ISに告白された少年 (二重世界)
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プロローグ 邂逅

「ああ、退屈だ!隕石でも降ってこないかな」

現在、暇なので部屋にあった漫画を適当に読んでいる。

今日は高校入試の前日だけど、勉強なんてしなくても簡単に受かるのでやる気がでない。

 

「こうなったら、真面目に勉強をしている連中の邪魔でもしてこようかな」

 

パリーン

 

いきなり、窓が割れてメイド姿の変な女が部屋に侵入してきた。そして、俺に抱き付いてきた。

 

「な、何だ!?お前は誰だ?」

 

「黒ちゃん。いきなりどうしたの?」

また、窓からウサギ耳をした変な女が入ってきた。

 

「お前ら、何者だ?いきなり、俺の部屋に入ってきて。しかも、ここは二階だぞ」

 

「私?私は束さんだよ。キミこそ誰かな?」

束?もしかして、IS製作者の篠ノ之束か。確か、現在は行方不明になっているらしいが、何でこんなところにいるんだ?

 

「俺の名前は飛原深夜だ。ところで俺に抱き付いてるメイドは誰だ?」

 

「ああ、その可愛い娘は束さんが作ったISだよ」

IS?ISが何故人間の姿をしているんだ?

 

「ところで、何でこいつはメイド服を着ているんだ?そして、何で俺に抱き付いているんだ?」

 

「うるさいなぁ。良く考えたら何で束さんがキミみたいな虫けらの質問に答えなくちゃいけないのかな?」

イラッ。

 

「黙れ、年増ウサギ。いい年して何でウサ耳なんかしてんだ?恥ずかしくないのか?いいから、さっさと俺様の質問に答えやがれ!」

 

「年増ウサギ?誰のことを言っているのかな、虫けら」

 

「お前のことだよ!!この年増ウサギが!」

 

「さすがの束さんもぐわっ!」

俺に抱き付いていたメイド姿の女の子が年増ウサギに殴りかかった。

 

「い、いきなり何するの、黒ちゃん」

 

「いいから、早く説明しなさい!」

 

「うぅ、黒ちゃんが怖いよ」

 

「ギロッ!」

こわっ!年増ウサギもビビっているし。て言うか、何で自分で作ったISに反抗されてんだ、こいつ。かっこ悪。

 

「……分かった。説明するよ。でも先に束さんの方が説明してほしいよ。いきなり研究所を飛び出したと思ったら、こんなところに来て」

 

「それを説明したらこの人に貴女も説明するのね!」

 

「約束するよ」

て言うか、何で俺抜きで話がどんどん進んでんだ?意味分かんねぇ。

 

「簡単に言うと、ここに運命を感じたのよ」

 

「運命?つまり、そこで情けなく座り込んでいる虫けらに何か感じるものがあるってこと?」

 

「何か、ではなく、これは間違いなく恋ね!さて、私が説明したから、次は貴女の番よ」

いきなり何言ってんだ、こいつ。告白?ISに恋愛感情なんてあるのか?

 

「じゃあ、黒ちゃんの説明するね。黒ちゃんはコアナンバー500の記念作だよ。ちなみに第4世代機。名前はまだ決まってないから、色で呼んでいる。ちなみにメイド服は束さんの趣味だよ。これでいいかな?」

 

「いや、良くねぇーよ。コアナンバー500、って何だよ!ISのコアって467個じゃねーのかよ!?後、第4世代機って何だよ!さらっと言っていい内容じゃないだろ!」

 

「世間に公表されている数が467個ってだけだよ。束さんは今もコアを作っているよ。後、束さんを他のポンコツ達と一緒にしないでね。既に第4世代機の研究中だよ」

マジか!これって軽く国家機密になるような内容じゃないか。

 

「よし、説明終了。というわけで、深夜。今日からよろしくね」

 

「何がというわけで、なのか分からないけど男の俺にISは使えないだろう?」

 

「それは大丈夫よ。私と深夜の愛情があれば、私を動かすことも出来るよ」

何か良く分からんが面白いことになったのは確かみたいだな。まぁ、隕石が降ってくるよりは楽しめそうだな。

 

「ふーん。少しキミに興味が出てきたよ。ISに恋愛感情があるなんて予想外だしね。こうなったら、研究所に連れていって人体実験するしか」

 

「おい、年増ウサギ。何、さらっと物騒なことを言ってやがるんですか?俺様はそんなのお断りだぜ」

 

「何か口調、変わってない?」

 

「あれ?そうやたっか?俺様の元のキャラはこんな感じやったっけ?」

 

「深夜はどんなキャラでも素敵だから大丈夫よ」

ああ、なんとなく自分のキャラを思い出してきた。油断すると、キャラとか口調がぶれるな。気をつけないと。

 

「いや、俺の口調とかどうでもいいんだよ!人体実験とかお断りだぞ。面白いことは歓迎だが、痛いのはいやだからな」

 

「そう言っても、しっくん。黒ちゃんも一緒に居たいみたいだし。ついてきてくれると、面白くなることは保証するよ。痛いかどうかは知らないけど」

しっくん?いきなり馴れ馴れしいな。

 

「そうだ、深夜。私の正式な名前、決めてくれない?」

 

「名前か?そう言われても、お前の装備とか知らないからな。装備を見てから決めていいか?」

すぐに思い付かないので適当に誤魔化す。

 

「うん。それでいいよ、深夜」

 

「じゃあ、早速行こうか。黒ちゃん、しっくんを連れてきてね」

そう言うと、年増ウサギは窓から出ていった。

そして、黒ちゃんとやらが俺をお姫様だっこして後に続いた。

 

「あ、そうだ。しっくん。年増ウサギはやめてくれないかな、さもないと、どうなるか分からないよ」

何か怖いな。にしても、年増ウサギじゃなかったら、なんて呼べばいいんだろう?まぁ、後で考えるか。

 




プロローグ、どうでしたでしょうか?
もし面白かったら、感想とかもらえると嬉しいです。


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第1話 IS学園、入学

自分の他の投稿作品に比べてUAが凄いことになっていて驚いています。


俺はウサギに拉致られた後、色々と人体実験に付き合わされた。ちなみに呼び方は年増をとって、ウサギと呼ぶことになった。

だが、俺がISを動かせる理由は分からず、一通り実験が終わるとIS学園に入学することになった。

ウサギ曰く「束さんは他にもすることがあるから、しっくんのことはちーちゃんに任せるよ」とのことらしい。何て適当なヤツだ。

後、俺の両親は既に交通事故で死んでいるので、めんどくさい説明とかしないで済んだのは助かった。

 

そして、現在、IS学園の入学式が終わりSHRが開始するところである。

 

「全員揃ってますねー。それじゃあSHR始めますよー」

前でクラスの副担任の先生がそう言って、自己紹介が始まった。

ちなみに先生の名前は山田真耶というらしい。上から読んでも下から読んでも、読み方が同じという面白い名前だ。新聞紙と一緒だな。

 

「皆さん、一年間よろしくお願いします」

自己紹介が始まるが他の生徒の視線は一点に集まっている。

そして、その視線の先には男性初のIS操縦者である織斑一夏がいる。まぁ、正確には俺の方が少し早かったのだが細かいことは気にしない。

席は真ん中かつ最前列という好ポジションで女子達の視線に困っている様子を観察しているのは、かなり面白い。

だが、俺は一切の注目を浴びていない。その理由はまた後で説明する。

 

「えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

織斑一夏を観察していて、他の自己紹介はまともに聞いていなかったが、ついにその本人の番がきたようだ。

周りが『もっと喋れ』という視線を送っている。

 

「以上です」

この発言に数人の女子がずっこける。

ふむ、このクラスはノリがよさそうだ。いじりがいがある。

 

パアンッ!

 

「いっー!?」

織斑一夏がいきなり現れた女性に出席簿で叩かれた。

いい音だ。後でコツで聞こう。

 

「げえっ、関羽!?」

パアンッ!また叩かれた。

 

「誰が三國志の英雄か、馬鹿者」

 

そして、こっちに振り向くと挨拶をした。

「諸君、私が織斑千冬だ。貴様たち新人を1年で使い物にするのが仕事だ。私の言うことをよく聴き、理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。それでも、出来ないヤツは死ね。逆らっていいが、私の言うことは聞け。聞かないヤツは死よりも恐ろしい罰が待っている。いいな」

物凄い暴力発言だな。間違いなくドSだな。俺と気が合いそうだ。

 

「キャー。本物の千冬様よ!」

 

「私を犯してー!」

 

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

「私、お姉様のためなら家族でも殺せます!」

やっぱり、ノリのいいクラスだな。二人ほど危ない発言をしていたヤツがいるな。後で応援するか。

 

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

確かに見ている分には楽しいが、当事者になるのは嫌だな。

そして、その推察は間違っているな。なぜなら、教室の外にもいろいるからな。

 

「だが、一番の馬鹿者はお前だ」

 

パアンッ!

 

織斑千冬が俺の方に歩いてきて、出席簿で叩いた。

 

「何するんすか、ちーちゃん」

 

「誰がちーちゃんだ、馬鹿者」

また、叩かれそうになったが今度は避けることに成功した。

 

「ちっ!ところで何でお前は女子の制服を着ているんだ?」

 

「「「は?」」」

周りが驚きの声をあげる。

 

そう、俺が注目されない理由。それは、俺が女装していたからだ。理由は周りを驚かせるためだ。て言うか、意外と気付かれないものだな。

さらに、俺は世間に発表されていない。最近まで、ずっとウサギの研究所にいたからな。

 

「とりあえず、挨拶しろ」

 

「了解」

そして、俺は前に出て挨拶をした。

 

「俺の名前は飛原深夜だ。男だ。ちなみにISを動かしたのは織斑一夏よりも、少し先だ。好きなものは面白いこと。モットーは『俺が面白ければ他はどうでもいい』だ。以上」

 

「「「えぇぇええええええ!!」」」

教室の外にいた連中も合わせて驚愕の声をあげる。かなりうるさいな。

 

「本当にISに動かせるんですか?」

一人の女子が俺に質問する。

 

「ああ、動かせる。質問される前に言うが、俺が世間に公表されていない理由は最近まで篠ノ之束に拉致監禁されていたからだ。ちなみに政府もまだ俺のことをごく一部の人間しか知らないらしい」

 

「「「……」」」

俺の発言に今度は全員が絶句する。

 

「私も質問が。その左手の薬指にある指輪は?」

今、それ質問するの?気にするところは他にもあると思うが。

 

「ああ、これは――」

 

「私の深夜に気安く話さないでくれる」

指輪が人間の姿になった。そして、IS学園の制服を着ている。

 

「何だ、それは?」

 

「あれ、ちーちゃんも知らなかったの?これは俺の専用機である黒嵐だ」

こいつの装備は嵐のような銃撃をするから、色と合わせて黒嵐という名前になった。ちなみに愛称は略して黒。犬の名前みたいだな。さすがに調教はしていないが。俺の趣味ではないからな。

そして、指輪になっていた理由は黒曰く『私自身が深夜との結婚指輪よ』とのことらしい。正直、意味が分からない。

 

「「「えぇぇええええええ」」」

また驚愕の声がこだまする。

何回、驚くんだ、こいつら。

 

「というわけで、私の深夜に手をださないでね。私と深夜は一晩を共にした仲なんだから」

 

「嘘を言うな。お前に生殖機能はないから、したくても出来ないだろ」

まぁ、一緒のベッドで寝たり、風呂に入ったりはしたが。途中でウサギが乱入してきたりで疲れたな。ウサギは見た通りだが、黒も意外と胸が大きかったな。着痩せするタイプなのだろう。

 

「……え、え~と。未成年でそう言うのはダメです」

副担任の先生が顔を赤くしながら言ってきた。

なんだろう。この人はいじりがいがありそうだ。

 

この人をどうやっていじろうか考えているとチャイムが鳴った。

 

「さあ、SHRは終わりだ。飛原に聞きたいことはまだあるだろうが、残りは休憩時間に聞け。さっさとお前らも座れ」

俺と織斑一夏が席に座り、一時間目の授業が開始した。

 




現在、深夜の同居人をのほほんさんか簪のどっちにするかで迷っています。両方、好きなキャラですし、これで登場頻度も変わってくるでしょうから。

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第2話 新しい芸人の発掘

「……終わったか?」

一時間目の授業が終わり、チャイムで目を覚ました。

IS基礎理論授業だったが、ウサギの研究所にあった資料で勉強したり、黒にIS関連のことを教えてもらったりしたから簡単で途中から寝てしまった。

そういや、ウサギに分からないことを聞いたらバカにされてムカついたな。

 

にしても、もう廊下に人がいっぱいだな。廊下の連中は全員、織斑一夏に視線が集中しているがクラスメイトの視線は俺に集中しているな。やっぱり自己紹介で目立ち過ぎたか。

「俺以外にも男子がいて助かったぜ。一人じゃキツイからな」

女子達の視線を気にせずに織斑一夏が俺の方に来て話かけてきた。

自分以外にも男がいて、かなり安心した顔をしているな。面白くない。

 

「話かけないでください。貴方のことが嫌いです」

 

「え!?俺、何か嫌われるようなことしたか?今、初めて話したばかりなのに」

俺に拒絶されて、かなり焦っているな。なるほど冗談が通じないタイプか。

 

「嘘だから気にしなくていい。それよりも何のようだ?」

 

「そ、そうか。良かった。二人っきりの男なんだから仲良くしようと思ってな。あ、俺のことは一夏でいいぜ。お前のことは何て呼べばいい?」

 

「……お前、もしかしてホモか?」

 

「違う!いきなり何を言ってんだ!」

それは助かった。俺にその趣味はないからな。

 

「お前のことはいっくんと呼ぶ。俺のことはしっくん以外なら何でもいい」

 

「じゃあ、俺は深夜と呼ぶことにする。そういや、1つ聞きたかったんだが、お前って束さんの知り合いなのか?」

 

「その話は私も聞きたいな」

俺といっくんが話していると、ポニーテールの女子が話かけてきた。

 

「ああ、篠ノ之箒か。俺もお前とは話したかったんだ」

 

「私のことを知っているのか?」

 

「ああ、ウサギにしつこく自慢されたからな」

本当にうざかった。実験の合間は常に自慢されたから全然休めなかった。しかも、スリーサイズまで教えてきたからな。そんなの知ってもどうしようもないだが。

 

「そうだっのか。姉さんが迷惑をかけたようだな。私が変わりに謝罪しよう」

こいつは姉と違って真面目なタイプらしいな。

 

「いや、気にしなくていい。ウサギには感謝しているからな。あいつのおかげで楽しめそうだ」

 

「そうか。そういや、さっきのIS。確か黒嵐だったか?そいつはどうしたんだ?」

 

「ああ、今、指輪になって寝ているよ。昨晩は疲れたからな」

 

「は、は、破廉恥な!」

顔を赤くしている。真面目なフリをして性には興味津々ということか。

まぁ、実際、昨日の晩は浮気はしないように注意された後、本番はできないが色々したからな。俺も眠い。次の授業も寝るか。

 

「何が破廉恥なんだ?今日の準備で忙しかっただけだろ」

何だ、こいつ。もしかして、そういうことに関して鈍感なのか?

 

キーンコーンカーンコン

 

チャイムが鳴ると同時に廊下にいた連中も戻っていった。

 

「姉さんのことは後で聞かせてもらおう」

 

「じゃあ、また後でな」

そう言うと、二人も自分の席に戻っていった。箒はまだ顔を赤くしているな。

 

 

 

二時間目が開始すると、最初は授業を聞いたが、やっぱり簡単なので寝ることにした。

パァンッ!

「痛っ!」

叩かれて目を覚ますと、目の前にちーちゃんが偉そうに仁王立ちをしていた。

 

「いきなり、何するんだ。気持ち良く寝ていたのに」

 

「教師にため口で話すな。そして、授業中に寝るな。そんなことをしていると、あのバカみたいになるぞ」

いっくんを指差しながら言った。あいつ、そんなにバカなのか?

 

「そう言っても、簡単すぎて眠いんですが」

 

「そうか。分かった。そこまで言うなら、後で私が特別なテストを作ってやろう。それで満点が取れれば授業に参加しなくていい。だが、一問でも間違えれば真面目に授業を受けろ」

 

「いいぜ。その挑戦、受けてやる」

 

「いい度胸だ。放課後、職員室に来い。それまでにテストを作っておいてやる」

これで堂々と授業をサボれるな。そういや、職員室ってどこにあるか知らないな。この学園は案内もしてくれないかな。不親切な学園だな。

 

 

 

「ちょっとよろしくて」

二時間目の休み時間、いっくんと箒と話していると金髪の偉そうな女が話かけてきた。

男を見下したような視線が不愉快だな。

 

「何か用か、パッキン女」

 

「パッキン女ですって?この私に……イギリスの代表候補生セシリア・オルコットに対して何て口の聞き方ですの!」

聞いてもいないのに、自分から名乗るとはな。自己主張の激しいヤツだな。

 

「……深夜。目が覚めたら目の前に不愉快な金髪がいるんだけど。この女は誰?」

黒が人型になって言ってきた。

 

「イギリス代表候補生のパッキン女だ」

 

「それは貴女が言った呼び方でしょう。私の名前はセシリア・オルコットです」

 

「ああ、そうだった。セッシーだった」

 

「今度は馴れ馴れしすぎるでしょう!貴方、ふざけていますの!」

最初は人を見下すだけの不愉快な女だと思ったが、もしかしたらツッコミの素質があるかもしれない。上から目線なのが気になるが、いないよりはマシだろう。

そういや、ウサギの研究所にいた時はツッコミがいなくて大変だったな。

 

「……何か楽しそうね、深夜。後、またキャラがぶれてるわよ」

 

「ああ、そういや俺はこんな感じにボケるキャラじゃなかったな。まぁ、人をいじるのは楽しいぜ」

 

「質問があるんだが。代表候補生って、何?」

がたたっ。聞き耳を立てていたクラスの女子数名がずっこけた。

ちなみに俺もずっこけてしまった。まだキャラが戻ってなかったか。

 

「深夜、大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫だ。だが、今の発言にはさすがの俺も驚いたな」

黒が差し伸べた手を掴んで起き上がる。

 

「おい、いっくん。今のはマジか?」

 

「おう。マジだ」

ここまで堂々と言い切るとは。逆に格好いいな。

 

その後、箒が代表候補生についていっくんに説明した。て言うか、知らなくても字面で分かるだろう。どんだけバカなんだ。

「なるほど。つまりエリートってヤツか」

 

「そう!エリートなのですわ!」

いっくんの発言でパッキン女が復活した。

両方、単純な思考をしているな。意外と二人は仲良くなるかもしれないな。

 

「何こいつら。バカなの?」

 

「黒。そう言うことは本人に言うなよ」

なんと言うか、どいつもこいつもいじりがいがありそうで楽しみだな。

 

「で、パッキン女。何のようなんだ?」

 

「ああ、そうですわ。忘れていました。それはこのわたくしが――」

 

キーンコーンカーンコン

 

やっと本題が始まろうとしたところでチャイムが鳴るとはな。

おいしいな。。こいつ、もしかしたら芸人の才能があるのかもしれない。

 

「っ……!またあとで来ますわ。逃げないことね!よくって!?」

そう言うと席に戻っていった。

次はどうやって、いじろうか。




黒の出番が少ないな。次回は起きているので活躍させたいです。

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第3話 宣戦布告

「準備を始める前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなくてはいけない」

三時間目の授業が始めると、ちーちゃんがそう言った。

一、二時間目の授業は山田先生だったが、三時間目はちーちゃんが担当するせいで眠れない。まぁ、今日だけの我慢だ。

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席が主な仕事だ。簡単に言うとクラス長。いや、ただの雑用だな。後、一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

何故、悪い方に訂正したのだろうか?まぁ、いい。めんどくさそうなことには関わらないに限る。

 

「はいっ。織斑くんを推薦します」

女子の一人がいっくんを推薦した。このまま決まってくれると有難い。

 

「私もそれがいいと思います」

 

「私は深夜を推薦します」

このまま決まれば良いと思っていた矢先に黒が俺を推薦してきた。

ちなみに、黒の机は用意されてなかったので、俺の隣でパイプ椅子に座っている。

 

「おい、黒。何故、俺を推薦するんだ?」

 

「だって、私と深夜の力を証明する良い機会じゃない。それに深夜が誰かの下につく、っていうのも嫌だしね。雑用がめんどくさいなら私も手伝うわよ」

 

「そう言うことなら……まぁ、いいか」

て言うか、生徒の時点で教師の下についているんだが。まぁ、気にしなくていいか。

 

「では候補者は織斑一夏と飛原深夜の二人か。他にはいないか?自薦他薦は問わない」

 

「何で俺が!?」

今更ながら、いっくんが立ち上がって驚く。

 

「座れ。お前に拒否権はない。他にはいないのか?いないなら、この二人で多数決して決めるぞ」

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

さっき話したパッキン女が立ち上がって異議を唱えた。

 

「そのような選出は認められません。大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ。わたくしにこの「トリビア・オルコット」にそのような、って会話の途中で声を重ねないでくださる!わたくしはそんな豆知識みたいな名前ではありませんわ」

 

「失礼。噛みました」

 

「嘘ですわ」

やっぱりツッコミがあると気持ちがいいな。これがウサギだったら、ボケにボケで返してくるからな。

 

「ナイスツッコミ。いや、不愉快な流れになりそうだったから、笑いを作ろうとしただけだろう」

 

「極東の猿の考えることは分かりませんわ。とりあえず、クラス代表は実力トップのわたくしがなるべきですわ」

 

「聞き捨てならないわね。私の深夜が貴女ごときに劣る訳ないでしょう」

まぁ、俺が代表候補生ごときに負けるとは思えないな。にしても、面白くなってきたな。

 

「そこまで言うなら決闘ですわ!それでどっちが強いか分かりますわ」

 

「ああ、いいぜ。それと、ちゃんとハンデはやるから安心しろ」

そう言うと、クラスからドッと爆笑が起こった。

 

「飛原くん。それ、本気で言ってるの?」

 

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

「いくら専用機持ちと言っても経験が違うよ」

みんな本気で笑っている。なるほど、みんな勘違いしているのか。

これはちゃんと勘違いを解かないとな。

 

「そう言ってもな、ISの起動時間以外に負けているところが見つからないんだが」

 

「いいですわ。ならわたくしの強さを証明してあげますわ。まず、私のIS。ブルー・ティアーズからですわ」

これで相手を説き伏せれば、俺の方が強いことを証明出来るんだな。

 

「わたくしのISはイギリスが開発した最新鋭の第三世代機ですわ」

 

「そんな前時代的なISに私が負ける訳ないでしょう」

 

「なっ!前時代的ですって!」

顔を赤くして怒った。分かりやすいヤツだな。

 

「黒は篠ノ之束の技術と俺の趣味で出来た第四世代機だ」

黒の装備はほとんど俺の趣味を元にウサギが造ったからな。まぁ、ウサギが元々造っていた装備もあるがな。

 

「そんな馬鹿な!第三世代機ですら各国でまだ実験段階なんですのよ!」

 

「それが出来るからの天災なんだろ」

 

「くっ!ならばわたくしのISランクはAですわ」

 

「俺はSだ」

まぁ、これは黒限定なんだかな。

他のISは黒が浮気は駄目、とかいって使えない。他のISに脅しをかけているそうだ。

試しに黒に頼んで一回だけ使ったことがあるがISランクはCだったな。

 

「わたくしは入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですわ」

 

「ああ、あれか。俺は倒せなかったな」

 

「ふん。これでわたくしの――」

 

「だって、ちーちゃんが強す痛っ!」

いきなりちーちゃんが出席簿を投げてきた。何で口よりも先に手が出るんだよ。

 

「織斑先生と呼べ」

 

「貴方の入試の相手って織斑先生だったんですの?」

 

「ああ、そうだ。マジで強かったな」

ウサギに連れられて初めてIS学園に来たとき、ウサギが煽ったせいでちーちゃんと戦うことになったな。

こっちは第四世代機で向こうは訓練機だったのに十秒ももたなかったからな。

 

「後はそうだな……才能も俺の方が上だな。さて、パッキン女。他に俺に勝てる要素はあるのか?」

 

「そ、そんなの関係ありませんわ。わたくしが男ごときに負けるはずがありませんわ」

今度は開き直ってきたか。こういうヤツが一番めんどくさいな。

 

「いいぜ。男が女に勝てないというなら、まずはその幻想をぶち壊す」

 

「さすが、私の深夜。格好いいよ」

これで俺の強さを証明出来たな。

 

「セシリア、ハンデ貰った方がいいんじゃない?」

 

「そうよね。今の話を聞いていたらセシリアは飛原くんに勝てないような気がしてきたし」

クラスの連中は自らの勘違いに気付いたようだな。

 

「そんなの関係ありませんわ。ハンデなんていりませんわ」

 

「安心しろ。お前が何と言おうと俺は全力で手を抜いてやるから、お前は全力でかかってこい」

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。飛原とオルコット、それに織斑はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業をはじめる」

ぱんっと手を打ってちーちゃんが話を締めた。

 

「えっ!?俺も!」

そして、驚くいっくんを無視して授業が始まった。

 

 

 

「ちっ!!満点だ」

放課後、約束していたテストをして俺は満点を取った。

にしても、IS関連の問題だけだと思ったのに一般教科の問題まで出るとは。何とも性格の悪いテストだった。

 

「何問か教師でも厳しい問題をいれたのに解かれるとは」

そこまでしていたのか。大人げないな。

 

「というわけで俺はサボり放題だな」

 

「約束だからな。だが、IS実習などの重要な授業は受けろ」

 

「それぐらいは分かってる」

まぁ、そこまでサボったら、何のためにIS学園に来たか分からないからな。

 

「後、寮の部屋が決まった」

 

「最初の一週間は自宅から通んじゃなかったのか?」

ずっとウサギの研究所にいたから、久し振りに家でのんびり出来ると思ったのに。

 

「事情が事情だからな。特別な処置だ」

 

「そこが私と深夜の愛の巣になるわけね」

 

「そんな訳ないだろ。相部屋だ。それに仮に一人部屋だったとしても教育機関で淫行を許すわけないだろう」

固いな。そんなんだからいい歳して彼氏の一人も出来ないんだな。

 

「余計なお世話だ」

この人、読心術まで使えるのか?

 

「他に人がいたら深夜とイチャイチャしづらいじゃない。個室を用意しなさいよ」

 

「決定したことに逆らうな」

 

「うっ……」

黒もちーちゃんには逆えないようだな。確かに俺もこの人は敵に回したくないからな。

 

「じゃあ、とりあえず家まで荷物を取ってこい。部屋や細かいルールなどは戻って来てから説明する。後、先に一つ言っておく。一年生の寮長は私だ。もし問題を起こしたら厳しい罰を与えてやるからそのつもりでな」

俺、何か目をつけられるようなことしたか?

 




戦い始める前から色々負けているセシリア。クラス代表決定戦で逆襲はあるのか?

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第4話 同居人

今更ですが黒雨という名前がラウラのISと被っていることに気付きました。だから、黒嵐という名前に改名することにしました。愛称はそのまま黒です。


「よし。これで準備終了だな」

一旦、IS学園から下宿の準備をするために家に帰ってきていた。

 

「ついでだから軽く掃除していくか。黒も手伝ってくれ」

当分、戻ってこれないし、一応やっとかないとな。

 

「じゃあ、まずは深夜の部屋からね」

 

「何故?」

 

「こういう時はエロ本を探すのが定番なんでしょ?」

なるほど。定番は確かに重要だな。まぁ、俺の部屋にエロ本はないがな。

 

「深夜の部屋って、初めて会った時以来ね」

あの時、窓を壊して侵入してきたんだよな。さすがの俺もびっくりしたな。

そういや、その時に壊した窓の修理費すら出さなかったんだよな、ウサギのヤツ。

 

「んー。エロ本はないわね。でも深夜が全くそういうのに興味がないとは思えないし」

 

「今の時代、ネットで手に入るからな。だから、いちいち買う必要ないんだよ」

 

「そのわりに漫画はいっぱいあるわね。それもネットで手に入るんじゃないの?」

 

「分かってないな。紙には電子書籍にはない良さがあるんだよ」

やっぱりエロ関連はネットだが、他は紙の方が良い。

 

「て言うか……漫画か。ついでだから持っていくか。また、手伝ってくれ」

漫画の他にも小説やアニメDVDも持っていくことになった。

予想以上に荷物が多くなったな。運ぶのがしんどそうだ。

 

 

 

「何だ、その荷物は?必要のない物まで持ってくるな」

学園に戻ってくると、いきなりちーちゃんに怒られた。

ちなみに家で男子の制服に着替えてきた。今日、1日女子の制服で過ごしたけど違和感がなくて途中から女装していたことを忘れてしまっていた。

 

「いいじゃないか。どうせ、明日から暇なんだから」

 

「だったら、まじめに授業を受けたらいいだろうが」

 

「だったら、何のためにテストをしたか分からないじゃないか。それに授業を受けても簡単だから、どっちにしろ暇だし」

 

「ちっ!!」

生徒に対して不愉快そうに舌打ちした。この人、本当に教師なのだろうか?

 

「まぁ、いい。寮について簡単するぞ。夕食は6時から7時、寮の一年生用食堂を使用しろ。後、大浴場があるがお前は使えない。各部屋にあるシャワーを使え」

マジか。大きな風呂でのんびりするのが好きなのに。

 

「何でだ?」

 

「お前は同年代の女子と入るつもりか?」

 

「俺は別に気にしない」

 

パァン!!

 

「お前が気にしなくても、他のヤツが気にするだろ」

何で叩かれたんだ?

 

「私と深夜の二人で風呂に入りながら、月を見て風情を楽しもうと思っていたのに」

 

「風情は良いものだな。だが、IS学園に露天風呂はないぞ」

 

「だったら、近場の銭湯に行ってきていいですか?」

 

「いいわけないだろ」

ちっ!!ケチだな。

 

「不満そうな顔をするな。ほら、鍵だ。さっさと部屋に行け」

そう言って、ちーちゃんは鍵を俺に投げてきた。

 

 

 

「ここが俺の部屋か。どんな人が同居人なんだろうな?」

 

「どんな人でもいいよ。私と深夜の邪魔をしなかったら」

とりあえず、扉を開けて中に入った。

 

「……男?まさか織斑一夏!」

部屋に入ると、いきなり中にいた水色の髪の女の子に敵意のある視線を向けられた。

俺のことを知らないからいっくんと間違ているようだな。

て言うか、いっくん。どんな恨みを買ったんだ。

 

「そうたが。知り合いか?悪いな。君のことを覚えてないんだ」

何となく面白そうことになる気がして、いっくんのふりをする。

 

「貴方が知らなくても、私は知っているのよ。で、何でこの部屋にいるの?もしかして貴方が私の同居人なの?」

 

「そうだ。ところで俺に何の恨みがあるんだ?」

 

「それは――」

 

「かんちゃん~。遊びに来たよ~」

そう言いながら、誰かが部屋に入ってきた。そういや、扉閉めてなかったな。

 

「本音。何か用?」

 

「暇だから遊びに来ただけだよ~。ところで、何でヒハランと黒ちゃんがかんちゃんの部屋にいるの~?」

ヒハラン?何だ、その雑魚モンスターみたいな呼び方は。まぁ、どうでもいいか。

 

「……え?織斑一夏じゃないの?」

 

「違うよ~」

もう少し弄って遊ぼうと思っていたのに。まさか、こんなに早くバレるとは。残念だ。

 

「じゃあ、誰?」

 

「俺の名前は飛原深夜。こっちは俺の「恋人」の黒だ。って、声を被せるな」

 

「えー、いいじゃない。本当のことなんだから」

 

「つまり、貴方は自分の部屋に女を連れ込んだ、ってこと?」

この女、おとなしそうな顔して毒舌だな。

 

「間違っていないが間違っているな」

 

「どういう意味?」

何か不機嫌そうだな。何かしたか?それとも元々こんな感じなのか?

 

「黒は俺の専用機だからな」

 

「は?」

とりあえず、俺と黒のことを軽く説明することにした。

途中でボケを挟んだら、また毒舌にツッコまれた。これはこれでアリだけど、ずっとこの調子だったらボケづらいな。どうにかしないと。

 

「なるほど。事情は分かった。いや、正直、ついていけないけど」

 

「じゃあ、次はそっちの自己紹介だな。これから同じ部屋で暮らすんだから、コミュニケーションは重要だ」

 

「私の名前は更識簪」

それだけか?なんというか、弄りづらそうだな。もしかして、だから俺の同居人に選ばれたのだろうか?だとしたら、ちーちゃん。かなり性格が悪いな。

 

「他にないのか?例えばクラスとか」

 

「クラスは4組。これでいい?」

ここまで大人しいのは新しいパターンだな。どうしようか?

 

「ところでお前は誰だ?」

 

「え~!?私のこと知らないの?クラスメイトだよ~」

そうだったのか。全く気付かなかった。

 

「しょうがないでしょ。深夜は私のことしか見てないんだから」

 

「そういう訳じゃないがな。で、名前は?」

 

「私の名前は布仏本音だよ~。ちなみにかんちゃんのメイドだよ」

メイド?そんな風には見えないな。こんなのんびりとしたヤツにメイドが勤まるのか?

 

「そういや、黒も初登場時、メイド服だったな」

 

「もしかして深夜ってメイド好きなの?」

 

「いや、違う」

俺に特定の好みはないからな。熟女と人妻は駄目だが。

 

「そういや、かんちゃんは何で俺のことを知らなかったんだ?もう学園中に噂が広がっていると思っていたんだが?」

 

「かんちゃん?馴れ馴れしすぎない?」

 

「それはかんちゃんに友達がいないからだよ~」

なるほど。確かにそんな感じだな。

 

「つまり、ぼっちか?」

 

「グッ!!」

何か傷付いたみたいだな。もしかして、気にしていたのか?弄りポイントを見つけたな。

 

「まぁ、そんな不機嫌そうな顔をしていたら当然だな」

 

「グワッ!!」

 

「つまり、授業で仲良しの人とペアを組む時に毎回一人残るタイプ、ってこと?」

 

「そ、そんなことない。今まで、本音と組んでいたし」

何とも寂しい言い訳だな。それに今は違うクラスだから一緒に組めないな。

 

「でも、かんちゃんって、私以外の友達いないし~」

 

バタンッ!!

 

「かんちゃん、大丈夫?」

唯一の友達が声をかけるが返事はない。ただの屍のようだ。

 

「そうだ。のほほんさんにしよう」

 

「ほへぇ。いきなりどうしたの?」

 

「いや、呼び方だ。布仏本音を略してのほほんさんだ」

我ながら良いネーミングセンスだ。雰囲気もピッタリだし。

 

「……それより、深夜。この倒れている女、どうする?」

 

「そうだな。とりあえず、ベットに寝かせるか。というわけで悪いな、のほほんさん。来たばかりだけど、こんなことになって」

 

「いや~、別にいいよ~。じゃあ、また明日ね~」

 

こうしてIS学園での初日が終わった。楽しくなりそうだな。




遂にかんちゃんとのほほんさんが登場しました。次回は生徒会長が登場します。

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第5話 生徒会長

「お~。ヒハランとかんちゃん発見~」

朝食を食べるためにかんちゃんと一緒に食堂に来て、食券を買って並んでいたら、のほほんさんとその他二名と出会った。

 

「ん、おはよう。のほほんさん」

 

「おはよう……、本音」

「え~。いつの間に飛原くんと仲良くなっていたの?」

 

「私達のことも紹介してよ」

その他二名が俺とのほほんさんが仲良く話しているのを驚いている。

 

「ん~。いいよ~。ヒハラン、この二人は私の友達でクラスメイトだよ~」

なるほど。つまり、俺のクラスメイトでもあるわけか。

 

「私の名前は相川清香です。よろしく」

 

「私は鷹月静寢です。よろしくね」

 

「こっちこそよろしく。ところで相川だったか?趣味とかあるか?」

 

「え~。もしかして、私に興味があるのかな?でも、飛原くんは恋人がいるでしょう。困っちゃうな~」

困るとか言いながら、思いっきり嬉れしそうな顔をしているな。

 

「いや、そういう訳じゃない。ただ、愛称を決めたいだけだ」

 

「愛称?」

 

「俺は人には基本的に愛称をつけることにしているんだ。でも、名前から思い付かなかったから趣味を聞いたんだ」

 

「……ああ、なるほど。そういうこと」

何か残念そうな顔をしているな。まぁ、どうでもいいか。

 

「出席番号一番!ハンドボール部!趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ!」

気を取り直して言ってきた。だが、聞いたのは趣味だけなんだが。何で必要のないことまで言ったのだろうか?

 

「よし。決まった。スポーツ処女とツッキーだ」

 

「……ちょっと間違えてない?それ、セクハラ」

かんちゃんからの鋭いツッコミ。昨日、弄ったせいで機嫌が悪いようだ。目が笑っていない。

 

「……分かった。スポーツ少女だ」

 

「ところで二人も一緒に食べない?」

のほほんさんから食事に誘われた。これはチャンスだ。

 

「いいぜ。かんちゃんもこれを機に友達を増やす努力をしよう!」

 

「余計なお世話」

そう言って、俺をつねってきた。地味に痛い。

 

「かんちゃん、機嫌が悪そうだね~。どうかしたの?」

 

「別に……」

唯一の友達にまでそんな態度だから、ぼっちなんだろうな。

 

「昨日、あの後、中途半端な時間に起きたせいで眠いんだろう?」

そのせいで俺も目が覚めたから、かなり眠い。後で寝るか。

 

「余計なことを言わなくていい……」

 

「かんちゃん、そんな冷たい態度とっていたら友達できないよ~」

 

「……そうね」

一応、友達の言うことは聞くみたいだな。

 

「そういや、黒ちゃんはどうしたの?」

 

「今は指輪になって寝ている。どうも朝が苦手みたいだ」

昨日はすぐに寝たんだかな。もしかして、擬人化していられる時間に制限でもあるのか?いや、ただ、だらしないだけだな。

 

話している内に順番がやってきたようだ。俺は和食定食を受け取った。

 

「どこか空いてないか?」

 

「あ、おりむーだ~」

 

「え、織斑くん。誘わない?」

 

「……あれが織斑一夏」

かんちゃんが凄く怖い顔でいっくんを睨んでいる。どんな恨みを持っているんだ?

 

「のほほんさん、あそこが空いているから早くいこう。かんちゃんが怖い」

 

「そ、そうだね。かんちゃん、行こうか」

その後、かんちゃんが不機嫌だったり、回りがうるさかったりして大変だった。

まぁ、視線はいっくんの方に多く集中していたな。後、すでに他の人と一緒にいるから声をかけてくる人もいなかった。もし一人だったと思うと恐ろしいものがあるな。

 

 

 

「深夜、デートね」

 

「ただの学園見学だ」

現在、朝食を食べ終わって、昨日出来ていなかった学園見学をしている。すると、途中で黒が起きてきて一緒にまわっている。人に迷惑をかけないために授業で使われている場所は行けない。まぁ、そこは後でまわればいいだろう。

 

「……ん。誰かつけてきてるわよ」

 

「誰か分かるか?」

 

「さすがにそこまでは分からないわ」

さぼっている生徒だとは思えないな。それだったら、俺が気付かないわけないし。何者だ?

 

「とりあえず、人気のないところに移動するか」

 

「え!?人気のないところに連れ込んでなにする気?」

 

「俺に露出趣味はないから、人の見てる前で何かするわけないだろう」

とりあえず、校舎裏に行くことにした。さすがに授業中にそんなところにいるヤツはいないだろう。

 

「まだついてきてるか?」

 

「きてるわよ」

 

「おい。俺達をストーカーしてるヤツ出てこい」

大声で呼びかける。

 

「あら。よく気付いたわね。ちゃんと気配は隠していたのに」

扇子を持った怪しい女が現れた。ただ者じゃなさそうだな。ちなみに扇子には『見事』と書かれている。

 

「……黒はISだからな。ハイパーセンサーがあるんだよ」

 

「ああ、そういうこと。そういや、そんな噂も聞いたわね」

 

「で、あんたの名前は?何で俺達をストーカーしたんだ?」

 

「いやぁ、一回に何個も聞かれても答えらないわよ。私は聖徳太子じゃないんだから」

何個も、って二つしか質問していないんだが。ふざけたヤツだな。

 

「……それ、深夜には言われたくないと思うけど」

最近、黒は俺の考えていることが分かるようになったらしい。まぁ、常に一緒にいるわけだから、当然といえば当然なのかもしれない。

 

「お姉さんの名前は更識楯無。IS学園の生徒会長をしているわ」

更識?ああ、なるほど。そういうことか。

 

「つまり可愛い妹が男と同室ということで、妹大好きのシスコンとしては心配になって調べにきたわけか」

 

「ええ、そうよ。よく分かったわね。って、違うわよ。そ、そんな訳ないでしょ」

おお、ノリツッコミか。やるな。

 

「そんな焦った様子で言っても説得力ないぜ」

 

「い、いや。本当に違うから」

 

「……分かった。じゃあ、本当は何のようだ?」

もうちょっと弄りたかったんだが仕方ない。

 

「分かったように見えないけど。まぁ、いいわ。世にも珍しい男性操縦者なのに、昨日まで全く情報が入ってこなかったことが不思議でね。生徒会長としては、そんな怪しい人物をほっとける訳ないでしょう」

何か言い訳臭いな。まぁ、これも一応本音なんだろうが。

 

「なるほど。で、何が知りたいんだ?俺に答えられることなら答えるが」

 

「そうね。まずは貴方のことね。昨日の今日だから、大したことは知れなかったけど一応調べてみたのよ。分かったことだけでも、貴方がただ者だとは思えないわ。何者?」

 

「何者、って聞かれてもな。ISが使えること以外は普通の高校生のつもりなんだが。それよりも織斑一夏の方がとんでもないだろう。何たってブリュンヒルデの弟なんだから」

 

「織斑一夏くんはそれ以外は普通みたいじゃない。それよりも、貴方のことよ。中学時代に色んなジャンルの大会で優勝しているでしょう。運動でも文科系でも勉強でも芸術でも何でもありとあらやるジャンルで。明らかに普通じゃないわ。ただ、団体競技には出てなかったみたいだけど」

中学時代は面白い物を探して、色々やったんだよな。全部、簡単ですぐに飽きたが。

て言うか、たった一日で、よく調べたな。こいつこそ何者なんだよ?

 

「そうだな。俺は色んな才能を持ってるが、人と合わせる才能はなかったんだ。で、それが何なんだ?そんな異常な人物が大好きな妹の側にいるのが不安なのか?」

 

「いや、あのね、お姉さん、真面目に話しているからふざけないでくれると有難いんだけど。それとも、キミは真面目に話すのが嫌いなのかな?」

 

「よく深夜のことが分かったみたいね。じゃあ、私達はデートに戻るわ」

 

「いやいや、じゃあ、じゃあないよね。もうちょっとお姉さんに興味を持ってもいいんじゃない?」

何だかめんどくさくなってきたな。

 

「そうだ。今度、代表候補生と戦うのよね。特別にお姉さんがコーチしてあげてもいいわよ」

そこまでして、俺のことを知りたいのか。めんどくさいが相手の思い通りになるのも嫌だな。

 

「必要ない。コーチしてもらわなくても俺の方が強いからな」

 

「生徒会長っていうは、学園最強の称号なのよ。教えてもらって損はないと思うけど」

 

「必至だな、学園最強(笑)。そんなに俺のことが知りたかったら教えてやる。その変わりに学園を案内しろ」

 

「(笑)って何!?まぁ、いいわ。分かった。じゃあ、今から案内してあげるわ」

嬉しそうな顔をしている。どんだけ妹を心配しているんだ?




今回、少しだけ深夜の素性が明らかになりました。今後の物語に影響するか分かりませんが。

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第6話 姉妹

「そういや、シスコン会長。授業はいいのか?」

 

「ねぇ。キミの中で何で私はシスコンになってるの?そんなこと、一回も言ってないよね?後、授業は別に問題ないわ」

今更何を言ってんだ、この女。

 

「でも、そうなんだろ?」

 

「……いや、そうだけど。て言うか、先輩に対する尊敬が感じられないんだけど?」

 

「そんなものないからな、学園最強(笑)」

て言うか、俺が誰かを尊敬したことなんて一回もないな。尊敬されたことはあるけど。

 

「……お姉さん、泣くわよ。後、その(笑)って何なの?」

 

「いや、俺の方が強いからな。つまり学園最強ではないと言うことだ。そんなヤツは(笑)で十分だろ」

 

「へぇ。それは凄い自信ね。そこまで言うならお姉さんと戦ってみる。もちろん、模擬戦だけどね」

なるほど。この女は負けず嫌いのようだな。俺には分からない考えだな。俺は勝っても負けても面白ければ関係ないからな。

 

「戦う理由がないな。それにめんどくさい」

 

「さっき、あんな大口たたといてお姉さんに勝つ自信がないのかな?」

何か妙に挑発的な言い方だな。やっぱり、さっきの発言にはムカついているようだな。

 

「勝つ自信がないわけじゃない。ただ、戦っても俺に得がないだけだ。まぁ、俺に得があるなら戦ってもいいがな」

 

「ふぅん。だったら、賭けをしましょうか。勝った方が負けた方に一つだけ何でも命令が出来る、っていうのはどう?もちろん、Hな命令でもいいわよ」

Hな命令はさすがに無理だな。他の女と仲良くするぐらいなら大丈夫だが、そこまでしたら黒が怒るからな。俺は大丈夫だが、かなりめんどくさいことになる。

 

「ふむ。それならいいか。俺が勝ったら……そうだな。協力してもらおうか」

 

「協力?何をすればいいの?」

 

「学園のイベントの時とかに面白くなりそうことを企むから、それの手伝い。後は、情報提供だな。男性操縦者なんているんだ。何らかのトラブルがおきても不思議じゃない。そういう時に状況を掻き回すために情報が欲しい」

協力者がいて損をすることはないからな。それが生徒会長だっていうなら尚更だ。

 

「前者はむしろ私から頼みたいくらいね。私も色々企むのは好きだからね。でも、後者はさすがに無理ね。掻き回さられたら、たまったものじゃないわ」

まぁ、当然か。片方、通っただけでもラッキーだしな。

 

「仕方ないな。で、シスコン会長の命令は何だ?」

 

「とりあえず、私の呼び方を変えてもらおうか?」

 

「そんなことでいいのか?」

 

「いや、これは命令とは別のお願いよ。さすがに学園最強(笑)やシスコン会長は嫌だからね」

この女を的確に表現した、いい名前だと思うだがな。

 

「分かった。俺に勝ったら、それも聞こう。で、本題は?」

 

「貴方には生徒会に入ってもらうわ」

 

「は?何で?」

 

「貴方の能力なら役に立つでしょうし、危険人物の監視も出来る。一石二鳥ってわけ」

なるほど。確かに効率的で良いアイデアだな。まぁ、仕事はめんどくさそうだけど、その分色々出来そうだ。

 

「いいぜ。その条件で殺ろうか」

 

「……字が違うわよ。でも、自信満々ね。そんなにキミのISは強いのかしら?」

 

「いや、弱いな。機体性能はかなり低い」

 

「いや、深夜。私、弱くないからね。これでも第三世代機並の性能はあるから」

そうだったのか。ウサギの研究中の他の機体と比べると最低レベルだからな。まぁ、趣味で作った物らしいから仕方ないか。

 

「そんな調子でお姉さんに勝てるの?」

 

「問題ない。他に優れている要素があるからな」

その要素が俺の趣味にあうものだからな。戦いようによってはちーちゃん以外には勝てるだろう。

 

「ふぅん。まぁ、いいわ。それよりも今日は仕事があって無理だから、試合は明日ね」

 

「了解。さてと、それよりも早く、次の場所を案内してくれ。もうすぐ、昼飯の時間だから、それまでに回れるだけ回りたいからな」

 

「分かったわ。次は生徒会室に案内するわ。生徒会に入るなら知っておく必要があるでしょう?」

もう勝ったつもりか?だが、全力を出すつもりはないしな。どうしようか?

 

 

 

案内が長引いて遅れたせいで食堂がいっぱいで席が空いてないな。どうしようか?

ちなみに黒はまた指輪になって寝ている。ISだから食事の必要はないし、人の多い場所は苦手だそうだ。

 

「ん?」

空いている席を探してると、いっくんから逃げるようにして離れていく女子生徒を発見した。

 

「詰め寄ってきた女子を酷い振り方でもしたのか?例えば、俺は二次元にしか興味がないんだ、とか」

 

「いきなり現れて何言ってんだ!そんな訳ないだろ!箒が追い払ったんだよ」

ああ、なるほど。そういうことか。

 

「ふぅん」

 

「何だ、その意味深な表情は?別に深い意味はないぞ」

しまった。さっきまでシスコン会長といたせいで、キャラが少しうつってしまった。

 

「そうだ。深夜、束さんに色々教えてもらったんだよな。それを俺にも教えて貰えないか?このままだったら、何も出来ずに負けてしまう」

 

「おい、一夏。それは私が教えると言っているだろ!」

 

「断る。めんどくさい」

 

「おい、私の話を聞け」

めんどくさいな。こいつにはウサギの妹ということ以外に興味がないし。

 

「そう言えば、まだお前の愛称を決めてなかったな」

何にしよう。ウサギ妹は微妙だし、ポニテも駄目だな。髪型を変えられたら、また新しく考えないといけないし。

 

「そうだ。侍娘にしよう」

 

「だから私を無視するな」

 

「侍娘、少しは静かに出来ないのか?」

 

「やっと、私と話す気になったか」

何か常にイライラしているように見えるな。本当にウサギと姉妹なのか?全然似ていない。

 

「いっくんには侍娘が教えたらいいだろ。俺に教えるつもりはないからな」

 

「そ、そうか。それなら良い」

 

「何が良いんだ、箒」

やっぱり鈍感だな、いっくん。

 

「それよりも何で教えてくれないんだ?」

 

「他にすることがあるからだ」

嘘だがな。

 

「そうだ。変わりとは言っては何だか明日の放課後、模擬戦するんだ。それを見に来いよ」

 

「模擬戦?誰とするんだ?」

 

「生徒会長とだ。お互いに本気を出すつもりはないが、勉強になると思うぜ」

 

「分かった。見に行くぜ」

その後、昼食を食べ終わると、いっくん逹は授業のために教室に、俺はまだ回っていない場所の見学に向かった。

 

 

現在、夕食を食べ終わって暇なので漫画を読んでいた。

研究所にいた時に色々教えたので黒も漫画に興味をもっており、隣で漫画を読んでいる。

 

「ねぇ……。噂で聞いたんだけど、お姉ちゃんと模擬戦するって本当?」

かんちゃんが部屋に戻ってくると、いきなり聞いてきた。

にしても、もう学園中の噂になってるのか。やっぱり女子の情報網はすごいな。

 

「そうだけど。それがどうかしたか?」

 

「何で、そんなことになったの?」

 

「俺みたいな怪しい人物をほっとけないんだと。それで話している内に模擬戦をすることになったんだ。かんちゃんも見に来る?」

理由の半分以上は妹を心配してだと思うが。まぁ、真実を言う必要はないだろ。

 

「行かない。って、それは!」

いきなりかんちゃんが大声を出した。びっくりした。大声、出せたのか。

 

「うわっ!いきなり、どうしたんだ?」

 

「そ、それ。私が好きなアニメの原作」

 

「ん?アニメが好きなのか?だったら、色々あるぞ」

俺は家から持ってきていたアニメのDVDを見せる。

 

「凄い!この初回限定版、私が買い損ねた物だ。うわぁ、まだ買っていない物が他にもいっぱいある。これ、借りてもいい?」

いきなり元気になったな。さっきまでのテンションとの違いに、さすがの俺も驚いた。まるで別人だ。

 

その後、三人で朝までアニメを見たり、語り尽くしたりした。

朝まで、そんなに仲良くなかったのに一瞬で親しくなれるとは。アニメの力は凄いな。

 

「分かってない。この作品は主人公が良いの」

 

「 違う。悪役が一番良いだろ。悪の美学を持っていて格好いいだろ」

 

「いや、ヒロインでしょ。この健気なところが可愛いんでしょ」

 

やっぱり、アニメで仲良くなるのは難しいのかもしれない。




次回、セシリアの前に何故か生徒会長と戦います。

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第7話 VSシスコン

「よく来たわね。待ってたわ、飛原深夜くん」

どこのラスボスだ、あんたは。

 

現在、放課後になりシスコン会長との模擬戦のためにアリーナに来ている。

にしても、観客が凄い人数になってるな。ただの模擬戦なのにアリーナの観客席を埋め尽くす勢いだな。

 

「何格好つけてんだ?」

 

「雰囲気を大事しているだけよ。なのに台無しにしないでよ」

 

「ああ、それは悪かったな」

まぁ、確かに雰囲気は大事だな。だが、相手の流れになるのは嫌いだ。

 

「まぁ、いいわ。いくわよ」

そう言うと、シスコン会長はIS『ミステリアス・レイディ』を展開した。

アーマーは面積が全体的に狭く、小さい。

特徴的なのは左右一対の状態で浮いているアクア・クリスタルである。

そこから水のヴェールが大きなマントのようにシスコン会長を包み込んでいる。

 

「了解だ」

そして、俺もIS『黒嵐』を展開した。

全身、真夜中を思わせる真っ黒なボディーに包まれる。

無駄な物を全て省いた特徴のない鎧のような外見。だが、シンプルが故の美しさのあるフォルムだ。

唯一、特徴的なのは展開装甲だけである。

これは現在、ウサギが製作中のIS『赤椿』に装備する展開装甲の試作版である。燃費が悪くてまともに使えるものではない。

 

『深夜、調子はどう?』

黒の声が直接、頭に聞こえてくる。

 

「ああ、問題ない」

ハイパーセンサーで観客席を見ると、いっくんに侍娘、それにパッキン女まで観戦に来ていた。

 

「それが貴方のISね。格好いいじゃない」

 

「それはどうも。あんたの武装はランスか」

そう言うと、俺は槍の武装『ブラックトライデント』を呼び出す。ギリシア神話のポセイドンの武器で有名なトライデントを元に俺が作った武装だ。ウサギに教えてもらいながら俺が初めて作ったもので頑丈なだけがウリの武装だ。

 

「さて、模擬戦を開始する前に一つ聞きたいことがあるんだけど」

 

「何だ?」

何でわざわざ今、聞くんだ?別に模擬戦が終わってから聞けばいいのに。

 

「今日の授業中にね、簪ちゃんが居眠りしてたのよ。あの真面目な簪ちゃんがよ」

 

「それがどうしたんだ?授業が退屈だったか、眠かったんだろ」

 

「そんな訳ないでしょう。……ねぇ。昨晩何があったの?」

物凄く怖い雰囲気を出してる。ああ、そういうことか。

て言うか、よく考えたら、何で授業中のかんちゃんのことを知っているんだ?シスコン恐るべし。

 

「聞かなくても分かるだろう。男と女が同じ部屋にいて寝不足。それだけだ」

実際はアニメ談義をしていただけなのに、わざと意味深な言い方をする。

アニメ談義のせいで、俺も眠くて今日は昼頃まで寝てしまっていった。

 

「……よ、よ、よ、よくも簪ちゃんの初めてを。初めては私が貰う予定だったのにー!」

かなり危ない発言をしながら突っ込んでくる。予想以上のシスコンぶりだ。

 

『……深夜、大丈夫?どう見ても本気に見えるんだけど』

 

「ああ、ヤバイな。もしもの場合は『アレ』を使うか」

俺のポリシー的には使いたくないんだが。そうも言ってられないな。

 

「はぁぁああああー!」

シスコンの猛攻が開始した。

冷静さを失っているわりに無駄のない正確な攻撃をしてくる。さすが、学園最強を名乗るだけはあるな。

 

「ちっ!」

攻撃を防ぎきれずに何発か、ダメージをくらう。

俺は展開装甲を使って少し下がって距離をとるように見せかけて突進を仕掛ける。

 

「なっ!水!?」

俺の突きを水のヴェールでガードされた。

 

「この水はISのエネルギーを伝達するナノマシンによって制御しているのよ。凄いでしょ?」

そんなものがあるのか?それは黒の装備の中にもないな。後でウサギに作ってもらおうかな。

 

『深夜、ブラックトライデントじゃあ勝てないよ』

 

「元々勝ち負けには興味ないが、このまま何も出来ずに負けるのは嫌だな。ちょっと本気出すか」

 

「どうしたの?その程度で私よりも強いって言ったのかしら」

シスコンの攻撃をまともに食らってしまった。シールドエネルギーの残りが少ない。ヤバイな。

にしても、かなり機嫌が悪そうだ。後でかんちゃんのことはちゃんと説明するか。

 

とりあえず、くらった攻撃を利用して距離をとることに成功した。

 

「よし、反撃だ」

 

「甘いわよ」

そう言うと、『蒼流槍』から四門ガトリングを射撃した。

そんな装備まであったのか。厄介だな。

俺はブラックトライデントを回転させて盾にすることで、その射撃を防ぐことに成功した。

 

そして、ブラックトライデントを戻して別の武装『グングニル』を呼び出す。

これは俺がブラックトライデントを作っているのを見たウサギが「そうだ、しっくん。どっちが優れた武装を作れるかで勝負しようか。よし、決定。束さん、頑張っちゃうぞ」という感じになって作られた物だ。勝てる訳ないだろ。馬鹿か。

特徴としては投擲用の槍。そして一点集中の攻撃力である。

 

「一撃滅殺!グングニル!」

俺はそう言って、グングニルを相手に向けて投擲する。すると回転しながら凄い勢いでシスコン会長に向かっていく。

 

「そんな物、この水には効かないわ」

そう言って、水のヴェールで防御する。

 

「なっ!」

だが、多少ずらすことには成功するが水のヴェールは貫通されてしまう。

さらに、そのままグングニルをくらって地面に勢いよく衝突する。

 

「うっ!」

そしてグングニルは一旦、量子化して消え次の瞬間には深夜の手に戻っていた。

グングニルはトライデントと違い、北欧神話のオーディンの武器で有名である。

そして、これは敵を貫いた後は自動的に持ち主の手元に戻るという話を元に作られた能力である。

 

「さて、形勢逆転だな。どうする、学園最強(笑)」

 

「……こっちにもまだ奥の手はあるのよ」

シスコンの掌の上で、しゅるしゅると水が集まっていく。

 

「黒。あれは何だ?」

 

『通常は防御用に装甲表面を覆っているアクア・ナノマシンを一点に集中、攻撃形成しているわ』

 

「……つまり?」

 

『あれをくらえば負けるわ』

そんな、明らかな奥の手を使ってくるなんて完全に予想外だ。

だが、攻撃に特化するということは防御力はおちるということ。

こっちが先にグングニルを当てれば勝てる。

 

「一撃滅殺!グングニル!」

二発目のグングニルを放つ。

 

「そんなの関係ないわ」

シスコン会長は突っ込みながらグングニルを避けるが、完璧には避けきれずに少しダメージをくらう。だが、ダメージを気にしないで、そのまま突っ込んでくる。

 

「くらえぇぇえええ!簪ちゃんの仇!ミストルティンの槍!」

 

「くっ!」

俺は相手の迫力に呑まれて動くことが出来ず、もろに攻撃をくらってしまった。

て言うか、かんちゃん死んでねぇし。

 

『試合終了。両者――引き分け』

 

最後の自分の攻撃の衝撃に耐えきれずに自滅したようだ。どこまでキレてんだよ。

 

 

 

「ごめん。本当にごめんっ!」

現在、二人とも怪我をしていて保健室で休憩している。

そこで、かんちゃんの寝不足の原因を説明すると、シスコン会長が謝ってきた。

 

「でも、深夜くんも悪いのよ。あんな意味深な言い方をするから」

 

「……まさか、あんな嘘で騙さられると思わなかったんだよ」

まぁ、嘘だけどな。でも、あそこまでキレるとは思わなかったな。

 

「ところで次のクラス代表決定戦には間に合うの?」

 

「大した怪我じゃないからな。二、三日休めば完全回復だ」

 

「そう、よかった。後、黒ちゃんは大丈夫?」

 

「ああ、現在、指輪になって休憩中だ。黒もダメージをくらったからな。まぁ、今日中には完全回復だろ」

人型の時よりも指輪の時の方が回復が早いらしい。

 

「にしても、腹のさぐりあいのような頭脳戦を予想していたのに、まさかパワーゲームになるとは。予想外もいいところだ」

 

「……いやぁ、そう言われても困るんだけど。そ、それよりも賭けはどうするの?この場合」

逃げたな。まぁ、いいけど。

 

「……そうだな。両方の意見を聞くことにするか」

 

「つまり?」

 

「俺は生徒会に入るし、あんたは俺の遊びの協力をする」

まぁ、元々お互いに損のない賭けだったし。

 

「じゃあ、まずは私の呼び方を変えてもらおうかな?」

 

「う~ん。呼び方ねぇ。すぐに思いつかないな」

 

「だったら、たっちゃんとかどう?オススメよ」

 

「よし、採用」

 

「えっ!?い、いや、軽い冗談のつもりだったんだけど」

冗談を真に受けられて焦っている。すぐに呼び方も思い付かないし、考えるのもめんどくさいから、これでいいや。

 

「そういや、かんちゃん来ないな。同居人と姉が怪我したというのに」

 

「……い、いや、それはその……」

急に言いづらそうにしている。もしかして、姉妹仲、良くないのだろうか?もしかして。

 

「自分の貞操を狙う姉が恐ろしくて、距離をとっているのか?」

 

「いや、違うから。そういうことじゃないの!」

何が違うのだろうか?自分の貞操を狙う姉なんて恐怖の対象以外の何者でもないだろう。

 

「その話は簪ちゃんに聞いても答えてくれないと思うから、後で私が教えてあげるわ」

何か訳ありなのだろうか?

