ハリーと侍と賢者の石 (近衛陸)
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第1訓 魔法学校への入学案内

サイトからの移転小説です。

ゆったり気長に更新するのでよろしくお願いいたします。



今は朝。万事屋では三人が並んで寝ている。どうやら昨日は新八が万事屋に泊まっていき仲良く川の字で眠ったようだ。

川の字といっても銀時が真ん中である。その両隣には、銀時にべったりとくっついている二人の子供……新八と神楽が寝ていた。

 

微笑ましい。実に微笑ましい朝の光景である。そんな微笑ましい光景を壊すかのように突然万事屋の窓がガッシャーン!!と割れた。

 

「なんだッ!?」

 

「な、なんですか!?」

 

「……何アルか?」

 

銀時が音に反応しガバッと起きあがると横の二人も目を覚ました。そして音のした方を見る。無惨にも窓のガラスは割れていた。

 

そして部屋の隅に手紙を加えた一匹の白銀の羽に赤い瞳のフクロウがいた。

 

「コイツが割ったのか?」

 

「そうみたいですね……ってかなんでフクロウ?」

 

銀時は眉を寄せて呟いた。新八はそんな銀時の言葉にコクンっと頷く。するとフクロウが銀時へと近寄り肩の上に止まった。そして手紙を渡すと銀時に懐くよう頬に擦りよる。

 

「なんか白ちゃんは銀ちゃんに懐いてるアルなァ」

 

「いや、神楽ちゃん……白ちゃんって何?」

 

「そのフクロウの名前ネ。白銀から取って白ちゃんヨ」

 

新八の言葉に神楽は白銀のフクロウを見ながらきっぱりといった。銀時はそんな二人を見ながら渡された手紙に視線を下ろした。

 

手紙の宛名には

 

万事屋銀ちゃん

坂田銀時様、神楽様、志村新八様

 

っと書かれてあった。銀時は眉を寄せ封筒を裏返してみる。裏には紋章入りの紫色のロウで止められていた。真ん中に大きく【H】と書かれ、その周りをライオン、鷲、穴熊、ヘビが取り囲んでいる。

銀時がじっと封筒を見ていると新八と神楽が話かけてきた。

 

「銀ちゃん!!何の手紙アルか?」

 

「依頼でしょうか?」

 

神楽と新八はワクワクと銀時に聞いた。銀時は封筒を再度見つめると封筒を開け手紙を読みはじめた。

 

「ホグワーツ魔法魔術学校……親愛なる銀時殿、神楽殿、新八殿。このたびホグワーツ魔法魔術学校の異世界留学入学生に選ばれました。心よりお喜び申し上げます。ちなみにこの手紙は読み終えたと同時に必要な物と一緒に移動します……え?」

 

 

「「え?」」

 

銀時は読み終わると驚き、新八や神楽も銀時の読んだ内容に驚いた。そして手紙通りに万事屋から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

ここは真選組の屯所である。

この場所にはいつも通りむさ苦しい男共がたくさん居る。

今は朝なので、朝の稽古を終えた後だろうか。隊士達は汗を流していた。朝なのに暑苦しい。ほのぼのとした微笑ましいものが一切ない……

しかし、そのむさ苦しい中にも違うオーラを纏った子もいる。

そう、ジミーもとい山崎である。ちなみに纏ったオーラは地味なオーラ……ジミーには相応しいだろう。

山崎はいつも通り、仕事をさぼりミントンをしていた。

いつもいつもそれで土方に怒られるのだが……まぁ、それは仕方ないのだろう。ジミーとはそんな役割なのだ……

 

まぁ、そんな山崎がミントンをしていると土方の怒鳴り声が聞こえた。

 

「ひっ……ふ、副長……ち、違うんです」

 

山崎は目を閉じ頭を守りながら言った。しかしいつまでたっても土方の拳が飛んでこない。山崎は恐る恐る目を開けた。どうやら土方の声が聞こえたのは部屋の中のようだ。山崎はなんだろうか?っと気になり遠くから部屋の中を覗きだした。部屋の中に居たのは沖田と土方だった。

 

 

 

 

「おい、起きろ総悟。見回りに行くぞ」

 

土方は腕を組んで沖田を見つめた。沖田はふざけたアイマスクを付けて寝ている。

 

「母ちゃん、勘弁しろよなァ……今日は日曜日ですぜィ」

 

「誰が母ちゃんだ!!誰が!!……大体今日は木曜日だ」

 

土方の言葉に沖田はウザそうに眉を寄せアイマスクずらして土方を見た。

その時一羽のフクロウが土方の頭目掛けてもの凄いスピードで飛んできた。

 

ザクッと嫌な音がして土方に刺さるフクロウのくちばし。土方があまりの痛さに叫びのた打ち回った。

 

「ギャァァア!!刺さったァァァア」

 

その光景に沖田は驚き目を見開くもにんまりとそれはもう楽しそうに笑った。そして飛んできたフクロウを持ち上げる。

 

「お前やりやすねィ。どうでさァ、これから俺のペットサド丸として……ん?手紙?」

 

沖田がフクロウをペットとして勧誘しているとフクロウは手紙を差し出した。そして沖田はそれを開けて読むと……土方とともに屯所から消えた。

 

 

 

 

「えぇぇぇぇ!?き、消えたァァァア!?」

 

遠くから見ていた山崎は驚いた。突然フクロウが飛んできて土方に攻撃を仕掛けたかと思うと……二人揃って消えたのだ。

 

「た、た、大変です!!局長ォォォオ!!」

 

山崎は叫びながら局長室へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

江戸かぶき町を颯爽と歩く男がいた。彼の名は桂小太郎。世間では、天人の支配するこの江戸をひっくり返そうとしている指名手配の男と恐れられている。

 

しかし、実際に桂をよく知る人物達はその男をただのバカあるいは電波男だと思っている。

だが、その電波男の桂を慕う者達もたくさんいた。今日もきっとその者達と一緒に攘夷活動について会議をしに行く所なのだろう。

 

 

 

 

 

「ちょっとそこのお兄さん!!見て行って可愛い子いっぱいいるよ~」

 

【一時間1万ポッキリ……損させません】

 

桂はハッピを羽織ると歩いている通行人に話しかけた。ペットのエリザベスは店の看板を掲げている。

 

 

って……なんでキャバクラの客寄せェェエ!!

 

「うむ、よくぞ聞いてくれた……ナレーションくん。攘夷活動するにもこう、入り用でなァ」

 

桂はナレーションの突っ込みに反応した。するとその時一羽のフクロウが警戒しながら近寄ってきた。どうやらエリザベスに警戒しているようだ。

 

「むっ……あれは、フクロウのふく子!?何故このような所に……お母さんと再婚相手のいる田舎に行ったのでは!!」

 

ふく子「良いの……お母さんってば最近私のこと構ってくれないんだもの!!」

 

桂はフクロウを捕まえると裏声を出して言った。

 

ふく子「お母さんはきっと……きっと……私のことなんて大事じゃないんだわ!!」

 

桂「それはちが……」

 

ふく子母「それは違うわ!!誤解なの!!」

 

ふく子「お、お母さん……な、何よ!!今さら来たって私のこと大事じゃないって知ってるんだから!!」

 

ふく子母「大事じゃないわけないじゃない!!誤解なのよ」

 

ふく子父「そうだ。お母さんはふく子が嫌いになったんじゃない!!ある理由であまり動けなかったんだ」

 

ふく子「お、お父さん……り、理由って?」

 

ふく子はビクッとしたあまり動けなかったなんて……何かの重い病気だったらどうしようかと……

 

ふく子父「ふく子……お母さんの体には今一つの生命が宿っているんだ」

 

ふく子「え?それって……」

 

ふく子母「ええ。あなたはお姉ちゃんになるの」

 

ふく子「わ、私がお姉ちゃ……ぐギャァァア」

 

フクロウのふく子はいい加減桂の芝居にうんざりしたのだろう。鋭いくちばしで桂の額をグサッグサッと刺した。

そして手紙を投げ渡すと飛び去って行った。

残された桂は痛そうにしながらとりあえず手紙を読む。そして消えた。

 

 



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第2訓 入学手続きは色々とハプニングがある


更新です。

数話をひとつにまとめているので文の始まりに違和感が拭えません。
まぁ、あまりにも酷いのは直しますがそれ以外は雰囲気で読んでください(笑)


 

新八は目を開けた。そして驚く……先ほどまで銀時、神楽と万事屋に居たはずなのだが、ここは明らかに違っていた。

そこは広くて美しい円形の部屋……新八の近くには何人かの子供が倒れていた。そして辺りにおかしな小さな物音で満ち溢れていた。棚の上には、みすぼらしいボロボロの三角帽子が乗っている。壁には額縁に入った写真が掛かっており、額縁の中で人が動いていた。

 

「え?え?ちょ……う、動いてるんですけどォォォオ!!」

 

新八が目を見開き叫び声をあげる。その声にうるさそうに倒れていた子供達が起き上がった。

 

「ん……うるせぇ……」

 

銀髪の子供は起きあがると額縁を見て固まった。近くに居た黒髪に瞳孔の開いた子供も固まっている。

 

「いやいやいや、ないない……夢だな」

 

「そうだ……これは夢だ」

 

銀髪の子供が言うと黒髪の子供もそれに答えるように言った。

 

「あっ、お宅も夢だと思う?」

 

「あぁ、夢だろ。これは夢しかねぇよ」

 

「お前話し分かるじゃん。名前なんて言うの?」

 

「お前こそ、話し分かるじゃねぇか。あっ、俺は土方十四郎だ」

 

「へぇ、俺は坂田銀時って……」

 

「「…………え?」」

 

二人は名前を言い合うと固まった。そしてマジマジとお互いを見つめ合う。

そして確認し合うように言い出した。

 

「もしかして……多串くん?」

 

「多串じゃねぇ土方だ。テメェこそ……万事屋か?」

 

「「なんで子供になってんのォォォオ!!」」

 

銀時の問いに土方は頷いた。そして銀時も土方の問いに頷く。二人は力の限り叫んだ。

 

 

 

 

二人が叫んでいる時、もう一つのグループでも騒ぎになっていた。

 

「ここどこアルか?」

 

神楽は起き上がって辺りを見渡した。周りは見たこともない不思議な部屋でこれまた見たこともない子供達が騒いでいたのだ。

 

「やっと起きたんですかィ。全く……チャイナはお気楽でいいですねィ」

 

「その嫌みったらしい言い方はサド!!……」

 

神楽は沖田の方を見ると目を見開いた。目の前にいたのは自分と背丈の変わらない栗色の髪の少年だった。

 

 

「……サド……アルか?」

 

神楽が聞くと沖田は嫌そうに眉を寄せるもコクリと頷いた。

 

「そうアルか……ぷぷぷっ、知らなかったネ。まさかシークレットシューズで背丈を誤魔化してたなんて」

 

神楽は心底馬鹿にしたように笑った。沖田は眉を寄せる。

 

「んなわけねぇだろ。まぁ、チャイナは馬鹿だから分からないのも仕方ありやせんが」

 

「あぁ?お前今何て言ったネ!!」

 

「聞こえ無かったんですかィ?頭だけじゃなく耳も悪いなんて可哀想でさァ」

 

沖田は神楽を馬鹿にするように言う。神楽は沖田を睨みつけた、今にも争い事が起こりそうだ。そんな二人の間に割ってはいる人物がいた。

 

「ちょ……神楽ちゃんに沖田さん、二人とも落ち着いて下さい。今はそれどころじゃないでしょ?」

 

眼鏡を掛けた黒髪の少年。そう、新八である。

 

「誰アル……あぁ、新八か」

 

「あ?誰……眼鏡の坊主か」

 

二人は一瞬入ってきた人物が誰か分からず首を傾げるも…ゆっくりと視線を眼鏡に移し納得したように頷いた。

 

「ちょっと待てェェェエ!!お前らさっきどこで僕だと判断したァァア!!」

 

新八は力強く二人に向かって叫んだ。その時、部屋の扉が開き白髪のおじいさんが現れた。

 

扉から入ってきた爺さんは部屋にいる子供たちの顔を交互に見つめた。

 

「ふむ。一人足りないようだが……まぁ、よいじゃろう」

 

長い髭を撫でながらこの部屋の主、ダンブルドアは両手を上げた。

子供たちは少し警戒をする。

 

「ようこそ!!異世界の皆様方……わしはこのホグワーツ魔法魔術学校校長……アルバス・ダンブルドアじゃ」

 

いきなりしゃべり始めた。爺さんに驚く子供たち。しかしすぐに囁かれ始めた?

 

「魔法?」

 

「銀ちゃん……魔法魔術学校って何アルか?」

 

「魔術……黒魔術ですかねィ」

 

「うっさんくせぇ」

 

銀時以外がペチャクチャと話し始める。銀時は危険がないかじっと爺さんを見つめて口を開いた。

 

「……その魔法魔術学校の校長が俺たちに何のようだ?……それにこの身体」

 

銀時が眉を寄せて聞くと他4人もダンブルドアを見つめた。ダンブルドアは何ともないように首を傾げる。

 

「はてはて?可笑しいのぅ……入学案内に書いてあったじゃろう?諸君らは選ばれたのじゃ」

 

「選ばれただ?何にだよ」

 

土方が眉を寄せた。この中で土方だけが入学案内の内容を知らないのだ。

他の4人は入学案内の内容を思い出している。

 

「異世界留学入学生……」

 

新八がボソッと小さく呟いた。新八の言葉に何人かは眉を寄せた。

 

「正解じゃ……子供になった理由もなんとなく分かろう。もちろん保護者からも許可を取っておる」

 

『保護者?』

 

5人はダンブルドアの言葉に首を傾げた。ダンブルドアは杖を取り出し一振りする。すると二枚の紙が現れた。一枚目には万事屋の三人の入学許可書だった。保護者はお登勢とお妙になっていた。二枚目の紙には土方と沖田の入学許可書だった。保護者は片栗粉と近藤になっていた。

紙を見つめたまま5人はしばらく呆然とした。

 

「ふざけ……」

 

「もちろん、学費も食事もタダじゃ」

 

「……まぁ、悪くないんじゃねぇ?」

 

「そうアルな」

 

銀時は一瞬文句を言おうとするもダンブルドアの言葉に黙って納得した。新八はそんな銀時を見て苦笑いをする。

 

「おい……万事屋は納得しても俺たちは納得しねぇぞ!!なぁ、総悟」

 

「旦那、一緒のクラスになれたらいいですねィ」

 

「総悟ォォオ!!なんで入学する気満々なのォ」

 

沖田は銀時の傍で楽しそうに言っていた。そんな沖田を見て叫ぶ土方。

 

「だって……面白そうじゃないですかィ。旦那も居やすし……退屈しそうにないでさァ」

 

「そうそう、まぁ……嫌なら土方くんは帰ればいいじゃん。……魔法でマヨ国に行けるかもしれないのによォ……」

 

沖田は心底面白そうにニヤリと笑った。それを見ると銀時もニヤリと笑った。

そんな二人を見て眉を寄せる土方だが……銀時の言ったマヨ国が気になるようだ。しばらく真剣に考え始めた。

 

「ま、まぁ……許可されたなら行くのが普通だろう。仕方ないから俺も入学してやる」

 

「あ?土方くんってば入学したいの間違いだろ?入学させて下さい言ってみろ」

 

「言ってみろ。土方ァ……お前なら言えるはずだ、土方ァ」

 

「テ、テメェ等……」

 

土方の言葉にドSコンビが弄った。土方は眉を寄せてプルプル身体を震わした今にも怒りが爆発しそうである。

そんな様子を見るとダンブルドアはパンパンと手を叩いて注意を促した。

 

「話は終わったかのぉ?」

 

ダンブルドアは注目を集めると聞いた。5人は顔を見合わせた、そして銀時が代表として言う。

 

「爺さん……俺達は入学することにしたぜ」

 

銀時が言うと他の4人も頷いた。ダンブルドアは満足げに頷くと両手を上げた。

 

「改めてようこそ!!新入生の諸君。君らは明日の入学式からこのホグワーツ魔法魔術学校の生徒じゃ」

 

ダンブルドアが言い終わると上から紙吹雪が落ちてきた。ダンブルドアの魔法だろう。5人はそれをしばらく眺めるも新八がふと疑問に思って言った。

 

「そういえば……僕達の教科書とかあるんですか?」

 

新八の言葉にダンブルドアは何かを思い出したように動き出した。

 

「そうじゃ、そうじゃ、すっかり忘れておった」

 

ダンブルドアは棚から坪を取り出した。そして杖を一振りし封筒を一人一人に渡した。中にはこの学年でいる教科書などが書かれた紙と切符……そして見たことないお金が入っていた。

 

「よいか?今から諸君らはこの煙突飛行粉でダイアゴン横丁まで行く、そこからはハグリッドと言う人物が案内してくれる」

 

5人は顔を見合わせた。そしてダンブルドアの持っている坪をじっと見つめる。中にはキラキラ光る粉が入ってるようだ。

 

「どうやって行くアルか?」

 

神楽がじっと見つめるとダンブルドアは粉をひとつまみしては坪に戻しながら説明をし始める。

ダンブルドアの説明によると、坪の中のキラキラ光る粉を一掴みし暖炉の炎に粉を振りかける。そして炎がエメラルド・グリーンに変わったら中に入り行きたい場所を叫ぶようだ。

銀時達は眉を寄せた。そして、火のついた暖炉に入るなど冗談じゃないっと思った。しかし、一人だけは目をキラキラ輝かせワクワクとしていた……もちろんその一人とは神楽である。

 

「面白そうネ!!私が一番乗りヨ」

 

神楽はそう言うとダンブルドアが持っている坪に手を突っ込み粉を一掴み取った。

 

「行き先はハッキリと言うのじゃぞ」

 

ダンブルドアの言葉に神楽は頷くと暖炉の火に向かって粉を投げ入れた。ゴーっという音とともに炎は色が変わり、高く燃え上がった。神楽は怖くないのか迷わずにその中へと入る。どうやら熱くはないようだった。

 

「ダイアゴン横ちょブワックション」

 

そして大きなくしゃみを一つして目の前から消えた。

 

神楽が消えてしばらくシーンとする。

 

「なぁ、さっきくしゃみしてなかったか?」

 

土方が聞き間違いかどうか近くの沖田に聞いた。

 

「してやした」

 

沖田はあまりのことに土方の問いに素直に答えた。

 

「いやいやいや、何のん気に答えてるんですか!!ちょ……神楽ちゃん大丈夫なのォォオ!!」

 

新八が叫ぶと銀時がその脇を通り過ぎ暖炉へと向かった。手には一掴みのキラキラ光る粉を握っていた。

 

「おそらくノクターン横丁に着いたのじゃろう」

 

暖炉の回路を調べていたダンブルドアが銀時に向かって言う。銀時は頷くと暖炉の火に粉を振り掛けた。

 

「銀さん!!」

 

「万事屋!!」

 

「旦那ァ!!」

 

三人が口々に銀時の名前を呼んだ。

 

「お前らは先に行っててくれ。神楽連れて行くからよォ」

 

銀時は三人に向けて言うと勢い良く色の変わった暖炉の火の中へと飛び込んだ。

 

「ノクターン横丁!!」

 

銀時が叫ぶように言うと消えた。

 

 

 

 

 

残された三人はとりあえず銀時の言う通り最初の目的地に行くことにした。ちなみに色々と口論して銀時が行ってからしばらくたっていた。

 

「とりあえず、俺から行く」

 

土方は前に出ると坪に手を伸ばそうとした。その時、突然土方の真上に子供が現れた。

もちろん空中で浮くことは出来ない。よって下に居た土方は下敷きとなってしまった。

 

「グヘッ」

 

「いってて」

 

最初の潰れた蛙のような声は潰された土方。次に聞こえて来たのが落ちてきた人物だ。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「そのまま潰しちゃってくだせェ」

 

新八は二人を心配して言った。沖田はニヤニヤと笑いながらどさくさに紛れて土方を踏みつけていた。

ダンブルドアはそんな子供たちの様子を見て髭を撫でた。

 

「どうやら、これで異世界留学入学生が揃ったようじゃな」

 

 



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第3訓 怪しいババアは大抵占い師

 

 

一方その頃……銀時はと言うと怪しい書庫のような場所へと着いていた。

 

「いててっ……ここどこだ?」

 

煤だらけで立ち上がった銀時は周りを見渡す。辺りは薄暗く周りには沢山の本棚がある。どうやらここには銀時以外誰も居ないようだ。銀時はチラッと自分の出てきた暖炉に目を向けるもすでに道は閉ざされていた。軽く舌打ちすると神楽を探そうと歩きだそうとした。

しかし、その時ちょうど上でガタンと物音が聞こえた。

 

「……神楽か?」

 

銀時は眉を寄せると音を立てないよう気を付けて上の階へと向かった。

 

 

 

 

 

 

こちらは少しさかのぼって先にノクターン横丁に着いていた神楽である。

 

「うぅ……鼻がムズムズするネ……ここが、ダイアゴン横丁アルか?」

 

神楽はキョロキョロと辺りを見渡した。明かりはロウソクのせいか薄暗くちょっと不気味な部屋だった。

 

「おやおや、可愛いお嬢ちゃん……迷子かい?ヒヒヒッ」

 

神楽がキョロキョロと辺りを見渡しているとこの部屋の主だろうか、杖を付いたお婆さんが怪しい笑い方をしながら話しかけてきた。

神楽は目をパチクリさせてブンブンと首を振った。

 

「ち、違うヨ。この私が迷子なんてないアル!!すぐに銀ちゃん来るネ」

 

「ほぉ、じゃあ……その銀ちゃんとやらが来るまでワタシとお話ししてようじゃないか」

 

お婆さんは神楽に向かってニヤリと笑った。神楽は暫く自分の出てきた暖炉とお婆さんを交互に見つめるとコクンッと頷きお婆さんに近付いた。

 

 

 

 

 

 

銀時はゆっくりと階段を上がって行った。階段を半分上がったくらいだろうか?なにやら話し声が聞こえることに気づいた。銀時は一旦足を止めて聞き耳を立てる。

 

「……かい?……そ……い」

 

「そ……ア……銀ちゃん……助け……ネ」

 

銀時はある単語が聞こえて来た途端階段を駆け上がった。そして階段の上にあるドアをバタンと勢いよく開けた。

 

「神楽ァァア!!」

 

「あっ、銀ちゃん!!遅いヨ」

 

銀時の登場に神楽は頬を膨らまして怒ったように言った。

銀時は神楽の様子にキョトンとしじっと見つめた。

 

確かに先ほど助け……という単語が聞こえたはずなのに、いざ入って見ると危険な状態所か和気あいあいとお婆さんと話している神楽が居たのだ。

 

「あ~……神楽……お前何して……いや、何話してたんだ?」

 

銀時は微かに眉を寄せて神楽に聞いた。すると神楽は不思議そうにしながら口を開いた。

 

「何って……お婆ちゃんに万事屋の説明ネ。銀ちゃんやメガネと一緒に人助けしてるネって話してたヨ」

 

神楽がきっぱり言うと銀時は冷や汗をダラダラと流し出した。

 

(やべぇ、やべぇよ。銀さんめちゃくちゃ勘違いしちまったァァア!!笑ってない?誰も笑ってないよな……)

 

銀時は目を泳がせ神楽を確認した。

 

神楽は気付いてないらしく不思議そうにしている。次にお婆さんを見た、お婆さんはニヤニヤと笑っている。

 

(……オイオイオイ、あのババア気付いてる?気付いてるんじゃねぇ?……いやいやいや、気付いてるよォォォオ!!)

