遊戯王GX 決闘モンスターリリカルなのは (あかない)
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一期
第一話


初めましてあかないと申します。
今回が初めての投稿となります。色々至らない点があると思いますが、よろしくお願いします。

デュエル中の効果の説明についてですが、どういう風に書いてよいのか分からないので、最低限の情報だけ地の文に書いています(名前、レベル、属性、種族、攻撃力・防御力)効果は主人公が台詞で説明します。
また、OCGカードはレベル、属性、種族、効果は書かずに、名前と攻撃力・守備力だけ書いています。

また、GXは小説や昔の記憶を頼りに書いているので、ところどころ原作とおかしな所はあると思います。





『起きて遊斗!』

「う~ん、あと5分・・・・」

『そんなベタな事言ってる暇があれば起きなさい! 今日はデュエルアカデミア実技試験でしょ!』

 

・・・・実技試験? ・・・・そ、そうだったーっ! い、今何時だ!?

時計を見ると、あと10分後で電車が出発する時間。そして今起きたばかりで、パジャマを着ている俺。

 

「・・・・どうして起こしてくれなかったの!? なのはさん!」

『ずっと前から起こしてました』

 

俺はガバッと勢いよく起き上がると、着ていたパジャマを速攻で脱いで中学の制服を手に取る。

朝目覚めたら超絶美人がいて、その人の前でさも当たり前の様に着替える。普通の中学生にはあり得ないシチュエーションだろうが、彼女は普通の人間ではないから問題ない。

俺を起こしてくれた人? は高町なのはさん。栗色の髪をサイドポニーと、サファイアの様に綺麗な瞳が魅力的な女性。

 

「じゃあヴィータさんやシグナムさんに手伝ってもらえば・・・・」

『私からも言ったけど二人とも『自分で起きさせろ』って。因みに厳しいティアナも、二人に止められてたよ』

「ホント手厳しいなオイ!?」

 

俺は制服を着終えると、髪や襟が整っているか確認もせずにリビングに降りた。

 

「おはよう父さん! ・・・・ていうか父さんが起こしてよ!」

「ああ、おはよう遊斗。そう言えばお前は今日試験だったな。徹夜で研究していたから忘れていた」

 

この色白で紫の髪をして黄色の目をした、いかにも弱そうな男が俺の父親。俺の髪が黒と言う事から分かるように、俺と父さんは血が繋がっていない。赤ん坊の頃捨てられていた俺を父さんが拾ってくれたみたいだ。

 

「お前には精霊がたくさんいるんだから、彼女等に起こしてもらえばいいだろう?」

「それが出来なかったから今こうして慌ててるんだろ!」

 

父さんはデュエルモンスターズの事で様々な研究をしているが、カードの精霊は見えない。そう、今の話を聞いて分かったと思うが、さっきの高町なのはさんはカードの精霊だ。彼女は俺の為に作ってくれた、世界に一つのリリカルシリーズのモンスター達の一枚で、なのはさん以外にもたくさん精霊がいる。さっき出た、ヴィータさん、シグナムさん、ティアナさんも、カードの精霊だ。

 

「じゃあ行ってくるよ! ジェイル父さん!」

「デュエルアカデミアに合格しなかったら、一年私の助手をしてもらうからな。ククク、頑張ってくれ・・・・」

 

俺は何も聞こえなかった! もし万が一、聞こえてたとしてもそれは絶対空耳だ。

 

 

 

 

なんて会話をしていたのが、フラグになったのだろうか・・・・?

電車に乗るまでの時間に余裕が無くても、電車に乗れば間に会う筈だったのだが、ただいま俺は全力疾走中。

 

「まさか電車が脱線するなんてーっ!」

「「遅刻だーっ! って? お前もか?」」

 

俺と全く同じ台詞を言ったのは、明るい雰囲気の元気な男。どうやらその男も俺と同じように、電車が原因で遅刻したらしい。

 

「俺は遊城十代だ、お前は?」

「俺は遊斗・スカリエッティ。見ての通り生粋の日本人だから、出来れば名前で頼む」

「ああ、分かったぜ遊斗」

 

おお、俺の名字を聞いてこんな反応をしてくれたのは十代が初めてかもしれない。毎回名字を名乗る度に笑われたり、わざと名字で言われたりと、余りいい思い出が無い。

 

「行くぞ十代! 意地でも合格するために!」

「おう!」

 

 

 

 

「これで全てのデュエルが終了しまし「「待ったぁあああ!」」き、君達は!?」

「受験番号110番遊城十代です!」

「受験番号7番遊斗・スカリエッティ!」

「「電車の脱線事故により遅刻しました!」」

 

ここに来るまでの間、何とか許してもらえる為に、あらかじめめ謝罪の言葉を打合せしておいた。確かに受験で遅刻はあり得ないのかもしれなけど、脱線事故を理由にしたら何とか・・・・。

 

「駄目デス~ノ。規則は規則」

「そこを何とか!」

「俺達携帯とか持ってないんで連絡しようにも出来なかったんです!」

 

もしデュエルアカデミアに入学できなかったら、俺は今から一年間あの変態親父の研究に付き合わないといけなくなる。それだけは絶対に回避しなければならない!

俺達の誠意が伝わったのか、それとも元々が優しい人なのか、校長らしき人が、変な喋り方の先生を呼んだ。

どうやら変な喋り方の先生は折れたのか、嫌そうな顔をして俺達を見て来る。

 

「仕方ないの~ネ。そのかわ~りアナタ達の相手は、デュエルアカデミア実技担当最高責任者、このワタシ、クロノス・デ・メディチが相手をするノーネ」

 

最高責任者!? それって試験官の中で一番強いって事だよな!

く~っ、父さんの研究を手伝いたくないって気持ちと、強い相手と決闘出来るってワクワクが混ざって、ドキドキが止まらない!

 

「望む所です!」

「俺達も遅刻した分のアピールぐらいできないと困りますからね!」

 

 

 

 

「スカイスクレーパーシュートッ!」

「マンマミ~ヤ~!」

 

白熱したデュエルは、十代のフレイムウイングマンの攻撃によって終止符を打たれた。攻撃力3000の最上級モンスターを、融合を使って倒す姿は、まさにHEROだった。

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」

「ぐぬぬぬ、ワタシがドロップアウトに負けるなんてまぐれナノ~ネ。次こそは勝つ~ノ」

 

早くもクロノス先生は準備万端の様なので、十代と入れ違いにデュエルスペースに入る。

クロノス先生とデッキを交換し、それぞれシャッフルした後、それぞれ腕に付けているデュエルディスクにはめる。

 

「「デュエル!」」

「俺の先攻! ドロー!」

 

クロノス先生が納得できない表情をしてるけど、これは入学が掛かっている大事なデュエル。多少意地が悪くても、有利な先攻をとっておくべきだ。

ドローしたカードを手札に加えると、まず何をすべきかを考える。クロノス先生のデッキはパワーデッキ。少しでも気を抜いていると、あっという間にライフが0になる。油断は出来ない・・・・。

 

「行きます! 俺はリリカルシリーズ高町なのはを守備表示で召喚! 高町なのはが召喚に成功した時、このカードにリリカルカウンターを一つ置く」

 

リリカルシリーズ(以後LS)高町なのは ☆4 /光/魔法使い/A500・D1800

 

リリカルカウンター(以後LC)高町なのは1

 

俺のフィールドに、制服のような白の恰好をしている栗色の女の子が現れた。彼女はこっちを振り向いてニコッと微笑むと、俺も優しく微笑み返す。

俺を起こしてくれたなのはさんと全く同じの女の子。大体予想できるだろうが、この女の子は彼女の幼少期の頃の姿。ピョコッと結ばれているツインテールと、まだ幼い顔立ちはとても可愛らしい。勿論大人のなのはさんも可愛いけど。

 

なに、あんなカード初めて見た

と、とっても可愛いッス!

ハァハァ・・・・

 

・・・・何も聞こえない聞こえない。もし入学したらこのロリコン共と一緒になるとか、絶対あり得ない。

最初の疑問にだけ答えておくと、このモンスターはリリカルシリーズの一枚。作った父さん曰く「昔、私の最強の軍団を倒した、予想不可能な集団」をカードにしたらしい。

未だにその意味は分からない。何故か精霊達(みんな)はその言葉の意味を知っているらしいんだが。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊斗 場

モンスター1 伏せ1 手札4

 

「私のターン。ドローにょ」

 

に、にょ?

 

「ワタシーはカードを一枚伏せて大嵐を発動!」

「大嵐!? ちょっと待った! 罠発動、ソニック・ムーブ!

このカードの効果により、エンドフェイズ終了時までなのはは除外する。更に戻ってきた時、除外された時と同じ数のカウンターが除外したカードに置かれる!」

 

おい、あいつ自分のモンスター除外したぞ?

プレイミスか?

おいおい、いくら相手がクロノス教諭だからって、そこまで緊張するか?

 

ええい! さっきから、がやがうるさい!

わざわざ自分のカードを破壊したって事は、伏せられていたカードはおそらく黄金の邪神像。だとすればクロノス先生の手の中には・・・・。

 

「何を考えーてるのかは知りませんが~、余りにも酷いプレイングミ~ス!」

「これも戦略の一つですよ。そんな事よりデュエルを続けましょう!」

「ムムム、生意気ナノ~ネ。ワタシ~は、破壊された一枚の黄金の邪神像の効果でトークンを一体特殊召喚! 

更にフィールド魔法歯車街(ギア・タウン)発動し、その効果でアンティーク・ギアの生贄を一体少なくする~ノ。トークンを生贄に古代(アンティーク)機械(ギア)巨人(ゴーレム)召喚!」

 

ゴゴゴゴゴ! と地面を突き破って現れたのは、圧倒的大きさの機械の巨人。この海馬コーポレーションの巨大な試験会場でありながらも、天井に届きそうな程だ。

しかも攻撃力が3000。おまけに貫通効果と、攻撃宣言時に魔法・罠が使えなくなる効果を持った強力なモンスター。

 

「壁モンスターを除外した事を後悔しなサーイ! 古代(アンティーク)機械(ギア)巨人(ゴーレム)でダイレクトアタッ~ク!」

「ッツ! ライフで受ける!」

 

遊斗 LP4000→1000

 

流石最高責任者。いくら俺の場にモンスターも伏せも無いからとは言え、初ターンで3000打点か!

だがこうじゃなきゃ面白くない!

 

「カードを一枚セットし~て、ターンエンドナノ~ネ」

 

場 歯車街(ギア・タウン)

遊斗 モンスター1 伏せ0 手札4 LP1000

クロノス モンスター1 伏せ1 手札1 LP4000

 

「エンドフェイズ除外されていたなのはがフィールドに戻ってくる。俺のターン!」

 

このドローで勝ち負けが決まるわけではないが、中々いい引きだと我ながら思う。

 

「俺はフィールド魔法。魔法都市ミッドチルダを発動!」

 

フィールド魔法ゾーンにカードをセットした瞬間、歯車の街が崩れ去って行き、青空の元に高層ビルが建ち並び、誰もがイメージするであろう未来都市に変わった。名前の“魔法都市”とはいったいどこから来たのか? って思う景色だろう。というかずっと使っている俺でも思う。

 

「にょ!? です~が、破壊された歯車街(ギア・タウン)の効果~で、デッキから古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)をデッキから特殊しょうか~ん」

 

さっきの十代とのデュエルで見知らぬフィールド魔法がトラウマになっているのか、クロノス先生は奇妙な声を上げる。・・・・てか良く考えたらこのデュエル始まる前からずっと奇妙な声だった。

しかも周りからは、クロノス先生の切り札が並んだからか、俺の負けが決定したような事になってるし。

 

「このカードはリリカルモンスターが通常召喚される度にカウンターが乗る。更に一ターンに一度、フィールドにあるリリカルカウンターの移動が出来る」

「な、なんです~か。ただの見せかけの効果ナノ~ネ」

「この流れを見た後でもそう言えますかね? まずはなのはの効果により、このカードに乗っているカウンターを一つ取り除き、フィールドの魔法・罠を破壊! 俺が選択するのは当然クロノス先生の伏せ! 行けなのは!」

『ディバインシューター!』

 

LC高町なのは1→0

 

なのはの手から桃色の球体が三つ出現し、クロノス先生の伏せに目掛けて直進し、伏せカードを破壊した。破壊したカードは奈落の落とし穴。

あぶね~、破壊してなかったら結構やばかった。

 

「俺はLSフェイト・テスタロッサを召喚!」

『ハァ!』

 

LSフェイト・テスタロッサ ☆4/光/魔法使い/A1800・D500

 

今度現れたのは金髪をツインテールにした可愛らしくもクールな女の子。着ている漆黒の服は女の子が着るには露出度が多く、太ももや腕の色白居肌が、小さな女の子とは思えない色気を出している。

 

金髪幼女ォォォ!

ハァハァ・・・・

なのはちゃんとフェイトちゃん! とっても可愛いッス!

 

「・・・・フェイト自身とミッドチルダの効果で、それぞれ一個ずつカウンターが乗る。そしてミッドチルダの効果でフェイトのカウンターをミッドチルダに乗せる」

 

LCフェイト0→LCミッドチルダ2

 

「そして自分フィールド上にフェイト・テスタロッサが存在する時、フェイト以外のリリカルカウンターを取り除く事でデッキからアルフを特殊召喚!」

『ガルルル!』

 

LSアルフ ☆4/地/獣/A1600・D1000

 

LCミッドチルダ2→1

 

デッキからオレンジ色の毛をして額に青い宝石が付いている、大きな狼が現れた。よし! これでアイツを呼ぶ事が出来る!

 

「俺は融合デッキに眠るモンスターの効果により、フェイトとアルフを融合! 融合召喚! 黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LS黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ☆8/光/魔法使い/A2800・D500

 

フェイトとアルフがウニャウニャとねじ曲がる空間で一つになった瞬間、中から大人になったフェイトが現れた。子供の頃の恰好より露出度が少なく、背中には白のマントを付けており、より強く凛々しくなった。その美しさに、この会場にいるほぼ全ての人間が見惚れる中、後ろにいる十代だけは目をキラキラと輝かせていた。

 

「すっげー! 融合無しの融合か!」

「ああ、普通の融合みたいに手札のモンスターを融合素材には出来ないが、手札消費が少ないんだ」

 

それにこっちの融合方法だと、デッキスペースにも余裕が出来て、融合そのものは勿論、融合専用のカードを入れなくていい。父さんはこの融合方法に似た、新たな召喚方法を研究しているらしい。

 

「行きますよクロノス先生!」

「な~にを馬鹿なこと~を! 私の古代(アンティーク)機械(ギア)巨人(ゴーレム)の攻撃力は3000!」

「フェイトの効果! このカードの正面にモンスターが存在する時、攻撃力が700アップ!」

 

これってかなり癖のある効果だよな。これに似た効果のってエーリアン・ベーダー、突撃ライノス、ストーム・シューターぐらいな気が・・・・。まあフェイトはそいつらとは違って、移動効果がかなり強いが。

 

黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンA2800→3500

 

「にょにょ!?」

「バトル! フェイトで古代(アンティーク)機械(ギア)巨人(ゴーレム)を攻撃!」

『トライデント・スマッシャー!』

 

古代(アンティーク)機械(ギア)巨人(ゴーレム)の拳を避けたフェイトは空に飛びあがり、手に持った機械の斧・バルディッシュで、目の前に展開した魔法陣の中心を貫通させる。その瞬間、バルディッシュの先から黄色い砲撃が出現し、古代(アンティーク)機械(ギア)巨人(ゴーレム)を呑み込み、破壊した。

 

「オーウ! 私の古代(アンティーク)機械(ギア)巨人(ゴーレム)がー!」

「俺はこれでターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 フィールド魔法 伏せ無し 手札3 LP1000

クロノス モンスター1 伏せ無し 手札1 LP3500

 

「ワタシのターン。確か~に、中々強力な効果です~が、目の前にモンスターがいないと2800。強化支援メカ・ヘビーウェポンを召喚し、効果で古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)に装備、攻撃力を500アッ~プ。

古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)で金髪小娘に攻撃!」

 

そう、クロノス先生の言う通り、フェイトの弱点はそこだ。効果さえ気付けば後出しのモンスターや、さっきの様に上級が並んだ状態に弱い。おまけに古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)はなのはがいる前のマスにいる。

だが・・・・。

 

「甘いですよクロノス先生! 攻撃宣言前に墓地から罠発動!」

「な!? 墓地から罠発動だって!?」

「墓地から!?」

「墓地から罠です~と!?」

「ぼぼぼ、墓地から罠だとぉ!?」

 

期待通りのリアクションありがとうございます。

 

「墓地のソニック・ムーブをゲームから除外する事で、もう一度効果を使う事が出来る! 俺は高町なのはを除外!」

「? バトル続行ナノ~ネ」

「フェイトの効果発動! 一ターンに一度、自分の空いているモンスターゾーンに移動する事ができる! 古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)の前に移動! これにより攻撃力3500!」

「なるほ~ど。自らモンスターを除外し攻撃力を上げ~る。ドロップアウトとは思えないプレイング。ですが甘い! ワタシはダメージステップにリミッター解除発動! これにより古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)の攻撃力は二倍」

「リ、リミッター解除!?」

 

古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)A7000 VS 黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンA3500

 

「ッツ!? ダメージ計算時、手札の夜天の守護獣ザフィーラを捨てる事によりダメージを0にする! 更に無効にした数値が自分のライフポイントを上回っていた場合、デッキからカードを1枚ドロー!」

「ム~、ターンエンド。リミッター解除の効果で古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)は破壊されます~が、ヘビーウェポンを破壊する事で破壊を無効にしま~す」

「同じくエンドフェイズなのはが帰ってくる」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1  伏せ無し 手札3 LP1000

クロノス モンスター1 伏せ無し 手札0 LP3500

 

終ったな。

良くここまで頑張った。

3000のモンスターを二回も倒せるわけがない・・・・。

 

おいおい、次のドローで俺の手札は4枚だぞ。とは言えこの手札だと3000打点を越えられないのも事実。

・・・・まあドローしてから考えるか。かの有名人もそんな事を言いながらドローしていた。

 

「ドロー! ・・・・残念ですがクロノス先生、俺の勝ちです!」

「やれるもんならやってみなさ~い!」

「俺はミッドチルダのカウンターを一つ取り除き、デッキからユーノを特殊召喚! ユーノもアルフと同じく、なのはがいるとき特殊召喚可能なモンスター」

 

LSユーノ・スクライア ☆4/風/魔法使い・リリカル/A500・D1600

 

「ん? さっきのターンカウンター二つあったから狼とそいつ、どっちも呼べんじゃねえのか?」

 

後ろから十代の質問が来た。うん、確かに説明してないと舐めプだと思われるな。

 

「アルフもユーノも効果を使ったターンは、デッキから特殊召喚できないんだ」

「なるほど~」

「さて、行きますよ! なのはとユーノを融合! 現れろ! A(エース)O(オブ)A(エース)高町なのは!」

 

LSA(エース)O(オブ)A(エース)高町なのは ☆8/光/魔法使い/A1000・D3000

 

フェイトと同じように、大人になったなのはが現れた。白のロングスカートや、持っている杖は変わっていないが、彼女の成長はソリッドビジョンでも分かる。体つきは勿論、彼女の取り巻く空気が、子供から大人へと変わっている。

 

「な、何を出すかと思え~バ、攻撃力たったの1000」

「レベル8の1000だけあって、効果は強力ですよ! なのはの効果発動! 守備表示のこのカードを攻撃表示にする事によって、デッキからレベル5以下のリリカルシリーズを手札に加える。俺は夜天の将シグナムを手札に加え、そのまま召喚!」

 

ミッドチルダLC0→1

 

LS夜天の将シグナム ☆4/炎/魔法使い/A1800・D1400

 

このカードは召喚した時にリリカルカウンターを置く効果はないが、それでも十分強い。特にコイツのおかげでな!

 

「そして“夜天”と名のついたモンスターが存在する時、フィールドのカウンターを一つ取り除く事で、リインフォースⅡは特殊召喚できる!」

 

LS祝福の風リインフォース(ツヴァイ) ☆3/風/魔法使い/A500・D500

 

「シグナムとリィンフォースを融合! 出でよ! 祝福の騎士シグナム!」

 

先程のシグナムさんは桃色の髪をしていたが、リインフォースⅡと融合した事によって 薄い紫の髪をした騎士となった。本人達曰く、これは融合ではなくユニゾンだそうだが、相手を混乱させてしまうかもしれないので、ユニゾンとは言えない。

 

LS祝福の騎士シグナム ☆7/風/魔法使い/A2700・D2000

 

「祝福の騎士シグナムが融合召喚に成功した時、自身にリリカルカウンターを乗せる。そのリリカルカウンターを取り除き効果発動! 一ターンに一度、自身のカウンターを取り除く事でフィールドにいるモンスター一体の攻守を0にする」

 

シグナムさんの手から、ユニゾンしているツヴァイが出した氷の風が出現する。その氷風は古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)を纏う様に吹き、徐々に巨大な機械を凍らせていく。

 

「ワ、ワタシの古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)が・・・・」

 

クロノス先生の前には氷漬けにされて攻守が0になった自分のモンスターと、俺の場にいる2700と1000のモンスター。

 

「バトル! なのはで古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)を攻撃!」

『アクセル・シュート!』

 

AOA高町なのはA1000 VS 古代(アンティーク・)機械巨竜(ギアガジェルドラゴン)A0

クロノスLP3500→2500

 

「シグナムでダイレクトアタック!」

 

祝福の将シグナムA2700

クロノスLP2500→―200

 

「『『紫電一閃!』』」

 

業火を纏った剣、レヴァンティンを持ったシグナムさんは、クロノス先生に容赦なく叩き斬った。一瞬ソリッドビジョンを忘れてしまいそうな程に気迫ある攻撃に、クロノス先生はどういう原理を使ったのか「ペペロンチ~ノ!」と叫びながら後ろに飛んで行った。

一応ソリッドビジョンですよ~。

 

『ふん。遊斗をドロップアウトと言った返しだ』

「ありがとうございますシグナムさん。でもやり過ぎですよ」

 

俺は精霊となったシグナムさんに苦笑しながら言う。あ、あの気迫はわざとだったのか・・・・。正直味方の俺でも怖かった。

 

『最後の紫電一閃。上手く合わさって良かったですよ』

「最後の決め技は揃えたいからな」

 

シグナムの背中から現れたのは、ツヴァイ。精霊の状態でも小さいのはデフォルトで、妖精サイズの大きさ。一応小学校3・4年生程度に大きくなる事はできるみたいだが、その状態の方が落ち着くらしい。

 

「あっ、クロノス先生、楽しいデュエルでしたよ! ガッチャ!」

「グヌヌ~!」

「へへっ、良いデュエルだったぜ遊斗。ところでその二人はカードの精霊か?」

 

デュエルスペースから出た途端、十代は本来なら誰もいない俺の背中の空間を指した。

まさか精霊が見えるとは・・・・。今まで精霊が見える人と会ったこと無かったので、かなり驚きだ。

 

「さっきので知ってると思うけど、ピンク髪の女性がシグナムさんで、小さいのがリインフォース(ツヴァイ)だ。十代って精霊が見えるんだな」

「ああ。それより遊斗! 今からデュエルしようぜ!」

 

こいつ、マジで言ってるのか!? いや、確かに俺もみんなから良くデュエル馬鹿と呼ばれるし、実際さっきの試験も楽しんでデュエルと思えた。それでも疲れることは疲れるし、今日は勝利の余韻に浸りたい。

 

「いや、流石に疲れたし今日は帰る。俺も十代も間違いなく入学できるだろうから、入学したらデュエルしよう」

「分かった! じゃあまたな!」

 

俺は十代と別れ試験会場を出ると直行で家に帰り、確定した入学を祝って父さんと豪華な物を食べた。

その後は夜遅くまで、精霊達(みんな)と一緒にワイワイと盛り上がった。

 

 

 

 




こんな感じですがどうでしょうか?

デュエル以外はササッと飛ばす感じでやりました。精霊の数が物凄く多いので、主人公であるなのはとフェイトをメインに出したいと思います。または今回のシグナムとツヴァイの様に軽く出すかです。兎に角全員出すと、書いている自分でも混乱すると思うので、なるべく避けたいと思います。


また、これは絶対ではないのですが、可能な限り、強欲な壺・天使の施し・天よりの宝札などのインチキ効果カードの使用は控えたいと思います。(重いとは言え、主人公は十分インチキですので、主人公は使用不可)

オリカの細かな効果などは、後書きに書くか、本文中に書くか、一話まるまる使って一気に説明するか、考え中です。



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第二話

第一話での感想をありがとうございます。
特にカードやライフ、フィールドでの事は指摘されなかったので、第一話と同じ感じでやります。
それと今回からあとがきにオリカの紹介をしたいと思います。前回は伝える事が多いので、今回で前回のオリカの分も紹介します。
遊戯王効果って結構大変ですね・・・・。



SIDEスカリエッティ

 

遊斗がデュエルアカデミア実技試験をクリアして数日後、私はいつも通り研究室にいた。研究内容は次元漂流と並行世界について。

 

私は数多ある次元世界の中の、第一番世界ミッドチルダでとある事件を起こした犯罪者だ。まあ悪役が捕まるのはどこの世界でもお決まりで、私の野望は叶うことなく、犯罪者として逮捕された。それから10数年後、突如次元震が起きて私はこの世界に飛ばされた。

第97番管理外世界、地球。天才である私はこの世界の存在を知っていたので、すぐに自分が飛ばされた世界が分かった・・・・筈だった。だがこの地球は、第97番管理外世界ではなかった。PT事件の舞台となった海鳴りなんて地名はなく、宗教的レベルでデュエルモンスターズというカードゲームが盛んな世界だった。

 

刑務所からそのままの状態で飛ばされたのだ。衣食住何も無い私は、非常に困っていた。

そんな時出合ったが捨てられた赤ん坊、遊斗だ。赤ん坊の遊斗はカードの首飾りをしていた。私はそのカードを奪い取り、カードショップで売ってもらうと、一枚の紙切れがとんでもない金になって帰ってきた。

私に善意という感情は無いが、私の命を救った赤ん坊を見殺しにするのも目覚めが悪い。仕方なく私は赤ん坊を引き取り、金を上手く使い遊斗を育て、今では有名な科学者として生きている。

 

「クックック、世の中何が起きるか分からないものだ。なあ、フェイト・テスタロッサ執務官」

『本当ですね。あなたが何故私達を作ったのかも、あなたのその無限の欲望がカードゲームに行く事も。私達がこうして話しているのも』

「君達を作ったのは、遊斗に言った通り、最強の軍団を遊斗に上げたかった。それだけだよ」

『しかし何故遊斗に精霊が見えると言わないのです?』

「変態と思われても一応私は遊斗の父親だからな。もっと大人になるまで犯罪者と言う事は教えたくない。それにそうした方が後々面白いからな」

『・・・・私達はあなたの世界の私達と同じ記憶、感情、能力を持っていますが、カードの精霊である事は事実。私達を作ったあなたがそういうのであれば、不本意ではありますが遊斗にはだまりますよ』

「助かるよ」

 

 

 

SIDE遊斗

 

「遊斗、デュエルアカデミアから届き物だ」

「ホント!?」

 

下から聞こえる父さんの声に、俺はでかい声で返事した。

届いたのは多分学校の制服だと思う。デュエルアカデミアはクラス分けの様に寮が三つある。それぞれの寮は、三枚の神のカードと言われるカードから、それぞれ名前と色をもらっている。

赤い制服のオシリスレッド。黄色い制服のラーイエロー。青い制服のオベリスクブルー。

寮はクジで決まっている訳ではなく、実技と筆記の試験によって変わるらしい。中等部から進学する優秀な生徒はオベリスクブルーで、受験成績優秀者はラーイエロー、成績が悪ければオシリスレッド。

 

「受験番号7番で成績優秀かつ、最高責任者に勝った俺はラーイエロー。ひょっとしたら異例でオベリスクブルーなんて事も・・・・」

「ククク、そうだといいな」

「なんだよ父さん? まさか父さんは俺がオシリスレッドだとでもいい・・たい・・・・」

「ククク・・・・」

 

この広いリビングに、父さんの馬鹿にするような笑い声だけが響いた。

 

 

 

 

「なんで俺がオシリスレッドなんだ・・・・」

『デュエル中の態度と思うよ。教導官の私から言わせてもらうと、いくら楽しんでるとは言え、試験であの態度はないと思うな。最後はガッチャ? だし』

『それもあるけど、多分あの先生が裏で何かしたんだと思うよ。デュエルで結果が出せなくても成績上位だったら入学はできるみたいだし』

 

クロノス先生がねぇ・・・・。まあプライドが高そうだし、ドロップアウトって言ってたし。なのはさんの意見もフェイトさんの意見も正しいんだろうな・・・・。

 

『というか、前から言ってるけど私達の事さん付けするのって変でしょ? 私達は遊斗の僕みたいなものだし』

「いや、それでも年上のお姉さん相手に呼び捨てはちょっと・・・・。デュエル中は流石にさん付けできないけど」

『シグナムとかヴィータだと、一回さん付けしてしまうと戻れないかもね』

「確かに・・・・」

 

俺の背中でプカプカと浮くなのはさんとフェイトさんと話していると、周りから奇異の目で見つめられる。あっ、またやってしまった・・・・。

精霊の声は普通の人には聞こえなく、傍から見れば俺は一人で会話している頭の可哀そうな高校生にしか見えない。この所為で小中学校、ずっと一人ぼっちだった。

俺は逃げるようにこの場を立ち去り、学校では気をつけようと肝に命じながら、デュエルアカデミア行きのボートに乗った。

 

 

 

 

小学校中学校にいる時、月一、あるいは週一で思っていたことだが、校長の話はとにかく長い。それは高校も同じようだ。というか高校になってますます酷くなり、鮫島校長の話は永遠に続いていた。十代なんて立ちながら寝てるし・・・・。

だが産まれてから15年。何の対策も無しに今まで校長の話を聞いていた訳ではない。毎回校長の話になると、精霊(みんな)が賑やかにしてくれる。流石に会話に混じる事は出来ないが、あらかじめ決めておいたサインや、首を軽く振る等で最低限のコミュニケーションは出来る。

 

「――――以上で私の話は終わりです」

 

ほら、こんな風に、校長の話が終った途端ため息をつく事も背伸びする事もしない。

見えない者が見えると、結構ハプニングに巻き込まれるってイメージがあるが、こんな風に便利な事もある。

で、それぞれの寮に解散する事になったはいいんだが。

 

「遊斗! デュエルだ!」

「ぼ、僕もあのカード達を見たいッス!」

 

レッド寮に向けて歩く前に、十代と、水色の髪をして眼鏡を掛けた背の低い男が目の前にいた。

うん、十代は純粋にデュエルを楽しみたいんだな。俺も十代とデュエルがしたい。だが隣の男はどう考えても幼いなのはとフェイト目当てだ。

 

「十代、とりあえず寮に付いた後。で、君の名前は?」

「丸藤翔ッス! 十代のアニキから遊斗君の事は聞いたッス」

 

へ~、クロノス先生程じゃないけど、面白い口調だな。

 

「アニキって?」

「俺の入学試験での勇姿に惚れ込んだらしいぜ」

 

だからアニキか。一瞬本当の兄弟かと思ったけど、よく考えたら名字も顔も違うし、試験の時も十代は一人だったな。

 

「じゃあ早くレッド寮に行こうぜ! 遊斗とデュエルがしてえ!」

「ちょっと待ってよアニキ~!」

 

無邪気にレッド寮まで走って行く十代と、それを追いかけようと運動神経が悪そうな体で走る翔。

 

『早くも友達二人だね』

「ですね。そういえばフェイトさんの入学式ってどんな感じなんですか?」

『中学校は遊斗とあんまり変わらないけど、小学校は入学式じゃなくて転入』

『あの時のフェイトちゃんってまだ人見知りでね。初々しくて可愛かったよ~』

『ちょっとなのは!?』

 

あ~、聞くんじゃなかった。また始まったよこのバカップルのイチャイチャが・・・・。彼女がいない俺への当てつけですか? まったくどうして精霊同士のイチャイチャに主の俺が悲しまなきゃならないんだよ。

 

 

 

 

「あっ、遅いぜ遊斗!」

「悪い悪い。ってかお前が速いんだよ。荷物置いたらすぐ準備する」

 

と言っても生活必需品の荷物は届いている筈なので、今手に持っている物だけなんだが。俺の部屋は十代達の隣で、運良く一人部屋。これで精霊達と家と同じように話す事が出来る。十代達の部屋より狭いが、一人部屋なので文句は言わない。

荷物を適当に置いた後、デュエルディスクをセットし、十代が待っている外に出る。

 

「・・・・ってかレッド寮って凄いボロいな。部屋も狭かったし」

「そうか? 味のあるいいところじゃん」

 

味って・・・・。十代って実は渋いのか? 同い年である俺だが、十代の感性が全く分からない。翔が苦笑していることから、少なくとも三人の内二人はボロだと思ってる。

 

「じゃあ行くぞ十代!」

「ああ! あの試験からずっとこの時を待ってたんだ!」

「「デュエル!」」

「先攻は貰うぞ! 俺のターン、ドロー!」

「あっ!」

 

フフフ、先に先攻と言った方が勝ち。それがデュエルの先攻後攻の決め方。

さて、手札には悲しい事にアルフがいる。フェイトがいるときデッキから特殊召喚できる強力な効果を持っているが、通常召喚する場合裏側守備表示でしか出せない。そうなると展開が遅くなってしまうので、今回アルフの出番はないだろう。

 

「永続魔法・魔力高炉を発動! 発動後このカードに二つリリカルカウンターが乗り、このカードのリリカルカウンターが0になった時破壊される。因みに自分のエンドフェイズ時にこのカードに乗っているリリカルカウンターの数×500のデメリット付きだ」

 

LC魔力高炉2

 

デメリットが痛いように聞こえるが、発動ターンに一個は必ず使うので、実質500ダメージ。このデッキのエンジンを掛けるには、安すぎるぐらいだ。

 

「高町なのはを召喚!」

 

A500・D1700 

 

「キター! 栗色の可愛子ちゃんッス!」

「・・・・」

「だ、黙るッス」

 

翔は俺の視線に耐える事が出来ず、テンションを下げて静かになった。ったく・・・・。

 

「そしてデッキからユーノの効果発動。魔力高炉のカウンターを一つ取り除きデッキから特殊召喚!」

「おお! 早速出るか!」

 

LC魔力高炉2→1

 

やっぱり融合使いには相手が使う融合でもかっこいいんだろう。十代のキラキラした目を見ると、こっちまで嬉しくなってくる。本当にデュエルを楽しんでいる。

 

「お望み通りの融合だ! なのはとユーノを融合し、AOA高町なのはを召喚!」

 

A1000・D3000

 

攻撃力1000かつ二体の融合でも、このカードの強さには使っている自分でも驚く。効果を使うと攻撃表示になるので、何かしら守りのカードを伏せなければいけないけど。

 

「なのはの効果! 守備表示のこのカードを攻撃表示にすることにより、デッキからレベル5以下のリリカルモンスターを手札に加える。俺が手札に加えるのは八神はやて。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、魔力高炉のデメリットにより500ダメージを受ける」

 

場 遊斗

モンスター1 伏せ2 LP3500 手札4

 

「ドロー! 早速行くぜ! 融合発動!」

 

ッツ! 十代も初端から融合かっ! さすが融合使い。

 

「手札のフェザーマンとバーストレディを融合! 現れろ、マイフェイバリットカード! E・HEROフレイム・ウイングマン!」

 

A2100・D1200

 

フレイム・ウイングマン。三枚消費で2100はお世辞にも強いとは言えないが、そのバーン効果をくらうとライフポイントの半分は持って行かれる。クロノス先生もライフ3000を一気に持っていかれて負けた。序盤から終盤までライフアドバンテージを稼げるモンスター。

 

「バトル! フレイム・ウイングマンでAOA高町なのはを攻撃! フレイム・シュート!」

 

ですよね~。伏せを警戒して攻撃してこないかもしれないと、一瞬期待したが、そんな事はなかった。

 

「あ~も~、なんかデジャブ! 罠発動、ソニックムーブ!」

「そのカードは!」

「ご存じの通り。なのはをゲームから除外し、エンドフェイズにカウンターと一緒に帰ってくる。まあなのはにはカウンターは載ってないんだが」

 

俺を守るモンスターがいなくなった事で、フレイム・ウイングマンが俺の目の前まで来て、右手の炎を吐きだす発射口を俺に向け、炎を吐きだした。こ、怖ええええ! お前本当にHEROなのか? 

 

LP3500→1400

 

「どうして除外しちゃったんスか? ダメージを減らせたのに」

「あのなぁ、フレイムウイングマンみたいな効果の奴は、戦闘と効果を合わせたらフレイムウイングマンの攻撃力と同じダメージになるんだ」

「「へ~」」

 

十代、お前もか! と言う事は、毎回毎回戦闘ダメージと効果ダメージを計算していたのか? それはそれで凄い気がする。

ゴホンと咳払いすると、十代は気を取り直したのか、バックを二枚伏せてターンエンドした。

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP1400

十代 モンスター1 伏せ2 手札1 LP4000

 

う~ん、相変わらずライフ差が出るな・・・・。まあザフィーラの事を考えるとある程度ピンチだとハンドのアド損が無くなるからいいんだけど。

 

「ドロー! なのはを守備にして効果。デッキから夜天の癒し手シャマルを手札に加える」

「これで遊斗くんの手札は6枚・・・・」

「八神はやてを召喚!」

『ん~、よっと』

 

LS八神はやて ☆5/闇/魔法使い/A2000・D1700

 

丸の帽子とジャケットは白で、その下に黒のシャツ。スカートも同じく黒だが、スカートにははやてが持っている杖の色と同じ、金色の装飾品が付いている。

新しい美少女の登場の所為か、翔が手で口を押さえて悶えている。静かにしているつもりのようだが、正直さっきよりもうるさい。十代は十代で「どうしてレベル5のモンスターを生贄なしで」って、デュエルに夢中だし。

 

「はやてはフィールドのリリカルカウンターを生贄素材とする事ができる。そして自身の効果でカウンターが一つ乗る」

 

LC魔導高炉1→0→破壊

LC八神はやて1

 

「そしてはやてが存在する時、場のカウンターを取り除く事で、さっき手札に加えたシャマルは特殊召喚する事が出来る! 来い、シャマル!」

『は~い!』

「この召喚方法で特殊召喚に成功した時、自身にカウンターを乗せる」

 

LS夜天の癒し手シャマル ☆4/水/魔法使い/A700・D1800

 

LC八神はやて0→夜天の癒し手シャマル1

 

「あ~、さっきからカウンターが行ったり来たりで分かりにきぃ」

「十代がプレイしてるわけじゃないからそんな考えるなよ。そして手札から装備魔法・闇の書を発動し、はやてに装備!」

 

杖を持っている手とは反対の手に、カード通りの本が出現した。やっぱりはやてが持っていると一番しっくりくるな。この装備って一応装備対象の縛りがないからな。

 

「闇の書の効果で攻撃力が300アップ。更にはやての効果、フィールドのリリカルカウンターを取り除く事でこのターン、二回攻撃が可能! バトル、はやてでフレイムウイングマンに攻撃!」

「これを全部受けたらアニキのライフは0になってしまう!」

「そうはさせない。ヒーローバリア発動!

自分フィールド上にE・HEROと名のついたモンスターがいるとき、相手の攻撃を一度だけ無効にする!」

 

ヒ、ヒーローバリア!? いくらヒーローデッキだからって、それはないだろ! 上位互換が余りにも多すぎる為、全然使われないカード。フリーチェーンって所が唯一の救いなのかもしれないけど、威嚇する咆哮、和睦の使者でOKな、デュエルモンスターズにはよくある可哀そうなカード。

 

「だが止められるのも一回だけ。続行、はやてでフレイムウイングマンを攻撃!」

「まだだ! リバースカードオープン、融合解除! フレイムウイングマンをフェザーマンとバーストレディに分裂」

 

フェザーマンD1000 バーストレディD800 

 

『ディアボリック・エミッション!』

 

はやての杖、シュベルトクロイツから黒の球体が出現し、それを発射させるとフェザーマンを包み込んで爆発させた。更になのはさんの攻撃でバーストレディを破壊、微力ながらシャマ(ねえ)の攻撃で十代のライフを削った。

 

十代LP4000→3300

 

「闇の書の効果。装備モンスターが戦闘によりモンスターを破壊した時、このカードにリリカルカウンターを一つ置く。更にシャマルの効果で、フィールドに一つカウンターを乗せる事が出来る。闇の書に乗せ、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LC闇の書2

 

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札2 LP1400

十代 モンスター0 伏せ0 手札1 LP3300

 

確かにライフ差はあるが、フィールド、手札のアドバンテージは俺が上だ。十代がどんなドローをするかは分からないが、得意の融合も手札が2枚ではどうする事も出来ない筈。

 

「へへっ、やっぱ強えな遊斗!」

「ありがとな。俺もお前とのデュエル楽しいぜ」

「こんなに強え奴と戦ってるって思うと、ワクワクが止まらねえ! ドロー! 俺はH・HEROバブルマンを召喚! 

このカードが召喚に成功した時、このカード意外にフィールドに何も無い場合デッキから二枚ドローできる」

 

マジかよその効果!? 強欲な壺とか天使の施しとかあるから、そんなカードがあるなんて聞いた事もなかったけど、かなり強いな。

因みに俺はそこら辺の強力なブーストカードは入れていない。単純に価格が高いのもあるけど、やっぱり父さんが作ってくれたカードだけでデッキは回したい。

さて、手札を補充した十代は何をする?

 

「俺は融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動! 効果で自分の墓地の融合と、融合素材モンスターを一体手札に加える。俺は融合とフェザーマンを手札に加える」

 

凄いドロー力だな・・・・。二枚しかなかった手札はあっという間に四枚に増えている。

 

「融合発動! 手札のスパークマン、フェザーマン、場のバブルマンを融合!」

「三体融合か!」

「現れろ! E・HEROテンペスター!」

 

A2800・D2800

 

「結構でかいのが来たな・・・・」

「バトル! テンペスターでAOA高町なのはを攻撃!」

「させるか! 墓地から罠発動、ソニックムーブ、効果でなのはを除外!」

「だが夜天の癒し手シャマルを攻撃してもライフを0にできる! カオステンペスト!」

「手札の夜天の守護獣ザフィーラを捨てる事により、ダメージを0にする。更に0にした数値が自分のライフを上回っていた時、デッキから一枚ドローする」

 

シャマ姉は破壊されてしまったけど、闇の書のカウンターもあるし、十代の手札はたったの一枚。かなり有利なのには変わりがない。

 

「ちぇ、俺はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札2 LP1400

十代 モンスター1 伏せ1 手札0 LP3300

 

「ドロー! 俺はなのはを守備にして効果「それはさせないぜ! 罠発動! ヒーロー・ブラスト」何!?」

「墓地の通常HEROを手札に加え、そのHEROより攻撃力以下の攻撃力のモンスターを破壊する! 俺はスパークマンを手札に加え、AOA高町なのはを破壊!」

「ック・・・・」

 

スパークマンの手から出された光が、なのはを感電させ爆発と共になのはを破壊した。

このターンあるカードをサーチして、はやての攻撃力を上げてカウンターを溜める予定も狂ってしまった。だが・・・・。

 

「俺は祝福の風リインフォースⅡを通常召喚」

「? そいつはシグナムってモンスターとの融合素材なんじゃ?」

「残念だがツヴァイははやてと夜天の騎士達、それぞれと融合ができる。行くぞ! 場のはやてとリインを融合! 出でよ、夜天の主・八神はやて」

 

LS夜天の主・八神はやて ☆8/闇/魔法使い/A2100・B2000

 

なのは、フェイトと同じく、はやては大人になって登場した。彼女が着ていた服は、子供の頃と変わっていないが、彼女の目と髪は変わっていた。栗色の髪は薄い白銀に変わり、青い瞳は少し薄くなった。

 

「はやての効果! 融合召喚に成功した時、このカードにカウンターを2つ置く。更にその数×300攻撃力がアップする」

 

夜天の主・八神はやてA2100→2700

 

「でもテンペスターの方が攻撃力は上だ」

「甘いな十代。墓地に送られた闇の書の効果発動。このカードが墓地へ送られた時、その呪われたシステムにより、フィールドのモンスターに装備しなければならない。俺ははやてに装備する」

 

夜天の主・八神はやてA2700→3000

 

夜天って言っておきながら闇の書を持つってのもなんか変な話しだけど、これも効果なので仕方が無い。

 

「攻撃力3000!?」

「バトルだ! はやてでテンペスターを攻撃!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

試験の時に使ったシグナムさんの氷なんて目じゃないくらいの寒さを纏った魔力の氷弾が、テンペスターを容赦なく呑み込む。災害のHEROも夜天の主であるはやてには勝てなかったのか、無残にも氷漬けにされて破壊された。

 

十代LP3300→3100

 

「テンペスター!」

「更に戦闘で破壊した事により、闇の書にカウンターが一つ乗る。一枚カードを伏せてターンエンド」

 

LC闇の書1

 

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札1 LP1400

十代 モンスター0 伏せ0 手札1 LP3100

 

「俺の場には3000のモンスターと二枚の伏せ。対するお前はさっき手札に加えたスパークマンのみ。これでどうやって勝つつもりだ?」

「へへっ、俺がHEROを、このデッキを信じている限り、俺は奇跡を呼び続ける! 俺のターン、ドロー!」

 

・・・・なるほど、デッキを信じればデッキが答えてくれる、か。俺は十代やクロノス先生の様に、手札を全部消費してそのターンに全力を尽くすってプレイングをする勇気がないから、ドローするカードに運命を掛けた事が余り無いが、よく考えて見るとこんな重いデッキを回せるのは、十代の言うこのデッキを信じている、からかもしれない。

 

「ッフ、いいぜ十代! お前の奇跡を見せて見ろ!」

「おう! 俺は死者蘇生を発動! 墓地からバブルマンを特殊召喚! 効果で二枚ドローする! スパークマンを召喚!」

 

? まさか十代は下級のHEROで突破するつもりなのか?

 

「手札から魔法R―ライトジャスティス発動! 自分フィールドのHEROの数だけ魔法・罠を破壊する! 俺が破壊するのは遊斗の伏せ2枚!」

 

ッツ! 攻撃反応とダメージ無効の罠が!

 

「手札からミラクルフュージョンを発動! 場か墓地のHEROを融合させる」

 

墓地融合だと!? なるほど、手札消費の激しいHEROには最高のカードってことか!

 

「墓地のフレイム・ウイングマンと、場のスパークマンを融合! 現れろ、E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン!」

「? 攻撃力2500?」

「いや、シャイニング・フレア・ウイングマンは、墓地にいるHEROの力を受け継ぎ、墓地のHERO×300ポイント攻撃力が上がる。」

 

十代の墓地にいるHEROはフェザーマン、バーストレディ、テンペスターの三枚。

 

「攻撃力3400・・・・」

「バトル! シャイニング・フレア・ウイングマンで夜天の主・八神はやてを攻撃! シャイニング・シュート!」

 

はやては反撃に出るものの、シャイニング・フレア・ウイングマンの超火力により惜しくも負けてしまい、その衝撃が俺を襲う。

 

E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン3400 VS 夜天の主・八神はやて3000

 

LP1400→1000

 

「負けか・・・・」

 

目の前に現れたシャイニング・フレア・ウイングマンを見て、ポツリとそう呟いた。薄々感づいていたが、やはりこのモンスターは融合素材のフレイム・ウイングマンの効果を受け継いでいるようだ。

十代の輝くHEROが俺の視界を、数秒間光だけの世界に包み込んだ。

 

LP1000→-1100

 

「あ~、負けた~!」

「ガッチャ、楽しいデュエルだったぜ」

 

なんか久々に負けた気がする。久しぶりに敗北を味わって思ったが、やっぱり悔しい。けど同時に凄く面白い。

次こそは負けた相手に勝とうと、今よりもっと今日よりずっと強くなりたいと心の底から思う。

 

「俺も楽しかった。次は絶対負けないからな」

「ああ、楽しみにしてるぜ」

「二人とも凄いデュエルだったッス! とっても感動しましたッス」

「そう言えば翔、お前見てたんだな」

「ひ、酷いッスよアニキ! 僕一生懸命応援してたんスから!」

「デュエルに夢中になってたんだよ。俺も翔の事完璧に忘れてたし」

「二人とも酷いッスーッ!」

 

これから卒業までの三年間、面白い高校生活になりそうだ。

 

 

 




LS(リリカルシリーズ)高町なのは ☆4/光/魔法使い/A500・D1800
このカードが召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。このカードに乗っているLCを1つ取り除く事で、フィールド上の魔法・罠カード一枚を選択して破壊する。

LSフェイト・テスタロッサ ☆4/光/魔法使い/1800・D500
このカードが召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。このカードに乗っているLCを1つ取り除く事で、相手フィールド上のモンスターの表示形式を変更する。

LSユーノ・スクライア ☆4/風/魔法使い/A500・D1600
自分フィールド上に「高町なのは」が存在する場合「高町なのは」以外の自分フィールド上に存在するLCを取り除くことで、デッキから特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したターン、自分はデッキから特殊召喚することが出来ない。このカードは通常召喚する場合裏側守備表示でしか出せない。

LSアルフ ☆4/地/獣/A1600・D1000
自分フィールド上に「フェイト・テスタロッサ」が存在する場合「フェイト・テスタロッサ」(以下ユーノと同文

LSA(エース)O(オブ)A(エース)高町なのは ☆8/光/魔法使い/A1000・D3000
「高町なのは」+「ユーノスクライア」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
1ターンに一度、自分フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードを攻撃表示に変更し、自分のデッキからレベル5以下の「リリカル」シリーズを手札に加えることができる。

LS黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ☆8/光/魔法使い/A2800・D500
「フェイト・テスタロッサ」+「アルフ」
(融合説明はAOAなのはと同文
1ターンに1度、使用していない自分のモンスターゾーンを指定して発動できる。自分フィールド上のこのカードはそのモンスターゾーンに移動する。この効果は相手のターンでも発動することができる。
このカードの正面の相手モンスターと戦闘する場合、このカードの攻撃力は700ポイントアップする。

LS夜天の将シグナム ☆4/炎/魔法使い/A1800・D1400
自分フィールド上に「八神はやて」と名のつくモンスターが存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除く事でこのカードを手札から特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚に成功した時、このカードにLCを乗せる。このカードの攻撃宣言時、自分フィールド上のLCを一つ取り除くことで攻撃力を500ポイントアップすることができる。


LS祝福の風リインフォース(ツヴァイ) ☆3/風/魔法使い/A500・D500
自分フィールド上に「八神はやて」「夜天」と名のつくモンスターが存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除くことでこのカードを手札から特殊召喚することができる。このカードが融合素材として墓地に送られた場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除き手札に加える。

LS祝福の騎士シグナム ☆7/風/魔法使い/A2700・D2000
「夜天の将シグナム」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)
(融合説明はAOAなのはと同文
このカードが融合召喚に成功したとき、このカードにLCを1つ置く。1ターンに一度、このカードに乗っているLCを1つ取り除き発動できる。相手フィールド上のモンスター一体を選択する。選択されたモンスターの攻撃力・守備力を、次の相手のエンドフェイズ時まで0にする。


ソニックムーブ 通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する「リリカルシリーズ」モンスター1体を選択し、このターンのエンドフェイズ時までゲームから除外する。選択したモンスターにLCが乗っていた場合、除外した時と同じLCを乗せる。また、墓地のこのカードをゲームから除外することで、もう一度同じ効果を使える。


魔法都市ミッドチルダ フィールド魔法
自分または相手が「リリカルシリーズ」モンスターを召喚する度に、このカードにLCを置く。1ターンに一度、自分フィールド上のLC1つを移動させる事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLCを1つ取り除くことができる。


LS八神はやて ☆5/闇/魔法使い/A2000・D1700
自分フィールド上のLCを生贄の代わりにすることができる。このカードが召喚、特殊召喚に成功したとき、このカードにLCを乗せる。1ターンに一度、フィールド上のLCを1つ取り除くことで、このターンこのカードは2回攻撃する事が出来る。


LS夜天の癒し手シャマル ☆4/水/魔法使い/A700・D1800
自分フィールド上に「八神はやて」(夜天の将シグナムと同文
1ターンに一度、自分フィールド上のカードにLCを置く事ができる。


LS夜天の守護獣ザフィーラ ☆4/地/獣/A1600・D2100
戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動する。その戦闘によって発生する自分へのダメージは0になる。また、この効果で0にした数値が、自分のライフを上回っていた場合、デッキから1枚ドローする。このカードは通常召喚できない。


LS夜天の主・八神はやて ☆8/闇/魔法使い/A2100・B2000
「八神はやて」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)
(融合説明はAOAなのはと同文
このカードが融合召喚に成功したとき、このカードにLCを二つ乗せる。このカードの攻撃力はこのカードにのっているLCの数×300ポイントアップする。自分フィールド上に「夜天」または「祝福」と名のついたカードが存在する場合、相手はこのカードを攻撃対象にすることができず、効果の対象にできない。

闇の書 装備魔法
このカードの装備モンスターは攻撃力が300ポイントアップする。このカードが墓地に送られた場合、フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターにこのカードを装備しなければならない。このカードの装備モンスターがモンスターを戦闘によってモンスターを破壊した場合、このカードにLCを1つ乗せる。LCが3つ乗ったこのカードをゲームから除外することで、手札・デッキ・墓地・除外ゾーンから「祝福の風リインフォース(アインス)」を特殊召喚できる。


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第三話

休みなので投稿が早いですが、平日になると結構遅れると思います。
それと前からですが「」内で改行しているのがありますが、効果説明とかが多くて見にくいのでやっています。


それとAOAなのはのサーチの時に重要なリリカルシリーズですが、ライナさんのご意見から、名前の最初にリリカルシリーズ(本文ではLS)とする事にしました。二話のオリカ説明欄もそうしています。




十代とのデュエルの後、流石に勝ち無しの日は俺のデュエリストとしてのプライドが許さないので、十代と翔と一緒に、アカデミアの探索ついでにデュエリスト探しをしていた。さっきの戦いで活躍してくれたはやてさんが、俺の心境を読みとったのか、背中でクスクスと笑っている。

 

『なんやしょうもないプライドに傷をつけられた顔しとるな~』

「しょうもないってなんですか!?」

「・・・・遊斗君誰に言ってるんスか?」

 

またやってしまったーっ! 頼む、その冷たい眼差しでこっちを見ないでくれ! はやてさん絶対狙ってやってるし! ケラケラ笑ってるし!

 

「ん、あっちからデュエルの匂いがするぞ!」

 

十代は十代でマイペースにデュエリスト探しをしており、フォローしてくれる気配の欠片も無く、俺達を置いて走って行った。

・・・・さて、翔の視線が痛いので、俺は十代とほぼ同速で走り、翔から逃げるように十代に付いて行った。後ろから翔の嘆きの声が聞こえた気がするが、気の所為だ。

 

 

 

 

十代の言う「デュエルの匂い」の元は巨大なデュエルスペースの事の様だ。へ~、かなり豪華な空間。最新設備のデュエル場の様で、音響設備も体感システムも一番新しいみたいだ。ここでデュエルすると気持ちいだろうな~。

 

「特に誰もいないみたいだし、もう一回デュエルするか?」

「勿論だ! さっきのリベンジ試合にしてやる!」

 

まさか十代の方からデュエルを申し込んで来るとは思わなかった。流石デュエル馬鹿。そしてそれに乗る俺もデュエル馬鹿だか。

デュエルディスクを構えると、後ろからコツコツと数人の足音と共に、男の声がこの空間にひびいた。

 

「ここで何をしている?」

 

俺と同じ黒髪でオベリスクブルーの制服を着たその男は、両脇に取り巻きを並べてこっちに歩いてきた。

それにしてもここで何をしているって、ここでデュエル意外に何をすればいいのか逆に聞きたい。

 

「デュエルだけど?」

「あっ、万丈目さん、こいつら110番とアイドルデッキの奴ですよ」

 

ア、 アイドルデッキって・・・・。確かにそう見えるかもしれないが、一人ひとりが立派な魔導師であり、アイドルデッキの様にファンデッキじゃないんだが。

 

「クロノス先生をマグレで倒した奴らか」

「実力だよ」

 

おお、良い事言うね十代。なんかコイツ表情から性格の悪さが出ているし、俺達の事を馬鹿にしているから見返してやらないとな。

 

「なんならこの場でデュエルしてマグレじゃないって事を見せてやろうか?」

「オシリスレッドの屑がっ! デュエルアカデミア最強の万丈目さんに向かって生意気だぞ!」

『最強って言う割には覇気がないけど』

『そうやね。小物臭がプンプンする』

 

法を守る人が言うと、本当にそう見えてしまうから恐ろしい。特にはやてさんは、色々とお偉方と駆け引きをした経験があるらしいしから、比喩じゃなく本当に万丈目が小物に見えているのだろう。

 

「へ~、それはおかしいな? デュエルアカデミアNO1は俺だから、万丈目は3番だな。お前より遊斗の方が強そうだし」

「ほう、お前は一回勝っただけで俺より強いと言いたいのか。いいだろう! 今すぐデュエルだ!」

「この俺様がオシリスレッド二人より弱いだと!」

「な、なんかカオスッス」

 

三つ巴デュエルになりそうな空気の中、何やら聞いたことある声が聞こえてきた。

 

「あなた達、何してるの?」

 

声の主は長い金髪で、キリッとした感じの美人で、とても高校生とは思えないスタイルの持ち主。その女性は万丈目達が来た方向からやってきて、この燃えあがった空気を冷ますような瞳で万丈目を睨んだ。

 

「ああ、天上院君。今オシリスレッドの二人に・・・・」

「そろそろ寮で歓迎会が始まる時間よ。早く帰った方がいいわ」

『やっぱりこの子の声、アインスそっくりや』

 

ああ、どこかで聞いたと思えばアインスの声か。そう言えばデュエルアカデミアに来て、まだアインスを出せてないので、今度頑張ってだそう。Strikersの四人も手札に来ないし・・・・。

どうやら万丈目は天上院さんに好意を持っているようで、彼女の言葉には逆らえないようだ。典型的な捨て台詞を吐くと、取り巻きを連れてこの場から出て行った。

 

「あなた達、確か入学試験でクロノス先生を倒した」

「俺は遊斗・スカリエッティ」

「遊城十代。よろしくな」

「丸藤翔ッス」

 

十代の名前には普通の反応した天上院さんだったが、俺と翔の名字を聞くとピクっと耳を動かした。俺はともかく翔の名字ってそんなめずらしいか?

 

「天上院明日香よ。明日香でいいわ。あなた達も歓迎会があるんじゃないの?」

「そうッスよ! そろそろ戻らないと!」

「またな明日香!」

 

 

 

 

明日香と別れた後、走ってレッド寮まで帰ってきた俺達は、歓迎会を楽しむと自分達の部屋に戻った。十代と翔の同居人である、前田隼人と軽い挨拶をして、部屋で精霊達(みんな)と話していた。

そして改めて思った。この部屋に入ってすぐ分かってはいたが、やっぱりこの部屋は・・・・。

 

「この部屋、狭い・・・・」

 

そう、元々扱いの悪いオシリスレッドの寮に加え、一人部屋と来たものだ。入った事は無いが、安いビジネスホテルくらいの広さじゃないんだろうか。

精霊のみんなも幽霊みたいに物にぶつからないとはいえ、やっぱり狭いみたいだ。ついでに説明しておくと、精霊のみんなは物に触れたりできる。だが一般人にも見える、実体化はできないらしい。

 

『このパンフレットを見る限り、オベリスクブルーの優秀生徒は高級ホテル並みの一人部屋が与えられるらしいよ』

『ハァ~、ベッドも狭いから伸び伸びと横になれないし』

『む~、キッチンがないと面白くない』

 

フェイトさんと言い、なのはさんと言い、はやてさんと言い、この部屋に不満があるようだ。今カードにいるみんなも不満なのは同じの様で、どうしてオシリスレッドになったのかと、俺を睨んでいる気がする・・・・。

いや、普通だったら俺イエローだから。俺じゃなくてクロノス先生を恨んでくれよ。

 

「それが今後の課題ですね。というかなのはさんかはやてさん、どちらか場所譲って下さい」

 

なのはさんはベッドでゴロゴロしており、はやてさんは回る椅子でグルグル回って遊んでいた。唯一フェイトさんが床に座り、ベッドを背もたれにしている。

 

『男の子なんだから床でいいでしょ~。ベッドに寝たいなら一緒に寝る?』

 

そ、その妖艶な表情で布団を上げるのは反則だと思います。思春期真っ只中の男子高校生には刺激が強すぎる。

 

「え、いや、その・・・・」

『も~、なのは、からかわないの。ていうか遊斗、PDA鳴ってるよ?』

 

フェイトさんはクールにも、パンフレッドを読みながらはやてさんの前にあるPDAの方に一瞬だけ視線を動かした。

 

「え~何々・・・・。貴様にアンティデュエルを申し込む、夕方会った場所で待つ。逃げたら一生の笑いものだww by取巻太陽。アンティデュエル?」

『勿論校則違反。同じくこの時間に出るのも』

「でもデュエルを挑まれたら受けて立つのがデュエリスト! 返り討ちにしますよ!」

 

初代デュエルキングの様に、腰に付けているデッキケースにデッキを入れた俺は、バタンと勢いよく扉を開けて目的の場所に向けて走った。

 

 

 

 

「あれ? 十代お前もか?」

「と言う事は遊斗も?」

 

デュエルスペースの入り口で十代とバッタリ会った。十代の後ろには、翔と隼人もいる。なるほど、俺は取り巻きの一人の取巻に挑まれて、十代は万丈目に挑まれたって事か。

 

「ほう、逃げずに来たようだな」

 

無駄に偉そうな声で挑発してきた万丈目は、無駄に偉そうなポーズで立っていた。隣には俺を呼んだ取巻太陽と思われる男もいる。

 

「当たり前だ。デュエルを挑まれた以上、どんな相手でも受けて立つ」

「ふんっ、取巻、お前は打ち合わせ通り7番を倒せ。俺は110番を倒す」

「分かりました! 7番、俺が買ったらそのデッキ丸ごと頂くからな」

「あなた達何してるの! それにアンティデュエルは禁止されているわ!」

 

突然明日香の声が聞こえ、万丈目と取巻ともう一人の名前が分からない取り巻きはビクッと肩を震わせた。

 

「なんでもないよ天上院君。ただオシリスレッドに上下関係を分からせるだけだよ。さあデュエルだ!」

 

万丈目はキラッとキメ顔で明日香にウインクしたが、メチャクチャ気持ち悪い。明日香も若干引いてるし。

俺と取巻、十代と万丈目は別のデュエルスペースに別れると、デュエルディスクにデッキをセットした。

 

「「「「デュエル!」」」」

「先攻は俺だ! ドロー!」

 

おっ、今まで先攻をとっていた俺が負けるとは。夜になって若干思考能力が落ちてるな・・・・。

 

「俺はブラッド・ヴォルスを召喚! 更にカードを二枚伏せてターンエンド!」

 

A1900・D1200

 

取巻 モンスター1 伏せ2 手札3

 

ブラッド・ヴォルスか。レベル4でありながら1900の打点と、サポートの多い闇属性。最もその程度じゃ俺の攻撃を止められない!

 

「ドロー! フェイト・テスタロッサを召喚! 効果でLCが一つ乗り、そのカウンターを取り除いて効果発動! 相手フィールド上に存在するモンスターの表示形式を変更する」

 

フェイト・テスタロッサ A1800・D500

 

「更に速攻魔法フォトンランサー。フェイトが存在する時相手フィールドのカード一枚破壊する。このカードの発動に対して相手は選択されたカードを発動できない」

「ック!」

 

破壊されたカードは和睦の使者。フリーチェーンのカード。

 

「バトル! フェイト・テスタロッサで攻撃!」

『ハーケンセイバー!』

 

斧になっていたバルディッシュは、全てを切り裂く鎌となり、魔力刃を飛ばしてブラッド・ヴォルスを切断する。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札3

取巻 モンスター0 伏せ1 手札3

 

「オシリスレッドの癖に生意気な! ドロー!」

 

ドローカードを見た瞬間、取巻は口元をニヤリと上げる。何かいいカードを引いたらしいが、もう少しポーカーフェイスを練習した方がいいと思う。

 

「古のルール発動! レベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する! 万丈目さんから貰った超レアカード! エメラルド・ドラゴン!」

 

A2400・D1400

 

え、え~? いや、レアなのは認めよう。カッコイイのも認めよう。レアカード仕様でキラキラと光っているのも、純粋にカッコイイと思う。だがそのエメラルド・ドラゴンでフィールドを支配する事は出来ない。良くても中堅程度のモンスターだ。

 

「行け、エメラルド・ドラゴン! そのモンスターを攻撃! エメラルド・フレイム!」

「罠オープン。設置型バインド! 

相手の攻撃宣言時に発動できる。発動後攻撃モンスターの装備カードとなる。装備されたモンスターは攻撃する事が出来ず、表示形式を変更する事ができない。更に自分フィールド上のカードに一個LCを乗せる」

 

LCフェイト・テスタロッサ1

 

「ック! 俺はカードを二枚伏せてターンエンド!」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札3

取巻 モンスター1 伏せ2 手札0

 

これで伏せが三枚か。そうなると動きにくいな。伏せ除去のカードが来ればいいんだが。まあドローしてから考えよう。

 

「ドロー! 俺は夜天の騎士ヴィータを召喚! “夜天”と名のつくモンスターが存在する時、フィールドのLCを取り除いて手札からリインフォースⅡを特殊召喚!」

 

LCフェイト・テスタロッサ1→0

LS夜天の騎士ヴィータ ☆4/地/魔法使い/A1900・1200

 

赤いゴスロリの恰好と頭にはウサギの付いた帽子。そんな可愛らしい恰好とは裏腹に、獣の様な瞳と手に持ったゴツイハンマー。

 

「ヴィータとツヴァイを融合! 現れろ! 祝福の騎士ヴィータ!」

 

LS祝福の騎士ヴィータ ☆7/地/魔法使い/A2600・2500

 

「このカードが融合召喚に成功した時、フィールド上にセットされたカード二枚を選択して破壊する! 取巻、お前のバックを二枚破壊させてもらう!」

「ック、だがただでは終わらん! 召喚時に奈落の落とし穴を発動! そのモンスターを破壊させてもらう!」

 

ック、だがそれでも二枚バックを破壊する事が出来た。ありがとうございます、ヴィータさん。

というかいっつも思うけど、飛べるカードが落とし穴に呑み込まれるのってなんか変な感じだよな・・・・。

さて、こいつがあるから、今回はこれ以上融合しなくてもいいみたいだな。

 

「装備魔法バルディッシュ・アサルト・ザンバーを発動。この効果により攻撃力が1000アップ」

 

フェイト・テスタロッサA1800→2800

 

バルディッシュは自身に埋め込まれている圧縮魔力を込めた弾丸、カートリッジをロードして、鎌の状態から複雑に変化して、巨大な魔力刃を持ったザンバーフォームへと変化する。

 

「バトル! エメラルド・ドラゴンに攻撃!」

『ジェットザンバー!』

 

巨大な魔力刃は更に伸びて、エメラルド・ドラゴンの反撃と堅い鱗をもろともせずに、エメラルド・ドラゴンの巨体を呑み込んで爆発させた。

 

フェイト・テスタロッサ2800 VS エメラルド・ドラゴン2400

取巻LP4000→3600

 

「ターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札1 LP4000

取巻 モンスター0 伏せ1 手札0 LP3600

 

「ック、俺のターン、ドロー! 手札から速攻魔法サイクロン発動、その装備カードを破壊! そして永続罠リビング・デットの呼び声! 墓地からエメラルド・ドラゴンを特殊召喚する。バトル!」

「そうはさせない。手札から「大変よ! 警備員が来るわ!」っちぇ、取巻、この勝負は引き分けって事にしといてやる! 翔と隼人は十代を連れて逃げろ!」

「「了解!」」

 

意地でもデュエルを終わらせてやると言わんばかりに、十代は翔と隼人の手から逃れようとするが、流石に男二人には勝てないのか、ズルズルと引きずられる。万丈目達も悪態をつきながら逃げて行った。

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、なんとか見つからずに済んだな」

「ちくしょう! あと一歩で勝ってたのに!」

「何言ってるのよ。あの状況でどうやって「これさ」? 死者蘇生?」

「ああ、これでフレイム・ウイングマンを蘇生すれば勝ってたぜ」

 

へ~、十代の融合カードも一度融合召喚したら召喚制限が無いのか。

 

「あなたのデュエルも見ていたけど、あの攻撃は・・・・」

「ああ、手札にいるスバル・ナカジマ。ダメージステップ時にこのカードを捨てると、攻撃または防御が1000上がるんだ」

「と言う事はエメラルド・ドラゴンを返り討ちにして」

「まあ手札は0だけだったけど、ほら」

 

俺は次のドローカードをみんなに見せる。それは通常魔法、次元転送。除外されたリリカルモンスターを効果を無効にして特殊召喚するカード。これで取巻のライフを0にできた。

 

「あなた達凄いわね。ブルー生徒を」

「ふぁ~、ありがと・・・・」

「流石に眠くなってきたんだな・・・・」

 

十代と隼人のあくびに釣られて、俺も大きなあくびが出てしまった。そう言えば今は外出禁止時間の深夜だったな。眠くなるわけだ・・・・。

 

「じゃあ俺達は寮に帰るな。明日香も女の子なんだから睡眠時間には気を付けろよ」

「大きなお世話よ。じゃあね、十代、遊斗」

 

明日香と別れた後、眠気の所為か重くなった足を引きずって寮に帰り、ベッドに横になるとスッと意識が飛んで行った。

 

 




フォトンランサー 速攻魔法
自分フィールドに「フェイト」と名のついたモンスターが存在する時発動できる。相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。このカードの発動に対して相手は選択されたカードを発動できない。


LS夜天の騎士ヴィータ ☆4/地/魔法使い/A1900・1200
自分フィールド上に「八神はやて」(以下LS夜天の将シグナムと同文
自分フィールド上のLCを1つ取り除く事でこのターンのバトルフェイズ、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。


LS祝福の騎士ヴィータ ☆7/地/魔法使い/A2600・2500
「LS夜天の騎士ヴィータ」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)
(融合説明はLSAOA高町なのはと同文
このカードが融合召喚に成功した時、フィールド上のセットされたカードを2枚まで選択して破壊できる。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

バルディッシュ・アサルト・ザンバー 装備魔法
「フェイト」と名のつくモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。


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第四話

どうやら今までルビの使い方を間違っていたみたいですね。申し訳ありません。今まで間違っていたルビを全部やり直しました。
またLS(リリカルシリーズ)は説明文以外書きません。十代みたいにE・HEROを省いて、モンスター名を言う感じです。

それと今更で申し訳ありませんがエンドフェイズ毎のフィールド確認の事ですが、表側の魔法・罠カードも伏せとして扱います。


それと今回収縮が出るのですが、計算合ってますかね?


「デュエルモンスターズのカードは、大きく別けてモンスター、魔法カード、罠カードの三つに別けられます。モンスターは通常モンスター、効果モンスター、融合モンスター、儀式モンスター。魔法は通常魔法、速攻魔法、永続魔法、装備魔法、儀式魔法、フィールド魔法に別けられ、罠は通常、永続、カウンターに別けられます」

「ぐぬぬ、シニョール・スカリエッティ、座りなさい」

「はい」

 

ハンカチを噛みしめて悔しさをぶつけているクロノス先生を見て、フフッと笑う。いい歳なのに感情豊かな人だ。オシリスレッドに対していやみなのが悪い所だが、それ程オシリスレッドのレベルが低いので、多少は仕方ないのかもしれない。今の俺の台詞を必死になってメモしているのはオシリスレッドだけだし。

あっ、因みに今の発表を噛まずに言えたのは、フェイトさんの言葉を復唱しただけだからだ。つまり俺が凄いのではなくフェイトさんが凄い。

授業はこんな風に精霊達(みんな)に手伝ってもらう時があるが、ペーパー試験はみんなの力は借りていない。なのはさんとヴィータさんの鬼教導官の元、必死になって勉強した成果が受験番号7番だ。

 

「それで~は、シニョール丸藤。フィールド魔法についての説明をするノーネ」

「え、えっと」

「今時小学生でも答えられるぞ。流石オシリスレッドだな」

 

どんな所にもああやって人を馬鹿にするのが好きな奴がいるな。というかブルー男子ほとんどがそんな気がする・・・・。

翔も翔でしっかりするんだ。確かにこの授業は、一学年全てでやるから注目の的になるかもしれないけど、高校生なんだからもう少し落ちつけ。

 

「翔、とりあえず深呼吸して、クロノス先生だけを見ろ。周りの目は気にしなくていい」

 

翔は言われた通りに深呼吸をして頭の中を整理すると、辺りをキョロキョロせずにクロノス先生を見る。うんうん、やればできるじゃないか。

 

「えっと、魔法・罠ゾーンじゃなく、フィールドカードゾーンと呼ばれる特別な場所に置くカードで、え~、効果がお互いに及ぶカードです。攻守が変動したり、遊斗君のみたいにカウンターを乗せたり、レベルの変化があるのが多いッス」

「若干説明不足ですが、いいでしょう。大事な所を付けくわえると、フィールド魔法は表側表示で存在できるのは一ヶ所のみ。自分がフィールド魔法を使っている時、相手がフィールド魔法を発動させた場合ルールによる破壊で破壊されま~す。勿論自分がフィールド魔法を発動すれば、自分のフィールド魔法を上書きできるノーネ」

 

翔はホッと息を吐くと席に座る。さっき翔を馬鹿にしていた男子はチッと舌打ちをすると黒板の方を向いて再びクロノス先生の話を聞き始めた。しかし今日初めての授業な訳だが、翔って恥ずかしがり屋なのか? 正直翔=オタクだから、あんまり実感がないな。

 

 

 

 

「遊斗君、さっきはありがとね」

「ああ、ドローパン一個かパック一個な」

 

笑顔で礼を言ってきた翔への返事がそれだった。翔と一緒に来ていたイエロー寮の男子と翔は、俺の優しさの欠片もない言葉に急に冷めた目をした。

 

「冗談だよ冗談。で? そこのイエローの人は?」

「自己紹介が遅れた。俺は三沢大地、実は7番君には色々と聞きたい事があってな」

 

あ~、三沢大地って確か筆記テスト1番で実技でもかなり上位だった優秀生徒だったよな。確かなのはさんがそんな事言ってた気がする。言われてみれば確かに頭よさそうな顔をしている。

 

「遊斗でいいよ。で? 聞きたい事って?」

「遊斗が使っているリリカルシリーズについてなんだが」

「それ私も気になるわ」

「俺も」

 

三沢の声を聞いて、突然十代と明日香も俺の席にやってきた。十代はさっきまで寝てたし、明日香はブルー女子と話していた気がするが、気のせいなのか?

 

「リリカルシリーズは俺の父さん、ジェイル・スカリエッティが作った世界に一枚しかないシリーズだ」

「ジェイル・スカリエッティ!? やっぱり、かなり変わっている名字だと思っていたが・・・・」

 

あれ? 三沢は父さんの事知ってるのか? ニュースとか全く出ない、かなりマニアックな学者なんだが。

 

「知っているのか?」

「ああ。大事な交渉以外は全く表に出ないと言われている謎の科学者。デュエルモンスターズやソリッドビジョン、最新のデュエルディスク、そして次元世界。あらゆるジャンルで活躍している人だよ」

「へ~、初めて聞いたッス」

「まあ父さんテレビに出て宣伝するよりも、自分の研究欲の方が大事な人だから」

 

どんな事よりも研究が大事な父さん。酷い時は俺が修学旅行に行っていた三日間、飲まず食わずで研究していたらしい。帰ってきて父さんが倒れていた時は、死体かと思って本気で絶叫したのを、今でも鮮明に覚えている。

 

「本来ならカードデザイナーでもない父さんがカードを作るのは禁止されているけど、色々と交渉して作ってくれたんだ」

「へ~、息子思いの良い父親だな」

「・・・・まあな」

 

精霊が見えると言った時、本気で研究材料にされそうになった事は、言わない方がいいだろう。

 

 

 

 

バレーボールの授業も終り、今日はこれで終りだった。因みにバレーの試合結果だが、俺と十代の活躍で無敗だった。日頃なのはさん、ヴィータさん、シグナムさんに鍛えられているから、正直楽勝だった。その後、昨日の決着をつける為に十代と一緒に万丈目の所に行ったが、どうやらブルー寮に帰ったらしい。

そうなるとする事がないので、初めての高校授業の疲れを取る為にレッド寮でゆっくりする事にしたんだが・・・・。

 

「えへへへ・・・・」

 

翔の様子がおかしい。どこからどう見ても変態にしか見えない。

 

「こ、これはなんだ?」

「さ、さあ? お前の精霊達なら知ってるんじゃないのか?」

 

十代の言葉と共に、なのは、フェイト、ザフィーラ以外の八神家が登場したが、誰一人翔の異常について分からなかった。

 

『ブラック・マジシャン・ガールの妄想でもしてるんじゃねえか?』

『一回上手く発表出来ただけで喜んでるんだよ。きっと』

『高校最初の授業が終ってテンションが上がってるのよ』

『女子の体操服姿に興奮したのではないか?』

 

・・・・酷い言われ様である。流石の十代もみんなの言葉はきついと感じたのか「ハハハ」と苦笑している。

だがどの意見も絶対違うと言えないのが、現時点での翔のイメージだ。みんなをカードの中に入らせると、十代と二人でしばらく悩んでいたが、だんだんめんどくさくなり、結局晩飯までデュエルしていた。

 

 

 

 

狭い部屋でみんなとトランプをしている時だった。昨日と同じようにPDAが鳴り、嫌な予感がしながらも、恐る恐るPDAに送られたメールを読んだ。

 

「マルフジショウは預かった。返してほしければブルー女子寮まで来い」

『なんや、あの眼鏡君、拉致られたん?』

「多分そうだと思いますけど・・・・。まだ外出していい時間ですし、昨日みたいな事はないでしょう」

 

デュエルとなれば気合い入れて行くが、翔の事となると若干面倒臭い。別に翔の事が嫌いなわけではないが、なんで男友達の為に一々着替えて迎えにいかにゃならんのだ。

俺は低いテンションで着替え、腰のデッキケースにデッキを入れて外に出た。すると同じタイミングで十代が部屋から出てきた。

 

「まさかお前も?」

「またか・・・・。ところで十代は女子寮の場所分かるか?」

「いや、今からお前の所に行こうと思ってな!」

「ですよね~。フェイトさん、よろしくお願いします」

『ハァ・・・・。二人ともパンフレットぐらい読んでおかないと、いざって時に困るよ?』

「「は~い」」

 

 

 

 

草原を走り、森を越え、ボートに乗り湖を渡った先に女子寮があった。

いったいなんて所に建ててるんだ! ってキレそうになったが、ブルー女子寮が悪いのではなく、レッド寮の場所が余りにも不遇なのだ。寮がボロいだけじゃなく、学校からも遠いし、おまけに他の寮からも遠いときた。本当に厳しい学校である。

 

「遅いわよ。十代、遊斗」

「アニキ~、遊斗君~、助けて~」

 

寮の前にいたのは、明日香と名前も知らない二人の女子、そして縄でグルグル巻きにされた哀れな翔だった。本当に何をしたらこうなったのか・・・・。

 

「明日香、翔を返してくれ」

「そういうわけにはいかないの」

「そうですわ! このロクデナシはあろうことか、私達の入浴を覗きましたの!」

「「覗き!?」」

「違うッス! 僕は覗いてないんス~。信じて下さい~」

 

う~ん、こうなると女性の方が強いからな。本当に覗いてなくてもその現場にいたんじゃ、疑われて当然だろうし。それに翔の様子がおかしかったのも、女風呂を覗く前の前兆だったのかもしれない。

どっちにしても精霊のほとんどが女性である俺には、これ以上翔を庇う事ができない。

 

「え~と、それでどうして俺達を呼んだんだ? 翔を罰するなら先生達を呼べばいいだろ?」

 

翔が涙目になりながら俺を見てくるが、無視して話を続ける。可能な限り翔を庇うような事は言わず、女性を敵に回すような事は言わない。もし精霊(みんな)を怒らせたら、明日俺が学校に行けなくなるかもしれない。

 

「単純よ。もしあなた達が私にデュエルで勝ったらこの子は解放する。先生達にも言わない。だけどもしどちらか片方でも負けたら」

「翔は退学ってわけか。いいぜ、そのデュエル受けて立つ!」

「右に同じく」

 

どちらか片方が負けたらそこで翔は退学か。きついデュエルになりそうだ。

 

「じゃあ十代どっちから行く?」

「俺行っていいか? できれば初見で明日香とデュエルがしてえ」

「別にいいぞ」

 

 

 

 

「ボルティック・サンダー!」

「きゃあああ!」

 

よしっ! 見事一回戦勝利したな! 十代のライフも削られて、かなりヒヤヒヤしたが最後のドローで一発逆転した。

次は俺の番か。明日香のデッキはだいたい分かった。だからと言ってアンチカードを入れたりはしないし、プレイングを変えたりもしない。

 

「じゃあ次は俺達の番だ」

「ええ、今度は負けないわよ」

「「デュエル!」」

「私の先攻ドロー! 私は巨大ネズミを守備表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

明日香 モンスター1 伏せ1 手札4

 

「俺のターン、ドロー!」

 

巨大ネズミ。地属性専用のリクルーターカード。さっきのデュエルでは明日香の切り札召喚は早かったが、どうやら今回はパーツが揃ってないようだ。

とは言え俺もアタッカーがいないし、ここはあいつの召喚を狙ってフィールドを制圧するか。

 

「俺はフィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。更に手札からカートリッジロード発動! 自分フィールド上のカードにLCを一つ置く。俺は夜天の癒し手シャマルを召喚。シャマルの効果と、ミッドチルダの効果でLCを二つ置く」

 

LC魔法都市ミッドチルダ3

 

「一気にカウンターが三つも・・・・」

「俺はカードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時、カートリッジロードの効果。デッキから同名カードを手札に加える」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札4

明日香 モンスター1 伏せ1 手札4

 

「あら、攻めてこないとは臆病ね」

「リクルーター相手に中途半端な状態で攻撃しねえよ」

「そう、私のターン、ドロー! じゃあこっちから行くわ! 手札から融合発動! 手札のブレード・スケーターとエトワール・サイバーを融合! 出でよ、サイバー・ブレイダー!」

 

A2100・D800

 

っちょ!? もう既に二枚パーツ揃ってたのかよ!? じゃあ巨大ネズミを攻撃しようがしなかろうが、あんまり関係なかったのか。ま、まあ結果論結果論。

 

「サイバー・ブレイダーの効果。相手のモンスターが一体のみの場合、このカードは戦闘では破壊されない。最も、戦闘で破壊することすら無理みたいだけど」

「その余裕の台詞、すぐに返してやるよ」

 

明日香はフッと笑うと巨大ネズミを守備表示から攻撃表示へと変更させる。

 

「バトル! サイバー・ブレイダーで夜天の癒し手シャマルを攻撃! グリッサード・スラッシュ!」

 

A2100 VS D1700

 

「ック! だがリリカルモンスターが破壊された時、罠発動! Asの収集発動! 効果でデッキからレベル5以下のリリカルモンスターを特殊召喚。俺が呼ぶのは八神はやて!」

『ん~よっと!』

 

A2000・D1700

LC八神はやて1

 

別にはやてさんじゃなくても良かったんだが、やっぱり明日香相手にあいつは出してやりたい。

 

「はやての効果により、自身にリリカルカウンターを乗せる。で、一応自爆特攻って手段はあるけど、どうする?」

「止めとくわ。ターンエンドよ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札4 LP4000

明日香 モンスター2 伏せ1 手札2 LP4000

 

「ドロー! 手札から装備魔法闇の書発動、はやてに装備させる」

 

はやて2000→2300

 

「げっ、あのカードは」

 

十代は若干トラウマになったのか、闇の書の発動を嫌そうにする。いやいや、あのデュエル結局お前が勝ったんだし、俺もフレイム・ウイングマンと、シャイニング・フレア・ウイングマン怖かったんだから。

 

「あら、早くも抜かれたわね」

「余裕なご様子で。はやての効果発動! 自身のLCを取り除いてこのターン二回の攻撃が可能になる!」

 

LC八神はやて0

 

「バトル! はやてで巨大ネズミを攻撃!」

 

はやては魔法を使うまでもないと判断したのか、シュベルトクロイツで巨大ネズミの頭を思いっきり叩いた。え~、広域魔導師がそんな戦い方しちゃう? 俺だけじゃなくて、周りのみんなもポカーンてしてるし。

 

「ダ、ダメージ計算時ガードブロックを発動。戦闘ダメージを0にして一枚ドロー。更に巨大ネズミの効果でもう一枚巨大ネズミを呼ぶ」

「続けて巨大ネズミに攻撃! ディアボリックエミッション!」

 

A2300 VS A1400

 

攻撃名を言われては逆らえないのか、はやてはシュベルトクロイツから黒い球体を出し、巨大ネズミを呑み込む程の大きさまで育てて射出した。小規模のディアボリックエミッションは巨大ネズミを呑み込み、とてもリクルート効果が使えると思えないほど容赦なく破壊した。

 

明日香LP4000→3100

 

「闇の書の効果発動! モンスターを戦闘で破壊する度にこのカードにLCを乗せる」

 

LC闇の書0→2

 

「そして手札からカートリッジロードを発動! 闇の書にLCを一つ乗せる」

 

LC3

 

「行くぞ明日香。俺のデッキの中の三体のエースモンスター、その一体の最終進化を!」

「!? いいわ、受けて立つ!」

「闇の書の効果発動! LCが三つのったこのカードをゲームから除外する事で、デッキから祝福の風リインフォース(アインス)を特殊召喚できる!」

 

祝福の風リインフォースⅠ《アインス》 ☆5/闇/魔法使い/A2300・D2300

 

闇の書が黒の魔力を禍々しく放出し、ドクンドクンと生き物では無いのに血管を浮かばせる。そして闇の書は放出している魔力を一ヶ所に集めると、その魔力は徐々に人の形になり、やがて長い銀髪と血のように赤い眼をした女性が出現した。彼女が来ている服は、はやての衣装に似ている。

 

『闇の書の起動確認』

「あ、明日香さんの声にそっくり!?」

 

やっぱ仲のいい友達からも同じに聞こえるのか。初めて明日香の声を聞いた時、アインスも驚いていたな。二人ともクールで透き通る声で綺麗だ。

 

「アインスの効果の効果発動! 特殊召喚に成功した時デッキから“ナハトヴァール”または“夜天の書”を特殊召喚する。現れろ! ナハトヴァール!」

 

アインスが展開した黒の古代ベルカの魔法陣から現れたのは、ウニョウニョと蛇の様な触手の様な、生理的に気持ち悪い固まり。ブルー女子は勿論、クールな明日香も、男子である十代も翔もナハトヴァールにドン引きしている。俺も初めてコイツをソリッドビジョンで見た時は泣いたっけ。今じゃいい思い出だな・・・・。

 

「場のはやてとアインスを融合! 現れろ! 夜天の王・八神はやて! 融合召喚に成功した時、自身にLCを3つ乗せる」

 

夜天の王・八神はやて ☆10/闇/魔法使い・リリカル/A2800・D2800

LC夜天の王・八神はやて3

 

融合独特の空間から現れたのは、アインスと融合して髪と瞳の色が変わっている大人になったはやて。だがツヴァイと融合した時とは違い、何か異質な感じがする。本来なら明るいはやてさんだが、アインスのクールさが混ざっているのか、冷たい目で敵である明日香を見つめている。はやてさんが宙に浮いたシュベルトクロイツを握った瞬間、魔力の衝撃が走り、辺りに風を起こす。

 

「ッツ、と、とんでもないモンスターをだしたわね・・・・」

「遊斗! それがお前の切り札なら、どうして俺とのデュエルでださねえんだよ~!」

「とんでもなく召喚条件が重いんだよ! 闇の書にカウンター3つ乗せるかつ、はやてを場に出さないといけないんだ・・・・。だが効果は強力だ! ナハトヴァールの効果発動、自分フィールド上の「夜天の王」または「アインス」と名のついたカードの装備カードとして、装備できる。そして装備したモンスターの攻撃力は1000上がる」

 

はやてさんがウニョウニョと蠢いている固まりにそっと触れると、ナハトヴァールはシュベルトクロイツの反対の手に纏わりつく。ナハトヴァールは徐々に形を変えて行くと、最終的に杭の様なものを内蔵した大型の手甲の様な銃となった。ロボットが好きな人には、パイルバンカーと言ったらイメージができるだろう。

 

A2800→3800

 

「「「「「攻撃力3800!?」」」」」

「ミッドチルダの効果によりはやてにLCを一つ移動。カードを一枚伏せてターンエンド、カートリッジロードの効果で同名カードを手札に。さあ明日香、どう突破する?」

 

LC魔法都市ミッドチルダ3→2 夜天の王・八神はやて3→4

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ2 手札4 LP4000

明日香 モンスター2 伏せ0 手札3 LP3100

 

 

 

 

SIDE明日香

 

ッツ、攻撃力3800を呼んでおきながら手札は四枚。その中の一枚はさっきサーチした魔法カードだけど、残りの三枚はまだ分からない。

 

・・・・どうやらリクルーターを残しておいたのが最悪の結果になってしまったようね・・・・。巨大ネズミの効果でエトワール・サイバーを呼んだのはいいけど、相手のフィールドには3800の最上級モンスター。しかもカウンターが四つのって、効果がまだ分からない。それにあのナハトヴァールって装備カードも攻撃力を1000上げるだけとは思えない。

おまけに相手の場にはモンスターが一体。これじゃあサイバー・ブレイダーの第二の効果が発動できない。

 

「私のターン、ドロー! サイバー・ジムナティクスを守備表示で召喚! そしてサイバー・ジムナティクスの効果、手札を一枚捨てて表側表示モンスター一体を破壊! 私は夜天の王・八神はやてを選択!」

「はやての効果発動! 1ターンに一度、自身のLCを取り除き、フィールドのモンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効にする」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)!』』

 

LC八神はやて4→3

 

どうやら私の声に似た女性は、彼女の中に入ってるみたいで、声が二重になって聞こえてきた。

八神はやてという女性はナハトヴァールをジムナティクスに向けた瞬間、突如銃口から禍々しい黒い鎖が放たれ、ジムナティクスを縛り付けた。相手のターンでも効果が使えるなんて・・・・。流石レベル10のモンスターね。でも効果が分かればこっちのものよ!

 

「手札から装備魔法団結の力を発動! 自分のフィールドのモンスター×800攻撃力が上がるわ。私はサイバー・ブレイダーに装備」

 

サイバー・ブレイダーA2100→4500

 

「「「「攻撃力4500!?」」」」

「流石元制限カード!」

「バトル! エトワール・サイバーで攻撃! グリッサード・スラッシュ!」

 

A4500 VS A3800

 

「流石ブルー寮、まさかパワーで負けるとは思わなかった。だが甘い、はやての効果発動!」

 

な!? まだあるの!?

 

「このカードが破壊される場合、一ターンに一度だけ代わりにこのカードに乗っているLCを一つ取り除く事ができる」

『『パンツァーシルト』』

 

LC夜天の王・八神はやて3→2

遊斗LP4000→3300

 

サイバー・ブレイダーの攻撃を、八神はやては三角形型の魔法陣を使って弾き返した。戦闘ダメージは与えている筈なのに、遊斗にも八神はやてにも、ダメージ演出が全くない。

 

「エトワール・サイバーを守備表示に変更して、カードを一枚セットしてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ2 手札4 LP3300

明日香 モンスター3 伏せ1 手札0 LP3100

 

攻撃力は上回っているけど、団結の力はモンスターが減っていくと効力が弱くなる。さあ、どうくるの遊斗?

 

「ドロー! まずはカートリッジロードを発動、はやてに乗せる。そしてミッドチルダの効果ではやてに移動」

 

LC夜天の王・八神はやて2→3→4

 

最高あと五回破壊しないと倒せないって言うの!?  お、落ち着きなさい明日香、さっき遊斗は一ターンに一度と言っていた。つまり何とかして一ターン内に二回破壊すればいいってこと・・・・。

 

「はやての効果発動。サイバー・ブレイダーの効果を無効にする」

 

LC夜天の王・八神はやて4→3

 

「そしてフェイト・テスタロッサを召喚! ミッドチルダにLCが乗り、そのカウンターを取り除いてデッキからアルフ特殊召喚! フェイトの効果によりサイバー・ジムナティクスの表示形式を変更」

「なんですって! サイバー・ジムナティクスの攻撃力は800なのに!」

「これで攻撃されたら明日香さんは大ダメージですわ~っ! ズルイですよそこの殿方!」

 

いやももえ、確かにかなり辛い状況だけど、ズルイはないんじゃない? さっきまでノリノリだった遊斗も苦笑して、ハァって落ち込んでるし。

 

「ん゛っん゛! 場のフェイトとアルフを融合! 現れろ、黒騎士・フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

出たわね! クロノス先生の古代(アンティーク)機械巨人(ギアゴーレム)を破壊した、変わった効果を持ったモンスター。チラッと遊斗のフィールド情報を見ると、前のターンから計算済みなのか、黒騎士はサイバー・ブレイダーの前にいた。

 

「さらに手札から装備魔法バルディッシュ・アサルト・ザンバーを発動! この効果により攻撃力が1000上がる!」

 

黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンA2800→3800

 

ッツ、自身の効果を合わせたら、エトワール・サイバーと戦闘する時は攻撃力4500。

 

「バトル! はやてでサイバー・ジムナティクスを攻撃!」

『『響け終焉の笛! ラグナロク!』』

 

A3800 VS A800

 

三角形の魔法陣の各頂点でエネルギーをチャージし、それぞれ色の事なる三つの弾丸が完成したようだ。三つの弾丸が砲撃となり、低レベルモンスターであるサイバー・ジムナティクスを呑み込んだ。

 

「ック、つう!」

 

LP3100→100

 

「もう意味が無いかも知れんが、ナハトの効果発動! 装備モンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、この装備モンスターの装備カードにすることができる。装備モンスターの攻撃力は、装備したモンスターの攻撃力の半分アップする」

 

夜天の王・八神はやてA3800→4200

 

その装備モンスターの真の効果はそれね。まったく、吸収効果まであるなんてとんでもないカードね。

おまけにモンスターが一体減ったから攻撃力が下がったし・・・・。

 

「これで最後だ! フェイトでサイバー・ブレイダーを攻撃!」

『プラズマザンバーブレイカー!』

 

A4500 VS A3700

 

私のライフはたったの100、これを受けたら私の負けだ・・・・。だけど、どんな状況でも最後まで諦めない!

 

「最後の最後で油断したわね、私はまだ勝負を捨ててないわ! あなたが黒騎士でサイバー・ジムナティクスを攻撃しなかったのはプレイングミスよ、ダメージステップに収縮を発動!」

 

黒騎士・フェイト・テスタロッサ・ハラオウン A4500→3100

 

「あれ? 収縮は攻撃力を半分にするカードでわ?」

「デュエルディスクの故障かしら?」

 

ジュンコ、ももえ、最後の最後で雰囲気を台無しにしないでくれる!? 収縮が半分にするのは元々の攻撃力、自身の効果と装備魔法で上昇した分は半減されないのよ・・・・。

遊斗もまたテンションが下がってしまったのか、申し訳なさそうに手札のカードを私に公開した。

 

「収縮にチェーンして、ダメージ計算時スバル・ナカジマの効果発動。その効果によりフェイトの攻撃力は1000上がる」

 

A3100→4100 VS 3700

 

そのカードは昨日私に見せたカード・・・・。目の前のカードに気を取られていてすっかり忘れていたわ。

私もまだまだね・・・・。

黒騎士の持った黄色の刀身をした大剣にサイバー・ブレイダーはあっけなく破壊され、そのまま刀身が私の方に伸びてきて、私を呑み込んだ。

 

 

明日香LP100→-300

 

 

 

 

SIDE遊斗

 

ふぅ・・・・、なんとか無事明日香を倒せたな。これで翔も退学せずに済んだか。俺も高校生活初日で友達が退学なんて嫌だからな。まあ友達が退学するのに、高校生活初日だろうと卒業式だろうと関係ないが。

 

「遊斗く~ん! ありがとうッス~!」

「こら抱きつくな!」

 

美少女に抱きつかれるならともかく、男友達に抱きつかれて喜ぶ趣味は俺にはない! 物凄い力で抱きしめて来る翔を、何とか引き剥がすと、明日香と取り巻きの女子が来た。確かジュンコさんとももえさんだっけ?

 

「完敗よ、ライフを1000も削れないなんて」

「いやいや、偶々だって。二ターン目でアインスを出せたから良かったけど」

「そうよ。明日香さんがオシリスレッドに負けるなんて「ジュンコ止めなさい」明日香さん・・・・」

 

女子って確かオベリスクブルーしかないんだよな? じゃあなんでオシリスレッドを馬鹿にしてるんだろう? なんて思ったが、せっかく好条件で翔を返してもらったばかりなんだ。相手の機嫌を損ねない様にしないと。コレ、フェイトさんの教えね。

 

「そういやさ、どうして遊斗はフェイトでサイバー・ジムナティクスを攻撃しなかったんだ? 結果オーライだけど、ライフ0にできたじゃねえか」

 

あ~その事か。デュエルの最後で明日香も同じこと言っていたな。

俺もフェイトの配置については結構悩んだんだよな。

 

「十代とのデュエルを見て、明日香の伏せがダメージ軽減系か攻撃変動系かと思ってな。俺的に一番いいやり方だと思ったけど、読み過ぎみたいだったな」

 

それともう一つ、ナハトヴァールの効果をあんまり使った事無いから、ソリッドビジョンではどんな感じなのか見たかったってのもある。

 

「なるほどね。楽しいデュエルだったわよ、十代、遊斗」

「ああ、俺も楽しかったぜ。じゃあ俺達は帰るな、行くぞ遊斗、翔!」

「また明日な。明日香、それとジュンコさんとももえさんも。っと十代の奴相変わらず速いな!?」

「二人とも速いッス! 待って下さ~い!」

 

 

 

 




LS祝福の風リインフォース(アインス) ☆5/闇/魔法使い/A2300・D2300
このカードは「闇の書」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚に成功した時、自分の融合デッキから「ナハトヴァール」または「夜天の書」を特殊召喚できる。


LS夜天の王・八神はやて ☆10/闇/魔法使い/A2800・D2800
「LS八神はやて」+「LS祝福の風リインフォース(アインス)
(融合説明はLSAOAなのはと同じ
このカードが融合召喚に成功したとき、このカードにLCを3つ置く。
このカードのLCを取り除く事で、以下の効果を発動できる。
●このカードのLCを1つ取り除き、相手フィールドに存在する表側表示モンスターを一体選択して発動する。そのモンスターはエンドフェイズ時まで効果が無効化される。この効果は一ターンに一度しか使えなく、相手のターンでも発動する事ができる。
●このカードのLCを2つ取り除き発動できる。融合デッキから「祝福」と名のつくモンスター一体を、効果を無効にして表側守備表示で特殊召喚する。この効果は一ターンに一度しか発動できない。
●このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLC1つを取り除く事ができる。この効果は一ターンに一度しか使用できない。


LSスバル・ナカジマ ☆4/地/魔法使い/A1500・D1500
自分フィールド上の「LS(リリカルシリーズ)」と名のついたモンスターが戦闘を行うダメージステップ時、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
そのモンスターの攻撃力または守備力は、エンドフェイズ時まで1000ポイントアップする。


LSナハトヴァール ☆8/闇/悪魔/A0・D0
このカードは「祝福の風リインフォース(アインス)」の効果で特殊召喚できる。
自分のメインフェズ時に「夜天の王」または「(アインス)」と名のついたモンスターに装備することができる。この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。また、装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターを装備モンスターに、装備カードとして装備する事ができる。装備モンスターの攻撃力は、この効果で装備しているモンスターの攻撃力の半分アップする。



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第五話

まだルビのミスがありました、申し訳ありません。修正しました。


今回は1つ謝らなければならない点があります。主人公ではないのですが、強欲な壷を一回使いました。本当なら壺無しで進める予定でしたが、それだと展開がイマイチになったので、思い切って使ってしまいました。主人公以外縛っているわけではないのですが、今後もなるべく使わないようにします。


それと感想にありましたが、なのは・フェイト・はやては効果モンスターの時は幼少期、融合の時はsts、そして前話の夜天の王・八神はやての様なIF、みたいな感じで進化します。

IFに関しては原作のキャラは完全無視しております。(夜天の王・八神はやてだったら大人の状態でアインスとユニゾンし、ナハトを装備している)


それと今回からオリカの紹介の最後に軽く一言入れます。


言って無かったかもしれないが、この学校はデュエルにおいて一流の高校だ。三つの寮に別けているのも、より上位を目指す様にする為だろう。実際に最新のデュエル場や、入学すればタダでもらえるデュエルディスクと力を入れている。また、授業以外でデュエルをした生徒にはDPが与えられ、そのDPとパックを交換できる、貧乏な学生にはかなり助かるシステムもある。それ程デュエルアカデミアは、デュエルを集中的に勉強させるのだ。

つまり俺が言いたい事はというと・・・・この学校は一ヶ月でどれくらい成長しているかを見る為に、月一でテストがある。

 

テストですよテスト! 多分全国の高校生全員にテストが好きかどうかアンケートしたら、9割は嫌いって言うと思う。あとの一割はよっぽどの努力家か天才のどちらかだ。

勿論俺もその9割の中に入る人間だ。そして今現在、なのはさんとヴィータさんに勉強を見てもらっている真っ最中・・・・。誰も頼んで無いけど。

 

『オラ、ボケっとすんな! 数学ってのは5秒見て分からなかったら諦めろ!』

「は、はい!」

 

ヴィータさんの怒鳴り声と共にペンを持つ手に力を込め、問題を解いていく。クソッ! 隣にいる十代は今頃ゴロゴロしてたり、翔は勉強せずに死者蘇生のカードに祈ってたりしてるんだろうなぁ、ちくしょう!

 

『んっ、ここまでのプリントは全問正解だよ。そのプリントが終ったら休憩ね』

「はい!」

 

 

 

 

そんなこんなで月一試験当日。試験勉強期間が試験前日一日だけだったら、まだ耐えられるが、そんな一夜漬けみたいな事はスパルタの二人が許さない。二週間前から授業以外にも3時間勉強しなくてはいけなく、一週間前からは息抜きのデュエル以外は自由時間がなく、前日はそのデュエルすら許されない。

これが三年間続くと思うと正直死にたくなる・・・・。

しかし試験とは頑張った分だけ点数になって帰ってくる、今の俺には嬉しくないシステムになっている。

筆記試験全て終えた俺だが、その場で答え合わせをしていたなのはさんとヴィータさん、フェイトさん、ティアナさんによると、英語の一問以外は全問正解らしい。

うわ~、なのはさんとヴィータさんがめっちゃ笑顔だよ・・・・。

 

「し、死ぬ・・・・。月一でこれは死ぬ・・・・」

「ズリ~ぞ遊斗。お前、精霊達(あいつら)に教えてもらってただろ?」

「・・・・お前、次の月一精霊交換するか?」

 

十代のデリカシーがない質問に、元気に返す気力も無かった。十代は俺の言った意味がよく分からないのか、首を傾げてるし。

 

「てかお前寝てたろ、筆記大丈夫なのか?」

「ああ! 実技でいい点取ればいいからな! じゃあ俺翔と購買行ってくる」

 

嵐の様に去って行った十代は、午後の実技試験に向けてデッキを強化するために、翔と一緒に新しいパックを買いに行った。クソ~、俺の強さなら十代と同じ台詞が言える筈なのに、どうして好きでもない勉強をあんなにやらにゃいかんのだ!

 

『おめでとう遊斗。帰ったらご褒美にチューしてあげるね』

「うっ・・・・次もがんばります・・・・」

『うん!』

 

あ~も~、今まで俺が反抗せずになのはさんとヴィータさんの勉強を受ける原因だよコレが! しかも本人は天然らしいから余計に性質が悪い。

 

『相変わらず遊斗はなのはに弱いね』

「・・・・フェイトさんに言われたくないです」

 

独り言を呟いている頭の可哀そうな奴に見られない様に、机に項垂れながら俺はなのはさんの可愛さを呪った。

 

 

 

 

「デュエルだ! さあ実技だ! 今なら初代デュエルキングでも、伝説のデュエリストだろうと勝てる気がする!」

「ゆ、遊斗はどうしたんだな・・・・?」

「そういえばここ一週間付き合い悪かったな。色々溜まってたんじゃねえのか?」

 

なんかクロノス先生がニヤニヤと不気味に笑いながら俺を見てきたが知った事ではない! 例えアンチデッキを使われようが、情報が筒抜けだろうが、デュエルができればそれでいい!

俺は言われたデュエルフィールドに来ると、そこにいたのは青の制服を着た男子生徒。

 

「初めまして、え~と「丸藤亮だ」丸藤さん! って丸藤?」

 

丸藤って名字どっかで・・・・。

 

「丸藤翔の兄だ」

「へ~、翔のお兄さん。それにしては背が高くてカッコ良くて、何やらオーラのある人ですね」

 

後ろから「シクシク」と誰かの泣き声が聞こえたが、別のところで行われているデュエルの音によってかき消された。

あれ? というか月一試験って同じ寮の同級生同士でやるんじゃなかったっけ? しかも翔のお兄さんって話によると2つ上の卒業生だよな?

 

「どうして相手が俺か、って顔だな」

「不満があるわけじゃないんですけど、ブルー寮の三年生が態々相手をしてくれるとは」

「元々君とデュエルをしたいと思っていた時に、クロノス先生に相手をしてくれないか? って頼まれてな」

 

ほう、クロノス先生は分かってるね~。俺が月一試験の鬱憤を溜めてるって予想して、強敵と戦わせてくれたのか。いや~、流石ベテラン。

 

「じゃあやるか」

「はい!」

「「デュエル!」」

 

おい、何でオシリスレッドがカイザーとデュエルしてんだよ

あいつアイドルデッキだろ?

もしカイザーの腕が鈍ったらどうするつもりなんだ・・・・

 

なんか周りがうるさいな。他の所に比べて観客がやたら多いし。というかさっきカイザーってのは、ひょっとして亮さんの事?

 

「周りは気にするな。さあドローしろ、それとも後攻がいいのか?」

「いえ、ではお言葉に甘えて、ドロー!」

 

おっ、この手札は中々いいな。爆発力はないけど持久力と安定性がある。さて、亮さんがどんなデッキなのかを確認するためにも、ここはしっかりとした守りと手札温存をしておこう。

 

「俺は永続魔法、魔力高炉発動します。発動後LCを2つのせて、カウンターが0になったら破壊されます。高町なのはを召喚、フィールドのLCを取り除いてデッキからユーノを特殊召喚!」

 

LC高町なのは1

LC魔力高炉2→1

 

「ほう、これが噂のアイドルデッキか」

「・・・・場のなのはとユーノを融合! 現れろ、AOA高町なのは。効果でデッキから八神はやてを手札に加えます。カードを一枚伏せてターンエンドです。エンドフェイズ、魔力高炉のデメリットにより500ダメージ受けます」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP3500

 

「俺のターンドロー! 相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、サイバー・ドラゴンは特殊召喚できる! 更にサイバー・フェニックスを通常召喚!」

 

A2100・D1600

A1200・D1600

 

デメリットなして2100の半上級モンスターか、かなり優秀だな。しかもあのサイバー・フェニックスって、凄く曖昧な記憶だったけど確か機械族を対象に取る魔法・罠を破壊無効にできたよな。もう一個効果があった気がしたけど、そっちは忘れた。

 

「バトル! サイバー・ドラゴンでAOA高町なのはを攻撃! エヴォリューション・バースト!」

「罠オープン、フォーメーションチェンジ! LSが攻撃対象になった時に発動できる。攻撃対象になったモンスターの表示形式を変更し、デッキから一枚ドローする。そしてこの戦闘で発生するダメージは0になる!」

 

攻撃表示のままだったら呑み込まれていた砲撃を、なのはさんはシールドを使って弾き返した。うん、やっぱりこの罠はなのはさんと相性抜群だな。まあ戦闘ダメージが発生しないのは地味に辛いが、ワンドローが強力だから仕方ないだろう。

 

「そうなると厄介だな。俺はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札5 LP3500

亮  モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

 

よし、このターンは最高の形で終わる事が出来た。なのはさんも守備表示だから、効果を使ってもまた守備表示に戻れるし。

 

「ドロー、まずはなのはの効果でデッキからリインフォースツヴァイを手札に加える。

更に手札からフィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。そして魔力高炉のLCを一つ生贄にして、八神はやて召喚。ミッドチルダとはやての効果で自身にLCが一つずつのる」

 

A2000・D1700

LC八神はやて1 ミッドチルダ1 魔力高炉1→0→破壊

 

「まだ手札は五枚・・・・」

「まだまだ行きますよ! はやてがいるとき、場のLC一つ取り除いて夜天の将シグナムは特殊召喚できる。こい、シグナム! この効果で特殊召喚に成功した時自身にLCが一つのる。そしてそのカウンターを取り除いて夜天の騎士ヴィータを特殊召喚。こいつもシグナムと同じ条件で特殊召喚が可能」

 

A1800・D1400

A1900・D1200

 

LC はやて1→0 シグナム1→0 ヴィータ1

 

「一気に場に三体も並べたか、流石だ」

「更にヴィータのLCを取り除いてツヴァイ特殊召喚! そしてそのまま融合! 現れろ、祝福の騎士ヴィータ。このカードが融合召喚に成功した時、セットされたカード二枚まで破壊できる。俺は亮さんの伏せ1枚を選択!」

『コメートフリーゲン!』

 

A2600・D2500

 

ヴィータさんは巨大な鉄球を一つ自分の目の前に出現させると、その鉄球をヴィータさんのデバイス、グラーフアイゼンで物凄い爆音が聞こえる程の力で叩き、伏せカードを破壊しようとする。

 

「チェーンして威嚇する咆哮を発動! このターンバトルするのは禁じられた」

 

罠カードから突如獣の雄叫びが出てきた。その雄叫びを聞くと、本来ならモンスターが脅える可愛らしい光景が見られるのだが、この四人は全く怯む素振りを見せずに、いつもの様に立っている。

その光景に俺だけでなく亮さんも呆気に取られた。

 

「ぼ、墓地のツヴァイの効果で場のLCを一つ取り除いて手札に」

 

LCミッドチルダ1→0

 

「なのはを守備にしてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター4 伏せ0 手札3 LP3500

亮  モンスター2 伏せ0 手札3 LP4000

 

っちぇ、せっかく並べたのに一枚のカードで攻撃を止められると、なんか損した気がする。というか実際損しているんだけど。はやてとシグナムさんはサイバー・ドラゴンより攻撃力が低い。どちらかは確実に倒されると思うけど、さあ、どうなる?

 

「ドロー、行くぞ! 手札と場のサイバー・ドラゴンを二体融合! 現れろ、サイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

A2800・D2100

 

やっぱりサイバー・ドラゴンはただの半上級じゃなくて、亮さんのデッキのエースだったか! 融合の渦から現れたのは、サイバー・ドラゴンが合体して二つの首を持ったモンスター。しかも攻撃力は2800、効果次第では辛いな・・・・。

 

「装備魔法ブレイク・ドロー発動! 機械族モンスターにのみ装備可能で、装備モンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、一枚ドローできる。更にサイバー・ツイン・ドラゴンは二回の攻撃が可能!」

 

よりによって二回攻撃かよ! 場を荒らされる上に、相手に二枚ドローを許してしまうのか。こんな事ならスバルさん手札に加えればよかった・・・・。

 

「バトル! サイバー・ツイン・ドラゴンで祝福の騎士ヴィータと夜天の将シグナムを攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

A2800 VS A2600

A2800 VS A1800

 

双頭の口から発射されたエネルギー弾が、ヴィータさんとシグナムさんを反撃させる前に破壊した。流石ブルー寮卒業生のモンスター。破壊した時の爆風が普通のモンスターとは桁違いだ。

 

遊斗LP3500→2300

 

「二枚ドローする・・・・。俺はこれでターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札3 LP2300

亮  モンスター2 伏せ0 手札3 LP4000

 

あれ、二枚引いて伏せは無しか。それにあのサイバー・フェニックスも攻撃表示のままだし。何か手札から発動できるカードでも引いたか?

それにしても手札や場のアドバンテージを稼ぐのが得意な俺が、彼と同じ手札、同じモンスター数と言うのは彼が強い証拠だろう。だがなのはさんの効果を甘く見てはいけない。

 

「ドロー、まずはなのはの効果でデッキからフェイト・テスタロッサを手札に加え、そのまま召喚!」

 

A1800・D500

 

黒いマントを靡かせて登場してきたフェイトは、チラッと俺と目線を合わせる。

 

『結構苦戦してるみたいだね』

「まあな、けど久しぶりのデュエルだ。負けるわけにはいかない。ミッドチルダとフェイトの効果でそれぞれLCが乗る!」

 

LCミッドチルダ1 フェイト1

 

「フェイトのLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚!」

「ほう、てっきり“夜天”がいる場合しか特殊召喚できないと思っていたが、違ったみたいだな」

「ええ、こいつは色んなモンスターと融合できますからね! 行きます、はやてとツヴァイを融合し、夜天の主・八神はやてを召喚!」

 

上からゆっくりと降りて登場してくるはやてさん。黒い翼が付いているので本来なら堕天使、というイメージがつきそうだが、彼女の美しさ、可憐さ、凛々しさが、彼女を堕天使ではなく天使にしている。

 

「融合召喚に成功した時、自身にLCを二つ乗せ、自分のLCの数×300攻撃力が上がります」

 

A2100・D2000→2700

LCはやて2

 

「更に墓地のツヴァイの効果でミッドチルダのLCを取り除いて手札に加えます」

 

LCミッドチルダ1→0

 

ツヴァイはLCの消費が物凄く激しいけど、それ以上の活躍をしてくれているからなるべく手札に持っておきたい。相手に手札内容がバレているとは言え、やはりこのカードは強力だ。

 

「カウンターを移動させて攻撃力を上げられた筈なのに使った?」

「このカードがあるからですよ。手札から魔法、カートリッジロード発動! 自分のフィールドのカードに一つLCを乗せる。俺が選択するのは当然はやて!」

 

LCはやて2→3

A2700→3000

 

「なるほど。ダメージより手札を優先したか」

「バトル! はやてでサイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A3000 VS A2800

 

家族の(かたき)を相手にして二人は燃えたのか、いつもよりエフェクトが派手だった。一体にしか攻撃してないのに関わらず、相手フィールド上が凍りついている。

 

亮LP4000→3800

 

「フェイトでサイバー・フェニックスを攻撃!」

『ハーケンセイバー!』

 

A1800 VS 1200

 

バルディッシュから放たれた回転する鎌状の魔力刃は、サイバー・フェニックスを縦に切断する。今初めて知ったが、ソリッドビジョンは機械の中身まで確認できるのかよ。

って事は服を着ているキャラとかって、下着とかも作られてるのか? 下心とかじゃなくて普通に気になる。

 

LP3800→3200

 

「攻撃表示のサイバー・フェニックスが戦闘によって破壊された時デッキから一枚ドローする」

 

なるほど、だから攻撃表示のままだったのか。

 

「なのはを守備表示にしてターンエンドです。エンドフェイズ、カートリッジロードの効果で同名カードを手札に加えます」

 

また罠が引けなかったけど手札消費はなかった。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ0 手札5 LP2300

亮  モンスター0 伏せ0 手札4 LP3200

 

「俺のターン、ドロー! 速攻魔法手札断札を発動。お互い手札を二枚捨てて二枚ドローする」

 

手札交換カードか・・・・。すまないがリインはあとシャマ(ねえ)としか融合できない。俺は回収したリインとサーチしたカードリッジロードを捨ててデッキから二枚ドローした。

 

「更に貪欲な壺を発動! 墓地のサイバー・ドラゴン、ツイン、フェニックス、ヴァリー、プトロサイバーをデッキに戻し二枚ドロー!」

 

召喚されなかったモンスターが二枚。そして戻したサイバー・ドラゴンは一枚だけ。何か仕掛けて来るならこのターンの筈。

 

「行くぞ! 融合回収(フュージョン・リカバリー)発動! 墓地のサイバー・ドラゴンと融合を手札に加え、融合発動! 手札の三枚のサイバー・ドラゴンを融合! 現れろ、サイバー・エンド・ドラン!」

 

A4000・D2800

 

融合の渦から稲妻と共に現れたのは、亮さんの言った通り、サイバー・ドラゴンを三体融合したモンスター。だがその威圧感と強者のオーラはサイバー・ツインとは比べ物にならなく、その在り余ったパワーを今すぐに吐き出してきそうだ。

 

「バトルだ! サイバー・エンド・ドラゴンでAOA高町なのはを攻撃! エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

バチバチバチとその体内に蓄えている膨大なエネルギーを三つの口に溜めたサイバー・エンド・ドラゴンは、三つの首をなのはさんに向け、一斉に発射した。攻撃力4000、なのはさんの華奢な体では受け止められない強力な攻撃力だが、さっきの手札断札で俺もいいカードを引けた。

 

「ダメージステップ時手札のスバルの効果発動! 手札のこのカードを捨て、なのはの守備力を1000アップさせる!」

 

D3000→4000

 

手札からモンスターになって現れたスバルさんは、サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃を防ごうと、なのはさんと一緒にバリアを張って防御を固めた。

 

「ほう、やはりその手のカードを握っていたか、その厄介なモンスターを狙って正解だった。その効果にチェーンして突進を発動! サイバー・エンドの攻撃力を700上げる! 更にサイバー・エンドは貫通効果を持つ!」

 

サイバー・エンド A4000→4700

 

「ッツ、そうき来たか!」

 

突進の発動と共にサイバー・エンド・ドラゴンの攻撃砲は更に大きくなり、なのはさんとスバルさんのバリアを破壊して二人を消滅させた。

 

「ッグ、まだまだ・・・・」

 

遊斗LP2300→1600

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札4 LP1600

亮  モンスター1 伏せ1 手札0 LP3200

 

俺の場にはフェイトとはやてさん。フェイトにLCは乗ってないし、ミッドチルダの効果でLCを移動してフェイトの効果を発動しても、守備力2800を越える事ができない。ック、突進握ってるって知ってたらスバルさん使わなかったのに・・・・。まあ亮さんも俺の手札にザフィーラが無いと知っていれば、フェイトを攻撃していただろうから、むしろラッキーと思おう。

 

「俺のターン、ドロー。来た! 俺は手札のキャロ・ル・ルシエを魔法・罠ゾーンに表側表示で置きます」

「また随分個性的なカードだな」

 

フェイトさんと同じくこの手のカードも少ないよな。トイ・マジシャンと白銀のスナイパー、ちょっと違うけど世界に一枚ずつしかない宝玉獣。あと噂で聞いたぐらいだけど、オレイカルコスの結界って言う幻のカードが似たような効果を持ってるらしい。

 

「キャロの効果! このカードは魔法として扱い、表側表示で存在する限り、LSの攻撃力は300ポイントアップする。更にこのカードに乗っているLCの数×300ポイント上昇します」

 

A3000→3300

A1800→2100

 

「そして魔法都市ミッドチルダの効果発動! はやてのLCをフェイトに移動!」

 

LCはやて3→2 フェイト1

 

「その時点で永続罠カード、安全地帯を発動する」

「っな!? そのカードは!?」

「ああ、今日来たパックに入っているカードだ。効果は知っているようだが一応説明する。

モンスター一体を選択して発動し、選択したモンスターは相手の効果の対象にならず、戦闘および相手の効果では破壊されない。選択されたモンスターは直接攻撃する事が出来ず、このカードがフィールドから離れた時選択したモンスターを破壊する」

 

そう、聞いて分かると思うが中々優秀なカードなのだ。特に亮さんが使っているサイバー・エンドの様な貫通効果持ちにはかなり嬉しい防御カード。

これでフェイトに移動したLCも無駄になってしまったが、まだ終わらない。

 

「はやてのLCを取り除きデッキからアルフを特殊召喚。そして手札から魔弾作製を発動! 自分フィールドのレベル7以上のLSを生贄にする事で、デッキ、墓地からカートリッジロードを可能な限り手札に加える。はやてを生贄にして俺は墓地の二枚とデッキの一枚を手札に」

「最上級よりもカウンターを選んだか、面白い戦法だ」

「行きます! これが今の俺の最大火力! 手札のカートリッジロードを全てキャロに使いLCを三つ乗せる!」

 

LCキャロ0→3

A2100→3000 1600→2800

 

「場のフェイトとアルフを融合! 現れろ、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

融合の渦から現れたフェイトさんは、キャロの桃色に光る魔力ブーストを受け継ぎ攻撃力を1200ポイント上昇させる。

 

A2800→4000

 

「まだです! 手札から装備魔法バルディッシュ・アサルト・ザンバーを発動! これにより攻撃力を1000上昇」

 

A4000→5000

 

バルディッシュのカートリッジ音が複数回鳴り響くと、フェイトさんが持っていた斧は、複雑な変形をして巨大な大剣になった。その大剣を片手で持ち上げ、自分より何十倍も大きいサイバー・エンド・ドラゴンを睨みつける。

 

「バトル! フェイトでサイバー・エンド・ドラゴンを攻撃! 効果で攻撃力が700アップ!」

 

A5700 VS 4000

 

再び内蔵エネルギーを三つの口に溜め、フェイトさんに狙いを定めて発射したサイバー・エンド・ドラゴン。だが神速の持ち主であるフェイトさんはその攻撃を難なく回避すると、サイバー・エンド・ドラゴンに直射型の砲撃を放った。

 

『プラズマザンバーブレイカー!』

 

亮LP3200→1500

 

「ック、だが安全地帯の効果でサイバー・エンドは破壊されない」

「・・・・二枚伏せてターンエンドです」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札0 LP1600

亮  モンスター1 伏せ1 手札0 LP1500

 

おい、カイザーとライフが並んでいるぞ・・・・。

しかも攻撃力5000のモンスター。

あいつオシリスレッドだよな?

 

なんて会話が周りから聞こえてくるが、そんな下らない会話は、すぐに頭の中から出て行った。

この状態で行けば次のターンには俺の勝利は確定なんだが・・・・。

 

「俺のターン、ドロー! 強欲な壺発動、デッキから二枚ドロー・・・・ッフ、残念だが遊斗、俺の勝ちだ。強化支援メカ・ヘビーウェポンをサイバー・エンドに装備!」

 

A4000→4500

 

あ~、機械族にヘビーウェポンを装備。この展開どっかで見た気が・・・・。

 

「リミッター解除を発動! これによりサイバー・エンドの攻撃力が2倍になる!」

 

A4500→A9000

 

おいおい・・・・。冗談じゃねえぞ、攻撃力9000って二回死ねるぞ。

 

「バトル! サイバー・エンド・ドラゴンで黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃!」

「ック、攻撃宣言時罠発動! Strikersの回収! 墓地のLSモンスター三枚をデッキに戻し二枚ドローする。更に速攻魔法、バルディッシュ・スピードローダー、相手の攻撃宣言時バルディッシュを装備しているモンスターの効果を無効にして攻撃力2000アップ!」

 

A9000 VS A7000

 

俺は三枚のモンスターをデッキに戻し素早くシャッフルし、ドローする指に力を込める。

このドローに全てが掛かっている。引いてチャンスがあるのはあの二枚だけ・・・・。一枚はスバルさんで攻撃力を上げ、ライフを保つ事。そしてもう一つは・・・・。

 

「・・・・頼む!」

「これで終わりだ! エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

A9000 VS 7000

 

勢いよく二枚引くと同時に、サイバー・エンド・ドラゴンからこのデュエル三回目のエネルギー弾が放出された。フェイトさんは攻撃に呑み込まれ破壊されてしまったが、まだデュエルは終っていない。

 

「ダメージ計算時、手札のザフィーラを捨てる事によりダメージを0にする。更に0にした数値が自分のライフを上回っていた場合一枚ドロー!」

「・・・・今の攻撃を避けるとは、面白い! 俺はターンエンドだ! エンドフェイズにリミッター解除の破壊効果で、代わりにヘビーウェポンを破壊する」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター0 伏せ1 手札2 LP1600

亮  モンスター1 伏せ1 手札0 LP1500

 

状況は最悪。正直今この状態ではライフなんて100だろうと1600だろうが五十歩百歩だ。

手札はこの二枚、完全に事故だ。だが墓地にはカードが溜まっている、それを利用できるカードをドロー出来れば!

 

「ドロー! ・・・・勝った! ティアナ・ランスターを通常召喚。ミッドチルダの効果でLCが一つ乗る」

 

LSティアナ・ランスター ☆4/炎/魔法使い/A1200・D1000

A1200→2400

 

現れたのはstrikersのリーダーであるオレンジ色の髪の少女。なのはさんのバリアジャケットに似た服を着て、二つの拳銃を持っている。キリッとした目とツインテールはいかにもツンデレ、と思わせる。実際スバルさんに対してはツンデレだが、俺にはツンデレの対応ではなくお姉さんの対応なのが悔しい。

まあそんなどうでもいい話は置いといて。

 

「行きます! ティアナの効果発動! LCを一つ取り除き、自分のLSモンスターを一体除外する。その除外したモンスターと同じ名称のトークンを特殊召喚する。俺はAOA高町なのはを除外し、同じトークンを特殊召喚します!」

 

A0・D0

 

「そんなトークンで何をするつもりだ?」

「王を召喚するんですよ。俺はAOA高町なのはトークンを生贄に、蒼穹(そうきゅう)の王・高町なのはを特殊召喚!」

 

カードをデュエルディスクにセットした瞬間、フィールドから物凄い風が発生する。風の発生地の一番近くにいる亮さんは勿論、このデュエルを見ている生徒まで、その風に吹き飛ばされないように足を踏ん張っている。

そして風の発生地に突き上がる竜巻が発生し、その竜巻の中に微かにだが人影が見えた。その人影は徐々にハッキリと見えてき、次第には人影が消えその正体が露わになっていく。

大きな赤い宝石を埋め込んだ巨大な王座。その王座にどうどうと座り、目の前のサイバー・エンド・ドラゴンを、まるで下等生物を見る様な眼で見つめる栗色の女性。その女性の周りには、今まで彼女が手に持っていたレイジングハートのブラスタービットが五機飛び回っている。

そう、王座に肘をつき偉そうに座っている女性がなのはさんだ。

 

LS蒼穹の王・高町なのは ☆10/風/魔法使い/A2500・D2500

 

「キャロの効果で攻撃力が1200アップ」

 

2500→3700

 

「それがお前の切り札か・・・・いいだろう! かかって来い!」

「ええ、なのはの効果発動、このカードが特殊召喚に成功した時、デッキから好きなカードを一枚墓地に送る。そしてメインの効果! 一ターンに一度、墓地から装備魔法を、装備条件を無視してこのカードに装備する。俺が装備させるのはレイジングハート・エクシード」

 

俺の声と共に、なのはさんを守るように動いていた一機のブラスターが強く光った。そのブラスターは発射口から桃色の細長い槍と魔力翼を展開してなのはさんの前で止まる。

 

「レイジングハート・エクシードは装備モンスターの攻撃力を1500上昇させる」

 

A3700→5200

 

「攻撃力5200ッ!」

「まだです! 速攻魔法A.C.S発動! レイジングハート・エクセリオンを装備したモンスターの攻撃力は2000上がる!」

 

A5200→7200

 

レイジングハートは六枚の光の羽を大きく広げ、先端にある槍を更に伸ばす。

攻撃力7200という爆発的火力を持ちながらも、なのはさんはあくまで王座に座り、レイジングハートに触れることすらせずにニヤリと笑った。

 

「バトル! なのはでサイバー・エンド・ドラゴンを攻撃!」

 

A7200 VS A4000

 

「『ディバインバスター・エクステンション!』」

「俺の負けか・・・・。だがサイバー・エンド! 負けようと関係ない! 迎え討て!」

 

なのはさんは王座から離れず、まるで大砲発射の命令を下す様な口調だった。なのはさんの前で浮かんでいるレイジングハートは、その大きさでは考えられない程のエネルギー弾を溜め発射。何枚ものカードを破壊してきたサイバー・エンド・ドラゴンの攻撃を、桃色の砲撃があっさりと呑み込み、サイバー・エンド・ドラゴンを貫通し、大きな爆発音と共に破壊した。

 

亮LP1600→-1600

 

・・・・

 

「・・・・カイザーが、負けた?」

「あいつ、カイザーに勝ったぞ!?」

「ば、馬鹿な!? カイザーがオシリスレッドに負けるなんて! そうだ、カイザーは脅されてそれで態と・・・・」

 

ッツ、いくらなんでもそれはないだろう! この最高のデュエルをオシリスレッドって言うだけで、そこまで言うのか!? 

 

「静かにしろ! 俺は最高のリスペクトデュエルをし、負けた。これ以上言うならそれは俺に対する暴言とみなす!」

 

亮さんの言葉にみな一気にシーンとなった。さっきまで好き勝手言っていたブルー生徒も何も言えなくなったのか、俺を睨むしか出来なくなった。

その空間の中、パチパチと小さな拍手が遠くから聞こえた。校長先生だ。

 

「素晴らしいデュエルだったよ遊斗君、亮。本来なら月一試験は一つずつしか寮のランクアップは許されていないのだが、遊斗君はこの学園一と言われているカイザーを倒した。君が良ければオベリスクブルーまで昇格しないか?」

 

ま、まじか!? さっきの件で正直オベリスクブルーになるのは止めようかと思ったけど、やっぱり言われると頷きたくなる。というかもう既に頷いている。

十代、翔、隼人、オシリスレッドのみんな、この一ヶ月で仲良くなったみんなと別の寮になるのは辛いが、それ以上に今から三年間あの部屋で住む方が辛い。

クロノス先生が校長の暴走を止めようとする姿が見えるが、もう遅い。

 

「分かりました! その好意、受けさせてもらいます!」

 

こうして俺はオベリスクブルーになった。

これで狭い部屋とはおさらばだ!

 

 

 




フォーメーションチェンジ 通常罠
「LS」が攻撃対象に選択された時発動できる。攻撃対象のモンスターの表示形式を変更し、自分のデッキから1枚ドローする。この戦闘で発生する戦闘ダメージは0になる。

カートリッジロード 通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するLCを乗せる事ができるカード一枚にLCを1つ置く。このカードを発動したエンドフェイズ、デッキから「カートリッジロード」を手札に加える事ができる。

LSキャロ・ル・ルシエ ☆3/風/魔法使い/A500・D500
このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。また、このカードに乗っているLCの数×300ポイント、自分フィールド上に表側表示で存在す「LS」と名のつくモンスターの攻撃力・守備力は上昇する。

Strikersの回収 通常罠
自分の墓地に存在する「LS」と名のついたモンスター3体を選択して発動する。
選択したモンスターをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

バルディッシュ・スピードローダー
相手の攻撃宣言時、自分フィールド上の「バルディッシュ」と名のつく装備魔法が存在する場合のみ発動できる。「バルディッシュ」と名のつく装備魔法を装備しているモンスターの効果を無効にし、攻撃力を2000アップする。
また、次の自分のスタンバイフェイズ、自分フィールド上の「バルディッシュ」と名のつく装備魔法を墓地に送る事で、墓地に送ったカードを装備していたモンスターはこのターン2回攻撃ができる。

LSティアナ・ランスター ☆4/炎/魔法使い/A1200・D1000
自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスター1体を選択し、ゲームから除外する事ができる。自分フィールド上にトークンを表側守備表示で特殊召喚できる。(魔法使い族・炎・星1・攻/守0)
トークンのカード名は除外したモンスターと同じになる。

LS蒼穹(そうきゅう)の王・高町なのは 星10/風/魔法使い/A2500・D2500
このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上の「AOA高町なのは」1体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。このカードが特殊召喚に成功した時、自分のデッキから一枚選択して墓地に送る事ができる。また1ターンに1度、墓地に存在する装備魔法を装備条件を無視してこのカードに装備することができる。
装備魔法カードを装備したこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードに装備された装備魔法カード1枚をゲームから除外する事ができる。

レイジングハート・エクシード 装備魔法
「なのは」と名のつくモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は1500ポイントアップする。装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する事ができる。

A(Accelerate)C(Charge)S(System) 速攻魔法
「レイジングハート」と名のつく装備魔法が存在する場合のみ発動できる。「レイジングハート」と名のつくカードを装備しているモンスター一体を選択し、選択したモンスターの攻撃力は2000アップする。このターンのエンドフェイズ、このターンで破壊されたモンスターの数だけ、自分フィールド上のカードにLCを乗せる事ができる。

魔弾作製 通常魔法
自分フィールド上の「LS」と名のつくレベル7以上のモンスター1体を選択し発動する。選択したモンスターを生贄にし、自分のデッキ・墓地から「カートリッジロード」を可能な限り手札に加える。




速攻魔法 ACS&バルディッシュ・スピードローダー
一見メチャクチャ強そうですが、遊戯王をよくご存じの人なら分かると思いますが、使い勝手が悪すぎます。ACSも発動しにくいですが、バルディッシュ・スピードローダーは相手の攻撃宣言時じゃないとできないのが難点。幼少期フェイトが1800、バルディッシュを装備して2800。この打点までいくと戦闘破壊より効果破壊の方が楽。オネスト、聖槍、光子化が天敵。



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第六話

今回から攻撃力守備力の変更の説明を変えました。今までは数値の変化だけでしたが、これからは誰の数値が変化したかを書きます。LCの個数の説明もそうですが、必要な所が右側にずれない為に
高町なのはでもAOA高町なのはでも

LCなのは

という風にします。


色々とアドバイスを下さりありがとうございます。


「ぅぅぅ・・・・寂しいっスよ」

「こんなに早くブルーに行く生徒はイエローを入れても、遊斗が初めてなんだな」

「遊斗! 何かあったらいつでもレッドに来いよ! いつでも歓迎するぜ!」

「ああ、みんなありがとう」

 

月一試験の翌日、オベリスクブルーに荷物を運び終えたので、最後にみんなと別れの挨拶をした。寮が変わるだけなのだが、それでも寂しいものだ。思えば小中と友達がいなかった俺にとっては、一ヶ月間毎日同い年と親しく話すのは初めてだったかもしれない。コミュ症にならなかったのは、毎日精霊(みんな)が話しかけてくれたおかげだ。

まあ俺のどうでもいい事情は置いといて、俺は三人と握手をすると、大事な手荷物だけ持ってレッド寮を後にした。

 

 

 

 

フェイトさんの道案内を基に歩いていると、青と白で造られた巨大な城があった。

え? これが寮? 俺もドラマとかでしか見た事ないけど、寮ってもっとこうイエロー寮みたいなものじゃないの? 

俺が困惑している間に、城の前にいたクロノス先生がこっちに歩いてきた。先生の表情はドロップアウトが上がってきた事への不満と、亮さんを倒した俺がオベリスクブルーに入ってきたことへの喜びが混ざった複雑な顔だ。

 

「シニョール、スカリエッティ。待っていたノ~ネ」

「あ、態々すいません。それと出来れば下の名前で呼んで欲しいのですが」

「分かりました。で~は、シニョール遊斗、こっちナノ~ネ」

 

クロノス先生が歩き始めたので、クロノス先生の背中に付いて行くように歩き、キョロキョロと辺りの景色を見て行った。

外見だけでもオシリスレッドと月とスッポンだが、中に入ると余計に格差を感じた。まずエントランスには警備員の人がおり、侵入者がいないかどうか確認している。そして高級ホテルに匹敵する程の、豪華なロビーがあり、それぞれの階へ続くエレベーターがあった。

 

「シニョールの階は10階。オベリスクの中でも優秀な生徒が多い、最上階ナノ~ネ」

「ハァ、俺がいきなり最上階ですか?」

「ワタシ~も、いくらカイザー亮を倒したとは言え、それは特別扱いしすぎだと思ったのですが、校長とカイザー亮に押されてしまったノ~ネ」

 

あ~、校長と学校一優秀な生徒に言われたらNOとは言えないよな。クロノス先生には申し訳ないけど、俺はお二人の好意に素直に喜んだ。エレベーターから降り少し歩くと、クロノス先生が一つのドアの前で止まった。どうやらここが俺の部屋の様だ。

 

「ここがシニョールの部屋で、これが部屋の鍵ナノ~ネ。ではワタシはこれで失礼する~ノ」

「ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」

 

帰って行くクロノス先生に礼を言うと、早速貰った鍵を使いドアを開けた。

中に入った途端、何もしていないのに突然部屋の明かりがついた。怪奇現象でも自動で明りが付いた訳でもなく、誰かが明りを付けたのだ。

 

『やったー! ふかふかベッドだー!』

『うわ~、大きなソファー、これでエリオとキャロと一緒にのんびりできるな』

『おお~、ピッカピカのキッチン! しかもIHコンロやん!』

 

三人のはしゃぎ声を聞いてハァとため息をつくと同時に、微笑ましくてクスッと笑った。部屋に入ってすぐの所にあった荷物を整理していると、三人だけではなくみんなカードから飛びだしてきてワイワイやっている声が聞こえた。手伝ってもらいたいが、みんなカードの中で苦しかったのだ、今日くらいは大目に見ておこう。

なんて思っているとシグナムさんとアインスがカードから出てきた。

 

『私達だけだが手伝おう』

『みな久しぶりの広い部屋に興奮しているのだ。許せ』

「助かります。ではシグナムさんはあの荷物をあっちに、アインスはこの荷物をこっちにやって」

 

この年頃の男なら他人に荷物を見られたくないと聞いた事があるが、俺は特に抵抗がない。まあ小さい頃からずっと一緒にいるから当然なんだろうか?

みんながはしゃいでいるリビングらしき部屋には入らず、他の部屋の探索をしつつも荷物を整理して行った。しかし回れば回る程思うが、これで一人部屋とは未だに信じられない。トイレや個人風呂は勿論、クローゼットやカード保管室などもあり、特にそのカード保管室はレッド寮の俺の部屋と大きさが余り変わらない。

シグナムさんとアインスの協力もあり、ほとんど片づけ終えたので、一番の楽しみであるリビング入った。

 

「うわ~、これが俺の部屋になるのか。実家がしょぼく感じる」

 

俺の目に映っているのはキングサイズのベッド、L字型の大きなソファー、巨大なテレビ、ピカピカのキッチン、広々とした天上、そしてバルコニーへと繋がる窓。あのオシリスレッドから一気にこの部屋に来て、ただでさえ豪華な部屋がより一層豪華に見える。

俺も部屋に感動してみんなとワイワイしていると、コンコンと扉がノックされ、皆一様にピタリとトークを止めた。

 

「どちらさまですか~?」

 

みんなの事がバレないかと少し冷や汗をかきながら扉を開けると、そこには昨日デュエルした亮さんがいた。

 

「あっ、亮さん。昨日ぶりです」

「? やたらと物音がしていたがお前一人か?」

 

や、やっぱり聞こえてたか。みんなは中途半端に物に触れたりできるからこういうトラブルがあるんだよな・・・・。

 

「い、いや、広い部屋になってたからはしゃいでて」

「そうか、子供らしいところがあるんだな」

「ハハハ・・・・」

 

二、三分であそこまで散らからせる子供はそうそういないと思うが。亮さんは俺の苦笑いが怪しく見えたのか、疑いの目で俺を見下ろした。

うっ、昨日はデュエルに夢中で全く気にして無かったけど、亮さんってかなり目力あるな。俺より二つ上だから身長とか体格も結構違うし、正直結構怖い。

 

「それで、俺に何か?」

「せっかくだから寮を案内しようと思ってな。知っての通りこの寮の生徒はプライドが高いからな、レッド寮からの生徒を良いと思わない」

「ああ、なるほど。それでカイザーと呼ばれる亮さんがわざわざ・・・・」

「それもあるがまたお前とデュエルがしたいんだ。俺も負けたままは嫌だからな」

 

なるほど、向上心のあるデュエリストなら誰もが持っているプライドか。誰しも負けたままというのは嫌な筈だ。

負けても構わない、相手は強いから仕方ない、そう思っている奴は低レベルのデュエリストのままだと俺は思っている。

 

 

 

 

ということで亮さんに寮を案内してもらっていたのだが、案の定レッドだった俺がカイザーの隣にいるのが気に食わない奴が突っかかってきた。

 

「おい! どうしてオシリスレッドのお前がカイザーの隣にいるんだ!?」

「新入生なんで案内してもらってるだけですが?」

 

日本人は謙虚と言ったのはどこのどいつだ? 亮さん曰くこのブルー寮生徒の半分以上が、医者だったり社長だったり弁護士だったりのボンボンで、甘やかされて育った所為か、自分が偉いと思っているらしい。

 

「生意気だよお前! お前がカイザーに勝ったのはただのマグレだ! それを今から証明してやる!」

「・・・・どうする、遊斗?」

「いいですよ。確かに亮さんに勝ったのは運だけど、人を見下すデュエリストには運が悪くても実力で勝ってやるよ!」

「黙れ!」

「「デュエル!」」

 

ロビーでのデュエルだったので、既に観客は大勢いる。

 

「先攻は貰うぜ! 俺のターン、ドロー。手札から可変機獣(かへんきじゅう)ガンナードラゴン」

 

ガンナードラゴンA2800・D2000→A1400・D1000

 

ガンナードラゴンか、嫌な予感しかしないんだが・・・・。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

ブルー生徒 モンスター1 伏せ2 手札3

 

あのニヤニヤした表情から見て、伏せカードは100%効果を無効にするカードだろう。ガンナードラゴンはレベル7のモンスターだが攻撃力と守備力を半分にする事で通常召喚できるカード。ステータスを半減にするのは効果なので、その効果を無効にすると攻撃力は表記された数値と同じになる。効果を無効にするカードとはかなり相性がいい。

 

「苦手なデッキと当たったな・・・・。ドロー!」

 

さて、あの伏せがフィールドのモンスターの効果を無効にする永続罠、スキルドレインだったら面倒臭くなる。ミッドチルダや魔力高炉があるが、基本的にモンスターの効果でLCを乗せて行くのが俺のデッキだ。そのモンスター効果を止められると、色々と行動が縛られる。おまけにスキルドレインを破壊できるカードも手札にはない。

 

「高町なのはを召喚、効果で自身にLCを置き、そのカウンターを取り除き魔法・罠を破壊する」

 

A500・D1800

 

「させるわけないだろう! 1000ポイントライフを払い、永続罠スキルドレイン発動! ハッハッハ! 何かするつもりでそのモンスターを攻撃表示で召喚したみたいだが、無駄だったな。しょせんオシリスレッドだ」

 

A1400・D1000→A2800・D2000

 

いくら心優しい俺でもいい加減その台詞にはイライラしてきたぞ。いいだろう、元オシリスレッドの底力を見せてやる。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗    モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

ブルー生徒 モンスター1 伏せ2 手札3 LP3000

 

「ドロー! 行くぞ、ゴブリン突撃部隊を召喚!」

 

A2300・D0

 

またデメリットモンスターか。そのデメリットもスキルドレインの効果で無効になっているから実質レベル4の攻撃力2300。というかガンナードラゴンに突撃部隊って、とりあえずデメリットモンスターを入れただけか? 

 

「バトル! ゴブリン突撃部隊で白いモンスターを攻撃!」

「名前で呼べ! 攻撃宣言時罠発動、フォーメーションチェンジ! LSが攻撃対象になったとき攻撃対象になったLS表示形式を変更して一枚ドロー」

「だがその効果では戦闘破壊までは止められないはずだ!」

「まだまだ! これにチェーンしてもう一枚の罠、プロテクションを発動する! LS一枚を対象に取り、このターン選択されたモンスターは破壊されない」

 

正直二枚使って守るくらいなら攻撃反応型の罠が欲しい所だが、手札に来ないから仕方が無い。

 

「生意気な! 俺はこれでターンエンド」

 

遊斗    モンスター1 伏せ0 手札4 LP4000

ブルー生徒 モンスター1 伏せ2 手札3 LP3000

 

「ドロー!」

 

こうなったらなのはさんを呼んでも壁にしかならない。それぐらいなら低レベルでビートした方がいい。

 

「手札から装備魔法レイジングハート・エクシードをなのはに装備。攻撃力1500アップ」

 

なのはA500→2000

 

「手札のキャロを魔法・罠ゾーンに魔法として置く。このカードの効果により自分フィールドのLSの攻守は300アップ。更にカートリッジロードをキャロに発動し、LCを一つ乗せる。これにより更に300アップ!」

 

LCキャロ1

なのはA2000→2600

 

「バトル! なのはでゴブリン突撃部隊を攻撃!」

『エクセリオンバスター!』

 

A2600 VS A2300

 

「ハッハッハ、甘いな! 速攻魔法、禁じられた聖杯。モンスターの効果を無効にして攻撃力を400上げる」

「やっぱそのカードか、ダメージステップスバルの効果でなのはの攻撃力を1000上げる」

「なんだと!?」

 

なのはA2600→A3600 VS A2700

 

なのはは元攻撃力500とは思えないほどの砲撃を発射。砲撃はキャロの支援により更に勢いを増し、それに加えスバルのディバインバスターまで発射された。その名の通り突撃するしか脳がないゴブリンはあっさりと破壊された。

 

ブルー生徒LP3000→2100

 

「カードを一枚伏せてターンエンド、エンドフェイズ時カードリッジを手札に加える。ブルーって割には随分と分かりやすい伏せですね」

「ック、おのれええええ!」

 

遊斗    モンスター1 伏せ2 手札1

ブルー生徒 モンスター1 伏せ1 手札3

 

「ドロー! ック、俺は手札抹殺を使う!」

 

手札交換カードか。この学校ではあんまり活用されていないカードだが、プロはこの使いにくいカードを自分の手足の様に使っている。実際初代デュエルキングの武藤遊戯さんも使ってたし。

俺は一枚、相手は三枚デッキかだドローした。

あっ、イライラしていた表情が急に明るくなった。

 

「ハッハッハ! レッド相手にこのカードを使うのは余りに勿体ないが、特別だ! 神獣王バルバロスを召喚!」

 

バルバロスA1900・D1200→A3000・D1200

 

バ、バルバロス!? あの超レアカードじゃないか!? このカードはガンナードラゴンと同じようにデメリット付きで通常召喚できるモンスター。だがガンナードラゴンの1400とは違い、1900で妥協召喚ができる。更にモンスター三体をリリースして召喚した場合相手フィールドを一掃できる効果ももっている。レア度が高いので、普通の高校生が買えるカードではない筈。亮さんが言っていたボンボンの一人にこいつも入っているんだろう。

 

「更に装備魔法巨大化によりこいつの攻撃力を二倍にする!」

 

A3000→6000

 

「攻撃力6000と2800か」

「バトル! バルバロスで高町なのはを攻撃! トルネード・シェイパー!」

「永続罠、鋼の軛! モンスター一体を対象にし、そのモンスターは攻撃を封じられる! 俺が選ぶのは当然バルバロス!」

 

カードが光ると共にバルバロスの足元から大量の魔力刃が出現し、バルバロスに突き刺さった。これ破壊されているんじゃないのか? って思う程悲惨な姿のまま、フィールドに居続けている。

 

「ッチ! だがガンナードラゴンの攻撃が残っている!」

 

A2800 VS A2600

 

「ダメージは受ける、だがレイジングハート・エクシードの効果により、装備モンスターが破壊される代わりにこのカードを破壊する」

 

遊斗LP4000→3800

A2600→1100

 

「ああああっ! とっととやられろ! 一枚伏せてターンエンドだ!」

「おっと、エンドフェイズ鋼の軛の効果で対象モンスターの攻守を1000下げ、フィールドのカードにLCを一つ乗せる。俺はキャロに乗せる」

 

あ~あ~、自分の方が有利な状態なのにイライラするなよ。

バルバロスに刺さっている魔力刃の一つが光り出すと、そこから青色のエネルギーを放出し、キャロの持っているデバイス、ケリュケイオンの中に入って行った。

 

LCキャロ1→2

バルバロスA6000・1200→5000・200

なのはA1100→1400

 

遊斗    モンスター1 伏せ2 手札1

ブルー生徒 モンスター2 伏せ3 手札0

 

さて、いい加減スキルドレインを破壊できるカードが来てもいいと思うんだが。まあ何が来るか分からないのがデュエルだ。有名人も言っていた、ドローしてから考えるか。

 

「ドロー、よしっ。手札からディバインバスターを発動! なのはがいる時場のLC一つ取り除き、フィールドのカードを二枚破壊する。俺は伏せとスキルドレインを破壊!」

 

キャロから送られた魔力を使い、なのはは元々持っていたレイジングハートに魔力を溜めて二枚のカードに標準を合わせ、発射した。破壊された伏せカードは、聖なるバリア―ミラーフォース―。また高級なカードを。

 

「これで効果使い放題だ! キャロのLCを取り除きユーノ特殊召喚! なのはとユーノを融合、現れろAOA高町なのは!」

 

キャロLC2→1

なのはA1000・D3000→A1600・D3600

 

「またそのモンスターか。そんな雑魚カードじゃ俺のモンスター達に並ぶことすらできない。あの破壊はプレイングミスだな!」

 

別にこのターン決める訳じゃないから、なるべくバックは破壊しておきたかったんだよ!

 

「なのはの効果発動! デッキからエリオ・モンディアルを手札に加え、そのまま効果発動! このカードを墓地に送る事で墓地のLSを一枚手札に加える。俺が加えるのはスバル」

「それでも攻撃力2600だ!」

「なにもなのはで倒すとは言っていない。フェイト・テスタロッサを通常召喚」

 

フェイト1800・D500→A2400・D1100

LCフェイト1

 

黒のマントをはばたかせて登場してきたフェイト。相棒であるバルディッシュを構え、二体のモンスターと対峙するその姿は、なのはさんの道を切り開く騎士の様だ。

相手もフェイトの効果は知っているのか、さっきまでの余裕な表情が一気に不安の表情に変わった。

 

「フェイトの効果発動! このカードのLCを取り除き相手モンスターの表示形式を変える。俺が変えるのはバルバロス」

 

フェイトが隠れながらの得意技であるライトニングバインドがバルバロスを捕縛して電流を流す。その電流に耐えられなかったのか、バルバロスは持っていた武器を徐々に降ろして行く。

 

「バトル! なのはでバルバロスを攻撃」

『アクセル・シュート!』

 

A1600 VS D200

 

鋼の軛の効果で元々フィールドに存在している事自体不思議な状態だったバルバロスは、なのはさんのアクセル・シュートを受け、やっと解放されたと、少し嬉しそうに破壊された。だが持ち主のブルー生徒は攻撃力5000のモンスターが僅か攻撃力1600のなのはさんに破壊されて大激怒。

 

「フェイトでガンナードラゴンを攻撃! ダメージ計算時スバルの効果により攻撃力1000アップ」

 

フェイトA2400→A3400 VS A2800

 

『ハーケンセイバー!』

『リボルバーキャノン!』

 

フェイトの鎌状の魔力刃を飛ばす攻撃に、ガンナードラゴンは口からエネルギーを放出して迎え撃つ。だがスバルさんの衝撃波を発生するナックルを叩きつけられ、フェイトの攻撃を迎え撃つ事ができなくなり、魔力刃によって真っ二つに切断された。

 

「そ、そんな馬鹿な・・・・。俺のモンスター達が・・・・」

 

ブルー生徒LP2100→1500

 

これで相手はフィールド、手札、伏せ、全て0の状態。これで終わっただろう。

 

遊斗    モンスター2 伏せ1 手札0 LP3800

ブルー生徒 モンスター0 伏せ0 手札0 LP1500

 

「ド、ドロー・・・・!? フフフ、ハッハッハ!」

 

まさか一枚でこの状況を逆転できるカードを引いたか!? ッツ、まずいな、俺には手札もリバースカードもない。この状況で逆転されたら辛い。

 

「よくここまで俺を追いつめたな! だがしょせんオシリスレッド、このモンスターを突破できるわけがない! 墓地の可変機獣ガンナードラゴンと神獣王バルバロスをゲームから除外し、獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロスUr(ウル)を特殊召喚!」

「バ、バルバロスUr!?」

 

A3800・D1200

 

世界に一枚ずつしかないカードを持ってる俺が言うのも変だが、そのデッキにいったいいくらかけてるんだ!? 

バルバロスUr、見た目は機械を装備した神獣王バルバロス。攻撃力3800という、手札消費一枚で呼んだとは思えない攻撃力を持っているが、相手が受ける戦闘ダメージが0になるデメリットを持つ為、かなり癖のあるカードだ。だがスキルドレイン等を使うデッキには、攻撃力3800を手軽に出せるエースへと早変わり。

 

「バトル! バルバロスUrでフェイト・テスタロッサを攻撃! 閃光烈(クラッグ・)破弾(ショット)!」

 

A3800 VS A2400

 

バルバロスUrが持っている槍の様なドリルのような、よく分からない武器で攻撃した。フェイトは防ごうとシールドを展開したが惜しくも破壊され、戦闘で負けてしまい墓地に送られた。

 

「ハッハッハ! これでターンエンドだ!」

 

場 

遊斗    モンスター1 伏せ1 手札0 LP3800

ブルー生徒 モンスター1 伏せ0 手札0 LP1500

 

「ドロー! 場にLCがあるプラス攻撃力が高い、って理由でフェイトを攻撃したみたいだけど、間違いだったな! なのはを守備にして効果発動、デッキからリインフォースツヴァイを手札に加える。そして夜天の将シグナムを通常召喚!」

 

シグナムA1800・D1400→A2400・D2000

 

「そしてキャロのLCを一つ取り除きツヴァイを特殊召喚! これで終わりだ、場のシグナムとツヴァイを融合、出でよ祝福の将シグナム!」

 

シグナムA2700・D2000→3000・D2300

 

突如フィールドに巨大な氷柱が現れ、バチバチバチとひびが入って行く。パリンと氷柱が壊れる音と共に、中からツヴァイとユニゾンしたシグナムさんが出てきた。

 

「そ、そのモンスターは・・・・」

「クロノス先生とのデュエルを見たら覚えているよな? シグナムが融合召喚に成功した時自身にLCを一つ乗せる。そして効果発動! 自身のLCを一つ取り除き相手フィールドのモンスターの攻守を0にする」

『『捉えよ、凍てつく足枷! フリーレンフェッセルン!』』

 

シグナムさんの手から放たれた氷が古代の(アンティーク)機械(ギア)巨人《ゴーレム》の時と同じように、徐々にバルバロスUrを氷漬けにして行き、次第に見動きすらできなくなり、機神機王を情けない姿へと変えた。

 

バルバロスUr A3800→0

 

「そ、そんな・・・・」

「バトル! シグナムでバルバロスUrを攻撃」

「『『紫電一閃!』』」

 

A3000 VS A0

 

炎を纏ったレヴァンティンを強く握り、巨大な氷の塊を豆腐の様にスパッと切断した。その時の衝撃で飛ばされた氷の粒がブルー生徒を遅い、悲鳴と共にライフポイントを0にした。

 

ブルー生徒LP1500→-1500

 

「流石だ遊斗。三年生相手にライフ200しかくらわなかったな」

「あっ、やっぱり上級生の方でしたか。途中からイラッとしたのでタメ口になってしまって」

「いや、今回はあいつが悪かった。後で俺からも言っておく、今はそっとしておいてやれ」

「はい」

 

亮さんに言われなくても、部屋の片隅で体操座りの状態でブツブツと呟いている上級生相手に話しかける勇気は俺にはない。

その後も亮さんにブルー寮を案内してもらい、今度デュエルをする約束をして別れた。

この一ヶ月で環境が二回も変わったからかどっと疲れがでてきたので、帰ってすぐ気を失うかのように眠りの世界に旅だった。

 

 

 

 




鋼の軛 永続罠
このカードがフィールド上に存在する限り、指定したモンスター1体は攻撃できない。エンドフェイズ時、指定したモンスターの攻撃力、守備力は1000ダウンし、自分フィールド上のカード1枚を選択する。選択したカードに1つLCを乗せる。


ディバインバスター  通常魔法
自分フィールド上に「なのは」と名のつくモンスターが存在する場合発動できる。自分フィールド上のLCを1つ取り除き、相手フィールドのカード二枚選択し、破壊する。




今回の新オリカはこの二枚。
さて、この鋼の軛、強いです。攻守を1000ずつ下げるのはタイミングが少し遅いですが、大事なのはLCを作ることが出来る事。攻撃を止めるかつ次のターンに入る前にLCを乗せる事ができるのは、防御+ブーストのダブル効果。



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第七話

前書いていた効果を確認していたところ、二つ変更点があります。
一つは祝福の騎士ヴィータに貫通効果をつけ忘れていた事。夜天の王・はやての融合召喚成功時にLCを乗せる効果を書き忘れていたこと。両者とも今回の話には関係ありません。



それと一枚ですがオリカのアイデアを募集しようと思います。

他の隊長陣が活躍している中、七話までにほとんど出番がないヴィータです。夜天でも祝福でも効果がいちまい使いにくく、ステータスも決して悪くないがどうも器用貧乏という感じです。それなのにどうしてもヴィータのIF(最終進化)が思いつかないので、ヴィータの最終進化のアイデア募集します。
頼んでおいてわがままですが、できればヴィータらしい効果でお願いします。

効果の条件は、自分フィールド上の「祝福の騎士ヴィータ」を生贄にした場合のみ手札から特殊召喚できる。

です。




俺がブルー寮に入ってから数日が経った。相変わらずブルー生徒の対応が酷く、俺を見ると睨んだりヒソヒソと陰口を言われたりと、散々だった。まあ部屋ではみんなが慰めてくれたり、レッド寮に行って十代達と遊んだりしているおかげでリラックスできたので、プライドの高い奴らの可哀そうな言動、として見る事にしている。

しかし小中学校は避けられ、高校で無視されると、結構悲しい学校生活だよな俺。いや、美少女+美人が周りにいるんだからいいのか? ただ恋愛に発展しないものかね~・・・・。

なんて考えるのにもしっかりと理由があり、今からミスデュエルアカデミアというコンテストが今から始まる。その名の通り学校一の美少女を決めるコンテスト。

男子生徒は誰に入れるかとワイワイやっているが、俺は正直どうでもいい。コンテスト事態には興味があるのだが、正直出場者全員が微妙なのだ。いや、微妙と言うとレベルが低いと捉えられるので言葉のあやだ。

ただ俺が言いたいのは。

 

「周りのレベルが高すぎるのがな~」

 

そう、俺の精霊達があまりに美少女+美人揃いなので、新入生一の美人と言われている明日香でさえ俺の目からすれば普通レベルだ。

贅沢な悩みだが、価値観がこうなってしまった以上仕方が無い。小さい頃、父さんのインタビューに来たアナウンサーに向かって「カメラ持つお仕事の人?」って言った事がある。その時のアナウンサーの頬がピクピクと動いていたのも今でも覚えている。

 

『あれ~、遊斗? もしかしてレベルが高いってうちらのこと?』

『遊斗がそんな風に思ってくれるなんて、私も嬉しいな~』

「そんな風に茶化されると、違うって言いたくなりますけど、その通りです」

 

なのはさんとはやてさんは嬉しかったのか、キャッキャと子供の様に喜んでいる。そんな姿もまた可愛いのが、贅沢ながらも悩みだ。フェイトさんはフェイトさんで自分の事を魅力のない普通の女だと思ってるから、色々と無防備だし。

 

『遊斗、そろそろ時間やから会場に行こ』

「りょ~かいです。さて、誰に入れようかな・・・・」

 

 

 

 

ミスデュエルアカデミア。エントリーした女子生徒の中から男子の投票により一番を決めるコンテスト。それに出るのは大概目立ちたがり屋か、ナルシスト。稀に友人に勧められて嫌々ながら出ると言う女子もいるらしいが、多分明日香がそうなのだろう。男子の野太い声の中、嫌そうにステージに上がって行った。ご愁傷さまです。

 

「さああああて! これで残り投票は僅か二票! オシリスレッド一年の遊城十代君! オベリスクブルー一年の遊斗・スカリエッティ君! さあ前に出て投票してください!」

 

はあ!? もうみんな投票してたの!? えっ、いつだよいつ!? 

しかも周りの視線が一斉に集まったので逃げる事もできない。ハァとため息をつき、嫌々ながら前の投票箱に歩いて行った。投票箱の前には既に十代がおり、十代もどっちにしようか悩んでいる。あいつはこのコンテスト事態がどうでもいい人種だろう。

 

「え~、俺の票無効にできない?」

「あ~、俺も誰に投票していいか分からないから辞退したいんだが・・・・」

「それはできません! 他の男子生徒全員が投票を終えたんです! あなた達の票で全てが決まるんですよ!」

 

と言ってもな・・・・。チラッとモニターを見ると明日香と小日向星華って人がぶっちぎりの状態だ。ただ小日向さんの方が一票だけリードしている。

明日香とはデュエルをした仲なので、彼女がミスデュエルアカデミアに興味があれば俺は迷わず明日香に投票するんだが、彼女には興味の欠片もない。むしろなりたくないと目が言っており、俺と十代に小日向さんを選べと睨んでくる。

 

「う~ん、じゃあ俺は明日香に投票するよ」

 

流石十代。そのアイコンタクトの意味を見事勘違いして明日香に投票した、ヘヘって顔をしているがそれ間違ってるからね? これにより二人は同点となり場が一気に盛り上がった。

つまり俺の投票で全てが決まると言う事だ。まさか早めに投票していなかったのがこんな展開になってしまうなんて。クソッ! 恨むぞ十代に俺の時間感覚!

明日香ファンの人に睨まれてしまうだろうが、本人がミスデュエルアカデミアになりたくないと言っているのだ。俺は小日向さんの名前を言おうと、口を開いた。

 

「俺は「待って下さい!」は、はい?」

 

俺の言葉を遮ったのは小日向さん本人。

 

「あなたは天上院さんとお知り合いよね?」

「はい。デュエルをした友達ですよ?」

「これでは不公平だと思いません?」

「はい?」

 

え? 別に友人に投票したらいけないっていう決まりとかなかったよね? というかそもそも俺はあなたに投票するつもりなんですけど!

 

「本来なら友人への投票は自由。ですがこの状況でそんな理由で投票されるとなると、面白ないでしょう?」

「いや、だから俺は「問答無用!」え~」

「私とデュエルしなさい!」

 

しかも明日香じゃなくて俺かよ。いや、デュエルとなると俺もその案に賛成だが、一応カイザーと呼ばれている亮さんを倒した男なんですが。

明日香は負けろって睨んでくるし、でもデュエリストとしてわざと負けるわけにはいかない。

 

「あなたが勝ったら天上院さんの勝利、私が勝ったら私の勝利よ」

 

他の人に投票するって選択肢も駄目ですか・・・・。

明日香ファンにも小日向さんファンにも睨まれ、今にもストレスで倒れてしまいそうだ。

 

「行くわよ!」

「ええい、考えるのを止めた! デュエルだ!」

「「デュエル!」」

「先攻は私、ドロー! フフッ、手札からオシャレオンを召喚!」

 

A1400・D800

 

オシャレとレオンを掛けたモンスターだが、全然オシャレに見えない。ま、まあ爬虫類の中のオシャレなので仕方ないのかもしれない。

因みに爬虫類族、女性陣では可愛いと言うグループと気持ち悪いと言うグループに別れる。ただシグナムさん、アインスに関しては興味すらないらしい。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

小日向 モンスター1 伏せ2 手札3 

 

「俺のターン、ドロー」

 

さて、オシャレオンは戦闘で破壊されると攻撃力500以下の爬虫類族を手札に加える効果を持つ。ということは十中八九爬虫類族デッキだろう。そうなるとおそらく2枚の伏せの中に、例の罠がある筈だ。

 

「フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動! 夜天の将シグナムを通常召喚! ミッドチルダの効果でLCが一つ乗る」

 

LCミッドチルダ1

A1800・D1400

 

「バトル! シグナムでオシャレオンを攻撃!」

「攻撃宣言時、永続罠ダメージ=レプトルを発動!」

『シュランゲバイセン!』

 

A1800 VS 1400

 

レヴァンティンはシュラゲンフォルムという、刀身を蛇の様にして中距離攻撃をするフォルムに変形した。いくつもの節に別れた蛇腹剣は、シグナムさんの意志に従い不規則に動き、オシャレオンをスパッと切り裂いた。

 

小日向LP4000→3600

 

「ダメージ=レプトルとオシャレオンの効果発動! オシャレオンの効果でデッキから攻撃力500以下の爬虫類を手札に加え、ダメージ=レプトルの効果で戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つ爬虫類を特殊召喚! 私は瓶亀を守備表示で特殊召喚し、ワーム・アポカリプスを手札に加える」

 

A200・D2100

 

ック、ダメージ400じゃ安かったな・・・・。この人、三年だけあってかかなり強い!

 

「カードを一枚伏せてターンエンドです」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

小日向 モンスター1 伏せ2 手札4 LP3600

 

「私のターン、ドロー! リバースカード、強欲な瓶。デッキから一枚ドローし、瓶亀の効果で更にもう一枚ドロー」

 

これで手札7枚。うわ~、爬虫類族には高速墓地溜めもあるし、恐ろしいな。

 

「瓶亀を生贄にマジオシャレオンを召喚するわ」

 

A2000・D800

 

今度現れたのは蝶ネクタイをしたでかいオシャレオン。使っている彼女はこのカードがお気に入りの様だが、男の俺でもこの大きさにはドン引きしている。出来るなら今すぐそのモンスターをフィールドから離れさせたいのだが、そんな事が出来たら苦労はしない。

 

「スネークレインを発動。手札一枚を墓地に送り、デッキの爬虫類を四枚墓地に送る。私が墓地に送るのはカミソリトカゲ、二枚のバルーン・リザード、ゴギガ・ガガギゴ」

「展開が早い!」

「死者蘇生! 墓地のゴギガ・ガガギゴを特殊召喚!」

 

A2950・D2800

 

やべえやべえやべえ! 爬虫類族最高攻撃力と貫通+攻撃封じ持ちのモンスターが並んだ。

 

「バトル! マジオシャレオンでそのピンク髪に攻撃!」

「烈火の将をピンク髪言うな! ダメージステップ時スバルの効果発動! このカードを捨てる事により攻撃力1000上昇、返り討ちだ!」

 

シグナムA1800→2800 VS 2000

 

巨大な舌を使ってマジオシャレオンが攻撃してきたが、シグナムさんがその舌を切り裂き、スバルさんの打撃でフィニッシュを決めた。

 

小日向LP3600→2800

 

「ああっ! ック、ダメージ=レプトルの効果発動! デッキから攻撃力800以下を特殊召喚、C・スネークを守備表示で召喚!」

 

A800・D1200

 

「今度は鉄蛇かよ!?」

「まだバトルは終っていないわ! ゴギガ・ガガギゴでその巨乳に攻撃!」

「ええい! だから烈火の将をそんな名前で呼ぶな! 罠発動、フォーメーションチェンジ。攻撃対象になったLSを守備表示にして一枚ドローする」

 

A2950 VS D1400

 

理性を失ったゴギガ・ガガギゴの暴走を止められず、シグナムさんは破壊されてしまった。

や、やべえ、爬虫類ってこんなに展開が早かったっけ?

 

「ふん、カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター0 伏せ0 手札3 LP4000

小日向 モンスター2 伏せ2 手札1 LP2800

 

「ドロー! よしっ、フェイト・テスタロッサを召喚! ミッドチルダと自身の効果により一つずつLCを置く。そして速攻魔法フォトンランサー発動! 相手フィールドのカード一枚を破壊する。破壊するのはそのリバースカード」

「甘いわね! その効果にチェーンして「選択されたカードはフォトンランサーの効果にチェーンできません」なんですって!?」

 

破壊したカードは毒蛇の供物。俺が恐れていたカードで、自分フィールドの爬虫類モンスターと、俺の場のカード二枚を選択して破壊するカード。これがめちゃくちゃ強く、発動されていたらかなり厄介だった。前のターンで伏せられてなくて良かった・・・・。

 

LCフェイト1 ミッドチルダ1→2

 

「フェイトの効果、このカードのLCを一つ取り除き相手モンスターの表示形式を変更! 俺はC・スネークの表示形式を変える」

「そんな!? 攻撃力はたったの800なのに!?」

 

LCフェイト1→0

 

「ミッドチルダのLCを一つ取り除きデッキからアルフを特殊召喚! 場のフェイトとアルフを融合! 現れろ、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LCミッドチルダ2→1

A2800・D500

 

融合の渦から現れたフェイトさんは、ゴギガ・ガガギゴを見て悲しい表情に変わった。ああ、確かゴギガ・ガガギゴって凄く悲しい物語だったよな。フェイトさんは優しいから、あのカードを何とかして救ってあげたいのだろう。

だが今はデュエルの真っ最中! フェイトさんには悪いが本気で行く!

 

「バトル! フェイトでC・スネークを攻撃! フェイトは自分の前にいるモンスターと攻撃する時攻撃力が700アップ」

 

フェイトA2800→3500

 

『トライデントスマッシャー!』

 

A3500 VS A800

 

丸くて黄色の魔法陣の中央にバルディッシュを貫通させた瞬間、そこから黄色の砲撃が出された。鎖で出来た蛇はそれに抵抗する事も出来ず、アッサリと破壊された。

 

小日向LP2800→100

 

「この攻撃で私のライフを0に出来なかった事を後悔するといいわ! ダメージ=レプトルの効果にチェーンして体力増強剤スーパーZを発動!」

「え、ええええ!? なんでそんなカード入れてるんですか!? いや、ダメージ=レプトルと相性はいいかもしれないけど!」

 

体力増強剤スーパーZ。ダメージステップ時に相手から2000以上のダメージを受けた時、ライフポイントから引かれる前に一度だけ4000ライフを回復する。

つまりさっきの計算ではなく。

 

小日向LP2800→6800→4100

 

になる。

嘘だ~。唯一ライフアドバンテージで勝ってたのに・・・・。しかもダメージ=レプトルで呼んでこれるのは攻撃力2700以下。ぶっちゃけ何でも呼んでこれる。

 

「そのカードを見てあなたの事を今思い出したわ。クロノス先生を倒しカイザーをも倒したアイドルデッキ使いの一年生。そのモンスターにはゴギガ・ガガギゴでは倒せないよね?」

「ええ、フィールドを移動できますから」

「だったらこの子よ。ワーム・キングを特殊召喚!」

 

ダメージ=レプトルのカードの中から出てきたのは、黄色い意味不明な物体X。体にはもう一つの口があり、リアルGを倒してくれたり、昆虫族モンスター相手でも動じないカッコイイフェイトさんでも流石にドン引きの様だ。

 

「・・・・ッハ! カートリッジロードを発動しミッドチルダにLCを一つ乗せる。カ、カードを一枚伏せてターンエンド。

エンドフェイズカートリッジロードの効果で同名カードを手札に」

 

LCミッドチルダ1→2

 

いかんいかん。余りの光景に俺も意識が一瞬飛んでいた。

そ、そう言えばここはミスデュエルアカデミアの会場だったな。小日向さんファンは元々彼女の趣味を知っていたようで微動にしていないが、他の観客も俺と同じようなリアクションだ。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札1 LP4000

小日向 モンスター2 伏せ1 手札1 LP4100

 

「私のターン、ドロー! ワーム・アポカリプスを召喚。そしてワーム・キングの効果。ワームを生贄にして相手フィールドのカード一枚を破壊! 私が破壊するのはその金髪小娘!」

「あんたより大人だよ! 罠発動、プロテクション! LS一体を選択して発動、選択したモンスターはこのターン破壊されない!」

 

ワーム・キングはワーム・アポカリプスを第二の口で食べ、そのエネルギーをフェイトさんに発射するが、フェイトさんは黄色のバリアを張って防いだ。

 

「・・・・カードを一枚伏せてターンエンド」

 

よしっ! 効果が簡潔ながらも強力なプロテクションのおかげでアッサリと防げる事が出来た。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札1 LP4000

小日向 モンスター2 伏せ2 手札0 LP4100

 

「ドロー! 装備魔法闇の書をフェイトに装備! 効果で攻撃力300アップ!」

 

フェイトA2800→3100

 

フェイトさんには似合わないが来てしまった物は仕方が無い。フェイトさんも苦笑しながら自分の前に移動してきた闇の書を握る。

 

「フェイトの効果でワーム・キングの前に移動し、バトル! ワーム・キングに攻撃!」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA3100→3800 VS A2700

小日向LP4100→3000

 

「まだまだ! ダメージ=レプトルの効果で二枚目のC・スネーク特殊召喚!」

「に、二枚積む程の能力ですかね?」

「爬虫類は攻撃力が低いからね。こういうモンスターは貴重なのよ」

 

なるほど~。いくらあのカードがあると言っても表記では2950が最高打点だもんな。・・・・あれ? というか小日向さんってあのカード持ってるのか? だとしたらかなりやばいんだけど。

 

「闇の書の効果で自身にLCを一つ乗せる。更にカートリッジロードを発動しこのカードにLCを一つ置く」

 

LC闇の書0→2

 

「最後にミッドチルダの効果でこのカードのLCを闇の書に乗せる」

 

LC闇の書2→3 ミッドチルダ2→1

 

「そのカードにカウンターを集めた?」

「闇の書の効果発動! LCが三つ乗ったこのカードをゲームから除外し、デッキから祝福の風リインフォースアインスを特殊召喚!」

 

フェイトA3100→2800

A2300・D2300

 

闇の書の放つ闇のオーラから現れたのは、銀髪をして赤い眼をした女性。というかアインスは明日香の前でよく登場するな。今回は狙っていたわけではないんだが。

 

「アインスの効果! 特殊召喚に成功した時融合デッキから夜天の書を特殊召喚できる。来い、夜天の書!」

 

LS夜天の書 ☆5/闇/魔法使い/A0・B0

 

アインスの右手には闇の書の本来の呼び名、夜天の書。闇の書とは違い禍々しい雰囲気がなく、魔法を研究するための本来の姿がそこにある。

 

「夜天の書の効果でアインスに装備する事ができる。そして装備された夜天の書の効果。一ターンに一度フィールドのカード一枚を選択して発動。選択したカードに乗っているLCを任意の数取り除き、デッキから取り除いた枚数ドローする」

 

LCミッドチルダ1→0

 

「・・・・ターンエンドです。エンドフェイズ、カートリッジロードの効果で同名カードをサーチ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札2 LP4000

小日向 モンスター2 伏せ2 手札0 LP3000

 

「ドロー! せっかくカウンターを溜めて特殊召喚したモンスターも無意味よ! 墓地の爬虫類族モンスターを全て除外!」

 

この状況でそれを引くか!? さ、最悪だ・・・・。

 

「きなさい! 邪龍アナンタ!」

 

フィールドに現れたのは毒々しい紫色の沼。その中から蛇の髪を持った化け物が、ゆっくりと上がってきて、フェイトさんとアインスをギロリと睨む。邪龍アナンタ、こいつが正真正銘爬虫類族の最強アタッカー。

 

「邪龍アナンタの効果。除外した爬虫類族×600ポイント攻守がアップ。私が除外したのは9枚!」

 

A5400・D5400

 

「バトル! 邪龍アナンタでその金髪に攻撃!」

「ック、フェイトの効果発動! 邪龍アナンタの前に移動!」

 

A5400 VS 3500

 

邪龍アナンタは自分の周りの蛇から紫色の液体をフェイトさんに向かって放つ。その液体をくらってしまったフェイトさんは、徐々に力が入らなくなったのか地面に膝をつき、生贄の時と同じようにスッと消えて行った。

 

遊斗LP4000→2100

 

「ゴギガ・ガガギゴで銀髪に攻撃!」

「少しは名前を覚えろ! 夜天の書の効果発動! 装備モンスターがバトルする時、墓地の夜天と名のついたモンスターをデッキに戻す事で、その攻撃力の半分を装備モンスターの攻撃力をアップする! 俺はシグナムをデッキに戻す!」

 

アインスA2300→3200 VS A2950

 

かつての呪いが解かれた夜天の書は、墓地にいる夜天の騎士の力をアインスに与える。その力を受け取ったアインスは、血の色をした鋼で出来た短剣を展開し、迫りくるゴギガ・ガガギゴに向けて発射した。

 

『ブラッディダガー』

 

LP3000→2750

 

「ック、あなたは返り討ちが得意のようね! 戦闘ダメージは250。ヴェノム・コブラを守備表示で出すわ」

 

A100・D2000

 

「メインフェイズ2。C・スネークを銀髪に装備させる。ターンエンド。エンドフェイズ邪龍アナンタの効果で、その厄介なフィールド魔法を破壊して貰うわ」

 

アインスA2300・D2300→A1500・D1500

 

場 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札2 LP2100

小日向 モンスター2 伏せ3(C・スネーク込み) 手札0 LP2750

 

状況最悪だなオイ。ミッドチルダを破壊され、アインスの攻撃力はダウン。前回のブルー生徒との余裕なデュエルが懐かしい・・・・。おまけに伏せまである。

 

「頼むぞ、ドロー! よしっ、まだチャンスはある! シャマルを通常召喚。シャマルの効果で自身にLCを置く。カートリッジロードをシャマルに選択して発動。LCを乗せる」

 

A700・D1800

LCシャマル0→2

 

「そして夜天の書の効果発動。シャマルのLCを取り除き二枚ドロー。アインスを守備にし、カードを二枚伏せてターンエンドです」

 

LCシャマル2→0

 

遊斗  モンスター2 伏せ3 手札1 LP2100

小日向 モンスター2 伏せ3 手札0 LP2750

 

「私のアナンタの前にはそのモンスター達も無力の様ね! ドロー、ヴェノム・コブラを生贄にスパウン・アリゲーターを召喚」

 

A2200・D1000

 

「バトル! スパウン・アリゲーターでアインスに攻撃!」

「だから名前でって! ・・・・あれ、合ってる? じゃなくてカウンター罠発動、クラールゲホイル! 

自分フィールド上にモンスターがおり、相手の攻撃宣言時に発動。このターンのバトルフェイズを強制終了させ、自分フィールド上のモンスター一体を選択、選択したモンスターをデッキに戻し、自分のデッキから夜天と名のついたモンスターを特殊召喚し、そのモンスターにLCを一つ乗せる。シャマルをデッキに戻し、来い、夜天の将シグナム!」

 

A1800・D1400

LCシグナム1

 

クラールゲホイルのカードから光の球体が複数出現すると、その一つ一つが相手モンスターの前まで移動して爆発した。だが相手モンスターに被害は無く、耳がキーンとする大きな音と激しい光が起きただけだった。スタングレネードと同じ様なものだ。

 

「また防御カード・・・・。エンドフェイズ、スパウン・アリゲーターの効果で生贄にしたヴェノム・コブラを守備で召喚。アナンタの効果でアインスを破壊」

 

アナンタの周りの蛇がアインスを一気に睨みつけ、その黄色い瞳を光らせた瞬間、アインスは石になってバラバラになってしまった。

ック、ここまでよくやってくれた、ありがとアインス。お前の為にも絶対勝ってやるからな。

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札1 LP2100

小日向 モンスター3 伏せ2 手札0 LP2750

 

この手札では5400のモンスターを越える事が出来ない。仮に出来たとしてもあの伏せカード、フェイトさんの攻撃の時も使っていないあのカードも正体が分からない。

 

「フフッ、私の場は圧倒的。対するあなたはそのピンク髪だけ。私の勝ちは目に見えたわね」

「さっきから烈火の将をピンク髪ピンク髪と・・・・。いいでしょう、こうなったら絶対にあなたに勝つ! ドロー!」

 

俺の師匠でもあるシグナムさんピンク髪やら巨乳やら散々言ったのだ。意地でもシグナムさんでとどめを刺したい。頼む・・・・。

恐る恐るめくったカードを見ると、そこには赤髪の小悪魔っぽい気の強そうな女の子の絵。

 

「来た! 手札から烈火の剣精アギトを通常召喚!」

 

LS烈火の剣精アギト ☆3/炎/魔法使い/A500・D500

 

『いよっと。おっ、ずいぶん苦戦してるじゃねえか遊斗、シグナム』

『ああ、だがお前が来たら100人力だ。あのモンスターも倒せる』

「俺は場のシグナムとアギトを融合! 現れろ、烈火の剣神シグナム!」

 

LS烈火の剣神シグナム ☆7/炎/魔法使い/A3000・D2000

 

突如フィールドに巨大な火柱が現れ、ゆらゆらと火が弱くなって行く。そして魔力が無くなったのかスッと消えると、中からアギトとユニゾンしたシグナムさんが出てきた。

リインが氷柱ならアギトは火柱。その二人とユニゾンできるのはシグナムさんだけだ。

 

「シグナムの効果発動! このカードが融合召喚に成功した時、このカードの攻撃力以下の元々の攻撃力を持つ相手フィールドに存在する相手モンスターを全て破壊する!」

「そんな!? 邪神アナンタの攻撃力は?だから0扱いなのに! ・・・・なんてね、速攻魔法我が身を盾に! 1500ライフを払い。フィールド上のモンスターを破壊する効果を無効にし破壊するわ!」

 

小日向LP2750→1250

 

・・・・勝った!

 

「そっちこそ甘い! 速攻魔法オプティックハイド! 

LSがフィールド上に存在し、相手がフィールドのカードを破壊する効果を持つ魔法・罠カードを発動してきた時に発動できる。そのカードの効果は自分フィールド上に攻守2000・レベル8のオプティックトークンを特殊召喚する効果になる!

チェーン処理によりトークンが特殊召喚された後、シグナムの効果が発動する」

 

相手フィールド上になのはさん達には馴染みのある、試験用の大型スフィアが現れた。受験者の半分は脱落する難関らしいが、アギトとのユニゾンをしたシグナムさんにとっては、ついでで倒せる雑魚だ。

 

『『剣閃烈火!』』

 

シグナムさんの中にいるアギトの声と共に、シグナムさんの左手に剣の形をした伸縮自在の炎が現れた。シグナムさんは左肘を曲げて左手を右手の所まで持ってくると、手に宿した炎を一気に巨大化させる。

 

『『火龍一閃!』』

 

左手を振りぬいた瞬間に、相手フィールドが炎に包まれた。ヴェノム・コブラ、スパウン・アリゲーター、シルエットトークン、邪龍アナンタは、炎にあらがう事が出来ずに断末魔を上げて燃えて行った。

 

「この効果を使用したターン、俺は攻撃が出来ない。だが融合素材に使われたアギトの効果発動。融合素材として墓地に送られたターンのエンドフェイズ、このターン破壊した相手モンスターのレベルの合計×100ポイント相手にダメージを与える」

「破壊されたモンスターのレベル合計は25・・・・」

「2500のダメージだ!」

 

墓地から現れたアギトは、自分の周りに25の炎の弾を発生させる。もう負けを確信した小日向さんに向かって、アギトは意地悪く笑うと、弾丸の核として使っている燃焼性の物質を着火させ発射した。

 

「『ブレネン・クリューガー!』」

 

小日向LP1250→-1250

 

デュエルの勝敗が決まりほんの数秒だけシーンとしたが、すぐに歓声と悲鳴に会場は包まれた。歓声は明日香ファン、悲鳴は小日向さんファンによるもの。因みに明日香本人は頭を抱えている。

わ、悪かったな・・・・。だがそもそもこんな事をするはめになったのは十代の所為なんだから、十代を恨め。

 

「勝者は遊斗・スカリエッティいいいい! つまり今年のミスデュエルアカデミアは天上院明日香に決定いいいいい!」

 

テンションの高いアナウンスと共に、会場は明日香コールに切り替わった。

さてと、これ以上厄介事にならない内に俺は退散しますか。

 

 

 

 

盛り上がっている会場を背中に歩いていると、みんながカードから出てきた。今は学園関係者全員があの会場にいるので白昼堂々話しても大丈夫だ。

 

『お疲れ様遊斗。今回はサポート出来なくてごめんね』

『でもなのはは爬虫類苦手だから、よかったって思ってるでしょ?』

『にゃははは、バレちゃった?』

「フェイトさんお疲れ様。シャマ姉もごめんね。あんまり爬虫類得意じゃないでしょ?」

『いいのよ。私が戦ったわけじゃないんだし。それより今日は功労者であるシグナムにテスタロッサちゃんにアインスに御馳走しなきゃね』

「・・・・はやてさんの付き添いとしてね」

『あっ、酷い! これでも料理上手になってるんですからね!』

『それよりさ遊斗、もし私達の中で一番を選ぶとしたら誰を選ぶ?』

 

なのはさんサラリと酷い事を・・・・。まあシャマ姉の料理関係だから、適当にあしらうのが一番だな。

う~ん、一番か。みんな可愛いし、綺麗だし、カッコイイし、強いし、誰が一番とかよく分かんない。

 

「・・・・シグナムさんかな? 今日一番カッコ良かったし」

 

この発言の所為で今日一日中みんなにからかわれたのは言うまでも無い。

 

 

 




LS夜天の書 ☆8/闇/魔法使い/A0・B0
このカードは「祝福の風リインフォース(アインス)」の効果で特殊召喚できる。自分のメインフェズ時に「夜天の王」または「(アインス)」と名のついたモンスターに装備することができる。
装備モンスターが戦闘を行うダメージステップ時に自分の墓地の「夜天」または「祝福」と名のつくモンスターをデッキに戻して発動できる。装備モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時までデッキに戻したモンスターの攻撃力の半分アップする。
一ターンに一度自分フィールド上にLCが乗ったカードを選択し発動する。選択したカードに乗っているLCを任意の数取り除き、取り除いた数だけ自分はデッキからカードをドローする。


クラールゲホイル カウンター罠
自分フィールド上にモンスター1体を選択し、相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。
その後選択したモンスターをデッキに戻し、自分のデッキから「夜天」と名のついたモンスター1体を、LCを1つ乗せた状態で特殊召喚する。


LS烈火の剣精アギト ☆3/炎/魔法使い/A500・D500
自分フィールド上に「八神はやて」または「夜天」と名のつくモンスターが存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除くことでこのカードを手札から特殊召喚することができる。このカードが融合素材として墓地に送られたターンのエンドフェイズ、このターン破壊した相手モンスターのレベル合計×100ポイントのダメージを与える。


LS烈火の剣神シグナム ☆7/炎/魔法使い/A3000・D2000
「LS夜天の将シグナム」+「LS烈火の剣精アギト」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードが融合召喚に成功した時、このカードの攻撃力よりも低い攻撃力を持つ相手フィールド上のモンスターを全て破壊する事ができる。
この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。


オプティックハイド 速攻魔法
自分フィールド上に「LS」と名のつくモンスターが存在し、相手が「フィールド上のカードを破壊する」効果の魔法・罠カードを発動時に発動できる。
その時相手が発動したカードの効果は「自分フィールド上にオプティックトークン」(機械族・地・星8攻2000/守2000)を特殊召喚する」となる。





今回の相手は漫画GX登場人物の小日向。カードのほとんどが漫画版オリカだったので、むちゃくちゃではありますがOCG爬虫類デッキにしました。


今回のオリカですが、やはり紹介したいのはこの二枚。
烈火の剣神シグナムと、烈火の剣精アギト。アギトの効果は完全にピンポイント効果です。LP4000では×100でもなかなかのバーンダメージが期待できます。ツヴァイの用に沢山のカードと融合できないので、LCを取り除かなくても効果が発動できるます。
最初は攻撃力上昇を考えたのですが、それだとシグナムの攻撃力が実質3000+上昇値分なので止めました。


そして烈火の剣神シグナム。融合召喚しただけでフィールド全破壊は強いです。大抵3000よりの低いカードが多いので今回の様に全部破壊するのは稀じゃないと思います。
最初はフレイムウイングマン効果予定でしたが、アギトとのユニゾンはsts26話イメージが強いのでこのような効果にしました。




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第八話

ヴィータの案、ありがとうございます。6名の方が案を下さり、効果の数はなんと14。
どれにしようかと嬉しい悲鳴をあげていました。


いただいた効果を簡単にして書いたのが下の文です

他のモンスターを攻撃対象にできない。
LCを1つ取り除き、一ターンに一度、魔法、罠の発動を無効にして破壊する。
フィールドから離れた時墓地の「夜天」をサーチ。
召喚時「祝福の騎士ヴィータ」に乗っていたLCの数だけフィールド破壊。
貫通効果
LCを四つ取り除き効果2倍
攻撃対象にされた時、代わりにこのカードに攻撃対象を変更する。
守備モンスターを攻撃するダメージ計算時、守備モンスターの守備力分攻撃力アップ。
このカードが破壊される代わりに手札、墓地の「ツヴァイ」を除外できる。
このカードが破壊された時「はやて」「なのは」がいたら「祝福の騎士ヴィータ」特殊召喚。
守備モンスターを破壊した時もう一度攻撃可能。
一ターンに一度破壊されない。
特殊召喚に成功した時、相手のフィールド上と手札を一枚ずつ破壊。
このカードが相手モンスターを戦闘またはカードの効果で破壊できなかった場合、手札墓地の「ヴィータ」を除外して相手モンスターの攻撃力を除外したカードの攻撃力分ダウン。ダウンさせたモンスターが守備表示モンスターだった場合もう一度攻撃できる。この効果が発動した場合、バトルフェイズ終了時まで相手のフィールドのカードの発動、効果を無効にする。


この中から選んだのが次のカードになります。



紅の鉄騎ヴィータ ☆9/地/魔法使い/3000・D2800
このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上の「LS祝福の騎士ヴィータ」を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。
自分フィールド上のモンスターが攻撃対象にされた時、このカードに攻撃対象をこのカードに変更する事ができる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていた場合、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。
このカードが戦闘でモンスターを破壊できなかったダメージ計算後に発動できる。手札または墓地に存在する「ヴィータ」と名のつくモンスターをゲームから除外し、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの攻撃力は除外したモンスターの攻撃力分ダウンし、そのモンスターをもう一度だけ続けて攻撃出る。また、選択したモンスターが守備表示の場合、そのモンスターを攻撃表示にする。
このカードが破壊され墓地に送られた時、自分フィールド上に「八神はやて」または「高町なのは」と名のつくモンスターが存在する場合、墓地の「LS夜天の騎士ヴィータ」を自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る。



かなり効果が長いです(苦笑)多分過去最長だと思います。
まずは一番多かった貫通。これは絶対必要ですね
次に攻撃対象の変更。同じく攻撃対象にできない、切り込み隊長効果もあったのでこれにしました。
三つ目は感想ではなくメッセージで貰いました。こんな発想はなかったので採用しました。かなりややこしいですが、ジャンクバーサーカーとニトロ・シンクロンの効果を足した発動条件が難しいバージョンと考えてもらえると分かりやすいと思います。
最後の効果は燃えますね。本当ならこのカード自身を特殊召喚したかったのですが、それは流石にやばいと思ったので止めました。


他にも魔法、罠の発動を無効にする案が複数あったのですが、この効果は強力なので、この効果を入れてしまうと他の効果を1つ削らなければバランスがヤバイと判断したので、無効効果は止めにしました。(バランスに関しては今更ですが)



改めて沢山の案、感想、お気に入り、評価をありがとうございます。
皆様のおかげで頑張ろうと思えます。



今回のオリカ紹介の後書きですが、今まで説明を忘れていたカードを乗せています。



俺がブルー寮に入って一週間。取りあえずブルーに入って日・月・火・水・目・金・土を過ごしたからか、この生活にも少し慣れてきた。カイザー以外にも心優しい人が友達になってくれたり、アイドルカード大好きな奴が強制的に友達になったりと、決して悪い生活ばかりではなかった。と言っても、彼等も俺とかかわって仲間外れになるのは避けたいらしく、授業の時や教室に居る時は、一人寂しくポツンとしている。

だが意外にも俺にちょっかいを掛けて来る奴は少なく、標的は俺ではなくあの万丈目に行っていた。

オシリスレッドに負けた万丈目、それが彼の今の呼ばれ方らしい。どうやら月一の時十代に惜しくも負けたらしく、そのショックで本人も落ち込んでいた。そこに傷に塩を塗るように、彼を馬鹿にしているのだ。

その中には今まで彼の取り巻きだった二人もおり、呆れてものも言えなかった。

 

「ったく・・・・小学校かよここは・・・・」

『ホント、なんだか昔を思い出すよ・・・・』

「え? なのはさんって苛められてたの?」

『男子によく軽くだけど頭叩かれたり、お弁当のおかず取られたり。散々だったよ』

 

・・・・それは小学校男子にある、好きな子を苛めたくなる現象じゃないですか? チラリとはやてさんのカードを見ると苦笑していることから、俺の推理は合っていた様だ。

しかしその男子達もある意味可哀そうだよな。なのはさんが大人になっても好意に気付いて貰えなかっただなんて。

まあなのはさんの話は置いておき、万丈目は今日もトボトボと教室に入ってきた。そしていつも座っていた彼の特等席には別の生徒が座っていた。

 

「おい、ここは俺の席だぞ」

「オシリスレッドに負けた万丈目にはこんな特等席はもったいない。ほら、アイドルカード使いの隣が空いてるだろ?」

 

うわ~、標的になってないだけで俺も相変わらず嫌われているのね。というか一回このデュエルアカデミア生徒全員とデュエルした方がいいと思う。俺のデッキは女性率は高いけどアイドルデッキでは無いと証明しなければ。

 

『男子率低いのは事実でしょ? エリオ、ユーノ、ザフィーラ、トーマの四人くらい?』

「・・・・今度トーマをフィニッシャーにするよ」

 

フェイトさんの言葉にほんの小さな声で返すと、万丈目がトボトボと俺の隣にやってきた。ニヤニヤと笑っている奴らを無視して、俺は万丈目に笑いかけた。

 

「オッス、万丈目、隣宜しくな」

「ック、どうして俺様がお前如きと同じ扱いに・・・・」

 

・・・・だいぶん病んでますね万丈目君。これは一度医者に見てもらった方がいいんじゃないか?

それからしばらく万丈目に声をかけるものの無視され続けた。

 

 

 

 

「って事があってさ」

「へ~、万丈目が。でもあいつなら大丈夫さ! なんとかやるだろ!」

 

放課後、十代達の部屋に遊びに来た俺は今日の出来事を三人に話した。そして返ってきたのは万丈目を地獄に落とした張本人の明るい言葉。ホント、天然って怖いね~。

翔は翔で「いい気味ッス」と悪い顔をしており、隼人はその事に何の興味も無い様だ。うん、なにげに俺の友達って酷い所あるよな。男子同士の会話ならこれが普通なんだろうか?

 

「それで本題なんだが、ついに万丈目がイエロー降格を掛けたデュエルをしなくちゃいけないらしい」

「「へ~」」

「その相手がイエロー寮の三沢で」

「「ふ~ん」」

「でも万丈目が、元レッドの俺がその試験を受けないで、自分だけ受けるのがおかしいってクロノス先生に言ってな。明日万丈目とデュエルして負けた方が三沢とデュエルする事になった」

「「なるほど~」」

 

十代と翔は前から打ち合わせでもしていたのか? 

十代は俺と万丈目のデュエルと聞いてメチャクチャ喜んでいる。

 

「そのデュエルは放課後だからよかったら応援に来てほしくてな。勝ったらDP使って一パックずつ奢るぜ」

「おおっ! 遊斗は太っ腹なんだな!」

「じゃあ明日に向けて訓練しないとな! 遊斗、デュエルだ!」

「望む所!」

 

 

 

 

Side万丈目

 

 

クソッ! どうして俺がイエロー降格の為のデュエルをしなきゃいけないんだ! しかも相手はマグレとは言えあのカイザーと戦ったスカリエッティ!

遊城十代とどっちが強いかは分からないが、あの時と同じデッキでは勝てるわけがない。

・・・・そうだ、俺は遊城十代のドローに負けた。つまり運が悪く、逆に言うと遊城十代は運を味方にした。だったら例え運が悪くてもデッキが回るように、確実にアドバンテージを稼ぐデッキを組み、確実に対処していく!

待ってろよスカリエッティ! イエローに落ちるのは貴様だ!

 

 

 

 

Side遊斗

 

そして翌日の放課後。十代とのデュエルは二勝二敗一引き分けの、何とも言えない結果になった。俺の方が一回負けてる回数が多いから今回は追いあげたかったが、十代相手に勝ち越す事は難しい。

十代とのデュエルが長引き寝不足になった所為か、ふわぁ~と欠伸がでた。

あっ、万丈目が来た。万丈目は「俺はブルーだから負けない、俺はブルーだから負けない」ともはや宗教レベルだ。

何だか哀れになってきた・・・・。

 

「お~い、万丈目、大丈夫か?」

「ふん! 貴様に心配される覚えはない! さあ、さっさとデュエルだ!」

「ああ、行くぜ! お前には悪いが俺もブルーの部屋が気にいっているんだ。クロノス先生の前で負けるわけにはいかない!」

「ほざけ!」

「「デュエル!」」

 

俺は万丈目がデッキトップに手を置く前に、素早くカードを引いた。

 

「ドロー! 永続魔法魔力高炉発動、効果によりLCを二つ乗せる」

 

LC魔力高炉2

 

「馬鹿の一つ覚えみたいにその妙なカウンターを」

「馬鹿の一つ覚えで結構。魔力高炉のLCを取り除き、八神はやてを通常召喚! 効果で自身にLCを一つのせる」

 

A2000・D1700

LC魔力高炉2→1 はやて1

 

「そしてはやてがフィールドにいる時、LCを取り除く事でシャマルは特殊召喚できる。魔力高炉のLCを取り除いて特殊召喚」

 

A700・D1800

LC魔力高炉1→0→破壊

 

「この効果で召喚した時自身にカウンターを乗せる。そしてシャマルの効果ではやてにLCを置く」

 

LCシャマル1 はやて1→2

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札2

 

「ドロー! X―ヘッド・キャノンを通常召喚」

 

A1800・D1500

 

「そして永続魔法機甲部隊(マシンナーズ)最前線(フロントライン)を発動。バトル、ヘッド・キャノンで緑のモンスターに攻撃」

「シャマルな。罠発動ソニックムーブ。エンドフェイズまでシャマルを除外する」

 

シャマ姉がソニックムーブを使うと言うのも何だか変な感じだ。実際は亜空間物質転送装置と同じモーションだが、やはりカード名は大事だ。この学校に来て一度もフェイト本人にこの罠を使っていない気がする。

 

「場にいるのは攻撃力2000のはやてだがどうする?」

「ック・・・・。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札2 LP4000

万丈目 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

さて、お互い手札はまだまだある。X―ヘッド・キャノンって事は、あのカードが万丈目の切り札って事でいいな。出来れば切り札を出される前に倒したいけど、万丈目の場には永続魔法機甲部隊(マシンナーズ)最前線(フロントライン)。この間のダメージ=レプトル程ではないが、似たような効果を持つ厄介なカードだ。

 

「ドロー。おっ、手札から魔法デバイスマイスターを発動。デッキからLS専用の装備魔法を手札に加える事ができる。更に自分フィールド上のLCを二つ取り除く事でツヴァイ、またはアギトを手札に加える事ができる。闇の書を手札に加え、はやてのLCを二つ取り除きツヴァイを手札に」

 

LCはやて2→0

 

1:2効果で強力なサーチカードだが、やっぱりLCが二つ減るのは辛い。今はシャマ姉がいるから取り除いたけど、それ以外では滅多に使わない。

 

「シャマルの効果で自身にLCを乗せ、そのLCを取り除きツヴァイ特殊召喚。場のはやてとツヴァイを融合!」

 

LCシャマル2→1

 

「ック、早くも出るか! 貴様の融合モンスターが!」

「現れろ、夜天の主・八神はやて」

 

A2100・D2000

 

「はやての効果にチェーンしてツヴァイの効果でシャマルのLCを取り除き手札に加える。

そしてはやての効果で自身にLCを二つ置く。はやては自分のLCの数×300攻撃力があがる」

 

LCシャマル1→0

LCはやて2

はやてA2100→2700

 

「ック、二ターン目から攻撃力2700・・・・」

「まだだ! ツヴァイを通常召喚し、場のシャマルとツヴァイを融合。出でよ、祝福の癒し手シャマル!」

 

LS祝福の癒し手シャマル ☆7/水/魔法使い/A1000・D2300

 

融合の渦から出てきたのはツヴァイとユニゾンして瞳が青くなったシャマ姉。落ち着いた感じの緑のロングスカートには、ところどころ白と金のラインがある。そして何より違うのが、指輪サイズのシャマ姉のデバイスのクラールヴィントが、腕輪並みに大きくなったところ。

 

「シャマルの効果発動。一ターンに一度フィールドのカードにLCを置く事ができる。はやてに一つカウンターを乗せる」

『静かなる風よ、癒しの恵みを運んで』

 

シャマ姉はクラールヴィントに優しくキスをした途端、クラールヴィントから優しい緑色の魔力が放出し、はやてさんを包み込んだ。

 

LCはやて2→3

はやてA2700→3000

 

「そして闇の書をはやてに装備させる」

 

はやてA3000→3300

 

「バトル! はやてでX―ヘッド・キャノンを攻撃!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A3300 VS A1800

 

X―ヘッド・キャノンは自前の二丁の銃ではやてさんを攻撃するが、シールドで攻撃は弾かれた。バリアを使っていない辺り、防ぐ必要も無いみたいだ。そしてそのまま氷の魔法を放つ。

 

「甘いわ! ダメージ計算時ガードブロックを発動。ダメージを0にして一枚ドロー。

更に機甲部隊(マシンナーズ)最前線(フロントライン)の効果。機械族モンスターが戦闘で破壊された時、そのモンスターより攻撃力の低い同じ属性の機械族をデッキから特殊召喚できる。ジェドナイトを召喚する」

 

A1000・D1800

 

「今度は戦闘破壊されたらサーチするカード。確実に場を整えてきたな」

「当たり前だ! 俺はオベリスクブルー万丈目。どんなデュエルであろうと最善の手で勝負する!」

「なるほどな。さっきの戦闘の時、闇の書を装備したモンスターが戦闘でモンスターを破壊した事によりカウンターを一つ乗せる。俺はターンエンドだ」

 

LC闇の書0→1

 

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札2 LP4000

万丈目 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

「ドロー! ッフ、お前がその装備魔法でカウンターを溜めたいのなら許してやろう、俺は優しいからな。

永続魔法マシン・デロッパーと二枚目の機甲部隊(マシンナーズ)最前線(フロントライン)発動! マシンナーズ・ピースキーパーを守備表示で召喚してターンエンド」

 

A500・D400

 

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札2 LP4000

万丈目 モンスター2 伏せ3 手札2 LP4000

 

「な、何が優しいだ! 全部破壊したらお前にアドバンテージの行くカードじゃねえか!? ・・・・というか十代の時と違うんだな」

「ッツ、ええい、奴の名前は出すな! 貴様のターンだ!」

「分かったよ。ドロー、シャマルの効果で闇の書にLCを乗せ、シャマルを攻撃表示に」

 

LC闇の書1→2

 

「バトル! シャマルでマシンナーズ・ピースキーパーを攻撃!」

『ふぇ? 私が攻撃?』

 

あっ・・・・。そう言えばこの状態のシャマ姉で攻撃するのって初めてだな。ユニゾン前のシャマ姉でさえ攻撃回数が少ないから、攻撃名は決めていない。

 

『え、え~と・・・・』

「シャ、シャマビーム!」

 

A1000 VS D400

 

ま、周りからの視線が痛いが気にするな。あの伝説のギャンブルデュエリスト、城之内さんだってラヴァ・ゴーレムの攻撃名を、城之内ファイアーにしたんだからあれに比べればこっちのがマシだ。

シャマ姉は中にいるツヴァイの指示を受け、クラールヴィントからレーザーを放出した。

 

「二枚の機甲部隊(マシンナーズ)最前線(フロントライン)の効果発動。デッキからオイルメンを二体特殊召喚する。更にマシン・デロッパーの効果でジャンクカウンターが二つ乗り、ピースキーパーの効果でZ―メタル・キャタピラーを手札に加える」

 

・・・・小日向さんの時もそうだが、そういうカードは二枚積んでるものなの? 対象がいなくなるって事はないの? ええい、態々攻撃力の低い奴から攻撃したのに結局増えるのかよ!

 

「はやてでジェドナイトを攻撃! 手加減するな!」

 

A3300 VS D1800

 

『はいはい。行くよリイン』

『はいです!』

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

二人の掛け声と共に放たれた氷弾は前のターンの時とは違い、手加減なしのSSランク魔導師の広域攻撃魔法だった。

 

LC闇の書2→3

マシン・デペロッパー2→4

 

「ジェドナイトの効果でV―タイガー・ジェットを手札に加える」

 

ククク、万丈目よ。闇の書にカウンターを溜めさせた事を後悔するがいい!

 

「闇の書の効果、LCが三つ乗ったこのカードをゲームから除外し、デッキから祝福の風リインフォースアインスを特殊召喚する。来い、アインス!」

 

はやてA3300→3000

A2300・D2300

 

『・・・・随分と場が凄い状況だが』

『そやね。これでユニゾンシグナムとユニゾンヴィータ、手札にザフィーラが来れば完璧の布陣や』

 

いや、そんな状況になる前にデュエル終ってますよ。

 

「アインスの効果発動。このカードが特殊召喚に成功した時融合デッキからナハトヴァールを特殊召喚できる。来い、ナハト!」

 

A0・D0

 

そう言えばナハトも久しぶりの登場だったな。毎回アインスが登場する時に現れる、闇の書から発生されるオーラが一ヶ所に集まると、そこからウニョウニョと蠢く黒い蛇の群が出た。今まで冷静にデュエルをしていた万丈目も、生理的に受け付けなかった様だ。

確かにペットの様に可愛がっているはやてさんとアインスの感性に疑問を覚える。

 

「ナハトの効果でアインスに装備。攻撃力を1000上げる。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

アインスA2300→3300

 

場 

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP4000

万丈目 モンスター2 伏せ4 手札4 LP4000

 

俺の場の方が圧倒的な筈なのに、なんか万丈目に負けている気がする。いや、フィールド+ハンドの枚数を合わせたら俺の方が実際負けてるから当然なんだけどさ。

 

「俺のターン、ドロー!  マシン・デロッパーの効果。このカードを墓地に送り乗っていたジャンクカウンターの数以下のレベルの機械族をデッキから特殊召喚。Y―ドラゴン・ヘッドを特殊召喚」

 

A1500・D1600

 

「Z―メタル・キャタピラーを召喚。そして死者蘇生でX―ヘッド・キャノンを特殊召喚」

 

A1500・D1300

A1800・D1500

 

あっ、これってかなりやばい状況? 因みにこれだけやっておいてまだ手札は3枚。しかも万丈目の場には二体のオイルメン。一応一体までしか装備出来ないき決まりはあるけど。

 

「X、Y、Zの三体を融合合体! 来い、XYZ―ドラゴン・キャノン!」

 

2800・D2600

 

十代や俺が融合する時のモーションとは違い、ガシャンガシャンと金属音を立てながら三機のロボットはやがて一機の機体へと合体する。

 

「まだだ! 永続罠血の代償を発動! ライフを1000払いW―ウィング・カタパルトとV―タイガー・ジェットを召喚」

 

万丈目LP4000→3000

 

「VWを融合合体! VW―タイガー・カタパルトを融合召喚」

 

A2000・D2100

 

ま、マジかよ万丈目・・・・。下準備ありとは言え一ターンであいつを出すのか!?

 

「これが俺の切り札だ! 場のXYZとVWを融合合体! 現れろ、VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン!」

 

XYZとVWは一旦変形を解除し、再び合体を始める。今度は下がキャタピラの戦車でも、空を浮くジェットでもない。足があり腕があり胴体があり顔のある、正真正銘の合体ロボット。

 

A3000・D2800

 

VWXYZ(ヴィトゥズィ)の効果。相手フィールドのカード一枚を除外。その銀髪の女を除外する」

『っな!? アインスー!?』

『お、落ち着いて下さい主。これはデュエルですから』

 

あ~も~はやてさんは面倒臭いな・・・・、これだからなるべく八神家揃わせたくないんだよ。はやてさんがギャーギャーと叫んでいるので万丈目の声が聞こえにくい。あのカードの発動が遅れてしまったら大変だぞ。

 

「墓地のソニックムーブの効果。エンドフェイズ時までアインスをゲームから除外する」

「小癪な! オイルメンをVWXYZ(ヴィトゥズィ)に装備。バトル、VWXYZ(ヴィトゥズィ)でそのはやてと言う小娘に攻撃し、効果により表示形式を変更」

 

A3000 VS D2100

 

『んな!? これでも19やで!?』

「VWXYZ―アルティメット・デストラクション!」

「甘いな、シャマルの効果発動。一ターンに一度フィールドのLCを一つ取り除く事でモンスターの破壊を無効にする」

『パンツァーヒンダネス!』

 

VWXYZ(ヴィトゥズィ)のサイバー・エンド・ドラゴン並みの攻撃を受けたはやてさんだったが、その直前でシャマ姉が全方位防御魔法をはやてさんに使っていた。完全防御型の障壁を破るのは流石のVWXYZ(ヴィトゥズィ)でも無理だったようだ。

 

「ック、カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズアインスが戻ってくる。最もナハトとの装備は無いが」

 

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札2 LP4000

万丈目 モンスター2 伏せ5 手札0 LP3000

 

あの伏せ絶対何かあるよな・・・・。俺の伏せみたいにブラフなんて事はないだろう。しかも装備しているオイルメン、装備モンスターが戦闘でモンスターを破壊したら一枚ドローし、装備モンスターが破壊された場合代わりに自身を破壊する効果を持っている。

さて、例の如くドローしてから考えるか。

 

「ドロー! きたっ!」

 

キタキタキタキタ! 引いたカードは最終進化形の一枚! このタイミングではかなりいいカードだ!

 

「シャマルの効果ではやてにLCを一つ置く」

 

LCはやて3→4

A3000→3300

 

「そして祝福の癒し手シャマルを生贄にして、現れろ! ホーリーカタルシス・シャマル!」

 

デュエルディスクにカードをセットした瞬間、辺りの音が一気に消えた。万丈目や応援に来てくれた十代達、他の生徒もこの現象に驚くが、その声は聞こえない。

その中でピチャンと雫が水面に落ちる音が聞こえた。皆一斉に音源を見ると、そこにはキラキラと輝いている湖。その中からおとぎ話の女神の様に、シャマ姉がゆっくり現れてきた。

今までの彼女とは違う、名前に似合わずその表情に癒しはなく、冷徹な表情で万丈目を睨んでいる。そしてさっきまで腕輪サイズだったクラールヴィントが、二つのリングで彼女を包むようにグルグルと回っている。

 

LSホーリーカタルシス・シャマル ☆9/水/天使/A2000・D3000

 

「・・・・な、なんだ。たかが攻撃力2000。守備で出すのが丁度いいモンスターじゃないか」

「こいつの守備力3000の壁は高くて険しいぞ? シャマルの効果発動、一ターンに一度フィールド上のカードにLCを二つ乗せる。俺が乗せるのは当然はやて」

「二つだと!?」

 

LCはやて4→6

はやてA3300→A3900

 

「こ、攻撃力3900!?」

「これで終わりな訳ないだろ? 第二の効果、俺の手札一枚につき俺のLPを300回復。そして回復した数値分相手にダメージを与える。俺の手札は2枚」

『戒めの鎖!』

 

シャマ姉の声と共に俺の手札から、先が槍のように尖っているギザギザのワイヤーが現れて万丈目の体を貫通した。うわ~、ソリッドビジョンでもあれは痛いな。いや、痛覚はないだろうけど。

そしてシャマ姉はそのギザギザのワイヤーを優しく撫でると、そのワイヤーはゆっくりと粒子かされていき、その粒子がシャワーの様に俺に降り注ぐ。

 

遊斗 LP4000→4600

万丈目LP3000→2400

 

「バトル! はやてでVWXYZ(ヴィトゥズィ)を攻撃!」

「甘いな、速攻魔法リミッター解除発動! これにより攻撃力が倍になる!」

 

VWXYZ A3000→6000 VS 3900

 

本日三回目の氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)は、VWXYZの長い攻撃名と共に発射された砲撃に撃ち負けてしまった。

 

遊斗LP4600→2500

 

「んな!? シャ、シャマルの効果発動! 一ターンに一度自分フィールド上のモンスターがフィールドから離れる時、代わりにフィールドのLCを二つ取り除く事ができる。はやてのLCを二つ取り除く」

 

LCはやて6→4

はやてA3900→3300

 

「ッチ、その守りの効果はまだ持っていたのか」

「俺はこれでターンエンド」

「エンドフェイズリミッター解除の効果でVWXYZ(ヴィトゥズィ)とオイルメンは破壊される。だがVWXYZ(ヴィトゥズィ)に装備したオイルメンの効果で、代わりにこのカードを破壊する」

 

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札2 LP2500

万丈目 モンスター1 伏せ3 手札0 LP2400

 

「ドロー! マジック・プランター発動。血の代償を墓地に送り二枚ドローする。ッチ、VWXYZ(ヴィトゥズィ)の効果でシャマルを除外!」

「シャマルの効果によりフィールドから離れるのを防ぐ」

 

LCはやて5→3

はやてA3600→3000

 

「バトル! VWXYZ(ヴィトゥズィ)でシャマルに攻撃! VWXYZ―アルティメット・デストラクション! 効果で攻撃表示にしてもらう!」

 

A3000 VS A2000

遊斗LP2500→1500

 

「ック、ダメージは受けるがシャマルの効果。このカードは一ターンに一度だけ戦闘で破壊されない」

「まだ効果を持っているのか!? 面倒臭いカードだ・・・・。カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札2 LP1500

万丈目 モンスター2 伏せ4 手札0 LP2400

 

ホント万丈目はやたらと伏せカードが多いな。今までの万丈目の伏せからすると、多分万丈目のデッキにはほとんど妨害カードはなく、自分のデッキを回すカードで占められているはず。

 

「ドロー。シャマルの効果。俺の手札の数×300ライフを回復し、お前にダメージを与える」

『戒めの鎖!』

「ック!」

 

遊斗  LP1500→2400

万丈目 LP2400→1500

 

流石シャマ姉のバーン効果。回復量もバーン量も決して高くは無いが、ライフ差が大きく開く事ができる。しかもただのおまけ効果の様なものだ。

 

「リバースカードオープン、速攻魔法ユニゾンアウト。夜天の主・はやてを対象に発動し、墓地から融合素材モンスターを特殊召喚する。来い、はやて、ツヴァイ!」

 

融合解除と違いLS専用なのが使いにくいが、融合素材カードが一度墓地から離れても、このカードの効果解決時に融合素材に使用したモンスターと“同じ名前”のカードが揃っていれば特殊召喚する事ができる為、決して劣化カードでは無い。

因みに今まで伏せていたこのカード。使わなかったのは単純に王様のはやてさんを召喚してもVWXYZ(ヴィトゥズィ)を突破できなかったからだ。

 

「場のはやてとアインスを融合。降臨せよ、夜天の王・八神はやて! 効果で自身にLCを三つ置く」

 

LCはやて3

A2800・D2800

 

シャマ姉やなのはさんの時と同じく、デュエルディスクにセットした瞬間にとてつもない威圧感が放たれた。さっきまで夕日の光に包まれてオレンジ色の空間が一気に真っ暗で光源は月光だけとなり、月光の下、空から闇の翼を持ったはやてさんが登場した。

 

「ッツ、どうせ貴様の事だ。3000を越えていないと言う事はそれなりの効果を持っているのだろう?」

「ああ、シャマルと同じで強力な効果を持っている。最も3000を越えるのはこのカード自身じゃなくて手札のこのカードだが。キャロを魔法カード扱いで魔法・罠ゾーンに置く」

「そのカードはカイザーとのデュエルで使った」

「ああ、LSの攻撃力を上げるカード」

 

キャロの両手についているケリュケイオンからピンク色の光が放たれ、はやてさん、ツヴァイ、シャマ姉の元に行く。

 

シャマルA2000・D3000→A2300・D3300

はやてA2800・D2800→A3100・D3100

ツヴァイA500・D500→A800・D800

 

「シャマルの効果でキャロにカウンターを乗せ、攻撃力上昇!」

 

LCキャロ0→2

シャマルA2300・D3300→A2900・D3900

はやてA3100・D→3100→A3700・D3700

ツヴァイA800・D→800→A1400・D1400

 

「ック、攻撃力3700!」

「バトル! はやてでVWXYZ(ヴィトゥズィ)を攻撃」

『『響け終焉の笛! ラグナロク!』』

 

A3700 VS A3000

 

「罠発動、ゲッドライト! 墓地のオイルメンをVWXYZ(ヴィトゥズィ)に装備」

 

意味不明なまでに巨大な砲撃を低レベルユニオンモンスター一体で防いだのは、絵的には変な感じだが、これもデュエルなので仕方が無い。

 

万丈目LP1500→800

 

「お前も粘るな。シャマルを守備にしてターンエンドだ」

 

遊斗  モンスター3 伏せ0 手札2 LP2400

万丈目 モンスター1 伏せ4 手札0 LP800

 

万丈目の手札は0。まだ分からない伏せが一枚あるが、さっきの攻撃宣言時に発動されなかったという事は、やはりコンボカードなのかもしれない。

 

「ドロー! 行くぞ遊斗・スカリエッティ! これが俺の全力だ! 罠発動、異次元からの帰還。

除外されたXYZ―ドラゴン・キャノン、VW―タイガー・カタパルト、X―ヘッド・キャノン、Z―メタル・キャタピラーを特殊召喚!」

 

万丈目LP800→400

 

突如現れた異次元の裂け目からは万丈目が宣言したモンスターが現れ、フィールドを埋め尽くした。合体しているドラゴン・キャノンとタイガー・カタパルト。まだ合体していないヘッド・キャノンとメタル・キャタピラー。この四枚をライフ半分とはいえ一気に特殊召喚できるのは、流石制限カードと言える。

 

「XYZとVW、XとZをダブル融合合体! 現れろ、VWXYZ(ヴィトゥズィ)、XZ―キャタピラー・キャノン!」

 

A3000・D2800

A2400・D2100

 

おいおいおい! いくら俺の場が整っているからってVWXYZ(ヴィトゥズィ)が二枚かよ!?

二枚のVWXYZ(ヴィトゥズィ)の威圧感は、亮さんのリミッター解除を使ったサイバー・エンド・ドラゴン並みだ。本来なら大きい筈のXZの合体モンスターも、小さく感じてしまう。

 

「二体のVWXYZ(ヴィトゥズィ)の効果発動! シャマルを選択して除外する!」

「だがこっちもシャマルとはやての効果発動。はやての効果で自身のLCを一つ取り除き、VWXYZ(ヴィトゥズィ)一体の効果を無効。そしてシャマルの効果ではやてのLCを二つ取り除きフィールドから離れるのを防ぐ!」

 

LCはやて3→0

 

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)』』

『風の護盾』

 

一機のVWXYZ(ヴィトゥズィ)が左手のキャノンを構えた瞬間、はやてさんはシュベルトクロイツから鎖を放ち、VWXYZ(ヴィトゥズィ)の体を縛り付ける。もう一機のVWXYZ(ヴィトゥズィ)の効果は許してしまったが、シャマ姉を包んでいたクラールヴィントが光り出すと、堅牢な防御魔法が現れて次元の彼方へと送り飛ばす砲撃を防いだ。

 

「ック、二体VWXYZ(ヴィトゥズィ)がいても止めるとは! だが装備魔法巨大化を、効果が無効になっていないVWXYZ(ヴィトゥズィ)に装備!」

 

A3000→6000

 

攻撃力6000、勝ったな。

 

「バトル! VWXYZ(ヴィトゥズィ)でその妖精の小娘に攻撃! 効果で攻撃表示にしてもらう! VWXYZ―アルティメット・デストラクション!」

 

A6000 VS A1400

 

『え、えええーっ!?』

 

す、すまんなツヴァイ。後でアイス買ってやるから許してくれ。だが万丈目、そのカードが巨大化という時点でお前の負けだ!

ツヴァイは攻撃力6000の攻撃をもろにくらったが、俺のその瞬間手札の一枚を万丈目に見せた。

 

「夜天の守護獣ザフィーラの効果。戦闘ダメージを0にし、その数値がライフポイントを上回っていた時デッキから一枚ドローする」

「・・・・ターンエンドだ」

 

万丈目は勝負を諦めたのか、ゆっくりと構えていたデュエルディスクを降ろした。だがサレンダーをしたわけではないので、デュエルは続行だ。

 

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札2 LP2400

万丈目 モンスター3 伏せ4 手札0 LP400

 

「ドロー、シャマルの効果。俺のライフを回復し、相手にダメージを与える」

『戒めの鎖』

 

俺の手札から三つの鎖が現れると鎖は万丈目の体を貫通し、彼の命を奪って俺に命を与えた。

 

遊斗  LP2400→3300

万丈目 LP400→-500

 

「・・・・俺は、お前にすら勝てないのか」

「すらって・・・・。なあ万丈目「黙れ!」・・・・」

 

地面に膝をつき、顔を上げずに万丈目は怒鳴った。俺に励ましの言葉や情けをかけられたくないのだろう。万丈目は地面に拳をぶつけ、大声で吠える。

 

「俺は全力で戦った! 切り札を二体出した! だが勝てなかった!」

「確かに万丈目は勝てなかったけど、いいデュエルだったぞ」

「何を・・・・」

「ほら、周りを見て見ろよ」

 

俺の言葉に嫌そうにしながらも従った万丈目は、ゆっくりと顔を上げた。彼の目に映っているのは、パチパチと拍手している観客のみんな。ブルー寮、イエロー寮、レッド寮みな同じように拍手しており、校長先生も彼らと同じように拍手してくれている。

万丈目は本当に悔しかったのか、今まで拍手が聞こえてなかったみたいだ。

万丈目はみんなの拍手を茫然として受けていると、突如考え込み、そして校長先生の方を向いた。

 

「・・・・校長! この俺万丈目準、デュエルアカデミアを止めます!」

【えええええええ!?】

 

万丈目の突拍子のない言葉に、俺も含めたこの場全員の声が揃った。校長も目をパチクリさせているが、万丈目の決意のある瞳を見て真面目な表情へと変わった。

 

「うむ。君がそれを望むなら私は止めません」

「こ、校長!?」

「ありがとうございます! いいか遊城十代、それに遊斗・スカリエッティ! 俺は必ず地獄の底から舞い戻ってくる!」

 

万丈目は俺と十代を指差して言葉を残し、この学校から出て行った。

万丈目の退学が余りにも突拍子すぎたのか、元々影の薄い三沢とのデュエルはみんなに忘れ去られていた。

 

 

 

 




LSエリオ・モンディアル ☆3/光/魔法使い/A1400・D1000
手札のこのカードを墓地に送り発動する。自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスター1体を手札に加える。

(六話登場)

プロテクション 通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターを選択して発動する。選択したモンスターはこのターンのエンドフェイズまで、戦闘及び効果で破壊されない。

(最新七話登場)

設置型バインド 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。発動後このカードは攻撃宣言したモンスターの装備カードとなる。このカードを装備したモンスターは攻撃する事ができず、表示形式を変更する事ができない。このカードの発動後、自分フィールド上のカード1枚選択し、選択したカードにLCを1つ乗せる

(三話登場)

Asの収集 通常罠
自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地に送られた時に発動する事が出来る。
自分の手札またはデッキから「LS」と名のついたレベル5以下のモンスターを特殊召喚する。

(四話登場)

LS祝福の癒し手シャマル ☆7/水/魔法使い/A1000・D2300
「夜天の癒し手シャマル」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
1ターンに1度フィールド上に表側表示で存在するカード一枚にLCを1つ置く事ができる。フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターが戦闘で破壊される場合、代わりに自分フィールド上に存在するLCを1つ取り除く事ができる。この効果は1ターンに1度しか使えない。

LSホーリーカタルシス・シャマル ☆9/水/天使/A2000・D3000
このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上の「LS祝福の癒し手シャマル」1体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。
以下の効果は1ターンに1度しか発動できない。
●フィールド上に表側表示で存在するカード1枚にLCを2つ置く事ができる。
●フィールド上に表側表示で存在するモンスターがフィールドから離れる場合、代わりに自分フィールド上に存在するLCを2つ取り除く事ができる。この効果は相手ターンでも発動する事ができる。
●自分の手札の枚数×300ポイント自分のライフを回復し、回復した数値分、相手にダメージを与える。
●このカードは1度だけ戦闘で破壊されない。

ユニゾンアウト 速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつく融合モンスター1体を選択して融合デッキに戻す。さらに、融合デッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスターと同名カードが一組自分の墓地に揃っていれば、その一組を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

デバイスマイスター 通常魔法
デッキから「レイジングハート」「バルディッシュ」「闇の書」と名のつく装備魔法を1枚手札に加える。その後、自分フィールド上のLCを二つ取り除く事で、デッキから「ツヴァイ」または「アギト」と名のつくカードを手札に加える事ができる。







今回の注目すべきオリカはやはりホーリーカタルシスシャマル。
その前の進化形態が融合を使って守備2300でLcを使わないと戦闘破壊を無効にできないと、不遇な効果を持っているのに対し、最終進化の効果数は4つも。
特に強いのがLCを2つ乗せ、”フィールドを離れるのを無効”にする効果。今回は表示形式が多かったが、このモンスターの3000の壁はかなり辛い。
このモンスターを倒すための準備をしようとしてもバーン効果でやられてしまう。

AOAなのは、ユーノ、アルフ、ツヴァイに続く正真正銘の強力オリカ。


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第九話


今回はデュエルが少し短いです。
それと原作の時系列が違います。完全に勘違いしていました、ご了承ください。


万丈目が学校を去ってから翌日。その日俺は、十代、翔、隼人、明日香、それとももえさんとジュンコさんとピクニック気分で森をブラブラしていたらSALという研究所から逃げたデュエルできる猿と出会った。SALはジュンコさんをさらい、人質にしたのでデュエルで勝負する事になった。

そんな中俺と十代、二人のデュエル馬鹿がいたら問題が一つ起こるだろう。そう、どっちがSALとデュエルするかだ。

結局俺はじゃんけんで負け、十代とSALとのデュエルをジーと見ていた。

そしてその日の夜。

 

「あ~、いいな~十代は。SALとデュエルして」

「へへっ、あいつスゲー強かったぜ」

「二人ともお気楽ッス。条件付きのデュエルで負けたら、とか思わないんスか?」

「「思わない」」

 

当たり前だぞ翔。どんな相手だろうとちょっとでも気持ちが負けてたら、デッキは答えてくれないし自分の実力を出し切る事なんで出来ない。十代も俺と同じ考えの様で、翔に軽い説教をしている。

 

「・・・・それで、どうして僕達は廃校に来てるんッスかね?」

「だから言っただろ、俺のカードが一枚無いんだよ」

 

そう、事の発端はSALとのデュエルの後。

 

 

 

 

「しかし猿なのに凄いデュエルタクティクスだったな」

「俺のデッキに似てる筈だけど、全然違うデッキに見えたんだな」

 

そう言えばSALのデッキは獣族をメインにしたデッキだったな。と言う事は隼人のデッキも獣族デッキか。一度戦ってみたいな。

なんて話していると急にデッキケースからなのはさんが現れ、遠くにある茂みを睨んだ。

 

『ん? ごめん遊斗、気になる事あるからちょっと向こう行くね』

 

翔と隼人がいるので声を出す事が出来なかったので、コクンと小さく頷き合図を送った。

そしてなのはさんが別行動して一時間、二時間、三時間と経過して行き、俺だけではなく精霊(みんな)も心配になって行き、なのはさんを探す事になった。

俺達の会話を聞く事が出来る十代が「みんなで遊斗のカードを探そう」といい、現在に至る。因みに翔と隼人には、さっきの会話通りカードが無くなったと伝えた。

 

「明日ドローパン奢るから許せ」

「本当か? いや~、遊斗は太っ腹だな。じゃあさっさと見つけ出して、帰ろうぜ!」

 

十代はどこでも明るくて元気だな・・・・。だが正直俺は内心かなり焦っている。なのはさんが何の連絡も無しに三時間も帰って来ないなんて今まで一度も無かった。精霊達(みんな)は念話という、頭の中で通話できる魔法が使えるので、何かあったら連絡はすぐに来る筈だ。

だが実際は来ない。それは何らかのトラブルがあったのか、なのはさんが何者かに捕まっていると言う事だ。

 

「ぅぅぅ、アニキは怖くないの?」

「全然! 豪華な場所でいいじゃねえか。掃除したら住めそうだぜここ」

「ぜ、絶対に嫌ッスー!」

 

怖さの余りか翔は十代の腕に抱きついて首を右へ左へ振っている。その姿が情けなくて、つい兄の亮さんと比べてしまう。

でも翔の意見には俺の賛成で、この廃校は怖い。光源は十代が持っているロウソクと割れた窓ガラスから入ってくる月明かりしかなく、小部屋に入ると十代の持つロウソクだけが頼りとなる。床は歩く度にギシギシと今にも壊れそうな音を立て、ヒューと吹く風が生暖かく感じる。

いつもの俺なら内心ビクビクして歩いているだろうが、今はなのはさんの安否が第一だ。怖がっている暇はない。

 

「・・・・あなた達、何してるの?」

「でたッスーっ!?」

「んだなー!?」

 

翔と隼人の絶叫を無視し、十代は声の主の方へロウソクを向ける。そこにいたのは幽霊ではなく、金髪美人の明日香。絶叫した二人はホッと息をついている。

 

「あなた達はどうしてここに?」

「遊斗の大事なカードが無くなって探しに来てるんだ」

「え? こんな所に?」

 

ック、馬鹿の翔と隼人は何の疑問も持たずに廃校まで一緒に来たが、やはり明日香は騙せなかったか。何で俺がピンポイントでここに来たのかと言うと、なのはさんの魔力反応がここにあると聞いたから。

 

「あ~、廃校の周りをブラブラした後に無くしたから。辺りになかったから風で廃校の中に飛ばされたと思って」

「明日香こそどうしてここに?」

「・・・・この廃校で私の兄さんが行方不明になったのよ」

 

ゆ、行方不明!? それって大問題じゃないか!?

 

「そ、そう言えばこの前大徳寺先生に聞いたッス。この廃校で闇のデュエルの研究がされてるって・・・・」

「ま、まさか・・・・」

「そんなわけないでしょ。闇のデュエルなんてただのおとぎ話よ。じゃ、私は兄さんの手掛かりを探すわ。あなたのカードを見つけたら連絡するわね」

 

っておい、まさか別れて行動するつもりかよ。どんだけ肝っ玉が強いんだ、少しは翔に別けてやって欲しい。

だがいくら強くても明日香は女の子、一人で放っておくわけにはいかない。俺は十代の耳元に口を近付け、他のみんなに聞こえない様に小さな声で伝えた。

 

「十代、今から精霊達と動き回りたい。翔と隼人がいると不便だから二人を連れて明日香について行ってくれ」

「おう、分かった。待てよ明日香、俺達も一緒に行くぜ」

「え? いいわよ別に・・・・」

「駄目だって。女の子を一人にするわけにはいかないだろ?」

「ま、待ってよアニキー。ロウソク持ったままいかないでー!」

「さ、三人ともちょっと待つんだなー!」

 

十代から女の子と言われた時の明日香の頬が少し赤くなっていた気がするが気のせいだろう。気の所為じゃなかったら十代爆発しろ。

 

「さて、なのはさんの魔力反応は?」

『ここの丁度下にある』

「了解。そこまで案内してください」

 

 

 

 

Sideなのは

 

SALとデュエルできなかった遊斗の悔しそうな顔を、微笑ましく眺めていた時にある気配を感じた。私は人一倍空間認識能力に長けているからか、みんなその気配に気付かなかった。私の思い違いかもしれないので、私一人でその気配の所に行く事にした。

 

『やっぱり勘違いかな』

 

なんてポツリと呟いた途端、私の視界が真っ暗になった。

 

『・・・・気が付いたかな?』

 

そして次の瞬間目の前にいたのはデュエルモンスターズのカオス・ソーサラーの精霊。私は慌てて辺りの景色を見渡したが、そこは見た事も無い空間。そして両手を動かそうとしたが、鉄の鎖に繋がれており動かす事が出来ず、念話をしたが誰にも繋がらない。

 

『クックック、噂に聞いてたより随分可愛らしい娘じゃないか』

『あ、あなた、どうしてこんなことするの!?』

『何故私が説明しないといけない?』

 

な、何なのコイツ・・・・。精霊が宿っていないカオス・ソーサラーとは違い、凄く気持ちが悪い。ニヤニヤと仮面の下から笑っているのが分かり、私を舐めまわす様に見ている。

 

『クックック、良い眺めだ・・・・』

『ッツ、今すぐこの手錠を外すならまだ許すよ!』

『? 許す? 逆に手錠を外さなかったら誰が私を罰すると言うのです?』

 

ック、念話が使えないとみんなに伝えることすらできない。レイジングハートも眠らされている今、コイツを倒す事は・・・・。

 

「おr『私だ!』フェ、フェイトさん・・・・」

『フェ、フェイトちゃん!?』

『ほう、これはこれは。LSの一角ではありませんか・・・・』

 

カオス・ソーサラーは私から離れ、この空間の入り口にいるフェイトちゃんの方へ歩いて行った。

 

『よくもなのはをっ・・・・』

『クックック、安心してください。まだ手は出していません。最も、今からあなた達は私の下僕となるのですがね・・・・』

「なにを『何をふざけた事を!』フェ、フェイトさん・・・・」

『おや? 後ろにいるのはデッキの持ち主様ですか? 初めまして、影が薄くて気付かなかったよ』

 

カオス・ソーサラーの言葉に激怒した遊斗は、地面をバンバン蹴っている。ご、ごめんね、私もフェイトちゃんとソーサラーに夢中で気がつかなかった。

 

『クックック、これは幸運だ。貴様は殺しても構わないと言われているからな』

「ごちゃ『ゴチャゴチャ言ってないで私と戦え!』・・・・ぅぅ」

『何、ただ力で戦っても面白くない。ここはデュエルで決着を付けよう。おっと、君達に拒否権はない、私の手にはその小娘がいるんだからな』

 

ソーサラーは右手の不気味に光る魔力を私の方へ向けると、壁の一部が爆発した。

あんなものをくらったら魔法が使えない私はイチコロだ。けど精霊世界のデュエルは文字通り決闘、敗者は死。それはフェイトちゃんも分かっている。

そんな危ない事遊斗にさせるわけにはいかないので、必死になって鎖から逃れようとするけど、ビクともしない。

 

『遊斗。このデュエルは文字通り決闘、敗者には死・・・・』

「命を掛けたデュエル・・・・」

『遊斗! 私の為にそんな「受けて立つ!」遊斗!?』

「負けた時の事なんて考えない! 常に勝利をイメージるのがデュエリストだ!」

 

ッツ、遊斗・・・・。いつのまにそんなに立派に。

 

「さあデュエルだ!」

『ククク、命が掛かっていると知りながらここまで堂々とするとは』

『「デュエル!」』

 

 

 

 

Side 遊斗

 

「先攻は俺だ、ドロー! よしっ、フェイトを召喚」

『なのはを、返してもらう』

 

LCフェイト1

A1800・D500

 

いつもは穏やかで大人しい女の子のフェイトだが、今はカオス・ソーサラーを殺気だった目で睨んでいる。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4

 

『私のターン、ドロー。ふむ、魔法族の結界を発動し魔力掌握を発動。結界に魔力カウンターを一つ乗せ、デッキから同名カードを手札に』

 

魔力カウンター(以後MC)結界0→1

 

『モンスターをセットし、カードを一枚伏せてターンエンド』

 

遊斗    モンスター1 伏せ1 手札4

ソーサラー モンスター1 伏せ2 手札3

 

? 偉そうな事を言ってたわりにはやけに消極的な手だな。いや、だが無難で確実な一手でもある。一瞬でも油断したら負けると思う、体術の訓練でもそう習った。

ソーサラーの永続魔法、あれは魔法使い族が破壊される度に魔力カウンターを乗せ、場の魔法使い族と自身を墓地に送り、乗っていたカウンターの数だけドローするカード。と言う事は相手のデッキは魔法使い族軸。

 

「ドロー。・・・・このタイミングでは動かないか。なら行くぞ、リバースカードオープン、フォトンランサー! そのセットされたカードを破壊!」

 

フェイトは右手に魔力弾を生成し宙に浮かせ、バルディッシュで伏せカードを指した。その瞬間魔力弾は指したカードに向けて高速で直進する。

 

『エンドフェイズに使わなかったのが仇になりましたね。チェーンして「フォトンランサーにチェーンする事はできない」何!?』

 

フォトンランサーが破壊したのはディメンションマジック。2:1効果で、単体で使うとアドバンテージがなくなるが、サクリファイスエスケープや追撃をしやすいトリッキーな速攻魔法。

 

「フェイトの効果、LCを一つ取り除き、そのモンスターの表示形式を変更する」

『私のモンスターは見習い魔導師』

 

LCフェイト1→0

A400・D800

 

「装備魔法バルディッシュ・ザンバーを装備。これで攻撃力は1000アップ」

 

フェイトA1800→2800

 

2800のモンスターにカオス・ソーサラーも少し驚いたのか、ピクリと仮面が動いた。まだ余裕みたいだが、すぐにあたふたさせてやる!

 

「バトル! フェイトで見習い魔導師を攻撃!」

『ジェットザンバー!』

 

A2800 VS A400

 

大剣のバルディッシュの刀身が伸び、小さな見習い魔導師を押しつぶした。よしっ、大ダメージだ。

 

ソーサラーLP4000→1600

 

『ック、見習い魔導師の効果でもう一枚の見習い魔導師をセット。結界にMCが一つ』

 

MC結界1→2

 

これで次のターンの4枚ドローが確定したか・・・・。なのはさんがいない今、手札のアドバンテージで勝負するのは難しい。ここは攻撃力の高いモンスターで押し、早急に勝負を終わらせるのが一番だ。

 

「モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗    モンスター2 伏せ2 手札2 LP4000

ソーサラー モンスター1 伏せ1 手札3 LP1600

 

『ドロー、見習い魔導師を反転召喚、効果で結界に一つMCを乗せ、魔力掌握で結界に乗せ同名カードを手札に』

 

MC結界2→4

 

魔力カウンターが最大まで溜まった・・・・。まだ通常召喚件が残っている状態で4枚ドローされるのは辛いな。

 

『見習い魔導師を生贄に私は四枚ドローする。魔導騎士ディフェンダーを守備表示で召喚。効果でMCを一つ乗せる』

 

A1600・D2000

MCディフェンダー1

 

え? 攻撃してこない? 手札が悪いのか、それとも何かを狙っているのか。だがどちらにしても攻めて攻めて攻めまくるだけ。

 

『カードを三枚伏せてターンエンド』

 

場 

遊斗    モンスター2 伏せ2 手札2 LP4000

ソーサラー モンスター1 伏せ3 手札4 LP1600

 

伏せが三枚・・・・。いや、臆していたら負ける。

 

「ドロー、手札から夜天の騎士ヴィータを召喚! そしてリインフォースツヴァイを反転召喚!」

 

A500・D500

A1900・1200

 

「場のヴィータさんとツヴァイを融合。現れろ、祝福の騎士ヴィータ! 効果でお前の伏せ二枚を破壊する!」

『おっと、それは困るな。手札のエフェクト・ヴェーラーを墓地に送り、そのモンスターの効果を無効にする』

 

エフェクト・ヴェーラー? 聞いたこと無いカードだな。リインサイズのそのモンスターは、手から光線を出して、ヴィータさんのコメートフリーゲンを止めた。

 

「バトル! ヴィータさんでディフェンダーに攻撃」

 

A2600 VS D2000

 

『ラケーテンハンマー!』

 

ヴィータさんの持っているハンマー、グラーフアイゼンからジェットの様な物が出てきた。そのジェットは魔力を燃料として噴射させた。ディフェンダーは自前の巨大な盾で防ぐが、ヴィータさんのハンマーの威力はだてでは無い。徐々にディフェンダーの盾にひびが入って行く。

だがソーサラーの宣言と共に、盾のひびが元に戻って行ってしまった。

 

『ディフェンダーの効果。このカードが破壊される時フィールドのMCを取り除く』

 

MCディフェンダー1→0

 

『フェイトで攻撃!』

『攻撃宣言時罠発動、マジシャンズ・サークル。魔法使いの攻撃宣言時にお互いデッキから攻撃力2000以下の魔法使いを攻撃表示で特殊召喚。私はミュータント・ハイブレインを召喚』

 

A0・D2500

 

『攻撃力0? 勝負を捨てた・・・・?』

「ッツ、俺はシグナムさんを召喚する」

 

A1800・D1400

 

『分かってると思うが遊斗、油断するな』

『けど攻撃反応型ならあたしの時にやった方が得の筈』

 

そう、ヴィータさんの言う通り攻撃反応型の罠があるならさっきしていた筈。確かに攻撃力ではフェイトの方が高いが、魔法使い族は優秀な魔法・罠破壊モンスターがいる。あれだけドローしておいてそのモンスターが来てない方が変だ。

 

「だが守ったら負け! フェイトでバトル続行! ミュータント・ハイブレインに攻撃!」

『ッフ、その勇気だけは認めてやる。罠発動反転(リバーサル)世界(ワールド)!』

反転(リバーサル)世界(ワールド)!?」

『これによりフィールド上の効果モンスター全ての攻撃力と守備力が変化する』

 

フェイトA2800・D500→A500・D2800

ヴィータA2600・D2500→A2500・D2600

シグナムA1800・D1400→A1400・D1800

ミュータント・ハイブレインA0・D2500→A2500・D0

ディフェンダーA1600・D2000→A2000・D1600

 

A500 VS A2500

 

フェイトの防御力は紙同然。速度特化のフェイトの防御力が仇となり、不思議な力により全てが反転した。

フェイトはミュータント・ハイブレインにより破壊され、その反射ダメージが俺を襲った。

 

「ぐ、ああああああっ!?」

 

遊斗LP4000→2000

 

こ、これが命を掛けたデュエルのダメージ・・・・。全身に激痛が走り、体が引き裂かれそうな感覚。立っているのが辛く、膝をつき、荒い呼吸を何とか整える。

や、奴も俺と同じ条件なのにどうしてあそこまで平気で立っていられる?

 

『クックック、別に大したことでは無い。この空間は私が作ったものですから』

『て、てめぇきたねえぞ!』

『最高の褒め言葉だ。さあ、どうしまする?』

 

ック、変化したシグナムさんの攻撃力じゃディフェンダーを出す事ができない・・・・。フィニッシャーになりやすいシグナムさんを選択せずに、はやてを選択しておけばよかった。

ガクガクと震える足に力を込め、何とかして立ち上がる。デュエルディスクがここまで重く感じたのは初めてだ。

 

「・・・・ふぅ。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

落ち付け。勝つ事に集中しろ。

奴のモンスター、ミュータント・ハイブレインは攻撃する時代わりに俺のモンスター一体を奪い、他のモンスターと攻撃させる能力を持つ。相手が選んでくるのは間違いなくヴィータさんのはず。

 

遊斗    モンスター2 伏せ2 手札1 LP2000

ソーサラー モンスター2 伏せ1 手札3 LP1600

 

『私のターン、ドロー。魔導戦士ブレイカーを召喚。効果で自身にMCを乗せる。MCが乗ったこのカードの攻撃力は300アップする』

 

MCブレイカー1

ブレイカーA1600・D1000→A1900

 

『そしてMCを取り除きその伏せカードを選択し破壊!』

「チェーンしてStrikersの回収発動。フェイト、ツヴァイ、ヴィータさんをデッキに戻し二枚ドロー!」

 

ブレイカーA1900→A1600

 

『ッチ、だが魔力掌握をブレイカーに発動し、再び効果。もう一枚の伏せを破壊する!』

「甘い! 伏せ除去の豊富な魔法使い族にそんな簡単に伏せない。チェーンしてソニックムーブをシグナムさんに発動! エンドフェイズ時まで除外」

『!? 遊斗、何してるの!?』

「さあ、ヴィータさんとミュータント・ハイブレインの攻撃力は同じ。相撃つか? それとも奪うか?」

『クックック、どちらにせよブレイカーとディフェンダーの攻撃であなたのライフは尽きる。だが手札から攻撃力を上げてもらっても困る。バトル!』

 

よし、まだチャンスはある。

 

『ミュータント・ハイブレインの効果発動。攻撃宣言時相手モンスターのコントロールを得る。私はヴィータを選択』

『ック、遊斗!』

「大丈夫ですよ。その効果で奪ったモンスターはダイレクトアタックできない」

『何を考えているかは知らんがブレイカーで攻撃!』

 

A1600

遊斗LP2000→400

 

「があああああああ!」

 

ブレイカーの剣が俺の体を切り裂き、その痛みが体全体に来る。胸に手を当てると血が流れており、本当に斬られたみたいだ。シグナムさんとの木刀の打ち合いと、痛さのレベルが違う。

 

『これで終わりだ! ディフェンダーでダイレクトアタック!』

 

A2000

 

や、やべえ。頭がぼうっとしてきた・・・・。このカードを使わないと・・・・。

 

「ダ、ダメージ計算時手札のザフィーラを墓地に送り戦闘ダメージを0に。そしてデッキから一枚ドロー・・・・」

 

ディフェンダーの杖から放たれた魔力エネルギーを手札から現れた犬形態のザフィーラが受け止めてくれた。

 

『ッチ、生き延びたか。だがデュエル以前にお前の体はもうボロボロだ』

「う、るせえ。さっさと続けろよ、人間相手に下準備しないとデュエルできない臆病者・・・・」

 

挑発が効いたのかソーサラーは殺気だった目で俺を睨み、乱暴にカードを二枚伏せた。

 

『二枚伏せてターンエンド!』

「ヴィータさんとシグナムさんは俺の場に戻る」

 

遊斗    モンスター2 伏せ0 手札3 LP400

ソーサラー モンスター3 伏せ3 手札0 LP1600

 

ハハッ、8枚まであった手札を0まで減らした。俺のプレイスタイルはライフアドよりフィールド、手札を大事にすること。どんなに攻めようと意識したって、やっぱり体にはこのスタイルが残っているみたいだ。

 

「その所為で斬られたんだが・・・・。ドロー・・・・ハァ、やっぱりなのはさんの騎士はこの人だよな。妬けるよホントに。フェイトを召喚! 効果でLCを乗せる」

『次は負けない!』

 

フェイト1800・D500

LCフェイト1

 

「効果を発動しミュータント・ハイブレインを守備に変更。そして魔力高炉を発動!」

 

LCフェイト1→0

LC魔力高炉2

 

『遊斗!? もうデメリットを受けるだけのライフは残ってないぞ!?』

「このターンで決めれば問題ない! LCを取り除きアルフを特殊召喚! そして場のアルフとフェイトを融合。現れろ、黒騎士・フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LC魔力高炉1

A2800・D500

 

「そして場のフェイトを生贄に、現れろ、迅雷の化身フェイト!」

 

バチバチバチとデュエルフィールドの上空から電気の音が鳴った。そしてその音の根源である雷が一瞬見えた途端、落雷となりデュエルフィールドに落ちてきた。

サラサラだった金色の髪は稲妻と同じようにギザギザがあり、今まで持っていたバルディッシュは彼女の手にはなく、腕から魔力刃が出ている。来ている服も黒のバリアジャケットではなく、黒の長いロングコートと黒のズボン。

比喩ではなく本当に雷を纏っているその姿は、彼女の好きな言葉、疾風迅雷そのものだった。

 

LS迅雷の化身フェイトA3300・D0

 

『な、なんだ、そのモンスターは・・・・』

「ハハッ、この人がお姫様を助けたいってさ・・・・。バトル! フェイトさんで魔導騎士ディフェンダーを攻撃!」

『ハッハッハ! まさかそのモンスターを召喚しただけで攻撃するとはな! この罠全部使って遊ぶのもいいが、せっかくだから一枚で終わらせてやる! 聖なるバリア―ミラーフォースを発動、貴様のモンスター全て破壊だ!』

「そいつを発動出来たらの話だがな。フェイトさんが攻撃するバトルフェイズ、相手は魔法・罠を発動できない」

『なに!?』

 

そう、フェイトさんの速さは疾風迅雷。彼女の速さを前に、魔法や罠を発動する時間さえない。

 

A3300 VS A2000

 

フェイトさんはディフェンダーと視線が交わった途端、その速さでディフェンダーの後ろに回り込み、ディフェンダーの首を魔力刃でかっ切った。

 

ソーサラーLP1600→300

 

「終りだ! フェイトさんは二回攻撃する事が可能! フェイトさんでブレイカーを攻撃」

『そ、そんな馬鹿な!? わ、私が負けるなど・・・・』

 

A3300 VS A1600

 

『フォトンランサーファランクスシフト・・・・』

 

この状態のフェイトさんにフォトンランサーの溜め時間なんていらいない。計76基のフォトンスフィアを僅か一秒弱で形成させたフェイトさんは、スッと手を上げた。

カオス・ソーサラーは大量の銃を一斉に向けられた感覚を覚えたのだろう。無様にも両手を上げて降参の意思を現している。

 

『は、ははっ、ゆ、許して下さいよ。ほら、もう戦いません。次のターンサレンダーしますから』

『精霊世界のデュエルは文字通り決闘、例え貴様にダメージが通らなくてもそれは絶対・・・・死ね』

「『撃ち砕け、ファイア!』」

 

計76基のフォトンスフィアから毎秒14発の斉射を4秒続ける最強の技。フェイトが時間を掛けて放つ1064発の4倍の4256。

それがブレイカーを襲い掛かり、巻き添えにミュータント・ハイブレインをも破壊し、残りがカオス・ソーサラーを襲い掛かった。

 

『嘘だ、うそだあああああああ!』

 

LP300→-1400

 

巨大な爆風と共の絶叫はゆっくりと消えて行った。フェイトさんの言う通り、このデュエルは命がけのデュエル。

 

「・・・・さっすがフェイトさん」

『君は、無茶をしすぎだ』

 

元々クールなフェイトさんだが、この雷のフェイトさんは更にクールだ。なのはさんが言うに、出会ったばかりのフェイトにそっくりらしい。

 

「勝てばいいんですよ・・・・。ちょっと眠るんで、治療はシャマ姉とユーノに・・・・」

『遊斗・・・・、遊斗!』

 

俺の名前を必死に呼んでくれるなのはさんの声がゆっくりと遠ざかって行き、俺は深い眠りについた。

 

 




LS迅雷の化身フェイト ☆10/光/魔法使い/A3300・D0
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上の「LS黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」一体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。
このカードが攻撃宣言を行ったバトルフェイズ終了時まで相手は魔法、罠を発動する事はできない。このカードは二回攻撃ができる。
このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したエンドフェイズ、自分の手札、デッキ、墓地から「フォトンランサー」を自分のフィールド上にセットすることができる。




今回のオリカはこの一枚。フェイトのIF形態です。テスタロッサ・ハラオウンが無いのは、孤独なフェイトさんってイメージを込めたからです。
攻撃力3300は前の形態より落ちていますが、2回攻撃が増えたのでダメージ量は増えます。また一番魅力的なのは戦闘破壊したエンドフェイズ時にフォトンランサーをセットする効果。1:1効果のカードを場に伏せられるのは強いです。
王様なのは、王様はやてには破壊耐性があるので、フェイトさんだけ何もないというのは少しかわいそうと思ったのですがフェイトさんに破壊無効を付けるのも違和感がある。だから攻撃は最大の防御、という意味を込めてこの効果にしました。





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第十話

今回はタッグデュエルがあります。LP8000のタッグフォースルールです
それで毎ターンのエンドフェイズ時の場の確認の、手札枚数ですが、ターンプレイヤーのみ書いています。
LP8000だったりターンが回ってこなかったり、結構苦戦しました。


あれ? 体がズキズキする・・・・。俺、なんで寝てたんだ?

瞼が重くて意識はハッキリとしないまま、太陽の光と周りの声で俺は目が覚めた。重たい瞼を頑張って開けると、そこにはなのはさんとシャマ姉とユーノがいた。

 

「あれ? 俺、いつから・・・・」

 

なのはさんの目に涙があったが、中々頭が回らずに何から質問していいのかが分からない。起き上がろうとすると体に激痛が走ったので、俺は起き上がるのを止めた。

 

『覚えてる遊斗? 昨日廃校でデュエルした事』

『ごめんね遊斗。私が捕まったばっかりに・・・・』

 

ユーノとなのはさんの言葉でやっと頭の整理が出来た。そうだったな。俺はデュエルモンスターズの精霊のカオス・ソーサラーと文字通り決闘をして、ギリギリで勝ったんだっけ?

 

「・・・・ああ、そう言えば。あれからどれくらい?」

『まだ一日も経ってないわよ。私とユーノ君の治療魔法は強力よ』

 

シャマ姉とユーノが・・・・。そりゃすぐ治るわけだ。ベッドの横にある目覚まし時計を見ると、まだ七時前。いつもよりは遅いが、傷の痛みで気を失った者にしては早起きだろう。

 

「なのはさん、せっかく勝ったのに泣かないでください」

『でも・・・・』

「ん~、じゃあ何か美味しい物作って下さい。このままじゃ主治医のシャマ姉の料理が出てきてしまうかもしれないんで」

『遊斗? それどういう事?』

 

シャマ姉はフフフと不気味な声を出しながら俺の頭をガシッと掴む。シャマ姉が怖かったのかユーノは大人しく退散したが、なのはさんは「うん!」と満面の笑みを浮かべ、キッチンの方へ行った。

 

 

 

 

まだ完全ではないが、なのはさんの鉄分タップリの料理を食べてからだいぶん体の調子も少し戻ってきた。傷もズキズキと痛むが、筋肉痛みたいな感じだ。傷跡も無いしシャマ姉曰く「外傷より魔力ダメージ的な、体内へのダメージの方が大きいわ」らしい。

いくら男とは言え傷跡が残るのは嫌だったので、その言葉を聞いてホッとした。そんなこんなで今日は体調不良で休もうかと思っていたら、突然扉がドンドンと叩かれた。

 

「査問委員会だここを開けろ! 開けなければこの扉を爆破する」

『・・・・管理局もびっくりの権限の持ち主だね』

「ちょ、ちょっと待って下さい! 筋肉痛みたいなんで」

 

俺は重い体で何とか扉の前まで来ると、なのはさんに扉を開けてもらった。う~ん、この程度の扉を開けれないとは意外に重傷なのか?

 

『めちゃくちゃ重症です! 外傷がないだけで、まだかなりダメージが残ってます!』

 

それじゃあデュエルできないな。死活問題だ・・・・。

 

「遊斗・スカリエッティだな」

「はい、そうですが」

「今から校長室まで来てもらう」

 

あ~、もしかして昨日の廃校の件か? 昨日は無我夢中で廃校に向かったが、そう言えばあの場所って立ち入り禁止だったな。

 

「了解しました。それで申し訳ないんですが、車椅子持って来てもらえませんか?」

 

俺の頼みごとに査問委員会のみなさんは、少し困った顔をしつつも、ちゃんと車椅子を持って来てくれた。

 

 

 

 

「「「「退学ぅぅぅううー!」」」」

 

呼びだされたのは俺だけじゃなく、十代、翔、隼人もいた。そして呼びだされて早々言われたのが、退学と言う言葉。いやいやいや、いくらなんでも退学ってあんまりじゃない!? 確かに校則違反だけど、廃校に入ったら退学にするとか書いてないし。

校長の隣にいるクロノス先生がいやらしい顔で笑っている。まだ俺も含めたレッド寮のみんなを馬鹿にしているのか。

 

「ですが君達もただ退学というのも納得できない筈」

「当たり前ですよ! 生徒指導部に行くのが普通じゃないですか!」

「普通の高校ならそうです~が、ここはデュエルアカデミ~ア」

「よって君達には退学を掛けた制裁デュエルをしてもらいます!」

「「「「制裁デュエル?」」」」

 

クロノス先生の説明は簡単で分かりやすかった。

勝ったらお咎め無し、負けたら退学。そして制裁するのはタッグデュエル使いらしいので、俺達はそれぞれタッグを組む事になった。

そして肝心のペアは。

 

「十代君、丸藤君ペア。遊斗君、前田君ペア。君達は明日来る制裁デュエリストと戦ってもらうよ」

 

ふむ、隼人とペアか。いいんじゃないかな? 昨日隼人のデッキに興味が出たし、タッグデュエルは産まれて初めてだ。

 

「それで~は、明日に向けてせいぜい頑張るノ~ネ」

 

 

 

 

あれから十代達に何があったのか聞いたら、向こうも向こうでかなり大変だったらしい。明日香が人質にされ、闇のデュエリストと名乗る奴とデュエルしたらしい。そのデュエリストは本物の闇のデュエリストではなかったらしいのでホッとしたが。

俺の怪我は色々ぼかして、階段から転んだと言っておいた。

 

「タッグデュエルだってよ。く~、ワクワクするぜ!」

「だな。でもせっかくなら隼人だけじゃなくて十代とも翔とも組んでやりたかったな」

 

せっかく一日の猶予を貰ったので、俺達はレッド寮でタッグデュエルの練習をする事にした。十代は車椅子を押しながらも、制裁デュエルをワクワクしている。

 

「二人ともお気楽なんだな。制裁デュエルの相手はクロノス先生が決める」

「きっと凄い大物ッスよ・・・・」

「じゃあ尚更燃えてきたぜ! なあ十代」

「ああ!」

 

俺と十代の言葉に二人はハァと深いため息をついた。全く・・・・、確かに退学が掛かったデュエルかもしれないが、変に緊張したり落ち込んだりするよりも、楽しくデュエルする方が自分らしいデュエルができる。それは結果的に自分が持てる最大、もしくはそれ以上の力を発揮できるというのに。

 

「でも遊斗君はデュエル出来るんッスか? デュエルディスクも持てないみたいだし」

「多分パートナーの隼人に指示通りやってもらうか、別の人に頼むかのどっちかだな」

 

俺は右手と左手をグーパーしようと力を入れるが、手が思う様に動かない。

 

「なあ、せっかくなら俺と翔、遊斗と隼人に別れて30分デッキを確認したりして、その後に勝負するって言うのはどうだ?」

「おっ、いいな。でもせっかくならそれぞれ持ってるカードを交換し合う方がよくないか? 別に俺達が競い合うってわけでもないし」

「おう! へへっ、今日は停学で学校も無いし、ラッキーだな!」

「アンラッキーッスよー! オイラがアニキのパートナーなんて無理ッスーっ!」

 

 

 

 

「なあ十代のデッキなら沼地の魔神王とかはいるんじゃないか?」

「おっ、これ隼人のデッキに会うな」

「翔のデッキにこれなんてどうだな?」

「あ、このカード遊斗君のデッキにピッタシす」

「? どれどれ、ってピケルかよ!? だからアイドルデッキじゃないって言ってるだろ!」

 

 

 

 

と言う事で早速デュエルする事になったわけだが・・・・。

 

「悪いな明日香。ディスク持ってもらって」

「いいのよ。あなたのデッキがどんなのかも見られるし」

 

昨日の御礼を言いに来た明日香が俺の変わりにデュエルしてくれるらしい。勿論俺のデッキでだ。

 

「じゃあ行くぞ! LPは8000のタッグフォースルール!」

「「「「デュエル!」」」」

「先攻は俺だ、ドロー! バブルマンを召喚、デッキから二枚ドローする。カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

十代&翔 モンスター1 伏せ1 手札6

 

「じゃあ隼人君、先に失礼するわね。ドロー! どう、遊斗?」

 

明日香に引いたカードを見せてもらい、俺は数秒間悩んだ。タッグデュエルは味方と合わせると最初から手札が12枚ある。なので序盤は場があっという間に埋まるが、後半になると手札の補充が辛くなる。何しろ4ターン経過して一枚しかドローできないのだ。

しかもLPは8000、ここはフィールド、ライフアドよりもハンドアドバンテージを優先するべきだ。

考えが纏まったので、何をするかを明日香に指示をした。

 

「フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。そして高町なのはを召喚。ミッドチルダと自身の効果でLCが一つずつ乗るわ」

 

A500・D1800

LCミッドチルダ0→1 なのは1

 

「なのはの効果で十代の伏せを破壊。えっと」

「効果名はソリッドビジョンのモンスターが言ってくれるからいい」

『ディバインシュート!』

「おっと、チェーンして速攻魔法バブル・シャッフル。バブルマンを生贄にエッジマンを特殊召喚する!」

 

バブルマンを包むように現れた大量の泡は、次第に消えて行くと、その中にはバブルマンではなくエッジマンがいた。

 

A2600・D1800

 

「ごめんなさい、遊斗」

「いいよ、誰がやっても十代が伏せていたのはバブル・シャッフル。明日香は悪くない」

「ありがと。ミッドチルダのLCを取り除きユーノ・スクライアを特殊召喚。場の二体を融合し、AOA高町なのはを召喚」

 

A1000・D3000

 

やっぱり最初はなのはさんを出して場を整えるのが一番いいな。初手にミッドチルダとなのはさんがある時の安心感は半端ない。

 

「AOA高町なのはの効果でデッキから・・・・ティアナ・ランスターを手札に加えるわ。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ1 手札4

十代&翔  モンスター1 伏せ0 手札5

 

「ぼ、僕のターン。パトロイドを召喚!」

 

A1200・D1200

 

翔のデッキはロイドというアメリカンアニメみたいな、可愛らしい機械族のデッキだ。そしてパトロイドの効果は・・・・。

 

「バトル! エッジマンでAOA高町なのはを攻撃!」

「え、え~と「ハァ、デュエリストはいつでも本気」そ、そうね。罠発動、フォーメーションチェンジ! AOA高町なのはを守備表示にして一枚ドロー」

 

A2600 VS D3000

 

「そ、そんな~・・・・」

 

お、おいおい。たかだか一回攻撃が通らなかったぐらいでそんな落ち込むなよ。どんだけ豆腐メンタルだよお前。

 

「翔、どうしてパトロイドの効果を使わなかったんだ?」

「え?」

 

う~ん、十代。確かに教えてやる事は大事だが、こいつはそれ以前の問題だと思うぞ。デッキに入っているカードの効果を覚えるのは、高校生であろうと幼稚園児であろうと、デュエリストなら必要不可欠だ。

 

「パトロイドは相手の伏せを確認できる。今回は守りのカードだったけど、迎撃カードだったら大変だったぞ」

「ご、ごめんなさい・・・・」

「気にすんなって。誰にだってミスの一つや二つはある。次からは気を付けような」

「はいっス!」

 

何となく翔が十代の事をアニキって言うわけが分かる気がする。今の翔の言動、もし俺が翔のパートナーだったらブチ切れていたかもしれない。

そこら辺は同じデュエル馬鹿でも違うよな。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドッス」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ0 手札5

十代&翔  モンスター2 伏せ1 手札4

 

意外にみんな手札を使わないで温存してきたな。じゃあいっそ次のターンにガツンと攻めるのもありだな。

 

「俺のターンドロー。ん、モンスターをセット、カードを二枚伏せてターンエンドなんだな」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター2 伏せ2 手札3

十代&翔  モンスター2 伏せ1 手札4

 

おいおいおい、これじゃあLP8000が0になるなんて夢のまた夢だ。多分翔と隼人は初めてのタッグデュエルで様子見しているのだろう。

まあ次は十代のターン。手札もあるし攻めて来るだろう。

 

「俺のターン、ドロー! 融合発動、手札のスパークマンとクレイマンを融合、サンダー・ジャイアント召喚!」

 

A2400・D1500

 

あ~あ~、出たよなのはさん殺しのHERO。このデュエルだけじゃなく、何度もなのはさんはこのカードに破壊されている。明日香に頼んで隼人の伏せを見たが、こいつの効果を止められるカードはない。

 

「サンダー・ジャイアントの効果、手札を一枚捨て、このカードより攻撃力の低いAOA高町なのはを破壊! ヴェイパー・スパーク!」

「ック、やるわね十代」

「ここは手札消費をさせたと思おう」

「そんな事言っている場合? 十代の場にはエッジマンもいるのよ?」

 

大丈夫だって明日香。デュエルは集中し、一瞬も油断してはいけないが、ゆとりを持ってやるものだぞ。

 

「パトロイドの効果、右の伏せを確認させてもらうぜ」

 

パトロイドの赤いランプが伏せカードを照らすと、そこには幻獣の角。獣族、獣戦士族に装備する事で800攻撃力を上げ、戦闘で破壊したら一枚ドローする効果を持つ通常罠。もう一つの罠は分からないが、十代なら臆せず攻撃してくるだろう。

 

「バトル! エッジマンでセットモンスターに攻撃!」

「セットされたカードは素早いビッグハムスターなんだな。リバースしたときデッキからレベル3の獣族をセットで特殊召喚。俺はデス・コアラを特殊召喚なんだな」

 

A2600 VS D1800

 

「貫通ダメージは受けてもらうぜ」

 

遊斗&隼人LP8000→7200

 

「ぅぅ、すまないんだな」

「いや、大丈夫だ」

「サンダー・ジャイアントで裏側のデス・コアラを攻撃!」

 

A2400 VS D1800

 

サンダー・ジャイアントは雷を纏った拳でデス・コアラを攻撃した。だがデス・コアラも負けてはいない。

 

「デス・コアラの効果発動。リバースした時相手の手札×300ダメージを与えるんだな。600のダメージを与える!」

「「ック」」

 

十代&翔LP8000→7400

 

まあ言っちゃ悪いがちゃちなダメージだ。デス・コアラ自体は決して弱いカードではないが、LP8000となると、両方ともバーンデッキじゃない限り、バーンが活きる事は少ないな。

 

「だがパトロイドの攻撃が残っている!」

「ゆ、遊斗・・・・」

「今の伏せじゃどうしようもないし受けよう。別に大したダメージじゃない。残り2000まではライフは飾りだ」

 

この考え方の所為で車椅子でデュエルする事になっているのだが、やっぱりこの考え方は止められない。

 

A1200

遊斗&隼人LP7200→6000

 

「へへっ、どんなもんだい。このままターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター0 伏せ2 手札3 LP6000

十代&翔  モンスター3 伏せ1 手札2 LP7200

 

「凄いよアニキ! 一気にライフを2000も減らしてモンスターも全滅ッス!」

「へへっ、だが相手は遊斗。なにが来てもおかしくないぜ」

「行くわよ、ドロー! ・・・・了解、手札からティアナ・ランスターを召喚! 効果でミッドチルダにLCが一つ乗るわ」

 

A1200・D1000

LCミッドチルダ0→1

 

やっぱり堂々と銃を構えているティアナさんってカッコイイ。あのティアナさんがツンツンしてて時々デレるって、スバルさんも美味しい立場だよな。男として羨ましい・・・・。

 

「ティアナ・ランスターの効果。LCを一つ取り除き墓地のAOA高町なのはを除外。その同名のトークンを特殊召喚!」

 

A0・D0

LCミッドチルダ1→0

 

「? どうして攻撃力の0のモンスターを?」

「来るぞ翔」

「行くわよ! 場のトークンを生贄に、蒼穹の王・高町なのはを召喚!」

 

A2500・D2500

 

明日香がディスクにカードをセットした瞬間、彼女の細い腕では耐えきれないほどの衝撃が走り、俺の膝の上に尻もちをついた。その瞬間明日香の重さに耐えきれず体全体に激痛が走る。あ、明日香は軽いが、なにぶんデュエルディスクさえ持てない状態だ。女性一人の体重に耐えきれるわけがない。

 

「いっ、ってええええ!」

「ご、ごめんなさい。というかあなた、こんなカード「おい、なのはの効果」そ、そうだったわ。蒼穹の王・高町なのはの効果発動! 特殊召喚に成功した時デッキから好きなカードを一枚墓地に送るわ。私が墓地に送るのはレイジングハート・エクシード」

「来るぞ、遊斗の装備コンボが」

「あっ、それと明日香。モンスター名は下の名前でいいぞ。めんどくさいだろ?」

「ええ、そうする。なのはの効果発動! 墓地の装備カードを装備条件を無視して装備。さっき墓地の送ったレイジングハート・エクシードを装備し、攻撃力を1500アップ!」

 

なのはA2500→4000

 

なのはさんの周りを護衛の様に回っている一機のレイジングハートが輝き、次第にその姿をレイジングハート・エクシードへと変えた。だが王は命令を下すだけで、武器に手を持ち戦う事はしない。

 

「攻撃力4000!?」

「バトル! なのはでエッジマンを攻撃!」

『ディバインバスター・エクステンション・・・・』

『Divine Buster Extension』

 

A4000 VS A2600

 

あくまでなのはさんは命令を下すのみ。実行するのは機械で作られた優秀なデバイス達。レイジングハートから放たれた桃色の砲撃が、最上級モンスターのエッジマンをアッサリと呑み込んだ。

 

十代&翔LP7200→5800

 

「凄いんだな。あっという間にライフを逆転した!」

「ティアナでパトロイドを攻撃!」

「え? 攻撃力は同じなのに!?」

 

A1200 VS A1200

 

すいませんティアナさん。でもパトロイドは地味に厄介だし、なるべくモンスターは減らしておきたい。

翔もこの攻撃に対する魔法・罠は特にないようだったので、このバトルは相討ちによって終わった。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ4 手札3 LP6000

十代&翔  モンスター1 伏せ1 手札2 LP5800

 

「む、無理だよ・・・・。攻撃力4000のモンスターなんて倒せないよ・・・・」

「諦めんなよ翔! 確かに攻撃力は4000だがそれは装備魔法の効果。装備さえ破壊出来れば攻撃力は2500だ」

「そ、そんな。無茶だよ・・・・」

 

十代は必死に励ましているが、翔はそれに答えようとせずにドローする気配を見せない。ハァ・・・・、いい加減にしてくれよ。どうしてドローする前から諦めるんだ。

昨日命がけのデュエルをした所為か、こうやってメソメソしている翔がやたらと癪に障る。もうデュエルを止めようかと明日香のデュエルディスクからデッキを取ろうとした瞬間。

 

「きばれ翔! 留年していて敵の俺が言うのもなんだが、今のお前は留年している俺よりカッコ悪いぞ!」

「そうよ翔君。そこで投げ出したらデュエリストじゃなくてただの弱虫よ!」

 

全く、今は敵同士だっていうのに、この二人は・・・・。

 

「翔! お前は十代の弟分だ。そのお前がアニキの面汚してどうすんだ! 弟分なら弟分らしくアニキの様にデュエルしろ!」

「隼人君、明日香さん、遊斗君・・・・」

「そうだぜ翔。デッキに宿る可能性は無限大。どんなデッキでもあのモンスターを倒す手段はある」

 

翔は俺達の言葉に涙を流しながらコクコクと頷いた。そして涙を拭いキッとなのはさんを睨みつける。その姿を見てニヤッと偉そうに笑うなのはさんは、どこからどう見ても悪役にしか見えない。ああ、あの優しくて可憐で可愛いなのはさんはどこに・・・・。

 

「僕のターン、ドロー! ッツ、僕は・・・・僕は・・・・、逃げない! パワー・ボンド発動! 手札のスチームロイド、ドリルロイド、サブマリンロイドを融合! スーパービークロイド―ジャンボドリルを融合召喚!」

 

A3000・D2000

 

パワー・ボンドから発生した渦に呑まれた三つのロイドが一つになり、巨大なドリルを持ったロイドに融合した。攻撃力は最上級の3000、しかもこれがパワー・ボンドの効果で・・・・。

 

「パワー・ボンドの効果で攻撃力が倍になる!」

 

シャンボドリルA3000→6000

 

まさか装備カードを破壊せずに越えて来るとは、流石亮さんの弟、いや、十代の弟分だな。

翔はどういうわけか融合召喚に成功した事に凄く喜んでいる。俺あんまり除去カード入れてないんだがな・・・・。

 

「バトル! スーパービークロイド―ジャンボドリルで蒼穹の王・高町なのはを攻撃!」

『へぇ、面白いね。けど少し甘いかな』

「ですね。明日香ボタンよろしく。攻撃宣言時、設置型バインドを発動。攻撃してきたモンスターの装備カードになり、装備モンスターは攻撃できない」

「そんな!?」

「更に発動後LCを一つ乗せる。俺はミッドチルダに乗せる」

 

LCミッドチルダ0→1

 

「ぅぅぅ、サンダー・ジャイアントを守備にしてカードを一枚セットしてターンエンド。パワー・ボンドの効果で3000のリスクダメージ」

 

十代&翔LP5800→2800

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ4 手札3 LP6000

十代&翔  モンスター2 伏せ2 手札0 LP2800

 

「ぅぅ、ごめんねアニキ」

「いいって、それにまだ破壊されたわけじゃないんだ。チャンスはまだある」

「俺のターン、ドロー。来たんだな、ビーストライカーを召喚」

 

A1850・D400

 

おっ、俺が上げた獣族モンスターか。そのモンスターを出すって事はあのモンスターが手札に来たって事。場がますます安定するな。

 

「手札のキング・オブ・ビーストを捨てデッキからモジャを特殊召喚」

 

A100・D100

 

デッキから現れたのは黒い毛を纏ったよく分からない動物。戦闘で破壊されたら獣をサーチする能力を持つが、もっと一つ重要な役割がある。

 

「フィールドのモジャを生贄にして、墓地からキング・オブ・ビーストを特殊召喚するんだな!」

 

A2500・D800

 

「おお。隼人のデッキもかなり変わったな!」

「バトル、キング・オブ・ビーストでサンダー・ジャイアントを攻撃。そして攻撃宣言時伏せカード、幻獣の角を発動し、攻撃力を800アップするんだな」

 

ビーストA2500→3300 VS D1800

 

「ッツ、サンダー・ジャイアント!」

「幻獣の角の効果でデッキから一枚ドロー。・・・・カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター3 伏せ5 手札2 LP6000

十代&翔  モンスター1 伏せ2 手札0 LP2800

 

むっ、場が埋まってしまったな。表になっているのはレイジングハート、幻獣の角、設置型バインド、裏になっているのは隼人が伏せたカード。

 

「ドロー! O―オーバーソウルを発動。墓地のクレイマンを召喚。更に戦士の生還でエッジマンを手札に加える」

「わざわざ上級モンスターを手札に加えた?」

「ネクロ・ダークマンの効果でエッジマンを生贄無しで召喚!」

 

やっぱりそうきたか。だがこの状況下で攻撃力2600は低い。残りの一枚で何をするつもりだ?

 

「手札からR―ライトジャスティス発動! レイジングハート・エクシードと設置型バインドを破壊させてもらう!」

「ッチ、またそのカードか!」

 

R―ライトジャスティスから放たれたエネルギー弾がなのはさんの前で構えているレイジングハートと、ジャンボドリルを縛っている設置型バインドを破壊した。

 

『貴様、愚民の分際で私の武器を・・・・』

 

なのはA4000→2500

 

お願い! そんな事言わないで! なのはさんはそんな事言わないから!

 

「バトル! スーパービークロイド―ジャンボドリルでキング・オブ・ビーストを攻撃!」

 

A6000 VS A3300

 

ジャンボドリルはその巨大なドリルを回転させながらキャタピラでキング・オブ・ビーストまで突進して、キング・オブ・ビーストをドリルで粉々にした。文明の力を見た気がする・・・・。

 

「ック、流石十代なんだな」

 

遊斗&隼人LP6000→3300

 

「エッジマンで蒼穹の王・高町なのはに攻撃!」

「それはさせないんだな! 速攻魔法突進で蒼穹の王・高町なのはの攻撃力を上げるんだな」

 

なのはA2500→3200 VS 2600

 

エッジマンは手に付いている鎌を王座に座っているなのはさんに振り下ろすが、斬った感触は無かっただろう。なんとなのはさんはその攻撃を王座に座ったまま片手で受け止めていた。

 

『王を動かせるとは随分と身の程知らずだ・・・・』

 

なのはさんはエッジマンを鎌ごと持ち上げ十代達のフィールドまで投げ飛ばすと、右手をゆっくりと上げた。

 

『スターダストフォール』

 

次の瞬間辺りの地面が抜き取られ空に浮かされ、その地面がエッジマンを襲い掛かった。

 

十代&翔LP2800→2200

 

「そう簡単には破壊させてくれないか。ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター2 伏せ1 手札2 LP3300

十代&翔  モンスター2 伏せ2 手札0 LP2200

 

「行くわよ、ドロー! 隼人君の伏せカード、手札抹殺を発動。4枚墓地に送り4枚ドロー」

「ターンプレイヤーの俺の手札は0だ」

 

流石明日香、良い引きだ。

 

「なのはの効果。墓地のレイジングハート・エクシードを装備」

 

なのはA2500→4000

 

「そして夜天の将シグナムを召喚。効果でミッドチルダに一つLCが乗る」

 

A1800・D1400

LCミッドチルダ1→2

 

「バトル! シグナムでクレイマンを攻撃。攻撃宣言時LCを一つ取り除いて攻撃力500アップさせるわ」

『シュランゲバイセン!』

 

LCミッドチルダ2→1

A1800→2300 VS D2000

 

蛇のような剣がクレイマンを襲った。クレイマンはその堅い体で前から来たレヴァンティンの刀身を防ぐが、刀身が後ろに回り込まれ防ぐ事ができなかった。

 

「なのはでスーパービークロイド―ジャンボドリルを攻撃!」

「え? 攻撃力の低いモンスターで攻撃?」

「翔、油断するな。おそらく明日香の手札には」

「その通りよ、速攻魔法A,C,Sを発動。レイジングハート・エクシードを装備したモンスターの攻撃力を2000アップ!」

 

なのはA4000→6000 VS A6000

 

「なるほどッス! でもこの瞬間を待っていたんッスよ! スーパーチャージを二枚発動!」

「ス、スーパーチャージ!? た、確かにタッグデュエルでは使いにくいが、翔のデッキなら余裕で複数枚入る!」

「蒼穹の王・高町なのはの効果でジャンボドリルだけが破壊されてしまうッスが、四枚ドローさせてもらうッス!」

 

ッツ、この状況で4枚引かれたか。まずい、次のドローを入れて5枚。ここに来てそのカードとは・・・・。

 

「なのはの効果でレイジングハート・エクシードを除外して破壊を無効にするわ」

 

なのはA6000→4500

 

「ビーストライカーでダイレクトアタック!」

 

A1850

LP2200→350

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズA,C,Sの効果でミッドチルダにこのターン破壊したモンスターの数だけLCを置くわ」

 

LCミッドチルダ1→3

 

場 ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター3 伏せ2 手札0 LP3300

十代&翔  モンスター0 伏せ0 手札4 LP350

 

確かに場では俺達の方が圧倒的、だが翔の手札は次のドローで五枚。さあ、この伏せを破ってどう攻撃してくる!?