 

「じゃあ、その前に今から来る鬼をどうにかしようか?」

 

「おい、飛原に更識」

ちーちゃんが怖い顔をして保健室に入ってきた。

そして、怒られた上に反省文の提出することになった。

まぁ、あれだけ大事になったんだから当たり前と言えば当たり前だけど、怪我人にはもう少し優しくしてほしい。




やっぱり戦闘シーンは難しいですね。正直、自信がないです。

黒の細かい設定はセシリア戦の時に説明しようと思います。

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第8話 生徒会

怪我から復活した日の放課後、俺は生徒会室の前にいた。

たっちゃんの見舞いに来ていたので、既に生徒会メンバーとは会って挨拶はしているが生徒会に本格的に参加するのは今日からだ。

生徒会室のドアを開ける。

 

「失礼します」

 

「失礼します、じゃないでしょ。ただいま、でしょ」

 

「昨日ぶり~。ヒハランに黒ちゃん」

 

「今日からよろしくお願いします。飛原くんに黒さん」

生徒会室に入るとメンバーが挨拶してくる。

のほほんさんが生徒会だと知った時は予想外で驚いたな。

 

「本音ちゃん、冷蔵庫からケーキを出してきて」

 

「はーい」

 

「お嬢様、私はお茶をいれますね」

挨拶が終わるといきなり、何かの準備を始める生徒会メンバー。仕事はいいのか?

 

「深夜くんと黒ちゃんはそこに座ってて。すぐに歓迎会の準備終わらせるから」

 

「歓迎会って言われても、私、食べらないんだけど」

 

「俺も食べて飲むだけの歓迎会には興味ないな」

 

「え~!じゃあ、ヒハランに黒ちゃんはどんなのがいいの?」

冷蔵庫を開けたところでのほほんさんが驚く。

電気代がもったないから早く閉めろよ。

 

「私は深夜と二人でイチャイチャできれば」

 

「そうだな。歓迎会だけに芸とかどうだ?」

回りの空気が冷たくなるのを感じた。くそっ!いっくんのせいだ。

 

「……深夜。今のは私でもフォーロー出来ないわ」

 

「深夜くん。さすがにそれはないと思うよ」

 

「ヒハラン~、おりむーと同じで寒いよ~」

殺せ!俺を殺してくれ!

 

「あの、それよりもいきなり芸って言われても準備してませんよ」

おお、うっちゃんがフォーローしてくれた。助かったぜ。

ちなみにうっちゃんはのほほんさんの姉で布仏虚という名前だ。

 

「芸じゃなくても、何かして仲良くなろう、ってことだ」

 

「なるほど、良いアイディアね。でも、何するの?」

 

「だったらコスプレとかどう?色々服ならあるよ~」

 

「おお、それで深夜にあんな格好やこんな格好をさせるのね」

せめて、建前ぐらいつかえよ。欲望に忠実過ぎるだろ。

 

「まぁ、いいけど。俺もコスプレは好きだ」

初日に女装して、ちょっとハマったからな。

 

「じゃあ、去年までの文化祭の衣装が生徒会の備品室にあるから私が取ってくるわ」

 

「ああ、俺も手伝うぜ。黒も来い」

 

「分かったわ」

三人で生徒会の備品室まで服を取りにいく。

その間、うっちゃんとのほほんさんが御菓子とお茶の準備をすることになった。

 

 

 

「さて、持ってきたが結構あるな」

 

「そうね、予想以上だわ」

目の前には備品室から運んだ大量の衣装がある。おい、少しぐらいは処理しとけよ、IS学園。

 

「お~。これ、いいね~」

 

「深夜、これとかどう?」

何故、俺に薦めるのが女物なのだろうか?黒に女装が気に入ったことを言ってなかったと思うんだが。

 

「じゃあ、早速着替えるか」

そう言って、俺は早速服を脱ぎ出す。

 

「え!?何でいきなり脱ぎ出してるんですか!?」

うっちゃんが顔を赤くして焦っている。

 

「そりゃあ、今から着替えるからだろ」

 

「だから何で今、着替えるんですか!?女の子と一緒に着替える気なんですか!?」

 

「俺は気にしないけど」

 

「私達が気にするんです!」

逹?何を言っているのだろうか、この人は。

 

「私は気にしないわよ」

 

「私も気にしないよ~」

 

「むしろ、見たいし、見せたいぐらいよ」

やっぱり誰も気にしていないな。大体、思春期のガキじゃあるまいし、気にしなくていいだろ。

そして、黒の痴女発言は後で人前では止めるように言っておくか。

 

「何で誰も気にしないんですか!?もしかして私がおかしいんでしょうか?」

 

「じゃあ、そういうことで」

 

「……えっと、あの。そうだ。皆で一緒に着替えるよりも、バラバラに着替えて、後で見せあった方が何というか……」

何か無茶苦茶だが、とりあえず言いたいことは分かった。

 

「なるほど。一理あるな。じゃあ、皆バラバラに着替えるか。黒、覗きに来るなよ」

 

「ほっ。助かった」

 

 

 

「さすが深夜!可愛いよ!」

俺が着替えて戻ってくると、いきなり黒が俺の写真を撮り出した。

ちなみに俺は魔法少女のコスプレだ。前にかんちゃんと一緒に見たアニメの主人公の服装だ。

 

「……黒、写真を撮るのはいいが、そのデジカメは何処から持ってきたんだ?」

 

「ああ、これ。これはあのウサギが箒ちゃん逹を撮ってくれ、って言って私の後付装備にインストールしてきたわ」

何、その話。俺は聞いてないんだが。

元々、趣味で作られた物だから後付武装に武器以外もインストールしていたのは知っているが。

 

「侍娘逹を撮っていないけどいいのか?」

 

「深夜以外の写真なんていらないわ。それにウサギの言うことを聞く必要もないわ」

ウサギのヤツ、自分で作った物の手綱ぐらいちゃんと握っておけよ。

 

「それよりも深夜。ポーズをとってみて」

 

「俺じゃなくて、お前のキャラがぶれてどうするんだ?」

 

「そんな可愛い深夜の格好を見たらキャラもぶれるわよ」

そんなに似合っているのか?自分じゃ、よく分からないけど。

 

「ところで何で黒はコスプレしてないんだ?」

 

「ああ、深夜と同じ服にしようと思ったのよ」

そう言うと、黒の服装が俺と同じ格好になった。

黒はISだから自由に服装を変えられるそうだ。便利で羨ましいな。

 

「どう?深夜くん、似合ってる?」

たっちゃんが戻ってきた。

服装は猫のコスプレだ。かなり露出度の高い格好だ。学園祭でしていい格好なのだろうか?そして、耳と尻尾が動いている。どんな素材で作られているのだろう?

 

「……その耳、触っていい?」

 

「深夜、駄目!触るなら私の耳を触って!」

そう言うと、黒に耳と尻尾が現れる。

にしても、猫耳魔法少女か。なんというかマニアックだな。

 

「ふにぁ~」

俺が耳を触ると猫みたい声で嬉しそうにしている。もしかして、耳に感覚があるのか?結構いいものだな。今度は別の獣耳をしてもらおう。

 

「お~。ヒハランが黒ちゃんにやらしいことしてる~」

 

「生徒会室でいやらしいことをしてはいけません」

布仏姉妹も戻ってきた。

のほほんさんは狐の着ぐるみ、うっちゃんはフリフリのメイド服。これまた露出が高い。

て言うか、生徒会室じゃなかったら、していいのだろうか?

 

「うっちゃん、その格好の方がいやらしいと思うけど」

 

「こ、 この格好はその……。本音に無理矢理薦められて」

照れて顔を赤くしている。

 

俺は黒の手から目にもとまらぬ速さでデジカメをとる。

 

――カシャ

 

そして、黒が俺から目にもとまらね速さでデジカメをとり、今撮った写真のデータを消した。

 

「何故、写真を消した?」

 

「深夜こそ何で写真を撮ったの?」

 

「いや、つい」

 

「確かに今のは私でもドキッ、ってきたけど。それでも浮気は駄目よ」

 

「はいはい、痴話喧嘩はそこまでね」

たっちゃんがニヤニヤしながら仲裁に入ってきた。

 

「じゃあ、次は私は撮ってね」

 

「次はヒハラン、私ね~」

何故か写真撮影会が開始してしまった。まぁ、楽しそうだからいいか。

 

 

 

「そういや、仕事はしなくていいのか?」

撮影会が終わってお茶会が開始すると俺は聞いた。

 

「うん、大丈夫よ。深夜くんがしてくれるから」

 

「は!?」

この女は何を言っているのだろうか?意味が分からない。

 

「深夜くん、授業に出なくていいんでしょう?だったら、その間に生徒会の仕事をしてくれれば私が助かるわ」

何て自分本位な発言なんだ。人を気遣うとかはできないのか。

 

「いやです。お断りします」

 

「……深夜くん、敬語を使うキャラじゃないよね。織斑先生にもタメ口だし。そこまで嫌なのかしら?」

当たり前だ。面白いこと以外は出来るだけ、いや全くしたくない。

 

「当たり前よ。そんなことをしたら私と深夜がイチャイチャする時間が減っちゃうじゃない」

だったら、朝、ちゃんと起きろよ。

 

「というわけでお断りします」

 

「だったら、さっき撮った写真、学園中にばらまくわよ」

ニヤニヤしながら俺を脅すような口調で言ってくる。この人は、まだ俺を理解していなのか?

 

「勝手にどうぞ。その程度で俺は困りません」

 

「んー。じゃあ、どうしようかな」

 

「どうもしなくていい。放課後はちゃんとするから、それでどうにかなる」

 

「凄い自信ね。分かったわ。じゃあ、そうしましょう」

 

あ、今思い出した。あのこと、まだ聞いてなかった。

 

「そういや、まだかんちゃんのことを聞いてなかったな」

 

「ああ、その話ね。ちゃんと説明するわ」

そして、俺はかんちゃんの専用機といっくんの専用機の開発元が同じであること。そして、いっくんの専用機に人員を回したせいで、かんちゃんの専用機がまだ完成していないことを聞いた。

後、更識の家のことと姉妹の関係についての説明も聞いた。

 

「なるほど。大体の事情は分かった。かんちゃんのことはクラス代表決定戦が終わってから対処するか」

 

「え?どうにか出来るの?」

 

「多分な。それにアニメ好きに悪いヤツはいない」

 

「じゃあ、任せたわよ」

 

「了解」

そして、その後はのんびりお茶会をして終わった。

本当に仕事をしなかったな。それでいいのか?まぁ、楽しそうだからいいか。




本当はセシリア戦を書くつもりだったけど、何となく思い付いたので書きました。

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第9話 クラス代表決定戦

「お、織斑くん織斑くん織斑くん」

現在、クラス代表決定戦の直前で第3アリーナ・Aピットにいる。

そこに副担任のマヤマヤがいっくんの名前を呼びながら駆け足でやって来た。三度も呼ばなくていいと思うが。

 

「マヤマヤ、落ち着け。落ち着かないと後ろの怖い人に怒られるぞ」

 

「は、はいっ!そうですね!」

むしろ怯えたようにも見えるが。まぁ、いいか。一応、落ち着いたし。

にしても、何で生徒がタメ口で教師が敬語何だろうか?立場が逆転してるような気がする。

 

パァンッ!

いつものようにちーちゃんが出席簿で叩いてきた。

 

「誰が怖い人だ、誰が」

 

「 気にしているんだったら、暴力は止めろよ」

 

パァンッ!

また、叩かれた。さっきよりも威力が高い。

 

「教師にタメ口で話すな。何度言ったら分かるんだ、馬鹿者!」

 

「それよりも山田先生、どうかしたんですか?」

それよりも、じゃあないだろう。お前も姉の暴力行為を止めさせろよ。

 

「ああ、実は織斑くんの専用機なんですが、少し遅れているんです。到着までもう少しかかります」

 

「えっ!?じゃあ、どうするんですか?」

 

「どうもしない。飛原が試合をしている間に届けば、そのままぶっつけ本番でやるだけだ。届かなった場合は素手でやれ」

何て無茶苦茶な発言だ。素手でISと戦える人はちーちゃんとウサギぐらいなのに。この人は自分の弟を殺す気なのか?

 

「んな、無茶苦茶な。それにISの練習もしていないのに。どうすればいいんだよ?」

侍娘が気まずそうに目をそらしている。

侍娘がいっくんにISのことを教えることになっていたが、一週間、剣道の練習しかしなかったらしい。いっくんも途中で気付けよ。

ちなみに俺は知っていたが放っておいた。理由は生徒会で忙しかったのと、このまま放っておいたら、どうなるか気になったからだ。まさか、全くISに関することをしなかったとは。予想外だ。

さっきから侍娘が全く喋らないのは責任を感じているからだろう。

 

「じゃあ、行ってくるわ」

そう言うと、俺はIS『黒嵐』を展開した。

 

「深夜、出来るだけ時間を稼いでくれ。じゃないと、素手で戦うことになってしまう」

 

「安心しろ。その心配はいらない」

俺は考えた。

生徒会があるのにクラス代表までするのはめんどくさい。そこで俺が楽しめて、他のヤツにクラス代表を押し付ける方法を。

 

そして、俺は敵……いや哀れなオモチャのいるところに行く。

 

「あら、よく来ましたわね。貴方の戦い方は先日の模擬戦で見ましたわ。男にしては多少、出来るようですけど、その程度では……って人の話を聞いていますの?さっきから欠伸をしていますけど」

 

「いや、聞いてない。面白くなさそうな話だったからな」

 

「……相変わらず腹のたつ方ですわね。ですが、その減らず口も今日までですわ」

 

「ふーん。あっそ」

 

俺は相手の武装を見て球体の自立機動兵器『スカイルーラー』とレーザーライフル『ブラックバースト』を呼び出す。

 

「わたくしと同じタイプの武装!?どういうことですの!?貴方の武装は槍じゃなかったんですの!?」

 

「さぁな。自分で考えろよ」

 

『黒嵐』には専用武装というものがない。つまり、基本的に素手だということだ。それに加えて機体性能も低い。さらに燃費が悪くて使い物にならない展開装甲。はっきり言って欠陥品だ。

だが、戦闘ではなく趣味を優先した、この機体には他の機体よりも優れた部分がある。それは圧倒的な拡張領域だ。

元々、ウサギが黒を製作した理由は自分が気分転換に作った武装や試作品が余っていたからだ。その武装をバラバラにではなく、まとめて使えたら面白いことになりそうだ、ということで他を全て犠牲にして拡張領域の増長した機体を作ったらしい。

後、俺が製作した武装もあるし、中には武装以外も入っている。

 

「まぁ、いいですわ。同じ武装ならわたくしが負けるはずありませんわ」

 

「そう思っているなら、それがお前の限界なんだろうな」

そして、本格的に戦闘態勢に入る。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でるワルツで!」

 

「殺して解して並べて揃えて、晒してやんよ!」

 

そして、相手の自立機動兵器『ブルー・ティアーズ』から、まさに弾雨のごとく攻撃から降り注ぐ。

 

「ふむ。その程度か。つまらんな」

その攻撃を俺の『スカイルーラー』が防ぐ。

この武装はとても頑丈で防御にも使えるし、そのまま相手にぶつけて攻撃することも出来る。本来は13機あるが相手にあわせて4機しか出していない。まぁ、まだ全部使うことは出来なくて、最大8機までしか扱えない。

ちなみに、この武装は俺のお気に入りで黒の名前の由来にもなっている。

 

『この程度なら、私いらなくない?』

 

「まぁ、いいじゃないか。俺の計画のためにパッキン娘を完膚なくまで、ぶっ倒さなくちゃならないんだから」

スカイルーラーは俺じゃなくて、黒も動かすことも出来る。

 

「なっ!?わたくしの攻撃が!」

 

「じゃあ、興味も失せたし、さっさと戦闘不能にするか」

そう言うと、俺はブラックバーストを発射する。

すると、レーザーが途中で分裂して相手を襲う。

この武装は多対一を目的につくられた物である。

 

「くっ!」

相手は避けきれずにダメージをくらう。そして、ブルー・ティアーズ――ややこしいので以下ビット――を2機破壊することに成功。

 

「ちっ!破壊し損ねたか」

 

「これならどうですか?」

レーザーライフルを発射してきた。

 

「それは悪手だろ」

俺はブラックバーストを発射して相殺する。

そして、その隙に黒がスカイルーラーを直接ぶつけてビットを破壊する。

 

「なっ!」

よく驚くヤツだな。

 

そして、俺は相手に接近する。

 

「これで終わりだな」

 

「……かかりましたわ」

にやり、とパッキン女が笑うと腰部から広がるスカート状のアーマーの突起が外れて動いた。

 

「おあいにく様、ブルー・ティアーズは六機ありましてよ!」

なるほど。やっぱり隠し球があったか。予想通りだ。

にしてもミサイルか。これが隠し球とは……つまらんな。

 

「これでわたくしの勝ちですわ!」

 

「これで終わりだ」

俺は爆風から何もなかったかのように現れて、パッキン女のレーザーライフルを破壊する。

 

「っ!?どうして!?」

 

「これだ」

そう言って、俺は新たに出したスカイルーラーを指差す。

 

「貴方も奥の手を隠していましたのね?」

 

「いや、これは奥の手でも何でもない」

 

そして、俺は出力を抑えて相手を倒さないように攻撃をする。

どんどん相手のISアーマーが破壊されていく。

 

「これだけ殺れば十分だろ」

 

『また字が違うよ。て言うか、深夜、それ好きだね』

 

「別にいいだろ」

そして、俺は相手に止めを刺す。

 

『試合終了。勝者――飛原深夜』

 

 

 

「……深夜。やり過ぎだろ」

試合が終わってピットに戻ると、いっくんが白い目で言ってきた。

 

「俺の計画に必要だったんだよ」

 

「計画って何だよ?」

 

「後で分かる。ところであれがいっくんの専用機か?」

俺が指差した方向に真っ白なISがあった。

 

「ああ、さっき届いたんだ」

いっくんが嬉しそうに言ってくる。やっぱり専用機が貰えるのは嬉しいことなんだろうな。俺も嬉しかったからな。

 

「それは残念だったな。パッキン女はもう戦えないだろう」

 

「え!?マジで!」

 

パァンッ!

ちーちゃんが出席簿で叩いてきた。

 

「何で叩くんだよ!俺、何かしたか?」

 

「やり過ぎだ。あれではオルコットはすぐに戦えないだろうな」

いっくんと同じことを言わなくてもいいだろう。

 

「じゃあ、どうすんだ、千冬姉」

 

「織斑先生と呼べ、馬鹿者。そうだな。とりあえず、飛原と戦え」

 

「ああ、それは無理だ。黒が疲れて寝てしまったからな。こうなると中々起きない。というわけで、俺は帰るわ」

まぁ、嘘だけどな。黒があの程度の戦闘で疲れるわけがない。

 

「じゃあ、俺はどうなるんだ?」

唖然としたいっくんを放っておいて、俺は部屋に戻る。

 

 

 

「……今日の試合。何なの?」

部屋に戻ると、かんちゃんにいきなり聞かれた。

 

「何が?」

 

「相手をいたぶるような真似をして……。明らかにやり過ぎ……」

 

「それ、三人目だな。まぁ、いい。説明するか」

かんちゃんが不機嫌になって、今日のアニメ談義が出来なかったら困るからな。

 

「俺がクラス代表にならないためだ。パッキン女があの調子なら試合は出来ないし、俺が棄権がすればいっくんが不戦勝で二勝してクラス代表に決定だ」

て言うか、今更ながら気付いたが、俺がクラス代表するわけにはいかいかないだろ。俺の存在自体、国家機密みたいなもんだし。人前に出るクラス代表は無理だろ。

 

「それなら、そんな方法とらなくていいでしょ……」

 

「それが一番楽しめる方法だからな」

 

「まぁ、貴方がそういう人だって分かっているから……いいわ。後、戦い方も気になったんだけど。貴方のISの機能なら、相手の武装にあわせて有利な戦法で戦うのが普通でしょ」

ああ、そういや、かんちゃんには黒のことを説明していたんだったな。まぁ、不思議に思うのも当たり前だな。

 

「俺の趣味だ。ただ勝つだけじゃ、つまらないからな」

 

コンコン

 

「入ってよろしいでしょうか?」

誰がやって来て、扉をノックした。

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します」

すると、パッキン女が部屋に入ってきた。

何か恋する乙女みたいな顔をしているな。もしかして、俺にボコボコにされて惚れたのか。いや、そんなわけないか。どんなドMだって話だ。

 

「何の用だ?」

 

「……実は一夏さんのことで相談がありまして」

一夏さん?もしかして、そういうことか。でも何故だ?意味が分からない。

 

「……もしかして、いっくんに惚れたのか?」

 

「い、いえ、そういうわけでは。ただ、気になってしまって……」

 

「あいつの何処が気になったんだ?」

 

「飛原さんにボコボコにやられて落ち込んでいるところを一夏さんに慰めてもらって……。それで……」

え!?なにそれ?こいつ、ちょっと優しくされただけで惚れるとか、チョロすぎるだろ!

 

「……それで何で、ここに来たの?」

かんちゃんが凄く不機嫌そうに聞く。いっくんの話題が出ただけで不機嫌になるからな。

 

「同じ男である飛原さんに男の人の趣味を聞こうと思いまして」

 

「なるほど。そういうことか。いいぜ」

その後、俺とかんちゃんがアニメ知識で明らかに間違ったことを悪意をもって教えた。

困ったいっくんを見るのが楽しみだ。




最後に教えているのは、ほとんどクラリッサと同じ内容です。ただ、クラリッサとの違いは勘違いではなく、分かっていて教えているところですね。

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第10話 転校生

クラス代表決定戦の翌日、朝のSHRに俺は珍しく参加していた。というよりも初日を除いて初めての参加である。理由は面白いことがありそうだからだ。

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね」

何がいい感じなのかは知らないが、マヤマヤが嬉しそうに喋っている。クラスの女子は大盛り上がりだが、いっくんだけは暗い顔をしている。

 

「先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

「俺は昨日の試合、何もしていないんですが、何でクラス代表になっているんでしょうか?」

 

「それは――」

 

「俺が説明してやろう」

マヤマヤの言葉を遮って、俺が立ち上がって言う。そして、いっくんとちーちゃんがツーショットになる位置に移動して写真を撮る。

 

「……深夜。その前に何で写真を撮っているのかを説明しろ。この前も撮ってたよな」

生徒会の初日の後にいっくんの写真を撮って、翌日に女子に売ったら凄く儲かった。特に昨日、パッキン女が大量に買ってたんだよな。さすがお嬢様、羽振りが良かったぜ。

そして、いっくんとちーちゃんのツーショットなんてなったら、凄い売り上げが期待できるぜ。

その他、道具とかは写真を渡せばウサギが準備してくれるから売り上げは全部俺のもの。

後でアニメのDVDに漫画、コスプレ道具に色々と買うか。

 

「気にするな」

 

「いや、すげぇ気になるんだが」

 

「……いっくんがクラス代表なのは不戦勝で二勝したからだ」

 

「無視するなよ!」

んー。やっぱり他の人間が入って上手くツーショットに出来ないな。仕方がない。後で加工するか。

 

「……もう諦めた。でも、納得出来ん。一番強い深夜がやるべきだろう」

 

バシン!

ちーちゃんがいっくんを叩いた。

 

「諦めろ。それに飛原を人前に出るクラス代表にするわけにはいかない。飛原の存在が世間にバレたら確実に問題がおきる」

 

「だったら、セシリアを痛っ!」

また叩いた。

 

「男らしく諦めろ」

 

「ハァー」

ちーちゃんに言われていっくんも諦めた。暴力に屈したようだ。

 

 

 

それから時間も過ぎて4月の下旬の夜、俺は人気のない校舎で電話をしていた。

 

『いやー、久しぶりだね、しっくん。しっくんの声を聞けて嬉しいよ』

電話の相手はウサギだ。さすがにウサギとの会話を人に聞かれるわけにはいかないので毎回、人のいないところに移動しなければいけない。正直、めんどくさい。

 

「久しぶり、って昨日、会ったよな?」

 

『あれー。そうだっけ?束さん、うっかりだね。あははははっ!』

相変わらずテンション高いな。

 

「で、何のようだ?写真なら昨日渡しただろ」

 

『昨日、言い忘れたことかあったんだよ。それをしっくんの声を聞くついでに言っておこうと思ってね』

昨日のこと覚えてんじゃねーか。相変わらず適当だな。

 

「それは面白いことなのか?」

 

『当然だよ。私が作っていたオモチャの実験だよ』

ああ、あれか。俺が研究所にいた時に作っていた物だな。

 

「ふぅん。それを俺にくれるのか?」

 

『それは無理だよ。まだ完成していないからね。でも、完成したらしっくんにもプレゼントするよ。そこでお願いなんだけどね、邪魔しないでほしいんだよね』

 

「ん?どういうことだ?俺と黒で性能テストするんじゃないのか?」

確か、そういう話になっていたはずだが。

 

『実は気が変わってね。他にも試したいことがあるんだよ』

 

「……ああ、なるほど。いっくんか」

 

『相変わらずしっくんは勘が鋭いね。他にも色々気付かれてそうで怖いよ』

それって色々企んでいる、って言ってるのと同じ意味なんだが。まぁ、だからウサギのことを気にいってるんだがな。

 

『とういうわけで用事は終わりね。後、一つ文句があるだよね』

 

「文句?何だ、それは?」

 

『いっくんの写真はいっぱいあるけど、ちーちゃんと箒ちゃんの写真が少なくない?』

 

「無茶言わないでくれ。侍娘もちーちゃんもすぐに暴力を振るうからな。いっくんの写真を渡すことで何枚か撮ってるけど盗撮は難しい。特にちーちゃんは不可能だ」

前にちーちゃんを盗撮しようとしたらバレて地獄をみたからな。あんなのは二度とごめんだ。

 

『まぁ、確かにちーちゃんはしっくんには厳しいよね』

 

「そんな挑発するような言い方をしても出来ないものは出来ないからな」

 

『ちぇ。仕方ないか。そうだ、くーちゃんも話さない?昨日、喋ってなかったよね。――え?嫌。相変わらずしっくんのことが嫌いなんだね』

まだクロエは俺のことが嫌いみたいだな。初めて会った時から、俺のことをライバル視してんだよな。ウサギを盗られると心配しているようだ。

ちなみに俺が唯一、あだ名で呼んでいない人物だ。ウサギ以外にくーちゃんと呼ばれたくないらしいし、クロちゃんだったら黒と被る、他の案も却下された。だから仕方なく名前で呼んでいる。

 

「黒はどうする?」

 

「ウサギなんてどうでもいいから、早く部屋に戻らない?」

黒も変わらないな。俺以外は基本的に興味ないからな。

 

「ということだ。じゃあ、そろそろ戻るわ」

 

『残念。じゃあ、またね。て言うか、明日電話するね』

 

「するな」

そう言うと、俺は電話を切った。

 

「じゃあ、深夜。早く戻りましょう」

 

「そうだな」

 

 

 

「本校舎一階総合事務受付……って、だからそれどこにあんのよ」

部屋に戻る途中、人気のない校舎で一人言を言いながらキョロキョロしている不審者を発見した。

 

「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

 

「……深夜。あれ、何?怖いんだけど」

 

「一応、IS学園の制服を着ているな。この学園の生徒か?」

でも、だったらキョロキョロしている理由が分からんな。それに見たこともないヤツだし。

どうしようか迷っているうちに向こうはこっちに気付いたらしくやって来た。

 

「ちょっとそこの二人、案内しなさいよ」

 

「何処に案内するか先に言え、不審者」

 

「誰が不審者よ。私は転校生よ」

転校生?ああ、この前、生徒会の資料で見たな。

 

「……確か中国の代表候補生で名前は凰鈴音(おおとりすずね)

 

「何で日本語読みしてんのよ!あんた、馬鹿なの?私は凰鈴音(ファンリンイン)よ」

こいつもテンション高いな。て言うか、何でこんなところで迷子になっているだろうか?まぁ、どうでもいいけど。

 

「ああ、そりゃ悪かったな」

 

「て言うか、何で男がIS学園にいるの?何で私のことを知っているの?」

こいつ迷子になっていることを忘れてないか?

 

「それよりも俺は何処に案内すればいいんだ?」

 

「あっ!しまった。忘れたわ。私は総合事務受付に行きたいのよ」

やっぱり忘れたのか。

 

「まぁ、いい。行きながら説明してやる」

 

「こんな貧乳、放っておいて部屋に戻ろらない?」

 

ドカァァンッ!

 

爆発音がして、衝撃が部屋全体をかすかに揺らしていた。そして、気付くと貧乳の右腕はその指先から肩までがIS装甲化していた。

ふむ。衝撃砲か。

 

「い、言ったわね。言ってはならないことを、言ったわね!」

明らかにぶちギレている。貧乳なのを気にしているのか。

 

「おい、黒。大丈夫か?」

 

「私がこの程度でやられるわけないでしょう」

黒は盾の武装『ファランクス』を出して攻撃を防いでいた。

 

「なっ!IS!?貴女も専用機持ちなの?」

 

「違うわよ。て言うか、普通、いきなりISで攻撃する?ISの私的使用は禁止されてるの知らないの?」

黒が珍しく正論を言ってるな。

 

「あんたが言ってはならないことを言ったからよ。あんたが悪い」

なんて暴言だ。

 

「おい、早く案内してやるから早く来い。お前のISの私的使用の罰は後で決める」

 

「何であんたが勝手に決めるのよ!」

 

「さっきの俺が何でお前を知っているか教えてやる。それは俺が生徒会だからだ」

まぁ、俺にそんな権限はないが後でちーちゃんに報告しておけばいいだろう。こいつ、偉そうでムカつくからな。

 

「くっ!まぁ、いいわ。早く案内しなさい」

そう言うと、貧乳は先に歩いていく。

 

「そう言えば、何で男がIS学園にいるのよ?」

 

「それは俺が男性初のIS操縦者だからだ」

 

「え?それは一夏じゃないの?」

 

「一夏?もしかしていっくんと知り合いなのか?」

いっくん、もしかして結構顔広いのか?

 

その後、貧乳といっくんの関係やIS学園でのいっくんの様子を軽く話した。

どうやら、こいつもいっくんに惚れているようだ。あいつ、モテるな。

 

「だから、その前にイメージが分からないんだよ」

IS訓練施設の近くを通った時、いっくんの声が聞こえてきた。

 

「い、一夏の声!?」

 

「分かりやすく嬉しそうだな」

 

「そ、そんな訳ないじゃない。何、馬鹿言ってるのよ!?」

なるほど。こいつはツンデレなのか。

そういや、侍娘もそうだったな。

いっくんの幼馴染みはツンデレが多いのか?

 

「一夏、いつになったらイメージが掴めるのだ。先週からずっと同じところで詰まっているぞ」

 

「あのなぁ、お前の説明が独特すぎるんだよ。なんだよ、『くいって感じ』って」

いっくんは侍娘との練習の帰りだったようだな。にしても、侍娘は相変わらず、そんな教え方をしているのか。あれじゃあ、いっくんじゃなくても分からないぞ。

 

「……ねぇ、あの一夏と親しそうに話している女は誰?」

 

「いっくんのクラスメイトにして幼馴染みの篠ノ之箒だ」

 

「へぇ、そうなんだ。確か、前に聞いた名前ね。にしても、一夏、楽しそうね」

目が笑っていない。

 

「不機嫌そうだな。お前は確か二組だったはずだ。クラス代表になれば一組のクラス代表であるいっくんと戦えるぞ」

 

「へぇ、それは良いアイディアね。一夏、コテンパンにしてあげるわ」

楽しそうに言っている。本当にいっくんが好きなんだろうか?

 

とりあえず事務室に案内して、そのまま別れた。

いっくんといたら、面白いことには困らないような気がしてきたな。




プロローグ以来のウサギの登場です。電話ですけど。もっと出番増やしたいな。

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第11話 パーティー

「というわけでっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

 

「おめでと~!」

そこでクラッカーが一斉に乱射される。

現在は夕食後の自由時間。場所は寮の食堂で、クラスの集まりのはずなのにクラスの人数を明らかに越えている。

壁には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書いた紙がデカデカとかけてある。

 

「……で、何で私がここにいるの?」

俺はいっくんから離れた席に座っている。そして隣に座っている、かんちゃんが若干怒った様子で言ってきた。

 

「ただで飲み食い出来るんだぜ。参加しといて損はないだろ」

 

「深夜は写真を売って、お金をたくさん持ってるから気にしなくていいでしょ……」

 

「そんなこと言ってもな、色々買ってるから、それでプラマイゼロだしな。それにかんちゃんのアニメのDVDも買ってやっただろ」

色々買い過ぎて、そろそろ部屋がヤバいんだよな。今度、ウサギの研究所にでも運んでおくか。

 

「……そういう言い方は卑怯」

 

「ヤッホー、ヒハランとかんちゃんも楽しんでる~」

さっきまで向こうにいたのに、いつのまにかのほほんさんがこっちに来ていた。

手に大量のお菓子を持っている。あんなに食べられるのか?

 

「……別に」

 

「ダメだよ~、かんちゃん。パーティーなんだから楽しまないと。そんなんだから私達以外に友達が出来ないんだよ~」

 

「別にいい……。本音と深夜と黒がいれば」

俺と同室になってから1ヶ月、ぼっちに耐える精神力を手にいれたみたいだ。

後、黒は珍しくかんちゃんとは普通に話しているが友達と思っているかは微妙だ。

 

「それに黒も同じ……」

 

「そう言えば、黒ちゃんいないね~。また寝てるの~」

 

「ああ。相変わらず人混みは苦手らしい」

にしても、よく寝るよな。ISだから自由に寝れるのだろうか?

 

「ねぇ、君って今、学園中で有名な飛原深夜くんよね?取材していいかな?」

ボイスレコーダーを持った女が話かけてきた。確か、さっきまでいっくんのところにいたな。

 

「その前にあんた、誰?」

 

「あ、ごめんねー。私は二年の黛薫子。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

そう言うと、名刺を出して渡してきた。

名刺か。俺も作ってみようかな。

 

「織斑くんとセシリアちゃんのコメントは貰って、次は飛原くんのコメントも貰いたいんだけどいいかな?」

 

「ふむ。じゃあ、織斑一夏の写真が欲しかったから飛原深夜のところまで。一枚100円、生着替え写真は500円から」

 

「おい、深夜。生着替え写真って何だ!」

別の女子と話していたのに、良く聞いていたな。

 

「「「おおー」」」

急に回りの女子が叫び声を上げた。

 

「私、生着替え写真1ダースで」

 

「私は3ダース買うわ」

 

「深夜くんの生着替え写真はないの?」

 

「私も一夏の生着替え写真を買うぞ」

 

おお、さすが。いっくんは大人気だな。売り上げに期待だな。

後、侍娘は同室なんだから好きなだけ見れると思うが。

 

「俺の生着替え写真はないがコスプレ写真ならあるぞ」

俺の今の発言でさらに盛り上がる。

後でウサギから追加の機材を貰わないといけないな。

 

「取材どころじゃなくなったわね。最後に専用機持ちの三人セットの写真が撮りたいんだけどいいかしら?」

あ、今良いこと思い付いた。

 

「それはいいですけど、一つ条件がある」

 

「条件?」

 

「今度、俺の記事をつくってくれ。色々宣伝したいからな」

 

「OK。いいわよ。話題性も充分だし」

よし、交渉成立。て言うか最近、商売も楽しくなってきたな。

 

「オーイ。織斑くんとセシリアちゃんもこっちに来て。専用機持ち三人で写真を撮るから」

副部長が呼ぶと二人がやってきた。

 

「あ、あの……。出来れば一夏さんと二人の方が……」

パッキン女が顔を赤くしてモジモジしながら言っている。

 

「俺はいいぜ。そうだ、部屋にウェディングドレスがあるから持ってこようか?結婚式みたいのも面白くていいだろう」

 

「そ、そうですわね。わたくしもそれがいいですわ」

 

「やっぱり女の子はそういうのが好きなのか?」

 

「そういうことではありませんわ」

パッキン女がふてくされている。正直、全く興味がない。

 

「ごめんねー。時間がないから、それはまた今度ね」

 

「残念ですが、仕方ないですわね」

 

「というわけで三人とも並んで」

そして、いっくんを真ん中にして三人で並ぶ。

 

「おい、深夜。押すなよ」

 

「仕方ないだろ。そうしないとカメラに入りきらないぞ」

まぁ、嘘だけど。

ん?侍娘が睨んでいるな。まぁ、どうでもいいか。

 

「そんなこと言ってもセシリアにぶつかってるし悪いだろ」

 

「い、いえ。わたくしは気にしてませんわ。そういう理由じゃ仕方ないですし」

う~ん。パッキン女は喜んでいるし、いっくんは気にしてない。何だか面白くないな。今度はアプローチを代えるか。それと、転校生の貧乳に期待するか。

 

「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」

 

「え?えっと、2?」

 

「74.375」

 

「正解」

 

パシャッとデジカメのシャッターが切られる。

 

「何で全員入っているんだ?」

いっくんの言う通り、気付いたら一組のメンバーが全員俺達の周りに集結していた。これじゃあ、クラス写真だな。

いや、良く見たらのほほんさんに引っ張られてかんちゃんも一緒に写っている。

 

その後、『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は10時まで続いたらしい。

俺とかんちゃんは飽きたので先に部屋に戻ってくつろいでいた。

そういや俺が帰る時、まだのほんさん食べてたな。何であれで太らないのだろうか?

 

 

 

 

「疲れた……」

部屋に戻ってベッドに座ると、かんちゃんが言った。

 

「……何もしてないだろ」

 

「人の多い場所はいるだけで疲れる」

まぁ、分からないこともないけど。

 

「それよりも専用機の件、まだ決まらないのか?そろそろ始めないとクラス対抗戦に間に合わないぞ」

前から俺とのほほんさんでかんちゃんのISの製作を手伝うと言ってるんだが、中々良い返事がもらえない。一人で作ることにこだわっているようだ。

まぁ、間に合っても意味ないんだけどな。オモチャの実験があるから。

 

「……そうね、分かった。クラス対抗戦まで限定で手伝ってくる?」

 

「お、やっと決めたか?じゃあ、明日の放課後からのほほんさんも誘ってやるか?」

生徒会はたっちゃんに事情を説明すれば休めるだろ。

よし、これでIS製作が出来るな。前から興味があったんだよな。

ウサギはレベルが高すぎて参加出来なかったから楽しみだ。

 

 




オリ展開やってみたいけど難しいですね。中々思い付きません。

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第12話 貧乳

「おい、深夜。どういうことなんだ?」

朝、教室に着くと、いっくんがいきなり俺に詰めよって言ってきた。

 

「いきなり何だ?」

 

「とぼけるな。さっきのことだぞ」

 

「さっき?」

何かあったっけ?全く心当たりがない。

 

「セシリアがパンをくわえて裸ワイシャツで俺にぶつかってきたことだ」

え?何それ?そんなことがあったのか。その写真、撮りたかったな。

 

「で、それが俺に何の関係があるんだ?」

 

「セシリアを問い詰めたら深夜に教えてもらった、って言ってたぞ」

あの野郎、喋りやがったな。

 

「いや確かに色々相談にはのったが、そんなことは教えていない」

本当に教えていない。確かに男は裸ワイシャツが好きだとか、パンをくわえてぶつかるのは恋愛に発展しやすいだとかは教えた。だが、裸ワイシャツでパンをくわえてぶつかれ、とは教えた覚えがない。そんなの俺の発想にもなかった。

昨日はつまらないと思ったが認識を改める必要があるようだな。

 

「相談?何の相談だ?」

さすがに内容を言うわけにはいかないな。先にパッキン女が喋ったとはいえ、写真を大量に買ってもらっている以上、守秘義務がある。

 

「それよりも転校生の噂は聞いたか?」

 

「何々?転校生の話?」

 

「確か今日、来るんだよね~」

スポーツ少女とのほほんさんがやって来た。

 

「転校生?今の時期に?」

確かにまだ4月だからな。しかもIS学園の転入はかなり条件が厳しく、国の推薦がないと出来ない。

 

「確か中国の代表候補生だったな」

 

「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

いつの間にかパッキン女がやって来ていた。

にしても、自意識過剰だな。全く違う理由だし、そもそもお前なんか危ぶむ必要ないだろ。

 

「このクラスに転入してくるわけではないだろう?騒ぐほどのこともあるまい」

何故か侍娘までやって来た。普段は来ないから知らないが、いっくんの周りはいつもこんな感じなのだろうか?

そして、残念だな。お前は確実に騒ぐ。

 

「それよりもおりむー、クラス対抗戦頑張ってね~。一位クラスには学食デザートの半年フリーパスが配られるんだから~」

 

「まぁ、やれるだけやってみるか」

 

「そういうことでしたら、このわたくしがクラス対抗戦に向けて、より実戦的な訓練を手伝ってあげますわ。一夏さんはまだ実戦経験がありませんから。ああ、もちろん相手はイギリス代表候補生の「凰鈴音」が務めさせて、ってまたですか?わたくしの名前に被せないでください。後、今のは誰ですの?」

 

「え?鈴?」

 

「こら、飛原。私がタイミングを見計らってたのに、先にバラさないでよ。後、私はイギリスじゃなくて中国の代表候補生よ!」

さっきから教室の入口で様子をみていた貧乳が俺に怒鳴ってきた。

 

「仲間になりたそうに、こっちを見ていたからきっかけを作ってやっただけだろ」

 

「そんなことないわよ!後、あんたは地の文で私を貧乳って言うのをやめなさいよ!」

そう言うと、ISを起動させて俺に衝撃砲を撃ってきた。

後、地の文とか言うなよ。メタ発言は禁止だ。

 

ドガァァンッ!

 

「安心しなさい。峰打ちよ」

衝撃砲に峰があるわけないだろ。馬鹿なのか?

 

「貴方は死なないわ。私が守るもの」

いきなり黒が人型になって盾で俺を守った。て言うか、起きてたのか?

 

「おい、黒。人前でアニメのセリフを言うな。いっくん以外理解出来てないぞ」

 

「いや、深夜もたまに言うけど簪以外に理解されないじゃない。それに私よりもマニアックだし」

それを言われるとキツいな。

 

「いやいや、俺はそれでもイタくならないように言ってるだろ」

 

「確かに深夜は格好いいけど……」

 

「夫婦漫才はやめて、こっちを向きなさいよ!て言うか、黒はどこから現れたのよ。さっきまでいなかったでしょ」

あれ?貧乳に黒のこと説明してなかったけ?まぁ、どうでもいいけど。

 

「それよりもいっくんと挨拶しなくていいのか?」

 

「私が感動の再会をしようと思っていたのに、あんたが邪魔したんでしょうが!」

俺が邪魔しなくても無理だったと思うが。

 

「鈴?お前、鈴か?」

 

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

良くさっきまでの空気をなかったことにしてやり直せたな。凄いメンタルだ。

 

「それよりも、後ろの修羅に注意しろ」

 

「えっ?」

貧乳が振り向くと、そこにはそれは恐ろしい鬼が仁王立ちしている。

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生と呼べ。後、さっきの爆発音はお前か?昨日、あれだけしぼったのにまだ足りなかったようだな。覚悟しておけよ。それと飛原。誰が修羅だ、馬鹿者」

 

「……(ガクガク)」

貧乳が脅えている。俺も前にやられたけど怖かったな。いや、あの時はマジで死ぬかと思った。

あ、よく見たら少し漏らしてる。

 

「覚えてなさいよね、一夏!」

それだけ言うと、貧乳は走り去っていった。

 

「おい、何で俺なんだよ!悪いのは深夜だろ!」

恐らく……いや、確実にその叫びは通じてないな。

 

「そういや、鈴と深夜って知り合いだったのか?」

 

「ああ、昨日、人気のない校舎で迷子になっていたのを案内したんだ」

 

「何だ、それは?」

 

「じゃあ、俺は戻るわ」

そう言って、俺は教室を出ようとしたところをちーちゃんに止められた。

 

「おい、飛原。またサボるのか?」

 

「サボるだなんて失礼な言い方だな。勝負に勝って手に入れた正当な権利だろ」

 

「確かにそうだな。だが、たまには授業を受けてもいいんじゃないか?」

ふむ、なるほど。普段と違うことをするのもいいかもしれない。

 

「じゃあ、久しぶりに授業に出るか」

 

「深夜、部屋であんなことやこんなことをしないの?」

 

「黒、間違ってはないが人前でそういう言い方をするな。めんどくさいことになるから」

 

「分かったわ。じゃあ、また寝るから。お楽しみは夜にお預けね」

そう言うと、黒は指輪に戻った。他のクラスメイトはいっくんに詰めよっている。そのおかげで黒の発言はちーちゃん以外聞いていない。だが、唯一聞いていたちーちゃんの視線が痛い。

 

「席に着け、馬鹿ども」

そして、ちーちゃんが出席簿で全員叩いて黙らせて、授業を開始した。

 

 

 

「おい、深夜。助けてくれ」

昼休みになったので食堂に行こうとしたら、いっくんが助けを求めてきた。若干、今朝と被るな。

 

「おい、逃げるな」

 

「そうですわ、一夏さん」

侍娘とパッキン女までやって来た。

ああ、なるほど。二人は授業中にぼーっとしていて、マヤマヤに注意されたり、ちーちゃんに出席簿で叩かれたりしていたからな。そのことだろう。八つ当たりとは、それでも高校生なんだろうか?

 

「めんどくさいことに巻き込むなよ。俺は今から食堂に行くんだから」

 

「だったら、俺も一緒に行くぜ」

織斑一夏は『逃げる』を選択した。

 

「というわけで、また――」

 

「私もついていくぞ」

 

「それでしたら、わたくしも仕方なく行って差し上げますわ」

だが、逃げられなかった。

俺はとりあえず、のほほんさんも誘って食堂に行くにした。

 

 

 

食堂に着くと券売機で俺は海鮮丼、いっくんは日替わりランチ、のほほんさんはお茶漬け、侍娘はきつねうどん、そしてパッキン女は洋食ランチを買っていた。

たまに食堂で見かけるけど、こいつら、毎回同じものを買っているな。俺みたいに色々頼めよ。

 

「待ってたわよ、一夏」

貧乳が俺達の前に立ちふさがった。

 

「だから、あんたは私を貧乳って言うのを止めなさいよ!」

 

「言ってないだろ」

何で心の声が聞こえるんだよ。どんだけ貧乳を気にしているんだ?それはそれで需要があると思うぞ。

 

「それよりも、まずはそこをどいてくれ。食券を出せないし、普通に通行の邪魔だぞ」

 

「う、うるさいわね。分かってわよ。あんたのせいよ」

俺を指差して言ってきた。俺は悪くないだろ。

それから、貧乳がいっくんと話始めたので俺はのほほんさんと話すことにした。

 

「そういや、あの話、かんちゃんからクラス対抗戦までの期間限定で許可がでたぜ」

 

「そうなの~?」

 

「ああ、だから、今日の放課後からしようと思っているけどいいか?生徒会の方はたっちゃんに後で言えばいいだろ」

 

「いいよ~。へへぇ、楽しみだねぇ~」

そして注文の品がやってきたので席を探して移動する。

 

「のほほんさん、何でお茶漬けに卵を入れんだ?」

 

「好きだからだよ~」

マジか?でも、のほほんさん幸せそうな顔しているな。でも真似する気にはなれないな。

とりあえず、俺は放課後のことを話し合いながら飯を食べた。

にしても、いっくんの方は盛り上がってるな。

 

「そういや、鈴と深夜って仲良いんだな」

ん?俺の話か?

 

「別にそんなことないわよ!そうよね、飛原」

 

「そうだな。俺が一方的にいじってるだけだからな」

 

「何よ、それ?」

 

「やっぱり仲良いんだな」

 

「だから違うんだってば!」

必死に否定している。パッキン女よりも貧乳をいじる方が楽しいな。

 

「そういや、さっきから地の文で貧乳って言ってるけど衝撃砲、撃たないのか?」

 

「あんたも地の文とか言うんじゃないわよ。て言うか、これ以上問題をおこしたら千冬さんに殺されるわ」

ふざけた口調で言ってるけど、その目は笑っていない。

 

「それよりも、今聞いたんだけど、あんたも専用機持ち何だって?私と勝負しない?」

 

「断る。俺は色々、忙しいからな。まぁ、どうしてもって言うならクラス対抗戦が終わってからならいいぜ」

 

「ふぅん。まぁ、いいわ。それよりも一夏。クラス対抗戦、覚悟しなさいよね」

そして、貧乳は食べ終わって片付けて、そのまま学食から出ていった。

 

「深夜、特訓に付き合ってくれ」

 

「だから、忙しいって言っただろ」

もしかして、俺のセリフを信じてなかったのか?

 

「だから私がすると言ってだろうが」

 

「いえ、わたくしが手伝いますわ」

めんどくさいことになりそうだったので、俺も片付けてのほほんさんと一緒に食堂を出た。

最後にいっくんが何か言ってた気がするけど無視だ。




感想と評価が少ないので欲しいです。
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第13話 恋愛相談

放課後、かんちゃんのIS『打鉄弐式』を完成させるために、俺はかんちゃんとのほほんさんと黒の四人で第二整備室に来ていた。

 

「俺の担当はマルチロックオンシステムによる高性能誘導ミサイルと荷電粒子砲だったな」

 

「うん……。でも、本当に出来るの?」

 

「言っただろ。俺はISの製作者、篠ノ之束に教えてもらったって。それに黒には大量の武装があるから、そのデータを使えば出来る」

まぁ、ミサイルは俺の趣味じゃないから、ないけど似たようなものはあるから大丈夫だろ。

 

「じゃあ、任せる……。本音は装甲のチェックして。私は火器管制システムと制動システムをやるから」

 

「了解~」

そして、それぞれに作業に開始する。

 

「じゃあ、黒。手伝ってくれ」

 

「いいけど、ISがISを造るっていうのも変な話ね」

言われてみれば、確かにそうだな。

 

「お!すげぇーな」

かんちゃんがデバイスをボイス・コントロールにアイ・コントロール、ボディ・ジェスチャーを駆使しながら、さらに両手両足のその上下に空間投影キーボードを一枚ずつ、計八枚同時に操っている。

しかも、足の指まで使ってやっている。

こんなの今の俺には出来ないぞ。

 

「かんちゃんは凄いでしょ~」

 

「ああ、素直にそう思うよ。それにフル・カスタマイズ・モデルのキーボードも面白いな」

確かウサギも似たようなものを持っていたな。俺も欲しい。後で作り方を聞こう。

 

「それよりも、のほほんさん、作業はどうした?」

 

「ちゃんと今からするよ~」

そう言って、のほほんさんは作業を始める。信用できるのか?