 

お婆さんに気付かれていると気付いた銀時はだんだんと顔を赤くしていった。身体が小さくなったせいかいつものポーカーフェイスが崩れたようだ。

 

「あれ?銀ちゃん……どうしたアルか?顔赤いネ」

 

「は?ちょ……何言ってんの?え?赤いって何言ってんの?」

 

神楽の言葉に銀時は誤魔化そうと早口で言う。するとお婆さんがニヤニヤ笑いながら口を開いた。

 

「ヒヒヒッ……お嬢ちゃん、ほっといてあげなよ。勘違い坊ちゃんのことは」

 

 

「ちょ……笑ってんじゃねぇ!!クソババ……ッ」

 

お婆さんの笑いに銀時は眉を寄せ文句を言おうとするも途中で黙った。何故なら婆さんが杖を振った瞬間銀時にギリギリ当たらないよう部屋の物が飛んできたからだ。

 

「坊や?口には気をつけなきゃいけないよ」

 

銀時は顔を青ざめ、神楽は凄いっとキラキラと瞳を輝かせた。

 

 

 

 

 

銀時は落ち着くと婆さんをチラチラと見ては神楽を呼んだ。

 

「か、神楽!!帰るぞ。とりあえず、婆さん世話になったな」

 

銀時はそう言うと神楽を連れて外に出ようとした。

 

「ちょいと、待ちな!!」

 

銀時がドアに手をかけると婆さんから声をかけられる。銀時と神楽は不思議に思い婆さんの方を向いた。

 

「坊や……あんたこれから大変なことが起こるって出てるよ」

 

「あ?いきなりなんだよ」

 

銀時が眉を寄せると神楽が自分のことのように胸を張って自信満々に言った。

 

「銀ちゃん!!婆ちゃんは凄腕の占い師ネ」

 

「は?占い師だァ?」

 

神楽の言葉に銀時は目をパチクリして婆さんをじっと見つめた。

 

「坊や……これから起こることは本当に大変だ。一つでも選択を間違えたら……坊やや他の子が死ぬかもしれない。それでもこのまま進むのかい?」

 

婆さんは真剣な表情で銀時を見つめた。しかし、銀時は二ヤッと笑みを浮かべる。

 

「俺は死なねぇよ、婆さん。それに誰も死なせねぇ!!例え間違いを選択しようとねじ曲げて正解にするからな」

 

「もちろん私だってねじ曲げ手伝うネ」

 

婆さんは銀時と神楽の言葉に目を見開いた。そして肩をプルプル震わす。

 

「ヒッヒヒヒッ、面白い坊やに嬢ちゃんじゃないかい。気に入ったよ」

 

婆さんは笑いながら杖を振った。すると銀時と神楽の目を前に2つの箱が浮かんできた。

 

「何アルか、これ?」

 

銀時は眉を寄せた。そして神楽が聞いた。

すると婆さんはにっこりと笑う。

 

「持って行きな。きっと何かの役に立つよ」

 

「婆ちゃん、ありがとうアル」

 

「ありがたくもらっていくわ」

 

神楽と銀時は婆さんから箱を受け取ると礼を言いドアを開けた。

 

「ダイアゴン横丁へはこの道を出て最初の角を右に回ってまっすぐだよ」

 

婆さんが言うと銀時は軽く手をあげて、神楽はブンブンと手を振った。

婆さんは二人が出て行ったのを見届けるとふぅっと息をつく。

 

「坊や……それに嬢ちゃん……死ぬんじゃないよ」

 

婆さんはボソッと二人の出て行ったドアに向かって呟いた。

 

 



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第4訓 眼鏡でも主人公になれる!!

だが、駄眼鏡。おまえは無理だ。

っと言うわけで第4訓です。
なんかタイトルに迷う。


 

銀時と神楽は婆さんの言った道筋通り歩いて行った。

すると暗い路地裏のような風景だった周りが明るくなっていった。

 

どうやら、無事にノクターン横丁から脱出したようだ。

二人はキョロキョロと辺りを見渡した。新八達がそばに居ないか調べたのだ。

しかし、ダイアゴン横丁はとっても広い……そう簡単に見つかるわけがない。

 

「銀ちゃん、待ち合わせ場所決めてなかったアルか?」

 

神楽の言葉に銀時はガシガシと頭を掻いた。そんな銀時に神楽はため息をつく。

 

「使えない男ネ」

 

神楽の言葉に銀時は口の端を歪ませ文句を言おうとするも……ふと、婆さんから貰った神楽の箱が光ってるのに気付いた。

 

「おい……その箱光ってんだけど……」

 

銀時は眉を寄せて箱を指差した。すると神楽が警戒も無しに箱を無造作に開けた。そして中に入っていた光ってるものを出した。光っていたのは真ん中に丸いガラス玉のついたシンプルな腕輪だった。

 

「銀ちゃん、腕輪が入ってたネ」

 

神楽は取り出して自分の腕につけるときっぱりと言った。銀時は神楽が腕につけている腕輪をじっと見つめた。

ちなみに先ほどまで光っていた腕輪は神楽が腕にはめた瞬間光らなくなった。

 

「ただの腕輪か?」

 

先ほどまで光っていたのだからただの腕輪ではないことは分かっているが、神楽の腕にはめた腕輪はあまりにも普通の腕輪のように見えるので銀時は思わずそう呟いた。

すると神楽は箱の中から、紙を取り出して銀時に渡した。

 

「銀ちゃん、これ……説明書みたいネ」

 

銀時は神楽の言葉を聞くと眉を寄せた。そして説明書を読み始めた。どうやら、神楽のつけた腕輪は捜し人を見つけ出す力があるようだ。使い方は至って簡単捜し人の顔を思い浮かべるだけだ。

銀時は読み終わるとじっと神楽を見つめた。神楽は瞳をキラキラと輝かせている。

 

「マジでか……凄いネ!!私早速やってみるヨ」

 

神楽はきっぱり言うと目を閉じて新八のメガネを思い浮かべた。すると腕輪が光り、ガラス玉の中に矢印が浮かんだ。

銀時と神楽は顔を見合わせガラス玉に浮かんだ矢印通りに歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いて行くと矢印はある店の中を差した。

銀時は店の看板をじっと見つめた。

看板には、『マダムマルキンの洋装店ー普段着から式服まで』っと書いてあった。

銀時と神楽はゆっくりとその店のドアを開けた。

中には藤色ずくめの服を着た、愛想のよい女がいた。

 

「おや、坊ちゃんにお嬢ちゃんもホグワーツなの?」

 

銀時が口を開こうとすると声をかけてきた。

 

「全部ここで揃いますよ……今、二人お若い方が丈を合わせてるからもう少し待っててね」

 

マダム・マルキンはそう言うと黒髪で眼鏡を掛けた少年の丈を合わせ始めた。

 

(ん?あれは新ぱ……ち?)

 

銀時は首を傾げて黒髪眼鏡の少年を見つめた。

 

「銀ちゃん、見つけた!!新八ネ」

 

神楽は黒髪眼鏡の少年に近付こうとするも銀時はガシっと神楽を掴んで止める。

 

「銀ちゃん?どうしたアルか?」

 

神楽は不思議そうに銀時を見つめた。

 

「新八、なんか違わねぇ?」

 

銀時が言うと神楽は首を傾げた。

 

「黒髪に眼鏡……新八の特徴ぴったりアル」

 

神楽が自信満々に言うので銀時は首を傾げながらゆっくりと新八?に近付いていった。

 

銀時と神楽はゆっくりと黒髪眼鏡の男の子に近づいた。黒髪眼鏡の男の子は隣にいる、青白い、顎の尖った男の子と話をしていた。

 

「新八!!その貧弱坊や誰ア……」

 

神楽は話していた二人のうち黒髪眼鏡の男の子に話しかけるも止まった。

 

「新八?」

 

「貧弱坊や?まさかそれは僕のことじゃないだろうね」

 

黒髪眼鏡の男の子は首を傾げ、青白い男の子は眉を寄せ文句を言っていた。

しかし、神楽は二人を無視すると銀時の方を向き驚いたように言った。

 

「銀ちゃん!!新八じゃないヨ。なんかこいつの周りキラキラしてるネ」

 

「あー、神楽。それは主人公オーラだ。銀さんの周りもキラキラしてるだろ?」

 

神楽の言葉に銀時は自分を指差し得意気に言う。しかし、神楽はブンブンと首を振った。

 

「銀ちゃんには全くダメなオーラ。略してマダオしか感じられないアル」

 

「マジでか……」

 

神楽の言葉に銀時は少し口の端を歪ませた。そうこう話していると黒髪眼鏡の男の子が話しかけてきた。ちなみに青白い男の子は親が迎えに来たのかいつの間にやら店から居なくなっていた。

 

「あの……あなた達は?」

 

黒髪眼鏡の男の子が首を傾げて聞くと、神楽がまず口を開いた。

 

「オイオイ、人に尋ねる前に自分が名乗るのが普通だろ?まぁ、仕方ないアルな……今回は特別に名乗ってやるヨ!!私は神楽ネ。そしてこっちのマダオが銀ちゃん」

 

「坂田銀時だ。まちがってもマダオじゃねぇからな」

 

神楽は銀時の口真似をして言うと、自己紹介をした。ちなみに銀時の自己紹介の時、銀時に頭を叩かれたのは言うまでもない。

 

「カグラとギントキですか?僕は……」

 

黒髪眼鏡の男の子が自分の名前を言おうとすると、店のドアが勢い良く開かれた。

 

「ハリー!!大変なことになった。どうやら、二人行方不明になったらしい」

 

ドアから現れたのは、ボウボウと長い髪、モジャモジャの荒々しい髭に隠れて顔がほとんど見えない大男が立っていた。

 

「ハグリッド!!行方不明って例の人達が!?」

 

黒髪眼鏡の男の子は目をパチクリさせて入ってきた大男に聞いた。すると大男は頷く。

 

そんな二人を見ながら銀時は首を傾げた。

 

「なぁ、神楽。ハグリッドって名前どっかで聞いたことねぇか?」

 

「……知らないネ、ハマグリの間違いじゃないアルか?」

 

神楽がそう言った時、大男の後ろから黒髪眼鏡の少年が現れた。

 

「ハグリッドさん!!やっぱり僕そこらへん探して」

 

「「新八!!」」

 

黒髪眼鏡の少年がハグリッドに言うも途中で台詞を遮られた。新八は自分が呼ばれた方向へと顔を向ける。

 

「ぎ、銀さん!!神楽ちゃん!!良かった……無事だったんですね」

 

新八は二人の姿を見つけるとホッと安堵の息を付いた。

 

 

 

 

 

 

新八はやっと合流できた二人としばらく話していたが、ハグリッドとハリーがこっちを見ていることに気づき慌てて紹介を始める。

 

「あっ、ハグリッドさん……この二人は行方不明者です。ほら、銀さんに神楽ちゃん!!自己紹介をして……あっ、ちなみに僕は志村新八です」

 

新八が言うと銀時は怠げに神楽は元気よくしゃべり出した。

 

「どーも、坂田銀時でぇーす」

 

「かぶき町の女王こと神楽アル!!」

 

そんな神楽の紹介にハリーとハグリッドは目を丸くさせた。

 

「え?女王?カグラはどこかの国の王族なの!?」

 

ハリーが聞くと神楽は胸を張り頷いた。

 

「いやいやいや、違うから!!神楽ちゃん、混乱するからやめて」

 

新八が違う違うと否定しながらハリーと神楽の間に入った。そして神楽に言い聞かせるように言った。

 

「むぅ……分かったネ。生産性の良い工場長で良いアル」

 

神楽は渋々とした感じで頷いた。するとハグリッドがしゃべり出す。

 

「次は、こっちの自己紹介だな。俺はルビウス・ハグリッド。ホグワーツの鍵と領地を守る番人だ。それでこっちが、ハリー・ポッター……お前さん達と一緒で今年からホグワーツに入学する」

 

ハグリッドが紹介するとハリーはペコッと頭を下げた。

 

「ハリーです。よろしく」

 

「おぅ、よろしく頼むわ」

 

「仲良くするアル」

 

「よろしくお願いしますね」

 

ハリーの言葉に三人は口々に答えた。それを見るとハグリッドは満足そうな笑みを浮かべた。

 

「はいはい、もう良いですか?そろそろお嬢ちゃんと坊ちゃん方の制服を合わせたいだけど、そっちの坊ちゃんは待っててね」

 

マダム・マルキンが新八に話しかけてながら銀時と神楽の手を取り踏み台の上に立たせた。

新八は言われた通りにその場で待つ。

 

「じゃあ、ハリー。俺達は買い物を続けるとするか」

 

制服の丈合わせなどは長くなりそうなのでハグリッドがハリーに向かって言うもハリーは首を振った。

 

「ハグリッド……その……僕はもう少しここに居たいな。シンパチも待つの暇だろうし」

 

ハリーの言葉にハグリッドとは少し驚くも頷いた。

 

「じゃあ、俺は本屋にあいつらを迎えに行ってくる」

 

ハグリッドはこうして本屋に向かって行った。

 

 

 

 

 

「ねぇ、シンパチ……あいつらって」

 

ハグリッドが行くときの言葉が気になったのかハリーはドキドキしながら新八に話し掛けた。ちなみにドキドキしているのはハリーにとって初めての友達になるかもしれないからだ。

 

「あー、あいつらってのは……僕達と同じ入学生ですよ。……ってかあの人達ほっといて本当に大丈夫なんだろうか」

 

ハリーの質問に答えながら新八は凄く不安になった。

しかし、もうどうすることも出来ないので……考えないことにしてハリーとしゃべり続けた。

 

 

 

 

 

 

 

ハリーと万事屋の三人がマルキンの店で楽しく話しているその頃、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店では小さな騒ぎが起きていた。

 

「何ィィイ!!それは本当か……くぅ……まさかあの大人気エッセイ桂とエリザベスの攘夷日記が売ってないとは……エ、エリザベスゥゥウ!!」

 

大きな声で言っているのは電波男桂である。ちなみに探しているのは、桂の頭の中だけで人気絶讃発売中の『桂とエリザベスの攘夷日記』という名の本だ。

内容は、タイトルから想像がつくように攘夷活動を日記にしたような感じだ。ちなみに、3日に一回は万事屋に現れては銀時を攘夷活動に誘って殴られるという内容が書かれている。

 

そして、しつこいようだが、そんなものが江戸で人気になったことは一度もない。いや、これからもなることはないだろう。

土方は、目当ての本が無いことにがっくりと肩を落とした桂を見るとため息をはいた。

 

「チッ、こんな近くに標的が居るのに捕まえられないとはな」

 

土方は軽く舌打ちをして、不服そうに呟いた。そう……桂が土方の上に落ちてきた後色々とあってこの世界では桂を捕まえないと約束をしたのだった。

 

あ?色々が何かだって……適当に想像をしてくれ。

とりあえず……まぁ、色々とあったのだ。

 

「それにしても……あの野郎は……馬鹿か」

 

土方は桂を見ながら眉を寄せて呟いた。まぁ、それも無理はない。桂は土方の上に落ちてきてしばらくはエリザベス、エリザベスとマジでうざかった。敵味方関係無しに殺意がわくほどだ。

そして今もエリザベス、エリザベスと店員を困らせている。

 

(あんな野郎に俺ら真選組が手こずらされてたなんて……)

 

土方はそう思うと今日で何度目かのため息をつく。

 

「おい、総……あ?」

 

そして、沖田に話しかけようと隣を向くも……居なかった。

土方は眉を寄せると辺りを見渡した。

すると、少し遠くで店員と話している沖田を見つけた。土方はゆっくりと沖田へと近付いていく。

 

「……え?そんな本ですか?」

 

「えぇ、頼んだ通りそんな本が欲しいんでさァ」

 

少し近付くと沖田と店員の話しが聞こえた。どうやら、沖田も桂と同じで何かの本を探しているようだ。

 

「しかし、そんな本となると闇の魔術に……」

 

「闇?覚悟は出来てまさァ……だから瞳孔マヨネーズ野郎を滅するまほ……」

 

「総悟ォォオオオ!!」

 

沖田の台詞を遮って土方が沖田の名前を叫んだ。

そして、沖田を追っかけだす。店員は慌てて止めようとするが、それは止まるものではなかった。

店員は自分だけではダメだと感じ、もう一人の店員に助けを求めようとするもダメだった。

もう一人の店員は、エリザベスと叫んでる厄介な電波を相手にしていたのだ。

店員はため息をつくと魔法で応対しようかと杖を取り出しそして止めた。今日は教科書などを買いにくる生徒や親達で店内は混雑している。ただでさえ相手は器用に人の間を走り回っているのだ。こんな状態で魔法を使うなんて……出来ない。そう、店員が出来ることと言えば追いかけて止めることのみ……

 

「お、お客様おやめ下さい!!」

 

泣きそうな店員の声が店内に響いた。

ちなみにこの騒動はハグリッドがやってくるまで続いた。



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第5訓 杖選びは計画的に……1


通常より長くなりそうなので二つに分けました。


 

 

さて、なんやかんやありまして、ハリーや万事屋メンバーは土方たちと合流をしました。

 

「さて、皆揃ったし……最後の買い物杖でも買いに行くか」

 

銀時が代表していると皆はコクンっと頷いた。そして杖を買いに歩いて行……

 

「ちょっと待てェェエ!!なんですか!?これ……めちゃくちゃ話飛んでません!!」

 

新八が突然叫んだ。すると銀時は眉を寄せて新八を見た。

 

「おいおい、新八。言いがかりは止してくれない?」

 

「そうヨ。どこが飛んでるアルか」

 

「いやいやいや、飛んでますよ!!めちゃくちゃ飛んでるじゃないですか!!合流場面とか自己紹介とか」

 

新八の言葉に銀時と神楽は何のことだかっと肩をすぼめた。新八はその様子を見ると今度は土方たちに訴え出す。

 

「土方さん、沖田さん、桂さん!!良いんですか?こんななぁなぁで飛ばされてしまって」

 

新八が聞くと3人は一応反応した。

 

「あー……タバコ吸いてぇ」

 

土方はニコチンが切れたのか遠い目をしていた。

 

「早く読んで実行したいでさァ」

 

沖田は本屋で買った(脅した)闇魔術の本をじっと見つめていた。

 

「エ、エリザベスゥゥウ!!」

 

桂はいまだにエリザベスの名前を叫んでいた。

新八はその様子を見るとがっくりと肩を落とした。

 

ここには常識の通じる相手が居ないのかと思い始めたその時、遠慮がちに……しかしはっきりとした声がした。

 

「シンパチ」

 

そう、ハリーが新八を呼んだのだ。ちなみにハグリッドは用事でどっかに行っている。

 

「ハリー君……そうか!!ハリー君が居ましたね。もう、この人たちに言ってやってください」

 

新八がビシッと銀時たち5人を指さすとハリーが口を開いた。

 

「あのね、シンパチ。小説なんて主人公の所さえ書いてれば後はどうとでもなるんだ。だから早く先に進めよう」

 

ハリーの言葉に新八は愕然とした。その言い方ではまるで脇役に裂く時間はないと言っているようなものだった。

 

「え?ちょ……ハ、ハリー君?」

 

新八は動揺で目を左右に泳がした。そんな新八にハリーはにっこりと笑う。しかし、その笑顔純真無垢ではなく……黒々としていた。

 

「えぇぇぇ!?黒ォォオ!!」

 

新八は声高々に叫んだ。なんとハリーは腹黒いだったのだ。

 

 

 

 

 

さて銀時たちは最後の買い物……杖の売っている店へとやってきた。剥がれかかった金色の文字で扉に『オリバンダーの店ー紀元前三八二年創業高級杖メーカー』と書いてある。埃っぽいショーウィンドウには色あせた紫色のクッションに、杖が一本だけ置かれていた。中に入ると奥の方でチリンチリンとベルが鳴った。小さな店内に古臭い椅子が人数分置かれていた。銀時たちはチラッと椅子を見たが座らず店内を見渡した。周りは静かで、天井近くまで整然と積み重ねられた何千という細長い箱の山がある。

 

「いらっしゃいませ」

 

しばらく見ていると突然柔らかな声がした。ハリー、新八の二人はびくっとして飛び上がった。

 

その二人以外は気配に気付いていたのかそこまで驚くことはなかった。

柔らかな声を出したのはこの店の亭主、オリバンダーであった。

オリバンダーは、銀時たちを順々に見つめる。そしてハリーを見ると少し目を開かせた。

 

「おお、そうじゃ。そうじゃとも。まもなくお目にかかれると思ってましたよ、ハリー・ポッターさん」

 

ハリーのことを知っているようだ。

オリバンダーはハリーの両親の話を始めた。そして、ハリーに近付くと額の稲妻形の傷痕に触れた。

 

「悲しいことに、この傷をつけたのもわしの店で売った杖じゃ……三十四センチもあってな。イチイの木でできた強力な杖じゃ。とても強いが間違った者の手に……」

 

オリバンダーが言葉を続けようとするとゴトっと音が聞こえた。

オリバンダーやハリー、そして銀時たちはその音のした方へと振り向くと目を見開いた。

神楽が、杖を持ち罰悪そうに立っていたのだ。どうやら、オリバンダーの話が長くて退屈したらしく店内を捜索していたら杖が落ちてきたようだ。

 

「神楽ちゃん、何し……」

 

新八が神楽に向かって何かを言おうとするとオリバンダーが驚きと感嘆……そして喜びに満ちた声を上げた。

 

「おぉ……まさか、まさかその杖。お、お嬢ちゃん……お名前は?」

 

「神楽アル」

 

神楽が言うとオリバンダーは少し興奮したように言った。

 

「では、では、カグラさん……その杖振れるかね?」

 

神楽は頷くと杖を振った。すると周りに綺麗な丸い光が現れる。

 

「なんと……なんとまぁ……」

 

オリバンダーは感嘆をして呟いた。銀時たちは首を傾げる。そして新八が代表になって聞いた。

 

「オリバンダーさん、あの杖……なんか凄いんですか?」

 

新八の言葉にオリバンダーはコクンっと頷き語り始めた。

 

どうやら神楽の持っている杖には魔法力が数段に上がるある物質が入っているらしい。そのせいか、通常の杖より何倍も重いのだ。

そのため……今まで杖を振ることは愚か、片手で持つことも難しかった。

しかし、目の前の少女は持ちあげる所か振っているのだ……軽々と。しかも、杖との相性は抜群である。

 

オリバンダーはもう一度神楽を見た。そして銀時たちを一人一人見ていく。

よくよく見ればここにいる子供たちは皆不思議な魔力……っというか雰囲気を持っていた。オリバンダーは愉快そうに笑った。そしてポケットから巻き尺を出す。

 

「これは、これは楽しい杖選びになりそうじゃ……さて、子供たち拝見しましょうか」

 

 

 

 

 

さてさて、しばらく時間をかけて神楽を除く6人の寸法を測り終えた。まずは、ハリーから杖を選び始める。オリバンダーは、奥に入って行くと箱を持ってきた。そして中に入っている杖をハリーに持たせて振らせる。

すると相性が合わないのか店内にある箱が衝撃を受けたかのようバンバンと落ちてきた。

そのたびにオリバンダーはこれは、ダメだ。だの、合わないな……など言いながらハリーに合いそうな杖を探す。

何回か試すとオリバンダーは何かを思い出すかのよう、埃の被った箱を持ってきた。

そして箱の中から杖を取り出しハリーに渡した。

 

「これはめったにない組み合わせじゃが、柊と不死鳥の羽根、二十八センチじゃ」

 

ハリーはオリバンダーの言葉を聞きながら杖を振った。すると先程神楽が出したように丸い光が現れた。

 

『おぉー』

 

銀時たちはハリーに対して感嘆の声をあげる。するとオリバンダーは不思議そうに口を開いた。

 

「不思議じゃ……まさかこんな……不思議じゃ」

 

「ふむッ……オリバンダー殿、何がそんなに不思議なんだ?」

 

桂が首を傾げて聞いた。ハリーも同意見なのかコクコク頷いている。

 

「ヅラさん。わしは自分の売った杖はすべて覚えておる。全部じゃ……この杖に入っている不死鳥の羽根はな、同じ不死鳥が尾羽根をもう一枚だけ提供した……たった一枚だけじゃが。ポッターさんがこの杖を持つ運命にあったとは不思議なことじゃ。兄弟羽が……なんと、兄弟杖がその傷を負わせたというのに……」

 

 

ハリーは段々と身を震わせ始めた。その様子に銀時たちは顔を見合わせた。そして銀時は身震いしているハリーの手を握った。

ハリーは驚いて銀時を見る。すると銀時はオリバンダーに向かって口を開いた。

 

「じいさん、そろそろ俺らの杖を合わせてくれねぇ?」

 

銀時が言うとオリバンダーはハッとし、しゃべるのを一旦やめた。

 

「おぉ、そうじゃった。そうじゃった。では、次はギントキさんでいいかのう?」

 

