ジョジョノ奇妙ナ学園ボツ案シリーズ 見たい方だけ見てください (エア_)
しおりを挟む

没案その1 第二話 千冬と承太郎の仲が悪い場合

タイトルどおり千冬と承太郎の関係を悪くした場合です。

こっちの場合は、互いに本音で言い合い、承太郎はそんな彼女を尊敬していて、千冬は自分のことが嫌いなのだろうと思い込んで距離を置いてる。見たいな感じです。

千冬がネガティブっぽくて書いてる途中自分のネガティブな部分が暴走しそうになり、これ以上はいけないと没になりました。なので途中で終わってます。


日本の空港に、黒いスーツの似合う美しい女性がそこに存在した。大和なでしこを体現していて、さらにこの時代の風潮を象徴するような強い女性という印象が最も多く感じられる。

 

そのスーツの女性。織斑千冬はイラつきを隠せないでいた。

 

そう、今回IS学園に転校してくるはずの人間を乗せた飛行機が未だに到着しないのだ。機長によると、ハイジャックに遭ったのではないか? とのこと。

 

何故言い切れないのかは至極簡単なこと。応答がないからだ。

 

到着時刻を大幅に遅れたドイツ→日本の航空機が一つ存在することが分かるとすぐにコントロールセンターからその航空機に応答を求めた。

 

しかし、返答はなく。何度も回線を確認したが接触も良好、悪いところなど見つからなかった。

 

「・・・・・・ラウラ」

 

千冬はかつての教え子、ラウラ=ボーデヴィッヒの安否を心配した。流石にハイジャック犯に遅れをとりはしないだろうとは思われるが、今回は戦場とはわけが違う。そう、ざっと200人をのせた旅客機の室内での戦闘となるのだ。人を救助するのが最優先であり、まともに身動きが取れない状況でもある。

 

「・・・・・・いったいどうする?」

 

一応、コントロールセンターに赴き、指示を仰いだところ

 

『流石にブリュンヒルデ殿に迷惑はかけられません。我々にも誇りがあります。我々でも手がつけられない時に関して、一時的にこのコントロールセンターの全権限を譲渡します。それまでは一般ロビーでお待ちください』

 

と待機を命じられたのだ。

 

いくらブリュンヒルデであるといっても、それはISに対しての権限が絶対的にあるだけで、飛行機やら軍、自衛隊での権限は客将と変わらない。一時的に中佐の権限が与えられるだけなのだ。

 

「・・・・・・」

 

千冬は考えた。所詮、力を持っていようが、世界の基盤は【変わりはしない】のだな・・・・・・と。

 

そんなとき、ケータイが鳴った。紛れもなく千冬自身のケータイからだ。この緊急事態に誰がかけてきたのだろうかと、苛立ちがさらに増す。

 

相手の名前の表示を見た瞬間に、そのイラつきが頂点に達した。

 

 

 

その頃、我らが承太郎たちはと言うと。

 

「ちっ、厄介なことになりやがったな」

 

「・・・・・・どうしましょう。我々がうかつに動いては、乗客に危害が及びます」

 

「まぁ待ちな。物事ってぇのはだいたいタイミングがある。ようはそのタイミングを待ち、ピシャリと合わせられるかが問題だ」

 

「つまり、【果報は寝て待て】ということですか」

 

そういう事だ。と承太郎はラウラとのプライベートチャンネルを一時的に閉じ、打開策を模索していた。

 

今状況を軽く説明すると、ISを装備した人間によるハイジャックテロである。数は1人。いかにも人を見下しているような女ただ一人だった。

 

「てめぇ等の中に一人。男でISを使える奴がいるはずだ。出てきな」

 

そして、内容は明らかに承太郎自身の身柄確保と来た。これではますます動きづらくなった。何故なら自分が素直に名乗り出たとしてここの乗客員が無事に開放されるとは限らないからだ。本来なら真っ向から潰しにかかるはずの承太郎だが、何も訳の知らない赤子とは違う。もしもISに適合してから一年以内だったら真っ先に手を出していただろう。だが、今の承太郎は違う。ISについてのレクチャーを受け、今の自分の立場を明確に理解している。

 

だからこそなのかもしれない。対応に困ってしまうのは。

 

(俺のISで潰すと一言で言えば簡単だが。こいつが何を仕掛けているかがわからねぇんだ。昔の俺ならともかく・・・・・・今となっては昔の俺が羨ましいぜ)

 

承太郎は、焦りはしないが判断を渋っていた。

 

「出てこねぇなら。この一番前の客から殺して行くんでよろしく」

 

「ひっ、ひぃいいいいいいいいいい」

 

完全に脅してきた。判断が遅れた所為なのか、もう名乗りを上げる以外に選択がなくなった。

 

(・・・・・・やれやれだぜ)

 

そうして、承太郎は昔の自分を思い出しながら立ち上がり、真っ直ぐ武装をしている女の前まで歩き出した。

 

「あん? 何だてめぇ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ゴゴゴゴゴゴッと周囲の空気が震える音が聞こえた気がした。そう、承太郎のその威圧感からなのかも知れない。

 

その姿に女はたじろいでしまう。それは仕方がないだろう。何故ならその体格は圧巻の195cm。それはISに乗っている身としてもたじろいでしまうのは仕方がないのかもしれない。

 

「な、なんつーでかさだよ」

 

 

 

 

「・・・・・・もしもし」

 

[Hey 千冬! 元気にしてたかい? Baby?]

 

「・・・・・・すみませんが、今取り込み中でして」

 

まぁ待て。今は冷静になるときだ。織斑千冬。この人はいつもこんな感じだろう。と頭の中で冷静になろうと勤めた。

 

何を隠そう。相手はあのジョセフ=ジョースターなのだ。

 

織斑千冬がとある事情でドイツにいる時。そこで知り合ったのが出会いのきっかけだ。

 

当初からジョセフは気さくな人間で、とても老人と言う歳には性格から見えなかった。むしろその性格のせいか、年寄り扱いされないので、いつもスタミナ切れに悩まされるほどだった。

 

そんなジョセフが千冬は苦手だったのだ。

 

その理由は互いの性格からだった。

 

織斑千冬は一言で言えば真っ直ぐな性格だった。曲がったことが大の苦手で、その事から得意な武器は剣ただそれ一振りだけだった。だからこそなのだろうか、特化したもので相手を自分の有利な場面に引きずりこみ、剣を叩き込み切り裂く。愚直に真っ直ぐなぶれない性格なのである。

 

対してジョセフといえば。暴力的で気性が激しく、さらに軽い性格をしている。某チョロコットさんが見たら血管ブチ切れものかも知れない。さらに目上の者に対しても関係なく茶化したような接し方をする。