 

 

 

「かんちゃん、そろそろ夕食の時間だから一旦、休憩にしないか」

そろそろ行かないと食堂がいっぱいになって、座れなくなる可能性がある。

 

「え?もう、そんな時間?」

時間も忘れて作業していたのかよ。

 

「私も腹ペコだよ~」

 

「じゃあ、食堂に行こう」

 

「私は休憩しているね。夕食が終わったら起こして」

そう言うと、黒は指輪になった。

そして、俺達三人は食堂に向かった。

 

 

 

食堂に着くと俺は豚のしょうが焼き定食、のほほんさんとかんちゃんはうどんを頼んだ。そして、のほほんさんは卵、かんちゃんはかき揚げをつけていた。

 

「深夜、調子はどう?」

席に座ったところで、かんちゃんがそう聞いてきた。

 

「荷電粒子砲なら明日には完成する。マルチロックオンシステムの方はもう少しかかりそうだが、一週間あれば完成するだろう」

やっぱり黒にない装備はてこずるな。

 

「おお~。ヒハラン凄いね~」

 

「……私の方は厳しい」

 

「だったら、武装が終わったら俺も手伝おうか?ああ、稼働データがとりたいなら俺が相手になるぜ」

武装以外も色々やりたいからな。

 

「うん。お願い」

 

「じゃあ、食べたら作業を再開するか」

 

「疲れたから明日にしない~?」

 

「それじゃあ、間に合わない……」

まぁ、頑張ればギリギリ間に合うか。

 

 

 

現在は8時過ぎ、今日の作業を終え、のほほんさんと分かれて部屋に戻るところだ。

 

「今までは一人でやっていたけど、皆でやるのも楽しい」

 

「そうか。そりゃ、よかったな」

アニメ談義以外で初めて笑っているところを見たな。

この写真を撮って、たっちゃんに売ったらいくらで買ってくれるかな。

 

「ん?」

前から貧乳が泣きながら走ってくるのが見えた。

 

「知り合い?」

 

「今日、転校してきた中国の代表候補生の貧乳だ」

 

「誰が貧乳よ!」

貧乳が俺に向かってドロップキックをしてきた。さすがにISは使わないか。

 

「ひょいと」

俺はそれを軽く避ける。

 

「ちっ!」

 

「舌打ちすんなよ。それよりも何で泣いていたんだ?」

何か修羅場の予感がする。そういや、どうでもいいけど昨日見たアニメも修羅場ものだったな。

 

「あんたには関係ないわよ!」

 

「ふむ。だったら、勝手に推理しよう。まず、間違いなく、いっくんが関係している。そういや昨日、内容までは聞いてないが、中学の時にいっくんと何か約束をしたと言っていたな。つまり、いっくんがその約束を忘れていた。もしくは間違って覚えていた、ってところか。いっくんが鈍感なことを計算にいれると後者の方が確率が高いな」

 

「あんたは超能力者か何かなの!?」

ふむ、当たっていたか。写真だけじゃなく、探偵業をやるのも面白いかもしれないな。何か考えてみるか。

 

「……相変わらず無駄に鋭い」

隣でかんちゃんがボソッと何か言っている。無駄とは何だ、無駄とは。

 

「相談ならのるぜ。これでも色々と相談にのっているからな」

まぁ、真面目に答えたことはないが。

 

「遠慮するわよ!どうせ、あんたのことだから真面目にやるわけないわ!」

意外と鋭い。

めんどくさいな。どうしようか?……よし、決めた。

 

「黒、連行よろしく」

黒を呼び出して貧乳の連行の頼んだ。

 

「めんどくさいけど分かったわ」

 

「ちょ、ちょっと待って!黒はどこから現れたの!?て言うか、この縄なに!?」

この縄は束縛プレイをするために黒が自分でインストールしたものだ。俺の趣味じゃないから一回も使われてないが、こんなところで役に立つとはな。

 

「うるさい。文句は後で聞く。いや、やっぱりめんどくさいから聞かない」

 

「……酷い」

 

とりあえず、貧乳を部屋まで連行して解放した。

 

「何すんのよ!」

 

「簡単に話しそうになかったので強硬手段をとっただけだ」

 

「こんなことして、後で千冬さんにバレたら酷い目にあうわよ」

 

「ちゃんと対策は考えてあるから問題ない」

まぁ、多分大丈夫だと思うが、無理だった場合は逃亡するか。

 

「私は興味ないから、先にシャワー浴びるね」

 

「了解」

 

「ちょっと待ちなさいよ!こいつ何とかしなさいよ!」

失礼なヤツだな。今から強姦でもするみたいじゃないか。俺はただ善意で恋愛相談をするだけなのに。

 

「いつものことだから諦めて……」

それだけ言うとかんちゃんはシャワーを浴びにいった。

 

「……で、何するつもりなの?」

 

「だから、ただの恋愛相談だよ。まずは何で泣いていたか、教えてくれ」

 

「何であんたなんかに話さないといけないのよ!」

 

「これでもか?」

そう言って、俺はいっくんの入浴写真をちらつかせる。

 

「し、仕方がないわね。後でそれ、くれるんでしょうね?」

 

「ああ、話してくれたらな」

そして、侍娘に部屋の変更を代わってくれように頼んだことと、中学の時の約束を聞いた。

 

「さあ、話したんだから写真を渡しなさいよ!」

 

「ほらよ」

そう言うと、俺は貧乳に写真を渡した。

 

「じゃあ、私は帰るわね」

 

「まだほかにも写真はあるが」

 

「何を話せばいいの?」

切り替え早いな。

 

「今は話さなくていい。今後、何かあったら相談してくれればいい」

 

「……何のために?」

貧乳が疑うような目で見てくる。

 

「何も企んでねぇーよ。いや、企んでいるか。まぁ、多分、被害はないから安心しろ」

 

「……何言ってるの?」

 

「気にしなくていい。俺が色々して楽しみたいだけだから。恋愛相談もその一環だ。ああ、写真は金で買ってもいいぜ。後、いっくんに関する情報も売るぜ」

 

「よく分からないけど帰るわね。お金は明日持ってくるわ」

そう言って、貧乳は立ち上がる。お得意様ゲットだな。

 

「ああ、そうだ。この写真もやるよ。代わりに今日のことはちーちゃんには言わないでくれよ」

 

「分かったわ。じゃあ、またね」

そして、貧乳は嬉しそうな顔をして部屋から出ていった。

 

「ん?帰ったの?」

かんちゃんがシャワー室からバスタオル一枚の姿で出てきた。

最初は気にしていたが、最近は恥じらう様子がまったくない。

 

「じゃあ、一緒に入りましょう」

いきなり黒が人型になって風呂に入る準備が終わっている。いつものことなので気にしない。

 

「また……するの……?」

 

「当然でしょ。私の一番の楽しみなんだから。簪も混ざりたいの?」

 

「いや、そういうわけじゃないけど……。出来れば声はもう少し小さくしてくれると助かる……」

気にするところはそこだけか?

俺には露出趣味はないが、黒にはあるからな。かんちゃんが気にしなくなると普通にベッドでする展開もくるかもしれない。それは避けないと。

 

「気をつけるわ。じゃあ、深夜。早くヤりましょう」

 

「了解だ」

とりあえず、俺の一日はこうして終わっていく。




一つ報告があります。
明日、発売するポケモンの新作を買ってプレイしたいので次の更新はいつもより遅れます。
出来るだけ早く次の更新を出来るように頑張ります。

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第14話 三日間

予想よりも早く書き終わったので投稿します。


クラス対抗戦の三日前

 

「あれ?完成してしまったな」

 

「……うん」

俺達の目の前には完成した打鉄弐式がある。

 

「いや~、本当に間に合うとは思わなかったよ~」

 

「ああ、間に合うとしてもギリギリだと思っていたのに。思ったよりも余裕があったな」

 

「そりゃ、深夜が頑張ったからよ」

 

「うん。凄く成長が早かった。もう、整備科の人よりも上手いと思う」

自分で言うのもあれだが最初と比べて別人のように上達したからな。

皆が授業をしている間に新しい武装を造ったりもしたしな。早く試したいな。

まぁ、うっちゃんが何回か手伝いに来ていたけど、あれに比べるとまだまだって気もするが。さすが三年首席って言ったところだな。

 

「じゃあ早速、打ち上げしよう~」

 

「そうだね。今日はもう休みにして稼働実験は明日にしよう」

 

「でも、何するんだ?」

 

「それは勿論――」

のほほんさんが一拍おいて、意味深な感じに言う。まぁ、予想はつくが。

 

「お菓子パーティーだよ~」

予想通りだな。

 

「でも、それじゃあ私が楽しめないわよ」

そういや、一緒に作業しているうちに、黒ものほほんさんとは普通に喋るようになったな。

 

「そう言えば~、そうだね~。だったら、黒ちゃんは何がいいの~?」

 

「それはもちろん、乱交パーイタッ!」

俺が黒を全力で蹴りとばす。

 

「いきなり何するの?深夜って暴力を振るうキャラじゃなかったよね?」

 

「いやいや、お前はいきなり何を言おうとしているだ!?」

俺のキャラが最近、安定していると思ったら、今度は黒のキャラがぶれだしたぞ。前は俺が他の女をいじるのはいいけど、仲良くするのは嫌がってたのに。

……もしかして、あれか?最近、黒はエロゲーにハマっているから、その影響か?どうにかしないとな。でも、下手に怒ると逆に喜ぶからな。

くそっ!こんなに悩んだのは、生まれて初めてだ。変人の相手は楽しいが、変態の相手はしんどい。

 

「まぁ、いい。とりあえず、後で埋め合わせはするから今日はゆっくり寝といてくれ」

 

「埋め合わせって、いつもより激しいプレイ?」

本気でどうにかしよう。昔のテレビみたいに叩いたら直らないかな。

 

「獣耳なら歓迎だが、今回は普通にデートだ」

たまには普通のことをしたい。

 

「……まぁ、いいわ。じゃあ、今日は寝てるわ」

とりあえず納得したようだな。

 

「……大変そうね」

 

「最近の変態性は異常だからな。あれは治ってほしいな」

 

「じゃあ、早くお菓子パーティーしよう~」

こんな時でも、のほほんさんは自由だな。

 

「パーティーは夜でいいだろう。俺はちょっと出かけてくるわ」

 

「また何か企んでいるの?」

 

「別に。ただの暇潰しだ」

 

 

 

そして、俺はいっくんが練習しているアリーナに来た。

 

「ちょっと様子を見に来たぜ」

侍娘とパッキン女もいるな。

侍娘は訓練機である打鉄を使って一緒に練習しているみたいだ。

 

「深夜か。どうしたんだ?」

 

「用事が終わったから、暇潰しに来たんだよ。何なら練習に付き合ってやってもいいぜ」

いっくんの専用機である白式に興味があるからな。

 

「必要ない。私がいるからな」

 

「そうですわ。イギリスの代表候補生であるわたくしがいるから大丈夫ですわ」

この前、俺に手も足も出なかったのに、その自信はどこからくるんだ?

まぁ、いいか。とりあえず、久しぶりにバトって気分転換するか。

 

「そこまで言うなら、俺と戦おうぜ。もちろん二人同時にかかってこい」

そして、新しく造った武装の練習ついでに二人を力ずくで黙らせた。いい実験台になったな。

それが終わるといっくんの訓練に付き合ったが、正直、弱いな。だが、ウサギに聞いた通り白式自体は面白い。ワンオフアビリティーの零落白夜を越える攻撃は俺にはないからな。

 

 

 

クラス対抗戦二日前

 

俺は生徒会室に生徒会メンバーを集めて皆で弁当を食べていた。

 

「簪ちゃんの専用機、完成したんだって。ありがとう」

 

「別にお礼を言われることじゃない。俺の趣味でしただけだからな」

 

「ところで、その弁当、飛原さんが作ったんですか?」

うっちゃんが俺の作ってきた弁当を見ながら聞いてきた。

ちなみに弁当は各自で作ってきたが、のほほんさんの分は俺が作った。

 

「そうだが」

 

「……料理も出来るんですね?」

 

「まぁな。俺は両親が死んでいるから一人暮らしだったからな。料理ぐらい出来るぜ」

 

「それは知らなかったこといえ、デリカシーのないことを言ってすみません」

 

「気にしなくていいぞ」

両親が死んだおかげで、のんびり一人暮らしが出来たからな。

今みたいな生活もいいが、たまに昔ののんびりした生活がなつかしくなるな。

 

「ヒハランの料理おいしいね~」

 

「そうなの?私も食べていいかしら?」

 

「返事を聞く前に箸をのばすな」

弁当を持ち上げて、たっちゃんの箸を避ける。

 

「ちっ!少しぐらい、いいじゃない」

 

「ちゃんと許可をとったらな」

 

「じゃあ、頂戴」

 

「……あの私もいいですか?」

 

「いいぞ」

そして、俺は自分の弁当を差し出す。

俺は後でまた用意すればいいだろ。

 

「おいしい~」

 

「本当においしいですね。後で作り方を教えてもらってもいいですか?」

 

「代わりにISの整備の技術を教えてくれたらな」

 

「それぐらいならいいですよ」

そういや、今まではちょっとしたら直ぐに何でも出来たから人に何か教えてもらう、って初めてかもな。

まぁ、俺より何かで優れている人間自体にほとんど会ったことないからな。ウサギとちーちゃんは例外だが。

 

「ところで何で私達を集めたの?」

 

「ああ、クラス対抗戦で何かしたいと思ってな」

 

「何か、って何?」

 

「例えば俺が実況をするとか、前座でライブをするとか」

オモチャの実験で台無しになるんだったら、ついでに色々して遊びたいからな。

 

「んー。実況ぐらいならいいけど、さすがにライブは無理ね」

 

「ライブの方が本命だったんだけどな」

 

「残念ね」

まぁ、仕方ない。文化祭でやるか。

 

「ヒハランが実況する場合、解説は誰がするの~?」

 

「……たっちゃんとか?」

 

「私は無理よ。他に仕事があるもの」

 

「私も無理ですよ」

 

「あら、残念ね」

嬉しそうな顔しやがって。俺が上手くいかないのが、そんなに面白いのか。

当日までに何か考えてゲリラでやってやる。

 

 

 

放課後、打鉄弐式を造ったメンバーで第3アリーナに来ていた。

 

「じゃあ、稼働実験を始めます」

 

「了解」

 

そして、荷電粒子砲にマルチロックオンシステムの実験に飛行テスト。そして、俺との軽い模擬戦闘をした。

 

「ふむ。俺ほどじゃないけど、結構やるな」

 

「予定よりも調子がいい……」

 

「これならいっくんには零落白夜にさえ気を付ければ勝てるな。それにイギリス代表候補生のパッキン女よりも上だな。中国の代表候補生の貧乳はまだ戦ったことがないから分からんな」

ふむ。コーチをするのも面白いかもしれない。IS学園に入ってから、どんどんしたいことが増えていくな。

 

「ヒハラン詳しいね~」

「俺に知らないことはない」

 

「さっき、中国の代表候補生は分からないっていってなかったけ~?」

いつもはのほほんとしているのに、変なところで鋭いな。

 

「……普通気付く」

かんちゃんまで俺の考えていることが分かるようになったのか。

 

「終わったところで、直ぐにデート行こう」

 

「今からか?もうすぐ夕食なんだが?」

 

「私には関係ないわよ」

まぁ、確かにそうだが。俺は外で買うか、帰ってきてから作ればいいだろ。

 

「……分かった。じゃあ女装してくるから、ちょっと待ってろ」

俺は外出する時は女装している。理由はちーちゃんが俺に「IS学園に男が出入りしているのがバレたらめんどくさい。だから外に出る時は女装しろ」と言ってきたからだ。

 

「私が服装、選んであげるわ」

 

 

 

クラス対抗戦前日

 

「よぉ、貧乳。確か前に俺と模擬戦としたいとか言ってたよな?放課後、暇だからやらないか?」

俺は休み時間に2組にいる貧乳のところに会いに来ていた。

 

「遠慮するわ。明日はクラス対抗戦よ。機体が破損でもして対抗戦に出れなかったら、ただの馬鹿よ」

 

「大丈夫だ。軽い模擬戦だから、そこまでやらないさ。……それとも自信がないのか?」

 

「んな訳ないでしょ!いいわよ、やってあげる。あんたなんかコテンパンにしてあげるわ!」

ちょろいな。こいつの能力も知っておいた方がオモチャの性能が分かりやすからな。ついでに暇潰しにもなるし、一石二鳥だな。

 

さて、明日はオモチャの実験か。楽しみだな。




エピソードデルタをクリアしましたが、他にも色々したいので少し遅れる可能性があります。
普通に二日後に投稿している可能性も高いですが。

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第15話 クラス対抗戦

クラス対抗戦当日、俺はかんちゃんと黒と第二アリーナの観客席に座っている。

今からいっくんVS貧乳の試合が始まるところだ。

 

「くそっ!結局、何も思い付かなかった!」

 

「……いきなりどうしたの?」

 

「気にしなくていいよ。いつも通りだから」

たっちゃんがちーちゃんにチクったせいで、事前の準備は無駄になってしまったし。

他にゲリラで出来るようなことは何も思い付かなかった。

 

「ところで何で私はここにいるの?次、私の試合なんだけど」

 

「別にいいだろ。準備は終わってるし、それに何もしなくても普通に勝てるだろ」

て言うか、どうせ試合は台無しになるしな。

 

「相変わらず適当……」

 

「適当でも、俺の言うことが外れたことはないだろ」

 

「それがムカツク」

どういう意味だ?

 

「お、貧乳が出てきたな」

第三世代機のIS『甲龍』を展開した姿でピットから出てきた。

 

「……あれが織斑一夏とその専用機」

次にいっくんが白式を展開した姿で登場した。

 

『それでは両者、規定の位置まで移動してください』

そのアナウンスで二人は移動してお互いの距離が五メートルまで近づく。

何かオープン・チャンネルで会話をしているようだな。

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「実力的には貧乳だな。だが、いっくんのワンオフアビリティの攻撃力は脅威だ。それを瞬時加速で当てることが出来れば勝てる可能性がある」

威力が高すぎて相手を傷つけるかもしれないから零落白夜を全力で使わないと言っていたから、勝ち目はないな。

 

貧乳の肩アーマーがスライドして開く。そして中心の球体が光った瞬間、いっくんが見えない攻撃に殴りとばされた。

 

「中国の人の見えない攻撃。あれは衝撃砲?」

 

「正解。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す第三世代兵器だな。しかも砲身までも目に見えず、砲身斜角がほぼ制限なしで撃てるのが特徴だ」

 

「言われなくても、そのぐらい分かる」

こういう時、頭の良いヤツは厄介だな。説明のしがいがない。

 

「でも、深夜と私には効かなかったけどね」

 

「そうなの?て言うか、いつ戦ったの?」

 

「昨日の放課後。さすがにクラス対抗戦の前日だったから、お互いに本気では戦わなかったけどな」

まぁ、あの程度なら全力で戦っても普通に勝てるだろうけどな。

 

「……色々忙しそうね」

まぁ、楽しいから忙しいと感じたことはないけどな。

 

「ところで、どうやって破ったの?今、織斑一夏がしてるみたいにハイパーセンサーで空間の歪み値と大気の流れを探らせるだけじゃあ遅れるでしょう?実際、織斑一夏はかなりギリギリで、いつ当たってもおかしくない」

かんちゃんの言う通りだが、いっくんがあそこまで動けるとは予想外だな。前に訓練で見た時より動きが良い。本番に強いタイプか?

 

「簡単だ。目線や癖から攻撃を読めばいいんだよ。砲身が見えなくても攻撃するのは人間だ。相手を観察すれば、どのタイミングでどの方向から攻撃するかは大体分かる。それに、あいつはかなり単純なタイプだから読みやすい」

 

「……いや、無理でしょ。ISで高速で移動しているのに、どうやって相手の目線とか癖を見るの?」

 

「だから、俺は基本的に動かないだろ?」

展開装甲の燃費が悪くて、あまり動けないというのもあるんだがな。何で全身が展開装甲なんだよ?本気で戦う時のために普通のスラスターも用意した方がいいかもな。まぁ、本気で戦う機会があるか分からないが。

 

「……それでも普通は無理。て言うか、あれは余裕の現れだと思ってた」

 

「まぁ、それもあるがな。ん?やっと本気になったか?」

目付きが変わったな。瞬時加速を使うつもりか?

 

その時、携帯電話が鳴った。

 

「誰だよ?いいところだったのに。ってお前か」

表示を見ると、そこにはウサギの名前があった。

 

「かんちゃん、ちょっと電話がきたから席を外すわ」

 

「試合の途中なのに?」

 

「大事な用みたいだからな」

そう言うと、俺は立ち上がって移動しながら電話にでる。

 

「何か用か?今、良いところだったのに」

 

『それは悪かったね。それよりもそろそろアレが着くと思うんだけど、どう?』

適当に人の話を聞き流すなよ。

 

「いや、まだ――」

 

ズドオオオオンッ

 

 

突然、アリーナ全体に大きな衝撃が走る。

 

「……今、来たみたいだ」

ステージ中央からもくもくと煙が上がっている。

 

『それは良かったよ。のんびりしててね』

 

「……俺ものんびりしたいところだが、こっちは既にパニックになってて大変そうなんだが」

 

『もう少し話していたいけど、仕方ないね。じゃあ、また夜にも電話するよ』

 

「了解」

そう言うと、俺は電話を切る。

そして、俺は黒と逃げようとしてパニックになっている人を煽動しながらオモチャを観察する。

オモチャの外見はISでは通常ありえない全身装甲だ。腕を入れると二メートルを越える巨体で、全身にスラスター口がある。

そして、頭部には剥き出しのセンサーレンズが不規則に並び、腕にはビーム砲口が左右合計四つある。

正式名称はゴーレム。そういや、どれが来ているんだろ?弱いヤツが来ているとは聞いているが詳しいことは聞いてなかったな。

 

「ふぅ……。やっと終わったか……」

何とか自分の周りを避難させると、俺は席に戻った。他の場所はまだパニックだが、どうでもいい。

 

「にしても、あの程度相手にだらしないわね」

 

「そうだな。今回のオモチャはそんなに強い機体じゃないからな」

さっきから、あの二人の攻撃は全く当たってない。逆に相手の攻撃は上手く避けれていない。

俺なら本気のフルバーストをやれば一瞬で倒せるだろうな。

 

「目付きが変わったな。やっと本気になったか?」

どうやら、あれが無人機だということに気付いたみたいだ。やっと全力の零落白夜を見れそうだな。

 

「一夏ぁっ!」

いきなりアリーナのスピーカーから大声が響いた。

中継室の方を見ると侍娘がいた。

 

「何やってるの、あれ?」

 

「さぁ。俺にも分からん。あんなことしたら危険なだけなのに」

あいつは本当にウサギの妹なんだろうか?あいつはあんな意味のないことをしないぞ。

 

「男なら、そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」

 

「どうする?ウサギの妹だし、助ける?」

オモチャはさっきの放送のせいで侍娘の方をじっと見ている。

 

「助けなくていいだら。アリーナの遮断シールドのせいで助けにいっても間に合わないだろうし。それに、なによりめんどくさい」

いっくんの方を見ると突撃態勢に移行して瞬時に加速した。

そして、貧乳が発射しようとしている衝撃砲の斜線上に躍り出た。

 

「ふむ。面白いことを考えるな」

 

「あれは貧乳の衝撃砲のエネルギーを利用して瞬時加速をしようとしているの?」

 

「そのようだな」

そして、いっくんは衝撃砲をくらい、瞬時加速をした。

そして零落白夜を使用してオモチャの右腕を切り落とした。

だが、左腕で反撃されてモロにくらった。

 

「本当に大丈夫なの?私はどうでもいいけど」

 

「大丈夫だろ。まぁ、つまらん結末だが」

さっきの一撃で遮断シールドを破壊していたみたいだな。そして、そこからパッキン女のピットがオモチャを打ち抜いた。

作戦としては悪くないが、もうちょっと白式の性能を見たかっただけにがっかりだな。

 

「まだ終わってないみたいね」

黒の発言通り、オモチャを見ると再起動していた。そして最大出力形態に変形して、いっくんを狙っている。

そして発射されたビームの中をいっくんが突っ込んでオモチャを切り裂いた。

 

「ふむ、悪くない。最後の最後にマシなものが見れたな」

オモチャの性能には問題ないし、いっくんも多少は面白いことが分かった。おおむね満足な結果で終わったな。




深夜が何もしていないので予想よりも短くなってしまいました。
次回で一巻の内容が終わります。
二巻では深夜を活躍、もとい暗躍させたいと考えています。まだ、ほとんど思いついてないですけど。

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第16話 結末

俺は今、人気のない校舎にいる。

その理由はウサギから電話がかかってきたからだ。場所は毎回、同じ場所に来ている。ここはほとんど人が通らない。

 

『やぁやぁ、久しぶりだね、しっくん。声が聞けて嬉しいよ』

 

「それは毎回言わないと駄目なのか?今日、少しだけど喋ったよな?」

 

『束さんにとっては一時間会えないだけで久しぶりなのだよ』

何を自信満々に言ってるんだ、こいつは。まぁ、こいつがふざけているのは毎回のことだから気にしなくていいか。

 

『別にふざけてないよ。束さんは常に真面目だよ。ぶぅぶぅ』

 

「そんなこと言っても可愛くないぞ。て言うか最近、俺の心が良く読まれているような気がするな」

俺にプライバシーはないのだろうか?

 

『しっくんは大事なことは隠すのが上手いけど、それ以外は適当だから分かりやすいんだよね』

 

「それは知らなかったな。次からは気をつけるか。それよりも本題はまだか?この後、ちーちゃんに呼ばれているんだが」

電話するたびに雑談がはいるからな。いつものペースだと時間に間に合わない。

 

『何か悪いことでもしたのかな?』

 

「今日の無人機のことだ。俺は元々、ウサギの紹介でIS学園に入学しているから、色々目をつけられているんだよ」

 

『何で束さんの紹介だと目をつけられるのさ?意味が分からないよ』

 

「……お前、絶対分かってて言ってるだろ?」

 

『さすが、しっくん。束さんのことを良く分かってるね。束さん、感激だよ』

いつもなら、このままウサギのペースに巻き込まれるのもいいけど、今日だけはマズイな。

 

「ああ、俺はウサギの数少ない友達だからな。それよりも早く本題に入ってくれ。くだらん話なら、また今度行く時でいいだろ?」

 

『ちーちゃんに呼ばれているんだったね。もう少し話たいけど、仕方ないね。結果だけ言うと実験はおおむね成功だよ』

 

「おおむね、ってどういう意味だ?」

 

『細かいところを詰めないといけない、ってだけ。でも後回しになるかな。先に紅椿を造りたいし』

紅椿ねぇ。俺も少しは性能を知っているが、侍娘に使いこなせるとは思えない。俺なり他の優秀なヤツにでも渡した方が面白いことになると思うけどな。

 

『しっくんの直接見た感想はどんな感じかな?』

 

「俺としては不満はないな。まぁ、一つ言うなら早く欲しいってぐらいか」

 

『しっくんは我慢するのが苦手みたいだね。お、しっくんの数少ない弱点を発見したよ』

 

「……いや、俺は能力的にはパーフェクトだけど、人格的には問題だらけだろ」

 

『あはははっ、それは束さんも同じだね。だから、仲良くやれるのかな?』

本物の天才はどこか人間的に問題をかかえてるものだからな。

にしては、ちーちゃんは人間的に問題がないように見える。いや前にいっくんがプライベートだと、かなりだらしないとか言ってたな。

 

「さぁな。じゃあ、そろそろ時間だから行くわ」

 

『了解』

 

「俺の口癖をとるな」

 

『別にいいじゃない。ケチだなぁ』

 

「まぁ、別にいいけどな。じゃあ、また今度行くわ」

それだけ言うと俺は電話を切った。

はぁ。行きたくない。ちーちゃん、マジで怖いからな。

 

 

 

 

コンコン。俺はちーちゃんの部屋のドアをノックする。

 

「入れ」

そして、ドアを開けて部屋に入る。

にしても、いつもより怖かったな。ヤバくなった時のために逃げる準備をしとくか。

 

「失礼します」

 

「ほぉ。お前にしては礼儀正しいな」

 

「どっかで『人生を有意義にする一番の武器は礼儀だ』って聞いたことがあるような気がするからな」

 

「どこの誰かは知らんが良いことを言うな。お前も見習え」

 

「俺は元々礼儀正しいんだよ」

戯言だけどな。

 

「まぁ、いいか。早速、本題に入るぞ」

あれ?座らせてもらえないのか?鬼だな。

 

「何の用なんだ?俺はこの後、かんちゃんとアニメ談義があるんだが」

 

「言わなくても分かってるだろ。今日の無人機のことだ」

いきなりだな。まさか、駆け引きもなしで核心をつくか。完全に予想外だ。こういうタイプはウサギ以上に苦手だ。

 

「何のことだ?ISは人が乗らなきゃ動かないだろ?無人機なんてありえない」

 

「普通はそうだな。だが、束なら無人機を造れるだろう?」

もう完全に確信してんじゃねーか。

 

「そんなこと言われても知らないものは知らない。大体俺はウサギのことを全部知っているわけじゃない。むしろ、隠していることの方が多いだろうからな」

これは本当のことだ。まぁ、俺がネタバレを嫌がって聞いていないだけだが。

 

「それはそうだろうな。だが、お前は何かを知っているんじゃないか?」

さっきから……て言うか、最初から怖い。下手なことを言ったら殺されそうだ。

 

「何を期待しているか知らないが俺はマジで何も知らない」

 

「そうか。お前がそう言うならそうなんだろう」

意外とあっけなく納得したな。拷問でもされると思っていたのに。

 

「だが、学園に迷惑をかけるようなことをするつもりなら覚悟しておけよ。その時は全力で排除する」

出来るだけちーちゃんは敵に回したくないんだよな。勝てる気がしない。何かする時は上手く立ち回らないとな。

 

「じゃあ、話も終わったようなので帰っていいか?」

 

「まぁ、待て。まだ話が残っている。お茶ぐらいは出すぞ。そこのイスにでも座っていろ」

何で今更、座らせるんだよ?て言うか、急に親切になって怖いな。

 

「これ以上何を話すんだ?」

 

「そんなことは決まっている」

そして俺にお茶を出して、ちーちゃんもイスに座った。

 

「この前に頼んだ一夏の写真についてだ!」

 

「は?」

 

「前に束に渡す写真を撮らせた時に一夏の寝起き写真やお風呂の写真とか頼んだだろ」

今、それについて話すのか?さっきまでのシリアスな空気はどうした?

 

「……ああ、一応あるが」

元々戦闘になったら写真を使って時間を稼いで、その間に逃げる予定だったから持ってきてはいるが。

 

「おお、やっぱり一夏は可愛いな。世界一だ。一夏のためとはいえ、普段厳しくしているせいでコミュニケーションがあまりとれないてないからな」

何か色々台無しだ。何だ、このとろけきった顔は?

ちーちゃんは本物の天才にしてはまともだと思っていたが、それは間違いだったな。思いっきり問題をかかえている。こいつは重度のブラコンだ。下手したら弟を異性として見ている可能性もある。

 

「何を言っているの?そんなヤツよりも私の深夜の方が可愛いわよ。この深夜の女装写真を見なさい」

さっきまで、ちーちゃんにビビって指輪になっていた黒がいきなり人型になって敵対心剥き出しの発言をした。

 

「ふん。貴様こそ何を言っている。一夏の女装の方が可愛いに決まっているだろう。これを見ろ」

そう言って、どこからか写真を取り出す。

 

「何でそんな写真持ってるんだ?俺、撮った記憶がないんだが」

 

「これは一夏がまだ小学生の時に頼んで撮った写真だ」

そんな昔からかよ。さすがに引くな。

世界最強の威厳はないのか?

 

「そうだ、飛原。一夏の女装写真を撮ってきたら多少の問題は目をつむるぞ」

駄目な大人を目撃してしまった。

 

「……じゃあ、黒。帰るぞ」

 

「分かったわ」

 

「ちょっと待て!一夏の――」

俺はちーちゃんが何か言っていたが無視して帰った。

これ以上関わるのはめんどくさい。




本当はシリアスなまま終わらす予定だったのに、書いている途中で思い付いてこんなラストになってしまった。何故こうなったのだろうか?
とりあえず、これで一巻の内容は終了です。
次回からは二巻に入ります。

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第17話 日常

「おい、一夏!何で可愛い女の子を二人も連れてきてんだよ!両手に花か!羨ましいんだよ、こんちくしょー!俺に一人ぐらい紹介してくれてもいいじゃねーか!」

俺は今、いっくんの親友の五反田弾とかいうヤツのところに来ている。

理由は面白そうだからついてきた。後、いっくんの情報を手に入れるために。この前、テレビで見た高級料理を食べてみたくなったから、金を貯めている。

ちなみに、もちろん俺は女装している。

 

「いきなり何言ってんだ、お前の親友は?」

 

「気にしないでくれ。いつものことだから」

 

「深夜か私に手を出したら殺すけど、いい?」

 

「さすがに殺すのはやめてくれ」

めんどくさそうだな、こいつ。若干、後悔してきた。

 

「て言うか、弾。ここに可愛い女の子はいないぞ」

まぁ、確かにそうだな。

 

「何言ってんだ?」

 

「俺は男だ」

 

「私は人間じゃないわよ」

 

「は?どういう意味だ?説明してくれ」

 

「いいけど、話した内容を口外した場合、下手したら戦争になるけどいいか?」

戦争もいいかもしらないけど、まだ早いな。

 

「良く分からないけど、話さなくていいわ」

 

「ふむ。懸命な判断だな」

 

「お兄!さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!さっさと食べに――」

ドアを強引に蹴り開けて赤毛の女の子が入ってきた。

お兄か。痛みを伴うプレイは好きじゃないが、こういうのはアリだな。

 

「あ、久しぶり。邪魔してる」

 

「い、一夏さん!それに可愛い女子を二人も……。そんな……」

何かさっきも見たリアクションだな。

 

「いっくん、こいつは誰だ?」

 

「ああ、弾の妹で蘭っていうんだ」

 

「ところでそちらの二人は一夏さんの何ですか?」

今の質問で、この女がいっくんをどう想っているか分かったな。

何故、いっくんはこんなにモテるのだろうか?謎だ。顔か?

 

「こっちはクラスメイトの飛原深夜。で、こっちはその専用機の黒だ」

俺のことを口外するのは禁止されているはずなんだが。何で簡単に喋っているんだ?

こいつがモテる理由はこれか?女は馬鹿な男に引かれやすいのか?

 

「間違ってるわよ。私は深夜の恋人よ」

最近、黒のキャラが少しずつ戻ってきた。これも俺の努力の賜物だな。

 

「え!女の子同士で!?」

 

「俺の名前を聞いていなかったのか?俺は男だ」

 

「どう見ても女にしか見えないぜ」

 

「それでも男だ」

ふむ。俺の女装はそんなに似合っているのか?今のところバレたことがないな。

 

「それよりも着替えなくていいのか?男の前でその格好は恥ずかしいだろ?」

 

「えっ!?あ……そうですね。着替えてきます」

ショートパンツにタンクトップという、かなりラフで露出の多い格好をしている。

それを急に思い出したように焦って部屋から出ていった。

 

「……お前のその格好は恥ずかしくないのか?」

 

「貴女は何言ってるの?この可愛い格好が恥ずかしいって言うの?」

 

「確かに。アリだな」

着替えよう。こいつ、気持ち悪いな。

 

「よし、殺そう」

そう言って、黒が縄を出して赤毛野郎を縛りつけた。

 

「も、もっとやってくれ!」

縛られて喜んでいる。本格的に気持ち悪い。

 

「……おい、いっくん。お前の親友は変態か?」

 

「悪い……。こういうヤツなんだ」

いっくんの知り合いにまともなヤツはいないのか?

いや、俺も人のこと言えないな。

 

「深夜、どうする?」

 

「とりあえず気絶させておけ。その間に俺は着替える」

 

「分かったわ」

そして黒は赤毛野郎の首を力ずくに絞めて気絶させた。

 

「おい、死んでないだろうな?」

 

「大丈夫じゃない。多分」

 

「……本当に大丈夫か?」

 

「どうでもいいだろ」

とりあえず俺は男用の服装に着替えて、その後は赤毛野郎をたたき起こして、黒が指輪に戻ったら一階の食堂に移動した。

赤毛野郎の家は食堂をやってるようだ。

 

「うげ」

俺達の昼食が用意してあるテーブルに先客がいるのを見て赤毛野郎が露骨に嫌そうな声を出した。

その理由はおそらく、着替えて露出の少ない格好になっているからだろう。

 

「何?何か問題でもあるの?あるならお兄ひとりで外で草でも食べてたら」

 

「聞いたか、お前ら。今の優しさに溢れた言葉。泣けてきちまうぜ」

本当に嬉しそうな顔をして泣いている。

こいつ、マゾでシスコンとか人として色々終わっているだろ。

 

「おい、ランラン。あいつを罵倒するな。喜ぶから」

ランランに近付いて周りに聞こえないように話かける。

 

「いきなり馴れ馴れしいですね。ところでどういう意味ですか?」

 

「そのままの意味だ。あいつは本物のマゾだ。だが、優しくしたらしたらで喜ぶだろうな。だから、あいつのことはいない者として扱え」

 

「アドバイスありがとうございます。次から、そうします」

 

「もし上手くいかなくなったり、悩んだことがあったら、いつでも相談に乗るぜ。これが俺の電話番号とメルアドだ」

俺は電話番号とメルアドを書いた紙を渡した。

何となく、いっくんを好きな連中の中で一番仲良く出来そうな気がする。ランランを応援しようかな。

 

「深夜は蘭といきなり仲良くなっているな。俺にはまだ心を開いてくれないのにな」

こいつは何を言っているのだろうか?

それともアレか?こいつもツンデレか?

 

「な、何を言ってるんですか!?そんなことないですよ!」

 

「気をつかわなくていいぞ。それよりも、そんなオシャレしてデートでもいくのか?」

まぁ、確かにデートに行くみたいな格好だが。

 

「違いますっ!」

 

「これをやるから落ち着け」

そう言って、俺はいっくんの写真を渡す。

 

「あ、ありがとうございます!大事にします」

 

「気にするな。また今度、別のをやる」

 

「おい、お前!何を人の妹と仲良く――」

バシッ!

目にも止まらない速さのアイアンクロー。凄いな。全く無駄なく相手を殺す動きだ。

 

そして、何かアイコンタクトをした後に赤毛野郎が怯えたような顔で何度も頷いている。マゾでも今のは怖かったか。

 

「おい、いつまでも喋ってないで速く食え!」

怒鳴ってきたのは赤毛野郎とランランの祖父の五反田厳だ。最初に来たときに挨拶したが、ただ者じゃないな。八十を過ぎているらしいが、明らかに今時の若者よりも元気だ。

 

とりあえず席について昼食を食べることにした。

 

「そういや、いっくんってIS学園ではかなりモテているな」

 

「なっ!やっぱ、そうなのか?」

 

「そうなんですか!?」

とりあえず暇なので雑談を始める。

 

「そんなことはないぞ。ただ男が珍しいから寄ってきているだけだろう」

 

「ちなみに女子と同棲していたぞ」

まぁ、男と女がいつまでも同じ部屋で過ごすのは教育的に良くないだろう、ということで今は引っ越しをして、いっくんは一人部屋なのだが。

ちなみに俺はまだ普通にかんちゃんと同室だ。色々と根回しをした結果である。

 

「だ、誰とですか!?」

 

「いや、今は――」

 

「幼馴染みの篠ノ之箒だ。ちなみに胸が大きい。もちろん、ラッキースケベで風呂を覗くという定番のイベントもおきている」

 

「な、何で知ってるんだよ!?」

本当にあったのか。適当に言っただけなんだが。

 

「一夏、てめぇ。羨まし――」

 

「私、決めました」

おっ!早速、赤毛野郎をいない者扱いして言葉を遮るか。やるなぁ。

この後は俺達も赤毛野郎が何を言ってもいない者扱いして会話を続ける。

 

「私、来年IS学園を受験します」

 

「え?でもIS学園って推薦ないし難しいんじゃ」

 

「何なら俺が裏工作で入学させてもいいが」

テストの答えを盗んでISランクを上げれば簡単に入学出来るだろう。

 

「そこまでしなくても大丈夫ですよ!筆記で普通に入れますから。それにこれを見てください」

そう言うとランランはポケットから紙を出して俺に渡す。

 

「へぇ。凄いな」

 

「何が書いてあるんだ?」

いっくんが覗きこんできた。

 

「IS簡易適性試験、判定A」

 

「問題はすでに解決済みです」

俺が何もしなくていいというのは残念だな。まぁ、他にもすることがあって忙しいからいいか。

 

「ですので、い、一夏さんにはぜひ先輩としてご指導を……」

 

「ああ、いいぜ。受かったらな」

 

「約束しましたよ!絶対の絶対ですからね!」

物凄い勢いだな。

いっくんは何でこんなに分かりやすいのに好意に気付かないのだろうか?

 

「だったら俺は入学祝でもやるか」

 

「入学祝ですか?」

 

「ああ、専用機をやるよ」

 

「「……は?」」

二人の声がハモる。

 

「……えーと、どういうことですか?」

 

「そのままの意味だ。今、俺が造っている機体があるから入学、出来たらやる」

 

「おい、ISを造っているってどういうことだ?コアとかないだろ?」

 

「あるぜ」

この前、ウサギのところに行った時いらなくなったコアがあるからって貰ったんだよな。

でも一から造るのは、やっぱ難しいな。第四世代機は無理だけど、一年あれば第三世代機は造れるといいな。武装は黒のを応用すれば何とかなるだろう。

 

「いや、そこまでしていただくわけには……」

 

「気にするな。俺が趣味でやっていることだから」

 

「……何か蘭には優しいな。何か企んでいるのか?」

失礼なヤツだな。まぁ、いっくんには色々迷惑をかけているから、そう考えるのも無理ないか。

 

「企んでいる、ってほどじゃないさ。それにいっくん以外には優しいぜ」

後、侍娘にも優しくしてないな。いっくんとは違う理由だが。

 

「何で俺だけ……」

 

「そっちの方が面白そうだからだ」

 

昼食を食べ終わって戻ろうとした時に赤毛野郎が床に倒れていたので踏んでしまった。

何があったのだろうか?

 

 

 

 

「あら、深夜くん。デートの帰りかしら?」

IS学園に帰ってきて、いっくんと分かれて部屋に戻る途中でたっちゃんに会った。

 

「今日は違う。いっくんが中学時代の親友のところに遊びに行くって言うからついていってたんだよ」

 

「ふーん、そうなんだ。ところで面白い情報があるわよ」

 

「面白い情報?何だ、それは」

 

「今度、深夜くんのクラスに転校生が二人くるのよ」

 

「また転校生?しかも何で同じクラスなんだ?普通、 分けるだろ」

IS学園は何を考えているんだ?どう考えてもおかしいだろ。

 

「さぁ、そこまで知らないわ。ただ二人とも訳ありぽっいのよね。深夜くん的には大歓迎でしょ?」

訳ありの転校生か。どう考えてもいっくんが狙いだろうな。

 

「ああ、大歓迎だ。ところで転校生ってことは代表候補生なんだろ?どこの国なんだ?」

 

「確か、フランスとドイツだったとはずよ」

ドイツか。確か前にちーちゃんがいた国だな。

 

「ふむ、面白そうだな。ところで、いつ来るんだ?」

 

「明日」

 

「は?」

 

「だから明日」

いきなりだな。何で今まで俺に情報が来なかったんだ?

 

「ただの意地悪よ。その驚く顔が見たかっただけよ」

こいつも性格悪くなったな。それとも元々そうだったのか?

 

「はぁ。じゃあ、俺は部屋に戻るわ。」

 

「じゃあ、また明日ね」

そして、たっちゃんと分かれて部屋に帰った。

また面白くなりそうで楽しみだな。




次回は遂にシャルとラウラが登場します。
二人とも好きなキャラなので頑張っていこうと思います。

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第18話 訳あり転校生

「お~、ヒハランがいるってことは何か面白いことがあるの~?」

朝、俺が教室にいるとのほほんさんとスポーツ少女とツッキーがやって来た。

そういえば、教室にいっくんがいないな。遅刻だろうか?珍しいな。

 

「俺がいるということはそういうことだ。ところで教室中が盛り上がっているが何かあったのか?」

何かクラス中の女子がカタログを持ちながら色々話している。

 

「今日がISスーツの申し込み開始日だからだよ」

ああ、なるほど。興味ないから完全に忘れていた。

 

「そういえば、飛原くんのISスーツはどこのやつなの?見たことのない型だけど」

 

「自作だ」

ウサギのヤツ、めんどくさいから自分で造れ、とか言ってきたんだよな。それで資料を読みながら黒と一緒に造ったんだよな。

 

「えっ!?そうなの?」

 

「ああ。だから聞いても参考にならないと思うぜ」

 

「凄いね。そういや、今月の学年別トーナメントで優勝すると織斑くんと付き合えるって噂、本当なのかな?」

女子はコロコロ話題が変わるな。

 

「さぁ」

ちなみに噂を流したのは俺だ。侍娘がいっくんに言っていたのを尾ひれをつけて流した。

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

ちーちゃんが登場すると、それまで騒がしかった教室が一瞬で静かになって全員席に座った。重度のブラコンなのに高いカリスマ性を持っているようだ。これが二面性というヤツか。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機であるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。さもなければ怪我では済まんぞ。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにしろ。正直、使い回すから臭うぞ。忘れた者は水着、それもない馬鹿者は下着でやれ。それもなければ裸だ」

 

転校生のことで忘れていたが実戦訓練も今日だったか。イベントの多い日だな。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

そういえば、ちーちゃんと話す時マヤマヤは毎回怯えているように見えるな。どういう関係なのか気になる。

 

「今日は転校生を紹介します。しかも二名です」

 

「「「えええええっ!?」」」

相変わらず、このクラスはリアクションが大きいな。まぁ、気持ちは分かるが。

 

「はぁー。失礼します」

 

「……」

ため息をついている金髪と無愛想な顔をした銀髪が教室に入ってきた。

金と銀がいるなら銅がいてもおかしくないな。銅髪って何だよ、って感じだが。

 

「……?」

二人を観察して、俺は首をかしげる。

変な二人だな。

金髪の方は女なのに何で男の制服を着ているんだ?さらに銀髪の方はクロエにそっくりだな。何というか予想以上に訳ありな……もとい面白そうな臭いがするな。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。日本は好きな国なので、ある程度は知っていますが間違っていたりしたら教えてくれるとありがたいです。はぁー」

ため息をつきながら、当たり障りのない挨拶をする男装転校生。

異国の地に不安がある、という感じではないな。俺には分かる。中学時代の俺と同じだ。面白いことがなくて退屈している時のため息だ。でも好きな国に来といて退屈とはどういうことなんだ?

 

「「「きゃあああああーっ!」」」

またか。何度も大声だして喉は潰れないのか?

 

「あー、騒ぐな。静かにしないとぶっ飛ばすぞ」

毎回思うが、この暴力発言はいいのだろうか?しかも本当に暴力を振るう場合もあるし。

 

「み、皆さん。お静かに。まだ自己紹介が終わっていませんから~!」

まぁ、俺的にももう一人の方が気になるから速く自己紹介してほしいな。

 

「……」

だが、もう一人は挨拶どころか口を開けようとしない。そして、その視線はちーちゃんを向いていた。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

いきなりちーちゃんに敬礼をする転校生。

やっぱり、ちーちゃん関連だったか。しかも敬礼から見て軍人。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。 私のことは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

見た目は似ていてもクロエとは性格が違うな。あいつは何と言えば分からないが違う。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「あ、あの以上ですか?」

 

「以上だ」

そう言えば、いっくんも自己紹介の時に同じことを言っていたな。しかもマヤマヤも同じように泣きそう顔をしているし。

 

「貴様が――」

俺を見て、いきなり敵意剥き出しにこっちにやってくる。俺、何かしたっけ?

とりあえず平手打ちをしようとしてきたのでボールペンのさきでガードする。

 

「ちっ!多少はやるようだが、貴様があの人の弟であるなど、私は認めない」

銀髪の転校生はボールペンに手があたる前にギリギリのところで手を止めた。

ところでこいつは何を言ってるんだ?俺に姉はいないぞ。

 

「何を言ってるか全く分からんが一つだけ言っておこう。銀髪で眼帯にロリとかマニアにうけそうな見た目してるからって調子に乗ってんじゃないぞ。自己紹介は第一印象を決める大事なものだ。しっかりとウケを狙え。そんなじゃあ根暗の烙印を押されて寂しい学園生活を送ることになるぞ」

 

「貴様は何をウチの副官と同じようなことを言っているのだ」

 

「……」

予定外の返答に言葉をなくす。

とりあえず、こいつの副官が気になる。

 

「何をやっている、ラウラ。私の弟はそいつみたいな何を考えているか分からんヤツではない」

あ、なるほど。いっくんと間違えたのか。確かに今、教室には俺しか男がいないから間違えるのも仕方ないか。……いや、やっぱりおかしいだろ。自分のターゲットの顔ぐらい事前に確認しとけよ。

後、俺のことをさりげなくディスりやがったな、あのブラコンめ。

 

「……え?でも……IS学園に男は一人のはずでは?」

 

「訳ありでな。IS学園と日本政府の一部しか知らないが、もう一人いるんだよ」

て言うか、入学の際に俺の説明はしなかったのか?

 

「そ、それは人違いで酷いことをした。すまなかった。許してくれ」

さっきとは別人のようになって礼儀正しく謝ってきた。良いヤツなのかもしれない。

 

「別に気にしていないからいい」

 

「いや、そう言われても詫びをしないと私の気がすまない。こうなったら日本式に腹を切って詫びよう」

そう言うと、ナイフを取り出して本当に腹を切ろうする。

 

「ちょ、ちょっと待て!何もそこまでしなくていい!」

 

「だが、これが日本式の謝り方だとウチの副官が言っていたぞ」

こいつの副官は間違った知識を持つ日本マニアなのか?

 

「それは昔の方法だ。今はごめんなさい、と謝るだけでよっぽどのこと以外は許してくれる」

 

「そうだったのか。ごめんなさい」

こいつは本当に素直で良いヤツだな。弄りがいがありそうで楽しみだ。

 

「うむ、許す」

 

「ところで本物の織斑一夏は何処にいるのだ?」

 

「遅刻しているじゃないか?」

 

「時間も守れんとはたるんでいる。そんなヤツが教官の弟とは」

 

「スミマセン。遅れました」

いっくんが勢いよくドアを開けて教室に入ってきた。走ってきたからか肩で息をしている。

 

「あれが織斑一夏だ」

 

「貴様が遅れたせいで私は余計な恥をかいたんだー!」

完全に逆ギレだな。ナイフを構えて凄い勢いで銀髪ロリがいっくんに襲いかかる。

ところで男装女子の方は何で嬉しそうな顔をしてるんだ?さっきまで退屈そうな顔をしていたのは好みの男がいなかったからか?少し違う気がするな。

 

「うわっ!いきなり何なんだ!」

 

「転校早々、問題を起こすな。馬鹿者が」

ちーちゃんが銀髪ロリを取り抑えた。さすがブラコンだな。まぁ、下手したら死んでいたかもしれないからな。

 

「これでHRを終了する。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

この後は女子が着替えるから移動しないといけないのか。俺は気にしないんだがな。

 

「おい、いっくん。転校生の男子は任せた。俺は先に行く」

 

「はっ!?ちょっと待て!転校生!男子!意味が分からん!少しぐらいは説明していけ!」

 

「めんどくさいから後でな」

HRが終わったから他のクラスの女子がやってくるだろう。そいつらの質問攻めにあうのは御免だ。

面倒ごとはいっくんには任せるにかぎる。




補足しておくと一夏が遅刻した理由は単純に寝坊です。
寝坊の原因は今後、明かされるかもしれないし、明かされない可能性もありますが一応考えています。

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第19話 昼食

「おっ!いっくん、速かったな」

俺が丁度、ISスーツに着替え終わったところにいっくんと男装転校生が肩で息をしながらやって来た。

 

「お前のせいで、こっちは大変な目にあったんだぞ!」

 

「俺のせいじゃないだろ。女子逹のせいだ」

 

「いや、ちゃんと説明しなかった深夜も悪い」

 

「それは遅刻したお前のせいだ。それよりも着替えなくていいのか?速くしないと、また遅刻するぞ」

 

「ああ、そうだった。速くしないと千冬姉に叩かれる」

そう言うと、いっくんは制服のボタンを一気に外し、ベンチに投げると一呼吸でTシャツも脱ぎ捨てた。

 

「おおー」

何で男装転校生は嬉しそうな声を上げているんだ?

 

「おい、転校生。嬉しそうな顔してないで速く着替えろ。俺が出ていって、いっくんと二人っきりになったら襲われるぞ。そいつはホモなんだがIS学園には女子しかいなくて飢えているから危険だぞ」

 

「えっ!?そうなの!」

何だ、この満面の笑みは?普通は引くだろ。

 

「そうなんだ!もしかして一夏と……君の名前は何だっけ?」

 

「飛原深夜だ」

 

「そうそう。一夏と飛原くんはもしかしてそういう関係だったりするのかな?その場合、どっちが受けでどっちが攻めなの?」

ああ、なるほど。こいつは腐女子か。それで最初、ため息をついていたのか。IS学園には男が一人しかいないから妄想のネタも出来ないからな。

 

「いきなり何を言ってるんだ、シャルルは?」

もしかしたら、いっくんがホモの可能性も考えていたんだが違ったか。だったら、こいつが女子の好意に気付かない理由はシスコンぐらいしか思い付かないな。いや、ロリコンや熟女好きという可能性も。……いや、さすがにないな。

 

「俺といっくんはそういう関係じゃないぞ。それに俺には彼女がいるし」

 

「それって、もしかして男の娘だったりする!」

何故、彼女だと言っているのに、その可能性が一番最初に思い付くんだ?

 

「いや、普通に女だ」

まぁ、ISだから普通ではないがな。

 

「……そっか」

あからさまにテンションが下がったな。

 

「じゃあ、そろそろ遅刻しそうだから俺は先に行く。黒も速く来い」

 

「分かったわ」

最初から物陰で俺といっくんの着替え写真を撮っていた黒が出てきた。

 

「うわっ!いつからいたんだ!って、それよりも速く着替えないと!」

 

「そ、そうだね」

急いで着替え出す二人だが、間に合わないだろうな。

 

 

 

「いたっ!」

いっくんがちーちゃんの拳骨をくらう。

 

「遅い。何をやってたんだ、馬鹿者」

今、気付いたけどちーちゃん、怒っているように見えて喜んでいるな。多分、今までもそうだったんだろう。この俺が今まで気付かないとは、さすがブリュンヒルデと言ったところか。

喜んでいる理由は、どんな形でも弟とコミュニケーションをとれているからか、弟を苛めるのが好きのどちらかだな。

ちなみに男装転校生はギリギリ間に合っている。見ていないが凄い早着替えだったんだろうな。

 

そして貧乳とパッキン女がマヤマヤと戦闘の実演で授業が始まった。結果はマヤマヤの圧勝だった。普段とは別人のようだったな。

ちなみに戦闘前にいっくんがマヤマヤの胸を揉むというラッキースケベがあったので写真を撮ったが使い道はあるのだろうが?

 

その後はグループに分かれて実習を開始した。専用機持ちがグループリーダーになってやったが、いっくんと男装転校生が大人気だった。

俺の場合は黒が睨みをきかしていたせいで大変だった。コーチの練習はまた今度か。

心配だった銀髪ロリはHRの影響で素直で良いヤツだと、皆分かっているので弄ったりして楽しそうにやっていたりした。

残りの貧乳とパッキン女は直前にぼろ負けしていたせいで、不満そうなメンバーが多かった。

 

 

 

 

昼休み、俺達は屋上にいた。ちなみに貸し切り。メンバーは俺といっくんと侍娘とパッキン女と貧乳とシャルの合計六人である。

シャルルはさすがに男装と呼ぶわけにはいかないので略してシャルと呼ぶことにした。

銀髪ロリも誘ったが、さすがに断られた。

 

「どういうことだ?」

侍娘がこの大人数を見て呟いた。

元々は侍娘がいっくんを誘って二人だけで食べる予定だったが、いっくんがシャルを食事に誘った。それを聞いた俺がついていって、ついでにパッキン女と貧乳もついてきた。

まぁ、パッキン女は元々いっくんのために弁当をつくっていたから関係なくついてきていただろうな。

 

「こっちの方が面白くなるからだ」

 

「お前はそれしかないのか?」

 

「当然だ」

何、当たり前のことを言ってんだ、こいつは。

 

「あんた逹、喋ってないで速く食べるわよ」

 

「そうですわ、速く食べましょう」

貧乳とパッキン女が呼んできた。

 

「はい一夏。アンタの分」

そう言うと貧乳がいっくんに酢豚の入ったタッパーを投げた。

確かに酢豚は美味しいが、何で他の料理をつくらないのだろうか?実家は中華料理屋って言っていたから普通に考えたら他にも出来るだろう。

 

「一夏さん、私もつくってみたので食べてみてください」

パッキン女はサンドイッチを出した。

 

「……ん?セシリア、その指どうしたんだ?」

パッキン女の指にはバンソンコウが張られている。

 

「え?いや、大したことはありませんわ。ちょっと指を切っただけですから」

ちなみに本当は指は切っていない。

俺がこうすると頑張っている演出が出来て好感が持たれやすいと教えたからだ。

 

「ねぇ、飛原くんは弁当を一夏に渡さないの?」

シャルが周りに聞こえないように小声で言ってきた。

 

「だから俺にそんな趣味はない」

 

「そんなこと言われてもIS学園には男が二人しかいないから一夏と飛原くんでやるしか」

こいつは腐女子であることを隠そうとしないのか?かんちゃんは必死に隠しているのに。俺には隠せていないが。

 

「それにこれは同居人が作ってくれた物だ。誰かに渡すわけがないだろう」

基本的に俺は食堂で食べることが多いがたまにかんちゃんが自分の弁当と一緒に作ってくれることがある。その逆で気が向いた時は俺が作ることもある。

 

「へぇ。それは日本のアニメのキャラ?」

 

「そうだ」

 

「もしかして、その同居人が恋人?」

 

「違う。俺の恋人は黒だ」

 

「えっ!?ISと!」

シャルは実習の時に黒がISになるのを見て驚いたところを担当していた班の女子に説明してもらったらしい。

 

「……でも、恋人でもない女の子に弁当を作ってもらってるの?」

 

「普通だろ。俺もたまに作ってやってるし」

 

「周りから見たら恋人にしか見えないんじゃないかな?」

う~ん、そう言われたらそんな気もするな。

でもウサギやクロエにも作っていたしな。クロエ、料理出来ないからな。パッキン女よりはマシだけど。

 

「おっ!深夜の弁当、キャラ弁か?凄いな」

いっくんがパッキン女の料理から逃げるようにやって来た。

隣でシャルが視線でチャンスだよ、と言っているが無視だ。

 

「ああ、俺の同居人が作ったんだ」

 

「へぇ、そうなのか?そういや、深夜の同居人にまだ会ったことがないな」

ISが完成してからは前ほどは嫌ってないみたいだし、そろそろ会わせても大丈夫だと思うがまだ時期ではないな。やっぱり出会いは印象的でないといけない。銀髪ロリみたいに。

 

「あら、一夏さんはまだ会ったことがございませんでしたの?」

 

「私は会ったことあるわよ」

写真を買いに部屋によく来るからな。

 

「二人は会ったことがあるのか。箒はどうなんだ?」

 

「私か?2、3回だけなら会ったことがあるぞ」

侍娘はあんまり写真を買いに来ないからな。自分も写真が撮られるのが嫌なんだろう。

 

「それよりも一夏さん、さっき鈴さんの酢豚を食べたんですから次はわたくしのを」

 

「くっ!」

織斑一夏はこの世の終わりを見るような目をしている。

 

「大丈夫だ。俺が教えて食えるレベルにはなっている」

俺が周りに聞こえないようにいっくんに言う。

顔を近付けたからかシャルの目がキラキラしている。早く対処しないといけないな。

 

「……でも前は見た目は良かったけど、今は明らかに不味そうだぞ」

パッキン女の料理は見た目だけは良かったからな。中身はこの世の物とは思えないような味だったが。

そこで俺は逆転の発想をした。パッキン女が見た目を気にしないで作ったらどうなるか。不味いは不味いがこの世の味になった。

そこで俺はバンソンコウの時と同じように、こうした方が頑張っている感じが出て印象が良くなると教えた。

 

「大丈夫だ。見た目に騙されるな」

 

「……分かった」

そう言うと、いっくんはパッキン女のサンドイッチを食べた。

 

「どうですか、一夏さん。美味しいですか?」

 

「……前よりも上達したんじゃないか」

決して美味しいとは言わないんだな。

 

「そうですか。それは良かったですわ」

パッキン女の嬉しそうな顔を見て、いっくんは罪悪感のある顔をしている。気にしているなら正直に言えばいいのに。はっきり言ってやるのも優しさだと思うぞ。

 

「そういや、いっくんの弁当はないのか?まさか女子から弁当を分けてもらうだけか?それじゃあ、ヒモと同じだな」

 

「今日の一夏の弁当は私が用意したのだ」

そう言うと侍娘が弁当を取り出した。

中身は中々、手が込んでおりバランスも良い。

 

「ふーん、やっぱヒモか」

 

「いやいや、そんなことはないぞ!いつもは自分で作ってるし」

 

「貴様は私の弁当に不満があるというのか!」

 

「そんなことはない。感謝してるぞ」

こいつは本当に押しに弱いな。

 

「じゃあ、今すぐ食べろ」

侍娘がいっくんに無理矢理、唐揚げを食べさせた。

 

「ふぐっ!……ん、美味しい」

 

「そうか、それは良かった」

侍娘が嬉しそうな顔をしている。

 

「シャル、これが日本で恋人同士がやる『はい、あーん』というやつだ」

 

「これが噂の……。実際に見れるとは思ってなかったよ」

そう言えばウサギが俺にやらせて黒とクロエが嫉妬して一騒動、ってことがあったな。

 

「一夏!はい、酢豚食べなさいよ酢豚!」

 

「一夏さん!サンドイッチもどうぞ!一つといわずにどうぞ全部!」

俺の言葉に反応して貧乳とパッキン女が凄い勢いで押し寄せている。

 

「一夏は女の子にモテるんだね。でも、そういう人がBL的な展開って言うのも……萌えるね」

俺はシャルが女だということを知っているが、他の人が見たらどう思うのだろうか?腐男子?