銀時はコクンっと頷くとハリーの手を離した。するとオリバンダーは奥から箱を幾つか取ってきた。そして箱を開けて銀時に渡す。

 

「だ、ダメじゃ!!ダメじゃ」

 

 

銀時が杖を振ろうとすると慌てて止めた。どうやら相性が全く合ってないどころか銀時の魔力に杖が耐えれないだろうと判断をつけたのだ。

それから何回も杖を握らせてみたが振る前に止められてしまう。

オリバンダーは眉を寄せた。どうやらこの店には銀時の魔力に耐えれる杖が無さそうなのだ。これは銀時の魔力が数段にデカいというわけではなく、他の魔法使いと違って魔力の質が刀のように鋭いのだ。

もちろん他の子どもたちも鋭いのだが、銀時ほどではなさそうだ。

ちなみにこの鋭さの差は剣術の差である。

オリバンダーは困ったように頭を抱えた。そしてふと銀時の腰にある木の棒に目がいった。

 

「ギントキさん……それを見せてくれますかな?」

 

オリバンダーが棒を指差すと銀時は眉を寄せて相手に渡した。

 

「なんと……なんと不思議な木。ギントキさん……あなたの杖はこれで作ってもいいかのう」

 

オリバンダーが言うと銀時は少し考え込むも仕方なさげに頷いた。銀時が頷いたのを見るとオリバンダーは嬉しそうにした。見れば見るほど不思議な魔力が込められている棒だった。まるで妖精でも住んでるような神々しさもある。実際に住んでるのは髭面のオッサン仙人なのだが

 

オリバンダーは楽しそうに笑うと木の棒を持って奥へと入っていった。

 

オリバンダーが奥に入って一時間が経過した。どうやら奥で杖を作っているようだ。

 

「銀ちゃん、まだアルか?お腹すいた……もう限界ネ」

 

神楽はお腹を押さえて銀時に言った。確かに朝起きてすぐにこの世界に連れて来られたので朝食を取っていない。おまけに今は昼過ぎである。

 

「確かに……腹減ったなァ」

 

「そうですね……」

 

銀時の言葉に新八も頷いた。意識するとお腹がグゥーグゥーと鳴り始める。

 

「じいさん!!俺ら、ちょっと飯食ってくる!!」

 

銀時が叫ぶように言うと奥から返事が返ってきた。

銀時はその返事を聞くとハリー、そして土方たちを順番に見つめた。

 

「俺たちは飯食いに行くけど……お前らはどうするんだ」

 

 

「僕も一緒に行きたい」

 

「銀時!!親友を置いていくつもりなんて照れ隠しだなっはははっ」

 

「もちろん旦那に付いて行くに決まってまさァ」

 

「チッ……マヨネーズはあるんだろうな」

 

上からハリー、桂、沖田、土方である。ちなみに桂がしゃべった時に銀時から親友じゃねぇよ!!っと突っ込みがあったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

さて、オリバンダーの店を出た銀時たちは適当にレストランのような飲食店に入った。店内に入ると店員がやってきた。

 

「いらっしゃいませぇ~何名様ですか?」

 

「あっ、七名です」

 

新八が答えると店員は少し考えて席へと連れて行った。案内された場所について見るとそこは6人席であった。

 

 

「すいませーん……7人席は無いんで、この椅子で我慢してください」

 

店員はそう言うと椅子を置いて去っていった。

 

「銀さん……何ですか?あの椅子」

 

新八は店員の置いていった椅子を見ると眉を寄せた。そして突っ込んでいいのかどうか悩んだ。ここが江戸なら迷わず突っ込むのだが、ここは異世界。しかも魔法世界である……もしかしたらこれは普通なのかもしれない。

 

「さ、さぁな……まぁ、とりあえず沖田くん……座りなよ」

 

「えぇー!!銀ちゃんなんでサドアルか?私もあれ座ってみたいヨ」

 

銀時は椅子を見て座るに相応しいだろう人物を指摘した。もちろん神楽と沖田、そしてハリー以外はウンウン頷いた。

 

「プププッ、チャイナ残念だったな。旦那は俺をご志望なんでさァ」

 

沖田はニタニタ笑いながら、椅子に座った。ちなみに先程から話題に出ている椅子だが、普通の椅子とはまったく違う。そう、想像するならRPGに出てくる魔王が座りそうな椅子であった。

 

「怖いくらい似合う……さ、さぁ、皆さん!!早く何か頼みましょう!!」

 

新八がボソッと呟くと沖田の目がキラリと光った。すると新八は慌てて皆を座らせて言った。

最初に反応したのは神楽だ。椅子のことで不機嫌そうにしてたのだが、新八の言葉を聞いた瞬間嬉しそうに銀時を見た。

 

「銀ちゃん!!銀ちゃん!!どれくらい食べて良いアルか?」

 

「あ?……どうせジジイの金だ。お前らガッツリ食うぞ!!」

 

銀時がきっぱり言うと神楽はメニューの端から端まで注文した。他の皆も大量に頼みだした。もちろんその様子に店員とハリーは目をまん丸くして驚いていた。

 

 

 

 

 



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第6訓 杖選びは計画的に……2

更新です。
うーん、長くなると思って1と2で分けたけどそうでもなかったかな……

っと思ったがまとめたらやっぱり分けて正解だった。


 

さて、お腹を存分に満たした銀時たち一行はオリバンダーの店へと戻ってきた。店に入るとまだオリバンダーは奥で杖の製作をしているようだ。

 

「なぁ、新八」

 

「なんですか?」

 

銀時は奥を見つめながら新八へと話しかけた。新八は店内を見ながら聞いた。すると銀時は少し悩んむような仕草をすると口を開いた。

 

「この小説、あれじゃねぇ?所々『さて』って言葉使い過ぎじゃねぇ?何?作者の陸の癖なの?」

 

「いやいやいや、そんなこと僕に聞かないで下さいよ」

 

銀時の言葉に新八は驚いたような口調で言った。するとその話を聞きつけたのだろう何人かが話に入ってきた。

 

「銀ちゃん、私もそれ思ってたアル」

 

「銀時、リーダーダメだぞ。そのようなことを言っては……ほら、見てみろ。陸殿が書き辛そうにしてるではないか」

 

「確かにそうだな、桂と同意見はしゃくだが……」

 

「そうでさァ、桂と土方コノヤローと同意見なんて嫌ですが、俺もそう思いやす」

 

神楽に続いて桂、土方、沖田がしゃべった。そんな3人に新八は感心したように言った。

 

「三人とも流石です。ほら、神楽ちゃんに銀さん……三人を見習って陸さんに謝っ……」

 

新八が銀時と神楽に謝らせようとすると、また三人にしゃべりだした。

 

「だから陸殿、書くことに困った時は……エリザベスを書くことをオススメする」

 

「いや、マヨネーズだろ」

 

「何言ってんですかぃ……拷問の様子をR指定並みに詳しくに決まってまさァ」

 

「オィィイ!!あんたらそれが言いたかっただけかァァァァアア!!」

 

新八が声高く叫んだ。ハリーはあまりの出来事に苦笑いを浮かべた。その時である、奥の方から出来たなどと声がした。どうやら銀時の杖が完成したようである。

 

銀時たちは少しワクワクとした感じでオリバンダーが出て来るのを待った。しばらく待つと真新しい箱を持ったオリバンダーが出てきた。どうやら完成した杖を箱に入れたようだ。

 

「完成じゃ、早速振ってみてくれ」

 

オリバンダーはそう言いながら箱を開けた。箱の中には長さ40センチくらいのキラキラ銀色に輝く杖が入っていた。

 

銀時は杖を持つとじっと見つめた。色が銀なのは塗ったのかと思っていたがそうではなさそうだ、もちろん洞爺湖の色は銀色ではない。銀時は不思議そうにしながらも杖を振った。すると杖の先から幾つもの光が現れまるで銀時を祝福するかのように周りを回って消えた。

 

「どうやら、相性は抜群のようじゃな」

 

オリバンダーは銀時の持っている杖を見つめると満足そうに言った。そして、杖について語り出す。

 

「この杖は魔力の秘めた洞爺湖と言う名の棒、ある物質……そして不死鳥の尾羽根を二枚にユニコーンの血を混ぜて作られておる」

 

自分が作ったくせに第三者のようにいうオリバンダー。ちなみに色はいつの間にやら銀色に染まってしまったようだ。そして棒自体に魔力が込められているので入れれるだけすべての魔力のある物質を入れたのだ。ちなみに最初に言った物質は神楽の杖と同じ物質である。

しかし洞爺湖とその物質の相性が良かったため……重くはなっていない。

神楽はそのオリバンダーの言葉を聞くと心底喜んだ。

 

「キャッホーイ!!銀ちゃんとお揃いアル」

 

神楽は嬉しそうに銀時に抱きついた。銀時はそんな神楽の頭を撫でる。

 

「ふむふむ、青春じゃ……次はどなたの杖をお選びかな?」

 

オリバンダーは銀時と神楽を微笑ましそうに見ると、残った4人を見つめた。

 

「ふむ、次は新八君でいいんじゃないか?」

 

桂が言うと残った二人も別に異論は無いのか頷いた。

すると新八はおずおずと前へと出た。

 

「じゃあ、僕で……お願いします」

 

「なるほど……シンパチさんの杖はもう決まっておる」

 

オリバンダーは新八を見つめると奥へ入っていった。そしてある箱を手に持つと戻ってきた。持ってきた箱を新八の前に置くとオリバンダーは口を開いた。

 

「これは……有名な錬金術師……メガーネ・ノタナカが作った杖ですじゃ、きっとシンパチさんにお似合いですぞ」

 

「おぉー、これは……」

 

「す、凄いアル」

 

「うん、シンパチさんとめちゃくちゃ相性良さそう」

 

オリバンダーが箱を開けて中を見るやいなや、銀時、神楽、ハリーが言った。他の三人も同意なのだろう。うんうんと頷いている。

 

「さぁ、シンパチさん……手に取り試してみてくれますかな?」

 

「え?……いや、あの……」

 

新八はオリバンダーの言葉に箱の中身を見ながら戸惑った声をあげた。

 

「も、もしや……気に入らないと?……それなら、こちらではどうですかな?」

 

オリバンダーはもう一つ箱を取り出した。そして新八の前に置くと開く。新八の口端がひくついた。

 

「これも凄いんですぞ。あの有名な錬金術師……メガネイ・チバが作ったものでし」

 

オリバンダーが説明を始めると新八がそれを大きな声で叫んで遮った。

 

「ってか、二つともただの眼鏡じゃねぇかァァァァアア!!」

 

そう、箱の中に入っていたのは両方とも眼鏡であった。

 

「何が有名な錬金術師!?それ、有名な眼鏡店のメガネのタナピーと眼鏡市ピーじゃねぇかァァア!!」

 

新八の台詞に自主規制が入りました。憶測で店名を言うのはやめましょう(笑)

 

新八はナレーションに注意をされた。

 

「いや、注意に(笑)付いてるんですけど……ってかオリバンダーさん、どういうことですか?これ、杖じゃないですよね」

 

新八は少し落ち着きを取り戻しオリバンダーを見つめて聞いた。

 

「いや、立派な杖じゃ……まぁ、魔法はひとつしかできないがのぅ」

 

「え?杖なんですか?……ってか魔法ひとつだけじゃ……ちょっと」

 

新八は言った。形はどうであれ……杖なら問題ないのかもしれないのだが、魔法学校に入るのだ。出来る魔法が一つでは話にならない。

 

「では、これならどうじゃ?」

 

新八の言葉にオリバンダーは再度箱を持ってきた、今度はきちんと杖が入っているようだ。オリバンダーは箱から杖を取り出すと新八に渡した。新八は杖を持つとドキドキしながら振った……その瞬間杖から薄い光の球が現れた。

 

「どうやら、相性がいいみたいじゃな。その杖はジミの木からつくられ地味な動物の毛が入っておる」

 

「いや、どんだけ地味強調したいんですか……」

 

 

オリバンダーの言葉に新八は力なく突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、銀時たちの杖は決まって……あとは桂、沖田、土方となった。

 

「では、次はどなたの杖選びかな?」

 

オリバンダーが聞くとずずいと桂が前へと出た。ちなみに杖の決まった銀時たちは興味なさそうにそれを眺めている。

 

「おぉ、次はヅラさんですかな?」

 

「ヅラじゃない!!桂だッ!!」

 

オリバンダーが言うと桂はいつものお約束の言葉をはいた。そしてゴホンっと咳をする。

 

「オリバンダー殿……実は俺は欲しい杖があるのだが……」

 

桂は何故かモジモジとした態度で言う。はっきり言ってめちゃくちゃ気持ち悪いのは言うまでもないだろう。

オリバンダーが首を傾げると桂は息を吸い込み話し出した。

 

「実は白い杖が欲しいのだが」

 

桂の言葉にオリバンダーはコクンっと頷き、箱を持ってきた。箱を開けると中には白い杖が入っていた。

 

「この杖はユニコーンの毛をふんだんに使っております」

 

オリバンダーは得意気に杖の説明を始めた。しかし、桂は杖を見ながら眉を寄せる。

 

「オ、オリバンダー殿……これもいいと思うのだが、こう持ち手に黄色の足が有り、顔は黄色いくちばしにパチリとした目の付いた杖はないのか?」

 

「あるわけねぇだろ!!ってかそれ杖じゃなくてエリザベスじゃねぇかァァア!!」

 

ヅラの細やかな要望に思わず新八が突っ込んだ。

しかし、オリバンダーは少し悩むように考え込むと奥へと行きある箱を取り出してきた。

 

「なんとお目が高い。ご要望の杖はこいつのことですかな?」

 

オリバンダーはそう言いながら箱を開けた。

中に入っていたのは10センチくらいあろうかというエリザベスによく似た人形だ。その人形に20センチくらいの棒が突き刺さっている。

 

「こ、これは……エ、エ、エリザベスゥゥウ!!」

 

桂はその杖を箱から出すと頬擦りを始めた。その姿は何というかキモかった。

 

「ふむ。気に入ってくれたようじゃな。ではではヅラさん……そのキモいじゃなかった杖を振ってみてくれんか?」

 

オリバンダーは若干本音が混じりながらも言った。

すると桂は頷き杖を振った。人形の黄色いくちばしが開き丸い光を出した。どうやら、相性は抜群のようである。

 

「ふっはははァ!!エリザベスは俺の物だ。銀時、銀時。どうだ良いだろう」

 

桂は嬉しそうに笑い杖に頬擦りをしながら自称桂の親友である銀時に自慢するように言った。銀時は桂と杖を交互に見るときっぱりと言った。

 

「キモい」

 

「な、何を言う。銀時!!この杖をキモいだなんて」

 

桂は銀時の言葉に眉を寄せて文句を言った。しかし、銀時はもう一度きっぱりと言う。

 

「いや、杖と一緒にいるお前がキモい。ってかお前が単体でキモい」

 

「はははっ、銀時。それはヤキモチだな。安心しろ、俺がどんなにエリザベスを愛でようとお前は俺の親友だからな」

 

銀時の言葉は聞いて勘違いしたのか桂は胸を張ってきっぱりと言い切った。

 

「何こいつ。キモいってかウザいんですけどォ」

 

銀時は不服そうに眉を寄せた。

 

 

 

 

 

 

さて、銀時と桂がじゃれあってる間にも杖選びは進んでいた。どうやら今度は沖田の杖を選んでるようだ。

 

「ふむふむ。こ、これは」

 

オリバンダーは沖田を見ながらどんな杖が良いかと店内を見渡した。

そして気付いたのだ。

 

店内にあるほとんどの杖が沖田に従っていることを……

 

(まさか……いやいや、まさかそのようなこと相性関係無しに杖が従いたがってるなんて有り得ないことじゃ)

 

オリバンダーは自分の思ったことに首を振って否定をした。何故なら杖には一つ一つ癖がある。そのため相性の合う術者は限られてしまうのだ。だから、全ての杖と相性の良い術者など見たことがない。そう今目の前にいる人物以外は……

 

「どうかしたんですかィ」

 

黙ったまま自分を見つめるオリバンダーに首を傾げる沖田。

 

「いやいや、何でもない何でもないですじゃ」

 

オリバンダーは誤魔化すようにブンブンと首を振った。そしてふと何かを思いついたのか奥へと入っていった。

そして古臭い箱を持ってきて沖田の前で開けた。中に入っていたのは45センチくらいの栗色の杖であった。

 

「これは……サディスティック国のサドの木で作られた杖じゃ。何故か今まで相性の合う者が居なかった。この杖を作った時、ドSにしか扱えないと言われたのだが……君なら……」

 

オリバンダーが言うと沖田は杖を掴み振った。すると、何故か土方の頭の上にたらいが落ちてきた。

 

「いてぇっ!!」

 

「ふふん、お前なかなかやるじゃねぇか。俺の杖にしてやりまさァ」

 

沖田は満足そうにニヤリと笑った。どうやら相性は抜群である。

オリバンダーはその様子に少し苦笑いを浮かべながら最後の1人の名前を呼んだ。

 

「では、次はヒジカタさんですじゃな」

 

「いつっ……総悟め」

 

土方は痛そうに頭を押さえながらオリバンダーの前に立った。すると、オリバンダーはある箱を取り出してきた。中には小刀のような黒い杖が入っていた。土方は少し目を見開くと杖を握りしめ振った。丸い光が土方の周りに現れる。

 

「相性良いようじゃな。それじゃあ、これで全員の杖は決まりましたかな?」

 

オリバンダーが言うと土方がおずおずと手を上げた。

 

「ん?ヒジカタさんどうかしましたかな?」

 

「いや、なんか俺……普通じゃねぇ?最後がこんなあっさりでいいのか?」

 

土方が言うとオリバンダーは少し考えた。そして身も蓋もないことをきっぱりと言う。

 

「仕方ないですなァ。ヒジカタさんのネタはマヨ以外思いつかなかったもので……」

 

「いや、ネタって何!?ってかそれ絶対作者の言葉だろうが!!」

 

土方は突っ込むように言ったがもちろん無視である。もうネタ切れなのだから。

 

「よし。じゃあ杖も決まったし、お前ら行くか」

 

銀時が言うと土方以外は頷いて店から出て行った。

 

「おぃぃい!!いいのか?こんな終わりでいいのかァァア!!」

 

土方の叫び声はしばらく店内に響いていたとか……いないとか……

 

 



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第7訓 駅員さんをいじめるのはやめましょう

 

 

さて、杖を買った次の日……銀時たちはロンドンにあるキングズ・クロス駅に来ていた。

 

「なんかすげぇ広い駅だな」

 

「ターミナルみたいでさァ」

 

銀時が駅を見上げて言うと沖田も頷くように呟いた。

 

「これからどこ行くアルか?」

 

「神楽ちゃん。これから僕たちは列車って乗り物に乗って学校に行くんだよ」

 

神楽の問いに新八が答えた。すると今度はエリザベス(杖)に頬擦りしながら桂が聞いてきた。

 

「ふむ。しかし……この九と四分の三番線とは一体どこに」

 

「さぁ?けどハリー君と土方さんが駅員さんに聞きに行ってくれてるんですぐに分かりますよ」

 

「何!?いつの間に!!」

 

「あんたがエリザベスエリザベスうるさい時にだよッ!!」

 

桂の言葉に若干突っ込み混じりで新八が答えていると駅員に聞きに行っていたハリーと土方が戻ってきた。

 

「あっ、ハリー君に土方さん!!どうですか?分かりましたか?」

 

新八は二人にかけって行くと聞いた。二人は顔を見合わせると罰悪そうに首を振った。

 

「そうですか」

 

新八は残念そうに肩を落とした。すると新八の両脇から二人の人物が現れた。ドSコンビ銀時と沖田だ。

 

「オイオイ、ハリーはいいとして土方君それでも税金泥棒?」

 

「本当でさァ。マジ使えねぇな。土方コノヤロー」

 

二人は腕を組んだまま使えない使えないと土方を責めていく。流石に土方も二人に言われるのは我慢がならないのだろうキッとキツく睨み付けた。

 

「うるせぇよ。このドSコンビが!!文句あるなら自分たちで聞きにいきやがれ」

 

土方の言葉に沖田は馬鹿にしたような顔で再度罵ろうとすると銀時が手でせいした。

 

「仕方ねぇなァ……もうあまり時間もねぇことだし、俺らが聞いてきてやるよ。ほら、行くぞ沖田くん」

 

「へい、旦那に付いて行きまさァ」

 

沖田はきっぱり言うと銀時に懐いているせいか素直についてきた。

 

 

 

 

さて、こちらはごく平凡なたくさんの駅員の中の1人の男である。

 

男はこのキングズ・クロス駅に勤めてもう何十年になるベテラン駅員だ。

 

「今日も平和だな」

 

男はプラットホームに突っ立っていた。男の仕事は列車の運転と客への案内。

とても平凡なお仕事である。しかし、今日はいつもと違った。ことの始まりは眼鏡を掛けた黒髪の少年と瞳孔の開いた少年が聞いてきた言葉である。

その二人の少年は不思議なことを言っていた。

ホグワーツやら九と四分の三番線などと、もちろん男は二人はいい加減なことを言っているのだと思った。だってそのような場所聞いたことがないし、この駅には九と四分の三番線なんてみょうちくりんなものは存在しないのだ。

男は二人を追い返した。

 

自分は今仕事中で子供の冗談に構っている時間なんてないのだ。

男が二人を追い返して暫くするとまた二人の子供がやってきた。

一人は銀髪に赤い瞳をした子、もう一人は栗色の髪にぱっちりとした目の子だ。銀髪の子の死んだ魚のような目を除けば二人とも可愛らしい顔立ちをしていた。

 

「あのよォ、ちょっといいか?聞きたいことがあるんだけど」

 

銀髪の子が此方を見上げて聞いてきた。男は少し体を屈ませ二人の子供に目線を合わせた。

 

「坊やたち、なんだい?」

 

「いや、九と四分の三番線ってのはどこにあるのか知りてぇんだけど」

 

男は目をぱちくりとさせた。先ほど来た子供と同じことを聞いてきたのだ。もしかしたら子供たちの間でそういう冗談が流行ってるのかもしれない。

 

「あのねぇ、坊やたち!!」

 

男は少し声を上げてた、どうやら二人に注意をしようとしているようだ。しかし栗色の髪の少年の言葉に男は口を閉じた。

 

「知らなかったり、嘘ついたら仕事が出来てないってことで四分の三殺しですぜィ」

 

「沖田くん……それほとんど死んでねぇ?」

 

栗色の髪の少年の言葉に呆れたように銀髪の少年が言ったが止める気は無さそうだ。

男は無意識にゴクリと唾を飲み込む。そして、口を開いた。

 

「そんなものは知らッ!!」

 

男がはっきり言おうとすると突然ゾクリッといいようのない寒気が走ったのを感じた。人間というものは生存本能が強い。そのため、危険が迫ると時々何かを感じることがあるようだ。こういうのを虫の知らせというのだが、それを今男は感じているようだ。

 

(こ、子供なのになんて威圧感……知らないなんて言ったらヤバい)

 

男の額に冷や汗が一滴流れた。

暫く沈黙が走る。その沈黙を破ったのは黒髪で眼鏡を掛けて地味なオーラを漂わせた少年だった。

 

「銀さん、沖田さん!!見つけました。神楽ちゃんが見つけたようです」

 

「おっ、そうなのか?」

 

眼鏡の少年に言われて銀髪の少年がやってきた道へと戻ろうとする。すると栗色の髪の少年も銀髪の少年について行こうとした。

男はホッとした威圧感が無くなったのだ。しかし、少年が立ち去る前に何やら囁きが聞こえた。

栗色の髪の少年が男に何かを囁いたのだ。

男はその囁きを聞いた瞬間青ざめた。そして即座に事務所に戻ると上司に退職願いを出す。

 

男の上司は聞いた。突然退職願いを出すなんて有り得ないからだ。しかし、肝心の男は悪魔だ。悪魔がァァア!!っと叫ぶばかり。

上司はそんな男に首を傾げる。

 

この事件の後、キングズ・クロス駅では九番線と十番線の間に悪魔が現れ身の毛のよだつ恐ろしいことを囁き去っていくと駅員たちの中で暫くの間恐れられていた。

 

