ブロリーがガンプラを作るようです (明石明)
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第1話「お買い物」

どうも、明石明です。
フォルダを整理していたら昔作ろうとして挫折したブロリーMADのプロットが出てきたためそれを小説に起こしてみました。
気が向いたときに更新するような作品なので、作者が投稿している作品の中では短めなものとなります。
また、パラガスのセリフの「腐☆腐」は仕様ですのでご容赦ください。


 新惑星ベジータに宮殿を建てることなく地球へ移住したブロリーとパラガスの親子。

 彼らは同じサイヤ人のよしみでベジータに紹介してもらった西の都のマンションで自由気ままな生活を送っていた。パラガスによる復讐? そのようなものがあろうはずがございません。

 そんなある日、暇を持て余したブロリーはいつものように父親であるパラガスの部屋を訪れようとしていた。

 

 

「親父ぃ。暇だからなんか面白いゲームかなんか貸して――――って、へあっ!?」

 

 

 部屋に入るなり目に飛び込んできたのは顔に透明なゴーグルとマスクを装着しビニール手袋とエアブラシを装備した親父ぃことパラガスだった。

 さらに部屋からは喚起が不十分なのかシンナーの臭いが残っており、人体にとっても非常によろしくない空間となっていた。

 

 

「うん? ブロリー、一体どうしたというのだ?」

 

「親父ぃ。部屋臭いけどなにやってるんですかぁ?」

 

「腐☆腐。ガンプラで御座います」

 

「ガンプラってなんだぁ?」

 

「ゑっ!? ガンプラを知らないというのか?」

 

「はい」

 

 

 無邪気なその一言がパラガスに言いようのない衝撃を与える。

 地球に移住するなり一緒にファーストガンダムから最新のビルドファイターズ、果てにはSDガンダムまで共に観賞したというのにガンプラの存在を彼は知らなかったのだ。

 しかもパラガスが一度買い物に出ればかなりの確率でガンプラを調達しているにもかかわらず、ブロリー自身はそれにまったく気付いていなかったのだ。逆に食料を調達してきたときは一瞬にして気付くのだが。

 

 

「ガンプラというのはだな、お前も観賞したガンダムたちを題材にしたプラモデルを指すのだ」

 

「何ぃ!? ということは俺のお気に入リーのジ・Oやメッサーラも……!?」

 

「その通りで御座います。そして――」

 

 

 パラガスは身に着けていたマスクやゴーグルを外し、ガンプラが陳列されている棚から一つを取り出す。

 

 

「これこそ、私のお気に入りのオリジナルガンプラ。その名も……伝説の超ゴッドパラダムというわけだぁ!」

 

 

 取り出されたのは1/100スケールマスターグレードゴッドガンダムハイパーモード(金メッキ処理済み)。しかしその顔は紛れもなくパラガスだった。

 

 

「キメェ! けど親父すごいです」

 

 

 ビジュアル的には確かに気持ち悪かったが、無駄に精巧に作られたその顔は(技術的にみれば)賞賛に値するものであった。

 

 

「ブロリーもガンプラ作りたいです。親父ぃ、何処で買えますか?」

 

「腐☆腐。その気になったようだな。いいぞぉ! 私についてきなさい」

 

 

 そうして連れてこられたのは西の都でも有数の大きさを誇る家電量販店――『Saiyashin』だ。

 

 

「親父ぃ……。ここ電気屋ですよ」

 

「心配することはない。最近の家電量販店ではガンプラを定価の30%引きで取り扱っているところが多いのだからな。さっ、模型コーナーはこっちだ」

 

 

 パラガスに連れてこられたのは『子供王国』と銘が打たれたおもちゃやゲームを扱うエリアだ。その中でも奥のほうに向かえば、ブロリーにも見知ったシルエットが見え始めた」

 

 

「よくみろ、西の都でもこんなにガンプラが揃ってる店は見られんぞ」

 

「な、なんて量だ……! 多すぎて迷いそうです」

 

「ブロリー。そういう時は自分の一番お気に入りの機体を探すのだ。お前はジ・Oやメッサーラが好きなんだろ? ならばそれを組めいいだけなのだからな」

 

「さすが親父です! じゃ、早速」

 

 

 そういって目的のガンプラを捜し求めガンプラコーナーを駆け巡るブロリー。するとひときわ大きな箱に黄色い機体があることに気付いた。

 

 

「フフフッ! 親父ぃ、見つけました!」

 

「ああ、そうか……って、ゑゑゑ!? マスターグレードだと!? やめろブロリー! お前のパワー(技術)ではそれはまだ早すぎる!」

 

「やってみなくちゃわからないですよ」

 

「……では、中身をよく見ろ」

 

 

 店員に頼んで箱の中身を確認させてもらうようお願いするパラガス。

 そして開けられた箱の中身はブロリーの想像を絶するものであった。

 