 

「おい、シャル。後で俺の部屋に来い。面白い物を貸してやる」

面白いことは放置するが、厄介なことは速効で対処しないとな。




最初からシャルを一夏をホモ扱いすることで弄ることは決めていましたが、そこから発展して腐女子になってしまいました。

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第20話 史上最悪の敵

「言われた通りに来たよ、深夜」

放課後、シャルが俺の部屋に来た。

 

「……誰?」

 

「今日来た転校生だ」

 

「ああ、クラスの人達が貴公子みたいな新しい男子が来た、って騒いでいたけどそれ?」

周りを気にしないかんちゃんが聞いているほど騒がられているのか。

 

「いや、違う」

 

「えっ!いや、あってると思うけど」

 

「だって女だし」

いきなり核心をつくのは、ちーちゃんみたいで俺らしくないな。まぁ、たまにはこういうのもいいだろう。

 

「えっ!?何を言っているのかな!僕はどこから見てもれっきとした男だよ」

面白いぐらいの焦り様だな。俺はその顔が見たかったんだ。半分ほど嘘だけど。

 

「俺を誤魔化せると思うなよ。観察力だけなら、あの篠ノ之束にだって並ぶんだからな」

本当にそれだけしかないけどな。悲しいことに。

 

「……いつ気付いたの?」

 

「最初から」

 

「……それで僕を部屋に連れ込んで何をするつもりなの?」

かなり悲痛な表情だな。人の驚いた顔は好きだけど悲しそうな顔は好きじゃないんだよな。

 

「連れ込む、って人聞きが悪いな。何もするつもりはないよ」

 

「……じゃあ、何がしたいの?」

 

「お前が俺を妄想のネタにするのを止めさせたいだけだ」

 

「えっ!?」

うんうん。やっぱり驚いた顔はいいな。

でも、さっきから同じリアクションが続いているのは減点だな。

 

「その代わりにかんちゃんのコレクションを貸してろう」

 

「……え~と深夜。いきなり何言ってるの?」

 

「だから、かんちゃんがベットに下に隠しているBL本や乙女ゲームをシャルに貸すと言っているんだ」

 

「いきなり何を訳の分からないことを言っているのかな!私はそんな物、持ってない!大体、私が好きなのはヒーローであって、そんな同性愛とかそういうのは――」

かんちゃんがこんなに喋ってるのは始めて見たな。レアなものを見れた。

 

「じゃあ、ベットの下を確認していいか?」

 

「そ、それは駄目!乙女のプライバシーだから!」

恋人でもない男の前でバスタオル一枚で平気なヤツが何言ってんだか。

 

「これでしょ。私もたまに読んでるわよ」

黒がかんちゃんのコレクションを持って現れた。

 

「これでも言い訳するか?」

 

「……諦める」

やっと諦めたか。俺に隠し事が出来ると思ったのが間違いだったな。

 

「……深夜と生活しているとプライバシーがない」

 

「俺だけじゃなくて黒を前にしてもプライバシーはないぞ。黒にはハイパーセンサーがあるからな」

 

「……はぁー」

 

「え~と、大丈夫?」

シャルが心配そうにかんちゃんに話かける。腐女子である点を除けば優しいヤツなのかもしれない。

 

「大丈夫だろ。それよりもこれ、貸してやるから俺を妄想のネタにするなよ」

 

「おおー、色々あるね。でも、本だけじゃなく現実でも良いネタないの?」

めんどくさいな。

 

「……それじゃあ、いっくんの親友に五反田という男がいるんだが。そいつとのそれっぽい写真を撮ってきてやるから、それで我慢しろ」

あいつを売って助かるなら安いものだ。

 

「そんなめんどくさいことをしなくても私が男になればいいだけのことじゃない?」

ん?黒は何を言ってるんだ?意味が全く分からない。

 

「それはどういう意味?」

シャルが目を輝かせて俺の代わりに黒に聞いた。

 

「こういう意味よ」

そう言うと、黒の体が男になった。元が良いだけに結構イケメンだ。

 

「私はISだから自由に体を変えられるのよ。もちろん中身は女のままだけどね」

知らなかった。良く獣の耳やシッポはやらせているが性別まで変えられるとは。

 

「心配しなくても私は男のままでも深夜のことを愛せるよ」

 

「……出来れば女の体のままで愛してくれないか」

ヤバい。今、生まれて初めて冷や汗をかいてる。

 

「いいんじゃないかな。僕的には満足だよ」

 

「いやいや、それじゃあ俺を妄想のネタにしているじゃないか!」

 

「貴方もたまには苦しむべき」

 

「かんちゃんまで敵か!?」

くそっ!どうしたらいい!

 

「大丈夫。いつもと同じだから」

黒が変態になってた時よりも怖い。

 

ダッ!俺は全力で逃げ出す。

 

「……逃がさない」

かんちゃんがISを起動して俺を捕まえた。

 

「普通そこまでするか!」

 

「面白そうなことには全力で。深夜がいつも言ってること」

 

「くっ!それを言われると反論出来ない」

 

「いつも新しい趣味を深夜は探しているんだからいいいじゃない」

こういうのを求めているわけじゃない。

 

「僕も直接見るのは初めてだからドキドキしているよ」

 

俺は今日、何か大切な物を失った。

シャルは俺にとって篠ノ之束や織斑千冬以上の史上最悪の敵だ。

 

 

 

 

「うん。こういうのもアリね」

 

「……頼むから、これで最後にしてくれ」

俺は生まれて始めて本気で誰かに懇願した。下手したら土下座しそうな勢いだ。

 

「……かんちゃん、いつもより多く金を渡すし、他にも言うことを聞くから今後は黒を止めてくれ」

かんちゃんの寝顔とか他に色々写真を撮って、たっちゃんに売れば問題ないだろ。

 

「……買収されたみたいだけど仕方ない」

これでかんちゃんは大丈夫だ。

シャルはどうするか?こうなったら俺の主義に反するけど仕方ない。最終手段だ。

 

「……シャル、これ以上やらせようとすると女子だってことをバラすぞ。何を企んでいるか分からないが困るだろ」

 

「……そ、それは……その……」

 

「だが、これ以上問題を起こさなかったから俺は何も言わないし、色々売ってる場所を教えてやる」

飴と鞭だな。追い込んでからの甘い言葉は効果バツグンだ。

 

「うん、仕方ないね。お互いにとって悪くない妥協案だね」

悪くないどころか最良だと思うが。

 

「黒、明日は作業を休憩して一日中付き合ってやるから今後は男にならないでくれ」

 

「うん、了解。明日はめいいっぱい楽しもうね」

変態性はなくなったし大丈夫だろ。多分。

 

「あっ!そろそろ一夏と夕食食べる時間だから行くね。それとも深夜も行く?」

 

「……いや、いい。今日は疲れているから」

俺はこの後、朝まで寝て過ごした。

昨日の楽しみだった気持ちが嘘みたいだ。

もう一人の転校生、銀髪ロリはこんなんじゃないことを祈るしかない。

 

 

 

「はぁー。昨日は酷い目にあった」

現在は朝のHR前。昨日は夕食も食べずに惰眠を貪ったせいで何とか落ち着いた。

とりあえず黒が起きる前にやることをやるか。

 

俺は目的地である一年三組にたどり着いた。

 

「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」

教室の入口付近にいた女子に話かけた。

 

「え!飛原くん!何の用かな。何でも聞いていいよ」

一々身だしなみを整えなくてもてもいいと思うが。

他の女子達も集まってきたな。

 

「このクラスの代表に会いたいんだけど。来てるか?」

 

「クラス代表ですか?え~と」

 

「私がこのクラス代表でーす」

集まってきた女子達の中にいたのか。平均的な身長でツインテールが特徴の元気な女子だ。

 

「私が三組のクラス代表をしている天吹刹那。気楽に刹那っち、って呼んでいいよ。ちなみに趣味は掃除」

にしてもこいつ、ただ者じゃないな。掃除が人間の掃除だと言われても信じるぞ。何でこんなヤツがいるのに直接話すまで気付かなかったんだ?

 

「じゃあ、刹那っち」

 

「うわぁ。本当にそう呼んだの深夜くんが初めてだよ。ところで今日は黒ちゃんはいないの?」

確か、たっちゃんも同じようなリアクションをした気がするな。

 

「あいつは朝に弱くてまだ寝てる」

今気付いたけどあいつ、俺が寝ている間に何もしてないよな。

 

「ふーん。そう言えば、私への用事って何?」

 

「人前で話すことじゃないから明日の放課後にまた会わないか?今日は用事があって無理なんだ」

 

「もしかして告白。困るなぁ」

何だろう?こいつからもアブノーマルの匂いがする。俺に被害がないことを祈るしかない。

 

「違う。もっと良いことだ。まぁ、とりあえず明日を楽しみにしといてくれ」

 

「オッケー。よく分からないけど楽しみにしてるよ」

次の学年別トーナメントではウサギが何もしないのは確認しているから色々楽しまないとな。まぁ、俺に黙って何かする可能性もあるが。

だが一番の問題は何をするか、まだ決まっていないことだな。




新キャラ登場です。
色々と裏設定は考えていますが本編とは全く関係ないのでほとんど書くことはないでしょう。
苗字の意味とか分かる人いますかね?

感想、評価、お気に入り登録待ってます。


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第21話 変態

「ヤッホー。深夜くん、約束通り遊びに来たよ」

刹那っちが部屋にやって来た。

 

「……デジャヴ?」

 

「ああ、一昨日もこんなことがあったな」

一昨日というか前回だな。メタ発言だけど。

 

「……深夜。私の知らない女だけど、いつ会ったの?」

 

「昨日の朝。言ってなかったっけ?」

 

「なるほど。深夜は私とのデートの前に違う女に会ってた、ってこと?」

あれ?黒はこんなことを言うヤツだったか?

 

「そう言われると俺が女たらしに聞こえるな」

 

「……違うの?」

かんちゃんがジト目で言ってきた。

 

「何々、修羅場?」

刹那っちが嬉しそうに言ってる。何か笑顔がシャルと被って怖い。

 

「そうなんじゃね?」

 

「……何か深夜、適当ね?普通はもっと焦るものじゃないの?」

 

「ああ、そういうこと」

俺の影響、受け過ぎだろ。

 

「かんちゃん。俺が一昨日寝ている間に黒に何か吹き込んだだろ?例えば、こうすれば焦るかどうかで俺の気持ちが分かるとか」

 

「良く分かったね」

 

「俺がいつもしている手だからな」

 

「それよりも我慢出来ないから、やっていいかな?」

ん?刹那っちは何を言ってるんだ?

 

「初めて見た時から好きでした。私とベットの中で一夜を共にしませんか、黒ちゃん」

何で女が女に告白しているんだ?しかも、かなり斬新な告白の仕方だな。て言うか黒がISだということと俺と付き合ってる、ってことを知っているはずだよな?

 

「まぁ、返事を聞かなくても襲うけどね。もう我慢出来ない。ISであるとか関係ないよ。だって、こんなに可愛いんだから。それに寝とるのも楽しいし」

言いながら目にも止まらない速さで黒に襲いかかって服を脱がし始めている。プロの動きだな。

 

「ちょっと深夜、助けて!何か怖いんだけど。それに凄いパワーだし」

ISである黒を押さえ込むとは。やはり、ただ者ではないな。

 

「……冷静に観察してないで助けた方がいいんじゃない?」

 

「俺に止められるとは思えないが」

今度は黒が酷い目に合う番だったか。

にしても俺の勘は当たってたな。あいつはアブノーマルだ。属性はレズか。俺には関係ないな。

 

「何か凄いことになってるんだけど」

黒が縄を出して相手を縛ろうとしたけど逆に縛られている。

 

「ちょ、深夜。本気でヤバい。何とかして!」

 

「大丈夫。深夜くんのことは忘れて私のことしか考えられないようにするから」

せめて、そういうのは俺のいない所でやれよ。

 

「まぁ、さすがにマズイし、そろそろ止めるか。かんちゃんも手伝ってくれ」

 

「……仕方ない」

 

三十分後、かんちゃんのIS起動までして何とか刹那っちの暴走を止めた。

 

「はぁ、はぁ……。お前……何者だ?」

 

「可愛い女の子が大好きなだけの可愛い女の子だよ」

 

「そういうことを聞いてるんじゃないんだが?」

何か物凄くふざけたヤツだな。……何か最近、こういうのが多い気がするな。

 

「て言うか、知ってて私を呼んでじゃないの?」

 

「刹那っちがただ者じゃない、ということ以外は知らない」

 

「だから、それを確かめるために呼んだの?」

 

「……お前、俺を勘違いしてないか?俺はそんな直接対決みたい方法はよっぽどのことがない限り使わない」

キャラがぶれた場合は知らないが。

 

「なるほど。じゃあ、誰にも喋らないと誓ったら教えてあげてもいいよ」

何か本題から完璧に外れているな。どうしようか?まぁ、後回しでいいか。

 

「じゃあ、言わないから教えてくれ」

 

「そっちの簪ちゃんはどう?もし私とベットの中で一夜を共にするなら特別に誰かに喋ってもいいけど?」

 

「……いや、普通に言わない」

まぁ、言う相手がいないもんな。

 

「ギロッ!」

怖いな。

 

「まぁ、いっか。特別に教えてあげよう。私は裏の世界で有名なプロの殺し屋だよ」

そんなに簡単に教えていい内容じゃないと思うが。

 

「殺し屋か。敵に回すよりも味方にした方がいい人種だな」

 

「まぁ、私が有名なんじゃなくて家が有名なだけなんだけどね」

 

「家族で殺し屋なのか?」

 

「う~ん。少し違うけど、そんな感じ」

裏の世界についてはあんまり詳しくないんだよな。更識と亡国機業ぐらいしか名前も知らないし。たっちゃんに後で聞くか。

 

「私の説明はこれで終わり。他に聞きたいとかある?」

 

「何で殺し屋がIS学園にいるんだ?」

 

「天吹としてはISが欲しいからだよ。簡単に言うとスパイみたいなものかな。まぁ、私個人としてはどうでもいいんだけどね。単純に美少女が多いから来ただけだし。まだ質問はある?」

 

「そうだな。他にも聞きたいことはあるが後でいいだろ。さっきにこっちの用事をすませる」

にしてもやっと本題か。すでに結構疲れている。

 

「じゃあ、単刀直入に言うぞ。専用機が欲しくないか?」

 

「……は?」

 

「もう一回言うぞ。専用機が欲しくないか?」

 

「私の殺し屋発言よりも衝撃的発言を聞いてしまった」

そうか?IS学園にいるんだからISの話が出るのは普通だろ。

 

「で、どうなんだ?」

 

「そりゃあ、貰えるなら貰うけど。いきなり、そんなことを言われても怪しいだけなんだけど。私に専用機を与えて何か得があるの?」

こいつが言うことも正しいな。俺でも、いきなりこんなことを言われたら疑う。

 

「俺は面白いことが好きなんだ。それで使えるオモチャがある。だから、それを使って遊ぶ。それだけの簡単な話だ」

 

「何か子供みたいね」

 

「ははっ!まぁ、そんな感じだ。お前にも悪くない話だと思うが?」

こいつが無理だったら別のヤツを探なくてはいけない。でも、こいつ以上のヤツが見付かるとは思えない。

 

「OK、貰うわ。でも、何処にあるの?」

 

「持ってくるのはめんどくさいから篠ノ之束の研究所まで取りに行くことになる」

 

「……一つ聞いていい?」

急にシリアスな空気になったな。やっぱ篠ノ之束との直接対面には思うところがあるのか?

 

「篠ノ之束って美人だって聞いているんだけど本当?」

聞くことはそれか!いや、レズにとっては重要な問題なのか?何か良く分からない。

 

「ああ、結構な美人だ。しかも胸もかなり大きい。さらにもう一人、美少女がいるぞ」

 

「よし。じゃあ、今すぐ行きましょう」

 

「いや、明日の放課後だ。元々行く予定だったし、今日のうちに刹那っちのことを向こうに言っておくよ」

 

「仕方ないか。じゃあ、また明日ね」

それだけ言うと刹那っちは帰っていった。

にしても専用機よりも女の方が重要とか変な殺し屋だな。

 

 

 

 

翌日の放課後、俺は刹那っちを連れてウサギの研究所に来ていた。かんちゃんも一応誘ったが断られた。

 

「へぇ。これがあのISの開発者である篠ノ之束の研究所か。こんな所にあったのね」

 

「まぁ、何個かある中の一つだがな。俺と会う時は基本的にここだな」

ここはIS学園近くにある町の地下だ。こんな所にあるのに、よく見付からないな。

 

「ああ、その扉に近付くなよ。システムに登録されていない人間が触ったら蜂の巣になるぞ」

 

「怖っ!」

俺は網膜認証と指紋認証をクリアして扉を開ける。さらに監視カメラでも確認しているんだから恐ろしいよな。

 

「やっほー、しっくん!会いたかったよー!」

扉を開けると同時にウサギが俺に向かって飛び込んできたので蹴飛ばす。

 

「うー。酷いよ、しっくん。いきなり蹴飛ばすなんて」

 

「下手くそな泣き真似はいい。とりあえず紹介するぞ。こいつが昨日電話した時に言った天吹刹那だ」

 

「どーも、初めまして。気楽に刹那っち、って呼んでください」

普通、篠之束に会ったら物怖じとかするものじゃないのか?普段通りに軽いが。

 

「初めまして、刹那っち。束さんのことは尊敬の念を込めて束博士と呼びなさい」

 

「分かりました、束博士」

 

「うんうん。しっくんとか全然尊敬してくれないから、そういうリアクションは新鮮でいいね」

普段のウサギを見ていたら尊敬なんか出来ないんだが。そして刹那っちも尊敬してないと思うが。

 

「にしても、しっくんに束さん以外の友達が出来るなんて意外だよね」

 

「別に友達じゃないぞ」

 

「酷い!私との関係は遊びだったの!」

最近、ツッコミ不足な気がしてきた。前はツッコミの方が多かったのに。

 

「……お前、女が好きなんじゃなかったのか?」

 

「そりゃあ、女の子の方が好きだけど。でも、別に男が嫌いってわけでもないから」

 

「束様、紅茶の準備が出来ました」

クロエがやって来た。俺を見て露骨に嫌そうな顔をしているがいつものことだ。紅茶の淹れ方を教えてやったのに。

 

「ねぇ、深夜くん。あの可愛い女の子は誰?」

 

「クロエだ。ウサギと一緒に暮らしているが詳しいことは知らない」

ああ、そういや銀髪ロリのことがあるから、ついでに聞いていくか。

 

「クロエちゃんを食べていい?て言うか、食べる。私のモロタイプ」

だったら俺に聞くなよ。

そして黒の時みたいに目にも止まらない速さでクロエに襲いかかった。

 

「凄い動きだね。天吹って名前に聞き覚えがあったけど、今思い出したよ。何年か前に束さんを殺しに来た殺し屋集団が天吹って名前だったね。まぁ、束さんの敵じゃなかったけどね」

そんなことがあったのか。それでよくここに来れたな。

 

「よし。束さんも刹那っちを見習って、さっきから黙っている黒ちゃんを食べよう。いつも、しっくんとだけ仲良くして束さんには冷たかったからね。ここで親睦を深めるのも悪くない」

そう言うとウサギが黒に襲いかかった。

 

「ちょ、何いきなり血迷ってるのよ!」

 

「今日は本気でいくよ」

いつもは殴り飛ばされて終わりだったのに、今回は気付いたら服を脱がしていた。これが天災の本気か。

にしても2日連続で襲われて黒も災難だな。

 

「うわっ!いきなり視界がぐちゃぐちゃに!何これ!?」

黒鍵を使って幻覚を見せたのか。

 

「でも嗅覚まで封じられていない。この私をなめないでください」

まさか匂いでクロエの場所を把握しているのか?これが変態の力か!

 

「マジでピンチ!ちょっと深夜、助けて!」

 

「私の初めては束様に捧げる予定だったのに……」

何か危ない発言が聞こえたけどいいか。

さて俺はどうしようか?……クロエが淹れた紅茶でも飲みにいくか。

俺は黒とクロエの悲鳴を聞き流して部屋を出た。

 

三十分後、マニアックな縛られ方をしたウサギと気絶した刹那っちが運ばれてきた。

そして黒とクロエはかなり服が乱れている。

 

「ウサギは嬉しそうにしているからどうでもいいとして。刹那っちの方は大丈夫なのか?」

 

「少し……いえ、かなり抵抗されたのでISを使って気絶させましたが命に別状はないでしょう。私的には殺してもかまいませんが」

大変だったんだな。それよりもクロエの初めてがどうなったか気になる。

 

「おい、起きろ。朝だぞー」

気絶している刹那っちの頬に思いっきりビンタをして起こす。

 

「いたっ!いきなり何!?……って深夜くんか。美少女だったら嬉しかったんだけどな」

この状況で言うことはそれか。こいつ、かなりの大物かもしれない。

 

「まぁ、いいか。お前らが遊んでいる間にISを運んできた」

 

「どこに?」

 

「あそこだ」

俺が指差した方向には赤黒く血をイメージさせる色をしたISがある。

ちなみに、ここまではこれに乗って持ってきた。黒がピンチだったからか使うことが出来た。

 

 

「あれがお前の専用機『ブラッディカルテット』だ」

 

 

 




二巻の内容に入ってから変態が多いですけど、今回で打ち止めです。今後、増えるとしたらクラリッサぐらいでしょう。多分。

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第22話 VSラウラ

現在、いっくんとシャルの三人で第三アリーナに来ている。明らかにシャルが俺といっくんをくっ付けようとしているのは明白だ。

それでも練習に付き合っているのは気分転換だ。刹那っちの専用機はウサギが造ったはいいが忘れて放置されていたのを俺が見付けたものだ。簡単な調整はウサギがしてくれたが細かいところは俺がやって、今日の昼前に終わったところだ。黒にも付き合わせてきたので今は寝ている。

ちなみにいっくんがシャルの説明書を分かりやすそうに聞いているのを、自称専属コーチ三人が後ろから不満そうに見ている。正直、貧乳と侍娘の教え方は感覚的すぎて俺にも分からない。パッキン女は逆に理論的すぎて俺には分かるが、いっくんには難しいだろう。

にしても最近、体を動かしてないから結構なまっているな。

 

「たぶんたけど、それってワンオフ・アビリティの方に容量を使っているからだよ」

俺がストレッチをしているとシャルの声が聞こえてきた。

 

「零落白夜の話か?」

 

「今、白式に後付装備がない話をしていて、それでワンオフ・アビリティの話になったんだ」

 

「ああ、そういうこと。全くではないけど関係ないぞ」

 

「何でそんなことが分かるんだ?」

あれ?もしかして聞いてないのか?

 

「造った人に聞いたから」

 

「造った人って。倉持技研の人達にも詳しい分かってないらしいけど」

 

「そっちじゃなくてウサギのことだ」

 

「……え~と、束さんが何の関係あるんだ?」

やっぱり知らなかったのか。とりあえず簡単に説明した。俺も詳しいことまでは知らないが。

 

「これって僕が聞いていい内容なのかな?」

 

「ん?別にいいんじゃね。そんなに重要なことでもないだろ」

 

「んー。いいいのかな?」

ここ何日かで分かったけどBL関係以外は周りに気をつかうタイプらしい。俺は趣味の方に気をつかえ、と思うが。

 

「にしても白式が第一形態からワンオフ・アビリティが使えるのはそういう理由だったのか。じゃあ、深夜も使えたりするのか?」

 

「使えるぞ」

 

「へぇ、そうなんだ。問題がなかったら聞いてもいいかな?」

あんまり説明したい能力じゃないんだがな。

 

「詳しいことを言うつもりはないが簡単に言うと零落白夜よりも強力だな。零落白夜みたいに簡単に使える能力じゃないがな。俺はあまり使いたくない」

多分、全ワンオフ・アビリティの中で一番強くて一番使用者に危険な能力だろう。何たって短い時間とはいえ人間の限界を超えるのだから。それでも織斑千冬に勝てるとは思えないが。まぁ、本気を出させるぐらいは出来るだろう。多分。

 

「私は好きな能力だよ。今から使う?」

いきなり黒が起きてきた。何で急に起きてんだ?

 

「あの能力を使えると聞こえたから起きたのよ」

 

「そんなことは言っていない。大体、使ったら俺が倒れるかもしれないだろ?」

最初に使った時は一日中、目覚めなかったからな。使ってる時は良い気持ちだったんだけどな。

 

「……どんな能力なの?」

シャルが質問をしてきたところで周りがざわつきはじめた。男が三人(一人は男装)いるから凄い人数の人間がいる。

注目の的に視線を移すと、そこには銀髪ロリがいた。最初は弄られていたが冷たい態度をとっているせいで最近は孤立ぎみだ。だから最初にちゃんと忠告してやったのに。ちなみに転校初日の放課後に改めて、いっくんに平手打ちをしたらしい。変なところで律儀なヤツだ。

銀髪ロリがオープン・チャンネルでいっくんに話しているようなので俺も回線に割り込む。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」

いきなりの宣戦布告か。でも、このまま二人が戦っても面白くないな。銀髪ロリが勝つのは目に見えている。

 

「イヤだ。理由がねぇよ」

 

「貴様にはなくても私にはある」

ちーちゃんが亡国機業に誘拐された、いっくんを助けたせいで第二回IS世界大会『モンドグロッソ』の決勝戦の時間には間に合わず不戦敗になった件のことか。

そりゃあ、ブラコンからしたら世界最強よりも弟の方が重要だよな。

俺は二人が話しているところに口を挟む。

 

「なぁ、銀髪ロリ。いっくんの代わりに俺が戦ってやろうか?」

 

「何?どういうつもりだ?そう言えば貴様は何者なんだ?見たところ専用機持ちのようだが代表候補生でもないし、どっかの企業のテストパイロットにも見えん」

俺の正体について、よく聞かれるがいい加減説明がめんどくさいな。

 

「そんなことはどうでもいいだろ。……そうだな、俺に勝ったら織斑一夏を誘拐して織斑千冬が世界最強になるのを邪魔した組織を教えてやるよ」

 

「何!?何で貴様がそんなことを知っているんだ!我がドイツ軍でも、そこまでは分かっていないのに」

 

「俺に勝ったら教えてやるよ」

 

「そうか。なら、これでどうだ?」

そう言うと、いきなり左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴いた。

 

「おいおい、こっちはまだISを起動していないのに攻撃するか、普通。どんだけ短気なんだよ?」

とりあえず俺はシールドを出して攻撃を防御した。

 

「おい、周りの連中。邪魔したら色々バラすぞ」

それだけ言うと俺もISを起動して銀髪ロリの前に行く。

 

「暇潰し程度に俺を楽しませろ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「いいだろう。軽く捻り潰してやる、飛原深夜」

俺は銀髪ロリの両手首に装着した袖のようなパーツから超高熱のプラズマ刃が展開しているのを確認する。そして俺は日本刀を二本展開した。日本刀を二本、何か駄洒落みたいだが、たまたまだ。

ちなみに現在は黒の装備から展開装甲を外して通常のスラスターを装備している。この前、完成したばかりで、すでにかんちゃんとの模擬戦で性能は確認済みだ。

そして戦闘が開始した。

 

「結構やるな。並みの反応速度ではない。だが、そんな太刀筋では私にダメージは与えられないぞ」

 

「そりゃ、どうも。だが、お前の攻撃も俺に当たってないぞ」

開始して、すぐに膠着状態に入った。何とか攻撃を防ぐことは出来るが、俺の攻撃も防がれている。よく考えたら俺って接近戦は初めてなんだよな。それどこらかマトモに動いての戦闘自体が初めてだ。結構楽しい。

 

「だったら、これでどうだ!」

銀髪ロリが一旦、距離を取ると肩と腰部に搭載された刃が六つ、一斉に射出された。しかも本体とワイヤーで接続されており、複雑な軌道で襲ってきた。

 

「ちっ!」

右手の日本刀を戻してアサルトライフルを出す。そして避けれそうにないワイヤーブレードだけを迎撃、他は何とか避けることに成功した。

 

「いいぜ。もっと本気でこい、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「いいだろう。だったら、次はこれだ」

今度はワイヤーブレードとプラズマ手刀が同時に襲ってきた。格闘戦に慣れていない俺では頭は反応出来ても、体がついてこない。今の武装ではかなり厳しい。こうなったら本気を出すか。

 

「これで終わりだ」

銀髪ロリがそう言うと俺の体が目に見えない何かに掴まれたかのように動かない。

 

「ちっ!これは何だ!?」

 

『AIC。慣性停止能力よ』

ああ、なるほど。めんどくさい……もとい、面白い能力を持ってるな。明らかに俺が戦ってきた中で一番強い。たっちゃんは冷静さを失っていたのでノーカンだ。

 

「だったら――」

 

『そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!』

突然アリーナにスピーカーからの声が響いた。派手にやり過ぎたか。今からが良いところだったのに。

 

「……ふん。運が良かったな」

 

「お前がな。今から本気を出すところだったんだがな」

 

「負け惜しみか?まぁ、いい。次の機会に決着を着ける。その後で教官の経歴に傷をつけた組織のことを聞こう」

それだけ言うと銀髪ロリはAICを解除してアリーナゲートへと去っていった。

次の機会って言われても困るな。俺は学年別トーナメントには出ないし。どうしようか?

 

「大丈夫か、深夜」

俺が戻ると、いっくんが話かけてきた。

 

「ああ。にしても、良いところを邪魔されたな」

 

「ところで聞きたいことがあるんだ」

何だ?シリアスな雰囲気して。……ああ、さっきのあれか。

 

「俺を誘拐した組織を知っている、って本当か?」

 

「名前だけだがな。言っとくが教えるつもりはないぞ。そんなことしても、いっくんに出来ることはない」

 

「……だったら俺が強くなったら教えてくれるのか?」

何だ?ちーちゃんの経歴に傷をつけた連中に復讐でもする気なのか?

 

「俺が教えなくても時期が来たら分かると思うぜ」

 

「どういう意味だ?」

 

「さぁな」

それだけ言うと俺はアリーナから出ていく。

さて、さっきの教師からの呼び出し。ばっくれるか。




最近、変態ばかり書いていたけど久しぶりに真面目な話でした。
ラウラは好きなキャラなので箒やセシリアに比べて良い扱いにする予定です。
出来ればツッコミとして鈴の出番を増やそうと考えているけど、どうしようか?

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第23話 対処策

「ハァー、酷い目にあった」

銀髪ロリとの戦闘後ばっくれたはいいけど、まさかちーちゃんが出てくるとは。ちーちゃんの教育という名の暴力のせいで黒は一応、ISとしての機能は使えるが人型を保てない程のダメージを負ってしまった。回復には一晩中かかる、と言っていた。ばっくれた分は写真を与えて罰を軽くしてもらったのに、これとは。本来なら死んでいてもおかしくなかったな。

 

「……また何かしたの?」

 

「何もしてねぇよ。喧嘩を売って、終わったら逃げただけだ」

 

「何かヤンキーみたい」

そう言われると、そんな感じもするな。にしてもヤンキーか。俺から一番離れたイメージだな。

 

「今日はもう寝るか」

言った瞬間にプライベート・チャネルで連絡がきた。

 

「ハァー、誰だ?」

 

『深夜、ちょっといいかな?』

シャルか。何かシリアスな雰囲気だな。う~ん、今日はそんなのが多いな。シリアスな雰囲気よりもふざけている方が好きなんだが。

 

「いいけど、何?いっくんに風呂を覗かれて女だってバレたか?」

 

『……え!?何で分かったの!』

適当に言っただけなのに当たるとは。俺の勘は良く当たるな。超能力の域だな。

 

「で、何で俺に連絡してきたんだ?」

 

『……二人っきりはちょっと……』 

正直、今はしんどいが仕方ないか。

 

「分かった。今から行くから待ってろ」

それだけ言うとプライベート・チャネルを切った。

今、気付いたけどISの私的使用で怒られないよな?次は本当に死ぬかもな。こうなったら、いっくんの女装写真を撮るしかない。

 

「というわけで、かんちゃん。ちょっと出掛けてくるわ」

 

「……また問題起こさないでね」

信用されてねぇな。俺が何回もバレるわけないのに。

 

 

 

 

「よぉ、来たぜ」

 

「「…………」」

とりあえず、いっくんとシャルの部屋に来たはいいが何だ、この重い空気は?無言の空間が一番苦手なんだよな。今は黒も動けないし。

 

「……よし、帰ろう」

 

「ちょっと待て!せっかく来たんだから、のんびりしていけよ」

俺が重い空気に耐えられず帰ろうとしたら、いっくんに止められた。

この状況でのんびりできわけないだろう。

 

「……何でシャルの風呂を覗いたんだ?」

 

「……いや、ボディーソープから切れていたから渡そうしただけなんだ」

まぁ、普通に考えて同じ部屋に住んでいて女だってことを隠し通すのは無理だよな。

 

「ハァー。とりあえずお茶でも落ち着け」

そういや、こんなに溜め息をするのは初めてだな。

とりあえず俺は電気ケトルでお湯を沸かして、それを急須に注いだ。

 

「……俺は今、かなりしんどいからさっさと話せ」

 

「……う、うん。分かった……」

それからシャルはデュノア社のことや男装している理由を話した。正直、全く面白くない話だったので半分寝ていた。

 

「ああ、なんだが話したら楽になったよ。……って深夜、起きてる?」

 

「……ん?ああ、起きてる、起きてる。さっきまで、ちーちゃんの折檻を受けてた上に面白くない話を聞かされていたけど起きてる。……」

 

「寝てるじゃねぇか!」

おっと、しまった。意識がまた飛んでしまった。速く終わらせて寝るか。

 

「大体、何でこんな酷い話を聞いている最中に寝れるんだよ!」

 

「酷い話?」

 

「ああ、親だからって子供の自由を奪う権利があるわけがない!生き方を選ぶ権利は誰にだってあるはずだ。それを親なんかに邪魔されるいわれは無い!」

んー、こういう熱いのは苦手だな。

 

「何?自分逹が親に捨てられたことを気にしているのか?」

いっくんとちーちゃんの話はウサギから色々聞いて知っている。正直、興味は全くないが。

 

「……知っていたのか?」

 

「そんなこと気にする必要ないだろ。過去なんて、どうでもいい。重要なのは現在だ」

 

「確かにそうだな。深夜の言う通りだ」

 

「にしても専用機持ちは家庭に問題があるヤツが多いな」

パッキン女と貧乳の話も恋愛相談の時に簡単にだが聞いたからな。まぁ、銀髪ロリに関しては試験管ベイビーだから家庭も何もないが。

 

「……深夜も何か問題あるの?」

 

「ああ、何年か前に交通事故で両親が死んでる」

 

「……え、え~と、何て言ったらいいか分からないけど……ゴメン」

 

「別に謝らなくていい。俺は気にしていない」

あんな面白くもない両親なんかいてもいなくても同じだからな。むしろ、生命保険でのんびり一人暮らし出来たんだからラッキーだ。

 

「それよりも対処策が三つある」

 

「み、三つも!」

 

「それは何なんだ?」

て言うか、こんな簡単なことに気付いていないのかよ。

 

「一つ目は単純に目的である白式の情報をやることだ」

 

「おお、良いアイデアだな」

 

「え……、いや、でも……」

何かこういう遠慮しているのを見るとイライラするな。

 

「二つ目は白式の代わりになる重要な情報をやることだ」

 

「白式の代わりの情報?」

 

「まぁ、色々あるが一番はISコアの製造方法だな」

教えたところで第三世代機に手こずってるような会社には造れないがな。

 

「ISコアって完全なブラックボックスなんでしょう?何で知ってるの?」

 

「ウサギに聞いたら普通に教えてくれた」

 

「えっ!そんな世界中が欲しがっている情報を簡単に教えてくれたの!」

今後何をするかは、あまり教えてくれないが過去のことは簡単に教えてくれるからな。

 

「他にも色々知っているから外部に俺のことを言うなよ。マジで戦争になるから」

 

「……わ、分かったよ。で、最後の方法は?」

 

「これが一番楽しめる方法なんだが、デュノア社をなかったことにしよう」

 

「「……は!?」」

二人揃って驚くようなことか?

 

「……え~と、どういう意味?」

 

「どういう意味も何もない。単純にそのデュノア社が邪魔だっていうなら潰せばいいんだよ」

デュノア社のIS保有数が何台か知らないがオモチャが五台もあれば殲滅可能だろう。白騎士に使われていたステルス能力とウサギのハッキング能力があれば暗殺も余裕だ。

 

「……い、いや……そ、それはその……」

 

「その後の生活を気にしているなら大丈夫だ。世話ぐらい見てやる」

金はウサギに頼めば問題ないだろ。

 

「いや、そういうことを言ってるわけじゃ……」

 

「まぁ、今すぐに決めなくてもいいだろ。少なくともIS学園を卒業するまでは時間はあるんだから」

 

「どういう意味だ?」

 

「いっくん、勉強不足だぞ。特記事項第二一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則とした許可されないものとする。つまり、そういうことだ」

 

「そんなの良く覚えていたな」

ああ、自分でもビックリだ。全く興味がないからすぐに忘れたのに思い出せるとは。俺の脳は自分で思ってるよりも都合良く出来ているようだ。

 

「だからシャル、卒業までのんびり考えろ。まぁ、結果が出ているというのなら明日にでも実行するが」

 

「いや、いいよ。卒業までのんびり考えてみる」

 

「そうか、了解した。それよりも楽しい思い出とはないのか?さっきまでの真面目な話で疲れてしまったんだが」

何か今の台詞は俺っぽくないな。やっぱり疲れているんだな。

 

「楽しい思い出か……。俺の場合は千冬姉がいたから親がいなくても普通に楽しかったぜ」

シスコン確定だな。

 

「僕のお母さんは日本が大好きだったんだ。その中でも特に漫画が大好きでね。良く二人で読んだりしたっけ……」

何かしみじみと語っているが、それがシャルの腐女子の原因か。俺的には全く感動出来ないどころか迷惑な話だな。

 

「へぇ、そうなのか。だったら今、その思い出の国に来れて良かったじゃないか?」

 

「うん。深夜に色々なところを案内してもらって日本を良く知れて楽しいよ」

あれ?疲労と睡魔のせいで思考力が落ちていて気付かなかったけど、この状況ヤバくないか?シャルの前に男が二人、しかも他には誰もいない。速く逃げよう。

 

「じゃあ、話も終わったところで体力も限界だし帰るわ」

 

「いやいや、深夜もついでだから家族との楽しい思い出を話していきなよ」

この優しい笑顔が悪魔の微笑みにしか見えない。黒も動けない状態で敵地に来るべきではなかった。

 

「俺にはそんな思い出はないし、マジで限界だから早く帰るわ」

俺は勢いよく立ち上がって部屋から出ようとする。

 

「そ、そうか。分かった。じゃあ、またな」

 

「ちぇー」

 

「じゃあ、お休み」

そして俺は部屋を出た。何とか助かった。さすがのシャルもISは使わないよな。

もう少し気付くのが遅かったらトラウマになった上に、ちーちゃんに殺されてもおかしくなかったな。




今回、シリアスっぽい話をしたのでボケたい衝動に襲われています。

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第24話 準備

昼休み、俺は弁当を持って生徒会室に来ていた。

 

「いきなり呼び出して何の用だ?」

 

「うん。今度の学年別トーナメントの話でね」

学年別トーナメントか。刹那っちの専用機の整備やその他諸々忙しくて、まだ何もしてないな。

 

「深夜くんに実況をやってもらおう、って職員室でなってるみたいなのよ」

 

「俺的には助かるが、何でだ?」

 

「織斑先生の提案らしいんだけど何か問題を起こす前に適当にやらせておこう、ってことらしいのよ」

俺が問題児みたいに聞こえるな。

 

「前回のクラス代表戦では何もしていないのに」

 

「それは織斑先生が事前に全部確認したからだだね~」

のほほんさんが弁当を食べながらツッコんできた。弁当をこぼしているのが気になるな。

 

「実況は俺がやるとして解説は誰がやるんだ?」

 

「それはこの楯無お姉さんにお任せ」

 

「二人共、真面目にやってくださいね」

今度はうっちゃんからのツッコミだ。こっちは綺麗に食べている。姉妹でも全然違うな。

 

「失礼ね、虚ちゃん。私達はいつでも真面目よ。ねぇ、深夜くん」

 

「たっちゃんはともかく俺は常に真面目だ」

 

「いやいや、どう考えても深夜くんの方が問題児でしょ」

 

「俺よりもいっくんの方が問題児だと思うぜ」

この場にいない人間に責任を押し付ける。

とは言え、あいつが問題児なのも事実だからな。

 

「確かにね。織斑一夏くん関連でかなりの学園の備品が壊れているし。でも深夜くんが女の子達を唆した結果だという噂もあるんだけど」

誰だ、そんな間違ったことを噂しているヤツは。

 

「ああ、それとルール変更もあるから」

 

「ルール変更?」

確か一対一のトーナメント戦だったよな。

 

「そう。より実戦的な模擬戦闘を行うために二人組での参加になったのよ。ちなみにペアの出来ない可哀想な子は抽選で選ばれた生徒同士でペアを組むことになるわ」

ふむ。だったら、かんちゃんと刹那っちをペアにしようか。にしても刹那っちを誘ってて良かったな。そうじゃなかったら俺が参加しない以上、かんちゃんは絶対にペアを組めないからな。

 

「まぁ、話はこんなところで終わりかな。ところで深夜くん。一つ気になってるんだけど、いい?」

何か今から話す内容の方が本題みたいな空気を出しているな。

 

「何だ?」

 

「深夜くんが食べてる弁当って自分で作ったの?何か前に見た時と全然違うけど」

 

「いや、かんちゃんが作った物だ」

 

「ヘ、へぇ。簪ちゃんがねぇ……。私は作ってもらったことないのに」

物凄く顔がひきつっているな。弄りたくなる。

 

「私にも食べさせなさい」

 

「自分で頼めよ。仲直りしたんだろ」

すでに俺が二人を仲介して仲直りさせることに成功している。仲良き事は美しき哉。

 

「い、いや、自分で頼むのは……その……」

どうも妹だけには強く出れないみたいだ。

 

「あれ~?確か前にかんちゃん、ヒハランに弁当を作ってもらってたような……」

 

「気が向いた時にお互いに弁当を作りあっているからな」

 

「……何それ?何か仲良過ぎない?本当に付き合ってないの?羨ましい……。仲直りしても私には冷たいのに……」

たっちゃんから嫉妬の視線が向けられている。

にしても仲良過ぎねぇ。普通だと思うが。

 

 

 

 

放課後、俺は刹那っちの専用機『ブラッディカルテット』の稼働実験のために、かんちゃんも連れて三人で第三アリーナに向かっている途中だ。

ちなみに全員、同じ更衣室でISスーツに着替えた。かんちゃんは慣れているが刹那っちまで普通に男の前で着替えるとは。刹那っちに羞恥心という概念は無いようだ。

 

「……何で私まで」

 

「今度の学年別トーナメントで私とペアを組むんだから、簪ちゃんも私の能力を知っておく必要があるでしょ?」

 

「貴女と組むとは決めていない」

まぁ、確かに刹那っちは危険人物だからな。性的な意味で。かんちゃんの気持ちも分かる。

 

「じゃあ、かんちゃん。誰とペアを組むんだ?俺は出ないぞ。人見知りのかんちゃんが知らない人間とペアなんて出来るのか?」

 

「ぐっ!仕方ない」

 

「そうそう、仕方ない。だから私とペアを組もう。そしてチームワークを深めるために私と今夜ベットでイタッ!」

かんちゃんが刹那っちを殴った。

 

「調子にのらないで」

 

「ごめん。でも諦めないよ」

何回断れて諦めないな。さすが殺し屋。不屈の精神の持ち主だな。

 

ドォォォォン!

 

アリーナの方から爆発音がした。

 

「ん?もう先客がいるのか?」

トラブルの匂いがしたので俺は走ってアリーナに入った。

 

「はっ!二人がかりで来たらどうだ?一足す一は所詮二にしかならん。下らん種馬を取り合うようなメスに、この私が負けるものか」

アリーナにはISを展開して銀髪ロリが貧乳とパッキン女と睨み合っていた。

 

「おい、銀髪ロリ。男が駄目なら女を取り合うのならいいのか?」

 

「飛原深夜か。今のはどういう意味だ?」

 

「お前、織斑千冬が好きだろ?」

 

「なっ!いきなり何を言うのだ、貴様は!」

うわぁ、分かりやすいぐらい顔を赤くしているな。

にしてもさすが同じ遺伝子から生まれただけあるな。クロエと同じで歳上の女性が好きなのか。

 

「いいだろう。今、この場で先日の決着をつけてやる」

 

「どうかしたの?」

かんちゃんと刹那っちも追い付いてきたようだ。

 

「ああ、そうだ。刹那っち、ちょうどいいから銀髪ロリと戦ってみないか?」

 

「へ?いやいや、いくらなんでも無理でしょ。私、今から初めての練習をするところなのに。それで代表候補生に勝てるわけないでしょ」

まぁ、一理あるな。だが、練習なんだから負けても問題ないだろ。それとも殺し屋故の考え方か?殺し屋は一回負けただけで終わる可能性が高いからな。負ける戦いはしないということか?

 

「お前の代わりにそこの女が戦うのか?」

 

「ああ、そう――」

 

「何で私を無視して話を進めんてんのよ、あんた達!」

俺の台詞は貧乳によって遮られた。そういや、いたな。完全に忘れてた。

 

「あの鈴さん……。私を、ってわたくしは数に入っていませんの?」

 

「最近、出番が少ないんだから邪魔しないでよ!」

パッキン女は数どころか視界にすら入っていないようだ。

 

「いきなり出番とか、またメタ発言かよ」

 

「大丈夫よ。ツッコミのためならメタ発言も作者から許可されてるから」

 

「作者!?」

さすがの俺も今の発言には驚きを隠せない。作者から許可とかマジか?

 

『ツッコミを増やすために特別に許可を出した』

 

いきなり頭の中に聞いたことのない声が聞こえてきた。今のが作者か?

それよりもツッコミという名の新たなボケを生み出したようにしか思えないが。

 

「結局、誰が私と戦うんだ?私は三人がかりでも構わんが」

 

「おい、貴様。また罰をくらいたいのか?」

ちーちゃんが急に気配もなく表れた。

 

「きょ、教官!何故ここに!」

 

「飛原に用があって探していたんだ。後、教官ではなく織斑先生と呼べ」

俺に用?まだ何もしていないはずだが。

 

「で、今度は何の騒ぎだ?」

 

「い、いえ……、そ、それは……その」

言い淀む銀髪ロリ。

そう言えば、何でこんなことになってんだろうな?トーナメント前に敵を潰そうとしたわけじゃないだろ。銀髪ロリからしたら貧乳もパッキン女も敵じゃないだろうからな。するとストレス発散か?

 

「まぁ、いい。これ以上の面倒ごとは勘弁だ。お互いに不満があるなら学年別トーナメントで決着をつけろ。いいな?」

参加しない俺はどうすればいいのだろう?

 

「他のヤツらも、それでいいな?」

 

「「「はいっ!」」」

ちーちゃんの迫力に押されて関係ない、かんちゃんまで返事をする。ちなみに俺と刹那っちはしていない。

 

「ところで俺に用事、って何?」

 

「ああ、すでに更識……そう言えば妹がいたな。めんどくさい。すでに更識姉から聞いていると思うが次の学年別トーナメントの件でな」

 

「それって急ぐのか?今から刹那っちとかんちゃんの練習を見る予定なんだけど」

 

「いや、ただの確認事項だから急ぐ必要はない。じゃあ、終わってから私の所に来てくれ」

 

「了解」

 

そしてちーちゃんが帰り、その後に銀髪ロリも何処か別の場所に移動した。俺達も貧乳達に練習を見られないようにするため別のアリーナに移動して練習を開始した。

かんちゃんの調子は良かったが、さすがに刹那っちは初めてということもあり上手くいかなかった。だが殺し屋というだけありセンスは良く本番までには間に合うだろう。

本番が楽しみだ。




次回は遂に学年別トーナメントが開始。
天吹刹那の専用機の説明に鈴の活躍を予定しています。

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第25話 学年別トーナメント

「さぁ、いよいよ始まります、学年別トーナメント。実況は私、この世に知らぬことなし!一文字流、飛原深夜が。そして」

 

「解説は簪ちゃん大好きこと、生徒会長の更識楯無がお送りします」

いきなり妹に公開告白するなよ、シスコン。にしてもIS学園の二大戦力がシスコンとブラコン。本当に大丈夫か?

 

「これから始まる学年別トーナメントは1回戦から注目の組み合わせです。中国の代表候補生、凰鈴音とイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットのペアVS我らが日本の代表候補生、更識簪と一年三組のクラス代表、天吹刹那のペアの試合となります」

とりあえず最初だけは真面目にやる。当然、後でボケるけど。

ちなみに黒は邪魔しないでくれ、と頼んだので後ろでヘッドホンをして、かんちゃんの乙女ゲームをやっている。

 

「それにしても観客席は凄いことになってますね」

観客席には各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々が大量にいる。

 

「そりゃあ、そうよ。三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が入ってからね。それに一年でもトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入るらしいし」

 

「なるほど」

何処の国もこんなところまで来て暇なのかね?スカウト以外は映像を後で見ればいいだけなのに。

 

「さて、この試合、実況の深夜ちゃんはどう思う?」

 

「いや、何で私に聞くんですか?それは解説である楯無さんの仕事でしょう?」

まさか先にボケられるとは。たっちゃん、やるな。

にしても、この喋り方はともかく呼び方は違和感があるな。まぁ、その内慣れるだろ。

 

「だって、この試合については私よりも深夜ちゃんの方が詳しいじゃない?」

そして、この呼ばれ方に慣れることはないだろう。男だとバレないためだとしても普通に嫌だ。

ちなみに服装は当然、女子の制服だ。名前はそのままでも大丈夫だろ。

 

「確かにそうですけど」

 

「じゃあ、よろしく」

 

「明らかに実況の仕事じゃないですけど仕方ないですね。私としてはどっちが勝ってもおかしくない試合だと思います」

 

「というと?」

 

「私が見た限りでは全員のISの性能は大体、同じぐらいです。こうなるとパイロットの実力の問題になります。ISの経験は外国人ペアの方があるでしょう。チームワークは両ペア共に微妙ですね。仲があまり良くないですから」

ISの経験は貧乳達の方が上だけど戦闘経験は刹那っちの方が圧倒的に上だな。殺し屋として子供のころから英才教育を受けていたらしいし、実戦で人を殺したこともあるらしいからな。チームワークは刹那っちの変態性が治れば問題ないんだけどな。

 

「聞いている限りだと外国人ペアの方が強そうだけど」

 

「日本人ペアのコーチをしたのは私ですからね。経験の不利ぐらい跳ね返しますよ」

 

「凄い自信ね」

まぁ、才能なら日本人ペアが勝ってるしな。

 

「さて、そろそろ試合開始の時間ね」

 

「まずは赤コーナーからはIS学園に舞い降りた天使、更識簪とIS『打鉄弐式』。そして学園きっての変態、天吹刹那とIS『ブラッディカルテット』が入場です」

そう言うと、かんちゃんが顔を赤くして、刹那っちは何故か誇らしげにISに乗って入場してきた。

 

「照れている簪ちゃんも可愛い!ねぇねぇ、この写真は買えないの?」

 

「学年別トーナメントの写真は私ではなく新聞部の皆さんが写真を撮ることになっています。お買い求めの際は新聞部の方に行ってください」

本当は写真も撮りたかったけど、さすがに実況と同時にやるとは無理だった。

まぁ、代わりに賭けはやってるけど。一番人気はいっくんとシャルのペア、二番人気は貧乳とパッキン女のペアだ。かんちゃんと刹那っちのペアはデビュー戦ということで人気はあまりなく三番人気。ちなみに俺はもちろん、かんちゃんと刹那っちのペアに賭けている。銀髪ロリはさすがに一人では厳しいだろう、と四番人気。つまり誰も侍娘を戦力に数えていない。

 

「では選手の紹介をしていきましょう」

 

「まずは簪ちゃんね。簪ちゃんは頭は良くて、さらに可愛い私の自慢の妹です」

 

「はい、シスコンは黙ってください」

この試合だけは別のヤツに頼んだ方が良かったな。こいつ、妹のことしか見ていない。

 

「うぅ。恥ずかしい」

 

「あれ、簪ちゃんの声が!もしかして音声も拾ってるの?」

 

「はい。この中継室は映像だけでなく音声も拾っております。選手との会話も出来ますよ」

これに関しては俺が黒に手伝ってもらって一晩で細工した。

 

「頑張ってね、簪ちゃん」

 

「シスコンは無視して紹介に入ります。簪選手はどちらかというと研究者肌ですけど、センスもあり冷静な判断力を持っている良い選手です。そして専用機の『打鉄弐式』は量産機の打鉄の発展型で機動力に優れています。そして最大の特徴はマルチ・ロックオン・システムでしょう」

もうちょっと詳しく説明したいけど長くなるので、ここで終了。

 

「そして次は天吹刹那選手の紹介です。刹那選手は非常に高い身体能力と反応速度を持つ変態です。そして専用機の『ブラッディカルテット』は打鉄弐式と同じで高い機動力を持っています。そして最大の特徴は背中から出ている二本の腕ですね。本来はそれで二刀流と二丁拳銃ですが、本人の趣味で四刀流になっています」

 

「ぶぅぶぅ。私が事前に書いていた紹介文と違うじゃない」

 

「そんな物は受け取っておりません」

あんな自分を持ち上げた紹介を良く考えられたものだ。俺なら途中で恥ずかしくなって書けないぞ。

 

「じゃあ、次は青コーナーからは貧乳と金髪です」

 

「何で私の説明はそんなに適当なのよ!後、何でプロレスの試合みたいな紹介なのよ!」

 

「え~と、だからわたくしは……?」

貧乳はツッコミながら、パッキン女は不満そうな顔をして入場してきた。

 

「二人の説明はめんどくさいので省略します。試合開始」

 

「何か中国とイギリスから苦情が来そうね」

 

「ちょっと待ちなさいよ!ちゃんと私の説明もしなさいよ!」

 

「じゃあ、ツッコミが仕事の貧乳。専用機はシェンロン。能力は玉を七個集めると願いが叶う」

 

「そんな何一つあっていないが説明があるわけないでしょ!」

ちゃんと説明したのに何の不満があるんだ?そして貧乳はあってるだろ。

 

「ああ、そうだ。ルール説明を忘れていました」

 

「ルール説明?普通のISバトルじゃないの?」

 

「今回は特別ルールが採用されています。バトルの途中で私達がボケるので、それに的確にツッコめたらポイントが入ります。題してツッコミISバトルです」

 

「私、そんなの聞いてないんだけど?」

 

「当然です。私が今、思い付いたんですから」

思い付きにしては我ながら面白い企画だと思う。まぁ、意味は全くないんだけど。

にしても完全に油断しているけど大丈夫か?