 

 

 

 

 

 

新八に連れられて戻ってみるとそこには神楽たちは居らず、代わりにいたのはふっくらしたおばさんと赤毛の女の子。

 

「あら、坊や。お友達は見つかったのね」

 

おばさんが新八に話しかけた。すると新八はコクンっと頷き口を開いた。

 

「えぇ。あの……神楽ちゃんたちは?」

 

「あぁ、お嬢ちゃんたちなら先に九と四分の三番線に言ったわよ」

 

おばさんはそう言いながら改札口の柵を指差した。

銀時と沖田はその柵を見て首を傾げるが、新八は納得したようにコクコクと頷く。

 

「そうですか。じゃあ、銀さん、沖田さん行きましょうか」

 

新八はそう言うと何の説明も無しに改札口の柵に走っていった。そして急に消えた。

 

「エェェ!!消えた、ってか説明していけやァァァアア!!」

 

「旦那。どうするんですかィ」

 

何の説明もなく消えた新八。そして、残された銀時に沖田は途方にくれた。するとおばさんが話しかけてきた。

 

「坊やたち、心配しなくていいのよ。九番と十番の間の柵に向かってまっすぐ歩けばいいの。立ち止まったら駄目よ、怖かったら少し走るといいわ」

 

おばさんの言葉に銀時と沖田は顔を見合わせた。すると沖田は前に出て銀時を見て言った。

 

「じゃあ、旦那お先に失礼しやす」

 

沖田はそう言うと柵に向かって行き、消えた。

残された銀時は柵をじっと見つめた、意外と頑丈そうである。

 

銀時は九番線と十番線の間にある柵へと向かって走った。柵は当然グングンと近付いてくる。

今にもぶつかりそうではある。しかし……スーッ……どうやら柵にぶつからなくて済んだらしい。

銀時は柵を越えてあるホームへときていた。近くに「9と3/4」と書かれた鉄のアーチが見えた。

プラットホームには紅色の蒸気機関車が停車していた。

 

「銀ちゃん!!」

 

銀時が辺りを見ていると近くで自分を呼ぶ声がした。銀時は声のした方を見るとそこには神楽たちがいた。

銀時はスタスタと歩いていく。

 

「じゃあこれで全員揃ったし行きましょうか」

 

新八が言うと銀時たちは機関車へと歩いていった。

先頭のニ、三両はもう生徒でいっぱいだった。窓から身を乗り出して家族と話したり、席の取り合いでけんかをしたりしていた。銀時たちは空いた席を探して、歩いていく。一つだけ空いてるところを見つけた。しかし、4人しか座れないようだ。

 

「仕方ねぇなァ。4人と3人で別れるか」

 

「私、銀ちゃんと一緒が良いネ」

 

「チャイナ、旦那は俺と一緒でさァ」

 

銀時が言うと神楽が銀時の腕に飛び付いた。すると沖田も銀時の腕を持ち引っ張った。

 

「銀時ィ、もちろん俺と一緒だよな」

 

「あ、あの……僕もギントキと一緒がいいな」

 

桂が言うとハリーもおずおずと手をあげた。すると、土方が口を開く。

 

「じゃあ、公平にジャンケンで別れればいいんじゃねぇか」

 

土方が言うと7人は恨みっ子無しのジャンケンをした。

 

「銀時ィ!!まさか、こんな所で別れるとは……」

 

「旦那。まさかのさようならですかィ」

 

「銀ちゃん……別れるなんて悲しいアル」

 

「いや、あんたら……大袈裟だから」

 

3人はしょんぼりとしながら最後の別れのように言った。それを呆れたように突っ込む新八。

 

「じゃあ、新八。あとは頼んだぞ」

 

「はい!!銀さん、土方さん、ハリーくん。また後で」

 

 

 

 

銀時たちは新八に別れを告げるとまた歩いて席を探し出した。

そして、やっと最後尾の車両近くに空いているコンパートメントの席を見つけた。銀時たちはコンパートメントの戸を開けると中に入った。ハリーはヘドウィグを先に入れた、そして重いトランクを入れようと見たが見当たらない。ハリーはキョロキョロと辺りを見渡すと銀時と土方が言い合いをしながら客室の隅にトランクを収めていた。

 

「あっ、ギントキ、ヒジカタ。ありがとう」

 

ハリーは嬉しそうににっこりと微笑んだ。そして、ギントキの隣へと座る。

 

「「別に……」」

 

銀時と土方は同時に照れくさそうに言った。

さて、読者の皆さんは不思議に思っているだろう。

 

二人は確かに優しいが、ここまで分かりやすい親切はしないと……そう、それは正解である。

実は銀時と土方はあることが原因で力比べをし始めた。そして結果的にハリーのトランクを持ち上げ客室の隅に入れたのだ。

 

 

 

さて、そうこうしているうちに汽車が動き出したようだ。窓の外の景色が流れるように見える。

汽車が動き出してすぐ、あまり時間をおかずにコンパートメントの戸が開いて赤毛の男の子が入ってきた。

 

「ここ、まだ空いてる?」

 

ハリーの向かい側、土方の隣を指差して尋ねた。

 

3人はチラッと赤毛の子を見ると頷いた。男の子は嬉しそうに席に腰をかける。

 

「おい、ロン」

 

コンパートメントの戸を開けて、赤毛の双子男が現れた。

 

「なぁ、俺たち真ん中の車両あたりまで行くぜ……リー・ジョーダンがでっかいタランチュラを持ってるんだ」

 

「分かった」

 

ロンと言われた男の子がモゴモゴと言った。

すると双子の一人が何かに気づいたようにハリーをじっと見つめる。

 

「驚いたな。君はハリー・ポッターかい?」

 

双子の一人が言うともう一人の双子とロンはハリーを見つめた。

 

「え?あっ……うん。僕はハリー・ポッターだ」

 

ハリーがコクンっと頷くと双子とロンはじっとハリーを見つめる。

 

「何?ハリーの知り合いか?」

 

銀時がその様子を見ながら聞くとハリーは首を振った。

すると双子の一人が罰悪そうに頭を書いた。

 

「いや、ごめんごめん。僕たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン。君たちは?」

 

「あっ……ご丁寧にこっちがギントキで、そっちヒジカタ。そして僕がハリーだよ」

 

「どーも、ギントキです。よろしく頼むわ」

 

双子の一人がいうとハリーが紹介した。銀時は挨拶をし、土方は軽く会釈をした。

 

「そっか、よろしく。っと僕たちはそろそろ行くな」

 

双子の一人が言うとコンパートメントの戸を閉めて去っていった。

そのあと、ロンを交えて4人は色々と話した。

 

話しているうちに汽車はロンドンを後にして、スピードを上げ牛や羊のいるそばを走り抜けていった。

 

 

 



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第8訓 蛙事件発生

 

 

十二時半ごろ、通路でガチャガチャと大きな音がし始めた。そしてそのあとすぐに、えくぼのおばさんがニコニコ顔で戸を開けた。

 

「車内販売よ。何かいりませんか?」

 

お腹の空いていた3人は勢い良く立ち上がったが、ロンはサンドイッチを持ってきたからと口ごもった。

ハリーはえくぼのおばさんを見るときっぱりと言った。

 

「ぜーんぶちょうだい」

 

「あっ、じゃあ俺も」

 

ハリーが言うと銀時も便乗したように言った。すると土方が銀時を止めるように口を開いた。

 

「おい、万事屋。そんなに買っていいのか?」

 

「あ?どうせジジイの金だし、いいんじゃねぇ?」

 

土方の言葉に銀時はきっぱりと言った。

そして、土方は手を上げてきっぱりとおばさんに向かって言う。

 

「それもそうだな。すいませーん、マヨネーズかマヨネーズ味の菓子あったらくださーい」

 

 

 

 

 

ロンは銀時たちが両腕いっぱいの食べ物を持っている様子を目をまん丸くして眺めていた。

 

「そ、そんなにお腹空いてるの」

 

「ペコペコだよ」

 

ハリーがきっぱり言うと銀時も大鍋ケーキを頬張りながら言った。

 

「ロン。お前も食え食え」

 

銀時が言うとロンはハリーと土方を見た、2人とも食べながらも銀時の言葉に頷いている。

ロンは土方の食べている黄色い物に驚きながら嬉しそうにかぼちゃパイに手をかけた。

 

しばらく黙々と食べるのに夢中になっているとハリーが声をあげた。

 

「これなんだい?」

 

「ん?それは蛙チョコレートだよ」

 

ロンの言葉を聞きハリーの横から包みを見ると銀時の目はキラキラと光った。

 

「マジでか?チョコレートじゃねぇか。銀さんも食う」

 

銀時は蛙チョコレートをお菓子の山から取ると喜々として包みを開け始めた。

 

「あっ、逃げられないように気をつけて」

 

そんな銀時を見ながらロンは言うも遅かった。開けた瞬間蛙はピョンピョンと飛んでいく。

 

「ちょ……なんでチョコが動いてんだよ!!」

 

銀時は慌ててチョコ蛙を追いかける。なんとか窓のガラスでチョコ蛙を銀時は捕まえた。

 

チョコ蛙はジタバタと動いて銀時から逃れようとする。

 

「これ……本当にチョコか?」

 

銀時は怪しげに蛙チョコを見ながら呟いた。確かに匂いはチョコレートなのだが、普通の茶色い蛙に見える。

 

「大丈夫。とっても美味しいチョコだよ」

 

ロンに言われると銀時はじっとチョコ蛙を見つめ食べようと口を開けた。

するとその時コンパートメントの戸が開いてある人物が入ってきた。

 

「銀ちゃん……ヒキガエル見なかっ……ぎ、ぎ、銀ちゃんが蛙食べてるゥゥゥウ!!」

 

入ってきたのは神楽だった。どうやら神楽はネビルとかいう少年が逃がしたヒキガエルを探している途中だったらしい。

 

神楽はコンパートメントの戸をあけたまま大きな声で叫んだ。汽車内にはその声が響きわたり、これで生徒全員に銀ちゃんという人物が蛙を食べていたことが伝えられた。

 

「え?ちょ……神楽お前なんつー誤解して」

 

銀時は慌てて誤解を解こうとするもドタバタと近付いてくる足跡に気がついた。

そして暫くすると神楽の隣から丸顔で半泣きの男の子が顔出した。

 

「ト、トレバー……き、君……僕のトレバーを食べちゃったの?」

 

男の子は今にも泣きそうな声を出し、銀時を見つめた。すると土方に神楽、そしてハリーまでもが銀時を疑いの眼差しで見つめ始める。

 

「いや、トレバーが何か分からないけど食べてねぇよ」

 

「トレバーはヒキガエルアル」

 

銀時が言うと神楽がボソッと呟いた。その言葉を聞いて銀時は目を見開かせた。

 

「ヒキガエルなんて食うかァァア!!ってか何お前らその目!!どんだけ疑ってんのォォオ」

 

銀時が叫ぶと神楽とハリーは声を揃えて言った。

 

「「いや、ギントキ(銀ちゃん)なら食べてそう(ネ)」」

 

「お前ら俺にどんなイメージ持ってんだァァア!!」

 

「ヒキガエル食べる貧乏人のイメージだろ」

 

2人の言葉に銀時が何度目か叫ぶと土方が嫌みたらしく言った。銀時はもちろん反応して振り向いた。

 

「あ?土方くんってば何言ってんの?あー、そうか……友達いない土方くんは銀さんに構って欲しいんだ」

 

銀時はニタニタ笑いながら土方を馬鹿にしたように言う。土方の眉がピクピクと動き出す。すると銀時は両手を上げて芝居かかったように話し出す。

 

「あー、けど……無理だわ。構ってやってもいいけど……銀さん今から誤解解くためヒキガエル捕獲しなきゃならねぇもん。あっ、もちろん手伝わなくていいんだぜ。土方くんトロいからヒキガエルなんて捕まえられないだろうし」

 

銀時はプププッと片手を口に当て笑いながら歩き出した。

 

「おい、待ちやがれ!!万事屋」

 

土方はキッと銀時を睨みつけて止めた。

銀時は鬱陶しげに土方を見た。

 

「テメェはここで待ってやがれ。注意力のないテメェなんかにヒキガエルは捕まえられねぇだろ」

 

「は?オイオイ、俺の注意力半端ないから!!土方くんとは格がちげぇよ」

 

「あ?格が違うだ?あー、そうだよな。テメェの方が下だもんな」

 

土方の言葉に銀時が返し、銀時の言葉に土方が返す。だんだんと言い合いが激しくなっていく。

 

「よし、分かった。そこまで言うならどっちが先にヒキガエルを捕まえるか勝負しようじゃねぇか」

 

「上等だゴラ」

 

「「ヒキガエル狩りじゃァァァァアア!!」」

 

銀時が言うと土方は頷いた。そして2人して、叫び声を上げながら走っていた。

 

コンパートメントに残された者は過ぎ去った嵐に呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時と土方が去って暫くすると神楽は大量の食べ物に気がつき食べ始めた。どうやらハリーたちと共に居る気らしい。

 

とりあえず自己紹介をして食べながら話していると、神楽はロンの膝の上で眠り続けている生き物を見つけた。

 

「それ……何アルか?」

 

「え?これは僕の使い魔スキャバーズだよ」

 

ロンは神楽の問いに答えて自分の膝で寝ているねずみを持ち上げた。ねずみは持ち上げられてもグーグーと寝ている。

 

「コイツあまり起きないんだよ、死んでたってきっと見分けがつかないよ」

 

ロンはため息混じりに言い出した。

 

「きのう、少しはおもしろくしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ」

 

「黄色って……ペンキで染めるアルか?」

 

「いや、この場合魔法じゃないかな?」

 

神楽の言葉にハリーが反応して言った。眼鏡のせいか突っ込みになりそうである。そんな二人の様子にロンはゴホンっと咳払いをした。

 

「まぁ、呪文効かなかったんだけどね。やって見せようかーー見てて……」

 

ロンはトランクをガサゴソ引っ掻き回して、くたびれたような杖を取り出した。あちこちボロボロと欠けていて、端からなにやら白いキラキラするものがのぞいている。

 

「ユニコーンのたてがみがはみ出してるけど。まぁ、いいか……」

 

杖を振り上げたとたん、コンパートメントの戸が開いた。一瞬銀時と土方が帰ってきたのかと思ったが、違うようだ。

 

その場に居たのは新調のホグワーツ・ローブに着替えた女の子だった。

 

「誰かヒキガエルを……ってあら、カグラこんなところに居たの?」

 

栗色の髪がフサフサして、前歯がちょっと大きい女の子は神楽を見つけると言った。

どうやらヒキガエル捜索の時知り合いになったようだ。

 

「あっ、ハーマイオニーネ。ヒキガエル見つかったアルか?」

 

ハーマイオニーと呼ばれた女の子は首を振る。そしてロンが杖を持っていることに気付くと興味深そうに言った。

 

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」

 

ハーマイオニーはそう言うと神楽の隣に座った。

ロンはそれを見ると少したじろぎ咳払いをする。

 

「お陽さま、雛菊、とろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」

 

ロンは杖を振った。しかし、何も起こらない。スキャバーズは相変わらずねずみ色で眠っている。

 

「その呪文、間違ってないの?」

 

ハーマイオニーが言った。

 

「まぁ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試してみたことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時驚いたわ。でももちろんうれしかった……だって、最高の魔法学校だって聞いているもの。教科書はもちろん全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は……カグラの友達かしら」

 

ハーマイオニーは一気に言うとハリーとロンの顔を見た。二人はコクンっと頷く。

 

「僕、ロン・ウィーズリー」

 

「ハリー・ポッター」

 

「ほんとに?私、もちろんあなたのこと全部知ってるわ。参考書を二、三冊読んだの。あなたのこと『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」

 

「僕が?」

 

「ハリー、有名人だったアルか?」

 

ハリーと神楽は目をパチクリさせた。

 

「まぁ、知らなかったの?そういえば三人とも、どの寮に入るかわかってる?私、いろんな人に聞いて調べたけどグリフィンドールに入りたいわ。絶対一番いいみたい。っと私はもう行くわ。そろそろ着くみたいだからローブに着替えたほうがいいわよ」

 

 

 

ハーマイオニーは自分の言いたいことだけ言うとスタスタと戸を開けて出て行った。ある意味嵐のような子である。

 

「ハリー、ロン。私も着替えに戻るアル。じゃあ、また後でな」

 

「あっ。うん」

 

「後で」

 

神楽もローブを着替えに出て行った。ハリーとロンは顔を見合わせるとため息をつく。

 

「どの寮でもいいけど、ハーマイオニーのいないところがいいな」

 

ロンは杖をトランクに収めながら呟いた。そんなロンを見ながらハリーは苦笑いを浮かべた。

 

 

 

暫くハリーとロンが話をしていると、またコンパートメントの戸が開いた。

 

二人は今度こそ銀時と土方が戻ってきたのかと思ったのだが、違った。

男の子が三人入ってきたのだ。ハリーは真ん中の一人が誰であるか一目でわかった。あのマダム・マルキン洋装店にいた、青白い子だ。ダイアゴン横丁の時よりずっと強い関心を示してハリーを見ている。

 

「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ち切りなんだけど。それじゃ、君なのか?」

 

「そうだよ」

 

ハリーが答えた。そして青白い子の両隣にいる二人に目をやった。二人ともガッチリとして、この上なく意地悪そうだった。

青白い男の子の両脇に立っていると、ボディガードのようだ。

 

「ああ、こいつはクラッブでこっちがゴイルさ」

 

ハリーの視線に気づいた青白い子が無造作に言った。

 

「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」

 

ロンは、クスクス笑いをごまかすかのように軽く咳払いをした。ドラコ・マルフォイが目ざとくそれを見咎めた。

 

「僕の名前が変だとでも言うのかい?君が誰だか聞く必要もないね。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛でそばかすで育てきれないほどたくさん子供がいるってね」

 

それからハリーに向かって言った。

 

「ポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。そのへんは僕が教えてあげよう」

 

男の子はハリーに手を差し出して握手を求めたが、ハリーは応じなかった。

 

「間違ったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」

 

ハリーは冷たい口調で言った。ドラコ・マルフォイは真っ赤にはならなかったが、青白い頬にピンク色がさした。

 

「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね。もう少し礼儀を心得ないと君の両親と同じ道をたどることになるぞ。ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等連中と一緒にいると君も同類になるだろうよ」

 

ハリーとロンが立ち上がった。そしてドラコを睨みつける。しかし、三人の後ろの戸が開いたことに気づき視線をドラコの後ろに移した。

 

 

 

 

「ったくよォ、ローブを着てこいとか……怖い姉ちゃんだわ。もう少しで俺がヒキガエル見つける所だったのによォ」

 

「いやいや、万事屋何言ってんだ。俺が先に見つけるに決まってんだろ」

 

「いやいやいや、土方くんこそ何言ってんの?銀さんに決まっ……」

 

どうやら銀時と土方が帰って来たようだ。どうやら話からよるとハーマイオニーにそろそろ着くからローブを着替えてこいと言われたらしい。

銀時はコンパートメントの戸を開けて眉を寄せた。三人の男の子が突っ立っていたので中に入れないのだ。

 

「おーい、お前ら……ちょっとどけてくれねぇ?」

 

銀時が三人に言うと青白い子が後ろを振り向いた。

 

「なんだ?君たち……どこの者か知らないが僕たちは今取り込み中だよ。そんなことも分からないなんて下等な連中の友達は下等って奴だね」

 

ドラコは二人もハリーと友達だろうと判断して言った。すると両隣にいるクラッブとゴイルも銀時と土方を馬鹿にするよう笑い出した。

銀時と土方の額に青筋が浮かぶ。

 

「もう一ぺん言ってみろ」

 

ロンがドラコを再度睨みつけた。ドラコはその様子を見ると再度馬鹿にするように言った。

 

「なんだ?一回じゃ分からなかったのか?記憶力も乏しいなんて良いところないんだな」

 

ドラコが言うとガシッと肩を掴まれた。銀時が掴んだのだ。

 

「あぁ、そうだな。銀さん記憶力ないからもう一度言ってみろや」

 

ギシギシと掴まれたドラコの肩がなる。クラッブとゴイルはドラコを守ろうと銀時に向かって行こうとした。銀時は迎え撃つためにドラコから手を離した。

これからケンカが始まるのかと思いきや、騒ぎを聞きつけたのか此方に向かってくる足音に気付いたドラコは舌打ちするとコンパートメントの中にいるハリーとロン、そして外にいる銀時と土方を睨みつけ足早に去って行った。

 

 



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第9訓 いざ城の中へ

 

銀時と土方はコンパートメントに入ると足音の人物を待った。しかし、こちらに来る前に他のコンパートメントに入ったようだ。

 

「あー、着替えようぜ。着くみたいだしよォ」

 

銀時が窓を見ながら言った。ハリーが窓をのぞくと、外は暗くなっていた。深い紫色の空の下に山や森が見えた。汽車はたしかに徐々に速度を落としているようだ。

四人は荷物から黒い長いローブを取り出して着た。ロンのはちょっと短すぎて、下からスニーカーがのぞいている。

 

車内に響き渡る声が聞こえた。

 

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」

 

ハリーは緊張で胃がひっくり返りそうだったし、ロンはそばかすだらけの顔が青白く見え、銀時と土方はヒキガエル……と呟き探しに行こうとするも通路にあふれる人の群れに諦めた。

 

汽車はますます速度を落とし、完全に停車した。押し合いへし合いしながら列車の戸を開けて外に出ると小さな暗いプラットホームだった。夜の冷たい空気が肌寒さを感じさせる。

やがて生徒たちの頭上にゆらゆらとランプが近づいてきて、ハリーの耳に懐かしい声が聞こえた。

 

「イッチ年生!!イッチ年生はこっち!!」

 

ハグリッドの大きな髭面がずらりと揃った生徒の頭のむこうに見える。

 

「さぁ、ついてこいよーーあとイッチ年生はいないかな?足元に気をつけろ!!いいか!!イッチ年生、ついてこいよ!!」

 

 

滑ったり、つまずいたりしながら、険しくて狭い小道をみんなはハグリッドに続いて降りていった。右も左も真っ暗だったので木が鬱蒼と生い茂っている道であろう。

 

「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ」

 

ハグリッドが振り返りながら言った。

 

「この角を曲がったらだ」

 

『うぉーーっ!!』

 

一斉に声が湧き起こった。狭い道が急に開け、大きな黒い湖のほとりに出た。むこう岸に高い山がそびえ、そのてっぺんに壮大な城が見えた。大小さまざまな塔が立ち並び、キラキラと輝く窓が星空に浮かび上がっていた。

 

「四人ずつボートに乗って!!」

 

ハグリッドは岸辺につながれた小船を指差した。ハリーとロンと銀時と土方が乗った。

 

「みんな乗ったか?」

 

ハグリッドが大きな声を出した。ちなみにハグリッドは一人でボートに乗っている。

 

「よーし、では進めぇ!!」

 

ハグリッドが言うとボート船団は一斉に動き出し、鏡のような湖面を滑るように進んだ。みんな黙ってそびえ立つ巨大な城を見上げ……

 

「ふっはははは!!」

 

一人の馬鹿が騒いでるようです。ボートの上に立ち一人の男の子がこちらに手を振っていた。

 

「ふっはははは、ギントキィィイ!!久方振りの再会だ」

 

「ちょ、桂さん恥ずかしいから止めて下さい!!」

 

桂が騒ぎ、新八がそれを抑えようとしているようだ。珍しく神楽と沖田は城を見上げ大人しくしている。

 

「頭、下げぇー!!」

 

ちょうど桂が騒いでる時、ハグリッドが掛け声を上げた。桂を除いて皆は一斉に頭を下げる。

桂は間に合わず頭上の蔦に顔をぶつけて倒れた。

そんな様子を見ていたロンは目をパチクリした。

 

「ひゃぁっ、ギントキの知り合い?」

 

「いや、知らねー」

 

ロンの問いかけに銀時は無表情で言った。ロンは相手が銀時の名前を呼んでいたことについて聞こうと思うもやめた。なんか聞いてはいけないように感じたからだ。

 

そうこうしているうちに船は城の真下……地下の船着き場に到着した。

 

