クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~ (Mr.エメト)
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鮮血の拳

"マナ"。

それは人類が進化の果てに得たとされる、目に見えない万能物質。

マナによる技術発展により戦争、貧富の差、環境問題が消滅したとされる。

ミスルギ皇国のマンションのある一室にて。

 

「マナが・・・無くなっている!?」

 

彼の名はリュガ・黒鋼・ホクト。

母と父は行方不明、独りで生活していたが、マナが使えなくなってしまった。

これは女性にしか発生しないはずなのにどうして?

呼び鈴が鳴らされ、心臓がドキッとするが深呼吸し、ドアを開ける。

 

「よお、遊びに来たぜ」

 

4人の友人だ。

それぞれ、シュージ、テンゲン、ゼノン、ニックという名前だ。

 

「あ、ああ・・・いらっしゃい」

 

「顔色が悪いがどうかしたのか?」

 

「連絡の一つ入れてなくて、驚きましたか?」

 

「大丈夫というわけでもないな・・・。皆に相談がある」

 

4人の友人は首をかしげるが、俺は腹を括って告白した

 

「マナが使えなくなった!?」

 

「おいおい、本当かよ!?」

 

テンゲンとシュージが驚く。

 

「でも、女性だけしか発生しないのに、どうして・・・」

 

「・・・解らん。だが、俺は確実にノーマとして認定されるな・・・」

 

"ノーマ"。

マナによる干渉を全く受け付けない人間を指す。

マナを扱えないかわりにマナによる拘束も受け付けないため、犯罪を犯してもマナでの捕縛ができない。

つまり、マナの崩壊を招く危険分子。

扱いは酷く、アルゼナルという場所に収容されるという(ゼノンが情報を仕入れたが、どうやったか不明・・・)

 

「ノーマに認定されて、社会から隔離、非人道的な扱いするなんて酷すぎると思うけどな」

 

「いくらマナのおかげで世界が良くなったとしても、裏側は酷い事をしているね」

 

そう、マナが使えなくなったものはノーマという烙印が押される。

差別がないのはマナが使えるもの限定だ。

 

「けどな、俺は例えマナが使えないリュガでも親友だ」

 

「うん、一緒に遊んだ仲じゃないか、気にしないでよ

 きっと、もう一度、マナが使えるようになるかもしれないしさ」

 

「すまない、皆・・・」

 

「気にするな。ニックもそう思うだろ?・・・ニック?」

 

姿が見えない。まさかだと思い、外へ行くと警官隊がいる。

 

「・・・その男を捕縛しろ!!」

 

リュガを連れて行かせないとテンゲン、シュージ、ゼノンは抑えようとするが、逆に警官隊に抑えられた

そして、リュガも捕まってしまったのだ。

 

「おい、やめろって!!」

 

「彼は僕たちの親友なんです!!連れて行かないでください!!」

 

シュージとゼノンがそう言うが、警官隊の後ろにニックの姿が、まさか・・・

 

「ニック!!お前が警察に連絡したのか!?」

 

「だ、だって!!リュガは危険なノーマなんだろ!?危険な奴を野放しにできないじゃないか!!」

 

ニックの言葉にリュガは愕然とした。

信じていたのに!!信じていたのに!!信じていたのに!!信じていたのに!!

裏切られた!!裏切られた!!裏切られた!!裏切られた!!

何かが外れ、怒り、憎悪、殺意、破壊が溢れ出した。

取り押さえていた警官たちを力尽くで跳ね除けて、俺を貶めたニックに腹部目掛けて殴り―――貫いた。

拳を引き抜き、臓物、血、脊髄の一部がビシャビシャと音が響く。

次に人々が悲鳴と絶叫が響く。

その後は―――覚えていなかったが、一つだけ覚えていたことがある。

 

―――人間をコワシタという事を。

 

 

◆◆◆◆

 

 

手が動かない。真っ暗で視えない。。

ここが、死後の世界かと思っていたが、突然、光が溢れる。

目を開けると眼鏡をかけた女性がいた。

 

「ナンバー130505、男性ノーマですか」

 

「・・・ここは何処なんだ」

 

「此処はノーマの収容所であり辺境の軍事基地アルゼナルです。

 私は此処で監察官担当のエマ・ブロンソン以後はお見知りおきを」

 

「・・・ああ、そうかい」

 

ぶっきらぼうに話す。

エマは片眉を上げて見下している。

 

「ノーマとなったお前はもう此処で戦って生きる道しか残されていないのだからな」

 

エマの言葉に付け足す様にいかにも高圧的な女性が現れる

 

「アンタは?」

 

「私はアルゼナル総司令官のジルだ。此処では私の命令に従ってもらう他ないのだよ」

 

「だろうな。どのみち俺は人間を一人殺してしまったからな・・・。帰る場所もないか」

 

その言葉を聞いて、エマは少しだけ驚く。

 

「今、人を殺したと?」

 

「・・・親友だった男に裏切られ感情が溢れてな。

 この拳で腹を貫通して、掌が真っ赤なに染まったんだ

 処刑されかとおもったが、こんな所に送られるとは運が良いのか悪いのか」

 

「・・・それは、お前がノーマだからだ。

 殺人鬼だろうともノーマである以上、ドラゴンと戦わねばならん。

 それに貴重な男性だから、処分するわけにもいかないからね」

 

ジルはそう言ってエマと共には部屋へを出ていく。

しばらくして、女性の悲鳴が聞こえた、拷問されているのか。

 

「・・・どうなるのかね。俺の人生は・・・」

 

マナが無くなったうえ、人殺しという烙印が押された。

だったら、決まっている、ドラゴンを全て駆逐するまで。




今作の主人公は恐ろしい履歴を考えました。
アニメ通りの展開になりますから、他の作品よりも更新頻度は遅いですが、頑張って執筆します。
批判・中傷コメントはご勘弁を・・・。


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まつろわぬ魂・前編

「遥か時空を超えて侵攻してくる巨大敵性生物それがドラゴン。

 そしてこのドラゴンを迎撃、殲滅し人類の繁斗を守るのが此処アルゼナルと私達ノーマの任務です。

 ノーマはドラゴンを殺す兵器としてのみ生きる事を許されます。

 その事を忘れずにしっかり戦いに励みましょう!」

 

「「「「「イェス!マム!」」」」」

 

幼等部の教室でノーマの講師がまだ幼い少女達に教授する。

俺ともう一人の女性がそれを聞かされていた。

 

「分かったか?リュガ、アンジュ」

 

「・・・はい」

 

「・・・」

 

その女性はミスルギ皇国第一皇女のアンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギだった。

家族ぐるみでノーマだという事を今迄隠し通してきたのだが戴冠式で実の兄に暴露されたという。

マナが使える人間たちからは絶大な支持を得ていたが、ノーマだと知ってこれとは・・・。

その兄も権力が欲しいがためにかとった行動とは、結局は人間が一番恐ろしいというわけか。

 

「もうすぐミスルギ皇国からの解放命令が、届くはずです・・」

 

諦めが悪くアンジュは必死に希望を見出そうとする。

浅ましい考えだ。

 

「監察官、この二人を本日付で第一中隊に配属させます」

 

「だ、第一中隊にですか!?」

 

「ゾーラには既に通達済だ。二人共さっさとくるんだ」

 

「ちょ、ちょっと!?離して下さい!」

 

「・・・了解」

 

ジルはアンジュの手を掴み連れて行く。

リュガは立ち上がり、その後をついていく。

 

「ふうーん、あれらがお噂の皇女殿下と男のノーマねえ・・・。

 男の方はともかく、皇女殿下は、やんごとなきお顔に穢れを知らない甘くておいしそうだわ」

 

「新しく来た子なら誰でもいいんでしょう?」

 

幼等部教室の丁度向かい側で金髪の女性が赤髪ツインテールの女性の体を触りながら眺めていた。

赤ツインの女性がモヤモヤしながら呟き、それに頷く薄青と茶髪の女性二人。

 

「なんだい?焼いてるのかい?」

 

「そ・・・それは・・」

 

「可愛いなぁ、お前達は」

 

「隊長!スキンシップは程々に。身辺からも揉み方が痛いと苦情が・・・」

 

そんな空気に痺れを切らしたのか藍ツインテールの女性が注意する。

 

「はいはい、気を付けるよ、副長~」

 

「ううっ!?」

 

そんな注意を促しても手をワキワキさせてくるので咄嗟にガードする。

 

「年上の新兵さんと男の人もいますが新兵同志お二人共仲良くね」

 

ピンクロングの女性が藍ツインテールの持っていた名簿を覗き既に配属されていた新兵の二人にも促す。

 

「「は、はい!」」

 

それに元気よく答えたまだ幼さの残る少女二人。

 

「ねえねえ、クイズしよう!誰が最初に死ぬのかな~?」

 

少しオレンジがかった赤髪の少女がそんな事を言ってきたので皆、強張る。

 

「死なせないように教育するのが私達の仕事でしょ!」

 

「あいたっ!?ご・・・ごめん・・・」

 

「着いたぞ」

 

ジルに連れてこられたアンジュは未だに顔を俯かせており、リュガはアンジュの隣に立つ。

 

「ゾーラ、後は任せたぞ」

 

バシッとアンジュの尻を叩くジル。

アンジュはキッとジルを睨むが、ジルは涼しげな顔をして立ち去る

 

「イェス!マム!」

 

ゾーラと呼ばれた金髪女性とそのノーマ部隊の仲間であろう女性達はジルに敬礼する。

 

「総指令から一度されたが改めて自己紹介しよう。

 ようこそ死の第一中隊へ、私は隊長のゾーラだ。

 後のメンバーの事は副長、紹介してやれ」

 

ゾーラは隣にいた藍ツインテールの女性に促す。

 

「イェス!マム、第一中隊副長のサリアだ。こちらから突撃班のヴィヴィアン」

 

「ヤッホ!」

 

ヴィヴィアンは薄ピンクのボサボサヘアーの子がキャンディを舐めながら元気良く挨拶してくる。

 

「次にヒルダ」

 

「フン」

 

サリアとは相対した赤い髪のヒルダはいかにも威張りちらした笑みを浮かべていた。

 

「後、救護班のロザリーと・・・」

 

茶髪の姉御肌という感じのロザリーさんの紹介の途中、アンジュは口を開く。

 

「これ全部、ノーマなんですか?」

 

言ってはならないことを言いやがった。

 

「はんっ!私達ノーマは物扱いだ」

 

赤髪のヒルダが更に爆弾発言を被せてくる。

 

「このアマ!」

 

二人の発言、いや、どちらかといえばアンジュの発言に切れるロザリー。

 

「そうだよ。皆、アンジュとリュガも一緒のノーマ。仲良くしようね」

 

ヴィヴィアンが友好的にそう言ってくる。

 

「違います!

 私はミスルギ皇国の第一皇女、アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ!

 断じてノーマではありません!」

 

「でも使えないんでしょう?マナ」

 

ヴィヴィアンのその言葉にアンジュリーゼは狼狽える。

 

「こ、此処ではマナの光が届かないだけです・・・此処から帰ればきっと・・・」

 

まだ必死に否定しようとするアンジュリーゼ。

この世界中にマナの光は満ちてはいる筈だからそれはない。

あんな傲慢な性格だから、無理な話というわけか。

 

「そっちの君もマナが使えないからここに?」

 

「最初は使えていたがな。

 突然、マナが無くなってここに送られた。

 まぁ、もう一つの理由としては・・・連行される前に人殺ししたがな・・・」

 

「人を・・・殺した?」

 

「親友の一人に裏切られてな。俺は怒りのあまりそいつの腹をぶち抜いたんだ」

 

ただ、ここに来た理由を話した。

皆はただ驚いているようだ、たった一人だけ除けば―――。

 

「はは、はははは!

 指令め、とんでもない者を回してきたか・・・。

 状況認識がなっちゃいない不良品と感情が制御できない殺人鬼か」

 

隊長のゾーラが豪快に笑う。

殺人鬼か、今の俺にお似合いな言葉だ。

 

「不良品は貴方方の方でしょう!」

 

「不良品が上から偉そうにほざいてますわ」

 

「うわあ・・・痛い・・・」

 

アンジュの言葉に皆が呆れていた。

 

「そうだな。俺も皇女も最低の不良品で欠陥品だな。

 その傲慢な性格でどれほどの周りを苦しめたのか。

 あんたの父親も母親も兄も同じ最低のクズだよ」

 

その言葉にアンジュはリュガの胸ぐらを掴む。

 

「今の言葉を取り消しなさい!!父上を、母上を侮辱するのはやめなさい!!」

 

「何度でも言おう。あんたとあんたの親と兄弟はクズだ」

 

「この・・・!!」

 

話の途中に痺れを切らしたのかヒルダが割って入ってきてアンジュの足を引っかけ転ばせた。

 

「痛っ!な、何をするのです!?」

 

「身の程をわきまえな、イタ姫さん」

 

「まあまあ、そのくらいで」

 

「エルシャ、こういう勘違い娘は最初でキッチリとしめておいた方がいいんだよ」

 

「そうそう」

 

ピンクの綺麗なストレートロングヘアーの優しい雰囲気を持った女性――エルシャがヒルダをなだめるが彼女は反論しそれにロザリーが賛同する。

 

「あらあら~そうなのぉ?」

 

天然なのか、それともこれが素なのか。

 

「はいはいお喋りはそこまでにしとけ。

 サリア、期待の新人教育を任せるぞ、同じノーマとしてな」

 

「はい」

 

ゾーラ隊長が話を無理矢理占めアンジュに触れる。

アンジュは嫌な顔をしているようだ。

 

「これより訓練を開始する!

 エルシャ、クリス、ロザリー、一緒に来い!

 遠距離砲撃戦のパターンを試す!」

 

「「「イェス!マム!」」」」

 

エルシャ、ロザリー、髪で片目を隠した銀髪三つ編みのクリスが敬礼する。

 

「サリア、ヴィヴィアン、ヒルダは新人教育を任せる。しっかりやんな!」

 

「「「はい!」」」

 

「各自かかれ!!」

 

「イェッサー!」

 

隊長号令でアンジュ以外の他の皆がそれぞれ動き出す。

リュガはサリアの後をついていこうとするが・・・。

 

「何をボサッとしている?こっちよアンジュ」

 

一人突っ立ているアンジュにサリアが誘導しようとする。

 

「何人たりとも皇女であるこの私に命令するなど!」

 

相変わらず態度を崩さないアンジュにサリアは懐からサバイバルナイフを取出しアンジュの首に、突き付けてくる

 

「此処での命令は絶対よ。良い?」

 

サリアのその気迫に押されたのかアンジュは首を縦に振った。

 

「・・・それから、リュガ、隊長が言っていた言葉、気にしなくてもいいのよ」

 

「・・・構わないよ。感情の制御もできない殺人鬼なのは甘んじて受け入れるさ」




オリ主の暴言、粗暴、ぶっきらぼうが目立つ気がする・・・。


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まつろわぬ魂・中編

急遽配給された男性用のパイロットスーツをサリアから受け取り着替えて訓練場へ向かう途中・・・。

 

「・・・んっ?」

 

どういうことか、アンジュが一糸纏わぬ姿をしておりドアを叩いていた。

 

「・・・何してんだ?」

 

「キャッ!?み、見ないでください!!」

 

しゃがんで、なんとか裸体を隠すアンジュ。

何が何だかさっぱりだが、ドアを軽く叩く。

 

「サリア副長、リュガだ」

 

ドア越しに声をかけると、扉が開きサリアが顔を覗く。

 

「あら、終わったのね」

 

「なんで、アンジュが真っ裸になって追い出されているんだ?」

 

「その子が、『そんな服を着るくらいなら、裸になった方がマシです!!』っと言ったから要望に応えただけよ」

 

アンジュのパイロットスーツを見ると血痕がある。

前の持ち主のか、女性だったら着たくもないし呪われそうだ。

結局、独りで着替えたことの無いアンジュはサリアの手伝いで着ることができた

 

 

◆アルゼナル 医務室◆

 

 

「はーあ~。こんなに真っ赤に腫れ上がっちゃってぇ~。ジュクジュクになってるじゃない~」

 

「ぐ・・・痛っ!?」

 

「痛い?痛い?痛いよねえ!」

 

人が痛がっている様子を見て危なく興奮している女医。

 

「酒臭いよ、マギー!」

 

「あいたっ!?ゴメンねえ~」

 

自身の腕を治療しているアルゼナル軍医マギーのおふざけにジルは鉄拳する。

 

「ジャスミン、そっちはどうなの?」

 

「外側のボルトが全部イカレちまってる。ミスルギ皇国製の奴に替えとくからちょっと値が張るがね」

 

アルゼナルの唯一の市場"ジャスミン・モール"の店主ジャスミンがジルの義手の修理して結果を伝える

 

「指令部にツケとくよ」

 

「毎度あり、だけどもうちょいデリケートに使って欲しいものだねえ。

 そいつはアンタ程頑丈に出来ちゃあいないんだ」

 

「いつも悪いね。じゃじゃ馬が暴れてさ」

 

ジャスミンの注意に申し訳なさそうにジルは言う。

 

「ああ、例の皇女殿下かい?」

 

「いいのかねぇ?皇女殿下と殺人鬼の男性を第一中隊なんかにブッ込んじゃってさ」

 

「・・・それでも駄目なら死ぬだけだよ」

 

ジルは不敵に笑いそう言い放つだけだった。

 

 

◆アルゼナル 訓練場◆

 

 

「パラメイルデストロイヤーモード起動!シュミレーター起動!フリーダムチャンバー、チャージ完了!」

 

「フリーダムチャンバーチャージコンプリート!」

 

「アレスティングギアリリース!」

 

「あ・・アレスティングギアリリースコンプリート!」

 

訓練場に着くと既に訓練は開始されていた。

リュガとアンジュはマシンに座り、サリアが説明をする。

 

「これに乗り込んでドラゴンと戦うのか・・・」

 

「そう、パラメイル。私達ノーマの棺桶よ」

 

「・・・棺桶ね」

 

「何をさせようというのですか?この私に・・・」

 

アンジュもサリアの棺桶発言を気に出来ない程混乱しているようだった。

 

「最初から出来るなんて思ってない。後は飛ぶ感覚を体に叩き込んで」

 

「・・・まぁ、善処する」

 

バタンッと閉めて、サリアは操作する

 

「リクエストリフト・オフ!アンジュ機、リュガ機、ゴーフォールド!ミッション07スタート!」

 

サリアの号令で景色が一変する。

 

「ぐっ!!」

 

「うきゃああー!?」

 

次の瞬間、凄まじいGが二人に襲い掛かってきた。

 

「シュミレーターでこれだけのGがかかるのか・・・!」

 

「な、何なのですかコレは!?」

 

たかがシュミレーターと侮りGの負荷に驚き、手を離しそうになったが耐える。

一方のアンジュは悲痛の声を上げ、操縦桿を手離してしまう。

 

「アンジュ、操縦桿から手を離さない!上昇!そして旋回!

 リュガ、ちゃんと前を見て!実践はこんなもんじゃないわよ!」

 

サリアの更なる号令により機体の動きが変わる。

必死についていこうと踏ん張る。

 

「最後に急降下訓練に移る!降下開始!」

 

「急降下!?うおおおっ!?」

 

「ひゃああああー!?」

 

「急いで!地面に激突してしまうわよ!機器を上げて!」

 

サリアは万が一の時の為に緊急停止ボタンに手を伸ばしておいたが―――

 

(でも、なんだ?初めて乗るのに、知っている―――?)

 

リュガの目つきが変わり、操縦桿を握り、地面に激突する前に上昇し、停止する。

 

「この感覚は・・・エアリア!!」

 

一方のアンジュもスポーツのやり方に似てすぐに機体を立て直し、遥か上空で停止したのを確認した。

 

「何なの・・・この子達は・・・」

 

サリアは初めてのはずの二人のシュミレーション結果に驚愕の意を隠せない。

 

「ほう・・・中々に良い筋をしているようじゃないか」

 

「隊長!」

 

訓練を終えたと同時に丁度、遠距離砲撃演習も終わったゾーラ隊長。

 

 

◆アルゼナル 浴室◆

 

 

「いやあー、大したもんだな皇女殿下とリュガは。

 初めてのシュミレーターで漏らさないなんてなあ!

 なあ、ロザリー?」

 

「い、いえ私の初めてはそのですね・・・」

 

ゾーラの質問に目が泳ぎつつ見当違いの返答をするロザリー。

 

「気に入ったみたいね、あの子と彼」

 

ロザリーのかわりに返答するヒルダ。

 

「ああ、悪くない」

 

「ねえねえ、サリア~。アンジュとリュガって何?超面白いんだけど~!」

 

ヴィヴィアンにそう質問され一番端側でシャワーを浴びているアンジュと今はこの場にはいないリュガの能力を見て感想を言う

 

「・・・今は、凄いの一言しか言えないわね」

 

 

~数日後~

 

 

エマがここ数日間で行ったアンジュとリュガの各技能テストの結果をジルに報告していた。

 

「例の新人達ですが基礎体力、反射神経、近接対応能力、更に戦術論のリタイヤ全てにおいて平均値を上回っております。

 特にリュガは、恐ろしいほどの伸びを見せています」

 

「優秀じゃないか」

 

「ノーマの中では、ですね」

 

エマの皮肉にジルは苦笑いを返し、エマは敬礼し別れた。

一方のジルは格納庫に足を運んでいた。

 

「パラメイルの操縦敵性・・・特筆すべきものがある・・ならば・・・」

 

そういう彼女の前には二機のパラメイルがあった。

一つは白、もう一つは黒のだった。



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まつろわぬ魂・後編

◆アルゼナル 食堂◆

 

ここは食堂。

兵士と言えど腹が減っては戦はできぬ。

新人のココとミランダは今日の献立を貰っている。

 

「わあー!」

 

ココはデザートのプリンを貰って大喜びだ。

 

「またとっとくの?たかがプリンでお子様だなあ~」

 

「もうお姉さんぶらないでよ。あ、リュガさんにアンジュさんじゃないですか!」

 

リュガとアンジュが座っている席を見つけたココとミランダ。

向かおうとするが―――。

 

「おや?これはこれは痛姫さま。あんなに何でも出来ちゃうお方が好き嫌い~?」

 

「しっかり食べないといざっていう時に戦えないよぉ?」

 

ヒルダとクリスが嫌味を言う

 

「・・・よく食べられますわよね」

 

「あらあら、痛姫さまのお口には合いませんでしたかあ?」

 

ロザリーがアンジュの食事を奪い空になった食器を返す。

新人いびりというやつか・・・。

 

「・・・あんた、そんなに食ったら太るぞ」

 

リュガの発言にロザリーは食を止め、キッと睨む。

 

「フフフ、言われたわねロザリー」

 

ヒルダがくくくっと笑う。

 

「う、ウルサイ!!生意気なんだよ!!」

 

ロザリーが水をぶっかけようとしたが、リュガはすかさずコップを奪いそのまま握りつぶした。

掌を広げると、コップの破片が落ち、血がポタポタと落ちる。

 

「これがあんたの手だったら、骨が粉々になっていたかもな」

 

ゾッとするロザリーとクリス。

 

「あんた、イタ姫様の味方するつもり?殺人鬼さん」

 

「五月蝿いやつを脅しただけだ。友人なら、躾けぐらいはしておけ」

 

リュガはそう吐き捨てて、席を立ち離れる。

 

「イタ姫さま、一つ忠告しておくわ。

 此処はもうアンタのいた世界じゃない。

 早く順応しないと・・・死ぬわよ」

 

ヒルダはアンジュにキツイ一言を言うが、それでもアンジュは完全に無視し席を離れた。

二人の前に、同じ新人の女の子が現れ、ココはアンジュにプリンをあげている。

 

「あ、私はミランダ。こっちの子はココですよろしく!」

 

「新人同士これからよろしくお願いします!」

 

緑髪の子ミランダ、藍色の髪の子ココが自己紹介する。

 

「・・・リュガだ、今後ともヨロシク」

 

「は、はい!」

 

「さっき、アンジュに何を渡したんだ?」

 

「私の大好物のプリンを是非アンジュ様には食べてもらいたくて!」

 

「・・・プリン?」

 

「この子、アンジュにベタ惚れのようでさ」

 

「ああ・・・そういうこと」

 

この子の精一杯の気持ちを今のアンジュは微塵も理解できんだろう。

楽しそうに話すココ達の様子を見てふと思い出す。

ミスルギ皇国にいる友人たちは元気にしているのだろうか?

 

「どうしたんですか?」

 

「・・・ああ、向こうの友人の事を思い出してたんだ」

 

「お友達の事を思い出していたんですか?

 私達は物心付く前から此処にいたからお母さんやお父さんの顔を全然知らないし」

 

ココやミランダの様な年端もいかぬ少女達は赤ん坊の頃から此処に連れてこられ兵士として育てられてきた。

残酷すぎるルールを作ったもんだな。

 

「あの、もしよろしければ・・・私達と友達になってくれませんか?」

 

「・・・なぜだ?」

 

「リュガさんが寂しくないように、友達になりたいんです。

 もっと、外の世界のことについて知りたいです」

 

リュガは微笑んでココとミランダの頭を撫でる。

 

「ありがとうな。ココ、ミランダ」

 

 

◆アルゼナル ジャスミンモール◆

 

 

アンジュは紙とペンを購入したようだ。

だが、何に使うつもりなのだろうか?

 

「そういえばアンジュさんとリュガさんは外の世界ではどうやってお買物とかしてたんですか?」

 

「・・・望めば何だって手に入りました。

 望んだ物が手に入る、望んだ自分がある。

 かつての暴力や差別が無い。困った事は何一つ無くマナの光に満ちていました」

 

反吐が出そうな気分だが、何も言わずにしておく。

 

「リュガさんも同じような生活を?」

 

「俺とアンジュの生活は全然違うな。

 ただ、普通に生活して友達とバカ騒ぎして楽しく暮らしていたぐらいだ」

 

「本当にあったんだ・・・魔法の国!」

 

一方のココはアンジュの話に関心しているようだ。

 

「ありがとうございました」

 

「あ、あの!」

 

それぞれの部屋に戻ろうとしたがココに呼び止められる。

 

「ま、また明日アンジュ様!リュガさん!」

 

「アンジュリーゼです」

 

「またな」

 

アンジュは本名で呼ぶように訂正し、リュガは手を振って別れる

 

~数時間後~

 

シャワーを浴び終えて、自室に帰ろうとした時、アンジュの声が聞こえた。

覗いてみると、そこは司令室のようだ。

アンジュはジルに他国の上層部に解放するよう働きかけをと明記した嘆願書を出してくれるようにと頼み込んでいた。

なるほど、昼間買った紙とペンはこの時に使おうとしたのか。

 

「まだ分かっていないの貴方は・・・」

 

エマも流石に呆れている。

 

「いやはや困ったものですよ。そいつの頭の固さには」

 

そこに、ゾーラが現れ、アンジュの頑固な態度にやれやれとしている。

 

「教育がなってないぞゾーラ」

 

「申し訳ありません指令。だけど男の方は良い順応性じゃないか」

 

「・・・それはどうも」

 

「では、皇女殿下をお借りします」

 

「キャ!?ちょ、ちょっと!?」

 

ゾーラは嫌がるアンジュを強引に何処かに連れて行った。

 

「はい・・・なんですって!?司令!」

 

「きたか!」

 

「「エマージェンシー!第一種攻勢警報発令!」」

 

エマにジルは冷静に警報を流すようオペレーターに言うように促した。

 

「リュガ、お前も早く準備しろ!」

 

「・・・了解」

 

 

◆アルゼナル 格納庫◆

 

 

「全電源接続!各機、ブレードエンジン始動!弾薬装填を急げ!」

 

格納庫にメカニックらしい少女の慌ただしい声が響く。

 

「アンジュ貴方は後列一番左の、リュガは一番右のに搭乗するのよ」

 

サリアがこれからの作戦を指示する。

リュガに充てられたのは量産機の機体だ。

 

『第一中隊は各自準備完了次第対応せよ!』

 

「準備完了!いくぞ!」

 

エマの指示にゾーラ隊長が返答を告げる。

 

「生娘共、少年、初陣だ!訓練通りにやれば死なずに済む。

 お前達は最後列から援護隊列を乱さぬよう落ち着いて状況に対処せよ!」

 

「いぇ、イェス!マム!」

 

「了解!」

 

「・・・これって・・・」

 

ゾーラ隊長の指示にアンジュ以外の皆が了解の意を返した。

 

『全機発進準備完了!誘導員が発進デッキより離脱次第発進どうぞ!』

 

「よし!ゾーラ隊出撃!」

 

オペレーターの発令により誘導員達が離れたのを確認した直後、ゾーラ隊長が号令しベテランパイロット達が一足先に出撃した。

 

「大丈夫、落ち着いて行動しろ」

 

「う、うん、いきます!」

 

初の実戦で不安がるココとミランダに一声かけ少しでも不安を和らげてあげた。

ココ達が出撃したのを確認しリュガも出撃した。

 

『モノホンのパラメイルはどうだ?振り落とされるんじゃないよ!』

 

「「は、はい!」」

 

「了解」

 

ゾーラの通信に俺達も返す。

 

『目標視認距離まで後一万!』

 

『よーし!各機、戦闘態勢!フォーメーションを組め!』

 

『イェス!マム!』

 

「了解!」

 

オペレーターからの計算結果を見たゾーラは各機に指示を出す。

 

「位置についてアンジュ、リュガ」

 

「了解」

 

サリアの指示にリュガは即座に従ったがアンジュは―――。

 

『アンジュ機、離脱!』

 

「・・・チッ!」

 

「・・・あの女」

 

サリアとリュガはアンジュを追いかける

 

「アンジュ戻って!もうすぐ戦闘区域なのよ!?」

 

「私の名前はアンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギです。

 私は私のいるべき世界、ミスルギ皇国へと帰るのです!」

 

「お前は、今の状況を解っているのか!?」

 

「持場に早く戻りなさい!でないと貴方を命令違反により今此処で処罰するわよ!」

 

サリアは銃を取り出し、アンジュを脅しにかけるのだが―――。

 

「アンジュリーゼ様、私も、私もミスルギ皇国へと連れて行って下さい!」

 

なんと、ココがアンジュに近づいて、連れて行ってほしいと頼みに入る。

 

「え!?な、何を言ってるの、ココ!?」

 

「私も魔法の国に!」

 

「ココ、今はそんなことをしている場合じゃない!!」

 

「そうよ!ココ考え直して!」

 

『真理が開きます!』

 

そこでオペレーターからの通告が入り、空に赤い稲妻が突如走る。

空を見上げると、何かが光る。

言葉を発するよりも、リュガはココに近づいて、強引に引っ張り、その場から離れる。

 

「リュガさん!?」

 

その直後、レーザーのようなものが、ココのパラメイルを破壊し水柱が上がる。

今のがドラゴンの攻撃だろう、一歩遅かったらココが餌食になるところだった。

そんな中空間に歪みが生じドラゴンの群が出現する。

 

『ドラゴン・コンタクト!』

 

「・・・あれが、ドラゴン・・・」

 

「・・・な、なんなの?・・・これ・・・」

 

アンジュも酷く混乱していたが、ドラゴンは雄たけびを上げて、睨んでいた




ココの死亡フラグは回避させました。
やっぱ、殺すのは可哀そうですので・・・。
ミランダとゾーラがどうなるのかはお楽しみに~。

アンジュの覚醒は墓地のイベントの時に。


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黒き破壊者

ココを救出したその矢先に、ドラゴンの群が出現する。

ピンク色の小型ドラゴンが20匹、青黒い巨大なドラゴンが2体が出現した。

 

『スクーナー級が20匹、ガレオン級が2匹』

 

「ガレオン級が2匹!?」

 

「1匹でも厄介なのに、2匹もくるものか・・・」

 

驚くロザリー、悪態するヒルダ

 

『総員聞け!新兵教育は中止。

 まずはカトンボを殲滅し、退路を確保する!

 全機、駆逐形態!陣形空間方陣!』

 

「イェス!マム!」

 

パラメイルの基本形態であるフライトモードから人型のデストロイヤーモードへと変形し応戦を開始する。

 

「命令違反の処分は?」

 

『後にしろ』

 

「・・・イェスマム・・・」

 

サリアは銃をしまい、ゾーラたちと合流する。

 

「・・・ゾーラ隊長、俺たちはどうすればいい?」

 

『なんとか、逃げ切り生き延びろ!!私たちがドラゴンを引き付けておく!!』

 

「了解」

 

とにかく、逃げて生き延びるしかない

 

「アンジュ!!ミランダ!!とにかく、逃げるぞ!!」

 

だが、アンジュだけは命令を拒否していた。

 

「いやです!!私はミスルギ皇国に帰ります!!」

 

「いい加減にしろ!!

 パラメイルだって出撃1回分の燃料しかない!!皇国もどこにあるのかも解らない!!

 お前の身勝手な理由でココが死んでしまう所だったんだぞ!!」

 

「それでも構いません。行ける所まで行って・・・あそこに戻らずに済むのであれば・・・!!」

 

リュガは叱責しようとしたその時、小型のドラゴンたちがアンジュに狙いを定め襲ってくる。

 

「ひぃっ!?いやあああああああああああっ!!」

 

恐怖に駆られたアンジュは半狂乱し、その場を離れたのだった。

滅茶苦茶な軌道だが、それでもドラゴンから逃げているようだ。

 

『ガレオン級の一体が、リュガ機を追ってます!!』

 

「なにっ!?」

 

オペレーターから最悪な事を言われたその時、猛獣のような雄叫びが後方から響く。

ガレオン級ドラゴンが俺を追いかけている。

リュガは上手く減速し、ガレオン級ドラゴンの下を掻い潜り、逃げる。

だが、いつまでも逃げ切れるわけではない、やられてしまうのも時間の問題だ。

 

「ミランダ!!こっちに来てくれ!!」

 

ミランダを呼び寄せて、ココを抱きかかえて移す。

 

「リュガさん、何を・・・?」

 

「俺が囮になる。お前たちは、アルゼナルまで退避しろ」

 

「そ、そんなの駄目です!!」

 

「急げ、時間がない!!」

 

リュガはそう言ってガレオン級ドラゴンへと向かう。

 

「ガレオン級は凍結バレットで心臓などの体組織を完全凍結させて殺すんだよな。

 だが、倒せるのか・・・?」

 

逃げてもいずれは、食われてしまう。

生き延びるには・・・倒すしか方法がない。

回避しつつ、見計らって、変形しようとするがドラゴンの尾が左の翼に当たり破壊された。

 

「しまっ・・・!!」

 

機体が不安定になり、スピードが出ない。

このままでは、喰われてしまうという絶体絶命のその時だ。

突然、夜を切り裂くように漆黒のパラメイルがリュガの前に現れたのだ。

 

「なんだ!?一体どこから!?」

 

驚くことに、操縦席には誰もいない。

考えるのは後にして、今の機体を捨てて漆黒のパラメイルに乗り込む。

操縦桿を握ると鼓動がし、脳内にフラッシュバックする記憶。

断片的だが、幼い時の記憶だった。

 

――煙草を咥えている父親。

 

――優しく微笑む母親。

 

――地下倉庫で見た、黒い巨人。

 

頭を振るい、状況を再確認する。

ガレオン級ドラゴンの体から、無数の光弾を撃つが全て回避する。

操縦桿を操作し、フライトモードからデストロイヤーモードへと変わる。

その姿は全身が黒く、騎士あるいは闘士、頭部には二本の角がある。

まるで、遠く切り離された半身が戻ってきたかのような気分だ。

 

「・・・征くぞ!!」

 

エンジンをフルスロットルし、ドラゴンへと向かう。

ドラゴンが口を開けて、噛み砕かんとするが、リュガは掻い潜る

 

「ああああああああああああああっ!!」

 

右手が杭打機パイルバンカーとなりドラゴンの腹部に連続で撃ち貫く。

武器を換装し、今度はチェーンソーとなり突き刺す。

エンジン音が入りドラゴンの肉と骨を削る音が響き下まで一気に振り下ろし切断する。

 

【ギャオオオオオオオオオオオオオオオンッ!?】

 

右半身が切り落とされ、堕ちるドラゴン。

リュガは止めを刺しに、追撃する。

 

「砕けろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

武器を換装し、油圧クラッシャーとなり、手首部分が回転しドラゴンの心臓を穿つ。

完全に生命が停止したドラゴンは海へと落下した。

リュガの機体はドラゴンの返り血を浴びていたか血に塗れていた。

目に入ったのは小型ドラゴンたちに追いかけられているミランダとココの姿だ。

 

「もう・・・ダメ!!」

 

ミランダとココは絶望しかけ、死を覚悟する。

ドラゴンは急降下し襲い掛かろうとしたが、リュガ機がドラゴンの首を掴み圧し折る。

死体を後続のドラゴン目掛けて投げ、左手を換装しダイヤモンドカッターを射出し首を撥ね飛ばす。

ココとミランダが無事なのを確認した後、もう一匹のガレオン級ドラゴンを倒しに向かう。

 

 

◇◇◇◇

 

 

一方のゾーラ隊。

小型のドラゴンの群を片付けて、最後に残ったガレオン級ドラゴンを仕留めに入る

 

「後はお前だけだよデカブツ、コイツでトドメだ!」

 

最後のガレオン級ドラゴン一体となった所でゾーラは油断していた。

 

「いやああああー!」

 

錯乱したアンジュがゾーラの機体に取り憑き身動きを封じてしまってたのだ。

 

「アンジュ、何をやってるのよ!?」

 

「何しやがる!?アンジュ離れろ!」

 

この隙にガレオン級ドラゴンは翼でゾーラとアンジュを両方を叩き落す。

叩き落された二機は今にも地上に墜落しそうになった。

 

「ゾーラァァァァァァッ!!」

 

ヒルダが悲痛な叫びをあげる。

最早、助からないと誰もが思ったその時だ。

 

―――ガキンッ!!

 

墜落しそうになった二機に、チェーンフックが巻き付いて阻止したのだ。

後ろを見ると、左手がクローラークレーンとなっている黒い機体――リュガが二人を助けたのだ。

 

「・・・なんとか、間に合ったか・・・」

 

「その声はリュガ!?貴方の機体なの!?」

 

「おお、いつの間に乗り換えたの?かっこいいジャン!!」

 

ヴィヴィアンは興奮しているが、リュガは全く聞いてない。

もう一匹のガレオン級ドラゴンはいなくなっている。

何処かへと逃げたのだろう。

 

「・・・みんな、基地まで引き返すわよ。追撃するのも無理ね」

 

サリアが命令し、基地へと帰還する。




ミランダとゾーラは生存せる方向ですが、ゾーラはしばらく戦闘に参加させないことにします。
遂に主人公機が登場、無人機で助けた理由は後ほど明かします。

◇登場した工具・重機◇

パイルバンカー(巨大な金属製の杭を高速射出し、装甲を破壊する)

チェーンソー(対象物を切り裂く電動ノコギリ)

油圧クラッシャー(破砕機とも呼ばれる。固い装甲を破砕・粉砕する武器)

ダイヤモンドカッター(ダイヤモンドでコーティングされた丸ノコ。射撃にも使える)

クローラークレーン(先端がフックとなっている。釣りの要領で捕縛したり絡め取って叩きつけたりに使う)


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故郷を無くした者たち

◆アルゼナル 医務室◆

 

 

誰も死ぬこともなく、帰投した翌日。

だが、ドラゴンの攻撃が堪えたのかゾーラは重傷を負い意識不明の状態だった。

いつ目を覚ますのか、解らない・・・。

 

「ゾーラ・・・」

 

「パラメイル4機大破、内メイルライダーが一名が意識不明。

 ドラゴンは撃ち漏らしたか。

 ・・・アンジュ、これがお前の敵前逃亡がもたらした戦果だ」

 

「・・・なんとか言えよ!おい!」

 

「手出すなよ。一応は負傷者だからな」

 

ロザリーは手を出そうとしたがマギーに止められ、渋々下がる

 

「私は、私は故国に帰ろうとしただけで何も悪い事をしていません・・・」

 

「お前のせいでお姉様が大怪我したんだ!」

 

「・・・ノーマは、ノーマは人間ではありません」

 

アンジュは反省の色も見せず、ヒルダは蹴りを入れようとしたが―――。

 

―――パシンッ!!

 

リュガはアンジュの頬を叩いたのだ。

 

「・・・まだ解らないのか?

 お前の身勝手な理由で、ココ、ミランダは死ぬところだった。

 ゾーラだって、目を覚まさない状態だ。

 それなのに、お前は・・・否定するというのか」

 

「私は、ただ・・・皇国に帰りたいだけです・・・」

 

「身勝手な・・・!!」

 

「落ち着け馬鹿者、その怒りはドラゴンにぶつけておけ」

 

「・・・了解」

 

「サリア、ゾーラが動けない以上、お前が隊長だ。ヒルダは副長だ。いいな?」

 

「「はい!」」

 

「撃ち漏らしたドラゴンが発見され次第、行動に移れ」

 

「イェス、マム!」

 

皆が部屋を出ていくが―――。

 

「リュガ、お前は残れ。大事な話がある」

 

ジルに呼び止められた。

ジルが懐から出したのはアンジュが書いた嘆願書だが、どれも受け取り拒否の印が押されていた。

 

「ミスルギ皇国は滅んだ。お前がノーマだと知り民衆たちはブチ切れたんだろう」

 

ジルの言葉を聞いて、アンジュとリュガは驚愕する。

いや、よく考えてみればそうだ。

宮廷クーデターによる皇室への信頼失墜、皇太子のジュリオだって人望があるとは思えない。

結果的に、ジュリオは権力が欲しいがあまりその結果、ミスルギ皇国は破滅した。

シュージ、テンゲン、ゼノンは無事なのか・・・?