 

「そんな話がウワッ!」

 

「くっ!」

かんちゃんの山嵐のフルバーストに二人は直前で気付いたけど避けきれずにダメージをくらう。

 

「……油断する方が悪い」

かんちゃんも言うようになったな。

 

「残念ながらあんたは私のタイプじゃないから殺っちゃうね」

そして刹那っちがパッキン女に突っ込む。

 

「わたくしがその程度で――」

 

「秘技四刀流、名前はまだ考え中」

ちゃんと考えとけよ。

 

「も、もう少し……出番が欲しかったですわ……」

パッキン女はこれでリタイアだ。

どうでもいいけど旬を過ぎた一発屋芸人みたいな捨て台詞だったな。

 

「ちょっと何でいきなり攻撃してんのよ!反則じゃないの!」

 

「私はちゃんと言いましたよ。試合開始って」

人の話を聞かないから、こんなことになるんだ。

 

「ところで気になったんだけど。セシリアちゃん、刹那ちゃんの攻撃を受ける時に一瞬動きが止まらなかった?あのタイミングならギリギリでピットでの反撃が間に合ったの思うんだけど」

もう完全に実況と解説が逆転してるな。

 

「刹那選手の迫力にビビったんでしょう。つまり気合い負けです」

刹那っちはお嬢様みたいな偉そうなタイプが嫌いらしいから本気の殺気で攻撃したんだろう。プロの殺し屋の殺気を代表候補生と言えど温室育ちのお嬢様に耐えられるわけがない。

 

「ちょっとやり直しを要求するわ」

 

「その要求は却下です。もううるさいので速く倒してください」

 

「じゃあ、速く倒してあげるかわりに今夜、黒ちゃんを貸してくれる?」

 

「その要求も却下です。さぁ、貧乳選手のコーナーキックで試合再開です」

 

「何でサッカーの試合みたいになってるのよ!」

ナイスツッコミ。後、もう貧乳には反応しなくなったな。

そして貧乳の衝撃砲が刹那っちに向かって発射された。

 

「そんな雑な攻撃に当たるわけないでしょ。代表候補生って、この程度なの?これなら私が国家代表になるのも夢じゃなさそうね」

 

「調子に乗ってんじゃないわよ!って同じ手はくらわないわよ」

かんちゃんが貧乳に向かって荷電粒子砲を発射した。

今度は何とか避けることに成功する。

 

「忘れられると困る」

 

「大丈夫よ、簪ちゃん。お姉ちゃんは忘れてないから」

 

「恥ずかしいからお姉ちゃんは黙ってて」

 

「か、簪ちゃんが冷たい」

そんなんだから、かんちゃんも冷たいんだよ。

 

「最初から思ってたけど簪だけ、ひいきしすぎでしょ!」

 

「そりゃあ、可愛い妹だからね」

 

「同室ですからね」

 

「あれ?私は?こういう扱いはイギリスの金髪の役目じゃないの?」

刹那っちが何か言ってるけど今は無視だ。

 

「同室だから、ひいきするっていうなら私の同室のティナを出しなさい」

 

「正直、全く意味が分かりませんがいいでしょう。貧乳の同室にして胸が大きいティナ・ハミルトンさんにカメラを向けましょう」

 

「……何となく前から思ってたけどあんたは私が嫌いなの?」

 

「そんなことはありませんよ。さて、ティナ・ハミルトンさん。カメラを向けられましたが何か言うことはありますか?」

俺は本当に嫌いな人間には何もしないからな。

 

「うるさいから引っ越したい」

 

「ティナっ!」

 

「分かりました。後で生徒会の方から職員室の方に提案しておきます」

その後、本当に提案したけど却下された。

 

「……分かったわ。こうなったら私と一騎討ちよ、簪」

何かどんどん訳の分からない方向に行ってるな。

 

「めんどくさいから嫌」

 

「もう我慢出来ない」

さすがにキレた貧乳が、かんちゃんに向かって衝撃砲を最大出力で発射しようと構えた。

 

「ここでピッチャー構えました!さぁ、次は何を投げるのでしょうか!」

 

「何で今度は野球みたいになってるのよ!」

キレててもツッコミはちゃんとするのか。本物だな。

 

「あんたみたいな貧乳に私の簪ちゃんはやらせないわよ」

そう言うと刹那っちが刀を戻してライフルを出して衝撃砲を発射する前に攻撃した。貧乳は体勢を崩して攻撃がずれた。良い反応速度だ

 

「ちょっと待ちなさいよ、刹那ちゃん!簪ちゃんは私の物よ」

 

「……どっちの物でもない」

 

「じゃあ、簪選手は誰の物なんでしょうか?」

 

「う~ん」

即返事をすると思ったのに予想外に迷っている。そして物凄い爆弾発言をした。

 

「……深夜の物?」

 

「「どういことなの、深夜(ちゃん)!」」

何故かヘッドホンをしていた黒まで詰め寄ってきた。

 

「確か前に黒が寝ていた時にかんちゃんと……」

つい素に戻ったけどいいか。

 

「「やったの!?」」

 

「二、三回だけだけど」

 

「一回もやってない!」

かんちゃんのこんな大声は初めて聞いたな。

 

「深夜がふざけるのは、いつものことだけど簪までふざけるとは思ってなかったらビックリしたわよ」

 

「かんちゃんが照れてるだけだ」

 

「実はそう……」

 

「「どっちなの!!」」

 

『試合終了。勝者――更識、天吹ペア」

 

試合終了のアナウンスが鳴った。

 

「「「は?」」」

俺達が言い争ってる内に試合は終わったのか?

 

「何か痴話喧嘩したみたいだけど、ちゃんと私の活躍見てた?」

 

「全く見てませんでした」

試合の映像は後で確認するか。

にしても代表候補生に勝ったのか。さすが俺が鍛えただけあるな。

 

「二回戦は休憩時間を挟みまして十分後に開始します。二回戦に出る選手は充分に準備をやっておいてください」

とりあえず無理矢理、試合を締め括る。

さて、かんちゃんの件はどうするか。




最初は真面目にやる予定だったけどボケたい衝動に負けました。まぁ、どっちにしても展開的には同じですけど。

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第26話 二回戦

「さぁ、休憩時間も終わり、今から学年別トーナメント二回戦が開始されます。実況は引き続きこの私、新世界の神こと飛原深夜が。そして」

 

「いや、まだ話が終わってないわよ。結局、かんちゃんとはどうなの?」

 

「その話は後にしろ、更識姉」

ちーちゃんに注意されて渋々といった感じで、たっちゃんは解説を開始する。

 

「解説も引き続きこの私、簪ちゃんは私の嫁、生徒会長の更識楯無がお送りします」

 

「そして私が特別ゲストのIS学園で教師をしている織斑千冬だ」

何故、ちーちゃんが中継室にいるかというと俺にも良く分からない。

かんちゃんのことで休憩時間に揉めていた時に急に現れて、次の試合は自分も実況をすると言ってきやがった。まぁ、そのおかげで騒ぎが収まって今、ちゃんと実況が出来てるからいいけど。

 

「私は何となくここにいる、新世界の女神こと黒です」

黒は持ってきたゲームが退屈で飽きた、と言って実況に参加してきた。

まぁ、基本的に見てるだけだと思うが。

 

「何か人が増えましたが気にしないでいきましょう。二回戦も一回戦に引き続き注目の組み合わせです。世界で初めての男性操縦者、織斑一夏とまたもや男性操縦者にしてフランスの代表候補生、シャルル・デュノアのペアVSドイツ軍でブリュンヒルデの元教え子にしてドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒです」

にしても何で一回戦と二回戦に代表候補生が集中してるんだ?これじゃあ、三回戦以降が盛り上がらないだろ。こんなの三流のエンターテイメントでもあり得ない。

 

「ちょっと待て!何で私の名前が紹介されてないのだ!」

侍娘が何か抗議してきた。

 

「必要がないからです。誰も貴女に注目していませんから」

正確にはハッキングして試合を見ているウサギは注目しているだろうが。だが、そのウサギも侍娘が活躍するとは思っていないだろ。

 

「何だと!それはどういう意味だ!?」

そんなことも分からない馬鹿を相手にするのはめんどくさいな。

 

「じゃあ、ここで何故かいる元ブリュンヒルデの織斑千冬先生に試合の予想を聞いてみましょう。この試合をどう見ますか?」

 

「そうだな。今の織斑達がラウラに一対一で勝つのは不可能といっても過言ではないだろう。だからあいつらは邪魔な篠ノ之をすぐに倒して二対一にもっていく必要がある。そうすれば戦い方次第では勝つことも可能だろう」

分かりやすいくらい、いっくん目線の予想だな。

 

「選手入場を開始します。まず赤コーナーからは全世界のモテない男の敵、織斑一夏とIS『白式』。そして私の最悪の敵、シャルル・デュノアとIS『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』の入場です』

 

「おい、何だ、その意味の分からない紹介は!」

 

「そうだよ。もっとマシな紹介の仕方はないの?」

いっくんとシャルが抗議しながら入場してきた。何か抗議が多いな。

 

「お前はまともにやるということが出来ないのか?」

 

「失礼ですね。的確に二人を表した紹介ですよ」

 

「深夜ちゃんは簪ちゃん以外には毒舌ね。一回戦も外国人ペアの陰に隠れたけど刹那ちゃんに変態とか言ってたし」

毒舌なのだろうか?真実をそのまま言っただけなのに。

 

「まぁ、いいです。まずは織斑――」

 

「織斑一夏の紹介は姉である私がしよう」

もしかして、この為に来たのか?俺がいっくんの訳の分からない紹介をしないようにするために。もしくは弟を自慢するために。

 

「織斑一夏はまだ経験が少なく未熟ではあるが、その分試合中でも成長する可能性を秘めており相手にとっては脅威だろう」

軽く引くくらいべた褒めだな。俺なら恥ずかしくて言えないな。

 

「千冬姉……」

いっくんが褒められて感動している。

 

「織斑一夏」

銀髪ロリは親の仇を見るような目で、いっくんを睨んでいる。

 

「次は専用機の『白式』の説明だな。白式の装備は近接ブレード『雪片弐型』のみだ。これは私が現役時代に使っていた雪片の後継である。さらに私のIS『暮桜』と同じワンオフ・アビリテイ『零落白夜』を持っている。まぁ、私と同じ武装を使うには本人が能力不足だがな」

最後のはただの照れ隠しだな。どう見ても弟が自分と同じ武装を使うことに繋がりを感じて喜んでいるように見えるな。

何か良い歳して気持ち悪いから銀髪ロリを応援するか。

 

「ギロッ!」

ちーちゃんが俺を睨み付けてきた。元世界最強だけに迫力が凄いな。

 

「次はシャルル――」

 

「シャルルくんの説明は私がするわ」

今度はたっちゃんに紹介を邪魔された。何の嫌がらせだ。

 

「シャルルくんは事前に武装を呼び出さずに戦闘に合わせて呼び出す『高速切替(ラピッド・スイッチ)』を得意にしている器用な選手です」

そういやシャルとは、まだ戦ってなかったな。にしても俺の本気の時のプレイスタイルに似ているな。今ままでは最初に出した武装だけで充分だったからしてないけど。

 

「そして専用機の『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』は量産機であるラファール・リヴァイブのカスタム機で機動性と加速性が高くなっています。さらに基本装備をいくつか外して拡張領域を倍にしてあります」

専用機の性能も黒に似ているな。まぁ、コンセプトは違うだろうが。

て言うか機動性の高い機体が多いな。防御力の高い機体とかはないのか?

 

「次は青コーナーから一年最強の戦士(俺は除く)のラウラ・ボーデヴィッヒとIS『シュヴァルツェア・レーゲン』の入場です」

 

「見ていてください、教官。私の強さを証明してみます」

銀髪ロリの視線には、ちーちゃんしか見えていないのか。だが残念だな。ちーちゃんの目には弟しか映っていない。

 

「だから私の紹介をしろ!」

再度、侍娘から抗議が来たところで電話がかかってきた。電源はちゃんと切っていたと思うんだが。

 

「ちょっと失礼します」

 

「電源ぐらいちゃんと切っておけ、馬鹿者」

ちーちゃんに注意されて電話に出る。

 

『しっくん、ちゃんと箒ちゃんの紹介しないと束さん、怒ちゃうぞ。ガオー』

ウサギからの電話だった。こいつなら何をしてきても不思議じゃないな。

 

「はぁー、仕方ないか」

下手にごねられてトーナメントの邪魔をされても面倒だ。

 

『うんうん。しっくんは物分かりが良いから大好きだよ。ちゅー』

 

「黙れ、シスコン」

そう言うと俺は携帯の電源を切った。にしても、いつもおかしいけど今日はさらにテンションがおかしかったな。

 

「えっ!呼んだ?」

たっちゃんがシスコンという単語に反応してきた。たっちゃんの中にはシスコン=自分という方程式があるのだろうか?

 

「違いますよ」

 

「誰からの電話だったんだ?」

 

「ウサギから。箒ちゃんの紹介もちゃんとしろ、だとさ」

さすがにこの発言は会場に聞こえないように言う。まぁ、大丈夫だとは思うが念のため。

ちーちゃんは予想していたのか、あまり驚いていない。だが、たっちゃんは驚いた顔をしていて声を出さないようにするので必死そうだった。黒は喋ることがなくて暇なのか俺に抱き付いている。

 

「えー、じゃあ、要望通りに紹介します。去年の中学の剣道の全国大会で優勝している篠ノ之箒とIS『打鉄』です」

正直、侍娘に関しては褒める部分がこれしか思い付かない。後、胸が大きいというのもあるが、さすがに人前で言っていいことではない。

 

「次はラウラ選手の紹介ですが織斑先生がしますか?」

 

「いや、いい。お前がやれ」

銀髪ロリが泣きそうな顔をして、こっちを、と言うかちーちゃんを見ている。さすがの俺も可哀想に思う。

 

「え~と、ラウラ選手は軍人というだけあり戦い馴れており強力な選手です。ISの『シュヴァルツェア・レーゲン』はドイツの第三世代機で最大の特徴はAIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーです。一対一なら、これほど厄介な能力もないでしょう」

 

「毒舌の深夜ちゃんが珍しく褒めてるわね」

まぁ、実際に今、一番興味を持っているのは銀髪ロリだからな。

 

「じゃあ、ついでに篠ノ之箒の紹介もしましょう。剣道が得意ということで剣の扱いは、そこそこ上手いですが他は一般的です。ISの『打鉄』は量産機ですから観客の皆さんも性能を知っていると思うので説明はしません」

また、つまらぬ物を説明してしまった。

 

「じゃあ、一通り紹介も終わったところで試合開始」

 

「「叩きのめす」」

俺が試合開始の合図を言うと、いっくんと銀髪ロリは同じ言葉を言い試合が始まった。




今回は紹介だけで話が終わってしまいました。戦闘はまた次回に。

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第27話 VTシステム

「おーと、皆さんの予想通りに箒選手、何も出来ずにリタイヤです」

味方であるはずの銀髪ロリに邪魔者扱いされて放り投げられ、シャルには何も出来ずに敗北した。

 

「もしかして深夜ちゃんは箒ちゃんが嫌いなの?」

 

「嫌い、というよりも期待外れなだけだ」

ウサギが自慢気に話すから期待していたんだがな。実際に会ってみたら、かなりつまらない人間でがっかりしたな。

 

「期待外れ?」

 

「おい、試合に関係のない話は後でしろ」

ちーちゃんに注意されて実況を再開する。

 

「にしても一夏選手とシャルル選手の連携は良いですね」

素晴らしいとは言わない。二人の連携には問題があるからな。

 

「確かに良い連携だけどシャルルくんが一夏くんに合わせている感じね。一夏くん自体はあまり連携の役には立ってないわね」

 

「いや、織斑に魅力があるからデュノアも力を貸して上手くいっているのだ。つまり織斑には他人に合わせさせる才能がある」

普段は厳しいのに今日は妙に甘いな。いっくんを褒めるコメントしかしていない。

 

「ですが二対一で互角に戦っているラウラ選手は素晴らしいと言えるでしょう」

代わりに俺は銀髪ロリを褒めるコメントばかりしているが。

これは何の対決なのだろう?

 

「一夏くんは零落白夜を使うみたいね。ここで勝負を仕掛けるつもりなのかしら?」

たっちゃんは、かんちゃんがいないので中立の立場だ。たまに俺に嫌がらせをしてくるが。

 

「そのようですね。零落白夜は触れれば一撃でシールドエネルギーを消し去る技です。でも対処自体は簡単です」

 

「……ああ、そうだな。当たらなければいいだけの話だからな」

ちーちゃんが苦々しそうに俺の説明を引き継ぐ。勝ったな。何に勝ったかは分からないが。

 

いっくんは銀髪ロリのAICによる拘束攻撃をギリギリのところでかわしている。

だが攻撃にワイヤーブレードも加わり、さらに余裕をなくしていく。

 

「一夏くん、思ってたよりも良い動きしてるね」

 

「ですが注目すべき点はシャルル選手の方でしょう。一夏選手を上手くフォローしています」

射撃武器で銀髪ロリを牽制しつつ、いっくんへの防御も行っている。俺ほどではないが、かなり器用だな。

何か強い奴はほとんど変態だな。ちーちゃんやウサギ、たっちゃんが良い例だな。いや、悪い例か。

あれ?こうなったら銀髪ロリも変態なのか?確かに、ちーちゃんが好きな百合ではあるが変態ではないはずだ。変人の相手は楽しいが、これ以上変態が増えるのはゴメンだ。

 

いっくん達がAICの弱点、停止させる対象物に意識を集中させないと効果を持続出来ない点を上手く突いて連携で銀髪ロリの大口径レールカノンを破壊することに成功した。

 

「遂に一夏達がラウラにまともに攻撃をくらわせたぞ」

元教え子を何だと思っているんだ、こいつは。後、喜びのあまり口調が素になっているぞ。

絶対に銀髪ロリを応援しよう。

 

「おーと、ここでシャルル選手、瞬時加速を使いました。これは事前のデータになかったからかラウラ選手も驚いています」

いっくんが止めをさそうとした瞬間にエネルギー切れをおこし、逆にピンチになってしまう。そこをシャルが瞬時加速で、いっくんのサポートに向かった。

 

「そうだな。恐らく初めて使ったんだろう。器用な奴だ」

 

「だがラウラ選手、AICでシャルル選手の動きを止めにかかる」

 

「無駄だ。後ろを見ろ」

銀髪ロリがAICを発動しようとした瞬間にシャルが直前に捨てていたアサルトライフルをいっくんが拾って攻撃した。確か、あれは訓練の時にシャルが、いっくんに使用許可を出していた銃だな。

 

「これで終わりかな?」

次の瞬間にはシャルが銀髪ロリの懐に入っていた。

シャルの盾の装甲がはじけ飛び、中からリボルバーと杭が融合した武器が露出した。

 

「あれは攻撃力だけなら第二世代最強と言われている武器、六九口径パイルバンカー『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』。通称『盾殺し(シールド・ピアース)』」

ふぅん。そんな隠し玉まであったのか。

 

「ちょっと待て、デュノア!止めは一夏にさせろ!」

完全に私情にまみれた実況をする元世界最強。威厳のある姉を演じるのに疲れたか?

今、気付いたけど俺が銀髪ロリ、ちーちゃんがいっくん、たっちゃんがシャルを担当して実況しているな。

 

「ん?様子がおかしいですね」

シャルに攻撃を受けてやられそうになっている銀髪ロリの様子がおかしい。

 

「ああああああっ!」

突然、銀髪ロリが絶叫したかと思うとシュヴァルッェア・レーゲンから激しい電撃が放たれシャルが吹き飛んだ。

 

「一体、何?」

次にISの装甲がぐちゃりと溶け、どろどろになって銀髪ロリの全身を包んでいく。

そして全身を包み込むと、ゆっくりと地面に降りた。

見た目は黒い全身装甲のISみたいだ。そして武器は織斑千冬が現役時代に使っていた『雪片』だ。映像で見たことがあるから間違いない。

 

「……VTシステム」

VTシステム?どこかで聞いたことがあるような。

 

「何ですか、それ」

 

「重要案件である上に機密事項だが一応、説明してやる。正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きをトレースするシステムだ。IS条約で現在どの国家・組織・企業においても研究・開発・使用すべてが禁止されている」

確か前にウサギの研究所にあった資料で読んだな。あの不愉快でつまらない物か。面白くないシロモノだったから説明されるまで忘れていた。

 

「それって危ないんじゃないですか!?」

 

「そうだな。更識姉は観客を避難させろ」

 

「分かりました」

そして、たっちゃんはアナウンスを流した。

 

『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧のために教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』

 

「……一つ聞くが、あいつが関わっているのか?」

 

「それは有り得ない。ウサギは完璧で十全だ。それがあんな不細工なシロモノを作るわけがない」

確認のためとは言え、不愉快な質問だな。自分の友達を馬鹿にされるのは。

 

「そうか」

 

「いやぁ、初めて見たわ。深夜がキレてるのは」

やっぱり黒は俺の考えが読めるみたいだな。出来るだけ顔には出さないようにしてたんだがな。

 

「ああ、そうだな。あんな不細工でつまらないシロモノに俺の楽しみを邪魔されて俺はキレてる」

生まれて初めてかもな。俺がキレるのは。

 

「……いくぞ、黒」

 

「了解」

俺は黒を起動する。

 

「おい、飛原。何をするつもりだ?」

 

「聞かなくても分かってるだろ?俺の楽しみを邪魔した奴は潰す」

中継室の窓をぶち破って外に出る。

そしてグングニルを展開する。

 

「一撃滅殺!グングニル!」

 

グングニルはアリーナのシールドを貫通して、そのまま黒いISに向かっていく。

 

スドオオオオンッ!

 

グングニルの衝撃で土煙が上がる。

 

「よぉ、いっくん。助けにきたぜ。感動したか?」

俺が突入する前に戦ってやられたのか、すでにISは解除されていた。

 

「深夜か?邪魔をするな!あいつは俺がぶっ倒す!あれは千冬姉の技だ!千冬姉だけのものだ!それをあいつは!絶対に許さねぇ!」

なるほど。あれは、ちーちゃんをトレースしているのか。厄介だな。

 

「俺はお前が倒して構わないがエネルギーはあるのか?さすがに死なせるような真似は出来ないぞ」

そんなことになったら俺が殺される。

 

「それは……」

 

「無いなら他から持ってくればいい。でしょ? 一夏」

 

「シャルか」

電撃のダメージから持ち直したのか、俺達のところにやって来た。

 

「普通のISなら無理だけど、僕のリヴァイヴならコア・バイパスでエネルギーを移せると思う」

シャルはそんなことまで出来るのか。本当に器用だな。俺は興味がなかったから習得していない。やり方ぐらいは頭に入っているが。

 

「本当か!?だったら頼む!早速やってくれ!」

このままだったら格好よく登場したのに活躍出来ない。

 

土煙が晴れてきたが敵は攻撃してくる様子がないな。攻撃に反応する自動プログラムみたいなものか?て言うか、やっぱり、さっきの攻撃はギリギリのところで避けられていたか。

 

「けど、約束して。絶対に負けないって」

 

「もちろんだ。ここまで啖呵を切って飛び出すんだ。負けたら男じゃねえよ」

 

「だったら負けた場合は明日から女子の制服で通えよ」

ふむ、良いアイデアだな。これなら女装写真を撮れる。ちーちゃんもウサギも満足で俺も助かる。まさに皆が笑っていられる夢のようなハッピーエンドだな。

 

「うっ!い、いいぜ。何せ負けないからな!」

喋っているウチに、いっくんも落ち着いてきたみたいだな。

 

「女装した一夏と深夜が、あんなことやこんなことを。……いいね」

シャルが邪悪な笑みでボソッと何か言っているが聞かなかったことにしよう。

 

「じゃあ、始めるよ。リヴァイヴのコア・バイパスを開放。エネルギー流出を許可。一夏、白式のモードを一極限定にして。それで零落白夜が使えるようになるはずだから」

リヴァイヴから伸びたケーブルを待機状態の白式に繋ぎ、そこにエネルギーを流し込む。

 

「完了。リヴァイヴの残りのエネルギーは全部渡したよ」

そう言うとリヴァイヴは光の粒子となって消えた。

そして白式は一極限定モードで再構成を始めた。やっぱり武器と右腕だけで限界のようだ。

 

「じゃあ、死ぬなよ」

今の状態で一撃でもくらえば即死だろうからな。

 

「僕は死なければ負けてもいいと思うよ」

それは俺も思う。て言うか、そっちの方が助かる。いっくんを女装させられた上に俺が活躍出来るからな。

 

「何、訳の分からないことを言ってるんだよ?負けるつもりはないぜ」

絶対にシャルがったことの意味を理解していないな。

 

「じゃあ、行くぜ偽者野郎。零落白夜、発動」

いつもは強大なエネルギーを開放するだけだったものが、今回は細く鋭いものへと結束していく。そして、それがおさまるとエネルギーが日本刀に形に集約した姿になった。

今回のことで一つ戦い方を覚えたのか。ちーちゃんが言った通りに試合中でも成長していくんだな。面白い。

 

そして敵が刀を降り下ろす。それを弾き、次に頭上に構え縦に真っ直ぐ相手を断ち切った。

 

「ぎ、ぎ……ガ……」

そして黒いISは真っ二つに割れ、中から銀髪ロリが出てきた。それを、いっくんが抱き抱えた。

ちーちゃんに啖呵を切ってきたのに活躍出来なかったな。それに今、気付いたけど賭けも駄目になったんだよな。今度、好きなアニメのDVDボックスが出るから金が欲しかったのに。満足出来ない終わり方だな。




二巻の内容がそろそろ終わるけど、まだ三巻の内容はほとんど思い付いていない。原作を読みながら考えるか。

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第28話 脅迫

現在は夕食を食べ終え、七時頃。俺はウサギに電話するためにいつものところに来ていた。

ちなみに今は黒を肩車している。最近、妙に触れ合いを求めてくる。

 

『はろはろー、しっくん。今日は電話が多いね。これで三回目だよ』

 

「嫌だったら回数を減らすぞ」

 

『嫌だなんて言ってないよ。しっくんの電話なら二十四時間いつでも歓迎だよ。何なら一日中、語り合ってもいいくらいだよ』

俺は嫌だ。

 

「それよりも今朝、話した件だけど」

 

『うん、もちろん終わってるよ。しっくんの頼みだからやったけど簡単過ぎて退屈だったよ。あそこのセキュリティ弱すぎるよ。今度、束さんにお願い事をするなら、もっと難しいことにしてね』

だから学年別トーナメントの時、いつもよりもテンションが高かったのか。

 

「分かった。善処する」

 

『頼むよ。紅椿も完成して最近、暇過ぎて困ってるんだよ。今日も暇潰しに学年別トーナメントの時のアレを作った研究所を破壊したしね』

そんなことまで、してたのか。て言うか紅椿、完成していたのかよ。だったら、すぐに侍娘に渡しに来ると思うんだが。何か企んでいるのかね。

 

「ご苦労様。で、あいつの今の様子が分かるか?」

フランスとの時差は八時間。向こうは午前十一時か。仕事をしていたらいいんだが。

 

『分かるよ。ちょっと待ってね。監視カメラをハッキングして様子を見るから。……よし、出来た』

速っ!相変わらず反則的な能力だな。

 

『今は部屋で仕事をしてるよ。どうする?しっくんに頼まれていたデータ送る?』

 

「じゃあ、頼む」

今日のストレス発散ぐらいにはなるだろう。

 

『オッケー、送ったよ』

 

「様子はどうだ?」

 

『あははははっ!面白いぐらい焦ってるよ』

 

「じゃあ、別のことをするから、また今度な」

 

『そういや、しっくんの考えていること聞いてなかったね。まぁ、いいか。またね』

あれ?説明してなかったっけ?まぁ、どうでもいいか。

とりあえず電話を切って別のところにかける。これからの電話での会話は全てフランス語だ。ちなみに俺は五カ国語話せる。

 

「どうも、初めまして。デュノア社の社長さん」

ついでに言っておくと、この携帯にはボイスチェンジャーの機能がある。他にも逆探知や会話を傍受されないような仕組みがある、ウサギが作った超高性能携帯である。

 

『誰だ、貴様は。もしかして今、このデータは貴様が送ってきたのか?』

思ったよりも冷静だな。電話の音で落ち着いたのか?

 

「そうだ」

送ったのはウサギだけど。まぁ、どっちでも一緒だろ。

ちなみに送ったデータの内容はデュノア社の汚職の証拠や社長の女性問題等だ。

 

『……貴様の目的は何だ?』

 

「物分かりが良くて助かる。単刀直入に言うと社長さんがIS学園に送り込んだ娘、シャルロット・デュノアについてだ」

 

『……ちっ!もうバレたのか。役に立たない娘だ。で、アイツに頼まれたのか?』

切り替えが早いな。社長なんてやってると、こういうことに馴れているのかね。焦ってるところを苛めたかったんだがな。

 

「いや、違う。むしろ、止められたぐらいだ」

今回の件については話してないが。

 

『だったら何故、こんなことをしている?あの娘に情でもあるのか?』

 

「ははっ、まさか。そんな訳ないだろ。もし、そうだったとしても俺はそんな理由で動く善人じゃない」

 

『だったら金で雇われたのか?それなら、あの娘の倍の金額を出すぞ』

何か典型的な悪党の台詞だな。一応言ってるだけ、って感じだが。

 

「違う。俺が動く理由、それは昨日読んだ漫画の内容に影響されたからだ」

 

『……は?』

俺の答えを全く予想していなかったのか、間の抜けた声を出した。

 

「だから昨日出た好きな漫画の新刊がちょうど、こんな感じの内容だったんだよ」

 

『……漫画というと、あの娘の母親が好きだった日本の娯楽文化か?』

 

「そう。だから俺があんたに寝返ることはないぞ。何たって自分には理由がないのだから。信念の無いところに裏切りはない」

ウサギよりも面白い物を教えてくれたら喜んで裏切るがな。 まぁ、そんなことは有り得ないが。

 

「さて、話を戻すぞ。俺が社長さんに求めることは一つ。シャルロット・デュノアを利用した作戦をやめることだ」

当然、シャルの本名は事前に確認している。

 

『……もし、やめなかったら、どうするつもりだ?』

 

「さっき社長さんに送ったデータをマスコミに公表する。それでもやめなかった場合はデュノア社を破壊する。ああ、もちろん、その場合は俺がシャルロット・デュノアの世話をするから交渉の余地はない」

社長さんが抵抗してくれる展開も面白いが無理だろうな。

 

『俺に選択の余地はないな』

 

「理解が早くて助かる。後、あんたが余計なことをない限り、こちらからは何もしない。ところで最後に一つ、聞いていいか?」

最初から何か違和感があるんだよな。何というか俺が予想していた人物像と違う。

 

『何だ?』

 

「俺程じゃなくても、あんたは頭が切れるみたいだ。そのあんたが、あんな小学生でも失敗すると分かるような作戦を何故実行したんだ?」

 

『ああ、バレることは予想していた。ちゃんと、その上での作戦も考えていた。まぁ、それもこんなに早くバレたせいで台無しだがな』

 

「食えない奴だな」

 

『お前に言われたくない』

そして電話を切った。

まぁ、予定とは違ったけど楽しめたからいいか。

 

「まどろっこしいわね。さっさと情報を流してぶっ潰せばいいのに」

黒が肩の上から言ってきた。

 

「こういう脅しは実行しないから意味を持つんだよ。情報を流したら向こうは開き直って何をするか分からないからな。まぁ、それはそれで面白いが」

 

「さすが深夜。色々考えているのね」

それよりも、そろそろ降りてほしいな。電話中もずっとしていたし、そろそろ疲れてきた。

 

 

 

「あっ、飛原くん。ちょうど良かったです。今から会いにいくところだったんです」

部屋に戻る途中でマヤマヤに会った。

 

「何か用?」

 

「朗報ですよ。何と今日から男子の大浴場使用が解禁です!」

まさか、いっくんの入浴シーンの写真を撮ってこい、ということか。

 

「そうなの?」

 

「はい。今日は大浴場のボイラー点検があったので、もともと生徒達が使えない日なんです。でも点検自体は終わってるので、それなら男子三人に使ってもらおうって計らいなんですよ。って、黒さんは一緒に入っては駄目ですよ」

部屋のシャワーだけじゃ物足りなかったから大浴場に入れるのは素直に嬉しいな。

 

「大丈夫、大丈夫。私はISで人間じゃないから気にしなくていいわよ」

 

「いやいや、そういう問題じゃないですよ!」

 

「じゃあ、着替えの準備に部屋に戻るわ」

 

「先生の話、聞いてます?」

聞いてません。

 

 

 

「あー、気持ち良い……」

俺は久し振りの風呂を堪能している。ちーちゃんも夜に抜け出して銭湯に行くぐらい許可してくれても、いいと思う。

 

「いつもはシャワールームで狭かったけど今日は広いところだから、色々なプレイが出来るのね」

 

「あー、無理だろ。これから、いっくんとシャルも来るだろうからな」

て言うか、今日はのんびりと風呂に浸かっていたい。

 

「私は気にしない」

 

「気にしろ」

 

カラカラカラ

 

脱衣場の扉が開く音がした。

 

「お、深夜。先に来てたのか?」

いっくんが入ってきた。

 

「ああ、先に浸かってる。ところでシャルは来ていないのか?」

 

「いや、女子と一緒に入るわけにはいかないだろ。俺のためにシャルルは気を使って脱衣場で待ってるよ」

シャルが気を使う?俺といっくんが一緒に風呂に入る状況でか。何処かから覗いてるじゃないだろうな?

て言うか、いっくんはシャルの本名を知らないのか。

 

「気にしなくていいわよ。私も入ってるし」

 

「って黒!何で入ってるんだ!?」

黒がいることに気付いて顔を赤くして焦っている。まぁ、タオルも巻いていない完全な全裸だからな。にしても恥ずかしがりながらも目線を外そうとしない。むっつりだな。

 

「気にするなよ。むしろラッキーだろ」

 

「いやいや、確かに嬉しくないわけじゃないけど駄目だろ!」

 

カラカラカラ

 

再度、脱衣場の扉が開く音がした。

タオル一枚のシャルが入ってきた。

 

「何でシャルルまで入ってるんだ!?」

 

「僕のことは気にしなくていいよ。端でのんびりと浸かっているから。深夜と仲良くしてなよ」

予想通りの嫌な展開だな。

 

「って何で黒がいるの!?これじゃあ駄目じゃないか!」

 

「……何が駄目なんだ、シャルル?」

知らないというのは幸せだな。

 

「風呂に入るというなら男になってよ!」

 

「え!?黒は男になれるのか!」

いっくんがどうでもいいことに驚いているが無視だ。俺にとっては、それどころじゃない。

 

「絶対に男になるなよ。トラウマだからな」

 

「大丈夫よ。今日は私ものんびり風呂に浸りたい気分だから」

それを聞いて安心だ。久し振りの風呂にトラブルはいらない。

 

「ハァー。折角のお風呂だし、たまには趣味を忘れてのんびりするのもいいかもね」

若干、不満そうではあるが納得して風呂に入ってきた。

 

「って何でお前達は、そんなに普通にしているんだ!?混浴状態なんだぞ!」

 

「うるさい。気持ち良く浸かってんだから静かにしろ」

 

「そうそう。大体、女の裸ぐらいで騒ぎ過ぎよ。思春期の子供じゃあるまいし」

いっくんは思春期の子供だと思うが。そういや、俺に思春期ってあったっけ?

 

「僕らが気にしない、って言ってるんだからいいんだよ。それに堂々と女の人の裸を見られるんだから役得でしょ?」

 

「いや、でもバレたら大変なことにならないか?」

いっくんは貧乳達に殺されるかもな。まぁ、俺には関係ないが。

 

「大丈夫、大丈夫。バレなければいいんだから」

 

「……そういうもんか?俺がおかしいのか?」

納得していない感じだが、いっくんも風呂に入ってきた。

当然、いっくんの入浴シーンの写真は撮った。ちなみにカメラは防水加工されている。

いっくんが途中でのぼせたが、めんどくさいのでシャルに任せた。

やっぱり風呂は気持ち良いな。かんちゃんとかを誘って夏休みに温泉旅行に行こうかな。




最初は社長さんを小者っぽくする予定だったのに切れ者みたいになってしまいました。何か、こういうことが多いな。最初の予定が書いている途中で変わること。まぁ、変わった後の方が好きなんで良いですけど。

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第29話 会議

「待っていたぞ、飛原深夜」

風呂から戻ってくると銀髪ロリが俺のベットに座りながら、かんちゃんと話していた。

この状況、今までの経験等を考慮すると答えは一つしかないな。

 

「いっくんに惚れたか。いいだろう。その相談、請け負った」

 

「なっ!まだ要件を言ってないのに何故、分かった!?」

 

「だから言ったでしょ?深夜は無駄に勘が鋭いって」

相変わらず無駄とは失礼だな。それに勘じゃなくて推理だ。後でその考えを矯正しないと。

 

「ところで、もう動いてもいいのか?」

 

「ああ、この程度なら問題ない」

さすが軍人といったところか。鍛え方が違うらしい。

 

「でも、ちーちゃんが好きな百合だと思っていたのに意外だな。いっくんのどこに惚れたんだ?」

 

「私はアイツに助けられた。私はその強さに惚れたのだ」

堂々として清々しいな。

とりあえず俺もベットに座り、黒に膝枕をする。当然、猫耳にさせて撫でている。

 

「ふにゃ~」

ああ、癒されるなぁ。

 

「さて、具体的な内容を聞こうか」

実況の時に変な情がわいたからな。初めて真面目にやるか。

 

「実はここに来る前にウチの副官に相談していた時に言われたのだ。こういう時は男性の意見も聞いた方がいいと」

転校初日にも言っていた副官か。気になるな。

 

「なるほど。ところで、その副官に他にどんなアドバイスを受けたんだ?」

 

「ああ、日本では気に入った相手を『嫁にする』のが一般的な習わしだと聞いた。他には男は力ずくで奪う物とも言っていた」

何か色々間違っているな。嫁については一般的どころか、かなりマニアックな分類だ。力ずくについては……間違ってないな。いっくん相手なら、それぐらいでちょうどいい。

 

「確かにその通りだな。でも恋愛相談か。今まで真面目にやったことないし、何をしたらいいんだ?」

 

「織斑一夏の好みに合わせてアプローチをするのがいいと思う」

かんちゃんが意見を出すとは思わなかった。俺が戻ってくる前に仲良くなったのか?それとも単純に女子だから恋愛に興味があるだけか?

 

「いっくんの好みか……。歳上の巨乳好きだな」

前にいっくんの自宅に遊びに行った時に調べた隠し持っているエロ本の傾向からして間違いない。実際、マヤマヤの胸元をよく見てるし。そういや姉萌え系の数が一番多かったな。

 

「無理ね。諦めましょう」

立ち上がった黒が銀髪ロリの肩に手を置いて悲哀に満ちた表情で言った。

 

「ふざけるな!他にはないのか?」

 

「安心しろ。性癖と好きになる奴は、また別問題だ」

再度、黒に膝枕をして撫で始める。

 

「そ、そうか……。それは良かった。それで何か良い作戦はあるか?」

いっくんは何でこんなにモテるのだろうか?確かに見た目は悪くないが、それだけでここまでモテるか?主人公体質なのかもしれない。

 

「やっぱりインパクトだな。いっくんの周りには女子が多いからな。他の女子とは違う特別なポジションを得ることが重要だろう」

いや、インパクトは充分か?初日にビンタをくらわしているし。

 

「なるほど、インパクトか。例えば、何だ?」

 

「……殺せば、その人の唯一になれる」

かんちゃんが過激な発言をする。何だ、そのヤンデレ思考は?いっくんに対する恨みはマシになったと思っていたんだが。そこまで恨んでいたのか?

 

「う~ん、さすがにそれはやり過ぎだろ?」

そういう問題じゃない!

 

「やっぱりストレートに告白するしかないんじゃない?」

 

「でも、それで失敗したら取り返しがつかないぞ」

どうでもいい奴だったら俺もこの作戦を提案するが。フラれるように仕向けた上で。

 

「……だったら自分無しでは生きられない体にすればいい」

だから怖い!何が、かんちゃんをそんなにしたんだ?

 

「それは最終手段だな」

アリなのかよ!このままだったら、いっくんがどうなるか心配だ。いや、それはそれで面白いかもしれないが。

 

「だったら押し倒すしか」

 

「お前らにマトモな手段はないのか!?」

キャラじゃないけど我慢出来ずに普通にツッコんでしまった。かんちゃんは猟奇的すぎるし、黒は直接的過ぎる。

 

「……だったら深夜は何かアイデアがあるの?」

 

「定番ならピンチの時に颯爽と現れて助けるとか」

 

「……少女漫画の読みすぎ。て言うか普通、逆」

 

「読んでねぇよ。後、細かいことは気にするな」

ラブコメは好きだけどガチの恋愛物はあまり好きじゃない。いや、全く読まないわけじゃないけど。

 

「でも、そんな都合よくピンチなんてあるのか?」

 

「ああ、問題ない。明日、飛びっきりのピンチが織斑一夏を襲うだろう」

何か予言者みたいな口振りだな。

 

「で、その後に唇を奪うのね」

 

「う~ん、それぐらいなら問題ないか。ただし、舌は入れるなよ」

ちーちゃんに見られたら殺されそうだから気をつけないとな。

 

「うむ。よく分からないが了解した」

 

 

 

 

「今日は、ですね。皆さんに転校生を紹介します。転校生といいますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、、ええと……」

翌日の朝のHR。マヤマヤはいきなり訳の分からないことを言っている。転校生とか、そんな話は聞いていないが。

それよりも、ちーちゃんがいないし計画の方を実行したいんだが。

 

「じゃあ、入ってください」

 

「失礼します」

そして女子の制服を着たシャルが教室に入ってきた。正直、意味が分からない。何がどうなっているんだ?

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

シャルの姿にクラス中がぽかんとしている。

そういや昨日、父親からもう自由にやっていい、と電話がきたとシャルが言っていたな。その時に俺が何かやったんだろう、と追及されたが適当に聞き流した。

それが関係してんのか?まぁ、女子なのに男装したまま生活をするのはしんどいだろうからな。

 

「あれ~?そういや昨日、男子が大浴場を使わなかったけ?」

のほほんさんの発言でクラス中が凄い喧騒に包まれる。

俺が言う予定だったけどいいか。

 

「一夏っ!」

貧乳が扉を蹴破って現れた。学園の備品を壊すなよ。また生徒会の仕事が増えるから。それにしても凄い地獄耳だな。

 

「死ね!」

ISアーマーを展開して、衝撃砲の発射準備に入る。

 

「ところでヒハランも一緒に入ったんだよね?」

さて、面白くなるように煽りますか。

 

「ああ、黒も一緒に入ったな。いっくんは途中、鼻血を出して倒れたな。黒とシャルの裸をガン見していたせいで」

 

「ちょっと待て、深夜!俺が倒れたのは、のぼせたからだ!鼻血は出していない!それにガン見もしていない!」

 

「……やっぱり殺すのはやめた」

貧乳の殺気が膨れ上がった。俺でも少し怖いと思うほどに。

 

「よく分からんが、殺すをやめ――」

 

「死ねよりもキツい苦痛を味あわせてやるわよ!」

そしてフルパワーの衝撃砲を発射した。

 

「なるほど。計画通りだな」

そこにISを纏っている銀髪ロリが割って入ってAICで相殺した。コアが無事だったから予備パーツで組み直したらしい。さすがに完全とはいかず大型レールカノンはないが。

 

「ちょっとあんた、何邪魔してんのよ!」

 

「ここでするのだな」

 

「さっきから何を言っているのか分からないが助か――むぐっ!?」

銀髪ロリがいっくんの胸ぐらを掴んで引き寄せ、キスをした。

そして俺はその瞬間を写真に撮った。

 

「ちょっと待て、深夜!さっきまで座っていたのに、いつの間に移動したんだ!?」

いっくんが混乱のあまりにどうでもいいことをツッコんできた。

 

「深夜、その写真は後で貰おう」

 

「了解。初回特典で別の写真もつけておいてやる」

 

「ああ、後で取りに行く」

そして俺は席に戻って座った。

 

「ああ、そうだ、のほほんさん。夏休みに温泉旅行に行こうと計画してるんだが、来るか?」

 

「おお、いいね~。他に誰を誘ってるの?」

 

「今のところは、かんちゃんだけだ」

 

「おい、深夜!平和に話してないで助けてくれ!」

いっくんの叫びを聞いて見てみるとパッキン女に侍娘まで参加していた。死ぬかもな。

 

「今は夏休みの旅行計画で忙しいから無理だ」

 

「まだ七月にもなっていないのに早すぎるだろ!」

 

「あまいな、いっくん。良いところは早めに予約を取っておかないといけないんだ」

出来れば温泉以外にも色々あるところに行きたいからな。旅費は両親の生命保険が残ってるから大丈夫だろ。

 

「一夏!飛原は関係ないでしょ!」

 

「いや、おかしいだろ!深夜も一緒に入ってんだぞ!」

 

「あいつはいいのよ」

 

「それに今の問題は一夏さんですわ!」

 

「大人しく諦めろ、一夏!」

物凄く理不尽な光景だ。モテるのも考え物だな。

 

「ねぇ、深夜。僕も一緒に行っていいかな?日本の温泉には僕も興味があったんだ。男女一緒に入るんでしょ?」

シャルが旅行会議に参加してきた。そして、また間違った日本知識か。何で外国人は日本文化をよく勘違いしているのだろう?

 

「ああ、いいぜ。にしても混浴か。探せばあるかな」

 

「ほら聞いただろ!深夜は堂々と混浴するつもりだぞ」

いっくんも諦めが悪いな。そして俺を巻き添えにしようとするのをやめろ。

 

「だから飛原はいいのよ」

 

「理不尽だろーー!」

いっくんの魂の叫びが学園中に響き渡る。

 

今日もIS学園は騒がしいな。

 

 

 




遂に二巻の内容も終了。次回から三巻の内容に入ります。冒頭しか話が思い付いてないけど、どうしよう。書いているウチに思い付けばいいな。

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第30話 妹

『では、こういうのはどうでしょう?日本では恋人が朝、裸エプロンで起こしに来るそうです。それを隊長もするのです』

現在、俺は銀髪ロリと黒ウサギ隊の副官であるクラリッサ・ハルフォーフの三人でプライベート・チャネルを使って織斑一夏攻略会議をしている。

俺の事情は話しているが隊長の恋を応援する限りは黙っていてくれるらしい。軍人としてそれで良いのか、と思うが俺としては有り難い。

ちなみに俺と黒ウサギ隊で『ラウラの恋を応援し隊』を結成した。というより無理矢理、入れられた。黒ウサギ隊のメンバーはクラリッサのことをお姉様と呼んでいるらしいが俺は嫌なのて姐さんと呼ぶことにした。

 

「なるほど。良いアイデアだな。いっくん相手では今までのアプローチじゃあ物足りないみたいだし、もうちょっと激しくしてもいいかもな」

 

「では明日の朝にでも実行するか?」

 

『そうですね。日本には善は急げ、という諺もありますし』

たまには間違っていない日本知識もあるんだな。

 

「それについては俺が良い作戦を思い付いた」

 

「さすがですね。では、この件については飛原さんに任せましょう。ところで昨日、漫画を読んでいて思い付いたのですが何かイベントはないのですか?いつもと違う場所でのアプローチは効果的らしいですね」

本当に有能な副官だな。

 

「ああ、それなら今度、臨海学校があるな」

 

『なるほど、臨海学校ですか。では水着で相手を悩殺しましょう。いつもと違う隊長の姿に織斑一夏もドキドキです』

 

「銀髪ロリはどんな水着を持っているんだ?」

 

「学校指定の水着だけだが……」

ということは旧型スクール水着か。て言うか、何でIS学園は旧型スクール水着にブルマが現存しているんだ?すでに絶滅した物だろう。偉い人の趣味か?

 

『何を馬鹿なことを!』

 

「ああ、その通りだ。それも悪くない。確かにそういうのが好きな奴もいる。だがしかし、それでは――」

 

「そ、それでは……?」

ごくり、銀髪ロリがつばを飲む。

 

「『色物の域を出ない!』」

 

「なっ……!」

 

『確かに隊長は豊満な体で籠絡するタイプではありません』

 

「だからといって際物に逃げるのは駄目だ。ここは可愛らしさを利用をした水着を選ぶべきだ」

とは言え厳しいな。いくら俺でも女物の水着には詳しくない。て言うか、そんなのに詳しい男は変態だけだ。

 

『飛原さんの言う通りです。隊長、ここは週末に水着を買いに行ってはいかがですか?』

 

「そんなことを言われても私には可愛らしい水着とか分からないぞ。深夜、ついてきてくれるか?」

 

「ついていくのはいいが俺も詳しくないぞ」

 

『でしたら私に秘策があります』

 

 

 

翌日の朝、六時過ぎ。俺はいっくんの部屋のバスルームにいた。そして部屋に仕込んだ隠しカメラと盗聴機で様子を見ている。銀髪ロリは眠いらしく、いっくんのベットに潜り込んだ。しかも裸で。予定とは違うが、これはこれでアリだ。

鍵はシャルがいっくんと同室だった時に借りてスペアを作っておいた。

 

「ん……」

ん?起きたか?正直、こんな時間だから眠たくてしょうがない。朝飯を食べたら昼まで寝るか。

 

「ん……」

銀髪ロリも起きたみたいだな。

 

「ら、ら、ラウラ!」

最初は眠気に負けて二度寝しそうだったが銀髪ロリに気付くと凄い勢いで布団をめくった。

 

「ん……?何だ?もう朝か?」

 

「ば、馬鹿!隠せ!」

何をやっている!早く押し倒せ!そっちの方が高く黒ウサギ隊に隠し撮りしている映像が高く売れるからな。そして何より、そっちの方が面白い。

だが、いっくんはその後も照れたりしながら銀髪ロリの裸をちら見しているだけで面白くない。もっと面白いリアクションを予想していたのにガッカリだな。こんな映像じゃあ売れないぞ。

こうなったら仕方ない。

 

「もうめんどくさいからキスをしろ。その後に昨日、教えた通りにやれ」

銀髪ロリに通信機で指示を出す。

 

「了解した」

 

コンコン

 

部屋のドアがノックされる音がした。

 

「い、一夏、いるか?せっかくだし朝食を一緒にしようかと思うのだが」

侍娘がやって来た。

ちっ!良いところだったのに。

 

かちゃり。侍娘が部屋に入ってきた。

 

「入るぞ、一夏。早く支度を――」

しまった!眠たくてボーとしていたせいで鍵を閉め忘れていた。

 

「げ」

 

「む」

いっくんに全裸の銀髪ロリがキスしようとしているところを見て侍娘の表情が固まる。

 

「カット、カット!」

俺はバスルームが出て止めに入る。

 

「おい、侍娘。良いところだったのに邪魔するなよ」

 

「むっ。それはすまなかった。って何で私が謝らなくてはいけないのだ!?」

 

「それは撮影の邪魔をしたからだろ」

こうなったら後で撮り直しかないな。

 

「って、ちょっと待て、深夜!何でバスルームから現れているんだよ !?後、撮影って何だ!?」

 

「いっくんと銀髪ロリがヤっているところを撮影してドイツ軍に売るんだよ。それなのに、いっくんのヘタレぷりにはガッカリだよ」

 

「いやいや、俺に何を求めているんだよ!?」

 

「貴様は聖なる学舎で何を考えているんだ!?」

失敗したし、早く朝食を食べて寝るか。

 

「おい、銀髪ロリ。次の作戦は後で考えるとして飯を食いに行くぞ」

 

「私としては、このまま続けてもいいのだが」

 

「いや、良くねぇよ!」

 

「……仕方ないか」

いっくんに言われて渋々、銀髪ロリは諦めた。

 

「いっくんは何が不満なんだ?銀髪ロリは見た目は良いだろ。それともあれか?胸がないからか?お前は女性の価値を胸でしか計れない男なのか?」

ここで直接、本人に性癖を聞いてみよう。

 

「何、一夏。それは本当か!?何て不埒な奴なんだ!」

いや、侍娘は胸が大きいから良いだろ。貧乳とか、めちゃくちゃ可哀想だな。

 

「ちょっと待て!朝から何て展開なんだ!俺は胸だけで女性を判断していない!」

 

「でも、いっくんの部屋の机の二重底の下にあったコレクションは巨乳物が多かったぞ」

睡魔で若干テンションがおかしいな。早く朝食を食べたいのに何をやっているんだ、俺は。

 

「何で知ってるんだ!?」

 

「何で知っているかは問題ではない。真実を言え」

真実は暇潰しに勝手に侵入して色々と調べたからだ。ちーちゃんの部屋は面白かった。何と言うか凄く散らかっていた。いっくんが表面的なところは掃除していたので綺麗だったが、それ以外のところは凄かった。一万円札をタンスの後ろで発見した時はビックリした。当然、持って帰った。

 

「い、いや……それは……たまたまだ。そうだ、たまたまだ。弾が勝手に持って来ただけだ」

他人に罪を擦り付けるとか酷い言い訳だな。いっくんがエロ本を買っているところをウサギがハッキングした衛星カメラで確認しているから、それが嘘だと分かる。て言うか、エロ本じゃなくて性癖の方を聞きたかったんだが。

自白していたら俺が盗聴機で録音した音声を貧乳達に聞かせて、さらに面白いことになっていたんだが。残念だ。

 

「一夏!そこになおれ!貴様のその腐った根性を叩き直してやる!」

いや、高校生がエロ本を持っているのは普通だから。むしろ健全だから。俺はネットで済ませてるから持ってないが。

 

「じゃあ、俺は朝食を食べに行くが銀髪ロリはどうする?」

 

「私は嫁を助けてから行く」

 

「そうか。頑張れ。制服はここに置いておく」

これで銀髪ロリの好感度が上がったら良いな。

 

 

 

 

 

「……やっぱり私の貧相な体では駄目なのだろうか?」

放課後、銀髪ロリは俺の部屋に今朝のことを相談しに来た。

 

「巨乳なんて、どうせ垂れるだけ」

かんちゃんは周りに胸が大きい人が多いから自分と比べて気にしている、と前にのほほんさんが言っていたな。

そんなに気にしなくても普通にあると思うが。もしかして前に機嫌が悪かった理由って、いっくんが巨乳好きだからか?

 

「大丈夫だ。いっくんも少なからず反応はしていた。それにコレクションの中には少ないけど貧乳物もあった。いっくんも全く興味がないわけではない」

 

「そうか、そうだな。まだ諦めるには早い」

 

「ああ、そうだ。まずは週末に姐さんが言っていた水着を買いに行くか。そうだ、かんちゃんも一緒に水着を買わないか?ついでに俺も買う予定なんだが」

俺も銀髪ロリのことを言えないんだよな。学校指定の水着しか持っていない。

 

「……行かない。学校指定の水着で充分」

それじゃあ困るんだよな。たっちゃんに、かんちゃんの水着写真を撮ってくるように頼まれているから。適当に露出の高い水着を買ってプレゼントするか。

 

「私も水着を買う」

 

「いや、黒はいらないだろ?自由に服装を変えられるんだから」

 

「私が今、読んでいる漫画に書いてあるのよ。一緒に水着を選んで買うことに意味があると」

それって二人っきりの時にすることじゃないか?今回の目的は銀髪ロリの水着を買うことだぞ。

 

「まぁ、いいか。黒の水着も買うか。銀髪ロリもそれでいいか?」

 

「私は構わない。だが、いつも悪いな」

 

「ん?いきなり、どうした?」

 

「いや、いつも世話になっているのに私はお礼が出来てないな、と思ったのだ」

クロエも銀髪ロリを見習ってほしいな。あいつ、料理とかその他諸々を教えても感謝の言葉すら言わないからな。

 

「いきなり、そう言われても困るな。俺も好きでやっているわけだし」

それに黒ウサギ隊に写真とかを売っているおかげで、かなり儲かってるし。

 

「私が何かしないと気が済まないのだ」

う~ん、どうしたものか。銀髪ロリのことは世話をしているうちに妹のように思えてきたし。……ん?なるほど、妹か。ランランを見てから妹には興味があったんだよな。

 

「だったら俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれないか?」

多分、俺の方が年下だけど。ちなみに俺の誕生日は二月二九日。そのせいで両親が四年に一回しか誕生日を祝ってくれなかったという嫌なエピソードがある。

 

「……同級生にお兄ちゃん呼びをさせるとか変態」

かんちゃんが何か言っているが無視だ。

 

「それだけで良いのか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、お兄ちゃん」

ぐわっ!俺は今まで自分のことを理性の塊で、理性でどうにか出来ない感情なんて無いと思っていた。だが、この心から溢れで出る感情は何だ!黒の獣耳も良いけど、それとは別の良さがある。

俺は気付いたら銀髪ロリの頭を撫でていた。

 

「ふわっ!いきなり何をするのだ!?」

 

「いや、つい。もうちょっと撫でていていいか?」

 

「ああ、これでお兄ちゃんが満足するなら良い」

何だ、この可愛い生き物は!?

