キノの旅×IS リメイク (un)
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プロローグ

 
 
 


 束が装置を機動させ大きな光が生まれる。

 

「皆さん、今まで本当にありがとうございました」

 

 キノが光を背にし、一夏や千冬達に最後の別れを告げる。

 

「俺の方こそ...ありがとう...キノ...」

 

 一夏が、涙をこらえながら答え後ろにいる箒達の目から涙がこぼれ落ていた。

 

 これまで共に学び、戦ってきた仲間との別れを前にして涙が止まらない。

 

「いっくん...きーちゃん...」

 

 二人を見つめる束は、今すぐにでも機械を止めようとする自分を必死に抑えつけ涙を流していた。

 

 ほんの数秒。一夏とキノは見つめ合う。

 

「それじゃ...」 

 

先にキノが背を向けて、光の元に歩き、キノと共に帰る彼らの元に立つ。そして、光が大きくなりキノ達を包み込もうとした時、一夏が前に出る。

 

「キノ!!」

 

 一夏はキノを見つめ、口を開く

 

「俺も...俺もいつか旅人になってみる!! そしてキノみたいに世界の美しい物を見ようと思う!!」

 

 一夏の発した言葉に全員が驚き、キノは

 

「はい...一夏さんなら、きっとなれますよ」

 

 優しい目で一夏を見つめ、キノはそう答えてーー

 

 

「また、どこかで!!」

 

 光に包まれたキノが一夏達に最後の挨拶をし、一夏達もーー 

 

 

 

 「「「「  また、どこかで!! 」」」  

 

 一夏達が答えた瞬間。光が大きく輝きを放ち、一瞬でその場から消えるのだったーー

 

 

 ...10年後 

 

本格的にISが宇宙へ向けての開発が行われ、地球外への調査等が行われていた。

 

 そして、この日。

 

 宇宙の長旅から白いISを纏った一人の男性が帰還し、誰もが彼の生還を喜んだ。

 

 IS学園に新しく作られた、宇宙への打ち上げの基地にて。

 

 かつて、この学園でただ一人のIS操縦者だった彼は、いち早く出迎えてくれた愛する人と我が子。そして、姉や仲間達に笑顔で

 

「世界は美しかったよ」

 

 と答えるのであった。

 

 さらに数年の時が経ち。

 

 彼の調査のおかげで人々が星への移住が可能となり、誰もが宇宙への旅に憧れを抱く時代となっていた。

 

 そして、旅人となった彼は歳を重ねその命も尽きかけていた。

 

 彼を見守っていた姉は安心し先立ち、学友や先輩達も皆それぞれの人生を歩み、永遠の眠りにつき。最後に残ったのは彼が愛した女性だけで、彼女の命も尽きようとしていた。

 

「一夏...」

 

「あぁ、すまない...今までこんな私と一緒にいてくれて...ありがとう...」

 

 ベッドに横になる彼に、女性は最後の力を振り絞り車椅子から降りて、彼の顔に近づき手を強く握った。

 

「いいえ、私は貴方を愛していたからいいの。だから一緒に...眠り、ま、...しょ...」

 

「...本当に、あり、がと...う...」

 

二人は手を握りしめたまま、安らかな顔をしたままその生涯を終えるのだったーー   

 

  




 更新は遅くなりますが、よろしくお願いします。



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1 異世界からの旅人
一話 発明の国


 大分遅くなりましたが、一話目です。


 青空がどこまでも広がり太陽がまだ登りきっておらず、まだ昼前の時。大きく鉄で作られた国の門の前で一人の老人が一人の旅人とモトラドに向かい話しをしていた。

 

いかかがでしたか旅人さん? 我が国の発明品は?」

 

 何かを期待しているかのように目を輝かせる髭を生やした老人。どうやら、この老人が国の長らしく、彼の後ろには黒服の付き人達が複数控えていた。 

 

「はい、とても素晴らしい物ばかりでした、ねエルメス?」

 

「右におなじ~~今までキノと旅をして来たけど、簡単に空を飛べる物なんて滅多にないよ」

 

 キノと呼ばれた旅人は、エルメスの言葉にうなずき国長は満面の笑を浮かべる。

 

「おお!! そうですか~~そう言ってもらえると嬉しい限りです!! 何しろ、あれらの発明は何代か前の国長が突如作られた事がきっかけでして...」

 

国長は興奮しながら国の歴史を語り始め、エルメスが「もう、知ってるのにね」と小声でキノに話しますが、キノは黙ってエルメスのタンクを軽く蹴り話しに耳を傾ける。

 

「発明がまだ生まれてない頃は、この国はまだ貧しく...」

 

国長の話しが五分程続いた時。一人の付き人の男が声をかけ国長に何かを話し始める、そして話しを聞いた国長は笑を浮かべ再びキノとエルメスの方を向き一度咳払いをする。

 

「ごほん。いや~~すみませな、こんな老いぼれの話しに付き合わせて...実は旅人さんに記念として持ってもらいたい物があって」

 

 別の付き人がキノに近づき、その手に持っていた木箱を開けると中には拳台ほどの白い宝石がありキノとエルメスに見せる。

 

「宝石ですか?」

  

「へ~~太っ腹だね!! 良かったねキノ? これで、暫らくはお金に困らないよ」

 

 エルメスの言葉にキノが注意し、国長は特に気にした様子はない。

付き人が箱から宝石を出し、キノに丁寧に渡す。キノは渡された宝石を見るが一見何もおかしなところは見当たらない。

 

「その宝石も我が国の発明品なのですよ。それを使えば、はるか遠くまで行くことができ、旅人さんにとっては役に立つ物ではないかと...」 

 

「え~~そんなのあったら、モトラドなんて必要なくなっちゃうじゃんか~~」

 

「...えっと、ありがたいのですがボクにはエルメスがいますので...」

 

キノは丁重に断り宝石を箱に戻そうとするが、突如宝石が光を放つ。

 

「!!っ」

 

「キノ!?」

 

 宝石から発生られた光が強くなりキノは目を閉じながら腰に手を伸ばし、一丁のパースエイダーを抜き取る。 

  

「くっ!!」

 

 光が収まり目を開けたキノの前には夕陽の光で輝く海が広がっていた。心地の良い風がふき、後ろには密林があった。

 

「キノ、大丈夫?」 

 

 隣りにいたエルメスが声をかけ、パースエイダーをホルスターに収めるキノ。

 

「エルメス、これは一体...?」

 

「うん、どうやら国長さんに渡された発明品が原因だね、確かにどこかに飛んだ見たいだね? ただ、ここが別の大陸なのかどうかは分から無いけどね」

 

「そうなんだ、あ、宝石は?」

 

「どうやら、消えちゃった見たいだね。キノが目をつぶった時、あの石が光った後消えて行くのが見えたから。つまり使い捨てだね」

 

「一体、何のためにボクに宝石を渡したんだろうね? ...!!」

 

 キノがパースエイダーを抜き、密林から飛んで出て来た物に銃口を向ける。その物体は何故かニンジンの形をしており、ニンジンはキノ達から数歩程の距離で着地し、ニンジンが割れてーー

 

「きーくん!!」

 

 女性がニンジンから飛び出し、キノに抱きつくのであった。

 

 

 

 

 



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二話 天災との出会い

 大分更新空いてしまいすみませんでした、更新は不定ですが来年もよろしくお願いします。


「あれ~~? きー君じゃない?」

 

 キノに抱きついてきたウサギ耳のような機械を頭につけたピンク髪の女性は不思議そうにキノが着ているコートを見つめ何かを呟く。下敷きになり砂まみれになったキノは目の前の女性を警戒しつつ体を起こし声をかける。

 

「あの...」

 

「ん? 君、誰? きー君と同じコート着てたから、もう~~違ったじゃん!!」

 

 頬をふくらませ可愛く怒りキノを睨みつけ立ちあがり、今度は傍にたエルメスに目を向ける。なんでこんなとこにバイクが? と謎の女性がエルメスに触れると

 

「なんだか不思議な人だね? ねぇキノ?」

 

「うわ!! モトラド!? ねぇ、どこから声出してるの? それと、どうやって動くのかな? 」

 

「え、あ...その...」

 

エルメスが相当気に入ったのか、キノが困っているのに関わらず女性はエルメスのエンジンやタンク等を触り始めエルメスが何度も強くやめるように声を出すがそれでもやめない。

 

「すみませんが...ここはどこなんですか?」

 

 今だにエルメスをおさわり中の彼女の背に声をかけると、エルメスを触るのを止めキノの方を向く。

 

「ん~~ここは束さんの秘密基地だけど、そもそも君たちどうやって入って来たの?」

 

 自分の事を束と呼ぶ彼女の言葉に首をかしげるキノ。それがどういう意味なのか聞こうとしたが、ひとまず基地に行こうと束に言われ、夕陽が大分傾き暗くなった砂浜を後にした。

 

 

 

「うわ~~すごいねキノ?」

 

 機械に囲まれた部屋を見て声を出すエルメス。それらが何のために使う物かキノには分から無いが、部屋の中心に置かれた二つの機械が目立っていた。

 一つは全体が銀で出来ており、まるで人が乗れるスペースがあった。さらに、もう一つは全体的に黒で染まっていて、こっちの方は人の乗れるスペースは無かった。

 

「どう? この束さんの手製IS。すごいでしょ?」

 

「あい...えす?」

 

「え? もしかして知らないの?」

 

 キノが頷くと、まるで信じられない と言ったような表情を浮かべる。一人と一台は初めて聞いた事を告げると束は空中に画面を出現させ、それにキノとエルメスが驚く。 出現した画面には先ほど束が言ったISと言う物がどうゆう物なのかが音声つきで説明される。

 

 インフィ二ット・ストラトス

 

 通称ISは、宇宙進出に向けて作られた発明であり、様々な機能が搭載されその性能から最強の兵器とも呼ばれており。ISを倒せるのはISだけと言うのが世間における常識ともされている。

 また、ISの中核とも言うべきISコアは開発者である 篠ノ乃束 にしか作れない事も説明に含まれていた。そして、画面に表示された青い星ーー地球をみて

 

「キノ、この惑星キノがいた星と違う」

 

 「え?」

 

 

 ーー数分後、一人と一台は空中に浮かぶ画面を眺めていた。内容は歴史だったり、科学技術だったりと、ありとあらゆる物でそれらを見てある事が分かった。いや、分かってしまった。

 

「キノ...どうやら僕ら遠い所どころか...別の惑星に来ちゃってた見たい...」

 

「...あぁ、そうだね。エルメス」

 

 そっけなくキノが答え少し黙っていると「これから、どうしようか?」とエルメスが聞き、ため息をついていると

 

「じゃさ!! 私にいい案があるんだけど!!」

 

 キノ達の暗い雰囲気を吹き飛ばすかのように話しに割り込む束。彼女の提案とは、自分の仕事を手伝う変わりに衣食住などを保証する と言うかなりいい話だった。そして、彼女の言う仕事をキノが引き受けーー数ヶ月後。

 

 

 人口の島にあるモノレール駅からキノが出て、今はいつもの旅で着ていた服装ではなく白を基準とした制服を着ていた。

 周りにも同じ制服を着た女生徒達がいたが、キノだけズボンを穿き少し浮いていた。

 

「と、そろそろ時間かな?」

 

(初日から遅刻すると目立つよ? ただでさえ今も浮いてるんだから)

 

 エルメスの声に黙って頷き、他の生徒達に混じり学園に進むキノ。そしてキノの右手の指には黒の指輪がはまっており、指輪から誰にも聞こえない声で「あ~~暇」とエルメスの声がするのであった。

 

 

 

 

 

 

   

 

  

 




 今年最後の更新になりましたが、来年もよろしくお願いします!!


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三話 青髪のクラスメイト

 入学式を終えたキノは1-4の教室に入り自分の席についていた。周りの生徒達は、

いくつかグループを作って談笑したり又は、一組にいるある人物を見に教室から出て行く者がいた。

 

(いいのキノ? 一組に行かなくて?)

 

 黒い指輪からエルメスがして、キノにだけ聞こえるように小声で声を出しキノは黙って首を縦に動かしただけだった。

 

(もう、あの兎の姉さんとの約束でしょ? 確か...親友の弟さんだっけ? その人を守るように言われてここにいるんだからさ)

 

 首を再び動かすキノ。制服のポケットから携帯端末を取り出し文字を打ちメールを送り、エルメスが何かを読み上げる。

 

(なになに...なんでも、その弟さんの姉さんは感が鋭くて、ばれたら面倒だからうかつに近づくなって注意を受けてる。後、せっかくの学校だから楽しみたいって...)

 

 キノがそっと、机の上で腕を組み右手にある指輪を優しくさすと予鈴の鐘が鳴り始めて、生徒達が教室に戻り席に着く中。キノと同じ誰とも話す事なく一人だけ机に座りキーボードを打ち込む生徒がいた。

 

「...」

 

授業の予鈴に気づき、キーボードから指を話した青髪の少女は一度ため息を吐いて授業の準備をし授業が始まった。

 

 

 時間が経ちやがて夕方になり、授業を終えた生徒達が遼に入る。キノも荷物と部屋の鍵を手に部屋を探していた。

 

「え~と...あ、ここだ。すみません」

 

 ドアをノックし、中から小さく「誰?」と声が聞こえ、自分は相部屋の者だとキノが告げると、先に入っていた人物から入室の許可が出て入ると、教室にいた青髪で眼鏡をかけた少女が椅子に座り、何か作業をしている途中だった。

 

「突然すみません、こちらの部屋で相部屋になった者でキノといいます」

 

「...更識、簪...よろしく」

 

 自分を簪と言った少女はそう短く伝え再びキーボードを打ち込む。キノは特に気にした様子もなく既に物が置かれている入り口側のベッドと窓側にある綺麗なベッドを見て、

 

「綺麗なシーツ...」

 

 そう呟き、窓側のベッドの方に歩き荷物を床に置いてベッドに横になり

 

「しかも、ふかふか...」

 

 ベッドの感想を呟いて、目を閉じたキノ。数秒してベッドに横になって動かないキノを変に思い簪が画面から目を離しベッドの方を向くと、小さな寝息が聞こえキノの寝入りの速さに思わずため息を出した簪は寝ているキノを見ていて自分と同じクラスの者だとやっと思い出した。

 

「...変な人」

 

 だが、同室者が大人しそうな人だった事に安堵をつき再び作業しようとしたが、そこで腹の音が鳴り簪が腹を押さえる。食堂がそろそろ混む頃だと思い椅子から立ち上がり部屋を出た所で購買に向かおうとしたが

 

「鍵、忘れてた...」

 

 部屋の鍵を忘れた事に思い出し再び部屋に引き返す簪。ドアを開けると

 

 

「キノ、起きないと食堂行けなくなるよ? あ、まず...」

 

「え?」

 

 部屋の中で小さな男の子の声が聞こえた。驚きながら声の主を探す簪。部屋の中には寝ているキノしかいないはずなのだが、声の主の姿は見えなかった。

 

(...?)