 

「・・・これで、本当に故郷を失ったというわけか」

 

俯いて頭を振るリュガ。

それ以上にショックを受けていたのはアンジュだ。

 

「そんな・・・私の国が無くなるなんて。・・・お母様は?お父様は?お兄様は?シルヴィアは?」

 

「・・・お前たちに見せいたものがある」

 

 

◆アルゼナル 墓地◆

 

 

雨が降っており、其処には傘をしたジャスミンとゴーグルをつけている犬と一緒にいた。

ジルに案内されると其処には墓が並んでいたのだった。

 

「まさか、この墓は・・・」

 

「ドラゴンと戦い散っていたノーマたちだよ」

 

予想はしていたが、やはり戦いで亡くなった者たちの墓か・・・。

 

「ほんの少しマナが使えないだけではないですか!それだけでこんな地獄に!」

 

「お前達の作ったルールで此処にいる」

 

その言葉を聞いて、アンジュはミスルギ皇国で自分が行ったことを思い出す。

 

――人類の進化の果てに手にしたマナの光それを否定するノーマは本能のままに生きる。

 

――反社会的な化物・・今すぐにでも世界から隔離しなけれなりません。

 

「わ、私は決してノーマなどでは・・・」

 

「では、貴様は一体なんだ?ココをミランダを死に追いやろうとし、

 ゾーラを意識不明に追い込んだ貴様は一体なんだ!?」

 

「・・・私は・・・」

 

リュガはアンジュに叱責するが、アンジュは俯いて涙を流す。

 

「・・・その顔はなんだ?その眼は!?その涙はなんだ!?

 泣いていればマナが戻ってくるのか!?ドラゴンが来なくなるのか!?

 現実を認めて、逃げずに戦え!!」

 

「あなたに・・・あなたに何が解るんです!?

 母を目の前で奪われ、兄にも裏切られ、すべてを失った私の気持ちが!!」

 

殴ろうとするが、アンジュの拳を受け止めて話を続けるリュガ

 

「本当に失うというのは、生きる意志を無くした者だ。

 お前はまだ、生きる意志を持っている」

 

アンジュはリュガの瞳を見る、真っ直ぐで強い意志がヒシヒシと伝わる。

サリアが現れて、ドラゴンが出現したと報告をする。

 

「アンジュ、お前にうってつけの機体がある」

 

 

◆アルゼナル 格納庫◆

 

 

案内されると、埃かぶっているパラメイルが鎮座していた。

 

「コイツがお前の機体だ。名はヴィルキスかなり古い機体だ

 まともに動かせる奴がいないのだがお前にコイツを任せよう。

 死にたいのならばうってつけだろ?」

 

「ヴィルキス・・・」

 

「もっとも、もう一つの黒いパラメイルはリュガが選んだようだけどな」

 

「ちょっと待て、あの黒いパラメイルはいったい何なんだ?何か知っているようだが?」

 

「・・・あの機体はお前の父親が造ったものだ」

 

「親父が!?」

 

「5年前、エルド・黒鋼・ホクトがこの基地に現れて、あの機体を渡したのだ

 "こいつを乗りこなす奴は現れるはずだ。その時は渡してやってくれ"っと。

 それから、彼は行方知れずとなった」

 

5年前と言えば、両親は大きな仕事があると言って、出ていった時期だ。

それ以来から、帰ってこなかった。

 

「その時、俺の母さん・・・。いや、ミリル・黒鋼・ホクトと一緒じゃなかったのか?」

 

「いや、その時はお前の父親だけだった」

 

ジルの説明を聴きリュガは黒い機体に触れる。

 

(親父が残した機体だとすれば、俺がノーマになる事を最初から知っていたのか?)

 

果たして両親はいま、何処にいるのだろうか?

 

「名前とかあるのか?」

 

「無名だな。お前の父が息子につけろとな」

 

無名の機体というわけか。全く、親父も面倒な事をしてくれるもんだ。

 

「よし、お前の名はプルートだ」

 

黒い機体―――プルートと名付けるリュガ。

いざ、ガレオン級ドラゴンを討伐へ向かうとしよう。

其処に、ミランダがいた。

 

「・・・ココは?」

 

「部屋で落ち込んでいるわ・・・」

 

「なら、傍にいてやれ。親友のお前とならココも安心する」

 

そう言ってプルートに乗り込むリュガ。

 

「リュガさん!!どうか・・・死なないで」

 

リュガは親指をグッと立てている。

必ず、帰ってくるということだろう。

いざ、戦場の空へ――――。



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白き天使

◆戦闘区域◆

 

 

ドラゴンの追撃部隊は、サリア、ヒルダ、ヴィヴィアン、エルシャ、ロザリー、クリス、アンジュ、リュガだ。

 

「お姉様をあんな目に遭わした奴と一緒に出撃ィ!?」

 

「殺す、殺す、ブチ殺す・・・」

 

ロザリーは不満を漏らし、クリスは物騒な事を呟く。

 

「死ににいくそうだよ痛姫さまが」

 

「何?」

 

ヒルダさんの言葉に二人は首を傾げる。

 

「見せてもらおうじゃないか、死にっぷりをさあ!」

 

「おぉ?なんじゃああの機体!?ねえサリア!アンジュのパラメイル、ドキドキしない!?」

 

天真爛漫にはしゃぐヴィヴィアンだが、サリアは冷静に返事をする

 

「作戦中よヴィヴィアン、皆くるよ!!」

 

取り逃がしたガレオン級ドラゴンが海面から姿を現す。

 

「どうする隊長?」

 

「奴は瀕死よ一気にトドメを刺す!全機駆逐形態!!」

 

「「「「「イェス、マム!!」」」」」

 

「了解!!」

 

アンジュ以外、フライヤーモードからデストロイヤーモードになりドラゴンを倒しに行くが―――。

 

【ガオオオオオオオオオオオンッ!!】

 

「!?」

 

「サリア、下からくるみたいだ!」

 

なんと、ガレオン級ドラゴンは下に無数の光弾を発生させ攻撃してきた。

あのドラゴン、頭が回るようになったのか?

 

「こんな攻撃してくるなんて・・・過去のデータには無い・・・」

 

予測外のドラゴンの攻撃にサリアは混乱しているようだ。

 

「・・・どうすれば・・・」

 

「サリアちゃんどうするの?隊長は貴方なのよ!」

 

エルシャが必死に指示を仰ごうとする。

ドラゴンが迫ってきている。

 

「か、回避!」

 

だが、サリアは遅れておりドラゴンが迫っていた。

リュガは、サリアの機体を掴み安全な方へと飛ばすが、代わりに捕まってしまった。

 

「リュガ!!」

 

「ちぃぃっ!!」

 

【グルルルルル・・・】

 

ガレオン級ドラゴンは、なにやら憎しみに満ちている顔でリュガ機を睨んでいる。

 

「ああ、そうか。俺が昨日、殺したドラゴンはつがいか?

 俺をどうやって殺そうかと考えているのか?」

 

ドラゴンもただ人間を襲う本能に任せた獣かと思っていたが、気にくわない顔だ

 

「ガン飛ばすんじゃねぇよ!!」

 

左手を換装しダイヤモンドカッターを射出しドラゴン左面に刺さる。

悲鳴を上げるが、それでも離す気配がない。

次の攻撃を仕掛けようとした時、アンジュ機がこっちに近づいてくる。

 

「ちゃんと死ななきゃ・・・」

 

ドラゴンの狙いは近づいてくるアンジュに変わり、攻撃を仕掛けようとする。

 

「あいつ、本気で死ぬ気・・・?」

 

ヒルダだけではなく他の皆にはそのような行動を取っているようにしか見えなかった。

だが、ドラゴンの強烈な尾に弾かれたが、アンジュは体勢を立て直す。

 

「いけない・・・もう一度ちゃんと・・・これで、さよならできる・・・」

 

死ぬ覚悟ができていないのか単に怖いのか回避行動を取っている。

だが、リュガはアンジュの行動を見て、あることが解った。

人間は死にたくても本能では死にたくない。死を恐れ、生きることに執着する。

遂にはアンジュも捕まってしまい、ドラゴンはアンジュを睨む。

 

「う・・・くぅ・・・」

 

ドラゴンの恐怖、いやこれから来るであろう死の恐怖に体が震える。

その時、自分を守ってくれた母――ソフィアを思い出す。

 

――生きるのです、アンジュリーゼ。どんな困難が待っていようとも・・・。

 

母の最期の言葉を思い出し、形見の指輪を見る。

ドラゴンは痺れを切らしアンジュを食いにかかろうとする。

 

「いやあああああああああああああああああああっ!!!!」

 

アンジュの悲鳴に応えたのか、ヴィルキスが白銀の輝きを放つ。

ドラゴンも突然の輝きに目が眩んだ隙に、リュガは脱出する。

 

「やっぱ、あの機体にも仕掛けがあったのか」

 

アンジュはヴィルキスを操縦し、デストロイヤーモードに変形する。

背中には青い翼、巨大剣ロングソードを滞納、額部に女神像のようなオブジェが飾られている。

その姿はまるで、戦乙女、天使のようだ。

 

「死にたくない・・・死にたくない・・・お前が・・・お前が、死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

アンジュが吼え、銃を構えて撃つが、ドラゴンは障壁を張っている。

反撃に無数の光弾を放つが、アンジュはフライトモードに変形し避ける。

デストロイヤーモードになり、ロングソードを抜きドラゴンの頭部を刺す。

自分の撃った光弾も直撃し、グラリッと傾く。

 

「うわあああああああああああああああああああああああ!!」

 

凍結バレットを心臓に何度も撃ちこむ。

氷塊がドラゴンの体を覆い、生命停止し、海へと沈んでいく。

 

「こんなの・・・私じゃない・・・ころしても生きたいなんて・・・」

 

「そいつは悪い事ではない。辛くても生きて生きて戦わなければいけないんだ」

 

リュガそう諭すと、アンジュは泣き始めた。

ジルはアンジュとヴィルキスの覚醒を見てフッと笑っていた。

 

 

◆アルゼナル 墓地◆

 

 

太陽が沈み、オレンジ色に輝いていた。

アンジュとリュガは沈む太陽を見ていた。

 

「私には何もない、もう何もいらない。

 名前も、過去も・・・だから、私は生きる。

 この過酷な世界で・・・」

 

アンジュはナイフを取り出し、髪を切り落とした。

皇女アンジュリーゼは死に、今この時から兵士アンジュとして生きるという決意の表れだろう。

 

「長髪もいいが、短髪も似合っているな」

 

「・・・それはどうも」

 

リュガは懐から取り出す、プリンだ。

 

「ココからだ。今度は捨てずに食えよ」

 

ズイッとプリンをアンジュに押し付ける。

アンジュは受け取り、プリンを食す。

どうしてか、一筋の涙が流れていた。

 

「美味いだろ?庶民のプリンでも」

 

「・・・不味いわよ」

 

口ではそう言っても、本当は美味しいと素直に言えないようだ。

リュガはそういうことにしておいて、自分もココから貰ったプリンを食べる。



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反逆者-リベリオン-

反逆者-リベリオン-

 

 

「三度の出撃で、この撃墜数・・・アンジュとリュガは大したものだよ」

 

執務室にはジルを初めジャスミン、マギー、サリア、メカニックのメイが集まっていた。

リュガの機体プルート、アンジュの機体ヴィルキスの活躍で襲ってくるドラゴンを全て排除してきた。

その結果を報告しているのであろう。

 

「いままで、誰にも動かせなかったヴィルキスを乗りこなしている物ね」

 

「たぶん、ヴィルキスがアンジュを認めた。リュガのプルートも」

 

「始めるとしようか・・リベルタスを」

 

ジルの言葉から出た"リベルタス"。

大規模な計画がいよいよ始まろうとしていたのだ。

 

「不満かサリア?」

 

「……すぐ死ぬわ。あの二人」

 

「アンジュはゾーラ隊長を負傷、リュガは単独で危ない戦いをしているものねぇ」

 

―回想 戦闘区域―

 

スクーナー級ドラゴンを撃ち落とすアンジュ。

だが、ロザリーはワザとアンジュ目掛けて砲弾を放つがアンジュはこれを回避する。

ヒルダが止めを刺そうとするが、アンジュは突き飛ばし、ガレオン級ドラゴンに凍結バレットを撃ちこんだ。

獲物を横取りされて、舌打ちをするヒルダ。

 

一方のリュガはガレオン級ドラゴンが放つ光弾を避けて接近、右手武器が油圧カッターとなり顔を縦に切断する。

チェーンソーに換装して、切断した顔から突き刺し、そのまま下まで切り裂く。

ガレオン級ドラゴンはまるでアジの開きとなる。

最後に心臓に凍結バレットを撃ちこむというこれほどにもない追い討ちをする。

海が凍結し、血の色が混ざった氷の塊が出来上がる。

ロザリーとクリスの方へと向き、二人が戦っているスクーナー級ドラゴン目掛けて、ダイヤモンドカッターを射出し撃墜する。

どうやら、リュガは獲物を横取りする気でドラゴンを討伐したのだ。

 

最後のガレオン級ドラゴンを仕留めようと、アンジュとリュガはお互い譲る気配もなく攻撃を仕掛ける。

ヴィルキスは接近し、剣を持ちドラゴンの顔面を連続で切る。

プルートは油圧クラッシャーとなりドラゴンの腹部を連続で穿つ。

 

「邪魔しないでくれる?」

 

「そいつは無理な相談だ」

 

言い争っているうちに、二人は次々と部位破壊をし、最後にアンジュとリュガが同時に止めを刺す。

ドラゴンは血ダルマになって海へと落ちていく。

 

 

―回想 終了―

 

 

今日のアンジュとリュガの無茶苦茶な戦闘を思い出すサリア。

 

「私なら、もっと上手くヴィルキスを使いこなせます!!」

 

「適材適所というやつだ」

 

ジルはバッサリ言うが、サリアは尚も食い下がる。

 

「もしも、ヴィルキスとプルートに何かあったら……!!」

 

「その時はメイがあの二機を直す!!命を懸けて、それが私たち一族の使命だから」

 

「しかし、黒鋼・ホクトという名前を聞いたとき、驚いたねぇ。

 あのDr.パブロフの――エルドの息子だから乗れたというわけかい」

 

「お前はお前の使命を果たすんだ、いいね?サリア」

 

「でも、これからが忙しくなりそうだね」

 

「気取られない様にするんだ。特にエマ監察官にはな」

 

話が終わり、サリア、メイ、マギーが部屋を退室。

 

「ジル、あんたはどれだけ利用するのかい?」

 

「利用するものはなんだって、利用するさ。地獄は見て来たからな」

 

煙草を義手で握り潰すジル。

 

◆アルゼナル 給与カウンター◆

 

昨日のドラゴン討伐、弾薬、燃料消費、装甲修理など計算し、報酬金を受け取っている。

 

「撃破数スクーナー級3、ガレオン級へのアンカー撃ち込み。

 弾薬消費、燃料消費、装甲消費等を差し引きして今週分は18万キャッシュ」

 

「っち、これっぽっちか」

 

少ない報酬金を受け取るロザリー。

 

「まだ、良い方だよ。私なんて一桁だから……」

 

クリスはハァーとため息している。

彼女が扱う機体はハウザータイプ。

砲撃戦が得意のパラメイルだが、中々稼げないためカスタマイズされてない。

そのため、被弾が目立つため一桁しか貰えないことが多い。

 

「ヒルダは?」

 

ロザリーの問いに、ヒルダは分厚い札束を見て二人は感動している。

 

「アンジュは550万キャッシュ、リュガは600万キャッシュ」

 

アンジュとリュガの大金を受け取っていた。

 

「アンジュ、リュガ。やるー!!」

 

「大活躍ですものね」

 

ヴィヴィアンとエルシャは二人の活躍に褒めている。

しかし、アンジュとリュガは必要な資金だけはとり、残りは預金した。

 

◆女子用更衣室◆

 

アンジュは自分のロッカーを開けると、中が落書きされており制服がボロボロとなっていた。

 

「また、貴方達ね」

 

「さぁーねぇ~」

 

サリアが注意するのだが、ロザリーはしらを切っていた。

だが、アンジュはボロボロになった制服を身に纏い、ロザリーを睨む。

瞬時に近づきナイフを抜き、空を切る。

ナイフを納めると同時に、ロザリーのライダー服が切れ、胸が見てしまう。

 

「ひゃああああああああああ!?」

 

「うざ」

 

アンジュはただそれだけ言って更衣室を出る。

 

◆アルゼナル 食堂◆

 

「大丈夫ですよ、仕事も慣れてきましたし私がいる限り秩序を・・・」

 

父に仕事の報告をしているエマ。

コーヒーを飲んでいる最中、アンジュの姿が目に入る。

ボロボロの制服を身に纏っており、思わず吹いた。

 

「と、と、止まりなさい!!」

 

アンジュは後ろからの声を聞き、立ち止まる。

 

「あなた、その恰好は何?秩序を乱す服装は慎みなさい。

 まったく、そんな恰好をして恥ずかしくないのですか?」

 

「監察官殿は、虫に裸を見られて恥ずかしいと思いますか?」

 

「えっ?」

 

アンジュはそう言って敬礼して立ち去った。

今度は食堂の方で騒ぎが起きている。

何かと思い、戻ると、リュガと別部隊ライダーと取っ組み合いになっている。

いや、リュガの方が優勢で相手は戦意喪失している。

リュガはそんなのお構いなしに相手の髪を掴み、今にも殴りにはいろうとするが・・・

 

「そこ!!やめなさい!!」

 

「なんだ、監察官?」

 

「どういうことか、説明しなさい!!」

 

「こいつらが俺にケンカを売ってきたから力の差を解らせてやっただけだ」

 

リュガの視線には、既に軽く痛めつけた二人が泣いていた。

 

「だからって、髪を掴んで顔を殴ろうとしましたわよね!!」

 

「肩か腹に殴ろうとしたがな」

 

「屁理屈を言わない!!この件は司令に注意しておきますからね」

 

「了解」

 

リュガは心の中で舌打ちをし、相手の髪を離す。

 

「俺やアンジュの事を気にくわない連中がいるからケンカを吹っかけて来たんだ。

 監察官なら、こういう陰湿な連中に目を光らせてほしいもんだ」

 

リュガは連中に鋭い睨みをつけて、食堂を後にする。

エマが一番悩ませる事になるのがリュガだろう、胃が痛くなりそうだ・・・。




◇登場した工具・重機◇

油圧カッター(鉄骨切断機とも呼ばれ単純に言えば建物などを斬るためのハサミ。ドラゴンの皮膚も簡単に切り裂くことができる)


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孤独な二人・前編

-再び更衣室-

 

アンジュに斬られた所を裁縫しいるロザリー。

新しいの買えば済むことだが、そんなお金もない。

 

「あの二人にもっと徹底的にやんねえと」

 

「でも、リュガはお姉さまを助けたのに・・・?」

 

「あの男は"そんなに食ったら太る"って、暴言、吐いたんだぞ!」

 

あの時、アンジュの食事を奪った時のだ。

その点でロザリーはリュガも攻撃対象に入っている。

女性に対して太る、それは何処の世界でも最大の禁句なのだ

 

「まずはあの女からだ。私たちがお姉さまの敵をとるんだ。ヒルダの分もな」

 

 

=作戦1.ワザと食器をぶつける=

 

 

アンジュが食事の配給を受け取るのを見たロザリー。

 

「おっと!」

 

わざとらしく食器を投げるがアンジュは避けて、褐色肌のライダーに当たった

 

「てめぇぇっ!!」

 

「ぎゃあああああっ!!」

 

食堂に、殴打とロザリーの悲鳴が響き渡る。

 

 

=作戦2.水に下剤を混ぜる=

 

 

アンジュとリュガがシュミレーターに入っている所に近づき、下剤入りの水をすり替える。

訓練が終わったアンジュはペットボトルを開けて飲もうとするが、違和感を感じる。

 

「ふふーん」

 

アンジュは首にかけていたタオルを投げる。

ロザリーの視線がそっちの方へと向いた隙に、先程の水を口移しで飲ませる。

アンジュはそのまま、立ち去る。

 

「うぐあっ!?」

 

「ろ、ロザリー?」

 

ロザリーは腹を抱えて、トイレへダッシュした。

心配するクリスだが、肩を誰かに捕まれる。

振り向くと・・・。

 

「お前か、下剤入りをしたのは?」

 

リュガだ、彼の手には下剤入りの水を持っていた。

 

「えっ!?なんで、解ったの!?」

 

「飲もうとしたら、ロザリーが顔を悪くしてどこかに走っていたのを見てな。

 で・・・お前も味わうか?」

 

ギロリッとクリスを睨む。

 

「ご・・・ごめん!!」

 

クリスは脱兎する。

 

 

=作戦3.弱みを握る=

 

 

アンジュはシャワーを浴びている最中。

ロザリーとクリスはアンジュの弱みを握ろうと探っている。

 

「ろ、ロザリー!!これ!!」

 

「うわぁ・・・あいつとんだ、アバズレだったのか!!」

 

クリスが見つけたのは派手な下着だ。

 

「ふぅーいい湯だったわ」

 

シャワーを浴び終えたエルシャ、ロザリーとクリスが視界に入る。

 

「こいつを廊下に張って、生き恥をさらしてやる」

 

「うん、色ボケ豚のメスビッチのパンツ」

 

「・・・もう一度、言ってくれないかしら?」

 

「色ボケ豚のメスビッチのパン・・・ツ・・・」

 

「えっ?」

 

ロザリーとクリスは声の方を向くと・・・。

 

「はぁーい、色ボケ豚のメスビッチでーす」

 

エルシャは指をバキバキとならしている。

笑顔だが、目が笑っていない。

ロザリーとクリスは目の前にドラゴン以上の恐怖がそこにいた。

この後、二人はエルシャの鉄拳制裁を食らう事に・・・。

シャワーを浴び終えたアンジュは制服を身に着けるが、胸部分がビリっと破けた

 

「・・・新しいの買うしかないわね」

 

 

◆アルゼナル ジャスミンモール◆

 

 

ここの巨大市場ジャスミンモールは日用品、食品、パラメイル用のカスタムパーツなどまで、取り扱う品目は多岐にわたる。

隣接するアミューズメントブースでは卓球やクレーンゲーム、スマートボール、ビリヤードなどの娯楽設備も楽しめ、ノーマたちの憩いの場でもある。

ヴィヴィアンが大きな袋を持って武器の方を見ている。

 

「おばちゃん、コレいくら~?」

 

「お姉さんだろ!!ったく・・。ソイツァは1800万キャッシュだね」

 

「喜んで!」

 

ヴィヴィアンが選んだのは斧の様な武器を購入する。

リュガはヴィヴィアンが購入した武器を見て少し呆れていた。

 

「あんな武器、使いこなせるのか?」

 

「使いこなせるから、購入したんだよ」

 

「武器のせいにして死ぬようなことはするなよ。ジャスミン、このリストに載っている奴はあるか?」

 

「ここは、ブラジャーから列車砲まであるジャスミンモールだよ。

 ダイヤモンドカッターとパイルバンカーの弾丸、それに電気モーターか」

 

「あのプルートの整備資料を見て、色んな物を装備すると違う効果があると書いてたから試しにな」

 

リュガはキャッシュを払い、お目当てのものを購入する。

すると、番犬が唸り声を上げる。

視線の方を向くと、ボロボロの制服を身に纏ったアンジュだ。

 

「おおー、セクシー」

 

「・・・涼しいそうな格好だな」

 

「随分、派手にやられたね」

 

それぞれの感想を述べるが、アンジュは制服代のキャッシュをジャスミンに渡す。

 

「毎度あり。しかし・・・なにをどうしたら、そんな風になるんだい?」

 

「大方、ロザリーとクリスにやられたんだろうな。

 ・・・それから、ジャスミン、花とかあるか?」

 

「あるにはあるけど何に使うんだい?」

 

「殺風景な部屋に少し、飾るだけだよ」

 

そう言って、リュガはキャッシュを出し、花を購入する。



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孤独な二人・中編

◆アルゼナル 指導教室◆

 

「ガス抜きと思って見逃していたけどあまりにも目に余るわね」

 

「うう・・・」

 

流石にこれ以上、見過ごせなくなったのか正座されているロザリーとクリス。

エルシャに殴られた痕が残っているが・・・。

 

「でも・・・アンタ等何も思わないの?大切な仲間を危険な目に合わせて、

 その上お姉様があんな事になって・・・あの女はのうのうと生活している事にさ!!」

 

「でも、アンジュちゃんは戦場に戻って自分が行ったことも、償いをしたわ。

 リュガくんもいなかったらゾーラ隊長も新人二人も生き延びることもなかったかもしれないわよ?」

 

「そ、それは・・・!」

 

エルシャの言葉に折れたのかロザリーは何も言えなくなりかけたが・・・

 

「それだけで納得出来るの?

 指令も何を考えているのやら・・・アノ二人にポンコツ機なんか与えてさ。

 それとも、司令も気に行っちゃったんだあの二人に。

 ま、そう考えれば変に優遇されているのにも納得がいくわ。

 あの指令をたらしこむなんて大したもんだねえ・・皇女殿下と殺人鬼はさぞベッドの上で・・・。アンタもそうなんでしょう?サリア」

 

「・・・上官侮辱罪よ!」

 

「・・・だから?」

 

サリアはサバイバルナイフを、ヒルダは拳銃を抜き互いに得物を向け合う。

 

「これ以上アンジュに手出しするのは許さないわ!今はこれで許しておくけど・・・」

 

「ふん・・・。行くわよ、ロザリー、クリス」

 

ヒルダ、ロザリー、クリスは部屋を出で行く。

 

「あの男はゾーラの事を助けてくれた事には感謝はするけど、所詮、人殺しよ。絶対に気を許しては駄目よ」

 

「ヒルダ・・・」

 

 

◆サリア&ヴィヴィアンの部屋◆

 

 

(ジル・・約束してくれたではないですか・・ヴィルキスは私にって・・・)

 

「うう~ん・・欲しいのがあり過ぎるなあ。欲しい物が無いって寂しいよねえ~。ここでクイズ!」

 

「な、何?」

ヴィヴィアンが自前の購入予定リストを見ながらサリアにクイズを出してくる。

一人物思いにふけっていたサリアはハッと我に返って返答する。

 

「サリアは何を読んでいるでしょうか?」

 

「指導教本、難しいわ」

 

「サリアまた怖い顔してるほら!」

 

「あ、ちょ、ちょっと!?」

 

ヴィヴィアンがサリアがかけていた眼鏡を外す。

 

「いつものアレを読んでいる時の方が良い顔してるぞ?」

 

「アレ?」

 

「ほれ引出の二段目にあるさ、男と女がチュッチュする奴」

 

顔を少しだけ赤らめながら慌てたサリアはナイフを抜き、スレスレの壁に向かって投げる。

 

「いい加減にしなさい?今度漁ったら・・・・・・」

 

狩人の目でヴィヴィアンを睨む。

 

「ご、ごめんちゃい!もうすぐ飯タイムだけどサリアも行く?」

 

「私はもうちょっと勉強してからにするわ」

 

「りょーかーい」

 

ヴィヴィアンは部屋を出で、食堂へと向かう途中―――。

 

「おりょ?」

 

ヴィヴィアンは花を持っているリュガを見つけた。

何処に行くのかついてみるが・・・既にいなくなっていた。

 

「どうして、花なんかもってたんだろう?」

 

 

◆アルゼナル 医務室◆

 

 

「いらっしゃーい。あらリュガじゃない?何処か怪我したの?」

 

「期待させているようだが、怪我ではなく花を飾りに来たんだ」

 

「あーら、残念」

 

マギーは怪我でないことを知ると不貞腐れる。

リュガはそんなことをお構いなしに、花瓶に花を入れてゾーラの傍に飾る。

 

「ま、こんなもんでいいだろ」

 

「あんたも随分とロマンチェストね。花を飾るなんて」

 

「なんだって、いいだろう。こいつをやるから内緒にしておけ」

 

マギーに酒を渡しておいて、医務室を後にする。

 

 

◆アルゼナル 格納庫◆

 

 

医務室でやることを終えてプルートの調整をしているリュガ。

父親が残していたプルートの整備方法などが記されている資料を見ている。

ちなみに整備班長のメイの許可は貰っている

 

「・・・やっぱ、父親に似たのかね」

 

昔から父は機械系の仕事が得意で、ミスルギ皇国の生活などに献上していたぐらいの天才だった。

そのためか、賞や勲章なども貰っているのを覚えている。

そんな父親に憧れたのか大学に入って機械工学に関する学科を取った。

 

「・・・解らないのが、どうしてプルートを乗りこなせたんだろうか?」

 

量産機パラメイルとは違ってプルートは複雑過ぎる。

車で例えるなら量産機は良くて改造車、プルートは最高のレースカーだ

武装は工具や重機を戦闘用に改造しているようで、パーツを組み合わせれば効果は様々のようだ

先程、購入した電気モーターを組み込ませれば完成だ。

 

「お疲れ様」

 

不意に声が聞こえ、振り向くとエルシャだ。

 

「なんだ、エルシャか」

 

「聞いたわよ、他部隊のライダーとケンカしたって」

 

「あっちからケンカを売ってきたんだ。だから、それ相応を返しただけだ」

 

「リュガくんはどうして皆との壁を作っているの?」

 

エルシャの言葉に、作業を止める。

 

「そう見えるのか?」

 

「同郷のアンジュちゃんとも、仲良くしているわけでもないから・・・」

 

「あいつは元皇女で俺は機械工学が得意な元学生だ。生活も身分も違いがあるん、だ」

 

そう言って、最後の仕上げを終わらせて片づけをするリュガ。

 

「初出撃の時、隊長とアンジュちゃんを助けたのは?」

 

「・・・ただの気紛れに過ぎん」

 

エルシャはクスリッと笑った。

リュガはなぜ、笑っているんだと訝しんでいる。

 

「本当は優しい性格をしているのね」

 

「・・・意味が解らん。俺が優しいわけが・・・」

 

最後まで言おうとしたが、エルシャは後ろからリュガを抱きしめ頭を撫でる

突然のことで訳が分からなくなるが顔を赤くし、リュガはエルシャの抱擁を解く

 

「ふ、ふざけんな!!何すんだよ!?」

 

「うふふふ、素直じゃない弟ができた感じで嬉しいのよ」

 

「・・・なんだそれ、意味が解らん」

 

「でも、独りだと寂しいわ。皆でいたほうがいいわよ。アンジュちゃんもリュガくんも」

 

本当は仲間が欲しいとは思っていた。

だけど、そんなことで甘えてはいけないと決めていた。

こんな、殺人鬼なんかと仲良くできるわけがない

けど、もしも・・・許されるのなら・・・。

 

「・・・・・・考えておくよ」

 

リュガはそう行って、歩き出しエルシャも後をついていき格納庫から立ち去る。

しかし、二人は気づいてなかった。

ヒルダがヴィルキスに細工をしていたことに・・・。



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孤独な二人・後編

孤独な二人・後編

 

 

次の日―――。

ドラゴンが出現し、格納庫は慌ただしくなっている。

ライダーたちはそれぞれのパラメイルに乗り込む。

 

「総員騎乗!」

 

ドラゴン出撃警報が鳴る中、サリアが号令をかける。

 

「サリア隊、リュガ機プルート、出る!」

 

エンジンをふかし、いざ出撃。

後ろに、ミランダとココの姿を確認し、いつもの仕事を始める。

 

 

◆戦闘区域◆

 

 

プルートはスクーナー級ドラゴンを牽制して動きを鈍らせる。

 

「ミランダ、ココ!!」

 

「「はい!!」」

 

ミランダとココに止めを刺させる。

例え、弱っているドラゴンを刈れば自信につながると思ってリュガはこういうことをしている。

 

「はあああー!」

 

「アンジュ!勝手に突っ込むな!」

 

一方のアンジュはサリアの命令を無視しドラゴンに突撃をかける。

 

「ねぇ、助けてやろうか?」

 

「!?」

 

何故か一番アンジュの事を嫌っている筈のヒルダ副長さんが彼女を援護しようとしていた。

だが、アンジュはヒルダの言葉を無視し、ドラゴンを討伐に行こうとした時、

 

「なっ・・・これは・・・!?」

 

アンジュはヴィルキスの異常を感じる。

 

「何をやってるの!早く立て直すしなさい!」

 

異常に気が付かないサリアはアンジュに命令する。

それを確認したヒルダは不敵に笑いを浮かべていた。

 

「ヴィルキス!?」

 

「ちょっとサリアちゃん何処行く気なの!?大きいのが最優先よ!」

 

ヴィルキスはブースターの異常で失速し海に墜落した。

それを狙ったスクーナー級ドラゴンとの取っ組み合いの末に遂には海中に沈んでしまったのだ。

やっと気付いたサリアは慌ててヴィルキスを追おうとするがエルシャに止められてしまう。

 

「そんな!?ヴィルキスが!?」

 

気を取られているサリアの背後にドラゴンが迫ってくる。

 

「隊長、危ない!」

 

ドラゴンが噛みつきに掛かろうとした。

しかし、サリアの間に左手が大砲に変形しているプルートが構えていた。

 

「ウェルダンにしてやるぜ」

 

発射口から火炎放射を放ち、ドラゴンの顔面を焼き尽くす。

怯んだ所を狙い、電気が帯びたチェーンソーで心臓を突き刺し、ドラゴンを倒す。

 

「今はこっちに集中しろ!」

 

「あ・・・ありがとう・・・」

 

それでもサリアはヴィルキスとアンジュが沈んだ海中をずっと見つめていた。

 

「アンジュが心配なのは解る。今は生き延びることが先だ」

 

「・・・うん」

 

リュガはサリアにそう言って、ドラゴンの駆逐に戻る。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「・・・ん・・・私は一体・・?」

 

目を覚ますと、どこかの天上が目に入る。

起き上がろうとするが、両手が縛られている。

横を見ると・・・。

 

「・・・え?え!?えええええええええええええええええええええええー!?」

 

隣には茶髪の男性が寝ており自分は裸にされていた。

果たして、この男性は何者なのか?アンジュとヴィルキスの運命は?




今回は短めで、申し訳ありません。次回はラッキースケベこと、タスクの登場です。

◇登場した工具・重機◇

ウェルダー(溶接工や溶接機という意味。ガス、放電、レーザーなどと種類は様々。超近距離においては絶大威力を持つ)


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流されて無人島

原作の第五話、始まります


アンジュは目を覚まし、目の前の光景に驚いていた。

 

「ごめん。一応、両手を縛っておいたから・・・」

 

男はそう言うが、アンジュはなにかされると思い、暴れる。

男は抑えようとするが、滑りアンジュの股に突っ込んでしまった。

目の前の光景には女性の大事な神秘があるのだ。

アンジュは男を横蹴りして、腹に足を乗せてから投げ飛ばす。

縄を切り、自分の服を持って洞窟から出る。

海岸の方まで走るとヴィルキスがあった。直ぐに発進しようとするが何も起きない。

調べると、焦げている部分があり、調べると下着が詰め込まれていた。

直ぐにあのヒルダの仕業だと知ると、下着を破り捨てる。

 

「酷いじゃないか、命の恩人になんてことを・・・」

 

蹴り投げた男がアンジュに近づくが、銃をとり足元を狙い撃つ。

男は後方に飛び退いて、手を上げる。

 

「それ以上、近づいたら・・・撃つわ」

 

「お、お、落ち着け!!俺は君に危害を加えるわけじゃない!!」

 

「縛って脱がせて抱き付いておいて、もっと卑猥で破廉恥なことをするつもりだったんでしょう」

 

顔を赤くし、銃口を男に向けるアンジュ。

男は弁明しようとしたが、足元にカニが近づいており、男の足を挟む。

 

「痛ぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

突然の痛さに、驚きアンジュに倒れ込み、股を埋めるような感じになった。

 

「ご、ごめん!!」

 

男は直ぐに離れるが、アンジュは顔を赤くして男に発砲する

しばらくして・・・

 

「変態!ケダモノ!発情期!!」

 

男を蔓でグルグルに縛り付けて、ズカズカと歩く。

 

 

◆◆◆◆

 

 

その頃のアルゼナル―――。

 

アンジュとヴィルキスが行方不明となり、司令室で今後の話をしていた。

 

「機体の調子はよかったのに、どうして・・・」

 

メイはあの時、もっと強くアンジュを止めていればこんな事にはならなかったと思っていた。

 

「アンジュとヴィルキスを回収するんだ。最悪、アンジュが死体になってもだ」

 

死体になっても回収・・・。

ジルがそこまで、アンジュが必要である事にサリアは驚いていた。

回収班はメイとサリア、整備兵が輸送機に乗り込もうとするが、ヴィヴィアンとエルシャがこっちに向かってきた。

 

「アンジュ、まだ生きてる!わかるもん」

 

「早く見つけてあげないとね、きっとお腹空かしてるわ」

 

ヴィヴィアンとエルシャはアンジュが生きていると信じている。

エルシャはサンドウィッチを入れるバスケットを持って準備万端だ。

メイが反論する前に二人は乗り込んだ。

顔は見合わせるメイとサリア、兎にも角にもアンジュとヴィルキスを捜索する。

 

 

◆◆◆◆

 

 

非常食を探しているが見つからない。

不意にサリアやジャスミンの言葉を思い出す。

 

「ノーマの棺桶か・・・」

 

すると、海水が増している。

どうやら満潮し、アンジュは急いでその場を離れる。

空が曇りだし、雨が降りだし雷鳴がとどろく。

大木の穴を見つけて雨宿りするが、飢えと雨の寒さで体が震えるが何か痛みを感じる。

蛇が噛みついており、急いで振り払い、その場から走り出す。

どのくらい歩いたのか体力が低下してきた。

先程の蛇に毒があったのか、体もだるく雨による体温低下により、アンジュは倒れてしまう。

 

「だれか・・・誰も・・・助けてくれない・・・」

 

これが、自分の最期になるのかと思うと涙を流し、目を瞑る。

 

「あの・・・大丈夫?」

 

声の方を振り向くと、先ほど縛り上げた男がいた。

どうやら同じ場所に辿り着いてしまったようだ。

男はアンジュの苦しい表情を見て、何かあったと悟る。

急いで蔦を切り、アンジュを抱きかかえて容体を調べる。

蛇にかまれたことを知り、傷口から毒を吸い出して処置をする。

 

 

◇◇◇◇

 

 

男は秘密の隠れ家で泥だらけになったアンジュの体を拭く。

アンジュが指に着けてる指輪を見て、幼い時の事を思い出す。

 

――――紅蓮の炎が街を燃やす。

 

――――両親は息絶えて、幼い自分は泣いている。

 

――――片腕を無くした黒髪の女性と女神のオブジェがついていた白い機体。

 

「・・・ヴィルキス」

 

男はもう一度、アンジュを見る。

何故、この女性がヴィルキスに乗っていたのだろうか?

 

「・・・んっ」

 

気が付くと、最初に目覚めた洞窟だ。

 

「動かない方がいいよ。毒は吸い出したけど痺れは残っている。

 それに、動けない女の子にエッチな事はしてないからね」

 

男はそういいながら、スープを盛り付ける。

 

「これに懲りたら、あんな格好して森に入ったらダメだよ」

 

「・・・余計なお世話よ」

 

「食べる?」

 

「いらないわよ」

 

そう言うが、腹が鳴っている。身体が正直なのが恨めしくなってきた

渋々と口を開けて、食す。

 

「・・・不味い」

 

そう言いながらも口をアーンッとあけるアンジュ。

男はクスリッと笑う

 

「気に入ってもらえてよかったよ、ウミヘビのスープ」

 

ウミヘビという言葉にギョッとし、飲みこむアンジュ。

するとある言葉を思い出す。確か、蛇にかまれた部分は―――。

 

「さっき、毒を吸ったと言ったわよね」

 

「うん、そうだけど・・・ハッ!?」

 

男は気が付き弁明するが・・・

 

ガブッ!!

