントだってば)


翌朝、僕の目を覚ましたのは僕のスマートフォンへの一本の電話だった。

「ん。はい?おはようございます一条ですが」

「緊急だ一条君!栄水遺跡の近くにある住宅街の広場に怪物の群れが!」

声の主をスマートフォン画面にて確認することなく電話に出たためと、目覚めて間もないため声とその内容がほとんど脳に入らなかった。

「えーと、杉田さん?ごめんなさいもう一度お願いできますか?」

おそらく相手は杉田さんなのだろうが、電話の内容が解らない以上話が進まない、そろそろ頭が冴えてきてはいるがやはり僕の早朝の脳内は弱いらしい、

「怪物の大群が栄水遺跡の近くの住宅街の広場に」

まで言いかけた杉田さんの言葉はそこで音信が途絶えた。それは僕が電話を切り上着を羽織って仮眠室を飛び出したからであるほかない。

一瞬だった、僕の身体はもう先ほどのそれとは全く別物だった。

「おーっ!!カオルン!おはー。」

仮眠室を出るとちょうど寝起きのノーメイク状態…の輝ちゃんに出くわした。

「ひっ輝ちゃんごめん!ここを離れないでね!何かあったら杉田さんか僕に連絡忘れないで!じゃっ!」

「んえっ?何かあったの?」

「帰ってきたら話すからー!」

と、僕はその言葉を残して施設を飛び出した。

「何かあったのかしら?」

輝は眠気を帯びた目をこすりながら呟いてカオルの背中を見送った。

 

バイクにまたがり山を下り近くの住宅街の広場へ向かう。場所を特定し切れてはいないが(杉田さんにちゃんと聞けば良かった…)なんとなく予想は出来ている。

僕が昔、両親と暮らした家があるあの場所の公園、「亀山公園」という名の場所だ。遺跡からはそう離れていない、バイクなら5分もかからない。

そうこう考えている内に、人の悲鳴が聞こえた。

「誰か、誰か助けてっ!」

50メートルほど先に骸骨のような姿をした怪物…いや怪人と言うべきか…?が男の子を連れ去ろうとしていた。

「やめろーっ!」

僕はバイクを加速し、そのまま怪人にバイクごと体当たりした。

「イーッッ!?」

怪人が叫びながら吹っ飛んでいき、ワタワタしなががら痛みにもがいている。

僕はバイクを降り、男の子に話しかける。

「大丈夫?怪我はない?」

男の子は、コクリと肯き、

「お兄ちゃんありがとう。あっ!」

と、男の子の視線の先には先ほどぶっ飛ばした骸骨の怪人と…同じ姿をした怪人が1、2、3、4、5、6、7…それ以上に増えていた、正直気持ち悪い。

「早く逃げようお兄ちゃん!」

「いや、僕に任せて!」

僕が男の子の前に立ちふさがり、怪人達に対峙する。

「お兄ちゃん…?」

「イーッッ!」

男の子が不安そうな声で呟くと同時に、怪人達かけ声とともに僕めがけ走り迫ってきた。

「よしっ、行きますかっ!」

僕も少し駆け出した、そして。

「変ッ身ッッッ!!」

クウガへと変身した。

「お兄ちゃんも…仮面ライダーなんだ…」

後ろの男の子が何か呟いた気はしたが今は戦いに集中しなければ。

僕は「赤」へと変身しているため接近戦、主にカウンター攻撃で怪人達を相手した。

すると視線の横をあの男の子が走り去るのをとらえた。あれっ、なんか今あの子地面すり抜けた…気のせい…?それを怪人の数体が追う。

「あっ、ちょっと待ってよ!?君!!」

残りの数体に足止めを喰らい男の子を追うことが出来ない。

「だぁっもう!邪魔だっ!」

「イーッッ!?」

残る怪人数体を蹴り飛ばし、男の子と怪人を追いバイクにまたがる。

「見つけたっ!」

そこまで離れてはいなかったようで、再び僕は怪人達と男の子の前に立ちふさがる。

「急にいなくなっちゃだめじゃないか!君はどうして奴らに追われてるの?」

男の子は答えない。

前方を見ると怪人達がさらに増えていた、これはどういう事だ。この男の子はいったい何者なんだ…?

「その子を助けてはならんッッッ!!」

んえっ?その渋い声に僕は呆気にとられ変身を解いてしまった。

その声の主は、僕の後ろから聞こえてきた。

その声に男の子はびくりとなり再び走って逃げてしまった。

「だぁっもう!待ってよ!?」

僕は男の子を追おうとするが、目の前の怪人達をどうするかで悩み足が止まる。

「あの子を助けてはならない…」

先ほどの、渋い声の主が僕の目の前まで来ると、再びそう告げた。

「あの子は…一体…?いや、ていうかあなたは?」

僕の目の前にいる「男」は、黒い革のジャケットを身にまとい黒いサングラスをかけた、初老までは行かないか位のダンディーな人だった。その男がサングラスを取り、

「俺は、本郷猛。お前はライダー…のようだな。」

「ライダー…?あっ仮面ライダークウガって事ですかね?出来ればその…内密に…」

さっきの変身見られていたか…黙ってて貰いたいけども…

「貴様のようなひよっこも…ライダーと認めるわけにはいかんッッッ!!」

えっ、何、この人、いきなり何キレてるの?

「イーッッ!!」

怪人達も何か叫んでる。あぁ僕もう男の子追いかけていいですか?杉田さんの所にも行かないと。

「そこのショッカー怪人共は俺が相手をする。」

僕はふと思った、この人…もしかして…もしかすると…

「お前はこの先でやることがあるだろう、ここは俺に任せて早く行け…」

尚も男はそう言うが、

「いや…でもですね…」

「そういうところがひよっこだというんだッッッ!!」

あはは、もう何か面白いよこの人。

「イーッッ!!」

遂には怪人達が襲いかかってきた。

「おのれショッカーッッッ!!俺が相手だ!!フンッ、ハァッ!!トウッ!!」

男は生身で怪人達とやりあっている。滅茶苦茶強いぞこの人…

「早く行けッ!!」

「ぬぁぁッッッ?!ハイッ!」

僕はバイクにまたがり先を急ぐことにした。

そして…

「ライダー…変身ッッッ…トウッ!!」

男は「変身」した。やはりか…やはり彼は「仮面ライダー」だったか…直感的にそんな気はしていたが…

彼の戦う姿を見ることなく僕はバイクで走り出す━━━━━━━━

 

「とどめだッッッ、トウッ!!ライダーキーックッ!!」

その男の名は本郷猛、またの名を仮面ライダー一号という、伝説の戦士。

「平成ライダー…だと…甘ったれたひよっこ共に…仮面ライダーという称号は、渡さん…」

その男はショッカー怪人を倒し終えるとどこへ向かうのか…どこかへ歩き去っていった━━━━━━━━

 

 

公園にたどり着くと、先ほどのショッカーと呼ばれていた怪人達や、グロンギの他に数体の怪物達が杉田さん達率いる警察部隊と対峙していた、ショッカー怪人達は警官が多勢でかかると何とかなるのか…ギリギリ何とかなっている状態…でもなさそうだが…あの男の子は…いないようだ。

とにかく、僕が行かなきゃ!!その思いと同時に身体が「赤」のクウガに変化した。

だいぶ変身も様にはなってきたかな。

「皆さん下がって!僕に任せて下さい!」

僕は怪人達に飛びかかり、警官達の前に立つ。

「一条君!すまない、あの白黒の怪人達は私たちに任せてくれ!ほかを頼む!」

杉田さんの指示が聞こえたので、白黒…ショッカー怪人の事だろうか?それ以外のグロンギ達の前に僕は立ちはだかる。

多勢に無勢は何度目か…?とにかくやるしかない。

そもそもこの怪人達の軍団はあの男の子を追っているのか?それさえもわからないが…今は戦うしかない。

「行くぞ!」

僕はグロンギ2体を相手に戦い始めた。

蜘蛛、蟻、の姿に近いその2体を相手に。

少し戦ってみると解ったのは蜘蛛の方は糸を吐いて相手の動きを封じて攻撃するタイプで蟻の方はとにかく俊敏で攻撃自体は弱いが逆にこちらの攻撃が当たらない。これは相手の組み合わせは最悪で最高と言える、動きを封じられ、動いても当たらない、中々厄介な組み合わせできたものだ…

「赤がダメなら…青だっ!ちょっと借りますよ、警官さん!」

そばにいた警官から警棒を借りるとそれを手に取り構えながら叫ぶ。

「超変身ッッッ!!」

僕の赤い身体が青へと変貌し、警棒は短剣へと姿を変えた。

とにかくスピードで接近戦に持ち込んで、致命傷を負わせて、「赤」でしとめるしかなさそうだ。

「ハァッ!!」

まず僕が取った行動は、蟻のグロンギに攻撃を仕掛けることだった。

「勝負だッッッ!!」

僕は蟻のグロンギに真正面から短剣を振るいながら挑む。

手数で攻める、所謂「乱舞」のような立ち回り。これは五代さんや士には無い、僕だけの先頭スタイル。とにかくパワーよりもスピードと攻撃の手数で相手を仕留める。

しかし、中々僕の短剣が蟻のグロンギを捕らえることは出来ない、「当たらなければ」意味がない。

スピードが蟻のグロンギの方が上回っているせいだ。そして、遂には攻撃してこなかった背後にいた蜘蛛のグロンギが僕めがけ糸を吐いた。

「ここだっ!」

蜘蛛のグロンギが糸を吐いた瞬間、僕は横に転がり、その糸を避けた。そしてこれは僕が今か今かとこの胸で震えんばかりに祈っていた絶好の好機でもあった。そう、蜘蛛のグロンギが吐いた糸は僕ではなく、僕の前にいた蟻のグロンギを捕らえたのだ。

「トドメだッッッ!!」

動きを封じられた、蟻のグロンギ。そのスピードを生かすことが出来ない、僕にとっての絶好のチャンス、存分に生かさせて貰おう。

「喰らえッッッ、ハァッ!!」

右手に持つ短剣を蟻のグロンギめがけ投擲し、横腹に命中した。その場所に封印の文字が浮かび、僕は蟻のグロンギめがけ駆け出し少し飛び上がり一回転。

「超変身ッッッ!!」

そして、

「ライダーキーックッ!!」

僕の赤色の身体になった渾身の蹴りが横腹に突き刺さる。

「グヌッッッ!?」

悲痛の叫びとともに蟻のグロンギは消滅した。

「さあ、次はお前の番だ…」

僕は蜘蛛のグロンギを見据えそう呟いた。

あとは、「赤」でやれる気がする。僕は確信していた。この蜘蛛のグロンギの決定的な弱点を。そして過信していた、己の確信を。

「さぁ、勝負だッッッ!」

僕は蜘蛛のグロンギに、接近戦で対処した。離れれば離れるほど、糸を吐かれるリスクがある、近くにいれば吐かれる前に攻撃を仕掛ければいい。それ自体が蜘蛛のグロンギの弱点だ、そう考えて僕は接近戦闘に持ち込んだ。

腹部にストレート、脚部に蹴り、色々なバリエーションで相手に攻撃をさせない先手先手の戦闘スタイル、これは士の戦い方に近いかな。

そろそろトドメをさせるだろうか?そう思った瞬間、足が急に動かなくなった。

「え、何!?」

僕は右足が「何かに」捕らわれそのまま倒れ込んだ。

よく見ると、蜘蛛のグロンギが吐いた糸が足元にへばりついていた。

「何で!?あっ、まさか…」

おそらくこの糸は、戦いの序盤に蜘蛛のグロンギが吐いた糸だ…それに足を取られた、いや違う、目の前のことに集中し過ぎて、周りに意識が行かなかった己の確信の過信の結果だ…これはまずい…

「カオル!!大丈夫か!今行く!」

「えっ!?」

僕に声をかけたのは、いつの間にか参戦していた仮面ライダーディケイド=門矢士だった。

「士!?危ない!後ろ!」

「なっ!?クソッ!」

ディケイドも多勢を相手しているため、中々助けには来られない状況…

蜘蛛のグロンギはゆっくりと近づいてきている、手の爪が一段と鋭く延びて、僕にとどめを刺そうとしている。くそっ…何か…くそうっ…もうダメなのか…

 

「させるかァーッッ!ウォリャーッッ!!」

 

懐かしく久しぶりに聞いたその声は澄み渡る青空から舞い降り、光と共に蜘蛛のグロンギを粉砕した。

まさか…まさか…

「おう、ナイスタイミングだな。」

ディケイドが僕に駆け寄り 、空から舞い降りた救世主に呟く。

「間に合って良かった。」

その青空の救世主とディケイドは僕の手を取り、再び僕は立ち上がることが出来た。いつの間にか変身が解けていた。

「さて、俺たち三人がいればこいつらなら相手は余裕だろう。」

士が残る怪人や怪物達を見据え、宣言する。

「杉田さん、警察部隊の皆さん、下がって下さい。」

僕の声に杉田さんが反応し警察部隊は後ろに下がる。

「それで、カオル君、怪我はない?」

青空より舞い降りた救世主は僕の身を案じているようだ。

「大丈夫ですよ!あなたこそもう大丈夫なんですか?」

彼は笑顔で答えた、と思う。

「俺は自分の場所に帰るために、もっと強くなりたいから!」

その答えで僕は十分だった。

「ははっ、大丈夫そうで良かった。あっ、そうだった。」

僕の顔を見て首を傾げる彼。

「どうしたの?」

彼は答え、士もこちらを見ている。

「お帰りなさい、五代さん!」

「ただいま、カオル君!」

僕と五代さんは右手を握りしめ親指を強く立たせあい、それを士は少し笑いながら見ていたと思う。

ようやくたどり着いた、対等に戦えるこの場所に、僕はようやく…たどり着いたんだ。

「行こう、五代さん!士!」

「あぁ!」

「お前に言われなくてもな!」

三人の男が並び立つ、その男たちは、まさしく仮面ライダーだった。

「「「変身ッッッ!!」」」

今ここに2人の仮面ライダークウガと、仮面ライダーディケイドが並び立つ、

父さん母さん、博士、輝ちゃん、そして愛する桜子、僕は、仮面ライダーだから!クウガだから!

「行くぞーッッッ!!」

僕を筆頭に三人の仮面ライダーは敵に走り出した━━━━━━━━━━━━━━━━━━━。

 

 




以前予告に登場予定だと告知していた仮面ライダー一号=本郷猛、そして五代さんの復活、同じ一号同士の登場も小ネタとして考えてました、さて次回以降はストーリーが人物の視点によって別々のストーリーが展開予定です、お楽しみに~。(更新はかなり遅くなりますごめんなさい)


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青空の旅立ち⑤

更新遅すぎですね、すみません。えーと、とりあえず。おのれディケイドーッッッ!!


そこから帰還した五代さんと士の助力により、僕達は怪人軍団を一掃し、杉田さん率いる警察部隊が現場の収束に取りかかり始めた頃、

僕は杉田さんに取り急ぎの用事がある、とその言葉を残し、五代さんと士と共に遺跡の施設へと向かった。本郷猛なる男や謎の少年も気になるが…

「おかえりーカオルン!なんか大変だったらしいね、桜子がニュースを見たってさっき電話が有ったよ。って、エェッッッ!?」

施設の宿直室に向かった僕を出迎えてくれた輝ちゃんがびっくりした顔で出迎えてくれた。

「久しぶり、帰りました、輝ちゃん元気してた?」

後ろから付いてきていた笑顔の五代さんが入室したその瞬間の輝ちゃんの叫び声が室内に広がる。

士も入室すると、イケメンキターッ とか言った気がしたが…最近輝ちゃんのキャラ崩壊が著しい気がする。

「イケメン三人に囲まれるとか私…ヌルフフフ…」

著しい気がする。

ん?それ僕も含まれるの?士も五代さんも所謂イケメンだとは思うけど、僕…??

「いやいや、俺や五代雄介は格好いいとしてカオルは…」

士のその一言に僕は傷ついたよ、凄く傷ついたよ!

「カオルンも格好いいよ、みんな格好いいですよ!命を懸けて戦ってる男たちですもん。っていうか…」

輝ちゃんがそういうと僕達三人は少しだけ嬉しかった、少なくとも僕は凄く嬉しかった気がする。

「五代さん、お帰りなさい!」

 

 

 

一条カオルと門矢士

 

「奴らはバダン帝国の雑魚共だ、それより…鳴滝に会っただと?」

五代さんと輝ちゃんがコーヒーを煎れてくれている間、僕は先程の怪人たちの話や昨日遺跡の近くの展望台で会った鳴滝という男について士に聞いた。

「うん、士が…ディケイドが世界を破壊するとか、そのディケイドを追って旅をしているとか…昔、えーと20年ほど前に遺跡の施設で働いてたらしいんだ。僕の両親や夏目博士の同僚だったって。」

それを言い終えると士は少し驚いた顔をして、なにやら考えているようだった。

「…?えーと士?」

僕が問うと士は思いついた顔で語り出す。

「カオル、これは俺の憶測だが…仮に本当に鳴滝がこの世界の人間だったとしたら、俺はこの世界を見違えていたのかもしれないな。考えを改めなければならないな…」

「どういう事?」

「この世界はただの〈クウガ〉の世界ではない。〈鳴滝のいた仮面ライダー〉の世界かもしれない。探偵のあいつらもこの世界にいるが…あいつは世界を越えられるからな…遺跡の調査や研究で手に入れた何かしらの力が有るのかもしれない。ちなみに言っておくが俺は破壊者じゃない、ヒーローだ。」

士は決め顔でそういった。

「鳴滝さん…なんかどこかでみた気がするんだよな…」

僕がそう呟くと士はギロッとした目で睨み付けてきて言った。

「俺は破壊者じゃない。」

いやもう解ったからね!?