 

 寝息を立てるキノがつけている黒い指輪を見て、何を思ったのか簪がキノに近づき手を伸ばそうとして、キノが目を覚ます。

 

「あ」

 

「ん?」

 

 いきなり起きだしたキノと目が合って簪は慌てて離れた。対してキノは寝ぼけた目で簪を見つめている。二人の間に沈黙が生まれて、お互いに何も言わない事数秒ーー

 

「いや~~ごめんキノ。うっかり声出しちゃってさ~~」

 

 再び男の子の声が聞こえ、キノが目を大きくし簪はここで声の出処が黒い指輪からだと気づいたようだった。

 

「エルメス...」

 

 状況が理解できたのか、キノはため息を吐き指輪となっている相棒を睨み目の前で固まっている簪に困ったような顔をしながら説明をした。

 

「えっと...こいつはボクの相棒なんです」

 

「あい、ぼう? 」

 

「そうそう、よろしくね」

 

 軽口で話し始める指輪を見せるキノ。まじまじと黒い指輪を観察する彼女にエルメスが逆に質問した。

 

「ところでさ、さっきから君がしてたのってISの設計でしょ? 」

 

「!? なんで? それを...?」

 

「キノが寝ている間ずっと画面が見えててね、それにまだ設計の途中みたいだけどいつごろ完成するの?」

 

「それは...」

 

顔を下に向ける簪。目つきが鋭くなり目に涙を浮かべながら「あなた達には、関係ない」とだけ言い部屋を飛び出してしまった。部屋に残ったキノとエルメスは部屋の扉を見つめ呆然とする。

 

「...何かまずかったかな?」

 

「さぁ? ボクは知らないよ」

 

「まぁ、あれだね。愚痴は災いの元ってやつだね?」

 

「...口は災いの元?」

 

「そう!! それそれ!!」

 

 

 

 部屋を飛び出した簪は、人気の無い遼の屋上でベンチに座り涙を流していた。夜空に登る満月の光が流れる涙を照らしISを装着して空から簪を身守る一人の少女も照らしていた。

 

「かんちゃん...」

 

 簪と同じ青の髪を持つ女生徒は簪に近づこうとしたが、屋上に誰かが出て来た事により動かずにその人物を見た。

 

「えっと...」

 

 手にはビニール袋を持ち気まずそうに簪を見つめるキノ。

 

「あっ...」

   

 簪は慌てて目を拭い視線を下げて「ご、ごめんなさい...」と小さな声で謝罪をした。 キノも気にしていない事を告げ指にしている指輪を見せて、エルメスが悪かった事を謝罪した。

 

(キノ、誰かこっち見てる。しかもIS使ってる)

 

 キノは小さく頷き、辺りを見渡そうとして、ぐっ~~と腹の音が聞こえ簪が慌ててお腹を抑えた。顔を赤くする簪にキノは苦笑しベンチに腰掛けて、簪にも一緒にどうですか? と声をかけ袋からパンとジュースを簪に渡した。

 

(...誰なのあの子? 簪ちゃんとあんなに仲よく...)

 

 ISのカメラを使い二人が楽しそうに会話している姿を見て顔をしかめる少女。時折、笑顔になる簪を見てIS乗りーー簪の姉である楯無はキノを睨みつけるのであったーー 

  

   

「ねぇ、その指輪なんだけど...」

 

 その後、部屋に戻った簪がエルメスについて聞き、さっきから黙っていたエルメスが返事をした。

 

「あぁ、これね。実を言うとISなんだよね~~」

 

「エルメス...」

 

「仕方ないじゃん、ここでごまかしてもスパイか何かって勘違いされるだけだし」

 

 口の軽い相棒にため息をつくキノ。

 

 「IS!?」

 

 

 簪が突如、キノの手をつかみ目を輝かせながら、このISはなんで話せるの? どこの企業が開発したのか次次と質問し始めた。キノもエルメスも彼女の変貌に驚きながらも、黙秘したり多少嘘を交えながら質問に答えるのだった。

 

 そして、質問が終わると今度はエルメスを見せて欲しいとまで言われそこまではできな

いと強く断った。がっかりして肩を落とす簪だが、その後も三人の会話が就寝する前まで続くのであった。

 

 

 

 

   

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

  



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四話 姉と旅人

「ねぇ、キノ? どうするの、あの子? また、整備室にこもってる見たいだよ?」

 

 入学して二日目の昼。人気のない屋上で会話するキノとエルメスがいた。

 

「うん、そうみたいだね。ところで、エルメス。簪さん一人でIS作るってって言ってたみたいだけ、そんなのできるの?」

 

「無理だね。それに見せてもらった設計図を見る限りまだまだ課題が一杯あるし、完成するまで何年かかる事か」

 

「そうなんだ...ねぇ、エルメス。ボクにできることってあるかな?」

 

「キノ? キノがここにいる理由忘れてないよね? 下手してこっちの正体バレると面倒だよ?」

 

「まぁ、そうなんだけどさ...ほら、既にエルメスの事バレちゃってるし、それにこれから同じ部屋にいるんだからさ、何か手伝おうかなって...」

 

 太陽の光に眩しく目を細め海を眺めるキノ。エルメスは「仕方ない」と言った感じで

 

「じゃあさ、強引な方法だけど...」

 

 

 

 

 その日の授業が終わり、キノと同じ部屋で端末を操作する簪。そこに、キノが部屋に入り簪は画面から目を離す。

 

「お疲れさまです、簪さん」

 

「お疲れ」

 

 少しだが柔らかい笑を浮かべ挨拶を返す簪。そして、彼女の目線はキノの指にある黒い指輪に注目していた。

 

「お疲れさま、今日も専用機の開発?」

 

 小さく頷く簪。キノは彼女に手伝える事はあるか と伝えるが首を横に振られる。

 

「あのさ、悪く言っちゃうと思うけど。今のままじゃ、その機体は完成できないよ。やっぱりいろんな人と協力して...」

 

「っ!! 貴方には関係ない!!」

 

 大声をあげ部屋から出て行く簪。その後をキノが追いかけ寮から出る。

 

 

 

(? あれ、簪ちゃん?)

 

 学生寮の近くを通っていた楯無が涙を流し走り去る妹の姿を見かけ、その後を走るキノを見かけ、目つきが鋭くなる。

 

「...」

 

 楯無は無言で走り去る二人を見つめながら、扇子を広げると何を勘違いしたのか「撲滅決定」と書かれていた。

 

 

 

「はぁ、はぁ...」

 

 走りつかれた簪は校庭にあるベンチに座り涙を流していた。

 

 

「あの...」

 

 と、そこに気まずそうに目線を下にして近づくキノ。さっきのエルメスの事を謝罪し、目を拭いキノを見つめつ簪。

 

「ううん、ごめんなさい...私の方こそ...」

 

「すみませんでした。ボクの方こそ手伝うなんて余計な事を言ってしまい」 

 

「違うの...その...」

 

 二人はベンチに座り。落ち着きを取り戻した彼女が、キノにポツポツと話を続ける。

 

 自分には優秀な姉がいていつも比べられており、その姉が一人でISを完成させた事

 

 そして、自分のISの開発がとある人物のせいで後回しになっていた事が話された。

 

「そうだったんですか...」

 

「ん、もしかして、その後回しになっちゃった原因って...一組のあの、世界で一人だけの人?」 

 

「そう」

 

「ありゃりゃ。これは、たたり目により目だめ」

 

「...は?」

 

 エルメスの意味が分から無いことわざに困惑する二人。だが、キノは何かに気づいた様子でエルメスを見て

 

「もしかして...弱り目に祟り目?」

 

「そう!! それ!!」

 

 こっちの世界に来ても相変わらずの相棒にため息をつくキノ。一方で簪は口元を押さえ笑いを抑えていた。

  

「ふふふ...ごめんなさい、つい」

 

「良かったねキノ? 元気でた見たいだよ。ところでさ、物は相談だけど...」

 

 エルメスが簪に何かを話し、簪は驚いた表情を浮かべるが

 

「うん、分かった」

 

 と何かを承諾したのだったーー

 

 

 

 翌日。昼食を食堂で摂っていたキノだが

 

「一年四組の✖✖✖キノさん。至急、生徒会室までお願いします」

 

 と呼び出される。早めに食事を終えてキノは今、生徒会室まで歩いていた。

 

 

(キノ? 何かしたの?)

 

(いや、特に身に覚えはないんだけど...)

 

(もしかして、正体がバレたのかな? どうする? 無視する?)

 

(無視したら無理やり連行されるかも。まぁ、何か起こったらエルメスお願いね?)

 

 生徒会室の前まで来たキノは、ポケットに入っているナイフを確認し扉をノックする。中から入っていいと声が聞こえ扉を開く。

 

「始めまして、✖✖✖さん?」

 

 中にいたのは、簪と同じ青髪をした少女がいた。手に持つ扇子には「歓迎」と書かれて

おり、キノが何のようかと彼女に聞くと

 

「そうね、貴方、私の妹の簪ちゃんと同じ部屋でしょ? それでね、特別にあなたに訓練してあげようかなって♪ ちょうど、生徒会権限でアリーナ使用できるしね」

 

 機嫌の良い笑を浮かべる楯無だが、キノはその笑顔の裏にある殺気に気づき。警戒を強める。

 

「訓練って...一体何をする気? 姉さん?」

 

 と、そこにドスが聞いた声がして、生徒会室に簪が入って来た。簪は楯無を睨みつけながらキノに近づく。

 

「か、簪ちゃん...」

 

「ねぇ? キノさんに何しようとしたの? もしかして、私の事でも聞こうとしたの?」

 

「そ、それは!? 」

 

 さっきまでの様子が変わり慌て出す楯無。キノは口を挟まずそのまま様子を見る。

 

「そういえば、さっきアリーナが使えるって聞いたけど?」

 

「う、うん...」

 

 視線をキノに向ける簪。

 

「キノさん、昨日の話すぐできそう」

 

「は、話?」

 

 楯無は何の事か知らずをおいてきぼりにされて、キノと簪は互に頷くのだったーー

 

 

 数分後。 

 

 アリーナにて、リブァイブに乗るキノと打鉄に乗る簪の姿があった。

 

「キノさん」

 

 簪がキノを見て話をかける。

 

「私が勝ったら、あの子...エルメスの中身を見せて」

 

「はい、でもボクが勝ったら...」

 

「うん、わかってる。開発を誰かに手伝ってもらう」

 

 二人は事前に決めていた勝負の賭けについて話をし。それ以上何も語らなかった。

 審判役の楯無は納得行かない表情をするが、試合開始のカウントダウンを告げ、数字が零になった時。二体のISが銃を取り出し引き金を引くのであったーー

 

 

 

 



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五話 初めての試合

 やっと更新しましたが、今回戦闘だけで短くなっております。


 キノがリヴァイブのライフルの引き金を引き、簪が後方に逃げながら打鉄に装備されているアサルトライフルを連射し距離を取る。

 

 キノの打った弾丸が打鉄の肩や足などに当たるが、簪が連射した弾がリヴァイブの手に当たり、キノの手からライフルが落ちる。

 

「てぁぁぁぁ!!!」

 

 ライフルをしまい今度はブレードを取り出して接近戦を仕掛ける簪。キノが落としたライフルを回収する前に一気に距離を取りブレードでリヴァイブにダメージを与えようとするがキノは、リヴァイブから二本のショートブレードを取り出し、打鉄のブレードを受け止め火花が散る。

 

「くっ!!」

 

 簪はそのままブースターの火を吹かせて、押し切ろうとするが。突然腹部に衝撃が走りブレードを落としてしまう。

 

「あっちゃ~~胴体ががら空きだね」

 

 鎖でネックレスのように首にかけている指輪から小声でエルメスの声が漏れる。キノは打鉄の脇腹を蹴り、ブレードを落とした簪に向け二本のショートブレードで切りつけ打鉄の装甲にダメージが入る。

 

「っ!?」

 

 簪はブレードを拾うのを諦め、慌てて距離を取る。そして、キノはライフルを回収し構えて撃ち弾丸は、打鉄の肩に当たる。

 

「おしいね、キノ。連射して打てばダメージ入ってたのに」

 

「うん。そうなんだけど、やっぱり無駄打ちはしたくないと言うか…」

 

「え~~こんな所でも貧乏性? どうせ税金なんだから、好きなだけ打ちなよ?」

 

「そう言われても…」

 

 エルメスとは小声で会話をしているがキノは、簪から目を離さずにライフルを構え続けていて隙がなく簪はそんなキノを見て気を引き締める。

 

(この人…戦い慣れてる…)

 

 簪は再びアサルトライフルを取り出し、キノに向って乱射した。キノは、上空に飛び回避し打鉄も追いかけて上に行く。二体のISが上空に飛び、リヴァイブに乗るキノは弾丸に当たらないように動くが、既に何発か装甲に当たりエネルギーが減って行く。

 

「やっぱり操縦は向こうの方が上か…」 

 

「だよね~~ こっちは訓練したのたった数日なのに、あっちは候補生で大分訓練してるもん。いくら素人が高性能の銃を持っていても、相手が凄腕の殺し屋だったらナイフ一本でやられちゃうよ。 キノ? どうする、棄権する?」

 

 キノは操縦しながら、首を横に振り。背後から追いかける簪の目と合う。

 

「いや、棄権をしたら。簪さんが納得しないと思う。だから、棄権はしない」

 

「けど、このままじゃエネルギー切れか、時間切れで終わっちゃうよ?」

 

「まぁ、何とかするさ…っ!!」

 

 キノは、突然リヴァイブのブースターを動かし、機体の向きを変え後ろから迫る簪の方を向きもう一つライフルを取り出し、両手にあるライフルから二つの火を吹く。

 

 ダダダダダッ!!