 

「痛あああああああああああ!!?」

 

鼻を噛まれたようだ・・・。

 

 

◆◆◆◆

 

 

結局、見つからず基地に帰還した回収班。

エルシャは飲み物を飲んでいた時に、ヒルダが待っていた。

 

「エルシャのお得意のお節介かしら?」

 

「アンジュちゃんとリュガくんを誰かが受け入れてくれないと二人とも孤独になるわ。

 そんなの寂しいじゃない、同じノーマだからね」

 

エルシャの言葉に、納得ができないヒルダ。

 

「それにアンジュちゃんとリュガくん似ているじゃない。

 昔のヒルダちゃんに。だから放っておけないの」

 

「似ている?あのクソ女と殺人鬼と?・・・殺しちゃうよ、あんたも」

 

ヒルダが脅して言うと、その場を去る。

入れ違いにリュガはヒルダを見て、結果報告を聞く。

 

「アンジュは・・・見つからないようだな。その様子だと」

 

「心配していたの?」

 

「あいつがいないとドラゴン狩りに張り合うのがヒルダしかいないからな」

 

「あらあら」

 

「・・・それに、あいつにはまだ帰る場所はある。俺には帰る場所は無い」

 

ここに来る前に人を殺してしまい、殺人鬼という烙印が押されている。

だから、戻る場所も待ってくれる人だっていない。

 

「やっぱり、優しいわね」

 

「気のせいだろ」

 

「じゃあ、ゾーラ隊長に花を飾っているのも?」

 

「・・・見たのか?」

 

エルシャは舌をペロッと出していた。

ブラフに引っかかってしまったようだ。

隠しても仕方ないので、告白する。

 

「・・・まぁ、花ぐらい飾ってもバチが当たらんだろうと思ってな。

 それに、ミランダとココが少しでも生き延びやすいように、パーツ用の資金を与えているんだよ」

 

「溜めていたお金をあの二人に使っていたの?」

 

「まぁな・・・。ところで、俺も捜索隊に加わってもいいか?」

 

「リュガくんも?」

 

「ああ、ジル司令にプルートの出撃許可をもらってくる。

 分散して、捜索した方がはやいだろ?異論は認めないからな」

 

そう言って、ジル司令から捜索許可を貰いに行こうとする。

なんだかんだで、情を捨てきれないような気がしてきたリュガだった。



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アンジュとタスクとリュガ

次の日。

ヴィルキスを修理ができるということで、男は早速、作業に取り掛かっていた。

 

「貴方、マナが使えないの?それにどうしてパラメイルの事を知っているの?」

 

アンジュの問いに男は険しい表情をする。

 

「・・・俺はタスク。ただのタスクだよ」

 

そう言って、男――タスクは整備を続ける。

 

「直せるの?」

 

「此処にはよくバラバラになったパラメイルが流れ着いてくるからいじっている内にね」

 

「へえ・・・」

 

タスクと一緒にヴィルキスの修復作業を手伝うアンジュ。

彼女は不意に自分を見失いかけたが叱責したリュガと自分の事を助けてくれたタスク。

アンジュの心の中で少しずつだが、凍てついた心が溶けていくような気がしてきた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

その日の夜―――。

浜辺で寝転んでいる二人。

無人島で楽しく日々を暮し、互いに打ち解けたようだ。

 

「空なんてずっと見てなかったから・・・綺麗・・・」

 

アンジュは空を見て星を眺める。

タスクが顔を赤くして。

 

「君の方が綺麗さ」

 

アンジュは少しドキッとする。

良い雰囲気になるが、タスクはアンジュを押し倒すが、静かにしろというサインをする。

フッ、夜空にとなにかが見える。

 

「・・・凍結されたドラゴン?」

 

二人は凍結されたガレオン級ドラゴンが輸送されていくのを目撃していた。

そこにスクーナー級ドラゴン3匹が襲撃、輸送ヘリは反撃するもむなしく全て撃墜されてしまった。

ドラゴンを輸送していた機体は全滅し、この島の奥へと墜落した。

タスクはアンジュの手を引っ張って逃げようとしたが、目の前にスクーナー級ドラゴンが落ちて来た。

先程の戦闘でボロボロだが、二人を睨み襲い掛かってくる。

 

「パラメイルを今すぐ、直して!!」

 

「解った!!」

 

二人はヴィルキスがあった海岸へ向かう。

アンジュはナイフを構えて、ドラゴンに立ち向かおうとする。

ドラゴンはアンジュに喰ってかかろうとするが、翼で弾かれてナイフを落としてしまう。

 

「これを!!」

 

タスクはアサルトライフルをアンジュに投げ渡し、キャッチする。

急いで直さなければアンジュが喰われてしまう、焦ってしまうが落ち着いて修理を進める。

アサルトライフルを撃ち、牽制するがドラゴンの尾で弾かれてしまう。

喰いにかかろうとするが、アンジュの指輪が光、ヴィルキスが銃を持っていた手が動きドラゴンへと発砲する。

不意をつかれたドラゴンが怯み、アンジュはこの機を逃さずドラゴンに攻撃を加えようとするが―――。

目の前に黒い機体が現れ、ドラゴンを蹴り飛ばし、チェーンソーで心臓を突き刺す。

 

「よぉ、楽しいバカンスのようだな、アンジュ?」

 

「その声・・・リュガ!?」

 

「男がパラメイルに乗っているのかい?」

 

 

◇◇◇◇

 

 

朝日が昇りはじめ、一筋の陽光が照らす。

スクーナー級ドラゴンの死体は海に攫われ、流れていく。

三人はその光景を静かに見守っていた。

 

「仲間を助けようとしたんだ。帰りたかったんだね、自分達の世界に・・・」

 

「ドラゴンはただ、人間を喰らう様な連中かと思ったが、仲間意識があるのか・・・」

 

「・・・リュガはどうして、ここに?」

 

「お前とヴィルキスの捜索していたところ、

 輸送機とドラゴンが戦闘して島に落ちたの見て来たわけだよ。

 しかし・・・いつから、彼氏持ちになったんだ?」

 

彼氏という言葉にアンジュは顔を赤くし反論する。

 

「そ、そういうわけではありません!!」

 

「はいはい。

 じゃあ、俺は救難信号を出して位置を知らせておくよ。

 別れぐらい、二人っきりにしておくよ。

 ・・・キスぐらいしておけよ?」

 

「違います!!」

 

顔を赤くして怒るアンジュ、リュガは涼しそうな顔でプルートに乗り込んで救難信号を出す。

アンジュは深く息をついてタスクの方を向いて決意する。

 

「私、帰るわ。今はあそこしか、私の戻る場所はないみたいだから・・・」

 

「うん、お別れだね」

 

タスクが頷くが、アンジュはタスクの襟元を掴み、顔を赤めて言う

 

「いいこと?私とあなたは何もなかった。

 何も見られてないし、何もされてないし、どこも吸われてない。

 全て忘れなさい!!いいわね!?」

 

「わ、解った・・・」

 

二人のやりとりにリュガは笑いを押し殺している。

アンジュは優しく微笑み自分の名前を名乗る。

 

「アンジュよ、タスク」

 

「良い名前だよ。またいつか・・・アンジュ」

 

「・・・ところで、あの黒いパラメイルに乗っている人は?」

 

「彼はリュガという男性のノーマよ。少し説教が五月蝿いけどね」

 

アンジュの言葉を聞いて、リュガとプルートを見るタスク。

しばらくして、サリアたちが到着し、アンジュとヴィルキスを回収する。

リュガはタスクの方を見てから、機体に乗り込み後を追う。

 

 

◆◆◆◆

 

 

タスクは荷物を持って墓標を後にする。

自分の隠れ家にはパラメイルの様な機体が置いてあり、二枚の写真を見る。

幼いタスクと両親と煙草をくわえた男性とおっとりした女性が写っている。

ゴーグルをつけ、機体を駆り無人島を後にする。




今回で原作、第五話は終了~。
原作の第四話と第五話は戦闘が少ないから、オリ主の影が薄い気がする・・・。

第六話と第七話は執筆中ですので、いつ投稿できるか解りませんができるだけはやく投稿します。


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再会

久々の更新~。
私情で忙しく内容をまとめるのが遅くなりました。
今回、メイドのモモカとリュガの友人との再会です。


◆アルゼナル物資搬入場◆

 

「食料良し、薬品類良し…あーソイツは其処に運んでおいておくれ」

 

「確かに受領しました今後ともよろしくお願い致します」

 

ジャスミンは物資搬入の確認をしていたが、4つの影に気がついていなかった。

一方、今日もドラゴン狩りを終えて基地の廊下を歩いているアンジュたち。

ヒルダ、ロザリー、クリスの三人は不満な顔をしている。

 

「クソ!またアイツらだけ荒稼ぎしやがって!」

 

「……なんで生きてるの?」

 

「どっちがゴキブリなんだか……」

 

ロザリーは胸からネジを取り出しアンジュの頭部目がけて投げ突けようとする。

 

「アイツの頭にネジ穴開けてやる!」

 

「バレタら、指令に怒られるよ……」

 

ジルの折檻が嫌なクリスはロザリーを止めようとする。

流石にジルの叱りが怖いのか躊躇うロザリー。

 

「バレなきゃいいじゃない」

 

「……それもそうだね」

 

ヒルダがそう言ったのでクリスも悪乗りする。

 

「そういうこと、これでも喰らいな害虫女!」

 

そうロザリーがネジを投げようとした瞬間、警報が鳴り出す。

 

「ひえっ!?違います違います!私何もしてませんよ!?」

 

「ロザリー違うみたいよ」

 

「え?」

 

ヒルダに言われロザリーは顔を上げる、館内放送が鳴り響く。

 

《総員に告ぐ!アルゼナル内に数人の侵入者有!対象は上部甲板を逃走中!直ちに付近の者は侵入者確保に協力せよ!》

 

「侵入者!?」

 

それに驚きを隠せないエルシャ、対してリュガは呆れた顔をしている。

 

「ここって、警備がザルなのか?」

 

「とにかく向かいます!上部甲板の侵入者を対処するわよ!」

 

「「イェス・マム!」」

 

リュガたちは上部甲板へ向かう

 

 

=上部甲板=

 

 

「まったく、シュージがこけたせいで見つかったじゃないか」

 

「俺のせいにすんなよ!!」

 

二人は逃げながらケンカしているが警備兵たちが現れて警備棒を振りかざすが小柄な少年がマナを使って弾く。

 

「ケンカしてないで、速く逃げるよ!!」

 

「……残念だが、それは無理のようだ」

 

前も後ろにも警備兵たちが取り囲んでいる。

 

「すみません、三人にも迷惑をかけてしまって……」

 

「なーに、気にする事ねぇよ。俺たちだって、アイツに会うために侵入したからさ」

 

「それに女性一人では、心細いだろう」

 

「でも、僕たちがピンチだよ……」

 

メイドと男性3人はどうするかと考えている。

アンジュとリュガは見覚えある姿と声を聞き、まさかだと思った。

 

「モモカ!?」

 

「シュージ、テンゲン、ゼノン!?」

 

声の方を見る侵入者たちは驚きの声を上げる。

 

「アンジュリーゼ様!!」

 

「「「リュガ!!」」」

 

 

◆アルゼナル 司令室◆

 

 

侵入者たちの正体はアンジュとリュガの知り合いと判明しエマは委員会と連絡している。

 

 

「モモカ・荻野目、シュージ・グラムス、テンゲン・ベルトル、ゼノン・スプリンです。はい・・・はい・・・。了解しました。」

 

「委員会はなんと?それとも・・・予想通りか?」

 

「最高機密であるアルゼナルとドラゴンの戦闘、それらが漏れたら・・・。

 あの四人はなんとかなりませんか?ここに来ただけなのに」

 

「ただ、ここに来ただけねぇ。ノーマの私に人間が作ったルールを変える事なんてできませんよ」

 

ジルは吹かした煙草を灰皿で潰し消す。

 

 

◆◆◆◆

 

 

モモカはアンジュの部屋に、シュージ、テンゲン、ゼノンはリュガの部屋にいる。

 

「全く、危険を冒してまでこんな所に来るとは……」

 

「どうしても、リュガに会おうと思ってあのメイドさんと協力してここに来たんだ」

 

昔からシュージの無茶苦茶ぶりには解る。

けど、ここまでやるとは思わなかった。

 

「……ニックはどうなったんだ?」

 

「ニックはあの時、死んじまったさ。即死だそうだ」

 

「腹が貫通し、出血多量、臓器と背骨の一部が破壊された」

 

「そう、か………」

 

やはり、あの時の一撃でニックは死んでしまったのか。

 

「けど、ニックだって僕たちの事を親友として見ていなかったと思うよ。

 大学に入れたのだって親が権力と金の力で入ったようなもの。

 僕たちと友人になったのもただの番犬みたいな扱いしてたしさ」

 

「あいつは、ノーマの事が恐ろしい存在だと認識しているからな。無理もないさ」

 

「…ミスルギ皇国が滅んだと聞いたが、本当なのか?」

 

三人はその言葉を聞いて、縦に頷きゼノンが口を開いた。

 

「リュガがアルゼナルに連行された三日後。

 アンジュリーゼ皇女がノーマだとジュリオ皇太子が告白したんだ。

 ノーマに関わった僕たちまで狙われることになったけど、なんとか逃げ延びたんだ」

 

「お前たちはアンジュのメイドとどうやって、知り合ったんだ?」

 

「なんとか、アルゼナルに入る方法を探していたところ偶然、出会ってな。

 ゼノンとテンゲンの知恵でどうにか荷物に紛れ込んで侵入できたというわけよ」

 

「シュージが途中でドジを踏まなければ、バレずに済んだのだがな」

 

「バレタらバレタでシュージがマナ使って、コンテナを兵士に向けてブン投げたから余計に被害が出たからさ」

 

テンゲンとゼノンの言葉にリュガは苦笑いをする。

そういえば、シュージは後先を考えずに行動するし、怪我とかも多かったな。

今でも思うけど、どうして停学ならなかったのか不思議なぐらいだ。

 

「けど、親友と再会できて、よかったよ。これから、どうすればいいのか問題だけどね」

 

「危険を冒してまでここにきて、すまないが、俺はお前たちの親友には戻れない」

 

リュガの言葉に三人は驚愕する。

 

「ミスルギ皇国でお前たちと共に過ごしたリュガ・黒鋼・ホクトは死んだ。

 今の俺はドラゴンを殺すノーマのリュガ。ただそれだけの存在だ」

 

「アンジュリーゼ皇女も髪を切って、戦士の顔つきになっていたが、お前も」

 

テンゲンの言葉にリュガは頷く、空気が悪くなりかけたがゼノンが両手で叩く。

 

「まぁまぁ!!積もる話はあるけどさ、夜も遅いし寝ようよ」

 

ベットの数が足りないのが、シュージとテンゲンは寝袋を持っておりそれで寝ることに。

ゼノンは空いているベッドで寝る

三人が寝静まり、リュガは空に浮かんでいる満月を見て、眠りに入る。

 

 

◆◆◆◆

 

 

◆アルゼナル 食堂付近◆

 

「ここって飯とかあるのか」

 

「味はお前たちの口に合うか解らんが・・・」

 

四人は食堂へと歩いているが―――。

 

「なんたることですか!!」

 

大きな声が響く。あの声の主はメイドのモモカのだ。

食堂の方へと急ぐとモモカが怒っている。

 

「アンジュリーゼ様に席を譲りなさい!!」

 

「やっぱ、イタ姫様のメイドね」

 

なにやら口論になっているようだ。

朝食を食べに来ていたココとミランダにに事実を聞く。

 

「あのモモカさんが"アンジュ様に席を譲りなさい"と言って、口論になっているんです」

 

「やっぱり、元皇女さまの従者だからかな……」

 

何にせよ、食堂で暴れるのはよろしくない。

止めに入るリュガはアンジュたちの方へと歩む。

 

「ストップ。朝からケンカか?見てて飽きないな」

 

「あら、あんたも来ていたの?」

 

「腹が減ったから飯を喰う。それ以外になんの理由がある?」

 

モモカはリュガの顔を見て、何かを思い出す。

 

「もしかして、貴方は……人を殺したというノーマの?」

 

人殺しという言葉に苦い顔をするリュガ。

ロザリーが便乗する。

 

「そうだよ、イタ姫様のメイドさん。そいつは人殺しのノーマさ」

 

ロザリーが暴言を言うと、シュージからブチッと音が聞こえた。

 

「き、君!!今すぐ、謝った方が!!」

 

ゼノンがそういうが、既に遅い。

 

「なんだと!!このアバズレ!!」

 

シュージがロザリーの胸ぐらを掴み、持ち上げる。

 

「ロ、ロザリー!?」

 

「何するのよ、あんた!!」

 

ヒルダがシュージに掴みにかかるが、シュージは椅子をヒルダに目掛けて蹴り飛ばす。

間一髪、避けるが蹴り飛ばした椅子は壁に直撃し粉々になった。

 

「あんた……!!」

 

今度はロザリーを投げようとするが、リュガは肩を掴む。

 

「シュージ、離してやれ」

 

「リュガ!!こいつは酷い事を言ったんだぞ!?何も知らないで、軽々しく!!」

 

「シュージ!!頼む!!」

 

リュガの言葉にロザリーを離す、シュージ。

 

「………すまない」

 

頭を下げるリュガはその場を後にする。

テンゲン、ゼノン、シュージは後を追いかける。



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変わらぬ絆

少し遅れましたが、あけましておめでとうございます!!

今年もよろしくお願いします!!


自販機でハンバーガーを購入して簡単に食事を済ませる4人。

 

「けど、どうしてリュガが殺人鬼だって知っているんだろう?」

 

「言ったのは俺だ。遅かれ早かれ知るだろうから、言った方が楽だと思ってな」

 

「変わってしまったなリュガ。前のお前は温厚で優しいが今はどうだ?

 まるで、戦を楽しむかのような狂戦士か破壊者みたいだ」

 

「テンゲン!!てめぇまで!!」

 

シュージはテンゲンの言葉に反論するが、リュガは言葉をつづける

 

「テンゲンが言っていることは本当かもしれない。

 あの平和な日常が、退屈で窮屈を感じた、こっちは命の危険があるけど

 ドラゴンと戦って飽きない日々が続くようになったよ」

 

「ミスルギ皇国で過ごしていた時、そんなにつまらないと感じたの?」

 

「おまえらと過ごした日々は楽しかったさ。あの時、ニックを殺した時から何もかも壊れたから

 兎にも角にも、お前たちの知っているリュガはニックを殺した時に死んだ。

 …すまないが、格納庫で機体の整備をする」

 

ハンバーガーを食い終わり食堂を出ていくリュガ。

格納庫へと向かう途中、司令室から声が聞こえる。

エマ監察官とジル司令官だ。

 

「では、四人は……」

 

「ここを知ってしまった以上、ミスルギ皇国に戻され処刑されるだろうな。

 この施設の秘密保持のために、な」

 

秘密保持のために処刑。

モモカ、テンゲン、シュージ、ゼノンは俺やアンジュに会いに来ただけなのに殺される。

なんとか、止めなければ……。アンジュを探しに、リュガは駆け出す。

 

◇◆◇◆

 

戦闘終了後。

 

「あんのアマ、戦闘中にアタシの機体をまた蹴っ飛ばしやがってえー!」

 

「邪魔って…私の事邪魔……」

 

「今日のアンジュとリュガはピリッピりだったにゃ~!」

 

「何呑気な事言ってんの!とんでもない命令違反よあんなの!」

 

それぞれアンジュとリュガの行動に不満を持った愚痴を零す。

 

「まあまあ落ち着いてサリアちゃん」

 

エルシャはサリアを落ち着かせようとするがサリアは腕を組んでアンジュリュガの行動に憤慨する。

 

「これが落ちついていられる訳ないでしょう!たった二人でほとんどのドラゴン狩られたんだから」

 

「悪いが、今回は説教を聞く気はないね。こっちは急いでやらなければいけないのでね」

 

リュガはそう言ってアンジュと共に駆け足で準備をする。

 

◆◇◆◇

 

滑走路にて荷物をまとめたモモカ、シュージ、テンゲン、ゼノン。

 

「お世話になりました、僅かでしたがお幸せでした。アンジュリーゼ様に伝えてください」

 

モモカはジルとエマに頭を下げる。

シュージとテンゲンは迎えの兵士が方に背負っている銃を見てヒソヒソと話す。

 

(やっぱ、この基地に一般の人間に知らされるのが不味いのか?)

 

(……おそらく我々を口封じするのだろうな)

 

船に乗ろうとする、モモカ、シュージ、テンゲン、ゼノン。

その時だった。

 

「待ちなさい!!」

 

「待ってくれ!!」

 

アンジュとリュガだ。両手になにか持って走ってくる。

 

「その娘、私が買います!!」

 

袋の中には大金のキャッシュをジルとエマに置く。

 

「俺もだ。その三人を買う」

 

リュガも貯めていたキャッシュを置く。

 

「は?……はあー!?」

 

アンジュとリュガの発言にエマは驚き目を丸くしている。

 

「ノーマが人間を買う~!?こんな紙屑で!?そんな事が許される訳が―――!」

 

「いいだろう。移送は中止とする。その娘と男たちはこいつらのものだ」

 

「はい!?」

 

ジルの放った発言にエマはまたしても驚きを隠せない。

 

「そ!そんな……!ちょ、ちょっと待ってください!」

 

エマはマナを使い、二人分のキャッシュを持って後を追う。

 

「ここにいてもいいのですか……。アンジュリーゼ様の御傍にいても、いいのですか?」

 

「…アンジュ。そう呼んで」

 

「はい、アンジュリーゼ様!!」

 

アンジュはフッと笑い、モモカは後を追いかける。

 

「結構、思い切ったことするな」

 

「よかったのか、あれほどの金を使って?」

 

「また稼げばいい。友人は失ったら戻ってこないからな。

 三人もアルゼナルで仕事ができるようジル司令に頼んでみるよ。

 改めて、よろしくな」

 

リュガは笑顔で三人に向けて歩き出す。

三人は初めて見たリュガの笑顔に驚きしばし呆然するが後を追う。



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サリアの憂鬱

今回、皆が大好きなサリア隊長の回でアリマス!!


今回の出撃にて、アンジュとリュガがドラゴンを刈り尽した。

二人は報酬金を多く貰えたが……。

 

「てめーらが報酬独り占めしてるせいで、こっちはおまんまの食い上げだ!」

 

「ケンカ売る暇があったら、少しはドラゴンを早く倒すという考えをしたらどうだ?

 それに、俺やアンジュに弾丸撃っても弾の無駄遣いだ」

 

リュガはばっさりとロザリーに反論する。

 

「アンジュ、リュガ。何故、命令がきけないの?」

 

サリアがアンジュとリュガに尋ねる。

 

「ドラゴンなら倒しているじゃない」

 

「敵対するドラゴンを殲滅しているだけだ。それの何が悪い?」

 

二人は当然の対処をしているためか、悪いとは思っていないようだ

 

「そういう問題じゃないわ!!これ以上、無視をするなら……!!」

 

「罰金でも処刑でもなんなりと」

 

「邪魔するなら、ドラゴンより先に始末する」

 

アンジュとリュガそう言ってその場を立ち去る

 

 

◆◆◆◆

 

◆アルゼナル ジルの部屋◆

 

 

「タスク、生きてたんだね、あのハナタレ坊主」

 

「アンジュを助けたのがあいつだったのね」

 

「じゃあヴィルキスを修理したのはその『騎士さん』だったんだ!」

 

「それでは、アンジュは男と2人っきりだったってこと!?」

 

サリアは思わず頬赤くして、アンジュとタスクの事を思う描く。

 

「ジャスミン、タスクとの連絡は任せたよ。いずれまた『彼ら』の力が必要になる」

 

「はいよ」

 

「それから、もう一人計画の参加するものを紹介する」

 

ジルがそう言うと、其処にいたのはリュガだ。

その姿を見て驚くサリア。

 

「リュガ!?どうして貴方が!?」

 

「ジル司令が、俺の両親について教える条件に参加しろと言われたんでな」

 

「お前なら上手くやれる。期待しているぞサリア」

 

ジルの言葉にサリアは隊長としての重圧がくる。

流石にジルの言葉にマギーとジャスミンは顔を見合わせて心配になる

 

 

~サリア隊長日誌 3月5日~

 

◆アルゼナル 食堂◆

 

エマは先日の件でアンジュとリュガに説教をしている

 

「ありえないわ!人間がノーマの使用人になるなんて!」

 

エマはアンジュがモモカを買い取った事にまだ納得していない様だった。

 

「ノーマは反社会的で無教養で不潔で、マナが使えない文明社会の不良品なのよ!?」

 

「はいはい」

 

アンジュは空になった器を置き、モモカが次の食事を差し出す。

リュガは監察官の言葉に五月蝿いのかぶっきらぼうに返す、

 

「それがどうした?ここは、ノーマが暮らすアルゼナル。

 監察官が言う人間様のルールとここのルールは違う。

 まさか、そこまで頭まで固いわけではないだろう?」

 

「んなっ!?モモカさん、貴女はいいのですか!?」

 

「私は、こうしてアンジュリーゼ様に仕えて幸せです」

 

モモカの答えにエマはため息ついて落ち込む。

 

「良かったねモモカン、アンジュと一緒に居られて」

 

っとその中でエルシャがため息をする。

 

「どったのエルシャ?」

 

「もうすぐフェスタの時期でしょ?、幼年部の子供たちに色々と送ろうか迷ってるんだけど…」

 

エルシャが通帳を見て苦笑いしながら言い、それにサリアが聞く。

 

「アンジュとリュガせいよね。何とかしなくちゃ……」

 

「どんな罰でも金でなんとかするだろうねアイツら、聞きやしないさアンタの命令なんてさ」

 

アンジュの事を考えているとヒルダがサリアに何やら嫌みそう言い放って。

 

「何が言いたいの?」

 

「舐められてるんだよアンタ。ゾーラが隊長だった時はこんな事なかった筈だけどね現隊長さん?」

 

「おっと、食堂でケンカはご法度だぜ。お嬢さん達」

 

第三の声の正体はコック服を身に纏ったシュージだ、デザートを運んでいるようだ。

 

「シュージはリュガの親友でしょ?なんとかならないかしら?」

 

「あいつ、昔から頑固なところがあるからな、聞いてくれるかどうか解らんぜ?

 それにこんな状況だから、本当に聞く耳持つのかどうか」

 

そう言いながら、シュージはババロアをみんなに配る。

ヴィヴィアンは「おお~!!」と目をキラキラと輝かせている。

サリアは席を立ち、食堂を離れようとする。

 

「食わねえのか?」

 

「遠慮するわ」

 

 

◆アルゼナル ジャスミンモール◆

 

 

「(皆・・・ほんと自分勝手、私だって好きで隊長をしてる訳じゃ・・・)」

 

不満を持つサリア。

隊が身勝手な事ばかりとアンジュとリュガ好き勝手な行動と言う事にストレスを溜まらせていく事に徐々に耐え切れなくなり、彼女はそのままジャスミンモールへと向かう。

到着した所にジャスミンに札束を渡し、それにジャスミンに言う。

 

「…いつもの」

 

「…一番奥のを使いな」

 

サリアはジャスミンにキャッシュを払い、一番奥の個室を使う。

数分後、リュガがやってきて服を買いに来たようだ。

 

「ジャスミン、試着したいが……」

 

「一番奥のを使いな」

 

リュガにそう伝えて、一番奥へと向かう。

ジャスミンがキャッシュを数えている途中、思い出す。

 

「…………あっ」

 

さて、サリアが使用している試着室では…………。

 

「愛を集めて光をギュっ、恋のパワーでハートをキュン。美少女聖騎士プリティー・サリアン!!」

 

魔法少女の衣装を着こなしてポーズを決めて、フフッと笑う。

 

(※作者も思わず、腹筋崩壊を起こしたシーンでもある)

 

その時――――。

 

「………」

 

「………あ」

 

サリアは引きつった顔で壊れたブリキ人形みたいにリュガの方を振り向く。

 

「…………邪魔した」

 

リュガはカーテンを静かに閉めて、速足で立ち去る。

ジャスミンはあちゃーという顔をした。

 

(見られた見られた見られた!!よりにもよって、リュガにぃぃぃぃ!!)

 

このままでは、コスプレ隊長という不名誉が!!

ヒルダは笑うのはもちろん、ジル司令が失望した顔でため息をつくというイメージが過る

 

「……こうなったら……」

 

何か決意、いや、思いつめた顔をするサリア。



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溜めていた思い

溜めていた思い

 

◆アルゼナル 医務室◆

 

「……ふむ。なるほど」

 

テンゲンはマギーの助手として働いていた。

医学部に所属しているため、薬や手術の補佐もできる。

しかし、女性ライダーたちはテンゲン目当てで毎日、相談に乗っている。

 

「あの、お時間があれば食事はどうでしょうか?」

 

「生憎だが、食事をする時間はとれん。君たちの健康管理をしなければいかんので」

 

女性ライダーのカルテをスラスラと書いて返事をする。

フッと扉を見ると、サリアが凄みのある顔で歩いていた。

 

(……あの表情からして、焦っているのか、それとも……)

 

 

◆アルゼナル リュガの部屋◆

 

 

リュガは部屋で寝転んで、サリアの姿を思い出す。

 

「……真面目な人間ほど変な趣味があるんだな……」

 

とにかく、脅しのネタ…もとい、笑いのネタになりそうだと思う。

ドアが開かれると、サリアだった。

心なしか、顔が赤く、怒っているような感じの表情だ。

 

「……よお、昼間の姿は面白かったぜ」

 

「忘れなさいよ!!」

 

ナイフを取り出し、リュガを斬りにかかろうとするが、避ける。

 

「あれを見られて、恥ずかしいから冷静な判断ができてないな、隊長さん。

 あんたがどんな趣味を持っていようと俺には関係ないね!」

 

サリアの足を引っかけて転ばして距離を取るリュガ。

体勢を立て直したサリアはナイフを構えて斬りにかかる。

リュガは避ける素振りも見せず、ナイフの刃を素手で掴む。

これには驚くサリアだが、その隙をついてリュガはナイフを取り放り投げる。

 

「おまえだって、俺とアンジュが死んでもいいと思っているだろう?

 目の前で撃たれそうになっているにも関わらず、咎めようともしない。

 俺はアンジュみたいに我慢強くもねぇし、キレたらあいつらを殺そうかと思っていたぐらいだ」

 

ズカズカとサリアに近づいて、胸ぐらを掴む

 

「アンジュが海に沈む時、お前はアンジュではなくヴィルキスの方を心配してただろ?

 ヴィルキスを取られて悔しいとか思っているのか?」

 

的確な言葉を言われて、サリアは更に憤る

 

「……貴方に、貴方に何が解るのよ!?」

 

サリアは拳を振り上げて、リュガの頬を殴る。

 

「……解るわけないだろ、俺はあんたじゃない。アンタは俺でもない。どうするかは自分で考えろ」

 

そう言ってリュガは自室を出て行く。

 

―――――

 

再び医務室。

 

「…それで、サリア隊長とケンカしてできたのか」

 

「…まぁ、な」

 

「マギー医師がいたら確実に傷を増やすかもしれんぞ」

 

「すまんな」

 

消毒、包帯を巻いて処置完了する。

 

「お前なら、避けれたことなのに何故、ワザと受けたんだ?」

 

「……少しでもサリアの負担を減らせればなと思って。色々と抱え込み過ぎて発散できればなと」

 

「不器用な性格だな」

 

そんな会話を医務室の入り口前でエルシャとヴィヴィアンは聴いていた。

 

 

―――――

 

 

翌日の戦闘区域、リュガは唐突にある提案をする。

 

「俺は5分の間、戦闘に参加せず待機する。殲滅できなかったら俺とアンジュの命を狙うようなことを二度とするな」

 

「いいわよ。受けて立つわ」

 

サリアが反論しようとするがヒルダが仕切る。

戦闘が始まり、ドラゴンはドンドン数を減らしていく。

あと少しで終わろうとするが、ガレオン級ドラゴンが4体も出現した

 

「うそ!?」

 

「な、なんでこんな時に!?」

 

そして、5分経ちドラゴン殲滅が失敗する。

リュガはフッと笑い戦いの準備に入る。

左腕が大砲になり、肘部分からホースが出現し海へ伸ばす。

 

「汲み上げ開始」

 

駆動音が響き海水を汲み上げる。

発射口から海水の弾丸を勢いよく連射し残ったスクーナー級ドラゴンたちの腹部を貫く。

超高圧水発生ポンプで加圧された水は、音速の約3倍に達し、破壊力のあるウォータージェット。

レーダーの照準をガレオン級ドラゴンに合わせ、心臓目掛けてスナイプショットを決める。

次々と狙い撃ちをし心臓を大きく抉れたガレオン級ドラゴンたちは血を吐き、海へと没した。

 

「約束は守れよ」

 

ヒルダ、ロザリー、クリスはリュガを睨む。

ヴィヴィアン、エルシャ、ミランダ、ココはリュガの事を心配している。

サリアはまたしても命令違反に加えて独断行動をするリュガに悩ませる。

第一中隊の空気がますます悪くなっていくが、新たな反応が出現する。

現れたドラゴンは今までの飛行タイプではなく四足歩行タイプのドラゴン、特徴は巨大な角、獣の様な尻尾だ。

 

「もしかして、あれって……初物!?」

 

「新種のドラゴンということか」

 

「コイツの情報持ち帰るだけでも大金持ちだぜ!」

 

「どうせなら初物喰いして札束風呂で祝杯といこうじゃないか!」

 

ロザリー、クリス、ヒルダは先行し、新種ドラゴンに攻撃を仕掛ける。

こんな時に興奮するヴィヴィアンが妙に静かだ。

 

「どうした、いつものように歓喜しないのか?」

 

少し皮肉気に言うがヴィヴィアンが少し沈んだ表情をしていた。

 

「…なんだろうピリピリする。ヒルダ戻れ!」

 

ドラゴンが咆哮を上げたかと思うと角が光りその瞬間周囲が何かに包まれた。

ヴィヴィアンが警告を促したが時既に遅くヒルダ達の機体が囚われてしまった。

 

「なっ!?」

 

「う…動けねえ…」

 

「一体何なのコレ!?」

 

『新型ドラゴン周囲に高重力反応!』

 

「「重力!?」」

 

オペレーターからの解析結果に驚く。

 

「ちっ、鈍重かと思ったが…そんなドラゴンか」

 

更にドラゴンが角を光らし、重力範囲を広げ始めた。

サリア、エルシャ、ヴィヴィアンが重力に捕まってしまった。

 

「皆を…はなせぇぇぇぇぇぇ!」

 

なんとか立ち上がろうとするヴィヴィアン。しかし、重力のせいで地に倒れてしまう。

重力場から逃れたアンジュ、リュガ、ココ、ミランダ。

どうにかしないと重力場に捕まった連中が潰されるのも時間の問題だ。

 

「ど、どうしよう……!?」

 

「このままだと、皆さんが!!」

 

戸惑うココとミランダ。

 

「貴方の武器で何とかならないの?」

 

「カッターでもウォータージェットでも、重力に阻まれるしなぁ」

 

「役に立たないわね」

 

「お互い様だろ」

 

どうするかと考えていたが、プルートの目が輝きだす。

なんとプルートの背から2本のアームが出現したのだ。

 

「へぇー、こんな隠し武器があるとはね」

 

アームの先端がグラップルとなっている。

操縦席からゴーグルと腕をはめ込めるぐらいの装置が出できた。

仕組みを理解し、ゴーグルをつけて両腕をはめ込む。

 

「その角を圧し折ってやる!!」

 

アームが伸びていき、重力をものともせず、ドラゴンの両角を掴む。

サリアたちの目の前に信じられない光景が起きた。

体格差は明らかなのに、大型ドラゴンを持ち上げたのだ。

 

「なっ!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

サリアとヒルダが驚愕する。

 

「おおおーー!!カッチョイイ!!」

 

ヴィヴィアンはいつも以上に興奮していた。

 

「おらああああああああああああああっ!!」

 

一気に下まで振り下ろし大型ドラゴンを地面に叩き付けた。

その衝撃は凄まじく、地面が陥没し、反動で、ドラゴンの角が両方とも圧し折れたのだ。

すると、サリアたちを襲っていた重力が消えて、動くようになった。

 

「返す!!」

 

折った角をドラゴン目掛けてブン投げて、背中に当てる

重力が解けて動けるようになったサリアたち、後は倒せるだろう。

アンジュも参加しようとしたが……。

 

「待った」

 

アームを使い、ヴィルキスを捕縛する。

 

「な、何をするの!?」

 

「今回はあいつらに任せよう。両角の重力がなければただのカカシだ」

 

 

◆◆◆◆

 

 

基地へと帰還し、今回の戦闘配給している。

 

「うひょおー!こんな大金夢みたいだ!」

 

「夢じゃないよ!」

 

ロザリー達は山積みにされたキャッシュを見て顔を綻ばせていた。

あの新型ドラゴンはフリゲート級と新たに認定された。

 

「う゛ー……」

 

「仕方ないか、角を圧し折ったぐらいだし」

 

アンジュとリュガは今回の報酬が少なかったようだ。

アンジュはリュガに止められて、攻撃に参加できなかったし、リュガはドラゴンの角を圧し折り、身体に突き刺しただけ。

一方の皆は分厚い報酬金を貰えたようだ。

 

「……その、ありがとう。リュガ」

 

「気にすんな。まぁ、俺も意地を張り過ぎたし反省はする。…………たぶん」

 

後半は聞こえないように小声で言う。

サリアに耳打ちをする。

 

(今度はそっちが約束を果たせ。秘密の趣味をばらされたくなければな?)

 

(うぐ……解ったわよ……)

 

コホンッと咳払いするサリア。

 

「色々あったけれど私達はこのチームでやっていかなくちゃいけない。

 アンジュ、リュガも報酬独り占めやめなさい。アンタは放っておいても稼げるんだから。

 これは隊長命令よ」

 

「誰もアンタの言う事なんか聞きやしないって……」

 

「……良いわよ別に私の足さえ引っ張らなければね」

 

アンジュは予想外に肯定する。

 

「私も良い…かな。今回、リュガのおかげで助かったから…」

 

いつも隠れがちなクリスがそう言う。

 

「ま、まぁ…私はしばらく金がある内はアタシも良いかな」

 

ロザリーも続けて言う。

 

「チッ……裏切者」

 

ヒルダは納得できないのか立ち去る。時間がかかるかもしれんな。

アンジュとモモカはサリアたちと一緒に何処かへと行ったようだ。

自室に戻るとゼノンが待っていた。

 

「リュガ、君宛にだけど…何か知っているかい?」

 

マナ通信を開くとそこにはこう書かれていた

 

《私はシュレディンガー、君の父の親友だ。君にあることを話したい。ミスルギ皇国で待つ》

 

謎の人物シュレディンガー。そして、滅んだとされるミスルギ皇国。

また、新たな騒動が起きようとしている。




◇登場した工具・重機◇

ウォーターカッター(水を噴射、高速・高密度な超高圧水のエネルギーを利用して、対象物を切断する一種の工法)

グラップルアーム(大きなくちばしのようなようなアタッチメント、物掴みに適しており、林業の現場、造家屋の解体、廃棄物の分別に使われる)


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真実を求めて

ここから、物語が加速!!見てない人には若干ネタバレ注意!!


「アンジュとヒルダが?」

 

事の始まりはマーメイドフェスタという公休日のことだった。

ローゼンブルム王国の王女であるミスティを人質をとったアンジュ、ヒルダ、モモカの三名はミスルギ皇国へと向かったのだ。

司令室でジル、ジャスミン、マギーと集まって今後のことを話していた。

 

「幸い、ミスティ王女は無事だったがアンジュとヒルダの姿が無い」

 

「それで、俺を呼び出した理由は?」

 

「アンジュとヒルダを連れもどせ」

 

「脱走したから、放っておいても……」

 

ミスルギ皇国。そこで待つというシュレディンガーという人物。

それに、本当に滅んだのかどうか確かめるチャンスでもある。

 

「じゃじゃ馬でお転婆娘を連れもどす仕事でもしますかね」

 

「随分、聞き訳がいいな?」

 

リュガは紙をジルに渡す。

 

「シュレディンガーという人物だが、"ミスルギ皇国で待つ"。おかしくないか?皇国は滅んだはずじゃないのか?」

 

それにジルは口を閉ざし、リュガはジッと視る。

 

「まぁ、言えない理由があるならいいけどさ。メイとゼノンにプルートを万全にしておくと言っておく」

 

リュガはそう言って司令室を後にする。

ジャスミンはフム、と頷く

 

「……シュレディンガーって、あいつも動き出したのかい?」

 

「おそらくラプラスとカルネアデスも動き出すだろうな。計画の為に……」

 

煙草を灰皿へと潰すジル。

その眼にはわずかながら怒りがあった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

アンジュとヒルダを捜索しに、ミスルギ皇国へ着いたリュガ。

プルートを隠し、帽子を被って歩く。

アンジュとヒルダを捜索するのは後にして、待ち合わせ場所へと向かう

 

「ここか……しかし、懐かしい所に待ち合わせか」

 

幼い自分と両親が住んでいた家だ。空き家となっており、誰もいない…。

 

「座標はここで合っているよな?」

 

空き家に入り中を探る。所々、壊れているがあの時の光景を思い出す。

そういえば、地下室があったが……まだ、あるかな?