 

そんな曲がりくねった性格に、千冬は苦手意識が酷かった。

 

しかし、そんなジョセフが時折見せる芯の硬さ、垣間見える正義と勇気の心に完全煮に嫌いになれないという本当に何ともいえない感情を向けていた。

 

[HAHAHA そんな事いうなよlittle girl? 俺と千冬の仲じゃあないか]

 

「・・・・・・それで、用件はなんですか?」

 

千冬のスルーにケータイの向こうのジョセフも苦笑い。千冬はイラつきを隠せないでいたのだ。冷静になるって言ったのはどこのどいつなのだろうか。

 

[今日くらいにワシの孫がお前んとこのお嬢ちゃんと空港に着くから、そいつの迎えをよろしくと思ってな]

 

「・・・・・・事前にボーデヴィッヒから聞いています。しかし、承太郎も一緒とは聴いていませんでしたね」

 

[ワシが頼んだんじゃよ。本来なら別の者が付き添いだったんじゃが、承太郎の性格を考えれば、お嬢ちゃんが適当じゃろ? なんせ承太郎のISは]

 

無類の強さじゃ。ジョセフの放った言葉に、千冬は目をまん丸に見開く。そう、彼女がドイツにいたときを思い出しながら。

承太郎がどのような人物だったのか。そして、彼の使うISがいったいどういった代物だったかを。正確に、全てを思い出した。

 

空条承太郎の危険性を

 

「・・・・・・今ちょうど、その二人が乗っている旅客機がハイジャックに遭ったそうです」

 

[ほう、それで?]

 

千冬の情報にジョセフは耳を傾ける。しかし、どういうわけか別段心配ではなさそうな声色をしている。

 

「・・・・・・はい。やつの性格上・・・・・・ハイジャック犯は重傷じゃすみません」

 

[そうじゃな]

 

「何故事前に言ってくださらなかったんですか。言ってくだされば私が直接出向いたものを」

 

 

怒りが込みあがる。危険人物と認識していた存在をこのケータイの向こうにいる老い耄れは野放しにしたのだから仕方もないだろう。承太郎は芯の固い男だが、それと同じくらい頑固でもある。そしてさらにいえばこの青年、非常にキレやすい。キレればすぐに手を出すような印象しか持っていないのだ。

 

[そうすれば小僧はお前さんを無視して一人で帰っただろうな]

 

「それはそうでしょう。奴は私が嫌いですからね」

 

互いの譲歩のお陰か表立って対立をしなかったと千冬は呟いた。

 

[そうじゃあない。千冬。お前はあいつを勘違いしておるぞ]

 

「それは? あんな短気な男のいったいどこを勘違いしていると?」

 

[千冬・・・・・・小僧はお前を尊敬しておる。そんな尊敬している人間をわざわざ自分のために寄越させるわけがなかろうが。小僧はれっきとしたジョースター家の末裔。真に敬意を払っている人間にそのような事をさせる訳がなかろうが]

 




お爺ちゃんのフォローは偉大かもしれない


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二章五話 銀の福音戦前までその一

もしDIOじゃなくて福音と戦わせたときはこうやって入ろうかなとか考えてました。

でもDIO様出すつもりだったし、でも束一人じゃ何にも出来ない、更に彼を止めるにはやっぱり承太郎しかいないと思い没に


 

 

束がそう叫びながら入ってきた直後、あたりは先ほどよりも静寂を強くした。それもそのはずだ。今作戦の方針が決まりそれからという所に邪魔が入れば誰だってそうなる。しかし問題を起こした本人はそんな事関係ないと笑顔のまま千冬飛びつこうとした。

 

千冬は飛んできた束にタイミングよくエルボーを腹に食らわせ、両肘を固めてそのままバックブリーカーを決めた。ジャージ姿の千冬が放ったバックブリーカーに一同唖然とする。

 

「・・・・・・それで、なんのようだ束。しょうもないことならこのままロメロスペシャルを食らわせるぞ」

 

「愛が痛いッ! 愛が! 愛がいだい!!」

 

流石にこのままの体勢でいるのは疲れるためか、束を解放すると先ほどの狼狽した態度などどこへいったのかと思わせるほど冷静な表情で未だ地に両手をついてる彼女を見下ろした。

 

「さっさとしろ。こっちは急いでいるんだ」

 

「だ、だから。紅椿が良いんだってちーちゃん。紅椿は束が作り上げた展開装甲を持つ第四世代型なんだから」

 

「・・・・・・何?」

 

承太郎だけが驚愕した表情をした。そう、実は既に周りの人間は第四世代については知らされていたのだ。

 

さて、第四世代型についての補足を入れておこう。

 

そもそもISとは本来宇宙への探索を目的としたMFS(マルチフォームスーツ)なのだが、軍事目的として転用が行われ、しまいにはスポーツの一環としてその姿を変えていった。そのことからISには自己進化プログラムが組み込まれており、その操縦者の戦闘経験に沿って自らの姿形を変える「形態移行」を搭載されている。

 

その過程の中で、IS自体の世代進化が現れたのだ。

 

兵器としての運用で作られた本来の目的から完全にそれた初期型IS「第一世代」

 

後付武装を用いて戦闘のバリエーションを多彩にする実用型IS「第二世代」

 

搭乗者の意思と接合させた特殊兵器を搭載した試作型IS「第三世代」

 

現在この三種類のISがこの世の中には存在しているのだ。学園で使っている打鉄やラファール・リヴァイブ。そしてシャルロットが使用しているそのカスタムⅡは第二世代。そしてセシリアの【ブルーティアーズ】、鈴音の【衝撃砲】ラウラの【AIC】など、精神力を酷く用いるISは第三世代の分類になる。ちなみに第一世代といえば、白騎士事件での不明ISはまさしく第一世代である。

 

では、第四世代とはいったいどのようなものをさすのだろうか。

 

第四世代の定義というものがIS業界では一部存在していた。

 

それは『装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力の獲得』自律支援装備を有し、展開装甲が標準装備となっている、というものだ。

 

つまりどういうことか、それは『あらゆる戦闘場面においてその場に応じた戦闘を従来の装備だけで運用出来る能力が必要』だということ。昔の兵器を例にあげれば、銃剣なんかはその原型とも言える。近距離及び中距離に適した剣と中距離及び遠距離に適した銃をあわせた全距離をカバーした兵器。それをISで行ったのが理想型IS「第四世代」なのだ。

 

今目の前の天災は、新たな火種をこうも簡単に投げつけてきたのだった。

 

「・・・・・・てめぇ、関係者以外が入ってくるんじゃあねぇ」

 