 

「僕のターン、ドロー! アニキのモンスター借りるよ。死者蘇生でバブルマンを特殊召喚! 効果で二枚ドロー!」 

 

注意、翔は前のターン手札は0でした。死者蘇生しか制限カードを使っていません。

 

「浅すぎた墓穴発動。ドリルロイドをセット!」

「ック、キング・オブ・ビーストをセット!」

 

「そしてとバブルマンを生贄にして、ドリルロイドを生贄にアーマーロイドガイデンゴーを召喚!」

 

A2700・D2000

 

出てきたのは今までのロイドとは少し違う、機械と言うよりロボットのロイド。白と赤がメインで、俺も初めて見たカードだ。

 

「アーマーロイドガイデンゴーの効果。ロイドを生贄に召喚したときフィールドの魔法・罠を全て除外する」

「なんだって!?」「なんですって!?」

「明日香、チェーンして発動だ」

「ええ、チェーンしてフィジカルヒール発動! LS一体を選択してそのモンスターのレベル×400ライフを回復するわ! 対象にするのはレベル10のなのは!」

 

LP3300→7200

 

俺達の伏せカードはアーマーロイドガイデンゴーによってあっさりと除外されてしまった。伏せていたもう一枚は攻撃を無効にするクラールゲホイル。

 

「そして融合回収を発動! アニキが使った融合とスパークマンを手札に加え、融合発動! 手札のスパークマンとユーフォロイドを融合! 現れろ、ユーフォロイド・ファイター! このモンスターの攻撃力は融合素材の合計になる」

 

A2800・D2800

 

「バトル! ユーフォロイド・ファイターで夜天の将シグナムに攻撃! 攻撃宣言時リミッター解除発動!」

 

ユーフォロイドA2800→5600

ガイデンゴーA2700→5400

 

A5600 VS A1800

 

ユーフォロイドのコアらしき部分から巨大なエネルギー弾が発射され、シグナムさんを破壊した。

 

遊斗&隼人LP7200→3400

 

「これで終わりッス! アーマーロイドガイデンゴーでビーストライカーを攻撃!」

 

A5400 VS 1850

 

「負けか・・・・」

 

ガイデンゴーの両肩部分から大量のミサイルを発射させ、ビーストライカーを中心にミサイルを爆発させた。

 

LP3400→-150

 

「か、勝った・・・・?」

「やったじゃねえか翔! 遊斗と隼人に勝ったぜ!」

「やった、あの遊斗君に勝ったッスー!」

 

十代と翔はハイタッチをして喜びあい、ワイワイと盛り上がっている。隼人もその中に入り、一緒に喜んでいた。

 

「・・・・遊斗、デュエリストはいつも本気じゃなかったの? あの手札抹殺を使う前の手札」

「・・・・別に、レイジングハート以外の装備魔法を墓地に送りたかっただけだ」

「そう、ならいいけど」

「まっ、次翔とやる時は完膚なきまでに叩きのめす。調子に乗るにはまだまだレベルが低いからな」

 

俺の言葉に明日香はクスッと笑うと、車椅子を持って十代達の方へ向かった。

 

「でも、デュエルを楽しめたのは褒めるべきよね?」

「そうだな」

 

 




フィジカルヒール 通常罠
フィールドに表側表示で存在する「LS」と名のついたモンスター一体を選択して発動する。自分は選択したモンスターのレベル×400ポイントライフを回復する。




今回のオリカはこの一枚です。オリカの地盤も固まってきたので新オリカの登場は少なくなっていくと思います。
フィジカルヒールの説明は効果のままなので、今回は蒼穹の王・高町なのはを紹介します。
LS蒼穹(そうきゅう)の王・高町なのは 星10/風/魔法使い/A2500・D2500
このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上の「AOA高町なのは」1体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。このカードが特殊召喚に成功した時、自分のデッキから一枚選択して墓地に送る事ができる。また1ターンに1度、墓地に存在する装備魔法を装備条件を無視してこのカードに装備することができる。
装備魔法カードを装備したこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードに装備された装備魔法カード1枚をゲームから除外する事ができる。


パワーツールドラゴンに似た効果。ただ手札の装備条件を満たしていないカードは装備できなく、装備カードが沢山あるデッキでは無いと毎ターン装備は厳しい。ただこのカードは”墓地に存在する”としか書いていないので相手の墓地の装備カードも使えるのが強み。

ディアーチェより偉そう



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第十一話

またですがオリカの募集をします。今回も私の発想力不足です。

今回募集するのは攻撃反応型の魔法・罠です。今あるのが
設置型バインド
鋼の軛 (フリチェ)
クラールゲホイル
ACS (なのは専用)
バルディッシュ・スピードローラー(フェイト専用)
フォーメーションチェンジ

と、実質4つとちょっとレパートリーが少ないです。
ですので攻撃を止めたり、攻撃をさせなかったりする魔法・罠を募集します。



最近体調不良で、ストックが無くなったら更新が遅れるかもしれません。


追伸)紅の鉄騎ヴィータの効果を間違えていました。破壊されたとき夜天の騎士ヴィータを特殊召喚する効果は「ヴィータ」と名のつくカードを特殊召喚する効果にするはずでしたが間違えていました。申し訳ありません。


十代達とタッグデュエルをしてから翌日。

俺はあれから体調管理も兼ねてすぐにブルー寮に戻ったが、どうやらあの後十代達は亮さんと合ったらしい。あの時は無我夢中でデュエルをしていた翔は明日の事を思い出し再び落ち込んでいたらしい。その話を聞いて俺はおいおいと呆れたが、その後亮さんに合った十代は、亮さんとデュエルしてその熱意を翔に伝える事にし成功。

結果は十代の負けだったらしいが、かなりいい線行っていたらしい。

因みにその話を聞かせてくれた亮さん曰く、十代の可能性は無限大、らしい。

 

まあ俺が帰った後にそんな事があったらしい。そして今俺は昨日と同じように明日香に車椅子を押してもらっている。う~ん、女の子にこんな事してもらうのは申し訳ないな。明日香曰く「私も校則を破ったのに何もやらないのはおかしい」と言う事らしいが、ミスデュエルアカデミアにもなった明日香に世話してもらっている俺は、周りの男子から睨まれている。

ハァ・・・・、明日香は俺じゃなくて十代に好意を持ってると思うんだが。

 

「それで~ワ、制裁デュエルを始めるノ~ネ。そしてシニョ~ル達の相手はこのお二人ナノ~ネ」

「我らは流浪の番人」

「迷宮兄弟!」

 

全く同じ顔に「迷」と「宮」という漢字が額に書かれていた。あの年にもなってあんな恰好恥ずかしくないのか? まあツッコミを入れても仕方が無い。

 

「迷宮兄弟ってあのキングオブデュエリストとも戦った事のある!?」

「最初の」

「相手は」

「「どっちだ!」」

 

ええい、一々区切るんじゃない。分かりにくいだろ。しかしこのシンクロ率、タッグデュエルになると辛くなるかもしれない。

十代は自分からやりたいと言いだし、翔と隼人はキングオブデュエリストと戦った事があると聞いて脅えている。

 

「十代、じゃんけんで勝った方からな」

「おう!」

 

 

 

 

「フォーチュン・テンペスト!」

 

結局俺はじゃんけんで負け、後からやることになった。

そして長く続き、接戦したタッグデュエルは、パワー・ボンドによって融合召喚されたユーフォロイド・ファイターによって終止符を打たれた。見事十代達の勝利となり、二人はお咎めなし。

 

「やった、やったッスー!」

「次は遊斗と隼人だな。頑張れよ!」

「ああ、分かってる。行くぞ、隼人」

「りょ、了解なんだな」

 

緊張しているな隼人・・・・。退学が掛かっているから当然か。確かに俺もこのデュエルで負けて退学になったらと思うと緊張するが、負けた事を考えないのがデュエリスト。緊張よりもワクワクの方が大きい。

 

「さっきのマグレだ」

「次こそは勝つ」

「さあ、行くぞ!」

「「「「デュエル!」」」」

「先攻は俺から。ドロー!」

 

昨日の教訓を活かして俺達は二人で役割を決めた。自分で言うのも何だがアドバンテージを稼ぐ事が得意な俺が防御、獣族独特の方法で素早く上級モンスターを展開事が得意な隼人が攻撃。

だがさっきの戦いを見る限り相手は最上級モンスター一体に絞って戦うデッキ。俺も出せる時は最上級を出しておきたい。

 

「行くぞ、明日香」

「ええ! 手札からフィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。そして高町なのはを召喚。効果でLCが一つずつ乗る!」

 

A500・D1800

LCミッドチルダ0→1 なのは1

 

「出た! 遊斗君のエンジンッス!」

「ああ、遊斗最高の出だしだ!」

「そしてミッドチルダの効果でなのはのLCをミッドチルダに移動。そしてミッドチルダのLCを取り除きデッキからユーノ特殊召喚!」

 

LCミッドチルダ1→2→1 なのは0→1

 

「場のなのはとユーノを融合! 現れろ、AOA高町なのは! 効果でデッキからスバル・ナカジマを手札に加えるわ。カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

A1000・D3000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ2 手札3 LP8000

 

「むむ、妙な召喚を」

「一ターン目から上級モンスターとは、だが攻撃力は1000。カイザー・シーホース召喚」

 

A1700・D1650

 

ふむ、攻撃力1700。まあ越されるのは計算通りだ。問題はここでスバルを使うかだが、ここがタッグデュエルの難しい所になる。

伏せは発動条件を満たしていたらいつでも使えるが、手札から発動する場合、ターンプレイヤーしか手札から発動できない。そのターンプレイヤーは簡単に言うと、前のターンにプレイしたプレイヤーの事だ。

例えばA・BチームとC・Dチームがあったとする。A→C→B→Dの順番でターンが回るとしたら、Cのターンで手札から発動できるのは前にプレイしたA。BのターンならC。DのターンならB。

という感じだ。

 

「スバルを使うぞ」

「ええ」

「カイザー・シーホースで攻撃!」

 

A1700 VS A1000

 

「ダメージステップに手札のスバルを捨てる事により、なのはの攻撃力を1000上げる!」

「「なんだと!?」」

 

なのはA1000→2000 VS A1700

 

『アクセル・シュート!』

 

スバルさんの機動力によって混乱したカイザー・シーホースに、なのはさんは魔力弾の弾幕を作ってカイザー・シーホースに射出した。そんな攻撃を回避する事など出来ず、カイザー・シーホースは破壊された。

 

迷宮兄弟LP8000→7700

 

「おのれっ。カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ2 手札2 LP8000

迷宮兄弟  モンスター0 伏せ2 手札3 LP7700

 

「俺のターンなんだな、ドロー! よしっ、レスキューキャットを召喚! このカードの効果でラッコアラとモジャを特殊召喚するんだな!」

 

A1200・D100

A100・D100

 

レスキューキャットは首に掲げたサイレンを鳴らすと自分は消え、代わりに二体のモンスターを呼びだした。このカードって強いっちゃ強いけど、デメリットが辛いよな。もう少し何かあればかなり強いカードになるだろうけど、今の所隼人みたいな獣族デッキぐらいしか使えなさそう。

 

「そしてモジャを生贄に手札からキング・オブ・ビーストを特殊召喚」

 

A2500・D800

 

「そしてラッコアラの効果でキング・オブ・ビーストの攻撃力を1000上げる」

 

ビーストA2500→3500

 

「凄いわ隼人君! 聞いてた話とは全然違う」

「あ、あの留年生~があんなプレイング~を!」

 

明日香もクロノス先生も隼人のプレイングに驚いた様だ。昨日のデッキを組む時に色々と教えた結果が出たかな。レスキューキャットは十代が持っていたんだっけ?

 

「AOA高町なのはを守備表示にしてバトルなんだな! ラッコアラで攻撃!」

「甘い、カウンター罠、攻撃の無力化を発動! バトルを強制終了」

二重召喚(デュアルサモン)を発動、ラッコアラとキング・オブ・ビーストを生贄に百獣王(アニマルキング)ベヒーモスを召喚。効果でモジャとレスキューキャットを手札に加えるんだな」

 

A2700・D1500

 

この回り方は凄い! 本当に少し軸を変えるだけでここまで回せるのか。隼人お気に入りのあのカードは入れたままなのに、凄い回り方で、上級者のプレイングだ。

 

「俺はこれでターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター2 伏せ2 手札4

迷宮兄弟  モンスター1 伏せ1 手札3

 

「ドロー! 弟よ、伏せを使わせてもらうぞ」

「ああ、兄者の為に伏せたんだ」

 

ふむ、どうやら先攻が弟で後攻が兄か。しかし額以外はそっくりだから分からないものだ。しかも結構離れているからどっちの額に何が書いてあるのかが分かりにくい。

 

「リビングデッドの呼び声発動。カイザー・シーホースを特殊召喚。そして生贄に雷魔神―サンガを召喚!」

 

A2600・D2200

 

現れたのは三魔神の中でも名前的に浮いているサンガ。確か英語版のテキストだとスーガがSuijinでヒューガがKazejinサンガがThunderと、仲間外れにされている。しかも今は雷族にRai-jinってモンスターが別にいる。

まあそんなどうでもいい。問題はこの布陣を相手がどう攻めて来るかだ。

 

「魔霧雨を発動! サンガの攻撃力以下の守備力を持つモンスターを破壊。ベヒーモスを破壊!」

 

突然現れた霧がベヒーモスを包み込み、その中にある大量の水分がサンガの雷を通し、ベヒーモスを破壊した。

う、う~ん、確かにベヒーモスを破壊されたけど、そのカードってどうなの? もっと装備カードとか、一ターン待つとか無かったのか? 

 

「魔霧雨を発動したターン攻撃できない。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ2 手札4 LP8000

迷宮兄弟  モンスター1 伏せ3 手札2 LP7700

 

・・・・この人達本当にあのキングオブデュエリストと戦ったのか? ま、まだ一ターン目。後々攻めて来るのだろう。それにサンガの効果は攻撃モンスターの攻撃力を0にする。

 

「行くわよ、ドロー! どうする、遊斗?」

 

ツヴァイかヴィータさんがいたらセットを二枚破壊出来たんだが、そう上手くいかない。ここは大人しくアドバンテージを稼いでいくか。

 

「了解、なのはの効果でツヴァイを手札に加え、守備表示に戻す。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ3 手札3 LP8000

迷宮兄弟  モンスター1 伏せ3 手札2 LP7700

 

「私のターン、ドロー! リビングデッドの呼び声を発動しカイザー・シーホースを召喚。伏せカード生贄人形発動。カイザー・シーホースを生贄に水魔神―スーガ召喚!」

 

A2500・D2400

 

二体目の魔神か。流石専用デッキだけあり、並ぶのが早い。十代達の時に関しては一巡目で呼んだからむしろ遅いのか?

 

「そして手札抹殺を発動。車椅子の少年と俺の手札を交換する」

 

さっき手札に加えたツヴァイは墓地に送られてしまったけど、伏せ的にも結果オーライだ。因みに手札を交換するのはターンプレイヤー同士だけだ。

 

「死者蘇生発動、風魔神―ヒューガ特殊召喚!」

 

A2400・D2200

 

「三体揃ったわね」

「来るか、あのモンスターが」

「三体の魔神を生贄にゲート・ガーディアンを特殊召喚」

 

A3750・D3400

 

やっぱりメチャクチャ早いな。三魔神はそれぞれ丸くなったり手足をひっこめたりして形を変え、一つの巨人へと合体した。それにしても俺はこの学校に来てよく合体カードを見るな。

攻撃力3750のレベル11の最上級モンスター。しかしその召喚の難しさと、三魔神のレア度の高さにより中々見れる事ができないモンスターだ。この目で見て思ったのは、ダサいの一言。

 

「バトル! ゲート・ガーディアンでAOA高町なのはに攻撃! 魔神衝撃波!」

 

A3750 VS D3000

 

「ック、なのはが破壊された時Asの収集を発動。モンスターが破壊された時デッキからレベル5以下のLSを特殊召喚する。夜天の騎士ヴィータを攻撃表示で召喚する!」

 

A1900・D1200

 

流石召喚条件が厳しいだけはある。なのはさんが戦闘破壊で破壊されたのは久々だ。

 

「これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ2 手札4 LP8000

迷宮兄弟  モンスター1 伏せ2 手札0 LP7700

 

「お、俺のターン、ドロー。うっ、モジャを守備表示で召喚して夜天の騎士ヴィータを守備に変更するんだな」

 

やっぱりあそこまで攻撃力が高いと突破するのが難しいな。俺もヴィータさんが俺のターンまでこのカードを使わずに生き残って貰わないと突破は辛い。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター2 伏せ2 手札4 LP8000

迷宮兄弟  モンスター1 伏せ2 手札0 LP7700

 

「やはり我らがゲート・ガーディアンは最強にして無敵! ドロー! 装備魔法ビッグバン・シュートを発動! 攻撃力が400ポイントアップし貫通効果を得る!」

 

ガーディアンA3750→4150

 

破壊できない俺が言うのもなんだが、ビッグバン・シュートのデメリットで除外されたらどうするつもりなんだ?

 

「バトルゲート・ガーディアンでモジャを攻撃! 魔神衝撃波!」

 

A4150 VS D100

 

「どうするの遊斗!?」

「どうるすもこうするもどうしようもないだろう! 受けるっきゃない!」

 

遊斗&隼人LP8000→3950

 

一気にライフが半分削られてしまった。ソリッドビジョンなのにゲート・ガーディアンが出す風は強く、そのオーラの強さを改めて実感した。

 

「モ、モジャの効果なんだな。破壊された時デッキからレベル4以下の獣を手札に加える。デス・カンガルーを手札に加えるんだな」

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター1 伏せ2 手札4 LP3950

迷宮兄弟  モンスター1 伏せ4 手札1 LP7700

 

「ハッハッハ! ゲート・ガーディアンの前ではどんなモンスターでも無力。大人しくサレンダーするんだな!」

「ご忠告どうも、行くぞ」

「ええ、ドロー! まずは罠、Strikersの回収を発動。墓地の高町なのは、ザフィーラ、スバルをデッキに戻して二枚ドロー」

 

よしっ、この局面でティアナさんを引いたのは強い。今回は王様のなのはさんの出番じゃないけど、

ティアナさんは他にも使い方がある。

 

「ティアナを通常召喚。ミッドチルダの効果でLCが一つ乗る」

 

LCミッドチルダ1→2

 

「ティアナの効果で墓地のツヴァイを除外、効果でツヴァイのトークンを特殊召喚!」

 

LCミッドチルダ2→1

A0・D0

 

「攻撃力0のモンスターで何ができる!」

 

ステータスに目を取られていたら足元をすくわれるぜ。遊戯王はどんなに弱くて効果が無くても、その名前がある限り活躍できるモンスターは沢山いる。

 

「場のヴィータとツヴァイを融合! 出でよ、祝福の騎士ヴィータ! 効果でセットされたカードを破壊するわ!」

「なんだと!?」

『コメートフリーゲン!』

 

ヴィータさんは自身の頭よりもでかい巨大な鉄球に自らの真紅の魔力を纏わせ、グラーフアイゼンで思いっきり叩いた。鉄球は伏せられた聖なるバリア―ミラーフォース・・・・あのさ、一昨日と言いブルー寮の生徒とのデュエルといい、ミラーフォースって発動される時あるの? もういっそ破壊されるのを読んでブラフにするのはどうだろう。

 

「そして祝福の騎士ヴィータを生贄に、紅の鉄騎ヴィータ!」

 

LS紅の鉄騎ヴィータ ☆9/地/魔法使い/3000・D2800

 

明日香がデュエルディスクにセットした瞬間、昨日と同じように物凄い衝撃が彼女を襲った。もう予想していたのか彼女はなんとか踏ん張りその衝撃から耐えた。

フィールドを見ると、カードから赤い真紅の光が現れていた。その光が徐々に収まると、そこには今までの小さいヴィータさんはおらず、成長したヴィータさんの姿。スラッとした手足、シグナムさんやフェイトさんまではないが膨らんだ胸、今まで被っていた帽子はなく、代わりに彼女が好きな呪いウサギの髪飾りをしている。

彼女の騎士甲冑は子供の頃とほぼ変わってはいないが、スタイルがよくなった所為かまるで別の洋服に見える。

 

「ッフ、登場が派手な割には攻撃力3000か」

「笑っていられるのも今の内だ。明日香、バトルだ!」

「え? こっちの攻撃力は3000なのよ?」

「いいから! バトル!」

「分かったわよ! ヴィータでゲート・ガーディアンを攻撃!」

「この瞬間罠発動、プロテクション! このターンLSは戦闘では戦闘及び効果では破壊されない! ほら、さっさと発動する」

 

明日香は俺の意図が分からないのか言われるがままにデュエルディスクのボタンを押す。

 

A3000 VS A4150

 

「迎え討て、魔神衝撃波!」

『ラケーテンハンマー!』

 

ヴィータさんはグラーフアイゼンを力一杯持ち、魔力噴射による加速で威力を高められたグラーフアイゼンをゲート・ガーディアンに叩きつけた。だがゲート・ガーディアンの力は圧倒的。ヴィータさんは攻撃を止められ、放たれた衝撃波に吹き飛ばされてしまった。

 

遊斗&隼人LP3950→2800

 

「ゆ、遊斗何してるんだな!?」

「そうよ「ヴィータの効果発動!」え?」

「このカードが戦闘で相手モンスターを破壊できなかった時、墓地の祝福の騎士ヴィータを除外する事で、破壊できなかったモンスターの攻撃力を除外したヴィータの攻撃力分下げ、もう一度攻撃する!」

『リミットブレイク!』

 

ガシャンガシャンガシャン、とグラーフアイゼンは巨大なハンマーになり、前にはドリル後ろにはブーストが付いた巨大な鉄鎚となった。ギガントフォルムの威力とラケーテンフォルムの長さの長所が合体したモード。更にそれでは終らず、いくつもの小さな鉄球を早打ちでゲート・ガーディアンに打ち込む。

 

A3000 VS A4150→1550

 

「「馬鹿な!?」」

『ツェアシュテールンクスハンマー!』

 

巨大なドリルがゲート・ガーディアンを脳天を叩きつけ、一番上にいるサンガをブチ壊す。だが一体の魔神が壊れるだけではヴィータさんの最終技は止められない。真ん中のフーガも頑張ってドリルの攻撃を耐えようとするが破壊され、一番下のスーガはハンマーの重さに耐えきれず地面に埋まり破壊された。

 

迷宮兄弟LP7700→6250

 

「ば、馬鹿な・・・・」

「我らのゲート・ガーディアンが二回も破壊されるなど・・・・」

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター2 伏せ2 手札2 LP2800

迷宮兄弟  モンスター0 伏せ1 手札1 LP6250

 

次は手札が0の迷宮兄弟、弟。場が発動済みリビングデッドだけの状態で何を引くか。まっ、ゲート・ガーディアンデッキを回すデッキだから、そんな都合のいいカードを引くわけ・・・・。

 

「ドロー! ライフを半分払いダーク・エレメント発動! 墓地のゲート・ガーディアンを除外して闇の守護神―ダーク・ガーディアンを召喚!」

 

LP6250→3125

A3800・D3700

 

・・・・うそだ~。ライフ半分で最上級なんて嘘だ~。ぶっちゃけ愚かな埋葬とかで墓地に送ってそのカード発動すればよくね? 攻撃力3800か、せっかくライフまで使って倒したのにあっという間にこいつかよ。

 

「ハッハッハ! 確かに」

「我らがゲート・ガーディアンを倒したのは」

「褒めてやる!」

「だが我らの本当の切り札は」

「「こいつだ!」」

 

ええい! だから一々区切ってやるな! 凄く聞き取り辛くてどっちに返事していいのか分からん!

 

「バトル! ダーク・ガーディアンでティアナを攻撃!」

「そうはさせない! ヴィータの効果を発動! 攻撃対象をヴィータに変更する事ができる! 更にヴィータの効果にチェーンして速攻魔法Asの回収とフェイクシルエットを発動!

Asの回収の効果で除外された祝福の騎士ヴィータとツヴァイを墓地に送り一枚ドロー。そしてフェイクシルエットの効果でデッキから八神はやてを墓地に送りエンドフェイズまでティアナを八神はやてとして扱う」

 

明日香はアタフタしながら俺の言った通りに二枚の伏せを発動させた。引いたカードはスバルさんじゃなかったのでこの戦闘を回避する事はできない。

 

「「ダーク・ショックウェーブ!」」

 

A3800 VS A3000

遊斗&隼人LP2800→2000

 

「ック、戦闘で破壊されたヴィータの効果発動。フィールドにはやてがいる時、墓地から祝福の騎士ヴィータを特殊召喚する事ができる!」

『ッチ、次が遊斗のターンならな!』

 

A2600・D2500

 

そう、とりあえず二枚のカードを使ってヴィータさんを復活させたが次は隼人のターン。ヴィータさんを活かすカードは持っていないので、今のヴィータさんは壁にしかならない。

 

「ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&隼人 モンスター2 伏せ0 手札3 LP2000

迷宮兄弟  モンスター1 伏せ1 手札0 LP3125

 

「お、俺の・・・・」

「頑張りなさい隼人君! 遊斗がここまで持って来てくれたのよ! それに本来なら攻めはあなたの役目! それを忘れないで!」

「そ、そうなんだな。守りは遊斗に任せて、俺はっ! ドロー、融合発動! 手札のビッグ・コアラとデス・カンガルーを融合! 来るんだな。マスター・オブ・OZ」

 

A4200・D3700

 

融合の渦から現れたのは、ビッグ・コアラが更にでっかくなりデス・カンガルーが持っていたボクシンググローブを構えたモンスター。その大きさはダーク・ガーディアンを軽々と越える。ヴィータさんの百数倍ってところ。いや、もっと大きいかもしれない。

効果がないがその攻撃力はダーク・ガーディアンの攻撃を上回る。

 

「「攻撃力4200!? だが闇の守護神―ダーク・ガーディアンは戦闘では破壊されない!」」

「じゃあLPを0にするまでなんだな! 速攻魔法野性解放を発動、マスター・オブ・OZの攻撃力を守備力分アップさせる!」

 

OZA4200→7900

 

「「攻撃力7900!?」」

「バトル、マスター・オブ・OZでダーク・ガーディアンを攻撃! エアーズ・ロッキー!」

 

A7900 VS A3800

 

マスター・オブ・OZは野性解放の効果を受け一段と大きくなり、ダーク・ガーディアンの数倍の大きさになった。そこから繰り出される拳はとてつもなく重く、攻撃力が3800もあるダーク・ガーディアンがプチっと虫のように潰された。

そして戦闘ダメージが衝撃となり迷宮兄弟を襲った。

 

「「嘘だあああああああ!」」

 

迷宮兄弟LP3215→-975

 

-975、凄く微妙な数値だな。制裁デュエルに勝って一番初めに思った事がコレだ。

 

「や、やったんだなー!」

「よっしゃー! これでお咎め無しだ!」

「やったわねみんな!」

「良かったッス、退学にならなくてホントに良かったッス!」

 

ハ、ハァ・・・・。やべえ、緊張の糸が一気に切れた。楽しくデュエルできたのは事実だが、やっぱり退学を掛けたデュエルだ。自分でも気付かない内に緊張してたんだろう。

俺も翔と隼人の事馬鹿に出来ないな・・・・、十代をもっと見習わなければ。

 

『ふふっ、お疲れ様、遊斗』

『隼人君に非があるわけやないけど、やっぱり一人のが全力出せるやろ?』

「で、ですね・・・・」

「お~い! 遊斗も来いよ~!」

「そっちに行こうと思ってもいけないんだ~」

 

ったく十代は相変わらずだな。でもホント、誰も退学にならなくてよかった・・・・。

クロノス先生が悔しそうにハンカチを噛みしめているが、校長先生に睨まれた途端大人しくなった姿を見て、俺はクスッと笑った。

 

 




Asの回収 速攻魔法
除外されている「LS」と名のつくモンスター、もしくは「LS」と名のつくモンスターの効果によって除外されたカードを2枚選択して発動する。選択したカードを墓地に送り、自分のデッキから1枚ドローする。

フェイクシルエット 速攻魔法
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
デッキから「LS」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る。
選択した自分のモンスターはエンドフェイズ時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。
また、墓地に「ティアナ・ランスター」がいる場合このカードと「ティアナ・ランスター」をゲームから除外することで、このターン相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。

(効果変更)変更点だけ乗せてます

紅の鉄騎ヴィータ ☆9/地/魔法使い/3000・D2800
このカードが破壊され墓地に送られた時、自分フィールド上に「八神はやて」または「高町なのは」と名のつくモンスターが存在する場合、墓地の「ヴィータ」と名のつくカードを自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る。







今回は二つの新オリカ。二つしかないので両方紹介していこうと思います。
まずAsの回収。注目すべき点はLSモンスターの効果で除外されたカード。つまり王様なのはさんの効果で除外した装備魔法を戻せる事が出来ます。条件ありとは言え速攻魔法に一枚ドローは強力。

二つ目はフェイクシルエット。効果と名前が若干違いますが・・・・。
メインの効果はヒーロー・マスクと同じ。ただヴィータの効果もあったので速攻魔法にしました。自分で書いておきながら結構使い勝手が良く、例えば違うモンスターをなのは、フェイトにしてデッキからユーノかアルフを特殊召喚したり、はやてにしてヴォルケンリッターを特殊召喚したり。
二つ目の効果は、せっかくのフェイクシルエットだからです。いつかは使いますが使い勝手はかなり微妙。




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第十二話

前回のオリカ募集で沢山の案を頂きました。これで防御手段に困る事はなったと思います。
本当にありがとうございました。


そして連続ですが今回もオリカ募集をしたいと思います。
これは私の発想力不足というわけではなく、お気に入り件数200突破記念です。本当は100突破の時にやろうと思っていたのですが、いつの間にか100より200に近かったので、今しました。
本来なら続けてオリカ募集はしたくなかったのですが、今やらないとタイミングを逃すので今回にします。不快に思われる方、申し訳ありません。

今回募集するキャラはこの三人。
ヴィヴィオ
アインハルト
イクスヴェリア
です。

それである程度はこちらで決めさせていただきます。
融合)聖王ヴィヴィオ   ☆7/光 /魔法使い/攻 未定 守 未定
融合)覇王アインハルト  ☆7/未定/魔法使い/攻 未定 守 未定
融合)冥王イクスヴェリア ☆7/闇 /魔法使い/攻 未定 守 未定

募集するのは融合素材前のモンスター、融合素材の組み合わせ、融合モンスターの効果です。
それで融合後の効果の条件なのですがちょっと癖のある効果にしたいと思います。
「エンドフェイズこのカードを融合デッキに戻し、自身以外の聖王、覇王、冥王と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する」
です。



もしお暇であれば考えてくれると嬉しいです。


何だかんだでデュエルアカデミアに入ってもう数カ月が経った。秋から学校が始まるデュエルアカデミアはクリスマス一色。冬休み前にクリスマスパーティーをワイワイやった後、みんな家に帰って行った。

変態とは言え俺も父親の事は心配だし、家に帰りたい気持ちもチョッピリだがあるし、家に帰る事にした。十代、翔、隼人は仲良くデュエルアカデミアで年を越す様だ。せっかくなのでみんなを招待したかったが、何しろ父親があの通り変態なので会わせたくないのだ。凄く三沢が父さんに会いたいと迫ってきたが、実験材料にされるかもしれないので却下。

そして今、育った町に足を降ろし、思いっきり背伸びをしている。

 

「ん~、この街も久しぶりだな」

『あっ、遊斗。あそこのケーキ屋でケーキ買おうよ』

「俺はなのはさんが作るケーキの方が食べたいです。手伝いますから」

『じゃあ材料買いにスーパー行こ』

 

そう言ってなのはさんは俺の手を掴み引っ張ってくる。ちょちょっ、なのはさんはよくても俺は普通の人間ですからね。傍から見たら何もない所に手を引っ張られてる男にしか見えないんですから。

 

「了解。というかやたらと注目されてません?」

『ん、そうかな? あっ、遊斗~。やっぱりチョコだけでも買って~』

「ハァ、全員分買わないといけないから安いのですよ」

 

独り言をしていると思われない様に繋がってない携帯電話をそのままポケットに入れ、なのはさんが指差すスイーツ店に入った。

 

 

 

 

「う~ん、やっぱり注目されてた気がするんだが・・・・」

 

スイーツ店でもスーパーでもやっぱり注目された気がする。おかしいな、今はあの趣味の悪いブルー寮の制服を着ている訳でもないし、独り言は極力避けてたし。

 

『気の所為だよ。チョコレートありがとね、遊斗』

 

なのはさんはクスッと笑って俺の頬に唇を落とした。絶対今俺にやけている、そう実感したのでゴホゴホと嘘の咳をして口元に手を抑える。

こういう時にそんな事しないで下さい! と込めてなのはさんを睨むと、えへへっと小悪魔っぽく笑った。ああ・・・・ヤバイな、本気で可愛いよこの人。

 

「ホント、精霊じゃなかったら・・・・。まっ、その時はフェイトさんとイチャイチャしてるのかな。今もそうだけど」

『遊斗! 早く早く!』

 

家の前でなのはさんが手をブンブンと振って俺の名前を呼んだ。俺の精霊になってもうすぐ10年経っているから、活動した年月はもう29年じゃないのか? って女性の年齢を考えるのは失礼ってシャマ姉が言ってたな。止めだ止め。なのはさんは永遠の19歳だ。

 

「ジェイル父さ~ん。帰ってきたぞ~」

 

イタズラかと思われん勢いで、インターホンを連打しながら父さんの名を呼ぶ俺。傍から見たらイタズラか追い出された子供みたいだが、こうしないと扉が開かない。詳しい人なら分かると思うが、このインターホンを押す間隔はとある信号で、その信号で暗証番号を打つと扉が開かれる仕組みになっている。

カチッ

 

「やっと開いたか。ったく、どうして鍵を作らないんだ鍵を」

『大事な資料とか取られたくないんだよ。それに元々博士って引き篭もりだし』

 

絶対後者だな。あの色白ガリガリ男らしい。

家に入ると真っ先に父さんの研究室に向かい、返事は無いだろうが一応ノックをした。コンコンと音が鳴り一秒、二秒・・・・十秒待ってやったぞ。

 

「父さん、ノックの返事ぐらいしろ! というかインターホンに出ろ! って何だこの匂い!?」

 

研究室に入った途端、甘ったるくて吐き気がする匂いが鼻に入ってきた。椅子に座り、机の上にある何かを研究していた父さんは、こっちをチラリとだけ見てまた机の上に視線を戻した。

 

「遊斗か、それになのは君も。ふむ、お前が帰ってくる時間には上にいたんだが、予想以上に来るのが遅かったな」

 

ガスマスクを被っている為声が籠っており、若干聞き取り辛い。

 

「・・・・因みに何分ぐらい上にいた?」

「何を言っているんだい? 君がメールで言っていた4時00分から一分だよ」

「あの後に“ぐらい”って書いてあっただろ・・・・。息子への優しい出迎えと研究のどっちが大事なんだ?」

「研究」

 

普段は妙にズレた答えや遠回しに答える父さんだが、俺の質問からコンマ一秒で答えた。分かってますよ、今さら父さんに父親らしい事期待してない・・・・って。

 

「ちょっと待てクソ親父! さっきなんて言った!?」

「? 君は凡人から馬鹿に降格したのか? 研究だ」

「違うその前! というか最初の父さんの第一声!」

「遊斗か、それになのは君も。だが?」

 

こ、この野郎・・・・。なに私は当たり前の事言ったぞ、みたいな声出してんだ・・・・。

 

「父さんはなのはさんが見えるのかよ!?」

「当たり前だ」

「ちゃんと俺の目を見て言え! 最初から見えてたのかよ!?」

 

回転する椅子を思いっきり回した後、父さんの目が俺の目を見るように椅子を止めた。父さんは俺の目を真剣にジーと見ながら手を後ろに回して作業をしていた。

 

「遊斗、お前は今まで疑問に思わなかったのかい? あれ程の力を持った精霊達が実体化出来ない事に」

「じ、実体化って、まさか・・・・。じゃ、じゃあ今日やたらと注目されてたのって!」

『私が実体化してたからかな?』

 

・・・・ッハ!? そう言えば最初、この街に来てすぐ、俺って普通になのはさんに手を握られてたな。あ、当たり前の様に握られたので違和感を覚えなかった。

 

「やはり遊斗は馬鹿だったか。私も悲しいよ」

「このやろ「この部屋の空気を吸い過ぎると危険だ」後で絞め殺す!」

 

万丈目達と同レベルの捨て台詞を吐いた俺は、すぐに研究室から出て空気が漏れない様に厳重に扉を閉めた。

 

 

 

 

それから十数分後。取りあえず荷物を片づけて部屋に入った俺は、精霊達を全員正座させていた。ヴィータさんであろうとシグナムさんであろうと例外は無しだ。

 

「で、実体化って何となく意味は分かるけど」

『普通の人間とほぼ同じ状態だね。だから博士みたいに精霊が見えない人でも見えるんだ』

 

やっぱりか。

 

「何で隠していた?」

『ご、ごめんね? ジェイルから口止めされていて。わ、私も遊斗に話した方がって思ってたけど』

『私もテスタロッサに同じだ。実体化しないと打ち合いの練習にならないからな』

『あたしもシグナムとフェイトに同じだ』

 

口を開いたのはフェイトさん、シグナムさん、ヴィータさんの三人。確かにこの三人は俺を騙して喜ぶようなタイプでも無いだろうし。シグナムさんとヴィータさんは若干怪しいけど。

 

「同じ理由でなのは、フェイト、はやて、ユーノ、ザフィーラ、アインス、トーマ、リリィ、エリオ、キャロは抜けて良し」

 

なのは、フェイト、はやての三人娘はビクビクしながら、トーマとリリィとユーノとアインスとエリオとキャロは苦笑し、ザフィーラは無表情で部屋から出て行った。けどそれ以外にも正座を崩した輩が一人いた。

 

『あ~、おおきに~』

「・・・・あなたははやて“さん”ですよね?」

『・・・・そうでした』

「ハァ、アギトにツヴァイにティアナさんは弁解があれば聞くよ」

『『『『『私達は!?』』』』』

 

なのはさん、はやてさん、スバルさん、シャマ姉が揃えて声を上げるが俺は無視した。あの四人は絶対に楽しんでいた人種だ。昔から何かトラブルがあると必ずと言っていいほどこの四人の内の誰かが原因だったし、俺をからかうのもこの四人が多い。

 

『あたしは最初気が引けたけど、あの変態医師に言われたから。まあ特別反対したわけでもねえけど』

『リ、リインも同じ感じです』

「はい、二人は抜けて良し」

『あたしは元々教えようが教えなかろうがどっちでもよかったっていうか』

「ティアナさんも抜けてよし」

 

嘘かもしれないがその時はその時だし、目を見る限り嘘をついているようにも見えなかった。問題児四人は仲間が出て行く毎に不安になってきた様で、ティアナさんが出て行く際、スバルさんは「ティア~」と言って抱きついたが、すぐに捨てられた。その時若干ティアナさんの頬が赤くなっていて、まあ・・・・なんというか可愛かった。取りあえずリア充爆破しろ。

 

「さて、正直に言うと許します。楽しんでましたか?」

『『『『うん』』』』

「さて、さっきのチョコはお預けだな」

『ちょっ!? 待ってや遊斗、それは堪忍!』

『そうだよ。あのお金は~遊斗のだけど』

 

普段はしっかり者のはやてさんは泣きながら足にすがりついてき、スバルさんは考える前に言葉が出たのか途中で言葉を詰まらせる。なのはさんとシャマ姉はシクシク泣きながら抱き合ってるし・・・・ってどんだけこのチョコ食べたいんだよ!?

 

「ハァ、分かりましたよ。その代わり条件があります」

『・・・・エ、エッチなのは駄目だからね?』

「いくら思春期だからってそんな頼みごとしませんよ。ちょっと体触らせてもらうだけです」

 

その瞬間四人の目が一気に冷たくなった。あれ? 俺なんか変な事言ったか? まあどっちにしろこの四人に拒否権はないので俺はスッとスバルさんの前まで来ると、思いっきり頬を抓った。

 

「い、いふぁいいふぁい! ひゅうとひゃめて!」

 

う~ん、本当に生きてる人間みたいだ。頬を伸ばせば伸びるし力を込めると更に痛がっている。頬をツンツンと突くとプニプニとした感覚が指に伝わる。

 

「スバルさん、実体化と精霊化を交互にやって下さい」

『・・・・は~い』

 

次に頬を触ろうとすると指はスッと頬を抜け、また触ろうとするとプニッと頬の感覚があった。・・・・結構面白いかもこれ。

その後も俺は残りの三人の頬で遊び、10年間騙し続けてきた恨みを小さいながらも返した。

 

 

 

 

「父さんは今日飯抜きだから」

 

研究室から出てきた父さんへの第一声がそれだった。これには天才である父さんも流石に予想してなかったのか、しばらくの間考えて口を開いた。

 

「・・・・じゃあはやて君かなのは君にでも頼むとする「あの二人は俺の精霊だから」・・・・どうしたら許してくれる?」

「秘密にしていた理由を話す事」

「それはな。お前が精霊の女の体で」

「はい下ネタ禁止。そんな堅い事父さんが考えるわけないだろ」

 

アギトに変態医師と言われる父さんの事だ。むしろ進めてきそうで怖い。

確かに俺は凡人で父さんは天才(へんたい)だが、それでも親子だ。父さんが何らかの理由があって隠していたぐらい分かる。

 

「そうだな、まずは私がどんな人間だったかについて話そう」

 

父さんはソファーに座り、付いていたテレビの電源を切って小さく口を開いた。あれ、急に真面目な空気になった。

父さんがどんな人間か? ま、まさか本当は変態科学者じゃなくて外でスポーツをする爽やか青年だったとか・・・・ないな。

 

「数多ある次元世界の中心地、ミッドチルダ。新暦75年、そこである事件が起きた」

「はいストップ。次元世界ってなに? 新暦ってなに?」

「・・・・これだから馬鹿は」

「ボソッと言ったつもりだろうが思いっきり聞こえているからな! 飯抜きにするぞ!」

 

飯抜きと聞き父さんはまた真面目な表情に変わり「なのは君達にでも聞け」と結局自分の口から教えてくれなかった。面倒事を押し付けたなこの野郎。

 

「数多の管理世界を統一する管理局。その膨大な力にある男が立ち向かったんだ」

『はいはーい、嘘は駄目やで。次元犯罪者のジェイル・スカリエッティさん』

「は、犯罪者!?」

『そう、この世界で言う警察に似た組織を、この人、ジェイル博士は壊そうとした』

「管理局の破壊はどうでもよかった。私はただこの欲望のままに!」

 

父さんはソファーから立ちあがり、ハッハッハ! と狂ったように笑いだした。うん、この人犯罪者で間違いないな。

 

「じゃあその時この変態を止めたのが、なのはさん達?」

『へ、変態って・・・・』

『そうだよ。はやてが指揮する部隊、機動六課がジェイル一味を逮捕した』

「おや? スカリエッティ一味と言わないのかい?」

『遊斗もスカリエッティの名を持ってるんです』

 

フェイトさんがお仕事モードになっているのか、取り調べしている警察官と犯罪者の様だ。父さんは何が可笑しいのかケラケラ笑っているし、フェイトさんはドンと机を叩くし。

 

「まあ捕まって牢屋に閉じ込められた私だが、ある時次元震が起こったんだ」

「次元震?」

『次元のトラブルみたいなものかな。いきなり別の世界に飛ばされたり、この世界に無い物があったり』

「やはり遊斗は馬鹿か。一度脳の改造をした方が」

 

・・・・始めて聞いた単語で説明されて分かる奴がいたら、それは天才と言うよりもアンタみたいな変態だよ。いい加減俺も我慢の限界なので、血管をピクピクと動かせながらクルッとなのはさんの方を見た。

 

「・・・・なのはさん、今日の父さんの晩飯パンの耳でいいから。タダで貰ってきて」

「ハッハッハ! まあ待て。次元震に巻き込まれた私は突然この世界に来た。牢屋から突然この世界に来たので衣食住何もないし金になるものもない。そんな時に赤ん坊のお前を見つけたんだ」

「俺?」

「ああ、捨てられたお前の上にはカードが置いてあった。それを盗んで売ったら予想以上の金が手に入ってな」

 

あ、赤ん坊からカード盗んだのかよ・・・・。流石テロリストだな。

 

「私の命を助けたお前を放っておくのも目覚めが悪いと思ってね。仕方なく引き取って仕方なく育てた訳だ。仕方なくね」

「て、てめぇ・・・・。因みにそのカードってなんだったんだ?」

「ふむ、確か絵違いのブラック・マジシャンだった」

「よし! 今すぐ一億よこせ! 当時はその数倍だったが特別に一億で許してやる!」

 

ブラマジ売ったんならもっといい家に住める筈だが、この家は普通の一軒家。土地代を入れても、もっといい家を作れる筈だ。と言う事は他の金は生活費とこいつの研究費になったわけだ。

そんなしょうも無い事の為に金が減るぐらいなら今すぐ俺の手元に来た方が、まだ世のため人の為になる。

 

「実体化を止めさせたのは、私が精霊と話をしないためだ」

「話を逸らすな」

「私が精霊が見えないと言い、なのは君達に実体化をさせなかったのは、私達が君の前で話さないようにするためだ。ボロが出てしまうかもしれないからね」

「・・・・父さん」

 

そうか・・・・。父さんは俺が育つまで本当の事をずっと黙ってくれてたんだ。

 

「まあ一番の理由は面白いからなんだが」

「なのはさん、パン屋まで散歩しに行こうか」

 

 

 

 

『ゆ、遊斗・・・・。ホントにパンの耳にするの?』

「なのはさんは優しいんだね。じゃあコーンスープぐらい付けてやろうかな」

 

元犯罪者相手でもなのはさんは優しい。その優しさに俺は感動して“インスタント”コーンスープを出す事に決めた。俺って優しいな。

 

『あはは・・・・。あれ、前にいる子達って遊斗の同級生じゃないっけ?』

 

? ゲッ、あいつらかよ・・・・。小学校中学校とよく俺に絡んできた悪ガキどもだ。よくパン買って来いとか言われて、渡されたお金でパック買ったりしたな。懐かしい。

回り込んで回避しようと思ったが、隣にモデル顔負けの美女がいて大変目立っているので、アッサリと悪ガキグループに見つかった。

 

「おい、スカリエッティじゃねえか」

「うおっ、めっちゃ美人じゃん。まさかお前の彼女?」

 

彼女だったらどれだけ幸せだったか。実体化出来ると知って、ますます恋人になりたくなったよ畜生。

因みになのはさん達は認識障害という魔法を使っていて、デュエルモンスターの「高町なのは」と目の前の「高町なのは」は似ているけど、何の関係もない、と思わせているらしい。

 

「こんな美人で可愛くて料理が出来る女性が俺の彼女だと思う?」

「ハッハ! だよな、こういう人は俺にこそ相応しい」

 

そう言ったのは悪ガキグループのリーダーらしき奴。あっ、こいつもよく覚えている。金髪に染めてたから一瞬分からなかったよ。同じ金髪でも明日香とは月とスッポンだ。

 

「え~と、君は確か、小学校4年の頃に先生の事をママって言った(ほか)君だっけ?」

「っな!? まだそんな事覚えてたのかよ! 気持ち悪い奴だな!」

「今日みたいに絡まれると面倒臭いから覚えていたんだけど」

『にゃはは、まあ男の子にはよくあるから気にしなくてもいいと思うよ。可愛いじゃん』

 

なのはさんにからかわれて真っ赤になった他君は、手に持ったデュエルディスクを構えた。

 

「て、てめえ、今日こそは決着を付けてやる!」

「おっ、デュエルなら誰でも歓迎する」

「待て! 俺等も参加させてもらうぜ」

 

他君の周りにいた二人の取り巻きがデュエルディスクを構えて、下種の笑みを浮かべる。万丈目とその仲間達を思い出す光景だな。

 

「いいけど俺、他君、俺、A君みたいでいい? 流石に手札枚数的に辛い」

「っけ、ほざけ! LPは当然4000だからな!」

「「「「デュエル!」」」」

「ドロー」

 

やっぱりなのは+ミッドチルダは来ないか・・・・。あの二枚があるとビュンビュン回るんだが一枚ずつのカードに期待するのも駄目か。

 

「魔法都市ミッドチルダを発動。そしてシャマルを通常召喚。効果でミッドチルダにLCを一つ置く」

 

A700・D1800

LCミッドチルダ0→1

 

「相変わらずのアイドルデッキか」

「だから・・・・、まあいいや。シャマルの効果でミッドチルダにLCを置く。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LCミッドチルダ1→2

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

 

「ドロー、行くぜ! 未来融合フューチャー・フュージョン発動! 選択するのはF・G・D!」

「さっすが他君。ドラゴン組めるなんて金持ちだな」

「ッフ、他だけじゃないぜ! 俺達全員ドラゴンデッキだ!」

 

ま、マジかよ。墓地依存のドラゴン族デッキが3つ。しかも初っ端から未来融合とか。

 

「墓地に送るのはマテリアルドラゴン、カイザードラゴン、ダークストームドラゴン、フェルグランドドラゴン、ドラグニティアームズ―レヴァテイン。

サファイアドラゴンを通常召喚し、ゲームから除外。レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを特殊召喚!」

 

A2800・D2400

 

嘘だろオイ! 手札がまだ三枚あるのに上級が二体来るのか!?

レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン・・・・。攻撃力2800の最上級モンスターでありながら一ターンに一度ドラゴン族をノーコストで特殊召喚できる強力なモンスター。ぶっちゃけドラゴン族以外で同じ効果の奴が出たら間違いなく禁止行きだ。

因みに名前が長いので、頭の部分をとってレダメと略す人も多い。

 

「レッドアイズの効果で墓地のレヴァテインを特殊召喚、効果でフェルグランドドラゴンを装備!」

 

A2600・D1200

 

レヴァテインと聞いてデッキに入っているとある一枚が動いた。間違いなくシグナムさんだ。

 

「バトル! レッドアイズで攻撃!」

「初っ端から飛ばすね。罠発動、クラールゲホイル! バトルフェイズを強制終了させて自分のモンスター一体をデッキに戻し、夜天を特殊召喚。シャマルをデッキに戻し、シグナムを特殊召喚する!」

 

安定と信頼の実績を誇るクラールゲホイル。光の球体がレッドアイズとレヴァテインの前に来ると、まばゆい光と激しい音を出して爆発した。

 

A1800・D1400

LCシグナム0→1

 

「ッチ、カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター1 伏せ0 手札3 LP4000

他+その他 モンスター2 伏せ3 手札2 LP12000

 

「ドロー。おっ? デバイスマイスターを発動、闇の書を手札に加え、ミッドチルダのLCを二つ取り除きデッキからアギトを手札に加える」

 

LCミッドチルダ2→0

 

やっぱりシャマ姉がカウンターを溜めてくれると展開しやすいよな。デバイスマイスターの追加効果もシャマ姉がいてこそだし。

 

「フェイトを通常召喚。効果でミッドチルダにLCを一つ乗せる」

『あ、あの、さっきはホントにごめんね?』

 

A1800・D500

LCミッドチルダ0→1

 

フェイトはバルディッシュを構えつつも、俺の方をチラッと見て謝った。いやいや、フェイトは何も悪くないから。

必死になって謝ろうとするフェイトはとても可愛く、思わず抱きしめたくなる。

 

「シグナムのLCを一つ取り除きアルフ特殊召喚。更にフェイトのLCを取り除きアギト特殊召喚!」

 

LCシグナム1→0 フェイト1→0

A1600・D1000

A500・D500

 

「場のシグナムとアギトを融合! 現れろ、烈火の剣神シグナム! シグナムの効果、融合召喚に成功した時3000以下の相手モンスターを破壊する!」

 

A3000・D2000

 

「なんだと!?」

『剣閃烈火!』

 

アギトの言葉と共にレヴァンティンに燃えあがる業火が纏った。巨大なドラゴン相手であろうとシグナムさんはいつもと変わらず堂々としており、ゆっくりと左手を上に上げた。

 

『『火龍一閃!』』

 

そして手を振り下ろすと共に、上級のドラゴン族は業火に呑み込まれて悲鳴と共に破壊された。闇の竜だろうと風の竜だろうとシグナムさんの前では関係ない。

 

「ハッハッハ! これだから無知は! レヴァテインの効果、効果で破壊された時装備モンスターを特殊召喚する。フェルグラントドラゴンを特殊召喚し効果。墓地のレッドアイズを選択し、攻撃力を2000アップさせる」

 

フェルグランドA2800・D2800→A4800

 

「ふむ、場のフェイトとアルフを融合。黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを融合召喚」

 

A2800・D500

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ墓地のアギトの効果、融合素材にされたエンドフェイズ、破壊した相手モンスターのレベル合計×100ポイントダメージを与える。合計レベルは18」

『ブレネン・クリューガー!』

「ック!」

 

他+その他LP12000→10200

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター2 伏せ1 手札2 LP4000

他+その他 モンスター1 伏せ2 手札2 LP10200

 

やっぱりこの条件は辛いな。いくら毎ターンドロー出来るとは言え、最初の手札枚的に辛い。

 

「俺のターンだ、ドロー! 行くぞ、手札抹殺を発動!」

「いきなりか。墓地に送られた闇の書の効果発動。墓地に送られた時モンスターに装備できる。フェイトに装備」

 

フェイトA2800→A3100

 

「行くぜ、墓地の神竜アポカリプスとラグナロク。エビルナイト・ドラゴンとクレセント・ドラゴンを除外! ライトパルサー・ドラゴンとダークフレア・ドラゴンを特殊召喚!」

 

A2500・D1500

A2400・D1200

 

それぞれ光と闇を除外して特殊召喚されたのは、光り輝くドラゴンと闇の炎を纏ったドラゴン。最近新しく出たドラゴン族モンスターで、高価なドラゴン族を子供にも使えるように、安く出回っているカードだ。流石ドラゴン大好きの海馬さん、子供達に夢を与えている。

 

「ダークフレア・ドラゴンの効果、手札とデッキのエクリプスワイバーンを墓地に送り、貴様の墓地のアギトを除外。エクリプスの効果でデッキからレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンとダイヤモンド・ドラゴンを除外する」

 

ダークフレア・ドラゴンは胸にある闇のコアから発射し、俺の墓地のアギトを除外した。

 

「ダークフレア・ドラゴンを生贄にストロング・ウィンド・ドラゴンを召喚。ウィンド・ドラゴンは生贄召喚にしたドラゴン族の攻撃力の半分の数値アップする」

 

ウィンド・ドラゴンA2400→3600

 

「バトル! フェルグラントドラゴンで黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃!」

「攻撃宣言時、鋼の軛を発動。フェルグラントを選択し、攻撃できなくさせる」

「ッチ、だがストロング・ウィング・ドラゴンで攻撃だ!」

「返り討ちだ。フェイトの効果発動、自分の空いているモンスターゾーンに移動し、目の前のモンスターと戦闘を行う時攻撃力を700上げる」

 

フェイトA3100→3800 VS 3400

 

「馬鹿な!?」

『トライデントスマッシャー!』

 

ウィング・ドラゴンは口から風の衝撃波を、フェイトさんは雷の砲撃で押し返しウィング・ドラゴンを破壊した。

 

他+その他LP10200→9800

闇の書LC0→1

 

「ック、ライトパルサーでシグナムに攻撃!」

 

A2500 VS A3000

他+その他LP9800→9300

 

「ライトパルサーの効果、破壊された時墓地から闇属性レベル5以上のドラゴンを特殊召喚。レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを復活させ、効果でドラグニティアームズ・レヴァテインを復活させライトパルサーを装備。ターンエンド」

 

A2800・D2400

A2600・D1200

 

「おっと、エンドフェイズ鋼の軛の効果でフェルグランドの攻撃力を1000下げ、闇の書にLCを一つ乗せる」

 

フェルグランドA4800→3800

闇の書LC1→2

 

ちゃんとメイン2に移行と宣言しろよ、って最近俺も言ってないな。

にしても上級モンスターがポンポン出てかなり辛い。フィールドのカードがなくなった時点で俺の負けだ。やばいな、デュエル下手な他君でも仲間と一緒にゴリ押しされると辛い。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター2 伏せ1 手札2 LP4000

他+その他 モンスター3 伏せ3 手札1 LP9300

 

「ドロー、ミッドチルダの効果で自身のLCを闇の書に移動する」

 

LCミッドチルダ1→0 闇の書2→3

 

「LCが三つたまった闇の書を除外しデッキからアインスを特殊召喚! 特殊召喚成功時、融合デッキから夜天の書を特殊召喚する」

 

A2400・D2400

A0・D0

 

『辛い状況みたいだが』

「そうだな。予想以上に他君が強くて」

「夜天の書をアインスに装備。そして手札から魔弾作製を発動。シグナムを生贄にしてデッキからカートリッジロードを手札に加え、全てミッドチルダに使う」

 

LCミッドチルダ0→3

 

「ハッハッハ! 上級モンスターを生贄にするとは馬鹿だな!」

 

あ~も~、やっぱり他君はイライラするな。似会っていない金髪になってますますそう思う様になった。

 

「ヴィータを通常召喚して、ミッドチルダにLCを置く」

 

A1900・D1200

LCミッドチルダ3→4

 

「夜天の書の効果。ミッドチルダのLCを全て取り除き4枚ドローする!」

 

これで手札は5枚。だが相手の場が圧倒的すぎて正直この二倍手札が欲しい。しかも次の相手のターン攻撃力5000のF・G・Dが特殊召喚される。

 

「だがっ! 場の黒騎士フェイトを生贄に迅雷の化身フェイトを特殊召喚!」

 

A3300・D0

 

デュエルディスクにカードをセットした瞬間、そのカードからバチバチと電気の音がしピカッと光り、フィールドに落雷が落ちてきた。その中には今までの優しい雰囲気を纏ったフェイトさんではなく、冷たく、だけど荒々しいフェイトさんがいた。

 

「更に装備魔法バルディッシュアサルト・ザンバーを装備」

 

フェイトA3300→4300

 

装備魔法を使ったがフェイトさんの元にはバルディッシュの姿はなく、右手の手先からバルディッシュの刀身が現れた。

「バトル! フェイトでレッドアイズを攻撃!」

 

A4300 VS A2800

 

レッドアイズから禍々しいオーラを纏った炎弾が放たれたが、フェイトさんには止まって見えるのだろう。少し本気を出すと既にフェイトさんはレッドアイズの後ろまで移動しており、その巨大で長い首を切断した。

 

他+その他LP9300→7800

 

「「「馬鹿な!?」」」

「更にフェイトはもう一回攻撃が可能! フェルグランドを攻撃!」

『ファランクスを撃つまでも無い・・・・。雑魚が』

 

A4300 VS A3800

 

フェイトさんは左手から一発の弾丸を生成させると、その弾丸でフェルグランドドラゴンの脳天を撃ちぬいた。

 

他+その他LP7800→7300

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、フェイトの効果でデッキからフォトンランサーをセットする」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター2 伏せ3 手札1 LP4000

他+その他 モンスター1 伏せ3 手札1 LP7300

 

「クソッ! お前ら何してるんだ!? まだライフを1も削れて無いじゃないか!」

「俺に任せてください! ドロー、この瞬間未来融合「速攻魔法フォトンランサー、フューチャー・フュージョンを破壊する」なんだと!?」

 

甘いぜ、デュエルモンスター最高の攻撃力を持つモンスターをそう簡単に召喚させるかよ。他君は切り札を出せなかった事に激怒しているし。

 

「ック、融合発動。手札の神竜ラグナロクとロード・オブ・ドラゴン―ドラゴンの支配者を融合 竜魔人キングドラグーンを融合召喚!」

 

A2400・D1100

 

ええい! さっきからいろんなドラゴンが次々と出てきて対処が辛い! レッドアイズ、レヴァテイン、フェルグランド、ライトパルサー、ストロング・ウィングそしてキングドラグーンか。

 

「そして墓地のエクリプスとドラゴンの支配者を除外して、ライトパルサーを特殊召喚! そして除外されたレッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴンを手札に加える」

 

ま、またかよ。ホントもう勘弁して下さい。

 

「キングドラグーンの効果でレッドアイズを特殊召喚し、効果でフェルグランドドラゴンを特殊召喚。効果で攻撃力を2000アップする!」

 

A2800・D2400

フェルグランドA2800・D2800→A4800

 

「おいおいおい! マジかよ!」

「更に一族の結束を発動!」

 

レッドアイズA2800→3600

ライトパルサーA2500→3300

フェルグランドA4800→5600

キングドラグーンA2400→3200

レヴァンティンA2600→3400

 

「バトル! フェルグランドでフェイトを攻撃!」

「だがまだまだだ! 速攻魔法バルディッシュ・スピードローダー。フェイトの効果を無効にして攻撃力を2000上げる!」

 

フェイトA4300→6300 VS A5600

他+その他 LP7300→6600

 

「ック、ライトパルサーでアインスに攻撃!」

「それもさせるわけにはいかない。ソニックムーブ発動! アインスを除外する」

「じゃあヴィータに攻撃だ!」

「墓地から罠発動!」

「っな!? ぼ、墓地から!?」

「墓地から罠だって!?」

「ぼぼぼぼ墓地から罠だと!?」

 

お久しぶりのリアクションありがとうございます。

 

「ソニックムーブを除外してヴィータをエンドフェイズ時まで除外する」

「く、クソッ! ターンエンド!」

「エンドフェイズ、ヴィータとアインスが戻る」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター2 伏せ2 手札1 LP4000

他+その他 モンスター4 伏せ3 手札1 LP6600

 

「ドロー、スタンバイ、スピードローダーの効果でバルディッシュを墓地に送りこのターンフェイトは二回攻撃が可能になる」

 

A6300→5300

 

「Strikersの回収を発動、黒騎士フェイト、烈火の剣神シグナム、アルフをデッキに戻して二枚ドロー。

リリィ・シュトロゼックを召喚。召喚成功時デッキから装備魔法、銀十字を手札に加える。そしてミッドチルダにLCを一つ乗せる」

 

LSリリィ・シュトロゼック ☆4/闇/魔法使い/A500・D500

LCミッドチルダ0→1

 

現れたのは純白のエンゲージスーツを纏った銀色の髪の長い少女。銀と言ってもアインスより色は薄い。とても前線に立って戦う女の子には見えない。まあ実際前線で戦うには厳しい。

 

「リリィが場にいる時、手札を一枚捨てる事でデッキからトーマ・アヴェニールを特殊召喚できる!」

 

LSトーマ・アヴェニール ☆4/風/魔法使い/A1000・D1000

 

今度現れたのは茶髪のショートをした青年。中央からアホ毛が伸びているのが特徴で、男の俺が言うのもなんだが可愛い顔立ちをしているイケメンだ。性格もサッパリした奴で、よく相談に乗ってもらったりしてもらっている。

 

「場のトーマとリリィを融合! 現れろ、リアクト・エンゲージ・トーマ!」

 

A2500・D2500

 

二人の融合は渦の中に呑み込まれるのではなく、ゆっくりと近づいて抱き合い、リリィの囁き声と共に融合をする。男としてリリィみたいな美少女と抱き合うっていうのは羨ましいけど、この二人はお似合いだからな。

リリィと融合したトーマの姿は、さっきまでの好青年とはかけ離れており銀髪の髪、血の様な瞳、黒の服に銀色の装飾品を付けたトーマがいた。この格好でもまだ第一形態だから、ECウイルスとは恐ろしい。

 

「トーマの融合召喚時このカードにLCを一つ置く。そして装備魔法銀十字をトーマに装備」

 

トーマの手に銀色の装飾品が付いた本が現れた。あれが銀十字。

 

「トーマの効果発動、このカードのLCを一つ取り除く事でフィールドのモンスターの攻守を1000下げる。この時銀十字を装備していた場合、下がる数値は2000になる」

 

レッドアイズA3600→1600

ライトパルサーA3300→1300

キングドラグーンA3200→1200

レヴァンティンA3400→1400

 

「そ、そんな・・・・。三対一でも勝てないのかよ!?」

「バトル! フェイトさんでキングドラグーンとライトパルサーに攻撃!」

『フォトンランサーファランクスシフト』

 

フェイトさんがパチンと指を鳴らすと、76基のフォトンスフィアが現れた。

 

『ドラゴンと言えどこのレベルか・・・・』

『「ファイア!」』

 

A5300 VS A1200

A5300 VS A1300

 

76基のフォトンスフィアは秒速14発の弾丸を4秒間続ける必殺技。一発一発は決して強い物ではないが、速さと鋭さを込めた弾丸を連射する事で、圧倒的破壊力を得る魔法。

 

「「「うわあああああ!」」」

 

他+その他LP6600→-1500

 

見事ライフを0にした。というか雷フェイトさんにバルディッシュ+スピードローダーは鬼畜だな。攻撃力5300の二回攻撃ってライフが10000でもダイレクトだったら死ぬぞ・・・・。まあ今回はトーマがいたおかげなんだが。

 

「さ、三人で戦ってライフを1も削れなかった・・・・」

「そんな悔しいなら馬鹿やってないで勉強したら? てか今後俺に絡まないでくれ。んじゃ」

『あ~、ごめんね。あの子もちょっと変わってるから、じゃあね』

 

 

 

 

その夜、我が家の晩御飯。

 

「・・・・遊斗、お前の前にある料理はなんだい?」

「父さんは馬鹿ですか? ステーキですよ」

「私の前にあるのは?」

「頭でも打ったんですか? パンの耳とコーンスープですよ」

「・・・・精霊達全員もお前と同じ料理を食べているな」

「目でも悪くなったんですか? そうですよ」

「・・・・いただこう」

 

一つだけ言っておこう。俺がこの家にいる限り、食卓は俺が握っている。

 

 




LSリリィ・シュトロゼック ☆4/闇/魔法使い/A500・D500
このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、デッキから「銀十字」を手札に加える事ができる。

LSトーマ・アヴェニール ☆4/風/魔法使い/A1000・D1000
自分フィールド上に「リリィ・シュトロゼック」が存在する時、手札を1枚捨てる事によりこのカードをデッキから特殊召喚できる。また自分フィールド上に「リリィ・シュトロゼック」が存在する時、LCを1つ取り除く事で、このカードを手札から特殊召喚できる。

LSリアクト・エンゲージ・トーマ ☆8/闇/魔法使いA2500・D2500
「トーマ・アヴェニール」+「リリィ・シュトロゼック」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードが融合召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。1ターンに1度、このカードに乗っているLCを1つ取り除く事で、相手フィールド上のモンスターの攻撃力と守備力を1000ずつダウンさせる。この効果は相手ターンでも使用できる。銀十字を装備している場合、この効果でダウンする数値は2000になる。

(銀十字の効果は後ほど)




今回出たのはトーマとリリィとリアクトトーマ。せっかくなのでこの三枚を紹介。
まずはリリィ。銀十字をサーチできるが、お互い一枚なので単体だと弱いが、トーマの存在で強い。リリィ召喚→サーチ→サーチカード捨てる→リアクトトーマ、が出来る。
因みにトーマは、いろんなところからリリィを守りに行く。という意味を込めて手札からも特殊召喚できます。

リアクト・エンゲージ・トーマ。トーマの名前に苗字がないのはこれ以上・で区切りを多くするのは嫌だったから。
ステータスは優秀だけど効果は普通。どっちかというと融合素材前が優秀。ただ銀十字を装備すると
4500まで相打ちに持ち込めるのは強力。





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第十三話

オリカの案たくさん頂きありがとうございます。
まだ募集は続けようと思います。アインハルトの案が無かったので(苦笑)


今回前半は原作で、後半は勝手に作りました。
それと今回恋愛?的なのが若干あります。恋愛に関しては未だどうするかは未定ですが、デュエルがメインの小説なので作者が好きなキャラをヒロインにしようと思います。


あと実体化した時の精霊の台詞ですが、指摘されたので『』ではなく「」にしたいと思います。


それと今回ザフィーラを使うのですが、上回るって言葉は”~以上”ではなく”~より大きい”であってますよね? ジャストキルのシーンがあったので若干迷いました。
あと強欲な壷を使いました。今まで壺を使ったのはあの兄弟。


ブルー寮に入って数ヵ月が経ったが俺は未だに同じ寮の男子に馴染めなかった。俺の事を馬鹿にする奴は減ったし、最近では新しく出来たブルーの友達とクラスで普通に話しているが、周りはみんなボンボンだったり、レッドを馬鹿にしたりと、話が合わない。なるべく向こうに話を合わせているのだが、それがまた精神的に疲れる。

なので俺はのんびりしようとレッド寮に来ていた。

十代達に何の連絡もしなかったのが悪かったのか俺は最悪な場面に出くわしてしまった様だ。ガチャッと十代達の部屋を開けたら、十代が小さな女の子を押し倒していた。

・・・・クールになるんだ俺。

まず何故十代が女の子を押し倒している? あいつは根っからのデュエル馬鹿で、婚約者の意味も知らなかった奴だ。おそらく何らかの事故だろう、そう思おう。

次にどうしてあんな子がこの学校にいる? どう見ても小学生高学年じゃないか。いや、世の中いろんな人がいるんだ、そこは触れないでおこう。だが何故女子がいないレッドの制服を着ている?

 

「・・・・えっと」

「おっ、遊斗。なあ遊斗からもコイツに言ってくれよ。コイツ風呂に入らないって言ってるんだぜ?」

「違っ! 僕は後から入るって言ってるでしょ!?」

 

俺がしばらくの間混乱している最中、フェイトさんとはやてさんは彼女の事をしばらく観察していたようで、二人の話によるとあの子は女の子で間違いないらしい。

 

「えっと十代。その状態のまま教えるのはあれかと思うけど、その子、男じゃなくて女の子だぞ?」

 

俺がそう伝えると十代は俺と押し倒している女の子を交互に見て「ハハハ」と笑い始めた。いや、どうやってレッドに入ったかは知らないけど、見て分かるだろ?

 

「何言ってんだよ遊斗。ほら、胸だって全然ない・・・・あれ?」

『はっ、あははは! じゅ、十代ってほんま面白いな! ま、まさか胸触って確かめるなんて!』

 

いや、はやてさん笑いごとじゃないですって。十代は過ちに気付いたのか「アハハハ・・・・」ってらしくない苦笑をして、押し倒された女の子は胸を手で押さえながらフルフルと震えている。

 

「きゃっ・・・・、きゃああああああ!」

 

 

 

 

あれから色々と大変だった。悲鳴を聞いて駆けつけてきた大徳寺先生を含むレッド寮のみんなをなんとか誤魔化したり、翔と隼人が邪魔だったので理由を付けて追い出したり。おまけに胸を触られた事でワーワーと女の子は泣き、十代は初めての経験なのかおろおろとしている。

 

「ご、ごめんな。まさか女の子って思わなくて」

「ぅっ、ひっく・・・・ゆ、許さない」

「ちょっと皆さん。ああいう状態の女の子はどうやって慰めるんですか?」

『そんな経験ないから分からないけど、色々とごっちゃになってると思うよ。羞恥心だったりプライドだったり』

『とりあえず下手に刺激しない方がいいよ』

 

との事なので十代はそれに従い女の子、レイちゃんの頭をよしよしと無言で撫で続けた。ハァ、にしてもまた十代の女関係か。この間もテニス部部長の綾小路って輩に「お前が明日香君のフィアンセか!?」って間違われ、一回デュエルした後に十代を呼ぶ事があった。

本人は大変だろうけど、見ている側から言わせてもらうと羨ましい。

 

「なあ、レイはどうしてこの学校に来たんだ?」

「・・・・亮さまに会いに来た」

「亮って、丸藤亮さんのこと? カイザーって呼ばれてる」

 

俺の質問にレイちゃんはコクンと小さく頷いた。だいぶん落ち着いてきたみたいだな。

 

「どうして?」

「どうして? 僕の初恋の相手だからだよ」

「じゃあカイザーに告白しに来たのか?」

「そう! その為に亮さまとデュエルして僕の想いを伝えるの!」

 

デュエルで想いを伝えるってどういう事だよ・・・・。い、いや、最近はお見合いデュエルとか結婚デュエルとか、バレンタインデュエルとか、デュエルは恋愛まで介入できるようになってきたからな。

デュエルは老若男女誰とでも同じ立場で戦える決闘だと思っている俺には今一よく分からないが。

 

「へぇ~、デュエルって事はお前デュエリストか」

「当たり前でしょ? この学校に来たんだから」

「てかレイちゃんってどれくらいの成績持ってる? それだけで強さを見るわけじゃないけど、亮さんってめちゃめちゃ強いよ?」

「地元の子供部門で二回優勝! 学校で一番強いんだから」

 

学校で一番ねぇ・・・・かわいらしいレベルだ。

 

「遊斗にデッキを見てもらったらどうだ? 遊斗はカイザーに勝った事あるんだ」

「ほ、ほんと!? ねえ見てよ僕のデッキ」

「りょーかい。十代、みんなが使っていないカードを持って来てくれ」

「おう」

 

十代がゴソゴソと探している間、俺はレイちゃんから渡されたデッキを見ていた。ふむ、なるほど。恋する乙女ってカードを使って相手のコントロールを奪うデッキか。う~ん、正直言って酷いな。

恋する乙女は攻撃表示で攻撃を受けたら乙女カウンターを乗せるカードらしい。しかし攻撃力は400と弱く、単体では乙女カウンターを乗せるだけ。ついでに言うとコントロールを奪うにはキョーピッド・キスを装備してダメージを更に受けなければならない。

そんな使いにくいカードなのにデッキにはダメージ無効のカードが入っていない。

 

「えっとねレイちゃん。亮さんは圧倒的パワーで押すデッキだから、レイちゃんのデッキじゃ乙女カウンターを置く前にやられてしまう」

「そ、そんな」

「えっと、だからダメージを0にして一枚ドローするガード・ブロックとか、相手に戦闘ダメージを移すディメンション・ウォールとか、ライフ回復のカードをとかを入れたらいいと思うよ」

「あったぜ遊斗。ガード・ブロックとディメンション・ウォール。ライフ回復系はあんまりないな」

 

流石四人分の余りカードを合わせただけあり、レア度の低いカードが多くある。因みに俺は、パックは買うがデッキにはLS専用のカードしか入れないので十代達にあげている。使わないと分かっていてもデュエリストの魂がパックを買えと訴えて来るんだ。勿論その見返りとしてなんらかの物は持っている、じゃないとやってけない。

 

「じゃあ何を抜けばいい?」

 

レイちゃんは笑顔で俺と十代の方を向いた。良かった、すっかり機嫌も良くなったようだ。やっぱり女の子は笑顔が一番だからな。

 

「え? そんなもん全部入れれば」

「十代は黙ってなさい。40枚がベスト」

 

偉そうな事言ったわりには俺もデッキ枚数は余り考えてないんだけどね。

 

 

 

 

「じゃあ早速デュエルしようよ!」

「なら俺とデュエルだ!」

 

新しいデッキができ、レイちゃんは早速デュエルを申し込み、そのデュエルを十代が受けた。

そしてデュエルを始めた二人を見ていて俺は一つ思った。

 

「俺、お邪魔虫か?」

 

いや、当の二人はそんなつもりはないだろうが、なんかやたらとイチャイチャしている気がする。十代はレイちゃんの恋する乙女のコンボにキラキラとしているし、レイちゃんは十代のHEROをカッコイイと言っているし。

 

「凄いよ十代。私こんなに楽しいデュエル始めてかも!」

「そう言ってもらえると嬉しいぜ。行くぜレイ、ドロー! 融合発動、手札のフェザーマンとバーストレディを融合! 現れろ、フレイム・ウィングマン!」

「それが十代の」

「ああ、俺のフェイバリットカードだ。バトル、フレイム・ウィングマンで恋する乙女を攻撃! フレイムシュート!」

 

十代のフレイム・ウィングマンの攻撃によってレイちゃんのライフは0になり、十代の勝ちとなった。するとパチパチと拍手が鳴り、そっちを見ると亮さんと明日香がいた。

 

「二人ともいつの間に」

「今日俺の部屋の前で誰かがウロウロしてたと聞いてな。今日転校してきた転校生が気になり来たんだ」

 

そう言えばレイちゃんが亮さんの部屋に忍び込んだって言ってたな。その事は内緒にしておこう。亮さん怒ると絶対怖いし。

 

「りょ、亮さま!?」

「ほら、今だぜレイ。カイザーは今のデュエルを見ていたんだ」

 

どうやら十代はレイちゃんに告白を進めているらしいがどうするべきか・・・・。亮さんはデュエル大好きなので告白されても十中八九断るだろう。この場に俺等がいていいのか?

 

「あ、あの亮さま。私、亮さまの事が好きです」

「・・・・レイ、故郷に帰るんだ」

 

亮さんはあくまで冷静な声でそう呟いた。レイちゃんも薄々は気付いていたのか目を潤わせながらコクンと小さく頷いた。

 

「何でだ! ブルーの女子寮に入れてもらえば全然問題」

「レイはまだ小学5年生だ。それに俺にはデュエルしかない」

 

やっぱりそれくらいか。九歳のなのは、フェイト、はやてのとあんまり変わらないからそのくらいかと思ったよ。あの三人の中で一番身長の高いフェイトより少し大きいくらいだからな。

 

「じゃあ俺、小学生相手に苦戦したのかよ!」

「えへへ、ガッチャ。楽しいデュエルだったよ」

 

レイちゃんはイタズラっぽく笑い、ガッチャのポーズで十代を指した。しばらくは呆気に取られていた十代だったが、フッと笑うともう一度レイちゃんにガッチャをした。

 

「遊斗、ここで会ったのも何かの縁だ。俺とデュエルしないか?」

「え? いいですけど、レイちゃんとデュエルしなくていいんですか?」

「レイには悪いが、今の所お前の方が俺より勝率がいい。そんな相手を俺が放っておくと思うか?」

 

亮さんは獲物を見つけた野獣の様な眼で俺を見つめた。りょ、亮さん怖ぇよ、まあレイちゃんも俺と亮さんのデュエルを見たいって言ってるし、いっか。

 

「分かりました。勝率を離させてもらいます」

「ッフ、面白い。今度こそ勝つ!」

「「デュエル!」」

 

 

 

 

というのが昨日の話。その後レイちゃんはデュエルアカデミアを去り、最後に「待っててね~! 十代さま~!」と恋の相手が亮さんから十代に変わったようだ。十代の優しさとデュエルを楽しむ心に惹かれたんだろう。しかし十代も大変だな、将来あの胸を触った事を武器に迫ってくるかもしれん。

そして亮さんとのデュエルは俺の負けで終わり、勝率が近づいてきた。というか亮さんの初手サイバー・エンド率が異常で、俺のミッドチルダ+なのはや十代のフレイム・ウィングマンより初手率が高いかもしれん。あれは詰め込みと疑うレベル。

なんて昨日の事を思い出しながら着替えていると、カードからフェイトが出てきた。その頬はやたらと赤く、俺の顔と地面を交互に見ている。

 

「ん? どうした、フェイト?」

「えっと、せっかく実体化できるようになったから、その、遊斗と一緒にアカデミアを回りたいな~って・・・・」

 

フェイトはモジモジと恥ずかしそうに手と足を動かしながら、顔をちょっとだけ下げて上目使いだった。

うわぁ・・・・何この可愛い生き物。

 

『デートかいな? 女の子から言わせるなんて遊斗もやるな~』

『フェイトちゃんよく頑張った。昨日なのはお姉さんが相談した成果だね』

 

そして周りが非常にうるさい。せっかく良い雰囲気だったのにこれじゃ台無しだ。

 

「俺も授業があるから付き合える時間は昼休みと放課後になるけど」

「いいの?」

「もちろん」

 

 

 

 

ああ・・・・ついに俺にも春が来たか? 目の前でチューチューとストローを吸っているフェイトを見ながらそんな事を思った。思えばこの16年間、女性に囲まれつつも恋愛には全く発展しない、彼女いない歴=年齢になっていた。まだ高校一年生だから、なんて余裕を持っていたらあっという間に受験生ってレッドの先輩が言っていたし。

ロリコンと言われようが変態と言われようが、こうして可愛い女の子とデート? 出来るのは男として幸せだ。

 

「遊斗も飲む?」

 

オレンジジュースに刺さったストローから口を離し、フェイトは首をチョコンと傾げた。

 

「じゃあ遠慮なく」

「ふふっ、お金は遊斗のなんだから」

 

て言ってもそんな高い物でもないし。

俺はフェイトがさっきまで触れていたストローを吸った途端、周りから悲鳴が聞こえてきた。主にロリコン男子の絶望の声。

 

「ゆ、遊斗・スカリエッティ! きさまああ!」

「う、羨ま、けしからんぞこんチクショウ!」

「フェ、フェイトたんとの間接キスぅぅぅううう」

「いつそんな美少女と知り合ったッスか!?」

 

なんか色々とカオスだ。女子達は不本意ながらも俺を含むこの場のロリコン達に引いておらず、この場には面白がってきた男子とロリコン男子しかいない。一応言っておくが俺はロリコンでないぞ。ただ一般的に可愛い女の子が好きなだけだ。

しかしこうやって女関係で問題が起こるって十代みたいだ。昨日心の中で十代にブツブツ言っていたおかげか?

 

「というか翔もそっちの人間か」

「遊斗君が言うならそっちじゃなくてこっちでしょ?」

 

だから一応違うって。フェイトは家族の付き合いとして見ているかもしれないし、俺もフェイトの事を家族だと思っているし。

 

「羨ましすぎるっス遊斗君! この場の全員の想いを受け取り、僕は遊斗君にデュエルを申し込むッス!」

「デュ、デュエルって・・・・、遊斗。まだ案内して欲しい所あるんだけど」

「ごめんフェイト。だけどこいつ等目が本気だし、翔ともデュエルしてみたいし」

「・・・・絶対後者でしょ」

 

フェイトに目的を当てられ、俺は苦笑しながら購買の少し広い場所へと移動した。

 

「滅殺ッス!」

「いや、何もそこまで・・・・まあそれで気合いが出るならいいか。行くぞ!」

「「デュエル!」」

「先攻は僕のターン、ドロー。融合発動、手札のレスキューロイドとキューキューロイドを融合、来るッス、レスキューキューロイド!」

 

A2300・D1800

 

初っ端か融合か。かなり飛ばすな翔。

 

「そしてエクスプレスロイドを召喚。効果で墓地のレスキューロイドとキューキューロイドを手札に加える」

 

A300・D1200

 

守備表示で出された新たなロイド。召喚、反転召喚、特殊召喚成功時に墓地のロイドを二体まで手札に加える事ができる高性能カードだ。攻撃力も低いのでリミット・リバースに対応しているし、融合素材にも使える。

 

「そして未来融合フューチャー・フュージョンを発動。極戦機王ヴァルバロイドを選択し、デッキから二枚目のエクスプレスロイド、サブマリンロイド、スチームロイド、ドリルロイド、ステルスロイドを墓地に送るッス。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 

翔 モンスター2 伏せ2 手札2

 

初っ端から飛ばしてきたな翔。

 

「ドロー、手札からフィールド魔法、魔法都市ミッドチルダ、永続魔法時空管理局を発動」

 

周りの景色がいつも通り近未来都市になったが今回はそれだけではなかった。空を見ると飛んでいる建設物があった。そう、あれが時空管理局。この間帰った時に父さんに貰ったカードで、正式には時空管理局本局、らしい。

この二枚が並んだ時のLCの溜まり方は凄い。

 

「手札からフェイトを召喚。効果でミッドチルダとフェイト自身にLCを乗せる」

 

A1800・D500

LCミッドチルダ0→1 フェイト1

 

ソリッドビジョンのフェイト登場にこの場の一同、実体化しているフェイトとソリッドビジョンのフェイトを交互に見る。名前と顔が一緒なので普通なら怪しむだろうが、認識障害をしている為みんな、似ている、としか思わないらしい。俺はよく分からないけど魔法ってやっぱり便利。

 

「そしてミッドチルダのLCを取り除いてアルフを特殊召喚。そして時空管理局の効果、LSが特殊召喚に成功した時自身にLCを一つ置く。この効果は一ターンに二回まで使える」

 

LCミッドチルダ1→0 時空管理局0→1

 

「まだまだ、場のフェイトと時空管理局のLCを一つずつ取り除き、連続転移を発動。デッキトップを三枚めくり、その中にLSと名のつく通常召喚可能モンスターがいたらそのモンスターを特殊召喚する。よし、俺ははやてを特殊召喚!」

 

A2000・D1700

LCフェイト1→0 時空管理局1→0

 

「はやてと時空管理局の効果で一つずつLCが乗る」

 

LCはやて1 時空管理局0→1

 

「闇の書をはやてに装備し、はやての効果で自身のLCを取り除きこのターン二回攻撃を可能」

 

はやてA2000→2300

LCはやて1→0

 

「流石遊斗君ッス」

「場のフェイトとアルフを融合。現れろ、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

さて、ここまで持ってきたのはいいがレスキューキューロイドは、自分のモンスターが戦闘で破壊された時に墓地から特殊召喚する効果を持っている。エクスプレスロイドから攻撃したらまた手札を増やされてしまうな。

 

「バトル! フェイトでレスキューキューロイドを攻撃!」

「そうはさせないッス。罠、シフトチェンジを発動。レスキューキューロイドへの攻撃をエクスプレスロイドへ変更!」

「しまった!」

 

シフトチェンジの効果でフェイトさんが放った砲撃はキューキューロイドに向かわず、エクスプレスロイドの方に曲がった。ッツ、面倒臭い事になった。

 

A2800 VS D1200

 

「レスキューキューロイドの効果。戦闘破壊されたエクスプレスロイドを蘇生し、エクスプレスロイドの効果で墓地のドリルロイドとサブマリンロイドを手札に加えるッス」

「モンスターだけとはいえこれで手札は4枚・・・・。はやてでエクスプレスロイドを攻撃!」

「攻撃宣言時スーパーチャージ発動。デッキから二枚ドロー」

 

更に手札を増やしてきたか。この状態ではスーパーチャージは2:2交換になるだけだが、この状態で交換されるのは辛い。というか翔のプレイングがかなり上級者に見えるのは俺だけか?

 

A2300 VS D1200

 

「・・・・闇の書の効果でLCを一つ乗せる。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LC闇の書0→1

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札0 LP4000

翔  モンスター1 伏せ1 手札6 LP4000

 

これってどこからどう見てもヤバイ状況だよな? 翔のロリコン魂がデュエルのプレイングを上昇させているのかもしれない。いや、翔の場合はロリコンと言うよりも美少女好きか?

 

「ドロー! キューキューロイドを召喚。そして死者転生を発動。手札のレスキューロイドを捨てエクスプレスロイドを手札に加える。そしてキューキューロイドの効果でエクスプレスロイドを特殊召喚。効果で墓地のスチームロイドとステルスロイドを手札に加えるッス」

 

・・・・あれぇ? これってかなりやばい状況なんじゃ?

 

「ビークロイド・コネクション・ゾーンを発動! 手札のスチームロイド、ドリルロイド、サブマリンロイドを融合ッス! スーパービークロイド―ジャンボドリル!」

 

A3000・D2000

 

か、かなりややこしい状態だが、つまり今翔の手札にはステルスロイドと未知数なカード一枚。手札と墓地に行ったり来たりで、俺のLC以上にややこしい。

なんて言ってる場合ではなく、ビークロイド・コネクション・ゾーンで特殊召喚されたモンスターはカード効果では破壊されず、効果を無効化されない能力を持つ。しかも次のターンにはヴァルバロイドが出る。

しつこいようだが翔って確かレッド寮だったな・・・・。

 

「バトル! ジャンボドリルで黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃!」

 

既にフェイトの効果を知っている為、翔はジャンボドリルをはやての前に置いているのでフェイトの効果を使えない。

 

A3000 VS A2800

 

「罠発動。協力防御。自分フィールド上にLSが二体いる時発動できる。モンスターは戦闘では破壊されずこのターン発生する戦闘ダメージを0になる。その後一枚ドローする」

 

危ない危ない。父さんに貰ったカードがまた役にたった。フェイトさんの元へ突進してきたジャンボドリルだが、はやてとフェイトさんの協力により攻撃は防がれた。

 

「っちぇ、カードを一枚伏せてターンエンドッス」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札1 LP4000

翔  モンスター4 伏せ2 手札1 LP4000

 

「ドロー、手札からなのはを召喚。効果で自身とミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1 なのは1

 

「なのはの効果、自身のLCと取り除き未来融合を破壊!」

「うっ、仕方ないッス・・・・」

『ディバインシューター!』

 

レイジングハートのコアの部分から現れた複数の魔力弾が、表側になっている未来融合のカードを貫通し破壊した。

 

LCなのは1→0

 

「そしてミッドチルダのLCを取り除きユーノを特殊召喚。時空管理局の効果でLCを一つ置く」

 

LCミッドチルダ1→0 時空管理局1→2

 

「場のなのはとユーノ融合。現れろ、AOA高町なのは。効果でデッキからザフィーラを手札に加え、時空管理局にLCを乗せる」

 

A1000・D3000

LC時空管理局2→3

 

「カートリッジロードを闇の書に発動。そしてミッドチルダの効果で時空管理局のLCを闇の書に移動」

 

LC闇の書1→3 時空管理局3→2

 

「来るッスね。あのモンスターが」

「ああ、闇の書をゲームから除外し、デッキからアインスを特殊召喚する! そしてアインスの効果でナハトヴァールを融合デッキから特殊召喚!」

 

A2300・D2300

A0・D0

 

ナハトの登場に翔とフェイト以外の全員が顔を青くする。流石に翔は見慣れたのか平気な顔をしているな。フェイトに関してはこいつと戦ったことあるらしいし。

 

「場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

デュエルディスクにセットすると、今までと違うアニメーションが起こった。セットした瞬間にカードを軸に周りの光が徐々に奪われて行き、やがてこの場に光はなくなった。そして暗闇の中、一線の光の柱が現れた。そこから舞い降りたのは夜天の王であるはやてさん。その美しさにロリコンの男共も思わず目を奪われていた。

 

A2800・D2800

LCはやて3

 

「ナハトの効果ではやてに装備、攻撃力を1000上げる!」

 

A3800・D2800

 

「バトル! フェイトでレスキューキューロイドを攻撃!」

『サンダースマッシャー!』

 

A2800 VS A2300

 

「攻撃宣言時スーパーチャージ。二枚ドロー!」

 

翔LP4000→3500

 

「はやてでジャンボドリルを攻撃!」

『『響け終焉の笛! ラグナロク!』』

 

A3800 VS A3000

 

古代ベルカの三角形の魔法陣のそれぞれの頂点に溜められたエネルギー弾が一斉に発射された。だがジャンボドリルも強力な機械。はやてさんのラグナロクを受け止めようとそのドリルを回転させる。

でもはやてさんはまだ本気を出していない。左手に付いているナハトをジャンボドリルに向け、銃口から禍々しい紫色の砲撃を放ちジャンボドリルを破壊した。

 

翔LP3500→2700

 

「ナハトの効果。破壊したモンスターをはやてに装備し、その半分の攻撃力をはやて加える」

 

A3800→A5300

 

「攻撃力5300!?」

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズカートリッジの効果で同名カードを手札に加える」

 

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札2 LP4000

翔  モンスター2 伏せ1 手札3 LP2700

 

「僕のターン、ドロー! 強欲な壺を発動、二枚ドロー。来た! 二枚目のビークロイド・コネクション・ゾーンを発動。場のエクスプレスロイド、手札のステルスロイド、トラックロイド、ドリルロイドを融合。スーパービークロイド―ステルス・ユニオンを召喚!」

「この状態でそれを引くか!?」

 

A3600・D3000

 

スーパービークロイド―ステルス・ユニオン。融合素材が多いだけありかなり強力な効果を持っている。説明は・・・・しなくてもすぐに分かるか。

 

「ステルス・ユニオンの効果。夜天の王・八神はやてを装備」

「はやての効果。って言いたいけど、ビークロイド・コネクション・ゾーンの効果で、効果は無効化されないからな。一応キューキューロイドの効果を無効にする」

「キューキューロイドを攻撃表示にして、バトルフェイズ! ステルス・ユニオンで黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃! ステルス・ユニオンが攻撃する場合攻撃力が半分になるけど、ダメージステップにリミッター解除を発動!」

 

キューキューロイドA300→600

ステルス・ユニオンA3600 VS A2800

 

「スバルを手札に加えていればよかったか!」

 

遊斗LP4000→3200

 

「まだまだ! ステルス・ユニオンは自身の効果でモンスターを装備している時、相手フィールド上のモンスターに一回ずつ攻撃できる! AOA高町なのはに攻撃!」

 

A3600 VS A1000

 

「ダメージ計算時ザフィーラの効果でダメージを0にする」

 

このまま行ったらライフは残り600。それだとキューキューロイドのジャストキルされてしまうし、ザフィーラの一枚ドロー効果は上回っていた時だけ。今使った方が得だ。

 

「キューキューロイドで攻撃!」

 

A600

遊斗LP3200→2600

 

「ターンエンドッス。リミッター解除の効果でキューキューロイドは破壊されるけど、ビークロイド・コネクション・ゾーンの効果でステルス・ユニオンは破壊されないッス」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札1 LP2600

翔  モンスター2 伏せ1 手札0 LP2700

 

「ドロー! 翔、さっきのターン俺を倒せなかったのはまずかったな。リリィを召喚、効果で銀十字を手札に加える」

 

A500

LCミッドチルダ0→1

 

「手札のカートリッジロードを捨て、デッキからトーマを特殊召喚」

 

A1000・D1000

LC時空管理局2→3

 

「場のトーマとリリィを融合! 来い、リアクト・エンゲージ―トーマ!」

 

A2500・D2500

LC時空管理局3→4

 

抱き合ってリアクトしたトーマの姿に翔は一瞬ビクッと方を震わせる。気持ちは凄く分かるぞ。俺もナハト程ではなかったが、最初トーマの姿には泣いたものだ。

 

「トーマの効果で自身にLCを一つ置く。そしてトーマに銀十字を装備」

「? 攻撃力は変わらないんスか?」

「ああ、こいつは別の効果がある。トーマの効果、自身のLCを取り除き相手フィールド上のモンスターの攻守を1000下げる。銀十字を装備している時、その効果は二倍になる!」

「そんな!?」

『Silver Stars Hundred million』

『『シルバー・スターズ・ハンドレッドミリオン!』』

 

銀十字の声に復唱しトーマと、トーマの中にいるリリィが魔法名を唱えた。その瞬間銀十字から大量の紙が出現し、その一枚一枚が光り出し、紙から魔力弾が発射された。トーマ曰く単純なエネルギー弾らしいが、その量が桁違いだ。

 

ステルス・ユニオンA3600・D3000→A1600・D1000

 

「そ、そんな・・・・」

「バトル! トーマでステルス・ユニオンを攻撃」

『『シルバーハンマー!』』

 

A2500 VS A1600

 

ディバイダー996から放たれた砲撃はトーマの効果でボロボロになったステルス・ユニオンの巨体をあっさりと呑み込み破壊した。

 

翔LP2700→1800

 

「ミッドチルダの効果でトーマにLCを移動させる。ターンエンド」

 

LC時空管理局4→3 トーマ0→1

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札0 LP2600

翔  モンスター0 伏せ0 手札0 LP1800

 

「ぼ、僕のターン・・・・」

 

翔の場にはモンスターも伏せも手札もない。十代の様に墓地融合が無いロイドでは、トーマを突破するのは不可能の筈。

 

「何やってんだ翔! お前は俺等の希望なんだ!」

「スカリエッティをぶっ倒せ!」

 

ここだけ聞くとすげえ感動的な場面に見えるが、ロリコン共が嫉妬しているだけだからな。これ程醜い事は無い。

 

「みんな・・・ドロー! 来た! 死者蘇生を発動、特殊召喚するのはスーパービークロイド―ステルス・ユニオン!」

「ここでそれを引くか!」

「ステルス・ユニオンの効果。相手モンスターを装備カードとして装備!」

「トーマの効果を発動。コイツの効果は相手ターンでも使用できる」

『『シルバー・スターズ・ハンドレッドミリオン!』』

 

ステルス・ユニオンA3600→1600

 

銀十字から出現した大量の紙から発生した魔力弾は、その圧倒的な数で翔の場のロイドの攻撃力を奪った。

 

「ック、けどステルス・ユニオンで攻撃が「おっと、俺の場をよく見ろよ?」ッツ、そんな!? どうして新たなモンスターが!」

 

俺の場にはさっきステルス・ユニオンに吸収されてしまったトーマの姿があった。だがさっきまでの姿とは違い、さっきよりも更に攻撃的な恰好をしていた。以前より比べアーマー装着部分が増え、紋様も全身に現れており、左手には銀の盾と刃を纏った物が一緒になった武装を付けている。どこからどう見ても敵キャラの恰好だ。

まあ王様なのはさんとかも完璧悪キャラだし、コイツだけ浮いてるって事はないかな。

 

「銀十字の効果。装備モンスターが自分フィールドから離れた時、デッキからリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマを特殊召喚できる」

 

LSリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマ ☆10/闇/魔法使い/A3000・D2000

 

「そ、そんな・・・・。ターンエンドッス」

「エンドフェイズ、ステルス・ユニオンの攻撃力は戻る」

 

ステルス・ユニオンA1600→3600

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札0 LP2600

翔  モンスター1 伏せ0 手札0 LP1800

 

「で、でもそのモンスターの攻撃力は3000。まだ次のチャンスが「あると思ってるのか?」へ?」

「ドロー! ミッドチルダの効果。時空管理局のLCを黒騎士トーマに移動」

 

LC時空管理局3→2 トーマ0→1

 

「墓地の銀十字の効果。自分フィールド上にトーマが存在する場合、手札を一枚捨てる事によりこのカードを手札に加える」

 

銀十字は手札に存在するカードから魔力を受け取り、俺の手札に戻ってきた。

 

「銀十字をトーマに装備し、トーマの効果。このカードのLCを一つ取り除き、フィールドに存在するこのカード以外のモンスターの攻守を半分にする。そして銀十字を装備している場合、この効果は攻守を0にする効果になる!」

『Divide Zero Eclipse』

『『ディバイドゼロ・エクリプス!』』

 

トーマの周りに禍々しい闇のオーラが纏い、トーマがドクンと揺れた瞬間、この場の空気が揺れてフィールドのモンスターに影響を与える。ディバイドゼロ・エクリプスは結合分断の効果をきわめて広い範囲で発生させるもの。トーマの前では攻撃力だろうが守備力だろうが、敵であろうが味方であろうが関係なく半分になる。そして銀十字がいる為その効力は更に上がる。

 

ステルス・ユニオンA3600・D3000→A0・D0

 

「関係はないが銀十字を装備したトーマの効果。このカードの効果を受けたモンスターが装備カードを装備していた場合、その装備カードは墓地に送られる。

バトル! トーマでステルス・ユニオンを攻撃!」

『『「ディバイドゼロ!」』』

 

ディバイダー996から放たれた砲撃。だがさっきのシルバーハンマーとは違い、貫通威力と効果距離が極めて高い、高レベルの砲撃魔法。最も今はガラクタ同然のステルス・ユニオンに向かっての砲撃なので、向こうから見たら大差ないのかもしれないが。

 

「の、呪ってやるッスぅぅうう!」

 

翔LP1800→-1200

 

最後の台詞が呪ってやる、ってどうかと思うが、それよりも翔のプレイングの向上に驚いた。エクスプレスロイドを使い回せと言ったのは俺だが、まさかここまで短時間でものにするとは思わなかった。やっぱり十代の弟分で亮さんの弟だな。

ただ今回のやる気スイッチに関しては褒めれないが。

 

「遊斗、お疲れ様」

「ありがと。デートの途中にデュエルしてごめんな」

 

フェイトはデートって単語に顔を真っ赤にさせアタフタし、最後には俺の顔を見ない様に顔を俯かせた。

あ~も~、ほんとに可愛いなフェイトは。この可愛さは犯罪レベルだと思う。

 

「う、うん」

「それじゃあ行くか」

 

背中にロリコン共の殺意がヒシヒシと伝わってきたが、俺はそれを無視してフェイトが行きたがっていた場所に向かった。

 

 

 




LSリアクト・エンゲージ―トーマ
(LSリアクト・エンゲージ・トーマから名前変更)

銀十字 装備魔法
このカードは「リリィ」または「トーマ」と名のついたモンスターに装備可能。自分フィールド上に「リリィ」または「トーマ」と名のつくモンスターが表側表示で存在し、このカードが墓地に存在する場合、手札のカード1枚を墓地に捨てて発動できる。墓地のこのカードを手札に加える。
また装備モンスターが「LSリアクト・エンゲージ―トーマ」だった場合、装備モンスターが自分のフィールドから離れた時、手札、デッキ、墓地から「LSリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマ」を特殊召喚する。

LSリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマ ☆10/闇/魔法使い/A3000・D2000
このカードは通常召喚出来ない。「銀十字」の効果で特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、このカードに乗っているLCを1つ取り除いて発動する。このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するモンスターの攻撃力・守備力をこのターンのエンドフェイズ時まで半分にする。「銀十字」を装備している場合、この効果を受けるモンスターの攻撃力と守備力は0にし、効果を受けたモンスターが装備魔法の対象になっていた場合、その装備魔法を墓地に送る。この効果は相手のターンでも使用できる。

連続転移 通常魔法
自分フィールド上のLCを2つ取り除いて発動する。自分のデッキの上からカードを3枚めくり、その中に「LS」と名のつく通常召喚可能なモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。それ以外のカードはデッキに戻してシャッフルする。

時空管理局 永続魔法
「LS」と名のつくモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードに1つLCを置く。この効果は1ターンに2回まで発動できる。

協力防御 通常罠
自分フィールド上に「LS」と名のつくモンスターが表側表示で2体以上存在する時に発動できる。このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になり、このターン自分のモンスターは戦闘では破壊されない。
発動後自分のデッキから1枚ドローする。



今回のオリカは5つ。全部長々と説明すると文字数が多くなるので、ザックリと。

銀十字、クシャノのサルベージ効果と黒騎士トーマを特殊召喚する効果。今回の用にトーマが敵に装備されても出せるのでアブzeroより発動条件は緩い。ただ装備魔法なのが難点。

黒騎士トーマ。この一枚だけでは効果は使えないので、ミッドチルダかカートリッジが無いと効果が使えないのが難点。ただ決して出しにくい訳ではないし、相手ターンにでも効果を使えるのが強み。

時空管理局。LCを溜めるカードが少ないので作りました。破壊無効効果とLC移動効果が無い分、特殊召喚対応+一ターンに二つ乗せれる効果。


連続転移。LSは通常召喚してから始まるデッキなので、その通常召喚が出来ないと辛いので作ったカード。LCが2つが使いにくいかもしれないですけど、条件を満たしていたら複数枚展開できる。デュエルを作る者としてはあると助かるカード。

協力防御
白金さんから頂いたオリカ。そのままだと少し使うのが難しいので、条件付き和睦+一枚ドローにしました。案をありがとうございます。



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第十四話

前回の黒騎士トーマの効果でミスがありました。モンスターの攻守を半分にする効果が永続効果になっていたので、エンドフェイズまで、にしました。申し訳ありません。


それとオリカの案をありがとうございます。感想にハッキリとオリカの件で答えてしまうと、その人に決定している様に見えるので、簡単な文で返しております。長々とオリカの感想やお礼が言えず申し訳ありません。

まだどなたの案にするかは悩み中ですので、オリカの発表はもう少し後になると思います。



もうそろそろ地獄の月一試験。俺は嫌々ながらもなのはさんとヴィータさんから勉強を教わり、月一試験に向けて勉強していた。だが今日は俺のモチベーションを上げる為か、勉強内容はデュエルモンスターズだった。やっぱり好きな科目を勉強するのは楽しい。今まで知らなかったカードのテキストや、マニアックなカードの存在など、デュエルモンスターズの勉強にも限界はない。

二人の教導官が見守る中で勉強しているとピピピとPDAが鳴った。誰からの電話かとチラッと見ると十代から。どうしても気になったので俺は叱られる事を覚悟でPDAを取った。

 

「十代。どうかしたか?」

「何言ってんだよ。明日あのデュエルキング、遊戯さんのデッキを観覧できる日じゃねえか。遊斗も予約券買いに行こうぜ」

「そ、そうだった! すぐ行く! なのはさん、ヴィータさん。この通り!」

 

俺は椅子から降りて土下座で二人に頼んだ。だってデュエルキングのデッキを観覧できるんだぞ! 土下座してでも見る価値はある。

 

『別にいいぞ』

『今日の分の勉強は終ったからね』

 

よっしゃあ! 二人からのお許しも出たので俺は40秒で仕度すると部屋を飛び出す様に出た。こういう時に便利な場所にあるブルー寮はいい。

 

 

 

 

チケット売り場の前で十代と合流し、俺達は勢いよくチケット売り場に入ると、そこは生徒の行列が出来ていた。あっちゃ~、やっぱり並ぶのが遅かったか。

 

「やったッスよアニキー! 遊斗君ー!」

「あれ? どうしたんだ?」

「翔は君達の為に態々長い時間並んで、予約券を掛けたデュエルに勝ったんだよ」

 

翔の隣に見覚えのあるような無いようなイエロー寮の制服を着た男がいた。え~と、確かコイツの名前は・・・・。

 

「マジか。ありがとな翔。三沢も予約券貰ったのか?」

 

そ、そうだ三沢だ。何やっているんだ俺、冬休み前にも家に泊りたいって言ってたじゃないか。いかんな、何故か三沢の名前と顔は覚えにくい。

 

「おい待てよ! チケット三枚はズルイぞ!」

「何言ってるんスか! ちゃんとデュエルに勝ったじゃないですか!」

 

文句を言ってきたのはイエロー寮の生徒。どうやら俺達の分のチケットを掛けたデュエルで翔に負けたらしいが、まだ諦めていないようだ。

 

「さっきのチケットは一人分だ。もう一人分のチケットを掛けてデュエルしろ!」

「いいッスよ! もう一度「翔、ここは俺がデュエルする」遊斗君?」

「なに、俺もデュエルしたいんだ。行くぞ!」

「「デュエル!」」

 

 

 

 

相手、イエロー寮の神楽坂はハッキリ言って弱かった。奴はクロノス先生のコピーデッキを使い、クロノス先生になりきって戦っていたが、やはりコピーはコピー、本物の足元にも及ばなかった。クロノス先生のデッキをコピーした割には俺のライフを1も削れなかった。

三沢曰く、神楽坂は記憶力がよすぎてデッキを作る時に他人のデッキを真似してしまうらしい。これだけ聞いたら可哀そうに聞こえるが、それだけ記憶力がいいんだ。むしろ誇れる事だろ。

俺なんて月一試験の為に毎回毎回鬼教導官殿にしごかれているんだ。

 

「さっすが遊斗君ッス」

「ああ。守りに守ってから攻撃に一転する。綺麗な戦い方だよ」

「初手になのはとミッドチルダが来たからな。あの戦法がとれたのはラッキーだった」

 

やっぱり初手なのはとミッドチルダからのなのはさん率が凄いよな。十代の初手フレイム・ウイングマンぐらいだと思う。

 

 

 

 

その翌日の早朝。いつものようにシグナムさんと打ち合いの練習をしていたらPDAが鳴った。十代からの電話で、せっかくなら遊戯さんのデッキを観覧前に見に行ってみないかというものだった。俺もなるべく早く見に行きたかったので十代の案に乗った。

 

「楽しみだよな、遊戯さんのデッキ」

「お前って遊戯さんファンだからな」

「ああ」

 

俺も遊戯さんの事は好きだし、少なからずファンだ。だが十代は本物のファンって感じで、遊戯さんのポスターや遊戯さんのマニアックな話を知っていたりする。何しろ初代デュエリストであり、三幻神と言われる三枚の神のカードの使い手。俺達の世代は誰もが遊戯さんに憧れを持っていると言ってもいい。

その時だった、観覧室の中からクロノス先生の悲鳴が聞こえた。

 

「ペペロンチーノ!?」

「今のはクロノス先生!?」

「行くぞ遊斗!」

 

観覧室の中には既に明日香、翔、三沢がおり、デッキが置いてある筈の場所にはなにもなく、ガラスケースが割られていた。

 

「まさかクロノス先生が?」

「そんな~。ワタシはやっていないノ~ネ。信じて欲しい~ノ!」

「鍵を持っているクロノス先生がわざわざガラスを割る意味はない。それにそんな事する人でもないし」

 

俺の弁護にクロノス先生は泣きながらコクンコクンと頷いている。十代もクロノス先生の事を良いデュエリストとして見ているので、クロノス先生への疑惑を解いた。

しかしここで盗難事件があるということは、十中八九犯人は学生だろう。そうなるとまだ近くにいる筈だ。

 

「じゃあみんなで犯人を探すか!」

 

十代の声を合図に俺達は部屋から飛びだし、犯人を探しに向かった。

 

 

 

 

「うわーっ!」

「!? あの声は翔!」

 

一人で探索していると突然翔の叫び声が聞こえたので、声のした方に行った。そこにいたのはデュエルに負け地面に横たわっている翔と、昨日デュエルしたイエロー寮の神楽坂。

 

「ハッハッハ! さすが武藤遊戯のデッキ! このデッキさえあれば俺は無敵だ!」

「神楽坂、お前が犯人だったのか!?」

「ブルーのスカリエッティか」

 

神楽坂は俺の方を見るとフッと笑い、デュエルディスクに入っているデッキをうっとりとした表情で見つめる。

 

「俺とデュエルしろ! 勝ったらそのデッキは返してもらう!」

「いいだろう! カイザーを倒したお前を倒せば、俺の実力に皆気付くだろう!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺だ、マジシャンズ・ヴァルキリアを守備表示で召喚」

 

A1600・D1800

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

神楽坂 モンスター1 伏せ1 手札4

 

やけに静かな出だしだな。マジシャンズ・ヴァルキリアは切り込み隊長の魔法使い族バージョンみたいなものだ。つまり魔法使い族があいつを含め二体いたら、あいつにしか攻撃できない。まっ、一体しかいないので意味が無いのだが。

 

「ドロー、リリィを召喚、効果でデッキから銀十字を手札に加える。そして銀十字を捨てデッキからトーマを特殊召喚!」

 

A500・D500

A1000・D1000

 

リリィを一人にしておけないと言わんばかりの勢いでトーマが現れた。相変わらず妬けるね~。

 

「トーマとリリィを融合! 来い、リアクト・トーマ・アヴェニール。効果でLCを一つ置く」

 

A2500・D2500

LCトーマ1

 

なのはさんに続き初手で安定するトーマ。攻撃力は2500と一ターン目ではかなり良い出だしで、二枚で2500の攻撃力低下モンスターはいい。

 

「バトル! トーマでヴァルキリアを攻撃!」

『『シルバーハンマー!』』

 

A2500 VS D1800

 

「攻撃宣言時マジシャンズ・サークル発動。デッキからもう一枚のマジシャンズ・ヴァルキリアを特殊召喚!」

「ック、ヴァルキリアロックか。デッキからはやてを特殊召喚し、効果でLCを一つ乗せる」

 

A2000・D1700

LCはやて0→1

 

『や、八神部隊長。よろしくお願いします!』

『うちは部隊長やないから。はやてでええって前から言っとるやん』

 

はやての登場にトーマはビシッと背筋を伸ばし、綺麗な90度に曲がってはやてに頭を下げた。このやり取りで分かると思うが、トーマは八神はやてという人物が苦手のようだ。俺も詳しくは分からないが、機動六課にいる時下っ端と部隊長という立場だったので、例え相手が子供のはやてでも頭を下げてしまうらしい。

 

「俺は攻撃できない。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札4 LP4000

神楽坂 モンスター2 伏せ0 手札4 LP4000

 

「ドロー、二体のマジシャンズ・ヴァルキリアを生贄に、ブラック・マジシャンを召喚!」

 

A2500・D2100

 

キタッ! 遊戯さんの相棒で伝説のマジシャン、ブラック・マジシャン。そのサポートの多さと、豊富な召喚方法で元々人気が高かったカードだが、遊戯さんがメインカードとして使ってから爆発的人気が出たカード。

生で見て改めて思ったが、やっぱりメチャクチャカッコイイ。はやてもトーマも、トーマの中にいるリリィも遊戯さんのブラック・マジシャンに大興奮している。ただ使っている本人が遊戯さんじゃなくパチモンなのが唯一の不満だ。

 

千本(サウザンド)ナイフ発動。その不良モンスターを破壊する!」

『っな!? 俺は不良じゃ』

「弁解は後でな。その効果にチェーンしてトーマの効果発動、自身のLCを取り除き、相手モンスターの攻撃力と守備力を1000下げる」

『『シルバーバレット!』』

 

トーマは素早くディバイダー996を構えると、銃口に一発の弾丸を溜めてブラック・マジシャンに発射した。だがブラック・マジシャンは少ししか怯まず、千本とまではいかないが大量のナイフを周りに出現させると、トーマに向けて発射した。

人型のモンスターがナイフで串刺しになれるのは流石のソリッドビジョンでもないので、ナイフがトーマに当たる寸前にトーマは破壊された。

 

ブラマジA2500・D2100→A1500・D1100

 

「ブラック・マジシャンの攻撃力を下げて安心してるみたいだが、まだまだ甘いぜ」

 

いや、別に安心してるわけじゃないんだけど。てかその喋り方遊戯さんを真似してるのか? それって遊戯さんじゃなくて、遊戯さんに宿っていたファラオの魂さんの方じゃない?

 

「ブラック・マジシャンを生贄に黒魔導(ブラック)執行官(エクスキューショナー)を特殊召喚する」

 

A2500・D2100

 

あ~、そのモンスターか。ブラック・マジシャン専用のカードだけあり、このカードも人気が高く値段もお高い。恰好はブラック・マジシャンが年を取って偉くなった感じ。通常魔法を使うたびに1000ダメージを与えるから、ぶっちゃけ4回魔法使えば勝てる。

 

「バトル! 黒魔導(ブラック)執行官(エクスキューショナー)で八神はやてに攻撃!」

「攻撃宣言時設置型バインドを発動。黒魔導(ブラック)執行官(エクスキューショナー)の攻撃を防ぎ、はやてにLCを一つ乗せる」

 

LCはやて1→2

 

「ッチ! ターンエンドだ!」

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

神楽坂 モンスター1 伏せ0 手札2 LP4000

 

「ドロー、はやてのLCを取り除きシグナムを特殊召喚。効果で自身にLCを乗せる」

 

LCはやて2→1 シグナム0→1

A1800・D1400

 

「更にシグナムのLCを取り除きツヴァイを特殊召喚! そして場のシグナムとツヴァイを融合。現れろ、祝福の将シグナム。

シグナムの自身にLCを乗せる効果にチェーンしてツヴァイの効果。はやてのLCを一つ取り除き手札に加える」

 

LCはやて1→0 シグナム1

A2700・D2000

 

「まだまだ! ツヴァイを通常召喚し、場のはやてとツヴァイを融合! 現れろ、夜天の主・八神はやて! 効果でLCを二つ置き、LC一つにつき攻撃力300ずつアップ」

 

LCはやて2

はやてA2100・D2000→A2700

 

「攻撃力2700のモンスターが二体!?」

 

シグナムさんは自分の主を守る為にはやてさんの少し前に立ち、目の前の黒魔導(ブラック)執行官(エクスキューショナー)をギロッと睨みつける。後ろ斜めから見るだけでもその瞳に宿る闘志はハッキリと分かる。

 

「シグナムの効果、LCを取り除き黒魔導の執行官(ブラックエクスキューショナー)の攻守を0にする!」

『『捉えよ、凍てつく足枷! フリーレンフェッセルン!』』

 

LCシグナム1→0

執行官(エクスキューショナー)A2500・D2100→A0・D0

 

しかしツヴァイは本当に強いな。古代の機械巨竜からバルバロス、そして黒魔導の執行官(ブラックエクスキューショナー)の超レアで強力なモンスター達の攻撃力0にしているもんな。

 

「バトル! シグナムで黒魔導の執行官(ブラックエクスキューショナー)を攻撃!」

『『紫電一閃!』』

 

A2700 VS A0

 

氷漬けにされた黒魔導の執行官(ブラックエクスキューショナー)に向け、シグナムさんは容赦なく炎を纏ったレヴァンティンで斬り、氷漬けの黒魔導の執行官(ブラックエクスキューショナー)は綺麗に二つになった。

 

神楽坂LP4000→1300

 

「ック、馬鹿な!?」

「これで終わりだ! はやてでダイレクトアタック!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A2700

 

「クリボーを捨てる事により戦闘ダメージを0にする。助かったぜ、相棒」

 

うわ~、すっかり遊戯さんになりきってるな。クリボーも微妙な表情で苦笑いして墓地に行った。

しかしこのターン決められなかったが、ライフでも手札でもフィールドでも勝っている。こんな状態でそうそう負ける筈はないと思うんだが・・・・。

しかし偽物とは言え相手はあの遊戯さんのデッキ。たった一枚のカードで場を逆転してくるかもしれない。

 

「・・・・俺はこれでターンエンド」

 

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札3 LP4000

神楽坂 モンスター0 伏せ0 手札1 LP1300

 

「俺のターン、ドロー! 行くぞ、墓地のマジシャンズ・ヴァルキリアとクリボーをゲームから除外し、カオス・ソルジャー―開闢の使者―!」

 

A3000・D2500

 

かかかかか、開闢!?

マジシャンズ・ヴァルキリアとクリボーの魂を胸に登場したのはカオス・ソルジャーが進化した姿。光と闇の二つの魂を生贄に捧げる事によって現れるカオス・ソルジャーは、少し前までは禁止カードにされていた程強く、緩い召喚条件には似合わず攻撃力3000であり、二つの強力な効果を持つカードだ。言っちゃ悪いがバランスブレイカーだ。

遊戯さん意外ほとんど持っていいないカードで安心した。このカードが出回ると思うと頭が痛くなる。

・・・・って現実逃避している場合じゃない! その頭が痛くなるカードが今目の前にいるんだ!

 

「バトル! 開闢の使者でシグナムを攻撃! 開闢双破斬!」

 

A3000 VS A2700

 

開闢の使者は持っている剣を振ると、衝撃波のようなものが出現した。その衝撃波は次元を引き裂く能力を持っていたのか、シグナムさんのレヴァンティンを呑み込み、シグナムさん本人をも呑み込んだ。

 

遊斗LP4000→3700

 

「開闢の使者の効果を発動。戦闘でモンスターを破壊した時もう一度だけ続けて攻撃できる!」

『「てめぇ! インチキ効果もいい加減にしろ!」』

「お前に言われたくない! はやてに攻撃。時空突刃(じくうとっぱ)・開闢双破斬!」

 

A3000 VS A2700

 

シグナムさんの時と同じように、開闢の使者から放たれた衝撃波ははやてさんを呑み込み、その衝撃が俺を襲った。

 

遊斗LP3700→3400

 

っちょ、本当にたった一枚のカードで逆転されてしまった。嘘だと思いたいがこれが“カオス”と言われるモンスター達の強さ。正直ライトパルサーとダークフレアの効果はもう少し強くするべきだと思う。

 

「モンスターをセット、ターンエンドだ」

 

遊斗  モンスター0 伏せ1 手札3 LP3400

神楽坂 モンスター2 伏せ0 手札0 LP1300

 

攻撃力3000のカオスモンスターってだけでも強いのに、光属性で戦士族で効果二つ持っている。う~ん、流石制限カード。

 

「ドロー。手札のキャロ・ル・ルシエを魔法・罠ゾーンに置く。そしてシャマルを守備で通常召喚。効果でキャロにLCを一つ置く」

 

LCキャロ0→1

シャマルA700・D1800→A1300・D2400

 

「そして速攻魔法フェイクシルエットを発動。デッキのフェイトを墓地に送り、シャマルをフェイトとして扱う。そしてデッキのアルフの効果、キャロのLCを一つ取り除く事でデッキから特殊召喚」

 

地味に使えるフェイクシルエット。この効果でティアナさんを墓地に送ると、実質愚かな埋葬でネクロ・ガードナーを墓地に送るのと同じ扱いになるので、それもまた面白い。

 

「フェイトとアルフを融合! 現れろ、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

クックック、例え開闢だろうと最終進化フェイトさんに勝てるわけがない! 

 

「フェイトを生贄に、迅雷の化身フェイトを特殊召喚! キャロの効果で300アップ」

 

フェイトA3300・D0→A3600・D300

 

『ハァ、最近やけに呼ぶね』

「す、すいません。じゃなくてバトル! フェイトで開闢の使者を攻撃! 容赦するな、フォトンランサーファランクスシフト!」

 

A3600 VS A3000

 

開闢相手に手加減は不要!

フェイトさんはハァとため息をつきながら、パチンと指を鳴らし、フォトンスフィアを大量展開させる。そして指で作った銃で開闢を狙いつける。

 

『ファイア』

 

その声と共にフォトンスフィアから発射された弾丸が全て、開闢の使者に向かった。

 

「ぐわああああああ!」

 

神楽坂LP1300→700

 

開闢を破壊した時の爆風が神楽坂を襲い、彼を数メートル後ろへ吹っ飛ばした。ううむ、やっておいてあれだが、どう考えても開闢へのオーバーキルだ。たった600のダメージでこれだからな。

 

「続いてセットモンスターに攻撃!」

「セットモンスターはメタモルポット。お互い手札が0なのでデッキから5枚ドローする」

 

ッチ、5枚ドローは確かに嬉しいが正直このままの方が良かった。手札を補充されたのは辛い。

 

「カートリッジロードをキャロに発動。キャロにLCが乗った事で更に300ずつ効力がアップ。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、フェイトの効果でデッキからフォトンランサーをセットし、カートリッジロードを手札に加える」

 

LCキャロ0→1

フェイトA3600・D300→A3900・D600

 

遊斗  モンスター1 伏せ3 手札4 LP3400

神楽坂 モンスター0 伏せ0 手札5 LP700

 

さあ、この状況をどうやって突破する?

 

「ドロー、速攻魔法サイクロンを発動。セットしたフォトンランサーを破壊する!」

「それにチェーンしてフォトンランサーを発動。セットしているカードを破壊!」

 

優秀なカードが破壊されるのは辛いな。やっぱり伏せがバレているとピンポイントで破壊されるからな。

 

「死者蘇生を発動、墓地のブラック・マジシャンを特殊召喚! そして黒・魔・導(ブラック・マジック)を発動! お前の魔法・罠を全て破壊する!」

「速攻魔法オプティックハイド発動! 相手の発動したフィールドのカードを破壊する効果を、自分フィールド上に攻守2000のオプティックトークンを特殊召喚する効果に変更する!」

 

あ、危ない危ない。オプティックハイドの効果で黒・魔・導(ブラック・マジック)のカードの絵柄が訓練用大型スフィアへと変わり、その見た目通りの効果を発動した。サイクロンの時に使わなくてよかった。

 

「まだだ! 光と闇の洗礼を発動。ブラック・マジシャンを生贄に、デッキから混沌の黒魔術師を特殊召喚! 特殊召喚成功時、墓地の死者蘇生を手札に加える!」

 

A2800・D2600

 

こんど現れたのはマジシャン・オブ・カオスの上位モンスター。開闢と同じく制限カードであり、召喚成功時に魔法カードを手札に加える事ができるカード。てか遊戯さんは制限カードを結構持ってるな。まあ開闢の時と同じで出回っていないだけマシなのだが。

 

「死者蘇生を発動。墓地のカオス・ソルジャー―開闢の使者―を復活させる!」

 

A3000・D2500

 

・・・・開闢の使者と混沌の黒魔術師って。この二体を目の前にして改めて思った。コイツ等が高価+制限で本当によかった。

な~んて現実逃避している間にも神楽坂は開闢の効果でフェイトさんを除外した。あ~も~、どうしてこうなった?

 

「バトル! 混沌の黒魔術師でダイレクトアタック!」

 

A2800

 

「ここはライフで受ける!」

 

混沌の黒魔術師の持っている杖先から、ミッドチルダ文字によく似た文字を纏った黒い弾丸が出てきた。こ、怖ぇぇええええ。

 

遊斗LP3400→600

 

「とどめだ! オプティックトークンで攻撃!」

「それは無効だ。手札のザフィーラの効果でダメージを0にして一枚ドローする」

「カードを二枚伏せてターンエンド! どうだこの強さ!」

 

遊斗  モンスター0 伏せ2 手札4 LP600

神楽坂 モンスター2 伏せ2 手札0 LP700

 

確かに強いがそれはお前のデッキじゃなく遊戯さんのデッキ。

俺は父さんから貰ったカードを全部詰め込んだデッキが今のデッキなので、デッキの構築を考えた事がないが、10年間このデッキを使っているから愛着は誰にも負けない。だがお前はデッキ構築を考える事もせず、数十分前に手に入れたデッキで喜んでいる。

 

「やっぱりお前にはそのデッキは扱えないよ」

「この状況でそれを言うとはな」

 

俺の今の手札にはあるカードの専用カードが3枚とカートリッジロード。いわゆる事故だ。

だがあのカードを引けばいいだけの事!

 

「ドロー、手札から高町なのはを召喚! 効果でLCを一つ乗せる」

 

なのはA500・D1800→A1100・D2400

LCなのは1

 

「そしてディバインバスターを発動! なのはが場にいる時LCを一つ取り除いてフィールドのカード二枚破壊する。俺はお前の伏せ二枚を破壊!」

 

LCなのは1→0

 

「チェーンして砂塵の大竜巻発動。キャロを破壊する」

 

砂塵の大竜巻によりキャロは破壊されてしまったが、伏せを二枚破壊する事が出来た。因みに破壊したもう一枚のカードは安定と信頼のブラフカードの聖なるバリア―ミラーフォース。神楽坂もブラフとして使ってきたか。

 

なのはA1100・D2400→500・D1800

 

「そして装備魔法レイジングハート・エクシード発動。攻撃力を1500上げる!」

『行くよ、レイジングハート!』

『Yes my muter』

 

なのはA500→A2000

 

「バトル! なのはで開闢の使者を攻撃!」

「馬鹿な!? 攻撃力の低いモンスターで」

「攻撃宣言時A,C,Sを発動! レイジングハートを装備したなのはの攻撃力を2000アップさせる!」

 

なのはA2000→4000 VS A3000

 

「う、嘘だ。俺は最強のデッキを・・・・」

『エクセリオンバスターA、C、S!』

 

本来なら中距離砲撃のエクセリオンバスターだが、A,C,Sを展開する事によって高速突撃をし、エクセリオンバスターを零距離で撃つ一撃必殺の技。

レイジングハートの先端に形成されたストライクフレームが開闢に突き刺さり、そしてエクセリオンバスターが炸裂した。

 

「うわああああああ!」

 

LP700→-300

 

ふぅ、あのドローでなのはを引けて本当に良かったな。俺はデュエルディスクを元の状態に戻し、地面に膝を付けて落ち込んでいる神楽坂の元へ歩いた。

 

「やっぱり俺にはデュエルの才能はないんだ・・・・」

「そんなこと無いぜ!」

 

背中から声が聞こえたのでクルリと振り返ると十代がいた。いや、十代だけじゃない。翔、隼人、明日香、亮さん、クロノス先生、み、み、三沢、それ以外にもアカデミアの生徒がたくさんいた。

 

「遊戯さんのデッキをあそこまで扱えたのは凄いと思うぜ」

「そうよ。あのキングオブデュエリストのデッキなんだから。自慢できる事よ」

「だがな神楽坂。それは遊戯さんのデッキだ、お前のデッキじゃない。今度はお前のお前だけのデッキを作れ」

「スカリエッティ・・・・。分かった! 俺は、俺のデッキで戦う!」

 

その後神楽坂はクロノス先生にデッキを返し、無事今回の事件は解決した。

 

 

 

 

そしてその翌日。

 

「ピケルで攻撃! エクセリオンバスターA,C,S!」

 

・・・・ピケルの攻撃力でその名前は割に合わないと思う。

それになのはの方が100倍可愛いし。

 

 

 




実はこの話、防御カードオリカ募集の時には既に半分以上出来あがっていた話なので新オリカを入れる隙がありませんでした。なので今回は活躍した
祝福の騎士シグナムと夜天の主・八神はやてを改めて紹介。



LS夜天の主・八神はやて ☆8/闇/魔法使い/A2100・B2000
「八神はやて」+「祝福の風リインフォースⅡ(ツヴァイ)」
(融合説明はAOAなのはと同文
このカードが融合召喚に成功したとき、このカードにLCを2つ乗せる。このカードの攻撃力はこのカードにのっているLCの数×300ポイントアップする。自分フィールド上に「夜天」または「祝福」と名のついたカードが存在する場合、相手はこのカードを攻撃対象にすることができず、効果の対象にできない。

LS祝福の騎士シグナム ☆7/風/魔法使い/A2700・D2000
「夜天の将シグナム」+「祝福の風リインフォースⅡ(ツヴァイ)」
(融合説明はAOAなのはと同文
このカードが融合召喚に成功したとき、このカードにLCを1つ置く。1ターンに1度、このカードに乗っているLCを1つ取り除き発動できる。相手フィールド上のモンスター1体を選択し、選択したモンスターの攻撃力と守備力を、次の相手のエンドフェイズ時まで0にする。




どちらも中々強力な効果を持っています。起動効果のシグナムは相手の攻撃力を0にする効果。もし攻撃に失敗しても攻守が戻るのは次の相手のエンドフェイズまで。ライフ4000の世界では攻撃が決まったら半分以上削れるのは強く、よくフィニッシャーになる。
次に永続効果を持つはやて。元々LCを2つ乗っているのに加え、LCが溜まればさらに攻撃力がアップする。一個乗せて3000打点で効果対象に出来ない状態にすると、かなり心強い。召喚成功時に乗るLCを利用して更にツヴァイを過労死させるのも手。


因みにオリ主の開闢への反応は、私が思っている事をそのまま書いています。
ミラフォは添えるだけ。


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第十五話

今回は三つ巴デュエル(1対1対1のサバイバル)です。
普段とは違うデュエルでタッグデュエルより苦戦しました。


それと結構前なのですが禁止について感想で聞かれた事があるので、この小説の制限について伝えようと思います。
この小説には基本制限カードや禁止カードについては決めていません。また、GXで使われたアニメオリカも縛っていません。
しかし天よりの宝札や命削りの宝札、第六感など、一枚で異様な枚数をドロー出来る禁止カードは誰であろうと使いません。ただどうしても手札枚数が一枚足らなくなったりするので、極力使わないようにしますが強欲な壷や天使の施しは使用させて下さい。また、十代のバブルマン効果は手札消費の激しい十代にはどうしても必要不可欠なので使います。

上記の理由としては
手札0でピンチだ→このドローに全てを掛ける→天よりの宝札で補充→デュエルに勝利
と言うパターンを縛る為です。一度やってしまうと、ただでさえバブルマンや強欲な壷に甘えている作者自身がそのパターンに甘えてしまうかもしれないので。

なので禁止ドローカードを使って他の禁止カードを縛るのではなく、例え禁止カードを使っても禁止ドローカードは使わないのが方針です。


凄く曖昧な説明で申し訳ありません。


とある日、今日も今日とて十代達と購買に来ていた。目的は勿論大人気のドローパン。色んな味があるが、俺が一番好きなのはやっぱり黄金の卵パン。と言っても俺は一度も当てた事がなく、十代と掛けデュエルをして勝つ事で黄金の卵パンを譲ってもらっている。因みに俺が負けた時はパックを買っている。

そして前回俺が勝ったので十代が当てた黄金の卵パンをモグモグと食べていると、校内放送が流れた。

 

「ブルー寮一年の遊斗・スカリエッティ君。レッド寮一年の遊城十代君。校長室まで来てください」

「あれ? 俺等何かやったっけ?」

「さあ? でもデュエルの匂いがするぜ。行こう遊斗!」

「ちょっ、ちょっと待て。後もう少しで食い終るから!」

 

 

 

 

校長室に入るとそこには当然校長先生、そしてクロノス先生とイエロー寮の受験番号一番。え、え~と確か名前はみ、み・・・・。

 

「あれ? 三沢も呼ばれたのか?」

 

そ、そう三沢だ。悪いな三沢。どうもお前の顔と名前は覚えにくい。

しかし真面目な三沢が呼ばれているとなると、どうやらこの間のような制裁デュエルってわけでもないらしい。まあ俺等は別に悪い事してないし。

 

「実は今度ノース校との代表デュエルがあるんだが、君たちにその代表になってもらいたくて」

「へ? 代表って三人なんですか?」

「違う~ノ。今からシニョ~ル達には、三つ巴デュエルをしてもらい、勝者一名が代表になってもらう~ノ」

 

三つ巴デュエル? つまり1対1対1のデュエルってことか。小学校高学年の時、クラスで同じ変則デュエルが流行っていたが、友達がいなく仲間外れにされていた俺は初めてのデュエルだ。

こういうデュエルが出来るのもデュエルアカデミアの魅力だよな。ま、まあ今の俺は友達が沢山いるから、学校行事じゃなくても出来るけどな。

 

「異論はないですな?」

「「「はい!」」」

 

 

 

 

それぞれの寮の新入生代表が三つ巴デュエルをする。その噂はあっという間に学校全体に広まった。最初は三つ巴デュエルの事をを知っている数人と、校長先生とクロノス先生だけが見学する予定だったが、全校生徒の半分以上が見に来ていた。なんか一気にプレッシャーが掛かってきたぞ。

三つ巴デュエルの事を聞いたブルーのクラスメイトが「レッドとイエローなんかに負けるなよ」って言ってきたし。応援してくれているのは嬉しいんだが、もう少しプレッシャーを掛けない応援にしてほしかった。

さて、気持ちを落ち着かせるために三つ巴デュエルのルールをもう一度思い出そう。と言っても最初のターン以外は普通のデュエルと変わらない。

A、B、Cのプレイヤーがいて、A、B、Cの順にターンが進んでいくとすると、攻撃できるのはCから。また大嵐やメタモルポットの様なカードは全プレイヤーに影響を受け、ライトニングボルテックスの様なカードは相手プレイヤー二人に影響を与える。Aの攻撃宣言時、Bがモンスターを特殊召喚して巻き戻しが起こった場合、AはCを攻撃する事も出来る。

三つ巴デュエルと言うだけあり、誰か一人を集中して狙うのもあり、ひたすら守り漁夫の利を狙うのもありだ。

 

 

「そう言えば三沢と戦うのはこれが初めてだな」

「ああ、君と十代。二人のデッキを研究して作り上げたデッキを見せてやる」

「イエロー一年代表と、ブルー一年代表を同時に相手出来るなんてワクワクするぜ!」

「「「デュエル!」」」

「先攻は俺から貰うぜ、ドロー! やっぱコイツで補充しないとな。バブルマン召喚、デッキから二枚ドロー」

 

A800・D1200

 

やっぱりバブルマンは強力だな。強欲な壺や天使の施しの所為で影が薄く、俺も十代が使っているのを見て初めて知ったカードだが、やはり1:2カード。おまけに十代はドローするだけじゃなく、そこから展開してくる。

 

「手札から融合発動。場のバブルマンと手札のクレイマンを融合。マッドボールマン!」

 

A1900・D3000

 

融合の渦から現れたのはクレイマンが更に丸くなり大きくなった姿。ハッキリ言うとHEROとは思えないダサさだ。効果は無いが、バブルマンが守備力3000の壁モンスターになったと思うと悪くは無い。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

十代 モンスター1 伏せ1 手札4

 

「遊斗、次は君に譲ろう」

「お? なら遠慮なく。ドロー、永続魔法時空管理局発動。そしてなのはを召喚。効果でLCを一つ乗せる」

 

A500・D1900

LCなのは1

 

「なのはの効果発動。十代の伏せを破壊する!」

「破壊されたのはヒーロー・メダル。相手によって破壊された時このカードをデッキに加え一枚ドローする」

 

流石十代と言わざるを得ない。

だがこっちも伏せ破壊にはそこまで狙っている訳でもなかったし、なのはさんの召喚を邪魔するカードじゃないならそれでいい。

 

「手札からカートリッジロードを時空管理局に発動。そして時空管理局のLCを取り除きユーノを特殊召喚。

場のなのはとユーノを融合! 現れろ、AOA高町なのは! 時空管理局にユーノとAOAなのはの分のLCが乗る」

 

A1000・D3000

LC時空管理局0→2

 

やっぱりなのはさんは頼りになる。序盤になのはさんをいかに守りアドバンテージを稼いでいくかがポイントだ。と言うかなのはさん以外には夜天の書ぐらいしかハンドアドバンテージを稼ぐカードが無いから、なるべく早いうちに出さないとあっという間に息切れする。協力防御とかフォーメーションチェンジは1:1だから。

 

「なのはの効果でザフィーラを手札に加え、カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札3 LP4000

十代 モンスター1 伏せ0 手札5 LP4000

 

「俺のターン、十代の場には守備力3000、それに比べ遊斗の場には攻撃力1000のモンスターか」

「通ると思うなら攻撃して来いよ」

「ッフ、そうだな。ハイドロゲドンを召喚」

 

A1600・D1000

 

三沢の場に現れたのは濁った水で造られた恐竜。あのモンスターは中々面白い効果を持っており、戦闘で相手モンスターを破壊した時同名カードを特殊召喚できる。戦闘破壊が発動条件だが、発動で斬れば一気に同名カードを並べる事ができる。

 

「バトル! ハイドロゲドンでAOA高町なのはを攻撃! ハイドロ・ブレス!」

「おっと、罠発動。フォーメーションチェンジ。なのはを守備にして一枚ドロー。この戦闘で発生する戦闘ダメージは0だ」

 

A1600 VS D3000

 

ハイドロゲドンは口から濁った水を発射したが、なのはさんのシールドにより弾かれた。守備表示の限りなのはさんがあんな水鉄砲に負けるわけない。

 

「ふむ、そのパターンで来たか。カードを三枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札4 LP4000

十代 モンスター1 伏せ0 手札5 LP4000

三沢 モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

 

最初のターンはお互い様子見って所か。最後のターンプレイヤーの三沢は攻撃したが、モンスターの数とライフの変更はなかったが、次は一番手札が多い十代。動いてくる筈だ。

 

「ドロー、スパークマンを召喚。そして装備魔法スパークガンを発動! 効果でAOA高町なのはの表示形式を変更する!」

「ッツ、嫌らしい事するな・・・・」

 

三沢には特に動きは無いか。今の十代の行動は完全に俺を狙っている。例え動けたとしても動く必要はないか。

 

「マッドボールマンを攻撃表示にしてバトル! スパークマンでAOA高町なのはを攻撃!」

「それを通すわけにはいかない! ソニックムーブを発動し、なのはをエンドフェイズまで除外!」

「ならダイレクトアタックだ!」

 

A1600

遊斗LP4000→2400

 

「マッドボールマンでハイドロゲドンを攻撃!」

「攻撃宣言時速攻魔法突進を発動! ハイドロゲドンの攻撃力を700アップする」

「何!?」

 

ハイドロゲドンA1600→A2300 VS A1900

 

「返り討ちだ!」

 

ハイドロゲドンから放たれた濁った水がマッドボールマンの巨体を貫通し、十代にダメージを与えた。あの巨体を倒すってどんだけ威力強いんだよ。効果抜群って事か? ハイドロゲドンを出したからひょっとしたらとは思っていたが、やっぱりコンバットトリックカードを入れていたか。

 

十代LP4000→3600

 

「ハイドロゲドンの効果でデッキから同名カードを特殊召喚する」

「融合回収を発動して融合とバブルマンを手札に加える。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「俺の場になのはが帰ってくる」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP2400

十代 モンスター1 伏せ2 手札4 LP3600

三沢 モンスター2 伏せ2 手札2 LP4000

 

「ドロー、なのはを守備にして効果でデッキからシャマルを手札に加える」

 

あの三沢の伏せだが、おそらくコンバットトリックカードがあと一枚くらいある筈だ。そう思ってシャマ姉を手札に加えたわけだ。幸いあのカードも来ている。

 

「シャマルを召喚。効果で時空管理局にLCを乗せ、カードリッジロードを発動して更にもう一つ乗せる」

 

時空管理局LC2→4

 

「デバイスマイスターを発動。レイジングハートを手札に加え、時空管理局のLCを二つ取り除きツヴァイを手札に加える」

 

LC時空管理局4→2

 

「そして時空管理局のLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚、時空管理局の効果でLCが乗る。

場のシャマルとツヴァイを融合。来い、祝福の癒し手シャマル。ツヴァイの効果で時空管理局のLCを取り除き手札に加え、時空管理局自身の効果でLCを乗せる」

「強力な永続魔法だな。これだけのやり取りをしてカウンターの消費が無いとは」

 

LC時空管理局2

 

まあシャマ姉とカートリッジのLCを溜める手段が二つあるからこその大盤振る舞いだが、これ一枚でもLCの持久力はグンと上がる。父さんも偶には良い仕事する。

 

「シャマルの効果で時空管理局にLCを置き、シャマルを生贄に捧げる! 来い! ホーリーカタルシス・シャマル!」

 

王様はやてさんの時と同じく、アニメーションが変わっていた。ソリッドビジョンに映っているカードの中から巨大な水の球が現れた。その中には眠っているシャマ姉がおり、ピチョンと球が揺れた瞬間に目を開いた。刹那、巨大な水の球は破裂し、クラールヴィントがシャマ姉を守る様に回り始めた。

 

A2000・D3000

 

「ッゲ、そのモンスターは・・・・」

 

ホーリーシャマ姉の姿を見て十代は嫌そうな声を出した。確かにホーリーシャマ姉の防御力と持久力はかなりのものだし、それに加え時空管理局の様なLCが溜まりやすいカードが場にあると更に厄介だろう。俺には最高の護りだ。

 

「シャマルの効果で自身にLCを2つ置く」

 

LCシャマル0→2

 

「そしてシャマルの効果。俺の手札の枚数×300俺のライフを回復し、その数値分お前たちにダメージを与える。俺の手札は4枚、1200のダメージだ!」

『戒めの鎖!』

 

俺の四枚の手札からそれぞれ出現した棘を持った痛々しい鎖が、十代と三沢の体を貫通した。そしてその鎖にシャマ姉がキスを落とすと、鎖が光の粒子となり俺のライフを回復する。

 

遊斗LP2400→3600

十代LP3600→2400

三沢LP4000→2800

 

「AOA高町なのはとそのカードが並ぶと巨悪だな。対象を十代から遊斗にしなければ」

「そう簡単に攻撃させるかよ! レイジングハートをなのはに装備!」

 

A1000→2500

 

「バトル! シャマルでハイドロゲドンを攻撃!」

「通すしかない」

 

A2000 VS A1600

 

『眼下の敵を撃ち砕く力よ、今ここに現出せよ! 破壊の雷!』

 

シャマ姉の周りを回っている二つのクラールヴィントの回転速度が上昇し、バチバチと音を立て始めた。クラールヴィントの回転速度により次第に風が吹き始め、男である十代と三沢でさえ踏ん張らないと飛ばされそうな程の風。そしてその風が何の前触れも無くピタッと止まった瞬間、ハイドロゲドンの上空から雷が降ってきた。

 

三沢LP2800→2400

 

とても攻撃力2000のアニメーションとは思えないが、最終形態は皆派手なので攻撃力は関係ない、って父さんが言っていた。

 

「なのはでスパークマンを攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

A2500 VS A1600

 

「ク~、流石遊斗。三つ巴デュエルでも強いな」

 

十代LP2400→1500

 

よし、あっという間にスパークマンのダイレクトアタック分を取り戻せた。って言ってもライフの優先度は低い、が俺の持論だが。

 

「ターンエンド。エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える」

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札4 LP3600

十代 モンスター0 伏せ1 手札4 LP1500

三沢 モンスター1 伏せ2 手札2 LP2400

 

結構良い状況だが、俺の手札はカートリッジロードとザフィーラとツヴァイとフィジカルヒール。フィジカルヒール以外は全部サーチしたカードで単体じゃどうにもならないカード。サーチメインでハンドを稼ぐと、どうしても手札内容が相手にバレてしまうんだよな。フィジカルヒールもホーリーシャマ姉がいる時はセットするより手札に持っていた方がいいだろうし。

十代は覚えているかどうか微妙だが、三沢は間違いなく俺の手札三枚を覚えているだろう。

 

「ドロー! 速攻魔法手札断殺を発動、それぞれ手札を交換だ」

 

ラッキー。ツヴァイとカートリッジロードをサーチしておいてよかった、フィジカルヒールはデュエルが続いたら逆転の一手になるかもしれないので取っておこう。

ツヴァイには申し訳ないけど本人も気にして無いみたいだし。精霊が優しいとデュエルもより一層楽しくなるな。コストにしたり手札交換したりする度に怒られると思うと、胃が痛くなりそうだ。

 

「ゴブリンのやりくり上手を発動し、チェーンしてゴブリンのやりくり上手を発動」

 

あれ? 嫌な予感しかしないんだが。

 

「それにチェーンして非常食を発動! 二枚のやりくり上手を墓地に送る」

「? 三沢はなにやってるんだ?」

「まさかさっきの手札断殺で三枚目のやりくり上手が!?」

「ああ、その通りだ。十代に分かる様に説明しよう。ゴブリンのやりくり上手は墓地の同名カードの数+一枚デッキからドローして手札の一枚をデッキの一番下に戻すカード。

まずチェーン3の非常食の効果でライフを2000回復、その後チェーン2のやりくり上手の効果でデッキから四枚ドローし一枚をデッキの一番下に、そしてまた四枚ドローして一枚をデッキの下に戻す」

「み、三沢の手札が七枚に」

 

これがやりくりターボと言われるコンボ。悪夢の蜃気楼の劣化版と言われているこのコンボだが、悪夢の蜃気楼よりドロー枚数が多い為、よりコンボパーツを集めやすくなったり、いざという時のライフ回復には持って来いのコンボだ。

普段能天気な十代も口をポカンと開けており、しばらくした後「俺もやってみようかな」って言ってる。冗談じゃない、お前がやりくりターボを入れたら、初手で揃ってしまう。

 

三沢LP2400→4400

 

「やりくりターボか。ハイドロゲドンとの効果に相性良いって事ね」

「その通りだ。そしてこれが俺の切り札、死者蘇生を発動! 墓地のハイドロゲドンを特殊召喚。そしてオキシゲドンを召喚」

 

A1800・D800

 

「そしてボンディング―H2Oを発動! 場のハイドロゲドン二体とオキシゲドンを生贄に、デッキからウォーター・ドラゴンを特殊召喚!」

 

二個の水素原子と一個の酸素原子を合わせた事で生まれたのは水で出来たドラゴン。化学式と同じ召喚条件を持つドラゴンは、三沢にピッタシだ。

 

A2800・D2600

 

「バトル! ウォーター・ドラゴンで十代に攻撃!」

「ヒーロー見参発動。俺の手札の中から一枚選択して、それがモンスターだった場合特殊召喚する。さあ、俺の手札は4枚もあるぜ」

 

ここで三沢が何を選ぶかで戦況が大きく変わるな。一番引いてはならないのは融合回収で手札に加えたバブルマン。また二枚ドローされたらたまったものじゃない。

まっ、いくら十代でも四分の一を相手に引かせるなんて・・・・。

 

「一番右のカードを選ぶ」

「このカードはバブルマンだ。守備表示で召喚し、デッキから二枚ドローする」

 

・・・・ですよねぇ~。珍しく十代が手札を温存していると思ったらヒーロー見参だったか。てかバブルマンを引いてくれると読んで他に何も伏せなかったのかよ・・・・相変わらずだ。

 

「モンスターが増えたから巻き戻しが起こる。ウォーター・ドラゴンでAOA高町なのはを攻撃!」

「そっか、そうする事も出来るのか。シャマルの効果、フィールドのモンスターが離れる代わりにLCを二つ取り除く。時空管理局のLCを二つ取り除く」

「だが戦闘ダメージは受けてもらう!」

 

A2800 VS A2500

遊斗LP3600→3300

LC時空管理局2→0

 

「カードを四枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札4 LP3300

十代 モンスター1 伏せ0 手札5 LP1500

三沢 モンスター1 伏せ4 手札0 LP4400

 

ガン伏せですね三沢君。あの伏せを突破できる自身が俺にはないな。

 

「ドロー! ミラクル・フュージョンを発動。墓地のスパークマンとクレイマンを融合。来い、サンダー・ジャイアント! 効果で手札を一枚捨てシャマルを破壊!」

 

A2400・D1500

 

「シャマルの効果! 自身のLCを二つ取り除き破壊を無効にする!」

『風の護盾』

 

シャマルLC2→0

 

サンダー・ジャイアントが両手を上げてその両腕に雷を宿すと、シャマ姉に向かって放出。だがシャマ姉から出された盾によりその攻撃は無効化された。

 

「E―エマージェンシーコールでデッキからエッジマンを手札に加え、墓地のネクロダークマンの効果で召喚。手札のH―ヒートハートを発動し、サンダー・ジャイアントの攻撃力を500アップ!」

 

A2600・D1800

サンダーA2400→2900

 

「バトル! サンダー・ジャイアントでウォーター・ドラゴンを攻撃!」

「攻撃宣言時罠発動、リビングデッドの呼び声。墓地のクリッターを蘇生。更に蘇生したクリッターを生贄に暴君の威圧を発動。クリッターの効果でデッキからメタモルポットを手札に加える」

「? バトル続行! サンダー・ジャイアントでウォーター・ドラゴンを攻撃!」

「攻撃宣言時に永続罠、DNA改造手術を発動! フィールドの全てのモンスターの種族を炎族にする。そしてウォーター・ドラゴンの効果によりフィールドの炎族の攻撃力は0になる!」

 

なるほど! 暴君の威圧はこういう事だったのか。暴君の威圧は、自分のモンスターはこのカード以外の罠を受けなくなる効果を持つ。つまりDNA改造手術による効果は受け付けず、ウォーター・ドラゴンは元の種族のまま。俺達のモンスターだけが炎族になり攻撃力が0になる。

 

シャマルA2000→0

なのはA2500→0

エッジマンA2600→0

サンダーA2900→0

バブルマンA800→0

 

「んな!? そ、速攻魔法収縮を発動。ウォーター・ドラゴンの攻撃力を半分にする!」

「そんなカードを持っていたか。だが返り討ちだ! アクア・パニッシャー!」

 

ウォーターA2800→1400 VS A0

十代LP1500→100

 

「ック、ホープ・オブ・フィフスを発動。墓地のマッドボールマン、サンダー・ジャイアント、バーストレディ、ネクロダークマン、フェザーマンをデッキに戻し二枚ドロー。

カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札4 LP3300

十代 モンスター2 伏せ2 手札0 LP100

三沢 モンスター1 伏せ4 手札1 LP4400

 

この状況非常に厳しいな・・・・。いや、だけどホーリーシャマ姉がいる。地道にバーンダメージで稼いで行こう。

 

「ドロー! シャマ「スタンバイフェイズにエッジ・ハンマーを発動する」へ?」

「エッジマンを生贄にホーリーカタルシス・シャマルを破壊し、その攻撃力分遊斗にダメージを与える」

 

エッジマンはホーリーシャマ姉に突進してき、その手に付いている鎌の様な物を勢いよく振り下ろし、どういうわけかホーリーシャマ姉と一緒に爆発した。うん、どういうわけだよ。

にしてもLCが無いタイミングを狙ってきたか。これは予想できなかった。

 

「しかも攻撃力0のエッジマンを墓地に送りつつとは、やるな十代」

 

遊斗LP3300→1300

 

「なのはを守備表示にして効果「永続罠スキルドレイン発動」貴様ぁぁあああ」

 

三沢LP4400→3400

 

お前らさっきから俺の邪魔ばかりしやがって! ク、クールになるんだ俺。幸い攻撃力が0になってしまったなのはさんは守備表示のまま。それに三沢のウォーター・ドラゴンではなのはさんの壁を突破できない。三沢自身メタモルポットの効果を欲している。ここは俺もカードを使おう。

 

「キャロを魔法・罠ゾーンに置く。こいつは魔法カード扱いだから効果は無効にならない」

 

なのはA0・D3000→A0・D3300

 

「カードを2枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ5 手札2 LP1300

十代 モンスター1 伏せ1 手札0 LP100

三沢 モンスター1 伏せ4 手札1 LP3400

 

「ドロー! モンスターをセットし太陽の書を発動。メタモルポットを表側攻撃表示にし、手札を全て捨てデッキから5枚ドローする」

 

クソッ、メタモルポットの効果発動が遅いのをカバーしてきたか。手札のザフィーラさんが墓地に行ってしまった。

 

「手札からリトマスの死の儀式を発動。手札の暗黒(ダーク)ドリケラトプスとメタモルポットを儀式の生贄に捧げ、リトマスの死の剣士を召喚」

 

A0・D0

 

次に現れたのは長いマントをし、頭にリトマス紙が付いた兜を被っている妙な騎士。俺も初めて見るカードでどういう効果かは分からないが、三沢のデッキが異常に重たいと言うのは分かる。儀式にウォーター・ドラゴンに暴君の威圧コンボって・・・・。

 

「リトマスの死の剣士は罠の効果を受けず、自分フィールド上に永続罠がある場合攻撃力が3000になる! そして団結の力をウォーター・ドラゴンに装備」

 

リトマスA0→A3000

ウォーターA2800→4400

 

「オイオイオイ。洒落にならんぞ!」

「バトル! リトマスの死の剣士でバブルマンを攻撃!」

 

A2800 VS D1200

 

「これで終わりだ!「ヒーローシグナルを発動」何だと!?」

「デッキからフェザーマンを特殊召喚する。さあ? どうする?」

「・・・・ウォーター・ドラゴンでAOA高町なのはに攻撃!」

「レイジングハート・エクシードの効果、装備モンスターの変わりにこのカードを破壊する」

「しまった! 数を減らせなかったか・・・・。俺はこれでターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター1 伏せ4 手札5 LP3300

十代 モンスター1 伏せ0 手札5 LP100

三沢 モンスター2 伏せ5 手札1 LP3400

 

「ドロー! 異次元からの埋葬を発動。クレイマンとスパークマンを墓地に戻す。O―オーバーソウルを発動、スパークマンを復活させ、ワイルドマンを通常召喚。そしてR―ライトジャスティスを発動! 暴君の威圧と遊斗の伏せ一枚とキャロを破壊する!」

「ッツ、暴君の威圧が無くなった事でウォーター・ドラゴンはスキルドレインの効果を受けモンスターの攻撃力が元に戻る」

「俺の破壊されたカードは鋼の軛。なにもない」

 

なのはA0・3300→A1000・D3000

スパークマンA0・D1400→A1600・D1400

フェザーマンA0・D1000→A1000・D1000

 

「墓地のH―ヒートハート、E―エマージャンシーコール、R―ライトジャスティス、O―オーバーソウルをゲームから除外してヒーローフラッシュを発動! デッキからバーストレディを特殊召喚し、このターン通常のHEROはダイレクトアタックが出来る!」

 

A1200・D800

 

「なんだと!?」

「スパークマン、フェザーマン、バーストレディで三沢にダイレクトアタック!」

 

ヒーローフラッシュの効果で輝きを持ったHERO三人がリトマスの死の剣士とウォーター・ドラゴンの壁を越え、三沢に電気、風、炎の攻撃が炸裂した。

 

「馬鹿なぁぁああ!? 俺は完ぺきなコンボをっ!」

 

三沢LP3400→-400

 

「三沢のライフが0になったからこれでスキルドレインは消えた。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札5 LP1300

十代 モンスター4 伏せ1 手札0 LP100

 

「残念だったな十代。三沢じゃなくて俺を狙っておくべきだった」

「そんなことやってみなくちゃ分からねえぜ?」

「ドロー! なのはの効果、デッキからはやてを手札に加える」

 

これで手札は7枚。その伏せがどんな伏せかは分からないが、一気に決める!

 

「魔力高炉を発動し、そのLCを生贄にはやてを召喚。効果でLCを乗せる」

 

A2000・D1700

LC魔力高炉2→1 はやて1

 

「はやてのLCを取り除きヴィータを特殊召喚、ヴィータ自身と時空管理局にLCが乗る。

ヴィータのLCを取り除きシグナムを特殊召喚。自身と時空管理局にLCが乗る」

 

A1800・D1400

A1900・D1200

LCはやて1→0 時空管理局0→2 シグナム1

 

「ややこしいな~」

 

それには同感する。元々ヴォルケンリッターのLCが乗る効果はややこしいし、それに加え時空管理局の効果で更にLCが乗る。俺もこのデッキを貰ってすぐの頃は良く混乱していたのを今でも覚えている。

なんて昔の事を思い出している場合じゃなくて、今はデュエルだ。

 

「そしてシグナムのLCを取り除きアギトを特殊召喚」

 

LCシグナム1→0

 

「場のシグナムとアギトを融合! 来い、烈火の剣神シグナム! 召喚成功時の破壊効果は使わない」

 

A3000・D2000

 

「はやての効果で時空管理局のLCを取り除き二回攻撃を可能にする!」

 

LC時空管理局2→1

 

これが後先考えずにワンショットを狙う勢いの回し方。さあ、その一枚でどうやって防ぐ?

 

「バトル! シグナムでフェザーマンを攻撃!」

 

A3000 VS A1000

 

「最後の最後でミスをしたな。ドレインシールドを発動! 俺のライフを3000回復する」

「ッフ、なるほどな」

 

フェザーマンに向かって斬りかかったシグナムさんの動きは、突如現れた半透明なシールドにより防がれ、本来ならダメージになる衝撃が十代のLPを回復した。やはりLP回復のカードだったか、てっきりエレメントチャージかと思い、剣神シグナムさんの効果を使わなかったんだが失敗だったみたいだ。まっ、結果は同じになるんだが。

 

十代100→3100

 

「はやてとヴィータの攻撃が残っている。はやてでフェザーマンとバーストレディに攻撃!」

『ディアボリック・エミッション!』

 

A2000 VS A1000

A2000 VS A1200

 

シュベルトクロイツの矛先に集められた黒の魔力は、次第に大きくなっていき、はやてがフェザーマンとバーストレディの方へシュベルトクロイツを向けると共に、二体のHEROの元に発射され爆発した。

 

「ック!」

 

十代LP3100→1300

 

「ヴィータでスパークマンを攻撃!」

『テートリヒ・シュラーク!』

 

A1900 VS A1600

 

スパークマンは手からフラッシュを放ったがヴィータさんには通用しない。持ち前の強力な防御力で攻撃から身を守ると、スパークマンの頭にグラーフアイゼンを打ち込んだ。

 

十代LP1300→1000

 

「よしっ。何とか耐えた!」

「十代、俺が倒したモンスターを言ってみろ」

「へっ? スパークマンとフェザーマンとバーストレディだろ?」

 

まだ気付かないかコイツは。

 

「上から順にレベルを言ってみろ」

「? スパークマンが4でフェザーマンとバーストレディが3・・・・合計10って!?」

「その通りだ。エンドフェイズ墓地のアギトの効果発動。このターン破壊した相手モンスターのレベル合計×100ダメージを与える」

『ブレネン・クリューガー!』

 

10個の火の弾を展開したアギトは、弾丸の核として使っている物質に着火させて発射した。その10個の弾丸が十代を守っているワイルドマンを飛び越し、十代にバーンダメージを与えた。

 

「嘘だろぉぉぉおお!?」

 

十代LP1000→0

 

【うぉおおおおおおお!】

「やったなスカリエッティ!」

「お前はブルーの誇りだ!」

「やっぱりレッドやイエローになんかに負けるわけない!」

 

大歓声と共に会場に響いたのは俺を褒めてくれるブルーの同僚達。へへっ、昔無視されたりしたけど、こうしてみんなに認めてもらえてよかった。もし負けていたかと思うとゾッとする。

最も俺の伏せていたカードはフィジカルヒール。仮に十代からのダイレクトアタックが俺に来ても負ける事は無かったし、手札的に三沢を倒す方法もあった。

 

「遊斗君、十代君、三沢君素晴らしいデュエルでした。では勝者の遊斗君がノース校との代表デュエルに出てもらいます」

「はい!」

 

他校とのデュエル。どんな相手が待っているかは分からないが、ワクワクが止まらない!

 

 

 




今回の話も前の段階から大まかなデュエルの進みは決めていたのでオリカはありません。
なので今回はこの小説最も出番の多いこのカード
AOA高町なのはについて紹介。

LSA(エース)O(オブ)A(エース)高町なのは ☆8/光/魔法使い/A1000・D3000
「高町なのは」+「ユーノ・スクライア」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードを攻撃表示に変更し、自分のデッキからレベル5以下の「LS」と名のつくモンスターを手札に加えることができる。




作者自身はこのカードが一番チートと思っています。出しやすさ、スバルやザフィーラ、エリオと言った手札から発動できるカードがあり、それらのカードを釣ってこれる便利さ。意味はありませんががB地区との無限ループを防ぐために一ターンに一度となっています。
守備力は3000と十分すぎるほどのステータスですが、守備力よりも効果を優先してしまうのでどうしても攻撃表示の状態で返しのターンが来てしまいますので、今回オリ主が言った通り、いかになのはさんを守るかがカギになると思います。
因みにこの効果は、教導官として前線で戦えるレベルまで育てる、って意味で作ったので、AOAより教導官の方が良かった気がします。


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第十六話

お気に入り200突破記念でやったオリカの案、無事まとまり今回から使う事にしました。
沢山の方に案を頂きました。中にはどうしても三枚とのシナジーが無かったり、効果の使い方が難しかったりして、採用できない案もありましたが、それらの案もとても参考になりました。
本当にありがとうございました。

では早速三王娘オリカの紹介です

オカ ワタルさん名前案 白金さん案

LS迷い子ヴィヴィオ ☆1/光/魔法使い/A0・D0
自分フィールド上に「なのは」または「フェイト」と名のつくモンスターが存在しない時、フィールド上に表側表示で存在するこのカードを手札に戻す。

LS聖王ヴィヴィオ ☆7/光/魔法使い/攻?・守?
「LS迷い子ヴィヴィオ」+「ロストロギア・レリック」
フィールド上に「なのは」または「フェイト」と名のつくモンスターが存在する時、このカードは自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地に送り、融合デッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードの特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から「聖王の鎧」1枚を選択し、手札に加える。また手札に加えた「聖王の鎧」を装備する事が出来る。
このカードの攻撃力・守備力は自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスターの数×400アップする。
スタンバイフェイズ、自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスター1体を選択し発動する。エンドフェイズまで、このカードは選択したモンスターと同じ効果を得る。
このカードが相手モンスターと戦闘を行い、相手モンスターを破壊できなかった時、破壊できなかったモンスターの効果は無効となる。
エンドフェイズ、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを融合デッキに戻し、「覇王」または「冥王」と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。

GMSさん案

聖王の鎧 装備魔法
このカードは「聖王」と名のついたモンスターにのみ装備できる。
このカードを装備したモンスターは攻撃力4000以下のモンスターとの戦闘では破壊されない。

オカ ワタルさん案

LSロストロギア・レリック ☆3/光/機械族ユニオン/A0・D0
フィールドのLCを一つ取り除くことで、このカードを手札から特殊召喚する事が出来る。
自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして「ヴィヴィオ」と名のつくカードに装備、または装備を解除して特殊召喚できる。装備モンスターは戦闘では破壊されず、相手の魔法、罠、モンスターの効果を受けない。
また、このカードが表側表示で存在する限り「迷い子ヴィヴィオ」の効果は無効になる。このカードを装備している限り「聖王ヴィヴィオ」はエンドフェイズ融合デッキに戻さなくてもよい。

夜の魔王さん案

LS悠久(ゆうきゅう)の眠り姫 イクスヴェリア ☆3/闇/魔法使い/A500 D500
1ターンに1度デッキ・手札・墓地からマリアージュを特殊召喚する。この効果を発動したターン、このカードを融合素材にできない。

LSマリアージュ ☆4/闇/機械/A1700・D1200
このカードは通常召喚できない。
このカードがカードの効果の対象になった時、このカードを破壊し、フィールド上のカード一枚を破壊する。
このカードがフィールド上に存在する限り、相手はイクスヴェリアを攻撃対象にできない。
このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時、自分のフィールド上にこのカードと同じレベル、属性、種族、攻撃力、守備力、効果が同じの「LSマリアージュトークン」を一体特殊召喚する。

LS冥王イクスヴェリア ☆7/闇/魔法使い/A2000・D2500
「LS悠久の眠り姫イクスヴェリア」+「LSマリアージュ」
このカードは自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)
このカードが特殊召喚された時、自分フィールド上の「マリアージュ」と名のつくモンスターの数だけ相手フィールド上のカードを選択し、破壊する。
一ターンに一度「マリアージュ軍隊長トークン」(闇・☆5・機械・攻2000/守2000)を特殊召喚できる。
エンドフェイズにこのカードを融合デッキに戻し、「聖王」または「覇王」と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。

夜の魔王さん名前案 白金さん効果案

LS記憶に縛られた少女アインハルト ☆3/風/魔法使い/A1300・D1000
相手フィールド上にモンスターが存在しない時、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを手札に戻す。
このカードが戦闘を行う毎に、このカードの攻撃力・守備力は100ポイントアップする。

夜の魔王さん案

LS覇王の愛機アスティオン ☆2/風/機械/A500・D500
このカードはフィールド上に「アインハルト」と名のつくモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。このカードが召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、このカードを除くフィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターのレベルの合計×100ポイントライフを回復する。

LS覇王アインハルト ☆7/風/魔法使い/A2700・D2200
「LS記憶に縛られた少女アインハルト」+「LS覇王の愛機アスティオン」
このカードはフィールド上に存在する上記のカードを墓地に送ることで、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)
このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時、墓地に送ったモンスターの元々の攻撃力と同じだけ自分のライフを回復する。
このカードが相手の魔法・罠の対象になった時、そのカードの効果を無効にし、破壊する。
エンドフェイズにこのカードを融合デッキに戻し、「聖王」または「冥王」と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。



所々改変しましたが、大きな改変はしていません。
どれも個性的で頭を捻りながらデュエルを考えました。


ついに待ちに待ったノース校との代表デュエル。会場はデュエルアカデミアではなく、堂実野町の会場で行われる。

なんでもノース校代表者がどこかの会社のボンボンらしく、会社を宣伝したいのか、代表デュエルがテレビで生放送されるらしい。その為、十代、翔、隼人、明日香、み、み、この間戦ったイエロー寮の奴が、やたらと自分のカードを勧めて来る。

 

「なあ遊斗。ハネクリボーを使ってやってくれよ。戦闘から守ってくれるぜ」

 

いや、だから俺は戦闘ダメージとかあんまり考えないんだよ。それに手札から発動できるザフィーラがいるから必要ない。

 

「遊斗君、パワーボンドなんてどうッスか? 攻撃力が2倍になるッスよ」

 

融合素材がいないだろ。精霊達(みんな)を機械族にしないでくれ。

 

「デスコアラとかどうなんだな? バーンダメージが強力なんだな」

 

バーン効果よりも大事な事ってあると思うんだ。

 

「効果を三つも持ってるサイバー・ブレイダーがいいわ」

 

だから融合素材がいないでしょ。

 

「ウォーター・ドラゴンも相手に炎がいたら無力化できるぞ」

 

出せないし無力化するならトーマでOKだって。

 

「あのさお前等、自分の好きなカードをテレビに出したいのは分かるけど、俺はデッキを変えるつもりは毛頭ないから。というかシナジーがあるのが一個も無い」

「「「「「あははは・・・・」」」」」

「全く・・・・」

 

万が一コイツ等が勝手に俺のデッキに自分達のカードを入れていたらたまったものじゃないので、デッキをケースから取り出し確認する。よしっ、足りないカードも無いし、見覚えのないカードもないな。

こうして神経質になるのも理由があり、あの伝説のギャンブルデュエリストの城之内克也さんも元日本代表デュエリストのインセクター羽蛾に見覚えのないカードを入れられた、前例があるからだ。

 

「なあ、遊斗。このカード「だからしつこいぞ! って父さん!?」帰ろう」

 

どうして父さんがいるんだよ!? じゃなくて父さんが持っているカード。チラッと見えたけどLSって書いてあった。新しいカードだよきっと!

 

「待って下さい父上様! その手に持っていらっしゃるカードをよろしければ見せていただけませんか!」

「「「「変わり身早!」」」」

「この方が謎に包まれたジェイル・スカリエッティ博士!?」

 

そう言えばみ・・・・イエロー代表は父さんの事を知りたがっていたな。けど悪いけど今はそれどころじゃない。何とかして機嫌を取り、手に持っているカードを貰わなければ。

 

「ッフ、私は君みたいな凡人とは違って天才だからね。寛大なんだ。ほら、これが新しいカードだよ」

 

父さんから渡されたカードの名前、絵、効果を見ている最中、デッキケースからなのはさんとフェイトさんが出てきた。

 

『ヴィヴィオのカードだ! ありがとうございます博士、って今は聞こえないのか』

『前に私達が頼んだカード達でね。遊斗のプレイングも一段と磨きがかかってきたから、そろそろ新しいモンスターカードをと思って』

 

なるほど、そんな事が・・・・。確かにフェイトさんの言う通り、かなり癖のあるカード達で昔の俺のプレイングでは扱うのが厳しいだろう。けど癖があると言う事は、それだけ意外性があり、沢山の可能性を秘めていると言う事でもある。しっかりとテキストを呼んでいる最中、ふと三枚のカードが目に入った。

 

「あれ、父さん? この三枚のカード何も書いてないけど?」

「そのカードはお守りにでもしてくれ。では私は失礼するよ。元々彼女達に頼まれて仕方なく来たんだ」

 

彼女達という言葉に十代以外のみんなは首を傾げた。

なるほど、出不精な父さんが近いとは言え態々堂実野町まで来たのはそういう事だったのか。てか父さんも精霊達(みんな)に弱いのか。元とは言え警察官と犯罪者だから当然か?

 

「待って下さいスカリエッティ博士! 色々とお話を」

「悪いが私は人と話すのが嫌いでね、君と話す事は何もない。だがそこの少年、君は実に興味深い」

「へ? 俺?」

 

父さんの視線の先には十代がおり、十代は自分に指を指して父さんに確かめると、父さんはコクンと頷いた。俺と同じく精霊が見えるけど、それだけじゃあ父さんの研究欲をそそらない筈。十代には別の何かがあるのか?

 

「・・・・ほう。では失礼する」

「へ? 何? 話するんじゃねえのか?」

「待って下さいスカリエッティ博士ー!」

「・・・・変わったお父様ね」

「様を付ける程偉い人間じゃない」

 

元犯罪者だからな。

 

 

 

 

会場に着くと校長先生とノース校の校長先生の話し合いが始まった。何やら二人はあるものを掛けているようで、負け方はご褒美を貰えないらしい。どっちにしろ校長先生の掛けごとだ、この間の三つ巴デュエルの方がよっぽどプレッシャーがかかる。

 

「我が校の代表は、あの天才ジェイル・スカリエッティの息子の遊斗・スカリエッティ君だ」

「ジェイル・スカリエッティ? 誰だそいつは。我が校の代表は誰もがしるあの会社の御曹司」

【【【【一!】】】】

【【【【十!】】】】

【【【【百!】】】】

【【【【千!】】】】

「万丈目サンダー!」

 

ままま万丈目!? ノース校全員の謎の声援と共に現れたのは黒い制服を着たあの万丈目。そう言えば万丈目は万丈目グループって会社の御曹司だったな。というかあの後ノース校に行っていたのか。

 

「この万丈目サンダー! 貴様等を倒す為に地獄から「「久しぶりだな万丈目!」」馴れ馴れしくするな!」

「いや~、実は結構気にしてたんだぜ。俺達が強すぎる所為で万丈目が出て行ってしまったって」

「凄いな。あれからノース校に入って、代表にまでなったのか」

「ええい、二人ともうるさい! すぐにこの俺が蹴散らしてやる! テレビの前で赤っ恥をかくがいい!」

 

 

 

 

「さ~て始まって参りました! デュエルアカデミアVSノース校の代表デュエル! デュエルアカデミアからは一年生の遊斗・スカリエッティ!」

【【【うおおおおお!】】】

「頑張れ遊斗ー!」

 

暗くなったステージの一部に無数のスポットライトが俺に当たった瞬間、アカデミアのみんなの声援が飛んできた。ああ、こうしてみんなの声援を受けるなんて、アカデミアに入る前の俺は考えてもいなかっただろうな・・・・。

 

「彼の使用するデッキは何と見た事も無いアイドルデッキ! どんなカードが出るか楽しみです!」

 

・・・・生放送でアイドルデッキって言いやがったな、あのMC。

 

「対するノース校の代表は~~~~っ!」

【【【【一!】】】】

【【【【十!】】】】

【【【【百!】】】】

【【【【千!】】】】

「万丈目サンダー!」

 

ホントそのコール好きだな。と言うか何でサンダーなんだ? 締まらない万丈目の事だから、万丈目さんだ! をノース校の人が勘違いしてサンダーになった気がする。そうに違いない。

 

「万丈目グループの御曹司。彼の使うデッキは見てのお楽しみだそうだー! それじゃあデュエルスタンバイ!」

「貴様を倒した後は奴を倒す!」

「やれるもんならやってみな!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺だ、ドロー! 仮面竜(マスクド・ドラゴン)を守備表示で召喚」

 

A1400・D1100

 

出てきたのはドラゴンにしてはやけに気持ち悪い顔をした赤いドラゴン。このドラゴンは、ドラゴン族専用のリクルーターで、リクルーターの中では優秀だ。レベル3で、リクルートするモンスターの表示形式縛りが無い。闇か光だったら完璧だな。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

万丈目 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

「ドロー、行くぜ万丈目。お前が新しいカード達の初の相手だ! まずはフィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。そしてLS悠久の眠り姫イクスヴェリアを召喚!」

 

LS悠久(ゆうきゅう)の眠り姫 イクスヴェリア ☆3/闇/魔法使い/A500 D500

LCミッドチルダ0→1

 

カードから現れたのはショートで朱髪の可愛らしい小さな女の子。とても前線で戦える様には見えなく、オロオロとしている。・・・・こ、この子が本当に冥王って言われていたのか? 教導官の顔のなのはさんとヴィータさんの方がよっぽど冥王って感じが・・・・さ、寒気が。

 

「そんなモンスターで何が出来る!」

「そう慌てるな。イクスヴェリアの効果発動。一ターンに一度、デッキ、手札、墓地からマリアージュを特殊召喚できる。来い、LSマリアージュ!」

 

LSマリアージュ ☆4/闇/機械/A1700・D1200

 

次に来たのはバイザーを付けた不気味なもの。体の形から一応女性だと分かるが、種族から察するにこいつは人間ではないだろう。マリアージュが登場した瞬間、イクスヴェリアはビクッと肩を震わせた。

というかマリアージュって俺より少しだけど背が高くないか?

 

「バトル! マリアージュで仮面竜に攻撃! 無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)!」

 

A1700 VS D1100

 

マリアージュの腕が突然機関銃に変わり、腕の機関銃が仮面竜を穴だらけにして破壊した。

 

「仮面竜の効果発動。戦闘で破壊された時デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族を特殊召喚する。来い! アームド・ドラゴンLV3!」

 

A1200・D900

 

!? レ、レベルモンスターだと!?

仮面竜の効果で呼ばれたのは鎧を付けた小さなドラゴン。ステータスは貧弱だが、LVモンスターはある条件で進化する効果を持っている。その斬新な発想はとても人気があり、伝説と言われる程レアリティが高いカード。せっかくのLVモンスターだが、リクルーターを表側で出したお前のミスだ!

 

「マリアージュの効果発動。このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地に送った時、このカードと全く同じマリアージュトークンを特殊召喚する!」

 

A1700・D1200

 

マリアージュは自分の腕を溶かして液体を出し、その液体から全く同じ姿のマリアージュが現れた。き、気持ち悪いな。万丈目も若干引いてるし、その気持ち分かるぞ。

 

「マリアージュトークンでアームド・ドラゴンLV3を攻撃!」

「それは無効だ! 罠発動、くず鉄のかかしモンスターの攻撃を無効にし、このカードをセットする」

「はい? ななななんだそのカード!?」

「どん底に落ちた俺は例えくずの効果であろうとも借りようと思った! その時拾ったカードだ」

 

拾ったカードにしてはずいぶん強い効果じゃねえか。と言う事は最低でも二回攻撃しないと万丈目には攻撃が通らないのか。そうなると結構めんどくさいな。LVモンスターの共通効果を発動されてしまう。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP4000

万丈目 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

「ドロー! よし! スタンバイフェイズ時、アームズ・ドラゴンLV3はLV5へと進化する!」

 

万丈目の場にいたアームズ・ドラゴンLV3は、突如白い光を発し、光が収まると共に2メートル弱あるドラゴンに進化した。まるであるゲームの進化アニメーションだな。

 

A2400・D1700

 

「アームズ・ドラゴンLV5の効果発動。手札のモンスターを墓地に送り、そのモンスターの攻撃力以下のモンスターを破壊する。俺は攻撃力2850のトライホーン・ドラゴンを墓地に送りイクスヴェリアを破壊!」

「そのモンスターの効果はそれか! チェーンしてソニックムーブを発動、イクスヴェリアを除外する」

 

LVモンスターはLVと共に効果も進化して行く。おそらくこの効果の上位交換の効果を持った進化形がまだいるはず。

それよりも手札コストがトライホーン・ドラゴンと言うのが気になる。攻撃力は高いし、同じドラゴン族だが、闇属性だから風属性の恩地を受けない。

 

「さあ、どうする?」

「バトル! アームド・ドラゴンLV5でマリアージュに攻撃」

「攻撃宣言時フォーメーションチェンジ発動。守備にして一枚ドロー」

 

A2400 VS D1200

 

「ッチ、カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズイクスヴェリアが帰ってくる」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札3 LP4000

万丈目 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

・・・・さっきから万丈目は何かに怯えている気がする。目の前の俺よりも、周りの目を気にしている感じだ。だったら意地でもこのデュエルに集中させてやる!

 

「ドロー! ティアナを召喚。そしてミッドチルダの効果でLCが一つ乗る」

 

A1200・D1000

LCミッドチルダ1→2

 

「ティアナの効果。ミッドチルダのLCを使い、墓地のマリアージュをゲームから除外し、そのモンスターと同名の攻守0のトークンを特殊召喚する!」

 

LCミッドチルダ2→1

 

ティアナさんのフェイクシルエットによって現れたマリアージュ。元々人間じゃないから、作られたトークンと本物の差が無い。

 

「そして場のイクスヴェリアとティアナが作ったマリアージュを融合! 現れろ、LS冥王イクスヴェリア!」

 

LS冥王イクスヴェリア ☆7/闇/魔法使い/A2000・D2500

 

イクスヴェリアは先程と体系は全く変わっていないが、黒いマントと炎の絵が描いているシャツを着ており、体には所々銀のチェーンが巻かれている。

 

「イクスヴェリアの効果発動。特殊召喚成功時場のマリアージュと名のつくモンスターの数だけ相手のカードを破壊する。俺はくず鉄のかかしを破壊!」

「一ターンで破壊されたか・・・・」

「更に速攻魔法フェイクシルエットを発動。デッキからリリィを墓地に送り、ティアナをリリィとして扱う。手札の闇の書を捨てトーマを特殊召喚、闇の書の効果でイクスヴェリアに装備」

 

イクスヴェリアA2000→2300

A1000・D1000

 

「流石遊斗。無駄のないプレイングね」

「行くッス遊斗君ー!」

 

ああ。校長先生の掛けはともかく、みんなに応援してもらっている以上負けるわけにはいかない。

 

「場のトーマとリリィとなったティアナを融合! リアクト・エンゲージ―トーマ! 効果で自身にLCを置く」

 

A2500・D2500

LCトーマ1

 

ティアナさんは意地悪っぽい笑みを浮かべながら『えいっ』と言ってトーマに抱きつき、トーマは頬を真っ赤にしながらティアナさんと融合した。こりゃあリリィとスバルさんの説教が待ってるな。

 

「トーマの効果発動。自身のLCを1つ使い、相手モンスターの攻守を1000下げる」

『シルバーバレット!』

 

LV5 A2400・D1700→A1400・D700

 

あ~、トーマの融合素材にはリリィが使われなかったから声が一つなのか。ってかフェイクシルエットからの融合ってどんな感じなんだ? 見た目が変わる時と、さっきみたいに変わらない時があるからな。

 

「更にイクスヴェリアのもう一つの効果。攻守2000のマリアージュ軍団長トークンを特殊召喚できる」

 

A2000・D2000

 

「バトル! トーマでアームド・ドラゴンLV5を攻撃!」

「速攻魔法レベルアップ! LVモンスターを墓地に送り、そのカードの次のレベルモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できる! 来い、アームド・ドラゴンLV7!」

 

A2800・D1000

 

先程と同じようにアームド・ドラゴンLV5は白い光を発し、白い光を発するシルエットが徐々に大きくなって光が消えた。そこにいたのは、棘棘した鎧を付けた巨大なドラゴン。LVが7となり、迫力がどんどん増していく。

 

「さっきのターンどうして使わなかった?」

「どうせ貴様の事だ。攻撃力2800を出してもすぐに突破するだろう」

「よく分かってらっしゃる。攻撃は中断。ミッドチルダのLCをトーマに移動し、マリアージュトークンを守備に変更。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LCミッドチルダ1→0 トーマ0→1

 

「エンドフェイズイクスヴェリアの効果発動! このカードを融合デッキに戻し、レベル7の聖王または覇王と名のつくモンスターを融合デッキから特殊召喚できる。来い! LS覇王アインハルト!」

 

LS覇王アインハルト ☆7/風/魔法使い/A2700・D2200

 

イクスヴェリアがデッキに戻る代わりに登場したのは碧銀の長い髪をした綺麗な女性。覇王と言うだけあり、静かに立っているだけなのに気迫を感じる。これが覇気というものだろう。

 

「そして闇の書の効果でアインハルトに装備」

 

アインハルトA2700→A3000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ2 手札0 LP4000

万丈目 モンスター1 伏せ0 手札3 LP4000

 

まだライフに動きは無いか。だが万丈目の場にはアームド・ドラゴンLV7。おそらく俺の嫌な方に進んでいくだろう。

 

「ドロー! 永続魔法強者の苦痛を発動。貴様のモンスターの攻撃力をレベル×100ポイントダウンさせる」

 

アインハルトA3000→2300

トーマA2500→1700

軍団長A2000→1500

マリアージュA1700→A1300

 

「アームド・ドラゴンLV7の効果発動。二枚目のトライホーン・ドラゴンを墓地に送り、攻撃力2850以下の相手モンスターを全て破壊する! ジェノサイド・カッター!」

「全部だと!? トーマの効果発動。LCを取り除きLV7の攻守を1000下げる、それにチェーンして墓地のソニックムーブを発動、アインハルトを除外する」

 

LV7 A2800・D1000→A1800・D0

LCトーマ1→0

 

アームド・ドラゴンLV7の周りに展開された風の刃がビュンビュンと音を立て、アームド・ドラゴンLV7の方向と共に発射された。マリアージュに軍隊長トークン、トーマはその刃に斬られて破壊されてしまった。

 

「貴様の闇の書の効果が発動する。それは強制効果だ。アームド・ドラゴンLV7に装備させてもらう」

「ック、この効果が裏目に出たのは初めてだ・・・・」

 

LV7 A1800→2100

 

「ドラゴンフライを通常召喚、バトル! ドラゴンフライで攻撃!」

 

A1400

遊斗LP4000→2600

 

巨大なトンボが突進してき、余りの気持ち悪さと恐怖で背筋がゾッとした。いつもの俺なら絶対に逃げだす程の気持ち悪さだが、生放送でそんな無様な姿は撮られたくない。畜生万丈目、何故生放送にした!

 

「アームド・ドラゴンLV7で攻撃! アームド・ヴァニッシャー!」

「墓地のフェイクシルエットの効果発動。このカードとティアナをゲームから除外し相手モンスターの攻撃を無効にする!」

 

アームド・ドラゴンLV7の手から放たれた衝撃波は、フィールドの端の方に現れ俺の幻影の方へ曲がり、幻影を破壊した。・・・・自分が破壊される姿ってなんかやだな。

 

「守りが上手いのは変わらずか。これでターンエンドだ」

「エンドフェイズアインハルトが帰って来て効果を発動。このカードを融合デッキに戻し、「冥王」または「聖王」と名のつくモンスターを融合デッキから特殊召喚する。来い、聖王ヴィヴィオ!」

 

LS 聖王ヴィヴィオ ☆7/光/魔法使い/攻?・守?

 

アインハルトさんの退場に代わって登場したのは金色の長い髪をし、翡翠と紅玉のオッドアイをした女性。ヴィヴィオさんはクルッと俺の方を振り向いてニコッと笑い、再び万丈目のモンスター達をジッと見つめた。

 

「ヴィヴィオの効果発動。特殊召喚成功時、デッキ、墓地から聖王の鎧を手札に加える」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ2 手札1 LP2600

万丈目 モンスター2 伏せ1 手札1 LP4000

 

「ドローする前にヴィヴィオの効果の説明だ。このカードの攻撃力は墓地のLSと名のつくモンスターの枚数×400になる。俺の墓地にはイクスヴェリア、リリィ、トーマ、リアクト・エンゲージ―トーマの四枚。攻撃力は1600」

「だが強者の苦痛の効果で攻撃力は700ダウンだ」

 

ヴィヴィオA?・D?→A900・D1600

 

「分かっている、行くぞ万丈目! ドロー! リバースカードオープン、速攻魔法Asの回収発動。除外されたティアナとマリアージュを墓地に送り一枚ドロー!」

 

ヴィヴィオA900・D1600→A1700・D2400

 

「手札からLS記憶に縛られた少女アインハルトを召喚! ミッドチルダにLCを置く!」

 

LS記憶に縛られた少女アインハルト ☆3/風/魔法使い/A1300・D1000

LCミッドチルダ0→1

 

アインハルトさん? はさっきの覇王の姿とは違い、小学校高学年くらいの少女の姿。髪の色や瞳の色は変わってはいないが、さっきの覇気を出していた姿とは違い、物静かな少女と言うのが第一印象だ。

 

「まだまだ! LS覇王の愛機アスティオンを特殊召喚」

 

LS覇王の愛機アスティオン ☆2/風/機械/A500・D500

 

「このカードはアインハルトが存在する場合手札から特殊召喚でき、特殊召喚成功時フィールドのこのカードを除くLCのレベル×100ライフを回復する。このカード以外のLSモンスターの合計は10、ライフを1000回復」

『にゃ~!』

 

遊斗LP2600→3600

 

アスティオンがベルカ式の魔法陣を展開して可愛い鳴き声を出すと、俺の体が薄くだが光り、俺のライフを回復した。

 

「よし! そして場のアインハルトとアスティオンを融合! 再び現れろ、覇王アインハルト!」

 

アインハルトA2700・D2200→A2000

ヴィヴィオA1700・D2400→A2500・D3200

 

「ック、強者の苦痛がある状態でもその攻撃力!」

「ヴィヴィオの効果発動。一ターンに一度墓地のLSモンスター一体の効果を得る。リアクト・エンゲージ―トーマの効果を得て効果発動! ミッドチルダの効果でヴィヴィオに移動させ、LCを取り除きアームド・ドラゴンLV7の攻守を1000下げる!」

 

LCミッドチルダ1→0

LV7 A2100・D0→A1100・D0

 

「ヴィヴィオに聖王の鎧を装備し、バトル! アインハルトでLV7を攻撃!」

『覇王断空拳!』

 

A2000 VS A1100

 

足先から練り上げた力を拳足に乗せて撃ち出す断空という技術による打撃。その技術をアインハルトさんは完璧にマスターしている・・・・ってシグナムさんが言ってる。なんのこっちゃ。

 

万丈目LP4000→3100

 

「闇の書の効果でヴィヴィオに装備。そしてアインハルトの効果発動、このカードが戦闘でモンスターを破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のライフを回復する」

『私と言うよりティオの力ですが。受け取ってください』

 

遊斗LP3600→6400

ヴィヴィオA2500→2800

 

「ヴィヴィオでドラゴンフライに攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

ってええ!? ヴィヴィオさんってディバインバスター撃てるの!? でもなのはさん程の威力はなく、その代わり出が早い。どっちかと言うとスバルさんが使うディバインバスターに似ている。あくまで素人から見た見解だが。

 

A2800 VS A1400

万丈目LP3100→1700

 

「破壊されたドラゴンフライの効果。デッキから二枚目のアームド・ドラゴンLV3を特殊召喚する!」

「まだ持っていたか・・・・、ターンエンド。エンドフェイズヴィヴィオを融合デッキに戻しイクスヴェリアを守備で召喚。そしてアインハルトを戻しヴィヴィオを守備で召喚。効果で聖王の鎧を手札に加える。

闇の書をヴィヴィオに装備」

 

ヴィヴィオA3200・D3200→A2800

イクスヴェリアA2000・D2500→A1300

 

ヴィヴィオの効果で手札の聖王の鎧を装備する事もできるけど、コストでも何でもいいから手札に1枚はカードを持っておきたい。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札1 LP6400

万丈目 モンスター1 伏せ1 手札1 LP2700

 

「何やってるんだ準! お前は万丈目グループの名に泥を塗っているのか!」

「しっかりやれ!」

「ック、分かっている!」

 

なるほど、さっきから万丈目が気にしているのはあの馬鹿兄共か。あの二人は万丈目が今頑張っている事よりも結果を気にしている。何より気に食わないのがデュエルを会社の名前の為の道具だと思っている事。

あいにく俺は表現が下手だからな。ストレートでお前の本気を出させてやる。

 

「万丈目! 言っておくがお前は弱い!」

「っな!? 貴様何を言う!?」

「だってそうだろ? レッドの十代に負け、俺に負け、そして今も元レッドの俺にライフ差を付けられて」

「き、貴様ぁああ! 言わせておけば!」

 

すまんな万丈目。だが今のお前はこのくらい言わなきゃ分からないだろうし。

 

「お前は今このデュエル以外の事を考える程強くない! 心の底から俺を倒したかったらこのデュエルの事だけを考えろ!」

「ッツ。・・・・・ッフ、当たり前だ! この万丈目サンダー、例えどんなプレッシャーを背負われてもデュエルに集中する! ドロー!」

 

よし、やる気が出たようだな万丈目。だがこの状況を手札二枚でどう打破する?

 

「スタンバイフェイズ時にアームド・ドラゴンLV3はLV5に進化する! そして闇の量産工場を発動! 墓地の二体のトライホーン・ドラゴンを手札に加える。まずはトレード・インを発動。一枚のトライホーンを墓地に送って二枚ドロー!

アームド・ドラゴンLV5の効果。トライホーン・ドラゴンを墓地に送り聖王ヴィヴィオを破壊する!」

 

ック、50の差でやられるとなんか損した気分だ。

 

「貪欲な壺を発動。二枚のLV3、LV5、LV7、仮面竜をデッキに戻し二枚ドロー! まだいける。死者転生を発動してトライホーンを手札に加える。そして墓地に送られたおジャマジックの効果でデッキから、おジャマ・グリーン、イエロー、ブラックを手札に加える」

 

お、おジャマ? 確かレベル2で攻撃力0の言っちゃ悪いが雑魚モンスターだよな? 何で万丈目がそんなカードをデッキに。アームド・ドラゴンのコストにもできないし。

 

「そして手札抹殺を発動!」

 

あっ、なるほど。そういう事か。

 

「俺は一枚ドロー」

「俺は四枚ドローする」

 

ふむ、手札二枚からここまで持って来るとは流石だ。さて、ここからどう来る?

 

「墓地の風属性と闇属性を一枚ずつ除外しダーク・シムルグを特殊召喚!」

「ッツ! あのトライホーンは手札コストや交換カードだけじゃなく、そのカード召喚の役割としてもあったのか!」

 

A2700・D1000

 

ダーク・シムルグ。カオスと似たような条件で特殊召喚できるモンスターであり、手札消費が激しいながらも墓地にいる時、手札の闇と風を除外し復活できる効果も持つ。あのカードが存在する限り俺はセットする行為が出来なくなり、あらかじめ罠を伏せてない限り罠は使用不可能になる。

確かに風属性のアームド・ドラゴンを軸にしていたら、闇を入れるだけで簡単に特殊召喚できる。考えたな万丈目。

 

「更にフィールド魔法デザートストームを発動。魔法都市ミッドチルダは破壊され、俺の場の風属性モンスターの攻撃力を500上げ、守備を400ダウンさせる」

「おまけにダーク・シムルグは風としても扱うから攻撃力が上がると・・・・」

 

LV5 A2400・D1700→A2900・D1300

シムルグA2700・D1000→A3200・D600

 

「バトル! アームド・ドラゴンLV5で冥王イクスヴェリアに攻撃!」

「通すしかない・・・・」

 

A2900 VS  D2500

 

「闇の書の効果で装備するのはアームド・ドラゴンLV5だ」

 

LV5 A2900→3200

 

「ダーク・シムルグでダイレクトアタック!」

 

A3200

遊斗LP6400→3200

 

一気に削られてしまったな・・・・。これは非常にまずい。てか罠引いた時点でアウトだよな。ミッドチルダも無いからなのはやフェイトを引いても次に繋げられない。

 

「エンドフェイズ、LV5の効果でLV7を特殊召喚する。ターンエンド」

 

LV7 A2800・D1000→A3300・D600

 

「闇の書はLV7に使う」

 

LV7 A3300→3600

 

場 デザートストーム

遊斗  モンスター0 伏せ1 手札1 LP3200

万丈目 モンスター2 伏せ1 手札2 LP2700

 

「ハッハッハ! 見たかスカリエッティ!」

「ああ、すげえよ万丈目。だがまだ勝負は終っていない! ドロー! ナイスドローだ! 永続魔法魔力高炉を発動して二個乗せ、そのLCを取り除いてそして連続転移を発動! デッキの一番上から3枚めくり、その中の通常召喚可能なモンスターを特殊召喚する。

一枚目、高町なのは、二枚目教会騎士カリム・グラシア、三枚目ユーノ・スクライア。三枚とも通常召喚可能なモンスターだ!」

「そうじゃなきゃ面白くない!」

 

なのはとユーノは万丈目も知っているだろうが、カリムさんを出すのは初めてだな。というかさっき貰った一枚だから、俺もこの人の事は初めて知った。

 

LS教会騎士カリム・グラシア ☆4/光/魔法使い/A500・D500

 

「カリムの効果発動。モンスター、魔法、罠を宣言し、デッキトップが宣言した種類だったら手札に加え、違う場合はめくったカードを墓地に送りこのカードを手札に戻す」

「更に運試しか。その強運どこまで続くか」

「信じればデッキは応えてくれる、親友の言葉でな。俺もその言葉に同感だし、その言葉を聞いてより一層デッキを信じる事が出来た! 俺は魔法を選択する」

 

さあ来い! 来い! あのカードよ来てくれ! この状況であのカードが来れば!

目を閉じて勢いよくドローし、恐る恐る瞼を開けドローしたカードを確認する。頼む!

 

「・・・・よっしゃあ! デッキトップは魔弾作製だ。魔法カードだから手札に加える」

「本当に当てるとは・・・・」

「そして場のなのはとユーノを融合。来い、AOA高町なのは! 効果でデッキからはやてを手札に加える。そしてなのはを生贄に魔弾作製を発動。デッキからカートリッジロードを三枚手札に加える」

 

まさか手札二枚で王様はやてさんを出せるとは思わなかった。

 

「カリムを生贄にはやてを召喚。そしてカートリッジロードを全て闇の書に使う」

 

はやてA2000・D1700→A1500

LV7 A3600→3300

LC闇の書0→3 はやて1

 

「闇の書を除外してデッキからアインスを特殊召喚。融合デッキから夜天の書を特殊召喚!」

 

アインスA2300・D2300→A1800

A0・D0

 

次々と場が整っていくが、まだこれだけでは二体のモンスターを破壊できない。強者の苦痛の所為で王様のはやてさんを出して、ナハトを装備しても攻撃力は2800のまま。破壊を無効にできる効果を持っているけど、それだけじゃ不十分だ。

 

「夜天の書の効果でアインスに装備する。そして効果発動! はやてのLCを一つ取り除きデッキから一枚ドロー!

ッフ、どうやらあの状況が出来るみたいだ! 場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

はやてA2800・D2800→A1800

LCはやて3

 

光の柱から降りて来る王様はやてさんの背中が、これ程大きく感じた事は今だかつてない。強者の苦痛の所為で攻撃力が1000下がってしまうから守備でカバーしよう。

 

「そしてはやての効果。LCを二つ取り除き、融合デッキから祝福と名のつくモンスターを効果を無効にして守備で特殊召喚できる。来い、祝福の癒し手シャマル!」

「その二体、まさか!?」

「ああ! 場の祝福の癒し手シャマルを生贄に、ホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚!」

 

シャマルA2000・D3000→A1100

 

「シャマルの効果。はやてにLCを二つ乗せる。ターンエンドだ」

 

LCシャマル0→2

 

場 デザートストーム

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札0 LP3200

万丈目 モンスター2 伏せ1 手札2 LP2700

 

「確かに貴様の場にはあの時のモンスターが二体。だが俺の場には3000越えのモンスターが二体。対するお前のモンスターは強者の苦痛により攻撃力は低レベルモンスターと同じだ!

ドロー! レベル調整を発動。相手に二枚ドローさせ、墓地からアームド・ドラゴンLV5を特殊召喚。速攻魔法レベルアップ! LV5をLV7に進化」

 

万丈目の場に二体のLV7が並んだ。強者の苦痛がある状態で攻撃力3300は洒落にならない。

 

「そして一枚のLV7を生贄に、アームド・ドラゴンLV10を特殊召喚」

 

LV10 A3000・D2000→A3500・D1600

 

これがアームド・ドラゴンの最終形態。外見はレベル7が二本足で立った程度だが、伝説のLVモンスターの最終形態だけあってプレッシャーを感じる。

 

「バトル! アームド・ドラゴンLV7、LV10、ダーク・シムルグでホーリーカタルシス・シャマルに攻撃! アームド・ビッグダーク・バニッシャー!」

 

A3500 VS D3000

A3300 VS D3000

A3200 VS D3000

 

アームド・ドラゴンLV7は効果と同じく自らの周りに展開した風の刃を飛ばし、LV10は巨大な鉄の爪をホーリーシャマ姉に向かわせ、ダーク・シムルグは闇の風で竜巻を作り飛ばした。

 

「シャマルの効果! 自身のLCを取り除き一回の破壊を無効、更にもう一つの効果でもう一回破壊を無効にする!」

「だが三回は防ぎきれない!」

 

三体の合体技を止める術が無く、ホーリーシャマ姉は破壊されてしまった。ガ、ガチでヤバイ。

強者の苦痛とデザートストームで攻撃力が離れすぎている。元々永続魔法除去は、なのはかフォトンランサーぐらいしかないから厳しい。

 

「さあ、次のターンがお前の最後だ。これでターンエンド!」

 

場 デザートストーム

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札2 LP3200

万丈目 モンスター3 伏せ1 手札0 LP2700

 

ダーク・シムルグ。あのモンスターを破壊しない限り俺に勝ち目はない。ただでさえ手札が少ない今、さっきドローしたこのカードを使わない手は無い。

 

「さあ、奇跡を起こし続けろ! 俺のターン、ドロー! 行くぞ、シャマルを召喚、そして遠隔転移を発動! フィールドにシャマルがいる時墓地からLSモンスターを復活させる! 来い、聖王ヴィヴィオ!」

『よっと、ありがとうシャマルさん』

『いいのよ。さあ、ドカンとやりなさい』

「墓地にいるLSモンスターは18体! 強者の苦痛の効果で700ダウンするが、攻撃力は6500!」

 

ヴィヴィオA?・D?→A6500・D7200

 

「攻撃力6500!? ば、馬鹿な!?」

「バトル! ヴィヴィオでアームド・ドラゴンLV10を攻撃!」

「カッート! 今すぐにカットしろー!」

「『ディバインバスター!』」

 

A6500 VS A3500

 

ヴィヴィオさんの目の前に溜められた虹色の魔力の弾。それは次第に大きくなり、ヴィヴィオさんが虹色の弾に拳を放った瞬間、その弾が砲撃となりアームド・ドラゴンLV10を襲った。アームド・ドラゴンLV10は自慢の巨大な鉄の爪でその砲撃を受けとめようとするが、砲撃の勢いには勝てず、徐々に爪はひびが入って行き、パリンと音がした瞬間アームド・ドラゴンLV10は虹色の砲撃に呑み込まれた。

 

「馬鹿なぁああああ!」

 

万丈目LP2700→-300

 

ふぅ、本当に危なかったな。それにしても転移系にはお世話になった。俺のデッキは召喚してから特殊召喚に繋げるカードが多いけど、召喚に成功しても次に繋げられないカードも多いから、こう言った特殊召喚系カードは重要だ。

 

「準! お前どうして俺達が上げたレアカードを使わなかったんだ!」

 

デュエルが終りため息をついていると、兄二人が万丈目の元へ走って行った。

説得力無いかもしれないけど、レアカードが全部強いわけじゃないし、万丈目はかなり頑張ったと思うぞ。

 

「俺は自分のデッキで勝ちたかったんだ・・・・」

「下らない! そんな事より大事なのは勝つ事だ! 勝たなきゃ意味は無い!」

 

その言葉は聞き捨てならない!

確かに勝つ事は大事だ。俺だってデュエルをやるからには勝ちたいし、負けるのは決して楽しい事ばかりではない。けどさっきのデュエルに意味が無いと言うのはおかしい。勝った俺にしろ、負けた万丈目にしろ、今回のデュエルで学んだ事がある。

その思いをぶつけようと、口を開いた瞬間。

 

「そんな事ないぜ!」

「十代・・・・」

 

ったくコイツは。いっつもいっつも良い所取って行きやがって。

 

「さっきのデュエルに意味が無いと思ってるのは、この会場であんた達だけだぜ」

「ああ、意味が無いって思っているのは、デュエリストじゃないか、よっぽどデュエルが下手かのどっちかだ」

「っな! お前等誰に向かって「そうだそうだ!」ック」

「サンダーは良いデュエルをした!」

「俺達ノース校は負けたが、誇りある負けだ!」

「あんた達にサンダーを怒る権利は無い!」

 

ノース校の生徒の心から叫びが会場に響き、万丈目の兄二人はばつの悪い顔をする。その二人とは反対に、会場の叫びは落ち込んでいる万丈目の心にズドンと来たようだ。

 

「・・・・兄さん達は帰ってくれ」

「準、お前!」

「いや、今日の所は帰ろう。だが準、お前が万丈目グループの名に泥を塗った事を忘れるなよ!」

 

あんた達の方が進行形で泥を塗っているぞ。さっきのテレビのカットもやらない方がよかったんじゃないか? 自分で言うのもなんだし良いデュエルが出来たと思っているし、負けた所で万丈目グループの株が落ちる事も無かっただろう。

 

「・・・・校長先生方! 俺は・・・・、やっぱりデュエルアカデミアでデュエルを学びたいです! どうか俺をデュエルアカデミアに帰らせて下さい!」

 

万丈目の言葉に二人の校長先生は少し話し合うと、ニコッと笑い頷いた。

 

「分かった。万丈目君、短い間だったけど楽しかったよ」

「こちらこそお世話になりました!」

「なあ万丈目、最後にこの会場全員であれやろうぜ」

 

頭を下げていた万丈目の肩にポンと手を置くと、万丈目はニヤッと笑い「当たり前だ」と呟いた。

 

「行くぞみんな!」

【【【【一!】】】】

【【【【十!】】】】

【【【【百!】】】】

【【【【千!】】】】

【【【【万丈目サンダー!】】】】

 

 

 

 

その後デュエルアカデミアに再入学したのはいいものの、ブルーには席が無く、レッド寮に入学する事になった万丈目の打ち上げをやって、ワイワイと盛り上がった。

因みに校長達の掛けは、購買のおばちゃんのトメさんのキスで、余りの下らなさに俺は校長に10パック奢らせた。

 

 

 

 




LS教会騎士カリム・グラシア ☆4/光/魔法使い/A500・D500
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札のこのカードは特殊召喚することが出来る。この効果で特殊召喚できるのは、1ターンに1度のみ。
1ターンに1度、自分はモンスター・魔法・罠を宣言して発動する。デッキの一番上のカードを確認し、そのカードが宣言したカードの場合手札に加え、違った場合墓地に送りこのカードを手札に戻す。

遠隔転移 通常魔法
自分フィールド上に「シャマル」または「キャロ」と名のつくカードが存在する時発動できる。
自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスターを選択し、選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。





せっかく三王娘のオリカを頂いたので、そのご紹介を。上記のカードはまた後日。
聖王ヴィヴィオ
召喚条件が厳しいので、基本イクスヴェリアとアインハルトから繋いでやるのが多いかもしれません。墓地のモンスター効果を使え、墓地が溜まると今回の用にフィニッシャーにもなれる優秀なカード。
おそらく墓地のモンスター効果は、strikersでヴィヴィオが魔法のデータ収集をしていた所からとられたと思います。違っていたらもうしわけありません。
また、聖王の鎧やレリックを装備して、強力な効果を持つモンスターに自爆特攻することで、効果を無効にすることも可。
弱点と言ったら効果を無効にされるのと、召喚条件が厳しく、出したいターンに出せない事。


覇王アインハルト
ライフ回復効果はティオの能力からとったそうです。作者がコンプエース12月号を買うのが遅れたため、つい最近まで知らなかったのですが、ティオの回復能力ってチート並みですね。
また、対象にされたら無効にするのは繋がれぬ拳(アンチェイン・ナックル)からだそうです。
ライフ回復効果とティオの効果が中々役立ち、ますますライフで受けれるようになりました。
三王娘の中で一番安定性があり、癖のあるヴィヴィオとイクスヴェリアに繋げられるので、これという弱点はないかも(ガチカードは除く)


冥王イクスヴェリア
マリアージュの数だけ相手フィールドを破壊できるモンスター。今回はLV7の所為でくず鉄先生しか破壊できませんでしたが、毎ターン2000打点を作れるのは強い。効果発動が遅いとは言え、破壊カードは、伏せ除去の少ないオリ主には嬉しいでしょう。相手のターンのエンドフェイズ時に、ヴィヴィオかアインハルト+マリアージュがいたら、擬似的なエンドサンブレになるのでいつかは使ってみたいです。
弱点はやっぱりトークンがいないと、二人に後れを取るって事ですね。トークンだとソニックムーブを使うと破壊されてしまうので、作者が好きな守りの手段がつかえないのが辛い。



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カード整理 モンスター編

LSも大分増えてきたのでちょっとカード整理の回とします。モンスターと魔法・罠に別けます。


効果モンスター数30
融合モンスター14





LS(リリカルシリーズ)高町なのは ☆4/光/魔法使い/A500・D1800

このカードが召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。このカードに乗っているLCを1つ取り除く事で、フィールド上の魔法・罠カード一枚を選択して破壊する。

 

LSフェイト・テスタロッサ ☆4/光/魔法使い/1800・D500

このカードが召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。このカードに乗っているLCを1つ取り除く事で、相手フィールド上のモンスターの表示形式を変更する。

 

LSユーノ・スクライア ☆4/風/魔法使い/A500・D1600

自分フィールド上に「高町なのは」が存在する場合「高町なのは」以外の自分フィールド上に存在するLC1つを取り除くことで、デッキから特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したターン、自分はデッキから特殊召喚することが出来ない。このカードは通常召喚する場合裏側守備表示でしか出せない。

LSアルフ ☆4/地/獣/A1600・D1000

自分フィールド上に「フェイト・テスタロッサ」が存在する場合「フェイト・テスタロッサ」(以下ユーノと同文

 

LS八神はやて ☆5/闇/魔法使い/A2000・D1700

自分フィールド上のLCを生贄の代わりにすることができる。このカードが召喚、特殊召喚に成功したとき、このカードにLCを乗せる。1ターンに1度、フィールド上のLCを1つ取り除くことで、このターンこのカードは2回攻撃する事が出来る。

 

LS夜天の将シグナム ☆4/炎/魔法使い/A1800・D1400

自分フィールド上に「八神はやて」と名のつくモンスターが存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除く事でこのカードを手札から特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ乗せる。このカードの攻撃宣言時、自分フィールド上のLCを1つ取り除くことで攻撃力を500ポイントアップすることができる。

 

LS夜天の騎士ヴィータ ☆4/地/魔法使い/A1900・1200

自分フィールド上に「八神はやて」(以下LS夜天の将シグナムと同文

自分フィールド上のLCを1つ取り除く事でこのターンのバトルフェイズ、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていた時、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

LS夜天の癒し手シャマル ☆4/水/魔法使い/A700・D1800

自分フィールド上に「八神はやて」(夜天の将シグナムと同文

1ターンに一度、自分フィールド上のカードにLCを1つ置く事ができる。

 

LS夜天の守護獣ザフィーラ ☆4/地/獣/A1600・D2100

戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動する。その戦闘によって発生する自分へのダメージは0になる。また、この効果で0にした数値が、自分のライフを上回っていた場合、デッキから1枚ドローする。このカードは通常召喚できない。

LS祝福の風リインフォース(アインス) ☆5/闇/魔法使い/A2300・D2300

このカードは「闇の書」の効果でのみ特殊召喚できる。

このカードが特殊召喚に成功した時、自分の融合デッキから「ナハトヴァール」または「夜天の書」を特殊召喚できる。

 

LS祝福の風リインフォース(ツヴァイ) ☆3/風/魔法使い/A500・D500

自分フィールド上に「八神はやて」または「夜天」と名のつくモンスターが存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除くことでこのカードを手札から特殊召喚することができる。このカードが融合素材として墓地に送られた場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除き手札に加える。

 

LS烈火の剣精アギト ☆3/炎/魔法使い/A500・D500

自分フィールド上に「八神はやて」または「夜天」と名のつくモンスターが存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除くことでこのカードを手札から特殊召喚することができる。このカードが融合素材として墓地に送られたターンのエンドフェイズ、このターン破壊した相手モンスターのレベル合計×100ポイントのダメージを与える。

 

LSスバル・ナカジマ ☆4/地/魔法使い/A1500・D1500

自分フィールド上の「LS」と名のついたモンスターが戦闘を行うダメージステップ時、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

そのモンスターの攻撃力または守備力は、エンドフェイズ時まで1000ポイントアップする。

 

LSティアナ・ランスター ☆4/炎/魔法使い/A1200・D1000

1ターンに1度、自分フィールド上のLCを1つ取り除き、自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスター1体を選択し、ゲームから除外する事ができる。自分フィールド上にトークンを表側守備表示で特殊召喚できる。(魔法使い族・炎・星1・攻/守0)

トークンのカード名は除外したモンスターと同じになる。

 

LSエリオ・モンディアル ☆3/光/魔法使い/A1400・D1000

手札のこのカードを墓地に送り発動する。自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスター1体を手札に加える。

 

LSキャロ・ル・ルシエ ☆3/風/魔法使い/A500・D500

このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。また、このカードに乗っているLCの数×300ポイント、自分フィールド上に表側表示で存在す「LS」と名のつくモンスターの攻撃力・守備力は上昇する。

 

LSリリィ・シュトロゼック ☆4/闇/魔法使い/A500・D500

このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、デッキから「銀十字」を手札に加える事ができる。

 

LSトーマ・アヴェニール ☆4/風/魔法使い/A1000・D1000

自分フィールド上に「リリィ・シュトロゼック」が存在する時、手札を1枚捨てる事によりこのカードをデッキから特殊召喚できる。自分フィールド上のLCを1つ取り除く事で、このカードを手札から特殊召喚できる。

 

LS迷い子ヴィヴィオ ☆1/光/魔法使い/A0・D0

自分フィールド上に「なのは」または「フェイト」と名のつくモンスターが存在しない時、フィールド上に表側表示で存在するこのカードを手札に戻す。

 

LSロストロギア・レリック ☆3/光/機械族ユニオン/A0・D0

フィールドのLCを1つ取り除くことで、このカードを手札から特殊召喚する事が出来る。

自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして「ヴィヴィオ」と名のつくカードに装備、または装備を解除して特殊召喚できる。装備モンスターは戦闘では破壊されず、相手の魔法、罠、モンスターの効果を受けない。

また、このカードが表側表示で存在する限り「迷い子ヴィヴィオ」の効果は無効になる。このカードを装備している限り「聖王ヴィヴィオ」はエンドフェイズ融合デッキに戻さなくてもよい。

 

 

LS悠久(ゆうきゅう)の眠り姫 イクスヴェリア ☆3/闇/魔法使い/A500 D500

1ターンに1度デッキ・手札・墓地からマリアージュを特殊召喚する。この効果を発動したターン、このカードを融合素材にできない。

 

LSマリアージュ ☆4/闇/機械/A1700・D1200

このカードは通常召喚できない。

このカードがカードの効果の対象になった時、このカードを破壊し、フィールド上のカード一枚を破壊する。

このカードがフィールド上に存在する限り、相手はイクスヴェリアを攻撃対象にできない。

このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時、自分のフィールド上にこのカードと同じレベル、属性、種族、攻撃力、守備力、効果が同じの「LSマリアージュトークン」を一体特殊召喚する。

 

LS記憶に縛られた少女アインハルト ☆3/風/魔法使い/A1300・D1000

相手フィールド上にモンスターが存在しない時、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを手札に戻す。

このカードが戦闘を行う毎に、このカードの攻撃力・守備力は100ポイントアップする。

 

LS覇王の愛機アスティオン ☆2/風/機械/A500・D500

このカードはフィールド上に「アインハルト」と名のつくモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。このカードが召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、このカードを除くフィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターのレベルの合計×100ポイントライフを回復する。

 

LS教会騎士カリム・グラシア ☆4/光/魔法使い/A500・D500

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札のこのカードは特殊召喚することが出来る。この効果で特殊召喚できるのは、1ターンに1度のみ。

1ターンに1度、自分はモンスター・魔法・罠を宣言して発動する。デッキの一番上のカードを確認し、そのカードが宣言したカードの場合手札に加え、違った場合墓地に送りこのカードを手札に戻す。

 

 

LS蒼穹(そうきゅう)の王・高町なのは 星10/風/魔法使い/A2500・D2500

このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上の「AOA高町なのは」1体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。このカードが特殊召喚に成功した時、自分のデッキから1枚選択して墓地に送る事ができる。また1ターンに1度、墓地に存在する装備魔法を装備条件を無視してこのカードに装備することができる。

装備魔法カードを装備したこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードに装備された装備魔法カード1枚をゲームから除外する事ができる。

 

LS迅雷の化身フェイト ☆10/光/魔法使い/A3300・D0

このカードは通常召喚できない。自分フィールド上の「LS黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」1体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。

このカードが攻撃宣言を行ったバトルフェイズ終了時まで相手は魔法、罠を発動する事はできない。このカードは二回攻撃ができる。

このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したエンドフェイズ、自分の手札、デッキ、墓地から「フォトンランサー」を自分のフィールド上にセットすることができる。

 

 

LSホーリーカタルシス・シャマル ☆9/水/天使/A2000・D3000

このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上の「LS祝福の癒し手シャマル」1体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。

以下の効果は1ターンに1度しか発動できない。

●フィールド上に表側表示で存在するカード1枚にLCを2つ置く事ができる。

●フィールド上に表側表示で存在するモンスターがフィールドから離れる場合、代わりに自分フィールド上に存在するLCを2つ取り除く事ができる。この効果は相手ターンでも発動する事ができる。

●自分の手札の枚数×300ポイント自分のライフを回復し、回復した数値分、相手にダメージを与える。

●このカードは1度だけ戦闘で破壊されない。

 

LS紅の鉄騎ヴィータ ☆9/地/魔法使い/3000・D2800

このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上の「LS祝福の騎士ヴィータ」を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。

自分フィールド上のモンスターが攻撃対象にされた時、このカードに攻撃対象を変更する事ができる。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていた時、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

このカードが戦闘でモンスターを破壊できなかったダメージ計算後に発動できる。手札または墓地に存在する「ヴィータ」と名のつくモンスターをゲームから除外し、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターの攻撃力は除外したモンスターの攻撃力分ダウンし、そのモンスターをもう1度だけ続けて攻撃出る。また、選択したモンスターが守備表示の場合、そのモンスターを攻撃表示にする。

このカードが破壊され墓地に送られた時、自分フィールド上に「八神はやて」または「高町なのは」と名のつくモンスターが存在する場合、墓地の「ヴィータ」と名のつくカードを自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る。

 

LSリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマ ☆10/闇/魔法使い/A3000・D2000

このカードは通常召喚出来ない。「銀十字」の効果で特殊召喚する事ができる。

1ターンに1度、このカードに乗っているLCを1つ取り除いて発動する。このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するモンスターの攻撃力・守備力をこのターンのエンドフェイズまで半分にする。「銀十字」を装備している場合、この効果を受けるモンスターの攻撃力と守備力は0にし、効果を受けたモンスターが装備魔法の対象になっていた場合、その装備魔法を墓地に送る。この効果は相手のターンでも使用できる。

 

 

 

LSA(エース)O(オブ)A(エース)高町なのは ☆8/光/魔法使い/A1000・D3000

「高町なのは」+「ユーノ・スクライア」

自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。

1ターンに1度、自分フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードを攻撃表示に変更し、自分のデッキからレベル5以下の「LS」と名のつくモンスターを手札に加えることができる。

 

LS黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン ☆8/光/魔法使い/A2800・D500

「フェイト・テスタロッサ」+「アルフ」

(融合説明はAOAなのはと同文

1ターンに1度、使用していない自分のモンスターゾーンを指定して発動できる。自分フィールド上のこのカードはそのモンスターゾーンに移動する。この効果は相手のターンでも発動することができる。

このカードの正面の相手モンスターと戦闘する場合、このカードの攻撃力は700ポイントアップする。

 

LS夜天の主・八神はやて ☆8/闇/魔法使い/A2100・B2000

「八神はやて」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)

(融合説明はAOAなのはと同文

このカードが融合召喚に成功したとき、このカードにLCを2つ乗せる。このカードの攻撃力はこのカードにのっているLCの数×300ポイントアップする。自分フィールド上に「夜天」または「祝福」と名のついたカードが存在する場合、相手はこのカードを攻撃対象にすることができず、効果の対象にできない。

 

LS夜天の王・八神はやて ☆10/闇/魔法使い/A2800・D2800

「LS八神はやて」+「LS祝福の風リインフォース(アインス)

(融合説明はLSAOAなのはと同じ

融合召喚に成功した時、このカードにLCを3つ乗せる。

このカードのLCを取り除く事で、以下の効果を発動できる。

●このカードのLCを1つ取り除き、相手フィールドに存在する表側表示モンスターを1体選択して発動する。そのモンスターはエンドフェイズ時まで効果が無効化される。この効果は1ターンに1度しか使えなく、相手のターンでも発動する事ができる。

●このカードのLCを2つ取り除き発動できる。融合デッキから「祝福」と名のつくモンスター1体を、効果を無効にして表側守備表示で特殊召喚する。この効果は1ターンに1度しか発動できない。

●このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLC1つを取り除く事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

LS祝福の騎士シグナム ☆7/風/魔法使い/A2700・D2000

「夜天の将シグナム」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)

(融合説明はAOAなのはと同文

このカードが融合召喚に成功したとき、このカードにLCを1つ置く。1ターンに1度、このカードに乗っているLCを1つ取り除き発動できる。相手フィールド上のモンスター1体を選択し、選択したモンスターの攻撃力と守備力を、次の相手のエンドフェイズ時まで0にする。

 

LS烈火の剣神シグナム ☆7/炎/魔法使い/A3000・D2000

「LS夜天の将シグナム」+「LS烈火の剣精アギト」

自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。

このカードが融合召喚に成功した時、このカードの攻撃力よりも低い攻撃力を持つ相手フィールド上のモンスターを全て破壊する事ができる。

この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

LS祝福の騎士ヴィータ ☆7/地/魔法使い/A2600・2500

「LS夜天の騎士ヴィータ」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)

(融合説明はLSAOA高町なのはと同文

このカードが融合召喚に成功した時、フィールド上のセットされたカードを2枚まで選択して破壊できる。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていた時、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

LS祝福の癒し手シャマル ☆7/水/魔法使い/A1000・D2300

「夜天の癒し手シャマル」+「祝福の風リインフォース(ツヴァイ)

自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。

1ターンに1度フィールド上に表側表示で存在するカード1枚にLCを1つ置く事ができる。フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターが戦闘で破壊される場合、代わりに自分フィールド上に存在するLCを1つ取り除く事ができる。この効果は1ターンに1度しか使えない。

 

LSナハトヴァール ☆8/闇/悪魔/A0・D0

このカードは「祝福の風リインフォース(アインス)」の効果で特殊召喚できる。

自分のメインフェイズ時に「夜天の王」または「(アインス)」と名のついたモンスターに装備することができる。この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。また、装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターを装備モンスターに、装備カードとして装備する事ができる。装備モンスターの攻撃力は、この効果で装備しているモンスターの攻撃力の半分アップする。

 

LS夜天の書 ☆8/闇/魔法使い/A0・B0

このカードは「祝福の風リインフォース(アインス)」の効果で特殊召喚できる。自分のメインフェイズ時に「夜天の王」または「(アインス)」と名のついたモンスターに装備することができる。

装備モンスターが戦闘を行うダメージステップ時に自分の墓地の「夜天」または「祝福」と名のつくモンスターをデッキに戻して発動できる。装備モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時までデッキに戻したモンスターの攻撃力の半分アップする。

1ターンに1度自分フィールド上にLCが乗ったカードを選択し発動する。選択したカードに乗っているLCを任意の数取り除き、取り除いた数だけ自分はデッキからカードをドローする。

 

LSリアクト・エンゲージ―トーマ ☆8/闇/魔法使いA2500・D2500

「トーマ・アヴェニール」+「リリィ・シュトロゼック」

自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。

このカードが融合召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。1ターンに1度、このカードに乗っているLCを1つ取り除く事で、相手フィールド上のモンスターの攻撃力と守備力を1000ダウンさせる。また、銀十字を装備している場合、この効果で2000ダウンする。この効果は相手のターンでも使用できる。

 

LS 聖王ヴィヴィオ ☆7/光/魔法使い/攻?・守?

「LS迷い子ヴィヴィオ」+「ロストロギア・レリック」

フィールド上に「なのは」または「フェイト」と名のつくモンスターが存在する時、このカードは自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地に送り、融合デッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。

このカードの特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から「聖王の鎧」1枚を選択し、手札に加える。また手札に加えた「聖王の鎧」を装備する事が出来る。

このカードの攻撃力・守備力は自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスターの数×400アップする。

スタンバイフェイズ、自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスター1体を選択し発動する。エンドフェイズまで、このカードは選択したモンスターと同じ効果を得る。

このカードが相手モンスターと戦闘を行い、相手モンスターを破壊できなかった時、破壊できなかったモンスターの効果は無効となる。

エンドフェイズ、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを融合デッキに戻し、「覇王」または「冥王」と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。

 

LS冥王イクスヴェリア ☆7/闇/魔法使い/A2000・D2500

「LS悠久の眠り姫イクスヴェリア」+「LSマリアージュ」

このカードは自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)

このカードが特殊召喚された時、自分フィールド上の「マリアージュ」と名のつくモンスターの数だけ相手フィールド上のカードを選択し、破壊する。

一ターンに一度「マリアージュ軍隊長トークン」(闇・☆5・機械・攻2000/守2000)を特殊召喚できる。

エンドフェイズにこのカードを融合デッキに戻し、「聖王」または「覇王」と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。

 

覇王アインハルト ☆7/風/魔法使い/A2700・D2200

「LS記憶に縛られた少女アインハルト」+「LS覇王の愛機アスティオン」

このカードはフィールド上に存在する上記のカードを墓地に送ることで、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)

このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時、墓地に送ったモンスターの攻撃力と同じだけ自分のライフを回復する。

このカードが相手の魔法・罠の対象になった時、そのカードの効果を無効にし、破壊する。

エンドフェイズにこのカードを融合デッキに戻し、「聖王」または「冥王」と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。

 




モンスターの数が予想以上でビックリしました。多くて20枚くらいかと。
今まで
なのは
フェイト
はやて
シグナム
ヴィータ
シャマル
トーマ
の7人をメインにしていたのでそんなに多いとは思いませんでした。
7人じゃ回すのがちょっときついかな、って思って三王娘の募集をした感じです。


エクストラデッキはこの当時と同じく、シンクロが無いので融合デッキの制限はありません。


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カード整理 魔法・罠編

魔法17枚
罠10枚


デバイスマイスター 通常魔法

デッキから「レイジングハート」「バルディッシュ」「闇の書」と名のつく装備魔法を1枚手札に加える。その後、自分フィールド上のLCを2つ取り除く事で、デッキから「ツヴァイ」または「アギト」と名のつくカードを手札に加える事ができる。

 

ユニゾンアウト 速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつく融合モンスター1体を選択して融合デッキに戻す。さらに、融合デッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスターと同名カードが一組自分の墓地に揃っていれば、その1組を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

カートリッジロード 通常魔法

フィールド上に表側表示で存在するLCを乗せる事ができるカード1枚にLCを1つ置く。このカードを発動したエンドフェイズ、デッキから「カートリッジロード」を手札に加える事ができる。

 

魔弾作製 通常魔法

自分フィールド上の「LS」と名のつくレベル7以上のモンスター1体を選択し発動する。選択したモンスターを生贄にし、自分のデッキ・墓地から「カートリッジロード」を可能な限り手札に加える。

 

ディバインバスター  通常魔法

自分フィールド上に「なのは」と名のつくモンスターが存在する場合発動できる。自分フィールド上のLCを1つ取り除き、相手フィールドのカード2枚選択し、破壊する。

 

フォトンランサー 速攻魔法

自分フィールドに「フェイト」と名のついたモンスターが存在する時発動できる。相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。このカードの発動に対して相手は選択されたカードを発動できない。

 

A(Accelerate)C(Charge)S(System) 速攻魔法

「レイジングハート」と名のつく装備魔法が存在する場合のみ発動できる。「レイジングハート」と名のつくカードを装備しているモンスター1体を選択し、選択したモンスターの攻撃力は2000アップする。このターンのエンドフェイズ、このターンで破壊されたモンスターの数だけ、自分フィールド上のカードにLCを乗せる事ができる。

 

バルディッシュ・スピードローダー 速攻魔法

相手の攻撃宣言時、自分フィールド上の「バルディッシュ」と名のつく装備魔法が存在する場合のみ発動できる。「バルディッシュ」と名のつく装備魔法を装備しているモンスターの効果を無効にし、攻撃力を2000アップする。

また、次の自分のスタンバイフェイズ、自分フィールド上の「バルディッシュ」と名のつく装備魔法を墓地に送る事で、墓地に送ったカードを装備していたモンスターはこのターン2回攻撃ができる。

 

連続転移 通常魔法

自分フィールド上のLCを2つ取り除いて発動する。自分のデッキの上からカードを3枚めくり、その中に「LS」と名のつく通常召喚可能なモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。それ以外のカードはデッキに戻してシャッフルする。

 

遠隔転移 通常魔法

自分フィールド上に「シャマル」または「キャロ」と名のつくカードが存在する時発動できる。

自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスターを選択し、選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

レイジングハート・エクシード 装備魔法

「なのは」と名のつくモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は1500ポイントアップする。装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する事ができる。

 

バルディッシュ・アサルト・ザンバー 装備魔法

「フェイト」と名のつくモンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

闇の書 装備魔法

このカードの装備モンスターは攻撃力が300ポイントアップする。このカードが墓地に送られた場合、フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターにこのカードを装備しなければならない。このカードの装備モンスターがモンスターを戦闘によってモンスターを破壊した場合、このカードにLCを1つ乗せる。LCが3つ乗ったこのカードをゲームから除外することで、手札・デッキ・墓地・除外ゾーンから「祝福の風リインフォース(アインス)」を特殊召喚できる。

 

聖王の鎧 装備魔法

このカードは「聖王」と名のついたモンスターにのみ装備できる。

このカードを装備したモンスターは攻撃力4000以下のモンスターとの戦闘では破壊されない。

 

銀十字 装備魔法

このカードは「リリィ」または「トーマ」と名のついたモンスターに装備可能。自分フィールド上に「リリィ」または「トーマ」と名のつくモンスターが表側表示で存在し、このカードが墓地に存在する場合、手札のカード一枚を墓地に捨てて発動できる。墓地のこのカードを手札に加える。

また装備モンスターが「LSリアクト・エンゲージ―トーマ」だった場合、装備モンスターが自分のフィールドから離れた時、手札、デッキ、墓地から「LSリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマ」を特殊召喚する。

 

魔法都市ミッドチルダ フィールド魔法

自分または相手が「LS」と名のつくモンスターを召喚した時、このカードにLCを1つ置く。1ターンに1度、自分フィールド上のLC1つを移動させる事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLCを1つ取り除くことができる。

 

時空管理局 永続魔法

「LS」と名のつくモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードに1つLCを置く。この効果は1ターンに2回まで発動できる。

 

Asの回収 速攻魔法

除外されている「LS」と名のつくモンスター、もしくは「LS」と名のつくモンスターの効果によって除外されたカードを2枚選択して発動する。選択したカードを墓地に送り、自分のデッキから1枚ドローする。

 

フェイクシルエット 速攻魔法

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

デッキから「LS」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る。

選択した自分のモンスターはエンドフェイズ時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。また、墓地に「ティアナ・ランスター」がいる場合このカードと「ティアナ・ランスター」をゲームから除外することで、このターン相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。

 

オプティックハイド 速攻魔法

自分フィールド上に「LS」と名のつくモンスターが存在し、相手が「フィールド上のカードを破壊する」効果の発動時に発動できる。

その時相手が発動したカードの効果は「自分フィールド上にオプティックトークン」(機械族・地・星8攻2000/守2000)を特殊召喚する」となる。

 

 

 

フィジカルヒール 通常罠

フィールドに表側表示で存在する「LS」と名のついたモンスター1体を選択して発動する。自分は選択したモンスターのレベル×400ポイントライフを回復する。

 

Asの収集 通常罠

自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地に送られた時に発動する事が出来る。

自分の手札またはデッキから「LS」と名のついたレベル5以下のモンスターを特殊召喚する。

 

プロテクション 通常罠

自分フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスターを選択して発動する。選択したモンスターはこのターンのエンドフェイズまで、戦闘及び効果で破壊されない。

 

設置型バインド 通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。発動後このカードは攻撃宣言したモンスターの装備カードとなる。このカードを装備したモンスターは攻撃する事ができず、表示形式を変更する事ができない。このカードの発動後、自分フィールド上のカード1枚選択し、選択したカードにLCを1つ乗せる

 

クラールゲホイル カウンター罠

自分フィールド上にモンスター1体を選択し、相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。

その後選択したモンスターをデッキに戻し、自分のデッキから「夜天」と名のついたモンスター1体を、LCを1つ乗せた状態で特殊召喚する。

 

鋼の軛 永続罠

このカードがフィールド上に存在する限り、指定したモンスター1体は攻撃できない。エンドフェイズ時、指定したモンスターの攻撃力、守備力は1000ダウンし、自分フィールド上のカード1枚を選択する。選択したカードに1つLCを乗せる。

選択したモンスターがフィールドから離れた時、このカードを破壊する。

 

Strikersの回収 通常罠

自分の墓地に存在する「LS」と名のついたモンスター3体を選択して発動する。

選択したモンスターをデッキに加えてシャッフルする。その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 

フォーメーションチェンジ 通常罠

「LS」が攻撃対象に選択された時発動できる。攻撃対象のモンスターの表示形式を変更し、自分のデッキから1枚ドローする。この戦闘で発生する戦闘ダメージは0になる。

 

ソニックムーブ 通常罠

自分フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスター1体を選択し、このターンのエンドフェイズ時までゲームから除外する。選択したモンスターにLCが乗っていた場合、除外した時と同じLCを乗せる。また、墓地のこのカードをゲームから除外することで、もう1度同じ効果を使える。

 

協力防御 通常罠

自分フィールド上に「LS」と名のつくモンスターが表側表示で2体以上存在する時に発動できる。自分フィールド上のモンスターの破壊を無効にし、このターン発生する戦闘ダメージを0にする。その後自分のデッキから1枚ドローする。

 




モンスターと合わせて計57枚。カートリッジは三積みだから59枚です・・・・。もうギリギリですね。


追記
デッキ枚数制限は考えず、これからもオリカを出していく予定です。



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第十七話

早朝、まだ太陽が昇る前だが俺は目覚ましもなしにパチッと眼が覚めた。この時間に起きるのも習慣になっており、肌寒い季節であろうとそれは関係なかった。こうして早朝に起きるのには理由がある。

 

『起きたか遊斗。今日もやるのか?』

 

ソファーで新聞紙を読んでいたシグナムさんは、ベッドにいる俺の方を見ずに問う。昨日は寝るのが遅かったのでシグナムさんなりの気遣いだろう。

 

「はい、日課ですから。今日もよろしくお願いします」

 

俺の言葉にシグナムさんはフッと笑うと、新聞紙を一枚めくった。新聞を読んでいるシグナムさんって様になるよな。お父さん、って感じがする。って事ははやてさんが奥さんで、ヴィータさんとツヴァイとアギトが娘、アインスははやてさんのお姉さんで、ザフィーラがペット。シャマ姉は・・・・(しゅうとめ)

 

『何かは知らないがシャマルに失礼な事は考えない方が良いぞ』

「肝に銘じておきます」

 

 

 

 

ブルー寮の屋上。室内に比べて殺風景なこの空間は、坊ちゃん育ちがほとんどのブルー寮の生徒には人気が無いので絶好の訓練スペースだった。まあ訓練と言っても木刀での軽い打ち合い。

ストレッチと準備運動を終え、毎日決められた回数の素振りをする。シグナムさんレベルまでなると、一つの素振りを1000回ぐらいするらしいが、俺には無理なので20の数セットをやる。

 

「19、20! よし、終わりました」

「よし、じゃあやるか。今日こそは一本取ってみろ」

 

実体化したシグナムさんと俺が木刀を構えた時だった。突然コンクリートの中からアインハルトがヌッと出てきた。

び、びっくりした! 実体化してないと精霊って幽霊みたいなものだから、当然物を貫通する事が出来る。俺も人並みに怪奇現象は怖いからその現れ方は止めて欲しい。

 

「アインハルトか、どうかしたか?」

『もしよろしければ私も組み手に入れてもらえないでしょうか?』

「ふむ、では遊斗とやってみろ。遊斗は木刀のままでいい」

 

へ? 俺武器持って良いの? アインハルトって確か武道家だけど女の子ですよ? 

それに俺、自分で言うのもなんだけど、シグナムさんに鍛えてもらってるから結構強いと自賛している。

 

「少女だと思って油断するな。お互い本気でやれ」

「『はい!』」

 

 

 

 

『も、申し訳ありません!』

「ははっ、良いって・・・・ハァ」

 

結果? このやり取りで分かる様に惨敗ですよ。可愛らしい外見ですっかり忘れてたけど、アインハルトって覇王様なんだよね~。そりゃあ凡人の俺が勝てるわけないよね~。因みにアインハルトは魔法使用無し+片手だけのハンデでもなお勝った。あ~あ、この十年間頑張ってきた成果が・・・・。

 

『アインハルトは覇王の記憶を受け継いで、経験も豊富だ。そんなに落ち込む事は無い』

『遊斗さんは魔法が使えないのに凄く強かったです。胸を張って誇って下さい』

「りょ~かい、素直に喜ぶよ」

 

シグナムさんとアインハルトの励ましで何とか普段のテンションまで持ってこれた時、前方から十代が走ってきた。

 

「おっ、いたいた」

「どうかしたか?」

「クロノス先生にお前と一緒に校長室に来るよう言われてな」

 

・・・・この間パックを奢らせた事に関係があるのか? い、いやいや、その件には十代は関係ないから違う筈だ。別に脅える必要はない。

十代と一緒に校長室に行くと、そこにはクロノス先生と校長先生だけではなく、万丈目、み・・・・イエローの人、明日香、カイザー、そして大徳寺先生がいた。

 

「やっと来たノ~ネ。全く、シニョ~ル遊斗はもう少しブルー寮の誇りと言うものを」

「いや、待たせたのは申し訳ないと思っていますけど、俺はここに呼ばれているのを十代から聞いて知ったんですから」

 

にしても亮さんと大徳寺先生までいるって事は、これは深刻な話なのかもしれない。お二人がいなかったら、一年生だけの行事の打合せとも取れなくはないが、学年関係なしに召集が掛かっている。なにより校長先生の雰囲気もいつもとは違い少し怖く、重たい空気を纏っている。

 

「ゴホン、早速だが本題に入らせてもらう。このデュエルアカデミアにはとてつもない力を秘めた三枚のカードがあります。その名を三幻魔。このデュエルアカデミアの地下に古より封印されし魔のカードです。このカードの封印が解かれると、天は荒れ、地は乱れ、世界を闇に包みこみ破滅に導くと云われております・・・・」

 

・・・・何、どゆこと? 天が荒れ、地は乱れ、世界を闇に包み込むって冗談ですよね? 少し苦笑しながら、いやいやと手を軽く振って冗談だと思おうとしたが、校長先生は首を軽く横に振った。

ほ、本当にそんなカードが存在するのかよ、このデュエルアカデミアの地下に・・・・。

 

「セブンスターズ、そう呼ばれる者たちが三幻魔復活を目論み、封印を解く鍵を奪わんと向かってきています。それがこの鍵です」

 

校長先生は机の下から古びた木箱を取り出し、木箱の蓋を開けると7つの古い鍵があった。鍵はどれも形はバラバラで、色々な形で別れたり尖がったりと、独特な形の鍵だ。

本格的とかじゃなくて、これ間違いなく本物だよな。ここまでやって冗談って言う先生でもないし。

 

「あなたたちはこの学園でも屈指の実力を持つデュエリストです。その力を見込み、この鍵を託したい。そしてセブンスターズからこの鍵を守ってもらいたいのです」

 

ほう、実力のあるデュエリストを集めたって事はセブンスターズとの戦いもデュエルって事か。てかそりゃそうだよな、カードを狙って襲ってくるのにリアルファイトだと、解放された三幻魔が怒りそうだし。

校長先生の真剣な表情に、みんなコクンと頷いた。勿論俺も首を縦に振った。

 

「あ、その前に。どうしてそんな危険なカードを処分しないんですか? デュエリストとして言う台詞では無いですけど、破ったり燃やしたり切ったりしたら」

「三幻魔と言われるカードは普通とは違います。どんな熱でも燃えず、斬っても破ってもすぐに再生します」

 

なるほど、やっぱり庶民的な意見でどうこうなるカードじゃないって事か。まっ、そうじゃないと三幻魔と呼ばれ、封印される意味が無いだろう。

リアルファイトではすっかりやる気を無くしたが、デュエルではどんな相手であろうと負けない。

 

「無理強いはしませんが、その覚悟を持っていただけるなら、この七星門の鍵を受け取っていただきたい。そしてもし、この場の全員その気があるなら、このダミーの鍵を持って行ってください」

「面白いじゃん! デュエルで俺が出なきゃ誰が出るって言うんだ!」

「同じく! 悪い奴でも強い奴と戦えるなら喜んで志願しますよ!」

 

一番に志願したのは俺と十代。この緊迫した空気には似つかわしくないテンションに、クロノス先生、万丈目、明日香、イエローの人は呆れている。俺は七つある鍵の一つを手に取ると、付いている紐を首に回して、首に下げた。

 

 

 

 

「なあ遊斗! 今からセブンスター探しに行かねえか?」

「行きません。確かに強い奴とデュエルはしたいけど、今は目先の女の子が大事」

「申し訳ありません、色々と奢ってもらって」

 

ペコリと綺麗なお辞儀をするアインハルトに「いいよいいよ」と軽く返す。デュエル馬鹿な俺が断るには、可愛い女の子(アインハルト)以外にも理由がある。それはアインハルトを観察して弱点を探す事!

いくら覇王とは言え女の子に負けたんじゃ、10年間シグナムさんに教わってきた俺のプライドがボロボロだ! 大人げないと思われようと、せめて一発入れられるくらい出来ないと。

 

『向上心は良い事だけど、もう少し正々堂々したら?』

「なのはさんは黙ってて下さい」

「? どうかしましたか?」

「いや、何でもないよ。って事で悪いな十代。セブンスターズ倒したら教えてくれ」

「っちぇ~。じゃあ俺もブラブラするか~」

 

トラブルメーカーの十代の事だから歩いていたら自然と向こうからセブンスターズが来そうだな。でもこの鍵、七星門の鍵を持っている限りトラブルメーカーじゃなくてもセブンスターズに狙われるのか。それに数ヵ月前だがカオス・ソーサラーに襲われた事もある。その件も解決していない。

何より心配なのが十代の事だ。今のあいつならセブンスターズとワクワクしながら戦うだろうが、はたしてそのワクワクがどこまで持つか心配だ。セブンスターズがどんな連中かは知らないが、命を掛けたデュエルをする時があるかもしれない。そんな時、心の底からデュエルが楽しいものだと思っているあいつは、どうなるんだろうか? 勿論俺もデュエルは楽しいものだと思っているし、カオス・ソーサラーと命がけのデュエルをした後でもデュエルを楽しんでいる。だけど俺と十代とではデュエルを楽しむ心に決定的な違いがある。

 

「・・・・どうかしたか、アインハルト?」

「いえ、お難しい顔をされていたので」

「まあな、みんなに聞いたと思うけど、数ヵ月前精霊に襲われた事があってな」

「はい、お聞きしました」

「そのセブンスターズって輩と関係があるのかなって・・・・。あともう一つ問題があってな」

「?」

 

ああ、そのチョコンと首を傾げる仕草。可愛らしくて思わず抱きしめたくなる愛らしさがあるそれ。その行動で発狂する輩がこのアカデミアには多くいるんだよ。

 

「周りがロリコンだらけって事だ」

「? ロリコン?」

「羨ましいッス遊斗君! フェイトちゃんに続き、アインハルトちゃんという美少女まで!」

「アインハルトたんハァハァ!」

「貴様は我ら紳士同盟の敵だ!」

 

駄目だコイツ等っ! 遅すぎたんだ、腐ってやがる!

周りにいた正常者は、男子も入れてコイツ等の気持ち悪さにドン引きしているが、当のアインハルト本人は無邪気と言うか警戒心が無いのか、リアクションが無い。いや、呆れてものも言えないのかもしれん。

 

「一度だけなら俺もそっちに合わせたけど、二回目は無いからな。ちょいと待ってくれアインハルト」

「はい。畏まりました」

 

 

 

 

ロリコン共、いや、紳士同盟全員とデュエルして奴らを薙ぎ払い、あいつらがゾンビのように復活しない内に俺達は売店を後にした。う~ん、にしてもアインハルトの弱点が全く分からない。元々感情を表に出さない子なのか、それとも俺の事を警戒しているのか。

 

「先程の精霊に襲われた件ですが、ひょっとしたらジェイル博士が関係あるのでは?」

「父さんが?」

「はい。これは皆様がお話している内容を耳にしただけですが、ジェイル博士が元いた次元、つまり私達の世界のジェイル博士の被害者が遊斗さんに危害を加えようとしているのかも」

「・・・・はい?」

「ジェイル博士は一般人の私ですら知っている凶悪次元犯罪者です。復讐しようと思う方もたくさんいるかと」

「・・・・じょっ、冗談じゃない! 何で俺が父さんの尻拭いみたいな事をしなきゃいけないんだ! 俺の両親はお前の父親に殺されたんだ、っていう定番か!? 言っておくが例えそんな奴が来て、どれだけ父さんに酷い事されていようが俺には一切関係ないからな!」

 

ハァ゛ハァ゛・・・・。い、いかんいかん、少し興奮しすぎたようだ。アインハルトも突然の暴走にポカーンと小さく口を開いている。その小さな口に指を入れたくなるのは俺だけではないと思いたい。

アインハルトは暫くして現実世界に戻ってきたのか、笑ってないけど苦笑って表現が一番似合う表情をした。そんな表情も可愛らしく、一人勝手に和んでいたが、突然アインハルトの目つきが鋭くなった。

 

「・・・・誰です!?」

「クックック、よくぞ気付いた。我はセブンスターズの一人、そうだな、リベンジと名乗ろう」

 

アインハルトが睨んだ先から、草むらの中から現れたのは黒いマントを着た、俺と同じくらいの背丈の男が歩いてきた。

・・・・リ、リベンジですか。もう少しいい偽名無かったのか? こういう時パッと思い浮かばなかったら、アルファベット一文字とかが王道で無難な気がするんだけど。リベンジってカードとかにもよく使われているし、正直言うと凄くダサい。アインハルトも同感の様で、先程と同じ表情だがネーミングセンスに呆れているのが分かる。

 

「そのリベンジさんは俺にデュエルを挑んできたのか?」

「ああ! ジェイル・スカリエッティ! この男に俺の家族は殺された! そう、お前の父親にな!」

 

え、何? さっきの話フラグだったの・・・・? 

じゃあどうしてこっちに来るんだよ!? 俺じゃなくて父さんの方に行こうよ、住所なら教えるって!

 

「どうして俺を狙うんだよ俺を!? 復讐したいなら父さんの方に行け!」

「うるさいうるさい! あいつにも家族を奪われる苦しみを与えてやるんだ! あいつを追って数年間、やっと貴様を見つけたんだ!」

 

俺を殺すよりも、研究成果とかレポートを壊した方がよっぽどショック与えられると思うんだが・・・・。こんなこと本人が言うセリフではないが、あの父親の元で15年も育てられていたら、父さんが自分の事をどう思っているかぐらいは分かる。

研究=欲望>精霊のカード>研究室>俺

良くてこれだと思う。

 

「なるほど。この間の対抗デュエルで俺の事を知ったってことか」

「さあ、デュエルしろ! 俺の復讐心が作り出した闇の力、この闇のフィールドではデュエルのダメージが本物となる。クックック、この闇で俺はこの次元まで飛んできたんだ。俺の闇の力は強力だぞ?」

 

リベンジの足元から出てきた闇の霧がここら一体の空間を包み込み、一つの空間になってきた。ック、闇のゲームが本当にあるとは・・・・。噂では負けた者は死より苦しい目に合うらしい。

やべぇ、いくら動機がありきたりとは言え、これは笑えなくなってきた。

 

「アインハルト、デッキに戻っていてくれ」

「はい」

「クックック、準備はできたようだな」

「闇のデュエル。笑えないなっ!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺だ、ドロー! 永続魔法漆黒のトバリを発動。そしてモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

リベンジ モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

漆黒のトバリ、ドローしたカードが闇属性だったらそのカードを捨てデッキからもう一枚ドローする墓地肥しカード。相手のデッキは闇属性デッキか。しかも漆黒のトバリを入れてると言う事はモンスターカードが多い、闇属性デッキ、ダークモンスターデッキの可能性が大だ。

ただこれはあくまで予想。決めつけてはいけない。

 

「ドロー! フェイトを召喚し効果でLCを置く。そしてLCを取り除きそのモンスターの表示形式を変更する」

「俺のカードはキラー・トマトだ」

 

闇属性専用のリクルーターか。漆黒のトバリの時点で分かっていたが、やはり闇属性デッキ。

 

「時空管理局を発動し、キャロ・ル・ルシエを魔法・罠ゾーンに置く。これによりフェイトの攻守は300アップ」

 

フェイトA1800・D500→A2100・D800

 

「バトル! フェイトでキラー・トマトを攻撃!」

『ハーケンセイバー!』

 

A2100 VS A1400

 

バルディッシュから放たれた魔力刃が、キラー・トマトを縦に真っ二つにした。へ~、キラー・トマトの中って普通のトマトと同じで実があるんだ・・・・。ってそんな事はどうでもいい。

 

リベンジLP4000→3300

 

「キラー・トマトの効果。デッキから終末の騎士を特殊召喚。そして終末の騎士の効果でマッド・リローダーを墓地に送る」

 

A1400・D1200

 

「お前へのダメージは無いんだな」

「正義の味方が悪を倒す前に倒れたら困るだろ?」

 

正義の味方ねぇ・・・・。俺自身が正義とは思っていないし、父さんのやった事は悪だと思う。けど悪を倒すのが正義って訳ではないだろう。

そもそも自分へのダメージを消すとか正義の味方のやり口じゃない。俺の思う正義の味方って言うのは、十代や精霊達(みんな)みたいに相手の事を純粋に心から思ってる人だと思うな。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、終焉の焔を発動。黒焔トークンを二体特殊召喚する」

 

遊斗   モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

リベンジ モンスター3 伏せ1 手札3 LP3300

 

「俺のターン、ドロー! 漆黒のトバリの効果でゴブリン陽動部隊を捨てドロー、レベル・スティーラーを捨てドロー、合成魔獣ガーゼットを捨てドロー。冥界の宝札を発動! 場の黒焔トークン二体を生贄にダーク・ホルス・ドラゴンを召喚! 冥界の宝札の効果で二枚ドローする」

 

A3000・D1800

 

奴の場に出たのは銀の体に禍々しい黒い炎を纏った巨大な竜。この竜はホルスの黒炎竜LV8というカードがダーク化した姿。ダークモンスターは効果も強力でカッコイイというのもあり、かなり人気の高いカード。実際前に、同じダークモンスターと戦った事があるが、このダーク・ホルスの纏う闇は本物の闇だと俺の直感が言っている。

 

「二重召喚を発動。闇の住人シャドウキラーを召喚」

 

A1400・D200

 

「バトル! ダーク・ホルスでその小娘に攻撃! ダーク・メガフレイム!」

 

A3000 VS A2100

 

このリバースカードは奴の攻撃を防げるカードでは無い。フェイトは俺へのダメージを減らす為に必死になって防御を展開したが、フェイトの力では止める事が出来ずに、俺の方へ火が飛んできた。ック、覚悟は最初から出来てんだよ!

 

「あっ、あああああああっ!」

 

遊斗LP4000→3100

 

きゅ、900のダメージでこれかよ。じょ、冗談じゃない。もう既に炎の所為で体の一部が火傷している。

 

「フェイトが戦闘で破壊された時Asの収集を発動。デッキからLV5以下のLSを特殊召喚する。来い、なのは! キャロの効果で攻守アップ」

『この人、凄く怖い・・・・』

 

時空管理局LC0→1

A500・D1800→A800・D2100

 

「だが闇の住人シャドウキラーは相手モンスターが守備のみの時ダイレクトアタックできる!」

 

A1400

遊斗LP3100→1700

 

「がっ! ああっ!」

 

シャドウキラーが持っている剣が俺の体を引き裂いた。肉を切られた感覚はないが、激痛が斬られた部分から体中にめぐり回る。

 

「ダーク・ホルスのレベルを一下げて墓地からレベル・スティーラーを復活し終末の騎士を守備に変更。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

A600・D0

 

遊斗   モンスター1 伏せ2 手札2 LP1700

リベンジ モンスター4 伏せ3 手札1 LP3300

 

ヤバイ、デュエルはまだ始まったばかりだが、闇のデュエルのダメージが想像を越えるものだ。カオス・ソーサラーとのデュエルの時は、カードにダメージを与えられた感覚だが、この闇のデュエルはそれに加え、体が闇の力に喰われているような感覚。相手も同じ条件なら死ぬ気で我慢するが、奴がインチキしてダメージが実体化しない今、俺一人の我慢大会。俺の気力もグンと下がる。

 

「ド、ドロー! 時空管理局のLCを取り除きユーノ特殊召喚、時空管理局の効果で再びLCが乗る。そして場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

なのはA1000・D3000→A1300・D3300

LC時空管理局1→2

 

「なのはさんの効果でデッキからエリオを手札に加える。エリオの効果、このカードを墓地に送り、墓地からLSをサルベージする。フェイトを手札に加え召喚」

「ッチ、またそいつかよ!」

「フェイト自身のLCを取り除き、ダーク・ホルスの表示形式を変更する」

「その効果にチェーンしてガードペナルティ。選択したモンスターが守備になったらデッキから一枚ドローする。

そして魔法が発動した事により、チェーン処理が終わった時にダーク・ホルスの効果で墓地からキラー・トマトを特殊召喚」

 

なるほど、相手のターンに魔法が発動したら効果を使えるダーク・ホルスを上手く利用したコンボだ。安定性はゴミ同然だが、そのコンボを決めさせてしまったのは俺自身だ。

 

「バトル! フェイトでダーク・ホルスを攻撃!」

『ハーケンセイバー!』

 

A2100 VS D1800

 

「続いてなのはさんで終末の騎士を攻撃!」

『アクセルシュート!』

 

A1300 VS D1200

 

「ック、悪役の分際で生意気な!」

 

ッチ、インチキしておいてよく言うぜ。俺だけダメージ受けているのに悪役だの悪だの、流石の俺もイライラしてきたぞ。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗   モンスター2 伏せ4 手札1 LP1700 

リベンジ モンスター3 伏せ2 手札2 LP3300 

 

「ドロー、死霊操りしパペットマスターを捨てドロー、墓地のパペットマスターとダーク・ホルスをゲームから除外して、手札のダーク・ネフティスを墓地に送る。レベル・スティーラーとシャドウキラーを生贄に闇の侯爵ベリアルを召喚! 冥界の宝札の効果で二枚ドロー」

 

A2800・D2400

 

闇の侯爵ベリアル。どう表現したらいいかよく分からないけど、剣を持った人型の悪魔って言えば一番分かりやすいと思う。癖のあるデュエルモンスターズの中では、なんかこうあり来たりで説明が難しい。因みにあいつがいると、あいつ以外のモンスターを攻撃対象に出来ず、魔法罠も対象にできなくなるから地味に辛い。

 

「更に悪夢再びを発動。墓地の守備力0の闇属性モンスターを手札に加える。俺はゴブリン陽動部隊と合成魔獣ガーゼットを手札に。闇の誘惑、二枚ドローしてゴブリン陽動部隊を除外。高等儀式術発動、デッキからサファイアドラゴンとブラッド・ヴォルスを墓地に送り、仮面魔獣マスクド・ヘルレイザーを降臨!」

 

A3200・D1800

 

マ、マスクド・ヘルレイザー。効果は何も持っていないが攻撃力は3000打点を越えた3200。昔伝説のデュエリストである遊戯さんと海馬を苦しめたカード。しかもこれだけやっておいて奴の手札は2枚。やっぱり闇属性はサポートが豊富すぎるんだよな。俺はどの属性に肩入れしているって訳ではないが、もう少し属性に平等を。

 

「バトル! マスクド・ヘルレイザーでその白の女に攻撃!」

「罠発動、フォーメーションチェンジ。このカードはLSを対象に取る効果だ。攻撃対象になったモンスターを守備に変更し、デッキから一枚ドローする」

 

A3200 VS D3300

 

ふぅ。なのはさんにこのカードはシナジー抜群だな。だがまだ奴の攻撃が残っている。

 

「ベリアルで金髪の小娘を攻撃!」

「それも無効だ。ダメージ計算時スバルさんを墓地に送り、フェイトの攻撃力を1000上げる。反撃だ!」

 

フェイトA2100→3100 VS A2800

 

手札から現れたスバルさんは、フェイトに振り下ろすベリアルの剣を受け止め、ベリアルを思いっきり蹴りあげた。スバルさんの力によって空中へ飛ばされたベリアルに向け、フェイトのハーケンセイバーが直撃して爆発した。

 

リベンジLP3300→3000

 

「ッチ、ヘルレイザーのレベルを一つ下げレベル・スティーラー復活。カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊斗   モンスター2 伏せ3 手札1 LP1700 

リベンジ モンスター3 伏せ3 手札1 LP3000

 

相手のライフを中々削れないが、こっちの場にはなのはさんとフェイトがいる。場はほぼ同じだが、奴の墓地には大量の闇属性モンスターと、1300のライフ差。そしてダーク・ネフティスは自身の効果で墓地に行った時、次のスタンバイフェイズ特殊召喚でき、魔法・罠を破壊できる。キャロを破壊されるのは辛い。

 

「ドロー! なのはさんの効果でデッキからザフィーラを手札に加える。罠発動、strikersの回収。墓地のスバルさん、エリオ、なのはをデッキに戻して二枚ドロー。

連続転移を発動。時空管理局のLCを二つ取り除き発動する。デッキの一番上から三枚めくり、その中の通常召喚可能なモンスターを特殊召喚する」

 

LC時空管理局3→1

 

「一枚目アインハルト、二枚目アルフ、三枚目アスティオン。三体を特殊召喚する!

アスティオンの効果でこのカードを除くLSモンスターのレベル×100俺のライフを回復する。俺の場のモンスターの合計は19、よって1900ライフを回復」

『にゃ~?』

『ティオ、お願いします』

 

LC時空管理局1→2

 

アインハルトの肩に乗ったアスティオンは、眠そうに『にゃ~』と鳴くと、ベルカ式の魔法陣を展開して俺のライフを回復してくれた。闇のデュエルだけあり、本当に命が回復して行くようだ。

 

遊斗LP1700→3600

 

「ッチ、悪役が回復カード使ってんじゃねえ!」

「場のアインハルトとアスティオンを融合。来い、覇王アインハルト!

同じく場のフェイトとアルフを融合。来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

アインハルトA2700・D2200→A3000・D2500

フェイトA2800・D500→A3100・D800

LC時空管理局2→3

 

ああいうのは無視だ無視。頭が可哀そうな奴と同じ土台に立っていた俺が悪かったんだ。

 

「カートリッジロードをキャロに発動。LCが乗った事で三体の攻守は更に300アップ」

 

なのはA1300・D3300 →A1600・D3600

フェイトA3100・D800→A3400・D1100

アインハルトA3000・D2500→A3300・D2800

 

「バトル! アインハルトでヘルレイザーに攻撃!」

『覇王断空拳!』

 

A3300 VS A3200

 

あの技って今日俺もやってみたけど、凄く難しいんだよな。言葉だけではとても習得できない技だ、いつか俺もやってみたいな。あそこまで破壊力要らないけど。

 

リベンジLP3000→2900

 

「き、貴様ぁぁあ!」

「アインハルトの効果。戦闘でモンスターを破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分ライフを回復する」

『ティオ、もう一仕事お願いします』

 

遊斗LP3600→6800

 

「ライフ6800!? ッハ、流石悪役だな」

 

・・・・ライフで悪役ってどういうことだよ? てかお前の中の悪役は、回復は使わない癖にライフはやたらと多いんだな。どういうこっちゃ。

 

「続いてフェイトさんでキラー・トマトを攻撃」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA3400 VS D1100

 

「キラー・トマトの効果。デッキから二枚目のキラー・トマトを呼ぶ」

「なのはさんで攻撃はしない。なのはさんを守備表示にしてカードを二枚伏せてターンエンド。

エンドフェイズアインハルトの効果で自身を融合デッキに戻し、イクスヴェリアを特殊召喚。更にカートリッジロードを手札に加える」

 

イクスヴェリアA2000・D2500→A2600・D3100

 

遊斗   モンスター3 伏せ4 手札2 LP6800

リベンジ モンスター2 伏せ3 手札1 LP2900

 

「ドロー! スタンバイフェイズ前のターン捨てたダーク・ネフティスを蘇生。そしてそのピンクの小娘を破壊する!」

 

A2400・D1600

 

ダーク・ネフティスは口から炎を纏った黒の弾を吐き出し、キャロに発射した。

ック、よくやってくれたキャロ。お前のおかげでここまで持ってくる事が出来た・・・・。

 

「そしてレベル・スティーラーとキラー・トマトを生贄に堕天使ゼラートを召喚! 冥界の宝札の効果で二枚ドローする!」

 

A2800・D2300

 

っな、そいつが出るか!? 奴の場に現れたのは黒い翼と鎧を着た、その名の通り堕天使。強力な効果を秘めているのに相応しい、禍々しいオーラを纏っている。ヤバイ、コイツの効果は異常に強い。

 

「召喚成功時ソニックムーブ発動。なのはさんを除外する!」

「ッハ、逃げたか、堕天使ゼラートの効果。手札の闇属性のガーゼットを墓地に送り、貴様のモンスターを全て破壊する! 消えろ、雑魚共!」

「サンダーボルト効果は反則だろ! 墓地のソニックムーブの効果を使い、イクスヴェリアを除外。ごめんフェイトさん・・・・」

『気にしないで』

 

ゼラートは持っている巨大な剣に黒紫のオーラを溜めると、剣を横に振る。堕天使の圧倒的な力にフェイトさんは防ぐ術が無く、破壊されてしまった。

 

「墓地のレベル・スティーラーを攻撃表示で復活。更に墓地の風と闇を除外して、ダーク・シムルグを特殊召喚!」

 

A2700・D1000

 

おいおい冗談だろ! 高等儀式術の時に墓地に送っていたサファイアドラゴンはこの為だったのか! この間の万丈目はシナジーがあるからともかく、そのデッキに風属性は無理やりすぎるだろ!

 

「これで終りだ、バトル! ゼラートで攻撃!」

「ッツ、鍵受け取った時点で覚悟決めてんだよ! 来いよ堕天使!」

 

A2800

 

先程フェイトさんを倒した時と同じように、剣に闇の力を纏わせたゼラートは、その剣を大きく横に薙ぎ払い、闇の力を衝撃波にして飛ばしてきた。ック、これがデュエルじゃなかったら隙の多いこんな攻撃回避できるんだが!

 

「がああああああ!」

 

遊斗LP6800→4000

 

「ハッハッハ! いい気味だ! ダーク・シムルグの攻撃!」

 

A2700

 

じょ、冗談じゃない。これ以上大きいダメージをくらったら死んでしまうっ。

だがダーク・シムルグは非情にも、当の昔に限界を越えた俺に向け、闇の風を吹き飛ばしてきた。

 

「死ねぇぇぇえええええ!」

「っが、ああああああああっ!?」

 

い、痛い痛い痛い痛い痛いっ! シムルグの闇の風が俺の体を引き裂いた。余りの痛みに一瞬意識が遠のいたが、自分に喝を入れて足に力を込める。こ、ここで負けたらこれ以上の苦しみが待っているんだ。それにあの変態親父の所為で死ぬなんてまっぴらごめんだ。

 

遊斗LP4000→1300

 

「これで止めだ、と言いたいがせっかく貴様に苦しみを与えられるんだ。レベル・スティーラーで攻撃!」

 

A600

 

「あ、うっ・・・・」

 

遊斗LP1300→700

 

や、ヤバイ・・・・。声が出ない・・・・。

 

「これで終りだ! ダーク・ネフティスで攻撃!」

 

そう言えばカオス・ソーサラーの時もザフィーラに助けられたっけ・・・・。あの時と同じで、早く使わないと。体が思う様に動いてくれない。

 

「ダ、ダメージ、計算時・・・・。ザフィーラを、墓地に送りダメージを0にする・・・・。そして一枚ドロー」

 

よ、よし・・・・何とか耐えきった。エンドフェイズには二人が帰ってくるからまだチャンスはある。

 

「今度こそ終りだ! 永続罠闇次元の解放発動! 除外されたダーク・ホルスを呼び戻す! 死ね、ダーク・メガフレイム!」

 

ハハッ・・・・最後の最後で取っておいてよかった・・・・。

 

「せ、設置型バインドを発動・・・・。ダーク・ホルス、の攻撃を、止める」

 

LC時空管理局3→4

 

「ッチ、素直に諦めればいいものを。カードを枚伏せてターンエンド。エンドフェイズゼラートは自身の効果で破壊される」

「エ・・・・、エンドフェイズ・・・・」

 

・・・・し、しっかりしろ俺・・・・。ここで発動しなきゃ話にならないんだ。け、けど・・・・もう、限界かも。

 

『頑張って遊斗! 負けちゃダメだよ!』

 

フェ、フェイト・・・・。けど、体が熱くて痛くて寒くて、デュエルディスクが鉛の様に重いんだ・・・・。

もうデュエル続行を諦めていると、フェイトは俺の手をギュッと握って口を開く。

 

『勝ったら、その、ご、ご褒美上げるから! お願いだから頑張って!』

 

ご褒美? その言葉で俺の意識が闇の世界から戻ってきた。普通ならそんな言葉で元気は出ないけど、フェイトの頬が一瞬赤くなったのを見逃さなかった。それってもしかして・・・・。

っしゃあああ! 俄然やる気が出てきた。そうだよな、彼女がいないまま死ぬのは絶対嫌だ。

 

「フェイト、ご褒美の話忘れるなよ! エンドフェイズソニックムーブの効果でなのはさんとイクスが戻ってくる! イクスの効果で融合デッキからヴィヴィオさんを守備で特殊召喚し聖王の鎧を手札に加える」

『ア、 アハハ・・・・』

『まったく遊斗は・・・・。けど頑張る心はいいよ!』

 

遊斗   モンスター2 伏せ2 手札3 LP700

リベンジ モンスター4 伏せ4 手札0 LP2900

 

不純な動機だろうと死にたくないって当たり前な理由であろうと、奴がどんな苦しみを抱えていても関係ない。俺はこのデュエルに勝つ!

 

「ドロー! まずはヴィヴィオさんの攻撃力だ! ヴィヴィオさんの攻撃力は俺の墓地のLSの枚数×400上がる。俺の墓地のLSは8体。よって攻撃力は3200!」

 

ヴィヴィオA?・D?→A3200・D3200

 

「更にヴィヴィオさんの効果。墓地のキャロを選択し、同じ効果を得る。そしてヴィヴィオさんにカートリッジロードを発動」

 

LCヴィヴィオ0→1

ヴィヴィオA3200・D3200→A3800・D3800

 

「こ、攻撃力3800ぅ~?」

 

ッハ、驚いた振りか? 随分下手じゃないか。おそらく奴の伏せは攻撃反応型。十中八九ミラーフォースの様な逆転のカードだろう。だがそんなもの無意味!

 

「なのはさんを生贄に、蒼穹の王高町なのはを特殊召喚!」

 

カードをデュエルディスクにセットした瞬間、そこから物凄い風が吹き出した。ダーク・シムルグの風が可愛く見える位の威圧感を持った風だ。痛い痛い痛い! 頼むから王様なのはさん、もう少し静かに現れませんか?

負傷中の俺の事をお構いなしに、フィールドに巨大な竜巻が出現した。その竜巻はダメージを受けていないリベンジでさえも足を踏ん張る程強く、俺はフェイトとヴィヴィオさんに支えてもらい何とか飛ばされずにいた。

 

『ふむ、私が寝ている最中ずいぶん面白い事が起こっていた様だな』

 

A2500・D2500

ヴィヴィオA3800・D3800→A4100・D4100

 

ようやくお目覚めですか王様なのはさん。この人はあろうことか、しばらくの間寝たい、という理由で『私をデッキから抜け』と言ってきたのだ。それで最近出番が無かった訳だが、やっぱり居てくれた方が頼もしい。

 

なのはA2500・D2500→A3100・D3100

 

「王様なのはさんの効果発動。特殊召喚成功時、デッキから好きなカードを墓地に送る。俺はバルディッシュ・アサルト・ザンバーを墓地に送る」

『ククク、王様なのはさんでは長かろう。なのは様と呼べ』

『な、なのはママ・・・・』

 

え、え~。いくらなんでもなのは様って・・・・。なんて戸惑っていると、王様なのはさんはギロリと睨んできた。

はい! 喜んで呼ばせていただきます。

 

「な、なのは様の効果! 墓地の装備カードを装備条件を無視して装備できる。バルディッシュを装備して攻撃力が1000上がる。そして手札からレイジングハート・エクシードを装備。攻撃力を1500上げる!」

 

なのはA3100→A5600

 

なのは様の周りを回っていた、五機のレイジングハートのブラスタービットの内二つが、レイジングハートとバルディッシュに代わり、なのは様の前にプカプカと浮かぶ。

 

「こ、攻撃力5600ぅ~?」

 

てめぇの三文芝居に付き合っている暇は無いんだよ。俺はそろそろ限界なんだ。

 

「バトル! なのは様でレベル・スティーラーを攻撃!」

「ッハ、馬鹿め! いくら貴様により苦痛を与える為とは言え、攻撃力600のモンスターを簡単に出すわけがないだろ! 聖なるバリア―ミラーフォース―を発動!」

「ッハ、三文芝居に分かりやすいミラーフォースか。確かに効果は受けよう、だがなのは様の効果、装備魔法一枚を除外する事で破壊を無効にする! バルディッシュを除外!」

 

ミラーフォースは確かに発動した。だがバルディッシュが展開したバリアによってなのは様への効果は防がれた。

 

なのはA5600→4600

 

「ば、馬鹿な!?」

『実に愉快だ。闇のデュエルをこの手で終わらせられるとはな』

 

A4600 VS A600

 

『ッフ、この闇、随分と濃いな。負けたらこの闇を作り出した貴様自身も地獄が見れそうだ・・・・』

「た、助け・・・・そ、そうだ! ジェイル・スカリエッティがやった事は全て許す、水に流そう! だから攻撃をするな! ゲームを中断しよう!」

 

今更命乞いとは随分都合のいい野郎だな。苦しみとか言ってたけど、結局は自分が一番大事で、家族の仇の息子に命乞いする程度って事か。こんな奴の家族をあの父さんが何かするか?

まあ今はそんな事はどうでもいい。

 

「悪いが俺は父さんが前の世界でやった事には何も関係もない。だから許すも許さないもないんだよ」

「お、お前の父親だろ!? 被害者の一人が許すって言っているんだぞ!」

「もう少しまともな父親だったら尻拭いも手伝ったかもな。研究資料じゃなくて俺を狙った自分を恨むんだな!」

 

ヴィヴィオの支援もあり、レイジングハートの前で溜まって行く桃色の魔力は、既になのは様自身を上回る程に大きくなっていた。だがなのは様はまだ発射しようとしない。ニヤニヤとあくどい笑みを浮かべながら、ギリギリまで砲撃を大きく育てて行き、リベンジに絶望を与えて行く。

 

「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だあああああああ!」

『「ディバインバスター・エクステンション!」』

 

俺達の掛け声で発射されたディバインバスター・エクステンションはレベル・スティーラーを中心に爆発した。その爆発は最上級モンスターである、ダーク・ホルス、ダーク・ネフティス、ダーク・シムルグを消し炭にし、リベンジを呑み込んだ。

 

「嫌だああああああああああああ!」

 

リベンジLP2900→-1100

 

攻撃が通ったのを確認した瞬間、俺は我慢の糸を解き、スッと眠りの世界に旅立った。

 

 

 

Sideフェイト

 

 

遊斗は勝った瞬間に足の力が抜けたのか、倒れそうになった。私は慌てて倒れそうになる遊斗の体を支える。

足の力が抜けたのではなく、体が限界で起きていられなかったみたい。私の隣にある遊斗の顔からスースーと寝息が聞こえてきた。ダメージを受けてライフを回復し、またダメージを受けたんだ。物凄い痛みに耐えてきたんだろう。

 

「全く遊斗は・・・・。そんなにご褒美が欲しかったの?」

 

私の言葉で元気を出して勝利を勝ち取った遊斗。世界に一枚ずつしか無い私達の主としては、余りにも締まらなく、欲望丸出しだ。戦っている姿はカッコイイけど・・・・。

 

「嫌だ、死にたくない! お願い! 助けて、助けて下さい!」

 

クルッと後ろを向くと、リベンジの足元の闇がウニョウニョと動き始め、体を徐々に呑み込んでいく。

 

『クックック、闇のゲームを挑んだ者が何言っている。貴様は負け、罰を受ける。それくらいの覚悟は出来ていた筈だ』

 

王様のなのはは、地面の中にズルズルと引きずられていくリベンジを見下しながら笑うと、デッキに戻って行った。ほ、ほんとにあのなのはは別人だな~。

私は遊斗を抱え、溶けて行く闇の空間から出て行った。

 

 

 




今回は新オリカがないので前回のオリカ紹介。

LS教会騎士カリム・グラシア ☆4/光/魔法使い/A500・D500
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札のこのカードは特殊召喚することが出来る。この効果で特殊召喚できるのは、1ターンに1度のみ。
1ターンに1度、自分はモンスター・魔法・罠を宣言して発動する。デッキの一番上のカードを確認し、そのカードが宣言したカードの場合手札に加え、違った場合墓地に送りこのカードを手札に戻す。

遠隔転移 通常魔法
自分フィールド上に「シャマル」または「キャロ」と名のつくカードが存在する時発動できる。
自分の墓地に存在する「LS」と名のつくモンスターを選択し、選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。



遠隔転移。死者蘇生の下位交換ですね。蘇生カードがないと厳しいので作りました。
ピンポイントなカードが必要ですが、まあそれは今更。LSの融合モンスターは蘇生条件がないので前回の様にヴィヴィオを呼べたりします。


教会騎士カリム・グラシア。融合素材ではないモンスターなので、ただ召喚して宣言したカードを当てただけじゃ手札的に1:1交換にしかなりません。ですが逆に言うと、この効果を二回使えば1:2効果になるので、今後出番が多くなるかもしれません。また前回の様に、連続転移で召喚してから宣言したカードを当てれば0:1になる、”小説”では優秀なカード。

因みに作者はなのはさんやカリムさんの様なお姉さんが大好きです。



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第十八話

今回は二つお詫びがあります。

まず一つ、前に頂いたオリカのマリアージュですが、効果を少し変更させてください。

このカードがカードの効果の対象になった時、このカードを破壊し、フィールド上のカード一枚を破壊する。

の所を、表側表示で存在するこのカードがカードの効果の対象になった時、に変更します。
理由は作者の知識不足で、例えば愚かな埋葬でデッキのこのカードを対象にしたり、モンスター回収でデッキに戻した場合、どうなるのかが分からないからです。


もう一つは強欲な壷を使ってしました。




先日リベンジとか言うネーミングセンスの欠片も無い奴と戦い、俺はそのデュエル中にフェイトから言われたご褒美を堪能している。フェイトの言うご褒美は、今日一日何でも言う事を聞いてくれる、だったのでデートする事にした。やっぱり女の子と二人っきりでご飯食べたり話したりするのって、新鮮で楽しい。

勿論男友達と一緒にワイワイやるのも楽しいけど、それとはちょっと違った楽しさがある。

 

「ふふっ、それでね」

 

普段は自分から話さないフェイトだが、今は自分の話をマシンガンの様に話してくる。そんな姿が可愛くて、ほんわかと和んでいると、トラブルメーカーの声が聞こえてきた。

 

「お~い遊斗~!」

「ハァ、どうした十代?」

「なんだよため息なんかついて。それでな、この間俺セブンスターズの一人と戦ったんだぜ」

 

早くも十代も一人倒したのか。流石トラブルメーカー・・・・って俺もセブンスターズを知った初日に戦ったんだな。それって俺も十代と同じトラブルメーカーって事か。

 

「実は俺もこの間十代と別れた後セブンスターズの一人と戦ってな」

「マジか! っちぇ、リードできたと思ったのに」

「そう簡単に負けねえぞ。いっそ俺達が鍵を半々持ってたらよかったかもな。相手は7人だし、同点になる事も無いから」

「遊斗! この間酷い目にあったの覚えてないの!?」

 

能天気な俺達の言動にフェイトは頬を膨らませてプンプンと腹を立てている。フェイトが頬を膨らませていると可愛いが、全然怖くない。

膨らんでいる頬を軽くバンと挟み、膨らんでいる頬を無理やり戻す。

 

「うにゅっ!?」

「酷い目に合ったのは覚えてるけど、だからって強い相手とデュエルがしたくないわけじゃない」

「そうだぜ。どんなに辛くてもデュエルは止められないんだ! っで、遊斗、早速だけど」

「セブンスターズ探しか?」

「ああ!」

 

全くこいつは。今現在隣にいる少女の姿が本当に見えてるのか? フェイトは俺がデートを止めると思っているらしくショボンと顔を俯かせているが、心配するな。

 

「悪いが今日はフェイトとの先約があるから。明日にでも二人で行こうぜ」

「了解。ん~、じゃあどうしよっかな~」

「暇ならちっとは勉強したらどうだ?」

「え~、そういう遊斗はどうだんだよ・・・・ってこの間ほぼ満点だっけ?」

「なんなら俺の家庭教師達をお前に付けようか?」

 

フフッ、どんなに勉強嫌いなお前でも強制的に勉強させられるぞ?

 

「え、遠慮する。じゃあな!」

「っておい! ・・・・悪かったなフェイト。それでさっきの話の続きは?」

「うん、えっとね。そこでアルフが――――」

 

 

 

 

翌日。俺は約束通り十代と一緒に、セブンスターズ退治と言う名目で、先生公認で授業をサボり、のんびりとデュエルアカデミアを散歩していた。嘘はついてないけどダラダラとしていているから、これもサボりの一種だろう。う~ん、しかしこうやって人気の少ない学校で散歩するのも楽しいな。

 

「遊斗の相手のセブンスターズはどんな奴だった?」

「ん? リベンジとか言ってな。変な言いがかりを付ける嫌な奴だったよ。そっちこそどうなんだ?」

「ああ、ダークネスって名乗るレッドアイズ使いでさ、それが実は行方不明だった明日香のお兄さんなんだよ」

「はぁ!? どうしてそんな大事なこと昨日言わない!?」

 

俺だって話には聞いていたし、何もしてはいないけど心配はしてたんだ。十代は俺の怒鳴り声に「いや~、わりいわりい」と軽く流した。やっぱり十代ってマイペースって言うか天然だ。

 

「ハァ・・・・。それで、明日香のお兄さんは無事なのか?」

「今は昏睡状態。明日香が付きっきりで看病している」

 

明日香が・・・・。明日香の顔を最近見ないと思ったらそんな事情があったのか。行方不明の兄がセブンスターズ側にいて、ようやく自分の元に帰ってきたら昏睡状態か。明日香も辛いだろうな・・・・。

 

「けど大丈夫さ! 明日香の想いが届いて吹雪さんも目が覚めるよ」

「吹雪さんって言うのか。クールな名前だな」

 

きっと本人も明日香に似てクールでカッコイイんだろうな~。俺もその人とあってみたい。

そんな事を思った次の瞬間、周りが急に暗くなった。

 

「!? これは一体!?」

「クックック、私の力ですよ」

「誰だ!?」

 

暗闇の中から聞こえてきた不気味な声に、十代は動じずに辺りを見渡した。男声なのに妙に声が高い声だ。デッキからは既になのはさんとフェイトさんが実体化して、俺と十代の背中を守る様に出てきてくれた。

 

「ここですよここ」

 

ば、馬鹿な!? 奴は決闘に負け死んだ筈・・・・。だがこの空気、この口調、そしてその姿、間違いなく奴。暗闇の中から現れたのは、数ヵ月前廃校でデュエルをしたカオス・ソーサラー。

 

「カオス・ソーサラー?」

「十代下がってろ。コイツは危険だ」

 

俺の脳裏には、廃校の壁を破壊した景色がよみがえっていた。あんな攻撃をくらったら生身の人間はイチコロだ。

 

「あなたは死んだ筈」

「ええ、死にましたよ。ですが精霊世界は素晴らしいもの。私はアンデット族として復活し、ある方の命令によりより強くなって復活したのです!」

 

ある方の命令? そう言えばあの時も俺を殺しても構わない、と言っていた。つまりコイツは誰かからの命令で動いているのか。

 

「そいつの名前を教えてもらう」

「クックック、そういうわけにはいきません。ここはデュエルで勝負をしましょう。私もセブンスターズの一人ですから」

 

カオス・ソーサラーはそう言って自分の腕からデュエルディスクの様なものを生やした。き、気持ち悪いなコイツ。

 

「遊斗、俺も助太刀するぜ!」

「いや、こいつは俺一人で倒したい、我慢してくれ」

 

十代は一瞬口をとがらせてごねていたが、俺の真剣な表情を読み取ってか、同じく真面目な顔になり、コクンと頷いた。

 

「分かった、絶対に負けるなよ」

「ああ、当たり前だ」

「クックック、さあ、友達との別れの言葉は以上かな?」

「それはこっちの台詞だ! 俺が勝ったらお前が知っている事全て教えてもらう!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺だ、ドロー! ヴィータさんを通常召喚!」

 

A1900・D1200

 

「ヴィータ“さん”?」

 

あっ、そう言えばこの呼び方を友達に見せるのは初めてだったな。精霊達(みんな)は呼び捨てでいい、って言ってくれるけど、10年間呼び続けてきた呼び方だし、変えようと思っても変えられないんだよな。

 

「普段からそう呼んでいるから、気にしないでくれ。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「行きますよ、ドロー! フィールド魔法混沌空間(カオス・ゾーン)を発動!」

 

奴がフィールド魔法ゾーンにカードをセットした瞬間、周りがグニョグニョと曲がったり揺れたりする、よく分からない空間になった。た、確かにカオスだ。こんな空間にずっといたら、頭がカオスになりそう・・・・。

 

「そして封印の黄金を櫃発動。デッキからネクロフェイスを除外」

「ネクロフェイスだと!? 嫌なコンボをしてくる」

「その様子だと説明する必要もありませんね。ネクロフェイスの効果でお互いデッキの上から五枚除外します。おっと、ちゃんと宣言してくださいね」

 

分かってるよ。いくら相手が俺を殺そうとした奴でも、しっかり確認するのがデュエルだ。

 

「除外されたカードはシグナムさん、バルディッシュ、アギト、ユニゾンアウト、バルディッシュ・スピードローダーの五枚。お前は?」

「私はゴブリンゾンビ、酒吞童子、ピラミッド・タートル、禁断の呪術、闇竜の黒騎士(ブラックナイト・オブ・ダークドラゴン)です」

 

はぁ!? どういう事だ!? アンデッドは種族共通で墓地依存。ネクロフェイスと黄金を櫃のコンボは強力だが、除外されたカードが余りにも変だ。

 

「ネクロフェイスを入れて除外されたモンスターは七体。よって混沌空間にカオスカウンターが七つ溜まります」

 

カオスカウンター(以後CC)混沌空間0→7

 

一気にカウンターが七つも。なるほど、この混沌空間はそういう効果を持っているのか。だが除外されたアンデットをどう使うんだ?