地下室へと降りる。目を瞑ればそこは父親の仕事場。

いや……他にもあった。昔見た黒い大きな巨人が……。

 

「あれがなんなのか二人とも教えてくれなかったな」

 

頭をポリポリとかく。

 

「どうやら、来たようだな」

 

声がする方を見ると、金髪の蒼眼、口はマスクで覆われた男が立っていた。

蒼いコートを羽織っており両手はポケットに入れたままだ。

 

「あんたが、シュレディンガーか?」

 

「よくここまで来たねリュガ。なるほどね、顔は母譲りか」

 

「母さんを知っているのか?」

 

「まだ、君が赤子だった時にラプラスと一緒に世話を任されたことがあってね

 ちなみに二人が結婚したとき、仲人役を任されたよ」

 

「そうなのか…。ところで、話があるんだよな?」

 

「この世界の正体を知りたくないか?」

 

「世界の正体?どこぞのクイズ少女みたいに付き合うのなら帰るが?」

 

「これからいう事は全て、本当の事だ。信じられない事だろうが……」

 

 

◇◇◇◇

 

 

母に会ったヒルダだが、悲劇的なものだった―――。

妹にあたる子供がいて、自分の事を忘れていた。

折角、ここまで来たというのにノーマだからこんな残酷な仕打ち。

 

絶望し、力なく当てもなく歩いていたが検疫官たちが集まりだす。

抵抗もしないヒルダを拘束しようとするが――――。

 

「ちょっと待った」

 

女性の声が響き、検疫官たちは動きを止める。

黄色の長髪、ツインテールに纏めたチャイナ服の女性。

茶色の短髪、ハーフデニムとブラウスの女性だ。

 

「その娘は私たちがアルゼナルに送り届けるわ」

 

「しかし、危険なノーマです。お二人に任せるわけには……」

 

検疫官が何か言おうとしたが、黄色の髪の女性は首を傾げ笑顔で言う

 

「私は無駄な事は嫌いなんだけどね?」

 

その言葉で検疫官たちを黙らせる。

茶髪の女性は、ヒルダを抱きかかえ、黄色髪の女性と共に歩みだす。

 

「……可哀そうにね。ノーマという烙印を押されてこの仕打ち」

 

「神様が作ったルールは残酷、叛いちゃえばいいピョン♪」

 

「シュレディンガーはあの少年に真実を伝えたのかしらね」

 

「真実を知ってそれが幸せなのか不幸せなのか本人次第♪」

 

クスクスと笑う黄色髪の女性。

だが、その眼にはこの世界に対する不平等で不条理を憎んでいる眼だ

 

 

◇◇◇◇

 

 

夜のミスルギ皇国を警戒しながらアンジュを捜索するリュガ。

 

(マナ社会の成り立ちと父さんたちの目的、か……)

 

 

~回想開始~

 

 

「マナ国家を滅ぼす?」

 

「正確に言えばマナ社会を創ったある神と呼ばれる男を倒すためだ。

 最もあの男はどこまで掌握しているかは解らんが……」

 

「そもそも、親父とアンタはどういう関係なんだ?」

 

「まずはそこから説明しよう。

 私やパブロフ、ラプラス、カルネアデス、メビウスはマナ社会の技術に献上している"古の天才"と呼ばれている

 だが、本当の目的はマナ国家を崩すための存在だ」

 

「マナ国家を崩すため……」

 

「我々は過去にノーマと"古の民"が多大な犠牲を払って神から強奪した機体ヴィルキスとその資料を盗み出し研究した。

 一つはある人物に渡し、もう一つは―――君が乗っているパラメイルだ」

 

「なっ……!?」

 

ヴィルキスは神と呼ばれる存在から奪い取った機体。

プルートはその機体と資料を基に造られた機体。

しかし、疑問が生じる。

 

「それだったら、ヴィルキスを使って当の昔にその神を倒せたんじゃないのか?」

 

「そうもいかなかった。神はヴィルキスに封印を施した。しかし、今はその人物が使えるようになった」

 

それがアンジュというわけか。

つまり、ジルが言ってたリベルタスというのはここで繋がるというわけか

 

「……そして、君は―――」

 

シュレディンガーが言いかけた時、マナ通信が開かれる。

内容を見て、数回頷く。

 

「…アンジュが処刑されるようだ。急いで助けに行った方がいい」

 

画像を見せると痛めつけられたアンジュの姿だった

 

 

~回想終了~

 

 

「……親父も母さんもこの計画に参加していたのか?」

 

二人もマナを持つものでありながらマナ国家を崩すためアルゼナルに協力してたわけか。

 

「こうなったら、親父と母さんと会って詳しい事を聞くか」

 

リュガは急いで、アンジュが走り出す。

だが、何故だろうか――――。

身体が軽く、力が湧き上がりそうなこの感覚、まるで自分がヒトで無くなりそうな気分だ。




次回。リュガ、大暴れ。


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決別の世界

決別の世界

 

 

全てはジュリオが仕組んだ罠だった。

アンジュが死なないという事から、シルヴィアを使ってミスルギ皇国で処刑させようという計画だった。

幽閉された父はあの後、処刑された。

アンジュはその中で泥沼に落ちているミスルギを完全に断ち切る事を決意する。

 

(ようやく目が覚めた、こんな世界……こっちから否定してやる!!)

 

そう決意したアンジュは歌い始めて、その場にいた者達は突然の事に静まり返る。

 

兵がアンジュを強引に絞首台に送り、首に輪を掛ける。

それをジュリオが笑みを浮かばせる。

 

「さらばだ、アンジュリーゼ」

 

ジュリオが手を上げようとした時に――――

 

―――ドオオオオオオオオオオオオン!!!!

 

大きな音が響き渡り、一斉に見るとそこには異様な光景だった。

装甲車を持ち上げるリュガの姿だ。それは人間でもノーマでも到底あり得ない業だ。

そんな異質で異形の光景を誰もが驚く

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

装甲車を国民たちに向けてブン投げた。

逃げ遅れた国民たちは悲鳴を上げて逃げるが何人かは巻き込まれて潰れていった。

 

「あ、あれは……殺人鬼ノーマだ!!」

 

国民たちは我先にと騒いで逃げるがリュガはそんな事に目もくれず息を深く吸い込み。

 

――ガァァァオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォン!!

 

猛獣、いや地獄に住む怪物の雄たけびをあげる。

誰もが足を止めて怯み、尻餅をつき怯えだす。

リュガは囚われているアンジュとモモカの所へ駆け出す。

 

「な、な、何をしている!!あのノーマを撃ち殺せ!!」

 

ジュリオの言葉に兵士たちは銃を構えて撃つが、リュガは右へ、左へと避けながら走る。

飛び掛かって兵士を殴り、蹴り飛ばす。

更に、兵士を盾にして襲いくる銃弾を防ぎ、死体を投げる。

 

「こ、この!!」

 

シルヴィアは鞭を振りかざすが、リュガは受け止めて鞭を取り上げる。

鞭を地面に叩き付け、兵士たちを鞭でしばく。

 

「はやく、アンジュを殺せ!!」

 

絞首は間に合わないだろうとジュリオは兵士たちに命じて銃殺しようとするが、閃光が奔る。

ジュリオの横を通り、搭乗している人物からナイフが投げ込まれ、アンジュを吊していたロープを切る。

その者は落ちて行くアンジュをキャッチするのだが……。

 

「うわっ!」

 

思わずバランスを崩してしまい落ちた。

 

「アンジュ!!大丈夫…か…」

 

駆け寄るのだが、大変な光景だった。

何とアンジュの股間に頭を突っ込んいて、アンジュは真っ赤な顔になる。

そいつはもがいていて、アンジュはさらに真っ赤にある。

 

「こ、こっの~~!!」

 

「ぐあっ!!」

 

アンジュはその人物の腹を蹴り飛ばし、壁に激突した瞬間、タスクの顔が現れる。

 

「た、タスク!?」

 

「無人島でアンジュと一緒にいた男か……」

 

「や、やぁ…久々だね。アンジュ、リュガ」

 

「護衛兵!何をしている!早く取り押さえろ!!」

 

くらんだ目から回復したリィザは、兵にアンジュを捕獲を命令する。

それに気づいたリュガはタクスに言う。

 

「タスク、アンジュとモモカを連れて逃げろ!!」

 

「解った!!」

 

タスクはアンジュとモモカを連れて、黒い空中バイクに乗り込む。

逃がすまいと追いかける兵士だが――――。

 

「悪いが……通行止めだ!!」

 

絞首台の柱の一部をもぎ取ったリュガは兵士たちを力任せに叩きのめす。

兵士が銃剣をリュガの腕に刺すが―――。

 

「……やったら、やられる覚悟はできてんだろう、な!?」

 

相手の頭を掴みアイアンクローをする。

メキメキとし、ゴシャリと頭蓋骨陥没させて、放り投げる。

刺さった銃剣を抜いて、叩き壊す。

 

「感謝してるわお兄様、私の正体を暴いてくれて。ありがとうシルヴィア、薄汚い人間の本性を見せてくれて

 

その事にシルヴィアは思わず引いて、アンジュはそのまま叫ぶ。

 

「さようなら、腐った家畜の故郷よ!!」

 

「なにをしている!!追ええええ!!」

 

リュガはナイフを取り出しジュリオ、目掛けて投擲する。

弧を描いたナイフはジュリオの右足に刺さる。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「権力を貪るゴミクズが」

 

リュガはジュリオに吐き捨てて、アンジュたちの後を追いかけてミスルギ皇国から脱出する。

その光景を遠くから見ていた二人の人物がいる、シュレディンガーと黒髪の煙草をくわえた男だ

 

「あれが、貴方の切り札ですか」

 

「ああ、ここまで覚醒するとは思わなかったが、あいつは見事それを使いこなせたというわけだ」

 

「だが、自分の息子にこの世界の運命を託すことになるんだぞ?」

 

「俺たちはこんな腐った世界を変えなければならねぇ、利用する物はなんだってするさ。息子であろうともな」

 

新しい、タバコに火をつけて咥える。

 

「俺がアルゼナルに行く、息子に真実を告げないといけないからな」

 

 

◇◇◇◇

 

 

タスクが用意した輸送機に乗り込んだ四人。

 

「ごめんなさい、アンジュリーゼ様……」

 

モモカはジュリオに自分が利用されていた事に気付かず、主であるアンジュを危険な目に合わさせて仕舞った事に罪悪感を感じており、必死に頭を下げながら謝っていた。

しかし、アンジュは頭を横に振り、モモカの頭を撫でる。

 

「何言ってるのモモカ、お蔭でスッキリしたんだから」

 

「え?」

 

アンジュの意外な言葉にモモカは顔を上げる。

 

「私には、家族も仲間の故郷も何にもないって分かったんだから」

 

「……ああ、まさか。あそこまで酷いとは思わなかったぜ。あれが人間の本性か」

 

リュガも故郷の人間たちの本性を見て、救いようがないと見切りをつけたようだ。

アンジュは次にタスクの方を見て、頭をグリグリとする

 

「どうして股間に顔を埋める必要がある訳~?意地なの?癖なの?それとも病気なの!?」

 

鬼気迫る顔でタスクを問い詰めるアンジュ。

今なら小型ドラゴンが逃げ出しそうな気迫だ。

 

「まぁ、そいつは置いといてだ。タスクはどうしてあそこにいたんだ?」

 

「連絡が来たんだ。カルネアデスという人からアンジュがピンチだってね」

 

「カルネアデス?」

 

「……親父の仲間の一人か」

 

「知っているの?それにリュガもどうしてここに?」

 

「まぁ、順を追って説明するよ」

 

リュガはミスルギ皇国に来た理由、シュレディンガーの事、父親の計画の事、そしてヴィルキスとプルートの秘密の事。

 

「……あなたのお父さんにそんな計画が」

 

「ああ、親父と母さんに直接会って話を聞かないと解らん」

 

なにはともあれ、無事に皇国から脱出できた。

後はアルゼナルへ帰還するだけだ。

タスクはアンジュが身に着けていた皇国の指輪を渡す

 

「ありがとう」

 

「アンジュの髪、綺麗な金色だよね」

 

「え・・・?それが何よ・・・」

 

タスクの言葉に顔を赤めるアンジュ、照れている表情だ

 

「下も金色なんだね」

 

「死ね!!!!この変態騎士!!!!」

 

最低な発言をしてアンジュの怒りが頂点に達し、タスクをボコボコにした

 

 

◇◇◇◇

 

 

無事、アルゼナルに着艦。

 

「ここでお別れだね、アンジュ」

 

「行くの?」

 

「俺にはまだやるべきことがあるからね」

 

タスクはそう言うが―――

 

「その必要はないピョン♪」

 

声がする方を見ると、ジルともう一人の女性がいた。

もう一人の女性はなんというかウサギのような感じだ。

 

「タスクくん、お姫様の救出ありがとー♪お姉さん、とても嬉しいよ♪

 でも、このまま単独行動すると危険だからここにいてもいいよ♪

 ジル司令には話はつけさせてもらったし」

 

「じゃあ、あんたがカルネアデスか?」

 

「そのとーり♪君がリュガくんか。なるなるパブロフとメビウスの子というわけかー」

 

「パブロフって…親父の仇名だろ?メビウスというのは?」

 

「ありゃりゃ?シュレちゃん、話していなかったのかー。

 まぁ、積もる話は後にしてゆっくり休むといいよ♪

 プルートは私とラプラスとで修理するから~♪」

 

リュガはいまいちカルネアデスの性格がよく解らない。

アンジュは脱走した罪により独房へと連行された。

独房へ入ると、其処にはヒルダがいた。

 

「どうしたのよ・・・?」

 

「故郷に帰ったのはいいけどさ、ママは私を受け入れてくれなかった。

 ノーマだから、こんな仕打ちにされたのよ。

 それから、検察官に捕まったけど女性二人が私を庇ってここに連れ戻されたのよ」

 

「・・・ようやく、解ったのよ。世界を壊しちゃおうか、全部ね。

 虐げ、辱め、陥れる世界なんて、そんな世界なんか私から拒否するわ」

 

アンジュの言葉にヒルダはクスリッと笑う

 

「いいねぇ、協力してやってもいいわよ?」

 

ケンカしていた仲だが、ようやく和解できた二人。

 

 

◇◇◇◇

 

 

その夜。

リュガはカルネアデスが話があるという事で部屋に入る。

茶髪の女性が座っており、立ち上がる

 

「貴方がパブロフの息子という訳ね。私はラプラス。

 シュレディンガーから聞いているけど貴方のお父さんとお母さんとは研究仲間ね」

 

「じゃあ、あんたらがヒルダを助けてアルゼナルに運んだというわけか」

 

ラプラスは肯定の頷きをする。

 

「しかし、親父がパブロフ、シュレディンガー、ラプラス、カルネアデスっと会ったが、メビウスという人は何処にいるんだ?」

 

メビウスに会ってないという言葉に驚くラプラス。

 

「まさか、お父さんから何も聞いてなかったの?」

 

「なんで、そこで親父が?」

 

「……メビウスというのは君のお母さんのミリル・黒鋼・ホクトの事だピョン」

 

カルネアデスの言葉にリュガは驚く。

まさか、自分の母親が天才の一人だなんて。

 

「親父はそんな事、喋ってくれなかったな」

 

「当然ね。私たちの存在は身内でも明かさないようにしているわ。

 かえって危険だし、巻き込まれる可能性だってあるから」

 

本当にそうなのかと思いたいリュガ。けど、不安が消えそうにもない。

すると、歌が聞こえ始めた。

 

「綺麗な歌ね」

 

「お姫様の歌か」

 

独房にいるアンジュは月を見始め【永遠語り】を歌い出した。

アルゼナルに響く歌はこの時だけ、癒されそうになった。

 

そして、新たな戦いと真実が迫っていた―――。




少しずつですが、リュガの秘密が明らかになりかけています。

次回は、サラたち率いるドラゴン軍団、襲来!!


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竜の歌 前編

今回は前編と後編と分けます!!まずは前編から


アンジュとリュガがアルゼナルに帰ってから数日が立つ―――。

 

「あ~、サリアお姉様だ」

 

サリアが呼ばれた方を見ると、幼年部の子供たちとその担当員が居た。

 

「サリアお姉様に敬礼~」

 

子供たちがサリア達に敬礼をし、サリアも子供たちに向かって敬礼をする。

子供たちは「サリアお姉様綺麗~」、「おっきくなったら第一中隊に入る~!」とそう言って去って行き。

担当員も挨拶をして子供たちの面倒を見に行った。

サリアは幼い頃の自分を思い出す。自分もかつてはジルの様になりたいと幼い頃からの夢であった。

 

「どうしたの?」

 

「幼年部の子供たちに、お姉様って呼ばれた。もうそんな年かな?」

 

「まだ17じゃん」

 

「もう17よ。同い年になっちゃった。"アレクトラ"と」

 

 

◇◇◇◇

 

 

アルゼナルの海岸に、後部から煙を上げるヴィルキスが降下して来た。

ヴィルキスはそのままアルゼナルの海岸に着地する。

そこに乗っていたのは当時メイルライダーとして戦っていたアレクトラこと"ジル"だった。

 

「アレクトラ!!」

 

アレクトラの元に、当時、司令官であるジャスミンと部下のマギー達もやってきた。

ジャスミンはアレクトラの右腕が無い事を見て、すぐにマギーに命令する。

 

「マギー!鎮痛剤だ!!ありったけの包帯を持ってこい!!」

 

「イエス・マム!!」

 

その様子を上のデッキにいる、まだ当時幼かったサリアとメイが居た。

 

「あれは……お姉様の?」

 

サリアが見ている中で、ジャスミンはアレクトラをヴィルキスから下ろす。

 

「しっかりしろ、アレクトラ!一体何があった!?」

 

ジャスミンはアレクトラから事情を聞く。

しかし、アレクトラはある者からメイに伝言があると言うばかりであった。

それを却下するジャスミンは何があったかと事情を問う。

ところがアレクトラは突然、ジャスミンへと謝る。

 

「ごめんなさいジャスミン、私じゃあ使えなかった…。ヴィルキスを使いこなせなかった!!」

 

涙ぐんでジャスミンに謝り、それにはジャスミンは何も言えなかった。

 

「そんな事ないよ!」

 

そこにメイとやって来たサリアが居て、サリアはアレクトラの弱さを否定しする。

 

「わたしが全部やっつけるんだから!」

 

アレクトラに向かって力強く言う、アレクトラはそれにサリアの頭に手を置いて撫でる。

 

 

◇◇◇◇

 

 

格納庫に着いたサリアはヴィルキスを見る。

 

(一体私に何が足りないの?アンジュと私に一体何が違うって言うの?あの子にヴィルキスは渡さない!)」

 

「どうしたのかしら?そんな怖い顔をして」

 

声がする方を見ると、茶髪の女性がいた。

確か、カルネアデスと一緒にいた――――。

 

「ラプラスさん?」

 

「覚えていてくれてありがとう。今、プルートの調整と修理を終えたところよ」

 

「あの…プルートってリュガの両親が造ったパラメイルなんですよね?」

 

「ええ、二人はこうなることを予想して造ったのかもしれないわね。

 それに、私もカルネアデスもシュレディンガーも協力して造ったわ。

 ――――――全ては2つの神を滅ぼすための」

 

最後はサリアに聞こえない様に喋るラプラス。

 

「・・・タスクの事も知っているの?」

 

「ええ、彼の両親とリュガの両親は知り合いだからね。それらを通じて、知り合えたわ。

 まだタスクは子供だったから、覚えているのかどうか解らないけどね」

 

フフッと笑うラプラス。

 

「話は変わるけど、貴女はヴィルキスに執拗に拘っていないかしら?」

 

「・・・っ!!」

 

的確な事を言われてサリアは少しだけ狼狽える。

 

「アンジュにとられたのがそんなに悔しいのかしら?でも、それは悪い事ではないわ。

 人は誰しも他人が持っているのを嫉む、いいことだと思うわよ」

 

「・・・失礼します」

 

サリアはそう言って、立ち去る。

 

「ちょっと厳しい事を言ったかしら・・・」

 

 

◇◇◇◇

 

 

一方のアルゼナル司令室、レーダーに何かをキャッチした。

 

「これは、シンギュラー反応です!」

 

「場所は?」

 

ジルが出現地を特定しろと命令を言い、それにパメラが急いで特定する。

 

「それがアルゼナル上空です!」

 

出現場所はアルゼナル上空、そしてアルゼナルの上空にゲートが出現し、そこから大量のドラゴン達が現れる。

 

「スクーナー級。数は・・・20・・・45・・・70・・・120・・・、数特定不能!」

 

「電話もなっていないのにどうして!?」

 

エマが司令室に到着して、電話が鳴らなかった事に疑問を感じていた。

ジルは基地全体放送で、アルゼナルの皆に言う。

 

「こちらは司令官のジルだ、総員第一戦闘態勢を発令。

 シンギュラーが基地直上に展開、大量のドラゴンが効果接近中だ。

 パラメイル第二、第三中隊全機出撃。

 総員白兵戦準備、対空火器重火器の使用を許可する。総力を持ってドラゴンを撃破せよ」

 

 

◇◇◇◇

 

 

「おいおい、ドラゴンが大量出現って・・・どういうことだよ!?」

 

「解らん!!だが、連中は本気で我々を潰しにかかってきたのだろうな」

 

シュージとテンゲンも武器を持ってドラゴンの襲撃に備える。

リュガも武器を整えて、アンジュとヒルダを思い出す。

 

「……アンジュとヒルダが心配だ。あいつらを迎えに行く」

 

「気を付けろよ、リュガ!!」

 

独房へ向かうリュガ、シュージとテンゲンは頷いて、ゼノンと合流へ向かう

パラメイル第二、第三中隊がドラゴンをなんとか、迎撃しているが数が多すぎて減る気配がない。

すると上空に居るドラゴン立はゲートの回りを飛び回ると、ゲートから4機のパラメイルがゆっくりと降下してきた。

その内の一機の紅いパラメイルはヴィルキスと同じ間接部が金色のパラメイルであり、そこから歌が流れていた。

 

「♪~♪~♪」

 

その光景を臨時司令部にいるジルが双眼鏡で見ていた。

 

「パラメイルだと・・・!?」

 

同じ様にアルゼナルの上空で戦っている中隊の隊長のエレノアもその機体に目を奪われる。

 

「何こいつ?何処の機体?」

 

皆が見ていると、その機体がいきなり金色の染まり始め、その両肩が露出展開し、そこから光学兵器が発射された。

エレノアを含め第二中隊と第三中隊の数名を含むメンバーは消し炭へとなっていた。

中隊を消し去った光学兵器はそのままアルゼナルに直撃し、強烈な光が包み込む。

 

「ありゃりゃ・・・酷いことになっているね」

 

半分ほど削られたアルゼナルを目にしたカルネアデスとラプラス。

それをチャンスとしたドラゴン達は一斉に襲い掛かってきた。

 

「……少し気が引けるけど、倒すしかないわね」

 

ラプラスは槍を取り出して、ドラゴンの首を撥ね飛ばす

 

「けど、ある意味チャンスかもね。お姫様とリューくんが覚醒する刻かも♪」

 

カルネアデスは背中からショットガンを取り出して、ドラゴンの脳天を撃ち貫く

他に誰かがいたのなら常人離れしている二人に驚愕するだろう。

 

 

◇◇◇◇

 

 

ヒルダとアンジュが囚われて独房へたどり着くリュガ。

扉を開けに掛かろうとするが、そのうちのスクーナー級ドラゴンが独房へと突撃し破壊した。

ドラゴンは唸り声をあげて二人を喰らおうとするが―――。

 

「どっせえええええええええい!!!!」

 

リュガの回し蹴りがドラゴンの側頭部に直撃し外へと飛ばされ落ちた。

 

「ど、ドラゴンを生身で蹴飛ばすなんて、あんた、人間やめてない?」

 

「まぁ、自分でも人間なのか解んなくなってきたわ」

 

呆れるヒルダをよそにリュガはそう返答をする。

急いで格納庫へ向かうが……。

 

「流石に一週間も独房にいたからか、臭うぞ二人とも」

 

「「うっさい!!」」

 

リュガは乙女の最大の禁句を言い、ヒルダとアンジュに殴られた。

 

「……イテェ」

 

涙目になりながらも二人の後を追う。



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竜の歌 後編

「第二中隊全滅!第三中隊!隊長と部下四名以下ロスト!」

 

紅の機体から放たれた光学兵器によって、被害が相当なものとなった。

パメラの報告を聞いたジルはすぐさま次の指示を出す。

 

「残存部隊を後退!第一中隊のサリア達に集約、サリア達を出せ!」

 

「了解!」

 

パメラはすぐに通信し、ジルは上空のパラメイルを見ながら思った。

 

「(あの武装……)」

 

一方の格納庫内でドラゴンと戦っているサリア達に命令が下る。

 

「了解!皆!パラメイルに騎乗!」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

サリア達のパラメイルはデッキへと上げる。

その時にジルからサリアに通信が来る。

 

『サリア、もう説明しなくても分かってるな?』

 

「はい」

 

『よし。それとアンジュはどうした?』

 

その事にサリアは重い表情で言う。

 

「シュージとテンゲンによると連れて来ると」

 

『そうか。なら、アンジュに伝えろ。あのパラメイルはヴィルキスでないと無理だ』

 

その事を聞いてサリアは思いつめた表情で言う。

 

「司令、私がヴィルキスで出ます!」

 

『黙れ!今は命令を実行しろ』

 

「お願いです!司令!!」

 

『黙って命令に従え』

 

そう言い残してジルは通信を切る。

それにサリアはどうしても納得が行かなかった。

 

「どうしてよ……ジル。ずっと…ずっと頑張って来たのに!!」

 

サリアはアーキバスから降りて、ヴィルキスの方に向かい乗り込む。

ゼノン、メイ、タスクが驚く

 

「サリアさん!?なにを!?」

 

「サリア!!」

 

サリアは二人の静止も聞かずにそのままヴィルキスに搭乗して皆に言う。

 

「サリア隊!出撃!!」

 

「「「イエス・マム!!」」」

 

デッキから発進したヴィルキスを含むパラメイル隊はドラゴン迎撃の為に出撃してしまった

遅れてリュガ、アンジュ、ヒルダが遅れて格納庫へ入るのだが―――。

 

「……ヴィルキスがない!?」

 

「アンジュ!!無事だったんだね!!」

 

「タスク、ヴィルキスは!?」

 

「それが、サリアが乗っていって……」

 

「なんだって、そんな事を……とにかく追いかけるぞ!」

 

リュガはプルートに乗り込み、ヒルダはグレイブ・カスタムに乗り込む。

アンジュはヒルダのパラメイルに乗って、ヴィルキスを取り戻す。

 

「ヒルダ、お願い」

 

「OK!!振り落とされない様にしっかり捕まってな!!」

 

三人もいざ、戦場へ―――。

 

 

◇◇◇◇

 

 

ヴィヴィアン達がドラゴンを撃ち落として行くが、サリアは単体でドラゴン側のパラメイルへ向かう。

しかし、ヴィルキスの調子が悪く出力が上がらない事にイラ立ちを現す。

 

「もっと!もっと早く飛べるでしょ!?」

 

その時にドラゴンがやって来て、それにサリアは追い払おうとヴィルキスで蹴るが逆に弾かれてしまい飛ばされる。

何とか体制を整えて、呼吸を整えながらもヴィルキスの性能に驚きを隠せない。

 

「嘘よ…ヴィルキスがこんなにパワーが無いなんて、どうして!?」

 

困惑するサリアだが、アンジュとヒルダ、リュガは追いつき横に並ぶ

 

「サリア!私の機体返して!!アイツは私がやるわ!」

 

「私のヴィルキスよ!!あなたはおとなしく基地に戻りなさい!!」

 

サリアは聞き入れずヴィルキスのライフルで攻撃する。

だが、紅の機体はかわしており挑発する、サリアは怒りが溜まる。

 

「馬鹿にして……!」

 

『どんなに頑張っても出来ない者は出来ないのだ』

 

「そんなはずない!誰よりも頑張って来たのよ!!私!!」

 

『無駄だ』

 

紅の機体がヴィルキスを蹴飛ばす、アンジュとヒルダはヴィルキスを追いかた、

リュガはドラゴン側のパラメイルへ向かう。

緑と水色の機体が動こうとするが、紅の機体が手で制止した。

 

(緑色の機体と水色の機体を止めた?あの赤、黄色がリーダーか!!)

 

デストロイヤーモードに変化し、先に赤い機体に攻撃を仕掛ける。

赤い機体はヒラリッと避けるが間合いを詰める。

突然、黄色の機体が割り込んで大刀を振りかざす。

 

「悪いがお前の相手はわたしだ」

 

通信から聞こえたのは男の声だ、あの機体に乗っているのは人間なのか?

すると黄色の機体のコクピットが開き姿を現す、黒の短髪に王のマントを羽織っている。

 

「我が名はゼランディア。こいつは愛機―――黄龍號。問おう、お前の名は?」

 

「……リュガだ」

 

相手が名乗ったのなら、自分も名乗りかえすリュガ。

ゼランディアはフッと笑いコクピットに入り、大刀を振り回し構える。

 

「今はこの出会いを楽しもうじゃないか?リュガ」

 

「……そうだな」

 

プルートの右腕を油圧クラッシャーに変えて構える。

お互い駆け出し、武器と武器がぶつかり合う音が響き渡る。

 

――――――

 

墜落するヴィルキスを追いかけるアンジュとヒルダ。

ある程度、近くなった距離からアンジュはヴィルキスに飛び乗り操縦桿を握る。

 

「無駄よ、もう距離が―」

 

「無駄じゃないわ!私とヴィルキスなら!!」

 

一気にスラスターをフルにして、海面ギリギリで浮上して、サリアを掴んでヒルダに連絡する。

 

「ヒルダ!」

 

『何?』

 

「落とすから受け取って!」

 

『はっ!?』

 

そう言ってアンジュはサリアを放り投げてしまった。

 

「うわわわああああ~~!!!!」

 

「ええ~~!?」

 

ヒルダは突然の事に慌てて拾いに行き、何とかサリアをキャッチして後部に乗せる。

 

「~~~~っ!!別料金だぞ、馬鹿姫!!」

 

それにアンジュは笑みを浮かばせて、不明機を見る。

 

「さ~てやりましょうか!」

 

アンジュはヴィルキスをフライトモードからデストロイヤーモードとなる。

真っ先に紅の機体と交戦するが互角の戦いを繰り広げた。

紅の機体は距離を取り歌唱し、紅の機体がまた黄金に変わりはじめた。

 

「この歌は……」

 

それは永遠語りと似ていて、それにアンジュは同じように歌いだす。

 

「~♪~♪~♪♪」

 

ヴィルキスが白から黄金に変化して両肩が露出展開、

それを見たリュガ達、司令部にいるジル、ラプラスとカルネアデスも見る。

 

「歌?アンジュの機体と赤い機体から歌が響く」

 

「お前とあの金髪の小娘は感じるのか、サラが奏でる星歌を」

 

戦場に歌が響くとヴィルキスと紅の機体が黄金に染まり、両肩が展開する。

エネルギーが渦を巻き、同時に発射し均衡し強烈な光が包まれる。

同時にプルートと黄龍號も変化が起き、二機が共鳴し合っている。

 

「これは……!?」

 

「―――"星歌、邂逅し歌唱すれば。原初の機体、覚醒"か」

 

戸惑うリュガだが、ゼランディアが言葉を呟く。

 

「偽りの民が、何故―――"真なる星歌"を?」

 

紅の機体のコクピットが開かれ姿を見せる。

それは純粋な黒い長髪、額には紅い滴の飾り、凛とした女性だ。

 

「あなたこそ何者!?その歌は何!!」

 

「真実は"アウラ"と共に」

 

その言葉を残し、女性は紅の機体へ乗り込みゲートへ向かう。

一方のリュガとゼランディアも―――。

 

「お前は何か知っているのか?ヴィルキスとプルートに秘密があるのか?」

 

「刻が来れば解る。次に会う時を楽しみにしているよ」

 

黄龍號と紅の機体は仲間と合流しゲートへと入り込んだ。

その光景を見てたラプラスとカルネアデス。

 

「……遂にこの時が来てしまったのね」

 

「でも、これで覚醒の兆しが見えたね。最後の鍵は"歌"か」

 

ドラゴンの集団と謎のパラメイルたちの被害は相当なものだった。



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誕生と真相

自分は人と違う生まれ方をしても、自分らしくいれますか?

リュガの秘密が明らかに――――。


誕生と真相

 

 

ドラゴン達の襲撃があったその数日後…。

 

無数の島が浮いていて、その場所に社交場の様な丸くて大きなテーブルが置いてあった。

その場所に各国の首相達が集まっていた、その中にジュリオもいた。

彼らの回りにはアルゼナルを襲撃しているドラゴンの映像が映し出されていた。

 

「ドラゴンが自ら攻めて来るとは……」

 

「それにこのパラメイル、まさかドラゴンを引き連れて?」

 

一人の首相の目に映る映像にはあの不明機が映し出されていた。

 

「シンギュラーの管理はミスルギ皇家のお役目、ジュリオ・・・いえ陛下。ご説明を」

 

女性の首相がジュリオにシンギュラーの発生に付いて聞いてきた。

しかしジュリオは頭を傾げながら言う。

 

「それが、"アケノミハシラ"には起動した形跡が全くないのです」

 

「馬鹿な!あり得ん!」

 

肥満な首相がジュリオの説明に納得が行かない事に拳をテーブルに叩き付ける。

 

「直ちにアルゼナルを再建し、力を増強せねば」

 

「だが、そうも行かんのだ」

 

年老いた首相がマナで次の映像を映し出す。

すると光学兵器を発射するヴィルキスの映像が映し出された。

 

「この機体、まさか!」

 

「ヴィルキスだ」

 

それにはジュリオを含め各国の首相達は言葉を詰まらせていた。

 

「前の反乱の時に破壊された筈では?」

 

「アルゼナルの管理はローゼンブルム王家の役目。何故放置していた?」

 

それにはローゼンブルム王家の首相は表情を歪めながら黙る。

 

「監察官からは異常なしと報告を受けていた」

 

「まんまとノーマにあしらわれていたと言う事か、無能め」

 

「その襲撃の最中、こんな物を見つけたのだ」

 

一人の首相がマナで新たな映像を映し出す。それはリュガだ。

アンジュを処刑しようとした時に現れ、多くの被害を出した。

 

「うわっ!!こ、こいつは!!」

 

ジュリオは思わず椅子から落ちて、怯えながらリュガに指をさす。

 

「こ、こいつが私の脚を傷つけた奴だ!!」

 

「こいつは……パブロフの息子ではないか?」

 

「5年前、行方不明となったあの天才の一人のか?まさかノーマに」

 

各首相たちが驚き戸惑いを隠せなかった。

 

「落ち着きなさい、今はどう世界を守って行くかを話し合うべきです」

 

女性の首相が皆にそう言い聞かせ、一人の首相が言う。

 

「……ノーマが使えない以上、私達人類が戦うしかないのでしょうか?」

 

その事に各国の首相達は思わず戸惑いの声が上がる。

木の裏で聞いていた一人の男性が立ち上がる。

 

「え、エンブリヲ様!?」

 

一人の首相が思わず言う。世界最高指導者であるエンブリヲは皆の所に行く。

 

「本当にどうしようもないな」

 

「し、しかし、ヴィルキスや天才たちが造った兵器がある以上、アルゼナルを再建させるには……」

 

「ならば、選択権は幾つかある」

 

それに皆はエンブリヲに目線が行く。

 

「一、ドラゴンに全面降伏する」

 

それには思わず息を飲む首相達、エンブリヲは構わず言う。

 

「二、ドラゴンを全滅させる」

 

「そ、そんな!」

 

「三、世界を作り直す」

 

最後の選択肢にそれにはジュリオが反応する。

 

「全部壊してリセットする、害虫を殺し土を入れ替える。正常な世界に」

 

エンブリヲは肩にのって来た小鳥をなでながら言う。

 

「壊して作り直す、そんな事が可能なのですか?」

 

それにエンブリヲは笑みを浮かばせながら言う。

 

「すべての"ラグナメイル"とメイルライダーが揃えば、共に作り直すのだろう?期待しているよ」

 

「は、はっ!!お任せ下さい!エンブリヲ様!!」

 

ジュリオはそう言い、エンブリヲと他の首相達は消える。

残ったのエンブリヲだけとなったが、背後に黒と白の髪、右半分は道化師の仮面をつけた男性が立っていた。

 

「聞きましたよ。世界を創り直すのかい?」

 

「……ああ、上手くいかないものだね」

 

「なら、満足いくまで再創-リメイク-すればいいさ」

 

右手に赤、青、緑の玉を出してスッと握ると黄色の玉になった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

アルゼナルでは損害が大きく外壁はどうにもならず、そのままの状態だった。

ジャスミンとシュージはドラゴンの死体を大きな穴に落としていく。

格納庫ではゼノン、メイ、ラプラスがパラメイルの修理、医務室ではマギーとテンゲンが負傷者の手当てをしていた。

サリアは反省房の中に居る、ヴィルキスに乗りこなせなかった事とジルの事でショックを受けていた。

墓場で黄昏れているリュガはゼランディアが気になっていた、プルートと黄龍號を知っていた素振り。

 

「問題が多すぎるなぁ、親父達の計画といい、ゼランディアといい…解らないことだらけだ」

 

はぁーとため息つく中、後ろからカルネアデスがリュガを抱きしめる

 

「ふふふ~こんな所で黄昏れているのかね少年?」

 

「……そういう、あんたはサボりか?」

 

「残念~、君に会いたい人がいるんだピョン♪」

 

カルネアデスの言葉に、タバコを咥えた男性が立っていた。

リュガはその男性を見て、驚く

 

「親父……!?」

 

「五年ぶりだな、リュガ」

 

天才が一人であるパブロフにしてリュガの父、エルド・黒鋼・ホクトだ

 

「5年もいなくなって……突然、帰ってくるなんて勝手すぎるぜ……ところで、母さんは?」

 

「そのことで話がある。ミリルは……別世界の人間、いやこっちの世界ではドラゴンと呼ばれている」

 

今、信じられない単語を耳にした。

ドラゴンといえば、襲ってくる生物のはず。

その母が‥‥‥‥ドラゴン?

 

「母さんが……ドラゴン?」

 

「この間、ドラゴンと共に襲ってきたあの連中はミリルとは同族なんだ。

 お前は人間とドラゴンの間に生まれた、人間離れした技を体験しているだろ?」

 

思い返してみれば――――。

ニックを貫いた時も、装甲車を持ち上げた時も、銃弾を回避できたもの、ノーマでは到底不可能だ。

リュガの脳内が整理がつかない状況、追い討ちをかけるようにエルドは口を開く。

 

「……そして、お前の機体プルートには、ミリルの魂が宿っている」

 

衝撃の言葉にリュガの頭が真っ白になりそうだった。

 

「うそ……だろ……」

 

「……あれは、機体が完成した日だ」

 

 

◆◆回想開始◆◆

 

 

――5年前、秘密研究室

 

「ミリル。ようやく完成したぜ」

 

「まだよ。この機体の本当の完成は魂を入れることで完成するわ

 マナ国家は思っている以上に恐ろしい存在だわ。それ以上の対抗をしなければいけないの。

 私が、この子に魂を吹き込むことによって……」

 

「本気で言ってんのかミリル!!そんな事をしたら……」

 

「私たちはリュガに酷い事をしたのよ。

 本当ならマナがいつまでも使えて争いの無い世界にいられたもの。

 でも、私たちがそうはさせなかった」

 

写真を取り出すミリル。

幼いリュガと一緒に写っている家族の写真だ。

 

「……あんな箱庭の世界にいても、本当に幸せなのかと言ったら違う、な」

 

「遺伝子操作、肉体強化、20歳を迎えた時にマナを減衰。

 全ては世界を破壊するための兵器として造った。

 リュガには苦しい思いはさせない、私はそれ以上を背負うわ」

 

親として何より母親として最低な事をした。

地獄に落ちて、苦しみを罪を全て受けていてもいいぐらいだ。

そして、機体を完全にするために母は自ら生贄となったのだ。

 

 

◆◆回想終了◆◆

 

 

「そして、ミリルはプルートに魂を入れて、完成したというわけだ」

 

「……肉体強化?マナを減衰?マナ国家を倒すための兵器?ドラゴンと人間の間に生まれた?」

 

リュガは頭を抱えて、首を横に振る。

普通に生まれたというわけではなく、SFやファンタジーによく話に出てくる生まれ方をした。

今の自分は人間でもない。ましてやドラゴンでもノーマでもない存在だ。

そして、プルートに母の魂が入っている―――。最初の出撃の時に無人操縦してきたのも。

リュガの心は怒りと憎悪の炎が燃えたぎり、エルドの胸ぐらを掴む。

 

「俺を兵器に仕立て上げ!!母さんの魂を機体に閉じ込めた!!