「喋りかけるなよ暑苦しい。今まで無視決め込んでた癖に話しかけんなよ。それに生みの親である私ほど関係している人物はいないと思うんだけどね」

 

「てめぇの存在なんざ知ったことじゃあねぇんだよこのうすらとんかち。今ここでの関係者はこの旅館にISの研修に来たIS学園の人間のうち、専用機を持つ限られた人数のことを言ってんだよ。さっさっと失せろ。このスカタン」

 

承太郎と束の視線が火花を散らす。片やISの生みの親、片や現世界最強有力候補No1。互いの険悪なムードが辺り一面を覆い隠した。仮にも天才であるのに間違いがない束に頭の回転が鈍いという意味のうすたとんかちと罵れる辺り、流石は承太郎といったところじゃないだろうか。そして、そんな空気に耐えられなかったのか、それとも純粋に疑問に感じたのか、一夏がふと思い出したように声を上げた。

 

「た、束さん。承太郎のISって、俺見たく近接だけだけど、全距離に対応してるし、第三世代みたいなの必要としてないし、第二世代みたいに後付け兵器も不必要って事はつまり箒の紅椿と同じで第四世代ってことですかね?」

 

「何言ってるのいっくん。こいつのISが全方向に対応できるからって、自律支援兵器も展開装甲も持ち合わせていないから第四世代じゃないよ」

 

「そ、そう言えば私たちと2対1をした時、それぞれが相手をしてましたわよね。これで2対2(タイマン)だと仰っていましたし。自律支援はなさっていると考えてもよろしいのでは?」

 

「それに、スター・プラチナの登場自体が空条の中から展開されていってるから、実は【憑依型】って、第四世代と考えてもいいのかもしれないわね」

 

一夏と束の会話に続き、セシリアと鈴音がそう付け足した。その内容に束の顔が歪んだ。まさか自分がやっとの思いで作った完成型が既に別の人間が完成させているなどと思っても見なかったのだろうか。それともまた別の意味で驚いているのだろうか、それは彼女以外誰にも分からない。

 

「んな事どうでもいいだろうが。今の問題は、ユーロから正式な要請がオルコットに言い渡された。どこの国の代表候補ですらねぇ篠ノ乃にやらせるわけにはいかねぇだろうが」

 

しかし、当の本人の“んな事”発言に周囲の人間は流石だなぁと思った。

 

箒の件で正論を吐いた承太郎だが、そこで一夏はどうなのだと言う人間も勿論いるだろう。だが、彼は既に世界初の男性操縦者ということもあり、彼の国籍は日本ではあると同時に自由国籍を持っているのだ。そのことにより今の所属は“日本”のIS学園となる。ただ、未だに彼には言い渡されていないだけで彼の一言で好きな国に所属することが出来るのは確かだ。承太郎は既にユーロ代表という地位についており、自由国籍はジョセフとその友人のシュトロハイムの都合、何よりもパートナーのラウラとの連携の関係からドイツに在籍していた。

 

今回はヨーロッパの代表候補生及びユーロ代表で占めているこの会議に当然ヨーロッパIS委員会も口出しをしてくるというもの。自分たちを主軸にしたいというのもおかしくはない。アメリカに恩を売っておこうと考えるのは間違いじゃないからだ。だが、そこでさらに口を出したのが我等の承太郎だった。彼の権限はまさに鶴の一声と同等の権限を持っていた。その事により、いまだにヨーロッパからの主導権の譲渡は求められていない。いや、彼にいわれたのにそれをすれば二度と議会に顔向けできないだろう。なんせ【空条承太郎自身から活を入れられる】のだから。

 

「そこの奴よりかは箒ちゃんのほうが作戦の成功率は上がるに決まってんじゃん」

 

「てめぇの勝手な決まりなんざ端から興味ねぇんだよ。もし篠ノ乃が失敗した時のリスクは考えてんのか? そしてその時の尻拭いをするのが攻撃力しか持ってねぇ一夏だ。オルコットと篠ノ乃、場数は間違いなくオルコットのほうが上、なら作戦遂行率が高いのは明確だろうが。俺は態々両方(ふたり)にかけるのはごめんだね」

 

「じゃあ成功したらそのISを貰うよ。そこまで私に啖呵を切ったんだ。それくらい賭けてもらわないとね」

 

高圧的な態度を取る二人に千冬は頭を悩ませる。苦悩が続く、それはさすがの彼女にも堪えるものがあった。

 

承太郎は箒とあまり関わりを持っていない。精々放課後の自主トレ(という名の一夏の手伝い)か、あの一夜限りだ。対してセシリアのほうは専用機を持って長い上、さらには自分と一戦交えた間柄なのだ。実力も分からないつい最近専用機を貰った生娘(実践という意味で)と専用機を長く持ち、代表候補生としての責務を全うするために今まで努力を怠らなかった実力のあるエリート生。はたしてどちらを選ぶだろうか。もちろん、承太郎はセシリアを選んだ。

 

「それなら、負けた時の言い訳でも考えておくんだな。とりあえず、俺は出られねぇ。後は任せるぜ」

 

その言葉を境に、彼はその場から消え去った。それはまるで束と入れ替わるように消え、入れ替わるようにそこで先ほどまで啖呵の切りあいをしていた彼女が千冬に話を通していた。既に周りの人間など蚊帳の外。天災と現最強。その会話にあの代表候補生の皆もついてはいけなかったのだ。

 

結局、束の言い分が通り、箒が一夏とともに空を駆けたのは、承太郎が消えて数分とかからなかった。

 

 

 

 

「承太郎殿」

 

「・・・・・・どうした、ラウラ」

 

「一夏が作戦を決行しました・・・・・・箒と共に」

 

岩場にて、承太郎はまた観察をしていた。ラウラもそれを見越してからか、作戦室への収集に買って出たのだ。自分ならすぐに承太郎を見つけられる。彼を探し出せる。そう確信していたからこそ、彼女一人、岩場へと足を運んだ。

 

「作戦室にはモニターが存在します。そこで状況を見守るとの事です。行きましょう」

 

「視なくても分かるだろうが・・・・・・作戦は失敗するだろうよ」

 

手に取っている貝殻を眺め、それをスケッチする。その工程をやめない彼に、ラウラは何もいえなかった。自分自身も同じく、この作戦が成功すると思ってないのだろう。しかし、彼女は表情を変えはしなかった。

 

「それでも、どのような兵装なのかは確認できます。それなら」

 

「ここからでもスター・プラチナを使えばよく見える。お前たちの協議用とは違って俺のは完全な観測用だからな・・・・・・まぁ、このパワーで観測用なんてのも虫が良すぎるがな」

 

「先生方も心配されております。顔を出すだけでも」

 

