緋弾のアリア(仮) (Quasar)
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始まり・プロローグ?

あらすじにも書いてある通り二番煎じの内容になるかと。あと、続くかどうかもわかりません。気まぐれに書いたものなので。
それでもいいという方はこの駄文、お楽しみください。


 皆さんは神様というものを信じますか? あらゆる願いを叶えられる神様とか、死神でもなんでも良いです。兎に角神と名の付くものを信じられますか?

 

 ――――私は、信じます。なぜなら……私が、転生者だからです。あぁ、安心してください。別に頭がオカシイとか面白可笑しいモノではないです。本当の本当に正真正銘転生者なんです。アレです。所謂神様チート転生者ですね。チートなんてなくて普通に幸せに過ごせればいいんですが……どうやら転生した世界がそれはもう物騒な世界らしくて。世に犯罪が蔓延り、それに対応するように武装探偵なるものが設立され、銃刀法がもうありえないくらいにゆるっゆるになってる世界です。

 

 さて、ここでもう察しの良い方はわかると思いますが、私が転生したのは迷惑にも『緋弾のアリア』の世界です。原作知識なんて私には皆無ですし、銃とかそんな物の種類なんてわかりませんし、そもそも興味もない普通の女子中学生の私にはそんな殺伐した世界、例えチートを授かったとしても生きていける気がしません。というか生きていけません。はい。モロ生き残っちゃってるんですけどね。

 そればかりか、なんの因果か私はちゃっかり武偵中に入学させられました。まぁ、何の因果といっても理由はわかりきってるのですが……。私が(強制的に)もらったチートの中に『冷静沈着』、『異常神経』、『魔眼』、『自動』という何ともオカシナものがあるからです。詳しく言えば他にもありますが……まあ、この四つに比べればあまり特筆すべき物ではありません。

 因みに『冷静沈着』の効果としては、簡単に言えば無口無表情。言葉は片言と言いますが、一言づつしか言えないみたいで……。無表情といっても、たまに、たまーに微笑むくらいは出来るんですよ? それ以外はできないだけで……。

 まぁ、それはいいんです。問題はその次。『異常神経』と『魔眼』と『自動』です。『異常神経』は、もう私とは違う別の何かが私を操っているのかと思うほど体が勝手に動くのです。こう、ハンドガン(?)の弾が一メートル位しか離れてない場所で放たれたとしても簡単に避けちゃうんです。本当に異常ですね。ありがとうございました。 ……簡単に言ってしまえば、神経というもの全てが異常に発達しているらしいです。反射神経とか、運動神経とか、その他諸々……。

 そして次に面倒なのが『魔眼』です。皆さんは魔眼なるものを幾つ御存知ですか? 私が知ってるのは多分世にある魔眼の中でもかなり少数でしょう。この『魔眼』は、知っていようが知っていまいが関係なく全ての“特殊な眼”が使えるんです。いえ、正確には知っていなくても頭に叩き込まれるんです、『眼』の知識が……。はい、言いたいことはわかります。思いっきり名前詐欺ですよね。

 そして最後にして一番厄介なのが『自動』。これは名前だけで察しの付く方も、いえ殆どの方が察しがつくと思うのですが……なんというか、武偵として歩み始めてから頭角を現したチートでして、その場その場での最適な行動を私の意識が外れている間勝手にしてしまうんです。私の意志に関係なく。

 まぁ、そういう諸々の理由で周りに“普通じゃない”という扱いをされて、無理矢理に武偵中に入学させられたのです。正直、この時は神様というものを本気で恨みました。

 そして今、私は、何故か高校にまで行っちゃっています。

 

 そんな私が“普通で幸せな生活”が出来るかどうか……良ければお見届けください。

 

 

 武偵高。それは武装探偵、通称武偵を育成する高等学校。そして今日はその入学試験日。ここで好成績を取ればS~Eに分かれるランクの中で上位にいける運命の日。とは言っても、Sになる生徒はホンのひと握りしかいないのが現実だ。

 それでも、試験を受ける者は相応の覚悟を持って試験に挑む。

 