全員が岩と小石の上に降り立った。

生徒たちはハグリッドのランプの後に従ってゴツゴツした岩の路を登り、湿った滑らかな草むらの城影の中にたどり着いた。皆は石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まった。

 

「みんな、いるか?」

 

ハグリッドは大きな握り拳を振り上げ、城の扉を三回叩いた。

 

 

 

 

 

扉がパッと開いて、エメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。とても厳格な顔つきをしている。この人には逆らってはいけないとハリーは直感した。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」

 

ハグリッドが報告した。

 

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」

 

マクゴナガル先生は扉を大きく開けた。玄関ホールはダーズリーの家がまるまる入りそうなほど広かった。石壁がグリンゴッツと同じように松明の炎に照らされ、天井はどこまで続くかわからないほど高い。壮大な大理石の階段が正面から上へと続いている。

マクゴナガル先生について生徒たちは石畳のホールを横切っていった。入り口の右手の方から、何百人ものざわめきが聞こえたーー学校中がもうそこに集まっているに違いない。しかし、マクゴナガル先生はホールの脇にある小さな空き部屋に一年生を案内した。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。

寮の組み分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは自分の属する寮の得点になりますし、反対に規則に違反した時は寮の減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。

どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるように望みます……まもなく全校列席の前で組み分けの儀式が始まります。学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」

 

マクゴナガルは長い長い挨拶を終えると部屋から出て行った。

 

マクゴナガル先生が出て行ってすぐに突然不思議なことが起こった。ハリーは驚いて三十センチも宙に跳び上がってしまったし、ハリーの後ろにいた生徒たちは悲鳴をあげた。

 

「いったい……?」

 

「あー、なんだよ。うるさッ!?」

 

「万事屋どうかしッ!?」

 

ハリーは息を呑み、銀時と土方は身体を固まらした。

後ろの壁からゴーストが二十人ぐらい現れたのだ。

 

真珠のように白く、少し透き通っている。みんな一年生の方にはほとんど見向きもせず、互いに話をしながらスルスルと部屋を横切って行った。

しかし、最後のゴーストの一人が急に一年生たちに気づいたらしい。何故か銀時たちの方にやってくる。

 

「新入生かな?……君たち二人は毛色が違うようだが」

 

銀時と土方を見ながら話しかけてくるゴースト。どうやらゴーストには異世界者だと分かるようである。

 

「おい、土方くん。話しかけられた……」

 

「知らん!!俺は何も知らん!!」

 

銀時は口の端をひくつかせ、土方は両耳を塞ぎ知らない知らないと言い続ける。

ゴーストは二人と話せないと分かるとまた後でと言い壁の向こうに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、行きますよ」

 

ゴーストが去ってすぐに突然部屋に厳しい声が響いた。

 

「組分け儀式がまもなく始まります」

 

マクゴナガル先生が戻ってきたのだ。

マクゴナガル先生は生徒たちを見渡す。そしてゴホンと咳払いをすると手をパンパンと叩いた。

 

「さぁ、一列になってついてきて下さい」

 

マクゴナガル先生が言うと生徒たちは一列になってついて行く。

ハリーは黄土色の髪の少年の後ろに並び、ハリーの後にはロンが続いた。その後ろをゴーストにビビった銀時と土方が歩いた。ハリーはチラッと後ろを見るとマクゴナガル先生に聞こえないように小さな声で聞いた。

 

「ギントキ、ヒジカタ大丈夫?」

 

ハリーの言葉を聞いた銀時と土方は挙動不審に動きだす。

 

「え?大丈夫?え?何が大丈夫?銀さん意味分かんないんだけど」

 

「そ、そうだな。大丈夫ってほんと何?って感じだ」

 

明らかに大丈夫じゃなさげな二人を見るとハリーはため息をつき、しばらくほっとくことにした。

 

一年生は部屋を出て再び玄関ホールに戻り、そこから二重扉を通って大広間に入った。

そこには、ハリーが夢にも見たことのない、不思議ですばらしい光景が広がっていた。何千というろうそくが空中に浮かび、四つの長テーブルを照らしていた。テーブルには上級生たちが着席し、キラキラ輝く金色のお皿とゴブレットが置いてあった。

 

広間の上座にはもう一つ長テーブルがあって、先生方が座っていた。マクゴナガル先生は上座のテーブルのところまで一年生を引率し、上級生の方に顔を向け、先生方に背を向けるかっこうで一列に並ばせた。一年生を見つめる何百という顔がみえる。

 

マクゴナガル先生が一年生の前に四本足のスツールを置いた。その椅子の上には魔法使いのかぶるとんがり帽子が置かれている。その帽子はつぎはぎのボロボロでとても汚らしかった。しばらく帽子を見ていると帽子がピクピクと動いた。ハリーは目をまんまるくして見る。ハリーの後ろで銀時と土方が帽子を見てビクッと動いたのを感じた。

 

帽子はつばのへりの破れ目が、まるで口のように開いて、突然歌を歌い出した。

 

 



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第10訓 組分け帽子……ってしゃべるのかよッ!!

 

 

歌が終わると広間にいた全員が拍手喝采した。銀時と土方はキョロキョロ辺りを見渡した。

 

((え?何?何これ?拍手しないとダメ?ダメな空気なの?))

 

二人は同じことを考えているようだ。しばらくすると拍手は止まり、四つのテーブルにそれぞれお辞儀をして帽子は静かになった。

完全に辺りが静かになるとマクゴナガル先生が長い羊皮紙の巻紙を手に持ち前へと進み出た。

 

「名前が呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組み分けを受けてください」

 

マクゴナガル先生は組み分けの簡単な説明をすると1年生たちと名前を呼び出す。そして一人一人と生徒たちの組み分けが決まっていく。

 

「オキタ・ソウゴ」

 

しばらくすると知り合いの名前が呼ばれた。前を見てみると沖田が椅子に座り帽子を被っていた。

 

「フムフム」

 

沖田は被ってる帽子から低い声が聞こえ眉を寄せた。

 

「さて、初の異世界入学者。フムッ、どこに入れようかな。ん?目的のためには手段は選ばない……か」

 

ブツブツと呟く帽子。それを聞きながら沖田はうるせぇな、この帽子燃やしてやりましょうかっと思っていた。

 

「スリザリン!!」

 

帽子が叫ぶと沖田はチラッとスリザリンを見てニヤリと笑った。そして、ゆっくりとスリザリンのテーブルへと向かう。

その目は自分の獲物を品定めするよう光っていた。

今日この瞬間にスリザリンに恐怖のドS王子が誕生した。

 

もちろん被害者は同じスリザリン生なのは言うまでもない。

 

 

 

 

さて、ドS王子の次に呼ばれたのはチャイナ娘神楽だ。

神楽は呼ばれると嬉しそうに返事をして椅子に座った。

 

「ウム、なるほどなるほど……グリフィンドール!!」

 

帽子は神楽の頭の上で何かを納得して頷くと声を高々にして叫んだ。

神楽はグリフィンドールのテーブルに向かおうと椅子から降りるも視界の端に銀時を見つけ手をブンブン振った。

 

「銀ちゃーん!!銀ちゃんも絶対にグリフィンドールアルよ!!……あっ、新八はどうでもいいネ」

 

神楽が最後の言葉を言うとどこかから突っ込みが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

さて、神楽が呼ばれた後にすぐ呼ばれたのもこれまた見たことがあるような人物だった。銀時は首を傾げ、土方やハリーやロンは眉を寄せた。

 

「あれ?アイツ……なんだっけ?」

 

銀時が呟くとハリーが説明する。

 

「ギントキ、あれだよ。列車で喧嘩売ってきたマルフォイって奴」

 

ハリーに言われて銀時は記憶を辿る。そういえばそんなこともあったような気がする。銀時はマルフォイに毛程も興味なかったし、おまけにゴーストに会うなんて恐怖体験をしてしまったため覚えてなかったのだ。

 

「スリザリン!!」

 

マルフォイが帽子を被るか被らないかで帽子は叫んだ。

どうやらマルフォイの寮が決まったようだ。

 

それを聞くと銀時は嫌そうにマルフォイを見ているハリーとロンの肩にポンと手を置いた。

 

「まぁ、列車では色々あったけど許してやろうじゃねぇか」

 

「え?」

 

「なんでだい?ギントキ」

 

ハリーとロンは不思議そうに銀時を見つめた。銀時は生暖かい目でマルフォイがスリザリンのテーブルに向かうのを見ている。そんな銀時に二人は首を傾げた。

 

 

 

「トウシロウ・ヒジカタ」

 

マクゴナガル先生の呼ぶ声が聞こえる。

土方は呼ばれた通りに歩いて椅子まで向かう。帽子を被ると帽子がブツブツと言い出した。

 

「統率力がある。頭も悪くない。ん?突っ込みよりボケに憧れてるようだ。目的はマヨネーズ王国に行くこと」

 

土方の思ってることが帽子に暴かれていく。ってかマヨネーズ王国とは本当にあるのだろうか?

 

「ウウム、スリザリンかグリフィンドールか」

 

帽子が困ったように呟いていると土方が口を挟んだ。

 

「グリフィンドールにしてくれ。こんなとこまで来て総悟に命を狙われる生活は嫌だ」

 

「分かった。では……グリフィンドール!!」

 

土方は帽子の言葉を聞くとグリフィンドールの席へと向かって行った。

 

 

 

 

「コタロウ・カツラ」

 

次に呼ばれたのは桂である。桂はスタスタ歩き帽子を被ると即座に要求した。

 

「帽子殿、俺をエリザベスに入れてくれ!!」

 

「エ、エリザベス?」

 

桂の言葉に流石の帽子も首を傾げるよう先の尖った部分を傾げさせた。

 

「エリザベスという寮はないのだが」

 

帽子の言葉に桂は目を見開いた。そして信じられないといった感じで帽子を見上げる。

 

「な、エリザベスがないだと!?帽子殿、嘘をつくのは止めるんだ。俺はずっと帽子殿がエリザベスエリザベス言うのを聞いていた」

 

これを銀時や新八が聞いていたらそれはお前のエリザベス中毒の幻聴だ!!っと突っ込むのだが、帽子は桂がエリザベス中毒だと言うことを知らない。

 

(エリザベス……エリザベス……もしやスリザリンと聞き間違いをしてるのでは)

 

「ス、スリザリン?」

 

と帽子は思い桂をスリザリンに入れた。もちろんスリザリン生はエリザベスエリザベスと呟いてこっちに近づいてくる桂を見て

 

(ど、どうしよう……変なの来た)

 

っと戸惑っていたのは言うまでもないことだろう。

 

 

 

 

 

「ギントキ・サカタ」

 

お次に呼ばれたのは我らが主人公その1坂田銀時である。ちなみにその1とは、この小説はハリーとのダブル主人公になっているからだ。

 

銀時は呼ばれると心底ダルそうな雰囲気を醸し出し帽子を被って言った。

 

「おい、帽子さんよォ。銀さんあれだわ、色々面倒だからあまり動かなくていい寮にしてくんない?」

 

初っぱなから主人公あるまじき発言である。

 

「は?君は何を言って……」

 

流石の帽子も驚いて銀時の言葉を聞き返した。すると銀時はハァっとため息をつく。

 

「だからよォ、銀さんどこぞの中2病ハゲ魔法使いとは面倒で会いたくない。だからあれ、パフパフだか、ブロックンが良いわけ」

 

だいたい中2病なんて高杉だけでいいんだっつーのっとブツブツ呟く銀時に帽子は苦笑いを浮かべる。

 

(パフパフかブロックンって……ハッフルパフとレイブンクローのことか?)

 

帽子は困ったように眉を寄せる。異世界入学者はスリザリンかグリフィンドールにしか入れれないのだ。っというか読者は何故銀時が既に例のあの人を知っているのかとも思うだろう。まぁ、それは銀時だからですまそう(笑)

 

「あー、すまないが、スリザリンかグリフィンドールに入れないといけないのだが」

 

帽子は尖った先をピクピク動かしながら言った。すると銀時は帽子を見上げた。

 

「マジでか!!……あー、じゃあスリザ……いやいやいや、断固グリフィンドールで」

 

 

銀時は帽子の言葉を聞くと即座面倒が少なそうな寮を口にするもスリザリンにいる最凶な沖田と桂を見てきっぱりと言った。

 

「よし、では……グリフィンドール!!」

 

帽子が叫ぶと嬉しそうに神楽がグリフィンドール席に銀時を連れて行った。

 

 

 

 

 

「次、シンパチ・シムラ」

 

新八は呼ばれると緊張した様子で椅子へと向かい、帽子を被った。

 

「あー、じゃあグリフィンドールでいいや」

 

新八が帽子を被った瞬間。帽子はどうでも良さげに言った。

 

「ちょ、いいやってどんだけ適当!!」

 

そんな帽子に突っ込みながら新八はグリフィンドールへと向かった。

 

 

 

 

「ハリー・ポッター」

 

ハリーが前に出ると突然広間中にシーっというささやきが波のように広がった。

 

「ポッター?今ポッターって言った?」

 

「あのハリー・ポッターなの?」

 

ハリーが帽子を被るまで広間中の人たち(銀時たちを除く)がハリーをよく見ようと首を伸ばしていた。

 

「フーム、むずかしい。非常にむずかしい。勇気に満ち溢れ、頭も悪くない、才能もあるし、自分の力を試したいとも思っている。さて、どこに入れたものか」

 

ハリーは帽子にささやくように呟いた。

 

「グリフィンドール。ギントキたちのいるグリフィンドールが良い」

 

「おや?グリフィンドールがいいのかね?」

 

帽子は小さく呟いた。

 

「スリザリンに入れば君は間違いなく偉大な魔法使いになれる道が開ける。だが、グリフィンドールが良いか。よろしい、君がそういうなら……グリフィンドール!!」

 

ハリーはその言葉を聞くと心底嬉しそうにグリフィンドール席へと向かう。グリフィンドール席では有名なハリーが来たのが嬉しかったのだろう、凄まじい歓声をあげていた。



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第11訓 世の中にはスタンドより恐ろしいものがある

 

 

ハリーの組み分けが終わり、4、5人呼ばれるとマクゴナガル先生はクルクルと巻紙をしまい、帽子を片付けた。組み分けが無事終わったのだ。ちなみにロン、そして列車であったハーマイオニーとネビルは同じグリフィンドールだった。

 

マクゴナガル先生が下がったのを確認するとアルバス・ダンブルドアは立ち上がった。おもむろに腕を大きく広げ、嬉しそうににっこりと微笑む。

 

「おめでとう!!ホグワーツの新入生、おめでとう!!歓迎会を始める前に、二言、三言言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!!わっしょい!!こらしょい!!どっこらしょい!!ーー以上!!」

 

ダンブルドアは不思議な二言、三言を言うと満足げに席をついた。出席者全員は拍手をし歓声をあげた。

ハリーは苦笑いをしながらちょうど近くにいたグリフィンドール監督生パーシーに聞いた。ちなみにパーシーはロンや双子の兄である。

 

「あの人……ちょっぴりおかしくない?」

 

「おかしいだって?」

 

パーシーは一瞬ハリーの言葉に驚くもウキウキした様子で答えた。

 

「あの人は天才だ!!世界一の魔法使いさ!!でも……少しおかしいかな?うん。あっ、君、ポテト食べるかい?」

 

パーシーの言葉にハリーはあっけに取られた。いつの間にやら目の前に大皿があり、中は食べ物でいっぱいになっている。

 

ローストビーフ、ローストチキン、ポークチョップ、ラムチョップ、ソーセージ、ベーコン、ステーキ、ゆでたポテト、グリルポテト、フレンチフライ、ヨークシャープディング、豆、にんじん、グレービー、ケチャップ、マヨネーズ、タバスコ、そしてなぜかハッカ入りキャンディ。

 

ダーズリー家では飢え死にこそしなかったが、お腹一杯食べさせてはもらえなかった。

 

「わぁ、凄い!!凄いね、ギントッ!?」

 

ハリーは瞳をキラキラさせた、そして隣にいる銀時たちを見て止まった。

 

ハリーが見た光景は気持ち悪いほどマヨネーズを乗せた黄色い物体を食べている土方、そのとなりでは神楽と銀時が競い合うように肉をむさぼり食らっていた。

 

そして、そんな二人に

 

「肉ばかりでなく野菜もバランスよく食べて下さい」

 

なんて言いながらいそいそとタッパーに料理を詰め込む新八。

 

(シンパチ……そのタッパーどっから持ってきたんだ?ってかそれ詰めてどうするの?)

 

口元をひきつらせながらそんな風に思ってるだろうロンの顔。

 

ハリーはその凄まじい光景を見ながら苦笑いを浮かべる。

 

「ハッハッハッ、凄まじいですな」

 

「う、うん……って誰!?」

 

ハリーは突然聞こえてきた声に同意して頷き、声のした方を見て驚いた。そこに居たのは、ひだ襟服のゴーストだった。ゴーストはハリーの言葉ににっこり微笑んだ。

 

「私は、ニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン郷といいます。お見知りおきを。グリフィンドール塔に住むゴーストです」

 

ピシッと銀時と土方の方から何かが固まった音がした。

 

「僕、君のことしってる!!」

 

ロンが突然口を挟んだ。

 

「兄さんたちから君のこと聞いてるよ。『ほとんど首無しニック』だ!!」

 

ロンが言うと、黄土色の髪のシェーマス・フィネガンが割り込んできた。

 

「ほとんど首無し?どうしてほとんど首無しなの?」

 

「確かにそうアルな。なんでアルか?」

 

神楽も食べる手を少しとめると聞いた。そんな二人にニコラス郷は眉を寄せた。

 

 

((こ、この馬鹿ども何聞いてんだァァア!!スタンド様眉よせてんじゃねぇか!!))

 

銀時と土方はそれを見て心の中で叫んだ。恐怖のあまり声が出ないのだ。

 

ニコラス郷は眉を寄せたまま自分の左耳をつかみ引っ張った。頭が首からグラッとはずれ、蝶番で開くように肩の上に落ちた。誰かが首を切ろうとして、やりそこねたらしい。

 

((ーーッ!?))

 

「ギャァァアアアッ!!」

 

なぜかスリザリンの方から叫び声がした。

生徒たちはニコラス郷というよりもスリザリンの声に驚いて目をまん丸くする。生徒たちはスリザリンの席に目を移した。

 

そこにはスリザリンの監督生が口を手で押さえて床にゴロゴロ転がっていた。

 

「な、何事ですか!!」

 

マクゴナガル先生が驚いてスリザリンのテーブルへと向かう。スリザリン生は何故か青ざめて今だ転がっている自分たちの寮のリーダー、監督生を見つめた。

 

「いったい、いったい何があったのですか?」

 

マクゴナガルが聞くと栗色の少年が出てきた。そう沖田である。

 

「すいやせん。先生……俺のせいなんでさァ」

 

沖田はしょんぼりとした声で悲しそうな表情のまま呟いた。

 

「ミスター・オキタ、何があったのですか?」

 

マクゴナガル先生は沖田をじっと見つめた。すると、沖田は心底後悔している風に話し出す。

 

 

 

「実は、俺……先輩と仲良くなりたくて、俺の国の文化的食べ物をあげたんでさァ。そしたら、先輩の口に合わなかったらしく……」

 

沖田は悲しそうに顔を伏せて肩を震わし始めた。

銀魂メンバー、そして少しの間でも一緒にいたハリーには分かった。あれは泣いているのではない、出そうになる笑いを押さえているのだと……

 

しかし、そんなことマクゴナガル先生が分かるわけがない。マクゴナガル先生は泣いているであろう沖田の頭を優しく撫でた。

 

「オキタ、大丈夫ですよ。先輩は保健室に連れて行くのですぐ大丈夫になります」

 

マクゴナガル先生はそう言うと床に転がった生徒を立たせて保健室に連れて行った。

そんな二人の姿を沖田はニヤリと悪意しかない笑いを浮かべて見送った。

その笑いを見てしまった不運な生徒は歓迎会中ずっとブルブル震えて青ざめていたらしい。もちろん一部始終見ていたスリザリン生はこれから始まる寮生活に多大な不安と恐怖を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

さて、色々と事件の あった歓迎会だがそろそろ終わりに近付いているようだ。

その証拠に先生方が何かを耳打ちしながら動き出している。

 

「エヘンーー全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから。また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。一年生に注意しておくが、構内にある森に入ってはいけません。これは上級生にも、何人かの生徒たちに特に注意しておきます」

 

ダンブルドア先生は立ち上がって言うと、チラッと双子のウィーズリー兄弟を見た。

どうやら双子は特に注意する生徒の中に入っているようだ。

 

「管理人のフィルチさんから授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意がありました。今学期は二週目にクィディッチの予選があります。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡してください」

 

 

ダンブルドア先生は淡々と言うと最後にもう一度咳払いをした。

 

「最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません」

 

その言葉にハリーは笑ってしまった。銀時たちは眉を寄せる。

 

「まじめに言ってるんじゃないよね?」

 

「さぁな」

 

ハリーは隣の銀時に向かって呟いた。銀時は眉を寄せたまま言う。

近くにいたパーシーが顔をしかめてダンブルドアを見ながら言った。

 

「いや、まじめだよ。それにしてもへんだな、どこか立ち入り禁止の場所がある時は必ず理由を説明してくれるのに……」

 

 

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!!」

 

ダンブルドアが声を張り上げた。ハリーには他の先生方の笑顔が急にこわばったように見えた。

 

「みんな自分の好きなメロディーで、では、さん、し、はい!!」

 

歌詞を知らない新入生以外の生徒や先生方はそれぞれ独特のメロディーで歌い出した。

もちろん全員メロディーが違うのでバラバラである。

 

(何これ……え?これが歌なの?)