 

「へあっ!? なんだこのパーツの量は!?」

 

「これでわかったか。ハイグレードも組んだことのないお前がマスターグレードに挑むなどと、SEEDでいうならサイがキラに挑むようなものだということだ」

 

「そうですか……。ジ・Oが欲しかったですが、がっかリーです」

 

 

 心底残念そうにするブロリーだが、パラガスはお決まりのように「腐☆腐」と声を上げる。

 

 

「心配することはない。ハイグレードにもジ・Oはあるのだからなぁ」

 

「マジですか!?」

 

「ハイグレードのZガンダムコーナーをよくみろ」

 

 

 ハイグレードが陳列されているコーナーに案内されてみれば、確かにハイグレードにしては大きな箱のジ・Oが鎮座していた。

 

 

「イェイ! さっさと会計を済ませて作ロットォォォ!!」

 

「待てブロリー! いい機会だから他のガンプラを見ていくのだ。眺めるだけでも楽しいぞ」

 

「そうですか? 親父が言うなら見てみよっと」

 

 

 ジ・Oを掲げてテンションが上がりまくったブロリーだが、パラガスの言葉を聞き一緒になって眺めることに。

 

 

「親父ぃ。さっきから気になってるんですがハイグレードやマスターグレードってなんですかぁ?」

 

「ガンプラの目安のようなものだ。作りやすさを重視したハイグレード(HG)、ギミックを追求したマスターグレード(MG)。究極のガンプラを目指したパーフェクトグレード(PG)。そしてハイグレードと同じ大きさでありながらクオリティを追求したリアルグレード(RG)などがあるのだ」

 

 

 コーナーに移るたびに説明するパラガス。そのひとつひとつを聞きながら箱を眺めているブロリーは目を輝かせていた。

 

 

「うん? パラガス、ブロリー。来てたのか」

 

 

 名前を呼ばれて振り返ってみれば、大量のガンプラをカートに突っ込んだベジータがいた。

 

 

「よ、ベジータもガンプラですか?」

 

「貴様も作るみたいだな。 ふむ、ハイグレードのジ・Oか。悪くはないチョイスだが、俺のGP01の敵じゃあない」

 

「聞き捨てならねえな、ベジータ。俺のνガンダムの方が上に決まってるぜ」

 

 

 現れたのはマスターグレードνガンダム(Ver.Ka)を手にしたヤムチャだった。

 

 

「ふざけるな。俺たちのゼロが上に決まってる」

 

 

 さらに現れたのはパーフェクトグレードのウイングガンダムゼロカスタムを担いだ人造人間16号とあの世からHGACのウイングガンダムゼロを買いに来たパイクーハンだ。

 

 

「おいおい、俺のヘビーアームズをのけ者にするとは許しがたいな」

 

 

 今度はマスターグレードのガンダムヘビーアームズ(EW版)をもった人造人間17号が……。

 

 

「かつてVSシリーズにも参戦したガンキャノンを忘れるとは許し難いな」

 

 

 続けてハイグレードとマスターグレードのガンキャノンを携えたピッコロが………。

 

 

「戦艦の魅力がわからないのか? だとすれば気功砲を撃たざるを得ない」

 

 

 さらに1/1700スケールのホワイトベースを持った天津飯が…………。

 

 

「……ブロリー、帰るぞ」

 

「……はい」

 

 

 カオスとなってきた店内から目を背けるように、ブロリーとパラガスはさっさと会計を済ませて店を後にするのだった。




ベジータが買おうとしていたのはHG、MG、RGのゼフィランサスとフルバーニアンを1個ずつとPGフルバーニアンです。
続きは気が向いたときに書くと思いますのでご容赦ください。
それでは、また。


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第2話「パラガスのガンプラ指南 その1」

どうもこんにちは、作者です。

クロノトリガーが完結してマブラヴの続きに着手する前の息抜きに続きを書きました。
暇つぶし程度に何なりとご覧ください。


「さぁ作ロットォ――――――ッ!」

 

 

 帰宅するなり早速ガンプラの箱を開封するブロリー。

 店で確認したマスターグレードほどではないが迫力あるパーツがいくつもあり、一番底に収まっていた説明書には綺麗な塗装までされた完成図が映し出されていた。

 

 

「……ん?」

 

 

 しかしそこでブロリーは気付いた。

 そう、見本の写真は塗装されているのだ。目の前のランナー(※1)に繋がれたままの実物と違い販売用に作られたため当然なのだが、それを知らないブロリーは首を傾げるだけだった。

 

 

「親父ぃ。写真と本物がだいぶ違います」

 

「当然だ。ハイグレードは作りやすさを重視しているのだからな。色が足りない部分は自分で塗る必要がある」

 

「なるほど。俺にも出来るといいなぁ……」

 