 

「混沌空間の効果発動。CCを四つ取り除き、除外ゾーンからゴブリンゾンビを特殊召喚」

 

混沌空間7→3

A1100・D1050

 

ゴブリンゾンビか。フィールドから墓地に送られたらデッキから守備1200以下のアンデットをサーチする効果を持つ優秀なカード。ただ自主的に墓地に送る事が結構難しいのが難点だ。

 

「そして特殊召喚成功時、地獄の暴走召喚を発動! 私はデッキから二体のゴブリンゾンビを特殊召喚しますが、あなたは?」

「ッツ、俺のデッキにはヴィータさんは一枚しかない」

「クックック、本当かどうか確認させてもらいますよ」

 

そう、地獄の暴走召喚で選択したモンスターを三対出せなければ、確認の為に手札とデッキの中身を確認されてしまう。手札のカードはイクスヴェリア、スバルさん、カートリッジロードの三枚。

 

「ふむ、なるほど、手札に一枚厄介なカードがありますね。まあいいでしょう。攻撃表示のゴブリンゾンビを生贄にカース・オブ・ヴァンパイアを召喚。ゴブリンゾンビの効果でデッキからゾンビ・マスターを手札に加えます。

バトル! カース・オブ・ヴァンパイアでヴィータに攻撃!」

「攻撃は通る・・・・」

 

カース・オブ・ヴァンパイアは戦闘で破壊された次のスタンバイフェイズ時に、500ライフを払う事で、攻撃力を500上げ復活する。ここでスバルさんを使うのは勿体ない。

 

A2000 VS A1900

 

「すみませんヴィータさん」

『何言ってんだ。いい判断だ』

 

遊斗LP4000→3900

 

カース・オブ・ヴァンパイアの攻撃の衝撃が僅かに俺を襲う。流石にこれくらいで痛いとは思わないが、服が少し切れている。

 

「モンスターが戦闘で破壊された時Asの収集を発動。デッキからなのはを守備で特殊召喚!」

 

A500・D1800

 

「ほう。私はカードを一枚伏せてターンエンドです」

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター1 伏せ1 手札3 LP3900

ソーサラー モンスター3 伏せ1 手札2 LP4000

 

奴のデッキはまだまだ分からない所が多い。だけど手札を知られている以上、守ってばかりは駄目だ。ネクロフェイスを手札に加えられ、除外効果を使われカウンターを溜められるのはもっと危険だ。

 

「ドロー! カートリッジロードをなのはに発動。そして効果でその伏せを破壊!」

「チェーンして異次元からの埋葬を発動します。除外された闇竜の黒騎士、酒吞童子、ピラミッド・タートルを墓地に戻します」

 

やっぱりそのカードが入っていたか。だがそれは制限カード。使い勝手のいい除外カードを墓地に戻すカードはなくなった。

 

「イクスヴェリアを召喚。効果でデッキからマリアージュを特殊召喚」

 

A500・D500

A1700・D1200

 

「? 知らないカードですね」

「バトル! マリアージュでゴブリンゾンビを攻撃!」

 

A1700 VS A1100

ソーサラーLP4000→3400

 

「破壊されたゴブリンゾンビの効果でデッキから馬頭鬼を手札に」

「だが戦闘でモンスターを破壊した事により、マリアージュの効果が発動。このカードとステータス、効果が全く同じのトークンを特殊召喚! トークンでもう一体のゴブリンゾンビを攻撃!」

 

A1700 VS D1050

 

「なるほど、手札が増えるのを恐れませんか。ゴブリンゾンビの効果でデッキから酒吞童子を手札に加えます」

「マリアージュトークンの効果で、更にトークンを特殊召喚。エンドフェイズ、カートリッジロードを手札に加える」

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター5 伏せ1 手札3 LP3900

ソーサラー モンスター1 伏せ0 手札4 LP3400

 

マリアージュの効果で何とかアドバンテージの差を誤魔化せているけどどうなるか。このターン奴の攻める方法で変わる。

 

「ドロー、光の援軍を発動します。デッキから三枚墓地に送り、デッキからライトロードと名のつくカードを手札に。私はライトロード・マジシャンライラを手札に」

 

マジシャンライラ。魔法罠破壊効果とエンドフェイズ墓地に送る効果で優秀なカードだが、何故かブレイカーの劣化として見られている。そのモンスターでこの伏せを破壊されたら辛いが・・・・。

 

「ゾンビ・マスターを召喚。手札の馬頭鬼を捨てもう一枚のゾンビ・マスターを特殊召喚。そして酒吞童子を墓地に送り酒吞童子を特殊召喚」

 

A1800・D0

A1500・D800

 

「まずは墓地の馬頭鬼の効果です。このカードを除外し墓地の闇より出でし絶望を特殊召喚。混沌空間にCCが一個乗ります」

 

A2800・D3000

混沌空間3→4

 

ック、最上級モンスターがポンと出てしまうのがアンデットの強い所なんだよな。ただ下級が優秀な分、上級に強いのが少ないというのが残念な所。まあ今は喜ぶべき所だが。

 

「更に酒吞童子の効果。墓地の邪神機―獄炎(ダークネスギア―ごくえん)とゴブリンゾンビを除外し一枚ドロー。混沌空間に更に二つ乗る」

 

混沌空間4→6

 

さっき光の援軍で墓地に送られたのは、闇より出でし絶望と邪神機―獄炎と二枚目のゾンビ・マスターかな?

しかし除外に弱いアンデットをここまで上手く使いこなすとは・・・・。

なんて感心している場合じゃない。奴の場にはアンデットを蘇生させるゾンビ・マスターが二体、ドロー効果を持つ酒吞童子、戦闘で破壊しても復活するカース・オブ・ヴァンパイア、攻撃力の高い闇より出でし絶望。

唯一の救いは奴の場が既に埋まっており、これ以上モンスターを召喚出来ない事。

 

「バトル! ゾンビ・マスターでマリアージュ本体に攻撃」

「カウンター罠クラールゲホイル発動! 相手の攻撃宣言時フィールドのLSを選択して発動。バトルを強制終了させ、選択したモンスターをデッキに戻す。その後デッキから夜天と名のつくモンスターを復活。マリアージュ本体をデッキに戻し、シャマ姉を特殊召喚」

 

A700・D1800

LCシャマル1

 

クラールゲホイルのカードから現れた魔力の球が奴のモンスターの前までプカプカと飛び、次の瞬間フラッシュボムとなり破裂した。アンデットが閃光弾に弱いってなんか変な感じだな。いや、光に弱いって意味では問題ないのかな?

 

「そんなに並べたのに残念だったな。ライラを召喚しておくべきだった」

「そんなもの結果論ですよ。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター5 伏せ0 手札3 LP3900

ソーサラー モンスター5 伏せ1 手札2 LP3400

 

「俺のターン、ドロー!」

 

引いたカードは闇の書。奴の場には攻撃力の低いモンスターがいるし、シャマ姉もいるしカートリッジもある。一応アインスを呼ぶ事ができるが、モンスターゾーンが埋まって・・・・。

・・・・なるほど。このカードでそう言う事も出来るのか。

さあ行くぞ! さっきのターンでこの布陣を崩せなかったお前が悪い。見ていろ、その余裕な表情と口調を壊し、ファランクスシフトをくらう前の様な、素のお前を出してやる!

 

「闇の書をマリアージュトークンに装備。マリアージュトークンは効果の対象になった時に自壊し、フィールドのカード一枚を破壊する。その伏せを破壊する!」

 

破壊したカードは安定と信頼のミラーフォース。それでも前回は発動する事できたから、決してブラフカードではないか、ブラフとか言ってすまんなミラーフォース。

 

「確かにミラーフォースは破壊されましたが、それでどうするおつもり「闇の書の効果発動」なに?」

「このカードが墓地に送られた時、フィールドのモンスターに装備しなくてはいけない。俺はマリアージュトークンを対象に装備。そしてマリアージュトークンの効果で、闇より出でし絶望を破壊!」

 

二体のマリアージュは自分の体を燃焼液に変化させながら、闇より出でし絶望に突進し爆発した。あ、相変わらずグロイ奴だなオイ・・・・。

しかし凄いなこのコンボ。マリアージュは自分のカードをトリガーにしたら大抵ディスアドなんだが、闇の書でマリアージュの効果を使うと1:1効果になり、場の荒らし方が凄まじい。ただしゴッドバードアタックや、毒蛇の供物と比べたら大きく見劣りするが。

 

「ック、よくも・・・・」

「闇の書の効果。シャマ姉に闇の書を装備させる」

『え、私?』

 

A700→A1000

 

本当ならユーノかツヴァイを呼んで一回融合し、融合モンスターに闇の書を装備させたいんだが、ツヴァイは手札にいないし、ユーノを呼ぶとデッキからの特殊召喚が出来なくなるから、展開がしにくいんだよな。

ここからモンスターゾーンの数でプレイングがややこしくなる。

因みに今俺の場にいるのは、なのは、シャマ姉、イクスヴェリアだ。

 

「バトル! シャマ姉で酒吞童子に攻撃! 攻撃宣言時手札のスバルさんの効果でシャマ姉の攻撃力を1000上げる」

『手伝います、シャマル先生』

 

シャマルA1000→A2000 VS A1800

 

手伝うと言ったが、ゾンビ・マスターは骨でできているので脆く、スバルさんのパンチ一発で破壊された。流石守備力0のアンデット・・・・。

 

ソーサラーLP3400→3200

 

奴のライフを削っているが、案の定奴への闇のデュエルのダメージは無いな。いや、正確に言うと奴にダメージは行っているが、アンデットになった為痛みを感じていない。不平等だが、前回のリベンジや、廃校の時みたいなインチキをしていないだけ好印象だ。まあ闇のデュエルに好印象もくそもあったものではないが。

 

「闇の書の効果でLCを一つ乗せる。バトルフェイズを終了する」

「ッフ、さっきの機械の様な女を呼び出して酒吞童子を攻撃したらよかった。プレイングミスですか?」

「俺も本来ならそうしたかったんだが、場が埋まってしまうからな。カートリッジロードを闇の書に発動。同じくシャマ姉の効果で闇の書に乗せる」

 

闇の書LC1→3

 

「闇の書の効果。LCが三つ乗ったこのカードをゲームから除外する事で、デッキからアインスを特殊召喚する! そしてアインスの効果で融合デッキから夜天の書を特殊召喚」

 

A2300・D2300

A0・D0

 

「そして速攻魔法フェイクシルエットを発動。デッキからはやてを墓地に送り、シャマ姉をはやてとして扱う。場のはやてとアインスを融合!」

『ふふっ、よろしくねアインス』

『ああ、しかしお前とユニゾンするとは面白い状況だな』

 

シャマ姉とアインスはクスッと微笑みあい、融合の渦に呑まれて行った。大人の女性同士が見つめ合っていると、なんかこう絵的に綺麗だな・・・・。って、闇のデュエルの真っただ中に何を考えている!

 

「来い! 夜天の王・八神はやて!」

 

その瞬間、混沌空間の中で蠢きまわっている闇が慌てるのが分かった。俺達の頭上から王様はやてさんが舞い降りてきた時、俺の周りにいた闇が少しだけだが遠ざかった。

 

A2800・D2800

LCはやて3

 

「そんなモンスターまで・・・・。やはりあなた、いえ、あなたの持っているそのカード達は危険だ」

「闇のデュエルを挑んできた奴にそんな事言われたくない。夜天の書の効果で王様はやてさんに装備。そして夜天の書の効果で王様はやてさんのLCを二つ取り除き、二枚ドロー」

 

これが美味いんだよな~。やっぱりドローカードはもうちと欲しい。

 

「イクスの効果でデッキからマリアージュを特殊召喚。

カリム姉を召喚して効果発動、モンスター・魔法・罠のどれかを宣言し、デッキトップが宣言したカードだったら手札に加える。俺は罠を選択」

 

このターンのもうバトルは出来ないから、別に当たらなくても特別問題は無い。ただやはり、当たった方が嬉しいと言うのは隠しきれない事実。デッキトップをチラッと見ると色はピンク。

 

「デッキトップはソニックムーブ。成功したのでソニックムーブを手札に加える。カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズカートリッジを手札に加える」

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター5 伏せ1 手札1 LP3900

ソーサラー モンスター3 伏せ0 手札2 LP3200

 

結構回したが、奴のモンスターはそんなに減っていない。ゾンビ・マスターと酒吞童子とカース・オブ・ヴァンパイアがいるし、このスタンバイでネクロフェイスが手札に加わる。おまけに混沌空間まであるからな。まあこっちもはやてさんがいる。決して悪くは無い場だ。

 

「ドロー・・・・。せっかくだから今、私が知っている事をお教えしましょう」

「死ぬ前に教えてくれるってか? ずいぶんいいドローだったみたいだな」

「クックック、そういうわけではありません。どっちにしろ闇のデュエルは逃げる事ができませんから、いつ教えようが関係ないでしょう?」

 

なるほど。なのはさんを誘拐して命乞いしていたから、プライドも何もない奴だと思っていたが、根底から悪い奴ではないらしい。

 

「私に命令を下したのは神聖魔導王エンディミオン様だ」

「ッツ、エンディミオン!?」

「命令? エンディミオン? なあ遊斗「十代、少し黙っていてくれ」あ、ああ・・・・」

 

神聖魔導王エンディミオン。実際にカードになっており、レベル7で魔法都市エンディミオンというミッドチルダに少し似たフィールド魔法を操るカードだ。

 

「何故エンディミオンが、いや、誰が主犯格だっていい。俺が知りたいのは何故精霊達(みんな)を狙う?」

「私も命令されている身。理由は知りませんよ。ただあなたを殺していいとだけ言われています。クックック、最初は膨大な金が貰える簡単な仕事だと思っていましたが、まさか死ぬ事になるとは」

 

俺は精霊達(みんな)を捕まえる為に邪魔な存在って事か。しかし肝心の理由は分からないままか。カオス・ソーサラーが嘘をついているようにも見えないし。

 

「クク、さて、おしゃべりはここまでだ。スタンバイフェイズ除外されたネクロフェイスが手札に加わる。ソーラー・エクスチェンジを発動。ライラを墓地に送り二枚ドロー。その後デッキから二枚墓地に送る」

 

奴がデッキから送ったカードは再生ミイラとネクロ・ガードナー。ック、また面倒臭いカードを。ネクロ・ガードナーは墓地のこのカードを除外する事で攻撃を一回向こうにする事ができるカード。唯一の救いはレベル3で混沌空間の復活効果を受けない事。

 

「ゾンビ・マスターの効果でネクロフェイスを墓地に送りゴブリンゾンビを召喚」

 

A1100・D1050

 

「墓地のネクロフェイスとライラをゲームから除外! 現れろ我が分身、カオス・ソーサラー! 

 

A2300・D2000

 

「ネクロフェイスの効果で再びデッキの上から五枚を除外だ」

「ッツ、除外されたのはティアナさん、キャロ、鋼の軛、ユニゾンアウト、デバイスマイスター」

「私が除外したのは火車、創世神(ザ・クリエーター)、D・D・R、ゾンビの呼び声、死者蘇生の五枚」

 

一枚聞きたくないカードが入っていたな。創世神、手札一枚でモンスターを復活させる事ができる最上級モンスター。効果は強力だが墓地からの特殊召喚が出来ない為中々使いにくいカードだ。だが除外ゾーンや、デッキ、手札からは特殊召喚できる。おまけに光で、お前自身のコストにすることもできる。考えたな・・・・。

 

「除外されたカードは我が分身のコストも入れて、6枚。よってCCが6つ乗る」

 

混沌空間6→12

 

「まずは我が分身の効果。夜天の王・八神はやてを除外!」

「させるか! 王様はやてさんの効果! このカードのLCを取り除きカオス・ソーサラーの効果を無効にする!」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)!』』

 

LCはやて1→0

 

夜天の書から放たれた禍々しい鎖がカオス・ソーサラーの体を縛り付けた。カオス・ソーサラーの効果は制約効果だから、例え効果が無効になっても攻撃は許されない。

 

「なるほど、そんな効果も持っているのか。酒吞童子の効果。墓地の闇竜の黒騎士と酒吞童子を除外し一枚ドロー」

 

混沌空間12→14

 

「救援光を発動。ライフを800払い除外された創世神を手札に加える」

 

ソーサラーLP3200→2400

 

創世神を無理やりにでも召喚する気か!

 

「場の我が分身とゴブリンゾンビを生贄に創世神を召喚!」

 

A2300・D3000

 

二体のモンスターの生贄によって現れたのは、アンデットデッキには相応しくない創世神。いや、蘇らせると言う意味では一番合っているかもしれない。どっちにしろこのカードが厄介なのには変わりはない。

 

「ゴブリンゾンビの効果で魂を削る死霊を手札に加え、創世神の効果。手札を一枚捨て、墓地のモンスターを蘇生。再び現れろ、我が分身!」

 

創世神が両手に力を込めると、混沌空間の中からカオス・ソーサラーが復活した。

 

「カウンターが無い以上止められはしない! カオス・ソーサラーの効果発動! 夜天の王・八神はやてモンスターを除外!」

「ソニックムーブ発動! 王様はやてさんをエンドフェイズまで除外!」

 

混沌空間14→15

 

「ッフ、馬鹿な事を。受け継がれる力を発動。我が分身を生贄にして創世神の攻撃力を2300上げる」

 

創世神A2300→A4600

 

「混沌空間の効果! CCを10個取り除き除外されたカードを場に呼ぶ!」

「10個!? まさかそのカードは相手のモンスターも!?」

「ええ、現れろ夜天の王・八神はやて! 私が持っていてたら宝も持ち腐れだが、これで貴様の場に戻る事はなくなった」

 

A2800・D2800

混沌空間15→5

 

さ、最悪のパターンだ。最上級モンスターが一体減り、向こうに移ってしまった。

 

「バトル! ゾンビ・マスターでマリアージュを攻撃!」

 

A1800 VS D1200

 

「ッツ、冗談じゃないぞ」

「酒吞童子でイクスヴェリアに攻撃し、カース・オブ・ヴァンパイアで高町なのはに攻撃!」

 

A1500 VS D500

A2000 VS D1800

 

二体のアンデットの攻撃はそれぞれなのはとイクスヴェリアを破壊し、爆発が風を生んで俺に更なる緊張感を与える。

 

「夜天の王・八神はやてでカリムに攻撃!」

「ッツ、墓地のソニックムーブの効果を発動。このカードを除外しカリム姉をエンドフェイズまで除外する」

 

混沌空間CC5→6

 

これで王様はやてさんの砲撃をもろにくらう事になるが仕方ない。幸い本人は俺に攻撃した事を引きずるような性格ではないので、王様はやてさんが精神的に傷つかない。

 

『ラグナロク!』

 

A2800

 

「ッグ、あああああっ!」

「遊斗! 大丈夫か!?」

 

王様はやてさんから放たれた砲撃が俺の体を呑み込み、数秒間俺の視界には王様はやてさんが放った砲撃しか見えなかった。え、詠唱が無かったから少しは手加減してくれたみたいだけど、それでもこの威力。一瞬お花畑が見えた気がする・・・・。

 

「お、俺はそんなに軟に出来てないから大丈夫だ・・・・」

 

遊斗LP3900→1100

 

「これで終りだ! 創世神で攻撃!」

 

ハハッ、認めたくないがこの間のリベンジとの戦いで、精神的にも肉体的にも頑丈になったようだ。目は少ししか霞まず、口も動く。

 

「罠発動、設置型バインド。創世神に選択し、選択したモンスターを攻撃不能にする。その後フィールドのカードにLCを乗せる。設置型バインド自身にLCを乗せる」

 

LC設置型バインド0→1

 

「ック、生き残ったか。私はこれでターンエンド。さあ、この状況をどうする?」

「エンドフェイズカリム姉が戻り、おまえの創世神の攻撃力は元に戻る」

 

創世神A4600→A2300

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター1 伏せ1 手札1 LP1100

ソーサラー モンスター5 伏せ0 手札0 LP2400

 

手札はカートリッジロード一枚。何を引いても圧倒的に手札が足りない。この状況で何を引く?

 

「ドロー! フェイト。お前が来てくれたか」

『う、うん。でも私一人じゃ・・・・』

「いや、まだカリム姉の能力がある。カリム姉の効果。デッキトップのカードの種類を選択。俺はモンスターを選択する!」

 

今まで成功率100%、この状況でもその奇跡が出てくれ! 頼む!

 

「・・・・デッキトップは迅雷の化身フェイト! モンスターなので手札に加える!」

「ック、だが手札三枚でどうするつもりだ? しかもその中の一枚はカウンターを溜めるだけのカード!」

「だったら二枚で突破するだけだ! フェイトを召喚! そして設置型バインドのLCを取り除きアルフを特殊召喚! 場のフェイトとアルフを融合! 現れろ、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

『行くよ遊斗!』

「はい! 場のフェイトを生贄に、現れろ、迅雷の化身フェイト!」

 

カードからバチバチと電気が生まれ、その電気は徐々に音を大きくなり、肉眼でも見える程巨大な電圧を発して行く。その電気の塊はカードから飛びだすと、混沌空間の中を物凄いスピードで駆け巡り、俺の場に落雷となって落ちてきた。

 

A3300・D0

 

『へぇ、懐かしい顔だ。はやてが向こうにいる? その程度の奴って事かな』

 

か、雷フェイトさん・・・・。はやてさん友達でしょ。王様なのはさんと言い、雷フェイトさんといい、この人達は本当にあのなのはさんとフェイトさんだろうか・・・・。

 

「そ、そのカードは・・・・」

「ああ、貴様を倒したカードだ! バトル! 雷フェイトさんで創世神を攻撃!」

『創世神と言っても名前だけ。結局は雑魚』

 

A3300 VS A2300

 

雷フェイトさんは動くのも不要と思ったのか、創世神の巨大な手から繰り出してきた拳を回避しようとせずに、ポケットに手を突っ込んだまま、展開した雷で巨大な拳の進行を止めた。雷族でもある創世神の攻撃を雷で止めるとは流石だ。雷フェイトさんは自分の前に一発の弾丸を作ると、その弾丸を雷速で発射した。

 

ソーサラーLP2400→1400

 

「続いて酒吞童子に攻撃!」

 

A3300 VS A1500

 

創世神を雑魚扱いした雷フェイトさんにとって、1500の酒吞童子はゴミ以下。酒吞童子の方を見ずに雷を酒吞童子に落とし破壊した・・・・、筈だった。だが何故か酒吞童子は破壊されずに場に残っている。

 

「墓地のネクロ・ガードナーの効果。このカードを除外する事で攻撃を無効にする」

 

混沌空間6→7

 

まあ覚えていたから面倒な創世神から攻撃したんだ。ゾンビ・マスターと酒吞童子への攻撃が通ったら俺の勝ちだったからな。

 

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズ雷フェイトさんの効果で、デッキからフォトンランサーをセットする」

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター2 伏せ1 手札1 LP1100

ソーサラー モンスター3 伏せ0 手札0 LP1400

 

「ドロー、酒吞童子の効果を発動。墓地のゴブリンゾンビとピラミッド・タートルを除外し一枚ドロー」

 

混沌空間CC7→9

 

これで混沌空間のカウンターは九個。ここでフォトンランサーを発動するべきか? いや、特殊召喚したモンスターを破壊した方が得だ。ここは動く必要がない。

 

「夜天の王・八神はやて以外のモンスターを守備に変更。混沌空間の効果で除外された馬頭鬼を守備で特殊召喚」

 

A1700・D800

混沌空間9→5

 

そいつを呼んできたか。フォトンランサーがセットされてる以上、低レベルモンスターを召喚しておくのは当たり前か。

 

「バトル! 夜天の王・八神はやてでカリムに攻撃!」

 

A2800 VS D500

 

止めたいがフォトンランサーを使うと、奴に好き勝手動かれてしまう。攻撃する前に混沌空間を使った行動も、この場でフォトンランサーを使わせる為かもしれない。

 

「通る・・・・」

「・・・・カードを二枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズフォトンランサーを発動! 右の伏せカードを破壊!」

 

破壊したのは生者の書―禁断の呪術。ど、どういう事だ? アンデット族専用の死者蘇生の使い勝手の良いカードを伏せただと? じゃあもう一つのカードはもっと重要なカードって事か?

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター2 伏せ1 手札1 LP1100

ソーサラー モンスター4 伏せ1 手札0 LP1400

 

「ドロー! Asの回収を発動。除外されたシグナムさんとティアナさんを墓地に送り一枚ドロー。バトル、雷フェイトさんで王様はやてさんを攻撃!」

『こうやって君と戦うのも面白いね』

『・・・・』

 

A3300 VS A2800

 

王様はやてさんは抵抗する気が無いのか、シュベルトクロイツを降ろし、フェイトさんの攻撃を待つ。フェイトさんは弾を一発作り、はやてさんに向け発射した。

 

ソーサラーLP1400→900

 

「続いて酒吞童子に攻撃!」

 

A3300 VS D800

 

先程のネクロ・ガードナーで止められた雪辱を晴らす為か、フェイトさんは酒吞童子の方を睨みつけ、二発の雷の弾丸を作り発射した。二発の弾丸は酒吞童子を貫通し、酒吞童子に大きな穴を二つ作った。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ墓地からフォトンランサーをセットする」

「エンドフェイズサイクロンを発動! 今セットしたフォトンランサーを破壊!」

 

ッツ、しまった。奴は次のターン雷フェイトさんの攻撃を止められないと思い、再びセットされる面倒なフォトンランサーを発動される前に破壊する事にしたのか。

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター1 伏せ2 手札0 LP1100

ソーサラー モンスター3 伏せ0 手札0 LP900

 

「ドロー! 強欲な壺を発動し二枚ドロー!」

「っな!?」

 

や、やっぱり強欲な壺は強力だな。どうして禁止にならないのか未だに不思議だ。俺も何度もデッキに入れようかと悩み、誘惑に負けそうになったが、意地でもLS専用のカードしか入れないと決めたからな。

 

「ブラック・ホールを発動! フィールドのモンスターを全て破壊する」

「させるか! 罠発動、プロテクション! このターン俺のモンスターは戦闘及び効果では破壊されない!」

 

ブラック・ホールはフィールドの中心に現れると、奴のフィールドのモンスター全てを呑み込み破壊した。

 

「残念だったな、被害はお前だけだ」

「なに、私の目的は自分自身のフィールドを空ける事。混沌空間の効果発動。酒吞童子を特殊召喚」

 

混沌空間5→1

 

「墓地の馬頭鬼の効果で墓地の酒吞童子を特殊召喚」

 

混沌空間1→2

 

? 酒吞童子を並べた所でフェイトさんを倒す事は不可能な筈。どうやって攻撃してくるつもりだ?

 

「一枚の酒吞童子の効果。除外されたネクロフェイスをデッキの一番上に戻す。そして二枚目の酒吞童子の効果で墓地のゾンビ・マスターと、カース・オブ・ヴァンパイアを除外し一枚ドロー!」

 

混沌空間2→4

 

「行くぞ! ネクロフェイスを通常召喚。このカードが召喚に成功した時、除外された全てのカードをデッキに戻し、その枚数×100ポイント攻撃力を上げる! 貴様が除外しているカードは十枚。私が除外しているのは十二枚! よって攻撃力は2200アップ!」

 

除外された一枚一枚のカードがネクロフェイスに力を与え、少しずつだが確実にネクロフェイスの攻撃力を上げて行った。

 

ネクロフェイスA1200→A3400

 

「そして装備魔法団結の力をネクロフェイスに装備!」

 

ネクロフェイスA3400→A5800

 

「攻撃力5800!?」

「バトル! ネクロフェイスで迅雷の化身フェイトに攻撃!」

「この攻撃が通ったら遊斗はっ!」

 

A5800 VS A3300

 

巨大なドラゴンぐらいの大きさに進化したネクロフェイスは、体から出ている触手や液体をフェイトさんに向け発射した。

 

「ハッハッハ! そのモンスターを倒し、なお貴様を倒せるとは! 最高だよ!」

 

ネクロフェイスの攻撃が発射された瞬間、カオス・ソーサラーはゲラゲラと笑いだした。雷フェイトさんに殺された復讐と、エンディミオンから下された命令を同時に果たせるからだろう。

だが・・・・本当にその攻撃が通じると思っているのか?

 

「残念だが俺の勝ちだ! 墓地のフェイクシルエットの効果! このカードと墓地のティアナさんを除外して攻撃を無効にする!」

「っな!? あの時墓地に戻したカード!?」

 

混沌空間4→5

 

ネクロフェイスの中心であろう壊れた人形の顔は、現れた雷フェイトさんの幻影に視線を動かした。ティアナさんのフェイクシルエットの効果で造られた幻影の方に体を向けると、触手と液体を一斉に発射した。

 

「違う! そっちじゃない! 相手は向こうだ!」

 

そんなソーサラーの叫びにも耳を傾けず、ネクロフェイスは幻影の雷フェイトさんを破壊した。

 

「そ、そんな・・・・」

「何もないならターンエンドしてもらう」

 

場 混沌空間

遊斗    モンスター1 伏せ1 手札0 LP1100

ソーサラー モンスター3 伏せ0 手札0 LP1400

 

「ドロー!」

「し、しかし酒吞童子は守備。確かに止める術は無いし、フォトンランサーをセットされるがチャンスはある!」

「『それはどうかな?』」

 

必至だなカオス・ソーサラー。やはりアンデットになったお前でも、闇の世界に行くのは怖いようだな。死より辛い苦しみが与えられるんだ、アンデットであろうと何であろうと闇は怖いか。

 

「装備魔法バルディッシュを雷フェイトさんに装備! これにより攻撃力1000アップ!」

 

A3300→A4300

 

「そ、その装備魔法は・・・・」

「御存じの通り貫通能力持ちだ。先に情報をくれてありがとな! バトル! 雷フェイトさんで酒吞童子を攻撃!」

『フィニッシュが雑魚って言うのが気に食わないけど』

 

A4300 VS D800

 

雷フェイトさんは右手から剣状の魔力刃を出し、右腕を反対の手で掴み、力を右手に集中させる。バチバチと雷フェイトさんの手から激しい音が鳴り、電圧の影響か剣の色が黄色から白に変化した。

 

「い、嫌だぁあああ! 死にたくないっ!」

『死人が言っても説得力無いね。プラズマザンバーブレイカー!』

 

フェイトさんの右手にある魔力刃は巨大な大剣へと変化し、雷フェイトさんが酒吞童子に剣先を向けた瞬間物凄いスピードで伸び、酒吞童子を呑み込みそのままカオス・ソーサラーも呑み込んだ。

 

「嘘だあああああああ!」

 

ソーサラーLP1400→-2100

 

「・・・・ふぅ」

 

闇のデュエルが終り緊張の糸が解けたのか、足に込めた力が溶けていった。このまま地面にぶつかるかと思ったが、誰かに抱きとめられたのか、視線が動くのが止まった。

 

「っと、大丈夫か遊斗?」

「あんまり大丈夫って状況じゃないけど・・・・、サンキューな十代」

「別にいい「ぐわあああああ!」なあ、あいつ・・・・」

 

背中から聞こえてきた悲鳴を聞き、十代はカオス・ソーサラーの方へ視線を動かした。悪い奴と分かっていてもカオス・ソーサラーが死ぬのが嫌みたいだ。

 

「闇のデュエルで負けた者を助ける方法を俺は知らない。仮に知ってても俺を殺そうとした相手を助ける気はない」

「けど・・・・デュエルで殺し合いなんて」

「確かに間違っているかもしれない。けどデュエルは決闘だ。奴は闇に呑まれるのを覚悟で俺に挑んできた。責任は俺にもお前にもない、奴自身だ」

「た、助けてくれえええええ!」

 

これ以上奴の悲鳴を聞きたくなかったのか、十代は無言で俺を背負い、この闇の空間から出て行った。

 

 

 

 

 




新オリカはないので、今回は序盤で活躍したイクスヴェリアとマリアージュについて。

LS悠久の眠り姫 イクスヴェリア ☆3/闇/魔法使い/A500 D500
1ターンに1度デッキ・手札・墓地からマリアージュを特殊召喚する。この効果を発動したターン、このカードを融合素材にできない。

LSマリアージュ ☆4/闇/機械/A1700・D1200
このカードは通常召喚できない。
このカードがカードの効果の対象になった時、このカードを破壊し、フィールド上のカード一枚を破壊する。
このカードがフィールド上に存在する限り、相手はイクスヴェリアを攻撃対象にできない。
このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時、自分のフィールド上にこのカードと同じレベル、属性、種族、攻撃力、守備力、効果が同じの「LSマリアージュトークン」を一体特殊召喚する。





イクスヴェリア。確実な1:1効果のモンスター。ステータスは貧弱ですが、そこはマリアージュと融合したり、守ったりしてカバー。


マリアージュ。自壊効果は魂を削る死霊に、相手のカード破壊があると思ってください。今回は闇の書を使ったコンボ(笑)をしましたが、この効果が以外に難しい。攻撃力を上げるために対象にとったら破壊されてしまうので、強いモンスターを戦闘で破壊したいとき相手モンスターの攻撃力を下げるしかありません。
もう一つはハイドロゲドンの上位交換の能力。ただし”マリアージュトークン”なので融合素材に出来ないのが弱点。


そしてこれはこの話を書き終えた後に思ったのですが、マリアージュにスバルを使ってステータスアップして相手モンスターを戦闘破壊したとき、マリアージュはダメージ計算後に破壊されますが、トークンを出すタイミングが”破壊した時”なのでトークンは出せるのでは? と思いました。
もし違ったらすいません。


追記)上記の戦法はタイミングにより不可能です。詳しくは第二十八話の前書きに書いております。
申し訳ありません。


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第十九話

今回は四枚オリカの修正があります。申し訳ありません。

まず一つ、これは今回の話に関係があるのですが、紅の鉄騎ヴィータ(ヴィータの最終形態)の効果

このカードが戦闘でモンスターを破壊できなかったダメージ計算後に発動できる。手札または墓地に存在する「ヴィータ」と名のつくモンスターをゲームから除外し、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの攻撃力は除外したモンスターの攻撃力分ダウンし、そのモンスターをもう1度だけ続けて攻撃出来る。また、選択したモンスターが守備表示の場合、そのモンスターを攻撃表示にする。

”そのモンスターをもう一度だけ続けて攻撃できる”ではなく、”そのモンスターともう一度戦闘を行う”にしようと思います。
つまり相手モンスターがヴィータに攻撃して、ヴィータを戦闘破壊できなかったとき、そのモンスターはヴィータに攻撃しなければならない、と言う事です。
表現があっているか分からないので、もし上記の効果を綺麗にまとめる事の出来る方がいれば、メッセージをくれると助かります。


二つ目はナハトヴァールと夜天の書。
この二枚共通効果の

自分のメインフェイズ時に「夜天の王」または「(アインス)」と名のついたモンスターに装備することができる。

自分のメインフェイズ時装備カード扱いとして「夜天の王」または「(アインス)」と名のついたモンスターに装備、または装備を解除して表側表示で特殊召喚できる。

とします。装備カード扱いが抜けていたのと、解除が抜けていました。


三枚目はアインスの召喚条件について
このカードは「闇の書」の効果でのみ特殊召喚できる。

このカードは通常召喚できない。
「闇の書」の効果で特殊召喚することができる。

にします。つまり闇の書で特殊召喚に成功すれば、復活出来ると言う事です。これは最近ドロー効果のある夜天の書ばかり出てるので、なんとかナハトにも出番を、と思いこうしました。


最後は魔法都市ミッドチルダ

このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLCを1つ取り除くことができる。

このカードが破壊される場合、の所を”このカードがカードの効果で破壊される場合”

にします。
理由は今のままだとフィールド魔法の上書きのルール効果にも耐性があり、いくらカウンターが溜まりにくいとはいえ、場持ちが良すぎるからです。


たくさんの変更があり申し訳ありません。やはり細かな所が抜けていたりすることがあるので、これからも時々このような修正があるかもしれませんが、ご了承ください。


カオス・ソーサラーとデュエルをしてからもう一ヶ月が経とうとしている。その間、カミューラと言うセブンスターズの一角が現れた。カミューラは幻魔の扉という、ブラックホールと死者蘇生が合体したような意味不明な強さを持つカードと人質を使い、クロノス先生と亮さんを倒したが、十代がカミューラに勝ち、クロノス先生と亮さんは無事に帰ってきた。

更に十代はもう一人、タニヤというアマゾネスの長とデュエルをしたらしい。だがそれは闇のデュエルではなく、婿を探す目的に行ったデュエルだった。その時イエローの人が色々関わっていたらしいが、俺は闇のデュエルの真っ最中でそれどころではなかった。

また、明日香がタイタンという奴と戦った。タイタンというのは、俺がカオス・ソーサラーと廃校で戦った同時刻、十代が戦っていた相手で、闇のデュエルに負けた筈だがどういうわけか復活したらしい。そのタイタンに負けそうになっていた明日香だったが、目が覚めた明日香の兄、吹雪さんの応援により無事勝つ事に成功。

 

よって現在俺が二人、十代が三人、明日香が一人と、六人のセブンスターズを倒している。セブンと言うからあと一人だろう。

俺はあれからセブンスターズと戦っていないにも関わらず、命がけのデュエルを数回やった。相手はカオス・マジシャン、闇紅の魔導師、ミュータント・ハイブレインの精霊。この三人もカオス・ソーサラーも魔法使い族で、カオス・ソーサラーと同じ目的で俺に襲いかかってきた。

そして今。

 

『ば、馬鹿なこの私が!?』

 

ライフが0になり徐々に闇に体が呑み込まれて行くネオアクア・マドールが、俺を睨みつけて悲鳴を上げている。ライフは4000と0。完全勝利だ。

 

「お前達は誰の指示を受けている? 何のために俺を襲う? 答え次第では助けてやる」

『ほ、本当か!?』

 

嘘に決まっている。俺の命を狙ってきた奴とは言え、死が間近の相手に嘘を言うのは少し心が痛むが、決闘を挑んで来た以上奴も覚悟があってきたんだ。

 

『わ、私に命令を下したのは王エンディミオン様だ。けど理由は分からない。さ、さあ知ってる事は言ったぞ!』

「待て、お前はその時俺のカード達について何か言われたか?」

『あ、ああ。お前は殺しても構わんが、精霊は殺すなと言われた。頼む! もう時間が無い』

 

ふむ、こいつが知っている情報もこれか。一ヶ月前から進展は無し・・・・。

俺が倒してきた精霊達は全員レベル6。おそらくコイツ等に情報を与える価値が無いと言う事だろう。

 

「悪いな、闇のデュエルで負けた者の救い方はしらない。カオス・ソーサラーは一回アンデットになって生き返っていたからお前もアンデットに願えば?」

『き、貴様ぁぁあああああ!』

 

闇に呑まれて行くネオアクア・マドールは最後の最後に憎しみの叫び声を上げると、完全に闇に呑み込まれた。最初はこの光景に罪悪感を覚えていたが、相手がこっちの命を狙って来ているからには、俺も非情になって奴らと接しなければならない。

 

『お疲れ様や遊斗。顔が青いで、ちょっと休んだら?』

「そうします。あっ、せっかくならはやてさんとなのはさんの特製チョコレートケーキが食べたいです」

『了解や、やけどちょっと時間かかるよ』

「待つ価値がありますから」

 

 

 

 

「またエンディミオンの名前が出たな」

「はい。エンディミオンが主犯格にしろ、その上に更に親玉がいるにしろ、魔法使い族が俺達を狙っていると言う事に間違いありませんね」

「問題はそこ。なんで魔法使い族なんだろう?」

 

シグナムさんとフェイトさんと一緒に話し合っていたが、考えても考えても相手の意図が掴めない。俺を殺しても良いって事は、目的は俺よりも精霊達(みんな)って事。だけどどうして精霊達(みんな)を狙う? カオス・ソーサラーがセブンスターズの一角になってやってきたのには何か理由があるのか?

・・・・

 

「あ~、駄目だ! 頭が痛くなってきた」

「ふふっ、遊斗はさっきのデュエルで肉体的にも精神的にも疲れているんだから考えなくていいよ」

「ああ、そろそろ主はやてと高町のケーキも作れる頃だと思うぞ」

 

って言われてもな~。考えるの止めろって言われると、逆に考えてしまいたくなるんだよな、人間って。

まあさっきみたいに真面目に深く考えずに、カードの整理をしながら適当に考える事にした。ってか俺ってカード結構持ってるよな。レアカードもあるから今度シャマ姉とツヴァイにでもオークションに出してもらおうかな? カードで手に入った金でまたカードを買いそのカードを売る。余り儲かりはしないが赤字にはならないので、色々なカードを見ておきたい俺には良い手段だ。

 

「あっ、エンディミオンだ」

 

手には神聖魔導王エンディミオンのカード。攻撃力2700、守備力1700のレベル7モンスター。精霊世界の偉さの基準と言うのは分からないが、エンディミオンが魔法使い族の一番上としたらレベル8以上のモンスターはどういう扱いなんだろう?

なんて素朴な疑問を思っていると、女性陣の喜ぶ声が聞こえた。

 

「遊斗ー! ケーキできたよー!」

「はーい!」

 

セブンスターズを二人も倒したんだ。最後のセブンスターズは他のみんなに任せ、俺は襲い掛かってくる精霊達の事に集中しておこう。

まっ、その前にチョコレートケーキに集中だ。

 

 

 

 

翌日、いつも通り寮合同の教室に入った途端、ダダダダと翔が走ってきた。

 

「遊斗君! 何とかして欲しいッス!」

「? どうしたんだよ翔?」

「アニキの様子が変なんスよ」

 

十代が変ってどういう事だ? ハッキリと説明しないまま十代の元まで引っ張られた。十代は俺が近くに来ても気付いていないみたいで、ハァとため息を吐きボーとしている。確かにおかしい、というか変だ。

 

「十代はどうしたんだ?」

「最近に多いんス・・・・。多分、最近続けて危険なデュエルをしたから・・・・」

 

なるほどな・・・・。十代は危険なデュエルをして、デュエルが本当に楽しいものなのか疑問に思ったか。セブンスターズの事を校長に教えてもらった日に気にしていた事だ。

十代は勝っても負けても、例えアンチデッキを使われようとロックデッキを使われようと、デュエルを心から楽しむ奴だ。そんな純粋にデュエルを楽しむ奴に、命がけのデュエルを続けてやるのは辛いだろう。

 

「やっぱりか・・・・」

「? やっぱりってどういう事ッスか?」

「いや、何でもない。そうだ、確かアカデミアに温泉があっただろ? みんなでそこ行かないか? 十代もリラックスできると思うし」

「良いっすね! じゃあ隼人君も誘ってみるッス!」

 

こんなに近くで話しているのに十代は未だに気付いていないようだ。

 

 

 

 

その日の夜、翔と約束した通り俺達はアカデミア内にある温泉に来ていた。俺も初めてきたが、しっかりと管理してあるようで、脱衣所も綺麗だった。服を脱いで浴場に入ると、そこにはおっさんくさい声を上げてのんびりしている万丈目がいた。

 

「あっ、万丈目じゃないか」

「? なんだ遊斗か。お前もリラックスしに来たのか?」

「どっちかと言うと十代の付き添いでな。今脱衣所にいるよ」

 

なんて会話をしていると、十代達も来た。寒い星空の下、ずっと裸のままでいると凍え死んでしまうので、急いで体と髪を洗い終えると、俺達は温泉に浸かった。

 

「あ~、気持ちいな~」

「後はここに美少女でもいたら完璧ッスね」

「なんだな~」

「翔。最近お前変態思考だな・・・・」

「遊斗君に言われたくないッス! フェイトちゃんとアインハルトちゃんに続き、一週間前なのはちゃんという新しい美少女とデートをっ!」

 

そう言えばそんな事もあったな。この間デュエルで頑張ってくれたお礼に、感謝の気持ちを込めてなのはと色々と遊んだんだよな。その時も紳士同盟が礼の如く突っかかって来て、それ以外にも数回デートを邪魔された事がある。

 

「まったくお前等は。女性と言えば天上院君の様な魅力ある人だろ」

「明日香さんは綺麗ッスけど、僕は可愛さを求めてるんス」

「好きになったら誰でもいいんじゃないか? な、十代?」

「え、うん。ああ・・・・」

 

う~ん、この温泉に浸かっても悩みは取れないか。まっ、その程度の悩みだったら十代がこんなに落ち込まないだろう。しばらくそっとしておくか。

と少し十代から距離を置こうとした瞬間、フラ~とキーメイスの精霊が横切った。

 

「・・・・せ、精霊!?」

「ほ、本当だ! あそこにたくさんいるぞ!」

 

って、万丈目も精霊が見えるのか!? 万丈目が指を指した先には精霊達がたくさん集まっていた。落ち込んでいた十代もそれには気になったのか、立ち上がり、精霊達が集まっている場所に恐る恐る近づいた。

 

「お、おい十代気を付けろ」

「いったい何が・・・・っておわ!?」

 

精霊達が集まっていた場所に近付いた瞬間、十代はその中心に引っ張られるように呑みこまれた。

 

「ちょ、十代! って、わっ!?」

「遊斗君!? アニキ!? ってあれー!?」

「今助けに行くんだな! なんだなー!?」

「お前等落ち着け。しっか、おわ!? 俺はそんなに近付いてないぞー!?」

 

 

 

 

・・・・あれ? 俺いったいどうしたんだっけ? 確か温泉に入っている途中精霊達が集まっていた場所に近付いて・・・・。

 

「ハッ! こ、ここは? というか服は、って、いつの間にか制服着てる・・・・」

「う、う~ん、どこだここ・・・・」

 

体を起して辺りを見渡すと、近くに十代、翔、万丈目、隼人が横になっていた。みんな怪我は無いようで、辺りの景色を見て驚いている。

俺もみんなに続き辺りの景色を見ると、言葉を失った。沢山浮かぶ風船、可愛らしいお城、飛んでいる小さな精霊、そして螺旋状の階段の様なもの。どれもカラフルな色で、さっきの温泉とは似ても似つかない景色だ。

 

「え~と・・・・」

 

気を失い目が覚めた直後、違う場所、しかも何が何だか分からない場所におり、俺の頭は状況を整理しきれていない。

だってこれ、え? どういう事?

 

『この空間、なんか懐かしいかも』

『そうだね・・・・』

 

いや、なのはさん、フェイトさん、懐かしんでないで何か情報を下さいよ。というか精霊が見えない翔と隼人もこの空間では精霊が見えるようだ。歩いたり飛んだりしている精霊達を見て、ポカーンと口を開けている。

 

「貴様等! ここで何をしている!」

「ヒッ!? ご、ごめんなさいッス!」

「別に俺達は怪しい者じゃない。温泉にいたら突然何かに吸い込まれ、この場所にいたんだ」

 

こういう時に気が強い万丈目は頼りになるな。俺は未だに整理しきれず口がパクパクと動いている。

 

「ふぅん、なるほど。どうやら貴様達はこの世界に来る扉に入ってしまったようだな」

 

コツコツと足音を立て、精霊たちの集団の中から歩いてきたのは、趣味の悪い格好をしたロンゲの男。そいつの事を俺は知っていた。

その名を正義の味方カイバーマン。頭の可哀想な海馬コーポレーションの社長が自ら作ったカードである。まあ天才と馬鹿は紙一重と言うからな。俺は凡人だから天才の考えは分からない。

 

「な、なんとかならないのか!?」

「知っているがただでは教えん。俺とデュエルをして楽しませてくれたのなら考えてもやらん」

 

うわ~、モデルになった人に似て偉そうだな。だが今はそんな事はどうでもいい。十代が落ち込んでいる今、俺が受けるしか――――

 

「そうだな。一番後ろにいる貴様、貴様なら俺を楽しませてくれるだろう」

「え、俺・・・・?」

 

後ろを振り向くと一番後ろにいたのは十代。ちくしょう! なんで落ち込んでいる十代を名指しして俺を無視するんだ!

ワーワーとカイバーマンに不満をぶつけたが、奴は鼻で笑って無視し、俺に背中を向けた。

 

 

 

 

カイバーマンがデュエルの相手を十代にしたのは理由があった。闇のデュエルを体験し、デュエルが楽しいものなのか疑問を感じ始めていた十代に、デュエルを通し、デュエルとはどういものかを十代に分からせる為だった。カイバーマンが使うデッキがあの海馬社長と同じ、ブルーアイズデッキというのもあり、十代はやる気を取り戻し、いつもの十代に戻った。

だがそんな楽しいデュエルもカイバーマンのこの攻撃で終わりになる。

 

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)で攻撃! アルティメット・バースト!」

「うわあああああ!」

 

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)の攻撃で十代のライフは0になり、十代は負けた。けど十代はいつもの明るい顔で「ガッチャ」とカイバーマンに言った。

 

「ふぅん、一つ言っておこう。負けるのを恐れるな、負けて勝て。これが今の貴様に必要な事だ」

「ああ!」

「それで、どうやって元の世界に帰れるんだ?」

「強く念じれば元の世界に帰れる。せいぜい頑張って祈ることだな」

 

祈れば帰れるのか、ずいぶん簡単な方法だな。

 

「じゃあみんな行くぞ!」

「「「おお!」」」

 

十代の合図と共に目を瞑った四人は、次の瞬間、瞬間移動したかのようにスッと消えた。へぇ、こんな風になっているのか・・・・。

さて、みんなには悪いが、俺はもう少しこの世界でやらなきゃいけない事があるんだよな。

 

「何故貴様は帰らない?」

「ああ、あんたとデュエルするまでは帰れないね。それに精霊世界に来たなら聞いておきたいことが色々あるんだ!」

 

ニヤッと笑ってデュエルディスクを構えると、カイバーマンも「ふぅん」と笑ってデュエルディスクを構えた。

 

「「デュエル!」」

「先行は貰う、ドロー! フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動! そして高町なのはを召喚! 効果で自身とミッドチルダにLCが一つずつのる」

 

A500・D1800

LCなのは1 ミッドチルダ0→1

 

「ほう、貴様の聞きたい事はあの事か。いいだろう」

「知ってるのか、まあ今はそれよりデュエルだ。ミッドチルダの効果でなのはのLCをミッドチルダに移動。そしてミッドチルダのLCを取り除きユーノを特殊召喚!」

 

LCなのは1→0 ミッドチルダ2→1

 

「場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

『相手はあの海馬社長と同じデッキか。わくわくだね』

 

A1000・D3000

 

「ですね、なのはさんの効果発動! 守備のこのカードを攻撃表示に変更し、デッキからスバルさんを手札に加える。レイジングハート・エクシードを装備してターンエンド」

 

なのはA1000→A2500

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

「俺のターン、ドロー! 手札抹殺を使う!」

「いい!? いきなりか!?」

 

せっかくサーチしたスバルさんが・・・・。というか初手手札抹殺ってよっぽど事故っていたのか?

 

「手札抹殺の効果で墓地に送られた二枚の伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)の効果でデッキから二枚ブルーアイズを手札に加える」

 

つ、詰め込みじゃねえかその初手。いやいや、亮さんに比べればこんなもの詰め込みでもなんでもないか。

ブルーアイズ限定とは言え、墓地に送られただけでサーチというのは便利だな。

 

「トレード・インを発動。手札のブルーアイズを墓地に送り二枚ドロー。正義の味方カイバーマンを召喚!」

 

A200・D700

 

カードから出てきたのはもう一人のカイバーマン。やっぱりその名前、ちょっとどころかかなりダサい気が・・・・。

 

「このカードを生贄に伝説を見せてやる。現れろ、我が僕青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)!」

 

A3000・D2500

 

現れたのは白く光る青の鱗を持つ、伝説のドラゴン。

その大きさは俺となのはさんを簡単に押しつぶせ、その爪と牙は鉱石にも傷を負わせることができる程鋭い。ブルーアイズの雄叫びがフィールドに響き渡り、俺となのはさんの武者震いが止まらなくなった。

 

「バトル! ブルーアイズでAOA高町なのはに攻撃! 滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!」

 

A3000 VS A2500

 

「レイジングハート・エクシードの効果発動! 装備モンスターが破壊される代わりにこのカードを破壊する!」

 

ブルーアイズから放たれたのは、青白く綺麗だが荒々しいエネルギー弾。その弾をレイジングハートで止めたなのはさんだったが、やはり伝説の龍の攻撃はもの凄い。レイジングハートが自分の身を挺してなのはさんを庇った。

 

『ありがとう。レイジングハート』

 

優斗LP4000→3500

 

「ふぅん、カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター1 伏せ0 手札4 LP3500

カイバ モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「十代とのデュエルからずっと思ってたけど、やっぱり生で見るブルーアイズは一味も二味も違うな」

「当たり前だ。我が僕は最強にして絶対。貴様のリリカルシリーズも無力!」

「それはどうかな? ドロー! なのはさんの効果でデッキからヴィータさんを手札に加え、そのまま召喚」

 

A1900・D1200

LCミッドチルダ1→2

 

やっぱりなのはさんがいると場が安定するな。理想的な流れができるからやっぱり頼りになる。

 

「場に夜天と名のつくモンスターがいるとき、フィールドのLCを一つ取り除き手札のツヴァイは特殊召喚できる!」

 

LCミッドチルダ2→1

 

「場のヴィータさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ! ヴィータさんの効果でその二枚のセットカードを破壊する!」

「甘い! カウンター罠王者の看破を発動! 自分フィールドにレベル7以上の通常モンスターがいる時、魔法罠の発動、モンスターの召喚、特殊召喚、反転召喚の内どれかを無効にして破壊する!」

 

ック、ブルーアイズをエースとしたデッキには相性抜群って事か・・・・。ヴィータさんの効果はブルーアイズの咆哮により止められ、スッと墓地に送られてしまった。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター1 伏せ2 手札2 LP3500

カイバ モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

 

「ドロー! 龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)を発動! 墓地のロード・オブ・ドラゴン―ドラゴンの支配者と神竜ラグナロクを融合! 竜魔人キングドラグーンを融合召喚!」

 

A2400・D1100

 

次に現れたドラゴンは上半身がドラゴンの支配者で、下がラグナロクの竜。種族はラグナロクを引き継ぎ、効果はドラゴンの支配者の上位互換を引き継いだモンスター。

 

「アドバンスドローを発動! 場のブルーアイズを生贄に二枚ドロー」

 

ブルーアイズを墓地に送った!? どういう事だ、攻撃力3000のモンスターを墓地に送る必要がどこに・・・・。

 

「闇の量産工場を発動。墓地のブルーアイズ二体を手札に。そしてキングドラグーンの効果で手札のブルーアイズを特殊召喚!」

 

A3000・D2500

 

なるほど。手札を増やす為にアドバンスドローを使ったのか。しかもキングドラグーンの効果でさっきと同じ状態にした。

 

「バトル! ブルーアイズでAOA高町なのはに攻撃! 滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!」

「攻撃宣言時フォーメーションチェンジを発動。なのはさんを守備にしてデッキから一枚ドローする!」

「甘いわ! ダメージステップ罠発動、スキル・サクセサー発動! ブルーアイズの攻撃力を400上げる!」

 

ブルーアイズA3000→3400 VS D3000

 

守備のなのはさんがやられるなんて・・・・。流石ブルーアイズ、圧倒的破壊の持ち主。いや、ブルーアイズだけじゃなく、そのブルーアイズを操るカイバーマンも凄い。

 

「キングドラグーンで攻撃! トワイライト・バーン!」 

 

A2400

優斗LP3500→1100

 

「ッツ、一気にきつくなったな」

 

十代はよくこんな強い相手とあそこまでいいデュエルができたな。でも俺も負けてられない。意地でもカイバーマンに勝ってやる。

・・・・というかさっきのスキル・サクセサーというカード。海馬さんが使っていたカードなら俺も知っているはずだが、一般人には教えてはいけないカードなのか? その割には効果が弱いが。

 

「ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター0 伏せ1 手札3 LP1100

カイバ モンスター2 伏せ1 手札4 LP4000

 

「ドロー! ティアナさん召喚。効果でミッドチルダにLCが一つ乗る」

 

1200・D1000

LCミッドチルダ1→2

 

「ティアナさんの効果! LCを一つ取り除き墓地の祝福の騎士ヴィータを除外。その同名トークンを特殊召喚!」

 

LCミッドチルダ2→1

A0・D0

 

「そんな雑魚モンスターで何ができる」

「こっからだ! 場の祝福のヴィータを生贄に紅の鉄騎ヴィータを特殊召喚!」

 

最終形態共通の、デュエルディスクにセットした時の衝撃が走った。俺の場に真紅の光が現れ、その光が徐々に収まると大人になったヴィータさんがいた。やっぱりヴィータさんって大人になると美人だ。

 

A3000・D2800

 

「バトル! ヴィータさんでキングドラグーンを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A3000 VS A2400

 

ヴィータさんの手にあるグラーフアイゼンから魔力が噴射され、そのスピードを利用して威力を上げ、キングドラグーンにグラーフアイゼンを叩き込んだ。自分より何倍も大きい相手を破壊するってどんだけ力強いんですか・・・・って今更か。

 

カイバLP4000→3400

 

「ふぅん、少しはやるようだな」

「その余裕な表情も今のうちだ。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター2 伏せ2 手札1 LP1100

カイバ モンスター1 伏せ1 手札4 LP3400

 

「ドロー! トレード・インを発動。ブルーアイズを墓地に送り二枚ドロー! バトルだ! ブルーアイズで紅の鉄騎ヴィータに攻撃!」

「相打ち? まあいい、罠発動プロテクション! これでヴィータさんはこのターン破壊されない! ブルーアイズだけ破壊させてもらう!」

「させるか! ダメージステップ墓地から罠発動!」

『っな!? 墓地からトラップ!?』

「ぼぼぼ墓地からトラップ・・・・って何か罠あったっけ?」

 

つい例のリアクションをしてしまったが、そんな罠あったか? というか墓地から罠ってかなり珍しいからてっきりソニックムーブだけかと思ってた。

 

「スキル・サクセサーを除外することでブルーアイズの攻撃力を800上げる! 滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!」

「そのカードか!」

 

ブルーアイズA3000→3800 VS A3000

 

ブルーアイズは破壊力抜群のエネルギー弾をヴィータさんに発射した。頑丈な防御を持つヴィータさんでもその攻撃を完全に受け止めるのは不可能で、受け止められなかった攻撃がかすかにだが俺に襲い掛かってきた。

 

「っと、流石ブルーアイズ! けどヴィータさんの効果を発動する!」

 

優斗LP1100→300

 

「ヴィータさんの効果! このカードが戦闘でモンスターを破壊できなかった時、墓地の夜天の騎士ヴィータを除外し、その攻撃力1900だけブルーアイズの攻撃力を下げる」

 

ヴィータさんは小さな鉄球を左手の指の間に四つ作り出し、グラーフアイゼンで飛ばしブルーアイズにぶつけた。

 

ブルーアイズA3800→A1900

 

「お、俺のブルーアイズをっ!」

「更にそのモンスターと戦闘を行う! 反撃だ!」

『リミットブレイク!』

 

ガシャンガシャンガシャンとグラーフアイゼンはカートリッジを三回行うと、巨大な機械音を出しながら巨大なハンマーへと変わった。しかもただのハンマーではない。前には巨大なドリル、後ろにはブーストがついた鉄槌。

 

『ツェアシュテールンクスハンマー!』

 

A3000 VS A1900

 

巨大なドリルをブルーアイズの頭上目掛けて振り下ろした。鉄球を叩きつけられて弱ったブルーアイズは抗うこともできず、ドリルによってペチャンコになった。南無・・・・。

 

「おのれぇ! ブルーアイズを」

 

カイバLP3400→2300

 

「まだだ! 永続罠、正統なる血統を発動! 墓地のブルーアイズを復活! ブルーアイズでティアナを攻撃! 滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!」

 

A3000 VS D1000

 

やっぱりティアナさんは残らなかったか・・・・。というかその攻撃名、このデュエル始まって何回言った? 俺一回のデュエルで、そこまで同じモンスターで攻撃したことない気がする。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター1 伏せ1 手札1 LP300

カイバ モンスター2 伏せ3 手札3 LP2300

 

ライフはもう300しかないか。ライフを優先しない俺でも300はいくらなんでもまずい。ザフィーラか覇王アインハルトが呼べればいいんだが。

 

「ドロー! Strikersの回収を発動! 墓地のなのは、ユーノ、スバルさんをデッキに戻し二枚ドロー! リリィを召喚、効果でデッキから銀十字を手札に加え、ミッドチルダにLCが乗る」

 

A500・D500

LCミッドチルダ1→2

 

「手札を一枚墓地に送り、デッキからトーマを特殊召喚! 場のトーマとリリィを融合! 来い、リアクト・エンゲージ―トーマ!」

 

相変わらず羨ましい融合モーションで現れたのは、悪そうな格好をしているトーマ。何度も言うが、こいつの格好はどこからどう見ても悪役だ。

 

A2500・D2500

LCトーマ1

 

「ずいぶんと趣味の悪い格好をしている」

「『『・・・・』』」

 

・・・・え、あなたが言います? カイバーマンとか言って、ロンゲでブルーアイズの顔をヘルメットにしているあなたが言います?

言われたトーマも呆れるしかないのか、無言で咳払いした。

 

「ト、トーマに銀十字を装備。そしてトーマの効果。このカードのLCを一つ取り除き、相手フィールドのモンスターの攻守を1000下げる。更に銀十字を装備している場合、この効果で下がる数値は2000になる!」

『Silver Stars Hundred million』

『『シルバー・スターズ・ハンドレッドミリオン!』』

 

LCトーマ1→0

 

銀十字の声に復唱すると、銀十字から何百もの紙が現れた。その一枚一枚が光だし、ブルーアイズに向け一斉発射した。

 

ブルーアイズA3000・D2500→A1000・D500

 

「おのれ、一度ならず二度も・・・・」

「これで終わりだ! ヴィータさんでブルーアイズを攻撃!」

「させん! 攻撃の無力化を発動! バトルフェイズを終了させる!」

 

やっぱりそう簡単には勝たせてくれないか。でもそうじゃなきゃ面白くない、何しろ相手は伝説のブルーアイズデッキの持ち主、こんな楽しいデュエルがそう簡単に終わってたまるか。

 

「ミッドチルダのLCをトーマに移動して、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LCミッドチルダ2→1 トーマ0→1

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター2 伏せ1 手札1 LP300

カイバ モンスター1 伏せ2 手札3 LP2300

 

「ドロー。ふぅん、手札から滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)発動! 相手フィールド上のモンスターを全て破壊する」

「ック、チェーンしてトーマの効果。相手フィールドのモンスターの攻撃力を2000下げる!」

 

ブルーアイズから放たれた一発の弾が俺のフィールドで爆発し、ヴィータさんとトーマが飲み込まれてしまったが、トーマの弾丸もブルーアイズに当たり、ブルーアイズは攻守とも0になった。

 

ブルーアイズA1000・D500→A0・D0

 

「破壊された銀十字の効果! 装備モンスターがリアクト・エンゲージ―トーマだった場合、リアクト・エンゲージ―黒騎士トーマを特殊召喚!」

 

A3000・D2000

 

滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)によって舞っていた土煙が収まると、そこには更に悪そうな格好をしたトーマの姿。鉄のアーマーをより多く装着し、紋様を全身にしているその青年が、実は好青年だと誰が信じるだろうか。まあ余り言い過ぎるとトーマがいじけるから口には出さないけど。

 

「リビングデッドの呼び声発動。墓地のブルーアイズを蘇生」

「滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)を発動したターン、ブルーアイズは攻撃できないはず・・・・。まさか!?」

「融合発動! 場の二体のブルーアイズと手札のブルーアイズを融合! 現れろ我が最強の僕、青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)!」

 

A4500・D3800

 

ブルーアイズが三体融合した圧倒的な姿。一体だけでも圧倒的な力を持った龍が一つになったことにより、異様なまでの力を込めている。初代デュエルキングの遊戯さんは、このモンスターの威圧感に耐えながらデュエルをしてきたのか。

 

「バトル! アルティメットドラゴンで黒騎士トーマを攻撃! アルティメット・バースト!」

 

A4500 VS A3000

 

三つのブルーアイズの首はそれぞれ口にエネルギー弾を貯め、エネルギーの強さにバチバチバチと力が漏れる音がする。そして放たれたエネルギー弾に黒騎士であるトーマも止めることができず、破壊された。

けど俺はまだ負けるわけにはいかない!

 

「ダメージ計算時ザフィーラを墓地に送りダメージを0にする。そしてデッキから一枚ドロー!」

「ふぅん、なるほどな。俺はこれでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター0 伏せ1 手札1 LP300

カイバ モンスター1 伏せ1 手札1 LP2300

 

ック、アルティメットドラゴンのプレッシャーが想像以上にでかい。闇のデュエルでもないのに、手が震えて次のドローをしようとしない。だがドローする前から諦めるのはデュエリストのすることじゃない。どんなカードでもそこから何かに繋げられる。

 

「ドロー! よし、まだ方法はある! ミッドチルダのLCを取り除きロストロギア・レリックを特殊召喚」

 

LCミッドチルダ1→0

 

ロストロギア・レリック ☆3/光/機械族ユニオン/A0・D0

 

場に現れたのは何てことない赤い宝石。これが物凄い力を込めているらしいが、実感が出ない。

 

「そして迷い子ヴィヴィオを召喚。ミッドチルダの効果でLCを乗せる」

 

LCミッドチルダ0→1

 

LS迷い子ヴィヴィオ ☆1/光/魔法使い/A0・D0

 

「このカードは場になのは、またはフェイトと名のつくモンスターが存在しない時手札に戻るが、レリックの効果でヴィヴィオの効果は無効になる」

 

小さいヴィヴィオにアルティメットの攻撃を防いでもらうなんて罪悪感でいっぱいだが、ヴィヴィオ本人も『だいじょぶだよ』って言ってくれてるから頼らせてもらおう。

 

「ロストロギア・レリックの効果でヴィヴィオに装備。これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター1 伏せ2 手札0 LP300

カイバ モンスター1 伏せ1 手札1 LP2300

 

「ドロー。ふぅん、そんな雑魚モンスターでアルティメットの攻撃が止められると思っていたのか! アルティメットの攻撃! アルティメット・バースト!」

 

A4500 VS D0

 

アルティメットは三つのそれぞれの首でエネルギーを溜め、幼女であるヴィヴィオに容赦なく発射した。アルティメットの殺気にヴィヴィオはビクッと怯えたが、攻撃が通ることはなかった。ヴィヴィオの周りに虹色の魔力がヴィヴィオを守るように現れたのだ。

 

「どういう事だ!?」

「ロストロギア・レリックの効果さ。装備モンスターは戦闘では破壊されず、魔法・罠・モンスターの効果を受けない」

「なんだと!? では貫通ダメージかその宝石を破壊するしかなということか。カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

優斗  モンスター1 伏せ2 手札0 LP300

カイバ モンスター1 伏せ3 手札0 LP2300

 

何とか耐えることができたか。しかし、いつカイバーマンが貫通効果のカードや、レリックを破壊するカードを引くか分からない。ここらで何かいいカードを。

 

「ドロー! フェイトを召喚! 効果でミッドチルダと自身にLCを置く。そしてミッドチルダにLCを移動」

 

A500・D1800

LCフェイト1→0 ミッドチルダ1→3

 

「レリックの装備を解除。そして場になのは、またはフェイトと名のつくモンスターが存在する時、ヴィヴィオとレリックは融合できる! 来い! 聖王ヴィヴィオ! ヴィヴィオさんの効果でデッキから聖王の鎧を手札に加える。そしてヴィヴィオさんの攻守は墓地のLSと名のつくモンスターの数×400になる。俺の墓地のLSは十一枚! よって攻守は4400!」

 

ヴィヴィオA?・D?→A4400・D4400

 

「攻撃力4400・・・・」

「更にミッドチルダのLCを取り除きアルフを特殊召喚。場のフェイトとアルフを融合、来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

『わ~、フェイトママー!』

『ふふっ、駄目だよヴィヴィオ。今は決闘中なんだから』

 

LCミッドチルダ3→2

A2800・D500

ヴィヴィオA4400・D4400→A5200・D5200

 

この二人は微笑ましいな~。背はフェイトさんの方が少し高く、ヴィヴィオさんはフェイトさんの腕の中に飛び込んだ。ここになのはさんを呼びたかったな。

さて、ヴィヴィオさんには悪いけど、家族の団欒は中断してもらう。

 

「ヴィヴィオさん効果、墓地のLS一体の効果を得る、俺はなのはさんの効果を選択! 攻撃表示に変更し、デッキからエリオを手札に加え、エリオの効果。このカードを墓地に送り、墓地のレリックを手札に加える。そしてミッドチルダのLCを取り除きレリック特殊召喚」

 

LCミッドチルダ2→1

 

「レリックをヴィヴィオさんに装備し、バトル! ヴィヴィオさんでアルティメットに攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

A5200 VS A4500

 

三つのブルーアイズから放たれたエネルギー弾よりも巨大な砲撃がヴィヴィオさんから放たれた。あの伝説の融合モンスターであるアルティメットの攻撃をあっさりと押し返し、アルティメットを破壊した。

 

カイバ2300→1600

 

「俺のアルティメットがやられただと!?」

「これで終りだ! フェイトさんでダイレクトアタック!」

「させん! アルティメットが破壊された時時の機械―タイム・マシーンを発動! アルティメットを再び特殊召喚!」

 

A4500・D3800

 

「ック、お前もしつこいな! 俺はこれでターンエンド。エンドフェイズヴィヴィオさんは融合デッキに戻らなくてはいけないが、レリックによりその効果は無効だ」

 

これで次のターンアルティメットに攻撃したら俺の勝ちだ。このターンで決められなかったのは予想外だが、奴に一ターンの猶予を与えただけ。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ2 手札0 LP300

カイバ モンスター1 伏せ2 手札0 LP1600

 

「ドロー! まさか貴様如きにこのカードを使う事になるとはな。今ここでブルーアイズの最終形態を見せてやる! アルティメットを生贄に捧げ降臨せよ! 青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)!」

 

アルティメットの表面がピキピキと音を立て、徐々に鱗がはがれて行く。アルティメットの中から光を発する白く神々しい何かがチラリと見えた。その正体は徐々に露わになり、白銀に輝く、綺麗という言葉だけでは現す事の出来ない神々しさを持つ龍が現れた。

 

A3000・D2500

 

ブ、ブルーアイズにはこんな最終形態があったのか・・・・。てっきりアルティメットだけかと思っていたが、更に進化があったとは驚きだ。まあ対をなすレッドアイズの進化形がやたら多いから、むしろもっと出すべきだと思う。海馬さんしか使えないけど。

 

「シャイニングドラゴンは墓地のドラゴン一体につき攻撃力が300上がる! 俺の墓地のドラゴンは七体。よって攻撃力は5100になる!」

 

シャイニングA3000→A5100

 

「バトル! 青眼の光龍(ブルーアイズ・シャイニングドラゴン)で黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃! シャイニング・バースト!」

 

A5100 VS A2800

 

「罠発動、協力防御。LSが二体以上いる時発動可能。このターンLSは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージを0にする。これで次のターンヴィヴィオさんで攻撃すれば俺の勝ちだ!」

「ほう、その手のカードを伏せて置いたか。だが無意味だ! トラップ・ジャマー発動! バトルフェイズ中に発動した相手の罠の発動を無効にする!」

 

取っておいた協力防御のカードはトラップ・ジャマーから出てきた怪しい色の霧によって破壊された。シャイニングの攻撃を止めていたフェイトさんとヴィヴィオさんの協力が解かれ、シャイニングドラゴンの攻撃がフェイトさんを襲い、その攻撃が俺に押し寄せてきた。

 

「粉砕! 玉砕! 大喝采!」

「くそおおおおお!」

 

遊斗LP300→-2000

 

ま、負けた・・・・。初手なのはさんから、ヴィータさん、トーマ、ヴィヴィオさん、フェイトさんに繋げてかなり良い流れだったけど、奴の圧倒的なパワーに押し負けてしまった。

 

「ふぅん、確かに貴様は強かった。だがこの俺を越える事は出来なかったようだな」

「ック・・・・完敗だ」

 

奴の圧倒的なブルーアイズへの執着。常時3000打点のモンスターを様々な手段で呼び、最後の最後までブルーアイズで押された結果がこの敗北だ。今回のデュエル、カイバーマンはキングドラグーン以外の上級モンスターはブルーアイズ関連しか使っていない。

 

「まあ俺も楽しめた。貴様の聞きたい事とやらに答えてやろう」

「本当か、ありがとう! じゃあ単刀直入に言うけど、最近魔法使い族、正確に言うと神聖魔導王エンディミオンってどういう人? 何か変わった事とかある?」

 

今俺が精霊達に狙われている事は既に知っているだろう。俺の質問に驚きもせずにカイバーマンは「ふぅん」と鼻で笑うと、口を開いた。

 

「魔法使い族だけじゃない。十年以上前から、ゆっくりだが確実に精霊世界はおかしくなってきている」

「おかしい? そこを詳しく教えてくれ」

「詳しくは知らん。だがそれぞれの種族の代表の行動が今までと変わり、戦争や暴力が増えた。ここはそんな世界で生きられなかった弱小モンスターが集まる場所」

 

なるほど、カイバーマンも攻撃力200の弱小モンスターだからな。なんて口が裂けても言えない。

 

「そして十年前からある噂をよく聞くようになった」

「え?」

「こんな噂だ。本来なら存在する筈のないカードが現れた」

「存在する筈のないカード? それってどういう」

「これ以上は俺も知らん。さあ、さっさと帰るんだな」

 

カイバーマンはそう言って背中を向け去って行ったので、俺も元の世界に帰りたいと願い、無事に元の世界に帰った。

 

 

 

 




今回も新オリカが無いので、今回はこれからの、この小説の話の進め方について説明をします。

今回前回からかなり話が進みました。セブンスターズももう後一人です。
まあ今までの話でお分かりになる方も多いと思いますが、基本的に原作と同じ組み合わせのデュエルはカットしたり、今回の様にザックリと説明します。
理由は
原作と同じデュエルを文才のない作者が書いてもただの劣化にしかならない。
仮にデュエルを違う展開にしても、対戦キャラが同じなの結局神展開の原作の劣化になってしまう。
単純に話数が増える。

などの理由からカット、またはざっくりとした説明で行かせてもらいます。


それとヒロインですが、おそらく幼フェイトになると思います。恋愛予定無しと書いてしまったので、ハーレムとかにするのもちょっと気が引けるので。


最後にもう一つ、デッキ枚数の事ですが、一期にある程度区切りがついたら皆様にアンケートさせて頂こうと思います。


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第二十話

投稿が遅れて申し訳ありません。俗に言うスランプです。それと今回文化祭の話なのですが、文化祭が二日ある設定になっております。

スランプとは関係ありませんが、今回はデュエルの密度がいつになく薄いです。この小説始まって初めてデュエルがお飾りになりました。今回はラブコメメインなので、デュエルを楽しみにしていた方には余り面白くないかもしれません。
まあ偶にはこんな回もいいかもしれません。


カイバーマンとデュエルをしてから一週間。奴から聞いた事で色々と考えたりしたかったが、それどころでは無かった。明日は年に一度のデュエルアカデミアの文化祭なのだ。俺は出し物をする訳ではないが、店や劇をする友達の手伝いや、明日のデュエルトーナメントのエントリーをしたりと、かなり忙しかった。寮の部屋に戻るのは11時を過ぎており、俺は部屋に入ってすぐベッドに体を預け、そのまま睡魔に身を委ねる。そんな一週間を繰り返していた。

と言う事で翌日、つまり文化祭初日。俺は文化祭二日目のデュエルトーナメントしか予定は無いので、ゆっくりと準備が出来る。

準備を終えると、俺はある決心をして両頬をパチンと軽く叩く。

 

「・・・・フェイト、出てきてくれ」

 

デッキケースからフェイトのカードを取ると、カードからフェイトが出てきた。いつも思うけど、カードの中ってどんな感じなんだろう? 精霊達(みんな)曰く、ちょっとした個室の様なもの、らしいけど想像がつかない。

 

『? どうかしたの?』

「その、よかったら一緒に文化祭回らないかな~って」

 

こうやって面と向かって誘うのはなんか恥ずかしいな・・・・。フェイトも誘いを聞いてか、頬が少しだけ赤く染まった。

 

『そ、その、私でいいの?』

「うん、フェイトと一緒に回りたい」

『じゃあすぐに準備するね!』

 

フェイトは頬を赤く染めながらも満面の笑みを浮かべ、一旦カードの中に戻って行った。

 

 

 

 

「あみだくじでレアカードが当たるかも! あみだカード一回200円だよー!」

「焼き蕎麦、焼き鳥、お好み焼き! どれも美味しいよー!」

「万丈目グループが出すレストラン! レストラン万丈目がなんとこの場で食べられる!」

 

ホント沢山の屋台があるな~。デュエルアカデミアは世界でも注目されているデュエルに特化した学校。しかもスポンサーがあの海馬コーポレーションと言う事もあり、色々な所から観光客が来ている。その為学生達も気合いを入れて屋台を出して盛り上げろうとしている。

貧乏な学生にとって、売り上げが全て自分達の物になり、沢山の客が来るこの祭りは小遣い稼ぎに持って来いだ。

 

「ねえ遊斗、あの万丈目の屋台行ってみていい?」

 

辺りの景色を見ながらもフェイトの可愛らしい恰好に見惚れており、フェイトの言葉に一瞬だが動揺してしまった。今のフェイトは、下にミニスカートを履き、黄色の暖かそうなシャツの上に、腰まである黒の毛皮のコートを着ている。金色になびく髪が黒のコートとマッチしており、いい形で大人っぽく見える。

 

「ああ、実は俺も結構気になってたんだ。というかそのコート、着てくれているんだな」

「へへっ、遊斗が買ってくれたものだから」

 

去年の冬休み(クリスマスではない)にみんなに一着ずつだが服をプレゼントした。その時フェイトに上げた服がこれだ。精霊達(みんな)が実体化出来ると分かった時、ふとある事を思った。それが精霊達(みんな)の服。今までも季節に合わせ服を変えていたが、それはデバイスが作ってくれた服であり、本当の服じゃない。お世話になっているみんなにデバイスの作った服をずっと着せ続けるのは、主として嫌だった。

貯金をほぼ全額使い、バーゲンの安い服をみんなに一着ずつだが買った。フェイトの着ているコートも高い毛皮では無く、コーティングされて高そうに見える物だ。

そんな安物を大事にギュッと握りしめてくれるフェイトは、本当に優しい女の子だ。

 

「いらっしゃい! って遊斗か。それとフェイト君だったな」

「はい、いつも遊斗がお世話になってます」

「お前が屋台やるなんて知らなかったぞ」

 

こいつに世話された事なんてあったか? と思いつつシェフの白い恰好をしている万丈目に問う。屋台には万丈目意外にも数人本物のシェフがおり、プロの手捌きで料理を作っている。こうやってプロの料理姿を見て初めて気付いたが、なのはさんとはやてさんの料理の腕って凄いんだな。目の前のプロの料理姿と、二人の料理姿がビックリするほど重なる。

 

「ああ、兄さん達がデュエルアカデミアの学園祭の事を聞いて、昨日やる事に決まったんだ。でもレストランのチェーン店屋台を出してもこの通りさ」

「閑古鳥が鳴いてるな」

「アハハ・・・・。確かにお祭りの時は濃いものとか、祭りっぽい食べ物を口にしたいですね」

「それで困っていてな。プロがその場で作った出来たてホヤホヤたのだからな。ほら、食ってみろ」

 

頼んでもいないのに万丈目から渡されたのは、トマト味のパスタと紙コップに入ったオニオンスープ。フェイトの言う通り、祭りらしからぬ料理だ。

だがそう思ったのも食べる前。パスタを口に入れた途端、トマト本来の味と風味が口に広がり、上にかけてあった粉状のチーズの味とマッチしていた。

 

「う、美味い!」

「お、美味しい!」

「だろ? 勝手に屋台を出した兄さん達にはともかく、アカデミアに来てくれたシェフのみんなに申し訳が立たなくてな」

 

う~ん、何とかしてあげたいが、俺が手伝える事って言ってもせいぜい宣伝することぐらいしか・・・・。待てよ? ここはデュエルアカデミア、自画自賛になるがデュエルが強い俺、そして隣には可愛い金髪美少女。

 

「フェイト、一時間だけ手伝ってもらってもいいか?」

「うん。こんなに美味しい料理なんだもん。もっと色んな人に食べてもらわないと」

 

やっぱりフェイトは優しい子だな。ニコッと微笑んで頷くその仕草は反則級の可愛さだ。

 

「万丈目、一時間だけ手伝ってもいいか?」

「おお、助かる! 具体的にはどんな風にするんだ?」

「まずは看板娘としてフェイトが接客。万丈目も同じように接客。それであと料理を勝ってくれた人には――――」

「何ィいいいい!? お前とデュエルで勝ったらエメラルド・ドラゴンをプレゼントだと!?」

 

あ~あ、大声で言ってしまったよ。その声は当然行き行く人の耳に入り、皆の動きが一瞬止まった。

 

「エメラルド・ドラゴンって本当か!?」

「嘘じゃないよな!?」

「ええ、今から一時間、レストラン万丈目の料理を買ってくれた方にはパラレルレアのエメラルド・ドラゴンを手に入れるチャンスが与えられます!」

「馬鹿か遊斗!? おま「パスタ一つ下さい!」は、はい!」

「こっちも一つ!」

 

突然の客の嵐に万丈目は慌てて対応し、俺へのツッコミをする暇などなかった。

 

「た、食べたぞ! さあ、デュエルしてもらおうか」

「毎度ありがとうございます! では早速」

「「デュエル!」」

 

 

 

 

万丈目の手伝いをして、もう一時間経つ。この相手がエメラルド・ドラゴンを手に入れられるチャンスを持つ最後の客だ。最もこの状況で俺に勝つ事は不可能だけどな。

 

「ホーリーカタルシス・シャマルの効果発動! 俺の手札×300俺のライフを回復し、相手にダメージを与える。俺の手札は六枚! よって1800のダメージ!」

『戒めの鎖!』

「うわあああああ!」

 

ホーリーシャマ姉の効果で客のライフは0になり、俺のライフが無駄に回復した。手札を温存して手加減したのにも関わらず、ダメージを1もくらわなかった。これならもっと豪華なカードを餌にすればよかったな。

万丈目はパラレルレアのエメラルド・ドラゴンを渡さずに済み、ホッとしてため息を吐いた。

 

「はーい! これにてエメラルド・ドラゴンを手に入れるチャンスは終わりました」

 

【え~!】とエメラルド・ドラゴン目当ての人達の不満の声が上がるが、既にたくさんの人が料理を食べてくれた。レストラン万丈目の屋台は美味しい、と噂になっているだろう。

 

「ありがとな遊斗。お前のおかげで随分客が増えた」

「礼ならフェイトに言いな。態々時間つぶしてまで手伝ってくれたんだから」

「そんな、私は何もしてないから・・・・」

「そんなこと無い。助かったよフェイト君」

 

万丈目に礼を言われ、フェイトは嬉しそうに頬の筋肉をゆるめた。

あの万丈目とこうして会話するようになるとはな・・・・。入学したばかりの俺は思いもしなかっただろうな。

 

「じゃ、俺達はこれで失礼するよ」

「御馳走になりました」

「ああ、明日のトーナメントデュエルで会おう」

 

 

 

 

「ん~、次はどこ行こう・・・・って腹減ってきたな」

「あのレストランも食べ歩きが出来るように量が少なかったからね。屋台で何か買おっか?」

「フェイトは何が食べたい?」

「何でもいいよ」

 

何でもいい、って言うのが一番困るんだよね。まっ、これもデートの醍醐味だと思って、なるべくフェイトが食べたい物を考えよう。ん~、そう言えば屋台の手伝いしている時、客が持っていた綿あめを見ていた気がするな。

 

「じゃあ綿あめでも食べるか?」

「うん!」

 

よかった。どうやら当たりだったようだ・・・・。

と、言う事で早速近くの綿あめ屋に来たんだが。

 

「遊斗君・・・・またフェイトちゃんとデートを! 羨ましいッス!」

「そう言えばお前、綿あめ屋やるって言ってたな・・・・」

 

血の涙を流しながら(そのように見えるだけ)俺を睨んでくる翔に、俺とフェイトは二人揃って苦笑していた。何とも分かりやすい奴だ。

 

「翔、さっさと注文するんだな。遊斗にフェイト、いらっしゃいなんだな」

「お久しぶりです隼人さん。あの、綿あめに絵を描きますってどういう事ですか?」

「その通りなんだな。綿あめに俺が注文された絵を色のついた砂糖で描く」

 

隼人の特技である絵を使った商売か。中々面白いな。隼人の絵の才能は凄く、よく賞を取ったりしており、最近ではブルー贔屓のクロノス先生も感心して隼人に注目している。

 

「へ~、フェイト、何か描いてもらったら?」

「うん。じゃあアルフ、はちょっと大きすぎるかな。バルディッシュって分ります? 斧状態のバルディッシュを描いて欲しいんですが」

「勿論なんだな。遊斗がよく使っているモンスターが持ってる武器、すぐに描くんだな」

 

他のレッド寮の仲間が綿あめを作り、その綿あめに隼人は黒い砂糖と黄色い砂糖をちょっとずつ綿あめに塗っていく。一分後には白の綿あめには、黒い機械の斧、バルディッシュが描かれていた。

 

「わ~、凄い。バルディッシュそっくり」

「すげえな隼人。はいこれ綿あめ代と絵の追加料金」

「いいんだな。遊斗には色々とお世話になってるし」

「じゃあフェイトを喜ばせてくれた礼と思って受け取ってくれ」

 

そう言って料金を台に置き、俺達は屋台から離れた。翔もいるから余り長居したくなかったんだよな・・・・。

どこかで座って食べてもよかったんだが、祭りの醍醐味は食べ歩き。綿あめを食べながらも次は何の屋台で遊ぼうか迷っていた。

 

「美味し~」

「だな。あっ、フェイト」

 

フェイトの口元に小さな砂糖が付いていたので、足を止めてフェイトと同じ背丈になる様に足を曲げ、フェイトの可愛い顔に自分の顔を近付ける。

 

「ふぇ?」

 

うっ、そ、そんな恥ずかしそうな顔をしないでくれ・・・・。俺まで少し恥ずかしくなってしまう。

キスと勘違いしたのかフェイトは目をギュッと瞑った。フェイト・・・・、急にキスを迫る程俺は度胸のある人間じゃないぞ? フェイトの行動に俺まで恥ずかしくなる。口元についた砂糖を取ると、フェイトは少し間抜けな声を出して目をパチッと開ける。

 

「これ、ついてたぞ」

 

そう言ってフェイトの口元にあった砂糖を口に含むと、フェイトの顔がボン、と爆発したかのように一気に赤くなった。いや、だからそんな意識されるとこっちも意識するから・・・・。

 

「ほう、遊斗。噂には聞いていたが本当にそんな趣味があったとはな」

「・・・・亮さん、もしそう思うんだったら邪魔しないで貰えます?」

 

そんなつもりじゃなかったけど結構良い雰囲気だったのに。

 

「何を言う、道のど真ん中でそんな事していた奴に言われたくない。お前がこれ以上ロリコンだと思われない様にしてやったんだ」

 

・・・・。そ~と辺りを見渡すと、周りの人から白い目で見られている。うわ~、やってしまった。

どうやって弁解しようかと、試行錯誤していた時、フェイトが救いの手を差し伸べてくれた。

 

「私、遊斗より三つ上ですよ?」

「・・・・ッツ!? ば、馬鹿な!?」

 

亮さんはその言葉が信じられないのか、二三歩後退りをして冷や汗をタラーと流した。フェ、フェイト・・・・、確かにお前と初めて会ったのは十年前で、その時俺は六歳で、お前は九歳だから、お前の方が年上って言えばそうなんだけど・・・・。

でも公共の場でロリコンと思われている以上、今はフェイトの言葉に続くしかない。

 

「本当ですよ亮さん。フェイト・・・・お姉ちゃんは幼馴染で、昔はよく遊んでもらって。成長期が遅いんです」

 

十代とか翔とかには通じるだろうが、常識人の亮さんに通用するか・・・・? いや、通じてもらわないと困る。

 

「・・・・じゃあこの人は俺より一つ年上?」

「って事になりますね」

 

亮さんが見下ろす先には、ニコッと微笑むどこから見ても小学生にしか見えない金髪美少女フェイト。亮さんは何度も瞬きをするが、フェイトの身長が伸びる事は無い。

 

「そ、そうか。それはすまな・・・・すいませんでした」

 

亮さんはフェイトにペコリと頭を下げると、長時間画面を見て目が疲れた人の様に、鼻の頭を押さえながら去って行った。な、何とか信じてくれたようだな・・・・。

それでも周りの人の視線は俺達から離れる事は無かったので、俺はフェイトの手を握る。突然の事に「ふぇ?」と可愛らしい声を出したフェイトを、俺は少し強引に引っ張りこの場から逃げ出す様に去った。

屋台が多くあるメインの道から少し離れた場所まで来て、そこにあるベンチに座り、フェイトも俺の隣に座った。

 

「あはは、やっぱりちょっと無茶だったかな?」

「当たり前だ。どこからどう見ても小学生・・・・というか本当に小学生なんだから」

 

珍しく悪戯っぽく笑みを浮かべるフェイトに、ハァと深いため息をついてそう言った。亮さんは常識人であるから故に、フェイトが何らかの病気を持っていると気を使ってくれたのかもしれない。どっちにしろフェイトが俺の年上であると言う事には無理がある。

 

「本当に遊斗より年上なんだけど・・・・」

 

フェイトは俺の精霊になってからこの十年、精霊としてしっかり生きているのだ。理解しているとはいえ、やっぱり成長しない体はコンプレックスなのだろう。どことなくフェイトが落ち込んでいる様に見えたので、俺はポリポリと頬を掻きながら口を開いた。

 

「俺は分かってるよ。フェイトお姉ちゃん」

「え? ・・・・フフッ、なんだか懐かしいな、その呼び方。昔はよくそう呼んでくれたよね」

「・・・・ろ、六年以上前の話だ」

 

だからフェイトの事をお姉ちゃん、って呼びたくなかったんだよ。絶対その話を掘り返されるから。

 

「そんな事言わないでよ。あの時の遊斗、可愛かったな~。いっつも、フェイトお姉ちゃ~ん、って付いてきてたよね」

 

ニコニコと純粋無垢な笑みで俺を見上げるフェイト。本人は普通に過去の出来事を口にしているだけかもしれないが、俺にとっては黒歴史のオンパレードだ。

別に五、六歳くらいなら男の子でも姉に甘えているかもしれないが、俺は十歳になり、フェイトの背を追い越すまでずっとフェイトお姉ちゃん、と呼んでいたのだ。これが黒歴史と言わず、何が黒歴史であろうか。

 

「あ、あれは・・・・」

「色々合ったよね。クラスの男の子と喧嘩したり、シグナムとヴィータに厳しくされたり。あっ、あと子供のはやてに嘘付かれて泣きついてきた事もあったよね。お、思いだしたら・・・・フフッ」

 

頬に人差し指を当て、俺の黒歴史を悪気無しに掘り起こしていく。や、やめてくれ! フェイトに悪意が無いだけに余計に恥ずかしい。思い出し笑いしているフェイトに、無駄と分かっていながらも、下らない釈明をする。

 

「はやてのあの嘘は、ブラックジョークだから泣くに決まってるだろ!」

「で、でも、一日にしゃっくりを二十回したら死ぬ、って信じるんだもん。あの時は笑いこらえるの必死だったんだよ」

「だってあの時既に十九回しゃっくり続いたんだから、あと一回で死ぬって言われたら怖いだろ」

 

まあ結果としてそのブラックジョークのおかげでしゃっくりが止まったんだがな。しゃっくりを止める方法に、驚かすとしゃっくりが止まる、というのがあるが、俺はあの時以上にその迷信を信じた事がない。何故あの時しゃっくりの回数を数えてたのかも分からないが、はやての嘘を聞いた途端、ピタッとしゃっくりが止まったのを今でも鮮明に覚えている。

 

「はやても悪気は無かったんだよ。不安になっている遊斗のしゃっくりを止める為だったから」

「余計に不安になったんだがな」

「フフッ、子供って純粋で何でも信じちゃうからね」

 

子供の姿のフェイトが言っても説得力が無いが、実際そうだ。

 

「でも遊斗って私に一番懐いてたよね? あっ、違ったらごめんね」

「・・・・実際そうだったよ。家ではフェイトにベッタリだったし、学校でも不安になるとフェイトを呼んでた」

「どうして私だったの? みんな私より優しいし」

 

そ、それを聞くかフェイト・・・・。ええい! 例え黒歴史であろうともう六年以上前の事だ。こうやって恥ずかしがっているより、堂々と話した方がいっそ気が晴れるだろう。

 

「やっぱり年が近かったからだと思う。俺と年が近い子でも、なのはは優しいけどちょっと厳しいし、はやてはたまにだけど嘘付くし、ツヴァイは小さいし、エリオとキャロは遠慮しすぎて近寄り辛くて」

「ユーノは?」

 

ッグ、や、やっぱりユーノの事を聞いてくるか・・・・。も、もう話すって言ったんだ、せっかくのデートなんだしここは正直に話そう。

 

「その、ユーノには・・・・」

「ユーノには?」

「フェイトを取られると思って、敵視してた・・・・」

 

恥ずかしさの余り顔を隠す様に手を当て、ポツリと呟いた。指と指の隙間からチラッとフェイトの顔を見ると、キョトンとしており、次の瞬間にはプッと笑いだした。

 

「ユ、ユーノが私の事狙ってるって思ってたの? かわい~」

「し、仕方ないだろ! というかもう俺の恥ずかしい話は止めてくれ!」

「フフッ、分かった。じゃあ別の・・・・ヘクシュ!」

 

次の話題を出そうとしたフェイトは、ブルッと一瞬震えると、可愛らしいくしゃみをした。男と女でこうもくしゃみが違うものなのか、なんてどうでもいい事を考えながら、フェイトがこれ以上寒くならない様に上着を脱ごうとした。

 

「大丈夫だよ。私は精霊だから風邪なんて引かないよ」

「でも寒さは感じてるんだろ?」

 

俺が上着を脱ぐのを止めようとしたが、ここまで脱いでしまったらもう後に引けない。黒歴史を暴露された今でも俺にだってプライドがある。

脱いだダッフルコートをフェイトの肩に置いた。肌が露出している手や顔がしもやけしそうな程寒い中、服二枚と言うのは非常に寒く、さっきのフェイトの様に寒さでくしゃみが出そうだ。

でもその代わり、フェイトは暖かそうにダッフルコートをギュッと握り頬の筋肉を崩し、優しく笑っている。

 

「とっても暖かい・・・・」

「よかった」

「ねえ、遊斗も一緒に入ろう?」

 

フェイトは俺側のダッフルコートの肩を上げて誘ってきた。その頬は朱を帯びており、それに釣られ俺の頬も赤くなった。恥ずかしがり屋のフェイトがこんな恥ずかしい台詞を言ってきたんだ。ここで断ったら男じゃない。

フェイトとくっつく様に並ぶと、さっきまで着ていたダッフルコートの温もりと、フェイトの体温が伝わってきた。俺より冷えているのか、その小さな体は冷たい。

 

「遊斗の体、あったかい」

「フェイトは少し冷たい。・・・・手も冷えてるか?」

「うん」

 

それを聞いて、俺はフェイトの片方の手を掴んで両手でギュッと包みこんだ。フェイトの手は凄く冷たく、ポケットに手を突っ込み温めておいた手がどんどん冷たくなっていく。でもその分フェイトの手が暖かくなっていると思うと、俺の体温全て使っても良いと、つい思ってしまった。

フェイトの片方の手が温まってくると、次に目が入ったのは露出したフェイトの綺麗な顔。そこも冷えていると思い、頬にそっと手を添えた。

 

「あっ・・・・」

「顔も冷えてるな・・・・」

 

頬に手を添えたからか、自然と見つめ合う形になった。今のフェイトの体温に似会う雪の様に滑らかで真っ白な肌、しかしその雪を溶かしそうな程情熱的で綺麗なルビーの瞳。理想的な大きさで形の整った鼻。

頬を温めている手とは反対の手で、フェイトのサラサラとした金色に輝く髪を撫でていると、顔の一番下のパーツに目が行った。

小さいけどふっくらとした、桜色の唇。

 

「フェイト・・・・」

 

天使の様に整ったフェイトの顔に引き寄せられ、何も考えずにただフェイトに顔を近づけて行く。

フェイトはびっくりした表情をしたが、何か覚悟を決めたのかギュッと目をつぶってくれた。

お互いの吐息を唇で感じられるほど距離が迫り、さっき食べた綿あめの原料となっている砂糖の甘い香りが鼻孔をくすぐる。俺も瞳を閉じてその魅力的な唇に自らの唇を当てようとした。

そして俺達のファーストキスは――――

 

「おーい遊斗ー! ここにいたのかー!」

 

空気の読めない馬鹿の一言で出来なかった。十代の声が聞こえた瞬間、俺とフェイトは我に返って勢いよく離れる。

 

「? なあ遊斗、俺達の屋台になんか因縁付けて来る奴がいるんだけど。何とかしてくれないか?」

 

こ、こいつ・・・・。そんな理由で俺のファーストキスの邪魔をしたのか・・・・。流石の親友でもこれには怒りが湧き、フルフルと体が震えるが、数回深呼吸をして心を落ち着かせた。

悪いのは俺だ。何かあれば俺が手伝う、と前日に言ったのだ、十代は悪くない。フェイトの方をチラッと見ると、恥ずかしさの余り顔を真っ赤にしてボーとしていた。このままじゃあ使いものにならない。

 

「フェイト、ここに携帯置いとくから、何かあったら俺の携帯に連絡してくれ」

 

と言ってフェイトの手に携帯を握らせておく。

 

「ッツ、その因縁を付けて来る客ってどこのどいつだ・・・・」

「ゆ、遊斗?」

「早く案内しろっ!」

「おっ、おう。こ、こっちだ」

 

少女マンガ並みに良い雰囲気だったのにブチ壊しやがって! どんな奴か知らないが覚悟しとけ!

 

 

 

 

十代達の屋台の前にいたのは髪を赤や青に染めた、アホ丸出しの男女四人組。どうやらオシリスレッドの屋台と言う事を理由に、難癖を付けてくるらしい。レッド寮のみんなは、普段オベリスクやイエローに馬鹿にされているからか、言い返すのが苦手な奴が多い。十代はそんな事は無いが、口論になると弱い。文化祭当日は先生も忙しいので、俺の方を頼ってきたんだろう。

こ、こんな馬鹿共にフェイトとのデートを・・・・。

 

「なんだよこれ。焦げた虫の死骸でも入ってるんじゃないのか!?」

「慰謝料払いなさいよ!」

「あの、どうされましたか? お客様?」

 

この煮えたぎる様な怒りを体内に抑え込み、これ以上ないくらいの作り笑いで馬鹿共に話しかけた。

 

「あ゛あ゛? お前なんだよ?」

「・・・・こ、この屋台店を仕切る者です。何か不手際があったら謝罪しますが、これ以上店の前で騒いでいただくと、こちらも営業妨害として教師に報告する事になりますが」

 

れ、冷静に冷静に。こういう時に普段冷静でカッコイイフェイトさんの姿を見ていたのが役に立った。もしフェイトさんの姿を見てなかったら、さっきの時点で乱闘になっていた。

 

「ハァ? こっちは被害者だっつーの」

「マジ意味分かんない」

「頭大丈夫か?」

 

あっ、もう我慢の限界だ。ただでさえ怒りの沸点をとうに越えていたのに、こんな馬鹿共に馬鹿にされたら怒りが爆発した。

 

「そちらこそ頭は大丈夫ですか? どう勉学したらそうなるんですかね?」

「っな! てめえ客に向かってなんて口を!」

「あいにくお客様は必要としても、馬鹿な客は必要として無いんだよ!」

 

後ろで「ゆ、遊斗・・・・」と十代が恐る恐る俺の名前を呼んだ気がするが、どうでもいい。この馬鹿共を追っ払って土下座させないと気が済まない。

 

「あんた誰にもの言ってるの!? この人はデュエルモンスターズの全国大会に出た事がある(つるぎ)君よ!」

「ッハ! それがどうした! お前如きライフ100対10000でも勝てる!」

 

今の俺なら例えバーンデッキ使いでもこの条件で勝てる気がする。それくらい俺の怒りは爆発している。

100対10000と言う膨大なハンデを聞き、剣と言われた馬鹿の一人がニヤリと笑った。

 

「言ったな! いいぜ、そのデュエル乗った。貴様が負けたら慰謝料を払ってもらう」

「ああ、その代わりお前が負けたらレッドのみんなに土下座して、自分が悪いと謝ってもらう!」

「「デュエル!」」

「先攻は貰った! ドロー! 行くぞ、増援を発動デッキからレベル4以下の戦士を手札に加える。俺は不死武士を守備で召喚」

 

A1200・D600

 

奴の前に現れたのは矢が刺さり血を流している武士。見た目と名前で分かるだろうが、不死の武士だ。ホントまんまだ。

不死武士は自分のスタンバイフェイズに、自分フィールド上にモンスターがいず、墓地に戦士族しかいない時墓地から復活できるカード。つまり相手のデッキは戦士族統一ということ。

 

「ターンエンド」

 

剣 モンスター1 伏せ0 手札5 LP10000

 

「ドロー! 相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、カリムは特殊召喚出来る。そしてカリムの効果、モンスター・魔法・罠を宣言し、デッキトップが宣言したカードだったら手札に加える。モンスターを選択する。デッキトップははやて、よって手札に加える」

「っな!? お前イカサマしてるだろ!」

「してない! カリムを生贄にはやてを通常召喚。ミッドチルダと自身の効果でLCを一つずつ置く」

 

A2000・D1700

LCミッドチルダ1 はやて1

 

「フィールドにはやてがいる時、場のLCを一つ取り除きツヴァイを特殊召喚できる」

 

A500・D500

LCはやて1→0

 

「場のはやてとツヴァイを融合! 来い、夜天の主・八神はやて! 融合召喚に成功した事により、LCが二つ乗る。更にはやてはLCの数×300攻撃力が上がる」

 

LCはやて2

はやてA2100・D2000→A2700

 

「攻撃力2700!?」

 

この程度で驚いているなんてレベルが知れるな。

 

「融合素材にされたツヴァイの効果、場のLCを1つ取り除く事で手札に加える。ミッドチルダのLCを取り手札に加える。そして闇の書をはやてに装備」

 

LCミッドチルダ1→0

はやてA2700→A3000

 

「バトル! はやてで不死武士を攻撃!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A3000 VS D600

LC闇の書0→1

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札2 LP100

剣  モンスター0 伏せ0 手札4 LP10000

 

「ドロー! 不死武士の効果で墓地から特殊召喚。切り込み隊長を召喚、効果で手札からならず者傭兵部隊を特殊召喚」

 

A1200・D400

A1000・D1000

 

切り込み隊長のその名の通りの効果で現れたのは、態度の悪い傭兵達。あいつにはそっくりのカードだ。

 

「ならず者傭兵部隊の効果。このカードを生贄に夜天の主・八神はやてを破壊!」

「その効果にチェーンしてプロテクション発動! このターンはやては破壊されない」

 

ならず者傭兵部隊はダイナマイトを手に取りはやてさんに突進して自爆しようとしたが、プロテクションによりはやてさんが爆発の影響を受けることなく、自分しか爆発しなかった。

 

「ッチ、ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札2 LP100

剣  モンスター2 伏せ0 手札4 LP10000

 

この調子でどんどん攻めて行く! ライフを回復して行くくらいなら奴のライフを0に近付けて行くのが先だ! 早くフェイトの所に行って色々と挽回する。

 

「ドロー! 場にはやてが存在する時、場のLCを取り除く事でシグナムを特殊召喚できる」

 

LCはやて2→1

はやてA3000→A2700

 

「攻撃力下げるなんて馬鹿じゃねえか?」

「ッハ、そう思っているならその程度の奴って事だ。そしてアギトを通常召喚。効果でLCを一つ置く」

 

A500・D500

LCミッドチルダ0→1

 

貴様が戦士族を使うなら、こっちは最強の剣士で戦ってやる。この怒り、とくと味わうが良い!

 

「ミッドチルダのLCを取り除きツヴァイを特殊召喚。行くぞ! 場のシグナムとツヴァイとアギトを三体融合! 来い! 氷炎の剣聖神シグナム!」

 

ディスクにカードをセットした瞬間、最終形態共通の衝撃と風が走った。だがその風はただの強風じゃない。寒波と熱風が交互になった天変地異。そして次の瞬間巨大な火柱が天に昇り、その火柱の周りを螺旋状に吹雪が回っている。

そんな異様な火柱の中から現れたのは赤と青の翼を持ち翡翠と紫のオッドアイのシグナムさん。右手に持ったレヴァンティンは炎の渦と吹雪の渦を纏っている。

 

LS氷炎の剣聖神シグナム ☆10/炎/戦士/A3500・D2000

 

「攻撃力3500!?」

「バトル! シグナムで切り込み隊長を攻撃!」

 

A3500 VS A1200

 

『剣閃烈火!』

『衝撃加速!』

『『『氷炎一閃!』』』

 

氷を溶かし、水をも一瞬で蒸発させてしまう程熱い炎と、炎すら凍らせる程の冷たさを持った氷。矛盾するこの二つを纏ったレヴァンティンを、切り込み隊長に向け縦に振った。切り込み隊長は持ち前の剣で受け止めようとするが、錆びた剣は豆腐の様に綺麗に斬れ、切り込み隊長も真っ二つになった。

 

剣LP10000→7700

 

「ック、おのれ・・・・」

「更にシグナムの効果発動! 戦闘でモンスターを破壊した時、その攻撃力のダメージをお前に与える!」

『掛けよ隼! シュツルムファルケン!』

 

レヴァティンは鞘と剣を一体化し、一つの弓の形になった。その名をボーゲンフォルム。魔力の弦を引き、炎と氷の魔力を圧縮した矢を生成。そしてその矢を奴に向けて発射した。

 

剣LP7700→6500

 

「はやてで不死武士を攻撃!」

 

A2700 VS D600

 

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

壊れた鎧しか装備をしていない不死武士の守備では、極寒の吹雪を耐える事しか出来ず、カチコチと凍って行き破壊された。

 

LC闇の書1→2

 

「これでターンエンドだ。エンドフェイズ墓地のアギトの効果。融合素材になったこのカードが墓地に行ったターン、このターン破壊した相手モンスターのレベル合計×100ダメージを与える。不死武士と切り込み隊長のレベル合計は6。よって600のダメージだ」

「ック、うぜぇ・・・・」

 

剣6500→5900

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札0 LP100

剣  モンスター0 伏せ0 手札4 LP5900

 

「ドロー! 不死武士を復活。手札抹殺を発動、俺の手札を交換する。戦士の生還を発動。手札の切り込み隊長を手札に加えそのまま召喚。効果で手札から異次元の女戦士を特殊召喚する。そして一族の結束を発動。戦士族の攻撃力を800上げる」

 

女戦士A1500・D1600→A2300

不死武士A1200→A2000

切り込みA1200→A2000

「バトル! 異次元の女戦士で氷炎の剣聖神シグナムに攻撃!」

「え? 攻撃力が低いモンスターで?」

「どういう事だ?」

 

ハァ・・・・、レッドのみんな。異次元の女戦士は戦闘したモンスターとこのカードを除外する効果を持つカード。その1:1効果は除去カードとして便利であり、有名なカードだ。

ここまで難癖付けられるのはおかしいが、もう少し頑張って勉強しろよ。

 

「甘い、最強の戦士は守る力も持っている! シグナムの効果発動! 相手モンスターの攻撃宣言時このカードをゲームから除外する事で攻撃したモンスターの攻撃力を俺のエンドフェイズまで0にし、守備表示に変更する」

 

女戦士A1500→A0

 

氷炎シグナムさんから放たれた炎の閃光弾により異次元の女戦士は慌てて防御行動を取り、更に氷の足枷が女戦士の攻撃力を0にした。

 

「そんな馬鹿な! ック、カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズシグナムは俺の場に戻る」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札0 LP100

剣  モンスター3 伏せ1 手札0 LP5900

 

あのニヤニヤとした顔と目。あの伏せはおそらくだが、魔法の筒(マジック・シリンダー)だと思う。まあミラーフォースかもしれない。どちらにしても一発逆転のカード。あのカードをセットした瞬間、勝ちを確信したかのように笑った。

もう少しポーカーフェイスを覚えるべきだ。まあ俺もフェイトさんやはやてさんと言った、お偉方と交渉してきた二人に色々とコツを教えてもらったから読めたのかもしれないが。

 

「ドロー! なのはを通常召喚。ミッドチルダと自身にLCを一つ置く」

 

LCミッドチルダ0→1 なのは1

 

「そしてなのはの効果で自身のLCを取り除き、その伏せを破壊!」

『ディバインシューター!』

「ば、馬鹿な!?」

 

桃色の弾によって破壊されたカードは魔法の筒(マジックシリンダー)。最近良くセットカードを当ててるな。将来プロのデュエリストになれなかったら、心理系の方に進めるかもな。

 

「ミッドチルダのLCを闇の書に移動。そして場の闇の書をゲームから除外してデッキからアインスを特殊召喚! アインスの効果で融合デッキからナハトヴァールを特殊召喚」

 

はやてA2700→A2400

A2300・D2300

A0・D0

 

闇の書から放たれた黒い瘴気の様なオーラが一点に集まり、それが徐々に形を変えてウニョウニョと蠢く蛇の大量の黒い蛇の塊になった。ヌメヌメと生々しく動くその蛇の群は生理的に駄目な人がほとんどであろう。俺もようやく慣れてきたところだ。

実際ナハトを見慣れた俺と十代以外のこの場の全員顔を真っ青にしている。

 

「ナハトの効果でアインスに装備。これにより攻撃力が1000上がる! バトル、シグナムで切り込み隊長に攻撃!」

 

アインスA2300→A3300

A3500 VS A2000

 

氷炎を纏ったレヴァティンで切り込み隊長を真っ二つ、さっきと同じパターンだった。

 

剣LP5900→4400

 

「シグナムの効果で更にダメージだ!」

 

剣LP4400→3200

 

「続いてはやてで異次元の女戦士に攻撃!」

 

A2400 VS D1600

 

ギロリとシグナムさんとアインスに睨まれたが、勝つ為だから許して欲しい。マジで怖い・・・・。

異次元の女戦士を破壊したはやてさんだったが、異次元の女戦士の効果により、共に異次元に連れて行かれた。フィールドにはやてさんがいなくなった事で、またもやシグナムさんとアインスに睨まれた。

 

「ア、アインスで不死武士を攻撃!」

『ブラッディーダガー!』

 

A3300 VS A2000

 

アインスが展開したのは血が固まったような黒い短剣の群。その短剣の群の標的を不死武士にし、一斉発射させた。黒の短剣は死なない武士を串刺しにして、どんな攻撃でも死ななかった武士を倒した。

 

剣LP3200→2000

 

「そしてナハトの効果、戦闘で破壊した不死武士を装備。その攻撃力の半分を装備モンスターに加える」

 

アインスA3300→A3900

 

「そ、そんな馬鹿な・・・・」

 

奴の手札は0。フィールドは一族の結束だけ。墓地に不死武士はいない。戦士族統一デッキでこの状況を打破できるカードはまずないだろう。

 

「俺はこれでターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札0 LP100

剣  モンスター0 伏せ1 手札0 LP2000

 

俺はエンド宣言をしたが、奴はもうドローする気が無いようだ。奴の仲間の馬鹿共は、既に奴に対して幻滅しており逃げる準備をしている。まあ散々でかい顔をしてきたから自業自得だ。

 

「さっさとドローしろ。じゃなかったらサレンダーするんだな」

「ック・・・・」

 

フェイトとのデートの最中のデュエルだったんだ。

俺はもう勝ちを確信したので、フェイトに連絡を入れようとポケットの携帯を手にしようとしたその時。

 

「お前! その次のドローはお前がデッキを信じる事で変わるんだ。お前が本気でデッキを信じているならドローするんだ!」

 

ハァ・・・・。どうして十代は、迷惑をかけてきた相手にそんな優しい言葉を掛けられるんだろうか。

 

「ッツ・・・・」

「そうだよ。あなたが本当にデッキを信じてるなら、この状況を打破できて遊斗を倒せるかもしれない」

 

凛々しくも可愛い声が背中から聞こえたので、クルッと振り返ると俺のダッフルコートを着たフェイトがいた。どうしてこうもあんな奴を応援するのか。俺が悪役っぽかったからか、それとも二人が優しいのか。

奴・・・・いや、剣はドローする決心を付けたのか、デッキトップに指を置く。

 

「・・・・ドロー! 来た、ブラック・ホールを発動! フィールドのモンスターを全て破壊する!」

 

フィールドの中心に現れたブラック・ホールの渦が、フィールドのモンスターを全て呑み込もうとする。シグナムさんも、アインスも、なのはも、容赦なくブラック・ホールに呑み込まれた。

・・・・本来ならな。

 

「なんで、なんでそのモンスターが残ってるんだ!?」

 

俺のフィールドのモンスターは全滅しておらず、炎と氷を纏ったシグナムさんが立っていた。

 

「シグナムは相手の魔法・罠・モンスター効果で破壊されない」

「そ、そんな・・・・。ターンエンド・・・・」

「ドロー、シグナムで攻撃」

 

A3500

 

戦意を失った相手に本気で斬りつけるのは、シグナムさんのプライドが許さないのだろう。レヴァティンを軽く横に振り、衝撃波を剣に当ててライフを0にした。

 

剣LP2000→-1500

 

デュエルが終り、剣は馬鹿な仲間達から逃げられ一人ぼっちになった。そんな中でも奴はどこか清々しい顔をしている。なんだ? 俺には十代みたいに、楽しませるデュエルなんてしてないぞ。

 

「遊斗だったか・・・・。その、ありがとな」

「俺は何もしてないし、ただ勝負して勝っただけだ。それにお前が最後ドロー出来たのは十代とフェイトのおかげ。俺はサレンダーして欲しかった」

 

剣が改心したのは認めよう。理由は分からないがこうやって礼を言っているした。だがしかし! フェイトとのデート、しかもキスの直前で十代が邪魔をしてきたのはお前達が原因だ。

その事で怒っているので、俺は今かなり冷たい。

 

「お前みたいに強い奴は初めてだ。どうして大会に出ない?」

「・・・・その内出る。じゃあな、これに懲りたら馬鹿やるんじゃないぞ」

 

それだけ言って俺は剣に背中を向け、待っていてくれたフェイトにニコッと微笑む。さっきまとは正反対の俺の態度に、周りにいた観客はギョッとしている。いや、俺は普段あそこまで冷たい人間じゃないぞ?

 

「ゴメンなフェイト」

「ううん。いいデュエルだったよ。いつもは優しい遊斗が怒っててびっくりしちゃった」

「だって・・・・その、いい雰囲気だったのに・・・・」

 

俺が激怒していた理由は、フェイトも分かっていただろうが、やっぱり口にされると恥ずかしいようだ。カアアと頬を真っ赤にさせ、視線をそらして地面の方を向いた。

ハァ・・・・、こんないい雰囲気の時堂々と、フェイトにキスをして甘い言葉でも囁けたらよかったんだが、そんな度胸俺にはない。

ただこのまま何もしないのは余りにも情けないので、フェイトの左手を右手でギュッと握りしめた。

 

 

 




LS氷炎の剣聖神シグナム ☆10/炎/戦士/A3500・D2000
「LS夜天の将シグナム」+「LS祝福の風リインフォース(ツヴァイ)」+「LS烈火の剣精アギト」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果では破壊されない。
また、相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをゲームから除外し、攻撃宣言したモンスターの攻撃力を自分のエンドフェイズ時まで0にし、守備表示に変更する。
エンドフェイズ時、この効果で除外したこのカードを特殊召喚する。





今回は久しぶりの新オリカ、シグナムの最終形態、氷炎の剣聖神シグナムの紹介。
三体融合と言い、攻撃力3500といい、遊戯王5Dsを知っている方ならお分かりになる通り、スカ―レッド・ノヴァにそっくりの効果です。バーン効果と攻撃力を下げる効果はツヴァイとアギトのイメージなのでオリジナルですが、効果発動のキーはスカ―レッドと同じです。(その方が裁定が楽なので)

効果の説明ですが、やはり強力なのは攻撃力を0にする効果。3500とかなり高い攻撃力を持つモンスターですが、決して超えられない壁ではない。しかしこの効果により戦闘ではほぼ無敵と言っていいでしょう。バーンダメージもあるので、守備モンスターでターンを稼ぐのも難しい。
破壊耐性もありますが、強制脱出装置や次元幽閉と言ったカードには当然弱い。
アギト、ツヴァイどちらかの二体融合の場合はフィニッシャーになりやすく、三体融合の場合はフィールドを支配する。



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第二十一話

前回の話の時頂いた感想で「ザフィーラの進化系は?」という意見を貰ったので、丁度いいと思い、皆さんに進化系について作者の考えを伝えようと思います。
ザフィーラもですが、スバルやエリオと言った手札から効果を発動するモンスターは進化させないつもりです。どのモンスターも優秀であり、態々手札のそれらのカードを使ってまで進化させるとなると、進化後のカードと言うのは、かなり強力でない限り舐めプになってしまいます。
(BFカルートをシンクロ素材にしたり、オネストをエクシーズ素材にする感じ)
ティアナ、キャロは進化させやすいですがFW陣で二人だけ進化させるのは嫌なので、この二人も進化させる予定はありません。



追記)今回デュエルでマリアージュのダメージ計算時にスバルを使い、マリアージュのトークン特殊召喚効果を使いましたが、タイミングによりトークンを特殊召喚することは不可能でした。修正しようがないので今回はこのままにします。申し訳ありません。
詳しくは第二十八話の前書きに書いております。




波乱・・・・と言う程何かあった訳ではないが、無事文化祭一日目が終わった。あれからもフェイトと色々な屋台を回り、結構いい雰囲気になったと思う。あれでいい雰囲気じゃなかったら俺は女性不信になる。それから剣とのデュエルの時、精霊達(みんな)が話してこなかったのは、みんな実体化して祭りを楽しんでいたからだ。はやてさんに異次元の女戦士を攻撃させた時、シグナムさんとアインスが睨んできたのも見間違いだったんだろうか? いや、あの二人の事だから、ソリッドビジョンにはやてさんlove設定が入っているんだろう。

フェイトとデートしている最中、なのはさん、フェイトさん、ヴィヴィオ、アインハルトの組み合わせ、八神家一同、スバルさん、ティアナさん、イクスヴェリアの組み合わせ。他にも数組あったらしいが、全員とは会えなかった。みんな楽しんでいるようだったので、文化祭の準備を手伝った一人として嬉しかった。

そして今、一日中遊び流石に疲れたので早く休みたかったのだが、俺の休息は邪魔されていた。

 

「も~、なんで言ってくれんやったんフェイトちゃん。遊斗とデートしたいならてつどうたのに」

「デ、デートする予定なんて全然なかったから・・・・」

「と言う事は遊斗からデートに誘ったの?」

「そうです。あの・・・・そろそろ寝む「やるね~遊斗。私もなのはとヴィヴィオとアインハルトと四人でね―――」はあ・・・・」

 

はやてさん、なのはさん、フェイトさんを中心に俺とフェイトのデートの事で盛り上がっていた。普段俺が疲れている時は、場を静かにしてくれるフェイトさんも、今は盛り上がっており収拾が付かなくなってきている。まあフェイトさんも、なのはさん、ヴィヴィオ、アインハルトと家族やってたからな。テンション上がってるのかも。

 

「あ~、みなさん。俺そろそろ寝たい「「キャー!」」・・・・」

 

フェイトの口から出て来る、耳を塞ぎたくなるラブコメ話しに、なのはさんとはやてさんは乙女の叫びをあげて盛り上がっている。フェイトさんだけじゃなく、なのはさんとはやてさんもテンション高いな・・・・。普段悲鳴以外であんな叫び声出さないもん。

俺は怒りの限界よりも体の限界の方が先に来たのか、精霊達(みんな)に了承を取らず部屋の電気を消してベッドにダイブした。

 

 

 

 

翌日。睡眠時間が長かったからかパチッと気持ちよく起きる事が出来た。普段早起きの俺の体も、昨日の疲れには勝てなかったのか、いつもより起きるのが遅い。キッチンの方でジュウウとフライパンの音が聞こえたので、キッチンの方を見ると、どういう訳かそこにいたのはなのはさんでもはやてさんでも無く、フェイトだった。

 

「フェイト? どうしてお前が?」

「えっと、料理で遊斗の胃袋を掴めって言われて・・・・」

「ハァ・・・・、まったく。で? その本人達は?」

 

キョロキョロと辺りを見渡すが、誰もいる気配が無い。

 

「邪魔しない様に外にいるって」

 

この時間だともう既に祭りの準備で外は賑やかの筈だが、ブルー寮は防音が万全なので、この部屋に響く音しか俺の耳に入ってこない。

二人っきりの空間で、フライパンが焼く音だけが響き渡る。気まずい半面、新鮮な朝で心躍る面もある。

 

「・・・・なあフェイト」

「・・・・何?」

「フライパン、焦げ臭いぞ」

「え!? わわっ、ほ、ほんとだ!?」

 

結局フェイトの作っていた料理は駄目になり、今度は二人で朝ご飯を作る事にした。フェイトは全く料理できないと思っていたが、意外にも手際がよく、調理開始から十分後にはテーブルに料理が並んだ。

 

 

 

 

ご飯を食べ終わった頃には既に外部からの客が入ってきており、メイン通りは人込みであふれていた。部屋のテラスからその様子を見たので、メインから少し離れた道から目的のトーナメントデュエル会場に向かう事にした。

 

「ハァ・・・・、料理上手くいかなかったな・・・・」

「経験が無いにしては上手かったぞ」

「遊斗の方が料理出来るって・・・・。なんか複雑」

 

みんなが実体化出来ると知るまでの十年間。俺はなのはさんとはやてさんのアドバイスの元、料理をしてきたからな。あの時精霊達(みんな)は物には触れるけど、他人には見えなく俺は触れることが出来ない、という良く分からない設定だった。だから十年前からなのはさんとはやてさんの料理を食べる事が出来たが、二人の背中を見ていると俺も料理を勉強したくなり、気が付けばかなりの腕になっていた。勿論師匠二人には及ばないが。

 

「お裁縫だって遊斗の方が出来るでしょ?」

「なのはさんとはやてさんに教えてもらってな」

 

友達がいなかった俺は、放課後家で精霊達(みんな)と一緒にいていたからか、精霊達(みんな)の趣味を教えてもらう事が多かった。剣道もシグナムさんの影響だ。

フェイトは女としてのプライドがズタボロになったからか、ショボーンと落ち込んでいる。

 

「仕方ないって。俺だってほら、この間フェイトと打ち合いやったけどボロ負けだったろ? 俺だってあの時プライド傷ついたんだ。お互い頑張って行こう」

「・・・・うん!」

 

何とか立ち直らせる事が出来たな。やっぱりフェイトは笑顔が一番だから、笑っていて欲しい。笑顔で見上げて来るフェイトの頭を優しく撫で、サラサラとした髪の感触を味わうと同時に、可愛いフェイトを愛でる。子供扱いされるので、フェイトは頭を撫でられるのがあまり好きではないが、このサラサラ感がなんともたまらなく、ついやってしまう。

 

「も~、遊斗」

「ゴメンゴメン。あっ、あれがトーナメントデュエル会場だ。行ってくるな」

「うん、頑張って。応援してる」

 

いいな~、こういう恋人みたいな会話。やっぱり友達以上の関係である女の子が応援してくれていると思うと、色々な事にモチベーションが上がる。

トーナメントデュエルは、デュエルアカデミア文化祭の伝統の出し物の様なものらしく、結構人気も高い。最もまだデュエルが始まってもいないので、外部の客はほんの数人しかいないが。

会場には既に参加者全員来ていた様だ。十代、万丈目、明日香、イエローと言った、顔見知りもいた。その中で一際目立っていたのはブラック・マジシャン・ガールそっくりの女の子。一応このトーナメントデュエルは部外者も参加できるが、デュエルアカデミアのレベルは結構高いし、参加者募集の時間帯が朝早い為、部外者の参加者は珍しいと聞いたが。

 

「それでは早速トーナメント表の発表をしたいと思います。対戦相手やシード等はこちらがクジで決めさせてもらっています」

 

つまり不正は無いって事か。まっ、豪華賞品がある訳じゃないし不正をする輩もいないだろう。壁に貼られたトーナメント表を見ると、俺は運悪くシードの様だ。ちぇ、一回デュエルする回数が減ってしまったな。俺の一回戦はあの二人の勝った方と相手か。十代と当たるとすれば決勝だな。

 

「遊斗、お互い頑張ろうな」

「ああっ、決勝で会おう」

 

十代とハイタッチをし、俺はフェイトが待っている観客席の方に向かった。しばらくはフェイトと一緒に、他人のデュエルを見学する時間になるだろう。

 

 

 

 

十代、明日香、万丈目は一回戦を突破した。残念な事にイエローは一回戦で万丈目と当たり、惜しくも負けてしまった。応援している最中、あいつが「イエローじゃない!」と言ったが、じゃああいつの名前はなんだったか・・・・。まあそんなどうでもいい話は置いておき、ついに俺の出番。対戦相手はなんとあのブラック・マジシャン・ガールによく似た女性だった。

フェイト曰く、彼女はブラック・マジシャン・ガールの精霊、つまり本人だそうだ。

奴がどういう目的を持ってデュエルアカデミアに来たのかは分からないが、少なくとも今精霊世界で何が起こっているかは知っているだろう。もしかしたらエンディミオンの手先かもしれない。

 

「おおおお! ブラック・マジシャン・ガールそっくりの美少女ー!」

「遊斗君羨ましいッスー!」

「またお前かー!」

 

男共(主に紳士同盟)の奴らから俺への非難の声が上がるが、そんなアホな言葉に返事をする余裕は俺には無かった。今はブラック・マジシャン・ガールの意図が知りたい。

 

「そんな怖い顔しないで、楽しもうよ」

「・・・・何が目的だ?」

「ふふっ、それはデュエルが終わってからだね」

「分かった・・・・」

「「デュエル!」」

「先攻は私、ドロー! ライトロード・マジシャンライラを召喚。永続魔法、魔法族の結界を発動、カードを一枚伏せてターンエンドだよ。エンドフェイズライラの効果でデッキから三枚墓地に送るね」

 

A1700・D200

 

BMG モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

ライラか・・・・。さっさと破壊しないと墓地を溜めさせるし、セットされたカードが破壊される。非常にめんどうなカードだ。

 

「ドロー、イクスヴェリアを通常召喚。効果でデッキからマリアージュを特殊召喚する」

 

A500・D500

A1700・D1200

 

やっぱりイクスは安定感がある。マリアージュをコスト無しで特殊召喚出来るのは便利だ。

 

「バトル! マリアージュでライラに攻撃!」

『・・・・無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)・・・・』

 

マリアージュは自分の腕をガトリングガンに変形させ、ライラに向けて連射した。だがライラもただでは負けず、手に持っている魔法の杖から光のエネルギーをマリアージュに発射させた。

どうでもいいことだがマリアージュの攻撃名、半強制的に自分から言わせる事にした。毎回毎回マリアージュの攻撃名だけ俺が言うのも変だし。

 

「ダメージ計算時手札のスバルの効果発動! マリアージュの攻撃力を1000上げる!」

 

マリアージュA1700→A2700 VS A1700

 

手札から現れたスバルさんがライラの攻撃をバリアで受け止め、その間にマリアージュが発射した弾丸がライラを貫通した。

 

「いった~い。魔法族の結界の効果でMCを一個乗せるね」

 

MC魔法族の結界0→1

BMG LP4000→3000

 

「ブー!」

「最低ッス遊斗君!」

 

紳士同盟からブーイングされるが、リアルファイトじゃなくてデュエルなんだから別にいいだろ・・・・。というかお前等初対面の女の子をよくそこまで堂々と応援できるな。

まあフェイトと言い、アインハルトと言い、なのはと言い、あいつらは初対面でもお構いなしに邪魔してきたもんな。常識を言った所で無駄って感じだ、恐るべき紳士同盟。

 

「マリアージュの効果。戦闘で相手モンスターを破壊した時、同じ効果を持つトークンを特殊召喚! 更にもう一つの効果。このカードが効果対象になった時、このカードと相手フィールド上のカードを破壊する! そのセットカードを破壊!」

「破壊したカードは魔術の呪文書。破壊されたら私のライフを1000回復するカードだよ」

 

BMG LP3000→4000

 

「マリアージュトークンでダイレクトアタック!」

『・・・・無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)・・・・』

 

A1700

 

だからもう少し感情込めて攻撃名言ってくれえないかな? 一応俺が考えた攻撃名なんだから。

 

「キャアア!」

 

BMG LP4000→2300

 

「てめぇ!」

「ブー!」

 

本当にうるさいなコイツ等・・・・。こっちは精霊世界で何が起こっているのか聞きたくてかなり真剣になっているのに。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

BMG モンスター0 伏せ1 手札3 LP2300

 

「行っくよー! ドロー、熟練の黒魔術師を召喚。そして魔力掌握を発動。熟練の黒魔術師にMCを乗せ、魔法が発動した事で更にもう一個MCを乗せるね。もう一個の効果で同名カードを手札に加えるよ」

 

A1900・D1700

MC黒魔術師0→2

 

「闇の量産工場を発動。墓地のコスモクイーンとホーリー・エルフを手札に加えるね。そして熟練の黒魔術師にMCを乗せる。そして三つ溜まった熟練の黒魔術師を生贄に、デッキからお師匠、じゃなかった、ブラック・マジシャンを特殊召喚!」

 

A2500・D2000

 

熟練の黒魔術師を出した時点で既に気付いていたが、やはりブラック・マジシャンを持っていたか。ブラック・マジシャン・ガールの場に現れたのは、彼女の師匠でもある、魔法使い最高クラスの黒魔術師。

 

「バトル! ブラック・マジシャンでマリアージュに攻撃! 黒・魔・導(ブラック・マジック)!」

 

A2500 VS A1700

 

「カウンター罠クラールゲホイル発動! バトルフェイズを強制終了させ、自分フィールド上のモンスター一体をデッキに戻す。その後デッキから夜天と名のつくモンスターLCが一個乗った状態でを特殊召喚する。俺はマリアージュトークンをデッキに戻し、シグナムを特殊召喚! 最もトークンはデッキに戻らず破壊されるだけだが」

 

シグナムLC1

A1800・D1400

 

「っちぇ、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札3 LP4000

BMG  モンスター1 伏せ2 手札3 LP2300

 

ブラック・マジシャン・ガールの手札は三枚だが、さっきサーチした魔力掌握とコスモクイーンとホーリー・エルフの三枚。伏せが気になるが、こっちが有利なのには変わりない。

 

「ドロー! イクスの効果で墓地からマリアージュを蘇生。そして場に夜天と名のつくモンスターが存在する時、手札のツヴァイを特殊召喚する」

 

LCシグナム1→0

A500・D500

 

「場のシグナムとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士シグナム! 効果で自身にLCを乗せる」

 

LCシグナム1

A2700・D2000

 

「シグナムの効果。LCを一つ取り除き、ブラック・マジシャンの攻守を0にする!」

『『捉えよ、凍てつく足枷! フリーレンフェッセルン!』』

 

シグナムさんとツヴァイの掛け声と共にブラック・マジシャンの足元に白銀に輝く水の渦が現れた。その水は徐々にブラック・マジシャンを呑み込んでいき硬くなっていった。

 

ブラマジA2500・D2000→A0・D0

 

「そんな!?」

「バトル! マリアージュでブラック・マジシャンを攻撃!」

「・・・・なんてね、速攻魔法ディメンション・マジックを発動だよ! ブラック・マジシャンを生贄に手札からコスモクイーンを特殊召喚して、祝福の騎士シグナムを破壊!」

 

ディメンション・マジックのカードから現れた紫色の怪しい煙がブラック・マジシャンを包み込み、霧が消えるとそこにいたのはブラック・マジシャンではなく、コスモクイーン。更にディメンション・マジックから鎖が現れ、シグナムさんを縛り上げ破壊した。

 

A2900・D2450

 

「更に魔法使い族が破壊された事で、魔法族の結界にMCが一個乗るよ」

 

MC魔法族の結界1→2

 

「ック、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札2 LP4000

BMG  モンスター1 伏せ1 手札2 LP2300

 

「行くよ~、ドロー! 魔力掌握を魔法族の結界を発動、同名カードをサーチ。そしてホーリー・エルフを召喚」

 

MC魔法族の結界2→3

A800・D2000

 

「そして魔法族の結界を発動。ホーリー・エルフを生贄にデッキから三枚ドローするよ」

 

三枚だった手札が一気に五枚かよ。やっぱり魔法族の結界は早めに破壊しておかないと駄目だな。マリアージュの効果で魔法族の結界を破壊しておけばよかった・・・・。今度から優先的に破壊しよう。

 

「死者蘇生を発動! 墓地からわた、じゃなくてブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚! 効果で攻撃力が300上がりま~す」

「「「うおおおおお!」」」

 

ブラック・マジシャン・ガールのフィールドに出てきたのは、彼女と瓜二つの女の子。胸元が空いた服とミニスカートは色っぽく、金色の髪と可愛らしい声はまさにアイドルカードと言える。まっ、フェイトの方が可愛いけど、と惚気ておこう。

 

BMG A2000・D1700→A2300

 

しかしすげえな。昔から存在するマニアックなカード、コスモクイーン。伝説の魔法使いと言われるブラック・マジシャンの弟子、ブラック・マジシャン・ガール。滅多に見られる布陣では無い。

 

「バトル! コスモクイーンでマリアージュに攻撃!」

「攻撃宣言時協力防御発動! このターンLSと名のつくモンスターは戦闘では破壊されず俺は戦闘ダメージを受けない。その後デッキから一枚ドローする」

「また守られちゃったか。カードを二枚伏せてターンエンドだよ」

 

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札3 LP4000

BMG  モンスター2 伏せ2 手札2 LP2300

 

あの布陣をどうしようか。ブラック・マジシャン・ガールの攻撃力は2300だから突破するのは簡単だが、コスモクイーンの攻撃力は2900。あのセットされた二枚のカードも怪しい。まあどんなカードにしろ、まずはイクスとマリアージュを融合させないと。

 

「ドロー! 時空管理局を発動。場のイクスとマリアージュを融合! 来い、冥王イクスヴェリア! 時空管理局の効果でLCを一つ置く」

 

LC時空管理局0→1

A2000・D2500

 

「イクスの効果でマリアージュ軍隊長トークンを特殊召喚する」

 

A2000・D2000

 

「なのはを通常召喚。効果で自身にLCを置き、そのLCを取り除いて右側のカードを破壊!」

「へへっ、セットカードは魔力掌握だよ。伏せてて良かった」

 

ブ、ブラフかよ。魔力掌握を発動してもサーチするカードが無いから伏せていたのか。まあ危険視する伏せカードが一枚減っただけでも良しとするか。

 

「時空管理局のLCを一つ取り除き、デッキからユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは! 効果でデッキからフェイトを手札に加える!」

 

A1000・D3000

 

伏せカードが怖いが、そんな事言ってたらいつまでたっても相手のモンスターを倒せない。行くか。

 

「場のなのはを融合! 来い、蒼穹の王・高町なのは!」

 

カードをセットした瞬間、フィールドを中心に強風が巻き起こり、辺り一帯の空気がドクン! と振動した。強風によりめくり上がったブラック・マジシャン・ガール(精霊の方)のスカートを見て、馬鹿な男子共が「「「うおー!」」」と野太い声を上げて喜んでいる。ハァ・・・・。

自分の支配する高貴なる風を、そんな下賤な事に使ったのが気に食わなかったのか、竜巻の中にいる王様なのはさん・・・・じゃなくてなのは様は、強風を馬鹿な男子共向けて発射した。あの人読心術持ってると疑うレベルで心読んでくるからな。様付けしないと殺されそうだ。

 

『ッチ、下種共が・・・・。私の風を・・・・』

 

A2500・D2500

 

お、お願いですから機嫌を直して下さいよなのは様・・・・。あなた怒るとめっちゃ怖いんですから。

 

「へ~、お師匠様に聞いた通り、凄い力を持ってるね」

「な、なのはの効果発動! 特殊召喚成功時、デッキから好きなカードを墓地に送る。俺はバルディッシュを墓地に送る。そしてなのはの効果で墓地のバルディッシュを召喚条件を無視して装備する」

 

なのはA2500→A3500

 

なのは様は呼び捨てで呼んだからか、俺をギロリと睨みつける。ぅぅぅ、でも一般人がいる状態でなのは様とか呼んだら、俺の社会的立場が底辺に落ちる。ブラック・マジシャン・ガールはなのは様の力を見て、素直に感心しているようで、やっぱり今までの魔法使い族の刺客とは違う。

 

「バトル! なのはでコスモクイーンを攻撃!」

「罠発動、迎撃準備! フィールド上に表側表示で存在する戦士族または魔法使い族モンスターをセットする!」

「っな!? なんでそんなピンポイントカードを!?」

「えへへ、自分様に入れていたんだけど、まさか相手に使うなんてね」

 

ック、モンスターがセット状態になったら装備カードは破壊されて墓地に送られてしまう。せっかくなのは様を出したのに無意味になってしまうな。

 

「ッツ、ターンエンド。エンドフェイズイクスの効果でこのカードを融合デッキに戻し、融合デッキから覇王、聖王と名のつくモンスターを召喚する。俺はヴィヴィオを特殊召喚し、デッキから聖王の鎧をサーチ。そして効果でその聖王の鎧を装備する」

ヴィヴィオA?・D?→A3600・D3600

 

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP4000

BMG  モンスター2 伏せ0 手札2 LP2300

 

まさかなのは様をセットされるとは想定外だった。守備力は2500と決して低くないが、コスモクイーンがいるから破壊されるのは確定だろう。

 

「ドロー! バウンド・ワンドをブラック・マジシャン・ガールを装備。装備モンスターの攻撃力をレベル×100ポイントアップするよ」

 

BMG A2300→A2900

 

「そして二枚目の魔法族の結界を発動。モンスターをセット」

 

また魔法族の結界かよ・・・・。カオス・ソーサラーの時と言い、そのカードは軽いトラウマだ。LSは魔法使い族が多いし、いざという時に伏せ除去カードが少ないし。

 

「バトル! ブラック・マジシャン・ガールでセットモンスターを攻撃!」

「「「1!」」」

「「「2!」」」

「「「3!」」」

黒・魔・導・爆・烈・破(ブラック・バーニング)

 

A2900 VS D2500

 

会場の男共ほぼ全員のカウントダウンから放たれたのは、ブラック・マジシャンの魔法によく似た魔法。杖先に溜められた紫の弾、その弾は所々炎がメラメラと燃えている。まさに黒魔導の爆裂破だ。

セットされたなのはさんは、アイドルカードに破壊された事が癪に障ったようで凄く不機嫌な顔をして破壊された。

と言うか男共、いつ黒・魔・導・爆・烈・破(ブラック・バーニング)の打ち合わせをした。

 

「魔法族の結界の効果でこのカードにMCを乗せるね」

 

MC魔法族の結界0→1

 

「う~ん、その金髪の子は倒せないな~。コスモクイーンでマリアージュ軍隊長トークンに攻撃!」

 

A2900 VS D2000

 

「これでターンエンド」

「エンドフェイズ、ヴィヴィオを融合デッキに戻し、融合デッキから覇王アインハルトを特殊召喚する」

 

LC時空管理局1→2

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札2 LP4000

BMG  モンスター3 伏せ1 手札0 LP2300

 

・・・・結構つらい状況だよなこれ。まあアインハルトがいるから、相手のターンにヴィヴィオさんを出せて、守りには問題ない。けどこのままだと結界にMCが乗って大量のドローをされる。手札にあるstrikersの回収も使いたいけど、ヴィヴィオさんの攻撃力を下げてしまうのは辛い。このドローカードでstrikersの回収を使ってもヴィヴィオさんの攻撃力に影響が無いようにしたい。

 

「ドロー! よしっ、連続転移を発動。時空管理局のLCを二つ取り除き、デッキトップから三枚めくる。三枚の中で、通常召喚可能なLSがいたらそのモンスターを特殊召喚する。一枚目バルディッシュ・スピードローダー、二枚目カリム、三枚目カートリッジロード。カリムを特殊召喚する」

 

A500・D500

LC時空管理局2→0→1

 

「そしてカリムの効果、一ターンに一度カードの種類を宣言し、デッキトップが宣言した種類だったら手札に加える。俺はモンスターを宣言、デッキトップはキャロ。手札に加える。

魔法・罠ゾーンにキャロを置き、キャロの効果でアインハルトとカリムの攻撃力が300上がる」

 

アインハルトA2700・D2200→A3000・D2500

カリムA500・D500→A800・D800

 

「そしてフェイトを召喚。効果でLCを置く。そして自身のLCを取り除き、ブラック・マジシャン・ガールの表示形式を変更する」

 

フェイトA1800・D500→A2100・D800

 

攻撃力が2900に上がっていても、ブラック・マジシャン・ガールの守備力は1700。表示形式を変更すれば下級モンスターでも破壊できるラインになる。やっぱり攻撃力1800で表示形式変更を持つフェイトは便利だな。

観客席にいるフェイトに、ありがとうの意味を込めて手を振ると、ニコッと微笑んで手を振り返してくれた。

 

「バトル! アインハルトでコスモクイーンを攻撃!」

『ハァアア! 覇王断空拳!』

 

A3000 VS A2900

 

足先から練り上げた力を拳足に乗せて撃ちだす打撃。その技法を完璧にマスターしているアインハルトの拳は、宇宙に存在し様々な星を統治している女王を粉砕した。

相変わらず見ているだけでは、どうやってあれほどの威力を出しているか分からない。デュエルには関係ないが、アインハルトと模擬戦をしてからほぼ毎日、あの断空の技法の練習している。まっ、数ヵ月で覚えるのは無理だな。

 

BMG LP2300→2200

MC魔法族の結界1→2

 

「アインハルトの効果。戦闘でモンスターを破壊した時、その攻撃力分俺のライフを回復する」

 

遊斗LP4000→6900

 

アインハルトの肩に乗っているアスティオンの『にゃ~ん』と可愛らしい鳴き声と共に、俺の体が光りライフを回復した。あ~、アインハルトの精霊もどっかに行ってるから、攻撃名しか言わないのか。いつもなら、ティオお願いします、って言うのに・・・・。そう思うと精霊がデッキにいないのって結構寂しいな。今いるの最終形態の皆さんだけだし。

 

「ありゃ~、ライフ一回も削って無かったのに回復されちゃったな」

「フェイトでブラック・マジシャン・ガールに攻撃!」

『ハーケンセイバー!』

 

フェイトA2100 VS D1700

 

フェイトはバルディッシュを鎌状にする。だが何もしないとその鎌には刃が無く、フェイトが魔力を供給する事により魔力が刃となる。フェイトが魔力を供給する瞬間、バルディッシュが地味だが複雑な動きをして魔力刃を出す。この瞬間が地味に好きだったりする。

フェイトはその魔力刃をブラック・マジシャン・ガールに飛ばし、彼女にぶつかる直前に魔力刃を爆発させた。

 

「「「ブー!」」」

「何て野郎だ!」

「お前は俺達のアイドルを!」

「大丈夫だよみんな! バウンド・ワンドの効果発動。装備モンスターが相手によって破壊された時、装備モンスターを墓地から特殊召喚。もう一度現れて、ブラック・マジシャン・ガール!」

 

魔法族の結界2→3

BMG A2000・D1700→A2300

 

「「「うおおおお!」」」

「そんな効果が・・・・。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズアインハルトを融合デッキに戻し、冥王イクスヴェリアを守備で特殊召喚」

 

イクスA2000・D2500→A2300・D2800

LC時空管理局1→2

 

遊斗  モンスター3 伏せ3 手札0 LP6900

BMG  モンスター2 伏せ1 手札0 LP2200

 

「行くよ、ドロー! セットした見習い魔術師を反転召喚。効果で魔法族の結界にMCを乗せるね」

 

MC魔法族の結界3→4

 

セットモンスターは見習い魔術師だったか・・・・。てっきり執念深き老魔術師と思ってあえてフェイトの効果で表示形式しなかったんだが、読み過ぎてしまったな。いくら結果論とは言え、勝利の機会を逃したのは悔しい。

 

「そして魔法族の結界の効果で見習い魔術師を生贄にしてデッキから四枚ドロー! よしっ、貪欲な壺を発動。墓地のブラック・マジシャン、ホーリー・エルフ、見習い魔術師、コスモクイーン、マジシャンライラをデッキに戻し二枚ドロー。賢者の宝石を発動。フィールドにブラック・マジシャン・ガールが存在する時、デッキからブラック・マジシャンを特殊召喚!」

 

BMG A2300→A2000

A2500・D2000

 

ッツ、師弟が揃ってしまったか。この二人が並んだ事で、効果が発動するわけではないが、遊戯さんのエースカードが二体並ぶのは得体のしれない恐怖とワクワクが溢れて来る。BMGの手札はまだ五枚。俺の場を破壊するには十分すぎる程の手札だ。

 

「マジシャンズ・クロスを発動。自分フィールドに魔法族モンスターが二体以上いる時、その一体を選択して発動。選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで3000になり、このターン選択したモンスター以外の魔法使い族モンスターは攻撃できない。私はブラック・マジシャンを選択」

 

ブラマジA2500→A3000

 

「更に拡散する波動を発動! ライフを1000払い、レベル7以上の魔法使い族モンスターを選択。選択したモンスターはこのターン相手モンスター全てに一回ずつ攻撃ができる!」

 

BMG LP2200→1200

 

なるほど! だからブラック・マジシャンの攻撃力を上げたのか。こんなことならイクスじゃなくてヴィヴィオさんを出しとくべきだった。次のターンヴィヴィオさんを出したくてイクスにしたんだが、失敗だったようだ。

 

「バトル! ブラック・マジシャンでフェイトに攻撃! 黒・魔・導(ブラック・マジック)!」

 

A3000 VS A2100

 

「攻撃宣言時strikersの回収を発動。墓地のスバル、蒼穹の王・高町なのは、イクスをデッキに戻し二枚ドロー!」

 

これでスバルさんを引けたらラッキーなんだけど、流石にそこまで上手くは行かない。ダメージ計算時も何もなかったので、俺はフェイトが破壊される姿を見るしかなかった。

 

遊斗LP6900→6000

 

「カリムとイクスヴェリアに攻撃!」

 

A3000 VS D800

A3000 VS D2800

 

カリム姉もイクスも、ブラック・マジシャンの杖先から放たれた黒紫色の黒魔術により、防ぐ術が無く破壊されてしまった。流石最高レベルのマジシャンだ。マジシャンズ・クロスと拡散する波動と言う個性的なカードを二枚同時に使い、俺のフィールドのモンスターを全滅させた。いや、ここで褒めるべきは、そのブラック・マジシャンを使っている、精霊のブラック・マジシャン・ガールか。

 

「マジシャンズ・ヴァルキリアを守備表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

A1600・D1800

 

遊斗  モンスター0 伏せ2 手札2 LP6000

BMG  モンスター3 伏せ1 手札1 LP1200

 

相手の場にはブラック・マジシャン師弟と、攻撃対象を制限させるマジシャンズ・ヴァルキリアか。対する俺は手札二枚でモンスターは0。非常に厳しい、だが同時にワクワクが止まらない。この状況をどう打破するか、次のドローで何が来るか。これだからデュエルは面白い!

 

「ドロー、まだいける! ティアナを通常召喚! そして時空管理局のLCを取り除き、墓地のAOA高町なのはをゲームから除外、その同名トークンを特殊召喚する!」

 

ティアナA1200・D1000→A1500・D1300

 

「そして場のAOA高町なのはを生贄に、再び現れろ! 蒼穹の王・高町なのは!」

 

なのはA2500・D2500→A2800・D2800

LC時空管理局2→3

 

さっきと同じようにフィールドに竜巻が現れ、その中からかーなーりー機嫌の悪いなのは様が現れた。さっきブラック・マジシャン・ガールに破壊された事を根に持っているんだろう。

 

「特殊召喚成功時デッキから闇の書を墓地に送る。そして闇の書の効果でなのはに装備。なのは自身の効果でバルディッシュを装備」

 

なのはA2800・D2800→A4100

 

なのは様の周りに旋回していたブラスタービットの内二つがそれぞれバルディッシュと闇の書になり、彼女を守る様に目の前で浮いた。

 

「バトル! なのはでマジシャンズ・ヴァルキリアを攻撃! これで終わりだ!」

「させないよ! その装備魔法が貫通効果を持ってるのは知ってる! 攻撃宣言時マジシャンズ・サークルを発動! デッキから二枚目のマジシャンズ・ヴァルキリアを特殊召喚。これで君は私のモンスターを攻撃できない!」

 

ヴァルキリアロックか! 神楽坂とやった時もこのタイミングでやられたな。ヤバイな・・・・、主になのは様のストレス的な意味で。余りにもイライラさせてしまうと、俺の命が危うくなる。

 

「俺はデッキからシャマルを特殊召喚。効果でキャロにLCを置く。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LCキャロ0→1

なのはA4100・D2800→A4400・D3100

シャマルA700・D1800→A1300・D2400

ティアナA1500・D1300→A1800・D1600

 

遊斗  モンスター3 伏せ5 手札0 LP6000

BMG  モンスター4 伏せ0 手札1 LP1200

 

シャマ姉が攻撃表示と言うのが若干不安だが、ライフは6000あるから、ライフが0になる事はないだろう。それに相手の場では今の所なのは様を倒す事は不可能な筈。いや、相手の場にはブラック・マジシャンがいる。どんな攻撃を仕掛けて来るか分からない。

 

「ドロー! 行くよ。魔法カードハリケーン! フィールドの魔法・罠カードを全て手札に戻す」

「バウンスかよ・・・・」

 

ブラック・マジシャン・ガールの手の中にあるカードから強風が発生し、俺の魔法・罠カードは全て破壊されてしまった。俺がセットしていたカードはオプティックハイド。大嵐や黒・魔・導(ブラック・マジック)が来ても大丈夫だったんだが、ハリケーンは守備範囲外だ。なのは様は自分の武器が飛ばされた事に大変お怒りの様で、ピキピキと額に青筋を立てている。まあさっきから自分の思い通りになってないからね。普段偉そうにしているなのは様にはイライラだろう。

 

なのはA4400・D3100→A2500・D2500

シャマルA1300・D2400→A700・D1800

ティアナA1800・D1600→A1200・D1000

 

「場のマジシャンズ・ヴァルキリア二体を生贄に混沌の黒魔術師を召喚! 効果で墓地から死者蘇生を手札に加えね」

 

A2800・D2600

 

ック、また混沌の黒魔術師かよ。遊戯さんのデッキは基本魔法使い族で、ブラック・マジシャン・ガールは純魔法使い族。しかも二人ともブラック・マジシャン軸だからこのカードも入っているのは当たり前か。

 

「死者蘇生を発動。君の墓地にいる祝福の騎士シグナムを特殊召喚するよ」

 

A2700・D2000

 

「バトル! 混沌の黒魔術師で蒼穹の王・高町なのはに攻撃! 滅びの呪文!」

 

A2800 VS A2500

 

混沌の黒魔術師は、ブラック・マジシャンが持っている杖とよく似た杖で、これまたよく似た呪文をなのは様に撃った。この二枚のアニメーションが似ているのには理由があり、混沌の黒魔術師はマジシャン・オブ・ブラックカオスのリメイクカードで、マジシャン・オブ・ブラックカオスはブラック・マジシャンが洗礼を受けた姿だから、ブラック・マジシャンとの繋がりがある。

今回二回目の破壊になのは様は我慢の限界なのか、混沌の黒魔術師から放たれた呪文を片手で受け止め、その反対の手の平を混沌の黒魔術師に向け、桃色の砲撃を発射した。突然の攻撃に混沌の黒魔術師は回避行動を取れず桃色の砲撃呑み込まれた。あれ? この戦闘なのは様が負けるんだよね?

その後なのは様はスッと除外ゾーンに行った。

 

遊斗LP6000→5700

 

「・・・・しゅ、祝福の騎士シグナムでシャマルに攻撃!」

 

A2700 VS A700

 

いまシャマ姉とシグナムさんの精霊は宿っていないので、二人ともさも当たり前の様に戦闘を行った。でもやっぱりレヴァンティンに斬られるシャマ姉の姿を見るのは心が痛む。死者蘇生の発動を許してしまった俺の原因だ、後で二人に謝っておこう。

 

遊斗LP5700→3700

 

「ブラック・マジシャン・ガールでティアナに攻撃! せーの!」

「「「1!」」」

「「「2!」」」

「「「3!」」」

黒・魔・導・爆・烈・破(ブラック・バーニング)

 

A2000 VS D1000

 

相変わらず仲良いなお前等! ブラック・マジシャン・ガールもすっかりノリノリだし。これで俺が勝ったら悪役にされてしまうだろうな・・・・。ハァ、紳士同盟ってメンドクせぇ・・・・。

 

「ブラック・マジシャンでダイレクトアタック!」

 

A2500

 

本日大活躍のブラック・マジシャンの杖先から、再び黒紫色の丸い弾が発射された。最高レベルの魔法使いの攻撃はやっぱり迫力がある。

 

遊斗LP3700→1200

 

「これでターンエンド」

 

遊斗  モンスター0 伏せ0 手札5 LP1200

BMG  モンスター4 伏せ0 手札0 LP1200

 

ライフは並んだ、モンスターも伏せも無いが手札は五枚・・・・だがこの五枚のカードはさっき手札に戻された、バルディッシュ、闇の書、キャロ、時空管理局、オプティックハイドの五枚。これが初手だったら100人中100人が事故と言うだろう。・・・・応えてくれ俺のデッキ!

 

「ドロー! ・・・・残念だが俺の勝ちみたいだ」

「え?」

「手札のエリオの効果発動。このカードを墓地に送り墓地のLSと名のつくモンスターを手札に加える。俺はフェイトを手札に加え、そのまま召喚する!」

 

LCフェイト1

A1800・D500

 

目のやり場に困る黒のレオタードに、腰回りには隠す役割を果たさない白のミニスカート。黒い漆黒のマントを羽織り、サラサラと靡く長い金色の髪を左右で結び、両肩に掛かる様に垂らしている。

あ~、なんか友達以上の関係になってからフェイトの恰好を見ると、色々とヤバイな。

 

「て、手札にある装備魔法は・・・・」

「その通りだ。手札のバルディッシュと闇の書をフェイトに装備」

 

フェイトA1800→A3100

 

「更にキャロを魔法・罠ゾーンに置く。これで攻撃力が更に上がる」

 

フェイトA3100・D500→A3400・D800

 

「バトル! フェイトでブラック・マジシャン・ガールを攻撃!」

『ジェットザンバー!』

 

A3400 VS A2000

 

大剣となったバルディッシュを細くてか弱い手で軽々と振り回し、柄の部分を右肩に乗せ、剣先がブラック・マジシャン・ガールに向くように思い切り振り下ろした。バルディッシュの魔力刃は物凄い速さで伸びて行き、一般女性ぐらいあるブラック・マジシャン・ガールの体を呑み、そのまま本物のブラック・マジシャン・ガールの方へ伸びて行った。

 

「きゃああああ!」

 

BMG LP1200→-200

 

「そ、そんな~」

「ブー!」

「ブラック・マジシャン・ガールを一回しか見られないなんて・・・・」

「おのれスカリエッティ!」

 

ハハハ・・・・、本当にコイツ等はデュエリストなのか? 同じ世代の俺が言うのも変だが、今時のデュエリストは腑抜けている。しかもデュエルアカデミアと言う、デュエルに力を入れている学校でこれだからな。

今度紳士同盟のアジトに殴り込み、一度思いっきりとっちめておこう。そんな事を考えながら、俺は落ち込んでいるブラック・マジシャン・ガールの元まで歩いた。

 

「ん、いいデュエルだったよ」

「えへへ、ありがと。私も楽しかったよ」

 

会場の地面に座り込んでいるブラック・マジシャン・ガールにそっと手を差し伸べ、彼女が俺の手を握るのを合図に彼女を置き上がらせた。男達の野太い悲鳴を無視して、俺はブラック・マジシャン・ガールの手を握ったままフェイトの元へ行った。金髪美少女二人と一緒にいたので周りから注目を浴びたので、会場の端っこまで避難した。

 

「お疲れ様遊斗」

「フェイトのおかげだ。ありがとな」

 

俺の勝利を願ってくれるフェイト。女神と言うには少し幼すぎる、天使と言う表現が一番似合う美しさだ。ブラック・マジシャン・ガールの手を離し、その手でフェイトの頭を数回だけポンポンと叩く。撫でてはいないが、フェイトには子供扱いされたと感じたのか、頬をプーと膨らませて怒り顔をする。

 

「あはは、二人ともお熱いのはいいけど、私から話聞かなくていいの?」

「ふぇ、ち、違うよ」

「ち、違うのか・・・・。ん゛ん゛っ! それじゃあ早速、精霊界で今何が起こっている?」

 

フェイトの否定の言葉にちょっと落ち込んだが気を取り直して、フェイトを挟んで隣にいるブラック・マジシャン・ガールに問う。

 

「十年前くらいからね、それぞれの種族の代表、どっちかって言うと王様かな? まあ兎に角、偉い人が少しずつだけどおかしくなったの。戦争、破壊、暴力、貧富の差。平和だった精霊世界に少しずつそんな事が起こってきた」

「やっぱり精霊世界にもそういう事が起こるのか」

「そうだね。そうなった原因は分からない。ただ一つ確かなのは、どの王様も、本来なら存在する筈のないカードを狙っているって事」

 

本来なら存在する筈のないカード・・・・。カイバーマンも同じ事を言っていた。

 

「どの種族もそのカードを必死に探した。実際に存在しない筈のカードは見つかった」

「見つかった? だって探しているそのカードは私達LSじゃないの?」

「まあ結論から言えばそうだね。でも本当にあるの、君も見覚えがあるんじゃない?」

 

・・・・俺の無知が原因でなければ、この前万丈目が使っていたくず鉄のかかし、カイバーマンが使っていたスキル・サクセサー、カオス・ソーサラーが使っていた混沌空間とエフェクト・ヴェーラー。あれらのこのカード達をネットで調べたが、どこにもそのカードは無かった。

 

「あるな・・・・」

「その他にも色々あったんだよね。でもどれも王様達が求めていたカードじゃなかった。そんなある時、魔法使い族のある一人があなた達LSの事を知った。全ての種族が狙っているLS、他の種族には知らせずに一人占めしたいよね?」

「だから魔法使い族しか襲ってこないのか・・・・」

「そう、王様であるエンディミオンはなるべく腕の立つ部下を使いあなたを襲った」

「・・・・あなたは魔法使い族なのにどうして敵である私達に教えてくれるの?」

 

そう言えば、俺は当たり前の様にブラック・マジシャン・ガールから話を聞いていたけど、彼女も魔法使い族だった。フェイトは警戒を強めたのか、ポケットに入れているバルディッシュに触れる素振りをした。

 

「お師匠様は十年前からエンディミオンの考えに疑問を思って、エンディミオンの元を離れたの。むしろ精霊世界を元に戻そうとしてる」

「でも俺達に話した所で精霊世界が元に戻る訳じゃないし、原因は俺たちかもしれないんだろ?」

「精霊世界がおかしくなった原因はLSかもしれない。でも同時にLSが精霊世界を元に戻せるかもしれないでしょ?」

 

力が原因だったら原因を力でねじ伏せるか・・・・。ちょっと違うかもしれないが、要するに孫の手も借りたい状況って事か。

 

「まあそもそも原因がLSって決まった訳じゃないし、精霊世界を救えるかも分からない。でも魔法使い族があなた達を狙っているのは事実」

「つまり事の状況を伝える為に来たと」

「そう言う事。じゃ、私はそろそろ戻るから。くれぐれも手先に気を付けてね」

 

伝えるべき事は全て伝え終えたようで、ブラック・マジシャン・ガールは席から立ち俺達に手を振った次の瞬間、スッと消えて行った。精霊世界に帰ったんだろう。

 

「「「ワアアアア!」」」

 

話している間に、どうやら全一回戦が終わったようだ。これからは試合数も減って行き、どんどん出番が増えて行くだろう。

 

「なんか大変な事が起こってるみたいだな・・・・」

「うん・・・・。でも、今は祭りを楽しもう。私達二人で悩んでも何にもならないし」

「そう、だよな。そうだよ、俺はこれから何回もデュエルするんだ。デュエルする前からモチベーション下げてたら行けないもんな」

「うん! 頑張って優勝してね」

「ああ!」

 

それから俺は順調に勝ち進んだ。途中、明日香と戦い、ブラック・マジシャン・ガール並みに苦戦したりもしたが、無事決勝まで来る事が出来た。相手は勿論十代。そう言えば大勢の観客の前で、十代と一対一で戦うのは初めてかもしれない。そう思うとワクワクが止まらない。十代とのデュエルはもう当に100回を越えたが、お互いまだまだデッキの全ての可能性を出し切っていない。

だからこのデュエルで、お互い、まだ知らない可能性を出して行こう。

 

「行くぞ十代!」

「ああ、かかって来い遊斗」

「「デュエル!」」

 

 

 




今回は新オリカが無いので、今回フィニッシャーになったフェイトについて。

フェイト・テスタロッサ ☆4/光/魔法使い/1800・D500
このカードが召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。このカードに乗っているLCを1つ取り除く事で、相手フィールド上のモンスターの表示形式を変更する。




光属性、魔法使い族、攻撃力1800、表示形式持ち。かなり強力ですね。
今回のブラック・マジシャン・ガールの様に上級モンスターでも守備力は低いモンスターはいるので使い勝手がいい。おそらく下級LSの中で一番使い勝手がいいカード。専用装備魔法のバルディッシュは貫通効果を持っているし、デッキからアルフを特殊召喚して融合すると、3500打点まで持ってこれる。


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第二十二話

ついに一期も終わりが近づいてきました。それで今回の二十二話はなんとデュエルがありません。正確に言うと、二十二話をストーリー進行と、デュエルに分割しました。
本当はいつも通りデュエルもセットで投稿する予定でしたが、デュエルに力が入りすぎて、デュエルだけでも文字数が過去最高になりました。
最近投稿ペースが落ちたのは、スランプもありますが、次話のデュエルの構成にメチャクチャ時間を掛けたからも大きいです。


それとデュエルパートで相手が使うカード効果がアニメオリジナルで、作者が勝手に変更した点もありますので、余り詳しくない方は後書きを見る事をお勧めします。




ブラック・マジシャン・ガールとデュエルをしてから一週間、あれからセブンスターズの事で大きな変化があった。そう、ついにセブンスターズ最後の一人が現れ、そのセブンスターズを十代が倒した事だ。

最後のセブンスターズ。それがまさか、レッド寮の寮長である大徳寺先生と誰が予想していただろうか。正確に言うと大徳寺先生ではなく、錬金術師アムナエル。まあ説明しにくいからこれからも大徳寺先生で統一する。

大徳寺先生は元々錬金術師で、賢者の石を研究していた時、デュエルモンスターズに辿りついたらしい。そして三幻魔の力がその賢者の石を作り出す事に繋がっているらしい。だからセブンスターズとなり三幻魔を狙っていた様だ。だが大徳寺先生は研究の為に三幻魔を狙っていただけで悪人ではなく、最後はあるカードと共に十代に「融合は無限の可能性を秘めているにゃ」と残してこの世から去って行った。

 

「あれから十代も少し考えるようになったよな」

『十代が懐いていた先生だからね。遊斗も好きな先生だったでしょ?』

「そうですね~。錬金術って変な授業だったけど、面白かったし」

 

なんて大徳寺先生の授業を思い返していた時だった。ドタドタドタと騒がしい足音がし、コンコンコンと焦りが分かるノックが鳴った。

慌てて出ると、明日香の兄である吹雪さんがいた。

 

「吹雪さん、どうかしましたか!?」

 

あんなに慌てていたんだ。きっと何か三幻魔の事で進展が――――

 

「実は万丈目君が明日香とラブデュエルをするんだ」

「・・・・ラ、ラブデュエル?」

「そう! 恋の魔導師であるこの天上院吹雪が考えた、ラブを相手に伝える為のデュエルだよ!」

 

・・・・そう、天上院吹雪とはこういう人なんだ。数ヵ月前クールな人をイメージしていた俺だが、全くの逆。明日香と本当の兄妹なのか、疑いたくなるレベルで性格が違う。

 

「はあ・・・・それで俺に何か?」

「何か? んん~、無骨な質問だね。そんなものみんなで見た方が面白・・・・ユニークだからだよ!」

「言い直した意味ありませんよそれ? せっかくのお誘いですが今俺忙しくて」

 

断ろうとしたその矢先、突然PDAに十代から連絡が入った。PDAに出ると、七星門の鍵が奪われたらしい。俺も吹雪さんもラブデュエルどころではなく、犯人が逃げた方に向かう事にした。

 

 

 

 

犯人は万丈目だった~。

明日香とラブデュエルする為だった~。

ハァ・・・・、これまでの流れを思い出しただけでも馬鹿馬鹿しくて、さっきから頭痛の嵐が頭を襲っている。

万丈目は普通にラブデュエルを挑んでも明日香は勝負してくれないと思い、七星門の鍵を奪って明日香にラブデュエルを挑んだ。どうやらこの計画、万丈目ではなく吹雪さんが考えたものらしい。せめて七星門の鍵じゃなくてもうちょっと安全な物でよかったと思うんだが。

 

「強制転移発動。さあ天上院君! モンスターを交換して、お互い相手の事を知っていこうじゃないか! 俺はおジャマ・イエローを君に渡すよ」

 

どうやら万丈目のデッキはラブデュエル専用のデッキらしいが、ハッキリ言わなくても気持ちが悪い。いつかレイちゃんが来た時、お見合いデュエルやバレンタインデュエルの話をしたが、それ等のデュエルでは今の万丈目のデッキの輩がたくさんいるんだろうか?

しばらく万丈目の事を避けようかな、なんて思っている間にもどんどんデュエルが進み、今明日香の切り札、サイバー・エンジェル―弁天が現れた。弁天は戦闘でモンスターを破壊した時、破壊したモンスターの守備力分のダメージを与える効果を持つ。万丈目のライフは2800で弁天の攻撃力は1800。そして万丈目の場にはおジャマ・イエローが攻撃表示でいる。明日香の勝ちだな。

 

「サイバー・エンジェル―弁天でおジャマ・イエローを攻撃! エンジェリック・ターン!」

『おにょにょ~! 万丈目のアニキー!』

「そ、そんなーっ!」

 

おジャマ・イエローの精霊は、迫ってくる弁天が怖かったのか泣き喚き、万丈目は無様にもジャストキルされてライフが0になった。

 

「て、天上院君。俺は・・・・」

「私は・・・・デュエルに恋をしてるの。あなたの気持には答えられないわ」

「ま、万丈目サンダー!」

 

ふられてからの第一声がそれってどうなんだよ? というか明日香が万丈目をふる直前、少し頬を染めて十代の方を見ていたな。やっぱりそう言う事か・・・・。

まっ、まあ俺はフェイトといい雰囲気だし? べべべ別に全然羨ましくなんて無いぞ。

なんて一人で強がっていると、突然ゴゴゴゴゴゴ! と地面が揺れ出した。

 

「ななななな!」

「おい万丈目! いくら明日香にふられたからって島を揺らすなよ」

「前から馬鹿だと思っていたがやはりお前は馬鹿だ! いくらなんでも島を揺らすわけないだろ!」

「鍵を奪ったお前が十代を馬鹿扱いするな!」

 

誰が馬鹿と言うより、この一連の会話が馬鹿なので、結局みんな馬鹿扱いされそうだが、俺は馬鹿では無いぞ。

デュエルアカデミアの揺れは未だ止まらず、森の方から柱が一本また一本生えてきた。地面から生えてきた柱は最終的に七本で、七星門の鍵と同じ数。い、嫌な予感がするのは俺だけか?

 

「シニョ~ル十~代! どうしたノ~ネ!?」

「クロノス先生。実は万丈目「うわー!」? どうしたノ~ネ?」

 

クロノス先生に自分の失敗を知られたくないのか、十代の口を塞いでワーワーと大きな声で喚いた。一応自分がやってしまったと、責任感はあるんだな。

 

「な、何でもありません。それより早く――――」

「万丈目君が自分勝手な理由で七星門の鍵を奪ってしまったッス」

「なんだな」

「その通りです」

「万丈目君にも困りました」

「いや、吹雪さんも同罪ですよ。って万丈目と吹雪さんの罰はあとにして今はあの柱に行きましょう!」

 

 

 

 

七つの柱に行く途中、イエローと校長先生と合流し、七つの柱が生えてきた所までやってきた。七つの柱の中央には何かの大座があった。

 

「? 何だあれ?」

「近づいては駄目です! あそこには三幻魔があります!」

 

っな、三幻魔!? と言う事はやっぱり三幻魔の封印が解かれたって事か。万丈目も吹雪さんも事の重さが分かっているのか?

 

「一刻も早く再び封印を「させん!」だ、誰だ!?」

 

台座に走っていく校長先生を遮る様に、空から変なロボットが落ちてきた。四本の足を付け、それとは別に手があるロボット。そしてロボットの中には、SF映画でよくある緑色の液体に入っている老人がいた。さっきの声は、中の老人の声がスピーカーから聞こえてきたようだ。

 

「まさかセブンスターズとの死闘ではなく、どうでもいいようなデュエルで三幻魔が復活するとは」

「あ、あなたは影丸理事長!? どうしてあなたが! それにセブンスターズは全員倒したはず」

「三幻魔復活に必要なのは膨大なデュエルの闘気。セブンスターズはデュエルの闘気を集めるためのただのお飾りだ」

 

えええ!? じゃあ今までの闇のデュエルは単なる闘気集めだったのかよ!? いくら何でもそれはあんまりだろ・・・・。

 

「そして私がここにいる理由! それは三幻魔を手にし、永遠の若さを手に入れる事!」

 

ロボットの手が三幻魔のカードを掴み、理事長のデッキにスッと入れられた。どうやら今すぐ被害がある訳じゃないようだが、このままにしておくわけにはいかない。

 

「理事長! 俺とデュエルしろ! 勝ったら三幻魔を返せ!」

「クックック、アイドルデッキを使うような奴には興味は無い。私が興味あるのは精霊を操る事の出来る遊城十代、お前だ」

「精霊の力? よく分かんねえけど、いいぜ。売られたデュエルは買うのがデュエリストだ!」

 

お、おのれ十代! 一度ならず二度までも!

十代は三幻魔と戦える事にワクワクしており、俺以外の周りのみんなは呆れ顔だ。

 

「行くぞ遊城十代!」

「三幻魔と戦えるなんてワクワクが止まらないぜ!」

「「デュエル!」」

 

 

 

 

三幻魔の力は強大だった。最初に出された三幻魔、神炎皇ウリアは墓地の罠一枚につき攻撃力を1000上げ、更には相手の罠を破壊できる効果。そして墓地にいる時、手札の罠を捨てる事で復活できる効果で十代を追いつめた。だが十代もテンペスターとスカイスクレイパーを使い反撃し、ウリアを二回も破壊した。

しかしウリアは自身の効果で何度も蘇り、攻撃力が5000になった次のターンには二枚目の三幻魔、降雷皇ハモンを出され十代は再び追いつめられる。

E・HEROバブルマンとバブルマン・ネオのサポートカードで二体の幻魔を倒したターンは、十代の勝ちと思ったが、ウリア自身の効果とサポートカードにより二体の三幻魔は復活。そして今最後の三幻魔が出されようとしている。

 

「三体の幻魔の殉教者トークンを生贄に、幻魔皇ラビエルを特殊召喚!」

 

三幻神と対をなす三幻魔が揃った。

オシリスの天空竜に似た神炎皇ウリア。

オベリスクの巨神兵に似た幻魔皇ラビエル。

ラーの翼神竜に似た降雷皇ハモン。

 

三幻魔が揃った瞬間、周りの草木が突然枯れ始めた。草木だけじゃなく、自然全ての力が三幻魔に吸収され、影丸理事長の体を若返らせていく。そしてその被害は精霊にも及んだ。巨大な力を持った最終形態のメンバーは影響を受けていない様だが、それ以外の精霊のみんなは辛そうにしている。万丈目の精霊のおジャマ・イエローも、隼人の精霊のデス・コアラも苦しそうだ。

カードから聞こえて来る悲鳴に唇をかみしめる。

 

「十代! 早く三幻魔を倒してくれ!」

 

だが三幻魔は、考えられない破格の効果を持つ。そんな三幻魔が並んでいる中、十代はあるカードを使った。

 

「賢者の石―サバティエル発動! ライフを半分払い、デッキからカードを一枚手札に加え、このカードをデッキに戻す。この効果で手札に加えたカードを発動した時、このカードを手札に加える」

 

インチキ効果もいい加減にしろ! なんて思ったのはほんの一瞬。それよりも俺が気になったのは賢者の石というカード名。まさかあのカードは大徳寺先生が作っていたカード?

そのカードを使い、十代はシャイニング・フレア・ウイングマンを出し、降雷皇ハモンの攻撃力を越え、破壊するものの、降雷皇ハモンの効果で影丸理事長が受けるダメージは0になってしまった。影丸理事長も耐えるな・・・・。

 

「賢者の石―サバティエルの効果で融合解除を手札に。ターンエンドだ」

 

次のターンの影丸理事長は幻魔皇ラビエルの効果で自身の効果で出したトークンを生贄に攻撃力を上げる。そしてウリアとラビエルで攻撃しようとしたが、さっき手札に加えた融合解除でシャイニング・フレア・ウイングマンをスパークマンとフレイム・ウイングマンに解除し防いだ。

十代の粘りっこさに影丸理事長はイライラしながらエンド宣言をした。

 

「俺のターンドロー! 賢者の石―サバティエルの効果。ライフを半分払いミラクル・フュージョンを手札に加える。そしてミラクル・フュージョンを発動! 墓地のクレイマン、バブルマン、フェザーマン、バーストレディを除外し、E・HEROエリクシーラーを融合召喚!」

 

だがエリクシーラーの攻撃力は2900。ウリアとラビエル、どちらの幻魔にも勝てない。

 

「効果を三回使った賢者の石―サバティエルの効果! 自分のモンスター一体の攻撃力を相手モンスターの数だけ倍にする。お前の場にはラビエルとウリアそして幻魔トークンが三体。よってエリクシーラーの攻撃力は五倍になる!」

 

エリクシーラーA2900→14500

 

す、すげえよ十代。大徳寺先生から貰ったカードをそこまで巧みに使えるなんて!

 

「ば、馬鹿な・・・・。私の三幻魔が・・・・」

「バトル! エリクシーラーで幻魔皇ラビエルを攻撃! 究極剣サバティエル!」

 

エリクシーラーの手に握られた白く輝く剣。その光が一段と激しくなると共に、ラビエルの上空に跳んだエリクシーラーは、落下する勢いを活かしながら輝く剣をラビエルに振り下ろした。

 

「馬鹿なああああああ!」

 

影丸理事長の悲鳴と共に、影丸理事長のライフは0になり、ソリッドビジョンがゆっくりと消えて行った。

 

「や、やったッスよアニキー!」

「凄いんだな十代! 本当に三幻魔に勝ってしまったんだな!」

「まさか三幻魔に勝つとは思わなかったよ」

「俺のライバルなんだ。それくらい当然だ」

「三幻魔を復活した君が言うかい?」

「それを言うなら兄さんもでしょ」

「うむ、流石十代だ」

「三沢君いつからいたの?」

「最初からだ!」

 

三幻魔を倒した事ですっかり和気あいあいとした空気になり、みんな十代を囲むように集まった。そんな中十代は三幻魔の力を失い、老人の姿に戻った影丸理事長の元に歩き、スッと手を差し伸べた。

ハァ、自分の欲の為に三幻魔を利用した相手を許すって言うのか。

 

「本当にお人よしだな」

「ため息ついてる割には顔が嬉しそうね」

「それが十代だから」

 

十代と影丸理事長がデュエルの件で熱い抱擁を交わしている途中、校長先生がデッキから三幻魔のカードを取り出し元の台座に置いた。

 

「これで一件落着ですな」

「・・・・それはどうかな?」

 

妙にクールで物静かな男の声が耳に入った。耳に入ってから僅かコンマ数秒で嫌な予感がして、バッと台座の方を向くと、そこには人間にあらず者がいた。その者は不思議な力を使い校長先生を突き飛ばし、三幻魔のカードを自分の手中に収めた。

 

「これが三幻魔のカード。まさかリリカルシリーズを追って来てみれば思わぬ収穫が手に入った」

「あ、あの者~ワ!?」

「し、神聖魔導王エンディミオン・・・・」

 

そう、ずっと前から俺が会いたかった相手。精霊達(みんな)を狙い、俺を殺そうとした奴等の親玉。

 

「本来なら俺自身のデッキで貴様を殺そうと思ったが止めだ。この三幻魔を使い貴様を殺しカードを奪おう。なあ? 遊斗・スカリエッティ」

「ゆ、遊斗!?」

「どういう事だ遊斗! 知り合いなのか!?」

 

俺の名前が出た瞬間、みんなの視線が俺に集まった。だが今の俺は質問に答える余裕は無く、無言でみんなを退かし、エンディミオンと睨み合った。

・・・・流石一番数の多い魔法使い族の王だけある。仮面の中に光る二つの目と目があった瞬間、恐怖や威圧感や殺気を感じて、ゴクッと唾を飲み込む。

 

「デュエルする前に何故精霊達(みんな)を狙うか理由を聞いておこうか」

「簡単だ、力が欲しいんだよ。圧倒的な力が。本来なら存在する筈のないカード達。実に魅力的じゃないか」

「三幻魔を手に持ち、なお力を求めるのか!?」

「確かに三幻魔の力は強大だ。だが三幻魔も結局は元から存在するカード。俺が手にしたいのは存在する筈のないカードだ!」

 

奴が叫んだ瞬間、奴を中心に強力な衝撃波が走った。木々は大きく揺れ、辺りに落ちていた石は遠くに飛ばされ、衝撃波が走る間海の波が変わったのが見えた。

・・・・ッフ、奴の手下全員全員倒さなきゃ会えないと思っていたが、向こうから来てくれるとはな。奴が三幻魔を持っていようと、俺は負けない! 絶対に勝ち、精霊達(みんな)を守る!

 

「王自ら俺の前に来たのを後悔しろ!」

「闇のデュエルでどこまでその態度がとれるかな。さあ、三幻魔の力をとくと見るがいい!」

「「デュエル!」」

 

 




次回主人公が戦う三幻魔のアニメオリジナル版(一部裁定やデュエルの展開などで変更あり)

神炎皇ウリア ☆炎/炎族/A0・D0
自分フィールド上の罠カード3枚を墓地に送った場合に特殊召喚することができる。
1ターンに1度だけ、相手フィールド上にセットされている罠カード1枚を破壊することができる。
このカードの攻撃力は自分の墓地の罠カード1枚につき1000ポイントアップする。
このカードが墓地に存在する時、手札の罠カードを墓地に送ることで、墓地のこのカードを特殊召喚することができる。

アニメオリジナルと違うところは、魔法・罠・モンスター効果の耐性がない、攻撃力だけしか上がらない、墓地から復活したターン攻撃できないデメリットが無い。


降雷皇ハモン ☆10/光/雷族/A4000・D4000
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上の魔法カード3枚を墓地に送ることで特殊召喚することができる。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、相手ライフに1000ポイントのダメージを与える。
守備表示のこのカードが破壊されたターン、コントローラーの受けるダメージは0になる。この効果は発動ターンのみ有効とする。

効果耐性をなくしました。


幻魔皇ラビエル ☆10/闇/悪魔族/A4000・D4000
このカードを生贄召喚する場合、3体の生贄を捧げなければならない。(モンスター3体をリリースしなければならない)
相手がモンスターを召喚・特殊召喚したとき、自分フィールド上に「幻魔トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守1000)を同じ数だけ特殊召喚する。
1ターンに1度だけ、自分フィールド上のモンスター2体を生贄に捧げることで、このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は生贄に捧げたモンスターの攻撃力分アップする。

召喚条件の所の()は作者自身が混乱しない様に書いています。上記二枚と同じように効果耐性がありません。


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第二十二話 デュエルパート

前回の前書きに書いたとおり、デュエルパートです。
今回のデュエルの構成にかなり苦労しました。


今回のデュエルは長いので、エンドフェイズ毎の場の確認に、表側になっている魔法・罠カードを()内に書いています。評判が良ければこれから表側のカードは書いていきたいと思います。


「先攻は俺だ、ドロー! 永続魔法時空管理局を発動! リリィを通常召喚、効果でデッキから銀十字を手札に加える」

A500・D500

 

「そして手札を一枚捨てデッキからトーマを特殊召喚。効果で時空管理局にLCが乗る!」

『まさか三幻魔と戦う事になるなんてな。行くよリリィ!』

『うん!』

 

A1000・D1000

LC時空管理局0→1

 

色々な死戦を潜りぬけてきたトーマも今回は精神的にも辛いようだ。リリィを不安がらせない様に強がっているが、俺にはトーマが無理しているのが分かる。これでも精霊達(みんな)の主だからな。

 

「場のトーマとリリィを融合! 来い、リアクト・エンゲージ―トーマ! 効果で自身の時空管理局にLCが乗る!」

 

A2500・D2500

LC時空管理局1→2 トーマ1

 

「トーマに銀十字を装備。ターンエンドだ!」

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000(管理局・銀十字)

 

出だしとしてはまず問題ない。だが相手は三幻魔、一秒も油断は許されない。全神経を研ぎ澄まし、奴の出方、効果を使うタイミングに気を付ける!

 

「ドロー! カードを三枚セット、そして自分フィールド上の三枚の罠を墓地に送り神炎皇ウリアを特殊召喚!」

 

ウリアA0・D0→A3000

 

奴の場に天空へと登る巨大な火柱が現れ、その中から赤く蛇の様に長いモンスターが現れた。

神炎皇ウリア。三幻魔の中の一枚。自己再生能力を持つウリアは、三幻魔の中でも一番強いかもしれない。

 

「そのカードは色々と厄介な様だからな。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000 (管理局・銀十字)

魔導王 モンスター1 伏せ2 手札0 LP4000

 

攻撃して来ない? いや、攻撃して来ないのはトーマの効果を知っているからだろうだが、手札を全てセットする必要があるのか? ウリアは復活効果を持つが、手札コストが無いと意味が無い。あの二枚の伏せは速攻魔法、なんて事も無いだろう。

だとすればあの伏せのどちらかには、十中八九相性の良い、強欲な瓶が入っている筈。1:1効果で墓地の罠を増やせるからな。

 

「ドロー! デバイスマイスター発動! デッキから闇の書を手札に加え、時空管理局のLCを二つ取り除きデッキからツヴァイを手札に加える!」

 

LC時空管理局2→0

 

「トーマの効果発動! 自身のLCを一つ取り除き、相手フィールド上のモンスターの攻守を2000下げる!」

『Silver Stars Hundred million』

『『シルバー・スターズ・ハンドレッドミリオン!』』

 

LCトーマ1→0

 

銀十字から出された紙の一枚一枚、弾丸を生成させる鍵。一枚で一発の弾丸しか作れないが、紙の枚数は何百枚もある。何百枚の紙から放たれた、何百もの弾丸がウリアに向け発射された。

 

ウリアA3000→A1000

 

「バトル! トーマでウリアを攻撃!」

『『シルバーハンマー!』』

 

A2500 VS A1000

 

「攻撃宣言時強欲な瓶を発動。デッキから一枚ドローする。更にダメージ計算時ガード・ブロックを発動し、ダメージを0にして一枚ドロー」

 

ウリアを破壊出来たが奴へのダメージは0。墓地の罠を増やされた上、二枚ドローされたか。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター1 伏せ3 手札4 LP4000 (管理局・銀十字)

魔導王 モンスター0 伏せ0 手札2 LP4000

 

「ドロー。墓地のウリアの効果。手札の罠を墓地に送り特殊召喚。これによりウリアの攻撃力は6000!」

 

ウリアA0・D0→A6000

 

「二ターン目から攻撃力6000のモンスター!?」

 

流石三幻魔。破格の効果をお持ちであられる。だがこっちもそう簡単にやられてたまるか。

 

「ウリアの効果発「その前に罠発動! ソニックムーブ! トーマを除外だ」ッチ」

「銀十字の効果でデッキからリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマを守備で特殊召喚!」

 

LC時空管理局0→1

A3000・D2000

 

「ッチ、まあいい。フィールド魔法、失楽園を発動。フィールドに三幻魔の内一体がいる時、デッキから二枚ドローする」

 

失楽園のフィールドはその名の通り失った楽園だった。フィールドの真ん中には枯れたリンゴの樹があり、一つだけ腐ったリンゴが生えていた。地面もドロドロとした紫色の沼で、頭部の骸骨が落ちており、気持ち悪い生物がいる。

 

「バトル、ウリアでリアクト・エンゲージ―黒騎士トーマに攻撃! 燃え散れ、ハイパーブレイズ!」

 

A6000 VS D2000

 

ウリアの口から放たれたのは、極太の炎の柱。その炎柱は黒騎士トーマを呑み込み、エンディミオンの宣言通り燃え散った。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、トーマが帰ってくる」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000 (管理局)

魔導王 モンスター1 伏せ1 手札2 LP4000

 

今の所ライフに動きは無い。だがウリアの攻撃力は3ターン目で既に6000。壁モンスターがいなくなれば一回の攻撃でライフは0。俺の負けだ。

 

「ドロー! 墓地の銀十字の効果、手札の闇の書を捨て手札に加える。墓地に送られた闇の書の効果。トーマに装備する!」

 

トーマA2500→A2800

 

「トーマに銀十字を装備。魔弾作製発動。トーマを生贄にデッキ、墓地から可能な限りカートリッジロードを手札に加える。

そして墓地に送られた銀十字の効果で墓地から黒騎士トーマを復活。闇の書を黒騎士トーマに装備」

 

LC時空管理局1→2

トーマA3000→A3300

 

「フェイトを通常召喚! 効果でLCを置き、そのLCを使いウリアの表示形式を変更する!」

「ック、ウリアの守備力は0・・・・」

「時空管理局のLCを取り除きアルフを特殊召喚。時空管理局にLCが乗る。場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

「凄い! 三幻魔相手にデュエルを支配している」

「バトル! 黒騎士トーマでウリアに攻撃!」

『『ディバイドゼロ!』』

 

A3000 VS D0

 

リアクター996をウリアに向けて構えたトーマは、数秒の溜め時間で極めて貫通能力の高い砲撃を発射した。攻撃表示だったらウリアに敵わないが、守備なら別だ。ウリアはトーマの砲撃をくらい、再び墓地に送られた。

 

「馬鹿な!?」

「闇の書の効果! 戦闘でモンスターを破壊した時、LCを乗せる! 続いてフェイトさんでダイレクトアタック!」

「「「「「フェイト“さん”?」」」」」

 

A2800

 

「させん! 二枚目のガード・ブロックを発動。戦闘ダメージを0にし一枚ドロー!」

 

ック、まさか二枚目とは。確かに発動条件をクリアしたら手札的に損は無いし、ウリアの攻撃力が更に上がる。これでウリアの攻撃力は7000、復活した時にはもう8000。パワー・ボンドを使ったサイバー・エンド・ドラゴンと同じだ。

 

「カートリッジを二枚闇の書に発動! そして闇の書の効果、このカードを除外して墓地からアインスを特殊召喚。効果で融合デッキから夜天の書を特殊召喚する」

 

A2300・D2300

A0・D0

 

「夜天の書の効果。時空管理局のLCを二つ取り除き二枚ドロー。カートリッジをトーマに発動」

 

LCトーマ0→1 時空管理局2→0

 

ここは闇の書はあえて装備させない方がいいだろう。黒騎士トーマの影響があるからな。

 

「墓地の銀十字の効果。手札を一枚捨て手札に加え、トーマに装備。ターンエンドだ」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター4 伏せ2 手札3 LP4000 (管理局・銀十字)

魔導王 モンスター0 伏せ0 手札3 LP4000

 

「ドロー! ッチ、まあいい。永続魔法天変地異とデーモンの宣告を発動。天変地異の効果でお互いデッキを反対にしてデュエルを続ける」

 

天変地異コントロールか・・・・。デーモンの宣告はライフを500払いカード名を一枚宣言。デッキトップがその宣言したカードだったら手札に加えるカード。本来ならリスキーで誰も使わないカードだが、天変地異の効果でデッキトップが分かる為、100%当てる事ができる。

 

「ほお、デーモンの宣告の効果。ライフを500払いカード名を宣言、宣言するカードは降雷皇ハモン。デッキトップは当然降雷皇ハモンだ」

 

魔導王LP4000→3500

 

二枚目の三幻魔を手札に加えられたか。もう一枚のカードは十中八九魔法カードか?

 

「カードを一枚セット。三枚の魔法カードを墓地に送り降雷皇ハモンを特殊召喚!」

 

A4000・D4000

 

奴がカードをデュエルディスクにセットした刹那、氷柱が奴のフィールドから生えた。その氷柱には、先端が鋭く尖った氷が木の様に生えている。氷柱が割れた瞬間、中から降雷皇ハモンが現れた。・・・・どうして降雷なのにアニメーションが氷なんだ・・・・。

 

「失楽園の効果! デッキから二枚ドローする。ッフ、墓地のウリアの効果。手札の罠一枚を墓地に送る事で特殊召喚する!」

 

罠を引かれてしまったか。本日何度目か分からない火柱が現れ、ウリアがより強くなり現れた。

 

「墓地の罠の数は八枚! よって攻撃力は8000!」

 

ウリアA0・D0→A8000

 

「も、もうダメっす! 攻撃力8000なんてアニキの時でも無かったのに・・・・」

「何言ってんだ翔! 気張れ遊斗!」

「応援をした所で無駄だ! バトル! ウリアで黒騎士トーマを攻撃! ハイパーブレイズ!」

 

甘いなエンディミオン。ウリアでトーマを攻撃したのは間違いだった。

 

「トーマの効果発動! LCを一つ取り除き、フィールドのモンスターの攻撃力を半分にする。更に銀十字を装備している場合、その効果は攻守を0にする効果になる!」

『Divide Zero Eclipse』

『『ディバイドゼロ・エクリプス!』』

 

トーマとリリィの声と共に、トーマを中心に黒の衝撃波がフィールドを襲った。この衝撃波を受けたトーマ以外のモンスターの攻守は全て0になる。

 

フェイトA2800・D500→A0・D0

アインスA2300・D2300→A0・D0

ハモンA4000・D4000→A0・D0

ウリアA8000→A0→A8000

 

「ど、どうしてウリアの攻撃力が8000のままなんだ!?」

「馬鹿がっ! ウリアの攻撃力アップ効果は永続効果。デュエルモンスターズのルールにより、~にする、の後に~アップする、効果が適用される。無知が仇となったな!」

 

そう、ウリアの攻撃力上昇は面白い効果だ。収縮や巨大化でも攻撃力が影響されることは無い。

だがそれくらい俺だって知っている。さっきの十代と影丸理事長のデュエルを見ていたし、ヴィヴィオさんも同じだからな。

 

A8000 VS A3000

 

「ああ、だからトーマの効果は無意味。だが俺の目的はハモンの攻撃力を0にすること! ダメージ計算時ザフィーラの効果でダメージを0にする。戦闘ダメージは5000、よってデッキから一枚ドロー!

さあ、ハモンの攻撃力は0。攻撃力が0同士のモンスターが戦闘を行っても相討ちにはならないがどうする?」

「ほう、三幻魔二体を相手にしてそんな態度が出来るとはな。フィールドバリアを発動してターンエンドだ」

 

フェイトA0・D0→A2800・D500

アインスA0・D0→A2300・D2300

ハモンA0・D0→A4000・D4000

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札3 LP4000 (管理局)

魔導王 モンスター2 伏せ1 手札1 LP3500 (フィールドバリア)

 

ありがとなトーマ。お前のおかげで被害を最小限に抑える事が出来た。勿論ザフィーラがいなかったら終っていたから、ザフィーラもナイス活躍。

さて、あの失楽園をミッドチルダで上書き出来たらよかったけど、フィールドバリアの所為で破壊は難しい。失楽園に気を取られていたら、幻魔達にやられてしまう。あくまで倒すべき相手は三幻魔だ。

 

「・・・・シニョール遊斗は笑っているノ~ネ」

「や、闇のデュエルなのに?」

「そう言えば遊斗、本人は気付いてないみたいだけど、時々凄く不気味な笑みを浮かべるんだよな」

 

? 俺が笑っている? 全く実感が無かったので頬に手を当てると、頬の筋肉が上に上がっていた。

 

「ほう、貴様今まで自分が笑っていたのを気付いていなかったのか?」

「・・・・ああ、だから何だ? ドロー! フェイトさんを生贄に、迅雷の化身フェイトを特殊召喚! 時空管理局にLCが一つ乗る!」

 

カードから眩く輝くプラズマが出現し、バチバチバチと不規則に動いていた。プラズマは徐々に形を変え、二体の幻魔を威嚇するように狼の姿になり、空気中の電子を震わせる咆哮を上げる。その後更に形を変え、人の姿になる。

 

『三幻魔が相手か。流石に雑魚扱いは出来ないね』

 

A3300・D0

 

「当たり前です。夜天の書の効果でアインスに装備。シャマ姉を通常召喚し効果でLCを時空管理局に置く」

 

A700・D1800

時空管理局LC1→2

 

「そして時空管理局のLCを取り除きツヴァイを特殊召喚。時空管理局の効果でLCはプラスマイナス0。場のシャマ姉とツヴァイを融合! 来い、祝福の癒し手シャマル!」

 

A1000・D2300

 

「っふ、その程度の攻撃力のモンスターで三幻魔に勝てると思っているのか?」

「当たり前だ。シャマ姉の効果で時空管理局にLCを置き、夜天の書の効果で時空管理局のLCを全て取り除き三枚ドローする!」

 

LC時空管理局2→3→0

 

シャマ姉が時空管理局に与えた力を、夜天の書が自らの力に変え、俺にドローさせてくれた。これで手札は最初と同じ四枚。まだまだいける!

 

「場の祝福の癒し手シャマルを生贄にホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚!」

 

三幻魔との戦いに似つかわしくない、ピチョンという小さな音が響いた。音源は俺の場に現れた小さな湖に一滴の雫が落ちたのだ。その湖から童話の女神の様に現れたのは最終形態のシャマ姉。だけど女神の様に優しい笑みを零さず、無表情のまま二体の幻魔を眺める。

 

A2000・D3000

 

「ホーリーシャマ姉の効果発動! 俺の手札×300ライフを回復し、その回復した数値分相手にダメージを与える! 俺の手札は三枚!」

『戒めの鎖』

 

俺の手札から現れた禍々しい三つの鎖が奴の体を貫通した。

 

「ッグ、グアアアッ!」

 

遊斗 LP4000→4900

魔導王LP3500→2600

 

これはあいつが言った様に闇のデュエル。ライフはその名の通り命。ライフが減れば本物の命も減ると言う事だ。どうやらあいつはインチキ無しで勝負してきたらしい。そこは褒めるべきところだ。

 

「魔法・罠ゾーンにキャロを置く。ホーリーシャマ姉の効果で、キャロにLCを二つ置く。キャロの効果でフィールドのLSの攻撃力が900上がる」

 

LCキャロ0→2

フェイトA3300・D0→A4200・D900

アインスA2300・D2300→A3200・D3200

シャマルA2000・D3000→A2900・D3900

 

「す、凄いんだな・・・・」

「遊斗の奴、ここまで強い奴だったか?」

「遊斗は元々強い。それに加え、三幻魔と戦える喜びがあいつを強くさせている。本人は普通にデュエルしているみたいだけど」

 

十代達は何を話しているんだ? ・・・・まあいい。行くぞ!

 

「バトル! 雷フェイトさんでハモンを攻撃!」

『フォトンランサーファランクスシフト』

 

フェイトさんはパチンと指を鳴らし、76基のフォトンスフィアを展開した。最初から全力全開で行く気か。多分雷使いとして、降雷皇と呼ばれるハモンを雷で倒したいのだろう。

 

『撃ち砕け、ファイア!』

 

A4200 VS A4000

 

ハモンは巨大な両翼を盾にフェイトさんのフォトンランサーを耐え続けた。だがフォトンランサーファランクスシフトは、堅い壁を撃ち砕く為の魔法。鋭く圧縮された魔力弾を連続で撃ち続ける事で、徐々に防御を崩していく。

実際ハモンの翼は徐々に傷が付いている。単純計算で3000ぐらいのフォトンランサーをぶつけた頃、ついにハモンの翼を貫通して本体を破壊した。

 

魔導王LP2600→2400

 

「ック、おのれえええ!」

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ雷フェイトさんの効果でデッキからフォトンランサーをセットする」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ5 手札1 LP4900 (管理局・キャロ・夜天の書・フォトンランサー)

魔導王 モンスター1 伏せ1 手札1 LP2400 (フィールドバリア)

 

戦況は有利だ。だが奴のデッキから罠カードが消えない限り、ウリアは復活し続ける。流石に攻撃力8000のモンスターの攻撃を耐え続けるのは無理だ。

 

「ドロー!」

「スタンバイフェイズフォトンランサーを発動! ウリアを破壊する!」

「構わん! ウリアの効果、手札の罠を捨て復活!」

 

ウリアA0・D0→A9000

 

ック、やっぱり罠を握っていたか。俺は十代みたいに相手の墓地を除外するカードを持っていないから、効果を無効にするか破壊し続けるぐらいしか方法が無いんだよな。

 

「召喚成功時フィジカルヒールを発動。雷フェイトさんを選択し、そのレベル×400ライフを回復する。雷フェイトさんのレベルは10。ライフを4000回復」

 

遊斗LP4900→8900

 

「失楽園の効果。デッキから二枚ドローする。バトル! ウリアでアインスを攻撃! ハイパーブレイズ!」

 

A9000 VS A3200

 

「夜天の書の効果! 墓地の夜天、または祝福と名のつくモンスターをデッキに戻し、その攻撃力の半分を装備モンスターの攻撃力に加える。攻撃力1600のザフィーラをデッキに戻し、攻撃力を800上げる!」

 

アインスA3200→A4000 VS A9000

 

「だからどうした! 5000のダメージを受けてもらう!」

 

ウリアから放たれは火の砲撃がアインスを襲い掛かった。アインスはベルカ式の盾で防ごうとするが、ウリアの攻撃力は9000。アインスでは受け止める事は当然無理だ。アインスを貫通してきた炎が俺の目の前まで迫り、アインスと同じように俺を呑み込んだ。

 

「うわああああああああっ!」

 

熱い熱い熱い熱い熱い熱い! 溶岩の中に放り込まれたかと思うくらい体は熱く、突然の熱に心臓の鼓動がいつもの何倍の速さになる。皮膚が全て燃え散り、黒焦げになる熱さの筈だが、皮膚には焦げ跡一つ無い。だがこの熱さと痛みは本物。

ダメージ5000は伊達では無く、意識が飛びそうになったのは一度や二度じゃない。

数秒か、あるいは数分か、ウリアの攻撃が終った頃には、頭も視界も朦朧としている。

 

遊斗LP8900→3900

 

「遊斗ー!?」

「頑張れ遊斗! 立つんだ!」

「何言ってるんだ!? 5000のダメージを受けたんだ!」

『・・・・何してるの遊斗。早く私の力を使いなさい』

 

・・・・ハハッ、攻撃や効果以外で口を開いたのは数ヵ月ぶりって言うのに、ずいぶん手厳しいねホーリーシャマ姉。

 

「シャ、シャマ姉の効果・・・・。 キャロのLCを二つ取り除きフィールドから離れるのを無効にする」

 

キャロLC2→0

フェイトA4200・D900→A3600・D300

アインスA3200・D3200→A2600・D2600

シャマルA2900・D3900→A2300・D3300

 

「面倒な。モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ3 手札1 LP3900

魔導王 モンスター2 伏せ2 手札1 LP2400

 

あ~、ヤバイかも・・・・。ウリアの攻撃で頭がボーとしてる。ライフ的には3900で初期ライフとほとんど変わってないけど、受けたダメージは5000だからな。

 

『遊斗。さっさとドローして』

「・・・・り、了解です。ハァ、フェイトは優しくて可愛いのに・・・・。ドロー! まずホーリーシャマ姉の効果で時空管理局にLCを二つ置く」

 

LC時空管理局0→2

 

「アインハルトを召喚。アインハルトがフィールドにいる時アスティオンは特殊召喚できる。ティオの効果でこのカードを除くLSモンスターのレベル×100ライフを回復する。俺の場のLSの合計は27よって2700ライフを回復」

 

遊斗LP3900→6600

LC時空管理局2→3

 

アスティオンが『にゃ~』と鳴くと俺の体が光りライフを回復した。あ~、何だかポカポカしてウリアからのダメージが消えていく。本当に命が回復している様だ。

 

「場のアインハルトとアスティオンを融合! 来い、覇王アインハルト!」

 

アインハルトA2700・D2200→A3000・D2500

LC時空管理局3→4

 

「夜天の書の効果で時空管理局のLCを全て取り除き四枚ドローする!」

 

相手が失楽園でドローするならこっちは夜天の書をひたすら使い回してやるしかない。攻撃力9000のウリアがいる以上、普段疎かにしているライフ回復に優先した方がいいだろう。

 

「ホーリーシャマ姉の効果! 俺の手札は四枚。1200ライフを回復し、その分お前にダメージを与える!」 

『戒めの鎖』

「ガアアッ!」

 

遊斗  LP6600→7800

魔導王 LP2400→1200

 

「速攻魔法ユニゾンアウトを発動。覇王アインハルトを融合デッキに戻し、融合素材を特殊召喚。アスティオンの効果でライフを2700回復」

 

遊斗LP7800→10500

 

「ラ、ライフ10500に対して相手は攻撃力9000のモンスター・・・・」

「遊斗の奴ダメージ覚悟で突っ走ってる」

「再び二体を融合! 覇王アインハルト!」

 

アインハルトA2700・D2200→A3000・D2500

 

「夜天の書とアインスの装備を解除。そして速攻魔法フェイクシルエットを夜天の書に発動。デッキからはやてを墓地に送り、夜天の書をはやてとして扱う! 場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

例え相手が三幻魔の専用のフィールドであろうと、王様はやてさんの登場時に辺りが暗くなるのは変わらなかった。腐ったリンゴの樹も、気持ち悪い沼も見えない、本当に真っ暗の世界。そんな暗闇の中、光の柱が現れ、そこからはやてさんがゆっくりと舞い降りてきた。

 

はやてA2800・D2800→A3100・D3100

LCはやて3

 

「なるほど。噂には聞いていたがそのモンスターも凄い力を持っている」

「三幻魔を使っているお前が言うな。王様はやてさんの効果! LCを一つ使い、ウリアの効果を無効にする!」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)!』』

 

シュベルトクロイツから放たれた闇の鎖が三幻魔の一角であるウリアを縛り上げた。

 

LCはやて3→2

ウリアA9000→A0

 

「ッチ、ウリアの攻撃力が・・・・」

「カードを一枚伏せてバトル! 雷フェイトさんでウリアを攻撃!」

「バトルフェイズ開始時にレインボー・ライフを発動! 手札を一枚捨て、このターン受けるダメージの変わりにその数値分ライフを回復する。さあ、どうする?」

 

今発動してくるか。このタイミングを逃したら攻撃力10000のウリアの攻撃が待っている。次の奴のターン再び王様はやてさんの効果を使ってもいいけど、LCの消費が荒い。それになによりライフを回復されるより、フォトンランサーをセットしておきたい。

 

「雷フェイトさんでウリアを攻撃!」

 

A3600 VS A0

魔導王LP1200→4800

 

「アインハルトでそのセットモンスターに攻撃!」

「セットモンスターはメタモルポット! 手札を全て捨てお互いデッキから五枚ドロー!」

「だがアインハルトの効果でライフを700回復する」

 

A3000 VS D600

遊斗LP10500→11200

 

手札を補充されてしまったか・・・・。さて、これからどうするかが問題だな。幸い王様はやてさんは守備で出してるけど、雷フェイトさんとアインハルトは攻撃表示のままか。まあ余り嬉しくない事にライフには余裕がある。俺が頑張って耐えれば特に問題はない。

 

「魔力高炉を発動。LCを二つ置く」

 

魔力高炉LC2

 

「ターンエンドだ。エンドフェイズ魔力高炉のデメリットによりライフを1000払う。そしてアインハルトの効果で自身を融合デッキに戻し、融合デッキから聖王ヴィヴィオを特殊召喚しデッキから聖王の鎧を手札に。最後に墓地のフォトンランサーをセットする。

因みにヴィヴィオさんの攻撃力は墓地のLSの数×400上がる。墓地のLSは十五枚だ」

 

遊斗LP11200→10200

ヴィヴィオA?・D?→6300・D6300

 

場 失楽園

遊斗  モンスター4 伏せ5 手札5 LP10200 (管理局・キャロ・魔力高炉・フォトンランサー)

魔導王 モンスター0 伏せ1 手札5 LP4800  (フィールドバリア)

 

場でもライフでも圧倒的。だが油断できないのがデュエルであり、奴の三幻魔である。

 

「ドロー、大嵐を発動。フィールドの魔法罠全て破壊する」

「オプティックハイド発動。LSがいる時、フィールドのカードを破壊する効果が発動した時、その効果を自分フィールドに攻守2000のオプティックトークンを特殊召喚する効果にする」

 

人や牛が嵐に飛ばされている、大嵐の絵が、練習用の大型スフィアに変化した。そして絵と同じ大型スフィアが奴のフィールド上に守備で現れた。

 

「ナイト・ショットを発動。そのセットされたフォトンランサーを選択!」

「チェーンして「ナイト・ショットに選択されたカードはチェーン出来ない」なに!?」

 

ック、まさかフォトンランサーと似たようなカードがあるとは・・・・。これで奴の行動を封じるカードが無くなった。

 

「死者蘇生を発動。墓地のハモンを復活!」

 

A4000・D4000

 

「失楽園の効果で二枚ドロー。墓地のレベル・スティーラーの効果。ハモンのレベルを一下げて特殊召喚」

 

A600・D0

 

またそのテントウ虫か。レインボー・ライフの時に捨てたカードか。

 

「デビルズ・サンクチュアリを発動し、メタルデビル・トークンを特殊召喚。場のオプティックトークン、レベル・スティーラー、メタルデビル・トークンを生贄に幻魔皇ラビエルを召喚!」 

 

A4000・D4000

 

最後の幻魔が降臨した。青い体はオベリスクの巨神兵と同じだが、幻魔と言われるだけあり、尖った手や顔が恐怖を与えて来る。

 

「墓地のウリアの効果、手札の罠を墓地に送り復活! 墓地の罠は十一枚。よって攻撃力は11000!」

 

ウリアA0・D0→A11000

 

ついに三幻魔が揃ってしまった。影丸理事長の時と同じように、三幻魔が辺りの生き物の生気を奪い取り始め、植物が枯れ、精霊達が力を奪われて行く。三幻魔の放つ威圧感は、亮さんのサイバー・エンドやカイバーマンのブルーアイズを軽く上回り、一瞬だけだが重心が後ろに行った。

 

「更に手札の閃光の双剣―トライスをラビエルに装備。攻撃力を500下げ、ラビエルは二回攻撃ができる。バトル! ラビエルで夜天の主・八神はやてに攻撃! 天界蹂躙拳(てんかいじゅうりんけん)!」

 

ラビエルA4000→A3500 VS D3100

 

ラビエルは自らの武器である巨大な手で拳を作り、その巨体からは想像もできない速さで拳を繰り出した。だがはやてさんの効果は一つではない。

 

「王様はやてさんの効果! LCを一つ取り除き、破壊を無効にする!」

『『パンツァーシルト!』』

 

LCはやて2→1

 

ラビエルの攻撃を三角形の魔法陣で防ぐ。いつもは無表情な王様はやてさんだが、ハモンの攻撃は辛いのか、目のつり上がった顔をしている

 

「まだだ! ラビエルで夜天の王・八神はやてに二回目の攻撃! 天界蹂躙拳(てんかいじゅうりんけん)!」

 

A3500 VS D2800

 

「シャマ姉の効果発動! 魔力高炉LCを二つ取り除きLSと名のつくモンスターがフィールドを離れるのを無効にする!」

『風の護盾』

 

LC魔力高炉2→0→破壊

 

「ハモンで夜天の王・八神はやてに攻撃!」

「攻撃宣言時王様はやてさんの効果! 相手フィールド上のモンスターの効果を無効にする! それにチェーンして墓地のソニックムーブの効果。このカードをゲームから除外して王様はやてさんを除外する!」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)!』』

 

LCはやて1→0

ウリアA11000→A0

 

ラビエルの二回の攻撃をはやてさんに受けさせ、極力ダメージを減らす作戦だったが上手くいった。これで次のターンもウリアを無力化する事ができる。

 

「なら迅雷の化身フェイトを攻撃! 失楽の霹靂!」

 

A4000 VS A3600

 

さっきの借りを返すかのように、ハモンは両翼の先端にある巨大な爪を合わせ、そこに邪悪な雷を溜めて行く。フェイトさんの体を呑み込む程の大きな球体に育て、雷の球体を発射した。

フェイトさんがこっちをギロリと睨むが、手札にスバルさんが無いのでどうしようもない。

 

遊斗LP10200→9800

ヴィヴィオA6300・D6300→A6700・D6700

 

「ッグ、この程度」

「ハモンの効果を忘れるな! 戦闘でモンスターを破壊し墓地に送った時、相手に1000ポイントのダメージを与える! 地獄の贖罪!」

 

上空がゴロゴロと低い音を立て、嫌な予感がした刹那、上空から雷が落ちてきた。

 

遊斗LP9800→8800

 

「ぐああああっ!」

 

体中を何百、何千もの針で容赦なく刺されているかと思える激痛。自分の意志で動かしていないのに、体中の筋肉がビクビクと震え、雷が収まると同時に震えも止まった。

や、やっぱりコストでライフを払うのと、ダメージを受けるのじゃ、プレイヤーが受けるダメージが月とスッポンだ・・・・。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、ウリアの攻撃力が元に戻る」

 

ウリアA0→A11000

 

「王様はやてさんが俺の場に戻り、ヴィヴィオさんの効果で自身を融合デッキに戻し、融合デッキから冥王イクスヴェリアを特殊召喚する」

「ラビエルの効果。相手が召喚、特殊召喚に成功した時幻魔トークンを特殊召喚する」

 

LC時空管理局0→1

イクスヴェリアA2000・D2500→A2300・D2800

A1000・D1000

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札5 LP8800 (管理局・キャロ)

魔導王 モンスター4 伏せ3 手札0 LP4800 (フィールドバリア・トライス)

 

ウリアの攻撃力は10000を越えているが、ラビエルは装備魔法の効果で二回攻撃が可能。取りあえずラビエルから倒すのを優先した方がいいか? ウリアは破壊しても蘇るし。

 

「ドロー! ホーリーシャマ姉の効果! 俺のライフを1800回復し、お前にその数値分ダメージを与える!」

『戒めの鎖』

「ッグ!」

 

遊斗 LP8800→10600

魔導王LP4800→3000

 

「なのはを通常召喚! 効果でLCを置き、そのLCを取り除きフィールドバリアを破壊!」

『ディバインシュート!』

「ッチ、フィールドバリアを破壊したか。ラビエルの効果でトークンを特殊召喚」

 

なのはの手のひらから生まれた桃色の丸い弾丸は、フィールドバリアを貫通し破壊した。

 

「フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動! 時空管理局のLCを取り除きユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは! 時空管理局にユーノとなのはさんの、二つが乗る」

 

A1000・D3000

LC時空管理局0→2

 

『これが三幻魔・・・・。まさか対決するなんてね』

「ええ。なのはさんの効果発動。デッキからスバルさんを手札に加える。ホーリーシャマ姉の効果で王様はやてさんにLCを二つ置く」

 

LCはやて0→2

 

「そしてLCを二つ使い効果発動。融合デッキから効果を無効にして祝福と名のつくカードを特殊召喚する。祝福の騎士ヴィータを特殊召喚!」

 

LCはやて2→0

 

「ヴィータさんを生贄に来い! 紅の鉄騎ヴィータ!」

 

ヴィータA3000・D2800→A3300・D3100

 

真紅の光を発し登場してきたヴィータさんは、グラーフアイゼンの先端の尖った所を地面に刺し寄りかかりながらも、三幻魔を下から睨みつける。

 

「ミッドチルダの効果で、時空管理局のLCを王様はやてさんに移動」

 

LC時空管理局2→1 はやて0→1

 

「王様はやてさんの効果でウリアの効果を無効にする」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)!』』

 

ウリアA11000→0

 

「イクスを攻撃表示に変更。バトル! 紅の鉄騎ヴィータで幻魔トークンを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A3300 VS D1000

 

「このままだと負けだな。攻撃宣言時、和睦の使者を発動! これにより俺のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージを受けない」

 

グラーフアイゼンのドリルは、和睦の使者が出したバリアによって受け止められ、幻魔トークンまで届かなかった。

 

「ッツ・・・・カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、イクスの効果でこのカードを融合デッキに戻し、融合デッキからアインハルトを守備で召喚する」

 

アインハルトA2700・D2200→A3000・D2500

ウリアA0→A12000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター5 伏せ4 手札2 LP10600 (管理局・キャロ)

魔導王 モンスター5 伏せ1 手札0 LP3000  (トライス)

 

念の為にイクスで攻めておいて正解だった。こういう時融合デッキに戻る効果は便利。奴のドローソースだった失楽園は破壊したが、既に奴の場には三幻魔が揃っている。はやてさんのLCが無いからウリアを止める事ができないが。

 

「ドロー! ラビエルの効果発動。一ターンに一度、自分フィールド上のモンスター二体を生贄に捧げる事で、このターンのエンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は生贄に捧げたモンスターの攻撃力分アップする。幻魔トークン二体を生贄に捧げ、攻撃力を2000アップする!」

 

ラビエルA3500→A5500

 

攻撃力5500の二回攻撃!? ウリアの攻撃力は12000だし洒落にならないんだが。

 

「ウリアの効果発動、一ターンに一度相手の罠を破壊する! 右側のセットカードを選択。トラップディストラクション!」

「残念だが俺が伏せたカードは聖王の鎧。魔法カードだ」

「ッチ、まあいい、バトル! ウリアでAOA高町なのはを攻撃! ハイパーブレイズ!」

 

A12000 VS A1000

 

「このままじゃ遊斗のライフが!」

「ヴィータさんの効果発動! ウリアの攻撃対象をヴィータさんに変更する!」

 

A12000 VS A3300

 

ウリアの口から放たれたのは、超高熱の火の砲撃。その砲撃はなのはさんの方へ発射されたが、ヴィータさんがなのはさんを庇う様に、ウリアとなのはさんの間に立ち、必死に抵抗したが攻撃力が4倍近く違い、抵抗は無駄に終わった。

ヴィータさんを呑み込んだその炎は、なのはさんを無視するように通り抜け、俺に向かって襲ってきた。ウリアの口に火が現れた瞬間、辺りの温度が数度上がる程の炎。炎が徐々に近づくにつれ、より俺の体感温度が上がり、当たってもいないのに体が火傷しそうだ。

炎が徐々に近づき、視界に映る色が赤とオレンジだけになった。

 

「がっ! うあああああああっ! あっ、あああああああ!」

 

炎の持っている熱が体に流れ込み、体中の水分を蒸発され、肉を焦がされるような感覚。痛い、なんて感覚はコンマ一秒もせずに無くなり、意識が無くなりかけてくる。

ソリッドビジョンの攻撃で、あくまでこの痛みは闇の力の筈なのに、服の一部が燃えている。

体感時間では何時間も経ったが、実際炎の中にいたのはほんの数秒。ウリアの攻撃が止まった瞬間、体に力が入らず、地面に激突しそうになる。

 

遊斗LP10600→1900

 

「遊斗ぉぉおおお!」

「おっと。デュエル中に部外者の立ち入りは禁止だ」

 

視界がぼやけ、耳が遠くなった今、俺を助けてようとしてくれる十代と、それを邪魔するエンディミオンの言動だけ感じる事が出来た。エンディミオンは精霊の力を使い、十代を押し返す。

 

「がっ!」

 

地面と衝突した瞬間、俺の口が勝手に動いた。ははっ・・・・、まだ体は動けるみたいだな。昔伝説のデュエリストの城之内和也さんは、闇のデュエルでモンスターに与えられるダメージがプレイヤーの苦痛になるデュエルをした事あるらしいけど、多分今の俺の痛みはそれ以上だと思う。

けど俺は気絶しない、諦めない。もはや服すらも重りに感じる中、体全身に力を込め、ゆっくりと立ち上がる。

 

「ほぉ。ライフを回復し、最初の大ダメージの痛みが無くなったとは言え、貴様がくらったダメージは既に15000を越えているのだが」

「・・・・」

 

ああ。闇のデュエルの痛みの設定なんて知らないけど、ダメージ的には既に三回は死んでいる計算だ。そりゃ痛いよ、苦しい、諦めたい、けど・・・・。

 

「・・・・」

「ッツ!? き、貴様! この状況でも楽しんでいるのか!?」

 

さっきの激痛で脳のリミッターがいくつか外れたみたいだ。ワクワクが止まらない。どうやって倒そうかと、さっきまで朦朧としていた頭がフル回転する。体の中から力が湧きあがってくる。

自分でも異常だと思うが、興奮が収まらない。

 

「あぁ、楽しい! だってこれが本当の決闘なんだろ!? この平和な時代、普通なら絶対に味わえないこの痛み、この感覚!」

「ッツ、お、お前は・・・・」

「これが俺の本性! 隠していた訳じゃない、俺もついさっきまで気付かなかったんだからな!」

 

膨大なダメージを受けてなお、俺の興奮は収まらない。俺の言動にエンディミオンの手が微かに震えている。

 

「・・・・ッツ、だ、だがどちらにしろこれで終りだ! ハモンでAOA高町なのはに攻撃! 失楽の霹靂!」

 

A4000 VS A1000

 

「ダメージは手札のザフィーラを捨て無効にする。そしてデッキから一枚ドローする!」

「っな!? 何故さっきそのカードを使わなかった!? そのカードを使えばあれほどのダメージを受けなかった筈!」

「俺はライフより手札が大事だからな。例え8700のダメージを受けてもライフが0にならない限りドローを優先したかったんだよ」

「く、狂っている・・・・。だ、だがハモンの効果で貴様に1000のダメージを与える! 地獄の贖罪!」

 

さっきのターンと同じように、雷が俺に落ちてきた。けどウリアの攻撃で頭がおかしくなった所為か、痛みを感じない。

 

遊斗LP1900→900

 

「ラビエルでホーリーカタルシス・シャマルを二回攻撃!」

 

A5500 VS D3300

 

ラビエルの両手から放たれる拳を、片方は防いだものの、もう片方の手により潰されてしまった。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、アインハルトの効果で融合デッキからヴィヴィオさんを特殊召喚する。墓地に存在するLSは22枚。攻撃力は9200になり、キャロの効果で攻撃力が300上がる」

 

ヴィヴィオA?・D?→A9500・D9500

LC時空管理局1→2

 

「幻魔トークンが特殊召喚される」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ4 手札2 LP900  (管理局・キャロ)

魔導王 モンスター4 伏せ2 手札0 LP3000  (トライス)

 

「こ、攻撃力12000に攻撃力9500・・・・」

「攻撃力4000が小さく見える・・・・」

 

だがヴィヴィオさんはエンドフェイズ融合デッキに戻る効果を持つ。このターンでけりを付ける。

 

「ドロー! 時空管理局のLCを取り除き、シグナムさんを特殊召喚」

「ラビエルの効果で幻魔トークンを特殊召喚」

 

シグナムA1800・D1400→A2100・D1700

 

「手札のエリオを墓地に送り、墓地のツヴァイを手札に加え、時空管理局のLCを取り除き特殊召喚。時空管理局の効果でLCのプラマイはゼロだ。

ヴィヴィオさんの効果発動。墓地の夜天の書を選択し、その効果を得る。時空管理局のLCを二つ取り除き、デッキから二枚ドロー!」

 

攻撃力9500になった今、貫通効果やLCを置く効果は必要ない。大事なのは手札だ。俺のデッキは人より多い筈だが、気が付けばだいぶん厚みが無くなっている。

 

「アギトを通常召喚。効果でLCがミッドチルダに置かれる。場のシグナムさん、ツヴァイ、アギトを融合! 来い、氷炎の剣聖神シグナム!」

 

LCミッドチルダ0→1

シグナムA3500・D2000→A3800・D2300

ヴィヴィオA9500・D9500→A10700・D10700

 

俺のフィールドから突如、吹雪を纏った火柱が現れた。ウリアが現れる時の様に荒々しい炎。ハモンが現れた時の様に冷たい氷。矛盾するその二つを操った剣士が、その異様な火柱の中から現れた。

本来ならエースとなる氷炎シグナムさんも、今は攻撃が失敗した時の保険にすぎない。

 

「セットされた聖王の鎧をヴィヴィオさんに装備。バトル! ヴィヴィオさんでハモンに攻撃!」

『ディバインバスター!』

「攻撃宣言時永続罠スピリットバリアを発動! フィールド上にモンスターが存在する限り、このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる!」

 

A10700 VS A4000

 

「ッチ」

 

まさかスピリットバリアが入っているとは思わなかった。ガード・ブロックが入っていたから、どう考えてもアンチシナジーなのだが。どちらもウリアのコストに出来るから、その時その時で使えばいいのか・・・・。

 

「ミッドチルダのLCを王様はやてさんに移動。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LCミッドチルダ1→0 はやて0→1

 

「エンドフェイズヴィヴィオさんの効果で、このカードを融合デッキに戻し、イクスを守備表示で召喚する」

「ラビエルの効果でトークンを呼ぶ」

 

イクスヴェリアA2000・D2500→A2300・D2800

 

「まだだ、アギトの効果でこのターン破壊した相手モンスターのレベル合計×100ダメージを与える。破壊したハモンのレベルは10。1000のダメージだ!」

『ブレネン・クリューガー!』

 

アギトは周りに十個の炎の魔力弾を形成し、エンディミオンに撃った。ウリアの攻撃には程遠いが、俺と同じ痛みを味わえ。

 

「ッグ。おのれ」

 

魔導王LP3000→2000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ4 手札1 LP900  (管理局・キャロ)

魔導王 モンスター5 伏せ2 手札0 LP2000  (トライス・スピリットバリア)

 

「俺のターン、ドロー! ウリアの効果発動! 前のターン伏せたカードを選択!」

「王様はやてさんの効果発動! このカードのLCを取り除きウリアの効果を無効にする!」

 

ウリアA12000→A0

 

「やはり使ってきたか。フィールド魔法失楽園を発動」

「ック、二枚目か・・・・」

 

辺りの景色が近未来都市から、失楽園に変化した。やはりこのフィールド魔法は居心地が悪い。

 

「失楽園の効果で二枚ドロー! ラビエルの効果発動、フィールドの幻魔トークン二体を生贄に捧げ、攻撃力を2000上げる」

 

ラビエルA3500→A5500

 

「幻魔トークンを生贄に暗黒の召喚神を召喚」

 

A0・D0

 

攻撃力0のモンスター? 攻撃力が変化する様子も無いし、一体何故あんなカードを・・・・。

 

「暗黒の召喚神の効果発動! このカードを生贄に捧げ、墓地の三幻魔の内一体を復活させる!」

「なんだと!?」

「出でよ! ハモン!」

 

A4000・D4000

 

せっかく倒したのに一ターンで蘇生されてしまったか・・・・。どう攻めて来る?

 

「バトル! ハモンで冥王イクスヴェリアを攻撃!」

「させない! 攻撃宣言時氷炎シグナムさんの効果発動し、それにチェーンしてstrikersの回収を発動! 墓地のザフィーラ、フェイト、エリオをデッキに戻し二枚ドローする。

氷炎シグナムさんの効果で自身を除外して攻撃してきたモンスターの攻撃力を0にし、守備表示にする」

 

ハモンA4000→A0

 

「また仕留めそこなったか・・・・。まあいい! ラビエルで夜天の主・はやて、冥王イクスヴェリアに攻撃! 天界蹂躙拳(てんかいじゅうりんけん)!」

 

A5500 VS D2800

A5500 VS D3100

 

ラビエルは今までと同じように、その凶悪な武器である拳を使い、王様はやてさんとイクスを破壊した。頼みの綱である王様はやてさんが・・・・。ライフが1000以下だったからハモンを優先して攻撃したがミスだったようだ。

 

「永続魔法、禁止令を発動。氷炎の剣聖神シグナムを選択する。これにより選択したカードを使用する事ができない」

「そんなカードまで!?」

「ターンエンドだ」

 

ラビエルA5500→A3500

 

場 失楽園

遊斗  モンスター0 伏せ3 手札3 LP900  (管理局・キャロ)

魔導王 モンスター3 伏せ3 手札0 LP2000  (トライス・スピリットバリア・禁止令)

 

「これでお前のモンスターはゼロ。魔法・罠にも攻撃力を300上げる事しか出来ないカードと、LCを溜めるカード。そしてずっと前から発動する気配も無いカードだけ。これでどうやって勝つ?」

 

奴の言う通り、今の状況は最悪だ。手札にはスバルさんがいるけど、この状態で攻撃力が1000上がっても何の意味も無い。あとの二枚はティアナさん、なのは様の二枚。攻撃力5000まで上げる事ができるが、火力を上げた所で、スピリットバリアで戦闘ダメージを与える事が出来ないし、ウリアの攻撃力を上回る事など出来ない。

セットしたカードは父さんから貰ったよく分からないカード。父さんから、大切な戦いの時は入れておけ、と言われて今の今まで入れてきたが、銀十字やトーマのコストにしかなっていない。

 

「・・・・ッフ、三幻魔相手にここまでやって負けるなら本望だ。けど父さんから貰った大切なカード達は死んでも守る! ドロ「フッフッフ、よく言った遊斗」へ?」

 

デッキトップのカードを引こうとした瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。その声を聞き、ドローする手が止まり、我ながら間抜けな声を上げた。辺りをキョロキョロ見渡すと、十代達が集まっている所に、声の主がいた。

 

「父さん!? どうしてここに!?」

「私は科学者だからね、三幻魔には非常に興味があるんだよ。いい伝え通りかなりの力を持っている」

 

いや、俺が聞きたいのはどうやってここに来たかなんだが・・・・。まあ父さんの事だから一般人には分からない方法で来たんだろう。

 

「遊斗の親父! 今はそんな事言ってる場合じゃ」

「ふむ、君の言う通りだ。遊斗、君に上げたお守りは今も持ってるかい? それと入れておけと言ったカードはセットしているか?」

 

お守り? それって確か何も書かれていないカードの事だったよな? デッキケースから何も書かれていない三枚のカードを取り出し父さんに見せる。

 

「クックック、そのカードは私が長年かけて作り上げたカードでね。簡単に言うと精霊の力を吸収できる。三幻魔も一応精霊なんだろう?」

「ハッハッハ! 何を馬鹿な事を言っている。そんなカードで三幻魔の力を吸収できるわけがない」

 

エンディミオンの言葉に思わず同意してしまった。三幻魔は天地を枯らし、永遠を与える事ができる超強力なカード。そんな三枚のカードの力を、簡単に破れそうなこの三枚のカードに封じる事など出来る訳がない。

 

「デュエルモンスターズとは実に不思議なものだ。闇のデュエルは勿論、神のカード、三幻魔、カードの精霊、負けた者の魂を封じ込めるカード。最近では精霊狩りと呼ばれる職業もあるらしい。これだけ前例があるんだ。精霊の力を吸収できるカードがあってもおかしくないだろう?」

 

父さんの口が動く度に、エンディミオンの手の震えが強くなり、それに反比例して俺のやる気がどんどん出てきた。そうだ、デュエルモンスターズには無限の可能性が秘められている。だから俺も魅了されたんだ。

俺は何も書かれていないカードの表を三幻魔に向け、ニヤリと笑う。

 

「三幻魔! お前達の力全て・・・・いや、若さを与える力や精霊の力を奪う力等いらない! 純粋な力を寄越せ!」

「や、止めろ! 貴様にそれ以上力を与えるわけには!」

「知らん! さあ!」

 

三枚のカードを天に掲げた瞬間、何も書かれていないカードがブルブルブルと激しく揺れ始めた。それに連動するように、辺りの空気が人間でも感知できる程震える。三幻魔は鼓膜が破れそうな程の雄叫びを上げ、反撃するように俺にそれぞれの攻撃を撃ってくる。

それは闇のデュエルでもソリッドビジョンでも無い。質量のある本当の攻撃だった。

炎を浴びれば焼け死ぬ。拳でペチャンコに潰される。雷で感電死する。凄く怖い、けど・・・・。

 

「まったく、君は本当によく無茶をする」

「・・・・無謀」

「まだ私の出番が来ていない。せめて出してから死んでもらわんとな」

 

俺の目の前には雷フェイトさん、王様はやてさん、なのは様の三人。このデッキの中で最も力を持った三人は、それぞれの手段で三幻魔の攻撃を防いでいる。

なのは様はウリアの炎をブラスターピットを盾に。

雷フェイトさんはハモンの雷を雷で押し返す。

王様はやてさんはシールドと鎖でラビエルの拳を受け止めている。

ゴゴゴゴゴゴ!

よりカードの震えが強くなる。チラリとカードの方を見ると、下から徐々にカードの効果が書かれ始め、次に絵が描かれていった。

 

「止めろ! 止めろおおお!」

「フッフッフ、実験は大成功のようだ」

「よく分かんねえけどやっちまえ遊斗ー!」

「三幻魔なんて結局はカードッス!」

「遊斗ならできるんだな!」

 

ッツ、みんなありがとう。十代、翔、隼人だけじゃない。明日香、万丈目、吹雪さん、クロノス先生、校長先生、理事長までも応援してくれている。

 

「さあ! 完成だぁああああああ!」

 

喉が壊れてしまいそうな程大声を上げた瞬間、カードの振動が止まり、新たなカードが完成した。三枚のカードをエンディミオンは茫然として見ている。三幻魔の姿は未だ健在だが、三枚の威圧感が明らかに減っているのが分かる。

改めてデッキトップに指を置き、指に力を込める。脳のリミッターがおかしくなっているのか、痛みが出たり消えたりとおかしい。けどどんな状態でもワクワクが止まらない!

 

「ドロー、遠隔転移を発動! 墓地の黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを特殊召喚」

『新しいカードか。やっぱり遊斗は凄いよ』

「フィ、フィールドに幻魔トークンが現れる」

 

時空管理局LC0→1

フェイトA2800・D500→A3100・D800

 

「ティアナさんを通常召喚! そして墓地のAOA高町なのはを生贄に、蒼穹の王・高町なのはを特殊召喚」

『ハッハッハ! 三幻魔の力を本当に物にするとは! 実に面白い!』

「幻魔トークンを特殊召喚」

 

A2500・D2500

 

今なら分かる。セットされた意味不明なカードの意味を。どうやって使うのかを!

 

「永続罠、存在しない者を発動! 一ターンに一度自分フィールド上のレベル8以上のLSを選択して発動! 選択したモンスターを生贄に捧げ、生贄にしたモンスターのカード名が含まれる、レベル11のモンスターを融合デッキから特殊召喚する! 黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に捧げ、降臨せよ! 降雷皇フェイト!」

 

突然地面がバチバチと音を立てた。何かと思い地面を見ると、黄色い電気が生き物のように地面を行き来している。その電気は一点に集まっていき、次の瞬間電気が集まっていた場所に落雷が落ちた。余りの眩しさに一瞬目を閉じてしまった。ゆっくりと瞳を開けると、始めて見る格好のフェイトさんがいた。

長い黒のマントや服はフェイトさんと変わりないが、手に付けている手甲や履いている靴は、まるでハモンを素材にしたかのように黄色く棘棘している。

 

LS降雷皇フェイト ☆11/光/雷族/A4000・D4000

フェイトA4000・D4000→A4300・D4300

 

「だ、だが攻撃力は4300・・・・。そんなモンスターで」

「だがラビエルとハモンを倒すには十分な攻撃力だ。バトル! 降雷皇フェイトでラビエルを攻撃!」

『サンダーレイジ!』

 

A4300 VS A3500

 

ラビエルの頭上に現れたのは黄色のミッドチルダ式の魔法陣。しかしその魔法陣は普通の大きさでは無く、ラビエルの巨体よりも大きい。巨大な魔法陣は、間隔が等しくなるように円周に八つのスフィアを作る。バチバチ、ゴロゴロ、と空気を震わせ、大気中の電気、空に浮かぶ雲が蓄えている電気エネルギーが、八つのスフィアに集まって行く。そして八つのスフィアはその電気エネルギーを中央に溜め、溜めた電気エネルギーをラビエルに落とし、ラビエルを破壊した。

その姿はまさに降雷。

 

「これでターンエンドだ。ハモンの攻撃力が戻る」

「ターンエンドだと!?」

 

ハモンA0→A4000

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ3 手札1 LP900  (管理局・キャロ・存在しない者)

魔導王 モンスター4 伏せ2 手札0 LP2000  (スピリットバリア・禁止令)

 

「ドロー! 馬鹿め、嬉しさの余りウリアの攻撃力の事を忘れたか! 失楽園の効果で二枚ドロー! バトル! ウリアで降雷皇フェイトを攻撃! ハイパーブレイズ!」

 

A12000 VS  A4300

 

降雷皇フェイトは反撃するそぶりも見せず、ウリアの攻撃により破壊された。エンディミオンは勝ちを確信したのかゲラゲラと品のない笑い声を上げる。

 

「残念だが降雷皇フェイトが戦闘を行う時、俺への戦闘ダメージは0になる。更に降雷皇フェイトが破壊された時、効果が二つ発動される。一つはこのターン俺はダメージを受けない、もう一つはデッキから一枚ドローする効果だ」

「ッチ、面倒な! だが戦闘破壊は出来る! ハモンで蒼穹の王・高町なのはを攻撃!」

「攻撃宣言時、永続罠、存在しない者の効果発動! 蒼穹の王・高町なのはを生贄に捧げ、融合デッキから神炎皇なのはを特殊召喚する」

 

ウリアと同じように、俺のフィールドに巨大な火柱が現れた。だがその火はウリアやシグナムさんの様な、破壊の火では無く、生命と再生の火。その優しい火から現れたのは、サイドポニーをした優しい笑みを浮かべるなのはさん。

バリアジャケットはいつもと少し違い、白のコートとロングスカートに赤のラインが入っている。何より一番の違いは、なのはさんが持っている杖だろう。

カノンモードのレイジングハートに形が似ているが、その杖はウリアの顔の部分を杖にしており、レイジングハートのコアが、ウリアの瞳に使われている。

 

LS神炎皇なのは ☆11/炎/炎族/A0・D0

なのはA0・D0→A300・D300

 

「このカードの特殊召喚成功時、スターライトカウンターが一つ乗る。さあ、どうする?」

 

スターライトカウンター(以後SLC)なのは1

 

「続行だ! ハモンで神炎皇なのはに攻撃! 失楽の霹靂!」

「ダメージ計算時、神炎皇なのはの効果発動! このカードに乗ったSLCを任意の数取り除き、それと同じ数の墓地のLSと名のつくモンスターを選択する。選択したモンスターをデッキに戻し、そのレベル×500ポイント攻撃力を上げる。墓地の迅雷の化身フェイトをデッキに戻し、攻撃力を5000上げる」

 

なのはA0→A5000 VS A4000

 

『フェイトちゃんの力、大切に使わせてもらうね。全力全開・・・・じゃないけど、ミニスターライトブレイカー!』

 

杖先に集められた桃色の魔力。いつものなのはさんならそのまま発射するが、デバイスになったウリアの効力か、桃色の魔力が炎を纏う。雷フェイトさんの魔力を受け継いだスターライトブレイカーが、ハモンの足元で爆発し、ハモンの巨体をアッサリと破壊した。

 

「ック! カードを二枚伏せてターンエンドだ!」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター2 伏せ3 手札2 LP900  (管理局・キャロ・存在しない者)

魔導王 モンスター3 伏せ4 手札1 LP2000  (スピリットバリア・禁止令)

 

これが最後のターンだ。この長いデュエルに終止符を打つ!

 

「ドロー! お互いのプレイヤーがドローする度に、新炎皇なのはにSLCが乗る」

 

SLCなのは0→1

 

「墓地の降雷皇フェイトの効果発動! 手札のLSと名のつくモンスターを一枚墓地に送り、特殊召喚できる! この効果で復活したこのカードは戦闘ダメージを相手に与えられないがな」

 

フェイトA4000・D4000→A4300・D4300

 

「なっ!」

「ティアナさんの効果発動。時空管理局のLCを取り除き、墓地のツヴァイをゲームから除外。その同名トークンを特殊召喚する。そして手札のエリオを墓地に送り、はやてを手札に加える。時空管理局のLCを生贄にはやてを召喚」

 

A2000・D1700

LCはやて1

 

「はやてのLCを取り除き、ディバインバスターを発動! セットしたカード一枚と、ウリアを破壊!」

「ック、ミラーフォースが」

 

LCはやて1→0

 

「場のはやてとツヴァイを融合! 来い、夜天の主・八神はやて! そして存在しない者の効果発動。夜天の主・八神はやてを生贄に捧げ、幻魔皇はやてを特殊召喚する!」

 

カードをセットした瞬間、衝撃が走る訳でも激しいアニメーションがある訳でも無かった。フィールドにカードが現れただけで肝心のモンスターが出てこない。だが待ち時間無くアニメーションが始まった。辺りの影がグニョグニョと動き始め、集まると次第に人の姿に変わり、新たなはやてさんが現れた。白の帽子、黒のジャケットは一緒だが、金の装飾品は青に輝く装飾品になり、手甲はラビエルの腕を小さくした様な色形。けどそれだけで外見は余り変わっていない。

 

LS幻魔皇はやて ☆11/闇/悪魔族/A4000・D4000

はやてA4000・D4000→A4300・D4300

 

「幻魔皇はやてが特殊召喚に成功した時、墓地に存在するLSと名のつくモンスターを二体魔法・罠ゾーンに置く。黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと冥王イクスヴェリアを置く」

 

幻魔皇はやては自分の影を魔法・罠ゾーンの所へ伸ばし、影から二つの棺桶を浮かばせた。その棺桶はラビエルを素材にしているのか、青で作られており、ラビエルの爪らしきものが棺桶に刺さっている。

 

「バトル! ティアナさんで幻魔トークンを攻撃!」

『クロスファイアーシュート!』

 

A1500 VS D1000

 

ティアナさんの周りには六つのオレンジ色の弾丸。その弾丸は追尾性能を持っているらしいが、動かない幻魔トークンには何の意味も無い。ただ自前の貫通能力は別だ。

 

「ック!」

「幻魔皇はやてで幻魔トークンを攻撃!」

『彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍ミストルティン!』

 

A4300 VS D1000

 

ベルカ式の魔法陣を中心に三本と、その中心から一本、計四本の光の槍が現れた。発射された四本の槍は幻魔トークンを突き刺し、刺し傷を中心に幻魔トークンの体が石化して行った。始めて見る魔法なので、どんなのかと思えば、中々酷い倒し方だ。

 

「これで終わりだ! 降雷皇フェイトで攻撃!」

「させん! 永続罠、リビングデットの呼び声を発動! 墓地のウリアを復活させる!」

 

ウリアA0・D0→A13000

 

このデュエル、最初から最後までコイツの圧倒的攻撃力に痛い目に合ってきた。でもな、最後の最後は力で倒させてもらう!

 

「この瞬間幻魔皇はやての効果発動! 一ターンに一度、相手がモンスターを特殊召喚した時、自身の効果で魔法・罠ゾーンに存在するモンスター一体を、モンスターゾーンに置く。選択するのはフェイトさんだ!」

 

フェイトA2800・D500→A3100・D800

 

「バトル続行! 降雷皇フェイトでウリアを攻撃!」

「ドロー狙いか! だからどうした! ハイパーブレイズ!」

 

A4300 VS A13000

 

降雷皇フェイトには申し訳ないが、これしか勝ち筋が無い。それに降雷皇フェイトの効果は、攻めの力じゃなくて守りの力。自分がどんなになっても仲間の為に復活し、戦ってくれる力だ。

 

「降雷皇フェイトの効果で俺の戦闘ダメージは0。そして効果で一枚ドローする! これにより神炎皇なのはにSLCが一個乗る」

 

SLCなのは1→2

 

「だからどうした!? 仮にレベル12のモンスター二体をデッキに戻しても、ウリアの攻撃にはとどかん!」

「ッフ、じゃあこのバトルフェイズでもう一枚ドローすればいいだけの事! 速攻魔法Asの回収を発動! 除外されたLSモンスター二体を墓地に送り、自分のデッキから一枚ドローする。除外された氷炎の剣聖神シグナムと、AOA高町なのはを墓地に戻す。そして一枚ドロー! これにより神炎皇なのはにSLCが乗る」

 

SLCなのは2→3

 

「ば、馬鹿な!?」

「行け! 神炎皇なのはでウリアを攻撃! ダメージ計算時神炎皇なのはの効果で、三つSLCを取り除き、墓地の氷炎の剣聖神シグナム、夜天の王・八神はやて、黒騎士トーマをデッキに戻す。戻したカードは全てレベル10! よって攻撃力は15000アップする!」

 

神炎皇なのはA300→A15300 VS A13000

 

「こ、攻撃力15300・・・・」

『全力全開! スターライトォォ、ブレイカー!』

 

杖先に集められた桃色のエネルギー。それは今まで頑張って戦ったみんなの力、想い、魔力、そして神炎皇なのは自身の魔力で集められたもの。デバイスになったウリアの効果により、その桃色のエネルギーには炎が纏う。ハモンを呑み込む程の威力を持ったミニスターライトブレイカーの三倍の威力を込めた砲撃を、神炎皇なのははウリアに向けて発射した。

ウリアは自分の持つ全エネルギーを、スターライトブレイカーにぶつけるが、炎の熱さ、密度、勢いが違う。スターライトブレイカーの進行を止めたのは僅か数秒。ウリアはそのまま破壊された。

 

「嘘だあああああ! 俺の、三幻魔がああああ!」

「これで終わりだ! フェイトさんでダイレクトアタック!」

『トライデントスマッシャー!』

 

A3100

 

魔法陣から放たれた黄色の魔力砲撃。エンディミオンは負けたくないのか背中を向け逃げようとするが、モンスターのダイレクトアタックを、プレイヤーが回避出来る訳がない。エンディミオンを背中から呑み込んだ黄色の砲撃は、エンディミオンのライフを0にした。

 

魔導王LP2000→-1100

 

ライフが0になった瞬間、ソリッドビジョンが消えて行った。その消え行くソリッドビジョンに連動し、俺の視界が急に闇に包まれた。ああ・・・・やっぱり無茶しすぎたみたいだ・・・・。

薄れ行く意識の中、最後に感じたのは、化学薬品の匂いだった。

 




LS神炎皇なのは ☆11/炎/炎族/A0・D0
このカードは「存在しない者」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、このカードにスターライトカウンターを1つ乗せる。
プレイヤーがカードをドローする度に、このカードにスターライトカウンターを1つ置く。
1ターンに1度、このカードに乗っているスターライトカウンターを任意の数取り除き発動する。取り除いたスターライトカウンターの数だけ、墓地の「LS」と名のつくモンスターをデッキに戻し、このターンデッキに戻したモンスターのレベル合計×500ポイント攻撃力がアップする。この効果は相手のターンでも発動する事ができる。


LS降雷皇フェイト ☆11/光/雷族/A4000・D4000
このカードは「存在しない者」またはこのカードの効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
このカードが破壊された時、自分はデッキから1枚ドローし、このターン自分が受けるダメージは0になる。
このカードが破壊された次のターンのスタンバイフェイズ時、手札の「LS」と名のつくモンスターを1枚捨てる事で、このカードを墓地から特殊召喚する。カード効果で破壊された場合、自分フィールド上に「存在しない者」が存在しない場合、この効果は発動できない。
この効果で特殊召喚したこのカードが戦闘行う場合、相手プレイヤーが受ける戦闘ダメージは0になる。


LS幻魔皇はやて ☆11/闇/悪魔族/A4000・D4000
このカードは「存在しない者」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、墓地の「LS」と名のつくモンスター2体を選択し、魔法・罠ゾーンに置く。
1ターンに1度、相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、このカードの効果で魔法・罠ゾーンに置かれているカード1枚を選択し、自分フィールド上に任意の表示形式で置く事ができる。


存在しない者 永続罠
自分のライフポイントが1000以下の場合発動できる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する、レベル8以上の「LS」と名のつくモンスターを選択して発動する。選択したモンスターを生贄に捧げ、生贄に捧げたモンスターのカード名含まれるレベル11のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。
この効果を3回使用したこのカードを墓地に送る事で、墓地に存在するレベル11の「LS」と名のつくモンスターを、召喚条件を無視して特殊召喚する。






この小説が始まってから作者がずっとずっと作りたかった三枚のカードです。今回は上記のカード達全ての説明をしたいと思います。


存在しない者 永続罠

このカードのメリットは、何と言っても効果を複数回使える事。強力なモンスターを呼ぶ事が出来る事。ただ呼ぶモンスターが強いだけに、このカード単体だとデメリットの方が目立ちます。
永続故に、このカードの発動にチェーンで破壊されたら効果発動できない。ライフ1000以下でないと発動できない。生贄にするモンスターが高レベルである事。セットしたターン発動できない事。


しかし呼び出せるモンスターが強い。まずは一枚目。


LS神炎皇なのは ☆11/炎/炎族/A0・D0

ウリアと同様墓地依存です。今回は最終形態全員出した、と言う前例で15000まで持ってこれましたが、ここまで持ってこれるのは難しいでしょう。しかしこのカードが特殊召喚できる最低条件がライフ1000以下なので、墓地は溜まっているかもしれません。
レベル×500アップは強力で、カウンターを溜めるのは決して難しくない。攻撃変動の効果なのでダメージステップにも発動できる。

ただライフ1000以下と考えると、ウリアと神炎皇なのはだと、ウリアの方が攻撃力が高くなっていると思います。



LS降雷皇フェイト ☆11/光/雷族/A4000・D4000

ライフ1000以下でしか呼べないが、これは強い。ドロー+ダメージ0+再生。防御が弱いフェイトさんとは違い、守りのカード。ただし効果破壊には少し弱点を付けました(そうしないと後々自分の首を締めるので)
ただ守りと言っても攻撃を無効にできるわけではないので、ダイレクトアタックや、別のカードを攻撃されるとザッフィー頼り。まあ毎ターン4000打点が復活すると考えると、デメリットにもなりませんが。


LS幻魔皇はやて ☆11/闇/悪魔族/A4000・D4000
このカードも中々です。相手依存で自主的に効果を発動できないとはいえ、特殊召喚しないデッキなんてほぼ無いですから、魔法・罠で除去されない限り、効果が発動できないなんてことは無いでしょう。
何と言ってもこのカードは”特殊召喚する”ではなく”任意の表示形式で置く”という裁定の面倒くさい効果になっております。つまりこの効果に対しても、置いたモンスターに対しても神の警告は発動できないって事ですね。←自信なし。
蘇生条件を満たさずともフィールドに呼べることができます。本来は唯一の最終形態を復活させるカード予定でしたが、神警回避できるのは作者自身驚きました。



どのカードもOCG三~を泣かす効果なので、召喚条件をかなり厳しくしております。


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第二十三話

更新が遅れてすいません。クリスマスで忙しいとかではなく、最近一話書いて投稿、一話書いて投稿とストックが無くなった状態で更新を続けていたので、ここらで一回ストックを溜めて置いておきたいと、更新する前に数話書きました。

それでオリカのミスが出てきたので修正させて頂きます。
ヴィヴィオ、アインハルト、イクスヴェリア共通の
エンドフェイズ、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを融合デッキに戻し、「~王」または「~王」と名のつくレベル7のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。

ですが、このままだと蘇生条件を満たせないのと、エンドフェイズに無限ループが起こるので変更します。

エンドフェイズ、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを融合デッキに戻し「~王」または「~王」と名のつくレベル7のモンスターを融合召喚扱いとして融合デッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンエンドフェイズに融合デッキに戻る効果が発動しない。


融合召喚扱いは、簡易融合に似て、戻らないのはネオスペースの強制効果版です。


本文もですが、オリカでもミスが多くてすみません。


目覚めは最悪だった。朦朧とだが意識が戻った瞬間、体中に痛みを感じた。昼か、それともライトが付いているのか、瞼だけでは隠しきれない光が眼球を刺激する。体中が悲鳴を上げている為、今すぐ二度寝したいが、どうやらかなりの時間眠っていたらしく、全然眠たくない。

ゆっくりと瞼を開けると、ブルー寮の俺の部屋の天井。何とか首を動かし、ベッドの隣に置いている電子時計を見ると、昼十二時ジャスト。

 

「・・・・腹減った」

 

三幻魔と戦ってから何日経ったかは分からないが、少なくとも丸一日は寝ている事になる。と言ってもこの体で食べ物を調達するのは不可能だろう。軽く手足を動かしたが、凄い激痛が襲う。全身酷い筋肉痛って感じだ。

 

「お~い、誰か~」

「あっ、遊斗。目が覚めたか?」

 

俺の声を聞いてか、ドタドタと足音を立てて十代がやってきた。何故十代がここにいる、なんて疑問より、空腹感を満たすのが先決だった。

 

「腹減った・・・・」

「分かった、今すぐ何か買って」

「ブルーアイズヌードルがあるからそれでいい・・・・。早く食いたい」

「まかせろ! 二分で作ってやる」

 

十代はそう言ってキッチンの方へ向かい、味も聞かずにブルーアイズヌードルを作り始めた。・・・・ブルーアイズヌードルって作るのに三分必要じゃなかったっけ?

 

 

 

 

十代が作ってくれたラーメンは硬く、力が入らない体では食べるのが辛かったが、空腹感は無くなり、朦朧としていた意識もスッキリした。

 

「御馳走様でした」

「おう。食器はキッチンに置いとくな」

「・・・・あれ? そう言えば精霊達(みんな)は?」

 

誰も姿を見せないし、キョロキョロと辺りを見渡すがデッキがない。

 

「遊斗の親父が、遊斗のダメージを考えて二週間は起きないだろうからそれまでデッキは預かる、だって。流石遊斗の親父だよな、本当に二週間後に起きるんだぜ?」

「・・・・へ? じゃああれから二週間経ってるのか?」

「そう言う事」

 

・・・・やべぇ。二週間寝たきりだったのか。意外に実感ないな。こういう時って単位とか出席日数ってどうなるんだろう?

 

「でも悪いな十代。面倒見てくれて」

「俺だけじゃない。三幻魔との戦いを見ていたみんなも面倒見ていたし。それにこの二週間遊斗の世話をしてたのはほとんどアイツだから」

「アイツ?」

「あっ、噂をすれば帰ってきたぜ」

 

ガチャッと鍵が開かれる音が聞こえ、廊下から足音が数回起こると、扉から購買の袋を持ったフェイトが現れた。もしかして俺の面倒を見てくれた人って。

フェイトは俺の顔を見た途端、手に持った袋をボトッと落とし、俺の方へ走ってきた。

 

「遊斗ー!」

 

フェイトは目に涙を浮かべながら俺に飛びついた。いくら細くて軽いフェイトでも、今の弱っている俺の体には辛い。それでもフェイトは二週間ずっと俺の面倒を見てくれたんだ。体が痛むのを我慢して、胸に飛び込んできたフェイトの小さな体をギュッと抱きしめる。

 

「遊斗ぉ・・・・。心配したんだから」

「ありがと、フェイト・・・・」

 

さっき食べていたラーメンの匂いが鼻に残っていたが、フェイトの女の子特有の甘い香りが鼻に入ってくる。フェイトの体は、力が入らない体でも簡単に壊せそうな程柔らかく、久しぶりに撫でた髪の感触は病みつきになりそうだ。

 

「フェイト・・・・ありがとう。けど父さんの所に行ったんじゃ?」

「博士に頼んで私だけこっちに残ったんだ」

「へへっ、よかったなフェイト」

「うん、十代もありがとね」

 

 

 

 

フェイトとハグしてから30分ぐらい。あれから十代とフェイトからこの二週間何があったかを聞いた。まず俺がエンディミオンとのデュエルに勝利してすぐ、つまり気絶した直後、エンディミオンは闇のデュエルに負けたので、闇に呑まれたらしい。本物の三幻魔は、力を奪われたからかアッサリと封印する事に成功。そして三幻魔の力を吸収したカード達は、今すぐ被害があるわけではないとの事で、父さんと校長先生がデュエルモンスターズの生みの親、ペガサス・J・クロフォード会長の所に持って行ったらしい。

ペガサス会長の名前を聞き、俺の意識が飛びそうになったのは秘密だ。俺にとってペガサス会長は、超有名な俳優や女優、海外の超一流の監督すらも、一般人に見えてしまう程の憧れの人だ。なんたってデュエルモンスターズの生みの親。その人が俺の作ったカードを見てくれると思うと、嬉しさの余りに息が止まりそうになっても仕方ないだろう。

 

「そう言えばあの場にいたみんなにはなんて説明したんだ? 俺精霊達(みんな)の事いつも通り呼んでたし」

「私達が精霊だって事は伝えたよ。実体化してたし、誤魔化す事できなかったから」

「三幻魔の力を吸収したカードは、俺達もよく知らないから報告待ちだ。もうそろそろ遊斗の親父が来るらしい」

 

父さんがねぇ・・・・。というか父さんが作った精霊の力を吸収するカード、あれをペガサス会長はどう思っているんだろうか?

 

「なあ遊斗。存在する筈のないカードって何なんだ? フェイトに聞いても教えてくれないし」

「ああ・・・・、それに関してはもうすぐ来る父さんの口からの方がいいだろう。あっ、噂をすれば」

 

鍵を付けていないドアを躊躇なく開け、数人の足音が聞こえた。部屋に入ってきたのは、相変わらず白衣を着た父さん、校長先生、そしてさっき話に出たペガサス会長。

 

「ペ、ペペペペガサス会長!? いだっ!?」

 

予想の斜め上をいった来客に、使いものにならない体を思いっきり動かしてしまい、体に激痛が走ってしまった。

 

「大丈夫ですか~? 遊斗ボ~イ」

「だだだ大丈夫です!」

 

ペ、ペガサス会長に名前呼んで貰えた! やべぇ、俺明日には死ぬんじゃねえのか? でもペガサス会長に会えたなら本望だ。

 

「すっげえ! 本物のペガサス会長だ」

「あなたが十代ボ~イですね。噂は鮫島校長とDrジェイルから聞いていま~す」

「ペガサス会長に名前を覚えてもらえて嬉しいです」

 

こういう時十代の性格が恨めしい。俺だって本当はもっとペガサス会長と話したいんだが、完全にあがっている。俺らしくない。

 

「ゴホン、十代君、ペガサス会長。そろそろ本題に」

「オ~、それは失礼。遊斗ボ~イ、ここに座ってもいいですか?」

 

ペガサス会長はリビングに置いてあるソファーを指して俺に聞いた。俺は痛む体を無視して、コクコクと首を何度も縦に振った。ペガサス会長に続き、父さん、校長先生も座る。・・・・しかしこうして見ると、父さんって本当に凄いんだな。あのペガサス会長と同じ席に座っている。

十代とフェイトはベッドに腰を掛け、三人の方を向いていた。

 

「ではまず、エンディミオンが言っていた、存在する筈のないカード。これについて詳しく教えてください」

「分かりました。ではまず私がこの世界、いえ、この次元に来たいきさつをお伝えしましょう」

 

まるでこの世界の人間じゃない様な言い方に、事情を知っている俺とフェイト以外の全員が目を見開いた。一番冷静だったのがペガサス会長で、始めは驚いていた様に見えたが、すぐに真剣な表情に戻した。

 

「この次元には星の数ほどの次元がありましてね、私はその次元世界の中心世界、ミッドチルダと言う世界で生活してました」

 

生活って言っても、まともな生活じゃなくて犯罪者としてだがな、と一人心の中でツッコむ。十代は今の一言で早くも話の内容が分からなくなったのか、口をポカーンと開けている。まあ俺も、次元世界って言われても全く分からなかったもんな。

 

「じ、次元世界?」

「まあ異世界が沢山あると思っていただいて結構。兎に角私はミッドチルダで科学者として日夜研究をしていました」

 

人体実験や非人道的な実験だけど。なんて今言ってもメリットが何もないからな。父さんは聞かれない限り極力言わない様にしているんだろう。

 

「そんなある時、次元間のトラブルで、私はどういう訳かミッドチルダからこの次元に来てしまった。つまり私は本来ここにいるべき人間ではないと言う事です」

「本来ここにいるべき人間ではない? 待って下さ~い、ではあなたが作ったリリカルシリーズのカードと言うのは」

「ええ、精霊達が言っていた通り、本来なら存在する筈のないカードでしょうね」

 

クックック、とこの状況を楽しむかのように父さんの笑い声が、静まり返った部屋に響いた。けどいくつか、いや、たくさんの疑問が生まれてきた。父さんがその真相を知っているか分からないが、聞いておいて損は無いだろう。

 

「でも異世界人である父さんが作ったカードと、ペガサス会長が新しく作ったカードは何が違うんでしょうか? 仮に今この場でペガサス会長が思い付きでカードを作ったら、それは本来なら存在する筈のないカードになるんですかね?」

「残念ながら私はそれについて研究しているから分からないね」

 

父さんが研究していたのはこの件? いや、あくまで研究の中の一部だろう。父さんの探究心は一個の謎で収まる訳がない。おそらくもっとたくさんの研究を同時進行しているんだろう。

結局謎は謎のままだが、精霊達が言っていた、存在する筈のないカード=リリカルシリーズと皆分かっただろう。

 

「・・・・まさかDrジェイルが異世界人だったとは驚きデース」

「ああっ、すげぇな遊斗の親父さん」

 

ペガサス会長と十代はこの何とも言えない空気を立ちなおす為か、さっきまでの空気に似つかわしくないトーンで言った。だよな、天才の父さんでさえまだ解明できてない謎を、俺が頭で解決するのは無理だ。三人に存在する筈のないカードの意味は伝えられたんだ、次の話に行こう。

 

「ペガサス会長。俺が三幻魔とのデュエルで新しく手に入れたカードの事ですが・・・・」

「オ~、あのカード達ですか。三枚ともかなりの力を持ってマース。三幻魔の力を吸収したカードを野放しにするわけにはいきまセーン」

 

ッツ、やっぱりそうだよな。三幻魔は天地を枯らし、精霊達の力を吸収する力を持っている。そんなカードの力を吸収したカードを、学生である俺に持たせてくれるわけないか。

ハァ・・・・とため息を吐くと、どういう訳か十代も悔しそうな顔をしている。新たに手に入れた強いカードと戦える事が出来なくて残念なのか、それともせっかく生まれたカード達を自由にできなくてか、あるいはその両方か。どっちにしろ、十代の心は嬉しかった。

 

「フフッ、君達、人の話は最後まで聞くものだよ」

「「え?」」

「この三枚のカード達は確かに強い力を持ってマース。しかし力とは、精霊達の力を吸収したり、所持者を若返らせる力ではありまセーン。三幻魔の力を吸収する前、遊斗ボーイが言っていた通り、純粋な力を持っていマース」

 

と言う事はもしかして・・・・。

 

「普通のデュエルでは使う事を禁じますが、危険なデュエルだったり、本当に必要となった場合のみ使う事を許可しマース。勿論、この三枚のカードはあなたのカードデース」

 

ペガサス会長はソファーから立ちあがり、手に持った三枚のカードを丁寧に俺に渡してくれた。

凄く・・・・嬉しかった。ペガサス会長の手から渡されたって事は、強力なカードを持つにふさわしいデュエリストと、彼に言って貰った様なものだ。俺の勘違いかもしれなけど、そうだと無理やり自分に言い聞かせる。

 

「あ、ありがと、ございます・・・・」

「? どうしたの遊斗?」

「お前ひょっとして泣いてるのか?」

「う、うるせえ! 泣いてない! このカードは俺のカードだから、俺の手元にあるのは当たり前だ!」

 

涙で潤んだ目を見られたくなくて、布団に顔を埋めて十代とフェイトにそう言った。しかし照れ隠しとしか見られなかったのか、みんなの笑い声が部屋に響いた。

 

「オー! もうこんな時間デース。実はデュエルアカデミアに来たのはもう一つ用事があったんデース」

「? 用事ですか?」

 

部屋に置いてある時計が目に入った瞬間、ペガサス会長は勢いよく立ちあがった。ペガサス会長が来てまだ30分しか経っていないんだが、ペガサス会長は忙しい方だろうし、俺に構ってくれる時間もあんまりないんだろう。

 

「実はオシリスレッドの前田隼人ボーイに用事が」

「は、隼人に!?」

 

 

 

 

どうやら隼人がコンクールに出した絵がペガサス会長の目に入り、インダストリアル・イリュージョン社のデザイナーとして隼人をスカウトしに来たらしい。前々から隼人の絵の才能は凄いと思っていたけど、まさかそこまでだったとは。

オシリスレッドで留年生の隼人が一気に出世したものだ。けどそう簡単に事は運ばない。

デュエルのレベルが低い隼人がデュエルアカデミアの生徒として、、I2社のデザイナーとして堂々と旅立てる様に、クロノス先生が隼人と卒業デュエルをするらしい。

 

「本当はテレビ電話で隼人ボーイをスカウトするだけの予定でしたが、遊斗ボーイの件があったのでこの目で卒業デュエルを見る事にしたんデース」

「なるほど」

 

俺は車椅子に乗って、フェイトに押してもらいながら、隼人とクロノス先生がデュエルするフィールドにやってきた。勿論十代、校長先生、ペガサス会長も一緒だ。父さんは仕事があるらしく先に帰って行った。

会場に入ると、観客席の方に翔、明日香、万丈目、イ・・イエローがおり、二週間ぶりの挨拶を簡単にだがした。

 

「ペガサス会長!」

「始めましてナノ~ネ、ペガサス会長。今日シニョ~ル前田の卒業デュエルを担当する、クロノス・デ・メディチ、デス~ノ」

「オー、あなたが。鮫島校長から話は聞いていマース」

 

・・・・何だこのエセ外国人二人。いや、本物なんだけどさ、なんか日本人が想像する、日本語を話す外国人だよな。

 

「隼人ボーイ。期待していマース」

「は、はい!」

「それでは行くノ~ネ!」

「りょ、了解なんだな」

「「デュエル!」」

 

 

 

 

隼人はかなりいい線を行っていた。トリッキーな獣族専用の、キャトルミューティレーションを使い連続攻撃をしたり、クロノス先生の古代の機械巨人(アンティーク・ギア・ゴーレム)を破壊したりと凄い奮闘だった。

最後は隼人がデザインした魔法カード、エラーロックサンライズを発動し、ビックコアラを復活。そして手札のデス・カンガルーを融合し、マスター・オブ・OZを召喚。あの攻撃が通れば勝ちだったが、クロノス先生が伏せていたカードはリミッター解除。攻撃力が二倍にされた古代の機械巨人(アンティーク・ギア・ゴーレム)に返り討ちにあい、負けてしまった。

 

「クロノス先生! 隼人は自分の出せる力を全て出しました! 自分の夢を諦めないと、あなたに言いました! だからどうか!」

 

隼人が負けてなお、十代は頭を下げてクロノス先生にそう言った。しかしクロノス先生は十代の言葉を無視し、コツコツと隼人の方へ歩み寄る。そしてクロノス先生の口から出たのは、誰も予想してなかった言葉。

 

「良く成長したノ~ネ。シニョ~ル前田はデュエルアカデミアの卒業生として胸を張っていいノ~ネ」

「ク、クロノス先生!」

「あ、ありがとうなんだな。クロノス先生・・・・」

 

隼人は唇をかみしめ、今にも泣きそうな顔をする。さっき似たような立場だった俺には、隼人の気持ちがよく分かる。自分の憧れの人、先生、上司、そんな人達から自分を認めてもらった時、嬉しくて嬉しくてたまらない。

 

「では隼人ボーイ。早速ですが行きましょう。あなたにしてもらいたい仕事は山ほどありマース」

「は、はい! でもちょっとだけ待って下さい。遊斗!」

「な、なんだ?」

「遊斗の体が危ない状態のは承知なんだな。けど、俺とデュエルしてくれ!」

 

隼人とデュエル? 思えばこの一年、隼人と一対一で戦った事は無いかもしれない。なるほど、確かに隼人はこれからデザイナーとなり、働き始めるから、簡単にデュエルを挑めないだろう。

フェイトは俺の答えが分かっていたのか、十代から少し強引にデュエルディスクを借り、俺の脚の上に置いた。

 

「自分でやりたいんでしょ? 隼人とのデュエル」

「・・・・ああ! 受けて立つぜ隼人!」

 

せっかくの隼人とのデュエル、制裁デュエルの時の様に他人にデッキを任せたくない。体を動かすだけでも激痛が走る体を、無理やり立たせて腕にデュエルディスクをセットする。父さんから返して貰ったデッキをシャッフルし、ディスクに挿入する。

 

「だ、大丈夫か?」

「俺がデュエル大好きって知ってるだろ? 命がけのデュエルでも楽しむ奴だ」

「・・・・俺は、俺はこの一年でお前から色々な事を学んだ。デッキのプレイングを教えてくれたのも遊斗だったし、使い方が分からなくて、デッキから抜こうと思ったカードの使い方を教えてくれたのも遊斗なんだな。だから遊斗の事、尊敬してるけど軽蔑はしてない!」

「ッツ、ありがとな隼人・・・・。ペガサス会長! 早速ですがあの三枚のカード使っていいですか?」

「OKデース。この場にいるのは三幻魔の事を知っている者だけデース。ですがこれは特別ですよ。(あのカード達がどれほどのものか、この目で見ておく必要もありマース)」

 

やっぱりペガサス会長は優しいな。テレビで見るペガサス会長そのままだ。

さあ隼人、三幻魔の攻撃でも一切泣かなかった俺を、泣かせようとした罰だ! 全力で行くぞ!

