新訳 ガンダムSeed Destiny オーブの守護神とザフトの燃える瞳 (faker00)
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プロローグ

C.E(コズミックイラ)70年、血のバレンタインを発端に始まった連合とザフトの闘いは圧倒的な物量を誇る連合の勝利による早期終結が予想されていたが技術で上回るザフトはニュートロンジャマーシステムをはじめとする新技術を大量に投入しその戦力差を覆すことに成功する。

 そして戦況は泥沼化、およそ2年に渡り混沌を深め拡大を広げた戦火は留まることを知らず、両陣営共に疲弊を極め市民達は不安の中に絶望を深めていく生活を余儀なくされる。

 

 

「一体どうしてこんなことになってしまったのだろう?」

 

 その問いに答えられる者など誰も居はしなかった。いや、答えられる者はひたすらにその道を突き進んだ、自らの思惑を果たすために偽りの仮面を被り続けて。

 そうして何も知らずにただ流れるままに踊り続ける多数とそれを操る少数によって世界は壊れていった。戦いの始まりが何だったかなど極一部を除いてもうどうでも良かった。ただ穏やかな日常を。

 

 その願いは突然、丸で流れ星への祈りが叶ったのかのように唐突に叶うことになる。

 

 アークエンジェル、キラ・ヤマト、そしてラクス・クライン

 

 始まりは一つのコロニーでの偶然だった。そこから数奇な運命を辿り巡り会って彼等は様々な出来事を体験し、結果として僅か半年足らずのうちに戦争を終わらせる力となった。

 まるでマンガか何かのような……いや、創作物でもこんな設定はふざけていると弾かれてしまう、そんな奇跡。

 かくして終わった戦争の後に世界は徐々に、ゆっくりとだがその姿を取り戻していった。そうして彼等は伝説となった……

 

 

 

 

 

 

 本来ならばここでハッピーエンドだ。

 だが現実はそう甘くいかない。

 C.E73年、終わりを迎えてから僅か2年、たったそれだけの時間で人の悪意は膨らみ、忘れ、またもや道を外そうとしていた。

 そうしてまた無知な群衆は踊るのだろう、その足にいつの間にか止められない靴をはかされていることも知らずに……

 世界は再び危機を迎えていた。

 

 

 

ーーーーー

 

『プラント代表ギルバート・デュランダル氏は最新鋭戦艦ミネルバの入水式を控えたアーモリー・ワンに入り現地には歓迎ムードが巻き起こっています。デュランダル氏はマスコミに対し「ミネルバの完成によりプラントの自衛機能が向上することを歓迎する」とコメントし、今回私達のような国外のメディアを招き入れたのもあくまで世界の安定のためだということをアピールすることが狙いと考えられています。また後ほど中継を繋ぎます。それではスタジオにお返しします。』

 

 

「……」

 

 

 これで本当に世界が安定するのならそれでいい。

 テレビから流れてくるレポーターの声を聞きながら穏やかな表情を浮かべる青年はソファーから立ち上がりコーヒーを淹れる。これはとある知り合いから進められたらお薦めと言われたから飲んでみることにしたのだが……どうやらまだ早すぎたみたいだ。

 

「にがい…」

 

 口内を覆う苦味に思わず顔をしかめる。

 とは言ってもあのコーヒー好きから大量に送られてきた豆は倉庫を覆うほどに余っている。この家の住人は自分以外コーヒーを飲むことすら出来はしない。彼が訪れたときに機嫌を損ねないよう少しでも消費しておく必要がある。

 

「あらあら…やっぱり不安ですの?」

 

「ラクス…」

 

 いつの間にか部屋に入ってきていたのか、耳障りの良い澄んだ声が聞こえてくる。振り返るとそこにいたのは愛しい人。

 

「カガリさん大丈夫でしょうか……最近少し頑張りすぎだとお伝えしてはいるのですが…」

 

「…カガリは何か感じているんだと思う。今の僕達にはそれを見守ることしか出来ないけど。」

 

「…もうあんな事が起こらなければ良いのですが…それにカガリさん自身も」

 

 ピンクの髪にどこか憂いを帯びた表情、しかしその端正な顔立ちは全く曇ることはない。上品さを感じる立ち振る舞いには一般のそれとはかけ離れたものを感じさせる。

 それもまた当然のことなのだろう。彼女こそ前プラント代表シーゲル・クラインの娘にして「プラントの希望」「戦乱の中に舞い降りた歌姫」と呼ばれ絶大な指示を誇り前大戦の終結を告げたラクス・クラインその人なのだから。

 

「…アスランがついているから大丈夫だとは思うけど。世界の行く末までは僕には…」

 

「ごめんなさい。不安にさせてしまいましたね。また何か不安要素が?」

 

「うん…ちょっとね。連合がまた動き出したみたいなんだ。今はまだ小さなことだけど…そろそろ時間だ。…行ってくるね、ラクス。」

 

「行ってらっしゃい、キラ」

 

 机に無造作に並べられた書類を一瞥した後部屋を後にする。

 靴を履き外に出るといつものように自分には不釣り合いだとしか思えない高級車が自分のことを待ち、止まっていた。

 

「おはようございます。キラ准将。」

 

「あんまり堅苦しい挨拶はいいっていつも言ってるじゃないか。もう半年になるよ。」

 

「恐縮です。」

 

 この繰り返しももう何度目になるか分からない。気付けばルーティーンになっているやり取りの後車に乗り込む。運転手を勤める少尉はかつてレーサーの養成学校に入っていた経験がありメカニックにも精通している。

 そのため話が合う部分も多くあるのだがそこは妹であり姉であるカガリに感謝しなければならないだろう。

 

「准将、制服の襟が。」

 

「え。ああ、ありがとう。」

 

 やっぱり堅苦しいのは苦手だ。心の中でぼそっと呟き制服の折れた襟を直し鏡を見る。

 

「(何度見ても軍人らしくは見えないな…)」

 

 親友であるアスランはこういうのが非常にしっくりくるのに自分との差は一体何なのだろうか?

 憂鬱な気持ちになりかけながら窓から外を窺う。オーブは今日も平和だ。この平和を守る為に戦うと決めたのだから少しくらいの我慢はしなければならない。

 

 何だかんだと理由をつけて隠居する手もあった。カガリはもうお前を無理に戦わせたくはないと言った。アスランはこういう荒事は俺の仕事だから任せておいてくれと言った。そしてラクスは…あなたが行く場所、どこでも私は着いていくと言った。

 そうして選んだのが今の道だ。幸い先の大戦で実績は嫌と言うほど作った。今ではこの名前だけでも抑止力になる、と100人の軍事ジャーナリストに聞けば100人同じ答えが返ってくるくらいだ。

 それだけで、オーブ軍に自分がいるということだけで充分なのだ。そして今日もこんな内心を誰に見せるでもなく今日もオーブの守り神としての責務を全うする。

 

 キラ・ヤマト。

 

 前大戦、MSフリーダムと共に伝説となった彼はオーブ軍准将としてこの2年世界の平穏を祈っていた。




どうもです。

いわゆる種厨と呼ばれる部類の作者ですがデスティニーには不満があります。ならば自分で自己完結してやろうじゃないか!ということで始めました!

感想など反響あるとうれしいです!

それではまた!


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狂いだした歯車

「アスラン・ザラ?」

 

「そうよ!あのアスラン・ザラが今このアーモリーワンにいるみたいなのよ!貴方だって気になるでしょ!?シン!」

 

 名前くらいは知ってるけど別に関係があるわけじゃない。なのになんだってこんなに興奮してるんだ?

 ザフトレッドと呼ばれる一部の特別階級の軍人にしか着ることの許されない真紅の軍服の下をピンクのミニスカに改造するという前代未聞の事態を堂々とやってのけたことで知られるザフトきってのエリート、そのルックスからも人気のある少女、ルナマリア・ホークの興奮した姿を目にしてシンと呼ばれた少年の反応は冷ややかなものだった。

 なぜかというとそもそもそんなものにシンは興味の欠片もないからだ。

 

「別に…そんなもんどうでもいいだろ?」

 

「良くない!あのねえ、アスランさんは間違いなく前大戦ザフトで最強のパイロットだったのよ!?あんたもインパルスのパイロットなんて大役任されてるんだから少しくらい興味持ちなさい!」

 

「あいた!」

 

 人差し指でデコをビシッと弾かれる。

 どうしてかは知らないがシンは全くといっていいほど昔からルナマリアには頭が上がらないのだ。オーブからプラントに移住してきた時に彼女が積極的に話し掛けてきてからと言うもの何だかんだ一緒にいる腐れ縁のような存在なのだが……身長で追い抜いたのも僅か1年前の話だ。後は語るまでもないだろう。

 

「だからってそれとこれとは別だろ!?だいたい本当にいるのかよ、あの人。確か今はオーブにいるんだろ?」

 

「うーん…確かにね…けどヴィーノが見たって、何だかグラサンつけて中途半端な変装してたみたいだけど。」

 

「はあっ!?それだけかよ!ヴィーノの話一つでよく信じられるなルナも…」

 

「やっぱり怪しい…かな?」

 

「怪しい。絶対に。」

 

 自分の預かり知らぬところでボロクソに言われているメカニックの悪友には済まないという気持ちはあることはあるがあまりに信憑性が薄すぎる。

 全く面倒な情報を持ってきてくれたものだと心の中で悪態をつきながらシンは止めていた足を再び進める。

 

「だいたい前大戦の英雄だなんて言っても怪しいもんだ、オーブのキラ…そう、キラ・ヤマトだっけ?あいつだって軍にいることはいるけど前線には音沙汰なしだ。ラクス・クライン共々実は大したことないんじゃないの?ただ担ぎ出し安かったからそうなっただけで…」

 

「…ほんとにシンってオーブも前大戦の名残も何もかも嫌いよね。」

 

「当たり前だろ。俺は戦争をなくしたくて軍にいるんだ。そんなものに特別な感情…憧れなんて持つはずないじゃないか。」

 

「それはそうだけど…」

 

 ーー我ながらずいぶんと意地になってるな…

 シンは自分の言動をすぐさま後悔した。こんな事を目の前の少女に八つ当たりしてもただ困る人が増えるだけなのに。…だがそれでも譲れない思いがシンの胸中を支配していた。

 

「(けど…全てを奪った戦争も、その英雄も、俺は肯定するつもりはない…!)」

 

 この事を考えると何時も感傷に浸ってしまう。そのせいだろうか、目の前に迫っていた人影に気付くのが大分遅れてしまった。

 

「…イッた!」

 

「…あっ!すいません!」

 

 ーーやっちまった!

 

 ぶつかった相手が自分よりも小さな小柄な少女だったことも災いしたか、別段力を入れたということもなかったのだが豪快に弾き飛ばす形になってしまった。

 

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ、大丈夫だアレックス…」

 

アレックスと呼ばれた男がシンに弾き飛ばされてしまった金髪の少女に手を差し伸べる。大きなサングラスにその顔は隠され素顔を窺うことは出来なかったがシンはその時確かに何か感じた。…ただそれがなんなのかを説明することは到底出来そうにもなかったが。

 

「……だから気をつけろと言っているだろ…?済まないな、君も大丈夫か?」

 

「え、ええ。俺は特に何とも…」

 

 ーーと言うよりも女の子に弾かれるようなことがあれば俺は一生立ち直れないと思う。

 言葉にこそしなかったがシンは本気でそう思った。

 

「それじゃあ失礼する。ほら行くぞ、会談に遅れる。」

 

「うるさいな、子供扱いするなよ!」

 

 そんなおてんばな妹としっかり者の兄といったありがちな弟妹のような会話を繰り広げながらその2人は歩いていった。

 その姿をシンとルナの2人はただ呆気にとられたように見つめていた。

 

 

「会談…ってなに?」

 

「さあ?」

 

「と言うよりもあのグラサンって…」

 

「「……まさかねえ。」」

 

 ハハハと2人笑いあう。なんてことはない、どこかのお偉いさんがボディーガードを引き連れてこれから何か重大な会議に望むのだろう。そしてそのお偉いさんならちゃんと今このアーモリーワンにいるのだ。

 

「まさかデュランダル議長に?」

 

「そうだとしたら俺大丈夫かな…そんな重要人物にぶつかったうえ弾き飛ばしたなんて知れたらインパルス落とされるんじゃ…」

 

「いくら何でもそんなことは……」

 

「おい、ルナ?なんとか言ってくれよ…」

 

「……さあ、気合い入れてブリーフィングいくわよ!ミネルバの入水式を飾るのは私達MS組なんだから!」

 

「……軍法会議かな。」

 

 覚悟を決めた方が良いかもしれない。

 先ほどまでの憂鬱も、苛立ちも、何もかもが吹き飛んだ。そうして新たに浮かんだ危機にめまいをお越しながらシンはルナマリアの後ろを歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ2人とも!いくら赤服と言っても遅刻は感心しないぞ。」

 

「すいません。副艦長」

 

 ブリーフィングルームの扉を開けると既に自分達以外は席についているようだった。入ると同時に小言を言ってくる副艦長であるアーサー・トラインの言葉を聞き流して自分の座るべき席とそこをとってくれているであろう友人の姿を探す。

 

 

 ーーいた。

 

 

 その中性的かつ整った顔を不機嫌そうに歪めながら早くこっちにこいと言わんばかりにこっちを睨んできている。

 

「…ルナ」

 

「…レイ様のお説教タイムは免れないわよ…覚悟を決めなさい。」

 

 

  

「シン、早くしろ。お前たちのせいで進行が滞っている。」

 

 しびれを切らしたかそのイライラを隠そうともせず怒気を孕んだ声がシンとルナに向かって投げられる。

 この男の逆鱗には本当ならなるべくふれたくない。何故かというと後が怖いからだ、まるで蛇のようにしつこく抉ってくる。これは文句など一つもなしで、投降する敗残兵のごとく従順に従うしかないだろう。

 

 

 

 

「いや…ゴメンよ、レイ。」

 