 

「ちょっと深夜!ラウラだけズルい。私も撫でてよ!」

黒が狐の耳と尻尾を出して飛び込んできた。

 

「……変態」

かんちゃんがまた何か言っているが、今はそれどころではない。何か新しい扉を開きそうだ。

 

 




ぶっちゃけ、ラウラのお兄ちゃん呼びは完全に作者の願望です。

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第31話 水着

週末の日曜日、俺はラウラと黒の三人で水着を買うために駅前の『レゾナンス』に向かっている。『ここで無ければ市内のどこにも無い』と言われるほどのでかいショピングモールだ。俺も漫画やDVD、コスプレグッズ等を買いによく行く。

ちなみにラウラについては本当の妹みたいに思えてきて銀髪ロリと呼ぶのに違和感を覚えたので普通に名前で呼ぶことにした。

 

「あれは何だ?」

ラウラが指差した方向を見ると不審者にしか見えない貧乳とパッキン女がいた。物陰から何かを観察しているようだ。

 

「そっか、やっぱりそっか。あたしの見違いでもなく、白昼夢でもなく、やっぱりそうか。――よし、殺そう」

そう言うと貧乳はISを部分展開した。

 

「街中で何を物騒なことを言ってるんだ?」

 

「なっ!何で、あんたがこんなところにいるのよ!?」

 

「こ、こんなところでどうしましたの!?」

いきなり現れた俺達に二人が驚いた声を上げた。

 

「俺達は臨海学校のために水着を買いに行くところだ」

 

「あれは嫁とシャルロットか?」

ラウラの視線の先には、いっくんとシャルがいた。二人が見ていたのはこれか。

 

「二人も買い物に行く途中みたいだな。で、それがどうしたんだ?」

 

「……いや、何か二人が妙に仲良そうに見えるから」

 

「デートかもしれないと思ったわけだ」

シャルはいっくんのことを好きじゃないし違うと思うが。単純に臨海学校の準備だろ。

ん、良いこと思い付いた。

 

「いや、有り得るかもな。いっくんが前にシャルと一緒にいる時が一番落ち着くと言っていたからな」

趣味がなければ気を使える良い奴だからな。それに他のメンバーと違って暴れたりしないし。

 

「なっ!それは本当なの!?」

 

「それは本当のことですの!?」

 

「ああ、いっくんは俺と違って静かに暮らしたいタイプだからな」

嘘は言っていない。

 

「お兄ちゃん、それは本当なのか?だったら私のアプローチも実は嫌がれていたのか?」

 

「大丈夫だ。いっくんは基本的に静かなのが好きなのは本当だが、皆と楽しく遊ぶのも好きだからな。それに俺がやり過ぎないように調節しているから心配するな」

貧乳とパッキン女には聞こえないようにラウラに言う。

 

「そ、そうか……。それは良かった……」

安堵しているラウラも可愛いな。たっちゃんやウサギがシスコンになるのも理解出来る。

 

「それよりも速く行かなくていいの?二人とも行っちゃうよ」

 

「よし、面白そうだからつけるぞ。どうせ目的地も一緒だろうから問題ないだろ」

そして俺にとって面白くない展開になりそうになったら邪魔するか。

 

「それよりも合流して一緒に行った方がいいのではないか?」

 

「遠くから見ているから知れることもある」

 

「そういうものか。よし、では嫁を尾行するぞ」

 

「私を無視して話を進めるんじゃないわよ!」

 

「……もう諦めましたわ」

完全に忘れた。

 

「で、お前達はどうするんだ?」

 

「もちろん行くに決まってるわよ!」

 

「その通りですわ!」

面白くなってきたな。ただ問題を起こして、ちーちゃんの罰をくらうのだけはゴメンだから気を使わないとな。

 

 

 

 

いっくん達をつけるとレゾナンスの水着売り場に到着した。

 

「いっくん達も水着を買いに来たのか」

男女で来る買い物じゃないと思うが。

 

「げっ!」

 

「ん?黒、どうかしたか?」

 

「アマゾネスと無駄おっぱいがいた」

教師陣までいたのか!

 

「……よし。貧乳達を囮にして隠れるぞ」

 

「隠れる必要があるのか?」

 

「いや、ちーちゃんに見つかったらめんどくさいことになる」

 

「水着を買いに来ただけで怒られるのか?」

 

「……ん?そう言われれば、そんな気も……」

ちーちゃんに隠れて行動する癖がついてしまったが、確かに今回は何も問題をおこしていないな。

でも面白そうな状況だし何か出来ないかな。

 

「おっ!いっくんがシャルが着替えている更衣室に間違えて入ってしまったぞ」

 

「な、な、な、何!?それは本当なの!?」

一人言を言う感じで言ったのによく聞こえたな。凄い地獄耳だ。

 

「ああ、足が滑って入ってしまったようだ」

 

「あいつはまたそんなことを!――やっぱり殺そう!」

 

「そうですわね。ここらでお灸を据えるのもいいかもしれませんわね」

二人が物凄い勢いで、いっくんを襲いにかかった。にしても毎回よく騙されるな。恋は盲目というヤツか?

 

「よし、深夜。私達も一緒に更衣室に入って着替えましょう」

 

「いや、さっきのは嘘だ」

ちーちゃんのいる状況でそんな危険なことが出来るわけないだろ。

 

「何をやっているんだ、馬鹿者共」

一瞬でちーちゃんに見付かっていた。

 

「いや……千冬さん、あの……」

 

「織斑先生が何でこんなところに?」

 

「水着を買いに来ただけだ」

何でこんなに水着を買いに来ている人が多いんだ?

 

「それでお前達は何をしているんだ?こんな人の多いところで問題で起こされると困るんだが」

 

「え、え~と……その飛原に騙されて……」

 

「よぉ、こんなところで何をやっているんだ?」

何となくふざけたい気分だ。

 

「何、今初めて会ったみたいな登場の仕方をしてんのよ!」

 

「ん?何言ってんだ?今、来たところだぞ。頭は大丈夫か?」

 

「あんたに言われたくないわよ!」

 

「おい、凰。外で騒ぐな」

ちーちゃんが頭に手を置いて疲れた様子で言っている。仕事で疲れているのだろうか?

 

「いや、深夜がラウラをけしかけたおかげで学園の設備がよく壊されているせいだと思うよ」

 

「その件については生徒会として俺も苦労している」

 

「写真で買収して、ほとんどサボっているでしょ」

都合の悪いことは聞かない。

 

「今はプライベートだし、面倒なことはするなよ」

 

「失礼な。俺は一切、問題を起こしたことはないぞ」

 

「おまえ以上に問題を起こした奴はいない」

直接的な被害は一回も出していないはずだが。多分。

 

「で、こんなところで何を企んでいるんだ?」

 

「俺が常に何かを企んでいるとでも思っているのか?今日は水着を買いに来ただけだ」

 

「そうだったのか。まぁ、騒ぎだけは起こすなよ」

 

「あれ?皆、揃ってどうしたんだ?」

いっくんとシャルがこっちに気付いてやって来た。

 

「ねぇ、深夜。この水着はどうかな?」

さっきから静かだと思っていたら水着を探していたのか。自由な奴だな。

 

「いや、それ水着なのか?どうみても紐なんだが」

 

「これぐらい過激にして深夜を誘惑しようかと」

いや、いつも裸も見てるから露出が高いだけで誘惑されるわけないだろ。

 

「だ、駄目ですよ!そんなハレンチなのは!」

マヤマヤが顔を赤くしながら注意している。いい歳して純情だな。だから彼氏がいないんだろう。

 

「よし。それは、かんちゃん用にネタとして買っておくか。他はないのか?」

 

「じゃあ、これならどう?」

次に出してきたのは水着というよりも猫の着ぐるみみたいなヤツだ。のほほんさんのパジャマと同じような感じだ。

 

「深夜の趣味に合わせたんだけど、どうかな?」

 

「……いや、確かに好きだけど。て言うか、それは水着なのか?」

 

「水着なんじゃない。水着売り場に売ってるわけだし」

確かにそうなんだが本当に水着なのか?前にパジャマ売り場で同じような物を見たぞ。

ここにマトモな水着はないのか、と周りを見てみると震えながら水着を選んでいる貧乳とパッキン女を見付けた。何があった?心配になってシャルを探してみると普通に、すでに選んでいた水着の会計をしていた。

そして、いっくんの方を見ると、ちーちゃんが水着を選ばせていた。そのために二人を排除したのか。

しかも結構、露出の多くてエロい水着だな。何か色々とアウトだろ。

とりあえず関わってはいけない気がしたので俺も水着を選ぶことにした。

 

「おい、黒。これとかはどうだ?」

そう言って俺は黒のワンピースタイプの水着を見せた。

 

「それ、地味じゃない?まぁ、深夜が選んでくれた水着なら何でも嬉しいけど」

 

「露出が多ければ良い、ってものでもないからな。お、これは姐さんが言っていたタイプの水着だな」

 

「なっ!私がそんなに露出の多い水着を着るのか!?恥ずかしいし、似合うとは思えないのだが……」

やっぱり照れている姿は可愛いな。黒には羞恥心と言うものがないから少しは見習ってほしい。

 

「大丈夫だ。絶対に似合うから」

 

「そ、そうか……。お兄ちゃんがそう言うなら安心だ」

 

「そうそう。俺は基本的に人を弄る時にしか嘘をつかないからな」

 

「深夜の水着はこれが良いと思うわ」

そう言って黒が見せてきたのは水着は女物のビキニだった。

 

「却下だ」

いくら俺でも体つきは隠せないから水着で女装は無理だ。

とりあえず、かんちゃんの水着を選んだ後に俺の水着も選んで買って帰った。




年末だというのに他にすることがなくて少し悲しくなっていたりします。まぁ、執筆しているのも楽しいからいいですけど。

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第32話 臨海学校

「海だぁぁぁぁー!」

今日は臨海学校の初日。移動中のバスから海が見えてきたところで刹那っちが叫んだ。

 

「……何で刹那っちが一組のバスにいるんだ?」

バスはクラス毎に分かれているはずなのに何で三組の刹那っちが、このバスに乗っているのだろうか?

ちなみに俺はバスの一番後ろの座席で黒とシャルと刹那っちの四人で座っている。

ラウラは俺が色々と手回しした結果、いっくんの隣に座っている。水着のこともあり緊張していて上手く話せていないようだ。

それをパッキン女と侍娘が離れた席から羨ましそうに見ているが、どうでもいいことだ。

 

「そりゃあ、三組よりも一組の方が美少女が多いからでしょ。でも今回の目的だったラウラちゃんは離れた席にいるし」

クラス代表がそれでいいのか?

 

「おい、ウチのラウラに手を出すなよ」

 

「簪ちゃんから聞いていたけど本当に過保護のシスコンのようね」

かんちゃんとそんな話をしていたのか。

 

「まぁ、そんなことよりもシャルロットちゃん。私と一緒に――」

 

「ごめんなさい」

 

「うわっ!言い切る前にフラれてしまった!」

俺が事前に刹那っちのことを教えていた結果だな。にしても、こいつは可愛い女の子だったら誰でも良いのか?

 

「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ」

ちーちゃんの言葉に全員が従う。相変わらずのカリスマ性だな。

そして、ちょっとしたらバスは目的地である旅館に到着した。そして四台のバスから次々と生徒達が出てきて整列した。

って、刹那っちが一組に並んでいるけど良いのか?

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員と特に私の仕事を増やさないように注意しろ」

 

「「「よろしくお願いします」」」

こっちが全員(俺と黒は除く)で挨拶をすると着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」

その後の挨拶はめんどくさいので聞き流した。そして終わってから部屋に移動することになった。

 

「よぉ、いっくんの部屋は何処なんだ?一覧に書いてなかったが」

俺の言葉に周りの女子が一斉に聞き耳を立てた。

 

「いや、俺も知らない。女子と寝泊まりさせるわけにはいかないので別の部屋を用意している、と山田先生が言っていだが」

 

「そうなのか?俺は普通に女子と同じ部屋だが」

まぁ、俺の場合は押し付けられただけだと思うが。

 

「……お前と俺の扱いの違いは何だ?」

 

「やっぱり女子と同じ部屋が良かったのか?」

 

「いや、そういうわけでは――」

 

「織斑、お前の部屋はこっちだ。ついてこい」

話の途中で、いっくんがちーちゃんに呼ばれて行ってしまった。まぁ、知りたい情報は知らないみたいだしいいか。

ただ、ちーちゃんが妙に嬉しそうな顔をしていたのが気になるな。

まぁ、一日目は終日自由時間みたいだし早く部屋に荷物を置いて泳ぎに行くか。

 

「じゃあ、俺達も移動するか?」

 

「じゃあ、深夜。早速部屋で――」

 

「先に海だ」

 

「黒ちゃん。せっかくの自由時間だし――」

 

「泳ぎに行きましょう」

その後、かんちゃんと合流して部屋に移動した。

 

「おっ!良い部屋だな」

窓からは海が見えて景色が良い。さらに色々と設備も整っている。

ちなみに俺はかんちゃんと刹那っちが同室だ。クラスがバラバラだが、この部屋割りには理由がある。かんちゃんは部屋割りを決める時に一人だけ余ってしまったらしい。そして刹那っちは他のクラスメイトが貞操の危機を感じて嫌がったらしい。つまり厄介者が一ヶ所に集められたわけだ。

まぁ、五人部屋を四人で広々と使えるんだから良いけどな。

 

「早速、水着美女を見るために海に行こう。そして可愛い女の子がいたらナンパだ!」

刹那っちは一回、諦めるということを覚えた方がいいと思う。

そして俺達は水着の準備を開始する。

 

「あれ?入れたはずの私の水着がない」

かんちゃんが荷物の中を探しても目当ての物が見付からなくて困っている。

 

「じゃあ、仕方ないな。俺が準備した水着を着るしかないな」

 

「……もしかして事前に私の水着を抜いたの?」

 

「まさか。いくら俺でも女子の荷物を弄ったりしないさ」

 

「……わざとらしい」

かんちゃんが冷たい目線を向けてくるが、俺は無視して水着を出した。

 

「何着かあるけど、どれがいい?」

 

「……マトモな水着がほとんどないんだけど」

俺が出した水着は前に黒が選んだ紐みたいな水着に男物の水着、スケスケのスクール水着、濡れると溶ける水着などだ。本当にレゾナンスには何でもあって驚いた。まぁ、荷物の中には普通の水着もあるが。

 

「……これでいい」

かんちゃんが選んだのは水色をしたフリル満載のビキニだ。俺が出した水着の中では一番マトモなヤツだ。

 

「水着なんて着なくて裸でいいんじゃない?私はそのつもりだけど」

 

「……何で?」

 

「だって裸の方が開放感があって気持ち良いでしょ」

物凄く良い笑顔をしている。

 

「おい、絶対にラウラに近付くなよ。悪影響だ。後、水着は着ろ」

そして着替えの準備が完了したので部屋を出た。

 

 

 

 

更衣室に向かう途中で、困っている様子のいっくんと不機嫌そうに歩いていく侍娘を見かけた。

 

「どうかしたか、いっくん」

 

「ああ、深夜か。これを見てくれ」

いっくんに言われたところを見てみると道端にウサミミが生えていた。しかも『引っ張ってください』という張り紙まである。

今回は何も聞いてないが。気紛れか?

 

「げっ!」

 

「おおっ!」

 

「……?」

黒は嫌そうな顔、刹那っちは嬉しそうな顔、かんちゃんは不思議そうな顔と三者三様のリアクションをとった。

 

「どうする?」

どうするもこうするもない。やることは決まっている。

 

「よし。黒、刹那っち、やるぞ」

 

「了解」

 

「OK」

そして黒は日本刀を展開、刹那っちはイヤらしい手付きをしている。

 

「……何をするの?」

 

「まぁ、見てろ」

俺はウサミミを思いっきり引っ張った。

 

「ちっ!」

下にはウサギが埋まっていると思ったが違ったか。どこにいやがるんだ?

 

キィィィィン……。

 

何かが高速で向かってくる音が聞こえてきた。

 

「上か!やれ、黒」

 

「殺るわよ」

黒は日本刀を上段に構える。

 

スパァァァァン!

 

そして飛んできた謎の飛行物体を真っ二つにぶった切った。

 

「うわっ!いきなり何なの!?」

真っ二つに分かれたニンジンの中からウサギが出てきた。何故、ニンジン?

 

「よし!」

刹那っちが出てきたウサギを抱き抱えるふりをしながら胸を揉みつつ投げた。

 

「痛っ!今度は何なの!?」

 

「やっぱり束博士の胸の揉み心地は最高ね。ただ、もうちょっと揉んでいたかったわ」

刹那っちがウサギの胸の余韻を楽しみつつ、残念そうな顔をしている。

 

「……誰?」

 

「ISの生みの親にして俺の友達、篠ノ之束だ」

 

「えっ!?この変な格好をしている人が深夜が言っていたシスコンにして変態の篠ノ之束」

 

「……ちょっと、しっくん。束さんのことをどんな風に説明しているのかな?」

気付いたらウサギが後ろに立っていた。

 

「まぁ、いいか。それよりも久し振りだね、いっくん。いつぶりかな~?」

ウサギは早速切り替えて、いっくんに話かけた。

 

「お、お久しぶりです、束さん」

 

「うんうん。本当にね。ところでいっくん。箒ちゃんはどこかな?さっきまで一緒だったよね?トイレ?だったら覗きに行くけど」

行くなよ。って言うか、侍娘に用があったのか。紅椿関連の話か?

 

「まぁ、この私が開発した箒ちゃん探知機ですぐ見つかるよ。じゃあね、いっくん。それにしっくん達も。またあとでね!」

そして箒ちゃん探知機とやらのウサミミがダウジングロッドみたいに侍娘のいる方向を向いた。本当にどういう仕組みで出来ているのだろうか?

 

「ちょっと待ってください、束博士」

 

「うん?何かな、刹那っち。用事なら後にしてほしいんだけど」

 

「もう一回、その素敵な胸を揉んでいいですか?」

クロエに殺されるぞ。そして、どんだけ気に入ったんだよ。手付きがかなりイヤらしいが。

 

「ははっ!また後でね!」

そう言うとウサギは凄い勢いで走り去っていた。

 

「楽しみは後に取っておこう」

相変わらず無駄にボジティブだな。

 

「さて、今のところは関係なさそうだし早く着替えて海に行くか」

そして俺達は一番奥の更衣室に向かう。そこは男子専用になっており、直接浜辺に出られるようになっている。

 

「って、何で女子達も一緒に来ているんだ!?」

いっくんが女子の更衣室を横切ったところでツッコんできた。

 

「そりゃあ、黒ちゃんや簪ちゃんと一緒に着替えるためでしょ」

 

「ああ、深夜と生活してたから感覚が麻痺してた。でも、人の多いところは嫌だし。こうなったら、別に見なければ気にしないけど」

今気付いたけど、これがいっくんとかんちゃんの初対面か。インパクトのある出会いを演出したかったんだが仕方ない。

 

「……IS学園に入ってから俺の中の常識が書き替えられていく」

 

「そろそろ慣れろ」

その後、いっくんは照れながら俺と女子達は全く気にしないで着替えた。

 




臨海学校が始まったけど福音戦の内容が思い付かない。遊んでるシーンを増やして時間を稼ごうかな。

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第33話 海

「おい、着替え終わったか?」

俺は更衣室を出たところで女子達の着替えが終わるのを待っている。

いっくんは一足先に遊びに行った。今は貧乳と戯れているようだ。

 

「着替え終わったわよ」

一番最初に黒が出てきた。

 

「どう?似合ってる?やっぱり私的には地味だと思うんだけど」

 

「大丈夫だ、似合ってる。いつもと雰囲気が違って良い。これがギャップ萌えか」

たまには普通の格好も良いな。黒は基本的に制服以外は変わった服装が多いからな。

 

「んー、よく分からないけど深夜が好きなら、それで良いわ」

 

「他の二人はまだ着替え終わってないのか?」

 

「簪はそろそろだと思うわよ」

簪は?刹那っちはどうしたんだ?

 

「……やっぱり恥ずかしい」

次にかんちゃんが出てきた。とりあえず写真を撮っておくか。

 

「ちょっと何でいきなり写真を撮ってるの!?」

 

「俺は写真係だからな。生徒会の仕事として臨海学校の思い出を写真に撮るように頼まれている」

この臨海学校は『ISの非限定空間における稼働試験』が主題であるため業者の人を雇うわけにはいかない。そこで俺が頼まれたわけだ。まぁ、これはただの口実で学園の二大戦力に頼まれ……もとい、脅されただけだが。

 

「だったら私も撮ってよ」

最後に全裸の刹那っちが出てきた。さっきの発言は本気だったのか。

 

「ちゃんと水着を着ろ!」

とりあえず俺は回し蹴りをする。

 

「ちょっと、いきなり何をするのよ?」

 

「ちっ!」

それを刹那っちは軽々と避けた。さすが殺し屋。身体能力が高いな。

 

「いいからお前は水着を着やがれ!」

 

「そう言われても体を拭くためのタオルぐらいしか持ってきていないんだけど」

さすがにこの返事は予想外だ。

 

「て言うか、何で脱ぐだけなのに最後だったんだ?」

 

「そりゃあ、黒ちゃんと簪ちゃんの着替えを見ていたからでしょ」

こいつには愚問だったな。そして、さっきの黒の発言はこういう意味だったのか。刹那っちは最初から着替えるつもりがなかった。

 

「仕方ない。俺が持ってきてる水着を貸してやる」

そして俺は更衣室に戻って鞄から水着を出して刹那っちに渡した。

 

「……何でそんなに女物の水着を持ってるの?て言うか、普通の水着も持ってるし。私も着替える」

かんちゃんもついてきて後ろで怖い顔をしている。

 

「水着を忘れた人のために生徒会として水着のレンタルをしている。後、変更は認められない」

生徒会って言い訳は便利だな。

 

「何か普通の水着ね。もっと変わった水着の方が良いんだけど。例えば濡れると溶ける水着とか」

 

「そんな物はない。それで諦めろ」

本当はあるけど、こいつに貸す気にはなれないな。

 

「ところで何で私の水着の変更は認められないの?」

 

「今から着替え直していたら時間がかかるだろ?」

 

「今、刹那も着替えてるし――」

 

「じゃあ、着替え終わったところで水着美女のナンパに行こう」

 

「はやっ!」

いつの間に着替え終わったんだ?全く気付かなかった。

 

「殺し屋たるもの行動は迅速にしないと。仕事場ではコンマ一秒の油断で死ぬこともあるし」

これを才能の無駄遣いと言うのだろうな。

 

「じゃあ、早速遊ぼうか」

 

「ちょっと私の話が終わってないんだけど」

 

「可愛い女の子が私を待っているはず」

俺達はかんちゃんの話を無視して海に出る。後ろでは諦めたように、かんちゃんもついてきた。

 

「おおっ!大量の水着美女が!IS学園は外国の生徒も多いし、色んなタイプがいてテンションがあがってきたぁぁー!」

刹那っちが壊れた。いや、いつものことか。そして目にも止まらない速さでナンパに向かった。

 

「さて、準備運動をするか」

俺は基本的にインドアだからな。泳いでいる時に足がつって溺れたりしたら格好悪い。

ついでに周りを見渡しけどラウラはまだ来てないみたいだな。シャルに頼んでおいたけど大丈夫か?

 

「まずは軽く、ひと泳ぎをするか。かんちゃんはどうする?」

 

「……私はあそこの海の家でのんびりしてる」

かんちゃんの指差した方を見てみると結構、大きな海の家があった。ビーチボールや浮き輪の貸出もしてるようで賑わっている。

 

「せっかくの海なのに、それはないだろ」

 

「……私は海が好きじゃない」

 

「ヤッホー、かんちゃんにヒハラン~」

のほほんさんとその他クラスメイトがやって来た。ほほんさんは狐の着ぐるみみたいな水着を着ている。前に似たような物を見たが、おそらく同じところで買ったのだろう。

 

「織斑くんの体も格好良かったけど飛原も格好良いね」

 

「ねぇねぇ、私達と一緒にビーチバレーしない?」

 

「俺は先にひと泳ぎしたいから後でな。代わりに、かんちゃんが一緒にやってきたらどうだ?」

 

「……何で私が?」

 

「これを機にかんちゃんも友達も作ろう~」

そう言うと、のほほんさんがかんちゃんを引っ張って行った。

 

「ちょ、ちょっと本音!」

 

「飛原くんも後でやろうね」

 

「ああ、また後でな。かんちゃんも頑張れよ」

さて、やっと泳げるな。

 

「じゃあ、邪魔者がいなくなったところで二人っきりで楽しみましょう」

 

「ああ、そうだな。二人でのんびりと泳ぐか」

そして海の方に歩いていくと、いっくんがパッキン女にサンオイルを塗っているのを見かけた。それを隣で貧乳が不機嫌そうに見ている。

 

「私にもサンオイルを塗ってくれない?」

 

「ISが日焼けすることはないだろ」

それ以前にサンオイルを持ってきていないが。

 

「よぉ、いっくん。そのまま尻も塗ってやったらどうだ?」

 

「深夜か。さすがにマズイだろ」

 

「さっきまでパッキン女の尻をガン見していたのに説得力がないぞ」

 

「い、一夏さんがしたいんでしたら私は構いませんわよ」

 

「だったら私がやったげるわよ!」

我慢できなくなった貧乳がいっくんからサンオイルを取ってパッキン女の尻に塗った。

 

「きゃあっ!?り、鈴さん、何を邪魔して――つ、冷たっ!」

サンオイルを温めずに強引に塗ったのでパッキン女が怒り体を起こした。

 

「きゃああっ!?」

さっきまでパッキン女は、いっくんにサンオイルを塗られていた。つまりパッキン女の胸が、いっくんに丸見えになった。

とりあえず俺は写真を撮った。

 

「ところで、いっくん。今の写真はいるか?パッキン女のだから安くしとくぞ」

 

「って、何で飛原さんはそんなに冷静に写真を撮ってるんですの!?後、何で私の写真だったら安くするんですの!?」

 

「いや、それはさすがにセシリアに悪いだろ」

 

「だったら、こんな写真はいらないから消すか」

パッキン女の写真なんて、あっても売り先がないからな。容量の無駄だ。

 

「それよりも一夏。私と泳ぎで勝負しない?負けたら駅前のカフェでパフェおごんなさいよ」

 

「だったら俺も参加していいか?向こうのブイに速くたどり着いた奴が勝ちにするか」

 

「ちょっと私を無視して話を進めないでくださる!」

 

「良いわね」

 

「深夜が参加するなら私も参加するわ」

そして四人でのレースが開始した。

トップは貧乳で、そのすぐ後ろに俺がいる。

 

「結構、やるわね。私についてくるなんて」

 

「そりゃ、どうも」

 

「でも、ここからが私の本気よ」

そう言うと貧乳のスピードが上がった。こうなったら俺も本気を出すか。

 

「!?ごぼぼっ!」

いきなり貧乳が溺れはじめた。おそらく、ちゃんと準備運動をしていなかったので足がつったのだろう。

俺は一回止まって様子を見るが、いっくんが助けようしていたので、そのまま泳ぎを再開する。

 

「深夜、私も溺れているんだけど助けて」

俺がブイまで行って戻る途中で黒が言ってきた。

 

「本当に溺れていたら助けるが、俺に嘘が通じるわけないだろ」

貧乳がいっくんに助けられているのを見て真似たのだろう。て言うか、そもそも黒は呼吸していないから溺れても問題ない。

そして俺は一位で浜辺に戻った。

 

「よぉ、溺れていたようだけど大丈夫か?」

 

「何であたしが溺れてんのに普通に泳いでんのよ!」

ふむ。ツッコむ元気はあるようだし大丈夫だな。

 

「だって俺よりも、いっくんに助けられた方が嬉しいだろ」

 

「な、何言ってのよ、馬鹿なの!」

 

「相変わらず分かりやすいな」

 

「もういいわ。あたしは向こうで休んでくる」

貧乳は照れているのを誤魔化すかのように、どこかに行ってしまった。

 

「ふぅ、やっと終わったわ」

結構、疲れた様子で黒が戻ってきた。

 

「遅かったな」

 

「よく考えたら私、泳ぐの初めてだったのよ」

そうだったか。それで普通に泳げているのは凄いな。

さて、もうひと泳ぎしたいけど、そろそろビーチバレーの方に行くか。

 




今日は大晦日。今回が今年最後の投稿です。次は来年に会いましょう。
では良いお年を。


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第34話 ビーチバレー

「あ、深夜に一夏。ここにいたんだ」

ビーチバレーをしている、かんちゃんのところに行こうとした時にシャルとバスタオル数枚で全身を頭の上から膝下まで覆い隠している何かが現れた。

 

「何やってんだ、ラウラ」

 

「こんな全身を隠しているのによくラウラだって分かったね」

 

「俺の観察眼を見くびるなよ」

て言うか、これがラウラが遅れていた理由か。

 

「それよりも速く、そのタオルを脱げよ」

 

「そうだよ、ラウラ。可愛いんだから一夏に見てもらわないと」

 

「そう言われても私にも心の準備があってだな……」

ラウラの声はいつもと違って弱々しいものだ。ずっと軍人として生きてきたラウラにはレベルが高かったか?

 

「ずっと、この調子なのか?」

 

「うん。僕もずっと言ってるんだけど中々頑固で困ってるんだよ」

 

「可愛いんだから大丈夫だぞ、ラウラ」

 

「や、やっぱり私が可愛いとは思えないんだが」

ラウラのこの認識を変えるところから始めないといけないかもな。

 

「いっくんも可愛いと思うよな?」

 

「え?ここで俺か?」

 

「思うよな」

俺は思いっきり睨みを利かして言う。

 

「あ、ああ、俺も可愛いと思うぞ」

 

「そ、そうか、可愛いか……。だったら仕方ないな……」

そしてラウラはタオルを脱いで水着姿になった。レースをふんだんにあしらった黒の水着で、髪型は左右一対のアップテールになっている。

俺は全力で写真を撮った。

 

「……シャル、この髪型は?」

 

「僕からのサービスだよ」

 

「ナイス、シャル!報酬を上乗せしといてやる!」

内容が内容だけに本当は嫌なんだが仕方ない。それだけラウラが可愛いんだから。

 

「おい、いっくん。ちゃんと感想を言ってやれ」

 

「……何かいつもとキャラが違わないか?」

 

「そんなことはどうでもいい。速くラウラの水着姿を褒めろ」

 

「ああ、似合ってるぞ、ラウラ」

もっと褒めろよ、ヘタレ野郎。

 

「そうか……。なら、良い……」

まぁ、ラウラが喜んでいるから良いか。

 

「し、深夜。代わって……」

かんちゃんが疲れた様子でやって来た。

 

「どうかしたか?」

 

「いや……もう……疲れて、しんどい……」

 

「疲れるの早すぎだろ。体を鍛えた方が良いぞ」

 

「いや、私とほとんど生活なのに運動神経の良い深夜がおかしい……」

そんなことはないぞ。たまに休日に道場破りとかしてるし。

 

「あっ!織斑くんに飛原くんだ!」

 

「さっきの約束!ビーチバレーしようよ!」

さっき約束した女子だな。

 

「かんちゃんもやろうよ~」

 

「……いや、本音。……無理。慣れないことして疲れた」

今度、かんちゃんの運動メニューを考えるのも面白いかもしれない。

 

「ああ、いいぜ。ルールは?」

 

「タッチは三回まで、スパイク連発禁止、キリのいい十点先取で一セットのお遊びルールよ」

 

「じゃあ、メンバーはどうするか。こっちには五人いるし」

俺と黒とラウラの三人でやりたいけど、ラウラはさっきので照れて使い物になりそうにないし。

 

「私と深夜で二人だけで充分よ」

 

「……私も参加する」

気配もなく、落ち込んだ様子の刹那っちが現れた。

 

「どうかしたか?」

 

「……ナンパに全敗したのよ」

予想通りだな。

 

「だからビーチバレーで活躍して女の子達にアピールするのよ!」

ここまでポジティブだと逆に尊敬できるな。

そして俺達はすでに出来ているコートに移動して試合を開始した。

相手は、のほほんさんと誰だろうか?ほとんど授業を受けていないせいでクラスメイトを全員、覚えていない。

 

「そっちのサーブから始めていいぞ」

 

「ふっふっふっ。七月のサマーデビルと言われたこの私の実力を……見よ!」

名前は分からないが次からサマーデビルと呼ぼう。

そして、そのサマーデビルはいきなりジャンプサーブを打ってきた。

 

「余裕」

刹那っちがレシーブをした。

 

「深夜」

次に黒が俺にトスを上げた。

 

「そこだ!」

そして俺が相手の届かない位置を計算して、そこにノータッチでスパイクを決めた。

 

「お~、三人共やる~」

 

「ちょっと布仏さん、何で敵を褒めてるのよ」

そんな感じで試合は進み俺達が完封勝利した。

 

「さて、次は誰が相手だ?」

 

「だったら俺が相手だ」

いっくんが出てきた。

 

「だったら僕もやるよ」

 

「嫁がやるなら私もやろう」

ラウラは復活したみたいだな。だが、困ったな。ラウラは狙えないし。

そして試合が開始した。

 

「何であんたの近くにはそんなに可愛い女の子が集まってるのよ!私に一人ぐらい寄越しなさいよ!」

刹那っちが嫉妬にまみれた発言をしながらスパイクを打った。そんなんだから駄目なんだと思うが。

 

「うわっ!」

そして、いっくんの顔面に直撃した。

 

「おい、いっくん、大丈夫か?」

 

「心配するな、大丈夫だ」

鼻血を出しながら言っても説得力がないな。

 

「私の嫁に何をする!」

ラウラが刹那っちめがけてスパイクを打った。

 

「そんな程度の攻めじゃ、私は感じないわよ」

俺は刹那っちがレシーブしたボールを刹那っちの顔面にめがけて打った。

 

「いきなり何するの!」

ちっ!避けたか。

 

「いや、ウチのラウラに下ネタを言ったから」

 

「このシスコンが」

その後は俺と刹那っちのスパイクが、いっくんに集中しているせいで互角の展開になっていた。だが、いっくんが顔面に三回目のスパイクが当たったところでダウンして俺達の勝ちになった。ビーチバレーのルールはいつから格闘技になったんだ?

 

「おい、ラウラ。いっくんを海の家にでも運んで休ませてやれ」

 

「了解だ、お兄ちゃん」

 

「ちゃんと頑張れよ」 

 

「う、うむ。分かった」

そして、いっくんをラウラが引きずっていた。確かにラウラの体格じゃあ、背負うのは厳しいかもしれないが。大丈夫か、いっくん。 

 

「何があったんだ?」

ちーちゃんとマヤマヤがやって来た。ちーちゃんの水着は前に、いっくんが選んだ水着だな。

 

「いっくんが顔面にボールがぶつかって鼻血を出してダウンしただけだ」

 

「織斑くんは大丈夫なんですか?」

 

「ラウラに任せたし大丈夫だろ」

そのまま夏の魔力でヤってきたら面白いんだが。

 

「せっかくの休憩時間だし、私もしていくか」

ちーちゃんに勝てる奴がいるわけないだろ。

 

「え……、いや、さすがに織斑先生は……」

 

「怪我ですむかな……」

他のメンバーがビビっている。

 

「安心しろ、小娘共。私の相手をするのは飛原だ」

何で俺が修羅の相手をしないといけないんだよ。

 

「……そろそろ昼だから飯を食べにいかないと」

 

「まだ時間はあるぞ」

 

「大丈夫よ。私と深夜ならアマゾネスに勝てるわ」

何で煽るんだよ。そして、その自信はどこから来るんだ?

 

「ほぉ、大した自信だな。だったら、その実力みせてもらおうか。後、私はアマゾネスよりも強いぞ」

何だ、このラスボス感は?何で、物語の途中でラスボス戦がくるんだよ。

 

「……仕方ない。ここは腹を括るか」

 

「そうだ、一つ賭けをしないか?」

 

「賭け?」

 

「ああ、勝った方が負けた方に一つ何でも命令を出来るというヤツだ」

この状況は俺の人生の中で二番目ぐらいヤバいかもしれない。ちなみに一番目はシャルが初めて俺の部屋に来た時だ。

 

「……断っていいか?」

 

「駄目だ」

くそっ!なんて暴君なんだ!

 

「私が勝ったら貴様には私に対するタメ口をやめて敬語で喋ってもらうぞ」

思ったよりはマシな内容だが、それでも難易度が高いな。俺が敬語なんて喋れるわけがない。

 

「飛原はどうする?まぁ、貴様には万に一つの勝ち目もないがな」

 

「……今すぐには思い付かないから勝ってから考える」

 

「まぁ、いいだろ。後、私はハンデとして山田先生と二人でやる。貴様は三人でいいぞ」

それ、ハンデになるのか?ちーちゃん一人で十人分以上の活躍をしそうだが。

 

そして試合が開始した。こっちのメンバーはさっきと一緒だ。

 

「いくぞ」

俺はちーちゃんと反対サイドのコートぎりぎりのところにサーブを打った。

 

「ふっ、甘いな」

マジか!今のはマヤマヤがレシーブするところだろ。それをレシーブするとか人間レベルじゃないぞ。

 

「では、次はこっちの番だな」

ちーちゃんがマヤマヤのトスをスパイクした。

 

パァァァーンッ!

 

ボールが地面にぶつかったところで破裂した。

 

「「「…………」」」

周りを静寂が支配した。

どんな力で打ったらボールが破裂するんだ?

 

「ふむ。ボールが破裂したみたいだし、変わりの物を海の家から借りてくるか」

えっ!まだ続けるの?こんなボール、レシーブしたら骨が折れそうなんだが。

 

「では、そこの貴様。ボールを借りてきてくれ。もちろん自腹で」

ちーちゃんのことは今までブラコンとしか思ってなかったが認識を改める必要があるな。ただのブラコンじゃない。ブラコンで魔王だ。

いや、待て。諦めるには早い。何か勝つ方法があるかもしれない。……無理だな。コート全体が守備範囲、そしてスパイクは破裂する。勝てるわけがない。

 

「棄権します!」

こうして俺はちーちゃん……もとい、織斑先生に敬語で話すことになりました。




明けましておめでとうございます。
新年一発目の投稿です。今年も頑張って書いていこうと思います。

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第35話 諦め

「「ハァー、今日は酷い目にあった」」

現在は夕食の時間、俺といっくんは同時に呟いた。

ちなみに俺の隣はシャルとラウラ。ラウラを挟んだところに、いっくんが座っている。パッキン女は俺の手回しにより遠い席に座っている。侍娘に関しては手回しをする必要がなかった。何か、いつもと様子が違ったな。ウサギが来ていることと関係しているのか?そう言えば、他に何か忘れているような気がするな。まぁ、忘れるようなことだからどうでもいいだろ。

 

「どうしんだ、お兄ちゃんに嫁よ」

今、気付いたけどいっくんとラウラが結婚した場合、いっくんは俺の弟になるのか。そうなったら、あの魔王とも親戚か。それは嫌だな。

 

「ああ、いっくんがダウンした後に魔王に襲われてな」

とりあえず俺はラウラの頭を撫でて癒されることにする。ちなみに本人の前以外では呼び方が、ちーちゃんから魔王に変わった。

 

「お兄ちゃんの撫で技術は日に日に上がっているな」

 

「当然だろ。常に限界(おれ)を越え続けるからこその俺だ」

 

「僕もその漫画、大好きだよ。BL要素はないけど面白いよね」

 

「……おい、シャル。余計なことを言うな。恥ずかしいだろ」

相手が分かっていたら良いけどラウラは理解出来ずにポカーンとしているし。

 

「その漫画は面白いのか?」

 

「最高に面白いぞ。俺のお気に入りの一つだ」

 

「だったら後で借りてもいいか?漫画はクラリッサも好きだし、何より私も日本のことを知りたいからな」

漫画で日本の勉強をするとシャルや姐さんみたいに間違った知識を覚えそうだな。まぁ、その場合は俺が訂正すればいいか。

 

「ああ、帰ったら他の漫画も貸してやる」

 

「ああ、楽しみにしている」

楽しみが一つ増えたな。

あっ!そう言えば、大事なことを忘れていたな。

 

「そういや、いっくんの部屋はどこなんだ?海で聞こうと思っていたけど鼻血を出して惨めに倒れたから聞きそびれていた」

 

「深夜がやったことなのに、そこまで言われる覚えはないぞ」

失礼だな。確かに止めを刺したのは俺だが、その前に二回当てていた刹那っちの責任でもあるぞ。

 

「それよりもどこなんだ?」

 

「千冬姉と同じ部屋だ」

何だと!確かに、それなら夜中に女子がいっくんの部屋に忍び込んだりすることは出来ない。そして、それを口実に魔王は愛しの弟と同じ部屋で過ごすことが出来る良い手だ。だが、それでは別の問題が起きてしまう可能性がある。それこそ世界が注目するような大スキャンダルが。

 

「よし、とりあえず適当な女子を部屋に連れ込め」

 

「何でだよ!?そんなことしたら千冬姉に俺が殺されるぞ!」

確かに、いっくんが死んだらラウラが悲しむから困る。それがなかったら、どうでもいいが。

 

「だったら部屋に監視カメラと盗聴機を仕掛けるしか……」

 

「何だ、その犯罪思考は!俺に何か恨みでもあるのか!?」

 

「何を言う。いっくんのために言ってるんだぞ」

マジで何か考えないとマズイな。刹那っちが、かんちゃんの貞操を奪わないようにも気を付けないといけないのに。どうしたら良いんだ?

 

「お兄ちゃんは何をそんなに焦っているのだ?男女と言っても嫁と教官は姉弟だから問題ないだろ」

 

「そうだよ。そんなに一夏にイタズラ出来ないのが嫌なの?」

そうか、二人は知らないんだな。

 

「時として知らない方が良いこともある」

 

「「「……?」」」

俺の発言に三人が首をかしげる。

説明する気になれないな。

 

 

 

俺が部屋に戻ると、かんちゃんが刹那っちに襲われていた。

 

「良いではないか、良いではないか」

 

「や、やめて……」

二人共すでに浴衣がはだけていて下着が丸見えだ。とりあえず写真を撮っておくか。

 

「何やってんだ、刹那っち」

 

「今日のナンパに全敗したから落ち込んでいるから簪ちゃんで癒されてるの」

なるほど。フラれすぎて頭がおかしくなったのか。

 

「これをやるからやめろ」

俺は刹那っちに今日、撮った女子の水着写真を渡した。女子がノリノリだったせいで臨海学校の写真というよりグラビアの撮影みたいな写真も結構多い。

 

「良いところだったのに何?」

そう言いながら刹那っちは写真を受け取った。て言うか、それ以上やったらシスコンに殺されてたぞ。

 

「おお、これは素晴らしい写真だ。被写体の女の子も可愛いけど、何よりアングルが良い。女の子達の可愛いさを引き出している」

すでに意識は写真に向いており、ヨダレを垂らしている。どう見ても変態にしか見えない。それだけ欲求不満ということか。適当にパッキン女を売りたいけどタイプじゃないみたいだし、どうしようか?

 

「かんちゃん、大丈夫か?」

 

「な、何とか。助かった」

かんちゃんが安心した顔をしながら浴衣を直していく。

 

「それよりも俺は今から風呂に行くんだが、どうする?」

 

「私も行く。刹那と同じ部屋に二人っきりでいるのは危険」

 

「だったら私も行く」

 

「貴女は部屋でのんびりしてて」

かんちゃんがISを起動して刹那っちを脅す。

 

「でも、それだったら簪ちゃんの荷物の中から下着を出して色々するかもよ」

だが、全くビビった様子もなく変態発言をする刹那っち。元から変態だが最近さらに増してるな。早く対処しないと。

って、俺はこんなに悩んだり苦労するタイプじゃなかったような気がするんだが。

とりあえず俺のキャラを元に戻さないと。確か俺は人を喰ったような性格で人の不幸を何とも思わない人間だったはずだ。

 

「とりあえず殺す?」

 

「殺すのは良いが、ISは使うなよ。周りにも被害が出るからな」

これ以上、面白くないことに頭を使うのも嫌だし、殺した方が楽だな。

もしくは他にレズを探すしかないか。IS学園は元々、女子校だし探せば何人かいるだろ。

あっ!良いこと思い付いた。

 

「ちょっと殺すのを待て、かんちゃん」

 

「……何で?」

 

「刹那っちに話があるんだ」

 

「私も殺されるのは嫌だから話を聞くけど、何?」

 

「実はある部屋に欲求不満で困っている美人がいるんだが」

こいつらがくっつけば、俺の悩みのほとんどは解消されるはずだ。まぁ、無理だと思うが。

 

「えっ!本当に!どこの部屋!」

部屋の場所を教えると凄い勢いで出ていった。

 

「今の話、本当なの?」

 

「ああ。しかも、上手くいけば刹那っちの変態性もどうにかなるかもしれない。生きていればだが」

 

「……どういう意味?」

 

「そのウチ分かる」

その後、準備をして風呂に行った。脅威が去ったからか、かんちゃんは風呂には行かず部屋でのんびりしていることになった。

 

 

 

 

俺は風呂から出ると、ある部屋に向かった。ちなみに風呂は、いっくんが出た後も黒と十五分ぐらい浸かってから出た。

そして目的の部屋につくと入口のドアに女子が五人ほど張り付いた。

 

「何やってんだ、お前達」

 

「シッ!」

貧乳がそう言うと俺の口を塞いできた。するとドアの向こうから声が聞こえてきた。

 

『千冬姉、久し振りだから緊張してる?』

 

『そんなわけあるか、馬鹿者。――んっ!す、少しは加減をしろ……

 

『はいはい。んじゃあ、ここは……と』

 

『くあっ!そ、そこは……やめっ、つぅっ!』

え!まさか、そういうことか!?俺が危惧していた最悪の展開になっているのか。それを阻止するために刹那っちを犠牲にしたのに無駄だったか。いや、待て。いっくんのことだし、ただのマッサージということもあり得る。

 

「失礼する」

そう言うと俺はドアを開けて部屋の中に入った。

 

「あれ、深夜。何か用か?」

 

「入るならノックぐらいしろ、馬鹿者」

 

「んーんー」

中には魔王にマッサージをしている、いっくんと猿轡と縄で拘束されている刹那っちがいた。何とか最悪の事態にはなってなかったようだ。そして刹那っちは役に立たなかったか。

 

「で、飛原はこの変態を回収に来たのか?」

 

「いえ、違います」

このまま放置していた方が穏やかに寝れるからな。

 

「うわっ!何、この状況!」

 

「ふ、ふん。私はこんなことだと分かっていたぞ」

 

「私もだ。私はけっして不埒なことなんて考えていないぞ」

 

「当然ですわ」

 

「僕はそれはそれでアリかな、と思っていたけどね」

刹那っちを見て驚いたり、誰にしているのか分からない言い訳をしたり、変態発言をしながら外にいた五人も入ってきた。

 

「貴様らは暇なのか?これから本番という時に」

マジでヤるつもりだったのかよ。来て良かったな。

 

「まぁ、いい。一夏、金を渡すから何か飲み物を人数分買ってきてくれ」

 

「分かった」

 

「いっくん、俺は日本酒で」

 

「自販機に日本酒があるわけないだろ。こいつは無視して行ってこい」

そして、金を受け取るといっくんは出ていった。

 

「て言うか、ツッコむところはそこじゃないような気がするんですけど」

 

「細かいことを気にしていたら、無い胸がさらに無くなるぞ」

 

「そんなわけないでしょ!」

 

「確かにそうだな。無くなるほど無いからな」

 

「うるさいわね!」

自覚はしていたのか。

 

「お前達は何を漫才をしているんだ?まぁ、いい。飲み物でも飲みながら話すか」

そう言って魔王は旅館の備え付けの冷蔵庫から、清涼飲料水を六人分取り出した。

 

「……あの教官。何で飲み物があるのに一夏に買いに行かせたのですか?」

 

「あいつに聞かせたくない話をするからだ。それよりも適当に好きなヤツを選べ」

て言うか、いっくんは飲み物があることを知らなかったのか?

 

「先生、アルコールがありません」

 

「しょうがないな。ノンアルコールでいいか?」

 

「ノンアルコールでも駄目でしょ!」

魔王にツッコむとは。やるな、貧乳。

そして俺達はそれぞれ飲み物を手に取って飲んだ。

 

「飲んだな?」

 

「まさか毒が入っていたんですか?」

弟との時間を邪魔したから仕返しとか。

 

「敬語になっても失礼な奴だな。ただの口封じだ」

そう言うと魔王は新たに冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、豪快に飲んだ。

 

「ぷはー」

 

「「「…………」」」

いつもの魔王のイメージと合わず俺以外のメンバーはぽかんとしている。

 

「おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらいは飲むさ。それとも、私は作業オイルを飲む物体に見えるか?」

 

「見えます」

 

「お前は喋るな」

生徒から発言の自由を奪うなんて酷い教師だな。

 

「まぁ、いい。他の奴等も口止め料を払ったんだから黙っていろよ」

ああ、この飲み物はそういうことだったのか。

 

「織斑先生が普段通りに下着姿でダラダラとしていても黙っています」

 

「敬語になって何か前よりもイラッとくるな。とりあえず次に余計なことを喋ったら眼球をえぐりとるぞ」

マジでやる目をしている。何でこんな奴が聖職者なんてしているんだ?て言うか、出来ているんだ?

 

「さて馬鹿は放っといて本題入るか」

二本目の缶ビールを飲みながら言ってきた。

 

「お前ら、あいつのどこがいいんだ?」

なるほど。弟にまとわりつく邪魔者のことを知ろう、ということか。

まぁ、二人ほど違う奴もいるが。

 

「同性愛が似合いそうなところです」

 

「お前は国に帰れ」

気持ちは分かるが、さすがにそれは言い過ぎだろ。

 

「で、お前は?」

次はラウラに話を降った。

 

「つ、強いところが、でしょうか……」

 

「いや、弱いだろ」

それは魔王に同意見だな。

 

「つ、強いです。少なくも、私よりは」

心が、という意味だろうか。それなら俺の方が圧倒的に強いが。

 

「まぁ、強いかは別にしてだ。あいつは役に立つぞ。家事も料理もなかなかだし、マッサージだって巧い。さらに顔を良い」

引くくらいべた褒めだな。そして、その全てにおいて俺が勝っているな。負けているのは身長ぐらいだ。

 

「というわけで、付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」

 

「く、くれるんですか?」

代表してラウラが聞いた。

 

「やるか馬鹿。あいつは私の物だ」

まさかの宣戦布告かよ。

 

「だったら、そこの拘束されて喜んでいる変態と交換はどうですか?」

 

「そんな変態はいらん。私には一夏がいれば充分だからな」

さすがに、この発言に他のメンバーがポカーンとしている。俺もここまで堂々と言い切るとはビックリだ。もう何か色々と諦めた。

 

 




活動報告の方で番外編のアイデアを募集しました。何か意見を書いてくれると嬉しいです。

感想、評価、お気に入り登録待ってます。


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第36話 二日目

臨海学校、二日目。今日は一日中、ISの各種装備試験運用とデータ取りに俺と刹那っち以外の専用機持ちは忙しい。俺と刹那っちの専用機はウサギが作ったものだから、する必要がない。て言うか、俺は日頃から趣味でやっている。

ちなみに現在地はIS試験用のビーチだ。

 

「ちょっと深夜くん!私を騙したわね!」

かんちゃんが専用パーツのテストを手伝っていたら急に刹那っちが詰め寄ってきた。

 

「何だ、開放されたのか?」

 

「織斑くんが朝食を食べさせてくれるために開放してくれたわよ」

ちっ!あいつ、余計なことをしやがって。

て言うか一晩中、拘束されていたのに元気だな。

 

「助けてくれた、いっくんに惚れたりしたか?」

 

「いきなり何言ってるのよ。私が男に惚れるわけないでしょ。女装が似合うなら別だけど」

いっくんのフラグ体質を持っても刹那っちは無理だったか。

 

「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」

 

「はい」

打鉄用の装備を運んでいた侍娘が魔王に呼ばれて、そっちに向かうのが見えた。

 

「お前には今日から専用――」

 

「ちーちゃ~~~ん!」

砂煙を上げながらウサギが凄い勢いで走ってくる。

 

「やぁやぁ、会いたかったよ、ちーちゃん!さぁ、ハグハグしよう!何ならこのままベットで愛を――」

 

「黙れ」

魔王がウサギを片手で顔面を掴もうとした。

 

「フッフッ。それは昨日、しっくんに食らったから効かないよ。私は学習する生き物だからね。イェーイ」

魔王のアイアンクローを避けるとウサギは抱き付いた。

 

「やっばり、ちーちゃんの抱き心地は最高だね。このまま一生やっていても飽きないくらいだよ」

 

「そうか。私はごめんだ」

そう言うと魔王は鳩尾を思いっきり殴った。

 

「うおっ!」

そして、そのまま俺のところにぶん投げてきた。

 

「……仕方ないな」

俺は飛んできたウサギをサッカーのボールみたいに侍娘に目掛けて蹴った。

 

「……」

それを無言で侍娘が日本刀の鞘で叩き付けた。

 

「……」

そこを刹那っちが無言で近付いて脱がしていた。

 

「……何、この状況?」

かんちゃんがこの一連の光景を見て冷たい目で呟いた。

すでにウサギは下着姿になっているので、とりあえず写真を撮った。後でクロエに売るか。

 

「皆して束さんを苛めるなんて酷いよ!これ、束さんじゃなかったら大怪我だよ!泣いちゃうよ!」

この状況を見て他の生徒達がぽかんとしている。

 

「そら一年、手が止まっているそ。この馬鹿のことは無視してテストを続けろ」

魔王に言われて女子達は作業を再開した。

 

「今度は無視!本格的な苛めだね!ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ!」

喋りながら刹那っちから服を取り戻して着直した。

 

「そうか。それは世界が平和になるな」

 

「相変わらず、ちーちゃんはツンデレで可愛いなぁ」

ツンデレじゃなくて本心だと思う。

 

「ふざけたこと言ってないで早く本題に入れ」

 

「オーケーオーケー。すでに準備は完了しているのだよ。さぁ、大空をご覧あれ!」

そう言うとウサギはビシッと上空を指差した。それにつられて俺達も空を見上げる。

 

ズズーンッ!