 あんたは…あんたらは人間が冒してはいけない事をやったんだ!!」

 

カルネアデスは辛い顔をして背けていた。

つまりラプラスもシュレディンガーも、この件を知っていた。

 

「……恨まれたっていい、怒りを俺にぶつけて殺しても構わない」

 

エルドはリュガの両肩を掴む

 

「俺は妻と息子を残酷なことをしたくなかった。

 あの神を倒せるためとはいえ、夫として父親として人間として最低な事をした。

 家族をバラバラにしたクズ野郎として受け入れるさ」

 

この話が本当だとすれば、今まで襲ってきたドラゴンは人間、つまり人間を殺してきた。

"同族殺し"-----、それが頭に過り罪悪感が襲う。

 

「……俺に今後、どうしろというんだ?教えてくれよ」

 

身体を震わし、涙を流し、天に向けて咆哮をする。

 

「俺は……俺はーーーーーーーー!!!!」

 

リュガの心と頭がグチャグチャで整理がつかない状況だ。

そんな時、放送が鳴り響く。

 

『こちらはノーマ管理委員会直属、国際救助艦隊です。ノーマの皆さんドラゴンとの戦闘を──」




リュガの設定としては原作のクロスアンジュでもあったように遺伝子組み換えによってドラゴンになった人間、機動戦士ガンダムSEEDの遺伝子操作に関することを参考につくりました。

機体に魂を入れる―――。最も頭が良いDr.メビウスことミリルは独自の理論や方法により成功、人造兵器という見方もできる。


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解放する怒り 前編

いよいよ、中盤の大詰め。まずは前編から


放送が鳴る、少し前―――。

アンジュたちもドラゴンの正体が人間であることを知る。

ジルはリベルタスを言うがアンジュの罵声を気にせず、森を歩き考えていた。

 

「神様か」

 

誰かの声が聞こえ、ジルは足を止めて振り向くと、そこにはエンブリヲが立っていた。

 

「私は自分から名乗った事は一度もないぞ?"創造主"と言う意味であれば、正解かもしれんが」

 

世界最高指導者がアルゼナルに居た事にジルはすぐさまマグナムを取り出してエンブリヲに撃ちこむ。

しかし、弾丸はエンブリヲの身体をすり抜ける様に後ろに木に当たり、ジルはエンブリヲを睨む。

 

「エンブリヲ……!!」

 

ジルはマグナムを構える。

だが、エンブリヲは涼しげな笑みをしてジルの方へ向かう。

 

「怒った顔も素敵だなアレクトラ、今は司令官のジルか?」

 

「貴様がここにいるという事は、カノープスもか?」

 

「彼はここに来てないよ。それとも、彼にも会いたかったのかい?」

 

「ああ、会って今すぐに殺したいさ」

 

「私の様に不滅の存在ではないが……彼は相当強いぞ?

 それとも、忘れたわけではないだろうな?君の腕がそうなったのは」

 

エンブリヲの言葉に僅かながら、ジルの表情は怒りになる。

 

「相変わらず傲慢で辛辣な言葉を吐くわね」

 

別の声がする、ラプラスだ。

 

「おや、君もここにいたのかい?」

 

エンブリヲは笑顔を崩さず話すがラプラスは怒りの表情になる。

 

「貴方とカノープスは、私たちの仲間ヘンペル、いえ―――カシム兄さんを殺した」

 

「私は彼を手駒にしようとしたがカノープスが細胞残さず原子分解にさせたそうだ」

 

その言葉を聞いて、ラプラスは憎しみに満ちた顔でエンブリヲを睨む

 

「それでも、兄さんを殺した貴方達を許さない!!」

 

今にも飛び掛かろうとしたいが、エンブリヲは死なない存在というのは知っている

 

「ふむ?来たようだな」

 

エンブリヲは違う方向を見る。

それにジルは同じ方を見るとマナの映像が映し出される。

 

『こちらはノーマ管理委員会直属、国際救助艦隊です。ノーマの皆さんドラゴンとの戦闘──」

 

「…強行手段を取るわけね」

 

ラプラスはそう言いジルはすぐさま構えるがすでにエンブリヲは居なかった。

ジルは舌打ちしてラプラスに言う。

 

「……後で聞かせて貰うぞ」

 

ジルはすぐに臨時司令部へと向かう。

ラプラスはパブロフたちの方へと向かう。

同時にその放送を聞いていたアンジュ達、その放送を聞いていたモモカは嬉しながらアンジュに言う。

 

「アンジュリーゼ様!助けです!助けが来ましたよ!」

 

「……いやな予感がするわ」

 

「どういう事だ?」

 

タスクはアンジュの言葉に振り向く

 

「考えて見なさい。今までノーマの私たちを毛嫌いしていた連中が急に助けに来るなんてあり得るの?」

 

テンゲン、シュージ、ゼノンは驚き戸惑う。

シュージはアンジュに問う

 

「まさか、罠の可能性が?」

 

「……多分」

 

アンジュの推理にジャスミンは「ふむっ」と感心する表情をしながら頷く。

その中でアルゼナル付近の海域で、ミスルギ艦隊がアルゼナルへと進攻していた。

艦の中で旗艦エンペラージュリオ一世に乗艦しているジュリオが笑みを浮かばせていた。

 

「さあ、最後の再会と行こうじゃないか。アンジュリーゼ」

 

 

◆◆◆◆

 

 

臨時司令部でパメラ達がその放送を見ていた。

 

「耳を貸すなよ、たわ言だ」

 

パメラ達が振り返るとそこにジルがやって来て命令を言う。

 

「対空防御態勢!今すぐだ!」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

ジルの命令と同時にアルゼナルは対空防御態勢へと入る。

アルゼナルの動きを知ったミスルギ艦隊、その事を兵士はジュリオに報告する。

 

「アルゼナル、対空兵器を起動!」

 

「やれやれ、平和的に事を進めたかったが……」

 

ジュリオは呆れると言わんばかりにマイクを取り、全艦艇に流す。

 

「旗艦エンペラージュリオ一世より全艦艇へ、たった今ノーマはこちらの救援を拒絶した。

 これは我々、いや全人類に対する明白は反逆である、断じて見過ごすわけには行かない。

 全艦攻撃開始!」

 

命令と同時に全艦隊からミサイルが発射されて、それにいち早く察知したバルカンが吠える。

 

「来るよ!」

 

「え?」

 

モモカは何が来るか分からず、アンジュは舌打ちをする。

 

「皆、基地の中に戻るわよ!!」

 

アルゼナルにミサイルが降り注ぎ、対空兵器が撃ち落とすも、一部は防ぎきれずにアルゼナルに直撃する。

アンジュ達は何とか爆風に巻き込まれずにアルゼナル内部へと退避した。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「始めやがったか」

 

「……シュレディンガーもこっちに向かっているピョン」

 

「解った。リュガ……お前には整理がつかない状況だが、今は生き延びる事だけ考えてくれ」

 

エルドはそう言うがリュガは何も答えずだ。

 

「急いで、プルートに乗り込むめ。いいな?」

 

「……ああ」

 

リュガはふら付きながらも格納庫へと向かう。

エルドとカルネアデスは自分たちがやるべきことへそれぞれ向かう。

格納庫へ向かうリュガだが、マナの特殊部隊と遭遇する。

 

「殺人鬼のノーマだ!!」

 

「殺せ!!」

 

ライフルを構えるが、リュガは怯える事もない。

むしろ、目の前のはただのゴミクズ程度と思っているだけだ。

特殊部隊たちが発砲しようとした次の瞬間――――。

 

ドゴッ!!

 

リュガは回し蹴りで兵士の首をあらぬ方向へと蹴り曲げた。

次々と特殊部隊を素手で息の根を止め、薙ぎ払った。

 

「ああ……ニックを初めてコワシタ感覚だな……」

 

そう言いながらも、格納庫へと向かう。

 

 

◆◆◆◆

 

 

アンジュはサリアに連れられて最下層へと向かわされていた。

アンジュの他にジャスミンも居て、モモカを担いで向かっていた。

 

「良いの?この基地が大変なんでしょ?」

 

「言ったでしょ、貴方には大事な使命があるって」

 

「関係ないわそんな事、あんた達の使命なんて分かりたくもないわ」

 

リベルタスには協力する気はないアンジュ。

それを言い聞かせようとするサリアも何とかするも駄目だった。

 

「では息を止めて下さい!アンジュリーゼ様!」

 

モモカがコショウを振りまき、辺り一面コショウまみれとなり、息が出来なくなった。

 

「アンジュ!何処なの!くしゅん!!」

 

その隙にアンジュとモモカは何とか逃げ出した。

モモカのとっさの行動にアンジュは感心した。

 

「随分大胆な事をするようになったわねくしゅ!」

 

「アンジュリーゼ様の影響でくしゅ!」

 

鼻をかみながらもその場から何とか逃げるアンジュとモモカ。

サリアの報告を聞いたジルは歯を噛みしめ、アンジュの捕獲の命令を与える。

 

◆◆◆◆

 

食堂に付いたアンジュとモモカ、モモカはマナの光で灯りを照らしていた。

 

「こちらですアンジュリーゼ様、ここから行けそうです」

 

灯りを前に向けた途端二人は息を飲む、そこには焼け焦げた人が沢山いた。

それにアンジュは嘔吐し、それにモモカは駆け寄る。

 

「アンジュリーゼ様!み、水を!!」

 

すぐさま食堂のキッチンに向かったモモカ、アンジュはあたりを見渡していると。

 

「大切な物は失ってから気づく、何時の時代も変わらない心理だ。

 全く酷い事をする、こんな事を許した覚えはないんだが」

 

謎の男が居て、それにアンジュは振り向いてみる。

その男こそエンブリヲだった。

 

「君のお兄さんだよ、この虐殺を命じたのは」

 

「なっ!?」

 

その事にアンジュは驚き、エンブリヲは言い続ける。

 

「北北東14キロの場所に彼は来ている、君を八つ裂きにする為にね。

 この子たちはその巻き添えを食ったようなものだ」

 

―――バン!!

 

「きゃあああああああ!!」

 

キッチンから銃声がし、モモカの悲鳴が聞こえてアンジュはすぐに向かう。

向かうと二人の特殊部隊がモモカを狙っていて、モモカは左肩を撃たれていたが、動ける右手でマナの光を出して防御をしていた。

アンジュは銃を取り出し、一人を撃ち殺して、もう一人は両肩を撃ち抜く。

 

「あなた達がやったの?お兄様の命令で?」

 

「貴様、アンジュリーゼ!」

 

すぐに銃を構えるも、アンジュに手を撃たれてしまう。

 

「う、撃たないでくれ。我々は……ジュリオ陛下の命令で……」

 

―――バン!!バン!!バン!!バン!!

 

アンジュは撃ちまくり、弾切れになっても引き続けていてた。

それを見たモモカは慌ててアンジュを止めた。

 

「大丈夫です!モモカはここに居ます!!」

 

アンジュはすぐに後ろを見る。

あの場所に居たエンブリヲの姿は無く、それにアンジュは決心する。

 

「行かなきゃ!」

 

「えっ?」

 

モモカはその事に意味が分からずだった。

 

「アンジュ!!」

 

アンジュは横を見るとタスクがやって来た。

 

「タスク!」

 

「銃声が聞こえてすぐに向かったんだ。でも良かったよ君が無事で」

 

タスクが一安心して話していると、アンジュが言う。

 

「タスク、行かなくちゃいけない所があるの」

 

「え?何処に?」

 

「いいから!一緒に来て!」

 

アンジュはそう言ってモモカと共に格納庫へ行き、それに慌てるタスク。

 

「ああ!ちょっと待ってアンジュ!!」

 

タスクは慌ててアンジュを追いかけて行き、格納庫へと向かって行った。

 

 

◆◆◆◆

 

 

ヴィヴィアンを運ぼうとしている兵士たち、輸送機の前に誰かがいる。

 

「シュレディンガー博士!!」

 

「何故、博士がここに?」

 

「……その女の子を返してもらおうか」

 

その言葉に驚愕する兵士たち。

 

「博士、何を言っているのですか!?」

 

「この女は危険です。今すぐに処分せよと……」

 

兵士たちはそう言うが、シュレディンガーは目を瞑り、言葉を発する

 

「では、死ね」

 

ブカブカの袖から三本の鉤爪を展開し、兵士たちの喉を次々と刈る姿はまるで豹。

顔に付いた血を拭いヴィヴィアンを抱える。

 

「……この基地も我々も危ないか」

 

シュレディンガーはヴィヴィアンを抱えて、安全な場所へ―――。



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解放する怒り 後編

お待たせしましたー、後編スタートです!!


格納庫ではヒルダ達が特殊部隊に対して猛反撃をしていた。

部隊の一人がグレネードを投げ、そのグレネードがロザリーのグレイブの右の連装砲に直撃して吹き飛ぶ。

 

「ああ!!新しい連装砲が!!」

 

「この野郎!!」

 

ヒルダとロザリーはマシンガンで撃ち返すが、その隣でクリスが絶望するかの様にひそめていた。

 

「……もう駄目だ、私達死ぬんだ……」

 

「死の第一中隊がこんな所で死んでたまるかってんだ!」

 

「今さら隊長づらしないで!!」

 

「はいはい……」

 

クリスの嫌みを流すヒルダだったが、一人の特殊部隊が狙っているのに気付く。

それにヒルダがクリスを庇う。

 

「クリス!!」

 

ヒルダが庇うと、左肩に銃弾を受けて仕舞う。

 

「く……!!このくそおおおお!!」

 

撃たれた事にキレたか、ヒルダは敵に向けてライフルを撃ちまくり、相手は穴だらけとなり海に落ちて行った。

クリスは自ら庇ったヒルダに唖然とする。

 

「どうして……」

 

「アタシ等は仲間だよ、誰も死なないしもう死なせないってな!」

 

その事にクリスとロザリーはただ黙ったまま聞いていた。

今度は敵が投げたグレネードがエレベーターシャフトに直撃して、シャフトが崩れる。

 

「エレベーターシャフトが!」

 

「これではパラメイルを下ろせません!」

 

部下の言葉にメイは歯を噛みしめ、不味い状況になって来る事にロザリーが問いかける。

 

「ど、どうするんだよ!ヒルダ!?」

 

「く……!」

 

その時、リュガが現れた。

テンゲン、シュージ、ゼノンはリュガに駆け寄る

 

「リュガ、無事だっのか!!」

 

「お前だけ、どこにいったのか解らなかったら心配したぞ」

 

だが、リュガはなんの返事もない。

三人は怪訝な表情して、シュージはもう一度、リュガに問いかける。

 

「おい、どうしたんだよ。リュガ……?」

 

「テンゲン、シュージ、ゼノン……。俺、お前たちの親友でよかった……」

 

三人はリュガの言葉に理解ができなかった。

リュガはプルートに乗り込み、戦場へ向かう。

 

「おい、リュガ!!」

 

「一体、どうしたんだろう……?」

 

シュージとゼノンは何が何だか解らないが、テンゲンは何かを理解していた。

リュガが抱えこんでいる重い何かを……。

遅れてアンジュ、モモカ、タスクが格納庫に到着する。

 

「お前、何処に行ってたんだ!!」

 

「ごめんね。これから行くところがあるの。シュージ、モモカをお願い」

 

アンジュはモモカをシュージに託しヴィルキスに乗り込む。

 

「アンジュさん、何処へ!?」

 

「……お兄様の所よ」

 

アンジュはヴィルキスを動かし。ジュリオ達が居る艦隊へと向かって行く。

 

「……私たちも行くとしますか」

 

ヒルダはそう言ってライフルを置いて自分のパラメイルの場所に向かう。

 

「ヒルダ……」

 

「アタシたちも行かなきゃね」

 

ヒルダに続き、ロザリー、クリスもパラメイルに乗り込み行こうとするが――――。

 

―――バンッ!!

 

敵兵が残っており、クリスが狙撃され、操縦不能となったパラメイルは瓦礫に突っ込んでしまった

更に足場も崩れ出し、助ける事は不可能になった……。

 

「クリス!!」

 

「クリス……。ちくしょう…てめぇら全員ぶっころす!!」

 

ロザリーは涙を流して、円盤ドローンを撃ちまくる。

だが、クリスの近くにエンブリヲが立っていた。

 

―――――――――

 

タスクもアンジュを追いかけようとバイクに乗ろうとしたが、肩を掴まれる。

振り向くと、シュレディンガー、ヴィヴィアンを背負っていた

 

「シュレディンガーさん!?その女の子は……」

 

「話は後だ。今すぐ、リュガとアンジュを追いかけるぞ。エンブリヲも何処かにいるはずだ」

 

リュガの後を追うアンジュ。サリアが追い付き、対峙する。

 

「戻りなさい、アンジュ!!使命を果たして!!何が不満なの?私の夢も居場所も奪ったんだから…そのくらい…」

 

「最低最悪で、何食べてもクソ不味かったけど……好きだった、ここでの暮らし

 それを、あいつが全て……壊した!!」

 

するとアンジュの指輪がうっすらと光始め、剣を抜きサリアのアーキバスを落とす。

 

「邪魔をするなら……殺すわ!」

 

その事に答えるかの様に指輪が光、端末も光を放つとヴィルキスは赤色に変化する。

 

「許さない……勝ち逃げなんて許さないんだから!アンジュの下半身デブーーーーーーーー!!」

 

そのまま落ちて行くサリアは叫びながら海へと落ちて行く。

アンジュは再び、ジュリオ率いる艦隊群へ向かう。

 

デストロイヤーモードに変形したプルート、リュガは眼前を見る。

父親から告げられた真実、自分はノーマでもドラゴンでもない、何もかも無に帰したい。

ああ、だったら…、目の前の"敵"を全部壊せばいいじゃないか。

 

全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部!!

 

「――――全部、壊す!!」

 

リュガの心は、破壊と殺戮に満ち溢れる。

それに呼応したのかプルートにも変化が生じ、口と思われる部分が開き目が赤く輝きを増す。

両腰部からホイールエクスカベーター、両籠手からチェーンソーを展開、両肩アームが変形し大砲の様な形となり発射口から火炎が溢れ出す。

 

「うらああああああああああああああっ!!」

 

チェーンソーで次々と戦艦を真っ二つに切り裂く。

人間の悲鳴が聞こえるが、差別する屑どもなんかどうだっていい。

円盤ドローンの群が遅いくるが、腰部のホイールエクスカベーターを操作して叩き落とす

両肩アームの大砲から火炎が勢いよく噴き出る。

最大出力で放ち炎は意志を持っているかのように戦艦を覆い尽くし逃げ場をなくす。

 

「逃げろ!苦しめ!泣き叫べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

更に火炎の出力を上げ炎の柱が次々とあがる。

その光景はまさに―――灼熱の火炎地獄。

 

「恐怖に慄きながら、死んでいけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

炎が収束し、大爆発が起こし戦艦を焼き尽くす

蒼かった海は紅蓮の炎の海が生まれ、黒雲が生まれる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

リュガの瞳が赤く染まり、吼える。

 

【ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!】

 

プルートも呼応するかのように、吼えた。

出力を調整して炎を剣にして切り裂いたり鞭のように振りかざして薙ぎ払う。

今のプルートは全てを破壊し焼き尽くす破壊神だ。

一方のヴィルキスも紅に染まり、赤く染まった剣で戦艦を両断し、紅のオーラを纏った状態で戦艦に突っ込み破壊する。

遂に、ジュリオが乗る戦艦に立つリュガとアンジュは司令室を見る。

 

「ひぃぃぃぃっ!?」

 

「てめぇは今すぐに殺してやる。骨も細胞も残さずに!!」

 

「生きる価値のないクズめ!!」

 

二人が止めを刺そうとしたその時だ。

 

「待ちたまえ」

 

リュガとアンジュの前に現れたのは、紫色のパラメイル、宙に浮いているエンブリヲだ。

 

「アンジュ、リュガ。君たちは美しい。その怒りは純粋で白い。

 理不尽や不条理に立ち向かい、焼き尽くす炎の様に、気高く美しい。

つまらない物を燃やして、その炎を燃やしてはいけない。――――――だから、二人の罪は私が背負うよ」

 

目を閉じ、歌唱するエンブリヲ。

紫色のパラメイルの両肩が開きエネルギー渦が発生する。

 

「これって…!?」

 

「ヴィルキスと赤い機体と同じ…!!」

 

紫色のパラメイルは光学兵器を発射、ジュリオが乗っている旗艦へと直撃する。

 

「う、うわあああああああああああああああ!!!!!!」

 

閃光が収まると、ジュリオが乗っていた旗艦が跡形もなく消え、海面に大穴が開いていた。

アルゼナルを抉った時の威力が桁違いすぎる。

 

「てめぇはいったい何者なんだ…?人間という感じでもない」

 

エンブリヲは何かの気配を感じた。

ロケット弾が飛んでくるが、エネルギーシールドで防ぐ。

ランチャーを構えた、シュレディンガー。

タスクはバイクを操作して、アンジュとリュガへ近づく。

 

「アンジュ!!そいつは危険だ!!離れるんだ!!」

 

エンブリヲと紫のパラメイルは狙いを定めたが―――。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

プルートのカメラアイが光、口が開かれる。

すると、口から渦を巻く青白い光学兵器が放たれた。

 

「むっ!?」

 

エンブリヲはそれに驚き、光学兵器を間一髪でかわし、空に直撃すると閃光が炸裂する。

 

「プルートにこんなものが……」

 

驚く、リュガ。シュレディンガーはプルートを見て呟く。

 

「……やはり、彼女がメビウスが目覚めたのか?」

 

今度はアンジュのヴィルキスが青色に代わり、リュガ、タスクたちを巻き込み転移した。

 

「ほう、つまらん筋書きだが、悪くない」

 

崩壊したアルゼナルからその光景を見ていた仮面の男が立っていた

 

「ふん。私を葬るために天才共が作り上げた最終兵器―――ドラゴメイルか

 完全に覚醒するまえに手を打たねばならないね」




次回はいよいよ、平行世界編!!楽しみに待っててください~。


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荒廃世界

もう一つの地球編、スタート


見知らぬ土地の廃墟でアンジュたちが集まっていた。

全員、気絶していたがリュガにある舌が伸びて来て、頬を舐める。

それに目を覚ましたリュガはその方を見ると、ドラゴンが見ていた。

 

「うお!?」

 

リュガはそれに驚くが、そのドラゴンは自分に指を指しながらジェスチャーする。

 

『アタシアタシ!』

 

「……あっ!?お前ヴィヴィアンなのか?」

 

『そうそう!』

 

再びドラゴン態へとなっているヴィヴィアンは「キュ~イ!」と吠えた。

 

『あれれれ?そういえば、リュガはこの姿を見るの初めてだよね?なんで声が解るの?』

 

「……まぁ、半分はドラゴンの血が流れているから声とか解ったんだろうな。とにかくアンジュを起こしてくれ」

 

リュガは気絶しているタスクとシュレディンガーを起こす

 

「おい、タスク。シュレディンガー。起きろ」

 

「う、う~ん………あ、あれ、リュガ?」

 

タスクとシュレディンガーは目を覚ました。

 

「確か、我々は海にいたはずだか……」

 

「けど、廃墟の場所に居る。どうなっているんだ?」

 

ヴィヴィアンに起こされたアンジュは辺りを見渡す。

 

「え?此処、何処!?」

 

全員は通信機でアルゼナルに通信を入れていた。

 

「こちらアンジュ、アルゼナル応答せよ」

 

しかし……何度も通信を試みるも誰も出ない。

 

「どうなってるのよ!」

 

「しかし、大昔に栄えた文明って感じだが……俺たち未知の世界に飛ばされたのか?

 それに原因があるとすれば……ヴィルキスが蒼くなったところだよな」

 

「ヴィルキスやプルートは特別だ。君たちも戦闘でそれを経験したはずだ」

 

シュレディンガーの言葉に先程の戦闘を思い出す。

あの時のプルートとヴィルキスは戦艦相手に叩き壊した。

アンジュは居ても立っても居られないのか、ヴィヴィアンと共に偵察へ向かう。

空を飛んで、いるとどこもかしこも廃墟が広がるが、ある建物が目に入る。

 

「アケノミハシラ……!?」

 

◆◆◆◆

 

「ここがミスルギ皇国!?」

 

「ええ、宮殿も街も綺麗さっぱり無くたっていたけど。あれはアケノミハシラだった、見間違えるはずがないわ」

 

アンジュは此処がミスルギだと言う証言にタスクとリュガはただ唖然とする。

 

「でもおかしいの、アケノミハシラも街もずっとずっと大昔の前に壊れたって感じだった」

 

「俺たちは未来世界に飛ばされたということか?」

 

何が何だかわからない状況だ。

小型ロボットがある放送を流しながら横を通り過ぎて行く。

 

『こちらは首都防衛機構です。生存者の方はいらっしゃいますか?

 首都第3シェルターは今でも稼働中、避難民の方を収容───』

 

その言葉を聞いて、一行は第3シェルターに向かう。

シェルターに入ったが中の人々達が白骨化した死体ばかりだった。

 

「……餓死したのかひでぇな」

 

シュレディンガーはゴム手袋を両手に付けて死体を調べる。

 

「……信じられんことだが、数百年以上の遺体のようだ」

 

衝撃の真実に言葉を失う。

すると、モニター画面が開かれる

 

『管理コンピューターひまわりです。ご質問をどうぞ』

 

「一体どうなってるの!?生きている者はいないの!? 一体何があったの!?」

 

『ご質問を受け付けました、回答シークレンスに入ります』

 

辺りが暗くなり、何かの映像が映し出される。

あたりが戦争している映像だった。

 

『実際の記録映像です。統合経済連合と汎大陸同盟機構による大規模国家間戦争――――。

 "第七次大戦"、"ラグナレク"、"D-War"などと呼ばれる戦争により地球の人口を11%まで減少』

 

その事にリュガ達は思わず息を飲む、すると目の前にある機体が目に映る。

 

『その状態を打破すべく、連合側は絶対兵器―ラグナメイル―を投入』

 

それはエンブリヲが操っていた機体だった。

しかもそれだけじゃない。リュガ達の目にアンジュが乗っている"黒いヴィルキス"が6機も映し出された。

 

「あれは……ヴィルキス!?」

 

黒いヴィルキス達は光学兵器を発射し、アケノミハシラを壊す映像が映し出される。

 

『こうして戦争は終結、ラグナメイルの次元共鳴兵器により地球上の全ドラグニウム反応炉が共鳴爆発。

 地球は全域に渡って生存困難な汚染環境となり全ての文明は崩壊しました。以上です、他にご質問は?』

 

「世界が……滅んだ?」

 

アンジュとタスクは目の前の光景に驚きを隠せなかった。

そして、リュガはその当時崩壊した時期を問う。

 

「……それは何時の出来事だ?」

 

『538年193日前です。

 世界各地2万976ヶ所のシェルターに、熱、動体、生命反応なし。

 現在地球上に生存する人間はあなた方4人だけです』

 

コンピューターはそう答え、リュガはモニター画面に向けて殴打し割れた音が響く。

 

「ふざけやがって……」

 

 

◆◆◆◆

 

 

辺りは夜になり、シェルターに残っていた食べ物を集めて食事をとるリュガたち

 

「……しかし、どうしたもんかねぇ」

 

「ふざけないでよ!! 私はこの目で見た物しか信じない!!」

 

「……てめぇはそういう性格だったの忘れてたな。少し現実を受け入れろよ、ワガママ娘!!」

 

お互いイライラが募っていたのか、口でゲンカになる。

タスクはアンジュを、シュレディンガーはリュガをなだめに入る。

 

「こんな時にケンカしてもなにもならん。落ち着け二人とも。アンジュ、君もだ」

 

「貴方に関係ないでしょう?それにジルの作戦。

 目的の為なら何人犠牲しても良い考えなんて潰れても良かったのよ。

 あんな最低最悪のゴミ作戦、笑えるわ」

 

それを言った途端にタスクが……。

 

「じゃあ、俺の両親もゴミに参加して無駄死にした………そう言う事か」

 

「えっ?」

 

タスクが突如言いだした事にアンジュも振り向く。

 

「俺達、古の民は、エンブリヲとカノープスから世界を解放する為にずっと戦って来た。

 父さんも母さんもマナが使えない俺達やノーマが生きて行ける世界を作ろうとして戦い……死んだ!

 死んでいった仲間も…両親の思いも…全部ゴミだと言うんだな!!君は!!」

 

タスクは今まで見せた事のない静かな怒りの表情にアンジュは戸惑い、リュガは黙っていた。

アンジュは謝ろうとしたが、タスクはそのままどこかに行ってしまった。

しかし、タスクが言ってた奇妙な言葉があった。エンブリヲとカノープス。

 

「なぁ、シュレディンガー。タスクが言ってたエンブリヲとカノープスってなんだ?」

 

「エンブリヲはヴィルキスと同じラグナメイル-ヒステリカを使う男。

 カノープスはエンブリヲと共に行動していた右半分仮面をつけた男。

 10年前、私やパブロフ、ヘンペル、ラプラス、カルネアデス、君の母であるミリルは二人の元で働いてた」

 

「なんだと…!?」

 

「だが、二人の所業を知り、タスクくんたち古の民と秘密裏に計画を練った。

 ヘンペルは私やラプラス、カルネアデスに肉体改造を行い常人とはかけ離れた肉体強化に成功した。

 リュガ、君が20歳に向かえてマナが枯渇する技術はヘンペルのおかげでもあるからね」

 

「そのヘンペルは……?」

 

「……ヴィルキスを強奪し設計図を奪う事に成功したが、その犠牲になってしまった。

 彼の死を無駄にしないためにもエンブリヲとカノープスはなんとして倒さなければならない」

 

シュレディンガーの言葉をただ、聞くリュガとアンジュ。

アンジュは命をかけたその計画にタスクの両親が関わり、命を落とした。

あんな暴言を言って後悔をした。

 

◆◆◆◆

 

翌日――――。

 

(……タスクにどう言えば……)

 

どうにかタスクに謝りたいが償う方法がない。

アンジュは地下の店にある物を見つけ、それを見て何かを思いついた。

一方、機体の修理をしているリュガとタスク。

シュレディンガーはヴィヴィアンをなんとか戻せないか色々と診断していた。

 

「……タスク、これ」

 

アンジュが戻ってきて手には金色に輝くネックレスだ。

 

「あの、に…似合うかなと思って……それだけ……」

 

「……ありがとう、アンジュ」

 

タスクはアンジュが持ってきてくれたネックレスを首にかける

リュガはフッと笑う。

 

「タスク、アンジュの事を許してくれないか?生意気で融通が効かないが、真っ直ぐなんだよ」

 

「うん、解っている」

 

「それにさ、お前らは人どうしだから、いいんじゃねぇか?俺みたいな半端な奴と違うしさ」

 

「どういうこと?」

 

「……親父に会って、真実を知ったんだよ。

 俺はドラゴンとノーマの間に生まれて、プルートの中にさ母さんの魂が入っているって……

 SFとかファンタジーみたいな話じゃねぇか」

 

リュガの出生とプルートの秘密を知り驚愕するアンジュとタスク

 

「怒りが爆発して、グチャグチャになって何もかも消え去りたいと思ったさ……。

 けどさ、昨日のタスクとシュレディンガーの話を聞いて、生きようかなと思ったんだよ。

 命をかけて死んでいった連中のためにも、エンブリヲとカノープスを倒さないといけないからさ」

 

過去は変えることも戻すこともできない。

例え、自分の正体が何であれ、生きていくことを決めたリュガ。

もうリュガには迷いは無くなったようだ。

 

「……さてと、飯の準備でもしますかな。二人は休んでなよ。飯ができるまで愛でも語らってな~」

 

リュガのぶっきらぼうな言葉に顔を赤くするアンジュとタスク。

シュレディンガーとヴィヴィアンも空気を読んだのか、リュガの後に続く。

 

「私ってホント駄目ね、何をやってもすぐに頭に血が上って…」

 

「君は元皇女。俺達とは考え方が違うんだからさ…」

 

二人はつまらない事に思わず笑いだす。

目線が近い事にタスクとアンジュは少しばかり頬を赤くする。

 

「ねえ…もっとくっ付いたら?」

 

「えっ!?い、いや……!?」

 

アンジュの誘いにタスクは真っ赤な顔で慌ててしまい、戸惑いながら言う。

 

「お、俺はヴィルキスの騎士だ!!君に手を出すなんてそんな!!」

 

「無人島の件やミスルギ皇国の件で散々、私の股に突っ込んだのに?」

 

痛い所を突かれて、タスクは黙り込んでしまう。

 

「もしかして、私の事…嫌い?」

 

「そ、そんな事ある訳ないだろう!!」

 

「それじゃあ何で……?」

 

「そ、それは……恐れ多くて……」

 

アンジュはタスクに意外な言葉に思わず振り向く。

 

「10年前…いや、正確には538年前か。

 リベルタスが失敗して右腕を失くしたアレクトラは二度とヴィルキスには乗れなくなり、

 俺の両親も仲間も死んだ。俺にはヴィルキスの騎士の使命だけが残された」

 

タスクの話す事にアンジュはただ黙って聞いていた。

 

「でも……俺は怖かった、見た事も会った事もない誰かの為に戦って死ぬ使命が。

 俺は……逃げた、あの深い森に戦う理由生きる理由も見当たらず、ただ逃げた。

 そんな時に君と出会った」

 

「えっ?」

 

「君は……戦っていた、抗っていた」

 

アンジュが必死に戦っている姿にタスクはどうやら気づかされた様なのだ。

それを聞いたアンジュは顔を上げた。

 

「あれで目が覚めたんだ。俺……何やってんだろうって。

 あの時やっと騎士である意味を見つけたんだ。俺は歩き出せたんだ。

 押し付けられた使命じゃない、自分の意思で……だから俺は君を護れればそれで良いと──」

 

「ヘタレ」

 

アンジュの言葉にタスクは彼女の方を見て、アンジュは微笑みながら言う。

 

「でも純粋」

 

アンジュはタスクの手を握って、それにタスクは顔を赤くするがアンジュは突如暗い顔になる。

 

「私は血塗れ。人間を殺し…ドラゴンを殺し…血の繋がりのある私の兄ですら死に追いやった。

 私は血と罪と死に塗れてる…貴方に守ってもらう資格なんて」

 

「そんな事ない!アンジュ!君は綺麗だ!!」

 

タスクの言葉にアンジュは一瞬目を大きく開き、タスクはアンジュの両肩を掴む。

 

「君がどれだけ血に塗れても、俺だけは君のそばにいる!」

 

「……暴力的で気まぐれで好き嫌い激しいけど……それでも?」

 

アンジュはその事をタスクに言うと、タスクは笑みを浮かばせて言う。

 

「ああ、それでも」

 

その事を聞いたアンジュはタスクの信頼する事にようやく素直となり、そっと目を閉じて口を上げる。

タスクは答えるかの様にアンジュとキスをした……。

 

(全く、やっとか……)

 

(若いっていいものだな……)

 

(きゃあ~~~)

 

物陰に隠れていたリュガ、シュレディンガー、ヴィヴィアンはアンジュとタスクを見て喜んでいた

すると……急に暗くなり上を見るとガレオン級ドラゴンがこちらに降りようとしていた。

 

「アンジュ!!タスク!!全力で逃げろ!!」

 

リュガの言葉に反応した二人だが、逃げそびれてしまう。

機体は動けないし、逃げるのも無理だ。

 

「……襲ってこない?」

 

ガレオン級ドラゴンが首を垂れると二人の女性が乗っていた

 

「ようこそ、偽りの民達よ。我らの世界……"本当の地球"へ」



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もう一つの地球~再会~

連続投稿、その2!!


二機のパラメイルとドラゴン達の群れに連れられて、何処か別の場所へと向かわされていた。

リュガたちはコンテナの中に入っていた。

 

「しかし……生存者がいたとはな。だが、どうしてドラゴンと一緒にいるのか謎だが……」

 

「あの人たちから情報を得られればこの世界が解るかもね」

 

一行がたどり着いた場所は和風の宮殿だった。

コンテナが開きナーガとカナメが刀と薙刀を構える。

 

「大巫女様がお会いになる。コチラへ」

 

突然、ヴィヴィアンの背中に麻酔弾が撃ち込まれ、それにヴィヴィアンは気を失う。

ヴィヴィアンの異変に気付いたリュガたちはヴィヴィアンの方を向く

 

「何をする気だ!?」

 

リュガは食ってかかろうとするがナーガとカナメが構えるが一人の声が響く

 

「心配することはない。そいつを治療するだけだ」

 

声の主にリュガは振り向く。

アルゼナルを強襲し、戦い合った―――ゼランディアが姿を現す

 

「お前、どうしてここに!?」

 

「無礼だぞ、この御方はバルドル一族の王。大将ゼランディア様だ!!」

 

ナーガは今にもリュガに斬りに掛かろうとするが、ゼランディアが制止した。

 

「やめろナーガ、そいつは大事な客人でミリルの息子だ」

 

「なんで、母さんの名前を知っているんだ!?」

 

母親の名前に反応してリュガはゼランディアに問う。

 

「色々と話したいが……大巫女様を待たせるわけにはいかん。ついてこい」

 

宮殿に入り、通路を歩き、玉座の間に着いたリュガ達。

そこに数人の者達がその場に座っていて、すざれに隠れていた。

ゼランディアは一番上の者に問う。

 

「大巫女様、連れてきました」

 

「ゼランディア、その者達がお前が認めたという男と異界の女と男か?」

 

「女の方はラグナメイルが一つ、ヴィルキスを操る者です」

 

「……お主等、名は何と申す?」

 

「人の名前を聞く時は、まずは自分から名乗りなさいよ!」

 

アンジュが怒鳴り声で叫び、それに他の者達はざわつく。

ナーガとカナメはアンジュに睨みつける。

 

「大巫女様に何たる無礼を!」

 

ゼランディアはクククっと笑っていた

 

「肝が据わっている女だ。同族なら、中々の実力者になってたよ」

 

「特異点は開いておらぬはず、どうやってここに来た?」

 

アンジュは答えそうにないのでリュガが代わりに答えた

 

「ヴィルキスが青くなって、気がついたらここに来た。証拠とかないと思うが……」

 

「それと、プルートと呼ばれる機体もですね」

 

別の女性の声が聞こえ、そのすざれから女性が出て来た。

女性にアンジュは見覚えがある女性だった。

それはアルゼナルを襲撃してきたあの美しい黒髪の女性だった。

 

「あなたは……!!」

 

「私は神祖アウラの末裔にしてフレイヤ一族の姫、中将サラマンディーネです」

 

「ようこそ真なる地球へ、偽りの星の者達よ」

 

「知っておるのか?」

 

大巫女がサラマンディーネに問いかけ、それにサラマンディーネが答える。

 

「この者ですわ。先の戦闘で我が機体と互角に戦ったヴィルキスの乗り手は……」

 

「あの者が………」

 

大巫女がアンジュをそう見て呟き、そして他の者達が大巫女に言いだす。

 

「あの女は危険です! 生かして置くわけにはなりません!」

 

「早急に処分を!!」

 

「やれば。死刑には慣れている。ただし…ただで済む事は思わない事ね」

 

「やめろアンジュ。こんな所で争っても何も解決にならん」

 

「でも……!!」

 

「ヴィヴィアンだって、こいつらの手に渡っている。下手に刺激したらヴィヴィアンが危ない」

 

その言葉にアンジュは渋々と黙る。

 

「お待ちください皆さん、女はヴィルキスを動かせる特別な存在。

 それに男は半分は我々の血が流れており、ミリルの息子です。

 ここは生かして置く方が得策かと、この者達の命……私にお預け頂けませんか?」

 

「私からも頼む。ミリルの息子に伝えないといけない事が山ほどあるからな」

 

サラマンディーネとゼランディアの言葉に周囲は納得したようだ

 

 

◆◆◆◆

 

 

客室に案内されたアンジュたち。

サラマンディーネとゼランディアは座り、御茶と菓子を用意する。

 

「さて、何から聞きたいんだ?」

 

「ここは……本当に地球なのか?」

 

タスクの問いにゼランディアは「ああっ」と肯定の返事をする

 

「なら。お前らは一体なんだ?」

 

「……人間ですわ」

 

「だがドラゴンの羽と尻尾があるが……?」

 

「それについては後で話すとしよう。それでだ地球が二つあるとしたら、信じるか?

 一部の人間がこの地球を捨て、移り住んだのが、お前らが住んでいる地球だ」

 

「……何故、そんな事を?」

 

「あなた達はあの廃墟を見たはずです。この星で何が起きたのかを……」

 

「世界戦争に環境汚染か……。それで移り住んだというわけか?」

 

「ああ。ミリルはいち早くエンブリヲとカノープスの存在を知りお前たちが住む地球へ渡った」

 

「母さんはこの世界から俺たちの世界へ渡ったのか……」

 

「そっちの世界でミリルと同じ志を持つ者ができ、エルドという男と愛し合ってお前が生まれたというのも知ったさ。

 そのエルドという男は大きな器を持ってたな。

 ミリルがドラゴンだと知っても《ドラゴンでも人間でも関係ない、ミリルを愛する》っと」

 

父さんと母さんは種族を越えた愛を育んでいた事を知るリュガ。

それなのにあの時の自分は、最低な両親だと思ってしまったことを恥じ入っていた。

リュガはある疑問が思いつき、ゼランディアに問う。

 

「じゃあ、なんで母さんの事を知っているんだ?」

 

「……ミリルは。私の妹だからな」

 

「「「ええええーーーー!!?」」」

 

ゼランディアの言葉に衝撃を受けるリュガとアンジュとタスク。

シュレディンガーは知っていたが、エルドに口止めされていたようだ。

 

「まぁ、呼ぶなら義兄さんって呼んでくれよ。叔父さんって呼ばれたくないしな。

 話を戻すがエンブリヲとカノープスはある計画を実行したんだ」

 

「計画……?」

 

「それについては、直接見せたほうがいいでわね」

 

サラマンディーネは立ち上がり、リュガたち一行はある場所へと向かう。




サラのフレイヤというのは北欧の女神なのでゼランディアは同じ北欧の神のバルドルをつけてみました。
次回はリュガの母、ミリルが遺した物


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もう一つの地球~母が遺した物~

連続投稿、その3!!