 一部の人間を除いて。

 

 その一部の中で取り分け異質な存在を一人紹介しよう。彼女は周りから見ればいつでも冷静沈着で、時折人間離れした動きをする少女だった。白雪のように真っ白な白銀の長い髪を一本に束ね、他の生徒と同じように制服の下に武装をして、脇には何故か大きな辞書のような本を持っている、控えめに言っても美少女と称されるほどの。表情はなく、期待も不安も何も移していない目はまるで人形のような、ともすれば硝子細工のような無機質さでどこか不気味でありながら神秘を感じさせる少女だった。

 

 その少女はまっすぐと強襲科に向かって歩いていた。その足取りは軽やかでありなんの憂いも気負いも感じさせないもの。

 だが勘違いしてはいけない。この少女は別に冷静沈着でもなんでもなければ、勇猛果敢なものでもない。

 この少女、心の中では、

 

 ど、どうしよう……どうしようどうしようぅーっ!? 道に迷っちゃった!? あ、でも目の前にちょうど建物があるからここに入って教務科の人に聞けば大丈夫……かなぁ……?

 

 などと考えていた。外見と中身がまったくもって違う少女である。ちなみに少女の名前は無垢式雅。メタいことを承知で言うのならば無垢式は空の境界という作品から。雅は全盛の名前である。

 そんな雅は外面は冷静に、内面では困惑しながら歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 私は今、人生で三十五番目くらいに焦ってるかもしれません。嘘です。三番目です。

 一番目は言わずもがなで転生した時。あの時ほど焦ったことはありません。いえ、あの場合は混乱していたといったほうが正しいのでしょうか? まあ細かいことはいいのです。二番目は……まあ、秘密ということで。

 さて、そんな今の私なんですが……絶賛迷子だったりします。

 いや、私をそんな哀れんだ目で見ないで下さいよっ! だって初めて来た場所なんですよ!? しかもここバカみたいに大きいんですしっ! だから私は方向音痴というわけではありませんっ!

 

 ……とまあそんなこんなで歩いていたら良く分からない場所について、チートの私が誰かに道を尋ねられる訳もなく適当な教室に入って適当に座っていたんですよね。それで時間が来るまでまだ少し余裕があるので窓から空を見上げながら雲の形で連想ゲームして遊んでいたんです。

 ……と、まあ現実逃避は程々にしましょうか。

 どうやら私、間違えて強襲科に入ってしまったみたいなんですよね。

 強襲科ですよ強襲科。あの卒業率が九十七%程しかないと言われてる(私にとって)地獄の科ですよ。泣いていいですか? 泣きますよ? これは神からの泣けという思し召しですか? まあ、泣けませんけどねっ! 生まれてこの方一回も泣いたことないんですよ、私。生まれた時もお腹がすいた時も、まあ……子供の頃に無意識で粗相をしてしまった時も。今思えば、これが一番“普通じゃない”と思われた原因なんでしょうね。

 あぁ、また現実逃避してました。

 って、あれ? あれれ? なんで私の周りに見知らぬ人が倒れてるんです? いえ、それよりも……ここ、どこですか? え? 廃墟? 廃ビル? 私こんなところに来た覚えなんて一度も――――ぁ、まさか……。また、『異常神経』の仕業でしょうか……?

 昔から何度かあったんです。特に武偵中に入った時から特に。気付いたら知らない場所に居て任務を受けていたり、何故か気がついたら先生達に褒め殺しされたり、後輩先輩方には尊敬と奇異の目で見られたり……今回も、それでしょうか……。あぁ、また嫌な予感が……。

 あっ、と、取り敢えず外に出ましょう。この倒れてる人達は……私の力じゃ運べませんし、置いて行ってもいいですよね……? いえ、置いていきましょう。長年培われた私の勘がおいて行けと囁いています。

 ……スミマセン。多分私が悪いというのはわかってるのですが……はぁ……。

 

 で、降りたら降りたで先生になにか言われるんですね、わかります。あぁ……今からもう憂鬱です……。

 

「ふむ。Bチームで帰ってきたのは雅だけか。お疲れ様」

「ん」

「今日はもう試験終了だから家に帰って結果が送られてくるまで待ってなさい」

「さようなら」

「あぁ、さようなら」

 

 やっぱりねっ!!