「解ったか、俺は破壊者じゃない、ヒーローだ。」

「ハイハイハイ、解ったよ正義のヒーロー殿…」

士ってたまに子供っぽくなるんだよな、まあ良いか。そしてこのタイミングで五代さんと輝ちゃんがコーヒーのカップを抱えてやってきた。

バダン帝国…大きな戦いはもう目の前だ。それと鳴滝さん…どこかで見たこと有るような気がするけど…?もう一度会えたら生前の僕の両親の話を是非聞かせて欲しいと思う━━━━━。

 

 

五代雄介と小田桐輝

 

 

「輝ちゃん、俺がいない間カオル君となんか進展有った?」

俺はコーヒー豆を選びながらそれとなく輝ちゃんに聞いてみる。

「昨日私誕生日だったんです、ほらこれ。この写真、カオルンと二人きりで撮りました!その写真を撮ったカメラがね、カオルンからのプレゼントだったんです。今の私は…このままこの先…ずっとこの距離でいいんです。カオルンには桜子が、桜子にはカオルンがいるから。二人とも大好きだから、私はこの距離でいいんです。」

「そっか、失恋って訳じゃないんだね?」

「そうです!」

「そうかー、あっ俺も何かプレゼントしたいな、輝ちゃん何か欲しいものある?」

「えっ!別にいいですよ!気にしないでください!」

「いやいや俺が何かしてあげたいからさ…あっじゃあさ、今日俺が手作りでディナーをご馳走しよう!ねっ、どう?」

「本当ですか!カオルンから聞いてたんですよ、五代さんは料理がうまいって、じゃあ場所はどうしましょ?」

この施設の当直室は正直あまり広くないからな、広いキッチン…あっ。

「そうだ、実加さんの自宅を借りよう!俺が帰ってきたことを実加さんと桜子ちゃんは知らないしサプライズにもなるし?」

「それはいい案ですね、実はちょうど夕飯実加さんと桜子に誘われてたんです、今から桜子に連絡してみようっと!」

ケイタイ~ケイタイ~と歌いながら桜子ちゃんに電話をかける輝ちゃんの恋心が叶うことがないのは…正直不憫ではある。でも輝ちゃんならきっといい人に出会えるよ、俺はそんな気がした。

「桜子オーケーらしいです!」

「良かった、あっ嫌いなものとかない?先に聞いとくよ?」

「あっ、私ナマコ食べられないです。」

「うん、了解!よーし、今からメニューを考えよう。」

コーヒーの良い薫りとともに穏やかな時間が流れている。

帰ってきたんだな…と実感できる薫りだ。

出来たてのコーヒーをカップに注ぎカオル君と士君のもとに向かうと2人は何やら話し込んでいるみたいだった。こういうのを見ると思い出す、一条さんとのやり取りや桜子さんとのやり取り。懐かしい、そんな穏やかな時間に俺は帰ってきたんだ━━━━━━━。

 

 

夏目実加と夏目桜子

 

 

「じゃあ行こうかお母さん!」

「はいよー。」

母の実加が退院することになった。ナント体の傷が完治し異常も見られない、椿先生も驚いていたほどだ。

病院を後にした私たち親子が向かう先は研究所だった。

「桜子、あんたさ、仕事の方は?幼稚園大丈夫なの?」

母が歩きながら私に聞いてくる、私は少し戸惑った。なぜなら…辞めようと思っているからだ、幼稚園の先生を。何故って?カオルの事や母が襲われた事で心配が絶えず、仕事所ではないからだ、そんな作り笑いで子供たちに接してしまえば…私は先生と呼ばれる資格はないように思う。

「うーん、うん。大丈夫だよ。」

私はその作り笑いで何とか誤魔化そうとした。

「嘘が下手だよねあんた昔から。」

甘かった、相手は長い付き合いになる母親だ、もう少し考えるべきだった。

「んで、なんで辞めようと思ってんの?」

「なんでわかったの!?」

「図星かい…鎌掛けなんだけどね。」

母のこういう所は好きになれない、あぁ私はなんてバカなんだろう。

「ひどいよお母さん…」

少し泣きそうになり歩いていた足を止める。

「まぁ…あたしや、カオル君のせいだわねー。うん、桜子あんたのしたいようにすればいいよ?」

そういう母やカオルが文字通り一番傷ついているのに…私は何も出来なかった、ただ見ていることしかできなかった。

「お母さん…私どうしよう…」

気付いたら泣いていた、最近は泣いてばかりだ。年のせいで涙腺弱って…ってまだ若いじゃん私。

「したいようにすればいい、なんならいっそ仕事辞めてカオル君と結婚して専業主婦でもする?」

「けけけ結婚!?」

気付いたら私は泣き止んでいた。

「おっ、泣き止んだ。泣いてたらそのきれいな顔が台無しだかんねー、カオル君に愛想尽かされるわよ?」

「カオルはそんな事で私を見捨てないよ!」

私は知ってる、一条カオルはそんな男じゃない。私の大切な人はそんな人間じゃない。

「冗談よ、まっ早く結婚してくれたら私も安心なんだけどねー、今は…仕方ないか。」

仕方ない…そう、今は私は見守ってあげるしかない、戦う運命を自ら背負った、大切なその人を私は見守ろう、何か気持ちが少し楽になった、幼稚園…仕事はまだもう少し考えよう、子供たちの笑顔をみたいしね。

「ありゃ?桜子、携帯鳴ってるわよー?」

画面にでている番号は見慣れた名前と共に表示されていた。

「輝姉ちゃんだ、はーいもしもーし。うん、そだよ?うん。良いよ、うん解った。お母さんにも伝えとくー。じゃねー。」

電話を切ると母が立ち止まって待っていてくれた。

「ダレカラー?カオル君?」

「輝姉ちゃんから、今日退院祝いで食べに行く約束してたじゃない?カオルがね、夏目家でやろうって言ってるらしいから良いよね?」

「あっ、そう。私は構わないわよ。」

「あっ、でも料理はどうするんだろう?私頑張っちゃおうか!」

私がそういった瞬間母は血相を変えて私に懇願した。

「桜子、とりあえず料理はカオル君にお願い、マジで本当今日そんな気分なの、ね?お願いします。」

「ちょお母さん、かっ、顔色悪いけど大丈夫…?カオルの料理ね、解ったよ…?」

その瞬間母の顔色は元に戻り、

「よし、そうと決まれば研究所に退院報告しなきゃね。ちゃちゃっと済ませて家の掃除しなきゃ!」

母は足早に足を進める。

「ちょっと桜子早く!行くよー。」

本当読めない母だ。

「待ってよー、お母さん!」

走って母を追いかける私を遠くから優しく見つめる眼鏡をかけた男がいたことを私たち親子は知ることはだいぶ先のことになる━━━━━━。

 

 

 

鳴滝

 

 

門矢士、ディケイドと仮面ライダークウガ…一条カオル君は出会ってしまった…別の世界のクウガ、五代雄介君もこの世界に現れた。

この世界はもう壊れかけている、私はこの世界も救えないのか。自らが生まれ育ち、愛したものとその血を受け継いだ娘の住むこの世界を。

実加…すまない、私はなんて愚かだったんだろう。桜子、君は君だけはどうか幸せになってくれ、どうか…遠くから私は見つめている、共に歩く親子を。

笑っている、その笑顔を見られただけで私は満足だ。ディケイドの旅が終わらない以上私は追い続ける、世界の破壊者ディケイドを観測し続けるために。

仮面ライダーの力で素晴らしい世界を手に入れるために。バダン帝国がこの世界に現れたのは想定外だったが…門矢士、仮面ライダーディケイド、その瞳は次に何を映す━━━━━━━━━。

 




短めですがお楽しみいただけましたか?門矢士と五代雄介という人物の本編のその後ってイメージ難しいですよね、でもだからこそ!二次創作万歳!


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青空の旅立ち⑥

海東さん少し登場、鳴滝さん暗躍中!?五代さんと士の掛け合いを書いていると、テレビで実際に見てみたい組み合わせだなと心底思います、そろそろ物語も佳境へ…そして新展開…?


その後士と五代さんと僕の三人で、夕飯の材料を買い出しに出かけ、夏目研究所の近くにある商店街にやってきた。

「カオル、明日には出発だぞ、解ったな?」

士が無粋な顔で呟く。

「解ってる、ありがとう士、本当ならもう行かなきゃいけないのにさ。」

「まぁ、五代雄介が帰ってきた祝いと夏目博士の退院祝いくらいわな。それくらいしたって罰は当たらんだろ。」

と、悠々と歩く士はいたる所へカメラを向けフラッシュを焚いていた。

「士君、写真巧いよねー、今度教えてよ、俺も結構好きなんだよ!」

五代さんはニコニコしながら度々カメラの被写体となっていた。

「良いが、技術料と教習料はきっちり貰うぞ。」

…士は甘くはなかった。

「で、五代さん?本当に大丈夫なんですね?」

「カオル君もなかなかの心配性だねー?大丈夫!俺はクウガだから!」

グッと握った右手に親指を立てて笑顔で答える五代さん。

「だったら良いんですけど…」

「大丈夫!大丈夫!あっ、このジャガイモいい感じ、すいませんこれ6個下さい!」

と、僕との会話の途中目に入った八百屋のジャガイモに目を奪われた五代さん。

「ちなみに五代さん?夕飯は何を作るんですか?」

「カレー!俺の叔父さんの店の味!あっおじさん、これ人参買うから玉葱安くなりません?いやーそこを何とか!」

五代さんが何か値切りだした!?とにもかくにも今晩のメニューはカレーで確定のようだ。

「って、あれ?士…?あれ…どこ行った?」

辺りを見回すと士がいないことに気付く。

見渡すと八百屋とは反対側に位置する電気屋さんのテレビの前に釘付けになっている士を発見した。

「どうしたのさ、士?」

「このニュース、気にならないか?」

「えーと…」

テレビに映し出されていたのは、日本のあちこちで怪物=グロンギの遺体が見つかっているというニュースだった。

「最近になってね…杉田さんからも聞いてはいたけど…どうやら同族争いみたいな感じなんじゃないかって。」

「遺跡が無いのにか?グロンギは遺跡に関連しているんじゃないのか?」

「それなんだけど…」

話は少し遡る、五代さんが消えてから2、3日たったある日の事、杉田さんと輝ちゃんの三人で集まったとき、その話が出たのだ。

「研究結果から…つまりね、カオルン、遺跡は栄水遺跡以外にも日本各地に有るみたいなの、似たような遺跡が幾つかね。だからもしかしたら霊石は…クウガになるためのあの石は他の場所にもあるかもしれないの、逆に言えば…」

僕は博士から聞いていた。だからその可能性も有るのではと少しは考えてはいたが…

「つまり各地にグロンギは出没する、人はグロンギ化する可能性が有るわけだね、うーん、参ったな…。」

「警察の力だけじゃ…人間だけで倒せる相手ではない…俺達警察官はただ一条君たちに頼るしかない…のか…しかしながらグロンギの出現場所が離れている場合…どうしようもないな…まぁ、今の所は同族争いみたいな感じですんでるようだからまだ良いか…」

杉田さんが何やら気になるワードを口にした。

「え、同族争いって?」

「あぁ、実は今朝他の県の…えーと確か嶬辺(ぎべ)遺跡という場所でグロンギ化したままの遺体が2体発見されてね。」

「そうだったんですか!?」

輝ちゃんと僕の目が合う、輝ちゃんの予想はすでに起きていた。

「小田桐博士の言うとおりグロンギは遺跡との関係は間違いないようだし…君のように戦える力がその遺跡に眠っているのかもしれない、明日から調査が入るようだ。」

「なるほど…」

僕は少しばかり期待を抱いた…抱いてしまった、独りじゃないという希望を。

「しかし、気になるんだがなー、その2体の遺体の死因なんだが…」

「死因?争って共倒れしたんじゃないんですか?」

僕の問いに杉田さんは歯切れ悪く続ける。

「━━━━━━━実は…2体の遺体の死因は━━━━━」

時はニュースを見ている士の場面に戻る。

「他にも遺跡が…?」

士はそう呟くともう一つ続ける。

「複数の遺跡で見つかっているグロンギの変死体、死因は過度の火傷によるショック死、いわゆる焼死…か。」

「みたいだね、火を扱う強いグロンギが他のグロンギを襲っているのかな。」

「グロンギ…ね…。もしかすると…もう一人の方が…」

士はテレビから反転し買い物に勤しむ五代さんを見ながら何か呟く。

「エ?何、士?」

何でもない、と答えた士は五代さんに近づきながら、俺はナマコ食えないからな、と一言添えた。

「へー、士君もかい?輝ちゃんも駄目らしいし、何か面白い!」

かくいう五代さんの両手に大量の野菜の入った袋が下げられている。

「って五代さん!?いくら使ったんですか!?僕も出しますよ!?」

「1000円くらいかなー。気にしないで、お金はどの世界も共通なのかな?日本円が使えて良かった。」

イヤイヤイヤ1000円で買える量じゃない…ですよ?

ざっとみた限り普通なら2000円以上はするハズだよ!?

「おじさんありがとう!」

五代さんがその言葉を口にすると八百屋のおっちゃんは毎度あり!と笑顔で見送ってくれた。

「あとはちょっとお肉とサイドメニューの材料くらいかなー…」

と、五代さんはスタスタと歩いていく。

そうだ、これこそが五代雄介、自由そのものなんだ━━━━━━━。

 

一方その頃夏目家では、件の用事を済ませ久しぶりに自宅の掃除をする親子二人の姿があった。

「ちょっとお母さん、あんま無理しなくていいよ?カオル達が来るまでに掃除くらい私一人で出来るし、座っててよ。病み上がりなんだしさ。」

母の実加を心配し娘の桜子は精一杯引き止める。

「見ての通り、ピンピンだから、あと子供1人産めるくらいピンピンだから大丈夫よーっと。」

娘の心配をよそに実加はテーブルを拭いていた。

「何言ってるのよ!?あのさ、歳考えてよ?お母さん幾つになるんだっけ?」

実加は手を止めず切り返す。

「私は永遠の17歳ですから。」

「ごめん、お母さんそれキツいわ。」

「なっ?!うっさいわねー、良いでしょ言ってるだけなんだから!」

「どこの世界に娘より年下の母親がいんのよ!?恥ずかしいからやめてよね!」

「別に本気で言ってるわけじゃないっての!あんたね、そんなだとカオル君に嫌われんぞー?」

いつの間にか掃除の手も泊まり、ちょっとした口喧嘩が勃発していた。

「カオルは関係ないでしょ!?そもそも子供1人産めるくらいとか、本当歳考えてよ!?冗談でもキツいわ!」

「何を!?私だってねまだまだ男の1人や2人くらいね!」

「えっ、ちょっとそれ本当?やめてやめてやめて、笑えない、笑えないから!?」

「うんまぁ無いけども、五代君はアリカナー。」

実加の棒読みに桜子はハイハイと冷めた目でスルーした。

「とにかくお母さん!カオルは取らないでよ!」

実加は呆気にとられ、次の瞬間には大笑いしだした。

「なっ、何がそんなにおかしいの!?」

実加は一息おいて、

「私がカオル君奪えるほどね、カオル君は浮ついた男じゃないよ、あんたが一番解ってんじゃん。ったくこんなところでも惚気かよ、鬱陶しいわ!」

実加は笑いながらそう言いきった。

「ふーん…なら良いけど…」

汐らしくなった桜子をニヤニヤしながら眺めるのも悪くない、そう思った実加であった。

その時、ピンポーンという来客を知らせる音が鳴った。

「「ゲッ…」」

親子2人は声をシンクロして、焦り出す。

「掃除終わってないのに…カオル達来ちゃったじゃん!お母さんが邪魔するから!」

「は!?あんたね、人のせいにすんじゃないわよ!?」

「お母さんが悪い!」

「ったく、性悪女め!親の顔が見てみたいわ!」

そんなやりとりをする親子二人は来客を忘れている、それに気付いたのは玄関が開けられ、リビングに見知った顔が現れたときだった━━━━━━━

 

他の買い物を終えた僕、五代さん、士、そして途中で合流した輝ちゃん。その四人で徒歩で夏目博士の自宅に向かう。

「結構買っちゃったなー、ごめんねカオル君荷物持たせちゃって。」

「いえ、筋トレもかねてちょうど良いくらいですし、ねえ、門矢君、君も筋トレ…シタイヨネー?」

「ははは、生憎俺はその手の事はやらない派でな、まぁ、一条君が筋トレでちょうど良いくらいらしいし、邪魔するわけにはいかないな?」

くそっ、士め、一つくらい持ってくれよ…

「カオルン!ファイト!オー!」

輝ちゃんが何か応援してくれてる、あ、でもつまりは持ってはくれないんだね…?

「というわけでカオル、ファイトだ。」

士にだめ押しを喰らい不屈の精神で荷物を運ぶ決意を固める、命有る限り戦う、それが仮面ライダーだからッッッッ!!

道中そんなやりとりをする中、ふと士は足を止め、急に目の前に現れた人物を凝視して凄む。

僕はその人物に見覚えがあった、この人は…!!

「何だ?海東、こんな所で何をしている?」

その人物はいつかの戦いで共闘した仮面ライダー=海東さんだった、服装はといえばキャップをかぶり、背中にはちょっとしたリュック、シャツにジーンズというなかなかのラフさだった。

「やぁ、士。久しぶりだね、おや、君はあの時の、一条カオル君じゃないか、久しぶり。」

海東さんは軽く挨拶をしたかと思うと、話を切りだした。

「ある人に頼まれてね、この石版を君に返すよ、一条カオル君。」

「ほぅ?お前が人の頼みを聞くとは…どういう風の吹き回しだ?」

「僕はお宝以外に興味がないんでね、ある人にとある条件を示談されてね、話に乗ったのさ。」

僕は海東さんからリュックを預かると、中身を確認する。石版…って、言ったよな今…石版…石版…アーッッあの石版!

その石版は海東さんが杉田さんから奪ったあの石版だった。

やはりあなただったのか…

「誰の差し金だ?」

士は海東さんに問う。

「まぁ、良いか、鳴滝さんだよ、鳴滝さん。交換条件は話せないというか話さないけどね。辞めてくれたまえよ?手荒なまねだけは。」

少々ピリピリしたムードになりつつあるが…

「また鳴滝か…まっ、良い。用は済んだのか海東?」

「あぁ、要件は果たした、それじゃあね。」

それだけ言うと、海東さんはどこかへ消えていった。

「鳴滝か…あいつ今度は何をたくらんでる…」

士は沸々と呟いてはいるが、隣で輝ちゃんが、あのイケメン誰!?とか言い出してそれをやりくりするだけで精一杯で士に話を聞けそうもなかった。

唯一五代さんだけが石版を眺めていた…何かを悟ったように━━━━━━━━━

 

夏目家の呼び鈴を鳴らすが一向に出てこない、よって僕の持参している合い鍵で強行突破することになった。

「お母さんが悪い!」

「ったく、性悪女め!親の顔が見てみたいわ!」

何か喧嘩してるみたいだ…まぁ、いつものことなんだけど。仕方ない僕の役回りを全うしよう。

「その親はあんたでしょう!夏目博士!いや…お義母さん!呼び鈴くらい気付いてくださいよ!!」

リビングに入るなり僕のツッコミは決まった。

「「アァ!?忘れてた!!」」

母娘二人の声は見事にシンクロしていた。

「2人とも仲良いよね、私感心しちゃうなー。」

僕の後ろからスタスタと入って来た輝ちゃんは、うんうんと首を縦に振っている。

「おいおい、客人にお茶くらい出したらどうなんだ?コーヒーが良いが。」

最初からそこにいたように悠々とリビングに有るソファーに腰掛けている士がいた。

「あっ、門矢さんだー。」

桜子がコンニチワーと挨拶している、って

「いやいや!!そうじゃなくて士!?なに人様の家でくつろいでんの!?ちゃっかりコーヒー頼んでるし!?」

「コーヒーじゃ物足りん、最高級のコーヒーを。」

「うっさいわ!!精々だせるのはインスタントコーヒーだよ!」

そこに現れたのは…

「お待たせしました、五代雄介特製、最高級ポレポレ珈琲でございます。」

「えっ!?有るの!?」

「頂こう。」

「召し上がれ!」

しばしの沈黙がリビングに訪れる。

コーヒーを飲み干した士、カップを置くと、ふむふむとなにやら頷いている。

「美味い。」

士は呟いた。

「長いよ!!士!!」

「美味いものを美味いと言っただけだが?」

「はは、喜んでもらえたみたいだね。」

五代さんは笑っていた。

「いや…あのー…」

そこに割って入ったのは桜子だった。

「何?どうしたの桜子。」

桜子を見ると、口元が見事に「アワアワ」していた。

「えーと、カオル、その人…五代さん?」

「そうだよ?」

「かっかっか帰ってきたー!!?五代さんだ!本当に五代さんだ!!おかえりなさい!」

桜子が取り乱し始めた。

「ただいま、桜子さ…桜子ちゃん。窓が開いてないから勝手に入って来ちゃいました。」

「え?あぁ、玄関鍵かけてたから!ごめんなさい、呼び鈴…」

五代さんは首を横に振り、ただいま…と呟いた。その後誰にも聞こえないであろう声で「言う人はこの子じゃなかったなー。」と呟いたのが僕にはわかった。

「実加さん、無事に戻れたみたいですね?」

五代さんは博士を目で捕らえ言った。

「五代君も無事戻れたのね。良かった。」

2人は笑いあっていた、いつの間にか皆も…なんと士も微笑んでいた。

僕も笑っていた、こんな気持ち、久しぶりだ。こうやって笑い会える日々を取り戻すため、僕は戦っているんだと改めて思い返したのだった━━━━━

 




次回はなるべく早く書こう、うんそうしよう。


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青空の旅立ち⑦五代雄介side

このお話から五代雄介視点と一条カオル視点で分けてストーリー進行していきます。こちらは五代雄介sideです。ライダー大戦に旅立つ一条カオルの視点では描かれない世界、つまり五代雄介が主人公となります。お楽しみ下さい。


五代雄介side

 

夕飯を作るためキッチンには俺とカオル君が入ることになった。その方がいいと実加さんに強く勧められたからであるが…桜子ちゃんの不服そうな顔がちょっと引っかかる。

「死人がでますから。」

カオル君曰わく。

リビングではガールズトークを繰り広げる女性三人(実加さん、桜子ちゃん、輝ちゃん)とそこに囲まれた士君の姿があった。時たま聞こえてくるのは彼女いるの?とか、歳は?とか…?輝ちゃんがほとんど質問している。

「写真館でカメラマンの仕事しながら時たま旅に出たり、色んな世界で戦ってきたな。」

士君もうまくあしらっているようで良かった。

そうこうしているうちにカオル君が野菜の皮をむき終えたようで、俺も取り急ぎ調理に勤しむことにした、カオル君は実は料理が出来るようで、なかなか手際よい。桜子ちゃんに教えてあげたらいいのに。

「教えたら死人が増えますよ。」

カオル君曰わく。

今晩のメニューはカレーがメインだ。俺のおじさんの店、ポレポレの味。

「五代さん、ドレッシング作ってみたんですけど…味見してもらえます?」

「どれどれドレッシング~、んっ!!美味い!!これバジルソース?」

「はい、昔母さんが良く作ってくれてたんです、美味しくできてよかった…」

カオル君は笑ってホッとしたようなそんな表情だった。

やっぱり誰かの笑顔は良いな。

「さっ、出来たよ!!お皿だしちゃおうか!」

「はい!」

カレーの香りが一面に広がり、夕食時を知らせる合図になった━━━━━━━━

 

食事を終え、洗い物は桜子ちゃんと輝ちゃんが担当することになった。まぁ実加さんは病み上がりだし年長者だしッて痛い痛い実加さん痛い叩くの禁止!暴力ダメ絶対!