もう一つの地球~母が遺した愛~

 

 

アケノミハシラと同じ塔へとたどり着く一行。

 

「アウラの塔とわたくし達は呼んでいます。嘗てのドラグニウムの制御施設ですわ」

 

「ドラグニウムって、シェルターのモニターが説明してた言葉だな」

 

サラマンディーネ達は制御施設内を進みながら説明していた。

 

「ドラグニウムは22世紀末に発見された強大なエネルギーを持つ超対称性粒子の一種。

 世界を照らす筈だったその力は、すぐに戦争へと投入されました。

 環境汚染、民族対立、貧困、格差、どれ一つも解決しないまま人類社会は滅んだのです」

 

環境汚染、民族対立、貧困、格差…元の世界でもそれらが起きたがマナで解決した。

こちらの地球ではマナというものがないのか?

エレベーターに乗って操作して稼働させる

 

「そんな地球に見切りをつけた一部の人間たちは、新天地を求めて旅立ちました。

「残された人類は一つの決断を下します。

 自らの体を作り変え、環境に適応すること。遺伝子操作により、生態系ごと」

 

「そうやって、ドラゴンが誕生したわけか」

 

エレベーターは目的の場所へと着く、巨大な空洞が広がってた。

 

「ここに"アウラ"が居たのです」

 

ゼランディアは装置を動かすとホログラムに神々しく純白に輝く白いドラゴンが姿を現す。

 

「アウラ。汚染された世界に適応するため、自らの肉体を改造、偉大なる始祖。最初のドラゴン」

 

「私達は罪深き人類の歴史を受け入れ、贖罪と浄化のため、生きることを決めたのです。

 男たちはドラゴンに姿を変え、世界の浄化のために生きる」

 

つまり今まで襲ってきた大型ドラゴンは、こちら側の男性というわけだ。

ただ、ひとつだけ疑問がある

 

「俺は半ドラゴンだから、解るが……ゼランディアはなんで人間体のままなんだ?」

 

「ミリルに特別な処置を施されたんでな。お前の成長を見る事と護る事をな

 しかし、アウラはエンブリヲとカノープスが連れていきやがった

 アウラのエネルギーを利用し、おまえらの世界の力の元―――"マナ"を発展させた」

 

マナの誕生の理由を知り驚愕するリュガたち。

 

「少しは分かって貰えましたか? ですが、まだあなた達は知らない事があります」

 

「え?」

 

サラマンディーネに問いかけられて、それにアンジュはサラマンディーネの方を向く。

 

「あなた達の戦いが偽りの戦いをしている事を、分かって貰えますか?」

 

「偽りの戦いって……」

 

「あなた達が私達の同僚を殺している事にあなた達の世界が維持されてることです」

 

アンジュはその事を聞いて驚く。

サラマンディーネの話を聞くとあの世界にマナのエネルギーを維持しているのはドラゴンの心臓から取り出されたドラグニウムだと言う。

ドラゴンからドラグニウムを取り出すにはドラゴンを連れて行く必要があるらしい。

可能とするのが今まで行って来たあのドラゴンとの戦いであった。

それを聞いたアンジュはある事を思い出す。

 

(それじゃあ、あの時――――!?)

 

あれはタスクと二人っきりで無人島で見た。凍結されたドラゴンを輸送されているのを。

 

「分かって頂けましたか?偽りの地球、偽りの人間、偽りの戦いと言った意味が」

 

アンジュはサラマンディーネが自分達の世界の偽りの真実を話す

 

「それでもあなたの世界に帰りますか?偽りの地球へ」

 

「……当然でしょ!貴方の話が全部本当だったとしても私達の世界はあっちよ!」

 

「ちょっとアンジュ!話を聞いてたの!?」

 

タスクはアンジュを慌てて止めるも全く聞かずだ。

 

「そうか……ならお前らを拘束させて貰う。これ以上、同朋を殺させる訳にはいかん」

 

ゼランディアはアンジュの前に立ちはだかり、戦おうとしたが――――。

 

「いい加減にしろ、アンジュ!!」

 

リュガが声を荒げて、止めに入る。

一同は、リュガを見る

 

「俺たちはエンブリヲとカノープスの掌で踊らされた。

 ここで争っても何も解決しない、倒すべきなのはエンブリヲとカノープスだろ!?」

 

「リュガ……」

 

「なぁ、ゼランディア。俺の母さんはどうして俺の機体に魂を入れるような事をしたのか知らないか?」

 

リュガの問いに、ゼランディアは重苦しい表情になりながら、口を開く

 

「アウラを取り返そうとしてもエンブリヲには"ラグナメイル"、カノープスには剣である"トリアングルム"を持っている。

 共に強力な兵器で勝ち目はない。そしてミリルはある一つの計画を出した」

 

「ある計画……?」

 

「自分を犠牲にして究極にして絶対兵器ドラゴメイルを造る。

 ミリルは霊力が強力で機体に血、骨、魂を使う事でやつらの機体に対抗できる最後の手段。

 プルートには魂を、黄龍號にミリルの骨を使ってドラゴメイルは完成した」

 

五年前の出来事に自分を犠牲にして最後の切り札を造ったミリル。

リュガもアンジュもタスクもただ言葉を失った。

 

「当然、私もエルドもサラも反対したさ……。

 犠牲にして完成させなければいけない代物を。

 だが……ミリルはなんて言ったと思う?」

 

ゼランディアはリュガの両肩を掴んで真っ直ぐに言う

 

「『私はどんなに傷ついても辛くても我慢できるわ。リュガは私の大事な子供だから。それが母親として最後の仕事だから』。

 …………リュガ、お前はここまでミリルに愛されているんだな」

 

母の大きな愛にリュガは涙が止め処なく流れ、歯を食いしばった。

 

「泣きたい時は思いっきり泣いてもいい。泣いた数だけ強くなれる」

 

ゼランディアはリュガを抱きしめた。

それが止めとなり、リュガは涙を流し泣いた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

日が沈みかけ、夕暮れ。

真実を知ったリュガたちはどうするのかしばらく、こっちの世界で休むことにした。

どのみち機体が完全に直らなければどうすることもできない。

リュガの後ろにサラマンディーネとゼランディアが立っていた

 

「母さんは、俺を護るために……辛かったよな」

 

頬に涙が伝うが、涙を払い決意の顔をする。

 

「俺にやるべき事ができたな……」

 

「やるべき事ですか……?」

 

「エンブリヲとカノープスを倒す。それに神に逆らい、神を殺すのは、いつだって人間とドラゴンだ」

 

リュガの言葉にサラは驚き、ゼランディアはフッと笑う

 

(神に逆らうのは人間とドラゴンか。

ミリル……お前の子はとてつもなく大きい器を持っている

だから、見ていてくれ。リュガと共にエンブリヲとカノープスを倒すのを!!)

 

――――竜の世界、新たな誓いを立てた。




自分の頭ではこれが精いっぱいです・・・!!上手く、伝わってくれればいいのですが・・・。
リュガは何回も転んで立ち上がるという、そんな性格にしてみました。


次回もまだまだ、"もう一つの地球編"を展開しますので、楽しみに待っててください!!


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トリアングルム

ここから戦闘開始、オリジナル敵機体の登場


夜―――。

宮殿の玉座の間で大巫女、サラマンディーネ、ゼランディア。

アウラの民の巫女たちが集まっていて、彼女達の前にリザーディア―――リィザがホログラムで通信回線を開き話していた。

 

「それは真かリザーディア!」

 

『はい大巫女様、新生ミスルギ帝国の地下。アウラの反応は確かに此処から』

 

リィザの報告に巫女たちは思わず声を上げ、大巫女は頷きながらリィザをほめる。

 

「よくぞやってくれたリザーディア、時は来た。

 アウラの子よ、これよりエンブリヲとカノープスの手から全能の母――アウラを奪還する。

 リザーディア、特異点解放のタイミングは手筈通りに」

 

『おおせのままに』

 

そう言い残してリィザは通信を終えて消える。

 

「これはこの星の運命を掛けた戦い、アウラと地球に勝利を!」

 

『『『勝利を!』』』

 

大巫女の声と同時に皆も頭をさげる。

会議が終わったゼランディアはヴィルキスとプルートの修理をしているシュレディンガーに会う。

 

「やはりというべきか、ミスルギの地下にアウラがいるか」

 

「決戦の時は近い。シュレディンガー、お前たち天才の力を借りたい」

 

「何を今更、エンブリヲとカノープスを倒すために君たちと協力している。

 ヘンペル、いや……カシムの仇を取らなければ死んでいった彼に申し訳ない」

 

シュレディンガーはそう言い、ヴィルキスとプルートを見る。

 

「ヴィルキスはOKだが、プルートは封印を解かなければならん。

 カノープスが所持している剣―――トリアングルムを使ってくるはずだ」

 

「ああ、トリアングルムと対等に渡り合うには黄龍號とプルートが必要だ」

 

 

◆◆◆◆

 

 

寝室へと案内されるアンジュ、タスク、リュガ。

 

「お前たち、二人はこの部屋だ。リュガは別室だ」

 

ナーガ、カナメが部屋の前に立つが、この部屋はアンジュとタスクが使用するようだ。

 

「えっ!?二人で!?」

 

「ああ、ではまた早朝の時に」

 

ナーガとカナメの後をついていくリュガ。

タスクとアンジュは思わず目線を合わせると、顔を赤くして、視線を逸らす。

しばらく歩くと、襖の前に立つナーガとカナメ。

 

「お連れしました」

 

「どうぞ」

 

開けると、サラマンディーネが座っていた。

 

「まさかだと思うが……」

 

「ええ、リュガは私と一緒に」

 

「姫様に手を出したら、私は許さんぞ……!!」

 

ナーガは今にも斬りかからんとする目でリュガに忠告する。

それに対しサラマンディーネはナーガを咎める

 

「ナーガ、お止めなさい。カナメはナーガと共に行きなさい」

 

「え!!し、しかし、サラマンディーネ様!!」

 

ナーガが戸惑いながらもサラマンディーネに問う。

 

「……ナーガ?」

 

サラマンディーネから凍り付くような視線を放ち、二人は慌てて襖を閉めて、その場を離れてた

 

「……警戒しないのかよ?」

 

「ええ。それに……貴方に襲われても……」

 

少しだけ頬を赤く染めるサラマンディーネ。

 

(ドラゴン世界の女性って……肉食系なのか?)

 

二つの意味で感じたリュガ。

しかも、布団が一つで二人分は入れるサイズだ。

サラマンディーネが先に入り、リュガは背を向けて寝る

 

「どうして背を向けるのですか?」

 

「……女と一緒に寝るのは初めてだからな……」

 

少し焦りながら、言うリュガ。

サラマンディーネはイタズラな顔になり、リュガを抱きしめる。

 

「!!?」

 

背中に温もりと柔らかな感触―――胸を押し付けられているのを感じる。

心臓がバクバクと鼓動し、身体が火照るの感じる。

 

「……男性の背中って広いのですね」

 

「……ゼランディアがいるのにか?」

 

「ゼランディアは兄の様な人でもあり、アウラの守り人でもあり、師範ですわ」

 

「アウラの守り人?」

 

「彼の一族はアウラを守護する戦士。彼と貴方の母はアウラを奪還することに命をかけていますわ」

 

命をかけるほどまで、アウラを取り戻す使命を背負っている。

母も自分の命を犠牲にして、プルートと黄龍號を造った。

サラマンディーネだって、アウラを取り戻すために戦っている。

リュガはサラマンディーネの方を向き、彼女を抱きしめる

 

「……リュガ?」

 

「……俺にはこうするしか安心させてやれないと思う。

 命をかけて戦っていたからさ、今だけは安心させてやりたいと思っている」

 

不器用な優しさにサラマンディーネはフフッと笑い彼の胸に顔を埋める。

 

(彼は本当に優しいのですね……)

 

 

◆◆◆◆

 

 

次の日―――。

 

「貴様、サラマンディーネ様に何かしたんじゃないだろうな…!」

 

「……まぁ、お互い抱きしめ合って寝たぐらいだしな」

 

その言葉にナーガは震え出し、斬りに掛かろうとしたがゼランディアが止めに入る

 

「落ち着けって、リュガもサラも大人だからさ」

 

「し、しかし……!!」

 

「ナーガ、お前はもう少しサラ離れしないと……。それに、二人は間違いなんかはしないだろうよ」

 

そんな会話をしてタスクとアンジュの部屋の前に来て、サラマンディーネが襖をノックし入る。

 

「おはようございます…あら?」

 

タスクがパンツ一丁でアンジュの寝間着が完全に崩れていた状態。

リュガは"またか"と思い、ナーガとカナメ頬を赤めており、ゼランディアはふむっとしていた

 

「朝の“交尾中”でしたか。どうぞお続けになって?」

 

「どうして、そう見える……」

 

とんでもない発言にリュガはツッコミを入れる。

 

「ちがーーーーーう!!!!」

 

アンジュはタスクを突き飛ばしてしまい、終いにタスクの尻を何度も蹴っていた。

リュガ達が朝食に行くと、そこにはヴィヴィアンと母ラミアの姿が居て、共に朝食を取っていた所だった。

 

「サラマンディーネ様、ゼランディア様」

 

「よく眠れましたか?」

 

「それが、ミィと朝まで喋りしてまして……」

 

「寝不足~」

 

ラミアがそのミィと言った言葉にリュガは頭を傾げる。

 

「ミィ?誰だ…?」

 

「ヴィヴィアンの事だよ。彼女の本当の名前だって」

 

タスクからその事を聞いたリュガは思わずヴィヴィアンの方を向く。

ヴィヴィアンの本当の名前がミィと言うのは予想も付かなかっただろう。

 

「貴方がミリルの息子ですか?母と同じ色の瞳と顔立ちをしていますわね」

 

「母さんを知っているのか?」

 

「私たちに知恵や勉学を教えてくださった御方です。……立派に育ちましたね」

 

ラミアはリュガの頬を優しく撫でる。

母はこちらの世界でも、頑張っていたことを知る。

その時―――――。

 

「なんだ……?」

 

ゼランディアは窓から外の景色を見る、アウラの塔から何やら異変が起きていた。

ある空間が変化して行き、ある風景が映る。

アンジュがまだ学生だった時に試合した事がある試合会場―――

 

「あれは……エアリアのスタジアム!?」

 

異変の空間はその人々を飲み込み、街を崩し、がれきと共に生き埋めにさせて行く。

 

「一体何が……!?」

 

「サラ、いくぞ!!」

 

「ナーガは街の人々を!!カナメは大巫女様に報告を!!」

 

サラマンディーネは指示を出し、ゼランディアと共に外へ出る。

 

「焔龍號!!」

 

サラの額の宝玉が光り、空から焔龍號がやってくる。

 

「黄龍號、招来!!」

 

ゼランディアは刀を天に掲げると空から黄龍號がやってくる。

 

「アンジュ、俺たちもあいつらを助けに行くぞ」

 

「……ええ」

 

アンジュ、リュガ、タスクはシュレディンガーの所へ向かう。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「皆さん!すぐに宮殿に避難を!!」

 

それに皆はすぐに避難をし始めて、サラマンディーネとゼランディアは落ちて来るがれきを次々と破壊して行く。

サラマンディーネとゼランディアは気配に気づく。

迫っている異変の空間が止まり、三体の機体が出現する。

 

――――盾と槍を持つ騎士風の灰色の機体。

 

――――全身が透明感あり、女性の様なフォルムをした翡翠色の機体。

 

――――6つの黒いモノリスを浮かばせている黄色のラインが入った黒い機体。

 

三機は、焔龍號と黄龍號を囲む。

 

「この機体は……!?」

 

「トリアングルム……!!」

 

一方、シュレディンガーの研究所へとたどり着いたアンジュたち。

 

「シュレディンガー、機体は!?」

 

「いつでも出撃できるぞ。それに、ミリルが遺した資料やパーツを使ってプルートの改修もした」

 

「母さんが遺した物を改修したのか、ありがとうよ」

 

「リュガ、アンジュ。あの三機はカノープスが所持している剣……トリアングルムだ

 エンブリヲが所持しているラグナメイルと同等、それ以上の性能を持つ。気を付けろよ」

 

「……解った」

 

アンジュはヴィルキス、リュガはプルートへと乗り込み、サラとゼランディアの所へ向う

 

――――

 

ガギィン!!ガギィン!!

 

灰色の機体――デネボラが繰り出すランスの突きを弾くゼランディア。

翡翠の機体――スピカからツララを放ち、切り払うサラマンディーネ。

黒い機体――アルクトゥルスは、熱光線を放つが、二人はなんとか避ける。

 

「デネボラ、スピカ、アルクトゥルス。一度に三機も相手をすると手強い……」

 

「それに、次元が迫ってきてますから時間だって……。まさか、敵の狙いはこれ?」

 

焦る二人だが、アンジュとリュガと合流する。

 

「何やってるのよ!サラマンドリル!!」

 

「名前、間違えているぞアンジュ……」

 

二人は異変の空間が人々を飲み込んで行く光景に驚愕する。

するとタスクから通信が入る。

 

「空間を歪ませているのはエンブリヲの仕業だ。

 エンブリヲは時間と空間を自由に操る事が出来るんだ!

 俺の父さんも仲間も石の中に埋められて死んだ………あんな風に!!」

 

「ひでぇ事をしやがる……!!」

 

三機はプルートを見つけると、一直線に向かい囲むように立ちふさがる。

 

「狙いは俺か……!!」

 

デネボラは槍を構えて、連続で突くが、チェーンソーで迫り合いをする。

斬りに掛かろうとするが、スピカは翡翠の独楽を生み出し、プルート目掛けて放つ。

チェーンソーで切り裂くが翡翠の独楽が弾け、氷の結晶となりプルートを傷つける

 

「厄介な!」

 

反撃に両手をウェルダーに変形させて、スピカ目掛けて火炎放射を放つ。

しかし、アルクトゥルスはモノリスを使い、シールドの様に使い火炎放射を防ぐ。

モノリスから無数の穴が開き、レーザーを放つ

 

「あの黒い楯は防御にも攻撃にも使えるのかよ!!」

 

敵の多彩な武器を前に、攻撃に転ずることもできない

 

「アンジュ!!サラマンディーネ!!二人は迫りくる空間を何とかしてくれ!!

 この三機は俺が抑えておく!!取り返しのつかないことになる前に!!」

 

アンジュとサラマンディーネは戸惑っていたが、リュガを信じて空間を止めに向かう。

ゼランディアはリュガと並び立ち、手には大剣を構える

 

「一人でやろうとするな。俺も協力する」

 

「それじゃあ、頼むぜ」

 

プルートはチェーンソーを、黄龍號は剣を構えてトリアングルムと交戦する。



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超絶進化

投稿ペースが落ちてますが……頑張って完走させます!!

プルートのパワーアップ回!!


シュレディンガーとタスクも避難活動をしている中、街の非難を手伝っていたヴィヴィアンの姿が発見する。

何かと思い、駆けつける二人が見た光景はラミアが瓦礫に埋もれていたのだ

 

「何でこんな危ない事をしたのさ!アタシだったら訓練を受けてるからへっちゃらだったのに!」

 

「子供を守るが…お母さんのお仕事だからよ…」

 

辛そうな顔をせず、笑顔を見せるラミア

 

「お母さんさん………」

 

「ヴィヴィアン、大丈夫か!?」

 

「うん、でもお母さんさんが………」

 

ヴィヴィアンはラミアを見て言い、シュレディンガーは頷く。

 

「任せろ、こういう時の道具がある」

 

両手にグローブを装着するシュレディンガーはラミアを下敷きにしている瓦礫をどかす

自由になったラミアは立ち上がろうとするが瞬間足を痛める。

 

「うっ……!!」

 

どうやら下敷きの際に足を怪我した様だ。

 

「大丈夫か!」

 

「……ミィ!貴方は彼らと共に逃げなさい!」

 

「やだ!!行かない!!」

 

その事にラミアは唖然とする。

 

「えっ?」

 

「私…!お母さんと一緒じゃなきゃ行かない!!」

 

ヴィヴィアンがラミアの事をお母さんと言った瞬間、ラミアは思わず嬉し涙を流す。

 

「……ラミアさん、私の背に乗ってください。

 タスクとヴィヴィアンはラミアさんを私の背に乗せるのを手伝ってくれ」

 

「はい」

 

「合点!!」

 

シュレディンガーはシャガミ、タスクとヴィヴィアンはラミアをシュレディンガーの背に乗せて四人は急いで宮殿の方まで走る。

 

 

◆◆◆◆

 

 

トリアングルムと交戦するリュガとゼランディア。

 

デネボラのアイカメラが輝きだすと、巨大な槍へと変形し猛スピードで突っ込んでくる。

二機は避けて、デネボラの攻撃を見て驚く。

 

「アイツ、変形できるのかよ!?」

 

デネボラ・ランサーは反転して、また突っ込んでくるが避ける。

しかも、敵の攻撃が加速してきている。

スピカとアルクトゥルスはその隙を狙ってくるかのように、攻撃を仕掛けている。

 

一方、迫りくる次元にどう対処すればいいのか考えているアンジュとサラマンディーネ。

 

「あれが……あるじゃない!!アルゼナルをブッ飛ばしたアレ!!」

 

アンジュが言うのはアルゼナルを削り飛ばした光化学兵器。

しかし、サラマンディーネは首を横に振るう。

 

「ダメです。都はおろか、神殿ごと消滅してしまいます……」

 

「だったら、3割引で撃てばいいじゃない!!」

 

「そんな調節できません!!」

 

「あなたお姫様でしょ、サラマンマン!!危機を止めて、民を救う。それが上に立つ者の使命よ!!」

 

その言葉にサラマンディーネは覚悟を決めて、歌唱しアンジュもまた歌唱する。

 

「「♪~♪♪~♪♪~」」

 

二人が同時に歌うとプルートに変化が起きる。

すると、メインモニター画面に文字が表示される。

 

「これは……何かの呪文か?」

 

始めてみるが読める、リュガは目を閉じ、呪文を唱える

 

「リザーレム・ドラグーン・ローア!!」

 

リュガが呪文を読み上げると同時に、プルートに変化が起きる。

背には青色の翼が展開、腰に竜尾が生え、口と思われる部分が開かれる。

 

その姿はまさに――――――――ドラゴン。

 

ゼランディアは驚きつつも笑う。

 

「ミリルが残した機械のパーツとプルートの姿はこの時のためという事か…!!」

 

「これなら、いける……!!」

 

リュガの瞳の色が金色に染まり、トリアングルムへ向かう。

デネボラ・ランサーが猛スピードで突撃するが、両手で掴み、大きく振りかぶって―――。

 

「おらああああああああっ!!」

 

―――バギィィィィンッ!!!!

 

地面に叩き付けると同時に、デネボラの刃が粉々に砕かれた。

スピカが冷凍光線を放つが、翼から炎が吹き出し羽ばたかせ熱風を巻き起こし冷凍光線を掻き消す。

 

「突っ込む!!」

 

炎の翼でスピカにぶつけると、スピカに罅が入り地面に叩き落とす。

アルクトゥルスは不利になったと判断し、スピカとデネボラを回収して、消え去った。

 

「……向うの世界に戻ったか……。あれが強化されたプルートの力か……」

 

ゼランディアは更なる進化を遂げたプルートを見る。

機械の竜人とも言える姿だ。

焔龍號は金色となり"収斂時空砲(しゅうれんじくうほう)"の準備をし、ヴィルキスはウリエルモードとなりディスコード・フェイザーを展開。

同時に放たれた光化学兵器は異変の空間に直撃し、消滅した。

 

 

◆◆◆◆

 

 

どうにか危機は去り、一息つく一同。

空は茜色になっている。

 

「……それにしても、二人の歌に反応してプルートが変化したのか」

 

「いや、変化ではなく進化と言うべきだろうな。ミリルが造ったドラゴメイルは生きた機械。

 プルートが完全に目覚めるには、二人の歌が必要だったわけか」

 

ゼランディアは推測する。

 

「貴女が歌ったのは、エンブリヲがこの星を滅ぼした歌……貴女はあの歌を何処で…?」

 

「お母様が教えてくれたの、どんな時でも進むべき道を照らす様にって」

 

アンジュは自分の歌を教えてくれた母の事を言い、それにサラマンディーネは言う。

 

「なるほど、わたくし達と一緒ですね?」

 

「えっ?」

 

「"星の歌"……私達の歌もアウラが教えてくれた物ですから。

 何て愚かだったのでしょう、貴女は私の所有物だなんて……」

 

「アンジュは元皇族。上に立つ者が皆を動かす指導者。

 誰かを救う為に何をするべきかをよく知っているからな」

 

リュガはアンジュを見ながらそう言い、それにアンジュは少々照れくさそうに顔を逸らす。

そう話す中でサラマンディーネは髪をおさえながら言う。

 

「アンジュ…私はあなたのお友達になりたい、共に学び…共に歩く友人に───」

 

「長いのよね、サラマンデンデンって……」

 

「えっ?」

 

「『サラ子』って呼んでいいなら」

 

「……アンジュ、ネーミングセンスないな」

 

「な、何よ!文句あるの!?」

 

「もっと、良い名前で呼べよ。サラマンディーネだから、サラとか……」

 

「ありがとうございます。素敵な名前で読んでくださって」

 

サラはリュガに近づいて抱きしめる。

リュガの顔はトマトの様に赤くなり、頭から煙が出ている。

 

(二人の子供が見れる日は近いかもな……)

 

ゼランディアはフッと笑っていた。



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夜空の下に流れる涙

迫りくる時空とトリアングルムを追い払ったその日の翌日。

風呂に入っているアンジュはサラにミスルギ皇国に侵攻の話を聞いて、アンジュはそれに問う。

 

「私に戦線に加われっとでも言うつもり?」

 

「まさか、貴女は自由ですよ?この世界に暮らす事もあちらの地球に戻る事も……。

 我々と共に戦っても貰えるとなればそれ程心強い物はありませんが。

 明日の出撃の前に貴女の考えを聞いて置きたくて…」

 

「私の…?」

 

アンジュはそれに頭を傾げ、それにサラは頷く。

 

「あなたとリュガは、民を救っていただいた恩があります。出来る事なら何でもお手伝いしますわ」

 

アンジュはそれを聞いて少しばかり考えた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「そっか……。アンジュもその話しをしていたんだね」

 

「そっちも?」

 

「ああ、俺とタスクはシュレディンガーとゼランディアからアウラの事を聞いた」

 

「アウラを取り戻せばエンブリヲとカノープスの世界に大打撃を与えられるのは間違いないからね」

 

「本当に、それでいいのかしら………」

 

アンジュのその言葉にリュガとタスクは振り向く。

 

「信じられないのよ……」

 

「サラの言葉にか?」

 

「何もかもが………」

 

アンジュは空を見上げながら……これまで起きたことを思い出す

 

「ドラゴンが人類世界に侵攻してくる敵だって言うのも嘘。

 ノーマの戦いが世界の平和を守るってのも嘘。

 あれもこれも嘘ばっかり………もうウンザリなの」

 

ジルは最初にそう言ってたが……全くの嘘だった。

父親、仲間の天才たちから本当の事を知り、同族殺しをしたのだ。

けど、過去をやり直すことはできない。

 

「誰も分からないよ。何が正しいかなんて…

 大切な事は、今までの過去ではなく。これからの未来を考えよう。

 失敗してもやり直せるからよ。どんなに、時間がかかっても……」

 

タスクが突如その事を言い出し、それにアンジュとリュガは振り向く。

 

「大切なのは、何が正しいかじゃなくて、君がどうしたいか…じゃないかな?」

 

笑顔で言うタスクにアンジュは心をゆさぶられ、聞いていたリュガは笑っていた

 

「君は自分を信じて進めば良い、前にも言ったけど…俺が全力で支えるから!」

 

「くくくく、タスク。こんな太陽が昇っているうちに告白か?」

 

「えっ!?」

 

リュガのからかいにタスクは思わず振り向きながら驚く。

アンジュは少し頬を赤くして髪をいじくる。

 

「バカね……そんな自分勝手な理屈が通じる訳ないでしょう?」

 

「えっ?そう?」

 

タスクはそれに振り向き、アンジュは安心するかの様な雰囲気を見せる。

 

「でも救われるわ、そう言う能天気な所」

 

「フッ、お褒めに預かり。光栄で──」

 

良い雰囲気なのに……石にぶつかりタスクはアンジュの方へと倒れ―――。

 

「うわああああああっ!?」

 

「えっ!?きゃあああああああ!!」

 

アンジュを巻き込んで倒れ込んで、そこに運悪くヴィヴィアンがやって来た。

 

「皆!皆!お母さんがお礼したいって!」

 

煙が晴れると、そこにはアンジュがタスクに上になって、頭に自分の股を当ててる風な感じだった。

ヴィヴィアンは頬を少し赤くして、可愛らしいポーズをとる。

 

「っ~~~~!!この、A級発情期がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

――――バコッ!!

 

アンジュの鉄拳がタスクを吹き飛ばし―――場外へ飛んで行き、崖の下の川に落ちてしまった。

 

「………あいつ、ラッキースケベの星のもとで生まれたのか?」

 

 

◆◆◆◆

 

 

夜―――。

 

川から無事救助されたタスクはあちこち包帯を巻いており、両手が使いない状態だ。

アウラの民の女たちがタスクにお肉を食べさえていた。

 

「はい、あ~ん♪」

 

タスクが食べてくれた事にその女たちは喜んでいた。

 

「うわ~!食べてくれた~♪」

 

「男の人って可愛い~!」

 

「えっ?そ…そう…」

 

「タスク、鼻の下を伸ばしているとアンジュに殴られるぞ」

 

肉をムシャムシャと喰いながらタスクに注意するリュガ

 

「あ、それは……」

 

「―――楽しそうね」

 

タスクとリュガは運悪くアンジュがその場にやって来た事に固まる。

アンジュの右手に何やら見覚えのある形をしているバーベキューのお肉串を持っていて、

その先端のキノコを思いっきりかぶりつく。

 

――――ガブッ!!

 

その光景を見てタスクは股をおさえ、流石のリュガも真っ青になり後ずさりする。

女たちは悲鳴をあげてその場から逃げて行く。

それにアンジュは鼻で笑い飛ばし、タスクのそばまで行って隣に座る。お肉を差し出す。

 

「はい、あ~ん」

 

「えっ?」

 

「何よ?いらないの?」

 

アンジュの行動にタスクは少々戸惑いを隠せない。

 

「えっ?……な、何で?」

 

「手、使えないんでしょう? 少しやり過ぎたわ」

 

アンジュは頬を赤くして、申し訳ない表情をしながら謝る。

 

「このくらいどうってことないさ。アンジュの騎士は不死身だからね」

 

「あの高さから落ちたのに両手ですむとか……体頑丈だな」

 

「そういうリュガも私を助ける時に車とか持ち上げてブン投げたじゃない」

 

「あの時は、自分がドラゴンだって知らなかったしさ……。そう、俺は……」

 

――バケモノ。

 

アンジュやタスクとは……全く違う。

あの時、吹っ切れたかと思ったけど、ダメなのかもしれない。

 

「悪い……一人で飯食ってくるわ」

 

リュガは無理な笑顔を作り、その場を逃げるように去る。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「……なにやってんだろうな、俺は……」

 

仰向けで星空を眺めるリュガ。

暗くなったのかと思いきやサラがやって来た。

 

「此処に居ましたか」

 

「サラか…」

 

サラはリュガの隣に座り、問いかける

 

「何を考えていたのですか?」

 

「俺は……人間なのかドラゴンなのか解らなくてね……。

 半人半竜、中途半端な存在、混ざりモノ。

 情けないなぁ、この前はあんだけ泣いて、神を倒すといった男がこんなんだと……」

 

「生きている物は悩んで苦しんで、それを乗り越えて前に進むものですよ。

 リュガ、貴方は独りではありませんわ。

 私もいます、ゼラもいます……。だから、頼ってもいいのですよ」

 

サラは頬を赤くして、リュガに言う。

リュガは上半身を起こして、サラと正面から向き合い抱きしめた

ギュっと強く強く、離さまいと抱きしめる

 

「……リュガ?」

 

「ありがとう……。なんか凄い、嬉しい……」

 

サラは微笑んでリュガを抱きしめて背中を優しく撫でる。

その光景を見ている三つの影―――。

 

「サラマンディーネ様も安泰ですね」

 

「ああ、リュガなら任せられるな」

 

カナメとゼランディアはうんうんと嬉しそうに頷くがナーガは、今にも飛び出しそうだがゼランディアが抑えている。

 

「離してください!!あの狼藉者を叩き斬って……!!」

 

「駄目だ。サラの将来の相手を斬るんじゃない。まったく……、気づかれんうちに帰るとするか」

 

ナーガを抑えたまま去るゼランディア、その後に続くカナメ。

夜空に輝く星々はリュガとサラを優しく見守っている。



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=主人公&機体資料=

現在、可能な限り公表できるデータ。

(2015/8/26 更新)


名前 リュガ・黒鋼・ホクト

 

性別 男性

 

年齢 20

 

特徴 瞳の色:蒼、黒の短髪、細マッチョ

 

CV 藤原啓治

 

履歴

 

大学では機械工学を学んでおり上位に入るほどの成績が良い。

両親は共に5年前に行方不明。

四人の友人と楽しく、過ごしていたがマナが無くなり、ニックのせいで"ノーマ"と告発される。

結果、親友に裏切られた怒り、悲しみ、憎悪によりニックを殺害する。

アルゼナルへ収容され、ノーマであることと人を殺した殺人鬼として受け入れ、甘えも優しい心を捨て、敵性生物ドラゴンを殺すことを決意する。

しかし、どうしても情を捨てきれない部分があるらしい。

 

人間の父と母のドラゴンの間から生まれた半人半竜。

ドラゴン化したヴィヴィアンの言葉を理解できるほどである。

 

 

 

 

 

リュガの評価

 

 

・アンジュ(傲慢な印象だったが、なんだかんだで放ってはおけない)

 

・サリア(いろいろ教えてくれたのは感謝するが、予想外の事には弱い事を知る)

 

・ヒルダ(性格がきつそうだが、張合いがある)

 

・ヴィヴィアン(テンションが高いし、喧しい)

 

・エルシャ(いまいち性格がつかめん、見透かされている気がする)

 

・ロザリー(躾がなってない犬みたいな感じだ)

 

・クリス(・・・影が薄い)

 

 

 

リュガへ対する評価

 

・アンジュ(同郷だが、関係ない。説教が喧しい。・・・あの時の強い瞳は忘れない)

 

・サリア(粗暴が目立つが、戦闘能力は中々の者として見ている。助けたことに好意を抱いている?)

 

・ヒルダ(ゾーラを助けてくれたことは感謝しているが、アンジュを庇う点がある)

 

・ヴィヴィアン(面白くて楽しい!!)

 

・エルシャ(乱暴だけど本当は優しい事に気が付いている。弟ができたみたい)

 

・ロザリー(太る、という言葉を言ったので許せない)

 

・クリス(目つきが怖い・・・)

 

 

 

●パラメイルについて

 

機体名プルート

 

型式番号AW-DRZ013(XX)

 

全高8.8m

 

頭頂高8.3m

 

重量5.0t

 

推力160KN

 

リュガの父、エルドが開発した黒のパラメイル、装甲色は黒、関節や目の部分は真紅。

高出力、高性能だが、操縦に難があり事実リュガしか扱えない。

デストロイヤー形態では後頭部に角があり、姿は悪魔もしくは闇黒騎士のような風貌をしている(モデルは俺タワーの"HLデモリションマシン"でアーム部分がない状態と想像してほしい)。

武装は工具や重機など戦闘用に改造したもので、右腕は近距離・格闘(パイルバンカー、チェンソーなど)、左腕は遠距離・射撃(ダイヤモンドカッター、クローラークレーンなど)になる。

最初の出撃の際に無人操縦で助けた理由は―――リュガの母ミリルの魂が宿っているからである。

もうひとつの地球にて強化されて、完全な姿へとなる。

 

 

=武装=

 

パイルバンカー(巨大な金属製の杭を高速射出し、敵の装甲を撃ち抜く)

 

チェーンソー(対象物を切り裂く武器。最も使われていることが多い)

 

破砕機(固い装甲を破砕・粉砕する武器。ドラゴンの心臓を穿つに使った)

 

油圧カッター(巨大ハサミ。ドラゴンの皮膚などを切断するほどの切れ味)

 

ダイヤモンドカッター(近接武器にも使えるが、射出し遠くの敵を切り裂く)

 

クローラークレーン(捕縛して、叩き付けたり、自分の方に引き寄せて近接戦闘に持ち込む)

 

ウェルダー(炎や放電によって、金属の接合部を溶かしたり、継ぎ合わせるために使われる溶接工具。超近距離では絶大な威力を持つ)

 

 

=完全形態の武装=

 

フレアウィング(翼から炎が噴き出す。熱風を起こしたり敵に叩く)

 

オメガブラスト(口と思われる部分が開き、渦巻く青白い光線を放つ。ヴィルキスや焔龍號の時空収束砲と同じ威力)



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敵対する仲間

元の世界へ帰還。そして……


アウラの民がアウラを奪還するべく総力を持って進攻する為、戦力を集結させていた。

その様子に外に居たアンジュ、タスク、リュガ。

その中でヴィヴィアンは感心していた。

 

「うお~!ドラゴンのフルコース~!」

 

「凄いわね………」

 

皆が思い思いでこの光景を言う。

 

「でも、残念ね~。こんないい男がもう帰っちゃうなんて」

 

其処に現れたのはドラゴン側の医者ドクター・ゲッコ。

どうもタスクの事を色々と調べていたり、ヴィヴィアンのドラゴン化を完全に治してくれた人だ

 

「まぁ……俺の親友であるシュージなら調べてもいいが」

 

「本当に!?約束よ~」

 

ゲッコはリュガの手を掴んで握手する。

タスクとアンジュは乾いた笑いをしていた。

ドラゴン達が集結して、大巫女が皆の前に現れるが大巫女の姿を見て唖然とする。

 

「あれが大巫女…?」

 

「サラとゼランディアが言うにはアウラ・ミドガルディアという名前だそうだ」

 

幼き大巫女――アウラ・ミドガルディアは民達に宣言をする。

 

「誇り高きアウラの民よ、原初のドラゴン、母なる竜アウラと言う光を奪われ幾星霜…ついに反撃の時が来た。

 今こそエンブリヲとカノープスに我らの怒りとその力を知らしめる。

 我らアウラの子!例え地に落ちてもこの翼は折れず!!」

 

その言葉にドラゴン達は雄叫びをあげて、それにヴィヴィアンもつられるように興奮しながら吠えた。

宣言が終えて、サラは焔龍號、ゼランディアは黄龍號に乗り込み、告げる。

 

「総司令!近衛大将ゼランディア!我らの母なる竜――アウラを取り戻すぞ!!全軍出撃!!」

 

黄龍號と焔龍號が発進。

ナーガとカナメの蒼龍號と碧龍號が続き、ドラゴン達もその後を追いかけるように出撃した。

 

「俺たちも行くぞ!!」

 

リュガとアンジュたちも機体に乗り込み、タスクとシュレディンガー、ヴィヴィアンは空中バイクに乗る。

 

「特異点開放!!」

 

すると皆の目の前にシンギュラーが解放されて、皆は後に続く

 

 

◆◆◆◆

 

 

シンギュラーを通り抜けると、青い空と青い海が広がっていた。

 

「ここは………」

 

「ここでクイズで~す! 此処は一体どこでしょうか!