 

「「デュエル!」」

「先攻は俺だ、ドロー! フィールド魔法、ミッドチルダを発動! なのはを通常召喚。効果でミッドチルダと自身にLCが置かれる。なのはのLCをミッドチルダに移動」

 

A500・D1800

LCなのは1→0 ミッドチルダ2

 

『久しぶり、遊斗。フェイトちゃん』

「ああ、後で仕事あるかもしれないからしっかり待機してろよ。ミッドチルダのLCを取り除き、デッキからユーノを特殊召喚。場のなのは、ユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

『まだ完治じゃないみたいだけど、無事でよかったよ』

 

A1000・D3000

LCミッドチルダ2→1

 

「心配掛けてすいませんでした。なのは・・さんの効果発動! デッキからはやてを手札に加える。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

この場の全員精霊の事は知っているから、もういつもの呼び方でデュエルしていいな。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「いきなり遊斗得意の出だし。十代じゃないけど、ワクワクするんだな。ドロー! ビーストライカーを召喚。効果で手札一枚を捨て、デッキからモジャを特殊召喚するんだな」

 

A1850・D400

A100・D100

 

俺があげたカード。いつの間にか隼人のデッキのアタッカーになっているカード達。そう言えばこの二枚のカードの使い方も俺が教えたんだっけ。懐かしいな・・・・。

 

「バトル! ビーストライカーでAOA高町なのはを攻撃! さあ、その罠を発動するんだな」

「じゃあ遠慮なく。永続罠、鋼の軛を発動! ビーストライカーの攻撃を無効にする」

「カードを一枚伏せてターンエンドなんだな」

「エンドフェイズ、鋼の軛の効果で、ビーストライカーの攻守を1000下げ、ミッドチルダにLCを置く」

 

ビーストライカーA1850・D400→A850・D0

LCミッドチルダ1→2

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

隼人 モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

 

体が痛くてすぐに横になりたいと悲鳴を上げている。けどそれ以上にデュエルをしたい、隼人との一対一のデュエル、心の底から楽しみたい。

 

「ドロー!」

「この瞬間罠発動、猛突進! 自分フィールド上の獣族を破壊し、相手フィールド上に存在するモンスター1体をデッキに戻す。ビーストライカーを破壊して、AOA高町なのはを融合デッキに戻すんだな!」

「バウンス!?」

 

伏せていたカードはプロテクション。防御を二重にしていたんだが、まさかバウンスとは予想外だ。面白いカードを使う。だがそれだけだったら強制脱出装置の下位互換でしかない。

 

「そして獣族が破壊された墓地へ送られた時、ライフを1000払い、墓地の森の番人グリーン・バブーンを特殊召喚するんだな!」

 

A2600・D1800

隼人LP4000→3000

 

隼人の場に現れたのは、ゴリラ・・・・らしき獣。いかにもバランスが悪そうな奴で、下半身はそこまで大きくないが、上半身、特に肩の部分がやたらと大きい。よく二本足で立っていられるものだ。

 

「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、カリム姉は特殊召喚できる。そしてカリム姉の効果。魔法を選択する。デッキトップはティアナさん、失敗したから墓地に送る。ミッドチルダのLCを生贄に、はやてを召喚。自身とミッドチルダの効果でLCが乗る」

 

A2000・D1700

LCはやて1

 

「闇の書をはやてに装備! バトル、はやてでモジャに攻撃!」

『ディアボリックエミッション!』

 

はやてA2000→A2300 VS D100

 

「破壊されたモジャの効果発動! 墓地からレベル4の獣族を手札に加えるんだな。ビーストライカーを手札に」

「闇の書の効果でLCが乗る。はやてのLCを闇の書に移動。ターンエンドだ」

 

LCはやて1→0 闇の書0→2

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札2 LP4000

隼人 モンスター0 伏せ1 手札4 LP3000

 

「ドロー! レスキューキャットを召喚。効果でこのカードを墓地に送り、デッキから森の聖獣ユニフォリアとみつこぶラクーダを特殊召喚。森の聖獣ユニフォリアの効果発動! 墓地のモンスターが獣だけの場合、このカードを生贄にし、墓地の獣一体を特殊召喚する。レスキューキャットを再び召喚」

 

あ~、よっぽどのデッキじゃないと使われないみつこぶラクーダを入れているのはそう言う訳か。隼人も勉強して随分マニアックなカードを使うな。

 

「レスキューキャットの効果でデッキから二体のみつこぶラクーダを特殊召喚」

 

A500・D1500

 

ステータスも高くないモンスターを三体も並べたのは、次の隼人の行動で明らかになるだろう。さて、プロテクション一枚でどこまで持つ事が出来るか。

 

「みつこぶラクーダの効果発動。みつこぶラクーダが自分フィールド上に三体存在する時、その内二体を生贄に三枚ドローする」

 

三体いるみつこぶラクーダの内二体はスッと消えて行き、残った一体の三つのこぶが光り出すと共に、隼人のデッキトップから三枚のカードが光った。

面倒臭い効果かもしれないが、レスキューキャット一枚だけで三枚ドローしたんだ。コンボとしては優秀だ。最も、みつこぶラクーダは弱小モンスターだから、手札に二枚来たら終りだ。

 

「融合発動! 手札のビッグ・コアラとデス・カンガルーを融合! マスター・オブ・OZをと融合召喚!」

 

A4200・D3700

 

その大きさの余り、マスター・オブ・OZは本来の大きさでは無く、室内用の大きさになっていた。それでも亮さんのサイバーエンドを軽く上回る程。まさに隼人の切り札のカードだ。

 

「バトル! マスター・オブ・OZで八神はやてを攻撃! エアーズ・ロッキー!」

 

A4200 VS A2300

 

「罠発動、プロテクション! LSを選択して発動、このターン選択したモンスターは破壊されない!」

「けど戦闘ダメージは受けてもらうんだな!」

 

マスター・オブ・OZの巨大な拳。その拳に付けているのは巨大な拳を覆いこむ、巨大なボクシンググローブ。はやては目の前にプロテクションを出し拳を受け止め、何とか破壊を無効にする事が出来たが、衝撃波までは止める事が出来ず、衝撃波が俺のライフを削った。

 

遊斗LP4000→2100

 

「ッツ・・・・」

「だ、大丈夫なんだな?」

「心配するな。続けろ」

「ああ。グリーン・バブーンで攻撃! ハンマークラブ・デス!」

 

A2600 VS  A2300

遊斗LP2100→1800

 

あと800、あと800ライフを上手く削れば三幻魔を呼べる。だが隼人だって三幻魔は警戒している筈、あえてライフを回復して調整するのもいいかもしれない。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドなんだな。エンドフェイズみつこぶラクーダは破壊されるんだな」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札2 LP1800

隼人 モンスター2 伏せ2 手札2 LP3000

 

「やっぱり強くなったな隼人。ドロー! ミッドチルダのLCを闇の書に移動」

 

LCミッドチルダ2→1 闇の書2→3

 

「闇の書の効果。このカードをゲームから除外し、アインスを特殊召喚する。効果で融合デッキからナハトを特殊召喚!」

 

A2300・D2300

A0・D0

 

もはやみんなナハトに慣れたのか、ナハトに対する反応は無かった。やっぱ一年でだいぶん変るもんだな。

 

「場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて! 王様はやてさんの効果でLCが三つ乗る」

 

王様はやてさんの登場シーンはいつもと同じだった。だが一つ違ったのは、王様はやてさんの登場に、ナハトが嬉しそうに体をグニョグニョと蠢かせた事ぐらい。

 

A2800・D2800

LCはやて3

 

「ナハトの効果で王様はやてさんに装備。攻撃力が1000上がる」

 

はやてA2800→A3800

 

「カリム姉を通常召喚。ミッドチルダにLCが一つ乗る。そして効果発動。罠を選択・・・・デッキトップはソニックムーブ。よって手札に加える」

 

A500・D500

LCミッドチルダ1→2

 

「バトル! 王様はやてさんでグリーン・バブーンを攻撃!」

『『響け終焉の笛! ラグナロク!』』

 

A3800 VS A2600

 

彼女のイメージカラーである黒とは反対の、三角形の白の魔法陣。ベルカ式の魔法陣の頂点には魔力が平等に溜められる。グリーン・バブーンを破壊できる程魔力を溜め、発射した。流石にスターライトブレイカー程の威力は無いが、プラズマザンバーブレイカー並みの威力はあるだろう。強い力を持っているグリーン・バブーンでも、馬鹿げた威力を持ったラグナロクを防ぐ事は出来ず、破壊された。

 

「うっ、グリーン・バブーンが!」

 

隼人LP3000→1800

 

「装備したナハトの効果発動! 装備モンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、そのモンスターを装備モンスターに装備できる」

 

王様はやてさんの腕にパイルバンカーとなったナハトの銃口から、禍々しい鎖が発射された。その鎖は隼人の墓地ゾーンに入りこみ、さっき墓地に送ったグリーン・バブーンのカードを縛り上げ、俺の魔法・罠ゾーンに連れ込んだ。

 

はやてA3800→5100

 

「攻撃力5100ッ!」

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札2 LP1800

隼人 モンスター1 伏せ2 手札2 LP1800

 

「遊斗と隼人のライフが並んだ・・・・」

「だがバーン、回復、ライフ1000以下での召喚条件。遊斗はライフを気にしていないと言っているが、ライフを上手く操る事が出来る。隼人の方が危ない」

「さっすが遊斗なんだな。ライフ的には並んでいるのに、追いつめられてるんだな。けど、それでも諦めない! ドロー!」

 

ッフ、買いかぶり過ぎだ隼人。けどそう言って貰えると素直に嬉しいよ。

 

「永続罠リミット・リバースを発動。レスキューキャットを特殊召喚。そして効果でデッキからコアラッコとラッコアラを特殊召喚」

 

A100・D1600

A1200・D100

 

コアラの様なラッコとラッコの様なコアラ。つまりコアラッコは海でプカプカ浮いているラッコがメインで、ラッコアラは葉っぱを食べるコアラだがメインだ。

・・・・早口言葉みたいなだ。

 

「もう発動しとくか。王様はやてさんの効果発動! LCを一つ取り除き、コアラッコの効果を無効にする」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)!』』

 

LCはやて3→2

 

再びナハトの銃口から禍々しい鎖が放たれ、コアラッコを縛り上げた。小動物相手に酷いやり方だが、コアラッコは自身以外の獣族がいる場合、相手モンスターの攻撃力を0にする効果を持つ。

本当ならレスキューキャットの効果を無効にしたかったんだが、効果解決時に墓地発動だから無効にしても意味ないんだよな~。

 

「ラッコアラの効果発動。フィールド上に他の獣族が存在する時、フィールド上の獣族の攻撃力を1000上げる。マスター・オブ・OZの攻撃力を1000上げるんだな」

 

OZ A4200→5200

 

早くも王様はやてさんの攻撃力を抜いてきたか。どうも二週間前のデュエルで攻撃力が10000越えをしていたから、5000でも小さく見えてしまう。

 

「ラッコアラとコアラッコを生贄に百獣王(アニマル・キング)ベヒーモスを召喚。ベヒーモスの効果で墓地のコアラッコとラッコアラを手札に加えるんだな」

 

A2700・D1500

 

隼人の手札もだいぶん分かってきた。さっき手札に加えたコアラッコ、ラッコアラ。あとビーストライカーと未知数のカード一枚。

 

「バトル! マスター・オブ・OZで夜天の王・八神はやてを攻撃! エアーズ・ロッキー!」

 

A5200 VS A5100

 

「王様はやてさんの効果発動。自身のLCを取り除き、破壊を無効にする」

『『パンツァーシルト』』

 

LCはやて2→1

遊斗LP1800→1700

 

「ベヒーモスでカリムを攻撃!」

「攻撃宣言時ソニックムーブを発動。カリム姉を除外する」

「やっぱりそうくるのか。ターンエンド。エンドフェイズOZの攻撃力が元に戻る」

 

OZ A5200→A4200

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札2 LP1700

隼人 モンスター2 伏せ2 手札4 LP1800

 

「ドロー! カリム姉の効果発動。魔法を選択。デッキトップのカードはフェイクシルエット。魔法カードだから手札に加える」

 

ライフをあと700削る事が出来たら、存在しない者の発動条件をクリアする。けど隼人の必殺のマスター・オブ・OZに野性解放を発動されたら負けだ。何しろ攻撃力が7900。亮さんのパワーボンドサイバーエンドとほぼ同じだ。

それに手札にはまだ存在しない者が来てないからな。自分からライフを削りに行くのは無謀だ。

 

「速攻魔法フェイクシルエットをカリム姉に発動。デッキのフェイトを墓地に送り、カリム姉をフェイトとして扱う。デッキのアルフの効果、ミッドチルダのLCを取り除き、特殊召喚」

 

LCミッドチルダ2→1

 

「場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士・フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

『久しぶり遊斗。体を考えるとあんまり褒められるデュエルじゃないけど、隼人の事を考えると最高のデュエルだ』

 

A2800・D500

 

「ええ、バトル! 王様はやてさんでマスター・オブ・OZを攻撃!」

「引っかかったんだな! 攻撃宣言時、邪神の大災害。フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する!」

「んな!?」

 

前の攻撃時に使わなかったのはレスキューキャットの効果を使いたかったから! 確かに、手札にベヒーモスがあったのなら、レスキューキャットの効果を使いたいはず。邪神の大災害は予想してなかった。

邪神の大災害のカードから大嵐と同じように、嵐が発生し、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊しようとする。

 

「ミッドチルダの効果。LCを取り除き、破壊を無効にする」

「けどナハトとグリーン・バブーンは破壊されて攻撃力が下がるんだな」

 

LCミッドチルダ1→0

はやてA5100→A2800 VS A4200

 

ラグナロクの準備をしていた王様はやてさんだったが、突然の嵐により詠唱が中断。マスター・オブ・OZはその隙を狙い、エアーズ・ロッキーを繰り出した。

 

「お、王様はやてさんの効果発動! LCを取り除き、破壊を無効にする!」

「けど戦闘ダメージを受けてもらうんだな!」

 

LCはやて1→0

遊斗LP1700→300

 

や、ヤバイ。いくらライフ1000以下を狙っていてもこれは想定外だ。けど幸い手札にはザフィーラがいる。次のターン耐える事は可能だ。

 

「フェイトさんでベヒーモスを攻撃! フェイトさんは目の前のモンスターと攻撃する時、攻撃力が700上がる」

 

フェイトA2800→A3500 VS A2700

 

『トライデントスマッシャー!』

 

そう言えばエンディミオンに止めを刺したのもフェイトさんのこの攻撃だったな。魔法陣を銃、バルディッシュがトリガーとなったその魔法は、俺もかなり好きな魔法だ。

ベヒーモスは持ち前の野生の力でトライデントスマッシャーを押し返そうとしたが、野生の力だけでは限界がある。百獣王は一人の優秀な魔法使いに破壊された。

 

「ぅぅ・・・・もうグリーン・バブーンの効果が発動できないんだな」

 

隼人LP1800→1000

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札2 LP300

隼人 モンスター1 伏せ0 手札4 LP1000

 

「ドロー! ・・・・手札抹殺を使うんだな」

「手札抹殺!?」

「多分隼人は遊斗の手札に、ザフィーラがいるって予想したんだと思うぜ。ほら、当たりみたいだ」

 

攻撃力を0にできるコアラッコを捨ててもドローがしたかったのか? いや、別にライフが300ならマスター・オブ・OZの攻撃で終わる。もはや必要のないカードって事か。

まあ真理がどうであれ、ザフィーラを墓地に送られたのは辛い。

 

「やっぱり遊斗はそのカードを手札に持ってたんだな」

「よく分かったな。けどそう簡単には攻撃を通さないぞ?」

「勿論そのつもりなんだな。墓地のフェイクシルエットは視野に入れてる。融合回収を発動、墓地のデス・カンガルーと融合を手札に。黙する死者を発動。墓地のビッグ・コアラを復活。

融合発動、場のビッグ・コアラとデス・カンガルーを融合! 現れるんだな、二枚目のマスター・オブ・OZ」

 

オイオイ、マジかよ!? 一枚でもこのデュエルスペースの面積を多く埋めていたのだ。そんなのが二体いたらソリッドビジョンも堪ったもんじゃないのか、最初からいたマスター・オブ・OZの大きさが少し小さくなり、もう一体のマスター・オブ・OZと並んだ。

 

「バトル! 一体目のマスター・オブ・OZで夜天の王・八神はやてを攻撃!」

「墓地のソニックムーブの効果発動! 王様はやてさんを除外する」

「なら黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンに攻撃! エアーズ・ロッキー!」

「罠発動、strikersの回収を発動。墓地のなのは、ユーノ、ザフィーラをデッキに戻し二枚ドロー。手札のザフィーラを捨ててダメージを0にする」

 

A4200 VS A3500

 

「やっぱり決められない・・・・。もう一体のマスター・オブ・OZでダイレクトアタック!」

「墓地のフェイクシルエットの効果発動。墓地のこのカードとティアナさんをゲームから除外し、攻撃を無効にする」

 

マスター・オブ・OZの拳は本物の俺では無く、幻影の俺の方へ伸びて行く。幻影の俺はペチャンコになる前にスッと消え、マスター・オブ・OZの攻撃は空振りに終わった。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドなんだな」

「エンドフェイズ王様はやてさんが戻ってくる」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ0 手札4 LP300

隼人 モンスター2 伏せ2 手札0 LP1000

 

「ドロー! なのはを通常召喚、効果で自身とミッドチルダにLCが乗る」 

 

LCミッドチルダ0→1 なのは1

 

あの二枚の伏せ、かなり気になるな。王様はやてさんにLCを乗せるか、どちらか一枚破壊するか、悩む所だが・・・・。

 

「なのはの効果発動。LCを一つ取り除き、右のセットカードを破壊!」

『ディバインシューター!』

 

破棄したのは野性の咆哮。永続罠で、自分フィールド上のモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時、自分フィールド上の獣族×300ポイント相手にダメージを与えるカード。俺のライフは既に300だから結構いいカードを破壊した。

 

「ミッドチルダのLCを取り除き、ユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合、再び現れろ! AOA高町なのは。効果でデッキからキャロを加え、魔法・罠ゾーンにキャロを置く」

 

LCミッドチルダ1→0

はやてA2800・D2800→A3100・D3100

なのはA1000・D3000→A1300・D3300

 

「カードを二枚伏せてターンエンドだ!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札2 LP300

隼人 モンスター2 伏せ1 手札0 LP1000

 

「あの伏せのどれかに間違いなく、存在しない者が入っている」

「ああ、それに引き換え隼人はフィニッシュカードを一枚破壊された。ライフ的にはあと300だが、厳しい壁だ」

「ドロー!」

「スタンバイフェイズに永続罠発動、存在しない者。ライフが1000以下の時発動可能。自分フィールド上のレベル8以上のLSを生贄に、その名前が入っているレベル11のモンスターを融合デッキから呼びだす。夜天の王・八神はやてを生贄に幻魔皇はやてを特殊召喚!」

 

辺りの影を手当たり次第自分の一部とし、一点に集めて行く。その影は小柄な女性の形になり、女性の影は下から徐々に色が付いていく。やっぱり三幻魔の力を込めたカードの威圧感は凄い。

味方である俺でさえ、その力を肌で感じるほどだ。隼人の感じるプレッシャーはこんなものじゃないだろう。

 

はやてA4000・D4000→A4300・D4300

 

「そして幻魔皇はやての効果。このカードが特殊召喚に成功した時、墓地のLS二体を魔法・罠ゾーンに置く。黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと教会騎士カリム・グラシアを選択する」

 

はやてさんの影が魔法・罠ゾーンの方へ伸び、影からラビエルを素材にした棺桶が二つ生えてきた。やっぱり棺桶ってちょっと嫌だな。

 

「・・・・バトル! マスター・オブ・OZでAOA高町なのはに攻撃!」

「攻撃宣言時、協力防御を発動。このターンLSは戦闘では破壊されず、俺は戦闘ダメージを受けない。発動後デッキから一枚ドローする」

「ッツ、ターンエンドなんだな」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札3 LP300

隼人 モンスター2 伏せ1 手札1 LP1000

 

やけに単調な攻撃だったが引きがよくなかったのか? どうであれラッキーなのには変わりない。

 

「ドロー! なのはさんの効果でデッキからスバルさんを手札に加える。そして存在しない者の効果発動。AOA高町なのはを生贄に、融合デッキから神炎皇なのはを特殊召喚!」

 

俺のフィードに巨大な火柱が現れた。本来なら天にも届くその火は、デュエル会場の天井に邪魔された。それでも優しく温かい火の感じは、前と同じで、その中からウリアの形のデバイスを持ったなのはさんが現れた。

 

なのはA0・D0→A300・D300

 

「神炎皇なのはの効果で、自身のSLCを乗せる」

 

SLCなのは1

 

墓地の最高レベルは、王様はやてさんの10。マスター・オブ・OZの攻撃力を上回る事が出来るが、あの伏せが非常に怖い。獣族は野性解放の他に、もう一つ攻撃力を爆発的に上昇させる永続罠がある。

ビーストライザー。自分フィールド上の獣族一体を除外して、フィールドの獣族の攻撃力を除外したカードの攻撃力分上げるカード。ダメージステップに発動できる優れ物で、上昇する効果も永続なので除外すればするほど強くなる。

 

「・・・・幻魔皇はやてを守備表示に変更。ターンエンドだ」

 

あと一枚、あと一枚あればあの伏せがビーストライザーでも勝てる。

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札5 LP300

隼人 モンスター2 伏せ1 手札1 LP1000

 

「ドロー!」

「この瞬間神炎皇なのはにSLCが乗る」

 

SLCなのは1→2

 

「死者蘇生発動! 墓地のベヒーモスを特殊召喚するんだな!」

「動いてきたか! 幻魔皇はやての効果発動。相手が特殊召喚した時、自身の効果で魔法・罠ゾーンに置いているカードをフィールド上に置く。フェイトさんを攻撃表示で置く」

 

フェイトA2800・D500→A3100・D800

 

「永続魔法一族の結束を発動」

 

OZ A4200→A5000

ベヒーモスA2700→A3500

 

「バトル! ベヒーモスで神炎皇なのはに攻撃!」

「隼人の奴神炎皇なのはの効果を忘れたのか!?」

「神炎皇なのはの効果発動! このカードのSLCを一つ取り除き、墓地のAOA高町なのはをデッキに戻す。これにより攻撃力が4000上がる」

 

SLC2→1

なのはA300→A4300

 

「ダメージステップ永続罠、ビーストライザーを発動。ベヒーモスをゲームから除外し、一枚のマスター・オブ・OZの攻撃力を2700上げる!」

 

OZ A5000→A7200

 

除外する効果は自分のダメージステップでも撃てる。SLCを消費させつつ、攻撃力を上げたってところか。けど伏せは警戒するべきだったな。

 

「攻撃力を上げたマスター・オブ・OZで神炎皇なのはに攻撃! エアーズ・ロッキー!」

「攻撃宣言時設置型バインドを発動! 攻撃は無効にし、ミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1

 

「けどもう一体のマスター・オブ・OZの攻撃が残っている。幻魔皇はやてを攻撃! エアーズ・ロッキー!」

 

A5000 VS D4300

 

「ダメージ計算時手札のスバルさんの効果発動。このカードを墓地に送り、幻魔皇はやての守備力を1000上げる」

 

はやてD4300→5300 VS A5000

 

マスター・オブ・OZの攻撃力は強力だ。攻撃力はF・G・Dと並ぶ攻撃力5000。幻魔皇はやて一人では無理だが、いつもみんなを助けてくれるスバルさんと一緒なら防ぐ事ができる。

マスター・オブ・OZの拳、エアーズ・ロックを古代ベルカ式の魔法陣と、近代ベルカ式の魔法陣二つが受け止め、巨大な拳を弾き飛ばした。

 

隼人LP1000→700

 

「・・・・ターンエンドなんだな」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札4 LP300

隼人 モンスター2 伏せ2 手札0 LP700

 

隼人の伏せはもう明らかになってる。おそらくこれが最後のターンになるだろう。隼人もそれは実感しているだろうが、最後の最後まで諦めていない。

 

「ドロー! この瞬間神炎皇なのはにSLCが乗る」

 

SLCなのは1→2

 

「存在しない者の効果発動! フィールド上の黒騎士・フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に、降雷皇フェイトを特殊召喚!」

「レイジングハートを神炎皇なのはに装備」

 

なのはA300→A1800

 

「バトル! 降雷皇フェイトで攻撃力の低い、マスター・オブ・OZに攻撃!」

『サンダーレイジ』

 

A4300 VS A5000

 

マスター・オブ・OZの上空に現れた巨大な魔法陣。魔法陣は辺りの電気エネルギーを溜め、溜めた電気エネルギーをマスター・オブ・OZにぶつけようとしたが、ぶつかる直前マスター・オブ・OZの姿がスッと消えた。

 

「ダメージステップ、ビーストライザーの効果でマスター・オブ・OZを除外し、もう一枚のマスター・オブ・OZの攻撃力を4200上げる!」

 

OZ A7200→A11400

 

「攻撃力11400!?」

 

しかもダメージステップ時に攻撃対象がいなくなったから、巻き戻しは起こらずに攻撃は無効。発動条件が除外なのが辛いけど、それ以外は強いよな。だがその攻撃力を出すのが少し遅かった。

 

「神炎皇なのはで攻撃! ダメージステップSLCを二つ取り除き、墓地の夜天の王・八神はやてと黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンをデッキに戻し、攻撃力を9000上げる!」

 

なのはA1800→A10800

 

「けどまだ足りないんだな!」

「いや、足りてるよ。速攻魔法ACSを発動! レイジングハートを装備しているモンスター一体を選択。選択したモンスターの攻撃力を2000上げる!」

 

なのはA10800→A12800 VS A11400

 

『行くよ、全力全開! スターライトブレイカー!』

 

マスター・オブ・OZは、ベヒーモスと自身の分身の力を受け継いでいる。神炎皇なのはに放ったその拳には、コアラとは思えないほどの闘気が込めていた。だがACSの状態で、王様はやてさん、フェイトさんの魔力を受け継いだスターライトブレイカーの威力は異常だ。マスター・オブ・OZの拳をもろともせず、マスター・オブ・OZの巨体を呑み込んだ。

 

隼人LP700→-700

 

「勝った・・・っと、あれ? 体が・・・・」

 

今まで体の事を無視してきたのが一気に来たのか、背中が地面に吸い寄せられるように倒れて行った。みんな一瞬慌てていたが、すぐにホッと息を吐いた。フェイトが倒れ掛かっている俺を、上手く車椅子に乗せてくれたのだ。

 

「あ、ありがと、フェイト・・・・」

「やっぱり無茶だったみたいだね。しばらくはデュエル禁止だからね」

「ハァ・・・・、分かったよ」

 

目が覚めた時点で、しばらくデュエルできないって分かっていたからな。嫌だけど仕方ない。

 

「ゆ、遊斗! 大丈夫なんだな!?」

「あ、あんまり大丈夫じゃないけど。でも、後悔はして無い。いいデュエルだっだ」

 

隼人へ手を向けてフッと笑う。動かしただけで手が痛むが、さっきまでデュエルしていたんだ。これくらい我慢できる。

隼人も俺に釣られてフッと笑い、俺の手を優しく握った。

 

「うん! 最後の最後、本気の遊斗と戦えてよかったんだな!」

「カードデザイナーとして頑張れよ」

「ああ! いつか遊斗専用のカードを作るんだな!」

「それは楽しみだ」

 

こうして隼人はデュエルアカデミアを卒業した。ペガサス会長と一緒に歩く隼人は、一年前、レッドは落ちこぼれの集まり、とブツブツ呟いていた隼人の面影は無く、一人前のデュエリストのオーラを出していた。

今の俺では出せないオーラ。強い弱いじゃない。自分の進むべき道や、夢。そんな目標に向かって、魂のデッキと共に歩くデュエリスト。これが今の隼人だった。

 

 

 




今回のデュエルは、オリカの三幻魔をメインにしました。と言っても後半しか出番が無いんですけど。
今まで、ホープレイ出したいなら自爆特攻でOKwwとか思ってましたけど、ライフを1000以下にするのって難しいですね。自分でハードル上げた気がする。
まあ今回ペガサス会長が言った通り、普通のデュエルでは使いません。今回はペガサス会長がいて、みんな事情を知っているから、特別で許可をもらった感じです。


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第二十四話

今回でついに一期が終わりです。
今回はストーリー的にデュエルする機会が無かったので、本当に初のデュエルが無い話です。


後書きに結構重要なアンケートをします。チラッと見るだけでもいいので、確認お願いします。


隼人が卒業してから一週間後。もうそろそろ三年生が卒業と言う事で、色々とイベントがあった。卒業する先輩に告白したり、今までの礼を言ったり、色紙を書いたり。卒業生とデュエルをして、思い出を作る生徒もいた。本当なら俺もデュエルしたいんだが、しばらくデュエルは禁止されている。

まあそれはそうだろう。なんたって今も松葉杖を付いて歩いている状態なのだ。デュエルなんて出来そうもない。

 

「やっぱりデュエルディスクでデュエルしたいもんな」

「せっかくの卒業デュエルだからな。けど中にはデュエルディスク無しでもOKの先輩達いたじゃんか」

 

そう、デュエル禁止と言っても、テーブルでデュエルするには何の問題も無い。ただアニメーションも、音も何もないデュエルと言うのは今一で、誘ってきた先輩達の8割が「元気になったら思いっきりやろう」と言い残して、俺とのデュエルを諦めた。

十代の言葉にハァとため息をつき「よっこいしょ」と親父臭い言葉と共に、椅子に座る。机を支えにして置いた松葉杖を見ると、まだ治らないのかと憂鬱になる。

 

「まだ休んでろよ。校長先生だって休んでいい、って言ってただろ」

「遅れた分取り戻したいからな。なによりお前と亮さんの卒業模範デュエルを見たら、部屋でジッとしてられなくてさ」

「へへっ、中々いいデュエルだっただろ?」

 

卒業模範デュエル。簡単に言うと、卒業生代表と在校代表のデュエルだ。

卒業生代表は当然パーフェクト人間である亮さん。そして在校生代表が十代。十代と亮さんのデュエルは物凄く、最後のターンなんか、三幻魔とのデュエルが可愛く見える程だった。

パワー・ボンドで攻撃力8000のサイバー・エンド・ドラゴンが登場。リミッター解除で攻撃力16000まで上昇。十代も負けず、決闘融合―バトル・フュージョンでシャイニング・フレア・ウイングマンの攻撃力を、サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃力分上げ20900に。だが亮さんもそのカードを持っており攻撃力は36900に。

攻撃力20900と36900で十代の負けかと思ったが、決闘融合―ファイナル・フュージョンと言う、お互いのモンスターの攻撃力の合計分ダメージを与える罠カードを使い、お互いライフが0になり相討ちになった。

 

「いや~、思いだしただけでも鳥肌が立つ」

「そんな褒めんなよ。あっ、クロノス先生が来たか。じゃっ、俺昼休みまで寝るから」

 

十代はそう言って机に寝そべり、僅か十数秒後にはグ~グ~と寝息を立て、夢の世界に旅立っていた。

・・・・やっぱデュエル以外は、代表と言える奴じゃないな。

 

「え~、それで~ワ、数日後の卒業式の事の話し合いをシマ~ス」

 

 

 

 

ついに卒業式当日。体もだいぶん戻ったが、まだ万全じゃなかったので、保険の鮎川先生の同伴の元、ブルー在校生代表として、卒業生の方々に別れと感謝を言った。長々しい校長先生の話も、卒業式ではその言葉一つ一つが重く感じられ、卒業生でもないのに目頭が熱くなった。校長先生の言葉が終ると、卒業生は一人一人、校長先生から卒業証書を貰った。

そして卒業式も終わった。

 

「今までありがとうございました」

「いや、スカリエッティみたいな後輩を持って良かったよ。いつかお前がプロになったら、自慢させて貰うぞ」

「はい。じゃんじゃん自慢してください」

 

亮さん以外にもいい先輩はいっぱいいて、お世話になった先輩一人一人にこうして別れの挨拶をしていった。卒業式が終わってから30分ぐらいずっと挨拶周りをし、最後に一番お世話になった先輩に挨拶をしに行く。

 

「亮さん、今までお世話になりました。こうやってブルーに溶け込めたのも、亮さんのおかげです」

「俺はお前が一人にならないようにしただけだ。ブルーの友人を作ったのはお前だ」

「それでもです」

 

亮さんには本当に色々とお世話になった。この一年間、十代の次にデュエルをしたのは亮さんだろうし、様々な戦術を見せてもらい吸収させてもらった。勿論デュエルだけではなく、日常生活や友好関係でもお世話になった。

 

「最後の最後、お前とデュエルを出来ないのは残念だ」

「俺もです。ここで今すぐデュエルしたいんですが、ある人に止められてて」

「ああ、あの女の子・・・・じゃなくて、お姉さんか。フェイトさん、だったか?」

「え? どうしてそれを?」

 

フェイトからデュエルを止められている事は、十代、翔、明日香、万丈目しか知らない筈だが。

 

「お前の頬が緩んでいたからな。そんな事だろうと思ったんだ」

「ッツ・・・・。やっぱり亮さんには敵いません。プロリーグでも頑張ってください」

「ああ、このデュエルアカデミアの卒業生として戦っていくさ」

 

亮さんと握手を交わし、何を言う事も無く俺達は別れた。

 

 

 

 

卒業式も終り、三学期もあっという間に終了。気が付けば長い長い夏休み。宿題があるが長い夏休みと、宿題がないけど短い春休み。どっちにも魅力があるが、同時にどちらにも悪い点がある。けどデュエルアカデミアの夏休みは、一般の夏休みより日数は長い癖に宿題がない。その代わりデュエルレポートと言うのがあり、毎日誰でもいいからデュエルをして、そのデュエルの流れと感想を書かないといけない。まあ日記みたいなものだ。そんなもの今までのデュエルを思い出したり、勝手に捏造したりすれば一日で終わる。つまり俺の夏休みのレポートはもう終わった。

そして俺は――――

 

「あ~、やっぱり自分の部屋って落ち着く~」

 

ミーンミンミン! と蝉が五月蠅く鳴く中、冷たいフローリングに横になり、扇風機から送られる風を堪能していた。ブルーの寮もいいけど、物心ついてからずっとここが自分の部屋だからな。やっぱりこの部屋が一番だ。

扇風機の風に吹き飛ばされない様にデッキを掴み、一枚一枚確認して行く。理由は無い、ただ暇だからだ。

 

「遊斗~、アイス買ってきたよ~。ってまだダラダラしてる」

 

開いているドアから入ってきたのは、近所のスーパーの袋を持ったフェイト。フェイトは俺の姿を見て、怒った顔をするが、しっかりリクエストしていたソーダ味のアイスをくれた。

 

「ありがと」

「も~、いくら夏休みだからってダラダラしすぎだよ。みんな実体化してどっか行ってるよ?」

「いや~、ブルーに上がってから、何だかんだで気を使ってたんだよ。優秀生徒に与えられる部屋を使っている分、テストやデュエルに力入れないとなって」

「その緊張が解けてダラダラしてると。確かに最後の月一試験では、イエローを退けて一位だったし、デュエルも完璧。遊斗って意外に凄いからね」

「フェイトさん程じゃないけどね~。一応努力してるんだ」

 

フェイトの前でフェイトさんの話をするのも変だけど、実際あの人は完璧超人だ。運動神経抜群、頭は良い、家事も出来るし戦闘も出来る。他にも色々あるけど、兎に角あの人は凄い。

けど俺だってフェイトさん程じゃないけど、運動は得意だし、勉強だって頑張っている。家事もなのはさんとはやてさんのおかげで人よりかは出来る。なによりデュエルが結構強い。この一年で女子に告白された経験もある。

 

「そう言えば、もし私が遊斗の精霊にならなかったら、今頃10年後の私と同じだったのかな?」

「フェイトは9歳までの記憶があって、フェイトさんは19歳までの記憶がある。9歳までの記憶は全く一緒って言ってたから、多分そうなんじゃないか? 本来ならフェイトは19歳のフェイトさんになる筈だけど、成長が止まって精霊として生き始めたから、違うフェイトになってるんだろ」

 

ソーダアイスを口に含みながら、俺は適当な推理を言った。

あっ! アイス一気に食って頭がキーンとする・・・・。このキーンって感覚も、冷たい物を食べる醍醐味の一つとして楽しむ人がいるらしいけど、俺はそこまでアイスが好きじゃない。因みにその醍醐味を味わっているのは、アイス好きのヴィータさんだ。

 

「今の私と、10年前の大人の私は違うもんね」

「そうそう」

 

フェイトは自分用のコーラ味のアイスをパクッと食べる。フェイトの食べる姿を見て、美少女に食べられる方がアイスもいいだろうな、なんて下らない事を考える。

 

「フェイト~、フローリングが硬い。膝枕して~」

「一年でデュエルアカデミアのトップになった人には見えないよ。もう一人のトップは授業で居眠りするし」

 

呆れ顔でそう言いながらもフェイトは俺の顔の方へ歩いて来て、腰を降ろしてお姉さん座りをした。甘えるようにフェイトの膝に頭を乗せ、柔らかい膝を堪能する。さっきまで硬いフローリングで寝ていたからか、よりフェイトの膝が柔らかく感じる。ん~、実体化出来るって素晴らしいな。多分俺、世界でかなり幸せな方だと思う。金髪美少女に膝枕してもらうって、そうそう経験できるもんじゃない。

 

「フェイト~」

「ん、何?」

「いくら相手が俺でもスカートの中は気を付けた方がいいぞ。襲うかもしれない」

「遊斗っ!」

 

その後数回フェイトに叩かれつつも、しばらくの間フェイトの膝枕を堪能した。365日ある一年の30日くらい、ダラダラしたっていいだろ。デュエルアカデミアは、土日に授業は無いけど、学校の中にいるのには変わりない。偶にはこうやって素の自分を出してリラックスしたい。

 

「あれ? もうこんな時間か」

 

気が付けば夕焼けが見える。そんな経験誰でもあるだろう。朝九時に起き、夕方になる六時までの九時間、いったい何をやっていたんだろうと、呆然とする人も多い筈。どうやらフェイトもその一人らしく、深くため息を吐いている。外出していた精霊達(みんな)が帰って来て、それぞれの思い出話を語るのも、フェイトがため息を吐く理由の一つだろう。

ふむ、確かに夏休みが始まってから一週間、まともに外に出てないな・・・・。フェイトも俺に付き合ってくれ、基本的に家にいる。俺も夏休み中ずっとダラダラするつもりはないし、ここは思い切って誘ってみよう。

 

「よしフェイト!」

「な、なに?」

「明日海行こう」

「へ、海?」

 

あれ、意外に反応が悪い? ひょっとしてフェイトって泳げない? それとも海が嫌いだったり・・・・。えっと、他に夏休みを感じる事が出来るものと言えば。

 

「海が嫌ならプールでもいいし、祭でもいいし」

 

祭は明日あるかは分からないけど、調べればどこかあるだろう。思いつく限り夏らしい遊び場を出すと、フェイトは首をフルフルと横に振り、俺を見上げニコッと微笑む。

 

「ううん、海がいい」

「よかった~。じゃあ明日朝の六時に出発するから」

「六時? 随分早いね」

「まあ少し遠いからな」

 

と言う事で翌日の六時。精霊達(みんな)には申し訳ないが、今日デッキは持っていかずフェイトと二人っきりで海に行く。デュエリストとしてデッキを携帯しないのは悪行だが、海にカードを持って行っても身動きがとりにくくなるだけだ。自転車の籠に自分の荷物を乗せ、家から出て来るフェイトを待つ。

ガチャッとドアが開くと、フリフリが付いた青の長いワンピースを着て麦わら帽子を被ったフェイトがいた。爽やかなブルーのワンピースに、ちょっと大きめな麦わら帽子はどこかグッとくるものがある。しかし肝心なフェイト本人の顔は、余り優れていない。

 

「・・・・もしかして自転車で行くの?」

「お前って水着持ってないだろ? 電車やバスで行くと水着代が無くなるんだよ」

「え? 遊斗ってそんなに貧乏だっけ?」

「ほら、冬休み精霊達(みんな)に服買っただろ? あれで今まで溜めていた金が綺麗に無くなってさ。自転車で嫌ならどこか別の所にしようか?」

 

ここからビーチまで自転車で一時間半以上は掛かるだろう。フェイトが嫌だったらどこか別のところでもいいんだが。

けどフェイトは悩む素振りも見せず、フフッと笑みを浮かべる。これだけでフェイトの言いたい事は分かった。フェイトに釣られて俺も笑い、ポンポンと後ろの荷台を叩く。

 

「途中で疲れたら言ってね」

「フェイトは軽いから大丈夫。よしっ、出発だ!」

 

フェイトの腕が腰に回ったのを確認し、ペダルを踏み込み車輪を動かし始めた。

 

 

 

 

どうやら俺は運が悪いらしい。自転車で片道一時間半の距離を漕いできて、誰にも邪魔されずフェイトと二人っきりで遊ぶ予定だったのに、どういう訳かビーチには十代、翔、万丈目、明日香、吹雪さんがいた。五人の姿が視界に入った瞬間、すぐにこの場から逃げようと思ったが、万丈目に見つかってしまった。

 

「・・・・どうしてお前達がここにいる?」

「それはこっちの台詞だ。ここは万丈目グループのプライベートビーチ。本当なら明日香君だけ招待するつもりだったのに・・・・」

 

万丈目の視線の先には、水を掛け合ってイチャイチャしている十代と明日香。誘った相手が他の男とイチャイチャしている。一時間半自転車を漕いできた俺でも、万丈目の不憫さには同情した。

万丈目の隣にいる翔が、俺をギロリと睨んできた。フェイトと二人乗りしていた事に嫉妬しているんだろう。いい加減フェイトの事は諦めたらどうだ・・・・。

 

「万丈目、更衣室ってどこだ?」

「あっちだ。ところでお前は自転車でここまで来たのか?」

「ああ、交通費使うとフェイトの水着が買えないからな。じゃっ、また後で」

 

万丈目と翔と別れ、更衣室に向かう途中、再びハァとため息をつく。ある情報でこのビーチは穴場で、フェイトと二人っきりのビーチで遊べると思っていたのに、まさか万丈目のプライベートビーチだったとは・・・・。ガセネタ掴まされたか。

 

「ゴメンね遊斗。水着まで買ってもらって」

「いいんだよ。男って女の子に服プレゼントしたい生き物だし」

「・・・・脱がせる為に?」

「ッブ!? い、いや、自分の好きな服を着てくれたら嬉しいじゃん」

 

ま、まあそういう下心が全く無い事もないけど、誰にでもそんな下心を持っている訳じゃない。なんて正直に言える勇気は無く、フェイトと別れ男子用更衣室に入った。

男の着替えなんてすぐに終わるものだ。一、二分で着替え終えた俺は、先に十代達の所に行った。さっきは遠くから見るだけだったが、明日香の水着は露出度が激しく、大人っぽかった。そんな明日香を前に、平然と遊んでいる十代は流石だと思う。

 

「おーい! 遊斗も一緒に遊ぼうぜー!」

「フェイトが来てからなー! 万丈目は明日香と遊ばなくていいのか? 吹雪さんも」

「明日香に念を押されてるんだよ。邪魔するなって」

「右に同じく」

 

女性にモテモテで、サーフィンも出来る吹雪さんでも、可愛い妹の明日香の邪魔はしたくないらしい。吹雪さんは片手でサーフィンボートを持ち、もう片方の手で万丈目の手を引っ張ると、十代と明日香が遊んでいる場所から少し離れた場所に歩いて行った。何だかんだであの二人は二人で楽しんでいるのか。

そしてさっきから何も話さない翔。コイツに関しては、泳げないから海で遊ぶ手段が砂浜で遊ぶくらいしかないんだろう。一人寂しく砂のお城を作る姿は、とても哀感が漂う。

 

「お待たせー遊斗ー!」

 

可愛らしい女の子の声と、綺麗な砂浜を走るサクサクの音が耳に入り、声の主であるフェイトの方へ視線を動かす。翔も俺と同じようにフェイトへと視線を動かそうとしたが、フェイトの水着姿を一番に見るのは俺だ。素早く翔の眼鏡を奪い遠くへと投げ飛ばす。

フェイトの水着は、上下白のシンプルなビキニ。腰には青のパレオが巻かれており、左足の膝を隠し右の太ももを出しているのが、小さい体ながらも何とも言えない色気を出している。上のビキニの中心には青のリボンが付けてあり、パレオとは違い子供らしさが出ている。

 

「・・・・」

「どう、かな?」

 

フェイトは恥ずかしそうにモジモジと手足を動かし、首を小さく傾げて上目使いで俺を見る。水着姿で手足をモジモジと動かすだけでも可愛いのに、首を傾げる+上目使いは駄目だ。

 

「凄く似会ってる。とっても可愛い」

 

余りの可愛さに口が中々動いてくれなく、フェイトの質問から十秒くらいたってようやく返事が言えた。

 

「あ、ありがと・・・・」

「よし! じゃあ遊ぶか!」

「うん!」

 

それから十代と明日香に混ざり、ビーチバレーをしたり、万丈目が持って来てくれたスイカでスイカ割りもした。ビーチバレーにしてもスイカ割りにしても、フェイトの運動神経は発揮された。自分の背より遥かに高いネットより高く跳びスパイクをしたり、スイカの気配を察知して綺麗に割ったりと、みんなを驚かせた。

 

「魔導師って運動神経もいいのね」

「私は近接戦闘をしたりもするから、結構鍛えてるんだ。元々運動は好きだし」

「へ~」

 

意外にもフェイトは明日香と話が合うようだ。忘れてしまいがちだが、フェイトは19年間生きているから、明日香とは年が近い。傍から見たらフェイトが妹で、明日香が姉に見えるが、生きた年月で言えば逆だ。

 

「魔法が使えるってどんな感じ?」

「それが当たり前だから良く分からない。けど私の魔法は戦闘ぐらいしか役にたたないから、絵本の魔法とは全然違うな」

「戦闘向きでもいいから魔法使ってみたいぜ。デュエルディスクにカードをセットしたら、カードが実体化する魔法とか」

 

十代だったら本当に出来そうで怖いな。

けど魔法か・・・・。昔からロマンチックな魔法を見た事がない俺にとっては、余り憧れるものじゃない。砲撃、斬撃、天候操作、広域攻撃、何一つロマンチックな物は無い。

 

「アニキは夢が無いッス。もし魔法を使えるなら、大儲けできるし、女の子からモテモテになる事も出来るッス」

「翔、お前の方が夢無いぞ・・・・」

「ってもうこんな時間か」

 

いつの間にか水平線の彼方に夕日が見える。オレンジ色の光が反射した海は、とても幻想的で、あの水平線の彼方に行くと、太陽に触れる事が出来るのではと、男らしくないメルヘンチックな考えが頭をよぎった。

 

「・・・・フェイト、ちょっと来てくれ」

「ふぇ? うん」

 

隣に座っているフェイトの手を握り、少し強引に引っ張る。俺達の後を翔が追って来たが、十代と明日香により止められ邪魔者はいなくなった。

人っ子一人いない場所まで来ると、クルリと振り返ってフェイトを眺める。オレンジ色の光によって反射した金色の髪は、この世のどんな色よりも美しく綺麗だった。キラキラと光る髪は、普通の人間には似合わない幻想的な色だが、天使の様に綺麗なフェイトには、輝く髪はこれ以上ないくらい似会っている。

 

「最後にちょっとだけ、二人で遊ばないか?」

「? うん」

 

フェイトの手は話さず、海に入っていく。長い間ビーチで遊んでいたから、体はすっかり乾いており、海の水がひんやりと気持ちいい。朝来た時とは違い、潮の関係で俺の腰辺りまで水が来ており、フェイトが遊ぶには少し水嵩がある。

 

「あの、遊斗?」

 

遊斗・スカリエッティ。一世一代の大勝負だ。ここで逃げたり誤魔化したら男じゃない。ゴクッと大きく唾を飲み込み、スーと軽く息を吸う。

 

「フェイト。俺・・・・フェイトが好きだ」

「へ?」

 

言った! ・・・・けど、フェイトは目をキョトンとして間抜けな声を出すだけで、何も言わない。まさかとは思うけど、likeの好きと勘違いされているとか? 

こ、告白したんだ、しっかり自分の気持ちをハッキリ伝えないと。

 

「家族としてじゃない。一人の女の子としてフェイトが好きだ。昔はお姉さんとして好きだったけど、デートしたり、学園祭回ったり、ずっと看病してくれたり。そんなフェイトを見て、フェイトが異性として好きになった」

 

は、恥ずかしすぎる・・・・。今すぐこの場から逃げて絶叫したいが、男がそんな事してどうする。フェイトが口を開くまでこの場から離れる訳にはいかない。

フェイトは顔を真っ赤にさせ、下を向き、ゆらゆらと揺れている海を眺めている。顔が赤いのは、遊日の所為じゃないと思いたい。

 

「私、人間じゃないんだよ? それに成長しない体だし・・・・」

「もし精霊だからって理由で俺をふるなら、俺は諦めない。あと成長しないのはフェイトのコンプレックスかもしれないけど、そんなの気にしない。勿論見た目も好きだけど、なによりフェイトの中身が好きだ」

 

自分の口じゃないみたいに、伝えたい気持ちがスラスラと出てくる。

 

「ッツ・・・・わ、私も、遊斗が・・・・好き」

「ちょっと普通とは違うけど、付き合ってくれる?」

「・・・・うん」

 

その言葉を聞いた瞬間、フェイトを寄せてギュッと抱きしめる。か弱く細い体を強く、けれど優しく抱きしめ続ける。

夕焼けだけが見守る中、俺とフェイトは恋人同士になった。

 

 

 




早速ですがデッキ枚数の事でアンケートをしようと思います。
問題はデッキの上限をどうするかです。
色々考えた結果、この二つにしようかと思います。

残り20枚に収める(1)
80枚超えても無視する(2)

の二つにします。デッキを二つに割るという案もありましたが、デッキを複数持っているとストーリー的に矛盾が出たり、相手によってデッキを使い分ける事をしたくないからです。


(1)ですが、これにするとこれからのオリカは融合モンスターが増え、防御手段も一定になっていくかもしれません。ですので出来れば作者としては避けたいところです。

(2)ですが、80枚超えると言っても毎回毎回オリカを出したりする訳ではなく、もう少し防御手段を増やしたり、vividやforceのキャラだったり、デバイスだったりをメインに出していきたいと思います。十代を理由に正当化するわけではないですが、アニメ終了時まで十代が使ったカードはメインだけで160枚です。(ここまで増やしません)


(2)に決定しなかったのは、80枚超えるのが嫌な方もいらっしゃると思うので、アンケート形式にしました。





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二期
第二十五話


前回の後書きに書いてあったアンケートの結果ですが(2)の80枚超えても無視する。
になりました。
と言っても毎回毎回オリカを出すわけではありません、自重はします。

おそらく次の次の話の時にオリカ案の募集をします。


それと前回恋人になったフェイトですが、恋人になったからと言ってアストラルの様やAIBOの様にずっと隣に居る訳ではありません。デュエルは平等です(`・ω・´)


追記)デュエルのミスが出たので強欲な壷を使いました。


長い長い夏休みも終り、再び学校が始まった。クラス、先生、友達は変わらないが、学校は夏休み前とは大きく変わっていた。三年生だった先輩達が居らず、代わりに新しく入ってきた一年生の後輩が出来た。

たった一年違うだけなのに、後輩達はとても初々しく、高校デビューに盛り上がっている。一年前の高校初日と言ったら、やっぱり十代との初デュエルが一番印象に残っている。あと深夜に万丈目の取り巻きとデュエルしたのも高校初日だった。

 

「あの、ひょっとしてスカリエッティ先輩ですか?」

「ん? ああ、そうだけど?」

 

見知らぬ男子から話しかけられた。俺に先輩と付けた事は、この子は新入生なんだろう。制服は赤、中等部から上がってきた訳じゃないようだ。レッドと言う事は、十代の後輩って事か。

 

「僕、テレビでスカリエッティ先輩を見てから、ずっとデュエルアカデミアに来たかったんです! こうしてスカリエッティ先輩とお会いできて光栄です!」

「テレビ・・・・、ああ、代表デュエルの。そう言ってくれると凄く嬉しいけど、俺はそんな凄いデュエリストじゃないよ」

「そんな事無いです」

「ッフ、じゃあ後輩の君に失望されない様に頑張るか」

 

なんてカッコつけて先輩らしい事は言ったけど、今年一年去年の様に頑張れるか? 月一試験では常に上位、デュエルでは代表になり、体育会でも活躍。頭で考えると無理そうだが、教導官が二人いるから大丈夫だろう。少なくとも一つ目の試験に関しては半強制的に勉強させられる。

 

「あっ、遊斗じゃない」

「明日香。久しぶり・・・・って相変わらず男女ともにモテモテだな」

 

明日香の手にはラブレターらしき手紙が10から20枚くらいある。明日香は中等部から上がってきたらしいから、中等部から上がってきた後輩は明日香の事を知っている。だから久しぶりに会った、憧れの明日香先輩にラブレターを送る新入生も多いのだろう。

 

「今からレッド寮に行こうと思うんだけど、一緒に行く?」

「ああ、そう言えば十代と挨拶してなかったしな」

 

 

 

 

十代達の部屋には十代も翔もおらず、レッド寮の裏の崖の方に、翔、万丈目、トメさんがいた。三人の視線の先には、崖の下で十代が見覚えのある少年とデュエルしていた。

ライフ的にもフィールド的にも手札的にも十代の圧倒。一目見ただけでも負ける要素が無い。

 

「十代は誰とデュエルしているんですか?」

「エド・フェニックスって言う、生意気な奴ッス」

「エド・フェニックス・・・・んな!? プロデュエリストじゃないか!? ちょちょ、サイン貰ってくる!」

 

少年の名前を聞いた途端、自覚できる程少年への反応が変わった。崖の下にいるエド・フェニックス目がけて跳び下りようとしたが、万丈目と翔に引きとめられ跳び下りる事は出来なかった。

 

「今はデュエル中だ。あとにしろ」

「ッチ」

 

エド・フェニックスが今使っているデッキは、俺の知っているエド・フェニックスのデッキでは無かった。それもその筈、どうやらあのデッキは、パックを八つ買い、その四十枚で作った紙束の様なデッキらしい。十代が圧倒している訳だ。

 

「これで終わりだ。フレイム・ウイングマンでダイレクトアタック!」

「うわああ~」

 

エドLP0

 

凄い棒読みのやられ声と共に、エド・フェニックスのライフが0になった。流石の十代も、デュエルに勝っても面白くないようで、困った顔をしている。俺も十代の立場だったら同じ反応だろうな。

・・・・ちょっと想像していたエド・フェニックスとは違うな。なんか今の彼にはサインを貰いたくない。

 

「流石です先輩。アッサリやられてしまいました」

「お前本気出してたのか?」

「さあ、どうでしょう。じゃっ、僕はこれで失礼しますね、先輩」

 

エド・フェニックスは嫌みと共に去って行った。どうやらエド・フェニックスはデュエルアカデミアの生徒として入学してきたらしい。何故プロデュエリストが態々日本の学校に入学し、十代を馬鹿にするかのようにデュエルを挑んだかは分からない。

だが一つ言える事は、エド・フェニックスは十代に興味を持っていると言う事。

 

 

 

 

エド・フェニックスがこの学校にいると知った翌日、デュエルアカデミアはある行事が行われていた。

新入生歓迎デュエル。新入生が二年や三年の先輩とデュエルして、交流の切っ掛けを作る行事だ。どうやら俺の噂は中等部まで行っているらしく、意外にも俺に挑戦してくる後輩達はいた。

新入生歓迎デュエルはようやく半分を行った所だ。これまでのデュエルで一番インパクトがあったのは、万丈目とブルーの後輩とのデュエルだった。

ブルーの後輩は一年前までの万丈目に憧れていたらしい。そんな万丈目が、落ちこぼれであるレッドにいる事が許せないらしい。昔の万丈目に戻す為、オシリスレッドの悪口を言いまくるが、万丈目は「俺はオシリスレッドである事に誇りを持っている」と言い、見事勝利を掴んだ。

 

『けど一年前にくらべて、あの子みたいなブルー生徒が少なくなったね』

「そうだな。っと、あの子は確か昨日の」

 

次にデュエルフィールドに上がったのは、昨日俺に話しかけてきたレッドの新入生の子。

 

「山下イシです。ブルー寮、遊斗・スカリエッティ先輩にデュエルを申し込みます」

「分かったノ~ネ。シニョ~ル遊斗、こっちに来るノ~ネ」

「はい」

 

俺がデュエルフィールドに上がると、イシは嬉しそうに笑う。

 

「一度スカリエッティ先輩とデュエルしたかったんです」

「ありがとな。けどデュエルをするからには、後輩と言えど手加減は無しだ」

「勿論です」

「「デュエル!」」

「先攻は貰います、ドロー! 巨大ネズミを通常召喚。カードを一枚伏せてターンエンドです」

 

A1400・D1450

 

イシ モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

巨大ネズミ。地属性専用のリクルーターか。ネズミにしては破格の大きさだが、デュエルモンスターズの中では巨大、とは言えないよな。って、どうでもいいかそんな事。

リクルーター相手にはマリアージュが一番なんだが、イクス来てくれないかな~。

 

「ドロー! フェイトを通常召喚。効果で自身にLCを置く」

 

A1800・D500

LCフェイト1

 

俺のフィールド上に、恋人の姿が現れた。こんな立場じゃないにしろ、恋人に戦わせるのは気が引ける、と多くの人は思うだろうが、俺はそんな事は思わない。11年前からこうして戦わせているし、フェイトだってモンスターとして戦うのが好きらしい。流石バトルマニア。

ただフェイトと恋人になって変わった事と言えば、露出度の高いフェイトの恰好にますます敏感になった事。これは思春期真っ只中の高校生なら仕方ない。うん、仕方ない。

 

「手札から装備魔法、バルディッシュ・ザンバーを発動。フェイトの攻撃力を1000上げ、貫通効果を得る」

「そんな!?」

 

フェイトA1800→A2800

 

「バトル! フェイトで巨大ネズミを攻撃!」

『ジェットザンバー!』

 

A2800 VS D1450

 

大剣になったバルディッシュの刀身が、名前通りジェットの様に素早く伸び、巨大ネズミが抵抗する前に破壊された。巨大ネズミが破壊された時の衝撃がイシを襲った。

 

イシLP4000→2650

 

「ック、この瞬間巨大ネズミが発動します。デッキから地属性攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚。来い、磁石の戦士γ(マグネット・ウォーリア・ガンマ)!」

 

A1500・D1800

 

ザワザワと会場が騒がしくなる。俺も会場のみんなと同じ心境だ。磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)は遊戯さんのデッキに入っていたカードで、遊戯さんの高火力アタッカーとして活躍していたカードだ。その為人気と値段が上がり、今ではかなり高価なカードになっている。

 

磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)とは凄いな」

「遊戯さんの影響で有名になる前から、好きだったカードみたいなんです。物心つく前の話らしいんで、記憶はあんまりないんですけど」

「へ~、そんな小さい頃から。俺もこのデッキはもう11年使っててな。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

イシ モンスター1 伏せ1 手札4 LP2650

 

「ドロー! フィールド魔法ガイアパワーを発動。地属性の攻撃力を500上げ、守備力を400下げる」

 

γ A1500・D1800→A2000・D1400

 

「そしてレスキューラビットを通常召喚。このカードを除外して、デッキのレベル4以下の同名通常モンスター二体を特殊召喚します。磁石の戦士β(マグネット・ウォーリア・ベータ)を特殊召喚」

 

β A1700・D1600→A2200・D1200

 

「バトル! γでフェイトに攻撃!」

「む? 攻撃力の低い奴で攻撃? ・・・・攻撃宣言時罠、プロテクション発動。このターンフェイトは破壊されない」

 

地属性通常モンスターが攻撃してきた。つい最近発売されたあのカードを手札に持っているかもしれない。発動して損は無いだろう。

 

「流石です遊斗先輩。攻撃宣言時、手札のジェム・マーチャントの効果を発動します。地属性通常モンスターが戦闘を行うダメージステップ、このカードを墓地に送り、戦闘を行うモンスターの攻守を1000上げます」

 

γ A2000→A3000 VS A2800

 

γは両手で拳を作り拳先をフェイトへと向け、腕を飛ばしてフェイトに発射した。ロケットパンチと言うやつだ。可愛く聞こえる攻撃方法だが、予想以上に拳のスピードが速かったのか、フェイトは慌ててプロテクションを出して破壊を逃れた。

 

遊斗LP4000→3800

 

危ね~。プロテクションを発動してなかったら負けていたのか。ジェム・マーチャントの存在を知っていて良かった。

 

「流石です。馬の骨の対価を二枚発動します。β二体を墓地に送り、計四枚ドロー。カードを一枚伏せてターンエンドです」

 

γ A3000→A2000

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札3 LP3800

イシ モンスター1 伏せ2 手札3 LP2650

 

レスキューラビットの効果で呼びだされたモンスターは破壊されるから、馬の骨の対価とは相性がいい。磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)は打点が低く、専用のサポートがある訳じゃない。合体されない内に叩くのが一番だ。

 

「ドロー! 高町なのはを通常召喚。効果でLCを自身に置く」

 

A500・D1800

LCなのは1

 

フェイトのLCを使うのは勿体ないが、なのはさんを呼ぶにはそうするしかない。けどまずは、なのはの効果を使う。

 

「なのはの効果発動。このカードのLCを取り除き、相手フィールド上の魔法・罠を一枚破壊する。右側のカードを破壊!」

『ディバインシュート!』

「チェーンして罠発動、石投げアタック! デッキのαを墓地に送り、スカリエッティ先輩に500のダメージを与えます!」

 

遊斗LP3800→3300

 

ック、フリーチェーンを当ててしまうとは、ついてないな。これでフィールド、墓地には三体の磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)が揃った。通常モンスターは何かと回収手段があるから、イシの切り札が出るのは遅くは無い。

 

「フェイトのLCを取り除き、デッキからユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは! 守備表示のこのカードを攻撃表示にする事により、デッキからスバルを手札に加える」

 

A1000・D3000

 

「装備魔法、レイジングハート・エクシードをなのはに装備。攻撃力が1500上がる」

 

なのはA1000→A2500

 

「低ステータスのモンスター二体を装備魔法で上級モンスター並みに」

「バトル! フェイトでγを攻撃!」

「させません! 罠発動、ジャスティブレイク! 自分の通常モンスターが攻撃対象となった時発動可能。表側攻撃表示で存在する、通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する!」

 

なのはさんのディバインバスターがγの前に現れた虹色の壁により反射され、なのはさんとフェイトの方へ向かって行った。

 

「ック、レイジングハート・エクシードの効果発動! 装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊する事が出来る!」

 

フェイトは反射したディバインバスターから逃れる事が出来ず破壊されてしまった。

だがレイジングハートは自らの身を挺してなのはさんを守り、ひびだらけになるとスッと待機状態の赤い宝石になり、なのはさんの胸のポケットに入って行く。

 

『ありがと、レイジングハート』

「ターンエンド」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札3 LP3300

イシ モンスター1 伏せ0 手札3 LP2650

 

「ドロー! 闇の量産工場を発動。墓地のαとβを手札に加えます。そして手札のα、β、場のγを生贄に磁石の戦士マグネット・バルキリオンを特殊召喚!」

 

場と手札にいる三体の磁石の戦士達は、それぞれ形を変え+極と-極を上手く使い、合体して行く。イシの場に出現したのは三体の磁石の戦士達が合体した最強の姿。単体ではアメリカのアニメみたいに可愛らしい磁石の戦士も、合体したら男心を擽られる、カッコいいカードへと変わる。

 

バルキリオンA3500・D3850→A4000・D3450

 

「ック、ついに出てしまったか。かなりテンポが速い。流石だ」

「ありがとうございます。バトル! バルキリオンでAOA高町なのはに攻撃! 電磁剣(マグネット・セイバー)!」

「攻撃宣言時、フォーメーションチェンジを発動! 攻撃対象にされたモンスターの表示形式を変更し、デッキから一枚ドロー」

「けどバルキリオンの攻撃力は4000! 破壊させて貰います!」

「それも無効だ! 手札のスバルの効果発動。このカードを墓地に送る事で、戦闘を行うLSの攻撃、または守備を1000上げる」

 

なのはD3000→D4000 VS A4000

 

バルキリオンは右手に持っている磁石の剣に電撃を纏わせ、なのはさんに振りかぶる。その威力はなのはさんでも一人では防ぐ事が出来ない威力だが、スバルとの協力プレイにより、無事バルキリオンの攻撃を防ぐ事が出来た。

因みにこの夏休み、スバルから「もう体の年齢は私より大人なんだから、呼び捨てでいいよ」って言われてからそうした。なのは、フェイト、はやての時もそうだったし、スバルも敬語を使われるのは余り得意ではないらしいし。

 

「まさかそんな方法で攻撃を止めるなんて・・・・。永続魔法凡骨の意地を発動。カードを一枚伏せてターンエンドです」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター1 伏せ0 手札3 LP3300

イシ モンスター1 伏せ2 手札0 LP2650

 

攻撃力4000のバルキリオンか・・・・。突破する方法としては黒騎士トーマかシグナムさんが妥当か。けどトーマに関しては、破壊に失敗したり即座に復活させられたら巻き返せない。ここは手札消費を少なく対処したい。

 

「ドロー! なのはの効果発動。デッキから教会騎士カリム・グラシアを手札に加え、通常召喚。そしてカリムの効果。カードの種類を宣言、デッキトップが宣言した種類だったら手札に加える。モンスターを宣言、デッキトップは祝福の風リインフォースツヴァイ。よって手札に加える」

 

よしっ、ツヴァイが来てくれたのは心強い。

これで手札は五枚。だけどまだ足りない。パーツがあと一枚。

 

「なのはを守備に。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「? 遊斗先輩って意外に攻めないんですね」

「攻める時は攻める。守る時は守る。お前に切り札を出された以上、今は守るのが一番だろ?」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札4 LP3300

イシ モンスター1 伏せ2 手札0 LP2650

 

イシの場にある永続魔法、凡骨の意地。通常モンスターをドローした時、ドローしたカードを見せる事でもう一枚ドロー出来るカード。あいつがデッキにどれだけ通常モンスターを入れているかは分からないが、連続ドローされない事を祈る。

 

「ドロー! ドローしたカードはα、もう一枚ドロー。次のドローはγ、もう一枚ドロー!」

 

ッチ、一回のドローフェズで三枚ドローか。かなりいい方だな。バルキリオンを二体並べて来るのか、それとも下級の磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)で押してくるのか。どっちにしても余り展開して欲しくない。

 

「罠発動、凡人の施し。デッキから二枚ドローして、その後手札の通常モンスターを一枚除外。αを除外します。そしてバルキリオンの効果発動。このカードを生贄に墓地の、α、β、γを特殊召喚します!」

「態々合体を解くのか!?」

 

バルキリオンは、合体した時のモーションを綺麗に逆再生したかのように、合体を解いた。周りのみんなは、プレイングミスだと言っているが、墓地に行ったバルキリオンは蘇生条件を満たしたバルキリオン。墓地からでも除外ゾーンからでも特殊召喚する事が出来る。

 

「戦線復活の代償を発動αを墓地に送り、墓地のバルキリオンを復活。その後バルキリオンの装備カードとして装備します」

 

バルキリオンA3500・D3850→A4000・D3450

 

コレなんだよな。通常モンスターを墓地から三体特殊召喚すると、こういう強みがあるから怖いんだ。しかし十代みたいに後先考えずに攻めて来るな。こういう相手はミラーフォースの様なカードを警戒しないから、ミラーフォースを入れていない俺には辛い。

 

「バトル、バルキリオンでAOA高町なのはを攻撃!」

「甘い甘い! カウンター罠クラールゲホイルを発動。相手モンスターの攻撃宣言時、自分フィールド上のモンスターを選択。相手のバトルフェイズを強制終了させ、選択したモンスターをデッキに戻し、デッキから夜天と名のつくモンスターをLCを乗せ特殊召喚。カリムをデッキに戻し、夜天の将シグナムを特殊召喚する」

 

A1800・D1200

LCシグナム1

 

「攻めれない・・・・。カードを二枚伏せてターンエンドです」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札4 LP3300

イシ モンスター3 伏せ4 手札1 LP2650

 

「ドロー! なのはの効果でデッキからアギトを手札に加える。シグナムのLCを取り除き、手札からアギトを特殊召喚。そしてツヴァイを通常召喚」

 

A500・D500

 

「場のシグナム、ツヴァイ、アギトを融合! 来い、氷炎の剣聖神シグナム!」

 

A3500・D2000

 

極寒の吹雪を纏った、高温の破壊の炎。それはいつ見ても幻想的で、同時に天変地異を見ているようで背筋が凍る。不気味だが美しいその氷炎の渦から現れたのは、二人とユニゾンしたシグナムさん。

 

「す、凄い威圧感だ・・・・」

「バトル! シグナムでβを攻撃!」

 

これが通ればバーンダメージで俺の勝ちだ!

 

「させません! 永続罠、強制終了を発動します。このカード以外のカード一枚を墓地へ送り、このターンのバトルフェイズは終了します。γを墓地に送ります」

「バルキリオンがいるからコストには困らないって事か。なのはを守備に、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

強制終了は持久戦向きのカード。イシがその気なら持久戦に持ち込んでやるか。俺も持久戦には自身ある。なんたって三幻魔の攻撃をひたすら耐えてきた男だからな。

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP3300

イシ モンスター2 伏せ4 手札1 LP2650

 

「ドロー! ドローしたのはβ、もう一枚ドロー。γを通常召喚。強欲な壷を発動し、二枚ドロー。団結の力をβに装備し、攻守を2400上げます」

 

γA1500・D1800→A2000・D1400

βA2200・D1200→A4600・D3600

 

さっきから磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)へのサポートが豊富だな。磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)以外のモンスターはジェム・マーチャントとレスキューラビットぐらいしか入っていないのか?

 

「守備封じをAOAなのはに発動。バトル! βでAOA高町なのはを攻撃!」

「攻撃宣言時、シグナムの効果発動! このカードを除外して、βの攻撃力を0にして守備表示に変更する!」

 

βは両手の磁石から電磁波をなのはさんに向け発射したが、閃光弾により視界を奪われ、氷の足枷により体の自由が奪われた。

 

βA4600→0

 

「けどバルキリオンの攻撃が残っています! 電磁剣(マグネット・セイバー)!」

「いいだろう、ライフで受けるぞ」

 

A4000 VS A1000

 

なのはさんには申し訳ないけど、この攻撃を止める事は出来ない。なのはさんが展開したミッドチルダ式の魔法陣は、バルキリオンの剣によって破られ、なのはさんは破壊されてしまった。

そう言えば、なのはさんの出番の多さは相変わらずだけど、一回のデュエルでここまで効果を使ったのは久しぶりだ。ここまでありがとうございます。

 

遊斗LP3300→300

 

「おい、オシリスレッドの奴がスカリエッティ先輩を追いつめてるぞ」

「どういう事だ? まさか手加減してるんじゃないのか?」

 

なんて声が聞こえて来る。そう言えば亮さんと初めてデュエルをした時もこんな感じだったな。イシの事を見下しているオベリスク新入生に怒鳴ろうとした瞬間。

 

「お前等! レッドだからって馬鹿にするのは止めろ!」

 

同級生のオベリスクの友人がその二人を叱った。

あいつも昔はオシリスレッドの事を馬鹿にしてたけど、成長したな。

 

「気にするなイシ。それと言っておくが、ライフが300だからって油断するなよ。俺のライフを削るのはここからが本番だと思え。ちょっと発動タイミングが遅れたが、罠を発動するぞ」

「はい!」

「なのはが破壊された時、Asの収集を発動。デッキからレベル5以下のLSを特殊召喚する。来い、夜天の騎士ヴィータ。地属性だからガイアパワーの恩寵を受ける」

 

ヴィータA1900・D1200→A2400・D800

 

「γじゃ届かないか。ターンエンドです」

「エンドフェイズ、シグナムが戻ってくる」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札3 LP300

イシ モンスター3 伏せ5 手札1 LP2650

 

取り合えず強制終了を何とかしないと話にならないな。と言っても伏せ除去カードがないんだが、どうしたものか。まあドローしてから考えよう。

 

「ドロー! よし、速攻魔法ユニゾンアウトを発動。氷炎の剣聖神シグナムの融合を解く。戻って来い、シグナム、ツヴァイ、アギト!」

 

A1800・D1200

A500・D500

A500・D500

 

三体融合のモンスターにユニゾンアウトを使うとなんか面白いよな。一気に三体特殊召喚するってカッコイイし。

 

「場のヴィータとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ! 融合召喚に成功した時、相手フィールド上のセットカードを二枚まで破壊できる。セットされたそのカード一枚を選択!」

『コメートフリーゲン!』

 

ヴィータA2600・D2500→A3100・D2100

 

ヴィータさんの手にはボーリングの球より一回り大きい鉄球が現れた。ヴィータさんはそれを中に投げ、空に浮いている鉄球をグラーフアイゼンでセットされたカードめがけ叩き飛ばした。破壊したのは異次元からの帰還。そんなカードまで入れているのか。

 

「ック・・・・」

「まだだ。場のシグナムとアギトを融合! 来い、烈火の剣神シグナム! 融合召喚に成功した時、このカードより攻撃力が低い相手モンスターを全て破壊する!」

『剣閃烈火!』

 

アギトの声と共に、シグナムさんの左腕に炎が宿る。シグナムさんは左手を肩の方まで持って、キッと相手モンスターを睨むと、左手の炎を伸ばし長い剣にする。そしてその炎の剣を薙ぎ払った。

 

『火竜一閃!』

 

シグナムさんより攻撃力が低い、βとγは炎に焼かれて破壊された。これで破壊したモンスターの合計レベルは8。しょっぱいが、一応バルキリオンだけにする事が出来た。すぐ三体に増えるんだがな。

 

「この効果を使ったターン俺は攻撃できない。祝福のヴィータを生贄に、紅の鉄騎ヴィータを特殊召喚。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

ヴィータA3000・D2800→A3500・D2400

 

「エンドフェイズ融合素材になったアギトの効果で、このターン破壊したモンスターのレベル合計×100ダメージを与える」

『ブレネン・クリューガー!』

「ック、バーン効果まで」

 

イシLP2650→1450

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札1 LP300

イシ モンスター1 伏せ3 手札1 LP1450

 

「ドロー! 行きます、バルキリオンの効果発動。墓地のα、β、γを特殊召喚します」

 

αA1400・D1700→A1900・D1300

βA1700・D1600→A2200・D1200

γA1500・D1800→A2000・D2400

 

再び合体を解いて、三体の磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)が現れた。こんなにカッコイイのにどうして専用のカードを作らないんだろう?

 

「そして馬の骨の対価を発動。αを墓地に送ってデッキから二枚ドローします」

 

というかさっきからコストはαばっかりだな。攻撃力が一番低いし、守備力はγより100低いから仕方ないか。磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)はただでさえ攻撃力が低いからな。

 

「ファントム・オブ・カオスを通常召喚」

 

A0・D0

 

イシの場に現れたのは、物体すらかも分からない黒のもの。闇なのか、黒の炎なのか、影なのか、どんな存在なのか全く分からない。

 

「ファントム・オブ・カオスの効果発動。墓地のバルキリオンをゲームから除外して、同じステータスと効果を得ます。ただこのモンスターでは先輩にダメージを与えられませんが」

 

ファントム・オブ・カオスA0・D0→A3500・D3850

 

「そして再びバルキリオンの効果。墓地のα、β、γを特殊召喚します」

 

・・・・あれ? さっきまでイシのフィールドってモンスター一体しかいなかったよね? どうしてこうなった。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドです」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札1 LP300

イシ モンスター5 伏せ3 手札1 LP1450

 

バルキリオンで攻撃してこなかったのは、俺の伏せを警戒していたのと、手札に馬の骨の対価があったからだろう。

マジで強制終了どうやって対処しようか・・・・。なのはか、フェイトのフォトンランサーか、あとイクスとマリアージュの破壊効果。

 

「ドロー。Strikersの収集を発動。墓地のなのは、フェイト、スバルをデッキに戻し、二枚ドローする。イクスヴェリアを通常召喚。イクスの効果でデッキからマリアージュを特殊召喚する」

 

A500・D500

A1700・D1200

 

「速攻魔法フェイクシルエットをマリアージュに発動。墓地のティアナ・ランスターを墓地に送る。そしてマリアージュはカード効果の対象となった時、相手のカード一枚と一緒に自壊する。強制終了を破壊させて貰う!」

「っな!?」

 

マリアージュは自身の体を燃焼液に変化させ、強制終了のカードへと突っ込み自爆した。ナハトに慣れた俺だが、マリアージュの自爆の仕方には未だに慣れる事が出来ない。

イシも顔を真っ青にしているし、この光景を始めて見た新入生も顔色が悪くなっている。マリアージュでバイザーを付けているけど、長身の美女だから、余計ショックが大きいのだろう。

 

「これで終わりだ! ヴィータでβを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

「速攻魔法禁じられた聖杯を発動します! これにより紅の鉄騎ヴィータの効果は無効になります」

 

ヴィータA3500→A3900 VS D1200

 

ムッ、別に隠していた訳じゃないが、貫通効果の事を知っていたか。聖杯によってヴィータさんの魔力がパワーアップしたが、同時に効果が発動できずβを破壊するだけだった。

 

「烈火の剣神シグナムで二体目のβを攻撃」

『紫電一閃!』

 

A3000 VS D1200

 

シグナムさんもレヴァンティンに炎を纏わせ、βを綺麗に真っ二つにして破壊した。

 

「ターンエンドだ」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター3 伏せ0 手札2 LP300

イシ モンスター3 伏せ1 手札1 LP1450

 

「(やっぱりスカリエッティ先輩は強い。ジワジワと確実に追い詰められている。いつもは簡単に削れる300が全然削れない)」

 

イシの手札はβというのは分かっている。このドローで何を引くのか見ものだ。

 

「ドロー! 場のα、γ、手札のβを生贄に、手札のバルキリオンを特殊召喚します!」

 

バルキリオンA3500・D3850→A4000・D3450

 

最後の最後でそのカードを引くか。俺に伏せは無い。攻め時は今だろう。

 

「これで終わりです! バルキリオンで紅の鉄騎ヴィータを攻撃! 電磁剣(マグネット・セイバー)!」

 

バルキリオンは右に手に持った剣に、電気エネルギーを溜めて紅ヴィータさんに突撃してきた。けど最後の最後で甘いと言うか、突撃思考なのは褒められないな。強制終了を破壊された今、それしか手が無かったんだろう。

 

「終りだ、ダメージステップ手札のスバルを捨てる事により、ヴィータの攻撃力を1000上げる」

『ラケーテンハンマー!』

 

ヴィータA3500→A4500 VS A4000

 

手札から現れたスバルは、手に付けたマッハキャリバーでバルキリオンの剣を受け止め、その間に紅ヴィータさんは手に持ったグラーフアイゼンで、バルキリオンの頭を横から殴打した。

破壊されたバルキリオンの破片がイシを襲う。

 

イシLP1450→950

 

「うわっ! ・・・・ターンエンドです」

 

場 ガイアパワー

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札1 LP300

イシ モンスター1 伏せ1 手札0 LP950

 

「ドロー。バトル、ヴィータでγを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A3500 VS D1400

 

グラーフアイゼンの後頭部から、魔力がジェットの様に吹きだし、ヴィータさんの持ち前のパワーに速さが乗る。磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)はグラーフアイゼンから伝って来た衝撃にバラバラになり、バルキリオンが破壊された時と同じように破片が勢いよくイシを襲った。

 

「うわああああ!」

 

イシLP950→-1150

 

ライフが0になったと同時に、起こったのは大歓声だった。有名な磁石の戦士(マグネット・ウォーリア)と世界に一枚ずつしか無いLSの戦い。そうそう見れるものじゃないだろう。

沢山の拍手の中、俺はイシに近付く。

 

「いいデュエルだったぜ。ガッチャ」

「ガッチャ?」

「俺の親友の口癖だ。またいつかデュエルしような」

「はい!」

 

 

 




今回は相変わらずデュエル構成をミスしてしまい、デュエル終了時に主人公の手札が無駄に一枚あります。デュエル構成まで下手で申し訳がありません。


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第二十六話

このキャラをオリカにしてくれ、という感想がたくさんありました。ありがとうございます。
オリカ案の時もそうですが、ハッキリ答えてしまうと、そのキャラをオリカにする事を決定しているかのように聞こえてしまうので曖昧に答えています。申し訳ありません。


追記
召喚成功時のフェイトのLCを乗せる効果にチェーンしてフォトンランサー(ナイトショットの速攻魔法版)を使用しましたが、優先権により相手の発動タイミングの方が先でした。セットしていたカードは奈落の落とし穴なので、優先権によりフェイトのLCの効果の次に奈落の落とし穴が発動できるようになります。
ですので奈落の落とし穴をミラーフォースにします。


二週間もすれば二年生になった事にも慣れるものだ。まあ二年生になって変わる事と言えば、勉強がより難しくなった事と、後輩が出来たことぐらいで、生活環境が変わった訳じゃない。

授業が始まってから二週間後、ふと最近オシリスレッドに行っていない事に気付き、暇潰しついでにオシリスレッドに向かった。せっかく外出なので、フェイトは実体化して一緒にオシリスレッドに行く事にした。

フェイトと恋人になってからもう一ヶ月が経つ。女性は何とか記念が好きとテレビで見た事あったので、この間付き合ってから一ヶ月記念にプレゼントを送ったら、予想以上に喜んでくれてうれしかった。

 

「こうやって遊斗と歩くなんて予想してなかったな」

「そうなのか?」

「泣き虫で甘えん坊だった遊斗が、私の恋人だもん。昔の私が知ったら驚くよ」

「だから昔の話は出さないでくれ・・・・」

 

隣で歩いているフェイトは、繋がった二人の手を嬉しそうに眺めながら、優しく言った。恋人になってからもフェイトはよく昔話を出す。精霊達(みんな)曰く「微笑ましくていいじゃん」らしけど、恋人に過去の恥ずかしい話を出されるのは、男として辛い。

 

「・・・・そう言えばフェイトっていつから俺の事好きになったんだ?」

「ッツ・・その、初めてデュエルの大会の決勝戦の時」

「初めてって・・、確か小学校四年だっけ?」

「丁度私の事をお姉ちゃん、って呼ばなくなった時だね。その時の遊斗の顔、凄く楽しそうで活き活きしてて・・・・」

 

うわぁ~、そんな前から俺の事好きでいてくれたのか。なんだろう、凄く嬉しい。頬が緩んでいるのが自分でも分かる。今だらしない顔をしていると自覚していたので、手を繋いでいるのと反対の手で口元抑える。

 

「え? スカリエッティ先輩ってロリコンだったの・・・・?」

「ちょっと、声大きいよ」

「先輩、尊敬してたのに・・・・」

 

あ~、めんどくさいな。俺が小さな女の子だからじゃなく、フェイトがフェイトだから好きで、純粋な気持ちで付き合っているのに。けど傍から見たらどこからどう見てもロリコン。これも告白する前から分かっていた事。

 

「ゴメンね遊斗・・・・」

「いいって、気にするな。えい!」

 

自分の体の事で悩むフェイトだが、俺はもう吹っ切れている。周りの目なんて気にしない。

フェイトを両手で抱きあげ、ギュッと抱きしめる。フェイトの髪が鼻に当たり、ふんわりとした甘い香りを味わう。辺りから(主に俺の事を憧れていた後輩の)悲鳴が聞こえて来るが、無視してフェイトを抱きしめ続ける。

 

「オシリスレッドに行くぞ」

「う、うん」

 

フェイトを着地させた後、この場から走って逃げた。しばらくの間後輩から避けられるのは間違いないだろう。

 

 

 

 

「おーい、十代。遊びに来たぞ」

 

コンコンとドアをノックすると、出てきたのは十代でも翔でも無く、イエロー寮の制服を着て恐竜の帽子を被った男だった。

 

「・・・・誰ザウルス?」

 

ザ、ザウルス? 余りに独特な語尾に苦笑も出ずに茫然としてしまった。フェイトの方が包容力があるのか、変わっている語尾にクスクスと可愛らしく笑っている。ああ、可愛いよフェイト・・・・、って現実逃避している場合じゃない。

 

「お」

「お?」

「お前こそ誰だー!?」

 

友人の部屋から出てきた語尾にザウルスを付ける、鍛えられた肌黒の男。これを変質者と言わず誰が変質者だ。俺の怒鳴り声がうるさかったのか、変質者は両手で耳を塞ぐ。

チャンス!

変質者が耳を塞いでいる間に、デッキから一枚のカードを取り出して、変質者の首元に当てる。

 

「な、何するザウルス!?」

「うるさい。抵抗すると首を斬るぞ。カードだからって甘く見るなよ。使い手によっては銃を弾き飛ばしたり、拳銃の撃鉄に挟んだりできるんだ」

「遊斗。初対面の人に失礼だよ!」

「な、何もしないザウルス! アニキー! 助けて欲しいドン!」

 

アニキ? こいつには兄がいるのか? 

「騒がしいな~」という声と共に出てきたのはこの部屋の主である十代。え? アニキって十代の事?

 

「おっ、遊斗じゃねえか」

「じゅ、十代? コイツもしかしてお前の知り合い?」

「ああ、俺の弟分のティラノ剣山。隼人の変わりにここに住んでいるんだ」

「え? この人の制服イエローだよね?」

「俺のデュエルに惚れ込んで一緒に住みたいって言いだしたんだ」

 

まるでどっかの眼鏡と同じような展開だな。というかその眼鏡はこの剣山の事をどう思ってるんだろう? あいつの事だから「アニキの弟分は僕ッス!」って喧嘩しそうだが。

その推理は当たっていたのか、部屋の奥から翔が不機嫌そうに出てきた。

 

「全く、迷惑な話ッス」

「丸藤先輩こそ迷惑ドン。せっかくアニキと同居したのに、おジャマ虫ザウルス」

「何をー! そっちこそ僕とアニキは二人仲良く暮らしてたのにー!」

「「ア、アハハハ・・・・」」

 

十代って良くも悪くも人からモテるよな。確かにあいつのカリスマ性は凄いけど、まさか同性からもここまでモテるとは思ってなかった。しかもこの修羅場を作り上げた当の本人は「同じ部屋で住んでる者同士、仲良くしようぜ」って能天気に応えてるし。

 

「駄目ザウルス! 今日という今日は決着を付けるドン! デュエルザウルス!」

「ふっふ~ん、僕とデュエルするならまず遊斗君に勝ってからッス。僕はブルーのエース遊斗・スカリエッティに勝った男っスよ」

 

両腕を組み威張る翔は、自分より背の高い俺をまるで見下しているかのような目で見る。そんな目で見て来る翔に、俺はニヤリと気持ち悪いくらい口元を上げる。

 

「あ、あの遊斗・スカリエッティ先輩に!? というか、この人がその当人ザウルス!?」

「剣山君。翔が遊斗に勝ったのはタッグデュエルで十代と組んだ時一回だけだよ。それを入れて49勝1敗」

「ギクッ」

「なんだ、やっぱり丸藤先輩は丸藤先輩ドン」

「お前はデュエルタクティクスは成長しても、精神は成長してないな・・・・」

 

予想以上に剣山と話が合うな。こんな話し方の奴だけど、意外に常識人だったりするのか?

俺と剣山の冷たいまなざしに、翔は冷や汗を沢山垂らしている。

 

「ぅっ、な、なら剣山君も遊斗君とデュエルしてみるッス! ブルー寮のエースの強さを実感するッス!」

「分かったドン! 遊斗先輩、デュエルを申し込むドン!」

「勿論、売られたデュエルは買うぞ」

「おっ、遊斗と剣山のデュエルか。面白そうじゃねえか」

 

と言う事で早速レッド寮の前の、野外デュエル場に行き、デュエルディスクを構える。剣山のデッキは少し会話しただけでも分かる。この時点で剣山のデッキが分からなかったら、多分その人は恐竜という単語自体を知らないんだろう。

 

「「デュエル!」」

「先攻は貰うザウルス! ドロー、奇跡のジュラシック・エッグを召喚」

 

A0・D2000

 

剣山の場に現れた、光り輝く恐竜の卵。俺も昔は恐竜図鑑を読んでいたから、恐竜についてある程度は分かる。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドン」

 

場 

剣山 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

予想通りの恐竜族。恐竜族はパワフルなカードが多いが、下級に優秀なカードが余り多くない。サポートカードも貧しく、化石調査、大進化薬、テールスイングぐらいしか強いのがない。

相手のデッキを馬鹿にしている訳じゃないぞ。冷静に恐竜族の感想を言っているだけだ。

 

「ドロー! おっ、イクスヴェリアを通常召喚。効果でデッキからマリアージュを特殊召喚する。こいつがいる限りイクスに攻撃できない」

 

A500・D500

A1700・D1200

 

「ムッ、いきなり二体呼んできたザウルス」

「魔法、罠ゾーンにキャロを置く。これでLSの攻守が300上がる。更にカートリッジロードをキャロに発動し、効力が更に300上がる」

 

LCキャロ0→1

イクスA500・D500→A1100・D1100

マリアージュA1700・D1200→A2300・D1800

 

「バトル! マリアージュでジュラシック・エッグを攻撃!」

「させないザウルス! 罠発動、老化の呪い! 手札を一枚捨てて、相手フィールド上のモンスターの攻守を500下げるドン。捨てたカードは恐竜さんだから、ジュラシック・エッグにカウンターが乗るザウルス」

 

エッグ0→2

イクスA1100・D1100→A600・D600

マリアージュA2300・D1800→A1800・D1300

 

・・・・また随分とマニアックなカードだな。手札のカードを墓地に送りたいならサンダーブレイクでもいい気がするが、恐竜族は全体攻撃モンスターが多いから、全く使えない訳じゃない。

マリアージュの両腕から放たれた弾丸は卵によって跳ね返された。

 

遊斗LP4000→3800

 

「ふむ、カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、カートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札3 LP3800

剣山 モンスター1 伏せ0 手札3 LP4000

 

「ドロー! 手札のキラーザウルスの効果ザウルス。このカードを墓地に送りデッキからジュラシックワールドを手札に加える。恐竜さんが墓地に送られた事で、ジュラシック・エッグにカウンターが二つ乗るドン」

 

エッグ2→4

 

や、やっぱり駄目だ。いくら常識人でもやっぱりその口調にはついて行けない。俺も自分の事を常識人だとは思っていないが、コイツ等に比べたらまだマシだと思う。

 

「ジュラシックワールドを発ドン! 効果で恐竜さん達の攻守が300アップするドン」

 

エッグA0・D2000→A300・D2300

 

「俊足のギラザウルスを特殊召喚するドン。この効果で特殊召喚したら、相手は墓地からモンスターを特殊召喚する事が出来るけど、先輩の墓地には何もいないザウルス」

 

ギラザウルスA1400・D400→A1700・D700

 

「ギラザウルスを生贄に、超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)を召喚するドン! 超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)はレベル8ザウルスが、恐竜さん一体生贄で召喚する事が出来るドン」

 

超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)A2700・D1400→A3000・D1700

エッグ4→6

 

「ジュラシック・エッグの効果。このカードを生贄に、デッキからこのカードに乗っていたカウンターの数以下のレベルを持つ恐竜さんを特殊召喚するザウルス! 来るドン、暗黒(ダーク)ドリケラトプス!」

 

ドリケラトプスA2400・D1500→A2700・D1800

 

現れたのは本当に黒い、というか悪そうなトリケラトプスだった。山姥メイクじゃないけど、顔にはカラフルな模様がある。コイツって確か貫通持ってるんだよな。

 

「バトル! 超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)でマリアージュを攻撃!」

「罠発動、設置型バインド! 発動後、攻撃したモンスターの装備カードとなる。装備モンスターは攻撃宣言できず、表示形式を変更できない。その後効果で、キャロにLCを置く」

 

キャロ1→2

 

イクスA1100・D1100→A1400・D1400

マリアージュA2300・D1800→A2600・D2100

 

「まだザウルス! 暗黒(ダーク)ドリケラトプスでマリアージュに攻撃!」

 

A2700 VS A2600

 

ドリケラトプスはその巨体からは想像できないスピードで突進し、マリアージュを踏みつけた。マリアージュは機械族として扱われているからか、やられ方までグロイ。今度海馬コーポレーションに行って、アニメーションの改変を頼まないと・・・・。

 

遊斗LP3800→3700

 

「カ、カードを一枚伏せてターンエンドン」

 

場 ジュラシックワールド

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP3700

剣山 モンスター2 伏せ1 手札0 LP4000

 

キャロのLCはもう二つ。手札にカートリッジはあるから三つ目で、攻撃力が1200上がる。これなら下級で押せるかもしれない。

 

「ドロー! イクスの効果発動。墓地からマリアージュを特殊召喚する。そしてカートリッジをキャロに乗せる」

 

LCキャロ2→3

 

イクスA1400・D1400→A1700・D1700

マリアージュA1700・D1200→A2900・D2400

 

「んな!? レベル4で攻撃力2900!? というか墓地からも特殊召喚できるなんてズルイザウルス!」

「いや、ズルイって言われても。バトル! マリアージュで暗黒(ダーク)ドリケラトプスに攻撃」

無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)・・・・』

 

A2900 VS A2700

 

相変わらず技名に感情が籠っていないな。機械に感情を求めるのが駄目なのかもしれないけど、もうちょい何とかならないものか。

暗黒(ダーク)ドリケラトプスはさっきと同じようにマリアージュに突進してきたが、マリアージュは腕をミサイルランチャーにして、ミサイルを発射。暗黒(ダーク)ドリケラトプスを木っ端みじんにした。

 

剣山LP4000→3800

 

「マリアージュが戦闘でモンスターを破壊した時、同じ効果、ステータスを持つマリアージュトークンを特殊召喚する!」

 

マリアージュの体の一部が液体となり、グニョグニョとフィールド上を動く。その液体は別のモンスターゾーンに移動すると、徐々に人の姿になり、マリアージュと全く同じ姿になった。

 

「さ、さっきからそのカード気持ち悪いドン・・・・」

「俺も同じだ・・・・。もう少し何とかならないものかな。っと、カードを一枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える」

 

場 ジュラシックワールド

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札3 LP3700

剣山 モンスター1 伏せ1 手札0 LP3800

 

「ドロー。永続罠、リビングデッドの呼び声を発ドン! 墓地の竜脚獣ブラキオンを特殊召喚するザウルス!」

 

ブラキオンA1500・D3000→A1800・D3300

 

地面から現れたのは、超巨大な恐竜。体が物凄く大きく、長い首を使えば、校庭に足を付けても学校の屋上に置いた餌を食べる事が出来るだろう。因みにブラキオサウルスと言う有名な恐竜をカード化したものだ。

 

超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)の効果が発動するザウルス。墓地から恐竜さんを特殊召喚した時、デッキから一枚ドローするドン。ブラキオンの効果発ドン! 一ターンに一度、このカードを裏側守備表示にするザウルス」

「サイクル・リバース効果持ちか。と言う事はリバースか反転召喚した時に効果が発動するのか」

 

レベル8のサイクル・リバースだから結構強力な効果を持っているだろう。守護者(ガーディアン)スフィンクスレベルの効果でない事を祈ろう

 

「流石ザウルス。ジュラシックワールドが破壊されるのは不本意ザウルスが、こうするしか無いドン! 大嵐発ドン!」

「チェーンして罠発動、協力防御。このターンLSと名のつくモンスターは破壊されず、俺は戦闘ダメージを受けない。その後デッキから一枚ドローする」

 

しかしせっかくLCを溜めたキャロがいなくなるのは辛い・・・・。下級で押そうと思っていたが、どうやら無理の様だ。

 

イクスA1700・D1700→A500・D500

マリアージュA2900・D2400→A1700・D1200

 

「モンスターをセットしてターンエンドン!」

 

遊斗 モンスター3 伏せ0 手札4 LP3700

剣山 モンスター3 伏せ0 手札0 LP3800

 

「ドロー!」

 

これで手札は五枚。一枚はカートリッジだが、手札が0の剣山に比べるとだいぶん有利な状態になっている。まずはイクスとマリアージュを融合して、剣山のフィールド上のカード一枚を破壊したいが、何を破壊するかが重要だ。効果が分からないブラキオンか、恐竜族専用の生還の宝札効果を持っている、超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)か・・・・。攻撃力を考えて、超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)が妥当か。

 

「場のイクスとマリアージュを融合! 来い、冥王イクスヴェリア!」

 

A2000・D2500

 

ヴィヴィオやアインハルトは大人の姿になるが、イクスは相変わらず子供もまま。ただ羽織っている炎の柄のマントや、体に巻き付けている銀の鎖などは、冥王らしさを出している気がしなくもない。

 

「イクスの効果、このカードの特殊召喚成功時、フィールド上のマリアージュと名のつくモンスターの数だけ相手フィールド上のカードを破壊! 超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)を破壊する!」

「恐竜さんが!」

「もう一つの効果発動。一ターンに一度、攻守2000のマリアージュ軍隊長トークンを特殊召喚する!」

 

A2000・D2000

 

「カートリッジロードを軍隊長トークンに発動。そして軍隊長トークンのLCを生贄に、はやてを召喚。効果でLCを置く」

 

A2000・D1700

はやてLC1

 

「闇の書をはやてに装備」

 

はやてA2000→A2300

 

ソリッドビジョンのカードから現れた闇の書は、嬉しそうにはやての元へ飛んで行った。結構出番が多い闇の書だけど、はやての元で戦う機会は意外に少ないから、嬉しいんだろう。

 

「バトル! はやてでセットモンスターに攻撃!」

「セットモンスターはメタモルポットドン!」

 

A2300 VS D600

 

「んな!? 恐竜族以外のも入ってるのかよ!?」

「恐竜さん達を活躍させる為に必要ザウルス。さあ、手札を全て捨て五枚ドローするドン!」

 

LC闇の書0→1

 

な、納得できねえが、剣山の手札は0。この状態で五枚ドローは喉から手が出るほど欲しい筈。俺は渋々手札のカードを全て墓地へと送り、デッキから五枚ドローする。メタモルポットは汎用性が高いから、恐竜族デッキに入っても仕方ない、そう思おう。

 

「永続魔法、時空管理局を発動。はやてのLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚。効果で時空管理局にLCが乗る」

 

LCはやて1→0 時空管理局0→1

 

「場のはやてとツヴァイを融合! 来い、夜天の主・八神はやて! 効果でLCを二つ乗せる。このカードの攻撃力は乗っているLCの数×300となる。更に墓地の闇の書を装備」

 

LCはやて2

はやてA2100・D2000→A3000

 

「召喚成功時、あと二つのカードの効果を発動する。一つは時空管理局にLCを置く効果。もう一つは融合素材になったツヴァイの効果で、時空管理局のLCを取り除き、墓地のツヴァイを手札に加える」

「ぅぅ、ややこしいドン・・・・」

「これくらいで何を言ってる。ターンエンドだ。エンドフェイズイクスの効果で、このカードを融合デッキに戻し、融合デッキから覇王アインハルトを融合召喚扱いで召喚する」

 

A2700・D2200

 

遊斗 モンスター4 伏せ2 手札4 LP3700

剣山 モンスター1 伏せ0 手札5 LP3800

 

「ドロー! ブラキオンを反転召喚し、効果発ドン! このカード以外のフィールド上にいるカードを全て裏側表示にするドン!」

「んな!? そんな効果なのかよ!?」

 

はやてさんに乗ったカウンターが全て0になり、はやてさんがセットされた事で闇の書が破壊されてしまった。イクスで破壊する対象を完全に間違えた。攻撃力が1500だし、超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)は生還の宝札を内蔵しているからと、簡単に決断したのがミスだな。

 

「けどただじゃやられん! 闇の書の効果。マリアージュトークンに装備する。マリアージュトークンは効果対象になった時、相手フィールド上のカードと自壊する! ブラキオンを破壊!」

「ック!」

「闇の書の効果で、マリアージュ軍隊長トークンに装備」

 

軍隊長A2000→A2300

 

「セイバーザウルスを通常召喚するドン。そしてセイバーザウルスを生贄に、大進化薬を発ドン! 発動後相手のターンで数えて3ターンの間フィールド上に残り続け、このカードがフィールド上に存在する限り、レベル5以上の恐竜さんを召喚するのに生贄が必要無くなるドン。

カードを二枚伏せてターンエンドン」

 

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札3 LP3700

剣山 モンスター0 伏せ3 手札2 LP3800

 

せっかくモンスターをセットしたのに攻撃はして来ないのか。はやてさんのLCだけでも十分に荒らされたから、これ以上されなくてホッとした。けど大進化薬を発動して、何もフィールド上に残さなかったのは怪しい。

攻め無い事には始まらないが、慎重にやろう。

 

「ドロー! アインハルト、はやてを反転召喚する。バトル! はやてでダイレクトアタック!」

「単調な攻撃ドン! 永続罠、血の代償を発ドン。ライフを500払い、究極恐獣(アルティメット・ティラノ)を召喚するザウルス!」

 

剣山LP3800→3300

A3000・D2200

 

究極の名に相応しい恐竜が現れた。巨大な体に、岩石をも噛み砕けそうな程の鋭い牙、体は鎧の様な鱗で覆われている。野生の王でもある肉食獣のオーラは、とてもソリッドビジョンとは思えない。

何らかのカードを伏せているとは思っていたが、まさか血の代償だとは・・・・。これから三ターン、剣山の手札かライフが尽きるまで、上級恐竜族がポンポン来るのか。アインハルトはイクスかヴィヴィオさんを守備で出せばいいが、はやてさんは既に表示形式をしている。まっ、攻撃が防がれるのは想定に入れてる。

 

「速攻魔法フェイクシルエットをはやてに発動。なのはを墓地に送り、はやてをなのはとして扱う。そして時空管理局のLCを取り除いてユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合、AOA高町なのは! 効果でザフィーラを手札に加える」

 

A1000・D3000

LC時空管理局1→2

 

「軍隊長トークンを守備表示に変更。カードを一枚伏せてターンエンド!」

「覇王アインハルトの効果は発動させないドン! 強制脱出装置で先に融合デッキに戻すドン!」

「ッツ、簡単に大進化薬を破壊するわけないか」

 

イクスの効果を使えたらだいぶん楽だったんだが、しっかり策を練っていたか。

 

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札3 LP3700

剣山 モンスター1 伏せ2 手札1 LP3300

 

「ドロー! 二枚目の超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)を召喚するドン! 死者蘇生を発ドン、墓地の超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)を復活ザウルス! 効果で一枚ドロードン!」

 

A2700・D1400

 

あ~、マジかよこの状況。蘇生方法の少ない恐竜族とは言え、やっぱり生還の宝札の効果は便利だ。この効果でドローしたカードが墓地から恐竜を復活させるカードだったら最悪だが・・・・。

 

「ライフを800払い、装備魔法早すぎた埋葬を発ドン! 墓地の暗黒(ダーク)ドリケラトプスを復活するザウルス! 何もないなら二体の超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)の効果でデッキから二枚ドローするドン!」

 

剣山LP3300→2500

A2400・D1500

 

次々と恐竜族が出て来るが、剣山のライフは確実に減ってきている。普段ライフを気にしないが、ツヴァイとユニゾンしたシグナムさんの攻撃が通れば、ライフを0にできるのは一つのアドバンテージだ。

 

「フィールド魔法、ジュラシックワールド発ドン! フィールドの恐竜さん達の攻守を300上げるドン!」

 

超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)A2700・D1400→A3000・D1700

究極恐獣(アルティメットティラノ)A3000・D2200→A3300・D2500

ドリケラトプスA2400・D1500→A2700・D1800

 

「バトルザウルス! 究極恐獣(アルティメットティラノ)は相手全てのモンスターに攻撃しなきゃいけないザウルス! アブソリュート・バイト!」

「攻撃宣言時、フォーメーションチェンジ発動、なのはを守備表示にし、デッキから一枚ドロー! 更にフィジカルヒール発動し、ライフを3200回復する」

 

遊斗LP3700→6900

 

A3300 VS D3000

A3300 VS D2000

 

究極恐獣(アルティメットティラノ)はマリアージュ軍隊長を口に付いている凶器で破壊し、それだけでは欲望が満たされなかったのか、なのはさんをも凶器で破壊した。全体攻撃効果を持ったカードは結構あるが、強制効果はモンスターで究極恐獣(アルティメットティラノ)だけ。やはり究極と言うだけあり、プレイヤーが制御するのも難しいのだろう。

 

「闇の書の効果。コイツは強制効果だから、究極恐獣(アルティメットティラノ)に装備する」

 

究極恐獣(アルティメットティラノ)A3300→A3600

 

「二体の超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)でダイレクトアタック! ダブル・ダイノクロウ!」

 

A3000×2

 

二体の超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)は巨大な手に付いた鋭利な爪を振り下ろした。

 

遊斗LP6900→900

 

「これで終りザウルス! 暗黒(ダーク)ドリケラトプスでダイレクトアタックドン!」

 

A2700

 

「おっと、手札のザフィーラを捨ててダメージを0にする。その後デッキから一枚ドローだ」

「防ぐザウルスか。けど遊斗先輩のライフは恐竜さん達の攻撃力より下ザウルス。もう勝ったも同然ドン! カードを一枚伏せてターンエンドン!」

 

場 ジュラシックパーク

遊斗 モンスター0 伏せ2 手札4 LP1500

剣山 モンスター4 伏せ4 手札0 LP2500

 

剣山のフィールド上には最上級恐竜族三体に、貫通効果持ちの半上級が一体。おまけに今はジュラシックワールドと、相手に有利なフィールドになっている。確かにフィールドは圧倒的に不利だが手札は次のドローで五枚。悪いがこの勝負貰った!

 

「ドロー! 時空管理局のLCを二つ取り除き連続転移を発動! デッキトップ三枚をめくり、通常召喚可能なLSがいたら特殊召喚する。一枚目ティアナ、二枚目バルディッシュ、三枚目アルフ。よってティアナとアルフの二枚を特殊召喚。時空管理局にLCが乗る」

 

LC時空管理局0→1

 

「フェイトを通常召喚。召喚成功時フェイトのLCを乗せ、速攻魔法フォトンランサーを発動! そのセットカードを破壊だ!」

「ミラーフォースが!?」

 

A1800・D500

LCフェイト1

 

「フェイトの効果で、自身のLCを取り除き究極恐獣(アルティメットティラノ)の表示形式を変更。場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

LC時空管理局1→2

 

「まだまだ! ティアナの効果発動! 墓地のAOA高町なのはをゲームから除外し、同名トークンを特殊召喚する」

 

A0・D0

LC時空管理局2→1

 

「行くぞ! 場の黒騎士フェイトとAOAなのはトークン二体を生贄に捧げる!」

 

最終形態のカード二枚同時にデュエルディスクにセットしたのは初めてだった。一枚でも召喚時、女性が耐えるには辛い衝撃が起こる。その衝撃が単純に二倍になっている。おそらく普通の男子高校生なら耐える事が出来ないだろうが、俺はこれでも鍛えている。確かな衝撃を感じたが、体を持っていかれる事は無く、普通に立っている。

衝撃が走ると同時に、フィールドに轟雷と台風の災害が起こった。フィールドの真ん中には堂々と、ここが自分に相応しい場所だと言わんばかりの巨大な竜巻が発生し、その竜巻を守るかの如く、稲妻が竜巻の周りをジグザグに動いている。

 

「な、何が起こるドン?」

「手札から迅雷の化身フェイトと蒼穹の王・高町なのはを特殊召喚!」

 

A3300・D0

A2500・D2500

 

竜巻の中からは、いつも通り玉座に偉そうに座っているなのは様。そして無礼にも玉座に肘を置いて立っている黒のコートを着た雷フェイトさん。

 

『貴様。私の玉座に肘を置くとはどうなるか分かっているのか?』

『ふふっ、そんなに怒らないで。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。まっ、君は怒っている顔も可愛いんだけど』

『なっ! ま、まあ特別に許してやる。別に可愛いって言われて嬉しかったわけじゃないからな!』

『分かってるよ。私の可愛い王女様』

 

やってしまった・・・・。この二人、デュエルでは滅多に一緒に出ないし、普段カードの外から出たりしないから忘れがちだけど、バカップルだった・・・・。と言うか雷フェイトさんが高町なのはという人物に甘い。

なのは様は雷フェイトさんからプイッと視線を逸らし、腕を組んでいるが、頬がにやけている。この人はティアナさん以上にツンデレな人だろう。その代わり俺とかに対して優しさの欠片も無いが。

 

「す、凄いモンスタードン・・・・。けど俺のライフを0にする事は出来ないザウルス!」

「なのはの効果発動! 特殊召喚に成功した時、デッキから好きなカードを墓地に送る事ができる! バルディッシュを墓地に送り、なのはの効果で墓地のバルディッシュを装備する!」

 

なのはA2500→A3500

 

「攻撃力3500!?」

「バトル! なのはで究極恐獣(アルティメットティラノ)を攻撃!」

『手を貸そうか?』

『こんな雑魚私一人で十分! プラズマザンバーブレイカー!』

 

雷フェイトさんの言葉を流すと、なのは様はバルディッシュを左手に持ち、その黄色に光る刀身を伸ばして剣先を天に向ける。左手は動かしても、右肘は玉座に付けており、自分の右頬を右手で当てている。

相変わらず余裕を見せるなのは様は、左手のバルディッシュを究極恐獣(アルティメットティラノ)に振り下ろした。

 

A3500 VS D2500

 

「バルディッシュを装備したモンスターは貫通効果を得る!」

「ッツ、けどギリギリライフは残るドン。そのモンスターが二回攻撃って事は知ってるザウルス」

 

剣山LP2500→1500

 

「おっと、究極恐獣(アルティメットティラノ)に装備していた闇の書の効果を忘れるな。闇の書の効果でフェイトに装備!」

 

フェイトA3300→A3600

 

「しまったザウルス!」

「これで終わりだ! フェイトで暗黒(ダーク)ドリケラトプスと、超古代恐竜(エンシェント・ダイノ)を攻撃!」

『せっかく王女様が見てるんだ。綺麗な花火を見せなくちゃね』

 

パチン! とプロのマジシャンの様に良く響く指の音と共に、計76基のフォトンスフィアが出現した。いや、なのは様が見ているからフォトンスフィアの数は更に多いかもしれない。ただ76基より多いにしろ、少ないにしろ、やり過ぎなのは確かだ。

 

『撃ち砕けファイア!』

 

A3600 VS A2700

A3600 VS A3000

 

もはや常人には弾丸の残像が僅かに見えるくらいだろう。それぐらいの速さの魔力弾が4000近く二体の恐竜めがけて発射された。恐竜達は抵抗する事も出来ず、破壊された。

 

「俺の恐竜さん達がぁぁぁー!」

 

剣山LP1500→0

 

ジャストキル。剣山には申し訳ないけど、やっぱりスッキリする勝ちだ。剣山はフォトンランサーで破壊された二体の恐竜の姿が頭の中で駆け巡っているのか、目に涙を浮かべている。

お、俺は悪くない。悪いのはなのは様の前でカッコつけようとした雷フェイトさんが悪い。

大の男が(高校生だけど)泣き喚き、俺だけじゃなく十代も翔もどうしようかと悩んでいると、フェイトが横切った。フェイトは地面に座っている剣山の元まで来ると、スッと手を差し伸べる。

 

「いいデュエルだったよ。君の恐竜さん達、凄くカッコ良かったよ」

「・・・・ポッ、ザウルス・・・・」

 

んな!? 待て待て待て待て! 今ポッて言ったか!?

剣山は差し伸べられたフェイトの手をガシッと両手で握り、フェイトの瞳を間近でジーと見る。フェイトのルビーの瞳を間近で見ていい男は俺だけなのに、あの野郎!

 

「おい剣山! 今すぐその手を離せ!」

「遊斗、剣山君は落ち込んでるんだから・・・・」

「離さないザウルス! 俺がこの子と手を握ってても遊斗先輩には関係ないドン!」

「関係大ありだ! フェイトは俺の彼女、恋人だ!」

「んなっ!?」

 

一目惚れした相手に恋人がいる事を知り、剣山はショックを受け、握っていたフェイトの手をそっと離し、再び地面に座り込んだ。さっきまで落ち込んでいた事には同情するが、今回の事には同情しない。むしろざま見ろ。

空いたフェイトの手をギュッと握りしめ、しっかり恋人握りをする。後ろから十代の「ヒューヒュー」と茶化す声と、翔の「羨ましいッス!」と妬む声が聞こえた。

 

「あ、諦めないザウルス! 遊斗先輩。フェイトちゃんを掛け、もう一度デュエルするドン!」

「する訳ないだろ! 挑まれたデュエルは買うのがデュエリストだが、フェイトに関しては別だ! お前とは絶対にデュエルしない! 行くぞフェイト!」

「えっ? ちょっと待っ!」

「あっ! 逃げるなんて卑怯者ザウルス! もう一度デュエルするドン!」

 

それから数日後、西洋の可愛い女の子の人形の精霊が、転校生と偽り、レッド寮に侵入してくる事件があった。その時俺は現場に居合わせた訳ではないが、剣山はその人形の精霊にメロメロになっていたらしい。どうやら剣山は、外国の美少女に弱い様だ。

因みにその事件は十代が解決した。

 

 

 




本文でも書きましたが、剣山はロリコンではなく西洋美少女に弱いという事です。一応アニメでもその設定ありましたので。
この時代ジュラックもエヴォル無いので恐竜族は弱く、回すのに苦労しました。一二枚ならジュラックやエヴォルのカードも出して良かったんですが、どちらのシリーズも一枚だけだと効果を発揮できないので入れる意味もありませんでした。
ぶっちゃけもう剣山のデュエルは構成したくないですね。


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第二十七話

前々回前書きで書いたとおり、オリカ案のアンケートをしたいと思います。


アンケートするキャラはシステムU-Dことユーリ・エーべルヴァイン。それと紫天の書です。
今回マテリアルズが出ますが、融合する予定が無いので単体で強力な効果を持っています。

ユーリですが、最上級モンスターでお願いします。融合素材が墓地や除外ゾーンに行ったモンスターを能動的に墓地に送るカードが欲しいので。

あとユーリやマテリアルズのサポートカードとして、アンブレイカル・ダーク、エグザミア等の案も募集します。


追記)大きなミスが見つかったので、元の二十七話を消して書き直しました。


「僕の父さんが最後に作ったD-HERO、そのカードの持ち主が父さんを殺した犯人。その犯人を探す為に僕はここにおり、D-HEROを使っている! なんの覚悟もないお前がHEROを使っているのを見るとムカつくんだよ!」

「ッツ、止めろエド! 復讐なんて何も生まない!」

「うるさい! お前も、お前のHERO達も、覚悟が無いのにヒーロー面をするな! 本当のヒーローは自ら傷つき人を傷つける事が出来る、覚悟のある者だ! バトル、ドレッドガイでサンダー・ジャイアントを攻撃! プレデター・オブ・ドレッドノート!」

 

ドレッドガイは鍛え上げられた強力な体を武器に、サンダー・ジャイアントを殴って破壊し、サンダー・ジャイアントを破壊した時の衝撃が十代を襲った。

 

「うわああああああ!」

 

ライフが0になったと同時に、十代は手に持っていた手札を落とし崩れ落ちる。まさか十代が負けるなんて・・・・。エドの強さはファンだった俺も良く知っているが、十代が子供の様にあしらわれるとは。

 

「アニキー!」

「大丈夫ザウルス!?」

「お前はHEROを使うのに相応しくない」

 

翔と剣山により支えられ、辛うじて立っている十代を見下し、エドはそれだけ言ってこの場から去って行った。今すぐこの場で十代の仇を討ちたかった。けどこの問題は、十代自身が解決するべきだと思ったので、デュエルディスクは構えなかった。

この状況になったのは、三日前のプロリーグが切っ掛けだ。

 

 

 

 

亮さんがプロリーグに入って一ヶ月。やはり亮さんの強さはプロでも通用しており、連勝記録を伸ばしていた。今では大手の会社と契約し、将来有望の天才児として世界を驚かせていた。

だがそんな上手く事は進まなかった。

亮さんは10連勝していた頃、エドとデュエルをした。エドは十代と同じE・HERO使い亮さんを翻弄した。まるで赤子を相手にする様なエドの言葉とプレイングに、亮さんは怒りを覚え、ついにはいつものデュエルが出来なくなっていた。

それとは反対に、エドは今まで隠していた新たなるHERO。D-HEROを使い、亮さんを追いつめ、そしてライフを0にした。亮さんはライフを0にした後、エドはテレビにこう言った。

 

「次の相手は日本のデュエルアカデミアの遊城十代。どちらが本物のHERO使いか勝負だ!」

 

宣言通りエドは三日後にデュエルアカデミアに来て、十代とデュエルを始めた。一ヶ月前とは違い、エドは自分のHEROデッキで戦い、十代を追いつめた。十代も負けずに反撃するが、D-HEROは普通のモンスターとは違い、時間を操る独特な効果を持っていた。その効果に翻弄され、さっきに至る。

 

「十代。大丈夫か?」

「あ、ああ・・・・。ッツ、カ、カードが見えない?」

「な!? どういう事だ!?」

「カードが、真っ白に見える・・・・」

 

十代の言っている事は嘘では無い様だ。震えた手でカードを持ち、何度も何度も目を擦るがその顔が優れる事は無い。どういう事だ・・・・。十代は今までだって辛いデュエルをしたり、負けた事もある。それなのにどうしてこんな事が起こる?

 

 

 

 

あれから二日。未だに十代にはカードが白く見えるらしく、かなり落ち込んでいた。「一人になりたい」と言って授業にも出ず、同じ部屋で寝泊まりしていた翔と剣山も、十代が何処にいるのか分からないらしい。

エドに自分のHEROを否定され、負けた事で落ち込んでいる事は分かるが、カードが白に見えると言うのはいくらなんでも変だ・・・・。デュエルで負けた事でショックを受け、病んでしまう人もいるが、カードが白く見えるなんて初めて聞いた。

 

「なあイエロー。カードが白く見えるなんて聞いたことあるか?」

 

今レッドの食堂でイエローとネット上を駆け巡っていた。理由は勿論十代の症状について。

 

「だからイエローじゃない! み「どうだ?」・・・・聞いたこと無いな。俺もあれから色々調べたがそんな症状初めてだ」

「だろ? これはあくまで俺の妄想だが、ひょっとしてエドがこの学校に来た理由と関係があるのかもしれない」

 

イエローはキーボードを打っていた指を止め、俺の方を向いた。パソコンの画面を見てキーボードを打ちながら、俺は自分の妄想をイエローに伝える。

 

「お前はあの場にいなかったから知らないと思うけど、エドの目的は父親を殺した犯人が持っているD-HEROを探す事。ひょっとしたら十代の症状に、そのD-HEROが関わっているのかもしれない」

「俺もあの場にいたんだが・・・・。だがそういう考えは悪くない、妄想はいずれ仮説に変わる。今回もまた、何らかの力が働いているのかもしれん」

 

 

 

 

Side十代

 

「ハァ・・・・」

 

なんて俺らしくないため息を吐いちまった。けど意識しないとため息が止まらなく、気が付けば「ハァ」とため息をついている。ほんと、らしくねえな。

あれから相棒のカードどころか姿も見れないし、遊斗の精霊達も見えなくなった。エドの言った言葉一つ一つを思い出すが、俺はエドが正しいとは思わない。その考えは負けても、カードが見えなくなっても変わらなかった。

 

「なんで・・・・デュエルを楽しくやっちゃいけないんだよ」

「そんな事ない。デュエルは楽しむものだ」

 

今まで目に映っていた満月が、突然遊斗の顔に変化した。ど、どうしてここが分かった!? というかここは海のど真ん中だぞ!?

遊斗の出現に驚き、横になっていた場所から慌てて数歩後ろに下がった事で、小舟がグラグラと左右に揺れた。

 

「ど、どうしてここが?」

「みんな心配してお前の事探してるんだ。その様子だと俺しか見つけられなかったのか」

 

遊斗はその後「なのはさんのWASすげえな」と付け加えた。大きいなのはが俺を見つけ出したのか、やっぱり魔法使いって羨ましいぜ。

フッと笑う遊斗の明るい顔を見て、なんか元気が出てきた。

 

「さっきの事だけど、確かにお前は能天気にデュエルを楽しんでいる。デュエルで飯を食っている人や、デュエルで人生を左右された人は中にもいるだろう。どっちが善悪とかじゃなくて、そういう人たちにとってお前のデュエルへの思いは楽しくないかもしれない」

「・・・・」

 

遊斗の言う通りだ。一年生の頃もたくさんの奴とデュエルをした。デュエルを悪用して商売をしている奴や、デュエルで自分の欲望を満たそうとする奴もいた。やり方は褒められる事じゃないけど、誰かを助ける為に必死にデュエルする奴もいっぱいいた。

今まで考えた事無かったけど、そう言う人達にとって、俺は鬱陶しい存在なんだろう・・・・。

 

「けど、誰だってみんな始めはデュエルが楽しくて楽しくて仕方なかった筈だ。勝ち負けなんて関係ない。自分の好きなデッキ、好きなカードでデュエルをする。けど大人になって現実を知ったり、あるきっかけを境に、次第に勝利を欲したり、デュエルを欲望を満たす為の道具にしたりする。そんな人達はお前が羨ましいんだよ」

「羨ましい?」

「どこかで鬱陶しいと思っている人もいるだろうけど、昔の純粋無垢のままデュエルをする十代が羨ましいんだ。けど今さらデュエルを心の底から楽しむ事なんて出来ない。頑張って楽しもうと思っても、楽しむ事が出来ない。何故ならその人にとってデュエルは勝利の余韻に浸るものであり、欲望を満たすものだからだ。だから羨ましいんだよ、十代の様に純粋にデュエル出来る事が」

 

俺が、俺が羨ましい? そんなの考えた事も無かった。だって俺は当たり前の様に、デュエルを楽しんでいるだけだ。特別な事なんて何一つして無いし、努力だってしてない。

すると突然遊斗はケラケラ笑い出し「考えるなんてお前らしくない」と言ってきた。

 

「いくら何でも酷いぜ。俺だって悩んだりするんだ」

「アハハハ! わ、悪い悪い。まあ偉そうな事言ったけど、俺も純粋にデュエルを楽しんでいるか分からないんだよな。いや、ある意味純粋に楽しんでいるけど、それはデュエルと言うより本当の決闘」

 

本当の決闘・・・・。この学校に入るまでは一回も体験しなかった本当のデュエル。即ち命を掛けた、誰も得する事のない俺の嫌いなデュエル。

そのデュエルを遊斗は確かに楽しんでいた。三幻魔の前から、闇のデュエルで遊斗は時々笑う時があった。その笑顔は活き活きとしており、ライフが少なくなっても笑顔の時があった。

 

「言っとくけどSでもMでも無いぞ。ただ決闘を肌で感じる事が出来て楽しいんだ。敵のライフを削り、敵のモンスターを破壊。ダメージを受けてもライフが0にならない限り反撃する事が出来る。あの感覚が忘れられないんだ。って、気持ち悪いな」

「いや、遊斗が自ら何の罪のない人に闇のデュエルを挑むなら軽蔑するけど、遊斗はそんな事しないから軽蔑しない。古代のデュエルは本当に命掛けだって聞いたことあるし」

 

だからと言って闇のデュエルを楽しもうとは思わないけどな。

 

「サンキューな十代。じゃあそろそろ・・ってあれ流れ星か?」

 

遊斗が指を指した方に視線を動かす。けど流れ星なら俺が向いた頃には消えているだろうな~、って思ってたけどそんな事は無かった。むしろ流れ星はどんどんと大きくなり、より鮮明に見えて来る。

 

「へぇ、かなりゆっくりとした流れ星だな」

「・・・・ば、馬鹿野郎! あれは流れ星だけど隕石だ! こっちに向かってるぞ!」

 

へ?

なんて行ってる間に、視界が真っ白になった。どうやら隕石を避けるのは無理だったみたいだ・・・・。

 

 

 

 

目が覚めた時、視界に映ったのは砂だった。後ろからザザーって音が聞こえる。デュエルアカデミアに入ってから良く聞く波の音だ。どうやらここは砂浜らしい。デュエルアカデミアの砂浜に流されたのかと思ったけど、上を見ると月では無い星がハッキリと見えた。地球だとこんな星が見えない。

じゃあ考えられる答えは一つ。ここは天国で俺は死んじまったって事。

 

「俺死んじまったのか~! クソ~、こんなことなら海老フライたらふく食っときゃよかった!」

「何呑気な事言ってやがる! こっちはまだフェイトと付き合って一ヶ月ちょいしか経ってないんだ! まだABC何もやってないのにー! せめてB!」

 

遊斗は俺の肩を掴み、前へ後ろへ揺さぶる。

悪かったけど、ABCって何の事だ? ・・・・分かったAは海老フライのAか。お前もフェイトと一緒に海老フライ食いたかったのか。

ハァ~、でも本当に天国なのか。トメさんの作った海老フライもう食えなくなるのかよ。エドにもリベンジしたいのに。

 

「やあ、待ってたよ。十代、遊斗」

 

ん? 天国に知り合いなんていない筈だけど。クルッと後ろを向くと、変な形のイルカがいた。ただのイルカじゃない。頭は普通のイルカと変わらないが、頭の下には人間の体が付いていた。勿論手足もある。

 

「キ、キ、キ・・・・」

「ん? どうした遊斗?」

 

宇宙人イルカに指を指しながら、遊斗は変な声を出す。そんな遊斗を心配して宇宙人イルカは遊斗に近づくが、遊斗は後退りして宇宙人イルカから逃げる。

 

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァ! イ、イルカが喋った!? と言うか何で人間の体があるの!?」

「僕はアクア・ドルフィン。ネオスペーシアンの一人さ。ここネオスペースの住人でもある」

 

一人ってどう見ても人間じゃないんだが。いや、宇宙人も人って書くから、一人でも問題ないのか?

けどネオスペーシアンってどっかで聞いた気が・・・・。あれ、なんだったかな?

 

「ネオスペーシアン?」

「そう、破滅の光と戦う、闇の力を持った者達の事だ」

「破滅の光? 破滅の闇じゃなくて? 普通、破滅の闇じゃないか?」

 

俺にはアクア・ドルフィンの説明は良く分かんなかったけど、遊斗の質問の意味は分かった。

どうしてプラスイメージの光が破滅なのか。それは俺も疑問に思った。

 

「宇宙の本質は光じゃなく闇。この宇宙は優しき闇の力によって、僕達が生まれるずっとずっと前から平和だった。だけど闇ある所に光はある。自然と生まれた破滅の光が宇宙を破壊しようと活動を始めた」

 

な、なんか急にスケールがでかい話になったな。アカデミアのテストでさえ分からねえのに、宇宙とか言われても全然分かんねえよ。

 

「破滅の光は宇宙、そして地球を破滅へ導こうとしている。君達にはそれを止めてもらいたい!」

「待て待て待て! 俺達にはそんな力は無いぞ?」

「いや、十代は正しき闇の力を持っている、破滅の光と戦う力を持っている。遊斗は十代と同じ力を持っている訳じゃないけど、闇から生まれたカードが君を待っている」

 

俺が正しき闇の力を持つ? 闇から生まれたカードが遊斗を待っている?

良く分かんねえけど、俺達はその破滅の光って言うのと戦わなきゃいけないのか。

 

「・・・・ッハ!? やべ、突然の事で頭が・・・・」

「まあ突然の事で混乱していると思う。だけど君たちなら破滅の光と戦ってくれると信じて・・ッツ! 奴らが来た!」

 

アクア・ドルフィンが睨みつけた先には、空を飛んでいる変な形のロボットが二機。そのロボット達は何の前触れも無く、目らしき場所からレーザーを発射した。突然の攻撃に反応できなかったが、アクア・ドルフィンが俺を抱えレーザーを回避した。遊斗は自力で避けたらしい。流石だ。

 

「奴等は!?」

「破滅の光の刺客だ!」

「「遊城十代、遊斗・スカリエッティ。お前達にデュエルを申し込む!」」

 

デュ、デュエル!? 宇宙での戦いもデュエルだから俺達が選ばれたって事なのか。

けど今俺はカードが真っ白に見えるし・・・・。

 

「受けて立つ、ってデッキが無い!? そうだよ、ここネオスペースじゃん」

「君達のデッキは僕が持っている」

「けど、俺はカードが真っ白に・・・・」

「そんな事言ってる場合か! タッグデュエルでいいな?」

 

ちょっと遊斗! 何勝手に話を進めて・・・・駄目だ。こいつ今から起こるデュエルを楽しみにしてる。

 

「「威勢のいい奴だ! だが我らが望むのは一対一のデュエル!」」

「いいだろう! そっちは任せたぞ十代!」

「「「デュエル!」」」

「デュ、デュエル!」

 

 

 

 

Side遊斗

 

「先攻は私のターン、ドロー。シャインエンジェルを守備表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

A1400・D800

 

刺客 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

十代は・・・・まだ気力がないみたいだな。人の事心配している場合じゃないけど、やっぱり心配だ。

 

「ドロー! ・・・・なんだこのカード?」

 

ドローしたカードは見た事のないカード。レベル4の魔法使い族モンスターで、良く見るとフェイトに良く似た顔をしている。バリアジャケットもそっくりで、リボン、スカートの色が水色、デバイスのコアの部分や持ち手の所なども水色。

 

「なんだとは何だ! 僕は雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)! 僕は凄いぞ! 強いぞ! カッコイイ~!」

 

・・・・な、何だこの子? 実体化して改めて見ると、本当にフェイトに良く似ている。髪は水色と言うのと、フェイトと違って馬鹿なのが違うくらいだ。

 

「あっ! 今僕の事馬鹿にしただろ!」

「・・・・そんな事よりお前って強いのか?」

「うん! 強くて凄くてカッコイイ! そう、僕最強!」

 

この子・・じゃなくてレヴィは絶対に馬鹿だ。レヴィの言動に破滅の光からの刺客も呆れているのが分かる。頼むから恋人の顔で馬鹿な言動をしないで欲しい。

 

「フィールド魔法ミッドチルダを発動。LS雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)を召喚!」

 

LS雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー) ☆4/闇/魔法使い/A1900・D400

LCミッドチルダ0→1

 

現れたレヴィは、恰好もフェイトのバリアジャケット姿にそっくりで、デバイスまでバルディッシュにそっくりだ。たださっきも言ったが、色と馬鹿なのが違う。馬鹿なのが違う!

 

「やっぱり馬鹿にしたでしょ!?」

「いや、レヴィ天才、最高、カッコイイって思ったよ。レヴィの効果で自身にLCを置く」

 

LCレヴィ1

 

「そうだろ~。ぼ「レヴィにカートリッジロードを発動! LCを乗せる」くってカッコイイだろ?」

 

LCレヴィ1→2

 

こ、こいつ。台詞を区切ろうとしても区切れないだと? ま、まあいい。

 

「バトル! レヴィでシャインエンジェルを攻撃!」

光翼斬(こうよくざん)!」

 

レヴィはデバイスを、鎌の状態にして自分の魔力光と同じ色の魔力刃を出す。魔力光は予想通り水色。

その水色の魔力刃をシャインエンジェルへと発射する。ハーケンセイバーのパク・・良く似ている。

 

A1900 VS D1100

 

「シャインエンジェルの効果発動。デッキから異次元の女戦士を召喚する」

 

A1500・D1600

 

「だがレヴィの効果も発動する。この馬鹿、じゃなくてレヴィが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードに乗っているLCを任意の数取り除き、その数だけレベル4以下のLSと名のつくモンスターを特殊召喚できる。このカードのLCを二つ取り除き、デッキからシャマ姉とカリム姉と特殊召喚する!」

 

A500・D500

A700・D1800

 

「あー! 今アホって言った! しかもどうして僕がこんなおばさん二人を呼ばなきゃいけないの!」

「「おばっ!?」」

 

何を言うこのアホの子は。カリム姉もシャマ姉もお姉さんとしての魅力が十分にあるではないか。カリム姉もシャマ姉もレヴィの言葉に頬をピクピクと動かし、無言でレヴィの両頬を引っ張る。

駄目だ。レヴィに付き合ってたらデュエルが終わらない。今は無視しておこう。

 

「この効果で特殊召喚したモンスターはこのバトルフェイズ攻撃できない。カリム姉の効果で罠を選択する。デッキトップはフォーメーションチェンジ。よって手札に加える。シャマ姉の効果でレヴィにLCを置き、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

LCレヴィ0→1

 

「エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ1 手札4 LP4000

刺客 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

レヴィか・・・・。アホの子だが、自分で強いと言うだけあり、結構強い効果だ。一ターン目からフィールドと手札アドバンテージに勝っている。

 

「ドロー! ライオウを通常召喚。自分フィールド上に二体以上光属性がいる時、カーディアン・オブ・オーダーは特殊召喚できる!」

 

A1900・D800

A2500・D1200

 

「バトル! ガーディアン・オブ・オーダーで雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)に攻撃!」

「これだから馬鹿は駄目なんだよ~。 行くんだ遊斗!」

「へいへい、ダメージステップ、手札のスバルを墓地に送り、レヴィの攻撃力を1000上げる!」

「甘い! それにチェーンして手札のオネストの効果発動! ガーディアン・オブ・オーダーの攻撃力を1900上げる!」

 

レヴィA1900→A2900 オーダーA2500→A4400

A4400 VS A2900

 

「え? き、聞いてないんだけど!」

 

そりゃあデュエルで予想通り行ったら苦労しはしないよ。オネストを使わせたのは良かったけど、スバルを使ったのは痛いな。

なんて言ってる間にも、ガーディアン・オブ・オーダーから放たれたエネルギー弾にレヴィが呑みこまれて破壊された。

 

遊斗LP4000→2500

 

「まだだ! ライオウでシャマルを攻撃!」

「ライオウが面倒だな・・・・。フォーメーションチェンジを発動。シャマ姉の表示形式を変更し一枚ドロー。この戦闘でダメージは発生しない」

 

A1900 VS A800

 

「異次元の女戦士でカリムを攻撃!」

 

A1500 VS D500

 

一気に三人とも破壊されてしまったか・・・・。だけど手札は5枚、次のドローで六枚になる。それに比べ相手の手札は二枚。しかも手札にはオネストが無い。

 

「ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター0 伏せ0 手札5 LP2500

刺客 モンスター3 伏せ1 手札2 LP4000

 

「ドロー! また新しいカード・・・・」

 

今度はなのはにソックリな子。ただツインテールでは無くショートで、なのはのバリアジャケットの白の所が黒紫、青の所が牡丹色となのはの逆だ。この子もレヴィと同じ様な性格だったら大変だな・・・・。

 

「LS星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)を召喚!」

「初めまして我が主。先程はレヴィがご迷惑をおかけしたようで」

 

LS星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター) ☆4/闇/魔法使い/A800・D1500

LCミッドチルダ2

 

こ、今度の子は普通だ! というかめっちゃ礼儀正しい子だ。良かった・・・・、レヴィが沢山いると考えただけでもゾッとする。ああいうのは一人いてこそ可愛い。

 

「ミッドチルダのLCを取り除き、連続転移を発動。一枚目なのは、二枚目ACS、三枚目アスティオン。よってなのはとアスティオンを特殊召喚する。アスティオンの効果でライフを800回復」

 

LCミッドチルダ2→0

A500・D1800

A500・D500

遊斗LP2500→3300

 

「シュテル! 久しぶりだね!」

「お久しぶりですナノハ。と言っても我らはカードになってから間もないので、あなた達と別れてからそれほど経っていないのです」

「デュエルを続けるぞ。カートリッジロードをなのはに発動。そしてなのはのLCを取り除き、ディバインバスターを発動! ライオウとそのセットカードを破壊!」

「ッチ、特に何もない」

 

ビビりだからセットカードを優先した破壊したが、セットカードはガード・ブロック。別に破壊しなくても良かったが、結果論だ。

 

「バトル! シュテルでガーディアン・オブ・オーダーを攻撃!」

「攻撃力800で攻撃だと!? 血迷ったか!」

「シュテルは攻撃するモンスターのレベル×300アップする! ガーディアン・オブ・オーダーのレベルは8、よって攻撃力を2400アップさせる!」

 

シュテルA800→A3200 VS A2500

 

「ブラストファイアー!」

 

シュテルは手に持ったデバイスをガーディアン・オブ・オーダーに構え、杖先に炎を溜める。どうやらシュテルは炎熱変換スキルを持っているようだ。溜まった炎はとてもレベル4モンスターの物とは思えなく、上級モンスターをあっさりと燃えカスにした。

 

「シュテルの攻撃で発生する戦闘ダメージは0だ。バトルフェイズ終了時、シュテルは次の自分のバトルフェイズ開始時までゲームから除外される。

カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札1 LP2900

刺客 モンスター1 伏せ0 手札2 LP4000

 

「ハッハッハ! まだライフを1も削れてないぞ。所詮その程度の男と言う訳か。ドロー!」

 

そうかな? そっちの方が通常ドロー回数が多いが、フィールドアドでは2つ勝っている。しかもセットしているカードは協力防御。もう一回ドローする事が可能だ。どうやら宇宙の価値観も地球と同じで、ボードやハンドよりライフアドバンテージで有利不利が決まるみたいだな。

 

次元合成師(ディメンション・クミストリー)を通常召喚。効果でデッキトップのカードを除外し、攻撃力を500上げる」

 

次元合成師(ディメンション・クミストリー)A1300・D200→A1800

 

現れたのは、次元合成師と言うだけあって、どういう顔なのかが全く分からないモンスター。ある意味顔が次元と言う訳だろう。

 

「墓地の光属性二体をゲームから除外し、神聖なる魂(ホーリーシャイン・ソウル)を特殊召喚!」

 

A2000・D1800

 

「バトル! 異次元の女戦士でアスティオンを攻撃!」

「罠発動、協力防御。このターン俺のモンスターは戦闘では破壊されず、俺は戦闘ダメージを受けない。発動後デッキから一枚ドローする。バトルは続行して異次元の女戦士の効果を発動するかどうか決めれるがどうする?」

「ッチ、カードを一枚伏せてターンエンド(今伏せたカードは聖なるバリア―ミラーフォース。次のターンもし攻撃してきたら一気に全滅だ)」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札2 LP2900

刺客 モンスター3 伏せ1 手札0 LP4000

 

・・・・俺の観察眼は宇宙人に対しても使えるようだ。今伏せたカード、どう考えても怪しい。まるで聖なるバリア―ミラーフォースの様な逆転のカードを伏せた時の様な顔だ。ロボットの口らしき所が、映画の悪役の様に曲がっている。せっかくの逆転のカードをセットした所悪いけど破壊させて貰うよ。

 

「俺のターン! カートリッジをなのはに発動。そのLCを取り除き、セットしたカードを破壊!」

「アクセルシュート!」

「俺の聖なるバリア―ミラーフォースが!?」

 

やっぱり聖なるバリア―ミラーフォースか。ミラーフォースはブラフカードと使った方がいいよ、って宇宙人相手に言う事になるとは・・・・。てか聖なるバリア―ミラーフォースの採用率ヤバイな。

さて、さっきのドローで手札に加えたのは、またまた新しく見るカード。今度ははやてそっくりの子だけど髪の色が銀色で瞳は緑。服の色もはやての紺色の部分が黒、上着の白い部分はグレーで、黒の部分は紫と、色が違う。だが一番の違いは、偉そうに高笑いしてる所。

 

「ティオを生贄に、闇統べる王(ロード・ディアーチェ)を召喚!」

 

LS闇統べる王(ロード・ディアーチェ) ☆5/闇/魔法使い/A2100・D1600

 

「自身とミッドチル「アーハッハッハ! みなぎるぞパワァー! あふれるぞ魔力ッ! ふるえるほど暗黒ゥゥッッ!」こ、今度は中二病患者かよ・・・・」

 

薄幸美少女のはやてと同じ姿とは思えないほどのテンションだった。登場時、闇を操っている様子など全くなかったが、彼女の中からは力が湧き出ているんだろう。そうなんだろう。

 

「ん? ああ、貴様が我の使い手か。何ともまたそこ等の塵芥と変わらぬ見た目」

 

カッチーン。確かに俺の周りには美男美女が多数いるけど、俺だって中の上か上の下の下ぐらいと自負している。それに余り顔の事は言って欲しくない、フェイトの隣に立つのが辛くなるから・・・・。う、鬱になってきた。

 

「ディアーチェ! 久しぶりだね!」

「む? ああ、うぬはシュテルのオリジナルの」

「なのはだよ、な・の・は! も~、ちょっとは名前覚えてよ~」

「我は「ディアーチェとミッドチルダの効果発動! LCをそれぞれ一つずつ置く」むぅ・・・・」

 

LCミッドチルダ0→1 ディアーチェ1

 

「ミッドチルダのLCを取り除き、デッキからユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは。効果でデッキからキャロを手札に加える」

 

LCミッドチルダ1→0

 

「あー! ディアーチェだー! 久しぶりー!」

「? ・・・・う、うぬはもしかしてナノハか!? さっきまでちっこかったではないか!」

 

なのはさんはディアーチェを自分の胸に引き寄せ、ポンポンと頭を撫でる。愛でられる事よりも、大人のなのはさんの姿に驚いた様で、呆然としている。

 

「キャロを魔法・罠ゾーンに置く」

 

なのはA1000・D3000→A1300・D3300

ディアーチェA2100・D1600→A2400・D1900

 

「そして遠隔転移発動。墓地のレヴィを復活させる」

「あー! 王様だ!」

 

レヴィA1900・D400→A2200・D700

 

「バトルフェイズ開始時、効果でシュテルが戻ってくる!」

神聖なる魂(ホーリーシャイン・ソウル)は相手のバトルフェイズ中、相手モンスター全ての攻撃力を300下げる!」

 

なのはA1300→A1000

シュテルA1100→A800

ディアーチェA2400→A2100

レヴィA2200→A1900

 

「あ、シュテ「バトル! レヴィで異次元の女戦士を攻撃」遊斗ぉ!」

 

だから今はデュエル中なの! 三王が新しいカードとなって来た時はこんな事無かったのに、どうしてこうもデュエルペースが乱れるかな・・・・。

 

「この瞬間ディアーチェの効果発動! LCを取り除き、フィールド上のLSと名のつくモンスター一体を選択。選択したモンスターの攻撃力は、そのモンスター以外のフィールド上のLSと名のつくモンスターの攻撃力の合計分アップする。なのはさん、ディアーチェ、シュテルの攻撃力の合計は3900」

「王様、僕に力をちょーだい」

「ふ、ふん! 臣下に出番を与えるのも王の務めだからな!」

 

レヴィA1900→5800 VS A1500

 

「行くぞぉー! 超必殺最大奥義!」

 

魔力刃へと溜まった皆の魔力を、レヴィは鼻歌を歌いながら自分の力へと変換して行く。魔法が使えない俺には分からないが、他人の魔力を使うのは難しいらしいが、レヴィは平然とやってのけている。

にしても超必殺最大奥義って、せめて必殺技か奥義のどっちかに絞れ。

 

「エターナルサンダーソード! 相手は死ぬ。・・・・キリッ」

「って何だその技名は!?」

 

ある意味その名の通り、永遠に伸びる雷を纏った剣は、逃げようとする異次元の女戦士を容赦なく破壊し、そのまま刺客を木っ端みじんにした。

 

「ば、馬鹿なあああ」

 

刺客LP4000→-300

 

「無事勝ったみたいだな」

「その様子ならお前も勝ったみたいだな。十代」

 

俺より早く敵を倒したのか、もう一人の刺客の姿はどこにもいなかった。十代の顔には今まで、いや、今まで以上の笑顔があった。話を聞くに、十代の新たな仲間のE・HEROネオスとアクア・ドルフィンは、昔十代が海馬コーポレーションに応募したオリジナルカードだそうだ。

 

「すげえな、じゃあネオスとアクア・ドルフィンはお前が作り上げたカードなのか」

「ああ。だけどネオスペーシアンはアクア・ドルフィンだけじゃないんだ。遊斗、デュエルアカデミアに帰ったら暫く付き合ってくれるか?」

「何に付き合うかよく分からないが、勿論だ。アクア・ドルフィン。俺達を帰してくれ」

「ああ! 濡れない様に君達がいた場所から一番近い陸地に飛ばすね」

 

次の瞬間、アクア・ドルフィンは何をしたのか、辺りの景色がネオスペースからデュエルアカデミアに変化した。これから十代が何をするかは分からないが、親友として最後まで付き合ってやろう。

 

「行くぞ遊斗!」

「おう!」

 

 

 

 





LS星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター) ☆4/闇/魔法使い/A800・D1500
このカードが戦闘を行う場合、ダメージステップの間このカードの攻撃力は戦闘を行なう相手モンスターのレベル×300ポイントアップする。
また、このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードをゲームから除外し、次の自分のターンのバトルフェイズ開始時に表側攻撃表示で自分フィールド上に戻す。
このカードが戦闘を行う場合、相手プレイヤーが受ける戦闘ダメージは0になる。


LS雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー) ☆4/闇/魔法使い/A1900・D400
このカードが召喚に成功したとき、このカードにLCを1つ乗せる。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードに乗っているLCを任意の数取り除き、取り除いた数と同じ枚数だけデッキからレベル4以下の「LS」と名のついたモンスターを特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃することができない。


LS闇統べる王(ロード・ディアーチェ) ☆5/闇/魔法使い/A2100・D1600
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ乗せる。
1ターンに1度、このカードのLCを1つ取り除き、自分フィールド上の「LS」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は、そのモンスター以外のフィールド上の「LS」と名のついたモンスターの攻撃力の合計分アップする。
「シュテル」「レヴィ」「ユーリ」と名のつくモンスターを選択する場合のみ、この効果は自分のバトルフェイズ中に発動できる。
この効果を発動するターン、選択したモンスター以外のモンスターは攻撃できない。




一気に三人とも紹介したいですが、最近後書きに書くことが無いのでゆっくり説明していきたいと思います。
まずマテリアルズ全体的なところ。
なのはとシュテルが一緒に出た時に分かった方も多いと思いますが、三人ともオリジナル三人娘より攻撃力が高く、守備力が低いです。攻守の合計値は一緒になってます。
融合しないとはいえ、やたらと強いです。カウンターは持久力が無いので、レヴィとディアーチェが比較的良心的ではないでしょうか?
全体的に強い理由はただ一つ。マテリアル補正です。可愛いは正義です。


今回はシュテルの解説を。
相手のレベル分攻撃力がアップする効果。強い敵に燃え上がるシュテルの性格を表そうと、この効果を思いついたのですが、まさか全く同じ効果を持ったモンスターがいたとは知らなかった・・・・。
十代が使っていた星見鳥ラリスですね・・・・。第一話に書いていたと思うんですけど、作者は小説と昔の記憶を頼りに書いていますから、調べるまでラリスの存在忘れていました。
攻撃範囲が広く、今後ともピンチや特殊召喚できないときに使っていこうかなと思います。十代で言うモグラ的立場?


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第二十八話

カードの事でミスが出たのでこの場を使い謝罪します。
だいぶん前の話になるのですが、十八話のあとがきで、ダメージステップ計算時にマリアージュにスバルを使うと、マリアージュトークンは出せる。と言っていましたが、出せませんでした。
何をどう勘違いしたのか、ダメージステップ時の順番がおかしくなっていました。

マリアージュの自壊効果ですが、あれはダメージ計算後に発動する効果で、トークンが呼びだされるのはダメージステップ終了時、戦闘破壊されたモンスターがフィールドから離れる時ですね。

この誤った戦法を使ってしまった二十一話のVSブラック・マジシャン・ガール戦ですが、もう修正のしようがないので、前書きの所に追記で書いておきます。
十八話のあとがきにも同じように書いておきます。

すいませんでした。





Side剣山

 

十代のアニキと遊斗先輩がいなくなってからもう三日経つドン・・・・。十代のアニキをみんなで探した日から、万丈目先輩はおかしくなり、白い制服を着てホワイト寮という変な寮に移ったザウルス。校長先生はと言うと、強いデュエリストを探す旅に出て、代わりにクロノス教諭が校長先生代理になっているドン。クロノス教諭の変わりに教頭先生になったナポレオン教頭とクロノス校長代理は考え方が違い、今先生達は混乱していてホワイト寮どころの騒ぎでは無いザウルス。

 

「ハァ・・・・アニキ~」

「アニキ達が帰ってくれないと、この間みたいに俺達がレッドを守らなくちゃならないザウルス」

 

この間ナポレオン教頭が落ちこぼれのレッド寮を潰す為に、刺客を放ってきたザウルス。しかもナポレオン教頭だけじゃなく、イエロー寮の先生が、イエローの俺と丸藤先輩を連れ戻す為に襲ってきたりもしたドン。

俺と丸藤先輩の力で何とか追い払う事が出来たザウルスが、このままアニキ達がいないのは辛いし、俺達も寂しいドン。

 

「アニキー! 遊斗君ー! 帰って来てくれよー!」

「ザウルスー!」

 

 

 

 

Side遊斗

 

 

あれから三日間。俺は十代に付いていき、デュエルアカデミア島各地に眠っていたネオスペーシアン達を探していた。何故彼らがデュエルアカデミアにいるのかは分からないが、溶岩や山岳地帯など危険な所にもおり、かなり大変だった。十代だけに収穫がある訳では無く、俺も見つけたネオスペーシアン達から新たなカードを貰った。

デュエリストとして新たなカードを貰うのは凄く嬉しいが、この三日間、俺達はガチのサバイバルをしてすっかり体力が無くなっていた。精霊達(みんな)が実体化してくれたらサバイバル生活も楽になるが、アクア・ドルフィンが「これは訓練だから精霊達の力は借りたら駄目だ」とのこと。

 

「けど遊斗が来てくれて助かったぜ。でなきゃ俺腹減って死んでた」

「海の水温が比較的暖かいから助かったな」

 

パチパチと火が細い木を燃やし、小さくて心地よい音を立てる。俺達にとって生命線である命の火に熱されている魚を眺め、十代はそう言った。

俺もサバイバルをするのは初めてだが、昔からサバイバル経験豊富な人が近くにいたので知識は豊富だ。サバイバルの知識はなのはさん、フェイトさん、シグナムさんから教えてもらった。

シグナムさんがサバイバルをする、それは想像つくかと思う。実際シグナムさんはキャンプ好きなアウトドアの人だ。その一方なのはさんとフェイトさんは管理局の任務で仕方なくサバイバルをやった事があるらしく、それはそれは地獄の様なサバイバルだったらしい。

 

「三人の話を聞いてて良かったよ。実際のサバイバルってテレビのサバイバル番組と全然違うし。ほら、魚焼けたぞ」

「おう、サンキュー! おっ、うっめー! アクア・ドルフィンが言うにはネオスペーシアンはあと二人」

「俺が貰うカードはあと三枚らしい」

「お前の方が多いってなんか納得できねえな」

「融合も入れたらお前の方が多いって。けどシュテル、レヴィ、ディアーチェだけじゃなかったとは。また賑やかになるな」

 

焼けた魚を豪快に噛みつく。海の塩がしっかりと身にしみ込んでおり、獲れたてなので身もしっかりとして、とても美味しい。美味しいが、ここ最近魚と山菜しか食ってないのでいい加減飽きてきた。十代も口には出さないが、大好きな海老フライが食べたいだろう。

 

「新しいカード同士でデュエルしてぇな~」

「同感だが、サバイバル中に余計な体力を使いたくない。気持ちは分かるが我慢しよう。それにお前も気付いてるだろ?」

「ああ、なんか嫌な予感がする。早くデュエルアカデミアに帰らねえとな」

 

十代はバクバクと白身を食べ、アニメの様に綺麗に頭と骨と尻尾だけ残すと、スッと立ち上がる。俺も十代に続き、素早く魚を食べて腹を膨らませる。

 

「行くぞ十代。今夜中には残りのネオスペーシアン達を探すぞ」

「おう!」

 

 

 

 

最後に飯を食ってから六時間ぐらいが経った。無事最後のネオスペーシアンを見つける事が出来、俺もネオスペーシアンからカードを貰った。もう二日徹夜でネオスペーシアンを探していたから体が限界だが、デュエルアカデミアの安否が確認できるまで寝たくても寝れない。

 

「・・・・し、死ぬ」

「後もう少しだ・・・・」

 

天真爛漫でいっつも元気な十代も、ネオスペーシアンが集まった喜びよりも眠気の方が強いらしく、エドに負けた時並みにテンションが低い。

 

「・・・・デュエルの匂いがする。こっちだ」

「おう・・・・」

 

お通夜の後の様なテンションの低さに等しく、足が進む速さも低い。フラフラとよろついている背中に付いて行くと、室内デュエルスペースの建物が前にあった。月一試験だったり、卒業代表デュエルがあった場所。ゾンビのようゆっくりとデュエルスペースに入ると、そこには明日香、翔、剣山、それにエドとナポレオン教頭がいた。

 

「アニキ! 遊斗君!」

「あなた達!? 今までどこにいたの!?」

「それはあとで説明する。今はどういう状況だ・・・・?」

「今はレッド寮の存亡を掛けたデュエルをするのでア~ル。エド・フェニックス氏とのデュエルに負けたら、レッド寮は無くなるのでア~ル」

 

語尾にア~ルを付ける、クロノス先生や剣山に負けずとも劣らない独特な喋り方をするのは、クロノス先生に代わり新しく教頭先生になったナポレオン教頭。どこの国の出身かは分からないが、一年前のクロノス先生に良く似ており、落ちこぼれであるレッドを目の敵にしているのは分かる。俺はブルー寮のエースだが、レッドの存続を求めているからナポレオン教頭には目を付けられている。

 

「エド! お前の相手は俺がする!」

「十代、あなたカードが真っ白に見えるんじゃないの?」

「大丈夫だ。もうしっかりとカードが見える。それにエドにはこの間の借りを返さないといけないからな」

 

デュエルディスクを構えていた明日香は、睡魔を吹き飛ばした十代の瞳に宿る意志を感じたのか、デュエルディスクを降ろす。

 

「おっと、待つのでアール。私の刺客はもう一人いるのでアール。来るのでアール銀流星!」

 

呼ばれたのは眼鏡を掛けて太った男。見た目でどうこう言うのは好きではないが、いかにもオタクっぽい奴。

 

「へぇ? 僕以外にも呼んでいるとは。日本の教師に舐められるとは、僕も落ちたものだ」

「そ、そういう訳ではないのでアール。ですが念には念を。さあ、銀流星と戦うのは誰でアール?」

「俺がやる。これに懲りたらレッドを無くそうなんて企むのは止めてもらいたい」

「分かったのでアール。けどどっちか一人負けたらレッドは消えるのでアール」

 

後ろから翔、明日香、剣山の非難の声が上がる。一人はプロデュエリストエド・フェニックス。銀流星は少しマニアックなデュエリストだが、ゲームチャンプであり、デュエリストとの腕も一流。そんな二人を学生二人が相手にし、どちらか一人でも負けたらいけない。傍から見たら不公平だが、新たな仲間を加えた俺達にとっては、これくらいの相手じゃないと話にならない。

 

「問題ない」

「それよりデュエルだ!」

「「「「デュエル!」」」」

「せ、先攻は僕がもらう。ドロー、ヴィークラーを通常召喚」

 

A200・D200

 

現れたのは、様々な乗り物が合体した姿のモンスター。二輪なのに連動してか、攻撃力、守備力、レベル全てに2が入っている。カードデザイナーのちょっとしたお茶目だろう。

 

「永続魔法マシン・デベロッパーを発動。機械族の攻撃力を200アップ」

 

ヴィークラーA200→A400

 

「これでターンエンドだ」

 

流星 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

やっぱりデュエルは凄い。さっきまでの眠気が吹っ飛び、目の前の相手とのデュエルに意識が集中している。

マシン・デベロッパーにヴィークラー。ヴィークラーは戦闘破壊された時、デッキからアンサイクラーを特殊召喚するリクルーターだ。そして永続魔法、マシン・デベロッパーは機械族が破壊された時カウンターを乗せる。ただヴィークラーを破壊しても俺にアドバンテージは無い。ここは工夫して攻撃に移ろう。

 

「ドロー! ナイスだ。レヴィを召喚。効果で自身にLCを置く」

『強くてカッコイイ僕は切り込み隊長!』

 

A1900・D400

LCレヴィ1

 

「バトル! レヴィでヴィークラーを攻撃!」

光翼斬(こうよくざん)!』

 

A1900 VS D200

 

ハーケンセイバーのパクリ技だが余り言わないでおこう。あくまで俺がハーケンセイバーを先に見ていたからで、レヴィの方がこの魔法を考えたのが早かったかもしれない。

水色に光る魔力刃が、ヴィークラーを二つにカットする。綺麗に破壊出来たことにレヴィも満足にしているのか『ふっふ~ん』と腰に手を当てている。

 

「レヴィの効果発動。戦闘でモンスターを破壊した時、自身のLCを取り除く事で、デッキからレベル5以下のLSを特殊召喚する。来い、イクス」

 

A500・D500

LCレヴィ1→0

 

「ヴィークラーの効果でデッキからアンサイクラーを特殊召喚。更にマシン・デベロッパーにジャンクカウンターが二つ乗る」

 

マシン・デベロッパー0→2

アンサイクラーA100・D100→A300

 

「この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃出来ない。イクスの効果でデッキからマリアージュを特殊召喚。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

A1700・D1200

 

遊斗 モンスター3 伏せ1 手札4 LP4000

流星 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

素直にレヴィは凄い。カウンターを溜められなかったら一回限りの効果になってしまうが、溜めれば一気に展開できる、優秀な効果だ。ただ内心で褒めないと、調子に乗ってしまう性格が長所でもあり短所でもある。

 

「アイドルデッキかな? ドロー、アンサイクラーを生贄に捧げ巨大戦艦ビッグ・コアを召喚する」

 

ビッグ・コアA2300・D1100→A2500

 

俺はロボットの事は詳しくないから説明するのが難しい。SF映画で良く出る薄っぺらい戦闘機と言えば分かるだろうか?

このカード、というより巨大戦艦のシリーズは、I2会社が作った某有名ゲームの機体らしく、そのゲームのファンの人達にとってはまさに夢の様なカードだろう。

 

「このカードの召喚時、カウンターを3つ置くよ」

 

ビッグ・コア3

 

「バトル! ビッグ・コアでレヴィを攻撃!」

「させない、攻撃宣言時永続罠、鋼の軛を発動。ビッグ・コアの攻撃を封じる!」

「ッツ、カードを一枚伏せ、永続魔法ボスラッシュを発動だ。ターンエンドする」

「エンドフェイズ、鋼の軛の効果でビッグ・コアの攻守を1000下げ、レヴィにLCを置く」

 

ビッグ・コアA2500・D1100→A1500・D100

レヴィLC0→1

 

遊斗 モンスター3 伏せ1 手札4 LP4000

流星 モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

 

このままレヴィで攻撃して展開したいところだが、巨大戦艦は共通で戦闘破壊されず、カウンターが無くなった状態で戦闘を行ったダメージステップ終了時に破壊される。

戦闘破壊をキーに効果を発動するレヴィとマリアージュには相手が悪い。ここは別のモンスターで戦っていくのがいいかもしれない。

 

「ドロー! レヴィのLCを生贄に、はやてを召喚。効果でLCをはやてに置く!」

 

A2000・D1700

LCはやて1

 

『あー! 僕の魔力!』

『ごめんなぁ。けど今はこうした方がええからな~』

 

まるでお菓子を食べられた子供と。それを宥める母親だ。この組み合わせも中々微笑ましい。

けどレヴィとは正反対の性格のイクスは、元気なレヴィにポカーンとしている。マリアージュはいつも通り立っているだけ。

 

「はやての効果。LCを一つ取り除き、このターン二回攻撃を可能にする! 場のイクスとマリアージュを融合。来い冥王イクスヴェリア!」

 

A2000・D2500

LCはやて1→0

 

「イクスの効果でマリアージュ軍隊長トークンを特殊召喚する」

 

A2000・D2000

 

「バトル、はやてでビッグ・コアを二回攻撃!」

『ディアボリックエミッション!』

 

A2000 VS A1500

流星LP4000→3000

 

「ック、ビッグ・コアのカウンターを二つ取り除き、二回とも破壊を無効するよ!」

 

ビッグ・コア3→1

 

「まだまだ! レヴィで追加攻撃!」

『もういっちょ光翼斬!』

 

A1900 VS A1500

流星LP3000→2600

 

「破壊を無効!」

 

ビッグ・コア1→0

 

ディアボリックエミッションと光翼斬をくらっても、なお破壊されない巨大戦艦。けどビッグ・コアは既に半壊であり、ダメージを受けているのが素人の目でも確認できる。

 

「イクスでビッグ・コアを攻撃!」

『えっと、この様な時は私も技名を言うのですか?』

「いや、無理にとは言わないが、お前も技名無かったな・・・・」

 

A2000 VS A1500

 

なんて言っている間に、イクスの周りからマリアージュがゾンビの様に地面から現れ、ビッグ・コアに向け銃を乱射した。う~ん、インフィニートゥムマリアージュとかどうだろうか?

 

「何をブツブツ言っているの? カウンターが乗っていない巨大戦艦が戦闘をしたダメージステップ終了時、巨大戦艦は自壊する」

 

マシン・デベロッパー2→4

流星LP2600→2100

 

「これでラスト! 軍隊長トークンで攻撃!」

無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)・・・・』

 

A2000

流星LP2100→100

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズイクスの効果。自身を融合デッキに戻し、融合デッキからアインハルトを特殊召喚する」

 

A2700・D2200

 

「こっちもボスラッシュの効果を発動。巨大戦艦が破壊されたターンのエンドフェイズ、デッキから巨大戦艦を特殊召喚する。巨大戦艦ビッグ・コアMk-Ⅱを特殊召喚。このカードの特殊召喚成功時、このカードにカウンター三つ置く」

 

Mk-ⅡA2400・D1100→A2600

Mk-Ⅱ3

 

遊斗 モンスター4 伏せ1 手札3 LP4000

流星 モンスター1 伏せ3 手札2 LP100

 

場、ライフ、この二つで勝っているし、手札も差は一枚。決して悪くは無い状況だが、奴の場は整った。ここから流星の本気が見えるだろう。

 

「凄いね、僕が押されるとは。けどこれからだ。ドロー! う~ん、このままバトルだ! Mk-Ⅱで軍隊長トークンに攻撃!」

 

A2600 VS A2000

 

マリアージュは抵抗するそぶりも見せず、抵抗したとしても攻撃力的に勝てないから意味ない、と言わんばかりの態度だった。

 

遊斗LP4000→3400

 

「Mk-Ⅱのカウンターが一つ減る。カードを二枚伏せてターンエンドだよ」

 

Mk-Ⅱ3→2

 

「埋まったか・・・・。アインハルトの効果で、このカードを融合デッキに戻し、融合デッキからヴィヴィオを特殊召喚する。このカードの攻守は墓地のLS×400上がる。墓地のLSは二枚。ヴィヴィオの特殊召喚成功時、デッキから聖王の鎧を手札に加える」

 

ヴィヴィオA?・D?→A800・D800

 

場 

遊斗 モンスター3 伏せ1 手札4 LP3400

流星 モンスター1 伏せ5 手札1 LP100

 

モンスターはともかく伏せが怖い・・・・。表になっているカードはボスラッシュとマシン・デベロッパーの二枚で分からないカードが三枚。これは非常に、いや、かなり動きにくい。

なのは来ないかな~、なのは来ないかな~。

 

「ドロー、なのは大好きだ! なのはを召喚、効果でLCを置く」

『にゃはは、フェイトちゃんに怒られちゃうよ?』

「(この人、僕よりカッコイイのに、重症なオタクだ・・・・)」

 

A500・D1800

LC1

 

「なのはの効果。このカードのLCを取り除き、一番左のセットカードを破壊!」

「残念、チェーンして和睦の使者を発動。このターン僕のモンスターは戦闘では破壊されず、僕は戦闘ダメージを受けない」

「ッツ、やられたな」

『ゴメンね。失敗しちゃった』

「気にするな。永続魔法魔力高炉を発動。このカードにLCを二つ置く」

 

LC魔力高炉2

 

「魔力高炉のLCを一つ取り除き、デッキからユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

A1000・D3000

ヴィヴィオA800・D800→A1600・D1600

LC魔力高炉2→1

 

「なのはの効果。このカードを攻撃表示にしてデッキからシュテルを手札に加える。そしてAOAなのはを生贄に、蒼穹の王・高町なのはを召喚!」

 

衝撃と共にフィールドに発生した竜巻は、宇宙空間でも戦闘出来る巨大戦艦を風圧で押している。しかしその圧倒的な風圧よりも竜巻の中にいる人物の覇気の方がはるかに強い。戦闘に関しては素人であろう流星も冷や汗を流している。

 

A2500・D2500

ヴィヴィオA1600・D1600→A2000・D2000

 

『こうして出るのは結構久しいな。楽しませてもらう』

「なのはの効果発動。特殊召喚成功時、デッキのカード一枚を選び墓地に送る。レイジングハートを墓地に送り、なのはの効果発動。墓地の装備魔法を装備する事が出来る。レイジングハートを装備」

 

なのはA2500→A4000

 

「攻撃力4000!?」

「まだまだ、ヴィヴィオの効果発動。墓地のAOAなのはを選択し、その効果を得る。ヴィヴィオの効果で守備のこのカードを攻撃表示に変更し、デッキからツヴァイを手札に加える」

 

スバルやキャロを手札に加えても良かったが、魔力高炉のLCが残っているなら、はやてとツヴァイを融合した方が得策だと思う。しかしこの流れが出来たのは高町親子の力あっての事。親子揃って強力な効果を持っている。

 

「魔力高炉のLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚。場のはやてとツヴァイを融合! 来い、夜天の主・八神はやて! 効果で自身にLCを二つ置き、LCの数×300攻撃力を上げる」

 

はやてA2100・D2000→A2700

ヴィヴィオA2000・D2000→A2800・D2800

 

「バトル! なのはでMk-Ⅱを攻撃!」

『ディバインバスター・エクステンション』

 

A4000 VS A2400

 

レイジングハートから放たれた桃色の砲撃が、巨大戦艦のエネルギー砲撃を押し返し、戦艦の半分を呑み込んだ。

 

「戦闘ダメージは無い!」

「だが戦闘を行った事でカウンターが減る」

 

Mk-Ⅱ2→1

 

「まだまだ! はやてでMk-Ⅱを攻撃!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A2700 VS A2400

Mk-Ⅱ1→0

 

「ヴィヴィオで攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

A2800 VS A2400

 

「ック、Mk-Ⅱは破壊される」

「アニキも凄いけど遊斗先輩も凄いザウルス! ライフと場で圧倒してるドン!」

「アニキも遊斗君も始めて見るカードを使っているッス」

「まさかこれで終わりじゃないだろうな? ターンエンド。エンドフェイズヴィヴィオを融合デッキに戻し、融合デッキからアインハルトを特殊召喚する」

 

A2700・D2200

 

「ボスラッシュの効果でデッキから巨大戦艦クリスタル・コアを特殊召喚するよ」

 

クリスタル・コアA2100・D1000→A2300

 

遊斗 モンスター4 伏せ2 手札3 LP3400

流星 モンスター1 伏せ4 手札1 LP100

 

「ドロー! ゴブリンのやりくり上手を二枚発動し、それにチェーンして非常食を発動。二枚のゴブリンのやりくり上手とマシン・デベロッパーを墓地に送る。効果でカードを三枚ドローし一枚デッキの下に、もう一回三枚ドローして一枚デッキの下に。そしてライフを3000回復する」

 

流星LP100→3100

クリスタル・コアA2300→A2100

 

伏せていたカードはやりくり上手だったか。ボスラッシュ軸なら不必要になったボスラッシュを墓地に送れるし、手札の巨大戦艦をデッキに戻せるし、ボスラッシュを手札に持って来る事が出来る。相性抜群のコンボって事か。

 

「相手フィールド上に二体以上同じ属性のモンスターがいる時、このカードは特殊召喚出来る。来い、神禽王アレクトール!」

 

A2400・D2000

 

アレクトール? 始めて見るカード。旋風に乗って登場したモンスターは、白い鎧を着た赤い羽根を纏った巨鳥の姿をしている。比較的緩い召喚条件に攻撃力2400、だがこの状況で出したカードが、ただの特殊召喚モンスターと言う訳ではないだろう。

 

「アレクトールの効果。フィールド上の表側のカードの効果を無効にする。ボスラッシュの効果を無効」

 

なるほど。ボスラッシュはデッキから特殊召喚する優秀な効果を持っているが、コントローラーは通常召喚出来なくなるデメリットがある。そのデメリットの所為でかなり評価が下がっているが、アレクトールを使う事でそのデメリットを消したか。

 

「クリスタル・コアの効果発動。攻撃表示のモンスターを守備表示にする。夜天の王・八神はやてを守備に変更」

 

はやてさんはLCで攻撃力は上がるけど守備は上がらないから、表示形式を変更されると半上級モンスターに勝てない。まあ攻守万能なモンスターは中々いないし。

 

「そしてクリスタル・コアとアレクトールを生贄に巨大戦艦カバード・コアを召喚!」

 

A2500・D800

 

次に現れた戦艦は、SF映画でよくするであろう円の形をしている機体。シリーズものの海外の映画で、賞金稼ぎが使っていた戦艦にそっくりだ。きっと某ゲームを知っている人ならもっと詳しい説明が出来るだろう。

装甲は銀色で、エネルギー弾やミサイルを発射する装置が目で確認できる。巨大戦艦で一番攻撃力が高く、最上級モンスターだが、大きさは先程の巨大戦艦より小さい。

 

「ガバード・コアの効果。召喚時二個カウンターを乗せる」

 

ガバード・コア2

 

「バトル! ガバード・コアで夜天の王・八神はやてを攻撃!」

 

A2500 VS D2000

 

ガバード・コアの正面から巨大なエネルギー砲がはやてさん目掛け発射された。SSランク魔導師でも、はやてさんは一対一の戦闘が得意では無いので、エネルギー砲を防ぐ事が出来ず破壊されてしまった。

 

「もう一枚のボスラッシュを発動。カードを二枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、アインハルトを融合デッキに戻し、ヴィヴィオを特殊召喚する」

 

ヴィヴィオA?・D?→A3200・D3200

 

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札3 LP3400

流星 モンスター1 伏せ5 手札0 LP3100

 

攻撃力4000のなのは様を対処しなかったという事は、あのセットカードに戦闘無効のカードがあるんだろう。となると、さっき手札に加えたシュテルの出番はないか。

 

「ドロー! ヴィヴィオの効果で墓地のAOAなのはの効果を得て、デッキからロストロギア・レリックを手札に加える。そしてそのまま召喚」

 

A0・D0

 

「レリックをヴィヴィオに装備」

 

手札はだいぶんあるが、これ以上展開するのは不可能だ。火力を上げる事も出来ないし、このままバトルと行くか。

 

「バトル! ヴィヴィオでガバード・コアを攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

A3800 VS A2500

 

「永続罠スピリットバリアを発動、これで僕の戦闘ダメージは0。そしてガバード・コアの効果発動。ダメージステップ終了時、コイントスをして表の場合戦闘したモンスターを破壊。裏だった場合カウンターを一つ取り除く」

 

スピリットバリア。あのカードは自分フィールド上にモンスターが存在する時、自分へのダメージを0にするカード。ヴィヴィオさんのディバインバスターはガバード・コアを呑み込み、そのまま流星へと飛んでいくが、薄黄色のバリアがディバインバスターを打ち消した。

戦闘耐性がある巨大戦艦にスピリットバリアか。自壊効果も持っているから余りいい組み合わせとは思えないが。

 

「だが残念な事に、それより先にヴィヴィオの効果が発動する。このカードが戦闘でモンスターを破壊できなかった時、そのモンスターの効果を無効にする」

「なんだと!?」

 

そう、ヴィヴィオさんの効果は戦闘破壊が確定するタイミングで発動する効果。ダメージステップ終了時よりだいぶん早く効果が発動できる。

 

「なのはでガバード・コアを攻撃!」

『ディバインバスター・エクステンション!』

 

A4000 VS A2500

 

「ック、戦闘ダメージは0だ!」

「だがこれで終わりだ! レヴィでダイレクトアタック!」

『僕で終わりだ! 光翼斬!』

 

A1900

 

「させない! 永続罠リビングデットの呼び声。墓地のガバード・コアを復活」

「やっぱり決められなかったか。攻撃は中断。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「エンドフェイズ、二枚のボスラッシュの効果でデッキからクリスタル・コアとカバード・コアを特殊召喚する」

 

A2100・D1000

A2500・D800

 

だいぶん前にセットした一枚のカードはまだ発動していない。このまま押していったら勝てると思うが。

 

遊斗 モンスター3 伏せ4 手札3 LP3400

流星 モンスター3 伏せ4 手札0 LP3100

 

「ドロー! 罠発動、マジック・ディフレクター。このターン、フィールド上の装備・フィールド・永続・速攻魔法の効果を無効にする」

 

なのはA4000→A2500

 

またボスラッシュのデメリット効果を無効化してきたか。いや、目的はなのは様の攻撃力を下げるのは目的かもしれない。レリックも装備カード扱いになっているから、ヴィヴィオさんも融合デッキに戻ってしまう。

 

「バトル! ガバード・コアで蒼穹の王・高町なのはを攻撃!」

 

A2500 VS A2500

 

「なのはの効果を発動。レイジングハートを除外して、破壊を無効にする。ガバード・コアがカウンターの無い場合戦闘を行ったダメージステップ終了時、自壊するぞ」

「けど除外した。もうその装備カードは装備出来ない。二枚目のガバード・コアで蒼穹の王・高町なのはに攻撃!」

 

A2500 VS A2500

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ時、永続罠ウイングロードを発動。それとヴィヴィオの効果でこのカードを融合デッキに戻し、アインハルトを特殊召喚する」

 

A2700・D2200

 

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札3 LP3400

流星 モンスター1 伏せ3 手札1 LP3100

 

よしっ、手に入れた新たなカードを発動できた。ヴィヴィオさんを場に残す事は出来なかったけど、次のターンで一気に決める。

 

「ドロー! この瞬間ウイングロードの効果発動! ドローフェイズにドローしたカードがLSと名のつくモンスターカードだった場合、またはカードの効果で自分のデッキからLSと名のついたカードを手札に加えた時、そのカードを相手に見せる事で自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る」

 

俺はドローしたカードをゆっくり回転させ、流星に見せる。俺がドローしたカードはモンスターカード。その瞬間、ソリッドビジョンのウイングロードのカードから、スバルと同じ魔力光で作られた魔法の道が現れ、デュエルディスクからモンスターゾーンを繋いだ。

 

「リリィを特殊。効果でデッキから銀十字を手札に加える。そして手札を一枚墓地に送り、デッキからトーマを特殊召喚」

 

A500・D500

A1000・D1000

 

「場のトーマとリリィを融合! 来い、リアクト・エンゲージ―トーマ! 効果でこのカードにLCを乗せる」

 

A2500・D2500

LCトーマ1

 

「トーマに銀十字を装備。そしてLCを取り除き、相手フィールド上のモンスターの攻守を2000下げる!」

『Silver Stars Hundred million』

『『シルバー・スターズ・ハンドレッドミリオン!』』

 

クリスタル・コアA2100・D1000→A100・D0

 

「ック、そんな強力な効果を・・・・」

「まだだ、シュテルを通常召喚!」

 

A800・D1500

 

『あっ、シュテるん!』

 

現れたシュテルを見て、レヴィは尻尾を振る飼い犬のように喜び、シュテルの元に飛んで行った。因みにモンスターゾーンでは、レヴィとシュテルの間にアインハルトが居り、自分のモンスターゾーンに入ってきたレヴィに非常に困っている。

アインハルトと聖王のヴィヴィオさん、トーマにリリィは、シュテル、レヴィ、ディアーチェのマテリアルズと知り合いらしい。

 

『レヴィ、最初のターンからいる割には余り活躍してないようで・・・・』

『ギクッ! ぼ、僕が悪いんじゃなくて、遊斗が僕を使いこなせてないんだよ』

『ふふっ、そう言う事にしておきましょう』

『ム~!』

『あ、あの。お二人とも、今はデュエル中ですので』

 

アインハルトは少し強引にレヴィを両手で抱きあげ、レヴィの本来のモンスターゾーンへと着地させた。それをトーマは微笑ましそうに見ている。

因みにこの一連の会話、精霊を認識できない流星の目には、モンスター達が意味不明な行動をしているように見えているだろう。

 

「バトル! シュテルでクリスタル・コアを攻撃! シュテルは攻撃対象にしたモンスターのレベル×300攻撃力をアップする」

 

シュテルA800→A2300 VS A100

 

『ブラストファイアー!』

 

シュテルのデバイス、ルシフェリオンから、ディバインバスターが炎熱の砲撃と化した魔法がクリスタル・コアへと発射された。クリスタル・コアは水色のエネルギー砲を発射するが、炎の勢いは止まらず、クリスタルは徐々に溶けて行き、巨大戦艦は黒い煙を出して爆発した。

 

「ック」

「レヴィでダイレクトアタック!」

 

A1900

 

「何もありません・・・・」

『光翼斬!』

 

流星LP3100→1200

 

「これで終わりだ! トーマで攻撃!」

『『シルバーハンマー!』』

 

A2500

 

「まだです。ドレインシールドを発動! ライフを2500回復する」

 

ディバイダー996から放たれた砲撃は、流星を守る様に現れた透明なシールドに吸収され、そのエネルギーは反転した効果に変換され、流星のライフを回復した。

 

流星LP1200→3700

 

「アインハルトでダイレクトアタック!」

『覇王断空拳!』

 

A2700

 

いくら自分に実態が無いとはいえ、素人相手に本気で殴りかかるのは気がひけたのか、アインハルトは断空拳の衝撃波で流星にダメージを与えた。アインハルトのポリシーなのだろう、優しい子だ。

 

流星LP3700→1000

 

「な、何とか耐え抜いた・・・・」

「何勘違いしているんだ? まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ」

「え?」

「墓地のソニックムーブの効果! このカードをゲームから除外する事で、自分フィールド上のカードをこのターンのエンドフェイズまで除外する事ができる! トーマを除外だ!」

「そ、そんなカードどこで・・・・。そうか、トーマの手札コストの時! けど除外して何の意味が・・・・」

「大ありさ。銀十字の効果! このカードがリアクト・エンゲージ―トーマの装備カードだった時、装備モンスターが自分フィールドから離れた時、リアクト・エンゲージ―黒騎士トーマを特殊召喚する。来い! 黒騎士トーマ!」

 

A3000・D3000

 

消えて行く銀十字は最後の力を振り絞り、転移魔法を発動する。銀十字が作った魔法陣から呼びだされたのは、黒の刺青をし、痛々しく尖った装備をしたトーマ。

 

「これで終わりだ! 黒騎士トーマで攻撃!」

『『ディバイドゼロ!』』

 

何とか耐えきったとホッとしていた相手に、負けと言う名の絶望を送るトーマは、見た目にあった悪役だった。先程のシルバーハンマーより更に威力の高いディバイドゼロが、太った流星の体をアッサリと呑み込んだ。

 

「うわあああ!」

 

流星LP1000→-2000

 

流星のライフが0になったのと同タイミングで、隣でデュエルしていた十代とエドのデュエルが、十代の攻撃で終わった。エドはデュエルを楽しむ心を十代の言葉によって取り戻し、デュエルを始める時とは違い清々しい顔をしている。

後ろで喜んでいる翔、明日香、剣山の話では、どうやら十代が新しく手に入れた力、コンタクト融合が勝敗を分けたようだ。

 

「向こうもいいデュエルだったみたいだな。ガッチャ、お前の巨大戦艦凄く面白かった」

「う、うん! 君のアイドルデッキも強くて可愛かった。けどいくら可愛いからって独り言は止めた方がいいよ」

「あ、ああ・・・・」

 

しまった・・・・。徹夜の所為でそこまで気が行ってなかった。流星は俺の事、ジャンルは違うが同類だと思ってるだろうな。これからは気を付けようと心に誓っていると、つかつかとエドが歩いてきた。

 

「君は遊斗・スカリエッティだね。いつか君とも手合わせ願いたい」

「あのエド・フェニックスにそう言ってもらえるとは光栄だ。その時はサインを頼むよ」

 

 

 




巨大戦艦でデュエルを考えるのは二度としたくない・・・・。この回を見てくださったデュエルを書く方も、お勧めしません(苦笑)
作者は巨大戦艦デッキ好きですが、このデッキは非常に練り難いと感じました。戦闘破壊できない、専用サポートの所為で通常召喚できない、攻撃力が低い、等など。



今回の新オリカです。

ウイングロード 永続罠
自分のドローフェイズにドローしたカードが「LS」と名のついたモンスターカードだった場合、そのカードを相手に見せることで自分フィールド上に特殊召喚することができる。
また「LS」と名のつくモンスターカードが、ドロー以外のカードの効果によって自分のデッキから手札に加わった場合、このカードを手札から特殊召喚できる。
このカードがフィールド上から離れた時、自分は手札を一枚捨てなければならない。





今回は前回出たマテリアルズの一人、レヴィと上記のウイングロードについて説明を。

LS雷刃の襲撃者レヴィ・ザ・スラッシャー ☆4/闇/魔法使い/A1900・D400
このカードが召喚に成功したとき、このカードにLCを1つ乗せる。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードに乗っているLCを任意の数取り除き、取り除いた数と同じ枚数だけデッキからレベル4以下の「LS」と名のついたモンスターを特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃することができない。


カウンターが無ければバニラですが、召喚時に一個乗るので効果を無効化されない限り、一回は効果を発動できるでしょう。ただ長生きしても効果を発動できない点や、スバルの上位互換のカルートやオネストの恩寵を受ける点ではシュラやゲイウ゛より劣る。
だがレヴィの強みは何と言っても1900と、類似効果を持つ下級モンスターの中では高い所。
これからも序盤のレヴィにお世話になろうと思います。



次はウイングロード
サーチから特殊召喚できる効果は、なのはさんとカリムさんからしか無理でしょう。ドロー以外の、が入っているのでカード効果のドローでLSを手札に加えても特殊召喚できません。
LSは特殊召喚が豊富と思われているかもしれませんが、LSは基本通常召喚してから特殊召喚に繋げるので、通常召喚を止められたり、LCが乗らなかったら詰まるんですよね。その為、連続転移や遠隔転移等のカードを作りましたが、どちらも癖があるので使いやすいこの効果にしました。


カードが増えたら、どうしても出番が少なくなってしまうカードが出るかもしれませんが、このカードとレヴィを使う事でなんとかその問題を解消していこうと思います。



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第二十九話

ユーリと紫天の書のオリカですが、決定しました。

夜の魔王さんから頂いた、紫天の書とユーリを使っていきます。
その他にもオリカの案をくれた方も、ありがとうございました。全部の案を採用するのは不可能なので、ご了承お願いします。


紫天の書 装備魔法
「LS闇統べる王」にのみ装備可能。
装備されたモンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップする。
相手フィールド上のモンスターが破壊される度に、破壊されたモンスターと同じ数のLCをこのカードに乗せる。
このカードがカードの効果で破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLCを1つ取り除くことができる。
このカードに乗ったLCを3つ取り除くことで、デッキ、墓地から「LS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァイン」を一枚手札に加える事ができる。


LS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァイン ☆10/闇/魔法使い/A4000・D4000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上の「LS」と名のついたモンスターを含むモンスター3体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。
このカードは破壊されない。
このカードはフィールド上に「紫天の書」を装備したモンスターが存在しない場合、攻撃できない。



他にも数枚サポートカードを貰ったので、今後出していこうと思います。
出番はこれを入れて三話後になります。



次回は大分前にいただいたオリカが数枚出ます。長らく待たせて大変申し訳ありませんでした。
オリカ募集したのはいいけど、その時は80枚オーバーするかどうか悩んでいたので、中々出す事ができませんでした。


十代がエドと、俺が流星とデュエルをした翌日。あれから俺と十代は睡眠不足で仲良く気絶した様で、気が付けば今日になっていた。

目が覚めた直後、保険の鮎川先生と臨時校長であるクロノス先生から長い長い説教を受けた。二人とも俺達の事を心配してくれていたのか、説教の最後に笑顔を見せてくれた。勿論心配してくれていたのは二人だけじゃなく、翔、明日香、剣山もずっと待ってくれていたようだ。

だが昨日感じていた嫌な予感は当たっていたようで、今デュエルアカデミアはかなり混乱しているらしい。

 

「「ホワイト寮!? なんだそりゃ!?」」

「分からないッス。けどホワイト寮になった生徒はみんなおかしくなって、斎王って言う奴の言いなりになってるっス」

 

斎王、聞き覚えのない名前だ。十代も聞き覚えが無いのか、俺と視線が合うと、フルフルと首を横に振った。

 

「おかしくなったって、どんな感じだ?」

「斎王って人の言いなりになるもだけど、あの万丈目君が白の制服を着てるんス」

「な、なんだと!?」

「ば、馬鹿な!? そこまで大変な事になってるのか!?」

「万丈目先輩が白を着るのがそこまで変ザウルス?」

 

そうか、剣山は一年生だから知らないだろうが、万丈目の黒への執着心はかなりのものだ。お前本当にブルーの制服着ていた万丈目かよ? って言いたくなるほど万丈目は黒が好きで、着ている服は校則に反した黒のコート。それは剣山も知っているが、万丈目の武勇伝はそれだけじゃない。

 

「あのコートは一週間に一回しか洗濯されてないんだ。本人曰く、赤の制服を着るぐらいなら、洗濯しない方がマシらしい」

「べ、別に予備の黒の服を持てばいいザウルス」

「ああ、俺達もそう言ったんだが、あのコートに思い入れがあるらしい。だからコートを洗濯する日

は、万丈目は一歩も外に出ないんだ」

 

俺と十代の言葉に、剣山は呆れながらも事の大変さが分かったらしい。斎王、万丈目に白を着せるとは恐ろしい奴だ。

 

「白・・・・。もしかして十代のカードが真っ白になる症状もその斎王の所為かもしれない」

「なるほど。けど俺が負けたのはエドだぜ?」

「エドも斎王の手下かもしれないって事だ。ひょっとしたらエドはその斎王と知り合いかもしれない」

「なるほどッス。けどエドは今何処にいるか分からないから、意味無いッス」

 

翔の言う通り、この事を昨日知っていればあの後聞く事が出来たが、今エドの話をしても意味がない。

 

「なあ、先生達はホワイト寮を許可してるのかよ?」

「それが昨日のデュエルで分かると思うザウルスが、ナポレオン教諭がホワイトよりレッドを敵視しているザウルス。クロノス臨時校長も頑張ってるけど、やっぱり校長の仕事は大変みたいドン。他の先生は頼りにならないドン」

 

もう大徳寺先生もいないし、先生達は頼れないか。となると俺達が原因である斎王と戦って、みんなを元に戻すしかない。今は何か大きな危険がある訳じゃないが、あの万丈目が白を着ているとなるとただ事ではない。危険因子は早めに取っておかないと。

十代も俺と同じ考えだったのか、それとも単に斎王とデュエルをしてみたいのか。俺と同じタイミングで立ち上がる。

 

「斎王の所に行くぞ」

「おう!」

「待つッス二人ともー!」

「相手は強力ザウルス~!」

 

意気込んだはいいけど、斎王がどこにいるか分からないし、顔も翔と剣山しか知らない。せっかくなので久々のデュエルアカデミアを回っていると、白の制服が目立っていた。翔と剣山によると、昨日はここまでホワイトはいなかったらしい。徐々に勢力を伸ばしているって事か。

目ぼしい所は一通り回ったが、斎王と思われる人物は見つからなかったので、十代は白の制服を着た生徒の方へ向かった。

 

「なあ、斎王ってどこにいるか知ってる?」

「む? 斎王様に何の用だ?」

「俺達もホワイト寮に入りたいと思ってな。なっ、遊斗、翔、剣山」

「ああ」

「そ、そうッス」

「ホワイトに入りたいドン!」

 

ホワイトの生徒は警戒心が無いのか、すんなりと斎王の居場所を教えてくれた。場所はなんとブルー寮の最上階。つまり優秀生徒に与えられる部屋だ。人を洗脳する輩が、同じ階層で寝泊まりしていると思うと、背筋がゾクッとした。

ホワイト寮の生徒が言った部屋の前まで来ると、コンコンとノックをする。

 

「誰だ君達は・・・・。おや、遊城十代君と遊斗・スカリエッティ君じゃないか」

 

部屋から出てきた人物はかなりの長身で、俺より軽く10㎝以上身長が高く、髪は濃い青のロン毛。優しそうな表情をしているが、内に禍々しい何かを持っている、そんな感覚を覚えた。

 

「俺達の事を知っているのか?」

「勿論。二人は有名だから。それでそんな二人が私に何の用かね?」

 

白々しい奴だ。俺達が何故ここに来たのか分かっている癖に。十代に代わり、斎王の目を見ながら口を開く。

 

「単刀直入に言う。洗脳した生徒達を解放しろ」

「洗脳? 私はただ皆に伝えただけ。白はどんな闇にも負けない優しさを持っていると」

「まるで白が正義で黒が悪みたいな言い方だな」

 

俺と斎王の間に十代が割り込み、斎王の顔を見上げニヤッと笑った。十代の言動に斎王は眉をピクリと動かしたが、すぐに上辺だけの優しい顔になる。

 

「ほう、君は逆だと?」

「ああ、だって宇宙は白じゃなくて黒の世界だろ? 宇宙ではむしろ闇が正義で光が悪だ。俺はそう思ってる」

「俺も同意見。光って眩しいだけだ。その真っ白の制服、目がチカチカする」

「・・・・君達とは話が合わないようだ」

 

十代に続き俺も挑発をする。後ろにいる翔と剣山は、予定した交渉の正反対の言葉にあわあわとたじろいでいる。十代が目の前の人物の事をどう取ったかは分からないが、少なくとも俺は目の前の人物が洗脳を解く気が無いと言うのは分かる。ただの直観だが、間違いない。

 

「ああ、俺達もお前とは合わない。帰るぞ」

「いずれ君達とは決着を付ける時が来るだろう」

「ああ、その時は俺が相手になってやる」

「斎王、最後にもう一度だけ言っておく。洗脳した生徒達を元に戻すんだ」

 

それだけ言うと、俺達は斎王の前から去った。

同じ寮に人を洗脳する輩と、その手下どもがいるなんて耐えられず、俺は荷物を纏めてレッド寮で生活する事にした。

 

 

 

 

斎王と出会って一週間、それは俺が再びレッド寮で暮らし始めて一週間と言う事になる。十代、剣山、翔との四人暮らしになるかと思っていたが、どうやらレッドの生徒もホワイト寮の一員になっているらしく、部屋はかなり空いていたので好きに使わせて貰った。

 

「明日から修学旅行か! く~、ワクワクするぜ!」

「何と言っても修学旅行先はデュエリストの聖地、童実野町! 楽しみッスね!」

「羨ましいザウルス! 俺も十代のアニキと旅行したいドン」

 

十代は一週間前の斎王との話を忘れたのか、修学旅行にウキウキしている。まあこんな時でも修学旅行を楽しめるのは、むしろ褒める所なのかもしれない。

 

「遊斗先輩、浮かない顔ザウルス。なんなら俺と旅行交代するザウルス?」

「盛り上がっている時に言いたくないけど、明日香までホワイト寮の生徒になったんだ」

 

明日香はホワイト万丈目とのデュエルに負けた。何の力が働いたかは分からないが、ライフが0になった途端明日香はホワイト寮の生徒になり、斎王を慕い始めた。

明日香と万丈目の話題に、場の空気はお通夜みたいに一気にシーンとする。だがそんな中、十代はニコッといつもの笑みを浮かべた。

 

「明日香も万丈目も大丈夫だ。自分の力で戻ってこれる。そうじゃなかったら俺が二人を助けだしてやる! だから今は遊斗も楽しもうぜ」

「・・・・ハァ、絶対二人を助けるんだぞ?」

「ああ!」

 

その夜、硬い安物のベッドに横になった瞬間、ピピピとPDAが鳴った。こんな時間に誰かと、ため息を付きながらPDAのボタンを押すと、予想斜め上の人物からのメールだった。

 

夜分に失礼する。今から10分後、灯台の下で待つ。

PSエド・フェニックス

 

 

 

 

「こんな時間に呼び出してすまない」

「何の用だ?」

 

あれからエドとは一度も会っていない。あの時は斎王やホワイト寮の事を知らなくて警戒していなかったけど、エドも斎王の手下かもしれない。警戒心を表情に出さない様に意識していたが、俺は芝居の才能が無いのか、エドは態とらしく困った表情をする。

 

「そんなに警戒しないでくれ。僕は斎王に言われてここに来たんじゃない」

「その言い方からするに、斎王の味方って事か」

「ああ」

 

隠す気も否定する気も無いか。

 

「何故俺をここに呼んだ? 俺をホワイトにする為か?」

「まさか。いくら斎王とは言え、僕はああいう事が嫌いなんだ。僕の目的はただ一つ、君とデュエルをする事だ」

 

嘘を付いているようには見えないし、精霊達(みんな)も斎王の気配は無いと言っている。信じても大丈夫だろうが、ただでデュエルをするのも惜しい。

 

「俺が勝ったら斎王の目的を教えてもらう」

「別に今教えるよ。答えは僕でも知らない。僕はただ友である斎王のやりたい事を手伝っているだけさ」

 

エドの目は揺らいでおらず、濁ってもいない。まっすぐ曇りない目で、俺の目をまっすぐ見ている。

 

「・・・・なるほど。分かった、デュエルを受ける。いつぞやの亮さんの仇を討ちたいしな」

「おや、そう言えばそんな事もあった。じゃあ行くぞ」

「「デュエル!」」

「先攻は僕だ、ドロー! 通常マジック、D-スピリッツ発動。自分のフィールドにD-HEROがいない時、手札からレベル4以下のD-HEROを特殊召喚する。カモン、ダイヤモンドガイ!」

 

A1400・D1600

 

暗い闇の中登場したD-HEROは体に宝石を纏ったHERO。おそらく俺は全部のD-HEROを見ていないが、こいつの効果は知っている。D-HERO全体に言える事だが、個性的な効果を持っている。

 

「ダイヤモンドガイのエフェクト発動。デッキトップを確認し、それが通常マジックだった場合セメタリーへ送り、次のターンのメインフェイズにそのエフェクトを発動する。違った場合デッキの一番下に戻す。デッキトップはトレード・イン。次のターン発動が確定」

「確かダイヤモンドガイはコストが必要無い。レベル8を捨てずに二枚ドローか」

 

こうしてエドとデュエル出来るとは夢の様だ。冷静にエドと接している俺だが、エドがデビューしてからずっとファンで、一時期俺の中でのエドの評価が落ちたが、一週間前からまたファンに戻った。

それでも斎王の仲間なのには変わりないので、こうして冷静に接している。

 

「その通りだ。続いてダイハードガイを通常召喚」

 

A800・D800

 

次のD-HEROは、鍛えられた筋肉ムキムキのHERO。その両手には自らの巨体も包み込む事ができる巨大な盾を持っている。ただ見た目の割にはステータスが貧弱だ。この大男の攻撃力がフェイトより1000も低いとはどういう事だ。

 

「カードを一枚セットしてターンエンド」

 

場 

エド モンスター2 伏せ1 手札2 LP4000

 

ダイハードガイの効果は分からないが、ダイヤモンドガイは早めに対処しておかないといけない。

 

「ドロー! 先手必勝、シャマルを通常召喚。効果で自身にLCを置く」

 

A800・D1700

LCシャマル1

 

「シャマルのLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚。場のシャマルとツヴァイを融合、来い、祝福の癒し手シャマル!」

 

A1000・D2300

 

「一ターン目から融合、やるね」

「おっと、これで終わるわけないだろ? 場の祝福の癒し手シャマルを生贄に、ホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚!」

 

いつもは俺のフィールドに現れた湖に、雫が一つ落ちて現れるが、海が近い為か、雫が落ちる事も無く海の中からホーリーシャマ姉が現れた。

 

A2000・D3000

 

「シャマルの効果、このカードに二つLCを置く」

 

LCシャマル2

 

「そしてもう一つの効果、俺の手札×300俺のライフを回復し、その数値分相手にダメージを与える。俺の手札は三枚だ!」

『戒めの鎖!』

「ック!」

 

三枚の手札からそれぞれ一本尖った鎖が現れた。それはエドの体を貫通し、貫通した者の生命を奪い取り、俺の生命へと変換する。

 

遊斗LP4000→4900

エドLP4000→3100

 

「バトル! シャマルでダイヤモンドガイを攻撃!」

『破壊の雷!』

 

A2000 VS A1400

 

ダイヤモンドガイの上空から、闇を纏った禍々しい雷が、落雷となり降り注ぐ。いくらHEROとは言え、自然の力に打ち勝つ事は出来ず、ダイヤモンドガイは悲鳴と共に破壊された。

 

エドLP3100→2500

 

「やるな。流石斎王が目を付けていただけある。トラップ発動、デステニー・シグナル。自分フィールドのモンスターが戦闘で破壊された時、デッキからレベル4以下のD-HEROを特殊召喚する。カモン、デビルガイ」

 

A600・D800

 

「なるほど、場を整えてきたか。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札2 LP4900

エド モンスター1 伏せ0 手札2 LP2500

 

デビルガイ、あのカードは俺の攻撃表示モンスターを二回目の自分のスタンバイフェイズ時まで除外する効果を持つ。ホーリーシャマ姉の効果で無効にする事は出来るが、低レベルモンスターにカウンターを取り除かれるのは辛い。

 

「僕のターン、ドロー。ダイハードガイのモンスターエフェクト発動。このカードが表側表示で存在する時、このカードを除く自分フィールド上のD-HEROが破壊された場合、そのモンスターを次の自分のスタンバイフェイズ時に特殊召喚する事ができる」

「ック、さっきのターンダイヤモンドガイを破壊した時点で効果が発動していたのか」

「そうだ、D-HEROは運命と言う名の未来を司るHERO。この効果を止める事は出来ない、戻って来い、ダイヤモンドガイ!」

 

A1400・D1600

 

これだけじゃない、前のターンのダイヤモンドガイの効果でエドはノーコストで二枚ドローする事が出来る。エドが言った通り、この効果も俺は止める事が出来ない。

扱いが難しいHEROだが、エドは自分の手足の様に扱っている。

 

「セメタリーのトレード・インのエフェクト発動。デッキから二枚ドロー。再びダイヤモンドガイのエフェクト発動。デッキトップのカードは強欲で謙虚な壺。よって次のターンエフェクトが確定」

「やっぱりお前もそのデッキを信じてるんだな。普通なら天変地異でも使わない限りそんなに当たらない」

「信じてる、ねぇ。まあ僕と同じ運命を歩いてきたカード達だ。このくらい造作も無い」

 

せっかくそんなカッコイイHERO達を持っているのなら、もっと早くプロリーグでも使えば良かったのに。

プロにはプロにしか分からない悩みや考えがあるのだろう。

 

「デビルガイのエフェクト発動。相手フィールド上の攻撃表示モンスターを除外する」

「それは無効だ! シャマルの効果発動! LSがフィールドを離れるのを、LC二つ使い無効にできる」

『風の護盾!』

 

デビルガイの杖から、ホーリーシャマ姉を未来へと飛ばすエネルギーが発射されたが、自慢の防御でデビルガイのエネルギーを無効にした。やっぱりホーリーシャマ姉がいてくれると心強い。

 

「厄介なモンスターだ。永続魔法D-フォーメーションを発動し、カードを三枚セットしターンエンド」

「エンドフェイズ、永続罠ウイングロード発動。LSをドローフェイズのドロー、またはサーチした場合、特殊召喚できる」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札2 LP4900

エド モンスター3 伏せ4 手札1 LP2500

 

「ドロー! ドローしたカードははやて、ウイングロードの効果で特殊召喚する」

 

A2000・D1700

LCはやて1

 

『おっ、ホーリーシャマルがおるやん。久しいな~』

『・・・・』

 

ホーリーシャマ姉はコクっとだけ頷き、再びエドの方を向いた。あれでもはやてと同じフィールドに立てて喜んでいる。はやてもそれが分かっているのか、ニコッと笑みを浮かべる。

 

「カリムを通常召喚。そして効果発動、カードの種類を宣言し、デッキトップが宣言した種類だった場合手札に加え、違った場合デッキトップを墓地に送りこのカードを手札に戻す。罠を宣言、デッキトップはプロテクション、罠だ」

「君も大概だね。確率は低いと言うのに」

「お前に言われたくない。シャマルの効果でLCを自身に乗せる。そしてはやての効果で自身のLCを取り除き、二回攻撃を可能にする」

 

LCシャマル2 はやて1→0

 

「バトル! はやてでダイハードガイを攻撃!」

「攻撃宣言時トラップ発動、D-シールド。攻撃表示で存在するD-HEROが攻撃対象となった時発動可能。このカードは装備カードとなり、攻撃対象になったモンスターを守備に変更してこのカードを装備する。そして装備モンスターは戦闘によって破壊されない」

 

シュベルトクロイツから放たれた小型のディアボリックエミッションは、ダイハードガイの両手の盾により防がれた。攻撃表示だったから何らかの罠を仕掛けていると思っていたが、そんなカードを仕掛けていたとは。この状況ではミラーフォースより厄介なカードだ。

 

「はやてでダイヤモンドガイを攻撃!」

『今度は破壊したる! ディアボリックエミッション!』

 

A2000 VS D1600

 

闇の力を持ったディアボリックエミッションがダイヤモンドガイを破壊した。だがこの時点でダイハードガイの効果が発動する。すぐ蘇生するならホーリーシャマ姉で破壊できるけど、蘇生する効果は次のターンだから破壊のしようがない。

 

「この瞬間、D-フォーメーションのエフェクト発動。D-HEROが破壊される度に、このカードにDカウンターを置く」

 

D-フォーメーション0→1

 

「シャマルでデビルガイを攻撃!」

『破壊の雷!』

 

A2000 VS D800

D-フォーメーション1→2

 

「シャマルの効果発動。俺のライフを600回復し、お前にダメージを与える」

『戒めの鎖』

 

遊斗LP4900→5500

エドLP2500→1900

 

「ック。追いつめられてるね~」

「その割には余裕だな。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札1 LP5500

エド モンスター1 伏せ4 手札1 LP1900

 

「僕のターン、ドロー。まずはダイハードガイのエフェクト発動。ダイヤモンドガイを復活」

 

A1400・D1600

 

「そしてセメタリーの強欲で謙虚な壺のエフェクトを発動。デッキトップは三枚めくり、その中の好きなカードを手札に加える。僕が手札に加えるのはダーク・シティ」

 

また始めて見るカード。遠くから見る限りフィールド魔法の様だ。

 

「マジック発動、デステニー・ドロー。手札のドレッドガイを墓地に送り、二枚ドロー。ダガーガイを召喚」

 

A300・D600

 

「この瞬間D-フォーメーションのエフェクト発動。自分が召喚、特殊召喚に成功し、なお且つこのカードにDカウンターが二つ以上乗っている時、このカードを墓地に送り、召喚、特殊召喚したモンスターと同名カードを二体までデッキ・墓地から手札に加える。二枚のダガーガイを手札に」

 

エドのデッキは手札が無くならないな。下級はダイヤモンドガイをメインにして、相手に邪魔されずドローやサポートをし、他のカードで守ったり攻めたりする。少しだが俺のデッキに似ているかもしれない。

 

「ダイヤモンドガイのエフェクト発動。デッキトップは貪欲な壺、次のターンエフェクトが確定」

 

貪欲な壺か。トレード・インはコストだから満たす必要が無く、強欲で謙虚な壺は誓約効果なので適用されない。けど貪欲な壺は五枚デッキに戻して二枚ドローするのが一連の効果なので、デッキに戻さないと駄目だ。エドの墓地にはまだ五枚もモンスターがいない。

 

「フィールドマジック、ダーク・シティを発動。これは十代が使うスカイスクレイパーと同じ効果だ。バトル! ダイヤモンドガイでホーリーカタルシス・シャマルを攻撃する。この瞬間ダーク・シティの効果で攻撃力が1000アップする。ダイヤモンド・ブロー!」

 

ダイヤモンドA1400→A2400 VS A2000

 

「シャマルの効果。一ターンに一度、戦闘では破壊されない」

「だが戦闘ダメージは受けてもらう」

 

ダイヤモンドガイは名前通り、ダイヤモンドを使い攻撃してきた。ホーリーシャマ姉は魔法を使い、身を守ったが俺への攻撃は止められなかった。

 

遊斗LP5500→5100

 

「まだだ! ダガーガイでカリムを攻撃。ダーク・シティの効果で攻撃力が1000上がる」

 

ダガーガイA300→A1300 VS D500

 

「罠発動、プロテクション! このターンカリムは破壊されない!」

「やはりそう来たか。好都合だ、ダイハードガイでホーリーカタルシス・シャマルを攻撃! 攻撃力が1000上がる。更にトラップ発動、D-チェーン。D-HEROの装備カードになり、攻撃力を500アップする」

 

A800→A2300 VS A2000

遊斗LP5100→4800

 

「シャマルの効果。LCを二つ取り除き、フィールドから離れるのを無効にする。残念だがシャマルは攻撃だと三回倒さないといけないぞ」

「だったら三回倒すまで、リビングデッドの呼び声を発動。そのエフェクトでセメタリーに眠るドレッドガイを復活。ドレッドガイの攻守は、このカードを除くD-HEROの元々の攻撃力を合計した数値になる」

 

ドレッドガイA?・D?→A2500・D2500

 

ドレッドガイ。二回目の十代VSエド戦で、十代を敗北へと追いやったエドのエースモンスター。D-HEROを守る効果と、攻撃力をアップさせる二つの効果を持つ。十代とのデュエルの時は、フィールド魔法の効果でこのカードを呼んできたが、今回はリビングデッドで呼んできたか。

 

「ドレッドガイでホーリーカタルシス・シャマルを攻撃! プレデター・オブ・ドレッドノート!」

 

A2500 VS A2000

 

ドレッドガイは鍛え上げられた巨大な腕を使い、ホーリーシャマ姉を襲った。その腕の太さは、シャマ姉のバストぐらいあるだろう。既に二回の攻撃を受けたホーリーシャマ姉には防ぐ手段は無く、ドレッドガイに破壊されてしまった。

 

遊斗LP4800→4300

 

「マジック・プランターを発動。リビングデッドの呼び声を墓地に送り二枚ドロー。ドレッドガイは自身の効果で破壊されない。ターンエンドだ」

 

場 ダーク・シティ

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札1 LP4300

エド モンスター4 伏せ2 手札4 LP1900

 

予想以上の凄い猛攻で、ホーリーシャマ姉が戦闘破壊されるとは、一ターン前の俺は夢にも思わなかっただろう。だが大量にセットしていたエドのセットカードは全て表になった。これでだいぶん動きやすくなる。

 

「ドロー。カリムの効果発動、宣言するのは魔法。デッキトップはミッドチルダ、よって手札に加える。フィールド魔法ミッドチルダを発動。悪いがダーク・シティは一ターン限りだ」

「上書きか。君もフィールド魔法を使うのか」

「お前や十代みたいに複数のフィールド魔法は使わないがな。なのはを通常召喚、効果で自身とミッドチルダにLCを置く」

 

A500・D1800

LCなのは1 ミッドチルダ1

 

「なのはの効果。自身のLCを取り除き、D-シールドを破壊!」

『ディバインシュート!』

 

四つの桃色の魔力弾がダイハードガイの両手の盾に穴を開ける。これでダイハードガイを戦闘破壊できる様になった。

 

「ミッドチルダのLCを取り除き、ユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合、来い、AOA高町なのは!」

 

A1000・D3000

 

「それが君の切り札か?」

「いや、どっちかと言うと中核だ。このカードがいないと中々始まらなくてな。なのはの効果発動、守備表示のこのカードを攻撃表示に変更し、デッキのLSを手札に加える。シュテルを手札に加え、ウイングロードの効果で特殊召喚する」

 

A800・D1500

 

『出番をいただきありがとうございます。ナノハ。それにカリムさんも』

『にゃはは、スバルのウイングロードのおかげだね』

『私はただ遊斗に一枚カードを引かせただけです』

 

律儀にペコリと頭を下げるシュテルに、なのはさんとカリム姉は嬉しそうに微笑む。

 

「反撃だ! バトル、はやてでダイハードガイを攻撃!」

「あんまり使いたくは無かったが、そろそろライフが危ないか。手札のダガーガイのエフェクト発動。相手のバトルフェイズ中、このカードを墓地に送る事でフィールドのD-HEROの攻撃力を800アップする。反撃だ!」

 

ダイヤモンドガイA1400→A2200

ダガーガイA300→A1100

ドレッドガイA2500→A3300

ダイハードガイA1300→A2100 VS A2000

 

ダイハードガイは、はやてのディアボリックエミッションをD-チェーンを巧みに使いビルの上に回避。そしてビルから飛び降り、再びD-チェーンを使いはやてを破壊した。

 

遊斗LP3800→3700

 

「そんな効果を!? しかも使ったダガーガイは一枚。もう一枚手札に持っているのか・・・・」

「おっと、D-チェーンのエフェクトが発動する。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手に500ポイントのダメージを与える」

 

遊斗LP3700→3200

 

「ック・・・・。全体強化が辛い。カードを一枚伏せてターンエンド」

「勿論エンドフェイズ時までだ。攻撃力は元に戻る」

 

ダイヤモンドガイA2200→A1400

ダガーガイA1100→A300

ドレッドガイA3300→A2500

ダイハードガイA2100→A1300

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札0 LP3200

エド モンスター4 伏せ1 手札4 LP1900

 

やっぱりエドは強い。正真正銘のプロだ。D-HEROは効果は強いか低ステータスで戦闘面では決して強くない。けどサポートや素早く最上級モンスターを出す事で、その弱点を補っている。

 

「ドロー。ダイヤモンドガイのエフェクト発動。デッキトップはオーバー・デステニー。次のターン発動が確定。行くぞ、これが僕の本当の切り札だ!」

「面白い! 受けて立つ!」

「場のダイヤモンドガイ、ダイハードガイ、ダガーガイを生贄に、ドグマガイを特殊召喚する!」

 

A3400・D2400

ドレッドガイA2500・D2500→A3400・D3400

 

呼び出されたモンスターは、本当にHEROなのか、そう思う程に禍々しいオーラを纏っている。背中には悪魔の様な黒く巨大な翼。右手には数多の者を殺してきた剣。体には半端な攻撃では通らない鎧。

さっきまで攻撃力が低かったHERO達とは間逆のHEROだった。

 

「ッツ、なんて迫力だ」

「セメタリーの貪欲な壺のエフェクトを発動。セメタリーのダイヤモンドガイ、ダイハードガイ、デビルガイ、二枚のダガーガイをデッキに戻し、二枚ドロー。

ダンクガイを召喚!」

 

A1200・D1700

ドレッドガイA3400・D3400→A4600・D4600

 

「エフェクト発動。手札のD-HERO一枚を墓地に送る事で500ダメージを与える。手札のディアボリックガイを墓地に送り、500ポイントダメージを与える」

「ッグ、シャマルのお返しって事か・・・・」

 

遊斗LP3200→2700

 

「バトル! ドグマガイでAOA高町なのはを攻撃! デス・クロニクル!」

「させるか! 罠発動、協力防御。LSが二体いる時発動可能。このターンLSは戦闘では破壊されず、俺は戦闘ダメージを受けない。発動後一枚ドローする」

 

A3400 VS A1000

 

ドグマガイの攻撃を、皆の力を合わせて受け止めた。このカードをセットしてなかったら今頃負けていた。

 

「なるほど、ならさっきのお返しだ。フィールドマジック幽獄の時計塔を発動する。カードを一枚セットしターンエンド」

 

場 幽獄の時計塔

遊斗 モンスター3 伏せ1 手札1 LP2700

エド モンスター3 伏せ1 手札2 LP1900

 

ミッドチルダまで破壊されてしまったか・・・・。しかもドレッドガイの攻撃力は4800。その攻撃力はほとんどドグマガイに依存しているからドグマガイさえ破壊すれば、攻撃力は1200まで落ちる。だが肝心のドグマガイの攻撃力は3400。シュテルで攻撃しても200足りない。それにエドはダガーガイを持っている。

 

『弱気になるなんてらしくないよ。相手は三幻魔じゃないんだから』

「ですね。行くぞエド、ドロー!」

「この瞬間ドグマガイのエフェクト発動! このカードを特殊召喚した次の相手のスタンバイフェイズ時、相手のライフを半分にする!」

「ライフを半分だと!?」

 

攻撃力3400に加えてライフを半分削る効果。今はライフが2200と低いからダメージは少ないものの、強力な効果だ。仮にライフを10000まで回復しても、このカードを出されたら5000削られるのか。

 

「ライフ・アブソリュート!」

「ッグ・・・・」

 

遊斗LP2700→1350

 

「更に幽獄の時計塔に時計カウンターが一つ乗る」

 

幽獄の時計塔0→1

 

二つの針が12を向いた不気味な時計塔の時間が進み、三時になった。どうやらカウンター一つに付き三時間時が進むらしい。

 

「だがこっからだ。カリムの効果、魔法を選択する。デッキトップはバルディッシュ、よって手札に加える! なのはの効果でフェイトを手札に加える。そのまま通常召喚。頼むぞフェイト」

『うん』

 

A1800・D500

LCフェイト1

 

「その永続トラップの効果を使わないのか」

「ああ、LCを乗せたいからな。フェイトの効果発動。LCを取り除き、ドグマガイの表示形式を変更する」

「だが守備力は2400。お前のモンスターでは勝てない」

「だからさっき手札に加えた魔法を使うんだ。装備魔法バルディッシュをフェイトに装備。これにより攻撃力を1000上げる」

 

フェイトA1800→A2800

 

「そう来たか!」

「バトル! フェイトでドグマガイを攻撃!」

『ジェットザンバー!』

 

A2800 VS D2400

 

その名の通りジェット並みの速さを持った黄色の魔力刃が、守りの体制に入っているドグマガイ目掛け発射された。強力なパワーに加え速さが乗ったその攻撃に、ドグマガイは自身を守る術を持たず、破壊され墓地に行った。

 

「更にバルディッシュは貫通効果を持つ。400のダメージだ!」

「ック」

 

エドLP1900→1500

ドグマガイA4600・D4600→A1200・D1200

 

「続いてシュテルでドレッドガイを攻撃! シュテルは攻撃するモンスターのレベル×300攻撃力を上げる。ドレッドガイのレベルは8。よって攻撃力は3200。因みにこの戦闘で相手が受けるダメージは0だ」

 

シュテルA800→A3200 VS A1200

 

「ドレッドガイまで破壊されてしまったか!」

「バトルフェイズ終了時、シュテルは次の自分のバトルフェイズまで除外される。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 幽獄の時計塔

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札1 LP1350

エド モンスター1 伏せ1 手札2 LP1500

 

「僕のターン、ドロー! セメタリーのオーバー・デステニーのエフェクト発動。墓地のD-HEROを一体選択し、そのモンスターのレベルの半分以下のD-HEROをデッキから特殊召喚する。レベル8のドレッドガイを選択するカモン、ダイヤモンドガイ」

 

A1400・D1600

 

「マジック発動デステニー・ドロー。手札のダガーガイをセメタリーに送り、二枚ドローする」

 

モンスターが二体しかおらず、しかもそのどちらもフェイトには届かない今、攻撃力を800上げるダガーガイは余り要らなって事か。

 

「ダイヤモンドガイのエフェクト発動。デッキトップは戦士の生還。よって次のターン発動が確定」

 

戦士の生還、効果を知らない人でもだいたい想像つくであろう。墓地の戦士族を手札に加える効果を持つ。1:1でサルベージ出来る優秀なカードで、戦士族をメインに使うデッキはほぼ全てと言っていいほど入るカードだろう。

 

「バトル! ダイヤモンドガイでAOA高町なのはを攻撃! ダイヤモンド・ブロー!」

 

A1400 VS A1000

 

効果が強力でもやっぱり守る手段がないとなのはさんは非力だ。ただダイヤモンドガイも紳士なのか、ホーリーシャマ姉の時とは違い、攻撃の威力が明らかに弱かった。

 

遊斗LP1350→950

 

「ダンクガイでカリムを攻撃! パワー・ダンク!」

 

A1200 VS D500

 

「ドゥームガイを召喚。カードを二枚セットしてターンエンド。エンドフェイズ、オーバー・デステニーのエフェクトによりダイヤモンドガイは破壊される」

 

A1000・D1000

 

場 幽獄の時計塔

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札1 LP950

エド モンスター2 伏せ3 手札0 LP1500

 

攻撃力2800の貫通効果持ちのフェイトを生かしたって事は、あのセットカードに何か秘密がある筈だ。十代との戦いを見る限り、一枚は幽獄の時計塔にカウンターを二個乗せるエターナル・ドレッド。このターンのスタンバイフェイズ時に一個乗り、エターナル・ドレッドの効果で四つ。これによりエドは戦闘ダメージを受けず、幽獄の時計塔が破壊されたらドレッドガイが呼ばれる。

だがこの効果で呼べるのは手札かデッキ。墓地にドレッドガイがいるからそこは問題ない。

 

「ドロー!」

「この時幽獄の時計塔にカウンターが乗る」

 

幽獄の時計塔1→2

 

「バトルフェイズ開始時、シュテルが戻ってくる。行くぞフェイト!」

『うん』

「バトル! フェイトでダンクガイを攻撃!」

『ジェットザンバー!』

 

A2800 VS A1200

 

「攻撃宣言時エターナル・ドレッドを発動。幽獄の時計塔にカウンターを二つ乗せる!」

「甘い、それくらい読んでいた! それにチェーンして速攻魔法フォトンランサーを発動! これでカウンターが乗る前に幽獄の時計塔は破壊だ!」

「やはり念には念をと言う事だ。フォトンランサーにチェーンしてトラップ発動、エターナル・ドレッド」

「二枚目だと!? けど結局は破壊される! ドレッドガイが墓地にいるから意味は「エターナル・ドレッドにチェーンして転生の予言を発動」ッツ、そのカードは!」

 

さっきまで伏せてあったエドの三枚のカードが表になった。二枚はカウンターを乗せるだけのカード。そしてもう一枚は墓地のカードをデッキに戻すカード。

 

「チェーンの逆順処理により、まずは転生の予言により墓地のドレッドガイ、デステニー・ドローを僕のデッキに戻す。そしてエターナル・ドレッドにより幽獄の時計塔にカウンターが二つ乗る」

 

幽獄の時計塔2→4

 

時計塔の針が一周周り、再び12を刺す。針が12を刺している時計塔を破壊してはいけないが、もうフォトンランサーは止まらない。

 

「フォトンランサーの効果により幽獄の時計塔は破壊。そして最初のエターナル・ドレッドは不発に終わる。効果処理が終わった後、幽獄の時計塔のエフェクトが発動する。デッキのドレッドガイを特殊召喚する! 

幽獄の時計塔の効果で特殊召喚した場合、自分の墓地からD-HEROを二体まで特殊召喚できる。カモン、ダイヤモンドガイ、ダガーガイ」

 

A1400・D1600

A300・D600

ドレッドガイA?・D?→A3900・D3900

 

ドレッドガイの方向により、地面からゾンビのように二体のHEROが復活した。ドレッドガイが特殊召喚されたターン、奴のD-HEROは無敵になり、エドもダメージを受けない。これ以上何もできない。

 

「巻き戻しになるけど何かするかい?」

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札2 LP950

エド モンスター5 伏せ0 手札0 LP1500

 

「ドロー! 本当ならこのまま攻撃したいけど、君は怖いからね。徹底的にやらせて貰う。セメタリーの戦士の生還のエフェクトを発動。墓地のドグマガイを手札に加える。場のダガーガイ、ダンクガイ、ドゥームガイを生贄に、再び現れろ、ドグマガイ!」

 

A3400・D2400

ドレッドガイA3900・D3900→A4800・D4800

 

「更にセメタリーに眠るディアボリックガイのエフェクト発動。このカードをゲームから除外し、同名カードをデッキから特殊召喚する」

 

A600・D600

ドレッドガイA4800・D4800→A5400・D5400

 

「これで終わりだ! バトル、ドレッドガイでシュテルを攻撃!」

「罠発動、ソニックムーブ。シュテルをゲームから除外!」

「ふん、どっちにしろ同じだ! ドレッドガイでフェイトに攻撃! プレデター・オブ・ドレッドノート!」

 

強力なD-HERO達の力を得過ぎた所為か、もはや狂人となっているドレッドガイがフェイトへと突進する。十代とのデュエルの時も思ったけど・・・・。

 

「エドって最後の爪が甘いな! ダメージステップスバルの効果発動、この効果でフェイトの攻撃力を1000上げる!」

「攻撃力を1000上げた所で何になる!」

「それはどうかな? スバルの効果にチェーンして速攻魔法バルディッシュ・スピードローダーを発動。バルディッシュを装備しているモンスターに発動可能。選択したモンスターの効果を無効にし、攻撃力を2000アップする!」

「なんだと!?」

 

フェイトA2800→5800 VS A5400

 

『バルディッシュ、ロードカートリッジ!』

『Load Cartridge』

 

マガジンにスピードローダーの六発の弾丸を装填し、そのカートリッジ六発を全て使って魔力を爆発的に上昇させる。

 

『プラズマザンバーブレイカー!』

 

カートリッジを六発使ったプラズマザンバーブレイカーは、大人のフェイトさんが使うそれよりもはるかに巨大で破壊力を込めていた。しかしドレッドガイも負けず、何と魔力刃を素手で掴み、攻撃を防ごうとしている。

力を持ったLSとD-HEROの激突の所為か、ソリッドビジョンなのに辺りの海は荒れ、コンクリートに僅かだがひびが入り出した。

 

「行っけえええ!」

 

俺の叫び声と共に、黄色に光る刀身は更に大きくなり、ついにドレッドガイを呑み込み跡形も無く破壊した。

 

エドLP1500→1100

 

「馬鹿な、僕のドレッドガイが二度も!」

「さあ、攻撃するか?」

「ック・・・・ターンエンドだ」

 

フェイトA5800→A4800

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札1 LP950

エド モンスター4 伏せ0 手札1 LP1100

 

「ドロー! ドグマガイの効果が発動される」

 

遊斗LP950→475

 

「バトルだ! フェイトでダイヤモンドガイを攻撃!」

『プラズマザンバーブレイカー!』

 

A4800 VS A1400

 

エドは負けを確信しているのか、攻撃宣言と共にデュエルディスクをそっと下ろした。バルディッシュのザンバーフォームから繰り出された砲撃に、エドはダイヤモンドガイと共に呑みこまれた。この轟音の中、音程の高いライフ音が静かに響いた。

 

エドLP1100→-2300

 

「・・・・まさかプロの僕がデュエルアカデミアの生徒二人に負けるなんて」

「プロって言っても結局は俺達より年下さ。これに懲りたら少しは年上を敬うんだな」

「あいにく、僕は基本的に敬語が苦手でね。こればっかりは中々直せないよ」

「まっ、気持ちは分かる。それに俺を敬えと言ってる訳じゃない。っと、忘れてた、コレにサインくれよ」

 

汚さない様にバックに入れて持ってきた本を取り出し、サインペンと一緒にエドに渡す。エドは本を見ると少し驚き一瞬目を開くが、フッと軽く笑うとサインペンを手にし、本に自分の名前を書いていく。

 

「もしかして君も僕のファンか?」

「っふ、それはどうかな?」

 

返してもらった本の題名は【それはどうかな?と言えるデュエル哲学】と書いてある。子供から大人にまで人気の本だ。

 




やっぱり十代やエドのサポートが多いデッキは構成がしやすいです。
もうひとつエドの面白いところは何と言っても「セメタリーに眠る~のエフェクト発動」ですね。時々癖でついエドの台詞に「墓地」や「効果」と書いてしまいました。

それとエドの台詞では漢字の「魔法・罠」を使っていませんが、漢字でも横文字でも基本読み方は「マジック・トラップ」です。
まあ作者が気にしてないので、漢字の場合読み方はどちらでもOKです。






今回は新オリカが無いのでディアーチェについて。


LS闇統べる王(ロード・ディアーチェ) ☆5/闇/魔法使い/A2100・D1600
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ乗せる。
1ターンに1度、このカードのLCを1つ取り除き、自分フィールド上の「LS」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は、そのモンスター以外のフィールド上の「LS」と名のついたモンスターの攻撃力の合計分アップする。
「シュテル」「レヴィ」「ユーリ」と名のつくモンスターを選択する場合のみ、この効果は自分のバトルフェイズ中に発動できる。
この効果を発動するターン、選択したモンスター以外のモンスターは攻撃できない。


BFシロッコの上位互換。ただしカウンター必要。
シュテルとレヴィの魔力を受け継いでパワーアップしたのをイメージし、味方の力を一点に集中させる効果にしました。バトルフェイズでも効果を発動できるのは、単純にシュテルに力を与えるため、ダメステでも発動する為。この二つです。
しかしバトルフェイズで手助けするのは、自分を除く紫天一家のみんなだけ。


因みに作者はマテリアルズの中でディアーチェが一番好きです。


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第三十話

更新が遅れて申し訳ありませんでした。
家族二人がズレてインフルエンザに掛かり、暇つぶしやら仕事やらでパソコンを占領されていました。

皆さんもインフルエンザに掛からないよう、手洗いうがいを怠らない様にしてください。



それと前回言った通り、頂いたオリカの紹介です。


夜の魔王 様作

アイゼンゲホイル 速攻魔法
フィールドに「LS」と付いたモンスターがいる時のみ発動できる。
発動したターンのバトルフェイズをスキップする。


d.c.2隊長 様作

ストラグル・バインド 通常罠

相手フィールド上に元々の攻撃力よりも高い攻撃力のモンスターがいる場合、そのモンスターを選択して発動することができる。そのモンスターの攻撃力を元々の攻撃力に戻し、次の自分のターンのエンドフェイズまでこのカード以外のカードの効果を受けなくする。


白金 様作

ロングアーチ・サポート 速攻魔法
自分フィールド上に「LS」と名のついたモンスターが存在する時発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するカードの効果をエンドフェイズまで無効にする。



この三枚を今回使用します。反映が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
この他にも反映しようと思っているカードがあるので、登場次第前書きに書こうと思います。



エドとデュエルをした翌朝。あの後テンションが上がって中々寝つけず、若干睡眠不足だがなんたって今日は修学旅行。小学校中学校とずっと一人ぼっちだったが、今年は違う。友達もたくさんいるし、何より行先は童実野町。多少の睡眠不足ぐらい辛くない。

ただ部屋が狭くなった事の不満は未だに収まらない。俺のストレスも溜まっているが精霊達(みんな)も早く元の部屋に帰りたいと呟いている。

 

「早くホワイト寮潰さないとな」

 

そう呟きながらブルーの制服に着替え、腰に掛けたデッキホルダーにデッキを入れる。新たなカードを手に入れ強くなった俺のデッキ。自惚れている訳ではないが、プロであるエドを倒したと言う事は、プロでも通用する実力があると思っていいんだろう。

 

「三幻魔も使えば遊戯さんも・・なんてな。けどいつか戦ってみたいよな」

「あれ? 遊斗ブルーの制服を着て行くの?」

 

鏡の前で寝癖を直して髪を整えていると、鏡に映ったフェイトが少しだけ首を傾げていた。

 

「え? 何か間違ってるか?」

「だって遊斗以外のブルーの男子生徒、みんなホワイトになったよ?」

「・・・・そうだった」

 

斎王は元ブルー寮を拠点にする為、俺以外の男子ブルー寮生を全員ホワイト寮生にした。ブルー程じゃないにしろ、イエローもレッドも被害にあっている。今はこの学校の生徒の半分がホワイトになっている状況だ。

レッドの制服も学校に返して持ってないので、持ってきた私服を着る。赤と黒をメインにした簡単なコーディネートだ。

 

「十代達とも回りたいけど、フェイトと二人っきりで散歩したいな」

「う~ん、私もそうしたいけど、たぶん無理だと思うよ」

「何で?」

「だって「あれ~、遊斗とへいとどっか行くの?」フェイト。レヴィがいるでしょ?」

「そうだったな」

 

レヴィだけじゃなく、シュテル、ディアーチェは普通の生活を全くした事が無いらしく、周りの物全てが輝いて見える所為か、勝手に実体化してウロウロしたりしている。

こればかりは仕方無い、むしろ探究心があるのはいい事なので、マテリアルズのみんなには様々な世界を見てもらいたい。

 

「よしっ、じゃあ行くか」

「? どこ行くの?」

「水色のキャンディーが売ってある場所。あっ、シュテルとディアーチェは何か欲しい物はあるか?」

 

 

 

 

「うおおおー! ここが童実野町! デュエルの匂いがプンプンするぜ!」

「ねぇ遊斗! 早くキャンディー買って!」

「海馬コーポレーションか。懐かしいな」

「ふむ、中々いい土地ではないか。いつかはここを我が手中に収めて見せようぞ!」

「う~、酔ったッス・・・・」

「大丈夫ですか? 酔い止めの術を知らず申し訳ありません」

 

海から陸へ移った時の言葉は三者三様だが、やっぱり友達同士で旅行するのは面白い。本当なら学ぶ為の修学旅行だが、ホワイト寮の影響で今は生徒を監視する先生はほとんどおらず、三日後の集合時間までにこの港にいれば何をやっても何処に行ってもいい。まさに不幸中の幸いだ。

因みにシュテル、レヴィ、ディアーチェは実体化している。十代も翔も精霊の事は知っているし、少人数の修学旅行も面白くないので、二人とも喜んでいた。

フェイトはカードの中で待機しており、マテリアルズと一緒に遊ぼう、と誘ったのだが『私の分までマテリアルの子達を楽しませて』とのこと。

 

「じゃあ早速あそこに行こうぜ」

「? あそこって何処だよ?」

「遊戯さんの家。確か小さなゲームショップだったろ?」

 

十代はホントに遊戯さんの話をしていると嬉しそうに笑う。なんて人ごとのように言ってるけど、俺もかなりテンションが上がっている。もしかしたら、万が一にでも遊戯さんと鉢合わせして、デュエル出来るかもしれない。

 

「え~! キャンディー買ってよ!」

「貴様、我にプリンを献上すると言ったではないか!」

「まあまあ、落ちつけよお前等。俺達の用事が終わったらちゃんと買ってやるから。全部遊斗の奢りだ」

「んな!? 人の財布を勝手に使うな! じゃあお前も遊戯さん家に新パックがあったら10パック奢れよ」

「え! そりゃあんまりだろ!?」

 

 

 

 

「ここが遊戯さんの家か・・・・」

 

十代は遊戯さんの家の前で歩くのを止める。せっかちなレヴィは「早く中に入ろうよ!」と騒いでいたので、口を押さえつけて静かにさせた。

十代を見ると、ジッと遊戯さんの家を見て、立ち尽くしている。憧れの伝説のデュエリスト、武藤遊戯は毎日この景色を見ているのだ。ここが遊戯さんにとって帰るべき場所。脳裏に焼き付けておきたいのだろう。

 

「遊戯さんの店ってだけでこの店がどんなビルよりも大きく見える」

「うむ、我もその者の事は知らんが、この場所は見る者を引き寄せる力がある」

「? 二人とも何言ってるの。この店はあのビルより全然ちっこいし、全然吸い込まれないよ」

 

確かにレヴィの言う通り。この建物は例え遊戯さんの家だからと言って大きくなる事は無いし、この景色が物理的に俺達を呑み込もうとする事は無い。十代、ディアーチェと視線が合うと、誰からと言う事も無くクスッと笑った。

 

「ッフ、そうだな」

「レヴィ、うぬもいい事を言う」

「さて、それじゃあ入るとするか。失礼しまーす」

「おー、いらっしゃい」

 

中に入ると見た目に等しい、小さなゲームショップだった。しかもテレビゲームなどは無く、デュエルモンスターズと昔ながらのゲームばかりだ。店内にはやはり遊戯さんのポスターが大々的に貼ってある。

 

「おや? 君達はデュエルアカデミアの生徒さんかい?」

「はい」

「俺はブルー、こいつは見ての通りレッドです。因みにこいつ、遊戯さんの大ファンなんです」

「おお、遊戯の。けどすまんな、遊戯は今出かけておって」

 

万が一会えたらいいな、ぐらいに思ってたからそんなにショックでは無い。十代もそれは分かっていたのか、特に落ち込む事無く「そうですか」と言った。

このおじいさんは、遊戯さんのおじいさんの双六さん。俺達が生まれる前からデュエルモンスターズに触れている、正真正銘のプロだ。本人曰く、デュエルの腕は今一らしいが、この人からはデュエリストのオーラが出ている。

しばらくの間俺と十代が双六さんと話していると、隣でガチャガチャと物音がした。クルッと振り向くと、翔とマテリアルズが商品で勝手に遊んでいた。

 

「これは何と言う遊びですか?」

「将棋って言ってね。色々な駒を使って相手の王を取るゲームッス」

「うお! これが噂のヨーヨーって奴だね。行くぞ、僕のハイパーテクニック」

「ふむ、この壺からはただならぬ気配がする。面白い! 我が闇の一部にしてやろう!」

「コラ! シュテルと翔はともかく、レヴィとディアーチェ! ヨーヨーは買ってやるから外で遊んできなさい! それとディアーチェ、勝手に人の家の闇を持っていくんじゃありません!」

「遊斗、最後だけおかしいぞ」

 

ハァ・・・・。やはりこの子達は普通の生活をした事が無いから、知識はあっても常識は無い。大きな赤子みたいだ。

話を聞くに、カードの精霊になる前の活動時間は一ヶ月も無かったそうだ。しかもその一ヶ月の七割は戦闘、三割は体の治療。世界の一般常識を身につける時間などどこにもない。

幸い双六さんは温厚な方の様で、ホッホッホと笑いながらシュテルと翔に将棋のスペースを与え、レヴィにはタダでヨーヨーをあげた。

 

「そこの銀髪の少女。その壺に闇があると言ったの~」

「ああ、この中には間違いなく闇がある」

 

九歳の女の子の手でも片手で持つ事が出来る小さな壺。ディアーチェはその壺を右手に持ち、ハッハッハ! と偉そうな高笑いを上げている。

手中に、と言ってるが、かなり昔に作られているのか、素人である俺でも年季を感じさせる不思議な壺だ。とても俺のポケットマネーで買える品物とは思えない。

 

「それは昔から家にある物でな。そんな闇の力があるとは思えんが、気にいったのなら上げよう」

「ほう、感謝すイタ! 何をする!?」

「上から目線じゃなく、しっかり礼を言え」

「むぅ・・・・ありがとう、ございます」

 

ディアーチェは納得いかないのか、双六さんの目を見て言わなかったが、これでも頑張った方だ。俺に対してはいつもの偉そうな態度でいいが、年配の方には身の丈に合った振る舞いをしないといけない。

 

「いい子だ、ディアーチェ」

「う、うるさい! 貴様、我を侮辱した罪、後悔するぞ!」

「はいはい」

 

ディアーチェの頭をポンポンと優しく叩くと、ディアーチェはますます不機嫌になり怒りが有頂天に達し「レヴィのオリジナルにある事無い事言うぞ!」と言って来たので、ディアーチェを子供扱いするのを止めた。

さっきからパチッと駒が将棋盤に当たる音が気になっていたので、翔とシュテルの方を見ると、意外や意外、翔の優勢だった。てっきりシュテルの事だから説明を聞いただけで将棋のコツが分かっていると思っていた。

 

「王手ッス!」

「ッツ・・・・参りました。もう一度お願いします・・・・」

「シュ、シュテルちゃん怖いッス」

 

この二人は案外お似合いなのかもしれない。勿論友達的な意味でだ。もし翔がそれ以上の関係を望もうとしたら、巨大な壁(主になのはさんとディアーチェ)が立ちふさがるだろう。

 

「なあ遊斗。せっかくなら俺達のデュエル双六さんに見てもらおうぜ。俺達新しいカードを手に入れてまだ一回もデュエルしてないし」

「いいな。双六さん、もしよかったら見てくれませんか? これでも俺達デュエルアカデミアのエースなんです。自慢じゃないですが、あのエド・フェニックスとデュエルして勝ってます」

「ほう、それは凄い。じゃあ見せて貰おうかの」

 

早速外に出ると、レヴィがブンブンとヨーヨーを振り回していた。俺達にカッコイイところを見せつけたかったのか、レヴィは急にヨーヨーを振り回し、次々と大技を出している。だがヨーヨーを初めてすぐの人間が、そう上手くいく筈も無く、いつの間にか体がヨーヨーの糸に縛り付けられていた。

 

「あれ? どうしてこうなるの?」

「そんなに振り回すからだ、自分で解きな。じゃあ十代、やるか」

「おう」

「「デュエル!」」

「先攻は俺が貰う、ドロー! おっ、お前からもらった新たなHEROを使うぜ。エアーマンを召喚! 効果でデッキからネクロダークマンを手札に加える」

 

A1800・D300

 

E・HEROエアーマン。十代やエド並みのドロー力が無い人にとっては、HEROデッキに必要不可欠な中核となるデッキ。召喚・特殊召喚成功時、HEROをサーチする効果とR-ライトジャスティスに似た効果をどちらか選択して発動できる。

レベル4でその凡庸性の高さから、無制限の頃はHEROデッキに関係なく三枚入れられていた事もある。

因みに十代の誕生日プレゼントに、中古のだが上げた。流石に新品となると、男友達へのプレゼントにしては高級すぎる。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

十代 モンスター1 伏せ1 手札5 LP4000

 

無難だがいい出だし。ネクロダークマンを手札に加えたと言う事は、何か手札コストが必要なカードでもある可能性が高い。

 

「ドロー! じゃあこっちも新カードで行かせて貰う。クロノ・ハラオウンを召喚!」

 

登場したのはLSでは珍しい黒髪の少年。14歳と成長期真っ只中の筈だが、背がかなり低く、小学生と言っても全然違和感がない。ただ可愛げが無く、俺をチラッと横目で見るが、すぐに十代の方に視線を戻す。

 

LSクロノ・ハラオウン ☆4/水/魔法使い/A1700・D1500

 

「このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからバインド、と名のついたカードを手札に加える。設置型バインドを手札に加える」

「ゲッ、嫌なカードだ」

「カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札4 LP4000

十代 モンスター1 伏せ1 手札5 LP4000

 

「攻めてこなかったか。じゃあこっちから行くぜ、ドロー! 融合発動、手札のスパークマンとネクロダークマンを融合! 来い、ダーク・ブライトマン!」

 

A2000・D1000

 

コストじゃなく融合でネクロダークマンを墓地に送ったか。それもまた一つの手。

 

「バトル! エアーマンでクロノを攻撃!」

 

A1800 VS A1700

 

「ッツ、悪いなクロノ。また後で出番があるかもしれないから」

『別に、僕はサーチ効果を使った。最低限の役割は果たした』

 

本当に可愛げのない奴だ。これは生まれつきなのか、それとも中学生独自の病気なのか。

しかもクロノ、信じられない事にフェイトの兄だと言う。義理と聞きホッとしたが、コイツの事をいつかお義兄さんと呼ばないといけないのか。

 

遊斗LP4000→3900

 

「続いてダーク・ブライトマンで攻撃!」

「設置型バインドを発動する。ダーク・ブライトマンの攻撃を止め、このカードにLCを置く」

 

LC設置型バインド0→1

 

「そうこなくちゃな。ターンエンドだ」

「エンドフェイズ、永続罠ウイングロードを発動」

 

遊斗 モンスター0 伏せ2 手札4 LP3900

十代 モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

 

「ドロー! ドローしたカードはリリィ。ウイングロードの効果で特殊召喚する。リリィの効果でデッキから銀十字を手札に」

 

A500・D500

 

「銀十字を捨て、デッキからトーマを特殊召喚。場のリリィとトーマを融合! 来い、リアクト・エンゲージ―トーマ!」

 

A2500・D2500

LCトーマ1

 

「トーマが来たか。そいつは厄介だからな」

「まだまだ。ヴィータを通常召喚」

 

A1900・D1200

 

「トーマの効果発動! LCを使い、お前のフィールド上のモンスターの攻守を1000下げる!」

『『シルバー・バレッド!』』

 

トーマは素早く銃剣のトリガーを二回引き、エアーマンとダーク・ブライトマンの足に当てる。命に別条は無いが、二人のHEROは弾丸の痛みにより戦うのが困難になってしまう。

 

エアーマンA1800・D300→A800・D0

ダーク・ブライトマンA2000・D1000→A1000・D0

 

「バトル! ヴィータでエアーマンを攻撃!」

『テートリヒ・シュラーク!』

 

A1900 VS A800

 

衰弱したエアーマンは風を起こすことすら出来ず、ヴィータさんのハンマーにより、墓地まで吹っ飛ばされた。

 

「ック!」

 

十代LP4000→2900

 

「まだまだ! トーマでダーク・ブライトマンを攻撃!」

『『シルバーハンマー!』』

 

A2500 VS A1000

 

同じく弱ったダーク・ブライトマンもトーマの砲撃に耐える事が出来ず、破壊された。だが破壊された時、ダーク・ブライトマンの怨念らしきものが現れ、トーマを道連れにした。

 

十代LP2900→1400

 

「ダーク・ブライトマンが破壊された時、相手フィールド上のモンスター一体を選択して破壊する。銀十字を装備してないのがミスだったな」

「別にミスじゃない。手札を捨てるのがもったいなかったんだ。それにお前の事だから、何らかの方法で突破してくるか、防ぐと思って」

「へへっ。おっと悪ぃ、タイミングが遅れたが罠を発動するぞ。ヒーロー・シグナル発動。俺のモンスターが戦闘で破壊された時、デッキからレベル4以下のE・HEROを特殊召喚する。

来い、バブルマン! デッキから二枚ドローする」

 

A800・D1200

 

ヒーロー・シグナルにバブルマンか。伏せに警戒して銀十字を装備させなかったが、それがミスだった。一気に攻めていればワンショットキルできていた。

それにいくら大ダメージを与えられたとはいえ、十代に手札を補給された。

 

「まだまだ俺も甘いな。ターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP3900

十代 モンスター1 伏せ0 手札5 LP1400

 

「今度はこっちの番だ、ドロー! 融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動。墓地のスパークマンと融合を手札に加える。スパークマンを通常召喚!」

 

A1600・D1400

 

「速攻魔法バブル・シャッフルを発動。その効果でバブルマンとヴィータを守備にし、手札からネオスを特殊召喚する!」

 

泡の渦の中から登場したのは、十代の新たなるHEROであり、なのは、フェイト、はやてよりも発生形態が多いカード。その姿は少年が大好きな、巨大な怪獣を倒すヒーローが小さくなったみたいだ。

 

A2500・D2000

 

「ネオス。こうして見るとやっぱりカッコイイな」

「だろだろ? しかもコイツはカッコイイだけじゃなくて強いんだ。バトル! スパークマンでヴィータに攻撃、スパークフラッシュ!」

 

A1600 VS D1200

 

「ネオスでダイレクトアタック! ラス・オブ・ネオス!」

 

A2500

 

ネオスの攻撃はビームを出す訳でもオーラを出す訳でも無く、誰にでも出来る簡単なチョップ。だがその一振りにはネオスの正義の心が籠っているようで、優しくも力強い攻撃だった。

 

遊斗LP3900→1400

 

「ライフが並んだか」

「スパークマンにスパークガンを装備して、自分を守備表示に変更しターンエンド。どうだ、俺の新たなHEROは?」

「ああ、最高にカッコイイし、火力が低い通常HEROの弱点を埋めている。だがこっちも負けてられない」

 

遊斗 モンスター0 伏せ1 手札4 LP1400

十代 モンスター2 伏せ1 手札3 LP1400

 

「ドロー! ドローしたカードははやて。ウイングロードの効果で特殊召喚する」

 

A2000・D1700

LCはやて1

 

「なのはを通常召喚。効果でLCを置く」

 

A500・D1800

LCなのは1

 

「なのはのLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚。はやてのLCを取り除き、ユーノを特殊召喚」

「うおっ! まさかの連続融合か。面白ぇ」

 

ピンチが迫っていると言うのに十代は相変わらず能天気で緊張感が無い。

 

「場のなのはとユーノ、はやてとツヴァイを融合! 来い、AOA高町なのは! 夜天の主・八神はやて!」

 

LCはやて2

はやてA2100・D2000→A2700

A1000・D3000

 

ネオスの攻撃力は2500と、通常HEROの中では高く、バランスの取れたステータスだが、最上級モンスターの中ではそこまで高くない。だがサポートの多いHEROと通常モンスター両方の加護が受けられる。ここはネオスの破壊より、手札を稼ぐのを優先しよう。

 

「なのはの効果。デッキからカリムを手札に加え、ウイングロードの効果で特殊召喚。カリムの効果発動、魔法を選択する。デッキトップはアイゼンゲホイル、魔法カードだ」

「? 始めて見るカードだな?」

「便利な速攻魔法だよ。デバイスマイスターを発動! デッキから闇の書を手札に加え、はやてのLCを二つ取り除き、アギトを手札に加える」

 

LCはやて2→0

はやてA2700→A2100

 

「闇の書をはやてに装備。バトル! はやてでスパークマンを攻撃!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

はやてA2100→A2400 VS D1400

 

「ふぅ、スパークガンで守備にしといて正解だったぜ」

「闇の書にLCが乗る。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

LC闇の書0→1

 

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札2 LP1400

十代 モンスター1 伏せ0 手札3 LP1400

 

「ドロー! カードガンナーを守備で召喚」

 

A400・D400

 

出たのは青と赤をメインとした、俺達の背丈ぐらいあるロボット。頭の部分が透明な為、中のメインコンピューターが丸裸で可愛らしい。HEROやネオスと同じく、アメリカンアニメのタッチ。

 

「カードガンナーの効果発動。デッキの上から三枚まで墓地に送って発動する。このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。俺は三枚墓地に送るぜ」

 

カードガンナーA400→A1900

 

「バトル! 「メインフェイズ終了時、速攻魔法アイゼンゲホイルを発動」何!?」

「このターンのバトルフェイズをスキップする。残念だったな」

「やっぱり守りのカードか。ターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター3 伏せ1 手札2 LP1400

十代 モンスター2 伏せ0 手札3 LP1400

 

十代のターンはアイゼンゲホイルのおかげでアッサリと防ぐ事が出来たが、ずっと守れる訳じゃない。このターンでアインスを出してより場を安定させよう。

 

「ドロー! カリムの効果発動。魔法を選択、デッキトップはソニックムーブ。外したのでソニックムーブを墓地に送り、このカードを手札に戻す」

 

ソニックムーブが墓地に落ちてしまった。せっかくなら当てて二回効果を使いたかったけど、墓地から発動できるカードなだけありがたいと思おう。

 

「なのはの効果、シャマルを手札に加え、ウイングロードの効果で特殊召喚する」

 

A800・D1800

 

「その永続罠、今度から優先的に破壊しようと思う・・・・」

「俺もそれをお勧めする。バトル! はやてでカードガンナーを攻撃!」

『『二回目の氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A2400 VS D400

 

氷の神が吹く息と同等であろう氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)に、カードガンナーはカチコチに固まり、次の瞬間バラバラになる。可愛いカードだったから残酷な倒し方に罪悪感があるが出るが、デュエルだから仕方がない。

 

「闇の書にLCが乗る」

「カードガンナーが破壊された時、デッキから一枚ドローする」

 

LC闇の書1→2

 

「シャマルの効果発動し、闇の書にLCを置く。そして闇の書をゲームから除外し、デッキからアインスを特殊召喚する。効果で融合デッキから夜天の書を特殊召喚」

 

A2300・D2300

A0・D0

 

闇の書から発されたオーラが徐々に人間の形になり、黒い闇は様々な色へと変色し、アインスが登場する。最近出番がなかったけど、今日は活躍してもらうからな。

 

「夜天の書をアインスに装備。カリムを通常召喚、効果で宣言するのは罠。デッキトップはフォーメーションチェンジ、よって手札に加える。カードを一枚伏せターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター5 伏せ3 手札2 LP1400

十代 モンスター1 伏せ0 手札4 LP1400

 

「ドロー。お前が場を整えている間に、俺も色々してたんだぜ。コクーン・パーティーを発動。自分の墓地に存在するネオスペーシアン一種類に付き、C(コクーン)と名のついたモンスター一体をデッキから特殊召喚する。俺の墓地に存在するネオスペーシアンは三種類」

「? そんな数のネオスペーシアン・・・・まさかさっきのカードガンナーで三枚の落ちたのか!?」

 

カードガンナー一回の効果で大量展開の布石が整っていたのか・・・・。なんて奴だ、けどそれをやってこその十代。

 

「デッキからC・ピニー、C・チッキー、C・パンテールを特殊召喚」

 

A800・D300

A100・D700

A600・D400

 

「ここがネオスペーシアンの戦う舞台だ。フィールド魔法ネオスペースを発動、これによりネオスの攻撃力が500アップする」

 

ネオスA2500→A3000

 

十代の新たなフィールド魔法は、虹色の光に包まれた不思議な空間だった。俺達が行ったネオスペースとはかなり違い、海も自然も土も何もなく、どっちが上か下か右か左か、目印になりそうなものは何一つない。

 

「そして三体のCの効果発動。ネオスペースがある時、自身を生贄に、そのCに対応するネオスペーシアンを特殊召喚する! 来い、N(ネオスペーシアン)・ブラック・パンサー、N・グロー・モス、N・エア・ハミングバード!」

 

A1000・D500

A300・D900

A800・D600

 

俺も十代と一緒にネオスペーシアンを探す旅をしていたから初対面では無い。

ブラック・パンサーはその名の通り黒い豹。

グロー・モスは白い液体が人の形をした様な生き物。

エア・ハミングバードは赤い体に白の翼を持った、鳥人間。

 

NEX(ネオスペーシアンエクステント)発動。自分フィールド上のネオスペーシアン一体を墓地に送り、墓地へ送ったカードと同名カード扱いのレベル4モンスター一体を融合デッキから特殊召喚する。グロー・モスを墓地に送り、N・ティンクル・モスを特殊召喚」

 

A500・D1100

 

出てきたのはドロドロだったグロー・モスがより人間らしくなった姿。胸の膨らみや腰のライン等を見ると女性の様だ。二枚のカードを使って攻撃力500、しかもレベル4融合モンスター。貧弱なステータスとは裏腹に、何か強力な効果を持っているに違いない。

 

「スペーシア・ギフト発動! 自分フィールド上に表側表示で存在するネオスペーシアンと名のつくモンスター一種類に付き、デッキから一枚ドローする。因みにティンクル・モスはグロー・モスとして扱うから、一体で二種類分だ。よって四枚ドロー!」

「んな!? 並べるだけで四枚ドロー出来るのかよ!?」

「へへっ、いいカードだろ? エア・ハミングバードの効果。相手の手札の枚数×500ライフを回復する。ハニー・サック!」

 

十代の技名と共に、俺の手札から赤い大きな花が咲いた。まるで少女マンガの背景の様に綺麗な花の蜜を、鳥人間が吸う姿はシュール以外の何物でもない。

 

十代LP1400→2900

 

「続いてブラック・パンサーの効果を発動。相手フィールド上のモンスターを選択し、選択したモンスターの同名カードになり同じ効果を得る。ブラック・パンサーをカリムとして扱う!」

「いっ!? ま、まさかカリム姉の効果が十代に渡るとは・・・・」

「さっそく効果を使わせて貰うぜ、モンスターを選択する。デッキトップはフェザーマン、モンスターだ」

 

デステニードロー所有者だけあり、やはりその効果を成功させてきたか。十代の手札には俺が知るだけでも、融合回収(フュージョンリカバリー)で回収した融合とフェザーマンが存在する。この事から、次十代がするのは一つ。

 

「融合発動、手札のフェザーマンとバーストレディを融合! 来い、フレイム・ウィングマン!」

 

A2100・D1200

 

やはり現れたか、フレイム・ウィングマン。十代のフェイバリットカードに新HEROにネオスペーシアン。因みに十代の手札はここまで回しておいてまだ四枚ある。恐るべきネオスペーシアン・・・・。

 

「バトル! ネオスではやてを攻撃!」

 

これで戦闘ダメージを受けたら残りライフ500。フレイム・ウィングマンでカリム姉かシャマ姉どちらか破壊されたらアウト。本当なら使いたくなかったけど、ソニックムーブを使うしかない。

 

「墓地のソニックムーブの効果。このカードをゲームから除外し、はやてを除外する!」

「ならネオスでカリムを攻撃! ラス・オブ・ネオス!」

 

A3000 VS D500

 

昨日のエドの時と言いHEROは紳士が多い様で、ネオスの手刃の威力は先程よりも明らかに弱まっていた。いくら女相手とはいえ、デュエル中の手加減は不満なのか、十代は少し納得のいかない表情。

 

「フレイム・ウィングマンでシャマルを攻撃! フレイム・シュート!」

 

A2100 VS D1800

 

「シャマルの攻撃力は800。ダメージを受けてもらう!」

「ック」

 

遊斗LP1400→600

 

「ティンクル・モスでなのはに攻撃! ティンクル・モスが戦闘を行う時、俺はデッキを一枚ドローする。ドローしたカードがモンスターだった場合バトルフェイズを終了、魔法だった場合このカードは直接攻撃が可能、罠だった場合守備表示になる」

「ちょっと待った。攻撃対象になった瞬間、フォーメーションチェンジを発動する。なのはを守備にして一枚ドロー」

「じゃあドローするぜ? ドロー、引いたカードはミラクル・フュージョン。巻き戻しによりよってフォーメーションチェンジのダメージを無効にする効果は無しだ。ティンクル・モス、ダイレクトアタック!」

 

A500

遊斗LP600→100

 

「く、首の皮一枚繋がったか」

「これ以上攻撃はできない。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「エンドフェイズ、はやてが戻ってくる」

 

場 ネオスペース

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札3 LP100

十代 モンスター5 伏せ1 手札4 LP2900

 

これが危険なデュエルだったら存在しない者を使い、三幻魔を召喚したいが、友人同士のデュエルで三幻魔を使う訳にはいかない。

ネオスペーシアン。攻撃力が1000以下の弱小モンスターだが、その独特な効果でサポートをする。しかもネオスと一緒にいる時は、俺の使う融合に良く似たコンタクト融合をする事が出来る。さっきのターンコンタクト融合しなかったのは、する必要が無かったからだろう。

幸い墓地にヴィータさんがいたから、アインスは攻撃されずに済んだが。

 

「面白くなってきた。ドロー! 永続魔法時空管理局を発動。そしてなのはの効果を発動し、デッキからシグナムを手札に加え、ウイングロードの効果で特殊召喚!」

 

A1800・D1600

LC時空管理局0→1

 

「フィールドにシグナムが存在するから、LCを一つ使ってアギトを特殊召喚する。時空管理局のLCの数はプラマイ0。場のシグナムとアギトを融合! 来い、烈火の剣神シグナム!」

 

A3000・D2000

 

「げっ! そのカードは!?」

「さっきのお返しだ! お前のフィールド上のモンスターの攻撃力は、このカード攻撃力以下だ! 全て破壊する!」

『剣閃烈火!』

『『火龍一閃!』』

 

シグナムさんとアギトが放った灼熱の業火に、三体のネオスペーシアンとネオスとフレイム・ウィングマンは悲鳴を上げながら燃焼する。例え火を司るフレイム・ウィングマンでも烈火の剣神の炎を止める事は出来ない。

 

「この効果を使ったターン俺は攻撃する事が出来ない。魔弾生成を発動、はやてを生贄にデッキからカートリッジロードを三枚手札に加え、全て時空管理局に使う」

 

LC時空管理局1→4

 

はやてさんを生贄に捧げた瞬間、シグナムさんとアインスが鬼の様な眼でギロリと俺を睨みつける。その瞳には殺気と怒りだけが宿っており、その視線に、体が蛇に睨まれた蛙の様にビクビクと震える。

十代が「大丈夫か?」と苦笑交じりに言うが、全然大丈夫ではない。ヴィータさんを含めた三人の八神はやて命は凄いと言うか異常。八神はやてが、この法律は気に入らない、と言ったら本気で法律を変えかねん。

 

「や、夜天の書の効果で時空管理局のLCを取り除き、四枚ドローする」

 

四枚もドローしたのに全然嬉しくない・・・・。

 

「なのはを守備に戻し、カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、アギトの効果でこのターン破壊したモンスターのレベル合計×100のダメージを与える。破壊したモンスターのレベル合計は22!」

『ブレネン・クリューガー!』

「ぐっ・・・・つう」

 

アギトが発射した22発の炎の魔力弾をくらい、一度回復した十代のライフは一気に減る。これでお互いダメージを受けたらアウトなラインまで来ている。

 

十代LP2900→700

 

場 ネオスペース

遊斗 モンスター3 伏せ5 手札3 LP100

十代 モンスター0 伏せ1 手札4 LP700

 

シグナムさんの凄まじい効果で一気にボードアドバンテージを逆転できた。

低ステータスのモンスターが並ぶ事自体珍しいので、ここまで上手くいく事は滅多にないが、上手く行くと今回の様に2:5効果になる。

 

「またまた追いつめられたか。けどこっちの方がワクワクするぜ! ドロー、リバースカードオープン、貪欲な壺を発動」

「ブラフとして伏せていたのか。また勿体ない事をする・・・・」

 

いくら墓地にカードが五枚必要とは言え、1:2効果のカードをブラフに使うとは末恐ろしい奴。

 

「へへっ、遊斗は結構伏せを気にするからな。墓地のネオス、フレア・スカラベ、グラン・モール、アクア・ドルフィン、カードガンナーをデッキに戻し二枚ドロー!」

 

戻した三体のネオスペーシアンがカードガンナーの効果で墓地に送られた三枚。今度はその三体を使って攻めて来る気か。

 

「墓地のネクロダークマンの効果。ネオスを生贄無しで召喚する! 来い、ネオス!」

 

ネオスA2500・D2000→A3000

 

「まだまだ、魂の共有-コモンソウルを発動! フィールド上のモンスターを選択し、手札のネオスペーシアンを特殊召喚。選択したモンスターの攻撃力はこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力分アップする。アクア・ドルフィンを特殊召喚!」

 

A600・D800

ネオスA3000→A3600

 

「最後にしては少ししまらないかもしれないが、これで終わりだ! アクア・ドルフィンの効果発動! 手札を一枚捨て、相手の手札を確認してその中のモンスターを選ぶ。選んだモンスターの攻撃力以上のモンスターが自分フィールド上に存在すれば、そのカードを破壊して相手に500ダメージを与える。存在しない場合俺が500ダメージを受ける」

 

しまった! 十代はフレイム・ウィングマン以外でほとんどバーンを使わないから考えてなかったが、新たなネオスペーシアンにはバーン効果を持っている奴もいるのか。普段はがっかりバーンと嘲笑う500ダメージも、今は生死を別けるダメージになる。

 

「手札を一枚捨て「速攻魔法ロングアーチ・サポート発動!」なんだそりゃ?」

「LSがいる時、相手フィールド上のカード一枚を選択し、選択したカードの効果をエンドフェイズ時まで無効にする。アクア・ドルフィンの効果は無効だ! コストの払い損だな」

「それはどうかな? ミラクル・フュージョンを発動! 墓地のスパークマンとフレイム・ウィングマンを融合! 来い、シャイニング・フレア・ウィングマン! 墓地のHEROは六体、1800攻撃力を上げる」

 

シャイニング・フレア・ウィングマンA2500・D2000→A4300

 

「モンスターゲートを発動」

「モンスターゲート? お前そんなカード入れてたっけ?」

「ネオスやエッジマンを特殊召喚する時便利だからな。アクア・ドルフィンを生贄に、通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキをめくるぞ。おっ、フレア・スカラベを特殊召喚だ! フレア・スカラベは相手の魔法・罠の数だけ攻撃力が400アップする」

 

フレア・スカラベA500→A2100

 

フレア・スカラベは五名めくってようやく通常召喚可能のモンスター。十代にしては引きが悪いと一瞬思ったが、落ちたカードはH-ヒートハート、E-エマージェンシーコール、R-ライトジャスティス、O-オーバーソウルの四枚。ライフ100ではHEROフラッシュを持ってないのを祈るしかない。

そしてスルーしていたが、フレア・スカラベの攻撃力がレベル4とは思えないステータスになっている。

 

「カードを一枚セット。行くぜ遊斗! これが手に入れた新たな融合、コンタクト融合だ! 場のネオスとフレア・スカラベをコンタクト融合! 来い、フレア・ネオス!」

 

A2500・D2000

 

ネオスとフレア・ネオスが上に現れた宇宙の渦の中に入ると、渦から優しい光が放出される。その光が収まると、十代の場にはフレア・スカラベと融合したネオスがいた。

体はネオスがベースだが、装甲はフレア・スカラベの黒と赤をメインとしており、背中にはスカラベの羽が生えている。虫が余り得意ではない俺だが、フレア・ネオスには抵抗が全くなく、むしろカッコイイと思える。

 

「フレア・ネオスはフィールドの魔法・罠の数×400攻撃力がアップする。ネオスペースの効果も受けるから攻撃力は2900アップ!」

 

フレア・ネオスA2500→A5800

 

攻撃力4300に5800のモンスター。とてもライフ100の相手に出す攻撃力じゃないが、高火力で押すのが手っとり早いのも事実。

けどライフ100でも1でもライフがある限り勝敗は分からない。

 

「バトル! シャイニング・フレア・ウィングマンでシグナムに攻撃! シャイニング・シュート!」

「罠発動、ストラグルバインド! 相手フィールド上の元々の攻撃力よりも、攻撃力が高いモンスターを選択。選択したモンスターの攻撃力を、元々の攻撃力に戻し、次の自分のターンのエンドフェイズまでこのカード以外のカード効果を受けない。シャイニング・フレア・ウィングマン自身の効果も受け無い!」

 

フレア・ネオスA5800→A5400

フレア・ウィングマンA4300→A2500 VS A3000

 

「マジかよ!?」

『まだまだ爪が甘いな。紫電一閃!』

 

シグナムさんはシャイニング・シュートを、アギトの炎が纏ったレヴァンティンを一振りして消滅させる。そしてレヴァンティンを鞘に収め一回カートリッジを行うと、その爆発的な魔力を全てレヴァンティンに与え、シャイニング・フレア・ウィングマンを一閃した。

 

十代LP700→200

 

「ック、けどもうセットカードはない! フレア・ネオスでシグナムを攻撃! バーン・ツー・アアーツ!」

 

フレア・ネオスは右手に炎の塊を溜めてシグナムさんに発射。いくら攻撃力で負けているとは言え、ただで負けるのは騎士の名が泣くからか、その塊をさっきと同じようにレヴァンティンで消滅させた。しかしここまでがフレア・ネオスの策略。シグナムさんの刺客に回り込み、零距離でバーン・ツー・アーツを発射。シグナムさんを破壊した炎の塊は、そのまま俺に向かってくる。

 

「俺が手札を持ってたらコイツを警戒するんだ。手札のザフィーラを捨てる事により、戦闘ダメージを0にする。その後一枚ドロー」

「決めれなかった・・・・。ターンエンド。エンドフェイズ、フレア・ネオスは融合デッキに戻らなきゃいけないが、ネオスペースの効果でこの効果は使わなくていい」

 

場 ネオスペース

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札3 LP100

十代 モンスター1 伏せ2 手札0 LP200

 

「このターンで決着を付ける、ドロー! なのはの効果でデッキからフェイトを手札に加え、通常召喚」

 

A1800・D500

LCフェイト1

 

「新しいデッキで勝負って言った割には、マテリアル達は使わないんだな」

「おっと、ディアーチェを出そうと誘導しているみたいだが釣られんぞ。その罠、大方ヒーローバリアだろう?」

「さあ? そいつはどうかな?」

 

これでフェイトの効果でフレア・ネオスを守備表示にして一斉攻撃をすれば俺の勝ちだ。それともヒーローバリアの上位互換である和睦の使者でも入れたか?

今の俺の手札はACS、アルフ、スバル、存在しない者。ここで攻撃を失敗したら後がない・・・・。

 

「いや、勝負だ! フェイトの効果でフレア・スカラベの表示形式を変更! バトル! アインスでフレア・ネオスを攻撃!」

「こいつを待っていた! 速攻魔法コンタクト・アウトを発動! 自分フィールド上の融合モンスターを融合デッキに戻し、融合素材モンスター一組をデッキから特殊召喚する! 来い、ネオス、フレア・スカラベ!」

 

ネオスA2500・D2000→A3000

フレア・スカラベA500・D500→A1700

 

「なるほどな。だが俺のフィールドにはモンスターが三体いる! アインスでネオスを攻撃! 攻撃宣言時、ザフィーラをデッキに戻して攻撃力を800上げる」

『ブラッディーダガー!』

 

アインスA2300→A3100 VS D2000

 

アインスが作り上げた血が固まった黒い短剣がネオスへと発射し、ネオスとブラッディーダガーの距離が数センチになると、黒の短剣はアインスの命により爆発した。

 

「なのはでフレア・スカラベを攻撃!」

『アクセルシュート!』

 

A1000 VS D500

 

ディバインシューター、桃色の魔力弾を相手にぶつける魔法。他の魔法みたいに派手ではないが、なのはさんのディバインシューターは強力で、フレア・スカラベを四方八方から桃色の弾丸で囲み、一斉に襲わせて破壊した。

 

「これで終わりだ! フェイトでダイレクトアタック!」

『ハーケンセイバー!』

 

バルディッシュから放たれた、グルグルと回る三日月状の魔力刃。手札も0、フィールドもネオスペースだけ。フェイトの攻撃を止めるカードは何一つない。

 

「勝った!」

 

そう叫んだ時だった、突然十代の前に巨大な鎧を着た白髪の戦士が現れた。その戦士はハーケンセイバーに向かい突進し、自ら盾となり十代の身を守った。

 

「ッツ!? 馬鹿な!」

「墓地のネクロ・ガードナーの効果。このカードをゲームから除外する事で、攻撃を一度だけ無効にする」

「いつそんなカードを・・・・アクア・ドルフィンのコストか!」

「ああ、だから言っただろ? それはどうかなって」

「アインスの時に使わなかったのは? ネオスを生かせたかもしれない」

「お前の事だから、スバルでも手札に持っているかもしれないからな」

 

ッフ、爪が甘かったのは俺の方か。このターン出来る事は何もない。

 

「ターンエンドだ」

 

場 ネオスペース

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札4 LP100

十代 モンスター0 伏せ1 手札0 LP200

 

「だが十代、お前の手札は0で、お前の予想通り俺の手札にはスバルがいる。また奇跡を起こすのか?」

「ああ、行くぜ遊斗! ドロー! ミラクル・コンタクトを発動! 自分の手札・フィールド・墓地から融合素材モンスターをデッキに戻し、ネオスを融合素材とするE・HEROを融合デッキから特殊召喚する! 墓地のネオスとフレア・スカラベをデッキに戻し、フレア・ネオスを特殊召喚!」

 

フレア・ネオスA2500・D2000→A5000

 

やっぱり逆転のカードを引いたか。流石だ十代。

 

「バトル! フレア・ネオスでなのはを攻撃! バーン・ツー・アーツ!」

 

A5000 VS A1000

 

フレア・ネオスが放った炎の塊は、桃色のプロテクションを破壊しなのはさんを破壊し、俺へと向かう。ソリッドビジョンの炎の塊がぶつかった瞬間、視界が一面炎に包まれたが、すぐに炎は消えた。炎が消えた頃にはネオスペースも消えており、遊戯さん家の前の広場だった。

 

遊斗LP100→-3900

 

「凄い、凄いぞ二人とも! 遊戯が見ても褒めるいいデュエルじゃった」

「ありがとうございます。けどこの勝負、本当なら遊斗が勝っていました」

「ほ?」

 

十代は最後に持っていた俺の手札を取り、その中にある一枚のカードを見て「やっぱり」と呟く。十代が見たカードは永続罠、存在しない者。フォーメーションチェンジの時にドローしたカードで、そのカードを軸にしていたら勝敗は変わっていたかもしれない。

 

「けど十代君、それを使わなかったのは遊斗君の判断じゃ。勝者は君じゃよ」

「そうそう、それにこのカードを伏せていたらお前の攻撃を防げなかったかもしれない」

「そっか、けどいつかそのカードを使ってデュエルしような。ガッチャ、楽しいデュエルだったぜ!」

 

 

 

 




十代のエアーマンですが、バブルマンの多様を防ぐ為に使うようにします。勿論属性HEROは使わず、オーシャンとフォレストマンも使用しません。

そして結構オリカにしてとの声が多かったクロノの登場です。


LSクロノ・ハラオウン ☆4/水/魔法使い/A1700・D1500
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「バインド」と名のついた罠カードを一枚手札に加える。






今回はクロノのと、ストラグル・バインドの紹介をしようと思います。

先にクロノですが、原作とは異なり予想より弱いなぁ、や、氷関係なくない? と思った方が多いと思います。
なにぶんクロノは器用ですので、何の効果にしようか悩みました。氷関連もいいかな、と思ったのですが、漫画からクロノは堅実な戦い方をするイメージがあったので、1:1効果のサーチ効果にしました。


次にストラグル・バインド。
相手依存に加え、元々の攻撃力より今の攻撃力が上昇していないと使えないですが、今回の様に反撃が狙えます。特になのは様等の破壊耐性のある高火力アタッカーには、相手も攻撃力を上げないと太刀打ちできないので、出番は決して少なくないと思います。
フリーチェーンなのもいいですね。

ただ攻撃力を元に戻す効果が、ステータスの増減を含むカードなのか分からず、ダメステでも発動できるのか作者も分からないという・・・・。




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第三十一話

前回は9日も更新が空いてしまったので、その穴を埋めるため、素早く投稿しました。

すっかり忘れていましたが、章に分けるシステムを見つけたので、一期、二期と分けてみました。

そして思ったのが、二期が始まって数話と言うのに、ペースがかなり早いという事。
ただこれくらいのペースでストーリー進めないと完結出来ないと思うんですよね(苦笑)


それと今回タッグデュエルをやりますが、エンドフェイズ時の場の確認の時にターンプレイヤー(TP)を付けています。


追記
進撃の帝王の使用中に、アドバンス召喚したカース・オブ・ヴァンパイアを攻撃しました。この時、ヴァルバロイドの効果を無効にする効果が、進撃の帝王により守られると勘違いしていましたが、ヴァルバロイドの効果は対象に取らないので、カース・オブ・ヴァンパイアの効果は無効化されます。



俺と翔とマテリアルズは十代と別れ、海馬コーポレーションの近くにあった喫茶店で昼ご飯を食べていた。十代が店に残ったのは、双六さんが語る遊戯さんの武勇伝やデュエルを聞く為。俺と翔も遊戯さんの話には興味があるが、腹が減っていたし、これ以上レヴィとディアーチェを待たせる訳にはいかなかった。

童実野町に着陸した時言った通り、レヴィには水色のキャンディーを。ディアーチェには学生が買うにはかなり贅沢なプリンを。シュテルには猫の形をしたまんじゅうをそれぞれ買ってあげた。

そして俺と翔は普通に喫茶店のパスタを食べていた。

 

「けどシュテルちゃん達、本当にそれだけで大丈夫ッスか?」

「はい。私達は元々食事が必要ありませんから。味を楽しむだけで量は必要ありません」

「ふ~ん、本当に精霊なんすね」

「仮に食事が必要だったら大変な事になってる。食事代だけでも考えただけでゾッとする」

 

365日朝昼晩、毎回大規模なパーティー並みの食料が必要になるだろう。父さんの収入を全て使っても、一年持つか分からない。

こうやって嬉しそうにお菓子を食べる三人には申し訳ないが、毎日食べさせてあげる事はできない。

 

「けどあの子はお菓子を食べなくて良いのでしょうか?」

「そうだよ。せっかく遊斗が買ってくれるって言ったのに」

「あの子ッスか?」

 

シュテル、レヴィが俺のデッキケースをジッと見つめ、翔も続いてデッキケースを見る。三人にとって大切な家族である一人の少女。三人からの話で、お菓子が大好き、と知っていたのでお菓子を餌に少しコミュニケーションを取りたかったが。

 

「なにぶん引っ込み思案だからな。まあ後で我が話をしておく」

「ありがと、ディアーチェ」

「ふんっ。勘違いするなよ。これはあ奴の為であって、貴様の為ではない」

「はいはい、分かってるよ」

 

プリンを食べて気が落ち着いているのか、言い方はきついがトーンはそこまできつく無い。ディアーチェは最後の一口になったプリンをプラスチックのスプーンでゆっくりと救い、スプーンの上でプルプルと踊るプリンを口にしようとした瞬間。

ガチャーン! と大きな音と共に、俺達が座っていた席に隣接していたガラスが突然割れた。

 

「ッツ!」

 

俺は素早く隣にいるレヴィとディアーチェを抱き寄せ、飛んでいるガラスの破片から二人を守る。ディアーチェは一瞬顔を真っ赤にしたが、すぐに真剣な表情に戻り、ジッとしていてくれた。それとは反対に、レヴィは苦しそうにバタバタと暴れている。

 

「キャアアアアア!」

 

ガラスが割れ、俺が二人を守った次の瞬間、ようやく店内から悲鳴が上がった。この僅かな時間で素早く行動できたのも、日頃の訓練の賜物と言える。

幸い大きなガラスが俺に当たる事は無く、背中に痛みはほとんどない。

 

「うわあっ! だ、誰ッスか!?」

 

翔の悲鳴が聞こえ、慌てて顔を上げると、俺達の机に一人の大男が立っていた。背伸びしたら天井に頭が付きそうな程背が高く、鍛え上げられた腕は、俺の二倍以上太い。

この男がガラスを突き破ってきたのか、男は服に付いたガラスを払っている。

 

「お前何者「武藤双六は預かった。KCビルの屋上で待つ」なっ!?」

「双六さんは十代さんと一緒にいます。誘拐したと言う証拠でもあるのですか?」

「賢い少女だ。これを見ろ」

 

大男はポケットから携帯電話を取り出し、シュテルの方へ投げ捨てる。携帯電話をキャッチしたシュテルは、画面を見ると「ッツ」と息を呑んだ。

慌ててシュテルから携帯電話を取り画面を見ると、そこにはビルの屋上で縄に巻かれ、見動きを取れずにいた双六さんがいた。丁寧に今日の新聞と時計も映っている。

 

「どうやら本当みたいだな・・・・」

「当たり前「ッペ! やっと飴が出てきた。まさか僕が飴玉に苦戦するとは思わぬほく兵。ん? おじさん誰?」・・・・」

「レヴィ、それを言うなら伏兵です」

 

この緊迫した空気をブチ壊すシリアス感のまるで無いレヴィと、冷静にツッコムシュテルの声が妙に大きく聞こえた。

どうやらさっきまで苦しそうにしていたのは、喉に飴が詰まっていたかららしい。

 

「・・・・KCビルで待つ!」

「待て! 行くぞ翔!」

「う、うん!」

 

後ろから店長らしき人物の怒り声が聞こえるが、今はそれどころじゃない。ひょっとしたら今の相手は、十代を倒す程の実力を持った奴かもしれない。

 

 

 

 

KCビルの屋上に付くと、そこにはさっきの大男と、もう一人の男。そして携帯の映像と同じように縄に巻かれた双六さんがいた。どうやら俺達がここに来るまでの間、双六さんは眠らされた様で、ピクリとも動かない。

辺りを見渡すが、十代の姿や身につけていた物などは無かった。

 

「双六さんを返すッス!」

「ただで返す事は出来ない。そこに立て」

 

さっきの大男は、悪役の笑みを浮かべながらクイクイと手招きをする。俺達に拒否権は無いので大男の指示通りの場所に立つ。俺と翔が立った場所は、ガラスで出来た床の上だった。下を見るとKC会社の職員が見える。高いのが苦手な翔は、下が見える床にブルブルと震えている。

 

「このじじいを返す条件は簡単だ。俺達にタッグデュエルで勝てばいい」

「デュエルでか。上等だ」

「だが普通のデュエルとは少し違ってな。ライフが0になった瞬間、敗者の地面、つまりガラスが爆発する」

「そ、それじゃあここから一気に落ちて」

「死ぬだろうな。これは命を掛けたデュエル。因みにお前達が負けた瞬間、このじじいも落ちる」

 

命を掛けたデュエル。それは俺好みなルールだが、翔には荷が重すぎる。現にガタガタと震えあがり、目に涙を浮かべている。

 

「ぼ、僕は無理ッス。遊斗君が一人二役して」

「おっと。もう既に爆弾のスイッチは入った。デュエルが終わる前に誰か一人でもこの場から出たらその時点でドカン」

「そ、そんな・・・・」

「大丈夫だ翔。お前は十代の弟分だ。こんな所でビビってたらアカデミアにいる剣山に笑われるぞ?」

 

その瞬間翔の震えはピタリと止まり、キッと二人の大男を睨む。何と言うか、翔は十代の名前を出しとけば扱い易い。

 

「ッフ、では始めようか」

「おっと、その前にお前達の名前を聞いておこうか」

「俺は氷丸。コイツは雷丸だ。さあ行くぞ!」

「「「「デュエル!」」」」

「先攻は俺だ、ドロー! モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

氷丸&雷丸 モンスター1 伏せ1 手札4 LP8000 (TP氷丸)

 

無難かつ安定した出だし。相手がどのようなデッキかはあのセットカード表になる事で分かるだろう。しかしタッグデュエルを挑んできたという事は、相手は十中八九コンセプトが同じデッキと言うのは読める。その一方俺達は全くコンセプトが違うデッキ。

 

「翔、お前が先にやれ。自分の好きなようにプレイするんだ。俺に気を使うな」

「う、うん。僕のターン、ドロー! ドリルロイドを召喚!」

 

A1600・D1600

 

ドリルロイドは守備モンスターを攻撃した時、ダメージ計算時前にそのモンスターを破壊する効果を持っている。セットカードがリクルーターでも効果を発動されず破壊できる。いい判断だ。

 

「バトル! ドリルロイドでセットモンスターを攻撃!」

「おっと、威嚇する咆哮を発動。バトルフェイズをスキップする」

 

威嚇する咆哮のカードから、血に飢えた獣の咆哮が発せられ、ドリルロイドはその咆哮に脅えてひるんでしまった。

 

「ック、申し訳ないッス、遊斗君・・・・」

「いや、あのカードをセットされた時点で攻撃を通すのはほぼ不可能。謝る必要無い」

「ありがとうッス。カードを二枚セットしてターンエンド」

 

遊斗&翔  モンスター1 伏せ2 手札3 LP8000 (TP翔)

氷丸&雷丸 モンスター1 伏せ0 手札4 LP8000 (TP氷丸)

 

「随分優しい少年だな。ドロー! セットされたカイザー・サクリファイスを生贄に捧げ、雷帝ザボルグを召喚!」

 

A2400・D1000

 

そうか、奴等のデッキは生贄召喚に特化したデッキ。生贄にしたカイザー・サクリファイスは、このカードを生贄にして、生贄召喚に成功した時、このカードを手札に戻す効果を持つ。融合程じゃないが、手札ロスが多くなるデッキには相性がいい。

そして現れた帝は、俺達人間よりかは圧倒的に大きな巨人。白銀の鎧を纏い、手からバチバチと電気エネルギーが出ている。

 

「雷帝ザボルグが生贄召喚に成功した時、フィールド上のモンスター一体を破壊する! ドリルロイドを破壊、デス・サンダー!」

 

雷帝ザボルグの両手から雷が、ドリルロイドを感電し、体内の機械部品を全てぶち壊した。

 

「そんな!」

「更に生贄にしたカイザー・サクリファイスの効果で、墓地のこのカードを手札に加える。バトル、雷帝ザボルグでダイレクトアタック! ローリング・サンダー!」

 

A2400

遊斗&翔LP8000→5600

 

「うわあああ!」

「この程度か? 魔法発動、ワン・フォー・ワン。手札のモンスターを墓地に送り、デッキからレベル・スティーラーを特殊召喚する」

 

A600・D0

 

背中に大きな星マークを付けた巨大なテントウムシ。巨大と言うのは、テントウムシの中でであって、デュエルモンスターズの中では小さい。

このモンスターも生贄召喚をメインとするデッキとは相性がいいだろう。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗&翔  モンスター1 伏せ2 手札3 LP5600 (TP翔)

氷丸&雷丸 モンスター1 伏せ1 手札3 LP8000 (TP雷丸)

 

「ゴ、ゴメンッス「このデュエル中謝るの禁止だ」ゴメンッス・・・・」

 

まあ翔がここまで謝るのも仕方がない。何しろこのデュエルで負けた者は命を失う。むしろ俺の様に楽しむ奴が異常。最も俺だって痛いのは嫌いだし、死ぬのは絶対に嫌だ。

 

「レベル・スティーラーか・・・・」

 

相手のデッキは帝を軸にした生贄召喚デッキで間違いないだろう。帝は強力な効果を持っており、レベル・スティーラーは息切れがしにくい。だがレベル・スティーラーは最低でもレベル5のモンスターがフィールドにいなければいけない。

 

「簡単な話、お前達のフィールドを全滅させればいいだけだ。ドロー! フィールド魔法ミッドチルダを発動! フェイトを通常召喚、効果でミッドチルダと自身にLCを置く」

 

A1800・D500

LCフェイト1 ミッドチルダ0→1

 

『大変な事になってるね。しかもこの二人、何か普通とは違う』

「分かった、気を付けるよ。ミッドチルダのLCを取り除き、アルフを特殊召喚」

 

A1600・D1000

LCミッドチルダ1→0

 

『なんだい? ひょっとしてあたしもバトルするのかい?』

 

フェイトの魔力値を頼りにデッキから現れたオレンジ色の毛を生やした大きな狼は、俺の方を振り向く。

 

「ああ、なかなか戦闘の出番を作れなくてごめんな。フェイトの効果、自身のLCを取り除き、雷帝ザボルグを守備表示にする」

「ッチ、小癪な」

「バトル! アルフでレベル・スティーラーを攻撃!」

『久しぶりの敵にしては手応え無いねぇ!』

 

A1600 VS D0

 

アルフはレベル・スティーラーに跳びかかかり、口に付いている鋭い刃でレベル・スティーラーに噛みついた。レベル・スティーラーは抵抗する事も出来ず、あっさり破壊された。

 

「フェイトでザボルグを攻撃!」

『私も負けてられないね。ハーケンセイバー!』

 

A1800 VS D1000

 

帝と言っても召喚成功時に効果を発動できるだけ。ステータスはそこまで高くない。

グルグルと回り残像で円を描く、三日月状の魔力刃は、ザボルグの雷をもろともせずに突き進み、ザボルグを真っ二つに切断した。

 

「フェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター1 伏せ3 手札3 LP5600 (TP遊斗)

氷丸&雷丸 モンスター0 伏せ1 手札3 LP8000 (TP雷丸)

 

「そっちの小僧はやるようだな。一対一なら危ない。だがお前には足枷がある」

「うっ・・・・」

 

確かに今の所翔にはいい所が無い。その事を翔も自覚していたのか、気まずそうに俺から視線を逸らす。

 

「確かに翔は気が弱いかもしれない。だが立派なデュエリストだ。少なくともお前達みたいに人質を取るデュエリストより何百倍も立派だ」

「遊斗君・・・・」

「さあ、ゴタゴタ言ってないで早くドローしな」

「ッチ、俺のターン。ドロー! 永続魔法強者の苦痛を発動。これによりそのモンスターの攻撃力は800ダウンする」

 

フェイトA2800→A2000

 

『ッツ・・・・』

 

強者の苦痛。相手のモンスターの攻撃力をそのモンスターのレベル×100ダウンさせる優秀なカード。主に攻撃力が低いデッキに入るカード。このカードが入っていると言う事は、相手は切り札になるモンスターが無く、半上級モンスターで叩いたり除去したりするのがメインと見た。

 

「今貴様はこのカードを見て、俺達のデッキに高火力アタッカーがいないと思っただろう?」

「? 間違っているのか?」

「一対一ならその通りだ。だがタッグデュエルの場合違う。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合サイバー・ドラゴンは特殊召喚できる」

 

A2100・D1600

 

「それはサイバー流のカード!? どうしてお前が持ってるッスか!」

「サイバー流だけが所持してる訳じゃない。このカードだって高額だが店に売っている。そして墓地のレベル・スティーラーを蘇生!」

 

A600・D0

 

「場のレベル・スティーラーを生贄に、茫漠(ぼうばく)の死者を召喚する!」

 

レベル・スティーラーを生贄に現れたモンスターは、包帯を体中に巻き付けたミイラだった。だが俺が見た事あるミイラとは明らかに違い、手足の一部分が異様に大きく、そこだけ分厚く包帯を巻いている。

 

茫漠の死者A?・D0→A2800・D0

 

「攻撃力は2800に!?」

「このモンスターの攻撃力は、召喚、特殊召喚時の相手ライフの半分の数値になる。お前達のライフは5600だから2800になる」

 

タッグデュエルの場合違うと言っていたのはこう言う事か。通常のデュエルだと初期ライフは4000。一ターン目に出しても攻撃力は2000と心もとない。だがタッグデュエルだと初期ライフは8000で、一ターン目に出した場合攻撃力は4000。

ダメージを受けたのが不幸中の幸いだが、強者の苦痛がある状態で2800のモンスターは辛い。

 

「バトル! 茫漠の死者で黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃!」

「ッツ、すまん翔。罠発動、リビングデッドの呼び声。これでフェイトを特殊召喚する」

 

フェイトA1800・D500→A1400

 

「だからどうした! 攻撃続行だ」

「もう一枚の罠発動、協力防御。俺のフィールドのモンスターは破壊されず、俺への戦闘ダメージは0。その後一枚ドローする」

 

ここでフェイトさんが破壊されるのは危険だ。攻撃力が700上げる効果を持っているので、帝の打点は越える事が出来るし、サイバー・ドラゴンも破壊できる。リビングデットを使ってでも守った方がいい。

 

「ッチ、ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター2 伏せ2 手札4 LP5600 (TP遊斗)

氷丸&雷丸 モンスター2 伏せ2 手札2 LP8000 (TP氷丸)

 

「お前が伏せてくれたカードのおかげで助かったぜ」

「うん、役に立てて良かったッス。僕のターン、ドロー! 未来融合-フューチャー・フュージョンを発動。極戦機王ヴァルバロイドの融合素材、スチームロイド、キューキューロイド、ステルスロイド、ジェット・ロイドを墓地に送る」

 

翔の新たなコンボでありエンジンでもある、未来融合―フューチャー・フュージョン。ヴァルバロイドを選択する事でデッキのロイド五枚を墓地に送る事が出来る。タッグデュエルでなければ、スーパーチャージでドロー加速が出来るが、タッグデュエルの場合ほぼ不可能と言ってもいい。

 

「バトル! 黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンでサイバー・ドラゴンを攻撃!」

「攻撃力2000で攻撃だと? 血迷ったか」

「甘いな。フェイトは目の前のモンスターと戦闘する時、攻撃力を700上げる」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA2000→A2700 VS A2100

 

サイバー・ドラゴンから放たれたエネルギー弾、エヴォリューション・バーストは、黄色に光る砲撃に掻き消され、放ったサイバー・ドラゴンも同じように破壊され消えて行った。

 

「「ック」」

 

氷丸&雷丸LP8000→7400

 

「デコイロイドを守備で召喚。そして機械複製術を発動、デッキから二枚のデコイロイドを特殊召喚。ターンエンド。どうだ、僕だってやる時はやるんだ!」

 

デコイロイドA300・D500→A100

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター5 伏せ3 手札1 LP5600 (TP翔)

氷丸&雷丸 モンスター1 伏せ2 手札2 LP7400 (TP氷丸)

 

「ッフ、たかがダメージ600で何を言っている。ドロー! 永続魔法生還の宝札を発動、茫漠の死者のレベルを下げレベル・スティーラーを復活。生還の宝札の効果で一枚ドロー!」

 

A600・D0

 

やはりレベル・スティーラーは除外しないと永遠に復活される。それだけならまだしも生還の宝札まで発動されてしまった。あれとレベル・スティーラーのコンボは物凄いドローブーストになるので、対処しなくてはいけない。

 

「レベル・スティーラーを生贄に、カース・オブ・ヴァンパイアを召喚」

 

A2000・D800

 

今度は戦闘で破壊された次のターン、ライフを500払う事で攻撃力を500上げて蘇生する事ができるモンスター。さっきから意外と帝は出てきてないが、ひょっとして名前と同じ属性の帝しか持っていないのかもしれない。

そう考えると、急に帝の中で一番弱い雷帝ザボルグを使う雷丸が可哀そうに見えてきた。

 

「装備魔法ビッグバン・シュートを茫漠の死者に装備」

 

茫漠の死者A2800→A3200

 

「バトル! 茫漠の死者で黒騎士・フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃!」

 

茫漠の死者は太く巻いた包帯を解き、フェイトさんに包帯を放った。先程まで軟らかい素材で出来ていた包帯は、突然鋭い刃へと変わり、フェイトさんに襲い掛かる。

 

「させないッス! デコイロイドの効果で相手はこのカード以外のモンスターを攻撃できない!」

 

A3200 VS D100

 

白い刃がフェイトさんに当たると思った瞬間、翔の言葉と共にデコイロイドがフェイトさんを庇うように現れた。

 

「面倒な事をする。だがビッグバン・シュートの効果で茫漠の死者は貫通効果を得る!」

 

遊斗&翔LP5600→2500

 

「ナイス判断だ。翔」

「カース・オブ・ヴァンパイアでデコイロイドを攻撃」

 

A2000 VS D100

 

3100のダメージを受け、二体のデコイロイドが破壊されてしまったが、まだもう一体のデコイロイドとフェイトとフェイトさんが残っている。レベル・スティーラーを呼んでいれば全部のデコイロイドを破壊出来ただろうが、攻撃力600のモンスターを守る手段無しで出しておくのは危険と判断したんだろう。

 

「ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター3 伏せ3 手札1 LP2500 (TP翔)

氷丸&雷丸 モンスター2 伏せ4 手札3 LP7400 (TP雷丸)

 

まだ二回目のドローなのに随分と差が付いてしまった。ここで一発逆転のカードを引かないとかなり危険な状態になる。

 

「ドロー、来た! この瞬間未来融合―フューチャー・フュージョンのターンカウンターが進む」

 

未来融合0→1

 

「デコイロイドを生贄に、ディアーチェを召喚! 効果でミッドチルダと自身にLCを置く」

『先程のプリンの仇、今ここで討つ!』

 

ディアーチェA2100・D1600→A1600

LCディアーチェ1 ミッドチルダ0→1

 

「装備魔法紫天の書をディアーチェに装備。これにより攻守が500ずつ上がる」

 

ディアーチェA1600・D1600→A2100・D2100

 

「だから何だと言うんだ?」

「こっからが本番だ。ディアーチェの効果発動。LSを一体選択し、選択したLS以外のフィールドにいるLSの攻撃力を選択したモンスターに加える事が出来る。黒騎士フェイトに攻撃力を集中!」

『なっ!? 我に攻撃させんか!』

 

出来ればそうして上げたいが、バトルフェイズ中に攻撃力を上げる事が出来るフェイトさんを対象にした方が効率が良い。フェイトさんはディアーチェの頭を優しく撫で『お願い』と微笑むと、ディアーチェは少しだけ頬を染めて言うとおりにした。

フェイトさんと俺への対応に明らかな差があるが、気にしないようにしよう。男の俺よりもフェイトさんの方が女性にモテるとか、そんな事きっと無い。

 

LCディアーチェ1→0

フェイトA2000→5500

 

「「攻撃力5500!?」」

「バトル! 黒騎士フェイトで茫漠の死者を攻撃! 黒騎士フェイトの効果で、茫漠の死者のモンスターゾーンの前に移動し、攻撃力を700アップ」

 

フェイトA5500→A6200 VS A3200

 

『ディアーチェが集めてくれた魔力、無駄には出来ないね。フォトンランサーファランクスシフト』

 

ディアーチェから貰った魔力を一度自分のリンカーコアを通し、自らの魔力へと変え、大量のフォトンスフィアを形成させる。流石に雷フェイトさん程の数はないが、大量の魔力を貰ったおかげが、目で数えるのが困難な程の数がある。

 

『撃ち砕け、ファイア!』

 

大量のフォトンスフィアから毎秒七発の魔力弾が発射され、そのすべてが茫漠の死者を襲い掛かる。一度死に、不老不死になったミイラでさえ、再び死ぬ事ができる程の超火力。

茫漠の死者は纏った包帯でフォトンランサーを斬るものの、数が数だ。結局全てのフォトンランサーを受ける前に、茫漠の死者は墓地へ行き、残りのフォトンランサーが氷丸と雷丸を襲った。

 

氷丸&雷丸LP7400→4400

 

「「ぐあああ!」」

「更に紫天の書の効果。相手モンスターが破壊される度に、このカードにLCを置く」

 

LC紫天の書0→1

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター3 伏せ5 手札2 LP2500 (TP遊斗)

氷丸&雷丸 モンスター1 伏せ3 手札3 LP4400 (TP雷丸)

 

「思った通り、かなりの実力を持っている。だが俺達は美寿知様から力を頂いたんだ」

「美寿知? それがお前達の親玉か!?」

「斎王美寿知と言えば分かるか? あのお方は斎王琢磨の妹」

「っな。斎王の妹!? それじゃあ今回の事件は斎王の仕業!?」

「おっと、おしゃべりはこのくらいにしておこう。ドロー! カース・オブ・ヴァンパイアのレベルを下げ、レベル・スティーラーを蘇生。デッキから一枚ドローする」

 

A600・D0

 

「レベル・スティーラーを生贄に、氷帝メビウスを召喚!」

 

相手フィールド上のある地点を軸に、地面が急に凍り始め、凍った地面の中から氷の帝が現れた。雷帝メビウスより色素の薄い白銀の鎧に、背中には青のマント。白銀の鎧には自ら出現させた氷が鏡となって映っている。

 

「氷帝メビウスの効果。未来融合-フューチャー・フュージョンと紫天の書を破壊する! フリーズ・バースト!」

「紫天の書の効果! LCを一つ取り除く事で、効果での破壊を無効にする!」

「だが未来融合は破壊だ!」

 

次のターンヴァルバロイドが呼べたら心強かったんだが、やはりそう簡単に出させてはくれないか。

 

LC紫天の書1→0

 

「まだだ、二重召喚(デュアルサモン)を発動。カース・オブ・ヴァンパイアのレベルを下げ、レベル・スティーラーを特殊召喚。効果でデッキから一枚ドロー。レベル・スティーラーを生贄に、フロストザウルスを召喚」

 

A2600・D1700

 

「永続魔法、進撃の帝王を発動。これにより生贄召喚したモンスターはカードの対象にならず、カードの効果で破壊されない」

 

これでカード効果での破壊や表示形式も不可能になった。だがこれから召喚されるモンスターはレベル・スティーラーの効果を受け付けなくなった。これで現在レベル・スティーラーは復活不可能になる。

 

「バトル! メビウスでディアーチェを攻撃!」

 

A2400 VS A2100

 

『アロンダイト!』

 

ディアーチェの持つ紫色の杖、エルシニアクロイツの先から、デバイスと同じ紫の砲撃が放たれた。だがその砲撃はメビウスが放った氷のエネルギーと密度が変わらなく、二つの砲撃は相殺し合い、爆風により土煙が舞った。

だがディアーチェはそこまで読んでいた。というより、アロンダイトにはもう一つの能力があった。土煙の中から球状の衝撃波が発生し、メビウスを襲い、破壊した。

 

「馬鹿な!? メビウスの方が攻撃力が上だぞ!?」

「ダメージ計算時、手札のスバルの効果を発動していた。これによりディアーチェの攻撃力は1000上がったんだ。甘かったな」

 

ディアーチェA2100→A3100 VS A2400

氷丸&雷丸LP4400→3700

 

「器用な奴め・・・・」

「更に紫天の書の効果でLCを乗せる」

 

LC紫天の書0→1

 

「まあいい。フロストザウルスで黒騎士フェイトに攻撃! フロストザウルスの前にはモンスターがいる。攻撃力を上げる事は出来ない!」

 

A2600 VS A2000

 

フロストザウルスはその巨大な体で突進し、フェイトさんを突き飛ばした。流石に人型のモンスターがペチャンコになるのは、ソリッドビジョンが避けたのだろう。

 

遊斗&翔LP2500→1900

 

「カース・オブ・ヴァンパイアでフェイトに攻撃!」

 

A2000 VS A1400

 

フェイトはハーケンセイバーを放つものの、カース・オブ・ヴァンパイアは一度複数のコウモリに姿を変えてハーケンセイバーを回避した。そして再び元の姿に戻り、フェイトを破壊した。

 

遊斗&翔LP1900→1300

 

「あ、あとライフ1300・・・・」

「落ち着け翔。ライフが0にならない限り勝負は付かない。もう攻撃は終りか?」

「ライフたったの1300でそんな態度がとれるとはな。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター1 伏せ3 手札1 LP1300 (TP遊斗)

氷丸&雷丸 モンスター2 伏せ5 手札0 LP3700 (TP氷丸)

 

幸いメビウスの効果で翔がセットしたカードと俺がセットしたカードは破壊されなかった。奴等の場には最初のターンからセットされたカードと、先程セットされたカード。それと生贄召喚のサポートカード二枚と、強者の苦痛。

俺にとってはライフが減ってからが本番だが、翔にとっては大ピンチと感じているのだろう。体がガタガタと震えて、デッキトップに乗せた指に力が入っていない。

 

「翔、しっかり「だ、大丈夫ッス」・・・・」

「ぼ、僕のターン、ドロー! まだ終わらないッス! 貪欲な壺を発動、墓地のスチームロイド、キューキューロイド、三枚のデコロイドをデッキに戻し、二枚ドロー。エクスプレスロイドを召喚、効果で墓地のドリルロイドとステルスロイドを手札に加える」

 

A400・D1600

 

「そんな弱小モンスターを出した所で何になる?」

「ここからが本番だ。セットした融合を発動! 場のエクスプレスロイドと手札の四体のロイドを融合! 来い、極戦機王ヴァルバロイド」

 

A4000・D4000

 

融合の渦に入って行った五体のロイドは、一つの最強のロイドとなって登場してきた。下半身は二つの巨大なタンク、手を連想させる二つの長い銃口。そして顔は融合素材であるロイドとは違い、アメリカンな可愛らしさは無く、細長くかっこいい。

そして何と言っても攻撃力守備力が4000と、融合素材が五体なだけあり、破格のステータスを持っている。

 

「攻撃力4000!? だが強者の苦痛の効果で攻撃力は下がる!」

 

ヴァルバロイドA4000→A2800

 

「それでも十分ッス! バトル! ヴァルバロイドでフロストザウルスを攻撃!」

 

A2800 VS A2600

 

ヴァルバロイドの銃口から放たれた火炎放射により、氷で作られたフロストザウルスはその体を徐々に水へと変えて行き、最後は水たまりになった。

 

氷丸&雷丸LP3700→3500

 

「この程度「ヴァルバロイドの効果発動! 戦闘でモンスターを破壊した時1000ダメージを与える」そんな効果を!?」

 

氷丸&雷丸LP3500→2500

 

「こっちも忘れるなよ。紫天の書の効果でLCを置く」

 

LC紫天の書1→2

 

「更にヴァルバロイドは二回攻撃をする事が可能! カース・オブ・ヴァンパイアを攻撃!」

 

A2800 VS A2000

氷丸&雷丸LP2500→1700

LC紫天の書2→3

 

「まだッス! 再び1000のダメージを受けるッス!」

「お前如きにっ!」

 

氷丸&雷丸LP1700→700

 

「これで終わりだ! ディアーチェでダイレクトアタック!」

「それはさせない! 速攻魔法クリボーを呼ぶ笛! 自分フィールドにクリボーを特殊召喚する」

 

A300・D200

 

最初から伏せてあったカードは十代も良く使うクリボーを呼ぶ笛だった。発動後、クリボーが奴等のフィールドに出現した。

 

「そのまま攻撃ッス!」

 

A2100 VS D200

 

流石のディアーチェも可愛らしい小動物相手には本気を出さなかったのか、デバイスでクリボーの頭を叩き、クリボーを墓地まで叩き落とした。

 

「ターンエンドッス」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター2 伏せ2 手札0 LP1300 (TP翔)

氷丸&雷丸 モンスター0 伏せ4 手札0 LP700  (TP氷丸)

 

翔のおかげでライフ、フィールド、共に逆転する事が出来た。だが次のターンプレイヤーである雷丸は、ドローを入れて手札は4枚。逆転するには十分な手札。このリバースカード一枚で防ぎきれるか。

 

「俺のターン、ドロー! 墓地のカース・オブ・ヴァンパイアの効果が発動する。ライフを500払い、カース・オブ・ヴァンパイアを特殊召喚。効果で一枚ドロー」

 

氷丸&雷丸LP700→200

カース・オブ・ヴァンパイアA2000・D800→A2500

 

ヴァルバロイドは攻撃したモンスターの効果をダメージ計算終了時に無効化する能力を持っている。だが進撃の帝王の効果で無効にすることはできない。

 

「手札のカード一枚を墓地に送り、THEトリッキーを特殊召喚」

 

A2000・D1200

 

「トリッキーのレベルを下げ墓地のレベル・スティーラーを復活し、デッキから一枚ドロー。行くぞ、レベル・スティーラーを生贄に、雷帝ザボルグを召喚する!」

 

A2400・D1000

 

「ザボルグの効果で極戦機王ヴァルバロイドを破壊する! デス・サンダー!」

「ヴァルバロイド!」

 

ザボルグの両手から発生した雷が、ヴァルバロイドを襲い、体内の機械を使いものにならなくする。せっかく召喚した最上級モンスターなのに一ターンしかフィールドにいれなかったのは残念だが、十分に活躍した。

 

「死者蘇生を発動。墓地の氷帝メビウスを特殊召喚する。効果で一枚ドロー」

 

A2400・D1000

 

「リバースカードオープン、ライトニング・ボルテックスを発動。手札を一枚捨て、ディアーチェを破壊する」

「無効だ。罠発動、プロテクション。このターンディアーチェは破壊されない」

「まあいい、バトルだ! 雷帝ザボルグでディアーチェに攻撃! ローリング・サンダー!」

 

A2400 VS A2100

 

「ディアーチェは破壊されない!」

「だが戦闘ダメージは受けてもらう!」

 

遊斗&翔LP1300→1000

 

「メビウスで攻撃! アイス・ランス!」

 

A2400 VS A2100

 

『ッチ、後で倍にして返してやる』

 

遊斗&翔LP1000→700

 

「カース・オブ・ヴァンパイアで攻撃!」

 

A2500 VS A2100

 

「頼むディアーチェ!」

 

二体の帝の攻撃と同じように、ディアーチェは紫色の古代ベルカ式のシールドを発動する。しかし攻撃力の差だけ俺達にダメージが走る。

 

遊斗&翔LP700→300

 

「何とか耐える事が出来たか・・・・」

 

と、言ったものの、この状態ではじり貧になる。紫天の書の効果であの子を呼んでも、ディアーチェがいる状態で召喚出来なかったら何の意味も無い。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗&翔  モンスター1 伏せ1 手札0 LP300 (TP翔)

氷丸&雷丸 モンスター3 伏せ4 手札0 LP200 (TP雷丸)

 

既に紫天の書の効果発動条件はクリアされたし、ディアーチェの効果だってミッドチルダのおかげで発動できる。だがディアーチェを残して平然としていると言う事は、さっき伏せたカードには何かある。

そしてあの子を出すには、最低二体、最高三体のモンスターを呼ばなくてはいけない。仮に守りのカードを引いても、手札が0の翔がドローカード一枚で逆転できるとは思えない。

 

「頼むッス遊斗君!」

 

デッキトップに置く指に力を込め、一秒だけ目を閉じる。心をデッキと一体化し、望むカードをデッキトップに来るように願う。

 

「俺のターン、ドロー! よし! ティアナを通常召喚、効果でミッドチルダにLCが一つ乗る」

 

ティアナA1200・D1000→A800

LCミッドチルダ1→2

 

「ティアナの効果発動! ミッドチルダのLCを取り除き、墓地のアルフをゲームから除外し、同名トークンを特殊召喚する」

 

LCミッドチルダ2→1

 

「更に速攻魔法フェイクシルエットをティアナに発動! デッキのなのはを墓地に送り、ティアナをなのはとして扱う。そして場になのはがいる時、LCを一つ取り除く事で、デッキに存在するユーノを特殊召喚できる!」

 

ユーノA500・D1600→A100

 

「ッフ、そんなモンスター達を呼んだ所で何になる?」

「こうするのさ。紫天の書の効果発動! このカードに乗ったLCを三つ取り除き、デッキからLS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァインを手札に加える!」

 

LC紫天の書3→0

 

この子がさっき喫茶店で話題になっていた子であり、マテリアルズの切り札でもある。その召喚コストとは引き換えに、物凄い力を持っている。

 

「行くぞ! 場のなのは、ユーノ、アルフの三体を生贄に捧げ、紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァインを特殊召喚する!」

 

ウェーブの掛かった金髪の髪に、戦場には似つかわしくないトロンと柔らかな雰囲気を出す金色の瞳。上半身は白をメインとした長袖を着ており、小さなへそが出ている。下は燃えたぎる炎の模様が入った紫色の袴の様だ。

これだけ見るとディアーチェより頭一つ小さい、可愛い女の子だが、氷丸と雷丸はユーリの姿――正確に言うとユーリの背に付いた闇色の炎で作られた翼に脅えている。

 

ユーリA4000・D4000→A3000

 

「強者の苦痛の効果を受けても攻撃力3000だと!?」

「(いっ、いや、大丈夫だ。俺が伏せたカードはあのカード。勝ったのは俺達だ)」

 

氷丸の叫び声を聞き、恐怖を与えている側であるユーリが何故かビクッと驚き、ディアーチェの背中にササッと隠れる。そう、この子は極度の恥ずかしがり屋。こうやってデュエルに出るのは勿論、デッキ所持者である俺も警戒する程。

 

『ディ、ディアーチェ・・・・』

『大丈夫だユーリ。うぬの力、我の為に使ってくれるか?』

『ディアーチェの、為?』

『そうだ。そこの塵芥共がアホなプレイをする所為で今困っておる』

 

うぐっ、ディアーチェめ、言わせておけば。けどここまで追い詰められたのも事実。

 

『分かりました。ディアーチェの為に頑張ります! 行きますよ、塵芥さん!』

 

さっきから色々と納得できないが、取り合えずこのデュエルを終わらせるのが先決。ユーリに俺の名前を覚えさせ、なお且つディアーチェにお灸を据えるのはその後。

 

「ディアーチェを守備にしてバトル! ユーリで雷帝ザボルグに攻撃!」

『ナパームブレス!』

 

A3000 VS A2400

 

ユーリは小さな手の平から、自分の手より何倍も大きい赤黒い球体を出し、そのか弱そうな細腕を使い、赤黒い球体を投げ飛ばした。

 

「ハッハッハ! 攻撃しなければまだチャンスは残っていたものの、これで終わりだ! 罠発動、聖なるバリア―ミラーフォース! これでそのモンスターは破壊だ!」

 

ユーリが放った攻撃が七色に光る薄いバリアによって反射され、自らの攻撃をもろにくらったユーリ。その衝撃で舞った土煙を眺め、雷丸と氷丸は勝利を確信したのかハハハ! と大声を上げている。

 

「ッフ、お前等、フィールドを良く見て見るんだな」

『大丈夫かユーリ?』

『はい、自分の攻撃が跳ね返って来るなんて予想外でした』

 

ゆっくりと晴れていく土煙の中には、闇の炎で作られた頑丈な盾があった。その盾には穴はおろか傷一つ付いていない。

 

「ば、馬鹿な!?」

「どうしてミラーフォースで破壊されない!?」

「残念だがユーリは破壊されない。その代わり紫天の書が無いと攻撃できない大きなデメリットを持っている」

 

最も、今さらデメリットを言った所でもうこの攻撃でデュエルは終わる。あの二人に言っても馬の耳に念仏だろう。

 

『ディアーチェを困らせる人は私が許しません!』

 

再び先程の球体を展開すると、今度はしっかりと狙いを定め、雷帝ザボルグに向けて放った。雷を従えし帝も、紫天の盟主の前では赤子同然。球体を止める事も出来ず破壊され、雷帝ザボルグを貫通した球体は、氷丸と雷丸の間に落ち、そこを中心に爆発した。

 

「「馬鹿なああああ!」」

 

氷丸&雷丸LP200→-400

 

奴等のデュエルディスクからライフが0になったのを知らせる音が鳴った瞬間、奴等が立っていた場所のガラスが、ドガーンと鼓膜が破れそうな程の音を立て、爆発した。

顔にガラスの破片が当たらない様に、両腕で防ごうとしたが、ディアーチェが実体化してシールドを張ってくれたおかげで防ぐ意味は無かった。隣の翔はユーリが守ってくれている。

 

「あ、あわわわ。あ、あの二人はどうなったッスか?」

「なに、持っていたパラシュートで優雅にビルを降りてるよ」

 

下を向くと、ガラス越しに二つのパラシュートがゆっくり落ちて行くのが見える。命がけのデュエルを挑んできた割にチキンな奴らだ。よくパラシュートを隠し持っている状態で、翔を馬鹿に出来たものだ。

 

「ありがとう。ディアーチェ、ユーリ」

「ふん、お前が傷つくと色々と騒ぐ輩がおるからな」

「私はディアーチェに言われたから助けただけです」

「翔、取り合えず双六さんをガラスの外まで運ぼう」

「了解「お前達も道連れだ!」へ?」

 

その声と共に、どちらかがもう一つの爆発スイッチを押したのだろう。ドガーンと先程と同じくらいの爆音が鳴った瞬間、体が浮遊感に支配された。

 

「うっ、うわあああああ!」

「ック、人目に付くがディアーチェ、ユーリ!」

 

二人は言われなくても助けるつもりだったようで、落下する俺達を助けようと、すぐさま飛んでくる。だがその瞬間、突如上空から丸い形をした何かがディアーチェとユーリに落ちてきた。

落下している最中なのでハッキリと分からなかったが、おそらくあれは機械族のモンスター。スフィア・ボム球体時限爆弾。

 

「な、なんだこの機械は!?」

「バインドで二人をっ」

 

ユーリが俺達に向けバインドを放とうとしたが、二体のスフィア・ボムが爆発した。コンマ数秒二人の心配をしたが、あの二人より俺達の方がピンチだ。デッキから誰かが助けてくれると余裕も、落下して二秒ぐらいすると無くなった。

 

「うわあああああ!」

「おい雷丸!? どうなってる!?」

「知るか!?」

「(ック、どうすればいい!?)」

 

次の瞬間だった。体の奥から何かとてつもない力が出てきた。それが何かは分からない。火事場の馬鹿力なのか魔法なのか。

その感覚を覚えた瞬間、落下スピードが一気に遅くなった――否、俺の体感速度が遅くなった。

 

「翔! 双六さん!」

 

無我夢中で空中で体を回転させ、近くの柱に一瞬だけ足を付け、思いっきり柱を蹴る。その衝撃で、落下している翔と双六の方へ跳び、空中で二人をキャッチする。既に翔は怖さの余り気絶している。

だがもう大丈夫。俺が翔達とぶつかった事で、俺達三人は丁度開いているパラシュートの上の位置にいる。

ドスッと音を立て、俺達はパラシュートの上に乗った。その重さに耐えきれず、パラシュートはしぼんでしまうが、既に地面との差は数メートル。それにパラシュートの下には二人の内どちらかがいるので、クッションになってくれた。

 

「がっ!?」

 

クッションになったのは氷丸だったようだ。二人を抱え地面に着地すると、回りは海馬コーポレーションの社員でいっぱいだった。

 

「お、おい君。大丈夫か?」

「この子、空中で凄い動きしなかった?」

「あれ? その子の服デュエルアカデミアのよね」

「さっき空を飛んでいる女の子が二人いなかったか?」

「ア、アハハハハ・・・・」

 

どうやっていい訳をしようか? 何故俺達が無事だったのか? 数秒間そんな事を考えていたが、あるものが目に入った瞬間、すぐに思考回路が変わった。

 

「貴様! 待て!」

 

俺と目があった瞬間、そのものは背中を向け立ち去ったので、俺は人混みを掻き分けでそのものを追いかけた。奴の後を追っていると、コーポレーション内の薄暗い廊下に出た。

 

『遊斗! 無事であったか?』

『すいません。ダメージは無かったんですが、黒煙で視界を遮られて』

 

奴の背中を追っている最中、ディアーチェとユーリが飛んできた。二人に外傷は一再見当たらない。

 

「色々と良く分からないが、お前達にスフィア・ボムを送り付けた犯人はあいつだ!」

 

それを聞いた瞬間、ディアーチェとユーリは再び実体化し、魔力弾を奴へ撃ち込んだ。おそらく二人が本気を出せば、奴は防げなかっただろうが、ここは室内。本気で撃てる訳が無く、二人の放った魔力弾は奴によって止められた。

 

「そろそろ逃げるのは止めろ! 機械王!」

 

その瞬間、機械王の足はピタリと止まり、ゆっくりとこっちを振り向いた。

 

『ッフ、その二体を封じ、数秒だけカードにいる精霊達を封じ込めればお前を殺せると思ったが、とんだ計算外だ』

「何故精霊であるお前がここにいる!?」

『決まっているだろう? LSを取りに来たんだ。機械族の王として』

 

 

 

 




注)作者は原作のこの回を見ていませんが、氷丸も雷丸も美寿知に操られていますが、落ちこぼれデュエリストです。この様なリアリストでは無いと思います。

遊戯王GXの知識があやふやですが、GX開催から再放送で再び見始め、比較的記憶が新しいです。と言っても細かいところは全然覚えていませんが。

そして中途半端に原作を意識した結果、帝を一人一種類縛りをしてしまい、帝デッキじゃ無くなったという。原作はどうやってデュエルしたんんだ・・・・。


それと遊斗の最後の身体能力ですが
遊斗=ラノベ主人公 ×
遊斗=クラッシュタウン時の満足同盟 ○


追記
デビルズ・サンクチュアリを速攻魔法と勘違いしていたので、キャラには合いませんが、クリボーを呼ぶ笛で代役をさせました。





今回登場した新オリカ。紫天の書とユーリです。


紫天の書 装備魔法
「LS闇統べる王」にのみ装備可能。
装備されたモンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップする。
相手フィールド上のモンスターが破壊される度に、破壊されたモンスターと同じ数のLCをこのカードに乗せる。
このカードがカードの効果で破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLCを1つ取り除くことができる。
このカードに乗ったLCを3つ取り除くことで、デッキ、墓地から「LS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァイン」を一枚手札に加える事ができる。


LS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァイン ☆10/闇/魔法使い/A4000・D4000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上の「LS」と名のついたモンスターを含むモンスター3体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。
このカードは破壊されない。
このカードはフィールド上に「紫天の書」を装備したモンスターが存在しない場合、攻撃できない。



まずは紫天の書ですね。
装備対象がディアーチェだけとは言え、やっぱり攻守500アップは強いですね。闇の書と違ってカウンターも乗りやすいのも良い点です。


次にユーリ
何と言っても強い点は攻守4000という破格のステータス。しかもどっかの幻魔とは違い、しっかりと破壊耐性も持っています。
召喚条件が特殊召喚なので、1ターンでも呼ぶ事は可能ですね。
ただディアーチェがいないと(良いところを見せたいが為)攻撃できないという非常に困った子でもあります。
ディアーチェとユーリは末永く爆発するべし。



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第三十二話

今日の5Dsの再放送で、伝説の「インチキ効果もいい加減にしろ!」が出ましたね。
相変わらず5Dsは名言にしろ迷言にしろ、凡庸性の高い言葉が多すぎる。
作者は特にジャック関連の迷言が好きです。ジャック!ハヤクローンヲシハラッテー!! は何度見ても笑える。


今回は序盤で結構物語が進展します。


「お前もエンディミオンと同じ企みを持っているって事か」

「エンディミオン? ああ、出しゃばって一人で勝手に突撃した魔法使い族の王か。俺はあの裏切り者とは違う」

「裏切り者だと? 裏切りも何もお前達は戦争をしている最中じゃないのか?」

 

俺の質問に機械王は「クックック」と笑い、口を開く。

 

「そうか、お前は知らないのか。まあせっかくなら話してやろう。我々20の王はお互いを敵だと思っていない。むしろ味方だ」

「味方!? さっきも言ったがお前達――いや、精霊界は種族同士で戦争をしている筈!」

「確かに民達は戦争をしている。だが我ら王は非常に深い関わりがある」

「馬鹿な! 何のメリットも無しに民を戦争させる王が何処にいる! 王とは臣下や民の声を聞くものぞ!」

 

同じ王を名乗っているディアーチェは王達がやっている事が許せず、激怒の表情で機械王に怒鳴りつける。デッキのアインハルトのカードもカタカタと震えている。ディアーチェと同じように怒っているのだろう。

 

「メリットが無い訳は無い。我らが起こした戦争には大きく二つメリットがある。一つは精霊世界を弱らせる事。もう一つはそうだな、自分で考えるんだ」

 

いったいどういう事だ・・・・。何故自らの世界を弱らせようとする。そんな事をしていたらいつか世界が滅ぶ――滅ぶ?