 

「っ!?」 

 

 いきなりの反撃に驚く中。機体に弾丸の嵐がぶつかり、打鉄の動きが止まる。キノは、さらにグレネードを取り出して打ち。簪が慌ててグレネードを撃ち落とし爆破が起こる。

 

「くっ!! どこに?」

 

 爆発により視界が阻まれ、センサーを頼りにキノの位置を確かめると、キノは地上降りて、再びグレネードで簪を狙って打つ。

 

 打鉄を巧に操り、放たれるグレネードを回避し、撃ち落とし辺りに煙が起きる。

 

「さて、今の内に…」

 

 キノがつぶやき、傍に落てある簪の落としたブレードに何かを糸で括りつけその場から離れる。そして、ライフルの弾が切れ、自身の落としたブレードの存在に気づき簪が拾った瞬間。糸につけられていたグレネードの弾が爆発した。

 

「きゃぁぁぁ!?」

 

 トラップにかかり、一気にダメージをくらい。試合の残り時間が僅かな時。

 

 キノは上空からスナイパーライフルを取り出し、打鉄めがけ引き金を引くのであったーー

 

 



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六話 一夏とキノ

 

「これが、ISの戦いか…」

 

 キノと簪の試合を観客席からみていた一夏がつぶやいた。なぜ彼がここにいるのかというとアリーナで試合があると聞き、一週間後に控えたクラス代表を決める試合に向けて何かの参考になるだろうと足を運んだのが理由だった。

 

 対戦しているのは日本の代表候補生である青髪の少女と、もう一人は名前も知らない黒髪をした生徒――キノだった。さらに、周りにいる観客の生徒達の話に耳を傾けると、キノはどこの代表候補でもなく、一般で入学した生徒らしくだれもがキノが叩きのめされると予想をしていた。しかし、実際に試合が始まり誰もが二人の戦いに夢中になる。

 

(…俺、銃とか使った事ないけど、大丈夫なのか?)

 

 キノと簪の射撃を見て、一夏が不安になる中。簪が落ちたブレードを拾い爆発が起こり、そこでアナウンスが流れーー

 

 

「両者エネルギー切れで引き分けだってさ、キノ。お疲れさん」

 

「あぁ、おつかれエルメス」

 

 控え室でISスーツを着たままのキノがベンチに横になり、エルメスに返事を返した。ISの操作に集中力と体力を使い疲れたのか、額から汗が流れ大きく息を吐き出した。

 

「…操縦はどう? 慣れた? 」

少しはね。けど、実践となると避けたり逃げたりして動き回るからかなり疲れる」

 

「まぁ、そこは何度もやって慣れるしかないね。ほら、上手ムシより、上手ならないって言うじゃない?」

 

 キノは、エルメスの言葉を聞き、数秒して口を開く。

 

「…上手昔より上手ならず?」

 

「そう、それ!! 」

 

「まぁ、これから練習していくしかないよね…ん?」

 

 扉がノックされ、キノはベンチから起き上がりドアを開けると、そこにはまだISスーツを着たままでうつむいている簪がいた。

 

「あの、キノさん…」

 

「こっちもいるよ~~」

 

 と首に下げているエルメスが軽く挨拶するが、すぐにキノから注意され黙ってしまう。簪はそんなキノ達を見て少しだけ笑を見せた。

 

「すみません、こいつはいつもうるさいので…ところで何か用ですか?」

 

「あ、その…約束の事なんだけど…」

 

 約束と言うのは、キノが試合で勝ったら簪は無理せず、周りの人に協力してもらい専用ISを作って行く事を。簪が勝てば、未知の技術で作られたエルメスを調べる事を掛けにしていたのだが、結果が引き分けになってしまい。どうしようか、二人が悩んでいるとーー

 

「じゃあさ、こういうのはどう?」

 

 エルメスの一声を聞き、その後二人は納得したような表情になる。

 

 その日の夜。整備室ではいくつもの機材が床に置かれ、整備科の生徒達が忙しく作業をしていた。部屋の奥に置かれた簪の専用機「打鉄二式」が簪やキノの目の前で着実と作成されていき、やがて消灯時間になり皆が寮に戻ると。

 

「すごい!! この子、とても人工智能とは思えない…」

 

「あのさ~~あんまりいじらないでね? あくまでも、見るのは一部だけなんだから」

 

 キノの指輪を熱心に見つめる簪。後ろではキノが苦笑し、まるで珍しいおもちゃを見ている目をした簪が次次と質問責めをしてきた。

 

「ねえ? これどこで作られたの? 制作者はあなた? こんなもの開発している企業なんて聞いたこのないわ、もしかして試作品か何か?」

 

「えっと、その…」

 

 迫り来る簪にキノは、答えきれる所だけ答え。そんな二人を見てエルメスが

 

「結局二つの約束は叶えたけど、試合した意味あったのかな?」

 

 と他人ごとのようにつぶやくのであったーー

 

 

 

 翌日。簪とキノが教室に入ると、昨日の試合を見ていたクラスメイト達から好評の声をかけられた。

 

「昨日の試合すごかったよ!! キノさんって、どこか所属していたの?」

 

「簪さんも、さすが候補生だね。今度操縦教えてよ!!」

 

 多くの人に声をかけられるのが苦手だった簪は顔を赤くしながら何度も頷いて返事をし、キノもクラスメイト達に混ざり、休み時間のたびに二人はクラスの輪に溶け込んでいた。

 

 そして、午前の授業が終わり。キノが一人で食堂に向かおうとしたところで背後から声をかけられた。

 

「あ、あの!!」

 

「? はい?」

 

 キノが振り向くと、そこには。真剣な表情をした一夏がいて、彼は頭を下げ

 

「頼む!! 俺にISの事を教えてくれ!!」

 

「…はい?」

 

 と言い、キノは首をひねるのだった。

 

 

 

「――つまり、クラス代表を決める試合があるため、操縦を教わりたいと?」

 

 食堂の席にて、キノがお茶を片手に真剣な目をした一夏と話していた。一夏によると、同級生で、外国からの代表候補生と言い合いになりその結果。試合で白黒つける事となり、一夏は幼馴染みの特訓を受け準備をしていたのだがーー

 

「箒のやつ、一度も操縦を教えてくれなくて…それどころか毎日剣道だけで…」

 

「なるほど…でも、教わるなら他のクラスの候補生の人に教わった方がいいのでは?」

 

「ま、まぁ…一人には声かけたんだけど、無視されて…」

 

 苦い顔をして視線をそらす一夏。と、小声でエルメスの声が聞こえる。

 

(キノ、多分、お兄さん。簪に声をかけて無視されたんだと思うよ)

 

 キノは小さく頷く。もともと簪の専用機の開発が遅れたのは、突如現れた目の前にいる男の操縦者が原因だが、本人は事情が分かっていないようだった。 

 

(どうする? 手伝の?)

 

 エルメスの次の質問にキノは首を動かさず、一夏を見て。

 

「分かりました。ボクでできる事であれば協力します」

 

「!! 本当か!? ありがとう!!」

 

 キノの返事を受け、一夏は喜び。二人は席から離れる。

そしてこの時、一夏だけが殺気を纏った少女が尾行しているのに気づいていない。

 

「あの女…一夏と一緒に…」

 

 長髪を一つにまとめた少女。箒が目を尖らせ二人の後を追いかける。

 

「えと、確か訓練機を使うには申請書が必要でしたね…」

 

「そ、そうだった…確か書類って…」

 

 二人が会話しながら廊下を歩いていると、簪が足を止めどこかに行くキノとその隣りにいる一夏を睨み物陰に隠れ、何故か胸に不安を覚えつつ二人の後を追う。

 

(キノさん…一体、何を話しているの?)

 

 学園で始めてできた友達が、敵とも思える男と仲よく歩いているのを見て、気持ちが焦り、周りが見えてないせいで、物陰から出てきた箒とぶつかってしまう。

 

「うぁ!?」

 

「きゃ!?」

 

 二人は廊下で尻もちをつき、慌てて立ちあがる。

 

「な、貴様、一体何を…」

 

 自分と同じ、一夏を追っている(実際はキノを)存在に気づき、箒が問いただそうとするが。簪が慌てて指指し、キノと一夏の姿が消えていた。

 

「しまった!! くぅ!! 一夏、どこだ!?」

 

「キノさん…」

 

 二人の追跡者は、それぞれの探す目的を口にし廊下を走りだすのであったーー

 

 

「え? 訓練機の申請が通るのって一ヶ月も先になるんですか?」 

 

「ISに乗れないなんて…」

 

 事務員から練習用の機体が予約が一杯なのを聞き、トボトボと歩く一夏。

 キノがどう声をかければいいのか悩んでいると、二人分の足音が聞こえ

 

「一夏!!」

 

「キノさん」

 

 

 息を切らし、目的の人間を見つけた二人の追跡者。

 

 箒はキノを睨んで一夏に迫り

 

「一夏、貴様何をやっている!! そいつは誰だ!?」

 

「ほ、箒? その、キノさんに、ISの事教えてもらおうと思って…」

 

「な、なんだと!?」

 

 簪は一夏を睨んでキノに近づく。

 

「キノさん、どうしてその人と一緒にいるの?」

 

「か、簪さん?」 

 

 

 何故か怒りに満ちている二人を見て、キノ達は説明したが

 

「その必要はない!! 一夏は、私が鍛えるんだ!!」

 

「キノさんが、そんな人を手伝う必要はない」

 

 と、即答されてしまう。

 

「ちょ、ちょと待てよ!! 俺、まだ一度も乗った事ないんだぞ、このままじゃセシリアに…」

 

「とにかく、私に任せればいいのだ!!」

 

 と、無理やり一夏の手を引っ張り連れ去ろうとする箒。そこに、キノが

 

「あの、結局申請はどうします?」

 

「貴様は黙ってろ!!」

 

 どこからか取り出した木刀をつかみキノを襲う箒。キノは、木刀の一撃を避け箒の胸ぐらをつかみ背負投げをし箒を廊下の床に叩きつけた。

 

「ぐぅ!!」

 

「…こんなところで振り回したら危ないですよ?」

 

「クソ!!」

 

「ちょ!! 箒やめろって!!」

 

 頭に血が上った箒を押さえる一夏。簪と一夏がどうしたらいいのか困っていると

 

「そこで何をしている、馬鹿どもが」

 

 耳にすき通る、冷感を持った声がし。四人が向いた先には一体の鬼がいた。

 

「事務所が騒がしいと報告を受けてきたが、これはどういうことだ?」

 

 威圧を発した女傑。世界最強の称号を持つ織斑千冬を前にして四人は身を震わせるのであったーー

 



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七話 千冬とキノ

「で? 何を騒いでいたんだ小娘ども」

 

 事務室の前で騒いでいた四人は千冬に小部屋へ連行され、椅子に座り足を組んで座る千冬に睨まれていた。

 

「そ、その…ち、ちふ姉…」

 

「ここでは織斑先生だ。馬鹿者」

 

 注意され口を堅く閉じる一夏。そんな中、隣に立つ箒が時折キノをにらむが、キノは落ち着いた様子で傍でおびえた様子の簪を見てから、千冬に説明し始めた。

 

 一夏にISの操縦を教えてほしいといわれ、訓練機が空いているのか確認に来たら箒と簪が来たこと、そして何故か箒が木刀で襲ってきたことを告げると

 

「貴様の助けなど必要ない!! 一夏には私が教える!!」

 

 と言い出すが、千冬が箒を黙らせキノ達を見る。

 

「とにかく、教員たちには迷惑をかけるな。これは命令だ。わかったらさっさと行け」

 

 納得のいかない様子の箒と、そんな彼女を見て不安になる一夏が部屋から出て行き。後にキノと簪が出ようとしたところで、千冬はキノを呼び止めた。簪は自分も残ったほうがいいのか戸惑うが、キノが先に行ってくださいと言い簪は部屋から出ていく。

 

「あの、なんでしょうか織斑先生?」

 

 部屋の中でキノと千冬の二人だけになり、何故か部屋の雰囲気が変わる。千冬が席から立ちキノの前に立つ。

 

「お前は、ほかのやかましい小娘どもとは違って少しはまともだが。目的はなんだ」

 

「何のことでしょうか?」

 

「とぼけるな。たかが無名のガキが、代表候補とまともに戦闘できると思っているのか?」

 

 千冬の言う戦闘とは、先日の簪との試合の箏だった。簪はれっきとした日本の代表候補の一人であり、ISの知識はもちろん操縦技術は一般の生徒たちより上である。だが、

キノはどこかの国の候補生や軍出身者でなく、一般の入試を受け入学しISの適正値はBと出ておりそこらの初心者の生徒とは変わりはないはずだった。正しデータ上での話だが。

 

「…そうですね、ボクは別にこの学校にスパイとして入った訳ではないです。けど、ISに乗って空を飛んだりして本当に楽しいと思いました。だからボクはもっとISについてここで学びたいです」

 

 キノは真剣な目で千冬を見つめる。しばらく沈黙が続き、千冬が口を開く

 

「ふん、だったら問題を起こすな。もし面倒を起こせば教員の迷惑になる。わかったらさっさと行け」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 キノは一礼し部屋から出る。部屋の前には心配そうに簪だけが待っていてキノと簪の二人は廊下を歩き、その後ろ姿を千冬が見ていると緑髪で小柄の女性が手に書類を持ち声をかける

 

「あれ、織斑先生? ん? あの二人って、この間の試合にいた四組の…何かあったんですか?」

 

「山田先生…あぁ、いやなんでもない」

 

「そうですか…それにしても今年の一年生はすごいですね。候補生は他にも何人もいますが特にあの四組の二人の試合。試合のデータを教員だけでなく生徒たちも閲覧しているんですよ。確か楯無さんと…もう一人は…」

 

 

 

「キノさん、大丈夫だった?」

 

 小部屋に一人だけ残されたキノを心配する簪。キノは大丈夫と答え二人は整備室に向かっていた。理由は簪の専用機である打鉄二式の進行状況を確認するためだ。

整備室に入り、すでに整備の生徒達が集まっていた。

 

「あ、かんちゃ~~ん!!」

 

その中に簪の幼馴染である布仏本音が簪を見つけ二人が話をする中、キノは整備室を出て指輪のエルメスに声をかける

 

「どうエルメス? 簪さんのISはできてる?」

 

「まぁ。少しずづだけど。こっちがばれないようにそれとなく助言したり、あと整備の人達の協力で何とか進んでるよ」

 

「そっか…」

 

「? キノ? もしかして、さっきのお姉さん怖かった?」

 

 キノは首を横に振り、どこか遠くを見つめた。

 

「確かに怖かったけど、それ以上にあの人…師匠と同じ感じがして少し懐かしかった」

 

「そういえば、なんとなくお師匠に似ていたね。あのお姉さん」

 

「そうだね…とっ そろそろ手伝おうか。エルメス」

 

 指輪をしまい。整備室に戻るキノ。簪達と混じり打鉄二式の完成に一歩だけ近づくのであったーー

 

 翌日の昼休みになり、キノは四組の教室から出て行く。

 

(あれ、キノ? どこに行くの?)