 

すると上空から金属の塊が二つ砂浜に落下してきた。

そして次の瞬間、片方の金属の塊の正面らしき壁がばたりと倒れて中身が見えた。

 

「じゃじゃーん。これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ」

真紅の装甲に身を包んだその機体は、ウサギの言葉に応えるかのように動作アームによって外に出る。

 

「さあ!箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか!私が補佐するからすぐに終わるよん」

 

「おい、束。こっちのは何なんだ?」

 

「ああ、それ。それはしっくんと相談して暇潰しに作った物だよ」

と言うとアレか。シャルの件が終わった後にウサギの暇潰し用に頼んだヤツ。

 

「何で持ってきたんだ?念のために頼んだだけで今、必要な物ではないだろ」

 

「あははっ!いつ、何が起こるか分からないからね。念のためというヤツなのだよ、ワトソンくん」

絶対、何か企んでいるな。まぁ、俺は楽しめれば良いけど。

 

「じゃあ、箒ちゃん。こっちに来て。今度こそ始めるから」

ウサギがフィッティングとパーソナライズを開始したところで俺は自分の荷物を取り出した。

 

「それは何?」

 

「黒のパッケージだ。本来、第四世代機には必要ないんだが黒は趣味と試作を兼ねて作られた欠陥機だからな。第四世代機の技術が使われているのに、ほとんど第三世代機と同じ性能しかない。特にエネルギー効率は最低だな。その欠陥を埋めるための物だよ。だから一般的なパッケージとは意味合いが少し違うな」

と言っても、このままでも充分戦えるけどな。これが必要になるとか、どんな事態になるんだろうな。楽しみだ。

 

「深夜、その欠陥機って呼び方を変えてもらえると嬉しいんだけど」

 

「なるほど。だったら何て呼べばいいんだ?」

 

「特別機とかで良いんじゃない?」

確かに人型になってる時点で特別だが。でも、それだと優れているイメージがあるな。

 

「じゃあ、異常機はどうだ?」

 

「深夜の意見でも、それはさすがに嫌ね」

 

「う~ん、難しいな。まぁ、呼び方は後で考えるとして先にパッケージをインストールするか」

 

「ああ、そうだ。しっくん、言い忘れてたことがあったよ。まとめて持ってきてるけど今回は増設ブラスターをインストールしておいてね」

ウサギが作業しながら言ってきた。にしても、よくよそ見しながら同じ速度で作業を続けられるよな。ウサギには脳が二つあって別々に思考してる、って言われても信じられるな。

 

十分後、俺はパッケージのインストールが終わったのでウサギのところに来た。どうやら、今は紅椿の方は自動処理に任せて白式の様子を見ているみたいだ。

 

「よぉ、ウサギ。そっちはどうだ?」

 

「やぁ、しっくん。もう終わったの?相変わらず仕事が速いね」

 

「たかがインストールするだけで速いも何もないだろ。それにまだ調整も残ってるし」

 

「あははっ!それもそうだね」

だったら最初から言うなよ。

 

「それよりも今、いっくんと白式の改造計画について話してたんだよ」

 

「改造計画?」

普通に考えると遠距離装備を付けるとか、そんな感じか。

 

「いっくんが執事の格好になるんだよ。セバスチャンだね。もしくはメイド服」

 

「だったら女体化なんてどうだ?」

 

「おお、良いね!創作意欲が湧いてきたよ。イェーイ。帰ったら早速、作ろう。もちろん、しっくんの分も作るよ」

何か俺も色々、思いついてきた。後でアイデアをまとめるか。

 

「ちょっと待ってください!何で俺を無視して話を進めてるんですか!俺は嫌ですよ!」

 

「何で?面白いと思うけど」

 

「こんなに面白そうなことを断るなんて本気か?」

 

「何で俺がおかしい、みたいな雰囲気になってるんですか!?普通、女子の体になるなんて嫌でしょ!」

何を言ってるのか理解できない。

 

「……あの、盛り上がっているところ悪いのですが、こっちはまだですか?」

侍娘が話に割り込んできた。

 

「んー、もう終わるよ。はい、三分経った~。今の時間でカップラーメンが出来たね、惜しい」

今は三分じゃないカップラーメンもあるけどな。

 

「んじゃ、試運転も兼ねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」

 

「ええ。それでは試してみます」

プシュッ、プシュッ、と音を立てて連結されたケーブル類が外れていく。その次の瞬間には紅椿は凄い勢いで飛翔していた。

そして武装のテストを開始した。武装は刀で『雨月』と『空裂』。

雨月は対単一仕様の武装で打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出。射程距離はアサルトライフルくらいだ。

空裂は対集団仕様の武装で斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーをぶつける。しかも降った範囲に自動で展開する仕組みだ。

 

「さてさて一通り終わったけど、しっくんはどう思う?」

 

「データで見た時と比べると、だいぶ性能が低いな。少なくとも俺が満足できるレベルではない」

 

「これでか!?かなりの圧倒的なスペックだと思うが!」

まぁ、他の連中からしたらそうか。この段階でも一般と比べると充分なレベルだからな。

 

「俺の見たところ全力の一割ぐらいだな」

 

「まぁ、それは仕方がないよ。それだけ紅椿の性能は圧倒的だからね。いくら箒ちゃんでも一回で使いこなせるわけがないよ」

 

「……何か別次元すぎるな」

俺達の会話を聞いて周りがぽかんとしているが、どうでもいいか。それよりも魔王がウサギを鋭い支線で睨んでいる方が気になるな。まぁ、さすがに今回のはやり過ぎだからな。何たって各国が努力して開発している第三世代型ISの開発を無駄にする行為だ。俺に言わせれば第三世代ごときで手こずっている無能の方に問題があると思うが。

 

「た、大変です!お、お、織斑先生!」

物凄く慌てた様子でマヤマヤがやって来た。

 

「どうした?」

 

「こ、これをっ!」

マヤマヤが魔王に小型端末を渡す。その画面を見て魔王の表情が曇った。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし……」

 

「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていた――」

 

「機密事項を口にするな。生徒達に聞こえる」

俺には聞こえているがな。

そこから周りの生徒の視線を気にしてか手話でやりとりを始めた。しかも軍関係の暗号手話だ。まぁ、俺には分かるが。

 

「それでは私は他の先生達にも連絡してきます」

そう言うとマヤマヤは走り去っていった。そして魔王が手をパンパンと叩いて生徒全員を振り向かせた。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動に移る。今日の稼働テストは中止。各班はISを片付けて連絡があるまで各自室内待機すること。後、専用機持ちは全員集合しろ。以上だ」

ウサギが具体的に何を企んでいるかは分からないが面白くなってきたな。

 




話の展開的にここからは真面目な話が続きそうです。ですが、隙を見付けてボケていこうと思います。

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第37話 漫才

「ふむ。何で俺はこんなところにいるのだろうか?」

現在、俺以外の専用機持ちと教師が集まって、ある問題に対する会議を行っている。俺はウサギと会議が行われている部屋の屋根裏から中を覗き見している。

 

何でこうなったか思い出してみよう。

俺は専用機持ち全員が集まられているのに一人だけ魔王から室内待機をくらってしまった。おそらく俺みたいな何を考えているか分からないイレギュラーは邪魔だということだろ。それなら刹那っちも室内待機にしろ、と思うが。

そして次に情報を得るためにウサギのところに行った。そしたら『着いてきてね』と言われてので着いて行ったら、こんなところに来てしまった。

 

「こんなところにいるとスパイになったみたいで楽しいね」

 

「それは良いが、いつまでいるんだ?」

 

「もうちょっと待ってね。一番インパクトのあるタイミングで登場する予定だから」

確かにインパクトは大事だな。

暇だし、中の会話でも聞いておくか。

簡単に話をまとめると二時間前にハワイ沖で試験稼働していたアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が暴走。そして、この近くの空域を通過するので、それを専用機持ち達で倒すことになった。しかし時速二四五〇キロを越える速度で超音速飛行をしているのでアプローチは一回が限度。だから一撃必殺の攻撃力を持っている、いっくんの零落白夜で倒すという内容だ。

 

「よし、今だ!」

そう言うとウサギは顔だけ出した。

 

「待った待った。その作戦はちょっと待ったなんだよ~!」

 

「……山田先生、室外への強制退去を」

 

「えっ!?は、はいっ。あの篠ノ之博士、とりあえず降りてください」

 

「とうっ!」

そしてウサギは空中で一回して着地した。

 

「よっと!」

続いて俺は普通に降りた。

 

「……おい、飛原。何で貴様がいるんだ?貴様には室内待機を命じたはずだが」

 

「知りません。ウサギに無理矢理つれてこられたので」

 

「酷いなぁ、しっくん。怪盗になって一緒にちーちゃんの激レアな写真をとろう、って言ったじゃない。あ、今のは盗ると撮るを掛けたんだけど分かったかな?」

いっくんじゃないんだから、つまらないダジャレを説明するな。

 

「√25点」

 

「何で√!?普通に五点で良いでしょ!しかも点数が低い!」

 

「……ぷふっ!」

かんちゃんが何故か吹き出していた。

 

「ほらっ!あの髪が水色の女の子は笑ってるよ!しっくんとは違って分かってるね!」

 

「かんちゃんは笑いのツボが他の人と違うんだよ」

かんちゃんの笑いのツボは本当に分からん。今のどこに笑う要素があったんだ?

 

「……夫婦漫才をするんだったら帰ってくれ」

 

「あ、そうそう。夫婦漫才と言えば今度、しっくんとの結婚報告を――」

 

「しないわよ!」

黒が人型になってウサギに蹴りかかった。

 

「おっと、危ないなぁ。束さんの周りは暴力的な人が多くて困るねぇ。命がいくつあっても足りないよ」

しかし、ウサギはそれを軽々と避けた。

 

「深夜と結婚するのは私よ!」

 

「人間とISって結婚できるのか?」

 

「愛があれば関係ないわよ」

こういうことを言う奴が将来ヤンデレになったりするんだろうな。まぁ、黒は大丈夫だろうが。

 

「この非常時にいつまで楽しいやり取りをしているんだ、馬鹿者共!」

 

ごすっごすっごすっ!

 

鈍い音が三連続でした。いつもの出席簿の代わりに手に持っていた情報端末で殴ってきた。外側が金属で出来ており、かなり痛い。今すぐ保健室に行って頭を冷やしたいぐらい痛い。

そして無理矢理、正座させられた。

 

「ちーちゃん、そんなに怒ってたらシワが増えるよ。スマイルスマイル」

 

「……貴様らが余計なことをしなかったら怒る必要もないんだがな」

さすがにそろそろマズイな。真面目にやるか。

て言うか、ほとんどウサギの責任だろ。

 

「そろそろ本題に入ったらどうだ?俺もまだ聞いてないし」

まぁ、大体は想像はついているが。

 

「本題?何だっけ?ちーちゃんに叩かれたショックで忘れちゃったよ」

 

「次は本気でやるぞ」

魔王が情報端末を構えながら言ってきた。

 

「ウソウソ!しっかり覚えてるよ!」

 

「じゃあ、速く言え。こっちは時間がないんだ」

 

「さっきの作戦だけどね。ここは紅椿の出番なんだよっ!」

予想通りだな。

 

「何?」

 

「紅椿のスペックならパッケージなんかなくても超高速機動が出来るんだよ!しかも調整時間は√四九分あれば余裕だね!」

何で俺の真似をして√で言ったんだ?普通に七分でいいだろ。

 

「よし。では本作戦は織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦は三十分後、各員、ただちに準備にかかれ」

俺とウサギがふざけすぎたせいで時間がなく、他の連中には詳しい説明もないまま作業が始まった。さて、俺は作業を押し付けられる前に逃げるか。

 

 

 

俺はすることがなく暇なので作戦開始の時間まで風呂に入ることにした。全員、作業をしているか室内待機なので貸切状態だ。

 

「ヤッホー、束さんも浸かりにきたよ」

そろそろ時間なので出ようとしたところで全裸のウサギが入ってきた。何回、思ったか分からないが何故、俺の周りの女は羞恥心がないのだろうか?

 

「作業は終わったのか?」

 

「モチのロンだよ!天才束さんにかかれば昼飯前だよ!」

よく意味が分からない。

とりあえずウサギも風呂に入ってきた。

 

「いやぁ、箒ちゃんもサプライズパーティーを喜んでくれてるかな?」

 

「サプライズパーティー?」

単に妹を晴れ舞台でデビューさせたいだけだ思っていたが違ったのか?

 

「ん?あれ?もしかして、しっくん忘れたのかな?今日は箒ちゃんの誕生日だよ」

なるほど。何か忘れているような気がしていたけど、それだったか。

そして、このために紅椿が完成しているのに渡さなかったのか。

 

「そのためだけにこんな事件を自作したのかよ?」

 

「可愛い妹のためにお姉ちゃんが頑張るのは当たり前の話だよ」

頑張る方向が間違ってる気がする。まぁ、俺は楽しめてるからいいが

 

「それよりも束さんの裸を見てムラムラしてこない?時間まで後少しあるし、どう?」

 

「妹の晴れ舞台の前に何を考えてるんだ!?」

 

「束さんは相手がいなくて欲求不満ぎみなんだよ」

最近、欲求不満な奴が多いな。

 

「だったら帰ってからクロエとヤっとけ」

クロエだったら喜んでヤってくれるぞ。

 

「え~、ケチだな~」

 

「この作品はR15だからな。したくても出来ないんだよ」

 

「でも黒ちゃんとは毎晩ヤってるんでしょ?」

別に毎晩ではないな。

 

「それは描写されてないから良いんだよ」

 

「だったら束さんとも描写されてウワッ!」

 

「さっきから我慢してたけど私の前で何してんのよ!」

黒がウサギに向かってお湯をぶつけた。

 

「目に入ったらどうするのさ?」

 

「そのまま失明したらいいじゃない」

 

「酷いね。だったら三人でヤらない?束さんは歓迎だよ」

 

「どっちでもいいけど後にしろ。そろそろ時間だ」

 

「ああ、それもそうだね」

そう言うとウサギは空中投影のディスプレイを呼び出すと、そこには福音といっくんを背中に乗せながら超高速機動をしている侍娘が映った。

 

「後少しで戦闘が開始するね」

 

「そういや、黒のパッケージには何の意味があったんだ?俺は風呂でのんびりしていいのか?」

 

「大丈夫だよ。今回はしっくんの出番はないから」

今回は、ねぇ。次があるみたいな言い方だな。まぁ、侍娘も専用機を貰って浮かれているようだし失敗してもおかしくないか。

 

「それにちゃんと、しっくんも楽しめるように工夫してるから心配しなくていいよ」

 

「それは楽しみだな。そういや、福音のスペックはどんな感じなんだ?」

 

「うん、それはこんな感じだよ」

そう言うとウサギは別のディスプレイを呼び出した。そこには『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の詳細なスペックデータがあった。

操縦者は『ナターシャ・ファイルス』。広域殲滅を目的とした特殊射撃型でオールレンジ攻撃が可能。そして攻撃と機動の両方に特化している。

性能の高い高出力の多方向推進装置(マルチスラスター)に砲口が三六個もある特殊型ウイングスラスターを装備している。

 

「軍用ISって、こんなに性能が高いのかよ」

 

「これは他の軍用ISと比べても性能が高いよ」

 

「大丈夫か?」

紅椿があったとしても操縦者がアレだからな。正直、厳しい。

 

「大丈夫だよ。お、戦闘が始まったみたいだよ」

ディスプレイを見てみると、いっくんの零落白夜が避けられていた。最初の一撃で倒す予定だったみたいだけど失敗か。いっくんは続けて攻撃をするが全て回避されている。そして福音の反撃が始まった。

 

「データで分かってても、あの火力は凄いな」

狙いはそれほど正確ではないが連射が無茶苦茶速い上に爆発するエネルギー弾丸。しかも、それを回避行動をしながらしてるんだから恐ろしい。

一対一で勝つ自信はないな。

 

「行っけー、箒ちゃん。カッコいいー!」

そして侍娘が紅椿の機動力と展開装甲による自在の方向転換、急加速を間合いを詰めていく。そして福音の隙を作ることに成功した。

黒の展開装甲は試作品だったから使ったら、すぐにエネルギー切れをおこして使い物にならなかったが、本気で使えば、あんなことも出来るのか。

 

「これで決着か。俺の出番はなさそうだな」

 

「いやいや、しっくん。それは早計というものだよ。あそこを見てごらん」

ウサギに言われた場所を見てみると、そこには船があった。海上は封鎖されているはずだ。

 

「密漁船か。もしくはウサギが手配したのか?」

 

「そんなわけないでしょ。そんなことして何の意味があるっていうのさ?」

 

「知るか」

 

「根拠もないのに人を疑ってはいけません、って学校で習わなかったの?束さんは習ってないけど」

相変わらず嘘臭いな。

 

その後、いっくんは密漁船を庇いエネルギー切れ。そして、次に具現維持限界になった侍娘を庇って気を失った。




真面目な話になると思っていたのに、ここまでふざけた話になるとは。自分でも驚いています。

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第38話 本気

「起きなさいよ、馬鹿!」

部屋で気持ちよく寝ていたら、いきなり蹴起こされた。

とりあえず時計を見ると午前四時だった。

 

「こんな時間に何だ?夜這いか?今日は疲れているから無理だ」

起きて見てみると、俺を起こしたのは貧乳だった。

 

「ふざけんてんじゃないわよ!あんたにも協力してもらうわよ」

 

「協力?」

中途半端な時間に起こされたせいで無茶苦茶ねむい。気を抜くと二度寝しそうだ。

 

「私達で福音を倒すのよ」

 

「詳しくは知らないが魔王がそれを許可するとは思えないな」

 

「そりゃあ、私達の独断行動だからね。後で千冬さんに怒られるのも覚悟してるわよ」

面白そうなことになってきたな。まぁ、俺は団体行動が苦手だから参加する気はないが。

 

「何でそこまでやる気満々なんだ?やる必要があるとは思えないが」

 

「決まってるでしょ。私達で一夏の仇を取るのよ!」

 

「いや、死んでねぇよ」

 

「細かいことを気にするわね。そんなんじゃあ、モテないわよ」

本当に大丈夫か?かなり心配なんだが。

 

「て言うか、俺を誘う前に侍娘を誘えよ」

寝る前に少しだけ見たが凄い落ち込みようだったな。そういや落ち込み、っていうのはどういう感情なんだろうか?俺は落ち込んだことがないから分からない。

 

「ここに来る前にちゃんとやる気にさせてきたわよ」

まぁ、侍娘の思考は単純だからな。適当にそれっぽい言葉をかければやる気になるか。

 

「じゃあ、俺は寝るから代わりにそこで寝ている刹那っちを連れていけ」

 

「何で参加しないのよ!後、こいつも起こすか」

俺に質問しながら貧乳は刹那っちの方に歩いていった。

 

「だって俺がやる理由がないし。そして何より眠い。今、こうして喋っているのもめんどくさい」

 

「何よ、そのふざけた理由は!あんたもたまにはウワッ!」

刹那っちがいきなり起き上がって貧乳を凄い勢いで押し倒した。

 

「アレ?確か二組の胸が残念な人」

 

「殺すわよ!あんたもそんなにないでしょ!」

お前ほどではないけどな。

 

「もしかして夜這い?ちょうど相手がいなくて困ってたから胸が残念でも歓迎するよ」

 

「何であんたも飛原と同じ発想なのよ!?後、そろそろどいてくれない?」

 

「いや、我慢できないからこのまま」

 

「やめろ」

布団から出て刹那っちを殴って止めた。

 

「残念」

そう言うと刹那っちは渋々といった感じで貧乳から離れた。

 

「……いきなり何なのよ」

 

「寝ている刹那っちに攻撃の意志をもって近付くとこうなる」

寝ている時は無防備だから対処できるように家でしつこく教わったらしい。

 

「……あんた、分かっててやったわね?」

 

「さて、何のことやら」

わざとらしく肩をすくめながら言った。

 

「まぁ、いいわ。確か天吹だっけ?あんたも福音を倒すのに協力してほしいのよ」

 

「断る」

いつものふざけた態度じゃなくて仕事モードに入ったみたいだ。

前に一回だけ刹那っちの仕事の様子を見たことがあるけど言葉数も少なくなって、まるで別人だった。そういや、会議の時も一言も発してなかったな。

 

「何であんたも断るのよ!」

 

「仕事柄、そういうのには関わりたくないのよ。どこでどう繋がってくるか分からないから下手なことは出来ない」

 

「仕事?何よ、それ?」

 

「秘密」

何で俺には簡単に話したんだ?

 

「まぁ、いいわ。でも飛原には参加してもらうわよ」

 

「何故?」

 

「シャルロットに聞いたけど強力なワンオフ・アビリティーを持ってるらしいじゃない?」

ああ、前に少しだけ喋ったな。

 

「無理だ」

 

「何で?」

 

「シャルに能力の危険性は聞かなかったのか?それに今は黒が寝てるしな」

 

「それが何の関係があるのよ!だったら起こせば良いだけの話でしょ!」

何か目が覚めてきたな。二度寝は無理そうだ。

 

「この能力には精神面も影響するんだよ。万全じゃない精神状態で使う気はない」

万全でも使いたくないが。

 

「だから参加しないっていうの?」

 

「まぁ、関係なく参加はしないがな。そういや、かんちゃんは参加するのか?」

ラウラは聞かなくても参加してるだろ。

 

「私達のバックアップとしてね」

そりゃ、良かった。もしも時、助ける人数は少ない方が楽だからな。

 

「やる気のない俺達の相手をする暇があったら他のメンバーと作戦会議でもしておいた方が良いんじゃないか?」

 

「そうね。じゃあ、行くわ」

そう言うと貧乳は部屋から出ていった。

 

「じゃあ、刹那っちは寝とけよ」

 

「深夜くんはどこに行くの?」

 

「目が覚めてしまったからな。ちょっと散歩だ」

 

 

 

適当に岬のあたりを散歩していると柵に腰掛けたウサギを見付けた。どうやらディスプレイで福音の様子を見ているみたいだ。福音はうずくまった状態で静止している。

 

「こんなところで何をやっているんだ?」

 

「湯涼みをしているだけだよ」

いや、嘘だろ。風呂に入ったのは四時間ぐらい前だぞ。

 

「しっくんは何してるの?今から呼ぼうと思っていたところだったんだけど」

 

「ちょっと目が覚めたからな。散歩をしていたんだよ」

 

「そうなんだ。だったら時間まで一緒に喋らない?」

 

「まだ喋るのか?風呂でかなりで喋っただろ?」

長く喋りすぎて軽くのぼせたからな。

 

「まぁまぁ、良いじゃない。束さんはいつまででも喋ってられるよ」

 

「まぁ、俺も暇だし良いか」

その後、ウサギとのんびり話しているうちに五人が福音のところに到着した。そして砲弾パッケージ『パンツァー・カノニーア』を装備したラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』の攻撃で戦闘が開始した。

 

「ほぉ。パッケージってのは結構、使えるんだな」

紅椿の侍娘以外のISはパッケージを装備している。そして福音相手に有利に事を進めていた。

 

「まぁ、五人がかりだしね。でも、これで終わらないよ」

だが福音も反撃を開始して状況が厳しくなってきた。だが何とか福音の両方の翼を破壊することに成功する。

 

「でも、まだ終わらないんだろ?」

 

「うんうん、しっくんも分かってきたね。これからが本番だよ」

次の瞬間、海面が強烈な光の球によって吹き飛んだ。そして、その中心に青い雷を纏った福音が自らを抱くようにうずくまっている。

 

「これは『第二形態移行(セカンド・シフト)』か!」

 

「その通りだよ」

やばい!何かテンションが上がってきた!黒を初めて起動した時以来の高揚感だ!

 

「なぁ、黒も『第二形態移行(セカンド・シフト)』できないのか?」

 

「出来ないことはないけどやめた方が良いよ。黒ちゃんに負担がかかるからね。自然になるのを待つ方が良いんじゃないかな?」

まぁ、こればっかりは仕方ないか。

 

「いきなり何なの?気持ちよく寝ていたのに。そんな玩具を貰って喜んでいる子供みたいにテンション高くして」

俺の高揚感が伝わって黒が起きたみたいだ。

 

「おい、黒。ちょっと遊びに行くぞ!」

 

「深夜が言うなら良いわよ。説明は移動中にしてもらうわ」

 

「了解」

俺はIS『黒嵐』を展開する。

 

「ねぇ、アレは使うの?」

 

「一分だけな」

 

「おっ!アレ、使うの!」

 

「この方向に真っ直ぐ行くと、すぐに辿り着くよ」

 

「じゃあ、行ってくる」

そして俺は全力で福音めがけて発進した。

 

『そろそろ着くわよ』

すると福音が倒れているラウラに攻撃をするのが見えた。

俺はドリルの武装『ドリルアーム』を呼び出す。

 

「俺の可愛いラウラに何してやがんだ、テメェ!」

俺は高速移動の勢いのままぶん殴った。

だが俺の攻撃はエネルギーの翼に防がれた。ガードした翼は壊れた。

て言うか、何これ?俺、エネルギーの翼なんて知らないんだけど。俺が移動している間に翼が生えたのか?

 

『深夜!?何でここにいるの!?』

かんちゃんからオープン・チャネルで話しかけてきた。。

 

「よぉ、かんちゃん。メチャクチャ面白そうなことになってるから参加しにきたぜ」

 

『……深夜、口調が崩れてる』

確かにテンションが上がって口調が変なことになってるけど今、言う必要あるか?

 

「まぁ、いい。てめぇら、刮目して見やがれ!これから俺様の本気を見せてやる!」

俺が会話している間に福音の翼が復活していた。楽しめそうで何よりだ。

 

 

「ワンオフ・アビリティー発動!完全同調!」

 

 

『……何も変わってないけど?』

無粋なツッコミだな。

 

「見た目はな。まぁ、見てろ」

この能力は俺がIS『黒嵐』と意識を完全に同調させることで脳が活性化し人間の限界を超えることが出来る。だが、この能力には決定的な弱点がある。ISの保護機能を持ってしても長時間の使用に脳が耐えられない。ウサギの計算では十分以上の使用で俺は廃人になるそうだ。そして脳に確実に後遺症を残さないで戦える時間が二分弱。初めて使った時は脳がオーバーヒートして辛かった。何回も使用していけば脳が慣れて使用時間が長くなる可能性もあるそうだが試す気にはなれない。

だが一番やっかいなのが全能感なんだよな。人間の限界を超えるせいで神にでもなったような錯覚がおきて気持ち良い。

 

俺はドリルアームを戻して『スカイルーラー』を全機と『グングニル』を呼び出す。

 

「さぁ、パーティーの開始だ!」

 

『敵機の情報を更新。攻撃レベルAで対処する』

福音のエネルギー弾による一斉射撃が始まった。

 

「お兄ちゃん!大丈夫か!」

ラウラの俺を心配してくれる声が聞こえてきた。とりあえずラウラは無事みたいだな。良かった。

 

「心配してくれるのは嬉しいが、この程度でやられる程お兄ちゃんは弱くないぞ」

大量のエネルギー弾の嵐から俺は何事もなかったかのように現れた。

今の俺には周りがスローモーションで見えている。だからスカイルーラーで当たる攻撃だけをガードしたのだ。

 

「にしても実際に見てみると凄いな」

やっぱりデータで見るだけと実践は違うな。面白い。

 

「楽しいパーティが始まったばかりで悪いが、こっちには時間がなくてね。もうお開きとしよう」

そう言うと俺は新たに盾の非固定装備『矛盾』を呼び出し、スカイルーラーによる一斉射撃を開始した。

 

『お楽しみのところ悪いけど、こっちに来るIS反応があるんだけど』

 

「は?誰が?」

俺は黒の発言に驚きながらも福音の避けきれない攻撃だけを矛盾で防ぎつつ、スカイルーラーで相手を追い詰める。

 

『この反応は白式ね』

と言うことは、いっくんか。

 

「おいおい、あの怪我で来るか普通?さすがヒーローだな」

 

『どうする?福音は適当に弱めて、いつも通り出番は譲るの?』

 

「いつもなら、そうするんだがな。今は気分が高まってるから譲ってやるつもりはない。それに、そろそろ止めだ」

俺は福音の動きをスカイルーラーで囲んで止める。今の俺なら複雑な動きをする福音の行動を予測して詰め将棋の如く追い詰めることも可能だ。

 

「初めて本気を出して楽しかったが、これでパーティーは終了だ」

そう言うと俺はグングニルを構える。

 

「一撃滅殺!グングニル!」

そして全力でグングニルを投擲した。

 

『キアアアアアアア……!』

福音は獣の咆哮のような声を発して片方の翼は破壊されるもギリギリのところで回避した。

 

「おいおい、嘘だろ!あのタイミングで避けられるのかよ!」

やばい!こんなに面白いことは久し振りだ。もっと遊んでいたい気分だ。

 

「でも、これで終了だって言っただろ?」

俺は福音が反撃してくる前に『矛盾』によるラストアタックで倒した。

『矛盾』は盾でありながら矛の性質を持つ矛盾した武装だ。

 

そしてアーマーを失い、スーツだけの状態になった操縦者『ナターシャ・ファイルス』が海に堕ちていく。

 

「仕方ない……」

 

「お兄ちゃん、こっちは大丈夫だ」

俺が助ける前にダメージから回復したらしいラウラが操縦者をキャッチした。

 

「ナイス、ラウラ!」

さて、これで終わりだな。

 

「完全同調、解除」

能力を解除すると同時に俺は凄い疲労感に襲われる。そして頭が痛い。

 

「おい、黒。時間は大丈夫だったか?かなりしんどいんだが」

 

『使用時間は二分三秒。確実安全ラインは少し越えてるけど大丈夫だと思うわ』

楽し過ぎて時間をオーバーしたようだな。後でウサギに見てもらうか。

 

「おい、皆!無事か!……って、あれ?福音は?」

ヒーローは遅れてやって来る、と言うが遅れすぎだな。

て言うか、怪我が治っているように見えるんだが。まさかISによる生体再生か。話にきいた『白騎士』みたいだな。

 

「よぉ、いっくん。遅かったな。福音は俺がたった今、倒したぞ」

 

「深夜か。折角、急いで来たのにこれはないだろ……」

これでVTシステムの時の借りは返したな。

 

「まぁ、皆が無事で良かった」

 

「そういや、皆は無事なのか?俺が来た時には全員、倒れていたが……」

ラウラの無事を確認できたら俺には充分だから、他のメンバーは確認してなかった。

 

「えっ!?マジか!」

そう言うと、いっくんは皆の安全を確認しに行った。

 

「かんちゃん。かなり疲れたから迎えにきてくれ」

 

『分かった。待ってて』

かんちゃんにオープン・チャネルで救援要請をすると俺は近くの休める場所に移動した。




やっと出せました、深夜のワンオフ・アビリティー。かなり最初の方から思い付いていて、ずっと出したかったんですよね。ちなみに話の展開しだいでは出ない可能性もありました。

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第39話 終了

「作戦完了と言いたいところだが、お前達は独自行動により重大な違反を犯した。帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるから、そのつもりでいろ。後、飛原には他の連中よりも更に厳しい罰が待っているから覚悟しろ。死んでも責任は取らん」

俺達が戻ってくると休む暇もなく魔王に捕まって大広間で正座させられながら説教をくらっている。

 

「織斑先生、何で自分だけ特別待遇なんですか?」

 

「貴様が最初から参加していれば、他の連中が怪我をすることもなかっただろうからだ」

何だ、それ?矛盾してるだろ。参加するな、と言っておきながら最初から参加しなかったから罰を与えるとか。

 

「先生、私は参加してません。殺られた皆を助けに行っただけです」

誰も死んでねぇよ。て言うか自分だけ助かるつもりかよ。

 

「更識妹が出撃していなかったとしてもバックアップしていたのは事実だ」

それに関しては俺も同意見だ。

 

「あ、あの、織斑先生。もうそろそろ、そのへんで……。怪我人もいますし、ね?」

マヤマヤがあたふたしながらも魔王に注意する。

 

「そうだな。一度、休憩してから診断だ。飛原と更識妹は室内待機してろ」

さて刹那っちを起こして朝食を食べにいくか。

 

 

 

部屋に戻ると刹那っちが腹を出しながら爆睡していた。

 

「自分で言っておいたことだけどイラッとくるな」

 

「……どうする?」

 

「叩き起こす」

とは言え、どうしたものか。下手に近付くと、こっちがやられる。

 

「山嵐で起こす」

 

「……いや、そんなことしたら魔王に怒られる」

かんちゃんは時々、かなり過激な発言をするよな。

 

「だったら、他に案があるの?」

 

「隣で俺と黒とかんちゃんでエロいことをしていたら、凄い勢いで起きるだろうな。嫌がらせにもなる」

 

「……寝言は死んでから言って」

かんちゃんがIS『打鉄弐式』を展開する。

 

「謝るからやめてくれ」

 

「……残念」

かんちゃんがISを戻した。何でこんな性格になったんだろう?最初は大人しかったはずだが。不思議だ。

 

「じゃあ、普通に縄で縛って起こすか」

 

「それ、普通なの?」

刹那っちが目をこすりながら起きてきた。

 

「ちっ!起きたか」

 

「そりゃあ、起きるよ。私は眠いが浅いからね。近くで会話してたら普通に気付くよ」

だったら何で腹を出しながら爆睡してんだよ。

 

「まぁ、いいか。じゃあ、朝飯を食べにいくぞ」

 

 

 

 

俺は夕食を食べ終わったところでウサギのいるところに向かった。

場所はまた岬で、柵に腰掛けている。気に入ったのか?

 

「やぁ、しっくん。そろそろ来る頃だと思っていたよ」

 

「いや、来るだろ。約束してんだから」

何、当たり前のことを言ってんだ?

 

「……しっくんって自分の演出を大事にする割りに、他の人の演出はつぶすよね」

 

「俺は性格が悪いからな。他人の思い通りになるのは嫌なんだよ」

 

「まぁ、いいや。しっくんも腰掛けたら?気持ちいいよ」

俺はウサギに促されるまま隣に座った。

 

「それよりも検査の結果はどうだった?」

俺は昼にワンオフ・アビリティーの影響で脳に異常がないか調べてもらった。

 

「全くナッシングだよ。ノープロブレムだね」

 

「そうか。それは良かった」

 

「にしても、しっくんもやり過ぎだよね。しっくんが一人で福音を倒したせいで、いっくんと箒ちゃんの戦闘データが取れなかったよ」

 

「IS学園に戻ってから俺がデータを取ってきてやるから我慢しろ。それに福音を倒したのは世間的には、いっくんと侍娘になってるんだから良いだろ。妹を晴れ舞台でデビューさせる計画は成功したんだ」

ウサギが色々と手回しをしたおかげで俺が福音を倒したという情報は、いっくんと侍娘が倒したという内容に改竄されている。俺的にも、そっちの方が助かる。まだ目立つつもりはないからな。

 

「まぁ、そうだけどね。これで目的の半分は達成かな」

 

「半分?」

まだ他にも計画があったのか?

 

「ここからは真面目な話になるけど良いかな?」

 

「ああ、いいぜ」

ウサギと真面目な話なんて一回もしたことなかったな。内容が想像できない。

 

「ねぇ、しっくん。人外(こっち)の世界に来るつもりはない?」

 

「は?」

ウサギが意味の分からないことを言うのは珍しくないけど、今回はいつもと意味が違いそうだ。

 

「ああ、単刀直入すぎたね。つまり、しっくんは生まれて初めて本気を出して楽しかったでしょ?」

ああ、そういうことね。

 

「つまり俺に篠ノ之束や織斑千冬と同じステージに立て、そういうことか?」

つまり、今回のウサギの目的は侍娘の誕生日会と俺に本気を出させることだった。

 

「そういうことだね。しっくんと束さんは友達ではあるけど親友ではないからね」

俺は天災『篠ノ之束』を理解することが出来ても、決して対等ではない。

 

「ちーちゃんはそんなに相手してくれないし、束さんも対等に遊べる親友が欲しいんだよ。でも、しっくんはその可能性があるのに中々来る気配がないからね」

 

「今まで俺が本気を出す機会がなったからな」

まぁ、負けたことがないわけじゃないがな。去年、近くで元オリンピック選手が教える卓球教室に乗り込んで戦った時は負けたな。一セット取るのが限界だった。チェスならネットでプロに勝ったことがあるが。

 

「でも束さんなら、今回みたいに本気を出す機会を与えることが出来るよ」

 

「それは興味深いな。例えば何だ?」

まだ俺の知らない世界があるということか。それはワクワクするな。

 

「そうだね。しっくんは第二形態移項(セカンド・シフト)で喜んでいたけどISにはまだ第三形態移項(サード・シフト)があるよ。それに束さんは既に第五世代機の構想も考えているし」

 

「ほぉ、つまりISには俺の知らない領域がまだまだあるということか」

それは考えてだけで楽しいな。未来に希望を持てるのは良いことだ。

 

「それに裏の世界には束さんレベルも数少ないけど存在するしね」

 

「マジか!ウサギみたいな人外が他にいるのか!」

 

「いやぁ、しっくん。今まで見たことのないような良い笑顔だね。惚れちゃいそうだよ」

そりゃあ、笑顔になるさ。今まで色々と楽しんできたけど、本気でやる方がもっと楽しいことが分かったからな。

 

「で、どんな奴がいるんだ?」

 

「束さんもそんなに詳しいわけじゃないけどね。自分の主以外に姿を見られたことがない、生きながらにして伝説と呼ばれる暗殺者がいるという噂を聞いたことがあるね」

普通に考えたら物理的に不可能だと思うが、もしそんな人物がいるとしたら人間の可能性は凄いな。

 

「他にはISを素手で殴り飛ばした人がいるというのも聞いたことがあるよ」

 

「いやいや、そんなの世界最強でも出来ないだろ!」

 

「まぁ、ただの噂だけどね。でも、その噂の人物は人類最強と呼ばれていて裏の世界では、ちーちゃんよりも強いと言われているよ。詳しいことが知りたかったら刹那っちに聞いたらどうかな?」

よし、後で聞くか。 ついでに他の有名どころも確認しよう。

 

「後、数年前に束さんのラボにハッキングがあってね。まぁ、ハッキング自体は珍しくないんだけど、あの時のは凄かったな。何とか撃退には成功したけど、いくらか情報を持っていかれたし」

それは凄いな。ウサギに匹敵するハッキング技術か。

 

「もしかしたら束さんの知らないISコアが裏で出回っている可能性もあるね」

いや、それ本当だったら、かなりヤバいんじゃないか?

 

「で、しっくん。人外(こっち)に来る気になったかな?」

 

「いや、ないな」

 

「え!?何で!?人外(こっち)の存在は他の人間に理解されないからね。もしかして、それが嫌なの?確かにそれが嫌で来ない人間もいるらしいけど」

こんなに焦っているウサギを見るのは初めてだな。そんなに意外だったのか?見ていて面白いな。

 

「いやいや、そうじゃない。大体、俺はほとんどの人間を玩具にしか思ってないんだ。だから俺が理解していれば充分で、向こうが俺を理解する必要はない」

俺が友達だと思っているのは更識簪と篠ノ之束だけ。家族と思っているのは黒嵐とラウラ・ボーデヴィッヒだけ。敵と思っているのはシャルロット・デュノアと織斑千冬だけ。その他は天吹刹那だけ。これが俺が今のところ正確に認識している全てだ。後、更識楯無は友達になる可能性があるな。

 

「だったら何で?」

 

「単純な話だ。今はこの状態を楽しみたいんだ。俺が人外(そっち)に行くのはIS学園を卒業してからだ」

 

「う~ん、しっくんなら人外(こっち)に来ても器用にやっていけると思うんだけどね。まぁ、しっくんがそう言うなら待ってるよ」

確かに器用にやっていく自信はあるが、それは対等じゃない。少なくともIS学園在学中に何人かは巻き添えにしないと行く気にはなれない。まぁ、元々卒業してから行く予定だったが。

 

「そういや、さっきの裏の住人の話だけど。そんなに凄い人物なら表でも活躍できると思うんだが」

 

人外(こっち)の存在は人間と違い過ぎて上手くやっていけないんだよ。分類上は同じ生物なんだけどね。だから表で有名な束さんとちーちゃんが例外なのさ。そして普通に人間と生活してるちーちゃんは更に例外だね」

 

「そういや、前に俺も似たような考察をしたことがあったな。何でだ?」

 

「束さんの予想で良いなら言うよ。行き過ぎた力は人々に恐怖を生む。でも、更にそれを越えた力は人々を崇拝させる」

なるほど、有り得る話だな。だったら、さっきの人類最強はどうなのか気になるな。

 

「もしくは力が強すぎて逆に理解されてない可能性もあるけどね」

 

「……それって、生物なのか?本格的に魔王じゃねぇか」

 

「誰が魔王だ、馬鹿者」

急に現れた魔王に殴られた。

 

「ちょ、落ちたらどうするつもりなんですか!?」

危なかった。ギリギリでバランスを取ったけど、後少しで海にダイブするところだった。

 

「知るか。そんなところで座っているお前が悪い」

殺人未遂で、この態度はおかしいだろ。

 

「ところで、ちーちゃんは何しに来たのかな?もしかして束さんに会いに来たのかな?」

 

「そんなわけないだろう。私は勝手に抜け出した飛原を連れ戻しに来ただけだ」

そう言うと魔王は俺の首根っこを掴んで引っ張った。

 

「痛い痛い!首が絞まる!殺す気か!?」

 

「勝手に抜け出した罰だ」

こいつが普通に人間と生活できている理由が今分かった。他の人間を圧倒的な暴力で支配しているからだ。

 

「ああ、そうだ。最後に一つ質問」

 

「何だ?手早くすませろ」

そしてウサギは溜めて言った。

 

「今の世界は楽しい?」

 

「そこそこにな」

 

「俺は自分で楽しくしてるから問題ない」

 

「そうなんだ。じゃあ、また今度ね」

そう言ってウサギは手を振ると次の瞬間に消えた。良い演出だな。俺の首根っこが掴まれてなかったら。

 




微妙な感じですが今回で本編は最終回です。次回からは番外編に入ります。一発目はかなり自由にいこうと思っています。

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第40話 魔法少女

今回はブリーチ・なのは・SAOネタがあります。


今日は夏休み初日。そして現在、昼食を食べ終わりIS学園の生徒はあるイベントのために第三アリーナに集まっている。

 

「皆さん、お待たせしました。さぁ、始まります、魔法少女バトル。今日はいつもISで空を飛び回っている彼女達が魔法少女になって空を舞います。高校生にもなって魔法少女とかキツいと思っている観客の心の声が聞こえてきますが無視していきます。実況&解説はもちろん、この私、ラウラ・ボーデヴィッヒの頼れる兄、飛原深夜と――」

 

「簪ちゃんの愛する姉、更識楯無です。そして今日は特別ゲストが二人きています」

『の』じゃなくて『を』の間違いなんじゃないか、とかツッコまない。

 

「イェーイ。箒ちゃんのアイドル、篠ノ之束でぇーす」

 

「え~と、ブリュンヒルデの弟、織斑一夏です」

 

「以上のシスコン四天王で今日の魔法少女バトルをお送りします」

このイベントをするために生徒会や職員室に頼みこんだり、徹夜で頑張ったりしたのでテンションがおかしくなっている。

 

「俺もシスコン四天王に入ってるのか!?」

 

「当然だろ」

 

「いやいや、俺シスコンじゃないし!」

今、どこがで誰かがショックで倒れたような気するが気のせいだろ。

 

「そう言えば、こんなタレコミがあったな。織斑一夏と織斑千冬のプライベートを見ていると夫婦にしか見えない。つまり織斑一夏は織斑千冬を実の姉としてではなく嫁として見ているからシスコンではない、こういうことか?」

今、誰かが復活したような気がするが気のせいではないな。

 

「誰のタレコミだよ!」

二人のプライベートを知っている人間に質問したら全員がそう答えた。

 

「おー、さすが、いっくん。やるね~。束さんも見習わないと」

 

「って、何で束さんが普通にいるんですか!?千冬姉に止められなかったんですか!?」

 

「ちーちゃんも誠心誠意お願いしたら分かってくれたよ」

 

「嘘つけ。ただの利害の一致だろ」

しかも交渉したの俺だし。

 

「あの……、そろそろイベント開始しない?」

 

「おっと、そうでした。では、シスコン四天王で盛り上げて実況していくので楽しんでいけよ、野郎共ぉぉぉー!」

 

「「「うぉぉぉぉぉーーー!!!」」」

 

やっぱりIS学園はノリが良いな。

 

「……いや、観客は全員女だろ」

 

「さて、今回の参加人数は天吹刹那を除く一年の専用機持ち六人です。そして勝者には私が叶えられる範囲で願いを叶えます」

 

「話したことないけど、その天吹は何で参加しないんだ?」

刹那っちは願いが邪過ぎたので強制的に失格にした。人数調整の意味もあるが。ちなみにイベントを邪魔されないために縄で縛って学園の地下に監禁している。

 

「次にルール説明をします。まず、予選と本選に分けられています」

 

「……また無視か。もう慣れた」

いっくんが隣で何か言ってるが無視だ。

 

「予選のルールは単純明快。一対一でのガチンコバトルに勝った方が本選に進みます。本選のルールは後で説明します」

 

「では次にシステムの説明をお願いします、束博士」

 

「OKOK、任せておいてよ。まず魔法少女に変身するには、しっくんと束さんが共同で開発したデバイスを使います」

元々デバイスは別の目的で作ったんだけどな。

 

「デバイスは自分の専用機と繋げて、そのエネルギーを元に動くよ。だから絶対防御などの機能もあるから安全快適なのさ」

 

「ちなみに、篠ノ之束が作った物をベースとして自分達が改造しています」

俺が担当したデバイスはラウラと貧乳だ。後、最初だけかんちゃんのも手伝った。

 

「私も生徒会総出で簪ちゃんのデバイスを手伝ったわ」

完全な職権乱用だな。

後、残りの侍娘とシャルとパッキン女はウサギがまとめて担当した。ちなみにシャルのデバイスの改造案は俺が出した。

 

「では、予選の組み合わせを発表します」

たっちゃんがそう言うとアリーナのディスプレイに予選の組み合わせが表示された。

 

一回戦 篠ノ之箒VSセシリア・オルコット

 

二回戦 ラウラ・ボーデヴィッヒVS凰鈴音

 

三回戦 更識簪VSシャルロット・デュノア

 

「お、いきなり箒ちゃんの試合だね」

 

「では、選手にはピットの入口で変身してからアリーナに入場してもらいます。ちなみに変身シーンもしっかりとアリーナのディスプレイに映り出されます」

 

「「セートアップ!」」

 

二人は掛け声と共に姿を変えていく。そしてアリーナに入場してきた。

 

「って、箒の格好、魔法少女じゃないじゃないですか!?」

侍娘は赤を基調とした妖精の格好をしている。そして武器は深い黄金色の刀身をした刀だ。

やばっ!ネタが被った。

 

「種族は『火妖精族(サラマンダー)』だね。そして武器は『聖剣エクスキャリバー』。ちなみに魔法も使えるし、束さん特製のオリジナルソードスキルもあるね。後、とっておきの切り札もあるよ」

何それ?チートだろ。

 

「……え~と、束博士。この企画の趣旨、分かってます?」

 

「当然だよ。魔法少女バトルでしょ?」

 

「だったら何故、魔法少女ではなく妖精なんですか?」

キツいからだろ。

 

「そりゃあ、箒ちゃんにはこっちの方が似合うと思ったからだよ。それに束さんの中でマイブームが来てるしね。魔法少女じゃなくて妖精剣士だね」

 

「……楯無さん。束さんには何を言っても無駄ですよ」

 

「……そのようね」

いっくんとたっちゃんが小声で何かを言っている。

 

「箒ちゃん、頑張ってね」

 

「姉さんは自分の仕事に集中してください」

 

「しっくん。箒ちゃんが冷たいよ~」

そう言いながらウサギが俺に抱き付いてきた。とりあえず無視して続けるか。

 

「続いてパッキン女の紹介に入りたいんですが一言、言うならキツいです。観客の皆さんの『ウワー、キツい。似合ってねぇー。恥ずかしくないのかよ』という心の声が聞こえてきます」

何と言うか小学生ぐらいの魔法少女が着る服をサイズだけ大きくした感じだ。しかもミニスカ。最初から予想はしていたけど、やっぱり物凄くキツい。見ている方が恥ずかしくなる。何の羞恥プレイだよ。

 

「ちょっと、それは酷いじゃないですの!わたくしだって好きで、こんな格好をしているわけじゃありませんわ!」

パッキン女が顔を赤くしながら叫んだ。正直、見たくないし速く終わらせるか。

 

「そういや、武器って何でしたっけ?」

ウサギが特注した侍娘以外の装備は確認したはずなのに思い出せない。

 

「さぁ、何だっけ?確か、起動したら自動で頭の中に使い方が流れ込んでくるように設定してるはずだけど」

 

「入ってきませんわよ」

 

「んー、どういうことだろうね?バグかな?」

何かめんどくさいから、もういいや。

 

「では、試合開始!」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「いざ参る!」

そう言うと侍娘は聖剣エクスキャリバーを構えながらパッキン女に突っ込む。

 

「フレイムブラスト!」

刀が炎を纏い、十三連撃でパッキン女を切り裂いた。

 

「ふん……」

そう言うと侍娘は刀を鞘に入れた。

 

『試合終了。――勝者、篠ノ之箒』

 

試合は一瞬で終わった。

 

「きゃゃゃゃゃっーーー!!!」

パッキン女が試合終了のアナウンスが終わると絶叫した。

 

「何でセシリアの服が脱げてんだ!?」

 

「ああ、言い忘れてました。負けた選手は罰ゲームとして脱げます」

そのせいでシスコンの心は妹に勝ってほしいけど、負けて裸が見たいという相反する感情に葛藤している。

 

「では二回戦の選手、変身してください」

 

「セシリアは無視か!?」

 

「……織斑一夏くん。深夜くんに何を言っても無駄よ」

 

「……それは分かってます」

俺をウサギと同じ扱いするなんて失礼だな。

 

「「セットアップ!」」

 

そして次の選手が入場してきた。

 

「飛原!私は何で男の格好なのよ!?」

貧乳の格好は学ランだ。そして武器はリボルバーナックル。

 

「そのツッコミをさせたくて」

 

「これは魔法少女バトルじゃないの!?」

 

「うるさいな。それに貧乳は魔法少女よりも、そっちの方が似合ってるし。なぁ、いっくん」

 

「ああ、似合ってるぞ」

 

「あんたは私が男に見えるって言うの!」

胸がないし男の格好だし正直、見えるな。

 

「そんなことよりも注目は俺の可愛い妹、ラウラ・ボーデヴィッヒです!」

 

「……おい、深夜。あれも魔法少女じゃないぞ」

ラウラの格好は黒を基調としており猫耳に尻尾つけた妖精の格好をしている。そして卍型の柄に漆黒の色の刀を持っている。

 

「……言うな。俺もネタが被ったことを気にしているんだ」

まさか、こんなことになるとは。ちゃんと事前に確認しておけばよかった。

 

「しっくんは獣耳が大好きだね。束さんのウサ耳も撫でてみない?」

 

「ああ、俺は小動物が大好きだからな」

ちなみに最初は黒ウサギ隊だからウサ耳にしようと思ったがネタ被りだからやめた。

 

「種族は『獣妖精族(ケットシー)』で武器は『天鎖斬月』だ」

 

「ちょっと待て!何で天鎖斬月!?せめて作品は統一しろよ!」

 

「しょうがないだろ。一緒にアニメを見ていてラウラがアレを格好いい、って言ったんだから。それに俺とラウラのイメージカラーの黒色だし」

デザインは俺と黒ウサギ隊の皆で考えて、装備はラウラの意見を出来るだけ取り入れている。

 

「後、鬼道も少し使えるし奥の手も用意しています」

他にも色々やりたかったけど時間が足りなかった。三日ほど徹夜したのに。

 

「それに見ろよ、あの尻尾。頑張って動きまで再現したんだぜ。その他にも――」

 

「え~と、深夜くんの話が終わりそうにないので試合開始!」

もう試合が始まってしまったか。まだまだ語り足りないんだが仕方ない。

 

「頑張れ、ラウラ!」

 

「実況が堂々とひいきしてんじゃないわよ!」

 

「兄が妹を応援するのは当たり前だろ」

 

「うんうん、しっくんの言う通りだね」

 

「それに関しては私も同意見ね」

妹は可愛いんだから当然だよな。

 

「くっ!シスコンに何を言っても無駄か」

 

「俺はそれよりも魔法少女バトルなのに魔法少女がいないことの方が気になるな」

それに関しては俺も気になっている。これならコスプレバトル大会にした方が良かったかな?

 

「いつまで話してる。行くぞ!」

 

「来なさいよ!」

 

「月牙天衝!」

ラウラの刀から黒いエネルギー波が放出される。

 

「ちょ、何よ、これ!?反則でしょ!?」

それを貧乳はギリギリのところで避ける。さすがに威力と速度までは再現できなかったからな。

 

「私には近接装備しかないのよ!」

 

「大丈夫大丈夫。その分、機動力は高いから」

 

「信用できないけどしょうがないわ。これでやるしかないんだから。優勝商品のためにも頑張るわよ」

 

「フッ。優勝商品を貰うのは私だ」

すると貧乳がラウラに向かって突撃するが軽くいなされている。

 

「二人があれほどやる気になる優勝商品ってのは何なんだ?」

 

「終わったら分かる」

二人が優勝商品に望んだのは、いっくんとの同室だ。ちなみに侍娘とパッキン女も同じだ。シャルは言いたくない。かんちゃんは俺が変わりに夏コミで色々、買い物をしてくることだ。しかも俺の自腹で。まぁ、元々黒ウサギ隊を案内する予定だったので俺としては問題ないな。

 

「どうした?その程度か?」

悪役みたいなラウラも良いな。俺は元々、かんちゃんと違って悪役が好きだし。

 

「くっ!性能が違い過ぎる」

 

「当たり前だろ。ラウラのは俺が黒ウサギ隊と協力して改造したんだから。俺は徹夜で黒ウサギ隊に限っては仕事をサボってまでしたんだから。ちなみに貧乳のは、俺が気分転換がてら改造した」

ラウラと貧乳のデバイスは天と地ほどの性能差がある。

 

「軍人、それで良いの!?」

問題ないだろ。上司は俺が適当に弱みを握って脅しておいたし。

て言うか、戦いながらツッコむとか器用だな。

 

「早くメインイベントに行きたいんで、そろそろ試合を終わらせてください」

 

「……深夜くん。それ、実況じゃなくてスタッフの台詞じゃない?」

 

「俺はスタッフも兼任している」

おかけで、かなり疲れた。イベントが終わったら爆睡するか。

 

「では、お兄ちゃんの言う通りに終わらせるか」

ラウラはそう言うと貧乳に指を向けた。

 

「縛道の六十一『六杖光牢』」

六つの帯状の光が銅を囲うように突き刺さって貧乳の動きを止めた。

 

「何これ!?動けないんだけど!」

 

「では、止めだ!月牙天衝!」

動けない貧乳は攻撃を避けられずに敗北した。

 

『試合終了。――勝者、ラウラ・ボーデヴィッヒ』

 

そして敗北した貧乳は全裸になった。

 

 




今回は番外編一発目なので、かなり自由にやっています。魔法少女をベースにした話にする予定だったのに、何故かほとんど登場していませんが大丈夫です。後半は魔法少女がちゃんと登場しますから。

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第41話 決着

「なぁ、何で全裸になる必要があるんだ?」

 

「こういう時に服が脱げるのは定番だろ」

俺は様式美を大事にするのだ。

 

「ところで織斑一夏くん。一回戦の時よりもリアクションが薄いね」

 

「そりゃあ、いっくんが巨乳好きだからだよ。あんな男と大して違わないまな板には興味がないんだね」

 

「そんな当たり前のことはいいから、早くどいてくれないか」

抱き付かれてる首がそろそろヤバい。

 

「おい、俺の巨乳好きは共通認識なのかよ!」

 

「誰が男と大して違わないまな板なのよ!ブッ飛ばすわよ!」

 

「図星を突かれたからってキレないでください」

 

「うるさいわね!まだ成長するわよ!」

いや、どう考えても無理だろ。

 

「じゃあ、三回戦の選手、入場してください」

 

「ちょ、まだ私の話は終わってないわよ!」

 

「その話は後にして早くどいてください。次の試合が始められません」

 

「くっ!」

貧乳は、こっちを睨みながら退場した。

 

「「セットアップ!」」

そして次の選手が入場してきた。

 

「待ってました!遂に簪ちゃんの出番です!イェーイ!」

妹の出番にテンションが上がるシスコン。

 

「お姉ちゃん、恥ずかしいから黙ってて」

そのシスコンを冷たい目で見る妹。

 

「何か最近、簪ちゃんに蔑まれるのが気持ちよくなってきたわ」

物凄く幸せそうな顔をしている。変態が感染してきているようだ。

 

「……え~と、目覚めてはいけない何かに目覚めた変態は無視して紹介に入ります」

何故、俺の周りは変態が多いのか謎だ。

 

「まずは更識簪選手。水色を基調としたシンプルなデザインが非常に良く似合っており素晴らしいです。まさしくシンプル イズ ベスト。これぞ、魔法少女と言った姿です」

ちなみにデザインはかんちゃんが自分の好きなアニメの主人公をベースに考えた。

 

「……深夜も褒めなくていい」

 

「いえいえ、褒めているわけではありません。事実を述べているだけです」

さすがアニメ好き。ラウラには劣るが素晴らしい出来だ。

 

「しっくんはあの簪、って女の子には優しいよね」

 

「そりゃ、同室だからな。それに親友候補でもあるし」

 

「へぇ、あの子が。それは楽しみだね」

出来れば引きずり込みたいんだよな。

 

「次は武器の紹介です。簪選手は今までの選手とは違いオリジナル。性能も多彩で強力な武器です」

かんちゃんの武器は、これまた魔法少女と言った感じの杖だ。まぁ、能力はえげつないが。

 

「次はシャルロット選手の紹介ですが何と言うか、あざといです!簪選手と同じくシンプルなデザインなのですが物凄くあざといです!」

 

「同じことを二回も言わなくていいよ!」

 

「大事なことなので二回、言いました」

似合ってはいるんだが、このあざとさは何だ?大きなお友達には人気が出そうだが、女子には嫌われそうな感じだ。

 

「他の皆さんはどう思いますか?」

 

「あざといわね」

 

「あざといね」

 

「似合ってて良いと思うぞ」

やっぱり男にはウケるけど女には駄目だったか。

 

「何なの、これ!?恥ずかしいから早く試合を始めてよ!」

そう言われると、もっと弄りたくなるな。でも、時間もないしな。後で新聞部が撮ってる写真を使って、いつもの仕返しに弄るか。

 

「では最後に武器の説明をします。武器は二丁の拳銃で、他にも色々な能力があります」

 

「簪ちゃんの試合だから今回は私が試合開始の合図するわね」

 

「好きにしてください」

 

「では試合開始!」

試合開始と同時にシャルの先制攻撃。拳銃からエネルギー弾が発射される。

 

「……無駄」

だがエネルギー弾は、かんちゃんの杖に吸収された。

 

「……え~と、今の何?」

 

「簪選手の杖はエネルギー攻撃を吸収することが出来ます」

 

「それじゃあ僕、どうしたらいいの!?僕にはエネルギー攻撃しかないんだよ!」

 

「頑張ってください」

これ以外にかける言葉が見付からない。

 

「次はこっちの番」

今度はかんちゃんがシャルに向かってエネルギー弾を発射した。

 

「僕だって頑張るよ。プロテクション!」

シャルの前に障壁が現れてエネルギー弾をガードした。

三回戦にして、やっと魔法少女バトルになったな。

 

「じゃあ、次はこれ」

かんちゃんの杖の先から刃が出てきて槍みたいになった。そしてシャルに向かって伸びた。

 

「もう一回、プロテクション!」

 

「それは意味がない」

かんちゃんの杖は障壁を吸収して、そのままシャルに直撃した。

 

「し、しまっ!」

 

「そして、これで終わり。シュート!」

零距離でシャルに吸収した分を上乗せしたエネルギー弾で攻撃した。

 

『試合終了。――勝者、更識簪』

 

「じゃあ、新聞部の皆さん。いつもより多めに写真を撮っておいてください」

 

「え!?この試合って写真、撮ってたの!?」

とりあえず大事なところだけ手で隠してツッコんできた。

 

「大丈夫です。ネットに画像を流したりしませんから」

 

「そんなことまで考えていたの!?」

 

「だから、しませんよ」

さすがにそこまでやるとシャレにならないからな。

 

「……なぁ、魔法少女姿ならともかく、裸を撮るのはやめた方がいいんじゃないか?」

 

「問題ない。学園から許可は貰ってる。それに販売は身内だけでやるから大丈夫だ」

 

「学園は何を考えてんだ!?後、そういう問題じゃないだろ!」

 

「うるさいなぁ。禿げるぞ」

 

「禿げねぇよ!」

まぁ、いっくんが禿げようが禿げなかろうが俺には関係ない。

 

「じゃあ、本選は休憩を挟んで二十分後に行います」

さて、この休憩時間が忙しいな。

 

「じゃあ、いっくん。よろしく」

 

「……は?」

 

 

 

 

「さぁ、休憩時間が終わりまして本選が始まります!本選は織斑一夏の変わりに男と大して違わないまな板、凰鈴音がゲストに来ています」

 

「ねぇ、あんた。私にケンカ売ってるんでしょ?そうなんでしょ?」

不良にしか見えないな。

 

「ところで深夜くん。何で織斑一夏くんじゃなくて貧乳ちゃんが、ここにいるの?」

 

「あんたもか!あんたも私にケンカ売ってるの!ちょっと胸があるからって調子に乗ってんじゃないわよ!」

若干、涙目になってきている。

 

「その理由はアリーナ中央をご覧ください」

アリーナの中央には予選を勝った三人+いっくんが立っている。

 

「では、本選の説明をします。ルールは簡単。一番最初にターゲット(いっくん)を倒したら勝ちです」

 

「おい、今、ターゲットと書いて俺と読まなかったか!?」

 

「ああ、だから、いっくんの代わりに絶壁ちゃんが来たんだね」

 

「もう我慢できない!あんたら全員ブッ飛ばす!」

貧乳が暴走してISを展開しようとしている。

 

「狭いところで暴れないでね、絶壁ちゃん」

だが、その前にウサギに取り抑えられた。

 

「くっ!」

もう完璧に泣いてる。何か苛めたくなるな。俺はドSではないんだがな。

 

「では変身してください」

 

「「「セットアップ!」」」

 

そして四人が魔法少女に変身した。半分は妖精だが気にしない。

 

「一夏まで私を馬鹿にするの!もういいわ!あんたを殺して私も死ぬ!」

やり過ぎたか?何か壊れてヤンデレ化してきたが。

 

「いきなり何を言ってんだ、鈴。――って何だ、これ!?何で俺が女になってるんだ!?」

そう、いっくんは変身して体も女になった。ちなみに胸は結構、大きい。

今、誰かが鼻血を出しながら幸せそうな顔で倒れた気がしたが気にしない。

 

「元々デバイスはこのために作った物ですから」

俺が実験でやった時は黒が鼻血を出して倒れた。ISに血はないはずなんだが。そしてクロエが顔を赤くしていたのが気になった。

 

「ちなみに胸のサイズはちーちゃんと一緒だよ。やったね」

 

「だから何なんですか!?」

本当に何なんだ?