 

「ま、まさかお前・・・・」

「ほう? てっきり精霊無しではただの小僧かと思っていたが、さっきの件と言い、やはり只者では無かったか」

「お前が、破滅の、光、なのか?」

 

何の感情が俺の体を支配しているか分からないが、思う様に声が出なかった。

正解、と言わんばかりの不気味な笑みを浮かべた機械王を見て、ディアーチェとユーリは再び戦闘態勢に入る。

 

「そうだ。俺――いや、我々20の王は破滅の光だ。おっと、この身体や本来のエンディミオンの名誉の為に言っておこう。我々は王の体を乗っ取っただけで、本来なら皆優秀な王達だ」

 

だ、駄目だ。さっきから色々な事が起こり過ぎて頭が付いて行かない。混乱して足がふらりとバランスを崩し一瞬浮遊感を覚えたが、誰かに支えられた。

 

「大丈夫、遊斗?」

「フェイト。それになのはさん・・・・」

「遊斗はちょっと休んでて。ここからは私が相手をするから。ディアーチェとユーリもお疲れ様。一旦休んで」

 

なのはさんの言葉に、ディアーチェとユーリは頷いて返事をし、カードの中に戻って行った。なのはさんは右手にレイジングハートを持った状態で機械王と対峙する。

 

「何で破滅の光が私達を狙うの? 王達を乗っ取れる力を持つあなた達なら、力なんて必要ない筈」

「ッフ、まさかLSからそんな言葉を聞くなんてな。答えは簡単だ。|お前達はお前達が思っている以上に力を持っている。それはこの宇宙の破滅を一気に近付ける事が出来る」

「私達が思っている以上・・・・。確かに、本来の私たちなら、正直カードの数値なんかに当てはめるのは難しい」

 

なのはさんは一瞬考え込んでいたが、すぐに機械王の言葉に納得した。俺もなのはさん達が実際に魔法で戦っている姿は見た事が無いが、話や映像を見る限りでは物凄く強い。この海馬コーポレーションを壊そうと思えば一人で壊す事が出来るし、時間は掛かるが意図的に自然災害を起こす事も可能。それに加え、本来のなのはさん達と違うIFのなのはさん達がいて、更に三幻魔の力も持っている。

 

「そうだ。実際のお前達はデュエルモンスターズには無い、スピード、頭脳、技術も持っている。それに先程の少女や、闇の書。どちらも使い方次第で星をも壊す事が出来るそうじゃないか?」

「闇の書とユーリの暴走・・・・。けど待って! それでも王達を操っているあなた達なら、破滅なんてすぐに」

「お前達はこの宇宙に存在する生命は、地球と精霊界だけしかいないと思ってないか? 我々が滅ぼすのは我々を除くこの宇宙に存在する生命全て。それに我等には闇と言う強大な敵がいる。王達を洗脳出来たのも、長い年月と色々な犠牲からだ」

「どうして・・・・どうして破滅何かを望むの!? どうして!」

 

機械王、いや、破滅の光の言葉に耐えきれなかったフェイトが、普段の彼女から考えられないほどの怒りを込めた声で怒鳴った。

 

「溺れた人間が酸素を欲するように。腹が減った人間が食べ物を求めるように。砂漠で干からびた人間が水を欲するように。我々の破壊する目的は、それが生理現象だから。ただそれだけだ」

「どうやらあなた達を説得する事は出来ないようね」

「ああ、我々もお前達と話に来たんじゃない。そこの少年を殺し、お前達を破滅の光の一員にする為に来た」

 

機械王はそう言って左手をスッと上げると、なのはさんとフェイトは警戒してデバイスを構え、デッキからヴィータさんとトーマも万全の状態で現れた。

 

「おっと、俺が何の策も無しに一人で来る訳無いだろう。さっきの翔と言う少年と、双六と言う爺さんはどうした?」

「ッツ!? まさか二人を!?」

「ああ、俺に手出しすれば二人はすぐにドカンだ。だが一つだけお前も助かり、あの二人も助かる方法がある」

 

そう言って機械王は自分の左手に付けた機械仕掛けのデュエルディスクを構える。ネオスペーシアンでもデュエルで決着を付けていたので、もしかしたらと思っていたが。

だいぶん混乱も収まってきたので、足に立つように指示を送り、体を起こす。

 

「いいだろう、受けて立つ。みんな、デッキで待機していてくれ」

 

みんな一様にコクンと頷き、デッキの中に戻っていく。

 

「最後に一つだけ、何故王であるお前が出て来る?」

 

ディスクからデッキを取り出し、機械王の左手に置き、機械王も同じように俺の左手に自分のデッキを置く。

 

「単純明確。お前に勝てる機械族のデュエリストが俺以外にいない」

 

暗くて不気味な廊下に、タッタッタとシャッフル音が二重に響き渡る。

 

「ッフ、じゃあ少なくとも機械族にデュエルで負ける事は無いな」

「クックック、悪役がペラペラと喋るときは勝ちを確信している時だ。さあ行くぞ」

「「デュエル!」」

「先攻は俺だ。ドロー! フィールド魔法ミッドチルダを発動」

 

さっきまで薄暗く不気味だった空間が、一気に近未来都市のど真ん中になる。機械王は「面白い」と呟きながらキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「シャマ姉を通常召喚。効果でミッドチルダにLCが乗る」

 

A700・D1800

LCミッドチルダ0→1

 

「シャマ姉の効果で、ミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ1→2

 

「そしてミッドチルダのLCを二つ取り除き、連続転移を発動! デッキトップ三枚をめくり、通常召喚可能なLSを特殊召喚する。闇の書、クロノ、アインハルト。よってクロノとアインハルトを特殊召喚する」

 

A1700・D1500

A1300・D1000

 

「この瞬間、クロノの効果。特殊召喚に成功した事でデッキから設置型バインドを手札に加える。更にアインハルトの効果。相手フィールド上にモンスターが存在しない時、このカードを手札に戻す」

 

これで手札消費はかなり抑える事が出来た。幸い手札にはティオもおり、アインハルトが手札に溜まる事も無い。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札4 LP4000

 

「フィールドに三枚のカードがあるが手札は4枚。流石だ。ドロー、メカ・ハンターを召喚」

 

A1850・D800

 

丸い球体に、黒緑の翼と六つの腕を付けた機械。機械王の命令で、ターゲットを捕まえるまで追い続けるハンターは、まさにこの絵にピッタリな説明文だ。

 

「永続魔法、機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)を発動。バトル、メカ・ハンターでクロノを攻撃」

「罠発動、設置型バインド。これによりメカ・ハンターは攻撃できない。そして発動後、効果でミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1

 

「そうくるだろうな。これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札4 LP4000

機械王 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

メカ・ハンターと機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)を出しただけ。王と名乗るには随分と単純な出だし。

いや、深くは考えず、素直に伏せが無い事に喜ぶとしよう。

 

「ドロー! アインハルトを通常召喚。フィールドにアインハルトが存在する時、ティオは特殊召喚できる」

 

LCミッドチルダ1→2

A1300・D1000

A500・D500

 

「ティオの効果。特殊召喚に成功した時、このカードを除くフィールド上のLSのレベル合計×100ライフを回復する。合計レベルは11」

『頼みますよ、ティオ』

『にゃっ!』

 

遊斗LP4000→5100

 

いつものほわほわしたティオとは違い、今日のティオは目の前の機械王をかなり警戒しているのがすぐに分かる。声のトーンも普段とは明らかに違う。

 

「シャマ姉の効果でミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ2→3

 

「行くぞ! 場のアインハルトとティオを融合! 来い、覇王アインハルト!」

 

A2700・D2200

 

「バトル! アインハルトでメカ・ハンターを攻撃!」

『覇王断空拳!』

 

A2700 VS A1850

 

足から練り上げた力を拳の先に溜め、バインドにより行動不能になったメカ・ハンターに向け、上空から拳を振り下ろす。落下するエネルギー加わった拳に、頑丈に作られた機械の装甲も防ぐ事が出来ず、メカ・ハンターに大きな風穴が開いた。

 

機械王LP4000→3150

 

「更にアインハルトの効果でライフを回復する」

 

遊斗LP5100→6950

 

「だが機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)の効果が発動する。機械族が破壊された時、そのモンスターより攻撃力が低い同属性の機械族を特殊召喚する。来い、A・ジェネクス・クラッシャー」

 

A1000・D2000

 

薄く汚れた黄色の装甲をした、人型の機械。頭にはカメラのレンズの様な物が付いている。

守備力2000か。機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)は破壊したモンスターより低い攻撃力の機械族しか出せないから、メカ・ハンターを倒してもクロノで倒せるモンスターが出るかもと思っていたが、そう上手くは行かないか。

 

「クロノを守備にし、カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズアインハルトの効果で、このカードを融合デッキに戻し、融合デッキからイクスを特殊召喚する」

 

A2000・D2500

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札2 LP6950

機械王 モンスター1 伏せ1 手札4 LP3150

 

ライフ差は開く事が出来たし、フィールドでも優勢。しかし機械王のあの余裕な表情。何か嫌な予感がする・・・・。

 

「俺のターン、ドロー。アインアンコールを発動。墓地のメカ・ハンターを蘇生」

 

A1850・D800

 

またメカ・ハンター・・・・。やはり攻撃力が1850とレベル4の中では高いから、使う側としても扱いやすいのだろう。実際相手にする俺も少し辛い。

 

「バトル。メカ・ハンターでシャマルを攻撃」

 

A1850 VS D1800

 

50の差でやられると、惜しく感じるが、デュエルモンスターズは1でも攻撃力が上だったら戦闘で勝つ事ができる。メカ・ハンターの六つの手に付いた六つの武器により、シャマ姉は破壊されてしまった。

 

「そしてメカ・ハンターを生贄に、混沌球体(スフィア・オブ・カオス)を召喚。召喚時、混沌球体(スフィア・オブ・カオス)の効果にチェーンしてジェネクス・クラッシャーの効果発動。同じ属性のモンスターが自分フィールド上に召喚された時、相手フィールド上のカード一枚を選択して破壊できる。冥王イクスヴェリアを選択」

「チェーンしてプロテクション発動! イクスはこのターン破壊されない!」

 

シャマ姉には申し訳ないが、取っておいて正解だった。まさかあのモンスターがそんな効果を持っているとは。

 

「ッチ、まあいい。混沌球体(スフィア・オブ・カオス)が生贄召喚に成功した時、デッキからレベル3のモンスターを手札に加える。強化支援メカ・ヘビーウェポンを手札に。カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、イクスを融合デッキに戻し、融合デッキのヴィヴィオさんを特殊召喚する。ヴィヴィオさんの攻撃力は墓地のLSの数×400。そして聖王の鎧を手札に加える」

 

ヴィヴィオA?・D?→A1200・D1200

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札3 LP6950

機械王 モンスター2 伏せ2 手札3 LP3150

 

「ドロー! カリム姉を召喚し、効果発動。モンスターを選択。デッキトップはキャロ、よって手札に加える。魔法、罠ゾーンにキャロを置く。これによりLSの攻守は300上がる」

 

ヴィヴィオA1200・D1200→A1500・D1500

クロノA1700・D1500→A2000・D1800

カリムA500・D500→A800・D800

 

「ヴィヴィオさんの効果発動。墓地のシャマ姉を選択し、同じ効果を得る。キャロにLCを乗せる。更にミッドチルダでもう一つLCを移動」

 

LCミッドチルダ3→2 キャロ0→2

ヴィヴィオA1500・D1500→A2100・D2100

クロノA2000・D1800→A2600・D2400

カリムA800・D800→A1400・D1400

 

「バトル! クロノでジェネクス・クラッシャーを攻撃!」

『ブレイズキャノン!』

 

クロノの持つデバイスの先から、ブレイズの名の通り、熱量を伴う砲撃が放たれた。発射速度が速い割に威力もかなり高く、ジェネクス・クラッシャーを木っ端みじんにした。

 

機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)の効果発動。デッキから魔貸物車両ボコイチを特殊召喚」

 

A500・D500

 

「やっぱり機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)は面倒だな。ヴィヴィオさんでボコイチを攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

ディバインバスターを放ったヴィヴィオさんだったが、相手は攻守500のモンスター。威力より出を早くしたのか、いつもよりアッサリと相手モンスターを破壊した。

 

「一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、ヴィヴィオさんを融合デッキに戻し、アインハルトを特殊召喚する」

 

アインハルトA2700・D2200→A3600・D3100

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP6950

機械王 モンスター1 伏せ2 手札3 LP3150

 

「俺のターン、ドロー。ッフ、ダークシー・フロートを召喚」

 

A0・D300

 

出現したのは、赤と青の浮き輪の様な物を被った干からびた男。機械族に見えないが、ダークシー・フロートの本体は浮き輪の様な輪っかだろう。その輪っかには目と口が付いている。

 

「機械複製術を発動。攻撃力500以下の機械族を選択。選択したモンスターと同名モンスターを二体までデッキから特殊召喚する。二体のダークシー・フロートを特殊召喚」

 

けど攻撃力は0。攻撃力0だと機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)でデッキから特殊召喚出来ないし、三体並べても効果が発動される気配は無い。

 

「一体何を・・・・」

「こうするのさ。特殊召喚成功時、激流葬を発動」

「っな!? 態々並べたモンスター毎破壊するのか!? チェーンしてソニックムーブを発動。カリム姉を場外する」

 

アインハルトを除外してもいいが、相手の目的が分からない今、なるべく手札を補充できるカリム姉を大事にしたい。

フィールドの上空に、突如物凄い量の水が発生し、その水はフィールド上のモンスター全てに滝の様に降り注いだ。

 

「目的はこれだ。ダークシー・フロートの効果発動。フィールド上に存在するこのカードが、カード効果で破壊され墓地に送られた時、デッキから一枚ドローする。よって三枚ドロー」

 

一気に三枚のカードをドローされてしまったか。奴の方が消費カードが多いが、ドロー効果でこっちのアド損の方がでかい。さっきのターンセットしていた激流葬を使わなかったのは、三枚のドローがしたかったからか。

 

「手札抹殺を発動する。俺は四枚捨て、四枚ドロー」

「俺は二枚だ」

 

手札には聖王の鎧があったから、手札抹殺は非常に嬉しい。だがそんな事はあいつも知っている筈。フィールドがガラ空きの今、一気に攻撃してくるつもりか?

 

「死者蘇生を発動。墓地のリボルバードラゴンを特殊召喚する」

「リボルバードラゴン!?」

 

A2600・D2200

 

墓地から復活した機械仕掛けの竜。右手に一丁の巨大な銃、左手にも一丁の巨大な銃、そして頭に一番銃口が長い銃、計三つの銃を持ったドラゴン。そのロマン溢れる姿に、機械族闇属性と様々なサポートを受け、ギャンブル効果だが強力な効果を持っている為、かなり高価で滅多に見られる事が出来ないカード。

まさかこんな形でその姿を見られるとは思わなかった。偽物とは言え、機械族の王と言うだけある。

 

「バトル、リボルバードラゴンでダイレクトアタック。銃砲撃(ガン・キャノン・ショット)

 

A2600

 

リボルバードラゴンの三つの銃にそれぞれ一発の弾丸が装填され、三つのトリガーが自動で引かれた瞬間、俺に向け三つの銃弾が発射された。

銃弾が体に当たった瞬間、トラックにひかれたかと錯覚する程の衝撃に襲われ、一瞬の内に体が数メートル後ろに飛ばされていた。

 

遊斗LP6950→4350

 

「うっ、ゲホッゲホッ!」

「ほう、普通の人間なら気絶してもおかしくない衝撃の筈だが。カードを二枚伏せてターンエンドだ」

「エ、エンドフェイズ、カリム姉が戻ってくる」

 

カリムA500・D500→A1400・D1400

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札2 LP4350

機械王 モンスター1 伏せ3 手札1 LP3150

 

ハァ、ハァ。さっきのリボルバードラゴンの攻撃で上手く出来なかった呼吸もようやく収まってきた。やはりこのデュエルは命を掛けたデュエル。デュエルでのダメージが実際のダメージになって襲ってくる。

 

「ドロー! カリム姉の効果発動。魔法を選択、デッキトップはフェイト。失敗したのでこのカードを手札に戻す」

「この土壇場で外すとは運が無いな」

「残念、俺にはもう一回チャンスがある。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、カリム姉は特殊召喚できる」

「なるほどな」

「効果発動。モンスターを選択。デッキトップはティアナさん。よって手札に加え、ティアナさんを通常召喚」

 

LCミッドチルダ2→3

ティアナA1200・D1000→A2100・D1900

 

「ティアナさんの効果発動! LCを取り除き、墓地のフェイトを除外。その同名トークンを特殊召喚する。更にフェイトがフィールド上に存在する時、フィールドのLCを取り除いてアルフを特殊召喚する」

 

LCミッドチルダ3→1

 

「あの状態から一気に三体もモンスターを増やすか」

「場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

フェイトA2800・D500→A3700・D1400

 

「ミッドチルダのLCをキャロに移動」

 

LCミッドチルダ1→0 キャロ2→3

フェイトA3700・D1400→A4000・D1700

ティアナA2100・D1900→A2400・D2200

カリムA1400・D1400→A1700・D1700

 

LCがキャロに移動した瞬間、キャロは周りの魔力素をより一層自分に取り込み、ブーストとしてみんなに魔力供給する。

 

「バトル! フェイトさんでリボルバードラゴンを攻撃! フェイトさんの効果で攻撃力が700上がる!」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA4000→A4700

 

デバイスフォームのバルディッシュの杖先から放たれた巨大な魔力砲撃。まるで龍が飛んでいるかと思わんばかりの勢いの砲撃に、リボルバードラゴンは三つの銃を使い反撃する。

だがたった三発の弾丸ではその砲撃を止める事は出来ない。リボルバードラゴンの体が呑みこまれる――事は無かった。

リボルバードラゴンは突如狂ったように三つの銃を連射し、徐々に黄色の砲撃を押して行き、遂にはトライデントスマッシャーを打ち消した。

 

「ッツ! まさかそのセットカードは!?」

「そうだ、リミッター解除。機械族の攻撃力を二倍にする」

 

リボルバードラゴンA2600→A5200 VS A4700

 

『ッグ、ごめん遊斗!』

 

フェイトさんが謝った刹那、リボルバードラゴンの攻撃によりフェイトさんは破壊され、その衝撃が俺を襲った。

 

「痛ッ! 500でこの威力か」

 

遊斗LP4350→3850

 

フェイトさんがやられるとは計算外だ。いくらリミッター解除でリボルバードラゴンが破壊されるとは言え、高火力モンスターを破壊されたのは痛い。・・・・いや、これはむしろラッキーかも。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、リミッター解除の効果を受けたリボルバードラゴンは破壊される」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ3 手札1 LP3850

機械王 モンスター0 伏せ2 手札1 LP3150

 

さあ、このターンが正念場になる。ここで上手くいけるか?

 

「ドロー。貪欲な壺を発動。墓地のメカ・ハンター、ジェネクス・クラッシャー、混沌球体(スフィア・オブ・カオス)、二体のダークシー・フロートをデッキに戻し二枚ドロー」

 

ドローした二枚のカードを見て機械王は口元をニヤリと上げた。何かいいカードでも引いたのか?

 

「オーバーロード・フュージョンを発動。フィールド・墓地から融合素材をゲームから除外し、機械族・闇属性の融合モンスター一体を特殊召喚する。墓地のリボルバードラゴンとブローバック・ドラゴンを融合、現れろ、ガトリング・ドラゴン」

 

A2600・D1200

 

渦から現れたモンスターは、融合素材であるリボルバードラゴンともフローバック・ドラゴンとも似ていない。体は二つの棘のついた車輪によって支えられ、背中には機械には似合わない尻尾。そして顔らしき部分が無く、上半身には先端にガトリングガンを搭載した三つの触手の様な物が付いている。

 

「ガトリング・ドラゴンの効果は――」

「説明しなくてもいい。コイントスを三回行い、表が出た数だけフィールド上のモンスターを破壊する」

「そうだ。効果を発動、と言いたいが、墓地にはソニックムーブがある。仮に表を二つ出したら自壊してしまう。アイアンコールを発動、墓地のダークシー・フロートを特殊召喚」

 

A0・D300

 

「アイアンコールでそいつを呼ぶか・・・・」

「これで終わりじゃない。機械複製術を発動。再びデッキから二枚のダークシー・フロートを特殊召喚」

 

また三体のダークシー・フロートが並んでしまった。奴からすれば、表が一回も出ない以外は全ていい結果に終わる。一回でも一枚破壊できるし、二回の場合は一枚のドローが追加される。三回だと二枚ドロー。

 

「ガトリング・ドラゴンの効果発動。三回コイントスを行う」

 

フィールドのど真ん中に現れた三つの巨大なコイン。機械王は今表になっている部分を表として選択。すると三つのコインは回転しながら上空に跳び、音も立てずに地面に着地した。コインの模様は先程と一つも変わっていない。

 

「これはラッキーだ。表の数は三。よってフィールド上のカードを三枚破壊する」

「コイントスを行った時点で、墓地のソニックムーブの効果! ティアナさんをゲームから除外する」

 

ガトリング・ドラゴンは対象を取る効果じゃない。だからこのタイミングでティアナさんを除外しないと破壊されてしまう。

 

「ガトリング・ドラゴンの効果で、カリム、機械複製術で召喚した二体のダークシー・フロートを破壊する」

 

三丁のガトリングガンが、それぞれカリム姉と二体のダークシー・フロートに照準を合わせ、銃弾の雨を降らせた。

 

「ック、ごめんカリム姉」

「ダークシー・フロートの効果でデッキから二枚ドロー」

 

さっきから奴の手札が無くならない。しかもこのドローに加え、エンドフェイズにアイアンコールの効果でダークシー・フロートが破壊され、またもう一枚ドローされる。

 

「これで終わりだ。永続罠、リビングデットの呼び声を発動。墓地のパーフェクト機械王を特殊召喚する」

 

A2700・D1500

 

フィールド魔法を発動していなかったら天井を貫いてしまう程の巨大な体。足には白、腕には赤の巨大な装甲。顔はロボットアニメに出て来るものとは少し違い、機械なのに悪魔の様な顔をしている。

 

「パーフェクト機械王!? そんなカードいつ墓地に・・・・」

 

手札抹殺の時なら、その後発動した死者蘇生でリボルバードラゴンでは無く、攻撃力の高いパーフェクト機械王を選択している筈。

いや、相手の立場になって考えろ。今まで機械王が出してきたモンスターは全て闇属性。つまり闇属性のリボルバードラゴンを出した方が、フィールドにある機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)と相性がいい。

 

「思考時間は終わったか? パーフェクト機械王の効果。このカードを除く、フィールド上の機械族モンスター一体につき、攻撃力を500上げる」

 

パーフェクト機械王A2700→A3700

 

「死ぬがいい。ガトリング・ドラゴンでダイレクトアタック」

 

三丁のガトリングガン全てが俺に照準を合わせ、強風にした扇風機の如く回転し始めた。毎秒どれくらいの弾丸が発射されているかは分からないが、くらったらひとたまりもないだろう。

 

「手札のザフィーラの効果発動! 戦闘ダメージを0にする!」

「お前は馬鹿か? いくらガトリング・ドラゴンの攻撃が怖いからと言え、俺の場には攻撃力3700のパーフェクト機械王がいる。パーフェクト機械王の攻撃」

 

A3700

 

パーフェクト機械王のボックスがウィィンと機械音を立て開くと、中に詰め込まれたミサイルが不本意ながら目に入った。パーフェクト機械王の瞳が一層赤く光った瞬間、両肩のミサイルが一斉に発射された。白い煙を上げながら飛んでくるミサイルの群は、俺の周囲数メートル圏内に落ちて爆発した。

 

「がっ! うあああああああっ!」

 

爆発の衝撃で体が引き裂かれる――程の痛みが体全身を襲った。本気で死ぬかと思った三幻魔の攻撃に比べると優しい方かもしれないが、死ねると思えるほどの痛みである事には変わりない。

 

遊斗LP3850→150

 

「ゴホッ、ハァ、ハァ・・・・」

「無駄に生命力の高い、いや、精神が強い男だ。カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、アイアンコールで特殊召喚されたダークシー・フロートは破壊される。そしてカード効果で破壊された事により、デッキから一枚ドローする」

 

パーフェクト機械王A3700→3200

 

「エ、エンドフェイズ、ティアナさんが戻る」

 

ティアナA1200・D1000→A2400・D2200

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ3 手札0 LP150

機械王 モンスター2 伏せ4 手札1 LP3150

 

・・・・やっぱりデュエルって面白い。この150って書いてある数値が0になった瞬間死ぬって言うのに、恐怖心なんて一切ない。

 

「貴様。話には聞いていたがこの状況を本当に楽しんでいるのか?」

「お前は今の自分の布陣を完璧だと思っているか?」

 

俺の質問に機械王は少しの間無言になるが、すぐに口元をニヤリと上げて口を開く。

 

「当たり前だろう? 実際エース級のモンスターが二体並び、ライフも3000勝っており、リバースカードも二枚ある。完璧な布陣じゃないか」

 

ああ、そうだよ。そんな風に勝ちを確信している奴に勝つのが大好きなんだよ。ピンチな状況がこれ以上に無いくらい面白い。

 

「じゃあその完璧な布陣。俺がぶっ壊してやるよ! 俺のターン、ドロー! まずはティアナさんの効果発動。キャロのLCを取り除き、墓地のフェイトさんをゲームから除外し、同名トークンを特殊召喚する。そして黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に、迅雷の化身フェイトを特殊召喚する!」

 

LCキャロ3→2

 

ティアナA2400・D2200→A2100・D1900

 

ディスクにカードをセットした瞬間、このミッドチルダの街中をジグザグに動く雷が発生した。まるで目の前のパーフェクト機械王とガトリング・ドラゴンを嘲笑う様に、二体の周囲を周った雷は、俺のフィールド上でピタリと動きを止め、その正体を現した。

 

フェイトA3300・D0→A4200・D900

 

「そいつが切り札の中の一枚。だが無意味だ、罠発動、奈落の落とし穴。これでそのモンスターは破壊してゲームから除外する」

 

また嫌らしい罠カードを。雷フェイトさんは態とらしく両肩を上げ、困った表情を作る。

 

『こんな無粋な罠に引っ掛かると、彼女を失望させちゃうな。遊斗』

「了解。永続罠、存在しない者を発動! ライフが1000以下の時発動可能。フィールドのレベル8以上のLSを選択。当然雷フェイトさんを選択する!」

「馬鹿め、それくらいお見通しだ。罠発動、砂塵の大竜巻。これで存在しない者を破壊する」

「馬鹿はそっちだ。リバースカードオープン、オプティックハイド! フィールドにLSが存在する時、フィールド上のカードを破壊する効果が発動した時、発動可能! そのカードの効果は、自分フィールド上にオプティックトークンを特殊召喚する効果になる! よかったな、オプティックトークンは機械族だぞ」

 

ソリッドビジョンに映っている砂塵の大竜巻のカードの絵柄が、例の如く訓練用の大型スフィアの絵になる。そして現れたオプティックトークンを見て、機械王は「ぐぬぬ」と小さく呻いている。

 

A2000・D2000

パーフェクト機械王A3200→A3700

 

「さあ! これがお前達が求める三幻魔の内の一体! 降臨せよ! 降雷皇フェイト!」

 

先程の破天荒な雷とは違い、今度は堂々と一つの雷が降りてきた。その雷は人の目でも確認できる程強大で、一瞬で消えたりはせず、滝の様に上空から降り注いでいる。

そして数秒間続いた雷の滝がようやく収まり、中から三幻魔の一角であるハモンをバルディッシュに取り込み、ハモンで作られた鎧を着た降雷皇フェイトがいた。

 

フェイトA4000・D4000→A4900・D4900

 

「こ、これが三幻魔の力・・・・。ふっ、フハハハハ! これ程の力を持ちながらLSはまだ戦力を持っていると言うのか? 貴様――いや、遊斗・スカリエッティ。お前に問う」

 

その声は今まで不気味に笑い、俺を見下していた奴の声とは別人の声に聞こえた。機械で作られた瞳からも確認できる強い意志。それはまるで俺を一人の敵として見ている様だ。

 

「お前は何故そのカード達を使って世界を征服しようとしない? お前ならきっと、いや、絶対に可能だ」

「俺がみんなの力を自分の欲望の為に使わない理由? 色々あるが一番の理由は、そんな世界になったら楽しくデュエルできないじゃないか」

「とことんデュエル馬鹿な奴だ。面白い。だがやはり殺す」

「それはこっちの台詞だ! バトル! 降雷皇フェイトでガトリング・ドラゴンを攻撃!」

『サンダー・・・・』

 

A4900 VS A2600

 

ガトリング・ドラゴンの上空に現れたミッドチルダ式の魔法陣。それは大規模な魔法を起こす為の布石であり、その大きさは普通の魔法陣の何十倍もある。巨大な魔法陣は、間隔が等しくなるように八つのスフィアを作り、そのスフィアは大気中の電気エネルギーを吸い上げる。

 

『レイジ!』

 

降雷皇フェイトの声と共に、巨大な落雷がガトリング・ドラゴンに降り注いだ。所詮作られた機械であるガトリング・ドラゴンが、人知を越えた力を防ぐ事など出来はしない。

 

「ぐあああああ!」

 

機械王LP3150→850

 

「だがしかし、機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)の効果が発動する! デッキから二枚目のブローバック・ドラゴンを特殊召喚」

 

A2300・D1200

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ2 手札0 LP150

機械王 モンスター3 伏せ3 手札0 LP850

 

デュエルモンスターズの中で一番弱いバーンカード、火の粉を受けてもゲームオーバーなライン。

 

「俺のターン、ドロー! ブローバック・ドラゴンの効果発動。コイントスを三回行い、その内二回以上が表だった場合、相手フィールド上のカードを破壊する。コイントスの結果、破壊効果を発動できる。俺が選択するのはLSを支援しているキャロだ!」

 

ッチ、やっぱり目の前の降雷皇フェイトに釣られなかったか。ブローバック・ドラゴンの頭の銃から一発の弾丸が発射され、支援に集中しているキャロは回避する事が出来ず破壊されてしまう。

 

フェイトA4900・D4900→A4000・D4000

ティアナA2100・D1900→A1200・D1000

 

「三幻魔と言っても攻撃力が無限な訳ではない! 強化支援メカ・ヘビーウェポンを召喚し、効果でパーフェクト機械王に装備させる」

 

メカ・ヘビーウェポンにパーフェクト機械王。様々な機械族デッキで使用されるメカ・ヘビーウェポンだが、パーフェクト機械王のカラーリングやデザインを揃えている為、この組み合わせが本来の合体なのだろう。

メカ・ヘビーウェポンは体を分解し、パーフェクト機械王の手足と胸の部分のパーツを強化し、より一層パワーアップさせる。

 

パーフェクト機械王A3700→A4200

 

「これで降雷皇フェイトの攻撃力を越えた! バトル、パーフェクト機械王で降雷皇フェイトに攻撃! ゲームオーバーだ!」

 

A4200 VS A4000

 

パーフェクト機械王から放たれた無数のミサイルは、ヘビー・ウェポンの力と自らの力により、威力とスピードが一段と上がっていた。降雷皇フェイトは今の自分では勝てないと判断したのか、抵抗する事無く爆発の海に呑み込まれた。

 

「・・・・何故ライフが減らない?」

「降雷皇フェイトが戦闘する時、俺が受けるダメージは0になる。更にこのカードが破壊された時、俺はデッキから一枚ドローし、このターン俺が受けるダメージが0になる」

「流石三幻魔。攻撃力だけじゃないって事か。だが戦闘破壊は出来る! フローバック・ドラゴンでティアナを攻撃」

 

A2300 VS D1000

 

さっきと同じように頭の銃から弾丸を発射し、ティアナさんを破壊した。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札1 LP150

機械王 モンスター3 伏せ4 手札0 LP850

 

「ドロー! 降雷皇フェイトが破壊された次のスタンバイフェイズ、手札のLS一体を墓地に送り、復活させる事ができる!」

「馬鹿な!? 再生能力も持っているだと!?」

 

デュエルディスクの墓地ゾーンから、黄色い稲光が発生した。機械で作られているにも関わらず、機械王はその光に目を手で遮っている。

そして奴が再びフィールドに目をやった時には、既に降雷皇フェイトが俺のフィールドに立っていた。

 

「この効果で特殊召喚した降雷皇フェイトは相手に戦闘ダメージを与える事ができない。だが火力は十分だ! バトル、降雷皇フェイトでオプティックトークンを攻撃!」

『サンダーレイジ!』

 

A4000 VS D2000

 

オプティックトークンの上空に現れた大規模な魔法陣。その中央に溜められた電気エネルギーが、降雷となりオプティックトークンを襲う。

 

「ぐっ、ああああ! ダ、ダメージを受けていないのにこの衝撃」

 

パーフェクト機械王A4200→A3700

 

「まだだ! 速攻魔法フェイクシルエットを発動! デッキのはやてを墓地に送り、降雷皇フェイトを八神はやてとして扱う」

「そんな事をして一体何に・・・・まさか!?」

「そうだ。存在しない者の生贄条件はレベル8以上。八神はやてとして扱っている降雷皇フェイトはこの条件に当てはまる! 八神はやてを生贄に捧げ、降臨せよ! 二枚目の三幻魔、幻魔皇八神はやて!」

 

平和なミッドチルダに、突如怪奇現象が起こる。ビルの影、車の影、木の影、信号の影、俺の影、機械王の影。ありとあらゆる影が一ヶ所に集まり、それはスライムの様にグニョグニョと不気味に動く。そしてそれは徐々に立体的になり、やがて小柄だがスタイルのいい女性の形になり、最終的に一人の美しい女性が現れた。

 

A4000・D4000

 

『ふぁ~あ。気持ちよく寝とったのに・・・・』

「寝過ぎだ。幻魔皇はやての効果発動! このカードが特殊召喚に成功した時、墓地のLSを2体選択し、魔法・罠ゾーンに置く。俺は墓地の蒼穹の王・高町なのはと降雷皇フェイトを置く」

『この力使うのもただじゃないんやで?』

 

幻魔皇はやてはもう一回眠そうに欠伸を掻くと、自分の影を魔法・罠ゾーンまで伸ばし、その影からラビエルを素材にした禍々しい青の棺桶を二つ出した。

 

「バトル続行! 幻魔皇はやてでブローバック・ドラゴンを攻撃!」

『彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍ミストルティン!』

 

A4000 VS A2300

 

ベルカ式の魔法陣を中心に三本と、その中心から一本、計四本の光の槍が現れた。発射された四本の槍はブローバック・ドラゴンを突き刺し、刺し傷を中心にブローバック・ドラゴンの体が徐々に石化して行き、数秒後には石象となり動かなくなった。

 

「罠発動、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にして一枚ドロー。更に機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)の効果! メカ・ハンターを特殊召喚する」

 

A1850・D800

 

「これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ3 手札0 LP150

機械王 モンスター2 伏せ2 手札1 LP850

 

「俺のターン、ドロー! 最後の最後で爪が甘かったな! あの時降雷皇フェイトをフィールドに残し続けていれば勝てていたものの! アイアンコールを発動、墓地のメカ・ハンターを特殊召喚する。これでパーフェクト機械王の攻撃力は500上がる」

 

パーフェクト機械王A3700→A4200

 

「この瞬間幻魔皇はやての効果発動。相手が特殊召喚に成功した時、自身の効果で魔法・罠ゾーンにいるモンスターゾーンに置く事ができる。来い、蒼穹の王・高町なのは!」

『最近私を使う出番が減ったではないか?』

 

A2500・D2500

 

こんな状況だと言うのになのは様は大変不機嫌なご様子。さっきの言葉からするに、もう少し出番を寄越せと言いたいのだろう。だったらさっき落下していた時に助けてくれたら――

 

『貴様。今私に文句を言ったか?』

「め、めっそうもございません!」

「何をゴチャゴチャ言っている! バトル、パーフェクト機械王で幻魔皇はやてを攻撃! これで本当の勝利だ!」

 

本日三度目のパーフェクト機械王の両肩から発射されたミサイル。それは降雷皇フェイトを破壊した時と同じような程のパワーとスピードを持っており、ミサイルの群が幻魔皇はやてへと向かう。そして無数のミサイルが爆発した。

 

「フハハハハ! これで勝ちだ! これで勝ち・・・・だ・・・・」

 

機械王の笑い声は、ある一つの光景を目にした瞬間ピタリと止まった。パーフェクト機械王から放たれた一つのミサイルが、幻魔皇はやての体を、まるで空振りをしたかのように貫通したのだ。

そのミサイルだけじゃない。実際ミサイルが爆発しても、幻魔皇はやてはビクともしない。

 

「どういう・・・・ことだ?」

「墓地のフェイクシルエットの効果。墓地のこのカードとティアナさんをゲームから除外する事で、攻撃を一度だけ無効にする事が出来る」

「そんな馬鹿な・・・・」

「何もないなら勝手にフェイズを進めるぞ」

「ま、待て、カードを一枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズ、メカ・ハンターは破壊される」

 

パーフェクト機械王A4200→A3700

 

「エンドフェイズ、存在しない者の効果発動。蒼穹の王・高町なのは――様を生贄に、神炎皇なのはを特殊召喚する」

 

突如フィールドに、巨大なビルをも呑みこむ火柱が現れた。その火は強大だが、とても優しくて暖かい。火柱から現れたのは、いつもの青の部分を赤くしたバリアジャケットを着た、ふんわりと笑みを浮かべる新炎皇なのは。

左手にはカノンモードのレイジングハートに似た、ウリアの頭の部分を杖にしたデバイス。

 

新炎皇なのはA0・D0

SLCなのは1

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ3 手札0 LP150

機械王 モンスター2 伏せ4 手札0 LP850

 

「これでラストターンだ、ドロー! この瞬間神炎皇なのはにSLCが一つ乗る」

 

SLC1→2

 

「新炎皇なのはでパーフェクト機械王に攻撃!」

「攻撃力0で何を考えているか知らんが、終わるのは貴様だ! 罠発動、聖なるバリア―ミラーフォース! これでその二体の幻魔を破壊だ!」

「なっ!? ミラーフォースだと!?」

 

新炎皇なのはのデバイスから放たれた炎の渦は、さっきの氷丸と雷丸と同じように、虹色の透明の光によって反射され、虹色の光を纏った炎により、二体の幻魔は破壊された。

 

「ハッハッハ! いくら幻魔でも結局はカード! 聖なるバリア―ミラーフォースの前では無力! さあ、降雷皇フェイトの効果でお情けの一枚をドローするがいい!」

「まっ、まさか一日で二回ミラーフォースをくらうとは思わなかった。しかも・・・・どっちも負ける直前の最後の悪足掻きとは」

「貴様、何を言って「永続罠存在しない者の効果発動」なんだと!?」

「三幻魔を呼ぶ効果を三回使ったこのカードを墓地に送る事で、墓地に存在するレベル11のLSを特殊召喚できる。さあ、再び降臨せよ、神炎皇なのは!」

『にゃはは、ミラーフォースとはちょっと予想外』

 

A0・D0

SLCなのは1

 

「そ、そんな・・・・」

「バトル続行。新炎皇なのはでパーフェクト機械王を攻撃! ダメージステップ、SLCを取り除く事で効果発動! 墓地のLSをデッキに戻し、そのレベル×500攻撃力を上げる。デッキに戻すカードは幻魔皇八神はやて、攻撃力は5500上がる」

 

なのはA0→A5500 VS A3700

 

「ば、馬鹿な・・・・」

『行くよ、これが私の全力全開!』

 

上空に飛びパーフェクト機械王に向けデバイスを向ける新炎皇なのはは、幻魔皇八神はやてと自らの魔力を使い、爆発的な威力を持った魔力の塊を杖先に作る。既に機械王は戦意を喪失しているのか、呆然としていた。

本当ならもっと話を聞きたかったが、敗者が死ぬのが闇のデュエル。これでサヨナラだ。

 

『スターライト・ブレイカー!』

 

命を繋ぐ優しい炎。だがそれは使い方次第では凶悪な武器へと変わる。

新炎皇なのはが放った炎の魔力砲撃は、数十メートルはある巨大ロボットを一呑みし、業火によってパーフェクト機械王の体内の機械は破壊され、やがて外装もドロドロと溶けた。

そして機械王を守る最強の壁が無くなり、炎の砲撃は機械王目掛けて突き進んで行く。

 

「うわあああああああ!」

 

機械王LP550→-1950

 

奴のライフが0になると同時に、突如奴の地面から無数の黒く禍々しい手が現れ、機械王の足をガシッと掴む。

 

「嫌だ! 死にたくない!」

「・・・・結局はお前も覚悟の無い奴って事か。ちょっとがっかりだ」

 

ズルズルと闇へと引きずり込まれる機械王を見下ろし、俺はそれだけ言うとクルッと奴に背を向けた。

奴の悲鳴が消えると同時に、ソリッドビジョンが消えて元の薄暗い廊下に戻ると、廊下は闇のデュエルの影響で罅が入っていたり、タイルが削れていたりと悲惨な状況になっている。

 

「ハァ・・・・もう少し場所を選ばないとな。っと?」

 

さっきまでハイテンションだったので気付かなかったが、やはり例によって例の如く体へのダメージが残っているようだ。ふらつく体を、さっきと同じように実体化してくれたフェイトが支えてくれた。

 

「大丈夫・・じゃないよね。かなりダメージ受けたんだから」

「けど慣れたのか、少し休めば歩けるようになると思う」

「あんまりそう言う事に慣れて欲しくないんだけど。けど、よく頑張ったね」

 

それからフェイトに支えられその場を離れ、人目の付かない所で休むことにした。

 




88888888!
皆さんも盛大な拍手をお願いします!

皆さんが散々
準制限カード(笑)
ミラフォは使われる事はないw
セイバリガハツドウシタゾ!
あまつさえ、本来なら悪い点に書かれるはずなのになぜか良い点に、ミラフォの扱いがいい、と書かれている始末。

だがそんなミラフォ先生も今回は優斗の切り札である三幻魔を破壊しました!

ミラフォ)俺は仕事をした

皆さんもこれに懲りたら、二枚のミラーフォースと、bloo-D、青眼の究極竜を使ってデュエルしましょう






ストーリーに関して少し。


原作では結局破滅の光のフラグ回収は無かったので、ここは出来る限り上手く使わないともったいないので。

遊戯王GXのストーリーをザックリと分けると、この辺りが丁度真ん中だと思うので、急展開ですが進めました。

機械王がリアリストのやり方で優斗を殺そうとしましたが、結局はデュエルで決着です。この世界では全部デュエルで決着がつきます。




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第三十三話 (修正)

覇王のテーマを永遠にループして聞いていると、執筆速度が上がる上がる。
二十代とのデュエルが楽しみです。



追記
ストーリーを修正しました。詳しい変更点は第三十七話の前書きに書いています。申し訳ありませんでした。


機械王とのデュエルで受けたダメージが回復したのは、デュエルが終わってから一時間経った頃だった。その間みんなが人質にされていた翔と双六さんを探索していたが、双六さんだけ見つかったが、翔の姿は何処にも無かった。

その一方、十代とはPDAで連絡を取る事が出来た。どうやら十代が双六さんの店から出た後に双六さんは誘拐されたらしく、俺達がいた喫茶店の騒ぎを見て、俺と翔を探す為にあっちこっち走り回っていてくれたらしい。

十代と再開してしばらくの間、翔の行方を捜したが結局見当たらなかった。

「まさか翔までいなくなっちまうなんて」

「悪い十代。俺がいながら」

「いや、遊斗の所為じゃない。全部その斎王の妹の、美寿知って奴の所為だ」

 

十代には氷丸と雷丸、そして美寿知の事は話したが、機械王の事は話さなかった。十代はただでさえ斎王やホワイト寮だったりで心配事が多いのに、これ以上心配事を増やしたら、いくら十代でもプレッシャーを感じるだろう。それに20の王が狙っているのはLS。これは俺の問題でもある。

 

「けどこれからどうする?」

「まずレッド寮のキャンプ場に行こう。向こうから動いてくる可能性がある」

 

情報が何もない今、ジッとしておくのが一番だろう。

幸いここからキャンプ場までそれほど遠くない。最もキャンプ場と言っても川辺の広場で、自分たちでテントを立てないといけない。因みにイエロー寮は普通の旅館、ブルー女子とホワイト寮は高級ホテルと、相変わらず寮による差がある。

 

「おっ、もうテントが出来てるじゃんか。おーい! みんなー!」

 

十代は川辺にいるレッドのみんなに聞こえるように大きな声を出し、手を振りながらみんなの方に走っていき、俺もそれに続く。

 

「あっ、十代に遊斗! お前達も手伝えよな」

「いや~、わりぃわりぃ。ちょっとトラブルがあってな。お前達も見ただろ? 海馬コーポレーション爆発事件」

「実は俺と翔がその事件に巻き込まれてな。翔は無事だろうが、行方不明だ」

「ま、マジかよ・・・・」

 

それから数時間。さっきまでのオレンジ色の太陽は山に隠れ、今は満月が見えていた。翔が行方不明と言う事を知ったレッドのみんなのテンションは低く、とても修学旅行とは思えない。

 

「おーい、みんなー!」

 

そんな時、聞き覚えのある声が上から聞こえた。声の主は今日お世話になった双六さん。手にはビニール袋を持っており、階段を使い川辺まで下りてきた。

 

「双六さん! どうしてここに?」

「差し入れじゃよ。遊斗君と翔君には世話になったようじゃからの。ほら、みんなの分もあるぞ」

 

双六さんの持ったビニール袋の中には、大量のハンバーガーがあった。そう言えばまだみんな、まだ晩御飯を食べていない。一日に二回も命賭けのデュエルをした所為か、俺の腹もかなり減っていたので、双六さんの差し入れを遠慮なく頂いた。

 

 

 

 

「そうか・・・・翔君が」

「そうなんです。まず間違いなく無事だとは思うんですが」

「やはりその美寿知と言う奴が怪しいな」

「あれ? 三沢いつからいたんだ?」

「さっきからいた!」

 

ハンバーガーを食べ終わった時には、双六さんと三沢に事の全てを伝え終えた事だった。因みに三沢は「せっかくの修学旅行、大切な友と一緒にいたいからな」と言う事でイエロー寮から出てきたらしい。

 

「翔君ならきっと大丈夫じゃ。話を聞く限り立派なデュエリストなんじゃ」

「そうですね」

 

やっぱり双六さんは長く生きているだけあり、冷静に俺達を励ましてくれた。

すると突然、後ろからグ~、と腹が鳴った音がする。さっきハンバーガーを食べたばかりなのに、お前の胃袋はどれだけでかいんだよ、と後ろにいるであろう十代の方を振り向くと、そこには十代はおらず、太った男と痩せた男がいた。

 

「誰だ!?」

「べ、別に怪しい者じゃない。ただ」

 

男の一人が慌てて弁解していると、再びグ~と腹が鳴った。先程の音源もこの二人の腹だろう。

 

「なあお前等。よかったら一緒に食わねえか? このハンバーガー美味いぜ」

「い、いいのか?」

「ああ。メシは大人数で食った方が美味しいからな」

「ハァ・・・・まったく十代は」

「まあいいじゃないか。あれも十代の魅力だ」

 

 

 

 

それから二人の話を聞いて行く内に、この二人は落ちこぼれのデュエリストだった事が分かった。中々デュエルに勝つ事が出来ず、デュエルアカデミアでは落ちこぼれ扱いされていたレッド寮の生徒さえ、羨ましい、と言っていた。けどこの場にいる全員、努力してデュエルの腕を磨いた人間。十代だって天性の才能を持っているが、それでも受験に向けて必死にデュエルの訓練をしてきたんだ。

 

「ところでお前達は何でこんな所にいたんだ?」

「ん? ああ、遊城十代ってデュエリストを探してたんだが」

「え? その遊城十代って俺の事だぜ」

 

じゅ、十代・・・・。もう少し自分の名前を隠そうとは思わないのかよ。どう考えてもさっきの一文から、この二人はお前を狙っているじゃないか。

 

「マジかよ!?」

「ああ、マジだ」

 

そして危機感の全くない十代。二人は少し心苦しそうな顔をするが、お互い顔を見合わせ頷き合うと、勢いよく立ちあがった。

 

「遊城十代! 俺とデュエルしろ!」

「いいぜ。よく分かんねえが、売られたデュエルは買うのがデュエリストだ」

「オイ待て十代。この二人、絶対お前を狙ってる。100%怪しい」

「なんだよ。まさか落ちこぼれの俺達に負けるのが怖いのか? オベリスクのお坊ちゃん」

 

カッチーン。その挑発は俺への宣戦布告と取っていいだろう。ニヤッと笑みを浮かべる二人に、立ちあがって返事をする。

 

「おい遊斗。お前まで」

「ホッホッホ、いいじゃないか」

「面白ぇ。デュエルアカデミア最強タッグを今ここで見せてやる。お前達、名前は?」

「俺は岩丸、こっちが炎丸だ」

 

俺達がデュエルディスクを構えた時だった。前に架かっている綱橋のアーチの上に何かが見えた。ハッキリとは見えないが、満月の光により赤の翼が肉眼で確認できた。デッキケースがカタカタと動いたのでまさかと思い、俺は構えたデュエルディスクを下ろして勢いよく地面を蹴る。

 

「ごめんみんな! ちょっと急用が出来た!」

「遊斗?」

「おいお前! 逃げるのかよ!」

「そう取ってもらって構わない」

 

背中に二人の非難の声が刺さるが、今は何と言われようが目の前の奴を無視する事は出来ない。辺りに誰もいない事を確認すると、デッキからフェイトさんが実体化し、俺の体を抱えてアーチの上まで飛んでいく。

鋼で作られたアーチに足を付け、アーチの上に立っている精霊を睨みつける。

フェニックスを連想させる赤い翼。それが装備なのか、それとも生まれつきなのか、白い体から灰色の棘の様なものが体から出ている。

 

「君の様な子供に、エンディミオンに続き機械王も破れるなんてね」

 

デュエルモンスターズの中でも高火力モンスターの多い天使族。その中でも一際強力な効果を持った最上級天使が目の前にいる。自らは特殊召喚できながらも、他のモンスターの特殊召喚を封じる、圧倒的な効果を持った天使。

 

「お前が天使族の王か? 大天使クリスティア」

「そうさ。と言う事はもう目的は分かってるよね?」

「分かっている。だが一つ質問がある。機械王がペラペラと話していた時、精霊界で戦争を起こすと、お前達破滅の光は二つのメリットがあると言っていた。一つは精霊界を弱体化させる事。もう一つは何だ?」

「あ~、あの馬鹿はペラペラ話したのか。まっ、いいけどね。デュエルを受けてくれる代わりに答えよう。もう一つのメリットは、君達LSを見つけやすくする事。と言ってももはや必要ないけどね」

 

LSを見つけやすくする事?

今一クリスティアの言っている意味が分からなかったので首を傾げると、クリスティアは丁寧に説明してくれた。

 

「この戦争の原因はLSと民衆に伝える事で、民は戦争を終わらせる為にLSを見つけようとするだろう? しかも見つけたら懸賞金も貰えると知ったら尚更だ」

「そう言う事か。やっぱり戦争の原因がみんなじゃないんだな」

「ああ、LSに罪は無いよ。さあ、おしゃべりは終り。デュエルと行こう」

 

クリスティアは自分の左腕から灰色の円盤を作り出す。その天使とは思えないグロテスクな光景に、無意識の内に頬がピクピクと動いた。

 

「最後にもう一つ。お前は王達の中で何番目に強い?」

「ん~、二番か三番かな。あの王達以外はあんま強くないし」

「ッフ、それを聞いて安心した。さあ行くぞ」

「「デュエル!」」

「先攻は貰う。ドロー! 永続魔法時空管理局を発動。なのはを通常召喚。効果でLCを置く」

 

A500・D1800

LCなのは1

 

「カートリッジロードを時空管理局に発動し、時空管理局のLCを取り除き、ユーノを特殊召喚」

「いきなりか」

「場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

『天使族デッキか。気を抜けないね』

 

A1000・D3000

LC時空管理局1→2

 

そう。なのはさんの言う通り、天使族は少ないカードでポンと最上級モンスターが出る。ライフ4000でもあっという間に削られ、下手をすればワンショットキルをされる恐れもある。

 

「なのはさんの効果でデッキからレヴィを手札に加える。カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、デッキからカートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札3 LP4000

 

「じゃあ行くよ、ドロー! ヘカテリスを墓地に送り、デッキから神の居城―ヴァルハラを手札に加える」

 

来たか。高レベル天使族を最大限に生かす優秀な永続魔法。あれは自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札から天使族一体を特殊召喚できる効果を持つ。最上級天使族がポンポン出て来るのはだいたいコイツの所為だ。

アンデット族にも同じ効果を持つ永続魔法があるが、アンデットは上級に強いモンスターがいないから採用率は低い。

 

「ヴァルハラの効果で手札の堕天使アスモディウスを特殊召喚!」

 

A3000・D2500

 

巨大な黒の翼。黒と灰色の鎧。腰には銀のチェーンが巻かれている。その堕天使が放つプレッシャーは攻撃力3000と言うだけはある。

堕天使アスモディウスは二つの効果を持つが、その中の一つが特に強い。

 

「堕天使アスモディウスの効果。一ターンに一度、デッキの天使族を墓地に送る事ができる。堕天使スペルビアを墓地に送る」

 

強力な効果はこれだ。天使族専用とは言え、便利な墓地肥やしカードである愚かな埋葬を内蔵しているのだ。これだけでもかなり強力だが、もう一つ厄介な効果を持つ。

 

「さてと、それじゃあバトル! アスモディウスでAOAなのはに攻撃!」

「攻撃宣言時フォーメーションチェンジを発動する。なのはさんを守備にしてデッキから一枚ドロー」

 

A3000 VS D3000

 

「う~ん、3000の壁は大きいな。カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ永続罠、ウイングロードを発動する」

 

遊斗  モンスター1 伏せ2 手札4 LP4000

大天使 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

いきなり攻撃力3000を出されるとなるとこっちも辛い所があるが、なのはさんとウイングロードがフィールドにいる。単純な殴り合いになると向こうに歩があるので、なるべく持久戦にならない様に、一気にけりを付けたい。

 

「ドロー! なのはさんの効果発動。デッキからディアーチェを手札に加え、そのまま特殊召喚」

『天使が相手とは面白いではないか』

 

A2100・D1600

LC時空管理局2→3 ディアーチェ1

 

「更に装備魔法、紫天の書を装備。これにより攻守が500上がる」

 

ディアーチェA2100・D1600→A2600・D2100

 

「レヴィを通常召喚。効果で自身にLCを置く」

『強いぞ凄いぞカッコイイ~! 遊斗の切り込み隊長ことレヴィ・ザ・スラッシャーとは僕の事だ! ってあれ? ひょっとして三番?』

 

A1900・D400

 

自分より先にフィールドにいたなのはさんとディアーチェを見て、ポカーンと口を大きく開けるレヴィ。間抜けなレヴィの姿を見て、なのはさんはクスクスと笑い、ディアーチェは呆れている。

相変わらずのアホの子だがデュエルでは頼りになる。

 

「なのはさんを守備にしてバトル! レヴィでアスモディウスに攻撃!」

「攻撃力1900で? 何かやるつもりかい?」

「勿論。ダメージステップディアーチェの効果を発動する。このカードのLCを取り除き、LS一体を選択。そのモンスターにLSの攻撃力を集中させる」

 

LCディアーチェ1→0

レヴィA1900→5500 VS A3000

 

「いきなり攻撃力5500!?」

『行くぞ! 僕の必殺技! あっ、王様も後に続いて』

『やるかうつけ』

 

ディアーチェの返答にショボーンと肩を落とすレヴィを無視し、バルフィニカスはバチバチと青い稲妻を刀身に纏わせ、レヴィの魔力変換資質を十二分に発揮させる。

 

『じゃあ一人寂しくぅ~。エターナルサンダーソード! 相手は死ぬ! ・・・・決まった』

 

さっきのやり取り以前に登場シーンから、お前がこのデュエルでカッコ良く決めるのは困難だ。とは言うもの、レヴィの放ったエターナルサンダーソードは、アスモディウスの体を真っ二つに切断して大爆発させた。

 

大天使LP4000→1500

 

「ぐううう・・・・。い、いきなり1500ダメージ」

「レヴィの効果発動。このカードが戦闘でモンスターを破壊した時、このカードのLCを取り除く事で、デッキからLSを特殊召喚できる。来て、シャマ姉」

 

A800・D1800

LC紫天の書0→1 時空管理局3→4

 

「けど破壊されたアスモディウスの効果を忘れるな。このカードが破壊された時、アスモトークンとディウストークンを特殊召喚できる」

 

真っ二つになったアスモディウスの体がグニョリと動き、次の瞬間分裂した体が二体の天使へと形を変えた。

 

A1800・D1300

A1200・D1200

 

「シャマ姉の効果で、紫天の書にLCを置く。更にカートリッジロードを発動し、もう一つ乗せる」

 

LC紫天の書1→3

 

「紫天の書の効果発動。このカードに乗ったLCを三つ取り除き、デッキからユーリを手札に加える」

「うわ~、回し方がえげつないね~」

「時空管理局のLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚。場のシャマ姉とツヴァイを融合! 来い、祝福の癒し手シャマル」

 

LC時空管理局4→3

A1000・D2300

 

「墓地のツヴァイの効果。融合素材として墓地に送られた時、フィールドのLCを取り除きこのカードを手札に加える」

 

LC時空管理局3→2

 

「シャマ姉の効果で紫天の書にLCを乗せ、ターンエンド。エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える」

 

LC紫天の書0→1

 

遊斗  モンスター4 伏せ2 手札4 LP4000

大天使 モンスター2 伏せ2 手札4 LP1500

 

「とても二ターン目のフィールドとは思えないね。ドロー! 速攻魔法、光神化を発動。手札の天使族の攻撃力を半分にして特殊召喚できる。光神テテュスを特殊召喚」

 

テテュスA2400→A1200

 

光神テテュス。正直言うとコイツはチートなんじゃないかと思うくらい強いと思う。自分がカードをドローした時、そのカードが天使族モンスターだった場合、そのカードを相手に見せる事でもう一枚ドロー出来る効果を持つ。しかもこの効果、ドローフェイズ時のドローじゃなくてもいいので、天使族と相性のいいトレード・インでドローしたカードでも追加ドローが出来る。

 

「余りやられて面白いカードじゃないんだよな~」

「トレード・インを発動。手札の光神機―轟龍を墓地に送り二枚ドロー。ドローした大天使クリスティアを見せてもう一枚ドロー・・・・」

 

・・・・ホッ。これ以上ドローするつもりは無いようだ。クリスティアを引かれたのは辛いが、まだいい方だと思おう。

 

「自分の墓地の天使族が四体の時、手札のクリスティアは特殊召喚できる。来い、分身よ!」

 

A2800・D2300

 

デュエルディスクを構えたクリスティアと瓜二つのクリスティアが現れた。こいつがフィールドにいる限り、特殊召喚が出来なくなる。攻撃力2800で特殊召喚封じは強力で、実際に準制限に掛かっている。

 

「この効果で特殊召喚に成功した時、墓地の天使族を手札に加える事ができる。墓地のアスモディウスを手札に加え、場のアスモトークンとディウストークンを生贄に、アスモディウスを召喚」

 

A3000・D2500

 

『ほう、これ程の天使が集まるとは』

『あっちのはカッコイイけど、あれはちょっとグロテスクだね。まっ、一番カッコイイのは僕だけど』

『う~ん、レヴィちゃんはカッコイイと言うより可愛いわよ?』

『にゃはは、ちょっとピンチだね』

 

特殊召喚が封じられたのにも関わらず、緊張感の欠片も無い人達だ。

 

「バトル! アスモディウスでディアーチェに攻撃! ヘル・パレード!」

 

A3000 VS A2600

 

「やっぱりディアーチェから狙ってきたか・・・・」

 

アスモディウスは両手から禍々しい黒のオーラを出した。両手をディアーチェに向けると、手に溜まった黒のオーラがエネルギー弾となり発射され、その弾にディアーチェは破壊されてしまった。

 

遊斗LP4000→3600

 

『あっ! 王様~!』

「ック、やっぱ威力がでかい」

「まだだ! 僕の分身で祝福の癒し手シャマルを攻撃!」

 

A2800 VS D2300

 

クリスティアは背中に付いた赤の翼から、超高速の羽を飛ばして攻撃するが、シャマ姉が出したシールドにより、羽がシャマ姉まで届く事は無かった。

 

「その選択はミスだったな! シャマ姉は一ターンに一度戦闘では破壊されない!」

「うっ。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、光神化の効果でテテュスは破壊される」

 

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札4 LP3600

大天使 モンスター2 伏せ3 手札2 LP1500

 

「俺のターン、ドロー! なのはさんの効果でデッキからシュテルを手札に加え、そのまま召喚する」

『これはまた、ずいぶんと愉快なお相手ですね』

 

A800・D800

 

オ、オネストなんていない筈。オネストに臆して何がデュエリストだ。シュテルも目の前の天使達を見て、その瞳に闘士の炎を燃やしている。

 

「なのはさんを守備にしてバトル! シュテルでクリスティアを攻撃! シュテルは攻撃するモンスターのレベル×300攻撃力を上げる! クリスティアのレベルは8」

 

シュテルA800→3200 VS A2800

 

「攻撃力3200に!? インチキだよそんなの!」

「特殊召喚可能+特殊召喚封じ+サルベージ+光属性に言われてたまるか!」

『行きますよ。ブラストファイアー!』

 

ルシフェリオンから発射された炎で作られた砲撃魔法。それは横に動く火柱で、その火力は大天使であるクリスティアも突破困難。クリスティアは単純に火力で負け、炎に焼かれフィールドから離れて行く。

 

「クリスティアはフィールドから墓地に送られる場合、墓地へは行かず自分のデッキの一番上に戻る」

「戦闘ダメージが発生しないのはシュテルの効果だ。バトルフェイズ終了時、戦闘を行ったシュテルはゲームから除外される。これで特殊召喚が出来る。シャマ姉の効果で時空管理局にLCを置く」

 

LC時空管理局2→3

 

「行くぞ! 祝福の癒し手シャマルを生贄に、ホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚する!」

 

LC時空管理局3→4

A2000・D3000

 

ディスクにカードをセットした瞬間、綱橋の下の川からゴゴゴゴ! と音がした。クリスティアと一緒に下を除いてみると川が割れ、川の底が丸裸になっていた。まさか神話の様な光景を、この目で見る事が出来るとは思わなかった。

 

「さ、流石LSだね・・・・」

『シャマルさん凄い』

『・・・・』

 

褒めてくれたなのはさんの言葉に、ホーリーシャマ姉はコクンと小さく頷く。ありがとう、と言っているのだ。11年の付き合いだからこれくらい分かる。

 

「まだまだ、デバイスマイスターを発動! デッキから闇の書を手札に加え、その後時空管理局のLCを二つ取り除いてアギトを手札に加える」

 

LC時空管理局4→2

 

「ホーリーシャマ姉の一つ目の効果! 俺の手札の枚数×300俺のライフを回復し、その数値分相手にダメージを与える! 俺の手札は5枚」

「え!? 流石にそれは危ない。手札を一枚捨て、レインボーライフを発動。これでこのターン僕が受けるダメージは回復効果になる」

 

遊斗LP3600→5100

大天使LP1500→3000

 

「ッチ、避けたか。ホーリーシャマ姉に闇の書を装備させ、ホーリーシャマ姉の効果発動! 闇の書にLCを二つ置く」

 

LC闇の書0→2

 

「最後のカートリッジロードを発動。闇の書にLCを置く」

 

LC闇の書2→3

 

「闇の書の効果発動。LCが三つ乗ったこのカードをゲームから除外し、デッキからアインスを特殊召喚する」

 

LC時空管理局2→3

A2300・D2300

 

闇の書から発生したオーラから出てきたアインスだが、何故かいつもより機嫌が悪そうで仏頂面だ。

 

『遊斗、最近私は主とユニゾンをしていない気がするが?』

 

・・・・言われてみれば、最近王様はやてさんを出していない気がする。仮に出したとしても、フェイクシルエットでどちらかの名称を変えて融合したりと、正規の二人で融合は珍しい。何しろ最近マテリアルズのおかげで、下級でも十分に戦えるようになったから。

 

「ノ、ノーコメントで。アインスの効果発動、融合デッキからナハトを特殊召喚し、アインスに装備」

 

アインスA2300→A3300

 

『私も一人で戦えるとは言え融合機だ。愛する主とユニゾンしたいのだ』

「分かった分かった。レヴィを守備表示にしてターンエンド」

「エンドフェイズ、永続罠リビングデットの呼び声を発動! 墓地のスペルビアを蘇生させ、その効果でテテュスを特殊召喚」

 

A2400・D1800

A2900・D2400

 

「ック、ドローフェイズ前にテテュスを呼んできたか」

 

遊斗  モンスター4 伏せ3 手札3 LP5100 

大天使 モンスター3 伏せ2 手札1 LP3000

 

奴のデッキトップはクリスティア。二枚ドローは確定している。

クリスティアの唯一のデメリットでもあるデッキトップに戻る効果も、テテュスが入ればデメリットにならず、むしろアドバンスドロー等を使うとメリットになる。

このターンどうやって対処しようかと考えていると、デッキトップに指を置いたクリスティアが、ドローせずに俺を見つめている。

 

「君も色々と苦労してるね。LSに」

「・・・・破滅の光に言われたくない。そう思うんならみんなを諦めてくれ」

「僕も面倒臭いんだけど、破滅の光にも上下関係があるからね。ドロー! ドローしたカードは当然クリスティア、もう一枚ドロー、天空の使者ゼラディアスだからもう一枚ドロー。ドローフェイズ終了っと」

 

ドローフェイズだけで三枚のドロー。やはりテテュスはいかなる手段でも破壊するべきカードだ。これであいつの手札は一気に四枚。そして最後に俺に見せた天空の使者ゼラディアスの効果は――

 

「手札のゼラディアスの効果。このカードを墓地に送りデッキから天空の聖域を手札に加える。フィールド魔法、天空の聖域を発動。このフィールドがある限り天使族モンスターの戦闘で発生する天使族モンスターのコントローラーへのダメージは0になる」

 

さっきまで一望出来ていた綱橋は消え、雲の上に建てられた天使の城が生えてきた。すぐ隣には巨大な城門があり、天使が使っているだけありとても綺麗な城だ。

だがこれはソリッドビジョン。本来なら綱橋のアーチの上にいるので、一歩でも左右に動いたら地面に真っ逆様。

 

「アスモディウスの効果。デッキのThesplendidVENUS(ザ・スプレンディッド・ヴィーナス)を墓地に送る。そしてまたまた墓地の天使が四枚になったから、クリスティアを特殊召喚! 効果で墓地のThesplendidVENUS(ザ・スプレンディッド・ヴィーナス)を手札に加える」

 

A2800・D2300

 

「またかよ・・・・」

「アスモディウスとスペルビアを生贄にThesplendidVENUS(ザ・スプレンディッド・ヴィーナス)を召喚!」

 

奴がディスクにカードを置いた瞬間、ここから少し離れた雲の海の中から、神々しい光が発せられた。余りの眩しさに一瞬目を瞑り、そして光が収まったのを見計らい、ゆっくりと瞼を開く。

輝くクリーム色の服。それは様々な攻撃から身を守る鎧。

左手に持つ杖。それは天使を助ける慈愛の杖。

背中に持つ四つの翼。それは圧倒的な存在感を出し、力を象徴している。

 

A2800・D2400

 

ThesplendidVENUS(ザ・スプレンディッド・ヴィーナス)・・・・。世界に一枚ずつしか無いプラネットシリーズの内の一枚」

「へえ。VENUSって人間世界では超レアなんだ。なんか王の僕の方が流通してるって納得いかない・・・・」

 

天使の王だから、人間世界に一枚しか無いカードも思うがままに使えるって事か。王って凄いな、そこは破滅の光でも素直に感心できる。

 

「まあともかく、VENUSの効果。フィールドに存在する、天使族以外の攻守を500下げる」

 

なのはA1000・D3000→A500・D2500

レヴィA1900・D400→A1400・D0

アインスA3300・D2300→A2800・D1800

 

「うっ、なのはさんとアインスが3000以下になったか・・・・」

 

天使やドラゴン族と言った高火力モンスターが多いデッキ相手には、攻撃力2900以下のモンスターは大概戦闘で破壊されてしまう。つまり攻撃力3000の優秀なモンスターが多いのだ。逆に言うと3000以上であれば戦闘で破壊される確率が減るのだが、その弱点をVENUSで埋めてきたか。

 

「バトル! まずはテテュスでレヴィを攻撃!」

『ハッハッハ、馬鹿め! 遊斗、ミラフォを発動だ!』

「そんなカードデッキに入れてないしリバースカードはありません」

 

A2400 VS D0

 

守備力0を相手にテテュスも天使としての慈悲を見せてくれたのか、持っている笛でレヴィの頭をポカンと殴った。頭を殴られたレヴィは涙目になりながら頭を押さえ、スッと墓地に行く。

 

「どうもさっきのレヴィって子は調子を崩すね。クリスティアでAOA高町なのはを攻撃!」

 

A2800 VS D2500

 

「ホーリーシャマ姉の効果発動。時空管理局のLCを二つ取り除き、LSがフィールドから離れるのを無効にする!」

『風の護盾』

 

LC時空管理局3→1

 

なのはさんに向け放たれたクリスティアの赤い羽根は、先程と同じようにシャマ姉によって防がれた。自分の分身の攻撃が、二度も攻撃を止められた事に、クリスティア自身納得いかないようだ。

 

「けどVENUSの攻撃が残っている。VENUSでAOA高町なのはを攻撃! ホーリ・フェザー・シャワー!」

 

A2800 VS D2500

 

どうやら天使族は自分の羽で攻撃するのが好きなのか、クリスティアと同じように、VENUSは四枚の翼から羽を発射してなのはさんを破壊した。というかVENUSが持っている杖は飾りかよ・・・・。

 

「ターンエンド」

 

場 天空の聖域

遊斗  モンスター2 伏せ3 手札3 LP5100

大天使 モンスター3 伏せ2 手札2 LP3000

 

う~ん、持久戦は余りやりたくなかったんだが、天空の聖域を破壊しない限り、天使を破壊してもダメージ与えられないからな。手札も三枚あるとはいえ、サーチしたユーリとツヴァイとアギト。三人とも特殊召喚が前提となるカードだ。

 

「アインスでいるから大丈夫か。ドロー! ホーリーシャマ姉の効果発動。時空管理局にLCを二つ置く」

 

LC時空管理局1→3

 

「バトルフェイズ開始時、除外されたシュテルがフィールドに戻ってくる。最も、その三体どれも倒せないが」

 

シュテルA800・D1500→A300・D1000

 

「バトル! アインスでテテュスを攻撃!」

『ブラッディダガー!』

 

A2800 VS A2400

 

テテュスを狙い投擲された地で作られた黒のナイフ。それはテテュスに突き刺さると、その白い服を禍々しい黒で覆いこんだ。

 

「アインスが装備しているナハトの効果! 装備モンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、そのモンスターを吸収し、その攻撃力の半分をアインスに加える」

「それじゃあアインスの攻撃力が・・・・」

 

アインスA2800→A4000

 

ナハトヴァールの銃口からウニョウニョと出てきた黒い触手が、クリスティアのデュエルディスクの墓地ゾーンに入りこみ、そこから無理やりテテュスを引きずりこんできた。

攻撃力が4000に上がったとはいえ、天空の聖域でダメージを与える事が出来ず、クリスティアの所為で特殊召喚する事も出来ない。だが特殊召喚が出来ないのは向こうも同じで、アインスのおかげで有利なのは間違いないし、シャマ姉で地道にダメージを稼いで行けば問題ない。

 

「ホーリーシャマ姉の効果発動。俺の手札は四枚。よって俺のライフを1200回復させ、お前にその数値だけダメージを与える!」

『戒めの鎖』

 

遊斗 LP5100→6300

大天使LP3000→1800

 

「ッグ・・・・」

「ターンエンドだ」

 

場 天空の聖域

遊斗  モンスター3 伏せ4 手札4 LP6300

大天使 モンスター2 伏せ2 手札2 LP1800

 

「痛~。このままじゃガチでヤバイかな。と言うか君、本当に強いんだね」

「そう思うならサレンダーでもして、大人しく宇宙に帰るんだな」

「まさか。闇のデュエルでサレンダーは許されない。僕も生きたいからね。そんじゃドロー!」

 

奴の言う通りこのままいけば俺の勝ちだが、そう簡単に事が運ばないのがデュエル。ホーリーシャマ姉を対処しないとあと二ターンでゲームが終わるが、どうやって二回の破壊耐性を持っているホーリーシャマ姉を対処する?

 

「コイツはついてる。アドバンスドローを発動。クリスティアを生贄に二枚ドロー。デッキトップに行ったクリスティアを入れて二枚ドロー。永続魔法一族の結束を発動。墓地に天使しかいないから、攻撃力を800上げるね」

 

VENUS A2800→A3600

 

「光神化を発動! 手札のアテナの攻撃力を半分にして特殊召喚」

 

アテナA2600・D800→A2100

 

来たか、スペルビアとの相性が絶望的にいい天使族上級モンスター。かなり優秀なカードだがレベル7と、上級が多い天使族に必須なトレード・インの発動条件を満たせない所が残念だ。

 

「さあ行くよ~。アテナの効果発動。VENUSを生贄に捧げ、墓地の天使を特殊召喚する。スペルビアを特殊召喚し、スペルビアの効果でVENUSを特殊召喚する」

 

スペルビアA2900・D2400→A3700

 

「まだまだ。アテナは天使族が召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時相手に600ダメージを与える。二体特殊召喚したから、1200のダメージ!」

 

遊斗LP6300→5100

 

アテナの杖から光のエネルギーが発射され、それが俺の体にダメージを与える。かなりの衝撃が体を襲ったが、少しでも足を踏み外したらアーチから落下する。

 

「グッ、こんな所でデュエルするんじゃなかった・・・・」

「あ~、それは申し訳ない事をした。またまた墓地の天使が四体になったので、クリスティアを特殊召喚。効果で墓地のアスモディウスを手札に加えて、アテナのバーンダメージ効果!」

 

クリスティアA2800・D2300→A3600

遊斗LP5100→4500

 

「痛っ。よくもまあ、こんなにターン経過してまでその条件を満たせる・・・・」

「その厄介な守備モンスターは倒させて貰うよ。バトル! クリスティアで攻撃!」

 

A3600 VS D3000

 

「ホーリーシャマ姉の効果で戦闘破壊を無効に」

「じゃあスペルビアで攻撃!」

 

A3700 VS D3000

 

ここでLCを消費して破壊を無効にしても、結局はVENUSの攻撃でやられてしまう。ここはLCを使わず、大人しくやられた方がいいだろう。

 

「あのモンスターがいなきゃダメージも受ける事も無い。続いてアテナでシュテルを攻撃」

 

A2100 VS D1000

 

「クリスティアの破壊、ナイスだったぞ」

『お褒めのお言葉ありがとうございます。私は墓地から戦いを見ています』

 

ホーリーシャマ姉もシュテルも破壊されてしまったけど、攻撃力4000のアインスはそう簡単に突破できなかったのだろう。けどいつまでもアインス一人で耐えきれるとは思えない。

 

「ターンエンド。エンドフェイズアテナが破壊される」

 

場 天空の聖域

遊斗  モンスター1 伏せ4 手札4 LP4500

大天使 モンスター3 伏せ2 手札2 LP1800

 

「ドロー! よし、速攻魔法ロングアーチサポートを発動! これでクリスティアの効果をエンドフェイズまで無効にする」

「何かと色んな手段で特殊召喚しようとするね」

「シグナムさんを通常召喚」

 

シグナムA1800・D1400→A1300・D900

 

「更に時空管理局のLCを取り除き、手札のツヴァイとアギトを特殊召喚! 時空管理局の効果でLCに変化は無い」

『ぅぅ。あのカードの所為で力が入らないです』

『元々500しかねえけど、やっぱり0ってのは屈辱だな』

 

ツヴァイA500・D500→A0・D0

アギトA500・D500→A0・D0

 

VENUSの効果で攻守共に0にされたツヴァイとアギトは思う様に力が入らないのか、シグナムさんの肩に乗って休んでいる。けどツヴァイとアギトは単体で弱くても、ユニゾンする事で強くなる。

因みにツヴァイとアギトの実際魔法の力を使うと俺はイチコロらしい。俺は数十センチの子供にも勝てないと思うと、軽く鬱になる。

 

「行くぞ! 場のシグナムさん、ツヴァイ、アギトを融合! 来い、氷炎の剣聖神シグナム!」

 

右腕には炎の渦を、左手には氷の息吹を。その相反する二つを纏った剣士は、目の前にいる天使達で、手に持っている魔剣で試し斬りをしようと言わんばかりの余裕な表情をしている。

 

シグナムA3500・D2000→A3000・D2000

 

「ツヴァイの効果で時空管理局のLCを取り除き、手札に加える」

 

LC時空管理局3→2

 

「これまた随分と強いモンスターを・・・・」

「バトルだ! アインスでクリスティアを攻撃!」

『ブラッディダガー!』

 

A4000 VS A2800

 

先程テテュスの体を血で汚した短剣が今度はクリスティアを襲いかかる。クリスティアも抵抗するが、ナハトの力で魔力が爆発的に上っているアインスに勝つ事は出来ず、その赤い翼は千切られる。

 

「クリスティアは墓地に行かずデッキトップに戻る。ナハトヴァールの効果は受けない」

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズ、融合素材になったアギトの効果で、このターン破壊したお前のモンスターのレベル×100のダメージを与える。クリスティアのダメージを受けてもらう」

『ブレネン・クリューガ!』

「うぐっ。天空の聖域なかったらどうなっていたか・・・・」

 

大天使LP1800→1000

 

場 天空の聖域

遊斗  モンスター2 伏せ5 手札2 LP4500

大天使 モンスター2 伏せ2 手札2 LP1000

 

上手い具合にフィールド、ライフで勝っている。なのはさんがいないとどうしても手札消費が激しくなってしまうが、この二人がいる限り何とかなる筈。けどあいつが未だにオネストをドローしていないのが気になるが。

 

「ドロー! 手札抹殺を使う。僕は二枚」

「俺も二枚だ」

 

結局使う出番が無かったユーリ。本当にすまない。

サーチしておいて出せなかった事への罪悪感で手札交換はしたくないが、そんな我が儘が通じる訳がない。

 

「バトル! スペルビアで氷炎の剣聖神シグナムを攻撃!」

「氷炎シグナムさんの効果発動! 相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをゲームから除外し、攻撃したモンスターの攻撃力を0にして守備表示に変更する」

 

スペルビア A3700→A0

 

「VENUSでアインスを攻撃」

「露骨なオネスト!?」

「その通り! ダメージステップオネストを発動! VENUSの攻撃力をアインスの攻撃力分だけ上昇させる!」

 

VENUS A3600→A7600 VS A4000

 

『攻撃力7600。流石に無理か・・・・』

 

VENUSの翼がまるで太陽の様に輝きだした。この真っ白で幻想的な空間でさえ、VENUSの翼の輝きは瞼を閉じる程眩い。その光は闇の力を使っているアインスを浄化するように、アインスの体を包み込み、光の力でアインスを破壊した。

 

「ぐあああああああ!」

 

遊斗LP4500→900

 

アインスへの攻撃が優しくとも、そのダメージは強大なもので、俺へのダメージも大きい。攻撃力3600のダメージを受け、ただの人間である俺が踏みとどまって耐えられる訳が無く、後方へ吹っ飛ばされる。

ソリッドビジョンでは飛ばされた先に地面があるが、実際には存在せず、ソリッドビジョンの地面を貫通し、地面へと落ちて行く。

だが俺が次の瞬間ぶつかったものは、硬い地面では無く、柔らかくて甘い匂いがするもの。

 

「遊斗。大丈夫?」

「ありがと、フェイト。一日に何回も女の子に助けてもらうって情けないな・・・・」

「そんな事無い、遊斗は一生懸命戦ってる。本当なら第三者である私達がプレイヤーを手助けするのは駄目だけど、事情が事情だから」

 

フェイトは小さい両手を俺の脇の下に入れ、俺を元居た場所まで運んだ。フェイトに「ありがとう、後で力を貸してくれ」と言ったが、フェイトは一向にデッキに戻る気配は無く、キリッとした顔つきでクリスティアを睨みつける。

 

「遊斗は今日これで三回の命賭けのデュエルをしている。強い遊斗でも流石に限界だから私がデュエルを引き継ぐ」

「ふ~ん、まあいいよ。どっちにしろ君のライフは900で、僕の優勢には変わりないし」

「フェ、フェイト? これは俺とあいつのデュエルだ」

「分かってる。けど、今の遊斗は命賭けのデュエルを三回もしてボロボロなんだよ! このままじゃいつもの遊斗のデュエルなんて出来る訳ない!」

 

そんな事無い! と言おうとしたが、視界が霞み、頭がフラフラして視点が定まらない。鉛の様に重たいデュエルディスクを持ちながら、足場の少ないアーチの上を、この足で立つのは不可能だろう。いや、それ以前に立つことすら辛い現状。フェイトが支えてくれないと、すぐにコンクリートに体をぶつけてしまうだろう。

 

「わ、かった。けど「分かってる」・・・・」

 

フェイトは俺の左腕からデュエルディスクを取ると、自分の左腕に装着して構える。

 

「そろそろデュエルを続けるよ? 僕はカードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、氷炎の剣聖神シグナムがフィールドに戻る」

 

場 天空の聖域

遊斗  モンスター1 伏せ2 手札2 LP900

大天使 モンスター2 伏せ3 手札0 LP1000

 

「行くよ。私のターン、ドロー!」

【このままシグナムで攻撃すれば終わる。けどあのリバースカード】

 

クリスティアに聞こえない様に、フェイトはアイコンタクトでそう語ってきた。

 

【けどクリスティアはLSの事を下調べしていないのか、みんなの効果に驚いたりしていた。このまま攻撃で終わるんじゃないか?】

【・・・・考えにくいけど、万が一の為にAsの回収でもう一枚ドローしていい?】

 

デュエルに関しては素人であるフェイトの意見だが、言う通りにする。もはやフェイトの綺麗な顔も、クリスティアの表情豊かな顔も霞んで見える。

 

「リオ・ウェズリーを召喚!」

 

LSリオ・ウェズリー ☆4/光/魔法使い/A1700・D500

 

リオA1700・D500→A1200・D0

 

仮にあいつがLSの事を知っていても、このカードは初見だろう。

登場したのは頭の上にリボンを乗せ、ショートヘアーの女の子。八重歯と、一部分だけ伸ばした髪が印象的な女の子だ。アインハルトの友達であり、小さいヴィヴィオの四年後の友達。小さいヴィヴィオと大きいヴィヴィオさんがいるのに、同級生の高町ヴィヴィオがいない事に軽くショックを受けていた出来事が、ボンヤリと脳裏を過った。

 

「リオの効果発動! 一ターンに二度、墓地のLSと名のつくモンスターをゲームから除外し、相手のエンドフェイズまで攻撃力を100ポイント上げる! 更に除外したモンスターが光、または炎属性の場合、攻撃力が400上昇する。墓地のレヴィとシャマル先生を除外し攻撃力を500上げる」

 

リオA1200→A1700

 

「攻撃力1700にしただけ? ひょっとしてまだ効果を秘めてるの?」

「ううん、リオでフィニッシュを決める事はできない。けどリオのおかげで速攻魔法Asの回収を発動できる。これでさっき除外したレヴィとシャマル先生を墓地に戻し、一枚ドローするよ」

 

フェイトはドローしたカードを見ると、少しだけ頬の緊張を解く。フェイトが欲しかったのはそのカードか。言われてみると、そのカードなら仮に攻撃反応型のカードでも対応する事が出来る。

 

「バトル! 氷炎の剣聖神シグナムでスペルビアを攻撃! 氷炎の剣聖神シグナムは戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える効果を持つ!」

「そのモンスターの効果は知ってるよ。罠発動魔法の筒(マジック・シリンダー)! モンスターの攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「やっぱりドローしておいて正解だった。速攻魔法ユニゾンアウトを発動! 氷炎の剣聖神シグナムの融合を解除し、融合素材を墓地から特殊召喚する。来て、シグナム、リイン、アギト!」

 

LC時空管理局2→3

シグナムA1800・D1400→A1300・D900

ツヴァイA500・D500→A0・D0

アギトA500・D500→A0・D0

 

「対象がいなくなった事で魔法の筒(マジック・シリンダー)は無効」

「ッツ・・・・。初心者の君なら引っ掛かってくれると思ったんだけど、まさか計画を邪魔にされるとは。こんな事になるんだったら、チェンジなんて許すんじゃなかったな~」

 

氷炎シグナムさんの攻撃宣言時、そのモンスターの効果は知っているよ、と言っていた。他のLSの効果は知らず、氷炎シグナムさんの効果だけ知っているとは考えにくい。フェイトが警戒していた様に、コイツは今まで。

 

「態々不利になるようなプレイングもして、油断誘ったのにな~」

「今の今まで演技だったって事かよ。そのままやっていたら引っ掛かってたぞ」

「ホント? じゃあやっぱりチェンジを許すんじゃなかったな~」

「恐ろしい奴・・・・。フェイト」

「うん。シグナムでスペルビアを攻撃!」

 

A1300 VS D0

 

「ん~、ピンチ」

「シグナム、リイン、アギトを融合! 来い、氷炎の剣聖神シグナム!」

 

シグナムA3500・D2000→A3000・D1500

 

「時空管理局のLCを取り除いて、リインを手札に加える。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、融合素材になったアギトの効果を発動! 800のダメージを与える!」

『ブレネン・クリューガ!』

 

LP1000→200

 

場 天空の聖域

フェイト モンスター2 伏せ2 手札1 LP900

大天使  モンスター1 伏せ2 手札0 LP200

 

「さっきのターンAsの回収を発動していなかったら俺は負けていた。ありがとなフェイト」

「ううん、役にたててよかった」

「ドロー! VENUSを生贄に、堕天使ディザイアを召喚! このカードは天使族を生贄にする場合、生贄一体で召喚できる!」

 

ディザイアA3000・D2800→A3800

シグナムA3000・D1500→A3500・D2000

リオA1200・D0→A1700・D500

 

クリスティアと同じ赤色の翼。だが堕天した者の翼が綺麗なままでいられる訳は無く、炎の赤と言うより血の様に禍々しい赤。今までに様々な強大な天使と戦ってきたが、ディザイアの威圧感も尋常じゃない。

 

「ディザイアの効果発動! 攻撃力を1000下げ、氷炎の剣聖神シグナムを墓地へ送る!」

「墓地に送る!? 氷炎シグナムさんは破壊にしか耐性を持っていない・・・・」

「弱点を突かれちゃったね・・・・」

 

ディザイアA3800→A2800

 

ディザイアは自らの体から禍々しい闇を放出し、氷炎シグナムさんを闇へと引きずり込む。欲望と願望が込められたその闇の中に、氷炎シグナムさんは苦しそうに呑みこまれて行った。

 

「バトル! ディザイアでリオを攻撃!」

 

A2800 VS D500

 

『私には荷が重いです』

「ごめんね。ピンチの時に呼んじゃった」

 

ディザイアは両手に持った巨大な盾から刃を出し、二つの刃をクロスするようにリオに斬りかかった。

 

「ターンエンドだ。ッフ、これでモンスターはいなくなった。手札もさっき回収したツヴァイだけ。さあ、この状況をどうやって突破する?」

「分からない。けどデュエルモンスターズは無限の可能性を秘めている。どんな状況でも必ず突破する手段はある。遊斗はいつもそう言っている」

「フェイト・・・・」

 

場 天空の聖域

フェイト モンスター0 伏せ3 手札1 LP900

大天使  モンスター1 伏せ2 手札0 LP200

 

キャンプ場で十代やみんなが待っているんだ。それに行方不明になった翔を助けなくちゃいけない。こんな所で負ける訳にはいかない!

 

「フェイト! 泣いても笑ってもこれが最後だ! このターンで終わらせるぞ!」

「うん!」

 

フェイトはデッキトップに力強く指を置き、来て欲しいカードをイメージする。そんなフェイトの肩をギュッと握り、フェイトの指先に魂を送る。二人揃いスーと息を吸い、ハァーとゆっくりと吐く。

 

「「俺(私)達のターン! ドロー!」」

「来た! ウイングロードの効果発動。ドローしたはやてを特殊召喚する!」

 

A2000・D1700

LCはやて1 時空管理局3→4

 

「けど手札のツヴァイと融合した所で、ディザイアに勝てる事は出来ない! ましてや天空の聖域がある以上僕に戦闘ダメージは来ない」

「罠発動、幸運の追い風! 場にはやてがいる時発動できる。ライフを半分払い、手札を一枚捨てる事で、アインスを召喚条件を無視して特殊召喚できる!」

 

フェイトLP900→450

 

はやてから溢れ出る白色の魔力。その優しき光を頼りに、眠っているアインスが目を覚める。

 

「復活して、アインス!」

『今度こそ、奴を倒す』

 

A2300・D2300

LC時空管理局4→5

 

「アインスの効果発動! 特殊召喚成功時、融合デッキから夜天の書を特殊召喚する」

 

A0・D0

 

「あなたの負け! 夜天の書の効果発動! 時空管理局のLCを全て取り除き、デッキから五枚ドロー!」

「ここにきて手札を五枚ドローだと!?」

 

LC時空管理局5→0

 

「行くよ、場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

ありとあらゆる夜と言う名の闇を支配する魔導師。神の足元でもあり、天使の城である天空の聖域を全て夜で支配し、540の扉、槍の壁、楯の屋根、鎧に覆われた長椅子をも夜で呑みこむ。

その中で光る一筋の光と共に降りてきた王様はやてさん。本来ならこの空間で満たされていた光が、砂漠の中のオアシスの様にとても貴重に見える。

 

「なっ、なっ・・・・」

 

LCはやて3

A2800・D2800

 

「夜天の王・はやての効果発動! このカードに乗ったLCを二つ取り除き、融合デッキの祝福の騎士ヴィータを守備表示で特殊召喚!」

 

LCはやて3→1

A2600・D2500

 

「そして場の祝福の騎士ヴィータを生贄に、紅の鉄騎ヴィータを特殊召喚!」

 

夜に支配された聖域に現れたもう一つの光。その光は王様はやてさんの周りをグルグルと回り、王様はやてさんの前で止まると正体を現す。スラッとした手足、厚い服の上からでも分かる細いウエスト、大人になってもキリッとした表情は変わらず、だがしっかりと美しい女性に成長したヴィータさんがそこにいた。

 

A3000・D2800

 

「夜天の書を夜天の主・はやてに装備! バトルだ! 紅の鉄騎ヴィータでディザイアを攻撃!」

「あっ・・・・あ・・・・」

『あんまあたし等や遊斗を舐めんなよ。おめぇが王の中で何番目につええかなんて関係ねぇけどさ、一人で遊斗を倒せると思うなよ。ラケーテンハンマー!』

 

A3000 VS A2800

 

グラーフアイゼンは魔力を圧縮させ、ジェット噴射させる事で短時間だが超スピードを出す。鉱石をも軽く討ち砕くヴィータさんの力に、航空型の戦闘機よりも速いスピードが合成される。

欲望と願望の天使もそれには打ち勝てない。

 

「痛っ! あ~あ~。まさか人間に負けるなんてね~。こりゃほんと、あの方じゃないと勝てないかも」

「さあ、精霊界を混乱させた罪、死んで償え!」

「夜天の主・はやてでダイレクトアタック!」

『雑魚が・・・・。終焉の笛』

 

A2800

 

天使族の王であるクリスティアを、まるでゴミを見るかのような目で見下しながら、ベルカ式の三角形の白の魔法陣を出す。ベルカ式の魔法陣の頂点には魔力が平等に溜められ、上に掲げていたシュベルトクロイツを振り下ろす。

 

『ラグナロク!』

 

巨大なトンネルよりもはるかに巨大な白の魔力砲撃。クリスティアは接近するそれをため息をつきながら眺め「楽しかったよ」と言い残し、白の砲撃に呑み込まれた。

 

大天使LP200→-2600

 

奴のライフが0になったのを確認したのは、王様はやてさんの攻撃が終り、奴の姿が消えていてからだった。ソリッドビジョンが消え、元居た綱橋のアーチの上にいた。

既に立っているのも限界だった体は、デュエルが終わった事により緊張が解かれ、フラフラとアーチに引き寄せられる。

 

「大丈夫遊斗!?」

「アハハ・・・・。あんまり大丈夫じゃない。シャマ姉とユーノに回復するように言ってくれ。それと、デュエルありがとうフェイト。勝てたのはお前のおかげだ」

 

 

 

 




クリスティア=演☆技☆王





今回の新オリカ


LSリオ・ウェズリー ☆4/光/魔法使い/A1700・D500
自分の墓地の「LS」と名のつくモンスター1体をゲームから除外して発動できる。
このカードの攻撃力は相手のエンドフェイズ時まで100ポイントアップする。この効果で光属性または火属性をゲームから除外した場合、上昇する数値は400になる。
この効果は1ターンに2度まで使用できる。
このカードが手札から墓地へ送られた時、次の自分のスタンバイフェイズ時、墓地のこのカードを手札に戻す。この効果はデュエル中に1度しか使用できない。



幸運の追い風 通常罠
自分フィールド上に「八神はやて」と名のつくモンスターが存在する時、ライフを半分払い、手札を1枚墓地へ送って発動できる。
自分の手札、デッキ、墓地から「LS祝福の風リインフォース(アインス)」を召喚条件を無視して特殊召喚する。



今回リオは活躍しませんでしたが、ご紹介と言う事で登場させました。
効果が分かりにくいかもしれませんが、よは光か炎を除外したら攻撃力が400上がり、それ以外だと100上がります。あえて作中でシャマルを除外したのも、効果が分かりやすいかな? と思ってです。
もう一つの効果は、あるカードとの相性を良くするためです。まあリオと言ったらあの子ですよね。



幸運の追い風。
あれですよ。闇の書にLCを三つ乗せるのも、LV5二体並べるのも難しいんですよ(苦笑)リビデや蘇生縛ってますから。
だから王様はやてさんが強いんですけど、最近の出番の無さは危険と思いました。王様はやてさんが出ないと、シャマル以外のヴォルケンも出にくくなりますし。

おそらくですが二期入ってからでは、シャマルの出番が一番多いかと。シャマ姉便利。




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第三十四話 (修正)

安定の非リア充更新。
は、覇王のテーマが悪いんです。あれを聴いていたら早く三期に行きたくて行きたくて。


それと前回の話で、高町ヴィヴィオを出さないのか、という感想が多くきました。
それで五件以上高町ヴィヴィオを出してくれ、と言う感想が来たら、高町ヴィヴィオとセイクリットハートをカード化しようかなと思います。


後もう一つ、リリカルなのはに出てくるナンバーズの案を募集しようと思います。
最初はシナジーを考える為に自分で全部考えようかと思ったのですが、とてもでは無いですが思いつきません。

レベル、属性、種族、攻守、何も決まっていませんし、条件もありません。
ただ出来ればコンボが強いのではなく、単体で強い効果だと助かります。


これは遊斗が使うのではなく、スカリエッティが使う予定です。
また、ナンバーズでデュエルするのは先になると思うので、しばらくの間募集します。


追記
一部修正しました。詳しい変更点は第三十七話の前書きに書いております。申し訳ありませんでした。


パッと目を開けると、そこは知らない天井と知らない壁があった。天井が広々として、やたらとカラフルだったので何となくホテルだろうと、理解する事は出来た。だが何故ホテルにいるのかが分からなくて、暫く頭の中がグルグルしていたが、ふと昨日のクリスティアとのデュエルの事を思い出した。

 

「そうか。あの後気を失って・・・・」

 

腰に力を入れて頭を起こすと、金属バットでぶん殴られたと錯覚するほどの頭痛に襲われた。

 

「いだっ!?」

「ゆ、遊斗っ? 大丈夫?」

 

部屋の奥から心配してくれる恋人の声とこっちに近付く足音が聞こえたが、顔を上げると頭痛がするので可愛い顔を拝むのは出来なかった。

 

「ず、頭痛が・・・・」

「まず横になってこの薬を飲んで。シャマル先生とユーノが用意してくれたんだよ?」

「ああ、ありがとう。・・・・ところでみんなは? こんな時に二人っきりになる様な配慮か?」

 

枕を縦にして頭を少しだけ上げ、フェイトに手渡された薬を水で流しこむ。良薬口に苦しと言うだけあってか、吐き気がするほど不味い薬だが、シャマ姉とユーノが用意してくれたから確実に効くだろう。

 

「みんなはこのホテルの周辺で破滅の光が来ないかどうか見張ってる。だから前線で戦えない人はここにいるよ」

「そうか・・・・。デュエル以降の記憶が無いんだけど、やっぱり俺」

「うん、眠る様に気絶したよ。昨日は命賭けのデュエルを三回、その内の二回は闇のデュエルをしたから、そのダメージだってさ」

 

ノーダメージで勝てば気絶せずにピンピンしていたと思うけど、どっちもライフが1000以下だったもんな。存在しない者の発動条件が1000以下とはいえ、やっぱり極力ダメージを受けない様にした方がいいかもしれない。

 

「あっ! ところで十代は!?」

「実はあの後、十代と遊斗、それからエドの所に、美寿知から連絡があったんだ。今日の朝九時、海馬コーポレーションのバーチャル施設に来いって」

「なんだと!?」

 

慌てて時計を見るが、もう昼の12時を過ぎている。

 

「大丈夫、十代とエドはデュエルに勝った。それは私が付いて行ってこの目で見てきたから間違いないよ」

「そうか、よかった・・・・。それで美寿知は何で二人を呼んだんだ?」

「美寿知の目的は、斎王を助けるデュエリストを探す事」

「どういう事だ?」

「斎王と美寿知は生まれた時から特別な力を持っていて。その力に周りの人々は脅えて、二人はずっと孤独。養ってくれる人が誰もいないから、二人はその力を使って占いをして生活してたらしんだ」

 

あの斎王が苦労人・・・・。フェイトは環境が違うとはいえ、自分と同じ辛い過去を持った二人の話を寂しそうに語る。

 

「そんなある時、客が一枚のカードを持って来て、斎王はそれを調べようと客からカードを受け取った。美寿知はそのカードから禍々しいオーラを感じて、斎王にそのカードを捨てるよう言おうとしたんだけど、もう遅く、斎王はカードの禍々しいオーラ――破滅の光に支配された」

「ック、また破滅の光! じゃあ斎王も被害者なのか」

 

いくら破滅に導くのが生まれながらの使命とは言え、やはり破滅の光がやる事は許せる事では無い。

 

「そう。炎丸、氷丸、岩丸、雷丸を操って襲ってきたけど、それも本当のデュエリストかどうか見定める為。美寿知、私に言ってたよ。遊斗を襲ってごめんなさい、って」

「そうか・・・・。それで結局美寿知はどうなったんだ?」

 

するとフェイトは急に頭を下げ、膝の上に置いた手を強く握りしめる。

 

「実はね、美寿知は今、バーチャル空間の中に閉じ込められているんだ。いつバーチャル空間に入ったのか自分でも記憶が無いから、本当の肉体がどこにあるのか分からないみたい。それを聞いた双六さんが、海馬社長に美寿知を探す様に頼んでくれたんだ」

「そうか・・・・。でも海馬社長なら絶対に見つけ出すだろ。なんたって天下の海馬社長だからな」

 

この地球上で海馬社長の名前を知らない人なんていない。そう言えるほど海馬社長は有名な人だ。フェイトもその理由に納得したのか「そうだね」と言って、クスクスと明るい笑顔を見せてくれた。

戦ったり、考えたりする時のカッコイイフェイトや、クールなフェイトも好きだけど、こうやって笑顔なフェイトが一番好きだ。

フェイトに釣られ俺もクスクスと笑っていると、突如フェイトの顔つきが真剣なものに代わる。俺には分からないが十中八九、念話が来ているのだろう。

 

「・・・・遊斗。王らしき精霊がいたみたいだけど、やっぱり体の調子が良くないから「何言ってんだ」へ?」

「薬を飲んだら元気が出た。そいつにデュエルを申し込む」

「嘘! いくらシャマル先生とユーノが治癒魔法を使ったからって昨日あんなに・・・・」

 

フェイトの否定の言葉も、ベッドから勢いよく跳び上がる俺の姿を見て止まった。フェイトは少し深刻そうな顔をするが、すぐにハァとため息を吐いて俺を見上げる。

 

「分かった、じゃあ行こう」

 

一瞬でバリアジャケットの姿にセットアップしたフェイトの手を握りベランダへと出る。そしてフェイトと一緒にベランダから飛び降りた。

 

 

 

 

俺達が向かった先には見張りをしてくれていたみんなと、その中心に見知らぬ人間の男がいた。あいつが王だろう。

因みに何故みんなの力で王を倒さないのかと言うと、魔法では破滅の光を消滅させる事は出来ず、ただ肉体の持ち主だけを倒してしまう。しかしデュエルなら、肉体の持ち主も殺してしまうが、破滅の光を消滅させる事が出来る。

それにそもそもデュエルとは文字通り決闘。結局はどんな時でもデュエルで決めるのが一番いい。

 

「遊斗。体は大丈夫なの?」

「ええ、シャマ姉とユーノの薬が効いたみたいです。さて、人間の姿をしているがお前は何の王だ?」

「お前が遊斗・スカリエッティか。クックック、俺様は昆虫族の王、グレート・モスだ!」

 

男が高らかに自らの名前を叫んだ瞬間、男の体から緑色の複数の足と、薄くて巨大な羽が生えてきた。その瞬間この場にいた大半の人が悲鳴を上げ、それぞれ誰かしらの背中に隠れた。

昆虫族、余り使われなく、嫌われやすい種族の一つである。特に女性の嫌いな種族ランキングぶっちぎり一位だ。アンデットより嫌いらしい。

因みにこの場で虫が大丈夫な女性は、フェイトにフェイトさん、ヴィータさん、シグナムさん、アインス、スバル、ティアナさん、キャロ、リリィ、マテリアルズと結構いる。

そしてなのは様が隣にいる雷フェイトさんの服の裾をちょっと引っ張っており、その姿に萌えてしまったのは仕方ない。

 

「ガハハハハハ! さあ、デュエルだ!」

「虫が苦手な人が多いから、あんまり昆虫族とは戦いたくないんだけどな」

「ふん、人間如きが!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺様だ。ドロー! 共鳴虫(ハウリング・インセクト)を召喚!」

 

A1200・D1300

 

出たのは超でかいバッタ。昆虫族にしては序の口だが、これで失神する女性も多いらしい。俺もそう余り長い時間見ていたものでは無い。

 

「永続魔法、大樹海を発動。ターンエンド」

 

モス モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

共鳴虫(ハウリング・インセクト)は昆虫族専用のリクルーターで、大樹海は昆虫族が破壊されて墓地に送られた時、同レベルモンスターを手札に加える永続魔法。一ターンの回数制限が無く、かなり強力なカードだ。本来ならなのはに来てもらって破壊してもらいたいが、虫が嫌いな女の子を戦わせるのも気が引ける。

 

「ドロー! レヴィを通常召喚! 効果でLCを置く」

『うおっ! でっかいバッターがいるぞ!』

 

A1900・D400

 

「バッターじゃなくてバッタな。超熱血球児じゃないんだから。カートリッジロードをレヴィに発動」

 

LCレヴィ1→2

 

「そっちがリクルーターと大樹海でアドバンテージを稼ぐなら、こっちはレヴィだ! バトル、レヴィで共鳴虫(ハウリング・インセクト)に攻撃!」

『光翼斬!』

 

A1900 VS D1300

 

レヴィの放った三日月状のグルグルと回る魔力刃は、共鳴虫(ハウリング・インセクト)を頭から真っ二つにする。その瞬間、体内の液体がベチャリと音を立ててフィールドに飛び散る。よくこれで海馬コーポレーションに苦情が来ないな・・・・。

 

共鳴虫(ハウリング・インセクト)の効果でアルティメット・インセクトLV3を召喚。更に大樹海の効果でデッキからイナゴの軍勢を手札に加える」

 

A1400・D900

 

「ッチ、面倒臭いカードを。レヴィの効果発動、LCを二つ取り除いてデッキからリリィとクロノを特殊召喚。二人の効果で銀十字と設置型バインドを手札に加える」

 

A500・D500

A1700・D1500

 

「レヴィの効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できない。手札を一枚捨て、デッキからトーマを特殊召喚。場のトーマとリリィを融合! 来い、リアクト・エンゲージ―トーマ!」

 

A2500・D2500

LCトーマ1

 

「トーマに銀十字を装備。カードを二枚伏せてターンエンドだ。エンドフェイズ、カートリッジを手札に加える」

 

このターンは昆虫が大丈夫な四人を使ったが、このプレイがいつまで出来るか・・・・。

 

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札3 LP4000

モス モンスター1 伏せ1 手札5 LP4000

 

「俺様のターン、ドロー! スタンバイフェイズ、アルティメット・インセクトLV3はLV5に進化する!」

 

余りに気持ち悪いから、詳しく説明するのも吐き気がしてくる。気持ち悪い虫が、気持ち悪い虫に進化したと思ってくれ。

 

A2300・D900

 

「アルティメット・インセクトLV5は、LV3の効果で特殊召喚した場合、相手フィールド上のモンスターの攻撃力を500下げる」

 

レヴィA1900→A1400

トーマA2500→A2000

クロノA1700→A1200

 

「その銃剣を持ったモンスターは厄介だからな。速攻魔法禁じられた聖杯を発動。攻撃力を400上げる代わりに、効果を無効化する」

「チェーンしてトーマの効果発動! LCを取り除き、エンドフェイズまでアルティメット・インセクトの攻守を2000下げる!」

『Silver Stars Hundred million』

『『シルバー・スターズ・ハンドレッドミリオン!』』

 

銀十字から放出された大量のページ。その一つ一つ、魔力弾を作り出すと言う単純な事しか出来ないが、塵も積もれば山となる。放出された全てのページから発射された弾丸が、アルティメット・インセクトにダメージを与える。

 

LCトーマ1→0

トーマA2000→A2400

LV5 A2300・D900→A300・D0

 

「効果は使わせた、それで十分だ。代打バッターを召喚!」

 

A1000・D1200

 

『遊斗! やっぱりあれはバッターじゃないか!』

「ハァ・・・・。あれはバッタとバッターを掛けているんだ。この二つを一緒にするのはお前ぐらいだよ」

「速攻魔法サイクロンを発動。その伏せカードを破壊」

 

破壊されたカードはクロノの効果で手札に加えた設置型バインド。代打バッターを攻撃表示で出したって事は、おそらく手札に上級モンスターがいる。

 

「バトル! 代打バッターでクロノを攻撃」

 

A1000 VS A1200

 

代打バッターはクロノに突進するが、クロノに激突する前にブレイズキャノンにより破壊された。

 

モスLP4000→3800

 

「ッグ、この瞬間代打バッターの効果発動。手札の昆虫族を特殊召喚する! 来い、鉄綱装甲虫(メタルアーマードバグ)! 更に大樹海の効果でデッキの代打バッターを手札に加える」

 

A2800・D1500

 

奴が召喚した昆虫族は、パーフェクト機械王に負けずとも劣らない程の強大さ。逆にこれぐらい清々しい大きさの昆虫の方が気持ち悪く見えない。中途半端な人間サイズの昆虫が一番気持ち悪い気がする。

 

鉄綱装甲虫(メタルアーマードバグ)でトーマに攻撃!」

 

A2800 VS A2400

 

リアクター996から数発の弾丸を発射するが、名前の通り鉄綱の装甲を纏っており、トーマの放った弾丸は全て弾かれる。結局突進してくる鉄綱装甲虫(メタルアーマードバグ)を止める事は出来ず、ひかれてしまった。トーマと鉄綱装甲虫(メタルアーマードバグ)の差、400のダメージが実体化して俺に襲い掛かってくる。

 

「ぐううう! こ、このくらいのダメージ」

 

遊斗LP4000→3600

 

「なっ!? 貴様は昨日大ダメージをくらった筈! こうやってデュエルをするだけでも辛いのではないのか!?」

「優秀なお医者さんがいるんでね。この通りピンピンだよ。銀十字の効果発動、デッキから黒騎士トーマを特殊召喚する」

 

トーマA3000・D2000→A2500・D1500

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター3 伏せ1 手札3 LP3600

モス モンスター2 伏せ2 手札3 LP3800 

 

「ドロー! カートリッジロードをトーマに発動!」

「この瞬間罠発動、ライラー・ワイヤー。墓地の代打バッターを除外し、黒騎士トーマを破壊する!」

 

クッ、やっぱりトーマの強力な効果をそう簡単に発動させてはくれない。罠カードから発動した蜘蛛の糸の様な物がトーマの体を貫通する。だが奥の手は最後まで取っておくものだ。伏せが無くなったから存分に動く事が出来る。

 

「クロノを生贄にはやてを召喚! 効果でLCが乗る」

 

LCはやて1

はやてA2000・D1700→A1500・D1200

 

「はやてのLCを取り除き、シャマ姉を特殊召喚。この効果で特殊召喚に成功した時、自身にLCを置く」

 

LCはやて1→0 シャマル1

シャマルA800・D1800→A300・D1300

 

「罠発動、幸運の追い風! はやてがいる時、手札一枚とライフ半分をコストに、デッキからアインスを特殊召喚する! 更にアインスの効果で夜天の書を特殊召喚!」

 

アインスA2300・D2300→A1800・D1800

A0・D0

遊斗LP3600→1800

 

「墓地に送った闇の書の効果。はやてに装備だ」

 

はやてA1500→A1800

 

「場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の主・八神はやて!」

 

夜を支配する最強の魔導師。辺り一帯太陽の光が遮断され、自らのフィールドである夜へと支配する。その中に光る一筋の明かり。その光はまるで月光の様に優しく、だが破滅の光を連想させる禍々しいオーラを持っている。

 

はやてLC3

はやてA2800・D2800→A2300・D2300

 

「ふん、そのモンスターもアルティメット・インセクトの前では攻撃力2300か」

「だが闇の書の効果で攻撃力が300上がる。更に夜天の書も装備する」

 

はやてA2300→A2600

 

本来なら同時に存在する筈の無い二冊の本。だがその矛盾さえも自らの物とし、二冊の本を自分の隣に浮かせる。

 

「シャマ姉の効果発動。このカードにLCを置く。そして夜天の書の効果でシャマ姉のLCを取り除き、デッキから二枚ドロー!」

 

LCシャマル1→2→0

 

「王様はやてさんの効果発動。このカードのLCを2つ取り除き、融合デッキから祝福の騎士シグナムを守備で特殊召喚する」

 

シグナムA2700・D2000→A2200・D1500

 

「まずはその厄介な虫から倒してやる。バトルだ! 王様はやてさんでアルティメット・インセクトLV5を攻撃!」

 

はやてA2600 VS A2300

 

『『響け終焉の笛。ラグナロク』』

 

溜め時間が1秒もしない内に発射された砲撃魔法、ラグナロク。だが溜め時間に関係なくその砲撃は圧倒的な破壊力を込めており、アルティメット・インセクトをいとも容易く破壊した。

 

「ぐあああ! だ、大樹海の効果! デッキからアルティメット・インセクトLV5を手札に加える」

 

モスLP3800→3500

LC闇の書0→1

 

「レヴィを守備にし、カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズカートリッジを手札に加える」

「エンドフェイズ、リビングデットの呼び声を発動。アルティメット・インセクトLV5を復活」

 

遊斗 モンスター4 伏せ3 手札2 LP1800

モス モンスター2 伏せ2 手札4 LP3500

 

「ドロー! スタンバイフェイズ、アルティメット・インセクトをLV7へと進化!」

 

A2600・D1200

 

LV7はLV5が羽を広げてブーンと音を立てて飛んでいる姿。これがアルティメット・インセクトの最終形態で、この状態はダウンするのは攻撃力だけではなく、守備力もダウンする。

 

はやてA3100・D2800→A2400・D2100

レヴィA1900・D400→A1200・D0

シグナムA2700・D2000→A2000・D1300

シャマルA800・D1800→A100・D1100

 

「ククク、いい様だ。まずは手札抹殺を発動する。デッキから四枚ドロー」

「俺は二枚だ」

 

大樹海の効果で手札に加えていた、イナゴの軍勢、代打バッター、アルティメット・インセクトLV5は墓地に送られたか。あの三枚は単体ではそこまで強くないから、手札枚数は負けているが、手札の内容では俺の方が優勢だったが。

 

「墓地の代打バッターとイナゴの軍勢をゲームから除外し、デビルドーザーを特殊召喚する」

 

A2800・D2600

 

現れたのは巨大なムカデだ。さっきも言ったが、ある意味これくらいの大きさの方が気持ち悪くない。最も、まじまじと見ていると気分が悪くなるから、長時間見ていたいものではない。

 

甲虫装甲騎士(インセクトナイト)召喚!」

 

A1900・D1500

 

レベル4の通常モンスターで攻撃力1900と優秀なステータスを持っているカード。

高等儀式術でこいつを墓地に送り終焉の王デミスを召喚。効果でライフを2000払い、フィールドを一掃し、高等儀式術で墓地に送った昆虫二体を除外し、デビルドーザーを呼ぶ流れが一時期はやった。何しろその当時は高等儀式術も巨大化も制限が掛かっていなかったし、デビルドーザーを呼ばなくとも、デミスに巨大化を付けても良かったので、かなり強いデッキだった。

 

「バトル! 甲虫装甲騎士(インセクトナイト)でレヴィを、デビルドーザーでシグナムを、アルティメット・インセクトLV7でシャマルを攻撃!」

「罠発動、プロテクション。このターンシャマ姉は戦闘で破壊されない」

 

A1900 VS D0

A2800 VS D1300

A2700 VS D1100

 

ここまで上級の昆虫族を並べられたら、アルティメット・インセクトの効果を無効にしても攻撃を止める事は出来ない。夜天の書がいるから、ドロー効果も期待できるシャマ姉にプロテクションを掛けたのが吉と出るか凶と出るか。

 

鉄綱装甲虫(メタルアーマードバグ)で夜天の王・八神はやてを攻撃!」

「王様はやてさんの効果。このカードのLCを取り除き、アルティメット・インセクトLV7の効果を無効にする!」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)』』

 

LCはやて1→0

はやてA2400→A3100 VS A2800

 

夜天の書と闇の書から放たれた先の尖った禍々しい黒の鎖。その鎖はアルティメット・インセクトLV7を縛り上げ、羽を止めて地面へと引きずり下ろす。

 

モスLP3500→3200

 

「グッ! だがこれでカウンターを0にした。大樹海の効果で二枚目のデビルドーザーを手札に加える。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札2 LP1800

モス モンスター3 伏せ3 手札2 LP3200

 

相手フィールドにはデビルドーザー、鉄綱装甲虫(メタルアーマードバグ)、アルティメット・インセクトLV7。合計レベルは19。アギトの効果でのバーンは不可能か。

 

「ドロー! よしっ、フェイトを召喚!」

『・・・・あっ、頑張ろうね』

 

フェイトA1800・D500→A1100・D0

LCフェイト1

 

なんか考え事していたみたいだけど、気の所為か? まあ何にせよ今はデュエルが大事だ。

 

「闇の書のLCを取り除き、アルフを特殊召喚。場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

フェイトA2800・D500→A2100・D0

LC闇の書1→0

 

「これで終りにしてやる。場の黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に、迅雷の化身フェイトを特殊召喚!」

 

強靭なパワーと目に留める事は出来ないスピードを持つ雷。その雷を体に纏わせ、雷で自らの体を作った、王様はやてさんと同じ最強の魔導師。

 

フェイトA3300・D0→A2600

 

「(ック、そのモンスターだとセットカードが発動できない・・・・)」

「シャマ姉の効果で、王様はやてさんにLCを乗せて効果発動! アルティメット・インセクトLV7の効果を無効にする!」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)』』

 

はやてA2400・D2100→A3100・D2800

フェイトA2600→A3300

シャマルA100・D1100→A800・D1800

 

「バトルだ! 雷フェイトさんでアルティメット・インセクトLV7を攻撃!」

『ファランクス使う必要もないか』

 

A3300 VS A2700

 

フェイトさんは指で鉄砲を作り、人差し指の先にフォトンスフィアを形成する。そして『バン』とクールに囁くと、フォトンスフィアからフォトンランサーが発射され、小さな一発の弾丸がアルティメット・インセクトの体を貫通し破壊した。

 

モスLP3200→2600

 

「ぐあああああ! アルティメット・インセクトが!?」

 

大樹海を使わないって事はデッキにレベル7の昆虫族がもういないって事だろう。最も、このターンで終わりだから手札に加えても意味がないが。

 

「雷フェイトさんは二回の攻撃が可能! デビルドーザーに攻撃!」

『バン』

 

A3300 VS A2800

 

フォトンスフィアから発射された二発目のフォトンランサー。文字通り雷速であろうその速度に、俺はおろか王であるグレート・モスも肉眼で確認できず、いつの間にかデビルドーザーが破壊されていた。

 

モスLP2600→2100

 

「ぐうう! おのれぇぇ!」

「これでフィニッシュ。王様はやてさんで甲虫装甲騎士(インセクトナイト)を攻撃。攻撃宣言時夜天の書の効果で、墓地の祝福の将シグナムをデッキに戻し、攻撃力を1350上げる」

 

はやてA3100→A4450 VS A1900

 

『・・・・昨日の天使の言った事は本当。雑魚』

「俺様を雑魚だと!? 貴様ああああああ!」

 

グレード・モスを見下しながらポツリとそう呟くと、魔法名も言わずラグナロクを発射した。エリート騎士である甲虫装甲騎士(インセクトナイト)も王の一撃にはただの虫も同然。白の砲撃に呑み込まれ、その砲撃は止める事をせずにグレート・モスをも呑み込んだ。

 

「ぐあああああああ!」

 

モスLP2100→-450

 

ソリッドビジョンが消えた頃にはグレート・モスの姿は無く、まるで最初から誰もいなかったかのように、奴がいた証拠すらなかった。

 

「あっけないな。クリスティアが言っていたのが本当なら、気を付けるべき王はあと二人」

 

いや、油断は禁物か。クリスティアが馬鹿って言っていた機械王に苦戦したんだ。例え上下関係があろうと、王である事には変わりは無い。

先程までグレート・モスがいた場所を見下ろしていると、突然腹がグ~と鳴った。朝ご飯食べる前にここまで来たんだったな。

 

「朝飯にでもするか。せっかくなら十代達も誘おう」

 

 

 

 

「遊斗! 大丈夫だったか!? かなり疲れが出たみたいだけど」

「おかげさまで」

「遊斗君ー!」

 

待ち合わせの場所で十代と翔に合うと、十代は優しく笑みを浮かべ、翔は泣きながら俺に抱きついてきた。勿論男に抱かれて喜ぶ趣味は無いので、華麗に回避したが。

 

「本当に良かったッス! あの時遊斗君が助けてくれたッスよね?」

 

あの時・・・・ああ、氷丸と雷丸の時の事か。そう言えば翔は落下している最中に気絶したんだったな。

俺がコクンと頷くと翔は嬉しそうに笑い「ありがとうッス」と言った。

 

「いや、遊斗が無事で「じゃあ行くか」待て! 俺の話を聞け!」

「あれ? 三沢君いたの?」

「最初からいた!」

「いや~、俺も気付かなかった。悪い悪い、三沢もお疲れ様」

 

それから俺達はレストランに入り、それぞれメニューを決めた。十代は相変わらず大食いで、大人二人分の量を注文し、翔はオムライス、三沢はステーキ、俺はハンバーグを頼んだ。

レストランに充満している料理の匂いに、十代はクンクンと犬の様に鼻を鳴らしながら、今か今かと料理が来るのを待っている。

 

「くぅ~、早く来ねえかな?」

「まだ頼んだばかりッス」

「十代は釣りが好きなのに、どうしてせっかちなんだ」

 

肘をつきながら三人のやり取りを聞き、ふと外の景色を見ようとガラスの方を向くと、道端にアロハシャツを着た人物が倒れていた。

 

「アレ、ひょっとして吹雪さん?」

 

俺の声に三人は一斉にガラスの外を眺める。俺達は数秒間沈黙していたが、右手に持っているウクレレを見た瞬間確信した。

 

「あれは」

「絶対」

「ふぶ「吹雪さんだな」・・・・」

 

どういう経緯があってああなったのか知らないが、道端で倒れている先輩を放っておく訳にいかず、十代と三沢が倒れていた吹雪さんを店内に連れて来てくれた。

 

「吹雪さん、何で倒れていたんですか?」

「いや~、所持金を全て使い果たしてしまってね~」

「一体何をしたら所持金を使い果たすんですか・・・・?」

 

十代の質問にケラケラと笑って返答する吹雪さんを見て、ハァとため息をつき、どういった経緯があったのか聞いた。すると吹雪さんは急に暗い顔に変わり、擦れそうな声を出す。

 

「実はね、最近おかしくなったアスリンの為に、何かプレゼントをしようと思ったんだ」

 

アスリンと言うのは明日香の事。

 

「アスリンがおかしくなったのは、きっとストレスから。だからプレゼントを上げてアスリンを癒してあげようと思ったんだ」

 

おかしくなったのはストレスじゃなくて斎王――破滅の光が原因なんだけどね。しかし明日香も愛されているな。これ程妹の事を思ってくれる兄もそうそういないと思う。

 

「それで最初はぬいぐるみを渡したんだけど、すぐに捨てられて。次は化粧道具を上げたんだけどこれも捨てられて。だから次はアスリンが欲しがっていたカードを上げて、それも捨てられて。気が付けば僕の財布とお腹は空っぽさ」

「つまり生き倒れって事ですか・・・・。この平和な時代に」

「だって仕方ないだろう!? アスリンが元に戻るならば僕は何だってする!」

 

最近吹雪さんの姿を見なかったのは、ホワイト生になってしまった明日香を元に戻す為、ストーカーの様に付け回したりプレゼントを贈ったりしていたからだ。吹雪さんも吹雪さんだが、明日香も明日香だ。

 

「あ、あの。こちらステーキセットになります」

「あれ? そんなの頼んだっけ」

「いや。勘違いじゃないスか?」

「俺のだ! ここに置いて下さい!」

「は、はい!」

 

ああ、そう言えば三沢がいたんだった。どうも三沢はすぐに忘れてしまうから困る。なるべく意識して三沢の存在の事を頭に入れておこう。

三沢のステーキが来たから、一気に注文した品がテーブルに置かれて行く。勿論吹雪さんの分の追加も頼み、それもすぐに来た。

 

「うおーっ。上手そうだ! じゃあみんなで」

「「「「頂きます」」」」

 

十代の声を合図に皆料理に手を付けていく。俺がハンバーグを切って口に含む頃には、十代の前にあったサラダが半分無くなっていた。あの細い体の何処にそんな量の食べ物が入るんだよ。

五人で会話しながら食べていると、他の客がチャンネルを弄ったのか、流れていたニュース番組が、海外のプロリーグ生放送へと変わった。

 

「今日の対戦はただいま五連勝中のスペシャル! そしてその相手は地獄から戻ったデュエリスト、ヘルカイザー亮!」

「「「「「え?」」」」」

 

慌ててテレビ画面を見ると、そこには白コートを着ている亮さんはおらず、全身黒尽くめの亮さんが立っていた。エドに負けたのを切っ掛けに、一気に落ちて行った亮さんだが無事に戻ってきたようだ。

それは喜ぶべき所だが、あの亮さんはいつもの亮さんと違う。その事に他の四人も気付いているのか、無言でテレビ画面を見続ける。

 

「君、確か連敗続きのボーイだね」

「下らん挨拶はいらん。さっさとデュエルと行こう」

「分かったよ! ボコボコにしてやる!」

「「デュエル!」」

 

先行のターンに攻撃表示でドル・ドラを出したスペシャルがカードを二枚伏せてターンエンド。

次の亮さんのターン、いきなり大嵐を使いスペシャルの伏せていたミラーフォースと奈落の落とし穴を破壊。未来融合-フューチャー・フュージョンを使い、何とデッキの機械族を全て墓地に送った。そしてオーバーロード・フュージョンを使い墓地の機械族全てを融合し、キメラテック・オーバー・ドラゴンと言う、始めて見るカードを召喚。

その攻撃力は――。

 

「こ、攻撃力16000だと!?」

「バトルだ! キメラテック・オーバー・ドラゴンで攻撃! エヴォリューション・レザルト・バースト!」

 

A16000 VS A1500

 

「う、うわああああああ!」

 

スペシャルLP4000→-10500

 

画面の向こうも、喫茶店内もシーンとした空気に包まれた。バーンダメージやループコンボでは無い、圧倒的なパワーによるワンターンキル。それは昔の亮さんと似ているように見えるが、全然違うデュエルだった。

 

 

 




今回はデュエルは少し短くして、ミニストーリーを進めました。ヘルカイザーも書かないと、原作知らない人はポカーンですし、些細な説明ですが、とても重要なシーンです。
また、全カットしてフェイトの説明で終わらせた美寿知の話も大事です。(原作うろ覚えの奴の小説ですが)
それと吹雪さんの存在をすっかり忘れていたという事。どうして三沢を覚えていて吹雪さんを忘れるんだ・・・・。

前回のデュエルと比べると見応えが減ったかな(前回は八割デュエルだったので)



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第三十五話

今回からついにGX大会が始まります。

と言っても基本的に原作の話は主人公の説明で終了すると思います。また、20の王ですがこれもカット対象になります。もちろんなるべく多くの種族を出す予定ですが、なにぶん種族の数が多すぎるので。ストーリー進行的にも、更新ペース的にもグダグダになってしまうと思うのでご了承ください。

と言っても二期から三期前半までに新オリカを多く出したいので、大幅カットにはならないと思います。


現在ヴィヴィオ要望の声が四件届いています。



修学旅行は無事に終わり、俺達はデュエルアカデミアに帰ってきた。たった数日いないだけだったのに、随分と久しぶりに感じる。修学旅行の間、結局フェイトと二人っきりでデートは出来なかったが、マテリアルズの子達と遊ぶ事は出来たし、十代達ともより一層仲良くなれたから、凄く充実した修学旅行だったと思う。

それに敵の正体が分かり、戦いやすくなった。精霊達(みんな)が戦争の原因で無いと知れたのもいい事だ。

 

「翔。久しぶりに購買「待て十代」とっとっと・・・・」

 

翔を購買に誘おうとする十代の口を塞ぎ、肩を引っ張り翔から遠ざける。

 

「なにすんだよ?」

「あのな。翔は亮さんの事で色々と悩んでるんだ。今はそっとしておいた方がいい」

「・・・・カイザー、いや、ヘルカイザーの事か」

 

翔が亮さんの事でどのように思っているかは分からないが、少なからずショックは受けている筈だ。少し一人で考える時間を与えた方がいいだろう。

 

「それに帰ってきた校長先生の挨拶に行かないといけないだろ。ほらっ、合同教室に行くぞ」

「ええ~。校長先生の話長いからパス」

「そんな事許されるか。ほら、行くぞ」

 

逃げようとする十代の手を掴み、無理やり教室まで引っ張っていく。途中数人の女の子が「キャー!」と黄色い悲鳴を上げていたが、何かあったのだろうか?

 

 

 

 

帰ってきた校長先生の話。それは普段校長先生の話に興味のない生徒でも、普通なら自然と興味が湧いてくるだろう。久しぶりにこうやって全寮の生徒が集まって改めて気付いたが、やはりホワイト寮生が圧倒的に多い。そのリーダーである斎王の姿を探したが、どこにも見当たらない。

 

「そう言えば校長先生ってどんな人ザウルス?」

「ん~、サイバー流の師範代でこの学校の先生だけあって、変わった人だよ。実際旅に出て急に帰ってくるし」

「ふぁ~あ。付け加えると話が長い」

「ふ~ん。けど校長先生が帰ってきたから、クロノス臨時校長は教諭に、ナポレオン教諭はただの先生に戻るドン。これでナポレオン先生もレッドを潰そうとしないザウルス」

「それは良かったけど、早くホワイト寮を何とかして欲しいが」

 

教室中ザワザワとうるさかったが、クロノス先生がパンパンと二回手を叩くと、自然に静かになっていく。変わった生徒が多いこの学校だが、基本的には真面目だ。

 

「それで~ハ。校長先生の登場です~ノ!」

「おお。見知らぬ間に知らない制服の子が増えたな。まあいいか」

「いやいやいや! よくありませんよ校長先生! ホワイト寮の所為で俺がどんなに迷惑掛かってるか! せめてブルー寮から追い出して下さい!」

 

いくら温厚なのはいいことだが、温厚すぎるのはどうかと思う。合同授業かつ校長先生の話が始まったばかりだが、俺は人目を気にせず堂々と発言した。

 

「遊斗! ならお前もホワイトに入るんだ! 白はいいぞ。全てを消してくれる」

「そうよ遊斗。あなたも白の偉大さを――」

「そこの三人~。発言は慎むノデア~ル」

 

クッ、やっぱり万丈目と明日香はおかしいままか。

 

「ゴホン、では早速。今日からこの学園でジェネックス大会を始めたいと思います」

「ジェネックス大会? なんだそりゃ?」

 

十代の呟きに返す様に、校長先生の後ろにある液晶画面に電源が付き、アルファベットのGXの文字が大きく出ていた。

 

「ジェネックス、略してGX(ジーエックス)大会。この大会はこの学校の生徒全員、そして私が世界を旅した時に出会った様々なデュエリストが参加します」

 

なるほど。校長先生が長い間旅に出ていたのは、この大会に参加するデュエリストをいろんな世界から集めに来たのか。それを聞くと一気に校長先生が輝いて見える。

ごく一般の校長先生が長い間席を開けていたら大問題になるが、デュエルアカデミアの校長先生がデュエルの大会を開く為に旅をしたのなら、許される――と思う。

 

「参加者に与えられるのはこのGXメダル。参加者はこのメダルを賭けてデュエルをし、負けたら自分の持っている全てのメダルを勝者に与えます」

「つまり負けたらもうGX大会に参加できなくなるノ~ネ。そして負けた者にはきついお仕置きが待っているノ~ネ」

「「「「「「えええええ!」」」」」」

 

教室のほとんどの生徒が非難の声を上げるが、俺と十代だけは笑みを浮かべただけだった。つまり負けなければずっと参加でき、いずれは優勝する。簡単なルールだ。

 

「因みに参加者は必ず一日に一回はデュエルをしなくてはいけません。これを破った者は失格となります。因みに私が招待したデュエリストは、様々な世界で活躍するプロのデュエリストが多いです。頑張ってください」

「プロと戦えるのかよ。ワクワクするな」

 

こういうのもなんだけど、低レベルのプロなら俺と十代の相手になるとは思えないが。なんたって俺達は、プロの中でも上位に入るエドを破ったんだ。

 

「それではGX大会、スタート!」

 

 

 

 

「へへっ! 早速誰かデュエルしようぜ」

「やる訳ないだろ。今ここでお前とやったらどっちかがここで脱落。そんなの面白くないだろ?」

「そうザウルス。アニキか遊斗先輩とやったら脱落してしまうドン」

「ん? ああ、そうだったな」

 

全くコイツは。本当に目先のデュエルだけしか考えてない。こんなんで良く頭を使うデュエルが出来るよ。

 

「んん~、じゃあ僕は素敵なレディにデュエルを申し込んでくるよ」

「はい。負けないで下さいよ吹雪さん」

「じゃあ俺も「十代、何処行く?」・・・・行ってくる」

 

あれ、今さっき三沢の声したか? でも十代も剣山も何の反応もしなかったからきっと気のせいだろう。

それにしても一日一回とは結構厳しいルールじゃないか? 俺と十代はデュエルアカデミアではエースと言われているから挑んでくる生徒はおろか、俺達が道を歩くと慌てて逃げようとする輩まで出て来る。

 

「こりゃあデュエルの相手見つけるのは苦労しそうだ」

「一応デュエルを挑みさえすれば、相手は断れないルールザウルス。最も、アニキや遊斗先輩の申し出をそう簡単に受ける輩はいないザウルス」

「ちぇっ、面白くね~な~」

 

そんな会話をしていると港に到着した。ここに来たのは十代の考えで、港に居ればアカデミアに来るプロのデュエリストと一番に戦える、と思ったらしい。こう言う時にだけ頭が回転するのは流石デュエル馬鹿だ。しかも十代の読み通り、港には見た事無い船が停められていた。十中八九外からの客だろう。

 

「凄いザウルス。アニキの言った通りドン」

「流石強運の持ち主。お前の案だから、デュエルはお前がやっていいぞ」

「へへっ、サンキューっと。あれ、もしかして斎王じゃねえか?」

 

十代が指差した方には、白の制服を着たロン毛の男がデュエルディスクを構えていた。あんなに分かりやすいのは斎王ぐらいしかいない。

斎王がデュエルしている相手はニュースでよく出ている有名国、ミズガルズ王国の王子、オージーン王子。その身分でありながらデュエルモンスターズの大ファンで、プロデュエリスト試験に合格する程の実力を持っているらしい。

 

「時の女神の悪戯を発動! このターンをスキップし、次の自分のバトルフェイズへと移動。これによりサテライト・キャノンにカウンターが乗り、攻撃力が2000になる。バトル、サテライト・キャノンで攻撃! 攻撃宣言時リミッター解除を発動!」

 

サテライト・キャノンA2000→A4000

 

「ダメージ計算時手札のアルカナフォースⅩⅣ(フォーティーン)TEMPERANCE(テンパランス)の効果。このカードを捨てて戦闘ダメージを0に」

「私のワンターンキルを防いだだと!? だがこれで終わりだ、魔法発動、エース・オブ・ソード! フィールドのモンスターを選択し、コイントスを行う。表だったら相手が、裏だったら自分が選択したモンスター分のダメージを受ける。コイントス!」

 

オージーン王子は自分の運に自身があるのか、自信満々の表情で回転するコインを眺める。だが斎王の前ではコイントスは無意味。斎王のデュエルしている映像を見た事があるがあれは異常だ。

斎王がコイントスをする時、絶対コイントスの結果は――

 

「馬鹿な!? 裏だと!?」

 

斎王の思うがまま。

 

「エース・オブ・ソードの効果で4000のダメージを受けてもらいます!」

「馬鹿なあああああ!」

 

オージーンLP4000→0

 

「ワ、ワンターンキル・・・・」

「いや、斎王はまだドローもしていない。これはワンターンキルと言うよりゼロターンキル・・・・」

「あれ? 三沢先輩いつからいたドン?」

「途中からいた!」

「というか三沢。これゼロターンキルって言うよりただの自爆じゃ・・・・」

 

身も蓋も無いようだが、ギャンブルカードを使ってワンキルをしようとする時点で、デッキ構築が甘いと言うか何と言うか。あの伝説のギャンブルデュエリスト並みの運があるならまだしも。

自爆した事にショックを受けたのか、オージーン王子は茫然として地面にうなだれるが、次の瞬間パッと斎王の方を向いて顔を上げた。

 

「あなたのデュエル、とても感動しました。是非あなたの部下にしてください!」

「オージーン王子!? 何を言っているんですか!?」

 

秘書らしき女性がオージーン王子の突然の行動に口を出すが、オージーン王子はその女性の言う事を聞かず、去っていく斎王に付いて行く。

 

「ま、待ってください王子!」

「・・・・斎王ってすげぇな」

「お前、敵を褒めてどうするんだよ・・・・」

 

 

 

 

三人一緒に相手を探してもそう簡単に見つかる訳でも無かったので、別れて相手を探す事にした。みんなと別れて30分くらい経ったが相変わらず相手は見つからず(逃げられ)非常に困っていた。

 

「ん~、どうするか」

「おい、そこのお前」

 

キョロキョロと辺りを見渡すが、俺以外に人はいない。

 

「・・・・ん? 俺ですか?」

「そうじゃ、お前じゃ」

 

クルッと後ろを振り向くと、アロハシャツではないが薄いシャツを着て、下は水泳のパンツを履いた男性がいた。ダイバーなのか、肌は日焼けして真っ黒だ。

 

「お前、ここの学生じゃろ?」

「はい。あの、あなたは?」

「俺は梶木漁太(かじきりょうた)。GX参加者じゃよ」

 

梶木漁太。詳しくは知らないが聞いた事はある。バトルシティ城之内さんと戦った事のある海を使うデュエリスト――だったと思う。何しろバトルシティ自体俺が子供の頃の出来事だから、遊戯さんと海馬さんのデュエル以外は詳しくは知らない。

 

「GX参加者。と言う事は」

「ああ、お前にデュエルを申し込むぜよ。お前、名前は?」

「遊斗です。遊斗・スカリエッティ。自分で言うのもなんですが、このデュエルアカデミアでは結構強い方ですよ」

「ハッハッハ! いい目をしとる。面白い!」

「「デュエル!」」

「先攻は遊斗にやるよ」

「ありがとうございます。ドロー! コロナ・ティミルを召喚!」

 

LSコロナ・ティミル ☆4/光/魔法使い/A500・D1700

 

登場したのはツインテールをした、健気で礼儀正しそうな女の子。ツインテールにしている髪はキャンディー型のゴムで結んでいる。右手にはクロスミラージュのダガーモードの様なデバイスを持っており、初めての戦場で緊張しているのか、動きが硬い。

 

「む? そのような女子(おなご)が戦えるのか? まさかお前、俺が嫌いなアイドルデッキ使いか?」

「女性が多いですけどアイドルデッキではありません。それに、女の子だからって甘く見てると、ライフが消えますよ? コロナの効果発動! 手札を一枚墓地に送り、デッキからLSゴーレム・ゴライアスを特殊召喚する」

創成起動(クリエイション)!』

 

LSゴーレム・ゴライアス ☆6/地/岩石/A2300・D2300

 

巨大な岩が集結し、人型の巨大なゴーレムへと変わる。そのゴーレムは岩で作られただけではなく、黒の鎧の様な物を付けている。

 

「ほう、いきなり攻撃力2300か」

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

 

「俺のターンじゃ、ドロー! フィールド魔法、伝説の都アトランティスを発動!」

 

梶木さんがフィールド魔法ゾーンにカードをセットすると、突如海の中になり、目の前には海に沈んだ城が建っていた。海の中なので魚も泳いでおり、幻想的な空間と言える。女の子であるコロナもこの光景に感動しているのか、目をキラキラと輝かせていた。

 

「伝説の都アトランティスは水属性の攻守を200上げ、お互いの手札・フィールドの水属性のレベルは1下がる。そしてアトランティスは海として扱う。おっと、そのカード達の効果説明を聞こうかの」

「はい。コロナはデッキからゴーレムを呼ぶ以外には、墓地のこのカードが除外された時一枚ドロー出来ます。そしてゴライアスは相手モンスターの攻撃対象を自分に変更でき、戦闘で破壊された次のターンのスタンバイフェイズ、フィールドにコロナがいたら復活します。因みにこの復活する時、俺のライフを払うか払わないかで攻撃力が変化します」

「なるほどのぉ。確かにこりゃあ女子(おなご)やからと言ってなめる訳にはいかんな。ギガ・ガガギゴを召喚!」

 

ギガ・ガガギゴA2450・D1500→A2650・D1700

 

ギガ・ガガギゴ、とても悲しいストーリーの主人公。カードの説明をすると、レベル5、水属性と言う事で、今回の様にアトランティスの影響下では生贄無しで通常召喚でき、攻撃力が2650まで上がる優秀なアタッカーだ。

 

「バトル! コロナに攻撃じゃ!」

「ゴライアスの効果発動。このカードに攻撃対象を変更します」

 

A2650 VS A2300

 

ギガ・ガガギゴはその強靭な肉体でゴライアスを一発の拳で粉々にして破壊した。ゴライアスもめちゃくちゃ硬い筈だけど、平然と破壊するな。アインハルトもゴライアスを拳一つで破壊した事があるらしい。ほんと、俺の周りの女性は強い人ばかりだ。

 

遊斗LP4000→3650

 

「カードを一枚伏せてターンエンドじゃ」

 

場 伝説の都アトランティス

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札3 LP3650

梶木 モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

 

「ドロー! このスタンバイフェイズ、墓地のゴライアスの効果発動。ライフを500払い、攻撃力を500上げて復活する!」

『蘇れ巨神!』

 

ゴライアスA2300→A2800

遊斗LP3650→3150

 

「攻撃力2800ッ」

「スタンバイフェイズ、もう一枚の効果が発動されます。さっきのターン墓地に送られたリオの効果。手札のこのカードが墓地に送られた次のスタンバイフェイズ、墓地のこのカードを手札に加えます」

「さっきのターンで既にいくつも反撃の布石を用意しとったんか。どうやら強い言うんはホントみたいやな」

「嘘なんて付きませんよ。アインハルトを召喚!」

 

A1300・D1000

 

『アインハルトさん!』

『この姿では私は微力ですが、お互い頑張りましょう』

『はい!』

 

アインハルトの登場にコロナは嬉しそうに笑みを浮かべる。そう言えばこの二人も知り合いか。父さんが作ったカードとネオスペーシアン達から貰ったカードが知り合いって言うのも不思議な話だ。

 

「フィールドにアインハルトがいる時、ティオは特殊召喚できる。効果でライフを1300回復!」

『ティオ、お願いします』

『にゃ~』

 

遊斗LP3150→4450

 

これでゴライアスの効果で失ったライフも回復する事が出来た。相手が普通のデュエリストである以上三幻魔は使えないから、無理にライフを削る必要も無い。

 

「場のアインハルトとティオを融合! 来い、覇王アインハルト!」

 

A2700・D2200

 

「バトル! アインハルトでギガ・ガガギゴに攻撃!」

「むむっ、永続罠グラビティ・バインド-超重力の網を発動! これでレベル4以上のモンスターは攻撃できん!」

「ッツ、面倒なカードを。ターンエンドです。エンドフェイズアインハルトの効果で、融合デッキから聖王ヴィヴィオを特殊召喚。効果でデッキから手札に加えた聖王の鎧を装備」

 

ヴィヴィオA?・D?→A800・D800

 

場 伝説の都アトランティス

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札3 LP4450

梶木 モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

 

グラビティ・バインドを入れていると言う事は、レベル4の水属性をメインとしたデッキ。ギガ・ガガギゴは気軽に通常召喚出来る攻撃力2650のモンスターなので入れているのだろう。

 

「ドロー! アビス・ソルジャーを召喚!」

 

アビス・ソルジャーA1800・D1300→A2000・D1500

 

「効果発動! 手札の水属性モンスターを墓地に送り、そのゴーレムを手札に戻す!」

「ッツ。コロナを守るカードが無くなったか・・・・」

 

この通りアビス・ソルジャーはレベル4にしてはかなり優秀な効果を持っている。バウンス出来るカードに縛りは無く、魔法・罠も手札に戻す事が出来る。また、水属性はサルベージ手段が豊富で、水属性が手札から無くなる事は少ない。

 

「バトルじゃ! アビス・ソルジャーでコロナを攻撃! 当然アビス・ソルジャーは水属性じゃからレベルが下がり、グラビティ・バインドの効果は受けん!」

 

A2000 VS D1700

 

アビス・ソルジャーは両手に持った剣を同時に振り下ろし、コロナを斬り倒して破壊した。これは結構ヤバイかもしれない。グラビティ・バインドの様なロックカードを破壊する手段は、余り多くない。

 

ヴィヴィオA800・D800→A1200・D1200

 

「ターンエンドじゃ」

「エンドフェイズ、ヴィヴィオの効果。このカードを融合デッキに戻し、冥王イクスヴェリアを特殊召喚する」

 

A2000・D2500

 

場 伝説の都アトランティス

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4450

梶木 モンスター2 伏せ1 手札2 LP4000

 

イクスの効果でマリアージュ軍隊長トークンを呼び、次のターンのエンドフェイズまで三王娘とマリアージュを生かし、イクスの効果でグラビティ・バインドを破壊するのは時間が掛かる。出来る限り何らかの方法で攻撃、または破壊をしてアドバンテージを稼ぎたい。

 

「ドロー! イクスの効果発動。マリアージュ軍隊長トークンを特殊召喚する。そしてマリアージュ軍隊長トークンを生贄に、ディアーチェを召喚!」

 

A2100・D1600

LCディアーチェ1

 

『ほう。この網は中々面白い力を持っておる。思う様に体が動かん』

 

ディアーチェはモンスターゾーンをドームの様に覆っているグラビティ・バインドの網を、エルシニアクロイツてツンツンと突いている。もう少しデバイスは大切にしろ・・・・。

 

「リバースカードオープン、フェイクシルエット。デッキのなのはを墓地に送り、ディアーチェをなのはとして扱う」

『貴様! 我の誇り高き名前を変えるとは――』

「魔法発動、ディバインバスター。なのはがいる時発動可能。ディアーチェのLCを取り除き、グラビティ・バインドとギガ・ガガギゴを破壊する!」

 

ディアーチェは今一納得しない表情だが、渋々と言われた通り砲撃魔法を放ち、グラビティ・バインドとギガ・ガガギゴを破壊した。ただ魔力光の関係から、ディバインバスターに似ても似つかない。

 

LCディアーチェ1→0

 

「一ターンで破壊されてしまったか」

「破壊しないと突破困難ですからね。バトル! ディアーチェでアビス・ソルジャーを攻撃!」

『アロンダイト!』

 

A2100 VS A2000

 

エルシニアクロイツの杖先から放たれた砲撃魔法。それに対抗するようにアビス・ソルジャーは口から高威力の水を発射する。だがアビス・ソルジャーのやりたかった事は実現される事は無く、アロンダイトは秘めた効果を発動する前に、アビス・ソルジャーの体を呑み込み破壊した。

 

梶木LP4000→3900

 

「イクスで攻撃!」

『えっと、インフィニートゥムマリアージュ!』

 

イクスの周りの地面からゾンビの様に複数のマリアージュが現れ、自分の腕を銃やガトリングガン、スナイパーと言った遠距離武器に変化させ、梶木さんに一斉射撃した。

 

「ぐう。ホントに強いのぉ」

 

梶木LP3900→1900

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、イクスを融合デッキに戻し、ヴィヴィオを特殊召喚する。そして墓地の聖王の鎧を装備」

 

ヴィヴィオA?・D?→A1200・D1200

 

場 伝説の都アトランティス

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP4450

梶木 モンスター0 伏せ0 手札2 LP1900

 

手札、フィールド、ライフ、全てにおいて俺が勝っている。油断している訳ではないが、やはりこの学校に入ってデュエルタクティクスにより磨きが掛かったようだ。数年前の俺ならこんな事出来なかっただろう。

 

「俺のターンじゃ、ドロー! コダロスを召喚!」

 

コダロスA1400・D1200→A1600・D1400

 

海デッキのエースともいえるダイダロス。その子供なのか幼少期なのか知らないが、ダイダロスが小さくなったのかコダロスだ。効果もダイダロスと同じで強力な効果を持っている。

 

「コダロスの効果発動! フィールドの海を墓地に送る事で、相手フィールド上のカード二枚を墓地に送る。俺が選択するのはビビオとディアーチェじゃ!」

「ビビじゃなくてヴィヴィです。チェーンして罠発動、ソニックムーブ。エンドフェイズまでヴィヴィオをゲームから除外する」

「逃がしたか。けどモンスターはおらん。コダロスでダイレクトアタック!」

 

A1400

 

コダロスは海の中に居るかの如く、スイスイと空中を泳いで接近し、俺の腕を噛みついてくる。勿論ソリッドビジョンだから痛みは感じない。

 

遊斗LP4450→3050

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、除外したヴィヴィオがフィールドに戻り、効果発動。このカードを融合デッキに戻し、融合デッキからアインハルトを特殊召喚する」

 

遊斗 モンスター1 伏せ0 手札3 LP3050

梶木 モンスター1 伏せ2 手札0 LP1900

 

「ドロー! リオを召喚! 効果で墓地のコロナとディアーチェをゲームから除外し、攻撃力を200アップ。更に除外されたコロナの効果でデッキから一枚ドロー!」

 

リオA1700・D500→A2200

 

「バトル! アインハルトでコダロスを攻撃!」

「させん、永続罠忘却の海底神殿を発動。このカードがフィールドに存在すり限り、このカードは海として扱う。更に一ターンに一度、レベル4以下の魚族・海竜族・水族モンスター一体をゲームから除外できる。コダロスを除外じゃ!」

 

始めて見る永続罠だな。フィールドにいる限り海として扱う、と言う事は、アトランティスの様にデッキで海と扱わないから複数枚デッキに入れる事が可能なのか。しかし海がある状態でフィールドをがら空きにしたって事は。

 

「一応アインハルトで攻撃しますけど、何か発動しますか?」

「このセットカードが分かった様じゃの。永続罠、竜巻海流壁(トルネードウォール)を発動! このカードがフィールド上に海が存在する場合に発動可能。このカードがある限り俺が受ける戦闘ダメージは0になる」

 

梶木さんに向け突撃するアインハルトだったが。忘却の海底神殿の水が突如荒れ、竜巻の壁を発生した事により接近が不可能になった。永続で戦闘ダメージ0は強いが、和睦の使者の様にモンスターを守るのは不可能。だが忘却の海底神殿の効果でフィールドのモンスターを減らす事で、その弱点を埋めたのか。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、アインハルトを融合デッキに戻し、イクスを特殊召喚」

 

問題は次のターン梶木さんがコダロスの効果を発動してくるか。伝説の都アトランティスを引かなければ発動しないだろうが、コダロスの墓地に送る効果は強力だ。

 

「同じくエンドフェイズ、海底神殿の効果でコダロスを特殊召喚する」

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP3050

梶木 モンスター1 伏せ2 手札0 LP1900

 

「しかしお前は手札が無くならんの」

「そうですかね? これでもこのデッキの中核となるカードは出してないんですが」

 

なのはさんは勿論、切り札のIF形態を一回も出してないし、墓地にLSが溜まっていないからヴィヴィオさんの攻撃力も貧しい。

 

「そりゃたまげた。デュエルアカデミアも大したことないと思っておったが、こりゃあ考え方を変えんといかんぜよ。俺のターン、ドロー!」

 

これで手札は1枚。アトランティスデッキはコンボデッキ。いくら海があるからとはいえ、そう簡単にこのフィールドを突破できるとは思えない。

 

「モンスターをセット。ターンエンドじゃ」

「エンドフェイズ、イクスをデッキに戻し、アインハルトを特殊召喚します」

 

リオA2200→A1700

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP3050

梶木 モンスター2 伏せ2 手札0 LP1900

 

あのセットモンスター・・・・怪しい。グリズリーマザーの様なリクルーターなら一番いいが、メタモルポット、ペンギンソルジャーと言った優秀なリバースモンスターだったら一気に状況が悪くなる。かといって対処せずに梶木さんにターンを回してしまえば、もっと危険な状況になるかもしれない。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

一番いいのはユニゾンヴィータさんで破壊するのだったが、この手札では無理だ。予想以上にゴライアスが手札に溜まる。いくら特殊召喚条件が緩いからと言って、通常召喚出来ないデメリットは辛い。そう言えば俺、手札交換カードとかほとんど入れてないもんな。

 

「リバースカードオープン、Asの回収。除外されたコロナとディアーチェを墓地に戻し一枚ドロー。そしてリオの効果発動。さっき墓地に戻したコロナとディアーチェをゲームから除外し攻撃力を200上げる。そして一枚ドロー」

 

リオA1700→A2200

 

う~ん、こんなに引いたがやっぱり揃わなかったか。デバイスマイスターもLCが二つ無いとツヴァイを手札に加えられないからな。やっぱりLCが軸となるから、ミッドチルダや時空管理局、シャマ姉が来ないと回りが遅い。

 

「デバイスマイスターを発動。デッキから闇の書を手札に加える。ヴィータを通常召喚し、闇の書を装備させる」

 

ヴィータA1900・D1200→A2200

 

「カードを三枚伏せてバトル! コロナでセットモンスターを攻撃!」

「ハッハッハ、甘かったな。セットモンスターはスノーマンイーター!」

 

表になり正体を現したモンスターは、牙のついた怖い雪だるま。小さい子供が見たら100%泣きだすであろう、子供の夢をぶち壊すようなモンスターだ。しかもよく見て見ると雪だるまの下に、同じく牙の尖った緑色のモンスターが隠れている。おそらくあれが正体だろう。

 

A2200 VS D1900

 

「スノーマンイーターの効果発動じゃ。このカードがリバースした時、表側表示のモンスター一体を破壊する! アインハルトを破壊じゃ!」

 

しかも嫌らしい事のこの手の効果は、ダメージステップの最中に発動する効果。墓地のソニックムーブを除外して回避する事は不可能だ。

スノーマンイーターの下にいた生物が突然雪だるまの中から飛び出し、アインハルトに襲い掛かる。突然の奇襲に対処する事が出来ず、アインハルトは緑の生物に押し倒されてしまう。い、いかん・・・・。アインハルトは苦しんでいるのに、妙にいやらしく見えてしまう・・・・。年頃男だからそう見えてしまうのか、梶木さんの目はアインハルトを見ながらも、純粋にデュエルを楽しんでいる。

 

LC闇の書0→1

 

「ん゛ん゛。ターンエンドです」

 

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札1 LP3050

梶木 モンスター1 伏せ2 手札0 LP1900

 

「ドロー、強欲な壺を発動してデッキから二枚ドロー。動いた方がええの。コダロスの効果発動。海として扱っている海底神殿を墓地に送り、ヴィータと一番右の伏せを墓地に送る」

「ここで動いてきたか。墓地の闇の書の効果発動。リオに装備する。更に海が無くなった事で竜巻海流壁(トルネードウォール)が破壊されます」

 

リオA2200→A2500

 

荒れていた海底神殿の海は、文字通り嵐が去った後の様に静かになり、その海底神殿もコダロスの効果でスッと消えて行く。態々この二枚を墓地に送ってまで動く必要があったのだろうか?

 

「機海竜プレシオンを召喚。このモンスターは自分フィールド上に海竜族がいる時生贄無しで召喚できる」

 

機械の械と海を掛けているだけあり、現れた海竜族モンスターは機械の装甲を纏っていた。プレシオンの由来である、ジュラ紀に生息していたプレシオサウルスそっくりで、剣山が見たら喜びそうだ。

 

「魔法発動、浮上。自分の墓地の魚・海竜・水族モンスター一体を特殊召喚する。スノーマンイーターを復活させ、プレシオンの効果発動じゃ! 水属性モンスターを生贄に、相手モンスターを破壊する! リオを破壊!」

 

これでフィールドはがら空き。梶木さんは勝利を確信したのかニヤリと口元を上げる。

 

「闇の書の効果は強制効果です。プレシオンに装備させます」

 

プレシオンA2300→A2600

 

「バトル! プレシオンでダイレクトアタックじゃ!」

 

A2600

遊斗LP2950→350

 

「コダロスでダイレクトアタック!」

 

A1400

 

コダロスは俺に向かって突進して、その大きな口で俺の腕を噛みつこうとしたが、青い狼によって進行を阻止されてこれ以上俺に近付けなくなった。

 

「手札のザフィーラの効果発動。手札を捨てる事により戦闘ダメージを0にする。そして0にしたダメージが自分のライフより上だった場合デッキから一枚ドローする」

「そんなカードをもっとったんか。これでターンエンド」

 

遊斗 モンスター0 伏せ3 手札1 LP350

梶木 モンスター2 伏せ0 手札0 LP1900

 

一気にモンスターを倒され、更にはライフも逆転されてしまった。伏せ的に絵的にも可愛い恋人の顔が見たくなったんだが。

 

「ドロー! やっぱり勝利の女神だよ。フェイトを通常召喚! 効果でLCを置く!」

『わ、私は女神なんて柄じゃないよ』

 

LCフェイト1

A1800・D500

 

そんな事無い。フェイトは女神みたい――ううん、女神が擦れて見える程可愛いよ、と梶木さんに引かれない様に声に出さず口で伝えると、それが伝わったのか顔を真っ赤にしてプイッと前を見てしまった。あ~、やっぱりフェイトは癒されるな~。

 

「リバースカードオープン。永続魔法、魔力高炉。発動後このカードにLCを二つ乗せる」

「な、何で永続魔法をセットしとるん!?」

「スノーマンイーターがセットされていた時、メタモルポットも可能性もありましたから伏せていたんです。フェイトの効果発動。LCを取り除きアルフを特殊召喚。場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LC時空管理局2→1

A2800・D500

 

「バトル! 黒騎士フェイトでプレシオンに攻撃! 黒騎士フェイトは目の前の敵と戦う時、攻撃力を700上げる」

『トラインデントスマッシャー!』

 

フェイトA2800→A3500 VS A2600

 

フェイトさんは持ち前のスピードでプレシオンを困惑させ、その隙に相手の死角に移動。そこから数秒間いつもより長くエネルギーを溜め、トライデントスマッシャーを発射させた。並大抵の攻撃なら巨大な体で無効化してしまうが、死角からの溜め攻撃、更に普段浴びた事無い電圧にプレシオンは耐える事は出来なかった。

 

梶木LP1900→1000

 

「ぐああああ! けどまだ「速攻魔法ユニゾンアウト発動」なに!?」

「黒騎士フェイトの融合を解く。更に闇の書の効果でフェイトに装備」

 

フェイトA1800→A2100

 

「バトル続行! アルフでコダロスを攻撃!」

『いっただっきまーす!』

 

A1600 VS A1400

 

いやいや、食べちゃ駄目だよアルフ。狼状態のアルフはコダロスをバクリと噛むが、ソリッドビジョンのモンスターが現実のモンスターと同じな訳がなく、バリンと音を立て粉々になった。

 

梶木LP1000→800

 

「俺の負けか・・・・」

「フェイトでダイレクトアタック!」

『サイズスラッシュ!』

 

A2100

 

ソニックムーブを使い梶木さんの目の前まで、瞬間移動かと思うスピードで移動したフェイトは、サイズフォームのバルディッシュで梶木さんの体を一斬りした。ソリッドビジョンなので当然実際に痛みは無いが、迫力は十二分にあった。

 

「グッ・・・・」

 

梶木LP800→-1300

 

「いや~。まさか初日で負けるとは思わんかったぜよ」

「俺も初日からこんなに強いデュエリストと戦えるとは思いませんでした」

 

アトランティスを使った水属性のデッキ。それに見た事のない忘却の海底神殿という永続罠カード。本当に面白かった。

梶木さんと握手をすると、梶木さんはバッグの中に入れていたGXメダルを全部くれた。計11枚あり、これで俺の所持メダル数は12枚と一気に増えた。

 

「んじゃな。またいつかリベンジするぜよ」

「あっ、待って下さい。あの忘却の海底神殿って言うカード、どこで手に入れたんですか?」

「ん? ああ、漁をしてた時に拾ったぜよ」

 

ふ~ん、また変な所にあるカードだな。というよりあんなカードを知らないなんて、俺もまだまだ勉強不足か。

 

 




ぜよぜよ。梶木さんの口調分からなかったから凄く安定してないぜよ。


vivid組も遂に出ました。あと予定ではシャンテとヴィクトーリア確定。ジークは未定。
シャンテは面白い魔法を使うのでカード化を。ヴィクトーリアは作者が好きだからです。

あとアイシスとアリサとすずか、聖王教会、無限書庫も確定。ルール―はスカさんにするか優斗にするか、ホントどうしよう・・・・。


前書きにも書きましたが、ストーリーに関係無い突拍子に出る新オリカは三期前半までに出しておきたいんですよね。
なのでまた新オリカ登場のラッシュになるかもしれません。(ならないかもしれませんけど)



今回の新オリカ


LSコロナ・ティミル ☆4/光/魔法使い/A500・D1700
1ターンに1度手札を1枚墓地に送ることで、デッキから「LSゴーレム・ゴライアス」を特殊召喚できる。また、墓地に存在するこのカードが「LS」と名のつくモンスターの効果によってゲームから除外された時、自分はデッキから1枚ドローする。


LSゴーレム・ゴライアス ☆6/地/岩石/A2300・D2300
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上のモンスターが攻撃対象に選択された時、このカードに攻撃対象を変更することができる。
フィールド上に存在するこのカードが戦闘で破壊され墓地に送られた場合、次のターンのスタンバイフェイズ時にライフを500払い、このカードを墓地から自分フィールド上に特殊召喚する。この効果は自分フィールド上に「LSコロナ・ティミル」が存在しない場合発動できない。
この効果によって特殊召喚に成功した時、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。






まずはコロナ。
最初は地属性にしていたんですが、リオとの相性を考えるとやっぱり光の方がいいと思って光にしました。イメージと合わない人は、コロナの笑顔が眩しいから光と無理やり思ってください。
手札コスト一枚で2300は純粋に強いです。シンクロやエクシーズがあったら間違いなく悪用されますでしょう。けど特殊召喚以外は破壊耐性を持っている訳ではなく、最近のデッキを見ると、普通に強いレベル。


次にゴライアス
このカードも普通に強いですね。特に攻撃対象変更が強いと思います。復活効果も強いですが、いくら攻撃対象を変更できるとはいえ、コロナを破壊されたらおしまいです。ですのでどっちかと言うと攻撃対象変更が強いかと。
モンスターが並んでいない前半、特に先行で活躍します。逆にリオは後半で活躍します。



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第三十六話 (修正)

今回結構文字数多いです。ま、まあクリスティアの回の感想を見る限り、意外とみなさん長い方が好きだと思います。


最近感想を見返して改めて、沢山の方に見ていただいてるな~と皆様に感謝していたのでですが、ヴィヴィオの票がメッセージを含めて五件でした。
数え間違い申し訳ありません。すぐに反映できませんが作りたいと思います。


それとオリカの案募集していたナンバーズですが、なにぶん数が多いので、まだ全てのカードは決まっていませんが

アルテリオン様作 ドゥーエ
夜の魔王様作 クアットロ
凡人で平凡な人様作 ノーヴェ

をある程度改良して採用させて頂こうと思います。ありがとうございました。
他のカードの案も頂いたのですが、イメージと違うので他のカードの参考にさせてもらいます。申し訳ありません。


まだしばらく募集期間は続きます。
詳しく書かなくても、このナンバーズはこんな効果みたいなのはどう? とザックリとした感じでもかまいません。
ただセインはディープダイバーの様な効果はどう? 等余りにもザックリしているとカード化できません(そこで困っているので)



追記
一部修正しました。詳しい修正点は第三十七話の前書きに書いております。申し訳ありません。


梶木さんとデュエルをしてから数時間、俺は積極的にデュエルを挑みどんどんGXメダルを増やしていた。やはり梶木さんの様に短時間で12枚も集める事は困難の様で、それから貰ったメダルは7枚とそこまで多くない。デュエルを挑んだ相手にはホワイト寮の生徒がいたが、負けなければ洗脳される事も無いので遠慮なくGXメダルを頂いた。

 

「これで20枚か。幸先が良いな」

「多分今の所遊斗が一番だと思うよ」

「いや。梶木さんの前例があるからな。多分もっといってる人もいると思う。まあ今日は結構デュエルしたし――」

 

俺が突然声を区切ったのが気になったのか、前に歩いていたフェイトはピタリと止まり、こっちを振り向いた。フェイトが俺の方を向いたのを確認すると、右手でフェイトを抱き寄せる。

 

「フェイトとイチャイチャでもしようかな?」

「ふぇ!? だ、駄目だよ。ここ外でっ」

「もうアカデミアのみんな知ってると思う。俺に小さくて可愛い恋人がいる事」

「小さくては余計・・・・」

 

と、少しぶっきらぼうな声で返してきたが、俺の腕の中で頬が緩んでいるのが確認できる。冬が近づいてきて体が少々冷えていたが、フェイトと触れ合っている部分だけ暖かくて心地いい。

もう付き合って数ヵ月。そろそろ・・・・いいよな?

フェイトに気付かれない様に辺りをキョロキョロと見渡し、誰もいないのを確認すると、膝を折ってフェイトと同じ高さにする。

 

「あっ・・・・」

「フェイト・・・・」

 

燃えるようなルビーの瞳。普段は凛とした目で見つめてくるその瞳は、近づいてくる俺の顔の所為か少しトロンとしており、幼い顔立ちが妖艶に見える。その表情に思わずゴクッと唾を飲み込み、ゆっくりとフェイトの唇に自分のそれを近付ける。フェイトも受け入れてくれるのか、瞳を閉じてジッと待ってくれていた。そして俺とフェイトの唇が重なる――事は無かった。突然フェイトはカッと目を開き俺を突き飛ばしたのだ。

 

「なっ!?」

 

次の瞬間ドガーン! とさっきまで俺達が居た場所が爆発する。刹那、後ろに殺気を感じたので、確認する前に後方へ回し蹴りをする。

 

「フッ」

 

だが回し蹴りは鍛えられた片手で止められてしまい、そのまま足ごと体を持ち上げられ近くにあった木へと投げられた。しかし毎朝シグナムさんと訓練した成果は確実と出ているようで、飛ばされている最中に空中で回転し、地面に足を付ける。

着地すると同時にポケットから数枚使わないカードを手に加え、俺を投げた奴に投げつける。投げたカードは奴のデュエルディスクに弾かれたが、その隙に接近して顔面に飛び膝蹴りをくらわせた。

 

「がふっ!?」

「Photon Lancer」

 

男を蹴り飛ばすと同時に感情のこもっていない男性の声――バルディッシュの声を合図に、黄色の弾丸が俺の視界を物凄いスピードで横切り大きな爆発音を上げた。

 

「大丈夫かフェイト!?」

「うん、セットアップする必要も無かったよ。それより遊斗こそ大丈夫?」

「数枚カードを駄目にしてしまったけど何とか」

 

フェイトは驚いたのか目を大きく開いたが、すぐにおっとりとした優しい目に変わり「成長したね」と微笑んでくれた。声のトーンが昔のフェイトお姉ちゃんの時によく似ており、恥ずかしかったがとても嬉しかった。

 

「あいつ等はいったい・・・・」

 

爆発により土煙が舞った方を睨みつけると、中から二人の男の笑い声が聞こえた。

 

「いくら人間の体とはいえ、まさか人間のガキに顔を蹴られるとは。こいつは面白ぇ」

「だから言ったではないか。こんな事をせず、デュエルを挑もうと」

「・・・・お前達、王か?」

 

土煙の中から現れたのは二人の人間では無かった。

下半身にライオンの体、上半身に人間の体を持ち、人間の顔にはライオンのたてがみが付いている。獣戦士族モンスター、神獣王バルバロス。

自然に鍛えられた紫色の巨体、一瞬炎かと思う程サラサラとした青い毛、顔には巨大な角を持ち、口に付いている牙は普通の動物よりもはるかに多い。獣族モンスター百獣王(アニマル・キング)ベヒーモス。

二体ともソリッドビジョンで見た時と全く同じ大きさだが、放つプレッシャーと存在感はソリッドビジョンとは比べ物にならない。

 

「私は獣戦士族の王、バルバロス」

「俺は獣族の王、ベヒーモスだ」

「一気に二人か。けど俺は一人なんでね。順番にデュエルするのか?」

「いや、我々は自分の力がどれ程のものか分かっているつもりだ。だから1対1ではお前に勝てないだろう」

 

なるほど、だから2対1のデュエルを申し込むって事か。それは面白い。

けど俺だって命賭けのデュエルであえて不利になる様な条件をのもうとはしない。いくらデュエル馬鹿でもそれくらいの理性はある。

 

「残念だがその条件はのめない。態々不利なデュエルをしようとは思わない」

「勿論こっちにも切り札はある。これを見ろ」

 

ベヒーモスが出したのは一枚のカード。獣族のカードかと一瞬思ったがそれは違った。あれは小さいヴィヴィオのカード。

ッツ! 慌ててデッキの中身を見るが、迷い子ヴィヴィオのカードは見当たらない。さっきのやり取りの最中に一枚抜いていたのか。俺を脅す気か・・・・。

 

「デュエル開始時にこのカードをお前に返す。勿論デッキに入れていい。シャッフルはしてもらう」

「破滅の光の言う事なんか信用できるか。なんなら力付くで!」

 

ギリッ歯を噛みしめながら低姿勢になり、地面を力強く蹴ろうとした瞬間、ベヒーモスが口を大きく開いた。

 

「おっと、一歩でも動いたり、精霊がこれ以上デッキから出たらこのカードを破る」

「安心しろ。非道な手段を使っているが、我々は嘘を付かん」

「・・・・いいだろう。ターンの進みはどうする? 俺の初期手札やLPは?」

 

俺に拒否権は無かったので、大人しくあいつ等の言う通りにするしかない。

変則デュエルの場合、こうやってしっかりとルールを決めておかないと、あと後面倒な事になる。二人はあらかじめ決めておいたのか相談する素振りを見せず、バルバロスが喋った。

 

「お前→私→お前→ベヒーモス→お前の順にやる。お前のライフポイントと初期手札は通常のデュエルと一緒、こちらはライフ8000でそれぞれ初期手札5枚。我々のフィールドや墓地は共通」

 

初期手札5枚の差とライフ4000が向こうに与えられるって事か。つまり俺は一人で、向こうがタッグデュエルで戦うと考えるのが分かりやすいだろう。

 

「いいだろう。約束は守れよ」

「勿論だ」

「さあ行くぜ!」

「「「デュエル!」」」

「さあ! デュエルは始まった。ヴィヴィオを返せ!」

 

ベヒーモスは約束通りカードをシュッと俺へと投げる。人差し指と中指の間で飛んでくるカードをキャッチして、カードに目を落とすと、しっかりヴィヴィオのカードがあった。

 

『ふぇぇ。ごめんなさい・・・・』

「いいんだ。カードを取られたのは俺の責任だ。シャッフルさせてもらう」

 

バルバロスとベヒーモスが頷くのを確認すると、一回デュエルディスクからデッキを取り外し、ヴィヴィオのカードを入れて再びシャッフルする。あいつ等にもシャッフルする権利はあるのでデッキを差し出したが、二人とも首を横に振った。

 

「じゃあ改めて。俺のターン、ドロー! フィールド魔法ミッドチルダを発動!」

 

マイナスイオンを発生していた森林地帯が、一気に近未来都市へと変わる。数多の次元世界の中心地、ミッドチルダの街中で堂々とデュエル出来るのは、ソリッドビジョンでしか出来ない贅沢だ。

 

「なのはを通常召喚。効果でミッドチルダと自身にLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1 なのは1

 

『この人達、プライドは持ってる人だけど許せない!』

「ああ。ミッドチルダの効果でなのはのLCを移動。そしてデッキからユーノを特殊召喚!」

 

LCなのは1→0 ミッドチルダ1→2→1

 

「場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは! 効果でデッキからコロナを手札に加える。カードを二枚伏せてターンエンドだ」

『ヴィヴィオを怖い目に合わせた事。絶対に許さないから!』

 

A1000・D3000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「私のターン、ドロー!」

 

左手に持った盾をデュエルディスクにし、右手の槍を地面に突き刺してバルバロスはデッキからドローした。獣戦士族と獣族は違う種族だが、サポートカードを共通で使える珍しい種族だ。水族・魚族・海竜族と同じで、種族の枚数は少ないが、使いやすく強力なサポートが多い。

 

「ジェネティック・ワーウルフを召喚!」

 

A2000・D100

 

遺伝子操作により四本の手を手に入れ、優しき心を失った可哀そうなモンスター。レベル4通常モンスターで2000と、アレキサンドライドラゴンと並んで最も高い攻撃力を持つ。

 

「バトル! ジェネティック・ワーウルフで高町なのはを攻撃!」

「速攻魔法アイゼンゲホイルを発動。このターンのバトルフェイズを終了させる」

「なるほど。カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

神獣王 モンスター1 伏せ2 手札3 LP8000

 

「俺のターン、ドロー! なのはさんの効果発動。デッキからリオを手札に加える。コロナを召喚」

 

LCミッドチルダ1→2

A500・D1700

 

「コロナの効果発動。手札のリオを墓地に送り、デッキからゴライアスを特殊召喚する」

『創成起動(クリエイション)!』

 

A2300・D2300

 

辺りの地面が突然ゴゴゴゴ、と音を立てて盛り上がる。盛り上がった地面は徐々に形を変え、次第に足、腰、体、手、首、顔に形を変えて行き、最終的には黒の鎧を付けたゴーレムが登場した。

 

「バトル! ゴライアスでジェネティック・ワーウルフを攻撃!」

「甘いぞ。罠発動、幻獣の角。発動後このカードは装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力を800上げる。更に装備モンスターが戦闘で相手を破壊した時、デッキから一枚ドローする」

 

ワーウルフA2000→A2800 VS A2300

 

ジェネティック・ワーウルフの頭の天辺に生えた神々しい角が、ジェネティック・ワーウルフにパワーを与える。ゴライアスの拳を三本の腕で受け止め、残り一本の腕でゴライアスの体を突き破った。

ゴライアスが爆発した時の衝撃が俺に襲い掛かる。その衝撃から両手をクロスにして防ぐが、制服の腕の部分が破れていく。

 

「ッツ、まだまだ」

 

遊斗LP4000→3500

 

「お前、かなり鍛えられているな。いい師に鍛えられたな」

「お前達みたいな奴等と戦う為にな」

 

と、言ったものの、シグナムさんの事を褒めてくれたのは素直にうれしい。

バルバロスと言いクリスティアといい、破滅の光だからと言って、決して悪い奴では無いのかもしれない。破滅の光では無く、精霊だったり普通の人間だったりしたら、友達になれていたかもしれない。

けど悲しい事にコイツ等は破滅の光。どんなにいい奴でも、破壊衝動を持っている危険な奴らだ。ここで生かしておく訳にはいかない。

 

「幻獣の角の効果。デッキから一枚ドローする」

「これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札3 LP3500

神獣王 モンスター1 伏せ2 手札4 LP8000

 

「今度は俺のターンだ、ドロー! おっ、いい引きじゃねえか」

「この瞬間墓地のゴライアスの効果発動。フィールドにコロナがいる時ライフを500払い、攻撃力を500上げて復活する」

 

ゴライアスA2300・D2300→A2800

遊斗LP3500→3000

 

「うおっ、再生効果持ちか。ワン・フォー・ワンを発動、手札のモンスターを墓地に送りキーマウスを特殊召喚」

 

A100・D100

 

首に鍵の掛かったリボンを付けた可愛らしいネズミが現れた。やっぱり低レベルの獣族は可愛らしいのが多い。

 

「モンスターをセット。バトル! ジェネティック・ワーウルフで高町なのはを攻撃!」

「ゴライアスの効果発動。攻撃対象をこのカードに変更する事が出来る!」

 

A2800 VS A2800

 

なのはさんに向かって突進してくるジェネティック・ワーウルフを巨大な両手でガッシリと掴むゴライアス。ジェネティック・ワーウルフも負けじと四本の腕をゴライアスの体に拳を打ち込むが、ゴライアスの力によってペチャンコにされた。だがゴライアスも限界だったのか、バラバラになりただの石の山となった。

 

「攻撃対象を変更されたか、すまねえバルバロス。俺はこれでターンエンドだ。エンドフェイズ、墓地に送られた暗黒のマンティコアの効果、手札かフィールドの獣・獣戦士・鳥獣一体を墓地に送って発動。このカードを復活する。俺は手札を一枚墓地に送って復活させる」

 

A2300・D1000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札3 LP3000

百獣王 モンスター2 伏せ1 手札2 LP8000

 

暗黒のマンティコアか。コストがある限り何度でも蘇る事が出来る強力なカード。あれと生還の宝札が非常に厄介で、このカード二枚と生還の宝札で一応ループを起こせるものの、エクゾディア所持者が余りに少ない為、規制される気配は無い。

 

「ドロー! このスタンバイフェイズ、ライフを500払いゴライアスを特殊召喚。更に墓地のリオを手札に加える」

 

ゴライアスA2300・D2300→A2800

遊斗LP3000→2500

 

「そのモンスターは厄介だな。早めに蘇生を止めねぇと」

「なのはさんの効果でデッキからレヴィを手札に加える。レヴィを召喚、効果でLCを乗せる」

『ハッハッハ! この出番の多さ! やはり僕がサイキョー故だね』

 

LCレヴィ1 ミッドチルダ2→3

A1900・D400

 

そうやってすぐに調子に乗るから普通のデュエルではなるべく使わない様にしているんだが、実際レヴィの言う通り、レヴィの能力はサイキョーではないが強力で使いやすい。

 

「更にレイジングハート・エクシードをなのはさんに装備」

 

なのはA1000→A2500

 

「バトル! レヴィでキーマウスを攻撃!」

『ごめんねチビッ子。光翼斬!』

 

A1900 VS D100

 

確かにあんなに可愛らしい動物を倒すのは心が痛む。それでもレヴィはしっかりと魔力刃を放ち、キーマウスを破壊してくれた。

 

「レヴィの効果。デッキからカリム姉を特殊召喚する」

 

レヴィLC1→0

A500・D500

 

「キーマウスの効果でデッキから、おとぼけオポッサムを手札に加える」

「ゴライアスでそのセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターは素早いビッグハムスター! リバース効果持ちだ」

『ゴライアス。ギガントナックル!』

 

A2800 VS D1800

 

ギガントナックル、と言っても見た目はただのパンチだった。命令しているコロナ曰く、拳の所に魔力エネルギーが溜まってより破壊力が上がっているらしいが、俺が理解できる訳がなく、やはりただのパンチに見えた。

 

「素早いビッグハムスターの効果発動。デッキからレベル3以下の獣族とセットする。素早いモモンガをセット」

 

嫌らしいカードを。素早いモモンガは戦闘で破壊された時、ライフを1000回復し、更にデッキから同名カードを任意の数だけセットできる。いずれ破壊しないといけないが、今はなのはさんで暗黒のマンティコアを破壊して、ターンプレイヤーがバルバロスの時に破壊した方がいい。タッグデュエルで野リクルーターなどの効果は、そのモンスターを召喚したプレイヤーのデッキからでは無く、ターンプレイヤーのデッキからしか特殊召喚出来ないからな。

 

「なのはさんで暗黒のマンティコアを攻撃!」

『エクセリオンバスター!』

 

A2500 VS A2300

 

レイジングハートから発射された桃色の砲撃。カードでは攻撃力が低いなのはさんだが、本来のなのはさんはこのレベルの砲撃をポンポン撃つ人らしい。始めはその言葉が嘘だと思っていたが、なのはさん以外のみんなの意見が満場一致したから間違いない。実際これ以上の砲撃をポンポンと撃つ映像を、この目で見た事がある。

 

「へっ。痛くも痒くもねえ」

 

百獣王LP8000→7800

 

「カリム姉の効果発動。デッキトップの種類をモンスターと宣言。デッキトップはユーリ。よって手札に加える」

 

レヴィ、カリム姉、コロナ、三人ともありがとう。ここは絶対に破壊されないユーリを呼んでいた方がいいだろうから、悪いけどユーリと交代だ。

 

「場のレヴィ、カリム姉、コロナを生贄にユーリを特殊召喚!」

 

三人もの生贄が必要な分圧倒的な力と耐性を持った女の子。禍々しい闇の炎を纏わせているにも関わらず、登場してすぐ辺りをキョロキョロと見渡して、なのはさんの背中に隠れる。

 

A4000・D4000

 

『ディ、ディアーチェを呼んでください・・・・』

「ハァ、まったく。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「エンドフェイズ、手札のモンスターを墓地に送り暗黒のマンティコアを特殊召喚」

「すまんベヒーモス。助かるぞ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ3 手札3 LP2500

百獣王 モンスター2 伏せ1 手札2 LP7800

 

この二人、性格がまるっきし反対だから仲が悪いかと思ったが、お互いを考えたプレイングをしている。例えるとシュテルとレヴィだ。性格は180°違うが、お互い悪い所を助け合っている。本当に破滅の光なのが惜しいくらいだ。

 

「私のターン、ドロー! 輪廻天狗を召喚」

 

A1700・D600

 

出てきたのは翼を大きく広げた顔の黒い天狗。風属性らしいが、闇属性に見えるのは気のせいだろうか? このカードは日本では発売されておらず、外国でしか登場していないカード。非常に強いカードで現在準制限カードに指定されている。

 

「バトル! 暗黒のマンティコアでゴライアスを攻撃!」

「攻撃力2300で?」

「ダメージステップ、永続罠ビーストライザーを発動。輪廻天狗をゲームから除外し、暗黒のマンティコアの攻撃力を1700上げる」

 

暗黒のマンティコアA2300→A4000 VS A2800

 

暗黒のマンティコアは輪廻天狗の力を受け継ぎ、体の筋肉が巨大化する。ムキムキボディになった暗黒のマンティコアは強大なゴライアスの拳を、自分の拳でゴライアスの体ごと破壊した。

暗黒のマンティコアの拳圧で飛ばされたゴライアスの破片が俺に飛んでくる。

先程と同じように両手をクロスにして防ごうと思ったが、飛んでくる破片の中には尖った石もあり、もし腕に刺さってしまったらデュエルが不可能になる。目にだけは入らない様にデュエルディスクを盾にして、飛んできた破片を体で受けた。

 

「ぐあっ!? ッツ・・・・洒落にならねぇ」

 

遊斗LP2500→1300

 

急所には飛んでくる事は無かったが、鋭利な石が脇腹と右太ももの近くを飛んで来たらしく、かなり深くまで肉が斬れていた。ドクドクと溢れ出て来る血を見て、急いでブルーの上着を脱いでビリっと破ると、これ以上血が出ない様に応急処置をする。

 

「ぐっ、ハァ・・ハァ。デュエルを続けろ」

「精霊に助けを求めないとはとんだ馬鹿野郎だな。輪廻天狗はフィールドから離れた時、デッキから同名カードを特殊召喚する」

 

A1700・D600

 

「俺も罠カードAsの収集を発動する。LSが戦闘で破壊され墓地に送られた時発動可能。デッキからシグナムさんを召喚する」

 

A1800・D1400

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP1300

神獣王 モンスター3 伏せ2 手札3 LP7800

 

ライフ差がかなり開いている。初期手札が相手の方が5枚も多いから結構厳しい戦いになるとは予想していたが、ここまでライフ差が開くと流石の俺も気にしてしまう。

このままなのはさんをフィールドに残したら暗黒のマンティコアの攻撃でやられてしまうか。

 

「ドロー! なのはさんの効果でデッキからクロノを手札に加える。クロノを召喚し、効果でストラグル・バインドを手札に加える」

 

LCミッドチルダ3→4

A1700・D1500

 

ディアーチェの効果で攻撃力を爆発的に上げてもいいが、ビーストライザーはダメージステップに撃てる為、攻撃対象を除外されたら攻撃が無効化される。それで暗黒のマンティコアをゲームから除外しても、ビーストライザーの効果で輪廻天狗の攻撃力が2300上がり、結果的に攻撃した意味が無くなる。

 

「ミッドチルダのLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚」

 

LCミッドチルダ4→3

A500・D500

 

「場のシグナムさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の将シグナム! 効果で自身にLCを置く。ツヴァイの効果でミッドチルダのLCを取り除き手札に加える」

 

A2700・D2000

LCシグナム1 ミッドチルダ3→2

 

「シグナムさんの効果発動! このカードのLCを取り除き、相手フィールド上のモンスターの攻守を相手のエンドフェイズまで0にする! 選択するのは当然暗黒のマンティコア!」

 

ビーストライザーの効果を発動されて輪廻天狗の攻撃力を2300上げてもいい。だがその代わり暗黒のマンティコアは効果を発動できなくなる。どっちにしろ暗黒のマンティコアは倒せる。

 

「ック・・・・」

 

暗黒のマンティコアA2300・D1000→A0・D0

 

「バトル! なのはさんで暗黒のマンティコアを攻撃!」

「ダメージステップ、ビーストライザーの効果発動! 暗黒のマンティコアをゲームから除外し、輪廻天狗の攻撃力を2300上げる! そしてダメージステップに攻撃対象がいなくなったので、攻撃は無効だ」

 

輪廻天狗A1700→A4000

 

まあそうしなきゃ暗黒のマンティコアも破壊されて、輪廻天狗も破壊されてしまうからな。

 

「シグナムさんでセットされた素早いモモンガを攻撃!」

 

A2700 VS D100

 

ターンプレイヤーはバルバロスだから、素早いモモンガが発動する事は――

 

「素早いモモンガの効果発動。戦闘で破壊された時ライフを1000回復し、同名カードをフィールドにセットする。三体の素早いモモンガをセットだ」

 

神獣王LP7800→8800

 

うん、まあ薄々気づいてたよ。ベヒーモスも獣戦士族の暗黒のマンティコアを特殊召喚してたから、もしかしてと思ったけど、この二人お互いの種族デッキ統一では無く、二人とも獣と獣戦士の混合の様だ。

 

「お望み通りライフを回復してやるよ! クロノで素早いモモンガを攻撃!」

『自暴自棄になるな。冷静になれ』

 

A1700 VS D100

神獣王LP8800→9800

 

偉そうに言うが、俺だってターンプレイヤーの計算だとか攻撃力とか伏せとか色々と考えているし、さっき流れた血の所為で頭が上手く回らないんだ。クロノの攻撃で相手のライフが9800になって、そしておそらく輪廻天狗もベヒーモスのデッキに入っていて・・・・。駄目だ、頭がこんがらがってきた。こういう時は深呼吸をするのが一番。スーハースーハーと数秒間深呼吸をしているとリラックスできて、フィールド・手札・デッキ・ライフの整理が出来てきた。

まず攻撃力4000の輪廻天狗はストラグル・バインドで対処できるだろう。ユーリはとりあえず守備にしておこう。次はベヒーモスのターンだから、あいつの手札はドローを入れて3枚。

 

「よしっ。カードを一枚伏せて、ユーリを守備表示に変更。これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ3 手札3 LP1300

神獣王 モンスター3 伏せ2 手札3 LP9800

 

「俺のターン、ドロー! おっ、こいつはありがてえ。遠慮なく受け取るぜ。一体の素早いモモンガを反転召喚する」

 

A1000・D100

 

態々反転召喚するって事は自爆特攻でもするつもりか?

 

「リバースカードオープン、鳥合の行進。フィールドの獣族・獣戦士族・鳥獣族いずれかのモンスターが存在する場合、その種族一種類につき一枚ドローする。フィールドにいるのは獣族と獣戦士族。二枚ドローする」

 

コイツ等本当に仲良いな。戦争をしろと言っているこの王達がこんなに仲がいいとは夢にも思っていないだろう。それとも獣族と獣戦士族は協定でも結んで戦争をしているんだろうか?

 

「鳥合の行進を使ったターン、俺は他の魔法・罠のカードの効果を発動できない。おとぼけオポッサムを召喚」

 

A800・D600

 

またまた始めて見るカード。王達はマイナーなカードから、世界に一枚しか無いカードまで使用するので使用カードはかなり期待している。前回のグレード・モスはそんな事無かったが。

オポッサム・・・・確かこの間授業で出た。カンガルーやコアラと同様に腹に育児嚢と呼ばれる袋を持っている動物。

 

「おとぼけオポッサムはこのカードより攻撃力が高いモンスターが相手フィールド上にいれば、このカードを破壊する事が出来る。フェイク・ダイ」

「自分からモンスターを破壊した・・・・って事はもしかして」

「そうだ! ライフを1000払い、森の番人グリーン・バブーンを墓地から特殊召喚!」

 

A2600・D1800

百獣王LP9800→8800

 

同じ獣族デッキを使っている隼人も入れている優秀なカード。その体はとても巨体だが、上半身の割に下半身は小さく、両肩が大きすぎる所為で顔が小さく見える。

 

「バトルだ! まずは素早いモモンガでクロノに攻撃!」

『弾き返せないとはデュエルは不便だな』

 

A1000 VS A1700

 

クロノの言う通り、実際攻撃したら相手が得すると知っていたら攻撃せずに防ぐだろうが、デュエルモンスターズは効果で止めなければ攻撃を止める事が出来ない。突っ込んできたモモンガを面倒臭そうにブレイズキャノンで破壊したクロノは、新しく出てきたモモンガを見てため息をつく。

 

百獣王LP8800→9100

 

「素早いモモンガの効果でデッキから二体のモモンガを特殊召喚する」

「輪廻天狗でクロノを攻撃!」

「罠発動、ストラグル・バインド。これで輪廻天狗の攻撃力を元の数値に戻す」

 

輪廻天狗A4000→A1700 VS A1700

 

輪廻天狗は手から怪しいビームを発射し、クロノはブレイズキャノンを放つ。同威力のそれらは相殺すると同時に、輪廻天狗とクロノを巻き込んだ。

 

「輪廻天狗の効果でデッキから輪廻天狗を特殊召喚。グリーン・バブーンでAOA高町なのはに攻撃! ハンマー・クラブ・デス!」

 

A2600 VS A2500

 

グリーン・バブーンは右手に持った大木槌の様な物を、なのはさんに向け勢いよく振り下ろした。なのはさんはプロテクションをして防ぐが、野生の馬鹿力相手には限界があり、遂にはプロテクションを破れてしまった。100の衝撃如き今さら!

 

「ッツ。けどレイジングハートの効果を発動する。このカードの破壊する事で、装備モンスターの破壊を無効にする」

 

遊斗LP1300→1200

なのはA2500→A1000

 

「輪廻天狗でAOA高町なのは攻撃!」

「罠発動、プロテクション! これでこのターンなのはさんは破壊されない!」

「このタイミングでだと!?」

 

A1700 VS A1000

 

クロノを攻撃した時の様に謎のエネルギーを手から発射した輪廻天狗。今度はしっかりとプロテクションを張りなのはさんは破壊を間逃れたが、防ぎきれなかった分の攻撃が俺に襲い掛かる。

 

「ぐっ、ああああああっ!」

 

遊斗LP1200→500

 

「ハァ、ハァ・・・・」

 

足腰に力が入らず、地面に引き寄せられそうな程頭がクラクラして、デュエルディスクがバーベルの様に重く感じる。体中が悲鳴を上げている酷い状態だが、心躍る楽しいデュエルだ。このダメージを味わえる人間がこの世に何人いるだろう? 百人はいるか? 千人はいるか? どっちにしろ世界中のほんの一握りの人間しかこの感覚は味わえない。死んでしまうかと言う恐怖がスパイスになり、普通のデュエルとは比べ物にならない緊張感と焦りが出てくる。

 

「話には聞いていたが、そんな状態で笑うとは」

「はっ! 俺に闇のデュエルをさせた元凶に言われるとは」

「俺は嫌いじゃないぜ。カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札3 LP500

百獣王 モンスター5 伏せ4 手札2 LP9100

 

輪廻天狗、グリーン・バブーン、三体のモモンガ。どれを破壊しても俺にメリットがあるカードは無い。しかしこれで三幻魔を呼ぶ発動条件は満たされた。ここからが俺の反撃だ。

 

「俺のターン、ドロー! なのはさんの効果発動。デッキからはやてを手札に加える。場のAOA高町なのはを生贄に、蒼穹の王・高町なのはを特殊召喚する!」

 

A2500・D2500

 

バルバロスとベヒーモスの巨体でさえ足を踏ん張らなければならないほどの暴風。彼女が大好きな空を駆け巡る風を支配した魔導師がここに現れる。

 

「なのは様の効果発動! 特殊召喚成功時、デッキのカードを一枚墓地に送る。俺は紫天の書を墓地に送る」

「な、なのは様?」

「そう言わなきゃ殺されるんだよ。いくら俺でも死にたくは無いからな。なのは様の効果発動! 一ターンに一度、墓地の装備魔法を装備できる。紫天の書をなのは様に装備!」

 

なのはA2500→A3000

 

自分の周りに展開していたブラスタービットが桃色の光を放ち、徐々に形を変えて紫天の書になった。現れた紫天の書を片手で持ち、マジマジと見ると、なのは様はニヤリとあくどい笑みを浮かべる。

 

『へぇ。これでU-Dを操作するんだ』

『U-Dじゃなくてユーリです!』

「ミッドチルダのLCを生贄にはやてを召喚! そしてミッドチルダのLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚する」

 

LCミッドチルダ2→1

A2000・D1700

A500・D500

 

「場のはやてとツヴァイを融合! 来い、夜天の主・八神はやて! 効果でLCを二つ置く」

 

LCはやて2

はやてA2100・D2000→A2700

 

「はやてさんのLCをミッドチルダに移動」

 

LCはやて2→1 ミッドチルダ1→2

はやてA2700→A2400

 

セットされた素早いモモンガがいるが関係ない。全部ぶっ倒してダイレクトアタックを決める。いくらライフが10000近くあっても、三幻魔の攻撃を三回止められるか微妙なラインの筈。

 

「魔法発動、ディバインバスター。フィールドになのは、と名のつくモンスターがいる時、LCを一つ消費する事で、相手の場のカード二枚を破壊できる。はやてさんのLCを取り除き、ビーストライザーと一枚のセットカードを破壊!」

『ディバインバスター!』

 

LCはやて1→0

はやてA2400→A2100

 

「ビーストライザーが破壊されちまったか」

 

二機のレイジングハートビットから砲撃を発射し、二つの砲撃は俺が選択したカードを見事破壊した。因みにセットカードはキャトルミューティレーション。

 

「バトルだ! ユーリでグリーン・バブーンを攻撃!」

『ディアーチェがいないのは残念ですが、仕方ありません! ナパームブレス!』

 

A4000 VS A2600

 

なのはさんの命令で嫌々ながらも攻撃に移行したユーリは、右手から自分の手より大きい赤黒い球体を出すと、グリーン・バブーンに向けて発射した。グリーン・バブーンは右手に持った大木槌で、野球の様に球体を打ち返そうとしたが、そもそも大木槌をナパームブレスで打つ事自体不可能で、大木槌と一緒に破壊された。

 

「ぐうう・・・・。すげえ威力」

 

百獣王LP9100→7700

LC紫天の書0→1

 

「はやてさんで素早いモモンガを攻撃!」

『『氷結の息吹(アーテム・デス・アイセス)!』』

 

A2100 VS D100

 

普段より威力が落ちているが、それでも十分すぎる程の威力。物凄い吹雪により体感温度が一気に下がったのか、モモンガの動きはピタリと止まり、最後にモモンガの氷像が出来上がった。

 

「モモンガの効果でライフを回復する」

 

百獣王LP7700→8700

LC紫天の書1→2

 

「この瞬間永続罠、存在しない者を発動! はやてさんを生贄に、融合デッキから幻魔皇はやてを特殊召喚する!」

 

森林、石、建物、プレイヤー。ここら一体のありとあらゆる影を自分にする事が出来る幻魔。集まった影は立体的に形を変え、影で出来た女性の姿に変わる。黒しか色の無い女性は下から徐々に自分に色を付けて行き、最終的に幻魔皇はやてとなった。

 

A4000・D4000

 

「攻撃力4000のモンスターが二体!?」

「幻魔皇はやての効果発動。このカードの特殊召喚成功時、墓地のLS二体を魔法・罠ゾーンに置く事が出来る。なのはさんとはやてさんを選択。幻魔皇はやてで輪廻天狗を攻撃!」

『ふぁ~あ。ミストルティ~ン』

 

A4000 VS A1700

 

こんな時に限っていつも以上にやる気のない幻魔皇はやて。まあ三幻魔を出すときは基本的にピンチな時だから、こんな時に限って、と言うのは変かもしれない。

白銀の槍が輪廻天狗の体を貫通し、一つの石像が作られ、ミストルティンはそのままベヒーモスの足元に飛んで爆発した。

 

「ぐあああっ! や、やってくれるぜ。輪廻天狗を特殊召喚する!」

 

百獣王LP8700→6400

LC紫天の書2→3

 

「この瞬間幻魔皇はやての効果発動。魔法・罠ゾーンのなのはさんを置く」

『うわ~、こうやって王様と一緒に出るの初めてかな?』

『ああ。私はお前を生贄に召喚されるからな。こうして同じフィールドで戦える事は珍しい』

 

流石コミュ力の高いなのはさんだ。偉そうにしている自分そっくりの女性を見ても、全く抵抗が無いようだ。マテリアルズの前例があるから慣れているだけかもしれない。

さて、これでベヒーモスのデッキに輪廻天狗がいなくなった。破壊するなら今の内だ。

 

「なのは様で輪廻天狗を攻撃!」

『342ページを開け!』

『仰せのままに』

『フッ、アロンダイト!』

 

A3000 VS D600

 

なのは様は周りに浮いている四機のブラスタービットから桃色の砲撃を一斉発射させた。一基の攻撃すらも止める事の出来ない輪廻天狗は前後左右から飛んでくる砲撃を諸に受け、更にアロンダイトの追加効果で、四つの球状の爆発に巻き込まれた。明らかなオーバーキルである。

 

「ぐううう。ダメージは無い筈なんだが」

 

LC紫天の書3→4

 

「なのはさんの効果発動。デッキからザフィーラを手札に加える。ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ3 手札2 LP500 

百獣王 モンスター2 伏せ4 手札2 LP6400

 

フィールドには二人のなのはさん、幻魔皇はやて、ユーリと圧倒的な状況だ。だがその代わり、ライフは風前の灯。ザフィーラを手札に加えたとはいえ、リバースカードが一枚も無いのは心もとない。

 

「私のターン、ドロー! このスタンバイフェイズ、前のターン自壊したおとぼけオポッサムを特殊召喚する」

 

A800・D600

 

フェイク・ダイ。と言う技名で薄々感じていたが、やはり破壊されたのは嘘。死んだふりって事か。

 

「墓地の獣戦士族二体をゲームから除外し、ピューマンを特殊召喚する」

 

A1500・D1000

 

今まで出てきた獣戦士族は獣が人間の使う鎧や武器を装備していたり、バルバロスの様に人間と獣が混合したモンスターが多かったが、現れたピューマンは、体は人間だが動物の耳が生えている獣人だった。

 

「幻魔皇はやての効果。魔法・罠ゾーンのはやてさんを置く」

 

A2100・D2000

 

「リバースカードオープン、幻獣の角。ピューマンに装備する」

 

ピューマンA1500→A2300

 

「ピューマンの効果発動。手札を一枚捨ててこのターン自身の攻撃力を二倍にする」

 

ピューマンA2300→4600

 

獣戦士族はあまり詳しくないが、このモンスターの効果は知っている。もう一つはダイレクトアタックをする効果。ダイレクトアタックをしてもザフィーラがいるから、攻撃力を上げて誰かを倒す作戦だろう。

 

「不屈闘士レイレイを召喚」

 

A2300・D0

 

レベル4で攻撃力2300と破格のステータスだが、攻撃したバトルフェイズ終了時に守備表示になる典型的なデメリットモンスター。この状態で破壊できるのはなのはさんとはやてさん。最もなのはさんは破壊できないだろうが。

 

「バトル! 不屈闘士レイレイでAOA高町なのはを攻撃!」

「攻撃宣言時、存在しない者の効果発動! AOA高町なのはを生贄に、神炎皇なのはを特殊召喚する!」

 

A?・D?

SLCなのは1

 

野蛮な雄叫びを上げてなのはさんに突進してきたレイレイだが、突如なのはさんの周りに現れた火柱により攻撃が遮られた。天に昇る火柱が消滅すると、火柱の中にいた神炎皇なのはのロングスカートがふわりと浮いた。そして突進してきたレイレイに無言でウリアの形をしたレイジングハートを向けると、レイレイは数歩後退りをする。

 

「攻撃対象を夜天の主・八神はやてに変更する!」

 

A2300 VS D2000

 

レイレイは巨大な両手の指をからめて連結すると、ハンマーの様に振り下ろした。魔力が少ないのに加えて、防御がそこまで得意ではないはやてさんのシールドは、レイレイによって破壊され、そのままはやてさんも破壊される。

 

「クッ・・・・」

「ピューマンで幻魔皇はやてを攻撃!」

 

A4600 VS A4000

 

幻魔皇はやてはミュストルティンを数本出してピューマンに当てようとするが、野生の力を解放しているピューマンは槍の雨を器用に回避しながら接近し、両手に持った斧で幻魔皇はやてを叩き斬った。その攻撃力の差、600が俺に襲い掛かるが、目の前に現れた青の狼が衝撃から守ってくれた。

 

「手札のザフィーラを捨て、戦闘ダメージを0に。その後一枚ドローする」

「幻獣の角の効果発動。デッキから一枚ドローする。バトルフェイズ終了時、レイレイは守備表示になる。素早いモモンガを反転召喚する」

 

A1000・D100

 

素早いモモンガを反転召喚か。明らかに攻撃を誘っている。そうじゃなかったら、神炎皇なのはの攻撃であいつ等のライフは0になる。

 

「おとぼけオポッサムの効果で自分自身を破壊。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ墓地の暗黒のマンティコアの効果発動。ピューマンを墓地に送り、このカードを特殊召喚する」

 

A2300・D1000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP500

神獣王 モンスター4 伏せ4 手札1 LP6400

 

「俺のターン、ドロー! この瞬間神炎皇なのはにSLCが一つ乗る」

 

なのはSLC1→2

 

これで神炎皇なのはの最大攻撃力9500になり、ワンショットキルも容易に狙える攻撃力だが、相手フィールド上の攻撃表示モンスターは明らかに罠である素早いモモンガだけ。レイレイのデメリットを上手く使われてしまった。

 

「なのは様の効果発動。墓地のレイジングハートを装備する」

 

なのはA3000→A4500

 

攻撃力4500の二回の破壊耐性と攻撃力4000の永続耐性、それと攻撃力が9500まで上昇出来るモンスター。圧倒的有利な状況だが、無敵では無い。デュエルモンスターズには除外カードもバウンスカードも墓地に送るカードも沢山ある。

 

「リオを召喚。効果で墓地のコロナとなのはをゲームから除外して攻撃力を500上げる。更にコロナの効果でデッキから一枚ドロー。そして神炎皇なのはにSLCが一つ乗る」

 

リオA1700・D500→A2200

LCミッドチルダ2→3

SLCなのは2→3

 

「バトル! なのは様で暗黒のマンティコアを攻撃!」

「どのモンスターを無効化しても辛いがこれが一番いいだろう。猛突進を発動。フィールドの獣族を破壊して相手フィールド上のモンスターをデッキに戻す。素早いモモンガを破壊して、蒼穹の王・高町なのはをデッキに戻す!」

 

しまった! これで紫天の書は破壊されてユーリも攻撃が不可能になってしまう。

 

「更にライフを1000払い、グリーン・バブーンを守備で特殊召喚する」

 

LP6400→5400

A2600・D1800

 

「それなら。神炎皇なのはでグリーン・バブーンを攻撃! ダメージステップ、SLCを一つ取り除き墓地のザフィーラをデッキに戻し、攻撃力を2000上げる」

 

なのはA0→A2000 VS D1800

SLCなのは3→2

 

『ショートブレイカー!』

 

スターライトブレイカーを放つ程の敵ではないと判断したのか、神炎皇なのははディバインバスターより少し威力の高い炎熱の砲撃を放ち、グリーン・バブーンを破壊した。

 

「リオでレイレイを攻撃!」

『轟雷炮(ごうらいびょう)!』

 

A2200 VS D0

 

足に雷の魔力を纏わせながら地面を勢いよく蹴ったリオは、レイレイに猛突進し、自分の間合い内に入ると雷の纏った足でレイレイを薙ぎ払った。強い獣戦士レイレイだが、攻撃は最大の防御と言わんばかりの考え方の所為で、体はやたらと脆かった。

 

「ユーリを守備表示に変更。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ3 手札1 LP500

神獣王 モンスター2 伏せ3 手札1 LP5400

 

「一気に防御が硬くなったな。やっぱライフが1000以下になるとめちゃくちゃ強くなるのは本当だったか」

「その様だな。いくら三幻魔を呼ぶ手段が1000以下とは言え、闇のデュエルで自らライフを削る様なプレイングをするとは」

「お褒めの言葉ありがと」

「俺のターン、ドロー! この瞬間おとぼけオポッサムの効果でこのカードを蘇生する」

 

A800・D600

SLCなのは2→3

 

「おとぼけオポッサムの効果発動。このカードを自壊する。更に墓地のグリーン・バブーンの効果。ライフを1000払い、特殊召喚する」

 

LP5400→4400

A2600・D1800

 

グリーン・バブーンが強いが、ここまで復活してくるのはおとぼけオポッサムの所為だ。毎ターン戻ってくるのは非常にやり難い。

 

「星見獣ガリスの効果発動」

「なっ!? ガリスだと!?」

 

十代も使うあのカード。普段なら余り気にしていないが、ここまでライフが減っていると危険だ。

 

「デッキトップを墓地に送り、それがモンスターだった場合、そのモンスターのレベル×200のダメージを与える。デッキトップは・・・・キーマウス、レベル1だ」

 

A800・D800

 

大きな羽を持った四本足で歩いている鳥の様な獣――星見獣ガリス。何とも説明しにくい姿の獣は、翼を大きく開いて、その翼から微弱なエネルギーを発射した。

 

「グッ、そのガリスが紳士で助かったよ・・・・」

 

ガリスがエネルギーを発射したのは、腹と溝内辺り。もし怪我した所に攻撃されたら痛みはこんなものじゃなかっただろう。

 

遊斗LP500→300

 

「だがもう一度チャンスがある。場の星見獣ガリスとセットされた素早いモモンガを生贄に、俺の分身を召喚する! 来い、百獣王(アニマル・キング)ベヒーモス!」

 

A2700・D1500

 

獣族の王として君臨しているベヒーモスが、モンスターとなって現れた。流石に本物のベヒーモスと対峙しているので、ソリッドビジョンのベヒーモスからは大したプレッシャーは感じなかったが、紫色の巨体、青の毛、顔に生えている巨大な角と牙、それらを見るとより一層気が引き締まる。

 

「ベヒーモスの効果発動。生贄召喚に成功した時、生贄に捧げた数だけ自分の墓地の獣族モンスターを手札に加える。俺が手札に加えるのはガリスとキーマウスを手札に加える。そしてガリスの効果発動!」

 

さあ、ここで来てくれよ俺の運! こんな所で死ぬ訳にはいかない! 死ぬなら絶対フェイトとABCまではしたい! 不純な動機だが清々しい程に俺の本心だ!

ゆっくりとデッキトップをめくるヘビーモスの手を、フェイトの事を考えながらジッと眺める。デッキトップのカードを確認するとベヒーモスはチッ、と小さく舌打ちをした。

 

「デッキトップはモジャ、レベル1だ」

 

再び現れたガリスがエネルギー弾を発射する。さっきと同じく地味に痛みが体に走り、軽く体を抑え込む。たかが200でも命の20分の1が消されていると思うと、むしろ少ないくらいの痛みだ。

 

遊斗LP300→100

 

「まさか二回連続でレベル1を引くとは運が悪いぜ」

「お前が運が悪いと言うより、あの少年の運がいいのだ。だが運だけではデュエルは勝てない」

「ああ、バトルと行くぜ! ベヒーモスでリオを攻撃だ!」

「罠発動、strikersの回収! 墓地のはやて、カリム姉、レヴィをデッキに戻して二枚ドロー!」

 

ベヒーモスはそこ等にある木よりも数倍も太い腕を振り上げ、リオを踏みつぶす様に振り下ろす。いくら魔力により力が上がってもベヒーモス相手に勝つ事は出来ない――なんて事は無かった。ベヒーモスが振り下ろした腕が徐々に地面から遠ざかっていく。ベヒーモスの巨大な腕を持ち上げているのは水色の髪をした少女、スバル一人。

 

『ハァァァ! 轟雷炮!』

 

スバルがベヒーモスの腕を支えている内に素早く後ろに回り込んでいたリオの蹴りがベヒーモスの顔面を炸裂した。

 

LP百獣王4400→3800

 

「ぐぅぅぅ! どうして俺のライフが!?」

「ダメージ計算時、手札のスバルを発動していた。これでリオの攻撃力が1000上がったんだ」

 

リオA2300→A3300 VS A2700

 

「・・・・ッフ、面白ぇ。だったらグリーン・バブーンで神炎皇なのはを攻撃!」

「ッツ、神炎皇なのはの効果を知ってて攻撃してくるだと?」

「ダメージステップ禁じられた聖杯を発動! これで効果は無効、SLCも全て消える」

 

なのはA0→A400 VS A2600

SLC4→0

 

効果を無効!? その方法で来たか・・・・。効果無効系はカウンター軸のデッキには非常に辛い。

SLCが無ければか弱い女性になってしまう神炎皇なのはが、グリーン・バブーンの攻撃を受け止められる訳も無く、三幻魔の一角とは思えないほどアッサリと破壊されてしまう。

 

「だが手札のザフィーラを墓地に送る事でダメージは無効化する。その後デッキから一枚ドローする」

「本当に防ぐのが上手い奴だ! たった100が削りきれないって前代未聞だぜ。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

リオA3300→A1700

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ2 手札2 LP100

百獣王 モンスター3 伏せ3 手札0 LP3800

 

ライフはたったの100。フィールドにユーリがいるが攻撃する事は出来ず、モンスターの数も圧倒的に少ない。しかも奴らにはセットカードが二枚もある・・・・。だが、俺にも一枚の伏せカードと手札にはそれに対応したカードがある。

 

「ライフ500になってから中々ダメージを与えられなかったのがお前達の敗因だな」

「この状況で何かするつもりなのか?」

「ああ! 俺のターン、ドロー! 速攻魔法フェイクシルエットをユーリに発動! デッキのフェイトを墓地に送り、ユーリをフェイトとして扱う」

「ッツ、まさか名称を変えて三幻魔を!」

「その通りだ! 存在しない者の効果発動! フェイトとして扱うユーリを生贄に、光来せよ! 降雷皇フェイトを特殊召喚する!」

 

A4000・D4000

 

まるで神罰の様に上空から滝の様に降り注ぐ雷。だがその雷は神罰によるものでは無く、三幻魔の一角が登場しただけの事。圧倒的な力と威圧感を登場するだけで見せつけたのは、降雷皇フェイト。

 

「クッ、まだ現れるか。三幻魔!」

「まだだ! 存在しない者の第二の効果発動! 効果を三回使用したこのカードを墓地に送る事で、レベル11のLSを墓地から特殊召喚する! 幻魔皇はやてを復活!」

 

A4000・D4000

 

「おいおい、冗談だろ・・・・」

「幻魔皇はやての効果発動。墓地の神炎皇なのはと、ユーリを魔法・罠ゾーンに置く」

 

魔法・罠ゾーンには三枚目の三幻魔と、三幻魔と同じく攻守4000のユーリ入った棺桶が現れる。これで奴等は特殊召喚したら三幻魔を呼ぶ事になる。だが特殊召喚をせずに勝てる程三幻魔は甘くない

 

「リオを生贄にはやてを召喚する。そして罠発動、幸運の追い風。はやてがいる時ライフを半分払い、手札を一枚捨て効果発動! デッキからアインスを召喚条件を無視して特殊召喚する!」

 

LCミッドチルダ3→4 はやて1

遊斗LP100→50

A2000・D1700

A2300・D2300

 

三幻魔に比べると相手に放つプレッシャーは微々たるものだが、それでも闇の書の管理人格は伊達では無い。バルバロスとベヒーモスの垂らす冷や汗が一段と増えているのが肉眼で確認できる。

 

「アインスの効果発動。夜天の書を特殊召喚する。そしてミッドチルダの効果ではやてのLCをミッドチルダに移動し、夜天の書の効果でデッキから五枚ドローする」

 

LCはやて1→0 ミッドチルダ4→5→0

 

「ご、五枚ドロー。禁止カードレベルの枚数・・・・」

「場のはやてとアインスを融合! 現れろ、夜天の王・八神はやて!」

 

A2800・D2800

LCはやて3

 

もはや天変地異だった。フィールドを駆け巡る降雷皇フェイトの魔力エネルギー。禍々しいオーラを発する幻魔皇はやての棺桶。そして夕焼けが昇っていたミッドチルダの光は全て夜にさせられる。

もはやどちらが悪役か分からないフィールドだが、勝てばいい。

 

「夜天の王・八神はやてに夜天の書を装備! そして八神はやての効果発動! LCを二つ取り除き、融合デッキから祝福の癒し手シャマルを特殊召喚。そして祝福の癒し手シャマルを生贄に、ホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚する!」

 

LCはやて3→1

A2000・D3000

 

普段物静かなホーリーシャマ姉の登場シーンも、混沌になっているフィールドでは流石に騒がしかった。バチバチと音を立てる魔力の電気。ゴゴゴ、と不気味に呻くラビエルの棺桶。ヒュルルルと吹く夜風。

 

「ホーリーシャマ姉の効果発動! 王様はやてさんにLCを二つ乗せる。更に手札の枚数×300ライフを回復し、その数値分のライフをお前達に与える。俺の手札は4枚だ!」

『戒めの鎖』

 

俺の四枚の手札からそれぞれ現れた四本の鎖。先端が尖り、痛々しい棘が付いた四本の鎖は、バルバロスとベヒーモスの体を貫通する。

 

「「ぐぅぅ!」」

 

LCはやて1→3

遊斗LP50→1250

百獣王LP3800→2600

 

「バトルだ! ホーリーシャマ姉でガリスを攻撃!」

『破壊の雷!』

 

A2000 VS D800

 

「ぐぅぅぅ! だがまだ!」

「幻魔皇はやてでグリーン・バブーンを攻撃!」

『彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍ミストルティン!』

 

A4000 VS A2600

 

全てを石に変える白銀の槍、ミストルティン。最強だが溜め時間や消費魔力が激しい筈だが、幻魔皇に常識は通用しない。三本のミストルティンをグリーン・バブーンに突き刺す。すると刺し口からグリーン・バブーンの体は石化し始め、やがて一つの石像に変わった。そして幻魔皇はやては石像に向けもう一本のミストルティンを発射し、無慈悲に石像を壊すと、ミストルティンをそのままベヒーモスに突き刺した。

 

百獣王LP2600→1200

 

「ぐああああ! ば、馬鹿な・・・・。体が」

「ベヒーモス!?」

『どっちにしろこのターンで死ぬんやから関係ないやろ?』

「クッ、だが俺はまだ諦めていない!」

「その根性嫌いじゃない。だがお前達は破滅の光! 王様はやてさんで暗黒のマンティコアを攻撃!」

『響け終焉の笛・・・・ラグナロク!』

 

A2800 VS D1000

 

ミストルティンと同じ白銀の魔力砲。石化の追加効果などは無いが、単純火力で圧倒する分かりやすい魔法。本来ならラグナロクはベルカ式の魔法陣の三つの頂点からそれぞれ放たれるが、今回はベルカ式の真ん中から発射された。もはや人知を越えた力に、獣戦士族上級モンスター如きが対抗できる訳なく、暗黒のマンティコアの体は崩壊した。

 

「ぐああああ!」

「ベヒーモス!? 貴様! いくらデュエリストとは言え、この行為は許さんぞ!」

 

石化した体の部分が先程の衝撃で壊れ、立つ事が不可能になったベヒーモス。紳士的だったバルバロスが激怒して俺を睨むが、全く怖くないし罪悪感も無い。

 

「精霊を戦争させているお前達に許される覚えは無いな。降雷皇フェイトでダイレクトアタック!」

『サンダー・・・・』

 

A4000

 

ベヒーモスとバルバロスの上空に展開された巨大な魔法陣。その魔法陣の円周に現れた八つのスフィアが辺りの電気エネルギーを溜める。その間ベヒーモスは自分のデュエルディスクを押し、最後のリバースカードを発動させようとしている。

 

「ト、トラップ、発・・・・」

「もしお前達が生まれ変わったら、その時は破滅の光じゃない事を祈るよ」

『レイジ!』

 

魔法陣の中央から降り注ぐ降雷。それは鉄槌の如く重く、滝の様に衝撃が強く、マグマの様に熱い地獄の雷。そんな雷をくらってピンピンしていられる生物がこの世にいる訳がない。

 

「「ぐあああああ!」」

 

地獄の雷を浴びながら、バルバロスとベヒーモスは俺へと手を伸ばして息絶えた。

 

百獣王&神獣王LP1200→-2800

 

デュエルが終わった頃には黒焦げになっていた奴等の姿は消えていた。闇のデュエルで負けた者は、闇の世界に引きずり込まれるか、痛みに耐えきれず死ぬかのどちらかだ。破滅の光だったがいい奴等だったので、せめてもの償いに俺がみんなに殺すよう頼んだ。

 

「悪いな・・・・。けどお前達も闇のデュエルを挑んできた以上、こうなる結果は予想できた筈だ」

 




注意)現実でのリアルダイレクトアタックはジャッジ以前に警察のお世話になります。ルールを守って楽しくデュエル。






今回の終わり方はかなり手抜き感・・・・文字数ですね。しかしデュエルがメインの小説でデュエルを手を抜くのは考えられないので、最低限自己満足はできるレベルのデュエルはしないと。(イチャイチャフェイズを入れたのが失敗だった)

ライフ1000以下で切り札を出すって展開で、最近UMAリスペクトしています。ただUMAにはホープレイ出して終わりじゃなくて、ホープレイを出してから数ターンデュエルをしてほしい。トロンとの戦いみたいに。




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第三十七話

重要なお知らせがあります。もしこれからもこの作品を読んで下さると言う方は、お手数ですが目を通して下さい。



大事な話というのは、第三十三話~三十六話までのストーリー部分を変更しようと思います。根本的なストーリー改編ではなく、デュエル中にフェイトの介入について作者自身違和感を覚えました。
優斗はデュエルには誰も関わって欲しくない。一人で1対1のデュエルがしたいと言っているのにも関わらず、グレート・モスの台詞で「神聖なデュエルを汚すな」という言葉に「第三者の介入にどうこう言われる筋合いはない」と言っています。明かなる矛盾です。
この時、頭の中で大まかなストーリーが完成し、小さなストーリーを考えていなかった結果がこれです。


本当に申し訳ありませんでした。ご了承願います。


色々な事があったが何とかGX大会一日目が終わった。あの後とてもデュエルする気になれなかったので、大人しくレッド寮の部屋で休み、デュエルでの疲れを癒した。

そして次の日の朝、俺はいつもより遅い時間に外出する準備をしていた。GX大会は有名なプロも参加するデュエル大会。せっかく来てもらったプロの人に放課後までGX大会参加を待ってもらう訳にはいかないので、GX大会中授業は無い。勿論定期的に授業はあるが、一日中自由と言うのは喜ぶべきことだ。

 

「イテテ、最近シグナムさんの訓練一段と厳しくなったな」

「遊斗が成長してきたからシグナムも本気を出してきたんだと思うよ。私も昨日、精霊相手に一発当てたのは驚いたもん」

 

顔に出来た傷にテープを張ってくれているフェイトは、ニコリと嬉しそうに微笑む。相変わらずフェイトは可愛いな~、なんてボキャブラリーの足りない同じ感想を思いながら、昨日の出来事を振り返る。確かに最近落下中にトリッキーな動きをしたり、精霊相手に飛びひざ蹴りをしたりと、強くなっている気がする。アインハルトも、両手を使わないと勝てないと言ってたし。

 

「やっぱりカード手裏剣はデュエリストに必要なスキルだな」

「あはは・・・・。デュエリストに格闘技とカード手裏剣が必要かどうかは分からないけど、成長してると思うよ。特にここ最近」

「まあシグナムさんに鍛えてもらってからもう10年近くなるからな。成果が出てないとおかしいって事だ。よしっ、今日もデュエルと行くか!」

 

 

 

 

昨日と違い朝からずっとGX大会が開いているので、自然と昨日よりメダルが集まった。二日目にもなると相手は最低二枚のメダルを持っていたので、太陽が真上に来た現時点でのメダル枚数は34枚。流石に朝からずっとデュエルは疲れて来るので、一旦食堂に行く事にした。

食堂に入るとそこは人混みで一杯だった。丁度腹が減る時間なので食堂に買いに来る人が多いのが一番の理由だが、もう一つはミーハーの生徒がプロのデュエリストを見たいから集まっているんだろう。

 

「とっとと、この量は尋常じゃないな」

 

まるでスキー場や遊園地の小さな食堂の様に賑わっている空間の中で俺を呼ぶ声がした。

 

「おーい遊斗。こっち来いよ! お前の分も買ってあるぜ!」

 

人込みの中から十代の頭が見えたのでそちらに向かうと、そこには十代、翔、剣山、そして隼人がいた。

 

「隼人!? どうしてここに!?」

「GX大会を見学してみたかったのと、十代と遊斗に俺の作ったカードを渡したかったんだな」

「隼人が使ったカード?」

 

とりあえず空いていた席に座り、隼人の出すカードをドキドキしながら待つ。十代はもう既に貰ったらしく、早速そのカードを使って勝利を収めたらしい。

隼人が出したカードは数枚のカードだった。このフィールド魔法とか、どこかで聞いた気がする。

 

「ジェイル・スカリエッティ博士にLSの設定元となってる世界の話を聞いて、実際にデザインしてみたんだな」

「ありがとう。大切に使わせて貰う」

 

早速効果を確認してデッキに入れると、隼人は嬉しそうに笑った。やっぱり実際自分が作ったカードを使ってデュエルをしてもらうと嬉しいんだろうな。

 

「む~、アニキと遊斗君にあって僕にないのは不公平ッス」

「しょ、翔のカードもその内作るんだな。けど俺がやるのは主にカードデザインだから、翔のデッキに合ったカードの案が出ない限り、カード化は難しいぞ」

「へ~、じゃあ恐竜族のカードが出たらデザインして欲しいドン! そして欲しいザウルス!」

「了解なんだな」

 

けどこうやって見ると本当に社会人になったんだな、隼人。レッドの制服を着ていた頃とは違い、凄く大人っぽく見える。

 

「じゃあそろそろ食べようぜ。腹減ってきた」

 

十代の言葉を切っ掛けに食事を開始し、隼人の話やGXメダルの話などをした。どうやらこの中で一番GXメダルを持っているのは俺の様で、やはり昨日の梶木さんから貰ったメダルが多かったようだ。十代も歌舞伎役者のプロデュエリストとデュエルをして見事メダルを得た。話を聞く限り面白いデュエルの様だったので、その場に居合わせる事が出来ず残念。

食事が終わると引き続きメダルを集める為に相手を探す事にした。けどその前に隼人の作ったカードを見たいとのことで、十代、翔、隼人、剣山は一回だけ俺のデュエルを見るらしい。

 

「ん~、せっかくならプロデュエリスト相手とやり合いたいけど」

「あら? そこの君デュエルの相手を探してるの?」

 

透き通るような声の主に振り向くと、そこそこ美人な女性がいた。隣にいる翔が興奮した様に「モデルのローズさんッス!」と大声を上げていた。ああ、モデルさんなのか。

やっぱり美人や美少女の中で育ってきたからか、俺の美人に対する価値観は人とは違うらしい。贅沢な悩みだと思われるだろう。実際俺も贅沢な悩みだと思うけど、世間一般と美的感覚が違うのは色々と苦労する所もある。

 

「あなた、もしよかったら私とデュエルしないかしら?」

「遊斗君変わるッス!」

「この人は俺にデュエルを申し込んでるんだ。分かりました、受けて立ちます。俺は遊斗・スカリエッティです」

「変わった名前ね。私はローズ」

 

ローズも十分変わっている名前だと思うが、芸能人だから芸名と考えるのが普通だろう。

 

「では行きますよ」

「「デュエル!」」

「レディーファーストで、どうぞ」

「優しいわね。ドロー! イービル・ソーンを召喚!」

 

A100・D300

 

グニャグニャと不気味に曲がった植物に、大量の棘がびっしり生えた手榴弾の様な実が付いている気持ちの悪い植物。不気味だから闇属性と言うのは間違っていないだろう。

 

「イービル・ソーンの効果発動。このカードを生贄に捧げ同名カードをデッキから二体特殊召喚。更にあなたに300ダメージを与える。イービル・バースト!」

 

手榴弾の様な実が突然爆発し、体に付けた棘を俺に飛ばしてくる。とても300ダメージとは思えないほど大量の針が飛んでき、俺の体を貫通する。ソリッドビジョンだから痛くもなんともない。

 

遊斗LP4000→3700

 

爆発により飛び散ったイービル・ソーンの種子が僅か数秒で育ち、先程と同じ姿のイービル・ソーンが二体生えてきた。もし現実世界にこんな植物があったら恐ろしいな・・・・。

 

「永続魔法、世界樹を発動。カードを一枚伏せてターンエンドよ」

 

ローズ モンスター2 伏せ2 手札3 LP4000

 

300とは言え一ターン目からバーンダメージを与えてきたか。イービル・ソーンの攻撃力100で、その弱点を晒しているが、あの伏せカードが簡単に攻撃を通してくれるものか。

 

「ドロー!」

 

ドローしたカードは――おっ、隼人がくれたカードだ。確かにこのカードなら、もしあのセットカードが除去カードだったとしても問題は無い。

 

「LSシスター-シャンテ・アピニオンを召喚!」

『へ~へ~、デュエルってこんな感じなんだ。あっ、よろしくねマスターさん』

 

LSシスター-シャンテ・アピニオン ☆3/炎/魔法使い/A1400・D500

 

登場した新たな仲間は、オレンジ色のショートヘアーの女の子。コロナと同じで髪の一部分だけをシンメトリーにしてロングにしている。恰好は何と言うか――中々過激なものだ。

上半身は赤、下半身は白がメインのバリアジャケットは、お腹と胸の間、つまりみぞおちの辺りの肌が見えており、成長途中の胸の一部が見えている。ノースリーブで綺麗なわきも見えており、太ももが見える程のミニスカート。

 

「・・・・あなた、アイドルデッキ使い?」

「違います! 俺のデッキをアイドルデッキと言うのなら、勝ってから言ってください!」

 

この子――シャンテと言い、精霊達(みんな)と言い、実際にアイドルと言っても全く違和感がないから困る。いや、シグナムさんとかアインスは違和感があるけど、女優と言ったら違和感がないだろう。

目の前の人が一般人レベルに見えるのもその所為だ。

 

「バトル! シャンテでイービル・ソーンを攻撃!」

『独奏で十分。双輪剣舞!』

 

A1400 VS A100

 

瞬間移動かと思う程の速さでイービル・ソーンの前まで移動したシャンテは、持っているトンファーの様なデバイスに魔力付与を掛けたのだろう。シャンテの双剣がクロスすると、イービル・ソーンは砕け散った。

 

『うぇ。気持ち悪い』

「攻撃が通った?」

「罠発動、ガード・ブロック。戦闘ダメージを0にしてデッキから一枚ドロー。更に世界樹の効果発動。植物族モンスターが破壊された時、このカードにフラワーカウンターを置く」

 

世界樹0→1

 

その伏せはガード・ブロックだったか。植物族は優秀なカードが多いが、基本的に前半は受けになる事が多い。それを予想して、戦闘ダメージ0+一枚ドロー効果のガード・ブロックを入れているのだろう。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札4 LP3700

ローズ モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

「私のターン、ドロー! ローンファイア・ブロッサムを守備表示で召喚」

 

A500・D1400

 

何と説明していいか分からないが、これまた変わった植物だった。ファイアと名のつき炎属性と言うだけあり、蕾らしき部分から炎を吹きだしている。

マイナーと種族の代表と言われていた植物族だったが、このカードが入っていたパックにより一気に強化された。特にこのカードは強力で、次回の制限変更で準制限に掛かるかもしれない。流石に制限までは掛からないだろうが、遠い未来このカードが悪用される日が来る筈。

 

「ローンファイア・ブロッサムの効果発動。イービル・ソーンを生贄に、デッキから植物族モンスター一体を特殊召喚する。椿姫ティタニアルを特殊召喚」

 

A2800・D2600

 

そう、この通りローンファイア・ブロッサムで呼べる植物モンスターにレベルの制限は無い。しかも自分自身も生贄に出来るので、ローンファイア・ブロッサム=デッキの植物モンスターの式が成り立つ。

 

「椿姫ティタニアルでその破廉恥な小娘を攻撃!」

『破廉恥!?』

「否定出来ない・・・・」

『そこ否定しようよ!』

 

A2800 VS A1400

 

ティタニアルは自分の周りに仕えさせていた茨のツタを使い、シャンテに攻撃する。一見弱そうに見える攻撃だが、攻撃力2800と言うと最上級モンスターレベル。破壊力もかなりのもの。

だがシャンテには相手の攻撃力など関係ない。シャンテに繰り出されたツタは、なんとシャンテを貫通して地面に激突する。しかし、体にツタが貫通しているのにも関わらずシャンテはピンピンとしている。

 

「ど、どういう事?」

「シャンテは嘘付きだから本人は別の所に避難したよ。シャンテの効果発動。このカードが戦闘で破壊され墓地に送られた時、このカードをデッキに戻す。そしてこの効果を使いシャンテがデッキに戻った時、デッキのLSを特殊召喚できる。来い、カリム!」

 

A500・D500

 

「更にシャンテのバトルで俺に発生するダメージは0。ありがとな隼人」

「ううん。使ってくれて嬉しいんだな」

「なるほど、面白い効果ね。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札4 LP3700

ローズ モンスター2 伏せ2 手札3 LP4000

 

ティタニアルの効果は余り使われないけど、植物族一体を生贄に対象に取る効果を無効にして破壊する事が出来る。植物族は火力がそこまで高い訳じゃないので、耐性のあるユーリでビートすれば勝てるが、何しろ三体生贄とディアーチェ+紫天の書が必要だからな。とりあえずここはカリム姉でアドバンテージを稼ごう。

 

「俺のターン、ドロー! カリムの効果発動。カードの種類を宣言し、デッキトップが宣言したカードだったら手札に加える。モンスターを選択、デッキトップはレヴィ。よって手札に加える」

 

またお調子者のレヴィを引いてしまったが、ローンファイア・ブロッサムを破壊する+カリム姉を守るという意味でもレヴィが必要か。

 

「レヴィを通常召喚。効果で自身にLCを置く」

 

LCレヴィ1

 

「ま、また女の子」

「ですからアイドルじゃないです。魔法・罠ゾーンにキャロを置き、LSの攻守を300上げます」

 

レヴィA1900・D400→A2200・D700

カリムAD500→AD800

 

「バトル! レヴィでファイアー・ブロッサムを攻撃!」

『カッコイイ僕は草刈りも天才的に上手い! 光翼斬!』

 

A2200 VS D1400

 

まあ光翼斬を雑草の生えた地面すれすれに撃てば一気に草刈り出来るだろうな。俺とレヴィの考えがシンクロしたのか、普段より低姿勢で回転する魔力刃を発射したレヴィは、ローンファイア・ブロッサムの根っこを切断して胴体と根っこを切り離した。

 

「レヴィの効果発動。デッキからコロナを特殊召喚する」

 

巨大樹1→2

コロナA500・D1700→A800・D2000

 

「この効果で呼んだモンスターは攻撃できない。コロナの効果発動。手札を一枚墓地に送り、デッキからゴライアスを特殊召喚する」

創成起動(クリエイション)!』

 

ゴライアスAD2300→AD2600

 

しかし毎度毎度思うが、ここまでモンスターが並んだらキャロも大変だろう。本来のブーストって制御が難しいって聞いたし。

 

「ターンエンドだ」

 

遊斗  モンスター4 伏せ2 手札3 LP3700

ローズ モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

ゴライアスで攻撃対象を変更したらカリム姉かコロナのどちらかは問題ないだろう。もし十代が使っているダンディライオンが世間に出回ったらと思うとゾッとする。そうなったら色々なカードに制限が掛かってくるだろう。

 

「ドロー! 永続罠、アイヴィ・シャックルを発動。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターは自分のターンのみ植物族になる」

 

げっ!? 嫌なカードを!? だがそれより心配しなくてはいけないのは、精霊達(みんな)が植物族モンスターになってしまう事。人間をそのままモンスターにしているLSが植物族になったら・・・・。と思ったが、特に精霊達(みんな)に変化は無い。色々な意味で良かった。

 

「フレグランス・ストームを発動。フィールド上の植物族モンスターを一枚破壊しでデッキから一枚ドローする」

「? 態々ティタニアルを破壊するッスか?」

「丸藤先輩は頭大丈夫ドン? アイヴィ・シャックルの効果で遊斗先輩のモンスターは植物族になってるザウルス」

「先輩に向かってなんて口を聞くッスか!?」

 

ハハハ・・・・・。相変わらずコイツ等が外野だと騒がしいな。別に騒がしいデュエルが嫌いじゃないからいいんだけど。

 

「そのゴーレムを破壊する!」

「グッ、まさかこんな形で効果破壊をしてくるとは・・・・」

 

世界樹2→3

 

「更にフレグランス・ストームの効果でデッキから一枚ドロー。ドローしたカードはロードポイズン。もう一枚ドロー。ロードポイズンを召喚」

 

A1500・D1000

 

これまたどうやって説明していいか難しいモンスターが現れた。イギリス辺りの国がイメージする幽霊の植物バージョン・・・・。やはりボキャブラリーが足りない。

 

「バトル! ティタニアルでカリムを攻撃!」

「攻撃宣言時、クラールゲホイルを発動。自分フィールド上のモンスター一体を選択。バトルフェイズを強制終了させ、選択したモンスターをデッキに戻し、夜天と名のつくモンスターをLCを乗せた状態で特殊召喚する。コロナをデッキに戻し、ヴィータを特殊召喚」

 

ヴィータA1900・D1200→A2200・D1500

LCヴィータ1

 

「やるわね。世界樹の効果発動。このカードに乗っているフラワーカウンターを二つ取り除き、カリムを破壊するわ」

 

クッ、安定しないものの毎ターンカードをドロー出来るカリム姉を狙ってきたか。しかもカリム姉は植物と扱っているから、フラワーカウンターがもう一つ溜まる。あの巨大樹、ある意味アイヴィ・シャックルより厄介かもしれない。

 

世界樹3→1→2

 

「もう一度世界樹の効果発動。カウンターを二つ取り除き、キャロを破壊するわ。カードを一枚伏せてターンエンドよ」

 

世界樹2→0

ヴィータA2200・D1500→A1900・D1200

レヴィA2200・D700→A1900・D400

 

遊斗  モンスター2 伏せ0 手札3 LP3700

ローズ モンスター2 伏せ3 手札3 LP4000

 

「俺のターン、ドロー! 永続魔法時空管理局を発動。なのはを召喚し、効果でLCを置く」

 

A500・D1800

LCなのは1

 

「なのはの効果発動。LCを取り除き、世界樹を破壊する」

『ディバインシュート!』

 

LCなのは1→0

 

世界樹を破壊するとは罰あたり極まりない行為だが、デュエルモンスターズだから仕方がない。なのはも流石に植物に魔法を撃つのは嫌だったのか、世界樹のカードに向かいディバインシュートを撃った。なのはも優しい子だ。

 

「クッ」

「ヴィータのLCを取り除き、ユーノを特殊召喚。時空管理局にLCを置く」

 

LCヴィータ1→0 時空管理局0→1

 

「場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは! 守備表示のこのカードを攻撃表示にする事により、デッキからツヴァイを手札に加える」

 

A1000・D3000

LC時空管理局1→2

 

「時空管理局のLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚。場のヴィータとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ! ヴィータの特殊召喚時、フィールドにセットされたカード二枚まで破壊できる。そのセットカードを破壊!」

 

LC時空管理局2→1

A2600・D2500

 

『コメートフリーゲン!』

 

ヴィータさんは巨大な鉄の球を自分の手の平に出現させ、右手でポーンと軽く投げる。しかしあの大きさの鉄球を片手で投げるのは、普通なら鍛えられた大の男でも不可能な筈。それ程の重さの球を宙に浮かせたヴィータさんは、グラーフアイゼンで鉄球を飛ばし、鉄球はセットされたカードを貫通した。

 

棘の壁(ソーン・ウォール)が!」

 

棘の壁(ソーン・ウォール)は植物族専用のミラーフォース。制限罠であるミラーフォースと同等の破壊力は抜群で、植物族相手には気をつけなくてはいけないカードだ。だがこの様に破壊される事が多々あるだろう。

 

「更に墓地のツヴァイの効果。時空管理局のLCを取り除き、このカードを手札に加える」

 

LC時空管理局1→0

 

「そして祝福の騎士ヴィータを生贄に、紅の鉄騎ヴィータを特殊召喚する!」

 

A3000・D2800

 

美しい女性に成長したヴィータさん。先程までの体系とは違い、巨大なグラーフアイゼンを担ぐ姿に違和感が全くない。

 

「攻撃力3000・・・・」

「バトル! レヴィでロードポイズンを攻撃!」

『光翼斬!』

 

A1900 VS A1500

 

先程と同じように無駄に低姿勢になって魔力刃を発射した。レヴィの思い通り、魔力刃はロードポイズンの尻尾の様なものを切断された。そこがロードポイズンにとっての生命機関だったのかは知らないが、悲鳴を上げながら墓地に送られた。

 

ローズLP4000→3600

 

「クッ、ロードポイズンが戦闘によって破壊された時効果発動。墓地から植物族モンスターを特殊召喚する。ローンファイア・ブロッサムを特殊召喚」

 

A500・D1400

 

この場合どちらを狙いべきか。ティタニアルを破壊してもローンファイア・ブロッサムの効果でデッキにいるティタニアルを呼ばれるかもしれない。そうしたら戦闘ダメージを多く与えられるローンファイア・ブロッサムを攻撃した方がいい。しかしデッキにいない場合、ティタニアルを破壊しておきたい。あえてロードポイズンを攻撃しない選択肢もあったか・・・・。

 

「紅の鉄騎ヴィータでティタニアルを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A3000 VS A2800

 

ジェット噴射により加速したグラーフアイゼンの巨体をヴィータさんのパワーで操る事により、抜群の破壊力が生まれる。ティタニアルの周りに仕えていた茨のツタを容赦なくハンマーで千切って行き、最後にティタニアルに鉄槌をぶち当てた。

 

ローズLP3600→3400

 

「ターンエンドです」

 

遊斗  モンスター3 伏せ0 手札2 LP3700

ローズ モンスター1 伏せ1 手札3 LP3400

 

「ドロー! ローンファイア・ブロッサムの効果発動。このカードを生贄に、デッキからギガプラントを特殊召喚」

 

A2400・D1200

 

ギガ、とついているだけ巨大な植物だった。体はきのこの様に地面から生えており、体からは鎌の様なものが生えている。顔に目は無く、口からは食虫植物の様に歯が何本もある。とりあえず一言で言うと、気持ち悪い生き物だ。

 

「ギガプラントに装備魔法スペールヴィスを装備。これでデュアルモンスターであるギガプラントは効果を得る」

 

ギガプラントの効果はデュアルモンスターの中でも強力だからな。ローンファイア・ブロッサムとギガプラントが植物の中核を担っていると言っても過言ではない。そしてスペールヴィスも中々強力で表側表示のこのカードが墓地に送られた時、墓地の通常モンスターを特殊召喚できる。デュアルモンスターは墓地にいる時は通常モンスター扱いになるから、相性はいい。

 

「ギガプラントの効果発動。手札か墓地から昆虫か植物を特殊召喚できる。墓地からティタニアルを特殊召喚する」

 

A2800・D2600

 

せっかく倒したのに面倒な奴だ。やはり攻撃力2800のモンスターがポンポン出ると殴り合いが不利になる。けど最上級モンスターで殴るデッキは、一定以上の攻撃力を持つモンスターを場に出しておけば、相手も辛くなるはず。その手のデッキは火力増強系のカードを必要としないからな。

 

「バトル! ティタニアルでAOA高町なのはを攻撃!」

「させません! ヴィータの効果発動。攻撃対象をこのカードに変更する事が出来る。この効果は対象に取る効果じゃないから、ティタニアルの効果は発動できません」

「そんな!?」

 

A2800 VS A3000

LP3400→3200

 

「くぅぅ。同じモンスターに二回も・・・・。モンスターをセット、カードを二枚伏せてターンエンドよ」

 

遊斗  モンスター3 伏せ0 手札2 LP3700

ローズ モンスター2 伏せ3 手札0 LP3200

 

「ドロー! なのはさんの効果も使えるし、やるか。フィールド魔法聖王教会を発動!」

 

これが俺の新たなるフィールド魔法。

綺麗に整えられて太陽の光を遮らない街路樹。緑だけでは無く、赤や青などと言ったカラフルな花が咲き、道はレンガで舗装されている中庭。俺の真正面側には大きな鐘塔があり、中世ヨーロッパの贅沢な教会の様だった。

 

「綺麗ね・・・・」

「なのはの効果でデッキからLSシスター-シャッハ・ヌエラを手札に加えて召喚! 召喚成功時LCを一つ置く」

 

LSシスター-シャッハ・ヌエラ ☆4/炎/魔法使い/A1800・D1000

LCシャッハ1

 

登場したのは紫の髪をしたおかっぱの女性。先程のシャンテとは違い、露出度は低いが、それでもノースリーブでわきがでている。下はスパッツとソックスを履き、太ももが一部分見えている程度。エクシードモードのなのはさんや、ヴィータさん、シャマ姉に比べると十分薄着だが、スピード重視の魔導師ならこれくらいが普通だろう。

 

「聖王教会の効果。シスター、または聖王と名のつくモンスターの攻守を500上げる」

 

シャッハA1800・D1000→A2300・D1500

 

「シャッハの効果発動。聖王教会がフィールドに存在する時、LCを一つ取り除く事で、手札、フィールドからシャンテを特殊召喚できる」

 

シャッハは両手に持っていたトンファー状のデバイスを下ろすと、スーと息を吸い込む。

 

『シャンテ! いい加減に来なさい!』

『は、はいー! って、私怒られる様な事してないよ!』

 

シャンテA1400・D500→A1900・D1000

 

シスターだから祈りのポーズで魔法陣を出して転移魔法するとか、神様によって導かれたとかイメージしていたんだけど。なんか思ってたのと違う・・・・。

これでフィールドは埋まった。あとは紅ヴィータさんを筆頭に殴るのが一番か。

 

「なのはにレイジングハートを装備。攻撃力を1500上げる」

 

なのはA1000→A2500

 

「バトル! なのはでギガプラントを攻撃!」

『エクセリオンバスター!』

 

A2500 VS A2400

 

今日もいつもと同じく巨大な桃色の砲撃が放たれた。本当にあの細くい体にあんな量のエネルギーが入っているのか、いつも気になる。桃色の激流はギガプラントの口の中に入ると、口内で爆発してギガプラントを破壊した。

 

ローズLP3200→3100

 

「スペールヴィスの効果発動。墓地のギガプラントを特殊召喚!」

「ヴィータでギガプラントを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A3000 VS A2400

 

きのこの成長を何百倍速かで見てるかの如く、ニョキニョキと地面から生えてきたギガプラントに向け、紅ヴィータさんはグラーフアイゼンで上空から思いっきり叩き込む。

 

ローズLP3100→2500

 

「まだまだ! レヴィでセットモンスターを攻撃!」

「攻撃宣言時罠発動! DNA定期健診! このセットモンスターを選択して発動。あなたは属性二つを宣言。このセットモンスターの属性が、あなたが宣言した属性だったらあなたは二枚ドロー。違ったら私が二枚ドローする。何を選択する?」

 

うぐっ、非常に難しい質問だ。光は除外していいが、闇、炎、地、水、風、全部可能性があるのが植物族。闇の植物族と言ったらキラートマトしかいないが、しかし様々なデッキで使われるキラートマトがいるのだ。いや待て、こんなギャンブル要素を入れていると言う事は、錬金生物ホムンクルスを入れているかもしれない。このカードは十代が使うグローモスと同じく光属性植物族と珍しい。

 

「ほら、早く選択しなさい」

 

しかし手札は0。入れているとしたらピン刺しであろうホムンクルスを引いているとも考えにくい。ここはリクルーターであるキラートマトか墓地復活のロードポイズンの属性を選択しよう。

 

「闇と水を選択」

「ふ~ん、残念ね。私のセットモンスターはボタニカル・ライオ。地属性よ。よって二枚ドロー!」

 

ギャ、ギャンブルだから仕方がない。翔とかのデッキだと真っ先に地属性を選択するだろうが、植物族は属性が固定されていないから、運に左右される事もあるだろう。

 

A1900 VS D2000

 

しかもレヴィの光翼斬はボタニカル・ライオによって弾き返され、俺に反射ダメージまで来る。

 

遊斗LP3700→3600

 

「シャッハでボタニカル・ライオを攻撃!」

『烈風一迅!』

 

A2200 VS D2000

 

高密度な魔力を乗せた斬撃。砲撃と同じで単純だが火力は馬鹿に出来ない。シャッハは独特な走り方で、高スピードでボタニカル・ライオに接近し、デバイスでクロスに一閃する。双剣輪舞に似ている、というかほぼ同じだ。

 

「シャンテでダイレクトアタック!」

「罠発動! リビングデットの呼び声! 墓地のティタニアルを復活!」

 

A2800・D2600

 

「またそのモンスター。ターンエンドです」

 

場 聖王教会

遊斗  モンスター5 伏せ0 手札1 LP3600

ローズ モンスター1 伏せ2 手札2 LP2500

 

「これはピンチね。私のターン、ドロー! いいカード。ボタニティ・ガールを召喚!」

 

A1300・D1200

 

虫を挟んで食べる食虫植物と、虫を溶かす食虫植物を体に付けた女性。生理的に駄目な人には駄目だろうが、特に気にならない人には変わった女性と見えるだろう。因みに俺は前者だ。

 

「バトル! ティタニアルでAOA高町なのはを攻撃!」

「ヴィータがいるのに攻撃?」

 

考えろ遊斗。相手は何か狙っている、これは間違いない。このタイミングで発動するとした手札から、つまり速攻魔法。ほぼ間違いなくコンバットトリックカードを持っている筈だが、収縮や突進だった場合あの攻撃表示のボタニティ・ガールは不必要なカード・・・・まさか!

 

「ッツ! ヴィータの効果は発動しません」

「なっ!? なるほど、私の狙いに分かったってことね。ダメージステップ速攻魔法、狂植物の氾濫を発動! 自分フィールド上の植物族モンスターはエンドフェイズ時まで自分の墓地の植物族の数×300ポイントアップする! 墓地の植物族は7枚!」

 

ボタニティ・ガールA1300→A3400

ティタニアルA2800→A4900 VS A2500

 

攻撃力3700と4900。ボタニティ・ガールはあのリミッター解除よりも上昇値が高い!

 

ティタニアルは突然狂ったように仕えさせていたツタを振り回して暴れ出し、なのはさんはそれに巻き込まれた。

 

遊斗LP3600→1200

 

「クッ! レイジングハートの効果で破壊を無効!」

「勘のいいと言うか頭のいい子ね。ボタニティ・ガールでAOA高町なのはを攻撃!」

「それは止める! ヴィータの効果で攻撃対象をこのカードに変更!」

 

A3400 VS A3000

 

ボタニティ・ガールは後頭部に生やした虫を溶かす食虫植物から、消化液をヴィータさんに吹きかけた。勿論体に害はあるが、フィールドバリアを使っている為か体に悪影響は無い。ただ服が徐々に溶けて行き、ヴィータさんは慌てて墓地に行った。

 

遊斗LP1200→800

 

「この瞬間破壊された紅のヴィータの効果発動。このカードが破壊された時、フィールドになのはが存在する場合、墓地のヴィータと名のつくモンスターを復活する事が出来る。祝福の騎士ヴィータを復活!」

 

A2600・D2500

 

「カードを一枚伏せてターンエンドよ。エンドフェイズ、狂植物の氾濫の効果で私のフィールド上の植物族は全て破壊される。この瞬間、ボタニティ・ガールの効果発動。このカードが破壊され墓地に送られた時、デッキから守備力1000以下の植物を手札に加える。私はフェニキシアン・クラスター・アマリリスを手札に」

 

場 聖王教会

遊斗  モンスター5 伏せ0 手札1 LP800

ローズ モンスター0 伏せ2 手札1 LP2500

 

「これで遊斗君の攻撃が決まれば勝ちッス!」

「いや、相手は強い。多分あのセットカードは攻撃を無効にする奴か、あるいは」

 

十代は言いかけたが、これ以上は助言になってしまうので口を閉じた。

 

「ドロー。・・・・少し考えます」

「いいわよ。じっくり考えなさい」

 

俺も十代と同じ考えだと思う。

少し前のターンに破壊した棘の壁(ソーン・ウォール)だ。あれはミラーフォースの下位交換で普通ならあのカードより使い勝手のいいミラーフォースをデッキに入れる。しかしあのカードはデッキに入っていた。それはつまり、制限であるミラーフォースを一枚入れ、下位交換であるが十分強力な棘の壁(ソーン・ウォール)を入れている。という線が一番妥当かもしれない。

貧乏人だったらミラーフォースを持っていない線も考えられるが、相手はモデル。ミラーフォースを買うお金くらいある筈。

 

「なのはの効果発動。デッキからクロノを手札に加える」

 

しかも先程手札に加えた、フェニキシアン・クラスター・アマリリスは簡単に説明すると800のバーン効果を持っている。最上級モンスターだが、あるカードの効果で特殊召喚できる。手札がたった一枚なので、引く確率はそこまで高くないだろうが、植物族は優秀なサーチもあり、相手のターンには俺のモンスターは植物族になりフレグランス・ストームのコストにもなる。

 

「シャッハの効果発動。攻撃力を半分にする事でダイレクトアタックが可能」

 

シャッハA2300→A1150

 

「ヴィータを守備に変更。バトル! なのはでダイレクトアタック!」

「罠発動、聖なるバリア-ミラーフォース! これであなたの攻撃表示モンスターは全て破壊!」

 

やはりミラーフォース! ここまでは読み通り!

なのはさん、シャッハ、レヴィ、シャンテは破壊されてしまったが、その代わりモンスターゾーンは空く。

 

「シャンテの効果発動! このカードが破壊され墓地に送られた時、このカードをデッキに戻し、デッキからLSを特殊召喚する。来い、シグナム!」

 

A1800・D1400

 

「シグナムでダイレクトアタック!」

『シュランゲバイセン!』

 

A1800

 

「痛ぅ。結構危なかったわね」

 

ローズLP2500→700

 

「クロノを召喚。効果でデッキから設置型バインドを手札に加えます。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 聖王教会

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札1 LP800

ローズ モンスター0 伏せ1 手札1 LP700

 

「私のターン、ドロー! フレグランス・ストームを発動! 祝福の騎士ヴィータを破壊して一枚ドロー。ドローしたカードはフェニキシアン・シード。もう一枚ドロー」

 

これであのフェニキシアン・クラスター・アマリリスの特殊召喚は可能。来るか!?

 

「フェニキシアン・シードを召喚して効果発動。このカードを墓地に送って手札から、フェニキシアン・クラスター・アマリリスを特殊召喚する!」

 

A2200・D0

 

白のユリの様な花に、赤い花が付いた植物。白い花を羽として空を飛び、雄蕊を口としている植物。花の事を全く知らないので、どのような種類の花をモチーフしているか分からない。

 

「バトル! フェニキシアン・クラスター・アマリリスでシグナムを攻撃!」

「まずいんだな! フェニキシアン・クラスター・マリリスは戦闘を行うと自壊する!」

「え? それじゃあ別にいいんじゃ?」

「やっぱり丸藤先輩は勉強不足ドン。フェニキシアン・クラスター・アマリリスは破壊された時相手に800ダメージを与えるドン」

「それじゃあ遊斗君のライフが0に!?」

「いや、遊斗はここまで読んでいた」

 

その通り、流石親友。よく俺の事を知っている。

 

「罠発動、設置型バインド。これでフェニキシアン・クラスター・アマリリスは攻撃できない! 更に効果で聖王教会にLCを置く」

 

LC聖王教会0→1

 

「嘘!? クッ、カードを一枚伏せてターンエンドよ」

 

場 聖王教会

遊斗  モンスター4 伏せ2 手札1 LP800

ローズ モンスター1 伏せ2 手札0 LP700

 

「これで終わりだ。ドロー! ツヴァイを通常召喚。場のシグナムとツヴァイを融合! 来い、祝福の将シグナム! 効果でLCを置く」

 

A2700・D2000

LCシグナム1

 

「祝福の将シグナムの効果! LCを取り除き、フェニキシアン・クラスター・アマリリスの攻守を0にする!」

『『捉えよ、凍てつく足枷! フリーレンフェッセルン!』』

 

LCシグナム1→0

アマリリスA2200→A0

 

シグナムさんの手の平に、中にいるツヴァイが作った小型の吹雪の渦が現れる。シグナムさんはそれをフェニキシアン・クラスター・アマリリスに向け投げると、炎の植物は一気に氷アートの観葉植物へと変わる。

 

「なんですって!?」

「そうか! 遊斗はアマリリスのバーン効果を使われる前に相手のライフを0にするつもりなんだ」

「バトル! シグナムでフェニキシアン・クラスター・アマリリスを攻撃!」

「これで負け・・・・。なんてね、まだ終わらないわよ! 罠発動棘の壁(ソーン・ウォール)!」

「なっ!? 二枚目!?」

 

しまった! 流石にそこまで予定していない! クロノを守備にしていたのが不幸中の幸いだが、フィニッシャーを破壊されてしまったか。

フェニキシアン・クラスター・アマリリスの前に現れた棘の壁が現れ、壁は突撃してくるシグナムさんを串刺しにした。勿論グロく無い様に、串刺しになる前にバリーンと破壊される。

 

「流石のあなたも予想外の様ね」

「ええ。これでターンエンドです」

 

場 聖王教会

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札1 LP800

ローズ モンスター1 伏せ1 手札0 LP700

 

「私のターン、ドロー! 永続魔法、増草剤を発動。一ターンに一度、メインフェイズに自分の墓地の植物族モンスターを特殊召喚できる。この効果を使ったターン、自分は通常召喚出来ない。私はティタニアルを特殊召喚」

 

A2800・D2600

 

「バトル! ティタニアルでクロノを攻撃!」

 

A2800 VS D1500

 

ック。マズイマズイ。まさかこのタイミングで毎ターン植物族を蘇生できる増草剤を引かれるとは。

 

「ターンエンドよ」

 

場 聖王教会

遊斗  モンスター0 伏せ1 手札1 LP800

ローズ モンスター2 伏せ2 手札0 LP700

 

設置型バインドのおかげで何とか持ちこたえたが、次が正真正銘のラストターンになる。デュエルアカデミアのトップが二日目で負けてしまったら、デュエルアカデミアの看板に泥を塗ってしまう。負けるとしても最終日だ、今じゃない!

 

「俺のターン、ドロー! ・・・・来ましたよ、このフィールドに最も相応しいモンスターが! 聖王教会のLCを取り除いてレリックを特殊召喚!」

 

LC聖王教会0→1

A0・D0

 

「攻守0のモンスター?」

「そして迷い子ヴィヴィオを通常召喚!」

『昨日のごめーわく、頑張ってかえします!』

 

昨日の事と言うのは、バルバロスとベヒーモスの事だろう。まだ五歳なのに律儀な子だな~。俺の五歳の頃とは大違いだ。

フィールドには攻撃力0のモンスターが二体。ローズさんは首を傾げているが、周りのみんなはもう分かったようだ。

 

「場のヴィヴィオとレリックを融合! このモンスターがここ、聖王教会で崇められている王! 来い、聖王ヴィヴィオ! 聖王ヴィヴィオの攻守は墓地のLS×400アップする! 更に聖王教会の効果も得て、攻守は――」

 

ヴィヴィオAD?→AD6900

 

「こ、攻撃力6900ぅ!?」

 

相手の墓地にも攻撃を止めるカードも無いし、手札、フィールドもモンスターと表になっている魔法・罠のみ。墓地のモンスターの効果吸収も必要無いだろう。

 

「バトル! ヴィヴィオでティタニアルを攻撃!」

『ディバイーン・・・・』

 

A6900 VS A2800

 

ヴィヴィオさんのディバインバスターはなのはさんと違い、砲撃と言うより直射型だ。だが墓地の精霊達(みんな)の力を貰う事により、手元にある虹色の球の大きさは収束魔法を撃つ時と同等の密度を持っていると肌で分かる。

 

『バスター!』

 

そして手元にあった球体に思いっきり拳を打つと、球体が砲撃に変わり一気に発射された。一般女性より数十センチ大きい程度のティタニアルが、自分より何倍も巨大な砲撃を止める術は無かった。

ティタニアルは悲鳴を上げながら消えて行き、その数秒後、轟音の中ローズさんの金切り声が聞こえた。

 

ローズLP700→-3400

 

「わ、私が負けるなんて・・・・」

「ガッチャ、楽しいデュエルでしたよ」

 

俺はローズさんに近付き十代お決まりのポーズを使い、笑顔で挨拶をする。するとローズさんは何故か頬を赤くさせ、そしてスッと俺に手を伸ばした。

 

「・・・・気にいったわ。あなた、私のマネージャーにならない?」

「遠慮します」

「即答ッスか!? 勿体ないッス!」

「ど、どうして? 私のマネージャーになれたら、私をより知れるわよ」

 

え~、あなたの事知るくらいなら、フェイトとワンステップ次に進みたいし。というか俺何か気に入られる事した?