 

 キノにだけ聞こえるように声を出すエルメスに、キノは黙ったまま一組の教室前に行く。教室の中を覗くと、どこか疲れている様子で席に座っている一夏がおり、たまたまなのか同じクラスにいる箒の姿がなかった。

 

「ん? きのー? どうしたの?」

 

 キノに声をかけたのは、昨日整備室にいた簪の幼馴染である本音だった。本音とは、簪のISの制作の手伝いをする中で知り合い、いつしかあだ名で呼ぶようになっていた。ちなみに、彼女は見た目ののんきな雰囲気から、皆からのほほんと呼ばれていた。

 

 キノは、本音に一夏に用事があることを告げると。彼女は二つ返事ですぐに教室に入り本音が一夏に話かける。

 

「おりむ~~きのーが話があるだって~~」

 

「へ? …っ!?」

 

 まさかの来客に一夏が慌てて席から立ちあがり、辺りにいた生徒達が驚いて彼とキノを見る。一夏は周りの状況など考えている余裕もなく。教室の前に立つキノに慌てて話かけた。

 

「キ、キノさん? どうして…あ、その…昨日は本当にごめん!! なんか箒の奴が変なことして、それとあの後千冬姉に何か言われなかった?」

 

「いえ、大丈夫ですよ…ところで、この間言っていたISの操縦についてですが、訓練機が使えなくてもボクでよければ手伝えるところだけ手伝おうと思いまして」

 

「ほ、本当か!! あ…でも箒が…」

 

 キノの提案を受けた後、すぐに何かを思い出したのか気まずい表情になる一夏。彼の話によると、昨日の千冬の説教が終わった後もISの操縦と関係ない剣道をやらされ今日の放課後も剣道場に行かなくてはならないとのことだった。

 

「まぁ、でも。ボクが教える方法もその箒って人とあまり変わりはしませんけどね」

 

「え?」

 

 

 

 ――やがて放課後になり、一夏とキノは学園にある射撃場にいた。一夏はテーブルの上に置かれた自動小銃を見て背中から嫌な汗が出て、キノに恐る恐る尋ねた。

 

「あの、なんでこんなところに? そして、この銃って…」

 

「あぁ、そのパース..じゃなかった。銃は本物ですので、まだ触らないでくださいね」

 

 一夏は生まれて初めて見る銃に驚くが、キノはテーブルに置いた銃を取り一夏に使い方を教え始める。

 

「まずは、打たない時は銃口を人に向けない箏と引き金に指を置かない。そして、辺りを確認してから打ってください」

 

 一夏に耳栓をするように告げ、キノは弾の入ったマガジンを銃に装填し、遠く離れた的に向け照準を合わせ引き金を引き乾いた音が鳴る。

 一発目は的のど真ん中を打ち抜き、二発目、三発目とほとんど的の中心を狙い傍にあった空間ディスプレイには得点が表示され、高評価だった。

 

「じゃ、さっき言ったようにやりましょうか」

 

「え? あ、はい…」

 

 

 弾丸が尽きた銃を渡され、一夏の手に緊張の汗が出てきた。キノの指導のどうりに安全装置の確認や弾丸の装填を確認し、初心者用に目を守るゴーグルを装着し一夏は銃を構え引き金をゆっくりと引く。

 

 パンッ

 

「くっ!!」

 

 手に思った以上の反動が来て声を上げ、慌てて的を見るが弾は命中していなかった。続けて弾が尽きるまで一夏は打つが、何発かが的の端に当たる程度だった。

 一夏は震える手と、ディスプレイに表示された最低点数を見て唇をかみしめた。

 

「まぁ、初めてでしたので仕方ないですよ」

 

「だめだ…剣も銃もこんなんじゃ俺はセシリアに勝てない…」

 

「けど、今はできることをすればいいですので…と、そろそろ時間ですね。銃を戻すのはボクがやりますので、一夏さんは、箒さんのところへ行ってください」

 

 この後に箒との特訓もあり(箒には内緒で)、一夏はキノに断りを入れ射撃場から立ち去る。そして、キノが使った銃を戻そうとした時

 

「ねぇ、君!!」

 

「はい?」

 

 キノに声をかけたのは、上級生の帯をつけた生徒だった。声をかけた女性以外にもジャージや作業服を着た生徒もおり、皆キノが射撃のディスプレイに表示されている評価を見て驚いていた。

 

「すごいね!! 君、一年生なのに射撃がこんなにうまいなんて」

 

「え、まぁ…どうも…」

 

「よければさぁ、他のも撃ってみてよ!!」

 

 女生徒に強制的にどこかの建物に連れていかれるキノ。建物には「射撃部」と書かれたプレートがあり、中には人間用の銃だけでなくIS用の銃まで置かれていた。

 

 キノは射撃部の先輩や部員たちに撃ってもらいたいとお願いされ。再び射撃場に戻り様々な銃を使い次々と的を打ち抜く。特に、的の真ん中に命中するたびに部員だけでなく、たまたま通りかかった生徒や教員たちが驚きキノは「やりづらい」と何度もつぶやいた。

 

 何十発も撃った後。射撃部からの勧誘を丁重に断りキノが寮に戻ろうとした時。

 

「ふん、こんな島国でもまともな腕を持った人はいるのですね?」

 

 そんな声が聞こえ、キノが振り向くと金髪でどこか人を見下したかのような態度をした少女がいた。キノは知らないが、彼女こそが一夏とクラス代表の座を賭けた対戦相手であるセシリア・オルコットだった。

 

 「そういえばあなた。この間の試合に出てた…ふふ、どんな人かと思えば男なんかに射撃を教えるなどとしているのでは、大したことはありませんわね。」

 

「はぁ、まぁ…」

 

 キノは適当に相槌を打ち、言いたい箏を言って満足したのかセシリアはどこかに去っていく。

 

「キノいいの? あんなこと言われて?」

 

「別に…それよりも…お腹すいた、早く食堂に行こうエルメス…」

 

 セシリアの言葉に気にしていない様子で、キノのお腹の音が鳴るのであった。

 

 その後、一夏はキノの射撃と箒の剣道の特訓を受け続けた。とにかく、やれることをやろうと必死になって鈍った剣の感覚を少しは取り戻し、慣れない銃の最低限の知識を頭に入れたが射撃の腕はまだ安定してない。

 

そして、日にちが経ち一夏にとって初のISの戦いが始まろうとしていたーー

 



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八話 一夏の初戦闘

「…結局一度もIS操縦できなかったな…」

 

 選手控え室にて、一夏がつぶやき。隣で箒がにらむ。

 

 一夏は箒から剣道を、キノから銃器の扱いを学びくたくたになりながらも、身を引き締め今はただ自身の専用機が到着するのを待つばかりだった。

 

(できる箏はやったんだ…負けたら二人に申し訳ない…)

 

 一夏がそんな箏を思っていた時、麻耶が部屋にやってくる。一夏の機体が届いたとの箏で三人は控え室からでて、アリーナに置かれた一体の機体が置かれていた。

 

「これが、俺の機体…」

 

 白式。文字どうり白色の機体は太陽の光に当たり光輝いているように見えた。

 試合開始までまもなくとなり、一夏は基本設定をする暇もなくいきなり本番で戦うこととなった。

 

(えっと、武器は…剣と、銃…これだけか…)

 

 白式に搭載された武器は二つ。

一つは、接近戦用のブレード「雪片弐型(ゆきひらにがた)」もう一つは、

六発式のリボルバー銃「カノン」だった。

 

「一夏…行ってこい!!」

「応!! 行ってくる、箒!!」

 

 箒の短い応援を受け一夏が気合を入れた後、ついに試合が始まろうとしていたーー

 

 

 

「キノ~~遅いよ!! 試合もう始まってるよ 」

 

「エルメス、人のいるところで声を出さない」

 

 周りの生徒に混じり、指輪のエルメスを伴ってキノも観客席に座る。

ちなみに簪はここにはおらず、理由はいまだに一夏を苦手としているからだった。

試合は始まったばかりらしく、二人のISのエネルギーはまだかなり残っていた。

 

(おにいさんと相手の金髪のお姉さん。どっちが勝つと思う? )

 

 今度は小声で質問し、キノは小さく負けるかもとつぶやく。

エルメスはさらに、どっちの方がと聞き、キノは一夏の名をあげた。

 

(え~~あれだけ剣と銃の練習したのに?)

 

 キノはエルメスの質問にそれ以上答えず、試合の方に目を向けた。

 

 一夏が対戦相手であるセシリアのIS「ブルー・ティアーズ」から放たれる

 BT(ビッド)攻撃をかわすのに精いっぱいだった。

 

 上や後ろからくるレーザー攻撃をよけるが、機体のあちこちにかすりエネルギーが減って一夏の方が不利になっていく。

 

 一夏も反撃しようと、カノンでBTを打ち落とそうとするが、なかなか狙いが定まらず何発か外してしまう。

 しかも、カノンには予備の弾丸がなく、搭載されている六発だけが頼りだったが、残っている弾は二発のみだった。

 

 残りの残数が心もとなく雪片を握りして振り落とし動きが止まっているBTを一つ破壊した。

 

(もしかして!!)

 

 一夏は何かに気づき、レーザーを回避し二つ目のBTを破壊した。

 動きが変わった一夏を見てセシリアは動揺し始めた。

 

「な、なぜです!? なぜ、こうも簡単に…」

「行くぞ!!」

 

 一夏が気づいたのはセシリアがBTを操作している時彼女の動きが止まり、逆に彼女が動いて攻撃している時はBTが動いていない箏だった。

 

 とにかくセシリアをかく乱させれば勝機がある。

 一夏は、再びBTを操作するセシリアに向けカノンを向け撃ち、偶然なのか弾丸がブルー・ティアーズに当たりエネルギーを大きく減らす箏ができた。

 

「なっ!!」

 

 一夏の攻撃が当たり、セシリアが動揺しその隙に一夏はBTを一つ、二つと切り捨て破壊した。

 

「そ、そんな馬鹿な!!」

 

 試合の流れがいつの間にか変わり、セシリアの周りにあったBTは破壊され、エネルギーもわずかだが一夏が優勢だった。

 

「行ける…箒やキノさんに教えてもらったことは無駄じゃなかった」

 

心の中で、自分に力を貸してくれた二人に感謝し手を開いて閉じて剣を再び握りしめた。だが、管制室にいた千冬は舌打ちをした。

 

「あの馬鹿、浮かれてるな」

 

 姉である彼女は、弟の癖を見抜いていた。余裕のできたときにする手の動きを見て、

 一夏自身が完全に油断している箏に気づいていなかった。

 

 そして、勝つためにセシリアに向けとどめの一撃を下そうと急接近したところで

 

「かかりましたわね!!」

 

 セシリアが叫び、二つの新たなるBTが出現しミサイルが白式を襲うのであったーー

 

 

(あ~~あ、お兄さん負けちゃったかな)

 

 ミサイルの直撃を受け、煙の中から白式が出てこない。誰もが一夏の負けだと思う中、キノは何も言わずずっと煙の中にいるであろう一夏を見続けて、変化が起こる。

 

「あれは…」

 

 煙から出てきた白式は、光を放ち前と少し違う形をしていた。

 この時観客達は知らなかったが、一夏の機体はまだ基本設定ができていなかったのだが。ついに設定が完了しこれで白式は完全に一夏の物になった。

 

 

「俺は、勝たないといけないんだ…」

 

 

 一夏は右手に雪片、左手にカノンを握り再びセシリアに特攻する。

 

 ミサイル搭載型のBTには弾がなくすぐに破壊され、彼女は残された射撃武器で一夏を狙うが一夏がカノンの引き金を引き、最後の弾丸がセシリアの手持ち武器スターライトブレイカーMKⅡの銃口に入り爆発を起こした。

 

「きゃぁぁ!!」

 

「うおぉぉぉぉ!!!!」

 

 爆発が起こる中、一夏はカノンを捨て一気に雪平に全てのエネルギーを注ぎで大きな光が生まれた。

 

 

「これで終わりだ!!」

 

 一夏が叫びブルー・ティアーズの装甲を切りつけようとし、観客達が息をのんで見守る中ーー

 

 「勝者、セシリア・オルコット」

 

 と、コールが鳴り響いたーー

 

 

 



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九話 姉と妹

 「...まさかエネルギー切れで負けになるなんて」

 

 