 クンクン…正解は!あたし達の風、海、空でした~!」

 

アンジュは自分の世界に戻って来た事に思わず嬉しさが出る。

 

「戻って来た……戻って来たのね」

 

一方サラは座標が違っている事にすぐに問う。

 

「到着予定座標より北東4万8000…!? どうなっているのですか、これは!」

 

「分かりません…!確かに特異点はミスルギ上空に開く筈…!」

 

その時サラの機体のレーダーに警告熱反応が表示され、それにサラは前方を見る。

すると目の前にミサイルが無数に飛んで来て、それにドラゴン達は光の盾を展開し防御する。

 

「何事!!」

 

煙が晴れた途端に無数のドラゴン達が海に落ちて行く。

ガレオン級が吠えた途端に緑色のビームがガレオン級の頭部を吹き飛ばして撃ち落とす。

それにサラは目を見開く。

 

「サラマンディーネ様!これは!?」

 

「待ち伏せです…!」

 

サラが言った言葉にナーガとカナメは驚きを隠せない。

 

「待ち伏せ!?」

 

「では!リザーディアからの情報は…!?」

 

「今は敵の排除が最優先だ!!」

 

そう言ってサラ達は龍神器達をアサルトモードに変形させて、ドラゴン達に言う。

 

「全軍!!敵機を殲滅せよ!!」

 

サラとゼランディアが先頭に進み、その後にナーガやカナメもあとに続く。

戦闘が始まるが、5つの黒い機体をみて驚愕する

 

「あれは……まさか……」

 

「黒いヴィルキス!?」

 

「……あれはエンブリヲが所持しているラグナメイルだ」

 

シュレディンガーがそう言う中、ドラゴン達が次々と落とされて行くのをヴィヴィアンが見て、大声で叫ぶ。

 

「ああ!!やめろーーーーー!!」

 

「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

リュガはプルートを操縦し、人型へと変形して両手から淡い緋色のエネルギーシールドが出現しドラゴン達を護る

 

「リュガ!?」

 

「サラ、ゼランディア。一度退いて体勢を立て直せ!!」

 

「出来ません!エンブリヲからアウラを取り戻すまでは!」

 

「周りを見ろ!!この状態ではアウラを取り戻すのは不可能だ!!」

 

サラは言う通りに周りを見渡すと、戦況が混乱状態だ。

 

「それとも、大事な仲間を危険に晒す気か!?撤退してチャンスを作るんだ!!」

 

サラは目を開かせて、頭を冷やして操縦桿を握りしめて皆に言う。

 

「全軍、撤退する!! 戦線を維持しつつ特異点に撤退せよ!」

 

ドラゴン軍達は特異点に向かい撤退し始める。

 

「すまない……リュガ」

 

「謝るな。エンブリヲとカノープスはこの事を見抜かれていた。

 生きていればアウラを取り戻せる」

 

「ああ、それまで……生き延びてくれ!!」

 

最後にサラとゼランディアは特異点に入り、撤退は成功する。

アンジュはラグナメイル・クレオパトラの方を見ると、クレオパトラがフライトモードになる。

 

「どうして、あんたが……」

 

ライダーのバイザーが透通って素顔が現れ、アンジュとリュガは驚愕する

 

「サ、サリア……!?」

 

ラグナメイル・レイジアにエルシャ、ラグナメイル・テオドーラにクリスが乗っていた

 

「エルシャ、クリス……!?」

 

「リュガ、アンジュ、どうしてあんたがドラゴンと一緒に戦って……」

 

「てめぇら………エンブリヲの犬に成り下がったのか」

 

かつての仲間と敵対することになる最悪の展開。

サリアはエンブリヲの指示を聞き、少し驚く

 

「分かりました……エンブリヲ様。アンジュ、リュガ二人を拘束するわ。色々と聞きたいことがあるから」

 

サリアの一言に驚き、サリアはエルシャとクリスに言う。

 

「二人共、良いわね?」

 

「「イエス、ナイトリーダー!!」」

 

サリア、エルシャ、クリスはアンジュの方へと向かい襲う。

リュガは救出しようとしたが……ラグナメイル・ビクトリアとラグナメイル・エイレーネが立ち塞がる。

 

「あなた、こんなに弱かったんだ…強くなったのは私。エンブリオ様のおかげで!!」

 

サリアの猛攻に防戦一方となり弾き飛ばされ態勢を崩される。

 

「今よ!陣形、シャイニングローズトライアングル!!」

 

クレオパトラ、レイジア、テオドーラが三角形の陣でヴィルキスを囲みワイヤーで拘束する。

身動きが取れなく、アンジュは苦虫を噛み潰した表情になる

 

「させるか!!」

 

両手を変形し、ダイヤモンドカッターを連射出してワイヤーを切り裂きヴィルキスを解放する。

 

「リュガ……!!」

 

「悪いが、抵抗はするぜ。俺らを縛り付けようと思うなよ……!!」

 

だが、不利な状況は変わりない。

アンジュはあの時と同じように、跳躍しようとする。

 

「飛びなさい!ヴィルキス!!飛べぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ヴィルキスの色が青色に代わり、跳躍した。

 

「何処に行ったの……!?」

 

サリアたちはアンジュたちを捜索する。

 

 

◆◆◆◆

 

跳躍した場所はボロボロとなっていた基地だ

 

「あそこは……アルゼナル?」

 

完全に基地機能を失ったアルゼナルを見て呟き、それにアンジュはただアルゼナルを見て呆然とする。

夜、アルゼナルの付近に着陸したが、黒焦げの遺体が所々ある。

 

「酷い事をしやがる……」

 

「皆…何処に行ったの?まさか…」

 

「脱出して、無事で居るはずさ。ジルたちがそう簡単にやられる筈がない」

 

「ああ、パブロフ、ラプラス、カルネアデスも一緒だ」

 

「だと、良いが……」

 

ヴィヴィアンは何かに気付き、それにリュガ達は見る。

すると海の方に緑色の光の玉が浮いて、そこから三人の人影が現れる。

アンジュは恐怖のあまりに悲鳴をあげながらタスクに抱き付く。

 

「あ…あ…アンジュリーゼ…様?」

 

「ち、違う!!私は!!……え?」

 

アンジュは自分の本名を知っている事に反応する。

すると、その人物はマスクを外すとモモカだ。

 

「モモカ……?」

 

「アンジュリーゼ様ー!!」

 

モモカはアンジュに駆け寄って抱き付き、アンジュもモモカが現れた事に嬉しながら抱き付く。

ヴィヴィアンはその他の者達を見た時にマスクを外したヒルダとロザリーを見て驚く。

 

「うわー!みんなだ!!」

 

「ヒルダ、ロザリーも無事だったのか」

 

「うわっ!!ドラゴン女!?」

 

ロザリーはヴィヴィアンを見てビビって引いて、ヒルダは笑みを浮かべてアンジュに駆け寄る。

 

「本当に………アンジュなの?」

 

「勿論よ、ヒルダ」

 

かつての仲間たちと合流し、あの後、何があったのか聞くこと……。



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決別の海 前編

決別の海 前編

 

 

無事アルゼナルの皆と合流したリュガ達。

アルゼナルの旗艦であるアウローラと共に海底へと進んでいた。

アウローラのブリッジに居るオリビエが提示報告をする。

 

「第一警戒ライン通過」

 

「まさか生きてたとは……」

 

ヒカルが別の部屋で話し合っているリュガ達の方を見ながら言い、それにはオリビエも同意しかねる。

 

「アンジュとリュガ、てっきりロストしたかと思ってました」

 

「今まで何処に行ってたんだ…?」

 

「それがシンギュラーの向こう…だって」

 

パメラが言った言葉にヒカルとオリビエが思わず驚きを隠せない。

 

「「うっそ~!?」」

 

 

◆◆◆◆

 

「平衡宇宙と、もう一つの地球。ドラゴン…いや、遺伝子改造した人間の世界か…」

 

「ドラゴンの目的は、アウラの奪還。マナを得るためにノーマがドラゴンを狩る。

 こんなバカげた戦いを終わらせることが出来るわ」

 

「だが……サラ達の侵攻作戦は失敗した。お互いの目的のためにも協力するべきだ」

 

アンジュとリュガはこれまでの情報を出す。

 

「敵の敵は味方、か」

 

ジャスミンが両腕を組んで納得している。

 

「冗談じゃね!!あいつらドラゴンは今まで仲間を食い殺したんだぞ!!」

 

ロザリーは反対で、その発言にヴィヴィアンは頬を膨らませてムッとする。

リュガはヴィヴィアンの頭をポンポンと撫でる

 

「確かにそうだが、俺たちの本当の敵はエンブリヲとカノープスだ。その策で俺たちは踊らされたんだよ」

 

「奴らは信じるに値しない、神気取りのエンブリヲとカノープスを倒し、この世界を壊す。

 忘れた訳ではあるまい。兄妹、民衆に裏切られてきた過去。人間への怒りを。

 差別と偏見にまみれたこの世界を壊す、それがお前の意志ではなかったのか?」

 

アンジュは言葉を詰まらせそうになったが、リュガが前に出る。

 

「あのドラゴンたちは良い奴らだよ。

 俺たちとドラゴン達と手を組めばエンブリヲとカノープスを倒せる。

 それとも逃げ続けて、怯える気か?」

 

「貴様……!!」

 

「辞めるんだ二人共。リュガの言葉の一理あるぞ。現にわたし等の戦力が心持たないのも事実だ」

 

「サリア達が寝返っちまったからね」

 

「アンジュ、リュガ。お前さんたちはドラゴンとコンタクトとれるのかい?」

 

「ああ、できる。ヴィルキスとプルートの力を使えばな」

 

「それは凄い。ジル、ドラゴン達との共闘。考えてみる価値はあるんじゃないのかい」

 

ジャスミンの提案に聞いたヴィヴィアンは思わず嬉しがる。

しかし、ジルは黙ったまま返答せず、それにリュガ達は厳しい表情で見ていた。

 

「………ジル」

 

ジャスミンが再び問いかけ、それにジルはようやく口を開く。

 

「………よかろう」

 

そう言ってジルは扉の方に向かう。

 

「情報の精査の後、こん後の作戦を通達する。以上だ」

 

そう言ってジルは出て行く。

 

「なんだか、冷たい感じだな」

 

「アンジュたちが戻って来た事に嬉しがっているのさ。そこはあたしが保障するよ」

 

ジャスミンがそういうが、リュガはどうにもジルの事が気になる。

 

 

◆◆◆◆

 

 

部屋にてラプラス、カルネアデス、シュレディンガー、リュガ、アンジュ、タスクと集まる

 

「しかし、こんな戦艦を持っていたとはな……」

 

「私たちと古の民が作ったリベルタスの旗艦。この艦でエンブリヲとカノープスと戦って来たのよ」

 

「これがねぇ……そういえば、親父は?」

 

「パブロフは単独でミスルギ皇国へ潜入したピョン。……三人はドラゴンの世界の真実を知ったのね」

 

「ああ……母さんの最期も……」

 

「それなら、私たちの話をしましょう。

 10年前……私たち6人の天才はカノープスの下で働いていたの。

 エルドとミリルの目的を知った私たちは協力して彼らに対抗できる力を備えようとしたわ」

 

「そこで、眼につけたのが……エンブリヲが所持しているラグナメイルが一つビルキス。

 ヴィルキスと名前を変えたのは反抗のための意味を込めてだ。

 ヘンペルことカシム・ゾル・グラムと多くの古の人々が払った犠牲で手に入れた物だ。

 後は、リュガ……ミスルギ皇国で私と会話していた通りだ」

 

「そういえば、貴方達の本名って……?」

 

天才たちの本名を聞き出すアンジュたち。

ここまで、来たのなら隠す必要もないと天才たちは名を上げる

 

「私の本名はニコル・サンドラムだ」

 

「私の本名はリム・パルムスだピョン」

 

「私はカリーナ・ゾル・グラムよ」

 

シュレディンガー、カルネアデス、ラプラスは自分たちの本名を名乗る

 

「えっ?ヘンペルと同じ苗字?」

 

「ヘンペルは私の兄なのよ。カノープスが兄さんを殺したとエンブリヲから聞いたわ」

 

天才たちから聞かされた経緯を知るリュガたち。

 

「そして、ヴィルキスの前の操縦者はジル、いえ本名はアレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツだピョン」

 

その名前を聞いてアンジュは驚く

 

「確かガリア帝国の第一皇女の。病死したって聞いてたけど」

 

「病死した事にされているのよ。マナを持つ者たちにとってのやり口ね。

 最初のリベルタスの時、タスクくんのご両親も仲間たちを失って、ジルも右腕を失ったわ……。

 私たちは、それぞれ単独でエンブリヲとカノープスを倒す時を待っていたわ。

 それが……リュガ、貴方なのよ」

 

ラプラスは真っ直ぐな目でリュガを見る

 

「……一番、悔やんでいたのはパブロフだ。

 息子を世界を破壊する道具として仕立て上げた事を。

 彼は妻を失い……子供までも手にかけていたことに今でも悔やんでいる」

 

そうだ。

親としての立場を考えれば……子供に世界の運命をかけた戦いに投じるような真似はしたくない。

今度、父と再会したその時、謝って和解しよう。



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決別の海 後編

後半!!そして……あの人が登場


=アウローラ 食堂=

 

 

「美味~い!シュージの料理が懐かしい~!」

 

「よく食べるねヴィヴィアン」

 

「やっぱ、元がドラゴンだからか?」

 

食い意地の強いヴィヴィアンの様子に呆れかえるしかなかった。

マギーがヴィヴィアンの身体をあちこち触りまくり、それに擽られてしまう。

 

「本当にキャンディーなしでもドラゴン化しなくなったのかい?」

 

「そう…らしい!」

 

「大した科学力だね~」

 

マギーはサラ達の世界の科学力に感心する。

 

「向こうの皆は羽と尻尾があったんだけど、アタシなんでないの?」

 

「あー……ばれるから切ったよ」

 

「うわっ!!ひでぇ~!!」

 

ヴィヴィアンの様子に向かいに座っているココとミランダ。

隣の席に座っている若者三人は苦笑いしながら見ていた。

それに……

 

「全く、あの時の二人がここまで強くなるとはね」

 

そう、元隊長のゾーラだ。

脱出した後にマギー、テンゲン、ラプラスが治療続けて遂に意識が戻ったのだ。

日常生活に支障はないがパラメイルに乗っての戦闘は無理のようだ。

 

「ま、色々と合ったんでな。ゾーラが寝ている間にな」

 

「ははは、生意気言うようになったか」

 

なんだかゾーラは嬉しそうな感じだ

 

「全く、心配させやがって。戦場からロストして、帰ってきたら、この男とはイチャイチャするわ」

 

「ごめんねヒルダ、悪かったわ」

 

アンジュが謝るとヒルダは少しばかり頬を赤くし明後日の方を向く。

 

「どうしたんだ、ヒルダ?」

 

「何でもないよロザリー。全く、お前等が居ない間大変だったからな」

 

「その事だが、俺達が居ない間何があった?」

 

リュガがその事を問い、ロザリーが少しばかり暗い表情で言う。

 

「お前たちが消えた後、アタシ等はとても苦戦した事ばかりなんだよ。

 アルゼナルは壊滅するわ、仲間が大勢殺されるわ、クリス達が敵になるわ……」

 

「サリア、エルシャ、クリス……。あの三人がどうして」

 

「こっちが知りてぇよ!容赦なくドカドカ撃って来やがって!あんなのもう友達でも何でもねぇよ!」

 

ロザリーが机をたたく。

いつも、クリスと一緒にいたからそんな気分なんだろう。

 

「そういえば、この船を護っていたのって……貴方達なの?」

 

「こいつ等が頑張ってくれたからな」

 

ロザリーは指を指して、三人の若い少女たちの方を向かせる。

 

「ノンナ、マリカ、メアリー。戦力不足でライダーに格上げされた新米たちさ」

 

「私達の後輩です!」

 

「足手纏いにならないよう頑張ってます」

 

ココとミランダが強い意志を見せる。

リュガはあの時と違って、強くなっているのを確信していた。

 

「ゾーラ姉さまが、まだ動けないから私がみっちり扱いたお蔭で何とか───」

 

メアリー達が一斉にヴィヴィアンの方に向かって行き、それにはロザリーも流石に突然過ぎて戸惑った。

 

「あの!お会いできて光栄です!」

 

「んっ?えっ?アタシ???」

 

ヴィヴィアンは自分の事を言われて、何が何やら分からなかった。

 

「第一中隊のエース、ヴィヴィアンお姉様ですよね!」

 

「ずっと憧れていました!」

 

「大ファンです!」

 

「そっかそっか♪ よし喰え喰え~!」

 

ヴィヴィアンは自分の食器の具をメアリー達にも分け、その様子にロザリーはやや悔しがる。

 

「ちょ、ちょっとあんた等!!アタシにはそんな事一言も!?」

 

「………どんまい」

 

シュージはポンポンとロザリーの肩を叩く

 

「慰めんなよ!!?私がみじめじゃないかーー!!」

 

アンジュが何やら考えているタスクの方を見る。

 

「どうしたの?」

 

「いや、アレクトラ…じゃなかった。ジルの様子が気になってね」

 

「アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ…だっけ」

 

「何故、知っているんだ?」

 

「皆知ってるよ、司令が全部ぶちまけたからね。自分の正体も……リベルタスの大義の事も」

 

ヒルダはジルが自ら正体を証し、リベルタスの全て。

自分達の最大の敵であるエンブリヲとカノープスを倒す事を宣言した事を話した

 

「アレクトラが……そんな事を」

 

「意気込みは分かるけど。ガチ過ぎてちょっと引くわ…」

 

「貴方にあの人の何が分かるの~!」

 

別に人物の声が聞こえた事にリュガ達はその声がした方を見る。

厨房から完全に酔っ払いたエマが出て来る、ワインをラッパ飲みしながら。

 

「か、監察官!?」

 

「ぷはっ! えまさんで良いわよ~?エマさんで~♪」

 

「ぐっ!?酒の匂い!?」

 

「この艦に乗られてからずっとこうなのですよ」

 

「ずっと……!?」

 

モモカの言った事にリュガは驚きを隠せない。

 

「しょうがないでしょう!殺されかけたのよ!!人間に…同じ人間に!!」

 

あの時、アルゼナルで保護を求めようとしたのに殺されかけたのをマギーが助けてくれて、それ以来エマは酒浸りになってしまっていたのだ。

それを司令であるジルが保護し、エマが信じられる人はジルただ一人だけらしい。

 

「あの人だけよ~!この世界で信じられるのは! そうよね~!ペロリーナ~!!」

 

エマはペロリーナのぬいぐるみを抱きながら泣き崩れ、それにマギーが止める。

 

「はいはい、もうその辺にしときな……」

 

「酒を取り上げんと、肝臓がやられるな」

 

テンゲンがやれやれと言う。

 

「でも、監察官の言う通りだ。アタシ等にとっちゃ、信じられるのは司令だけだからな、この世界で……」

 

ロザリーはそう言う。

だが、アンジュとリュガはこのままジルを信用していいのか……決められなかった。

 

 

◆◆◆◆

 

=アウローラ 司令室=

 

 

一人となったジルはタバコを吸っていた

だが、あの忌々しい光景がよみがえる。

 

 

"右半分の道化師の仮面をつけた男が、引き千切った片腕を持っている"

"―――逆らう気も起こさぬほど、もっと苦しませてやる"

 

 

吸っていた煙草を握りしめて潰し、恐ろしい表情をする。

 

「エンブリヲ……カノープス……!!」

 

 

 

◆◆◆◆

 

翌日、リュガ、アンジュ、タスクと共にアウローラでジル達と作戦会議を開いていた。

 

「よく眠れたか?」

 

「まぁな……」

 

「それは結構、ではお前たちに任務を与える。ドラゴンと接触、交渉して同戦線の構築を要請しろ」

 

それにアンジュとタスクは驚きの表示を隠せなかった。

だが、リュガは訝しんでいた

 

「どうした?お前の提案通り、一緒に戦うと言っているんだ」

 

「………本気か?」

 

「リベルタスに終止符を打つには、ドラゴンとの共闘。それがもっとも合理的で効率的だと判断した」

 

それには流石のジャスミン達も驚きを隠せずだった。

ジルの話しを聞いたタスクは笑みを浮かばせながらアンジュの方を向く。

 

「アンジュ…!」

 

「うん!」

 

アケノミハシラにエンブリヲが居ることが判明し、そこにドラゴン達と共にミスルギ皇国に進行すると言う作戦。

ドラゴン達は前方から攻めて、薄くなった後ろから攻撃するという。

最もアンジュ達の目的はアウラを開放する目的が一緒な為、これが効率の良い作戦だと感じたアンジュとタスク。しかしレオンは…。

 

「これだと、ドラゴン達が大きな負担になるぞ。それに……サリアたちは?」

 

その事にジルは思わず鼻で笑う。

 

「持ち主を裏切る様な道具はいらん」

 

「道具って……!だってサリアよ!?」

 

アンジュは反論する。

アルゼナル時代、一応は世話になった仲間だ。

サリアだけではなく、エルシャとクリスも葬る。

 

「全てはリベルタスの為の道具に過ぎん。ドラゴンも、アンジュも、リュガも、私も」

 

「テメェ……ドラゴンを捨て駒にするのか!!こんな作戦、協力できるか!!」

 

「なら、協力させるようにしてやる」

 

映像に映し出されたのは、モモカ、シュージ、テンゲン、ゼノンが囚われていた。

 

「減圧室のハッチを開けば侍女と友達は一瞬で水圧に押しつぶされる」

 

「ジル!!アンタの仕業かい!!」

 

「聞いてないよ、こんなこと!!」

 

ジャスミンとマギーもジルの所業に異論を唱える

どうやら、ジルの独断で行動したようだ。

 

「アンジュ、リュガ。お前たち二人は命令違反の常習犯だ。予防策を取らせてもらった」

 

「アレクトラ……!」

 

タスクは以前とは全く違うジルの行動にただ戸惑いを隠せない。

 

「救いたければ作戦を全て受け入れ!行動しろ!」

 

「てめぇ…自分が何をしているか分かっているのか!?」

 

リュガはジルを睨みながら問い、それに笑いながらジルは言い続ける。

 

「リベルタスの前では全てが駒であり道具だ。

 あの侍女はアンジュを動かす為の道具、アンジュはヴィルキスを動かす道具。

 そして……ヴィルキスはエンブリヲを殺す究極の武器!!」

 

アンジュが銃を取り出してジルに向ける。

 

「ふざけるな!!モモカを解放しなさい!!今すぐ!!!」

 

次の瞬間、ジルに銃を奪われて、アンジュはジルに腕を捕まれ引き寄せられる。

 

「てめぇ!!」

 

リュガはジルを殴りにかかるが、蹴飛ばされて壁に激突した。

 

「リュガ!!」

 

「タスク、お前はヴィルキスの騎士。お前はヴィルキスを護れば良いのだ!」

 

「アレクトラ…!!」

 

もう完全に昔のジルではないと感じたタスクはジルを睨むしかなかった。

 

「さあ、お前の答えを聞こうかアンジュ」

 

「く…くたばれ!」

 

アンジュはジルに向かって唾をかけ、唾を掛けられたジルはアンジュを睨む。

 

「どうやら少しお仕置きが必要だな……」

 

ジルがアンジュに拳を上げた途端―――。

 

「がああああああああっ!!」

 

リュガはジルの脚に噛みつく。

痛さにアンジュを離し、転ぶジル。

片方の足でリュガの腹を蹴飛ばし、銃を構える。

 

「貴様……!?」

 

ジルたちの身体が急に動かなくなり、ジャスミン達は徐々に意識が失っていった。

何とか意識を保っているジルは換気口を見て、換気口から何かガスが出ているのに気が付く。

 

「ガスか…!」

 

「ああ……昨晩、シュレディンガーたちと話して万が一の為に仕掛けておいたんだ」

 

タスクはアンジュとリュガにガスマスクを渡し、すぐにつける

 

「タスク!貴様もか…!!」

 

「アレクトラ、もうあんたは俺の知っているアレクトラじゃない!」

 

「貴様、ヴィルキスの騎士が!リベルタスの邪魔をするのか!!」

 

その事にタスクは真っ直ぐな目線でジルを見ながら言う。

 

「俺はヴィルキスの騎士じゃない!!アンジュの騎士だ!!」

 

それにアンジュは思わずタスクを見て、リュガはフッと笑う

三人は急いで部屋から出る

 

「惚れ付いたか…ガキが!」

 

 

◆◆◆◆

 

 

モモカたちを助け出した同時にリュガ達はヴィヴィアンと天才たちと合流した。

 

「ったく、いきなりヒデェメにあったぜ」

 

「だが、お前らが無事でよかったよ」

 

三人の友人が無事でホッとするリュガ。

 

「リュガ、一つ聞きたいことがあるがいいか?……まだ、俺たちに隠し事をしているだろう?」

 

テンゲンの言葉に驚き戸惑うリュガ。

だが……リュガは真実を話した。

自分と母がドラゴンであること、自分が乗っているパラメイルには母の魂が宿っていると。

 

「……これが全てだ。俺はもう……普通じゃないんだ」

 

軽蔑されたって構わなかった。

だが、シュージはリュガの肩を掴む――――。

 

「バカだな!!

 お前がノーマだろうがドラゴンだろうが、リュガはリュガだろ!?

 ――――俺たちの親友だろ」

 

「何年、お前と付き合っているんだ馬鹿者。昔から抱え込むのは治っていないようだな」

 

「リュガ、僕たちはそれで君の事を嫌いにならないよ……いっぱい迷惑かけてもいいからさ」

 

「……ありがとう」

 

三人の友情の絆にリュガは感謝していた。

格納庫へとたどり着き、パラメイルに乗ろうとするが――――。

 

「逃げ出す気か!アンジュ!」

 

皆が前を見ると、ジルの姿がいた。

しかも、ジルの足にナイフを刺した後があり流血していた。

強引に催眠から覚めるために刺したのだろう。

それほど、リベルタスを成功させたいという執念だからこそだ。

 

「うげ、足にナイフを刺すとか無茶苦茶だろ……」

 

「逃がさんぞ…アンジュ! リベルタスを成功するまではな!」

 

「私の意思を無視して戦いを強要するって…人間達がノーマにさせている事と一緒じゃない!!」

 

アンジュが相手にしようとするがリュガが止めに入る。

 

「……俺が相手をする」

 

リュガはファイティングポーズをとる。

 

「お前が勝ったら、俺を煮るなり焼くなり好きにしてもいい。皆は下がっててくれ」

 

ジルはナイフを構えてリュガを斬りにかかるが、避けて蹴りを放つ。

互いの攻防が続くが、ジルはリュガに強く言う。

 

「お前は人間を殺したんだ!!そんなお前だからこそ、リベルタスを成功させるために必要なんだ!!」

 

「テメェの言いたいことは解った……だがな!!」

 

リュガはジルの腕を掴んで投げ飛ばすが、ジルは両手をついて一回転して着地する

リュガの両目が金色になり、吼える。

 

「それでも俺もアンジュも復讐の道具にならねぇよ!!アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ!!」

 

「っ!!黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

鋼の義手で殴りにかかるが、リュガは掴み、頭突きをブチかます

強烈な一撃で意識が朦朧としかけているジルだが両膝をついて倒れた。

 

「……母さんの故郷の皆に危険な真似はさせたくないんでね」

 

だが、ジルは立ち上がろうとするが――――

 

「もうやめな!ジル!」

 

突然の声にリュガ達は振り向くと、マギーに支えられやって来るジャスミンが居た。

 

「解っただろ。あんたのやり方じゃあ……無理だったんだよ」

 

聞いたジルは歯を噛みしめながら悔しがり、そのまま意識が途切れてしまう。

海面に出たアウローラ、格納庫ハッチが開く。

 

「リュガ、俺たちはここに残って帰りを持つよ。待つ奴がいれば気が楽だろ?」

 

「……解った。シュレディンガーさん、ラプラスさん、カルネアデスさん。俺の友人をお願いします」

 

三人の天才たちは頷く。

 

「これからどうするんだい?」

 

「もう決まっている。俺達がリベルタスをやる」

 

「あの人のやり方は間違ってはいたけど、やっぱりノーマの解放は必要だもの…。私達がやるわ、リベルタス」

 

「ああ、俺達を信じてくれる人たちと……俺達が信じる人たちと一緒にね」

 

リュガ、アンジュ、タスクがそう言ってジャスミンは笑みを浮かばせる。

ヴィヴィアンも連れて空へと飛び立ちサラたちの世界へ飛ぼうとするが――――。

カノープスの剣であるトリアングルムとサリア達のクレオパトラ、レイジア、テオドーラが向かって来た。

 

「そこに居たのね…アンジュ」

 

クレオパトラに乗っているサリアはアンジュを見てそう呟くのだった。



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調停者と監察者 前編

一年ぶりの更新!!けど、今回は二つに分けてます。


ラグナメイル達はアウローラへ襲撃し、攻撃を仕掛ける

水柱が幾度も上がり、船内が大きく揺れだす。

 

「皆、しっかりしな、敵襲だよ!!」

 

ジャスミンはアウローラの舵を取りつつ敵の攻撃を回避する

 

「やめなさい!!」

 

アンジュはヴィルキスを操縦して、ラグナメイルと交戦する。

 

「アンジュ機とリュガ機、敵パラメイルと交戦中!!」

 

「誰のせいでこんなことになったのか……わかってんのかねぇ。まったく」

 

スピカは無数の氷結弾が放たれ、タスクは急いで回避するが――――。

掠めて、バランスを崩しモモカが振り落とされる。

 

「きゃああああああああああ!!」

 

「しまった!!モモカさん!!」

 

「マナ!!マナの光!!マナの光よ!!」

 

慌ててマナの光をスカートに集中させて、パラシュート替わりにして落下を減速させる。

タスクは急いでモモカを無事、救出する。

デネボラは鎗を振りかざし、リュガは防戦一方だ

 

「くそっ!!反撃ができない!!」

 

「飛んでけー!ブンブン丸!!」

 

ブーメランブレードはそのまま、デネボラに直撃する。

その隙にパイルバンカーにチェンジしてデネボラを撃つ。

アンジュに攻撃を仕掛けていたエルシャがヴィヴィアンの方を見る。

 

「駄目でしょ……ヴィヴィちゃん」

 

エルシャはヴィヴィアンに向けてビームライフルを放ち、それをまともに貰ってしまった。

 

「うわっ!!」

 

「ヴィヴィアン!!」

 

リュガはヴィヴィアンの救出に向かおうとするがアルクトゥルスは4枚のモノリスを飛ばしてプルートを囲み光の網でプルートを捕獲する

 

「こ、こいつ!?」

 

「リュガ!?」

 

クレオパトラ、レイジア、テオドーラの三機がアンカーを発射し、ヴィルキスの両腕と首に巻き付いて動きを封じる。

それにアンジュは強引に動かそうとするもビクともしなかった。

 

「くっ……剥がれない!!」

 

サリアがヴィルキスのコックピットカバーを強引に剥がし、アンジュは前を見るとサリアが出て来て銃を構えた。

 

「さようなら、アンジュ」

 

――――パーン。

 

アンジュに胸に一発の銃弾が撃ち込まれ、アンジュは倒れてしまい海へと落ちて行く。

 

(な……なんて様なの……。よりにもよってサリアにやられるなんて……)

 

そう思いつつアンジュは意識を失う。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「…様……リーゼ様!アンジュリーゼ様!」

 

「っ!!」

 

呼ばれた事に驚いたアンジュは思わず飛び起きる。

周りを見るとかつて自分が過ごしていた豪華な部屋であった。

アンジュは呼ばれた方を見るとモモカが居た。

 

「モモカ…?」

 

「良かった!アンジュリーゼ様!無事でなりよりです!」

 

「どうして……?それにここは……」

 

「はい!ここは【ミスルギ皇国】です!」

 

モモカが言った言葉にアンジュはベットから下りて窓を見る。

目の前にアケノミハシラがあり、モモカの言う通りアンジュとモモカが居るのはミスルギ皇国であった。

 

(でも、どうして……?)

 

考えつつアンジュは着替えようとしたら、モモカが着替えをやり始める。

あの時の筆頭侍女としての立場へと戻っていて、仕方なくモモカに頼むしかなかった。

着替えを終えたアンジュはすぐさま武器になる物を探す。

 

「アンジュリーゼ様?」

 

「本当ならライフルや手榴弾があればいいんだけどね」

 

「無駄よ」

 

声がした方を振り返ると、扉に軍服の様な制服を身にまとったサリア達が居た。

 

「あなたは大事な捕虜なのよ。勝手な事しないで」

 

「元気そうねサリア。一体何があったの?あんなに司令好きのあなたが……」

 

「別に、目が覚めたのよ。エンブリヲ様のお蔭でね」

 

話しによると、サリアはアンジュに落とされた後、エンブリヲに助けられ自ら迎えてくれた事に感謝をしていた。

自分を全く必要としていないジルからエンブリヲへと鞍替えした。

愛するジルからエンブリヲへと………。

 

サリアは頬を少し赤くしながら、エンブリヲから貰った指輪を見る。

 

「そして私はエンブリヲ様の直属の親衛隊『ダイヤモンドローズ騎士団』、騎士団長のサリアよ」

 

「要するにあなたはあのナルシスト男に惚れたって行く事ね。リュガは何処にいるの?」

 

「彼なら―――――。」

 

 

◆◆◆◆

 

 

リュガが目を覚めると、何処かの祭壇の様な部屋だ。

手足を動かそうとするが、鎖に繋がれていて身動きができない。

 

「お目覚めのようですね」

 

足音が響き、徐々にその姿が明らかとなる。

 

「始めまして、私の名前はカノープスと申します。

 天才どもから聞いていますよね?リュガ・黒鋼・ホクト」

 

「その名前は捨てた、俺はリュガだ」

 

「ああ……失礼。君はノーマでありハーフドラゴンでもあったね」

 

「てめぇ……人を怒らせるのが趣味か?」

 

人の過去をつつくような態度にリュガはイラつく口調になる

 

「おっと。そう言っても君は動けないじゃないか?アンジュという娘もね」

 

「アンジュはサリアに……!!」

 

「心配しなくても彼女は無事だよ。麻酔で眠らせてミスルギ皇国に運ばせたんだよ」

 

「なに?ここはミスルギ皇国なのか?」

 

「王宮の地下だよ。

 最も亡き国王もジュリオのガキも知らない地下祭壇だけどね。

 私がここで監視をしているんだ」

 

カノープスの背後に、幾つもののウィンドウが開かれて、この世界の景色が映る。

 

「この世界を監視している者としてね」



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調停者と監察者 後編

後編でございます~。


その頃。タスクとヴィヴィアンは敵の攻撃からなんとか逃れてアウローラと合流した。

アンジュ、リュガ、モモカが敵につかまってしまうという事態となった。

これで、最後の希望が潰されてしまったようなものだ。

しかし、三人の天才たちはみんなを集めてジルに問いただしていた。

 

「あの作戦でどこかおかしいと思ったのよ。あれではヴィルキスを敵に渡すようなものじゃないかって」

 

ラプラスがそう答えるとジャスミンとマギーもあの作戦の違和感に気付いた。

そして、カルネアデスが答える。

 

「……もしかするけど、エンブリヲに操られているんじゃないかと?」

 

「!!!!」

 

『『『なっ!!?』』』

 

カルネアデスの一言に皆は驚き、ジルは驚く表情をし戸惑いを隠せない。

目を泳がせながら大量の汗が湧き出て来る。

 

「ほ、本当かい!!アレクトラ!?」

 

ジャスミンがそれに問うも、ジルは顔を逸らして戸惑いながらも黙り込む。

 

「何で黙ってるんだい…!答えろよアレクトラ!!」

 

マギーが怒鳴りながらジルの胸倉をつかみ、振り向かせ言い聞かせる。

 

「それは………!」

 

シュレディンガーはマギーを抑え、説明する

 

「最初のリベルタスの時にエンブリヲに何かされたのだろ。アレクトラでも違和感を感じさせない様に」

 

「…ああ、そうだ、私は操られた…エンブリヲの人形だった……」

 

ジルの言葉にジャスミン達は驚き、その場にいたメイも驚く。

 

「何故、あの男の人形にされていたの?」

 

「……私はあの時、リベルタスを行い…エンブリヲを殺そうとした。

 だが奴に身も心も憎しみ…全てを奪われた。誇りも使命も純潔も…。

 ああ…怖かったよ。リベルタスの大義…ノーマ解放の使命…仲間との絆。

 それが全部…奴への愛情、理想、快楽へと塗り替えられていった。

 何もかもあいつに踊らされていると感じたんだ………」

 

マギーは腕を組んだまま問う。

 

「何で黙ってたんだ……」

 

「どう話せばよかったのだ?

 エンブリヲを殺しに行ったが、逆に奴に惚れましたとでも言えるのか?

 全て私のせいさ…リベルタスの失敗も仲間の死も全部………、

 こんな汚れた女を救う為に皆死んでしまった…!!」

 

「そ、んな………そんな!!」

 

メイにとっては残酷な事実を知って、姉の死がジルに当たる事に困惑していた。

 

「私に出来る償いはただ一つ、エンブリヲとカノープスを殺す事だ。今頃、奴は新しい玩具で遊んでいるだろうな」

 

「新しい玩具…?」

 

「………アンジュとリュガの事ね」

 

「奴はアンジュを徹底的に落とすつもりだ…。道具として、自分の快楽の為にな。

 リュガもまた、自分を護るための番犬として人格を破壊するだろう」

 

ジルの言葉を聞いて皆は絶句する、シュレディンガーは口を開き―――。

 

「それでアンジュとリュガを道具として使おうとした所を逆に奪われた……と言う事か」

 

「ああ、利用するつもりだった。勿論此処の皆もそうだった」

 

それを聞いたジャスミンとマギーは驚く、自分達を使い捨ての道具にしようとしたジルの言葉を聞いて。

 

「だが、それをいとも簡単に潰された…、リュガによってな──」

 

―――パンッ!!

 

ジルの頬にマギーの平手打ちが放たれ、それにジルはただ黙ったままマギーを見る。

 

「私はあんただから一緒に来たんだ、あんたがダチだからずっと付いて来たんだ。

 ………それを利用されていただなんてさ!!何とか言えよ!アレクトラ!!」

 

「そのくらいにしときな、マギー…」

 

「………ぐッ!」

 

マギーはその場を離れ、ジャスミンはジルと面と向かい合う。

 

「知っちまった以上、あんたをボスにはして置けない。指揮権を剥奪する…いいね?」

 

「………ああ」

 

ジルはジャスミンによってアウローラの指揮権及びノーマ達リーダーの座を失った。

それも大きな傷跡を残して。

しかし、ラプラスは気掛かりな点があった――――。

 

(けど……カシム兄さんの死は?彼は何かが引っかかると言って、あの時、残って……)

 

 

◆◆◆◆

 

 

一方、サリアたちはアンジュとモモカをエンブリヲの所へと案内していたが、既に消えており逃げられてしまった。

 

「ど、何処に行った!?」

 

「アンジュは元々この屋敷の人間!どこに逃げるかも知っている!!」

 

サリアたちは慌てて探すが、壁の一部にわずかな隙間が開いており、そこにアンジュとモモカが居た。

 

「よく知ってるじゃない。私の家をなめないでね」

 

そう言ってアンジュとモモカは庭に通じるダクトを通る。

庭へと出たアンジュとモモカはエンブリヲを探そうとした所に………。

 

「ああ~!アンジュお姉様だ!」

 

アンジュはアルゼナルに居た幼年部の子供たちに見つかってしまい、一緒に居たエルシャにも見つかった。

 

「あらあら、アンジュちゃんを追い詰めるなんて。みんなやるわね」

 

「エルシャ………」

 

アンジュはエルシャを見ながら呟き、エルシャから事情を聞き出した。

今の彼女は『エンブリヲ幼稚園』と言う園長を務め、そこで子供たちの世話をしていた。

信じられない事に幼年部の子供たちは一度死んだと事を聞かされて、アンジュとモモカは驚いた。

 

「し、死んだって……!」

 

「そんな事、マナの光でも不可能です!」

 

「エンブリヲさんがね、あの子たちを蘇らせてくれたのよ。

 エンブリヲさんがあの子たちの幸せな世界を作るんだって。

 私はその為なら何だってやるわ、ドラゴンもアンジュちゃん、リュガ君達を殺す事もね」

 

「エルシャ……」

 

エルシャの相当な覚悟を聞いたアンジュは思わず息を飲む、モモカに行こうとした所……クリスが立っていた。

 

「クリス、どうして裏切ったの?ヒルダ達が怒ってたわよ」

 

「怒る?怒ってるのはこっちよ……!見捨てて置いて!」

 

意味が分からない事にアンジュは頭を傾げる。

クリスからの話だと、彼女はアルゼナルに攻撃して来た特殊部隊達を撃退。

パラメイルで出撃した時に生き残っていた部隊の一人に攻撃を食らい、シャフトにぶつかってしまう。

ロザリーから助けに行くと言った際にクリスが乗るパラメイルが爆発し床が崩れる。

その時に助けたのがエンブリヲだと言う。

 

―――アンジュは分かった、クリスは思い違いをしている事に………。

 

クリスに案内されたのはある私室、アンジュは更に警戒を強める。

エンブリヲはアンジュの方を見ると、笑みを浮かばせて立ち上がる。

 

「やあ、よく来たねアンジュ。待っていたよ」

 

「エンブリヲ……!」

 

「そう怖い顔をしないでおくれ」

 

「揃ったみたいだね」

 

カノープス、後ろにはリュガがいたが、両手は拘束されていた。

 

「……お互い、無事のようだな」

 

「……みたいね」

 

どうにか再会を喜ぶが、リュガは二人を睨み口を開く。

 

「お前らは一体何が目的なんだ?」

 

「その前に、我々が今していることを話そう」

 

「旧世界の人間は野蛮で好戦的でね。まるで獣だった…。

 そして、この世界を作ったが今度は堕落したのだ。

 与えられることに慣れ、自ら考えることを放棄したんだ。

 アンジュ、君も見ただろ?誰かに命じられれば簡単に差別する、彼らの本性を……」

 

ノーマだと知れば差別し殺すというあの人間たちの本性を。

かつてアンジュも……そうだった。

 

「だけど……どうしても、"バグ"つまりマナを持たない人間"ノーマ"が生まれる。

 向うの世界からドラゴンが攻めてきたりと、マナを持つ者たちは戦う術はない。

 そこで、マナを持たないノーマを使ってドラゴンを撃退させて世界を維持してきた。

 ………けど、それも限界。だから、リセットしようとしてね」

 

エンブリヲが二つの地球を用意して、一つに合わさる

 

「統一理論。アウラのエネルギーを使って、二つの世界を融合し一つの地球に作り直す」

 

「簡単に言えば、今の世界とドラゴンの世界をくっつけて原初の地球に戻すというわけだ。

 シミュレーションで何回も実験したから、後は実戦するだけ」

 

二人がそこまで説明し、今度はアケノミハシラに連れられていた。

エレベーターで最下層に降りて、アンジュの目にある光景は映る。

 

「ア、アウラ……!」

 

アンジュとリュガの目の前にアウラがドラグニウム発生器らしき物を付けられて幽閉されていた。

 

「どうだいアンジュ。あれがドラグニウムだ。

 この世界の源であるマナは此処から発せられている、これで色々な事を楽しめたよ」

 

「貴様ら……アウラを発電機扱いしたのか!?」

 

その事には全く否定しないカノープスは笑みを浮かばせる。

 

「人間達を路頭に迷わせる訳には行かないだろう。

 リィザの情報のお蔭でドラゴン達の待ち伏せは成功し、大量のドラグニウムが手に入った。

 これで計画を進められる………そう最終計画がね」

 

そう話すカノープスにアンジュは睨みかましていると、エンブリヲの後ろに銃があった事に気が付いたアンジュ。

アンジュはエンブリヲの銃を奪い、頭に銃を突きつける。

 

―――カチャ!