 …………と、取り敢えず、先生にも言われましたし、家に帰りますかっ。

 ……嫌ですね……。なんで毎回毎回こんなことになるんでしょう……。それもこれも『異常神経』と神様が勝手にチートをつけたからですよね。

 っというか、なんですか、私の素っ気ない態度。もっとこう、ちゃんと出来ないんでしょうか……? 私のことなんですけどねっ! ……泣きたい……。

 

 

 

 

 

 

 初めて無垢式雅を見た時の感想はただの小娘か……と、それだけだった。実際、毅然とした佇まいで立っているが、たまに目には不安の色が見え隠れする、無表情な部分と見た目が浮世離れしていることを除けばどこにでも居るようなまだ青臭い子供にしか見えなかったからだ。

 

 今回入試試験として採用されたのはあの戦闘狂ジミた蘭豹から提案されたバトルロワイヤル形式。ABCの三種類でチーム分けされた中で時間まで、或いは最後の一人になるまで戦い続けるという実戦ないし戦争のようなものを思い浮かばせるようなもの。

 

 だから試験が始まった時のあの状況は夢なんじゃないかと思いながら目を疑った。

 何故なら監視カメラから見えるそれが俺の予想を遥かに超えていて、雅が全員を圧倒していたからだ。……あれは戦闘というものではない。ワンサイドゲーム、一方的虐殺と言われるものだ。

 銃を撃たれても紙一重で避け、接近戦で追い込もうとすると返り討ちにあう。そんなことが繰り返しまるでルーチンワークのように続けられていた。いつの間にか全員が全員あの小娘を狙っていたというのに、あの小娘は……雅は当然のように攻撃は避け、カウンターで攻撃し相手を確実に撃墜した。さっきまで目に不安の色があったというのに……だ。しかも、今は憂いを帯びた目になっている。

 多分、アイツは今、拍子抜けだとでも思っているのだろう。自分より強い奴がいると思って不安だったんだろうが、いざやってみれば誰も自分に対処できないのだ。例え全員が一斉に掛かってきても。あぁ、侮っていた。見た目だけで判断していた。アイツは小娘なんかじゃない、“化物”だ。もしかしたらSランクの中でも上位に入るくらいの強者、だ。

 それを理解した瞬間、俺の足は無様にも震えてだした。そして力の限り歯を食いしばる。

 あぁ、侮っていた。自分が憎らしくなる。Sランクとわかった時点で足が震えてくる自分が憎らしい。何十年も鍛錬を続けていた自分より圧倒的に強いアイツが羨ましい……。

 教師失格だ、俺は。武偵失格だ。教師という座に付き、自分が強いと思い込んでいた。それに加え本当の強者を見た目だけで判断したのだ。見た目ではなく、そのものが放つ気迫を見れば一発で分かったことなのに。

 ……いや、今悔やんでも仕方ない。そろそろアイツが戻ってくる頃だろう。

 

「ふむ。Bチームで帰ってきたのは雅だけか。お疲れ様」

「ん」

 

 教師という面子を崩さなかったのは最後の意地だった。だが、体は正直で足は今でも震えている。

 ……雅が短い返答だったのも、俺なんかと話す言葉がもったいないと思ったからだろうか?