食いつくラウラに流石の承太郎も観念したのか、いつもの口癖を呟きながら三度目の別れを岩場にいる海洋生物にした。名残惜しそうに見えるのはまず間違いない。

 

「・・・・・・あの海域はもう封鎖されてんのか?」

 

「はい、すでに撤去していられる思われます」

 

「なら今すぐ本部に戻りな。俺はあいつなの元へ行く」

 

「な!? 承太郎殿!?」

 

不意なその発言に、ラウラは対応できず、飛んでいく彼の後姿を見ていることしかできなかった。そして気がついた。彼の前後の言葉を思い出し、彼が伝えたかったことを知ったのだ。

 

「もしそうなら・・・・・・急がなくては!」

 

ラウラは本部へ駆けた。いつもよりも早く動く彼女は肉体のATPを今まで以上に使用し、エネルギーを使っていった。

 

[本部へ、こちらラウラ=ボーデヴィッヒ。教官、至急お伝えしたいことが]

 

[織斑先生だ・・・・・・それで、なんだ?]

 

[はい・・・・・・・・・・・・目標付近の海域に船がまだ残っているそうです。承太郎殿がそちらの救出のために、今飛びました]

 

[・・・・・・何?]

 

 

 

視点は、我等が承太郎へとシフトチェンジする。彼は今、海上を超高速で移動していた。紅椿が如何ほどの速さかは彼自身知らないが、今まで彼とであった人間で彼ほど機動力のあり、敏捷性に長けた存在は彼を覗いて他ないとまで言われるほどだ。それほどの速度を出して、彼は飛翔している。

 

[ジジイ、海域に船だ。回収に行くぜ?]

 

[まぁ、それでいいじゃろう。お前が海域に行く理由となるからな]

 

[そー言うことだ]

 

承太郎とスター・プラチナの速度が増した。間近で見ているものがいるとすれば、目を疑うだろう。何度か目を擦り、もう一度視ようとするだろう。

 

彼等の体がぶれたのだ。

 

速度を上げたと同時に、彼等の体は視覚的にもセンサー的にもぶれて動いた。まるでそれは光速を超えた時に起こる時間の停滞のようにも感じられる。彼等だけが、その時間を生き、その他全てを置き去りにしたように。だが、彼はその時間すらも置き去りにしたように加速した。

 

「・・・・・・ん?」

 

スター・プラチナのセンサーにISの反応を見つけた。その数は3。勿論、一夏と箒、そして暴走ISだ。

 

承太郎はすぐに周囲をセンサーで散策した。目標は船一隻。センサーに反応が少ないことから、小さな小型の漁船だと思われる。

 




時間とか一切考えてなかったものですからこうなりました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五話その二 戦闘なし

今度は福音戦で敗北した一夏を救出するための回収チームとかいろいろ考えてたもの。

でもそろそろ承太郎さんに戦闘してもらわないと困る上に、6人の会話を纏め上げるのが難しいため没に


 

 

束がそう叫びながら入ってきた直後、あたりは先ほどよりも静寂を強くした。それもそのはずだ。今作戦の方針が決まりそれからという所に邪魔が入れば誰だってそうなる。しかし問題を起こした本人はそんな事関係ないと笑顔のまま千冬飛びつこうとした。

 

千冬は飛んできた束にタイミングよくエルボーを腹に食らわせ、両肘を固めてそのままバックブリーカーを決めた。ジャージ姿の千冬が放ったバックブリーカーに一同唖然とする。

 

「・・・・・・それで、なんのようだ束。しょうもないことならこのままロメロスペシャルを食らわせるぞ」

 

「愛が痛いッ! 愛が! 愛がいだい!!」

 

流石にこのままの体勢でいるのは疲れるためか、束を解放すると先ほどの狼狽した態度などどこへいったのかと思わせるほど冷静な表情で未だ地に両手をついてる彼女を見下ろした。

 

「さっさとしろ。こっちは急いでいるんだ」

 

「だ、だから。紅椿が良いんだってちーちゃん。紅椿は束が作り上げた展開装甲を持つ第四世代型なんだから」

 

「・・・・・・何?」

 

承太郎だけが驚愕した表情をした。そう、実は既に周りの人間は第四世代については知らされていたのだ。

 

さて、第四世代型についての補足を入れておこう。

 

そもそもISとは本来宇宙への探索を目的としたMFS(マルチフォームスーツ)なのだが、軍事目的として転用が行われ、しまいにはスポーツの一環としてその姿を変えていった。そのことからISには自己進化プログラムが組み込まれており、その操縦者の戦闘経験に沿って自らの姿形を変える「形態移行」を搭載されている。

 

その過程の中で、IS自体の世代進化が現れたのだ。

 

兵器としての運用で作られた本来の目的から完全にそれた初期型IS「第一世代」

 

後付武装を用いて戦闘のバリエーションを多彩にする実用型IS「第二世代」

 

搭乗者の意思と接合させた特殊兵器を搭載した試作型IS「第三世代」

 

現在この三種類のISがこの世の中には存在しているのだ。学園で使っている打鉄やラファール・リヴァイブ。そしてシャルロットが使用しているそのカスタムⅡは第二世代。そしてセシリアの【ブルーティアーズ】、鈴音の【衝撃砲】ラウラの【AIC】など、精神力を酷く用いるISは第三世代の分類になる。ちなみに第一世代といえば、白騎士事件での不明ISはまさしく第一世代である。

 

では、第四世代とはいったいどのようなものをさすのだろうか。

 

第四世代の定義というものがIS業界では一部存在していた。

 

それは『装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力の獲得』自律支援装備を有し、展開装甲が標準装備となっている、というものだ。

 

つまりどういうことか、それは『あらゆる戦闘場面においてその場に応じた戦闘を従来の装備だけで運用出来る能力が必要』だということ。昔の兵器を例にあげれば、銃剣なんかはその原型とも言える。近距離及び中距離に適した剣と中距離及び遠距離に適した銃をあわせた全距離をカバーした兵器。それをISで行ったのが、

 

理想型IS「第四世代」なのだ。

 

今目の前の天災は、新たな火種をこうも簡単に投げつけてきたのだった。

 

「・・・・・・てめぇ、関係者以外が入ってくるんじゃあねぇ」

 

しかし、そんな事承太郎にとってはお構いなし。凄みを利かせ、彼女をにらみつけた。

 

「喋りかけるなよ暑苦しい。今まで無視決め込んでた癖に話しかけんなよ。それに生みの親である私ほど関係している人物はいないと思うんだけどね」

 