 

「ターゲットのデバイスは攻撃機能が一切ありません。代わりに機動力と防御力が高く設定してあります。選手は思う存分タコ殴りしてください」

 

「ちなみに束さんが遮断シールドの強度を十倍にしてあるから、どんなに暴れても大丈夫だよ」

 

「ちょ、そんなに危ないんですか!?」

 

「では、魔法少女バトル本選『ターゲットを壊せ』開始!」

 

「おい、何だ、その物騒な名前は!?俺の安全は保証されてんのか!?」

いっくんがウダウダ言っている間に侍娘が攻撃態勢に入る。

 

「一夏、見苦しいぞ。覚悟を決めろ」

そして侍娘は火属性魔法攻撃をした。て言うか、詠唱なしかよ。ズルいな。

 

「うおっ!あぶねぇ!」

だが、いっくんはそれを避けた。

 

「くっ!本当に機動力は高いみたいだな」

 

「だったら、今度は私。シュート!」

 

「私もやるぞ。破道の七三『双蓮蒼火堕』」

かんちゃんとラウラの同時に遠距離攻撃をした。

 

「ちょ、容赦なさすぎだろ!」

二人の攻撃を避けた先では侍娘がエクスキャリバーを構えていた。

 

「逃げずに男らしく戦え!」

 

「無茶言うな!俺には攻撃機能がないんウワッ!」

いっくんが喋ってる途中で思いっきり地面に叩き付けられた。

 

「って、そんなに痛くない。本当に防御力は高いんだな」

痛みだけは食らうようにした方が良かったな。

 

「油断禁物」

今度はかんちゃんが杖を槍にして伸ばして攻撃した。

 

「うおっ!」

それをギリギリで避けて空中に逃げた。

 

「待っていたぞ、嫁」

 

「ちょっとぐらい休ませろ!」

大変そうだ。俺なら適当にやられて終わらせるな。どんなに逃げても最後には攻撃を食らうんだから。

 

「ターゲット。少しぐらいはダメージを食らっても大丈夫だから避けるな。避けてばかりでは面白くない」

 

「ふざけるな!俺に公開リンチにされろって言うのか!」

切り札を出される前に殺られた方が良いと思うんだけどな。

 

「そういや、貧乳が静かだな」

 

「うるさいから気絶させておいたよ」

 

「助かる」

 

「生徒会長として、これを見逃していいのか迷うところね」

 

「保健室にでも連れていけば大丈夫だろ」

その後、手が空いているスタッフを呼んで保健室まで運ばせた。

 

十五分後

 

「ターゲットしつこいな」

 

「そろそろ終わらせて次の撮影会に移りたいね。早く箒ちゃんの写真を撮りたいよ」

 

「私も簪ちゃんの写真を撮りたいわね」

ちなみに、この後の撮影会ではラウラの写真を撮った後、俺も撮られることになっている。

 

「ということで、アレ使っていいぞ」

 

「分かった、お兄ちゃん」

ラウラが顔に手をかざすと仮面が現れた。

 

「あれがラウラ・ボーデヴィッヒの切り札『虚化』だ。一時期的に能力を数倍に跳ね上げることが出来る最終奥義。エネルギーの消耗が激しいから長時間の使用は出来ないのが弱点だ」

 

「じゃあ、箒ちゃんも切り札、使おうか」

 

「分かりました」

侍娘の聖剣エクスキャリバーに凄い力が集約していく。

 

「あれが箒ちゃんの切り札『エクスカリバー』。紅椿のワンオフ・アビリティー『絢爛舞踏』の応用でエネルギーを増幅、それを発射する最強の技だよ。弱点はないね」

色々ツッコたいが、まず作品が違わないか?

 

「じゃあ、簪ちゃんもゴー」

 

「……言われなくてもする」

かんちゃんの杖にもエクスキャリバーと同じく凄いエネルギーが集約されていく。

 

「あれが簪ちゃんの切り札『スターライトブレイカー』。周りの人のエネルギーまで集めて発射する究極奥義。発動まで少し時間がかかるのが弱点ね」

こっちのエネルギーを吸収する、ってことはラウラの攻撃力が少しとはいえ下がるんじゃないか。

 

「ちょっと待て!普通に説明を聞いてたけど俺、ヤバくないか!?」

かなりヤバいな。

 

「月牙天衝!」

 

「エクスカリバー!」

 

「スターライトブレイカー!」

いっくん目掛けて物凄いエネルギーの塊が向かっていく。

 

「ちょ、さすがに、これは洒落にウワァァァー!」

極大の攻撃に避けることも出来ず、モロにダメージを食らう。

 

『試合終了。――織斑一夏の死亡を確認』

 

「……は?いや、さすがに死んでないよな!?」

いっくんの死亡を告げるアナウンスにさすがの俺も焦る。そんなことになったら魔王が暴れて大変なことになるぞ。

攻撃の衝撃で土煙が出て、いっくんの生死をすぐに確認できない。

 

「勝手に殺すな……」

土煙が晴れるとボロボロの織斑一夏が現れた。血は出ており、立つのも厳しそうだが大きな怪我はないようだ。いっくんのデバイスは防御力が自慢なのに、こんなことになるとは。予想外だ。

後、何で、あんな訳のわからないアナウンスが流れたんだ?システムの誤認識か?

 

「じゃあ、これにて魔法少女バトルは終了。結果は三者引き分け。最初に言われていた願いは無理だけど、後で教えてくれたら簡単な願いなら叶えます」

何事もなく平和に終わって良かった。

 

「では、決着は次回につけるとして三十分後に撮影会を開始します」

 

「ちょっと待て!俺の救助はなしか!?て言うか、次回って何だ!」

 

「試合は終わったんで早く戻ってください。デバイスのチェックもあるので」

観客がドンドン退場していく。

 

「なぁ、箒は助けてくれるよな?」

 

「男なら自分で立て」

侍娘は本当に、いっくんのことが好きなのだろうか?

 

「え~と」

 

「悪いな、嫁。私はこの後も用事があって忙しいのだ」

 

「……そのまま死ねばいい」

さて、俺は次の撮影会の準備をするか。

 

「たっちゃんも手伝ってくれよ」

 

「もちろん」

 

「じゃあ、束さんはデバイスの様子を見てくるね」

そして俺達も中継室から出ていく。刹那っちは撮影会が終わってから回収するか。いっくんは魔王が回収するから大丈夫だろ。

 

 




鈴を苛めるのが楽しかったけど、話の本筋から離れるので途中でやめました。
さて番外編一発目が終わり、ラストまで数話。残りも頑張っていきます。

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第42話 プール

「なぁ、かんちゃん。明日、プールに行かないか?」

夏休みに入って半分以上の生徒が帰省してIS学園は静かだ。そのせいで、のんびりと読書するにはいいが退屈だ。

 

「……何で?」

 

「この前の臨海学校の時に思ったんだよ。かんちゃんはもっと運動した方が良いって」

 

「余計なお世話」

 

「良いじゃないか。それに漫画を読んでるだけで、どうせ暇だろ?」

まぁ、これは俺も同じだが。

 

「で、ここに今月できたばかりのウォーターワールドのチケットが二枚ある。どうだ?」

 

「黒と行けばいいでしょ?」

 

「黒はISだから中に入ってから人型になれば大丈夫だろ」

 

「それ、良いの?」

 

「問題ないだろ。黒は人間じゃなくてISなんだから」

それでも問題になったら、なった時に考えればいいだけの話だ。

 

「黒は深夜と二人で行かなくていいの?」

かんちゃんが俺に膝枕をさせながら漫画を読んでいる黒に聞いた。

 

「私、人混みが苦手だから、あんまり行きたくないのよ。それに二人でデートしなくても深夜と私はずっと一緒にいるから大丈夫よ」

マジでずっと一緒だな。何せ初めて会って以来、一回も目の届かないところに行ったことがないんだから。多分、半径十メートル以上はなれたことがないじゃないか。

 

「じゃあ――」

 

「ヤッホー、簪ちゃん。明日、デートに行こうよ!」

たっちゃんが勢いよく扉を開けて入ってきた。その手には俺が持っている物と同じチケットが二枚ある。

 

「何々?プール?私も行く!」

気付いたら目をキラキラと輝かせた刹那っちがいた。

 

 

 

 

あの後、刹那っちに押しきられて四人でウォーターワールドに来ている。黒は人混みが苦手なのと刹那っちを恐れて最初に水着姿を見せて指輪になった。

 

「生徒会長さんはスタイルが良いですね。食べちゃいたいくらいですよ」

いきなり、たっちゃんにナンパをする刹那っち。

 

「え~と、どうしたらいいの?」

それに戸惑う、たっちゃん。

 

「殺せばいい」

 

「それはやり過ぎだ。適当に動けないほど痛め付けて放置するだけで充分だろ」

刹那っちは何回もボコボコにされてるのに何故、懲りないのだろうか?魔法少女バトルの時は手足を縛って目隠しした上で水も与えず六時間も地下に監禁されてたのに。もしかして本物の変態からしたら、それも気持ちいいのか?それとも裏の世界の住人からしたら普通なのか?

 

「じゃあ、早速シャワールームに行きましょう!さすがに野外プレイは途中で邪魔が入るでしょうから」

そういう問題じゃないだろ。

でも、どうしたらいいんだ?さすがに一般人を被害に遭わせるわけにはいかないし。

 

「あ!物凄く可愛い幼女が死んだ魚みたいな目をしている変質者に襲われている!助けなくては!そして、そのお礼として――」

そう言うと刹那っちは凄い勢いで走っていった。続きの言葉が気になるな。

て言うか、俺にはただの兄妹に見えるが。いや、兄の方はかなりヤバそうだが。一般人に迷惑をかけるのは嫌だが仕方ない。刹那っちが犯罪を犯しても俺は無関係だ。後、変質者はお前だ。

 

「さて、変態もどっかに行ったところで、かんちゃんを鍛えるか」

泳ぎに行こうと思った瞬間、園内放送が響き渡った。

 

『では、本日のメインイベント!水上ペアタッグ障害物レースは午後一時より開始いたします!参加希望の方は十二時までにフロントへとお届け下さい!優勝賞品は何と沖縄五泊六日の旅をペアでご招待!』

何か面白そうなイベントだな。優勝賞品は興味ないからラウラにやるか。

 

「よし、かんちゃん。このイベントに参加しようか」

 

「断る」

 

「そうよ。簪ちゃんは私と出るんだから」

 

「そういう問題じゃない」

たっちゃんとどっちが、かんちゃんとペアで出るかを言い争いながら受付に着いた。

 

「やっぱり私が簪ちゃんと出るみたいね」

受付で参加を希望している男が『お前、空気読めよ』という無言の笑みに退けられていた。まぁ、確かに女だけの方がイベント的には盛り上がるだろうからな。

 

「ふむ、確かに一人だけ男が入って会場を変な空気にするのは嫌だな」

 

「そうでしょ。だから私が――」

 

「ここは奥の手を使うか」

 

「……奥の手?」

 

「待ってろ」

それだけ言うと俺はどこかに移動した。

 

十分後

 

「これで問題ないだろ」

 

「……人違いじゃないですか?」

やっぱり分からないか。

 

「……嫌がらせ?」

 

「いやいや、そんなことないぞ、かんちゃん。俺の方がちょっと胸が大きいからって気にするな」

 

「……え?え~と、どういうこと?簪ちゃんの知り合い?」

まだ気付かないのか?かんちゃんはすぐに気付いたのに。

 

「俺だよ、俺」

 

「オレオレ詐欺?」

 

「そうじゃなくて飛原深夜だ」

 

「……え?」

たっちゃんの思考がフリーズする。

 

「ええぇぇぇぇぇーーー!本当なの!?女装とか、そういうレベルじゃなくて女の子にしか見えないんだけど!?胸もパットじゃなくて本物よね!?しかも滅茶苦茶、可愛いし!」

そう言いながら、たっちゃんは確認のために俺の胸を揉んできた。

 

「いや、さすがにそれは人前では……。やるなら帰ってから」

 

「深夜も冗談を言わないで。後、お姉ちゃん、目立ってるからやめて」

確かに周りの視線が俺達に集まってるな。

 

「……あ!え~と、ご免なさい。つい」

たっちゃんは視線に気付くと俺から離れた。

 

「あー!百合カップル!私も混ぜてください!」

刹那っちが大声をあげながら凄い勢いで走ってくる。

 

「お前は少しは自重しろ!」

向かってくる刹那っちに思いっきり蹴りを入れようとしたが避けられた。

 

「今の容赦なく人の急所を的確に狙う蹴り。もしかして深夜くん!?」

 

「ああ、そうだよ。後、どんな目線から人を判断してるんだよ、刹那っちは」

 

「でも、一体どういうことなの?」

 

「この前の魔法少女バトルで使ったデバイス。あれを使って変身したんだよ。ISに繋いでないから、ただ性別が変わっただけだな」

ウサギが変なところにこだわったせいで体の作りから女になるんだよな。だから多少、筋力が落ちるが問題ない。さすがに子供は生めないが。

 

「中身は関係ない。見た目が可愛い女の子だったら私はイケる。だから――」

 

「それよりも、さっきの幼女はどうなったんだ?」

とりあえず話を誤魔化そう。

 

「ん?あの後、幼女のお兄さんが来て邪魔された」

まず、幼女という呼称をやめた方がいいだろ。いや、俺も言ったが。

 

「あの死んだ魚みたい目をしたヤバい奴が兄じゃなかったのか?」

 

「ああ、かなりイカれてる人はただの付き添いだったみたい」

 

「ふーん、そうだったのか。ところで兄が来たくらいで刹那っちがやめるなんて、らしくないな」

もしかして、その兄もシスコンだったのか?そうだったら世界は変態とシスコンと可愛い妹だけで構成されている可能性も出てくるな。

 

「兄もかなりヤバい存在だったのよ。あれには出来るだけ関わるな、って家から言われてるし」

裏の人間って意外と普通にいるんだな。俺もウォーターワールドに来る前にIS学園で会った倉持技研から来ていた男も裏の人間だと思うし。何というか雰囲気が違った。そして、何よりシスコンでロリコンの変態だったからな。

 

「そんなことよりも――」

刹那っちが話を戻そうとした瞬間、俺はスタンガンで気絶させた。これは黒の武装の一つで市販の物よりも、かなり電圧が強い。下手したら人が死んでしまうくらいに。

 

「さて、たっちゃん。この変態の世話は任せた。俺はかんちゃんとイベントに参加してくる」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

たっちゃんを無視して俺はかんちゃんと受付に向かった。

 

 

 

 

 

「さあ!第一回ウォーターワールド水上ペアタッグ障害物レース、開催中です!」

適当にウォーターワールド内の喫茶店で昼食を食べてからイベントに来た。刹那っちはまだ気絶しているけど大丈夫だろ。

 

「さぁ、皆さん!参加者の女性陣に大きな拍手を!」

俺は男だけどな。にしても、俺が企画したイベント程ではないけど盛り上がってるな。

 

「ん?」

参加者の中に貧乳とパッキン女を見付けた。珍しい組合せだな。何で二人でこんなこところにいるんだ?そういや、いっくんが貧乳と連絡を取りたかったのに取れなかったと言っていたが、それが関係しているのか?まぁ、どうでもいいか。俺的に好都合だ。

 

「……おい、かんちゃん。あの二人が大立ち回りをするだろうから俺達は漁夫の利を狙うぞ」

 

「て言うか、何で私が参加してるの?」

 

「今さら何を言ってんだ?もうイベントが始まるんだから諦めろ」

 

「……仕方ないから適当にやる」

渋々と言った感じだが何とか納得してくれた。

 

「ではルールの説明です!この巨大なプールの中央の島にあるフラッグを取ったペアが優勝です!なお、ご覧の通り円を描くようにして中央の島へと続いています!その途中には障害が設定されており、基本的にペアでなければ抜けられないようになっています!ちなみに、妨害はアリです。つまりポロリもあるかもしれませんよ、野郎共!」

無駄にテンションの高い司会だな。

 

とりあえずコースの確認をするか。中央の島はワイヤーで空に浮いている。しかもショートカットも出来ないように上手く工夫されてるな。

 

「さぁ、いよいよレース開始です!位置について、よーい……」

パァンッ!と競技用ピストルの音が響き、参加者が一斉にスタートした。

すると予想通りに貧乳とパッキン女が大立ち回りを開始した。そのせいで妨害が二人に集中している。

 

「よし、今のうちに進むぞ」

 

「それでいいの?」

 

「俺は雑魚の相手をするのは嫌いなんだよ」

その後、二人の陰に隠れて全く目立たず最後のステージまで進んだ。

そこでトップのペアが反転してきた。ここで二人を倒すつもりなのだろう。

 

「おおっと、トップの木崎・岸本ペア!ここで得意の格闘戦に持ち込むみたいです!二人は先のオリンピックでレスリング金メダル、柔道銀メダルの武闘派コンビです!」

え?オリンピック?何それ?最後に活躍して注目を浴びる予定だったけど作戦変更だな。このままスルーしよう。

 

「あ!まだ敵が残ってる!あっちを倒した方が良いんじゃない!」

貧乳の野郎!俺達に筋肉ダルマを押し付けるつもりか!

 

「こうなったら仕方ない。俺が注意を引き付けるから、その内にフラッグを取れ」

 

「……分かった」

そう言うと、かんちゃんは一人で先に行った。

あ!しまった。あの台詞を言いそびれた。まぁ、いっか。

 

「ちょっと待ちなさいよ、そこのあんた!」

 

「黙れ!貧乳!」

 

「何ですって?もう一回、言ってみなさいよ!」

やっぱり貧乳は単純で操りやすいな。とりあえず、このまま煽って注目を集めるか。筋肉ダルマ二人も俺達を見て、どうしたらいいか迷っているみたいだし。

 

「二回も言わないと分からないのかよ。胸だけじゃなくて頭にも栄養がいってないみたいだな。じゃあ、どこに栄養がいってるんだろうな?尻か?いや、尻に栄養がいっているのは、そっちの金髪の方か?ああ、確かに醜い雌豚みたいな見た目してるな」

 

「あんた、セシリアはともかく私まで馬鹿にするのは許せないわ」

 

「そうですわ。鈴さんはともかく、わたくしを馬鹿にするなんて許されることではありませんわ」

何て醜いコンビなんだ。

 

「そっちのオリンピックコンビだとか言う筋肉ダルマもそうだ。筋肉のお化けか何かかよ?女性的魅力が全くないな。そんなんじゃ、結婚どころか永遠に処女だぞ。花嫁修業でもしたらどうだ?まぁ、したところで相手は見つからんだろうがな」

 

「おおっと、ここでフラッグが取られました!これで優勝は更識・飛原ペアに決定です!」

ん?もう終わりか?罵倒するのが楽しくなってきたところだったんだが。

 

「へ?更識?飛原?」

 

「どういうことですの?」

俺が女になってるから混乱していみたいだな。

 

「デバイスで変身しているんだよ」

 

「また、あんたか!何度、私を馬鹿にすれば気がすむのよ!」

 

「そうですわ!今日は一夏さんとのデートもなくなってしまいましたし、酷い一日ですわ!」

いっくんにも対する恨みまで言われても知らねぇよ。

て言うか、こんな人の多いところでISを展開しようとしてないか?コイツらに常識はないのかよ。今度、倫理の授業をすることを職員室に薦めるか。

 

「おい、黒。頼む」

 

「了解」

 

「え?何でISが展開できないのよ!」

 

「強制スリープモードになっていますわ!どういうことですの!?」

これが人型になれる黒だけが使える裏技。ISの意識に直接、語りかけてスリープモードにする。まさか、こんなところで使うことになるとはな。

 

「今回は交渉が一瞬で終わったみたいだな」

 

「あの二人は自分の専用機に嫌われているのよ。いつも雑に扱って、しかも負けてばかりだから」

まぁ、確かに俺もISだったら、あんな持ち主は嫌だな。でも、あいつらってISランクはAだったよな。IS個人の好き嫌いとランクは別物ってことか。

さて賞品を貰ったら、かんちゃんを鍛えるか。




今回の話は番外編の中で唯一、原作にある話です。後、考えていたけど使う機会のなかった裏技を出しました。補足しておくと、この裏技は万能ではありません。ISの意識に断れたら終わりですから。

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第43話 倉持技研

俺は今、電車を乗り継いで一時間、そこからバスでさらに一時間の山奥にある研究所に来ていた。

 

「ここで合ってんのか、倉持技研」

研究所の看板を確認してみると合ってるみたいだ。

ここが白式と打鉄弍式の開発元か。まぁ、打鉄弍式はほとんど俺とかんちゃんで作ったが。

前にいっくんのセカンド・シフトした白式を見るために来ていた倉持技研の研究員と知り合って倉持技研に招待されたので来た。

 

「で、どうやって入ればいいんだ?」

入口には取っ手のないドアがあるだけで、チャイムもない。

ん?後ろに人の気配がするな。

 

「って、ウワッ!いきなり何をしようとしてんだ!?」

いきなり変態が俺の尻を触ろうとしていた。にしても最近、見ただけで変態かどうか分かるようになってきたな。欲しくない才能だ。

 

「んー?よく気付いたね?気配を隠して近付いたのに」

この変態は水中メガネをつけており、スク水みたいな紺色のISスーツを着ている。しかも名札で『かがりび』と書かれている。見た目まで変態なのは新しいパターンだな。

 

「で、君は誰?」

 

「この研究所の変態……いや、あんたじゃなくて別の変態に会いに来たんだよ」

 

「ああ、あの特別研究員の客か。話は聞いているよ」

変態で通じるのか。

 

「ところで何でいきなり尻を触ろうとしたんだ?」

 

「可愛い美少年がいたら尻を触るのが礼儀というものだよ」

どんな礼儀だよ。

俺がこの変態の対処をどうしようかと迷っていると、いきなり背後のドアが開いた。

 

「やぁ、少年。来たんだね」

変態が増えた。

 

「久し振りだな、兎吊木さん」

白衣にスキンヘッドの中年のオッサン。これが今日、俺が会いに来たシスコンでロリコンの変態、兎吊木垓輔だ。

ん?スキンヘッド?

 

「前に会った時に兎吊木でいいと言ったはずなんだがな。俺は《さん付け》が苦手なんだ。昔の仲間は呼び捨てにしてくれて気楽だったんだがな。君は歳上を敬うタイプには見えないし、実際にタメ口で喋っている。単純に性格が悪いんだな」

 

「それよりも何でスキンヘッドなんだ?前に会った時は髪フサフサだったよな?」

 

「ああ、あれはカツラだよ。今は男がいるとはいえ、女子校に行くのにスキンヘッドはないだろ?まぁ、知り合えたのは可憐な女子高生じゃなくて君だったわけだが。半分以上の生徒が帰省していたのが残念だったな。教員には会えたが俺は年増には興味がないのでね」

相変わらず、よく喋る変態だな。ウザい。すでに来たことを後悔してきた。

 

「それよりも速く中に入りたいんだが」

 

「ふむ、それもそうだね。では再会と友愛の証に」

そう言うと、兎吊木さんは俺に顔を近付けてきた。キスじゃないよな!?

 

「私の深夜に何をしようとしてんのよ、変態!」

人型になった黒が兎吊木さんを全力で蹴り飛ばした。そして研究所の壁に叩き付けられた。

 

「ん?君はどこから現れたのかな?さっきまではいなかったはずだが」

ヤバい!科学者タイプの人間には黒のことを知られたくなかったのに。確実にめんどくさいことになる。

 

「それよりも私の深夜に何をしようとしたのよ!」

 

「再会のキスだが?それがどうかしたか?」

 

「…………」

黒の正体からは話がそれそうだが、それよりもヤバい話になりそうだ。マジで中年のオッサンにキスされるところだったのかよ。考えただけで恐ろしいな。

て言うか、叩き付けられたのに元気だな。見た目よりも体は頑丈なようだ。嫌な情報だ。

 

「あんた、シスコンとロリコンだけじゃなかったのか?もしかしてホモでもあるのか?」

だったら今すぐ山を全速力で駆け降りるが。

 

「いや、そうじゃない。可愛い女子はもちろんのこと、可愛い男子も俺にとっては妹だよ」

格好つけながら変態発言してんじゃねぇよ!しかも倒れたまま。本格的に気持ち悪いな。て言うか、実の妹が二人いるはずだし。

 

「それに君は女装が似合いそうだしね」

それは間違ってないが。

 

「おうおう、そっちだけで楽しんでないで私も混ぜろよ」

こっちも参戦か。くそっ!どうしたらいい?逃げ場がない。

 

「さっき、何か音がしましたがどうかしましたか?」

男性職員がやって来た。良かった。この人は変態じゃない。

 

「変態に襲われているんです!助けてください!」

 

 

 

三十分後、何とか落ち着いて変態二人と俺と黒の四人で応接室にいる。さっきの男性職員には同席してほしかったが逃げられた。

 

「まずは自己紹介をしておくか。俺はIS学園一年一組所属、実質的に男性初のIS操縦者、飛原深夜だ」

 

「私は深夜の恋人の黒です」

 

「黒?何か犬みたいな名前だね。まぁ、いいけどね。世の中にはキラキラネームとかいう変な名前の人もいるみたいだし。俺はそんな名前の人に会ったことないけど。ところで君もIS学園の生徒なのかな?」

お前の名前も充分、変だ。

 

「ああ、そうだ」

とりあえず話を合わせるか。

 

「俺としてはそっちのお嬢さんに聞いたつもりだったんだけど。とりあえず俺も自己紹介しとこうか。俺の名前は兎吊木垓輔。前に働いていた研究所が壊れたから昔の知り合いがいる、ここで特別研究員として働いているんだ」

 

「私は篝火ヒカルノ。倉持技研の第二研究所所長をしている」

変態が所長で大丈夫なのか?

 

「まぁ、いいか。俺はここに勉強をしに来たんだから」

 

「どういうこと?勉強ならIS学園でも出来るでしょ?」

 

「俺が学園で学べることは何もない。前まで三年首席の布仏虚に教わっていたけど、すでに俺の方が上だからな。だから専門家の人に習おうと思ったんだよ。独学では限界があるからな」

ウサギに教わるという方法もあるが、それは無理だろう。ウサギは感覚派だから人に教えるのには向かないから。

 

「ふーん、それは凄いね。で、何を教わりたいんだい?」

 

「俺はソフトウェアが苦手なんだ」

 

「だったら私の出番だね。私の専攻はISソフトウェアだからね」

何か嫌な予感がしてきた。

 

「教えるのはいいけど、その代わりの報酬はちゃんと貰うよ。もちろん、体で払ってもいいよ。というより、そっちがお薦め」

予想通りだ。しかも、かなり本気だ。したなめずりをしている。

 

「いや、普通に金で払う」

 

「ちぇー、残念だな」

物凄く不満そうな顔だ。

 

「俺は金に困ってないから体で払ってくれ」

 

「断る。俺は中年のオッサンに興味はない」

 

「だったら仕方ない。他に可愛い女子高生を紹介してくれたらいいよ」

可愛い女子高生ねぇ。かんちゃんとラウラは絶対に紹介したくないし、シャルは嫌な予感がするから無理だ。侍娘を紹介したらウサギに殺されそうだ。

 

「金髪のお嬢様はどうだ?」

正直、可愛いとは全く思えないが人の趣味はそれぞれだからな。可能性はある。

 

「金髪はいいけど、お嬢様というのは俺のタイプではない。俺に命令していいのはこの世で、たった一人だけだからな」

使い捨てにもならんとは。役に立たないな。

 

「その兎吊木さんに命令していいのは誰なんだ?」

 

「俺が敬愛してやまない彼女さ。一度、見たら君でも彼女に踏まれて足を舐めるのが快楽になるだろう」

どんな女なんだよ!

 

「ああ、前に写真を見せてもらったな。確か十九歳だけど中学生ぐらいにしか見えない可愛い女の子だったよね?」

マジで想像できない。

 

「……深夜。別のところに行った方がよくない?」

 

「ああ、俺もそう思っていたところだ。いや、最初から思っていた」

黒ウサギ隊とは顔見知りだしドイツに行こうかな。

 

「おいおい、それは困るな。俺は寂しがり屋なんだ。せっかく出来た友達とは仲良くしたいんだよ」

 

「友達じゃねぇよ、変態!」

 

「可愛い女の子に罵倒されるのは好きだが、野郎にされるのは好きじゃない。俺を罵倒したければ女装してからにしてくれると助かる」

こっちが助からねぇよ。

 

「それよりも飛原くんはどうするんだい?研究所はむさいオッサンばかりだから美少年が来てくれるのは嬉しい。しかも美少女のおまけ付きだ。だから教えるのはいいけど、まさかIS学園から通うつもりじゃないよな?」

 

「ここで泊めてもらえるのら、それが一番だけどな。まぁ、駄目なら学園から通うけど」

黒でステルス飛行すれば問題ない。

 

「部屋も余ってるし、泊めてもいいよ。何なら私の同じ部屋をお薦めするよ」

 

「全力で拒否する」

 

「俺の部屋に泊まるんだよな?」

 

「んなぁわけねぇだろが、変態!」

完全に俺の口調が崩れてきた。刹那っちと同じレベルとそれ以上の変態を相手取るのはしんどい。

 

「で、どのくらい泊まって行くつもりなんだ?」

 

「俺も夏コミに温泉旅行と色々と忙しいからな。三、四日を予定している」

 

「いいだろう。君のことは気に入ったからバシバシしごいてやる。ただし、君も仕事は手伝ってもらうよ。それぐらいの能力ならあるだろう?」

 

「もちろんだ」

むしろ職業体験できる分、ラッキーだな。

 

「そういや、今更だけど兎吊木さんの専門は何なんだ?」

 

「うん?俺の専門かい?俺の専門は破壊(クラック)だよ」

こんな奴に習って大丈夫なのだろうか?

こうして不安しかない倉持技研での職業体験が開始した。




続きそうな終わり方をしましたが続きません。というより、この変態共の話を続ける自信がありません。
何で、こんなことになったのだろうか?最初は主人公が物語をかき乱す話を書きたかったはずなのに。気付いたら変態とシスコンが跋扈する話になっていた。

後は温泉旅行の話を二話して終わる予定です。最後まで読んでくれると嬉しいです。

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第44話 温泉旅行

俺は今、赤神温泉街というところに旅行に来ている。メンバーは俺と黒とラウラとシャルに刹那っち、のほほんさんだ。

 

「にしても、またここに来ることになるとはね」

 

「ん?刹那っち。前に来たことがあるのか?」

 

「一回だけね」

 

「じゃあ、旅館に着くまで暇だから、どんなところがあるか説明してくれるか」

混浴があるから来たけど、この温泉街は変なんだよな。色々と下調べしたけど、大事なことは隠されているように分からなかった。しかも、ただの温泉街とは思えないほど施設が充実している。秋葉原クラスのアニメショップに室内プール、植物園に球場まで合ったからな。

 

「いいよ。ここは裏の世界における完全中立地帯。つまり、ここは日本で一番安全な場所。海外からの偉い人とかもよく利用している。ここだと暗殺とかされる心配がないからね。実際にここ二、三年は全く犯罪がないらしいよ」

逆に怖いな。て言うか、ここ、そんなところ場所だったのかよ。

 

「ああ、そう言えば私も前に軍の噂で聞いたことがあるな。ありとあらゆる権力が通じない場所が日本にあると。そこでは犯罪者も堂々と捕まる心配もなく休んでるらしい」

物騒なのか安全なのか分かねぇよ。

 

「そう、それがここ赤神温泉街。赤神財閥を中心にして作られた場所」

 

「でも、裏の世界の住人が集まって問題が全く起こらないなんてあり得るのか?」

そんな話は信じられないな。一般人でも全く問題が起こらないなんて有り得ない。

 

「その答えは単純明快。誰も逆らえないほどの圧倒的な力で押さえ付けているだけ。まだ赤神温泉街が出来た頃は犯罪もあった。でも、犯罪を犯した一般人は例外なく次の日に交通事故で死亡している」

 

「一般人は、ということは一般人じゃない場合はどうなったのだ?」

 

「顔以外を認識できないほどに解体して箱詰め。そして、見せしめに仲間にそれを送り付ける」

完全に都市伝説みたいな話だな。

 

「え~と、それって、ただの噂だよね?」

 

「いやいや、違うよ、シャルロットちゃん。実際にウチにも送られてきたからね。当時、ここで依頼で仕事をした私のお父さんが」

あれ?シャルに刹那っちのこと説明したっけ?ラウラに説明してなかったような気がするし。まぁ、いっか。のほほんさんはどうでもいいし。

て言うか、父親が殺された場所でくつろぐのかよ。相変わらず裏は普通じゃないな。……いや、俺も普通に過ごせるな。じゃあ、普通なのか。

 

「でも、ウサギに聞いた人類最強とかなら何があっても返り討ちにするんじゃないか?」

 

「伝説級のプレイヤーは基本的に無駄な争いはしないからね。それに戦闘狂はそもそも中立地帯に何か来ない」

 

「なるほど、そういうことか。じゃあ、そこらへんに伝説級のプレイヤーが普通にいたりすることは?」

 

「普通にいる――ゲッ!」

どうした?刹那っちが今までに見たことのないような嫌そうな顔をしているが。

 

「気付かれる前に行くわよ」

どうやら、刹那っちはお土産屋の中にいる女子中学生をナンパしている針金細工ような見た目をしている変態を嫌がっているみたいだ。

 

「さっきの変態がどうかしたか?」

 

「あれは裏の世界で絶対に関わってはいけないと言われている殺人鬼集団の切り込み隊長をしている男よ。昔、地図から町を一つ消したという噂があるわ」

そんなヤバい人物だったのか、あの変態。普通にそんな奴がナンパしているなんて恐ろしいところだな。

 

「でも、それが何なんだ?ここなら殺人鬼でも殺せないんだろ?」

 

「私が中学生の頃にチャットで女子中学生に語り合っていたことがあるのよ」

何で女子中学生が女子中学生について語り合っているのか、とかツッコまない。

 

「それである時オフ会をして、その時に来たのがあの変態。まぁ、正確には白衣の変態もいたけど。私が女子中学生だと知った瞬間にしつこくメルアドを聞いてきて、オフ会が終わった瞬間から毎日大量にメールが来たのよ。しかも、どうでもいい話ばかり。こっちは返事してないのに。もう怖くてアドレスを変えたわ」

刹那っちが恐れるほどの変態か。て言うか、白衣の変態って兎吊木じゃないよな?

 

「にしても昨日、家族で旅行中だと書いていたけど、ここだったのか」

 

「今でもチャットしてんのかよ!」

こいつに常識が通じないのは知っていたが、予想以上だ。

 

「あっ!叔父さんだ」

 

「叔父さん?」

刹那っちの視線の先にいるのは叔父さんというよりもお祖父さんにしか見えない老人だ。

 

「子作りが趣味のエロじじい。去年、私の姉、ちなみに女子高生と子供を作ったのよ」

 

「あの歳で性欲が枯れてないのかよ。て言うか、子作りが趣味って……。凄い趣味だな。どれくらいの子供がいるんだよ?」

 

「さぁね。私の知ってるのは四、五人ぐらいしかいないわ。まぁ、子供を産んだら女は用済みらしいけど」

凄いゲスだな。本当、裏にはマトモな奴がいないな。

 

「多分、温泉がてら子作りの相手を探しにきたんでしょ。関わったら私は大丈夫だけど、代表候補生だと知ったら子供を産まされるかもね」

 

「ラウラにそんなことをしたら俺がぶっ殺すから大丈夫だ」

 

「あれ?僕は助けてくれないの?」

 

「自分でどうにかしろ」

わざわざ敵を助けるほど俺は優しくない。

 

「でも、そんな強姦みたいなことして大丈夫なのか?」

 

「大丈夫なんじゃない。あのエロじじいなら上手く相手を口説いて合意の上でヤるでしょ。何たって生涯無敗の男なんだから」

 

「は?」

 

「だから生涯無敗。生まれてきてからジャンケンですら一回も負けたことがないらしいよ」

そりゃ、規格外だな。天災とか人類最強よりも桁違いだ。でも、強そうには見えないな。つまり強さとは別の何かを持っているということか。俺の理想とは違うが興味深いな。

 

「ところで話は変わるが、こんな場所なんだ。非合法な店とかはないのか?」

 

「普通に一般人も来るからね。あまりないよ」

 

「じゃあ、少しはあるのか?」

 

「地下にカジノとかエロい店なら少しはあるよ。でも、未成年は入れないよ。私も前に来た時に入ろうとしたけど力ずくで追い出されたわ。誰かの紹介があれば入れるらしいけど、誰もいなかったし」

カジノか。一回は行ってみたいな。でも、紹介してくれる人物に心当たりがないな。ここはデバイスの出番だな。女バージョンだけじゃなくて大人バージョンも作っておいてよかった。

 

「お、着いたな」

喋っている間に目的の旅館に着いたみたいだ。

 

 

 

 

「あれ?隊長に飛原さん。どうして、ここにいるんですか?」

部屋に移動する途中の売店で姐さん達、黒ウサギ隊のメンバーに会った。

 

「こっちは旅行だが。そっちは?」

 

「こちらも旅行です」

 

「おー、美味しそうなお菓子があるよ~」

のほほんさんが売店のお菓子を食べたそうに見ている。

 

「もうすぐ昼飯だから我慢しろ」

何か母親みたいなことを言ってるな。

 

「え~、ヒハランはケチだな~」

 

「そういう問題じゃない」

とりあえず、かんちゃんとシャルは先に部屋に行かせて姐さんと話すことにした。のほほんさんはお菓子の試食を食べている。後で昼飯を食べれなくなっても知らないぞ。

 

「私達は飛原さんに夏コミを案内された後、何ヵ所か整地巡礼をして今はここで休養をしているんです」

俺が薦めといてなんだが軍人として、それでいいのか?

 

「なるほど。それで、いつ帰るんだ?」

 

「実は今日の午後に帰るんです。それで本国にいる他の隊員のためにお土産を買っているんです」

 

「だったらラウラも昼飯を食べたら一緒に行ったらどうだ?短い時間とはいえ、久し振りに会ったんだ」

 

「では、お兄ちゃんとお言葉に甘えるとしよう」

妹の幸せが兄の幸せだ。

 

「おい、のほほんさん。そろそろ行くぞ」

 

「え~、もうちょっと待ってよ~」

店員が試食を大量に食べて買う様子のない、のほほんさんを不愉快そうに睨んでいる。あれもプロだな。変態ではないからレベルは低そうだが。

 

「帰りに買ってやるから我慢しろ」

 

「分かったよ~」

のほほんさんが渋々、納得して食べるのをやめた。

 

 

俺は昼飯を食べ終えて早速、風呂に入りにきた。昼飯は豪華海の幸を使った鍋だ。

ちなみにラウラは黒ウサギ隊のところに、かんちゃんはレトロゲームのところに行っている。ゲームは後で俺もプレイしよう。のほほんさんは昼飯を食べて部屋に戻ると寝てしまった。かなり自由だ。

 

「さてさて、男のカップルはいるかな?」

シャルがキラキラした笑顔で言っている。

 

「基本的に普通のカップルか夫婦だと思うぞ」

 

「そうだよ、シャルロットちゃん。いるのはホモじゃなくてレズに決まっているでしょ」

 

「お前、人の話を聞いていたか!」

何で変態は人の言うことを聞かないんだ。もしかして、これが俺の変態が苦手な理由か?

 

「私は深夜がいれば、それで充分よ」

 

「……一人ぐらいは俺の言うことを聞いてくれ」

せめて、かんちゃんだけでも連れてくるべきだったな。

 

そして更衣室に来たので男女に分かれて着替える。ここは水着の着用が義務付けられている。

着替え終わって浴場に行くと女子はまだみたいなので先に浸かることにした。サウナとかもあって結構、広い。しかも露天風呂で景色もいいが時間が時間なので人数は少ない。カップルが数組と変な男が二人いるだけだ。男の片方は顔面に刺青、もう片方は死んだ魚みたいな目をしている。て言うか、死んだ魚みたいな目をしている男は前にプールで可愛い幼女と一緒にいた奴じゃないか?かなりヤバい雰囲気だったから覚えてる。

 

「さて、私もそろそろ出るかな」

さすがに男子更衣室にいれるわけにはいかず指輪になっていた黒が人型になると俺に抱き付いてきた。もちろん、水着を着ている。

 

「男のカップルがいるよ!」

 

「残念。レズカップルはいないか……」

二人もやって来たみたいだがテンションが全然違う。

 

「夜は若者が多い女子風呂に行くわ」

何故だろう?性別を考えたら刹那っちは女子風呂に行くのが普通なのに犯罪にしか思えない。

 

ブシャャャャャーーー!

 

「あの二人は凄く妄想がはかどって死にそう」

シャルがいきなり鼻血を出しながら幸せそうに倒れた。風呂がシャルの血で凄いことになってる。別のところに移動しよう。

 

「刹那っち、シャルの看護を頼む」

 

「え?何でわた――」

 

「気絶しているシャルに色々、やり放題だぞ」

 

「任された!」

刹那っちが凄く良い笑顔でシャルを更衣室に運んでいった。入ったばかりなのに忙しいな。

別の風呂に移動しようときた時にシャルが倒れた原因の二人の会話が聞こえてきた。

 

「せっかくの混浴なのに何で僕は君と一緒に入ってるんだ?本当なら歳上のロリメイド三人と入りたいのに」

 

「かははっ!奇遇だな。俺もお前みたいな陰気な奴じゃなくて綺麗なお姉さんと入りたかったぜ」

 

「傑作だな」

 

「いや、戯言だろ」

ふむ、妙に息の合ってる二人組だ。まるで鏡写しだ。

ところで、その二人を更衣室の入口から見ている女子二人が気になるな。一人は前にプールで見た可愛い幼女、もう一人は両腕が義手でニット帽をしている。何故、風呂に入るのにニット帽なんかしてるんだ?て言うか、二人もシャルほどではないけど鼻血を出している。ホモが嫌いな女子はいないということか。

関わりたくないし一旦、サウナに逃げるか。




針金細工の変態と子作りが趣味のエロじじいの話は書く予定のなかった刹那の裏設定です。最後なので、ついでに書いておきました。

次回はついに最終回。亡国機業も登場します。

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第45話 亡国機業

「妙にツヤツヤした顔をしているな?」

風呂から出て部屋にシャルの様子を見に来ると刹那っちが幸せそうにしていた。

 

「おいしくいただきました」

手を合わせながら言う。

 

「いただく?寝ている相手をか?」

 

「深夜くんが遅いから我慢できなくて。睡姦って初めてだったけど気持ち良かった」

マジでか!?気絶している相手に何をやってんだよ!

て言うか、俺が風呂に入っていたのは三十分ぐらいなのに。手が速いな。

 

「いや、普通、途中で起きるだろ」

 

「起きそうになったら睡眠薬を使って眠らせたわ。裏でも中々手に入らない強力なヤツよ」

 

「……それって、普通に犯罪だろ。後で処分されないのか?」

て言うか、シャルにはどうやって説明しようか。いや、しなくていいな。

 

「大丈夫でしょ。身内のことだし、言わなければ問題なし」

物凄く肝が座ってるな。

 

「今度からはこの方法でヤろうと思うの。て言うか、今まで何で思い付かなかったのか不思議」

 

「IS学園ではやめろよ。俺だけじゃなくて魔王も敵に回すぞ」

 

「う~ん……」

本格的に考え込む刹那っち。普通、悩むか?

 

「仕方ない。今度から仕事をする時は殺す前にヤることで妥協しよう」

そんな妥協があるわけねぇだろ!ヤりたければ恋人を作れよ。

まぁ、刹那っちには何を言っても無駄か。

 

「そうだ、戻って来る時に見付けたんだが卓球しないか?」

 

「別にいいよ」

そして俺は鞄からマイラケットを出して卓球場に移動した。

 

 

 

卓球室に着くと先客が二人いた。金髪と乱暴そうな女がベンチに座って飲み物を飲んでいる。

 

「あ、スコールさんとオータムさんだ」

 

「知り合いか?」

 

「うん」

刹那っちは意外と顔が広いな。

 

「お久しぶりです」

 

「あら、貴女は誰かしら?オータムは覚えてる?」

 

「覚えてねぇ」

二人は刹那っちのことを覚えていなのか。

 

「ごめんなさい。私達は貴女のことを覚えてないわ」

 

「二人が覚えてないのも無理はありません。二年ぐらい前にウチに依頼に来た時に少し会っただけですから」

 

「依頼?」

 

「はい、私は天吹です」

さっきから刹那っちが二人に尊敬の眼差しを送っているのが気になる。

 

「……天吹。ああ、思い出したわ。確かお母さんの後ろで頑張ってた女の子よね?大きくなったわね」

何か見た目以上に発言が年寄り臭いな。

 

「で、そっちの男の子は?もしかして恋人かしら?」

 

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ、オバサン。深夜は私の恋人よ」

 

「お、オバサン……」

 

「あぁ?てめぇ、舐めた口、聞いてんじゃねぇぞ」

このオータムって女、ガラが悪いな。いきなり立ち上がって、こっちを威嚇してきた。

 

「やめなさい、オータム」

 

「ち!分かったよ」

そう言うとオータムは渋々、ベンチに座った。

 

「じゃあ、自己紹介しておこうか。俺は飛原深夜だ。よろしく」

黒は不愉快そうにして挨拶をしない。

 

「私はスコールよ。こちらこそ、よろしくね」

 

「オータムだ。てめぇなんかと、よろしくするつもりはない」

ここまで偉そうにされるとムカつくな。

 

「深夜くん、この二人は亡国機業よ」

 

「亡国機業?じゃあ、ウサギが言ってた、ISを作れってうるさい金髪のオバサンってスコールのことだったのか」

確か、いっくんを拉致った組織でもあるな。

 

「貴女、私達のことを知っているのかしら?」

 

「篠ノ之束に少し聞いただけだ」

 

「!?貴方、篠ノ之博士の知り合いなの?」

いやぁ、良い感じに驚いた顔だな。こんな感じに分かりやすい奴ばかりだったら俺も苦労しないのに。まぁ、こんな奴ばかりというのもつまらないが。

 

「友達だ」

 

「あら、そうなの。だったら貴方から篠ノ之博士に頼んでくれないかしら?」

 

「ISの提供をか?しかもコアごと」

 

「ええ、話が早くて助かるわ」

あ、良いこと思い付いた。

 

「そうだな、せっかく卓球場にいるんだ。俺と卓球で勝負しないか?俺に勝ったら頼んでやるよ。その代わり、あんた達が負けたら俺の言うことを聞いてもらう。どうだ?」

 

「……内容によるわね」

分かりやすいぐらい警戒してるな。まぁ、いきなりこんな賭けを持ち掛けられたら普通は誰でも警戒するよな。

 

「俺が勝ったらカジノに招待してもらう」

 

「は?」

 

「だからカジノだよ。未成年だけじゃ入れないだろ。だから、あんたに招待してもらいたいんだよ」

デバイスを使うのはいいが、バレた場合めんどくさいことになるからな。

 

「ええ、それぐらいならいいわよ。ルールはどうするの?」

 

「そっちは二人だしダブルスにしよう。俺は黒とやる」

そういや、ダブルスは初めてだな。確かパートナーと交互に打つんだよな。

 

「ええ、いいわよ」

 

「てめぇみたいな生意気なガキに大人の力を教えてやるよ」

卓球でかよ。

 

「深夜、私はラケット持ってないんだけど」

 

「あそこの受付で借りてこい」

黒がラケットを借りてきて試合が開始した。

スコールが中陣ドライブ型、オータムが前陣速攻型。両方、攻撃的なプレイスタイルだ。カウンターが得意な俺にとってはやりやすい。

そして、試合は俺達の快勝で終わった。

 

「ゲームセット、俺達の勝ちだな」

 

「あぁん!てめぇ、舐めんじゃねぇぞ!」

 

「何か負け犬みたいで憐れだな」

あ、しまった。思ったことを、そのまま口に出してしまった。

 

「てめぇ、ぶっ殺す!」

 

「やめなさい、オータム!」

 

「で、でもよ……スコール」

オータムはスコールに弱いんだな。どうでもいいが。

 

「私達の負けよ」

 

「ちっ!」

そう言うとオータムはラケットを床に叩き付けて、どこかに行ってしまった。道具は大事にしろよ。

 

「オータムが失礼な態度を取ってごめんね。恋人として謝るわ」

俺を利用してウサギに取り入ろうという考えだな。

て言うか、何か変な単語が聞こえたが。

 

「え~と、二人は恋人なんですか?」

驚いて、つい敬語になってしまった。

 

「ええ、そうよ。言ってなかったかしら?」

聞いてない。と言うか予想外すぎる。

 

「……刹那っちが二人に尊敬の眼差しを向けていたのは、こういうことだったのか?」

 

「そういうこと。二人がレズカップルだからよ。私も早くそうなりたいわ。具体的に言うとクロエちゃんか簪ちゃんあたりと」

適当にクロエあたりを狙ってくれ。

 

「ところで、どうするのかしら?今すぐ行く?」

 

「恋人は追わなくていいのか?」

 

「ええ、大丈夫よ。こういう時は放っておくのが一番」

なるほど、これが大人の余裕か。

 

「じゃあ、行くか」

 

 

 

 

「ああ、くそっ!あの占い師の女。思い出しただけで腹が立つ!」

カジノから戻ってきて皆で夕食を食べている。旅館ではなく俺が町で見かけた焼肉屋に来ている。

 

「どうした?お兄ちゃんが苛立っているとは珍しい。というよりも初めて見たな」

 

「ああ、カジノでちょっとあってな。あ、刹那っち。その肉、焦げそうだぞ」

あんな人を苛立たせる天才には会ったことがない。的確に人の嫌がることだけを言うとは。それに、あそこまで感情の読めない相手は初めてだ。

 

「私は焦げかけが好きなのよ。深夜くんのことは気にしなくていいわよ。カジノでぼろ負けしただけだから」

 

「深夜が負けたの?想像できないけど。その肉、私が育てたのに」

 

「へへぇ~、焼肉はサバイバルだよ、かんちゃん」

のほほんさんはあれだけお菓子を食べておいて、よく肉なんて食べれるな。しかも、それで太らないんだから不思議だ。

 

「で、何があったの、深夜」

シャルは肉よりも野菜を食べてるな。

 

「超能力者を名乗る酒臭いオバサンに儲けのほとんどをポーカーでむしりとられたんだよ。後、ラウラ。肉だけじゃなくて野菜もちゃんと食べろよ」

俺はラウラの皿に野菜を入れる。

 

「……ちゃんと分かっている。ところで、どれくらいむしりとられたのだ?」

 

「最大の時は百万ぐらい稼いでいたが最終的に残った稼ぎは五万ぐらいだ」

後でまた稼ぎにいくか。夏コミと今回の旅行で結構な額を使ったし。

 

「それでもマイナスになって借金を背負うよりもはいいよ」

 

「俺がマイナスになる前に自分で引いたんだよ。ギャンブルは引き際が大事だからな」

 

「うんうん、その通りだよ。ギャンブルは引き際が大事だね。ところで束さんも肉、食べていいかな?」

 

「うわっ!」

気付いたらウサギが俺に抱き付いていた。

 

「いつから、いたんだ?」

 

「今、来たところだよ。しっくんが人の気配に気付かないなんて珍しいね。あ、店員さん。ビールを注文」

 

「あと、Aセットも追加で」

俺が注文している間にウサギが勝手に俺の肉を食べた。

 

「こら、ウサギ。そこは私の特等席よ。どきなさい」

黒が人型になると同時にウサギの頭を掴む。最初は避けられていたのに黒も成長したな。

 

「痛い痛い!黒ちゃん、この町では暴力は禁止されているんだよ!」

 

「知らないわよ。このウサギはドMの変態だから、こうすれば喜ぶとか言えば大丈夫でしょ」

大丈夫だとは思えないが。まぁ、身内同士のじゃれあいぐらいなら問題ないか。

それよりもウサギが黒に抵抗しているせいで、さらに首が絞まってヤバい。

 

「よっと」

俺は箸でウサギの額を突いた。

 

「イタッ!」

ウサギが俺から離れた。これで肉が食えるな。

 

「酷いよ、しっくん」

 

「食い物の恨みは恐ろしいんだよ」

とりあえず俺は次の肉をいれる。

 

「じゃあウサギがまた変なことをしないうちに」

そう言うと今度は黒が抱き付いてきた。

 

「黒は食べれないから食事中は指輪になってるんじゃなかったのか?」

 

「深夜に抱き付いているだけで幸せだから問題なしよ」

食べるのに少し邪魔だが仕方ないか。

 

「あ、のほほんさん。その肉、まだ焼けてないぞ」

 

「少しぐらい赤いところが残ってる方がおいしいんだよ~」

ここで店員が追加の肉とウサギのビールを持ってきた。

 

「よし、ビールが来たところで束さんも肉争奪戦に参加するよ」

 

「争奪戦なんかしてねぇよ。て言うか、何でここにいるんだよ?」

ウサギに旅行をするなんて言った覚えはないぞ。

 

「束さんだから」

説明になってないが妙な説得力があるな。

 

その後の旅行はウサギも交えてすることになった。夜は部屋にウサギが乗り込んできて大変だった。刹那っちが昼のことで満足していたのが不幸中の幸いだったな。

翌日はカジノでリベンジしようと思ったら刹那っちの叔父である生涯無敗がやって来て、また稼げなかった。生涯無敗の名は伊達じゃないな。その後も色々な裏の住人と出会ったり、亡国機業にスカウトされたりした。返事はまだしていないが。楽しい旅行だったな。

また来年も来よう。いや、冬休みにするか。カジノでリベンジしてやる。




ついに最終回です。飽き性の自分がここまでやれたことに驚いています。
やりたいことの大半は出来て個人的には満足しています。一つやり残したことをあげるとしたマドカを出し損ねたことですね。もしかしたら気が向いたり、何か思い付いたりしたら復活するかもしれません。

では次回作にご期待ください。まだ完結させていない作品があるけど。


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