 一夏の試合が終わり数分後、キノは一人で寮の屋上でエルメスと先ほどの試合について話していた。既に日が傾き、夕日の光で輝く海を見ながらキノは手すりに体を預ける。

 

「お兄さんの持ってた剣は、エネルギーをだいぶ使う武器だったんだよ。

 まぁ、本人は知らなかったみたいだけど」

 

「ふ~ん」

 

「けど、一応。うさぎのお姉さんにも連絡したけど、怒ってなかったし。

 それに訓練もしてあげたからキノの株も上がって一石二鳥だね」

 

「…あれ、間違えてない」

 

「失礼な」

 

 キノは軽く笑いながら、指輪になっているエルメスを軽くこする。

 

「結果はどうあれ、あの人との約束は少しは果たせたかな? 」

 

「そうだね、ISがあれば襲われても自分で…」

 

 とエルメスが言葉を切り黙ってしまう。キノは眉をひそめ指輪をしまって立ち上がり、屋上の出入り口のドアを警戒するとーー

 

「そんなに警戒しないでよ~~」

 

 ドアが開き、一人の女生徒が姿を表した。

 その女生徒は、簪の姉である楯無で扇子を口元を隠しながらキノの前まで近づいてきた。

 

「こんなところで一人で何をしていたの?」

 

 彼女に質問にキノは、落ち着いた様子で風景を見ていたと告げるが楯無は目を細めてさらに話しを続けた。

 

「そうなんだ? 最近、簪ちゃんの様子が変わったみたいなんだけど一体何があったのかな? できれば、教えてほしいの」

 

「えと、ボクは簪さんのISの制作の手伝いをしているだけですよ、それに他の整備の人達にも…」

 

「ふ~ん、そうなんだ…ところで、織斑君に銃器の使い方を教えたって君だって本当? どこで使い方を学んだの?」

 

 楯無の目が変わる。キノは楯無が何かを聞き出そうとしている事に気づき、教科書やネットで調べたとごまかすが、盾無の疑いの目は変わらない。このまま夕食の時間ですので と言ってその場から去ろうかとキノが思っていたその時。

 

「キノさん…っ!?」

 

 屋上に出てきたのは簪だった。簪は、キノと盾無を見て固くなるが、すぐに怒りの表情を露にキノの手を取る。

 

「キノさん、行こう」

 

「か、簪ちゃん!!」

 

 盾無が声をかけるが、簪は無視し早足でキノと共に階段を降りていってしまう。残された盾無はその場で俯きやがて日が落ていくーー

 

 

 

 場所は食堂に移り、二人席でキノと簪が食事を摂っていた時だった

 

「ねぇ、キノさん…姉さんと何を話してたの…?」

 

 簪の質問にキノは、盾無から最近の簪の様子を聞かれただけと答える。

 

 上着のポケットに入れてあるエルメスが小声で「姉妹喧嘩かな?」と呟くが、誰も答えない。

 

 その後、二人は夕食を終え今夜も簪の専用機の作成作業の予定のため二人が整備室に行こうとすると

 

「あ、キノさん」

 

 一夏に声をかけられ、キノの隣にいた簪の目が険しくなる。

 

 一夏は、試合に負けた事の謝罪と銃器の練習の礼を伝えた。

 さらに、この後食堂でパーティがあるとの事で、キノは誘いを丁重に断り整備室にいく。

 

「….」

 

「簪、落ち着きなよ。ここでお兄さんを恨んでもどうしようもないじゃないか」

 

 辺りに人がいないため、キノの首にかけていた指輪のエルエスが簪をなだめる。

 

「じゃ…」

 

「ん?」

 

「また、調べさせて、そうしたら、落ち着くかも…」

 

 簪の言葉を聞き苦笑するキノと、うんざりした声を出すエルメス。やがて整備室に入ると既に準備ができており、作業は深夜まで行われたのであったーー

 



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十話 鈴とキノ

 キノの旅アニメ化しましたね(今さら)

 こっちの方も、メインヒロイン達とバトルしたり、千冬と××したりと

 考え中です。


 セシリアと一夏の試合が終わり、翌日。

 

 一組の教室では、勝ったはずのセシリアが一夏や日本を侮辱した発言を謝罪し、一夏もクラスメイトたちはそんなセシリアを見捨てず受け入れる。

 

 さらに、セシリア自身がクラス代表を一夏に譲り、放課後に一夏のクラス代表のお祝いをするとのことで、一組は少し騒がしかった。

 

 同じ頃、キノのいる四組でもクラス代表の話があったが。既に簪がその席におり、別段変わった事はなかった。その後キノと簪は授業が終わると、二人で寮に向かう。。

 

 まだ周りには人がおりエルメスは黙りながら二人の話を聞きながら「暇だ」と何度もぼやいていた。

 

「ねぇ、あんた達」

 

 二人に、小柄の少女が声をかけてきた。大きなバックを持つ少女は「事務室はどこにあるのか?」と聞いてきて、簪は視線をそらしキノが答えた。

 

「そう、ところでさ。織斑一夏ってどこのクラス?」

 

「一夏さんですか? 彼なら一組で、ボクたちとは違うクラスですけど」

 

「ふぅん、そう」

 

 少女がつぶやき、キノに教えられた道を行きキノ達は自室に戻った。

 

「簪さん、今日はどうしましょうか?」

 

「今日は、これを見ようと思う」

 

 DVDボックスを取り出し、テレビにDVDをセットすると特撮物が流れ始め二人は夢中になって鑑賞する。最近になって、簪の趣味が特撮物だった事から時折キノも一緒に見るようになりエルメスも時折声を出しながら観ていた。

 

「キノも変身できればいいのにね? そうしたら銃を撃ち放題で、いつでも敵を殲滅するヒーローの出来上がりだよ」

 

「殲滅って、それじゃ完全に悪者だよ」

 

「じゃあ、キノと簪はどんなヒーローになりたいの?」

 

 エルメスの質問に二人は少し考えて、

 

「ボクは…毎日ご飯とお風呂に困らないヒーローならいいかな」

 

 先にキノが答え、簪が苦笑した。

 

「それじゃ、今の生活と変わらないじゃないの?」

 

「あぁ、そうか。じゃ、ボクは一応ヒーローって事なのかな?」

 

「それ、ヒーローじゃないような気が…」

 

 簪が小さく突っ込むと、キノと簪が笑い始める。

 

「じゃ、簪はどんなヒーローになりたい?」

 

「私? 私は…」

 

 エルメスの質問に簪は黙ってしまった。簪は自分がヒーローになる事なんて考えたことがなく、むしろヒーローに助けられるヒロインになる事に憧れていた。そのためどう答えればいいのか分からず黙ってしまい、テレビ画面ではヒーローがヒロインを助けるシーンが流れるーー

 

 

 時を同じくして、食堂では一夏の就任祝いが行われていた。クラスメイトたちから質問やら受け、箒やセシリアが不服そうな顔をしていた。

 

「ところで、織斑君ってどこで射撃を習ったの?」

 

「射撃は、四組にいる人が…キノさんって人に教えてもらったんだ。あの人に教えてもらってなかったら、もっとひどい形で負けてたと思う」

 

 一夏の一言に黄色い声が広まる。だが、同時に箒とセシリアの目つきが変わり。

 さらに、食堂の外で一夏を昼間にキノ達と会った小柄の少女。鈴が拳を強く握りしめ見ていた。

 

「へぇ…」

 

 暗い目をしている少女こと鈴も、一夏の親友の一人で今は中国の候補生の一人だ。

 そして、そんな彼女は何かを決めたかのような目つきで静かにその場から去る。

 

 その後は、記念撮影をしてお開きになるが翌朝――

 

 

「ねぇねぇ!! 一組の織斑君に射撃を教えたのって本当なの?」

 

「はい?」

 

 何故か一組の子が、四組のキノを訪ねて来た。一夏が祝いの席で口にしたことをさっそく聞きにきて、キノは肯定しあくまでも基礎しか教えきれてない と付け加えて説明した。

 

「そりゃそうだよね、四組の代表の人とすごい試合してたんだもん」

 

「ねぇ、今度私にもいろいろ教えてよ!!」

 

「は、はぁ…」

 

 いつの間にか四組の子までもが話に入り、一夏の発言のせいでキノは余計に注目されてしまい、さらに簪が不機嫌な顔をする。

 

 その後も、簪の機嫌が戻らずキノが声をかける前にどこかに行ってしまい、キノが首をかしげると「嫉妬しているね」とエルメスがキノに伝え、キノは簪の不機嫌に何となく気づき無理に声をかけなかった。

 

 簪がいないままキノは食堂に一人だけ入ると、食堂の入口に食器を持った女性が立っていた。

 

「あんた昨日の…」

 

「はい?」

 

 鈴がキノに近づく。

 

「黒髪にズボン…ねぇ、四組で一夏に銃を教えたのってあんた?」

 

 キノは「そうですが」と答え、鈴が目を細めキノを見る。

 

「ねぇ、あんた一夏はどういう…」

 

 関係か と聞こうとしたが、キノの背後から一夏と箒。さらにセシリアが来る。

 

「お!! キノさん!! それに鈴!!」

 

 一夏はキノと鈴を見かけ声をかけて箒とセシリアが一夏をにらむ。

 

 鈴はキノをにらみ空気が悪い中、会話に入ることができないエルメスは内心

「これは波乱だね」とつぶやく中、四人は一つのテーブルを取り席について話はじめた。

 

 箒達から鈴の事を説明を受け、鈴の紹介をし。次に、キノの話となった。

 

 訓練をつけてくれた事を話す一夏は気づかないが、三人はキノを「新たなライバルか?」と疑いの目をしていたが、キノは手元のカレーを食べる手を止めないまま話を聞く。

 

「そ、そうでしたの…初心者の一夏さんがあそこまで戦えたのは、あなたが...」

 

 セシリアが言葉を震わせ、つぶやく。箒は、以前事務室でキノに倒された事をまだ根に持ち、一言も話さない。

 

「ま、まぁいいわ。ところで一夏。あんた、部屋はどこなの?」

 

 一夏は鈴の質問に、箒と相部屋で使っていると答えると鈴は何かを閃き笑みを浮かべた。

 

「ふぅ、疲れた…」

 

 昼食時の気まずい空気と、簪の不機嫌。さらに授業の疲れでため息を吐き出すキノ。食堂が混んでおり、簪は整備室にいるため一旦寮に戻ると、近くの部屋から声が聞こえ、突然。

 

「この、馬鹿!!」

 

 と、鈴が叫び部屋から飛び出すのが見えたーー

 

 

 

 事の原因は、鈴が箒と部屋を変える提案をしてきた事が始まりだった。もちろん、箒は頑なに拒否した。

 

 さらに鈴は昔一夏に告げた「約束」を聞くが、どういう訳か彼の中では

 「酢豚を作ってくれる」と勝手に変換され、これには彼女は怒り部屋を飛び出して、屋上で鈴は一人ベンチに座っていた。

 

「馬鹿馬鹿…」

 

 一夏に対する恨み言を呪詛のように唱えていると扉が開き屋上に来たのは

 

「あんた…」

 

「あ、どうも」

 

 ビニール袋を持ったキノだった。食堂が混んでいたせいで、食べることができなかったのと、簪がいつもより早く部屋に戻り気まずかったため屋上に来たキノ。

 

 目が合った二人は少しの間静かになるが、キノはビニール袋からおにぎりを出し「食べますか」と鈴に差し出した。

 

「たくっ!! 本当に、あの馬鹿!! ありえない!!」

 

 ベンチに座ったキノは、鈴の愚痴を聞いていた。相槌と返事をして鈴が怒りに任せた食べた物を片付ける

 

「ふぅ、なんか馬鹿らしくなってきた…」

 

 キノに愚痴を聞いてもらい、気持ちが落ち着いた鈴。と、彼女はふとキノを見て口を開く。

 

「ねぇ、あんた…一夏のこと。どう思ってんの?」

 

「? どう思って…」

 

 キノは少し考える。キノが学園にいる理由は、支援してくれる束の依頼で一夏の身を守ることだ。鈴の思っているような一夏を「異性」としてではなく「護衛対象」としか見ていない。

 

「真面目でいい人だと思いますよ」

 

「そ、そう…」

 

 キノのあっさりとした言葉に鈴は少し肩透かしを受け、キノから視線をそらした。一夏を狙っている鈴は心の中で「もしかしてキノは一夏を狙っていないのか?」と思い少し安心したのか息を吐く。

 

「その、なんかごめん。愚痴に突き合わせて」

 

「いえ、大丈夫ですよ。ただ、話を聞いてみてボクは鈴さんの酢豚を食べたくなりました」

 

「そう? まぁ、愚痴を聞いてくれたし、今度作ってあげるわ」

 

 鈴の提案にキノは「楽しみです」と答え、日が落ちる頃になって二人は屋内に戻った。

 



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十一話 依頼

 一夏と鈴の喧嘩から翌日の朝、キノは食堂にいた。

 

「さて、どうしたものか…」

 

 朝日を受けながら背伸びするキノ。

 

「一夏さんの方は様子見を続けるとして、他にボクにやる事ってあるのかな?」

 

 束からの依頼で、エルメスをISに改造して一夏の護衛のためこの学園に来たのだが正直あまりやる事がない。世界中から生徒が集められたこの学園では警備もそうだが、学生も何かしらの訓練を受けており普通に「敵」はいなかった。

 

「いいんじゃない? せっかくの学校なんだし、もっと楽しめばいいよ」

 

「確かに、ここだと弾薬は使い放題で練習はできるけど…」

 

「もしかして、いつもの「一つの国には三日だけ」 ってルールが気になるの? 