「てめぇの存在なんざ知ったことじゃあねぇんだよこのうすらとんかち。今ここでの関係者はこの旅館にISの研修に来たIS学園の人間のうち、専用機を持つ限られた人数のことを言ってんだよ。さっさっと失せろ。このスカタン」

 

承太郎と束の視線が火花を散らす。片やISの生みの親、片や現世界最強有力候補No1。互いの険悪なムードが辺り一面を覆い隠した。仮にも天才であるのに間違いがない束に頭の回転が鈍いという意味のうすたとんかちと罵れる辺り、流石は承太郎といったところじゃないだろうか。そして、そんな空気に耐えられなかったのか、それとも純粋に疑問に感じたのか、一夏がふと思い出したように声を上げた。

 

「た、束さん。承太郎のISって、俺みたく近接オンリーだけど、全距離に対応してるし、第三世代みたいなの必要としてないし、第二世代みたいに後付け兵器も不必要って事はつまり箒の紅椿と同じで第四世代ってことですかね?」

 

「何言ってるのいっくん。こいつのISが全方向に対応できるからって、自律支援兵器も展開装甲も持ち合わせていないから第四世代じゃないよ」

 

「そ、そう言えば私たちと2対1をした時、空条さんとスター・プラチナそれぞれが相手をしてましたわよね。これで2対2(タイマン)だと仰っていましたし。自律支援はなさっていると考えてもよろしいのでは?」

 

「それに、スター・プラチナの登場自体が空条の中から展開されて行ってるから、実は【憑依型】って、第四世代と考えてもいいのかもしれないわね」

 

一夏と束の会話に続き、セシリアと鈴音がそう付け足した。その内容に束の顔が歪んだ。まさか自分がやっとの思いで作った完成型が既に別の人間が完成させているなどと思っても見なかったのだろうか。それともまた別の意味で驚いているのだろうか、それは彼女以外誰にも分からないでいた。

 

「んな事どうでもいいだろうが。今の問題は、ユーロから正式な要請がオルコットに言い渡された。どこの国の代表候補ですら決まってねぇ篠ノ乃にやらせるわけにはいかねぇだろうが」

 

しかし、当の本人の“んな事”発言に周囲の彼を知る人間は流石だなぁと改めて思った。

 

さて、箒の件で正論を吐いた承太郎だが、そこで一夏はどうなのだと言う人間も勿論いるだろう。だが、彼は既に世界初の男性操縦者ということもあり、彼の国籍は日本ではあると同時に自由国籍を持っているのだ。そのことにより今の所属は日本の“IS学園”となり、彼はIS学園代表候補となっていたのだ。ただ、未だに彼には言い渡されていないだけで彼の一言で好きな国に所属することが出来るのは確かだ。

 

承太郎は既にユーロ代表という地位についており、自由国籍はジョセフとその友人のシュトロハイムの都合、何よりもパートナーのラウラとの連携の関係からドイツに在籍していた。

 

さてヨーロッパの代表候補生及びユーロ代表で占めているこの会議に当然ヨーロッパIS委員会も口出しをしてくるというもの。自分たちを主軸にしたいというのもおかしくはない。アメリカに恩を売っておこうと考えるのは間違いじゃないからだ。だが、そこでさらに口を出したのが我等の承太郎だった。彼の権限はまさに鶴の一声と同等の権限を持っていた。その事により、いまだにヨーロッパからの主導権の譲渡は求められていない。いや、彼にいわれたのにそれをすれば二度と議会に顔向けできないだろう。なんせ【空条承太郎自身から活を入れられる】のだから。

 

「そこの奴よりかは箒ちゃんのほうが作戦の成功率は上がるに決まってんじゃん」

 

「てめぇの勝手な決まりなんざ端から興味ねぇんだよ。もし篠ノ乃が失敗した時のリスクは考えてんのか? そしてその時の尻拭いをするのが攻撃力しか持ってねぇ一夏だ。オルコットと篠ノ乃、場数は間違いなくオルコットのほうが上、なら作戦遂行率が高いのは明確だろうが。俺は態々両方(ふたり)にかけるのはごめんだね」

 

「じゃあ成功したらそのISを貰うよ。そこまで私に啖呵を切ったんだ。それくらい賭けてもらわないとね」

 

高圧的な態度を取る二人に千冬は頭を悩ませる。苦悩が続く、それはさすがの彼女にも堪えるものがあった。

 

承太郎は箒とあまり関わりを持っていない。精々放課後の自主トレ(という名の一夏の手伝い)か、あの一夜限りだ。対してセシリアのほうは専用機を持って長い上、さらには自分と一戦交えた間柄なのだ。実力も分からないつい最近専用機を貰った生娘(実践という意味で)と専用機を長く持ち、代表候補生としての責務を全うするために今まで努力を怠らなかった実力のあるエリート生。はたしてどちらを選ぶだろうか。もちろん、承太郎はセシリアを選んだ。

 

「それなら、負けた時の言い訳でも考えておくんだな。とりあえず、俺は出られねぇ。後は任せるぜ」

 

その言葉を境に、彼はその場から消え去った。それはまるで束と入れ替わるように消え、入れ替わるようにそこで先ほどまで啖呵の切りあいをしていた彼女が千冬に話を通していた。既に周りの人間など蚊帳の外。天災と現最強。その会話にあの代表候補生の皆もついてはいけなかったのだ。

 

結局、束の言い分が通り、箒が一夏とともに空を駆けたのは、承太郎が消えて数分とかからなかった。

 

 

 

 

「承太郎殿」

 

「・・・・・・どうした、ラウラ」

 

「一夏が作戦を決行しました・・・・・・箒と共に」

 

岩場にて、承太郎はまた(・・)観察をしていた。ラウラもそれを見越してからか、作戦室への徴収に買って出たのだ。自分ならすぐに承太郎を見つけられる。彼を探し出せる。そう確信していたからこそ、彼女一人、岩場へと足を運んだ。

 

「作戦室にはモニターが存在します。教官はそこで状況を見守るとの事です。行きましょう」

 

「視なくても分かるだろうが・・・・・・作戦は失敗するだろうよ」

 

手に取っている貝殻を眺め、それをスケッチする。その工程をやめない彼に、ラウラは何もいえなかった。自分自身も同じく、この作戦が成功すると思ってないのだろう。しかし、彼女は表情を変えはしなかった。

 

「それでも、敵の兵装がどのような物なのかは確認できます。それなら」

 

「ここからでもスター・プラチナを使えばよく見える。お前たちの協議用とは違ってこいつは完全な観測用だからな・・・・・・まぁ、このパワーで観測用なんてのも虫が良すぎるがな」

 

「ですが先生方も心配されております。顔を出すだけでも」

 