「言い訳なら後で聞こう。ルナマリア、お前もだ。」

 

「あちゃー…まあそうなるわよね。」

 

 シンもルナもお互いに「ここはどちらも絶対に逆らわない。それがお互いの為だ」とアイコンタクトを交わしてから不機嫌極まりない青年の隣に並ぶ。彼はシンと同い年のはずなのだが…誰にきいても彼の方が年上に見えると答えるだろう。それくらい貫禄というかオーラに違いがある。

 

 レイ・ザ・バレル、今年の軍育成学校の主席を取った言うなればザフトの誇るスーパールーキー、MS戦闘、CQC、射撃、諜報、全てに優れたその才覚に人は彼のことを「アスラン・ザラの再来」と呼んでその将来を嘱望した。

 もちろん尋問活動もスペシャリスト。その威圧感たるやシン、ルナマリアこそ苦笑いしながら受け流すことが出来るが一般兵…所謂グリーンの兵ならばそこで失禁しかねないものがある。

 そんな彼に睨まれたシンの居づらさは既に作戦前から神経を極限まで張りつめさせるに至っていた。

 

 

「(今度からは遅刻厳禁…いや、常にレイと行動しよう。そうすれば何も問題はないはずだ。)」

 

 本日シンが掴んだ、これが第一の教訓だった。

 

 

「これで全員揃ったわね…それじゃあリラックスタイムもここまで。本日のミネルバ入水式に置けるブリーフィングをこれより行います。私はタリア・グラディス。この艦、ミネルバの艦長を務めるので以後は艦長と。…戦闘任務ではないですがこれが記念すべきミネルバ初任務です。議長も視察に訪れていますから各員全力を尽くすように。」

 

 タリアから出された、議長、という言葉にその場の雰囲気が変わる。前代表パトリック・ザラの死後混乱のさなかにあったプラントをまとめ上げ、その政治的手腕と地球との融和を軸にした政策で今や国民の誇りとなっている代表、ギルバート・デュランダルの名を出されれば嫌でも気合いが入るというものだ。

 その証拠にいつもはおちゃらけているルナマリアも、普段クールなレイでさえも背筋に力が入っているのがよくわかる。

 

「よろしい。気合いが入ったみたいですね。それでは説明に入るのです……」

 

「大変だ!!!」

 

 その姿をタリアが見て満足気な表情を浮かべたその時だ。息を切らした護衛兵がブリーフィングルームに飛び込んできたのは。

 

「何事です!ここはミネルバクルー以外立ち入り禁止のはずです!」

 

「ハッ!すみませんグラディス艦長!しかし急を擁するので…」

 

「急を擁する…?分かりました発言を許可します。」

 

 尋常ではないその護衛兵の様子に何か感じたタリアは発言を許可した。

 シンもその判断は正しいと感じた。…一体何があったのか。

 

「先程5分ほど前にアーモリーワン内部にスパイが侵入!新型機セカンドシリーズがが奪取され、現在ザクが一機で対応しています!ブレイズザクファントム、ガナーウォーリアの調整は完了していないのですがインパルスはでれます!すぐに出撃を!」

 

「なっ…!」

 

 ブリーフィングルームが俄かに騒がしくなる。こんな時に襲撃、しかも最新鋭の新型セカンドシリーズが奪われた、となれば現在このアーモリーワンのどこかにいるであろう議長の命も危ないと言うことだ。まともな神経の持ち主なら落ち着いていられるはずがない。

 

「艦長!」

 

 シンはすぐさま立ち上がった。護衛兵の話だとここをどうにか出来るのは自分をおいてほかにはいない。

 シンは一秒でも早く出撃したかった。

 

「…分かりました。シン!インパルスを出撃させて!ミネルバも直ぐに出します!総員戦闘配置へ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

「…シン!」

 

「どうしたんだよレイ。おまえのはまだ出れないんじゃ…」

 

「よく聞け、シン。お前は強い。だから絶対に負けない。この言葉を忘れるな。」

 

「ああ!」

 

 格納庫へと向かう道を全力で走っているなかわざわざついてきて忠告してくれたレイに感謝の意を示し片手をあげる。

 

 ーー分かってる…俺は負けない!

 

 そのまま走りつづけまだ正式にはロールアウトされていない自機に乗り込む。コアスプレンダー…端から見ればただの戦闘機だがこれが次世代MSインパルスの肝になる…!

 

『コアスプレンダー、発進準備完了!発進どうぞ!…気をつけてね。シン』

 

「ああわかってる!シン・アスカ、コアスプレンダー、いきます!!」

 

 管制を務めるルナマリアの妹、メイリンの合図と同時にシンはコアスプレンダーを起動させ、飛び出して行った。

 この合図がその先も続くシンの激闘の始まりを告げる鐘の音になるとも知らずに…

 

 

 

 

ーーーーー

 

数十分前 オーブ首長国連邦 首都オノゴロ 軍総本部

 

「…っ!これは本当なの!?」

 

「…はい。間違いありません。」

 

「これじゃあカガリとアスランは…!」

 

「巻き込まれる可能性も…」

 

 キラは報告された内容と自分の不甲斐なさに顔を歪めた。

 

ーー連合の誇るエクステンデットがアーモリーワンに侵入した。恐らく目的はミネルバの入水式に合わせてお披露目予定だった新型機の強奪。

 

「くそっ!これじゃあ2年前となにも変わらないじゃないか!!」

 

「はっ…?2年前…ですか?」

 

「…!いや、何でもないんだ!」

 

 自分がストライクに出会った時とこれでは全く同じ…あまりの状況の一致に歯噛みする。兆候はあったのだ。だがしかしそれは本当に些細なものでまさかこんなにもはやく連合が動くとは到底思えなかった。

 

「…」

 

 キラには確信があった。これを放置すれば再び世界は混沌に包まれる、と。

 

「(恐らくアーモリーワンは歓迎ムードで一般人も多い。あんな状態でエクステンデットなんかに入り込まれたら軍にまともな対処が出来るとは思えない…!)」

 

 

 

ーーならやることは一つしかないじゃないか

 

 

 

「マードックさんを呼んで!あと僕のパイロットスーツの準備を!」

 

「…!一体なにを!?」

 

「フリーダムでプラントへ飛ぶ!今は行かないと大変なことになる!」

 

「しかしそんなことをすればカガリ様の極秘訪問の件が…」

 

「構うもんか!今は非常事態だ!次はないから早くして!」

 

「……わかりました!」

 

 秘書をどやしつけて自分も脳内を、パイロット、キラ・ヤマトに切り替える。

 

 執務室を駆け出しキラは思案する。

 

「(ブースターを使っても20分はかかる…カガリ、無事でいて!)」

 

 

 そうして準備を整えキラも飛び出した。これが彼の思い虚しく再び戦争の中へと引き戻す出撃とも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもです!

初っ端から原作とは違う方向へ行ってますね…

早すぎるキラとシン、そしてアスラン邂逅がもたらすのは一体何なのか?

次回もご期待ください!

それではまた!

評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃん待ってます!
特に感想良かったらお願いしまーす!


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燃える瞳

「見えた!なんてこった…」

 

 シンは目の前の光景に心を抉られる。

 昨日訪れたときにはまるでお祭りのような賑わいを見せていた市街部は無残にも壊され、機体を収容する格納庫が密集した地帯は更にそれ以上だ。

 

ーーこれは…前の戦争となにも変わらない…!

 

 思い出したくもない記憶が脳裏をよぎる、上空を飛び交うMSの数々、鳴り響く警報、逃げ惑う人達、吹き飛ぶ風景、そして…もう二度と会うことは出来ない家族。

 

「くっそ…!」

 

 戦争が憎い、あんな思いはもうたくさんだ。その思いを叶えるためにザフトに入ったというのにここで一体どれだけの数の人が自分と同じような経験をしたと言うのか?

 そう考えるだけでシンの怒りは既に最高潮に達しようとしていた。

 

 連合か?オーブか?それとも他の何か?もうそんなものはどうでもよかった。この状況を作った奴をこの手で何とかしてやる。

 バーニアの出力を上げオーバーヒート寸前までスピードを上げる。ここまでくれば最悪ぶっ壊してしまっても辿り着ける。メカニックからしてみればありえない、卒倒してしまいそうな考え方だがとにかく早く何とかしたかった。

 

 

「…見えた!」

 

 遂に視界に動き回る2機のMSを捉える。

 

「(緑の見慣れたフォルム…報告にあったザクか?んでもう片方が目的の…確かガイアだっけ?)」

 

 もう少し真面目に勉強しておけばと今更になって後悔する。自軍の最新鋭機の事すらまともに分からないとは自分の記憶力に怒りさえ覚える。

 インパルスの搭乗訓練が厳しく他の事に気が回らなかったというのはもちろんあるのだがそれにしてもだ。ちゃんと弱点も把握していれば捕獲も幾分かやりやすくなったかもしれない。

 

 セカンドシリーズ、ガイア。人型形態と獣型形態を使い分ける機動力に優れる機体だったか…必死に記憶をつなぎ合わせてもシンに分かる情報はこの程度だった。

 早いうちに細かい情報をミネルバに問い合わせればより詳細な情報を取り寄せることも出来ただろうが、残念ながらシンの思考はそこまで思い至らなかった。

 

 

 

【シン、目的は確認できた?】

 

「ええ艦長!直ぐに交戦に入ります!」

 

 オープンにしている回線から艦長であるタリアの声が聞こえる。こうも突然に通信が入ると集中の妨げに出来ることならシンとしては切っておきたいと思うのだが重要な報せまでカットするリスクを考えればそうは言っていられない。

 

【ミネルバはまだ時間がかかります。なのであなた1人であの3機を相手取ってもらうことになるけど…いけるわね?】

 

「だいたい分かってましたよ…どうせこうなるのは…」

 

【了解。本部からの指示は捕獲です。撃墜はなるべく控えるように…それでは健闘を。】

 

「はあっ!?ちょっとまっ!」

 

 一方的に通信を打ち切られる。

 捕獲はともかく撃墜するなとは何事なのか、それではあまりにも戦い方に縛りができてしまう。 

 いくらシンが若いとは言え軍人だ。上の偉い人とやらの言いたいことも分からなくはなかった。議長の肝いりで進行していたと言われるセカンドシリーズの機体を失うというのは単純な金の問題以上に痛すぎる。事実今シン自身が乗っているインパルスもどれたけ重要か耳にたこが出来るほど言われたものだ。

 

 

「けどそれとこれとは話が別だろう…!」

 

 だからと言ってこの指示は無茶ぶりもいいところだ。と心の中で吐き捨てる。それだけの熱意で造られた機体が他の量産型のように弱い訳がない。ザクが一機応戦しているがそれは戦力に数える方が難しい。要するに1対3の上にこちらには縛り有りというわけだ。

 そんなものはテレビゲームでも躊躇う。

 

 

 

 

 その時だ。ガイアのライフルからビームが放たれ、ザクを掠め商業施設を破壊したのは。

 

 

「……!」

 

 シンは見た。弾ける建物の残骸とその中を悲鳴を上げながら走る人達の姿を。

 その瞬間、思考は半ば焼き切れた。

 

 

「クッソー!!」

 

 地上に降り立つ。目の前で異変に気付いたのか先程の攻撃の衝撃で体制を崩していたザクに追い討ちをかけようとしていた止めるべき相手、ガイアがシンの乗るインパルスに向く。

 その姿を見てシンの心の中にあった感情は一つのみ。ただひたすらに純粋で、密度の高い怒り。

 

 「また戦争がしたいのか!!あんた達は!!!」

 

 指示なんてものは既に頭の中から消え去っている。

 平和な世界を乱そうとするならば躊躇なく殺す。シン・アスカはまぎれもなく死地を潜り抜ける戦士の資質を持っていた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 【目標地点まで100秒、パージ時の衝撃に注意してください。】

 

 聞こえてくる無機質な音声にキラはもう一度呼吸を整える。今のところ何者かに強奪された機体と同じくザフト所属の機体が交戦に入ったというのが最後の情報だ。戦局は常に変化している。その言葉に照らし合わせれば楽観視する事はできないがまだやれることはあるはずだ。

 

「(上手く意図を伝えられるならいいけど…どちらからも敵扱いされるようなことがあると厄介だ…)」

 

 キラからしてみれば戦闘に置ける不安などほとんどないに等しい。

 目的がカガリ、そしてアスランの保護ということを考えればザフトと敵対する意味はない。相手をするとしても連合の一部隊程度だ。その程度切り抜けられない自分ではないという自信と自負を不本意ながらキラは間違いなく持っていた。

 問題といえばさすがに最新鋭機体を相手取ることになるので自身の駆るフリーダムという機体に前大戦の時のようなアドバンテージがないというところと、介入行為で下手な誤解を生めばその場にいる全てが敵になりかねないという点だ。

 

 いくなんでも基地の全総力+ポテンシャルのある機体3機になってしまえば状況は最悪だ。下手をすれば撃墜までありえる。

 

 

「(最悪の場合はオープンチャンネルの回線を開いてカガリの存在を公開してでも…)」

 

 

ーーまず第一に優先すべきはカガリの命。

 

 その後に待っているであろう混乱も、面倒も、全て自分が引き受ける。

 覚悟を決めてキラは集中のために閉じていた目を開ける。その目に宿るは強い決意。

 それが2年前に流れるままに闘い、大切なものをたくさん失った彼の、今度こそ全てを守るために戦うという決意の証だった。

 

【カウントダウン開始、10,9,8…………0】

 

「……!」

 

 衝撃と共に機体が宇宙へと放り出される。

 その中で素早く機体を制御し、コントロールをつかむ。

 視界を埋め尽くすのはどこまでも黒く、果てしない空間。その特殊さに思わず息をのむ。宇宙へと出るのはキラにとって二年ぶり、あの忌まわしきラウ・ル・クルーゼとの一戦以来の出来事だった。

 

「……」

 