 

「今日はもう試験終了だから家に帰って結果が送られてくるまで待ってなさい」

「さようなら」

「あぁ、さようなら」

 

 多分、そうなのだろう。現に雅が発言したまともな言葉は「さようなら」というたったの五文字だけだったのだから。

 去っていく雅の後ろ姿を眺めながら小さく拳を握りつつ未だに倒れたまま動かない入学希望者達の手当をしてもらうために救護科(アンビュラス)へ連絡をした。

 

 それがある程度一段落してから俺は人気のない場所に行き、煙草に火を付け煙を燻らせる。……今日という日を俺は一生忘れることはないだろう。上には上が居ることを再認識させられた一日だ。これからはもっと精進していこう。せめて次雅にあった時胸を張って教師といえるように。武偵だと誇れるように。




誤字脱字、批判評価、序でに感想。よろしければお願いします。


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始まり・日記

たまにこういう日記回があるのでご了承ください。
また、今回は下手な伏線回なので前回よりつまらなくなってるかもしれません。
それでもいいという方はこの駄文、お楽しみください(定型文)。


○月A日

 

 いつもは本とお喋りしてるのですが、日記を書く事で感情表現がもう少し出来るようになるのでは? という提案の元今日から日記を始めようと思います。

 ……といっても、何を書けばいいのでしょうか……。

 あっそうだ。えーっと、今日入学試験の結果が届きました。結果はやはり想像通り。実技オール百点でSランク確定です。私は強襲科に入るつもりもなく、出来れば諜報科か探偵科に入りたかったのですが……。まあ、今更気にしても意味がないのでもう気にしなようにしましょう。

 そういえば、試験の日に二人、友達になれそうな人を見つけました。遠山キンジという方と星枷白雪という方です。星枷さんは見た感じ大和撫子って感じで話しかけやすそうっていうか、仲良くなれそうでしたし、遠山さんは話してるとどこか安心できそうな雰囲気でした。……遠くからいざこざを見ていただけなので見た感じ、でしかわかりませんが……。

 あそこで声をかけるなり助けるなりすればよかったんでしょうか? そしたら仲良くなれたかも……いえ、でも、幾ら能力で神経が以上に発達していても怖いものは怖いですし……。

 はぁ……何があっても表情が殆ど変わらないのに小心者な自分が憎らしいです……。

 

○月E日

 

 今日は家に何時も置いてある栄養剤とカロリーメイト(+天然飲料水)がなくなったのでコンビニに買い物に行きました。そしたらなんと、遠くで遠山さんが歩いてるのが見えたんです。お兄さん……でしょうか? その方と歩いてる遠山さんは凄く嬉しそうで、見てるこちらが思わず微笑んでしまうような光景でした。まあ、実際にはピクリとも私の表情筋は動きませんでしたが。

 しばらくコンビニの中から二人の様子を見ていたら、お兄さんの方に途中で睨まれてしまいました。バレないように(というか、普通肉眼では見えない距離だったはずなのですが……)そっと目をそらしました。多分、ジッと見ていたから鬱陶しかったのだと自己完結しておきます。誰しもジッと見られるのは嫌でしょうし……今度会ったら、今日のことについて謝りたいです。どうせ片言なのでしょうが……。

 

○月F日

 

 昨日、日記に表情や言葉についての悲観、諦めのような事を書いてしまったので本に怒られちゃいました……。その時に注意されたことは大事そうなのでついでに日記にメモッちゃいましょう。

①.治すよう努力してるのだから悲観しない。

②.       〃      前向きに。

 です。同じようなことを言ってる感じですが、それだけ大事なことなんだろうと肝に銘じて頑張っていきたいです。

 

 あ、そういえば、今日星枷さんと少しお話できたんですよ。なんでも、遠山さんに会いに来たらしくて、その帰りにバッタリ会っちゃったんです。

 すごいんです。見た目通り大和撫子って感じで、こんな私なんかにも変わらず接してくれて……思わず泣きそうになってしまったのは内緒です。いえ、まあ……本に今日のことを話してる時に雀の涙くらいの量でしたが出ました。たまたま目にゴミが入ってしまったというわけじゃないです。……改善、頑張りたいと思います……。

 

○月G日

 

 昨日の日記を読み直していいこと思いついたんです。

 ゴミが目に入って涙が出る……なら、目薬をさせば涙っぽいものが出るんじゃないかと。涙の味とゴミが入った時に流れた涙の味は微妙に違うんですが、多分大丈夫でしょう。そう信じたいです。