 まぁ、確かに元の世界に帰るのが三年後かもしれないし。最悪、この世界で暮らしていかないといけない事も考えないとだし」

 

「それは…そうだね」

 

 エルメスの言葉にうなずき、コーヒーを一口飲み考えこむキノ。

 

 発明の国で注意を怠りこんなことになった自分も悪いが。知らない世界に来れたのもいい機会かな とつぶやくと誰かが近づいてきた。

 

「あ、キノ」

 

「おはようございます、鈴さん」

 

 昨日の屋上の一件から仲良くなった鈴にあいさつした。

 エルメスは黙り、鈴がキノの隣に座る。二人は朝食を食べ、今日の授業や昼食を一緒に食べる事を話していると、簪が食堂に入ってくる。

 

 キノの隣に座る鈴に簪はどうしたらいいのか と目をそらすと鈴が声をかけ彼女を席に座らせた。

 

「あんた四組の候補生よね…?」

 

「う、うん…」

 

 そこで、鈴と簪の二人は互いに自己紹介し朝食が少し和やかに過ごすことができた。

 

 午前中は座学を受け、時折会う一夏や鈴達と少し会話し昼食もキノ、簪、鈴の三人で過ごすが。

 

 そこで、鈴から明日。一夏と試合をすると聞き食事をする二人の手が止まった。

 

「えと…いきなりですね。ちなみに、一夏さんの方は了承されたのですか?」

 

「あたり前よ!! 明日、絶対に勝ってやるんだから!!」

 

 一夏の名前を聞き眉を動かす簪と、明日の試合に向けて意気込みを話す鈴。

 

 旅の中であまり話す機会がなかった同性で同い年との会話にキノは笑みを浮かべながら鈴に「頑張ってください」と伝える。

 

「ちなみにキノ。もしアイツがあんたに教えをこいてきたら…」

 

「やめておいた方がいいですか?」

 

「別構わないわよ。今日一日の付け焼刃程度で私は負けないし」

 

 鈴の自身にあふれた表情に「そうですか」と答えキノが横を見ると不機嫌になった簪と目が合う。

 

「あの、簪さん?」

 

「…ふん」

 

 自分には関係ない と雰囲気を出し食器を持ち席から離れてしまった。

 

 さすがにこの話はダメだったか とキノが思っていると、突然端末にメールが入り鈴に一言告げ食堂から離れトイレの個室でメールを開く。

 

「束さんからだ…明日の試合で、エルメスを使う?」

 

 送られたメールを見てキノがつぶやき、「あ、やっと動ける」とエルメスが声を出した。

 

 

 放課後、アリーナにて白式を装着した一夏は箒とセシリアの二人を相手に苦戦していた。

 

「ちょ!! 待て!!」

 

「何をしている!!」

 

「明日まで時間がないのですよ!!」

 

 箒とセシリアは無理やり一夏をアリーナに連れ込み「鍛えてやる」とやる気に満ちていた。最も、一夏は箒達の「キノや鈴に取られたくない」思惑には気づいておらずひたすら二人の攻撃を回避し、剣で受け止めるなど「実践」を受け翌日――

 

 

 放課後のアリーナでは肩に大きなパーツを装備した甲龍(シェンロン)をまとう鈴と

白式を操縦する一夏が対峙していた。

 

「一夏!! 覚悟しなさい!!」

 

「だから、なんで怒ってんだよ!?」

 

 鈴の気持ちが分からないまま二人の試合が始まる。観客席にいる箒とセシリア達と離れた場所でキノは観戦していた。甲龍(シェンロン)から放たれる空気の弾丸を受け、ダメージを受ける白式。

 

「あの武器って一体なんだろうエルメス…って、そうだった」

 

 キノは思い出したかのように自分の手を見る。いつもつけている指輪は今はなく、キノはアリーナから離れた。

 

「当たれ!!」

 

 一夏がカノンの引き金を引くが、弾丸は甲龍に当たらない。経験値の差が明らかに出ていることに、鈴は感じこのまま勝てると獲物である双剣を器用に回し止めを刺そうとした時だった。

 

 突然、上空から黒い物が落下し。アリーナ中に警告が流れる。

 

「な、なんだ!?」

 

「ISなの?」

 

 黒い物体は、不気味な目を光らせ二人を見つめる。

 

(ごめんねお兄さん、これは依頼だから)

 

 黒いISことゴーレムが、いやエルメスが誰にも聞こえない声でつぶやき一夏達に向け攻撃を始めたーー

 



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十二話 ゴーレム

 更新遅くなってしまいましたが、今回はエルメスの無双となります。


 

 「さて、うまくやってるかな?」

 

 防衛でアリーナの扉が閉まる前に、先に建物の外に出たキノがつぶやく。

 周りでは避難してきた生徒や、扉を開けようとしている教員たちが騒ぎキノはアリーナから離れていく。

 

 一方で、アリーナに突如侵入した謎の機体ことエルメスは、片腕を上げレーザーを撃ち一夏達に攻撃していた。

 

(それにしても、お兄さんを強くするためにゴーレムを使うのはいいけど。学園のシステムをハッキングしたりすごいことするね)

 

 束からの指示で「一夏の特訓」のため大がかりな事をした彼女に対し、ゴーレムに意識データを組み込まれたエルメスが内心つぶやく。

 

 本来このゴーレムと呼ばれる機体は、史上初の無人機なのだが、何故かモトラドの構造を熟知していた束の手により多少時間がかかったがエルメスの意識を移すことで、エルメスは初めて「体」を手に入れることになった。

 

 

(まぁ、こっちは試運転できるからいいか)

 

 レーザーをわざと狙いを外し、一夏と鈴を見る。

 

「なぁ? 鈴。さっきからあいつ動きが変だぞ?」

 

「はぁ? 何言ってんのよ?」

 

 二人のやり取りを聞きながらも、エルメスは二人の機体の残存エネルギーを確認し、

もう少しだけなら戦えると判断し、その場から動かない。

 

「ここから狙えるか...くっ!!」

 

 一夏がカノンを取り出し、引き金を引こうとするが狙いを定める前にゴーレムからのレーザーが飛び慌てて回避し鈴は援護のため肩の砲口から空気の弾丸が放たれるが、

エルメスはブースターを吹かせ回避する。

 

「くっ!! 動きが早い!!」

 

 二人の攻撃を難なく回避し二機と一機の戦いが続くが、一夏の鈴の機体からアラームが鳴りエネルギー切れを起こしかけていた。

 エルメスも、二人の様子には気づいておりそろそろ撤退しようかと考えた時ーー

 

 「一夏!! 何をしている!!」

 

 二人と一機が声をした方を向くと、指令室にマイクを持った箒の姿があった。箒は、声を張り上げ一夏に喝を入れる中

 

 (あ~今の内に逃げようかな?)

 

 と、背中を向けると一夏が「逃げるな!!」と叫びブースターを全力で吹かせ雪片を振り上げる。

 

「うおぉぉぉ!!」

 

 雪片をゴーレムめがけて振り落とすが、エルメスはブースターを最大にして横に回避し一夏の渾身の一撃をかわした。

 

「なっ!?」

 

 急速な動きで避けたゴーレムに鈴が驚きの声を上げた。あんな無理な動きをすれば、中にいる操縦者に大きな負担がかかるはずなのだが、ゴーレムはそんな様子もなくアリーナから飛び去っていく。

 

「逃がすか!!」

 

 一夏が後を追おうとしたが、そこで白式の限界が来てしまい飛ぶどころか動くこともできなくなった。鈴の方も同様で、二人は飛び去っていく黒い機体の後ろ姿を見ることしかできなかったーー

 

 

 (さて、ここらへんでいいかな?)

 

 アリーナから離れた倉庫の裏にてエルメスは着地するとすぐに待機状態である指輪に姿を変え地面の上に落ちた。

 

 「お疲れ、エルメス」

 

 そこにキノが現れ、指輪を拾い声をかけるとエルメスも返事をかえす。

 

 「どうだった? 初めての戦いは?」

 

 「まぁまぁかな...と」

 

 エルメスは言葉を切り黙り、キノが上を見ると青い機体が飛んでいるのが見え静かにその場から立ち去ったーー

 

 

 

 

 

 

 



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番外編
番外編 1 旅人と淑女


 これは学園の食堂で一夏達とキノが食事をしていた時だった。

 

「そういえば...キノはよく食べるよな」

 

 ふと、一夏がつぶやき箒達が箸を止め注意する。年頃の少女に向けて失礼だ と注意を受け一夏が謝るがキノは気にしてないと答えた。

 

「たしかに、お兄さんの言うとうり。キノは食べ物が美味しかった国に行ったらお腹が限界になるまで食べてたしね」

 

「そうなのか? エルメス?」

 

 すでに知られている指輪のエルメスが答え、ラウラが反応した。ISや格闘戦で戦ったライバルの意外な一面が知れ意外な声を出す。

 

 鈴やシャル。セシリア達もこのメンバーで食事をし始めた時から今日までの事を思いだすと、キノは確かに自分達より多めに食べていたな と思いだしキノの体を見る。

 

「...あんた、それ太らないの?」

 

「え? まぁ、ISの授業とかで動いてますし大丈夫だと思いますけど」

 

 鈴はキノの体の、特に胸部をにらみ自分の物と比較して何故か肩を落とし、シャルが鈴を慰め始める。キノは頭に? を浮かべつつ汁物をすすって食器が空になったところで隣に座る簪が声をかける。

 

「キノさんは、元の世界でも...こんなに食べてたの?」

 

「まぁそうですね...国によっては無料で食べれるところがあって、その時は悔いの残らないようにしっかりと食べてますね」

 

「もう、あんまり食べすぎたら体壊すよ? 腹八目に、ナニいらずって言うし」

 

 エルメスの言葉に、一夏達が黙りキノが「それって、腹八分目に医者いらず?」と答える。

 

「そうそうそれ!! お腹壊したら授業もでれないし、戦えないから気をつけてよ?」

 

「はいはい、分かったよ」

 

 エルメスの間違ったことわざにシャル達が苦笑いを浮かべるが突然セシリアが 

 

「いいえ!! 食事と体型の維持は淑女のすべきことですわ!! 」

 

 いきなり席から立ち上がり周りが驚くが、セシリアは気にもせずキノに向け指をさす。

 

「いくら戦闘が強くても、あなたには重要な物が欠けています!! それは...女性らしさですわ!!」

 

「え?」

 

「ですから!! キノさん!! あなたには、女性としての自覚が足りないと言ってますの!! 銃の扱いやISが良くても女性としてはそのままではダメなのですわ!!」

 

 セシリアの言葉を受け特にショックを受けた様子もないキノ。だが、周りの少女達はセシリアの言葉を受けキノを観察する。

 

 ぼさぼさの短い髪。スカートをはかずにラウラと同じズボンを穿き男と間違いやすく、制服の上着の下には銃器を隠しもち、服や靴などあちこちにはナイフを隠し持っていた。

 

 おまけに料理は...とある教師が口にして三日も倒れこんでしまうなど伝説を作ってしまっていた。

  

 これには、セシリアと一夏以外の少女達は頷いてしまっていた。

 

「今日はもう授業がないのは幸いでした、さっそく指導を行いましょう」

 

「え、え?」

 

 キノが戸惑う中、セシリアを主体とした「キノの改造」(仮)が始まった。

 

「最初は見た目からですわ!!」

 

 セシリアの部屋にて、ぼさぼさの髪が整えられ顔には化粧品が塗られ肌がきれいになる。普段から化粧品や髪を丁寧にしなかったキノは慣れず何度もため息をつく。

 

「次は服だね」

 

 今度はシャルの部屋にて、制服を合わせる。ちゃんとした女子用の上下を、もちろんスカートも用意しキノは丁寧に断るが、ラウラと鈴に体を押さえられ着替えさせられる。

 

「最後は、姿勢...かな?」

 

 茶道部の部室にて、髪を整え女子用の制服を着込んだキノに箒と簪が指導する。慣れないスカートに困惑しながらも一人称のボクから私に、座り方から姿勢など注意される。

 

「どうキノ? 慣れてきた?」

 

「いや、とっても難しい...」

 

 同級生たちからの女子としての指導を受けキノは大きく疲れまじりのため息をついた。 

「そんな事では立派な淑女になれないわよ!!」

 

 と、部屋の扉が大きく開かれ楯無が入ってくる。手に持つ扇子を広げ「淑女育成」と書かれていた。

 

「キノさん、これまでの旅の経験で戦闘やISは確かに強い、けど!! 強いだけが女の子じゃないの!! だから、お姉さんが心を鬼にして協力してあげる!!」

 

 芝居がかかった口調と、目と顔が「面白そう」と書かれていることに周りの人間が察知した。

 

「それでは、まずはお姉さんが手取り足取り...」

 

 

「なんだ、やけに騒がしいと思えば。何をしている小娘ども」

 

 部室の空気が変わり、この部室の長である彼女。千冬が部室に入り扉を閉めたーー

 

 

「あ、あの織斑先生...これは...?」

 

「お前は茶道をしらんのか? 」

  

 一夏が質問するが着物に着替えた千冬が短く答え茶を湯出ていた。何故かキノの淑女指導から千冬の茶道教室にシフトチェンジしてしまい、一夏含め全員緊張している。 

 

 一方、茶道が珍しくキノは黙って千冬を見つめていた。元の世界で命の恩人である師匠と同じ雰囲気を持つ千冬には一夏達と違い落ち着いていた。

 

 やがて、千冬から皆に茶を配られ緊張しながら飲み終えと

 

 「なんだ、お前がその恰好は珍しいな。明日からそれで通学するか?」

 

 「いえ、できればそれは...」

 

 「教師命令だ、それで登校しろ」

 

 職権乱用だ と一夏達の心の叫びが一つになる。キノは困った顔をし千冬を見るが、千冬は鼻で笑い「冗談だ」と言い、普段から苦手意識のある楯無や一夏達が驚く。

 

 「さて、実は職員会議までまだ時間があってな。それまでに、何か暇つぶしの話を聞かせろ」

 

 「え? じゃなんで着物に着替えたんだ?」

 

 一夏のつぶやきは無視され、巻き添えをくらってもやもやしていた楯無もキノの話に興味を持ち顔色を変えていた。

  

 「あぁ、キノ。お姉さんは暇潰しにキノの旅の話が聞きたみたいだよ」

 

 「はぁ...確か前は爆弾を売っていたお店の話をしましたね...それじゃ...」

 