 あまり気分の良いものじゃない、思い出される情景をバッサリと切り捨てる。

 そうして目の前に見え始めているコロニーへと進路をとる。

 

 到達まで数分……本来ならば直ぐに事が済むはずのことだった。

 

 あの男がいち早くその存在と危機を察知して状況を動かしさえしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いない!?」

 

【ああ、本来ならオーブ軍所属の君がここにいること自体が問題なのだがそれ不問に付そう。目的はあのお姫様の保護なのだろう?】

 

「カガリは!?」

 

【安心したまえ、彼女は無事だ。どうやら連れていたボディーガードがとことん有能だったようだね。】

 

 

 アーモリーワンに乗り込んだキラを待ち受けていたのは想定外の空振りという事実だった。

 そうして誰もいない所に飛び込む形になってしまいザフトに包囲されたがそんなキラに助け舟が出された。

 

 カガリと会談をしていたはずのギルバートデュランダル議長その人である。彼の指示によって厳戒体勢は解かれ今は彼に教えられたパスワードの秘匿回路を使い2人で現状の確認が行われている。それによると襲撃があったのは会談の後らしく、カガリの事を直接把握している訳ではないがそれらしき人物がMSに乗ったこと、そして軍に保護されたと言うことだった。

 

 

「それじゃあ彼女は今ここに?」

 

【いや、それなんだがね…】

 

 ここまで淀みなく紡がれていたデュランダルの口が止まる。こういうときは大体あまりよくない報せがあるときなのだ、キラは若干の失望を心に覚えその続きを待つ。

 

【恐らくアスハ代表である人物をそのボディーガードをザフトとして保護はした。問題はその場所だ。彼女の乗ったザクは中破しこのアーモリーワンで唯一着艦可能な艦に着陸許可を求めたのだが…】

 

「それが今日お披露目予定だった新型艦、ミネルバと言う訳ですね。」

 

【そういうことだ。そしてミネルバはここにはいない。現在は強奪されたセカンドシリーズの奪還任務についてもらっている。】

 

「……そこまで話していいんですか?」

 

【なにがだね?】

 

 

ーー恐らく嘘はついていない

 

 

 だからこそその正直さが逆にキラに猜疑心を作った。一体なぜここまで他国、しかも同盟国でもなく中立の自分に本来なら機密中の機密である情報をペラペラと話してしまう?

 公明正大である、そのことが逆に疑う余地を作るとは皮肉な思考をしているとキラは自分の考え方をそう評価した。

 

【ああ、軍事機密、ということか。そんなことは些細な物だ。私はどうせ全てを公表してしまうからね。あの三機も既に実用段階だ、そう遠くないうちに世界に向けて発表する予定だったから今更君に隠すメリットなどどこにもないということだ】

 

「そう…ですか。」

 

 納得するしかない。彼の話していることは全て理に叶っている。なぜかふと疑ったがそれは深読みだという公算の方が遥かに大きい。

 キラは一度湧いた感情を投げてフラットな姿勢でデュランダルの話に耳を傾ける。

 

 

【それで…だ。提案があるんだが…】

 

「何ですか?」

 

【いや、ちょっとした話だ。恐らく君はこのままアスハ代表の身の安全を確保するべく追いかけるのだろう?良かったらそのついでにこちらの新型機奪還の手助けをしてくれないかね?あれがどこの所属かは知らないがわざわざこちらの領分にまで入り込んできて奪っていくなど尋常ではない。放っておけば間違いなくようやく安定してきた世界に爆弾を撃ち込むことになるだろう。…これはプラントの代表としてではない。この世界の一員としてのお願いだ。】

 

「……」

 

 言っていることに間違いはない。この画面の向こうで頭を下げるデュランダル議長がどこまで知っているのかは定かではないが、その言葉通り放置して良い問題ではない。それは確かだ。

 

 だがそれではオーブの理念である他国同士の争いに介入しない、という観点上ではどうなのだろうか?恐らくこれは世界中のトップニュースになってもおかしくはない。その時にオーブ理念の象徴的存在である自分が思いっきり介入していたとしたら?オーブ国民に走る動揺は小さいものではないだろう。

 

 どちらも簡単には選べそうにはない。 

 

 

「(こんな時にカガリだったらどうするんだろう…)」

 

 最初に浮かんだ考えはそれだった。いまこのコックピットに座っているのがオーブ代表として必死に活動し続けている彼女だったら?それを考えれば自分のやるべきことも自ずと見えてくるのではないか…?

 

 

 

 

 

「……分かりました。」

 

 キラの出した答えはイエス。

 

【頼めるかね?】

 

「ええ、ですが条件があります。」

 

【いってみたまえ。】

 

「僕が介入するのは3機の奪還のみです。他の事には一切手は出さない。そして今回の出来事、そしてこのやり取りはあなたと僕、そして今追っているミネルバクルー以外には公表しないでください。それが出来ないのなら僕はカガリをミネルバから降ろし次第即離脱します。」

 

【……分かった。約束しよう。】

 

 

 ここで動かない、という選択肢は彼女なら絶対に選ばない。それがキラの出した結論だった。

 理念は確かに大事だし守るべきものだ。その信念があるからこそ人は誇りを持って闘える……だが世界が争いの渦に巻き込まれるのを防げる力があるのに指をくわえて見ていることが正しいとは思わないし、たとえ理念にそぐわないものだとしてもやるべき事だ。

 

「(仮にこの判断が間違っているとしても僕は……全てを背負う。)」

 

 

「それでは官制に繋いで現在のミネルバの位置を教えてください。直ぐに出ます。」

 

【すぐ手配しよう…協力感謝する。】

 

 

 正解なのか、間違いなのかはわからない。だがキラは信念を持ってその判断を下した。

 

そうして飛び立った彼がミネルバにたどり着いたのはそう遠くない時間のことだった。

 

 

 

 

 




どうもです。

なかなか出会わないなこれ…

それではまた。評価、感想、お気に入り登録お待ちしております。


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集う運命

「良い調子だ。うん、ザフトの最新鋭って言ってもこんなものか。拍子抜けだね。」

 

【大佐、あまり気を抜きすぎないように。】

 

「分かっているさイアン、仕事はこなすさ。慎ましくな。」

 

 

 現在も戦闘中……のはずなのだが諫めるように話しかけてくる母艦であるガーディ・ルーの艦長であるイアン・リーに答えるその男の態度は休暇中に自宅で優雅にティータイムを過ごしている人物のそれに近いものだった。

 

「おおっと!そんな簡単には当たるわけにはいかないなあ!」

 

 その余裕はたとえ敵MSに照準を合わせられビームを撃たれたところで変わることはない。

 当たらなければ問題ない、そう言いたげに完璧な機体制御で愛機であるエグザスを駆る。

 そうしてまた笑みを浮かべるが外からその素顔を伺い知る事は出来ない。仮面に包まれたその顔は輪郭の動きから大まかな感情を読み取ることが出来る程度だ。

 こんな外見だがその実力、人望は本物であるからまた面白い。

 

 地球連合軍第81独立機動群ファントムペイン、地球連合軍の中でも数が限られ重要機密の一つである強化人間、エクステンデットを率いる彼の名はネオ・ロアノークと言った。

 

 

【ネオ!あいつやっちゃって言いよね!】

 

【戦艦潰しなんて腕が鳴るぜ。】

 

【ネオ……終わったら褒めてくれる?】

 

 

「はいはい、わかったから落ちつけお前達。アウル。OKだ。思いっ切りやってこい。スティング、あまり不用意に近づくなよ?あれはまだまだ牙を持ってるからな。ステラ、ああ。もうちょっと頑張ったらな。」

 

【【【了解!】】】

 

 

 ーーまるで仲の良い弟妹だな。

 

 殆ど同じタイミングで入った通信に手早く答えるとそんな日常的な光景を思い浮かべた自分に苦笑する。

 そんなことはあり得ないというのに。

 

 だが案外子供というのはあっているともネオは思った。彼等の外見は10代後半だがその心は純粋、まだ何も知らない子供だ。……だからこそ僅か数時間前に3人で数百人の敵兵を死に追いやってもあんな風に無邪気に笑っていられるともいえるのだが。

 

 

「頭が痛くなってくるな……」

 

【は?何か異常が?】

 

「いや、そういう訳じゃない。ただこちらの事情だよ。」

 

【あまり感情移入し過ぎないように。あれら、は兵器です。普通に考えれば疲れますぞ。】

 

「ああそうだな。」 

 

 

ーー感情を読まれるとは随分焼きが回ったもんだ。

 

 全てお見通しのようなイアンの回答にネオはやれやれと心の中で苦笑する。

 最初はどこまでつまらない男かと思ったがそれはどうも思い違いだったらしいと改めて関心する。もしかしたらいいコンビになれるかもしれないと…イアンがどう思っているかはネオには知るよしもないが。 

 再び無機質に飛んでくるビームに対応していると状況が動いた。

 

 

「やるじゃないかイアン!これで奴らは袋のネズミってやつだ!」

 

 対応していたトリコロールカラーのMSもその異変を察知したから焦ったかのように後退していく、さっきまでは一方的に攻めてくれたが今度はこちらの番だ。

 時間をかけた仕込みの成功を喜びながらも油断はない。目的は元々MSだけだったかが少し欲張るのも有りだろう。

 

 追撃を掛けながらその成果を見る。

 ザフトの誇る最新鋭艦ミネルバ、今日が初陣という事もありまだまだ綺麗に輝いているその船体は大きな小惑星の地面に押し付けられていた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 デブリ帯をセカンドシリーズ3機を強奪した部隊を追って進むミネルバ、その速度は流石に最新鋭という出力を誇っており交戦に入るまでは順調だったのだ。だからこそ、追撃しているのは自分達という意識からか気付いたときには全てが手遅れだった。

 

「はめられた!」

 

「ええ!?」

 

 ネオがその成果にほくそ笑んだその時、絡め取られたことにも気付かずにいたミネルバの艦内でいち早くその事態を察知して叫んだ男がいた。

 

「そうみたいね……これを抜け出すのはかなり……」

 

 同じように事態の深刻さに気付いたのか艦長のタリアも苦虫を噛み潰したような表情で考え込んでいる。

 ミネルバは危機を迎えていた。

 

「どういうことですか?アレックスさん?」

 

 官制を務めるメイリン・ホーク……現在出撃中のルナマリア・ホークの実の妹でもある……が何が起こったのかわからない、という表情で問いかける。

 それに対してアレックスと呼ばれた青年は努めて冷静に、かつ危機の重大さを伝えられるように思案してから答えた。

 

「ブリッジからも幾筋のワイヤーが見えるだろ?敵艦を追っているうちにあれの配置がミネルバでは抜けられない大きさの密度になってしまったんだ。恐らくあれがどんどんと幅を狭めてミネルバの動きを制限するだろう。そうして最終的には……」

 

「……!あの小惑星に叩きつけられるってことですか!?」

 

「残念ながらその通りだ。皆衝撃に備えろ!後数分もしないうちにコントロールを失う!!」

 

 アレックスの予想通りその知らせを聞いたクルーが安全を確保する頃にはミネルバの機体は大きめの小惑星に縛り付けられていた。

 がっちりと食い込むワイヤーは特注なのかミネルバのパワーをもってしても引きちぎるのは困難だった。この瞬間ミネルバは宇宙に浮かぶ的に成り下がった。

 

 

 

「グアッ!!」

 

 アレックス本人もその衝撃に船内を転がり回る。

 様々な経験を積んできたが流石に航行中の戦艦で地面に叩きつけられるという経験はない。 

 生き残ることが出来たのなら今後の話のネタになるかもしれない。普段そんなジョークを考えたりするような性格ではないが何故か今回に限ってはそう思った。それほど状況は絶望的だとアレックスは睨んでいた。

 

「シン!レイ!ルナマリア!全機戻って艦の援護を!このままでは沈みます!」

 

 早くも冷静に戻ったタリアが通信機を通じて指示を出撃中のMS隊に飛ばす。

 それは正しい判断だとアレックスも思った、逆に言えばそれしかないとも言うことができるが現時点で出来ることなどそれくらいしかないのだ。

 

「この艦の武装は!?」

 

 急いでこの状況の打開策を考えねばならない、アレックスはそう感じていた。MS隊の帰還はあくまでも対処療法だ、こんなにでかい的が止まっていては防ぎきることなど出来はしない。撃沈までどれだけあるのか?そう考えると少しでも大口情報が欲しかった。

 

「教えなさい!今は猫の手でも借りたいの!」

 

「は、はい!タンホイザーに40mmCIWS……」

 

 とは言ってもアレックスはザフトの軍人ではない。どこまで教えて良いものかと戸惑うクルーだったがタリアの鋭い叫びが飛ぶ。

 艦長である以上タリアは戦況から目を離せない。とにかくここから抜け出す方法は任せた、そう任せられたかも同然の指示だった。

 

 

 

 

「これしか……ないか。」

 

 あまり乗り気はしないがこれぐらいしか策は思い浮かばなかったがこれしかない。武装、艦のオプションパーツ、その全てを聞いた上でも現状を打開できるアイデアは少ない。そう感じたアレックスは覚悟を決めた。このままでは艦そのままが落ちてしまう。それだけは避けるべきだと判断した。

 

「艦長!」

 

「なに!?今手を離せないからそのまま伝えて頂戴!」

 

「予備燃料タンクをパージしてください。一気に切り離してそれをミサイルで破壊すればこの小惑星をえぐる程度の威力は出せるはず……それと同時に出力を全開にしてその爆風に乗って加速、このワイヤーごと引きちぎって離脱しましょう!」

 

「ば、バカをいうな!」

 

我に帰ったかのように副艦長を務めるアーサーがそれは無謀だと止めに入る。

 

「この超至近距離でそんなことをすればただではすまないぞ!下手をすれば自爆、仮に成功しても動力源に重大な欠陥が生じたらその後なにもできないぞ!」

 

「そんなことは分かっています!」

 

 ……今必要なのはそんな正論ではなく、生き残るための手段だ! 