 

「どうしても何も、俺には可愛い恋人がいますから。じゃ、遠慮なくメダル貰いますね」

「・・・・ふ、ふん! 何枚でも持って行きなさい!」

 

 




前書きを読んでいない方は、お暇があれば前書きに目を通して下さい。
本当に申し訳ありませんでした。





さて、気を取り直して今回の話に話題にしましょう。
今回はやたらと思考フェイズが長かったです。まさか小説で「少し考えます」を使う日が来るとは思っていませんでした。それと植物族は他の種族より描写が難しい(花を知らないので)
今回は聖王教会とシスター二人が登場しました。シャンテの描写を書く為に、画像を検索していたんですが、シャンテ可愛いですね・・・・。元々俺好みの魔法ですし。



LSシスター-シャンテ・アピニオン ☆3/炎/魔法使い/A1400・D500
このカードが破壊され墓地に送られた時、このカードをデッキに戻す。このカードの効果で墓地に存在するこのカードがデッキに戻った場合、デッキから「LSシスター-シャンテ・アピニオン」以外の「LS」と名のつくモンスターを特殊召喚する事ができる。
このカードの戦闘によって発生する自分へのダメージは0になる。


LSシスター-シャッハ・ヌエラ ☆4/炎/魔法使い/A1800・D1000
このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。このカードのLCを2つ取り除く事で、デッキから「LSシスター-シャンテ・アピニオン」を特殊召喚する。また「聖王教会」がフィールドにある時、取り除くLCは1つでよい。
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。この時、このカードが相手ライフに与える戦闘ダメージは半分になる。


聖王教会 フィールド魔法
フィールド上に表側表示で存在する「LSシスター」または「聖王」と名のつくモンスターの攻撃力・守備力を500ポイントアップする。
このカードがフィールド上に存在する時「聖王」と名のつくモンスターは、エンドフェイズ時に融合デッキに戻る効果を発動しなくてもよい。





まずはシャンテ。本当ならトークンを出して、その攻撃力分攻撃力を上げる――とかやりたかったんですけど、メインアタッカーよりサポートに回したかったので。
墓地に溜まらず、効果破壊でもリクルート出来るので、リクルーターの中で優秀ですね。炎属性なのは髪の色から適当に。


次にシャッハ。
ダイレクトアタッカー件、シャンテのお呼び出し係。後者はオットーやディードの方が合うかな。カリムのサポート効果でもよかったんですが、シャンテにしました。炎なのは他に合いそうな属性が。


聖王教会。ピンポイント効果ですが500アップは大きいと思います。そしてすぐにデッキに戻ってしまう聖王ヴィヴィオをフィールドに止める数少ないカードでもあります。
聖王教会の案はグラハムサイト2様から頂きました。ありがとうございます。






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第三十八話

前回の前書きで書いたとおり、三十三話~三十六話まで修正しました。

最近文字数が多くて一話に掛かる時間が非常に長くなっています。その為ストックも全て使いきってしまいました。ひょっとしたら次話の更新が遅れるかもしれません。それと、来週・再来週家族が仕事にPCを使うので更新ができないかもしれません(隙を見て更新するつもりです)


ナンバーズのオリカ案ですが

ドロップ様作
オットー
ディード
チンク
セイン

神埼はやて様作
ウーノ

を多少効果を変更して採用させて頂きます。神埼はやて様のウーノには灰汁の天災様から頂いた案を組み込もうと思います。ドロップ様の案が多いのは、一体でも十分に戦える非常に強力な効果を持っていたので採用させていただきました。


残りのナンバーズはトーレ・セッテ・ディエチ、ウェンディになっております。
もし何かアイディアが浮かんだら気軽に感想またはメッセージにお願いします
強すぎた場合こちらでバランスを取るつもりですで、多少インチキ効果になってもかまいません


追記
アンデットワールド発動時にアンデット族以外の最上級モンスターをアドバンス召喚してしまいました。修正しにくい部分だったので、酷いプレイング+強欲な壷を使っています。申し訳ありませんでした。


「ぐああああ! 馬鹿な! 俺は恐竜族の王だぞ!?」

「天使の王に勝った俺に、一人でデュエルを挑んできたのが敗因だ」

 

恐竜族の王、超伝導恐竜(スーパーコンダクターティラノ)のライフは雷フェイトさんの攻撃によって0になり、悲鳴を上げながら闇に呑まれて行く。ローズさんと戦ってから翌日。あれから俺は四枚しかGXメダルが増えておらず、代わりに次々と襲いかかってきた王達を倒していた。

炎族の王、ヘルフレイムエンペラーはバーンダメージが辛かったがホーリーシャマ姉とアインハルトの効果でライフを10000近く回復して勝った。

水族・魚族・海竜族の王達は何と3対1のデュエルを申し込んできて、かなり苦労してダメージもくらったが無事に勝つ事が出来た。水族はガエル・サンデス、魚族は超古深海王シーラカンス、海竜族は海竜神-ネオダイダロス。この三王のデッキは1対1だったら余裕で勝てただろうが、三種族が集まる事で梶木さんのデッキに火力・スピード・持久力を兼ね備えたようなデッキだった。

 

「ふ~。恐竜の王とは言え剣山とどっこいかそれ以下だな。これで残りの王は九人。ようやく折り返し地点を出発したぐらいか」

「やはり頻度が増えてきている。一日二日休んだ方がいい」

 

肩を貸してくれているシグナムさんは、ポツリとそう言った。その気持ちは素直にうれしいが、まだ襲ってくる王が存在する以上、気になってゆっくり休めないだろう。

 

「王達が残っていると気になって休めませんから」

「では終わったら最低でも一週間は休め。これは私だけでなく、皆の意見だ」

 

一週間も休む必要無いと思うんだけどな~。襲い掛かって来る王とのデュエルで、心体共に疲れる日も、たっぷり寝れば心も体も元気いっぱいになる。去年のカオス・ソーサラーや三幻魔の時とは大違いだ。

「単位が大丈夫だったらそうします」と伝えると、シグナムさんはため息を吐く。だが次の瞬間、突然シグナムさんは歩くのを止めた。

 

「新手か・・・・」

「ヒッヒッヒ、いや~お見事でしたよ。やはり恐竜族如きでは勝てませんでしたか。天使族の王を倒したんですから当然ですか」

 

下半身は無く上半身だけの干からびた体。赤いマントを頭に掛けているが、そのマントはボロボロ。右手に持った黄色くも禍々しい鎌。不死のアンデットの王、不死王(ノスフェラトゥ)リッチーがそこにいた。

 

「アンデットか。残念だが今遊斗とデュエルはやらせん。やると言うのなら、私を倒してからにしろ」

 

シグナムさんは右手に握ったレヴァンティンに業火の炎を纏わせ、上空にいるリッチーを殺気だった目で睨みつける。そんなシグナムさんを見て、リッチーはケラケラと笑い声を上げる。

 

「な~に、別に今じゃなくていいですよ。そうですね~、明日の早朝、決闘を申し込みます。アンデットは日の光が嫌いですから、なるべく早く起きて下さいよ。ヒーヒッヒ!」

 

リッチーは最後に不気味な声を上げながらスッと姿を消し、リッチーの姿で隠れていた三日月が見えていた。シグナムさんはレヴァンティンを待機状態に戻すと、無言で再び歩き始める。

 

「戦うのだろう?」

「ええ、どっちにしろ全員倒しますから。けどありがとうございます。流石に俺も二回続けて闇のデュエルは辛かったので」

「・・・・別に構わん。けど一つ聞かせろ。何故お前が戦おうとする? 何故遊城や万丈目の力を借りない?」

「分かりません。ただ俺がやらないといけない気がして」

「・・・・私は何も言わん。ただ一つ、お前には我等がついている。お前のやる事が人の道を踏み外さない限り、我等はお前の剣となり盾となる」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

翌日の早朝。リッチーとのデュエルがどれくらい続くかは分からないが、あいつのお望み通り太陽が昇る二時間前に昨日リッチーと会った場所を訪れていた。ゆっくり休んでいても緊張して落ち着かないので、起きてすぐここに来た。

 

「ヒッヒッヒ、随分と早いお目覚めで」

「挨拶はいらん。だが一つ聞かせてもらう。お前は王の中で何番目に強い?」

「私は一番弱いですよ。何しろ、滅多なことではデュエルをしませんからね~」

「教えないって事か。じゃあ嫌でも本気を出させてやる!」

「「デュエル!」」

「ヒッヒ、先攻は頂きます。ドロー。モンスターをセット、カードを二枚伏せてターンエンドです」

 

 

リッチー モンスター1 伏せ2 手札3

 

やはり守備的で無難な手。相手が何を軸にしたアンデットかは知らないが、アンデットにはゴブリンゾンビ、ピラミッド・タートル、魂を削る死霊と優秀な壁モンスターがいる。前者二枚ならこのカードが役に立つ。守っても仕方がないから攻めるか。

 

「俺のターン、ドロー! 相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、カリム姉は特殊召喚できる」

 

AD500

 

「カリム姉の効果発動。デッキトップのカードの種類を宣言する。モンスターを選択、デッキトップはフェイト、よって手札に加える。フェイトを召喚、効果でLCを乗せる」

『アンデットの王か。なのは大丈夫かな?』

 

LCフェイト1

A1800・D500

 

「フェイトの効果発動。LCを取り除き、そのモンスターの表示形式を変更!」

「ヒッヒ、セットモンスターはピラミッド・タートルです」

 

LCフェイト1→0

A1200・D1400

 

背中にピラミッドを乗せたアンデット族を運ぶ亀。このカードはリクルーターの中でもかなり優秀で、特殊召喚するモンスターの条件が、守備力2000以下と、一般的なリクルーターとは違う。

 

「魔法・罠ゾーンにアリサ・バニングスを魔法扱いとして置く」

 

LSアリサ・バニングス ☆3/炎/魔法使い/A500・D500

 

『せっかくなら前線でバンバンと戦いたいけど、あたし達じゃ辛いわね』

 

キャロと同じ魔法・罠ゾーンに魔法扱いとして置く事が出来る、独特な効果を持ったカード。長い金髪をなのはと同じように一部分だけ纏めたツーサイドアップにしている少女で、非常に活発的な印象を受ける。幼いなのはに匹敵するほどのアニメ声で、何故か声だけでツンデレのイメージが湧く。

 

「アリサの効果発動。一ターンに一度、俺のフィールド上のモンスターを選択。選択したモンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、選択したモンスターにLCを置く」

『フェイト、あたしの力受け取りなさい!』

『うん』

 

アリサは炎を纏った鞭の様な物をフェイトの持つバルディッシュに巻きつけると、黄色の魔力刃から電気に加え炎の力も纏う。

 

「バトル! フェイトでピラミッド・タートルを攻撃!」

「魔法使い族の攻撃宣言時、マジシャンズ・サークルを発動します」

「なっ!? マジシャンズ・サークルだと!?」

 

いくら対戦相手を俺に絞り込んでいるとはいえ、魔法使い族の攻撃宣言時にしか発動できないマジシャンズ・サークルをアンデットデッキに入れるか!? あいつが呼び出すモンスターは100%あのモンスター。だったらここは・・・・。

 

「デッキからシュテルを特殊召喚する!」

 

A800・D800

 

「私は大神官デ・ザードを特殊召喚します」

 

A1900・D2300

 

白銀の兜に純白のマントを着た聖職者。だがこのモンスターは褒められる聖職者では無く、悪に落ち、永遠の命を望もうとした愚かな人間。

 

「まずはフェイトでピラミッド・タートルを攻撃する!」

 

A1800 VS A1200

 

無言で放たれたハーケンセイバーはピラミッド・タートルに縦に回転しながら接近し、ピラミッド・タートルを真っ二つにした。ピラミッド・タートルが背負っていたピラミッドの中身は、以前図鑑で見たピラミッドの断面図とよく似ていた。流石海馬コーポレーション、無駄な所まで凝っている。

 

LCフェイト0→1

リッチーLP4000→3400

 

「ヒッヒッヒ、ピラミッド・タートルの効果でデッキからピラミッド・タートルを特殊召喚します」

 

A1200・D1400

 

「シュテルで大神官デ・ザードを攻撃! シュテルは攻撃するモンスターのレベル×300攻撃力をアップする!」

 

シュテルA800→2300

 

「ヒヒッ、ダメージステップ、速攻魔法禁じられた聖杯を発動。シュテルの攻撃力を400上げる代わりに、効果を無効にします」

「しまった!?」

 

シュテルA2300→1200 VS A1900

 

『くっ、力が・・・・』

 

魔力が思う様に使えず、シュテルの放ったブラストファイアーは微々たる威力だった。デ・ザードは魔法で向かってくる炎を打ち消すと、シュテルに向け魔力弾の様な物を放った。体に負荷が掛かっている状態なのか、シュテルは思う様に動けず、魔力弾をくらい破壊されてしまった。

 

「ぐっ! やはりお前、ダメージを受けないのか」

 

遊斗LP4000→3300

 

「カカッ、何しろ死んでいますからね。デ・ザードの効果発動。戦闘でモンスターを破壊する度に効果を得ます。一回破壊したこのカードは、このカードを対象にする魔法・罠カードの発動を無効にする効果を持ちます」

 

一回目はまだいい。だが二回目の効果は使わせる訳にはいかない。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗   モンスター2 伏せ2 手札3 LP3300

リッチー モンスター2 伏せ0 手札3 LP3400

 

「ドロー。ヒヒッ、強制転移を発動します。これで私達はお互いモンスターを一体ずつ交換しなくてはなりません。ピラミッド・タートルを差し上げます」

「クッ、俺はカリム姉のコントロールを移す」

 

カリム姉はペコリと俺に頭を下げると、リッチーのフィールドに移った。カリム姉の変わりに来たのは亀。絵的にもアドバンテージ的にも割に合わない。

 

「ありがとうございます。では早速カリムのモンスター効果を発動します。デッキトップを魔法と選択、デッキトップはフィールド魔法アンデットワールド。よって手札に加えます」

 

アンデットワールドは名前の通り、アンデットの世界。フィールド、墓地のモンスターが全てアンデット化してしまう、強力なフィールド魔法。

 

「ゴブリンゾンビを召喚」

 

A1100・D1150

 

何故アンデットワールドを発動しない? フィールド魔法アンデットワールドは、フィールドと墓地のモンスターをアンデット化するだけじゃなく、アンデット族以外は生贄召喚出来なくなる、もう一つ強力な効果を持っている。張り替えが怖くて手札温存か?

 

「バトル。大神官デ・ザードでピラミッド・タートルを攻撃」

 

A1900 VS A1200

 

セットしていたカードはLS専用の防御カードだから、LSではないピラミッド・タートルを守る事は不可能。しかも戦闘ダメージは俺が受けるが、リクルーターの効果は墓地発動。

 

遊斗LP3300→2600

 

(つう)っ~~!」

「? まあいいでしょう。ピラミッド・タートルの効果発動。デッキから地獄の門番イル・ブラッドを特殊召喚」

 

A2100・D800

 

現れたのは、青と白の囚人服の様な物を着た巨大な大男。これだけではアンデット族に見えないが、前に付いてるジッパーを下ろすと、そこには巨大な目と口を持った不気味な男の顔が現れた。幸い俺はそこまでオバケが苦手じゃないので、不気味としか感じないが、オバケ嫌いの人にはこのモンスターは辛いだろう。

 

「イル・ブラッドでフェイトを攻撃」

「罠発動、プロテクション。これでこのターンフェイトは破壊されない」

「しかし戦闘ダメージは受けてもらいます」

 

A2100 VS A1800

 

イル・ブラッドは巨大な腕をフェイトに振り下ろし攻撃する。プロテクションで攻撃を弾くが、衝撃を殺す事は出来ず、300の衝撃が俺の体を襲う。

 

「ぐっ! この程度!」

 

遊斗LP2600→2300

 

襲ってきた衝撃から両手をクロスにして防ぎ、再びデュエルディスクを構えると、リッチーが俺をジーと見ていた。が、すぐに口を開いてデュエルを再開する。

 

「大神官デ・ザードの効果発動。戦闘で相手モンスターを二回破壊したこのカードを生贄に、デッキから私の分身、不死王(ノスフェラトゥ)リッチーを特殊召喚」

 

A2600・D2900

 

リッチーとは不死化魔導師と和訳される高位アンデッド。永遠の命を手に入れる為、いくつもの命を犠牲にして儀式を行った結果、アンデッドになってしまった魔導師。

不死王(ノスフェラトゥ)リッチー。その召喚条件の重さから、対峙するのはおろか、今までこのカードを使ってデュエルをしている人を見た事がない。だが今、あいつは僅か二ターンで自分の分身を召喚した。

 

「呼ばれてしまったか」

「リッチーの効果発動。一ターンに一度、裏側守備にする事が出来る。私はこれでターンエンド」

 

遊斗   モンスター1 伏せ1 手札3 LP2300

リッチー モンスター4 伏せ0 手札3 LP3400

 

リッチーを呼ばれてしまったが幸いセットカードは無い。ここで動いて次のターンに備えておこう。

 

「俺のターン、ドロー! なのはを通常召喚。効果でLCを一つ置く」

『にゃ、にゃはは。あんまりこのフィールドに長居はしたくないかも』

 

A500・D1800

 

フェイトが心配していた通り、オバケが嫌いななのはには辛いフィールドだ。カリム姉にも早く戻って来て貰いたいが、それはデュエルに余裕が出来てからにしないと。

 

「フェイトのLCを取り除き、ユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは」

『えっと。もしよかったら私もチェンジしたいんだけど・・・・』

 

LCフェイト1→0

A1000・D3000

 

「中核となる人がそんな事言わないで下さい。なのはさんの効果発動。デッキからLS月村すずかを手札に加える。そして手札のすずかを、魔法カード扱いとして、魔法・罠ゾーンに置く事が出来る」

 

LS月村すずか ☆3/水/魔法使い/A500・D500

 

この子もキャロやアリサと同じく、独特な効果を持ったLS。紫色のロングヘアで、髪には白のカチューシャをしている。アリサとは違い、俺より大人っぽい雰囲気を出している、大人しそうな女の子。

 

『アリサちゃんと一緒に、皆さんをサポートしますっ』

「うん、よろしくな。アリサの効果発動。フェイトを対象にする。更にフィールドにすずかがいる時、選択したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、俺はデッキから一枚ドローする事が出来る」

 

先程と同じようにアリサはバルディッシュに鞭を巻き付け、バルディッシュが本来扱う事の出来ない炎の力を与える。

 

「バトル! フェイトでゴブリンゾンビを攻撃!」

『ハーケンセイバー!』

 

A1800 VS A1100

 

フェイトが放ったハーケンセイバーには炎が纏っており、縦に回転する魔力刃にほんの0.数秒遅れて炎が回転している。それだけ見るととても綺麗な景色だが、ゾンビを切断した瞬間に、幻想的な絵は血みどろの絵に変わる。

 

リッチーLP3400→2700

 

「ゴブリンゾンビの効果発動。フィールド上のこのカードが墓地に送られた時、デッキから守備力1200以下のアンデットを手札に加えます。私はゾンビ・マスターを手札に」

「アリサの効果でフェイトにLCが乗り、更に追加効果でデッキから1枚ドロー」

 

ここでなのはさんでカリム姉を攻撃するかが悩みどころだ。もし奴がカリム姉の効果に失敗したら俺の手札にカリム姉が戻って来てくれる。効果に成功したり、生贄にされたらアド損だが、ここはカリム姉を信じよう。

 

「すずかの効果発動。フィールド上のLCを一つ移動させる事が出来る。フェイトに乗ったLCを、すずかに移動する」

 

LCフェイト1→0 すずか0→1

 

「すずかの効果発動。フィールドにアリサがいる時、このカードに乗ったLCを一つ取り除き発動できる。相手フィールド上のモンスター一体を選択。選択したモンスターは次の相手のエンドフェイズ時まで攻撃宣言をする事ができず、表示形式を変更する事もできない。俺が選択するのは当然裏側表示のリッチーだ」

『アイスバインド』

 

LCすずか1→0

 

セットされたリッチーのカードの上空からパラパラと粉雪が降る。何の害も無さそうな綺麗な雪だが、すずかがまるでバイオリンを弾くかの様に、空を指でスッと撫でると、突如リッチーのカードが凍り付けにされた。

 

「なるほど。考えましたね」

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

遊斗   モンスター2 伏せ3 手札3 LP2300

リッチー モンスター3 伏せ0 手札3 LP2700

 

「ヒヒッ、ドロー。まずはカリムの効果を発動。罠を宣言。デッキトップは、神獣王バルバロスでしたか、残念です。このカードはあなたの手札に戻ります」

「貴様、今まで倒した王を使って俺に揺さぶりを掛けるつもりか? 残念だが俺はそこまで精神が柔じゃない。破滅の光をいくら殺したって罪悪感はない。例え精霊の姿をしていてもな」

「ヒッヒッヒ、別にそんなつもりはありません。私はただ、優秀な上級カードを入れているだけですよ。どんなに強い王でもカードの効果が強くないと、入れる意味はありませんからね。ヒッヒッ」

 

優秀なカードだからデッキに入れているにしろ、俺に揺さぶりを掛ける為に入れているにしろ、普通のアンデット族ならバルバロスなんてカードは入らない。おそらくコイツのデッキは――

 

「イル・ブラッドを再度召喚。これにより、手札・または自分の墓地のアンデット一体を特殊召喚する効果を得ます」

 

これだけでは先程のバルバロスを使う事は出来ない。だがカリム姉の効果で手札に加えたフィールド魔法がある。

 

「ヒーヒッヒ、フィールド魔法アンデットワールドを発動」

 

奴がフィールド魔法ゾーンにカードをセットした瞬間、辺り一帯が地獄と化した。地面には何千、何万もの骸骨が落ちてあり、沢山の人面を持った枯れ果てた巨大な樹が生える。甲高い鳴き声を上げて飛ぶコウモリは、ヴァンパイアの住処であろう洋館に飛んでいく。

 

「イル・ブラッドの効果発動。アンデットとなったバルバロスをフィールドに特殊召喚」

 

A3000・D1200

 

数日前に闇のデュエルをした相手、神獣王バルバロス。数日前に見たバルバロスは、破滅の光であったがプライドを持ち、堂々とした奴だった。だが目の前にいるバルバロスは、体がボロボロに腐っている醜い怪物になっており、数日前のバルバロスと同じモンスターとは思えない。

 

「バトル。バルバロスでAOA高町なのはに攻撃!」

 

A3000 VS A1000

 

「攻撃宣言時、罠発動。協力防御。LSが二体以上いる時発動可能。このターンLSは戦闘で破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは0になる。そして発動後デッキから一枚ドロー」

「ヒヒッ、そうこなくては。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター2 伏せ2 手札5 LP2300

リッチー モンスター3 伏せ1 手札2 LP2700

 

いくらアリサとすずかのおかげでアドバンテージを稼げているとはいえ、なのはさんとフェイトじゃ火力不足だ。手札を消費してでも高火力モンスターを出さないと、こっちが負ける。

 

「ドロー!」

 

なのはさんのサーチを入れても融合素材が揃わない。ここはフェイトを融合させて火力を上げよう。

 

「なのはさんの効果でデッキからシャマ姉を手札に加える。シャマ姉を通常召喚して効果発動。このカードにLCを置く」

 

LCシャマル0→1

A800・D1800

 

「そしてシャマ姉のLCを取り除き、デッキからアルフを特殊召喚。場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」

『アンデットワールドに蘇生モンスターか。厄介だね』

 

A2800・D500

 

フェイトさんでイル・ブラットを破壊しても、リッチーを破壊しても、次のターンどちらかの効果でもう片方が復活してしまう。だったら前のターンと同じく、アリサの効果を使いLCを溜め、すずかでリッチーの表示形式の変更を阻止するのが一番。

 

「アリサの効果発動。フェイトさんを選択する。バトル! フェイトさんでイル・ブラッドを攻撃!」

「ヒッヒ、させません。永続罠発動、強制終了。自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード一枚を墓地に送る事で、このターンのバトルフェイズを終了させます。私はバルバロスを墓地に送ります」

「しまった! まさかアンデット族に防御カードとは・・・・」

 

アンデット族は基本攻撃されて動く事が多いから、その手の防御カードは入れていないと思っていたが・・・・。けどコストが充実しているのは事実。この場合毎ターン墓地から二体のアンデットが復活するから、すぐに場が埋まってしまう。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター3 伏せ4 手札4 LP2300

リッチー モンスター2 伏せ1 手札2 LP2700

 

「ドロー。ヒッヒッヒ、リッチーを反転召喚します。リッチーがリバースした時効果発動。自分の墓地のアンデットを特殊召喚できる。来い、神獣王バルバロス」

 

A3000・D1200

 

これはヤバイ。このターンバルバロスの攻撃を防ぐ手段がない――と言う訳ではないが、このまま殴り合いを続けていたら明らかに俺の方が不利だ。しかも奴はまだ、アンデット族専用の死者蘇生とも言える、生者の書-禁断の呪術を一枚も使っていない。あれは明らかに三枚入れている筈。

 

「更にイル・ブラッドの効果で墓地のゴブリンゾンビを特殊召喚」

 

A1100・D1050

 

「ゴブリンゾンビを生贄に、ヴァンパイア・ロードを召喚。ゴブリンゾンビの効果でデッキから馬頭鬼を手札に加えます」

 

A2000・D1500

 

これであいつの手札はゾンビ・マスターと馬頭鬼と未知数のカード。

 

「生者の書-禁断の呪術を発動。あなたの墓地の高町なのはをゲームから除外して、墓地のゴブリンゾンビを特殊召喚します」

「チッ」

 

永続罠と分かった以上、次のターンなのはさんの効果でエリオをサーチして、なのはで破壊する予定だったが。やはりあいつもLSの事はしっかりと調べてきているようだ。

 

「バトル。バルバロスで黒騎士フェイトに攻撃」

「攻撃宣言時、鋼の軛を発動! このカードがある限りバルバロスは攻撃できない」

 

表になった鋼の軛のカードから、ザフィーラと同じ魔力光の魔力刃が地面から生え、バルバロスの体を串刺しにする。これで攻撃は出来ないが、アンデットになっているからか痛みを感じていない。

 

「ヒッヒッヒ、厄介ですね。ではリッチーでAOA高町なのはを攻撃します」

「クッ、攻撃は通る・・・・」

 

A2600 VS A1000

 

対象にする魔法・罠を破壊できるリッチーにはこのカードは無意味となる。リッチーは右手に持った黄色の鎌を構え、なのはさんに当たるよう薙ぎ払った。巨大な鎌を防ぐ者の、不死王の力は伊達では無く、惜しくも破壊されてしまった。

 

遊斗LP2300→700

 

「ぐああああああ! ぅぅっ・・・・」

 

1600のダメージ。ライフ4000のデュエルでは生死を別ける程のダメージでは無い。だが手足が胴体と離れると錯覚するほどに体が痛い。全身火炙りにされているのか、氷付けにされているのか、はたまた両方なのか。この激痛の所為で頭が混乱しているのか、俺は暫くの間乱れた息で何とか呼吸するしか出来なかった。

 

「ヒッヒ、かなり本気で殺しにかかったのですが、生きているとは・・・・。面白いですねぇ。さあ、ライフが1000以下になりましたよ? 三幻魔を呼ばないのですか?」

「こ、このカードで呼べたら苦労はしない」

「ヒッヒッヒ。そうですか。まだ私の攻撃は終わっていません。イル・ブラッドでシャマルを攻撃」

「罠発動、設置型バインド。イル・ブラッドは攻撃できず、表示形式も変更できない。そして発動後、フィールドのカードにLCを置く。俺はすずかに置く」

 

LCすずか0→1

 

「そうこなくては。ではヴァンパイア・ロードでシャマルを攻撃」

 

A2000 VS D1800

 

ヴァンパイア・ロードは自分の体を複数のコウモリに変え、シャマ姉に襲い掛かる。元々コウモリが得意ではないのか、シャマ姉は涙目になりながら、逃げるように墓地に去った。残されたヴァンパイア・ロードは少し困惑した表情でトボトボと自分のモンスターゾーンに戻った。

 

「ゴブリンゾンビで黒騎士フェイトを攻撃します」

 

攻撃力1100で攻撃だと? 墓地から発動も無いし、手札もゾンビ・マスターと馬頭鬼だけ。この状態で発動できるカードは・・・・ッツ、なるほど。

 

「ヒッヒ、強制終了の効果発動。バルバロスを墓地に送り、このターンのバトルフェイズを終了させます」

 

バルバロスを墓地に送る事で、鋼の軛を破壊したって事か。攻撃力3000のモンスターをコストにして“自分”のバトルフェイズを終了させるなど前代未聞の行為だが、次のターンノーコストで復活する手段があるなら悪い手では無い。

 

「リッチーの効果で、自身を裏守備表示に変更。ターンエンドです」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター1 伏せ3 手札4 LP700

リッチー モンスター4 伏せ1 手札2 LP2700

 

まずは強制終了をなんとかしないと一方的に攻撃されるだけ。コストを全滅させるのは現状況でほぼ不可能な筈。仮にアギトでユニゾンしたシグナムさんを出しても、リッチーだけは生き残り、次のターンにゾンビの様に湧いてくる。それに加え表示形式をすずかで止めても、ヴァンパイア・ロード自身の効果で復活し、手札のゾンビ・マスターの効果で馬頭鬼を墓地に送られる。

 

「俺のターン、ドロー! ・・・・なるほど。確かにこれなら問題は無いか」

「ヒッヒッヒ、何かアイディアでも浮かびました?」

「ああ、攻撃が駄目ならカウンターを狙えばいい。自分フィールド上になのは、またはフェイトと名のつくモンスターがいる時、LCを一つ取り除く事で手札の高町ヴィヴィオは特殊召喚できる!」

 

LCすずか1→0

LS高町ヴィヴィオ ☆3/光/魔法使い/A1300・D1500

 

ヴィヴィオの名前で分かるだろうが、この子は迷い子ヴィヴィオの数年後の姿。生まれや昔の出来事など関係なく、なのはさんの娘――高町ヴィヴィオとして、堂々と生きている立派な女の子だ。

 

『フェイトママ、助けに来たよ』

『ありがとうヴィヴィオ。でも気を付けて。このアンデットの王、かなり強い』

『分かってる。けど私にはクリスがいるから。遊斗さん』

「ああ。フィールドに高町ヴィヴィオがいる時、手札のセイクリッド・ハートは特殊召喚できる」

 

LSセイクリッド・ハート ☆2/光/機械/A500・D500

 

ヴィヴィオのハイブリッド・インテリジェント型のデバイス。普通のデバイスはレイジングハートやバルディッシュと言った武器に変身する物だが、セイクリッド・ハートはアインハルトの持つティオと同じく、動物の外装を持った補助型のデバイス。因みに白い兎の恰好をしており、喋る事は出来ないようだが、普通のデバイスより機敏に動き、ジェスチャーやパントマイムの動作をしている。

 

「クリスの特殊召喚成功時、自分フィールド上のカードにLCを一つ置く。すずかにLCを置く」

 

クリスは小さな虹色の魔法陣をすずかの足元に展開すると、パタパタと手を動かしてすずかに魔力を与える。

 

『ありがとう。クリス』

 

LCすずか0→1

 

「場のヴィヴィオとクリスを融合! 来い、カウンターヒッター-高町ヴィヴィオ。」

 

LSカウンターヒッター-高町ヴィヴィオ ☆6/光/魔法使い/A2300・D2000

 

「アリサの効果でフェイトさんを選択。バトル! フェイトさんでイル・ブラッドを攻撃!」

「ヒッヒッヒ、強制終了の効果発動。フィールドのゴブリンゾンビを墓地に送ります。ゴブリンゾンビが墓地に送られた事で、デッキからデス・ラクーダを手札に加えます」

「カードを一枚伏せターンエンドだ」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター2 伏せ4 手札2 LP700

リッチー モンスター3 伏せ2 手札3 LP2700

 

「ヒッヒッヒ、リッチーの表示形式を変更させて構わないのですか?」

「お前の手札は全部アンデットだ。蘇生手段を一つ止めても、フィールドは埋まる」

「賢いご判断で、ヒヒッ。ドロー、イル・ブラッドの効果発動。墓地のゴブリンゾンビを復活」

 

A1100・D1050

 

「リッチーを反転召喚し、墓地のバルバロスを特殊召喚」

 

A3000・D1200

 

「フィールド魔法ゾーンにカードをセット。上書きによりアンデットワールドは破壊されます」

 

態々アンデットワールドを破壊した? おそらく今フィールド魔法ゾーンにセットしたカードはアンデットワールドだろうが、破壊する意味はいったい・・・・。

 

「ゴブリンゾンビとヴァンパイア・ロードを生贄に、青氷の白夜龍(ブルーアイス・ホワイトナイツ・ドラゴン)を召喚します」

 

A3000・D2500

 

無理やりエース級のカードを召喚したって事か。元々手札にアンデットワールドが一枚あれば出来る荒技だが、そこまでして呼ぶカードなのか微妙だ。

あの伝説のカード青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)に名前が似ているだけあり、ステータスや見た目もよく似ていた。だがホワイトナイツ・ドラゴンは氷によって作られたのか、目がついていない。

 

「ホワイトナイツ・ドラゴン。明日香が使っていたモンスター・・・・」

「ヒッヒッヒ、この世界でのレアリティがどのような基準かはしりませんが、精霊界では強い者は強いカードを持つ事が出来ます。ゴブリンゾンビの効果で、デッキからゾンビ・マスターを手札に加えます」

 

明日香曰くこのドラゴンは斎王から貰ったカード。このカードを実際に調べてみると、かなり希少価値の高い事が分かった。まあリボルバードラゴンやVENUSと同じく、王にはレアリティが通用しない。

 

「ヒッヒ、まさかこれで終わりじゃないでしょう? バトル。バルバロスでヴィヴィオを攻撃」

 

A3000 VS A2300

 

「攻撃宣言時罠発動、フィジカルヒール。LS一体を選択し、選択したモンスターのレベル×400ライフを回復する。フェイトさんを選択し、ライフを3200回復する」

 

遊斗LP700→3900

 

「ヒヒッ。ライフ回復とは予想外でしたよ。ではダメージを受けて貰います」

 

バルバロスは右手に持った赤い槍をヴィヴィオの心臓を目掛けて突く。何とかそれを両手で受け流す事が出来たが、ダメージを全て消す事は不可能だった。ぶつかった衝撃により後方へ飛ばされたヴィヴィオ。だが破壊される気配は無く、むしろ十代の様にワクワクした表情でバルバロスを見ている。

 

遊斗LP3900→3200

 

「? おかしいですね~」

「ヴィヴィオは戦闘では破壊されない。そしてこのカードが攻撃を受けたダメージステップ終了時効果発動。このカードと戦闘したモンスターはもう一度ヴィヴィオを攻撃しなければならない。この時ヴィヴィオの攻撃力は1000上がる」

「ヒッヒッヒ、なるほど」

『さっきので見切ったよ。行くよ~』

 

ヴィヴィオA2300→A3300 VS A3000

 

再び赤い槍をヴィヴィオに突き刺そうとするバルバロス。だが攻撃パターンとスピードをさっきので学んだのか、赤い槍をジャンプして回避すると、赤い槍を足場にバルバロスの顔面に近付いて行く。

 

『アクセルスマッシュ!』

 

拳に七色に光る魔力を乗せたアッパーがバルバロスの顔面に諸に入った。一見簡単な魔力付与攻撃だが、あのアッパーにはかなりの魔力が込められ、威力は相当のものらしい。現にバルバロスを破壊した。

 

「さらにヴィヴィオが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードにLCを置く」

 

LCヴィヴィオ0→1

 

「ヒヒッ、しかしいくら最上級モンスターを破壊出来たとはいえ、あなたの方がダメージ量は多い。セットしていたアンデットワールドを発動。リッチーを裏守備にしてターンエンド」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター2 伏せ3 手札2 LP3200

リッチー モンスター3 伏せ2 手札3 LP2700

 

リッチーのフィールドのモンスターが減った。ここであのカードを引けば一気に逆転が狙える。応えてくれ、俺のデッキ!

 

「俺のターン、ドロー! 来た! 黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に、迅雷の化身フェイトを特殊召喚!」

 

デュエルディスクにセットした刹那、激しい衝撃と共にカードから雷の塊が現れてフィールド上を破天荒に駆け巡る。一通りアンデットワールドを見終わったのか、雷の塊は長い黒のコートを羽織った雷フェイトさんが立っていた。

 

「速攻魔法ロングアーチサポートを発動。このターン強制終了の効果を無効にする!」

「ヒッヒッヒ、これは危険ですねぇ」

「その余裕な態度も今の内だ」

「私は余裕なんかありませんよ。この口調や性格は生まれつきです。ヒヒッ」

「チッ、やり難い奴だ。アリサの効果を雷フェイトさんに発動する。バトル、ヴィヴィオでイル・ブラッドを攻撃!」

『あ、あのモンスターに接近戦は無理かも・・・・』

 

A2300 VS A2100

 

ヴィヴィオは軽快なステップで素早くイル・ブラッドに近付くと、ジッパーの中にいる顔面にディバインバスターを発射した。イル・ブラッドは背筋が凍る程の断末魔を上げ、ドガーンと爆発した。

 

リッチーLP2700→2500

 

「ヒッヒッヒ、随分と酷い殺し方だ。アンデットの王が言うのも変ですか。ヒッヒ」

『あいつ、イライラするね』

「同感です。雷フェイトさんでリッチーを攻撃!」

『フォトンランサーファランクスシフト』

 

A3300 VS D2900

 

「仕方ないですねぇ。どうしようもありませんか。リッチーのリバース効果発動。イル・ブラッドを特殊召喚します」

『撃ち砕け!』

 

計76基のフォトンスフィアから毎秒14発の一斉射撃を4秒続ける、破壊の魔法。例え不死王と言えど、体がバラバラになり、木っ端みじんになれば死んだも同然。4256発のフォトンスフィアをリッチーの体が文字通り粉々になるまで撃ち続け、ようやくフェイトさんは攻撃を止めた。

 

「アリサの効果でLCを乗せ、デッキから一枚ドロー」

 

LCフェイト0→1

 

「イル・ブラッドに攻撃!」

「いくら蘇生手段豊富とは言え、イル・ブラッドを破壊されるのは困ります。ホワイトナイツ・ドラゴンの効果発動をします。自分の魔法・罠カード一枚を墓地に送り、このカードに攻撃対象を変更する。強制終了を墓地に送ります」

『氷の龍か・・・・いい事思いついた』

 

A3300 VS A3000

 

雷フェイトさんは両腕に魔力刃を出すと、ホワイトナイツ・ドラゴンの周りをグルグルと何回も周る。何をやっているのかと興味心身に見ていると、雷フェイトさんの意図が分かり、ハァとため息が出た。先程までホワイトナイツ・ドラゴンだった氷は、王座に偉そうに座る一人の女性、すなわちなのは様の氷像になっていた。本物そっくりではないが、美術の評価がそこまで高くない俺でも上手いと言うのは分かる。

 

「ヒッヒッヒ、こんな攻撃でも一応ダメージは受けるんですねぇ」

 

リッチーLP2500→2200

LCフェイト1→2

 

「お前の場合本当にダメージを受けているか信じ難いがな。アリサの効果でデッキから一枚ドロー。すずかの効果で雷フェイトさんのLCを自分に移動」

 

LCすずか1→2

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ雷フェイトさんの効果でデッキからフォトンランサーをセットする」

「この瞬間、永続罠心鎮壺(シン・ツェン・フー)発動します。あなたのフィールドにセットした二枚のカードは、このカードがある限り発動できなくなります」

「クッ、面倒なカードを・・・・」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター2 伏せ4 手札2 LP3200

リッチー モンスター1 伏せ1 手札3 LP2200

 

手札は四枚あるが、全てモンスターカード。ゾンビ・マスターと馬頭鬼がいるからすぐにフィールドは埋まるだろうが、先程よりかは楽になる筈。

 

「ヒッヒッヒ、ドロー。強欲な壺を発動。デッキから二枚ドロー。手札抹殺を発動します。何もないのなら全て捨て、四枚ドローします」

「クッ、運のいい奴め。二枚ドロー」

「ヒヒッ、あなたに言われたくありませんね。それに手札抹殺じゃなくてもよかったんですよ。イル・ブラッドを再度召喚。その効果で墓地のヴァンパイア・ロードを復活」

 

A2000・D1500

 

文字通りゾンビの様に蘇ってきやがる。いくら雷フェイトさんが二回攻撃できるとは言え、ここまで上級モンスターがぞろぞろと出るとため息をつきたくなる。

 

「フィールドのヴァンパイア・ロードをゲームから除外し、ヴァンパイアジェネシスを特殊召喚」

 

A3000・D2100

 

先程までのイケメンのヴァンパイアの姿はどこに行ったのか、紫色の巨大な化け物がそこにいた。

ヴァンパイアの十人十色だろうが、皆ヴァンパイアは人の血を糧としているイメージを持っている筈。だが目の前のヴァンパイアは人の血を吸って腹が膨れる様な体では無い。というかそもそもその巨大な口で人の血を吸えるかどうかも定かではない。

 

「ヒッヒ、ヴァンパイアジェネシスの効果発動。手札のアンデットを墓地に捨て、捨てたモンスターのレベルより低い、アンデットを自分の墓地から特殊召喚する。捨てるのはバーサーク・デッド・ドラゴン、レベルは8。よって墓地のリッチーを特殊召喚する」

 

A2600・D2900

 

さっきまで再度召喚していないイル・ブラッドだけだったが、気が付くとフィールドには既に再上級モンスターが二体。しかも墓地の馬頭鬼の効果は使っていない。

 

「悪夢再びを発動。墓地の守備力0の闇属性モンスター二体を手札に加えます。私が手札に加えるのは、バーサーク・デッド・ドラゴンとゾンビ・マスター。ヒッヒ、バトルと行きましょう」

「バトルフェイズ開始時、ヴィヴィオの効果発動! このカードに乗ったLCを一つ取り除き、相手フィールド上にいる攻撃表示モンスターを選択。選択したモンスターはヴィヴィオを攻撃しなくてはいけない。俺はイル・ブラッドを選択する」

 

LCヴィヴィオ1→0

 

「カカッ、面倒ですね。ではバトル、まずはお望み通り、イル・ブラッドでヴィヴィオを攻撃します」

 

A2100 VS A2300

 

『ま、またこのモンスター・・・・。ディバインバスター!』

 

ヴィヴィオは突進してくるイル・ブラッドをギリギリまで引き寄せ、ディバインバスターを発射する。聖王であるヴィヴィオさんよりかは威力が低いが、イル・ブラッドを倒すには十分だ。

 

リッチーLP2200→2000

LCヴィヴィオ0→1

 

「ヒッヒッヒ、ここからが本番ですよ。ヴァンパイアジェネシスでヴィヴィオを攻撃!」

「ダメージを与えられるとは言え最上級モンスターを自爆させるだと!?」

 

A3000 VS A2300

 

ヴァンパイアジェネシスは両手を前に突き出し、手の平から禍々しい球体を出して発射した。ヴィヴィオさんは紙一重でそれを避けるが、球体は俺の足元で爆発し、俺の体に激痛を与える。ライフを回復していなかったら既に4000以上のダメージを受けている。体がそろそろ限界に近い。

 

遊斗LP3200→2500

 

「ぐぅっ、ああああっ!?」

『遊斗さん!?』

「ヴィ、ヴィヴィオの効果発動。攻撃力を1000上げ、再びバトルだ!」

 

ヴィヴィオA2300→A3300 VS A3000

 

ヴァンパイアジェネシスは再び両手を突き出してヴィヴィオに攻撃を仕掛けようとしたが、その前にヴィヴィオの飛び膝蹴りで腕の関節を折られ、腕に力が入らなくなる。だが相手はヴァンパイア。すぐに再生するだろう。それでも数秒の時間が稼げただけで十分。ヴィヴィオは地面を思いっきり蹴り、ヴァンパイアジェネシスの腹と思われる部分にアクセルスマッシュを打ち込んだ。

 

リッチーLP2000→1700

LCヴィヴィオ1→2

 

「ヒッヒッヒ、せっかく召喚したレベル8のヴァンパイアジェネシスが破壊されてしまいましたか」

「レベル8・・・・ッツ、まさかリークされていない最後の一枚は!?」

「そうです。速攻魔法デーモンとの駆け引きを発動します。自分フィールド上のレベル8以上のモンスターが墓地に送られたターンに発動できます。手札のバーサーク・デッド・ドラゴンを特殊召喚します」

 

A3500・D0

 

まるでメタルと思えるほどの分厚い黒鐵の装甲。刃を連想させる鋭利な手足の爪。その姿はドラゴン族と言っても問題ない様に見えるが、肉のない顔を見るとアンデットと言うのも理解できる。

攻撃は最大の防御。まさにその言葉が相応しい、ステータスと効果を持った最上級モンスター。

 

「ここでそいつかよ・・・・」

「ヒッヒッヒ。効果はご存じの様ですね。では行きますよ。バーサーク・デッド・ドラゴンで迅雷の化身フェイトを攻撃」

 

A3500 VS A3300

 

フェイトさんはフォトンランサーを連続で撃ち、バーサーク・デッド・ドラゴンと戦う。見た目に反し、バーサーク・デッド・ドラゴンは柔らかいのか、アッサリと体が壊れて行く。だが瞬きをした次の瞬間、バーサーク・デッド・ドラゴンの姿は元に戻っていた。

どんなに強い雷フェイトさんでも、異常なまでの再生スピードに攻撃速度が付いて行かなくては勝てる事は出来ない。結局巨大な牙と力強い顎に噛みつかれ、雷フェイトさんは破壊されてしまった。

 

「くっ」

 

遊斗LP3200→3000

 

「バーサーク・デッド・ドラゴンは相手フィールドのモンスター全てに攻撃する事ができます。ヴィヴィオに攻撃!」

 

A3500 VS A2300

 

バーサーク・デッド・ドラゴンはグルっと縦に一回転し、尻尾を鉄槌の如くヴィヴィオに撃ちつける。何とか後ろに飛んで回避するが、先程のヴァンパイアジェネシスの時の様に、俺に襲い掛かってくるダメージを止める事は出来ない。

 

遊斗LP3000→1800

 

「ぐああああああ! ぐっ、い、今ヴィヴィオの効果を使っても無意味か」

「リッチーを裏守備にしてターンエンドです。エンドフェイズ、バーサーク・デッド・ドラゴンの攻撃力は500ダウンします」

 

バーサーク・デッド・ドラゴンA3500→3000

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター1 伏せ4 手札2 LP1800

リッチー モンスター2 伏せ1 手札1 LP1700

 

墓地の馬頭鬼の効果は使ってこなかったか。確かにヴィヴィオがいるから攻撃力3400以上のモンスターは返り討ちにあう。さっきのターンで俺のライフを0に出来ないので、融通が効く馬頭鬼を使う必要もないか。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

だが確実に流れはこっちに来ている。すずかの効果でリッチーのサイクルリバースを封じる事が出来るし、モンスターもヴィヴィオ一枚だがかなり安定している。

 

「すずかの効果発動。ヴィヴィオのLCを自分に移動させる」

 

LCヴィヴィオ2→1 すずか2→3

 

「連続転移発動。すずかのLCを二つ取り除き発動する。デッキトップ三枚をめくり、その中に通常召喚可能なLSがいた場合、そのLSを特殊召喚する。はやて、紫天の書、ツヴァイ、よってはやてとツヴァイを特殊召喚する」

 

LCすずか3→1 はやて1

A2000・D1700

A500・D500

 

「速攻魔法フェイクシルエットを発動。デッキのアインスを墓地に送り、ツヴァイをアインスとして扱う。場のはやてとアインスを融合! 舞い降りろ! 夜天の主・八神はやて!」

 

A2800・D2800

 

紫の瘴気が漂う地獄、アンデットワールドを夜で覆い隠し、ストンと小さな音を立てて着地した王様はやてさん。その圧倒的な力を目の当たりにしてなお、リッチーは不気味な笑い声を上げる。

 

「ヒッヒッヒ、これはピンチですね」

「王様はやてさんに闇の書を装備。更にアリサの効果で王様はやてさんを支援する」

 

はやてA2800→A3100

 

「バトル! 王様はやてさんでバーサーク・デッド・ドラゴンを攻撃!」

『響け終焉の笛。ラグナロク』

 

A3100 VS A3000

 

ベルカ式の魔法陣の頂点に溜められた、白の魔力の塊。その塊の中には小さくもメラメラと燃える炎が入っていた。王様はやてさんが杖を振り下ろした刹那、三つの魔力の塊がその力を解き放ち、砲撃となってバーサーク・デッド・ドラゴンを襲いかかる。

先程は圧倒的な再生スピードで雷フェイトさんを倒したバーサーク・デッド・ドラゴンだが、強力な力故にフィールドに居続けると徐々に弱体化して行く。弱体化した所を狙われたバーサーク・デッド・ドラゴンはラグナロクに打ち勝てず、断末魔を上げて破壊された。

 

リッチーLP1700→1600

LC闇の書0→1

 

「アリサの効果でデッキから一枚ドロー。すずかの効果発動。LCを取り除き、リッチーの攻撃、および表示形式変更を不可能にする」

『アイスバインド』

 

LCすずか1→0

 

「ターンエンドだ」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター2 伏せ5 手札2 LP1800

リッチー モンスター1 伏せ1 手札1 LP1700

 

「ヒッヒッヒ、そろそろ私も年貢の収め時ですか、これは厳しいですね。ドロー。闇の誘惑を発動。デッキから二枚ドローし、闇属性モンスターをゲームから除外します。ゾンビ・マスターを除外」

 

これであいつの手札二枚は分からなくなった。けど奴の言う通り、リッチーのサイクルリバースを封じ、なお且つ攻撃力3000以上のモンスターがいる。馬頭鬼の効果でイル・ブラッドを特殊召喚しても、ゾンビ・マスターを特殊召喚しても、王様はやてさんの効果で効果を無効にされる。

 

「墓地の馬頭鬼の効果。墓地のピラミッドタートルを特殊召喚します」

 

A1200・D1400

 

「モンスターをセット。カードを一枚伏せてターンエンドです。ヒッヒ」

 

場 アンデットワールド

遊斗   モンスター2 伏せ5 手札2 LP1800

リッチー モンスター3 伏せ2 手札0 LP1700

 

守りに入った。もう毎ターン3000打点を呼ぶ余裕が無くなったって事で間違いない。この勝負貰った!

 

「俺のターン、ドロー! エリオの効果発動。手札のこのカードを墓地に送り、墓地のフェイトを手札に加える。フェイトを召喚し、効果発動。その裏守備モンスターを表側表示にする」

 

A1800・D500

 

「ヒッヒ、セットモンスターは魂を削る死霊です」

 

A300・D200

 

「最後に一つ。今までほとんどの王は負ける前に命乞いをした。お前はしなくていいのか?」

「ヒッヒッヒ、私はあのお方より長生きですからね。生への執着なんてほとんどありませんよ。しかし最後のデュエル、久しぶりに心躍る物でしたよ。ヒッヒ」

 

死ぬ直前だって言うのに人を馬鹿にした様な口調。奴の言う通り、その口調が素なんだろう。あいつと付き合いが長い奴は大変だな。

 

「俺も楽しかったさ。バトル! 王様はやてさんで魂を削る死霊を攻撃!」

「ヒッヒ、一応悪足掻きはさせてください。罠発動、聖なるバリア-ミラーフォース。攻撃表示モンスターを全て破壊します」

 

王様はやてさんが放ったラグナロクは虹色のバリアによって反射され、攻撃表示の王様はやてさん、ヴィヴィオ、フェイトに襲い掛かる。突然の反射技にヴィヴィオとフェイトは対応が出来ず破壊されてしまうが、王様はやてさんは自分の前に白銀のシールドを出して防いだ。

 

「王様はやてさんの効果発動。このカードのLCを一つ取り除く事で破壊を無効にする」

 

LCはやて3→2

 

「バトル続行!」

『響け終焉の笛、ラグナロク』

 

A3100 VS A300

 

再び三角形の頂点に溜まる白の塊。それは目の前の生きる死者を成仏させる優しい光にも、死者を地獄に送り返す悪魔の光にも見える。王様はやてさんが無表情でシュベルトクロイツを振り下ろすと、魔法陣から砲撃が発射され、魂を削る死霊ごとリッチーを呑み込んだ。

 

リッチーLP1700→-1100

 

ライフが0になる音と共にソリッドビジョンが消える。敗者となったリッチーは地面から出て来る闇にズルズルと呑みこまれていく。

 

「最後に一つ聞かせてくれ。クリスティアの言っていた二番目か三番目に強い奴と言うのはお前か?」

「ヒッヒッヒ、クリスティアがそんな事を。多分そうだと思いますよ? しかし最後にデュエルをしたのはあなたが生まれるずっとずっと前ですから、今となっては彼の方が強いでしょう」

「すまない、もう一つだけ。お前達のボスは誰だ?」

「あなたも薄々気付いているでしょう? デュエルモンスターズの中でも誇り高く、圧倒的な力と能力を持った種族、ドラゴン族。その王は、デュエルモンスターズの中で最大のステータスを持つお方」

 

光属性と神意外には戦闘で破壊されず、五体の融合が必要となるが龍の鏡により一枚で呼べる最強の火力を持ったモンスター。あの伝説のデュエリスト、武藤遊戯さんと名も無きファラオを苦しめたドラゴン族。

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)か」

「ええ、あなたはあのお方とどこか同じ気配がします。破滅の光に乗っ取られる前のお話ですが」

「同じ気配? と言うか待て! その言い方、まさかお前」

「ヒッヒッヒ、たかだが数千年生きている光り如きに乗っ取られたりしませんよ。それでもF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)様の命令は絶対ですからね、ヒッヒッヒ」

 

リッチーは最後の最後まで不気味な笑い声を上げながら闇に呑まれて行った。

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)・・・・。そいつが王の中の頂点にいるモンスターであり、俺が戦うべき相手。

 




ちょっとストーリー進んだかもしれませんけど、いい加減王との戦いがグダッてきた(機械王から六話)
あんまりやりすぎると三期と四期の相手のデッキ考えるのも困るかもしれませんし、四十一話前後でGX大会を終わらせ、二期のクライマックスに入ろうかな、と思っています(予定ですが)
クライマックスに入る前に二期に出た新カードと三幻魔の整理の回を作ろうと思います。

三十五話の前書きを覚えている方にお伝えしますが、これでも自分的にはカットしてない方です。




今回の新オリカです

LSアリサ・バニングス ☆3/炎/魔法使い/A500・D500
このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠ゾーンに表側表示で置く事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、選択したモンスターにLCを1つ置く。
また、自分フィールド上に「LS月村すずか」が表側表示で存在する場合、選択したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、自分はデッキからカードを1枚ドローする。


LS月村すずか ☆3/水/魔法使い/A500・D500
このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠ゾーンに表側表示で置く事ができる。
1ターンに1度自分フィールド上のLC1つを移動させる事ができる。
また、自分フィールド上に「LSアリサ・バニングス」が表側表示で存在する場合、相手フィールド上のモンスター1体を選択し発動できる。このカードに乗ったLCを1つ取り除き、選択したモンスターは次の相手のエンドフェイズ時まで攻撃宣言をする事ができず、表示形式を変更することもできない。この効果は1ターンに1度しか発動できない。

LS高町ヴィヴィオ ☆3/光/魔法使い/A1300・D1500
自分フィールド上に「なのは」または「フェイト」と名のつくモンスターが表側表示で存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除き、手札から特殊召喚できる。


LSセイクリッド・ハート ☆2/光/機械/A500・D500
自分フィールド上に「LS高町ヴィヴィオ」が表側表示で存在する場合、手札から特殊召喚できる。このカードが召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時、自分フィールド上のカードを1枚選択する。選択したカードにLCを1つ乗せる。


LSカウンターヒッター-高町ヴィヴィオ ☆6/光/魔法使い/A2300・D2000
「LS高町ヴィヴィオ」+「LSセイクリッド・ハート」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。
(「融合」のカードは必要としない)
このカードは戦闘では破壊されない。
このカードが攻撃を受けたダメージステップ終了時発動できる。攻撃したモンスターはもう1度だけこのカードに攻撃しなければならない。この効果で戦闘を行う時、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードにLCを1つ置く。
相手のバトルフェイズ開始時、このカードのLCを1つ取り除き発動できる。相手フィールド上の攻撃表示モンスターを1体選択し、選択したモンスターはこのカードを攻撃しなくてはならない。






五枚と言う事で非常に長くなりました。今回はカウンターヒッター―高町ヴィヴィオだけ紹介します。

全てに言える事ですが、相変わらずのフルネームで申し訳ありません。単純明確にネーミングセンスがなくて。カウンターヒッターと、捻りも何もありません。
攻撃されないと効果が発動されない、受け身のカードです。しかしヴィヴィオは守りが上手いという訳ではないので、このような効果にしました。正直戦闘破壊したらLCを置く効果は無い方がバランス取れていたかもしれません(苦笑)
自画自賛ですが、上手くヴィヴィオの戦闘スタイルを効果に出来たと思います。


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第三十九話

前回言った通り更新遅れました。
まだストックが無いのでちょっとペースは落ちるかもしれません。
まあ作者のどうでもいい、言い訳は置いておき、ナンバーズのオリカが全部決まりました。沢山のご意見ありがとうございました。

次回ナンバーズが登場します。


採用させ頂く案は。


神崎はやて様作   ウーノ
アルテリオン様作  ドゥーエ
夜の魔王様作    トーレ
          クワットロ
ドロップ様作    チンク
          セイン
夜の魔王様作    セッテ
ドロップ様作    オットー
凡人で平凡な人様作 ノーヴェ
神薙様作      ディエチ
夜の魔王様作    ウェンディ
ドロップ様作    ディード

を採用させて頂きます。
なおウーノには灰汁の天災様
セインにはルシフェル様
ディエチには夜の魔王様
の案を組み込もうと思います。


ありがとうございました。他の方の案も参考になりましたが、イメージが違ったり、少し単体だと使いにくい等の理由があり、採用できませんでした。ご了承願います。



リッチーと戦ってから三日が経過した。あれから俺も十代も色々な事があった。俺は相変わらず沢山の王と戦い、勝利を掴み取った。王達は当然GX大会参加者では無いので、一日一回のデュエルにカウントされない。だからこの三日間、毎朝一番に適当な対戦相手とデュエルをして、その後王と戦う生活をしていた。

倒した相手は鳥獣族、植物族、爬虫類、岩石族の王達。

鳥獣族の王は始祖神鳥シムルグ。自分の分身や、神鳥シムルグ、ダーク・シムルグ等をメインアタッカーにして攻めてきた。

植物族の王は椿姫ティタニアル。あいつは王と言うより女王で、当然女口調だった。デッキはこの間のローズさんと変わり映えしない。

爬虫類族の王は毒蛇神ヴェノミナーガ。出したら勝ちとも言われる自分を使って追いつめてきたが、神炎皇なのはの爆発的火力を利用し、ワンショットキルで勝利した。

そして岩石族の王メガロック・ドラゴン。コイツは正直そこまで強くなく、攻撃力が低く守備力の高いモンスターを、フェイトで表示形式を変更して倒した。

 

「思い返してみると濃い一週間だな」

「最近王が来る頻度が高いからな~。遊斗が強うなってから見つかったんが、不幸中の幸いや」

「ですね~。おかげで最近筋肉痛で」

「今日くらいは休んでええんちゃう? なんなら私が校長先生に話付けてくるよ?」

 

はやてさんの話術だったらあの校長先生を上手く丸めこむ事が出来るだろうけど、俺だけ特別扱いって言うのも嫌だしな。

 

「いえ、大丈夫です。それに今日は王と戦う予感はしませんし」

「ふ~ん、ならええけど。って、二人っきりで話してたらフェイトちゃん妬くんちゃう?」

「今さらすぎますよ。みんな家族みたいなものですし」

「ふふっ、せやな。しかし遊斗もやけど、十代もええ男になったな~」

「ああ、この間の明日香との戦いですか」

 

修学旅行前俺と約束した通り、十代は明日香と万丈目を斎王の洗脳から救い出してくれた。万丈目との戦いは、万丈目が捨てたおジャマ達をデッキに入れ、おジャマの精霊達と一緒に万丈目を説得した。斎王から貰ったカードと白のコートを着ていた万丈目は、おジャマ達と滅多に洗濯しない黒のコートを見て自我を取り戻した。因みにデュエルは十代が勝利した。

明日香との戦いは、十代の燃える闘士と明日香の冷たい心がぶつかり合った。明日香は同じく斎王から貰った白夜デッキを使って十代の体とカードを凍らせ続けたが、心までは凍らす事が出来ず、最後にはフレア・ネオスの炎の攻撃でフィニッシュを決め、明日香を救い出した。

 

「どっちもヒヤヒヤするデュエルでしたよ」

「私は遊斗のデュエルに慣れとうから、そこまでヒヤヒヤせんかったけどな」

「ええ!? 俺ってそんなにメチャクチャなデュエルですか!?」

「メチャクチャって言うか、ライフより手札やフィールドが優先。って考え方やろ? まさか闇のデュエルまでその考え方突き通すとは思わへんよ普通」

 

デュエルモンスターズではライフは大事だ。何しろライフが0になった時点で勝敗が決まるから、当然多い方がいい。

しかし最上級モンスター一体と手札0の状態でライフが10000あるのと、フィールドにモンスターが並び、手札が5枚でライフたったの100の状態。デュエルモンスターズには絶対は無いが、後者が勝つ可能性の方が明らかに高い――と俺は思う。

 

「そうそう。もうちょっと遊斗は自分を大事にしないと」

「なのはさんまで・・・・。いいじゃないですか、成績残してるんだから」

「最近十代に連敗続きなのはその所為かもよ?」

「うっ!」

 

俺が地味に気にしている事を・・・・。

 

「あっ! もうすぐクロノス先生に会わんといかん時間や! 元気があるなら早く準備せんと!」

「はやてさんが話しかけてくるからでしょ!?」

 

 

 

 

クロノス先生の執務室に到着すると、膝に手を置いて乱れる息を整える。PDAの電子時計を確認すると、クロノス先生に呼ばれた時間の一分前。痛む体を無理やり走らせたかいはあった。

息が整ったのでブルーの制服をしっかりと整え、コンコンと扉をノックして自分の名前を言う。するとすぐに扉が空き、クロノス先生が出迎えてくれた。

 

「失礼します。クロノス先生、今日はどのようなご用件で」

「実は今、深刻な事態が起こっているのでアール」

 

アールなんて独特な語尾を使う人物は一人しかいない。部屋の奥を見ると、ナポレオン先生がソファーに座っていた。

というか深刻な事態って・・・・。今このデュエルアカデミアを乗っ取ろうとしているホワイト寮ができてもう二ヶ月くらい経つんですけど。

 

「深刻な事態って。ホワイト寮ですか?」

「違うノーネ。あれはただの学生うんど~ウ。私達も昔はやったノーネ」

 

昔は日本じゃなくてイタリアでも学生運動が起きていたのか? この人が本当にイタリア人なのか急に疑わしくなってきた。じゃあ今まで先生達がホワイト寮に手出ししなかったのは、学生運動と思っているからなのか。てっきり情けないだけかと。

 

「最近、この学生の生徒が次々に脱落しているのでアール」

「そうなノーネ。このままではデュエルアカデミアはしょせん学生と、世間に馬鹿にされてしまうノーネ」

「えっと、つまり」

「ブルー寮生である遊斗・スカリエッティにプロをコテンパンにして欲しいのでアール」

「あなたはエド・フェニックスに勝ったと聞いたノーネ。そこら辺のプロなんて目じゃない筈なノーネ」

「ま、まあ確かに誰であろうと、勝つ自信は持っていますが。それで、戦う相手って?」

「ヘルカイザー亮でアール」

 

 

 

 

ヘルカイザー亮。彼のデュエルはこの学園にいた時とは変わっていた。正直俺はリスペクトデュエルと普通のデュエルとの違いは分からないが、今と昔は明らかに違う。吹雪さんと翔はヘルカイザー亮のデュエルに納得できず、彼に戦いを挑んだが、圧倒的なパワーでデュエルを支配され、二人とも負けてしまった。

 

「お前か、遊斗。そう言えばあの時の俺はよくお前に負けていた」

「勝率で言うと亮さんの方が良かったじゃないですか」

 

デュエルアカデミアの本校から少し離れた火山の麓で、俺と亮さんは睨み合っていた。正確に言うと俺が亮さんに一方的に睨まれていた。まるで飢えた獣の様な瞳に、闇のデュエルを多くやっている俺でも背筋が凍りつく。

 

「ヘルカイザー亮となってからのあなたは、再び知名度が上がってますからね。デュエルアカデミアの生徒があなたに勝ったと知れたら、デュエルアカデミアの宣伝になります」

 

俺は学校の知名度とか余り気にしないけど、先生に貸しを作っておくと後の学校生活が有利になるからな。

 

「フッ、クロノス教諭の差し金か。まあなんだっていい。最近つまらないデュエルばかりしていて飢えていたんだ」

 

亮さんは岩陰に隠れているクロノス先生とナポレオン先生の方を一瞬だけ睨みつけたが、すぐにデュエルディスクを構える。二人も隠れている意味がないと判断したのか、岩陰から出てきた。まあ最初から隠れる理由なんてないんだけど、クロノス先生は今の亮さんに会いにくいだろう。

 

「ハハッ・・・・俺は逆に強い相手とばかり戦ってますよ!」

「「デュエル!」」

「先攻は貰う。ドロー! ハウンド・ドラゴンを召喚」

 

A1700・D100

 

レベル3のドラゴン族の中で最高の攻撃力を持つカード。守備力が低いが、レベル3にしては十分だろう。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

亮  モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

亮さんのデッキに新たに加わったサイバー・ダーク。その共通効果は、召喚成功時に墓地のレベル3以下のドラゴン族を装備し、その攻撃力分アップする事。つまりあのハウンド・ドラゴンはサイバー・ダークを出す為の布石。

 

「ドロー! フィールド魔法聖王教会を発動。このフィールドがある限り、聖王またはシスターと名のつくモンスターの攻守が500上がります」

「ずいぶんと平和そうな場所じゃないか」

「シャンテを召喚! このカードは聖王教会の恩寵を受ける」

 

シャンテA1400・D500→A1900・D1000

 

「永続魔法時空管理局を発動。バトル! シャンテでハウンド・ドラゴンを攻撃!」

『独奏。双剣輪舞!』

 

A1900 VS A1700

 

シャンテがデバイスを構えた瞬間、俺のフィールドにいたシャンテはスッと消え、ハウンド・ドラゴンの前に姿を現し、ハウンド・ドラゴンをクロスに斬る。

 

亮LP4000→3800

 

「これでターンエンドです」

「この程度でターンエンドとは。お前、俺を馬鹿にしているのか?」

「それを言うなら亮さんだって初手サイバー・エンドじゃないんですね」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

亮  モンスター0 伏せ1 手札4 LP3800

 

「ッフ、お前も言う様になった。何か秘策があるのか、面白い。ドロー! 相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、サイバー・ドラゴンは特殊召喚できる!」

 

A2100・D1600

 

例えデュエルの戦法が変わってもエースのサイバー・ドラゴンは変わらない。攻撃力2100の割にプレイヤーと同じく異様な覇気を放っており、目の前にいるシャンテを機械の瞳でギロリと睨みつける。

 

「サイバー・ダーク・キールを召喚!」

 

A800・D800

 

サイバー・ドラゴンと同じく東洋の龍の形をした、機械で作られた細長いドラゴンが現れた。だがサイバー・ドラゴンとは決定的に違うのが、属性と色。名前に付いたダークに合った黒の装甲で、属性も闇。

 

「キールの効果発動! 召喚に成功した時、墓地のレベル3以下のドラゴン族一体を装備する。ハウンド・ドラゴンを装備。これでキールの攻撃力は1700上がる」

 

キールA800→A2500

 

レベル4で攻撃力2500。下準備が必要とは言えかなり強い数値だ。亮さんのエースであるサイバー・ドラゴンを容易に越えている。

 

「これで二体の攻撃を受けたら、シニョール遊斗のライフが一気に削れるのでアール」

「大丈夫ナノーネ。シニョール遊斗の事だから、きっと何かあるノーネ」

「バトル! キールでシャンテに攻撃! ダーク・ウィップ!」

 

A2500 VS A1900

 

ハウンド・ドラゴンを体に装着したキールは、自分の細長い体を鞭にしてシャンテを薙ぎ払う。シャンテの体は真っ二つになったが、手ごたえは無く、まるで素振りをしたかのように空を斬った。

 

「シャンテの効果発動。このカードの戦闘で俺へのダメージは0になる。そしてこのカードが破壊され墓地に送られた時、このカードをデッキに戻し、このカード以外のLSを特殊召喚する。来い、シュテル!」

 

LC時空管理局0→1

A800・D1500

 

「始めて見るカード。攻撃力800で攻撃表示か。だがその前にキールの効果発動! 戦闘でモンスターを破壊した場合、相手ライフに300ダメージを与える!」

 

遊斗LP4000→3700

 

「ぐっ。どうします? シュテルに攻撃しますか?」

「いや、止めておこう。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター1 伏せ0 手札4 LP3700

亮  モンスター2 伏せ3 手札2 LP3800

 

シャンテとシュテルのおかげでダメージを最低限にする事が出来た。本当ならダメージを受ける予定は一再無かったんだが、キールががっかりバーンを持っていたとは。

 

「俺のターン、ドロー! イクスを通常召喚。効果でデッキからマリアージュを特殊召喚する」

 

LC時空管理局1→2

AD500

A1700・D1200

 

「魔法・罠ゾーンに、永続魔法扱いとして、キャロとすずかを置く」

「さっきのターンは俺の出方を見る為に温存しておいたのか。面白い」

「亮さんのデュエルはある意味十代以上に怖いですからね。すずかの効果発動。時空管理局のLCをキャロに移動させる」

 

LC時空管理局2→1 キャロ0→1

 

シュテルA500・D1500→A1100・D2100

イクスAD500→AD1100

マリアージュA1700・D1200→A2300・D1800

 

「凄いのでアール! 一気に攻撃力が上がったのでアール」

「けどキールの攻撃力は越えられないノーネ」

 

そう、クロノス先生の言う通り、シュテルの攻撃力は相手のレベルによって大きく依存する。レベルが4でも高レベルモンスターと同等かそれ以上の力を発揮できるが、低レベルで攻撃力の高いモンスターには弱い。けど今はマリアージュトークンを増やすのが一番。

 

「バトル! マリアージュでサイバー・ドラゴンを攻撃!」

無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)

 

A2300 VS A2100

 

マリアージュは自分の腕を巨大なガトリングガンに変え、ガトリングガンで集中砲火する。その余りのうるささに、後ろにいるクロノス先生とナポレオン先生は耳を塞いでいるが、俺と亮さんは黙々とその光景を見ていた。サイバー・ドラゴンが穴だらけになり、肉体の部品をパラパラと落とすと同時に激しく爆発した。

 

亮LP3800→3600

 

「罠発動、ダメージ・コンデンサー。戦闘ダメージを受けた時、手札を一枚捨てて発動。受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから特殊召喚する。サイバー・ヴァリーを特殊召喚」

 

AD0

 

攻守共に0。だがレベル1で効果を三つも持っており、そのどれもが非常に強力だ。サイバーとついているからサイバー流で使われているそうで、サイバー流が買い占める所為でかなりレアリティが上がっている。校長先生がサイバー流だから余り大きな声で言えないが。

 

「モンスターを破壊したのでマリアージュトークンを特殊召喚。サイバー・ヴァリーは生かしても面倒ですからね! マリアージュトークンでサイバー・ヴァリーを攻撃!」

「罠発動、威嚇する咆哮。バトルフェイズを終了する」

「? どうしてバトルフェイズを無効に出来るサイバー・ヴァリーを守ったノーネ?」

「あ~、亮さんあのカードを持ってるんですね。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター4 伏せ4 手札1 LP3700

亮  モンスター2 伏せ0 手札1 LP3600

 

「俺の考えが分かったようだな。ドロー! 機械複製術を発動。サイバー・ヴァリーをデッキから二体特殊召喚する」

 

さっきも言ったがサイバー・ヴァリーには三つの効果がある。その内多く使われるのは一つ目と二つ目の効果。

 

「サイバー・ヴァリーの第二の効果を発動。このカードと自分フィールド上のモンスター一体をゲームから除外し、デッキから二枚ドローする。サイバー・ヴァリーとキールを除外する」

「あのカードの融合素材であるキールを除外!?」

「ドローがしたいからな。二枚ドロー! 運が良い、アーマード・サイバーンを召喚」

 

A0・D2000

 

「こいつも攻撃力が0だ。機械複製術を発動し、デッキから二体のアーマード・サイバーンを呼ぶ!」

「うぐっ、全部コストって事ですか」

「勿論だ。二体のサイバー・ヴァリーの効果。二体のアーマード・サイバーンをゲームから除外して四枚ドローする!」

 

これで亮さんの手札は5枚。だが通常召喚を使わせたし、奴の融合素材であるキールをゲームから除外した。これで有利になったとは思いたいが。

 

「融合発動! 手札のサイバー・ドラゴン二体を融合! 来い、サイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

A2800・D2100

 

一つの胴体に二体のサイバー・ドラゴンの首が生えた機械仕掛けのドラゴン。デュエルモンスターズの効果は、テキストが短い=強い、とよく言うがこのモンスターも単純だが爆発的火力を持っている。

 

「サイバー・ツイン・ドラゴンは二回の攻撃が可能! バトルだ! マリアージュとマリアージュトークンを攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

A2800 VS A2300

A2800 VS A2300

 

サイバー・ツイン・ドラゴンの二つの頭は、それぞれマリアージュとマリアージュトークンに標準を向け、口に青白いエネルギーを溜める。放たれた青白いエネルギーは二体のマリアージュの妨害をビクともせず、二体のマリアージュを同時に破壊した。

 

遊斗LP3600→2600

 

「ぐうう。だがマリアージュが破壊された時Asの収集を発動。デッキからカリムを特殊召喚する」

 

LC時空管理局1→2

カリムAD500→AD1600

 

「アーマード・サイバーンの効果発動。サイバー・ツイン・ドラゴンに装備し、攻撃力を1000下げる事でモンスター一体を破壊できる。イクスを破壊だ! ジャッジメント・キャノン!」

 

サイバー・ツインA2800→A1800

 

サイバー・ツイン・ドラゴンの胴体に装着されたアーマード・サイバーンは、サイバー・ツイン・ドラゴンの体内エネルギーを貰い、自らの銃口にエネルギーを溜めると、イクスに向けて発射。イクス本人に戦闘能力がある訳ではないので、アッサリと破壊されてしまった。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札1 LP2700

亮  モンスター1 伏せ3 手札0 LP3600

 

一年前から毎ターン手札を使いきったりする人だったが、ヘルカイザーとなってもそのプレイングは変わらないようだ。

 

「ドロー! カリムの効果発動。モンスターを選択。デッキトップははやて。よって手札に加える」

 

現在サイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力は1800に下がっている。シュテルだったら攻撃力が下がって無くても勝てたが、どっちにしろチャンス――なんだが、攻撃力を下げたら低レベルモンスターに破壊されるのは亮さんだって分かっている。コンボパーツを引かれてしまう可能性が高くなるが、持久戦に持ち越した方が有利になる筈。今はやてを出さない方が賢明だ。

 

「バトル! シュテルでサイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃!」

「永続罠発動。サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジーを発動! サイバー・ドラゴン及び、サイバー・ドラゴンを融合素材とするモンスターを墓地に送る事で、攻撃モンスターを破壊する。墓地に送るのはサイバー・ツイン・ドラゴン!」

 

またそうやって使いにくいカードを! 明らかにアド損だが、亮さんの事なので何か考えがあるんだろう。シュテルが砲撃を放つ前に、サイバー・ツイン・ドラゴンが突然大爆発し、その爆発に呑み込まれてシュテルは破壊されてしまった。

 

「すずかの効果で時空管理局のLCをキャロに移動。カードを一枚伏せてターンエンドです」

 

LC時空管理局2→1 キャロ1→2

カリムAD1600→AD1900

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター1 伏せ4 手札2 LP2700

亮  モンスター0 伏せ2 手札0 LP3600

 

「けどこれでシニョール亮の手札は0。いけるのでアール」

 

ナポレオン先生。おそらくそれはフラグって奴ですよ。さっきのターン発動されなかった罠カードはおそらく・・・・。

 

「ドロー! 罠発動、異次元からの帰還! ライフを半分払い、除外されたカードを可能な限り特殊召喚する。除外されたサイバー・ヴァリー三体と、アーマード・サイバーン、キールを特殊召喚」

 

亮LP3600→1800

AD0

AD800

A0・D2000

 

「二体のサイバー・ヴァリーの効果発動。アーマード・サイバーンとサイバー・ヴァリーをゲームから除外し四枚ドローする。キールを生贄に、ジャンク・コレクターを召喚」

 

A1000・D2200

 

キールを生贄に現れたモンスターは、長年使いこまれているのかボロボロで薄汚れたコートを着た男の人形。人形、と言っても女の子が遊ぶ小さなものでは無く、俺よりも大きい等身大の人形だ。背中にはバラバラになった人形を背負い、左手にはハンマーを持っており、実際現実世界にいたら間違いなく警察のお世話になるだろう。

 

「攻撃力1000・・・・」

 

亮さんが使うにはずいぶんと守備的なステータスだが。何かサイバー・ドラゴン関連を呼ぶのに必要なモンスターなんだろうか?

 

「ジャンク・コレクターの効果発動。このカードと自分の墓地の通常罠をゲームから除外し、除外した罠を発動できる」

「んな!? じゃあさっきの!?」

「ああ、異次元からの帰還を再び発動する。除外されたサイバー・ヴァリー二体とアーマード・サイバーン二体、ジャンク・コレクターを特殊召喚」

 

しかもこの手の効果は、エドの使うダイヤモンドガイと同じでコストを支払わなくていい。ここまで強引に使いまわしてドローして来るとは、流石ヘルカイザーとなってプロリーグで活躍しているだけある。これくらい破天荒なデュエルをしないと、観客も面白くないだろう。

 

「サイバー・ヴァリー二体の効果で、アーマード・サイバーン二体をゲームから除外して四枚ドロー!」

 

ただいま亮さんの手札は8枚である。普通のデッキでさえ手札が8枚あるなんて異常としか言えないが、亮さんはさっきのエンドフェイズまで手札は0枚。サイバー・ヴァリーの力って凄いな・・・・。

 

「ジャンク・コレクターの効果発動。このカードと墓地のアタック・リフレクター・ユニットをゲームから除外し、デッキからサイバー・バリア・ドラゴンを特殊召喚する!」

 

A800・D2800

 

サイバー・ドラゴンの体がより太くなりて長くなった姿。顔にはバリアを発生させる装置が組み込まれており、攻撃力が低くなった代わりに守備力が格段と上がっている。けど、いくらサイバー・ドラゴン一体で呼べるとは言え、攻撃表示じゃないとその効果を使えないと言うのは余り納得できない。今は非常に助かっているが。

 

「にょにょっ!? あんなカードいつの間に」

「ダメージ・コンデンサーの時ですよ。あの時から亮さんはこの展開を想定してた」

「流石だな。死者蘇生を発動。墓地のサイバー・ツイン・ドラゴンを特殊召喚!」

 

A2800・D2100

 

「バトルだ! サイバー・ツイン・ドラゴンでカリムを攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト、ダイイチダァ!」

 

A2800 VS D1900

 

一匹のサイバー・ドラゴンの首から放たれたエヴォリューション・バーストがカリム姉の体を呑み込み、その圧倒的な破壊力で強制的に墓地に送る。いくらキャロと聖王教会の効果を受けても、融合したサイバー・ドラゴンに勝てる訳がない。

 

「ダイニダァ!」

 

A2800

 

「これが通ったらシニョール遊斗の負けナノーネ!」

「手札のザフィーラの効果発動! 戦闘ダメージを0にして一枚ドロー!」

「ククッ、そうじゃなくちゃ面白くない。サイバー・バリア・ドラゴンで攻撃! エヴォリューション・バリア・ショット!」

 

A800

 

サイバー・バリア・ドラゴンの頭の部分についている、バリアを発生させる装置が青白く光る。するとサイバー・バリア・ドラゴンの顔の前に青の壁が現れ、それは徐々に球体に形を変えて行き、俺に発射される。足元で爆発したその球体だが、元々攻撃する為の装置では無いので、俺へのダメージはそこまで多くない。

 

遊斗LP2700→1900

 

「カードを三枚伏せてターンエンドだ」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター1 伏せ4 手札2 LP2700

亮  モンスター2 伏せ4 手札4 LP1800

 

今までの亮さんとのデュエルとは余りにも違いすぎて、困惑してばかりだ。あのサイバー・ダークに気を取られていたが、今は逆にサイバー・ダークの方が薄れて見える。やっぱり亮さんには毎ターン全力で攻撃しないと、すぐ亮さんのペースに呑まれてしまう。

 

「ドロー! キャロのLCを生贄に、はやてを召喚! 効果でLCを置く」

 

LCキャロ2→1 はやて1

はやてA2000・D1700→A2600・D2300

 

「罠発動、幸運の追い風! はやてがフィールドにいる時、ライフを半分払い、手札を一枚捨て効果発動! アインスを召喚条件を無視して特殊召喚する! 来い、アインス!」

 

LC時空管理局2→3

アインスAD2300→AD2900

遊斗LP2700→1350

 

「効果で夜天の書を特殊召喚」

 

LC時空管理局3→4

夜天の書AD0→AD600

 

「すずかの効果発動。キャロのLCを時空管理局に移動する」

 

LCキャロ1→0 時空管理局4→5

はやてA2600・D2300→A2300・D2000

アインスAD2900→AD2600

 

「夜天の書の効果発動。時空管理局のLCを全て取り除き、デッキから五枚ドロー!」

 

LC時空管理局5→0

 

「さっきから両者、凄まじいスピードで展開しているのでアール」

「本当ならとっくに息切れしてもおかしくないノーニ、両者の手札は減って無いノーネ!」

「さあ来い、遊斗。俺に最高の勝利を届けてくれ」

「清々しい敗北ならお届けしますよ! 場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の主・八神はやて!」

 

はやてAD2800→AD3100

LCはやて3

 

「夜天の書をはやてに装備」

 

太陽が昇っていようと辺りを夜に染める魔導師は、自らの武器であり知識でもある本をそっと左手で持つ。そして本の主がポツリと囁くと、夜天の書は自ら本をめくり、ある一ページでピタリと止まる。

 

「はやてのLCを二つ取り除き、融合デッキから祝福の騎士ヴィータを特殊召喚。そしてヴィータを生贄に、紅の鉄騎ヴィータを特殊召喚する!」

 

ヴィータA3000・D2800→A3300・D3100

 

夜を操る最強の魔導師と、圧倒的破壊力を兼ね備えた守護騎士の一角。

サイバー・バリア・ドラゴンはサイバー・ドラゴンと扱わないし、融合モンスターでも無いのでサイバネティック・ヒドゥン・テクノロジーで墓地に送る事は出来ない。効果を無効にしてしまえばなんの問題も無い。

 

「はやての効果発動。LCを一つ取り除き、サイバー・バリア・ドラゴンの効果を無効にする!」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)』』

 

LCはやて1→0

 

古代ベルカ語がギッシリ詰まった本の中から、突然禍々しい鎖が飛びだしてきた。もはや魔法と言えば何だって出来るが、やはり本の中から鎖が出て来るのは摩訶不思議な現象だ。同時に卒業した中二心を擽る俺好みのアニメーションだ。

 

「バトル! 紅の鉄騎ヴィータで攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A3300 VS A800

 

ここでサイバネティック・ヒドゥン・テクノロジーを使ってくるかと思ったが、紅ヴィータさんの持つグラーフアイゼンがサイバー・バリア・ドラゴンの顔面を破壊し、バーンと爆発音を上げた。

 

「なっ!? 攻撃が通った!?」

「罠発動、ガード・ブロック。これで戦闘ダメージを0にして、デッキから一枚ドロー」

「クッ、はやてでサイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃! 攻撃宣言時夜天の書の効果でザフィーラをデッキに戻し、攻撃力を800上げる」

 

はやてA3100→A3900 VS A1800

 

「サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジーを発動! サイバー・ツイン・ドラゴンを墓地に送り、攻撃モンスターを破壊!」

 

ガード・ブロックで守って来るとは、流石亮さん。王様はやてさんが破壊されてしまったけど、手札は5枚。十二分に動ける手札だ。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター1 伏せ5 手札3 LP1350

亮  モンスター0 伏せ3 手札5 LP1800

 

「俺のターン、ドロー! 手札抹殺を使う! なにも無いなら五枚交換する」

「俺は三枚です」

 

これで墓地に機械族が溜まり、更には亮さんの切り札の融合カードが手札に加わった筈。おそらくここで出て来る筈。

 

「リビングデットの呼び声を発動。墓地のサイバー・ドラゴン・ツヴァイを特殊召喚。そして特殊召喚成功時、地獄の暴走召喚を発動! デッキから二体のサイバー・ドラゴン・ツヴァイを特殊召喚する!」

 

A1500・D1000

 

サイバー・ドラゴン・ツヴァイを特殊召喚した時点で薄々気付いていたけど、やっぱり地獄の暴走召喚を手札に持っていたか。俺の場には紅ヴィータさんしかいないから、紅ヴィータさんしか選択する事が出来ない。

 

「お前のデッキは確認するまでも無いが、モンスターは一枚ずつしか入っていない。デッキはともかく、手札は確認させて貰うぞ」

「クッ、手札はなのは、協力防御、トーマです」

 

そう、俺のデッキは地獄の暴走召喚を発動されたら、融合モンスターを選択しない限り、確認として絶対ピーピングされてしまう。だから俺に対して地獄の暴走召喚はピーピング+特殊召喚とアドバンテージを稼ぐ事が出来る。

 

「三体のサイバー・ドラゴン・ツヴァイの効果発動。手札の魔法一枚を見せることでサイバー・ドラゴンとして扱う。俺が見せるのはパワー・ボンド! そしてパワー・ボンドを発動! 場の三体のサイバー・ドラゴンを融合! 来い、サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

A4000・D2800

 

バチバチバチと体内に収めきれない膨大なエネルギーを纏わせた、最強の機械龍。三体のサイバー・ドラゴンが合体し、背中には巨大な翼を持つ、正真正銘亮さんのエースモンスター。攻撃力4000と言うデュエルモンスターズの中でも最上位の攻撃力は、パワー・ボンドにより二倍になる。

 

サイバー・エンドA4000→A8000

 

「攻撃力8000! けどそうじゃなきゃ面白くない!」

 

と、言った物の、三幻魔無しでこの攻撃力相手にするのは骨が折れるな~。俺のデッキには余り除去カードが入っていないから、ここまで打点を上げられると防ぐのも辛い。おまけに貫通効果持ち。

 

「バトルだ! サイバー・エンド・ドラゴンでヴィータに攻撃! エターナル・エヴォリューション・バースト!」

「罠発動! フィジカルヒール! ヴィータのレベル×500ライフを回復! 4500ライフを回復する!」

 

遊斗LP1350→5850

 

「だが攻撃は止まらん!」

 

A8000 VS A3000

 

サイバー・エンド・ドラゴンの三つの口に溜められた青白いエネルギー。だが今までのサイバー・ドラゴンや、サイバー・ツイン・ドラゴンの時とは違い、ウ゛ーン゛、バチバチと莫大なエネルギーが音となって漏れている。

放たれた青白いエネルギーは、なのはさんが使う長時間溜めた収束魔法と同等――とまでは行かないにしろ、紅ヴィータさんが一人で止められる程優しくは無い。紅ヴィータさんはバリアを張って抵抗するが破壊され、そのまま俺の体を呑み込む。

 

遊斗LP5850→850

 

「ぐうううう! や、闇のデュエルじゃないのにこの威力か・・・・」

「罠発動、ピケルの魔法陣。このターンのエンドフェイズまで俺はカード効果のダメージを受けない。カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、パワー・ボンドのデメリットで融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受けるが、ピケルの魔法陣によりダメージを受けない」

 

亮さんがピケルの魔法陣って凄く違和感がある。けど実際パワー・ボンドのハイリスクを一枚で防ぐことができる優秀な罠である。それに亮さんはピケルに関連するカードだから入れている訳ではなく、相性がいいから入れているのだ。

 

「エンドフェイズ、永続罠、ウイングロードを発動!」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター0 伏せ4 手札3 LP850

亮  モンスター1 伏せ4 手札1 LP1800

 

攻撃力8000のモンスター。単純に火力で勝とうとしたら、オネストでも使わない限りほぼ不可能。だったら低レベルLSの力で突破するしかない!

 

「俺のターン、ドロー! ウイングロードの効果発動。ドローしたディアーチェを特殊召喚! このカードと時空管理局にLCが乗る」

『ううむ。いくら我が王と言えど、こいつを倒すのは骨が折れるな』

 

LC時空管理局0→1 ディアーチェ1

ディアーチェA2100・D1600→A2400・D1900

 

「なのはを通常召喚し、効果発動! このカードに乗ったLCを取り除き、そのセットカードを破壊!」

『ディバインシュート!』

 

なのはA500・D1800→A800・D2100

 

なのはが出した桃色の弾丸が破壊したカードは二枚目の地獄の暴走召喚。ブラフとして使い、あわよくば使用する予定だったのだろう。亮さんは特に困った素振りを見せず、平然と立っている。

 

「時空管理局のLCを取り除き、ユーノを特殊召喚! 場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

LC時空管理局1→0→1

なのはA1000・D3000→A1300・D3300

 

「なのはの効果発動! デッキからフェイトを手札に加え、ウイングロードの効果で特殊召喚」

『最近遊斗、休む暇がないね』

 

フェイトA1800・D500→A2100・D800

 

そうそう、最近は王と命賭けのデュエルをしてばっかりで身も心も疲れているのに、まさか亮さんと戦わないといけなくなるなんて・・・・。帰ったらなのはさんとはやてさん作のスイーツでも食べて疲労回復しよう。

 

「すずかの効果発動。時空管理局のLCをフェイトに移動。そしてフェイトの効果でサイバー・エンド・ドラゴンの表示形式を変更する!」

「だが守備力は2800。お前のモンスターじゃ破壊出来ない」

「ですからディアーチェですよ。ディアーチェの効果発動! このカードのLCを取り除き、自分フィールド上のLSの攻撃力を、一枚のカードに収束させる事が出来る! ディアーチェに攻撃力を収束!」

 

LCディアーチェ1→0

ディアーチェA2300→A5700

 

『見ろ、我の力! 圧倒的ではないか!』

『攻撃表示のサイバー・エンド・ドラゴンに比べると低いけど』

『ええい黙れ! それとこれとは話が別だ!』

 

なのはさんはクスクスと笑いながらディアーチェにツッコムと、ディアーチェは顔を真っ赤にさせてエルシニアクロイツでなのはさんの頭をバンバンと叩く。

 

『ディアーチェ!? 痛い痛い!』

『う、うるさい!』

 

なのはさんとディアーチェの絡み合いも微笑ましいな~。純粋でまっすぐな人とツンデレで素直になれない少女か。するとデッキと融合デッキから一枚ずつカタカタと動いた。この二人に対して嫉妬をする=フェイトさん+ユーリだとすぐに分かった。

 

「バトル! ディアーチェでサイバー・エンド・ドラゴンを攻撃!」

『絶望に足掻け塵芥!』

 

A5700 VS D2800

 

『エクスカリバー!』

 

ディアーチェが前に出した紫色のベルカ式の魔法陣の三つの頂点に溜められたエネルギー。ここまではラグナロクと同じだが、ディアーチェは三つに溜められたエネルギーを魔法陣の中心に集めて一つにし、サイバー・エンド・ドラゴンに発射した。デュエルモンスターズの中で飛びぬけた火力を持ったサイバー・エンド・ドラゴンだったが、守備表示ではその攻撃力が生かされる事は無い。

サイバー・エンド・ドラゴンはエクスカリバーに破壊されてしまったが、最後の最後に、体内に持っていたエネルギーを使い、自ら爆発してディアーチェを道連れにした。

 

「だがこれを忘れるな。サイバネティック・ヒドゥン・テクノロジーを発動! サイバー・エンドを墓地に送り、攻撃モンスターを破壊!」

 

ディアーチェは破壊されてしまったけど、攻撃力8000のサイバー・エンド・ドラゴンを倒すことができた。

 

「助かったディアーチェ。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター3 伏せ5 手札1 LP850

亮  モンスター0 伏せ3 手札1 LP1800

 

「俺のターン、ドロー! マジック・プランターを発動。リビングデットを墓地に送り、デッキから二枚ドロー! フッ」

 

亮さんが笑った。おそらくあのカードを引いたと見ていいだろう。だが亮さんの墓地にドラゴン族はハウンド・ドラゴンしかいない。勿論それでも十分な攻撃力だが。

 

「永続罠、輪廻独断を発動。発同時に一種類の種族を選択。このカードがフィールド上に存在する限り、お互いの墓地に存在するモンスターを選択した種族として扱う。俺が選択するのはドラゴン族!」

「ッツ、そう言う事か!」

「サイバーダーク・インパクトを発動! 手札・フィールド・墓地からホーン、エッジ、キールをデッキに戻し、鎧黒竜(がいこくりゅう)-サイバー・ダーク・ドラゴンを融合召喚する! 墓地のホーン・エッジ・キールをデッキに戻し、鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンを融合召喚!」

 

A1000・D1000

 

三体のサイバー・ダークが合体した裏サイバー流の切り札。ホーンは翼に、エッジは顔と牙に、キールは尻尾になる事で、一つの機械の竜が作られた。攻守1000と亮さんが使うには違和感のあるステータスだが、すぐにこのカードの効果は分かる。

 

「このカードが特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター一体を装備できる。このカードの攻撃力は装備したモンスターの攻撃力分アップし、更に自分の墓地のモンスターの数×100アップする!」

「にょにょ! 輪廻独断でシニョール亮の墓地のモンスターは全てドラゴン!」

「ここで選択するモンスターは当然」

「俺はサイバー・エンド・ドラゴンを装備! 更に俺の墓地のモンスターは12体! 攻撃力は6200!」

 

鎧黒竜A1000→A6200

 

攻撃力8000のモンスターを倒したと思ったら、攻撃力6200のモンスター。やってられないが、さっきのターンこの二体が並ばなかっただけ良かったと思おう。人間前向きに考えるのが大事だ。

 

「バトルだ! 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンでフェイトを攻撃!」

「罠発動、協力防御! LSが二体以上いる時、俺のモンスターは戦闘では破壊されず、俺はダメージを受けない。発動後デッキから一枚ドロー!」

 

A6200 VS A1800

 

「さっき見たカードだな。カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札2 LP850

亮  モンスター1 伏せ3 手札0 LP1800

 

さーて、ここで特殊召喚をして時空管理局にLCを溜め、フェイトで表示形式をすれば鎧黒竜を破壊する事は出来るが、それくらい亮さんだって気付いている。そんなに簡単にフェイトの効果が通るとは思わないが。

 

「ドロー! ドローしたレリックをウイングロードの効果で特殊召喚!」

 

LC時空管理局0→1

A0・D0

 

「すずかの効果発動。時空管理局のLCをフェイトに移動」

「その効果にチェーンして永続罠、安全地帯を鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンに発動。これにより選択したモンスターは戦闘および相手の効果で破壊されず、効果の対象にならない」

 

LC時空管理局1→0 フェイト0→1

 

エリオがデッキに居れば墓地のなのはを回収して、安全地帯を破壊する事が出来るが、手札抹殺の時に墓地に送られてしまい回収不可能の状態になっている。けどその選択はミスですよ亮さん。

 

「なのはの効果発動。デッキから迷い子ヴィヴィオを手札に加え、ウイングロードの効果で特殊召喚!」

 

LC時空管理局0→1

A0・D0

 

『なのはママ~!』

『ふふっ、甘えんぼさんだな~。ママとしてはあんまりヴィヴィオを戦わせたくないんだけど』

『だいじょ~ぶ! カードのレリックなら私、変にならないもん』

 

なのはさんの話を聞くに、本来ヴィヴィオはレリックと無理やり融合させられたらしい。正確に言うとレリックを体内に入れられた、というのが正しいかもしれない。レリックを入れられ、更には精神操作をされた所為でヴィヴィオは我を失い、なのはさんと戦った事があるらしい。だからヴィヴィオからすれば本来レリックとの融合はトラウマの筈だが、俺や精霊達(みんな)を助ける為に自分から融合するように頼む時もある。

 

「出来た子だよな~」

「? 何か言ったか?」

「え? な、なんでもありません。ん゛ん゛! 場のヴィヴィオとレリックを融合! 来い、聖王ヴィヴィオ! 効果でデッキから聖王の鎧を手札に加える。ヴィヴィオの攻撃力は墓地のLSの数×400。更に聖王教会とキャロの恩寵も受け、攻撃力は7200!」

 

ヴィヴィオAD?→AD7200

 

「まさか火力で押して来るとは。やはりお前とのデュエルは面白い」

「そう言ってくれて嬉しいです。ヴィヴィオの効果発動。墓地のLSを選択し、その効果を得る。俺が選択するのは夜天の書。効果でフェイトのLCを取り除き、一枚ドロー」

 

LCフェイト1→0

 

「バトル! 聖王ヴィヴィオで鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンを攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

A7200 VS A6200

 

ヴィヴィオさんの放った収束砲撃並みのディバインバスターは鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンの巨体をアッサリと呑み込み、亮さんにダメージを与える。だが永続罠、安全地帯により鎧黒竜は破壊される事は無い。だがしかし――

 

亮LP1800→800

 

「ヴィヴィオが戦闘で相手モンスターを破壊出来なかった時、効果が発動! 戦闘を行ったモンスターの効果を無効にする。この効果は対象に取る効果ではないので、安全地帯で防ぐ事は出来ません」

「なるほど。効果が無効になった事で装備カード化を維持できない。サイバー・エンドは墓地に行く」

 

鎧黒竜A6200→A1000

 

「フェイトでサイバー・ダーク・ドラゴンに攻撃!」

『ハーケンセイバー!』

 

A1800 VS A1000

 

この攻撃が通ればジャストキル。この勝負に終止符が付くが――

 

「罠発動。ガード・ブロック。戦闘ダメージを0にして一枚ドロー。本当は後に取っておきたかったが、まあいい」

「やっぱりそう簡単には勝たせてくれませんか。カードを一枚伏せてターンエンドです。エンドフェイズ、ヴィヴィオは融合デッキに戻らないといけませんが、聖王教会の効果でその効果は無効になります」

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター3 伏せ5 手札3 LP850

亮  モンスター1 伏せ3 手札1 LP800

 

亮さんのフィールドには攻撃力2200の鎧黒竜サイバー・ダーク・ドラゴンと永続罠三枚だけ。鎧黒竜・サイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃力も伏せたソニックムーブで回避する事が出来る。

 

「俺のターン、ドロー! マジック・プランターを発動。輪廻独断を墓地に送り二枚ドローする。遊斗、お前は流石としか言いようのないデュエリストだ。サイバー・ツイン、エンドに続き、サイバー・ダークの切り札も今は機能していない。攻撃してもそのセットカード、あるいは手札のカードで防いで来る筈」

「何がいいたいんですか?」

「俺のデッキにはまだ切り札があると言う事だ! オーバーロード・フュージョンを発動! 墓地の機械族11体と鎧黒竜サイバー・ダーク・ドラゴンを融合! 現れろ、キメラテック・オーバー・ドラゴン!」

 

AD?

 

黒いサイバー・ドラゴンの体から、計12体の黒いサイバー・ドラゴンの首が現れた合成獣(キメラ)。その威圧感、プレッシャーは、今まで亮さんが出してきたどのモンスターをも凌駕し、24の瞳が全て俺に降り注ぐ。

 

「キメラテック・オーバー・ドラゴンが融合召喚に成功した時、自分フィールド上のカードを全て送る。このカードの攻守は融合素材にしたモンスターの数×800。よって攻撃力は9600!」

 

キメラテックAD?→AD9600

 

「こ、攻撃力9600・・・・」

「し、信じられないのでアール・・・・」

「これがヘルカイザーの力だ! バトルだぁ!」

「まだ諦めませんよ! 罠発動、ソニックムーブ! この効果でなのはを除外! 更に墓地のソニックムーブを除外してヴィヴィオをゲームから除外!」

 

フェイト一人にさせてしまったけど、こうしないと勝てないんだ。本当にゴメン。いくら戦い慣れているとはいえ、攻撃力9600の化け物に女の子一人にさせてしまうのは彼氏以前に、男として最低だ。

 

「けどこれも勝つ為の布石!」

「面白い! キメラテック・オーバー・ドラゴンでフェイトを攻撃! エヴォリューション・レザルト・バースト!」

 

A9600 VS A1800

 

計12の全ての首が青白いエネルギーを口に溜め、幼い少女であるフェイトに向かい無慈悲にも全弾発射した。圧倒的――否、意味不明なまでの攻撃力の前に抵抗をする気にもなれなかったのか、フェイトは苦笑しながら青白いエネルギーに呑み込まれて行った。そしてそのまま俺に飛んでくるエネルギーは、何と一匹の狼によって防がれた。

 

『うおおおおお!』

 

ふ、普段無口なザフィーラが叫んでいる! 盾の守護獣でもダメージ7600は余裕を持って防ぐ事は出来ないのだろう。ザフィーラは盾を五重にしてエヴォリューション・レザルト・バーストを防ぎ、軽く肩を上下に動かしながら墓地に行った。

 

「ザフィーラの効果でデッキから一枚ドロー!」

「そうじゃなきゃ面白くない。カードを二枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、除外したなのはとヴィヴィオが戻ってくる」

 

ヴィヴィオAD7200→AD7600

 

場 聖王教会

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札3 LP850

亮  モンスター1 伏せ1 手札0 LP4900

 

さっきのターン俺を倒せなかったのが亮さんの敗因だ。このターンヴィヴィオさんの効果を使い、墓地の王様はやてさんの効果を得る。そして効果を無効にすればキメラテック・オーバー・ドラゴンは攻守0の雑魚モンスターになる。

 

「俺のターン、ドロー! ヴィヴィオの効果発動。墓地の夜天の主・八神はやてを選択してその効果を得る」

「ほう、そのモンスターの効果は」

「ええ、すずかの効果発動! 時空管理局のLCをヴィヴィオに移動。そしてはやての効果を受け継いだヴィヴィオの効果を発動!」

「すずかの効果にチェーンしてリバースカード発動! 禁じられた聖衣! フィールド上のモンスター一体を選択して発動。エンドフェイズ時まで選択したモンスターは攻撃力が600ダウンし、カードの効果の対象にならず、効果では破壊されない!」

「ッツ!?」

 

LC時空管理局1→0 ヴィヴィオ0→1

キメラテックA9600→A9000

 

キメラテック・オーバー・ドラゴンの巨体を包み込むように現れた神々しい光のカーテン。その光により攻撃力が600ダウンする変わりに、様々な効果から身を守ってくれる聖なる衣がキメラテック・オーバー・ドラゴンの防具となる。

不味い・・・・。ヴィヴィオの攻守は7600。キメラテック・オーバー・ドラゴンを倒すには最低でもLSを四枚墓地に送らなくちゃいけない。なのはさんの効果が残っているがエリオもディアーチェもリリィもザフィーラも墓地にある。聖王教会があるが、シャッハもシャンテもキメラテック・オーバー・ドラゴンの前ではなす術がない。

 

「聖王の鎧もキメラテック・オーバー・ドラゴンの前では・・・・」

「どうした? サレンダーでもするか?」

「・・・・いや、まだ手はある。なのはの効果発動! デッキからスバルを手札に加える!」

 

そう、スバルの効果を使いヴィヴィオさんの攻撃力を1000上げる。更にLSが墓地に行った事により攻撃力が400上がる。これで現在のキメラテック・オーバー・ドラゴンと同じ数値になる。

亮さんも俺の意図に気付いたのか、ニヤリとダークヒーローの様な笑みを浮かべる。

 

「コロナを召喚! 効果で手札一枚を墓地に送り、デッキからゴライアスを特殊召喚する!」

 

A500・D1700

AD2300

 

「この攻撃で終わりです! バトル! ヴィヴィオでキメラテック・オーバー・ドラゴンを攻撃! ダメージステップスバルの効果発動! 手札のこのカードを墓地に送り、攻撃力を1000上げる! 更にヴィヴィオの効果で400アップ!」

 

ヴィヴィオA7600→A9000

 

『ディバインバスター!』

 

キメラテック・オーバー・ドラゴンの計12の首から放たれたエヴォリューション・レザルト・バーストは虹色の砲撃より僅かに威力が高い。だが12の首の内、どれか一体でも攻撃を中断すれば虹色の砲撃に押し返される。ヴィヴィオさんはかなり辛い表情をしているが、これも計算の内。キメラテック・オーバー・ドラゴンの注意がヴィヴィオさんに入っている隙に素早くキメラテック・オーバー・ドラゴンの懐に入ったスバルが、右手に溜めたディバインバスターを打ち込んだ――そう思った刹那、一匹の攻撃によりスバルは青白い砲撃に呑み込まれた。

 

『う、嘘! 急に威力が上がって!』

「なっ!? ま、まさか・・・・」

「スバルの効果にチェーンしてリミッター解除を発動していた。これでキメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃力は倍となる」

 

キメラテックA9000→A18000 VS A9000

 

「攻撃力18000!?」

「反撃しろキメラテック・オーバー・ドラゴン! エヴォリューション・レザルト・バースト!」

 

文字通りキメラテック・オーバー・ドラゴンは自らの限界(リミッター)突破(解除)し、自らが持てる全てのエネルギーを放出する。いくらみんなの力を受け継いでいても、最強の機械であるキメラテック・オーバー・ドラゴンの後先考えない最強の攻撃を止めることはできなかった。俺が亮さんの足元にあるリミッター解除のカードから頭上で行われている砲撃戦に視界を移した時には、虹色の光はどこにも見えず、青白い光だけが輝いていた。

 

優斗LP850→-8150

 

「そ、そんな。シニョール優斗までが負けてしまったのでアール!」

 

目先のキメラテック・オーバー・ドラゴンの事に集中しすぎてリバースカードを注意しなかったのが敗因か。期待してくれたクロノス先生とナポレオン先生には申し訳ないことをしてしまったか。けど、それでもやっぱり――

 

「ガッチャ、楽しいデュエルでした」

「負けて楽しい? いや、昔の俺もリスペクトさえ出来れば勝敗など関係なかったか」

「亮さん、やっぱりあなたは昔の様にデュエルを楽しめないんですか? 正直俺にはリスペクトデュエルってよく分からないんですけど、あの頃の亮さんは楽しそうにデュエルをしていました」

 

バッグの中に入れていたGXメダルを渡しながら、少し遠い目をしている亮さんにそう言った。すると亮さんは悪役の様に「クックック」と笑いながら口を開く。

 

「プロに行き、挫折して始めて分かった。どんなにいいデュエルでも結果が残せなくては意味がない。だから俺は勝利をリスペクトする」

 

亮さんはそれだけ言い、クルリと背中を向けて去って行った。

挫折、結果、勝利。確かに全て大事だ。人は挫折をして成長すると昔から聞くし、結果が残せなくてはどんなに努力しても意味は無い。例え1点差で負けても、コンマ数秒差で負けても勝者と敗者に別れる。それは決闘でもスポーツでも勉強でもそうだ。

それでもデュエルを楽しくやりたい、そう理想を持つことは自由だ。

 

「理想を現実にするのって難しいのかな?」

「そんな事ないノーネ」

「クロノス先生・・・・」

「あなたとカイザーの戦いはとても心踊るものだったノーネ。確かにあなたは負けてしまいました~が、意味の無いデュエルではなかったノーネ」

 

クロノス先生はそう言いながら俺の頭に手を乗せ、ポンポンと軽く叩く。いくらクロノス先生が相手とは言え頭を撫でられて喜ぶ年ではないので、反論しようとクロノス先生の顔を見上げると、彼は笑っていた。

 

「実際ワタクシも、あなたとシニョール十代に負けて学んだ事がたくさんあるノーネ。だから例え負けても胸を張っていいノーネ」

「・・・・はい!」

「しかーし、負けは負け。厳しい罰は受けてもらうノーネ」

「言ってることとやってる事が違いますよ!?」

「違わないノーネ」

 

厳しい罰というのは反省文を原稿用紙20枚書かないといけない事だった。20ページとはかなり膨大だったが、幸いな事に反省文はデュエルのこと。結局その日は数時間掛けて反省文を書き上げ、次来る王に向けて万全の態勢で臨めるように体を休めた。

 

 

 

 

 




今回はアニメオリジナルカードとして輪廻独断というカードがありました。効果は本文と全く同じです。因みにOCG化されたら絶対に禁止になります。

やっぱりカイザーは手札消費が激しすぎて構成が難しいですね。まさかジャンク・コレクターを使うとは自分でも思わなかった。



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第四十話

前回宣言した通り、今回ナンバーズが出ます。


その件でですが、ここでお詫び申し訳ます。

実はですね、作者本人がネタバレするのはどうかと思い黙っていたのですが、今回スカさんが戦うのは優斗じゃありません。
魔法使い族のアンチカードなども頂いたのですが、それらのカードの出番は先になります。


ではなんでこのタイミングでオリカの募集をしたかと言うと、今後デュエルする時に、ただでさえややこしいオリカVSオリカで、片方は新オリカばかりだと作者も読者の皆様も混乱すると思ったので、オリカを使わないあの人と戦ってもらいます。
また、地味にですがこのタイミングで出してフラグを立てておきたかったからです。


あとデュエルの都合上、どうしても出せなかったナンバーズもいます。



追記)ネクロダークマンのルール効果にヴェルズサンダーバードと同じ効果を持つウェンディの効果を使用して除外しました。実際は出来ないと思います。修正が難しい部分だったので、どうしようもありません。ご了承ください。


亮さんに負けて、つまりGX大会を敗退してから二日。GX大会で授業が無く、そのGX大会ももう参加できないとなると、以外に暇な二日間だった――と言いたいが、実際のところ襲撃してきた王の所為で命掛けのデュエルをしていた。戦ったのは雷族と戦士族の王。

雷族の王は創世神。しかし雷族には見えない外見の為、奴が電池メンを使う姿は結構シュールだった。雷族はサポートが優秀だが、なにぶんカード枚数が少なく、まともなカテゴリーは電池メンとエレキしかない。なので破壊されない+高火力のユーリと効果無効の王様はやてさんを使って勝った。

戦士族の王はギルフォード・ザ・ライトニング。こいつは下級の戦士、不死武士、一族の結束を使ってひたすら殴ってきた。優秀な下級戦士の攻撃力が上がり、しかも伏せが強力でかなり苦戦したが、一族の結束を破壊しつつ守り、何とか勝つ事が出来た。

これで残りの種族は悪魔族とドラゴン族。そろそろ親玉であるF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)も出てくるだろう。そう思うと気が抜けないが、今は出来るだけリラックスしないと、ストレスの溜まりすぎで倒れてしまうかもしれない。

だからストレス解消の為に外をブラブラと散歩していたんだが、どういう訳か目の前には髪を白く染めた三沢が体操座りをして、ため息を吐いていた。

 

「ハァ~。みんなの注目を集める為、ホワイト寮に入って髪まで染めたというのに、いつの間にか万条目も天上院君もホワイト寮を抜けた・・・・。いや、それだけならまだいい! むしろ俺の出番が増える筈! だがホワイトのみんなはエース二人が抜けたことでパニック。斎王様も最近は部屋から出てこられないし、あのオージーン王子を付き人にさせている・・・・」

 

こ、これは重症だな。これだと数年後には染めなくても髪が白くなるんじゃないのか? そう思うほどに三沢の背中は哀愁漂っていた。

 

「お、おーい。三沢~」

「ん? ああ、なんだ優斗か。お前はいいよな。学年トップの成績でデュエルの腕も一流で信頼もあって・・・・」

「な、なに言ってんだよ。三沢がトップの時だってあるだろ? デュエルだって亮さんに負けてGX大会敗退だし、信頼があるのも十代といつも一緒にいるからであって、俺というより十代の信頼って言うか」

 

ここは多少大げさで、自分自身のコンプレックスを打ち明けてでも三沢をフォローしなくてはいけない。下手するとこいつ、ストレスや不安で学校を辞めてしまうかもしれない。

俺のフォローが通じたのか、三沢は少し嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「そ、そうか?」

「ああ。それに三沢はたくさんデッキを持っているだろ? あれって相当勉強して努力しないと出来ないと思うんだ。俺はずっとこのデッキだし、お前みたいにたくさんのデッキを使いこなすなんて到底出来ない。十代だって出来ない。うん」

「クックック、優斗。随分と安っぽいフォローをしてるじゃないか?」

「おい! もう少しで三沢を立ち直らせることが出来たのに――って父さん!?」

「や、やっぱりフォローなのか――ってスカリエッティ博士!?」

 

俺と三沢、ほぼ同じタイミングで背中から聞こえてきた声の主を振り返ると、そこには白衣を着た色白でガリガリな細男、ジェイル・スカリエッティこと父さんがいた。

な、何で出不精の父さんがここにいるんだ!? 前にも言ったかもしれないが、父さんは基本外に出る事は無く、研究室に引き篭もり、ひたすら研究に没頭している人だ。父さんが外に出た=重大な事件が起こった、と考えてもいい。

 

「お、お久しぶりですスカリエッティ博士!」

「? 君は誰だい?」

 

一応父さんは去年のノース校との対抗試合の時に三沢に会った筈なんだが、案の定三沢の事を覚えていなかったか・・・・。元々父さんは興味が無い人間の事を覚えないし、三沢って空気が薄いからな。いや、まだあの頃は輝いていたっけ?

どちらにしろ憧れの対象である父さんに、顔も覚えてもらえなかった事がショックだった様で、ガクッと肩を降ろす。

 

「どうしてデュエルアカデミアに? 何かまた大事な話?」

「いや、クロノス教諭という方に頼まれて遊城十代君に会いに来たんだよ。単位ギリギリの十代君に勉強を教えて欲しい、と」

「あの馬鹿・・・・。単位ギリギリってどういう事だ・・・・」

 

父さんの返事に、俺は額に手を当ててハァと溜息を吐くしか無かった。デュエルアカデミアは合同授業と寮によって別れる授業の二つがある。前者の場合、レッドである十代と授業が同じなので、あいつがサボろうとしても強制的に俺が授業に出席させている。だが後者の場合、寮が違う俺が授業のある教室まで連れて行くのは不可能なので、翔と万条目に頼んでおいたんだが・・・・。

 

「ス、スカリエッティ博士の授業だと!? そんなのあいつには勿体無いです!」

 

うん、まあ確かに父さんが本気で研究について教えようと思ったら、おそらく理解できる人はごく一部だろう。勉強を全くと言っていいほどしていない十代が分かるわけがない。

ただ父さんが人に勉学を教えるのは不可能な気がする。この人の場合頭が良過ぎるから、どこが難しいとか、どこで躓くなどの感覚がない。

 

「それは私が決めることだよ。どうだい優斗、せっかくならお前もくるかい?」

「そうする。父さんも十代も別のベクトルで心配だから」

「待ってください! 俺も付いていきます!」

「・・・・好きにしたまえ」

 

 

 

 

「へ~、勉強教えてくれる相手って優斗の父さんか。お久しぶりです」

「ああ、久しいね、十代君」

 

補習室に入った時には十代はもう既に来ており、入ってきた父さんと俺の姿を見てビックリしていた。三沢の格好もチラッと見ていたが、すぐに視界から外し、父さんと挨拶をした。

三沢は十代の態度と、十代の事は覚えていた父さんの言動のダブルパンチをくらい、再び落ち込んでいた。

流石の俺もそろそろ面倒くさくなったので、肩をポンポンと優しく叩くだけにした。

 

「早速勉強を始めたい――と言いたいが、君は次元の狭間についての計算を知っているかい?」

「じ、次元の狭間ぁ?」

「フッ、その返事で理解したよ。どうやら君は普通の勉強を教えるに値しない頭の持ち主だ」

 

いやいやいや、次元の狭間を求める式とか優等生である俺も知らないんですけど。三沢もポカーンと口をあけて呆然とし、次の瞬間「やはりスカリエッティ博士は次元について・・・・」とブツブツと呟きだした。

 

「ここはデュエルアカデミアらしく、デュエルをしようか。元々私もそのつもりできたんでね」

「おっ! デュエルなら受けてたちます!」

「別に敬語じゃなくてもいいよ。それじゃあ早速やろうか」

 

父さんのデュエル。あの人は色々なデッキを使うから特定のデッキは無いんだよな。しかも使うデッキがフルバーンだったりロックだったりハンデスだったりと、いやらしいデッキばかりを使う。それに加え、普段デュエルをしない癖にデュエルタクティクスが凄い。

最も、デッキを信じるとか非科学的な事が大嫌いな人だから、そこまで強くない。おそらく十代でも勝てるだろう。

 

「分かった。じゃあいくぜ」

「デュエル!」「デュエル」

「先行は貰うよ、ドロー。クック、じゃあ早速行くとするか。ナンバーズ1-ウーノを召喚」

 

ナンバーズ1‐不可蝕の秘書ウーノ ☆4/光/機械/A0・D2000

 

現れたのは始めて見るモンスター。上は白に紫のラインが入ったシャツを着て、下は紫のロングスカートを履いている女性。髪は父さんより少し薄い紫のロングヘアー。見た目通りのステータスで、前線で戦うよりサポート的立場の様だ。

なんて冷静に分析したが、これはどういう事だ・・・・。

 

「と、父さん? そのカードは何?」

「私もデュエルがしたくなってね。ペガサス社長が私に作ってくれたんだよ。クックック、やはりI2会社に恩を着せて置くべきだね」

「へ~、優斗も知らないカードか。ワクワクするぜ!」

「続けるよ。ウーノの効果発動。手札の機械族モンスター一体を墓地に捨て、デッキからレベル4以下のナンバーズ、と名のつく機械族を特殊召喚する。デッキからクアットロを特殊召喚する」

 

ナンバーズ4-幻惑の使い手クアットロ ☆3/地/機械/A1000・D1600

 

今度現れたのは茶髪でメガネを掛けた少女。笑顔を作っているが、どこか裏があるような女の子で、その笑顔を見ても余りいい気分になれない。

初めてのカード達に気を取られている最中、突然デッキからフェイトさんが現れた。三沢には見えていないから実体化ではなく、精霊として出てきたようだ。

 

『あの子達は・・・・』

「フェイトさん、知っているんですか?」

『うん。以前ジェイル博士が世界規模のテロリスト行為の主犯格、って話をしたでしょ? あの子達はジェイル博士によって作られた戦闘機人で、ジェイル博士の下でテロを起こした犯人』

「な、なるほど。それまた物騒な・・・・。けど精霊が宿っている気配は見えませんね」

『私達が実体化できるから油断は出来ない。チンクやノーヴェも時期によっては荒れていた頃だから』

 

そのチンクさんやノーヴェさんの事は知らないけど、テロ行為を荒れていた、というフェイトさんは色々な意味で凄いと思う。

 

「しかしまたなんでこのタイミングで、その戦闘機人達をカード化したんでしょう?」

『分からない。仮にも優斗の父親だからあんまり疑いたくないけど・・・・』

「・・・・まっ、大丈夫と思いますよ。もし父さんが何か企んでいるとしたら、こんなに分かりやすい事しないと思います」

『うん、それもそうだね』

 

フェイトさんはそう言うと視線を俺からフィールドに戻す。隣には三沢がいるが、コイツは今目の前のデュエルに集中しており、俺の独り言(フェイトさんとの会話)など耳に入っていない。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

ジェイル モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

 

「へへっ、どんな効果を持っているのかワクワクするぜ! 俺のターン、ドロー! コンバート・コンタクトを発動。自分フィールド上にモンスターが存在しない時発動できる。手札とデッキから一枚ずつ墓地に送りシャッフル。その後二枚ドローする。俺は手札のグロー・モスとデッキのブラック・パンサーを墓地に送る」

 

自分フィールド上にモンスターが存在していたら発動できないが、中々優秀な手札交換カードだ。ネオスペーシアン専用とは言え手札交換+愚かな埋葬が扱える。序盤等には特に使えるだろう。

 

「融合発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合! 来い、マイフェイバリット、フレイム・ウィングマン!」

 

A2100・D1200

 

今日も例によって例の如く1ターン目からのフレイム・ウィングマン。確かに攻撃力2100という数値は1ターン目の様子見では丁度いい数値かもしれないが、それにしてもこの初手率は流石だ。

 

「バトル! フレイム・ウィングマンでウーノを攻撃!」

「この瞬間クアットロの効果が発動する。フィールド上のモンスターが攻撃対象となった時、墓地のモンスター一体を選択して特殊召喚する。そして攻撃してきたモンスターの攻撃対象は、特殊召喚したモンスターに移る。私が特殊召喚するのはガジェットドローンⅡ型」

『IS発動。シルバーカーテン』

 

ガジェットドローンⅡ型 ☆2/地/機械/A500・D500

 

クワットロと言う女の子がニコニコと不気味な笑みを浮かべながらパチンと指を鳴らすと、フレイム・ウィングマンの目の前に突如無数の小型戦闘機が現れた。突然現れた戦闘機の群にフレイム・ウィングマンは混乱するが、戦闘機の群の頭上に跳び、フレイム・シュートで戦闘機を全て焼き払った。

先程ソリッドビジョンが喋ったが、あれは精霊がいるいないは関係ない。

 

「フレイム・ウィングマンの効果で500のダメージを与える!」

 

ジェイルLP4000→3500

 

「けどこの瞬間、ガジェットドローンⅡ型の効果が発動する。このカードが戦闘で破壊され墓地に送られた場合、デッキからナンバーズと名のつくモンスター一体を手札に加える。私が手札に加えるのはディエチ」

『ディエチか・・・・。ジェイル博士はどんな効果にしたんだろう?』

「どんな方ですか?」

『優しい子だよ。色々あって誘拐されたヴィヴィオに気を使ってくれたり、ナカジマ家をサポートしたり。因みになのはと同じ砲撃型』

 

ナカジマ・・・・ってスバルの所か。その事についても色々聞いてみたいな。俺も向こうの話には興味があるし、聞いていて素直に楽しい。

 

「フレンドッグを召喚。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

A800・D1200

 

十代   モンスター2 伏せ1 手札1 LP4000

ジェイル モンスター2 伏せ1 手札4 LP3500

 

「ドロー。自分フィールド上にナンバーズが一体以上いる時、ディエチは特殊召喚できる」

 

ナンバーズ10-狙撃する砲手ディエチ ☆6/地/機械/A2500・D1000

 

青の巨大な狙撃砲を軽々と担いだ茶髪のログヘアーの少女。物静かな感じの少女で、少し風格がシュテルと似ているかもしれない。いや、シュテルはあれで案外子供っぽい所や、熱血な所があるから少し違うか?

 

「そしてチンクを通常召喚」

 

ナンバーズ5-刃舞う爆撃手チンク ☆5 / 炎 / 機械 / A1000・D1600

 

右目を眼帯で覆い隠した、銀髪の小柄な少女。番号が若い程稼働時間が長いと考えれば、ディエチと言う少女より年上と言う事になるが、外見だけで言うと10歳前後。しかし先程から出て来る少女達は皆、父さんが昔非人道的な研究によって作られた子なのか・・・・。上手く言葉にできないけど凄く複雑な心境だ。

 

「レベルが5なのに生贄無しで召喚?」

「ウーノの永続効果だよ。このカードがフィールドにいる限り、私の手札のナンバーズのレベルは一つ下がる。ではチンクの効果を発動するよ。デッキトップを5枚まで墓地に送る。相手のエンドフェイズ時まで送った枚数×400攻撃力を上げる。私はデッキトップを五枚墓地に送る」

 

チンクA1000→A3000

 

墓地アドで計算すると0:5効果。未来融合で因縁の相手F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)や、ヴァルバロイドを選択した時より強力だ。しかも攻撃力が1000だから奈落の落とし穴に引っ掛かる事も無い。その代わり効果を無効にされたら辛いが。

 

「バトル。チンクでフレイム・ウィングマンを攻撃」

『IS発動』

 

A3000 VS A2100

 

チンクは両手の指と指の間に、それぞれ三本ずつ金属で出来たナイフを持つと、フレイム・ウィングマンに向けて投擲した。投げたナイフはフレイム・ウィングマン本人に刺さる事は無く、その足元にタッと音を立てて突き刺さった。十代が何かカードを発動したのかと思ったが、そう言う訳では無く、次の瞬間チンクが口を開く。

 

『ランブルデトネイター』

 

その瞬間フレイム・ウィングマンの足元に刺さっていたナイフが激しく爆発した。フレイム・ウィングマンはその爆発に呑まれ破壊され、爆風が十代を襲う。

 

十代LP4000→3100

 

「くっ! フレイム・ウィングマン!」

「ディエチでフレンドッグを攻撃」

『IS発動。へヴィバレル』

 

A2500 VS D1200

 

ディエチは両手で抱えている巨大な狙撃砲の銃口に、薄いオレンジ色のエネルギー弾を溜める。発射されたディエチの砲撃は、なのはさんのエクセリオンバスターには敵わないが、それでも凄まじい威力を込めているのが目で分かる。実際フレンドッグをアッサリと破壊した。

 

「フレンドッグの効果発動。戦闘で破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地からE・HERO一枚と融合を手札に加える。俺はフェザーマンを手札に加える。更にその効果にチェーンしてヒーロー・シグナルを発動。デッキからバブルマンを特殊召喚。その効果でデッキから二枚ドローする」

 

A800・D1200

 

先程まで手札が一枚だったのに、あっという間に手札を五枚まで増やした。融合の弱点である激しい手札消費を様々なカードで補って、息切れしない様にしている。

それにクワットロもウーノもバブルマンの守備力を越える事が出来ない。

 

「やはり君は面白い。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

十代   モンスター1 伏せ0 手札5 LP3100

ジェイル モンスター4 伏せ2 手札2 LP3500

 

「サンキュー。けど俺の実力はこんなもんじゃないぜ。ドロー! 融合発動! 手札のフェザーマンとスパークマン、場のバブルマンを融合! 来い、E・HEROテンペスター!」

 

AD2800

 

コンタクト融合では無い、普通の融合では珍しい三体融合のE・HERO。正直フレイム・ウィングマン、サンダー・ジャイアントとかの方が強い気がするが、それは言ってはいけない。現に俺はこのカードに苦戦した事がある。

 

「カードガンナーを召喚。そして効果発動。デッキトップを三枚まで墓地に送り、墓地に送った枚数×500攻撃力をアップする」

「チンクに似た効果か」

「俺はデッキトップ三枚を墓地に送り、攻撃力を1500アップさせる」

 

カードガンナーAD400→A1900

 

「ミラクル・コンタクトを発動。手札、フィールド、墓地から融合素材をデッキに戻し、ネオスを融合素材とするE・HEROと名のつくモンスターを特殊召喚する。俺は墓地のネオス、グロー・モス、ブラック・パンサーをデッキに戻し、カオス・ネオスを特殊召喚!」

 

A3000・D2500

 

白銀の爪と装甲を付け、黒い翼を背中に生やした三体融合をしたネオス。二体でのコンタクト融合はまだネオスの面影があるが、三体融合になるともはや別のモンスターに変わっている。どちらかと言うとエドのD‐HEROに似ている。

それにしてもミラクル・コンタクトを使ったとはいえ、普通の融合より扱いにくいトリプルコンタクト融合を僅か二ターン目でやるとは。

 

「カオス・ネオスの効果発動。コイントスを三回行い、表が出た回数によって効果が変わる。コイントス!」

 

フィールドの真ん中に現れた巨大な三つのコインが、十代の合図と共にクルクルと回転しながら上空に跳んだ。回転しながら地面に落下したコインは、この戦況を大きく変える結果となった。

 

「表の数は二枚。よってこのターン相手フィールド上の表側モンスターの効果は無効化される」

 

チンクA3000→A1000

 

これでクアットロの蘇生効果は使えなず、チンクの攻撃力もダウンした。攻撃するなら今がチャンス。

 

「バトル! カードガンナーでクアットロを攻撃!」

 

A1900 VS D1600

 

カードガンナーの両腕から発射されたエネルギー砲に当たり、クワットロはバリーンと破壊された。フェイトさん曰く、こんな簡単な攻撃で逮捕出来たら苦労はしない、との事。まあこれはデュエルだから、結局は数値によって戦闘の勝ち負けが決まるからな。

 

「テンペスターでウーノを攻撃! カオス・テンペスト!」

 

A2800 VS D2000

 

「凄まじい猛攻だね」

「カオス・ネオスでチンクを攻撃! ライト・アンド・ダークスパイラル!」

 

A3000 VS A1000

 

カオス・ネオスは両手を自分の胸の前に持って来て、両手の中から白と黒、交互に光る謎の球体を作り出してチンクに放つ。ISというスキルが無効化されて本来の実力が発揮されないのに加え、相手はトリプルコンタクト融合をした最強のネオス。ナイフだけでは攻撃を止める事は出来ず、チンクは球体に呑まれて破壊された。

 

ジェイルLP3500→1500

 

「チンクが破壊された時、自分の墓地のカードを三枚まで選択し、デッキに戻す事が出来る。私は三枚デッキに戻す」

「ターンエンド。エンドフェイズカオス・ネオスは融合デッキに戻り、効果が発動する。フィールドの表側モンスターをセットする」

「私もこのカードを発動する。速攻魔法ドクターの作品。自分フィールド上のモンスターが破壊されたターンのエンドフェイズに発動する事ができる。ガジェットドローントークンを二体特殊召喚する」

 

A0・D0

 

十代   モンスター2 伏せ0 手札1 LP3100

ジェイル モンスター3 伏せ1 手札2 LP1500

 

父さんのフィールドに現れたのは、丸くて細長い形状のへんてこな機械の模造品。攻守0だからおそらく生贄要因として使うんだろう。

 

「ドロー。場のガジェットドローントークン二体を生贄に、トーレを召喚」

 

ナンバーズ3-音速の戦士長トーレ ☆7/風/機械/A2800・D2000

 

少し離れているから分からないが、おそらく女性の中でも高身長なマリアージュやシグナムさんより更に背の高い、紫色のショートカットの女性が立っていた。マリアージュより5㎝は大きいだろうから、俺より10㎝近く大きいと言う事だろう。ググッ・・・・最近背が伸びてないからな~。俺の身長がシグナムさんより数㎝大きいから、マリアージュやトーレの様な高身長の女性が羨ましい。

見ただけでもボーイフィッシュと言うか男性的なイメージを感じさせる女性で、そのキリッとした目はそんじょそこらの肉食系男子など目じゃない。男性より女性にモテそうだ。

 

「装備魔法インパルスブレードをトーレに装備。この効果でトーレの攻撃力は200上がる。更に戦闘で相手モンスターを破壊する度に、攻撃力が200ずつ上昇する」

 

トーレA2800→A3000

 

「ディエチを反転召喚。最もディエチは相手にダメージを与えられないんだけどね」

 

そりゃそうだ。攻撃力2500で異常なまでの緩い召喚条件だ。デメリットが無いと、いくら父さんだけのカードとしても強すぎる。

 

「バトル。トーレでセットしているテンペスターを攻撃」

『IS発動、ライドインパルス!』

 

A3000 VS D2800

 

トーレがISを発動した刹那、まだ表になっていないテンペスターのカードが真っ二つに破壊された。一瞬だけだが残像が見えたので、超スピードで移動して、手足に付いた紫色の羽でカードを切断したのだろう。

 

「へっ? テ、テンペスター!?」

『やっぱりトーレは速いね。もし味方だったら頼もしい限りなんだけど』

 

そう言うあなたはこのスピードの持ち主に勝ったんでしょう。

 

「インパルスブレードの効果で攻撃力が200アップ」

 

トーレA3000→A3200

 

「トーレは戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地に送った時、続けてモンスターに攻撃できる。カードガンナーを攻撃」

 

A3000 VS D400

 

先程と同じようにトーレは超高速で動いてカードガンナーが表になる前にカードを切断した。う~ん、情報がリークされているからこの演出が成り立つものの、リークされていないセットモンスターの時はどうするんだろう?

 

「攻撃力が更に200アップ」

 

トーレA3200→A3400

 

「破壊されたカードガンナーの効果。デッキから一枚ドローする」

「私はこれでターンエンド」

 

十代   モンスター0 伏せ0 手札2 LP3100

ジェイル モンスター2 伏せ1 手札1 LP1500

 

手札が二枚とは言え、父さんの場には連続攻撃が出来る3400のモンスター。生半可なモンスターを出してもすぐにやられてしまう。これは十代でも辛いな。

しかし十代には危機感が全くなく、目の前のトーレとディエチを見てワクワクしている。

 

「やっぱデュエルはこうでないとな、ドロー! グロー・モスを召喚」

 

A300・D900

 

先程カオス・ネオスの融合素材になったネオスペーシアン。相変わらずドロドロしており、よくそれで体が溶けないなと、どうでもいい感想が頭を過る。

 

NEX(ネオスペーシアンエクステント)を発動。グロー・モスを墓地へ送り、融合デッキからティンクル・モスを特殊召喚」

 

A500・D1100

 

この間も非常に苦しめられた十代の新たなドローブーストカード。このカードとスペーシア・ギフトのおかげで十代は今まで以上に手札消費を気にせずに融合やHERO達を使える訳だ。

 

「ティンクル・モスでディエチを攻撃。ティンクル・モスの攻撃宣言時俺はデッキから一枚ドローする。そしてドローするカードによって効果が変わる。ドローしたのはアルケミー・サイクル、罠カードだ。よって守備表示になる。カードを一枚伏せてターンエンド」

「ふむ、君にしては守りの手だね」

「いや~、流石に手札がねぇと厳しくてさ」

 

十代   モンスター1 伏せ1 手札1 LP3100

ジェイル モンスター2 伏せ1 手札1 LP1500

 

「私も余り手札が無いからね、気を付けないと。ドロー。ガジェットドローンⅠ型を攻撃表示で召喚」

 

ガジェットドローンⅠ型 ☆1/地/機械/A100・D100

 

先程トーレの生贄になったトークンと全く同じ形の機械。違う所は背中であろう部分から、うにょうにょと動く触手の様なアームを出していると言う事。こいつに負けたら色々な意味で危ない気がする。

 

「私も攻撃するしかない。バトル、トーレでティンクル・モスを攻撃」

「ティンクル・モスの効果。デッキから一枚ドロー。ドローしたカードはグラン・モール。モンスターだからバトルフェイズを終了する」

「やはり噂通り凄いドローだ。私は非科学的な物が大嫌いだが、そのドローは素直に凄いと思うよ。ターンエンド」

 

十代   モンスター1 伏せ1 手札2 LP3100

ジェイル モンスター3 伏せ1 手札1 LP1500

 

「俺には科学的とか非科学的とか良く分からないけど、信じればデッキは応えてくれる!」

 

それを非科学的と言うんだが、言ってる本人はその事に全く気付いていないようだ。父さんは十代の言葉に一瞬キョトンとしたが、すぐにニヤリと口元を上げる。

親子だから分かるけど、十代や三沢から見たら突然父さんが口元を上げた様にしか見えなかっただろう。

 

「ほう。では見せてくれ、君の非科学的なドローを」

「ああ! 俺のターン、ドロー! グラン・モールを召喚!」

 

A900・D300

 

「スペーシア・ギフトを発動。フィールドのネオスペーシアン一種類に付き一枚ドローする。ティンクル・モスはグロー・モスとしても扱う。よってフィールドにいるのは三種類、三枚ドロー!」

 

ここに来て三枚ドロー。しかし父さんは攻撃力100のガジェットドローンⅠ型を攻撃表示で出した。おそらくあのモンスターか、セットカードには何か秘密がある。

 

融合回収(フュージョン・リカバリー)を発動。墓地のスパークマンと融合を手札に加える。融合発動! 手札のスパークマンとネクロダークマンを融合! 来い、ダーク・ブライトマン!」

 

A2000・D1000

 

十代はこの方法でネクロダークマンを墓地に送るのが好きだよな。他にも色々と手段はある筈だが、無駄にこの戦法が多い気がする。いや、決して無駄じゃないが、ダーク・ブライトマンは三枚消費してまで出すモンスターでは無い気がする。

 

「バトル! グラン・モールでトーレに攻撃! ドリル・モール!」

 

A900 VS A3400

 

「ほう。攻撃力900で攻撃と言う事は、破壊・効果無効・バウンス等の効果を秘めているのかい?」

「流石遊斗の親父さん。グラン・モールの効果発動。ダメージ計算を行わず、戦闘を行う相手モンスターとこのモンスターを持ち主の手札に戻す」

 

グラン・モールは両肩のドリルパーツを合体させ、頭にかぶせるように変形させ、地面に潜り突撃する。素早いトーレの事なので普通なら対処できただろうが、突然自分の後ろに現れた次元の穴に吸い込まれてしまい手札に戻されてしまった。その次元の穴を掘ったグラン・モールも同じく次元の穴に吸い込まれ、十代の手札に戻る。

 

「ダーク・ブライトマンでガジェットドローンⅠ型を攻撃!」

 

A2000 VS A100

 

ダーク・ブライトマンが両手を上空に掲げると、突如天井から黒の雷がダーク・ブライトマンの両手に降り注いだ。その雷を手の平に収めたダーク・ブライトマンは、ガジェットⅠ型に向けて発射した。実際のガジェットドローンがどれだけの強さを持っていたかは知らないが、デュエルモンスターズでは攻守100の雑魚モンスター。アッサリとダーク・ブライトマンの黒い雷により破壊されてしまった。この攻撃が通れば十代の勝ちだが、父さんに襲い掛かる黒の雷は、黄色のバリアによって防がれた。

 

「ガード・ブロックを発動。戦闘ダメージを0にして一枚ドロー。更に戦闘破壊されたガジェットドローンⅠ型の効果が発動。デッキから一枚ドローする。そして攻撃表示のこのカードが戦闘で破壊された場合、デッキからレベル4以下のナンバーズを特殊召喚する。私はウェンディを特殊召喚」

 

ナンバーズ11-守護する滑空者ウェンディ ☆4/機械/風/A1700・D1700

 

赤い髪――いや、濃いピンクと言った方が良いだろうか? 赤の同系色の濃い髪を後ろで纏めた少女だった。精霊が宿っていない筈だが、雰囲気と表情で楽観的な性格と言うのが分かる。右手に持っているのは少し分厚い機械の板。おそらくあれが彼女の武器なのだろう。

 

「ティンクル・モスでディエチを攻撃。この瞬間効果で一枚ドローする。ドローしたカードはトゥルース・リインフォース、罠カードだ。よって守備表示になる」

 

リインフォースか。アインスやツヴァイには、祝福の風、と言う意味を込めてはやてがそう名付けたらしいが、このリインフォースは補強、増強すると言う意味だ。二人の名前が入っているカードなので、チラッと調べた事がある。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

十代   モンスター2 伏せ2 手札3 LP3100

ジェイル モンスター2 伏せ0 手札4 LP1000

 

十代がセットしているカードは十中八九あの二つのカード。父さんもそれは分かっている筈。さあ、どうやって攻める?

 

「ドロー。相手フィールド上にモンスターが存在し、墓地に四体以上のナンバーズが存在する時、手札のドゥーエは特殊召喚できる」

 

ナンバーズ2-幻影の暗殺者ドゥーエ ☆7/闇/機械/A2000・D2000

 

フェイトと同じ金髪のロングヘアーの女性だが、フェイトの様に明るくハッキリした色でなく、霞んで落ち着いた色。何やら凄い殺気を感じたが、その殺気もすぐに消えた。フェイトさんも殺気に感じた様で、ピクリと眉を動かした。

 

『あの子がシグナムが言っていた子だね』

「? フェイトさんは面識がないんですか?」

『うん。長期の独立行動をしていたみたいで、セイン――6番以下のナンバーズとは面識がないんだって』

「へ~」

「手札を一枚墓地に送りドゥーエの効果発動。墓地のモンスター一体を選択し、このターンのエンドフェイズ時まで選択したモンスターの同名カードとなり、同じ効果を得る。私はセッテを選択」

「ブラック・パンサーに似た効果か」

『IS発動。ライアーズ・マスク』

 

ドゥーエがISを発動した瞬間、ほんの0.数秒だけドゥーエの体が、バリアジャケットをセットアップする時の様に光に包まれ、光が収まると、そこにいたのは金髪の女性ドゥーエではなく、これまたトーレと同じくらいの高身長の薄いピンクの髪をした女性がいた。

 

「うおっ。やっぱり姿も変わるのか!」

「更に先程墓地に送られたガジェットドローンⅡ型改の効果が発動する。このカードがナンバーズと名のつくモンスターの効果によって手札から墓地に送られた時、デッキから一枚ドローする」

 

実質ノーコストで効果を発動したって事か。ドゥーエだけでなくウーノのコストにも出来るから相性はいいだろう。ただおそらくナンバーズは一枚ずつしか入っていないだろうから、態々二枚も三枚も入れるカードでは無い。父さんのデッキも俺や十代と同じハイランダーだろう。(カートリッジロードだけ三枚だが)

 

「オットーを召喚」

 

ナンバーズ8-閃光の術士オットー ☆3 / 光/ 機械 / A600・D1900

 

茶髪の短い髪をして顔立ちも中性的な人がいた。隣にいるフェイトさんに彼? 彼女? の性別を聞いたがフェイトさんも分からないと言う事。一応元犯罪者なら性別ぐらい分かるだろうけど、何故か謎に包まれたままらしい。

 

「バトル。ディエチでダーク・ブライトマンを攻撃」

「攻撃宣言時罠発動、トゥルース・リインフォース! デッキからレベル2以下の戦士族を特殊召喚する。来い、ヒーロー・キッズ!」

 

A300・D600

 

赤と白をベースにした宇宙服を着た小さな男の子。右手にはおもちゃの鉄砲を持っており、ステータス通り威力の無い鉄砲だ。

 

「ヒーロー・キッズが特殊召喚された時、デッキから同名カードを任意の枚数特殊召喚できる。二体のヒーロー・キッズをデッキから特殊召喚!」

「そうくるだろうね。バトルは続行。ディエチでダーク・ブライトマンを攻撃」

「もう一つの罠発動。アルケミー・サイクル! 発動ターンのエンドフェイズ時まで自分フィールド上のモンスター全ての元々の攻撃力を0にする。この効果で元々の攻撃力が0になっているモンスターが戦闘によって破壊され、墓地へ送られる度に、自分のデッキから一枚ドローする」

 

ダーク・ブライトマンA2000→A0

ティンクル・モスA500→A0

ヒーロー・キッズA300→A0

 

いくらドロー出来るとは言え、元々の攻撃力を0にし、なお且つ破壊されないと効果が発動できないので、決して優秀なカードとは言えない。だが現在の十代の場のモンスターは全て守備表示。なお且つ下級モンスターや戦闘で破壊されて効果が発動するモンスターがいる為、この状態ではかなり優秀なカードと言えよう。

 

『IS発動。へヴィバレル』

 

A2500 VS D1000

 

ディエチの持つ狙撃砲から発射されたオレンジ色のエネルギー砲。それは両手で防ごうとするダーク・ブライトマンの体ごと呑み込み、その凄まじい威力でダーク・ブライトマンを破壊した。

だが次の瞬間、ダーク・ブライトマンの怨霊の様な物がドゥーエの前に現れる。しかしオットーの手から放たれた光の嵐が、ダーク・ブライトマンの怨霊を無理やり成仏させる。

 

「なっ!? どうしてダーク・ブライトマンの効果が!?」

「オットーの効果。自分フィールド上のナンバーズが効果の対象になった時、このカードを生贄にする事でその効果を無効にする。更に墓地に送られたオットーの効果でデッキからディードを特殊召喚する」

 

ナンバーズ12-瞬殺の双剣士ディード ☆4/光/機械/A1700・D600

 

オットーの穴を埋める様に現れた、茶色の髪を下ロングヘアーの少女。先程のオットーと同じく無表情な子で両手に持った、刀身の無い双剣を無言で構える。

 

「ディードが召喚・特殊召喚に成功した時、このカードの攻撃力を800上げる」

 

ディードA1700→A2500

 

『無表情って事はやっぱり隔離施設の前かな?』

「へ~、じゃあ本当は表情豊かな人なんですか?」

『と言うより、素直に感情や表情を表に出せないんだ』

「セッテでティンクル・モスを攻撃」

「この瞬間、ティンクル・モスの効果でデッキから一枚ドロー。ドローしたカードはE-エマージェンシーコール。魔法だから攻撃は続行」

「セッテは守備モンスターを攻撃する時、ダメージ計算を行わずに破壊する」

 

A2000 VS D1100

 

なるほど、アルケミー・サイクルは戦闘で破壊されないとドローする事が出来ない。効果破壊する事で一枚ドローを阻止したのか。

セッテは自分の両手に刃が付いたブーメランを出現させ、ティンクル・モスに向かって投げる。グルグルと横に回りながらティンクル・モスに襲い掛かったブーメランは、ティンクル・モスの体を三つに分別した。

 

「今まで助かったぜ、ティンクル・モス」

「ウェンディとディードは攻撃しない。バトルフェイズ終了時、ディエチは守備表示になる。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

ヒーロー・キッズA0→A300

 

十代   モンスター3 伏せ0 手札5 LP3100

ジェイル モンスター4 伏せ1 手札1 LP1000

 

「ドロー! E-エマージェンシーコールを発動! デッキからネオスを手札に加える」

「この瞬間ウェンディの効果発動。魔法・罠カードが発動した時に、このカードをゲームから除外する事が出来る」

 

エスケープ効果を持ったモンスターか。いくら攻守1700のモンスターとは言え、その効果は非常に厄介だ。おそらくこのターンのエンドフェイズか次のスタンバイフェイズに戻ってくるだろう。

 

「二体のヒーロー・キッズを生贄に、ネオスを召喚!」

 

A2500・D2000

 

「さっきは墓地から融合素材になったから、こうやって直に見るのは初めてだ。これが君のエースカードと言う訳か」

「ああ。最高に強くてカッコイイんだぜ! 永続魔法魂の共有-コモンソウルを発動。フィールド上のモンスターを選択して発動。手札のネオスペーシアンを特殊召喚し、選択したモンスターのコントローラーのフィールド上へ特殊召喚する。選択したモンスターの攻撃力は、この効果で特殊召喚したネオスペーシアンの攻撃力分アップする。まっ、今回はコンタクト融合だから意味無いんだけどな。来い、グラン・モール!」

 

A900・D300

ネオスA2500→A3400

 

なるほど、あの融合を使うのか。そのモグラの効果を引き継いだだけあり、あのコンタクト融合のネオスもかなり強いんだよな。

 

「行くぜ! 場のネオスとグラン・モールをコンタクト融合! 来い、グラン・ネオス!」

 

A2500・D2000

 

ネオスとグラン・モールが上空に現れた宇宙の渦の中に入ると、眩い光がフィールドを覆う。その眩しさに一瞬だけ目を閉じ、再び瞼を開けると、コンタクト融合をしたネオスがそこにいた。右手には巨大なドリルを持ち、左手はモグラの手を巨大化した様な、鋭く太い爪が付いている。体には地面を現す茶色い装甲の様な物を付けている。

 

「グラン・ネオスの効果発動。一ターンに一度、相手フィールド上のモンスターを手札に戻す! 俺が選択するのはディード。ネビュラスホール!」

 

グラン・ネオスは右手のドリルを回転させると、何もない空間に向けそのドリルを突き刺した。何も無かったその空間には突如宇宙空間の様な黒い空間が現れ、それはディードの後方にも出現する。先程のグラン・モールと同じく、ディードはその黒い空間に吸い込まれ、手札に戻された。

 

「装備魔法インスタント・ネオスペースを発動。これでグラン・ネオスはエンドフェイズに融合デッキに戻らなくてもいい。バトル! グラン・ネオスでドゥーエを攻撃!」

「罠発動。シフトチェンジ。モンスターが攻撃対象になった時発動できる。その攻撃対象を自分フィールド上に存在する他のモンスターに変更する。攻撃対象をディエチに変更」

 

A2500 VS D1000

 

グラン・ネオスは再び右手のドリルを回転させ、ディエチの体に突き刺した。勿論例によって例の如く人型のモンスターがグロい死に方をする訳にもいかないので、バリーンと破壊される演出だ。

 

「ちぇっ、倒せなかったか。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

十代   モンスター2 伏せ2 手札1 LP3100

ジェイル モンスター1 伏せ0 手札2 LP1000 

 

「ドロー。スタンバイフェイズにウェンディが帰ってくる」

 

AD1700

 

「貪欲な壺を発動。墓地のチンク、ガジェットⅡ型改、オットー、クアットロ、ディエチをデッキに戻して二枚ドロー。フィールド魔法ドクターSの研究所を発動」

 

父さんがフィールド魔法ゾーンにカードをセットした途端、教室だったこの空間は不気味なラボに変わった。洞窟の中を研究所にしているのか、天井には地面が見える。ここら一帯薄い緑色の明かりに照らされており、その光源はコポコポと泡を出す不気味な液体が入った生体ポット。

チラリと隣にいるフェイトさんを見ると、普段の優しい彼女からは考えられないほど怒りの表情をしている。それでも美人なのは、流石フェイトさんである。

 

「へ~、なんか悪の親玉が居そうな場所だな」

「クックック、悪の親玉か。確かにそうかもしれないな」

 

確かに、ではなく間違いなくそうだ。ドクターSのSってスカリエッティだろ。

 

「ディードを召喚。そして召喚時に発動するディードの効果にチェーンしてフィールド魔法ドクターSの研究所の効果発動。ナンバーズと名のつくモンスターを召喚した時、手札からナンバーズと名のつくモンスターを特殊召喚できる。トーレを特殊召喚」

 

A2800・D2000

ディードA1700→A2500

 

わお、最上級モンスターも特殊召喚できるって凄いな。最上級モンスターが少ないナンバーズだから許されるようなものの、天使やドラゴン族にそんなカードが出たら、最低でも制限は掛かるだろう。

 

「ドゥーエの効果発動。手札一枚を墓地に送り君の墓地のティンクル・モスの効果を得る」

『・・・・IS発動。ライアーズ・マスク』

 

やっぱり精霊が宿っているのか、ドゥーエは非常に嫌そうな声でISを発動した。グロー・モスじゃないだけましかもしれないが、ティンクル・モスも嫌だろう。

 

「そしてコストにしたガジェットⅡ型改の効果でデッキから一枚ドロー。ウェンディの効果発動。一ターンに一度、このカードの攻守どちらかを500上げる。攻撃力を500アップ」

 

ウェンディA1700→A2200

 

「バトルだ。トーレでグラン・ネオスを攻撃」

「これ通したらヤバイな。罠発動、キッズ・ガード! ヒーロー・キッズを生贄にして発動。攻撃を無効にしてデッキからE・HEROを一体手札に加える。エッジマンを手札に」

「ならばディエチでグラン・ネオスに攻撃する」

『IS発動。ツインブレイズ』

 

A2500 VS A2500

 

ディードの声と共に、刃の無い双剣から赤く光る刀身が現れた。どうやら自分のエネルギーを刀身として出しているのだろう。

グラン・ネオスは接近してくるディードに向かい回転するドリルを打つ。ディードはそのドリルを双剣をクロスにして正面で受け、グラン・ネオスと打ち合う。数秒間二人は対峙していたが、ディードが打ち合いを止めて懐に入りこみ、グラン・ネオスを切断。だがその間にグラン・ネオスも左手の巨大な爪でディードを引き裂いており、二人は同時にバリーンと破壊された。

 

「グラン・ネオスは破壊されてしまったけど、インスタント・ネオスペースの効果発動。装備モンスターがフィールドを離れた場合、手札・デッキ・墓地からネオスを特殊召喚する」

「だがディードの効果も発動する。このカードが墓地に送られた場合、手札または墓地からオットーを特殊召喚する」

 

A2500・D2000

A600・D1700

 

「ネオスを残してしまったか。ティンクル・モスでネオスを攻撃。攻撃宣言時デッキから一枚ドローする。ドローしたカードはバージョンアップグレード、魔法カード。よってダイレクトアタック」

 

A2000

 

「ぐうっ。攻撃力2000のダイレクトアタッカーか」

 

十代LP3100→1100

 

ティンクル・モスはステータスが低く召喚条件が難しいからバランスが取れているカードだが、ドゥーエの効果でコピーすれば、低ステータスと言う大きな弱点が無くなり、かなり凶悪なカードになる。

 

「ターンエンド」

 

ウェンディA2200→A1700

 

場 ドクターSの研究所

十代   モンスター1 伏せ1 手札2 LP1100

ジェイル モンスター3 伏せ0 手札2 LP1000

 

「やっぱ遊斗の親父ってだけあって滅茶苦茶強いな」

「君もペガサス会長に認められただけあり、実に興味深いよ」

「へへっ。じゃあ行くぜ、ドロー! 墓地のネクロダークマンの効果発動。E・HEROを生贄無しで召喚できる。来い、エッジマン」

 

A2600・D1800

 

最近ネオスの所為で出番が少なくなった気がする最上級E・HERO。

 

「この瞬間ウェンディの効果発動。モンスター効果が発動されたので、このカードをゲームから除外する事が出来る」

「やっぱりモンスターでも逃げれるのか。けどドゥーエは倒せる! バトル、エッジマンでドゥーエを攻撃! エッジハンマー!」

 

A2600 VS A2000

ジェイルLP1000→400

 

エッジマンはドゥーエの上空に跳び、右手に付いた鎌でドゥーエを斬り裂いた。これで強力な効果を持ったドゥーエを破壊した。だが父さんの場には連続攻撃が出来るトーレがいる。次のターンウェンディが戻ってくるのは確定しているので、守る手段がないと十代は負ける。

 

「ネオスを守備に変更。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 ドクターSの研究所

十代   モンスター2 伏せ2 手札1 LP1100

ジェイル モンスター1 伏せ0 手札1 LP400

 

「ドロー。スタンバイフェイズウェンディが戻ってくる」

 

AD1700

 

このままバトルフェイズに入れば、トーレの連続攻撃で二体のHEROは破壊され、ウェンディのダイレクトアタックで蹴りはつく。だがあの十代がそう簡単に攻撃を通してくれるとは思わない。

 

「ウェンディの効果。攻撃力を500上げる」

 

ウェンディA1700→A2200

 

「バージョンアップグレードを発動。自分フィールド上のナンバーズを選択して発動する。選択したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時まで攻撃力が500アップし、相手のカードの効果の対象にならない。トーレの攻撃力を上げる」

 

トーレA2800→A3300

 

なるほど。仮にあのセットカードがヒーローバリアの様なカードでも、対象に取れなければ攻撃を防ぐ事が出来ない。

 

「バトル。トーレでネオスを攻撃」

『IS発動。ライドインパルス!』

 

A3300 VS D2000

 

再び超高速でネオスに突進し、両手両足に付けた紫色に光る羽の様な刃で、ネオスの体を斬り裂いた。

 

「戦闘で相手モンスターを破壊したので続けて攻撃できる。エッジマンを攻撃」

 

A3300 VS A2600

 

速さに乗ったトーレは先程よりも威力が乗った紫色の刃でエッジマンに向かう。エッジマンは最上級HEROだけありトーレの速さに僅かだが付いて行く事ができ、右手の鎌でトーレと相撃とうとするが、速さが乗ったトーレの刃を片手で止める事は出来ず、鎌ごと紫の刃の餌食となった。

 

十代LP1100→200

 

「ッツ、ネオスに続いてエッジマンまで」

「何もないならコレで終わりだ。ウェンディで攻撃」

「速攻魔法クリボーを呼ぶ笛を発動! デッキからハネクリボーを特殊召喚する!」

 

A300・D200

 

十代の伏せはクリボーを呼ぶ笛だったか。クリクリ~と鳴く毛むくじゃらの丸い妖精は、可愛いものが大好きな女性に大人気だ。よく精霊達(みんな)もハネクリボーを抱っこしてモフモフしている。

 

「ふむ、ではウェンディでハネクリボーを攻撃」

『エリアルショット!』

 

A2200 VS D200

 

「あれ? IS発動って言わないんですね」

『ウェンディのISは既に発動してるよ。エリアルレイヴ。あの右手で持っているライディングボードを盾の様に使ったり、浮遊させて高速飛行したり、砲撃したり出来るんだ。ほら、除外する時もサーフィンみたいに乗って移動してたでしょ?』

「なるほど。だからですか」

 

なんて呑気に会話している間にもハネクリボーは破壊された。これでハネクリボーの効果が発動されるが、もう父さんの場には攻撃モンスターがいないので、効果は無意味となった。追撃できる速攻魔法を持っていたら話は別だが。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

トーレA3300→A2800

 

場 ドクターSの研究所

十代   モンスター0 伏せ1 手札1 LP200

ジェイル モンスター2 伏せ1 手札0 LP400

 

さて、十代はこの状況をどうやって突破する? コンタクト融合を使うか、それとも普通の融合を使うか。

 

「多分これがラストターンになると思うぜ」

「クックック、私が勝てる事を祈るよ」

「行くぞ! 俺のターン、ドロー! 来たぜ、隼人から貰ったカード。フィールド魔法、魔天楼2-ヒーローシティを発動!」

 

フィールド魔法の入れ代わりによるソリッドビジョンの対応は流石と言え、先程まで薄い緑の光によって包まれた不気味な研究所はバリンと鏡の様に割れ、今度は巨大なビルが立ち並ぶ近未来都市の真ん中に俺達はいた。ミッドチルダに雰囲気は似ているが、ビルの天辺にはドーナツ状やドーム状の屋根が付いており、こちらは近未来都市、と言うよりもSF映画に出て来る街と言った方がいいかもしれない。

 

「ヒーローシティの効果発動! 一ターンに一度、メインフェイズ時に戦闘で破壊されたE・HEROを墓地から特殊召喚できる。俺が選択するのはグラン・ネオス!」

 

A2500・D2000

 

そうか! コンタクト融合体は蘇生条件が無い。あの時破壊されたグラン・ネオスがこんな所で生きるとは思わなかった。攻撃力2800のトーレもバウンスには弱い。しかし思い出すと、グラン・モールと言いトーレはよくバウンスされるな。

 

「そのモンスターか」

「ああ、グラン・モールの効果発動! トーレを手札に戻す! ネビュラスホール!」

 

グラン・ネオスは何もない空間にドリルを突き刺し、再び黒い宇宙空間の様な穴を作る。その穴は例の如くトーレの背後にも現れ、トーレはまた手札に戻されてしまった。

 

「エアーマンを召喚! エアーマンの効果でこのカード以外のフィールドのHEROだけ魔法・罠を破壊する! そのセットカードを破壊だ!」

 

A1800・D300

 

エアーマンは両肩に付けた扇風機の様な物から竜巻を発生させ、父さんのフィールドにセットされたミラーフォースを破壊した。普通なら初手に出してひたすら使い回すべきエアーマンだが、最後の最後にちょっとだけ出すのが十代らしい。

 

「バトル! グラン・モールでウェンディを攻撃! 」

 

A2500 VS A1700

 

先程まで右手のドリルで戦っていたグラン・モールだが、最後は左腕の巨大な黒い手の平から茶色く光るエネルギーらしき物を発射した。なのはさんの砲撃の様にドでかくは無く、巨大なエネルギーを小さく圧縮している様で、ウェンディの持つライディングボードに穴を開け、そのままウェンディの体を貫通すると、最後に父さんに当たり、茶色いエネルギーは消えた。

 

ジェイルLP400→-400

 

「へへっ、ガッチャ。楽しいデュエルだったぜ!」

「クックック、私もだよ。もし良かったらまたデュエルをしよう」

「おう!」

 

本当に楽しんでいたか俄かに信じ堅いが、お互い笑っているからまあいいとしよう。父さんもいつものロックデッキやバーンデッキより強かった気がする。やはり前の世界の仲間のカードを使ったから自然とデッキを信じ、それにデッキが応えてくれたのだろう。

二人はギュッと握手し合い、先程のデュエルについて語り出した。ブツブツと不気味に呟いていた三沢もデュエルが終りようやく正気に戻ったのか、二人の会話に入り出した。

 

「さて、十代。俺に何か話す事は無いか?」

「え? ああ、いいデュエルだっただろ?」

「ああ! ・・・・って違う! 馬鹿野郎! お前単位がギリギリってどういう事だ!? あれ程出ろって言っただろ!」

「いっ!? いや、これには深い事情が「正座!」はい・・・・」

 

それから万丈目と翔も呼び出し、三人をフローリングの上で正座させて小一時間ほど説教した。どうやら話を聞くに、サボっていたのは十代だけでは無く翔と万丈目も同じようにサボっていたらしく、各担当の先生の元に連れて行って、単位を貰えるよう頼みに言った。先生達は皆一様に「明日までにはやってきなさい」と言って大量のプリントを三人に渡した。

いくら言い出しっぺの俺でも、そのプリントの量は尋常じゃなかったので、その日は徹夜でプリントを片付けるのを手伝った。

そして後日、謹慎処分を受けている三沢から聞いた話だが。

 

「あの、ジェイル・スカリエッティ博士! LSはあなたが考えたのでしょうか?」

「そうだが」

「融合モンスターのレベルが、融合素材モンスターの合計レベルに等しいのは何か理由があるからでしょうか!?」

「ほう。君、名前は?」

「三沢大地と言います!」

「覚えておくよ」

 

どうやら父さんが考えていた、次世代の召喚方法の重要な部分に気付いたらしく、三沢は父さんに名前を覚えてもらえたらしい。その嬉しさの余り、ホワイト寮の事などどうでもよくなったのか、ホワイトの制服を脱ぎ棄て全裸で校内を走り回るという事件が起こった。

謹慎の理由はこれだ。

 

 

 




紹介するオリカが多いので手短に伝えたいと思います。
一つはナンバーズが精霊か精霊じゃないか。これはストーリー上どちらでも構いません。フェイトさんの解説に加え、攻撃以外の精霊の台詞を入れると文字数が多くなるので、今回は謎にしました。
ナンバーズも精霊がいい。と言う方が多くいらっしゃれば精霊にし、特に無ければ普通のカードにします。(普通のカードの場合は理由を付けます)
もう一度言いますが、ストーリー上どちらでも構いません。精霊にしたからと言ってスカさんのデュエルが増える訳ではありません。



二つ目。オリカの量が多いので、二期の終わりにナンバーズのオリカを纏めようと思います。ですので今回はモンスターだけ効果を乗せます。



ナンバーズ1‐不可蝕の秘書ウーノ ☆4/光/機械/A0・D2000
このカードがフィールド上に存在する限り、自分の手札の「ナンバーズ」と名のつくモンスターのレベルは1つ下がる。
1ターンに1度、手札から機械族モンスターを墓地に捨てる事で、デッキからレベル4以下の「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、そのターン攻撃できない。


ナンバーズ2-幻影の暗殺者ドゥーエ ☆7/闇/機械/A2000・D2000
このカードは通常召喚できない。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分の墓地に「ナンバーズ」と名のつく機械族のモンスターが4体以上存在する時、特殊召喚することができる。
1ターンに1度、手札を1枚墓地に送り発動する。フィールド上または墓地に存在するモンスター1体を選択し、このターンのエンドフェイズまで選択したモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。


ナンバーズ3-音速の戦士長トーレ ☆7/風/機械/A2800・D2000
このカードが相手モンスターを戦闘で破壊したとき、もう一度モンスターに攻撃することができる。
この効果は1ターンに2回まで発動できる。



ナンバーズ4-幻惑の使い手クワットロ ☆3/地/機械/A1000・D1600
自分フィールド上のモンスターが相手モンスターの攻撃対象になった時、自分の墓地から「ナンバーズ」または「ガジェットドローン」と名のつく機械族モンスター1体を選択して、自分フィールド上に特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに移し替える。
特殊召喚されたモンスターは、特殊召喚されたバトルフェイズ終了時に破壊される。
この効果は1ターンに1度しか発動できない。

ナンバーズ5-刃舞う爆撃手チンク ☆5 / 炎 / 機械 /1000・D1600
1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを5枚まで墓地へ送って発動する。
このカードの攻撃力は相手のエンドフェイズ時まで、墓地へ送ったカードの枚数×400ポイントアップする。
このカードが破壊された時、墓地からカードを3枚まで自分のデッキに戻すことができる。

ナンバーズ6-潜行する密偵セイン ☆3/水/機械/A600・D1700
このカードが召喚に成功したとき、相手の手札をランダムに1枚墓地へ送る。そのカードの種類により、このカードは以下の効果を得る。
●モンスター:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度だけ、相手モンスター1体の攻撃を無効にする事ができる。
●魔法:自分のデッキからカードを1枚ドローした後、手札を1枚デッキに戻す。
●罠:自分フィールド上の「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターはこのターン直接攻撃する事ができる。


ナンバーズ7-空の殲滅者セッテ ☆4/機械/闇/A1800 D1400
このカードが守備表示モンスターと戦闘するとき、ダメージ計算を行わずそのカードを破壊する。
このカードが破壊された時、このカード以外の墓地に存在する「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を手札に加える。


ナンバーズ8-閃光の術士オットー ☆3 /光/機械 /A600・D1900
自分フィールド上に表側表示で存在する「ナンバーズ」と名のつくモンスターが相手の魔法・罠カードの効果の対象になった時、このカードを生贄にする事でその効果を無効にする。
このカードが墓地に送られた場合、デッキ・手札から「ナンバーズ12-ディード」を特殊召喚することができる。


ナンバーズ9-破壊する突撃者ノーヴェ ☆4/風/機械/A1900・D1500
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して破壊する。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。


ナンバーズ10-狙撃する砲手ディエチ ☆6/地/機械/A2500・D1000
自分フィールド上に「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスターが1体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したターン、このカードが戦闘によって相手に与えるダメージは0になる。
このカードは攻撃したバトルフェイズ終了時に守備表示になる。


ナンバーズ11-守護する滑空者ウェンディ ☆4/機械/風/A1700・D1700
1ターンに1度、攻撃力か守備力のどちらかを次の相手のターンのエンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
このカード以外の魔法・罠・効果モンスターの効果が発動したとき、自分フィールド上のこのカードをゲームから除外できる。この効果は相手のターンでも発動できる。この効果で除外したこのカードは次のスタンバイフェイズ時にフィールド上に戻る。


ナンバーズ12-瞬殺の双剣士ディード ☆4/光/機械/A1700・D600
このカードが召喚・特殊召喚に成功したとき、このカードの攻撃力を800ポイントアップする。このカードが戦闘を行ったターンのエンドフェイズ時、このカードの攻撃力は500ポイントダウンする。このカードが墓地に送られた場合、手札または墓地から「ナンバーズ8-オットー」を特殊召喚できる。


ガジェットドローンⅠ型 ☆1/地/機械/A100・D100
このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。攻撃表示のこのカードが破壊された場合、デッキからレベル4以下の「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。


ガジェットドローンⅡ型 ☆2/地/機械/A500・D500
このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、自分はデッキから「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を手札に加える。


ガジェットドローンⅡ型改 ☆2/地/機械/A500・D500
「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスターの効果で、このカードが手札から墓地に送られた場合、デッキからカードを1枚ドローする。






とりあえずモンスターだけ書きました。ガジェットドローンは完全にサポートになっております。
所々変更したり、付け加えたところがあります。



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第四十一話

いよいよ二期も終わりが近くなってきました(作者の近いは本当に近いです)


そこで今さらですが、一つ謝罪があります。それはですね、毎回毎回誤字や脱字が多くて申し訳ありません。書き上げた後、その場のテンションで投稿しない様にストック形式でやり、見直しも何回もやっているのですが、一向に誤字脱字が減らない。それどころか前回はグラン・ネオスをグラン・モールとか言ったり、カード名まで間違える始末。

まあ何が言いたいかといいますと、誤字脱字報告助かります。ここまでお世話になっているからには頑張って完結させます。それ以前に誤字脱字が少なくなるようにより一層気を付けます。


最近前書きが謝罪場になっている気がします。




GX大会もいよいよ大詰めになってきたのか、現在GXメダルを持った生徒はほとんどいなかった。俺が知る限りでは現在GXメダルを持っているのは十代と万丈目と亮さんの三人だけ。十代に負けた万丈目だが、あの時はGX大会と言うよりも、万丈目を正気に戻すのが目的だったので、GXメダルは貰わなかったそうだ。悪く言うと十代が情けを掛けたとも言う。

俺はその、情けを掛けた本人の部屋に遊びに来ていた。理由は単純、暇だからだ。GX大会と言うのは良くも悪くも強い者しか生き残れない大会だ。敗者はデュエルを見学するか、生き残りの生徒の取り巻きになるか、こうやってのんびりと遊ぶか、自主勉強をするかの四つだ。

 

「ふぁ~あ。暇だな~」

「あとカイザーと万丈目だけか。身内ばっかりだな」

「なあ十代。ちょっと考えたんだが、お前のデッキに終末の騎士とダーク・シムルグを入れるのはどうだろう? 終末の騎士でクロス・ポーターを墓地に送ってデッキからエア・ハミングバードを手札に加えたら素早く闇と風が集まるし」

「なんだよ急に。まあ確かに相性はいいけど」

「暇だ・・・・」

「ああ・・・・」

 

勝者である十代でさえ暇なこの大会。最初はいいけど参加者が少なくなっていくと今一盛り上がりに欠ける。まあ万丈目は天狗になるタイプだから、自然と万丈目の周りの生徒達は万丈目を担いでお祭り騒ぎだろうけど、十代はデュエル出来ればそれでいい、ってタイプだからな。

二人でダラダラと床の上でデュエルをしていると、扉がコンコンとノックされた。

 

「誰だ?」

 

立ち上がった十代がドアを開けると、そこには見覚えのある一人の女性がいた。はて、どこで彼女を見たんだっけ?

 

「えっと、どちら様?」

「初めまして。私はオージーン王子の秘書、リンドと申します。以前少しお会いになりましたが、あの時はご挨拶出来ず申し訳ありません」

「へ? ああ! あの時の」

「はい。今日は遊城十代様にお願いがありやってきました・・・・が、どうやら遊斗・スカリエッティ様もいらっしゃる様ですね」

「あっ、邪魔なら部屋から出て行きますが」

「いえ、むしろあなた様がいてくれた事は好都合です」

 

十代の案内で(玄関で靴を脱いだらすぐの場所だが)上がって来たリンドさんは、ご丁寧に正座をして畳の上に座った。何となく俺も正座をしなければいけない雰囲気だったが、隣にいる十代はあぐらを掻いているので、俺も楽な姿勢で座った。

リンドさんは右手に持っていたケースをスッと俺達の前に出し、そのケースの蓋を開く。ケースの中には黒いクッションが詰め込まれており、二つの鍵の様な物が大切に保管されていた。

 

「これは?」

「お二人ともニュースや新聞はご覧になりますか?」

「まあ偶に。ただ隣の馬鹿は見てないのでよろしければ説明していただくと」

「お、俺だってニュースぐらい見るぜ「デュエルだけな」うっ・・・・」

 

俺達の会話にリンドさんは一瞬クスッと笑うが、すぐに真面目な表情に戻す。

 

「オージーン王子が収める国、ミズガルズ王国では世界を滅ぼしかねないレーザー衛星、ソーラを所持しています」

「ええ!? なんでそんな危ない物を!?」

「ほ、本当にご存じないのですね・・・・」

「ネットやテレビは見るんですが、デュエルだったりスポーツだったりで」

 

ハァとため息を吐くと、十代は「アハハ・・・・」と乾いた笑い声を上げる。

 

「様々な国から非難されているソーラですが、本当は今後地球に降り注ぐかもしれない隕石の除去の為に作られたものです。勿論この事は何度も言っているのですが、中々信用されません」

「地球を破壊できる物を作った時点で非難されるでしょうね」

「ええ、この問題は長い時間を掛けて解消して行きたいと思います。ですが今は国同士の問題など微々たるものです。今このデュエルアカデミア、いえ、世界は滅亡の危機を迎えています!」

「「・・・・えええええ!?」」

 

何々!? 何で世界が滅亡するの!? 急な事実で頭がパニックになって中々思考が纏まらない。最初は冗談かと思ったけど、リンドさんの表情は本気だ。

俺達は五秒間ぐらいひたすら、え、と叫び、ようやく少し落ち着く事が出来た。

 

「じゃ、じゃあまさかその鍵みたいな物は・・・・」

「はい。これはレーザー衛星ソーラを作動させる鍵です。これは操られたオージーン王子が斎王に渡した物だったのですが、隙を見て奪ってきました。おそらく斎王は鍵が無い事に気付き、私を探している頃だと思います」

 

さ、さっきまで暇でダラダラとしていて、GX大会と言う名のお祭りの事を話していたのに、いきなり世界の命運を別けた話に巻き込まれるとは。

 

「この鍵を守る事が出来るのは、あなた達二人と、斎王を導く事が出来るエド・フェニックスだけです」

「エドも? けどこの鍵を収める場所、二つしかないぞ?」

「あなた達三人に渡す三つの内二つは本物です。一つだけダミー。どれが本物かはあなた達にお教えする事は出来ません。これも安全の為ですので」

 

ダミーの鍵と聞くと七精門の鍵を思い出すな。そう言えばあの時も世界の命運が鍵によって左右されていたっけ? しかし前回は人命の危機は無かったけれど、今回は人類が生き残るか死ぬかの話。

 

「はぁ・・・・しかしなんでまた俺達に? 十代は強いですけど、俺より亮さんの方が強いですよ?」

「いくら外交関係が良くないとはいえ、私達は一国のトップです。あなたがこの島に眠っている三幻魔のカードの力を持っている事くらいお見通しです」

「ど、どこから情報が漏れたんだ・・・・。あっ、あともう一つ。何故斎王は今までソーラを発射しなかったんですか? 斎王がオージーン王子を支配下に置いたのはGX大会初日の筈」

「地球を滅ぼすレベルのエネルギーを数日程度で溜める事は出来ません。しかも斎王は時々意味不明な事を言い、何故か地球滅亡を阻止する様な事を言いだしたりもします」

 

そうか。リンドさんは破滅の光の事を知らないのか。

おそらく斎王は、まだ破滅の光に完全に乗っ取られた訳ではないのだ。本来の斎王琢磨としての意識が、破滅の光の野望を阻止しようとしているんだろう。

 

「とにかくこの鍵を斎王の手に渡らない様にすればいいんだな?」

「はい。もうあなた達に頼る他ありません」

 

土下座をして頭を下げるリンドさんを見ると、俺達も断る事が出来ない。俺と十代は顔を見合わせ、コクンと頷くと、それぞれ一つずつ鍵を手に取った。俺達の行動にリンドさんは顔を上げ、もう一度ペコリと頭を下げた。

すると突然部屋のドアがドンドン! と激しく叩かれた。

 

「だれん~~っ!?」

「静かにしろ、十代。こいつは招かれざる客って奴だ」

 

十代の口を封じた時には、ドンドンと叩かれていたドアは、ドガンドガンと蹴られており、木でできた木製のドアは早くもミシミシと限界の音を立てていた。

 

「十代、リンドさん、ベランダから飛び降りるぞ。そこまで高くない」

「おう」

「え、私はとても・・・・」

 

なんて言っている間に十代は俺達三人の靴を持って来て床に置く。俺は自分の靴を雑に履き、リンドさんの靴を人差し指と中指だけで持つと、リンドさんの体を抱き抱えた。十代はガラガラと窓を開け、窓から飛び降り、俺もそれに続き窓から飛び降りた。

細身の女性と言えどやはり人間。かなりの衝撃が足腰を襲ったが、普段鍛えているのでちょっと痛い程度だった。地面に着地した刹那、さっきまでいた部屋からドガン! と一際大きな音が鳴った。

 

「いないぞ!」

「馬鹿な!? どこに行った!?」

「窓が空いている! まさか跳び下りたのか!?」

「走るぞ十代」

「了解」

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ここまで来れば大丈夫だろう」

「あ、ああ・・・・。け、結構走ったな」

「お、お二人とも素晴らしい身体能力ですね」

 

リンドさんだけ息が上がっていないのは、俺がずっと抱き抱えていたから。リンドさんは、自分も鍛えているから大丈夫、と言っていたがヒールで走るのは辛いだろうし、半強制的に抱き抱えて走った。

 

「ゆ、遊斗。精霊達を使えばあんな奴等」

「いや、あいつ等も操られているだけだし、手荒なまねはしたくない。それに極力精霊の姿は見られない方がいい。可能な限り手札を見せたくないからな」

「け、けど次来たら頼むぜ。俺の場合戦える精霊はネオスしかいないけど、お前は沢山いるんだから」

「わ、分かってるよ。そのつもりだ・・・・」

 

と言っても、ここはデュエルアカデミアでも迷いやすいと言われる森の中だからそう簡単に見つからないだろう。俺と十代はネオスペーシアンを見つける時のサバイバルでこの島の事を知り尽くしているので、滅多な事では迷ったりしない。ただこのデュエルアカデミアは三幻魔と言い謎が多いので、知り尽くしたと言うのは大げさかもしれない。

 

「鍵を手に入れるとか言っときながら逃げられるとは」

「ッツ!? 誰だ!?」

 

突然深い森の奥から男の声が聞こえたので、俺達はそちらを振り向く。ベヒーモスやバルバロスの時の様に急に襲ってくるかもしれないので、ポケットに手を入れて中にあるカードを人差し指と中指で掴むと同時に、なのはさんとフェイトさんも精霊状態でデッキから出てきた。フェイトさんは俺を、なのはさんは十代とリンドさんを守る様に移動し、声がした方を睨みつける。

ザッ、ザッ、と草を踏む足音と共に俺達の前に現れたのは、黒い髭を顔いっぱいに生やした男だった。だがこれは仮初の姿の筈。コイツからは精霊の気配が感じられる。

 

「誰だお前?」

「俺は悪魔族の王のトラゴエディア。遊斗・スカリエッティにデュエルを挑みに来た」

「悪魔族の王? 遊斗、どういう事だ?」

「・・・・説明は終わってからにする。十代、お前はリンドさんを連れてここから逃げろ」

 

十代の方を見ずにそう言うと、十代は察してくれたのか、それとも俺の気迫に押されてか「分かった」と言ってリンドさんの手を引っ張りここから去って行った。トラゴエディアもなのはさんが二人を守っているので、追撃するのは不可能と判断したのか、逃げる二人に攻撃する気配を見せなかった。

 

「今さら悪魔族の王か」

「俺は捨て駒だ。だが俺も出来れば生きたいからな。貴様を殺す覚悟でデュエルを挑む」

「その意気込み嫌いじゃない。これ以上の会話は不要だ。行くぞ」

「「デュエル!」」

「先攻は俺だ。ドロー! クリッターを召喚」

 

A1000・D600

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

エディア モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

クリッターを表側表示で出したか。普通戦闘破壊して効果を発動するカード、つまりリクルーターやクリッターの様なサーチカードは、裏側で出した方が相手に攻撃をさせやすい。

かといって生贄要因を残しておくのも得策とは思えない。ここは罠と分かっていても攻めた方がいいだろう。

 

「ドロー! フィールド魔法ミッドチルダを発動し、クロノを召喚! 効果でデッキから設置型バインドを手札に加え、ミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1

A1700・D1500

 

『なんだかあのリバースカード、嫌な予感がするんだが・・・・』

「男なら黙って攻撃だ。行くぞクロノ! バトル、クロノでクリッターを攻撃!」

 

A1700 VS D600

 

「馬鹿め、クリッターが攻撃対象となった時、ヘイト・バスターを発動! 攻撃モンスターと攻撃対象になったモンスターを選択し破壊。破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

表になった罠カードから発射された衝撃波がクリッターとクロノを突然爆発させた。その爆風は衝撃波によって俺にのみ向かって来て、俺の体に激痛を与える。

 

「ぐああああああ! グッ、この程度!」

 

遊斗LP4000→2300

 

「フハハハ! いきなり大ダメージだな。クリッターの効果でデッキから幻銃士を手札に加える」

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター0 伏せ1 手札4 LP2300

エディア モンスター0 伏せ0 手札5 LP4000

 

「ドロー! ワン・フォー・ワンを発動! 手札を一枚墓地に送り、デッキからキングゴブリンを特殊召喚!」

 

A0・D0

 

なのは様が座っている台座に比べると、かなり安っぽい台座に座った緑色の怪物。偉そうに足を組んで座っているが、緑色の化け物の足組など一体誰が喜ぶだろうか。

 

「幻銃士を召喚して効果発動。召喚成功時、フィールドのモンスターの数だけ銃士トークンを特殊召喚できる」

 

A1100・D800

AD500

 

「そしてキングゴブリンはこのカード以外の悪魔族の数×1000ポイント攻守を上げる」

 

キングゴブリンAD0→AD3000

 

「バトル! キングゴブリンでダイレクトアタック!」

「罠発動、設置型バインド! キングゴブリンの攻撃を封じ、ミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ1→2

 

「幻銃士でダイレクトアタック!」

 

A1100

 

幻銃士は背負った二つの小さな大砲から黒い鉛玉を飛ばし、俺の足元まで飛ばす。その鉛玉はドンと地面にぶつかった途端、ドカーンと大爆発を上げた。

 

遊斗LP2300→1200

 

「ぐぅぅ・・・・」

「18の王を倒した割に大した事ないな。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター0 伏せ1 手札4 LP1200

エディア モンスター4 伏せ2 手札1 LP4000

 

この野郎・・・・。ヘイト・バスターを決めて一回ダイレクトアタックをしたくらいで調子に乗りやがって。

 

「ドロー! ミッドチルダのLCを生贄に、はやてを召喚!」

『このターンで決めるよ!』

 

はやてLC1

A2000・D1700

 

「ああ、夜天の書の主とヴォルケンリッターの力を見せてやれ! 永続魔法時空管理局を発動! そしてフィールドにはやてがいる時、LCを一つ取り除く事でシャマ姉は特殊召喚できる」

 

LCミッドチルダ2→1 時空管理局0→1 シャマル1

A800・D1800

 

「同条件でヴィータさんも特殊召喚できる!」

 

LCミッドチルダ1→0 時空管理局1→2 ヴィータ1

A1900・D1200

 

「シャマ姉の効果で時空管理局にLCを置く! そしてフィールドにはやてかヴォルケンリッターがいる時、ツヴァイは特殊召喚できる!」

 

LCシャマル1→0 時空管理局2→3

 

「場のシャマ姉とツヴァイを融合! 来い、祝福の癒し手シャマル! ツヴァイの効果でLCを一つ取り除いて手札に加える」

 

LC時空管理局3→2

 

「そして再びツヴァイを特殊召喚!」

『ま、またですか~?』

「と、飛ばし過ぎではないか?」

「言っただろ、このターンで決めるって。場のヴィータさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ! 融合召喚時、その二枚のセットカードを破壊!」

『コメートフリーゲン!』

 

A2600・D2500

 

ヴィータさんは空中に二つの巨大な鉄球を出現させ、グラーフアイゼンを薙ぎ払って二つの球を同時に打った。二つの鉄球はそれぞれ別の軌道で動き、トラゴエディアの二つのセットカードを破壊した。破壊したカードはミラーフォースと二枚目のヘイト・バスター。

 

「守りのカードが!」

「はやての効果発動! このカードのLCを取り除く事で、このカードはこのターン二回攻撃が出来る」

「に、二回攻撃だと!?」

 

LCはやて1→0

 

「バトル! はやてで幻銃士と幻銃士トークン一体を攻撃!」

『ディアボリックエミッション!』

 

A2000 VS A1100

A2000 VS D500

 

シュベルトクロイツの杖先に込められる魔力。その魔力は次第に黒の球体に変わり、その球体は徐々に大きくなっていく。そしてはやてがシュベルトクロイツを勢いよく振り下ろすと、黒い球体は幻銃士と幻銃士トークンの丁度真ん中に発射され、着弾と同時に二体の幻銃士を呑み込む程のドームになった。そのドーム内で何が起こっているのかは分からないが、黒のドームが消えると、そこには二体の幻銃士はいなかった。

 

「ぐぅぅ・・・・だ、だがまだ」

 

エディアLP4000→3100

キングゴブリンAD3000→AD1000

 

「ヴィータさんで幻銃士トークンを攻撃! ヴィータさんは貫通効果を持つ!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A2600 VS D500

 

幻銃士トークンは両手をクロスにして防御を固めようとするが、その程度ヴィータさんにとっては、薄っぺらい紙が一枚増えた様なもの。何の妨害にもならない。ジェット噴射によって勢いを付けたヴィータさんは、幻銃士トークンをグラーフアイゼンでぶっ叩いた。

幻銃士トークンはグラーフアイゼンの威力に耐えきれず、後方に飛ばされ、トラゴエディアに激突して爆発した。

 

エディアLP3100→1000

キングゴブリンAD1000→0

 

「ぐああああ! ば、馬鹿な!?」

「ラスト! シャマ姉でキングゴブリンを攻撃!」

『シャ、シャマビーム』

 

A1000 VS A0

 

ああーっ!? そう言えばその名前だった! 初めて万丈目と戦った時に俺が命名した攻撃名だけど、シャマ姉は覚えていたのか。シャマ姉も俺に頼らないで、一年近くあったんだから攻撃魔法の一つくらい考えて欲しい。

シャマ姉が両手に掛けている腕輪サイズのクラールヴィントから発射された緑色のエネルギー砲は、キングゴブリンを貫通してトラゴエディアを襲った。

 

「ぐあああああ!」

 

トラゴエディアLP1000→0

 

本人は物凄い痛みを体感しているのだろうが、攻撃名が余りにしまらないので、大げさなリアクションにしか見えない。今度攻撃名を一緒に考えるか・・・・っと、そんな事を考えている場合じゃない。コイツに一つだけ聞いておきたい事がある。

 

「死ぬ前に一つ。F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)はどこにいる?」

「ハハハハ! 俺が教えるまでも無い。上を見て見るんだな! 貴様もこれで終わ――」

 

騙し討ちかと一瞬思ったが、もう既に闇に呑まれたのでその心配は無いだろう。パッと上空を見ると、そこには長い黒のコートを着たロン毛の男が平然と浮いていた。男は殺意の籠った瞳で俺をギロリと睨み、ゆっくりと空から降りてくる。

その男から感じられる力は今までの王とは比べ物にならなかった。王の中で二番目、三番目に強いクリスティアとリッチーが、目の前の男に忠誠を誓うのが分かる程の力だ。

同じ高さで男を見て気付いたが、どうやら男の長い髪は赤・青・黒・金・茶と属性をイメージさせる五つの色で染められていた。趣味が悪いなど、そんなどうでもいい感想は、この男の威圧感で頭から消された。

 

「お前がF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)だな」

「左様だ。貴様が遊斗・スカリエッティか」

「ああ」

 

・・・・。ほんの数秒だったか、あるいは一分や二分だったか、短く長い間俺とF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は睨み会っていた。いや、俺が一方的に睨んでいただけかもしれない。余裕のない弱者が強がる為に、強者を睨んでいたのかもしれない。三幻魔に負けずとも劣らない、それ程の力を目の前の男は持っていると肌で実感できた。

 

「・・・・」

「遊斗、落ち着いて。今までF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)がデュエル以外の方法で襲ってこなかったのは、私達の力を知っているから。それに遊斗には三幻魔も付いている」

「フッ、賢い精霊だ。確かに我がデュエル以外の方法で戦を挑めば、我は勝てないだろう。だが同時に、お前達もデュエル以外の方法では、(破滅の光)を滅ぼす事は出来ない」

 

そうか・・・・。俺は敵の事ばかりを考えていたが、俺には王すらも手が出せない頼もしい仲間が付いているんだ。落ち着け、冷静になるんだ。戦うのは俺のフィールドであるデュエル。相手がどんなに力を持っていても、デュエルは平等だ。

 

「デュエルをする前にいくつか聞かせて欲しい」

「よかろう。我とお前、どちらか一方しか生きる事が出来ない。命乞い以外は答えてやろう」

「何故このタイミング、いや、お前が最初から挑んでこなかった? そうすれば他の王達は死ななかったかもしれない」

「王の中の王と言えど命を掛ける事は極力したくないのだ。使える駒は全部使った方が賢明だろう?」

 

なるほど。その答え、嫌いじゃない。

 

「それに仲間と言えど精霊の王。死んだ方が精霊の世はより混乱する」

 

ッツ! 最近、王=破滅の光、と言う事に意識が行きすぎていたが、精霊達にとっては今まで挑んできた王達は、その名の通り、その種族の王なのだ。いくら破滅の光が乗り移っていたとしてもそれは変わらない。

 

「今、精霊世界はどうなっている?」

「悲惨な状態だぞ。一部の賢い精霊達や弱者は、種族が違えど手を取りやって助けているみたいだが、ほとんどの精霊が争っている」

 

目の前の男はニヤリと口元を上げながら、嬉しそうにそう言った。その態度に俺はカッとなったが、痛いくらいに拳をギュッと握って怒りを堪えた。今、目の前の男を殴った所で、返り討ちに会うだけだ。

 

「だが争いの発端である我等王を全員倒せばその内戦争は終わるかもしれないぞ?」

 

確かに発端である王達全員を倒せば、戦争はその内終わるかもしれない。しかしF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の言うその内とは、精霊世界が滅亡間近になった時、もう戦争する必要が無いと全種族の過半数が気付く時だろう。はたしてその終りが、俺が生きている間に来るのかすら分からない。

 

「また一つお前を倒す理由が増えた様だな」

「クックック、出来れば倒されたくないものだがな」

「少しさっきの質問に戻る。今日このタイミングで来たのは、やはりソーラと関係があるのか?」

「左様。貴様も知っている通り、斎王と言う男は破滅の光によって支配されている。本来ならソーラの鍵を交渉材料にLSを奪おうと思ったが、あの馬鹿はソーラのエネルギーが溜まったこの日にリンドとか言う女狐に鍵を盗まれた」

 

リンドさんがソーラの鍵を盗んだタイミングが完璧だったって事か。

しかもこの言い方から、俺が持っているこの鍵は本物の可能性が高い。もしこれが本物じゃなかったら、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)と斎王は先に鍵を手に入れて、俺を脅す筈。

 

「そろそろいいか?」

「ああ、最後に色々と聞けて良かったよ」

 

そう言ってデュエルディスクを構えると、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は再びニヤリと笑った。刹那、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が着ていた服が――いや、人の皮がビリビリと破けた。

まず始めに目に入ったのは黄金の鱗。どんな銃弾でもどんな刃でも皮膚まで届きそうにない最強の鎧。次に目に入ったのは火・金・闇・水・黒鐵の物体。その五つの物体は徐々にその正体を見せて行き、ついにその五つの首が全貌を見せた。

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)。デュエルモンスターズの中で最高峰のステータスを持ち、光属性以外のモンスターでは破壊する事が不可能。ステータスだけならたった一枚で三幻神・三幻魔をも倒せるそのモンスターは、目の前にいるだけでこの世の終わりかと思わせるほどの恐怖を俺に与える。

 

「確かに凄い・・・・けど、こっちには破滅の光でさえ脅える仲間がいるんだ!」

「そうでなくては面白くない! 今まで戦ったのは雑魚ばかり! 我を楽しませろ!」

「「デュエル!」」

 




トラゴエディア・・・・ヤ無茶しやがって。
一応最後の雑魚王なのでカットするのもどうかと思ったので、久しぶりの文字数稼ぎにデュエルさせた結果がコレだよ!
取り敢えず漫画GXの知識がある方は二次+破滅の光に乗っ取られていると思い、割り切るか心の窓から投げ捨ててください。



作者は馬鹿で財政チートとか楽しく読むもののサッパリ分からないので、こういう目的暴露パートは矛盾が無いかどうか心配です。リンドさんの話はうろ覚えな原作知識を頼りに書いたので、矛盾は無いと思いますが。(取り敢えずペガサスや社長はソーラをなんとかするべき)



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第四十二話

うそっ・・・この回の文字数多すぎ。


はい。伝えるべき事は二つ。一つはラスボスでは自重しない。
もう一つはつい最近発売された四征竜と言うカードが多く出てきます。最近のカードに詳しくない方もいらっしゃると思うので、その四体の効果をここに乗せます(知らない方は軽く頭に入れておく事をお勧めします)
また、非常に長いテキストなので読むのが面倒です(断言)
ですので前書きの終わりに作者が四征竜をザックリとします。



焔征竜-ブラスター
効果モンスター
星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守1800
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
または炎属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと炎属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
このカードが除外された場合、
デッキからドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「焔征竜-ブラスター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。


瀑征竜-タイダル
効果モンスター
星7/水属性/ドラゴン族/攻2600/守2000
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
または水属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと水属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、
デッキからモンスター1体を墓地へ送る。
このカードが除外された場合、
デッキからドラゴン族・水属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「瀑征竜-タイダル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。


嵐征竜-テンペスト
効果モンスター
星7/風属性/ドラゴン族/攻2400/守2200
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
または風属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと風属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、
デッキからドラゴン族モンスター1体を手札に加える。
このカードが除外された場合、
デッキからドラゴン族・風属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「嵐征竜-テンペスト」の効果は1ターンに1度しか使用できない。


巌征竜-レドックス
効果モンスター
星7/地属性/ドラゴン族/攻1600/守3000
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
または地属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと地属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、
自分の墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。
このカードが除外された場合、
デッキからドラゴン族・地属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
「巌征竜-レドックス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。







全部テキストを読んだ(遊戯王の)勉強熱心の方お疲れ様です。
さて、四征竜の説明ですが、四征竜は四つの効果と一つの制約を持っております。
効果はそれぞれ以下の様になっています。

1 手札・墓地のドラゴン族か自身と同じ属性を二体除外して手札・墓地から特殊召喚する。

2 手札のこのカードと自身と同じ属性を墓地へ捨て、それぞれの効果を発動する。

3 除外された場合同じ属性のドラゴン族を手札に加える。

4 特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズに手札に戻る

◎「同名カード」の効果は一ターンに一度しか使用できない。


ざっくりこんな感じです。四つも効果を持ってTUEEE! と思った方、違うんですよ。
最後の同名カードの効果は一ターンに一度しか使用できない。これは1・2・3・4の内一つしか使用できないと言う事です。
例えば手札のタイダルの効果を使ったターン、タイダルの効果で墓地から特殊召喚は出来ないし、タイダルを除外してもサーチは出来ません。
ま、まあ強いんだけど・・・・と微妙です。裁定が変わったら鬼になりますからバランスは取れていると思いますが。


「先攻は我だ。ドロー! 手札の瀑征竜-タイダルの効果発動!」

「タ、タイダル?」

 

瀑征竜-タイダル。ドラゴン族の王との決戦に向け、全てのドラゴン族モンスターの名前、効果は覚えた筈だったが、そのモンスターの名前は聞いた事無かった。

 

「手札のこのカードと水属性モンスター一体を墓地に送り、デッキからモンスター一体を墓地に送る。我はこのカードと青氷の白夜龍(ブルーアイス・ホワイトナイツ・ドラゴン)を墓地に送り、デッキからレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを墓地に送る」

 

二枚消費して行ったのは愚かな埋葬と同じ。明らかにディスアドバンテージ。しかし墓地に送られたレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンはドラゴン族をノーコストで復帰させる事が出来る、強力なカード。蘇生手段があるとしたら悪い手ではない。

 

「更に手札の巌征竜-レドックスの効果発動。手札のこのカードと地属性モンスターを捨てる事で、墓地のモンスター一体を蘇生させる。我はこのカードとミンゲイドラゴンを捨て、墓地のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚!」

 

A2800・D2400

 

そこ等にある樹なら握りつぶせそうな程巨大な手と鍵爪。鱗はメタルでコーティングされており、ただでさえ堅い鱗がより一層堅くなっている。吹雪さんが使う同じレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンとはエラッタなのか、効果が違い、こちらはカード自体にそこまで迫力は無い。しかしレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを操るF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が、赤き瞳の竜の威圧感を増幅させる。

 

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動。墓地のホワイトナイツを特殊召喚する」

 

A3000・D2500

 

クッ、初っ端から最上級モンスターが二体。展開速度が速い十代や剣山でさえ、一ターンでこれ程展開するのは難しいだろう。

 

「これでターンエンドだ」

 

FGD モンスター2 伏せ0 手札2 LP4000

 

毎ターンレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果でドラゴンが復活するとは言え、この手札じゃ攻めるのは不可能だ。ここは守りを固めて次のターン万全な状態で入れるようにしよう。

 

「ドロー! なのはを召喚。効果でLCが置かれる」

 

A500・D1800

 

「そしてフィールドになのは、またはフェイトと名のつくモンスターがいる時、LCを一つ取り除く事で手札の高町ヴィヴィオは特殊召喚できる」

 

LCなのは1→0

A1300・D1500

 

「フィールドにヴィヴィオがいる時、手札のクリスは特殊召喚できる。このカードが召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時、フィールドのカードにLCを一つ置く。自身にLCを置く」

 

LCクリス0→1

AD500

 

「クリスのLCを取り除き、ユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノ、ヴィヴィオとクリスを融合! 来い、AOA高町なのは、カウンターヒッター-高町ヴィヴィオ!」

 

A1000・D3000

A2300・D2000

 

『行くよ、ヴィヴィオ』

『うん! なのはママ』

「なのはさんの効果発動。デッキからシュテルを手札に加える。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札2 LP4000

FGD モンスター2 伏せ0 手札2 LP4000

 

「攻撃はしないか。面白くない」

「堅実にフィールドを整えてるんだ。そう思うと面白いだろう?」

「ふっ、成程な。我のターン、ドロー! 手札の嵐征竜-テンペストの効果発動! 墓地のタイダルとレドックスをゲームから除外し、このカードを特殊召喚する!」

 

A2400・D2200

 

手、足、首、尻尾が竜巻で作られた全身に竜巻を纏っている竜。竜巻で作られていないのは、胴体と翼の二つだけ。どうやって生きているのか、それ以前に生きているのかすら分からない。

いや、そんな事はどうでもいい。それよりも気になるのが、さっきから出て来る征竜というカテゴリー。さっきのタイダルやレドックスからするに、手札から発動するドラゴンと思っていたが、効果はそれだけじゃない様だ。

 

「除外されたタイダルとレドックスの効果発動。このカードが除外された場合、デッキからそれぞれの属性のドラゴンを手札に加える。タイダルの効果でブリザード・ドラゴンを、レドックスの効果で二枚目のレドックスを手札に加える」

「サーチまで!? 無茶苦茶強くないか? そのカテゴリー」

「残念な事に征竜はそれぞれ、同名カードの効果は一ターンに一度しか使えない」

「つまり効果で墓地に送った征竜をそのターン除外してもサーチは出来ないって事か」

 

なるほど。その効果がある限り、一征竜の効果を控えない限り決してアドバンテージを得る事は出来ない。そこでバランスを取っているって事か。

 

「しかし我がドラゴンは四征竜により、新たな可能性が生まれた。デメリットがあろうと問題ない。バトル! テンペストでAOA高町なのはを攻撃!」

「罠発動! フォーメーションチェンジ! 攻撃対象モンスターの表示形式を変更し、デッキから一枚ドローする!」

 

A2400 VS D3000

 

テンペストは翼を羽ばたかせて二つの竜巻を作り出してなのはさんに発射するが、なのはさんはシールドを上手く使いテンペストの攻撃を防いだ。

 

「AOA高町なのはを出した時の常套手段と聞いていたが、まさか本当にそれで防いで来るとは。ホワイトナイツでヴィヴィオを攻撃!」

 

A3000 VS A2300

 

ホワイトナイツは口から青白い氷点下の息吹をヴィヴィオに放射した。ヴィヴィオは上空に跳んで回避すると、その息吹は俺に向かって飛んできて、俺の体温を一気に下げて行く。元々寒い冬に、氷点下の息吹をくらったので、寒さでカードを持つのが辛い――のが普通かもしれないが、興奮で体温が上昇しているのか、体温の低下はすぐに元に戻った。

 

遊斗LP4000→3300

 

「グッ。この瞬間ヴィヴィオの効果発動。このカードが攻撃を受けた時、このカードに攻撃したモンスターは攻撃力が1000上がったヴィヴィオともう一度攻撃しなければならない」

 

ヴィヴィオA2300→A3300 VS A3000

 

上空に跳んでいたヴィヴィオは右手に虹色のエネルギーを溜め、ホワイトナイツの顔の近くまで落下すると、右手のエネルギーをホワイトナイツに撃ち込んだ。

 

「そしてヴィヴィオが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードにLCを置く」

 

LCヴィヴィオ0→1

FGD LP4000→3700

 

「バトルフェイズは終了。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果で墓地のホワイトナイツを蘇生。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを守備にしてターンエンド」

「エンドフェイズ、永続罠ウイングロードを発動!」

 

やはりレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは倒しておかないと、ドラゴンがどんどん並んでしまう。けどリビングデッドや死者蘇生と言った汎用カード、更に二枚消費とは言え蘇生効果を持つレドックスがF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の手札にある。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの破壊に気を取られてはいけない。

それにしてもレダメと略されるだけあり、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは名前が長い。

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP3300

FGD モンスター3 伏せ0 手札4 LP3700

 

「ドロー! なのはさんの効果発動。デッキからフェイトを手札に加えて、ウイングロードの効果で特殊召喚!」

『これで王との戦いを終わらせよう』

 

A1800・D500

 

「ああ、流石に年に19回も命賭けのデュエルはしたくない。ヴィヴィオのLCを取り除き、アルフを特殊召喚。場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LCヴィヴィオ1→0

A2800・D500

 

「シュテルを通常召喚」

『中々手応えのある敵ですね。この様な局面でなければ、心躍る戦いになるのですが』

『ほんとだよ』

「行くぞ! シュテルでホワイトナイツを攻撃! シュテルは攻撃する相手モンスターのレベル×300ポイント攻撃力を上げる!」

『ブラストファイアー!』

 

シュテルA800→A3200 VS A3000

 

シュテルが発射した炎の砲撃、ブラストファイアーはホワイトナイツの息吹を一瞬で溶かして蒸発させ、ホワイトナイツの体を呑み込むと、これまた一瞬で溶かして蒸発させた。

 

「だがそのモンスターは我にダメージを与える事は不可能」

「200ダメージぐらいどうでもいい。フェイトさんでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンに攻撃! 攻撃力を700上げる!」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA2800→A3500 VS D2400

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンが発射した闇の火の弾に、フェイトさんは正面から堂々とトライデントスマッシャーを撃った。体の大きさは強さに比例しない。そう言わんばかりの勢いで放出される黄色の砲撃は、黒の炎を打ち消し、メタルの鱗を粉々にした。

 

「バトルフェイズ終了時、シュテルがゲームから除外される。なのはさんを守備にし、カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、特殊召喚したテンペストの効果発動。相手ターンのエンドフェイズ時にこのカードを手札に戻す」

 

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札1 LP3300

FGD モンスター0 伏せ0 手札5 LP3700

 

「ドロー! 墓地のミンゲイドラゴンの効果発動。自分の墓地のモンスターがドラゴン族しか存在せず、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、墓地から特殊召喚できる」

 

A400・D200

 

「そしてミンゲイドラゴンはドラゴン族を生贄召喚する場合、二体分の生贄となる。ミンゲイドラゴンを生贄に八俣大蛇(ヤマタノドラゴン)を召喚!」

 

A2600・D3100

 

身が一つで頭と尾が八つある大蛇、ヤマタノオロチ。その蛇が龍となり、そしてカードとなり復活したのが目の前のモンスターだ。

このカードは戦闘ダメージを与えた時、手札が五枚になるまでドローする事が出来る強力なカード。それ以前にこのカードはスピリットと言う、ペガサス会長が自ら作った幻のシリーズの一枚。プラネットシリーズと言い、生で見るのは到底不可能なカードを易々と持っている。

 

「七星の宝刀を発動。手札、またはフィールド上のレベル7のモンスターを除外してデッキから二枚ドローする。手札のレドックスを除外して二枚ドロー。除外されたレドックスの効果でモンタージュ・ドラゴンを手札に加える」

 

墓地のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを蘇生させる事が出来るレドックスを除外? 手札に地属性が無かったのか、あるいは今手札に加えたモンタージュ・ドラゴンと言う聞いた事無いカードを手札に加えたかったのか。

 

「手札のテンペスト、ブリザード・ドラゴン、ライトパルサーを墓地に送り、モンタージュ・ドラゴンを特殊召喚する! このカードは墓地に送ったモンスターのレベル合計の三百倍になる!」

 

モンタージュA?・D0→A5100

 

こ、攻撃力5100! ・・・・けどよく考えたら手札消費四枚で攻撃力5100か。八俣大蛇がいるからカバーできるが、使い勝手の難しいモンスターだ。モンスター共通の弱点である神宣や神警は勿論、奈落の落とし穴でも、効果無効でも、魔法の筒(マジック・シリンダー)でも駄目な奴か。

 

「カードを二枚伏せる。バトル! 八俣大蛇でカウンターヒッター-高町ヴィヴィオを攻撃!」

「見事に手札を使いきったか・・・・。何も無い」

 

A2600 VS A2300

 

八俣大蛇は八つの首からそれぞれ炎を吐き出す。ヴィヴィオは直線状に飛んでくる炎の隙間を見つけ出し素早く回避。八俣大蛇の炎が俺の体を一秒弱包み込むが、一年前のウリアのダメージに比べると大したものでは無い。それでも痛いが相手に弱みを見せてはいけない。

 

遊斗LP3300→3000

 

「戦闘ダメージを与えた事でデッキから五枚ドロー」

「ッツ、割に合わないがまあいい。せめてそのモンスターだけでも破壊だ! ヴィヴィオの効果発動!」

 

ヴィヴィオA2300→A3300 VS A2600

 

『ディバインバスター!』

 

一番大きい八俣大蛇の首に向け、ヴィヴィオはディバインバスターを発射する。リーダーだったかは分からないが、一匹の首が死んだ事で他の首は統率が乱れ、混乱してお互いの首を噛みつき合ったり、炎を吐いたりして自滅した。

 

「五枚ドローしたとはいえ、ライフは粗末にしたくないものだ」

 

LCヴィヴィオ0→1

FGD LP3700→3000

 

「モンタージュ・ドラゴンでなのはを攻撃!」

 

A5100 VS D3000

 

モンタージュ・ドラゴンは三つの首を槍の様にして突撃してきた。普通のドラゴンならブレスを吐いてくるが、まさかまさかの接近戦になのはさんは対処できず、高速で近づいてくるモンタージュ・ドラゴンにひかれてしまった。

 

「ヴィヴィオを攻撃しなくてよかったのか?」

「下手に貴様のライフを減らしても逆転されるのがオチだからな。確実にサーチ要因を減らす」

 

今の状況、デュエルアカデミアの生徒や素人だったらヴィヴィオを攻撃してくるんだが。

 

「手札の焔征竜-ブラスターの効果発動。このカードと手札の仮面竜を墓地に送り、そのセットカードを選択して破壊する」

「選択する効果で助かったよ。チェーンしてstrikersの収集を発動。墓地のなのは、フェイト、ユーノをデッキに戻して二枚ドロー!」

「失敗だったか。フィールド魔法混沌空間を発動」

 

今まで森林の中だったフィールドが、どちらが上か下か左か右か分からない、青と黒に包まれた四次元空間になった。一年前カオス・ソーサラーが使っていたフィールド魔法。モンスターが除外される度にカウンターが乗り、四つ以上のカウンターを取り除く事で、取り除いたカウンターの数と同じレベルの除外されたモンスターを特殊召喚するカード。

 

「墓地のテンペストの効果発動。墓地のブリザード・ドラゴンと八俣大蛇をゲームから除外してこのカードを特殊召喚する」

 

混沌空間0→2

A2400・D2200

 

「墓地からも復帰が出来るのか・・・・」

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP3000

FGD モンスター2 伏せ3 手札1 LP3000

 

一気に三枚も伏せられた。こうなるとなのはやヴィータさんがいないと回しにくいが、臆してはいけない。

 

「ドロー! ウイングロードの効果でシグナムさんを特殊召喚!」

『これが王達との最後の決戦。我等一同も全力で戦う』

 

A1800・D1500

 

「頼りになります! 永続魔法時空管理局を発動。そしてヴィヴィオのLCを取り除き、ツヴァイを特殊召喚!」

 

LCヴィヴィオ1→0 時空管理局0→1

 

「場のシグナムさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の将シグナム! ツヴァイの効果で時空管理局のLCを取り除き、手札に加える」

 

LCシグナム1 時空管理局1→2→1

A2700・D2200

 

「シグナムさんの効果発動! LCを一つ取り除き、相手モンスターの攻守を0にする! 選択するのは当然モンタージュ・ドラゴン!」

『『捉えよ、凍てつく足枷! フリーレンフェッセルン!』』

 

シグナムさんの手の平に現れた小さい吹雪。シグナムさんがその吹雪をモンタージュ・ドラゴンに投げると、徐々にその吹雪は大きくなっていき、モンタージュ・ドラゴンに当たった時には、モンタージュ・ドラゴンの巨体を包む程の吹雪になっていた。その寒さに耐えきれず、先程まで攻撃力5100に相応しい威圧感を放つ竜は、ただの氷像になった。

 

モンタージュA5100→A0

 

「バトルフェイズ開始時、シュテルが戻ってくる。バトル! シュテルでテンペストを攻撃!」

「そのモンスターは厄介だ。罠発動、次元幽閉。攻撃モンスターを除外する」

「なっ!」

突如現れた次元の狭間が、シュテルの体を吸い込み、幼き少女を次元の彼方まで飛ばした。

 

混沌空間2→3

 

「シグナムさんでテンペストを攻撃!」

「攻撃宣言時竜の転生を発動。自分フィールド上のドラゴン族一体を除外し、墓地か手札からドラゴン族を特殊召喚する。テンペストを除外してライトパルサー・ドラゴンを特殊召喚!」

 

混沌空間3→4

A2500・D1500

 

「更に除外されたテンペストの効果でデッキからドラグニティアームズ-レヴァテインを手札に加える」

「クッ、攻撃は中断。フェイトさんでモンタージュ・ドラゴンを攻撃! 攻撃力を700上げる!」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA2800→A3500 VS A0

 

「攻撃宣言時罠発動、レインボーライフ。手札を一枚捨て、このターンのダメージ分ライフを回復する」

 

フェイトさんが放った黄色の砲撃は氷の竜の像を破壊し、衝撃がF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)を襲う。だがその衝撃は虹色の光により、ライフを回復させる癒しの雫へと変わる。虹色の雫がF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の体に降り注いで傷を癒す。

 

FGD LP3000→6500

 

「ターンエンドだ」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札2 LP3000

FGD モンスター1 伏せ0 手札1 LP6500

 

「ドロー! トレード・インを発動。手札のレヴァテインを捨て二枚ドロー。墓地のブラスターの効果発動。墓地のモンタージュ・ドラゴンと仮面竜を除外し、特殊召喚する!」

 

混沌空間4→6

A2800・D1800

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)のモンスターゾーンがムクリと盛り上がると、その盛り上がりの天辺からマグマが噴出した。そのマグマの中からドシンドシンと音を立て出てきたのは、マグマで作られた炎の竜。マグマが冷えて黒くなった部分と、未だにマグマが活動している赤い部分で、上手く竜の形になっている。

 

「奇跡の発掘を発動。除外されたカードが五枚以上の時、カードを三枚墓地に送る。我が墓地に送るのは、タイダル、レドックス、テンペストの三枚。そして墓地のダイダルの効果発動。墓地のレドックスとテンペストを除外して特殊召喚!」

 

混沌空間6→8

A2600・D2000

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の前に突然現れた巨大な滝。その滝はF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の巨体すら隠す程高く広い。その滝の向こうから竜の叫び声と共に、滝の奥から水で作られた竜が現れた。先程のブラスター程巨大ではないが、それでも最上級の竜の中では大きい方だ。

 

「そして除外されたレドックスとテンペストの効果。二枚目のミンゲイドラゴンとテンペストを手札に」

 

これで混沌空間のカウンターは8つ。ヴィヴィオを破壊する手段があるのなら、混沌空間のカウンターを取り除く意味はあるが、ヴィヴィオを破壊出来ないのなら態々使う必要も無い。それにレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚できるくらい溜めておきたいだろう。

 

「ライトパルサーを攻撃表示に変更。バトル! ブラスターで黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃! ブラスターの目の前のモンスターゾーンは埋まっている。攻撃力は上昇せぬ!」

 

A2800 VS A2800

 

フェイトさんはバルディッシュをサイズフォームにし、高速でブラスターに接近してブラスターの腹を鎌で斬った。魔力刃にかなりの量の魔力を注いだのか、冷えた溶岩の鎧は切断され、ブラスターは鼓膜が破れそうな程の悲鳴を上げる。そしてブラスターは最後の力を振り絞り、自らの体内エネルギーを使い、物凄い轟音と共に爆発した。

 

「フェイトさん!」

「まだだ。ライトパルサーで祝福の将シグナムを攻撃!」

 

A2500 VS A2700

 

ライトパルサーは両翼に付いた爪を自らの胸の前で合わせ、胸のコアの力を使い光の球を形成し、発射した。美しい綺麗な光の球は、歴戦の将であるシグナムさんとその相棒レヴァンテインにより一太刀で打ち消される。シグナムさんが攻撃を打ち消す間に、中にいるツヴァイが拘束魔法を唱えてライトパルサーの動きを封じ、動けないライトパルサーをシグナムさんが叩き斬った。

 

FGD LP6500→6300

 

「ライトパルサーの効果発動! このカードが墓地へ送られた時、自分の墓地のレベル5以上の闇属性ドラゴンを特殊召喚する。呼び戻すのは勿論レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン!」

 

A2800・D2400

 

「また出てきやがったか!」

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンで祝福の将シグナムを攻撃!」

 

A2800 VS A2700

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは、口から出した闇の火の弾による単純火力でシグナムさんを破壊した。攻撃方法は地味かもしれないが、その発射速度と弾のスピード、威力はどれも一級品だ。

 

遊斗LP3000→2900

 

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動。墓地のブラスターを特殊召喚する」

 

A2800・D1800

 

ホワイトナイツでは無くブラスターを特殊召喚したか。おそらく次のターンのエンドフェイズに手札に戻るデメリットを上手く使い、ブラスターを手札に戻すつもりだろう。

 

「ターンエンド」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札2 LP2900

FGD モンスター3 伏せ0 手札3 LP6300

 

しかしそう簡単に事を運ばせない。ブラスターを戻させたら守りの要であるヴィヴィオが破壊されてしまう。

 

「俺のターン、ドロー! ドローしたリリィを特殊召喚。効果でデッキから銀十字を手札に加える!」

 

LC時空管理局1→2

AD500

 

「そして手札を一枚墓地へ送り、デッキからトーマを特殊召喚」

 

LC時空管理局2→3

 

「場のトーマとリリィを融合! 来い、リアクトエンゲージ-トーマ!」

『こんな数のドラゴン族を相手にするのは久しぶりだ。行くよ遊斗』

 

LCトーマ1

AD2500

 

「ああ、お前達の力で形勢を逆転させる! トーマに銀十字を装備させ、トーマの効果発動! LCを一つ取り除き、相手フィールド上のモンスターの攻守を1000下げる。更に銀十字を装備していた場合、その効果でダウンする数値は2000になる!」

『Silver Stars Hundred million』

『『シルバー・スターズ・ハンドレッドミリオン!』』

 

銀十字から現れた無数の紙。その紙はトーマを囲むように螺旋状に並び、トーマが銃剣を頭上に上げると同時にポウと小さな明かりを発する。そしてトーマが銃剣を振り下ろした瞬間、大量の紙からは魔力弾が発射され、三体の竜の体をボロボロにした。

 

レダメA2800・D2400→A800・D400

ブラスターA2800・D1800→A800・D0

タイダルA2600・D2000→A600・D0

 

「チィ!」

「バトル! トーマでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻撃!」

『シルバーハンマー!』

 

A2500 VS A800

 

トーマはリアクター996をレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンに向けると、溜め無しに巨大な砲撃をぶっ放した。先程の攻撃で既にボロボロになっている体ではどうやっても防ぐ事が出来ず、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは破壊された。

 

「またしてもやられたか」

 

FGD LP6300→4600

 

「ヴィヴィオでブラスターを攻撃!」

『ディバインバスター!』

 

A2300 VS A800

 

「ぐぅぅ。レインボーライフを使って正解だった」

 

FGD LP4600→3100

LCヴィヴィオ0→1

 

「ターンエンドだ」

「エンドフェイズ、タイダルの効果でこのカードを手札に戻す」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札1 LP2900

FGD モンスター0 伏せ0 手札4 LP3100

 

これで次のターンタイダルを自身の効果で墓地のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを除外し、混沌空間で再び特殊召喚する事が出来る。だがその方法で特殊召喚しても、ヴィヴィオを突破するのは不可能だし、トーマを倒しても黒騎士トーマが特殊召喚される。

どうやってこの状況を突破してくる?

 

「ドロー! タイダルの効果。このカードと手札のドラゴン・アイスを墓地に送り、デッキからダークフレア・ドラゴンを墓地に送る」

 

ダークフレア・ドラゴンか。手札のドラゴンとデッキのドラゴンを一枚ずつ墓地へ送る事が出来るが、既に墓地も除外ゾーンも埋まっているのでもう必要ないカード。

 

「墓地のホワイトナイツ、ドラゴン・アイス、ブラスターをゲームから除外して氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)を特殊召喚!」

 

混沌空間8→11

A2300・D2000

 

氷炎シグナムさんと同じく、氷と炎の対なる属性を纏った異端のドラゴン。召喚条件が水属性二体、炎一体と決してコストが軽い訳では無く、効果発動にも手札が必要なので決して強くないと言われているカードだが、四征竜とは相性がいい。

 

「除外されたブラスターの効果。デッキからブラスターを手札に加える。そして混沌空間の効果発動。カウンターを八つ取り除き、ホワイトナイツを特殊召喚する」

 

混沌空間11→3

A3000・D2500

 

このタイミングで呼んできた? 混沌空間の他にもレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを呼ぶ手段があるって事か?

 

氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)の効果発動。手札を一枚捨て発動。フィールド上のモンスター一体を破壊する。我が選択するのはカウンターヒッター-高町ヴィヴィオ!」

「ッツ! 今まで助かったヴィヴィオ」

『私はリタイヤだけど、頑張ってね遊斗さん』

 

氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)の口から発射された氷と炎がヴィヴィオを破壊した。

 

「バトル! ホワイトナイツでリアクトエンゲージ-トーマを攻撃!」

 

A3000 VS A2500

 

ホワイトナイツは口から氷点下の青白いエネルギーを放つ。トーマはそのエネルギーを打ち消そうと砲撃魔法を放ったが、なんとその砲撃すらも凍ってしった。氷は砲撃を伝ってリアクター996、トーマの右腕へと進み、ついにトーマの全身を凍らせた。

 

遊斗LP2900→2400

 

(つう)っ! だが銀十字の効果発動! リアクトエンゲージ-トーマが自分フィールド上から放たれた時、デッキから黒騎士トーマを特殊召喚する!」

 

氷の中にいた銀十字が何か魔法を唱えると、次の瞬間氷の中に居たトーマが外に瞬間移動された。力を使い果たしてしまった銀十字は墓地に送られたが、変わりにトーマが第二形態に覚醒した。

 

A3000・D2000

 

氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)でリアクトエンゲージ-黒騎士トーマを攻撃!」

「攻撃力2300で攻撃だと!?」

「ダメージステップ収縮を発動! これによりリアクトエンゲージ-黒騎士トーマの攻撃力を半分にする」

 

トーマA3000→A1500 VS A2300

 

『クッ、体が・・・・』

 

急に脱力感に見舞われたのか、トーマは地面に膝をつきディバイダーを手から離す。氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)はその隙を見逃さず、先程と同じように二つの口から氷と炎を発射した。シールドすら張れないトーマはアッサリと破壊されてしまい、更に氷と炎が俺を襲い掛かる。

 

「ぐああああっ! うっ、あああ!」

 

ドライアイスを触ると火傷すると、テレビで見た事があったが、実際にそんな感じだった。俺の体半分は氷が襲っていると言うのに、体全身が燃えるように熱く、今すぐ逃げだし足る程痛い。

氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)の攻撃が終わると同時に膝を地面に付け、荒い息とバクバクと激しく鼓動する心臓を落ち着かせる。最近体が頑丈になって来たかと思ったが、やはり一定以上のダメージは耐える事が出来ない。足に力を込めて立ちあがると、ふぅと息を吐く。

 

遊斗LP2400→1600

 

「クックック、面白い。ターンエンドだ」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター0 伏せ2 手札1 LP1600

FGD モンスター2 伏せ0 手札1 LP3100

 

ヤ、ヤバイ。何とかライフが持ったが、俺の手札はツヴァイだけ。ドローによっては手詰まりになってしまう。頼むぞ俺のデッキ。ここで手札を増やさないと負けてしまう。

 

「ドロー! ドローしたカードはカリム姉! よって特殊召喚する! そしてスタンバイフェイズ時に前のターン手札から捨てたリオを手札に加える」

『わ、私はデュエル以外でランクの高い魔法生物と対面した事が無いのですが、この威圧感は幽霊より怖いですね』

 

LC時空管理局3→4

AD500

 

何しろ威圧感を放っているのはホワイトナイツと氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)だけでなく、プレイヤーのF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)もいる。俺より間近で戦っているみんなの感じるプレッシャーは尋常じゃない筈だ。

 

「怖いだろうけど頑張って下さい。カリム姉の効果発動! デッキトップを魔法と選択。デッキトップはコロナ。よってこのカードを手札に戻す。自身の効果でカリム姉をもう一度特殊召喚」

「面白いやり方だ」

 

LC時空管理局4→5

 

「もう一度効果発動。デッキトップを魔法と選択。デッキトップはフェイクシルエット。よって手札に加える。リオを召喚!」

『アハハハ・・・・。これ、デュエルじゃなかったら勝てないだろうな~』

 

A1700・D500

 

確かにこのメンツだと、とてもじゃないだろうが勝てない。前線で戦う大人組やマテリアルズ、IF、三幻魔の面々なら十二分に戦えるだろう。

 

「リオの効果発動。墓地のコロナと高町ヴィヴィオをゲームから除外して攻撃力を800上げる。そしてコロナの効果でデッキから一枚ドロー!」

 

混沌空間3→5

リオA1700→A2500

 

「魔法・罠ゾーンにキャロを置く」

『ドラゴンか・・・・』

 

リオA2500・D500→A2800・D800

カリムAD500→AD800

 

なんかキャロの様子が変だな。そう言えばキャロはフリードとヴォルテールと言う二騎の竜を従えているんだっけ? ドラゴン族と戦うのは極力控えたいって気持ちがあるんだろう。

っと、キャロには悪いけど今はデュエルに集中しないと。

 

「バトル! リオで氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)を攻撃!」

『絶招炎雷炮!』

 

A2800 VS A2300

 

二つの首から発射される炎と氷を、炎と電気の力で強化したリオは素早く回避し、二体の竜が繋がっている胴体に蹴りを打ち込んだ。ゴライアスを投げ飛ばす事が出来る馬鹿力に加え、炎と電気が込められたその蹴りを前に氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)は耐える事が出来ずに破壊された。

 

FGD LP3100→2600

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札2 LP1600

FGD モンスター1 伏せ0 手札1 LP2600

 

「ドロー! 墓地のタイダルの効果発動! 墓地の氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)とブラスターをゲームから除外し、このカードを特殊召喚!」

 

混沌空間5→7

A2600・D2000

 

「この効果でデッキからヴォルテールを手札に加える」

「なんだと!?」

『ヴォルテール!? どうしてあなたがヴォルテールを持っているの!?』

「さあな。この身体の持ち主だったら知っているだろうが、我は破滅の光」

『そ、そんな・・・・』

 

どういった経緯で本当のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)がヴォルテールを手に入れたかは知らないが、あのカードは何とかして取り返さないといけない。しかし俺のデッキにはコントロール奪取のカードは入っていない。キャロには申し訳ないが、現れるなら倒すしかない。

 

「さあ行くぞ。タイダルをゲームから除外し、二枚目のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚!」

 

混沌空間7→8

A2800・D2400

 

「効果でヴォルテールを特殊召喚!」

 

ヴォルテール ☆9/炎/ドラゴン/A3000・D3000

 

黒茶色の巨大な翼。その翼だけでも十分巨大だと言うのに、まだ体の一部分。顔には白い角の様な物が生えており、首から胸まではオレンジに近い色の装甲をしている。体長は15メートル、いや、もっとあるだろうか? レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの巨体すらも軽々越え、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)より大きいかもしれない。(両者大すぎる為下からでは比べられない)

 

『ヴォルテール・・・・』

「仕方ないんだキャロ! 行くぞ!」

「更にフリード・リヒを召喚!」

『ッツ!? フリードまで!?』

 

フリードリヒ ☆4/炎/ドラゴン/A1600・D1000

 

翼長10メートル以上の大きさの竜で、主に白がメインの竜。所々に青が入っており、瞳は紅。ミッドチルダではこの大きさの竜でもかなり珍しいらしいが、なにぶんさっきから神話に出てきそうな巨大なドラゴンばかり見てきたので、正直インパクトに欠けると言うのが、素直な感想だ。

 

「バトル! ヴォルテールでリオに攻撃!」

「罠発動、協力防御! LSが二体以上いる時発動可能。このターンLSは戦闘で破壊されず俺はダメージを受けない。発動後デッキから一枚ドロー!」

「止めたか。先に使っておくべきだったか? フリードの効果発動。このカードの守備力より低い守備力を持つモンスターを破壊する。カリムを破壊だ」

 

フリードは口から火の球を発射した。それがどれ程の威力を持っているかは知らないが、前線で戦うのは無理なカリム姉が防げる訳無く、爆発と共に破壊されてしまった。

 

「ターンエンド」

 

リオA2800→A2000

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札3 LP1600

FGD モンスター4 伏せ0 手札0 LP2600

 

手札は三枚。次のドローで四枚になる。問題はこのドローで何を引くかだ。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを破壊しない限りドラゴン族は永遠に湧いてくるが、フリードの効果は厄介だし、ヴォルテールの効果は未確認だ。

 

『遊斗!』

「な、なんだ?」

 

普段温厚で大人しいキャロの大声だったので一瞬たじろいてしまう。しかもキャロの瞳はキリッとして、顔だけでも怒っているのが分かる。普段怒らない人が怒ると怖いとはよく聞くが、確かに怖い。この言葉は、普段温厚なだけあり爆発したら止まらない、と言う意味だろうが、キャロの場合怒って何を言い出すか分からない。

 

『エリオ君を呼んで』

「エ、エリオを?」

『いいから!』

「は、はい! お、俺のターン・・・・」

 

エリオ、絶対来いよ、絶対だからな! 振りでも何でもないぞ。このドローで来なかったらF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)より前にキャロに殺されるかもしれん。

 

「ド、ドロー! えっと、キャロさん? エリオを召喚すればいいんだよね?」

『そう』

「ウイングロードの効果でドローしたエリオを特殊召喚する」

 

LC時空管理局5→6

A1400・D1000

 

こうやってエリオを召喚するのは初めてだ。何しろエリオは手札から効果を発動するカード。オネストとかの場合、どうしようもない場合は守備で出す事もあるが、手札交換のカードを召喚する事は普通ない。

 

『フリード、ヴォルテール・・・・。分かった、行くよキャロ、遊斗!』

『うん!』

「や、やるって何を?」

 

俺の質問に答えるかの如く、融合デッキから黄色とピンクの光が発せられた。まさかと思い融合デッキを見ると、そこには見た事の無いカードがあった。どうやって作ったのかは分からないが、この状況では最適のカード。

 

「どういう状況かは分からないけど、やるべき事は分かった! 場のエリオとキャロを融合! 来い、竜を喚ぶ巫女キャロ!」

 

LC時空管理局6→7

リオA2000・D800→A1700・D500

竜を喚ぶ巫女キャロ ☆6/風/魔法使い/A1500・D2300

 

エリオとキャロは俺の前に現れた融合の渦に入って行く。その中から出てきたのは、髪をロングに伸ばし、僅かだが身長が伸びて顔立ちも大人っぽくなったキャロがいた。バリアジャケットやデバイスは同じ。おそらく数年後のキャロなのだろう。

 

「ほう、聞いた事ないカードだな」

「俺もよく分からないけど、二人が作り上げたカードだ。行くぞ、キャロの効果発動! フィールド上のLCを任意の数を取り除き発動。取り除いたLCの数×2以下のレベルのモンスターのコントロールを得る。時空管理局のLCを五個取り除き、ヴォルテール奪う、いや、返してもらう!」

 

LC時空管理局7→2

 

『ヴォルテール、落ち着いて。私が今助けてあげるから』

『グォォ・・・・』

 

キャロはヴォルテールの足元に巨大なピンクの魔法陣を展開すると、ヴォルテールの巨体がピンクの光によって包まれる。するとヴォルテールは小さく声を上げると、ドシンドシンと歩き、俺のモンスターゾーンにやって来た。

混沌空間の中でも地響きはするんだな。なんてどうでもいい事を考えていると、デュエルディスクに現れたヴォルテールのカードがピカッと一瞬光る。

 

LS大地の守護者ヴォルテール ☆9/炎/ドラゴン/A3000・D3000

 

「名前が変わった?」

『これがヴォルテールの本来の姿』

 

効果も少し変っている。なるほど、本来の効果はこんな効果だったのか。

 

「速攻魔法Asの回収を発動。除外されたヴィヴィオとコロナを墓地に戻し、リオの効果で再び除外。コロナの効果でデッキから一枚ドローする」

 

混沌空間8→10

リオA1700→A2500

 

「バトル! ヴォルテールでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻撃!」

『行くよヴォルテール! 大地の咆吼(ギオ・エルガ)!』

 

A3000 VS A2800

 

ヴォルテールの巨大な黒の羽に、大気中に含まれていたエネルギーが集中する。あのエネルギーの正体は魔力だろう。その巨大な魔力エネルギーはなのはさんのスターライト・ブレイカーと同等かそれ以上かもしれない。相変わらずLSの攻撃力は実際の攻撃力と合っていない。

ヴォルテールは集めた魔力に炎熱効果を付け、シュテルや神炎皇なのはと同じような炎の砲撃をレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンに放った。炎の砲撃はレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを塵も残さないほどに焼き尽くし、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)に襲い掛かる。

 

FGD LP2600→2400

 

「ぐぅっ! 凄まじい威力だ!」

「リオでフリードに『待って!』キャロ?」

『お願い、一ターンだけ待って! きっとエリオ君が何とかしてくれる!』

「けど・・・・」

『お願い!』

 

ペコリと頭を下げるキャロを見てふと気付いた。そう言えばキャロがこうやって我が儘を言うのは11年間一緒に居て初めてだ。出来れば命がけのデュエルの真っ最中に我が儘を言って欲しく無かったが、ここでキャロの我が儘を無視すると、おそらく二度とキャロの我が儘を聞けないだろう。

 

「・・・・分かった。リオもすまない」

『いえ、大丈夫ですよ』

「リオを守備表示に変更。カードを二枚伏せてターンエンド」

「ふん、余裕だな。言っておくが今の行動は優しさでは無い、馬鹿のやる事だ」

「久しぶりに言われたよ馬鹿って言葉。じゃあその馬鹿の底力を見せてやる。エンドフェイズキャロの効果発動。このカードを融合デッキに戻し、融合デッキから魔を狩る騎士エリオを特殊召喚できる」

 

LS魔を狩る騎士エリオ ☆6/光/戦士/A2300・D1500

 

キャロと同じように成長したエリオがそこに居た。10歳の時とは違い短パンでは無く長ズボンになっている。いや、そんな事はどうでもいい。この野郎たった数年でメチャクチャ成長してやがる。顔立ちからするとおそらく14歳くらいだろうが、既に俺と同じくらいの身長だ。

 

「エリオ、このデュエル終わったら身長寄越せ」

『ええ!? 無理だって』

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター3 伏せ4 手札2 LP1600

FGD モンスター2 伏せ0 手札0 LP2400

 

「我を無視しておしゃべりとは余裕だな。ドロー! 混沌空間の効果発動。除外されたテンペストを特殊召喚」

 

混沌空間10→3

A2400・D2200

 

「七星の宝刀を発動。フィールドのテンペストを除外してデッキから二枚ドロー。テンペストの効果でデッキからドラグニティアームズ-レヴァテインを手札に加える。そしてトレード・インでレヴァテインを捨て二枚ドロー」

 

これで一枚だった手札は三枚に増えた。ここまでサーチやドローを繰り返したんだ。そろそろあのカードが手札に加わってもおかしくない。

 

「やはり年寄りの言葉は信じるべきだな。ネクロフェイスを召喚」

 

A1200・D1800

 

赤ん坊の人形の顔からグロイ触手が飛びだしたモンスター。不気味なものが多いアンデットの中でも、一際不気味なカードだ。しかも優秀で使用率が高いのが、イル・ブラッドより恐れられる理由だ。

さっきのF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の台詞からするに、そのネクロフェイスはリッチーの助言でデッキに入れたのだろう。あの野郎は死んだ後も俺に迷惑を掛けるな。

 

「ネクロフェイスの効果発動。除外された17のカードをデッキに戻し、デッキに戻した枚数×100ポイント攻撃力を上げる」

 

ネクロフェイスA1200→A2900

 

「未来融合-フューチャーフュージョンを発動。融合デッキの我の分身、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)を選択して素材となる五枚のドラゴンを墓地に送る。我が墓地に送るのは、レドックス、ダイダル、テンペスト、ブラスター、八俣大蛇の五枚」

「ア、アハハ・・・・。初手に来なくて助かったよ」

 

や、やっぱり五枚のカードを選択して墓地に送るのは異様に強い。何しろあのインチキチートカードである苦渋の選択と同じだからな。あのカードは禁止になって当然だ。

 

「墓地のブラスターの効果発動。墓地のレドックスとダイダルをゲームから除外して特殊召喚。二体の征竜の効果でデッキからブルーアイスとモンタージュ・ドラゴンを手札に加える。手札抹殺を発動し、デッキから二枚ドロー」

「俺は二枚だ」

 

混沌空間3→5

 

「トレード・インを発動する。手札のホルスの黒炎竜LV8を捨て二枚ドロー!」

 

本当に七星の宝刀とかトレード・インとか手札抹殺とかの手札交換系のカードが好きだな。このターンだけでも四回使用している。亮さん並みの詰め込みじゃないか?

 

「フリードの効果でリオを破壊する!」

 

フリードは再び火の球を形成すると、手をクロスにして体を守っているリオに向けて発射した。リオの素早さなら避けられただろうが、デュエルで回避などあってはならない。

 

「バトル! ホワイトナイツでヴォルテールを攻撃!」

『くっ、ヴォルテール!』

 

A3000 VS A3000

 

氷点下のエネルギーを操る竜と、鉄をも溶かす炎熱を操る竜。その二者はそれぞれ口と羽に自らが放つ事が出来る最大のエネルギーを溜め、空気の振動を肌で感じる程の咆哮と共にエネルギーを発射した。氷と炎の力は互角で、二つの力がぶつかっている部分では水が凍ったり水蒸気になったりと凄い現象が起こっている。その刹那、突然二つのエネルギーがぶつかっていた部分が大爆発し、二体の竜を呑み込んだ。

 

『水蒸気爆発か』

 

え? 俺専門的な知識って全くないけど、水蒸気爆発ってあんな簡単に起こるもんなの?

 

「とりあえずこの時点で速攻魔法フェイクシルエットを発動! デッキのはやてを墓地に送り、エリオをはやてとして扱う」

「それがどうした! ブラスターでエリオを攻撃!」

「攻撃宣言時幸運の追い風を発動! はやてが存在する時、手札を一枚捨て、ライフを半分にして発動。デッキからアインスを特殊召喚し、効果で融合デッキから夜天の書を特殊召喚する」

 

遊斗LP1600→800

AD2300

AD0

 

「ほう」

「さあ、誰を残す? お前ならアインスと夜天の書の効果を知っているだろう?」

「なるほど。ならば貴様の策に乗ってやろう。ブラスターでアインスを、ネクロフェイスで夜天の書を攻撃!」

 

A2800 VS D2300

A2900 VS D0

 

ブラスターは口から溶岩の塊を、ネクロフェイスは自分の顔から出ている触手を伸ばしてアインスと夜天の書を破壊した。これは誰が倒されていても特に問題無かったが、まさか本当にエリオを残すとは思わなかった。

 

「カードを一枚伏せる。超再生能力を発動してターンエンド。エンドフェイズデッキから四枚ドロー」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札1 LP800

FGD モンスター3 伏せ2 手札4 LP2400

 

さーて、ここからが本番だ。一気にフィールド、手札のアドバンテージを逆転された。ここであのカードを引かないとちょっと、いや、かなり辛い。

 

「ドロー! ナイスだ、俺のデッキ。エリオの効果発動。LCを一つ取り除き、セットされたカード一枚を破壊する。その伏せを破壊する」

『ソニックムーブ!』

 

時空管理局2→1

 

エリオは魔法名を唱えると共に、フィールドから姿を消し、次の瞬間F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の伏せカードの元に姿を現した。手に持ったストラーダで一閃したのか、既にF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の伏せカードは真っ二つになっていた。

言っておくがこの効果は、相手はチェーン出来ない、などの効果は付いていない。

 

「チッ」

「魔法・罠ゾーンにルーテシア・アルピーノを置く」

 

LSルーテシア・アルピーノ ☆3/闇/魔法使い/A500・D500

 

薄い紫色のロングヘアーをした可愛らしい女の子。この子はこの間父さんが来た時に貰ったカードだ。本当なら父さんが使う予定だったらしいが、父さんは「私ですらこの豹変は付いて行けない」と言いながらこのカードを渡した。どういう事なのか理由を聞くと、何でもこの笑顔が可愛い女の子は、昔は無表情な子だったらしい。それが今や胸の谷間を出して、股関節ギリギリまで眩い太ももが見えるバリアジャケットを着ている。いくら露出度が高いフェイトのバリアジャケットを見慣れているとはいえ、これは年頃の男としては色々と危ない。

 

『久しぶりだねルー』

『私は精霊になって間も無いから久しぶりじゃないけど。それにしても初戦がドラゴンって・・・・』

『ま、まあまあ。ルーはフルバックだし、前線では戦わないよ』

「ルーテシアの効果発動。一ターンに一度、墓地に存在する戦闘で破壊されたLSを特殊召喚する。この効果を使ったターン俺は通常召喚出来ない。戻って来て、フェイトさん!」

 

A2800・D500

 

「そのモンスターか!」

「まだだ! 融合デッキの竜を駆る騎士エリオの効果発動。フィールドの魔を狩る騎士エリオとドラゴン族一体を融合素材にする事で特殊召喚できる。俺は魔を狩る騎士エリオとフリードを融合する!」

「我のモンスターを融合素材にするだと!?」

「現れろ! 竜を駆る騎士エリオ!」

 

LS竜を駆る騎士エリオ ☆6/光/戦士/A2300・D1500

 

白銀の巨大な竜に跨り、左手には手綱を右手に槍を持つエリオ。更に数年の時が流れたのか、その身長は更に伸びており、おそらく170後半はあるだろう。顔立ちも一段と男らしくなっており、男性モデルと思われてもおかしくない程美形だ。

 

「攻守全く同じ?」

「効果があるんだ。エリオは融合素材にしたドラゴンのレベル×300ポイント攻撃力を上げる。フリードのレベルは4」

 

エリオA2300→A3500

 

「面倒なモンスターだ。倒すモンスターを間違ったか。だがお前もフリードを融合素材にしなければ勝っていたものの」

「キャロの願いを叶えたかったんだ。バトル! フェイトさんでブラスターを攻撃! 攻撃宣言時攻撃力を700上げる!」

 

フェイトA2800→A3500 VS A2800

 

パカッと口を開けて接近するフェイトさんを迎撃しようとするブラスター。それを狙っていたのか、フェイトさんはソニックムーブと呟き、ブラスターの口元へ高速で移動する。そして開いたままの口の中に、トライデントスマッシャーを撃ち込んだ。ブラスターは今まで聞いた事が無い断末魔を上げて爆発した。

 

FGD LP2400→1700

 

「エリオでネクロフェイスを攻撃!」

『フリード、ブラストレイで援護を!』

 

A3500 VS A2900

 

エリオの指示に頷いたフリードは、早速口に火の球を作り出してネクロフェイスに発射した。効果で力が上がっているネクロフェイスはその火の球を触手で弾く。が、その隙に接近していたエリオに気付かず、ストラーダにより体を真っ二つにされた。

 

FGD LP1700→1100

 

「クックック、ここまで追い詰められたのは久しぶりだ」

「無限書庫を発動。魔法・罠ゾーンに表側表示で存在するカードを一枚選択して発動。選択したカードとこのカードをデッキに戻し、二枚ドローする。ルーテシアをデッキに戻して二枚ドロー」

『あれ? 私の出番終り?』

「悪いな。ウイングロードと時空管理局は取っておきたいから。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札1 LP800

FGD モンスター1 伏せ1 手札4 LP1100

 

「ドロー! 未来融合-フューチャーフュージョンのカウンターが一つ進む」

 

未来融合0→1

 

「手札のタイダルの効果。このカードとブリザード・ドラゴンを墓地に送りデッキから神竜アポカリプスを墓地に送る」

 

神竜アポカリプスか。同じ神竜と名のつくラグナロクと攻守、属性が対となるモンスターだ。

 

龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)を発動!」

 

ッツ! 一ターン早くアイツが来るか。しかも次のターンにはもう一枚同じ奴が並ぶ。これは厳しくなってきたぞ・・・・。

 

「墓地のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン、アポカリプス、テンペスト、八俣大蛇、モンタージュ・ドラゴンをゲームから除外して我の分身、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)!」

 

混沌空間5→10

A5000・D5000

 

火・金・闇・水・黒鐵の五つの首を持った究極のドラゴン。その首一つだけでも尋常じゃない力が溢れ出ていると言うのに、それが五体。しかもプレイヤーとは言え本物のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)がいるので、首は十体にもなる。

 

「来たか、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)・・・・」

「テンペストの効果でデッキから真紅眼の飛竜(レッドアイズ・ワイバーン)を手札に加える。そして混沌空間のカウンターを10取り除き、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚」

 

混沌空間10→0

A2800・D2400

 

コイツは一体何回レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを出せば気がすむんだ。いくらドラゴン族の中で一番優秀なカードとは言え、いくらなんでも出し過ぎだろう。

 

「効果で墓地のヴォルテールを特殊召喚する。・・・・ムッ、何故だ? 召喚出来んぞ?」

「追加されたヴォルテールの効果だ。そのカードは自分フィールド上にキャロかエリオが存在しない場合、召喚する事が出来ない」

「チッ、面倒な。まあいい。ならばホワイトナイツを特殊召喚する!」

 

A3000・D2500

 

「バトル! ホワイトナイツでフェイトを攻撃!」

「攻撃宣言時永続罠、存在しない者を発動。ライフが1000以下の時発動可能。その効果でフェイトさんを生贄に、降雷皇フェイトを特殊召喚する」

 

時空管理局1→2

A4000・D4000

 

先程までフェイトさんが居た所に降り注ぐ雷の滝。本来なら一秒も経たない内に消える筈の雷だが、数秒間ずっと一点に降り注ぎ、バチバチバチと空気中の電気を混乱させる。F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)に負けずとも劣らない程の圧倒的な威圧感。雷の中に居る幻魔に睨まれたのかホワイトナイツはビクッとたじろいでフィールドに戻る。

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)でエリオを攻撃! ファイブ・ゴッド・バースト!」

 

A5000 VS A3500

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の五つの口から放たれた、火、水、土、風、闇のエネルギー。そのエネルギーはエリオもろともフリードを破壊する。その五つのエネルギーはエリオ達に貫通して俺に向かってくるが、一匹の狼によりその進行は止まった。

 

「攻撃は通す。だが手札のザフィーラの効果発動! 手札のこのカードを捨て、戦闘ダメージを0にする。その後デッキから一枚ドロー! いつも助かるよ」

『守護獣の務めを果たしたまでだ』

「相変わらずクールだね~。破壊された竜を駆る騎士エリオの効果発動。このカードが破壊された時、墓地のエリオを手札に加える事ができる」

「カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札2 LP800

FGD モンスター3 伏せ3 手札1 LP1100

 

「ドロー! ドローしたティアナさんを特殊召喚!」

 

LC時空管理局2→3

A1200・D1000

 

「ティアナさんの効果発動。時空管理局のLCを一つ取り除き、墓地のアインスをゲームから除外し、同名トークンを特殊召喚」

 

LC時空管理局3→2→3

AD0

 

「そして手札のエリオの効果。このカードを墓地に送り、墓地のはやてを手札に加える。ティアナさんを生贄にはやてを召喚」

 

LCはやて1

A2000・D1700

 

「場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

LCはやて3

AD2800

 

どこが上か、どこが下か、右か、左か、全く分からないこの混沌(カオス)なフィールドを包み込むのは、夜。青の空間だったこのフィールドはいつの間にか夜に支配され、そこに光る一筋の光から王様はやてさんが現れた。

 

「王様はやてさんの効果発動! LCを一つ取り除き、ホワイトナイツの効果を無効にする!」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)!』』

 

LCはやて3→2

 

シュベルトクロイツの杖先から現れた棘が痛々しい黒い鎖。その鎖はホワイトナイツの氷の体に傷を付け、ギギギと黒板に爪を立てた様な歯が痒くなる音を出して行く。どうやらこの音は生身の人間でも精霊でもドラゴンでも王でも関係ないのか、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)も嫌そうにしている。

 

「これで終わりだ! バトル! 降雷皇フェイトでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを攻撃!」

「させるか! 罠発動、バーストブレス! レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを生贄に発動。生贄にしたモンスターの攻撃力より低い守備力を持つモンスターを全て破壊する!」

 

バーストブレス!? 本来なら相手フィールド上のカードを破壊するのが目的に使われるカードだが、自分のモンスターを破壊する事により戦闘ダメージを回避するつもりか!

 

「王様はやてさんの効果発動! このカードのLCを取り除き、破壊を無効にする」

 

LCはやて2→1

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは上空へ飛ぶと、フィールドに向かって闇の炎を吐きだした。その炎はあっという間に広がり、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)、降雷皇フェイト、ホワイトナイツ、王様はやてさんを呑み込むが、その炎で破壊されたのはホワイトナイツ一体のみ。

 

「バトルは中断。存在しない者の効果発動。王様はやてさんを生贄に、幻魔皇はやてを守備表示で特殊召喚する」

 

AD4000

 

「幻魔皇はやての効果発動。このカードが特殊召喚に成功した場合、墓地のLS二体を魔法・罠ゾーンに置く。なのはさんとキャロを魔法・罠ゾーンに置く」

 

フェイトAD4000→AD4300

はやてAD4000→AD4300

 

「ターンエンドだ」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札1 LP800

FGD モンスター1 伏せ2 手札1 LP1100

 

さっきのターンで決めれなかったのは痛い。次のターン二枚目のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が召喚される。確かに降雷皇フェイトがいるが、本当に安心していいのか。

 

「ドロー! このスタンバイフェイズ、未来融合-フューチャーフュージョンの効果でF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は特殊召喚される!」

 

A5000・D5000

 

攻守5000のモンスターが二体・・・・。本人もいれるとF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は三体並んでおり、もはや笑い声しか上がらないこの状況だ。

 

「幻魔皇はやての効果発動。相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、このカードの効果で魔法・罠ゾーンに置いているモンスターを、フィールドに置く事が出来る。なのはさんをモンスターゾーンに置く」

 

なのはA1000・D3000→A1300・D3300

 

「天使の施しを発動。デッキから三枚ドローして二枚捨てる。バトル! F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)でなのはを攻撃!」

「存在しない者の効果発動。なのはさんを生贄に、神炎皇なのはを特殊召喚する!」

 

SLCなのは1

なのはAD0→AD300

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は五つの口にそれぞれ異なるエネルギーを溜めたが、突如なのはさんを守る様に現れた火柱に発射するのを戸惑った。その炎はF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が苦手とする優しさや生命の力が込められていたからか、あるいは自らの力よりも圧倒的な破壊の力が込められていたからか。火柱が収まると共に現れたのは、神炎皇なのは。

 

「ならば幻魔皇はやてを攻撃する。攻撃宣言時永続罠、竜の逆鱗を発動。このカードがある限り、ドラゴン族は貫通効果を得る!」

「ッツ!?」

 

A5000 VS D4300

 

再び五つの異なるエネルギーを溜め、発射するF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)。その単純火力は三幻魔をも越え、更には五つの属性を纏っており、頑丈な防御を持つ幻魔皇はやてでも防ぐ事が出来ない。自らが作った棺桶を盾にしてF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の攻撃を耐えようとするが、その棺桶はミシミシと音を立て、次第には破壊された。

幻魔皇はやてを貫通した五つのエネルギーは、そのまま俺に向かってくる。

 

「ぐあああああッッ! あっ、あああああ!」

 

様々なエネルギーを込めているが、結局感じるのは死ぬほど痛い激痛だった。体全身がバラバラになって千切れていったのかと錯覚する痛みに、気を失った――が、ほとんど無意識状態で踏ん張ったのだろう。パッと目を開けると膝に手を当てて立っていた。

 

遊斗LP800→100

 

「我の分身の攻撃を受けても死なないとは、実に面白い。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札1 LP100

FGD モンスター2 伏せ4 手札0 LP1100

 

先程までくらってきたドラゴン達のダメージと大差ない筈だが、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の700のダメージはこのデュエルで一番強かった。次くらったらライフ以前に体が持ちそうにない。だがこれで。このターンで終わる!

 

「俺のターン、ドロー! ドローした事により神炎皇なのはにSLCが乗る!」

 

SLCなのは1→2

 

「これで終わりだぁぁあ! バトル! 神炎皇なのはでF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)を攻撃!」

 

神炎皇なのははウリアの外装をした杖を構え、ウリアの口の部分に桃色の魔力を集める。周囲の魔力や墓地のみんなが撒き散らしてくれた大量の魔力を一点に集中して集める、威力に関しては最強の技。それに炎熱の属性が付いたら、文字通り凄まじい火力となるだろう。

神炎皇なのはは杖を上空に上げ、振り下ろそうとした刹那――先程まで収束していた桃色の魔力はパンと音を立て弾けた。

 

『「なっ!?」』

「永続罠、スキルドレインの効果発動。ライフを1000払い、フィールドのモンスターの効果を無効にする」

 

FGD LP1100→100

A300 VS A5000

 

『そんな!』

「バトルは続行する! F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)! 幻魔を「速攻魔法アイゼンゲホイルを発動!」何!?」

「発動したターンのバトルフェイズをスキップする!」

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)と神炎皇なのはの間に突如現れた光の球体の様な物が、キーンとする高い音と眩い光を出して爆発する。その光に両者全て目を瞑り、その光と音が収まったのと同時に目を開くと、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)も神炎皇なのはも攻撃態勢を解いていた。

 

「命拾いしたな。だが次のターンで終わりだ」

「クッ、カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札0 LP100

FGD モンスター2 伏せ3 手札0 LP100

 

落ち着け。まだ俺には攻撃を防ぐ手段が残っている。奴は既に勝利を確信しているからか、油断している筈。そこに上手く付けこめば。

 

「我のターン、ドロー! さあ、これで終わりだ! バトル! 一枚目のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)で神炎皇なのはを攻撃!」

「墓地のフェイクシルエットの効果発動! このカードをとティアナさんをゲームから除外し、攻撃を無効にする!」

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の攻撃は本来の神炎皇なのはが居る場所とは全く別の方向へ発射され、そこにいた幻影の神炎皇なのはの姿を消滅させた。

 

混沌空間0→1

 

「だがもう一体のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)がいる。神炎皇なのはに再び攻撃!」

「それも止める! 永続罠発動、鋼の軛! 対象になったモンスターは攻撃できず、エンドフェイズ毎に攻守が1000下がる」

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の頑丈な体を貫通して串刺しにする青の魔力刃。先程までF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)しかいなかった場所は、針山地獄と化し、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)も攻撃する所では無い。

 

「な、何とか耐えきっ「馬鹿が。我のバトルはまだ続いておる」なっ!?」

「永続罠、リビングデッドの呼び声を発動。復活させるモンスターはなんでもいいが、そうだな。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを復活させる!」

 

A2800・D2400

 

う、嘘だろ? 墓地から発動するカードは無い。手札も0。リバースカードも無い。この状態で攻撃をくらったら俺は貫通ダメージをくらい、ライフは0になる。

まさか・・・・これで本当に終りになるのか? このまま負けたらソーラの鍵が奴の手に渡ってしまうかもしれない。そしたら地球が滅びる。いや、今の俺にはそんな事はどうでもよかった。素直に死にたくないと願う気持ちと、みんなが破滅の光の手に渡ってしまう事への恐怖。

 

『ッツ! 降参する! だから遊斗の命は助けてあげて!』

「まさか幻魔からそんな甘い言葉を聞くとは。だが駒とは言え、奴は我の同胞を殺した。奴が良く口にしていたのだろう? 闇のデュエルをするという事は死ぬのを覚悟する事だと。終りだ! レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンでこうげ――」

 

攻撃の宣言が下る、それは即ち死ぬのと同じだ。その恐怖に思わず目を瞑ったその時、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の声が止まった。数秒経っても攻撃宣言がされず、恐る恐る目を開けてみると、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が体中から血管を吹きだしていた。

 

「GYAAAAAAAA!!」

「ッツ!?」

 

空気の振動が肌で感じられ、鼓膜が破れそうな程の巨大な咆哮に、考えるより先に耳を手で塞いだ。手で塞いでも鼓膜に届いてくる叫び声を上げながら、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は五つの口からエネルギー弾をあちらこちらに撃ち始めた。

 

「な、なっ・・・・」

『どうなってるの?』

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は十秒弱の間ひたすら辺り一帯にエネルギーを発射しており、ソリッドビジョンも耐えきれず元居た森に戻る。そこはマイナスイオンを発していた森は無く、辺り一帯F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の攻撃で焼け野原になっていた。

 

「GYAAAA!! バ、バトル、フェイズを、しゅう、りょう・・・・」

 

その言葉が真か嘘かを確かめる為に、慌ててデュエルディスクに映っている現在のフェイズを確認する。現在のフェイズはメインフェイズ2。本当にバトルフェイズが終了されていた。

 

「グアアアアアア! ハァ、ハァ・・・・。ア、アイツ! 11年経った今でもまだ我の中で生きていたと言うのか!? そんな馬鹿な事があるはず無い! この身体に入ってからこの様な事、今まで一度も無かった!」

「じゃあさっきのは・・・・」

「カードを一枚伏せてターンエンド! さあ、貴様に攻撃する勇気があるのなら、攻撃して来い!」

 

FGD AD5000→AD4000

LC鋼の軛0→1

 

場 混沌空間

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札1 LP250

FGD モンスター2 伏せ5 手札0 LP100

 

「おっ、俺のターン・・・・」

 

だ、駄目だ。指が震えてドローが出来ない。今まで死ぬような痛みを受けたり、ビルの頂上から落下したりと、命掛けの事は何度もしたのに、何で今更死ぬのが怖いんだよ! 

・・・・ハハッ、今まで挑んできた精霊達に散々偉そうな事を言ってきた奴がこの様だ。本当に惨めだ・・・・。けど、ここでドローしなかったらみんなは破滅の光に操られ、宇宙の全てを破壊するのを一生送る。そんな事は絶対にさせない。

 

「動け、動け動け!」

『遊斗・・・・』

 

しかし指は動かない。口にはしているが、まるでデッキトップにあるこのカードだけが重りで作られたと錯覚するほどに重く、デッキトップのカードをドロー出来ない。F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は先程までの風格が全て無くなった下品な笑い声を上げるが、その笑い声は頭の中で響く声により掻き消された。

 

――へ~、これはユニークな状態だね

 

「ッツ!? 誰だ!?」

「恐怖のあまり幻まで見えたのか? 言っておくが貴様にサレンダーはさせん。嫌でもドローをし、そして大人しく攻撃するがいい。勇気が無ければそのままエンド宣言するのもありだ」

 

――僕の声は君しか聞こえていない。僕はカードの精霊。と言っても、僕のカードは存在しないんだけど。

 

存在しないカードだと?

 

――僕の力がカードに収まらないのか、あるいは僕は本来生まれる精霊では無かったのか。まあそんな事はどっちだっていい。ようやく僕は実体になれる。君、僕と取引しないか?

 

取引?

 

――そう。君にこのデュエルを勝たせてあげる。その変わりに三幻魔を僕にちょうだい。

 

三幻魔を!? そんな事が出来るか!

 

――なら君は負ける。あのセットカード、あれは魔法の筒(マジック・シリンダー)だ。効果は知ってるよね?

 

ッツ・・・・

 

――これはトロッコ問題の様に誰かが助かる訳ではないよ? 君は死に精霊は皆操られるか、三幻魔を僕に渡して勝利を掴むか二つに一つ。

 

・・・・分かった。力を寄越せ。

 

――えへへ~、交渉成立。

 

嬉しそうな声と共に、俺の頭の中にあるカードとその使い方がインプットされた。何も見聞きしないのに自分が知らない情報が入る感覚は、まるで人の領域を越えた様で、不気味だが何故か気持ちいい。

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)! 俺は絶対に勝つ! お前達破滅の光にこれ以上好き勝手はさせない!」

「面白い! やれるものならやってみろ!」

「俺のターン、ドロー! 存在しない者の効果発動。三回効果を使用したこのカードを墓地に送り、墓地の幻魔皇はやてを特殊召喚する!」

 

はやてAD4000→AD4300

 

「三幻魔を揃えたか。だがそれで何をやると言うのだ?」

「神炎皇なのは、降雷皇フェイト、幻魔皇はやて。すまない。勝利の為にお前達の力を貸してくれ」

『話の内容は私達にも伝わったよ』

『いいよ。私達は本来なら存在する筈のない者』

『ちょっとの間だけでもこうして戦えたのは、嬉しかった』

 

――僕は力を貰うだけで、三幻魔は死ぬ訳じゃない。今生の別れじゃ無いから安心して。

 

「ッツ、黙ってろ! 場の神炎皇なのは、降雷皇フェイト、幻魔皇はやてをゲームから除外する!」

「三幻魔をゲームから除外だと!?」

「七十二柱を纏いし最強の幻魔。その足で現世を踏み、混沌と勝利を我が手に収めよ! 降魔しろ! 混沌幻魔-フェルシュトラーフェ!」

 

LS混沌幻魔-フェルシュトラーフェ ☆12/闇/悪魔/A0・D0

フェルシュトラーフェAD0→300

 

普通の融合はフィールドに渦が現れその中にモンスターが入って行くが、このモンスターは違った。

青い空を隠す巨大な渦が上空に現れた。その渦の大きさはデュエルアカデミアの本校の数倍も大きく、俺やF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)以外にも、このデュエルアカデミアにいる全員がこの渦を見ているだろう。三幻魔は、それぞれ赤、青、黄色の魔力光を発しながら、その渦に吸い込まれるように飛んでいく。三体が渦に入ったと同時に、空気はおろか大陸も水も雲も揺るがす衝撃が走り、次の瞬間渦の中から黒い光を発する物体が俺のフィールドに降りてきた。

 

「なっ、なっ・・・・」

『へ~。僕に実態は無いから誰かの容姿を借りるのは分かっていたけど。どう? 可愛いかな?』

 

俺に背中を見せていた者がクルッと振り返ると、そこには幼い高町なのはの姿があった。しかし高町なのはとは何もかも違う。栗毛のツインテールの髪は、左の前髪に赤・青・黄色のメッシュが入っているロングヘアーになっており、サファイアの瞳も片方がルビーのオッドアイ。

着ている服は、ウエディングドレスの様だ。肩や首元が露出しており、スカートの部分はフレア型になっている。刺繍や縫い取りもしっかりあり、純白だったら幼いながらも良く似会っていただろう。そう、目の前の精霊が着ているドレスは白では無く黒。上半身や長いグローブには紫が混ざった黒のラインが入っており、その他は全て漆黒。

 

『ねぇ~。どうどう?』

「本当に勝たせてくれるんだな?」

『素直な感想を聞かせてくれたらね』

「・・・・可愛いよ」

 

そう言うと目の前の精霊は頬を少しだけ赤くさせ、嬉しそうに「えへへ」と笑みを浮かべる。全く知らない奴だったら無視するだろうが、なのはに似ているのが性質の悪い。

 

「・・・・さあF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)! いや、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)に取り付く破滅の光! これで最後だ! 速攻魔法ロングアーチサポートを発動! スキルドレインの効果を無効にする!」

「クッ!」

「そしてフェルシュトラーフェの効果発動! デッキトップを四枚墓地に送って発動する。その中にモンスターがいたら一体を選択。そのモンスターの属性によって異なる効果を得る」

 

デッキトップから四枚めくり、一枚ずつ墓地に送って行く。墓地へ送ったカードは紫天の書、フェイト、バルディッシュ、プロテクション。

 

「墓地へ送られたフェイトは光属性。フェルシュトラーフェの効果発動! 一ターンに一度相手フィールド上のカード二枚を選択し墓地に送る。俺が墓地に送るのは伏せカードと一枚のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)!」

「ん~と、えい!」

 

フェルシュトラーフェが右手を相手フィールドに向けた途端、手の平から雷を纏った悪魔と鎌を持った悪魔が現れ、雷で伏せカードを破壊し、鎌でF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の体を横に真っ二つにした。伏せはフェルシュトラーフェが言った通り、本当に魔法の筒(マジック・シリンダー)だった。あのまま攻撃していたら俺は負けていた。

 

「おのれぇぇ! だがそのモンスターの攻撃力はたったの300!」

「僕をなめてもらったら困るな~」

「言っただろ、これで最後だと。バトル! フェルシュトラーフェでF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)を攻撃! 攻撃宣言時フェルシュトラーフェの効果発動! 戦闘を行うモンスターの攻撃力分アップする!」

 

フェルシュトラーフェAD300→AD5300 VS A5000

 

「攻撃力5300!? 我のライフはっ!」

「ライフを100にしたのがミスだったな!」

死に絶える運命(アオス・シュテルベン)!」

 

フェルシュトラーフェは背中に六つの翼を生やし、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の頭上に飛ぶ。その翼は神炎皇なのはの赤、降雷皇フェイトの黄色、幻魔皇はやての青に輝いており、対となって並んでいる。

フェルシュトラーフェは頭上に手の平を上げ、そこに禍々しい黒い球体を作り出す。その球体を出して攻撃するかと思ったが、そうではなかった。黒い球体は地獄に繋がっているらしく、黒の球体の中から次々と悪魔が現れる。中にはゲームでもよく見るフェニックスや、実際にカードになっているベリアル、アスモデウス、ガープと言った悪魔まで現れた。

合計何体居るか分からないが、本当の地獄絵図となったこの空間を作り上げたのは、なのはの恰好をした精霊ただ一人。悪魔たちは火、水、土、風、闇、光、音、自分が司る属性や物を使いF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)を虐殺する。

 

「そんな、馬鹿な! 馬鹿な! 我は最強の王だぞ!」

「違う! 最強の王はお前じゃなくて本物のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)! 俺が勝った一番の理由だ!」

 

大量の上級悪魔の攻撃は、最強のドラゴンであるF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)でも耐えるのが不可能だった。F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の体は次第にピキピキと罅が入って行き、断末魔と共にF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は破壊された。悪魔の攻撃はまだ続き、プレイヤーであるF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)に攻撃する。

 

「ぐあああああああああ! 我が、我が勝っていた筈だぁああああ!」

 

FGD LP100→-200

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の悲鳴の中、トゥインとライフポイントが0になった場外れな音が耳に入った。F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が地面にぶつかると、その巨体故に地面が僅かに揺れる。刹那、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の体から白い光が一瞬だけ発せられ、パッと消えて行った。闇のデュエルで体が尋常じゃない程痛むが、そんな事を忘れ俺はF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の元へ走った。

 

「お前、いえ、あなたが本当のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)ですか?」

「・・・・あ、あ。我を、そして王達を救ってくれてありがとう。これを・・・・」

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)はどこからともなくアクセサリーを出して俺の目の前に浮かせた。そのアクセサリーはF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)と同じ火・水・地・風・闇の順に一定間隔で光る竜の爪。(闇が光る時は爪が黒くなる)

 

「これは?」

「それ・・は、お前・・・・やくに・・・・。さ・・え・・よ・・」

「おい!」

 

F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)は途切れ途切れの言葉を口にしながらこの世を去った。

五つの口は既にどこも動かず、巨大な瞳は一ミリも動かなくなり、その巨体は粒子の様にバラバラになって行き、何も無かったかのように消えた。命の恩人だからか、何故か無性にF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の死が悲しくなり、堪えなかったら泣いてしまいそうな程喉奥が痛い。

 

「ねえねえ僕の事も忘れないでよ」

「本当に、三幻魔を連れて行くのか?」

「僕が精霊の状態でいるのには必要不可欠だからね。僕はこの世界、ううん、この次元を旅する。もしまた会う機会があったら宜しくね」

「その時、敵か味方かは分からないがな」

「も~、意地悪」

 

フェルシュトラーフェはそう言って頬を膨らましながら、何らかの力を使って俺のデッキから存在しない者、融合デッキから三幻魔のカードを取り出し、自分の手中に収めた。

 

「じゃあね~」

 

ニコッと笑みを浮かべて手を数回振ると、フェルシュトラーフェの姿がスッと消え、この焼け野原に俺一人だけとなった。いや、一人じゃないか・・・・。

 

「これで終わったんだよな? みんな」

【【【【お疲れ様、遊斗】】】】

 

 

 




これで二期も終わりました。一・二話だけほのぼのパート的なのを書いて、三期に突入します。

後々のストーリーを考えながらストーリーを進めるのは難しいかった。

何気に初めての口上ですが、一週間後の自分が見たらベッドでゴロゴロすると思います(既に何回もしてる)
フェルシュトラーフェは、ドイツ語で死刑・絶滅するをイジって重ねました。ネーミングセンスが欲しい。


それと新オリカが多くて申し訳ありません。別に無くても構成は出来たんですが、ヴォルテールとフリードはこのタイミングで出すと前々から決めていたし、作者好みのエリオとキャロの進化オリカを頂いたので使いたかったので。(出さないとか言っておきながら)
スバル、ティアナもナメプにならない方法で進化させます。


同じオリカの件ですが、今後効果モンスターのオリカ採用率が下がります(融合は別です)
理由は低レベルが多すぎて出番が回ってこない。この作者が優しい金髪お嬢様のヴィクターですら最近出すべきか考えています。
とりあえず主要キャラのギン姉とアイシス、あとルールー関連で白天王だけは絶対。最悪ガリューカット


今回出たオリカ説明ですが、フリードは次回出番があった時に、フェルシュテローフェは大分先に説明しようと思います。




LSルーテシア・アルピーノ ☆3/闇/魔法使い/A500・D500
このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事が出来る。1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に戦闘によって破壊され自分の墓地に送られた「LS」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚するターン、自分はモンスターを通常召喚できない。
このカードはドロー以外の方法でデッキから手札に加える事はできない。


LS大地の守護者ヴォルテール ☆9/炎/ドラゴン/A3000・D3000
自分フィールド上に「キャロ」または「エリオ」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは召喚・特殊召喚・反転召喚出来ず、このカードは攻撃する事が出来ない。
このカードがフィールド上に存在する限り「キャロ」と名のつくカードは破壊されない。このカードを除く自分フィールド上のモンスターが攻撃対象になった時、攻撃表示のこのカードを守備表示にする事で、その攻撃を無効にする事が出来る。この効果は1ターンに2度使用できる。


ナガミツ様作


LS魔を狩る騎士エリオ ☆6/光/戦士/A2300・D1500
「LSエリオ・モンディアル」+「LSキャロ・ル・ルシエ」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。
(「融合」魔法カードは必要としない)。
1ターンに1度フィールド上のLCを1つ取り除きフィールド上の裏側表示カード1枚を選択して破壊する。この効果を使ったターンこのカードは攻撃できない。エンドフェイズ時このカードを融合デッキに戻し「LS竜を喚ぶ巫女キャロ」を融合デッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する事ができる。


竜を喚ぶ巫女キャロ ☆6/風/魔法使い/A1500・D2300
「エリオ・モンディアル」+「キャロ・ル・ルシエ」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。
(「融合」魔法カードは必要としない)。
1ターンに1度フィールド上のLCを1つ取り除くことで、自分の手札または墓地からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。また自分フィールド上のLCを任意の数取り除き、取り除いた数×2以下のレベルを持つ、レベル5以上の相手モンスターを選択し、コントロールを得る。
エンドフェイズ時このカードを融合デッキに戻し「LS魔を狩る騎士エリオ」を融合デッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する事ができる。



LS竜を駆る騎士エリオ ☆6/光/戦士/A2300・D1500
「LS魔を狩る騎士エリオ」+ ドラゴン族モンスター1体
フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。
(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードの攻撃力・守備力はこのカードの融合素材としたドラゴン族モンスターのレベル×300ポイントアップする。このカードが破壊された時、自分の墓地の「LSエリオ・モンディアル」を手札に加える事ができる。


無限書庫 通常魔法
自分の魔法・罠ゾーンに存在するカード1枚を選択して発動する。このカードと選択したカードをデッキに戻し、2枚ドローする。「無限書庫」の効果は1ターンに1度しか使用できない。


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第四十三話

二期の終わりという事で原作には無かったオリジナルの話です。
今回はちょっと特殊なデュエルをやるので、約束(タグ)を破ります。ストーリー上何の影響も無いので、楽しんで読んでいただけたら幸いです。


それと前回さらりと出しましたが、OCG化したらほぼ最低でも制限になるカードを出しましたね。後書きのオリカ紹介をお読みになった方ならお分かりになると思いますが、無限書庫ですね。
自分の表側の魔法・罠ゾーンのカード一枚と、自身をデッキに戻して二枚ドロー。(°Д°)ハァ?

まあこのカードを使ってワンキルやエクゾパーツを揃える事はしません。



追記
バルキリー・ナイトのレベル5以上戦士族を特殊召喚する効果でクライスを呼び、そのクライスの効果にチェーンして強欲な亀を発動しましたが、クライスが特殊召喚されたのはダメージステップなので、効果を発動することはできません。
デュエルの都合上このままにさせていただきます。


F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)との戦いが終わった後色々と大変だった。何が大変かって、まあ沢山あるが、一番大変だったのが焼け野原になった森の事だ。あの後学園全員があの焼け野原に駆けつけ、その場に居た俺に何があったのか問いただした。

俺は気を失って目が覚めたらこうなっていた。と言ってその場を何とか収め、その後校長室に集まった十代、ペガサス会長、鮫島校長の三人に事の全てを話した。三人の感想は三者三様。十代は単純に「大変だったな~」と言い、鮫島校長は「精霊の力とは恐ろしいですな~」と同じく単純な感想だったが、ペガサス会長だけが着眼点が違った。最後に俺に力を貸したフェルシュテローフェの事を考えていた。

 

「そのフェルシュテローフェと言うカードの事、少し調べて見ま~す。ひょっとしたら何か手掛かりがあるかもしれませ~ん」

「宜しくお願いします。良くも悪くも純粋な子だったんで心配なんです」

「あっ、そうだ遊斗。斎王と美寿知の事で進展があったんだ。斎王は無事に破滅の光から解放されて、美寿知も体が見つかってヴァーチャル空間から出てきた」

「本当か!? それは良かった・・・・」

 

こうやって俺達が会話してるって事はソーラも発射されなかったみたいだし、万事解決――いや、まだ精霊世界の戦争が終わった訳ではない。こうしてる間にも精霊が苦しんでいるのだ。

 

「校長先生、俺、この学校を止めようと思います」

「遊斗!? 何言ってるんだ!」

「先程の話を聞く限り、君は精霊達の戦争を止めたいのでしょう?」

「はい」

「しかしよく考えてみなさい。どうやってその精霊世界に行くのですか? あなたの父上、ジェイル・スカリエッティ博士ですら次元の事を把握しきれていない。それにこのデュエルアカデミアに留まっていた方が、王の仇打ちに来る精霊に会えるかもしれません」

「鮫島校長! 遊斗にまだ危ない事をさせるのかよ!」

 

校長先生の言う通り、ここに居た方が俺は危険なのかもしれない。破滅の光が乗っ取っていても王は王。王を慕っている精霊は沢山いるだろうし、仇打ちに来るかもしれない。

 

「十代。校長先生は俺の気持ちを分かってくれているんだ。俺は危険な事をしてでも精霊達の戦争を止めたい」

「けどっ!」

「分かってくれ、十代」

「ッツ・・・・」

 

十代は暫くの間拳をギュッと握り目を瞑った。何を考えているのか。俺は十代じゃないので分からないが、優しい十代の事だ。俺や精霊達(みんな)の心配をしてくれているのだろう。

数秒間目を瞑って何かを考えていた十代は、瞼を開けて俺の目を見つめながら口を開いた。

 

「分かった。けど危ないと思ったら俺を呼んでくれ。俺はお前の味方だ」

「おう。サンキューな。校長先生もありがとうございます。少し興奮していました」

「分かっています。十代君も言いましたが、危ないと思ったら自分を第一に考えて下さい。私もペガサス会長もあなたの味方です」

「はい」

 

 

 

 

その後、十代とリンドさんの事、世界の滅亡や精霊世界の戦争に比べたら大層小さな出来事だがGX大会の事も聞いた。

十代とリンドさんは俺と別れた後、操られたオージーン王子と会い、デュエルをしたらしい。オージーン王子はワンターンキルに特化したデッキで十代を苦しめたが、リンドさんの想いと十代のデュエルにより、元の自分を取り戻した。どうやらリンドさんは昔からオージーン王子の事が好きで、オージーン王子も同じ気持ちだったそうだ。

その後十代はオージーン王子から聞いた斎王の所に行くと、そこではエドと斎王がデュエルをしていた。エドは斎王を追いつめるものの、あと一歩の所で破れた。その後エドの想いを引き継いだ十代は斎王と戦って無事勝利を掴み、斎王に取り付く破滅の光を倒した。

そしてGX大会だが――

 

「まさかレイちゃんが参加してるなんてね」

「はい! 来年から十代様と遊斗さんの後輩です。宜しくお願いします」

「明日香。天敵の登場だな」

「ッツ! うるさいわね!」

 

そう、あの早乙女レイちゃんもGX大会に参加していたらしい。優勝候補だった亮さんは「もうこの大会には興味がない」と言って今まで集めたGXメダルを全部レイちゃんに上げ、同じく生き残っていた万丈目とGX大会優勝を賭けてデュエルをした。因みに十代が斎王とデュエルしている真っ最中に決勝戦が行われたので、十代を入れずにGX大会が終わった。

レイちゃんは惜しくも万丈目に負け、優勝者に与えられる、校長先生の力で出来る可能な限りの事を逃した。

レイちゃんが優勝して叶えたかった事は、飛び級してこの学校の生徒に入る事。それを知った校長先生は「そのレベルなら付いて行けるでしょう。あなたが望むなら入学を許可します」と言ってレイちゃんを入学させたらしい。

 

「天敵って? 明日香はレイが嫌いなのか?」

「違うわよ・・・・」

「そんな事よりどうだい天上院君。GX大会優勝者である僕と、今日のパーティーで踊らないかい?」

 

そしてGX大会優勝者である万丈目はこの通りに鼻が天狗の様に伸びている。指鉄砲を顔に当てて、カッコつけたつもりだろうが、そんな時代遅れなポーズで明日香がときめく訳が無く「遠慮するわ」とバッサリ断る。

 

「そ、そんな~。僕はGX優勝者だよ! 天上院君!」

「十代があの場にいたら違ったかもしれないわ」

「それに丸藤先輩のお兄さんとデュエルをしてたら、間違いなく負けてるドン」

「グッ・・・・。ま、万丈目サンダーッ!」

「悲しくなったら自分の名前叫ぶ癖、止めた方がいいぞ?」

 

 

 

 

GX大会が終わった日の夜。それは世界が救われた日でもあり、王を乗っ取っていた破滅の光が全滅した日でもある。

さっき万丈目が言った通り、GX大会優勝者である万丈目を祝うパーティーがデュエルアカデミアで行われていた。生徒達は皆タキシードやドレスを着ており、変わった行事が多いデュエルアカデミアとは思えないほど華やかな場になっていた。

そんな中俺と十代は、今日のデュエルで疲れていたので、女子に目を付けずひたすらご飯を食べていたのだが。

 

「「私と踊らない? 十代君」」

「「「遊斗先輩! 私と踊って下さい!」」」

「「はい?」」

 

最近俺はモテ期が来たのだろうか? あるいは女子同士で行われた罰ゲームだろうか?

急に女子に接近されると、どういう反応をしていいか分からなくなるのは俺だけではない。隣にいる十代もポカーンとした顔をして、皿と口を行き来していた手を止める。おそらく俺も同じような反応をしているだろう。

 

「わりぃ。俺今飯食ってるから」

 

その言葉と共に、十代をダンスに誘った女子達は泣きながら去って行った。

まあドレス姿の自分より食べ物が大事と言われたらショックだろう。俺も同じ立場だったら泣くかもしれない。そんな事に全く気付かない、意外と冷たい十代は、一回だけ首を傾げて再び料理を食べ始める。

 

「あ~、俺はその~」

 

どうやって断ろうかと思ったその時【お~!】と感心の声が上がる。俺も女の子達も、その声がした方へ向くと、その中心にこの世の者とは思えない程美しい少女がいた。

漆黒のパーティードレスに呑み込まれないほど幼くも美しい顔立ちは、おそらく少しだけ化粧をしているのだろう。首元、肩下、膝下は黒のドレスから出ており、粉雪の様な滑らかな肌が露出している。肩には白のショールが掛けられ、胸の前で大きなリボンが作られており、黒を僅かに包み込む白が何とも言えない色気を放つ。そして何より目立つのが、腰まで掛かる長い金色の髪。サラサラした金色の髪は彼女が歩く度に宙を舞い、彼女の着ている漆黒のドレスをどんな色より華やかにさせる。

 

「・・・・」

「どう、かな?」

 

その少女は紛れも無くフェイトだった。彼女の美しさか、子供とは思えないほど大人っぽく水面の様に落ち着いた雰囲気にか。先程まで俺を囲んでいた女の子達は、人の道を作りフェイトを通していた。

 

「一瞬フェイトだって気付かなかった。凄く、綺麗だ」

「ありがとう。遊斗もスーツ姿、とっても似合ってる。最近顔立ちが大人っぽくなったからかな?」

「その・・・・。そうかもな」

 

目の前の美しい少女に動揺してか声が上手く出ず、考えもせずにそう言っていた。先程まで食料を欲していた胃は驚きの余りに縮こまったのか、全く食欲が出ない。変わりに目の前の少女を周りに見せつけ、自分のものにしたいと言う願望が体中から出てくる。

 

「フェイト・・・・」

「な、なに?」

「もし良かったらカップルデュエルに出ないか?」

「・・・・え? デュエル?」

 

あれ? 俺何か変な事言ったか?

 

「あはは・・・・。うん、遊斗らしいや」

 

どうやら俺とフェイトの価値観は違うようだ。正確に言うと、この世界の住人と、フェイト達の住む世界の価値観が違うみたいだ。フェイトは苦笑しながらも、最後は俺らしいと言って、先程とは違う幼い笑みを浮かべる。

 

「いいよ。カップルデュエルに出ようか」

「ご、ごめんフェイト。ムードぶち壊しにして」

「気にしないで。言われてみれば、遊斗とデュエルするのは勿論、タッグデュエルもした事無かったし」

「おっとー! そこの二人がカップルデュエル挑戦するみたいなノーネ!」

 

突然会場を響かせた大音量のクロノス先生の声に、クロノス先生以外の会場の全員がビクッと肩を震わせた。

カップルデュエルは先に大会出場をエントリーするのではなく、その場で二人がカップルデュエルの参加を希望したら出場できる。まあパーティーの盛り上げ役の様なものだ。

 

「この二人に挑むカップルはいないノーネ!?」

「はいはーい! 私、早乙女レイと遊城十代様がやりまーす!」

「いい!? レイ、聞いてないぞ!?」

「十代! 参加するってどういう事なの!」

 

隣でご飯を食べていた十代は、どこからともなく現れたレイちゃんにより無理やり手を上げさせられ、レイちゃんとは反対に十代の隣に現れた明日香が激怒している。

その様子を笑って見ている人込みの中に、ポツンと無表情で突っ立っている万丈目が凄く可哀そうに見えた。

 

「決まったノーネ! カップルデュエル第一回戦は遊斗・スカリエッティ&フェイト・テスタロッサVS遊城十代&早乙女レイなノーネ! 因みにカップルデュエルはこちらで用意されたデッキでデュエルするノーネ! よりお互いの事を想っている方が勝利を掴めるデュエルなノーネ!」

「「「「うおおおお!」」」」

 

俺達四人はデュエルフィールドに上がると、そこに置いてあったデュエルディスクを手に付け、渡されたデッキをデュエルディスクに装着する。そう言えば生まれて初めて、LS以外のデッキでデュエルする事になる。けど知識ならこのフィールドに居る誰よりもあると自負している。フェイトのサポートもできるだろう。

 

「こうやってデュエルディスクを持つのは二回目だね」

「一度目はクリスティアの時か。あの時は助かったよ。デュエルディスクを構えるフェイト、カッコ良かった」

「ふふっ、いつもの遊斗の真似してただけだよ」

「おーと! ここでシニョール遊斗とシニョールフェイトは早くもラブラブっぷりを見せているノーネ!」

「ムムッ! 十代様こうしちゃいられません! この場で私に愛の告白をして下さい!」

「ん、んな無茶な・・・・」

「それではカップルデュエル第一回戦、開始ナノーネ!」

「「「「デュエル!」」」」

「先攻は俺だ。ドロー! なるほどね~」

 

六枚の手札を見る限り俺のデッキは魔力カウンター軸の魔法使い族デッキ。おそらくフェイトも似たようなコンセプトのデッキだろう。魔力カウンターをお互いで溜め、使っていくって事か。

 

「永続魔法、魔法族の結界を発動。見習い魔導師を通常召喚。効果で魔法族の結界にリリカル、じゃなくてMCを置く」

 

MC結界0→1

A400・D800

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗&フェイト モンスター1 伏せ2 手札3 LP8000 (TP遊斗)

 

本当はレディーファーストって事でフェイトかレイちゃんに一ターン目を上げたかったけど、フェイトは二回目のデュエルって事で緊張し、レイちゃんはいつもと違うデッキだから混乱していたから俺が先行を貰った。

 

「えっと、じゃあ俺がやるな。ドロー! うぇ~っと~、速攻魔法手札断札を発動。手札を二枚捨て二枚ドロー」

「ターンプレイヤーの俺が効果を受ける。二枚捨てて二枚ドロー」

「ライトロード・パラディンジェインを召喚」

 

A1800・D1200

 

ジェインか。ライトロードはシリーズもので、レイちゃんも同じライトロードを召喚したらこの二人のデッキはライトロードと言う事になるが、レアリティの高いデッキをカップルデュエルで出すか?