「んでー?カオル君?明日行くわけね?」

「はい、博士…いや…お義母さん。すみません。」

「何で謝んのよ?世界を救いに行くんでしょ?誇りに思いなさいな?」

「はい!」

「よろしい。で、士君?実のところどれくらいの期間になりそうなの?」

「長くてあと3日、それで仲間は集まるはずだ、カオルを含めて。」

「なるほどー、で五代君はココにいるんだね?」

「そうですね、カオル君が帰るまで俺が戦います。」

「ふむふむ…戦う男たちか~良いね~、うんうんうん。」

実加さんもしかして酔ってる?

「みんな死ぬんじゃないわよ?」

「実加さん…」

「まっ、あたしが言えないわよねー、でもね、もうこれ以上悲劇はたくさんよ。」

士君はコーヒーを啜りながら相槌をうっている。

カオル君は…少し不安そうな顔でどこというわけでもなく視線を泳がせていた。

「大丈夫!俺が守ります、いや俺たちが守ります、ね士君、カオル君!」

俺の言葉に2人は強く頷いてくれた。

するとキッチンの方から輝ちゃんが帰ってきて、

「今から記念にみんなで写真撮りません?」

その一言に俺は強く賛同した。

「良いね!撮ろう撮ろう!」

桜子ちゃんもキッチンから戻ると、私も撮りたいとカオル君の手を取り引っ張っていった。

「あっ、じゃあカオルンからのプレゼントのあのカメラすぐ現像できるしあれで撮ろうよ!」

輝ちゃんはカバンを漁りカメラを取り出す。

「うーん、順番にみんなで一枚ずつ撮って行こうか!」

俺の案に皆賛同してくれた。

全員取り終え、パソコンとコピー機を使って現像を始める輝ちゃん。

「やっぱり士の写真なんか面白いよ、みんなボヤケてる。」

士君の写真だけが何故かボヤケていたのが妙に面白かった。

「そういう仕様だ。」

拗ねたようにカオル君にかえし言う士君が少し面白かったりした。

その後、順番にお風呂に入ることになり、俺は最後になった。

「あっ、五代さんお待たせしました、お風呂どうぞ。」

カオル君が風呂から上がり、俺も仕度をする。

「ありがとう。」

カオル君と別れ、リビングを出ると何やら女性陣が騒がしい。

「アァッ!?これカオルと私が生まれてすぐの写真だ!!」

とか。

「えっ、ちょっこの綺麗な人誰?」

「お前の母親だよッッ!!」

「えっお母さん!?」

「実加さんなの!?嘘だーッッ!?」

「お前ら歯ぁくいしばれェッッ!!」

とか、実に賑やかだった。

 

風呂から戻るとリビングのテーブルでアルバムを広げ、あーだこーだと盛り上がる女性陣とそれに付き合わされているカオル君がいた。

ちなみに士君は端で仮面ライダーの書かれたカードを整理していた。

「あっ、五代さん…」

力なく呟くカオル君に少し同情してしまう。

「何々?アルバム?」

「そう、五代君。あたしのピチピチの20代の頃の写真、欲情しちゃダメよー?」

「やめてよお母さん!!」

「まぁまぁ、桜子ちゃん、どれどれ、ほほう、なかなかの。やっぱり妹そっくりだ。」

「あー、それ僕の母さんです。」

「五代君歯ぁくいしばる?」

「じょ冗談ですよ実加さんははは。」

正直言うと実加さんの若い頃の写真はとても美人だった、今も綺麗な人だけどね。

アルバムをめくるページもラストになり、そのページには若い頃のカオル君の両親と実加さんの元旦那

さんも写っているページになった。

カオル君と桜子ちゃんが生まれる前らしい。

「ありゃ、あいつの写真まだあったんだ。」

「ヘー、お父さんの顔なんてほとんど知らないけど…写真あったんだ。」

実加さんと桜子ちゃんは案外あっけらかんとしている…が、

「つつつつ士士士!!」

カオル君がとたんに壊れた。

「どうした気持ち悪い。」

士君もなかなかひどい。

「僕は気持ち悪いと言う名前じゃない、カオルだ!いやそんなことより…これこの写真の男の人!」

「ったく…ん…?な…こいつは…!?」

士君も壊れた。

「えっ何、門矢君、うちの旦那知ってるの?葛城喜太郎っていうんだけど。」

「…葛城喜太郎…か。」

士君は少し戸惑っているようだ。

「士…この人…やっぱり…」

「あぁ…間違いない…鳴滝だ。」

士君とカオル君だけが何やら掴んだらしいが後ほど士君とカオル君の鳴滝なる人物の説明を受けると、実加さんが泣き出し、その日はお開きなった。

「喜太郎…生きてんなら顔見せなさいっての…」

実加さんの呟いたその一言は俺を中々寝させてはくれなかった━━━━━━━━

真夜中、横たわりはしているが寝られない俺の元に実加さんがやってきた。

「起きてるー?五代君?」

リビングのソファーで寝ていた俺の横に座る実加さん。

「どうしたの、実加さん?」

実加さんの目は少し腫れ上がってはいるが泣き止んではいるようだが…

「夜這いにきました~。」

「夜這いって、はは、冗談言わないでよ、実加さん。」

実加さんは何も言わず、ただ座っている。

「実加さん?」

無言で実加さんは俯いている。

「何か飲み物入れてきますね。」

「あっ、良いの良いの、ちょっと1人だと寂しくてさ、いい歳してね。それでね…」

「何か話しましょうか、楽しい話。」

「そうね、じゃあ五代君の話を聞かせてもらおうかね~。」

「それじゃあ━━━━━━━━」

俺は俺の世界での話をした。楽しい話も多かったが、実加さんが「一条さん」に強く興味を示したのでほぼ話は「一条さん」ネタになった。

「━━━━━━━それで一条さん何て言ったと思います?大丈夫か五代?ですよ、自分が血だらけの状態で生身で敵と戦っていたのに、俺を心配してるんですよ、おかしいでしょ?いやいやあなたこそ大丈夫じゃないでしょうにってね。しかもその次の日には現場に復帰してるし、強すぎってレベルじゃないですよホント。」

実加さんは笑いながら聞いてくれていた、それを見てつられて俺も笑ってしまう。

「面白い人ね、一条さん。なんかカオル君と似てる気がするわ、まぁ同姓同名だからかしらね?五代君の相棒って感じがするわ。」

相棒か…

「実加さんは?何か面白い話し無いですか?是非聞きたいんですけど?」

「わたし~?私ねー…それじゃあ━━━━━━」

カオル君との話、桜子ちゃんとの話、輝ちゃんとの話、カオル君の両親との話、しかしその中に彼の…元旦那さんの話は一切出てこなかった。

「━━━━━━ってわけよ。はぁ、話したら気が楽になったわ、ありがとうね五代君。」

「いやいや、俺も何か思いっきり笑ったの久しぶりだったんで、輝ちゃんの話なんか面白すぎでしょ。」

何があったかは二人だけの秘密だ。

「あの実加さん、気に障ったらあれなんですけど。その旦那さん…喜太郎さんの話、何か有りませんか?」

実加さんは少し目を細めた。

「あ、いやダメだったらいいんですごめんなさい。」

「あー、いやいや私もね、話したくない訳じゃないの。その…上手く話せないのよ。記憶に靄がかかったようになっててね。ただ、あいつの顔ぐらいしか思い出せないのよ、いつからかだったか…そんな感じ。」

「靄…?そっか…残念です。」

「まぁ真面目な奴だったのは確かよ、うん。あっ、そうだ、さっきの写真出来てたからはいこれ。」

「あー、出来たんですか。この写真…帰ったらみんなに見せよう。」

写真の真ん中に集まったカオル君、士君、桜子ちゃん、実加さん、輝ちゃん。

士君の口元を引っ張り笑っているように見せようと奮闘しているカオル君が妙に面白い。こんな写真が俺にも撮れることが本当に嬉しい、良い笑顔だよ皆。

「あとこれ、輝ちゃんが隠れて撮ってたみたい、カオル君とのツーショット。」

俺とカオル君がキッチンでドレッシングを作っていた頃の写真だった。

「絵になるねー、相棒同士って感じ。」

実加さんはそう言って、ソファーから立ち上がる。

「そろそろ寝るわ~ごめんなさいね五代君。遅くに…」

「いえいえ、おやすみなさい、実加さん。」

おやすみ~とスタスタとリビングを出て実加さんは自室に戻っていった。

「俺も寝よう…っとその前に。士君いるんでしょ?」

キッチンの方から士君が現れた。

「いつから気付いていた?」

士君は怪訝そうな顔で聞いてきた。

「うーん、いつって言うか何となく。」

「盗み聞きするつもりはなかったが…出て行くタイミングをはき違えてな。」

「聞かれちゃまずい話もないし全然良いんだけどキッチンで何してたの?」

「夕食のサラダのドレッシングのレシピがないか探していたんだ、美味かったからなあれ。」

「カオル君に直接聞いてみなよ?」

「あれはカオルが作ったのか?そうか、今度聞いてみるとしよう、それと。」

「葛城喜太郎…?」

「あぁ、葛城喜太郎…もとい鳴滝の件は俺が調べる、気になる話があったしな。」

「気になる…?」

「記憶に靄がかかると夏目博士は言っていた、おそらく何かあるはずだ、葛城喜太郎…鳴滝が何か仕組んでいるのかもしれない。」

「そうか…じゃあよろしく頼むよ。」

あぁ、とだけ返事をした士君は客間に帰って行った。

「皆の物語が少しずつ進み始めた、俺もその時なんだろうな。」

俺は目をつむると懐かしい記憶を辿るように夢の世界に落ちていった━━━━━━━━━━━━━

 




次の更新はいつになるんだろう…


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青空の旅立ち⑦一条カオルside

五代雄介sideとは別の物語です。今回は別作品からゲストが3人?と、一匹?も。彼の決め台詞も登場。
はてさてお楽しみいただければ。



一条カオルside

 

翌朝、時刻は8時。僕と士はバイクにまたがり旅立とうとしていた。

「じゃあ行ってきます。」

博士、桜子、輝ちゃん、そして五代さんに見送られ、戦いに赴こうとしている。

「カオル!絶対!帰ってきてよ…?」

「わかってる。必ず」

桜子に笑顔で答える。

「五代さん、少しの間…お願いします、どうか怪我だけはしないで下さい。」

「カオル君もね、無理はしないこと。それと、これを。」

五代さんが僕に差し出したのは昨晩夕食後にみんなで撮った…集合写真だった。

「この写真…ありがとうございます五代さん!じゃあ行ってきます!」

僕は写真を胸の内ポケットにしまい、バイクのエンジンをかける。走り出す音と共に僕と士の旅は始まった、目線の少し先が波打つように揺れていた、これは涙ではない…空間が歪んだのか…?そう、世界を越えたのだ━━━━━━━━━━━。

 

眩い光の先に見えてきたのは、見慣れない町並みだった。

士がバイクからおり、辺りを見回している。

「どうしたんだよ士?」

僕もバイクから降り、士に駆け寄る。

「ちょっとな。」

尚も辺りを見回している士は声を張り上げて叫んだ。

「いるのは解っているぞ、夏ミカン!隠れん坊は無しだ!」

夏ミカン…人を捜していたのか…?

すると、物陰からひとりの女性が出てきた。

「…どうして解ったんですか士君。」

ムスッとした表情で現れたその女性はとても可愛かった。

「お前のことなら解る、俺だからな。何をしている?」

「それは俺から説明させてもらう。」

士がその女性に問うと同時にどこからか現れた青年が言い放つ。

「お前は…桜井侑斗…だな…?いや、仮面ライダーゼロノスの方が良いか?」

桜井侑斗と呼ばれた青年は一枚の写真を士に見せた。

「この写真の少年、名前はシュウ。この子を光夏実と調べていた。過去に飛んだりしてな。」

士はなるほど…と頷く。

「あのぅ…士君、話の途中ですみません、そちらの方は?」

光夏実と呼ばれた女性とチラッと視線が合い僕はドキッとした、これは浮気じゃないよ、浮気だめ絶対。

「ぼ、僕は一条カオルと言います、えっと…」

僕が口ごもるのを見かねて士が割って入る。

「一条カオル、仮面ライダークウガだ。ユウスケとは別の世界のな。」

士から聞いたことがある、小野寺ユウスケ=仮面ライダークウガ。今は旅をしているらしい…

「クウガ!?それはそれは!はじめまして、光夏実と言います、士君には夏ミカンと呼ばれてます、あっ、ちなみに私も仮面ライダーなんです。ね、キバーラさん。」

パタパタと白い何かが夏実さんの周りを飛んでいる。何あれ…鳥?

「それ鳥ですか?」

僕の問いにキバーラさんと呼ばれた白い何かが答えた。答えた!?

「失礼しちゃう、私は蝙蝠よコウモリ、オーケー?」

「しゃべった!?」

「キバーラさんは私の相棒さんなんです、改めてよろしくお願いしますね一条カオルさん!」

「あぁ…よろしくお願いします…」

「話が脱線したな、元に戻すぞー。」

士は桜井侑斗と呼ばれた彼に向き直る。

「で、ゼロノス殿?シュウの正体が分かったと?」

「あぁ、間違い無い情報…いや歴史だな、彼は…シュウは…すでに死んでいる。」

シュウと呼ばれた少年…昨日助けたあの少年はすでに死んでいる…?確かに触ったし話もしたが…

「なるほどだいたい解った、昭和ライダー達が敵対した理由もそれが原因だ、ふんっ、胸くそ悪い話だな。」

士は空を仰ぎ呆れているようだった。

「門矢士…いや仮面ライダーディケイド、これ以上あの少年シュウに肩入れはするな。これは警告だ。」

桜井侑斗は士に対しキツい口調で言う。

「子供を守るのが仮面ライダーだろう、俺はそう思うが、俺がその警告に反するというならどうする気だ、桜井侑斗?」

「ダメです士君、今回ばかりは…あの子を助けてしまうと…世界はバダン帝国の物になってしまいます!だからッッ!」

夏実さんが桜井侑斗と士の間に割って入り、何とか冷え切った空気を取り繕いでくれてはいるが…これはつまり…士と桜井侑斗の交渉は決裂したということか…?

「世界の破壊者ディケイド、もう一度警告する、あの子を助けてはならない。即刻身を引け。」

「断る、俺は自分が信じた自分の生き方を変えるつもりはない、シュウは必ず守る、そしてバダン帝国は俺が…いや俺達平成ライダーが叩き潰す、お前は昭和ライダーの差し金なのか?」

士ははっきりした口調で言い切った。

夏実さんがワタワタとして慌て始めているが…

「時間は自然に流れるから美しい、俺は時を守るためなら何でもするのさ。平成だの昭和だのそんなのはどうでも良い、歴史を改編する物は敵と見なす、俺はそれだけだ。」

2人は詰め寄り、今にも戦いの幕が上がりそうだ…僕は…

「僕は…2人の言い分はよくわからない。」

「「なに…?」」

桜井侑斗と士の声がシンクロし夏実さんはキョトンとした目で僕を見ている。

「桜井侑斗、君が言っている歴史改編は、つまりシュウが死んでいるはずなのに今何故か生きていることを指すんだろ?」

あぁ、と桜井侑斗は返事をする。

「士、バダン帝国とシュウはどう関係しているのかちゃんと調べた?」

「有る程度はな、シュウは特殊な状況で蘇ったらしい、それをバダン帝国が利用しようとしている。」

「なるほど…と言うことは僕が思うに…なんだけど、二人の意見は決裂してないと思うんだけど…?」

僕は続ける。

「バダン帝国はおそらく生きているものと死んでいるものをひっくり返そうとしている、士は昨日夕食の時教えてくれたよね?昭和ライダーの話も聞いた。平成ライダーがシュウを助けたことによって生み出されたのがバダン帝国だと昭和ライダーは主張しているって。この一連はさ、自然に流れてない…?」

「なるほど確かに…」

士は頷く。

「桜井侑斗、君が主張する、シュウを助けてはならないという話、つまりはバダン帝国にシュウを渡してしまえと言うこと…?違うでしょう?」

桜井侑斗はハッとした顔で僕を見ている。

「君はおそらく、シュウが死んだ時間で何か見たんじゃない…?夏実さんも。」

夏実さんも少しハッとした顔で僕を見ている。

「シュウの父親が…バダン帝国の中にいる…」

桜井侑斗は呟いた。

「なるほど…これでだめ押しだ、士は…たぶん気付いているんじゃない?昭和ライダーの目的を。」

「おそらく、昭和ライダーはシュウを見殺しにつもりはなく、シュウを泳がせてバダン帝国の目論見を探っている…?」

士も頷く。

「よし、だいぶ落ち着いてきた、これで最後。僕たち仮面ライダーの現状、敵となる存在は…?」

「「「バダン帝国」」」

僕の問いに三人が答える。

「そう、時間を元に戻すにはまずバダン帝国の目論見を絶ち、シュウがどう関連し、何故狙われるのかを調べることだ、倒すべきは平成ライダーでもない昭和ライダーでもない、バダン帝国でしょ?」

三人が黙って聞いている。

「そしてこれは僕の憶測なんだけど。たぶん昭和ライダーは僕たち平成ライダーとあえて敵対し僕たちを泳がせて、バダン帝国のねらいを探っているんじゃないかな。バダン帝国に潜入したりしてるかもね。」

「何故そう思う?」

士は僕を睨むような目つきとともに話す。

「本郷猛…という人に出会ってね、シュウを助けるなと言って僕の前に現れたんだ、昨日ね。」

「なんだと!?」

士は驚き桜井侑斗と夏実さんは黙っている。

「僕はシュウを怪人から守るために戦っていた、そこに助けるなと言い現れた男が、僕にやるべきことがあるだろう、と催促し先に行かせ、シュウを守るように怪人と戦っていた、それが本郷猛という男だった。たぶん昭和ライダーなんだろう、とそのとき思ったよ、平成ライダーだのひよっこだの散々言われたからね。僕達は監視でもしてるんじゃない?昭和ライダー達に、同様にバダン帝国も間近で監視するくらいやってのけそうだけど。」