 そう叫ぶが流石に二の足を踏んだかクルーの意見はアーサーのそれに傾きつつあった。艦長であるタリアはまだ判断こそ下していないがかなり迷っているようにも見える。

 

 ーーくそ!万事休すか!

 

 アレックスはこの判断は受理されないと判断した。

 こうなったらいっそのこと自分の正体を明かしてでも……

 

 そう思い変装の為につけていたサングラスに手を伸ばす、……するとそこで異変に気がついた。今の今まで酷くなる一方だった爆音が完全に止んでいる。それに異常を感じたのはアレックスだけではなかった。

 

「シン!?一体なにが?」

 

【分かりませんよ!けど突然全機引いていって……】

 

MSに乗っているのであろうシンと呼ばれた少年も困惑した表情を浮かべている。となるとなにか撃墜したとかいうわけでもないようだ。それなら一体何が…?そのアレックスの疑問をさらに深めるかのように敵は更に行動に出た。少し距離をとると各武装を乱射、ミネルバとの間に小惑星の破片でバリゲートを作ったのだ。

 

 これはまるで追撃を受けて逃げているようではないか?

 一度逆転した立場が再び元に戻ったかのような行動にアレックスも混乱した。

 

 一体……何がしたい?

 

 

 

「こちらに接近する機体あり!識別番号は……オーブです!」

 

「オーブだって!?」

   

 あまりの急展開にミネルバ全体が唖然としていると突然メイリンが叫ぶ。 

 アレックスの混乱はここに極まった。なぜ、オーブの機体がここにいる?そもそもそんな機体があるのか?

 その混乱は数分後。思わぬ形で解けることになる。

 

【こちらオーブ軍所属、フリーダム、パイロットのキラ・ヤマトです!ミネルバ聞こえますか!?】

 

「キ……ラ……?」

 

 なんで……お前が?

 

 見慣れた機体、聞き慣れた声にアレックス・ディノはアスラン・ザラに戻っていた。

 

 

 

 

  




キラにもシンにも視点あてないと難しいですね…

オチとしてはネオが直感でキラ、というか格の違う相手が来るのを予測したということです。

今度こそキラとシンが出会う……はず。

それではまた!



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邂逅

「どうもグラディス艦長。キラ・ヤマトです。今回はデュランダル議長との合意の元参戦しました。あくまで僕個人としての意志による参加でありオーブ軍としてではないということをまずは確認してください。」

 

 

 ミネルバのクルーが注目する中、明らかに格式が高い軍服に身を包んだ女性と青年が相対する。

 

 簡潔に、それでいて意図ははっきりと伝わるように。

 オーブ軍准将としてではなく、1人の人間としての行動だということを強調するように。

 まだ少年の面影が残っている……にも関わらずどこか悟ったような達観した憂いを帯びた瞳が特徴的な青年、キラ・ヤマトは警戒心を持ったままそう告げた。

 

 

 

「分かっておりますわ。ヤマト准将、今回の件はザフトという組織として准将とは何もなかった。それに相違ありません。」

 

 

「助かります。」

 

 

 多分この人は大丈夫な人だ。  

 キラは握手を求める手に応えながらこちらの内情を汲み取った返答をする彼女についてそう思い少し自分の中にある警戒レベルを一段階下げた。

 この2年様々な軍人を見てきたが一目でわかるようなプライドと、支配欲求に駆られたような軍人とは違う。それがキラの、タリア・グラディスと名乗る彼女に対する第一評価であった。

 

 

「それでは行きましょうか。議長が貴方をまっています。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 小惑星にその船体を括り付けていたアンカーを取り除き自由を取り戻したミネルバだったが、今キラと握手を交わしている艦長であるタリアが下した決定は撤退だった。既にセカンドシリーズ3機を奪取した部隊。そしてその母艦である正体不明の艦ーーボギーワンの反応はロストしていてその後の追跡は不可能だという判断だった。

 インパルスパイロットのシン・アスカを含め中にはこの判断を不服とした者もいたがその抗議には一切声を傾けずにミネルバはそのまま帰投。今はまだ生きていたドッグ内で修理が行われている。

 

 そして……現在議長滞在用に準備されたVIPルームでキラ、タリア、そしてプラント代表であるギルバート・デュランダルの三者による非公式会談が始まろうとしていた。

 

 

 

「申し訳ありません議長、セカンドシリーズの奪還は叶わず更にミネルバも深手を負いました。これは全て艦長である私の責任です。」

 

 タリアが扉が開くのとほぼ同時にまず最初に議長に対する謝罪を口にする。結果から言えば目的は達成できず、ザフトとしてはただ痛手を負っただけである。彼女が取った手段は分からないがもしかするとこの場でペナルティが言い渡されてもおかしくない、キラはそう読んでいた。

 

 

「いや、良いんだグラディス艦長。そもそもこのような事態を招いてしまったのはザフト全体の失態でもある。元々あちら側としては念入りに準備を重ねた上での実行だろうし君だけを責める話ではない。先ずはクルーに1人の犠牲者が出なかったことを幸運と捉えるべきだ。」

 

 

「ですが……」

 

 

「私が良いと言っているんだからそれで良いじゃないか。この借りは今後君が艦長として働いていくうえで返してもらう。それで手打ちだ。」

 

 

 だがデュランダルの出した結論は、実質的にはおとがめなしと同等のかなり寛大な処分だった。

 タリアも驚いたような表情を浮かべるがそこで謝罪は終わりだと強引に話が打ち切られたためそのまま何を言うこともなかった。

 

 

「君にも迷惑を掛けたね、キラ君。せっかく2年前の英雄、そして最強のパイロットである君とフリーダムというコンビの力を借りたというのに。」

 

 

「僕が着いた時には既に正体不明部隊は撤退していましたから特には。……あと議長、出来ればその呼び方で呼ぶのは……」

 

 

「ああ、そう言えば君はそう言う呼ばれ方をするのが嫌いだったね。」

 

 

「ええ。」

 

 

 大戦の英雄、そう呼ばれるのをキラは嫌っている。

 いくら華やかな言葉で誤魔化そうとも、どれだけ人を救おうとも、自分の手で殺めた人を蘇らせたりすることは出来ない。それが戦争だと言われてしまえばその通りなのかもしれないが自分の手は血塗られている。その事実から逃げよういうという気持ちは毛頭なく、それと同時に賛美されるのもキラは受け入れる気はなかった。

 

 

「それは済まなかった。だが君の力を借りてよかったと思っているのは本当だ。おそらく君がいなければミネルバは墜ちていただろうからね。どうも報告によると敵が撤退したのは実に不可解な状況だったようだし……しかしその撤退の数分後に君が救援に来たと聞いて納得した。彼らは何らかの方法で君がくることを察知したのだろう。それで辻褄があう。」

 

 

「ですがそれは。」

 

 

「分かっている。ミネルバはまさしく最新鋭だ。そのミネルバよりも速く察知するということはどれだけの技術をあのボギーワン、そしてその大元が持っているかわからない、ということだからね。全く悩ましいものだ、ユニウス条約違反のミラージュコロイド使用というだけでも厄介だと言うのに。」

 

 キラの懸念に同意したのかデュランダルは沈痛な面持ちになる。

 キラも引っかかっていたのだが、フリーダムの速度なら通常戦艦のレーダーがその存在を感知してから離脱するまでには充分な余裕を持って辿り着ける。だというのにキラが見たものは括り付けられたミネルバとそれを剥がそうとするミネルバ所属のMS隊のみだった。

 ということはだ、それだけで判断するのは早計だが今回の強襲部隊はなんとか均衡を保っている世界のバランスを崩すような一歩先の技術を所有している可能性があるということに繋がるのではないか?この懸念は消えそうになかった。

 

 

 

 ーーもちろん例外はある。

 

 

 今回の件がその例外によるものとは思えなかったがキラはある2人のことを思い出した。ナチュラル、コーディネーターの違いどころの話ではない、本当に通じ合い技術の範疇を超えた存在のことを。

 

 ムウ・ラ・フラガ、そしてラウ・ル・クルーゼ、彼等の互いの共感、察知は言葉では説明できないものがあった。そしてキラもクルーゼとは本来有り得ない共感を体感したことがある。目の前にいないのにいるような、聞こえるはずがないのに聞こえる、そんな感覚だ。だがそれはないと分かってもいた。

 2人とも2年前の決戦……あの激戦を極めたヤキン・ドゥーエの闘いで命を落としたのだから。

 

 

「まあそれについてはおいおい私達も動いて解明するとしよう。それではキラ君。そろそろ本題に入ろうか。その本題なのだが……」

 

 

 肘をテーブルに付き議長が少し身を乗り出す。

 

 

「そうですね。僕達は今回セカンドシリーズ3機が強奪され、一連の行動があったということは感知していませんし、もちろん参加もしていない。そしてプラントの政情不安を試みてこの事実の公開はもちろん行わない。こちらとして執る手段はこれで大丈夫ですか?」

 

 

キラとしても恐らくこういう話が主題になるだろうなと感じてはいたので事前……言ってもデブリ帯からここにたどり着くまでの間にフリーダムのコックピットで考えた即席のものだが……に考えておいた回答をすらすらと述べていく。

 

「驚いたな。もしかしたら君には政治家としての才能もあるのかもしれないな。」

 

 

 それに対して心底驚いたように目を見張りながらデュランダルは賞賛の言葉を贈ってくる。 

 これが彼の望む満点に近い答えだったのだろうとキラはそう判断した。

 

 

「お言葉ありがとうございます。そしてこちらからの条件なのですが……」

 

 

「もちろんこちらも分かっている。さっき君と話した内容にプラスしてアスハ代表の訪問の件もその事実自体を消すなり、もしくは何か理由を付けた公式訪問、という形にしよう。」

 

 

 対するデュランダルの答えもキラにとって満点に近い答えだった。

 これでオーブ代表としてこのアーモリー・ワンを訪問していたカガリ・ユラ・アスハ、カガリに対して無駄ないちゃもんがつけられる可能性は極限まで減ったとみて良い。事実がどうあれ世の中には面白おかしく憶測を呼ぼうとする人間が大量にいるのだ。

 

 

「そうだ……失念していたのだがアスハ代表の容態はどうなのかね?あまり重傷てはないということだが。」

 

 

「脳震盪を起こしているのと少し出血がある程度見たいです。今はアスランがついているので」

 

 

 そうか、と議長が安堵の声を漏らす。

 緊急避難としてザクに乗り込んだアスランとカガリは戦闘に巻き込まれたというのはキラも聞いていたが負傷したというのは想定外の事態だった。

 ただ軽症であったことが救いであり、それについてザフトや議長に何か求めるつもりはなかった。

 

 

「そして、アスラン・ザラ……か。彼がいたからこそその程度ですんだのだろうし彼にも感謝の念を伝えておかねばならないな。あの3機相手にたかが量産型のザク1機で対応するなど無謀の極みだと思ったものだがまさか機体まで残して生還したのだからね。彼もまたその名に恥じない、というわけか。」

 

 

「軍からは手を引いているとの事ですが彼の状況判断力を未だに一級品だと思い知らされましたわ。あのデブリ帯に阻まれ絶対絶命な状況でも彼は的確に判断した上での策を提示してくれました。」

 

 

 アスラン・ザラ、カガリのボディーガードとして同行した彼はどうやら緊急事態に際して自らの素性を明かしたらしい。プラントでは色々と面倒になりかねない立場の彼がそんな行動に出たと言うのはキラにも驚く事実だったが、そのアスランの話題になったとたんここまで黙っていたタリアも賞賛の言葉を述べる。

 

 

「彼……アスランも闘っていますから。」

 

 

 政治なんてしたこともないのにカガリを支えるために見知らぬフィールドで必死に闘っている、その親友の存在はキラにとっても誇りに思える存在であり、そしてかけがえのないものだった。

 

 

「それは間違いないだろう。だが……苦言を呈したいわけではないのだが、彼の闘う舞台は間違っているのではないのだろうか?」

 

 

「……どういうことですか?」

 

 

 今日この会談の中で始めて否定、疑問の言葉を発したデュランダルに間髪入れずに聞き返す。

 デュランダルのその言葉にはなにかやるせなさと、そして今までにない冷たさが混じっていた。

 

 

「アスラン・ザラ、彼が今を精一杯に闘っているのは分かっている。だが私は思うのだよ。それを上手くできる人なら他にもいるだろうし、もっと彼を最大限に活かす場所は他にあるのではないか?とね。例えば君のようにMSに乗れば更にその存在は大きくなるだろうし、そうでなくても軍人としての彼は正しくザフト最高傑作だ。オーブの若い軍人を育てる立場につけば将来は安泰だろう。キラ君、私はこう思うのだよ。人は生まれながらにして自分に向いている才能というものを誰しもが持っていて、そこを見つけ、そこで活きるのが最も幸せなのではないかと。」

 

 

 

 君はどう思う?そう問いかけるデュランダルの瞳は何かを試そうとしているように見えた。

 

 

「確かにその通りかもしれません。誰しも人は自分に向いているものを探すものですし、だからこそ自分探しなんて言葉が生まれた、とも考えられます。けど……それでも選ぶ自由はあるべきだと僕は思います。そしてアスランはカガリと共に寄り添う道を選んだ。単純な数値としてみる効果は確かに低いかもしれない、けどそうして自分で選んだ道を間違いだとは思いません。」

 

 

 ーーそれだからこそ僕もここにいる。

 

 

 自らが選んだ道だからこそ人は歩いていけるのだ。

 全て流れるままに過ごした日々があるから分かる。キラはこの2年、それを信じつづけていた。

 

 

「ふむ……参考になったよ、ありがとう。それではそろそろ終わりにしようか。代表とアスラン君はザフトが責任を持って地球圏まで送り届ける。君が希望するなら宙域に入ったところからフリーダムで護衛すると良い。タリア、君も戻って大丈夫だ。」

 

 