 それから、茶道部の部室では千冬の会議の時間になるまでキノの旅の話となった。

 余談だが、いつの間にか撮られていた制服姿のキノの写真が何故かクラス中に広まり翌日からキノにスカートを穿かせようと女子たちが動き、キノの淑女指導が明後日の方向になったまま終わるのだったーー 

 

 

 

 




 久しぶりに書いてみました。
 誤字などありましたらすみません。


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番外編 2 三者面談

 


 職員室の隣にある応接室。そこに、小さく縮こまって席に座るキノと、二人の大人がいた。

 一人は、何故か一組の担当教師であるはずの千冬。そして、千冬の向かいには長い白髪を一つにまとめた老婆がいた。

 

 「お忙しい所すみませんでした」

 

 老婆が千冬に向け頭を下げる。千冬は「気にしなくていい」と答え、キノは額に汗を流しながら視線をそらし、隣に座る老婆を恐れていた。

 老婆…キノを鍛えた女性こと師匠は、キノの学園での生活態度や成績などを聞き時折うなずく。

 

 ただの三者面談にしては、まるで戦場のような空気が流れ。キノと指輪のエルメスは沈黙を続ける。

 

「そうですか…弟子がお手数をおかけして…」

 

「まぁ、最近では私のクラスの者と…」

 

 千冬は一瞬。悪い笑みを浮かべ最近、箒達と少しもめた事に触れると師匠は横目でキノをにらみ、キノは背筋を伸ばした。

 

 そんな会話を、扉の向こうで聞き耳を立てる人影が8つ。

 突然現れた、キノの保護者を名乗る師匠と千冬の会話が気になっている一夏達。

 

 「うわっ…千冬姉ぇ…絶対楽しんでるよ…」

 

 一夏は、千冬がわざわざ四組のキノの面談に入った理由を察した。

一つは悪戯心だがもう一つは、おそらくキノが料理した物を口にして、死にかけたことへの仕返しだろう(この事件は学園の伝説にもなった)

 

「変だ。教官、の声が楽しんでいるように聞こえる…」

 

「えと、あいつ死なないよね?」

 

 ラウラがいつもと違う千冬に身を震わせ、鈴達がキノの身を心配した。

 

 (あの子の師匠ね…)

 

 一人、一夏達と交じりキノと師匠について調査していた楯無。師匠から感じる普通ではない気配に警戒しいつもの笑みはなかった。

 

 と、突然部屋の中から声が聞こえなくなり、何があったのか耳を見ると、突如扉が開かれる。

 

「何をしているこの馬鹿どもが」

 

「「「「「「「「あっ!!」」」」」」」」

 

 開かれた扉から千冬が姿を現し、8人は逃げる暇もなく部屋の中に連行されるのであったーー

 

 

 

「改めまして、私がキノの保護者です。名前は…師匠とお呼びください」

 

 部屋の隅に立たされた8人に向け師匠が丁寧にあいさつを告げる。一夏達は、師匠を前にして千冬と同じ空気を、強者の雰囲気を持つ師匠に緊張した。

 

「…」

 

 キノは一夏達と目を合わせず無言を続け、師匠と千冬の会話が再開される。

時折、一夏達の不祥事やキノの話になるたびにそれぞれが気まずい表情をうかべ数分が経つ。

 

 今度は学友からの普段のキノの様子を聞かれ、一夏は射撃の先生。箒は前までは気に入らなかったが今は仲間であると答える。他の少女達も、よきライバル。大切な友人・後輩と言い師匠は頷いた。

 

「…キノ」

 

 師匠がキノの前に立ち、キノの肩に優しく触れる。

 

「どうやら、旅だけでなくこの学園の方もうまくいっているみたいですね。私も安心しました」

 

「師匠…」

 

 師匠の優しい目にみつめられ、肩の力を抜くキノ。旅に出る際、あらゆる物を勝手に持ち出して、この世界で再開した時はゴム弾を額に受けた。この後、撃ち殺される事を覚悟したがそれが杞憂だと感じ息を吐く。

 

「まだまだ未熟な弟子ですが、どうか皆さんよろしくお願いします」

 

 師匠の言葉に、一夏も慌てて返事する。さっきまでの緊張が解け、9人は安心するが

 

「さて、面談を盗み聞きした分と中断させた罰がまだだったが…」

 

「ちょうどいいですわ、キノの実力も見たかったので」

 

「私も、こいつらの実力が知りたくてな…」

 

 二人の最強(最凶)が何やら物騒な事を言いだし、キノや一夏達の顔が青ざめる。

 

「ちょうど、体育館が空いてまして、そこならぞんぶんに…」

 

「あら、それはちょうどいいですわね…」

 

 数時間後、貸し切り状態の体育館にて銃声と複数の悲鳴があがる。

 9人の生徒達は、二人の女性と生身での戦闘訓練との事で模擬弾や竹刀の餌食となり

翌日ボロボロの姿で教室に姿を現すのであったーー

 

 

 

 

 

 

 

 



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番外編 3 優しい国の種

 一応、報告でセシリアと一夏の試合結果を変えました。

 後、この話は優しい国を見た後で思いついた物です。


 日曜の朝。キノはエルメスに粒子化していた荷物を出し、整理していた。

 

 「本当に便利だ。旅の荷物まで入るなんて。元の世界に戻っても、エルメスはそのままでいいじゃないかな?」

 

 「やめてよキノ。モトラドは走ってこそだよ」

 

 冗談だよ、とキノは答え衣類や火薬など異常がないか見ているとカバンの端に封筒があるのに気づく。

 

 キノは封筒を開け、中には数枚の紙と小さな種があった。

 

 「...」

 

 「そういえば、それまだ持ってたね」

 

 キノは種を見て、大きな息を吐き出し天気の良い窓の外を見た。

 

 「エルメス」

 

 「ん?」

 

 「ボクが今考えている事、当てようか...もしも。あの時。さくらちゃんをお預けされて、旅をして、この世界についてたら、さくらちゃんをこの世界に住ませようと考えていた」

 

 「そうだね、けど。もうどうすることもできない」

 

 「エゴだ、何もかもエゴだ...」

 

 キノが短くつぶやくと、部屋の扉が開き、簪が帰ってきた。さらに、後ろには鈴とシャル。ラウラ。そして簪の姉である楯無も部屋に入る

 

 「ん、荷物なんて広げてどうしたの?」

 

 鈴が聞くが、そこで五人はキノの悲しそうな目に気づき、四人の目線はキノの持つ種に集まる。

 

 「ん? どうした?」

 

 「キノ、さん?」

 

 「えと、何かあったの?」

 

 ラウラだけでなく簪とシャルが聞き、キノは「旅をしていた時の事を思いだしました」と答える。

 既に、一人と一台が別の惑星から来た旅人だと一夏含め何人かは知っており、キノの話す旅の話は楽しみにしていた(ある女教師も)

 

「ふ~ん、で。それってどんな話?」

 

「そうですね...」

 

 キノは一度、言葉を切り

 

「今まで訪れた国の中で、一番だった。他の旅人たちの分まで優しさを持った国です」

 

 この世界で出会った五人の友人たちに語り始める。

 

 旅人たちの間で、評判がとても悪い国があった。

 

 キノは興味本位で、その国に行くが何故か噂と違い国の人々はキノを優しく迎え入れた。

 そこで、ある一人の少女と出会い、三日間。その国を案内してもらい最高の思い出を作ることができた。キノは、居心地のよいその国に滞在延長を希望したが受け入れられず、出国した。

 

 そして、国を出た翌日。

 

 その国を火砕流が襲い、国を一瞬で滅ぼしてしまった。

 

 キノは、国を案内してくれた少女の母親からもらった手紙を読み、この国の人々が迫害された歴史を持ち、それゆえよそ者を嫌っていた事。

 

 そして、火砕流が起きる事をしり国中の人間は国と共に運命を共にすることを選び、誰かの記憶に残りたいと強く願うがこれまでのよそ者を嫌う風習のせいで誰も国に来ず、

諦めかけた時にキノが来たことに大きく感謝したことが手紙にあった。

 

 そして、母親の手紙と一緒に。案内をしてくれた少女から、結婚式でキノが拾ってあげた種を手紙と共にあり旅の成功と、自分達を忘れないで と願いが書かれていた。

 

 キノの話を聞き四人は黙っていた。そして、いつしか五人の目から涙が流れ、話が終る頃には昼になっていた。

 

 「そんな...」

 

 「なんでよ、なんで...その子、死ぬのが分かってたのに...」

 

 国の人々が選んだ道と、キノに種を渡した少女の選択に五人は胸をえぐられる気持ちで一杯だった。

 

 「仕方ないさ、どのみちキノと共に二人で旅なんて無理だったんだ」

 

 エルメスが言うが、誰も答えない。

 

 だが、楯無は何も言わず。キノを抱きしめる。

 

 「あ、あの...」

 

 「今はこうさせて」

 

 楯無の言葉にキノは小さく頷く。

 

 「お前は...」

 

 ラウラが、キノと、キノの持つ種を見て口を開く

 

 「そんな思いをしてまで、どうしてそこまで旅をやめない? 何故、おまえはそこまで強いんだ?」

 

 ラウラの質問に、キノは首を横に振り

 

 「いいえ、ボクは強くなんてないです。ただの一人の汚く矮小な人間です。ですが、

それでもボクは世界の美しい物と、そうでない物全てが愛おしいから。だから、ボクは旅を続けていると思います」

 

 「キノ...」

 

 自分達と同じくらいのはずのキノが別の惑星から迷いこんでも、これまでつらい思いをしても、なんで旅をやめないか。恐らく、自分達が一人の人間に恋をしここにいるのと同じくらい、またはそれ以上に強い物だと感じた。

 

 「あの、キノさん...」

 

 簪が手をあげ、彼女の提案を受け六人は学園の花壇にいた。

 

 「よし」

 

 花壇の日当たりのいい場所に種を植えたキノが立ち上がる。

 

 「いいの? その種って大切なんじゃ?」

 

 「えぇ、ですけどここでなら安心して育てることができますので」

 

 キノが言い、シャルが納得した。

 

 「さて、もうお昼でしたね」

 

 食堂に とキノが言いかけた所で、どこからかサッカーボールが飛んできて、キノが今植えた花壇に落下する前に、鈴が腕部分を一部展開しボールを握りつぶした。

 

 「うわぁーすげ飛んだな...」

 

 と、サッカー部の助っ人で体操服を着た一夏が姿を現す。一夏はキノ達を見てボールがどこに飛んだか聞くが

 

 「あんた、ここ荒らしたら殺すわよ」

 

 「え?」

 

 キノを除いた、五人の殺気に一夏が後ろに下がる。さらに、テニスボールまで来て、簪がライフルを構えボールが粉々になる。

 

 「ちょ!! 何をなさるのですか!?」

 

 ラケットを持ったセシリアが抗議するが、四人の殺気により黙ってしまう。

 

 「どうした一夏? 早く戻らないと、部員たちが...」

 

 と、一夏の手伝いでいた箒も出てくるが殺気だった空気に困惑し何も言えなくなった。

 

 その後、一夏達(箒除く)はシャル達に説教を食らい、キノは彼女達を見て笑みを浮かべた。

 

 「エルメス」

 

 「ん? どうしたの?」

 

 「確かにつらいことは、たくさんあったけど。ここでの思い出はボクは一生忘れないと思う」

 

 違う惑星に飛ばされ、そこで束に出会いこの学園にきた。最初は問題や戦うことばかりだったが、この学園で出会った仲間や恩師の思い出を大切にすると口にし一人の旅人は空を見上げたーー

  

 



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番外編 4 コミケの国

 アニメの方が終ってしまい寂しいですね

 最終話を見て、生身の戦いなら
 
 千冬=師匠>キノ>ラウラ じゃないかと思いましたました。

 今年も、あとわずかですが来年もよろしくお願いいたします!!


 12月29日

 

 クリスマスが終り、人々が来年に向けて準備をする中。

 

 東京のとある場所では、既に数えきれないほどの人が並んでいた。

 

 「うぅ...寒い」 

 

 「...」

 

 「ふぁ~~」

 

 まだ日の上らない暗い中。私服姿のキノと簪、本音の三人の姿があった。

 

 三人の手には、分厚い本があり。それは今から三日行われる最大イベント

 

 コミックマーケット 通称「コミケ」のカタログだった。

 

 (いや~~まさかまたここに来るなんて思わなかったよ。

 キノ、前回は暑かったけど、今回は涼しくていいんじゃないかな?)

 

 (エルメスは寒さなんて関係ないだろ、それと前回って何?)

 

 キノの小さなツッコミを無視し、指輪のエルメスは

「今回は、どんなあとがきがくるかな?」とつぶやき、キノは首をかしげる。

 

 「二人とも、聞いて」

 

 と、簪が声をかけ。キノと立ったまま眠っていた本音が目をこすりながら耳を立てる。

 

 「会場が開くのは10時から、でもその前に作戦を...」

 

 簪が真剣な雰囲気を出し、二人に作戦を伝える(ちなみに、今は朝の6時だ)

 

 このまま場所をキープし、中に入ったら二手に分かれ目標を確保する事。

 

 三人でいる事を利用し、トイレに行きたくなった時は交代する。

 

 中では常に連絡し合い、互いの場所を把握する旨が伝えられる。

 

 「分かりました」

 

 「了解~~」

 

 二人の返事を聞き簪はうなずく。

 

 (真剣だね~~まぁ何事もなければいいけど)

 

 エルメスがつぶやき、やがて太陽が昇り始める。

 

 

 

 「うぁ!! すげぇこんでるぞ!?」

 

 まだ朝の8時だというのに、駅では多くの人がおり一夏は思わず叫んだ。

 

 「嫁、気を抜くな...私が仕入れた情報だと。ここは日本における最大の戦場と言うことだ、気をぬけば...」

 

 「そんな事はないからね、ラウラ」

 

 ポケットにナイフを忍ばせているラウラをたしなめるシャル。さらに、鈴や箒。セシリアと楯無までおり、簪を除いた学園のいつものメンバーが歩く。

 

 本来なら彼女達は、国家の候補生でそれぞれの国に帰る予定なのだが、今年から起きたごたごたの処理などで飛行機の手配ができず今年は学園で過ごすことになった。

 

 そこで、どうせならと皆で出かける事を一夏が提案し、ラウラやシャルが日本のイベントに興味があるとのことでコミケに来ていた。

 

 だが、彼らが思っていた以上に混雑しており。駅から出るのに苦労しながら会場に向かうと

 

 「嘘だろ...」

 

 「ふぅ、さすがコミケねぇ」

 

 コミケ参加が初めての一夏や楯無がつぶやく。会場の外にとてつもなく長い列ができていた。

 しかたなく、彼らは列の最後尾を探すが見つからない。係の人に聞くと、最後尾はなんと隣のさらに先の公園に行かなければならないと聞き、一同はしぶしぶ歩き始めたーー

 

 

 (さて、残りはあとわずか。果たしてキノ達は目的を達することができるのであろうか?)