「それは有り得そうだな…ふんっ胸くそ悪い。」

士は再び空を仰いだ。

「つまり俺がシュウについて調べるのも把握されていたということか、とんだピエロだな。」

と、桜井侑斗が呟く。

「シュウを助けることで時間が歴史が元に戻ることを願ってるのは昭和ライダーもきっと同じなんだよ、策を練ってるんだろうね、きっと。それに気付かないで戦っている平成ライダーもいるかもしれない、だから僕たちにできることは…仲間を集め共に行動し、バダン帝国を叩き潰す、それだけさ。」

僕の言葉に三人は納得してくれたようだった。

「そうこう言ってるうちに敵のお出ましみたいよ~?」

キバーラさんがパタパタと飛んで見やる方に目を向けると、昨日戦った奴らと同じ格好の骸骨みたいな…えーっとショッカー怪人だっけ?が100…いや200はいるだろうか?僕たちを取り囲んでいた、中には少し強そうなゴツゴツした怪人も数体見受けられる。

「カオル、行けるか?」

士は僕の肩に手を乗せ問う。

「もちろん。」

胸ポケットに入った写真に手を当て言う僕。

「士君、私も久しぶりに戦います。キバーラさんお願いします。」

まかせて~とパタパタと飛ぶキバーラさん。

「勝手にしろ、怪我だけはするなよ。」

「つれないですねー、でも私頑張ります!」

士と夏実さんは付き合ってるのかなとかちょっと思ったり思わなかったり。

「ゼロノス殿?相棒のイマジンがいないようだが戦えるのか?」

士は桜井侑斗に問う。

「ふん、あいつがいなくても戦える、カードは使わなきゃ意味がないからな。」

とどこからかベルトと緑色のカードを取り出す。

同時に士もベルトを装着しカードを取り出した。

夏実さんの手にはキバーラさんが。

…僕も行こう。

「「「「変身ッッ!!」」」」

四人同時に変身し、四方に分かれて怪人達に駆ける。

僕の目の先には40ほどのショッカー怪人と、それを仕切っているのか一体の全身灰色の鰐のような風体の怪人がいた。とりあえずショッカー怪人が先か…

赤で充分やれるが、スピード勝負にも慣れておきたい…と、目の前にある鉄の手すりを蹴り落とす。

「超変身ッッ!!」

青に変身すると同時に蹴り落とした手すりが短剣へと姿を変える。

「一気に決めるッッ!!」

青特有のスピードでショッカー怪人を圧倒し確実にしとめていく。

数分で、20体は倒せただろうか。

士達は…と周りを見回すと、その姿を確認できたのは桜井侑斗、もといゼロノスだけだった。

「戦いの途中で余所見とはなめられたものだなッッ!!」

「なッッ!?」

鰐のような怪人の手痛い一撃が僕の顔面炸裂し体ごと吹っ飛ばされる。

「いてー…」

たぶん、口の中が切れたのだろう…少し血の味がする。

「お前等は下がれ、俺が…クロコダイルオルフェノク様が相手をしよう。」

「イーッッ!!」

ショッカー怪人たちを下げ、さしで勝負をしてくれるようだ。

「ははっ、僕もなめられたもんだね、1対1で勝てるつもりか?」

「ふん、その減らず口、体ごと吹き飛ばしてやるわッッ!!」

僕は立ち上がり、青の体のままクロコダイルオルフェノクに飛びかかる。

「ハァッッッ!!」

短剣を舞の如く振るい、相手に攻撃をさせる隙を与えない。

「そらッッッ!!」

切りかかると見せかけ、跳び回し蹴りを顔めがけ放つ。

「小賢しい…」

「何ッッ!?」

僕の跳び回し蹴りを難なく受け止め、掴まれた右足ごと放り投げられる。

「くっ…スピードよりもパワーが必要な相手か…」

赤か…赤で行くか。

「超変身ッッ!!」

再び立ち上がり、クロコダイルオルフェノクの真上に跳び体を一回転し、右足に力を込める。

「ハァッッッ!!ライダーキーックッッ!!」

僕の右足はクロコダイルオルフェノクに炸裂した…が…

「軽いわッッ!!ハァッッッ!!」

固い腕の鱗に弾き返されてしまう。

「嘘だろ…」

赤でもだめ…青でもだめ…緑は銃を杉田さんに返してしまったし…無理だ…

「ははは…降参でもするか?」

少しずつクロコダイルオルフェノクは僕に接近してきている、どうする…パワーが足りない、スピードもだめ…両方を同時に使うのは一度やって危険だと解っているし…切る攻撃がもう少し強ければ…あの堅い腕を切り落として、腹部に蹴りを撃ち込めれば勝機はある…かもしれないが…短剣では力が足りない…どうすれば…

考えているうちにクロコダイルオルフェノクの攻撃が始まり、防御に徹するしかなくなった僕は…ただひたすらに受け流し、カウンターを少し繰り出すが効いていないのも目に見えている。

「オラオラどうしたッッ!?」

クロコダイルオルフェノクのアッパーが見事に決まり何度目かのダウンを取られた。

正直大ピンチだ…どうすればいいか見当もつかない、でも諦めない、まだだ…まだいける。

「暇は与えないぜ?オラァッッ!!」

ひざを突いた僕めがけクロコダイルオルフェノクの右ストレートが僕の胸部をえぐる。

「ッかはッッ…」

吹き飛ばされ勢いのまま壁に打ち付けられる。

「…何か…何か方法は…」

少し先を見ると、ゼロノスが怪人たちにとどめを刺していた、剣から放たれた斬撃が矢のようになり跳び道具と化していた。

剣から放つ跳び道具…

「あれしかない!!」

ボロボロの体を何とか起こし立ち上がり、辺りを見回す。

「あった…!!あのサイズならッッ!!」

壁に打ち付けられた衝撃で建物の鉄柱が地面に転がっている、それを手にしイメージをする。

「攻撃特化…跳び道具…斬撃…よしっ!!」

クロコダイルオルフェノクがのそりのそりと迫っている。

赤がダメなら、青がダメなら、緑がダメなら、今度は━━━━━━━━

「超変身ッッ!!」

僕の体の色が赤から紫へと変化した、どうやら成功したようだ、両手で構える大剣を確認し、改めてそう感じる。

「ハァッッッ!!」

大剣を両手で大きく振るい地面を叩ききると、少し地割れが起こった…このパワーなら…いける!!

「どこを狙っている?気がおかしくでもなかったか?フハハハッッ!!」

クロコダイルオルフェノクは僕をあざ笑う、その次の瞬間徐々に割れた地面が輝きだした。

「何ッッ!?何だこれは…!?」

クロコダイルオルフェノクは驚愕していた。

「新しい僕の力だ。行くぞッッ!!ハァッッッ!!」

割れた地面から無数の光の矢が飛び出しクロコダイルオルフェノクを包んだのだ。

「何ッッ!?これはいったい!?」

尚も無数の光の矢に撃ち抜かれ少しずつ灰化し始めるクロコダイルオルフェノク。

「とどめだ。」

腹部に力を込めると霊石が輝きだし、その光が両手に持つ大剣に集まり始める、それを大剣からクロコダイルオルフェノクへと打ち込むべく大きく振ると放たれた光の波がクロコダイルオルフェノクを貫通、もう一ちょっ行っときますか。

「超変身ッッ!!」

大剣を捨て、赤に戻りクロコダイルオルフェノクへと走る。

光の波が貫通した場所がまだ輝いている、そこにめがけ渾身の蹴りをくれてやる。

「…ライダーキック…ウォオリャーッッ!!」

「ヌァァッッ!?」

蒼白い炎と共に燃え尽きていったクロコダイルオルフェノク…強かった…正直…危なかった…

辺りを見ると士と夏実さんはやはりいなかったが、全て片が付いたのか、変身を解除しながら桜井侑斗が歩いてくる。

「なかなか手強い相手だったみたいだな、あんた結構強いんだな。」

桜井侑斗は笑みを浮かべながら、称えてくれた。

「君こそ強いんだね、僕はまだまだだよ。」

「まぁな。最初で最後に言っておく。俺はかーなり強い!!とりあえず俺は今から別行動をとる、色々やることがあるからな、じゃあな。」

軽く手を振り桜井侑斗は去っていった。

「仮面ライダー…ゼロノスか…」

時を守ると言っていたけど…歴史の番人か何かなのかな…

「あのぉ…桜井侑斗を見ませんでしたか?」

声がした方を見るとカラスみたいな怪人が話しかけてきていた。

「げっ、怪人!?まだいたのかッッ!?へんし」

「ちょっちょっと待った待った!?待ってくれ…俺は怪人じゃないイマジンだ、デネブと呼ばれている、桜井侑斗を見ませんでした?」

カラスみたいな怪人=デネブは桜井侑斗の関係者…?

「桜井侑斗ならあっちに歩いていったけど…」

「アァッ!?そうですかありがとうございます、あっこれ、デネブキャンディーですどうぞ。」

デネブはどこからか取り出したキャンディーを手渡すとそそくさと桜井侑斗を追いかける。

「アァッ!桜井侑斗をよろしくー!!」

振り返り大きな声でそう叫ぶと、消えていった。

デネブ…あいつ何なんだろう。

「とりあえず…俺…これからどうしよう…」

デネブに貰ったキャンディーを頬張るとどこからともなくそう呟いてしまった。

「いきなり士とはぐれるとは…さい先悪いよ…デネブキャンディー旨いなー…」

士のバイクは見当たらないし別の場所に移動したのだろうか…とりあえず辺りを探して見るべく、バイクを渋々走らせる僕であった━━━━━━━━━

 




さて次回更新はいつになるやら…


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青空の旅立ち⑧

前回の更新から早1ヶ月、リアルの仕事が忙しすぎて中々執筆が進まないので悲しくなりますが、読んでいただいている皆様に感謝を!
一条カオルと、五代雄介の別々のストーリー…二人のクウガの物語を是非お楽しみ下さい。一条カオルsideにはジン・ケイスケが再登場、仮面ライダーフィフティーンも登場。五代雄介sideは着々と「一条カオルがクウガ」の世界の謎が人類の手により解明されていき、黒幕の魔の手が少しずつ近づいています。でわでわどうぞ。


一条カオルside

 

 

海岸沿いを走って30分程過ぎただろうか。

いったん気を落ち着かせるため、何となくだがバイクのエンジンを止めて防波堤へと徒歩で向かう。少し先に灯台も見えるこの場所はなかなかの美しい景色だ。

世界を越えた感覚はあまりぱっとしてはいないが、いざ知らぬ土地で独りになると、少し心細くなる。

「綺麗な景色だなー。カメラ持ってくるんだったなぁ。」

そんな独り言も潮風と波の音がかき消していく。

先程の戦いが嘘のようだ、なんて感傷に浸っていると、何やら悲鳴のような声が…その声がした方を見ると、少し離れた反対側の防波堤を走る一人の女性を発見した。しかもその女性を追っているのはショッカー怪人のようだ。女性が走る先はもう行き止まりの他無い。

「ったくまたか!?休む間もなしかよッッ!!!?あぁもうっ!」

女性とショッカー怪人を追って僕は走り出し、霊石を腹部に発現させる。

「一気に追い付くしかないか…なら!!!これだッッ!!!」

尚も防波堤を走り逃げる女性を視界に捕らえ僕は叫ぶ。

「変身ッッ!!!」

走りながら「緑」のクウガに変身し、翼を広げ海原を飛び出し、ショッカー怪人の群に向け奇襲を仕掛ける。

「超変身ッッ!!!」

空中で「赤」のクウガに変身し、ショッカー怪人の群に前回転しながら急降下する。

「喰らえッッ!!!ハアァッッッ!!!」

「イイーッ!?」

渾身の蹴りを打ち込み、ショッカー怪人の群れを一掃し、残りも僅かになった。

「こういう戦い方も有り…かな。」

「緑」で空高く舞い「赤」で蹴りを打ち込む、これは今後もかなり使えるハズだ。

と、考えたのも束の間、僕の前に取りこぼしたショッカー怪人数体と、その後ろに控える謎の男が現れ臨戦態勢を取った。後ろには女性が息をあげて今にも倒れそうになっている。その女性にそこを動くなと指示し、僕はショッカー怪人数体と謎の男に対峙する。

「お前は…仮面ライダークウガ…だな。」

ショッカー怪人達の前に立った男が僕に問う。

「そうだよ、で…あんたは?」

謎の男は変わった剣を左手に携え、右手に持った骸骨の顔をした何かを握る。

「俺は…仮面ライダーフィフティーン…」

と、同時に骸骨の顔をした何かから電子音が発せられ、腰のベルトに装着された。

「仮面ライダー…だって…!?」

僕は耳を疑った、仮面ライダーは…人類の味方ではないのか!?

「さて、小手調べと行くか、平成ライダー…仮面ライダークウガッッ!!!」

目の前の謎の男は仮面ライダーフィフティーンに変身し、僕に切りかかってきた。

「なっ!?」

とっさの事に焦ったが何とか横に転がり、その一撃を避ける。

「イイーッ!!!」

ショッカー怪人達も攻勢に出始め、やっかいな戦いが再び始まった。

「ショッカー怪人達を先にやるか…超変身ッッ!!!」

僕は「赤」から「青」になり、速さを活かし一体、また一体と確実にショッカー怪人達を仕留めて行く。

「小賢しい事を!!!」

フィフティーンの一振りの剣が僕の肩を少しかすめ、そこから出血したのが解るくらい痛んだ。

肩を押さえながら、立ち上がりフィフティーンの次の一手を避けるべく、後方に飛ぶ。

正直マズい…武器になる物がないからな…どうすれば…

「その程度か?仮面ライダークウガ…とどめを刺させて貰う。」

フィフティーンは剣を振りかざすと、そこから黒い靄のような物が立ち込める。

どうする…あれを避ければ…間違いなく女性が犠牲になる…盾になれば…僕は…

 

“…必ず帰ってきてよね、カオル!!”

 

その時、僕の脳裏に桜子の声が響き渡る。

そうだね、桜子…生きて帰らなきゃ!!

「オラァッッ!!!」

フィフティーンが剣を地に突き刺すと、地割れが発生し、そこかは爆発が起こり、その爆発が迫り来ると同時に僕は意を決し振り返る。

「ごめんね!!!ちょっと我慢して!!!」

「えっ?!」

と、後方の女性に走り、そのまま体ごと担いで「赤」から「緑」に変身し、宙を舞う。そのまま少し離れた場所にあったバイクまで一っ飛びして、バイクのエンジンをかけ、女性を乗せて僕はバイクとともに走り出す。

「生きるためには…逃げることも必要って事か…悔しいけど…」

いきなりのことではあるが全速力で走り去る僕たちをフィフティーンとショッカー怪人達は追ってこなかった。

ひたすらにバイクを走らせて20分ほど経っただろうか…もう追っ手はないはずだ、たぶん。

「あのっ!!!」

後ろに乗っていた女性が僕に話しかけてきた。

「何~?」

僕は疲れからか意識が少し朦朧とし始めていた。

「あのっ、肩!!!血が!!!」

あぁ…そういえば…忘れてた。僕怪我してたんだ。

バイクを止めて、降りた瞬間僕はフラついて座り込んでしまう。

「ちょっと出血が多かったせいかな、でもちょっと休んだらこれくらい大丈夫だよ?だって…僕ク…ウガだ…」

そこで僕の意識は遠退いていった━━━━━━━━━━。

 

遠のく意識の中で僕が見たものと言えば、たぶん…五代さんとあちらの【一条さん】が2人で他愛もない話をしている夢だった━━━━━━━━。

 

 

「……ん?あっ。」

目が覚めると、真っ白な天井と、襲われていたあの女性…というより中学生…高校生くらいの女の子の顔が割と近くにあった。桜子に見られたら生きていられるか心配なくらいに。

「ごっ、ごめんなさい!」

女の子はとっさに離れ平謝りすると、横にある椅子にちょこんと座る。

「あー、いや、大丈夫。で…ここはどこ?僕、気を失っちゃったよねたぶん。」

女の子はコクリと頷く。

「ありがとうね、君が一人でここに運んでくれたの?」

「えっと…私じゃないんですけど、乾さんっていう人に運んでいただきました、お兄さんが倒れた場所からここは結構近いんですけど…ここ私の自宅なんで…」

「そっか…乾さん、その乾さんはどこにいるの?せめてお礼を言いたいんだけど…」

「あー、それはちょっと。乾さんはまた来ると思います、気紛れな方なんで。」

「そう…いないのかー、残念。」

窓の外を見ると夕刻のようで海岸沿いに日が沈もうとしていた。

「あの…私マリって言います。お兄さんは?」

「あ、自己紹介まだだったね、ごめん。僕は一条カオル、見られちゃったから隠す必要無いか、僕は仮面ライダー…クウガなんだ。驚いたでしょ?」

マリは少しうーん…と考えるような仕草を見せ、

「そんなには…私の身近にも仮面ライダーはいますから…」

「えっ!?」

僕の声にマリは驚いたようで身体をビクつかせた。

僕の声が外にも漏れたようで、部屋に初老とまではいかないが、渋い白衣の男性が入ってきた。

「目覚めたか、元気そうで何よりだ、良かった。」

その白衣の男性の一言と同時に僕の脳にあるワンシーンがフラッシュバックした。

この人どこかで…

「ん、どうした?」

僕はその白衣の男性の顔をマジマジと見つめ、記憶が少しずつ鮮明になり始める。

「…ケイスケ…ジン…あっ!!!そうだ!!あなたはジン・ケイスケ先生!!?」

そうだ、瀕死の夏目博士を救ってくれたあの医師、間違いない、あの時のジン・ケイスケ先生だ。

「どこかで会ったか…?ん、ん…ああ、君はあの病院で会った?」

「はい!」

「そうか!あの時の…彼女は回復したかい?きっと良くなってるはずだが。」

「はい!あの時は本当に━━━━━━」

そこからはジン・ケイスケ先生といろいろな話をした。それをマリは楽しそうに見ていた。そして日は暮れていくのであった。

しかし僕は重大なことを忘れて見落としてしまったのだ。マリの言った…身近に仮面ライダーがいるという話を、そしてマリが何故、フィフティーンやショッカー怪人に狙われたのかを━━━━━━━━。

 

 

 

 

五代雄介side

 

 

カオル君が旅立った直後だった。カオル君から預かったスマートフォンに着信があったのだ。電話主は杉田さんだった。

「もしもし、えっと、五代です!」

慣れない手つきで何とか電話に出ることが出来た、技術の進歩ってすごい。

「五代君か、一条君は?」

「あ、士君と旅に出まして。俺が携帯預かってるんです、何かありましたか?」

「あぁ…例の件か…。解った、あぁいや、急で悪いんだが、グロンギの件で協力して貰いたいんだが、今から署まで来てもらえるか?」

「解りました!すぐ行きます!」

俺は二つ返事で、杉田さんのいる警察署までバイクを飛ばした、ちなみにこのバイクはトライチェイサーとは似つかない、実加さんの旦那さんが遺していった、ロードバイクだ。快く実加さんが貸してくれた物だった。

「実加さん、俺ちょっと杉田さんの所に行ってきます!バイク借りますね。」

「あぁ、輝ちゃんも呼び出されてたわね、わかった、いってらっしゃい!」

そう実加さんに送り出して貰ったときは、何かちょっと新鮮な気もした。

バイクを走らせること20分、何とか署に辿り着いた俺は(何度か道に迷った)駐輪場にバイクを止め足早に署内に向かう。

「おう、五代。帰ってきたのは本当だったよいだな。」

署に入った矢先、見知った男性が話しかけてきた。

「椿先生!お久しぶりです、五代雄介帰還いたしました!で、椿先生も杉田さんから連絡が?」

「あぁ、何やら見てほしいモノがあるとか。」

「…なるほど。」

「とりあえずあいつは二階の会議室らしい、行くぞ。」

「はい!」

二階に向かう途中壁に微かに穴の空いた跡があったり、剥がれていたりしているのを見て思い出したが、グロンギの襲来を受けてからこの署はそんなに時間は経っていないのだ。

「カオル君、俺がいない間ここでも戦ってたんだよなー。」

俺のつぶやきに椿先生は気付くことなく淡々と足を進める。

二階の会議室に入ると杉田さんを含めた数人の刑事さん達と、輝ちゃんが何やら資料を広げ話し合いをしていた。

「おう、椿と五代君来てくれたか、早速だがこちらへ来てくれ。」

杉田さんと輝ちゃんが手招きで迎えてくれた。

広げられた資料を拝見すると、グロンギに関する資料と古代文明の文字及び歴史の詳細が記されていた、俺がいない間、捜査や研究は著しく進んでいるようで感心してしまう。

「五代さん、この文章読んでもらえます?」

 

 

“光と闇の戦士現れるとき世界は災厄に見舞われ、恐怖と悲しみと絶望、そして悪しき欲望がヒトを変貌させる”

“ヒト成らざる者は力を求め、血肉の争いに明け暮れる”

“悪しき心を持たぬ者、それを人々はクウガと呼び、何時しか神と呼ばれるようになる”

“2人の神は天と地、光の雨と闇の焔と対する存在になり果て、血肉の争いは光を持って集束する”

“ヒトは戒めのため、神を祭り後世に希望をそして絶望を残すことに始終する”

“対なる神再び目覚めし時、ヒト成らざるモノ現れ、その力は時を経て受け継がれ、神もまた受け継がれる”

“光の神、己心と五大の力目覚めしとき、聖なる力に目覚めん”

“闇の神、罪念と執念の焔に再思の時、ヒト成らざるモノと共に目覚めん”

 

 

つまりこの文章は、ジョウの言っていた過去の話のアレだ。光の神=現代にそれを受け継いだのはカオル君。闇の神=永き眠りから目覚めたダイ。

そして、ヒト成らざるモノ=グロンギ。そのグロンギは力を求めた元はヒトということ。カオル君が感情の変化で身体の色が変わると言っていたが…それについては何も記されていないのか…それでも情報としては充分だ、つまり…カオル君はいずれ…「本当の姿」に覚醒するときが来る。

「すごいよ輝ちゃん、ここまで調べ上げるなんて!」

「頑張りましたよー?もうお肌ガサガサですし…」

輝ちゃんは目を細めながら、今にも泣きそうな顔でそう言った。これはスルーするしかない。

「それでだ五代君、この写真見てもらえるか?」

杉田さんが俺に見せた写真には2体の焼死体だった。それもグロンギの。焼死体…?