 その言葉がどう届いたのかはキラには知る由もない。結局表情を変えることもなく会談の終わりを告げたデュランダルに頭を下げてタリアと共にキラは部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「おわっ!」

 

「きゃ!」

 

「……!?大丈夫かい?」

 

 

 部屋を出ると同時に目の前にいた2人の赤服をきた少年と少女にぶつかりそうになる。自分より年下に見えるその2人が妙に印象に残った。

 それも当然かもしれない。2年前から准将という地位にこそいるもののキラもまだ18才、軍人としてはまだまだ最若年層の部類にはいる。加えて地位が地位なので普段から接する相手はほぼ年上だ。こういう機会はこの時こそあまり深く考えなかったが実際のところほとんどない。

 

 

 

「アハハ……ごめんなさい。あの、キラ・ヤマトさんですか?」

 

 

「えっ?うん、まあそうだけど……」

 

 

「やっぱり!それじゃあアスランさん」

 

 

「こらルナマリア!、シン!余計なことしないの!」

 

 

「ゲッ!?艦長まで!おいこら行くぞルナ!すいませんでした!」

 

 

「あ、ち、ちょっと引っ張んないでよ!」

 

 

 軍服に似つかわしいとはとても言えないミニスカの少女……ルナマリアが何か尋ねようとするがタリアの一喝と、その場にいたもう1人のシンと呼ばれた少年に阻まれ何が言いたいのかもわからぬまま退場していった。

 キラはその姿をただ呆然と見守ることしかできなかった。

 

 

「あの……」

 

 

「悪かったわね、ヤマト准将。あの子達はうちの期待の星でね。あの引きずってるほう……シンがインパルス、色々聞いてきた方がルナマリア、あの赤いザクのパイロットなのだけれど。」

 

 

 本当にまだまだ子供だから困る、とタリアは頭を抱える。

 その隣でキラはなるほど、と心の中で納得していた。ザフトの赤と言えばエリートの証、そう簡単に着れるものではないということはアスランから少しだけ聞いていた。

 そしてタリアの言った機体は一目見ただけで分かるくらいには他の量産型に比べ遥かに滑らかな挙動を見せていた。それを操っていたのが赤服、それもかんに期待の星と言わしてる逸材なら納得がいく。

 

 

 

「貴方がザフト所属ならみっちりしごいてあげてほしいけれどそういうわけにはいかないものね……ごめんなさい。それじゃあ私もそろそろいくわ。部屋は分かる?」

 

 

「はい。ありがとうございます。グラディス艦長。」

 

 

「タリア、で良いわよ。それじゃあまたいつか。」

 

 

 

 ーー医務室にでもよっていくかな。

 

 タリアを見送ったあとカガリとアスランを訪ねることに今後の方針を定め廊下を歩く。今日は色々とあったからいい加減見知った人に会いたいしゆっくりしたい。

 振り返ると朝苦過ぎるコーヒーを飲んだのが遙か昔に感じる、その後宇宙にでて、会談をして、久し振りに目まぐるしい1日だった。

 

 

「シンとルナマリアか。」

 

 

 ボソッと名前を呟く。何の理由が有るわけではない。なんとなく、どうしようなく彼等2人のことは忘れられそうになかった。ただそれだけだ。 

 

 

 

 

シン・アスカとキラ・ヤマト、これが始めての邂逅であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとですね……とりあえず今作のキラがどんな感じなのかはそろそろつかんで頂けたかと。
 次回はシンに視点を戻してある地点から、そしてユニウスセブンへと向かっていきます。それ以降はオリ展か、それとも原作準拠か、まだ迷ってます。

それではまた!

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思惑

「なにやってんだ、あいつ?」

 

 

「さあな。」

 

 

 見てはいけないものを見てしまったようないたたまれない気分になり隣を歩く長髪下に諦めにも似た表情を見せる数少い同期、レイ・ザ・バレルに見解を求めるが残念ながら聡明な彼にもこの状況を説明するというのはかなり難解なようである……

 

 ーー着てるのが赤じゃなきゃ今頃は警備員が駆けつけて適当に処理、最悪尋問室行きだろこれ。

 

 

 そんな物騒なことを思いながらレイと全く同じタイミングで溜め息をつく。

 場所はアーモーリーワンの敷地内でも最高級に警備が厳しいVIPルーム……なにを隠そうあのプラント代表ギルバート・デュランダルその人が滞在している部屋の前、もちろん防音も完璧。そんなことはこのアーモーリーワンに招かれ、現場マニュアルを少しでも読んだザフト軍兵士なら確実に分かるはずのことだ、だというのに……目の前の少女はまるでドアの隙間から物音が聞こえるんじゃないか?いや絶対に聞こえる!と言わんばかりに必死に四つん這いになりながら聞き耳をたてているのか。そして明らかに適正な長さではない短さのスカートの下から下着が丸見えになっているのはふれていいのかだめなのか。

 

 

「頼むよレイ、今年度士官学校主席の力ってやつをみせてくれよ……ってあれ?」

 

 

 少なくとも俺の手に負えることじゃない。そう判断しシンは全ての処理を隣にいるレイに全て押し付け……もとい、委ねようとした。俺が何かしたところでどうせ火に油、まず意味はない。

 そう思い顔を上げたのだが話し掛けたはずの相手は既にその場から姿を音もなく消しており現状シンは誰もいない虚空に話しかけるただの頭の可おかしい人以外に表現のしようがない状態になっていた。

 

 

 ーーあの野郎……逃げやがった!

 

 

 反射的に辺りを見渡すがお目当ての姿はない。そして近場に横道にそれる通路はたくさん。

 こうなると導きだされる答えは一つしかない……責任を押し付けようとした相手はいち早くそれを察知しいち早く先手を取った、というところだろう。

 周りに人は誰もいない、スルーするというのも非常に魅力的な手段だ。だが今に限ってはそれはきつい。悪手としか言いようがない。

 未だに奇行をやめる様子がないルナマリアを見ながらシンの頭はグルグル回っていく。なにせ今回の初陣、結果からすればこちらの完敗なのだ。セカンドシリーズの機体は奪われミネルバも傷付いた。こんな状況で更に問題を起こしてどうする?それこそ大変なことになりかねない……

 

 

 「おい、何やってんだよルナ」

 

 

 「あ、シン!、何って盗み聞き?」

 

 

 「あのなー……」

 

 

 てへっ、と舌を出すルナマリアにシンは空いた口が塞がらなかった。盗み聞きってなんだよそんな軽く言いやがって。

 止める、同期の暴走は同期である自分が止めるしかない。時間にすれば1分とたっていないだろうがシンの中ではそれよりも遥かに時間のかかった脳内での問答の後下した判断は特攻。様々な対処パターンをシュミレーションした。だというのに初っ端から予想を遥かに越えるフランクさで返され完全に気勢をそがれてしまった。

 

 

「で、レイは?」

 

 

「あいつなら呆れてどっか行っちゃったよ。お前もこんな馬鹿馬鹿しいことしてないで早く戻るぞ。」

 

 

「ふーん……レイはいないんだあ……よし」

 

 

 レイの不在を確認するとルナマリアはいたずらっぽい笑みを浮かべると同時になにやら制服のポケットをガサゴソとあさりはじめる。そしてイヤホンを耳に付けると集音機とおぼしき機械を分厚い扉に接続し再び盗み聞きに精を出し始めた。

 

 

「おい!やめろよこのバカ!こんなんバレたらどうなるか」

 

 

 ーー今度こそただじゃすまない。これは盗み聞きなんてかわいいものじゃない。立派な盗聴行為だ。

 血の気がひくと同時にルナマリアを扉から引き離そうとするが彼女はいーやーだー、と頑として離れようとはしない。一体この華奢な身体のどこにこれだけの力が隠されていたというのか、女子とはわからないものだ。

 

 

「大丈夫だって!それにシンは興味ないの?議長とあのキラ・ヤマトの会談よ?そこらへんの国家機密よりよっぽどビッグニュースよ!」

 

 

「知るかそんなもん!!それよりもお前のやってることのほうが俺からしたらよっぽど大きな問題だ!!」

 

 

「こんの分からず屋ー!」

 

 

「どっちがだよ!?」

 

 

 実のところ興味があるかないかと聞かれると答えはイエスだ。キラ・ヤマトと言えば恐らく、間違い無く現時点で世界最強のMSパイロットであることに疑いの余地はない。それに加えて数々の武勇伝は枚挙にいとまがない。なるべく前回の戦争については公平の見方が出来るようになりたいとザフト、オーブ、連合の3つの視点からの大戦の歴史を学んだがその圧倒的な力は否定のしようがなかった。

 砂漠の虎と呼ばれた男との戦い、まさに戦局を1人でひっくり返すという荒業をやってのけたアラスカ防衛戦、何時までも語り継がれるであろう伝説のヤキン・ドゥーエ、そして……全てが壊れたオーブでの対連合戦。

 怨みが無いわけではない、あの戦いに関わっていた人は正直なところ全員に憎いという気持ちはある。特に平和などというできもしないあいまいな言葉で国を潰したアスハには憎しみしかない。だがそれ以上にあの時本当は何があったのか知りたい。もうあんなことを繰り返さないために……直接話せるものなら話してみたい。

 率直にシンはそう思っていた。

 

 だがそれはあくまでその話が出来るなら、の話だ。すくなくとも今の会話の流れでそんな昔話に彼と議長が興じるとは到底思えないし仮にその話をするんだとしても処罰のリスクをおってまで聞きたいとは思わない。

 

 

 

 

「男がそんなちっさいこと言わない……やばっ!?」

 

 

「は?」

 

 

 シンを威嚇していたルナマリアが突然慌てたように扉に取り付けていた機材を取り外し、こっちよろしく!とコードの一部を押し付けてくる。

 ほんの数秒前までの死んでも外さないというような態度から突然の豹変に戸惑いながらもなすがままに焦るルナマリアに従うシンだが結果的にその判断が成功だと知るのにはそこから時間はかからなかった。

 

 

 

「ええ、それじゃあ失礼しま……っ!?」

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「おわ!」

 

 

 

 シンのポケットの形が変わるほど中に色々な物が押し込められるのとほぼ同時。ルナマリアが一体どこからそれを取り出したんだと聞きたくなる鞄に色々放り込んで横にそれる通路へと投げたのも同じくほぼ同時。絶対に開かないものとして2人の目の前にそびえ立っていたVIPルームの扉は突如、なんの前触れもなく内側から襲いかかるように開かれた。

 

 

「え……と……大丈夫?」

 

 

 急な出来事に飛び退いたシンとルナマリアだが一瞬で遠くまで移動する事など出来はしない。扉を開けると目の前に奇怪な光景が広がっていた茶髪のいかにも大人しそうな青年はシンの予想通り困惑の表情を浮かべどうしたらいいかわからないととりあえずの謝意を表している。この時点でシンとしては何か言い訳でも考えてさっさとこの場から早く立ち去る為の算段を頭の中で必死に考えていたのだが、そのせいもあってかそもそもの元凶であるルナマリアが隣でむしろ活き活きとして目を輝かせていたことに気付くことができなかった。

 

 

 

「アハハ……ごめんなさい。あの?キラ・ヤマトさんですか?」

 

 

「え?うん、まあそうだけど……」

 

 

「それじゃあアスランさん」

 

 

 この瞬間、とっさにシンの身体が動いた。

 何か考えあっての行動ではない。ただとりあえずこの何故か状況も見ずにテンションが上がっている少女を放置しておいたら大変なことになると察知したのだ。

 

 

「こら!シン、ルナマリア!余計なことしないの!」

 

 

「おい!こら行くぞルナ!すいませんでした!」

 

 

「えっ?ちょっと待って……」

 

 

 

 恐らくキラ・ヤマトであろう青年の後ろから現れたタリアから逃げるようにシンはルナマリアをそれこそ首根っこを引っ付かんで強引にその場を後にする。

 その場にとどまっていても待つのは手加減なしの厳しいお説教であるのは考えるまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外と普通なんだな。」

 

 

「なにがよ?」

 

 

 

 いつまでも引きずっている訳にもいかずどうしようかと考えたが、そう言えば夕食を取るのがまだだったということで食堂へそのまま移動してシンとルナマリアは遅い夕食を迎えていた。

 目の前に座るルナマリアは不機嫌の一言である。それは数分に渡りずっと首をつかまれていたことを考えれば至極当然のことでありいまも右手でフォークを操りながら左手で首筋をさすりパスタを食べているという状態である。シンとしても少しやりすぎたかという後悔はあり気まずい空気を打破することができなかったのだが……口を開けばルナの反応は案の定素っ気ない。

 

 

「あのキラって人。もっとこう何というか……オーラみたいなのがあるもんだと思ってた。」

 

 

「まあそんなもんでしょ。同じ人間なんだから。」

 

 

「そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラ・ヤマトか……」

 

 

 誰もいなくなった部屋の中でギルバート・デュランダルは一人呟いた。

 憂鬱そうに溜め息をついた彼の手に握られているのは白のナイトとルークの駒。

 

 

「クイーンを守るナイトは未だ健在。いや困ったな、ここまで意志がしっかりとしているとは想定外だよ。」

 

 

 デュランダルからするとキラ・ヤマトとの面会の結果は芳しい物とはいえなかった。2年前、プラントの実権を握るためには最大の障害であったラクス・クライン、彼女を排除するために色々と手を回してなんとか成功したのはよかったのだがその代償も大きかったと言わざるを得ない。彼は爆弾だ、それも最上級の。それがまともなバックアップを手にすれば敵に回した状態で事を運ぶのは簡単ではない。それを見越してできることならばこちら側に引き込みたいという思いもあったがせいぜい五分五分が良いところだ。

 

 

「せめてフリーダムだけでも……それは無理か。それでは彼女が黙っていなかっただろう。フリーダムがあってこその彼だ。」

 

 

 考えたところで結局現状が今のところの最善なのだろう。悪手は一つとして打っていない。なにをするにもここからがスタートだ。

 

 チェス盤の上にルークを倒す、そして連鎖するように立ててあったクイーンも。

 道はいくらでもあるのだ。そう思い直しデュランダルは不敵に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「ユニウスセブンが軌道を変えたですって!?」

 

 

「その通りだタリア。」

 

 

 翌日。タリア・グラディスに舞い込んだ報せは昨日の襲撃がかわいく見えるほどの大惨事になりかねないものになる可能性を秘めたものだった。

 ユニウスセブン……かつて血のバレンタインによって引き起こされた悪夢の地、そのコロニー全体が今や廃墟となりその中には今も回収出来ていない死体が数万眠っているといわれる正にコーディネーターにとっての誓いの地、今は数百年周期の安定軌道に入ったと言われていたがその軌道が突然ずれ、地球に向かい始めたというのは人が自力で起こせる最悪の事態を遥かに越えている。

 

 

「連合は……」

 

 

「まだなんの動きもないのだよ。これは大変なことだ、もしもこのまま地球に直撃するなんてことになればそれは人類の絶滅につながりかねない。」

 

 

 そんなことは言われなくてもわかる。ユニウスセブンが直撃すればその直接的な破壊力はもちろんのことその後に起こる二次災害で地球は死の星になるのはどうやっても避けられない。終わらない死の冬、津波、地殻変動、どれも人には耐えられないのは歴史が証明している。

 

 

「では私達がやるべきです。ザフトだの連合だのは今は些細なものです。」

 

 

「もちろんだ。君ならそう言ってくれると信じていたよ。」

 

 

 タリアの答えを予想していたように満足げな微笑みを浮かべるとデュランダルは立ち上がる。そしてこれを見たまえとタリアにとある髪の束を手渡した。

 

 

「オペレーション・メテオ。急拵えなのは否めないが今我々ができる最善手だと私は思う。タリア、君とミネルバにも力を借りたい。」

 

 

 

 

 

 

 




どうもです。遅くなりました。

感想は次話書いたところで買えずシステムにしてましたがそれだと遅くなりすぎるので今回からは早めに返します(_ _)


それでは評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃん待ってます!