 

ハリーや銀時たちは口元をひくつかせた。

歌を歌い終わると大きな拍手が湧き起こった。

 

「ああ、音楽とは何にもまさる魔法じゃ」

 

ダンブルドアは感激の涙を拭いながら言った。もう突っ込みどころ満載である。

 

「さぁ、諸君!!就寝時間。かけ足!!」

 

 



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第12訓 意外な部屋割り

やっと移転三分の二いきました。


 

 

グリフィンドールの一年生はパーシーに続いてペチャクチャと騒がしい人ごみの中を通り、大広間を出て大理石の階段を上がった。ちなみにスリザリンは監督生が居なかったのでスリザリンの先生、スネイプが引率していった。

 

「ふわぁ、銀ちゃん眠いアル。おんぶ」

 

神楽はお腹いっぱいになったせいか、それとも夜遅いせいか眠たそうに銀時の背中に飛び付いた。

 

「うぉっ。おい、神楽せめて部屋まで頑張れよ」

 

銀時が背中に飛び付いた神楽に言うも神楽はブンブンと首を振った。

 

「無理アル。眠いーー銀ちゃーーん、おんぶゥゥウ」

 

神楽は甘えるように銀時の背中にすり寄った。そんな神楽に銀時は微かに眉を寄せ、仕方なさげにため息をつきおんぶする。

 

神楽は嬉しそうにギュッと銀時にしがみついた。

そんな様子を見て新八と土方以外のグリフィンドール生は銀時と神楽が恋人同士なんだと勘違いしていた。

 

ハリーは仲の良い銀時と神楽を見て頬を染めた。人目もはばかずいちゃつく恋人同士を見て何故か恥ずかしくなったようだ。

 

「ヒュー、ヒュー、可愛い恋人たちと一年生ちゃん。なんてなんて愉快なんだ!!」

 

突然ポンと音がして、意地悪そうな暗い目の大きな口をした小男が現れた。あぐらをかき、意地悪な甲高い笑い声をあげている。

 

「ピーブズだ、ポルターガイストのピーブズだ」

 

パーシーが一年生に伝えた。どうやらゴーストのようである。

ハリーはゴーストだと判断すると、心配そうに銀時と土方を見た。しかし、予想と違い二人は平気そうである。

 

「ピーブズ、行ってしまえ。そうしないと男爵に言いつけるぞ。本気だぞ」

 

パーシーが怒鳴った。

ピーブズは舌をべーッと出し、近くにあった鎧をガラガラ言わせながら遠のいていった。

 

「ピーブズには気をつけたほうがいい。悪戯好きだからな。ピーブズをコントロールできるのは『血みどろ男爵』だけなんだ。僕ら監督生の言うことさえ聞きゃしなーー」

 

「ギャァァァアアッ!!」

 

パーシーが話している途中、恐怖に満ちた叫び声がした。あの特徴のある声は先程までここにいたピーブズの声である。

 

「ピーブズ?」

 

パーシーは不思議そうにピーブズが飛んでいった方向を見た。

 

「あっちはスリザリン寮に向かう道だが……『血みどろ男爵』にでも会ったか」

 

パーシーはそう納得すると寮に向かって歩き出した。銀魂メンバーはスリザリンに向かったピーブズに何と出会ったのかなんとなく分かったのだろう。小さく合掌をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いていくと、廊下のつきあたりにピンクの絹のドレスを着たとても太った婦人の肖像画がかかっていた。

 

「合言葉は?」

 

肖像画の婦人が聞いてきた。

 

「カプート ドラコニス」

 

パーシーがそう唱えると、肖像画がパッと前に開き、その後ろの壁に丸い穴があるのが見えた。どうやらその穴を登っていくらしい。

 

「おぉ、隠し穴ネ」

 

起きていたのか神楽が銀時の背中から穴を見つめ、キラキラと瞳を輝かせた。

 

「おい、神楽。起きてるなら自分で歩けや!!」

 

銀時は神楽を下ろそうとするも神楽はイヤイヤと首を振った。そんな神楽に銀時はため息をひとつし、みんなが登っていった穴に登っていった。

 

ーー穴はグリフィンドールの談話室につながっていた。心地よい円形の部屋で、フカフカしたひじかけ椅子がたくさん置いてあった。

 

「へぇー、意外と広いじゃねぇか」

 

「確かに広いですね」

 

銀時と新八はキョロキョロと辺りを見渡した。生徒たちはパーシーの指示で、神楽以外の女の子は女子寮に続くドアから、銀時、新八、土方以外の男の子は男子寮に続くドアからそれぞれの部屋に入っていった。

 

「で、俺たちはなんで残されたんだ」

 

土方が眉を寄せてパーシーを見つめた。銀時は寮についたので神楽を背中から下ろそうとしている。

 

「それが、君達は作者事情により男女混合で同じ部屋になってるんだ」

 

パーシーの言葉に新八が目をまばたたかせた。銀時も土方も意外そうにパーシーを見つめる。

 

「キャッホーーイ、それ銀ちゃんと同じ部屋って意味あるか!!」

 

神楽は嬉しそうに言った。パーシーはコクンと頷くと、とりあえずとばかりに銀時たち4人を部屋へと案内した。

 

 

 

 

部屋に入るとまず、深紅のビロードのカーテンがかかった、四本柱の天蓋つきベッドが四つ置かれてあるのが見えた。

荷物は隅に置いてあった。

 

「私、銀ちゃんの隣が良いネ」

 

ハイハイと神楽が手を上げる。

そんな神楽に銀時は頭をガシガシと掻き好きにすればいいといった感じで神楽を下ろし、適当にベッドへと座った。

 

新八や土方もそれを見てベッドに座る。もちろん神楽は銀時の隣を取っていた。

 

 

 

 

 

 

「見て、見て」

 

「どこ?」

 

「ほら、あの赤毛ののっぽとメガネ掛け器の間」

 

「あー、あの地味なメガネ掛け器の隣のメガネかけてるやつ?」

 

「顔見た?」

 

「あの傷を見た?」

 

翌日ハリーたちが寮を出たとたん、ささやき声がつきまとってきた。教室が空くのを外で行列して待っている生徒たちが、つま先立ちでハリーを見ようとしたり、廊下ですれ違った後でわざわざ逆戻りしてきてジロジロ見たりした。

 

「オイオイ、何これ?まるで動物園のパンダ並みじゃねぇか」

 

「本当ヨ。あんなジロジロジロジロ見られたら食欲減るネ。銀ちゃん、あいつらちょっとしめてきてもいいアルか?」

 

「よし、行ってこい神楽」

 

銀時は周りの視線に眉を寄せ、神楽に向かってグッと親指を立てた。

 

「行ってこいじゃねェェエ!!確かに鬱陶しいのは分かりますけど、ダメですよ」

 

「「えぇぇ」」

 

新八の言葉に神楽と銀時は不服そうな声を上げる。そんな三人を見てハリーが申し訳なさそうな顔で言った。

 

「ごめんね。みんな、僕のせいでこんな注目されちゃって……」

 

ハリーはしょんぼりと顔を俯かせた。

そんなハリーに銀時はがしがしと頭を掻いた。

 

「あー、アレだわ。別にオメェのせいじゃねぇよ」

 

「そうアル!!ハリーは何にも悪くないネ」

 

「そうですよ。だから気にしないで下さい」

 

銀時、神楽、新八はハリーを元気づけるかのように口々に言った。

 

「そうだな、万事屋と同意見になるのはしゃくだが、お前は悪くねぇよ」

 

「うん。ハリー気にしないで」

 

三人に加勢するかのよう先ほどまで黙って様子を窺っていた、土方とロンも頷いた。

 

そんな5人をハリーは順番に見ると嬉しそうにコクンと頷いた。

 

「よし、じゃあ早く行きましょう。急がないと授業に遅刻しちゃいますよ」

 

新八が言うとハリーとロンと土方はハッとした顔になったのだが、銀時と神楽はふわぁっと能天気に欠伸をしていた。

 

 

 

 

 

5人は急いで授業のある教室に向かった。まぁ、銀時と神楽はマイペースだったが……。

 

教室に着くと、どうやらまだ先生は来てないようだった。ただ、何故か教卓の上に猫が一匹佇んでいた。

 

「セーフ」

 

ロンが安心したように言った。5人は席につこうと空いてる席を探そうとしたとき、突然猫が輝き始めた。そして、ゆっくりと人型をかたどっていく。

 

「全くセーフじゃありませんよ」

 

現れたのは、マクゴナガル先生だ。5人はポカーンと口をあける。

 

「変身術は、ホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出ていってもらいます!!そして、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます。私は遅刻は許しません。次はないように」

 

「は、はい」

 

マクゴナガル先生の淡々とした言葉に5人はコクリと頷いた。

 

 



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第13訓 朝食は大人しく食べましょう

 

 

さて、お次は生徒たちが一番待ち望んでいた授業だ。

 

ロンはみるからにワクワクとしていた。

 

「なぁ、ロン。なんでお前はそんなにワクワクしてるんだ」

 

銀時はチラッとロンを見ると聞いた。すると、ロンは何を言ってるのっといった感じに目を見開き興奮気味に言った。

 

「だって次の授業は闇の魔術の防衛術だよ!!どんな授業かほんと楽しみじゃないか」

 

ロンの言葉に銀時は首を傾げる。

確かに周りはワクワクしながら席に座って先生がくるのがまだか、まだかといった感じだ。

 

「確か、闇の魔術の防衛術の先生はクィレル先生でしたよね」

 

「「クィレル?」」

 

新八の言葉に神楽と銀時が首を傾げた。すると、新八の代わりに土方が簡単に説明した。

 

「クィレルって野郎はあれだ。歓迎会の時ダーバンを巻いてビクビクした弱々しい奴いただろ」

 

「あー、私覚えてるヨ。あの根暗っぽい先生の隣にいた奴アルな」

 

土方と神楽の言葉に銀時は思い出すように天井を見上げた。確かにいた。普通に見てると臆病でビクビクした感じなのに何故か時々感じられる狂気的な嫌なオーラを纏った人物だ。

何時もの銀時なら全く覚えてないのだが、その人物に全く似合わない狂気が引っかかり覚えていたのだ。

 

(土方は弱々しいって言ってるけど……弱々しい奴があんな狂気出せるのか。まるで、高杉みてぇな)

 

 

 

銀時はそう思い眉を寄せた。銀時がそんな風に考えていると周りがざわざわと騒がしくなった。

 

どうやら、先生が来たようである。

 

 

 

 

 

先生が来ると、生徒たちは期待に胸を膨らました。しかし、授業が進むにつれてその期待は無惨にも砕け散っていった。

 

何故ならクィレルは巻いているダーバンはやっかいなゾンビをやっつけたときにアフリカの王子様がお礼にくれたものだといったのだ。生徒たちは眉を寄せた、クィレルのダーバンはそんな高価な物に見えないからだ。

 

生徒の一人、シューマス・フィネガンが手を挙げてどうやってゾンビをやっつけたのかと質問すると、クィレルは赤くなって話をそらし、お天気について話しはじめたのだ。

 

 

 

そんなことをしてしまえば明らかに自分は嘘を付いてます!!と言っているようなものである。

その瞬間生徒たちは……

 

(あー、この先生ダメだ)

 

と思っていた。

 

しかし、銀時はそんなクィレルを気付かれないよう横目でチラチラ見ると何かに気付いたかのように突然見るのをやめ教科書に目線を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は金曜日、銀時たちはいつものように、大広間で朝食を食べていた。

 

「今日はなんの授業だっけ?」

 

オートミールに砂糖をかけながらハリーが呟いた。ちなみに銀時は周りが引くくらいたっぷり砂糖をかけている。

まぁ、その隣でもっとどん引きな黄色い物を食べている人物もいるのだが……

 

「確か、魔法薬学ですよ」

 

ハリーの問いかけに新八が時間割り表を見ながら言った。すると、ロンが途端に顔をしかめた。

 

「ん?どうしたの?ロン」

 

ハリーが気付いて尋ねると、ロンは顔をしかめたまま話始めた。

 

「だって、スリザリンと一緒の授業だよ!!しかも、スネイプはスリザリンの寮監だからいつもスリザリンをひいきするってみんな言ってる!!」

 

 

ロンの言葉を聞くと土方は眉を寄せた。

 

「ひいきって……教師あるまじき奴だな」

 

「ほんとでさァ、まるで土方さんみたいにウザイ奴ですねィ」

 

土方の後ろからもう一つ声が聞こえた。ハリーたちはハッとしてその声のした方向を見た。

そこに居たのは沖田だ。沖田は土方を椅子から蹴り落とすと嬉々として銀時の隣に座った。

 

「テメェ、総悟何しやがんだッ!!」

 

「ん?あれ?沖田くん」

 

「あっ、旦那おはようございまさァ」

 

怒鳴る土方を完全に無視して沖田は銀時に挨拶した。

 

そんな騒ぎに気付いたのだろう。

 

ガツガツと一心不乱にご飯を食べていた神楽が銀時に近づいた。

 

「サド、何しに来たネ!!ってか私の許可なく銀ちゃんに挨拶してんじゃねぇよッ!!」

 

「あ?なんで旦那に挨拶すんのにテメェの許可が必要なんだよ。クソチャイナがッ!!」

 

神楽と沖田は立ち上がり銀時の頭の上で火花を散らし合った。

 

「当たり前ネ!!銀ちゃんは、私の大切な家族ヨ。サドなんかと居たら教育に悪いネ」

 

「教育に悪いのは、お前だろ!!テメェこそ旦那から少しは離れたらどうでィ」

 

「んだとッ!!」

 

二人は銀時の頭の上でギャンギャンと言い合いをする。銀時は眉を寄せた、せっかく若返ったせいで糖尿病の心配がなく甘いものをたらふく食べれると言うのに……このままでは食べることに集中できないのだ。

 

「オイ、お前らいい加減にッ!?」

 

「銀ちゃんは黙ってるアル!!」

 

「旦那は黙ってて下せェ!!」

 

ガッシャンッ!!

銀時が怒ろうとすると二人は銀時の頭を思い切りテーブルへと叩きつけた。

銀時の頭が有り得ないくらいテーブルにめり込む。

 

「「ギントキィ!!」」

 

「銀さぁぁあん!!」

 

ハリーとロンと新八は叫んだ。

土方はもう我関せずといった感じにマヨネーズをすすっている。

 

新八は沖田と神楽の暴走にため息をついた。唯一二人の喧嘩を止めれそうな銀時がやられたのだ。

もはや、自分に出来ることはこれ以上被害が拡大しないよう祈るだけだ。そう思い新八がため息をつくと隣から笑い声がした。

 

「はっはっはっ、相変わらず銀時は子供に好かれるようだな」

 

そこに居たのは桂だった。桂はモグモグとオートミールを食べている。

 

「桂さん、いつからそこに!?……ってそれ僕の朝食なんですけど」

 

「いや、この朝食からエリとザべスな感じがしてな。食べちゃった、テヘッ」

 

桂は悪気もなくきっぱり言うと、舌をぺろっと出しコツンと頭を小突いた。なんだろう、めちゃくちゃムカつく。

 

新八は色々と突っ込みどころのある桂に眉を寄せた。そして、色々と不快だったのだろう……二本の指を立て桂の鼻に突っ込み投げた。新八の得意技鼻フックデストロイヤーである。

 

「テヘッじゃねェェエ!!」

 

桂は思い切り投げられ床へと顔面からスライディングした。

当たりにズザザザッと擦れる音が響く。

そして、ドカッと何かにぶつかった音がして止まった。

 

「新八君何するッ!?」

 

「何するはこっちの台詞ネ」

 

「桂ァ、良い度胸じゃねぇか」

 

桂は、新八に文句を言おうとするも固まった。そう、神楽と沖田が恐ろしい目で自分を見ていたからだ。

 

どうやら、さっきのドカッという音は喧嘩していた二人にぶつかった音のようである。

桂はサァッと顔を青ざめた。

 

「ふ、二人とも落ち着け、落ち着くんだ。ほら、このエリザベス人形をあげるから」

 

桂は二人を落ち着かせようとどこから取り出したのかエリザベスのぬいぐるみを取り出した。そのぬいぐるみは抱いて寝ているのだろう、よだれがべっとりついていて汚かった。

沖田と神楽は顔を見合わせた。そして……

 

「ギャァァァァアア!!」

 

周りの生徒が怯える中、桂の悲鳴が大広間に響いた。

 

 



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第14訓 教師苛めはほどほどに

 

 

さて、沖田と神楽が桂をボコ殴りしている頃。

ハリーに向かってフクロウが飛んできた。フクロウはヘドウィグだ。ヘドウィグはポトンとくわえていた紙をハリーの目の前に落とす。

どうやら、その紙は手紙のようだ。表にお世辞にも綺麗とは言えない字でハリーの名前が書かれていた。

 

「何?手紙?……ハグリッドからだ」

 

ハリーは裏返し差出人の名前を見て呟くといそいそと手紙を開き始めた。

 

―――――――――

 

親愛なるハリー

 

 

金曜日は午後しか授業がないはずだね。どうだろう、もしよかったら銀時たちを連れて三時頃にお茶に来ませんか?

 

君たちのこの一週間がどんなだったか聞きたいです。

 

返事はヘドウィグに持たせてください。

 

ハグリッド

 

―――――――――

 

ハリーは手紙の内容を読むとチラッと新八を見た。新八はハリーの視線にコクンと頷く。

 

ハリーはそれを見ると手紙の下に『はい、喜んで』と書いてヘドウィグに渡した。

すると、ヘドウィグは手紙をくわえ飛んでいった。

 

 

 

 

 

魔法薬学の授業は地下牢で行われた。地下のせいか、他の教室より寒く、壁にはずらりとガラス瓶に入ったアルコール漬けの動物がプカプカしていた。

 

「うわっ、趣味わりぃ」

 

その壁の動物たちを見て銀時がボソッと呟いたのはご愛嬌だ。

 

まず、スネイプは教室に入ると出席を取った。

 

そして、ハリーの名前まできてちょっと止まった。

 

「あぁ、さよう。ハリー・ポッター。われらが新しい――スターだね」

 

 

ドラコ・マルフォイとその仲間のブタ二匹はクスクスと冷やかし笑いをした。

 

それをチラッと銀時たちは見て眉を寄せる。

出席を取り終わると、スネイプは生徒たちを見渡した。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」

 

スネイプが呟くように言った。銀魂メンバー以外の生徒たちはじっとスネイプを見つめる。

 

「このクラスでは瓶を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う生徒もいるかもしれんが……フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち登る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……まぁ、諸君がこの見事さを真に理解するとは期待してないがな」

 

 

スネイプの言葉に生徒たちはポカーンと口を開けた。銀時はふわぁっと欠伸をした。

 

スネイプは突然叫んだ。

 

「ポッター!!」

 

ハリーはビクッとしてスネイプを見上げる。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

ハリーは目を真ん丸くして、ロンと新八を見た。しかし、二人は分からないと言った感じだ。

空気の読めないハーマイオニーが空中に高々と手を挙げた。

 

「わかりません」

 

ハリーは首を振って答える。

 

スネイプは口元をにやつかせた。

 

「チッ、チッ、チ――有名なだけではダメらしい」

 

当たり前かのように、ハーマイオニーの手は無視された。

 

「ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたらどこを探すかね」

 

やはり空気の読めないハーマイオニーが思い切り手を高くあげた。

マルフォイとブタ二匹は身をよじって笑っている。この3人もハリーと同様に質問の答えが分からないくせに良い度胸である。

 

「わかりません」

 

「クラスに来る前に教科書を開いて見ようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?」

 

スネイプの言葉に限界が来たのだろう神楽がガタンと立ち上がった。

 

「先生!!酷いアル!!教科書開いた瞬間寝る体質だったらどうするアルか!!」

 

神楽の言葉にスネイプが眉を寄せた。

 

「君は、カグラだったな。今は我輩がしゃべっていいと言ったか?」

 

スネイプは腕を組むと神楽に向かってそれはもう偉そうに言った。

神楽の額に青筋が浮かぶ。神楽がスネイプにくってかかろうとした時、銀時がそれを止めた。

 

「神楽、止めとけ」

 

「銀ちゃん……分かったアル」

 

銀時が言うと神楽はしぶしぶといった感じに椅子についた。

 

「ふむ、グリフィンドールにも少しは身の程をわきまえる奴がいるようだな」

 

スネイプが言うと銀時は沖田と一瞬目を合わせてニタリと笑った。

 

「えぇ、分かってますよ。お宅がキャラ立ちに必死だってことに」

 

銀時の言葉にスネイプはピクッと眉を寄せる。

すると、沖田も銀時に合わせるように言った。

 

「あっ、やっぱそうだったんですねィ。おかしいと思いやした。教科書を読めば分かるなんて……教科書さえあれば自分がいらないって言ってるようなもんですし」

 

沖田はニタニタと笑って言った。スネイプの眉間にシワが刻まれた。

 

「な!?お前たち二人はサカタとオキタだったな、グリフィンドールにスリザリン減て」

 

スネイプが怒ったように言うが、その台詞を銀時が遮った。

 

「オイオイ、スネイプ先生がなんか言ったよ、げんて……続きなんだろうね?総一郎くん」

 

「旦那、総悟でさァ。さぁ、なんですかねィ。げんて……まぁ、一番有り得ないのは減点ですね」

 

「そうだよな、ここで減点なんてしたら自分が必要ないって認めたも同意語だしよォ。まさかスネイプ先生が減点なんて……しませんよね?」

 

「旦那ァ、失礼なこと言っちゃあダメですぜィ。そんなことするわけないじゃねぇですか」

 

銀時と沖田はスネイプをじっと見つめた、そしてニヤリと笑う。スネイプは口の端をひくつかせる。

周りの生徒も二人のその笑いを見て少し顔を青ざめた。

 

見えたのだ。銀時と沖田に悪魔の羽と尻尾がついてるのを……

 

スネイプは悔しそうにそのまま口を閉じた。

授業中に私語をしたからと言って減点にしても良かったのだが……分かったのだ。そんなことをしてもあの悪魔二匹にはかないそうにないことを……

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法薬学の授業が終わるとグリフィンドール生から歓声が沸き起こった。

あのあともスネイプはハリーに対して嫌がらせをしようとするも、銀時と沖田のドSコンビにズタボロにされて出来なかったのだ。

 

ちなみに授業が終わるとスネイプは素早く教室から出ていった。

 

 

「あの、ギントキ、オキタありがとう」

 

ハリーは立ち上がると二人に礼を言った。

しかし、二人は別に何もやってないといった感じで礼を受け取らなかった。

 

 

 

 

 

さて、授業が終わると銀時たちは城を出て校庭を横切って歩いていた。

禁じられた森の端にある小屋、ハグリッドの住処に向かっているのだ。

小屋に着くとハリーがドアをノックした。

 

ノックをすると、中から戸をガリガリと引っ掻く音と、唸るようなほえ声が何回か聞こえた。

 

「退がれ。ファング、退がれ」

 

ハグリッドの声が聞こえる。どうやら戸の近くにいる何かを退がらせているようだ。

しばらくすると戸が少し開いて、隙間からハグリッドの顔が現れた。

 

「待て、待て、退がれ。ファング」

 

ハグリッドは巨大な黒い犬の首輪を押さえて、銀時たちを招き入れた。

ちなみに動物好きな神楽と桂は犬を見るとキラキラと瞳を輝かせた。

 

中に入るとハグリッドはファングを離し椅子に座るように促す。

ファングはハグリッドから離されるとロンへと飛びついて顔をなめ始めた。どうやらめちゃくちゃ懐いてるようだ。

 

神楽と桂はその様子を見て羨ましそうにしている。

 

「えっと、ハグリッド紹介するよ。ロンだよ」

 

この中で唯一ハグリッドと初対面なロンをハリーは紹介した。

ハグリッドはロックケーキを人数分切って皿に乗せる。新八は雑用根性が身についているのか、ティーポットに熱いお湯を注いでお茶の準備をしている。

 

「ウィーズリー家の子かい?」

 

ロンのそばかすと赤髪を見ながらハグリッドは言った。

 

「いやはや、お前さんの双子の兄貴たちを森から追っ払うのに、俺の人生の半分を費やしてるようなもんだ」

 

ハグリッドがため息をつくとロンは苦笑いを浮かべる。

すると、銀時が歯が折れる並みに固いロックケーキと格闘しているのを見ていた沖田が口を開いた。

 

「人生の半分……ってことはそんなにその森は楽しいんですかィ?」

 

「楽しい?馬鹿を言ったら駄目だ。あの森はとても危険なんだ」

 

ハグリッドの言葉に沖田は面白そうにニンマリと笑った。

この時、ハグリッドの残り半分の人生は沖田を森から追っ払うことに費やされることが決定した。

 

そこからハリーたちは色々と話した。ロックケーキとの格闘を終えた銀時はその話を聞きながらふと、ティーポットの下に紙切れが挟まってるのを見つけた。

 

(なんだ?)