「これは…燃えたんですよね?」

「あぁ、それも極度の高熱で発火し、焼死したようだ。グロンギ同士でやり合ったならともかく、こんな事を出来るグロンギが他にいるんだとすれば…正直警察官に対抗できる相手じゃない、悲しい話だが。」

違う…こんなことが出来るのは…

「闇の焔…違いますか五代さん?」

そう、呟いたのは輝ちゃんだった。

「その可能性は高い…たぶん、カオル君に対する存在のもう一人のクウガの仕業だ…」

俺が呟いたクウガと言う言葉に、会議室にいる全員が言葉を失ってしまったのを…俺は見逃すことが出来なかった━━━━━

と、その時。

【小野寺地区にてグロンギ数体が出現、グロンギ対策本部は直ちに出動して下さい。】

署内の緊急アナウンスが流れ会議室は慌ただしくなる。

「五代君!」

「はい!行きます!」

杉田さんの声で我に返り、俺は足早に会議室を出て、小野寺地区に向かう。恐らく小野寺病院の近くだろうか。

パトカーが向かう先を追い、たどり着いたその場所で三体のグロンギが争いあっているのか、取っ組み合いになっていた。

その近くに座り込み泣いている女の子がいることに気付き俺はその子に駆け寄る。

「大丈夫!?怪我してない!?」

「…うん…でも…怖いよぉ…」

その子を抱え、物陰に隠れさせる。

「もう少ししたらお巡りさんが来るから、我慢してここで待ってて!」

「…わかった…おじさんはどこに行くの…?」

「おじさんかー…おじさんはね、今から君の笑顔を取り戻しに行ってくるよ、だからまたね!」

俺は女の子にサムズアップをしながら答えると、そのままグロンギ達に走る。

「一条さん、カオル君、俺はまだまだ頑張りますよ!」

走って向かってくる俺に気付いたグロンギ三体。

走りながら俺は叫ぶ。

「変身ッッ!!」

その俺の姿をあの女の子は見てしまっただろうか…

この姿をどう思ったんだろうか…俺はそんなことを気にしながらも、目の前の敵に立ち向かっていく━━━━━だって俺はクウガだから━━━━━━

 

 

 

 




サムズアップを女の子に向け颯爽と去っていく中年の五代雄介をイメージとして脳内で描いていただけたなら嬉しい限りです、もちろん空は青く澄んでる感じで(笑)
次回はまた1ヶ月先になるでしょうか…早く書きあがればすぐ更新します、頑張ります!
一条カオルside予告

ジン・ケイスケとマリに介抱され復活したカオルの前に乾巧という男が現れる。カオルが倒れた際にジン・ケイスケの元に運んでくれた張本人だった。その直後マリが再びショッカー怪人及びバダン帝国の襲来を受け、乾巧=ファイズが応戦、ジン・ケイスケ=Xも現れ、怪人たちを一蹴するが━━━━━

五代雄介side予告

三体のグロンギに手を焼く五代雄介=クウガ。
刑事の杉田や、医者の椿のアドバイスを貰いながら応戦し、孤高の戦いを繰り広げる。しかし…五代雄介=クウガに本当の闇が近付き始めていた━━━━━━


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青空の旅立ち⑨

更新が一月に一回がやっとでしかもあまりストーリーがあまり進まない、頑張りが足りないのか…それでもお楽しみいただければ嬉しいです


一条カオルside

 

ジン・ケイスケの治療院で一晩世話になった明くる日の朝、いつの間にか治療院に届けられていた僕のロードバイクの存在に気付いた。

「あれ…誰がここに…」

「そいつ、あんたのだろう。身体は大丈夫なのか?肩から血を流してたみたいだが。」

背後から語りかけてきた男性は、長身の…どこか士に少し似た風貌というか…そんな男性だった。

「はい、傷も完治しましたし…あなたは…あっ、あなたが乾、乾巧さんですか!?」

「ん?あぁそうだ。」

「ありがとうございました!僕を運んでくれたんですよね?本当にありがとうございました!」

乾さんはぼうっと空を見上げたかと思うと、

「それくらいのことなら…戦わなくても…守れるのにな…」

そう呟いた。

「それで…ジン先生とマリがいないんですけど…乾さん何か知りませんか?」

「マリから電話があったらしくてな、あの人は血相変えて出て行ったよ、最近物騒だからな、何かあったんだろう。」

「えぇっ!?ちょっちょっとそれ気になりますよ!どっちに行きました!?」

「海沿いを走っていったぞ?」

「僕行きます!」

「ちょっと待った。2つあんたに聞きたいことがある。」

「何ですか?」

「一つ目は…もし仮に、仮にの話だ。誰にも負けないような、そんな戦う力があって、その力で誰かを守ることが出来るのに、戦わないのは悪か?どう思う。」

乾さんは真剣な眼差しで僕に問う。

「それは…その人しか答えが出せないでしょう。でも僕は…僕なら…一人でも多くの笑顔を守りたい…だから戦いますよ。」

「…そうか…そうだな。」

乾さんは遠い目をしながらまた呟く。

「二つ目だ、あんた名前は?」

乾さんは自分のバイクに跨がりヘルメットをかぶりながら問う。

「一条カオルです!」

「そうか…一条カオル、あんたはきっと強い。俺もあんたみたいになれるかね。」

呟きながら、乾さんはエンジンをかけるとどこへと向かうのか颯爽と去っていった。

 

「肩の傷が一晩で完治…誰かのために戦う…笑顔のために…まるで正義のヒーロー…仮面ライダーだな…いや…きっと…」

乾巧は心の中にその言葉をしまい込み、目の前の道をただ進むのだった。

 

「って、僕も急がないと!またショッカー怪人やバダン帝国の仕業で何かあったとしたら…それと、士を探さなきゃだしな…」

バイクに跨がりエンジンをかけ、僕は乾さんと同じ方向に向かう。

なぜだか解らないが…乾さんはたぶん、何かを知っている、そんな気が僕を駆り立てたからだ━━━━

━━━━

 

 

 

一条カオルが乾巧を追う一方、バダン帝国の怪人達と戦う二人の仮面ライダーがいた。

「夏実!息はあがってないか!?」

「士君こそ大丈夫なんですか!?」

二人の仮面ライダーは仲が良いのか悪いのか、しかし息の合った素晴らしいタイミングとコンビネーションで怪人達を圧倒していた。

「そろそろ仕留めるか。」

その仮面ライダーは戦いの手を取め、懐にあるカードをベルトに装填すると、空高く飛び上がる。

九つの巨大なカードの紋章が現れ、それを突き破りながら怪人達に向けて降下しながらキックを放つ。

「伏せろ!夏実!」

もう一人の仮面ライダーは有無を言わず横に転がり難を逃れる。

「はぁぁっっ!!」

複数の怪人達が消滅しその場には煙と静寂が立ちこめ、その幻想のような場所には2人の男女が向かい合って立っていた。

「士君ひどいです、私まで巻き込むつもりだったんでしょ。」

「は?ちゃんと伏せろと言ったろう。」

「…解ってます…違います、巻き込んでほしいんです。」

「はぁ?…何が言いたい。」

女性は男性に寄りそのまま抱き付いた。

「夏実、何のつもりだ。」

「士君が遠くに行ってしまうそんな気がするんです。」

「遠くも何も俺は色んな世界を渡り歩いている、ただそれだけだ。」

「少しでも良いんです、たまには私たちの元に帰ってきて下さい…心配なんです。」

男は溜息をつき、空を仰いだ。

「夏美、俺は…ディケイドとして世界を渡り歩く。それが俺の居場所なんだ。俺は戦い続ける、それが俺なんだ。」

「士君…あなたという人は…そうですね、そうです。それこそが士君です。でも…それでも…」

女性は少し顔を赤らめ口を閉ざす。

「歯切れが悪いな、何だ?何が言いたい?」

「…寂しいんです、士君にたまには会わないと私寂しいんですッッ!!」

「なっ…夏みかん、お前どうしたんだ…訳が分からん。とにかく、今回の件はお前は関わるな、俺達が片を付ける。良いな?」

「なっ…もう良いです!せっかく会いに来てあげたのにッッ!!色々調べて協力しようと思ったのにッッ!!キバーラさんッッ、こんな人ほっといて行きましょう!!キバーラさん?キバーラさん!!どこですか?キバーラさん?」

女性が周りを見渡し誰かを捜しているようだ。

「ここよー、夏実ちゃーん。」

夏美と呼ばれた女性が声の主を捜すとそこには見知った男性とキバーラと呼ばれたコウモリがいた━━━━━━━━━━

 

 

バイクを走らせ乾さんを追う僕の頭上に見知ったコウモリが飛び回っていた。

「はぁい。一条カオル君、昨日ぶりね~元気してた?」

僕はいったんバイクを降り、エンジンを切る。

「あ、えーと…キバーラ…?あれ、じゃあ近くに夏実さんと士がいるの!?」

辺りを見回すがそれらしき姿はない。

「あの二人ならこっちよ~バイクを押してきなさいな。」

「あっ、うん!」

僕はバイクを押しながらって言った?なのでバイクを押しながらキバーラを追う、おそらく近くに二人はいるのだろう━━━━━━━━

 

「喧嘩してる…?」

「しーっ、静かに。あれは…はぁ…昼ドラ的展開を期待しちゃう。」

乾さんを追っている途中でキバーラに再会、キバーラについて行くと何か士と夏実ちゃんが険悪なムードで話していた、つまりどういうこと…?

「夏実ちゃんね、寂しかったのよ。士君がなかなか会いに来ないから、今回の戦いのついでに士君に会って説教してるわけ。私に会いにたまには帰ってこいよってね。」

「あっ、夏美さんが抱きついたよ!?あの二人デキてるの?」

「ビミョーな所よね、士君が乙女心解ってないから、もうすんごいアレなんだけど、こういうのキュンキュンして私はたまらないッッ、たまらないわ~。」

キバーラは羽をパタパタ言わせながらキュンキュンしているようだった。もうよく解らない。

「あ、キバーラ。呼ばれてるよ?」

「あらホント?ここよー夏美ちゃーん。」

僕もキバーラに釣られ二人に姿を見せてしまった、気まずい。これはアレか、かなり気まずいアレだ━━━━━━━━━━

 

「…いつから見ていた、カオル。」

夏美さんとキバーラはそのままどこかへ消え去り、残された士と僕は…うん、とても気まずい。

「いつからと言われても…夏美さんが抱きつ」

「だいたい解った、アレは誤解だ。俺と夏みかんは何でもない。」

僕に最後まで話させることなく士は言い切った。

「まぁ、うん、解った。お幸せにね、士!」

「誤解だ。」

そんなやりとりをしていると、遠くからバイクの音が近づいてくるのが解った。

「乾さんかな。」

「何だ、カオル。乾…?お前、まさか乾巧を知ってるのか?」

「うん、僕を助けてくれたんだ。ちょっと昨日戦いが酷くてさ。怪我して気を失って。」

「そうか、昨日はぐれたのは正直悪かった。どこにいたんだ?」

「ジン・ケイスケ先生の診療所で一晩世話になったんだ。乾さんはそこで出会ったんだよ。」

「…ジン・ケイスケ?なるほどな…」

「それでさ、乾さんとジン・ケイスケ先生を探してたらキバーラが現れて今に至るわけ。」

「カオル、先に言っておく。そのジン・ケイスケと言う医者、乾巧、共に俺達の仲間だ。」

「…なんとなく解ってたよ。うん、ジン・ケイスケ先生が昨夜それっぽいこと言ってたんだ。戦う運命になれば容赦しないとか言ってて。たぶん僕の正体に少しばかり気付いたんだろうね。」

と、一台のバイクが視界に現れた。

「あれは…」

士がそう呟くと同時に、バイクから降りたのは童顔の男性だった。

「やぁ、久しぶりだね、門矢士。仮面ライダーディケイド。」

「お前は…園崎ライト…フィリップ…仮面ライダーダブルだな。相方はどうした?」

「翔太郎なら、単独変身で戦ってるよ、今頃ね。それを君に伝えにきたのさ。バダン帝国と昭和ライダーが遂に動き出したらしい。」

「何!?」

「この先の海岸沿いでXライダーと555が戦いを繰り広げているよ。」

「まさか…乾さんとジン先生…?」

「ん?君は?あ、君は確か…一条カオルだね。仮面ライダークウガ。」

フィリップと呼ばれた青年は僕を知っているようだ。ん?フィリップ…?

「五代雄介さんに僕はある場所で出会ってね。」

「あ!君が五代さんから聞いたあの話のフィリップ君なの!?」

五代さんが失踪時、不思議な空間で出会った青年、そうか彼がフィリップ君なのか。

「まぁ、そうさ。それより話がそれてしまったね、門矢士、仮面ライダーディケイド、早急に君は仲間を集めた方がいい。戦いはもうすぐだ。」

「わかった、とりあえず左翔太郎の所へ行く。」

「いや、そう簡単には行かせてくれないみたいだね。」

フィリップ君が目を向けた先には複数のバダン帝国怪人達がひしめき合っていた。

「げ…すごい数。士、急ぐんなら先に行ってよ、ここは僕が戦うから。」

「あぁ、任せる。後で合流だ、そうだな…フィリップと行動を共にすればいい。件の(検索)とやらをすれば俺の居場所は掴めるだろうからな。」

「仕方ない、じゃあ僕も単独変身と行こうか、翔太郎も今戦っているようだし。」

士はマシンディケイダーを走らせ先に進む。行く手を阻む怪人達は僕とフィリップ君が引き受けることになったようだ。

「さっ、行きますか!フィリップ君!じゃお先に…変身ッッ!!」

僕は赤のクウガに変身した。

「単独変身はあまり好きではないんだ。早く終わらせよう。」

フィリップ君はベルトを装着し右手に持つ緑色のメモリースティックのスイッチを押した。

 

サイクロンッッ!!

 

そんな電子音が聞こえ、右手に持つ緑色のメモリースティックをベルトに装填し、ベルトを起動させる。

辺りに風が舞い、そこには緑色の体を持つ仮面ライダーがいた。

「僕は仮面ライダーサイクロン。さぁ、お前の罪を数えろ。」

決めゼリフと共に戦いの幕はあがる━━━━━━━

 

 

五代雄介side

 

 

俺はただひたすらに戦っていた。独りで三体も同時にグロンギを相手取るのはほぼ初めてなのだから。

 

「超変身ッッ!!」

 

赤から青、青から紫、紫から緑、緑から青…

三体のグロンギ相手にハイペースで色を変え臨機応変に対応し、何とかグロンギ達の体力を削るのには成功しているようだ。

まずは一体、続いて二体、と確実にとどめを刺し残る一体になったときにはけっこう体力的に限界だった。

「くっ…」

残るグロンギはサイのような角を持つタイプだった。パワーではこちらがかなり不利である。

「はぁ…はぁ…超…変身ッッ!!」

紫のクウガに変身し、大剣をふるいながら対応するが体力はすでに限界を越えつつあった。

思うように体は動かなくなりはじめ、仕留めるには無理があった。

「どうすれば…」

カオル君ならどうしていた…俺は…俺なら…

 

 

「甘いんだよ。」

 

 

えっ…?