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ユニウスセブン

ユニウスセブン、それは忌まわしきC.E史上最悪の戦い、2年前のヤキン・ドゥーエ戦役の引き金となった「血のバレンタイン」の舞台となった悲劇のコロニー。

かつてそこは一般人もすむ緑豊かな農業コロニーだった。

そのユニウスセブンが何故連合、そして大量の核兵器に狙いをつけられたのかは現在でも定かではない。だが現実としてC.E70年2月14日に核攻撃は実施されユニウスセブンは壊滅。住人データの称号などから公表された犠牲者数は24万3721人、更にその遺体の多くはその後の戦争の悪化による情勢不安等を背景に今でも放置され、人類の悪夢の墓標としその残骸とともにこの2年宇宙を漂っていた。

近づくものはおらず、見捨てられた地。だというのにそれが地球へ向けて移動を始めたという事実は世界に衝撃を与えた。

軍、一般人、ナチュラル、コーディネーター、何もかも分け隔てなくだ。

そして、そうして突如訪れた人類の危機を回避すべく動き出したものも少なからずいた。

 

 

「ユニウスセブンはかつての血のバレンタインによる核攻撃により多少破損しているとは言えその大きさは未だ直径数十kmはあり、これを破壊する作業は非常に困難と思われますが本艦はプラント本土から破砕専用器具メテオブレイカーを搭載したジュール隊と合流しその任務に挑むことになります。主な任務としては……」

 

 

「随分むっちゃくちゃになりそうな任務だなまた。」

 

 

「当たり前だ。コロニー1つを粉々に砕こうというのだからまともなやり方では到底叶わん。」

 

 

シンとレイもその動き出した者の一員だった。天井から吊り下げられたテレビから流れるタリアの声を聞きながらパイロットスーツに着替え固形ゼリーを一口。

呆れたように溜め息をつきながら緊張した様子を隠せないシンと何時もと全く変わらない様子のレイ。

対称的な様子の二人だが醸し出すその集中力はどちらも変わらぬレベルで高まっていた。

 

 

「なんだよレイ、お前こんなときでも少しも緊張しないのか?ほんとにクールというかなんというか……」

 

 

「緊張?なぜそんなものをする必要がある?」

 

 

「なんでってそりゃ……」

 

 

特に理由はないがそもそも緊張に理由なんてないだろ!と思ったが何かしら議論になった場合シンがレイに勝ったことは今までとして1度もない。基本完膚泣きまでに叩き落とされ最悪半泣きにされたことも恥ずかしながら1度や2度ではない。

そういうわけでなにか奥歯にものが挟まったような釈然としない気持ちを抑えながらシンは反論を断念する。

 

 

 

「俺達はただ任務をこなすだけだ。それに今回の任務は議長特命のものと聞いている。彼が言うのなら間違いはない。」

 

 

「ああー……そうだな。」

 

 

まためんどくさいスイッチを押してしまったと、議長という単語を出した瞬間にわかに声に力がこもりはじめたレイにシンは思わず苦虫を噛み潰したような顔になる。

レイ・ザ・バレルという人間は普段どこまでもクールな男である。感情が表に出ることはほとんどなく趣味なども本人曰くない。だというのに何事もやらせてみればなんでも出来てしまうというのがなんとも言えない妙な劣等感をシンやその他多数の人間に抱かせていたのだが……とにかくそんな自分の世界を崩さない男にも例外というものがある。それがプラント代表であるギルバート・デュランダルだ。

デュランダルはその政治家としての有能さから高い支持率を維持し、更にそのルックスからアイドルのおっかけのような集団がつくような言わば時代の寵児と言うべき存在である、がレイの彼に対する感情は単なる尊敬を遥かに越えている、とシンは個人的に感じていた。

他の人の会話に首を突っ込むことはないが話題が議長になると別、議論があれば眉1つを動かさずに論破するが議題がそうなら理論をかなぐり捨て声をあらげて真っ向から対決する。正直なところそれがなにか倫理上問題のある変な感情だとしても驚きはしない。

 

 

 

「それよりもさ!あの人達は来るのか?キラとアスラン!」

 

話を変えようと思ったらちょうどいいものがシンの頭のなかにポッと思い付いた。

昨日のルナマリアとの一件以来キラとアスランを誰も見ていない。メカニック集団やルナマリアといったゴシップ好きでさえも見ていないということは本当にどこにいるのかわからないということなのだ。

直接的に被害を受けるのは自分たちプラントではなくオーブにいるあんたらだろうに。

 

本人が気付いているかどうかは定かではないがシンの言葉には若干の苛つきがまじっていた。

 

 

「シン、流石に敬語を使え……そうだな。聞いたところによると二人とも参加するらしい。だが先にオーブの代表を大気圏突入まで送り届けてから来るということだ。昨日から姿が見えないのはそういうことだ。」

 

 

「アスハか……文句の1つでも言ってやろうと思ってたのに。」

 

 

「お前と会うことなく帰ってくれたことに本当に感謝しているよ俺は。」

 

 

 

結局レイを抑えるために自分の機嫌が悪くなるという本末転倒。

瞬時にいつもの調子に戻ったレイに宥められながら任務開始までの僅かな時間は過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「到着時刻はどうなっている?ディアッカ。」

 

 

 

MS部隊が隊列を組み何一つ遮るものがない宙域を進んでいく。

ユニウスセブン破壊工作特務部隊。そのなかでも一際目立つ白にコーディネートされたグフは自らがその将であることをその乗り手の性格同様痛烈なまでに誇示していた。

その乗り手とはイザーク・ジュール少佐。かつてクルーゼ隊の一員としてストライク含む新型機強奪にも参加。その後はデュエルガンダムを駆り戦場を渡り最後の決戦においては連合の虎の子でもあるエクステンデットの乗る機体を2機撃破した功績はプラントの人々の記憶に新しい。

現在は赤服以上の白服に僅か19という年で昇格。絵にかいたようなエリート街道を進む彼は今回の任務においてザフトが送り込んだ渾身の人材と言えた。

 

 

「はいよ。あと2時間ちょいってとこ?ミネルバもその辺りで来るってさ。」

 

 

そんなイザークに無線越しながら全く敬意の欠片もなくのんびりと対応するヘルメット越しにも褐色の肌が目立つ

青年。

彼の名はディアッカ・エルスマンといい2年前は赤服としてイザークやアスランと共に戦ったザフトの軍人であり、特にイザークとの親交は深い。なぜそんな彼が今では赤ではなく一般兵と同じ緑を着ているかというと様々な紆余曲折があったのだが……現場にいることが出来るだけましというのがディアッカ本人の感想でもある。

 

 

 

「んで?どういうことよイザーク。」

 

 

「なにがだ?」

 

 

「今回の件。これ、偶然とは思えないぜ?」

 

 

「知らん、今更俺達にはどうしようもないことだ。」

 

 

「まあそれもそうだけどさ、なんかきな臭いんだよなあ……」

 

 

ディアッカの指摘と全く同感だったイザークは無線を切ると眉を潜める。

どう考えても今回の一件はおかしいのだ。ユニウスセブンがあれだけの質量を持っているのにも関わらず放置され続けた原因は戦争だけではない。専門機関の分析で数百年単位の安定軌道に入ったと言われ人類に危害を与える危険がないと判断されたこともあるのだ。だというのに……

 

 

「2年、たったの2年でこんなことが有り得るのか……?」

 

 

そんなことあるわけがない。

答えは明白だ。専門ではないがこれは常識レベルの知識があれば十分に分かることである。

だが現実としてユニウスセブンは動き出し、今も地球へ向けて動いている。

となるとだ。これが自然現象だと断定することがどこの誰にできるというのだ?

 

 

「……だが」

 

 

その可能性は極限まで低い、絶対にないとイザークは信じたかった。

ユニウスセブンを「人為的」に動かそうとすればそれにかかるエネルギー、コスト、技術は莫大なものとなる。それこそ一介のテロ集団ではどうすることもできないほどに。

もしもそれが出来る人がいると言うなら……

 

 

「連合か……いや、それなら狙いはプラント。自らの本拠である地球に落とすなど有り得ない。ならまさかザフトか?だがそれならば何故議長はこんなにも早く具体的な策とともに俺達を動かした?そもそも彼は融和派のはず……それなら第三勢力のほうがまだ現実味がある……」

 

 

最低でも一国を動かすだけの力の軍事力。それぐらいなければ出来るはずかない。だがそれだけの力のある陣営はどこも決め手に欠ける。

 

 

「なにも起こらないでくれよ……」

 

 

一気に膨らみ始めた不安。単体だけでも危機的だというのにそれよりも遥かに大きな影がチラホラと見え隠れしている。

結局イザークがその後無線を入れることは任務が始まるまで1度もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「ここからは僕とアスランは一緒に行けないけど……大丈夫?」

 

 

「バカにするな!全く私のことを何だと思っているんだ!?お前は?」

 

 

「……っ!」

 

 

頭にキーンと響く声に思わず閉口する。

キラとしては一応気を使ったつもりだったのだがどうもそれは逆効果だったらしい。

 

「お前ってやつは本当に人の扱いは下手くそというかなんというか……カガリ、俺達が戻るまでプラントは任せたぞ。」

 

 

「ああ!お前達もしっかりな!」

 

 

「なるほど。」

 

 

どうやら自分にはない人の機敏を見抜く才能が親友にはあるらしい。

キラはアスランのカガリに対する手懐け方を見て心底そう思った。

兄妹、もしくは姉弟かどちらかはわからないが同じ日に同じ場所で生まれたにも関わらずいまだに何かするたびに彼女の逆鱗に触れてしまうキラとしてはアスランのこういう器用さはとても羨ましいものであった。

 

 

 

 

 

「ところでだ。ミネルバとの合流時刻は大丈夫なのか?」

 

 

「うん、大丈夫だと思う。……それよりもアスランは大丈夫なの?」

 

 

「……機体の事か。問題はない。流石にジャスティスと比べると酷いもんだが破砕作業の支援くらいなら問題ない。」

 

 

「そう……」

 

 

「俺からしたらお前のほうがよっぽど心配だ。ほんとにいいのか?ユニウスセブンが向かっているのは地球にも伝わってるし監視衛星からバンバン映像も送られてる。俺はこの機体だから問題ないがフリーダムは……」

 

 

不安そうに言う親友の言いたいことはキラにもよく理解できた。

あくまでも自分はオーブの軍人。それも戦争批判、平和の国であるオーブの象徴的存在であるフリーダムに乗っているのだ。

そのフリーダムがザフトと協力している映像が地球に流れればどうなるか……

それは想像に難くない。

 

 

「わかってる……けどそれでもかまわない。もしもこの状態を見逃したらもっと大変なことになるから。」

 

 

たがそれがわかっていてもキラに躊躇はなかった。

確かに政治的側面を考えれば自分もカガリと共に地球に降りるのが無難だ。事実その道もしっかり開かれていたのだから。

アスランに話してはいないが今回の件もデュランダル本人から決断はキラ本人に任せるという風に委ねられていた。その上でも敢えてキラは自分で協力する道を選んだのだ。

 

全てを背負う。その覚悟が向けられる対象は別にプラントだろうと連合だろうと関係はない。そしてその先に起こる人の変化も。

 

 

「そうか。だが無理はするなよ。ここでお前が倒れたらどうにもならん。それに……今回はどうもおかしい。」

 

 

「分かってる。」

 

 

アスランに念押しされキラはこくんと頷く。画面越しのアスランの表情から考えていることは一緒だとキラは分かった。

2人が知るよしもないがイザークが抱いたのと全く同じ違和感をキラとアスランは抱いていた。

 

あまりにも不自然な事象。ことイザークに比べればその方面に対する学のあるキラの疑念はその知識量に比例して大きかった。どう考えてもおかしい。物事に100%なんてことはないのだがそのくくりで今回の事態が許容されるのならなんの前触れもなく明日地球が爆発したとしてもそれが不自然でないというのにも等しい。それだけのものだとキラは判断していた。

 

アスランがどこまで具体的なイメージをもっているのかはわからないけれど少なくとも出来る限り外にも警戒しておかなければならない。

 

出来ることならば使うことのないように祈る2年前に封印された数多くの武装、そのすべてはオールグリーンの表示を示している。

 

 

 

 

 




どうもです!