 

銀時は手を伸ばして紙切れを取った。その紙切れはどうやら新聞の切り抜きのようだった。

 

(ふぅーん、グリンゴッツって所で泥棒ねぇ)

 

銀時が切り抜きを読んでいると、土方が懐からマヨネーズを出してロックケーキにかけながら聞いてきた。

 

「万事屋、さっきから何見てんだ?」

 

「あ?なんかグリンゴッツって所に泥棒が入ったって記事」

 

銀時が言うとハリーがピクッと反応をした。そして、銀時の横からその記事を読んでハグリッドをじっと見つめた。

 

「ハグリッド!!グリンゴッツに侵入があったのは僕の誕生日だ!!僕たちがあそこにいる間に起きたのかもしれないよ!!」

 

ハリーが言うとハグリッドは目をそらした。そんなハグリッドの様子に怪しいなと思い、銀時たちはじっとハグリッドを見つめる。

ハグリッドはその視線に耐えきれないのか慌てながら銀時たちにロックケーキをすすめた。

 

(怪しい、絶対に怪しい)

 

ハグリッドを見ていた銀時たちは心の中でそう思っていた。

 

 



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第15訓 空を飛びたい

 

 

ハグリッドの小屋から帰ってきた銀時たちは、とりあえず沖田、桂と別れてグリフィンドールの寮へと向かった。

 

グリフィンドールの談話室に入ると何故か1年生たちが、掲示板へと群がっていた。

 

「なんだ?」

 

「どうやら、掲示板にお知らせがあるみたいですね」

 

銀時が首を傾げると新八が周りの様子を見て言った。

銀時たちは1年生の集団をかき分けて掲示板のお知らせを読んだ。

 

――――飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業です――――

 

1年生のみんなは、スリザリンと一緒だと分かってもがっくりとしなかった。

 

例の魔法薬学の授業を行うまで自慢話と人を馬鹿にしてばかりのスリザリンと一緒なんて嫌だと思っていたグリフィンドール生。

しかし、スネイプがズタボロにされた時からスリザリン生がとても大人しくなったので、グリフィンドールにとってはスリザリンと一緒だろうがどうでもいいのだ。

 

 

 

 

 

木曜日の朝食の時、グリフィンドールのテーブルにメンフクロウがやってきた。どうやらネビルに何かを届けにきたようだ。

ネビルはめんふくろうから小さな包みを受け取るとワクワク、ウキウキしながら開けた。

中に入っていたのは、ビー玉ぐらいの大きさのガラス玉である。何故か中に白い煙が詰まっているように見える。

 

「あっ、これ『思い出し玉』だ!!」

 

「何アルか?」

 

ネビルの言葉に神楽は首を傾げて聞いた。銀時たちは、ネビルの持つガラス玉をじっと見つめた。

 

「これはね、何か忘れてることがあると教えてくれるんだ。見てて、こうやってギュッと握るんだよ。もしも赤くなったら……あれれ?」

 

「赤くなりましたね」

 

「おお、真っ赤でピカピカネ」

 

ネビルは玉を見て首を傾げ、新八は淡々と言い、神楽は興味津々にキラキラ瞳を輝かせた。

 

「で?赤くなるとどうなるんだ?」

 

朝食のドリンクとして出てきたイチゴ牛乳を飲みながら銀時は首を傾げてるネビルに聞いた。

ネビルは真っ赤に光った思い出し玉を見ながら口を開く。

 

「うん……赤くなったら何かを忘れてるってことなんだけど……」

 

「何を忘れてるのか分かんねぇってとこか」

 

土方がコーヒーにマヨネーズをふんだんに入れながら言った。

そんな土方の言葉にネビルはコクンと頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、銀時たちはグリフィンドール生と一緒に校庭へと出ていた。

 

校庭にはすでにスリザリン生が到着しており、何十本の箒が地面に並べられていた。

 

「おお、箒で飛ぶなんて魔○宅になれるアルな」

 

神楽はキラキラと瞳を輝かせた。

 

 

 

 

しばらくすると飛行訓練担当の先生が来た。マダム・フーチである。マダム・フーチは白髪を短く切り、鋭くつり上がった鷹のような黄色い目をしていた。

 

「さぁさぁ、みんな箒のそばに立って」

 

マダム・フーチに言われて生徒たちは箒の隣に立った。場所は決まってないので、沖田は銀時の隣に立っている。ちなみにその反対側は神楽だ。

 

「では、箒の上に手を突き出して」

 

マダム・フーチが言うといそいそと生徒は自分の利き手の突き出した。

 

「そして、『上がれ!!』と言う」

 

生徒たちは先生の言ったように叫んだ。

 

ハリーの箒はすぐに飛び上がってハリーの手に収まった。銀時の箒もきちんと上がって銀時の手に収まったのだが、向かいにいた桂の箒が何故か真っ直ぐ銀時の股関に飛んできてぶつかった。

 

「む?箒の瞬間移動か?」

 

「瞬間移動じゃねぇよォォオ!!桂さん何やってるんですか!!」

 

あまりの出来事に新八が叫んだ。

銀時は股関を押さえたまま悶絶中だ。

それを見ていた男子生徒は青ざめている。

 

「ギ、ギントキ……その大丈夫?」

 

ハリーが近付いてきて恐る恐る銀時に尋ねた。

銀時は痛そうに涙目で首を振った。

 

「無理。なんか上あがってる。ちょっと悪いけど優しく腰叩いてくれない?トントンって」

 

「分かりやした」

 

「分かったアル」

 

銀時の言葉に応えたのは、沖田と神楽だ。沖田と神楽はふぅっと息をはき、呼吸を整えると自分の箒をゆっくりと上げた。

 

「オイオイ、なんでそんなあげるわけ?優しくだよ、優しく」

 

銀時は逃げ腰になるもまだ痛いため逃げられない。

 

「ホワチャァァア!!」

 

「うりゃァァァア!!」

 

神楽と沖田は勢い良く銀時の腰、目掛けて箒を振り下ろした。

ドゴォオオンッ!!とけたたましい音が辺りに響く。

 

周りに舞った土煙が晴れると、沖田と神楽は同時に舌打ちをした。

銀時が痛みを我慢してギリギリ避けたのだ。銀時の避ける前の場所には二つの箒が突き刺さっており、そこを中心に地面にヒビが入っていた。

 

「オィィイ!!お前ら銀さんを殺す気ィィイ!!」

 

銀時は地面に尻を付き青ざめて叫んだ。

 

 

 

 

さて、色々あったが、とうとう空を飛ぶ所まで授業が進んだ。っというか、マダム・フーチは騒ぎを気にせず授業を進めていたのだ。

あまり気にしないタイプなのだろう。地面にヒビが入った時も

 

「まったく今年の新入生はやんちゃで困ったものです」

 

っと呟いていたくらいだ。

ちなみにそれを聞いた生徒は目を見開いて驚いていた。

 

「さぁ、みんな箒にまたがりましたね。では、私が笛を吹いたら地面を蹴って下さい。二メートルぐらい浮上したら、前屈みになって降りてくること……では、一、二の――」

 

笛を吹く前にネビルの箒が宙に浮かんだ。

どうやら、ネビルは1人だけ地上に置いてきぼりを食らいたくなく、笛を吹く前に思い切り地面を蹴ってしまったようだ。

 

「こら、戻ってきなさい!!」

 

先生が叫ぶ。するとネビルはビクッとしたのだろうもうスピードで何故か銀時たちのほうへと向かってきた。

 

「ギャァァア!!なんでこっちに!!」

 

新八が叫ぶ。その間に銀時と沖田は即座に向かってくる箒から逃げる。ドSであればあるほど色んな意味で打たれ弱いのである。

 

「うわぁぁあん。止まらないよ、ギントキ助けてェェエ」

 

ネビルは泣きながら同じグリフィンドール生の銀時に助けを求める。しかし、銀時はそれどころではない。だってさらに加速して銀時と沖田に突っ込んでくるんだもの。

 

「ネビルゥゥウ!!止まれェェエ!!」

 

「ちょ、なんで旦那だけじゃなく俺まで、早く止まりやがれ!!」

 

銀時と沖田は叫ぶも、ネビルの箒は加速する一方だ。

 

そして……

 

ドグシャッ!!と何かが潰れる音がした。

どうやら三人は見事ぶつかったようである。

 

先生と生徒たちは慌てて三人の元へと向かった。

三人は、目を回して倒れていた。どうやら銀時、沖田はともかくネビルは意外と丈夫だったらしく大きな怪我はないようだ。

 

「とりあえず、この子たちを医務室に連れて行きます。誰か手伝ってくれませんか?」

 

「銀ちゃんは私が連れて行くネ」

 

「総悟は俺に任せとけ」

 

「では、俺がネビルくんを連れて行こう」

 

神楽、土方、桂はそれぞれ持ち上げた。

何故か三人とも姫だっこで持ち上げるので後で恥ずかしい思いをするだろう。特に神楽といえど女の子に持ち上げられた銀時が

 

「では、私たちが医務室に行っている間誰も動いてはいけません。もし、動いたら、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出てもらいますからね」

 

マダム・フーチはそう生徒たちに言うと神楽たちを連れて医務室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

銀時はふわふわとした布団に包まれて目を覚ました。近くには心配そうにこちらを見つめる神楽がいる。

 

「あ?神楽?」

 

「銀ちゃん!!目覚ましたアルか!!良かったネ」

 

銀時が神楽の名前を呼ぶと神楽は嬉しそうに言った。

 

「あらまぁ、目を覚ましたの?痛いところは?気持ち悪くない?」

 

白衣を羽織った先生が聞いてきた。銀時は首を振る。すると、白衣を羽織った先生は他に寝ている生徒の方へと向かった。

 

「神楽、ここは?」

 

「医務室アル」

 

神楽の言葉に銀時は少し眉を寄せた。

そして、思い出すように頭に手を当てた。

 

(あー、そうか。ネビルの野郎がぶつかってきたんだっけ)

 

 

 

銀時は、自分が何故ここに居るのか思い出すとため息をつき、周りを見た。

医務室は思った以上に広く、ベッドが並んでおり、部屋の隅には沢山の薬の入った棚やツボなんかが置かれていた。

並んだベッドの内、銀時の寝ていたベッドを除いて2つまだ使われているようだ。

 

「あいつら、まだ起きてねぇのか?」

 

「サドは軟弱だからナ。ネビルは見ての通りヨ」

 

神楽は沖田を馬鹿にするよう鼻で笑った。そんな神楽に銀時は微かに笑う。

 

「おおー、銀時。起きたようだな」

 

神楽と銀時の会話に気付いたのか、医務室の先生に聞いたのか、とりあえず馬鹿が現れた。

 

「馬鹿じゃない、ヅラだ!!いや、間違えた桂だ!!」

 

突然叫ぶ桂。そんな桂を見て、神楽と銀時は不審者を見るような目で桂を見つめた。

 

「銀ちゃん、あれ何アルか?」

 

「神楽!!駄目だ、見たら馬鹿が移るぞ」

 

銀時はおもむろに桂と神楽の距離を離させた。

 

その時である。外から生徒たちの歓声が聞こえたような気がした。

 

(あれ?さっきなんか……)

 

銀時は不思議そうにするも、どうやら、銀時以外の医務室の中にいる人たちには聞こえてないようである。

 

(気のせいか?)

 

銀時はそう思いベッドへと再度横になった。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃新八は……

 

「ど、ど、どうしよう。ハリー君がマクゴナガル先生に連れて行かれちゃった」

 

なにやら、不安を抱いてたようだ。

 

 



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第16訓 聞くは一時の恥、聞かぬは……

 

 

沖田が目を覚ますと銀時たちは医務室をあとにした。ちなみに、ネビルも起きたのだが、今日は大事をとって医務室に泊まるらしい。

 

「それにしても、酷い目にあったわ」

 

銀時はコキコキと首をならしながら夕食を食べに大広間まで向かう。

 

「本当でさァ、これは後で八つ当たりしに行かなきゃいけやせんねィ」

 

沖田の言葉に土方は眉を寄せた。一体誰に理不尽な八つ当たりをするのだろうかっと疑問に思ったのだろう。

しかし、土方は聞かなかった。聞いたら最後八つ当たりのターゲット決定である。

 

「それにしても、なんか騒がしくねぇ?」

 

銀時は歩きながら首を傾げる。生徒たちがいつもより騒がしいのだ。時折、ハリーの名前が聞こえるような気がする。

 

銀時たちは、不思議に思うも本人に聞けばいいかっと思い大広間へと入っていった。

 

 

 

 

 

「あっ、銀さん!!それに沖田さんも、良かった。無事だったんですね」

 

銀時の姿を見つけた新八が安心した様子で駆け寄ってきた。

銀時たちはコクンっと頷き、周りの騒がしい理由について何かを知ってるか聞いてみた。

 

「なぁ、新八……なんでこんな騒がしいか知ってるか?」

 

銀時の言葉に新八は口元に手を当て、何かを考えるような素振りをした。そして、分かったのかコクンっと頷き口を開いた。

 

「あぁ、これは多分。ハリー君がシーカーに選ばれたからですよ」

 

 

「「「「「シーカー?」」」」」

 

(((((何それ?)))))

 

五人の言葉と心がシンクロした。

しかし、新八が知ってることを聞くのはなんか勘にさわる。

銀時は、ゴホンっと咳払いをした。

 

「あー、シーカーな。シーカー……はいはい。あの暑い島国にある獣の置物の」

 

「銀さん、それシーサーです」

 

新八は銀時の言葉にきっぱりと言った。

沖田が何かを思いついたのか前に出た。

 

「旦那。あれですぜィ。ほら、よく売ってるじゃないですかィ……サラダの前についてる」

 

「沖田さん、それシーザーサラダのことですか!?」

 

またもや新八にはっきりと言われた。

 

「ふふふ、銀ちゃんもサドもダメアルナ。こういうのは私に任せるネ。金曜ロー○ショーで鍛えた、この私に!!」

 

「あっ、神楽ちゃん。ラ○ュタのヒロインはシーターだからね」

 

神楽は自信満々で出るとまたもや新八がきっぱり言った。

 

「…………ホワチャァ!!」

 

「ぐはっ!!」

 

新八の言葉を聞きしばらくの沈黙のあと、神楽は思い切り新八を殴った。

ある程度殴り終えると電波……桂が前に出てきた。

 

「全く、リーダーに新八くん落ち着くんだ。あれだろう?白い身体にパッチリおめめ、黄色いクチバシが特徴のエリ」

 

「「「ただのエリザベスじゃねぇかァァァアアア!!」」」

 

「ギャァァァアアア!!!!」

 

銀時、沖田、神楽の三人は台詞をハモらせ桂をリンチし始めた。

 

そんな四人を見て新八はため息をつく。そして、自分だけでは突っ込みきれないと思い土方に声をかけた。

 

「はぁ、土方さん。土方さんも何か言ってやってください」

 

「え?」

 

新八の言葉に土方は驚いた。そして、困ったように眉を寄せる。

 

「あー、テメェ等落ち着け!!それにシーカーってのはあれだ……ク、クリスマスにソリをひいてやってくる」

 

少し頬を染め一生懸命言う土方。

そんな土方を見た三人は桂をリンチするのをやめ、きっぱり言った。

 

「とりあえず腹も減ったし飯食いながら話すか」

 

「そうアルナ」

 

「今日のご飯は何ですかねィ」

 

三人はスタスタと夕食を取るためテーブルに向かった。

新八はチラチラと土方を見ると、申し訳なさそうに言った。

 

「あの、土方さん。むちゃぶりしちゃってごめんなさい。えっと……それじゃあ」

 

パタパタと銀時たちのもとへ向かう新八の背中を見ながら土方は目から雫がこぼれそうになるのを耐えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時たちは、テーブルに着きモグモグと夕飯を食べながらシーカーについて聞いた。

 

「なるほど、つまりそのクィドッチってスポーツのポジション的な感じか」

 

「銀さん、クィディッチです」

 

銀時の言葉を訂正する新八。

 

神楽は話半分で聞いており、沖田は八つ当たりの相手を見つけるのに忙しい。

桂は普段通り電波を発し、土方はまださっきのショックが残っているのかボォーとし料理にブチュブチュっと大量にマヨネーズをかけている。

 

「なんか、凄いらしいですよ。普通一年生はダメらしくて最年少とか」

 

「あっ、神楽。そのケーキは俺のだぞ」

 

「知らないネ。取ったもん勝ちッッッ!?」

 

新八の言葉を聞いているのかいないのか、銀時は神楽にケーキに手を出さないように言う。

しかし、神楽は気にせずケーキを口に頬張り顔を真っ赤にした。

 

「ゲホッ、ゴホッな、からっ、からっ」

 

神楽はせき込むと近くにあったドリンクを飲み干した。

 

よくよく見てみるとケーキに赤い液体が大量にかけられている。きっとタバスコだろう。

 

「テメェ、サド殺すッ!!」

 

「証拠もないのに俺のせいですかィ。チャイナは失礼だねィ」

 

「うるさいネ。こんなことやるのお前くらいしか居ないアル」

 

神楽はキッと沖田を睨みつけた。沖田は痛くもかゆくもないといった感じにニヤリと笑う。

 

「あの、僕の説明聞いて……」

 

新八が尋ねようとするも、それを遮り銀時が眉を寄せて言った。

 

「オイオイ、沖田くん。ケーキにタバスコとか俺が食べたらどうしてくれるわけ?」

 

「侵害でさァ、旦那。そんな失敗するほど俺は馬鹿じゃないですぜィ」

 

銀時の言葉に沖田はニタリと笑う。

神楽は、沖田をキッと睨みつける。

 

「やっぱ、テメェじゃねぇかッ!!」

 

「当たり前だろ。馬鹿じゃねぇか」

 

沖田は神楽に向かって馬鹿にするように鼻で笑う。

神楽は、額に青筋を浮かべた。

 

「上等ネェェエ!!泣かせてやるヨ」

 

そして、叫ぶと沖田に向かって飛びかかった。

 

「話……聞いてないですね、うん」

 

そんな騒がしい二人の様子を見て新八はため息をついた。

 

「そういやよォ、ハリーたち居なくねぇ?」

 

銀時はモグモグと他のテーブルから取ってきたケーキを頬張り小さく呟いた。

 

 

 



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第17訓 こ、怖くなんてねぇし!!なめんなコノヤロー

 

 

その日の夜、銀時はキャンキャンと叫ぶ声で目を覚ました。

 

隣には、神楽がグーガーといびきをかいて寝ており、その隣にはお通ちゃんなんて寝言を呟きながら新八が寝ている。

 

「……」

 

銀時は、目をこすりながらベッドから出て声のした方を見に行く。

 

銀時が見に行くと、ちょうどロン、ハリー、ハーマイオニーが肖像画を押し開け穴から出て行くところだった。

 

銀時はボォーとしてそれを見送る。

 

(あれ?あいつら)

 

「どこ行くんだ?」

 

「ッッ!?!?」

 

銀時は、突然後ろから聞こえた声に叫びそうになるもなんとか耐え恐る恐る後ろを見た。

 

いたのは欠伸をしている土方だった。

銀時は土方を見ると眉を寄せる。

 

 

「オイオイ、突然後ろから声かけんじゃねぇよ!!びっくりすんだろ」

 

土方は少し眉を寄せる。

 

「んだよ、その顔。びっくりだぞ!!別にびびったわけじゃねぇからな、びっくりだからな!!」

 

銀時は念を押すように何度も言った。

すると、土方は眉を寄せたまま三人が出て行った肖像画を見つめる。

 

「別にそんなこと言ってないだろ。それよりあいつらいいのか?」

 

「あ?いいって」

 

銀時は土方の言葉に眉を寄せる。

 

「いや……それが今日の夕食の時」

 

どうやらマルフォイがハリーたちを罠にかけたらしい。

 

「オイオイ、それヤバいんじゃねぇか?……まぁ、すぐに言いに行けば間に合うか」

 

銀時はそう言うと肖像画を押し穴の外をちら見してすぐに帰ってきた。

 

「万事屋?」

 

土方は眉を寄せて銀時を見た。銀時はウロウロと視線を動かす。

 

「よくよく考えたら土方くんが聞いたんだし、土方くんが説明すべきだろ」

 

銀時の言葉に少し眉を寄せると土方は仕方なさげに肖像画を押して穴の外をちら見すると帰ってきた。

 

「いやいや、ここは出てきた所を見つけた万事屋が行くところだろ」

 

「いやいや、土方くんが」

 

「いやいやいや、万事屋が」

 

2人は言い合う。どうやら穴の外はとても薄暗く不気味で怖かったようだ。

 

しばらく2人は言い合うと、ぜぇぜぇと息を吐いた。

 

「お、思ったんだけどよォ」

 

「なんだよ」

 

「2人で捜すなんて非合理的だろ」

 

「……なるほど」

 

銀時の言葉に土方は呟く。相手が何を言いたいのか分かったのだ。

二人は頷くと自分たちの部屋に戻った。

 

「神楽ちゃぁぁあん!!起きて、銀さんのお願いィィイ!!」

 

「眼鏡起きろ、ちょっと大変なことが起きた」

 

銀時と土方は、必死に神楽と新八を起こし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗なホグワーツ魔法学校内を四つの人影がゆっくりと歩いていた。

 

「ふわぁ、全く……寝不足はレディの大敵アルヨ」

 

「本当ですよ……こんな遅くに」

 

歩きながら欠伸をし、神楽と新八は口々に言った。

 

そんな二人に銀時と土方は反発する。

 

「何言ってんだ。ハリーたちのピンチだぞ!!」

 

「万事屋の言うとおりだ。助けてやるのが優しさってもんだろ!!」

 

きっぱり言う二人だが、土方は新八、銀時は神楽にしがみついてるので情けなかった。

 

「まぁ、確かにハリー君たちは心配だからいいですけど……土方さん。そんなしがみつくと歩き難いです」

 

新八の言葉に銀時はクスクス笑う。

 

「あっはは、土方くん。言われてやんの!!歩き難いくらいしがみつくとか、土方くんは怖がりだな」

 

「あ?別に怖くねぇよ!!これはアレだ……あー、あらゆる災害から眼鏡を守ってんだよ!!」

 

土方は新八を離さないまま言うと銀時を見て眉を寄せた。

 

「万事屋、テメェこそそんなチャイナ娘にしがみついて……ププッ、男が女にしがみつくとか情けな」

 

土方は片手を口にあてクスクス笑った。銀時は眉を寄せる。

 

「オイオイ、何言ってるわけ?これはアレだ。あらゆる障害物から神楽を守ってやってるだけですぅ」

 

銀時は少し語尾を伸ばして言った。そして、新八をガシッと掴むと引っ張った。

 

「ってか新八なら銀さんが護るから土方くんはいりません」

 

「あ?ふざけんなよ。眼鏡を守るのは俺だ!!」

 

土方は銀時と反対側に新八を引っ張る。

 

「いや、俺が!!」

 

「いやいや、俺が!!」

 

「ちょっ……いだっ、いだだ、裂ける!!裂けるゥゥウ!!」

 

渾身の力を込めて引っ張る二人、新八の身体はメキメキと悲鳴をあげ始めた。

 

「おおー、裂けるアルか?新八裂けるアルか?」

 

神楽は、キラキラと瞳を輝かせた。

 

「裂けてたまるかァァア!!あんたら二人もいい加減に」

 

新八が騒ぐ。そこに怒鳴るような声が聞こえた。

 

「そこで騒いでるのは誰だ!!」

 

フィルチがやってきたようだ。

まぁ、仕方ない……まるで見つけてくれっと言わんばかりに騒いでいたのだから

 

「いだっ、ヤバい。ヤバいです!!見つかいだだっいい加減離せやァァァアア!!」

 

新八は叫ぶも二人は離そうとしない。それどころか、言い合いを始めた。

 

「おい、いい加減離してやれよ。土方くん」

 

「テメェが先に離せや」

 

二人はグイグイと引っ張り続ける。

 

フィルチはそんな四人に近付いた。

 

「さぁ、誰だ。四人もか……すぐに捕まえて退学だ」

 

フィルチは四人の影を見つけると明かりで相手の顔を照らそうとした。

しかし、それは出来なかった。

 

「「うるせェェエ!!勝負の邪魔だァァァアア!!」」

 

「「ギャァァァアアア!!」」

 

なんと土方と銀時は引っ張っていた新八を思い切りフィルチにぶつけたのだ。

夜のホグワーツ魔法学校内に新八とフィルチの叫び声が響いた。

 

二人は、新八を投げてハッとした。

すると、神楽が明かりで照らしながら言う。

 

「新八と見たことあるオッサンが気絶してるネ」



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第18訓 隠せ、隠せ。そして証拠隠滅だ

 

 

ハリーたちは、グリフィンドールの寮へと急いでいた。

頭に浮かぶのは先ほど見た怪獣のような犬の目。

そう、銀時たちが色々やらかしてる間にハリーたちも色々やらかしていた。

 

実はフィルチに見つかり逃げてる時に、あの立ち入り禁止と言われた『禁じられた廊下』に入ってしまったのだ。

 

そして、そこで犬を見た。ただの犬ではない!!