 さて、そうと決まれば有言実行。がんばりましょー。

 

○月I日

 

 目薬なんか、もう使ってやらんのですよ……。っというか、反射神経さん。一旦仕事辞めてください……切実に……。

 

○月T日

 

 何日かぶりに日記を書きます。今日、強襲科担当の蘭豹先生に連れられて早くも寮の方にお引越しさせられました。まあ、寮でも家でも誰もいない一人というのは変わらないらしいので特筆することなんてないんですが……長年住んでいただけあって少し感慨深いものはありました。

 

 そういえば、遠山さんと星枷さん以外の方でお友達になれそうな方が二人いました。武藤剛気さんという人と不知火亮さんのお二人です。

 武藤剛気さんは少し強引だけど気さくでちょっとえっちな人のような感じがしました。ちょっとえっちなのはいらないんですが、強引なところがなんとなく安心できそうな感じがあります。私、自己主張or行動力がありませんから……。

 不知火亮さんは……なんででしょう? 一目見た時に武藤剛気さんや遠山さんとお話していて仲良さそうだったからでしょうか? んー……。

 あ、他にも峰理子さんという方もいたのですが……なんというか、裏がありそうな人というか、腹の奥底が見えない人みたいな感じで少しダメでした。それ以外にも、私の勘がこの人に関わったら私の求めてるものが手に入らなくなる……と言ってるような気がしたんです。……我ながら、何言ってる変わりませんね……。はぁ……。

 

○月Z日

 

 入学式です。入学式でした。……あぁ……入学してしまいました。でも、今年は良い事があるような気がします。……多分。

 そういえば、遠山さんが同じクラスになりました。いやもうそれだけで今年の運は使い切ったと思ったのですが、なんと同じランクという更なる奇跡が重なりました。なんというか、なんというか……嬉しいですねっ! だって友達になれるかもしれない人が同じランクなんですよっ! お近付きになる理由としてこれ以上最上級なものはないですよっ! あー、でも、なんて話しかければいいんでしょう? やっぱりアレですかね? 同じランクなのでこれから仲良くしてください……みたいな? キャーッ!! って、あれ? え? なんですかこの文? ……あああぁぁぁぁっ! これじゃ私が遠山くんに恋してるみたいに見られちゃうじゃないですかって羽ペンで書いたから消せないーーーっ!? あーっわーっうにゃああぁぁーーーっ!!!

 

 文字が乱れて読めません――――。

 

 ……私としたことが何やら焦ってしまったようです……。うぅ……恥ずかしい……。

 

 

 入学式、そう、入学式だ。ここから、始まるんだ。

 遠山キンジ()の兄は武偵だ。どこに出しても、例え誰に見せても恥ずかしいなんて思わない、最高で俺の憧れの人だ。

 中学では自分の体質(HSS)のせいで最悪なこと続きだったが、高校は誰とも被らないように遠くの場所を選んだ。だから、今日からようやく始まるんだ。

 

 校長の長い演説が終わって教室。これからクラス内での自己紹介だ。普通は自己紹介なんてものはしないで自分で調べろが武偵のモットーだが、ここには一般中学校(般中)からの奴もいるので一年生だけ特別自己紹介がある。

 名前順で自己紹介していき、ようやく俺の番が来た。といっても、自己紹介なんて名前と学科、言いたければランクを言えばいいだけなので簡単だった。

 

「俺の名前は遠山キンジ。学科は強襲科。ランクはSだ」

 

 S、その言葉を言った瞬間、周りがざわついた。当然だ。学生でSになる奴なんてひと握りの天才だけ。誇るわけじゃないが、俺はそのランクSなのだから。地で行ったらC、良くてBだろうけどな。別に、今ランクを言わなくても良かったのだが、なにせここは武偵だ。そのうち調べられてなにか言われるに決まってる。なら、自分で行ったほうが楽なんだ。

 そして、そのあとはAはチラホラいたがSは全くといっていいほどおらず、そろそろ自己紹介が終わるという時だった。そいつを俺が――――いや、クラスの全員が初めて見たのは。