そろそろ違和感を持つ読者の方も出てきたのではないでしょうか?

ここら辺から物語は違った方向へ……

それではまた!

評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!

あと二人なので投票してくれると嬉しいです!




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不協和音

「ユニウスセブンが地球に向かっているだと?」

 

「ええ、プラントのギルバート・デュランダルから全世界へ向けメッセージが入りました。我が国の監視衛星からの映像でも確認出来ており恐らく本当かと……」

 

「くそっ!アスハの娘がいないこんな時に!!」

 

 

 何度も執務室の中ををぐるぐると動き回っていた初老の男。オーブ五大氏族の一つセイラン家の家督、ウナト・ロマ・セイランはイライラした様子で近くにあったゴミ箱を蹴り上げる。その中からは大量の紙屑がカーペットに散乱したがそんなものを気にとめる余裕はウナトにはなかった。

 

 

「各国の対応はどうなっている!?」

 

 

「規模が規模なので国単一で行動を起こそうという所は今の所……連合の動き待ちと言ったところでしょうか。」

 

 

「やはりそうなってしまうか……」

 

 

 予想通りの秘書の答えにウナトは唇を噛みしめる。ユニウスセブンと言えば十分な質量を持ったコロニーだ。それが地球に落ちるようなことがあれば今までの歴史上に起きた隕石の落下などとは比べ物にならないレベルの災害が起こることは容易に予想がつく。

 

 

「その連合の動きを把握することは」

 

 

「残念ながら。やはり私達は友好国というくくりではないので。」

 

 

「ぐうう……落ちてくるその瞬間まで私達に出来ることはないということか……」

 

 

 だから連合との友好を深めておくべきだと常日頃から言っているのだ!ウナトは今は宇宙にいる小娘に向けて心の中で罵倒する。

 現在の代表、カガリ・ユラ・アスハは先代代表であり父であるウズミ・ナラ・アスハの意思思想を色濃く継ぎどの陣営に対しても理念である中立を頑固なまでに打ち出してきた。

 ウナトとてその理念自体に異論はない。戦争などないにこしたことはないのだから。

 

 

「だが綺麗事だけでは生き残れんのだと言うのに……!」

 

 

 しかしカガリのそれは夢見がちな子供の理想論に過ぎないとウナトはばっさりと切り捨てていた。如何に技術に自信があろうともオーブは世界を牛耳る大帝国ではない。むしろ物資に限ればせいぜい中堅国家レベルなのだ。

 そのオーブが生き残る為には多少の迎合、折り合いをつけることは必要だ。

 それがウナトの持論だった。

 

 

「ウナト、気持ちはわかる。だが一つ線を越えてしまえばそこからはもう止まることの出来ない下り坂だ。そうなればオーブの理念は世界に荒波に簡単に押し流されることになるだろう。お前の言うとおりオーブは大国ではないのだから。」

 

 

 前対戦終結後、次は自分の番だと待っていた所へ軍部の後押しも経て突如台頭してきたカガリと公開討論の場を持った時の彼女の言葉だ。

 全国民が注目した会談で自信満々に言い放ったこの言葉。

 オーブの国民に選挙権はない、だが世論というものは確実に存在し、それは選ぶことが出来る数少ない者の感情にも影響する。結局前任のウズミの支持率が高かったこともありカガリの世襲が認められ、反対の意を示したのは五大氏族の中ではサハク家のみだった。

 そうしてウナトは実質的なNo.2である宰相の地位についたが代表との差は歴然だ。

 

 

「こんな面倒ばかり……」

 

 

 自分の意見など通りはしない。

 その葛藤はこの2年、徐々に大きくなっていた。

 

 

「とにかく急いで関係部署に連絡をとれ!軍、警察どちらも総動員だ!!一般人を早く地下シェルターへ移動させろ!それと車を!」

 

 

「車ですか?」

 

 

「ああそうだ!直ぐに国営テレビ局へ向かい緊急放送で私の口から国民へと伝える!」

 

 

「ですがそれではカガリ様の不在が!?」

 

 

 その言葉に秘書の顔がサッと青くなるがウナトは彼女に詰め寄りたたみかけた。

 

 

「四の五の言わずにさっさとやれ!緊急事態だ!!」

 

 

「はっはい!」

 

 

 その様子に気圧されたか秘書が駆け出していく。それを見てウナトは次の手を考え始めたが一つ言い忘れていた事を思い出し秘書を呼び止める。

 

 

「少し待て」

 

 

「なんですか?」

 

 

「ヤマト…カガリ様についているヤマト准将とも連絡をとれ。降下まであと数時間はあるだろう。万が一それまでにカガリ様が戻られるようなら彼女がやれるに越したことはない。」

 

 

「……わかりました。」

 

 

 そうして今度こそ部屋にはウナト1人になり椅子にどっと座り込む。 

 もう一つ悩みの種があるのを失念していた。、とウナトの頭痛はひどくなる一方だった。

 キラ・ヤマト准将。フリーダムのパイロットにして前大戦の英雄。加えてカガリ・ユラ・アスハの実の弟ときた。このある意味巨大な爆弾も今はオーブにいない。

 

 

「~~!!」

 

 

 いてほしいときに限っていないとはなんと不便なものなのか。

 外交問題に発展しかねない現状に考えれば考えるほど袋小路にはまっていく感触をウナトはおぼえていた。

 カガリの不在だけでも面倒だというのにフリーダムまでいないのがバレでもすればそれは間違いなく最悪の事態だ。下手をすればユニウス条約不履行の疑いを掛けられ、主権問題になっても文句は言えない。

 

 

「となると……」

 

 

 自分が出て行くのは得策なのか?ウナトはこう考えた。自分が出て行くと言うことは即ちカガリの不在を暗に認めることになる。それに加えてフリーダムの件まで露呈してしまえば問題は大きくなる……

 

 

「気は進まんが彼女に協力を仰ぐしかあるまい……」

 

 

 重い溜め息をつき2年前カガリやキラと共にオーブへやってきた彼女の滞在先を書いておいたメモを探す。対外的な露出が昔に比べ減ったとは言え未だその影響力は絶大だ。彼女をオーブ政府公認で表に出せば世間の目はそちらに向くはず。

 

 

「……これだ。」

 

 

 メモに書かれた連絡先に電話を掛ける。今の所悪いことしか起こっていなかったウナトだったがどうやらまだ運が残っていたらしく3回も呼び鈴がなるころには電話に応対した彼女はウナトの願いをあっさりと快諾した。

 

 

「ええ……分かりましたわ、ウナト・ロマ・セイラン。本来ならどこかの政治に肩入れしてと言うのはあまりそぐわないのですが今回は別です。引き受けさせて頂きます。」

 

 

「そうですか!それは助かります!それでは迎えを寄越しますのでそのまま会見場へ……」

 

 

 簡潔に用件を伝え電話を切りすぐに職員を迎えに出す。これでひとまず最悪の事態は避けられるのではないかとウナトは安堵した。

 ラクス・クライン。反戦の歌姫の声は人々の目を釘付けにしてくれるはずだ。

 

 

「大変そうだねお父さん。」

 

 

「……ユウナか。」

 

 

 大方整理がついたところで話しかけられ顔を上げると先ほど秘書が走っていった際に開けたままになっていた扉の位置によく見知った青年の姿があった。

 見るからにいい育ちをしたのだろうというのがよくわかるその青年はユウナ・ロマ・セイランと言いウナトの実子である。

 

 

「ああ、随分と怒ってたじゃないか。あれじゃあ部下に愛想つかされちゃうよ?」

 

 

「……お前の専門は経済だから分からんだろうが外交にはいろいろとあるんだ。」

 

 

 大袈裟な手振りを交え近づいてくるユウナに対しウナトの対応は手厳しいものだった。

 頭は確かにキレるのだが自分の思い通りにならない、自分の一存だけではどうしようもない問題に対しての対応力はあまりにも乏しい。なまじ裕福で思い通りになることが当たり前になる家だったので持っている世界観が狭いのだ。

 それがウナトのユウナに対する評価であった。

 だから今までも外交問題には口をださせなかったし面倒だからあまり耳にも入れさせなかったのだが……どうやら今回は迂闊だったと頭に血が上った自分を後悔した。

 

 

「全く、カガリもヤマト准将も活動的すぎるよね。だからこんな時にオーブにいないなんてことになるんだ。」

 

 

「カガリにも考えがない訳ではないだろう……」

 

 

「だけど気にくわない。そうでしょ?」

 

 

「何か言いたげだな。」

 

 

「いいや別に。ただここまで私的感情で動いて国を揺らすのを何とも思ってないような連中が国のトップなのはどうなんだろうね。もっと安定させる方法はいくらでもあるのに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー 

 

 

「合流ポイントまで残り10分を切りました。インパルス、ザクファントム、ガナーザクウォーリア、各機のパイロットは所定の位置で待機してください。」

 

 

「もう何時でもいけるって。」

 

 

 館内に鳴り響くメイリンの声にシンは1人突っ込む。既に機体の整備は万全、バッチが開けばすぐにでも飛び出せる。

 

 

「シン、ルナマリア、今日の任務の確認をしておくぞ。」

 

 

「了解。」

 

 

「りょーかい!」

 

 

 その時通信がONになりレイとルナマリアの見慣れた顔が画面に映る。いつものごとく仕切るのはレイ。特に決まっているわけではないがこれはもう暗黙の了解とやらだ。

 

 

「それでは説明だが……簡単に言うと俺達がやるのは本土から向かってきているジュール隊の破砕作業の補佐だ。彼らはメテオブレイカーを積んできている分極端に武装が少ない。」

 

 

「そもそもメテオブレイカーってなによ?」

 

 

「あ、俺もそれ気になる。」

 

 いつものように簡潔に要点のみを話すレイにルナマリアが質問する。シンとしてもそこは気になっていたので賛同するがその瞬間レイが僅かながらむっとしたように見えたのが妙に残った。

 

 

「質問なら全部終わった後にしてほしいのだがな、ルナマリア。」

 

 

「えー、良いじゃない別に。疑問を残すのはよくないって言うし。」

 

 

「ハア……分かった。メテオブレイカーというのは採掘用の汎用土木器具の改良型だ。ただそれの威力を常軌を逸したレベルまで押し上げている。結果惑星の内部だろうと滞りなく抉れるという訳だ。ジュール隊はそれを複数持ってきていてユニウスセブンをバラバラに砕く。」

 

 

「えーと……あれか、地球にあった石油採掘?とかそんなのの応用だろ?」

 

 

「なにそれ?」

 

 

「そういうことだ。」

 

 

 見たことが有るわけではないが地表凡そ数千mまでドリルで抉る技術はかなり昔からあったらしい。恐らくそれに類似したものなのだろう。

 シンの疑問はあっさりと解けていた。ルナマリアはまだピンときていない様子であったが。

 

 

 

「それもあってジュール隊には補佐が必要だ。それを俺達が担う。そうしてユニウスセブンを何分かの1のサイズに小さくしたらその後はミネルバがタンホイザーを中心に全武装を使用して更に細かくする。どれだけ役に立つかは分からんが俺達もやれるだけやるべきだろう。そこまでやったら後は大気圏に任せるしかない。」

 

 

「そういうことね……」

 

 

 最後の最後が運というが気にくわなかったがそれはどうしようもないことなのだろう。ともかくやれるだけやる。

 シンはもう一度深くヘルメットをかぶり直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが……ユニウスセブン……」

 

 

「資料で見たことはあるけど生で見るとやっぱ違うわね。」

 

 

「これを砕くって正気か?」

 

 

「やるしかないだろう。そら、ジュール隊もおいでだ。」

 

 

 

 正に壮観、今のシンの頭の中を支配していたのはこの言葉だった。

 大きい大きいと聞いていたがこれはもう惑星だ。こんなものを人の力で砕こうというのだからもう目眩さえしてくる。

 

 

 

「あれがメテオブレイカーか」

 

 

 視界にMS隊が入るとその姿がぐんぐんと大きくなる。2機で1つ、メテオブレイカーと思わしき巨大なドリルを持った彼らの姿は見る見るうちに大きくなり数分もしないうちに向かい合う形になった。

 

 

「ジュール隊隊長のイザーク・ジュールだ。今回は協力感謝する。」

 

 

「ミネルバ艦長のタリア・グラディスです。ジュール少佐、こちらこそよろしくお願いします。」

 

 

 少し詰めの話をするかもしれないからONにしておけと言われた回線からタリアの顔とそして初めて見る顔が映る。

 イザーク・ジュール、その武勲は有名だがどのような人物なのかは全く知らず顔もシンはほとんど知らなかった。

 

 

「最後はそちらの火力次第の面もありますから……それで、このひよっこ達がミネルバ隊の?」

 

 

「ええ、今年最高のルーキーと自負していますわ。」

 

 

 画面越しにイザークの眼光がギラッと鋭く光り詮索するように3人を見渡す。その視線にシンは悪いことなどしていないのにどこかバツが悪いような、そんな気分になるのを感じた。

 

 

「2年前は俺もこんなのだったとは信じがたい……おい、奪われなかったインパルスに乗ってるのはどいつだ!?」

 

 

「は、はい!自分であります!ジュール少佐!」

 

 

 なんで俺にふるんだよ!?