 

「アウラを解放しなさい、今すぐ!」

 

銃を構えているアンジュに対しても余裕をかましているエンブリヲ。

 

「おやおや、ドラゴンの味方だったのか」

 

「いいえ、貴方の敵よ!

 兄を消し去り、タスクを殺そうとして、沢山のドラゴン達を殺した。

 それで敵と考えるのは十分だわ!」

 

「ふふふ……君のお兄さんは少女たちを皆殺しにしてその罪を受けたのだよ」

 

「そこの、リュガの人格を破壊し我々の味方になれば……誰にも逆らえる気もない。

 ドラゴン側が造った兵器、ドラゴメイルをね」

 

「そこまで、知っているのか……!!」

 

「勿論だとも、あれは私の計画の邪魔者でしかない。

 だが、こちらにある以上これで私には怖い物なしだ」

 

「そうは……させないわ!」

 

バッーーーン!!!!

 

アンジュが持つ銃がエンブリヲの頭部を撃ち抜き、エンブリヲは血を流しながらそのまま倒れる。

次にカノープスに狙いを定める。

 

「アウラを解放しなさい」

 

「……やれやれ、君たちの目は節穴かい?」

 

カノープスは後ろの方に指をさすと、何事もなかった様に立っていたエンブリヲが居た。

 

「バカな!?頭を撃ち抜いたのに!?」

 

二人は倒れた方を見るとエンブリヲの死体が無い。

アンジュはエンブリヲを睨みつけて再びエンブリヲの頭を狙い、エンブリヲの頭を撃つ。

それに抵抗せずにエンブリヲは頭部を撃たれて倒れる。

しかし、また別の場所からエンブリヲが現れる。

 

「無駄だと言っているのに……アンジュ」

 

「あ…貴方、一体…!?」

 

「アレクトラやパブロフから聞いているだろう…?」

 

その言葉に二人は思い出す、この世界を作った者たちの事――――。

 

「つまり、てめぇらは神様か……?」

 

「その呼び方は好きではないな、調律者と監察者だよ」

 

「調律者と監察者………?」

 

アンジュはエンブリヲの言った言葉に呟く。

カノープスはお道化たような態度で、口を開く。

 

「そう、世界を正す者として生きているのさ。1000年間ずーーーっと生き続けてね」

 

「1000年!?」

 

「そうだよアンジュ、私は死なないのだ」

 

そう言ってエンブリヲはアンジュの元に近づき、アンジュは近寄るエンブリヲに銃を構える。

 

「来ないで!!」

 

「そんなに冷たい言い方はしないでくれたまえアンジュ、それに私は君に頼みたい事があるんだ」

 

そう言ってエンブリヲは片膝を付いて、手を差し延ばす様に振る舞う。

 

「アンジュ……私の妻となっておくれ」

 

「はぁ!!?」

 

エンブリヲの発言を聞いてアンジュは思わず声が出て、カノープスはやれやれと笑う。

 

「私は気の強い女性は好まないね。女性はおしとやかじゃないと」

 

「どうだいアンジュ?私と共にこの世界を新しく作り直そうではないか」

 

「お断りよ!! 死んでもあんたの妻になんか絶対にならないわ!!!」

 

アンジュは完全にエンブリヲの誘いを断ち切り、それにはエンブリヲは呆れかえる。

 

「フッ……やれやれ、困った花嫁だ」

 

「誰が花嫁よ!!勝手に名づけるな!!」

 

アンジュは銃を構えるが、カノープスはチョップで銃を叩き落した。

 

「ぐ……!!」

 

「あまり、乱暴にしないでくれよ。カノープス」

 

「失礼~。けど……あんまりバンバン撃つと五月蝿いからね」

 

「本当はやらせる気はなかったのだが……、言う事を聞かない子には少しばかりお仕置きが必要だ」

 

エンブリヲはアンジュと共に別の場所へと連れて行く様に転送される。

カノープスはリュガ見て、ニヤリッと嗤う。

 

「では……リュガ、君の人格を破壊する為に、その心を壊さなきゃね」

 

カノープスの影がまるで悪魔の様な姿でリュガの前に立ちふさがる。

二人の運命はどうなるのか――――?



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ミスルギ皇国での戦い 前編

救出

 

 

「うあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

アンジュは生まれたままの姿で何やら床に転がりながら暴れまわっていて、それをエンブリヲは眺めていた。

エンブリヲがアンジュの感覚と痛覚を全て快感へと変化させていて、それにアンジュは苦しめられていた。

彼はそれを使ってアンジュの心を徹底的に落とそうとしていた。

ようやく快感である呪いが解けて、アンジュは息荒らした状態で床へと倒れ込む。

エンブリヲはアンジュのそばにより、アンジュを見ながら問う。

 

「どうだねアンジュ、これで私の妻になる気はあるかい?」

 

それにアンジュは息荒らした状態で、エンブリヲを睨む。

 

「ぜ…絶対…に……アンタの……妻に…は…ならな…い!!」

 

アンジュの心の強さはエンブリヲの感覚変化さえも折らせる事は出来ない。

しかし、エンブリヲはため息を少し出しながらアンジュを見る。

 

「はぁ…、やれやれ、困った子だ」

 

エンブリヲは指でアンジュ頭を突き、アンジュに再び快感の感覚を味あわせる。

 

「ああああああああああああああ!!!!熱いいぃぃぃぃぃぃぃぃいい!!!!」

 

アンジュは再び転がりまくりながら暴れ、エンブリヲはその部屋を出ようとした時だった。

 

「タ、スク……!!」

 

「ん?」

 

エンブリヲはアンジュの言った言葉に思わず振り向き、アンジュは目に涙を流し絶えながらタスクの名を言う。

 

「助けて…!!タスク……!!」

 

エンブリヲはつまらなそうに部屋から出ていくとカノープスが壁にもたれていた。

 

「やれやれ手こずっているようだね。あのお姫様は」

 

「おもったより、強情だが……やりがいがあるよ。そちらも同じだろ?」

 

「普通の人間なら、精神崩壊なのに耐えるんだよね。

 やはりドラゴンの血を引いているのか、壊れなくてね。

 ……だから、興味深いし面白いよ。まぁ、駄目なら生きたまま解剖というのもありだね」

 

カノープスもまた、嗤って次の事を考えていた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

アンジュとリュガの帰りが遅いと感じたモモカはミスルギ王家の地下を調べてアンジュを探していた。

 

「アンジュリーゼ様ー!リュガさーん!何処ですか?!」

 

―――バシュバシュ!!

 

何やらムチの音がしたのをモモカは振り向き、その場に向かう。

その場には裸のまま吊るされたリィザの姿が居て、そシルヴィアがムチでリィザを痛みつけていた。

 

「全く!何て汚らわしい!そこで反省していなさい!!」

 

シルヴィアはその場から離れて行き、隠れて見ていたモモカはすぐさまリィザの元に行き、彼女を解放する。

下ろされたリィザはモモカに水を渡されて、それを飲み干すとモモカを見る。

 

「……ど、どうして」

 

「ジュリオ様と一緒に、アンジュリーゼ様を貶めた事、忘れはしません」

 

アンジュの誕生16年祭の時に彼女をノーマと暴露し、

彼女に酷い仕打ちをしたことを忘れはしないと言うモモカ。

 

「だから……アンジュリーゼ様に謝ってください。それまでは絶対に死んでは駄目です」

 

アンジュに謝罪を申し込むモモカ、それだけの思いにリィザの目に涙が浮かび上がって来る。

あの時、アンジュに酷い事をしたとは言え、だた謝れと言うだけで死んでは駄目だと言う事を言われれば、

涙を流さない者はいない。

 

「……皇宮西側の地下、皇族専用シェルター……彼女はきっとそこに居る」

 

それを聞いたモモカは有力な情報を手に入れた。

モモカはすぐにリィザを隠れる場所へと案内した後、まずアンジュの元へとすぐに向かった。

その次に、リュガを救おうと決意する。

 

 

◆◆◆◆

 

 

一方の地下祭壇で、リュガは酷い拷問をかけられていた。

カノープスが視覚、触覚、痛覚を狂わせて、骨が砕かれ、全身が血ダルマにされ、炎で焼かれ、氷に閉じ込められたりと。

だが……彼はそれでも耐えたのだ、サラとの約束を果たすためにも決して折れなかった。

カノープスは次なる手を考えるからといって、元の状態に戻した。

 

「……元の状態に戻ったとはいえ、恐怖が残っているな」

 

それは、心臓を鷲掴みにされかけた恐怖。

カノープスがあんなことをするのは簡単に殺せるという意味でもあるからだ。

 

「あんな事ができるのなら、勝てるのか……心配になってきた……」

 

いつのまにか弱気になりかけている。

ガチャリとドアが開かれ、顔を上げると―――エルドが立っていた。

 

「今度は父さんを使った幻か……」

 

「幻じゃない、俺は本物だ」

 

ペシペシッとエルドはリュガの顔を軽く叩き、きつけをする。

眼に光が戻り、潤ませる。

 

「と、父さん……。本当に!?」

 

「ああ、遅くなったな」

 

直ぐに拘束を解いて、自由の身になるリュガ。

 

「まずはアンジュを助けろ、彼女はここのシェルターにいる。

 それから、ここにお前らのパラメイルが置いてある」

 

エルドはここから脱出するための地図を渡す。

 

「父さん、俺……母さんの故郷の世界で全部知ったよ。母さんの最期とその覚悟も」

 

「………そうか」

 

エルドはリュガの頭をポンポンと撫でる。

 

「……辛い思いをさせて悪かったな」

 

「困るね~。人のペットを盗もうとするのは?」

 

カノープスが立っており、人差し指でチッチッ、とする。

 

「リュガ、走れ!!俺は後から追いかける!!」

 

エルドは拳銃を抜き、リュガは全速力で走る。

カノープスはヒョイヒョイと避けるが、リュガの回し蹴りがカノープスの顔に当たる。

よろけて、リュガはその隙にここから脱出する。

 

「やってくれたね……!!」

 

「何処に行くつもりだ?お前の相手は俺だ!!」

 

「いいだろう、まずは君から殺してやる」

 

 

◆◆◆◆

 

 

一方―――。

 

アンジュは完全に疲れ切った状態で床に倒れ込んでいた所にサリアが入って来た。

 

「不様ねアンジュ」

 

「サリア……」

 

アンジュは何とか目を動かし、サリアの方を見る。

 

「エンブリヲ様に歯向かうからよ、馬鹿」

 

「馬鹿はあなたの方よ、あんなゲス男に心中しちゃって」

 

「私にはもうエンブリヲ様しか残ってないもの。

 でもあんたは違う…ヴィルキス、仲間、自分の居場所…何で持ってる」

 

サリアはアンジュがどれだけ恵まれている事に羨ましがっていた。

しかし、アンジュは頭を横に振る。

 

「ううん、私は居場所だけは持っていなかった………」

 

アンジュの言葉にサリアは少し驚く。

 

「何時も居場所を作っていたのは、リュガの方だった。

 あいつは粗暴だけど、困っている人は放っておけなくて、

 ……痛みを悲しむこともずっと知っていた」

 

最初に来た時は、"殺人鬼ノーマ"と呼ばれていた。

母親の魂は機体に、自分はドラゴンの混血児と真実を知って心が壊れてしまうかと思っていた。

だが、それでもリュガは受け入れて前を歩き続けていた。

 

「そう……あいつがそうしているのね。

 でもさっきも言った通り、あんたは私やあいつよりも凄い物持ってるじゃない。

 変身なんてしなくても十分よ……これ以上私から奪わないで!」

 

そう言い残しサリアは出ようとして、再びアンジュの方を向く。

 

「出て行きなさい、エンブリヲ様が戻ってくる前に……。

 抵抗を続ければその内心を壊されるわ、それでも良いの?」

 

「えっ!?」

 

アンジュはサリアの行動に見開いて驚きを隠せない。

エンブリヲに忠実であるサリアが自分を逃がすなんて考えられなかったからだ。

 

「別にあんたを助ける訳じゃないからよ……不様なあんたを見たくないから」

 

そう言い残して出て行くサリア。

アンジュはサリアの首に手刀をかける。

 

「ありがとうサリア、これは助けてくれたお礼よ

 "逃がした"より"逃げられた"事にしておいた方が罪は軽くなるでしょ……!!」

 

「余計な…お世話よ…!この…筋肉…バカ……」

 

言い残した後にサリアは意識を失い、アンジュはサリアを寝かせて呼吸を整えている。

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「モモカ!」

 

モモカと再会して、アンジュは走る。

奥の方にリュガの姿を確認し、合流して、急いでパラメイルを確保しに行く。

 

 

◆◆◆◆

 

 

その頃のエンブリヲ達はアケノミハシラでラグナメイルを使い、アウラのエネルギーである事をしようとしていた。

 

「諸君、揃ったな。ん?サリアはどうしたのだい?」

 

「それが何処を探しても見かけていないのです」

 

エンブリヲは頭を抱えながらも、ホログラフィック端末を展開させる。

 

「カノープスも帰ってこないな……ふむ」

 

見ると、アンジュがいなくなっておりサリアが気絶させられていた。

 

「逃げられたのか……?」

 

「リュガも逃げられてしまったよ、思わず邪魔が入ってね」

 

扉からカノープスが入ってくる所々、返り血がついていた。

 

「そちらもか?」

 

「だが……痛め付けておいたから、追ってはこないよ。

 それに、ミスルギ皇国から脱出することは……不可能だよ」

 

だが、二人は知らない。

ヴィルキスとは別の所で置いていた、鎖で縛られていたプルートのアイカメラが輝きだし、引き千切る。

 

 

◆◆◆◆

 

 

アンジュはモモカに支えられながら宮邸の外に出る。

リュガは先頭に立って、警戒しながら走る。

 

『何処に行くの?アンジュちゃん』

 

「「「!?」」」

 

三人は空からやって来た追跡部隊であるエルシャとクリスに発見されてしまう。

 

「エンブリヲさんが探しているわ、戻りましょう」

 

アンジュは再びエンブリヲに捕まる訳には行かない。

あんな苦しい思いをするのは二度とゴメンだった。

 

「走れますか?アンジュリーゼ様」

 

「ええ!」

 

そう言ってアンジュはモモカに引っ張られながら走り出しリュガも走る。

それにはエルシャは困った表情になる。

 

「あらあら、仕方ないわね」

 

エルシャはすぐさまレイジアをアンジュの方に向かわせ、

それにアンジュ達は逃げているとアンジュの指輪が光り始める。

同時にアケノミハシラにあるヴィルキスが起動して青色に変化、ヴィルキスはアンジュの元にジャンプしてアンジュ達の目の前へと現れる。

それに追跡していたエルシャとクリスがヴィルキスの登場に驚く。

 

 

「二人は先に行け、俺は後から追う」

 

「でも、直ぐに捕まるわ!!」

 

「心配するな……もうすぐ、来る」

 

「クリスちゃん!!」

 

「解っている……逃がさない!!」

 

攻撃をしようとしたが、背後から突然の衝撃波で二人は吹き飛ばされる。

プルートがリュガの前に降り立つ。

アイカメラが輝き、コクピットが開く。

 

「ありがとよ!!」

 

乗り込んで、二人は脱出するが――――――目の前の三機が出現する。

カノープスが所持しているトリアングルムだ。

 

「あれは……!!」

 

「トリアングルム……!!」

 

絶体絶命のピンチかと思われたが、シンギュラーゲートが開き、龍神器――サラたちが現れた。

 

「借りを返しに来ましたよ。リュガ、アンジュ」




まさかのクロスアンジュ、スーパーロボット大戦Vで参戦!!おめでとうございます!!


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ミスルギ皇国での戦い 後編

一年ぶりの更新。待たせてすみません……。

この作品は必ず完結させます!!


サラたちと再び会えたがサラは鼻をおさえていた。

 

「しばらく見ない間にとても淫らになって、それに風下だと何だか臭いますわ」

 

「ううっ……」

 

サラに痛い所を突かれるアンジュは思わず表情を歪め、リュガは首を傾げる

 

「コックピットに入っていたら臭いはしないだろう?なんで解るんだ?」

 

「龍神器のコックピットは気圧や空気を安定するためには外の空気を取り入れるんだよ」

 

ゼランディアが説明し、そういう設計なのかと納得するリュガ。

トリアングルムたちが行動を開始し、襲い掛かってくる。

 

「来るか……!!」

 

デネボラの手に持っているランスが形状変化し、三又の槍トライデントとなる。

対してプルートは両手をチェーンソーに変形させて、鍔迫り合いをする。

スピカは氷の剣を六つ生成し、放つがサラは剣を抜き、叩き斬る。

遅れて、エルシャとクリスも現れるがゼランディアが向かおうとするが―――。

 

「ゼラ!!その二人は俺たちの元仲間だ!!だから……」

 

「殺すなって、言いたいのか?解った!!」

 

剣を振りかざして、牽制する。

しかし、アルクトゥルスはアンジュを追跡する。

 

「どけっ!!」

 

プルートはデネボラを蹴り飛ばして、急いで後を追いかける。

 

 

◆◆◆◆

 

 

ミスルギ皇国へと向かっていたタスク達。

ココ達は別の場所で待機を命じられていて今は居ない。

しかし、ミスルギ皇国の状況の異変に気付いたロザリーが皆に問う。

 

「おい皆、何か変だ。もう戦闘が始まってる!」

 

「クンクン…!タスク!ヒルダ!アンジュあっち!!」

 

「えっ?」

 

「はぁ?」

 

タスクとヒルダはヴィヴィアンの反応を見て振り向く。

 

「アンジュ、あっち~~!!」

 

そう言ってヴィヴィアンは違う方向へと向かって行く。

 

「クソっ!どうなってるんだよ!?」

 

そう舌打ちをするロザリー。

すぐにヴィヴィアンの行動に気付いたタスク。

 

「そうか!ヴィヴィアンはシルフィスの一族だから分かるんだ!」

 

すると、ヴィヴィアンの言う通り、ヴィルキスの姿が確認。

 

「助けに来たぞ!アン……『アンジューー!!』うぐ!?」

 

ヒルダが言おうとした時にタスクがアンジュに向かって叫んで、それに割り込まれた事に思わず言葉を詰まらせる。

アンジュはタスクの声を聴いた途端に目に涙を出て来る。

 

「タスク!!」

 

だが、背後にアルクトゥルスが迫っており4つの黒い石板を合体させて拡散熱線を放つ。

 

「こんな時に!!」

 

「来るぞ!!散開!!」

 

ヒルダの声に、一同は散開し熱線を避ける。

地面が抉り飛び、木々が吹き飛び、湖から水柱が大量に上がる。

 

「オラアアアアアアアアアアアッ!!」

 

リュガは気合を入れた声をあげるとともに右手のパイルバンカーをアルクトゥルスの背中に叩き付けた

背後の攻撃に対処できないのかアルクトゥルスはバランスを崩し、地面に落とされた。

 

「……あんときの借りを返したぞ」

 

追手が来ないうちに、脱出しようとしたその時、モモカに異変が起きる。

 

「うっ!」

 

「モモカ?どうしたの?」

 

アンジュがモモカに問うも、モモカは何も答えずにアンジュの手を掴み、操縦桿から離す。

それにアンジュは驚きながら動かそうとするも、モモカの力とは思えない程の腕力でビクともしなかった。

徐々に高度を落として行くヴィルキスの異変にリュガ達は気づく。

 

「どうしたんだ!?」

 

通信からゼラディアの声が入る。

 

『おそらくエンブリヲが操作しているんだろ。マナを生み出したのアイツだからそれくらい造作もない』

 

言い方を変えればマナを持つ人間はエンブリヲの操り人形みたいなものだ。

急いで、ヴィルキスを追いかけるタスクとリュガ。

ヴィルキスは近くのビルの屋上へと不時着してアンジュとモモカは外に放り出される。

ぶつかった衝撃でモモカは正気に戻ったようだ。

 

「あれ?私は今……」

 

「モモカ!?」

 

「やれやれ、強情な花嫁だ」

 

聞き覚えのある声にアンジュはもの凄く驚いた表情をし振り向くと、近くのベンチに座っていたエンブリヲが居た。

エンブリヲは呼んでいる本を閉じて、立ち上がって人差し指をアンジュに向ける。

 

「またお仕置きが必要かな?」

 

「っ!!!!」

 

エンブリヲの指を見た途端、アンジュの心に途轍もない恐怖心が襲い掛かろうとしていた。

エンブリヲの足元に斧が刺さり、投擲した方向を見ると。

機体から降りたリュガとタスクはアンジュ達の元に行く。

 

「アンジュ!!」

 

「無事か!?」

 

「タスク!リュガ!」

 

「ふむ……カノープスめ逃がしてしまったのか」

 

「いやはや、申し訳ないね」

 

声がする方を見るとカノープスだ。

 

「てめぇ、父さんはどうした!!」

 

「……どうなったと思う?今頃はボロボロに倒れているよ」

 

 

◆◆◆◆

 

 

一方別の場所で待機をしていたココ達。

 

「皆…」

 

「無事アンジュを助けられると良いけど…」

 

ココとミランダはタスク達がアンジュを救出できるか不安に思っていた時だった。

 

「もう駄目!私行く!!」

 

「ええ!?」

 

「駄目よ!タスクさんやリュガさん達が此処に居ろって命令されたでしょ!」

 

ココとミランダがマリカに待つようにと命令をするも、マリカは自分の我慢を抑えられなかった。

 

「でも……今行かなきゃロザリーお姉様が危ないもの!!」

 

そう言ってマリカはココとミランダの命令を無視して飛び立ってしまった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

「アンジュ、ここは俺たちに任せて逃げろ」

 

「……二人とも、気を付けて」

 

アンジュとモモカは逃げ出し、タスクとリュガはエンブリヲとカノープスの前に立つ。

 

「ヴィルキスの騎士イシュト・ヴァーンとメイルライダー、バネッサの子………タスク!!」

 

タスクは自分から名乗りをあげながら走り出す。

 

「最後の古の民にして…アンジュの騎士だ!!」

 

そう言った瞬間にタスクは閃光手榴弾を投げ、閃光手榴弾の閃光にエンブリヲとカノープスは思わず目がくらむ。

エンブリヲはタスクが言った言葉、アンジュが言ったタスクを見て睨む。

 

「くっ…!そうか貴様が!」

 

「余所見をすんな!」

 

リュガの回し蹴りがエンブリヲの首を捉える。

きりもみに吹き飛ばされるエンブリヲだが、何事もなかったかのように起き上がる。

 

「ちっ……本当に死なないのかよ」

 

「こっちですよ」

 

カノープスが眼前に迫り、右手を振り下ろすがリュガはかわす。

立っていた場所が五本線に抉れている。

 

「っ!?なんだ、あの威力!?」

 

「ふふふ、造作もない事だよ。少し能力を使えばね」

 

カノープスの能力に驚かされるが、なんとかアンジュが仲間たちと合流するまで時間を稼ぐ二人。

 

 

◆◆◆◆

 

 

ラグナメイル、デネボラとスピカと戦うサラたちだが、敵の機体の性能が上でアウラの所までいけない。

 

「はやり今の戦力ではアウラを………」

 

サラはナーガとカナメに通信を入れる。

 

「引きますよ、カナメ、ナーガ」

 

『『ええっ!?』』

 

二人はサラの言った言葉に驚きを隠せず、サラはそのまま言う。

 

「現有戦力でのアウラ奪還は不可能です。一度引いて体制を立て直します」

 

そう言ってサラは皇宮のそばに隠れているリィザに言う。

 

『リィザ、聞こえますか?貴女も合流するのです。

 貴女に何があったのか今は問いません。

 ですが多くの仲間を死なせた事を悔やんでいるのなら、より多くの仲間を救う為共に戦いなさい!』

 

「サラマンディーネ様……」

 

その事を言われたリィザは少しばかり考えた後、決心を決めて外に出て飛ぼうした時だった。

彼女の近くの壁に銃弾が当たり、それにリィザは撃って来た方を見ると、

ライフルを不器用に構えたシルヴィアがいた。

 

「大人しく地下牢に戻りなさい!さもなくばエンブリヲおじ様に切開してもらいますわよ!」

 

「……哀れな子、ジュリオは、あなたのお兄様を殺したのは…あの男だと言うのに」

 

「な、何を言って?」

 

リィザの真実の話に思わず困惑するシルヴィア。

そしてリィザは空へ飛んでいき、それに慌てるシルヴィア。

カナメの碧龍號がリィザを乗せて飛び立ち、サラはビーム砲を撃ちまくった後にナーガ達とそのばから撤退した。

 

「くそっ!逃がすか!!」

 

ターニャが思わず追いかけようとした所をエルシャがそれを止める。

 

「深追いは駄目よ……ん?………っ!!」

 

エルシャは皇宮の側の庭を見ると

アルクトゥルスの熱線の巻き添えを食らってしまった子供たちが死んでいて、

それにエルシャは思わず目を見開いてしまう。

 

「あっ……あっ……」

 

一方、クリスと対峙してるヒルダたち。

 

「ぐぅぅっ!クリス強ぇぇ…!」

 

ヴィヴィアンがクリスの強さに思わず声を出し、ヒルダは舌打ちをして睨み返す。

 

「くそっ…!」

 

「待ってくれよクリス!!」

 

ロザリーは必死にクリスに問いかけ、見捨てた事を必死に否定していたが、クリスはそれを耳も傾けず、自分の八つ当たりを人にぶつけていた。

ヒルダはどうすればいいかと考えていた所に。

 

「お姉様ーー!!」

 

マリカがのるグレイブがやって来て、マシンガンを撃ちながらクリスに向かって行った。

それにヒルダ達は足を止めて、マリカを止める。

 

「やめろ!マリカ!!」

 

「邪魔…!」

 

クリスがラツィーエルを投げて、マリカに向かって行く。

それにマリカは思わず目を瞑った。

しかし、金色の閃光が奔り――ゼランディアが刀を抜きラツィーエルを切り払う。

 

「……無事か?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「……急いでここから、離れるぞ。死にたくない奴は急いで後をついてこい!!」

 

ゼランディアの号令に、ヒルダたちは驚くが頷き後をついていき、戦線から離脱する。

 

 

◆◆◆◆

 

 

なんとか逃げようにもエンブリヲがマナを持つ人間たちによって行くてを阻まれていく。

まるで誘導されるかのように……、そして、たどり着いたのが、何処かの庭園だった。

優雅に紅茶を飲むエンブリヲとカノープスが待っていた。

 

「くッ……」

 

「もう、逃げ場は無いよ。アンジュ……」

 

エンブリヲはゆっくりと歩むが、タスクとリュガなんとか追いついてアンジュを庇う様に立つ。

 

「ふむ……しつこいね。やれ」

 

エンブリヲは操作して、モモカを操る。

手には剣を持っており二人に斬りにかかる。

 

「モモカ!?」

 

「マナを持つ人間達は私の支配下にある。忘れたのかね?」

 

エンブリヲに言われた事にアンジュはエンブリヲを睨みつける。

しかし、エンブリヲは徐々に表情を恐ろしくしていく。

 

「また、調教しないといけないようだね」

 

アンジュは恐怖に染まった顔になり、一歩ずつ後ろへと下がる。

 

「モモカ!!負けちゃダメ!!戻って来なさいよ!!」

 

アンジュの声を聴きモモカの目が正気へと戻った。

そして――――。

 

「タスクさん……アンジュリーゼ様をお願いします!!」

 

「モモカさん、なにを!?」

 

タスクはモモカの言葉に振り向き、モモカはエンブリヲに向かって行く。

ふらつきながらも剣を振り下ろし、アンジュを引き離してエンブリヲに向かって行く。

 

「フッ、愚かな」

 

エンブリヲは銃を構えてモモカに目がけて撃ち、それにモモカは胸に銃弾を受けてしまう

だが、そのままエンブリヲに向かって行く。

 

「マナの光よ!!」

 

モモカは車をマナで動かし、エンブリヲはまだ動けるモモカを見て驚いた。

 

「何……!?」

 

「やああーーーーッ!」

 

モモカはそのまま剣をエンブリヲに向かって突き刺し、

車はモモカとエンブリヲに突っ込んで行き、二人を巻き込んで壁を突き破って崖へと落ちて行く。

 

「モモカ!!」

 

アンジュはすぐさま崖へと落ちて行くモモカに向かうも、既に落ちて行ってしまい、車は地面に直撃して爆発していった。

その光景を見てしまったアンジュは信じられないまま唖然としてしまう。

 

「モモカーーーーー!!」

 

いつの間にか傷一つないエンブリヲが立っていて、銃を構えて笑っていた。

 

「エンブリヲ!!」

 

「この私があのくらいで終わると思っていたのか?

 私から離れて行ったホムンクルスなど、もう私には必要ない」

 

「てめぇぇぇぇぇ!!」

 

リュガはエンブリヲを殴りに掛かろうとするが、カノープスが阻みリュガの首を掴む。

 

「やはり君は危険な存在だね。このまま殺してあげるよ」

 

ミシミシッと力を入れて、リュガの首を圧し折ろうとする。

 

「うぁぁ……がぁ……!!」

 

なんとか振り解こうとするが、だんだんと抵抗する力が無くなり意識が遠のこうとするが……。

 

―――ドゴッ!!

 

「っ!?」

 

「俺の息子に手を出すな……!!」

 

カノープスを殴り飛ばしたのはエルドだ。

 

「父さん…!!」

 

「ワリィな、遅れちまって」

 

だが、エルドはボロボロになっていた。

あの時の地下祭壇で傷を負っていたのだ。

 

「やれやれ、君もしつこいね。無駄だというのが何故、解らない?」

 

タスクは隙をついて、アンジュを空中バイクに乗せてとある場所へと登録する。

 

「君は生きるんだアンジュ。必ず戻るから…君の元に……」

 

タスクは笑顔でアンジュに言い、それにアンジュは頭を横に振る。

 

「駄目…駄目よ!タスクッ!」

 

次の瞬間、タスクがアンジュに突如キスをする。

それにアンジュは思わず唖然とし、少し頬を赤くする。

キスを終えたタスクは持っているネックレスをアンジュに渡し、バイクはアンジュを乗せて自動で飛び立っていく。

 

「タスク……!!」

 

「貴様!!」

 

その時、手榴弾が投げ込まれる。

現れたのはシュレディンガーだ、背中にはモモカを背負っていた

 

「落ちていくところをなんとか回収してね。しかし……この状況はあまりにも不利だ」

 

そう、ヴィルキスが無ければエンブリヲ倒すこともできない。

エルドは一つの決断をした。

 

「リュガ、お前は生きろ……」

 

強く抱きしめて、シュレディンガーへ渡す。

 

「シュレディンガー……いや、ニコル。リュガを頼む」

 

シュレディンガーは目を瞑り、リュガ、タスク、モモカと共に退避する。

エルドは傷だらけの体でカノープスを見据える。

 

「愚かな、神に勝つつもりかい?」

 

「……最後の希望は若者たちだ」

 

エルドは口に咥えていた煙草をプッと吐き、一気に駆け出す。

ポケットから金属製のボールを取り出し、操作する。

 

「後は頼んだ……リュガ!!」

 

カノープスに叩き付けてた瞬間―――――凄まじき閃光と爆炎が巻き起こる。

 

「父さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

 

リュガの慟哭が夕焼け空に響き渡る。



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ファイナルカウントダウン 前編

一年ぶりの更新!!待っていた皆さま、申し訳ないです!!

いよいよ、終わりの時が近づきました。

最後の最後まで、走り続けます!!


ミスルギ皇国ではエンブリヲが計画の最終段階へと移そうとしていた。

 

「ラグナメイル・コネクターパージ」

 

――パシュ!

 

「くっ!?」

 

そこには何故か少しばかり頬を赤くし恥ずかしそうにしているサリアが居た。

 

「耐圧角展開、ドラグニウムリアクター・エンゲージ、リーブレン共振器接続、全出力供給開始」

 

アケノミハシラに保管されているラグナメイルが連動して光始め、

エネルギーとしてアケノミハシラの頂上に向かいそして散布される。

その様子を映像で確認したエンブリヲ。

 

「準備は整った……しかし」

 

―――パシュ!!

 

「ぐっ!?」

 

エンブリヲは膝に居るサリアの尻を叩いていたのだ。

 

「アンジュが居ないとは……何故逃がした?」

 

「っ…!」

 

――パシュ!!

 

「うっ!どうしてアンジュが必要なんですか!?

 私はずっと…エンブリヲ様に忠誠を誓ってきました…エンブリヲ様の為に戦ってきました…!

 なのに…またアンジュなんですか!?私はもう…用済み何ですか!?」

 

サリアの思いを聞いたエンブリヲはその心には何にも感じないまま話す。

 

「私の新世界を作るのは強く賢い女たちだ、だから君達を選んだ…。

 アンジュも同じ理由だ……愚かな女に用はない」

 

「!?」

 

エンブリヲの言葉を聞いたサリアは思わず絶句し、カノープスは黙って聞いていた。

エンブリヲはサリアを下ろして、冷たく言う。

 

「アンジュは必ず此処に来るだろう、私を殺す為に。

 サリア、君が本当に賢く強いなら――――やるべき事は分かるな?」

 

聞かされたサリアは急いで下着をつけ直して、急いで敬礼をして言う。

 

「アンジュを捕え、服従させます」

 

「期待しているよ、私のサリア」

 

サリアは唇を噛みしめて何やら思いつめるのだった。

そして、エンブリヲはカノープスの方を向いて言う。

 

「カノープス。リュガとアンジュの騎士を名乗る男を葬れ」

 

「解っていますよ。貴方は計画の準備をチェックしてみては?トラブルがあったら大変ですし」

 

「……言われずとも解っている」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「二つの地球を融合だと!?」

 

シュージが驚いた事実にリィザは頷く。

 

「制御装置であるラグナメイルとエネルギーであるアウラ。

 エンブリヲは二つの地球を時空ごと融合させ………新しい地球を……

 ゲホッ!!ゲホッ…!」

 

リィザは突如せき込んでしまい、体力的に無理と判断したマギーが止める。

 

「……彼女は休ませておこう」

 

テンゲンがそう言ってマギーと共にリィザを医務室へと―――。

一方でエルドの死を知らせて、仲間たちは悲しみに暮れていた。

 

「エルド、勝手に死ぬなんて……」

 

「……一番辛いのは、リュガだよ。母を失い、今度は父を失うなんて」

 

ゼランディアは両目を瞑りながら、口を開く

 

「感情的になるのは解る。

 だが、悲しみに暮れている間にもエンブリヲは最終計画を発動する。

 止められるのは、リュガとアンジュの二人だ」

 

「それで、アンジュリーゼさまは何処へ?」

 

「俺が前に住んでいた無人島にいるはず。あのバイクにはそういう風に設定してある」

 

「それなら、お姫さまを迎えるのはタスクとモモカに任せよう。同じタイプのバイクがある」

 

「ありがとうございます、ニコルさん」

 

タスクとモモカはアンジュリーゼと合流する為に、格納庫へと向かう。

 

「……それで、リュガは?」

 

「俺が行こうかと思ったが……サラが見ると、言いだしてな」

 

 

◆◆◆◆

 

 

サラはリュガの部屋に入る。

スタンドの電気しかつけていなく膝を抱えて座っているリュガがベッドの上にいた。

サラはリュガの前に立ち、話しかけようとするが、どんな言葉をかければいいのか解らなかった。

 

「……リュガ」

 

呼ばれてゆっくりと顔を上げるリュガ。

両目は泣いていたのか眼が赤く、涙の後がある。

 

「……サラ、か。ごめんな。こんな弱い姿を見せて……」

 

しばらくの沈黙が続き、リュガは父の別れた時を思い出す。

 

「俺があの時……。

 カノープスにつかまっていなければ、父さんが、父さんが死ぬようなことは無かったのに……!!

 俺のせいで……!!」

 

ギリリッと二の腕に爪を立てて、傷つけ、血が滲む。

サラはそんなリュガを見て、痛々しく、耐えられなかったのか、包み込むように抱きしめた。

 

「リュガ、貴方が……そんな弱気では、ご両親が哀しみます。

 お二人がどんな想いで、貴方に託したのですか?

 それをよく考えてください……」

 

厳しくも優しく、リュガを励ますサラ。

そうだ、ここで自分が折れてしまったら、両親に顔を合わせられない。

リュガはゆっくりと立ち上がり深呼吸をする

 

「……ああ、そうだな。ありがとうサラ」

 

 

◆◆◆◆

 

 

「メイルライダーのヒルダ殿、我々アウラの民はノーマとの同盟締結を求めます」

 

「同盟…?」

 

ヒルダはその事を聞いてゼランディア達を見る。

 

「我々の龍神器だけではエンブリヲの防衛網を突破する事は困難、カノープスが所持しているトリアングルムも脅威だ」

 

サラの言葉にヒルダは思わず考え込む。

 

「確かにアタシ等だけじゃあラグナメイルもあのトリアングルムにも手も足も出ない……。

 良いよ…同盟結んでも、ただし、アンジュが帰ってきたらだ」

 

『おや?アンジュは戻っていないのか?』

 

皆は扉の方を向くとエマ監察官がやって来た。

しかしバルカンは何故か警戒して唸りはじめ、エマの様子がいつもと違う事に気が付く。

 

『やれやら…何処に行ってしまったのやら、我が妻は…』

 

「監察官さん?」

 

エマがマナの通信画面を開くと、そこにエンブリヲの画面が映る。 

 

「エンブリヲ!」

 

バルカンが思わず向かってしまい、それをエマが叩き落としてしまう。

 

「大丈夫か!」

 

ゼノンはバルカンの方へ駆け寄り、介抱する。

 

「とうとう狂ったか、てめぇ!!」

 

ヒルダが銃を構えた瞬間、ゼランディアは止める。

 

「待ちな。彼女は操られてるだけだ」

 

「何……!?」

 

ゼランディアの言葉にヒルダが驚く。

 

「その通りです、逃げた女に追いすがるなど……。不様ですわね、調律者」

 

『フン、ドラゴンの姫と皇子か』

 

其処に皆と合流したサラとリュガ。

エンブリヲはサラとゼランディアを見て鼻で笑い、サラは剣をエンブリヲに向けて言う。

 

「焦らずとも、すぐにアンジュと共に伺いますわ。

 その首を貰い受けにじっくりと怯える事ですわね」

 

『ほう……、果たしてできるかな?』

 

「……必ずやるんだよ」

 

『ふん、人間でもノーマでもドラゴンでもない君にできるか?』

 

その言葉にヒルダたちは驚愕し、リュガを見る。

 

「……神を殺すのはいつだって、ドラゴンと人間だ」

 

リュガはサラの方を見て、サラは頷く

 

「ラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

サラの雄たけびによりエマのマナが不安定となって破壊され、エマは正気を取り戻して気を失う。

 

「監察官さん!?」

 

ヴィヴィアンが問いかけ、すぐさまラプラスが見る。

 

「……大丈夫。気を失っているだけよ」

 

「ヒルダ殿、エンブリヲはなりふり構わずにアンジュを探している様子です。

 エンブリヲの眼をかわしアンジュを助け出す事が出来ますか?貴女に………」

 

「……ぐ」

 

サラの言葉にヒルダは言葉を詰まらせる。

エンブリヲの目をかわす事などヒルダには出来ない事だった。

それにサラは笑みを浮かばせる。

 

「アンジュは帰って来ます。タスク殿が必ず連れて」

 

「はっ!何であいつが!?」

 

「理由は簡単だ……あいつはアンジュの騎士だからだ。

 僅かとはいえ、確かな繋がりがあるから」

 

その事にヒルダは言葉を止まってしまう。

 

 

◆◆◆◆

 

 

再び自身の部屋に戻ったリュガ。

タスクとモモカがアンジュを連れて帰って来た時が、最後の戦いが始まるだろう。

これまで、幾つも死ぬような危険性があったが怖くはなかった。

だが、今度のは……恐怖はある、いや、いままで恐怖を感じなかったのが異常だったのかもしれない。

 

「ははは……、今更になって人間らしさが出たという事か」

 

ドアがノックし、サラが入ってくると同時に、鍵をかけた。

 

「サラ……?」

 

「次が最後の戦いとなるでしょうから、お互い、勇気を出そうと思いまして来ましたわ」

 

「勇気……?」

 

明かりを消して、サラは身に纏っている服を脱ぎ、裸になる。

リュガは驚きつつも、彼女の白い肌をチラチラと見る。

一糸纏わないサラゆっくりと近づき、リュガの上着を脱がす。

互いに見つめ合い、頬を染める。

 

「サラ……」

 

「リュガ……」

 

互いに名前を呼び、キスをした後、二人はベッドに倒れる。

 

二つの影が一つに重なり合う―――――――。




というわけで、リュガとサラ……最後までしちゃいました!!

最初はサリアかエルシャと考えてましたが、サラが本格的に登場して、魅力されて、ヒロインに決定しました。

次回に続きます!!


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