 

「バトル! ジェインで見習い魔導師を攻撃! ジェインは攻撃する時攻撃力を300上げる」

 

ジェインA1800→A2100 VS D800

 

「混乱しすぎだ十代。見習い魔導師はリクルーター。効果でデッキから水晶の占い師を裏守備で召喚する。更に魔法族の効果でMCを置く」

 

MC結界1→2

 

「十代様はこんな攻撃で終わりません! ね?」

「え、え~と。わりぃ、いつもと違うデッキで当てずっぽうだった。けど次からはこうはいかない。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、ジェインの効果でデッキトップを二枚墓地へ送る」

 

十代が墓地へ送ったカードを良く見ると、アーマー・ブレイカーのカードが見えた。もう一枚のカードは分からないが、十中八九戦士族デッキだろう。

 

遊斗&フェイト モンスター1 伏せ2 手札3 LP8000 (TP遊斗)

十代&レイ   モンスター1 伏せ1 手札3 LP8000 (TP十代)

 

「えっと、私のターン。ドロー! 確か水晶の占い師の効果は・・・・。水晶の占い師を反転召喚。効果でデッキトップ二枚をめくり、その中から一枚を選んで手札に加える。残りのカードはデッキの一番下に。私はクルセイダー・オブ・エンディミオンを手札に加えるね」

 

よし、やはりフェイトのデッキも魔力カウンター軸。しかもデュアルモンスターであるクルセイダー・オブ・エンディミオンを手札に加えた。これで念の為に伏せておいたリバースカードが上手く働く。

 

「クルセイダー・オブ・エンディミオンを召喚。そしてリバースカードオープン、装備魔法スーペルヴィス。デュアルモンスターに装備可能。装備したモンスターを再度召喚した状態にする」

 

A1900・D1200

 

「いいぞフェイト」

「遊斗が伏せてくれたおかげだよ。クルセイダー・オブ・エンディミオンの効果。一ターンに一度、フィールド上にMCを一つ置き、このターンのエンドフェイズ時まで攻撃力を600上げる。魔法族の結界にMCを置く」

 

MC結界2→3

エンディミオンA1900→A2500

 

「も、もう三つもカウンターが溜まっちゃった」

「バトル! クルセイダー・オブ・エンディミオンでジェインを攻撃!」

 

A2500 VS A1800

 

クルセイダー・オブ・エンディミオンは右腕から緑色の球体を出し、ジェインに放つ。攻撃力が上がったクルセイダー・オブ・エンディミオンの攻撃は上級魔法使いにも匹敵する為、攻撃力1800のジェインは防ぐ事が出来ずに破壊された。

 

「ッツ~。先手を取られたか」

 

十代&レイLP8000→7300

 

「水晶の占い師でダイレクトアタック」

 

A100

 

十代&レイLP7300→7200

 

「カードを一枚伏せて「フェイト、結界は使っておけ」いいの?」

「お前の為に出したカードだからな」

「分かった。魔法族の結界の効果。水晶の占い師とこのカードを墓地に送って三枚ドローする。もう二枚カードを伏せてターンエンド」

 

エンディミオンA2500→A1900

 

遊斗&フェイト モンスター1 伏せ4 手札5 LP8000 (TPフェイト)

十代&レイ   モンスター0 伏せ1 手札4 LP7200 (TP十代)

 

「さっきから二人ばっかり。私だって十代様と! 私のターン、ドロー! このスタンバイフェイズに、墓地の不死武士を特殊召喚!」

 

A1200・D600

 

ジェインの効果で墓地に送られていたもう一枚のカードは不死武士だったか。これで間違いなく十代とレイちゃんのデッキは戦士。しかしいつ見ても、血だらけで弓が体に刺さったままの落ち武者は恐ろしい。

 

「ぜ、全然可愛くない・・・・。バルキリー・ナイトを召喚!」

 

A1900・D1200

 

紅の兜と鎧を着た女剣士。コマンド・ナイトと攻守が入れ替わっており、攻撃対象を制限する効果もコマンド・ナイトとは逆だ。攻撃力1900と優秀で、二つの効果を持っているから使い勝手はいいだろう。

 

「装備魔法最強の盾を発動。戦士族モンスターに装備可能。攻撃表示モンスターに装備した場合、装備モンスターの攻撃力は守備力分アップする」

 

バルキリー・ナイトA1900→A3100

 

「二枚で攻撃力3100か」

「さっきのお返しだよ。バトル! バルキリー・ナイトでクルセイダー・オブ・エンディミオンを攻撃! 攻撃宣言時十代様が伏せてくれたリバースカードオープン。ゲットライド。墓地のユニオンモンスターをフィールドのモンスターに装備する事が出来る。墓地のアーマー・ブレイカーをバルキリー・ナイトに装備」

 

A3100 VS A1900

 

バルキリー・ナイトはクルセイダー・オブ・エンディミオンの魔力弾を最強の盾で防ぎながら接近し、元々持っていた神剣フェニックスブレードでクルセイダー・オブ・エンディミオンの体を切断した。

 

遊斗&フェイトLP8000→6800

 

「アーマー・ブレイカーの効果発動。装備モンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時、フィールド上のカード一枚を破壊できる。右側のリバースカードを破壊!」

 

破壊されたのは永続罠、漆黒のパワーストーン。発動後魔力カウンターを三つのせ、自身の魔力カウンターを他のカードに移す事が出来るカードだ。発動出来たら今よりもっとデッキを回せていただろうが、相手もそう簡単に勝たせてはくれない。

 

「スーペルヴィスの効果発動! 墓地のクルセイダー・オブ・エンディミオンを特殊召喚!」

「不死武士じゃ攻撃できないか」

「けどレイ。ナイスプレイだったぜ」

「十代様のおかげだよ~。カードを二枚伏せてターンエンド」

「こちら二人のコンビも負けていないノーネ!」

 

遊斗&フェイト モンスター1 伏せ2 手札5 LP6800 (TPフェイト)

十代&レイ   モンスター2 伏せ4 手札2 LP7200 (TPレイ)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

バルキリー・ナイトが存在する限りバルキリー・ナイト以外の戦士族モンスターを攻撃対象に出来ない。しかも攻撃力が3100まで上がっている。最強の盾が消えてもアーマード・ブレイカーと攻撃力1900のステータスは中々強力だ。だが――

 

「フェイトの伏せでそれも解決する。リバースカードオープン、二重召喚(デュアル・サモン)このターン俺は二回召喚が出来る。俺はクルセイダー・オブ・エンディミオンを再度召喚し、魔導戦士ブレイカーを通常召喚。効果で召喚成功時にMCを置く」

 

MCブレイカー1

ブレイカーA1600・D1000→A1900

 

「魔導戦士ブレイカーの効果発動! このカードのMCを取り除き、魔法・罠カードを破壊する。最強の盾を破壊! マナ・ブレイク!」

 

MCブレイカー1→0

ブレイカーA1900→A1600

バルキリー・ナイトA3100→A1900

 

魔導戦士ブレイカーは右手に持った剣に魔力を込めてルキリー・ナイトに向け剣を振った。すると魔力で出来た青い衝撃波が現れ、バルキリー・ナイトの持つ最強の盾を破壊した。

 

「クルセイダー・オブ・エンディミオンの効果発動。魔力カウンターを魔導戦士ブレイカーに乗せ、攻撃力を600アップ」

 

エンディミオンA1900→A2500

 

「再びブレイカーの効果を発動し、アーマード・ブレイカーを破壊!」

「私と十代様の愛の結晶が!」

「いや、ゲットライド使っただけだろ」

「バトル! クルセイダー・オブ・エンディミオンでバルキリー・ナイトを攻撃! 攻撃宣言時罠発動、マジシャンズ・サークル! 魔法使い族の攻撃宣言時に発動可能。お互いのプレイヤーはデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族を特殊召喚する。デッキから聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)を召喚」

 

A2000・D2300

 

「私のデッキには魔法使い族はいない」

「バトル続行!」

 

A2500 VS A1900

 

クルセイダー・オブ・エンディミオンは再び緑色の球体を作り出してバルキリー・ナイトに発射した。最強の盾が無くなり、なお且つ効果を使って攻撃力が上がったクルセイダー・オブ・エンディミオン。どっちが勝つかは一目瞭然だ。

 

十代&レイLP7200→6600

 

「クッ。けどバルキリー・ナイトの効果発動。戦闘で破壊されたこのカードとアーマード・ブレイカーをゲームから除外して、墓地のレベル5以上の戦士族を特殊召喚する。光帝クライスを特殊召喚!」

 

A2400・D1000

 

黄金に輝く鎧にマントを着た帝。普通の帝と違いコンボデッキに入る変わった帝だが、どこかの雷帝や地帝と違い、帝の名を名乗るのに相応しい優秀な効果を持っている。手札断札の時かジェインの時に墓地へ送られたカードだろう。十代が墓地へ送ったカードを上手く使うとはレイちゃんも中々やる。

 

「光帝クライスの効果発動。召喚・特殊召喚に成功した時、フィールド上に存在するカードを二枚まで選択して破壊できる。私は不死武士とセットカードを選択して破壊する。その効果にチェーンしてリバースカード強欲な瓶を発動してデッキから一枚ドロー」

 

光帝クライスは両手から光り輝くクリーム色の球を作り出し、十代とレイちゃんのフィールドの二枚のカードを破壊した。これだけだと何をやっていると思われるだろうが、ここからがクライスの本領発揮だ。

 

「破壊されたカードのコントローラーはデッキから破壊された枚数分カードをドロー出来る。私は二枚ドロー。ゴメンね十代様、伏せカードを繋げなくて」

「何言ってるんだ。上級モンスターを出して手札を補充したんだ。すげえプレイングだったぜ」

「これ以上攻撃は出来ない。光の護封剣を発動。発動から三ターン相手は攻撃できない。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

二人のフィールドにいくつもの光の剣が突き刺さり、相手モンスターの行動を制限する。護封剣もかなりレアなカードだけど、よくこんなデッキに入っているな。

 

遊斗&フェイト モンスター3 伏せ2 手札3 LP6800 (TP遊斗)

十代&レイ   モンスター1 伏せ1 手札5 LP6600 (TPレイ)

 

「じゃあ行くぜ、ドロー! おっ、すげえカードが入ってるな。光帝クライスを生贄にサイレント・ソードマンLV5を召喚」

 

A2300・D1000

 

「ブッ!? 何でLVモンスターがお前のデッキに入ってるんだよ!?」

「いや~、そんな事言われても」

 

万丈目が使うアームズ・ドラゴンと同じようにサイレント・ソードマンも同じLVモンスター。伝説のカードと称される程レアリティの高い超レアなカードで、滅多にお目に出来るカードじゃない。俺が知る限りでもLVモンスターを持っているのは万丈目と遊戯さんの二人だけ。

 

「それはワタシがこの学校に貸したデッキだからデ~ス」

 

聞き覚えのある独特なイントネーションと共に、先程までステージにいる俺達を当てていたスポットライトが、会場にいる一人の男性に集中した。そこにいたのは右手にワインを持ち、赤いタキシードを着た外国人男性がいた。

 

【【【ペガサス会長!?】】】

 

会場全員の声が重なると、ペガサス会長はひらひらと周りに手を振る。

 

「鮫島校長に今日のパーティーの事を聞きましター。ユニークなデュエルが行われるとの事だったので、試作品のデッキを貸したのデース」

「だ、だから光の護封剣も入っていたのか・・・・」

「さあ、デュエルを続けてくだサーイ」

「ええっと。そう言う訳だから行くぞ。サイレント・ソードマンLV5にライトイレイザーを装備。このカードは光属性戦士族に装備可能。装備モンスターと戦闘を行ったモンスターをダメージステップ終了時に除外する」

 

ライトイレイザーか。優秀なカードだけどテキストからは読み取りづらい効果処理を行うから面倒なんだ。ダメージステップ中にリバース効果などと同じタイミングにチェーンブロックを作り効果が発動され、相手モンスターを除外することのみが決定する。そしてその後ダメージステップ終了時、戦闘破壊されるモンスターが墓地へ送られる前にチェーンブロックを作らず除外する。

 

「バトル! サイレント・ソードマンLV5は相手の魔法カードの効果を受けない。よって光の護封剣は無意味だ! サイレント・ソードマンLV5でクルセイダー・オブ・エンディミオンを攻撃!」

 

A2300 VS A1900

 

サイレント・ソードマンLV5は光の護封剣の隙から突撃してきた。クルセイダー・オブ・エンディミオンは緑色の球体で迎撃しようとするが、サイレント・ソードマンLV5の剣により球体は掻き消され、ライトイレイザーの効果でその球体と同じようにフィールドから掻き消される。

 

遊斗&フェイトLP6800→6400

 

「ライトイレイザーの効果でクルセイダー・オブ・エンディミオンは除外される」

「十代様。私が伏せたカードを使って」

「いいのか?」

「私より十代様が使った方がいいだろうから」

「分かった。罠発動、針虫の巣窟。効果でデッキトップを五枚墓地へ送る。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

護封剣0→1

 

遊斗&フェイト モンスター2 伏せ2 手札3 LP6400 (TP遊斗)

十代&レイ   モンスター1 伏せ2 手札1 LP6600 (TP十代)

 

針虫の巣窟。墓地へ送ったカードが何なのか良く分からないが、十代の事だからいいカードが墓地へ落ちているだろう。さて、次はフェイトのターンだが、相手が除外カードを使ってくれたおかげで、これまた念の為に伏せていたカードが使える。

 

「私のターン、ドロー! フィールド魔法、魔法都市エンディミオンを発動」

 

魔法都市ミッドチルダとよく似た名前のフィールド魔法。しかし近未来的なミッドチルダとは全く違い、中世ヨーロッパの様な街並みに、王であるエンディミオンが居座っている城が街の中心にある。まっ、俺が倒してそのエンディミオンはいないんだけど。・・・・自分で言って辛くなるな。

 

「フィールドに魔法使い族がいる時、手札の稲荷火(いなりび)は特殊召喚できる」

 

A1500・D200

 

「魔導戦士ブレイカーと稲荷火を生贄に、氷の女王を召喚!」

 

A2900・D2100

 

白銀のドレスを着た魔法使いの女性。上半身は身体のラインに合わせ、スカートの部分はフレア状になっているドレスライン。右手には先が花弁の様に複数に広がっている氷でできた杖を持ち、髪は氷でできている。

 

「バトル! 氷の女王でサイレント・ソードマンLV5を攻撃!」

 

A2900 VS A2300

 

氷の女王は右手に持った杖をサイレント・ソードマンLV5に向け、杖から吹雪を起こす。魔法を無効化出来るサイレント・ソードマンLV5も、上級魔法使いの魔法は無効化出来なかったのか、吹雪に体温を奪われカチコチに凍りつく。だがサイレント・ソードマンLV5に装備されていたライトイレイザーの効果で、氷の女王は次元の彼方に飛ばされた。

 

十代&レイLP6600→6000

 

聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)でダイレクトアタック!」

 

A2000

 

「ぐっ。遊斗もフェイトも強ぇ」

 

十代&レイLP6000→4000

 

「伏せていた|D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》を発動。手札を一枚捨て、除外された氷の女王を特殊召喚」

 

MC魔法都市0→1

A2900・D2100

 

「そして聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)の効果発動。ミッド、じゃなくてエンディミオンのMCを取り除いて|D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》を手札に戻す」

「? なにやってんだ?」

 

MC魔法都市1→0

 

このままでは手札を一枚捨てて氷の女王を墓地へ送っただけ。ハンドアドバンテージ、情報アドバンテージ、カウンターの無駄使いと酷いプレイングに見えるが、氷の女王は破壊された時ある効果が使える。

 

「氷の女王の効果発動。このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地の魔法使い族モンスターが三体以上の場合、自分の墓地から魔法カード一枚を手札に加える事が出来る。私は魔法族の結界を手札に加え、そのまま発動する」

 

MC魔法都市0→1

 

「上手いぞフェイト」

「面白い使い方だな」

「十代様。感心しないで下さい」

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市エンディミオン

遊斗&フェイト モンスター1 伏せ4 手札1 LP6400 (TPフェイト)

十代&レイ   モンスター0 伏せ1 手札2 LP4000 (TP十代)

 

発動条件が難しいとはいえ、大量ドローが狙える魔法族の結界が再び発動された。ドロー出来るのは一人だけだが、タッグデュエルなので結界にカウンターが溜まるのが普通より早い。

 

「行きますよ。ドロー! 墓地の不死武士を特殊召喚!」

 

A1200・D600

 

「墓地のライトイレイザーを除外してマジック・ストライカーを特殊召喚」

 

A600・D200

 

「不死武士とマジック・ストライカーを生贄に、ギルフォード・ザ・レジェンドを召喚!」

 

A2600・D2000

 

巨大な大剣、装備魔法伝説の剣を持ち、黒いマントで身体を覆う伝説の戦士、ギルフォード・ザ・レジェンド。顔は何故か角が付いた仮面で隠しており、いい大人が何やっているんだ、と心の中で突っ込んでおく。最上級モンスターで攻撃力2600と低い気がするが効果が強力だ。

 

「ギルフォード・ザ・レジェンドの効果発動。このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の装備魔法を可能な限り戦士族モンスターに装備する事が出来る。勿論自身も戦士族。墓地の最強の盾と融合武器ムラサメブレードを装備!」

 

レジェンドA2600→A5400

 

「こ、攻撃力5400・・・・」

「大丈夫だフェイト。護封剣があるし、ライフだってある」

「へへっ。それはどうかな? って奴だよ遊斗先輩。十代様が私の為に伏せてくれたカードを発動」

 

私、の部分を会場にいる明日香をチラッと見ながら強調するレイちゃん。う~ん、この子は中々やり手と言うか、恋に一直線な子だな。いい意味でも悪い意味でも。

 

「速攻魔法ダブルサイクロン。融合武器ムラサメブレードと、光の護封剣を選択して発動。選択した二枚のカードを破壊する!」

 

MC魔法都市1→2

 

「なるほど。融合武器ムラサメブレードは装備カードとなった状態ではカード効果で破壊されない」

「おっと! シニョール十代とシニョールレイの二人も、コンビプレイで使いにくいダブルサイクロンを上手く使ったノーネ!」

 

ダブルサイクロンにより光の護封剣は破壊され、二人のフィールドに刺さっていた光の剣はバリンと音を立てて破壊された。

 

「バトル! ギルフォード・ザ・レジェンドで聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)を攻撃!」

 

A5400 VS A2000

 

ギルフォード・ザ・レジェンドは右手に融合武器ムラサメブレードを、左手に最強の盾を持ち、聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)に突進して右手の融合武器ムラサメブレードを振り下ろす。すると聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)の目の前にダイヤ型の黒い盾が現れ、聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)を攻撃から守った。

自分の足元にあったリバースカードが表になっており、チラッと隣のフェイトを見るとデュエルディスクのボタンを押した直後だった。

 

「罠発動、ガガガシールド。発動後魔法使い族モンスターの装備カードになる。装備モンスターは一ターンに二回まで戦闘・効果では破壊されない」

「けど戦闘ダメージは受けてもらうよ!」

 

ガガガシールドは聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)を守ったが、フェイトに向かう衝撃までは防げなかった。剣と盾がぶつかった際に発生した衝撃がフェイトを襲う。

 

「きゃっ!」

「よっと。大丈夫か?」

 

急いでフェイトの元まで走り、軽く後ろに吹き飛ばされた小さな体を支えると、フェイトの頭上から顔を出して安否を確認する。

 

「う、うん。ありがと。ソリッドビジョンって言っても衝撃が全くない訳じゃないんだね」

「11年やってる今でも衝撃が起こる判断基準が分からないんだがな。まっ、フェイトの可愛い声を聞けたから得した」

「あぅ・・・・」

「ム~、さっきからイチャイチャして! カードを三枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市エンディミオン

遊斗&フェイト モンスター1 伏せ2 手札2 LP3000 (TPフェイト)

十代&レイ   モンスター1 伏せ5 手札1 LP4000 (TPレイ)

 

さてと、次は俺のターン。攻撃力5400のモンスターを戦闘で破壊するのは、特別ステータスが高くない魔法使い族では無理だ。まあ5000以上になると、魔法使い族関係なく戦闘では厳しい。

ブレイカーの効果を使っても最強の盾を破壊したら攻撃力を3400までダウンさせる事が出来るが、その数値も魔法使い族の火力で突破するのは難しい。

 

「ドロー。モンスター・スロットを発動。墓地のモンスター一体を除外して発動。デッキから一枚ドローしてドローしたカードが除外したモンスターと同じレベルのモンスターだった場合、特殊召喚できる。氷の女王を除外してデッキから一枚ドロー。ドローしたカードは・・・・おっ、氷の女王。特殊召喚する」

 

MC魔法都市2→3

A2900・D2100

 

「すげぇな遊斗。初めて使うデッキなのに、デッキが応えてくれてる」

「お前もレイちゃんの事を考えながらやれば、デッキが応えてくれるかもしれないぞ?」

「さらりと“も”を付けてるシニョール遊斗! 私はこの二年彼を見てきましたーが、始めて見た一面ナノーネ!」

「フェイトがセットしていた|D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》を発動。手札を一枚捨て、氷の女王を特殊召喚」

 

MC魔法都市3→4

 

「この流れは・・・・」

聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)の効果発動。エンディミオンのMCを取り除き、|D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》を手札に戻す。破壊された氷の女王の効果で墓地の光の護封剣を手札に加える」

 

MC結界0→1 魔法都市4→3

 

「手札から魔導掌握を発動。魔法族の結界にMCを置き、同名カードを手札に加える」

 

MC魔法都市3→4 結界1→2

 

「光の護封剣を発動。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

MC魔法都市4→5

 

「「またぁ!?」」

 

自分達のフィールドに突き刺さる光の剣を前に、二人は声を合わせて嫌そうな顔をする。このまま光の護封剣を破壊しなかったらずっとフィールドに居続けるからな。何とかしないと厳しいぞ?

 

場 魔法都市エンディミオン

遊斗&フェイト モンスター2 伏せ4 手札2 LP3000 (TP遊斗)

十代&レイ   モンスター3 伏せ4 手札2 LP4000 (TPレイ)

 

「なんとかしないとな。俺のターン、ドロー! 罠発動、ゴブリンのやりくり上手。チェーンして非常食を発動してやりくり上手を墓地に送る。これで墓地のやりくり上手は二枚。三枚ドローして一枚をデッキの一番下に置く」

 

MC魔法都市5→6

十代&レイLP4000→5000

 

なるほど、もう一枚は十代が使った針虫の巣穴の時に墓地に送られていた。

そう考えるとタッグデュエルでゴブリンのやりくり上手って強いな。仮に墓地に二枚のやりくり上手がある状態で、ゴブリンのやりくり上手を四枚使ってやりくりターボをしたら二十八枚ドローして四枚デッキに戻す。つまり二十四枚ドローか。

そういうゲームじゃねぇから! って突っ込みたくなる枚数だ。

 

「お前が光の護封剣で攻撃を封じるなら俺も攻撃を止めるぜ。切り込み隊長を召喚。効果で手札のバルキリー・ナイトを特殊召喚」

 

A1200・D400

A1900・D1200

 

「えっと?」

 

さっきまで複雑なプレイングをしていたフェイトだが、今一十代のプレイが理解できていない様だ。困惑するフェイトの顔が可愛くて、頬の筋肉が落ちてデレデレしているのが自分でも分かる。頬を何回か揉んでいつもの顔に戻してフェイトに伝える。

 

「切り込み隊長が存在する場合他の戦士族はモンスターを攻撃対象にできないんだ。それはバルキリー・ナイトも同じ。つまり俺達は攻撃を封印されたんだ」

「あっ、切り込みロックって奴だね」

「そうそう。バルキリー・ナイトの登場でだいぶんやりやすくなった」

「光の護封剣で攻撃は出来ない。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

護封剣0→1

 

場 魔法都市エンディミオン

遊斗&フェイト モンスター2 伏せ4 手札2 LP3000 (TP遊斗)

十代&レイ   モンスター3 伏せ4 手札2 LP5000 (TPレイ)

 

「私のターン、ドロー! 伏せていた魔導掌握を発動。魔法族の結界にMCを置いて、デッキから同名カードを手札に加える」

 

MC魔法都市6→7

 

「マジシャンズ・ヴァルキリアを通常召喚。魔法族の結界でマジシャンズ・ヴァルキリアを墓地へ送って三枚ドロー。ゴメンね遊斗。二回も使っちゃって」

「良いって。変わりにサポートしてくれてるんだし」

 

それよりマジシャンズ・ヴァルキリアの使い方が凄く可哀そうだ。いや、まあ魔法使いの結界がある時点で下級の魔法使い族はこうなる運命だけどさ。召喚されてすぐコスト宣言されたマジシャンズ・ヴァルキリアがショボーンと肩を落としている様に見える。

 

「よしっ。装備魔法ビッグバン・シュートをバルキリー・ナイトに装備」

「ゲッ!? そのカードは!」

 

MC魔法都市7→8

バルキリー・ナイトA1900→A2300

 

聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)の効果。MCを取り除いてビッグバン・シュートを手札に加える。このカードがフィールドから離れた時、装備モンスターを除外する」

 

MC魔法都市8→7

 

「さっきから嫌らしいプレイングばっかり!」

「え、えっと」

「コントロール奪取使いが何を言う。これも立派な戦法だ」

「じゃあバトル。氷の女王で切り込み隊長を攻撃!」

 

A2900 VS A1200

 

氷の女王は杖先を切り込み隊長に向け、杖から氷の息吹を放つ。氷点下の吹雪では切り込み隊長の鎧も通用せず、体がカチンコチンに凍りついた。氷の女王は最後に凍りついた切り込み隊長を杖で殴り、切り込み隊長を破壊する。

 

十代&レイLP5000→3300

 

「速攻魔法ディメンション・マジックを発動! フィールドの氷の女王を生贄に、手札のサイバネティック・マジシャンを特殊召喚。ディメンション・マジックの効果でギルフォード・ザ・レジェンドを破壊!」

 

MC魔法都市7→8

A2400・D1000

 

表になったディメンション・マジックから現れた、棺の様な不気味な金色の箱。その箱から白いロングコートを着た金髪の魔導師、サイバネティック・マジシャンが飛びだし、それと同時に棺の中から先の尖った黒いチェーンがギルフォード・ザ・レジェンドに向かって発射され、伝説の戦士の体を鎖で穴を開けた。

 

「これで二人を守るモンスターはいない。サイバネティック・マジシャンでダイレクトアタック!」

「そうはさせない! 罠発動、トゥルース・リインフォース! デッキからマッシブ・ウォリアーを特殊召喚! このカードは一ターンに一度戦闘では破壊されない」

 

A600・D1200

 

サイバネティック・マジシャンの進行を阻止するかの如く現れたのは、戦士とは言いにくい石で作られた物体。四つの手と巨大な体を四本の足で支えており、四つの手は石でできた盾を持っている。

 

「ならサイバネティック・マジシャンと聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)でマッシブ・ウォリアーを攻撃!」

 

A2400 VS D1200

A2000 VS D1200

 

サイバネティック・マジシャンは左手に持った、先端が尖って持ち手に丸い水晶をはめた短剣にも杖にもなる便利な武器でマッシブ・ウォリアーを襲う。尖った杖先はマッシブ・ウォリアーが抱えている石の盾により防がれるが、その隙にマッシブ・ウォリアーの後方へ移動していた聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)が、表面に旧漢字を浮かべる白い球体をマッシブ・ウォリアーの体にぶつけ、石の体を砂へと返した。

 

「ごめん遊斗。倒せなかった」

「いや、いい動きだった。気にする事無い」

「ありがとう。じゃあカードを三枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ砂塵の大竜巻を発動! 光の護封剣を破壊し、手札のこのカードをセットする」

 

十代が表にした罠カードから巨大な竜巻が飛びだし、俺達の場にあった光の護封剣のカードに綺麗な放物線を浮かべながら進行し、光の護封剣の発生源であるカードを破壊した。これにより二人のフィールドに刺さっていた光の剣は粒子となり消滅して、モンスターに自由が戻った。

 

場 魔法都市エンディミオン

遊斗&フェイト モンスター2 伏せ4 手札2 LP3000 (TPフェイト)

十代&レイ   モンスター0 伏せ1 手札1 LP3300 (TP十代)

 

「ありがとうございます。十代様」

「ああ。俺は出来る事をやった。あとはお前に任せた」

「はい! 私のターン、ドロー! 墓地の不死武士の効果。このカードを特殊召喚」

 

A1200・D600

 

「鉄の騎士ギア・フリードを召喚!」

 

A1800・D1600

 

全身を鎧に包み込む事で強大すぎる力を防ぎこんだ戦士。黒の鎧には白のラインが入っており、武器となる剣は右手の鎧に付いている先が尖った剣。

バトルシティで活躍した城之内さんがよく使っていたカードだ。言っちゃ失礼だが、城之内さん自体がそこまで人気がある訳ではないから、特別人気が高い訳ではない。

 

「リバースカードオープン、拘束解除。フィールド上の鉄の騎士ギア・フリードを生贄に、デッキから剣聖-ネイキッド・ギア・フリードを特殊召喚できる」

 

MC魔法都市8→9

A2600・D2200

 

鎧と言う名の拘束を解いて現れた剣聖ギア・フリード。なんてカッコ良く言ったものの攻撃力は2600と中途半端。そこそこ優秀な効果を持っているが、単体ではバニラと同じで、通常召喚権+一枚を使ってまで出すのかと言われたら微妙である。

なんて散々言ったが、城之内さんが使っていたカードだし素直にカッコイイと思う。

 

「神剣-フェニックスブレードをネイキッド・ギア・フリードに装備。ネイキッド・ギア・フリードは装備カードを装備した時、相手フィールド上のモンスター一体を破壊する。サイバネティック・マジシャンを破壊!」

 

MC魔法都市9→10

 

ネイキッド・ギア・フリードは自分の前に現れた神剣-フェニックスブレードを両手で持って頭上に上げると、サイバネティック・マジシャンの方へ振り下ろした。すると神剣-フェニックスブレードの刀身から赤い衝撃波が発生され、サイバネティック・マジシャンは左手の杖で受け止めようとするが、杖諸とも真っ二つに切断される。

 

「まだだよ。大嵐を発動! フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する」

「うっ。罠発動、ダメージ・ダイエット。このターン受ける戦闘ダメージを半分にする。そして魔法都市エンディミオンの効果でこのカードのMCを取り除いて破壊を無効」

 

ダメージ・ダイエットのおかげで何とか耐える事が出来るが、魔法・罠ゾーンにあるカード全てが突如現れた大嵐により吹き飛ばされた。吹き飛ばされた裏側のカードは魔導掌握と・・・・あれ? あのカードを伏せていたのか。これまたトリッキーなカードが入っている。

 

「このターン決められないか。墓地の神剣-フェニックスブレードの効果。墓地のマッシブ・ウォリアーとマジック・ストライカーをゲームから除外して墓地のこのカードを手札に加えるよ。再び神剣-フェニックスブレードをネイキッド・ギア・フリードに装備。効果で聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)を破壊!」

 

今までずっと頑張って来てくれた聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)はネイキッド・ギア・フリードが作りだした衝撃波によって、サイバネティック・マジシャンと同じように真っ二つにされた。しかし聖なる解呪師(セイント・ディスエンチャンター)だが、MC一つで表側の魔法カードをバウンスする効果は予想以上に強い。実際にデュエルしてみて初めて分かる事もあるんだな。

 

MC魔法都市10→11

ネイキッドA2600→A2900

 

「バトル! 不死武士でダイレクトアタック!」

 

A1200

 

左腰に差した二本の刀を取り出し、生気の無い瞳でフェイトに突進してくる武士。前線で凛々しく戦い、時には最上級モンスターを破壊するフェイトだが、やはり女の子。体中に矢が刺さった死者に襲われるのは怖いらしく不死武士が突進と共に目をギュッと瞑る。

そんな恋人の行動を見過ごせる訳無く、フェイトと不死武士の間に立って不死武士の太刀を受けた。

 

遊斗&フェイトLP3000→2400

 

「大丈夫かフェイト?」

「え? ひょっとして遊斗が受けてくれた?」

「怖がってたからな。やっぱりフェイトでも怖いものは怖いんだな」

 

女の子共通の弱点である昆虫族ともアンデット族とも平然と戦っていたから、このくらいの大丈夫かと思っていたが意外な一面を見せてくれた。

俺の言葉が不服だったのか、フェイトは少し朱を帯びた頬を軽く膨らませる。

 

「私だって女の子だよ?」

「分かってるって」

「・・・・十代様ぁ~! 私も不死武士怖い~」

「さっきまで普通に命令してただろ・・・・」

「カップルデュエルですノ~デある程度はいいですが~、デュエルのペースが乱れるのはよくないノーネ」

 

それ以前に風紀が乱れるのを止めましょうよ、先生なんですから。いや、風紀を乱している俺が言うなって話だけど。

 

「む~。じゃあネイキッド・ギア・フリードでダイレクトアタック!」

 

A2900

遊斗&フェイトLP2400→950

 

「ダメージ・ダイエットがなかったら負けてたね」

「ああ、フェイトのおかげで勝利が見えてきた」

 

ネイキッド・ギア・フリードの攻撃アニメーションは効果と同じだったので、フェイトは特に怖がる様子も無くダイレクトアタックを受けた。やっぱり堂々としているフェイトは男よりもカッコ良く見えるが、オロオロしてたり落ち着いているフェイトは誰よりも可愛く綺麗に見える。

自分で言って重傷だな、これは。

 

「ターンエンド」

「エンドフェイズ破壊されたトイ・マジシャンの効果が発動」

「「トイ・マジシャン!?」」

「このカードは魔法・罠ゾーンにセットできるカード。このカードは相手のカード効果によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンのエンドフェイズ時に自分フィールド上に特殊召喚できる。来て、トイ・マジシャン」

 

A1600・D1500

 

これは十代もレイちゃんも予想していなかっただろう。パートナーである俺ですら予想していなかった。さっきのターン情報がリークされていたフェイトの手札は魔導圧縮とビッグバン・シュート。さっきまでの俺達のプレイから、フェイトはその二枚を伏せていると思ったが、万が一に備えてトイ・マジシャンをセットしていた。魔法・罠ゾーンが埋まりやすいタッグデュエルでは大胆なプレイングだ。

 

場 魔法都市エンディミオン

遊斗&フェイト モンスター1 伏せ0 手札2 LP950 (TPフェイト)

十代&レイ   モンスター2 伏せ1 手札0 LP3300 (TPレイ)

 

「俺のターン、ドロー! 十代とレイちゃんが魔法カードを沢山使ってくれたおかげでエンディミオンにカウンターが溜まった。魔法都市エンディミオンのMCを六つ取り除き、手札から神聖魔導王-エンディミオンを特殊召喚!」

 

MC魔法都市11→5

A2700・D1700

 

良くも悪くもコイツから始まった王達との戦い。まさか王との戦いが終わった日に、コイツをフィニッシャーにする事になるとは、世の中面白い。

 

「この効果で特殊召喚に成功した時、墓地の魔法カード一枚手札に加える。手札に加えるのはディメンション・マジック」

「そ、そのカードは・・・・」

「バトル! トイ・マジシャンで不死武士を攻撃!」

 

A1600 VS A1200

 

トイ・マジシャンは赤い宝石をはめた杖を、手首を回してクルクルと数回回転させる。するとトイ・マジシャンの周りに一筆書き出来る星が四つ現れ、その星は流星となって不死武士を襲った。見た目では不死武士が勝ちそうだったが、トイ・マジシャンは意外と強く、その放つ魔法も中々のものだ。

不死武士は流星に押しつぶされてバーンと破壊された。

 

十代&レイLP3300→2900

 

「そ、そんな~」

「速攻魔法ディメンション・マジックを発動。トイ・マジシャンを生贄に手札の魔導騎士ディフェンダーを特殊召喚!」

 

A1600・D2000

 

「そして効果でネイキッド・ギア・フリードを破壊!」

 

前にフェイトが使った時と同じように棺から先の尖った黒い鎖が飛びだし、ネイキッド・ギア・フリードの体に穴を開けた。

 

「これで終わり。魔導騎士ディフェンダーと神聖魔導王-エンディミオンでダイレクトアタック!」

 

A1600

A2700

 

魔導騎士ディフェンダーとエンディミオンは互いに持つ杖をクロスさせて魔法を一点に集中させる。お前達そんなに仲が良かったっけ? と心の中で突っ込みを入れている間に、ディフェンダーとエンディミオンの白と黒の魔法が発射され、十代とレイちゃんの体を数秒間呑み込んだ。

 

「きゃあああ!」

「うわあああ!」

 

十代&レイLP2900→-1400

 

「決まったノォォォーネ! 勝者は遊斗スカリエッティ&フェイト・テスタロッサペアナノーネ!」

【【【うおおおお!】】】

 

いつの間にかMCになっていたクロノス先生の声と共に会場全てが大歓声と大きな拍手に包まれた。突如鼓膜と空気を震わせる大音量にフェイトはビクッと肩を震わせるが、すぐに頬の筋肉を緩めて笑顔を作る。

 

「へへっ、ガッチャ。変わったデュエルだけど楽しかったぜ」

「ああ。お前も何だかんだでしっかり使えてたじゃないか」

「まあな。けどもう別のデッキは勘弁。頭が疲れる」

「ふふっ。普段頭を使わない十代には丁度いいんじゃないかな?」

「右に同じく」

「さ、さらりと酷い事言うなお前達・・・・」

 

十代のパートナーだったレイちゃんは先程から足を動かさずに肩を降ろしていた。好きな人と組むタッグデュエルを勝ちたい気持ちはよく分かる。故に落ち込む理由は、ひじょ~に大変よく分かる。

 

「レイちゃん。良いデュエルだった「一回・・・」え?」

「もう一回デュエルして! 私と十代様が一番ラブラブなんだから!」

「「ハァ?」」

「フフッ、遊斗がいいなら私は構わないよ」

「待ちなさい! 次は私の番よ!」

「十代! やはり今日こそは貴様を倒す!」

「シ、シニョール明日香、万丈目。勝手にステージに上らないで欲しいノーネ!」

「俺もフェイトちゃんとタッグデュエル組みたいドン! フェイトちゃん素敵だドン!」

「僕も組みたいッス!」

「お前等には絶対に組ません! フェイトと組んでいいのは俺だけだからな!」

 

こうしてデュエルアカデミア二年目の一大イベントであるGX大会が幕を閉じた。

楽しいデュエルアカデミアの生活二年目ももうすぐ終り、一つ上の先輩達は卒業して俺達は三年生になる。ここでの学校生活は今までのどんな時間よりも濃くて、けれども時間が経つのが速い。この生活も後一年しか無いと思うととても寂しいが、いつかは別れが来るものだ。

GX大会が終わってから数ヵ月後。先輩達は卒業し、俺達は高校生活最後の夏休みを迎えた。

 

 

 




気が付いたらロリVSロリになっていた件について。明日香ぁ・・万丈目ぇ・・
一応カップルデュエルと言う事でしたがイチャイチャ・・・・出来てたのか?


今回のデュエルはLSでは無いデュエル。オリカ無しのデュエルもやっぱり面白いですね。
初のオリカ無しのデュエルだったので、王道の戦士族と魔法使い族を使ってみました。
それと本文にもチラッと書きましたが聖なる解呪師が中々強い。これはこの話を書いてて初めて気付きました。勿論小説なので100%コンボが決まるから強いんですけど、魔法バウンスって侮れませんね。


焼け野原はペガサス会長が元通りにしてくれます。
さすがペガサス会長! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!


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二期の新オリカ

二期に出たオリカの整理を。
フリードとフェルシュトラーフェは出番があった回の後書きに乗せますので、今後のオリカ整理回に出す予定です。



LS 星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)☆4/闇/魔法使い/A800・D1500

このカードが戦闘を行う場合、ダメージステップの間このカードの攻撃力は戦闘を行なう相手モンスターのレベル×300ポイントアップする。

また、このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードをゲームから除外し、次の自分のターンのバトルフェイズ開始時に表側攻撃表示で自分フィールド上に戻す。

このカードが戦闘を行う場合、相手プレイヤーが受ける戦闘ダメージは0になる。

 

 

LS 雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー) ☆4/闇/魔法使い/A1900・D400

このカードが召喚に成功したとき、このカードにLCを1つ乗せる。

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードに乗っているLCを任意の数取り除き、取り除いた数と同じ枚数だけデッキからレベル4以下の「LS」と名のついたモンスターを特殊召喚できる。

この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃することができない。

 

 

LS 闇統べる王(ロード・ディアーチェ) ☆5/闇/魔法使い/A2100・D1600

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ乗せる。

1ターンに1度、このカードのLCを1つ取り除き、自分フィールド上の「LS」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は、そのモンスター以外のフィールド上の「LS」と名のついたモンスターの攻撃力の合計分アップする。

「シュテル」「レヴィ」「ユーリ」と名のつくモンスターを選択する場合のみ、この効果は自分のバトルフェイズ中に発動できる。

この効果を発動するターン、選択したモンスター以外のモンスターは攻撃できない。

 

 

LS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァイン ☆10/闇/魔法使い/A4000・D4000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上の「LS」と名のついたモンスターを含むモンスター3体を生贄にした場合のみ特殊召喚できる。

このカードは破壊されない。

このカードはフィールド上に「紫天の書」を装備したモンスターが存在しない場合、攻撃できない。

 

 

LSリオ・ウェズリー ☆4/光/魔法使い/A1700・D500

自分の墓地の「LS」と名のつくモンスター1体をゲームから除外して発動できる。

このカードの攻撃力は相手のエンドフェイズ時まで100ポイントアップする。この効果で光属性または火属性をゲームから除外した場合、上昇する数値は400になる。

この効果は1ターンに2度まで使用できる。

このカードが手札から墓地へ送られた時、次の自分のスタンバイフェイズ時、墓地のこのカードを手札に戻す。この効果はデュエル中に1度しか使用できない。

 

 

LSコロナ・ティミル ☆4/光/魔法使い/A500・D1700

1ターンに1度手札を1枚墓地に送ることで、デッキから「LSゴーレム・ゴライアス」を特殊召喚できる。また、墓地に存在するこのカードが「LS」と名のつくモンスターの効果によってゲームから除外された時、自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

LSゴーレム・ゴライアス ☆6/地/岩石/A2300・D2300

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上のモンスターが攻撃対象に選択された時、このカードに攻撃対象を変更することができる。

フィールド上に存在するこのカードが戦闘で破壊され墓地に送られた場合、次のターンのスタンバイフェイズ時にライフを500払い、このカードを墓地から自分フィールド上に特殊召喚する。この効果は自分フィールド上に「LSコロナ・ティミル」が存在しない場合発動できない。

この効果によって特殊召喚に成功した時、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。

 

 

LSシスター-シャンテ・アピニオン ☆3/炎/魔法使い/A1400・D500

このカードが破壊され墓地に送られた時、このカードをデッキに戻す。このカードの効果で墓地に存在するこのカードがデッキに戻った場合、デッキから「LSシスター-シャンテ・アピニオン」以外の「LS」と名のつくモンスターを特殊召喚する事ができる。

このカードの戦闘によって発生する自分へのダメージは0になる。

 

 

LSシスター-シャッハ・ヌエラ ☆4/炎/魔法使い/A1800・D1000

このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。このカードのLCを2つ取り除く事で、デッキから「LSシスター-シャンテ・アピニオン」を特殊召喚する。また「聖王教会」がフィールドにある時、取り除くLCは1つでよい。

このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。この時、このカードが相手ライフに与える戦闘ダメージは半分になる。

 

 

LSアリサ・バニングス ☆3/炎/魔法使い/A500・D500

このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠ゾーンに表側表示で置く事ができる。

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、選択したモンスターにLCを1つ置く。

また、自分フィールド上に「LS月村すずか」が表側表示で存在する場合、選択したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

LS月村すずか ☆3/水/魔法使い/A500・D500

このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠ゾーンに表側表示で置く事ができる。

1ターンに1度自分フィールド上のLC1つを移動させる事ができる。

また、自分フィールド上に「LSアリサ・バニングス」が表側表示で存在する場合、相手フィールド上のモンスター1体を選択し発動できる。このカードに乗ったLCを1つ取り除き、選択したモンスターは次の相手のエンドフェイズ時まで攻撃宣言をする事ができず、表示形式を変更することもできない。この効果は1ターンに1度しか発動できない。

 

 

LS高町ヴィヴィオ ☆3/光/魔法使い/A1300・D1500

自分フィールド上に「なのは」または「フェイト」と名のつくモンスターが表側表示で存在する場合、自分フィールド上のLCを1つ取り除き、手札から特殊召喚できる。

 

 

LSセイクリッド・ハート ☆2/光/機械/A500・D500

自分フィールド上に「LS高町ヴィヴィオ」が表側表示で存在する場合、手札から特殊召喚できる。このカードが召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時、自分フィールド上のカードを1枚選択する。選択したカードにLCを1つ乗せる。

 

 

LSルーテシア・アルピーノ ☆3 /闇/魔法使い/A500・D500

このカードは魔法カード扱いとして手札から魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事が出来る。1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に戦闘によって破壊され自分の墓地に送られた「LS」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚するターン、自分はモンスターを通常召喚できない。

このカードはドロー以外の方法でデッキから手札に加える事はできない。

 

 

LS大地の守護者ヴォルテール ☆9/炎/ドラゴン/A3000・D3000

自分フィールド上に「キャロ」または「エリオ」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは召喚・特殊召喚・反転召喚出来ず、このカードは攻撃する事が出来ない。

このカードがフィールド上に存在する限り「キャロ」と名のつくカードは破壊されない。このカードを除く自分フィールド上のモンスターが攻撃対象になった時、攻撃表示のこのカードを守備表示にする事で、その攻撃を無効にする事が出来る。この効果は1ターンに2度使用できる。

 

 

LSカウンターヒッター-高町ヴィヴィオ ☆6/光/魔法使い/A2300・D2000

「LS高町ヴィヴィオ」+「LSセイクリッド・ハート」

自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。

(「融合」のカードは必要としない)

このカードは戦闘では破壊されない。

このカードが攻撃を受けたダメージステップ終了時発動できる。攻撃したモンスターはもう1度だけこのカードに攻撃しなければならない。この効果で戦闘を行う時、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、このカードにLCを1つ置く。

相手のバトルフェイズ開始時、このカードのLCを1つ取り除き発動できる。相手フィールド上の攻撃表示モンスターを1体選択し、選択したモンスターはこのカードを攻撃しなくてはならない。

 

 

LS魔を狩る騎士エリオ ☆6/光/戦士/A2300・D1500

「LSエリオ・モンディアル」+「LSキャロ・ル・ルシエ」

自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。

(「融合」魔法カードは必要としない)。

1ターンに1度フィールド上のLCを1つ取り除きフィールド上の裏側表示カード1枚を選択して破壊する。この効果を使ったターンこのカードは攻撃できない。エンドフェイズ時このカードを融合デッキに戻し「LS竜を喚ぶ巫女キャロ」を融合デッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する事ができる。

 

 

竜を喚ぶ巫女キャロ ☆6/風/魔法使い/A1500・D2300

「エリオ・モンディアル」+「キャロ・ル・ルシエ」

自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。

(「融合」魔法カードは必要としない)。

1ターンに1度フィールド上のLCを1つ取り除くことで、自分の手札または墓地からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。また自分フィールド上のLCを任意の数取り除き、取り除いた数×2以下のレベルを持つ、レベル5以上の相手モンスターを選択し、コントロールを得る。

エンドフェイズ時このカードを融合デッキに戻し「LS魔を狩る騎士エリオ」を融合デッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する事ができる。

 

 

LS竜を駆る騎士エリオ ☆6/光/戦士/A2300・D1500

「LS魔を狩る騎士エリオ」+ ドラゴン族モンスター1体

フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。

(「融合」魔法カードは必要としない)。

このカードの攻撃力・守備力はこのカードの融合素材としたドラゴン族モンスターのレベル×300ポイントアップする。このカードが破壊された時、自分の墓地の「LSエリオ・モンディアル」を手札に加える事ができる。

 

 

LS神炎皇なのは ☆11/炎/炎族/A0・D0

このカードは「存在しない者」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。

このカードが特殊召喚に成功した時、このカードにスターライトカウンターを1つ乗せる。

プレイヤーがカードをドローする度に、このカードにスターライトカウンターを1つ置く。

1ターンに1度、このカードに乗っているスターライトカウンターを任意の数取り除き発動する。取り除いたスターライトカウンターの数だけ、墓地の「LS」と名のつくモンスターをデッキに戻し、このターンデッキに戻したモンスターのレベル合計×500ポイント攻撃力がアップする。この効果は相手のターンでも発動する事ができる。

 

 

LS降雷皇フェイト ☆11/光/雷族/A4000・D4000

このカードは「存在しない者」またはこのカードの効果でのみ特殊召喚する事ができる。

このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

このカードが破壊された時、自分はデッキから1枚ドローし、このターン自分が受けるダメージは0になる。

このカードが破壊された次のターンのスタンバイフェイズ時、手札の「LS」と名のつくモンスターを1枚捨てる事で、このカードを墓地から特殊召喚する。カード効果で破壊された場合、自分フィールド上に「存在しない者」が存在しない場合、この効果は発動できない。

この効果で特殊召喚したこのカードが戦闘行う場合、相手プレイヤーが受ける戦闘ダメージは0になる。

 

 

LS幻魔皇はやて ☆11/闇/悪魔族/A4000・D4000

このカードは「存在しない者」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。

このカードが特殊召喚に成功した時、墓地の「LS」と名のつくモンスター2体を選択し、魔法・罠ゾーンに置く。

1ターンに1度、相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、このカードの効果で魔法・罠ゾーンに置かれているカード1枚を選択し、自分フィールド上に任意の表示形式で置く事ができる。

 

 

紫天の書 装備魔法

「LS闇統べる王」にのみ装備可能。

装備されたモンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップする。

相手フィールド上のモンスターが破壊される度に、破壊されたモンスターと同じ数のLCをこのカードに乗せる。

このカードがカードの効果で破壊される場合、代わりにこのカードに乗っているLCを1つ取り除くことができる。

このカードに乗ったLCを3つ取り除くことで、デッキ、墓地から「LS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァイン」を一枚手札に加える事ができる。

 

 

アイゼンゲホイル 速攻魔法

フィールドに「LS」と付いたモンスターがいる時のみ発動できる。

発動したターンのバトルフェイズをスキップする。

 

 

ロングアーチ・サポート 速攻魔法

自分フィールド上に「LS」と名のついたモンスターが存在する時発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター・装備魔法・フィールド魔法・永続魔法・永続罠カード一枚を選択し、選択したカードの効果をエンドフェイズまで無効にする。

 

 

聖王教会 フィールド魔法

フィールド上に表側表示で存在する「LSシスター」または「聖王」と名のつくモンスターの攻撃力・守備力を500ポイントアップする。

このカードがフィールド上に存在する時「聖王」と名のつくモンスターは、エンドフェイズ時に融合デッキに戻る効果を発動しなくてもよい。

 

 

 

無限書庫 通常魔法

自分の魔法・罠ゾーンに存在するカード1枚を選択して発動する。このカードと選択したカードをデッキに戻し、2枚ドローする。「無限書庫」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

ストラグル・バインド 通常罠

相手フィールド上に元々の攻撃力よりも高い攻撃力のモンスターがいる場合、そのモンスターを選択して発動することができる。そのモンスターの攻撃力を元々の攻撃力に戻し、次の自分のターンのエンドフェイズまでこのカード以外のカードの効果を受けなくする。

 

 

幸運の追い風 通常罠

自分フィールド上に「八神はやて」と名のつくモンスターが存在する時、ライフを半分払い、手札を1枚墓地へ送って発動できる。

自分の手札、デッキ、墓地から「LS祝福の風リインフォースⅠ(アインス)」を召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

 

存在しない者 永続罠

自分のライフポイントが1000以下の場合発動できる。

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する、レベル8以上の「LS」と名のつくモンスターを選択して発動する。選択したモンスターを生贄に捧げ、生贄に捧げたモンスターのカード名含まれるレベル11のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。

この効果を3回使用したこのカードを墓地に送る事で、墓地に存在するレベル11の「LS」と名のつくモンスターを、召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

 

ウイングロード 永続罠

自分のドローフェイズにドローしたカードが「LS」と名のついたモンスターカードだった場合、そのカードを相手に見せることで自分フィールド上に特殊召喚することができる。

また「LS」と名のつくモンスターカードが、ドロー以外のカードの効果によって自分のデッキから手札に加わった場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

このカードがフィールド上から離れた時、自分は手札を一枚捨てなければならない。

 

 




モンスター15枚
融合7枚
魔法5枚
罠5枚


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ナンバーズのオリカ

二期の新登場のオリカに続きナンバーズのオリカの紹介をします。
とりあえずスカさんが使用したカードとナンバーズだけここに乗せます。



 

 

ナンバーズ1‐不可蝕の秘書ウーノ ☆4/光/機械/A0・D2000

このカードがフィールド上に存在する限り、自分の手札の「ナンバーズ」と名のつくモンスターのレベルは1つ下がる。

1ターンに1度、手札から機械族モンスターを墓地に捨てる事で、デッキからレベル4以下の「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスターを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターは、そのターン攻撃できない。

 

 

ナンバーズ2-幻影の暗殺者ドゥーエ ☆7/闇/機械/A2000・D2000

このカードは通常召喚できない。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分の墓地に「ナンバーズ」と名のつく機械族のモンスターが4体以上存在する時、特殊召喚することができる。

1ターンに1度、手札を1枚墓地に送り発動する。フィールド上または墓地に存在するモンスター1体を選択し、このターンのエンドフェイズまで選択したモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。

 

 

ナンバーズ3-音速の戦士長トーレ ☆7/風/機械/A2800・D2000

このカードが相手モンスターを戦闘で破壊したとき、もう一度モンスターに攻撃することができる。

この効果は1ターンに2回まで発動できる。

 

 

ナンバーズ4-幻惑の使い手クワットロ ☆3/地/機械/A1000・D1600

自分フィールド上のモンスターが相手モンスターの攻撃対象になった時、自分の墓地から「ナンバーズ」または「ガジェットドローン」と名のつく機械族モンスター1体を選択して、自分フィールド上に特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに移し替える。

特殊召喚されたモンスターは、特殊召喚されたバトルフェイズ終了時に破壊される。

この効果は1ターンに1度しか発動できない。

 

ナンバーズ5-刃舞う爆撃手チンク ☆5 / 炎 / 機械 /1000・D1600

1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを5枚まで墓地へ送って発動する。

このカードの攻撃力は相手のエンドフェイズ時まで、墓地へ送ったカードの枚数×400ポイントアップする。

このカードが破壊された時、墓地からカードを3枚まで自分のデッキに戻すことができる。

 

ナンバーズ6-潜行する密偵セイン ☆3/水/機械/A600・D1700

このカードが召喚に成功したとき、相手の手札をランダムに1枚墓地へ送る。そのカードの種類により、このカードは以下の効果を得る。

●モンスター:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り1度だけ、相手モンスター1体の攻撃を無効にする事ができる。

●魔法:自分のデッキからカードを1枚ドローした後、手札を1枚デッキに戻す。

●罠:自分フィールド上の「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターはこのターン直接攻撃する事ができる。

 

 

ナンバーズ7-空の殲滅者セッテ ☆4/機械/闇/A1800 D1400

このカードが守備表示モンスターと戦闘するとき、ダメージ計算を行わずそのカードを破壊する。

このカードが破壊された時、このカード以外の墓地に存在する「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を手札に加える。

 

 

ナンバーズ8-閃光の術士オットー ☆3 /光/機械 /A600・D1900

自分フィールド上に表側表示で存在する「ナンバーズ」と名のつくモンスターが相手の魔法・罠カードの効果の対象になった時、このカードを生贄にする事でその効果を無効にする。

このカードが墓地に送られた場合、デッキ・手札から「ナンバーズ12-ディード」を特殊召喚することができる。

 

 

ナンバーズ9-破壊する突撃者ノーヴェ ☆4/風/機械/A1900・D1500

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して破壊する。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 

ナンバーズ10-狙撃する砲手ディエチ ☆6/地/機械/A2500・D1000

自分フィールド上に「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスターが1体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したターン、このカードが戦闘によって相手に与えるダメージは0になる。

このカードは攻撃したバトルフェイズ終了時に守備表示になる。

 

 

ナンバーズ11-守護する滑空者ウェンディ ☆4/機械/風/A1700・D1700

1ターンに1度、攻撃力か守備力のどちらかを次の相手のターンのエンドフェイズ時まで500ポイントアップする。

このカード以外の魔法・罠・効果モンスターの効果が発動したとき、自分フィールド上のこのカードをゲームから除外できる。この効果は相手のターンでも発動できる。この効果で除外したこのカードは次のスタンバイフェイズ時にフィールド上に戻る。

 

 

ナンバーズ12-瞬殺の双剣士ディード ☆4/光/機械/A1700・D600

このカードが召喚・特殊召喚に成功したとき、このカードの攻撃力を800ポイントアップする。このカードが戦闘を行ったターンのエンドフェイズ時、このカードの攻撃力は500ポイントダウンする。このカードが墓地に送られた場合、手札または墓地から「ナンバーズ8-オットー」を特殊召喚できる。

 

 

ガジェットドローンⅠ型 ☆1/地/機械/A100・D100

このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。攻撃表示のこのカードが破壊された場合、デッキからレベル4以下の「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

 

ガジェットドローンⅡ型 ☆2/地/機械/A500・D500

このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、自分はデッキから「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスター1体を手札に加える。

 

 

ガジェットドローンⅡ型改 ☆2/地/機械/A500・D500

「ナンバーズ」と名のつく機械族モンスターの効果で、このカードが手札から墓地に送られた場合、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

ドクターの作品 速攻魔法

自分フィールド上のモンスターが破壊されたターンのエンドフェイズ時に発動できる。自分フィールドにガジェットドローントークン(☆3/攻撃力1000・守備力1000)を2体特殊召喚する。

 

 

インパルスブレード 装備魔法

このカードは「ナンバーズ3-音速の戦士長トーレ」にのみ装備可能。

装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。また、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊する度に装備モンスターの攻撃力を300ポイントアップする。

 

 

ドクターSの研究所 フィールド魔法

1ターンに1度、どちらかの効果を発動することが出来る。

○デッキから「ナンバーズ」と名の付く機械族モンスターを1枚手札に加え、その後手札のカード一枚を墓地へ捨てる。

○「ナンバーズ」と名の付くモンスターが通常召喚された時、手札の「ナンバーズ」または「ガジェット」と名の付く機械族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚できる。

 

 

バージョンアップグレード  通常魔法

このカードは1ターンに1度しか発動できない。自分フィールド上に表側表示で存在する「ナンバーズ」と名の付いく機械族モンスター1体を選択して発動できる。このターン選択したモンスターの攻撃力と守備力は500アップし、効果の対象にならない。

墓地にこのカードが存在する時、墓地に存在するこのカード以外の魔法カードを2枚デッキに戻し、このカードを手札に加えることができる。

 

 




LSに二つ名が無く、ナンバーズに二つ名があるのは頂いたからです。
こうして一話使って紹介していますが、登場は大分先になります。


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三期
第四十四話


更新が遅れて申し訳ありません。
ちょっと最近お厳しい評価を頂いた+花粉症でションボリしたので、気晴らしになんか色々やってました。


で、ですね、夏休みの話を投稿しようかと思ったのですが、後に回して三期に突入しようかと思います。小さいですが一応理由はあります。



それと大分前にオリカの事で話したが、ストーリーに関係の無い新オリカは三期前半までで止めます(例外はあるかもしれません)
それでその三期前半に入ったので、この話を入れないで約4話~5話後ぐらいでオリカの募集を止めたいと思います。4か5だと急に聞こえるかもしれませんが、どんなに早くても一週間はかかります。



現在採用が確定したカードは

夜天の王様から頂いた

闇の書の意志
ナハトヴァール


コクイ様からいただいた
次元震
次元断層
虚数空間
アルハザード


を採用させて頂きます。


もうしばらく新オリカラッシュが続くと思います。


気が付いたら長い長い夏休みも終わり俺達はついに三年生になった。夏休みの話は今後少しだけ語ろうと思う。

思えばこの二年間、セブンスターズだったり破滅の光だったり精霊の王達だったりと濃い二年間だった。まあそれも今となればいい思い出になりつつある。

去年と同じように高校生活デビューを果たした一年生が目立つ時期でもあり、その一年生からしたら俺や十代、万丈目、明日香は目立っているだろう。俺や十代は世界で一枚ずつしか無いカード所持者、万丈目はGX大会優勝者、明日香はミスデュエルアカデミアでもあり一流のデュエルタクティクスの持ち主。翔は・・・・なんかあるんじゃないか?

 

「万丈目、翔、ペンキ持ってきたぞ」

「助かるッス」

「助かるぞ遊斗。じゃあお前達は屋根の上を塗り替えてくれ」

「「はい!」」

 

入学式が終わった後、俺達ブルー寮生は白になったホワイト寮を青に戻していた。二年の時から続けていたが、何しろ素人が城と変わらない大きさの寮の色を塗り替えるのは時間が掛かる。斎王は一体どうやってこのブルー寮を数日で白に塗り潰したのか未だに謎だ。

そして先程のやり取りで疑問に思った事があるだろう。何故レッド寮の万丈目とイエロー寮の翔がブルー寮の手伝いをしているか。理由は簡単、月一試験で二人は見事ブルー寮に上ったのだ。

 

「けど明日から本格的に高校三年目が始まると思うと何だか呆気ないよな」

「そうッスね。けど今年こそは平和な年を過ごしたいッス」

「翔、フラグになるからそう言う事は言わない方がいい。それにこのデュエルアカデミアの事だから明日ぐらいに絶対何か起こるぞ」

「そ、そんな事言わないで下さいッス」

 

頬をピクピクと引き攣らせながら苦笑する翔。この一連のやり取りが本当にフラグだったのか、狙ったかのようなタイミングで、一つ下のブルー寮の下級生が俺達の元へ走って来た。

 

「先輩方~! 今から校長先生の話があるみたいです。非常に大事な話だから全員来るようにって」

「なっ? 言っただろ?」

「マンマミーア!」

 

なんて翔と話していると、隣に立っていた万丈目はメガホンを口に当てて作業しているみんなに聞こえるように大声を出す。

 

「みんな! 今から集会があるそうだ! すぐに作業を止めて校舎に行くぞ!」

【【【はい!】】】

 

それにしても急な集会か。いくらエンターテイメントが好きだからってアポなしの集会は勘弁して欲しい。あの校長先生に今更言ったって意味ないだろうが。

待てよ? アイツの事だからどうせ部屋に居らずにどこかで釣りか昼寝でもしてる筈。そうなると集会の事を耳にするのは不可能だ。

 

「悪い万丈目、翔。十代を探してくる。あとは任せた」

「お、おい! 全くあいつは・・・・。十代の母親か」

 

 

 

 

なのはさんのWASも使って十代を探したが、見つからなかった。仕方ないので合同教室に戻る事にし、クルッと方向転換すると目の前に一人の男がいた。

その男は袖にフリルのついた白いシャツを着を黒いズボンにインしている、好が別れるだろうがオシャレな恰好をしていた。髪の色に合わせてか青のベストも来ており、ズボンにも青のラインが入っているのが分かる。

 

「・・・・」

「・・・・」

「誰だ?」

「俺か? 俺はヨハン・アンデルセン。よろしくな」

「お、おう・・・・」

 

気が付けば右手を差し出されていたので、何が何だか良く分からないがその手を取って握手する。マイペースな挨拶にふと十代の事を思い出す。新入生・・・・にしては十五歳に見えない。しかし剣山の例があるからあり得るのか?

暫くの間目の前の男をジーと見ていると、その背中から紫色の毛を生やせたリスの様な動物が出てきた。小さいけど確かに精霊のオーラを感じる。

 

「それ、ひょっとして精霊か?」

「へ? 君もルビーが見えるのか?」

「ああ。精霊とは色々あってね。多分精霊の数ならこの世界の誰にも負けないと思う。フェイト、出てきてくれ」

 

すると腰に付けていたデッキホルダーから黄色の魔力光が発生し、次の瞬間俺の右隣にフェイトが現れた。突然現れたフェイトにヨハンは目を大きく開いて驚きを見せたが、すぐに嬉しそうに笑う。

 

「感激! まさかLSに会えるなんてな。じゃあ君が遊斗・スカリエッティ?」

「ああ。そうだけど・・・・」

「おっと。俺は怪しいもんじゃない。アークティック校から留学してきたんだ。海外でも君の活躍は有名だよ」

「それは光栄、かな?」

 

どこから俺の情報が海外に流れたのか一瞬気になったが、去年行われたGX大会にはプロが参加する事もあって各国テレビ局も来ていた。そこから流れたと考えるのが妥当だろう。

 

「ところで一つ聞いていいかな?」

「なんだ?」

「合同教室って何処だ? 俺方向音痴なんだ」

「あっ・・・・」

 

合同教室に駆けつけた時には既に全校生徒集まっており、校長先生の話の真っただ中だった。俺とヨハンの入室に校長先生は愉快そうに笑い、クロノス先生は深いため息を吐いている。

三年生ブルー寮代表が初っ端から遅刻したら、ブルー寮の格が落ちる。いくら寮同士の喧嘩や上下関係が無くなったとはいえ、ブルー寮がトップであるのには変わりが無い。トップなら下の寮生が、こうなりたい、と思える立ち振る舞いをしないといけない。と、前日クロノス先生に言われたばかりなのだ。

 

「いや~遅れた遅れた! 俺方向音痴だからな!」

「遅刻して申し訳ありません」

「ハァ、分かったノーネ。シニョールヨハンが来たのは丁度いいノーネ。みんなに挨拶するノーネ」

「ああ!」

 

遅刻した事を余り気にしていないのか、クロノス先生にタメ口で返したヨハンは入り口から堂々と階段を降りて行く。その間に俺は十代達が取っていてくれた空席にササっと移動して静かに座る。十代を遅刻させない様に探しに行った俺が遅刻するなんて、まるでミイラ取りがミイラになった気分。

万丈目や翔に、どうして遅刻したんだと聞かれたが適当に流し、合同教室の教壇へ歩くヨハンの背中を見て、後ろにいる十代の顔をチラッと見る。

 

「やっぱり似てるな・・・・」

「何か言ったか?」

「いや、何でも無い」

 

顔や声が似ている訳では無いので、やはり雰囲気だろうか? 兎に角十代とヨハンは、上手く口にはできないがどこか似ている。

ヨハンのデュエルを見たら何が似ているのか分かるだろう。挨拶が終わったらヨハンにデュエルを挑もうと考えていると、エドは教壇に立って俺達デュエルアカデミアの生徒に顔を向ける。

 

「アークティック校から留学してきたヨハン・アンデルセンだ。仲良くしてくれ」

 

他にも色々と言う事はあるだろうが、随分と簡単な挨拶だ。会場に響くパチパチと歓迎の意を表す拍手は数秒間続き、その間に俺は教壇に立つ五人の男を見る。

一番目に入るのは、やはりワニを背負った高校生――には見えない、大人びた(老けた)肌黒の男。頭にはカーボーイハットを被っており、首には派手な柄のスカーフ。背負ったワニも飾りではないらしく、瞬きした瞬間を確かにこの目で見た。

彼と一緒に並んでいてはインパクトが少ないのは当然だが、後の四人は容姿が外国人風であったが特に変わった点はなかった。

鼻が丸い黒人の男。眼鏡を掛けた優しい笑顔が特徴的な男。そして角刈りで身長2mはありそうな巨体の男。おそらく前者二人が生徒で、角刈りの男が先生だろう。正直眼鏡を掛けた男意外、皆中々大人びており(老けており)先生と名乗っても特に違和感が無い。

 

「全ての生徒が集まったので、プロフェッサー・コブラからお話があるそうです」

「臨時教師として配属されたプロフェッサー・コブラだ。お前達にはこれから一年間、このベルトを付けてデュエルをしてもらう」

 

プロフェッサー・コブラが皆に見えるように掲げたのは、柄の付いていないシルバーの質素な腕輪だった。

そのベルトを付けて何が変わる? おそらくこの場の全員の思考が一つになっただろう。プロフェッサー・コブラは皆の心の声に答える様に再び口を開き、ハスキーボイスでベルトの説明を始める。

 

「このベルトはデスベルト。これを付けてデュエルすると私の元へデュエルの内容と、戦術、戦績が送られる。それらを分析し、生徒個別の能力を測る物だ」

 

中々次世代的なベルトだが、デスベルトと言うのは生徒に付けるにはネーミングが駄目だと思う。現にデュエル好きな俺だって、デスと付いていたら余り乗る気がしない。闇のデュエルを楽しんでいた俺が言うと矛盾に聞こえるだろうが・・・・。

 

「これからは月一試験を廃止し、能力が低い生徒を問答無用で寮の格下げ、退学にする」

【【【退学!?】】】

「プロフェッサー・コブラ。いくらなんでもそれはやり過ぎナノーネ。この学校では筆記試験と実技の両方を行い、その二つから寮の上げ下げが決まるノーネ」

 

クロノス先生の意見に、生徒達も「そうだそうだ!」と言ってデスデュエルを否定する。寮格下げでも十分すぎるほど厳しいのに退学はあんまりだ。その意見にはクロノス先生や皆と同意見だが、月一試験が消える事にはちょっと期待してしまう。毎月毎月あの時期になると強制的に勉強させられるからな・・・・。この二年良く共同官二人に反抗しないで頑張ったと、自分で自分を褒めたい。まああの教導官二人に反抗出来る奴がいるのなら見てみたいが。

少し話がそれてしまった。

 

「どんなに知識があっても実戦で役に立たなくては意味が無い。これが私の教育方法だ」

 

確かに知識だけあっても実戦で約に立たないと意味が無い。だからと言って知識が無ければ実戦で戦うことすら不可能だ。スポーツでもデュエルでもそうだ。ルールを知らなかったり、技を知らなければフィールドに立つことすら不可能。

プロフェッサー・コブラの意見に反対しようと、腰を浮かせて立とうとした途端、パンパンと校長先生が手を叩いて場を収めた。

 

「大丈夫ですよ皆さん。プロフェッサー・コブラはこう言っていますが、実際に退学になどしません。ここは一度デスベルトの力を確かめる為に、留学生と在校生でお手本のデュエルをしてみるのはどうでしょうか? プロフェッサー・コブラ?」

「分かりました。ではアンデルセン、お前がやれ」

「はい!」

「では在校生代表はシニョール遊斗にお願いするノーネ」

「ちぇっ。羨ましいぜ」

 

背中から来た十代の悔しそうな声に「お先に」と言って席を立つ。十代とヨハンのデュエルも見たかったが、せっかくならヨハンのデッキを知らない、全くの初見で挑む方が面白い。教壇に降りる途中、他の友人からも声援を貰い、軽く手をタッチして勝利を約束する。

 

「まさかいきなり君と戦えるなんて。おもしれぇ」

「君じゃなくて遊斗でいい。俺もヨハンとデュエル出来るのを楽しみにしてたし」

 

プロフェッサー・コブラから貰ったデスベルトを、デュエルディスクを付けた手の反対、つまり右手首に装着する。デスベルトは装着する人の体格に合わせて柔軟に変化するのか、ジャストフィットして窮屈だったりブカブカだったりしない。

 

「それではデスデュエルを始める」

「成績に関係するらしいけど、気楽にやろうぜ」

「ああ。LSの力を見せてやる!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺が貰う。ドロー! フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動! そして高町なのはを通常召喚! 効果で自身とミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1 なのは1

A500・D1800

 

この学園に入って新たな仲間達と出会ったが、この初手の実用性は未だに衰えない。上級モンスターを二枚で特殊召喚しつつ、なのはさんの効果で手札一枚を補給。更に自分の有利なフィールド魔法を張っている状態。

 

「なのはのLCをミッドチルダに移動! ミッドチルダのLCを取り除きユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

LCミッドチルダ1→2→1

A1000・D3000

 

「感激! これが君のエースモンスターか!」

「俺のデッキにはエースは沢山いる。けどこのカードがこのデッキの中核であり切り札であるのは事実かな。なのはの効果発動! デッキからフェイトを手札に加える。装備魔法レイジングハート・エクシードをなのはに装備」

 

なのはA1000→A2500

 

「ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

「いきなり攻撃力2500のモンスター! さっすが。俺のターン、ドロー! 宝玉獣トパーズ・タイガーを召喚!」

 

A1600・D1000

 

『ガルゥゥ! 俺様が先陣を切るぜ!』

 

ヨハンのモンスターゾーンから発生した黄金の光と共に、一匹の虎が登場した。その虎の種類はホワイトタイガーと言って良いのだろうか? 普通の虎では黄色になる部分の怪我白く、黒い縞の色が薄い。しかもその虎は貴重種であるホワイトタイガーの中でも珍しく、頭と四本の足からは宝石の様に輝く刃物が生えており、首にはトパーズの宝石が埋め込まれている。

 

『わぁ! 虎さんが喋った! 可愛い~』

『と、虎さん!? この女、馬鹿にしやがって』

「まあまあ。人に褒められるのはそんじゃないぜ? あれ? この場合人じゃなくて精霊か?」

「俺は一人の女性として見てるから、出来れば人として見て欲しいな。あっ、もちろん自他共に精霊って事は認めてるんだが」

「ふ~ん。変わってるなお前」

 

まあ確かに世間一般からすれば変わっているかもしれないけど、お前やデュエルアカデミアの生徒にだけは言われたくない言葉だ。

 

「じゃあ続けるぜ。永続魔法宝玉の樹を発動。更に装備魔法宝玉の解放をトパーズ・タイガーに装備。攻撃力を800アップする」

 

トパーズA1600→A2400

 

「それだとなのはの攻撃力には届かないぞ?」

「それはどうかな? バトル! トパーズ・タイガーでなのはに攻撃! トパーズ・タイガーは攻撃する場合ダメージステップの間攻撃力が400アップする! トパーズ・バイト!」

 

トパーズA2400→A2800 VS A2500

 

首に埋めているトパーズが輝くと共に、トパーズ・タイガーの体が黄金の光によって包まれた。装備魔法により宝玉の力が解放され、更には自分の野生の力を解放した事により、一時的だがなのはさんより攻撃力が上回った。なのはさんに突撃したトパーズ・タイガーは、その鋭利な牙と足に付いた刃でなのはさんを攻撃する。

桃色のバリアを発生させてトパーズ・タイガーの進行を阻止したなのはさんとレイジングハートだったが、トパーズ・タイガーの力は想像以上で、レイジングハートが自らの力を全て出し切る事でようやく防ぐ事が出来た。

 

「レイジングハートの効果発動! 装備モンスターが戦闘で破壊される変わりに、このカードを破壊する事が出来る」

「けど戦闘ダメージは受けてもらう!」

「うっ!」

 

遊斗LP4000→3700

なのはA2500→A1000

トパーズA2800→A2400

 

『ふっ。俺様を馬鹿にしたからだ』

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札4 LP3700

ヨハン モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

 

『にゃはは、馬鹿にした訳じゃないんだけど』

「プライドが高い精霊ですね。どっかの誰かみたいだ・・・・。俺のターン、ドロー! なのはの効果発動。デッキからアリサを手札に加える。魔法・罠ゾーンにアリサとすずかを置く」

 

魔法・罠ゾーンに現れたアリサとすずかを見て、ヨハンとトパーズ・タイガーは大層驚いた顔をした。虎の驚く顔なんて初めて見た気がする。

 

「へぇ。君もその手の効果を・・・・」

「? お前も使うのか?」

「それは見てのお楽しみって奴さ」

「分かったよ。フェイトを召喚。効果で自身とミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ1→2 フェイト1

A1800・D500

 

さっきもヨハンとは軽く顔を会わせたから初対面では無いが、フェイトは改めて『初めまして、フェイト・テスタロッサです』と軽く頭を下げて挨拶をした。

こうも沢山の精霊同士の会話があると、俺達も自然とデュエル以外の話が出てしまう。精霊の声が聞こえる十代や万丈目には、俺達が何の話をしているかが大体予想できるだろうが、他の生徒にはチンプンカンプンだろう。

 

「フェイトのLCをすずかに移動。ミッドチルダのLCを取り除きアルフを特殊召喚!」

 

LCミッドチルダ2→1 フェイト1→0 すずか0→1

 

「場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

「げっ。攻撃力2800!」

「アリサの効果発動。フィールド上のモンスター一体を選択。選択したモンスターが戦闘でモンスターを破壊した場合、選択したモンスターにLCを置く。更にフィールドにすずかがいる時、ドローする効果が追加される。フェイトを選択する」

「破壊した場合、か・・・・」

 

ヨハンはその部分だけを復唱してバツの悪そうな顔をする。除外デッキでもない限り、破壊した場合でも、破壊して墓地へ送った場合でも余り大差ない様に思えるが、そこが何か関係あるのだろうか?

 

「バトル! フェイトでトパーズ・タイガーを攻撃!」

 

A2800 VS A2400

 

運がいいのか、それともフェイトさんの効果を知っていたのか、トパーズ・タイガーはなのはさんの前のモンスターゾーンに召喚されていた。

アリサの効果により、バルディッシュに纏わる属性は電気と炎の混合。二つとも変換資質の中ではかなり攻撃に特化した変換資質であり、そこにフェイトさんの機動力とパワーが加われば並大抵の防御で無ければ受け止める事は不可能。

 

「罠発動! ラスト・リゾート!」

「ッツ。攻撃反応型!?」

「ハハ。遊斗が考えてる効果じゃないぜ。こいつはもっと面白い効果を持ってる。ラスト・リゾートは相手の攻撃宣言時に発動できる。デッキからフィールド魔法、虹の古代都市-レインボー・ルイン選択して発動できるのさ」

 

ヨハンがデッキから一枚のカードを取り出してフィールド魔法ゾーンにセットすると同時に、近未来都市ミッドチルダは、ガラスが割れる様にバリンと粉々になり、頭上に虹が輝くコロッセオの様なフィールドに変化した。先程も言ったがコロッセオと同じく、建物は丸い円を作っており、建物の中央に決闘者である俺とヨハンがいる状態だ。

 

「ラスト・リゾートの発同時に相手がフィールド魔法を発動していた場合、相手は一枚ドローする事ができるが?」

「勿論ドローする。バトルは続行だ」

 

フェイトさんは飛びかかって来たトパーズ・タイガーに向けてザンバーフォームのバルディッシュに振り下ろし、トパーズ・タイガーの体を木っ端みじんにする。

 

ヨハンLP4000→3600

 

「トパーズ・タイガーと宝玉の解放の効果発動! トパーズ・タイガーが破壊された場合、墓地へ送らずに永続魔法として自分の魔法・罠ゾーンに置く事ができる。同じく宝玉の解放の効果。このカードが墓地へ送られた時、デッキの宝玉獣を魔法・罠ゾーンに置く」

「なっ! 墓地へ行かず魔法・罠ゾーンに!?」

 

バラバラになったトパーズの欠片がヨハンの魔法・罠ゾーンに集まり、一つのトパーズの塊が現れた。そのトパーズの塊は(重さを考えなければ)大人一人が両手を使わないと抱えられない程大きな塊で、質にもよるが売れば億万長者になれるだろう。

 

「宝玉の解放の効果でデッキからエメラルド・タートルを魔法・罠ゾーンに。そして宝玉の樹は宝玉獣が魔法・罠ゾーンに置かれる度にジェムカウンターを一つ置く」

 

宝玉の樹0→2

 

「あれが宝玉獣か」

「面白い。イッツ、ワンダーモンスター!」

 

近くに居る留学生二人は、独特な効果を持つヨハンの効果にそれぞれ簡潔な簡単を言う。どうやらワニを持った男はペガサス会長と同じ、日本語と英語を合わせた独特な喋り方をするようだ。ただこの学校に居ればそこまで気にならない。

 

「アリサの効果発動。モンスターを破壊したからデッキから一枚ドローする」

 

LCフェイト0→1

 

「なのはでダイレクトアタック!」

『アクセル・シュート!』

 

A1000

 

なのはさんは桃色の魔力弾を四つ発生させてヨハンに向かって発射する。四つの魔力弾は全弾命中するかと思ったが、四つの内二つが虹色の光に包まれてスッと消えて行き、二つの魔力弾がヨハンを襲った。

 

「レインボー・ルインの効果。魔法・罠ゾーンに宝玉が二つ以上ある時、一ターンに一度戦闘ダメージを半分にする」

 

ヨハンLP3600→3100

 

「ダメージ半減か、地味に厄介だな。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 虹の古代都市-レインボー・ルイン

遊斗  モンスター2 伏せ3 手札5 LP3700

ヨハン モンスター0 伏せ3 手札2 LP3100

 

「フィールドも手札もライフも一気に逆転。いきなりピンチ!」

「そう言う割には全然諦めていないな」

「へへっ。まあな。俺のターン、ドロー! 宝玉の樹の効果を発動。このカードを墓地へ送り、このカードに乗っていたジェムカウンターの数だけデッキから宝玉獣を魔法・罠ゾーンに置く。俺はルビー・カーバンクルと、アンバー・マンモスを置く」

 

枯れていた宝玉の樹から、赤とオレンジの輝きを持つ果実が生まれた。その果実が魔法・罠ゾーンにポトリと落ちると、ルビーとアンバーの結晶へと進化する。どちらも売れば億万長者になれる大きさだ。

 

「レインボー・ルインの効果発動。魔法・罠ゾーンに宝玉が四つ以上ある時、一ターンに一度デッキから一枚ドロー出来る。一枚ドロー! よしっ、サファイア・ペガサスを召喚!」

 

A1800・D1200

 

白馬に翼が生え、角を持った伝説の生き物ペガサス。目の前に現れたペガサスの翼にはサファイアが埋め込まれており、角もサファイアで作られているのか青く輝いている。

 

『ヨハン。一気に攻めるぞ』

「ああ! サファイア・ペガサスの効果発動。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、手札・デッキ・墓地から宝玉獣一体を魔法・罠ゾーンに置く事が出来る。デッキのアメジスト・キャットを置く。サファイア・コーリング!」

 

サファイア・ペガサスのサファイアの角がより一層強い輝きを発すと、何も無い空間に巨大なアメジストの塊が出現した。ルビー、エメラルド、トパーズ、アメジスト、アンバー。比較的物欲が低い俺でもこれらの宝石の前には思わず涎が出てしまいそうだ。

 

「レインボー・ルインの効果。宝玉が五つ以上ある時、魔法・罠ゾーンの宝玉獣一体を特殊召喚できる。俺はルビーを特殊召喚!」

 

AD300

 

『はぅ! 可愛い~』

『ほんとだ。凄くペットにしたい』

 

廊下でヨハンと会った時にルビーの姿を見たが、やはりリスの様だ。紫色の毛並みをした宝玉獣は瞳と尻尾の先に自らの宝石であるルビーで出来ている。なのはさんとフェイトさんはその愛くるしい姿にすっかりメロメロだ。

 

「ルビーの効果発動。このカードが特殊召喚に成功した時、自分の魔法・罠ゾーンの宝玉獣を可能な限り特殊召喚できる」

「可能な限り!?」

「ルビー・ハピネス!」

 

尻尾の先の丸い宝石から赤い光線が発生した。その光線は魔法・罠ゾーンにあるトパーズ、アンバー、アメジストの結晶にエネルギーを与え、眠っていた宝玉獣達を眠気から覚ます。

ヨハンのフィールドにホワイトタイガー、マンモス、猫が現れており、それぞれ自らの宝玉を体の一部分に付けている。

 

A1600・D1000

A1700・D1600

A1200・D400

 

「ちょ、ちょっとヤバイかも」

「装備魔法団結の力をアンバー・マンモスに装備! 攻撃力を4000アップする!」

 

アンバーA1700・D1600→A5700・D5600

 

・・・・攻撃力4000アップの団結の力など久しぶりに見た気がする。団結の力の効果は、自分フィールド上のモンスターの数×800ポイントモンスターの攻守を上げるカード。良くて2400ぐらいアップするカードなんだが、攻撃力5000を突破したか。

 

「呆気ないがこれで終わりだ。バトル、アンバー・マンモスでなのはに攻撃! アンバー・スタンプ!」

 

A5700 VS A1000

 

仲間の宝玉の力を貰ったアンバー・マンモスの体は瞬間的にだが一気に五倍の大きさになった。これがソリッドビジョンでフィールドが変わっているから五倍まで大きくなれたが、元の教室だったら天井に付いているかもしれない。アンバー・マンモスはドスンドスンと地面を揺らしながらなのはさんに突進し、巨大な足でなのはさんを踏みつぶす。が、なのはさんはプロテクションを使いアンバー・マンモスの渾身の一撃を防ぐ。

 

「罠発動! 魔導師の甲冑! 発動後このカードは装備カードとなる。LSに装備可能。装備したモンスターは戦闘で一度だけ破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは半分になる」

 

しかしなのはさんへの攻撃を防いでも、ダメージまでは防げない。丸いバリアを上手く使い自分への攻撃をいなしたなのはさんだったが、アンバー・マンモスの巨体が地面とぶつかった瞬間、衝撃波が発生して俺の体を襲う。

 

遊斗LP3700→1350

 

「トパーズ・タイガーでなのはを攻撃! トパーズ・バイト!」

 

トパーズA1600→A2000 VS A1000

 

宝玉獣の連続攻撃、しかも片方は攻撃力5000以上のパワー相手では、なのはさんでも突破困難だった。バリアを張る前にトパーズ・タイガーの接近を許し、巨大な牙と足に付いた刃で斬られて破壊された。

 

遊斗LP1350→850

 

「アメジスト・キャットは与える戦闘ダメージを半分にする変わり、ダイレクトアタックができる! アメジスト・ネイル!」

『ちょいと痛い目にあってもらうよ!』

 

アルフに似た喋り方をする猫はフェイトさんを飛び、上空で前両足の爪をシャキンと構える。そして俺の元へと降りて来ると空中で爪をクロスさせて顔を引っ掻く。散々闇のデュエルをしてきた俺だが、この攻撃はソリッドビジョンでも怖く一瞬目を瞑ってしまった。

 

遊斗LP850→250

 

「あとちょっとだったか。これでターンエンド」

 

場 虹の古代都市-レインボー・ルイン

遊斗  モンスター1 伏せ2 手札5 LP250

ヨハン モンスター5 伏せ2 手札2 LP3100

 

「俺のターン、ドロー!」

 

幸いな事にすずかにLCがあるから、これでアンバー・マンモスの攻撃を防ぎ、他の宝玉獣達を倒して行ってアンバー・マンモスの攻撃力を下げて行けばいい。だが現時点で効果が分かっているのはルビー、サファイア・ペガサス、アメジスト・キャット、トパーズ・タイガーの四体。

攻撃力を上げる事が出来るトパーズ・タイガーでも攻撃力が100多いサファイア・ペガサスでも無く、未だに効果が分かっていないアンバー・マンモスに団結の力を装備させたのは何か理由があるのだろうか? 

もしこのターンでアメジスト・キャットを破壊できなかったらダイレクトアタックでライフが0になってしまう。

 

「・・・・よしっ。その効果と仮定して動こう」

「へっ?」

「ティアナを通常召喚! 効果ですずかのLCを取り除き、墓地のAOAなのはを除外し、同名トークンを特殊召喚する!」

 

LCすずか1→0

A1200・D1000

A0・D0

 

「そしてAOAなのはトークンを生贄に、蒼穹の王・高町なのはを召喚!」

 

A2500・D2500

 

手札のカードをデュエルディスクにセットした瞬間に、ドンッ! とかなりの衝撃がデュエルディスクから発生した。ヨハンも宝玉獣もそれに気付いたのか、警戒を強めている。

フィールドの中心は我が物と考えているのか、彼女が登場する時に現れる竜巻はフィールドのど真ん中に発生し、強風を巻き起こす。小さいルビーはその風によって『ルビー!?』と鳴きながら(泣きながら)飛ばされ、竜巻の中心へと吸い込まれた。

その竜巻が消えると共に、赤い宝石が埋め込まれた黄金の玉座にこれでもかと言う程偉そうに座っているなのは様がいた。埋め込まれた赤い宝石は飛ばされたルビーにあらず、なのは様は右手でルビーを摘まんでおり、ポイッと捨てるようにルビーを返した。

 

「女なのにかっくぃ~!」

「そう言ってくれるとご本人も喜ぶよ。蒼穹の王・高町なのはの効果発動。特殊召喚成功時にデッキのカード一枚を墓地に送る。闇の書を墓地へ送り、その効果でなのはに装備する」

 

なのはA2500→A2800

 

「更になのはの効果。一ターンに一度、墓地の装備魔法を装備条件を無視して装備できる。レイジングハートを装備」

 

なのはA2800→A4300

 

「アリサの効果でなのはを選択。バトル! なのはでアメジスト・キャットを攻撃!」

『ディバインバスター・エクステンション!』

「へへっ、掛かったな。アンバー・マンモスの効果発動! 他の宝玉獣が攻撃対象になった時、攻撃対象をこのカードに変更できる!」

「この攻撃が決まったらヨハンの勝ちだ!」

 

アメジスト・キャットへ接近する桃色の砲撃の前に一つの巨大な壁が現れた。アンバー・マンモスだ。このままだとなのは様は返り討ちに合い俺のライフは0になってしまうが、ここまで計算通り。

 

「やっぱりその手の効果か。読みは当たった様だ! ダメージステップ速攻魔法ACSを発動! レイジングハートを装備しているモンスター一体を選択して発動。攻撃力を2000上昇させる!」

「なんだと!?」

 

なのはA4300→A6300 VS A5700

 

なのは様が持ったレイジングハートから桃色の翼が生える。まるで天使の翼の様に美しいそれは、広げると同時に桃色の羽を周囲に零す。しかしその美しさとは反比に、破壊力が凶悪的なまでに上がる。例え仲間達の力を一点に集中させたアンバー・マンモスでさえ、赤い炎を纏わせた桃色の攻撃の前では手も足も出ず、抵抗する暇も無く一瞬で破壊された。

 

ヨハンLP3100→2500

 

「アンバー・マンモス! クッ。アンバー・マンモスの効果で魔法・罠ゾーンに」

「アリサの効果でLCを置き、デッキから一枚ドロー!」

 

LCなのは0→1 闇の書0→1

 

アリサのドロー効果を二回使えた。発動してから二ターン遅れたが、これでアドバンテージは稼げた。アリサもすずかも優秀なサポートカードだが、単体ではボードやハンドアドバンテージを稼ぐ事が不可能で、アドバンテージを取り返しにくい。

 

「フェイトでアメジスト・キャットを攻撃! このカードが正面の敵と戦闘を行う場合、攻撃力を700アップする!」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA2800→A3500 VS A1200

 

バッと左手を付き出し、手のひらが中央に来るように黄色の魔法陣を展開する。そして掛け声と共に、黄色の砲撃が激流となってアメジスト・キャットを襲い掛かる。攻撃力3500と言う数値は馬鹿に出来ず、アメジスト・キャットは避ける事も出来ずに黄色の砲撃に呑み込まれた。

 

「レインボー・ルインの効果で戦闘ダメージを半分にする! そして魔法・罠ゾーンにアメジスト・キャットを置く!」

 

ヨハンLP2500→1350

 

「すずかの効果発動。なのはに乗ったLCを闇の書に移動」

 

LCなのは1→0 闇の書1→2

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズACSの効果。このターン破壊したモンスターの数だけ自分フィールド上のカードにLCを乗せる。闇の書とすずかにLCを乗せる」

 

LC闇の書2→3 すずか0→1

 

「へっ? なのはの攻撃力は下がらないのか?」

「残念だがACSの上昇は永続だ。専門性が高くて発動条件も厳しい分見返りも大きいんだ」

 

場 虹の古代都市-レインボー・ルイン

遊斗  モンスター3 伏せ5 手札3 LP250

ヨハン モンスター3 伏せ3 手札2 LP1350

 

「攻撃力6300のモンスターか。こりゃ本気で参ったな」

『大丈夫だヨハン。私達が付いている』

『俺達が力を合わせれば勝てない奴なんていない』

『ルビルビー』

 

今のやり取りだけ聞くと俺が悪役みたいだな。いや、まあ確かになのは様はあくどい顔(でも可愛い)をして宝玉獣とヨハン達を見下しているから、あながち間違っていないのかもしれない。

 

「ああ! みんなサンキュー。俺のターン、ドロー! アームズ・ホールを発動。デッキトップ一枚を墓地へ送り、デッキか墓地から装備魔法を手札に加える。流星の弓-シールを手札に」

「げっ。そのカードは・・・・」

「装備魔法流星の弓-シールをトパーズ・タイガーに装備。攻撃力を1000下げ、ダイレクトアタックを可能にする」

 

トパーズA1600→A600

 

「今度こそ終りだ。トパーズ・タイガーで遊斗にダイレクトアタック! トパーズ・バイト!」

「そうはいかない! 速攻魔法アイゼンゲホイルを発動! このターンのバトルフェイズを無効にする」

 

表になったカードから飛びだした、光り輝く丸い球体。フラッシュボム、スタングレネード、呼び名はどちらでもいいがつまり閃光弾の役割をする魔法だ。閃光弾が爆発すると思い目を瞑ろうとしたその刹那、光の球体はスッとフィールドから姿を消した。

 

「ところがそうはいかないんだな。レインボー・ルインの効果発動。モンスターカードゾーンにいる宝玉獣一体を墓地へ送り、魔法・罠の発動を無効にして破壊できる。ルビーを墓地へ」

「ぶっ!? 三枚で魔法・罠無効!? どう考えてもそれ五枚以上の効果だろ!?」

「んな事俺に言うなよ。言っただろこれで終わりって」

「終わらせるか! ダメージ計算時にザフィーラを墓地へ送って戦闘ダメージを0にする!」

 

なのは様とフェイトさんの頭上を飛び越えてきたトパーズ・タイガーの進行を止める様に、狼状態のザフィーラが俺の前に現れた。ザフィーラは無言でトパーズ・タイガーと対峙するが、トパーズ・タイガーは唸り声を上げてザフィーラを睨みつける。

 

『・・・・』

『・・・・おらぁぁあ!』

 

痺れを切らしたのはやはりトパーズ・タイガーだった。歴戦連魔のザフィーラの立ち振る前に耐えきれなかったのか、頭に生やした刃を武器に突進して来た。しかしザフィーラは冷静にシールドで受け止めて数歩下がって魔力刃を出そうした――その時。

 

『早くして』

 

後方で起きていたやり取りが面倒だったのか、なのは様は衝撃波でザフィーラを無理やり墓地まで吹き飛ばし、トパーズ・タイガーを竜巻の檻に閉じ込めてヨハンの元まで突き飛ばした。

 

「だ、大丈夫かトパーズ・タイガー?」

『も、問題ない。軽く目が回っただけだ・・・・』

「・・・・ザ、ザフィーラの効果でデッキからカードを一枚ドロー」

「ははっ。お前の精霊達面白いな。けど今のが止められるのは予想外予想外。サファイア・ペガサスでティアナを攻撃! サファイア・トルネード!」

 

A1800 VS D1200

 

サファイア・ペガサスはサファイアで出来た角から竜巻を発生してティアナさんを破壊した。なのは様の登場や攻撃を見慣れていると、地味に見える不思議。

 

「レア・ヴァリューを発動。魔法・罠ゾーンに宝玉が二つ以上ある時発動できる。相手はどれか一つ宝玉を選択し墓地へ送る。その後俺は二枚ドローする」

「なるほどな。じゃあ俺はアメジスト・キャットを選択する」

「二枚ドローする。カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

場 虹の古代都市-レインボー・ルイン

遊斗  モンスター2 伏せ4 手札3 LP250

ヨハン モンスター2 伏せ5 手札1 LP1350

 

俺の場には攻撃力6300のなのは様と、攻撃力を3500まで上げる事が出来るフェイトさん。トパーズ・タイガーかサファイア・ペガサスどちらかを倒せばヨハンのライフは0になる。レインボー・ルインで半減できるとは言えそれは変わらない。が、伏せられた二枚のカードがそう簡単に攻撃を許してくれるのかが疑問だ。

にしてもヨハンに宝玉獣、こいつ等かなり強い。一枚一枚は大した攻撃力を持ってないが、破壊されたら宝玉化する効果とサポートカードを使って――大した攻撃力?

 

「ヨハン。お前さ、ひょっとしたらまだエースカードを出してないんじゃないか?」

「へ? どうして分かったんだ?」

「いくら装備カードがあるとはいえ、攻撃力が低すぎるからな」

「ああ! 遊斗の読み通り俺には切り札がいる。レインボー・ドラゴン」

「レインボー・ドラゴンか。けど未だに出さないとなると、召喚条件が難しいか俺が舐められているかのどっちかだな」

「舐めてる訳じゃない。ただレインボー・ドラゴンはとっておきの、とっておきのとっておきだからな!」

「このデュエルでそのモンスターが出る事を期待してるよ。俺のターン、ドロー! 闇の書の効果発動。LCが三つ溜まったこのカードをゲームから除外し、デッキからアインスを特殊召喚する。そしてアインスの効果で融合デッキからナハトヴァールを特殊召喚!」

 

AD2300

AD0

 

闇の書から出てきたアインスと、アインスが呼びだしたグニャグニャした蛇の塊。とっくの昔に慣れてはいるが、やはりナハトの姿はグロテスクだ。現に新入生のほぼ全員の顔色が青くなっている。ヨハンはこの手のモンスターに無関心なのか「ふ~ん」と俺が出会った中で一番薄いリアクションをした。

ここでやるのはアインスにナハトを装備する事でも無く、はやてを召喚せずに新たな融合モンスターを呼ぶ。

 

「場のアインスとナハトヴァールを融合!」

「せっかく呼んだモンスター達を融合?」

「現れろ! 絶望への旅路-闇の書の意思!」

 

絶望への旅路-闇の書の意思 ☆10/闇/魔法使い/A3000・D3000

 

先程までアインスに懐いていたナハトは、突然アインスの体を自らの体で呑み込んだ。幸いな事にすぐにアインスの姿は見えたが、そのアインスはさっきまでの感情が表に出ていたアインスはおらず、顔や手に赤いラインを浮かばせた無表情な銀髪の女性がいた。両耳の上と腰からは黒い翼が生えており、腰に生えた翼はロングの髪よりも長い。

 

「凄い気迫だ・・・・」

「闇の書の意思の効果発動! 特殊召喚成功時に除外された闇の書を装備する」

 

闇の書の意思A3000→A3300

 

「闇の書の意思の効果発動。一ターンに一度、相手の墓地の通常魔法一枚を選択し、自身の効果として使用できる」

「俺の墓地の魔法カードを!?」

「ヨハンの墓地のアームズ・ホールの効果発動! このカードはコストや制約は必要無い。デッキからバルディッシュ・ザンバーを手札に加える」

 

特殊召喚したがセットカードが発動する気配が無い。やはり攻撃反応型なのか? 最悪ミラーフォースでもなのはさんがいるから問題ない。むしろ一番怖いのは魔法の筒(マジック・シリンダー)やディメンション・ウォール。

 

「速攻魔法フォトンランサー。フェイトと名のつくモンスターが存在する時発動できる。相手フィールド上のカード一枚を破壊する。右側伏せカードを選択!」

「くっ! ガード・ブロックが!」

 

破壊したカードは優秀な戦闘ダメージ無効化カードで、非常に汎用性の高い罠カード。他の学校でもこのカードの採用率は高いらしい。

 

「バトル! 闇の書の意思でトパーズ・タイガーを攻撃!」

『咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。貫け、閃光! スターライト・ブレイカー!』

 

A3300 VS A600

 

闇の書の意思はなのはさんの十八番であり代名詞でもある収束砲撃魔法を片手だけで行い、一匹の宝玉獣に向けて撃った。

 

「罠発動、虹の引力! 自分フィールド上及び墓地に宝玉獣が七種類存在する場合に発動できる。自分のデッキから究極宝玉神と名のつくカードを召喚条件を無視して特殊召喚できる!」

「ッツ!? このタイミングでレインボー・ドラゴンを!?」

 

今まで出てきた宝玉獣は六体。後一体はアームズ・ホールの時に送られていたのか!

ヨハンの足元に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の光を発する小さな七つの宝石が現れ、それらは放物線上に飛ぶとレインボー・ルインに大きく美しい虹を描く。虹は本来光の反射によって起こる現象である為、実体は無く、虹のふもとなど存在しない。だが俺は生まれて初めて、絵本で描かれている様な虹の橋を肉眼で見ている。

 

「さあ、現れろ。究極宝玉神レインボー・ドラゴン! ・・・・なんちて」

「は?」

 

アインスが撃ったスターライト・ブレイカーは何事も無かったかのように突き進み、トパーズ・タイガーに当たるとそこを中心に爆発し、巨大なドームを作った。そのドーム内にいたヨハンの悲鳴と共にライフポイントに0の数字が刻まれた。

 

ヨハンLP1350→-1350

 

「あいたたた・・・・」

「どういう事だヨハン?」

「いや~、レインボー・ドラゴンはな・・・・まだ持っていないんだなコレが」

 

右手で後頭部に手を当てて「ハッハッハ!」と大声で笑い始めるヨハン。その光景に今までシーンとしていた会場は一気に野次が飛び交う空間へと変わる。

 

「おいおい!」

「期待させやがって!」

 

多少口が悪いが、俺も野次のみんなと同じ心境だった。態々専門のカードを使って虹を描いたと言うのに、デッキには対象のモンスターがいない。あのアニメーションはヨハンとソリッドビジョンの悪戯かよ・・・・。

 

「レインボー・ドラゴン。そのモンスターの正体は誰も知らなく、古代の石板にその姿が描かれている。その石板を見つけ次第ペガサス会長が作ってくれるらしいんだけど。みんなも見つけたら教えてくれよな! そうそう転がってるもんじゃねえがな! ハッハッハ!」

「なんというか、変わった奴だな・・・・」

 

 




十「伝説って?」
ヨ「ああ! それってハネクリボー?」

嘘みたいだろ? ノーカットなんだぜ、これ。



今回はヨハンと戦いました。最初はバッドエンドクイーンとか入れる予定だったのですが、改めてヨハンの項目をググったら宝玉獣関連以外は”一枚”もモンスターカードを使っていないんだとか。
これも更新が遅れた理由の一つでもあります。宝玉獣ハイランダーって何なの? 恵みどうやって使うの?

まあ原作を気にしている作者ですが、相変わらずの原作知識不足です。原作で十代とヨハンがデュエルした理由とかを全く覚えていません。


今回の新オリカ



魔導師の甲冑 通常罠
発動後このカードは装備カードとなり、自分フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名のつくモンスター1体に装備する。
装備モンスターは1ターンに1度戦闘で破壊されず、装備モンスターが戦闘を行う場合、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。



LS絶望の旅路―闇の書の意思 ☆10/闇/魔法使い/A3000・D3000
「LS祝福の風リインフォースⅠ」+「LSナハトヴァール」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードが特殊召喚された時、除外されている「闇の書」を1枚装備する。
1ターンに1度、相手の墓地の通常魔法カードを1枚選択し発動することができる。この効果は「闇の書」を装備していない場合発動できない。
このカードが特殊召喚されて2回目の自分のエンドフェイズにこのカードを墓地に送り、手札・デッキから「LS闇の書の闇―ナハトヴァール」を1体特殊召喚する。





闇の書の意志は夜の魔王様から頂きました。ありがとうございます。

魔導師の甲冑。まあバリアジャケットですね。
甲冑は騎士のフィールド系の事を指しますので、魔導師の甲冑って色々と間違っているのですが語呂がいいのでこの名前に。
しょっぱい効果ですが、ライフ操作に使っていこうかと。


絶望の旅路―闇の書の意思。いや~、やっぱり二つ名の様なものがあるといいですね。
アインスを呼べば直で出せるのが一番の強みです。召喚条件を無視してアインスを特殊召喚する罠があるので、闇の書が無いと効果が発動できない様にしました。
相手の通常魔法をパクる効果は蒐集をイメージされたようです。
デッキトップ操作をしなくても良く、更に相手の墓地の好きなカードを使用できるという点では、やはりダイヤモンドガイの上位互換効果ですが、相手依存でもあり召喚条件が厳しいという前提があるのでバランスは取れていると思います。
(オリカのバランスは三者三様なので)



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第四十五話

今回白竜の忍者を使うんですけど、それでちょっと疑問に思った事があります。
白竜の忍者の魔法・罠カードは破壊されないって言うのは、表でも裏でも関係なく、魔法・罠ゾーンに存在するカードは破壊されないって事ですよね?
白銀のスナイパーとかも白竜の忍者がいたら破壊されないのかな~と、結構調べたのですが、なにぶん初心的な疑問ですから答えが見つかりませんでした。
結局疑問に思ったまま続けていたので、白竜の忍者が出た後に不自然なプレイングをやってしまいました。

まあその辺詳しく書かれていないので、魔法・罠ゾーンに存在するカードは白銀のスナイパーの様なモンスターカードでも破壊されない、と思いますが。


追記
今回の相手が自分のモンスターを対象に安全地帯を発動し、その後相手がブラック・ホールを発動しました。安全地帯で守れるのは相手のカードの破壊ですので、本来なら安全地帯を対象に取ったモンスターは破壊されますが、何故か破壊されないまま進めております。
文字でデュエル構成をやっていると時々この様な事が起こってしまうので、ご了承お願いします。




「凄かったぜ。遊斗とヨハンの戦い!」

「へへっ。次は十代ともデュエルしたいな」

「ああ!」

 

やはり類は友を呼ぶと言うのか、十代とヨハンはすっかり意気投合していた。あのデュエルの後、本来の目的であるデス・ベルトの機能が皆の前で公表された。

プロフェッサー・コブラのパソコンには俺とヨハンの顔写真が映し出され、デュエル回数、戦績、使用カード、対戦相手などが表示されていた。それだけでも十分凄いが、画面には自分のデッキの弱点やプレイングミスの欄まであり、実際そこにコメントがあった。

因みに俺のプレイングミスの欄には「アンバー・マンモスを戦闘破壊せずに団結の力を破壊した方が効果的です」と書かれていた。プレイングミスかどうかは微妙だが、そのコメントは実際にデュエルの事を把握していないと分からない。

 

「けどさ。デス・ベルトって名前が嫌だな」

「そうか? まあHEROベルトとかの方がカッコイイな」

「流石十代。安直なネーミング」

「俺は宝玉ベルトとかがいいな」

「全員分揃えるのに大企業の金庫スッカラカンに使わないと無理かもな」

「「厳しいな遊斗は」」

 

いや、俺はあくまで評価しただけであって厳しく言ったつもりは無いんだが・・・・。しつこい様だがこの二人、仲のいい兄弟と言っても過言では無いくらい似ている。現に打ち合わせをせずに同じ言葉を、一文字もズレずに綺麗にハモらせた。

 

「それで? 今からどうする?」

「決まってる。ヨハンとデュエルだ」

「ああ! 俺もそのつもり「スカリエッティ先輩!」なんだぁ?」

 

ヨハンの台詞を区切る程の大声と共に、真正面から走って来たブルー寮男子生徒。高校生と言うにはまだ幼く、初めて見る顔なので新入生だろう。約100メートルの距離を十五秒前後のタイムで全力疾走してきた少年は、ハァハァと数回息を整えるとスゥと息を吸う。

 

「スカリエッティ先輩! 僕とデュエルしてください!」

「デュエル? 勿論売られたデュエルが買うが、俺はいつでも全力全開だぞ?」

「分かっています! 僕、たった数ヵ月でブルー寮に上がった遊斗先輩に憧れて、ずっと頑張って来たんです」

「へぇ、それは光栄だな。期待通りの人間じゃないが、デュエルだけは想像以上だと思う」

「面白そうだな。十代、デュエルは後だ」

「え~」

「僕、(しのぶ)って言います」

「ああ。宜しくな忍。それと俺は下の名前で呼んでくれ。それじゃあ行くぞ!」

「「デュエル!」」

「先攻は貰った! 俺のターン、ドロー! レヴィを召喚!」

 

LCレヴィ1

A1900・D400

 

GX大会後半から高火力の相手(亮さんとF・G・D)と戦ったりして少し出番が無かったが、やはり序盤で攻撃力1900は頼りになる。レヴィはブンブンとバルファニカスを振り回して威嚇するものの、途中でバランスを崩して尻もちを付く。

 

『フッフッフ、僕を転ばせるとは。やるね、君』

「・・・・カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

「本当に遊斗先輩とデュエルしてるのかぁ。感激だな~。僕のターン、ドロー! 僕は忍者マスターHANZOを召喚!」

 

A1800・D1000

 

「「『アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?』」」

「うわっ!? ど、どうしたんだ!?」

 

HANZOが現れた同時に俺、十代、レヴィの口から出た意味不明の奇声にヨハンはビクッと肩を動かした。いや~、レヴィと一緒に読んでいたからレヴィは同じ反応をすると思っていたがまさか十代も。

 

「おお! その反応をしてくれるとは嬉しいです! では行きますよ~。HANZOの効果発動! 召喚に成功した時忍法と名の付いたカードを手札に加える。僕は忍法変化の術を手札に加えます。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

忍  モンスター1 伏せ2 手札4 LP4000

 

攻めてこなかったが、忍が伏せた忍法変化の術。忍者が使う術だけあり、かなり独特でユニークな効果を持った永続罠だ。これは楽しいデュエルが期待できそうだ。

 

「俺のターン、ドロー! フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。アインハルトを通常召喚し、ティオを特殊召喚する! ティオの効果でライフを700回復」

 

LCミッドチルダ0→1

遊斗LP4000→4700

 

「場のアインハルトとティオを融合! 来い、覇王アインハルト!」

 

A2700・D2200

 

相手のデッキが忍者と分かったが、何軸かがまだ分からない。トリッキーかつユニークな効果を持った忍者相手には、状況によってカードを変化できる三王娘が適切だ。

 

「バトル! レヴィでHANZOを攻撃!」

「永続罠発動、忍法変化の術! 自分フィールド上の忍者一体を生贄に発動。生贄にした忍者のレベル+3以下のレベルを持つ、鳥獣族・獣族・昆虫族をデッキから特殊召喚する。HANZOを生贄に、デッキからダーク・シムルグを特殊召喚します!」

 

A2700・D1000

 

HANZOは忍者が術を使う時のポーズを構え『忍!』と言った途端、HANZOの体を隠す様に白い煙が下から噴き出てきた。視界が奪われては攻撃が出来ない。レヴィは一旦後方に飛んで煙が収まるのを待つ。白の煙が晴れると、そこには忍者の姿は無く、黒い巨大な鳥がいた。

 

「やはりダーク・シムルグを入れているか。だが攻撃は続行だ! レヴィでダーク・シムルグを攻撃!」

「攻撃力が低いモンスターで・・・・? まさか!?」

「知っているなら話は早い! ダメージ計算時に手札のスバルを捨て、攻撃力を1000上げる!」

 

レヴィA1900→A2900 VS A2700

 

俺が手に持っているカードから、ウイングロードを敷きながらダーク・シムルグに向かうスバルが飛びだして来た。スバルはダーク・シムルグを翻弄するように不規則に動いて相手の油断を自分に誘う。巨大な体ではちょこまかと動くスバルを視界に捉えるのは難しく、スバルに弄ばれるダーク・シムルグはもう一人の事など頭に入っていなかった。

 

『馬鹿め! 光翼斬!』

 

他人を馬鹿にする前に、まず自分の学力(というか思考)を見返した方がいいと、心の中で突っ込みを入れつつ、青い刃が黒い巨大な鳥を斬る光景を眺めた。

 

忍LP4000→3800

 

「ダーク・シムルグが破壊されるなんて!」

「サーチしていたから出て来るのは予想できた。レヴィの効果発動。デッキからクロノを特殊召喚する。効果でデッキから設置型バインドを手札に加える」

 

LCレヴィ1→0

A1700・D1500

 

「アインハルトでダイレクトアタック!」

「罠発動、トゥルース・リインフォース! デッキの青い忍者(ブルーにんじゃ)を特殊召喚します!」

 

AD300

 

「なら青い忍者に攻撃!」

『覇王断空拳!』

 

A2700 VS D300

 

青い忍者に独特なステップで高速接近し、走りながら足先から練り上げた力を拳の先に乗せて青い忍者に放った。攻守300の弱小忍者がそのような攻撃を受け止める事など不可能。

 

遊斗LP4700→5000

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズアインハルトの効果。このカードを融合デッキに戻し、融合デッキの聖王ヴィヴィオを特殊召喚。効果でデッキの聖王の鎧を装備」

 

ヴィヴィオAD?→AD1200

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ4 手札1 LP5000

忍  モンスター0 伏せ0 手札2 LP3800

 

「遊斗の奴、初っ端から本気だな」

「さっすが先輩です。ホントに想像以上だ! けど僕だって。ドロー! よしっ。悪シノビを通常召喚!」

 

A400・D800

 

左手にクナイを持ち、闇を駆ける隠密行動型のシノビ。残念な事にこのカードは忍者と名の付いていないので忍者の恩寵を受ける事が出来ないが、それでも忍は忍者が好きなのかこのカードを入れている。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドです!」

「エンドフェイズ。ヴィヴィオをデッキに戻し、融合デッキのアインハルトを特殊召喚する」

 

A2700・D2200

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札1 LP5000

忍  モンスター1 伏せ2 手札0 LP3800

 

「さっきからあいつ、攻撃を仕掛けてこない」

「いや。あの悪シノビの効果は・・・・」

 

十代の言う通り、さっきから忍は一回も攻撃を仕掛けてこない。まあ単純にこちらの火力が高いのだ。忍者は下級モンスターがほとんどで優秀なカードが多いが、決してステータスがズバ抜けて高い訳でも無く、除去手段が豊富な訳ではない。

最上級モンスターは忍法で出す事が多いが、出した最上級が一ターンも経たずに破壊されてしまったら息切れもする。

 

「ドロー! アイシスを通常召喚!」

 

LCミッドチルダ1→2

LSアイシス・イーグレット ☆4/風/魔法使い/A1000・D500

 

肩に当たるか当たらないかくらいの短い髪をなのはさんと同じくサイドに束ねた黒髪の女の子。黒がメインのバリアジャケットで、太く赤いラインが多くあるので黒一色ではない。華奢な括れとへそが出ており、スレンダーな体系がバリアジャケットの良さを引き出している。

 

「攻撃力1000?」

「攻撃力で判断すると痛い目を見るぞ」

『あたしの効果は守備的だけどね』

 

それを言うな。

にしてもセットカードが非常に気になるな。十中八九悪シノビを守るカードだろうが、やはり和睦の使者と言った戦闘ダメージも受けず、悪シノビも破壊されないカードだろうか? 滅多にデッキに入れられない悪シノビだから、どうやって守ってくるのか見当もつかない。ただ何が伏せられていようと、魔法・罠の対象にされた時それを無効にする事が出来るアインハルトからの攻撃が一番だろう。

 

「バトル! アインハルトで悪シノビを攻撃!」

「攻撃対象に選択された時、悪シノビの効果が発動。デッキから一枚ドローします。そして悪シノビの効果にチェーンして立ちはだかる強敵を発動!」

「ッツ~。やってくれたな」

「僕のドローコンボです。立ちはだかる強敵は相手の攻撃宣言時に発動する事が可能です。自分フィールド上のモンスター一体を選択。発動ターン相手は選択したモンスターにしか攻撃対象に出来ず、全ての攻撃表示モンスターは選択したモンスターを攻撃しないといけません! 更に立ちはだかる強敵にチェーンして和睦の使者を発動! このターン悪シノビは破壊されず、戦闘ダメージを受けません」

 

A2700 VS A400

 

攻撃力ではアインハルトが勝っているが、うっすらと光る半透明のバリアにより悪シノビと忍は守られ、戦闘破壊はおろか戦闘ダメージすら与える事が出来ない。

 

「悪シノビを上手く使ってるな。レヴィ、クロノ、アイシスで悪シノビを攻撃する」

「戦闘対象にされた時、デッキからカードを一枚ドローします。それを三回」

 

非常に使いにくいコンボとは言え、相手の攻撃を回避しながら四枚ドローは強力だな。メイン1でアイシスを召喚したのが失敗だったみたいだ。

 

「ターンエンド。エンドフェイズ、アインハルトを融合デッキに戻し、イクスを特殊召喚」

 

A2000・D2500

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター4 伏せ2 手札1 LP5000

忍  モンスター1 伏せ0 手札4 LP3800

 

「僕のターン、ドロー! 忍者マスターSASUKEを召喚!」

 

A1800・D1000

 

忍者と言えば誰? と聞けばかなりの人数が答えるであろう佐助。彼の名に因んで数々の漫画やゲームにサスケと名乗るキャラクターが登場する。目の前の忍者も当然その佐助に因んでいる。

 

「バトル! SASUKEでイクスを攻撃! SASUKEは表側守備表示モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する!」

「ッツ、守備表示にしたのが仇となったか。アイシスの効果発動。フィールド上のモンスターが攻撃対象となった時に発動する。デッキトップ三枚を墓地へ送り、その中にモンスターが存在すればその数によって効果を得る。墓地へ送られたモンスターは二枚。このカードを守備表示に変更する」

「墓地肥やしですか」

 

SASUKEは札が付いたクナイをイクスの足元へ放つ。するとそのクナイはシューと音を立て、次の瞬間ドガンと爆発した。

 

「カードを四枚伏せてターンエンドです」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札1 LP5000

忍  モンスター2 伏せ4 手札0 LP3800

 

一気に四枚ガン伏せ。おそらく忍法と名の付くカードが絶対一枚は入っているだろう。非常に動きにくくなるが、忍者と名の付くモンスターさえ破壊出来れば腐る伏せカードも出る筈。

 

「ドロー! 速攻魔法、次元震を発動! お互いのプレイヤーは相手フィールド上のモンスター一枚を選択して破壊する。その後自分はデッキから次元断層とレベル4以下のLSを手札に加え、相手は一枚ドローする。俺はSASUKEを選択」

「僕はアイシスを選択しますが、チェーンして忍法超変化の術を発動。忍者と相手モンスター一体を選択して発動。選択したモンスターを墓地へ送り、そのレベル合計以下のドラゴン・恐竜・海竜を特殊召喚します!」

 

やっぱり変化の術を伏せていたか。場が荒れてしまうが、フリーチェーンのエスケープカード、忍者の消失は悪くない。

 

「逆順処理により、忍法超変化の効果でSASUKEとレヴィを墓地へ送り、デッキから白竜の忍者を特殊召喚します」

 

A2700・D1200

 

今度の変化の術は頭に超が付くだけあり、SASUKEが出した白い煙は自らを隠すだけでなくレヴィの体をも消した。煙の中から『止めろ! アハハハ! く、くすぐったい!』と、SASUKEがマニアックの趣味の人なら非常に危ない声が数秒間聞こえたが、スッと消えて行く。

それに続く様に突然アイシスの後ろに次元の狭間が現れ、宇宙の様に暗い空間に呑み込まれて行った。

 

「デッキから一枚ドローします」

「次元断層となのはを手札に加える」

 

手札に加えた次元断層は、次元震が発動したターンには発動できない制約を持つ。次元震も次元断層も1:1交換効果だが、自分の好きなタイミングで発動できるのが強い。効果は全くの別物だが一時休戦に似ている。

 

「なのはを通常召喚! 効果で自身にLCを置き、LCを取り除いて一番左の魔法・罠カードを破壊する」

 

LCミッドチルダ2→3

A500・D1800

 

「チェーンして安全地帯を白竜の忍者に発動!」

「い、一番面倒なパターンをやりやがったな・・・・」

 

白竜の忍者の効果は自分の魔法・罠カードをカード効果で破壊されないようにする。そして安全地帯は対象に取ったモンスターは破壊されず、効果の対象にも出来ない。つまりどちらかの効果を無効化しない限り、白竜の忍者も安全地帯も破壊できない。

 

「時空管理局のLCを取り除いてユーノを特殊召喚。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

LCミッドチルダ3→2

 

「効果でデッキからシャマルを手札に加える。バトル! クロノで悪シノビを攻撃!」

「攻撃対象にされた時悪シノビの効果で一枚ドロー。それにチェーンしてシフトチェンジを発動します。悪シノビの攻撃対象を、白竜の忍者へと変更」

「んな!?」

 

A1700 VS A2700

 

細長い白の龍を自由自在に操る美少女忍者は、クロノの氷結攻撃を安全地帯の恩寵を受けて無効にし、白い龍をクロノに突進させて鋭く尖った牙でクロノの体を引き千切った。

 

「クッ・・・・」

 

LP5000→4000

 

「なのはで悪シノビに攻撃!」

「悪シノビの効果で一枚ドローします」

『アクセルシュート!』

 

A1000 VS A400

 

桃色の魔力弾がちょこまかと動いて回避する悪シノビを捉え、ようやく悪シノビを破壊する事が出来た。消費カードも多かったが、このカードだけで六枚もドローさせてしまった。しかしここまで苦労し、しかも受身の効果で六枚ドローと考えると、やはり天よりの宝札はバランスブレイカーだ。あれも禁止になって当然である。

 

忍LP3800→3200

 

「ターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

忍  モンスター1 伏せ3 手札3 LP3200

 

「僕のターン、ドロー! 成金忍者(ゴールドにんじゃ)を召喚!」

 

A500・D1800

 

とても潜入向きとは思えない派手な服に、黄金に光る手甲と顔当て。今まで盗んできた盗品で幸せな生活をしていたのか、俊敏に動くには不可能な太った体系。ハッキリと言わなくても、とても忍者とは思えない。

 

「成金忍者の効果発動。手札の罠カードを墓地に送り、デッキからレベル4以下の忍者を表側または裏守備で特殊召喚します。覆面忍者ヱビスを特殊召喚」

 

A1200・D1800

 

緑色の忍者服を着た同じくメタボリックの忍者。I2会社が出した忍者ゲームのキャラをモチーフにしており、過去にそのゲームをプレイした事がある俺にとってこのキャラクターのカード化は嬉しい。

 

「ヱビスの効果を発動します。一ターンに一度、このカード以外の忍者と名の付くモンスターの数だけ相手の魔法・罠カードを手札に戻します!」

「チェーンしてプロテクションを発動。このターンなのはは破壊されない!」

 

しかし伏せていた設置型バインドは、ヱビスが吐いた息により俺の手札まで吹き飛ばされた。

 

「防がれてしまいましたか。けどダメージは受けてもらいます。バトル! 白竜の忍者とヱビスでなのはを攻撃!」

 

A2700 VS A1000

A1200 VS A1000

 

『竜はともかくおじさんの息は受けたくないなあ・・・・』

「同感です」

 

遊斗LP4000→2100

 

「? どうかしましたか?」

「いや、何でも無い」

「カードを二枚伏せてターンエンドです」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ0 手札4 LP2100

忍  モンスター3 伏せ5 手札0 LP3200

 

「ドロー! なのはの効果発動。デッキからはやてを手札に加える。そして次元断層を発動。互いのプレイヤーは相手フィールド上のモンスター一枚を選択して除外する。その後相手は二枚ドローし、俺は時空管理局、虚数空間、LS一枚を手札に加える」

「強力なカードですね。僕もドローするとは言え、1:3サーチですから」

「メリットもあるがデメリットもある。好きなタイミングで使える代わりにサーチカードが限られているのと二枚ドローさせる事。俺は成金忍者を選択」

「確かに。じゃあなのはを選択します」

「次元断層の効果にチェーンして速攻魔法ユニゾンアウトを発動。なのはとユーノの融合を解除する」

 

なのはさんと成金忍者の体半分が本来の位置からズレる。左右対称だった顔のパーツは勿論、体全てがズレて不気味な状態になるが、なのはさんは融合を解除して素早く次元断層から回避。

しかし回避できなかった成金忍者は体のズレに耐えきる事ができずに、ゲームから除外された。

 

「加えるLSはホーリーカタルシス・シャマル。墓地の次元断層を除外して虚数空間を発動! 時空管理局も発動する」

 

二枚の永続魔法によりこの空間は混沌と化した。近未来都市ミッドチルダの上空に現れる超巨大な建設物、時空管理局本局。だがその巨大な建物の表面には赤い不気味な空間があった。それは明らかに時空管理局の一部では無く、こことは全く別の次元。その赤い空間の大きさは決まりが無く、大きくもあれば小さくもあり、それはミッドチルダの街中にも見られる。

 

「LCを生贄にはやてを召喚」

 

LCミッドチルダ2→3→2 はやて1

A2000・D1700

 

「そしてフィールドにはやてがいる時、手札のシャマルを特殊召喚! 効果で時空管理局にLCを置く」

 

LCはやて1→0 時空管理局0→1 シャマル0→1

 

「場のなのはとユーノを融合! 再び現れろ、AOA高町なのは! 効果でデッキからツヴァイを手札に加える」

 

A1000・D3000

 

「シャマルのLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚。更にシャマルの効果でミッドチルダにLCを置く」

 

LC時空管理局1→2 シャマル1→0 ミッドチルダ2→3

 

「場のシャマルとツヴァイを融合! 来い、祝福の癒し手シャマル! 更に融合素材にしたツヴァイの効果で、時空管理局のLCを取り除いて手札に加える」

 

LC時空管理局2→1

A1000・D2300

 

「シャマルが乗せたLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚!」

「凄い展開力だな・・・・」

「遊斗のデッキはカウンターを溜めるフィールド魔法か永続魔法、それかAOAなのはがいれば展開力が上がる。で、今遊斗のフィールドにはそのカード達がいる」

「場のはやてとツヴァイを融合! 来い、夜天の主・八神はやて! はやての特殊召喚成功時、自身にLCを二つ乗せる。更にはやては自身のLCの数×300攻撃力が上がる。更にツヴァイの効果で時空管理局のLCを取り除き、自身を手札に」

 

LCはやて2 LC時空管理局1→0

はやてA2100・D2000→A2700

 

「これで最後。祝福の癒し手シャマルを生贄に、ホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚!」

 

A2000・D3000

 

虚数空間の影響で混沌と化したこの空間でも、ホーリーシャマ姉の登場時に無音になるのは変わらなかった。ほんの数秒間無音の状態が続き、ピチョンと湖に雫が落ちる音が聞こえる。すると突然俺のフィールドに湖が現れ、そこからホーリーシャマ姉が、おとぎ話の女神様の如く現れた。

 

「最上級モンスター達が並びましたが、白竜の忍者を突破できませんよ?」

「白竜の忍者を突破しなくても、お前のライフを0にすればいいだけの事。シャマルの効果発動! 俺の手札の数×300ライフを回復し、その数値分お前にダメージを与える! 俺の手札は三枚!」

『戒めの鎖』

 

遊斗LP2100→3000

忍LP3200→2300

 

「ッツ」

 

ホーリーシャマ姉は俺の手札から、王様はやてさん御用達の先の尖った禍々しい鎖を出現させ、忍の体を襲う。

 

「シャマルの第二の効果。フィールドのカード一枚にLCを二つ置く。はやてに二つ置く」

 

LCはやて2→4

はやてA2700→A3300

 

「ミッドチルダのLCをはやてに移動」

 

LCミッドチルダ2→1 はやて4→5

はやてA3300→A3600

 

「バトル! はやてでヱビスを攻撃!」

「罠発動! ゴブリンのやりくり上手! それにチェーンして非常食を発動します! ゴブリンのやりくり上手とセットカードを墓地に送りライフを2000回復」

 

忍LP2300→4300

 

「そしてゴブリンのやりくり上手の効果でデッキから三枚ドローして一枚をデッキの一番下に戻します」

 

さっきの成金忍者の時にもう一枚のやりくり上手を墓地へ送っていたのか。

 

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A3600 VS A1200

 

はやてさんが自分の周辺に氷をイメージさせる水色のブロックを形成した途端、辺りの空気が一気に下がった。吐く息が白くなり、術者であるはやてさん本人もその影響を受けているのか、彼女が吐く息も白い。シュベルトクロイツを振り下ろした瞬間、その水色のブロックはヱビスに向かって急降下し、ヱビスを中心に氷神の息吹を起こす。

 

忍LP4300→1900

 

「クッ・・・・」

「仕留めそこなったか。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札1 LP3000

忍  モンスター1 伏せ2 手札4 LP1900

 

「僕のターン、ドロー!」

「このスタンバイフェイズ虚数空間の効果が発動する。互いのプレイヤーはスタンバイフェイズ開始時に、相手フィールド上のモンスター一体を選択。選択したモンスターをゲームから除外する」

「? 手間をかけて手札に加えた割には自分も被害にあうんですね? じゃあはやてを選択します」

 

そう、(自分の手札だけ考えると)1:3効果である次元震のもう一つの弱点。それはサーチする対象の虚数空間の使いにくさ。色々とコンボカードを入れれば面白いカードになるだろうが、俺のスタンスに反するからな。

 

「シャマルの効果。はやてとミッドチルダのLCを一つずつ取り除いてフィールドから離れるのを無効にする」

 

LCはやて5→4 ミッドチルダ1→0

はやてA3600→A3300

 

「だからそのモンスターを・・・・、では行きますよ。手札抹殺を発動します! 何も無ければ僕は四枚の手札を交換します」

「俺は一枚だ」

 

手札抹殺か・・・・。誰もが知る優秀な手札交換カードだが、ゴブリンのやりくり上手を入れている忍者に入れるメリットはあるのか?

 

「浅すぎた墓穴を発動。お互いのプレイヤーは墓地のモンスター一体を裏守備の状態で特殊召喚します」

「俺はイクスを特殊召喚する」

「僕は渋い忍者(シルバーにんじゃ)を特殊召喚します」

 

渋い忍者。そのギミックまで入れているとは、素直に凄いと思う。渋い忍者は確かに強力な効果を持っているが、コンボ性の高いカード。悪シノビのギミックまで入れていたデッキに入れるカードでは無い。

 

「太陽の書を発動。裏側表示の渋い忍者を攻撃表示に。そしてリバースした時、渋い忍者の効果が発動します。自分の手札・墓地から渋い忍者以外の忍者を可能な限り裏守備で特殊召喚します。僕が特殊召喚するのは青い忍者、赤い忍者(レッドにんじゃ)、SASUKEの三枚です」

 

渋い忍者が両手を合わせ忍者が術を使う時のポーズを取ると、瞬間移動したかの様に、何処からともなく三枚の裏守備モンスターが現れた。

 

「そして手札の砂漠の光を発動します!」

「手札から罠発動だと!? まさかさっきの手札抹殺で!」

「はい。処刑人マキュラが墓地に送られています。処刑人マキュラは墓地へ送られたターン、手札から罠を発動できます」

 

また高級なカードを・・・・。元々罠カードはタイムラグが大前提としてあるカードだが、このカードはそのタイムラグを一気に無くす事が出来る。エクゾディアパーツが安値で出回れば真っ先に禁止になるカード。

 

「砂漠の光の効果で自分フィールド上のモンスターを全て表側守備表示にします」

 

上空から降り注ぐ日焼けしそうな程熱い太陽の光を浴び、渋い忍者、白竜の忍者と三枚のセットされたカードが表側守備表示になる。

 

「リバースした赤い忍者と青い忍者の効果を発動します。青い忍者で時空管理局を破壊します」

「そっちを破壊してきたか」

 

青い忍者は両手から青いビームを上空にいる時空管理局に向けて発射する。大きさで言うと俺より一回りくらい大きい程度のビームで時空管理局を破壊できる訳ないが、これはデュエルである。青いビームを受けた時空管理局は、まるで映画のラストシーンの様に内側から大爆発を上げて木っ端みじんになった。青い忍者って一応攻守300の弱小モンスターだよね?

時空管理局に努めているはやてさんはこの光景に「アハハハ・・・・」と乾いた笑い声を上げている。精霊になる前とは言え、自分の職場が忍者一人に破壊されたら微妙な心境だろう。

 

「更に赤い忍者で右側のセットカードを選択します。そのカードが罠だったら破壊する事が出来ます」

「選択したカードは設置型バインドだ。破壊される」

 

青い忍者と同じように両手から放たれた赤いビームが、セットされた設置型バインドを破壊する。さっきが壮大すぎた所為か、凄く地味に見えてしまう。

 

「ゴブリンのやりくり上手を発動します。三枚ドローして一枚をデッキの一番下に。赤い忍者と青い忍者を生贄に、究極恐獣(アルティメット・ティラノ)を召喚します!」

 

A3000・D2200

 

究極恐獣。剣山が愛する恐竜でもあり、エースでもある強力な最上級モンスター。おそらく超変化で特殊召喚する為に入れているのだろう。

始めて剣山とデュエルをした時はこのカードにプレッシャーを受けたものだが、数々の王と戦った今となっては可愛く見える。

 

「究極恐獣は相手フィールド上のモンスター全てに攻撃しないといけません! バトル! 究極恐獣でなのはとシャマルに攻撃!」

 

A3000 VS A1000

A3000 VS A2000

 

俺のライフはジャスト3000。この攻撃を受けたら負けてしまうが、そう簡単に新入生に負ける訳にはいかない。

 

「罠発動、フィジカルヒール! LSを選択して発動。選択したモンスターのレベル×400ライフを回復する。シャマルを選択してライフを3600回復」

 

遊斗LP3000→6600

 

「クッ! ですが3000のダメージを受けて貰います!」

 

遊斗LP6600→3600

 

究極恐獣の鋭い牙と爪により、なのはさんは破壊されてしまったが、ホーリーシャマ姉は自らの前に緑色の盾を作り出して破壊を間逃れた。究極恐獣の闘争本能は未だに収まらず、セットされているイクスとはやてさんにも突進する。

 

「イクス、はやての順番に攻撃!」

 

A3000 VS D2500

A3000 VS A3300

 

突進してくる究極恐獣に身動きが取れないイクスはアッサリと破壊されてしまったが、はやてさんは上空に飛んで究極恐獣の縄張りである地上から遠ざかる。そして再び氷の息吹を起こし、究極恐獣を凍死させた。

 

忍LP1900→1600

 

「カードを一枚伏せてターンエンドです」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札1 LP3600

忍  モンスター3 伏せ3 手札1 LP1600

 

やはりさっきのターンで決めるつもりだったのか、虚数空間への対抗策は無い様だ。最も、白竜の忍者は対象に出来ないからどうしようもないんだけど。

 

「ドロー! 虚数空間の効果を発動。SASUKEをゲームから除外する」

 

俺がSASUKEを指差した瞬間、SASUKENの足元に突然赤い異次元空間が出現し、まるで落とし穴の様にSASUKEは虚数空間に呑み込まれて行く。この虚数空間はどんな事をしても脱出できない底なしの沼。フェイトのお母さんもこの空間に呑み込まれたと聞いた。

 

「シャマルの効果を発動。俺の手札は二枚だ」

『戒めの鎖』

 

遊斗LP3600→4200

忍LP1600→1000

 

「遊斗の奴えげつないカード使うな」

「あいつを突破するのは苦労するぜ。何回も戦った俺でさえ出されたら苦労する」

 

そこの外野二人うるさいぞ。俺は後輩に自分の持てる全ての力を使って戦っているんだ。まあ三幻魔はフェルシュトラーフェと一緒にどっか行ったけど。それ以前に三幻魔は使わないけど。

なに自分で矛盾した事言ってるんだ・・・・。

 

「シャマルの効果ではやてにLCを置く」

 

LCはやて3→5

A3300→A3900

 

「バトル! はやてで渋い忍者を攻撃!」

『『氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)!』』

 

A3900 VS D2200

 

氷結魔法で渋い忍者を凍らせるだけで、特に面白いアニメーションは無い。

 

「シャマルを守備に変更。一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札1 LP4200

忍  モンスター1 伏せ3 手札1 LP1000

 

「やっぱり遊斗先輩は強いです。これでも僕、中等部ではかなり上位にいたんですが」

「上には上がいるって事さ」

 

主に亮さんとか十代とかF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)とか亮さんとか。

 

「けど絶対に諦めません、このデュエル勝たせてもらいます! 僕のターン、ドロー!」

「虚数空間の効果が発動する。どっちを選択しても結果は一緒だが」

「はやてを選択します」

「シャマルの効果で無効にする」

 

LCはやて6→4

はやてA3900→A3300

 

「へへっ、その永続魔法のおかげでそのカードが破壊できます。ブラック・ホールを発動します!」

「ッツ、やっぱり一長一短か。墓地のソニックムーブの効果を発動! このカードをゲームから除外してはやてを除外する」

「え!? いつから墓地に!?」

「アイシスの時にだよ。いざという時に取っておいたんだが、正解だった様だ」

 

今まで使う機会は沢山あったが、全て何らかの保険のカードがあった時だ。今も保険のカードはあるが、おそらく次のターンで決着が付くだろうから取っておく必要も無い。

 

「ぅぅ、予想外でした」

 

ブラック・ホールに呑み込まれたのはホーリーシャマ姉一人。白竜の忍者は安全地帯によって破壊には無敵。

 

「罠発動! トラップ・スタン! これでフィールドの罠カードの効果を無効にします。これで安全地帯と忍法超変化の術の効果は無効になります。マジック・プランターを発動。フィールドの忍法超変化の術を墓地へ送って二枚ドロー! 速攻の黒い忍者を召喚!」

 

A1700・D1200

 

速すぎる余り常にカラフルな残像を引きながらフィールドを駆けまわっている、雷フェイトさん以上に落ち着きのない黒い忍者。

 

「風魔手裏剣を白竜の忍者に装備。攻撃力を700上げます」

 

白竜A2700→A3400

 

「白竜の忍者を攻撃表示に変更! バトルです! 白竜の忍者、速攻の黒い忍者の順でダイレクトアタック!」

 

A3400

 

「白竜の忍者の攻撃はライフで受けよう」

 

遊斗LP4200→800

 

「だが速攻の黒い忍者の攻撃は手札のザフィーラで防ぐ。効果でデッキから一枚ドロー」

「これで・・・・、ターンエンドです」

「エンドフェイズソニックムーブの効果ではやてが戻ってくる。ソニックムーブの効果ではやてのLCは除外した時と同じ四つになる」

 

LCはやて4

はやてA2100→A3300

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札1 LP800

忍  モンスター2 伏せ2 手札0 LP1000

 

「これがラストだ。俺のターン、ドロー! 虚数空間の効果発動。速攻の黒い忍者を選択する!」

「チェーンして速攻の黒い忍者の効果を発動します。墓地のダーク・シムルグとHANZOをゲームから除外し、このカードをエンドフェイズ時まで除外します」

 

白竜の忍者を選択してもしなくてもどちらでも構わない。せっかくなら墓地の闇を除外させた方がいいと思い選択したが、本当に除外するとは。

 

「虚数空間の効果発動。効果を四回以上使用した時、デッキからフィールド魔法、アルハザードを手札に加える」

「アルハザード?」

 

アルハザード、またの名を忘れられし都。そこには時を操り死者さえも蘇らせる秘術がある幻の場所。次元断層に沈んだとされるその空間が今、虚数空間を旅した事により発見されこの手に加わる。

 

「フィールド魔法アルハザードを発動!」

 

フィールド魔法をセットし、どんなフィールドなのかドキドキしながら待つ。カードの絵柄だけでは今一分かりにくく、発動するまで時間が掛かる為ソリッドビジョンでも中々お目にかかれない。

殺伐としたフィールドだろうか? 機械的なフィールドだろうか? 宇宙の様に真っ暗なフィールドだろうか?

どれも外れだった。

そこは緑豊かな場所。緑豊かな木々が伸び伸びと背を伸ばしているが、どれも視界の邪魔にならず、子供達が元気に楽しめる広い草原。多色の花が咲き、その花に含まれている蜜を虫が美味しそうに吸っている。

 

「・・・・え~と」

 

ソリッドビジョンでもマイナスイオンを感じられるいい場所だが、何と言うか予想と違いすぎて頭が追い付いていない。数秒間キョロキョロと辺りを見渡していると、突然デッキからフェイトが出てきた。

 

『ここが・・・・。そっか、やっぱり母さんはたどり着けたのかな』

「えっと、フェイト?」

『ううん、何でも無い。デュエルを続けて』

 

喜ぶ、と言うよりどこか懐かしむ様な顔をしながらフェイトはデッキに戻って行った。今までフェイトから聞いた話から一つの答えが出てきたが、フェイトに聞くのも野暮だろう。

 

「さて、気を取り直してと。虚数空間の効果が発動する。アルハザードが発動した時、このカードの効果で除外したカードを持ち主のフィールドに特殊召喚する。更にアルハザードがある限り、虚数空間の毎ターン除外する効果は無効化される」

「SASUKEを守備表示で特殊召喚します」

 

A1800・D1000

 

「アルハザードの効果発動! 一ターンに一度フィールドのカードにLCを三つ置く事が出来る! 置くのは当然はやて!」

 

LCはやて4→7

はやてA3600→A4200

 

「こ、攻撃力4200!?」

「カートリッジロードをはやてに乗せる!」

 

LCはやて7→8

はやてA4200→A4500

 

「はやてで白竜の忍者を攻撃!」

『最後まで同じ魔法をやるってのも味気ないし、ここは一発!』

 

A4500 VS A3400

 

『『海より集え水神の槍、彼方より来たれ銀雪の吐息、坂巻き連なり天に座せ!』』

 

先程まで草原だったアルハザードの空間は、はやてさんに合わせるようにいきなり海へとフィールドを変える。やはり普通のフィールドでは無かったらしい。

はやてさんは海の水をひたすら一点に溜め、その大きさを徐々に徐々に大きくしていき、ついには巨大戦艦の一つや二つを楽に呑み込む事が出来るくらいの巨大な水の塊へと変わる。その巨大な水は、はやてさんの瞬きと共に氷塊へと変化して白竜の忍者を狙う。

 

「・・・・もはや魔法って言えば何でもありだな、この人達は。って、今更か」

『『ヘイムダル!』』

 

白竜の忍者もプレイヤーである忍も、余りの光景にポカーンと口を開けて接近する氷塊を眺めるしか出来なかった。氷塊により白竜の忍者と忍の影が見えなくなり、最後の最後で忍の悲鳴が聞こえた。

 

「ぎゃああああああ!」

 

忍LP1000→-100

 

「・・・・はやてさん、やり過ぎですよ。トラウマになったらどうするんですか」

『だ、大丈夫や。アニメーションなのには変わらへんし。あっこまで攻撃力が変化して氷結(アーテム・デス)息吹(アイセス)ってのもしまらんやろ?』

「言いたい事は分かりますけど」

「アイタタタ・・・・。やっぱり遊斗先輩は強いです! 僕、すごく感動しました!」

 

どうやら忍は純粋で向上心があるのか、最後の攻撃の事は特に気にしていない様だ。はやてさんが軽くだがホッと息を吐くのを見逃さなかった俺は、次のはやてさんの言葉に苦笑した。

 

『よかったやろ?』

「調子いいですね」

「え? 何か――」

 

精霊を見聞きする事が出来ない忍には独り言に聞こえたのか、俺の言葉の意味を聞こうとした瞬間、突然忍は足をふら付かせて俺の胸に倒れてきた。

 

「お、おい忍!?」

「す、すいません。デュエルで張り切り過ぎたのかも」

 

最後に「大丈夫です」と付け加えたがとても大丈夫そうには見えないので、抱き抱えてすぐ近くの日陰に運んで横にさせる。デュエルを見ていた十代とヨハンも心配そうに忍の顔を覗き込み、パタパタと手で風を送る。

 

「あれ? 俺も若干ダルい」

「へ? 遊斗も?」

「ああ。多分新学期一日目って事で緊張してたんだと思う。まっ、すぐに治るさ」

 

 

 




カウンターをはやてに!
いいですとも!


これとニンジャをやりたかっただけです。
本当ならこの最後で例のあいつが「ハッハッハ! デュエルエナジー頂きぃ~☆」的な事を言うんですけど、一人称だから書こうと思っても書けない。

今回もまた数枚オリカが出ました。


LSアイシス・イーグレット ☆4/風/魔法使い/A1000・D500
このカードが表側攻撃表示で存在し、相手モンスターが攻撃宣言をした時に、1ターンに1度自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動できる。この効果で墓地へ送られたモンスターカードの枚数で以下の効果を得る。
●0・1枚:攻撃モンスターの攻撃力を500ポイントアップする。
●2枚:このカードは守備表示になる。
●3枚:その攻撃モンスター1体の攻撃を無効にする。



コクイ様作

次元震 速攻魔法
お互いのプレイヤーは相手フィールド上に存在するモンスターを1体ずつ選択して発動する。
選択したモンスターを破壊する。その後相手はデッキからカードを1枚ドローし、自分はデッキから「次元断層」とレベル4以下の「LS」と名の付くモンスターを1枚をデッキから手札に加える。
このカードを発動したターン、自分は「次元断層」を発動することはできない。


次元断層 通常魔法
お互いのプレイヤーが相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターをゲームから除外する。その後相手はデッキからカードを2枚ドローし、自分はデッキ・墓地から「時空管理局」と「虚数空間」を手札に加え、デッキから「LS」と名の付くカードを1枚手札に加える事が出来る。


虚数空間 永続魔法
墓地の「次元断層」をゲームから除外する事で発動できる。
お互いのプレイヤーはスタンバイフェイズ時に相手フィールド上のモンスター1体を選択し除外する。
この効果を4回以上発動した時、自分はデッキから「アルハザード」を手札に加える事ができる。
「アルハザード」が発動した時、このカードの効果で除外したモンスターを持ち主のフィールドに戻す。フィールドに「アルハザード」が存在する場合、スタンバイフェイズ時に発動するこのカードの効果は無効になる。


アルハザード フィールド魔法
フィールド上に表側表示で「虚数空間」が存在しない場合このカード除外する。
このカードは効果の対象にできない。
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に以下の効果をどれか1つ選択して発動することが出来る。
●自分の墓地のモンスター1体を効果を無効にし、召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃することができない。
●自分フィールド上に表側表示で存在するカードにLCを3つ置く。
●自分の墓地の魔法・罠カードを1枚選択して発動する。選択したカードをデッキに戻し2枚ドロー。その後手札1枚を捨てる。






とりあえず出したアイシス。効果は場が限定されるカードガンナー。どっちかと言うとカードブロッカーに似ています。三枚墓地へ送る効果も十分に強いので、特別な効果は持っていません。
効果を分け無くてもよかったんですけど、それはそれで使いにくいかもと思ったので。まあ0・1がデメリットで2枚以降がメリットと言う感じです。


続いてのカード達はコクイ様から頂きました。
次元震、次元断層はある意味完全な1:1交換です。相手と自分のモンスターの損失数は同じ、このカードの発動に手札一枚消費を、サーチ効果で発動時より増やす。相手にもドロー。
サーチする魔法カードが限定されている為、手札は増えますが相手にもドローさせると考えると、決してメリットだけではありません。
ただ好きなタイミングで発動できるのが大きいです。


虚数空間。毎ターン相手のモンスターを除外するカード。中々複雑と言うか難しいカードでもあります。ただ発動条件が次元断層をゲームから除外してなので、過程二つを飛ばす事も可能になります。
見返りが大きい分、タイムラグは長いです。


アルハザード。
お前がラスボスでいいんじゃないかな? まあ皆さんに分かってほしいのが、高速墓地肥やし→虚数空間→テラフォからのアルハザード、なんて事はやりません。こういうのがあるからオリカで統一してる所存です。
気軽にポン、と出せませんがヨハンのレインボールイン、失楽園よりはるかに強力なフィールド魔法です。ただルインの三枚以上、てめーは駄目だ。
まあ性質上どうしても出番が少なくなると思いますが、面白いので使っていきたいなと思います。


何故これらのカードを採用したかと言うと、これらの案と一緒に頂いたバックストーリーが面白かったからです。
最初の次元震で次元断層が生まれ、偵察命令が下される(これが下級サーチ)
次は次元断層で虚数空間が見えてきたから管理局も重い腰を上げて主戦力を投入。相手もそれに対応するために手札を補給。
虚数空間が発生して敵味方が重力の底に真っ逆さま。
最後は少し違うのですが、虚数空間を旅することでアルハザードを発見。そこで虚数空間に呑み込まれた仲間たちと会う。


遊戯王らしいカードのストーリーがあったりします。



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第四十六話

更新が遅れて申し訳ありません。この小説投稿して以来初めてゲーム買ったんですが、それが(更新ペースから見て)クソゲーでして、執筆が全くできませんでした。アクションゲームで盛り上がったのは久しぶりでした。まだクリアしていないのですが、急に執筆したくなって。


今回優斗に殺意を覚えた人は作者と親友になれます。


あと結構アニメオリカが登場します。アニメオリカのカードの登場時に軽い説明を入れておきます。


ヨハン達が学校にやって来た日の夜。イメージ的には夏が終り、少し寒いと感じる日もある九月の夜だが、実際は真夏の夜と大して変わらない温度だ。そんな中俺は一人で山奥に来ていた。

涼みに来たのではなく、その逆で温まりに来たのだ。山奥に来て温まると言ったら大方予想できるだろうが、念の為に言っておくと俺は温泉に向かっている。この暑い中、態々山を登ってまで温泉に来たのには理由がある。

勿論温泉に浸かりに来た、と言うのも理由の一つだが、二年前にここに現れた精霊世界の扉が開いていないか確認する為。

ひょっとしたらあの場所から再び精霊世界に行けるかもしれないので、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の戦い以降よくこの温泉に通っている。

 

「あ゛~、久しぶりだと気持ち~」

 

ダラダラしていた夏休みから一変し、ブルー寮三年生代表としての生活が始まった。まあ初日早々遅刻したけど。その緊張を解すかの如く、俺の体全身を芯から温めてくれる温泉の中にいると、意識せずとも親父臭い声が出る。

 

「遊斗。私も入るよ」

 

風で微かに揺れる湯に体を左右に揺らされている途中、女の子の声と共に俺の意識は一気に覚醒した。

俺の返答を待たずに脱衣所から出てきたのは、長い金色の髪を下ろしたフェイト。勿論体をバスタオルで大事な所を隠しているが、肩、鎖骨、太もも、他にも色々あるが、特にその三つの部位が俺を刺激した。

 

「エット、フェイトサン?」

「そ、そんなに緊張されると私まで恥ずかしいよ」

 

と、少し頬を赤く染めながら湯船に浸かっていく。右足の親指からゆっくりと温泉に浸かるその光景は、比喩でもお世辞でも無く、本当に天使の入浴かと錯覚してしまった。

濁る温泉がこれ程まで憎いと思ったのは生まれて初めてだったが、濁っていないと理性を保てていたかどうかかなり怪しいので、濁る温泉は許す事にしよう。

 

「星が、綺麗だね」

「・・・・ああ。本校以外高い建物が無いからな」

 

空を見上げるフェイトに合わせて顔を上に上げると、そこは空いっぱいに広がる白く輝く小さな星達。ここから見たら数センチも無い小さな光に見えるが、気が遠くなる程の距離を旅すればその大きさを目で確認できるだろう。

 

「私は小学校の記憶しかないから高校って体験した事ないんだけど、やっぱり楽しい?」

「ああ、今までで一番楽しい。小学校、中学校と友達ゼロだったからな」

「ほんと、今じゃあ後輩に憧れる先輩にもなって。ほんと、成長したね」

「トラブルの種が尽きないで、デュエルが何よりも優先される変な学校だからな」

 

変な学校と聞いてか、フェイトは「ふふっ」と嬉しそうに小さく笑う。でも実際、学園内をフェイトが歩いていても特に違和感を持たず、むしろ俺との関係の方を気にしたり、剣山みたいな変わった奴が多かったり。他にも色々あるが変人揃いの学校である。

 

「あっ、今日満月なんだ。綺麗~」

 

さっき夜空を見た時は俺も一緒に上を向いていたから何とも思わなかったが、月光を浴びながら夜空を見るフェイトは、今まで見てきたどんなものよりも綺麗と素直に感じた。

だからだろうか。死にたくなる程恥ずかしい台詞を言ってしまったのは。

 

「確かに綺麗だけど、お前の方が綺麗だ」

「えっ?」

「・・・・」

 

完全に台詞を外してしまったのか、フェイトは照れると言うよりもキョトンとした表情とルビーの瞳で、赤面しているであろう俺の顔を見る。

 

「・・・・ふふっ。ありがとう」

「お、おう」

 

人並みには黒歴史を持っている俺だが、これ程恥ずかしい経験をしたのは初めて。フェイトは素直に喜んでくれたのだろうが、さっきのありがとうには俺へのフォローも入っている様で、酷く自分が惨め――と言うかアホに思える。

ただそれと同時に、隣で気持ちよさそうに温泉に浸かっている少女は、俺より長い年月生きていると実感できる場面でもあった。

 

「あーもぉーっ!」

 

恥ずかしさの余り大声を上げ、両手で皿を作って温泉で顔を何度も洗う。左からフェイトが笑いを堪える声が聞こえるが、それでも止めずに何度も顔を洗う。すると恥ずかしさの余り幻覚を見てしまったのだろうか? 濡れた手で顔を雑に拭いて目を開けると、そこには濁った緑色の鱗が見えた。

 

「・・・・なあフェイト」

「なに、かな?」

「お前にはこの目の前の生物が見えるか?」

「うん。結構危険な動物だよね」

 

長い()と尻尾を持ち、その縦に長い体は鱗で覆われている。眼と鼻孔のみが水面上に露出する様な配置になっていると、テレビで見た事があるが、本物でも実際にそうだった。

その生物が温泉に入れるどうかは別として、これまでの説明で目の前にいる生物が大体分かった筈。

 

「ワワワワ、ワニィィ!? フフ、フェイト。今すぐ逃げるぞ!」

「大丈夫みたいだよ。ほら」

 

フェイトの指さす方からジャブジャブと足音ならぬ、水音が聞こえる。湯気の所為で遠くまで見えなかったが、すぐに誰か分かった。ワニを背負って留学生の中で一番目立っていたジム・クロコダイル・クック。

どうやら彼も温泉に入っているようで、下はタオルで隠しているが裸だった。

 

「君は、ヨハンとデュエルをしたユニークボーイ」

「ボーイって年・・・・なのか? えっと、申し訳ないんだけどとりあえずあっち向いてくれる?」

「ワッツ?」

「そこに女の子がいるから」

「オーケー」

 

男の欲望のままに動く奴では無かったようで、素直に俺が指差した方へ振り返り、暫くの間ジッとしていてくれた。

 

 

 

 

温泉から上がってそれぞれ服を着た俺達は、山を下る真っ最中だった。

 

「それで、どうして君達は温泉に入っていたんだ?」

「ワニを温泉に入れてるお前には言われたくないけど。この温泉にはよく通っててな。フェイトとは恋人だから」

「へ~。ガールはフェイトって言うのか。カレンが君に懐いているよ」

「カレンってそのワニの事?」

「イエス」

 

なのはやはやてから聞いた話では、フェイトは昔からモテモテだったらしいが、まさかワニにまで好かれる程だったとは。生まれがコンプレックスなフェイトに言うのは失礼だろうが、生まれ持った一種の才能だろう。フェイトはジムに背負われているカレンに恐る恐る手を近付け、そっと手を当てる。

 

「わあ、不思議な感じ」

「サンクス。カレンも喜んでる」

「ところでジムはどうしてあんな山奥にいたんだ?」

「そうだった。実はこのデュエルアカデミアで強力な電磁波が発生している可能性があるんだが、君達は何か心辺りが無いか?」

 

強力な電磁波、と言われても電磁波って基本体では感じられないんじゃないのか? 俺達が良く使う家電やデュエルディスクにも使われている電磁波だが、急に言われると親近感の無い言葉だ。

 

「いや。フェイトは電気に詳しいけど」

「分からない。ただバルディッシュに聞けば分かるかも」

「Bardiche?」

「い、いや。何でも無いよ」

 

何故バルディッシュの発音だけがいいのかが分からないが、やはり外国人? の発音は美しい。

 

「一時間前ぐらいから普段温厚なカレンの様子がおかしくなってね。ひょっとしたら電波が関係あるかもと思って探してたんだ」

「・・・・あっ。そう言えば忍とのデュエルが終わった後、ちょっとだけ疲労感が出たな。忍も急にふら付いてたし」

「リアリィ?」

「けどすぐに治ったから俺も保健室まで運ばなかったけど」

 

するとジムは顔に手を当てて少し考える素振りを見せ、何を思ったのか歩くのを止めてこっちを向いてきた。

 

「遊斗。俺とデュエルをしてくれないか?」

「デュエル? 別にいいけど、その電磁波と何か関係があるのか?」

「イエス。ここに来る最中、デュエルの後にふら付く生徒を見たんだ。ひょっとしたらこのデス・ベルトに何か関係があるかもしれない」

 

そんな事が起こっているなら、いち早く精霊達(みんな)が気付くだろうが――と思ったが、露天風呂に入るからカードの中でジッとしているように、って言ったから気付かなかったのか。そうじゃなくても普段からカードの中でジッとしている方が多い。

 

「いいぞ。百聞は一見にしかず。やってみた方が早いだろう」

「ちょっと遊斗!? 危険かもしれないんだよ! 帰ってから調べた方が」

「帰ってから調べるより、今すぐ調べる方法が目の前にあるんだ。それにジムとデュエルしてみたい。こいつの強さは本物だ」

「ヒュ~、グレイト! デュエリストはそうでなくちゃ!」

「ハァ・・・・。やっぱりデュエリストって変だよ・・・・。もう構えてるし」

「「デュエル!」」

「先攻は貰う。俺のターン、ドロー! モンスターをセット。カードを三枚伏せてターンエンド」

 

ジム モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

 

採用していない俺が言うのもなんだが、大嵐を警戒していないのか。それともカウンターでも入っているのか。どっちにしろあのセットモンスターを表にすれば大体の予想は付くだろう。

 

「ドロー! コロナを召喚!」

 

A500・D1700

 

「コロナの効果発動! 手札一枚を捨て、デッキからゴライアスを特殊召喚する」

創成起動(クリエイション)!』

 

AD2300

 

コロナとブランゼルの声と共に、俺の目の前のモンスターゾーンの地面が盛り上がり、地面の中から黒鐵の鎧を着たゴーレムが現れた。

 

「ブラボォー! ナイスなモンスターだ!」

「コロナも喜ぶよ。手札のキャロを魔法・罠ゾーンに置く。これによりLSの攻守が300アップ」

 

コロナA500・D1700→A800・D2000

ゴライアスAD2300→AD2600

 

「更にフィールドにキャロがいる時、手札のフリードは特殊召喚できる!」

 

LS白銀の飛竜フリードリヒ ☆4/炎/ドラゴン/A1600・D1000

フリードA1600・D1000→A1900・D1300

 

「一気に行くぞ。バトル! ゴライアスでセットモンスターを攻撃!」

「攻撃宣言時、和睦の使者を発動。効果は説明無しでオーケー?」

「オーケーだ」

「セットモンスターはメタモルポット! リバース効果でお互いのプレイヤーは手札を全て捨て、五枚ドローする!」

 

A2300 VS D600

 

メタモルポットの何倍も大きい石の拳は、半透明のバリアによって進撃を防がれ、メタモルポットは無傷で効果を使用する。

一応ジムのセットカードがメタモルポットと分かったが、メタモルポットの様な汎用性の高いカードだとデッキを特定できない。

 

「和睦の使者で無効に出来るのは戦闘破壊だけ。効果は止められない。フリードの効果発動! このカードの守備力より低い守備力を持つモンスター一体を破壊する! メタモルポットを破壊だ!」

『フリード! ブレストフレア!』

 

フリードの放った火の球がメタモルポットを爆発させる。どうにもアニメーションが地味で盛り上がった説明の難しい攻撃だが、ノーコストで相手モンスターを破壊できるレベル4モンスターは強い。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札4 LP4000

ジム モンスター0 伏せ2 手札5 LP4000

 

「ドロー! 遊斗、君は俺のデッキが何を軸にしているか疑問に思ってるだろ?」

「ああ、恥ずかしながら分かんなくてね」

「これで分かるさ。伏せていた化石融合-フォッシル・フュージョンを発動!」

「化石融合!?」

 

見た事も聞いた事も無い、新たなる融合カード。十代の様に手札で融合するのか、それとも俺の様にフィールドで融合するのか、あるいは――

 

「自分の墓地の岩石族と相手の墓地のモンスターをゲームから除外し、化石と名の付く融合モンスターを特殊召喚する!」

「俺の墓地のモンスターを融合に!?」

「墓地のメガロック・ドラゴンと遊斗の墓地のリオをゲームから除外し、新生代化石騎士スカルポーンを召喚!」

 

新生代化石騎士スカルポーン ☆4/地/岩石A2000・D800

 

化石と付いているだけあり、地面から現れたモンスターは古びた骨で作られていた。その化石は二本足で立ち、長い尾を持つ。更に左手には骨で作られた長い槍を装着している。こんな生物が生息していたなど聞いたことすらない。

 

「架空の動物の化石?」

「少し違う。昔の科学者たちは恐竜の化石を見てドラゴンの化石と勘違いしたらしい。俺はそういうロマン、嫌いじゃなくてね」

「フッ、なるほど。面白いカテゴリだ」

「コアキメイル・ガーディアンを召喚!」

 

A1900・D1200

 

白い石でできた鎧を来ている石のナイト。コアキメイルは少し癖のあるカテゴリで、単体で強力な効果を持っている代わりに、維持コストとして手札のコアキメイルの鋼核を墓地へ送るか、特定のカードを相手に見せる。

 

「装備魔法フュージョン・ウェポンをスカルポーンに装備! 攻守を1500アップ!」

 

スカルポーンA2000・D800→A3500・D2300

 

レイジングハートと同じ上昇値だが、元々の攻撃力が違うだけでここまで違うか。なのはが装備して2000、なのはさんなら2500と、装備している割には心もとない数値だ。なのは様は別だが。

 

「バトル! スカルポーンでコロナを攻撃!」

「攻撃宣言時にゴライアスの効果発動! このカードに攻撃対象を変更する」

「ユニークゴーレム! だけどコアキメイル・ガーディアンの効果を発動。モンスター効果が発動した時、このカードを生贄にし、効果を無効にする!」

 

やはりその効果を使ってきたか。

コアキメイル・ガーディアンは自らの体をバラバラにし、ゴライアスに隕石となって突撃する。ゴライアスは黒鐵の鎧で防ごうとするが、白い岩によってその体を粉々にされた。

 

「スカルポーンでフリードを攻撃!」

 

A3500 VS A1900

 

右手には長槍を、左手にフュージョン・ウェポンを装備したスカルポーンに、フリードはブラストフレアを撃つ。だがスカルポーンの力はフュージョン・ウェポンの効果で格段に上がっており、その程度の火の球は片手で薙ぎ払える程度だった。二つの武器をクロスにして薙ぎ払い、フリードの体に×の傷を付け、フリードを戦闘不能にし、右手の長槍を俺に投げつけた。

 

「グッ、強い・・・・。フリードの効果発動! 1000ポイント以上のダメージを受け戦闘で破壊され墓地へ送られた時、キャロにLCを1つ置く」

 

遊斗LP4000→2400

LCキャロ0→1

コロナA800・D2000→A1100・D2300

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ2 手札4 LP2400

ジム モンスター1 伏せ3 手札3 LP4000

 

化石融合フォッシル・フュージョン。自分の墓地のモンスターと相手の墓地のモンスターを除外して融合する、手札消費も墓地アドバンテージも失いにくい強力なカード。だが出したのが攻撃力2000の低級モンスターと言うのが気になる。おそらく何らかの条件下ではもっと強力な融合モンスターを特殊召喚できる筈だ。相手依存と考えるとレベルか属性、あるいは種族か?

どっちにしろ余り墓地にモンスターを送りたくないが、融合無しでジムを相手にするのは骨が折れる。

 

「ドロー! フィールド魔法ミッドチルダを発動し、レヴィを通常召喚。頼むぞ」

『任せたまえ! おっ? あのモンスターかっくい~!』

 

LCレヴィ1 ミッドチルダ0→1

レヴィA1900・D400→A2500・D1000

 

ヨハンの口調がうつっているぞ、レヴィ。

 

「連続転移を発動! ミッドチルダとキャロのLCを取り除きデッキトップを三枚めくる。その中に通常召喚可能なモンスターがいたら特殊召喚する」

 

LCミッドチルダ1→0 キャロ1→0

 

一枚目はレイジングハート、二枚目は闇の書、三枚目はディアーチェ。流石王様。臣下のピンチには駆け付けてくれる。

 

「通常召喚可能なディアーチェを特殊召喚する!」

 

LCディアーチェ1

ディアーチェA2100・D1600→A2400・D1900

 

『ワーイ! 王様が来てくれたぁ!』

『レヴィ一人では何も出来んからな。特別に我が力を貸してやる』

「バトル! レヴィでスカルナイトを攻撃!」

「ワッツ!? スカルギオスより攻撃力が低いモンスターで!?」

「ディアーチェの効果発動! このカードのLCを取り除き、俺のフィールドのモンスターの攻撃を、レヴィに集める」

『受け取れ、レヴィ!』

 

LCディアーチェ1→0

レヴィA2200→A5400 VS A3500

 

ディアーチェは自分とコロナの魔力を一度自分の元へと集め、その魔力全てをレヴィに与える。それによりバルファニクスはレヴィに負担を与えずにブレイバーモード(バルディッシュのザンバーと同じ)に変形し、レヴィの細腕に似つかわしくない巨大な魔力刃を生み出す。自分が大好きな水色に光る魔力刃と、腕に全魔力を注ぎ込んだレヴィは、スカルナイトにエターナルサンダーソードを振り下ろす。

 

『暗黒の雷の刃、全てを飲み込め! エターナルサンダーソード!!! 相手はぁ~~~死ぬっ』

 

エターナルサンダーソードを両手の武器で受け止めようとするが、レヴィの宣言通り武器は壊れてスカルナイトは真っ二つに引き裂かれた。

 

「罠発動、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にして一枚ドローする」

「だがレヴィの効果が発動する! LCを一つ取り除き、デッキからシュテルを特殊召喚!」

 

シュテルA800・D1500

 

『おや、もう王もレヴィも来ていましたか』

『シュテるん来るの遅ーい!』

『私が遅いのではなく、遊斗が私を引かなかった。これだけです』

『どっちでもいい! 我の本当の力を見せてやる!』

「行くぞ新たなる王の力を! 場のディアーチェ、シュテル、レヴィを融合! 来い、紫天の王-ロード・ディアーチェ!」

 

LS紫天の王-ロード・ディアーチェ ☆9/闇/魔法使い/A2500・D2000

ディアーチェA2500・D2000→A2800・D2300

 

融合の渦の中に呑み込まれたディアーチェ、シュテル、レヴィ。グニャグニャと曲がる渦から現れたのは、紫色の翼、赤の翼、水色の翼、六つの翼を生やしたディアーチェ。ディアーチェの数多の魔法に加え、レヴィの素早さとシュテルの超火力が加わったディアーチェはまさに最強の姿と言える。

 

「紫天の王-ロード・ディアーチェが融合召喚に成功した時、デッキか墓地の紫天の書を手札に加える。そして紫天の王-ロード・ディアーチェは闇統べし王(ロード・ディアーチェ)として扱う。つまり闇統べし王(ロード・ディアーチェ)の専用装備が装備可能と思ってくれ」

「オーケー」

 

確かにさっきの俺の言葉は日本語でOKの典型的だったからな。ディアーチェをディアーチェとして扱うって言われてもなぁ。

 

「ディアーチェに紫天の書を装備」

 

ディアーチェA2800→A3300

 

「ターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札2 LP2400

ジム モンスター0 伏せ1 手札4 LP4000

 

「ドロー! ナイスドロー。二枚目の化石融合フォッシル・フュージョンを発動。墓地のコアキメイル・ガーディアンとレベル5のディアーチェを融合! 中生代化石騎士スカルナイトを特殊召喚!」

 

中生代化石騎士スカルナイト ☆6/地/岩石/A2400・D1100

 

またもや二本足で立つ化石。白い骨が本体で、少し茶のかかった骨を鎧にしており、骨が骨で体を守っているのは中々シュールである。顔の形は恐竜と言うより死神に似ており、相変わらず尻尾が付いている。

 

「アームズ・ホールを発動。デッキトップを墓地へ送り、墓地のフュージョン・ウェポンを手札に加え、スカルナイトに装備」

 

スカルナイトA2400・D1100→A3900・D2600

 

「永続魔法一族の結束を発動して攻撃力800アップ」

 

スカルナイトA3900→A4700

 

「ん~。これでも火力には自信があったんだが」

「化石達は決して火力が高い訳じゃない。だからこうやって攻撃力をアップするのさっ。バトル! スカルナイトでコロナを攻撃!」

 

A4700 VS D2000

 

ゴライアスがいないコロナはただの女の子――ではなく、肉弾戦でもかなり戦えるファイターだが、何度も言っている通りみんなの能力がカードに反映される訳ではない。フュージョン・ウェポンと一族の結束により、二倍近く攻撃力を上げたスカルナイトの太刀は神業の域に行っており、右手のフュージョン・ウェポンが残像となって動き、次の瞬間にはコロナはフィールドから墓地へ送られていた。

 

「スカルナイトは時相手フィールド上にモンスターが存在すれば、もう一度だけ攻撃ができる。ディアーチェにネクストアタック!」

「ディアーチェの効果発動! このカードが相手モンスターと戦闘を行う時、相手モンスターのレベル×100ポイント攻撃力をアップする! 更に魔導師の甲冑を発動し、ディアーチェに装備! 装備モンスターは一ターンに一度戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは半分になる」

 

ディアーチェA3300→A3900 VS A4700

 

ディアーチェから離れた場所で剣を構えたスカルナイトは、何も無い空間に剣を振るう。空しく空を切ったかと思ったが、スカルナイトが放った剣圧により斬撃が飛ばされ、ディアーチェを襲う。チッと女の子とは思えない舌打ちをしたディアーチェは、右手を前に出して炎を纏ったベルカ式のシールドを展開して剣圧の刃から自らを守る。

 

「だが戦闘ダメージは受けてもらう」

「ダメージは半分だ」

 

遊斗LP2400→2000

 

「ターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札2 LP2000

ジム モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

 

魔法・罠ゾーンにあるカードは紫天の書、キャロ、魔導師の甲冑。相変わらず場に溜まりやすいカードばかりだ。だがこんな時の為にあのカードがデッキに入っている。

 

「ドロー! 無限書庫を発動。魔法・罠ゾーンのカードとこのカードをデッキに戻し、二枚ドローする。キャロを選択して二枚ドロー! よしっ、ルーテシアを魔法・罠ゾーンに置く」

『ん~、やっぱり気軽なデュエルっていいわね~』

 

ああ、そう言えばルーテシアの初戦はF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)との戦いだったな。にしても相変わらず露出度が高いというか、非常に悩ましいバリアジャケットである。ルーテシアを出すと男には喜ばれ、女には冷たい目で見られる事もあるが、ジムは反応せずにデュエルディスクを構えている。

 

「ルーテシアの効果。通常召喚権を放棄する事で、戦闘で破壊されたLSを一体特殊召喚できる。フリードを特殊召喚する」

 

A1600・D1000

 

「バット、スカルナイトはフュージョン・ウェポンで守備力も上がっている」

「分かっている。このターン召喚する予定が無いから出しただけさ。ルーテシアを出したのはこっちが目的! 魔法発動、究極竜騎召喚!」

『未だにキャロの召喚と混合してるそれ、気に入らないわ』

「そう言うなって。専用カードなんだから・・・・」

「ワッツ? 何か言ったか?」

「い、いや、何でも無い。フィールドにルーテシアかキャロがいる時発動可能。ルーテシアなら白天王、キャロならヴォルテールを特殊召喚する。このターン俺はこの効果で特殊召喚したモンスターしか攻撃する事ができない」

 

ルーテシアが出した魔法陣は古代ベルカ式と変わらない正三角形の形をしているが、術式がかなり違うらしい近代ベルカ式の魔法。今使用しているルーテシア以外にも、スバルやエリオ、シャッハも近代ベルカ式の使い手。

自分が魔法陣の中心になる様に正三角形の魔法陣を数メートル広げ、ルーテシアは詠唱に入る。

 

『あ~あ、確かに究極竜騎召喚ってカッコイイけど、名前だと究極の竜を召喚って聞こえるわよね? やっぱり納得いかないわ。せめて究極昆虫召喚とか、究極竜虫召喚とか』

 

ちゃんと詠唱しろ詠唱! そんなんじゃせっかく呼ぶ大型モンスターもカッコ悪く見えてしまう。

一応あれでも詠唱が完了していたのか、ルーテシアの背中、つまり俺とルーテシアの間の地面から突如巨大な白い物体が生えてきた。表面が光っており、ヴォルテールとは違った意味で硬質を連想させる外骨格。それを支える筋肉や半透明の羽は昆虫を思わせるが、体のつくりは人に近い。

アニメ、漫画、映画でも白天王に似た生物を見た事無いので、かなり特殊な地域に住んでいた生物だろう。

 

LS白紫の蠱王・白天王 ☆9/地/昆虫/A3000・D3000

 

「白天王でスカルナイトを攻撃!」

「ワッツ? また攻撃力が低いモンスターで?」

「白天王がモンスターを攻撃する時、そのモンスターの攻守を変更できる。ついでに言うと白天王がいる時にルーテシアは破壊されず、ルーテシアがいない白天王は攻撃ができない」

『行くのよ白天王! 魔導砲!』

 

A3000 VS A2600

 

究極竜騎召喚の事でグチグチ言ってた割には単純な攻撃名だなおい。

白天王は胸に付いている紫のコアに魔力エネルギーを溜め、超巨大な魔力砲撃をぶっ放した。超巨大、と言ってもスターライトブレイカーよりかは少し小さいな。そう思うと高町なのはという女性は一体何者なんだ・・・・。

スカルナイトは左手の盾を使って砲撃を防ごうとするが、骨で出来た盾で防ぐ事は不可能で、盾もろとも粉々になった。

 

ジムLP4000→3600

LC紫天の書0→1

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ罠発動、リビングデッドの呼び声を発動。墓地のメタモルポットを特殊召喚する」

 

メタモルポットA700・D600→A1500

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ4 手札1 LP2000

ジム モンスター1 伏せ2 手札2 LP3600

 

「ドロー! 墓地のスカルナイトとスカルポーンをゲームから除外し、マイエースモンスター、ガイア・プレートを特殊召喚!」

 

ガイア・プレートA2800・D1000→A3600

 

先程までスカルナイトがいた地面が、突然左右に割れて巨大な谷を作る。その谷から突如マグマが噴出し、そのマグマからゴライアスに似た黒鐵の鎧を付けた巨大なゴーレムが現れた。マグマの中にいた事で表面の温度が上がっていたのか、外気に触れてジューと音を立てる。

 

「これがお前のエースモンスターか」

「イエス。前のスクールじゃコイツを出す程苦戦する事は無かったが、遊斗にはコイツを出さないと勝てない」

「それは光栄だ」

「カードを一枚伏せて、速攻魔法月の書を発動。メタモルポットを裏守備にし、反転召喚。効果で五枚ドローする」

 

俺の手札も一枚と心もとない枚数だったので、このドローは結構助かる。最もジムも五枚のドローをして手札を補給した。このターンでワンショットされない事を祈ろう。

 

「ブロック・ゴーレムを召喚し、効果発動! 墓地のモンスターが地属性オンリーの時、このカードを生贄に墓地のレベル4以下の岩石族二体を特殊召喚する。墓地のマンモ・フォッシルと風化戦士(ウェザリング・ソルジャー)を特殊召喚」

 

マンモA1800・D0→A2600

風化戦士A2000・D1300→A2800

 

今まで名前すら出なかったモンスター達。おそらく最初のターンのメタモルポットとアームズ・ホールで落ちていたのだろう。

 

「バトル! マンモ・フォッシルでフリードを攻撃!」

 

A2600 VS A1900

 

巨大な二つの牙を持った化石となった象は、その巨体から想像できない程のスピードでフリードに突進する。フリードは慌てて火の球を発射するが、巨大な牙によって薙ぎ払われる。化石になったのでどれくらいの重さがあるか分からないが、かなりの重さを持っているであろう化石象の突進にひかれて破壊された。

 

遊斗LP2000→1300

 

「マンモ・フォッシルが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手に300のダメージを与える」

「だから風化戦士を守備表示にしているのか」

 

遊斗LP1300→1000

 

「これでフィニッシュ! ガイア・プレートで白天王を攻撃! ガイア・プレートが戦闘を行う時、相手モンスターの攻守を半分にする!」

「なっ!? 罠発動ポジションチェンジ! モンスターが攻撃か効果の対象にされた時発動できる。その攻撃対象を自分フィールド上のLSに変更する事ができる。ディアーチェに攻撃対象を変更!」

「仕留めれないか」

「そしてディアーチェの効果でガイア・プレートのレベル×100攻撃力をアップ」

 

ディアーチェA3300→A4100→A2050 VS A3600

 

ガイア・プレートはおそらく磁気を利用したのだろう。ディアーチェは突然体を支えるのが辛くなったのか、一瞬体をふら付かせる。その隙を狙ってガイア・プレートは巨大な右腕を上げ、ディアーチェに向かって振り下ろす。

ディアーチェはプロテクションと暗黒甲冑(デアボリカ)の性能をフルに生かし、何とか破壊を間逃れ、俺へのダメージも半分に抑えてくれた。

 

「魔導師の甲冑の効果でダメージを半減」

 

遊斗LP1000→225

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ風化戦士の攻撃力が600ダウン」

 

風化戦士A2800→A2200

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札5 LP225

ジム モンスター4 伏せ4 手札3 LP3600

 

ライフ225、かつて無いくらい微妙な数字――なんてそんな事は凄くどうでもいい。あのガイア・プレートとか言うモンスター。戦闘を行うだから、こちらから攻撃をしても攻守を半分にされる。戦闘に関しては無類の強さを持っている。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

だが一族の結束で攻撃力が上がっているとはいえ、攻撃力が比較的に低いメタモルポット、更には守備力が0のマンモ・フォッシルがいる。この攻撃で終わるとは思えないが、攻撃するチャンス!

 

「シャッハを通常召喚。効果でミッドチルダと自身にLCを置く」

 

LCシャッハ1 ミッドチルダ0→1

A1800・D1000

 

「シャッハの効果発動。このカードとミッドチルダのLCを取り除き、デッキからシャンテを特殊召喚する」

『スゥ~。シャンテ! いい加減に来なさい!』

『は、はい! って、やっぱりこの登場おかしいよね!? あたし何もやってないよ!』

『仕方ないでしょう。私は転移魔法など、複雑な魔法は苦手なので』

『いや、律儀に効果通りの事しなくていいでしょ。真面目なんだから~』

 

A1400・D500

 

「バトル! 白天王でマンモ・フォッシルを攻撃!」

「罠発動、次元閉幽! 攻撃モンスターを除外する!」

 

白天王の頭上に突然異次元への狭間が現れ、掃除機に吸われる如く、白天王は次元の狭間へと吸い込まれた。

 

「ならディアーチェでマンモ・フォッシルを、シャッハでメタモルポットを攻撃!」

 

ディアーチェA3000→A3400 VS A1800

A1800 VS A1500

 

ディアーチェは尖った杖先に、シャッハは手に持ったトンファーにそれぞれ魔力を込める。まずはディアーチェが動き、化石象にアロンダイトを発射する。その巨大な体もパワーアップした王の砲撃よりかは一回りも二回りも小さく、スッポリと砲撃に呑み込まれる。しかも砲撃の中でアロンダイトの追加効果が発動したのか、内側からドーム状の爆発が起こる。

ディアーチェの攻撃に脅えて壺の中に隠れるメタモルポットだが、狙われた相手が悪かった。高速接近し、持ち前のトンファーで壺ごと破壊するシャッハ。

 

「クッ」

 

ジムLP3600→1700

LC紫天の書1→3

 

「ディアーチェの効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキからレベル4以下のLSを特殊召喚できる。来い、イクス!」

 

A500・D500

 

「最後にシャンテで風化戦士を攻撃!」

『堅そうだから四重奏(カルテット)で!』

 

A1400 VS D1300

 

シャンテの掛け声と共に風化戦士の後ろに突如二人のシャンテが現れた。二人のシャンテは人間でいう後頭部と腰にトンファーの先を当て、魔力で強化した足で一蹴りし、再びトンファーで上空へ吹き飛ばす。風化戦士が飛んだ先にいたのは、更にもう二人のシャンテ。シャンテ達は自分達の間に魔力砲を溜め、飛んでくる風化戦士に魔力砲を放つ。

 

LC紫天の書3→4

 

『ベルカント・カノーネっと』

「ヒュ~。凄いアニメーションだ」

「相変わらず攻撃力とアニメーションの差が激しくてね。攻撃できるモンスターはいない。イクスの効果でデッキからマリアージュを特殊召喚」

 

A1700・D1200

 

「紫天の書の効果。LCを三つ取り除いてデッキからユーリを手札に加える。そして場のイクス、マリアージュ、シャッハを生贄に、ユーリを特殊召喚!」

 

LC紫天の書4→1

AD4000

 

紫天の書の盟主であり、ディアーチェの切り札。暴走時の力はなのは、フェイト、はやての放つトリプルブレイカーを、痛いで済ませる事ができ、星一個破壊できる。この説明分だけだと、どんなゴリラ女かと思うが、ところがどっこい。ディアーチェよりも小さく、オドオドしてディアーチェの背中に隠れる金髪の可愛い女の子。

 

「ディアーチェの効果。ユーリがフィールドに存在する時、このカードを攻撃対象にできない」

『すまんなユーリ』

『ディアーチェは私の大好きな方ですから、守るのは当然です』

『フッ、背中に隠れている癖に何を言う』

 

二人の背景にピンク色のハートとイチャイチャイチャイチャの文字が見える程の甘々っぷり。ユーリを助ける時のディアーチェのカッコよさの前では、ユーリがこうなるのも仕方ない。ユーリからしたら白馬、いや、漆黒の馬に乗った王子様だろう。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター3 伏せ4 手札3 LP225

ジム モンスター1 伏せ3 手札3 LP1700

 

「ドロー! スタンバイフェイズ、ガイア・プレートの効果で墓地の風化戦士を除外する。岩投げエリアを発動。一ターンに一度戦闘で破壊される変わりに、デッキの岩石族を墓地へ送る事ができる」

 

バリンと音を立てて破壊されミッドチルダから、岩一つない無い荒野のフィールドになる。

 

「化石融合-フォッシル・フュージョンを発動! 墓地のマンモ・フォッシルとレベル6のゴライアスをゲームから除外し、スカルナイトを特殊召喚!」

 

スカルナイトA2400・D1100→A3200

 

「タイム・ストリームを発動! ライフを半分払い発動。自分フィールド上の「新生代化石騎士」「中生代化石騎士」を選択。選択したモンスターを融合デッキに戻し、「新生代化石騎士」の場合は「中生代化石騎士」、「中生代化石騎士」の場合は「古生代化石騎士」を融合デッキから特殊召喚する。スカルナイトは中生代化石騎士。古生代化石騎士に逆進化する!」

 

ジムLP1700→850

 

古生代化石騎士スカルキング ☆8/地/岩石/A2800・D1300

スカルキングA2800→A3600

 

手に持っていた盾を捨て、右手の大剣だけで戦う化石の王。マントは化石でできていないのか、綺麗なマントをはおっている。今までの化石騎士と違い、化石の顔の下に人間の肌が見える。そこにはあえて触れないでおこう。

 

「バトル! ガイア・プレートでシャンテを攻撃!」

 

シャンテA1400→700 VS A3600

 

ガイア・プレートは岩でできた右腕を大きく振りかぶってシャンテの小さい体を薙ぎ払うが、シャンテが飛ばされる気配は無く、平然とそこに立っている。

 

「シャンテは戦闘ダメージを受けず、戦闘で破壊された時に墓地へ戻る。その後デッキからモンスターを特殊召喚する効果を持つが、任意効果の為発動しない」

「そんな効果を・・・・。スカルキングでユーリに攻撃!」

「守備表示のユーリに攻撃だと?」

「スカルキングは貫通効果を持っている。更に罠発動、鎖付き爆弾! スカルキングの攻撃力を500アップする」

 

スカルキングA3600→A4100 VS D4000

 

化石が爆弾使うっておかしくないか? 爆弾が誕生する何億年前かの化石は、鎖付きの爆弾を振り回しながら、右手の大剣でユーリを突く。どうやら鎖付き爆弾は使わずに、テンションを上げる為に使用している様だ。ユーリは巨大な手にした魄翼を盾にして自らの体を守るが、剣先から放たれる剣圧を止める事が出来ず、その僅かな衝撃が俺を襲ってくる。

 

遊斗LP225→125

 

「ワンチャンス! 相手フィールド上にモンスターがいる時、スカルキングはもう一度だけ攻撃できる! ユーリに攻撃だ!」

『ぅぅ、怖いです・・・・』

 

遊斗LP125→25

 

俺もかつてないくらいライフが少なくて怖いよユーリ。ジムのライフ850すらも大きく見える程悲惨。

 

「遊斗は運がいい。これでターンエンド」

 

場 岩投げエリア

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札3 LP25

ジム モンスター3 伏せ3 手札0 LP850

 

「運も実力の内ってな。俺のターン、ドロー! 紫天の書のLCを生贄に、はやてを召喚」

 

LC紫天の書1→0

A2000・D1700

 

『やっほー。王様とこうやって戦うのは久しぶりやな~』

『ふん! 我はお前などに興味無いからな』

『王様酷いわ~』

『ディアーチェは私のものですから』

「ん゛ん゛! 罠発動、幸運の追い風! ライフを半分払い、手札を一枚捨てて発動。デッキからアインスを特殊召喚する」

 

遊斗LP25→13

AD2300

 

「イッツグレイト! そんなライフは始めて見た!」

「俺もだよ。まさかデュエルモンスターズで四捨五入するとは思ってなかった。アインスの効果でデッキからナハトを特殊召喚する」

 

AD0

 

『ディアーチェにユーリ、それにナハト。こうしてお前達と戦うのは心地いいものだ』

『確かにな~。一時はみんな敵同士やったけど、今はこうしている。不思議なもんや』

 

そこのお四方。デュエル中の会話は控えてくれないと、精霊の声が聞こえる俺にとっては非常にプレイしにくいんだが。俺の事を気にせずに会話を続ける四人を止める為、咳払いをして静かにしてもらう。

 

「行くぞジム! 場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

LCはやて3

AD2800

 

『普段小鴉もこれくらい大人しければ楽なのだが』

『・・・・』

 

荒野のフィールドを夜に染めて現れた王様はやてさんへの第一声がこれだった。最も王様はやてさんは特に気にしていないのか、それとも眼中に入っていないのか、ディアーチェの言葉を無視して目の前の化石とゴーレムを睨みつける。

 

「はやての効果発動! LCを一つ取り除き、ガイア・プレートの効果を無効にする!」

「ワッツ!?」

『『封鎖(ゲフェングニス)領域(デア・マギー)』』

 

もはやこの鎖を見るのも日常になってきた今日この頃。先が尖って痛々しい棘が付いた黒い鎖は、自分より何十倍も大きいゴーレムの体を縛り上げ、鎖の魔力で効果を無効化する。

 

「はやてにナハトを装備。攻撃力を1000アップ!」

 

はやてA2800→A3800

 

「バトル! ユーリでガイア・プレートを攻撃!」

『ディアーチェの前でカッコ悪い所見せられません! ナパームブレス!』

 

A4000 VS A3600

 

ユーリは手の平に、闇の炎を纏った大男一人程度なら丸のみ出来る大きさの球体を作り出し、ガイア・プレートに向かって放つ。ガイア・プレートの体は、闇の炎と触れる事は無かった。ナパームブレスが持つ温度の前では、マグマの中でさえ活動出来たガイア・プレートの体はどんどん溶けていくのだ。ジムの足元で爆発したナパームブレスだったが、ガイア・プレートも最後の力を振り絞りって自らの破片でジムを守る。

 

「ック、ガイア・プレートが破壊されるとは。けど、攻撃力4100のスカルキングを突破する事はできない。俺の勝ちだ」

「いや、これで終わりだ。俺はダメージ計算時にスバルの効果を発動していた。これでユーリの攻撃力が1000上がり、攻撃力が5000になった」

 

ジムLP850→-550

 

「ッツ・・・・。悔しいけど完敗だ」

「いや、お前も十分に強かった。それでどうだ? 強力な電波の影響は?」

「特に何も――」

 

ッツ!?

ジムの言葉が途切れると共に、急に神経がすり減る感覚に襲われる。しかもただのダルさじゃない。俺は脚に力を入れて地面を思いっきり踏む事で何とか体を支える事が出来たが、ジムは突然の疲労に耐えきれなかったのか、俺に倒れて来る。

鍛えているとはいえ、この疲労感では身長が10㎝以上違うジムと、ジムが背負っているカレンを支える事ができなかった。

 

「っと! 遊斗!」

 

倒れそうになった背中に、小さな手の平が当たる。流石近接戦闘が得意な魔導師だけあり、俺とジムとカレンをその小さくて細い体で支えてくれた。

 

「サ、サンキューフェイト」

「やっぱりデス・ベルトが原因。バルディッシュが感知してる。二人のエネルギーが飛んで行った場所も把握した」

「じゃあ今から」

「駄目。遊斗はジム以上にエネルギーを消費しているから、今日明日はゆっくりしてないと駄目。すぐに保健室に行くよ」

「わ、分かった。カレンもジムを運ぶのを手伝ってくれ」

 

コクンと上下に揺れるカレンの頭を眺め、本当にジムの事が好きなんだなと、この状況ではどうでもいい感想を抱いた。

 




注)発動していた、はOCGでは使用できません。ルールを守って楽しくデュエル!


⊂二二二(ジ^ω^)二⊃ 古生代化石竜スカルギオスを特殊召喚!


こんなしょうもない事は覚えてるんですけど・・・・。一体何の意味があるというんだ。
因みに上の顔文字は、ジムがスカルギオスを特殊召喚するポーズです。

そして本来ジムは暴走した剣山とデュエルするのですが、この話を書いている途中までその事を完全に忘れていました。まあこの辺りで留学生組とデュエルさせないと、他にデュエルする機会がないんで、結果的に良かったんですが。


なのはが入るカップリングは色々と争いが止まないですが、ディアーチェとユーリは本気で公式だと思います。最後のディアーチェのカッコよさは異常。



今回のオリカ。

グラムサイト2様の意見を参考にしました。

究極竜騎召喚 通常魔法
自分フィールド上に「キャロ」と名の付く、また「LSルーテシア・アルピーノ」が存在する場合発動できる。「キャロ」と名の付くモンスターが存在する場合「LS大地の守護者ヴォルテール」を、「LSルーテシア・アルピーノ」が存在する場合「LS白天王」を、「キャロ」と名の付くカードと「LSルーテシア・アルピーノ」の両方が存在する場合「LS大地の守護者ヴォルテール」と「LS白天王」を特殊召喚する。
このターン、この効果で特殊召喚したモンスター1体しか攻撃することができない。


LS白紫の蠱王・白天王 ☆9/地/昆虫/A3000・D3000
自分フィールド上に「LSルーテシア・アルピーノ」が存在しない場合、このカードは召喚・特殊召喚・反転召喚出来ず、攻撃する事が出来ない。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り「LSルーテシア・アルピーノ」は破壊されない。このカードの攻撃宣言時、攻撃対象になったモンスターの攻撃力・守備力をバトルフェイズ終了時まで入れ替える事ができる。


LS白銀の飛竜フリードリヒ ☆4/炎/ドラゴン/A1600・D1000
自分フィールド上に「キャロ」と名の付くモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。1ターンに1度、このカードの守備力よりも低い守備力を持つモンスター1体を選択し、破壊できる。この効果を使用したターンこのカードは攻撃できない。
このカードの戦闘で、このカードのプレイヤーが1000ポイント以上のダメージを受け、このカードが破壊され墓地へ送られた時「キャロ」と名の付くカードにLCを1つ置く。

ポジションチェンジ 通常罠
自分フィールド上に存在するモンスター1体が相手カードの効果の対象になった時、または相手モンスターの攻撃対象になった時に発動する事ができる。
その対象を自分フィールド上に存在する正しい対象となる「LS」と名の付く他のモンスター1体に移し替える。
移し替えたモンスターが破壊された場合、融合デッキからカードを1枚墓地へ送る事ができる。


夜の魔王様作

LS紫天の王-ロード・ディアーチェ ☆9/闇/魔法使い/A2500・D2000
「LS星光の殲滅者」+「LS雷刃の襲撃者」+「LS闇統べる王」
このカードは上記のモンスターをフィールド上から墓地に送ることでのみ特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要ない)。
このカードは「LS闇統べる王(ロード・ディアーチェ)」としても扱う。
このカードがモンスターと戦闘するとき、ダメージ計算時にこのカードの攻撃力を、戦闘するモンスターのレベル×100ポイントアップさせる。
このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、デッキから「LS」と名のついたレベル4以下のモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは特殊召喚されたターンに攻撃できない。
自分フィールド上に「LS紫天の盟主―ユーリ・エーベルヴァイン」が表側表示で存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象にすることができない。






今回も多いですが、まずは上から順に。

究極竜魂召喚。
う~ん、正直ですね、キャロとルーテシアがいた時に両方特殊召喚されるのが、チートかそうでないか自分でも分からないんですよね。強すぎるよ! こんなの絶対おかしいよ! と言われる方が多ければ、効果を変更しようと思います。
攻撃宣言できないとは言え1:2で3000打点は強いかな? とも思いますし、発動条件が厳しいので別に二体でもいいんじゃね? と言う二つの考えが作者の中にあります。


白天王。
この子にあった二つ名の様なものを募集します。(そのうち作者は二つ名を考えるのを止めた)
効果的には元キングが使っていたデーモン・カオス・キングの相違互換。


フリード。
便利だな~。この感想だけがあります。最近のデッキには流石についていけませんが、ブレイカーが制限だった時代では外道ビートに入っていたと思います。
LCを置く効果はどうやって説明したらいいか良く分かりませんでした。


ポジションチェンジ。
とどのつまりシフトチェンジです。一応差別化の為に融合デッキのカードを墓地へ送る効果を付けました。(完全後付け)


ロード・ディアーチェ
シュテルの攻撃力上昇効果、レヴィの特殊召喚効果、紫天の書を手札に加える効果、ユーリに守ってもらう効果を持っています。紫天の書のおかげで実質攻撃力は3000。シュテルのおかげでもっと攻撃力がアップします。
単体で強いマテリアルズですが、このカードを出すことにより、ディアーチェを守りやすくなるんですよね。結果的にそれがユーリの出番を増やす事にもなります。



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第四十七話

昨日movie2ndのDVDを買って実際に見たんですが、やっぱり感動ものでした。二期あってこその2ndですが作者は映画の方が好きですかね。悪役?を出すより、どうしようもない運命って感じが好きです。


感動すると同時に、アインスとかナハトとかを使っているこの作品の原作ブレイクと言ったら・・・・。(今更過ぎますが)

同時に、この魔法をカード化したいな~とか次々思いましたが、採用を決定したのに出せていない貰ったオリカが多々あるので我慢しました。


それと中途半端に文字数を使ってしまった為、今回デュエルはありません。既にデュエルパートは書いてあるので、見直しが終わったら投稿します。


ジムとデュエルをした翌日。結局俺とジムは保健室で一晩を過ごしつつ、鮎川先生に事情を話した。デス・ベルトの正体が広がるとパニックになるし、まだハッキリとデス・ベルトが原因だと断定できない。その為校長先生やクロノス先生といった上にかけあったが、結局上からの返事はなかったらしい。

プロフェッサー・コブラを呼ぶ放送があったが、未だに優れない鮎川先生の顔を見ると、十中八九プロフェッサー・コブラの行方が分からないのだろう。

バルディッシュやレイジングハートを筆頭とするデバイス達からのデータによると、デュエルが終わった直後、俺とジムのエネルギーが一気にとある場所に向かって飛んで行ったらしい。

 

「プロフェッサー・コブラの目的は何だ? やっぱり一年の影丸理事長と同じような事が目的?」

「? 心辺りがあるのか?」

「二年前って三幻魔の頃か?」

 

俺の独り言に、ジム、十代の順に首を傾げる。ジムは俺と一緒に保健室に運ばれ(というか運び)、十代は留学生のオブライエンとデュエルをしてデュエルエナジーを奪われたそうだ。因みにそのオブライエンは、保健室には来なかった所を見ると、どこか別の所で休んでいるのだろう。

 

「ああ。二年前、この島に眠る三幻魔のカードをめぐってセブンスターズと名乗る者と戦った。そのセブンスターズは三幻魔の封印を解く為に七星門の鍵を狙ったが、三幻魔の封印を解く方法は七星門の鍵は必要無かった」

「ワッツ? じゃあ何が必要なんだ?」

「デュエリストの闘気、デュエルエナジーだ。セブンスターズはデュエルエナジーを溜める為の駒にしか過ぎなかったんだ」

「なるほど。そのデュエルエナジーをプロフェッサー・コブラが狙っている、遊斗は考えていると」

「ああ」

 

けどあの時は闇のデュエルでフラフラだったが、デュエルが終った後、ここまで露骨に体調不良になる事は無かった。その分かなりの量のエネルギーが吸い取られていると考えた方がいい。

幸いデス・ベルトを付けた状態では勝敗が教師に公になってしまうので、それを恐れてデュエルをする生徒はそこまで多くない。不幸中の幸いだ。

 

「けどさ、そのデュエルエナジーで何をするつもりなんだ?」

「分からないから考えてるんだ。そもそもデュエルエナジーが科学的にどんなエネルギーか分からないから想像はできない」

「バット、生徒をこんな酷い目にあわせるんだ。どうせろくな目的じゃないさ」

「ああ。だから今すぐにでも生きたいけど――」

「駄目。今日の夜まで絶対安静」

 

と、フェイトが付きっきりで看病している為、出ようにも出られない状況である。力ずくでフェイトをどかそうとしても数秒でけりが付く。勿論俺の負けで。

 

「それに――」

『私達が調べたけど、あそこは危険だよ。私達ですら中まで調べられなかった。いや、私達が精霊だから調べられなかったのが正しいかな』

 

実体化しているフェイトに続き、ジムに聞かせない為に、精霊の状態のなのはさんが言葉を繋いだ。

なのはさん達精霊だから行けない? と言う意味を込め、軽く首を傾げるとなのはさんは説明を続けてくれる。

 

『精霊の力を妨害する、AMFの様なものがあの建物内のいたる所にあったんだ。私達はカードの中にいないとあの場所に入れる事ができない』

 

かなりの力を持っているみんなですら、カードの状態で無いと入れない場所。それが科学的な力で働いているのか、非現実的な力で働いているのかは分からないが、みんなの力を封じ込めるとは普通じゃない。

IF形態やユーリですら駄目となると、力で防いでいるというより、なのはさんが言っていた通り強力なジャミングがかかっているのかもしれない。

ベッドの上での一般学生の考えなので、どこまで当たっているかは分からないが、考えを纏める事はできた。

 

「三人とも急に黙り込んだが、どうかしたか?」

「う、ううん。何でも無い。あっ、リンゴ切ってあげるね」

「おっ、ちょうどリンゴ食いたかったんだ。サンキュー」

「フェイト、怪我しても保健室だから安心しろ」

「なっ! リンゴくらい切れるよっ」

 

と言った矢先、リンゴの表面でナイフが滑ってフェイトの細長い指も小さい線を作る。その線から朱色の液体がタラリと零れて来る。

 

「全く・・・・」

 

こんな不器用少女フェイトの10年後があのフェイトさんだと思うと、10年とはやはり長い年月である。切れた方の手を取り、引き出しの中から絆創膏を取り出す。

 

「言わんこっちゃない」

「あぅ・・・・」

 

絆創膏をフェイトの指に巻き、フェイトをベッドまで抱きよせて股の間に座らせる。そしてフェイトにナイフを持たせ、その手に俺の右手を合わせる。

 

「いいか。リンゴの切り方はな・・・・」

「翔や剣山が見たら、怒るだろうな~」

 

人の手を持ちながらリンゴを切るのは結構難しかったが、途中からフェイトもコツを掴んできたのか、最初の様なたどたどしさが無くなっていく。それでも俺が手を離すと、危なっかしい手付きに戻るので、皮を剥いて俺、フェイト、十代、ジムの四つ分に別けるまで数分の時間がかかった。

 

「よし。完成っと」

「つ、次は絶対大丈夫だから」

「はいはい。変な所で負けず嫌いなんだから」

 

 

 

 

その日の学校が終わるまでやる事が無かったので、デュエルが出来ない俺たちは、会話したりトランプをして暇を潰していた。デュエルではめっぽう強い十代だが、頭を使うトランプとなると一気に弱くなり、度々最下位になった。

デュエルも十二分に頭を使うと思うが、十代曰く「デュエルなら本能のまま突っ走れる」との事。馬鹿と天才は紙一重と言うものだが、まさか現実で本当に使うとは、この言葉を知った時の俺は思いもしなかっただろう。

そしてまた、最下位になった十代が渋々トランプをシャッフルしていると、突然フェイトの顔が険しくなり、なのはさんがデッキから出てきてコクンと首を縦に振る。

 

『研究所に一気にデュエルエナジーが集まってる。何かあったのかもしれない!』

 

ッツ! ジムへのいい訳も一瞬考えたが、そんな事よりもデュエルエナジーを奪われた生徒達の事が心配だったので、フェイトと一緒に慌てて保健室を飛び出した。なのはさんの声が聞こえていた十代は俺達に続き、ジムは少し遅れてカレンを背負いながら走って来た。

校長先生やクロノス先生はデス・ベルトを危険視している筈だから、生徒のデュエルは控えさせている筈だがこうなってしまった。クロノス先生はともかく、校長先生はその辺り頼りにならないから、もしかしてと思っていたが。

 

「ストップ! 三人ともどうしたんだ!?」

「ある場所で一斉にデュエルが行われたらしい!」

「どうしてそれが分かる!?」

「説明は後だ!」

 

 

 

 

なのはさんの案内でやってきた場所はブルー寮から少し離れたパーティー会場だった。F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)と戦った日に行われたパーティーと同じ場所で、度々華やかな場になる会場だ。会場に入った途端、この広々とした空間には呻き声と空いた窓から入ってくる夜風の音が空しく響いていた。

考える先に、近くに倒れていた生徒に近寄り、上半身だけ起きあがらせる。周りに倒れている生徒と同じくパーティー用の服を着ており、幸いにも意識があった。

 

「何があったんだ!? 何故一斉にデュエルをした!?」

「そ・・れは・・「アモンがパーティーを開催したんだ」ヨハン!? どうしてここに!?」

 

衰弱しきった生徒の口は中々動かず、舌も思う様に動かないのか活舌が悪い。そんな時だった。俺達が入って来た玄関からやってきたヨハンがそんな事を言ったのは。

ヨハンの言葉の真偽を確かめる為に、腕の中にいる生徒に「そうなのか?」と聞くと、生徒は小さくだが確かに首を縦に振った。

 

「プロフェッサー・コブラについて色々と調べ回っていたんだ。そんな時にアモンがパーティーを開くと聞いて、慌てて駆け付けたんだが・・・・」

 

もう限界だ! 先生達が何らかの方法で対処してくれたら一番平和的だったが、こんな大勢の被害者を目の辺りにした以上我慢出来ない。

無言のまま腕の中にいる生徒をゆっくりと地面に降ろし、スッと立ち上がってヨハンのいる玄関へと早歩きで向かう。そしてヨハンとすれ違う直後、肩に手が当てられた。

 

「止めるなヨハン」

「一人で突っ走るな」

「そうだぜ。俺達だってプロフェッサー・コブラに怒ってるんだ」

「俺達はもうフレンドだ。遊斗が行くなら俺も行く」

「みんな・・・・、分かった! それじゃあ――」

 

ドガーン!

プロフェッサー・コブラがいる施設に行こう。そう言おうとした瞬間、物凄い爆音と、その数秒後に鳴った水しぶきの音で遮られた。四人は勿論、言いかけていた俺も音源が気になって慌てて外に出て近くの湖まで走る。かなり足の速い俺達でさえ一分間は走り続けていただろう。

近付くにつれて大きくなっていく騒音にもしやと思ったが、思った通り、湖の上を二機のヘリコプターがその状態を維持して飛んでいた。

二機のヘリコプターは同様に、機体から二本のロープを繋ぎ、足場を宙に浮かせていた。いくらヘリコプターがその状態を維持しているとはいえ、全く動いていない訳ではない。そんなヘリコプターによって足場になっている二つの板は、風の影響もあってかなり不安定だ。そんな状態でもその足場に乗っている二人は、黙々とデュエルをしていた。

 

「万丈目じゃないか!」

「それにアモン! どうして二人がデュエルを!?」

 

デュエルをしているのは万丈目と留学生のアモンだった。何故二人がデュエルをしているのか、何故パーティーの主催者であるアモンがこんな所にいるのか、色々とツッコミたかったが、それよりも何故空中でデュエルをしているのかが分からなかった。

 

「あれ? アニキ達、どうしてここに?」

 

しかも翔、剣山、明日香、レイちゃんまでそこにいた。そしてレイちゃんの隣には、イエローの制服を着たおかっぱ頭の小柄な少年までいた。少年は俺達が怖かったのか、レイちゃんの影に隠れるように移動する。

 

「そういうお前達こそ何でここにいるんだ?」

「ヘリコプターの音がしたからここに来たら、万丈目先輩がデュエルをしていたドン」

「なるほどな。それでレイの後ろにいる奴は誰だ?」

「マルタンことマルっちだよ。私と同じ新入生なんだ」

「は、初めまして・・・・」

 

レイちゃんは飛び級をしているから小柄なのは分かるが、このマルタンと言う少年は昔から小柄なのだろうか? レイちゃんと身長差がほとんどない。

視界を四人から万丈目とアモンの方へ移す。今万丈目の場にはVWXYZ-ドラゴン・カタパルト・キャノンと表になったカードが二枚ある。対するアモンのフィールドには雲で出来たモンスターと三枚の伏せカード。

 

「ドロー!」

 

万丈目がドローした瞬間、アモンが罠カードを発動した。一枚は雲のモンスター、雲魔物(クラウディアン)の攻撃力を1000下げるごとにフィールドのカード一枚を破壊するカード。もう一つは相手カードを破壊する度に400ダメージを与える永続罠。前者の罠カードにより万丈目のエースカードが破壊されてしまう。

 

「せっかく召喚したVWXYZ(ヴィトゥジィ)が破壊された!」

「いや、何だかんだでやる時にはやる万丈目だ。何か策がある筈」

「そこ! ちゃんとさんを付けろ! 装備魔法、次元破壊砲を発動! 墓地のVWXYZの召喚条件を無視して特殊召喚する!」

 

再び復活する万丈目の切り札。その強力な効果を使いアモンのフィールドのモンスターを除外する。アモンのライフより攻撃力が高いVWXYZの攻撃が通ればこれで万丈目の勝ち。しかしアモンもそう簡単を通さず、罠カードを使いVWXYZの攻撃を防ぐ。

その次のターン、アモンはクラウディアン専用のカウンター、フォッグカウンターを軸にしたカードを使用し、再びVWXYZを破壊。微力なクラウディアンでダイレクトアタックをして万丈目のライフを減らす。

 

「万丈目君、君は静かに横たわり、空に浮かぶ雲でもゆっくり眺めているがいい」

「ッツ! 俺はのんびりと雲を眺めていたお前の様なお坊ちゃん野郎じゃない! 俺は挫折をし、誰にも負けない凄まじいまでのコンプレックスを抱え込んだ! 底辺の底辺に落ちたが、そのコンプレックスをバネに地獄から戻って来たのだ!」

万丈目・・・・。お前がそこまでの悩みを抱えていたとは・・・・。

万丈目の言う地獄とは正直甘いものかもしれない。なのはさんや、フェイト、他にもみんなの話を聞く限り、万丈目の言う地獄とは生温いかもしれない。だけど万丈目は今まで勝ち組だった人生が一転して、上手くいかない事がずっと続いたのだ。傍から見たら甘い地獄かもしれないが、その時の万丈目はプレッシャーやコンプレックス、交友関係などで酷く落ち込んでいた。それこそ今自分のいる場所が地獄と錯覚するほどに。

だから・・・・。

 

「いいぞ万丈目! お前の挫折と成長の力! 見せてやれよ!」

「さんだ!」

 

そのターン、万丈目はなんと一ターンでおジャマ三兄弟を召喚し、おジャマ・デルタハリケーンを発動してアモンのフィールドのカードを全て破壊した。だがおジャマの攻撃力は全て0なので、おジャマは守備表示で特殊召喚されており、アモンのライフを減らす事が出来ない。

万丈目はエンド宣言をすると同時に、アモンに自らの想いをぶつけた。

 

「どうだアモン! 俺の、底辺の底辺の人間の底力には、お前の様なボンボンは分からないだろう!」

「なるほど・・・・。君が僕をどんな風に思っていたか今ので分かったよ。そしてもう一つ分かった。君が甘々のおボッチャまだって事がね」

「なんだと!?」

 

万丈目が最も言われたくない言葉を放った時のアモンの顔は、怒り、悲しみ、嫉妬――いや、それだけじゃない。もっと沢山の感情が込められている様に見えた。

 

「君の言う地獄は人並み。しかもこの裕福な国、日本のお坊ちゃんの地獄だ」

「ッツ! 言わせておけば!」

「では聞こう。君は食べ物に困った事はあるか? 寝る場所に困った事はあるか? 衣服に困った事はあるか?」

 

それを聞いて万丈目は何も言い返さなかった。否、言い返せないのだ。アモンの言ったのは人間が生活して行く上で最も重要な衣食住。辛い経験がある万丈目でさえ、その三つに困った事は今まで一度も無い筈。

 

「僕はある。僕は今となってガラム財閥の御曹司だが、貧富の激しい国の捨て子だった。僕はそこで毎日毎日ゴミの中から食べられる物を漁り、土下座を幾度も繰り返し、靴を舐めた事だってある」

「なっ!?」

「そんな僕を助けてくれたのが今の父さん。ガラム財閥の総帥さ。おっと失礼。つまらない不幸話をしている場合ではなかったね」

 

その態度に万丈目は怒りの瞳でアモンを睨み、拳をこれでもかと言う程力強く握るしか出来なかった。アモンの態度には勿論だが、散々自分の不幸話をしていた数分前の自分への怒りもある。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

これがこの二人のラストターンだった。フィールドが0だったアモンだが、手札は十分にある。クラウディアン専用のカードと死者蘇生を使い、二枚のモンスターを特殊召喚。そして二体のモンスターを生贄に最上級モンスターを呼んだ。

 

「来い、アイ・オブ・ザ・タイフーン!」

 

何の物質が入っているのか、清々しい青空とは程遠い、不気味なまでの青。青い雲で作られたそのモンスターには一つだけ巨大な目が付いている。今までのクラウディアンと大きさも不気味さも、強者の放つ威圧感も違う。

 

「バトル! アイ・オブ・ザ・タイフーンでおジャマ・イエローを攻撃!」

おジャマ・イエローは守備表示。いくら攻撃力3000でも万丈目にダメージを与える事は出来ない。この場の全員がそう思った刹那、突如万丈目のフィールドで腕をクロスにして座っていたおジャマ達が、守備を解いて無防備な0と言う攻撃力を晒した。

 

「どういう事だ!?」

「アイ・オブ・ザ・タイフーンが攻撃する時、クラウディアン以外の表示形式を変更する! パーフェクト・ストーム!」

 

攻撃力の差分のダメージが万丈目を襲い、バランスを失った万丈目は湖へと真っ逆様に落ちて行った。

 

「万丈目!」

「万丈目先輩!」

 

誰よりも早く動いたのは十代と剣山だった。二人はすぐさま湖に飛び込んで万丈目を助ける。幸い万丈目は肉体的にも精神的にも余裕があったのか「水浴びがしたかっただけだ!」と元気に言い訳を言っている。だがこれで終わりでは無い。

湖の中にいる万丈目と、空にいるアモンはデュエルエナジーを奪われたのか、二人とも脱力と同時に気を失った。

 

「ど、どうしてお二人が・・・・」

「デス・デュエルの影響だ。レイちゃんとマルタン君は先生達を呼んで、あの二人とパーティー会場にいる生徒を休ませてやってくれ」

「え? 遊斗先輩はどうするの?」

「俺は、いや、俺達は今から元凶の元へ行く。翔、明日香、お前達も来るか?」

「ええ」

「勿論ッス!」

「なあ遊斗。それで結局プロフェッサー・コブラはどこにいるんだ?」

「SAL研究所。そこにプロフェッサー・コブラがいる」

 

 

 




MADの影響であふれるほどネタシーンが出てくるのに、震えるほど重要な部分を覚えていなく、驚くほどしつこいこの話題!

書いた本人が駄目出しするのって一番駄目だと思うんですけど、精霊達が無能みたいで違和感があります。ただこうしないと後々もっとストーリー構成に苦戦するので(精霊を出し過ぎた者の末路)



次の次の話でオリカの募集を止めようと思います。


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第四十八話

今回マクロコスモスが出て、その影響下で融合をしまいました。融合LSのテキストからでは出来ないと思うのですが、つい先ほどそれを気付きました。普通の融合の場合は墓地へ送るのがコストでは無い為融合できるのですが、LSの場合はコストになると思うので、融合できなくなるかと。
また、上記の裁定になる場合、LSの融合条件ではトークンと融合できない事も知りました。LSの融合の弱点としてこのままにしておくのもいいのですが、今までもティアナが出したトークンで融合をしており、弱点として残すと色々と矛盾が出るので、シンクロ召喚と同じ特殊裁定にしようかなと思います。

特殊裁定でやるにしろ、融合の条件を変えるにしろ、非常に重要な事だと思うので長々と書きました。これは大事な部分なので、ハッキリとどうするか決めたら一話の後書きや、カードの紹介の所に追記します。勉強不足でした。



来週の火曜日からネット環境から離れる為、その間更新できません。最近更新ペースが遅れて申し訳ありません。


それと今回原作キャラアンチになるかもしれません。ただ(アンチされるキャラ)たんハァハァと言われる方は恐らくいないと思うのですが。大好きな方は申し訳ありません。




「ここがSAL研究所・・・・」

 

もう既に管理されていないのか、表面のコケやサビが目立つ建物を見て、誰がポツリとそう呟いた。SALとデュエルをした十代も、そのデュエルを見守っていた俺達も、SAL研究所を目にするのは初めてだったのでその言葉と同じ感想を抱いていた。

 

「遊斗、本当にプロフェッサー・コブラはここにいるのか?」

「ああ、みんながそう言っている」

「みんな?」

「誰ザウルス?」

 

このメンツでLSが精霊と知らないのはジムと剣山だけ。ジムにはもう言い逃れ出来ないだろうから、ここで伝えておくのがいいだろう。

 

「俺が使っているLSは精霊でな・・・・。説明するより見せた方が早いか。フェイト、カードに戻れ」

「うん」

 

剣山の隣にいた、いや、剣山がフェイトの隣にいたと言うのが正解か。兎に角フェイトは薄い黄色の光を体から発しながら突然スッと消え、黄色の光は俺のデッキケースに入って行った。

ジムは目を見開いて驚き、剣山は顔の半分を占める程口をポカーンと開けた。二人を無視してデッキケースをポンポンと叩くと、再びフェイトが実体化した状態でみんなの前に現れた。

 

「プロフェッサー・コブラの居場所を遊斗が知ってたのも私達の仲間が調べてくれたから」

「そう言う事だ。因みに十代とヨハン。この研究所内は精霊はカード以外の姿でいられないらしい」

「へ? そうなのか? じゃあルビー。カードに戻ってくれ」

「ハネクリボーも」

 

二人は肩に乗っているハネクリボーとルビーに向かってそう言うと、二匹は首をコクンと頷かせてカードに戻って行く。フェイトも二匹と一緒にカードに戻って行き、剣山の精神に追撃をかける。

 

「オーケー。遊斗の理由は把握できた」

「・・・・う、嘘だドン」

「ほら、いくッスよ剣山君」

 

SAL研究所にはロックが掛かって無く、アッサリと入る事ができた。なのはさんが言っていた通り、中で精霊達は活動できなく、精霊達(みんな)の声が聞こえなくなった。十代とヨハンも同じく精霊達の声が聞こえない様だ。

いくつかのグループに別れて探索している途中、明日香がドアを見つけた。研究所に入ってすぐは研究所らしい――つまり現代的な空間だったが、明日香が見つけたドアをくぐった途端、辺りの景色がジャングルへと変わった。

 

「な、何でジャングルが?」

 

それは俺が聞きたい事だ。ただSALの研究に必要な空間だってことは確かだろう。でなきゃ態々室内にジャングルを作ったりしない。この研究施設はドーム状で出来ており、天井からはガラス越しに月の光が降り注いでいる。小さくてもジャングルはジャングルの様で、少なくともデュエルアカデミアには生息していない危険な生物の影が数回視界に入った。

 

「い、嫌な予感がするッス・・・・」

「こんな広い施設からプロフェッサー・コブラを見つけ出すのは難しい。いくつか別れよう」

「ああ! じゃあ俺と十代と遊斗。剣山と翔、明日香とジムでどうだ?」

 

この場の全員ヨハンの組み別けに異議は無い様で、言われた通りにグループを作る。実際の所、翔や剣山、明日香は不満そうな顔をしていたが、個人的な感情だけで場を乱すのは駄目だとしっかり把握している。因みに皆十代とペアを組みたかったのだ。その点ヨハンはさりげなく十代をキープしている。

 

「何か進展があったらPDAで連絡し合おう」

 

 

 

 

四人と別れた後、俺達三人はジャングルの中をさ迷っていた。こういう時普段なら精霊達(みんな)が助け舟を出してくれるのだが、その声も無い。この施設内では活動できないと改めて思い知らされた。

ヨハンがどうかは知らないが、十代は足が速いし、俺もリアルファイトにはある程度自身がある。剣山もパワーがあるし、ジムにはカレンがいる。ヨハンの組み別けは完璧ではないが一応考えられている。

 

「プロフェッサー・コブラの奴絶対許せねぇ」

「ヨハンも災難だな。入学早々事件に巻き込まれて」

「何言ってんだ。俺は望んでこの学校に来た。災難なんて思ってないぜ」

「そうか」

「ただ十代と同じで、プロフェッサー・コブラは許せない」

 

トラブル無くジャングルをまっすぐ突き抜けると、入口と同じように金属でできた壁が視界に入った。しかもそこには俺達の十数倍もでかい巨大な扉がある。研究所の面積や位置などからするに、この先がSAL研究所の最深部。よくあるRPGや冒険物だったらこの先にボスであるプロフェッサー・コブラがいる筈。

十代と一緒に巨大なドアの全面を遠目から見ている時だった。さっきまで元気だったヨハンが急に静かになったのが気になり、キョロキョロと360°全方位を見渡す。

 

「ヨハンはどこに行った?」

「へ? さっきまで一緒に居た・・・・って、いないぞ!?」

「ま、まさかあいつ途中で迷子になった?」

「そんな事ある訳ない・・・・って言えないな。しかもヨハンはPDA持ってないだろ? どうする遊斗」

「この状態で一人になるのは良くないが、俺達はPDAがある。一旦別れてヨハンを探すぞ」

「おう!」

 

ハァ・・・・。方向音痴って事は知っていたが、まさか俺達と一緒に行動している途中に迷子になるとは誰が予想していただろうか。ヨハンの事だから何か気になる物を見つけて、俺達に話す前に方向転換したのだろう。その光景が驚くほど新鮮にイメージできる。

 

「けど精霊達(みんな)がいないだけでここまで不安になるなんて」

 

この二年間、色々とトラブルに巻き込まれてきたが、なんだかんだで今まで俺の近くには精霊達(みんな)が居てくれた。今も精霊達(みんな)が近くに居るって事を、頭では理解しているつもりだが、やはり精神的に不安である。

 

「それもこれもヨハンの所為・・・・って、ん?」

 

金属の壁に沿って歩いている途中、さっきとは違った普通サイズのドアが存在した。まだヨハン探しをして数分も経ってないので、普段なら後回しにするだろうが、そのドアが半開きになっていたら話は別だ。

開いているドアを見つけた。十代は引き続きその場所でヨハンを探してくれ。と簡潔な文をPDAに打ち込んで十代のPDAに送信する。

 

「ッツ! な、夏休みにホラゲーやるんじゃなかった・・・・」

 

ドアをくぐった先は、薄暗い赤いライトで照らされ、機械の部品が剥き出しになっている不気味な空間だった。夜の研究所とは予想以上に恐ろしく、ゲームでは淡々とプレイしていたが、実際にその場に立ち合わせると、男の俺でもかなり怖かったりする。しかもそれが、血を連想させる赤いライトで照らされていると思うと尚更だ。

 

「こ、これはフェイトの瞳の色これはフェイトの瞳の色」

 

呪文の様に何度も何度も同じ言葉を繰り返す。勿論フェイトの瞳を思い出しながらだ。

歩幅が少し小さくなりながらも何とかその不気味な空間を抜け出せた。出た場所は、先程のジャングル程では無かったが、早歩きで一周回るのに1・2分はかかるであろう、ドーム状の空間。

この空間に入ってすぐ目に入ったのは、中央に建っている橋。俺のすぐ目の前にあるその橋は、反対側へと続いている。

 

「来たな! ジェイル・スカリエッティの息子!」

「ッツ! 誰だ!?」

 

ドームに響くのは元気な老人の声だった。その声が鼓膜を振動した瞬間、いつでも走りだせる様に中腰になり、声のした方向を睨みつける。声の主である老人がいたのは、橋のど真ん中だった。辺りを見渡す限り罠があるとも思えないので、老人の元へと歩いて行く。

影が邪魔をして、白衣を着た下半身しか確認できない老人に俺は言った。

 

「お前は誰だ? プロフェッサー・コブラがどこにいるか知っているのか?」

「二番目の質問には答えられん。だが一番目の質問に答えよう。私はアルベルト・ツバインシュタイン」

 

自己紹介と共に月光の下へ歩いてきたその老人の顔を見て、俺は昔の出来事を思い出した。

十数年前かハッキリと覚えていないが、俺がまだ小さい子供だった頃。父さんは物理関連の論文を発表し、新たなる着眼点で一躍有名になった。有名と言っても、その後テレビに出る機会は無かったし、その論文が直接発明に繋がる訳では無かったので、百人が百人父さんの事を知っている訳ではない。

話を戻す。その当時父さんの論文に文句を言う輩がいた。それがこのツバインシュタイン博士だ。何でもツバインシュタイン博士もほぼ同じ研究論文を書き上げていた様で、父さんが自分の論文内容を盗んだと言いだしたのだ。しかし父さんの人格を知る人なら分かる通り、父さんがそんなセコイ手を使って盗みを働くとは思えないし、そもそも他人の論文に興味を持つ人では無い。

アリバイもあったし父さんは訴えられる事も無く、逆にツバインシュタイン博士が父さんの論文を盗んだとマスコミに言われ、その後ツバインシュタイン博士の名を聞く事は無くなった。

 

「あなたは・・・・」

「知っているなら話は早い。お前の父親の所為で私の人生は滅茶苦茶だ。天才である私が人生をかけてようやくたどり着いた理論をあんな若造が分かる筈が無い!」

 

目の前の老人には申し訳ない事だが、世間の目などを全く気にしない父さんがあの論文を発表したのは、ちょっとした金稼ぎと名を売る事で大手会社とのパイプを作る為だったんだよな。本人は後者が目的と言っていた。

 

「デュエルアカデミアの生徒である俺がこんな事言うのもなんだが、父さんとあんたでは月とスッポンだ」

「お前に何が分かる!」

「分からないさ。天才の考える事はいつの時代も凡人には分からない。凡人が理解するには長い時間が必要だ」

「ほぅ。私を天才だと認めているのか?」

「ああ、ただジェイル・スカリエッティの息子として言うと、天才と言っても程度が知れてるが」

 

俺の言葉にツバインシュタイン博士は激怒すると思ったが、以外に冷静さを保っている。別に交渉戦をしている訳ではないが、相手の冷静さを削っておいた方が有利に立てるからな。

 

「仮に父さんがあなたの立場に立ったとしても、父さんはひたすら研究を続けて自分の欲望を満たす。だけどあなたは父さんや俺への復讐に燃えている。精霊達が活動できないのもあなたの仕業でしょう? また時間の無駄な事を」

「やはりあの若造の息子、着眼点はいい。お前の言う通り、精霊の活動を妨害する装置は私が作り上げた。ただこの装置はお前達への復讐では無く、私が生活する為の装置だ」

「生きる為?」

「精霊狩りと言う職業を知っているか?」

 

精霊狩り!? 最後にその言葉を聞いたのは、三幻魔とのデュエルの真っ最中に父さんが言っていたが、その職業の事は知っている。精霊が見える人間が、精霊と精霊が宿ったカードを盗み、同じく精霊が見える輩に高く売る。職業とは言わず、誘拐犯と言った方がいいだろう。

しかも厄介なのが、精霊を見える人間は少数なので、世間や警察も動こうとはしない。それ以前に話すら聞いてくれないだろう。

 

「私は精霊狩りと手を組んだ。その時精霊の動きを妨害するのが、今使っている装置の下位互換じゃ」

「ッツ! やっぱりあんたは父さんとは違う。研究者としてのレベルも低ければ、やる事のスケールも小さい」

 

人間としてはあんたの方がまだマシだがな、と心の中で付け加えておく。

 

「デュエルだ! 俺が勝ったらプロフェッサー・コブラの居場所を教え、装置を解除しろ!」

「私にデュエルを挑むとは、愚か者め! 長年の恨み、今ここで晴らす!」

「「デュエル!」」

「先攻は貰う、ドロー! アイシスを召喚!」

 

A1000・D1500

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ1 手札4 LP4000

 

そっか・・・・。いつもはデュエルしている最中、場に出ている誰かが話しかけてくれるが、精霊がカードから出られないこの空間では誰も話しかけてはくれない。こんな状況になったのは、13年間デュエルをやって来て初めての出来事。

 

「私のターン、ドロー。異次元の生還者を召喚」

 

A1800・D200

 

薄汚れた茶色いマントをはおった金色の髪の男戦士。このカードの効果を知らない人でも、除外ゾーンを異次元と例えていると知れば、自ずと効果が見えるだろう。

異次元の生還者の登場にゴクリと唾を飲み込む。このカード自体は決して強く無い、と言うよりコンボパーツなので今すぐその効果が発揮される事は無い。ただあるカード達が場に現れた時、非常に厄介なカードへと変化する。

 

「バトル。異次元の生還者でアイシスを攻撃」

「アイシスの効果発動。攻撃宣言時にデッキトップを三枚墓地へ送る。墓地へ送った中にモンスターがいれば、その枚数によって発動する効果が変わる。墓地へ送られたモンスターカードは二枚。よってアイシスは守備表示になる」

 

A1800 VS D1500

 

異次元の生還者は無言でマントの下に持っている大剣を取り出してアイシスに突進する。アイシスは爆薬を使い目くらましをし、その間に守備の体制を整えたが、異次元の生還者の一閃を防ぐ事はできなかった。

 

「アイシスが破壊された時、Asの収集を発動。デッキからレベル4以下のLSを特殊召喚する。来い、フェイト!」

 

A1800・D500

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗   モンスター1 伏せ0 手札4 LP4000

ツバイン モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

いつも通り凛々しくも可愛いフェイトの横顔だが、精霊がいないと思うと、どうにも安心できない。

っていつまでもみんなに甘えるな。いくら初めてだからって、いつもと同じ自分のデュエルをすればいいんだ。

 

「俺のターン、ドロー!」

「この瞬間罠発動、マクロコスモス。これにより墓地へ送られるカードは全て除外される」

 

ック、既にそのカードを引いていたのか・・・・。マクロコスモス。先程ツバインシュタイン博士が説明した通りの効果だ。墓地へ送られるカードが除外されるだけ。ただそれだけなのだが、それが非常に強力であり、アマチュアからプロまでこのカードを苦手とする人間は多い。

そもそもデュエルモンスターズは墓地から発動する効果や、墓地のカードを活かすカードが非常に多く、上級者からは第二の手札とも言われている。そのカード一枚だけで、動きが完全に停止するデッキもある程、墓地は重要なものになりつつある。

 

「だが既に墓地にいるモンスターの効果は防げない。墓地のギンガの効果発動! 墓地に存在するこのカードとスバルをゲームから除外する事で、融合デッキからレスキューレンジャー・スバルを特殊召喚する」

 

LSレスキューレンジャー・スバル ☆6/地/機械/A2000・D1500

 

機動六課から更に数年後の時が経ったのか、15歳だった少女はすっかりと一人前の女性としての顔つきになっている。ただ顔や体つき以外は大きく変わって点は無い。せっかく初めての出番なのに、会話できないのは非常に残念だ。

 

「スバルが特殊召喚に成功した時、フィールド上のカードにLCを一つ乗せる事が出来る。自身に乗せる」

 

LCスバル0→1

 

「そしてスバルのLCを取り除き、デッキからアルフを特殊召喚。場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

「フェイトさんに闇の書を装備」

 

フェイトA2800→A3100

 

正直な所アインスを呼べるかどうかはかなり微妙だ。マクロコスモスと異次元の生還者がいる以上、毎ターン異次元の生還者は蘇ってくる。二人の攻撃が通ればこれで勝ちだが、果たしてそう上手く行くか・・・・。

 

「バトル! フェイトさんで異次元の生還者を攻撃! 異次元の生還者はフェイトさんの目の前にいる。よって攻撃力700アップ!」

『トライデントスマッシャー!』

 

フェイトA3100→A3800 VS A1800

 

闇の書の使い方を知らないフェイトさんにとって、闇の書は正直邪魔な物なのだろう。ぞんざいに扱いはしない物の、闇の書を活かした攻撃もしない。黄色の激流によって破壊された異次元の生還者は、マクロコスモスの効果により破壊されずゲームから除外される。

 

ツバインLP4000→2000

LC闇の書0→1

 

「戦闘ダメージを受けた時、ダメージ・コンデンサーを発動。手札一枚を捨て、受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター一体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。異次元の女戦士を攻撃表示で特殊召喚」

 

A1500・D1600

 

異次元の女戦士。言わずと知れた優秀な下級モンスターだ。下級モンスターと1:1交換されるのは癪だが、フェイトさんを除外されると辛いし、戦闘ダメージを与えられる攻撃表示の内に破壊しておきたい。

 

「スバルで異次元の女戦士を攻撃! スバルが攻撃する時、自分フィールド上のLCの数×100攻撃力を上げる」

『ディバインバスター!』

 

スバルA2000→A2100 VS A1500

 

実際にフィールドにいるスバルのディバインバスターを見るのは初めてだ。異次元の女戦士の元までマッハキャリバーの機動力を活かして接近したスバルは、ほぼ零距離と言う所で、異次元の女戦士にディバインバスターを放った。

青白い砲撃は女戦士を木っ端みじんにした筈だが、その特殊能力によりスバルまでも道連れになり、次元の彼方へと飛ばされる。

 

ツバインLP2000→1400

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、ゲームから除外された異次元の生還者と、異次元の偵察機を特殊召喚する」

 

A1800・D200

A800・D1200

 

見覚えの無い近未来的な機械。先程のダメージ・コンデンサーの時に捨てていたのだろう。少し説明するのが遅れたが、マクロコスモスが発動している状態で、墓地へ送る事がコストのカードは使用できない。先程ツバインが発動したダメージ・コンデンサーは捨てる事がコストなので、発動出来た訳だ。

 

遊斗   モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

ツバイン モンスター2 伏せ1 手札2 LP1400

 

「ドロー! 異次元の偵察機を生贄に、邪帝ガイウスを召喚!」

 

A2400・D1000

 

マクロコスモスに帝。次元帝とはガチガチのガチデッキだな。邪帝ガイウスは召喚と共に、自分の胸の前に手を持って来て手の間に闇の力を溜める。

 

「邪帝ガイウスが生贄召喚に成功した時、フィールド上のカード一枚を除外する。黒騎士フェイトを除外だ!」

「チェーンして速攻魔法次元震を発動! お互いのプレイヤーはそれぞれ一体ずつ相手フィールド上のカードを選択し、破壊する。俺はガイウスを選択」

「ッチ、黒騎士フェイトしか対象は居らん」

「更に次元震にチェーンして速攻魔法あの日のリボンを発動! LCを一つ取り除き、フェイトさんを融合デッキに戻し、融合デッキからなのはさんを特殊召喚する。闇の書のLCを取り除く」

 

LC闇の書1→0

 

「処理を行う。あの日のリボンの効果で融合デッキからなのはさんを特殊召喚し、次元震の効果でガイウスは破壊。次元震の効果で俺はデッキからリリィと次元断層を手札に加え、お前は一枚ドロー。ガイウスの効果対象はいなくなったので不発となる」

 

A1000・D3000

 

この一連の流れにより、破壊されたのはガイウス一枚だけ。だが同時に俺も一気に二枚の速攻魔法を使ってしまった。いくらなのはさんの守備が3000とは言え、やはり伏せが無いのは心配だ。

 

「カードを二枚伏せてターンエンドじゃ。エンドフェイズ、異次元の偵察機が特殊召喚される」

 

遊斗   モンスター1 伏せ0 手札4 LP4000

ツバイン モンスター2 伏せ2 手札1 LP1400

 

「俺のターン、ドロー! なのはさんの効果発動。デッキからクリスを手札に加える。リリィを召喚し、効果でデッキから銀十字を手札に加える」

 

AD500

 

「手札の次元断層を捨て、デッキからトーマを特殊召喚する。場のリリィとトーマを融合! 来い、リアクトエンゲージ-トーマ! 効果でLCを乗せる」

 

LCトーマ1

 

「銀十字をトーマに装備」

 

ツバインシュタインの伏せカードが発動される気配が無い。やはりライフが少ないから守りのカードを入れているのか? どっちにしても攻撃するチャンスと言う事には変わりない。

 

「更にフィールドになのはさんがいる時、LCを一つ取り除く事で手札のヴィヴィオは特殊召喚できる」

 

LCトーマ1→0

A1300・D1500

 

「そしてヴィヴィオがいる時、クリスは手札から特殊召喚できる。特殊召喚成功時、クリスの効果でトーマにLCを置く」

 

LCトーマ0→1

AD500

 

「場のヴィヴィオとクリスを融合! 来い、カウンターヒッター-高町ヴィヴィオ!」

 

A2300・D2000

 

「バトル! トーマで異次元の偵察機を攻撃!」

「攻撃宣言時、攻撃の無力化を発動! バトルフェイズを終了させる!」

 

トーマが放ったシルバーハンマーは、異次元の偵察機の前に現れたグニャグニャと螺旋状に動くバリアによって防がれる。そのバリアは時空が乱し、バトルフェイズを強制終了させる。

 

「なのはさんを守備表示に変更。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

遊斗   モンスター3 伏せ2 手札1 LP4000

ツバイン モンスター2 伏せ2 手札1 LP1400

 

「私のターン、ドロー! カオス・グリードを発動。カードが四枚以上除外されており、自分の墓地にカードが存在しない場合、デッキから二枚ドローする。異次元の生還者を生贄に氷帝メビウスを召喚!」

 

A2400・D1000

 

氷帝メビウスか。こいつと雷帝ザボルグが余りいい思い出が無い。知っての通り、二年生の時の美寿知の部下、氷丸と雷丸とのデュエルで苦しめられ、あまつさえビルの中を真っ逆様に落ちて行ったからな。

 

「メビウスの効果。生贄召喚時、魔法・罠を二枚まで破壊できる。銀十字と伏せカードを破壊する!」

「トーマの効果発動! LCを取り除き、相手モンスターの攻守を2000下げる!」

 

自らの力で氷の槍を形成したメビウスは、二本の槍を投擲してトーマが持っている銀十字と俺の足元に存在する伏せカードを貫通して破壊した。

だがトーマも氷の槍が投げられたと同時に、メビウスと異次元の偵察機に向けて二発の弾丸を発射。戦力を根こそぎ奪う。

 

メビウスA2400・D1000→A400・D0

偵察機A800・D1200→A0・D0

 

「罠発動、血の代償! ライフを500払い通常召喚を行う。氷帝メビウスを生贄に、雷帝ザボルグを召喚! 効果でトーマを破壊する!」

 

ツバインLP1400→900

A2400・D1000

 

邪帝ガイウスと同じように胸の前に両手を持って来たザボルグは、手の間に雷のエネルギーを溜めてトーマに放出する。トラウマが蘇るものの、結局はガイウスの劣化であり、どうにも緊張感が出ない。同じくガイウスの劣化であるグランマーグは岩石族と言う事を活かし、投入される事も決して珍しくないのだが。

 

「守備封じを発動。なのはの表示形式を攻撃表示にする」

 

しゅ、守備封じって・・・・。どう考えてもエネミーコントローラーの下位互換。いや、一応裏側守備表示のカードを攻撃表示に出来る利点があるのか。

 

「バトルじゃ! ザボルグでなのはを攻撃!」

 

A2400 VS A1000

 

ザボルグの放つ雷の電圧に、なのはさんは耐えきれずに破壊されてしまったけど、なのはさんのおかげで大量展開が出来た。お勤めご苦労様です。

 

遊斗LP4000→2600

 

「異次元の偵察機を守備表示に変更し、ターンエンド。エンドフェイズに異次元の生還者を守備表示で特殊召喚する」

 

偵察機A0・D0→A800・D1200

 

遊斗   モンスター1 伏せ0 手札1 LP2600

ツバイン モンスター3 伏せ2 手札0 LP900

 

いくら相手のライフが1000以下でフィニッシュも目の前まで来ている。だがマクロコスモスの所為で思う様に動けない。そろそろマクロコスモスを破壊しないと、後々危険な事になるかもしれない。

 

「ドロー! よしっ、イクスを通常召喚! 効果でデッキからマリアージュを特殊召喚する」

 

AD500

A1700・D1200

 

「バトル! マリアージュで異次元の生還者を攻撃!」

無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)

 

A1700 VS D200

 

マリアージュは腕を超巨大なガトリングガンへと変化させ、理不尽なまでの弾丸の雨で異次元の生還者を再び異次元へと撃ち落とす。更にその異能の力で、異次元の生還者の欠片を自らの分身として出現させる。

 

「マリアージュが相手モンスターを戦闘で破壊した時、属性・種族・攻守・効果が同じのトークンを特殊召喚する。マリアージュトークンで異次元の偵察機を攻撃!」

「ッチ、守備表示が仇となったか!」

 

A1700 VS D1200

 

「再びマリアージュトークンを特殊召喚。魔法・罠ゾーンにアリサを置く。そしてアリサの効果で、マリアージュトークンを効果の対象にし、マリアージュトークンの効果が発動する。このカードが効果の対象になった時、自壊し、相手フィールド上のカード一枚を破壊する。マクロコスモスを破壊だ!」

 

マリアージュは自らの体を燃焼液に変化させながら、ツバインシュタイン博士の足元にあるマクロコスモスのカードに接近し、そのカードに触れると同時に自爆した。これが普通のデュエルで無かったら間違いなくツバインシュタイン博士も巻き沿いをくらっていただろう。

 

「ターンエンドだ」

「エンドフェイズ、異次元の生還者と偵察機を特殊召喚する」

 

だがその二枚のカードも、マクロコスモスの破壊と共にこれ以上の蘇生は不可能。仮に再び、マクロコスモスを発動したとしても、今のツバインシュタイン博士の手札は0。

 

遊斗   モンスター4 伏せ2 手札0 LP2600

ツバイン モンスター3 伏せ1 手札0 LP900

 

「流石あの男の息子、多少は腕が立つようだ」

「この状況でそんな強がりが聞けるとは」

「ふん! 私のターン、ドロー! サイバー・ヴァリーを召喚!」

 

AD0

 

攻守0だが、レベル1で三つも効果を持っているサイバーモンスターで、サイバー流の人間が買い占める所為で高額になっているカード。人生滅茶苦茶と言っておきながら、結構設けている様だ。

 

「サイバー・ヴァリーの第二の効果。このカードと異次元の偵察機を除外して二枚ドロー! バトルじゃ! ザボルグと異次元の生還者でマリアージュとマリアージュトークンを攻撃!」

 

A2400 VS A1700

A1800 VS A1700

 

ザボルグは馬鹿の一つ覚えの様に同じポーズで雷を放ち、異次元の生還者は相変わらず音も立てずにマリアージュに接近し、マントの下の大剣を振るいマリアージュを切断する。

二体のマリアージュが破壊された衝撃が、プレイヤーである俺に襲い掛かる。

 

遊斗LP2600→1800

 

「クッ」

「ターンエンド。エンドフェイズ、異次元の偵察機を特殊召喚する」

 

攻撃力800のモンスターを無防備な状態で晒したか。守りのカードを引けなかったのか、あるいは血の代償でカバーするつもりか・・・・。

 

遊斗   モンスター2 伏せ2 手札0 LP1800

ツバイン モンスター3 伏せ1 手札2 LP900

 

「ドロー! イクスの効果発動! 墓地のマリアージュを特殊召喚する」

「させん! 手札のD.D.クロウを発動。手札のこのカードを墓地へ捨て、マリアージュを除外する!」

 

手札誘発のモンスターかっ・・・・。マリアージュの特殊召喚を妨害したって事は、血の代償を破壊されたく無いと言う事。しかし相手の真意が分かった所で、俺が進むべき道は一つしかない。

 

「バトル! ヴィヴィオで異次元の偵察機を攻撃!」

「攻撃宣言時、血の代償の効果を発動! ライフを500払い、異次元の生還者、偵察機、ザボルグを生贄に、神獣王バルバロスを召喚!」

 

ツバインシュタインLP900→400

A3000・D1200

 

畜生! 三体生贄の時点でもしやと思っていたが、やはりそのカードか! 獣戦士族の王でもあったバルバロスの特殊効果が発動されてしまうが、俺に防ぐ手段は無い・・・・。

バルバロスはすぅと息を吸い、胸を膨らませた刹那、空気の振動を体で感じられる程の咆哮を放つ。神獣王の咆哮は破壊効果も秘めており、ヴィヴィオ、イクス、アリサはバリンと粉々になって破壊されてしまった。

 

「ひゃっひゃっひゃ。三体のモンスターを残しておいたのが仇となったな」

「だがデュエルは終わっていない! カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊斗   モンスター0 伏せ1 手札0 LP1800

ツバイン モンスター1 伏せ1 手札1 LP400

 

これで奴がモンスターを引いたらかなり危険な状態になる。頼む、引かないでくれ! 引いても攻撃力の低いモンスターだ!

 

「ドロー! そんなハッタリが通用するかい。バトル! バルバロスでダイレクトアタック!」

「安直な攻撃で助かったよ! 罠発動ディフェンス・スクラム! 発動後俺のフィールドに可能な限り武装隊トークンを守備表示で特殊召喚する!」

 

AD500

 

レイジングハートのカノンモードを地味にした感じの簡易デバイスを持った武装隊員が、それぞれプロテクションを発動している状態で現れた。まあ容姿に付いても服装に付いても特に言う点も突っ込む点も無い。

 

「ムッ。ならばバルバロスで一体トークンを破壊する!」

 

A3000 VS D500

 

バルバロスは手に持った赤い巨大な槍を水平に構え、一人の武装隊員に突き刺す。プロテクションのおかげで僅かコンマ数秒程槍の進行を遅らせる事が出来たが、その程度。一人の武装隊員は槍に貫通されて破壊されてしまう。

さっきから、せっかく命を助けてくれた武装隊員の皆に失礼な説明だが、他に説明が思いつかないのだ。申し訳ない。

 

「サイバー・ヴァリーを召喚し、ターンエンド」

「エンドフェイズ時、ディフェンス・スクラムの効果で武装隊トークンは破壊され、この効果で破壊された枚数以下のレベルを持つLSを手札に加える。アイシスを手札に」

 

遊斗   モンスター0 伏せ0 手札1 LP1800

ツバイン モンスター2 伏せ1 手札0 LP400

 

「ドロー! アイシスを攻撃表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

A1000・D1500

 

「遂に策が無くなった様じゃの」

 

遊斗   モンスター1 伏せ1 手札0 LP1800

ツバイン モンスター2 伏せ1 手札0 LP400

 

「ドロー! 魂を喰らう者バズーを召喚!」

 

A1600・D900

 

身長は俺より低い程度だが、体積がかなり大きい紫の毛をした動物。体格はゴリラと言ったらイメージ出来るだろうが、顔は有名なトーテムポールの顔にそっくりだ。

 

「バズーの効果発動。墓地の偵察機とザボルグをゲームから除外し、攻撃力を600ポイントアップする!」

 

バズーA1600→A2200

 

ツバインシュタイン博士の墓地から二つの魂が人魂の様に飛んでくる。それを手でキャッチしたバズーは、無慈悲にもその魂を喰らい、自らの力へと変換させる。

 

「バトル! バズーでアイシスに攻撃!」

「アイシスの効果発動! デッキトップ三枚を墓地へ送る。墓地へ送られたモンスターは一枚、バズーの攻撃力を500上げる」

 

バズーA2200→A2700 VS A1000

 

先程喰った人魂の影響か、バズーの両手が黄金色に光る。アイシスに素早く突進したバズーは、黄金色の拳でアイシスを殴り飛ばす。バズーは狙っていたのか、アイシスが飛ばされた先には俺が居り、飛んでくるアイシスの背中をキャッチするが、かなりの勢いで飛ばされたのか、俺も後ろへ吹っ飛ぶ。

 

遊斗LP1800→100

 

「攻撃が通るとは計算外じゃ。だがどちらにしろこれで終わる。バルバロスでダイレクトアタック!」

 

A3000

 

「させるか! 墓地のフェイクシルエットの効果発動! このカードと墓地のティアナをゲームから除外し、バルバロスの攻撃を無効にする!」

「さっきの効果の時に墓地へ行っていたのか!?」

 

途中まで俺を標的にしていたバルバロスだが、少し離れた場所に現れた幻影の俺へと攻撃対象を変え、巨大な赤い槍で幻影の俺を突き刺した。いつ見ても自分と同じ幻影が破壊されるのはいい気分では無いが、そんな我が儘を言うくらいならデュエルを止めろって話だ。

 

「コンボカードが同時に墓地へ送られるなど、確率論的におかしい」

「デュエルは確立だけでどうこう出来るものじゃない。精霊の存在を知っているあんたならそれくらい分かる筈だ」

「この世は全て物理で解決できる! それが世界の決まりだ! サイバー・ヴァリーの効果でバズーをゲームから除外し二枚ドロー! カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

遊斗   モンスター0 伏せ1 手札0 LP100

ツバイン モンスター3 伏せ3 手札0 LP400

 

やはり研究者だけあり、そう言う所だけは父さんと似ているな。カードを信じればカードが応えてくれる。非科学的で父さんが嫌いな言葉だ。

確かに非科学的だが、例え天地がひっくり返っても変わらない事実。それを今から証明してみせる!

 

「俺のターン、ドロー! 速攻魔法Asの回収を発動! 除外されたギンガとティアナを墓地へ送り、一枚ドロー! 墓地のギンガの効果発動! このカードとティアナをゲームから除外し、融合デッキからミラージュガンナー・ティアナを特殊召喚する!」

 

ミラージュガンナー・ティアナ ☆6/炎/魔法使い/A1500・D2000

 

スバルと同じで、六課時代のティアナが一段と大人の女性っぽくなった姿。あのお姉さんだった六課時代のティアナも、今は俺より年下になる。勿論活動時間と言うか、生きている年数的にはティアナの方が上だが。

 

「ティアナの効果発動! ゲームから除外されたLSを墓地へ戻し、戻したカードと同名の攻守0のトークンを特殊召喚する。フェイトを墓地へ戻し、トークンを特殊召喚!」

 

AD0

 

「だが攻守0では何もできない!」

「名前が重要なんだよ。リバースカードオープン、フォトンランサー! 右側の伏せカードを破壊する!」

 

流石にトークンのフェイトがフォトンランサーを放つのは不可能なので、表になったフォトンランサーのカードから一発の黄色の魔力弾がレーザーの如きスピードで発射される。肉眼でも微かにしか確認できないフォトンランサーは、俺が宣言した右側のカードを狙う。

 

「そのカードは選択されたカードはチェーン出来ないが、他のカードは発動できる。二枚目のリバースカードオープン、非常食。血の代償とミラーフォースを墓地へ送り、ライフを2000回復する!」

 

ツバインLP400→2400

 

この非常食により、ティアナで異次元の偵察機を攻撃しても自分のライフを0にする事は出来ない。そうツバイン博士は考えてあるだろうが、誰もティアナの効果が一ターンに一度しか使えないと言っていない。

 

「ティアナの効果発動! 除外されたなのはさんを墓地へ戻し、同名トークンを特殊召喚する!」

「なっ!? 二回効果を発動できるだと!?」

「もっとも、この効果を二回使ったターン、この効果で特殊召喚したトークンは融合素材に出来ない。だがさっきも言った通り、名前が大事なんだ! 場のなのはさんを生贄に、蒼穹の王・高町なのはを特殊召喚!」

 

AD2500

 

精霊の力を妨害する機械の影響下にある為か、いつもの様な衝撃が起こらなかったが、アニメーションは相変わらず派手で、ティアナのミニスカを容赦なく揺らしていた。中はスパッツだからか、精霊が宿って無いからか、本人は特に気にしていない。

 

「なのは・・・・様の効果発動! デッキのレイジングハートを墓地へ送り、そのまま装備。攻撃力を1500上げる!」

 

なのはA2500→A4000

 

「こ、攻撃力4000だと!?」

「フィニッシュだ! なのは様で異次元の偵察機を攻撃!」

『ディバインバスターエクステンション!』

 

A4000 VS A800

 

そのスレンダーな体から発射されたとは思えないほど、強大で破壊力がある桃色の砲撃。例えライフを回復しようと、圧倒的な火力で押せばいいと言わんばかりの超火力。異次元の偵察機程度の攻撃力では、なのは様の砲撃を僅かに弱める事しか出来ず、砲撃はツバインシュタイン博士へと突き進む。

 

「わ、私の完璧なデュエルがぁぁぁああ!」

 

ツバインLP2400→-800

 

ソリッドビジョンが消えると同時に、なのは様の砲撃の影響で地面に横たわっているツバインシュタイン博士の元へと歩く。

 

「言った通りプロフェッサー・コブラの場所を教え、装置を解除しろ」

「何を言っとる? それはお前が言っただけで私は一度も約束しておらん」

 

この後に及んでこの爺ッ! 精霊狩りと手を組んでるって事自体許せねぇのに、口約束を破る気か。

デュエリストとして、そして老人に手を上げたくなかったから我慢してきたが、相手がその気なら俺も行動に移ろう。

横になっているツバインシュタイン博士が着ている白衣の首元を掴み、数㎝だけ空に浮かせる。

 

「カハッ! ぐっ、暴力で脅す気か」

「あいにくこっちも急いでるんでね。出来ればプロフェッサー・コブラの場所を白状して、装置を停止する事を進める。俺もこの施設内全てを探索して、気絶した相手の体を探りたくない」

 

ツバインシュタイン博士を睨みつけ、そう脅した時だった。突然、重力が数倍になったと錯覚するほどに体が重くなり、体のエネルギーがどこかへ飛ばされる感覚を覚える。いつの間にか俺が感情的になっていたのか、すっかりデス・デュエルの事を忘れていた。

 

「ひゃっひゃ。最後の最後で爪が甘かったな。デス・デュエルの影響を受けた者は、どんなに鍛えていても数十分は行動でき・・・・ない・・・・」

 

まるで悪役が勝利を確信したかのような笑い声を上げたが、その笑い声も徐々に消えて行く。俺が未だにツバインシュタイン博士を上げた手を降ろさないからだ。

確かに体中が重くて気分が悪いが、軽い老人を持ち上げる程度の力は残っている。あの貧弱な父親とは違って、こっちは鍛えてるんでね。

 

「じゃあ俺はそれ以上に鍛えてるって事だな」

「ば、馬鹿な! そんな、ぐあっ!」

「十秒だけ時間を与える。10、9、8、7「わ、分かった、言う!」・・・・」

 

カウントダウンを止めてツバインシュタイン博士を地面へと降ろすが、両手を白衣から話さずに無言で見下ろす。

 

「プ、プロフェッサー・コブラの居場所は――」

 

肝心な部分を暴露する直前。突如ツバインシュタイン博士が、まるでエネルギーを奪われたかの如く、ガックリと項垂れて気を失う。紛れもないデス・デュエルの症状だ。

 

「まさかデス・ベルトが!? けど手首には・・・・」

 

デス・ベルトは付いていない。そう言おうとしたが、デュエルディスクの装着部分から赤いランプが微かに点滅している事に気付き、途中で言葉を区切る。おそらくデュエルディスクの方にデス・ベルトを組み込んでいたのだろう。ツバインシュタイン博士が不必要と思ってデュエルエナジーだけ奪った。そう考えるのが妥当か。

 

「ハァ・・・・しかも装置の制御装置らしきものも無いか・・・・。仕方ない、十代に連絡するか」

 

 




ツバインシュタイン博士たん(;´Д`)ハァハァ
流石に・・・・いや、世間は広いから・・・・。


融合の裁定についてはすいませんでした。切り札の召喚条件なのに気づくのが遅すぎですが、まあずっと気付かないよりましかな(苦笑)


さて、話を本編に戻して、結構ガチな次元帝です。
ただフリーでは面白くないし、大会で成績残すには展開が遅い。ある意味可哀そうなデッキ・・・・。


スカさんの所為で色々と出番を奪われたツバインシュタイン博士。まあ犯罪者じゃなくなったスカさんは相手が悪すぎる。はやてさんも、犯罪者じゃなかったら間違いなく歴史に残る天才。と言ってましたし。


今回は遂にギン姉と進化スバティアを出しました。これで最低限オリカにするカードは終わりました。あとは受け継がれる力と援護射撃を足して二で割った感じの罠を作ろうかと。




LSギンガ・ナカジマ ☆4/地/魔法使い/A1500・D1500
自分の墓地に「LSスバル・ナカジマ」または「LSティアナ・ランスター」が存在する場合、自分のメインフェイズに発動できる。このカードと上記のカードどちらか1枚をゲームから除外し、除外したモンスターのカード名が含まれるレベル6の融合モンスター1体を、融合デッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する。


神薙様の案を参考にしました。

LSレスキューレンジャー・スバル ☆6/地/機械/A2000・D1500
「LSスバル・ナカジマ」+「LSティアナ・ランスター」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードが融合召喚に成功した時、自分フィールド上に表側表示で存在するカード1枚にLCを1つ置く事ができる。自分フィールド上に「ティアナ」と名のつくカードが表側表示で存在する時、このカードを除く、フィールド上の「LS」と名のつくモンスターの攻撃力を500ポイントアップする。
攻撃宣言時、フィールド上に存在するLCの数×100ポイントこのカードの攻撃力がアップする。


ミラージュガンナー・ティアナ ☆6/炎/魔法使い/A1500・D2000
「LSスバル・ナカジマ」+「LSティアナ・ランスター」
自分フィールド上に存在する上記のカードを墓地へ送った場合、融合デッキから特殊召喚できる。(「融合」魔法カードは必要としない)。
ゲームから除外されている「LS」と名のつくモンスターカードを1枚選択して発動する。選択したモンスターを墓地へ戻し、自分フィールド上にトークンを表側守備表示で特殊召喚する。(魔法使い族・炎・星1・攻/守0)
この効果は1ターンに2度まで使える。この効果を2回使用したターン、この効果で特殊召喚したトークンは融合素材にできない。また、この効果で特殊召喚したトークンは攻撃対象に選択された時、破壊される。


ドロップ様作

ディフェンス・スクラム 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。「武装隊トークン」(魔法使い族・光・星1・攻/守500)を可能な限り、自分フィールド上に表側表示で特殊召喚する。
エンドフェイズ時フィールド上に存在する「武装隊トークン」は全て破壊され、破壊された枚数以下のレベルを持つ「LS」と名のつくモンスター1体を自分の墓地から手札に加える。


ドロップ様作

あの日のリボン 速攻魔法
自分フィールド上のLCを1つ取り除き発動する。自分フィールド上に表側表示で存在する「なのは」または「フェイト」と名の付くモンスター1体を選択し、デッキに戻す。デッキに戻したカードが「なのは」と名のつくモンスターの場合、戻したモンスターと同じレベルの「フェイト」と名のつくモンスターを、「フェイト」と名のつくモンスターの場合、戻したモンスターと同じレベルの「なのは」と名のつくモンスター1体を、召喚条件を無視して、デッキ・融合デッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃する事はできない。






まずはギン姉。
舐めプにならない進化+そこそろバランスが取れた条件。と言ったらこれしか思いつきませんでした。これだと手札のスバルを召喚しなくとも、効果を使った後に進化させる事ができますので、舐めプにはならないかと。ノーコスで上級召喚はどうかとも思ったのですが、コストを付ける程のものでもないと思いました。


大分前から要望が多かった進化スバルとティアナ。
二体とも墓地に揃えばノーコスで特殊召喚できるので、ステータスはさほど高くありません。
ただLCがあればスバルは上級の2400のラインを突破できます。ティアナもノーコスでトークンは強いかと。ただ防御に使えない様に工夫はしました。


ディフェンス・スクラム。
モブがうじゃうじゃ出てきて防衛を組む。典型的な負けフラグ(勝ちましたけど)
レベル3以下のモンスターがさほど強くないLSですので、出来れば四体は残して置きたいですね。ダメージ0や攻撃を無効ではなく、数で圧倒する守備カード。


あの日のリボン。
腐った作者が大好きな名場面。この発想はあったようでなかった!
つまり9歳なのはを戻せば9歳フェイトが。19歳フェイトさんを戻せば19歳なのはさんが。なのは様を戻せば雷フェイトさんがそれぞれ助けに来ると。このカードがアドバンテージを生む訳でもないのですが、追撃は強いのでそこだけは規制を。なのは様の後の雷フェイトさんは鬼畜。



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第四十九話

いや~、お久しぶりです。前回言ってた通り、ネット環境から離れてしばらく執筆+投稿が出来ませんでした。本当は月曜日に投稿しようかとも思ったのですが、予想以上に文字数が多くなり投稿できなくなりました。
久しぶりですので、数ヵ月ぶりにテンションの高い状態で投稿します。


この一週間遊戯王やなのは関連で色々あったと思います(遊戯王らしくなったゼアルだったり、コンプだったりなのは漫画が出たりと)

色々とこの場で書きたいのですが、それは後にして、大事な話がいくつか。


一つはこの回に調整中のルールを勝手に改編してデュエルをしています。これは調整中というのが問題と思うので、謝罪をする訳ではないのですが伝えておこうと思います。


もう一つは、言っていた通り、この回でオリカの募集を止めます。正確に言うと次話を投稿するまでです。今までありがとうございました。




どうやら十代は既にみんなと合流していた様で、十代との待ち合わせ場所に付いた時にはこの研究所に来た時と同じメンバーが揃っていた。何故か明日香の制服がびしょ濡れで、理由を聞くと、プロフェッサー・コブラの罠にかかってしまい、後もう少し手窒息する所だったらしい。

今までのデュエルエナジーの吸収も犯罪レベルのやり口だが、いよいよ殺人まで手を染めたか、プロフェッサー・コブラ。

十代とヨハンもまた、俺とは別にデュエルをしていた様だ。十代の相手はアカデミアの先生の佐藤浩二。その人がプロフェッサー・コブラに手を貸した理由は、十代の影響の所為で自分の授業が崩壊してしまった為らしい。実際に俺もこの人の授業に出た事あるが、勝つ事を最優先とした考え方だから、面白くないんだよな。

ヨハンはヨハンで因縁のある対決をした。何と話題になっていた精霊狩りの人間と戦ったそうだ。何でもヨハンと精霊狩りが戦ったフィールドには精霊の力を妨害する装置が無効にされていたらしく、それを利用してサファイア・ペガサスを札質(人質)にしたようだ。結局宝玉獣とヨハンの絆により、ヨハンはデュエルに勝利した。

 

「調べて無いのはこの奥だけ。ここにプロフェッサー・コブラがいる」

「気を引き締めて行くぞ!」

【おー!】

 

と言った刹那、突如俺達がいた天井がゴゴゴと音を立てて降りて来たでは無いか。後に引くのは簡単だ、数歩後ろへ歩けばいい。ただ前に行くにはそれなりの距離を走らなくてはいけない。俺はともかく、十代とヨハンはデス・ベルトの影響でかなり体力を消耗している。

 

「ゴー! ランニングだ!」

 

ジムの合図と共に一斉に前に走り出したが、体力を奪われている十代とヨハン、女性である明日香、足が遅い翔が間に合うと思えない。走り出す直後すぐ近くにいた明日香を強引に抱き抱えて走る事は出来たが、残りの三人が間に合うとは思えない。

その時だった。落ちて来る壁の動きが止まったのは。

 

「オブライエン! どうしてここに!? お前はプロフェッサー・コブラの味方じゃ無かったのか!?」

「俺はお前達の味方だ。詳しい事は後で話す! 早く行け!」

 

一心不乱に走っていた所為で、どうやってこの壁を止めているのかは知らないが、後方で行われている会話を聞きとる事は出来た。

壁が落ちて来る廊下を抜けた数秒後に遅れていた三人が到着し、更にその数秒後には先程まであった長い廊下は壁になっていた。

 

「ハァ゛ハァ゛。プ、プロフェッサー・コブラは本気ッス」

「ミートゥー」

「ありがとう。助かったわ遊斗」

「意味無かったけどな。ただそう言ってもらえると嬉しいよ」

「この先にプロフェッサー・コブラが」

 

細い廊下を出た先は真っ暗な空間だった。ただ僅かに零れる光から分かる事は、この空間は円の形をしていると言う事。

 

「コブラ! 何処に居る!」

「フッフッフ、まさか訓練をしていない学生達がたどり着くとはな。お前達を過小評価していた様だ」

 

どうやらもう逃げ隠れするのは止めたらしく、プロフェッサー・コブラはこの部屋の明かりを点けて、自らの姿を露わにした。やはり元軍人だけあり、手を降ろして無防備な状態になっているが、隙が一瞬たりともない。

 

「コブラ! 何故こんな事をする!」

「そうザウルス! 今すぐデス・ベルトを解除するドン!」

「それは出来ない。だが冥土の土産に教えてやろう。息子を、リックを救う為だ」

「リック?」

「私はいつもいつも戦場にいた。その事に疑問を思った事は無かった。戦場でリックを拾うまでは。戦うしか無かった私の人生でたった一つの希望、それがリックだった。だが、リックは私の目の前で、事故に合って死んだ」

 

話が見えてきた。プロフェッサー・コブラは息子であるリックを生き返らせる為に、デュエルエナジーを集めている。こんな大掛かりな事件を起こしたら、その後の自分の将来は駄目になってしまうかもしれない。プロフェッサー・コブラもそのくらい分かっていただろうが、自分を犠牲にしてでもリックを救いたいのだろう。リックの事を話すプロフェッサー・コブラの声色は、どこか優しさを感じるものだった。

 

「そんな時私はカードの精霊と出会った。その精霊はリックを生き返らせてくれると言った。だから私はリックを生き返らせる為に、精霊の言う通りにデュエルエナジーを集めている!」

 

プロフェッサー・コブラの話を聞いて、俺はふととある人とこの人が被った。フェイトのお母さん、プレシア・テスタロッサさん。彼女は本当の娘であるアリシアを生き返らせる為に、修羅の道を選び、フェイトにも酷い事をした。プレシアさんの事は、話で聞いた事しかないからどんな人かは分からない。ただ一つ言えるのが、アリシアを助ける為に周りが見えなくなったけど、本当は優しい人、と言う事。

 

「コブラ! 自分が幸せになる為なら誰かを犠牲にしても「十代、俺に話させろ」けど」

「プロフェッサー・コブラ。いや、もうプロフェッサーを付ける必要は無いか。俺はリックを知らないからあんたがどれくら悲しいかは分からない。だけどこれだけは言える。コブラ、あんたはまだやり直せるラインにいる。罪を償い、真っ当に生きる事が出来る」

「ふんっ。子供が何を戯言を」

「俺はッ! あんたと同じ立場にいた人を知ってる。大切な(ひと)を助ける為に、自分の全てを犠牲にしようとした人達を知っている。当事者じゃない俺だけどこれだけは言える! あんたはまだ引き返せる!」

「そんな安っぽい言葉で私を止められるとでも思ったのか?」

「他人を犠牲にしてまで生き返ったリックは喜ぶと?」

 

数秒間の間コブラは無言でいたが、すぐに沈黙を破って口を開いた。

 

「話し合いはこれで終わりだ。デュエルだ。ここを知られた以上、お前達を返す訳にはいかない。根こそぎデュエルエナジーを奪ってやる。相手は遊城十代、お前だ」

「おうっ! そのデュエル、受けて立つぜ!」

 

コブラが十代を指名した理由が気になったが、今はそんな事より重要な事がある。前に出た十代と同じく、俺も前に一歩出て自己主張する。

 

「俺もデュエルに参加させてもらう」

「遊斗?」

「構わん。お遊びでデュエルをしている学生が何人束になった所で結果は変わらん!」

 

コブラの叫び声と同時に、突如この部屋全体が揺れ、ウィーンと機械音がなり部屋の天井が開き、人口の光から月の光によって辺りが照らされる。それと同時に地面がゴゴゴゴ! と音を立てて上に上がって行き、風を感じる外へと伸びて行く。

 

「デュエルアカデミアドン!」

「め、滅茶苦茶高いッスー!」

「悪かったな十代。邪魔して」

「構わないぜ。お前の言葉、すげえ良かった。行くぜ遊斗、俺達の最強タッグを見せてやろうぜ」

「ああ。思えば、こうやってお前とタッグを組むのは初めてだな」

「ライフは私が8000、お前達が4000。お前達はライフ、フィールド、墓地を共通」

「コブラ→俺→コブラ→十代→コブラの順で構わないな?」

「構わん。行くぞ!」

「「「デュエル!」」」

「ドロー! ヴェノム・スネークを召喚!」

 

A1200・D800

 

デュエルモンスターズの中では小さいが、蛇としては破格の大きさを持つ蛇のモンスター。その体を真っ直ぐにしたら、俺より少し小さいくらい。詳しくは無いが、おそらく現実では大きい部類に入るはず。自らの名前に因んだ、爬虫類族のデッキ。こんな時でも思わず一年生の時のミスデュエルアカデミアを思い出す。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

コブラ モンスター1 伏せ2 手札3 LP8000

 

ヴェノムデッキは相手にカウンターを乗せてジワジワと攻撃力を削っていく、持久戦向きのデッキ。勝手に入って来た俺が今更言う事ではないが、これはライフ8000にさせてしまったのは悪手だった。

いや、くよくよ言ってる場合じゃない。コブラを止める為にも、俺達はこのデュエルを勝たなくてはいけない。

 

「俺のターン、ドロー! ヴィータさんを通常召喚!」

 

A1900・D1200

 

「ワッツ?」

「ヴィータさんドン?」

「遊斗は目上の精霊の人には敬語を使うのよ」

「ほぅ。やはり精霊・・・・」

「お前達の所為で本来の力が出せないがな。魔力高炉を発動。発動後LCを二つ置く」

 

LC魔力高炉2

 

「そしてLCを一つ取り除き、ツヴァイを特殊召喚!」

 

AD500

LC魔力高炉2→1

 

「場のヴィータさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ! 効果でセットされた二枚のカードを破壊する!」

「チェーンしてダメージ=レプトルと安全地帯をヴェノム・スネークに発動!」

 

ヴィータさんの効果で破壊できなかったのは少々勿体ないが、情報アドバンテージを得られただけでも十分にでかい。ダメージ=レプトルからの展開が怖いが、ライフを減らす事を優先しないと、ヴェノムは面倒臭い事になる。何故ここまでヴェノムに詳しいかというと、襲ってきた爬虫類族の王がヴェノムを使っていたから。

 

「ツヴァイの効果。魔力高炉のLCを取り除き、このカードを手札に加える」

 

LC魔力高炉1→0→破壊

 

「バトル! ヴィータさんでヴェノム・スネークを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A2600 VS A1200

 

グラーフアイゼンの後頭部から発射されるジェットに身を任せ、ヴェノム・スネークに猪の如く突進する。蛇に打撃攻撃は効きそうにない気もするが、そんな俺のイメージを破るかの如き勢いでグラーフアイゼンを叩きつけ、ヴェノム・スネークを真っ二つに切断する。

 

コブラLP8000→6600

 

「グゥッ、安全地帯の効果でヴェノム・スネークは破壊されない。ダメージ=レプトルの効果で受けたダメージ以下の攻撃力を持つ爬虫類族を特殊召喚する。二枚目のヴェノム・スネークを特殊召喚!」

 

A1200・D600

 

体を切断されたヴェノム・スネークはトカゲのしっぽの様に体を生やして元の姿を取り戻し、ダメージ=レプトルの絵の中からもう一体の蛇が現れる。

 

「やっぱり序盤であのカードは呼ばないか・・・・。カードを一枚伏せてターンエンド」

「すげえぞ遊斗。一ターン目から大ダメージだ」

「ああ。だが初期手札が俺達の方が多い分、ライフはコブラの方が上。気を引き締めていこう」

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

コブラ モンスター2 伏せ2 手札3 LP6600

 

「ドロー! 来たか、フィールド魔法ヴェノム・スワンプを発動!」

 

そこはまさに毒蛇の楽園と言える場所。樹は枯れ、動物の骨が毒沼の中に浸かり、動物達の悲惨な末路が見えて来る。樹が枯れているのにも関わらず、蛇たちが逃げ隠れ出来る紫色に濁った森林は生かされている。三幻魔専用のフィールド魔法、失楽園にどこか似ている。

 

「さあ十代。厄介なフィールド魔法が来たぞ。出来れば俺達どっちかのフィールド魔法で上書きするのが一番だが」

「そんな事はさせん。永続魔法、フィールドバリアを発動」

 

だろうな。これでフィールドバリアを破壊しない限りヴェノム・スワンプを破壊する事は出来ない。一応バウンスという手段があるが、魔法・罠のバウンスは少なく、パッと思いつくのは十代のトリプルコンタクトかニンジャ。

 

「不気味な場所だな・・・・」

「ア、アニキー!」

「あっち行くドン!」

 

背中から聞こえて来る悲鳴に、俺達は慌てて振り向くと、フィールド魔法ヴェノム・スワンプに潜んでいた蛇達がみんなを襲っていた。

 

「汚いぞコブラ!」

「ただのデュエルじゃないって事か」

「なんとでも言え。二体のヴェノム・スネークの効果を発動! ヴィータにヴェノムカウンターを一つずつ置く!」

 

ヴェノムカウンター(以後VC)ヴィータ0→2

ヴィータA2600→A1600

 

二体のヴェノム・スネークはヴィータさんに向け、口から紫色の液体を発射する。その液体を浴びたヴィータさんの肌が、当たった部分から痛々しい紫色に変わる。

 

「ヴィータが!? 遊斗、これは」

「ヴェノム・スワンプの影響下では、ヴェノムカウンターを乗せたモンスターの攻撃力は、カウンターの数×500ダウンする」

「それだけじゃない。ヴェノム・スワンプはエンドフェイズ時に、ヴェノム以外のモンスターにカウンターを一つずつ乗せ、この効果で攻撃力が0になったモンスターを破壊する」

「つまりどんどん毒が回って行くって事かっ!」

「そう言う事だ。安全地帯の影響を受けていないヴェノム・スネークを守備表示に変更。これでターンエンドだ」

 

VCヴィータ2→3

ヴィータA2600→A1100

 

場 ヴェノム・スワンプ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札3 LP4000

コブラ モンスター2 伏せ3 手札2 LP6600

 

「俺のターン、ドロー。コブラ! お前が俺の仲間達を傷つけると言うのなら、俺は全力でお前を倒す! 融合発動。手札のスパークマンとエッジマンを融合! 来い、プラズマヴァイスマン!」

 

A2600・D2300

 

スパークマンがエッジマンの武器や装甲を得た新たなるHERO。両手には黄金に輝くエッジマンのハンマーが装着されており、胸の部分や脛にもプラズマヴァイスマンの装甲が見られる。その他の部位にはスパークマンが着ていた青いスーツが見えるので、スパークマンがメインと言うのが分かる。

 

「バトル! プラズマヴァイスマンで守備表示のヴェノム・スネークを攻撃!」

「ダメージ=レプトルを恐れて守備表示のスネークを狙ってきたか」

「いや、プラズマヴァイスマンは貫通効果を持っている。行け、プラズマヴァイスマン! プラズマ・パルサーション!」

 

A2600 VS D600

 

プラズマヴァイスマンは黄金に輝く右手のハンマーに、強力な電気エネルギーを溜めてより一層に輝きを放つ。この月下で月よりも綺麗に輝く黄金のハンマーは、ヴェノム・スネークを真っ二つに切断し、再生できない様に電気で燃やしつくす。そしてライフダメージが衝撃となってコブラを襲う。

 

コブラLP6600→4600

 

「ダメージ=レプトルを恐れないか。ダメージ=レプトルの効果でヴェノム・ボアを特殊召喚!」

 

A1600・D1200

 

先程のヴェノム・スネークより一段と大きい青色の蛇。間違いなく、現実世界で大蛇と呼ばれるであろう大きさで、クネクネと曲がったその体を伸ばしたら数メートルはある。

 

「ヴィータを守備表示に変更。これでターンエンドだ」

 

VC ヴィータ3→4 ヴァイスマン0→1

ヴィータA1100→A600

ヴァイスマンA2600→A2100

 

場 ヴェノム・スワンプ

十代  モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

コブラ モンスター2 伏せ3 手札2 LP4600

 

「悪い遊斗。お前のサポートが出来なかった」

「気にするなって。自分のデュエルをやるのが一番だ」

「ふんっ、やはりお前達のデュエルは甘いな。私を倒すや助けると言っておきながら、結局は慣れ合いのデュエルで、背負うものは何もない」

「ツッ!」

 

コブラの言葉が十代の心にグサッと来たのか、十代は何も言い返さずに、悔しさを込めた小さな舌打ちしかしなかった。

一年前も、エドとのデュエルの後十代は深く悩んでいた。さっき戦った佐藤先生も、デュエルを楽しそうにやる十代が嫌いと言ったそうだ。

心の奥底で悩んでいた、デュエルを楽しくやったらいけないのか、という疑問をこの一日で二回も付き付けられ軽く動揺している。俺の目に映る今の十代は、そう見える。

 

「違う! 十代や遊斗はみんなの期待を必死に背負っている! 付き合いの短い俺でもそれは分かる!」

「ヨハン・・・・」

「ありがとなヨハン」

 

けど俺は期待を背負う程、誰かを助ける事が出来る人間じゃない。俺も周りのみんなの様に、十代に期待している一人だ。

だけど全く背負うものが無いと言う訳ではない。俺が首にかけている、F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が纏う五つの色を発する竜の爪。精霊の王の中の王を倒した者として、死んだ彼らに恥じない様にデュエルをする覚悟がある。

 

「俺達にだって背負うものはある! だからお前には負けない。だろ、十代?」

「あ、ああっ・・・・」

「ふん。だったら見せて見ろ! 私のターン、ドロー! ヴェノム・スネークの効果発動。ヴィータにヴェノムカウンターを乗せる」

 

VCヴィータ4→5

ヴィータA600→100

 

エンドフェイズ時にヴェノム・スワンプの効果でヴィータさんにVCが乗る。だからヴェノム・ボアの効果をヴィータさんに使わなかった。そんな所だろう。

 

「ヴェノム・ボアの効果。プラズマヴァイスマンにVCを二つ乗せる」

 

VCヴァイスマン1→3

ヴァイスマンA2100→A1100

 

「プラズマヴァイスマン!」

 

ヴェノム・ボアが放つ紫の液体を浴びたプラズマヴァイスマンの体も、ヴィータさんと同じように紫に変色して行く。これがヴェノムの本領。

 

「マジック・プランターを発動。安全地帯を墓地へ送り二枚ドロー。安全地帯の効果で、ヴェノム・スネークは破壊される。手札を一枚捨て、スネーク・レインを発動!」

「ヴェノムの王様が現れるのが近い」

「スネーク・レインの効果でデッキの爬虫類族を四枚墓地へ送る。ヴェノム・コブラ、二枚のヴェノム・サーペント、そして毒蛇王ヴェノミノンを墓地へ送る」

 

スネーク・レインには、探検隊の頭上に樹から蛇が落ちて来る絵が描かれているのだが、いくらソリッドビジョンでもそこまで再現できず、プロフェッサー・コブラは手動で四枚の爬虫類族を墓地へ送る。

 

「死者蘇生を発動。墓地の毒蛇王ヴェノミノンを特殊召喚する!」

 

AD0

 

毒を連想させる紫のマントと、蛇の形をした兜らしき物を被っている大蛇。その高さは俺達、成人男性と余り変わらないが、地面にウニョウニョと伸びている尻尾も入れたら、相当な大きさになるだろう。複数の黒い小さな蛇が絡み合い、手と指を作り出している。

 

「ヴェノミノンの攻撃力は墓地の爬虫類族の枚数×500アップする。墓地の爬虫類族の数は六枚。攻撃力は3000!」

 

ヴェノミノンA3000

 

「バトル! ヴェノミノンでプラズマヴァイスマンを攻撃! ヴェノム・ブロー!」

 

A3000 VS A1100

 

ヴェノミノンは右腕の蛇達を操り、小さな蛇達を一つの大きな蛇へと変化させる。その巨大な蛇の口から微かに紫が入った、どす黒い塊を吐きだしてプラズマヴァイスマンを破壊する。ヴェノミノンとプラズマヴァイスマンの数値の差分のダメージを与える為、ヴェノム・スワンプに隠れていた蛇達が俺と十代の体に噛みつく。

 

「ぐああああ!」

(うっ)! だ、大丈夫か十代?」

「あ、ああ・・・・」

 

十代LP4000→2100

 

襲い掛かって来た蛇達は、小さい割には予想以上に鋭利で尖った歯をしていた。しかも微弱だが毒を持っているのか、傷口辺りの感覚が鈍くなっている。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「十代、今だ!」

「メインフェイズ終了時、ソニックムーブを発動! ヴィータをゲームから除外する!」

「ヴェノムカウンターを取り除いたか」

「ターンプレイヤーであるあんたが優先権を持っている。先にヴェノム・スワンプの効果を処理するんだな」

「ヴェノムモンスターもヴェノミノンもヴェノム・スワンプの効果は受けない」

「効果処理後にヴィータさんがフィールドに戻ってくる」

 

A2600・D2500

 

隣に居る十代は効果処理が何なのか今一よく分かっていないのか、ポカーンと軽く口を開いている。俺もデュエルを知り尽くしている訳ではないが、もう少し勉強しよう。

 

場 ヴェノム・スワンプ

十代  モンスター1 伏せ0 手札3 LP2100

コブラ モンスター2 伏せ3 手札1 LP4600

 

「ドロー! よしっ、シュテルを召喚!」

 

A800・D1500

 

下級モンスターの中では無類の戦闘能力を持つシュテル。本来ならデメリットである除外効果も、ヴェノム・スワンプの状況下ではむしろメリットへと変わる。

 

「バトル! シュテルでヴェノミノンを攻撃! ヴェノミノンのレベル×300攻撃力をアップさせる!」

『ブラストファイアー!』

 

シュテルA800→A3200 VS A3000

 

九歳の少女が持った杖先に溜められたのは、全てを焼き尽くす滅びの炎。オリジナルと同じ一撃必殺・火力重視・全力全開の思考を持つシュテルは、巨大な蛇の王に向けて炎の砲撃を放つ。右手の蛇からプラズマヴァイスマンを破壊した塊を発射するが、ジュッと小さな音を立てて蒸発し、ヴェノミノンは少し長くジューと音を出して蒸発する。

 

「ヴェノミノンの効果発動! 墓地の爬虫類族をゲームから除外し、このカードを特殊召喚する!」

 

ヴェノミノンA0→A2500

 

「ヴィータさんでヴェノム・ボアを攻撃!」

『ラケーテンハンマー!』

 

A2600 VS A1600

コブラLP4600→3600

 

「ダメージ=レプトルの効果発動。デッキから二枚目のヴェノミノンを特殊召喚する!」

 

ヴェノミノンA0→A3000

 

やっぱ二枚目も持ってるよね~。これ以上ヴェノムカウンターを乗せない為に、ボアを破壊したが、3000のモンスターが二体並ぶのは辛い。おまけに戦闘ダメージを防ぐカードが一枚しか無い。

 

「バトルフェイズ終了時、シュテルがゲームから除外される。カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ時にヴェノム・スワンプの効果でヴェノムカウンターを乗せる」

 

VCヴィータ0→1

ヴィータA2600→A2100

 

場 ヴェノム・スワンプ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札1 LP2100

コブラ モンスター2 伏せ3 手札1 LP4100

 

「ヴェノミノンが二体並んじまったな」

「悪かった十代。正直お前頼みになりそうだ」

「良いって。遊斗のおかげで手札もそこそこあるし」

「私のターン、ドロー! カードを一枚伏せる。バトル! ヴェノミノンでヴィータを攻撃!」

「罠発動! フォーメーションチェンジ! 攻撃対象になったヴィータさんの表示形式を変更し、デッキから一枚ドローする」

 

A3000 VS D2500

 

ヴェノミノンが発射する塊により破壊されてしまったヴィータさん。これで俺達のフィールドはがら空きとなった。

 

「呆気ないな。ヴェノミノンでダイレクトアタック!」

 

A3000

 

流石に同じ攻撃ばかりで飽きたのか、ヴェノミノンは一つの蛇になった腕を元々の複数の蛇に戻し、その蛇達を飛ばして攻撃してきた。確かにフィールドには何もないが、手札は二枚ある。蛇が間近に来た時、手札を一枚捨てて青き狼を呼ぶ。

 

「残念。手札のザフィーラを捨て戦闘ダメージを0にする。その後デッキから一枚ドロー」

 

もう一枚はサーチしたツヴァイだからな。フォーメーションチェンジでザフィーラを引かなかったら負けていた。

 

「チッ、カードと一枚伏せてターンエンド」

 

場 ヴェノム・スワンプ

遊斗  モンスター0 伏せ0 手札2 LP2100

コブラ モンスター2 伏せ4 手札1 LP3600

 

「俺のターン、ドロー! 融合回収(フュージョンリカバリー)を発動!」

「させん! 邪神の勅命を発動! 手札のヴェノム・サーペントを見せる事により、魔法の発動を無効にする」

 

発動条件が少し厳しいが、魔法を無効に出来る優秀なカードだ。これで十代は墓地の融合を手札に加える事が出来なくなった――が、少し使うタイミングが早すぎた様だ。

 

「コンバート・コンタクトを発動! フレア・スカラベとブラック・パンサーを墓地へ送りデッキから二枚ドロー! バブルマンを召喚! 効果でデッキから二枚ドローする」

 

A800・D1200

 

「まだまだ! 速攻魔法バブル・シャッフルを発動! バブルマンとヴェノミノンを守備表示に変更し、バブルマンを生贄にネオスを特殊召喚!」

 

A2500・D2000

 

泡の竜巻がバブルマンを包み込む。泡が消えた時、中に居たのはバブルマンでは無く、十代のエースカードネオス。

 

「装備魔法アサルト・アーマーをネオスに装備!」

 

ネオスA2500→A2800

 

「バトルフェイズ開始時、シュテルが戻ってくる! バトル! シュテルで守備表示のヴェノミノンを攻撃!」

『ブラストファイアー!』

 

シュテルA800→A3200 VS D0

 

「ヴェノミノンの効果! 墓地の爬虫類族を除外して、復活させる!」

 

ヴェノミノンA3000→A2500

 

「ネオスで復活したヴェノミノンを攻撃! ラス・オブ・ネオス!」

 

A2800 VS D0

 

右手を振り上げた状態で高く跳び上がったネオスは、月を背景に、ヴェノミノンの元へ飛びこんで右手の手刀を振り下ろす。

 

「ヴェノミノンの効果! 爬虫類族を除外して、復活!」

 

ヴェノミノンA2500→A2000

 

「けどこれでヴェノミノンの攻撃力は下がった」

「アサルト・アーマーの装備を解除し、ネオスをもう一度攻撃させる! 攻撃表示のヴェノミノンを攻撃だ! ラス・オブ・ネオス!」

 

A2500 VS A2000

コブラLP3600→3100

 

「ダメージ=レプトルの効果。デッキから攻撃力100のヴェノム・コブラを特殊召喚する」

 

A100・D2000

 

「シュテルはゲームから除外される。カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ、ヴェノム・スワンプの効果でネオスにヴェノムカウンターが乗る」

 

VCネオス0→1

ネオスA2500→A2000

 

場 ヴェノム・スワンプ

十代  モンスター1 伏せ1 手札0 LP2100

コブラ モンスター3 伏せ3 手札1 LP2800

 

「私のターン、ドロー! 速攻魔法異次元の埋葬を発動! ヴェノミノンの効果で除外した二枚の爬虫類族と、お前達が除外しているシュテルを墓地へ戻す」

「せっかく除外したモンスター達が!」

 

ヴェノミノンA1500→A2500

 

それだけじゃない。仮にこのターン凌いだとしても、シュテルの攻撃が途切れてしまった。このタイミングで異次元の埋葬を引かれたのは辛い。実質先のターンの攻撃が、ライフダメージを与えた以外ほぼ無意味になり、十代の手札が0になってしまった。

 

「ヴェノム・サーペントを守備表示で召喚!」

 

A1000・D800

 

「効果でネオスにヴェノムカウンターを置く!」

 

VCネオス1→2

ネオスA2000→A1500

 

ヴェノムカウンターの所為で2500という優秀な数値が、あっという間に1500と下級ラインまで落ちて行く。

 

「バトル! ヴェノミノンでネオスを攻撃! ヴェノム・ブロー!」

 

A2500 VS A1500

 

ヴェノミノンの両手になっている無数の蛇達がネオスに向かって勢いよく飛ぶ。槍の様に体の先端を尖らせた蛇達は、ネオスの体を貫通して十代に襲い掛かる。慌てて十代の元へ走ろうとしたが、ヴェノム・スワンプに潜んでいる蛇達が足に絡みつき、フィールドを動く事が出来ず、十代への攻撃をただ見ているしか出来なかった。

 

「ぐあああああっ!」

 

十代LP2100→1100

 

「終わりだ! ヴェノミノンでダイレクトアタック!」

「クッ、速攻魔法クリボーを呼ぶ笛を発動! デッキからハネクリボーを特殊召喚する! 頼むぜ相棒」

 

A300・D200

 

「チッ、ハネクリボーに攻撃だ!」

 

A2500 VS D200

 

ヴェノミノンの攻撃にハネクリボーは破壊されてしまったが、最後の力を使って俺達の前に優しい光のバリアを展開させる。これでこのターンは何とか凌いだ。

 

「ターンエンドだ」

 

場 ヴェノム・スワンプ

十代  モンスター0 伏せ0 手札0 LP1100

コブラ モンスター4 伏せ3 手札0 LP2800

 

ヴェノム・スワンプ。ターンが経過するごとに攻撃力がダウンする凶悪なフィールド魔法だが、守備力までは下がらない。そこを上手く付けこみ、次のドローに繋げよう。その為には彼女が来てくれないと始まらない。頼む!