誰の声か解らないが、今確かに聞こえた。

 

 

「闇の力を使えば良いんだよ」

 

 

まただ、また聞こえた。

「誰だ、誰なんだ!?」

俺が声を張り上げた瞬間、目の前に迫っていたサイの角を持つグロンギの身体が黒い炎に包まれ燃え始めた。無論もがき苦しむそのグロンギは遂に膝を突いた。

「自然発火…まさか…」

俺が気付いたときにはグロンギは燃え尽きた後で塵一つのこりはしなかった。

「ダイ…か…」

そう、この自然発火には心当たりがある。

俺も同じ力を使ったことがあるからだ。

そう、黒に染まったクウガの本当の力、

それが黒い炎を操る力だということを俺は知っている。

同時に確信した、謎の声の主と、黒い炎を操ったのは…この世界の俺、「ダイ」だということに━━━━━━

 




今回、原作からの登場人物が結構いました。
士と夏実のいちゃいちゃ(笑)キバーラのキャラ崩壊、そして原作の小説に登場した仮面ライダーサイクロンが登場。たっくんは戦いたくないようだし…と、色々ありました。短い割に詰め込めた感はあります汗

五代雄介sideはかなり短いですが次回はほぼ五代雄介sideになるので致し方ない結果に。
「一条カオルの世界がクウガ」の世界の五代雄介=ダイと、五代雄介の戦いは近付いています。ダイの狙いは何なのかが今後のキーになります、ではまた次回お楽しみに。


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青空の旅立ち⑩

更新滅茶苦茶遅くなりました。書く時間が無さ過ぎる…


五代雄介side

 

 

「えっと…五代さんが言ってる、その…闇の戦士クウガ?が…それが黒幕だと?」

「うん、黒幕…というのか、グロンギ出現の原因に携わってるのは間違いないよ。」

自然発火現象…もとい三体のグロンギ相手に戦った翌日の昼前、実加さんの研究所に来ていた俺と輝ちゃんは過去の資料を探しながらの会話に勤しんでいた。

「しかも五代さんと瓜二つなんですよね?」

「そう、こちらの世界の俺なんだと思う。俺の住んでた世界とこちらの世界は似てるから、たぶんそうだと思うんだ。」

「ふーん…なるほどなるほど…」

輝ちゃんはファイルをパラパラ捲りながら話していて、俺はと言うと、同じくファイルをパラパラ捲りながらたまに紐で纏められた書類や写真を眺めながら捜し物をしていた。

「見つかったー?2人ともー。」

そこに実加さんがやってきて、その後ろには桜子ちゃんが待機していた。

「全~然、実加さんも一緒に探して下さいよー。」

輝ちゃんが拗ねたように言うが、

「私はね、例のグロンギ討伐対策で杉田さんに頼まれ事されて忙しいの何の。」

実加さんは杉田さんから「ある事」を調べて欲しいと頼まれたようだったのだ。俺が聞いたところによると、「ある事」とはグロンギは古代にクウガだけでなく人間とも争ったようで、おそらく人間にも対抗しうる何かしらの方法があったのでは?と、実加さんが杉田さんに話したのが始まりで、遺跡関連の文献などから詳しく調べて欲しい、杉田さんはそれを実加さんに託したのだ。

それについては俺も引っかかっていた、ジョウから聞いた話に確かにグロンギに抵抗した人類がいたような事を言っていた節がある、ただしダイ、ジョウ=クウガが基本的にグロンギを討伐していたといった内容で、最後はダイとジョウ、グロンギ、人類は相容れぬ存在となり果て事態は収束した…つまり人類は少数でも生き残ったのだから、もしかすると何かしらの「生き残る方法」を見つけていたのかもしれなかったのだ。自らの命を守る術を。

「ちょっとー五代さん、手が止まってますよ。」

「あぁ、ごめんごめん。」

つい考えにふけってしまって、目的の「資料」を探す事を忘れてしまっていた。それを輝ちゃんから叱責されてしまったが、そもそもその「資料」が何かというと、海東と言う青年から預かった例の石版の欠けた部分の文字を調べるために「資料」を探していたのだ。

そしてこの石版は実加さんの元旦那さんの葛城喜太郎=鳴滝さんが海東青年に条件付で託させたものだと言うことだったが…

「あ、有った!ん…え?」

輝ちゃんが最初パァッとした顔で手に取った書類、そして写真の束。それらはファイリングされており、疑問を浮かべた表情の輝ちゃんの目の先は氏名欄にあり、そしてファイリングの氏名は「葛城喜太郎」となっていた━━━━━。

 

欠けた部分の文字は恐らくは重要なところを押さえている意味合いを持つようだった。

というよりも、その石版はちゃんと調べることにより今まで解読していた文章とは全く違う内容や、意味を持つ文献へとなり果てた。現代語として訳すと恐らく以下の通りになるようだ。

 

力は希望となり、絶望にもなる。

希望は受け継がれ対するように絶望も受け継がれることだろう。

ヒトは皆が光、ヒトは皆が闇。

対するものが受け継がれる限り悲しみは連鎖する。

悲しみを断ち切ることの出来る希望は、その悲しみの中に有る。

力を受け入れ、絶望に立ち向かい打ち勝つことが出来る者がヒトの希望になるのだろう。

 

という内容の意味になった。

俺はこの文章を読んで確信した事が2つあった。

「実加さん、この文章…たぶん杉田さんから頼まれた件の役に立つハズです、俺そんな気がします。」

これが一つ目。

そしてもう一つ。力とは何か。不思議な力を持つ石の話をジョウから聞いていたが…

クウガにこそなれなかったが、不思議な力を持つ石を体内に宿し、グロンギと同等の力を手に入れグロンギと戦った者がいたとしたら。

力に負けてグロンギとなり果てる者もいたとしたら。その「同等」の力を持つ両者はヒトからすれば希望と絶望の両極になるのだろう。ヒトのために戦う者が希望なら、絶望なる存在は単に殺し合う者達ということなのだろう。

つまり、グロンギにも善と悪、光と闇、希望と絶望の二種が存在していたということなのでは?

そして、これはあくまで仮定だが。

人類の「生き残る方法」の一つが「力を受け入れる」=グロンギとなり心を失わずに戦い抜いた…ということにならないだろうか…?そこまではジョウに詳しく聞いてはいなかったが…

人類がグロンギに対抗しうる術=グロンギとなり心を失わずに戦う、クウガと同じ様に。

心優しき者、ヒトがグロンギとなりヒトのため戦う、それは希望と言えるのではないだろうか…

もしそうなのであれば…遺伝子的な意味で、現代の人間にグロンギ族の「力」が受け継がれ、現グロンギ大量出現の理由も納得がいく。

クウガが復活し、グロンギが現れ、恐怖や混乱に満たされた現状にグロンギの遺伝子が作用して人を変化させてしまう…とすれば。

全ての辻褄…ピースが当てはまるのだ。

 

「喜太郎の奴、調子良いことしてくれるわね、今度会ったら、私は貴様をムッコロス。」

実加さんはそんなこと言いながらも、ファイリングされた写真を大事そうに眺めていた。

 

「ん、五代君。携帯、鳴ってる。」

実加さんの指摘通り、カオル君から預かったスマホ(使い方が難しい)がブルブル震えながら、重い荷物を~枕にしたら~とか歌が流れている、カオル君の着信音のセンスに何故か思わず涙が出そうだが、画面に出ている相手の名前を見て急いで電話に出ることにした。

電話主が杉田さんだったのだ。

「はい、五代です!」

「五代君、緊急だ!東京都内でグロンギが大量に出現したらしい、私も今向かっているところだ!秋葉原で多数の死者が出ているようだ!」

「わ、わかりました!急ぎます!」

俺は電話を切ると、上着を羽織り急ぎ足で外へ走る。実加さん達が俺のあわてぶりに何事かという顔になっていたが、状況を何となく察してくれたらしい。

「五代君!これ、鍵!」

実加さんが俺に投げてくれた鍵は車の鍵だろうか?

「杉田さんがね、移動手段としてスポーツバイクを五代君にって、今朝新しいのを置いていったの。だから早く!」

実加さんはそういうと俺を見送ってくれ、そして桜子ちゃんと輝ちゃんも見送ってくれた。

ここから東京秋葉原まで全速力で飛ばしても一時間はかかる一刻も早く行かなければ…

たくさんの人が犠牲になってしまう。

守るんだ、誰かの笑顔を。カオル君の分まで━━━━━━━。

 

「くっ…数が多すぎる…」

10、20、30?いや…これは秋葉原に到着してから倒した数か…目の前、後ろ、周りにはあと20体はいるであろうグロンギ達に俺は取り囲まれている。

警察隊の人達も多数犠牲になったようで、杉田さん達は現場に取り残された人達を避難させるのに尽力していた。

これはかなりまずいパターンだ…数が多すぎて対応し切れていない。昔俺が戦ってきたグロンギ達は基本的に単独で行動していたようだったから、戦闘もマンツーマンで行えた。逆に言えば俺は複数相手の戦闘にはなれていない。むしろカオル君の方がクウガになってからの期間は短いが、複数相手にはなれているだろう。

そうこう考えながら、目の前のグロンギを一体…また一体ととどめを刺していくが…体力の限界はもうすぐそこまで来ている。膝を着いて肩で息を始めた俺の意識が遠のきそうになった、

その時だった。

「さーて、そろそろ…俺もお邪魔させてもらうよ?

変身。」

唐突だった、そんな声がした瞬間、周りにいたグロンギ達が燃えだしたのだ。自然発火現象その物だった。

「…ダイッッ!?」

俺の驚きの声と共にそこに現れたのは、紛れもなくこの世界のクウガだった。ただし全身、目でさえも真っ黒な闇に満ちた…究極の闇の戦士クウガ。

「なーにへこたれてんの?」

一歩ずつ俺に近づいてくるダイ。その間にもグロンギ達は焼失していく。

「現代語覚えるの苦労したんだよ?」

また一歩、また一歩と俺に近づいて、また一体また一体と焼失していくグロンギ達。

恐ろしさのあまり、一体のグロンギが凶変し、黒いクウガに襲いかかる。

長い爪で黒いクウガ…ダイの胸の辺りを切り裂こうとするが…

「笑えないなー。」

ダイはその言葉と同時に、グロンギの爪を腕ごとつかみ、その腕を引きちぎった。

「んッッっギアアアッッ!!!?」

辺りに鮮血を飛ばしながら転げもがくグロンギの腹部に右足をかかと落としのように振り下ろすダイ。

その瞬間紋章と共に焼失していくグロンギ。

「はぁ、つまんねー。で、そろそろお前は俺を楽しませてくれるくらい強くなった?五代雄介君。」

ダイは俺の名前を呼び、焼失したグロンギを確認することなく俺の前までやってきた。

辺りの気配からすると、他のグロンギも焼失したようだ。このたった一瞬で。ダイは、それを実行したのだ。

「なぁ?」

ニヤリと少し笑ったような声で俺を見下ろすダイ。

そして、次の瞬間殺気を感じ立ち上がらずそのまま横に転がる。

「おー、やるね。」

ダイが再びニヤリと少し笑ったような声で言ったその場所は黒い炎に覆われその中をダイは平気そうにただ立っていた。

「これはどう?」

次に俺を待っていたのは、ダイが手から放つ黒い炎の塊の連弾だった。

「いッッッ!?」

何とか転がり直撃は免れたが、脇腹を少しかすめ激痛が俺を襲う。

傷を見ると、その部分が「焼失」していた。

直撃していたと思うと…恐怖しかわいてこない。

「なんだ、弱っちいままか。もう一人のクウガ…一条カオルだっけ?そいつはどうしたよ?」

淡々とダイは俺に語りかける。

淡々と、眈々と。

「カオル君は…違うところで戦ってる。」

「はぁ?なんだそれ。」

俺は痛みを堪え立ち上がり、心を落ち着かせる。

「だから…今ここで俺は倒れるわけにはいかないッッ!!!ジョウのためにもッッ!!!カオル君のためにもッッ!!!超変身ッッ!!!」

意識を集中し、俺はいつぶりかの「禁じ手」を解放する。

「おー。それそれ、あ?なんか少し足りないな。」

ダイは俺の姿を見て尚も淡々と話す。

俺は「黒いクウガ」に変身した。しかし究極の闇の一歩手前の姿だった。

「まぁ、それでもいいや。楽しもうぜ。」

次の瞬間、ダイは俺へと駆け出し、そして俺もまたダイへと駆け出し、互いの拳、瞬足の蹴りが相殺し(少しばかり俺は圧されている)ぶつかり合う度に…あの時、一条さんと別れた…雪山での戦いの事を思い出す。

「おー、いいねー。でもやっぱまだ足りねえわ。」

ダイの回し蹴りが俺の胸を捉え、そのまま吹き飛ばされ壁にめり込んでしまう。

痛みが尋常ではなく、恐らくは肋骨が数本折れたのではないだろうか。

壁から抜け出そうと力を込めるが、よく見ると変身が解けているようで、「焼失」した傷口から血が滴り落ちているのが解った。

声が出ない、手足に力が入らない。

死ぬのか俺は。

そんなの駄目だ…絶対に…

「よし、決めた。俺、一条カオルだっけ?が戻るまでお前を殺さない。」

ダイは何故かそんなことを言い出した。

「…な…ぜだ…ダイ…。」

ギリギリの意識と声で俺はダイに問いかける。

「あー、だってその方が楽しいじゃん?」

意識が消えかかっていた俺は、ダイのその言葉を最後に完全に意識を失ってしまうのだった━━━━━━━━。

これを一言で表すなら。

「敗北」なのだろう━━━━━━━━━━

 

 

 

 

一条カオルside

 

「さて、決めさせてもらおう。」

フィリップ君もとい仮面ライダーサイクロンが怪人たちを一掃すべく、腹部のメモリースティックを腰の辺りに装填し、空高く舞い上がる。

「…これが、僕の。…ライダー…キック…ッッ!」

舞い上がった仮面ライダーサイクロンの周辺には強烈な風が立ち込め、竜巻のごとく仮面ライダーサイクロンを包み込んだ。

包み込んだと同時に、竜巻の上部から一気に仮面ライダーサイクロンが怪人たちめがけ急降下する。

広範囲に広がる暴風は竜巻へと吸い寄せるかのような強いもので、戦闘中の僕こと一条カオルも竜巻へと吸い寄せられた。

「って、ちょっと、待って!?それ僕も巻き添えになるからね!?」

咄嗟の判断で、怪人たちを盾に風をうまくかわし難を逃れる僕。

「さぁ、お前の罪を数えろ。」

着地した後の仮面ライダーサイクロンは一掃した怪人たちにそう告げて、変身を解除。と同時に怪人たちは爆砕していった。

「フィリップ君、とりあえず君も罪を数えた方が良いんじゃないかな!?(僕を巻き添えにしようとした罪を)」

変身を解除し、フィリップ君に盛大なツッコミをいれておく。

「なるほど、君はツッコミ担当という奴だね?」

「それ答えになってないよッッ!?」

フィリップ君もなかなかの強者のようだ…

 

戦いから数分して息を整えた僕とフィリップ君が次にとった行動は、情報の整理だった。

「昭和ライダーは平成ライダーを敵と見なした。バダン帝国は生死をひっくり返す装置を作った。シュウという少年を狙うバダン帝国の中にその父親がいる。昭和ライダーはシュウを助けた平成ライダーを敵と見なした、つまりシュウが今回の件の中心というわけだね。ふむふむ…さて」

フィリップ君はどこからともなく「本」を取り出し、そっと目を閉じた。

「検索を始めよう。」

「検索…?」

「あぁ、これから僕たちが向かうべき場所を検索するんだ。」

「んー?あ、士が言ってたあれか!」

フィリップ君は尚も目を閉じ続ける。

「キーワードは【昭和ライダー】【平成ライダー】【バダン帝国】の3つから始めよう。」

僕はただフィリップ君を見守るしかない。

「ふむ、まだけっこうな量の情報数だ。絞り込むには…」

そこで僕は一つのキーワードを伝える。

「仮面ライダーフィフティーン。」

「仮面ラはさイダーフィフティーン…?なんだいそれは?まぁ、一応検索してみよう。」

少し間を置いてフィリップ君は再び口を開いた。

「一つだけ情報が残った…これは…シュウという少年はすでに死んでいて、何かしらの方法で生き返り、その技術と成果を確かめるべくバダン帝国はシュウを狙っている。そしてシュウの父親が仮面ライダーフィフティーンとしてシュウを追っている…?」

「そうか…そう言うことか…!行こうフィリップ君。」

「…?説明してもらえるかい?」

「そうだね、でもとりあえず移動してから話をしようか。」

「ふむ、まぁそれでも構わないが…」

フィリップ君は少し考えた素振りを見せたが、僕に従ってくれるようだった。

僕たちが向かう先、それは━━━━━━「風都」。

 

 

 




次回もお楽しみに。


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青空の旅立ち━終━

前回更新から約半年( ゚Д゚)!?
時間無さ過ぎるよ…
皆さん良かったら読んで下さいまし


五代雄介side

 

「起きて、五代君!」

 

 

…桜子…さん?

 

 

「雄介、寝てないで店手伝ってくれよ~」

 

 

…叔父さん…?

 

 

「お兄ちゃん、遅刻するよー?」

 

 

…みのり…か?

 

 

「何してるんだ五代、行くぞ。」

 

 

…一条さん…?一条さんッッ!!

 

「待って一条さんッッ!!!ってイテテテ…」

去ろうとする一条さんを俺は追いかけようと手を伸ばす、と同時に激痛が走る。

「あ、五代さん!?良かったー…やっと目を覚ましてくれた…」

「ひ、輝ちゃん?ここどこ?確か俺今一条さんを…あれ…夢…?」

俺は自分が置かれている状況を把握できていない。

「あの…五代さんここ病院です、あと自分が大怪我したって解ってます?」

輝ちゃんが俺を睨むように見てくる。

言われて自分が胸部、腹部、両腕、両足、頭部、つまり体全体に包帯を巻いていることに気付く。

「今の痛みは…脇腹…?あっ」

脇腹の痛みと共にようやく意識がはっきりしてきた。

「ダイは!?まだグロンギは残ってたはずだッ!凄い被害になったんじゃ!?俺どれくらい寝てた!?」

「それが…あの…とっとりあえず皆を呼んできます、それから話を。」

「あっあぁ…でもッッ!?」

輝ちゃんはすでにそこにはおらず、俺は数分白いベッドに横たわりダイとの死闘を想い出す。

「今のままじゃ間違いなくダイには勝てない…それにダイの行動…少し不審だった…いや…気のせいか…?」

色々と思考していると病室に輝ちゃんを含む数名が入ってきた。

「あぁ…五代君…良かった、本当に良かった…」

今にも泣きそうな声で実加さんが。

「五代君、すまない…何も出来ない私達は…」

杉田さん謝らないで。

「五代、傷はまだ痛むか?一命を取り留めてくれて本当に医者として仲間として嬉しいぞ、色々観察させてもらったが。」

椿さん俺に何したんですか…ッッ!?

「五代さん、死んだら承知しませんよ、カオルが戻ってきたら、それこそあいつは抜け殻になりますから。良かった…泣きませんよ、私。だって五代さん生きてるし、笑顔でカオルを待つって決めてるんで!」

桜子ちゃん、ありがとう。必死に涙を堪えて…でもその笑顔、良いなあ。うん。…うん。

「あの後、何かあったんですね杉田さん。」

俺の言葉に杉田さんは頷いた、そして杉田さんは淡々と俺が眠っている間の出来事を語ってくれた。

そして語ってくれた内容は俺の予想を遙かに越え、とても信じられるものではなかった━━━━。

 

翌朝、俺はまだ入院していた。クウガの回復力を持ってしてまでこの状態…普通なら死んでいた、間違いなく。

「おはー、五代君。」

声の主は実加さんだった。

「あ、実加さん、おはようございます。」

「どう?だいぶ良くなった?」

「うーん、あと3日は完治は無理かも、早く治さないと…」

「そうね、まぁ、なるようになるわよ。今は例の彼を信じましょう、じきにカオル君も帰るでしょうに。」

「そう…ですね━━━━━━━。」

昨日杉田さんが語ってくれた内容は、まず俺が意識を失っていたのは丸一日だったこと。

それと残っていた、グロンギを彼が…ダイが倒してくれた話。俺が病院に運ばれ(小野寺病院)意識を失っている間に別の場所にグロンギが現れ、人を襲っていた、それを…ダイがグロンギを一掃した、しかも人を守った…らしい。杉田さんがそう話してくれた。意味が解らない、ジョウが言っていた話と食い違う、ダイは人もグロンギも憎んでいる、なのに人を守った…?確かに俺が戦っていたときも人間に危害は加えていなかったように思う。

体力の限界を迎えた俺に致命傷を負わせ戦闘不能にし、残っていたグロンギを一掃…まるで俺を戦わせないようにしているようじゃないか、とも思えてしまうが。ダイの目的は何だ…?グロンギだけを倒し、人を守る?まるで俺やカオル君と同じじゃないか…?

ジョウに聞いた話と食い違いすぎて訳が解らない。

ジョウの話が真実でダイが倒すべき相手で…

 

「おーい五代君、聞いてるぅ??」

実加さんが俺の顔を指でツンツンしてくる。

「ん?え、何でしたっけ?」

「だーかーらー、クウガの話とグロンギの話、五代君が経験してきたことを話してほしいの。元の世界での話ね、役に立つはずなのよ?」

「あー、そういえば実加さん達にはあまり話してないですよね、んー…何から聞きたいですか?」

「そうね、まず五代君がクウガに成るところからかな。」

「あー、それはですね━━━━」

昔の話に実加さんはほとんど口を挟むことはなくただ聞き手に回ってくれた。

話していると当時のことを思い出して気持ちが溢れそうになる、みんなにまた会いたいなと心から思う。

「そして俺は雪原に一条さんと二人で最後の戦いに向かいましたと、そんな感じです。」

実加さんはただ相槌をうち、うんうんとうなっていた。

「え、実加さん?」

「あー、メンゴメンゴ。でもあれね、似てるわよねこの世界とそちらの世界、名前が同じってのがね。それにこちらの世界の五代君も名前は違えどもクウガだし顔は瓜二つだし、一条さんって人とカオル君は顔は似てないけど境遇が似てる感じよね、人柄とかも。」

「一条さんに瓜二つの人ならこちらにもいたんですよ、ジョウといって、ダイとの死闘で死んでしまったんです、古代の二人の戦士の彼ですよ。」

「あ、なるほど。そうだったのね。でもあれよね、一条さんって人に瓜二つなら是非一度会ってみたかったわ、カッコいいんでしょ?」

「イケメンでしたよ、うん。」

「だよねー…そんな気がしたわ、カオル君がその一条さんの顔ならなー。私イケる。」

「やめて実加さん、後ろに桜子ちゃんいるからッッ!?」

殺気を感じた視線の先に桜子ちゃんがいた。

「あ、いや桜子?冗談よ冗談。ね?」

「…私のだから。」

「まぁまぁ桜子ちゃん落ち着いて、ね…?」

しばらくの間、実加さんと桜子ちゃんの小競り合いは続いていたが、

「カオルはカオルで、良いところいっぱいあるし!一条カオルは一条カオルよ!」

桜子ちゃんのその言葉に俺は、えっそこ!?と思いはしたが…ふと思ったことがある。

俺とダイ、一条さんとカオル君が似て非なる存在、いや例えば…あるいは=で繋がるならば…ジョウはいったい━━━━

 

その日の夜、杉田さんがやってきて俺にある話を告げ足早に去っていった。

「あのダイという男、今日はグロンギに襲われていた子供を身を挺して守ったという情報が入った、五代君…彼は本当に敵なのか…?」

ダイ、君はいったい…君は俺と同じなのか…?