「ブロリー。初心者のお前はまず組み立てるところから始めるんだ。塗装のテクニックは後でじっくり調教……ではなく、教えてやる。さ、私の道具を使っていいぞぉ!」

 

 

 自分の部屋から持ってきたニッパーやデザインナイフ、墨入れ用のペンを広げるパラガス。

 

 

「まずは必要なパーツが全て揃っているか説明書を参考に調べるのだ。まずありえないだろうが、パーツが足りていないとなれば店へ知らせる必要がある」

 

「メーカーを血祭るためですね、わかります」

 

(いや、そのりくつはおかしい……)

 

 

 まったく違う解釈をしたブロリーは説明書の通りにランナーやシールが揃っていることを確認する。

 いよいよ作るのだと思うと彼の気は自然と高まってきた。

 

 

「ではブロリー。まずは説明書の通りに組み立てるのだ。大体のガンプラは胴体から入り頭部、両腕、両足、腰、バックパックや付属装備へと繋がっていく。自分が作りたい場所からかかってもいいが、今回は説明書どおりに組むぞ」

 

「はい」

 

 

 ニッパーをガシッとつかみ、説明書に記されたパーツをパラガス監修の元、ランナーから切り離す。ただし、あとで綺麗に処理するため密着してきるのではなく若干ゲート跡(※2)を残してである。

 

 

「へぁっ!? なんて切れ味だ……!」

 

「腐☆腐。最高級アルティメットニッパーのパワーはいかがかな? 次は切り取ったパーツに残ったゲート跡を処理するためこいつを使うのだ」

 

 

 ブロリーに真新しい刃が付けられたデザインナイフを手渡し、パラガスは予備のナイフで自分の作りかけのガンプラを使って実演をして見せる。

 

 

「このようにゲート跡を処理するが、こいつの切れ味は非常に強い。慎重にゲート跡を削らねば、ガンプラはもちろん、自分の手までも破壊し尽くしてしまう。力加減に気をつけてな」

 

「はい、頑張ります」

 

 

 アドバイスを受けてさっそくナイフを構え、ゲート跡を睨む。そして――

 

カッ!

 

 

「でやぁ!!」

 

 

 目を見開いて掛け声とともに一気に刃を走らせる!

 ゲート跡はナイフの切れ味とブロリーのパワーによって切り飛ばされ、パーツは見事に綺麗なラインを手に入れた。

 

 

スパッ

 

 

「「……あっ」」

 

 

 だが、勢いよく走らされたナイフの刃は止まることなく、そのままパラガスの手にあったパーツ(RGウイングガンダムゼロEWのアンテナ)までも真っ二つにした。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 気まずい沈黙が流れ、ブロリーは冷や汗をかきながら場を和ませようと口を開く。

 

 

「……テヘ、やっちゃったZE☆」

 

「…………」

 

 

バゥン!!

 

 

 怒りと悲しみが臨界突破し、パラガスは超サイヤ人へと変貌した!

 

 

「ま、待て! 話せばわかる! 交渉を!!」

 

 

 

~パラガス号泣中 もうしばらくお待ち下さい!~

 

 

 

「改めて教えるぞ、ブロリー。パーツを切るときは、力を込め過ぎず慎重にだ」

 

「は、はい……」

 

 

 パラガスのガン泣きによって揺れに揺れた部屋は、まるで地震でも起こったかのような惨状となっていた。

 ひとまず部屋の状態をまるでビデオを巻き戻したかのように元通りに戻し、綺麗になったところで再び作業を再開。

 

 

「次はこのペンを使ってモールド(※3)に色を付ける作業だ。はみ出た場所はティッシュや綿棒、汚れてもいいタオルなどで拭き上げるのだ。もし乾いてしまっても塗装用のうすめ液を使えばすぐ落ちる」

 

「なぁるほど。 ――こうですかぁ?」

 

 

 細い溝にペンを這わせて線を引く。色が付けられたことでメリハリが出てのっぺりとした部分が本物のようにリアリティを増した。

 

 

「フフフ! カッコよくなりました!」

 

「いいぞぉ! このまま説明書通りにDON☆DON組み上げて――ピーンポーン☆――うん?」

 

 

 テンションが上がってきたパラガスの水を差すように鳴り響くインターホン。

 誰が来たのか確認すべくパラガスは来客カメラをタッチする。

 

 

『よっ、パラガス。オラ腹減っちまったぁ……食いもんくれ!』

 

 

 何故かいきなり食事を求めてきた来客者は、ブロリーと因縁深いカカロットこと孫悟空だった。




(※1:パーツがついている物のこと。A、Bといった具合に目印が振り分けられている)

(※2:ランナーとパーツをつなぐ部分のことをゲートといい、切り取ったあとパーツに残った部分をゲート跡という)

(※3:ガンプラに掘られた溝のこと。これを細いペンやスミ入れ用の塗料で色を付けるとメリハリが出て見栄えが良くなる)


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