 

「無垢式雅。強襲科。S」

 

 そう言って自己紹介した奴は静かに座る。

 必要なことを必要最低限言うだけの自己紹介だった。感情を感じない抑揚のない声で、表情も能面のようにピクリとも動かない。見る人から見れば不気味、と思われてもおかしくない程そいつからは何も感じなかった。だが、なぜか俺は、そいつを見て綺麗だと思った。神秘的な、どこか脆い感じが可愛いと思った。

 俺の時とは打って変わって周りはシンと静まり返っていた。多分、アイツの――――雅の無表情さに気圧されたのだろう。

 この静かな空気は、いち早く正気に戻った担任の教師が次の人に自己紹介を進めるまで続いた。

 そしてまた自己紹介が開始される中、雅はジッと正面だけを向いていた。その目には、少しだけ喜色が浮かんでるように思えた。




短いです。
誤字脱字、批判評価、序でに感想。よろしければお願いします。

11/16 修正・加筆


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初めての友達・プロローグ

作者の中で蘭豹のイメージが固まっておらず、少ししか出ていないのにオカシな感じになってしまい申し訳ありません。
そして今回も短いです。
それでもいいという方はこの駄文、お楽しみください。


 入学式が終わって次に日。

 早い人はもう友達やら何やらを作ってることなのでしょうが……なぜ、でしょう? 私、皆さんに避けられてるような気がします。いや、まあ、私が普通じゃないっていうのは理解してますよ? いつも無表情ですし、強襲科のSランクですし。でも、そこまで避けなくてもいいじゃないですかっ! アレですか? 昨日、先生のHRが終わった後に話しかけられた時片言でしか返さなかったからですか!? 違うんです! 不可抗力なんです! 私はもっと皆さんとお話したいんですーっ!!

 ……なんて、そう言ってもこのお口様は私の意思に反して片言以外で話してくれませんけどね。

 はぁ……遠山くんにも近付けませんし、星枷さんは違うクラスですし……災難、です……。うぅーっ帰ったら存分に本に愚痴りましょう。筆談で、ですけど……。

 ――――ッ! そうだ! 筆談ですよ筆談! これなら私の素が出せるはずです! 日記でも私の素が出せてましたし! そ、そうとわかったら早速有言実行です! さあ、友達作りますよー!

 

 っと思っていた時期が私にもありましたとさ。

 

 えぇ、ダメでしたよ。ん、とかわかった、とか違う、とかしか書けないんですよ! なんでですか!? 日記ではちゃんとかけたのに……。それもこれも全部冷静沈着と異常神経のせいです……。なんで私の思い通りに動いてくれないんでしょうか? 魔眼はある程度私の思い通りに動いてくれるのに……。

 あ、雲可愛いなー。あれはドーナッツでしょうか? だとしたらあれはうさぎさん? って、あーっ! 逃げてくださいうさぎさん! 後ろ、後ろにチュパカブラが! ってチュパカブラさんも逃げてくださいー! 後ろに何かわからない変な形のものが迫ってますー! ……あーっ!!!! 飲み込まれちゃい……ました……。チュパカブラさん……。

 はっ! まだです! まだウサギさんが――――。

 

「なぁに余所見しとんじゃぁ? 無垢式ぃ?」

「……別に」

「……ちっ。脅し甲斐のないやっちゃなぁオマエは。今回は見逃してやるけど次は覚悟しとけや」

「ん」

 

 ――――死ぬかと思ったぁっ! そうですよ、今蘭豹先生の授業じゃないですか! なんでよそ見なんてしたんですか私のバカー! うぅ……今回は冷静沈着に助けられました……。

 でも、余所見する要因を作ったモノに助けられるなんて、なんか複雑です……。

 あ、うさぎさん、いなくなっちゃってます……。今日はいいことなさそうですね……。

 

 ✝

 