 

 エルメスが小声で、実況し。あたりの雰囲気も変わっていた。

 係の人がスピーカーを持ち、人を誘導し。コスプレ専用エリアでは着実に人が増えていく。

 

 「いよいよ...」

 

 簪は付箋やマーカーがついたカタログ本を抱きしめ、傍にいる友人二人に目をやり

そしてコミケ一日目が開始されたーー

 

 

 「「押さないでください!! 」」

 

 「「企業ブースはこちらではありません!!」」

 

 「「歩きながらスマホはやめてください!! 画面がバキバキに...」」

 

 会場は大騒ぎだった。目的の物を手にしようと人が人を押し、店頭では多くの金が流れ動いた。

 特に今年は、IS学園の事件が影響したのか、ISを元にしたアニメや作品がかなり売れ、さらにとある旅人の話を元にした作品も同じく売れている。

 

 「えっと、確か...」

 

 大きな会場の中、キノは一人でさまよう。時折、エルメスの指示に従いながら簪の希望の物を購入していく。

 

 (それにしても、キノ)

 

 (ん?)

 

 (委員会が作ったお兄さんたちをモチーフにした作品と、お姉さんの知り合いが執筆したキノのこれまでの旅の作品が人気だね)

 

 キノはふと顔を上げ、二つの大きな画面を見る。

 

 一つは、IS委員会がIS学園やISのイメージアップのために制作されたアニメで、主役は女性だが、一夏の白式に似た機体で空を駆ける。

 

 もう一つは、束の知り合いがキノが旅してきた話を執筆しネット小説にした所、

とてつもない人気となり、重い過去を持ち祖国を捨てた一人の旅人と、言葉が話せる二輪車の旅物語のアニメ映像だった。

 

 (キノの名前はないけど、どう? 自分が元になったアニメを見て?)

 

 (まぁ、よくできているけど...)

 

 自身がモデルとなったアニメを見て、少し苦い顔をするキノ。

 アニメの主人公は自身と同じ女なのだが、旅先で時折。身分の高い男性に結婚を求められたり、まだ未成年なのに酒に酔って豪快にやらかすなど多少違う部分があった。

 

 (さて、行くかエルメス)

 

 キノは振り返り、長蛇の列の中に入っていく。

 

 一日目は、簪の希望の物が全て手に入る事ができ。一方で一夏達は人込みに流されたり、ラウラが部下のお土産にと商品を買おうとしたが既に売り切れたり、はぐれてしまうなど散々な目に合うのであった。

 

 二日目。

 

 再び三人は、会場に来て個人で出している本の売り場にいた。

 

 「いっぱい薄い本がありますね」

 

 とキノが言い、二人は顔を赤くし

 

 (あ~キノはまだ知らないから...まぁ、大人になればね?)

 

 (え? けど、ボクは手術は受けてないし...)

 

 二人と一台? が困惑するがキノは不思議な顔をするのであった。

 

 ちなみに、一夏達は昨日の件で「もう行きたくない」と決めここにはいない。

 

 

 そして、三日目。   

 

 「あの、大丈夫ですか?」

 

 「ま、まぁなんとか...」

 

 「かんちゃんを放っておけないわよ」

 

 キノ達に交じり、もう来ないと決めたはずの一夏と楯無がいた。

 

 五人は、どんどん進む列に押されながらも最終日の盛り上がりの中、あらゆるブースを回る。

 

 一夏は、アニメに映る自身に似た少女キャラクターを見て苦笑いをし

 

 簪と楯無姉妹は、キノがモチーフになったアニメのグッズを買い

 

 本音は、売店のお菓子を食べながら歩く。

 

 

 「ねぇ、キノさん」

 

 「はい?」

 

 「このキャラ。ティーちゃんって、元はどんな子だったの?」

 

 「あ~~あまり話した事はないんで、ちょっと...」

 

 楯無の手には、小さな女の子のキーホルダーがあり。船の国で出会ったのは主にシズのためキノはあまり覚えていない。

 一応、キノの周りの人間はこのアニメのことは知っており。TVで放送された時は、元はどんな国でどんな話だったのかキノに聞きながら観ていた。

 

 やがて、時刻は夜になりキノ達はIS学園の寮に戻る。

 

 

 「一夏、おまえ。また行ってきたのか...」

 

 

 既にコミケの洗礼を受けた箒が疲れた顔でつぶやき、他の少女達も同じような顔をしていた。

 

 「ま、まぁな...そうだ、ラウラ。これ欲しかっただろ?」

 

 一夏は、アニメのグッズを渡し、ラウラが「さすが、私の嫁だ!!」と抱き着き。

 ひと悶着する中、簪はキノの手にある袋を見る。

 

 「キノさん、それは?」

 

 「あぁ、どうせならと思って」

 

 キノが袋から出すと、×××××の旅と書かれたDVDがあった。

 

 「ねぇ、キノ...この間放送された羊の事なんだけど...」

 

 シャルが恐る恐る聞いた。先週の、主人公が羊たちに囲まれ、どうにか逃げた話があり、それもキノの実話をもとに作られたものだ。

 

 「えぇ、だいだいアニメのとうりですね。あの時は本当に危なかった」

 

 「本当だったのですか...」

 

 「あんた、豪快ね...」

 

 セシリアと鈴もアニメを見てドン引きしていた。

 

 他にも、動いてかなり迷惑な国や徳ポイントを集める国などあるが。

 

 キノの実話を聞いた彼らの中に一番心に残ったのは、10話と11話だったが、

 羊のせいで、感動とかが拭きとんでしまい、何ともいえない気持ちでいた。

 

 「まぁ、あの時は仕方なかったので...と」

 

 キノが時計を見ると、のこりわずかで来年になろうとしていた。

 

 「今年はいろいろあったな...」

 

 一夏の言葉で、それぞれが今年を振り返る。

 

 発明の国で、別の惑星に飛ばされ

 

 世界発の男性IS操縦者になり

 

 離れ離れになった幼馴染と再会でき

 

 最初は敵対したが、戦って友情が芽生え

 

 お互いの気持ちを出した姉妹が仲良くなってーー

 

 それでも、こうして仲間と認め合うことができた。

 

 「まぁ、いろいろあったけど。来年もよろしくね。お兄さんたち」

  

 エルメスが言い、彼らがうなずく。

 

 

 すると、どこからか除夜の鐘が聞こえ新たな年が始まるのであった。

 

 

  

 

 

 

 

  

   

 

 

  

 

  




 今年最後の執筆になりますが、今年は皆さんご指摘などありがとうございました!!

 キノのアニメが放送された今年に、このSSが書けて嬉しかったです。

 更新はまだ、未定で遅くなりますが。

 来年もよろしくお願いいたします!!


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番外編 5 ドイツと旅人 1

 



 ドイツ軍基地の射撃所にて。

 

 パンッ

 

 一発の銃声が鳴り、的の真ん中に綺麗な穴が開く。

 

 「あの距離を正確に...」

 

 ラウラの隣に立つ女性クラリッサがつぶやき、他の隊員達も一人の人間の射撃を見て驚く。

 

 「...やりづらい」

 

 キノは借りた軍服を着て、フルートの弾倉を再装填する。

 

 「どんな時も平常心」

 

 

 首に鎖を通して下げている指輪から、エルメスが小声で言い、キノは返事を返さず一発、また一発と発砲し、これもまた命中させた。

 

  

 何故キノはIS学園でなく、遠く離れたドイツにいるのか。それは、昨日の昼時ーー

 

 

 「え? ラウラ、ドイツに帰るのか?」

 

 「あぁ、一時的にな。ISの整備やら、隊の者達にも報告があってな」

 

 食堂にいた一夏達は、ラウラが明日から三日間IS学園を離れる事を告げられ、少し驚いていた。

 

 「そうか、少し寂しくなるな...」

 

 「なっ、だ、大丈夫だ!! 何かあればすぐに戻る!! お前は、私の嫁なんだからな!!」

 

 一夏のつぶやきに必死になるラウラ。箒達がにらみ、周りの視線が集まるが一夏は気づかす、ラウラをなだめる。

 

 本当なら、一夏を連れて行き二人で旅行。とも考えたが、一夏は男性操縦者で、世界中から狙われているし、IS学園から勝手にでる事はできない。

 

 例え明日から連休が始まるといえど、生徒は担任から許可書のサインをもらわなければならない。

 

 箒達はさっそく、一夏をどうやって誘うか悩む中。ラウラは、

 

 「さて、クラリッサ達の土産はどうした物か...」

 

 日本のアニメグッズは買い占めた、しかしそれだけでは物足りない と考えた時。食堂の端で見覚えのある人物を見かけ、ラウラが向かう。

 

 「キノ、お客さんだよ」

 

 「ん?」

 

 キノが顔を上げると、ラウラが「獲物を見つけた」ような目をしてーー

 

 「ちょうどいい、お前の実力を見てきたい」

 

 と一言告げられ、ドイツへの同行を言い渡された。いきなりの事でキノは断り、書類がない事を告げるが、ラウラが無理やりキノを連れ職員室に入り、さっそく千冬に事情を伝えると、ほんの数秒でサイン入りの許可書が返ってきた。

 

 その時の千冬の顔は、かつて盗賊から金品を巻き上げた時の師匠と同じ目をしており、キノは何も言えず、そのままの流れでラウラと共にドイツに入国して数時間後。

 

 迎えにきた軍車両に乗り、軍の施設に二人が入る。

 

 「お待ちしておりました、隊長」

 

 ラウラが隊長をしている部隊の女性たちが敬礼し、キノとラウラを出迎える。副官であるクラリッサと言う女性が、キノの事を聞きラウラが「ライバル」だと答え、その場に衝撃が走る。

 

 「そ、それはどういう事なのでしょうか!?」

 

 「ら、ライバルとは!?」

 

 隊員達の質問にキノは「友人です」と答え、落ち着くのに時間がかかる。

 

 その後、射撃場に案内され、キノはラウラから撃つように言われ、カバンの中に入れていた「カノン」と「森の人」を出し、簡単な整備をする。

 

 

 「隊長、彼の実力は確かなのですか?」

 

 「ずいぶん古い銃ですが?」

 

 隊員のが聞き、黙って見ている事を告げる。後、性別の訂正を告げると、隊員達がさらに驚く。

 

 「さて...」

 

 右手にカノンを持ち、遠くにある的に向け発砲する。轟音が響き、弾は真ん中に命中し、続けて5発とも同じ所が当たる。

 

 次にキノは、腰に吊っている森の人を素早く左手で抜き。これも、的確に当てる。

 

 「最近練習してなかったけど、腕は鈍ってなくてよかった」

 

 キノはつぶやき、カノンと森の人の弾を装填していると、隊員達が駆け寄り

 

 「す、すごい...ほとんど命中率している」

 

 「あ、あの。一体その銃はどこで手に入れたのですか?」

 

 キノの腕を見て、隊員達が質問攻めをし、いつの間にか周りには人が増えていた。

 

 代表候補であるラウラが連れたきたというのもあるが、先ほど見せた射撃を見て人が増えていた。

 

 その後も、二丁の練習をしたキノは、カバンから折り畳み式のライフル「フルート」を組み立てる。

 

 「そんなライフル初めてみた、どこで手に入れたんだ?」

 

 と、ラウラが聞き「旅をしている時にもらいました」とキノが答え、フルートで射撃をした。そして、フルートの射撃をしているうちにギャラリーたちに見られ今に至る。

 

 三丁の射撃が終ると、隊員だけでなく一般の兵達がキノに駆け寄る。

 

 どこで、その銃を手に入れたのか?

 

 どこの国の所属で、訓練をしてきたのか?

 

 よければ、軍に来ないか?

 

 など、声をかけられ。さらに、キノの持つ三丁の内どれかを譲ってくれと言われるが、キノは丁重に断りながら質問に可能な限り答える。

 

 銃は一時、家族と旅行した際にどこかでを購入したとごまかし

 

 自分は日本出身で、知り合いに銃に詳しい人がいて教えられた事

 

 今、IS学園に所属しているため軍には入れない事を告げる。

 

 やがて、質問の波が収まった頃

「...疲れた」

 

 案内された腰のベッドに横になりキノがつぶやく。

 

 「お疲れ、こんな風に質問攻めなんて、あの国いらいだね」

 

 「あぁ、そうだね」

 

 キノが短く答え、しばらく沈黙になる。

 

 「あぁ、そういえば」

 

 キノが何かを思いだし、端末を開く。

 

 「ドイツってなにが有名なんだろ? 何かおいしい食べ物とかあるかな...」

 

 「食いしん坊、お昼にあれだけ食べた癖に」

 

 「ここの料理はもちろん美味しかったよ、けど、せっかく外国に来たんだから堪能しないと」

 

 「キノ? お姉さんたち、キノの性別知った後も驚いていけど、食べてる所見ててかなり驚いてたよ?」

 

 「特にお腹おさえながら」とエルメスが付けたし、キノは「ごはんが足りなかったのかな?」と首をかしげるが、エルメスは「そんなに食べてなんで太らないのか?」と女性たちの心の声を察知していたが、キノには伝えなかった。

 

 ドイツでの滞在は3日。残りの2日で、キノとエルメスが予定を話し合い、時間が過ぎていく。

 

  

 

 

 

  

 

 



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