食いつくラウラに流石の承太郎も観念したのか、いつもの口癖を呟きながら三度目の別れを岩場にいる海洋生物にした。名残惜しそうに見えるのはまず間違いない。ゆったりと歩みを進め、本部へとむかう二人。ラウラはふと、あの時の千冬と箒へ睨んだことを思い出した。何故あの時彼女たちを睨んだのだろうか。聞きたくてたまらなかった。だが、それと同時に別の想いが頭をよぎった。

 

――――承太郎殿が、自分如きに教える筈もない――――

 

体が凍りついたように凍えてくるのが分かる。嫌な汗が体から流れるのを理解する。拒絶されるかもしれない。もう既にされているのかもしれない。心がそれを否定したいのに嫌なイメージが自分の首を締め上げる。

 

否定されるに決まっている。

 

お前は彼を裏切ったのだ。

 

死んでも償いきれはしない。

 

ネガティブな感情が自分の本音を露呈してゆく。孤独に陥った時と同じ感覚だ。何も見えない暗闇、何もかもを失い、ついには光にさえも拒絶されたあの空間。3畳程の小さな監禁室よりも小さなあの部屋で、来る日も来る日も体を抱えて怯えながら生きているのか分からない生活をしていたあの頃と同じ感覚が彼女を襲った。

 

ラウラの足取りが覚束なくなったのをいち早く感知したのは承太郎だった。続いてスター・プラチナが彼の後を追うようにセンサーで彼女の容態の悪化を知らせた。

 

[一時的な精神ショックと判明]

 

「わかってる・・・・・・いったいどうしちまったんだ。ラウラ」

 

心底心配になった承太郎はその覚束ない歩みを続ける彼女を抱え、歩む速度を変えずにゆったりと本部へと向かった。突然の事に慌ただしくなる彼女だったが、そんな事今は聞いてる暇はないと承太郎はさっさと本部へ足を運んだ。

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

そう呟きながら承太郎は最近情緒不安定さを露見させている相棒に少しは正気に戻ってくれよと心の内に願う。

 

 

 

 

本部に着くと同時に、一夏達は敵機ISと接触を果たしていた。既に臨戦態勢をとっており、緊迫した空気が本部の部屋を包んでいた。

 

映像に映っているのは敵機ISが一夏を撃ち落しているちょうどその時だったのだ。セシリアはその映像に悲鳴を上げ、鈴は声すら上げられずにただただ見つめることしか出来ず、シャルロットは口を手で覆い、涙を流していた。

 

「すぐに救援班を結成する。オルコットと鳳は回収班、ボーデヴィッヒとデュノア、そして空条は護衛班となって織斑、篠ノ乃両名を救出したのちに海域から緊急離脱を行え。我々は、織斑が帰投次第緊急治療を行えるように救護班を徴収しておく。一応言っておくがこれは一刻を争う。即刻出撃しろ」

 

『了解!』

 

セシリア等はすぐに外へと向かって走り出した。承太郎はラウラを千冬に渡し、事情を説明した。そしてすぐに3人の後を追うように珍しく走り出した。

 

浜辺にはもう彼女達の姿はない。空にはもう点となりつつある三機のISのみが、承太郎に居場所を教えた。

 

「スター・プラチナッ!」

 

彼の叫びと共に、スター・プラチナがその姿を現す。いつ視てもISとはことは慣れたその人間味のある姿。見慣れている承太郎だからこそ、何も考えることなく、そのまま飛翔することが出来る。だからこそ、ちょうど訓練が一区切りで終わっていた女生徒達は目を点にしながらその珍しい後姿を眺める事しか出来なかったのだ。

 

承太郎が飛翔した。その背中に得手であるスター・プラチナを控えさせ、彼はこの大空を飛び上がった。彼が飛ぶのはセシリア&鈴音との対決依頼じゃないだろうか。もっとも、その時は飛んでいたというより、歩いていた。というのがしっくり来るのは彼の空の飛び方がそうだったからだろう。

 

青空がどこまでも続くこの世界に承太郎は飛行機絡みえていた空とはまた別の感覚を覚えていた。一夏が落ちたことへの焦りを紛らわせるように感嘆とした声を上げる。だが、すぐにその表情を険しくした。

 

[空条! 一夏を発見したわ。これからすぐに本部へ戻るわよ!]

 

[ジョジョ、この海域にはもうあのISはいないみたいだから、鈴達の護衛に専念しながら離脱しよう]

 

どうやら、既に回収が終了したようだ。承太郎はその二人の言葉に、短く答えると、スター・プラチナのハイパーセンサーをフル活用させた。数光年先の星を観測するために作られたこのセンサーを惜しむことなく使い、周囲を見渡す。そしてあの敵機ISがシャルロット達から離れていっているのを確認した。

 

一先ずは安心だとため息を吐くが、彼女達と合流するまで警戒は怠らなかった。

 

「ジョジョ~!」

 

シャルロットの声が空に響く、それと同時に承太郎の耳にもそれが届いた。それを確認すると、すぐに皆の下へと彼は走った。

 

「一夏の容態は?」

 

「意識不明の重体! どうしよう、一夏が、一夏がぁ!」

 

「箒さんもずっと独り言を呟くだけで何も出来ません。はやく本部まで行きませんと」

 

「あのISは見当たらないわね。もしかして未だ待機中ってわけ?」

 

それぞれが言葉を返してくれる。今にも泣きそうなシャルロット、警戒を一切やめない鈴音、未だ俯いたまま呟き続ける箒を心配そうに見つめるセシリア。承太郎は彼女から一夏を受け取ると、スター・プラチナに運ばせ、本部へと急いだ。皆も後から追ってはくるが、スター・プラチナの速度には追いつけていない様子で、彼女達がつく頃には、千冬が待機させていたであろう救護班が帰りを待っていた。

 

「意識無し、重体だ。おそらくISの熱線攻撃にやられたんだろう。詳しくはわからねぇが、急いでくれ」

 

「分かりました。さぁ、織斑君をこちらへ」

 

 




これもよかったんだけど、何か違うかなと思いました。

こっちのほうがラウラの病み度は半端ないです。まじでヤンデレ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話 篠ノ乃夫妻殺害

篠ノ乃束への脅しを考えたときにこうなりました。

すこし自分でも身震いするようなのを考えるぞーと思って書いたんですが、こうなりました。

つまり没案です。


 

 

「・・・・・・テメェは、いったい」

 

「ん? ・・・・・・なるほど、そういう事か。貴様は本能でこの私の正体を理解したか。流石はこのDIOに対しての唯一なる障害」

 