 

床から天井までの空間全部が埋まってしまうほどの大きさ。頭が三つ。血走ったギラギラした目。三つの鼻をそれぞれの方向にヒクヒクさせている。

そして三つの口から黄色く鋭い牙をむきだしにし、間からヌメヌメした触りたくないよだれをだらしている。

 

ハリーたちを目に移すと、グァっと口をあけ雷のようなうなり声をあげた。

 

もちろんハリーたちが速攻逃げたのは言うまでもない。

 

グリフィンドールの寮へと向かう途中、ハリーは止まると小さく声をあげた。

 

「止まって!!誰かいる」

 

ハリーが言うとロン、ハーマイオニー、そしていつの間にいたのかネビルが足を止めた。

 

ハリーたちは息を潜め見つからないように隠れ、様子を窺った。

 

耳を済ませば何かを話しているのかボソボソと声が聞こえる。

 

 

 

 

 

フィルチをノックアウトさせた後銀時たちはどうしようか考えていた。

 

「おい、万事屋。これどうすんだ?」

 

「銀ちゃん、とりあえず起きる気配ないアルヨ」

 

土方と神楽に言われて銀時は考えた。新八はじきに起きるとして問題はフィルチだ。

 

このまま放置して行ってもいいように感じるが、明日犯人探しなんぞされたら迷惑極まりない。

 

「とりあえず、俺達がやったとバレないほうがいいよな」

 

銀時は呟くと、土方に視線を移した。

土方はコクンっと頷く。

 

「ってかよォ。話し中?に割り込んでくるコイツが悪くねぇ?」

 

「確かにな。話し中に割り込んできたKYさが事件の発端だからな」

 

銀時の言葉に土方が頷く。どうやら、二人に巻き込んだことへの罪悪感など一つもない。

 

新八が起きていたら色々と突っ込んでいるだろう。

 

「KY事故アルか……確かに事故なら銀ちゃんやトッシーが責任負うと可笑しいネ!!」

 

神楽がしみじみと呟く。

すると、銀時がフィルチをじっと見つめニタリと笑った。

 

「よし、証拠隠滅するか」

 

 

 

 

 

銀時たちの証拠隠滅が始まった。まずは犯人に一番繋がりやすい指紋である。

 

「万事屋、指紋つっても俺達はこいつに触れてねぇぞ」

 

「あっ、じゃあ指紋なんてついてないアルな」

 

土方と神楽の言葉に銀時は指を立てて軽く振った。

 

「二人とも甘いな。確かに俺達は触れてないが凶器(新八)が触れてるだろう?」

 

「あっ……」

 

「お、おい。万事屋。それじゃあ指紋ってのは……」

 

神楽が驚き、口元に手をあてた。土方はゴクッと息を呑み額に一筋汗を流させる。

 

銀時は二人をゆっくり見ると淡々と口を開いた。

 

「被害者(フィルチ)の命を奪った凶器(新八)は特殊だった。そう、調べればきっと出てくるはずだ!!眼鏡紋がッ!!」

 

「なんじゃそりゃァァァアア!!」

 

ビシッと指をさした銀時目掛けてスパァァンっと小粋の良い音をたててハリセンがヒットした。

 

「いつつ、おい。凶器(新八)いきなり何するんだよ」

 

銀時は叩かれた頭をさすりながらハリセンを持って仁王立ちした新八を見た。

 

「何するんだよじゃないわァァア!!人が黙って気絶してたらボケ放題で!!あんたこそなんだ?眼鏡紋って!!いや、それよりもフィルチさん死んでないですからね!!」

 

色々言いたいことがあったのだろう。

 

一気にまくし立てる新八であった。

新八はおもむろにため息をつくと眼鏡をクィッとあげた。

 

「だいたい、あの雰囲気なんなんですか?」

 

「いや、作者がよォ。なんかサスペンス的なもん書いてみたいなって言ってたような、言ってないような」

 

「そんな曖昧な理由であの雰囲気始めたんかい!!」

 

銀時の言葉に鋭く突っ込む新八。

やはり突っ込みと眼鏡しか存在価値のないキャラである。突っ込みがとてもしやすい。

 

「いや、突っ込みと眼鏡しかってどういうことォォオ!?」

 

ほら、ナレーションにまで突っ込むくらい突っ込み色だ。

 

「……っだ、大体土方さん!!あなた突っ込みじゃなかったんですか?なんで銀さんと一緒にボケなんか……」

 

どうやら、ナレーションに逆らうのは危険だと感じ突っ込み相手を土方に変えたようだ。

土方はフゥッとため息をつくと遠くを見つめた。

 

「突っ込まなかったらあとでマヨくれるって約束したからな」

 

「何、警察が買収されてんだァァア!!」

 

新八は大声で叫ぶ。

すると、そのせいか死体役のフィルチが身じろぎを始めた。

どうやら、目を覚ますのも時間の問題のようだ。

 

「オイオイ、どうするよ。新八がキャンキャンうるさいから起きそうだぜ」

 

「チッ、空気読め眼鏡」

 

「ちょ、二人して僕が悪いの!?それならほんとすいませんでしたァァア!!」

 

銀時と土方、二人の言葉にわけが分からずとりあえず新八は謝った。

 

すると、神楽が首を傾げる。

 

「銀ちゃん。このオッサン起きるとヤバいアルか?」

 

「あー、そりゃ校則破ってるからな」

 

銀時が言うと神楽はじっとオッサンという名のフィルチを眺めた。

 

「ここはやっぱあれじゃねぇ?全責任取って新八が囮に」

 

「あー、なるほど。それは名案だな」

 

「いや、名案じゃないでしょ!!ってかどうして僕がッ!!」

 

「「眼鏡だから!!」」

 

「眼鏡だからって何ィィイ!?ちょ、神楽ちゃんもこの二人に何か言ってあげて!!」

 

グシャッ

 

「そう、グシャッ……グシャッ?」

 

言い争う三人の耳に神楽とフィルチのいる方から何か音が聞こえた。

 

三人は音を不思議に思い神楽のほうを向き、驚いたよう一声あげた。

 

「「「あっ」」」

 

三人が見た光景は、カニのように口からブクブク泡を吹いているフィルチがいた。

うん、ピクピクしている所を見るからに生きているようだ。

 

「え?ちょ、か、神楽ちゃん!!一体全体何したわけ!?」

 

「魔法で姉御のダークマターを出して食べさせただけヨ」

 

どうやら、魔法で江戸からあの可哀想な卵焼きを呼び出したようだ。

 

確かにフィルチの口元には泡の他に黒くジュウジュウいっている物体が付いていた。

 

「よくやった!!神楽。これで記憶なんざ飛んでるだろうし、証拠隠滅だな」

 

銀時は、グッと親指を立てて神楽の勇気ある行動を褒め称えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一部始終を見てしまったハリー達はブルブルと震えた。

 

「ね、ねぇ……あ、あの黒いのなんだったのかな?」

 

ロンがフィルチの口に付いた黒い物体をチラチラと見ながら呟いた。ハリーはロンの問いに知らないとばかりにプルプルと首を振る。

 

「と、とりあえず合流してみたらどうかしら」

 

ハーマイオニーがフィルチを見ないようにしながら言った。

このまま隠れていてもアレだし、相手は銀時たちなので一応大丈夫だと判断したのだろう。

 

ハーマイオニーが言うとハリーはコクンっと頷きゆっくりと銀時たちに近付いた。

 

 

 

 

ハリーたちが近付くと流石というか銀時たちはすぐに4人に気づく。

 

「おっ、ハリーじゃねぇか。ったく捜したぜ」

 

「あっ、良かった。無事だったんだね」

 

ハリー達、4人を見ると銀時と新八がホッとしたように言った。

 

「全く、どこで何をやっていたアルか!!」

 

「あまりルールは破るもんじゃねぇぞ」

 

神楽はハリー達を見るとマジックでフィルチの顔に落書きしながら言い、土方は何故かマヨネーズをフィルチの懐に忍ばせていた。きっとお詫びのつもりなのだろうが、フィルチにとっては有り難迷惑だ!!

 

「う、うん。ちょっと……」

 

ハリーはそれを見ないようにしながら口ごもらせた。

多分、一部始終を見てしまったとしても何してたか聞きたいのはハリー達のほうだろう。

 

 

とりあえず、8人は合流したので寮へと帰ることにした。

もちろんフィルチは壁に縋らせて放置である。

 

 

 

 

 

寮の談話室に着くとハーマイオニーは疲れたと言わんばかりに部屋に戻り、ネビルも色んな意味でプルプル震えながら部屋に戻っていった。

 

「ネビルの奴。なんであんな震えてんだ?」

 

「何か怖いことでもあったアルか?」

 

銀時が不思議そうに首を傾げると、神楽がハリー達に尋ねた。

ハリーとロンは顔を見合わせる。少し前ならネビルが怯えているのはあの怪獣犬のせいだと言えただろう。しかし、今は……

 

ハリーとロンはフィルチの状態を思い出しブルッと震える。

しかし、そんなこと神楽たちに言えるわけないので誤魔化すことにした。

 

「えっと……僕たちその犬に会って」

 

「犬?」

 

ハリーの言葉を聞くと銀時は首を傾げる。すると土方が腕を組んだままため息を付いた。

 

「あいつ犬なんかにびびっちまったのか?」

 

呆れたようにいう土方にロンが口を開いた。

 

「た、ただの犬じゃないんだよ!!大きくて頭が3つあって」

 

ロンは大きく手を動かし説明をした。ロンが説明を続けるにつれて神楽の目がキラキラと輝きだした。

銀時と新八はそれを見て嫌な予感がする。

 

「ねぇ、銀ちゃん。私その定春35号飼いたいアル」

 

嫌な予感的中である。

神楽の言葉に新八がブンブンと首を振る。

 

「いやいや、神楽ちゃん何言ってるの!!聞いた話だと頭が3つとかある犬なんだよッ!!」

 

「新八、酷いアル!!眼鏡の分際で犬差別アルか?眼鏡の分際で」

 

「いや、差別じゃないけど……って眼鏡の分際って酷くない!?しかも何で二回も!!」

 

「大事な事は二回言うとヨロシ」

 

「大事じゃないよね!!」

 

神楽の毒舌にショックを受けながら突っ込む新八。

そんな二人を見ると銀時はふわぁーっと欠伸を一つ。

 

「とりあえずよォ。もう、夜も遅いし詳しいことは明日にしねぇ?っつーわけで寝るわ」

 

銀時はきっぱり言うと立ち上がり自分の部屋へと向かった。

 

銀時が部屋に向かうとその場に居た者も皆、右習えといった感じに部屋へと戻った。

 

次の日、ハーマイオニーからあの犬は何かを守っていたからもう飼い主がいるのではないかと言われ神楽がしょんぼりとすることになる。

 

 



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第19訓 皆さん覚えてるでしょうか?

 

 

このホグワーツ魔法学校の一大イベントであるハロウィーンが終わった休日。

新八はどこから持ってきたのかはたきを手に持ち与えられた寮部屋を掃除していた。

 

「え?掃除していたってちょっと待って下さい。ハロウィーンいつ終わったんですか!?」

 

与えられたはたきを持とうともせずに新八、いや、眼鏡はあろうことかナレーションに噛みついた。

 

「オィィイ!!なんで言い直した!!あってたじゃん。ってかハロウィーン!!」

 

新八は目をこれでもかと見開いて叫ぶ。ハロウィーン、ハロウィーンっとまるで眼鏡のようだ。

 

「いや、意味分かんないから!!って銀さーん。銀さんもなんか言ってやって下さいよ」

 

新八はそう言うと自分のベッドに横になりこれまたどこで手に入れてきたのか、銀時愛用の雑誌。少年ジャンプを読んでいる銀時に助けを求めた。

 

銀時はチラッとジャンプから視線をあげ怠そうに新八の姿を綺麗な紅色の瞳に映した。

 

「……」

 

そして、無言で新八からまたジャンプへと視線を落とす。

 

「ちょ、銀さん!!ジャンプ読んでないでなんか言って下さいよ!!」

 

「なんか」

 

新八の言葉に銀時は一言口にした。銀時の言葉に新八の口端が微かに引きつる。

 

「あ、あの……銀さんそうじゃなくてですねぇ」

 

「……あー、ったく。うるせぇな」

 

新八が懲りずに口を開くと銀時は仕方なさそうにパタンっとジャンプを閉じた。

口ではブツブツと言うがきちんと話を聞こうとでも思ったのだろう。

流石、銀時。とても心優しい。それに比べて新八は……

 

「で?どうしたんだよ」

 

銀時が首を傾げて新八を見ると、新八は今まで話を聞いてなかったのかとばかりにがっくりと肩を落とした。しかし、すぐに気を取り直し言葉を放つ。

 

「聞いて下さいよ、銀さん!!ナレーションさんってばもうハロウィーンは終わったって言うんですよ」

 

新八の言葉に銀時は手近にあったクッキーを手に取り一つ口に放りこむ。

そして、咀嚼すると新八を見据えた。

 

「確かに終わったみたいだな」

 

「お、終わったみたいって……ちょ、銀さんなんでそんなに冷静なんですか!!」

 

銀時の言葉を聞き、新八は少し声を荒あげた。しかし、銀時は新八の荒あげた声を気にせずクッキーのカスがついた指をペロッと一舐め。

 

「冷静ねぇ、新ちゃんはよォ。何が言いたいわけ?」

 

「え?それは……ほ、ほらハロウィーンの夜に結構一大イベントあったじゃないですか。なのに、その話せずに進めるのはどうかと……」

 

モゴモゴと話す新八に銀時はああっと頷きガシガシと頭を掻くとため息混じりに口を開いた。

 

「いいんじゃねぇ?あのハロウィーンのイベントには俺たち関わってねぇし」

 

「え?」

 

銀時の言葉に新八は目をぱちくりとさせた。

 

「えっと……誰一人関わってないんですか?」

 

「なんかよォ。あのイベントは三人に友情が芽生える大事なイベントだから部外者が気安く入るべきじゃないってトロールなんか気にせず避難しないでハロウィーンのご馳走食べてたろ」

 

「逃げろォォオ!!せめて避難しろよ!!」

 

銀時の言葉に新八はとりあえず突っ込んだ。しかし、銀時はやはり気にせず言った。

 

「まぁ、そんなわけでハロウィーンは飛ばして今回の話行くぞ」

 

「はぁ。納得は出来ませんが、分かりました」

 

っというわけで気を取り直して、

このホグワーツ魔法学校の一大イベントであるハロウィーンが終わった休日。

新八はどこから持ってきたのかはたきを手に持ち与えられた寮部屋を掃除していた。

 

「あっ、本当に最初からやり直すんだ」

 

新八は呆れたようにはたきを持つと掃除を始めた。

新八が掃除を始めてしばらくすると銀時の持ち物から見慣れない箱を見つけた。

 

「あ、あれ?」

 

「あ?どうした?」

 

新八の抜けたような声に反応し、銀時はジャンプから目を離し……あっ、今はジャンプじゃなくクッキーを食べているんですね。失礼しました。クッキーを食べる手を休め新八のほうへと顔を向けた。

 

「いや、見慣れない箱が……ってなんで僕には強制的に掃除させるのに銀さんは行動自由なんですか!!」

 

新八は見つけた箱を指差すと不満を口にした。ってかそんなもん、新八だからに決まってる。

わざわざ答えるまでもないだろ、この駄眼鏡がッ!!

 

「ちょっとォォオ!!ナレーションさんがすっごく酷いんですけど、僕何かしましたか?」

 

「あー、この箱な。そういやすっかり忘れてたわ」

 

新八が悲痛を叫ぶのを横目で見ながら銀時は箱を持ち上げた。

さて、皆様は覚えているだろうか?神楽と銀時が出会ったあの占い師を……そして去り際に渡された箱のことを。

 

「ナレーションさんも銀さんも無視ですか……で?それ何が入ってるんですか?」

 

綺麗に無視されため息をつく新八。しかし、へこたれずに新八は銀時の持つ箱へと指を差した。

 

「……知らねー」

 

「え?知らないんですか?」

 

銀時の言った言葉を聞くと新八は目をぱちくりさせた。

そんな新八を見ると銀時はコクンっと頷く。

 

「神楽がもらった箱はあの後すぐに開けたけどな。俺のは……作者自体忘れてたんじゃねぇ?」

 

「いや、銀さん。流石に忘れてたとかはないと思いますよ」

 

…………。

 

「あ、あれ?ちょっとナレーションさん何黙って」

 

…………。

 

「ま、まさか本当に忘れてたんかいィィイ!!」

 

「あー、やっぱりそうか。可笑しいと思ったんだよな。今更こんな話やるなんてよォ。普通学校始まってすぐにしなきゃダメな話だぜ」

 

銀時は呆れながらため息をついた。なんというか本当に申し訳ない。

ナレーションが凹んでいると新八が空気を変えるかのように大きな声をあげた。

 

「と、とりあえず銀さん。それ開けてみませんか?」

 

新八の言葉に銀時はおもむろに箱を見つめた。

そして、箱の蓋へと手を伸ばしパカッとそれはもう躊躇もなくごくごく普通に開けた。

存在が忘れさられるほど放置プレイを受けていた箱の中身は……本だった。

 

「タイトルはlost……あとは読めねぇな」

 

箱から取り出した本は古くタイトルの書かれた文字が薄れておりよく見えなかった。

銀時はペラッとページをめくってみる。

表紙と同じくところどころ文字が薄れていた。

 

「……magic今度は最初が見えねぇな」

 

銀時が呟くと、新八が本を覗き込みながら口を開いた。

 

「続けるとロスト マジック……どういう意味だろう」

 

「……失われた魔法」

 

「え?銀さん分かるんですか!?」

 

銀時の訳した言葉に新八は驚き目を見開く。

そんな新八の様子に銀時は眉を寄せた。

 

「いや、新八。そんなに驚くことか?」

 

「だ、だってこれ外来語じゃないですか!!まさか銀さんにそんな学があるなんて毛ほども思いませんでした!!」

 

「よーし、分かった新八。表出ろや……あ、あり?」

 

新八のあまりにも酷い言葉に銀時は眉を寄せたままきっぱりと言う。そして何かに気付いたように不思議そうに声をあげた。

 

「銀さん、どうかしたんですか?」

 

「いや、なんでお前読めないのかと思ってよォ」

 

銀時の言葉に新八は少し眉を寄せた。バカにされたとでも思ったのか不服そうに口を開く。

 

「別に読めなくていいじゃないですか!!僕は日本人なんだから日本語さえ分かればいいんです!!」

 

 

口を尖らせて言う新八に銀時はポリポリと頬を掻き違う違うと手を振った。

 

「いや、そうじゃなくてよ。新八、普通に教科書とか読めるしハリーたちとも話せるじゃん」

 

銀時の言葉に新八はハッとする。確かにそうである。ハリーたちや教科書は外来語で書かれてあるのに読めたり、しゃべったりできるのだ。

 

「た、確かにそうですけど……言葉通じないのは色々困りますし、小説のお約束的な感じで大丈夫なんじゃ……あ、あれ?」

 

そこまで言うと新八は目をパチクリとさせた。

小説のお約束というチート技で外来語が分かるようになっているのなら銀時の持つ本だって読めるはずだ。

 

しかし、実際には読めなかった。

 

 

「銀さん……どういうことですか?」

 

「さぁな。この本はチート技を受け付けないか……それとも」

 

銀時はチラッと本を見るとパラパラとページを捲り、全体を見ると閉じてため息をついた。

 

「それともなんですか?」

 

銀時の言葉に首を傾げて聞く新八。

 

銀時はそんな新八を見ると答えることなく立ち上がった。

 

「え?ぎ、銀さん!?」

 

「ちょっと確かめてくるわ」

 

そう一言告げると驚いてる新八を気にせず本片手に寮部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

銀時の言葉に新八は本棚にはたきをかけながらにっこり微笑んだ。

 

「お帰りなさい、銀さん早いお帰りでしたね…………ってはえぇよ!!まだ出ていって5分もたってないんですけど!!」

 

新八が叫ぶように言うも銀時は気にした素振りを見せずベッドへとダイブした。そして、ゴロンっと寝返りをうち仰向けになるとチラッと新八を瞳に写し深く溜め息ひとつ。

 

「オイオイ、新八なにいってんだ?俺は三ヶ月以上かけて調べに行ってたんだぜ。見ろよ、前回は真冬に入る前だったのに今は春間近じゃねぇか。で?ハゲは仕留めたか?」

 

「いや、銀さん三ヶ月もたってないですから!!確かに更新は三ヶ月以上空きましたけど……ここと外では時間感覚違いますから!!ってか三ヶ月じゃハゲは仕留めれません」

 

新八のはっきりとした言葉に銀時は眉を寄せ起き上がりガシガシと頭を掻いた。そして、心底面倒くさそうに口を開く。

 

「マジでか?オイオイふざけんなよ。俺の中じゃ7巻の下巻までいってんだぜ?それがまさかまだ上巻とは……」

 

「いってねぇよ!!上巻も何もまだ1年生だから!!ってかたった三ヶ月で何言ってるんですか!!」

 

銀時の言葉を突っ込みながら新八ははたきを振るった。銀時はベッドから身体を起こし座ると人差し指を立てる。

 

「新ちゃんよォ。よく考えてみろよ。更新までかなり間空いたんだぜ?もう誰もこんな文字の羅列なんて見てないって、これ小説終わらすチャンスだからね?なあなあで完結文書いて間の話はバカには見えない特殊文字で書きましたって言えば騙せるだろ」

 

「騙せるかァァア!!あんたなんてこと言うんですか!!すいませーん!!読者の皆さんマジすいませーん!!」

 

新八ははたきを捨てると床に座り画面の向こうにいるであろう読者にペコペコ土下座を開始する。そんな新八をみながら元凶である銀時は反省の色ひとつなく鼻をほじっていた。

 

しばらくの間、新八が無様に土下座をしているのを見ていた銀時は仕切り直しとばかりにパンパン二回手を打った。

 

「そろそろ冗談もこれくらいにして本題に移るか」

 

「え?じ、冗談?」

 

銀時の言葉が聞こえると新八は土下座をしたまま銀時をじっと見つめた。銀時は新八の目線に応えるよう数回コクコクと頷く。

そして、意地悪げにニタリと口端をあげるときっぱり言った。

 

「三ヶ月も立ってるからな。クッションないと書けないんだわ。ってことでハリ銀始まるぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

銀時は寮から出ると通路をトコトコと歩きだした。

 

「さて、まずはどこに向かうか」

 

そう呟くとチラッと手に持った本を見つめる。そして、歩きながらパラパラと本のページをめくる。

 

「あら、ギントキじゃない。何してるの?」

 

適当に歩いていると後ろの方から女の声が聞こえた。銀時は声から誰が話しかけてきたのか察して振り返り気味に相手の名前を呼んだ。

 

「あー、ハーマイオ…………何それ!?」

 

銀時は少女の名前を呼ぼうとするも相手の状態を見た瞬間目をパチクリさせた。声はハーマイオニーなのだが、見えるのは本、本、ブック、本なのだ。

 

「えっと、何してるかは俺が聞きたいんだけどってか……え?ハーマイオニーだよね?どこぞのゴリラ女や大暴食娘じゃないよね?」

 

 

額に汗を滲ませ思わず確認してしまう銀時。それも仕方ないこと顔を隠すどころか天井に向かって高く高く積み上げられた本をなんなく持ち上げている少女が目の前にいるのだから。

正直、大人の銀時なら持ち上げられるが少年となってしまった銀時では持ち上げるのは不可能だろう。

 

「何してるって、図書館で本を借りてきたのよ。ちょっと借りすぎちゃったかしら」

 

本を下ろすことも、重そうに声色を変えることなく平然と話すハーマイオニー。

 

(いやいや、明らかにちょっとじゃねぇよ!!)

 

「へ、へぇーそうなんだ。……けどそれ重くないのか?」

 

銀時は心の中で突っ込みながら口を開いた。するとハーマイオニーからクスクスと笑い声が聞こえた。

 

 

「ギントキってばハロウィーンのとき私とハリーとロンでトロールを倒したのは覚えてるでしょ?」

 

ハーマイオニーの言葉に銀時はある呪文を思い出す。

確か【ウィンガーディアム レビオーサ】という呪文。魔法の効果はその魔法をかけた対象を浮かび上がらせるもの。

 

(なるほどな。魔法で本を浮かび上がらせてるわけか)

 

銀時は納得したように心の中でうんうん頷く。しかし、次のハーマイオニーの言葉を聞き一瞬思考を停止させた。

 

「あの時のトロールの棍棒振り回してたらいつの間にか力ついてたのよね」

 

にっこり笑顔で言うハーマイオニー。銀時はハーマイオニーの言葉が理解出来ずに目をパチクリ。

 

(あれ?今、なんか目の前のお嬢さん可笑しなこと言わなかった?トロールの棍棒振り回してたとか……いやいや、聞き間違いだよね?うん。ないない。ハーマイオニーは一応ヒロインの位置にいるんだしないない。うん、ないない)

 

銀時はブンブン首を振り続けた。そんな銀時をハーマイオニーはしばらく不思議そうに首を傾げて見つめていた。

 

 





これにて移転完了です。
明日からはワンピースと銀魂のクロス小説を移転させます。
気になった方はチラ見してくれると嬉しいです。


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