ならばなぜあの時ジョウと俺を倒そうと…?

あの記憶に違いは無いだろう…?

何がどうなっている?真実はどこだ?しっかりしろ俺、五代雄介。

ダイ、君はこの世界の「クウガ」なのか…?

やはり君も「クウガ」なのか…?

一条さん、俺。

何かとてつもない間違い…思い違いをしているんでしょうか━━━━━

 

翌日の昼前、傷の完治を終えていない俺の元に輝ちゃんがやってきていた。

「色々解ってきましたよ五代さん、これ見て下さい。」

輝ちゃんから手渡されたクリアファイルの中には数枚の書類が入っていた。記された内容は、古代の2人の戦士「クウガ」の能力や特徴といった、いわゆるステータスなど。

「闇の戦士」は全てを闇の炎で焼き払い消滅させる能力、そして圧倒的な力で接近戦闘に長けていた。

「光の戦士」は全てを光で包み、傷を癒やしそれを元の状態に回復させる能力、そして多彩な戦闘スタイルでバランスの取れたステータスだったことなどが遺跡の文字から解ったようだ。

「なるほど…つまりカオル君はいずれ覚醒すれば白の戦士に成るわけだ。ジョウと同じ霊石を身に宿したわけだから。」

「そうかもしれません、あー、今頃カオルン戦ってるのかな…」

カオル君が旅立って3日目を迎えた今日、未だカオル君は帰らない。大事に至っていなければいいのだが…

「あ、五代さん、テレビつけて良いですか?」

「あ、うんどうぞ。何か面白いのやってるの?」

「いえいえ、最近巷の情報番組はクウガやグロンギの話題だらけですからね、私この間インタビュー受けたんですよ、そろそろ放送されるんじゃないかなー、と。」

「ははっー、インタビューか、楽しみだね。」

しばらくテレビを見ていると、カオル君が変身した姿のクウガや俺の変身した姿のクウガが戦うシーンが遠くから撮影されていたりした。

それと、クウガは2人以上いるのではと仮説を唱えるコメンテーターもいたり、クウガに変身しているのはどんな人物なのか、そもそも人間なのかなど、世間の目はクウガやグロンギに釘付けのようだ、正体がバレるのも時間の問題だろうか…

「ん、あ、えー、なっ!?こっここで緊急ニュースです、東京都内に複数の怪物、通称グロンギが出現した模様です、情報によりますと、様子のおかしかった人が急に暴れ出しグロンギになったとの通報があった模様です。現在、警察及び自衛隊などが━━━━━━」

「人がグロンギに…」

そのニュースを見ていた俺の目と身体はテレビから離れ、ベッドから降り準備を始めていた。

「ダメですよ五代さんッッ!?その状態じゃ…」

止める輝ちゃんの肩に手を乗せ、俺は答える。

「大丈夫、俺はクウガだから。それにカオル君に頼まれたんだから、みんなをお願いしますって。」

「でもッッ…」

俺は上着を羽織りながら答える。

「戦えない人のために俺は戦いたい、これは俺が選んだ旅の道程だから。じゃあ輝ちゃん、実加さん達によろしく!」

親指をぐっとたてて、笑顔のまま俺は病室を出る。

ダイから致命傷を受けた傷が痛むが、俺は行ける。

何故かって?

俺には帰らなきゃいけない場所があるからさ━━━━。

 

病室を出て都内にバイクを走らせ、救急、緊急車両が大量に走る方へと俺は急ぎ、逃げ惑う人々のその先に数体のグロンギを発見した。

「変身ッッ!!」

バイクに乗りながら変身し、そのまま一体のグロンギに追突し吹っ飛ばす。

バイクから下り、辺り一帯に人が居ないことを確認し、グロンギの群に向かい走り、勢いのまま空へ舞い前中する。

「ウォリャァァッッ!!!」

炎を纏った蹴りがグロンギの一体を捉える、封印の文字が浮かびそのまま消えていった。

周りにはまだ複数のグロンギがいる、一体ずつやっていては埒があかない。

「傷が痛む…ここはやっぱり黒の金になるしか…」

そう思った瞬間、辺り一帯に黒い炎が上がりグロンギ達を一掃していく。

「よお、頑張ってるか。五代雄介?」

「…ダイ…か。」

黒い炎の中を悠々と歩くもう1人のクウガ、黒いクウガ、ダイ…

「お前はそこで見ていろ、これがクウガの…黒の力だ。」

ダイがそう言った瞬間、再び辺りにいたグロンギ達が黒い炎に包まれる。

一体、また一体と倒れ「焼失」していくグロンギ達。

「思っていたより、弱っちいのばっかりだ。過去の戦いではこんな簡単にはやられてくれなかったけどなぁ。」

ダイのその言葉に俺は固まってしまった。いや、見ていろと言われたから…というわけではない、そうじゃない。

「何を黙り込んでいる五代雄介。」

…ダイの目が赤い…?

「五代雄介、…お前は何故戦う。その体の状態になってまで。」

唐突にダイは俺に疑問を投げかけてきた。

「何故…目が赤い…」

「質問に質問で返すのか。っと。」

ダイは詰め寄ってくるグロンギを相手取りながら俺と会話している。強烈な回し蹴りを喰らった一体のグロンギが吹っ飛びながら焼失していった。

「五代雄介、一つ伝えておく。俺とお前は同じだ。ただ俺にはやらなければいけないことがある。それで中途半端なお前ら、一条カオルとお前を殺そうとした。なぜだか解るだろうか、中途半端に理性を失われて、覚醒だけされてしまったら俺の目的を達成できなくなるからだ。だが先日お前を殺そうとした時気付いた。一条カオルの不在…それでな。」

「カオル君がいないから俺を殺さなかった…?」

間をおいてダイは衝撃の言葉を口にした。

「少し違うな、もしも一条カオルが覚醒したとき、いや…ジョウに完全に乗っ取られたとき、俺とお前2人なら…奴を殺せる可能性が高いからだ。」

と━━━━━━━━━━。

 

 

 

一条カオルside

 

 

 

フィリップ君が走らせるバイクの後ろを追う僕。向かう先は「風都」。

「風都」はライダー対戦が起こりうる可能性は非常に高い場所だと僕は考えている。仮面ライダーディケイド=門矢士が協力を依頼していた左翔太郎が活動している場所であるし、過去に噂で「風都」で「仮面ライダー」がテロリスト相手に戦ったという話を杉田さんに聞いたことがあったからだ。だから「仮面ライダー」に因縁のある場所だと思考しているのもあるが…

ライダー集め=協力者を探している士は今、乾さんのもとに向かっているはずだが、仮に乾さんの場所を特定できなければおそらく、「風都」の探偵…つまり左さんに頼んで探してもらうとかしてそうな気がする…

だから「風都」に向かっているのだ。フィリップ君にはそれとなくこの「理由」を話したけど、本人は「実に興味深い、一条カオル、君は面白い、まぁ僕も町に戻らなければいけないし、向かうとしよう」と肯定し僕をジロジロ舐めるように見てきた。フィリップ君…僕は君の前には立たないようにするよ。

 

景色を目に焼き付けながらフィリップ君を追う僕の視界に多数のショッカー戦闘員が映った。

しかも若い男性が独りでその群に突撃するのを僕は見逃さなかった。

僕はバイクをショッカー戦闘員の群れの方に走らせる、と同時にフィリップ君もそれを察したのか同じ方向に走り出した。

「イイーッッ!!!」

若い男性がショッカー戦闘員と生身で戦っている、敵の数は尋常ではない、いったい何者だ彼は…

バイクから降り、フィリップ君と2人でショッカー戦闘員に向かって走り出す。

するとショッカー戦闘員がこちらに気付き、数体が駆け寄ってくる。

「イイーッッ!!!」

「こんのっ!ハァァッ!!!」

僕は生身のままショッカー戦闘員に跳び蹴りを、フィリップ君は踊るような体さばきでショッカー戦闘員を翻弄している。

「あの!大丈夫ですか!?」

僕が若い男性に向けて叫ぶと、その人が振り返り笑顔で答えてくれた。

「あっ、うん!ありがとう!でも大丈夫!俺クウガだから!」

「んじゃあそろそろ本気で行きますかッッと!!!」

一言目今なんて言った…?あの男性は今なんて…?

と、考えたのも束の間、次の瞬間若い男性は僕の〝見慣れた〟動きと真の姿を見せた。

「変身!」

そのかけ声とともに━━━━━━

 

「ほぅ…あれは…興味深い…僕もそろそろ本気で行かせてもらう、変身。」

フィリップ君も仮面ライダーサイクロンに変身。

「ッッ僕も!変身ッッ!!!」

僕も少し遅れたが変身した。

若い男性が変貌、いや、変身した姿。彼は仮面ライダーだった。僕と同じ。

そう全く同じ。〝仮面ライダー〟

そして━━━━━

〝クウガ〟だったのだ━━━━━━━━。

 

岸壁沿いに三人の仮面ライダーが大量のショッカー戦闘員を相手にしている光景は人々にどう映るのか。そんなことを考えながら闘える余裕が自分に生まれていることに気付いていないわけではなかった、日々僕は驚異的なスピードで「強く」なっている。

この「強さ」がまるで自分のものではないような錯覚に陥りそうになる。つまりこの恐怖が「闇」なのだと解り始めている、それでも戦う僕を桜子…君はどう想うんだろうか。

「空中へ奴らを巻き上げる、君達は注意してくれ!」

フィリップ君の一声で我に戻った僕の周りのショッカー戦闘員達が空中へ浮き上がる、これはフィリップ君の…「メモリ」の力か!

「さぁ終わりだ。」

フィリップ君がそういうと空中に舞い上がったショッカー戦闘員が一塊に集約され球体のようなものになる、その瞬間仮面ライダーサイクロンがその球体の頭上へ急上昇、僕ともう一人の「彼=クウガ」もそれに続きジャンプし、球体の頭上へ。

「決める。」

「ハァッ!」

「ライダーキックッ!」

三人の仮面ライダーのキックが球体に炸裂、球体はそのまま地面へと叩きつけられ、爆発しながら消失していった。

このとき僕は気付かなかった。僕一人だけが助からないんだって。

「「あっ。」」

フィリップ君と「彼」が声を合わせて僕を見守っていた。

二人は地面に着地し、僕は別方向へ。

「これ僕だけ下海じゃん!!!?んアァァァッッ」

この先の話は落ちも何もないので、いや、落ちるんだけど、僕ってほんと残念だな━━━━━

 

海から何とか這い上がり(これでも僕クウガだよ)、手を貸してくれた彼は笑顔で、「君面白いね~」と言った、その笑顔は胸に刺さります。

「一条カオル、少し休むかい?」

「そうだね…そうしてもらえると。それよりも…」

僕の視線は彼に向かった。

「あの…あなたは?」

彼はキョトンとした顔で、次の瞬間気付いたようにハッとなり、と忙しく。

「あ、俺クウガなんだ!小野寺ユウスケっていいます、ちょっと人捜しでいろんな世界を旅してるんだ。」

フィリップ君は僕に質問権を与えてくれてるようで黙っていた。

「僕は一条カオル、彼はフィリップ君です、それで…人探しって…?」

「うーんとね、その探してる奴がさ、最近大きな戦いを控えてるってはなしを聞いてね、どうして俺にその協力を頼みにこなかったのか、文句を言いたくってね~」

笑いながら話す小野寺ユウスケさんは…今気付いたがこの人も「ユウスケ」なんだ…五代さんといい、似た世界は他にも有るんだろうな、、、ん?

あれ?

「あのもしかして、さっきいろんな世界を旅してるって言ってましたけど。」

「うん、文字通り、いろんないくつもの世界を旅してるよ~」

「探してる人って、〈世界の破壊者〉とか?」

そこで小野寺さんは固まる。

「〈世界の破壊者〉ね、周りはそういうけど、もしかして君、門矢士を知ってる?」

知ってるも何も━━━━━

そこでフィリップ君が口を開く。

「僕たちも今、門矢士=仮面ライダーディケイドを追ってるんだ。」

「戦いの協力を依頼されたんです、士に。」

「つまりこの世界に…やっぱりこの〈ライダー大戦〉の世界にいたのか、やっと会えそうだな士。」

遠い空を見つめる小野寺さんの目はとても輝いていた━━━━━━━━━━

 




次回は新章突入


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青空の足跡
青空の足跡①


五代雄介side

 

 

ダイは俺に語る、正直ダイの話を鵜呑みにしていいのか自信はない。

ただ、ダイの語る話で辻褄が合う事がたくさんある。

「そろそろ頃合だから単刀直入に言おう、ジョウは記憶を操作、及び消去出来る、光の戦士には総てを〈浄化〉する力があるからだ、それがすべてだ。ジョウがお前に語った話があるだろう、あれが総て嘘だという訳じゃない、真実も話していただろう。しかし10年前の栄水遺跡の中で起こったあれは…」

確証は何もないが、これが真実なら、前にジョウが俺に説明した過去の話…俺とジョウが共闘しダイを封印したあのことも偽りだとしたら。あれが偽りだとしたら…いくつか辻褄があうことがある。

まず一つ目、カオル君の両親の死の真相。

「一条カオルの両親があの遺跡の棺及びアマダムの〈扉〉を開き、お前を導いた、〈扉〉は同時に俺やジョウの封印を解く鍵でもある、俺より先に目覚めたジョウはお前を俺と勘違いした、同時に憎んでいる人間=リントの2人を殺そうとし、お前はジョウと戦った、一条カオルの両親を守るためだ、しかしジョウはあることに気付いたんだ、一条カオルの両親にグロンギの気配があることに、そしてジョウは2人に〈光〉を浴びせ、人である記憶を抹消し、2人はグロンギとして、お前を襲った。なぜか?簡単だ、遺跡の石版に記されていたはずだ、〈光〉と〈闇〉の戦士の殺し合いがあったと、何もクウガだけに〈光〉が〈闇〉あったわけではない、望んでグロンギになった奴らにもその両極があったんだ。つまりお前は〈闇〉の戦士として戦う力を持つもの、〈光〉より生まれたグロンギがお前を襲うのは致し方ない話だ、そしてお前は追い詰められ、瀕死に陥る、そこでようやく俺が目覚め、一条カオルの両親を焼き払い、ジョウを封印するため再び戦った、そして俺はジョウを倒した…しかし目覚めて間もない俺にジョウを殺せるほどの力はなく、再び棺に封印するしかなかった、ジョウを担ぎ棺に入れようとしたその時、ジョウは俺に〈光〉を浴びせようと最後の力を振り絞り足掻いた。その時瀕死だったお前が俺を庇い、その光を浴びた。お前の記憶は書き換えられ、お前は黒のクウガに覚醒し、俺はお前と戦った。何とかお前の動きを封じ、倒すべきかどうか悩んだが、俺の入っていた棺に封印する事にしたのさ、何故か?ここからが重要だ。」

ダイはそっと空を見上げ、続けた。

「ジョウが居なくなっていた、霊石だけを残して。どこに消えたのか…あの時は理解できなくてな、霊石をお前と一緒に棺の中に入れた、そうすれば秩序は保たれるはずだから。そして俺は一条カオルの両親=現代の人間たちにグロンギの遺伝子が引き継がれていることを知ってしまったが故、それから今まで約10年この世界を旅していた。過去に起こったあの悲劇を二度と起こさせないため、グロンギが現れれば俺が倒そうと、一人行動していたのさ。」

ダイは話すことをやめ、俺を睨むように見てきた。

そして同時に俺がこのダイの話を信じても良いかもしれないと思った2つめの理由が沸き起こる。

「俺がふらふらしながらつい最近目覚めグロンギの気配を察知し街を歩き再び遺跡に戻った、あの時ジョウの霊石を俺は棺に置いたままにしてしかも人目に見えるところに置いてしまったから発見された…?」

ダイはそれだけではないと付け足す。

「これは俺の甘さが生んだことだが…あの霊石にジョウが眠っているんだよ。いや…眠ってなんかいねえ…ジョウは己に〈光〉を浴びせ、霊石の中に消えたんだ、再び復活するために。」

「まさか…そんな…」

「間違いないさ、〈光〉の空間でお前はジョウに会っただろう、それ以外の場所でも会っているかもしれないが。」

「あの閉じ込められたら場所が…!?確かにジョウに導かれ入ってしまったけど…まさかジョウはあのまま俺を閉じ込めるつもりだったのか!?」

「だろうな、しかしイレギュラーな存在がお前を救い出した。」

フィリップ君や実加さん…みんながいたからか。

「ジョウの狙いはもう解っただろう。」

「ダイ…君の言うことが本当だとしたら、確かに辻褄があうことがある、だけどそれだけじゃ信じられない、君はカオル君を攻撃したことが有るじゃないか?」

「一条カオルを殺せばジョウの復活は無いと思っていた。最初はな。だがあの時、一条カオルをぶっ飛ばしたときに気付いたんだよ。」

「どういうことだ?」

「一条カオルを殺せば、この世界は闇に包まれる。俺が生きている以上、この世界の秩序は乱れたままなんだよ、それにグロンギが再び現れたんだ、クウガが多いことに越したことはない。」

「だから…カオル君と俺を殺さず、少しずつ俺やカオル君に強くなってもらいグロンギを共に倒す、カオル君が覚醒して、ジョウが復活すれば俺と2人で止めれば…と…そうかあれは…カオル君と出会った頃俺の調子が悪かったのは…クウガとして覚醒していた頃の記憶が曖昧で、体がついてきていなかったってことか!!」

「だろうな、それで変身出来なかった、ってのと。あとはジョウが何かしらの方法でお前に攻撃していたんだろうと思う。何せ〈光〉の霊石そのものになりやがったんだからな。」

「でも…なんで俺を…?」

「一条カオルに早く覚醒してもらうためだろう、強くなってもらい、己の身体として奪うつもりなんだろう、記憶をいくらでも書き換えられるんだ、クウガとして完全に覚醒したときに身体もろともってな。」

「それじゃ余計カオル君を戦わせるわけには…」

「いや、一条カオルに強くなってもらって、ジョウを引きずり出し今度こそしとめるしかない、今はもうあの霊石は〈光〉のクウガになるためのものではない、一条カオルは世界を脅かす脅威を背負っている、一条カオルを殺せばあの霊石は次の誰かに受け継がれる、負の連鎖は終わらない、霊石ごと消すしかないんだ。」

「〈消す〉ってつまり…それはだめだ…ッッそんなことは…」

俺はついにダイの狙いが解ってしまった、そうダイがカオル君を殺さなかったのは。

「それしかないんだ、一条カオルが〈光〉の戦士として覚醒し意識をジョウに乗っ取られる前に〈光〉を自らに、及び俺とジョウにも浴びせ〈消す〉。」

「そんな…カオル君は…自分が消えるために強くなるってのか!?そんなの間違ってる!何か他に方法が…それにグロンギを倒す存在がいなくなってしまう…」

「五代雄介、それはお前が一番知っているだろう、俺は旅をして知ったが…〈仮面ライダー〉がいる。この世界を託せる戦士が他にもいる、俺がお前に致命傷を負わせた理由はそれだ、お前はこの世界の戦士じゃない、俺たちは俺たちの戦いを終わらせるべきだ、お前も早くもとの世界に━━━━━━━━」