何かを理解したのか、海の上に立つ黄色に包まれた男は不敵に笑ってみせ、そしてその圧倒的存在を見せ付けた。相対した二人はその眼前に現れた謎の存在に、驚きを隠せずにいた。不意に承太郎は自分と同じ存在だと本能的に感じ取る。それがどう意味なのかすらも理解出来ない。だが、この目の前の存在は同じ部類の存在だと認識したのだ。

 

「“スタンド同士は惹かれあう”とはよく言ったものだ。このDIO直々に貴様の下へ行くことになるとはな・・・・・・それも、標的に会うために来たというのに」

 

男は束を見つめたまま、ゆっくりと海に波紋を作りながら近づいていく。歩む足を一歩ずつ出すたびに、その存在感が増して行き、周囲の存在をかき消す。そして全てを自分の存在へと塗り替えていった。束はその存在を恐怖のために理解できないでいた。この目の前の存在に、空条承太郎よりも恐ろしいナニカを感じ取っていたのだ。

 

「まず初めに言っておこう篠ノ乃束。私に永久の忠誠を誓わなければお前の妹はこの海上にて死ぬ。その事を踏まえてからお前は私の問いに答えよ」

 

「な!? いきなり何様のつもり!? 私に直接ならともかく、箒ちゃんを交渉の材料に使うなんて、死んでも償いきれないよ!!」

 

彼女の睨みが更に増した。彼女が異世界の気の使い手ならばどれほど頼もしいものだろうか、しかし残念ながらこの世界にはそんな龍球的要素は全くといっていいほど存在していない。ゆえに彼女の睨みは男にとっては何の傷みにもなりはしない。

 

「ほぅ? それが答えか? ならば仕方がない。篠ノ乃箒にはこの瞬間、舞台から永遠に退場してもらおう」

 

「ま、まって!」

 

男の躊躇無さに束は改めて恐怖した。目の前の存在はやると言えば必ずやる凄みが存在した。急に嫌な汗が彼女の体に纏わりついてきた。一歩間違えば自分の大切な妹を失うかもしれないのだ。この目の前の存在に従えば何をするかは知らないが、妹を助けられるのもまた事実。しかし、彼女の天才としてのプライドがそれを阻んでいた。

 

何者にも屈しはしない。それが篠ノ乃束の掲げたプライドだった。

 

その有り余る才能の所為で影ながら疎まれた彼女の破天荒な行動の所以、そして彼女の根源と言っても過言ではない。彼女のその高慢さ、身勝手な行動。その全てがその掲げたプライドによる行動といって良い。

 

だが、今はそのプライドが、彼女の選択の手を濁らせた。妹は助けたい。だがプライドが屈する事を邪魔する。しかし目の前の存在が行っているのは出鱈目かもしれない。だが本当なのかもしれない。

 

「クククッ、あぁそうだ、そうだった。お前の選択を一択にする為に一つ手を回したことがあるのだった」

 

「な、何をいったい」

 

男は未だ不敵に笑いながら、二人を見下すように仁王立ちのまま動かない。承太郎もすぐにスター・プラチナを展開したいが、相手が既に手を打ってしまっている。迂闊に手を出せば箒に被害が及ぶ。それは避けなくてはならない。

 

だが、彼の事情などいざ知らず。男は衝撃の事実をその手のものと同時に突きつけた。

 

 

 

「貴様の両親の血は、中々の美味だったぞ?」

 

 

その手の中に存在したのは、篠ノ乃束の父が持っていた家宝の小太刀だった。

 

 

 

 

パタリッと海岸に膝をつく女性がいた。目を見開き、顔を真っ青にさせ、次第に涙を流し始める。あまりにも衝撃的な事実に絶望をしたのだ。

 

状況の全くつかめない承太郎は、男が持つものが束の両親のものだということだけを理解し、そこから彼女の両親が殺されたのだという事実に自らの推理力で導き出した。そして、憤怒した。

 




ミジケー 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話~回想とかにして話をすっぽかしver

サブタイ通り、回想にしてすっぽかし、挙句の果てにはキャラ崩壊。



これは、深夜テンションで書いたんです。決して本物の承太郎はこんな可笑しい行動をしません


 

 

旅館からIS学園へ向かうバスに承太郎の姿があった。窓側の席に座り何も語らずに外の景色を眺めていた。少し前の方では一夏が専用機持ちと騒がしいがそんなこと今の彼には関係なかった。あの謎の男、DIOとの戦闘。束を庇っていたとは言え、あそこまで歴然の差を見せ付けられては流石の承太郎も苦虫を噛みつぶしたように顔を歪ませた。パワーは世界最高とあの千冬からも称された程の力を持つスター・プラチナをあんないとも簡単にパワー負けするとは思ってもみなかっただろう。そして最後の一瞬で近づいて来たあの動き。もしもあの時、あの男が何かに動揺せずにその手刀を自分の体に突き立てていたなら・・・・・・。

 

(俺は確実(・・)に死んでいただろうな)

 

その事実が実に気に入らなかった。彼が今まで負けた事がないからという訳ではないし、別に勝利に酔っている訳でもなかった。そう、己自身の弱さが気に入らなかったのだ。

 

彼、空条承太郎は冷静沈着な性格だが、それに這わせるように「やる時はやる」な性格も持ち合わせているのだ。冷静を芯に勇気と熱意でコーティングしたような心を持つ彼は、あの戦いの時のあの一瞬が非常に気に食わなかった。

 

もっと強ければ、後ろにいた篠ノ乃束を守りつつもDIOと互角に戦えたはずだと。ISでの差は己の技術と根性で補えたはずだと。彼は今もなおその思考を止められずにいた。

 

「承太郎殿? どうかされたんですか?」

 

不意に声をかけられた承太郎はその声のしたほうへと顔を向けた。余程彼の顔が険しくなっていたのだろうか。行き同様に帰りも隣の席に座っていたラウラが心配そうに見つめていた。一度砂浜で精神的ショックを起こして倒れたと言うのに、自分よりも承太郎を心配していた彼女に承太郎は怪訝な顔をした。そりゃあそうだ。彼女には自分の心配をして欲しいと切に願う承太郎だが、その願いは届くのだろうか。

 

「・・・・・・俺のことより、テメェは大丈夫なのか? ラウラ」

 

「はい。今のところ落ち着いていますので・・・・・・それに自分よりも承太郎殿の方が大事です」

 

「テメェはまず優先順位を真面目に直せ」

 

そんな願いは通る事無く終わってしまった。

 

小さくため息を吐いた承太郎はラウラに大丈夫だと伝えると目を瞑り、とある事を考えていた。

 

 

そう、彼が起きた時に千冬と束と三人で話したあの内容についてだった。

 

 

―回想―

 

 

「承太郎。病み上がりで悪いが、今回戦闘を行ったDIOと言う男について何か知らないか?」

 