 慣れない敬語に加えて背筋を伸ばしながらシンは一気に緊張が高まっていくのを感じた。これは直感だがこの人は多分理不尽だ。しかも正論を盾にくるから反論ができないタイプの。

 そんな人に目を付けられたら後に待つのはストレス地獄である。

 初見の人にこんなことを思うのは失礼極まりないと思ったがそう思ってしまった。

 

 

「お前がねえ……その機体がどれだけ重要なもんか分かってるんだろうな?」

 

 

「承知しておりますです!」

 

 

 ルナマリアが噴き出すが視界に入ったがそれを気にする余裕など今のシンにはなかった。

 

 

「ならいいが。そのインパルスは今後のザフトの象徴になるかもしれん機体だ。それだけは肝に命じておけよ。」

 

 

「了解です!」

 

 

「ふむ。ところで……」

 

 

 激励されたのかどうなのか。シンが測りかねているといざという時の眼光はまた更に鋭くなりまるで仇敵を呼ぶかのように刺々しい言い方である人物の名をつげた。

 

 

「アスラン・ザラはどこにいる?あいつには散々言いたいことがあるのだが。」

 

 

 




どうもです!

ちょっとセイラン家の事情にもフォーカスを当てております。

どんなやつにも正義があるというスタンスです。

いよいよユニウスセブン崩壊へ向け皆合流し本格始動。次回をお楽しみに!

評価、感想お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!感想ほしいです!

それではまた!!


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逆鱗とスイッチ

「これより作業にとりかかる!グズグズするなよお前たち!!インパルスのパイロット、お前は俺と来い!グフとザクは向こうだ!』

 

 

「……了解です。」

 

 

 名前くらい覚えてくれよ。

 そう言いたいのをグッと堪える。ここで言い返したところで何か変わるわけではない、というよりも怒られて終了だろう。

 どちらかと言えば感情が高ぶりやすい、言い換えればケンカっ早い人間であるシンだがそれは分かっていたのでここまで無難な返事に終始していた。

 

 

 

「あの、ジュール少佐……」

 

 

「なんだ?」

 

 

「先程アスランがどうのと言っておられましたがお二人は仲が宜しいのでしょうか?」

 

 

「あん!?」

 

 

「……!?」

 

 かと言ってこんな気まずいというかギスギスとした空気の中にいるのは気が進まない。

 そう考えて話題を振ったつもりだったがどうやら失策だったらしい。

 子供や女子が聞いたらそれだけで泣くんじゃないかと思うほどトゲトゲしさ全開になったイザークの声にシンはやっちまったかと心の中で呟いた。

 

 

「あいつと仲がいいだと!?断じてありえん!!……おいお前、二年前は一体どこにいた。」

 

 

「オーブであります。」

 

 

「オーブ……?となると移民か。道理でそんなことを真面目に聞けたわけだ。ラウ・ル・クルーゼという男は知っているか?」

 

 

「名前くらいなら……ザフトの元エースであったということ以外はわかりませんけど。」

 

 

 激昂から突然冷静に。

 ジェットコースターのようなテンションの上げ下げに辟易しながらもそれを表には出さないように細心の注意を払いながら対応する。

 せっかくまともな会話が出来そうな空気になったのにわざわざ自分から崩しにいくのだけは願い下げだ。

 

 

 

「まあそうだろうな。一般人が知っているのはその程度だろうよ。確かにクルーゼは優秀な軍人だった。そして俺とあいつ……アスラン・ザラは士官学校を同期で卒業した後に揃って彼の部隊に配属された。そして前大戦中期、とある重要任務につくことになった。」

 

 

「その任務とは?」

 

 

「話くらいは聞いたことがあるだろう?今のお前たちとは全く逆の状態……連合の新型機体強奪任務だ。」

 

 

「噂に高いG強奪部隊……」

 

 

「その通りだ。そして俺とあいつはそれから暫く同じ戦場で戦った。それだけだ。」

 

 

 ラウ・ル・クルーゼ、24才という若さで黒服にまで上り詰めたエリート中のエリート、ということ以外はほとんどシャットアウトされているザフトの前大戦の闇の一つ。

 ザフト入隊に際してその名を調べようとしたことはある。だがその名の高さに比例せず全くと言っていいほど彼本人の情報、経歴は出てこなかったのだ。

 

 

「ラウ・ル・クルーゼって一体……」

 

 事実、今イザークの語ったザフトによる連合のG強奪、この出来事もそれ自体はかなり有名な出来事である。

 だがそこにクルーゼが絡んでいたということは初耳だった。

 

 

「お前たちのように若い世代に何も伝えない、というのはフェアではないと思うのだがな……んっ?!」

 

 

 何か遠くを見つめたかとおもうと何か言おうとしたイザークだったが突然鳴り響いた警報音にかき消される。

 そしてその音はインパルスのコックピット内にも同じようにけたたましく響いていた。

 

 

「モビルスーツ!?10……15……なんでこんなに大量に!?」

 

 

「おいディアッカ!!一体どうなっている!?」

 

 

『あー……アクシデント?ちょっとやばいわこれ。機体はザフトの何だけどさ。』

 

 

 イザークは通信機を通じて別方向の指揮をとっているディアッカを怒鳴るように問いただす。

 そんなイザークのやり方を熟知しているディアッカは特に気分を害した様子もなく返答するがその声は文面とは違い切迫感が漂っていた。

 

 

「ザフトだと…?ここにいるのは俺達だけじゃないのか?」

 

 

『だからアクシデントだって言ってんの。なんのつもりか知らないけどコンタクトはガン無視、しかもこっちを……っと!!』

 

 

 一瞬声が途切れたかと思うと直後に大きな爆発音が響く。

 それを聞いた瞬間イザークとシンは同時に息をのんだ。その音の指し示す内容は軍人ならば誰にでもわかる。

 

 

「交戦しているのか!?」

 

 

『今の聞けば分かるでしょ。なんか知らないけど俺らにユニウスセブン壊されちゃ困るみたいよこいつら……こっちはこっちでなんとかするからそっちは頼んだ!あんま時間もないしこれ、壊されたらもう地球お終いだぜ。』

 

 

 最後にとんでもなく不吉なことを軽い調子で告げたディアッカとの通信はグウレイトォー!という台詞と共に一方的に打ち切られた。

 

 

 

「……~~!話は後だ!とっとと片づけるぞ!」

 

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「10……20……くそ!なんなんだよ!こいつら!」

 

 

 

「ごちゃごちゃ言ってる暇があったら手を動かせ手を!……こいつらかなり訓練されている、手を抜いたら死ぬぞ!!各自持ち場を守れよ!?一番に守るはメテオブレイカーだ!」

 

 

 

 こんな大軍シュミレーションでもお目にかかれないぞ!?

 

 想像以上の多さに驚きながらも順調に撃墜していく。が、それ以上の動きを見せる機体が怒鳴り声と共にシンの乗るインパルスの横をすり抜けていく。

 

 雑魚はさっさと片付けろと周りを叱咤しながらも凄まじい勢いで敵陣を切り裂くイザークにシンは内心舌を巻いていた。

 

 

「これが……大戦を生き残った戦士の力……」

 

 

 自然と口から感嘆の声が漏れる。

 

 はっきり言ってレベルが違う……一つ一つの動作のキレ、機体制御、そして踏み込みの限界点の見極め。まるで自分の身体の動きをそのままトレースしているかの如き動きは今の自分では全く及ばない。

 

 

「……っ!」

 

 

 そこまで思ってしまってから唇を咬む。

 

 

 今、無意識に負けを認めなかったか?

 

 

 否定できない内側からの問い掛けに怒りが湧いてくる。

 

 こんなことでは、何も守れやしない……!

 

 

 守れない、その言葉が脳裏に浮かんだ瞬間、シンの理性は吹き飛んだ。

 

 

「……くっそ!」

 

 

 

 ざわめく心を静めようとするかのようにシンは一直線に敵MSが固まるポイントへと飛び込む。

 

 あの集団を潰せばイザークと戦果は変わらない!…… そんなくだらない意地での行動が命取りになることをシンはまだ分かっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「チイイ!!あの大将機を落とせば!!」

 

 

 シンとは対照的に口汚く目の前を飛び回る敵を罵りながらもイザークは冷静だった。

 多少の訓練こそ受けているようだがそこまでの脅威にはならない。だが問題はその数だ。

 

 

 

「頭さえ崩せば……こっちは少しでも被害を受けたら負けだと言うのに!」

 

 

 これが通常の戦闘ならばここまで迷うこともなかったはずだ。手当たり次第に蹴散らしていけばいい。

 しかし今回は違う。こちらはメテオブレイカーを理想としては一基たりとも失わずにこの戦局を乗り越えなければならない。

 

 だからこそイザークは正直なところ不安を感じるシンに防衛を任せてまで打って出た。

 頭を探すためにだ。こういったゲリラ陣は頭を抑えられると一気にその動きから統一性が失われことが往々にしてある。やはり軍とは違い逃げ帰ったところで責める相手はもういない。そうなると人間の本能である生存本能、それを支える「臆病」という大事な感情が突然表面化するのだ。

 

 

 

「どうした!!ザフトといってもそんなものか!……だろうな、デュランダルに迎合した軟弱者など所詮その程度よ!!」

 

 

「このっ…!」

 

 かくして目的の相手は予想よりも早くに見つかった、のだがここでイザークの中で誤算が生じた。

 想定を遥かに上回ってその相手が強かったのだ。

 

 

「だから先の大戦でも連合を叩きのめす直線までいきながら和平などという……パトリック・ザラの遺志を踏みにじった愚か者どもめが!」

 

 

「大戦の真実も知らぬ愚か者が……!」

 

 シンマイバニューバ、別段クオリティの低い機体と言うわけでもないか取り立ててアドバンテージを持てる機体でもない。だというのにその動きはシンの駆るインパルスよりも遥かに強いだろう。

 互角に近い闘いを強いられながらイザークは思わず舌打つ。

 

 

 これだけの動きが出来て尚且つザフトの機体、そうなれば乗り手が誰なのか大体想像がつく。

 

 

「サトーか……怒りをぶつける場所が間違っている!」

 

 

 戦後の混乱にまみれてザフトも多くの脱走兵が出た。その中にはエース級の活躍を上げた者もちらほらと……恐らく今回の首謀者であろうサトーもその1人だった。

 データベース管理で誰がいなくなったのかは直ぐに割れたこともあり粛清をとの声も上がったがデュランダルは全てが変わったザフトから離れたいと思うのも個人の自由だと敢えて追わないという指示をイザーク達ザフトに下していた。

 だがその指示の結果が最悪に裏目にでたいうことをこの瞬間にイザークは悟らざるを得なかった。

 歴戦の戦士がザフト。そして人類に牙を向く。こんなことはあってはならない。

 

 

 

「んなっ!?」

 

 

 再びビームライフルを構えるべく一旦カメラを横に向ける。

 その時イザークの目に信じがたい光景が飛び込んできた。

 

 

 インパルスが持ち場を離れている……?

 

 

 そこまで離れた訳ではない。だが自衛機能を持たないメテオブレイカーには充分過ぎるだけの隙。

 

 

「あんのクソガキがぁ!!」

 

 

 こうなってしまえば優先順位を変えるほかあるまい。

 

 

 任せる、という判断をした自分への怒り、そして任されたにも関わらずそれを全うしなかったシンへの怒り、全てを一つの咆哮と共に吐き出すと180度旋回しメテオブレイカーへ向かう。

 

 2……3……幸いなことに周りの敵機の数は少ない。これならば数秒で片を……

 

 

「俺に背を向けて生き残れると本気で思っているのか?」

 

 

 

「しまっ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「ザフト機は離れてください!!一掃します!……ターゲットマルチロック……いっけぇぇぇ!!!」

 

 

 色鮮やかな大小多数のビームが空間を埋め尽くす、そうしてその先の射線上にあったものは何もかも例外なく宇宙空間に浮かぶ塵とかしていた。

 

 

 

「一体なんて威力……」

 

 

「これがフリーダムの力……」

 

 

「流石、としか言いようがないな。あれほどの数の重火器を完全に操るとは。」

 

 

 

 その威力を初めて目の当たりにした面々の衝撃は大変なものだった。

 なにせ自分達がてこずり続けた相手がフリーダムの登場後僅か数分で壊滅してしまったのだから。

 ミネルバクルー、および宙域のザフト兵はフリーダムが前大戦の英雄と呼ばれる所以を初めて肌で実感していた。

 

 

「ヒュー、相変わらず派手だねそのやり方。」

 

 

 もちろん全員が全員というわけではなかったが。

 

 

 

 

「ディアッカ……」

 

 

「久し振りだな、キラ、アスラン。なに?また乗ることにしたのか?」

 

 

「成り行きでな、ずっと乗るつもりはないさ。」

 

 

「ふーん……まっいいんじゃない。お前はちゃんとしてれば大丈夫さ。」 

 

 

 約二年振りの再会だが思った以上に話すことがないなとアスランは苦笑した。

 MS越しに対峙するディアッカは全く変わっていないようだったが。

 

 

「イザークはどうした?ここにいるんだろ?」

 

 

「あっちで交戦中。まっ、大丈夫でしょ。あいつはこんな所でやられるようなたまじゃないよ。」

 

 

「なっ…!まだ敵がいるのか!?」

 

 

 まるで全部終わったような空気出して何をしているんだお前は!?

 そういえばそんな性格だったと思いだしアスランは頭を抱える。いくらイザークを信頼していると言ってもこれは全くの別問題だ。

 

 

「そんな!?一体どっちに!?」

 

 

 同じ感想を抱いたのかキラも声を挙げる。

 しかし当のディアッカは落ち着き払ってのんびりと言い放った。

 

 

「まあ落ち着けよ、2人とも……俺は別に一言もこっちが終わったなんて言ってないぜ?」

 

 

 

 

「レーダーに反応!距離60からアンノウン集団、きます!」

 

 

 

「まだいたのか!?」

 

 

「そういうこと。……まああっちも1人で退屈してるだろうし……ミネルバと一緒に行ってこいアスラン。ここは俺とキラで引き受ける。」 

 

 

 

 

 





どうもです!久し振りの更新です!

長らくお待たせいたしました……次回でユニウスセブン編終了になります。
イザークを間接的とはいえ窮地に陥れたシン、今後が非常に恐ろしいですね。


それではまた!

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