 

このあとも少しダイと話をしていた、納得できたことがあるとしたら、何かを思い出そうとする度、自信の記憶に靄のようなものがかかるあれはダイの言う話を照合すると、それに当てはまる…それと気になるのは、ダイがカオル君の両親を殺したと言ったが、何故ダイはあの二人をカオル君の両親だと知っていたのか…だけど、いやだからこそほとんど耳に入ってこなかった、何故ならば、そう。もし仮にダイの話が真実であるならば。カオル君が真実を知らずに今もなお強くなろうとしている、つまりそれは強くなればなるほど、彼は━━━━━━

 

 

その日グロンギ出現の情報はなく、再び病院に戻り椿先生の診断を受け無事が確認され(回復力が向上しているようだ)、俺は実加さんの研究所に戻ることになった。

「あ、五代君おかえりー!」

実加さんが書類を両手に抱えながら出迎えてくれた。

「うわ、何ですその資料の山、手伝いますよ。」

ありがと、と実加さんが俺に渡してくれた資料は少し茶色に汚れている部分があった。

「これって…」

実加さんは、あぁこれねーと笑顔で言うが、これは実加さんの研究所が襲われたとき、実加さんが桜子ちゃんを庇って傷を負った時に流した血のあとだった。

そうか、そうだよ。

カオル君。

ダイが言っていた話が本当だとしたら、だとしてもだ。

君を死なせたくない、死なせるわけにはいかない。何か…何か他に策は…

一条さん、俺どうしたらいいですか。

「中途半端に関わるな。」

実加さんが呟いた一言に、俺は固まった。

「まーた五代君難しい顔してたよ?最近の一条君…カオル君と同じ顔してた。」

「すみません、俺。らしくないかなやっぱり?」

はぁ…とため息をついた俺に笑顔で実加さんは

「私の元旦那様とカオル君の両親がね、夢の中で私に言ってきたんだ、“中途半端に関わるな”ってね。あれってたぶんカオル君と五代君を助けてやってくれって事なんだろうなって今なら思う訳よ。」

「へぇ、そんな夢を?」

「私ってさこんなだからさ、力になれることがあるとしたら何だろうなって、二人のために何ができるんだろう、遺跡を調べて文献を読み解いてそれでって思ってたわけ。」

「実加さんは研究者だから…それのおかげで俺もカオル君も…」

「でもさ、今五代君が難しい顔してた時思ったんだよね、私に出来ることはそれじゃない。私のする事はここで、この場所で“おかえり”って2人を出迎えてあげることなんだって。」

「実加さん…」

「だから五代君、五代君は五代君にしか出来ないこと、するべきことをすればいいんだ。君らしい事があるとしたら、それしかないよ。」

実加さんのその言葉で俺は今、長い〈眠り〉からようやく醒めたのかもしれなかった。

“中途半端に関わるな”一条さんが俺に言ったあの一言はこれほどまで重みのある言葉だと再び知らしめられた。

「実加さん、俺ちゃんと関わりますから。大丈夫、俺もカオル君も大丈夫!」

俺は右手の親指をグッとたてて笑った。

そうか俺らしいってこうだったんだ。

「んじゃあ夕飯!俺作りますねっ!」

「あっ、その事なんだけど。」

「はい?」

「2人で食べに出ようじゃないか、ね?」

「いや、俺が作りますよ?中入りましょうよ。」

実加さんは顔を赤らめ、上目遣いで語る。

「今夜は帰りたくないの。ね、五代君?」

「えっ、いやあのっ、えっ?」

俺が実加さんの言葉に動揺していると研究所の中から桜子ちゃんが出てきた。

「あ、お母さん何してんの?あれ?五代さんおかえりなさい!ちょうど良かった、今夕飯出来たんで、五代さんも食べましょうよ?」

俺の後ろに隠れながら実加さんはぼそぼそと、帰りたくない、食べたくない、死にたくない、とそう呟いていた。

とりあえず、覚悟はしよう。桜子ちゃんの奇跡の料理、神秘的で視覚や聴覚総てを刺激し幻覚、幻聴が起きると言われている。

大丈夫!俺クウガだし!

俺と美加さんは中に入るなりポケットに胃薬を忍ばせて戦いへと赴いていくのだった━━━━━

 



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青空の足跡②

2話連続更新です、遂に物語は佳境を迎えます(ようやく…やっとかよ…)
ちなみに主人公の一条カオルとヒロインの夏目桜子の過去の物語を、始まりの物語を別の作品枠で掲載しました、興味ありましたら是非ともよろしくお願いします!感想もお待ちしてます、ではお楽しみ下さい



一条カオルside

 

 

小野寺さんは門矢士との旅の物語を少しばかり語ってくれた。

小野寺さんの話を聞く限り、やはり門矢士という男は不器用で無愛想な無頓着野郎だったみたいだ、だけど誰よりも強い信念を持って戦っている、今も昔も、そう言う小野寺さんの顔は笑顔で、その笑顔はどことなく五代さんに少し似ている気がした。

「さて、そろそろ行こうか、この先に士はいるの?」

小野寺さんが座っていた防波堤から立ち上がると僕とフィリップ君を見渡す。

「風都はもうすぐ先だ。僕についてきてくれ。」

フィリップ君はそう言うと、バイクに跨がり走り出した、小野寺さんもバイクがあるらしくそれに跨がりフィリップ君を追った。

僕もその二人を追い再び走り出す━━━━━。

 

一方その頃の門矢士は乾巧との接触の前に再び風都の探偵左翔太郎のもとに向かう途中だった、そこに向かえばフィリップもといカオルと合流出来る可能性が高いとにらんでいる他ない。

途中で謎の少年シュウと合流し、まさかの乾巧との接触にも成功、再び移動を開始した直後、士の前に2人の昭和ライダーが立ちはだかる。

仮面ライダーblack,仮面ライダーblack RXだった。

士は戦う決心をし、シュウを庇うべく変身しようとするが…

「どうやら昭和ライダーは完全に敵に回ったらしいな。」

士が振り向くと、そこには左翔太郎が立っていた。

「ディケイド、ここは俺に任せな…?」

「だいたいわかった、が相方はどうした?」

「連絡を取れねえ、まさかなとは思うが。」

「昭和ライダーにやられたと…?」

「さあな、どっちにしろ昭和ライダーが敵に回ったことに変わりはねえ、んじゃ行くぜ…?」

左翔太郎は歩き出し仮面ライダージョーカーへと変身、仮面ライダーblack,仮面ライダーblack RX

との戦いに赴いた(急遽左翔太郎と行動をともにしていた仮面ライダーバロンも助太刀にはいったようだ)。

そして━━━━━━━━━━

 

「士!」

声の主はカオルだった。

「フィリップは?」

カオルは少しうつむき、

「途中、仮面ライダーZXと名乗るライダーと戦って…僕は逃げろと言われたんだ。」

「フィリップなりの優しさかね…」

「違う、フィリップ君は最初にZXにやられて…謎の空間に吸い込まれていった…」

「謎の空間…?待て、じゃあお前を逃がしたのは誰だ?」

「士…僕は君に謝らなければならない…」

「良いから、そいつは誰だったんだ?」

「…小野寺ユウスケさんだ…。」

「おの…ユウスケが?!あいつが…」

その時の士は何を思ったんだろう、

「お前が弱いせいで」

「何故残って戦わなかった」

だろうか。

士は怒り悲しみ、そのどちらでもない表情で一言呟いた。

「カオル、これ以上昭和ライダーの好き勝手にはさせん。」

門矢士は…強い。まさに信念の塊だと思い知らされた、小野寺さんが言ってた話通りだ。

ごめんねフィリップ君…小野寺さんどうか無事でいて下さい。

そのあと、僕を含め生き残った平成ライダーと昭和ライダーは一旦休戦しバダン帝国の野望を打ち砕くべく共闘しそれを撃破。

バダン帝国撃破のあと正義と正義のぶつかり合い、平成ライダーvs昭和ライダーの戦いは再開し━━━━

戦いの最中、一輪の花を守った平成ライダーの仮面ライダー鎧武の優しさに昭和ライダーリーダーの仮面ライダー一号(本郷猛)が負けを認め、戦いの幕は閉じたのだった。

この戦いで僕はたくさんのライダーに出会い、学ぶことがたくさんあった。

正義と正義の衝突、共闘、そして認め合う。

人とグロンギもそう言う関係になれれば良いのに、そう思う僕はまだ…甘いのだろうか。

ちなみに倒されたライダー達は(ヘルヘイムの森)なる場所に隔離されていただけだったようだ。

この話は後に帰ってきたフィリップ君から聞いた話で、小野寺さんも無事だったようだ。ZXとの戦いの時僕も変身して戦ったが…この話はいずれ五代さんとゆっくり話そうかな、僕の体に起きた〈異変〉について━━━━

 

戦いを終えた数時間後、僕と士は砂浜を歩いていた。僕に会いたい人がいるらしく士諸共呼び出され僕はそこに同行したのだ。

「来たか…門矢士、仮面ライダーディケイド。」

「カオルを連れて来てやったんだ、話なら手短にな。」

「ん…一条カオル君、久しぶりだな。」

待っていたのは、桜子の父、葛城喜太郎…いや、(鳴滝)さんだ。

「あなたは…!?お久しぶりです…鳴滝さ…いやお義父さん。」

「お義父さん…か、そうか君は娘と、桜子と?」

「はい、帰ったらプロポーズしようと思ってます。」

士は黙って少し離れた場所に移動していた。

そしてその場所でパチパチと手を叩き僕を見てニヤニヤしていたって聞こえてるじゃねえかあの野郎夏実さん呼ぶぞこら。

「桜子を頼む、君なら…」

「お願いです!!帰って、その…桜子に会ってやって下さい!」

「それは出来んよ、私は…」

「じゃあ何で僕に会おうとしたんですか!?何故僕はここに呼ばれたんですか!?桜子や実加さんの話を聞くために僕を呼んだんじゃ…!?」

鳴滝さんは首を横に振る。

「私はね、海東大樹という青年と手を組みあの世界…今の私の世界の状況を調べていたんだ。あの世界を守るために。」

「なら、帰って戦いましょう!?僕はクウガです!五代さんもいます!仲間なら他にもたくさん…」

その時、鳴滝さんは涙を流しながら、その姿を〈変えた〉。

「えっ…その姿は…!?グロンギ…?」

鳴滝さんは僕が何度か〈夢の中〉で見たことのあるグロンギの姿に変化していた。

「その姿…ン・ダグバ・ゼバ…そうか…鳴滝、お前の正体はそういうわけか。」

士がそう言いながら近付いてきた。

ン・ダグバ・ゼバと言うのか。

そう、五代さんが自分の世界で最後に戦ったグロンギ=ン・ダグバ・ゼバ、そして僕の住む世界のン・ダグバ・ゼバは桜子の父、葛城喜太郎だったのだ━━━━━━━━━━━

 



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青空の足跡③

約何年ぶりかの時を経て復活ッッ


━鳴滝、葛城喜太郎の真実━

「…驚いたかね、私の正体に。」

鳴滝さんは尚も続ける。

「この姿になったのはいつ以来だろうか…25年ほど前か…」

「25年ほど前…?それってまさか…」

僕は何故だか解った気がした。

「察しがよいな、そうだ。私が実加の前から姿を消して以来だね。」

「遺跡の中で何かあったんじゃないかって僕は思っていました。鳴滝さん真実を教えて下さい!」

僕の問いに姿を元に戻しながら鳴滝さんは頷いた。

「遺跡の研究者だった私はある日いつものように遺跡の中を調査していたのだ。そしてとある棺に触れた。棺は保存状態が悪く国から触れることを禁じられていたのだが…何故か私は触れた、いつの間にか触れてしまっていた。そして、自分の中の黒い何かが私を包み込み、気付いた時にはあの姿になっていた。」

黒い何か、おそらくグロンギの遺伝子が活性化したんだろう。元からグロンギの遺伝子を鳴滝さんが引き継いでいて、それがあの棺の中のダイの力に刺激されたとすれば…グロンギに覚醒した理由としては間違いない。

「私は…私の世界の破壊者なのだよ。君が暮らすクウガの世界の破壊者、ダグバは…私なのだ…」

声をつまらせながら鳴滝さんはそう答える。

「破壊者か、鳴滝。俺とお前の共通点はそういう事か。」

夕焼け空を眺めながら士は呟く。

「門矢士、ディケイド。破壊者である君だからこそ解るだろう?壊したくないのだ、ただ守りたい、それだけなのだよ。」

「ふん、なるほどな。お前が俺を追ってきていた理由がようやくわかった。俺がお前の世界に介入することを阻止するためか。」

「そう、だがしかし君はディケイドは介入してしまった。君の介入が1つの要因として、別の世界のクウガが介入してしまうという、悲劇の始まりを生んだんだ。いや…もとはと言えば、私の研究論文が悲劇の始まりだったのかもしれないな…」

そこで僕はある1つの案件を思い出した。

「もしかして、僕の両親が調べてた遺跡の件が関わってるんじゃ?」

「まさか…君の両親が私の研究を引き継いでいるとは思いもしなかったよ。そう、古代のヒトとグロンギの戦いの歴史の碑文だ。そして、二人のクウガの再誕、ヒトのグロンギ化の謎もその碑文の研究が関わっている。」

やはりか…解ってはいたが僕はクウガに〃ただなった〃のではなかった。〃なるべくして〃なったということだったんだ。

「だいたいわかった。鳴滝、今回の件はお互い協力して立ち向かうってのでどうだ。俺はカオルに借りがある、否応なしに俺はカオルの、鳴滝、お前の世界に介入させてもらう、五代雄介にもなるべく早くもとの世界に帰ってもらわなければいけないんでな。」

「おのれディケイド…と、言いたいところだが。まさか君と手を組む日が来ようとはな。だがしかし…私はあの世界に滞在してはならないのだ、ディケイド君なら解るだろう?」

「ダグバの力に引き寄せられてヒトのグロンギへの覚醒に拍車をかける可能性があるわけか。」

「無論だ、だからディケイド。君に最初で最後の頼みがある。」

「その頼みは、俺が聞くべきではないな、カオル、お前が決めろ。」

「鳴滝さん…まさかその頼みって」

「私を殺してくれ。今でなくて良い、すべてを終えたとき最後に私を君の手で。」

僕は声を荒げて答えた。

「そんなことできませんよ!あなたは桜子の父親で僕の義理の父です!そんなこと…」

「急がなくて良い、君が答えを出したとき、私は再び君のところへ現れる。本当にすまない一条カオル君、私は私にはそれしか━━━━」

それを最後に鳴滝さんは時空の波へ消えていった。

 

「士、僕は鳴滝さんを殺すなんて絶対にしない。もし士が鳴滝さんを倒そうとするなら僕は士を倒す。」

「上等だ、だが、生憎俺も鳴滝を倒すつもりはない。今はな。とりあえず、お前の世界に帰るぞ━━━━━」

その言葉と同時に僕も時空の波へ溶け込み、気付くとそこは見慣れた町並みで、空は夕焼けで赤く染まっていた。が、しかし、逃げ惑う人々の悲鳴が僕を走らせる。

「もう、こんな悲しいことのために、誰かの涙は見たくない!士、僕行ってくる!変身ッッ!」

士を一人残し僕は人々の波を掻き分けその先を目指す。

 

-超変身、夏目桜子、五代雄介-

昨日の夕飯ではポケットに胃薬を忍ばせ´´戦いに´´挑んだ俺と実加さんだったが、ちょっとした奇跡が起こっていた。

桜子ちゃんの料理はなかなかの強敵で俺も苦戦を強いられるはず、だったんだけど。

その桜子ちゃんの料理がとても美味しかったのだ。

実加さんなんか、「あれ?あたしの味覚がおかしいのかね?美味すぎるんだけどなぁ」とか、「実は出前だったり…」とか、小声で呟いたりしていた。

「桜子ちゃん、これ美味しいね!何か隠し味とか?」

特に美味しかったのはカレーだ。カレーなんて誰でも作れて、とか、思うかもしれないけど。このカレーは明らかに俺のおじさんのカレーよりも絶対に美味い。

「んー、実はちょっと前から料理を覚えるために勉強してて。で、カオルが好きなカレーからまず極めたいなって。ほら、カレーって作った次の日からさらに味が深まるって言うじゃないですか?だから…カオルが無事に明日帰ってきたら、カレーを少しでも美味しく食べて貰えるかなって。私に出来るのはこういうことなのかなって思って。」

最近みんなで撮った集合写真のカオル君を見つめながら桜子ちゃんは語った。

「大丈夫。桜子ちゃん、カオル君は明日必ず帰ってくる、このカレーをちゃんと食べてもらわないとね!」

桜子ちゃん笑顔は少し元気がなかったが、大丈夫。カオル君は帰ってくる。大丈夫━━━━

そして明くる日の16時過ぎ、俺は杉田刑事に電話で緊急で呼び出された。場所は市街地、しかも人が溢れ変える日曜日の夕刻前に´´奴ら´´が現れた。

「変身ッッ!」

行ける、とりあえず俺はクウガへの変身は出来た。これでどこまで戦えるのかわからないけど。

´´奴ら´´は計、二体。どちらも鞭のようなものを携え暴れまわっている。

俺は一体に攻撃を仕掛けるが、なかなかの早さでその一撃を交わされる。

「赤では駄目か…ッッ」

今の俺に色を変える力があるのだろうか?いや、悩んでる場合じゃない、やるしかない。

「超変身ッッ!」

俺の体は少しずつ色を変え始め、それは青に変わる。目の前に落ちている破壊された木片を手に取るとそれはロッドへと姿を変えた。

「行けるッッ!」

俺は一撃一撃を確実に決めていき、次の瞬間にはその1体は爆発し、倒すことに成功した、が、まだ1体残っている。その1体が、鞭のようなものを仕掛けてくるが、俺は確実に避け反撃のチャンスを伺うが…

背後に何か気配を感じ、振り返ると10体ほどの´´奴ら´´がこちらに歩み寄ってきていた。

気を取られた俺は鞭の一撃を食らい、倒れこんでしまう。立ち上がり見回すといよいよ囲まれるような形に…

まずい、この数はさすがに…

目の前の1体は鞭を力強く振り上げさらに追い討ちを仕掛けてくる、その瞬間。

「伏せて!五代さん!」

真っ赤な夕日の中から1つの光が帰って来た。

空中で1回転し、鞭の一体に蹴りの一撃を入れ、その一瞬で彼は倒してしまった。

「遅くなりました、五代さん。すみません、大丈夫ですか?」

「大丈夫!だって俺たち、」

「「クウガだからッッ!」」

次の瞬間には俺たちは駆け出し取り囲む´´奴ら´´1体1体を確実にしかもかなりのハイペースで倒していく。

数分後には総てを倒し切り、疲れ果てて、俺もカオル君も変身が解けてへたれこんでしまった。

「いやー、なかなか危なかった。ありがとうカオル君。」

「こちらこそ遅くなってすみません。」

寝転がりながら俺たちは笑いあう。

「五代さん、僕は何があっても戦いますから。僕はもう大丈夫ですから。」

「どうしたんだい急に?」

「いえ、今のはすみません。自分に言い聞かせたつもりだったんです。何があっても、どんな理由があっても、僕は僕の戦いをするって。」

カオル君は━━━━━おそらく何か重大なことを経験したんだろう、そのときの俺はそれくらいにしか思っていなかった。

が、後にそのカオル君の強い思いがこの世界の命運を分けるなんてこの時の俺は思いもしなかった━━━━━━━━




ジオウ出しちゃうんだから


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