既に日は沈み、生徒達が自分の布団にもぐり寝ている時間。承太郎はコーヒーを飲む千冬と何故かその千冬によってボロ雑巾のようになった束を前に、目を覚ました。

 

DIOと自らを呼称していた謎の男。全身を黄色と黒で身にまとい、あの灰色のナニカを操っていた存在。これまで無敗を誇っていた承太郎に唯一膝をつかせた存在。それも圧倒的な力で彼を殺す一歩手前まで行った存在。

 

「俺はあいつを知らねぇ・・・・・・だが最初あいつと対面した時、咄嗟にDIOという文字が頭の中に浮かんだ。それ以外は何も知らねぇ」

 

「そうか・・・・・・ではもう一つ聞きたい。そのDIOが使っていたIS・・・・・・肉眼では確認できないとそこに転がっている馬鹿は言った。だが承太郎、お前はハイパーセンサーを起動せずにそのISを目視していた・・・・・・違うか?」

 

「あぁ、俺の目にはハッキリ見えてたぜ。だが、ハイパーセンサーを起動してそれをみりゃあ灰色に塗りつぶされた黒い輪郭の野箆坊(のっぺらぼう)にしか見えなかった。千冬こそ分からねぇか? あの正体」

 

「残念だが、私もこいつもあのISを全く認知していないし、作りそうな奴も見当がついてない。何処で開発されたのかも知らない。唯一の手懸かりと言えば、[ISのセンサーでさえも追いつけないほどの高速移動を生身で行った]ということ。自分の事を、[太陽を克服した存在][吸血鬼]と言ったことだ。お前の祖父、ジョセフ=ジョースター殿が以前戦ったと言う[柱の男]、もしかするとそれに類似する存在かも知れない。学園に戻った際、一度連絡を取ろう」

 

今のところ、対策の術がない。その事実が三人のモチベーションを下げた。千冬と同程度の力を持つ承太郎が圧倒的な力の前に敗北した。即ちそれは今のIS界にDIOを単騎で相手取ることの出来る存在がいない事を証明しているのも同じだからだ。千冬はその事実を目の当たりにした二人に何も言う言葉が浮かばなかった。

 

束は束で、自分の所為で対等に戦えるはずだった場面を自分の所為で一方的にやられ敗北した事について酷く落ち込んでいた。千冬に承太郎が無敗のヨーロッパを背負った存在だと言うことを聞かされて余計にその落ち込みようは凄かった。

 

すると、そんな彼女の顔が気に食わなかったのか、承太郎はいつもの口癖を呟き、そして言った。

 

「篠ノ乃束。テメェが自分の所為で負けたと思ってるんなら勘違いも甚だしいってもんだぜ? 俺は本気だった。テメェが居ようが居まいが変わらねぇ。だがよ。俺は確かに本気だったが、全力じゃあない。俺のスター・プラチナを甘く見てもらっちゃあ困る」

 

立ち上がった承太郎はそのまま医務室を後にしようと歩き出した。流石の束も今の彼が危険だと言うことは分かっているのか千冬と共に制止をかけた。

 

しかし、そんな事で彼が()まるはずもない。扉の前まで行くと、二人のほうに振り向き、二人を指差し、こう述べた。

 

「あいつはこの空条承太郎が直々にぶちのめす。絶対だ」

 

それは宣言であり、誓言。これが意味するのはただ一つ。

 

[二度と敗北はしない]

 

それこそ、今の彼が不安がっている二人に送る最大限の言葉だった。

 

 

―回想終了―

 

 

「それにしても承太郎殿。お怪我のほうは大丈夫でしょうか。何やらトラブルがあったとのことですが」

 

「その事については悪いが国家機密に該当するらしいんでな、知りたいってぇなら千冬に直接聞くんだな」

 

「了解しました」

 

ふぅ、と小さくため息をつくと、承太郎は背凭れに深く座った。疲れがドッと出たのは見るからにわかる。あの戦いの後は死んだように眠っていた彼だが、やはり疲れと言うものは取れていなかったのだろう。体中の細胞を休ませるように、彼は意識を手放した。

 

今はただ、この疲れを取ることが先決であるのは間違いでないのだから。

 

 

 

 

夏休み、人々はこの言葉を聞いて喜怒哀楽的表現を数多くしている。勿論、それは空条承太郎も同じことだ。相も変わらず学ランであるのは実に彼らしい。それはもう途轍もなく彼らしいのだ。そんな彼は、本来なら実家に帰って畳の自室でゴロゴロしているはずなのだがそうはいかない。今、彼はとても積極的な行動をしていたのだ。

 

「さっさと行くぞ、刀奈」

 

「私の覚悟を返してよ承太郎(ジョータロー)!!」

 

「残念ですが生徒会長殿。承太郎殿はとても真っ直ぐな方なので私が止めても止まりません」

 

「それって所謂頑固ってやつよねぇ!? 止めてもないのに何で諦めるのよ!! やってみなきゃ分かんないでしょうが!」

 

生徒会長更識楯無の首根っこを掴んで引きずっているのだ。傍らにはラウラが控えており、すれ違う人間が等しく二度見するということがおきるほどの光景だ。それもそうだろう。【IS学園生徒会長は常に最強であれ】それがIS学園生徒会長の絶対なる条件と言っても過言ではないのだ。そんな彼女を悠々と首根っこ掴んで歩く彼の存在を、生徒達は目撃してしまったのだ。二度見してしまうのも無理はない。

 

「うわぁ~~ん! 仕事が残ってるんだから離してよぉ~!!」

 

「テメェが仕事する玉かよ。黙って連れてかれろ」

 

「副会長の布仏虚殿は『どうせ仕事をしないからかまいません』とのことです。良かったですね。生徒会長殿」

 

「悪意がある! うちの生徒会に悪意があるぅうううううう!!」

 

普段見られない光景がそこには存在した。女生徒の首根っこを引っ張る長身でがたいがとても良い見た目不良が、見た目小学校高学年の少女を控えさせて歩いているのだ。完全に誘拐現場と間違われるだろう。

 

着いたのはアリーナ。それもいつも彼等が訓練をしている第3アリーナであった。楯無を放り入れ承太郎も下を確認し、アリーナ内に降りた。開放された彼女は尻餅をつきながら悪態をついた。

 

「流石の私でもこの高さから落とされたら死ぬわよ!!」

 

「IS起動してんだから死んでねぇだろうが」

 

「では承太郎殿。何をするのか説明をお願いしてもよろしいですか? 流石に何をするのか理解していないと、身構えてしまいます」

 

「え? 何するかも教えてもらわなかったのについてきたの? この子大丈夫!? 将来が非常に心配だわ」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。