 普通の学校では入学式の次の日は授業が少ないか教科書を配るなどの時間になるのだが、ここは武偵高。普通とはかけ離れた場所だった。

 まず寮に移った時にはその部屋に必要な教科書は一通り置いてあるのである。たまに教師科の手違いでないものがあったりするのだが、そういう場合は自分で取りに行くというのがセオリーだ。故に入学式の次の日からは普通に勉強を始める。

 ちなみに蘭豹の名は東京武偵高校に通うものなら誰でも知っており、またそれに伴う異名も知られているので第一印象凶暴な肉食獣として恐れられている。

 幸か不幸か雅は蘭豹と直接会ったことがあるので(寮に移るとき知らせに来たのが蘭豹)、その怖さや恐ろしさを身を持って知っている。

 

 閑話休題

 

 そんな武偵高で唯一平穏な時間と言われる普通授業が終わった昼休み。

 授業が終わると同時に雅は教室から抜け出していた。向かう場所は食堂ではなく、屋上。どうやら小心者の雅にとって食堂は高度な場所に過ぎるようだ。別に高度でも何でもないのだが。

 ではなぜ屋上なのかといえば、生徒にとって不人気な場所ナンバーワンが屋上だからである。

 夢見る少年少女よ、武偵の通う学校に夢などないと言っておこう。なぜなら、武偵とは犯罪でなければ依頼で何でもこなすので、至る所から恨まれたりするのだ。例えば犯罪者。犯罪者は自分を捕まえるであろう、または捕まえた者を快く思うものだろうか? いや思わない。だから狙撃などで命を狙われることもたまにあるのだ。そして屋上はフェンスがある事を除けばほぼ全方位から狙うことができる、格好の的なのだ。であるからして屋上は武偵に不人気なのだ。

 雅は『異常神経』により聴覚もクジラやウサギ等と同じくらい良いので、放たれた弾が鳴らす風切り音だけで判断し避けることが出来るので気にしなくても別にいいのだ。とはいっても、雅はそんなこと知らないし、ここを選んでるのは簡単に人がいないからである。

 そんな屋上。どうやら今日は先客が居たようだった。

 フェンスに背中を預け、狙撃銃を背負い、青色の綺麗な短髪を風に靡かせ、恐らく家から持ってきたであろうカロリーメイトと天然水の入ったペットボトルで昼を過ごしてる少女。もうお分かりだろうが、狙撃科のSランク武偵、通称ロボットレキだ。

 人がいるなんて微塵も思っていなかった雅はレキの姿が目に入った瞬間硬直する。しかし外面や雰囲気はかすかにも変わっていないのは本当に冷静沈着さまさまなのだろう。

 雅がレキを見たように、レキも突然入ってきた雅を軽く見る。そして直ぐに視線を外しカロリーメイトを食べるのに集中をし始めた。

 ここで漸く硬直していた雅は再起動を始める。話しかけるべきか話しかけないべきか、少しの間逡巡して結局話しかけないで隅で食べるという選択をした。流石小心者。考えることが万人と違う。

 そうと決まればと雅は早速隅の方に移動し、懐からカロリーメイトを取り出し食べ始めた。

 食べ始めてからレキも自分と同じカロリーメイトを食べてることに気が付き、妙な仲間意識を芽生えさせながらも話しかける事はせずお昼休みは終了した。

 一方レキの方は、雅のことを全く気にしていなかったと言ったら嘘になる。露骨に反応しなかったのは、ここで下手な行動を取って距離を置かれたくなかったからだ。

 なぜあのロボットレキがそんなことを気にするのか、その答えはいたって単純だった。

 

 ――――雅から風を感じない。

 

 そう、ただそれだけだった。まあ、それだけでもレキにとっては大きなことになるのだが。

 レキにとっては風は自分の全てであり、絶対のモノだ。それが聞こえないとなると、それは不安と疑問しかもたらさない。だからレキは当分の間雅を観察することにしたのだった。

 

 その少し後からある事をきっかけに彼女たちは親交を深めていくことになる。だがそれは、また別の話。




書いてる途中、構成が頭の中から吹き飛んでしまい、最後の方は支離滅裂になってしまいました。少し時間を置いて改訂、編集をさせていただきます。


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