 

「俺のターン、ドロー! いつも助かるよ。シャマ姉を召喚! 効果で自身にLCを置く!」

 

LCシャマル0→1

A800・D1800

 

「シャマ姉のLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚! 場のシャマ姉とツヴァイを融合! 来い、祝福の癒し手シャマル!」

 

A1000・D2300

 

「祝福の癒し手シャマルを生贄に、ホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚する!」

 

A2000・D3000

 

ヴェノム・スワンプの毒にも侵食されない、浄化(カタルシス)を司る聖なる泉が現れる。その泉に純水の水が一滴落ち、水面のピチャンという音を合図に泉からホーリーシャマ姉が出てきた。

 

「ホーリーシャマ姉の効果発動。自身にLCを二つ置く。これでターンエンドだ」

 

LCシャマル0→2

 

「例え守備力3000のモンスターを出した所で、数ターンしかもたん。ヴェノム・スワンプの効果発動!」

 

VCシャマル0→1

シャマルA2000→1500

 

場 ヴェノム・スワンプ

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札0 LP1100

コブラ モンスター4 伏せ3 手札0 LP2800

 

そうか。最近ハッキリと裁定が決まったからプロフェッサー・コブラは知らないみたいだな。ヴェノム・スワンプの抜け道を。

 

「ドロー! ヴェノム・サーペントの効果でシャマルにヴェノムカウンターを置く」

 

VCシャマル1→2

シャマルA1500→A1000

 

「どうやら一ターンも持たないようだ。ヴェノム・サーペントを生贄に、ヴェノム・ボアを召喚! 効果でヴェノムカウンターを二つ置く!」

 

VCシャマル2→4

シャマルA1000→A0

 

「これでお前達の壁モンスターはいなくなる!」

「ホーリーシャマ姉の効果発動。このカードのLCを二つ取り除き、破壊を無効にする!」

「それでもヴェノム・スワンプの効果で――な、何故破壊されん!?」

「ヴェノム・スワンプは攻撃力が0になった時に発動される効果。この効果で攻撃力が0になっているモンスターが一度破壊されなかった時、もう一度破壊される事はないんだよ」

 

LCシャマル2→0

 

「すげえぜ遊斗! これならヴェノム・スワンプにも対抗できる!」

「だが攻撃力が0の状態では何もできん! ターンエンド!」

 

場 ヴェノム・スワンプ

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札0 LP1100

コブラ モンスター4 伏せ3 手札0 LP2800

 

確かにコブラの言う通り、いくら破壊を間逃れても攻撃力は0のまま。だけどホーリーシャマ姉は自分だけじゃなく、他のモンスター達も守る事が出来る。十代ならそこを上手くつけるはず。

 

「俺のターン、ドロー! まずはホーリーシャマルにLCを二つ置くぜ!」

 

LCシャマル0→2

 

「ホープ・オブ・フィフスを発動! スパークマン、エッジマン、プラズマヴァイスマン、バブルマン、ネオスをデッキに戻し、二枚ドロー! シャマルの効果。手札の枚数×300俺のライフを回復させ、お前にダメージを与える! 俺の手札は2枚!」

『戒めの鎖』

「ぐっ。おのれ・・・・」

 

質量保存もへったくれも無く、十代の手札から尖った鎖を出したホーリーシャマ姉は、鎖を使ってコブラのエネルギーを吸収し、その生命エネルギーを十代の頭上に降らす。

 

十代LP1100→1700

コブラLP2800→2200

 

「グロー・モスを召喚! そしてNEX(ネオスペーシアンエクステント)を発動! グロー・モスを墓地へ送り、ティンクル・モスを特殊召喚する!」

 

A500・D1100

 

「最近お前そのカードよく使うよな」

「今は心強いだろ?」

「ああ!」

「バトル! ティンクル・モスでヴェノム・ボアに攻撃! 攻撃宣言時ティンクル・モスの効果で一枚ドロー! ドローしたカードはスペーシア・ギフト。ダイレクトアタックだ!」

 

コブラLP2200→1700

 

「こざかしい真似を!」

「二人のライフがコブラと並んだ!」

「スペーシア・ギフトを発動。デッキから二枚ドローする。カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ時にヴェノム・スワンプの効果を発動!」

 

VCシャマル4→5 ティンクル0→1

ティンクルA500→A0

 

「ホーリーシャマルの効果発動。モンスターが離れる代わりに、このカードのLCを二つ取り除く」

 

LCシャマル2→0

 

場 ヴェノム・スワンプ

十代  モンスター2 伏せ1 手札1 LP1700

コブラ モンスター4 伏せ3 手札0 LP1700

 

「凄いドン! アニキと遊斗先輩のカードが助け合ってるザウルス!」

「ティンクル・モスでドローしてホーリーシャマルでダメージを与える。グレイトコンボ!」

「調子に乗るな。お前が魔法を引けば私の勝ちだ。ドロー! このままバトル。ヴェノミノンでティンクル・モスを攻撃!」

 

非常に残念なことだが、十代が自分に都合の悪いカードをドローすると思うか? ドローした十代は、嬉しそうに口元をニヤリと上げて、コブラへとドローしたカードを見せる。

 

「ドローしたカードはカードガンナー。このターンのバトルフェイズを終了させる」

「チッ、ヴェノム・ボアの効果でシャマルにヴェノムカウンターを二つ置く。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

VCシャマル5→7 ティンクル1→2

 

場 ヴェノム・スワンプ

十代  モンスター2 伏せ1 手札1 LP1700

コブラ モンスター4 伏せ4 手札0 LP1700

 

「ドロー。バトル! ティンクル・モスでヴェノム・ボアに攻撃。ドローしたカードは魔法都市ミッドチルダ。よってダイレクトアタック!」

 

と言ってもティンクル・モスの攻撃力は0。ダメージを与える事はできない。

 

「ホーリーシャマ姉の効果。俺のライフを600回復させ、その数値分ダメージを与える!」

『戒めの鎖』

 

遊斗LP1700→2300

コブラLP1700→1100

 

「なのはを通常召喚! 効果でLCを置き、LCを取り除いてフィールドバリアを破壊する!」

『アクセルシュート!』

 

LCなのは1→0

 

精霊のなのはだったら、フィールドバリアをスターライトブレイカーの単純火力を使って破壊するだろうが、ソリッドビジョンの思考には限界があり、コブラの足元にあるフィールドバリアのカードを桃色の魔力弾で破壊するだけだった。

 

「これでフィールド魔法が使える! フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動! ヴェノム・スワンプは破壊される!」

 

シャマルA0→A2000

ティンクルA0→A500

 

「これでヴェノムカウンターは無力なカウンターに変わった! ホーリーシャマ姉の効果でミッドチルダにLCを置き、そのLCを取り除いて、ユーノを特殊召喚! 場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

LCミッドチルダ2→1

A1000・D3000

 

「なのはさんの効果でデッキからフェイトを手札に加える。これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札1 LP2300

コブラ モンスター4 伏せ3 手札0 LP1100

 

これでついにライフが逆転。ヴェノム・スワンプが破壊されたおかげでこれ以上モンスターの攻撃力が減る事も無い。しかし奴はまだ、切り札を残している。あらゆる耐性を持ち、自らの効果で復活する事が出来るあのカードを。

だが同時に奴は少なからず焦っている。おそらく俺達の事を、お遊びでデュエルをしている少しデュエルが上手い学生と思っていたのだろう。

 

「優勢になったからもう一度言う。コブラ、お前は戻る気は無いのか?」

「無いと言っている。私のターン、ドロー! アドバンスドローを発動。ヴェノミノンを生贄にして二枚ドロー! リビングデッドの呼び声を発動。ヴェノミノンを特殊召喚する!」

「? 確かに手札は増えたが、何か意味があるのか?」

「速攻魔法サイクロンを発動! リビングデッドの呼び声を破壊する!」

「何を・・・・」

「来るぞ十代!」

 

先の尖った竜巻がリビングデッドのカードを破壊したと同時に、辺りに黒紫色の瘴気が漂う。既にコブラはデッキか手札からあのカードをデュエルディスクにセットしたのだろう。その姿は見えないが、異様なまでの威圧感と恐怖が漂ってきた。この数ヵ月間平和ボケして居た所為か、久々の威圧感に手が軽く震える。

黒紫の瘴気が消えた頃、プロフェッサー・コブラのフィールドに並んでいた二体の王の内一体は消え、変わりに新たなモンスターがそこに居た。食欲を削ぐような青紫の長い蛇の尻尾。両腕には自分の胴体よりも大きい蛇を生やし、髪は神話の生物メデゥーサの様に蛇になっている。

 

「こ、こいつは・・・・」

「ヴェノミノンが戦闘以外の方法で破壊された時、邪神降臨を発動できる。この効果で呼び出せるモンスターが毒邪神ヴェノミナーガ」

「毒邪神、ヴェノミナーガ・・・・」

「ヴェノミナーガの攻撃力は墓地の爬虫類一体に付き500ポイントアップする」

 

ヴェノミナーガA0→A3500

 

「バトルだ! ヴェノミナーガでAOAなのはを攻撃!」

「墓地のソニックムーブの効果発動! なのはさんをゲームから除外する!」

「ならば厄介なそのモンスターを破壊する! ヴェノミナーガとヴェノミノンでホーリーシャマルを攻撃!」

 

A3500 VS D3000

A3500 VS D3000

 

ヴェノミノンの攻撃は緑色のバリアで防いだものの、腕から生やしている二体の大蛇を飛ばすヴェノミナーガの攻撃を防ぐ事は出来ずに、ホーリーシャマ姉は破壊されてしまった。次のターンで確実に決着を付ける為に、フェイトを優先してサーチしたが、これだったらスバルを手札に加えた方がよかったか。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ時に、なのはさんが戻ってくる」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ1 手札1 LP2300

コブラ モンスター4 伏せ2 手札0 LP1100

 

「毒邪神ヴェノミナーガか・・・・」

「相手にとって不足無し。そうだろ?」

「あ、ああ! その通りだ! 俺のターン、ドロー!」

 

・・・・やっぱり十代は隠し事が苦手だな。あからさまに佐藤先生とプロフェッサー・コブラの言葉を気にしている。

このデュエルを楽しむ様な俺の言葉に素直に同意できない自分がいる。俺は心理カウンセラーでも無いし、十代の家族でも無いからハッキリと分からないが、そんな所だと思う。

 

「カードガンナーを守備表示で召喚! 効果でデッキから三枚のカードを墓地へ送り、攻撃力を1500アップする」

 

カードガンナーAD400→A1900

 

「バトル! ティンクル・モスで「罠発動、毒蛇の供物!」何!?」

「私の場のヴェノム・コブラと、お前達のフィールドのAOAなのはとティンクル・モスを破壊する!」

 

ヴェノミナーガA3500→A4000

ヴェノミノンA3500→A4000

 

「クッ、バトルは出来ない。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

十代  モンスター1 伏せ2 手札0 LP2300

コブラ モンスター3 伏せ1 手札0 LP1100

 

「どうやらこれで終わりだな。ドロー! このままバトルだ。ヴェノミノンでカードガンナーを攻撃!」

 

ヴェノム・ボアを攻撃表示にしなかったのがミス。槍の様にカードガンナーに飛ぶヴェノミノンの両手の蛇。機械に襲い掛かる蛇。その両者の間に、突如黒い鎧を着た白髪の戦士が登場する。

 

「墓地のネクロガードナーの効果発動! このカードをゲームから除外し、攻撃を無効にする!」

「ならばヴェノミナーガでカードガンナーを攻撃! アブソリュート・ヴェノム!」

 

A4000 VS D400

 

ヴェノミナーガの両腕の大蛇により、カードガンナーは粉々にされて破壊されてしまう。こう言うとカードガンナーに失礼かもしれないが、カードガンナーは破壊されるのも仕事だ。

 

「カードガンナーの効果で一枚ドロー」

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

十代  モンスター1 伏せ2 手札0 LP2300

コブラ モンスター3 伏せ1 手札0 LP1100

 

「ドロー! 十代、この伏せカード、ありがたく使わせてもらうな。リバースカードオープン、死者蘇生を発動! 墓地のなのはさんを特殊召喚! その効果でデッキからスバルを手札に加える」

 

A1000・D3000

 

「フェイトを召喚! 効果で自身とミッドチルダにLCを置く。そして自分のLCを取り除いてヴェノム・ボアを攻撃表示に変更する」

 

LCフェイト1→0 ミッドチルダ1→2

A1800・D500

 

俺達の反撃が怖かったからか、勝ちを確信していたのか、動揺していたのか。どれでもいいが、さっきのターン守備表示のままだったヴェノム・ボアは、フェイトの効果で結局攻撃表示へと変更される。

 

「ミッドチルダのLCを取り除いてアルフを特殊召喚! 場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

「バトル! フェイトさんでヴェノム・ボアを攻撃! 攻撃力を700上げる!」

 

フェイトA2800→A3500 VS A1600

 

「これが通れば二人の勝ちッス!」

「させん。罠発動、デストラクトポーション。ヴェノム・ボアを破壊して、ライフを1600回復する」

 

コブラLP1100→2700

ヴェノミナーガA4000→A4500

ヴェノミノンA4000→A4500

 

「ツッ、カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ2 手札1 LP2300

コブラ モンスター2 伏せ1 手札0 LP2200

 

「ドロー! この二体の前ではどんなモンスターを出しても無力! どんなに防ごうといずれ私の勝ちは決まる!」

「それはどうかな? 最後の最後まで分からないのがデュエルだ」

「あくまで諦めないか。まあいい。バトル! ヴェノミナーガでAOAなのはに攻撃! アブソリュート・ヴェノム!」

 

A4500 VS A1000

 

墓地の爬虫類族が増える度に巨大化する二つの大蛇は、なのはさんへと襲い掛かる。なのはさん一人だったらこの攻撃を防ぐ事は出来ないだろう。だけどなのはさんは一人では無い。勿論俺もいるし、手札にはスバルも待機してくれている。だけど彼女が最も信頼している人はすぐ隣に居る。

 

「罠発動、ディバイドエナジー! フィールド上のモンスターが攻撃対象となった時に発動できる。攻撃対象になったモンスター以外のLSをゲームから除外し、除外したモンスターの攻撃と守備力を攻撃対象のモンスターに加える! フェイトさんを選択!」

 

なのはA1000→A3800

 

フェイトさんはなのはさんのすぐ隣に立ち、襲ってくる大蛇をなのはさんと一緒に砲撃で押し返す。桃色と黄色の魔力はゴゴゴ! とこのフィールドを揺らす程の振動を起こしながら、二体の蛇を押し返そうとするが、蛇神と名乗るだけあり、ヴェノミナーガの攻撃力は高い、が。

 

「更にダメージステップ手札のスバルの効果発動! なのはさんの攻撃力を更に1000上げる!」

「ヴェノミナーガの攻撃力を上回っただと!?」

 

なのはA3800→A4800 VS A4500

 

ソリッドビジョンでも空気は読めるのか、スバルはなのはさんとフェイトさんの間に立たず、ウイングロードを使ってヴェノミナーガの上空まで移動し、ほぼ零距離と言う所で、ヴェノミナーガの顔面にディバインバスターを撃つ。

なのはさんには遠く及ばないものの、かなりの威力を持っているスバルのディバインバスターをもろにくらったが、ヴェノミナーガは破壊されない。だが一瞬だけ怯んだ。

二人がその隙を見逃す訳が無く、砲撃の威力を一時的にだが爆発的に上げ、蛇もろともヴェノミナーガを破壊した。

 

コブラLP2200→1900

 

「だがヴェノミナーガは滅びん! 何度でも蘇る! 墓地の爬虫類をゲームから除外して復活!」

 

ヴェノミナーガA4500→A4000

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札0 LP2300

コブラ モンスター2 伏せ2 手札0 LP1900

 

「俺のターン、ドロー! 遊斗のおかげでヴェノミナーガの攻撃力をもう一回下げれるぜ。ミラクル・コンタクトを発動! 墓地のネオスとフレアスカラベをコンタクト融合! 来い、フレア・ネオス!」

 

フレア・ネオスA2500・D2000

 

ネオスはホープ・オブ・フィフスでデッキに戻っていたが、カードガンナーの時に墓地へ送っていたのか。墓地へ送った三枚のカードの内、一枚はネクロガードナーでもう一枚は融合素材モンスター。やっぱり十代は頼りになる。

 

「カードを一枚伏せる。フレア・ネオスはフィールドの魔法・罠の数×400攻撃力を上げる」

 

フレア・ネオスA2500→A4500

 

「バトル! フレア・ネオスでヴェノミナーガを攻撃! バーン・ツー・アッシュ!」

 

フレア・ネオスA4500 VS A4000

 

フレア・ネオスの手の平から発射された、情熱を連想させる熱い炎は、見事ヴェノミナーガを焼き尽くす。

 

コブラLP1900→1400

 

「ヴェノミナーガの効果。墓地の爬虫類を除外して復活!」

 

ヴェノミナーガA4000→A3500

 

やはり貫通や表示形式変更を恐れてダメージ=レプトルでモンスターを出してこない。最強のモンスターであるヴェノミナーガを出しておきながらも、未だに100もダメージを与えられない事に、動揺しているのだろう。

 

「なのはを守備表示に変更。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

十代  モンスター1 伏せ2 手札0 LP2300

コブラ モンスター2 伏せ2 手札0 LP1400

 

「何故だ、何故お前達に勝てん! 何も背負うものが無いお前達に!」

「少なくとも、他人を犠牲にして自分の願いをかなえようとする奴に負けない程度、背負うもはあるさ」

「クッ、私のターン、ドロー! バトル! ヴェノミナーガでAOAなのはを攻撃!」

「させるか! 罠発動、和睦の使者!」

 

なのはさんの前に現れる半透明の薄い膜状バリア。厚さ数ミリも無いバリアだが、このバリアは数多のデュエリスト達を助けてきたバリア。例えヴェノミナーガの攻撃でも通す事は出来ない。

十代が発動した和睦の使者にやけに驚いているコブラ。その理由は俺達にも分かる。この和睦の使者は、さっき十代が伏せたカードとは別。このカードは十代がカードガンナーを召喚したターンから伏せてあった。つまり今までこのカードを取って置く、余裕があったと言う事。

 

「コブラ。これ以上続けてもお前は負ける。これが最後のチャンスだ。サレンダーしろ」

「遊斗。お前、どうしてそこまで?」

「言っただろ。コブラと似た人を知ってるって」

「さっきからしつこい。ターンエンドだ!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

十代  モンスター2 伏せ1 手札0 LP2300

コブラ モンスター2 伏せ2 手札1 LP1400

 

答えはノーか。分かっていたけど、こうやって説得する立場って結構辛いんだな。何回も何回も真っ直ぐに突き進む、高町なのはという女性は、粘り強いと言うか、猪突猛進と言うか、正義感に強いと言うか・・・・。

まあ俺は高町なのはじゃないし、デュエリストらしく終わらせる。

 

「俺のターン、ドロー! ディバイドエナジーを発動した二回目の自分のスタンバイフェイズ時に、除外したモンスターがフィールドに戻ってくる!」

 

A2800・D500

 

「なのはさんの効果発動! デッキからディアーチェを手札に加える!」

「この瞬間罠発動! マインドクラッシュ! さっき手札に加えたディアーチェを選択」

 

マインドクラッシュの効果で俺は手札を見せないといけない。渋々コブラに手札のカードを見せ、手札にあるディアーチェを捨てる。

まさかマインドクラッシュを伏せているとは思わなかったが、ある意味ディアーチェを宣言されたのはありがたかった。おかげで伏せカードを気にせずにデュエルを続ける事が出来る!

 

「リバースカードオープン! アームズ・ホール! デッキトップを一枚墓地へ送り、デッキか墓地から装備魔法を手札に加える!」

「十代が伏せていた魔法カードだ!」

「けどバルディッシュかレイジングハート、どっちを手札に加えてもコブラのライフを0にする事は出来ない!」

 

マインドクラッシュで俺の手札を知っているコブラなら分かるだろう。このアームズ・ホールのコストで最も墓地へ行って欲しくないカードを。

 

「デッキトップを墓地へ送り、デッキからバルディッシュを手札に加える。そして墓地へ送られた闇の書の効果!」

「ツッ!」

「闇の書をフェイトさんに装備する。無限書庫を発動! 闇の書をデッキに戻し、二枚ドロー!」

 

ドローしたカードを見ずとも引いたカードが自然と分かった。何故引いたカードが分かったのかは、上手く説明できない。フィールドにいる二人が運んでくれたのか、引いたこの二人の絆が強いからか。

 

「フィールド上のAOA高町なのはと黒騎士・フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に・・・・」

「ワッツ!? 遊斗の奴手札を見て無いぞ!」

「し、信じられないッス!」

「すげぇ! あの二人を一気に出すのか!」

「蒼穹の王・高町なのはと迅雷の化身フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを特殊召喚する!」

 

AD2500

A3300・D0

 

フィールドを巻き込む竜巻。荒れる天の雷。神が操作する二つの災害を纏った、二人の最強の魔導師が今ここに降臨する。機械の所為で二人の能力が封じられているが、それでも完全に封じるのは不可能だった様で、デュエルディスクから定期的に衝撃が走る。

現れた二人の魔導師は、モンスターゾーンの壁を越えて隣合う様に登場した。王を守る騎士と言ったところだろうか。

 

「特殊召喚したなのは様の効果発動! デッキからレイジングハートを墓地へ送る」

「ゆ、遊斗・・・・。こう言う時ぐらいはモンスター名で呼ぼうぜ」

「死ぬぐらいならカッコ悪い方がマシだ。なのは様の効果発動! 墓地のレイジングハートを装備! 更に雷フェイトさんにバルディッシュを装備!」

 

なのはA2500→A4000

フェイトA3300→A4300

 

「攻撃力4000に4300ッ」

「バトル! 雷フェイトさんでヴェノミナーガを攻撃!」

 

A4300 VS A3500

 

雷フェイトさんは右手を雷で出来た剣へと変化させ、雷速でヴェノミナーガに接近する。僅かコンマ数秒の間で全てを終わらせたのだろう。次に俺がヴェノミナーガを姿を見た時は、ヴェノミナーガの体はバラバラに切断されていた。

 

コブラLP1400→600

 

「ヴェノミナーガの復活は無しだ!」

 

ヴェノミノンA3500→A4000

 

「なのは様でヴェノミノンを攻撃!」

『ディバインバスターエクステンション!』

 

A4000 VS A4000

 

何人ものデュエリストを敗北に叩き落とした絶望の桃色の砲撃。しかし今回は相手が相手なので、攻撃力は互角だった。なのは様は自らの力とレイジングハートの性能全てを使い、ヴェノミノンは墓地に存在する八体の爬虫類の力を受け継ぎ、攻撃を放つ。

なのは様とヴェノミノンの攻撃は互角で、大爆発を起こす。なのは様はレイジングハートで身を守り、ヴェノミノンは自らの効果で墓地から蘇る。

 

ヴェノムノンA4000→A3500

 

「私が、プロの私が学生に負けるだと!?」

「いっけえ遊斗!」

「終わりだ! 雷フェイトさんで二回目の攻撃!」

『フォトンランサーファランクスシフト・・・・』

 

A4300 VS A3500

 

例えソリッドビジョンが動かしていても、雷フェイトさんは変わらず、クールにファランクスシフトを形成する。形成に掛けた時間は僅か数秒と言うのに、現れたスフィアの数はざっと見ても60はある。

 

『撃ち砕け、ファイア!』

 

約60機のフォトンスフィアを毎秒八発撃つ、ガトリングガンも真っ青になる程の連射。しかも一発一発の密度も高く、その威力は蛇王をも赤子の様に粉砕する。

 

「馬鹿なァァァァアアア!」

 

コブラLP600→-200

 

ソリッドビジョンが消えると同時に、コブラは前から地面へと倒れて行く。慌てて俺と十代が駆け寄ろうとしたが、コブラは地面と口づけする前に右足で体を支えて踏ん張る。デュエルでのダメージが実際のダメージとなって体を襲ってくるデュエルだったので、並みの人間では立つ事が出来ない筈。

「フッフッフ・・・・」

「ツッ!?」

 

突然笑い出したコブラを警戒し、コブラの元へ行こうとする十代を腕で止める。確かに錯覚では無かった。今一瞬だが、コブラの左腕が化け物の腕になったのを。

その時だった。再びデス・ベルトの影響で俺達のエネルギーが奪われたのは。体のエネルギーが所費されるのではなく、どこかに飛ばされる感覚は、ただの疲労感では感じられない吐き気を覚え、先程まで立てていた体が一気に重くなってくる。重いと言っても少し重いのではなく、風邪で体温が38°以上行っている時のダルさに近い。

 

「大丈夫か二人とも!?」

「これでようやくあのお方がお目覚めになる!」

「あの、お方、だと・・・・?」

 

ヨハンの肩を借りながらゆっくりと立ち上がった十代が、コブラを睨みつける。

コブラが言うあのお方の正体は、彼が説明する前に正体を現す事になった。突然下の方から、人間でも感じる事ができる、禍々しい邪悪なオーラが発せられた。この場の全員が邪悪なオーラを感じ取ったのか、コブラ以外の全員が下の地面を見る。

するとヘリポートのHの文字が書いてあった地面から、金色の輝きを発した少年が出てきた。

 

「おお・・・・。リック、なのか?」

『よくやったね、コブラ。これで僕はようやくあの狭い空間から出られる事が出来た』

 

その金色の少年からは、なじみのある精霊の気配が漂っていた。突然の事態に頭が付いて行かないが、ただ一つだけ分かった事がある。それはリックの姿をしたこの金色の精霊が、コブラの言うあのお方と言う事。

 

『コブラ、今まで君は良くやってくれた』

「約束通りリックを生き返らせてくれ!」

「ツッ! 止めろコブラ! 死者が生き返る方法などこの世に存在しない! あってはいけないんだ!」

 

だがコブラは俺の言葉など耳に入らなかったようで、金色の光を発するリックの形をした精霊にゆっくりと近づいて行く。

 

『君はもう、用済みだよ』

 

さっきまで女声だった精霊の声が、突然野太い男の声へと変わると、精霊は突然コブラの胸に手を貫通させた。

 

「ぐああああっ! な、何を!?」

 

殺されたと思ったコブラの声が聞こえ、恐る恐る瞼を開ける。コブラは確かに生きていたが、コブラの体から邪悪な瘴気の様なものが溢れだし、精霊は吸収するかの如く、その瘴気を自らの体へと取り込んでいく。

突然の出来事の前に、俺もみんなも動く事が出来ず、ただただ茫然と見ているしか出来なかった。ハッと我に返って慌ててコブラの元へと走り出した頃、既にコブラは干からびたミイラの様になっていた。

 

『パパー! こっちだよ!』

「リ、リックなのか・・・・?」

 

リックが飛んで行った先は、ヘリポートから出た場所。即ち空だった。しかし目の前のリックに気を取られていたコブラはそれに気づかないのか、ノロノロとリックのいる方へと進んでいく。

 

「ツッ!」

 

二回のデス・デュエルで疲れ切っていたが、それでもコブラの歩く速度よりかは速かった。しかし俺の手がコブラに届く事は無く、金色の精霊が発したのであろう衝撃波により、俺の体は後方へと飛ばされる。

 

「大丈夫か遊斗!」

「あ、あいつ・・・・。なんでこの装置がある中で行動できるんだ・・・・」

「キャアアアアア!」

 

明日香の悲鳴が聞こえた頃、ヘリポートの上にコブラの姿は何処にも無かった。俺を支えていた十代の体がフルフルと怒りで震えている。

 

「お前! 何で、何でこんな酷い事をする!」

『十代。君は彼が死んで苦しんでくれたの? だったら彼も、生きていた価値はあったって事かな?』

「な、なんで俺の名前を!」

『・・・・それはお楽しみにしよう。十代、君にはある世界に招待するよ。そこで仲間達が傷つく姿を思う存分に見るがいい』

「なっ! 何――」

 

ドォォォン!

十代が返事は突如施設内から起こった爆音により遮られた。その爆音に連動したのか、何故か俺のデッキが白い光を輝き始める。ひょっとして精霊の活動を妨害する装置が破壊されたのかと思ったが、それは甘い考えだった。

 

『いくら僕でも異次元へ飛ばすのは疲れるからね。そこのLSの力を借りるよ』

「なんだと!? お前! みんなに何をした!?」

『これからするんだよ。LSの莫大なエネルギーを使って、このデュエルアカデミアの一部を異次元へと飛ばす。いくらLSでもこの装置の影響下では抵抗できないだろう? さあ十代。僕の愛を、受け取ってくれ!』

 

金色の精霊の口が目に届きそうな程グニャリと曲がった刹那、俺のデッキが眩い光を発し、デュエルアカデミア全体を、真昼間と思わせる程明るくさせる。

何が起こっているのか未だに分からないが、みんなが危険な状態だってことは分かる。すぐにデュエルディスクからデッキを取り出し、みんなの安否を確認する。

 

「そ、そんな・・・・」

 

そこには次々と真っ白になって行くカード達がいた。モンスターも魔法も罠も関係なしに、次々と色や効果欄、絵が消えて行って遂には一枚の真っ白のカードになる。

慌ててデッキの中にある一枚のカードを探す。フェイトのカードだ。フェイトのカードも既に下から徐々に白くなって行き、一瞬だけ絵の中に居る彼女の顔が辛そうな表情に変わった。

 

「あっ、あ・・・・」

「止めるんだ! 何でこんな酷い事をする!」

『なんで? それは君が僕に教えてくれた事じゃないか。さあ行くよ! 異次元へと!』

 

みんな・・・・消えてしまった・・・・。

俺の所為だ。俺が、俺がみんなを連れてここまで来たから!

 

「うあああああああ!」

 

金色の精霊が居た場所へと飛びかかったが、そこに金色の精霊の姿は無く、振りかぶった拳が空を切る。

 

「グッ・・・・」

 

ふら付いた足を支えきれなかったのか、体が勝手に地面に激突した。

砂だ・・・・。さっきまでヘリポートにいた筈なのに、いつの間にか地面が砂になっている。

 

「何処だよ、ここ・・・・」

 

何処でもいい。何処だっていい。みんな、みんな消えてしまった・・・・。何も抵抗できずに、ただ見てる事しか出来なかった。みんなの絵がいたカードは真っ白になり、ただの紙となった。

 

「あっ、あああああああああ!」

 

 

 




まああれですよ。精霊世界でなのは達がいたら間違いなく俺TUEEEE! 状態になりますから、こうやって危機感をね。

ユベ○『よかれと思って!』


2nd見て頭の中がなのフェイにならない人は
他のカップリング好き or 二人は俺の嫁! or 純粋な心の持ち主

しかし百合好きな癖にヒロインがフェイトというよう分からない考え方です。まあ主人公を自分を重ねたりしていないので、矛盾は無い・・・・かも?


今回は初めて十代とタッグを組みました。本当なら十代とのタッグはもっと後にしても面白いかもと思ったのですが、ここって十代には結構重要なデュエルですし、かと言って優斗をデュエルさせないのもなんですし。


お分かりになった方もいらっしゃると思いますが、前書きで書いていた調整中の部分は、ヴェノム・スワンプで攻撃力が0になったモンスターは破壊を無効にできるのか? と言うところ。
wikiには、ヴェノム・スワンプで攻撃力が0になったガチガチガンテスは~~と書かれております。
この回投稿した翌日に決まったら嫌だな~(フラグ)


新オリカ


ディバイドエナジー 通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。攻撃対象になったモンスター以外の、自分フィールド上に表側表示で存在する「LS」と名の付くモンスター1体を選択し、ゲームから除外する。攻撃対象になったモンスターの攻撃力は、除外したモンスターの攻撃力または守備力のどちらかを選択し、その数値分アップする。
発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、この効果で除外したモンスターを表側攻撃表示でフィールドに戻す。






受け継がれる力と援護射撃を足して二で割った感じの罠です。迎撃カードですね。最低でも二体以上必要+タイムラグ+相手依存なので強くはありません。まあある程度強くない方が、デュエルの構成がしやすので、結構いいかも(自画自賛)




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第五十話

ついに五十話ですね。しかし五十話でここってずいぶんとペース早いなぁ。まあ伸ばすより完結させるの第一って言う考え方なので仕方ない。


ネーミングセンスが全く無い作者ですが、最近少し自分のネーミングセンスに自信が持てました。
まさか公式で シ ャ マ ル ビ ー ム が使われるとは思っていませんでした。八話の時点でほぼ似たようなネーミングを考えた自分のセンスに嫉妬! ルがないからニヤピンですが。


ここ一週間ベクターやなのはの特典映像の所為で腹筋が良からぬ事になっています。 



しばらくデュエルありません。


「あああああああああ!」

 

絶叫が止まらない。止まってもすぐに、息も吸わずに再び絶叫を上げる。

なんでみんながこんな目に合わなきゃいけないんだ!? ・・・・俺の所為だ。俺が注目を浴びる様な事をしたから、みんなが狙われた。俺がもっとしっかりしていれば。もっと慎重にしていればこんな事にはならなかった。

 

「ストップ遊斗!」

「遊斗呼吸してないぞ!」

「あああああああっ! ああああああ!」

「落ち着け遊斗! 落ち着くんだ! ツッ・・・・悪い遊斗!」

 

ドガッ。

右頬を襲った強い痛みと、頬を殴打した時の小さな鈍い音と共に、突然視界が青くなった。青い空を背景にした十代が俺を見下ろしていた。

 

「ハァ゛ハァ゛ハァハァ・・ハァ・・」

 

肺が勝手に空気を取り込み、いつの間にか荒くなっていた呼吸を整えていた。自分の体なのに自分の体じゃない様な感覚。さっきの痛みもいつの間にかボンヤリとしてきた。

 

「しっかりしろよ遊斗! みんながいなくなった辛さは分かるが」

「ツッ! お前に何が分かる! ずっと、ずっとずっとずっとずっと一緒に生きてきたんだ! 何も考えない能天気のお前に俺の何が分かる!」

「今のお前の言葉。コブラが言っていた台詞とそっくりだぞ・・・・」

 

今まで聞いた事のない、凄く優しい十代の声が耳に入ってくる。その声と共に、今まで現実と夢の狭間に居た意識が、ハッと現実に返って来た。

頭に溜まっていた血が一気に降りて行き、自分でも頭が冷めて行くのが分かる。それと同時に、さっき殴られた痛みが戻って来て、さっきまでの出来事が夢でない事を実感してしまった。

 

「じゅう、だい・・・・」

「ああ・・・・」

「どうして、どうしてみんなが! ぅ、ぁ、うあああああ!」

 

泣いた。思いっきり泣いた。赤い制服に顔をうずくめて、喉の痛みも気にせずに、暫くの間ずっと泣いた。

 

 

 

 

「そ、その。すまなかった!」

 

冷静になってすぐ、恥ずかしい気持ちを抑えながらみんなに謝った。多分傍から見たら俺の体は綺麗に90°に曲がっていると思う。それくらいみんなへの申し訳ない気持ちで一杯だった。

 

「ドントウォーリー。気にするな」

「僕たちでさえ悲しいッスから」

「お、俺も悲しいザウルスぅぅ~!」

「一緒に精霊達を助ける方法を考えましょ?」

「遊斗と精霊の絆は深いんだ。きっとみんな大丈夫さ」

「俺達親友だろ?」

「みんな・・・・」

 

みんなの優しい言葉に感動して再び涙が出そうになったが、何とか堪えて泣くのを止めた。次に泣く時はみんなと再開した時と泣いている時に決心したから。

ゴシゴシと腕で目を擦って流れた涙の後を拭うと、首をキョロキョロと見渡して辺りの景色を確認する。

冷静になって初めて知ったが、ここは白い砂漠のど真ん中にある様だ。砂漠地帯に浮いている建物が一つだけあった。デュエルアカデミアだ。

遠目からでよく分からないが、デュエルアカデミア本校も俺達と一緒に飛ばされた様だ。

 

「まずはデュエルアカデミアに行こう」

【了解!】

 

と、ヨハンの声に皆一様に返事をしてデュエルアカデミアへと向かう。砂の高さはさほどなく、足の甲が浸かるか浸からないかぐらいで、歩くのにも支障はない。ザクザクと砂の音を立てながらデュエルアカデミアに向かっていると、その途中、遠くにヒラヒラと動くマントの様なものが視界に入った。

 

「おい、あれ」

「誰かいるな・・・・ってあれ!」

「三沢君ッス!」

 

かなりの長時間歩いていたのか、三沢は両手で持った木の棒を杖代わりにしてよろよろと歩いている。向こうも俺達に気付いたのか、少しだけ歩くペースを上げて俺達の方へ向ってくる。

 

「ワッツ! あれは何だ!?」

 

突然ジムが空に向かって指をさしながら叫んだ。ジムが指している方を見ると、そこには人ならざる者がいた。長い赤い髪。細く長い手から生える翼。足の指から生えた何センチもある鋭いかぎ爪。世の中の大半の女性が羨ましがるだろう、スタイルの良い体。デュエルモンスターズの中でも、かなり歴史のあるカード、ハーピィ・レディがそこにいた。

 

「シャアアア!」

 

飛んでいる三体のハーピィ・レディの内一体が獣の声と共に、三沢に向かって急降下した。三沢もハーピィ・レディに気付いたのか、歩くペースを速めるが、衰弱しきっているのか明らかに遅い。三沢の方へ走っていくが、何しろ距離が距離だ。どんだけ速くても、ハーピィ・レディの攻撃を防げる事が出来ない。

ハーピィ・レディのかぎ爪が三沢の背中に迫ったその時、三沢の体が消えた。いや、ある介入者により地面へと押し倒されたのだ。

 

【アモン!?】

 

万丈目とデュエルをしていたアモンだった。何故保健室に居る筈の彼がここにいるのか気になったが、今はそれよりハーピィ・レディの退治が優先だ。こうやって二人の元へ走っている間にも、ハーピィ・レディは攻撃を続けて、三沢を庇っているアモンを傷つけている。

 

「止めろォォ!」

 

一番下にいるハーピィ・レディの元へ跳ぶ――筈だった。しかし俺の体は言う事を聞かず、下に居るハーピィ・レディを狙った筈が、何故か空に居るハーピィ・レディの元まで体が跳んでいた。

しかも辺りの速度が一気にスローモーションになった様に見え、空に居るハーピィ・レディにすれ違いざまに拳を一発打つ事が出来た。

 

「ギャアアア!」

 

地面に着地しても衝撃が全然痛くない。この感覚、どこかで・・・・。

 

「サファイア・ペガサスを召喚!」

「行け、フレイム・ウィングマン!」

 

遠くに居る二人はデュエルディスクにカードをセットした様だ。召喚された二体のモンスターは、自らの翼を使って、空を飛ぶハーピィ・レディを追い、それぞれの必殺技を使って二体のハーピィ・レディを追いやった。

 

「・・・・」

 

みんなは一斉に三沢とアモンの方へ走ったが、俺は暫くの間茫然として自分の体をジッと見ていた。いくら鍛えているとはいえ、人間があんなに跳べる筈が無い。

まるであの時。そう、海馬コーポレーションの屋上から落下した時の様に、体の奥底から力が湧いて出て来る。

一瞬胸に掛けているF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)が力を貸してくれたのかとも思ったが、海馬コーポレーションを真っ逆様に落ちたのはこの首飾りを貰う前。

 

「凄いザウルス遊斗先輩! 今何メートルも跳んだドン!」

「あっ、ああ。日ごろの訓練のおかげだろうな。あの人たち、滅茶苦茶厳しいから。って十代! ヨハン!?」

 

自分の体に違和感を覚えながらも、剣山に心配させない様にいつもの顔を装っていると、三沢とアモンの元にいた二人の体がフラついていた。

 

「まさか。召喚しただけでデス・ベルトの影響があるなんて・・・・」

「とにかく今はデュエルアカデミアに行きましょう。みんなを休ませなくちゃ」

 

 

 

 

旅人が着ていそうなボロボロで汚いコートを脱いだ三沢は、デュエルアカデミアにあった食料と水を猛獣の如く食べており、アモンは保健室に運ばれた。

デュエルアカデミアの中は、事態を把握できない生徒がほとんどで、先生達に何が合ったのか問い詰めていた。勿論現場にいた俺達でさえ半分も分かっていないのに、先生達が知る訳が無い。

 

「三沢。どうしてここに?」

「GX大会が終わる少し前からか。あれから俺はジェイル博士の元で次元について研究していた」

「え? 夏休みに家に帰ったけど、お前いなかっただろ?」

「ずっと研究室に籠っていたからな。それで実験の途中、次元エネルギーに吸い込まれてこの世界に来たんだ」

 

つまり三沢がここに来てしまったのは父さんの所為だと。苦労した三沢には失礼かもしれないが、三沢がいてくれた方が心強い。ひょっとしたら三沢なら脱出方法が分かるかもしれない。

 

「分かった。三沢はしばらくゆっくりしていてくれ」

「遊斗こそ、LSの話を聞いた。無茶するんじゃな」

「俺は・・・・多少無理してでもみんなを取り戻したい。友達、家族、恋人がいる」

「そうか」

 

三沢の元を離れてから購買の柱に寄りかかって腕を組む。

見た限り辺りに食料や水が調達できそうな場所は無い。つまりここにとどまっている限り、食料と水には限りがあるって事だ。幸いデュエルアカデミアにはもしもの事を想定して、予備の食糧庫があると聞いた事があるし、孤島の学校であるが故に普通の学校とは違い、数日分の食料が一回で運ばれてくる。

 

「どういう事だ! 何で周りが砂漠なんだよ!」

「どういう事か説明して下さい!」

「なんで黙ってるんですかクロノス先生!」

「あっ、いや~。ワタクシ達教師もそれが分からないノーネ」

 

何より大変なのがこうやって混乱する生徒がいるって事。不幸中の幸いか、俺のメンタルはみんなの消失でこれ以上ないくらい落ち込んでいる為、たかが異世界に飛ばされた程度では動揺したりしていない。我ながらみんなに依存していたものだ。

 

「みんな落ち着けって!」

「そうだ! こうやってクロノス先生を攻めても何も解決しない! まずは冷静になるんだ!」

 

そしてもう一つラッキーなのが、十代とヨハンの存在。二人はこの状況下でもリーダーシップを忘れずに、混乱している生徒達を落ち着かせている。失礼な言い方だが、この状況では先生達により役に立つ。

そのやり取りを少し遠くから眺めていると、丁度視界をレイちゃんとマルタン君が横切った。

 

「あっ、レイちゃん、マルタン君。ちょっといい?」

「? なんですか遊斗先輩」

「な、何か・・・・」

「そんな警戒しなくていいよ。万丈目とのデュエルの後、二人はアモンをどうした?」

 

すると二人は少しだけ考える素振りを見せ、俺の顔を見上げる。

 

「あの後すぐにアモンさんは目が覚めて、勝手にどこかに行っちゃいました。ね、マルッち?」

「う、うん。止めようと思ったんですが」

「いや、二人を責めてるわけじゃない。ありがとう」

 

そう言うと二人はペコリと頭を下げてみんなが集まっている方へ向って行った。

・・・・三沢を助けてくれたアモンを疑う訳ではないが、何故アモンはデュエルアカデミアの外にいたんだ? 寮に戻って休養? けど寮にいた生徒はデュエルアカデミア玄関前に飛ばされたと聞く。

一人だけ転移座標のミスとも考えにくい。

 

「・・・・」

「何を考えているんだ?」

「ん? ああ、留学生のオブライエンだったか」

「話すのは初めてだな」

「そうだな」

 

彼へ右手を伸ばすと、オブライエンも右手を伸ばし、手を握ってくれた。

 

「そういえばお前はコブラの傭兵だと聞いた。何であの時俺達を助けたんだ?」

「もう隠す必要は無いだろう。俺の本当の雇い主はI2会社の社長。ペガサス会長だ」

「ペガサス会長?」

「ああ。コブラの素性を探る為にコブラの傭兵になったんだ」

 

スパイって奴か。というかそんな事するくらいなら、コブラの素性を学校側が確認してからプロフェッサーとして向かい入れればいいのに。

鮫島校長は良い人何だが、この際ハッキリ言おう。あの人は無能だ。鮫島校長の肩を持つ事が多い俺がこんな事を言うのには理由があり、あの鮫島校長、何とデス・ベルトの正体を知っておきながらデュエルアカデミアから出て行って、判断や仕事を全てクロノス先生に押しつけたのだ。

いくら鮫島校長に優しくしてもらった俺でも、その行動には頭を痛めるしかない。

 

「それは大変だったな。それでコブラが飼っていた精霊の事は何か知っているか?」

「いや、精霊がいる事自体分からなかった。まだまだ未熟だ」

「そんな事無いさ。あの時お前がいなかったら、今頃友達の半分はペチャンコさ」

 

オブライエンは自分のミッションの失敗を気にしていたのか、俺の言葉を聞いて少し嬉しそうに頬を緩めた。と言っても笑っている訳ではない。

堅い奴だな・・・・。なんて思いながらオブライエンの鍛えられた体を上から見ていると、右腰に付けてあるデュエルディスクらしきものが目に入った。

 

「それ、デュエルディスクか?」

「ああ。デュエル以外にもカードが発射できるようになっている」

 

武器に詳しくないのでオブライエンのデュエルディスクの形状をどう説明していいのか分からなかったが、細長い黄色いデュエルディスクで、その先からカードが発射される様だ。

 

「戦力として心強い」

「お前もかなり身体能力が高いと聞いた」

「まあな。人よりはあると思う」

「謙遜するな」

 

 

 

 

購買は再びガヤガヤと騒がしくなっていた。おそらく皆冷静になり、さっき考えていた心配事に気付いたのだろう。食料だ。今このデュエルアカデミアにはほとんどの教師と生徒、購買のトメさんやセイコさんがいる。いくら大量の食糧があるとはいえ、人数が多ければ多い程消費速度が早い。

その事に気付いた生徒達の標的は、食料の事に詳しいトメさんとセイコさんへと移った。

 

「腹減ったぞ!」

「食料はどうするんだ!」

「俺、人より食べないと持たないんだ!」

 

お前達がそう言いたい気持ちは分かる。だけどここに流れ着いたみんな我慢しているんだ。それは今、標的になっているトメさんもセイコさんも同じだ。

 

「お前等! いい加減にしろ!」

 

この雑音の中でもみんなの耳に入った俺の音量は中々のものだろう。

そうだ。この数時間の間、色々とありすぎてすっかり忘れていたが、俺はブルー寮三年のエース。ここでみんなを引っ張らなくて、いつ先輩らしい事をする。

 

「トメさん。どれくらい持つと思う?」

「遊斗君・・・・。そうね、節約に節約して一週間って所かしら」

「賞味期限を守らずに、均等にもう一日は持つ?」

「そうね。多分、いや、絶対持たせるわ」

 

時間は八日だけ。結構持つように聞こえるが、辺りに食料になりそうな物が無いこの空間ではかなり厳しい筈。生きるか死ぬかではなく、元の次元へ帰るか死ぬかの二択。

 

「とりあえず今日はもう遅い。今は寝てなるべく腹が減るのを抑えよう。ヨハンとクロノス先生は怪我人の手当てや休ませるスペースの確保と、保健室に居る虻川先生や病人達の護衛」

「おう!」

「わ、分かったノーネ」

「俺とオブライエンは学校の周囲を探索。ジムと十代は学校内の探索」

「OK」

「任せろ!」

「残りの先生方や比較的余裕のある三年生はこの部屋から誰も出さない様に見張りを。下級生は辛いだろうけど、今は休め。イライラしていたらストレスが辺りに伝染する」

【【【【は、はい!】】】】

 

とりあえず頭を回転させるだけさせて指示を出しておく。ただの学生の指示なので、的確なのか全く分からないが、みんなもただがむしゃらにしているより何か指示を受けた方が楽だと思う。中には不満そうな顔をした奴もいたが、軽く睨んで反論をさせなかった。

こういうのは柄じゃないと言うか、苦手なんだが、ブルー寮三年生エースと言う立場を上手く使おう。

 

「じゃあ俺達は外に出るから。危険な精霊がいるかもしれないから、くれぐれも外に出さないでくれ」

「分かったッス」

「ええ」

「了解ザウルス」

 

この場を任せた三人の顔がドアで遮られた途端、へなへなと体の力が抜けて行った。

 

「あ、あはは・・・・。何とか、なったか?」

「素晴らしかったのノーネ。やっぱりあなたは代表に相応しかったノーネ」

「ああ。遊斗のおかげで大分混乱が収まった」

「けどいいのか。危険な外に二人だけなんて?」

「オブライエンがいる。大丈夫・・・・と思う」

 

 

 

 

結論から言うと特に何も無かった。それは逆に言うとメリットになりそうな物の何も無かったと言う事だ。まあ学園の周りをチラッと回っただけなので、あったのは少し離れにある発電所ぐらいだ。

 

「どうしたもんかね~」

「・・・・言わない方がいいのかもしれないが、意外と元気みたいだな」

「いや、正直心ズタボロだよ。けどこうやって元気なフリしてないとみんなを心配させるだろうし。それに――」

「それに?」

「みんな強い心と勇気を持っているから。主である俺がいつまでも落ち込んでられない」

 

 




十代√と思った人、ちょっと屋上に逝かないか♂?



あのさぁ・・・・。仮にも本文シリアスなんですけど。
てか今さらですが、ようやく遊斗のキャラが遊戯王の世界にそこそこ付いていけるくらい濃くなってきたと思います。(ついにあらすじ詐欺)


デュエルが無いから書くのが結構楽でした。その分文字数も少ないですが。
ただこの手の指示を与えたりする台詞って苦手なんですよね。実際異世界トリップを経験された方はそうそういらっしゃらないと思うので、正解は無いと思いますが。



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第五十一話

innocentのマテリアルズが、俺好みなタッチな件について。


実際始ったinnocentやって思ったのが、strikers以降のカードださなくて、融合のレパートリーを増やすのも面白かったかな~と思います。





異世界に飛ばされた翌日。流石に二回続けて飯を抜くとみんなの限界なので、異世界に来て最初の食料が配給された。まあ食料に関して、俺は何も口出しせずにトメさんとセイコさんに任せておく。

配給の手伝いをしている剣山とヨハンに食料をついでもらった俺は、ふぅとため息を吐いて床に座った。すると俺の元へ男子ブルー生徒が歩いてきた。見覚えのない顔・・・・一年生か?

 

「何か用か?」

「スカリエッティせんぱ~い。先輩のご飯の量、多くないッスか?」

「ん? そうか?」

 

チラッとヨハンと剣山の方を見ると、何とも言えない微妙な表情をしている。ひょっとしたら二人が気を使って俺の分だけ多くしてくれたのかもしれない。

 

「分かった。んじゃあ量が同じになる様に減らしてもらうよ」

 

この態度の悪い一年生が何をやりたかったかは知らないが、少年はチッと舌打ちをして足を引っ掛けようとする。ガキの遊びに付き合ってる暇は無く、足元を見ずにヒョイッと回避してヨハンと剣山の元へ行く。

 

「わりぃ。けど遊斗はデス・デュエルを連続でやってるから」

「そうザウルス。人より多く食べていいドン。何なら俺のを」

「大丈夫。人よりデス・デュエルの影響を受けにくいのか結構ピンピンしてるし」

 

自分の食料が減る訳でも無いのに、二人は悔しそうに俺の皿に乗った食料を戻して行く。そしてさっきいた場所に戻る途中、さっきの一年生に「これで問題ないだろ?」すれ違いざまに言った。その言い方が気に入らなかったのだろうか。その一年は後方から俺の脚を蹴ってきた。

完全な死角。仮に気付いても対処が出来ない場所からの蹴りだったが――。

 

「いい加減にしろよガキ」

 

左足を軸に素早く回転させ、後ろから来る蹴りを右足で受け止める。

 

「ヒィ!」

「下らない事やる暇があるなら働け。何もやる事無いなら、ジッとして妄想でもしてろ」

「は、はいっ」

 

ハァ・・・・。目立つ立場にいるとこう言った事にも巻き込まれるのか。まあ彼も気が立っているのは分かる。少し言いすぎたかもしれない。

 

「ノー。立場は遊斗も同じさ。むしろもっと強く言ってもよかったさ」

「ありがと・・・・」

「・・・・やっぱり辛いのか?」

「・・・・ああ。腹減ってるのに、食欲が出ない。心配するな、ちゃんと食べるよ」

 

食べると言う事よりも、体にエネルギーを送り込むと言う理由で、無理やり口の中に食料を押し込む。水で胸に詰まった食料を流し込むと、デッキケースを取り出して、デッキから一枚のカードを取り出した。

 

「それは?」

「フェイトのカードさ」

「分かるのか?」

「なんとなく。けどこれはフェイトのカードだよ」

 

周りからみたら、カードに取り込まれた男子高校生に見えるだろう。それだけ俺はジーと手の中にあるカードを眺めていた。すると真っ白なカードが一瞬だけ。ほんの一瞬だけフェイトの絵が見えた。

 

「ツッ!?」

 

何度も瞬きをして目をゴシゴシと擦る。改めて見たら真っ白なカードは真っ白なまま。何も映っていない。

 

「っと、ヤバイ。ボーとしてるとホントに病みそうだ」

「遊斗・・・・」

「じゃあまた外回りでも「大変だ遊斗!」十代?」

 

勢いよく入って来た十代はダッダッダッと走って来て俺の手を掴むと、無理やり引っ張った。

 

「ど、どうかしたのか?」

「レイが大変なんだ!」

 

 

 

 

十代が連れてきたのは保健室だった。保健室にもかなりの生徒が居り、万丈目もベッドで横になっていた。そう言えば万丈目はアモンとのデス・デュエルで衰弱していたんだっけ。十代が引っ張って来たのは万丈目の隣のベッド。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・」

 

そこには呼吸が荒く、顔が朱に帯びたレイちゃんがいた。かなりの高熱なのか、レイちゃんの額にはタオルが置いてあり、鮎川先生が付きっきりでいる。

 

「熱、ですか?」

「ただの熱じゃないの。これを見て」

 

鮎川先生がベッドの一部を剥がし、レイちゃんの左腕をベッドの外へ出す。十代が大変だと言った意味がようやく分かった。これはただの熱じゃない。レイちゃんの白い細腕には、野獣の様な巨大な爪で引っ掻かれた生々しい傷があった。しかもただの傷では無く、血が出ないかわりに黒い禍々しい何かがそこにあった。

 

「レイは、治りますか?」

「駄目。こんな傷見た事無いわ。だけど傷以外の症状は分かるから、逆算して行けばいい薬が無い事も無いわ。だけどこの保健室には・・・・」

「薬草になりそうな草も一本も無い。クッ、どうする?」

「潜水艦ならあるかもしれない」

「三沢!? 潜水艦ってどういう事だ?」

「漂流してからここに来る途中、砂漠の中に潜水艦があったんだ。あの時は幻かと思って中まで探さなかったが、ひょっとしたらその潜水艦になら薬があるかも」

 

三沢の説明を聞いて俺と十代は顔を合わせる。本当に幻かもしれないが、可能性があるなら行くしかない。一緒のタイミングで首を縦に振る。

鮎川先生も異論が無いのか、数秒間目を瞑って何かを思考し、目を開けるのと連動して口を開く。

 

「○△□×よ。それがあれば治す事が出来るわ」

「「・・・・ワンモア」」

「○△□×」

 

・・・・それは英語? ドイツ語? フランス語? イタリヤ語? それとも地球に存在しない言葉?

 

「三沢なら分かるだろ?」

「俺もそっち方面は詳しくない。それに俺はこの学校で次元の計算をしておく」

 

日常生活では何の役にも立たない次元の計算だが、今これ以上に役に立つ計算があるだろうか? 足し算や引き算より役に立つ計算だ。

けど肝心な薬が分からないとなると厳しいな。今鮎川先生を保健室から連れ出すと、医師がいなくなるし、かといって潜水艦の中にある薬を全部持っていく訳にもいかない。

 

「その薬なら俺が分かるぜ」

「ヨハン!?」

「分かるって本当かよ?」

「ああ! 向こうの学校で勉強したからな! 俺も一緒に行く!」

 

よしっ。薬が分かる人がいるってだけでも心強いのに、それがヨハンなら鬼に金棒だ。

三沢の話ではここから潜水艦まで半日強かかるそうだ。往復するから一日半は掛かる。それまでの間レイちゃんが持つだろうか。いや、こうやって悩んでいる間にも時間は経って行くんだ。

準備に取り掛かろうと、部屋を出ようとしたその時。

 

「マルっち・・・・助けてあげて」

 

マルタン君?

そう言えば朝から姿を見ていない気がする。準備に取り掛かるついでもあったので、クロノス先生とナポレオン先生がいる購買へと走る。

 

「クロノス先生、ナポレオン先生。お話があります」

「い、今はそれどころでは無いのでアール! 生徒が一人いなくなったのでアール!」

 

いつにもまして焦っている様に見えるナポレオン先生の態度が気になったが、先生の態度よりも言葉の方が気になる。まさかとは思い、いなくなったその生徒の名前を聞く。

 

「イエロー寮のマルタンがいなくなったノーネ!」

「・・・・昨夜、何者かに襲われた早乙女レイが、マルタン君の名前を出しました」

「ま、まさかマルタンが襲ったと言うのでアールか!?」

「違います。ただマルタン君は何か知っているかもしれません。それとクロノス先生。早乙女レイの傷を治す為に、一日半ここを留守にします。その間ここは任せました」

「分かったノーネ。シニョール遊斗も気をつけるノーネ」

 

 

 

 

結局潜水艦に向かうメンバーは、俺、十代、ヨハン、オブライエン、ジムの五人。人数的にはこれくらいが丁度いいだろう。皆一日分の食料が入ったバッグを背負い、腕にデュエルディスクを付けている。

 

「三沢の話ではこっち方面だな」

「ヨハン。これは冗談じゃなく本気で迷子になるなよ」

「大丈夫だって」

 

前例があるから注意しているんだが、本当に分かっているのかコイツ? 

なんて少し呆れながら十代とヨハンの背中を眺めていると、十代が喋り出した。

 

「なあ、ネオスに乗っていかないかぁ?」

「お前、この状況を楽しんでないか?」

「あ、あはは・・・・」

「命がかかってる。それを忘れるな十代」

 

ヨハンもオブライエンも結構厳しい。

 

「俺はむしろ十代みたいな明るい奴がいた方がいいな。今朝みたいな奴が増えると思うと余計にストレス溜まる。張りつめてやるサバイバルは長く持たないって聞いたことあるし」

「確かに訓練していない場合そうだ。だが今は「分かってるよ。俺も十代も」・・・・」

「けどモンスターの召喚はバッドだ。デス・ベルトが付いている以上、下手にモンスターを召喚しない方がいい。エネルギーを奪われる」

 

最初はデュエルが終わった時にしかエナジーを奪われなかったが、随分見境なくなったな。しかしデス・ベルトの機能が壊れていないとなると、未だにあの金色の精霊はデュエルエナジーを溜めているのか? 

 

「もう一つ厄介なのがデュエルモンスターズの精霊だ。昨日のハーピィ・レディの様に襲ってくる精霊もいれば、デュエルを挑んでくる精霊もいる。デュエルが出来る精霊と出来ない精霊の差が何か分からないが、後者の方が頭がいいだろう。最も、お前達が苦戦するレベルの精霊はそうそう出てこないと思うが・・・・」

 

最後にポツリと言葉を足しながら、倒した王達の姿を思い出す。あの頃はまだ三幻魔がいたから勝てたものの、今の俺が挑んだら厳しいだろう・・・・。って、なんか俺らしくない。デュエルで弱音なんて――

 

「うわあああ!」

 

突如十代の叫び声がした。さっきまで十代がいた場所には、十代の姿は無く、変わりに巨大な蟻地獄があった。三沢の話ではあんな蟻地獄の話は無かった筈。

誰よりも早く動いたのはオブライエンだった。蟻地獄に呑み込まれないギリギリの場所まで来ると、蟻地獄の中にいる十代に向けてロープを投げた。

 

「させん!」

 

だがそのロープは投げられた一枚のカードにより切断され、十代を助ける命綱が断たれてしまった。

カードを投げた主の元へ視線を移す。蟻地獄の真ん中には岩でできた柱があり、それを支えにして立っていたのは、左手にデュエルディスクを付けた岩の精霊タイタン。

 

「いくら俺でも十代を助けながら蟻地獄を登るのは無理だ」

「だったら俺がやる! サファイア・ペガサス! コバルト・イーグル!」

「イーグル。お前は十代を助けろ。私は先陣を切る」

「分かったぜリーダー!」

 

サファイア・ペガサスは空を駆けてサファイア・トルネードを放つ。だがサファイア・ペガサスの攻撃は岩の精霊タイタンの前に現れた番兵ゴーレムにより防がれた。攻撃力と守備力が互角だから止められたのだ。

 

「クッ!」

「番兵ゴーレムの効果! その鳥を手札に戻す!」

 

十代を助けようとしたコバルト・イーグルは、黄色の光を発しながらヨハンの手札に戻っていく。

 

「ヨハン、サポートする「待て! デス・ベルトがある以上大人数で召喚するのは避けた方がいい!」そうだが」

「ヨハン! 装備魔法だ! それで一気に蹴りを付けろ!」

「ああ! 装備魔法宝玉の解放を発動! サファイア・ペガサスの攻撃力を800上げる!」

 

サファイアで作られた角が、より一層青い輝きを発し、サファイア・ペガサスに秘められた力を解放する。これで番兵ゴーレムは破壊できる。

その間俺達はただボーとしている訳ではない。切られたロープの変わりになる布を細く丸め、縄の変わりにする。

 

「邪魔だ!」

 

タイタンが新たにモンスターを召喚した。出てきたモンスターはこの間ジムが使っていたコアキメイル・ガーディアン。白い岩石でできたモンスターで右手には剣、左手には盾を持っている。コアキメイル・ガーディアンの出現と同時にオブライエンが素早く銃を放ったが、やはり頑丈な岩で作られているのか弾丸が効かない。

 

「危ないヨハン!」

 

コアキメイル・ガーディアンは宝玉獣達のプレイヤーであるヨハンを狙って剣を振った。比較的近くに居た俺は、デュエルディスクを盾にしてコアキメイル・ガーディアンの攻撃を受け止める。デュエルディスクはかなり頑丈に出来ている為切断されたりしなかったが、左手に走る衝撃はかなりのもので、普通の人間が受け止めていたら骨が折れていたかもしれない。

 

「大丈夫か遊斗!?」

「こんなの、ヴィータさんの鉄槌に比べたら足元にも及ばない!」

 

叫ぶと同時に剣を弾き、体を思いっきり回転させる。そして回転の勢いを利用して回し蹴りを繰り出す。コアキメイル・ガーディアンは左手の盾で防ごうとする。岩で出来た盾を壊せる筈無いと思ったのだろう。現に俺もそう思っていた。

だが違った。岩は粉々になって破壊され、コアキメイル・ガーディアンに蹴りが炸裂。蹴りが当たった場所を原点に罅が入り、バラバラとなって、小さい白い岩の山が出来た。

 

「ツッ!? ・・・・ジム! 降ろしてくれ!」

「お、OK! カレンも持つのを手伝ってくれ!」

 

自分の化け物じみた力に茫然としたが、今は十代の救出が最優先事項。ロープに掴みながらゆっくりと蟻地獄の中心へと降りて行く。十代も頑張って抵抗していたので、落ちた所からさほど移動していなかったのが幸いで、降りて数十秒後に十代の手を掴む事ができた。

 

「わ、わりぃ」

「おあいこだ。ジム! 引っ張ってくれ!」

「OK! 行くぞカレン!」

 

身長が180以上あるジムによる引っ張りと、ワニの強力な力により、俺達の体はゆっくりとだが上がっていく。上って行く間、ヨハンの様子を見ていると、サファイア・ペガサスとコバルト・イーグルの空中攻撃で岩の精霊タイタンを押していた。

 

「終わりだ! サファイア・トルネード!」

「ぐあああああっ!」

 

サファイア・トルネードをもろにくらった岩の精霊タイタンは足場から飛ばされ、蟻地獄に落ちて行った。自分が仕掛けた罠に掛かるとは何とも間抜けな終わり方だ。

 

「ふぅ・・・・クッ」

「大丈夫かヨハン!?」

「あ、ああ。少し休めば大丈夫だ」

「俺が背負っていく。俺の荷物を誰か持ってくれ」

「悪い。俺の所為で・・・・」

「気にするなって。言っただろ、おあいこだって」

 

十代に自分の荷物を渡してヨハンを背負う。結構鍛えているのか、見た目に反しヨハンは意外と重い。

再び歩き始めると共に、背中に居るヨハンが問う。

 

「なあ遊斗。お前はいったい?」

「・・・・自分でも分からない。すまない。今はこれ以上追及しないでくれ」

 

鍛えている、ではすまされない身体能力。どうして俺がこんな力を持っているのか分からない。ただ今は、余り考えたくなかった。

 

 

 

 

「潜水艦だ!」

 

どうやら潜水艦までの距離は、疲れ切っていた三沢の足で半日らしく、俺達は十時間前後で潜水艦に到着した。その間何度か精霊に襲われたりしたが、デュエルディスクを付けた精霊は居らず、野生の精霊と何度か戦ったりしたが、低ステータスだったので俺とオブライエンのリアルファイトで追い払った。

潜水艦などの乗り物に全くと言っていい程詳しくない俺は、これが潜水艦の中でどれくらいの大きさがあるか分からないが、結構長い。

やはり傭兵としての知識があるのか、オブライエンが先頭に立って探索を始める。やはり映画やゲームと同じように、|甲板(うえ)に出入り口があり、オブライエンから中に入って行った。

 

「へえ! 中身はこんな感じになってるのか! カッコイイな!」

「丁度いいからここで飯にしよう。なるべく荷物を軽くして、ここにある物を持って行きたい」

「分かった。だが食事をするなら一旦外に出よう。見晴らしの悪く、地理を知らない場所で腰を落とすのは自殺行為だ」

 

オブライエンの意見に賛成した俺達は、一度外に出てリュックから食料を取り出す。

 

「けどホントに変な場所だよな。太陽が三つあるなんて」

「そのおかげか、砂漠でも気温の変化が無い。いい事だぜ」

「俺達は本当に帰られるんだろうか?」

「何言ってるんだオブライエン? 大丈夫だって」

「周りにいるのがお前等だから言う。正直俺も帰れるかどうかは微妙だと思う」

「ゆ、遊斗まで。大丈夫だって、絶対帰れる」

 

そうだと良いが・・・・。

 

「どっちにしろ普通の方法じゃ帰れる事は出来ない。ここは外国じゃない。異世界だ。例え何千キロ歩いてもデュエルアカデミアに戻れない」

「そ、そうだけど・・・・」

「ストップ。遊斗、ちょっと言い過ぎだ」

「悪い・・・・。ただ一週間生きているだけじゃ帰れない。それだけは分かって欲しい」

 

楽しい食事の時間を、お通夜の様な空気にしてしまったな。食事を楽しみにしていた十代、ヨハン、カレンには悪い事をした。

この空気を引っ張らない為に、食料を胃に送りこむと同時にパチンと自分の頬を叩く。

 

「よし。食べ終わったし行くか」

「おう」

「ああ!」

「OK」

「了解」

 

 

 




おい、デュエルしろよ

鮎川先生が言った薬名を、まるさんかくしかくばつと読んだあなた。あなたは十代や遊斗と同じく、薬名は分かりません。作者も、まるさんかくしかくばつと読んでいる為、分かりません。


何でヨハンの「潜水艦だ!」はあんなに面白いんだろうか・・・・。ジャックの「MATTE!」や「O☆KA☆WA☆RI☆DA!」と同じ魔力を持っている気がします。



デュエル無いんでストーリーポンポン進めようと思っているのですが、あまりザックリし過ぎていると、精霊世界二・三話で終わったかもしれないので、色々やって文字数増やして話数を稼いでいます。




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第五十二話

注意)この作品は遊戯王デュエルモンスターズGXの二次創作であり、決してアクション作品の二次創作ではありません。



最近色々と謎が増えてきて様々な意見が飛び交ってますね。
とりあえず一つ言いたいのが
ハードルを上げるなよ! 絶対上げるなよ! 絶対だからな! フリじゃないからな!



それとかなり重要な所ですが、投稿出来なかった一週間の間に自分の作品ちょくちょく見返したのですが、ッツやッチ、など、なぜかちっちゃいツが前にきてましたね(重要じゃない)
前回か前々回くらいから、ちっちゃいツが前に来るようにしました。





再び潜水艦に侵入した俺達は、早速潜水艦にある物を物色していた。薬の事を知らない俺達が薬を探すというのも無理なので、食糧だったり毛布だったりと、生活に必要な物を探していた。

何か物は無いかと探し続けていると、潜水艦内部に描かれている一つのマークが目に入った。

 

「ガラム財閥? じゃあこの潜水艦はガラム財閥のもの?」

「どうかしたか遊斗?」

「オブライエン。これを見てくれ」

 

オブライエンにガラム財閥のマークを眉間に皺を寄せる。やはりオブライエンもアモンの真意が分からないのか。

 

「またアモンか・・・・。一度話した方がいいかもしれないな」

「その様だな」

「薬があったぞー!」

 

潜水艦に響くヨハンの声に、俺達はコクンと首を縦に振ってヨハンの元へと急ぐ。既にジムと十代もヨハンの元に居り、背負っているリュックには毛布やら食料やらがとび出していた。ヨハンの手にある薬がレイちゃんを助ける薬なのだろう。

 

「ヨハン。それは飲み薬か?」

「ああ!」

 

その時だった。突然潜水艦内がグラグラと揺れて地面が斜めになった。バランスを崩した俺達は、近くにある柱や壁を掴んで体を支える。

 

「敵襲か!?」

 

オブライエンの疑問に応える様に天井からゴトンと音を立てて何かが落ちてきた。落ちてきた物の正体は青い装甲を覆った巨大サソリ、デビルスコーピオン。

レベル2の通常モンスター。攻撃力は900、守備力200と救い様のないモンスターだが、それが実際に目の前に立つと厄介極まりない。

しかもゴトンと、デビルスコーピオンが落ちて来る音は、一回で終わらなかった。十匹二十匹というレベルじゃない。五十前後はいるだろうデビルスコーピオンが俺達の前にいた。

 

「相手に出来るか! 遊斗、扉を閉じるぞ!」

「おう!」

 

十代の掛け声と共に素早く扉の前に移動し、分厚いドアを閉じてこの部屋への侵入を防ぐ。だが俺達が予想していたより、攻撃力900という数値は大きく、鉄で出来た分厚い扉は徐々に形を変えて行き、悲鳴を上げている。

 

「クレイマンを召喚! 頼むぞクレイマン!」

 

岩で出来たHEROを扉の前に配置する十代。これで少しは時間が稼げるだろう。

今度は素早く動ける俺が先導して、別の出入り口へと向かう。物色している途中に色々と見回ったからある程度の地理は頭に入っている。

 

「あの通路を右に曲がったら上がれるぞ!」

 

しかし甘かった。出口のある通路から、砂と一緒に再びデビルスコーピオンの群が現れたのだ。

 

「ワッツ!? サンドが侵入してるぞ!」

「潜水艦が沈んでいるんだ! どうする!?」

「カードの力を借りるしかないだろう! 何か良いモンスターを出してくれ!」

「援護は俺がするが、毒を持っているかもしれない。ヒット・アンド・アウェイでやるんだ」

「了解!」

 

拳をギュッと握って戦闘にいるデビルスコーピオンに突進する。デビルスコーピオンは尻に付いている尾を使って攻撃してきたが、速度を落とさないまま上半身を動かして回避する。そして勢いに乗せた拳を顔面に向けて打つ。

 

「キギャアアア!」

 

サソリ自体詳しくないのに、ここまで大きいサソリの弱点がどこだとか分からなかったが、どうやら顔面で正解だった様だ。打ち込んだ拳を戻すと、素早く後ろに跳んで距離を取る。その間デビルスコーピオンの接近を防ぐために、オブライエンが銃を連射して、前衛にいるデビルスコーピオン達を攻撃する。

弾丸をくらったデビルスコーピオンは悲鳴を上げながら燃え上がり、最後は絶命する。が、何しろ数が数だ。

 

「チッ!」

 

再び群へと接近する。一匹だけ群から外れて先導していたデビルスコーピオンに回し蹴りを放ち、巨大な体をサッカーボールの様に扱い、群のいる方へ放つ。俺達のいる世界なら、死体が道を防ぐバリケードになって役に立ってくれるが、絶命したモンスターは、破壊された時と同じようにバリンと音を立てて消えて行く。

 

「俺の宝玉獣じゃ無理だ! 戦えても突破は出来ない!」

「俺の古生代騎士も同じだ!」

 

そう、ここは狭い潜水艦の中。出せるモンスターにも限界があるし、下手して潜水艦を壊してしまったらそこから砂が入って来て呑みこまれるかもしれない。

 

「何か、何かないのかっ!」

 

三人のデッキにいるカード達を思い出す。それがいけなかったのだろう。ほんの一瞬だが隙が出来てしまい、その隙を一匹のデビルスコーピオンにつかれてしまった。

 

「しまっ!」

 

一瞬だけ目を瞑ってしまったが、俺の心配は無駄だった様だ。オブライエンが見事俺を襲っていたデビルスコーピオンを撃ち、破壊したのだ。

 

「そうだ! ネオスとグラン・モールをコンタクト融合! 来い、グラン・ネオス! グラン・ネオスの効果発動ネビュラスホール!」

 

現れたグラン・ネオスは右手のドリルを使って何もない空間を貫いて、潜水艦の外の空間に繋げる。

 

「遊斗!」

「分かってる!」

 

近くに居るデビルスコーピオンを蹴飛ばして、グラン・ネオスが開けた空間へと跳び込む。潜水艦もかなり危険な状態だった様で、俺が潜水艦の外に出た数秒後には、ゴゴゴと音を立てて砂の中に呑み込まれて行った。

 

「なっ! お前達何故生きている!?」

 

沈んだ潜水艦のすぐそばにいたのは、蟻地獄に呑み込まれた筈の岩の精霊タイタン。呑みこまれたタイタン本人なのか、他のタイタンなのか分からないが、こいつが犯人と言うのは一目瞭然だ。

 

「グラン・ネオス! 攻撃だ!」

「うわあああああ!」

 

グラン・ネオスのドリルに貫かれた岩の精霊タイタンは、バリンと音を立ててバラバラになった。

 

「ふぅ・・・・。何とか助かったな。十代は大丈夫か?」

「結構きついけど、お前ほどじゃないぜ」

「俺はそうでもないから」

「ソーリー。何も出来なかった。変わりに荷物を持たせてくれ」

「助かるよ」

 

 

 

 

荷物が多くなったり体力を使ってしまった所為か、行きより時間が掛かり、結局砂漠のど真ん中で一夜過ごす事になった。体力的にも夜の見張りは出来ただろうが、みんなの好意で一晩中寝かせてもらった。

朝になってから数時間後。ようやくデュエルアカデミアに戻って来た。

 

「はやくレイに薬を・・・・」

「ああ! ってあれ? 外に生徒がいるぞ」

 

ヨハンが指した先を見ると、イエローの制服を着た生徒がいた。野生の精霊がうろついているかもしれないから危険だ。慌てて外をぶらついている生徒の元へ行く。生徒はずいぶんと衰弱しているのか足がふら付いており、パッと見るだけでもかなり危険な状態だと分かる。

 

「おい、お前。こんな所でなにを――」

「でゅえる・・・・」

 

十代の台詞は、生気のない声により遮られた。

 

「デュエルってお前。デュエルしたらデス・ベルトの影響で「でゅえる~」な、何だコイツ?」

「アニキ! そいつとデュエルしちゃいけないドン!」

「剣山! どういう事「説明は後ドン! 今は逃げるザウルス!」あ、ああ!」

 

生気のない生徒は、まるでゾンビの様にノロノロと動きながら近づいてきた。この程度のスピードなら走って逃げられるので、俺達は剣山の元へ走って行った。

 

「あいつは一体?」

「あいつはデュエルゾンビザウルス」

「「「「「デュエルゾンビ?」」」」」

「そうザウルス。なにかに取り付かれた様にデュエルを申し込んで来るドン。しかも感覚が無いのか、デュエルエナジーを奪われても動き続けるザウルス」

 

デュエルエナジーを奪われても動き続ける・・・・。しかも自分がそれに気付いていないとなるとかなり危険だな。

 

「しかも厄介なのが、デュエゾンビに負けるとデュエルゾンビにされてしまうザウルス」

「どこのバイオハザードだよ・・・・」

 

デュエルを挑んでくるだけゾンビゲームよりマシだが、デス・ベルトの所為でデュエルし続ける訳にもいかない。感覚が無いって事は、殴っても気絶しないし、脳のリミッターが外れて強靭的な力を持っているかもしれない。

なんて話している間にも前方から十人前後のデュエルゾンビの群がやって来た。

 

「前から来たぞ!」

「クッ、こっちに来るドン!」

「何でたった一日半であんなのが増えたんだ!? てか外に出るなって言っただろ!」

「俺を責めないで欲しいドン! ずっと同じ場所に居たくないって、みんなが勝手に出たザウルス!」

 

あ~も~、俺達がいなくなった途端これかよ!

 

「剣山! 保健室に行くにはどうしたらいい!? レイに薬を届けないと!」

「保健室辺りにデュエルゾンビが多いドン! 今は購買に戻って策を立てるザウルス!」

 

 

 

 

デュエルゾンビを避けながら何とか購買に到着した。購買にいる生徒達の数は全体の三分の一がいるかいないか。明日香、クロノス先生、ナポレオン先生は無事に居てくれたが、万丈目や翔の姿が見えない。

 

「どうする? あんなのがうろちょろしてたら保健室まで行けないぞ」

「薬はここにあるってのに」

「問題はそれだけじゃないんだよ」

「どういう事だトメさん?」

「デュエルゾンビの所為で食糧庫まで行けなくなったんだよ。食糧がなくなりかけて」

 

ツッ! 今まで購買や給食等の、消費期限の早いものから食べていたから、非常用の食糧が備えてある食糧庫には手を付けていなかった。

レイちゃんに薬を届けに行くのと、食糧庫の奪還。相手は体力無尽蔵のデュエルアカデミアの生徒三分の二。相手が悪すぎる。

 

「厳しいな。オブライエン、何か案は無いか?」

「ちょっと待っていろ。ブルーベレー、集合」

「「「「「ハッ!」」」」」

 

突如オブライエンの前に現れたのは、ブルー寮の制服より更に青い服と帽子を着た、五人の生徒達。男子が三人、女子が二人の組み合わせだ。

オブライエンは俺達が聞くより先に、ブルーベレーの説明を始めた。

 

「警備兵の素質のある生徒に声をかけて作ったんだ。お前達、デュエルアカデミアの細かな地図を持っているか?」

「はっ! これがデュエルアカデミアの地図です!」

 

五人の中で一番長身の男が懐から出したのは、筒状に丸めてあったデュエルアカデミアの地図だった。いつの間にか出してあった机の上に地図を広げる。

確かにかなり細かい地図で、俺が知らない場所も書かれていた。

 

「保健室はここ、食料庫はここか・・・・。どちらともこちらの購買から遠く、長い廊下を突きぬけるのが一番の最短ルートか」

「と言うかほぼそれしかないな。ここから保健室に行くルートは入り組んでいない」

「一気に突き抜けてゴー」

「それが一番か」

 

しかしもう一つの食糧庫の問題が解決していない。ここから食料庫は保健室より更に遠い。仮に食糧庫に到達したとしても、この人数分の食料を持って帰るにはかなりの時間と人数が必要になる。デュエルゾンビがうろつき回っている以上、その時間と人数を使うのは危険だ。

この地図を見ている皆、俺と同じ考えだったのだろう。あえて食糧庫の話はしなかった。

 

「どっちにしろ保健室に向かうのは俺達だ。ここは少しだけタイムを忘れ、休息を取ろう」

「けどレイが!」

「ジムの言う通り。俺だってレイは心配だ。だけど俺達は今日休まずに歩いてきた」

「ヨハンまでっ!」

「安心しろ。数時間も休む訳じゃない。一時間、一時間後に作戦を決行する。それまで休息と細かい配置について話し合おう」

 

 

 

 

オブライエンの作戦は実に分かりやすいものだった。レイちゃんの元へ十代を連れて行く為に、十代を守る様な配置で廊下を突き進む。ノンストップで走る為、十代の後ろには誰もつけず、三角形になるフォーメーションになる。

いざとなったら十代以外の誰かが犠牲となってデュエルゾンビを引きつける。因みにデュエルが出来ない俺は、控えとして十代の近くに居る事になった。

理由は二つあって、一つはデュエルゾンビの戦闘力が未知数なので下手に接近するのは危険な為。もう一つは突然身体能力が爆発的に上がった俺の力では、デュエルゾンビ(生徒)に重傷を負わせる可能性がある為。

 

「本当に俺とダイナボーイは行かなくて良いのか?」

「そうザウルス! 俺も行きたいドン!」

「二人は何としてでもここを死守するんだ。それに人数はこのくらいが丁度いい」

 

元傭兵のオブライエンが立てた作戦だ。これ以上横槍を入れるのも無意味だと感じたのだろう。二人は首を縦に振って了解の合図をした。

 

「扉を開けた瞬間走るんだ。3・2・1、走るぞ!」

 

剣山とジムによって扉が開かれた。扉の前には既に数人デュエルゾンビがいたが、剣山とジムが何とかしてくれる。そのデュエルゾンビ達を無視して長い廊下を突き進む。

最初のカーブに当たった直後、目の前にデュエルゾンビの群が現れる。

 

「でゅえる~」「でゅえる・・・・」「でゅえ、る~」

「ブルーベレー1・2、突撃!」

「「了解!」」

 

呼ばれたブルーベレー隊員は嫌そうな顔をせず、むしろ清々しそうな表情をしながらデュエルディスクを構える。デュエルの相手が見つかったデュエルゾンビ達は、そちらを優先して勝手に道を開けてくれた。

 

「二人とも、わりぃ!」

「まだだ! 次が来るぞ!」

 

長い廊下だから必然的に人が集まるのか、それとも俺達がこの道を突っ切ると知っていたのか。どちらか分からないが、デュエルゾンビの数はかなりのものだった。さっきのデュエルゾンビを合わせると、既に50人近くいる。

 

「ブルーベレー3・4・5突撃!」

「「「ハッ!」」」

 

再び先導してデュエルディスクを構える三人の隊員。購買を出る前は九人いたが、早くも四人に減っている。

 

「半分越えたぞ!」

「駄目だオブライエン! 次は俺が前に出る! このペースじゃ全滅する!」

「分かった。だが殴るのではなく、押したり投げ技で道を開くだけだ!」

 

予想以上のデュエルゾンビの数にオブライエンもあせっているのが分かる。廊下の音を聞き付けてきたのか、細い道からデュエルゾンビが数人出て来る。

 

「これは俺がやる!」

 

オブライエンはそう言って腰からデュエルディスクを取り出して、数人のデュエルゾンビの足元に向けて二発の弾丸を撃つ。突然足元に銃を撃たれたデュエルゾンビ達は一瞬怯み、俺達の進行を止める事が出来なかった。

やはりデュエルする知性があるのか、怯んだりはするようだ。麻薬の症状みたいに、テンションがよく分からない方向に行っている感じかもしれない。

 

「後もう少し!」

 

このカーブを曲がって少しした所が保健室だ。だがそこには、先程までと比べ物にならない程の数のデュエルゾンビがいた。閉まっている保健室の中に入ろうとしている様で、保健室の扉をダンダンと叩いていた。そう、叩いていた、なのだ。

 

「あっ、あにきだぁ~。でゅえるしようよ~」

「このまんじょうめさんだーがでゅえるしてやるぞぉ~」

「翔!? 万丈目!?」

「でゅえる~」「でゅえる・・・・」「でゅえ、るぅ~」

 

不味い! 数が多すぎて話にならない! しかも後ろからさっきいたデュエルゾンビ達が来ている。

 

「十代とヨハンはプラン2のルートで保健室に迎え!」

「遊斗!? それじゃあ遊斗とオブライエンはッ!」

「早くしろ! 保健室の前のデュエルゾンビは追っ払ってやるから、帰りは心配するな!」

「行くぞ十代! 俺達はみんなの想いを無駄にしちゃいけないんだ!」

 

サンキューヨハン。十代はヨハンに連れられて、すぐ近くにある細い通路に入って行った。

あの道は行き止まりだが、天井から保健室に行く事が出来る。何故そんな事をブルーベレーの隊員が知っていたかは分からないが、役に立った。

 

「さ~て、どうするオブライエン?」

「別々の方向へ逃げるのが一番だろう」

 

背中合わせの状態で両側から来るデュエルゾンビを睨みつける。さっきまで走る事に夢中で気付かなかったが、デュエルゾンビの中にはクラスメイトや友達、後輩がいる。

 

「けどさ、まさか知り合って一日で背中を任せる事になるなんて」

「全くだ」

「ゆうとくぅ~ん、でゅえるしないならこっちからいくよぉ~。さいくろいどをしょうかんするねぇ~」

「おれさまはえっくすへっどきゃのんだぁ~」

 

なるほど。デュエルが出来ない相手には、モンスターを召喚して無理やりデュエルゾンビにするって事か。ごり押しのその戦法、決して嫌いじゃない。

 

「ヴォルカニック・ハンマーを召喚! 行け!」

 

ハァ・・・・。にしても、デュエルモンスターズと生の体で戦う日が来るとは思ってなかった。まあ精霊達(みんな)も一応デュエルモンスターズなので、それを入れると初めてではないが。

人間何があるか分からないから、やっぱり鍛えておいて損は無いか。最も、この意味不明な身体能力が無かったら、戦う以前の問題だが。

 

「行くぞ!」

 

召喚されたサイクロイドの方へ接近し、左足で回し蹴りを放ち、X-ヘッドキャノンへ飛ばす。飛んできたサイクロイドの所為で、X-ヘッドキャノンの標準がずれてしまい、X-ヘッドキャノンの攻撃はデュエルゾンビの方へ発射された。

 

「うわぁ~」「でゅ、でゅえ」「でゅえる~」

「ほ、ホントにコイツ等は不死身かよ!」

 

新たなモンスターを召喚される前に、万丈目の元へ近寄り、右膝と肘でデュエルディスクを挟んで破壊する。

 

「きらーとまとをしょうか~ん」

「わいとをしょうかん」

「がんせきのきょへいをしょうかん」

 

ツッ、やっぱり数が多すぎる! オブライエンがいるから戦う相手は単純計算で半分になっているが、元々の数が多すぎるし、今もなお増えている。

せめて逃げ道を作れれば良いんだが、それが出来れば苦労しない。待てよ? 今召喚したワイトを使えば。

 

「「こうげ~き」」

 

突進してくるキラー・トマトと、飛んでくる岩石の巨兵の拳を跳んで回避して、召喚されたワイトの近くで着地する。そしてワイトの腕を強く掴み、ブンブンと振り回す。

 

「やっぱ骨だけあって軽いな。どけどけぇぇー!」

 

ワイトの体をヌンチャクの様にブンブンと振り回して、デュエルゾンビ達を薙ぎ払っていく。さっきのオブライエンが撃ったデュエルゾンビの反応と同じく、デュエルゾンビ達は怯んでいる。

武器となったワイトのおかげでデュエルゾンビの壁が無くなり、道が開く。

 

「先に行くぞオブライエン!」

 

オブライエンの返事は無く、チラッと後ろを見た時には、オブライエンが相手をしていたデュエルゾンビ達がいなくなっていた。

 

 

 




どうして決闘者なのにデュエルをしないんだ・・・・。


まあデュエルを入れない利点って、投稿ペースとストーリーのペースが速くなるんですよね。異世界に飛ばされる前の、コブラとジムのデュエル構成に時間を掛けたからか、余計にそう思えます。
こういうアニメじゃねぇから! (こういうアニメです)


最後はみんな大好きワイトビートで押し切りました。

遊斗「ワイトを持って物理で殴る」


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第五十三話

この回入れてついに四話連続デュエル無しという・・・・。
そのおかげで一週間の間に五話投稿出来たので結果オーライですが。


一ヵ月ぐらい言うのが遅いですが、漫画innocentでもなのはの運動音痴設定は無くなりましたね。movie2ndでもフェイトとリアルファイトしてましたし。
innocentはパラレルですし、movieも少し違いますが似たようなものなので、運動音痴設定無くてもモーマンタイですが、ここ最近二次創作書き始めた方はどっちの設定を使ってるのかいささか気になりました(自分で調べろ)



あれから一時間以上かけてデュエルゾンビをまいた俺は、ようやく購買まで戻って来た。囲まれない限り、デュエルゾンビから逃げるのは決して難しい事ではないが、ただ逃げるだけではデュエルゾンビを購買まで誘ってしまう。だから一時間以上かけたのだ。

 

「「遊斗!」」

「遊斗先輩! 心配したドン!」

「よく帰って来たな、遊斗」

 

出迎えてくれたのは十代、ヨハン、剣山、ジム。入口から少し離れた場所に明日香が居り、眠っているレイちゃんの看病をしている。話を聞くに、レイちゃんの呼吸の乱れは無く、頬の朱も大分収まって、気持ちよさそうにグッスリ寝ているらしい。

 

「オブライエンは一緒じゃないのか・・・・?」

「ああ・・・・。でも心配するな。あいつは俺より先に包囲網を突破していた。きっと大丈夫」

「そうだよな!」

 

レイちゃん救出作戦は、無事にではないが成功する事が出来た。だがもう一つの食糧庫奪還はかなり難しい。オブライエンがいなくなったから、作戦を立てるのも難しくなった。

しかも食糧が調達できない為、自然と食糧不足になってくる。今もなお、食事を要請する声が多数上がっている。

 

「腹減ったぞ!」

「早く食事を出せ!」

「まだ今日一回しか食べて無いわ!」

 

さ~て、どうしたものか・・・・。皆一週間の間は食事に不自由ないと思っていたのと、突然同じ学校の生徒がデュエルゾンビになった事で、かなり気が立っている。これは抑えようとしても難しいだろう。

そうなると目標は食糧庫奪還か、あるいは・・・・。

 

「おい、三沢」

「・・・・」

 

購買の壁一面に計算式を書いている三沢の名を呼ぶが、夢中になって計算しているのか、返事が無い。

 

「三沢!」

「ん? 遊斗か。どうしたんだ?」

「元の世界に帰る算段は見つかったか?」

「いや、やはり俺だけだとどうしようも出来ない。だが一つ、万が一だが元の世界と連絡を取る可能性が無くは無い」

「本当か!?」

 

三沢の言葉を耳にした十代、ヨハン、ジム、剣山の四人が集まってくる。他の生徒は食べ物を寄越せと騒いでいる為、耳に入らなかったようだ。

 

「発電所。ひょっとしたらそこの電気エネルギーなどを利用して、元の世界から通信してきているかもしれない」

「それが本当なら行ってみる価値があるぞ。アカデミアごと飛ばされた大事件だから、父さんがいるかもしれない!」

 

 

 

 

発電所に行くメンバーは俺、ヨハン、三沢の三人。下手に大人数で動いても目立つだけなので、最低限の人数で行く事にした。モンスターを召喚できる二人と、身体能力の高い俺が出た訳だ。

相変わらずデュエルゾンビの数が多く、ヨハンと三沢が召喚したモンスターで道を開いて突き進んだり、デュエルディスクを物理的に破壊したりする事で、何とか発電所近くまで来る事が出来た。

 

「ハァ、ハァ・・・・。昔からお前は運動できる奴だったが、まさかデュエルモンスターズと戦える程とは」

「俺もつい最近まで知らなかったよ」

 

もうその事で考えるのは面倒だったので、軽い口調で適当に流した。発電所の中にはデュエルゾンビの気配は無く、電線から青い稲妻がバチバチと漏れていた。

 

「通信の気配な無いが・・・・」

「俺の計算が合っていても、結局は向こう頼みだ。やはり無理だった『君は私を馬鹿にしているのかい?』ツッ!?」

 

相手を馬鹿にするような落ち着いた声により、三沢の独り言は途切れた。ノイズが入って少し聞きとり辛いが、この声は間違い様が無い。慌てて辺り一面を見渡すと、二本の電線がバチバチバチと巨大な音を出しながら、青い電気を放つ。すると上下に平行にして並んでいる二本の電線の間に、モニターが現れた。モニターは一昔前のテレビの様にノイズが入っているが、そのモニターに映っている人物はすぐに分かった。

 

「父さん!」「ジェイル博士!」

『まさか三沢君とデュエルアカデミアが飛ばされた次元が同じとはね。運命って奴かな?』

「そんな呑気な話をしてる場合じゃないだろ!? 帰る方法はあるの!?」

『久しぶりに会った父親に酷い言い草じゃないか』

 

それはあんたが夏休みの間ずっと研究室に籠っていたからだろう! と突っ込みたかったが、グッと堪えて我慢した。

 

『結論から言うとある。この世界と君達の世界を繋ぐ事が出来るのは、一枚のカード。究極宝玉神レインボー・ドラゴン』

「「「レインボー・ドラゴン!?」」」

「けどあれは見つかっていない!」

『君達は運がいい。つい先程レインボー・ドラゴンの石板が見つかった。今ペガサス会長がデザインしている頃だよ』

 

こんな事件に巻き込まれた時点で運がいいとは到底思えないが、まあ不幸中の幸いと言うべきか。帰る手段が見つかったのは何よりも大きい。

 

『そのレインボー・ドラゴンの爆発的エネルギーでデュエルアカデミアごと戻せるだろう』

「けど待って下さい! そのレインボー・ドラゴンがこっちの世界に無いと!」

『勿論それについても考えている。こっちの世界とそちらの世界を繋いでデュエルをする。その時に発生する膨大なデュエルエナジーを使用する事で、そちらの世界にレインボー・ドラゴンを送る事ができる』

 

いいぞ! 段々希望が持ててきた。これなら無理に食糧庫を奪還する必要も無い。

 

「具体的な方法は?」

『まずペガサス会長のデザインに数時間が掛かる。更にそのデザインを元にカードを作らなくてはならない。それを入れると、デュエルが出来るのは今日の夜遅くだろう』

「それまでに俺達がやっておくべき事は?」

『誰にもデュエルを邪魔されないスペースを確保し、そこにこの施設のエネルギーを送り込む。それくらいだよ』

 

たった一つしかないが、これが結構厳しかったりする。今現在この場所にデュエルゾンビがいないが、何もバリケードがないからいつデュエルゾンビが来てもおかしくない。比較的購買に近く、バリケードを作りやすい場所と言えば――。

 

『おっと。もうそろそろ限界の様だ』

「待ってくれ父さん! この世界に飛ばされた時、精霊達(みんな)のエネルギーが使われてカードが真っ白になったまんまなんだ! それにこの世界に来てから、俺の体がおかしくて!」

『ほう。いつの間にかお前も面白い存在になって来たものだ』

「ふざけてる場合じゃ『一つだけ言おう。私を倒した奴等は殺しても殺せない奴らだ』・・・・」

『また会おう』

 

父さんが言い終えると共にノイズが酷かったモニターがプツりと切れ、二本の電線が発していた青い電気が消えた。

さっきの父さんの台詞からするにみんなは無事なんだろうか? あの人はどうでもいい嘘をついたり、信じられない様な真実を口にしたりするから、今一素直に喜べない。それにもう一つの質問にも答えてもらっていない。

腰に付けたホルダーからデッキを取り出して、一番上にあるカードを見る。相変わらず真っ白のままだったが、この気配から、なのはのカードだろう。

 

「・・・・」

「心配するな遊斗! お前の親父さんって天才なんだろ? その人が大丈夫って言うんだから大丈夫さ」

「それに今は落ち込んでいる場合じゃない。スカリエッティ博士が仰られた通り、俺達はやるべき事をやろう」

「そう・・・・だよな。悪い。どうもみんなの事になると、弱くなってしまう」

「気にすんなって。それでデュエルゾンビに邪魔されない場所ってどこかあるか?」

「一つある。月一試験が行われるデュエルフィールド。あそこなら購買に近くてバリケードも貼りやすい」

 

 

 

 

目的が決まった俺達は、早速行動に映った。まず発電所のエネルギーをデュエルフィールドに送りこんだ。普通の高校生でも、普通じゃない高校生でも、発電所の操作方法なんて全く知らないのが当たり前だが、何と三沢は知っていた様で、見事デュエルフィールドに電気を送り込む事が出来た。

その後デュエルゾンビから逃げながら購買に戻り、購買にいる全員に事の全てを説明。これで食糧庫を奪還しなくてもすむと言ったのだが――

 

「今夜まで待てって言うのか!」

「それに絶対帰れる訳じゃないだろ!」

「食糧庫は絶対に必要よ!」

 

と、十代、ジム、明日香、クロノス先生、ナポレオン先生とトメさんとセイコさん以外の全員非難の声を上げている。

これ以上コイツ等は俺達に何を求めているのかは知らないが、自分で動かない奴等の我が儘にもそろそろ限界が近づいてくる。が、堪忍袋の尾が切れるギリギリのラインに居ようとも、俺はブルー寮三年のエースなのには変わりない。なるべく冷静に冷静に・・・・。

 

「みんな落ち着け。腹が減っているのは分かる。俺達も同じだ」

「嘘だ!」

「自分達だけ多く食べているだろ」

「そんな事ないわ。みんな平等に別けているよ」

「それにだ。仮に食糧庫を奪還しても限界がある。今、目先の食糧に気を取られて数日後野たれ死ぬより、今我慢して早く帰る方が良いだろ?」

 

冷静な判断能力を皆が持っていれば、潔く後者の案を引き受けてくれただろう。だが今は食糧不足と、デュエルゾンビの徘徊、異世界に飛ばされた事によりかなり混乱している。一度ヒートアップした彼等の勢いは止まらなかった。

 

「夜まで我慢しないといけないんだろ!?」

「そんなの無理だよ!」

 

・・・・そろそろ我慢の限界だよ。こちとら家族がいなくなって、恋人がいなくなって、人外の力で混乱してるって言うのに、その上お前達の戯言まで聞かなきゃいけないのかよ・・・・。あいにく俺は十代みたいに明るくないし、ヨハンのように優しくないんだ。

我慢の限界ですぐ隣にあるロッカーをぶん殴ろうとしたその時――

 

『へ~、ずいぶん食料に困ってるみたいだね』

 

突然スピーカーから少年の声が聞こえた。どこかで聞き覚えのあるこの声は。

 

「マ、マルッち?」

「マルタン!? マルタンでアールか!?」

『そうだよ。マルタンさ。そしてデュエルゾンビを操る王でもある』

 

あのマルタン君がデュエルゾンビを操っている? 俄かに信じ難いが、デュエルゾンビがうろついている状況で、放送室に居ると考えると嘘とは思えない。それ以前にこっちの声が向こうに聞こえている時点で普通では無い。

 

「マルタン、何をしているアールか! 何故こんな事をするのでアール!」

『僕の目的? それはね、マルタン帝国を作る事だよ。それが僕の望みであり、野望でもある』

 

それは中学生ほぼ全員が発症するであろうあの病気が、高校生になっても未だに続き、更に重症なのだろうか? しかし、いくら中学生ほぼ全員が発症してしまう例の病気が重症だとしても、デュエルゾンビを操る原因にならない。

 

『十代。僕と取引をしないか?』

「へ? 俺か?」

 

この雰囲気に似つかわしくない、間抜けな声を出しても無理は無いだろう。十代とマルタン君は接点も何もない。あるとしてもレイちゃんを繋いで、顔見知りくらいのはず。

 

『食糧庫を君達に上げよう。勿論デュエルゾンビに邪魔をさせない』

 

食糧が切れかかっている俺達には、文字通り喉から手が出る程美味しい話だ。さっきまでガミガミと喚いていた生徒達が一斉に【ワァァアッ!】と歓声を上げる。

だが条件が余りにも厳しすぎた。

 

『その代わり発電所を僕にくれないか?』

「なっ!? そんな事出来る訳ないだろう!」

 

さっきの話を忘れ居ているのか、腹が減っている生徒達は非難の声を上げる。

 

『君に拒否権はない。デュエルゾンビを一斉に押しかければすぐに出来る。でもそれじゃあ面白くないだろう?』

「ふざけるなマルタン! 俺とデュエルしろ!」

『ふふっ、君ならそう言うと思ってたよ。いいよ、じゃあ今から二時間後、デュエルアカデミアの前でデュエルをしよう。けど普通のデュエルじゃ面白くないし、そっちから三人代表を出しなよ。三人全員が勝ったら食糧庫を上げる。じゃあね、十代』

「待つのでアールマルタン!」

 

放送を切るのを止めようとするが、ナポレオン先生の声がマルタンに届く事は無かった。

勝てば食糧庫を手に入れられるし、発電所も守る事が出来る。これ以上無いくらい最高の案に、皆大声を上げて盛り上がっている。

そんな中、やけにマルタン君の名前を呼んでいた、ナポレオン先生の元へと行く。

 

「ナポレオン先生。あなたとマルタン君の関係は?」

「・・・・マルタンは、私の息子でアール」

「そう、ですか・・・・。もしよろしければ名字が違う事を聞いても?」

「マルタンは離婚した母に引き継がれたから名字が違うのでアール。きっとマルタンがあんな事をしているのは、私と母が離婚してしまった所為なのでアール」

 

そう言う事か・・・・。

しかし両親が離婚した所為でデュエルゾンビを操れるようになったら、今頃世界は滅んでいる。マルタン君が何かを抱え込んでいたとしても、何らかのきっかけがあった筈。

その時ふと、十代を知っている金色の精霊、コブラの左腕が一瞬化け物になった事、レイちゃんの左腕の傷、この三つが重なり合った。

 

「もしかすると・・・・」

 

化け物になったコブラの腕と、レイちゃんの左腕の傷。どちらもハッキリと見た訳ではないので分からないが、形がかなり似ている気がする。コブラの左手が金色の精霊の力だとすれば、あの金色の精霊は今度はマルタン君に取り付き、近くに居たレイちゃんを傷つけた。

そう考えると、接点のないマルタン君が十代に話しかけていたのにも、マルタン君がデュエルゾンビを操つれる力を持っているのも納得できる。

 

「それで誰がデュエルに出るザウルス?」

「俺は絶対出るぜ。マルタンが何で俺を呼んだかは分からないが、デュエルじゃ絶対に負けない」

「トゥーミー。十代に同じく」

「俺も出るぞ」

「ヨハンは駄目だ。さっき父さんに言われたばっかりだろ」

「大丈夫だって。それに俺だって腹減ってるんだ。絶対に勝ちたい」

 

俺を見るヨハンの瞳は、一度言い出したら絶対に考えを曲げない時の十代の瞳にそっくりだった。

しっかりしているのかしていないのか、今一よく分からないヨハンの言葉に、ハァとため息を吐くしか無かった。

 

 

 

 

それから二時間後。マルタン君は本当にデュエルゾンビを操れる様で、安全無事にデュエルアカデミアの表に来る事ができた。因みに購買に居た全員が、十代、ヨハン、ジムの三人を応援に来ている。

三人の相手であろう三つの人影。その正体はなんと、デュエルアカデミア生徒、原田、寺岡、山中の三人。しかし三人ともデュエルアカデミアの制服を着ておらず、デュエルモンスターズと融合させられたのか、人外の恰好をしている。

 

「いっけぇぇ!」

「絶対に勝てよぉぉ!」

 

・・・・やっぱり話が上手過ぎる。マルタン君がこの話を出した時点で、こっちには言わずと知れた十代と明日香がいるし、留学生代表のヨハンとジム、更に実技担当最高責任者であるクロノス先生もいる。一人でも勝てば発電所が手に入るとはいえ、この布陣相手に挑んでくるだろうか?

最初はマルタン君本人が出てきて、確実に一勝をもぎ取って来るかと思ったが、出てきたのはそこまで強くない原田、寺岡、山中の三人。

 

「何ダメージくらってるんだ!」

「負けたら絶交だからな!」

 

そもそも何でマルタン君は発電所を狙っているんだ? デュエルゾンビを操って占領するにしろ、この勝負に勝って奪うにしろ、発電所を手に入れる意味が無い。それにデュエルゾンビで占領しても面白くないと言ったが、実際はデュエルをする事が目的?

 

「まさかッ!」

 

一つの推理が成り立った途端、俺は三人のデュエルを見届けるのを止め、走り出した。

色々とあり過ぎて混乱していたが、デス・ベルトの影響でデュエルをするとデュエルエナジーが奪われる。それが目的で不利なデュエルを挑んできたとすれば、つじつまが合う。

デュエルエナジーを集めて何をするかは分からない。この世界に来る前に、ジムに説明した通り、デュエルエナジーはどんなエネルギーか分からない。ただ一つ俺は、デュエルエナジーの使い道を知っている。

 

「どうして気が付かなかった! マルタン君が狙っているのは発電所じゃない!」

 

デュエルゾンビを作り出したのも、発電所をかけてデュエルを挑んできたのも、全てあの三枚の復活の為。

うろついているデュエルゾンビ達を無視してあの三枚が眠っている場所へと走る。できれば外れて欲しかった俺の推理は的中した様で、その場所にはマルタン君の姿がいた。

 

「マルタン君! いや、カードの精霊と言った方がいいのかッ!」

「君は・・・・。へぇ、僕の目的と正体に気付いたのか」

 

マルタン君が振り返ると、もう一つの推理も当たっていた様で、マルタン君の左腕はコブラと同じように化け物になっている。

 

「デュエルを挑んできた時から変だと思ってたんだ。デュエルゾンビを操れるなら態々デュエルを挑む必要も無いし、そもそも発電所を狙う理由も無い。だから分かったんだ、態々デュエルエナジーを集めるのは強大な力、三幻魔を手に入れる為だってな」

「君は思った以上に頭がいいんだね。けどLSがいない君が僕をどうやって止めるつもりだい?」

「こうするのさッ!」

 

マルタン君の体を傷つけるのは嫌だが、今目の前にいる少年はマルタン君では無く、みんなの力を利用して、コブラを殺した精霊。これだけでも許せないのに、奴は三幻魔の力まで手に入れようとしている。

 

「なっ!?」

 

俺の事をただの人間だと思っていたのか、奴は油断していた。予想以上に素早く接近してきたからか、俺が繰り出した拳に対処できず、溝への攻撃を許した。いくら精霊とはいえ、体はマルタン君だ。これをくらったらひとたまりも無い筈。

そう思った刹那、突然溝辺りに、まるで何かに殴られたかの様な痛みが走った。

 

「カハッ!?」

 

いくら頑丈な体でも急所はそこまで頑丈じゃない。突然の来る溝への痛みに、一瞬呼吸が止まる。

 

「フフッ。僕の痛みは君自身の痛みなんだよ」

「お、前の、効果、かっ・・・・」

 

奴の正体が何か分からないが、反射ダメージ系統で間違いない。マルタン君の顔は痛みを感じておらず、むしろニヤニヤと余裕の表情のまま見下ろしてくる。

 

「君は十代の親友って言ってたね。十代に必要なのは僕だけだ。十代には他の何もいらない」

 

意味不明な事を言いながら化け物の腕が俺の首を掴み、呼吸を無理やり止めてきた。

奴から離れる為に右肘を、それこそ骨を折る勢いで化け物の腕に打つ。

 

「ツッ!?」

「言ったでしょ? 僕の痛みは君への痛みになる」

 

嘘・・・・だろ? 何をしても奴へのダメージは俺が受ける。これじゃあ何をやっても、どんな事をしても奴を倒す事は出来ないし、奴から逃げる事が出来ない。

しかも・・頭まで・・・・ボーと・・・・。

化け物の腕が霞んできて、記憶が走馬灯のように駆け巡った。

ずっと一緒だったみんな。この学校に入って初めて出来た友達。尊敬する先生や先輩も出来たし、慕って後輩もできた。

一年前に出来た恋人、フェイト。昔はずっと甘えてて、今も偶にだけど甘えさせてもらって。フェイトが最後に見せてくれた表情は、凄く辛そうだった。

 

「まだ、死ぬ・・わ、け」

「君は死ぬ。これで十代が悲しんで、苦しんでくれたら君に感謝するよ」

 

奴の最後の言葉がもう耳に入らなかったその時だっただろうか? 全てが朦朧としている中、突然ゴゴゴゴ! と、爆音が鳴った。

 

「ゴホ゛ッゴホッ! ハ゛ァ゛、ハ゛ァ゛! ハァ、ハァ・・・・」

 

突然呼吸が可能になり、無我夢中で肺に空気を送っては吐き、送っては吐いた。暫くの間、それがどのくらいの時間かは分からないが、体感時間では既に数十分経っている気がした。

ようやく意識が戻って行き、何が起こったのか辺りを確認する。

少し離れた場所でマルタン君の体が倒れており、それを見下ろす一人の少女の姿があった。腰まで当たる長い栗色の髪をした少女。着ている服はウエディングドレスの様に派手で、肩や肩甲骨辺りが露出して、スカートはフレア状になっている。しかし普通のドレスとは決定的に違うものがある。色だ。彼女が着ているドレスは、紫が混ざった黒のライン以外、全て漆黒。

 

「久しぶりだね。え~と、あの時は冬だったからもう半年以上前かな?」

「君は一体・・・・」

「僕? 僕はフェルシュトラーフェ」

 

三幻魔と一緒にどこかへ行った、フェルシュトラーフェがそこにいた。

 

 




フェルシュトラーフェが出ると予想した方、大正解でございます! 8888!
と言う事で、どこかに行っていたフェルシュトラーフェが出ました。最初は出す予定無かったんですが、やっぱ三幻魔関係なので出したかったんですよね。


今回は遊斗のハイパー推理で色々とフラグを回収したりしました。主人公の力ってすげー!
けど反射ダメージ持ちには勝てないと。


しかしデュエル脳のスカさんと言うのもかなりシュールなシチュエーションだと思います(苦笑)
スカさん「その方法はレインボー・ドラゴンだ!」


遂に次回デュエルがあるので、少し更新が遅れるかもしれません(この五話が早すぎた)


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第五十四話

更新が遅れて申し訳ありません。
前回デュエルで遅れると言っていましたが、それに加えスランプでしばらく執筆していませんでした。まだスランプの途中だと思うので、更新には時間がかかるかもしれません。
まあこういう時は余り深く考えない様にしています。


てかリリパで劇場版新作の発表があったらしいですね。完全オリジナルとなると、ますます盛り上がりますね。しかもそのリリパで結婚発表があったと言う・・・・。行かれた方は楽しめただろうな~。




「フェルシュトラーフェ?」

「驚いたよ~。グルグルと世界回ってたら、遊斗がいるんだもん。しかも死にかけ」

 

フェルシュトラーフェは目の前に敵がいるのにも関わらず、ピョコピョコと嬉しそうに跳ねながらこっちにやって来た。あの時と変わらず、九歳のなのはそっくりで、左の前髪の螺旋状に並んでいる赤・青・黄色のメッシュと、サファイアとルビーのオッドアイが特徴の女の子。

 

「どうしてお前が「だ~か~ら~、僕も偶然通り掛かっただけなんだって」そ、そうか」

 

ほんの僅かな時間しかこの子と一緒にいなかったが、この子が嘘を吐けない純粋な子というのは分かる。だからこれ以上何も聞かず、若干ダルい体を置きあがらせる。

 

「君には僕の力が効かないみたいだね」

「うん! 僕は強いからね」

「けどいくら強くてもこれは辛いでしょ?」

 

奴は左腕の化け物の腕から突然デュエルディスクを生やし、セットされたデッキから五枚のカードをドローする。

 

「手札の封印されしエクゾディアの効果発動! 封印されし者の右腕、左腕、右足、左足とこのカードが揃った時、相手に∞ポイントのダメージを与える! 怒りの業火エクゾード・フレイム!」

「んな!? 詰め込みかよ!? 逃げるぞフェルシュトラーフェ!」

「え~、何で~?」

 

なんて言ってる間にも空中に現れた魔法陣から巨大な右手と左手が出ている。

フェルシュトラーフェの手を掴んでエクゾディアの真正面から急いで逃げる。既にエクゾディアを召喚した奴の姿が見えなかった。三幻魔の元へ行ったのだ。

 

「えへへ~。遊斗の手、暖かいね」

「そりゃあ興奮してるからな!」

「こ、興奮って僕の「違う! エクゾディアだ!」む~、そんなに言うなら僕が倒してあげる」

 

エクゾディアの力が精霊世界でどれくらい強いのかは分からないが、封印が解かれたエクゾディアを止めるのは不可能。だからこうやって逃げている訳だが、いつの間にか握っていた筈の、フェルシュトラーフェの手の感覚が消えた。

まさかと思いエクゾディアが召喚された方を見ると、あろうことかエクゾディアの目の前で鎌を持って浮いていた。

既にエクゾディアの封印は解かれた。標的を見つけたエクゾディアは、フェルシュトラーフェに向けて右手に溜めた炎を撃とうとする。

 

冥界の制裁(ヴィルト・シュトラーフェ)

 

コンマ一秒もあったのだろうか? いつの間にかフェルシュトラーフェの姿は、エクゾディアの後ろにあり、彼女がポツリと呟いた魔法名が、この広い砂漠に響いた気がした。

彼女の声が鼓膜を振動した刹那。魔法陣と共に、エクゾディアの体が真っ二つになり、バリンと音を立てて消える。

 

「どう? 凄いでしょ?」

 

いつの間にか俺の目の前まで来た彼女を見て改めて思う。この子は異様なまでの力を持っている。それこそエクゾディアの力を凌駕するほどの。

 

「ああ、ビックリした。正直エクゾディアを倒せるなんて」

「あのカードがどれだけ強いかは知らないけど、結局は封印されてたんでしょ? 封印されるくらいのカードに僕は負けないよ」

「自分の力は封印出来ないって事か?」

「だって僕が抵抗するからね。そんな事より遊斗、あいつ追いかけなくていいの?」

「ツッ、続きは走りながら話す!」

 

エクゾディアを切断するフェルシュトラーフェの姿に茫然としてしまい、いつの間にか奴の事を忘れていた。フェルシュトラーフェなら転移魔法とか使えそうだけど、若干――というかかなり不安なので、走って追いかける。

奴が消えた場所の近くには地下へと続く階段があった。フェルシュトラーフェがいる安心感と、一刻も早く奴を止めないといけない正義感に押され、中を確認する前に入る。

 

「それでフェルシュトラーフェ」

「フェルシュトラーフェじゃ長いから、フェルって呼んで」

「じゃあフェル。単刀直入に言うと、真っ白になったみんなを元に戻す事は出来るか?」

 

俺の真横を飛びながら進んでいるフェルに、真っ白になったカード一枚を渡す。するとフェルは、飛びながら腕を組んでう~んと唸る。

 

「出来ない事も無いけど、かなり力を奪われてる。全員分は厳しいね」

「最低限デュエル出来るレベルまでだったら?」

「カードに絵を戻すだけだったらそんなに力使わないかな。けど数が数だから、僕もちょっとグロッキーになっちゃうかも」

「そこを何とか!」

 

全力疾走中に両手を合わせて頭を下げる事が出来る俺は、やはり色々とおかしくなっている。しかしそんな事より、今はみんなを取り戻す方が先だ。今目の前にその方法があるなら、それに頼るしかない。

 

「嫌だ~。って言いたいけど、僕自身LSだから、この人達は無視できないんだよね~。う~ん、じゃあ今度美味しいものちょうだい? 遊斗の手作り」

「それくらいだったらいつでも食わせてやる」

「交渉成立だね~。けどデュエルするギリギリまではお預けだから」

「分かってる」

 

坂道は一本道だったので迷う事も無く、無事に最下層まで到達する事が出来た。最下層は結構大きい広間があった。まあ広いと言っても中学校の体育館ぐらいの大きさだ。

この広場に入って真っ先に目に入ったのは、三幻魔のカードが封印されているケースに近付く奴の背中。

 

「フェル!」

「任せて!」

 

フェルは素早く右手を前に出し、超高速でバインドを出して奴の体を縛る。しかし次の瞬間、赤・青・黄の三色が螺旋状になって並ぶバインドはバリン! と粉々になって粉砕された。

 

「あれっ?」

「フフッ、残念だけど、三幻魔は僕に力を貸してくれるみたいだ」

 

三幻魔のカードを封印していたケースから三枚のカードが奴のデッキに向かって飛んでいく。あの絵柄は忘れようと思っても忘れられない。

神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエル。

 

「自分達の力を奪った君を恨んでるみたい」

「フェルは三幻魔が融合した事で初めてカードに収める事が出来たモンスター。力を奪われた三幻魔じゃ勝てない筈・・・・」

「説明してあげるよ。前の世界でコブラは僕に莫大なデュエルエナジーを与えた。だけど僕は完全に復活せずに、こうやって人の体に乗り移っている。これは何でだと思う?」

 

この世界に俺達を送る為? いや、それはみんなの力を奪って行なった。デュエルエナジーは関係ない。つまりこいつはコブラが送って来たデュエルエナジーで自分の体を取り戻すと同時に――

 

「三幻魔の力を取り戻す為に、そっちにもデュエルエナジーを送り込んだって事か」

「正解! 君は凄いよ。そこにいる奴以上に面白い存在だ」

 

奴が指差した先にいたのはずっと気になっていた留学生の一人、アモンだった。

 

「アモン!? どうしてここに!?」

「すまない。三幻魔を守る事が出来なかった」

「嘘はいけないよ。君も三幻魔を狙って僕とデュエルをしたじゃないか」

「・・・・」

 

じゃあアモンの怪しい行動や、ガラム財閥の潜水艦が合ったのは、三幻魔を奪う為?

そうなると一応繋がる点はあるが・・・・。

 

「遊斗が思ってる推理じゃないと思うな。あの男の人、何だか黒いモヤモヤを持ってる」

「流石三幻魔が融合した姿。その手の感情にはお詳しい。実はね、アモンと僕は初対面じゃないのさ。この世界に来る前から僕とアモンは知り合いだった」

「ツッ!? そうなのかアモン!?」

「そうだ。僕の、いや、ガラム財閥の目的は三幻魔では無く、この精霊だったんだ」

「だけどアモンはガラム財閥関係なしに、個人的に僕の力が欲しくなった。本当なら僕もそうしてあげたかったけど、僕はマイペースでね。約束を破ったのがいけなかったのかな? 今じゃこうやって僕に抵抗してくる」

 

いまいち背景設定が読みとれないが、つまりアモンは敵でも味方でも無いって事か。いや、敵の敵は味方とも言うから、今はこっち側と考えてもいいかもしれない。

 

「色々と疑問は解決した。後やるべき事は一つ」

 

左手のデュエルディスクを起動させ、腰に付けているホルダーからデッキを取り出してデュエルディスクにセットする。たった数日デュエルをしていなかったのに、もう何ヶ月もデュエルをしていない様な気がする。

 

「三幻魔対三幻魔って事か。いいよ、受けて立とう」

「アモン、ここは危ない。今は見逃してやる」

「・・・・感謝するよ」

 

感謝の欠片も無いトーンでそう言って、アモンは俺達が入って来た入口とは別の場所に走って行った。

 

「フェル。頼むぞ」

「りょ~かい。あっ、それと三幻魔のカード渡しておくね」

「ホント、何から何まですまないな」

「そう思うなら愛情込めて料理作ってね」

 

フェルは三幻魔のカードと存在しない者を手渡すと同時にスッと姿を消した。存在しない者を入れるついでにデッキを確認すると、真っ白だったカード達が元に戻っていた。

嬉しさの余りに思わず泣き出しそうになったが、グッと我慢して、瞳に溜まった涙を腕で拭う。

 

「おかえり、みんな・・・・。さあ行くぞ!」

「フフッ、感動の再会は出来たみたいだね」

「「デュエル!」」

「先攻は僕が貰う。ドロー! 永続魔法トライアングル・フォースを発動! 発動時にデッキから同名カード二枚を発動できる!」

 

効果がそれだけとは言え、たった一枚でフィールドに三枚の永続魔法を出すのはかなり強い。これで奴のフィールドに三枚の魔法カードが揃った。

 

「三枚の永続魔法を墓地へ送り、光来せよ! 降雷皇ハモン!」

 

AD4000

 

デュエルフィールドを埋め尽くすほどの巨大な氷柱が地面から生えた。先の尖った氷柱の中に眠っているのは、三幻魔の一角、降雷皇ハモン。ハモンは氷の牢獄を破壊して、完全なるその姿を俺達の前に現す。

 

「永続魔法? 影丸理事長やエンディミオンが使っていたハモンの召喚条件は魔法カード・・・・」

「君が力を奪ってしまった所為で効果も一部変わってしまったみたいだね」

 

三幻魔もエラッタには敵わないって事か。となるとウリアの特殊召喚条件も永続罠になり、ラビエルも何らかの縛りが追加されたと思っていい。

けど手札消費たったの二枚で攻守4000のハモンを出したのは流石と言える。

 

「カードを三枚伏せてターンエンド」

 

マルタン モンスター1 伏せ3 手札1 LP4000

 

「俺のターン」

 

デュエルを始めてもう十何年も毎日この台詞を言って来たから、たった数日口にしていないだけで、この台詞を言うのも随分久しぶりな気がする。デッキトップに人差し指と中指を当て、一回大きく息を吸って長く吐く。みんなと一緒にいなかった時間がそうさせたのか、不思議とデッキトップのカードが分かる気がした。

 

「ドロー!」

 

この感覚だ。全ての感情をこのデッキトップに込めて、たった一枚のカードを力強く引くこの感覚。

 

「スタンバイフェイズ、永続罠暗黒の呪縛を発動! 魔法カードを使う度に1000ポイントのダメージを受ける。これで少しは行動が制限できたかな?」

 

手札にある魔法カードは三枚。つまりダメージを考慮すれば俺は半分の手札を封じられた事になる。だが甘い。

 

「永続魔法時空管理局を発動!」

「ダメージは恐れないと。1000ポイントのダメージを与える!」

 

暗黒の呪縛のカードから禍々しい黒いエネルギーが発射され、視界を一瞬の間だが真っ黒に染めた。三幻魔の力が働いているからか、やはりデュエルのダメージが体を襲ってくるが、この程度どうってことない。

 

遊斗LP4000→3000

 

「頼むぞ。フェイトを召喚! 効果でLCを置く!」

 

LCフェイト1

A1800・D500

 

まだ完全に力を取り戻していないから、フェイトの優しい笑みや声を見聞きする事は出来ないが、大好きな彼女の姿を再び見られただけでも十分だ。

 

「フェイト・・・・」

「涙の再会中申し訳ないけど、デュエルを進めてくれるかな?」

「分かってる。手札のすずかを魔法カード扱いとして魔法・罠ゾーンに置く。これは発動じゃないからダメージは受けない。すずかの効果でフェイトのLCを自身に移動」

 

LCフェイト1→0 すずか0→1

 

「すずかのLCを取り除いてデッキからアルフを特殊召喚! 場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LC時空管理局0→2

A2800・D500

 

「装備魔法バルディッシュをフェイトさんに装備!」

「暗黒の呪縛の効果で1000ポイントのダメージを与える!」

 

フェイトA2800→A3800

遊斗LP3000→2000

 

「バトル! フェイトさんでハモンを攻撃! 効果で攻撃力を1000上げる!」

「永続罠、デモンズチェーンを発動。これで黒騎士フェイトの攻撃を封じる」

 

やはり永続罠を伏せていたか。王様はやてさんやホーリーシャマ姉が使う鎖によく似た、禍々しい鎖がフェイトさんの体を縛って動きと効果を封じる。

 

「無限書庫を発動! 効果でバルディッシュをデッキに戻して二枚ドロー!」

「まさか君はッ! クッ、暗黒の呪縛はミスだったみたいだね」

 

遊斗LP2000→1000

 

これでライフは1000以下。しかもドローしたカードの中にあのカードが入っている。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

遊斗   モンスター1 伏せ3 手札2 LP1000

マルタン モンスター1 伏せ3 手札1 LP4000

 

「ドロー! 永続罠、メタル・リフレクト・スライムを発動」

 

A0・D3000

 

「この時点で永続罠、存在しない者を発動! ライフが1000以下の時に発動可能。自分フィールド上のLSを生贄にして、生贄にしたモンスターの名前が含まれるレベル11のモンスターを融合デッキから特殊召喚する。黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に、光来せよ! 降雷皇フェイト!」

 

LC時空管理局2→3

AD4000

 

地下に居ても感じられる程巨大な雷の音が頭上から聞こえて来る。その直後、ズドドド! と天井の岩を破壊して黄色い雷が降りてきた。雷の威力に耐えきれず、さっきまで頭上にあった地面は、文字通り粉々になった。三つの太陽の光に照らされる中現れたのは、ハモンの体のパーツを装備した降雷皇フェイト。

 

「GYAAAAAAA!」

「ツッ、随分気がたってるみたいだね」

 

自らの力を奪った降雷皇フェイトを前にし、ハモンは空気の振動を肉眼で感じられる程の爆音を上げて威嚇する。奴によって力を奪われていない降雷皇フェイトは普通に話せる様で、ハモンの怒りの咆哮に冷や汗を流している。

 

「じゃあ行くよ、二枚目の幻魔を! 暗黒の呪縛、メタル・リフレクト・スライム、デモンズチェーンの三枚を墓地へ送り、新来せよ! 神炎皇ウリア!」

 

先程降雷皇フェイトが開けた天井から、天へと昇る巨大な火柱が現れる。その火柱は空を優雅に泳いでいる雲を斬り裂く。だがこれは、登場する前の演出にすぎない。火柱の中から現れたのは、オシリスの天空竜と対をなす、蛇の様に細く巨大な体を持った、神炎皇ウリア。

 

ウリアAD0→A3000

 

「フィールド魔法失楽園を発動!」

 

水も無く、干からびた植物がかろうじて生きている枯れ果てた大地。毒々しい瘴気の様な雲。一枚の葉も無い枯れた樹の下には、無数の腐ったリンゴが落ちている。三幻魔はその力で、楽園だったこの土地のエネルギーを根こそぎ奪い、楽園を消したのだろう。

 

「失楽園の効果発動! 三幻魔の内一体がいる時、デッキから二枚ドロー出来る。僕のフィールドにはハモンとウリアがいる。よって二枚ドロー! その降雷皇は厄介だね。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗   モンスター1 伏せ3 手札2 LP1000

マルタン モンスター2 伏せ1 手札1 LP4000

 

ウリアの召喚と失楽園の発動だけで攻撃はしてこなかったか。奴は降雷皇フェイトを除去しない限り、俺にダメージを与える事は出来ない。と言ってもハモンの効果を発動させてしまったら俺のライフは0になる。

 

「俺のターン、ドロー! 時空管理局のLCを生贄に、はやてを召喚!」

 

LCはやて1 時空管理局3→2

A2000・D1700

 

「時空管理局のLCを二つ取り除いてデバイスマイスターを発動。デッキから闇の書とツヴァイを手札に加える」

 

LC時空管理局2→0

 

「そしてはやてのLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚」

 

LCはやて1→0 時空管理局0→1

 

「場のはやてとツヴァイを融合! 来い、夜天の主・八神はやて! ツヴァイの効果で時空管理局のLCを取り除いて手札に加える」

 

LC時空管理局1→0→1 はやて2

はやてA2100・D2000→A2700

 

「はやてに闇の書を装備。すずかの効果ではやてのLCを時空管理局に移動」

 

LC時空管理局1→2 はやて2→1

はやてA2700→A3000→A2700

 

「バトル! 降雷皇フェイトでハモンを攻撃!」

「サンダーレイジ!」

 

相手の頭上に雷を落とすサンダーレイジ。その為本来は、相手の頭上に魔法陣を展開させるのだが、何と降雷皇フェイトは自分の目の前に超巨大な魔法陣を出現させた。その大きさはハモンの巨体すらもすっぽり埋まる程の大きさだ。その魔法陣の中心に、辺りに満ちた電気エネルギーと自分の魔力を込め、落雷を砲撃の様に発射してハモンに撃つ。

 

「撃激しろ! 失楽の霹靂!」

 

A4000 VS A4000

 

ハモンの放つ禍々しい雷と、降雷皇フェイトが放つ黄色の雷の威力は五分五分。同じ降雷皇を名乗っているので当然と言える。降雷皇フェイトとハモンは同じタイミングでバリンと音を立てて破壊される。

 

「降雷皇フェイトの効果。デッキから一枚ドロー! 永続罠、存在しない者の効果発動! 夜天の主・八神はやてを生贄に、現出せよ! 幻魔皇はやて!」

 

AD4000

 

突如うごめき出す影。俺の影、奴の影、カードの影、モンスターの影、枯れ果てた樹の影、腐ったリンゴの影。影であればどんなものでも形振り構わずに自らの体を作るパーツにする。一点に集まった影はグニョグニョと蠢く、不気味なスライムの様になったが、本来の姿を現すにつれその姿は美しくなる。

はやてさんのバリアジャケットと同じく、黒いスカートに白のジャケット。違う点と言えば、金色の部分がラビエルの部位で出来ているのと、白のジャケットが長くどちらかと言うとコートに近い点。それとシュベルトクロイツもラビエルの腕の部位で出来ている

 

「幻魔皇はやての効果発動。墓地のフェイトさんとはやてさんを魔法・罠ゾーンに置く。そして闇の書の効果で幻魔皇はやてに装備」

 

はやてA4000→A4300

 

「幻魔皇はやてでウリアを攻撃!」

「罠発動、マジカルシルクハット! ウリアを裏守備にセット。更にデッキから二枚の永続罠を裏守備表示で特殊召喚する。その後セットされた三枚をシャッフル」

 

ウリアはその巨体を?のマークが付いたハットの中に隠した。どう考えてもウリアの巨体はそのハットの中に入らないだろうが、そこはツッコんではいけない。

 

「幻魔皇はやての効果発動! 魔法・罠ゾーンのフェイトさんを守備表示で置く。そして幻魔皇はやてでて真ん中のセットモンスターを攻撃!」

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて撃ち貫け。石化の槍ミストルティン!」

 

A4300 VS D0

 

残念な事にセットされていたのはウリアじゃなくて永続罠カード。エンドフェイズ時にもう一枚の永続罠も破壊されれるから、ウリアの攻撃力は5000になる。フェイトさんを攻撃表示で置かなかったのは、三分の一の確率でも反撃される可能性があったからだ。

 

「ターンエンド」

「エンドフェイズ時にもう一枚の永続罠カードは破壊される」

 

場 失楽園

遊斗   モンスター3 伏せ5 手札3 LP1000

マルタン モンスター1 伏せ0 手札1 LP4000

 

「ドロー!」

「スタンバイフェイズ時に、降雷皇フェイトの効果発動。手札のLSを捨て、再び復活する! 再臨せよ! 降雷皇フェイト!」

 

AD4000

 

再び落雷と共に現れた降雷皇フェイト。奴にとって攻守4000の復活するモンスターは非常に厄介だろう。三幻魔の内の二体が復活する降雷皇フェイトと相撃たれるのだ。

 

「ウリアを反転召喚。墓地の永続罠は五枚、よって攻撃力は5000!」

 

ウリアAD0→A5000

 

「失楽園の効果。デッキから二枚ドロー! 幻銃士を召喚! 幻銃士は召喚成功時、フィールドのモンスターの数だけ銃士トークンを特殊召喚できる。来い、二体の銃士トークン」

 

AD1000

AD500

 

「そして三体の悪魔族モンスターを生贄に、現出せよ! 幻魔皇ラビエル!」

 

AD4000

 

失楽園に落ちる黒が入った青い光線。巨大な青い光の中から現れたのは、最後の三幻魔。幻魔皇ラビエル。召喚するだけでも大災害を起こし、青い光線が落ちた場所には巨大なクレーターが出来ていた。

ハモンと同じく、自らの力を奪った幻魔皇はやてを、文字通り鬼の様な眼で睨みつけている。三幻魔の中で、何故か一人だけ本来の性格とは違う幻魔皇はやては、面倒臭そうに欠伸を掻きながら、ラビエルを大層どうでもいい様な眼で眺める。

 

「幻魔皇はやての効果発動! 魔法・罠ゾーンにいるはやてさんを守備表示で置く」

 

A2100・D2000

 

「バトル! ウリアで幻魔皇はやてを攻撃! ハイパーブレイズ!」

 

A5000 VS A4300

 

巨大な口から放たれるのは、ウリアが従えし炎。それは生命の炎や再生の炎とは程遠い、破壊にしか使えない禍々しい炎。幻魔皇はやては自分の目の前に、ラビエルの素材で作られた二つの棺桶を出して防ごうとするが、今のウリアの攻撃力はラビエルより大きい。棺桶は僅か数秒で破壊され、そのまま幻魔皇はやてを破壊。そのまま俺へと向かって飛んできた。

 

「ぐああああああッ! ツッ! 流石三幻魔。ダメージ700でこれか・・・・。闇の書の効果発動! はやてさんに装備する!」

 

遊斗LP1000→300

はやてA2100→A2400

 

「君はかなりタフみたいだね。ラビエルで黒騎士フェイトを攻撃! 天界蹂躙拳!」

 

A4000 VS D500

 

その巨大な腕からは考えられないスピードで放たれた拳を速度特化のフェイトさんが防げる訳が無く、拳をくらって吹き飛ばされたフェイトさんは破壊され、墓地へ送られてしまった。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗   モンスター2 伏せ4 手札2 LP300

マルタン モンスター2 伏せ1 手札1 LP4000

 

幻魔皇はやてが破壊されてしまったが、降雷皇フェイトは無事。だが攻撃力5000のウリア相手だといずれピンチになる。

デッキトップに指を置くと、不思議と何となくだがカードが分かる気がする。もし本当にデッキトップのカードがこのカードだったらウリアを倒せる。

 

「ドロー! 読み通りだ。速攻魔法ユニゾンアウトを発動! はやてさんの融合を解除し、墓地に存在するはやてとツヴァイを特殊召喚する! 闇の書をはやてに装備」

 

LC時空管理局2→3 はやて1

はやてA2000・D1700→A2300

AD500

 

「速攻魔法フェイクシルエットを発動! デッキからアインスを墓地へ送り、ツヴァイをアインスとして扱う。そしてすずかの効果ではやてのLCを時空管理局に移動」

 

LC時空管理局3→4 はやて1→0

 

「場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて! 闇の書を装備する」

 

LC時空管理局4→5 はやて3

はやてAD2800→A3100

 

「融合素材にしたツヴァイの効果で、LCを取り除いて手札に加える」

 

LC時空管理局5→4

 

「王様はやてさんの効果発動! LCを一つ取り除き、ウリアの効果を無効にする!」

封鎖領域(ゲフェニクスデア・マギー)!」

 

LCはやて3→2

ウリアA5000→A0

 

シュベルトクロイツの杖先から放たれた禍々しい鎖がウリアの体を縛り上げ、その能力を奪っていく。いくら三幻魔でも、効果を無効にされてはひとたまりも無い。

 

「バトル! 王様はやてさんでウリアを攻撃!」

「響け終焉の笛・・・・ラグナロク」

 

A3100 VS A0

 

王様はやてさんは紫の雲のすぐ下まで跳び上がり、眼下の敵を狙って古代ベルカ式の魔法陣を展開する。三つの頂点に溜められたエネルギー。その一つだけでも、普通の魔導師なら手も足も出ないと言うのに、それが三つ。効果を奪われたウリアではダメージを減らす事も出来ず、白銀の魔力流に呑み込まれて破壊された。

 

LC闇の書0→1

マルタンLP4000→900

 

「クッ!」

「降雷皇フェイトでラビエルを攻撃!」

 

A4000 VS A4000

 

降雷皇フェイトの雷と、ラビエルの拳の威力は互角で、二体とも衝撃に巻き込まれて破壊された。

 

「降雷皇フェイトの効果でデッキから一枚ドロー! 王様はやてさんの効果発動。LCを二つ取り除き、融合デッキの祝福の将シグナムを守備表示で特殊召喚」

 

LCはやて2→0

A2700・D2000

 

「そして魔弾生成を発動! レベル7以上のLSを生贄にする事で、カートリッジロードを可能な限り手札に加える。シグナムさんを生贄にデッキから三枚のカートリッジロードを手札に加える。カートリッジロードを闇の書と王様はやてさんに発動!」

 

LC闇の書1→3 はやて0→1

 

「闇の書の効果! LCが三つ乗ったこのカードをゲームから除外する事で、墓地のアインスを特殊召喚する! 更にアインスの効果で夜天の書を特殊召喚!」

 

AD2300

AD0

 

「ふふっ、僕の場にモンスターはいないのに、容赦ないね」

「お前のライフを0にするまで全力全開だ。夜天の書を王様はやてさんに装備。そして時空管理局のLCを四つ取り除いて四枚ドロー! カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

LC時空管理局4→0

 

場 失楽園

遊斗   モンスター3 伏せ5 手札4 LP300

マルタン モンスター0 伏せ1 手札1 LP900

 

「僕のターン、ドロー!」

「降雷皇フェイトの効果。手札のLSを捨て、再臨する」

 

LC時空管理局0→1

AD4000

 

三幻魔がいないから失楽園の効果を発動する事も出来ない。圧倒的に有利なこの状況だが、相手も三幻魔を使ってくるとなると、不安要素が多すぎる。

 

「ファントム・オブ・カオスを召喚!」

 

AD0

 

ツッ、そう来たか。ファントム・オブ・カオスは墓地のモンスターを除外して、その効果と名前を得るモンスター。王様はやてさんがいるから効果を無効にする事は出来るが、除外する効果はコストでは無い為、除外するタイミングで効果を無効にする事は出来ない。この効果を通してしまうと、次に俺がフリーチェーンの効果を発動できるのは、奴が召喚か効果を使った時、もしくはフェイズの移動をした時。

 

「ファントム・オブ・カオスの効果発動!」

「王様はやてさんの効果発動! ファントム・オブ・カオスの効果を無効にする!」

 

ここで止めないと真っ先に失楽園の効果を発動されてしまい、二枚のドローを許してしまう。この判断が吉と出ればいいんだが。

 

「永続罠、血の代償を発動! ライフを500払い、通常召喚を行う! ファントム・オブ・カオスを生贄に、暗黒の召喚神を召喚!」

 

マルタンLP900→400

AD0

 

デーモンの召喚を召喚に似た言い方をして、奴がデュエルディスクにセットしたモンスターは、レベル5でありながら攻撃力守備力0の雑魚モンスター。100%効果持ちだろうが、態々三幻魔デッキに入れてるとなると、嫌な予感しかしない。

 

「暗黒の召喚神の効果発動! このカードを生贄に捧げる事で、墓地のウリア、ハモン、ラビエルの内一体を特殊召喚できる! 最も、この効果を使ったターン僕は攻撃できないけど」

「当たり前だ」

「再び新来せよ! 神炎皇ウリア!」

 

ウリアAD0→A5000

 

暗黒の召喚神は自らの体を生贄に捧げ、三幻魔の一角を蘇生させた。

 

「まずはウリアの効果を発動! セットされた魔法・罠を破壊する! トラップディストラクション!」

 

その効果は強化されたのかッ! 伏せていたカードはディバイドエナジーのカードは、ウリアが吐きだした灼熱の炎で燃えッカスになって消えてしまう。

 

「失楽園の効果発動、デッキから二枚ドロー。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗   モンスター3 伏せ4 手札3 LP300

マルタン モンスター1 伏せ3 手札0 LP400

 

「ドロー!」

 

ここは召喚反応型を警戒して一気に攻める!

 

「すずかの効果発動。時空管理局のLCを王様はやてさんに移動。そして王様はやてさんの効果でウリアの効果を無効にする!」

封鎖領域(ゲフェニクスデア・マギー)!」

 

LC時空管理局1→0 はやて1→0

ウリアA5000→0

 

「バトル! 王様はやてさんでウリアを攻撃!」

「罠発動、威嚇する咆哮。このターンのバトルフェイズをスキップする」

 

フリーチェーンの万能防御カード・・・・。カウンターが無い俺のデッキでは止めるのは不可能。

ウリアがいる以上一枚だけセットカードを伏せるのは無意味。

 

「これでターンエンドだ」

 

場 失楽園

遊斗   モンスター3 伏せ4 手札4 LP300

マルタン モンスター1 伏せ2 手札0 LP400

 

「僕のターン、ドロー! 失楽園の効果で二枚ドロー。リビングデッドの呼び声を発動。墓地の暗黒の召喚神を特殊召喚」

 

AD0

 

「暗黒の召喚神の効果発動。墓地のハモンを復活させる!」

 

AD4000

 

降雷皇フェイト程ではないが、何度も復活する三幻魔達。エンディミオンが使っていた時は蘇生制限が無いカードだったし、ウリアが自己再生能力を内蔵していたから毎ターン三幻魔がいたが、今も余り大差ない状況だ。

 

「魔霧雨を発動。ハモンの攻撃力より低い守備力を持つ全てのモンスターを破壊する。このカードを使ったターン僕は攻撃できないけど、元々暗黒の召喚神の効果で攻撃できないからね」

 

クッ、伏せが無い俺には止める手立てはない。奴が持っている魔霧雨のカードから、不気味な白い霧がフィールドを埋め尽くす。そこには雷を通す魔力でも込められていたのか、ハモンが自らに地獄の雷を落とした時、その雷がフィールド全体に広がっていった。仲間であるウリアも例外なく、同じ降雷皇を名乗るフェイトも、魔霧雨の加護を受けたハモンの力には勝てなかった。

 

「クッ、降雷皇フェイトの効果でデッキから一枚ドロー!」

「マジック・プランターを発動。リビングデッドの呼び声を墓地に送って二枚ドロー。死者蘇生を発動。墓地の暗黒の召喚神を特殊召喚。その効果で墓地のウリアを特殊召喚!」

 

ウリアAD0→A6000

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗   モンスター0 伏せ3 手札5 LP300

マルタン モンスター2 伏せ3 手札0 LP400

 

「ドロー! 降雷皇フェイトの効果。再び特殊召喚する!」

 

LC時空管理局0→1

AD4000

 

「永続魔法魔力高炉を発動。LCを二つ乗せる。そのLCを取り除いて連続転移を発動。デッキトップ三枚をめくって通常召喚可能なモンスターを特殊召喚する」

 

LC魔力高炉2→0→破壊

 

「一枚目ユーノ、二枚目ACS、三枚目ヴォルテール。ユーノを特殊召喚する!」

 

LC時空管理局1→2

A500・D1600

 

「手札のエリオの効果発動。このカードを捨てて、墓地のフェイトを手札に加える。フェイトを召喚! そしてフェイトのLCを取り除き、速攻魔法あの日のリボンを発動! デッキからなのはを特殊召喚する!」

 

A500・D1800

 

「場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは! 効果でデッキからザフィーラを手札に加える」

 

A1000・D3000

 

「遂に来るか」

「存在しない者の効果発動! AOA高町なのはを生贄に、新来せよ! 神炎皇なのは!」

 

SLCなのは1

AD0

 

ウリアと同じように、天まで登る巨大な炎の柱。しかしウリアと決定的に違うのは、その炎が持つ暖かさだ。幻魔の力を吸収しているのにも関わらず、その炎は心地よい暖かさを与えてくれる。そんな炎を発せられるのは、この炎を扱う彼女の心が優しいからだろう。

巨大な炎の柱から出てきたのは、赤いバリアジャケットを着て、ウリアを素材にした杖を持った神炎皇なのは。

最も、今回はフェルを出すから出番が無いんだけど。

 

「存在しない者の効果発動! 効果を三回使ったこのカードを墓地へ送り、墓地の三幻魔の一角を蘇生できる。再臨せよ! 幻魔皇はやて!」

 

AD4000

 

「そしてフィールド上の神炎皇なのは、降雷皇フェイト、幻魔皇はやてをゲームから除外する!」

 

失楽園を破壊した訳でもないのに、融合する時の衝撃で失楽園はバリンと音を立てて粉々になり、辺りの景色が天井に大きな穴の開いた地下に戻る。

 

「七十二柱を纏いし最強の幻魔。その足で現世を踏み、混沌と勝利を我が手に収めろ!」

 

三体の幻魔は巨大な穴から空へと飛んで行き、青空と雲を覆い隠す程の超巨大な融合の渦に入って行く。三体の幻魔が入った刹那、ドォォォォン! と、おそらくこの砂漠地帯全域に聞こえる爆音を上げ、融合の渦から赤・青・黄色の輝きを放つものが俺の目の前に降りてきた。

 

「降魔しろ! 混沌幻魔-フェルシュトラーフェ!」

 

AD0

 

さっきと変わらず黒のドレスを着た少女、フェルシュトラーフェ。白紙になったみんなを戻したのにも関わらず、特に疲れた様子も見せずに、ニコニコと純粋無垢な笑みを浮かべている。

 

「う~ん、召喚条件が重いとはいえ、もうちょっと早く出番が欲しかったな~」

「無茶言うな。行くぞ! フェルの効果発動! デッキトップ四枚を墓地へ送り、その中にモンスターがいたら、その内一体を選択して発動。選択したモンスターの属性により別々の効果処理を行う。墓地へ送られたティアナを選択。属性は炎だ」

 

その刹那、突然ハモンがこの世の終わりの様な悲鳴を上げ始めた。今まで余裕の表情を保っていた奴もこれにはかなり驚いたようで、自分フィールドにいるハモンの名前を大声で呼ぶ。

 

「炎または水を選択した時、相手フィールド上のモンスター一体をフェルの装備カードとして装備できる。そして装備したモンスターのレベル×100ポイントフェルの攻撃力は上がる。装備するのはハモン!」

ヘルシャー・ツヴィンガー(支配者の檻)!」

 

未だに止まないハモンの悲鳴は、フェルが開いていた右手をギュッと握りしめると共に止んだ。するとフェルの右腕から、バチバチと音を立ててハモンの使う雷が放たれた。三幻魔の一角を取り組んでいるだけあり、フェルの右腕の雷は時折暴れ出して辺りの岩や地面を破壊する。が、フェルの体を傷つける事は一度も無く、無理やり押さえつけたのか、すんなり大人しくなった。

 

フェルA0→A1000

 

「バトル! フェルでウリアを攻撃! フェルは戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分攻撃力を上げる!」

 

フェルA1000→A7000

 

「攻撃力7000!?」

死に絶える運命(アオス・シュテルベン)!」

 

A7000 VS A6000

 

フェルの頭上に、融合の渦がドス黒くなった様な、グニャグニャと曲がった空間が現れた。その中から複数の不気味な笑い声が聞こえると共に、渦の中から大量の悪魔や堕天使達が出てきた。いくら三幻魔の一角と言えど、やはり七十二柱の悪魔には恐怖を覚える様で、ウリアはフェルを狙うより先に周りの悪魔達を攻撃した。ウリアの攻撃は一匹の悪魔により空しく消されてしまい、残りの悪魔全員の攻撃に、聞いただけで地獄が思い浮かぶような悲鳴を上げて破壊された。

 

「トラップ発動ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にしてデッキから一枚ドローする」

「決められなかったか・・・・。フェルが攻撃した時、効果で装備しているモンスターを墓地へ送る」

 

フェルA1000→A0

 

「フィールド魔法聖王教会を発動。これで失楽園は破壊される。ターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター1 伏せ3 手札1 LP300

マルタン モンスター0 伏せ2 手札1 LP400

 

モンスターは無し、伏せはたったの一枚、ライフ400、手札は次のドローを入れて二枚。たった三枚のカードだけで混沌幻魔であるフェルを倒せるとは思えない。が、何故かホッと一息吐く事が出来ない。むしろ今まで以上に奴のデッキトップを刺す視線が強まる。

 

「僕のターン、ドロー!」

「・・・・」

「永続罠、リミットリバースを発動! 墓地に存在する暗黒の召喚神を特殊召喚!」

 

AD0

 

「そして特殊召喚成功時、速攻魔法地獄の暴走召喚を発動! 特殊召喚した攻撃力1500以下のモンスターを可能な限り特殊召喚する。君もフィールドのモンスターを可能な限り特殊召喚できるけど」

「融合モンスターは特殊召喚出来ないし、そもそもフェルは一枚しか持っていない・・・・」

 

奴はデッキに眠る二枚の暗黒の召喚神を自分のフィールドに並べる。これで暗黒の召喚神が三体並んだ。そして墓地には三体の幻魔。

 

「三体の暗黒の召喚神の効果発動! 墓地のウリア、ハモン、ラビエルを特殊召喚する!」

 

ウリアA0→A6000

ハモンAD4000

ラビエルAD4000

 

いくら攻撃できないとは言え、たった二枚で三幻魔を並べやがった。

やはり三体並んだ時の幻魔の威圧感は尋常では無く、自分が死んでいるのか生きているのか、これが夢か現実なのか、一瞬だがそんな曖昧な世界に飛ばされていた。

 

「だが三幻魔と言えどフェルの前では無力。攻撃できないのなら尚更だ」

「確かに今の三幻魔だったら君に勝てない。だけど、君と同じく僕も三幻魔を融合させる手段を持っているのさ! 魔法カード、次元融合殺を発動! 自分フィールド上に存在する神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエルをゲームから除外し、混沌幻魔アーミタイルを融合デッキから特殊召喚する!」

「なっ!?」

「僕と同じ・・・・。いや、こっちが本物って言った方がいいのかな?」

 

フェルがポツリと何か呟いていた気がしたが、俺の耳には全く入って来ず、目の前の光景をただ茫然と見るしか無かった。奴の後ろに現れたのは、先程フェルが出した融合の渦によく似た、ドス黒いグニャグニャと曲がる不気味な空間。三体の幻魔は体を細くしながら螺旋状に回り、ドス黒い渦の中に入って行く。そして漆黒のオーラが放たれると共に、融合の渦から一体のモンスターが現れる。

 

「降魔せよ! 混沌幻魔アーミタイル!」

 

AD0

 

ハモンを象徴する巨大な両翼。

ウリアを象徴する巨大な尻尾。

それらの中心部にいるラビエルの顔。

ここまで巨大なモンスターを今まで俺は見た事があるだろうか? 否。三幻魔やF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)やマスター・オブ・OZと言った、デュエルモンスターズの中でも一際巨大なモンスターを見た事があるが、これ程巨大なモンスターは見た事が無い。その巨大で長い尾を丸めてこの大きさだ。この尾を伸ばすと、数百メートルはあるのではないだろうか?

そしてその巨体から放たれる威圧感――いや、殺気。アーミタイルから感じられる気配は、怒りも憎しみも無く、ただ殺気だけが感じられる。

 

「これが、もう一体の混沌幻魔・・・・」

「本当は十代に最初に見せたかったけど出し惜しみもしてられないしね。さあ行くよ! 混沌幻魔アーミタイルの効果発動!」

 

奴がアーミタイルの効果を起動したその時だった。突然フェルとアーミタイルを中心に、物凄い衝撃が辺りに放たれた。俺も奴もその衝撃に吹き飛ばされ、背中が堅い岩と衝突した。

 

「グッ!?」

「カハッ!」

 

辺り一面の地面が崩れて行き、地面に亀裂が出来る程の衝撃。と言ったらどれくらいの威力なのかだいたい想像できるだろう。頑丈な俺でもこれにはかなりの痛みを感じ、岩と衝突して十数秒後にようやく立ち上がる事が出来た。

 

「い、いったい何が・・・・?」

 

目の前に広がる光景は文字通り天変地異だった。まずフェルとアーミタイルを覆う様な薄紫色のドームが貼られており、そのドームの中でこの世の終わりと言っていい程の異常気象が起こっていた。

ドーム内を縦横無尽に駆け巡る数多の色の雷。風の刃を作り出して飛ばすいくつもの竜巻。俺の手で収める事が出来る程度の小さい流星群が降り注ぎ、地面からはマグマが拭きあふれる。視界が霞む程の雨が降っていると思えば、次の瞬間には晴れやかな太陽が現れた。

 

「おそらく二体の混沌幻魔の衝突であらゆるエネルギーが暴走したんだ。君の混沌幻魔のおかげで僕達はこうして助かっているが、このバリアが消えれば終わりさ」

「なら今すぐ止めさせろ!」

「そのつもりさ。このデュエルはドローとしよう。勿論異論は無いよね?」

 

このアーミタイルの効果は知らないが、俺が非常にピンチなのには変わりなかった。余り勝利にこだわらない奴なのか?

いや、そんな事考えてる暇は無い。

 

「ああ。異論は無い」

 

奴はデュエルディスクにセットしているアーミタイルを含む全てのカードを取り除き、デュエルディスクにセットしているデッキに戻す。俺も奴に続いてフィールドと墓地にいるカード達をデッキに戻した。

すると目の前に広がっていた薄紫色のバリアが消える。バリアの中には地面に横たわっているフェル一人だけがいた。

 

「フェル! 大丈夫か!?」

「あ、あはは・・・・。ちょっと続けて力使い過ぎたみたい。というか、あの混沌幻魔、強すぎ・・・・」

「その力を抑え込めたお前も十分強いよ」

 

腕の中で衰弱しているフェルの頭をゆっくりと丁寧に数回撫でる。フェルは嬉しそうに笑みを浮かべ、スッと消えて行き、カードに戻って行った。

 

「少し力を使い過ぎたけど、今君と戦っておいてよかったよ。これで僕と十代のデュエルは誰にも邪魔されない」

「その混沌幻魔がどんな力を秘めているかは知らないが、俺は負けていた訳じゃない」

「分かってるよ。君が手札に持っていたザフィーラとか言う犬。あれは戦闘ダメージを0にする事が出来る。少なくともそのターン君が死ぬ事は無かった。アーミタイルの効果は10000の戦闘ダメージを相手に与える効果だからね」

 

10000の戦闘ダメージ・・・・。出したらほぼ勝ちと言っていいカードだな。

 

「だけど君もLSもその混沌幻魔も、今のデュエルで力を使い過ぎた。今まで力を補充していた僕と三幻魔を止める事は出来ない。おまけに君は、またデュエルエナジーを奪われただろう?」

「クッ・・・・」

 

やっぱりこの疲労感はあの衝撃の所為じゃなく、デュエルエナジーを奪われた所為だったのか・・・・。

奴はゆっくりとこっちに近付いてくるので、いつでも動けるように構える。

 

「安心して。十代を苦しめる為に君を殺してもいいけど、引き分けのデュエルの後に君を殺すなんて面白くない。それに僕の十代も到着したみたいだし」

「遊斗!? やっぱりさっきここで起こっていたデュエルはお前とマルタンのデュエルだったのか!?」

 

ヒーローは遅れて登場するって言うけど、少し遅すぎだ・・・・。十代はクレーターや、罅が入っている壁を一瞬だけ見ていたが、すぐに俺の方に走って来た。

 

「大丈夫か遊斗?」

「何とか・・・・。けどお前と一緒に戦うのは出来そうにない」

「気にするな。お前の分まで俺が戦ってやる。マルタン! よくも遊斗をッ!」

「違う十代。コイツはマルタンじゃない。みんなの力を奪ったあの金色の精霊だ」

「フフッ、そいつの言う通りだよ十代。君が思いだせないのなら無理やりにでも思い出させて上げるよ。デュエルアカデミアの横の決闘場で待ってるから」

 

奴はすれ違いざまにそう言って、十代がやって来た入り口とは別の場所から出て行った。十代は急いで追いかけようとしたが、天井の落盤により出入り口が塞がれて追いかける事が出来なくなった。

 

 

 




強力モンスターが万能
強力なモンスターの力で中断されるデュエル
いつの間にかOCG効果に戻っているカード
カードの力が暴走して異常気象が起こる


つまりカードゲームでは良くある事。


この一言で片付けられるから遊戯王は凄い。OCG化には理由を付けましたが。


最近ZEXALが更にぶっ飛んで面白かったです。
ベクターが関係する話は全部遊戯王だった(関係無くても遊戯王です) シャークさんとⅣとベクターが今のところ(ネタキャラ)三強だと思います。



最近innocentでチケット手に入る機会が増えて結構Rカード増えましたが、その代わりLDが溜まらなくなった・・・・。まあ最低限のRも持ってなかったので喜ぶべき事かと。
しかしこうなるとSのユーリやシュテル辺りが欲しくなります。



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第五十五話

お前はハムエッグの黄身も愛した女もナイフで半分に切り分けるのか?
お、おう・・・・(←これ以外の返答が出来る方を作者は尊敬します)


いや~、凄いOPでしたね。あのコラボは予想外でした。今季はドラマもアニメも好きなのが多く嬉しいです。前季アニメ&ドラマ共に一話を見過ごしたりして、ほとんど見てなかったので。



 

「ホントに大丈夫か遊斗?」

「ああ。最悪デュエルゾンビに囲まれたら俺を捨てて逃げろ。元の世界に戻れないパターンが最悪だからな」

「何言ってんだ! お前はちゃんと俺が――」

「ハァ・・・・。レイちゃん。そうなった時は頼むな」

「遊斗先輩・・・・」

 

十代に支えられながら何とか地上に戻って来る事が出来たが予想以上に体力の消耗が激しく、思う様に体が動かない。仮にも三幻魔と戦った後なのでこれくらい当たり前なのかもしれないが、ここ最近不気味な程体が変化していたから少し違和感を覚える。

十代の話では、発電所と食糧庫を賭けたデュエルに無事勝利したが、再びデュエルゾンビが襲い掛かって来てかなりの人数がデュエルゾンビにやられてしまったらしい。発電所を賭けたデュエル事態、デュエルエナジーを集める為に奴が仕組んだ罠だったのだ。

鍵となるヨハンは、クロノス先生、明日香、ジム、剣山と言ったメンバーに守られながらデュエルフィールドに行き、三沢は万が一にも発電所を止められない様に発電所に向かったそうだ。

それで十代とレイちゃんは、三幻魔の登場時の雷や炎を見てこっちにやってきたらしい。

 

「あの道を曲がればデュエルフィールドです!」

 

その言葉を待っていたかの如く、レイちゃんが指した角からデュエルゾンビ達がやって来た。しかもさっきまで、腹が減っていたと騒いでいた生徒達の顔まで見える。

 

「くっ! 逃げるぞ!」

 

だがそれも出来なかった。後ろを振り返るとデュエルゾンビの群が見える。ここまで数が多いとモンスターを呼んで強行突破しかないが、病み上がりでデュエルディスクを付けていないレイちゃんには無理だし、俺も精霊達(みんな)の状況が分からない以上、無理やり呼び出す事は出来ない。フェルも疲れきって今は休んでいる。必然的に十代が召喚するしかないが、十代に体力は温存させておきたい。最もこの状況で十代に頼るしか――

 

「こっちだ!」

 

その時だった。床のタイルがズレて、その中からオブライエンが現れたのは。

喜びの再会といきたいが、時が時だ。オブライエンの後に続きレイちゃん、俺、十代の順に地下に入り、最後にいた十代が、デュエルゾンビの追跡を防ぐ為にタイルを戻した。タイルには持ち手が無いので、上からここに来るのは不可能だろう。

地下は俺達が中腰にならないと歩けない非常に狭かった。しかも普段使われていないのか、埃や蜘蛛の巣があり、長居したい場所では無い。

 

「オブライエン。デュエルフィールドへの道は分かるか?」

「ああ。ここから直にデュエルフィールドに行く事が出来る。しかしこの道を利用して学園内を探索していたが、おそらくもう俺達とデュエルフィールドにいる仲間以外は全滅だ」

「そんな・・・・」

「大丈夫だレイ。戻ったらみんなのゾンビ化も治る」

 

など話していると、ドタドタと地上が騒がしくなる。デュエルフィールドに近付くにつれその音は騒がしくなるので、おそらくヨハン達にデュエルゾンビが襲ってきたのだろう。それに気付いたオブライエンは歩く速度を速めてデュエルディスクを構える。

 

「みんな! こっちから来るんだ!」

「オブライエン! みんな、こっちだ!」

 

上で何が起こっているのか分からないが、声から察するにヨハンは無事な様だ。数回の銃声と、モンスターの叫び声が鳴った時には、デュエルフィールドに向かっていた全員が無事に地下に潜る事が出来た。

この狭い空間にずっといる訳にもいかなかったので、オブライエンの案内で下水道に向かう事にした。あそこからだったらデュエルアカデミアの正面玄関近くに出られるらしい。

 

「ヨハン。レインボー・ドラゴンはどうだった?」

「こっちの世界に持ってくる事は出来た。だがカードが入ったケースが砂漠地帯の方に落ちてしまった」

「なるほど・・・・。じゃあ十代は奴の元へ、ヨハンはレインボー・ドラゴンの探索になる。オブライエンの話ではデュエルゾンビはデュエルアカデミアに集まっている。そうなると必然的に十代の方に人数が行く事になるが・・・・」

「ヨハンの護衛は俺がやろう」

 

オブライエンが付いているなら心強い。砂漠地帯を探す事になると出来るだけ沢山の目が必要になる。

 

「明日香もヨハンとオブライエンに付いて行ってくれ。十代側は強行突破になる」

「構わないけど、それだとレイや疲れているあなたの方がいいんじゃない?」

「いや、モンスターを召喚できる明日香が行った方がより探す時間が短縮される。それに俺は三幻魔に、レイちゃんはマルタン君に用がある」

 

まあ俺の場合用と言うよりかは、因縁というか。十代と奴等のデュエルを見届けたい。

 

「分かったわ」

「そろそろ出口だ」

「じゃあヨハン。また後で会おうな」

「ああ! それまでやられるんじゃないぞ」

 

無事に三つの太陽の元に出た。しかしデュエルゾンビは俺達の出て来る先を知っていたのか、既に数十人のゾンビが集まっていた。

 

「いきなりドン!? でも挫けないザウルス。究極恐獣(アルティメット・ティラノ)、超伝導恐獣《スーパーコンダクターティラノ》を召喚!」

「私も負けないノーネ。古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)しょうかーん!」

 

一気に全員がモンスターを召喚する訳にはいかない。まずは剣山とクロノス先生がエースモンスターを召喚し、デュエルゾンビ達が召喚したモンスター達を破壊して行く。

 

「行くぞみんな!」

 

四体の最上級モンスターの攻撃により開かれた道を指し、十代が先陣を切る。レインボー・ドラゴンを探索する三人は別の道を走っていた。

足を動かす度に体に激痛が走るが、それを堪え十代とレイちゃんの背中を追って行く。

 

究極恐獣(アルティメット・ティラノ)!?」

「頑張るノーネ古代の機械巨竜(アンティーク・ギアガジェルドラゴン)!」

「次だ! 古生代化石竜スカルギオス、地球巨人ガイア・プレートを召喚!」

 

みんなのエースモンスターも数で押されると限界がある。先陣を切っている十代もネオスとフレア・ウィングマンを使って道を切り開いているが、その道はすぐに埋められる。何とか十代の近くにいた俺はデュエルゾンビの群を突破する事が出来たが、チラリと後ろを見るとジム、剣山、クロノス先生が戦っていた。

 

「アニキ! 遊斗先輩! 今から一発大きいのを発動するドン! 後は任せたザウルス!」

「なっ! 剣山!?」

「罠カードジュラシック・インパクトを発ドン! フィールドのカードを全て破壊するザウルス!」

 

すると上空に無数の隕石が浮かび上がり、自分達とデュエルゾンビの群に向かって降下して行く。効果が効果だけあり、中には俺達の方へ落ちて来る隕石もあった。隕石が地面に落ちた衝撃で足元が揺れ、走る速度が落ちてしまうが、奴が用意した決闘場の元までやって来る事が出来た。

階段を上る途中、さっきまで居たデュエルアカデミア前を見ると、モンスターや動きまわるデュエルゾンビは一体も居らず、皆砂漠の上で気絶している。みんなの犠牲があってこそ俺達はここまで来れた。その事が悔しくて唇を噛み締め、一段ずつ階段を上って行く。

階段を登り終えると、そこに一人の少年がいた。

 

「マルタン!」

「フフッ、あの包囲網の中を潜りぬけて来るとは流石十代」

「マルッち! どうしてこんな事をするの!?」

「そこの男から聞かなかったのか」

 

奴が俺を指すと、レイちゃんの視線が奴から俺に移る。十代に説明したけどレイちゃんには説明していなかったか。色々あり過ぎて忘れていた。

 

「マルタンはカードの精霊に操られてるんだ」

「そ、そんな・・・・」

「俺はここまで来たぞ! お前の正体を教えてもらおうか!」

「そう焦らないでよ十代。まずはデュエルを楽しもうよ」

 

奴は俺の時と同じ様に、左腕からデュエルディスクを生やす。ここまでの事をやって来た相手に話が通じない事は分かっていた。十代もデュエルディスクを起動させて構える。

 

「お前が何者かは知らないが、仲間達を傷つけた事は絶対に許さない!」

「「デュエル!」」

 

 

 

 

「クッ! 流石三幻魔・・・・」

 

奴のフィールドには神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエルの三体。十代も融合やトリプルコンタクト融合を使って何度も三幻魔を倒したが、その度に復活され、遂に三体の三幻魔を並べてしまった。十代の場には三体の守備モンスターがいたが、僅か一ターンで破壊され十代のフィールドからモンスターが消えた。

 

「十代様・・・・」

「ツッ」

 

十代でも三幻魔相手は辛い。しかも奴は三幻魔専用のサポートカードを大量に入れている。三幻魔の効果が一部弱体化したとはいえ、豊富なサポートカードによってむしろ強化されていると言っていい。それに奴は、十代のデュエルを知り尽くしたかの様なプレイングをしている。

あの十代も三幻魔の前に弱気になっていたその時、この場の誰のものでも無い声がする。

 

「大丈夫か十代!」

「ヨハン! 来てくれたのか!」

「ああ! 手に入れてきたぜ、レインボー・ドラゴンを」

「お前なら必ずやると信じてたぜ」

 

ヨハンだった。

ヨハンの登場に奴の表情に怒りが見えた。今までも奴は十代を自分のものと思っている点が見られたが、やはり奴と十代は深い関わりがある。

 

「俺も加えさせて貰うぜ。俺が加わる事で増えるライフはお前のライフにも加算される。それで文句ないだろ?」

「面白い提案だね。いいよ。君を倒してからゆっくりと十代と遊ぶ。十代には友達なんか必要無いんだ」

 

ヨハンは三幻魔相手に全く脅えず、むしろワクワクした表情で挑んだ。

やはり三幻魔の力は圧倒的で、火力の低い宝玉獣で戦うのは難しかったが、豊富なサポートカードや魔法・罠ゾーンに置かれる効果を利用して次々とフィールドに宝玉獣を溜めて行く。時には三幻魔の攻撃時にコンバットトリックカードを使い、三幻魔を迎撃したりした。十代もヨハンに負けじと二回目のトリプルコンタクト融合を行い三幻魔を破壊する。

しかもこのドローでヨハンはあのカードを引く事が出来た。

 

「やった、やったぜ! 俺は長い間この時を待っていたんだ! マルタン、お前には一つだけ感謝する。お前のおかげで俺のデッキが完成した! そして俺にも感謝してくれよ! 俺の最強モンスターに初めてやられる奴になれるってことをな!」

「なに!?」

 

僅か二ターン目でヨハンはあのモンスターを呼ぶ召喚条件を整えた。

 

「フィールドと墓地に七体の宝玉獣が揃った! これが宝玉獣デッキの真の姿だ! 現れろっ! 究極宝玉神レインボー・ドラゴン!」

 

A4000・D0

 

天使の様に綺麗な翼。汚れ無き白銀の装甲で覆われた細長い体。長い体にはルビー、エメラルド、アメジスト、コバルト、トパーズ、アンバー、サファイアの七つの宝玉が埋め込まれており、その神々しい体からは七色の光が発せられている。三幻魔相手に一歩も引かず、むしろ三幻魔を威圧している。

 

「これがレインボー・ドラゴン・・・・」

「すげぇ、すげぇよヨハン!」

「綺麗・・・・」

「くぅ~、待ちに待ったレインボー・ドラゴン! やっぱりカッコイイ!」

 

その後ヨハンはレインボー・ドラゴンで猛攻撃を仕掛けたが、ライフ8000と三幻魔の壁は大きく、奴のライフは0には程遠い。それでも二人が三幻魔を押しているのは確かだ。

だが奴には究極の切り札がある。二人を信用していない訳ではないが、あのカードの力はフェルと同等。出されたらピンチで済む話では無い。

あのカードを引くなと心の中で願っていた時、突然隣にいたレイちゃんが奴に言った。

 

「もう止めて! 返してよ! マルっちを返して!」

「そんなにこの体が心配なら返してやろう。この世界で行われていたデュエルエナジーの収集により僕の体も復活した。返して上げるよ」

 

すると突然マルタン君の体が前に倒れ、さっきまでマルタン君が立っていた場所に人ならざる者がいた。

俺が予想していた精霊とは違い、その精霊は人間の体をしている。悪魔族なのか体は黒や鼠色と言った暗い色で、額には第三の目が付いている。胸を見ると向かって右は男の胸だが、左の胸は女性らしく膨らんでいるから、ひょっとしたら男女が無い両性類なのかもしれない。

 

「これで引き裂かれた僕の体はやっと一つになる事ができた。もうこの体には様はない。返してやる」

 

その精霊は足元に倒れたマルタン君を掴み、レイちゃんに向けて雑に投げた。レイちゃんの変わりにマルタン君を抱き止め、地面に寝かせる。

 

「まさか本当に忘れた訳じゃないだろうね。僕を、この瞳を」

 

右が黄色、左が緑のオッドアイ。十代はあの瞳を見た途端、数秒間掛けて何かを思い出したのか、ユベルの言葉に少し遅れて声を出す。

 

「まさか、お前はユベル?」

「知っているのか十代?」

「ようやく思いだしのかい、十代。そうだよ、ユベルだよ」

「そんな・・・・、馬鹿な!」

「そうだよ、君は僕を宇宙へ飛ばした。どうして? 僕はこんなに君を愛してるのに?」

 

この二人がどんな関係なのか分からないが、十代の戦う気力が無くなっているのは分かる。

 

「十代! しっかりするんだ! みんなの運命は俺とお前にかかってるんだ!」

「ヨ、ヨハン・・・・。そうだよな。今の俺には仲間達がいる!」

 

ユベルと呼ばれた精霊は二人のやり取りにチッと舌打ちをする。

十代が今まで覚えていなかったとなると、十代にとってはそこまで大切な思い出は無かったのか? しかし十代の反応を見る限り、かなりショックを受けていた。一体二人は・・・・。

 

「ドロー。君達には驚いたよ。まさか一日に二回もこのモンスターを出す事になるなんて。魔法カード、次元融合殺を発動!」

「ッ!? 気を付けろ二人とも!」

「フィールドの三幻魔を融合し、混沌幻魔アーミタイルを融合召喚!」

 

AD0

 

態々三幻魔を融合素材にして攻撃力守備力0。その異様さに警戒し、二人はデュエルディスクを力強く構える。

 

「混沌幻魔アーミタイルの効果発動! 一ターンに一度相手モンスターを選択。選択したモンスターに10000ポイントの戦闘ダメージを与える! カオス・ネオスを選択! 全土滅殺・天征派!」

「10000ポイントだと!?」

 

十代のフィールドに魔法・罠カードは無い。この効果を通してしまえば、10000にネオスペースの恩寵を受けたカオス・ネオスの攻撃力を引いた6500のダメージが十代を襲う。アーミタイルの前に現れた、混沌が具現化した黒い球体がカオス・ネオスに向かって飛ばされる。

 

「ツッ! どうすれば「十代、後は頼むぜ」ヨハン?」

「速攻魔法プリズム・ウォールを発動! 混沌幻魔アーミタイルの効果対象を自分に向け、互いの攻撃を貫通させる!」

「何!?」

 

本来ならカオス・ネオスに向かって飛ぶ黒い球体。しかしフィールドに現れた無数の宝石の柱によって別の方向へ誘導され、レインボー・ドラゴンに向かっていく。

 

「今こそ見せろ! レインボー・ドラゴンの効果発動! フィールドの全ての宝玉獣を吸収し、一体に付き攻撃力を1000上げる! レインボー・オーバー・ドライブ!」

 

レインボー・ドラゴンA4000→A10000

 

「アーミタイルと互角だと!?」

 

ヨハンのフィールドの半分を埋め尽くしていた六体の宝玉が、自らの象徴する光を放ち、レインボー・ドラゴンに埋め込まれている宝玉に入って行く。六つの宝玉の力を受け継いだレインボー・ドラゴンの前に、アーミタイルが放った闇の球体が接近する。

 

「俺は自分のデュエルを通してみんなを救う事が夢だった。今、それを叶える時が来たんだ。後は頼んだぜ。行け、レインボー・ドラゴン! オーバー・ザ・レインボー!」

 

A10000 VS A10000

 

レインボー・ドラゴンは七色に光るエネルギー砲を闇の球体に撃つ。ヴィヴィオさんの砲撃によく似た虹色の攻撃は、闇の球体とぶつかり周囲に黒と虹色の衝撃波を交互に起こす。

攻撃力10000と攻撃力10000の戦い。しかも方や三幻魔の融合体、方や究極宝玉神。その両者の全力がぶつかり、俺達がいる決闘場は一溜まりも無く、ミシミシと音を立てて行く。

 

「うあああああっ!」

「そんな、ばかなぁああ!」

「ヨハァァァァン!」

 

この二体の衝突の近くにいた三人の声が聞こえて来る。ヨハンとユベルはプリズム・ウォールによる貫通ダメージでライフが0になる。残った十代が勝者となるが、その十代も攻撃力10000同士の衝撃に耐えきれず地面に吹き飛ばされた。

 

「レイちゃん! マルタン君と十代を連れて脱出するぞ!」

「十代は俺が運ぶ!」

「オブライエン! 分かった、頼むぞ!」

 

マルタン君を担ぎ、この衝撃の源をキッと睨みつける。ライフが0になったヨハンが元の世界に戻れるか分からない。だから――

 

「ヨハン! 絶対に助けに行くからな!」

 

聞こえているか分からないが、俺は目一杯の大声で叫んだ。

階段を降り切った時には決闘場は岩の集まりになり、その決闘場から虹色の光が柱となって天に昇っていた。

 

「これは・・・・」

「レインボー・ドラゴンの力が発揮したんだ。これでこの世界と元の世界の架け橋が出来た」

 

七色の光が天を貫くその光景は、俺が今まで見てきたどんな景色よりも綺麗だったが、どんな景色よりも虚しかった。

ただ茫然と七色の光を見ているしかなかった俺達の目から、気が付けば七色の光も三つの太陽も消えていた。

 

 

 

 

無事デュエルアカデミアに帰る事が出来た。

その事を実感できたのは、正気に戻った生徒と、この世界に戻る手助けをしてくれた科学者や先生達の大歓声を聞いてからだった。緊張の糸が切れたとはこの事だろう。突然足の力が抜け、フラフラと地面に尻持ちを付く。

大声を上げて喜んだり、嬉しさの余り泣いたり、持って来てもらった食糧を食べたり、友達と抱き合ったり。皆が感動する中を、白衣にポケットを入れたまま歩いてくる人物が一人いた。

 

「父さん・・・・」

「まずはよくやったと言おう」

「ありがとう。父さんのおかげさ」

 

この会話だけ見ると、仲の良い普通の親子に見えるだろう。だが実際は違う。父さんは元居た世界ではテロリスト。俺は意味不明な力を持ってる奴。

 

「いくつか聞きたい事がある。そっちの次元を調べている最中、とてつもないエネルギーを感知した。レインボー・ドラゴンを向こうに送る最中にだ。あれは何だ?」

「去年話しただろ。三幻魔と一緒にどこかに行ったフェルシュトラーフェ。あの子と本来の三幻魔が融合したアーミタイルの衝撃だ」

「そのカードはあるかい?」

 

一瞬父さんに渡そうかどうか悩んだが、弱っているフェルや精霊達(みんな)を救う方法を知っているかもしれない。融合デッキが入っているホルダーを取り出し、フェルと三幻魔のカードを探す。

 

「・・・・ない?」

「ふむ。この世界に戻る前に逃げたのかもしれないね」

「あいつ。あんな体で何処に・・・・」

「まあいい、次だ。お前が首に掛けているその首飾りは何だ?」

 

あっ、三幻魔とフェルの話はしたけどこの首飾りの話はしてなかんだっけ?

 

「これは最後にF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)がくれたんだ」

「ふむ、少し触らせて貰うよ」

 

俺の前にしゃがんできた父さんは、服の中から竜の爪を取り出してマジマジと見る。すると何かに気付いた様だ。

 

「今一瞬光が消えなかったかい?」

「え? ゴメン、ボーとしてた」

「ふむ・・・・。お前も疲れただろう。今日は休めばいい」

「やけに優しいな。それとみんなは元に戻るのか?」

「クックック、私は君の父親だからね。質問にはイエスと答えよう。あの連中の事だ、一日二日で戻ってくるだろう。あと最後に、これは独り言だが、次元の余波で数日後に次元の歪が出るかもしれない」

 

そう言って父さんは立ち上がり、他の研究者の人と喜んだりせず、そのまま去って行った。相変わらず一匹狼と言うか、コミュ力が無いと言うか。

細長い背中が視界から消えると、突然目の前にペットボトルが差し出された。

 

「明日香?」

「その、遊斗。十代に何かあったの?」

「十代は何て言ってた?」

「自分の所為でヨハンが、って」

「と言う事はやっぱりヨハンは帰って来なかったか・・・・」

 

血が出る程強く拳を握り、怒りを自分にぶつける。肝心な時にデュエルが出来なくて、結局十代とヨハンに任せっぱなしだった。精霊世界に行って強くなった? 友達一人守れないで何が強くなっただ。

 

「ヨハンはな――」

 

明日香に説明した。十代とヨハンがタッグを組んでデュエルを挑んだ事。マルタン君を操っていたのは十代と深い関係がある精霊という事。ヨハンはデュエルアカデミアのみんなを助ける為に、一人犠牲になった事。

 

「そんな事が・・・・」

「今はそっとしておいてやれ」

 

 

 

 

その翌日。明日香にヨハンの事を説明してから、またいくつか進展があった。

ヨハン以外にももう一人、アモンがこの世界に帰ってきてない事。

マルタン君がこの学校を止めてナポレオン教諭と一緒に静かに暮らす事にした事。

無事にデス・ベルトが外れた事。

みんなのカードの色が昨日より濃くなってきた事。ユベルに根こそぎ力を奪われたが、フェルの救済によってかなり回復が早まったらしい。真っ白な状態でもみんなは死んでなかった様だ。

最後に一つ、これは進展とは言えないが、あれから十代は誰とも話さずに部屋に籠っているらしい。

かくいう俺も疲労回復と精霊世界で起こった事を纏める為に部屋から出ていなかった。さっきの話は見舞いに来てくれたジムが教えてくれた。

 

「さて、俺もいい加減外に出ないとな。十代の所に行くか」

 

この間の戦闘でボロボロになったブルー寮の制服は使えないので、私服に着替える。ふと今気が付いたが、俺の色の好みはフェイトに影響されたのかもしれない。流石に黒一色ではないが、赤と黒の組み合わせが多く、黄色のアクセサリーや小物を付けたりする。

 

「こういうのも無くして初めて気付く事なのか?」

 

みんながいたら、勝手に殺すなってツッコミを入れて来るだろうが、そのツッコミを貰うにはもう少し時間が必要だ。

もう一日以上ダラダラしていた様で、外を出ると、十六夜の月がデュエルアカデミアを照らしていた。

十代の部屋の前まで来ると、コンコンとノックをして「遊斗だ」と名乗る。勿論返事が来るとは思っていないので、ドアノブを回す。勿論鍵が掛かっているのも分かっていたので、未だに続く馬鹿力で無理やりドアノブを回す。バキッと嫌な音が聞こえたが、無事にドアが開いた。

 

「勝手に入るぞ十代」

「なっ、何でドア壊すんだよ!」

「だったらちゃんと返事をしろ」

 

自分しか使わない二段ベッドの下で、十代は横になっていた様だ。今はベッドを尻に引き、勝手に入って来た俺を軽く睨んでいる。だがヨハンを失ったショックがでかいのか、全く怖くない。

 

「十代、お前が考えているのは大体分かる「遊斗には分からな」お前は単純だからな」

「うっ・・・・」

 

そこで言い返せないのが、普段天真爛漫で考えるより先に突っ走る遊城十代だ。

 

「ヨハンを犠牲にしたのは自分の所為。ユベルの暴走も自分の所為。だから何としてでもヨハンを助ける。そうだろ?」

「まあ、だいたいは・・・・」

「昨日父さんの独り言を聞いてな。余波でひょっとしたら今日か明日の間に次元の歪が出来るらしい」

「え?」

「全く信じられない父親だろ? また俺達に次元を旅しろって言ってるんだ」

 

余りの滅茶苦茶っぷりにケラケラと笑いながら十代に告げた。すると十代は突然スッと立ち上がって机の上に置いてあったデッキホルダーを腰に付ける。

 

「おい。いくら何でもこんなタイミングに出る訳は無い。ちゃんと準備して『クリクリ~』マ、マジかよ・・・・」

『クリ~、クリクリ~』

 

どうやらハネクリボーの話では、このデュエルアカデミア内で、精霊に似た気配を感じたらしい。おそらく次元の歪から漏れている精霊の力だろう。言われてみればそんな気配を感じられない事も無い。

 

「俺は行く。遊斗、お前はどうする?」

「行くに決まってるだろ。けどせめてみんなが戻ってから出て欲しかった」

 

次元の歪がいつ消えるか分からない。デッキとデュエルディスク以外何も持っていない、手ぶらの状態で俺達は部屋を出た。

ハネクリボーの案内が終わると、目の前にグニャリとネジ曲がっている空間があった。今すぐにでも飛び込みたかったが、そのグニャリとネジ曲がっている空間が狭すぎて、通る事が出来ない。

 

「ど、どうする?」

「レインボー・ドラゴンの時みたいに、モンスターに乗せてデュエルエナジーを与えればいいと思う。デス・ベルトも取れたし思いっきり召喚できる」

「けどLSは戻って無いんだろ? 俺一人のデュエルエナジーで「僕達を忘れないで欲しいッス!」翔!? それにみんな!?」

 

俺と十代の後ろにはいつの間にか、翔、明日香、万丈目、三沢、剣山、吹雪さん、ジム、オブライエンの八人がいた。つけられていたのか、それとも誰かから次元の歪の事を知ったのか。どっちにしても皆俺達に付いてくる気満々だった。

 

「お前の為じゃない。俺はヨハンを助けに行くんだ」

「俺達もヨハンにはお世話になったドン」

「そうッス! このままじゃ終われないッス」

「ヨハンを護衛するミッションがまだ終わっていない」

「フレンドを助けるのに理由はいらないだろ」

「そのヨハンって子に明日香ともどもお世話になったみたいだからね」

「ヨハンは勿論、次元についても興味がある」

 

十代と同じ様に、ヨハンも自然と他人を惹きつける魅力があるようだ。みんな言葉と共に自分のエースカードを十代に見せる。

 

「みんな・・・・」

「これだけいれば行けるぞ十代!」

「ああ! 行くぞみんな! E・HEROネオスを召喚!」

「XYZ-ドラゴンキャノン!」

「スーパービークロイド-ステルス・ユニオン!」

超伝導恐獣(スーパーコンダクターティラノ)!」

「ウォータードラゴン!」

「サイバー・エンジェル-弁天!」

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)!」

「地球巨人ガイア・プレート!」

「ヴォルカニック・デビル!」

 

皆自分のエースカードの名前に魂を込めて叫ぶ。このカード達がヨハンを救う鍵になってくれるのだ。モンスター達も自らの名前を高らかに呼んでくれ、信頼してくれた主に応える様に力を込める。

俺は融合デッキから一枚のカードを取り出して、誰にも聞こえない小さい声で囁く。

 

「実際に力は使わなくていいです。でも俺の魂を、思いを、あの次元の歪にぶつけて下さい。AOA高町なのは!」

 

俺のデッキの中核であり、最も出番の多いカード。デュエルだけでなく、実生活でもいつもいつもお世話になっていた。まだ会話も出来ないくらい衰弱している状態だが、せめて形だけでもみんなと共に、あの次元の歪をこじ開けたい。

皆次元の歪を指し、攻撃名を宣言する。

 

「ラス・オブ・ネオス!」

「X・Y・Zハイパー・キャノン!」

「ブロウンクマグナム!」

「アルティメットバイト!」

「アクア・パニッシャー!」

「エンジェリック・ターン!」

「ダーク・メガフレア!」

「プレート・テンペスト!」

「ヴォルカニック・キャノン!」

「ディバインバスター!」

 

それぞれの必殺技が時空の歪を無理やり抉じ開ける。十の必殺技は次元の歪を少しずつだが確実に広げていき、小さい穴は次第に大きくなっていく。次第に歪の中から白い光が漏れだし、薄暗い夜に真っ白な光が線を描く。その光の線は次第に大きくなっていき、辺り一帯を白の光で覆い尽くす程眩くなる。

 

「開いたぞ!」

 

この声はおそらく三沢だろう。かなりの爆音で誰の声かハッキリ区別出来なかったが、誰かが開いたと言ったのは耳に入って来た。

その時だった。まるで白い光に引っ張られる様に体が次元の歪に呑み込まれた。体を動かすと皆同じように呑み込まれた。どこまで続く真っ白な空間だったが、今俺達が下に落ちているのは分かる。

何秒か、何分か、何時間か。永遠に同じ景色が続き時間感覚が狂って来たころ、突然真っ白な空間に黒が現れた。

おそらくあれが出口だろう。そう思った時、突然キーンと高い音が聞こえてきた。いや、聞こえて来たと言うよりは直接頭に響かせている様な感覚。余りにも異様な感覚に、酷い吐き気と眩暈を覚え、気が付けば俺の意識は闇に落ちていた。

 

 

 

 




異世界から戻ってきた回に異世界に旅立つ系二次創作。

極力早く進めたいんですよ(文字数稼げない言い訳)
今回はポンポンストーリーが進みました。実は最初、十代とヨハンと一緒にユベルと戦う予定でしたが、構成を練る前から難しいと分かっていたので断念しました。レインボードラゴンを出す、アーミタイルを出す、フェルを出す、十代にも活躍させる。かつフィールドに六体の宝玉獣がいるようにする。
作者には無理です。



それと全く関係ありませんが、遂にブルーアイズのストラクチャーの看板カードが出ましたね。
感動的だ。だが蘇生効果を、効果モンスター以外にして欲しかった。



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第五十六話

ついにここまで来ました。精霊世界編後半。まだ四期のストーリーを構成してないからハッキリ分からないですけど、あと三十話ぐらいで終わるんじゃないかな?
夏休み前に終わらせたいと思いますが多分この台詞がフラグになるだろうなぁ・・・・。

様々な名シーンがある(迷ではない)第三期後半。色々と書きたいシーンもありますがいつもと同じようにオリジナル展開で進んでいきます。


追記
闇の書の闇の相手の墓地の通常魔法を使う効果を少し変更しました。
今まで相手の墓地の通常魔法をこのカードの効果として使える、でしたがそれだとコストが必要になってくるので、ダイヤモンドガイと同じく通常魔法カードの効果を発動できる、にしました。



体が酷く重い。まるで全身に重りを付けている様で、特に手足と瞼に関しては1tの重りが乗っているのでは無いかと思った。勿論そんな訳は無く、手に動けと命令を送るとちゃんと動く。

やけに良い匂いの場所で、パン屋の甘い匂いが鼻孔を擽る。ボーとする頭をフルに回転させ、今度は瞼を開く様に命令する。体はよほど睡眠を欲しているのか、中々瞼を開ける事は出来なかったが、十数秒かけて、薄らとだが何とか目に光を当てる事が出来た。

すると視界に入って来たのは、赤。いや、赤と言うには余りにも美しい。真紅、ルビーの様な真紅。まるで恋人の瞳を連想させる色。

 

「遊斗、目が覚めた?」

「フェイ・・・・ト?」

 

連想では無かった。この真紅の瞳は彼女の瞳。

さっきまで重りの様に重かった瞼がパッチリと開き、彼女の全てを見る事が出来た。長い間眠っていたからか、それともこの優しい声を聞くのが久しぶりだったからか。

フェイトの顔を何年振りかに見る気がした。相変わらず芸術品と思わんばかりの整った顔と、それをより一層輝かせる金色の髪。

いつの間にか上半身が起き上がっていたのか、ベッドに座っているフェイトを見下ろしていた。

 

「久しぶり、遊斗」

「ツッ! フェイトッ!」

 

考えるより先にグッと引き寄せて思いっきり抱きしめた。こんな細い体では壊れてしまうのではないかと心配もあったが、それよりフェイトの存在を確かめるのが先だった。ギュッとギュッと強く強く抱きしめ、何度も何度もフェイトの名前を呼ぶ。

 

「久しぶりじゃない!」

「・・・・うん」

「悲しかった!」

「・・・・うん」

「怖かった!」

「・・・・うん。ゴメンね」

 

フェイトが悪い訳じゃない。フェイト達は被害者で、悪いのは全部ユベルだ。

それは分かっている。分かっているけど、嬉しさ怒り哀しさ喜び。全てフェイトにぶつけた。情けないと思われるだろうが、理性は働かず、口が勝手に動く。

 

「何で離れたんだよ!」

「大丈夫って伝えたくて、みんなの力を集めて姿を取り戻したんだけど」

 

異世界に飛ばされた一日目にフェイトのカードが見えたのは幻じゃ無かったのか・・・・。

 

「あの時は、自分がおかしくなったと思った」

「私達も外の事は知らないから、後で教えて欲しいな」

「分かってる! それより言う事があるだろ!」

「うん・・・・」

 

さっきまで抱きしめていたフェイトを少し離し、両肩をギュッと握りしめる。フェイトは年相応の少女らしく純粋に、だけどフェイトお姉ちゃんとしての顔で笑みを浮かべた。

 

「ただいま、遊斗」

「お帰り、フェイト・・・・」

 

ずっとこの時を待っていた。この言葉を待っていた。ここが何処だとか全く分からないけど、それよりフェイトが俺の元に帰って来たのが嬉しかった。嬉しさの余り、勝手に目から涙が流れてくる。

男としてダサいし、彼氏としてダサいし、主としてもダサい。けど涙は止まらないし、止めようとも思わなかった。

 

「うっ、フェイ、トぉ・・・・」

「私はここにいるから・・・・」

 

フェイトの肩に顔を乗せ、大声を上げて泣き喚く。フェイトとの再会により、今まで溜めていた怒りや寂しさや悲しみや不安も爆発し、涙でフェイトの服が濡れていく。その間フェイトは優しい声で「頑張ったね」と頭を撫でながら褒めてくれた。

何分の間泣いていたかは分からないが、少なくとも五分はずっと泣いていただろう。涙が止まるとようやく頭が冷静になり、恥ずかしさの余り顔どころか体全体が熱い。

 

「ご、ごめん。でもありがとう」

「ううん、むしろ嬉しかった。遊斗が泣きついて来たのって久しぶりだから」

 

こんな情けない男の泣き事を、フェイトは嫌そうな顔一つせずに笑って受け止めてくれた。ただ自分の右肩を見ると困った表情をして「着替えなきゃね」と言い、俺にクスッとイタズラな笑みを見せた。

 

「わ、悪い。着替え・・・・ってそう言えば、ここどこ?」

 

何かフェイトのサイズに合う服を探そうと辺りをキョロキョロと見渡すと、ここが何処なのか全く分からない。そういえば眠る前の最後の記憶は、十代達と一緒に次元の歪を攻撃して異世界に飛んだ事。

ここが異世界と考えると、この昔ながらの建設物にも納得がつく。アニメとかでよく出る、山奥の小さな家という感じで、壁となっている丸太は露出し、その隙間から太陽の陽射しが部屋に入って来ている。木で作られた机や椅子。パチパチと木が燃える心地よい音を鳴らす石で作られた暖炉。その暖炉の前には栗色のサイドポニーがひょこひょこと揺れていた。

 

「なのはさん!」

「うん、久しぶりだね遊斗」

「いるならいるって「言えると思う?」・・・・すいません」

 

なのはさんは暖炉の火を使ってパンを焼いていた様で、鉄のプレートの上に乗っているパンをトングを使って暖炉から取り出し、机に置いてあった皿の上に置く。

まるで自分の家の様に素早い身のこなしに、一瞬だが血の気が引いた。

 

「お、俺どれくらい眠ってた?」

「一日半。随分疲れが溜まってたみたい。シャマル先生カンカンだったよ」

「シャマ姉が・・・・」

 

なのはさんの手際の良さから、ここに家を建ててもう何年も住んでいるのかと思ったが、そんな事は無かった。

 

「ここは異世界なのか?」

「そうだよ。私達もビックリしちゃった。ようやく外に出られるようになったら異世界にいるんだもん。はい、パンとハムエッグ」

「あっ、ありがとうございます。と言う事はなのはさんもフェイトもフェルシュトラーフェの事とか全く知らない?」

「フェルシュトラーフェって混沌幻魔の子だよね?」

 

じゃあ三幻魔のデュエルの事も全く覚えてないのか。少し時間が掛かるが、前にいた異世界の事を話すか。フェイトとなのはさんのゆったりした感じから、ここは安全な場所の様だし、みんなが戻って来てくれたから、よほどの事が無い限り安全だろう。

なのはさんが作ってくれたご飯を食べ終えた頃、丁度異世界で起きた事の説明をし終えた。

 

「つまり遊斗達はユベルとの戦いで離ればなれになったヨハンを助ける為にここに来たんだね」

「しかしまた無茶したね。いくつあるか分からない次元世界からヨハンを助けるなんて。もう後戻り出来ないから私も協力するけど」

「ありがとうございます。じゃあ今度は」

「うん、説明しようか。外に出た方が分かりやすいんだけど、大丈夫?」

「ああ。腹も膨れたし、みんなと再会出来たから元気いっぱいだ」

 

二人の後に続き家の外に出ると、そこにはデュエルモンスターズの精霊が沢山いた。種族はバラバラで、戦士族や魔法使い族もいれば、アンデッド族や悪魔族、天使族もいる。属性もバラバラだが、一つだけ共通点があった。皆、低級ステータスのモンスター。少しきつい言い方をすると、弱小モンスターだ。

種族バラバラであるのにも関わらず、手を取り合って木材を運んだり、料理を作ったり、農作物を耕したりしている。

 

「これは・・・・」

「ここは、遊斗を襲ってきた王達が収めていた精霊世界」

「え? そんな訳。だって種族が違う・・・・」

「この村にいる精霊達は、種族間の争いや貧富の差から逃げてきたんだ。だからどんな種族でも、平和を望めば仲間として歓迎される」

「だから俺を泊めてくれたのか?」

「それ以外にももう一つあるんだけど、それは後でね」

 

俺となのはさんは、歩き始めたフェイトに続いて村の中を歩く。さっき俺が眠っていた家と同じ様な作りの家が沢山あり、精霊達がそれぞれ自分の能力や種族としての特性を活かし、家を建てている。

少し遠くを見ると大きな草原があった。精霊世界にも牛や豚等の家畜もいる様で、広い草原を散歩中の様だ。

 

「戦争中の世界とは思えませんね」

「好き好んで戦争する精霊なんてごく僅かだからね。こんな風に平和を望む精霊は多いんだよ。特にデュエルモンスターズは生まれながらのレベルやステータスで力関係が決まるから」

 

なるほど。デュエルモンスターズの精霊は人間以上に大変だな。生まれながら身分や強さが決まった世界か・・・・。もし俺が生まれていたら、多分この村に来ていただろうな。

何となく、ふとある事が気になったので空に浮かんでいる太陽を探す。浮かんでいる太陽は、この前の次元の様に三つでは無く六つ。数が違うって事は、ここは前いた次元とは違う次元か。

 

「そういえばどこに向かってるんだ?」

「この村のリーダーの所」

「村長さんか?」

「ううんリーダーでいいの。村長だとこの村で自分が一番偉いみたいだから、その呼び方は嫌なんだって」

 

ふ~ん、良い意味で変わってる人だな。

フェイトの足が止まると共に、俺は目の前の建物を眺める。先程まで並んでいた家よりちょっと、というかかなり大きく、一目で偉い精霊が住む家と分かる。本当にさっきの台詞を言った人間の家だろうか?

 

「フェイトです、入りますね」

 

一応ノックはしたが、返事が来る前に勝手にドアを開けた。フェイトにしては珍しい行動だったが、そのリーダーの正体を見るとフェイトの行動に納得出来た。確かにこのモンスターだったらノックをしても返事が来ないだろう。まるでどこぞの研究者の様だ。

 

「ヒッヒ、いらっしゃい。おやおや、君達の主も戻った様だな」

 

なのはさんより小さい身長。少し茶に汚れた白衣。一部ハゲた頭。紫色の髪。丸い眼鏡。

どうやら俺はマッドサイエンティストと縁があるようだ。マッドサイエンティストのダジャレにより生まれたモンスター。

 

「ま、魔導サイエンティストか・・・・」

「ヒッヒッヒ、私の事をご存じで?」

「そ、そりゃあワンキルパーツとして猛威を振るっていたからな」

 

こいつならこんな村に住まなくても、戦争に貢献できるだろうが、一応ステータスは攻守共に300。それでも研究者として十二分に活躍できそうだが。

 

「まあお座り下さい。王達の王、F.・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)を倒した少年よ」

「知っているのか?」

「勿論です。あなたのおかげで種族の天辺にいた輩は混乱し、どの種族も戦への勢いが無くなっている」

 

少なくとも平和を願っている精霊からは感謝されるって事か。すっかり忘れていたが、精霊の王を倒した俺はその家臣に恨まれている可能性が高い。

 

「色々と質問されたい事があるでしょうが、一つ聞かせて欲しい。あなたはこの村に害をなす者か?」

「この村の目的が戦争の無い平和な世界なら俺は味方だ」

「それを聞いて安心しました」

 

魔導サイエンティストは人を馬鹿にした様な表情を変えず、甲高い声で笑っている。一応これでも喜びを表しているのだろう。

 

「じゃあいくつか聞きたい事が「リーダー! 大変です」今度はクリッター・・・・。ホントに弱小者の村なのかよ・・・・」

 

誰にも聞こえない様にボソッと呟き、勢いよく入って来たクリッターの話に耳を傾ける。

 

「ド、ドラゴン族の群が接近しています! しかも先頭にいるのは究極竜騎士(マスター・オブ・ドラゴンナイト)です!」

「それは困りましたね~。まさかF.・G・Dの側近、マスター・オブ・ドラゴンナイトが直々に来るとは」

「この余所者がおびき寄せたんです! この村には結界があるんですよ! 普通なら気付かない筈」

「彼等は悪くありません。ですが関係があるのは事実でしょうな」

 

確かに俺はF・G・Dを倒したが、ドラゴン族に位置を知られる様な事はしていない。なのはさん達が持つ魔力値を感知したのか? いや、相手がどんな方法でこの村を知ったのかは今は関係ない。暖かいご飯とベッドを貰った一宿一飯の恩義に報いる。

 

「行くぞ、フェイト。なのはさん」

「う、うん」

「分かった・・・・」

 

 

 

 

村の住民の話では既にドラゴン族の群はこの村で一番大きい広場に降りたらしい。今すぐ村に攻撃しない事を考えると、ひょっとしたら話が通じるかもしれない。人混みを掻きわけて突き進む。既にマスター・オブ・ドラゴンナイトが乗っている青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)やモンタージュ・ドラゴンやホルスの黒炎竜LV8と言った巨体が見えている。

広場に姿を現すと、先程まで休んでいたドラゴン族は、一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに殺気と怒りのオーラを噴出して俺を睨みつける。

 

「・・・・」

 

風の流れが変わる程の殺気だが、三幻魔、F・G・D、混沌幻魔と相手にしてきたので、手足が震える事は無かったし、堂々とマスター・オブ・ドラゴンナイトを見る事が出来た。

マスター・オブ・ドラゴンナイトはカオス・ソルジャーが青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)に乗ったモンスター。俺が見ているのは、カオス・ソルジャーと言った方が分かりやすいかもしれない。

 

「貴様は遊斗・スカリエッティか」

「そうだ」

「よりによって何故お前がここにいる! よくも我が君を!」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトは手に持った剣を振るい、剣圧で刃を作って俺に飛ばす。当たったら真っ二つになってしまうだろうが、刃が俺の体に触れる事は無く、黄色のバリアによって進行を止められた。

 

「ありがと、フェイト」

「こうやって遊斗を守るのは私達の役目だから」

「チッ、LSか」

「攻撃してきたって事は、話し合いは無用って事でいいんだな?」

「当たり前だ。貴様が居るとは予想外だったが、これも我が君の導き。決闘を申し込む!」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトが持っていた剣が突然複雑な動きを始め、数秒後にはデュエルディスクに変形した。俺は、一歩前に出て左腕のデュエルディスクを起動させる。了承のサインはこれで十分だ。

 

「「デュエル!」」

「先攻は俺が貰う。ドロー! コロナを召喚、効果で手札を一枚捨ててデッキからゴライアスを特殊召喚する!」

創成起動(クリエイション)

 

A500・D1700

AD2300

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ2 手札2 LP4000

 

召喚した際コロナが「お久しぶりです」と言ってくれたので「ああ、お帰り」と返した。その様子が大層気に食わないのだろう。マスター・オブ・ドラゴンナイトは憤怒の表情でデッキトップに指を置き、力一杯デッキトップのカードを引く。

 

「私のターン! 融合発動! 手札のカオス・ソルジャーと沼地の魔神王を融合! 来い、我が分身! マスター・オブ・ドラゴンナイト!」

 

AD5000

 

一ターン目の初っ端から、固定ステータス最高峰の攻守共に5000の、マスター・オブ・ドラゴンナイト。このステータスを持つモンスターは、F・G・Dとこのカードしか居ない。

このカードを主軸にしているのは分かっていたので、ゴライアスを守備表示にしておいて正解だった。

 

龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)を発動! 墓地のカオス・ソルジャーと沼地の魔神王をゲームから除外し、二枚目の我が分身を特殊召喚する!」

 

AD5000

 

・・・・これは予想外だな。既に奴の手札は二枚だが、手札消費二枚で攻撃力5000のモンスター二体と思えば安いものだろう。

 

「二体のマスター・オブ・ドラゴンナイトの効果。自身以外の自分フィールド上にいるモンスターの一体に付き、攻撃力を500アップする」

 

ドラゴンナイトA5000→A5500

 

「バトル! 二体のマスター・オブ・ドラゴンナイトでコロナとゴライアスを攻撃! ギャラクシー・クラッシャー!」

 

A5500 VS D1700

A5500 VS D2300

 

アルティメットの三つの首と、その上に乗ったカオス・ソルジャーの剣から放たれるエネルギーが交差して、攻撃力に相応しい強大な力になる。発射速度が早く巨大な攻撃は回避しようと思っても回避できるものではなく、コロナもゴライアスもバリーンと音と共に破壊された。

 

「罠発動、Asの回収! デッキからディアーチェを特殊召喚する。効果でLCを一つ置く」

 

LCディアーチェ1

A2100・D1600

 

「久しく呼んだと思えばこの様な戦況か。まあ遊び相手には丁度いい」

「心強いよ」

「私はこれでターンエンド!」

「エンドフェイズ時に永続罠、ウイングロードを発動」

 

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札2 LP4000

ナイト モンスター2 伏せ0 手札2 LP4000

 

二体のマスター・オブ・ドラゴンナイトの登場に、マスター・オブ・ドラゴンナイトが勝つと決めつけ、村の精霊は勝手に諦めていた。確かに攻撃力5500のモンスター二体は破格だが、みんなが居ればどんな戦況だって覆す事ができる。

 

「俺のターン! ウイングロードの効果でドローしたカリム姉を特殊召喚!」

 

AD500

 

「スタンバイフェイズ、前のターン捨てたリオの効果。このカードを手札に加える。カリム姉の効果発動。カードの種類を選択。デッキトップが選択した種類だった場合手札に加える。魔法を選択。デッキトップは魔法都市ミッドチルダ、手札に加える」

 

これで手札は一気に四枚に増えた。しかしまだまだこんなものでは終わらない。

 

「フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動!」

 

中世ヨーロッパの田舎村だった景色は、一気に近未来の魔法都市に変化する。低級モンスターでもフィールド魔法は知っている様で、自分達が住んでいた村が変わっても特に驚いたりしなかった。

 

「リオを召喚! 効果でミッドチルダにLCを一つ置く」

 

LCミッドチルダ0→1

A1700・D500

 

「リオの効果発動。墓地のコロナとゴライアスを除外して攻撃力を500アップ。更にコロナの効果でデッキから一枚ドロー」

 

リオA1700→A2200

 

このターンになって既に二体のモンスターと一枚のフィールド魔法を発動したが、手札はまだ三枚ある。少なくだが確実にアドバンテージを稼いで行っている。だが現在のLSの攻撃力の合計は、4800。まだ700足りない。

 

「カートリッジロードをミッドチルダに発動。LCを一つ置く」

 

LCミッドチルダ1→2

 

「ミッドチルダのLCを二つ取り除き、連続転移を発動。デッキトップ三枚をめくり、通常召喚可能なLSを特殊召喚する。一枚目レヴィ、二枚目闇の書、三枚目シャマ姉。レヴィとシャマ姉を特殊召喚!」

 

A1900・D400

A800・D1800

 

「すごいぞ! 強いぞ! カッコイイ! 切り込み隊長レヴィ・ザ・スラッシャー登場!」

「その、頑張るわよ遊斗」

 

レヴィは変わらず元気だったが、シャマ姉の雰囲気がいつもと少し違った。そう言えばここに来る途中のフェイトとなのはさんも変な感じだった。何かあったのか・・・・駄目だ。今はデュエルの真っ最中。相手に集中しろ。

 

「シャマ姉の効果でミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1

 

「バトル! レヴィでマスター・オブ・ドラゴンナイトを攻撃!」

「馬鹿め、自爆する気か!」

「いや、奴が前のターン召喚したあいつは」

 

流石F・G・Dの側近。俺のカード達はお見通しって訳か。けど止めるカードが無い以上あいつはどうする事も出来ない。

 

「ダメージステップ、ディアーチェの効果発動! 自身のLCを取り除き、LSの攻撃力をレヴィに集める!」

「受け取れ、レヴィ」

「はいよぉ~っ! キタキタキタ! 超必殺最終奥義!」

 

レヴィA1900→A6500 VS A5500

 

ディアーチェは杖先に溜めた皆の魔力をバルファニクスの刀身に送り込み、レヴィの攻撃力を一時的にだが爆発的に上げる。その威力は圧倒的な攻撃力5500のマスター・オブ・ドラゴンナイトを上回る6500。

ディアーチェ、リオ、シャマ姉、カリム姉の魔力光を発する大剣を、技名を叫びながら振り下ろす。

 

「エターナルサンダーソード!」

 

その剣は、あの伝説のデュエリスト武藤遊戯さんが使うカオス・ソルジャーと、海馬瀬戸さんのアルティメットが融合したマスター・オブ・ドラゴンナイトを切断し、上空から水色の雷を降らせ爆発させた。

 

ナイトLP4000→3000

ドラゴンナイトA5500→A5000

 

「ぐああああっ!」

「マスター・オブ・ドラゴンナイト様が!?」

「やはりF・G・D様を倒したのは本当なのか!?」

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズデッキからカートリッジロードを手札に加える」

 

レヴィA6500→A1900

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター5 伏せ2 手札1 LP4000

ナイト モンスター1 伏せ0 手札2 LP3000

 

「私のターン、ドロー! トレード・インを発動。手札のカオス・ソルジャーを捨て二枚ドロー。ドラゴンの支配者を召喚!」

 

A1200・D1100

 

これでドラゴン族であるマスター・オブ・ドラゴンナイトを効果対象にする事が出来なくなった。こうなると全体除去か、さっきと同じ様に火力で押すしか方法が無い。最もドラゴンの支配者は見ての通り低ステータスなので、そっちから破壊すればいいだけだが。

 

「バトル! マスター・オブ・ドラゴンナイトでディアーチェを攻撃!」

「罠発動、ポジションチェンジ。自分フィールド上のモンスター一体が攻撃対象になった時発動可能。その対象を他のカードに変更する事が出来る。攻撃対象をリオに変更、悪いな」

「大丈夫です。地味ですがしっかりアドバンテージを稼ぎました」

「面倒な! ギャラクシー・クラッシャー!」

 

A5000 VS D400

 

同じモンスターにリオとコロナのコンビが破壊されるのを見ると、空しいと言うか悲しくなってくる。本人達はさほど気にしていないだろうが、どうにも寂しい絵だ。だが二人のおかげで次に繋げる事ができる。

 

「対象を移し替えたモンスターがこのカードを発動したターン破壊された時、融合デッキからLS一体を墓地へ送る事ができる。墓地へ送るのは祝福の将シグナム」

「ドラゴンの支配者でカリムを攻撃!」

 

A1200 VS D500

 

どうやって攻撃するのかと思えば、持っている笛からエネルギーを発射してカリム姉を破壊した。つまり口からビームを発射したって事か?

 

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ1 手札1 LP4000

ナイト モンスター2 伏せ2 手札0 LP3000

 

「ドロー!」

 

引いたカードは闇の書。シャマ姉、ミッドチルダ、カートリッジロードの三枚を使えば速攻でアインスが呼べるし、そこからのドローも可能。しかしそうなるとディアーチェにLCが置けなくなる。ドラゴンの支配者を攻撃表示で出したって事は、必ず何か防御カードがある筈。

ドローして、尚且つ防御カードを使わせるのがいいか。それともブラフと読んでディアーチェにLCを乗せて攻撃するか・・・・。

 

「闇の書をシャマ姉に発動」

 

シャマルA800→A1100

 

「カートリッジロード、シャマ姉、ミッドチルダの効果で闇の書にLCを三つ置く」

 

LCミッドチルダ1→0 闇の書0→3

 

「闇の書をゲームから除外しアインスを特殊召喚!」

 

AD2300

 

「再びお前と一緒に戦えて嬉しいぞ」

「俺もだ、また今日も頼むよ。アインスの効果で融合デッキからナハトを特殊召喚!」

 

AD0

 

「フィールドのアインスとナハトを融合! 来い、絶望への旅路-闇の書の意思!」

 

先程までナハトがアインスの腕に絡まってジャレている様に見えなくも無かったが、突然ナハトはアインスの体を呑み込んだ。ナハトの体はすぐに消え、アインスの姿が見えたが先程までのアインスとは違う。体や手には赤いラインが刻まれ、耳の上と腰から堕天した翼が生えていた。

 

A3000・D3000

 

「闇の書の意思の効果発動。召喚成功時に除外された闇の書を装備する」

 

闇の書の意思A3000→A3300

 

「そして闇の書を装備した、闇の書の意思の効果発動。相手の墓地の通常魔法を発動できる。トレード・インを発動して二枚ドロー」

「なっ、私の魔法を使うだと!?」

 

アインスが持った闇の書からトレード・インの絵が浮かび上がり、闇の書からカードが二枚出現し、俺の手元に飛んできた。よしっ、このドローならLCをディアーチェに置く事が出来る。

 

「ツヴァイを通常召喚! 効果でミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ0→1

 

「場のシャマ姉とツヴァイを融合! 来い、祝福の癒し手シャマル!」

 

A1000・D2300

 

「効果でディアーチェにLCを置く」

 

LCディアーチェ0→1

 

「またそのモンスターにカウンターを・・・・」

「バトル! レヴィでドラゴンの支配者を攻撃!」

「攻撃宣言時に和睦の使者を発動! このターン私のモンスターは破壊されず、戦闘ダメージを受けない」

 

A1900 VS A1200

 

様々なモンスターの攻撃を防いできた半透明のバリアは、今日もまたレヴィの攻撃を防いで発動プレイヤーを救った。和睦の使者と威嚇する咆哮はホント使い勝手の良い防御カードだ。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ3 手札0 LP4000

ナイト モンスター2 伏せ1 手札0 LP3000

 

相手のフィールドには攻撃力5000のマスター・オブ・ドラゴンナイトがいるが、フィールドアドバンテージで圧倒的に有利だ。しかもアインスがいる限り、俺は毎ターン二枚のドローが可能になる。これはかなりの強みだ。

 

「私のターン! クッ、バトル! マスター・オブ・ドラゴンで闇の書の意思を攻撃! ギャラクシー・クラッシャー!」

 

A5000 VS A3300

 

「罠発動、協力防御。LSが二体以上いる時戦闘破壊及び戦闘ダメージを0にする。その後デッキから一枚ドロー」

 

LSが二体いるのが前提だが、その代わりドロー効果が付いたLS専用の和睦の使者。アインスに飛ばされた攻撃は、ディアーチェ、レヴィ、シャマ姉の協力もありアッサリと弾かれる。

 

「ドラゴンの支配者を守備表示に変更。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ2 手札2 LP4000

ナイト モンスター2 伏せ2 手札0 LP3000

 

「ドロー。闇の書の意思の効果発動。トレード・インを選択してデッキから二枚ドロー」

 

これで手札は五枚。その内一枚はカートリッジロードだが、残り四枚はマスター・オブ・ドラゴンナイトに情報がリークされていない。

 

「シャマ姉の効果発動。レヴィにLCを置く」

 

LCレヴィ0→1

 

「そして祝福の癒し手シャマルを生贄に、ホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚!」

 

A2000・D3000

 

ワイワイ騒いでいた外野の音が消え、足音も風の音も動物の音も何も聞こえないサイレントの世界に連れ込まれる。しかしいつまでもサイレントの世界が続く訳では無く、湖に一滴の雫が落ちるピチャンと音と共に、辺りに音が戻った。それと同時に俺のフィールドに現れた湖の中から、巨大なクラールヴィントの中にいるシャマ姉が登場する。

 

「クッ、また最上級モンスターを・・・・」

「進化して行くのがLSの強みだからな。ホーリーシャマ姉の効果発動。闇の書にLCを二つ置く」

 

LC闇の書0→2

 

「バトル! レヴィでマスター・オブ・ドラゴンナイトを攻撃! ダメージステップ、ディアーチェの効果発動。フィールドのLSの攻撃力をレヴィに集める」

 

レヴィA1900→A9300 VS A5000

 

先程の倍以上の攻撃力。それは当然レヴィにもバルファニクスにも影響があり、水色の刀身は紫、緑、黒の魔力光を螺旋状に纏い、その幅を五倍以上に広げている。攻撃力5000が小さく見える程の超火力にレヴィのテンションは最高峰になっているのか「ハッハッハッハ、ゴホッゴホッ!」と笑いすぎて蒸せている。

もはやレヴィの攻撃がカッコ良く決まらないのは定番となっているので、特にツッコんだりしなかった。

 

「ハイパー切り札! エターナルサンダーソードファランクスシフト!」

 

超巨大なバルファニクスを天へと付き上げると、水色の刀身がバラバラになって崩れ落ちる。だがこれも魔法の演出で、バラバラになった水色の魔力は剣となってマスター・オブ・ドラゴンナイトを狙い付ける。

 

「いっけええ!」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトは、四十はある水色の剣によって体全体を突き刺され、更には追加効果の雷によって爆発した。本来ならこの爆発によってマスター・オブ・ドラゴンナイトのライフは0になるが、奴の前に黄色のバリアが現れ爆発から守った。

 

「罠発動ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にしてデッキから一枚ドローする!」

「レヴィが戦闘で相手モンスターを破壊した時LCを取り除く事で、デッキからLSを特殊召喚できる。シュテルを特殊召喚」

「お久しぶりです遊斗。おや・・・・ディアーチェとレヴィがいると言う事は、またディアーチェに力を献上するのですね」

「ああ。場のディアーチェ、シュテル、レヴィを融合! 来い、ロード・ディアーチェ!」

 

A2500・D2000

 

シュテルとレヴィの力を受け継いだディアーチェ。その六つの翼の内四つは、シュテルの炎とレヴィの雷で形成されている。それ以外見た目に変化は無いが、ディアーチェの使う魔法にシュテルの炎とレヴィの雷が追加されるので、滅茶苦茶強くなっている。

 

「ディアーチェの効果でデッキから紫天の書を手札に加える。ホーリーシャマ姉の効果発動。俺の手札の数×300俺のライフを回復し、その数値分相手にダメージを与える。俺の手札は五枚、1500のダメージを与える」

「戒めの鎖」

 

遊斗LP4000→5500

ナイトLP3000→1500

 

五本の鎖がマスター・オブ・ドラゴンナイトの体を貫通し、生命エネルギーを奪っていく。その生命エネルギーは変わりに俺のライフを回復する。

 

「グッ・・・・」

「紫天の書をディアーチェに装備」

 

ディアーチェA2500→A3000

 

「カートリッジロードを発動。闇の書にLCを置く」

 

LC闇の書2→3

 

「再び闇の書をゲームから除外し、墓地のアインスを特殊召喚! 効果で融合デッキから夜天の書を特殊召喚!」

 

AD2300

AD0

 

「夜天の書をアインスに装備。カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、絶望への旅路-闇の書の意思の効果発動。このカードを特殊召喚した二回目のエンドフェイズ、このカードを墓地へ送り、デッキか手札からLS闇の書の闇-ナハトヴァールを特殊召喚する」

 

LS闇の書の闇―ナハトヴァール ☆10/闇/悪魔/A5000・D5000

 

一つのモンスターゾーンに収まっているとは思えない程の巨大なモンスター。これがソリッドビジョンでなければ、おそらくこの村は広場どころか辺りの家も押しつぶされてしまう。高さではあのアーミタイル程は無いが、体積では闇の書の闇の方が多いかもしれない。しかも本当の闇の書の闇だった場合、村どころかこの世界を侵食してしまうらしい。

非常にグロテスクなモンスターで、前方の方に顔の無い女がいる。おそらくあれがナハトヴァールの本体と言っていいのだろう。

村にいる精霊達も、やって来たドラゴン族も、マスター・オブ・ドラゴンナイトも闇の書の闇が放つ絶望のオーラに茫然としている。

 

「闇の書の闇の召喚成功時自身にLCを四つ置く。このカードのLCはこのカード以外の効果以外で取り除く事は出来ず、乗せる事も出来ない」

 

LC闇の書の闇4

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ5 手札1 LP5500

ナイト モンスター1 伏せ1 手札1 LP1500

 

「これが、我が君を倒した男の力・・・・」

 

フィールドにはディアーチェ、アインス、ホーリーシャマ姉、闇の書の闇。更にアインスは夜天の書を装備しており、ディアーチェも紫天の書を装備。一番低い攻撃力を持つホーリーシャマ姉ですら攻撃力は2000。対する奴のフィールドはドラゴンの支配者と一枚の伏せカードのみ。

 

「私のターン!」

「返事は予想できるが一応言っておく。二度とこの村を襲わないと約束したらデュエルの中断を認める」

「我が君の仇を目の前に逃げる等絶対にしない! モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンドだ!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ5 手札1 LP5500

ナイト モンスター2 伏せ2 手札0 LP1500

 

手札0の状態でセットモンスター・・・・。メタモルポットの可能性が高いな。俺の手札も少ないのでメタモルポットで得られるアドバンテージは多いが、相手に五枚のドローを許すのはいただけない。

ここは闇の書の闇の効果が安定か。

 

「ドロー。バトル、闇の書の闇でドラゴンの支配者を攻撃!」

 

A5000 VS D1200

 

闇の書の闇の本体と言える女は、自分の目の前に黒の球体を作り出す。黒の球体の中には不気味なまでの真っ白な光が見え、闇の書の闇が叫ぶと共にその白い光が黒を突き破ってドラゴンの支配者に飛んでいく。僅か数ミリしか無いビームだったが速度や威力、何より数が違う。百前後の白いビームがドラゴンの支配者を襲い掛かり、その体や服を穴だらけにした。

 

「闇の書の闇が戦闘で相手モンスターを破壊した場合、このカードに乗ったLCを一つ取り除く事で、相手フィールド上に存在するモンスター全て破壊する!」

「何だと!?」

 

LC闇の書の闇4→3

 

闇の書の闇は体から生えている触手の全てをセットモンスターに向け、触手の先からどす黒い射撃魔法を放つ。セットされていたカードは爆発に巻き込まれて破壊された。破壊したモンスターは予想通りメタモルポット。

 

紫天の書0→2

 

「この効果を使うターン、他のモンスターは攻撃できない。ホーリーシャマ姉の効果発動。ライフを600回復し、その数値分のダメージを与える」

「戒めの鎖」

 

遊斗LP5500→6100

ナイトLP1500→900

 

「ぐああああっ!」

「これでターンエンドだ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ5 LP6100

ナイト モンスター0 伏せ2 LP900

 

「じ、次元が違う・・・・」

「マスター・オブ・ドラゴンナイト様はF・G・D様の側近。今のドラゴン族の中では一番のデュエリスト」

「お前達は一つ肝心な事を忘れている。俺は全ての王をこのデッキで倒した。三幻魔の力が無いとはいえ、その事実は変わらない。俺を倒したいのなら、王を倒す気でかかって来い」

「(こいつ、我が君に似ている・・・・。ツッ、私は何を考えている。こいつは我が君の仇)私のターン!」

 

この状況下でもまだ諦めないか。何故コイツはここまでF・G・Dを称えているんだ? 10年以上前からF・G・Dは破滅の光に操られ、王に不信感を持つ者は多い筈。昔のF・G・Dを知る側近なら、その変化が分かった筈。

 

「お前は何故そんなにF・G・Dに忠誠を誓っている。F・G・Dは10年以上前からおかしくなったと聞く」

「確かに我が君はその頃からお変わりになられた。だがそれまでは誰もが尊敬する素晴らしいお方だった。元々変わった所もあったが、それでも最高の王であられた。そんなF・G・D様だからこそ、私は忠誠を誓った。だからどんな命令であろうと私は従う!」

「・・・・なるほど。お前が負けられない理由は分かった。だけど俺も、LSの主として、最強の王から貰ったこの首飾りの所有者として負ける訳にはいかない」

 

F・G・Dから貰った首飾りを服から取り出して奴に見せる。やはり側近だけあり、この首飾りを知っていた様で目を大きく見開いた。しかし想像していた反応とは違い「そんな、馬鹿な・・・・」とかなり動揺していた。一緒にこの場にやって来たホルスの黒炎竜やモンタージュ・ドラゴンも同じ様な反応をしていた。

 

「ど、どういう事でしょうマスター・オブ・ドラゴン様!」

「分からん! 分からんが、全てこのターンで見極める!」

 

さっきまで揺るがない闘志を燃やしていたマスター・オブ・ドラゴンナイトは、指を震わせながら恐る恐るドローする。

 

「ゴブリンのやりくり上手を発動。更にチェーンして二枚目のやりくり上手。そしてそれにチェーンして非常食を発動! 二枚のやりくり上手を墓地へ送る。処理により、ライフを2000回復し、三枚ドローして一枚デッキの下に、もう一度三枚ドローして一枚をデッキの下に戻す」

 

一気に手札が四枚に増えてしまったが、それ以上に相手の反応が気になって仕方ない。どうしてこの首飾りを見せただけで驚く? まさか代々伝わる国宝でかなり脆いものだったり?

 

「貪欲な壺を発動! 墓地のカオス・ソルジャー、二枚のマスター・オブ・ドラゴンナイト、ドラゴンの支配者、メタモルポットをデッキに戻し二枚ドロー! 融合発動、手札のカオス・ソルジャーと沼地の魔神王を融合し、マスター・オブ・ドラゴンナイトを融合召喚!」

 

AD5000

 

龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)を発動。二枚目のマスター・オブ・ドラゴンナイトを融合召喚!」

 

ドラゴンナイトA5000→A5500

 

初ターンと全く同じ方法で二体のマスター・オブ・ドラゴンナイトを並べやがった。ワンパターンだがマスター・オブ・ドラゴンナイトを並べやすいプレイング。しかも奴が持っている最後のカードは、初ターンとは違うカード。

 

「装備魔法巨大化を発動! 一体のマスター・オブ・ドラゴンナイトの元々の攻撃力を二倍にする!」

 

ドラゴンナイトA5500→A10500

 

巨大化の最も多い上昇値5000をこの目で見るとは思わなかった。流石かつて制限カードだった装備魔法。マスター・オブ・ドラゴンナイトの体を倍の大きさにし、攻撃力5500の超火力モンスターに更に5000と言う数値を加えた。

 

「バトル! 攻撃力10500のドラゴンナイトでアインスを攻撃! ギャラクシー・クラッシャー!」

「罠発動ディバイトエナジー! フィールドのモンスターが攻撃対象になった時、LSをゲームから除外し、除外したモンスターの攻撃力分攻撃対象になったモンスターの攻撃力を上げる! 闇の書の闇をゲームから除外し、アインスの攻撃力を5000上げる!」

 

アインスA2300→A7300

 

「更に夜天の書の効果発動。祝福の将シグナムをデッキに戻し、その攻撃力の半分をアインスに加える。攻撃力1350アップ!」

 

アインスA7300→A8650 VS A10500

 

巨大化を装備したマスター・オブ・ドラゴンナイトには及ばないが、この二枚の活躍でアインスの攻撃力が爆発的に上昇した。青と白銀が混ざった砲撃によりアインスは破壊されてしまったが、攻撃力の差を1850まで縮める事が出来た。

 

遊斗LP6100→4250

 

「グッ」

「二体目のマスター・オブ・ドラゴンナイトでディアーチェに攻撃!」

「ディアーチェの効果発動。戦闘を行う時、相手モンスターのレベル×100攻撃力を上げる。マスター・オブ・ドラゴンナイトのレベルは12!」

 

ディアーチェA3000→A4200 VS A5500

 

ディアーチェの切り札とも言える砲撃魔法、エクスカリバーを放ったが、マスター・オブ・ドラゴンの力は更にそれを上回っていた。アインスと同じ様にディアーチェも攻撃を諸に受け、防ぎきれなかったエネルギーが俺を襲ってくるが、今度はさっきとは違う。

 

「ホーリーシャマ姉の効果発動。紫天の書のLCを二つ取り除き、ディアーチェがフィールドから離れるのを無効にする」

 

LC紫天の書2→0

 

「・・・・まさか本当に防がれるとは。間違いないようだ・・・・。少し遅れてしまったがデュエルの中断を受け取ろう」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトは構えていたデュエルディスクを降ろし、デュエル中断を受け取ると告げた。それはつまりドラゴン族がこの村を襲わないと約束したと言う事。村に住む精霊達は大歓声を上げて喜ぶが、俺は素直に喜ぶ事が出来なかった。この首飾りを見せただけで突然マスター・オブ・ドラゴンナイトは態度を変えた。

 

「その首飾りが気になっている様ですね」

「ツッ!」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトが突然こっちに歩いてきたので、中腰になっていつでも動けるような状態にする。フェイトもなのはさんもそれぞれデバイスを構えるが、マスター・オブ・ドラゴンナイトは左手の剣を地面に放り投げた。これにより俺達の警戒心は僅かだが薄れた。

 

「私達はたった今、あなた様の味方になりました」

「あ、あなた様?」

 

急にマスター・オブ・ドラゴンナイトの口調が敬語になり、俺は不信感よりも恐怖を覚え、数歩後ずさり、なのはさんの後ろに回る。奴は俺の心境を感じ取ったのか足を止め、青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)、ホルスの黒炎竜、モンタージュ・ドラゴンと共に、地面に膝まずいた。

 

「あなた様こそ我らが君、F・G・D様のたった一人のご子息。我らが君が亡くなった今、我らが主君は遊斗・スカリエッティ。あなた様になります」

 




様々なフラグを立ててきたがそもそもこの展開を思いついたのは二期の前半の時点でもう少し丁寧にフラグとかやったり意味深な台詞とか出しても良かったけどバレるのも嫌だからそこそこといった感じで結果的に余りインパクトが無かったかもしれないが

つまり、遊斗はFGDの息子だったんだよ!!

ΩΩΩ<な、なんだってー!?



ありきたりの展開と思ったあなた・・・・。その通りです。
ひょっとしたらと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

いやですね、やっぱり原作のキャラや大まかなストーリーを大事にしつつも、フラグを立てて原作と絡ませるというのは結構(言い訳)
ただ二十代リスペクトでこうなった訳ではありません。


今回久々に新オリカが出ました。これは結構前に頂いていたものです。


夜の魔王様作

LS闇の書の闇―ナハトヴァール ☆10/闇/悪魔/A5000・D5000
このカードは「LS絶望の旅路―闇の書の意思」の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外の自分フィールド上に存在するモンスターが相手に与える戦闘ダメージは、そのモンスターのレベル×100ポイントになる。
このカードの特殊召喚成功時、このカードにLCを4つ置く。このカードのLCはこのカードの効果以外で取り除くことはできず、乗せることもできない。
このカードが破壊される代わりにこのカードのLCを2つ取り除くことができる。
このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードのLCを1つ取り除き発動できる。相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。この効果を使ったターン、自分はこのカード以外攻撃する事ができない。





Q 一体いくつ”このカード”と書いてあるんです?
A 10だ


出しにくいとはいえ、固定火力が圧倒的です。戦闘ダメージ操作効果と、相手フィールド上の前破壊と、カード破壊無効の三つとカウンター固定の制約を持っています。
強いですが軸にするのは辛いカードですかね。いくら火力が高いとはいえ、やはり特殊召喚するのに色々と時間がかかるので(あと単純に前の方が使い勝手が良い)

まあLS最上級特有の召喚条件が重いけど強いと言えばそれだけになります。





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第五十七話

じゃんじゃじゃ~ん! 今明かされる衝撃の真実ゥ!

と言う事で色々と立てたフラグを回収していきます。矛盾はないと思いますが、こういう回って凄く不安です。


果てしなくどうでもいいし、絶対にやらないのですが、ミンサガの熱情の律動の歌詞(?)をここに乗せたら利用違反になるんだろうか・・・・。



「俺がF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の息子? いくら奇襲を企んでるからってもう少しマシな嘘を吐け」

 

アホらしい。この一言で済ます事が出来た。俺がF・G・Dの息子だと? そりゃあ俺もF・G・Dもデュエルは強いかもしれないけど、それだけだ。他にも強いデュエリストは沢山いる。

だが俺の返答などお構いなしに、地面に膝まづいたままのマスター・オブ・ドラゴンナイトは淡々と告げる。

 

「その首飾り。それはドラゴン族の王家に代々伝えられる国宝です」

「だから何だ? これはF・G・Dから貰ったんだ」

「その首飾りは、代々王の血を引く者が触れない限り輝きを発さないのです」

 

ツッ! そんな馬鹿な!? だって今現に俺の胸でこの首飾りは火・水・地・風・闇の順に、それぞれの属性に対応した色を発している。

火の時は竜の爪の中に炎が灯り、赤の光を発する。

水の時は竜の爪の中に水が溢れ、青の光を発する。

地の時は竜の爪の中に砂が飛び、茶の光を発する。

風の時は竜の爪の中に風が吹き、緑の光を発する。

闇の時は竜の爪の中に闇が浮び、黒の光を発する。

首飾りを強引に外し、隣にいるフェイトに押し付ける。一瞬フェイトはビクッと肩を振るわせたが、急に光を失った竜の爪を見て、顔を伏せた。

 

「・・・・たまたま、かもしれない」

「私達がここに来たのはF・G・D様の気配を感じ取ったからです。それでも信用できないのであれば、他に心当たりはあるはずです。人間とは思えない力を発揮したり、私以外の方にF・G・D様に似ていると言われた、精霊の気配を感じ取れるようになった。特に身内の精霊の」

 

心当たりは・・・・あった。

この前の異次元世界でもそうだが、二年生の時に海馬コーポレーションから落ちたあの時から体がおかしくなっていた。闇のデュエルをやってもすぐに体は回復するし、妙に体が頑丈になった。一年の時は一回闇のデュエルをして気絶する時も多々あった。

王の一人、唯一破滅の光に操られなかった不死王(ノスフェラトゥ)リッチーが、F・G・Dと俺が似ていると言っていた気がする。

言われてみれば海馬コーポレーションから落されてから、相手が人間か精霊か気配を感じられるようになった。前の異次元世界でも、カードが真っ白でも何となく誰かが分かった。それはさっきのデュエルでも同じだ。

 

「・・・・」

「遊斗・・・・」

「二人が今日、よそよそしかったのはコレを知ってたのか・・・・?」

「えっと、その・・・・」

「シャマル先生が気付いたの。遊斗の体の構造が半分精霊になってるって・・・・」

 

なるほど、だから召喚した時シャマ姉もおかしかったのか・・・・。

余りダメージを受けて無いのに急に視界がグルグルと回ってボヤやけてきた。俺の名前を呼ぶフェイトとなのはさんの声が聞こえた気がするが、返事をする余裕は無かった。

ああ・・・・俺は精霊なのか。それは嫌では無い。むしろみんなに一歩近づけたと思えばむしろ喜ぶべきことだ。フェイトとの人間と精霊の壁も崩れた様なものだ。

 

「良い事だらけじゃないか。体は強い、王の中の王F・G・Dの血を受け継いでいる、こうやってドラゴン族が協力してくれる。あの時F・G・Dが一瞬だけ正気に戻ったのも多分俺が息子だからだ。そのおかげで今こうして生きている」

「遊斗・・・・」

「なあ、マスター・オブ・ドラゴンナイト。F・G・Dは身内の精霊の気配に敏感だったのか?」

「・・・・はい。我が君は自らの種族に非常に敏感でした。あなたが今持っていらっしゃる二体のドラゴン族のカード。あのカードが我が君のデッキに入っていたのもその力によるものです。新しい精霊が生まれる時、どの様な原理かは分かりませんが、我が君は必ずその精霊の事を事前に知ります。しかし知らぬ間に現れた二枚のカード。不審に思った我が君は、魔法使い族の力を借り、その精霊が宿るカードを自らの元へ取り寄せたのです」

 

だからフリードとヴォルテールをF・G・Dが知っていたのか・・・・。俺の場合身内はLS。カードを見ずとも誰のカードか判断できるのはそう言う事だったのか。

明かされた自分の出生の秘密に、心はズタボロになって混沌と化しているが、不思議と頭は冷静だった。むしろみんなを失った時の方が何倍も何十倍も可笑しくなっていた。

 

「その、遊斗・・・・」

「少し休む・・・・。悪いけど一人にさせてくれ。マスター・オブ・ドラゴンナイト、他にも聞きたい話がある。すまないがこの村に残っていてくれ」

「畏まりました」

 

 

 

 

「俺が・・・・精霊・・・・」

 

カーテンから漏れた光が照らす左手を眺め、そうポツリと呟いた。あれから何時間経ったか分からないが、ヘッドボードに背中を預けベッドに座った体制は一回も変えていない。人間ボーとしていたら長時間同じ体制でいられないから――って俺、人間じゃないんだっけ・・・・。

何度も言うが嫌では無かった。これは強がりでも現実逃避でも無い。ずっと周りに精霊がいた所為か、魔法には憧れなくても精霊に憧れた事はあった。みんなと同じ世界を見て見たいと思った時もあった。

 

「ツッ、何なんだよ・・・・」

 

だけど、何でよりによってF・G・Dの息子なんだよ・・・・。何で俺が殺した奴の息子なんだよ・・・・。

いくら操られたとはいえ、いくら父親とは思えないとはいえ、血の繋がった親を殺したのは変わらない事実。今までも何人もの精霊を殺してきたが、それは良い事だと思っていたから。

F・G・Dを殺して喜ぶ精霊は大勢いた。F・G・D本人もありがとうと言ってくれた。

 

「あぁ・・・・やっぱり理屈じゃないよな・・・・」

 

血がつながっていないとはいえ、ジェイル父さんの事を本当の父親だと思っていた。そりゃそうだろう。ずっと一緒に暮らして育てて――もらった記憶は無いが。

だから自然と、自分の体にはあの人の血が流れていると思っていた。

 

「ハハッ・・・・、元テロリストの血じゃなくて王様の血っていうのに、全然嬉しくないな」

 

なんて自虐的に笑っていると、扉がコンコンとノックされた。声や足音を聞かずとも、気配で分かる。フェイトだ。

 

「フェイトか・・・・。入っていいぞ」

「うん」

 

鍵の掛かっていないドアは心地よいアルトの声と共に開かれ、廊下に降り注ぐ光と共にフェイトが入って来る。フェイトはドアを閉めて光を追い出すと、こっちに歩き、俺と同じ体制で隣に座った。こんな時だってのに、フェイトがベッドに乗った時のスプリングの軋む音に少しドキドキしてしまい、やっぱりフェイトの事好きなんだな~と自覚させられた。

 

「・・・・やっぱり、ショックだよね?」

「まあ、かなり・・・・。頭では分かってるんだけど」

「その気持ち、私も少しなら分かって上げられると思う。私も、生まれが普通じゃないから・・・・」

 

アリシアのクローンとして生み出された女の子、フェイト。フェイトは母プレシアの本当の娘、アリシアになる事は出来ず、散々酷い仕打ちを受けた挙句、プレシアに捨てられた女の子。

一度は心を失いかけていたフェイトに対し、俺の生まれはメリットだらけだ。

フェイトの肩に手を回し、少し強引に胸に引き寄せる。急所である心臓にフェイトの顔があると、恐怖が消え、心の混乱が解けて行く。

 

「フェイトはどうやって立ち直った?」

「私は何もしてないよ。私はみんなに助けられただけ。ユーノに、ハラオウン家のみんなに、アースラにいたみんなに、優しくしてくれたみんなに。色んな事を教えてくれたリニスに。ずっと一緒にいてくれたアルフに。ボロボロになっても私を支えてくれたバルディッシュに。何度も何度も友達になろうって言ってくれたなのはに・・・・」

「ヴィヴィオも、エリオも、スバルも、家族を失ったティアナもトーマも、他にも普通とは違った生まれや辛い過去を持っている仲間がいる」

「うん・・・・」

「みんな、助けてもらったのかな?」

「そうだと思う。私と同じように・・・・」

 

胸元にいるフェイトに顔を向けると、いつの間にかフェイトは俺の方を見上げていた。自然と向き合う体制になる中で、俺はポツリと自分の気持ちを素直に口にした。

 

「次は、俺の番だな」

「うん。遊斗には私がいる。私達がいる。デュエルアカデミアのみんながいる」

 

本当に、心の底から思う。フェイトに出会えて、精霊達(みんな)に出会えて、デュエルアカデミアのみんなに出会えて良かった。

当たり前なのかもしれないが、さっきまでの俺は自分の事しか考えて無かった。これから俺はどうすればいいのか、どうやって生きていこうか、何を感じていけばいいのか。自分が人間じゃないって言われたら誰だって混乱する。だからそれは悪い事じゃないと自分の事ながら思う。

だけど、ずっと一人で抱え込むのは駄目だと、フェイトは教えてくれた。

何もしなくていい。ただ自分に優しくしてくれる人達の元へ行けばいい。フェイトはそう教えてくれた。

 

「フェイト」

「なに?」

「愛してる。心から、お前を愛している」

 

お姉さんモードに入っているフェイトも流石に恥ずかしかったのか、顔全体をカーと真っ赤にさせた。途端に初々しくなるフェイトにクスッと笑い、もう一度今度は耳元で優しく告げる。

 

「好きだ、愛している」

「ぁ、あぅ・・・・」

 

やっぱり精霊でよかった。こうして自分が何なのか考えて、落ち込んで。そんな時に共感できる優しい言葉を言ってくれるフェイトをこんなにも好きになれた。好きだと実感した。

フェイトの口からも愛してる、と聞きたい気持ちもあったが、やっぱり俺は身勝手な奴なんだろう。自分の気持ちをフェイトにぶつけるのでいっぱいいっぱいだった。

 

「ありがとうフェイト。愛してるよ」

「ぅ、うん・・・・」

「フェイト?」

「な、何?」

「フェイトにキスしたい。フェイトが欲しい」

 

今度は優しく包み込むようにギュッと抱き締めて、フェイトの耳に響く様に言った。

するとフェイトはもう体中の水分が蒸発してしまうのでは、と思えるほど顔を真っ赤にさせて、顔を俯かせた。このままだとキスが出来ないし、それから先を考えたらこの体勢は少しやりにくい。フェイトの体を両手で少し浮かせ、そのままベッドに横になる様に押し倒した。

 

「ふぇ!? あ、あの・・・・」

「愛してる・・・・」

 

ここまでのやり取りで少し乱れた服や髪。顔を真っ赤にさせて恥ずかしがりながらも、しっかりと俺の目を見てくれる。やはり中身は大人なのか、幼い体から発せられたものとは思えない色気に一瞬クラっと来ながらも、フェイトの唇に自らのそれを近付けていく。

少し乱れているフェイトの吐息を口で感じられるまで接近すると、フェイトの口がゆっくりと動かされた。

 

「私も、遊斗を愛してる」

 

その声が耳に入って来ると同時に、俺達は触れるだけの優しいキスをした。ふっくらとした色のいい唇はとても気持ちがよく、マシュマロの様な柔らかさに温もりを感じられる暖かさ、甘いフェイトの匂いが一緒になった最高の味わいだった。

 

「フェイト!」

 

プツリと、頭の中で何かが切れた。完全に歯止めが効かなくなり、次は勢いよくキスをする。世間一般がどうかは知らないが、二回目のキスでこれは中々だと思う。フェイトの口内に進出し、舌を絡ませ合ってお互いの唾液を交換する。唾液は汚いと言うが、フェイトの唾液は今まで味わって来た何よりも美味しく、ずっと味わっていたい程中毒性があった。

両者呼吸が荒くなり、一旦キスを止めて顔を見合わせる。

 

「フェイト・・・・」

「ゆう、とぉ・・・・」

 

 

 

 

おそらく翌日。外の明りが一回消え、再び明るくなったのでおそらく一日が経過しているのだろう。昨日の内に色んなものを吐き出したので心も体もスッキリで、ぶっちゃけ精霊であろうがなかろうがもう完全にどうでもよくなっていた。

朝起きると隣にフェイトの姿は無く、カードの中に戻っていた。まあ理由は分かる。

とりあえず今は腹が減って仕方が無かったので、部屋を出て太陽の光によって照らされる廊下を、目を細めながら歩いて行く。何しろ昨日部屋に籠ってから一回も何も食べていない。

 

「腹減った・・・・って、この良い匂いは?」

 

何処からともなく美味しそうな匂いが漂って来た。まずは何か食べないと頭も体も目が覚めないので、フラフラとゾンビの様に匂いの元へ歩いて行く。

匂いの元はやはりキッチンからの様で、キッチンにはなのはさんとはやてさんが料理を作っていた。

 

「おはようございます」

「あっ、おはよう」

「もうご飯出来とるから、待っとってな」

 

いつもと変わらない挨拶に少し違和感を覚えながらも、椅子に座って料理が届くのを待つ。それからすぐ、机の上には様々な料理が置かれた。どれも美味しそうで好物もある。しかしそれ等より目に付く料理が俺の前に置かれていた。

 

「・・・・あえて、何もいいません」

 

赤飯があったのだ。

本当なら色々と追求したい所だったが、自ら地雷源に突っ込むのと同じだ。ニマニマと隠せてない笑みを見なかった事にして、二人が作ってくれた料理をたらふく食べた。

人間世界と同じ食材が精霊世界にあるのか、あるいは精霊世界にある奇奇怪怪な食材を人間世界の料理に変化させたのか。二人が作ってくれた料理は相変わらず美味しく、気が付けば机の上にあった大量の料理はきれいさっぱりなくなっていた。

 

 

 

 

朝ご飯を食べて一時間後。

俺はもう大丈夫、F・G・Dの息子と言う事を受け入れるとみんなに伝え、これから何をやって行くのかを話した。

俺の目標はこの世界の戦争を止める事。そして十代達と合流してヨハンを救い出す事。

既になのはさんとフェイトに話したので、皆その目標の事は知っていたが、改まって俺の口からみんなに伝えたかった。

話しの途中、俺の顔を見てカーと頬を赤くさせたり、ニヤニヤと頬の筋肉を崩す輩がいたが、全部無視した。十秒後にはそんな事は忘れている。

そして今、俺はマスター・オブ・ドラゴンナイトと向かい合っていた。

 

「俺はこの世界の戦争を止めたいと思っている。その為にはまず情報が必要だ。今どういう状況なのか教えてくれ」

「分かりました。遊斗様がご存知の通り、この世界では種族間で戦争が行われています。攻めたり、守ったり、手を組んだり、種族によって考え方や戦い方はバラバラですが、皆亡くなった王の命令を聞いていたのは一緒です。

そしてその王達が遊斗様によって倒された事への反応は大きく分けて二つです。一つは昨日の私の様に、遊斗様を倒そうとする者。もう一つはこの村の者の様に遊斗様を感謝するもの。前者に関しては王の側にいた身分の高い者や戦争で儲かっていた者が多く、後者は身分の低い者や戦争に苦しんでいた者が多いかと」

「その比率は?」

「後者の方が多いですが、前者はかなりの力と金を持っています。数は少なくとも前者の方が強いです」

 

まあそうなるだろうな。そうじゃなかったらとっくに革命が起こって、今頃戦争は終わっている。

こんな事なら革命を起こす小説なり、戦争関連のゲームだったりをやっていれば多少は何かいい案を思いつくのかもしれないが、デュエルモンスターズ三昧の俺には、全てが上手く進む妄想ぐらいしか思い浮かばない。

 

「司令官や執務官、古代ベルカの王様達は何かいい案ある?」

 

と五人を呼んだが、カードから出てきたのははやてさんとフェイトさんだけ。

三王娘は自分で戦うのは得意だが、この手の事には弱そうだ。ヴィヴィオには聖王の記憶はないし、アインハルトは頭より拳が武器だし、イクスは強制的に戦争させられた女の子。

 

「う~ん、いくら遊斗がF・G・Dの息子だとしても、戦争を止める影響力は殆んど無いからね。利用しないのは勿体無いけど」

「と言うか、そもそもF・G・Dを倒した遊斗にドラゴン族全体はどんな反応なん? ドラゴン族を束ねる事が出来るか出来ないかで、だいぶ話は変わると思うんよ」

「昨日一緒に同行してきたホルスの黒炎竜とモンタージュ・ドラゴンが国に帰り、大臣に遊斗様の事を伝えると、賛否両論だったそうです」

「俺が言うのもなんだけど、仇を討とうと、満場一致じゃないんだな」

「F・G・D様はこの戦争が始まる前に、自分には人間の女と出来た子供がいると大臣に伝えておりました。その時に、もし息子にあったら助けてやってくれ、と仰っていたので」

「けどその息子がF・G・Dを倒した張本人だからな」

「そうですね・・・・。我がドラゴン族は誇り高き一族です。本来なら国というものを作り、束ねるのも難しいのですがF・G・D様は僅か一代でそれを成し遂げた。それだけ皆F・G・D様を慕っております」

 

カリスマ性あふれるドラゴンだったって事か。それだけ凄い竜だったからこそ、破滅の光に乗っ取られてもなお、ドラゴン族達はF・G・Dに付いて行ったのか。いや、全種族が戦っているのを見ると、全ての王がそれぐらいのカリスマを持っていたと思ったほうがいいかもしれない。

ん? てかそもそも待てよ。

 

「俺が半分人間なのは、やっぱりF・G・Dが人間の女と恋をしていたのか?」

「はい。偶然この世界に迷い込んだ人間の女性と恋に落ちたのです。しかし精霊と人間の恋は前途多難。しかも王となると、一国を揺るがす程の大事件です。勿論F・G・D様は、私以外の誰にもその女性の事は話しませんでしたが、やはりいつかは限界が来るもの。臣下の一体に見つかったその女性は、F・G・D様の寝室を荒らす泥棒として捕まりました。本来なら死刑になる筈でしたが、F・G・D様と私が密かに救い出し、人間世界に帰したのです」

「その女性のお腹の中にいたのが遊斗・・・・」

「その通りです」

「ちょっと待ってくれ。さっきお前は、F・G・Dが自分には人間の女性との子供がいるって言った。しかしそんな事を知った大臣達はF・G・Dを許したのか?」

「勿論色々問題はありましたが、あのF・G・D様が私達に頭を下げられたのです。ですから私達は命を承り、それ以降何も言いませんでした」

「なるほど・・・・。じゃあそれだけ人間と精霊との子供って珍しいんだな」

「珍しいと言うより前例がありません。どの様に成長するのかF・G・D様は大変気にしていましたが、これ程立派に成長されるとは」

 

まるで自分の事の様に喜ぶマスター・オブ・ドラゴンナイトの表情がなんともくすぐったく、俺は頬を数回掻くだけで何も言えなかった。

しかし前例が無いとなると、何故一年前から精霊の力が現れたのか、何故ユベルに飛ばされた次元で身体能力が爆発的に上がったのかが分からないままか。

 

「これは私の勝手な想像になるのですが、精霊の力が開放されるのは遊斗様が本当に危険だと思った時では無いでしょうか?」

「本当に危険な時? そんなの一年生の時から数え切れないほど体験してるけど」

「フェイトさんからお話を聞いたのですが、ビルから落ちた時も、異世界に飛ばされた時も遊斗様の周りにはLSが居なかったとか」

「いつも遊斗の周りにいた私達がいなくなって、更に危機的状況になった。多分遊斗が思っている一番危険な状況は、私達がいない事じゃないかな」

 

確かに辻褄が合っている。言われて見れば一回目も二回目も俺の周りにはみんながいなかった。だから自分の中の力を解放するしか手が無い、そう無意識の内に思っていたのだろう。となると、初めて闇のデュエルをした時も、三幻魔とデュエルをしていた時も、王達とデュエルをしていた時も、みんながいるから心のどこかで安心していたのか。それはそれで自分の神経を疑いたくなる。

 

「さて、そろそろ話を本題に戻そうか。本題は戦争をどうするかで、ドラゴン族達が遊斗に付いて来てくれるか。まずここからや」

「先程も申し上げましたが、何とも言えません。F・G・D様の命を従おうとする者も居れば、仇を討とうとする者も、触るぬ神に祟りなしと思うものも」

「どっちにしても話し合いをするなら、まずドラゴン族からだね」

「そうですね・・・・。ただこれだけの話でも大まかな進路は決まった。俺が思いついた戦争を止める策は三つ。一つ目は全種族のお偉方と話をして戦争を止めさせる。二つ目は戦争を望まない精霊達を束ねて革命を起こす。三つ目は一つの勢力がこの精霊世界全域を支配する」

「私は二つ目に反対です。戦争を行う精霊の中には戦争で設けたり、身分を上げようと企む者もいますが、亡き王の望みを叶える為に戦争を行う精霊もたくさん居ます」

「一つ目の話し合いも難しいね。こっちには、F・G・Dの息子、王達は操られていたという事実、これくらいしかカードが無い。ドラゴン族の場合これに家宝とF・G・Dの命令が加わるけど、他の種族にはそれが通用しない」

 

となると三つ目の一つの勢力が精霊世界全域を支配する。しかし支配をするには、相手に圧倒的な戦力差を見せ付けたり、相手の勢力を根こそぎ奪う等、かなり荒っぽい方法しか思い浮かばない。

やっぱり最小限の被害で戦争を止めるのはかなり難しい。というか不可能に近い気がする。

 

「まあ一日や二日でいい考えが思い浮かぶとは思わない。とりあえず今日の話し合いはここまでにしよう。マスター・オブ・ドラゴンナイトは一旦国に帰ってくれ。そしてF・G・Dが操られていた事や戦争を止めようと思っている事を説明してくれ。今混乱の原因である俺が向かうよりも、F・G・Dの側近のお前の口から言った方がいいと思う」

「分かりました。進展があればまたこちらに来ます」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトは席を立って一礼すると、部屋を去って行った。マスター・オブ・ドラゴンナイトと入れ違いになる様に、一人精霊が入って来た。

 

「ヒッヒッヒ、実はLSの主であるあなたに提案があります」

「何だ?」

 

魔導サイエンティストだ。相変わらず深刻な雰囲気に似つかわしくない喋り方をする魔導サイエンティストは、嬉しそうに「ヒッヒ」と笑う。いや、本当に嬉しそうなのか微妙だが。

 

「実は迎撃用の武器を開発していましてね。おっと、この村のポリシーに反しません。あくまで自衛様の武器ですから」

「何も言ってないが・・・・」

「ならいいです。それでですね、もしよろしければそれ等の武器をLSに使って頂きたいと思いまして」

「どんな武器だ?」

「Forceと申します」

 

 

 




遊斗とフェイトは深く考えないでいいです。あなたが真っ先に思いついた方が合っていると思います。


まあ色々とフラグを回収した訳ですが、どうなる事やら不安です。矛盾は駄目だよね。現に赤ん坊の遊斗が持っていたカードが魔法使い族だし。フッ素!


三期後半のストーリーはオリジナルになり、カードで戦争を止める展開になります。カードゲームではよくある事。原作組みとの再会はいつになる事やら・・・・。
ただこうすることで原作に似すぎるって事はまず起こらないので、安心して投稿できるという。十代&ヨハン VS ユベルも似すぎてないか少し心配だったので。





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第五十八話

更新が遅れて申し訳ありません。
この作品を投稿する前からいつかはなるだろうと思っていた事が起こりました。
この作品への情熱が、頭の中で構成していた別の作品に移りました。人間一つの事に集中できる時間は短いと言いますし、別に仕方のない事だと思いますのでご了承お願いします。
絶対こうなると思ってポンポンストーリー進めていたのですが、まさかオリジナルストーリーの途中になるとは・・・・。


頭の中で構成していた作品は既に文にしているので、四期突入した辺りで同時執筆始めようかなと思わなくもないです。




「Force?」

「はい。Forceと言うのは総称で、正確な名前は別にあります。ただ私達が兵器全体をForceと言っているのです」

 

兵器か。確かに新たな力を貰えるのは大きい。俺は是非採用した言いが、みんながどう思うかが問題なんだが・・・・。

丁度実体化しているフェイトさんとはやてさんをチラッと見ると、物欲しげな目をしている訳でも無く嫌な顔をしている訳でも無い。パワーアップ出来るなら魔法だろうと平気だろうとどっちでも良いようだ。

 

「じゃあ連れて行ってくれ」

「畏まりました」

 

魔導サイエンティストが連れてきたのは、他の家に比べたらやたらと大きい自分の家。大きかったのには理由があり、この家の中に研究所も入っている様だ。というか研究所を除いたら、普通の家の三分の一も無い。

魔導サイエンティストは部屋の隅にある本棚の元へ歩き、立ててある一つの本をクイッと引っ張った。すると部屋の扉がスーと横に移動し、新たな道が開かれる。凄いシステムだが、外から隠し部屋があるとバレてたら意味が無いんじゃないか?

 

「どうです? ここが研究所です」

「うわ~」

「へ~」

「なるほどな~」

 

音が外に漏れない様にしているのか、中は金属の板で覆われていた。本当に呑気な村の一部なのか疑問に持つ程別世界だ。

働いているのは主に機械族の下級モンスターで、せっせとせっせと機械を作っており、中には魔法使い族や戦士族等の人型モンスターもいた。

 

「しかし下級モンスターだけでよくこんな施設を作れたな」

「逆ですよ逆。下級モンスターだからこそ手先が器用で、より良いものが作れます。こちらの武器がForceです」

 

魔導サイエンティストが案内した先には、机の上に置かれている巨大な武器があった。剣、銃、ハンマー、盾など様々な種類の武器があり、どれも大の男が両手を使わないと持てないだろう。

するとデッキからトーマとリリィが出てきて、机に乗っている武器をマジマジと眺める。

 

「これ、AEC武装にそっくりだ・・・・」

「ホント・・・・」

「「「AEC武装?」」」

 

トーマ達が知ってフェイトさんとはやてさんが知らないって事は、JS事件より更に後の武装。その読みは当たっていた様で、俺の推理と同じ言葉がトーマの口から出る。

 

「いつか話したと思うんですけど、新暦81年にEC因子適合者と呼ばれる人達と起動六課メンバーは戦います」

「そのEC適合者に対する武器がAEC武装と言うんですけど、その武器とこの武器がそっくりなんです」

 

あ~。そんな話何年か前に聞いた様な気がしなくもない。少なくともデュエルアカデミアに入る前の話だから記憶が曖昧でも仕方ないだろう。しかしなのはさん達がこんなゴツイ武器を装備して戦うのか・・・・。それはそれでカッコイイ気がする。

 

「持ってみていいか?」

「ええ。ですがかなり重いですよ。人間の男二人がかりでようやく持てるものですから」

「た、確かにめちゃくちゃ思いでコレ・・・・」

 

はやてさんは一番軽そうな剣を持とうとしたが、剣は僅かに上がるだけでとても戦える状態じゃない。俺は二番目に軽そうな銃を両手で持ってみる。やはり確実に精霊の力が解放されているのか、さほど重く無く、片手で持っても振り回せる。

 

「うっ、まさか遊斗に負けるなんて・・・・」

「はやて。私も持ってみたい」

 

はやてさんが持てなかった剣を、フェイトさんは片手でヒョイッと持ち上げ、手首のスナップを利用して軽く素振りをした。見た目の筋肉はほとんど変わらないのに、どこからそんな力が出て来るだろう? って、俺も似たようなもんか。

 

「私も持ってみたい」

「なのはっ。なのはならやっぱり銃と盾かな?」

「い、いくら教導官のなのはちゃんでも二つ同時は無理やないかな?」

 

なのはさんの登場にフェイトさんは嬉しそうに声を上げ、はやてさんは頬の筋肉を引き攣らせながら俺の手元にある銃とテーブルの盾を見る。

改めてなのはさんとフェイトさんを見ていると、少し妬ける。やっぱり大人のフェイトにも憧れるから、大人のフェイトが取られた感じを覚える。フェイトとフェイトさんはもう別人だから嫉妬も何もないんだけど。

 

「えいっと。う~ん、やっぱりかなり重いね。身体能力強化が無いと厳しいかも」

「ですよね。これを振り回すのはちょっと難しいかも。まあ俺はやりませんが」

「私の場合剣だけだからそこまで感じないけど、なのはは厳しいかもね」

「・・・・あれ? おかしいのは私なん?」

「ヒッヒ、変なのは向こうですよ」

 

ん~、はやてさんは魔導師だけどそこまで鍛えてないのか。そう言えばスバルのマッハキャリバーも重すぎて中々持てないって、もう何年も前に仰っていた。

 

「まあ私も身体能力強化使えば持てるけど、ちょっと厳しいな~」

「ねえ、この武器っていくつあるの?」

「実際に使用段階にあるのは、ここにあるのと剣と盾が一つずつ。その剣は二刀一対の連結使用の片手剣です」

「となると使用する人数は限られますね」

 

するとなのはさんは顎に手を当てて「う~ん」と考える。ハンマー使いはヴィータさんしかいないのでヴィータさんが持つのは確定。この手の剣はシグナムさんだろうし、もう一つの連結の剣はフェイトさん。後は銃と盾だが。

 

「みんなさえよければ私、銃と盾を使ってみたいな。かなりの火力と防御が期待できそう」

「せっかくなら私も装備してみたい。私は防御があんま得意やないし」

「決まったみたいですね。じゃあ魔導サイエンティスト。本当に貰っていいのか?」

「ええ。ですが細かな調整と、もう一つForceの弱点を防ぐためにとある機械が必要ですのであと数日時間が必要になります」

「分かった。どっちにしろ今日明日出て行く訳じゃない。もう少しここにいさせてもらうよ」

 

 

 

 

それから昼ご飯を食べ終え、デッキの調整をしている頃、ふと一枚のカードが目に入った。俺がジッと見るカードと言えば大方予想は出来るだろう。フェイトだ。

フェイトがカードに閉じこもる理由は分かるが、いい加減出てきてほしい。昨日散々抱きしめたりキスをしたけど、もっとフェイトと一緒にいたい。

 

「出てきてくれ、フェイト」

 

返事が無い。

 

「フェイト、お願いだから出て来い」

 

無言。

 

「・・・・昨日のフェイトの言動ばらすぞ」

「そ、それだけはやめて!」

 

勢いよくカードから出てきたフェイトの顔は真っ赤で、色々といっぱいいっぱいと言った表情だ。手を必死に動かしてオドオドしており、漫画やアニメだったら後ろにアタフタと文字が出ているだろう。

目の前に出てきたフェイトの手を引っ張って股の間に座らせる。フェイトはどうか知らないが、フェイトの体全体を抱きしめられるこの体勢でいるのが好きだ。

 

「ぅぅ・・・・」

「恥ずかしい気持ちは分かる。けどフェイトには傍にいて欲しい。俺だってまだ戸惑ってるんだ」

「遊斗・・・・」

 

すまないフェイト。ぶっちゃけ俺は、もう精霊だろうが人間だろうが割とどうでもよくなってきている。でもこれくらい言わないとフェイトはまたカードに帰るかもしれないから、何とかして手元に置いておきたい。

 

「はぁ・・・・フェイトの髪って気持ちいい」

「や、やっぱり遊斗キャラがおかしいよ・・・・。す、凄く積極的・・・・」

「・・・・今まではさ、周りの目を気にしたり、フェイトに迷惑が掛かると思って自重していた時が多かった。だけど周りの目を気にするより、フェイトに迷惑をかけるより、フェイトの隣に居たい。フェイトの温もりや鼓動を感じていたい」

「――~~ッ・・・・ズルイよ」

「何て言われても、フェイトが俺の事を嫌いにならない限り、俺はずっとフェイトの傍にいる・・・・。愛してるよ」

 

耳元で優しく愛を告げ、フェイトの顔が俺と向き合う様に左手で動かす。キスをされると分かったのか、フェイトは力強くギュッと目を瞑る。スッとフェイトの左胸に手を当てると、微かに膨らんだ柔らかい胸を、バクバクと高鳴る心臓が揺らしている。

 

「えっち・・・・」

「可愛いよ、フェイト」

 

結局その日は二人っきりの部屋でフェイトとイチャイチャしていた。

 

 

 

 

それから二日後。デュエルアカデミアから旅立って四日目になる。

そう簡単に何か進展があるとは思っていなかったが、やはりヨハンや戦争の事が気になる。前者に関しては、正直どの次元のどの星のどの世界のどの地域のどの街にいるのか分からない、何一つ手がかりの無い状態なので、正直焦っても成果は出ない。十代辺りが突っ走ってそうだけど、ジムやオブライエンがいるから何とかなるだろう。最も、俺と同じ様にみんなバラバラだったら危険だが。

後者も10何年と続いてきた戦争を、僅か数日で止めようと急ぐのは無謀だ。だからこうやって深く考えないようにしているのだが、フェイトとイチャイチャしていないとどうにも落ち着かない。

 

「この村の周辺を調べるのもいいな」

 

と言って探索したのが昨日。結論から言うと何も無かった。進展が無かったのか、ドラゴン族から使いが来る事は無い。話ではForceが完成するのは明日との事。

 

「いい加減に動きたいんだが、今日も待機かな」

「そんなに動きたいなら、私と打ち合いでもする?」

「いいな。そう言えば二回目の覚醒から一回も打ち合いしてないし」

 

今なら身体能力強化ありの本気のフェイトと打ち合えるかもしれない。

身体能力強化は結構地味で目に見えないから分からないかもしれないが、かなりの体が強化される。考えてみてくれ。普通の人間が樹から樹へ跳び移ったり、ベランダから飛び降りたり出来るか? ビルが壊れる程の勢いで飛ばされて平気だったりするだろうか? 運動音痴のなのはでさえそれが可能になるのが身体能力強化だ。

フェイトと一緒に外に出ると、マスター・オブ・ドラゴンナイトが目の前にいた。

 

「ご報告が遅れてすいません」

「問題ない、頭を上げてくれ。何かあったのか?」

 

地面に膝まずき頭を下げたマスター・オブ・ドラゴンナイトは、俺の言葉と共に頭を上げて説明を始める。しかしこんなやり取りをしていると、改めて自分がF・G・Dの息子だと知らされる。

 

「はい。話を聞いた大臣達が、本当に国宝の竜の爪が光り、尚且つF・G・D様を凌ぐ強さを持つかこの目で見る事が出来たら、あなたを我が君主として認めると言いました。どうされます?」

「勿論行くに決まってるだろ。ただな、実はお前が帰った後魔導サイエンティストからForceって言う新たな力を貰う約束をしていたんだが、もう少し時間が掛かるんだよ。別にForceが無くとも力は見せられると思うが、より強大な力を見せて損する事はないだろ?」

「ヒッヒ、それについては問題ありませんよ」

 

顔を見なくても声と口調で分かるが、話を聞く態度として一応振り向いて、魔導サイエンティストの顔を見る。その後ろには一昨日見た武器、Forceを持っているなのはさん、フェイトさん、はやてさん、シグナムさん、ヴィータさんの五人がいた。

 

「皆さんとデバイス達が優秀なおかげで、予定より一日早く完成しました。それとせっかくドラゴン族の国に行くなら、これで行った方が速いですよ」

 

魔導サイエンティストは手に持っていたボタンをポチっと押すと、突然地面が揺れて移動を始めた。一歩も動いていないのに、気が付けばさっきまで居た場所から離れた場所に立たされており、さっきまで居た場所には巨大な穴があった。

人間色々な事を経験すると慣れるもので、驚きはしたが「うおっ」と一声上げただけだった。一年からナノーネと語尾に付ける先生や闇のデュエルに三幻魔。二年目は宇宙に飛ばされて正義の闇や破滅の光。三年目は混沌幻魔に異世界に飛ばされ、半人半精と暴露される。

もはや穏やかな村に一つや二つ秘密基地があろうと、驚かない図太い神経の持ち主になっていた。

 

「Forceの弱点。様々な機能やバッテリーを組み込んでいる為重量物となっているのと、バッテリー切れが非常に早い。しかしそれを補うのがこのLS級艦船ヴォルフラムです」

 

そのLSって聞いてもリリカルシリーズしか思い浮かばないから、他の艦船に比べてどれくらい大きいのかは分からないが、ここら一帯を影にする程大きい。青をイメージにしているのか目に入る場所の六割が青や青の同位色、三割が白で残り一割が赤。

余り乗り物に詳しくないので上手く説明できないが、デュエリストらしく説明するならビクトリー・バイパーXX03の先が三角形になっている。果たしてこの説明で何人が分かるかは知らないが、我ながら良い例えだと思う。

 

「なるほど。このヴォルフラムからバッテリーを貰えば、長時間戦えるって事か」

「ええ、理解力が高く助かります」

「けどどこから乗るの? それに私達みんな前線で戦うから、艦船を操縦出来ないよ?」

「ヴォルフラムの真下に中と外を繋ぐワープ装置があります。操縦も自動でやってくれるので問題ありません」

 

しかし自転車の次に自分の物になる乗り物が艦船って、過程をぶっ飛ばしているな。それ以前に自分用の艦船を持つ者事態が少ないから、他と比べようがないか。

 

「これは凄いですね・・・・。とてもこの村で作った物とは思えません」

「反応が遅いのは茫然としていたからか」

「それとこれがForceを装備した五人のカード。こちらがヴォルフラム。そしてForceのサポートカードとなります」

 

Forceの五人は融合モンスターの様で紫の枠で覆われていた。これ以上メインデッキに上級が増えても困るので、融合モンスターで助かる。最も、融合であろうとなかろうとデッキを回す自身はあるが。

 

「何から何まですまないな」

「いえ、戦争を止めるあなたに協力するのは当然です」

「それじゃあ行って来る。マスター・オブ・ドラゴンナイトは先に飛んで案内を頼む」

「畏まりました」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトは空を見上げながら口笛を吹くと、龍の咆哮が村中を走り、その直後ヴォルフラムと村の間にアルティメットドラゴンが飛んできた。単純な脚力だけでアルティメットドラゴンに乗ったマスター・オブ・ドラゴンナイトはアルティメットドラゴンに命令を出して飛んで行った。

 

「俺達も行こう」

 

 

 

 

ヴォルフラムを発進させてから約半日。ようやくドラゴン族の国に到着した。

先導するマスター・オブ・ドラゴンナイトから送られる細かな指示に従いヴォルフラムから降り、その巨大な戦艦をヴォルフラムのカードに収める。

着地した場所は山を削って作ったのか、岩肌が露出している巨大な城の一部だった。上からも見えていたが、着地点にはホルスの黒炎竜LV8が出迎えていた。

 

「お待ちしておりました」

「大臣達がお待ちです。こちらへ」

 

待っていたホルスの黒炎竜LV8は俺に深々と頭を下げ、先に着地したマスター・オブ・ドラゴンナイトが案内してくれた。

ドラゴン族が暮らす城なのでかなり大きく作られており、地面から天井までの距離が五十メートル近くあり、幅もかなり広い。F・G・Dの様に人間の姿で居る事も可能だが、公の場や重要な会議では本来の姿で行わないといけないので、これ程大きくなったらしい。

 

「けど俺ぐらいのサイズのドラゴンには移動が辛いだろうな。主にお前とか」

「ここに暮らしてかなりの月日が経っているので慣れましたが、未だに急ぎの時はアルティメットに乗ったまま移動します」

「だろうな。一応聞くがその大臣達がいる場所には何分掛かる?」

「このペースだと20分くらいです。かなり近くに着地したので」

「・・・・ペース上げるぞ」

 

 

 

 

15分近く歩き、ようやく大臣達がいるだろう凄く派手な扉の前に出た。もはや大きさにツッコミは入れず、天井より更に10メートルは大きい扉だった。ドラゴン族に合わせて作ってあると、これ程まで違うとは。

 

「こちらに大臣達がいます」

「ああ」

 

扉の前に立つと、内側から開けたのか自動で扉が開かれた。中はここより明るいのか、扉が開かれると共に白い光が視界に入って来る。どんなドラゴンが待っているのか少し不安だが、みんながいる限りどんな事があっても大丈夫だ。

開かれた扉を潜り一段と広い巨大な空間に出る。どうやら玉座の間の様で、入って数十メートル先に超巨大な王座がありそこを中心にシンメトリーの状態になっている。黄金に光るドラゴンの爪や顔等の装飾。宝石で作られた龍の眼。まあそんな派手な装飾や宝石も、部屋にいるドラゴン族達に比べれば地味なものだろう。

炎属性のタイラント・ドラゴン。

水属性の青氷の白夜龍(ブルーアイス・ホワイトナイツ・ドラゴン)

風属性のアームド・ドラゴンLV10。

地属性のモンタージュ・ドラゴン。

闇属性のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン。

そして光属性のマスター・オブ・ドラゴンナイト。

計六体のドラゴン族モンスターがそこにいた。

 

「中央にお立ち下さい。そこで皆に国宝を見せるのです」

「分かった」

 

地面に丸い魔法陣の様な模様があったので、そこがこの部屋の中央だろう。マスター・オブ・ドラゴンナイトとモンタージュ・ドラゴン以外の四体から睨まれながらも中央に移動し、首に掲げた竜の爪を取り出してしっかりと見える様に上に掲げる。

 

「やはり本当の様だな・・・・」

「我らが君を倒した相手がご子息とは」

「いくら人間との子とは言え、主の血を引く者。主の命は絶対」

「しかしF・G・D様を倒したのもこの者」

「俺はこの者に付いて行くと決めた。マスター・オブ・ドラゴンナイト様を圧倒した実力」

「私の結論は決まっている。お前達も遊斗様の力次第では認めると言った。それはいいな?」

 

俺に協力的なのはマスター・オブ・ドラゴンナイトとモンタージュ・ドラゴン。その他の四体の竜はどちらとも言えないという感じだ。

 

「俺はドラゴン族の王となってこの戦争を終わらせたいと思う。既にマスター・オブ・ドラゴンナイトから聞いていると思うが、王達は破滅の光に操られていた。だから本当の王達は戦争を望んでいない」

「分かっている。我らがマスター・オブ・ドラゴンナイト様から聞いた様に、お前も聞いている筈だ。我等はデュエルでお前の力を試させてもらう」

「勿論構わないが、それだと負けた方が死ぬんじゃないのか?」

「これは我らが貴殿を試すデュエル。命の奪い合いでは無い」

 

それを聞いて安心した。せっかく強力な最上級ドラゴン族が付いてくれるって言うのに、その前に殺してしまったら元も子も無い。左手のデュエルディスクを構えると、四体の竜は一斉に吠えて自分の目の前にデッキ、モンスターゾーン、魔法&罠ゾーン等が描かれたデュエルフィールドを作り出す。

 

「我等全員と一斉にデュエルをしてもらう」

「ライフは共に4000」

「私達はフィールド、墓地や除外ゾーンは共通」

「貴殿→タイラント→ホワイトナイツ→アームド・ドラゴン→我→貴殿の順にプレイをする」

 

初っ端から初期手札も18枚差があり、こっちはドローする機会もバトルフェイズを行う機会も少ない。不平等極まりないルールだが、そんなルールを出すって事はF・G・Dが通った道と言う事だろう。

 

「とことんお前達に有利なルールって事か。いいだろう! それくらいないと面白くない!」

「「「「「デュエル!」」」」」

 

 




実際50メートルの天井ってどんな感じでしょうね? それと凄くどうでもいいですが、アルティメットって50メートルで収まるのか・・・・?
50メートル走とかがあるので、前後の50メートルはそこそこイメージ出来ますが、高さ50メートルとなるとイメージがしにくい←イメージしろ。

それと我ながらヴォルフラムをビクトリー・バイパーXX03に例えたのはいいと思う。小説書いてるくせに言葉を知らないんで、ヴォルフラムを形で説明するのは無理でした。


AEC装備=Forceと思ってください。トーマ以外のEC感染者がいないのにAECと言うのも変な話ですので変更しました。



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第五十九話

感覚的には数ヵ月ぶりの投稿ですが、まだ八日しか経ってないんですね。まあのんびりやっていきます。
前回の内容を忘れていらっしゃる方もいると思うのでザックリ説明すると、ドラゴン族の大臣達と超官VS蟹&元キング&元泥棒の様なデュエルをする事になりました。


それと新しく文にしている小説ではちゃんと点を三点リーダーにしています。教えてくださった方ありがとうございます。


なんかナンバーズハンターってパックでZEXALのカードが色々出るみたいですね。そこでNo.が結構入っているんですけど、それや漫画のNo.を入れたらアストラルが言った通り50枚のNo.になるのか少し気になってます。
カード集めるキャプターな魔法少女の様に、ライブラ辺りの入手経路がカットされるのだろうか?
というかアニメで最低でも100枚のエクシーズモンスターを出すって言うのに、凄い勢いでエクシーズ出してるけど、ネタが切れないのだろうか。



「俺のターン、ドロー!」

 

当然の様に俺の手札は六枚。しかし相手の手札合計で二十四枚。もし相手全員がフルバーンデッキだったら勝ち筋は無いが、誇り高きドラゴン族の大臣達がそんな事をするとは思えないし、いくらF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)でも相手がそんなデッキだったら勝つのはまず無理だ。

手札枚数を少しだけでも埋めて、息切れをしない為にもなのはさんを使って手札を増やすのは絶対条件となるが、それだけで勝てる程甘くは無い。持久戦に持って行けば持って行くだけ、ドローフェイズの差やバトルフェイズの差で俺が有利になる。

 

「フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。なのはを通常召喚! 効果で自身とミッドチルダにLCを置き、ミッドチルダの効果で移動」

 

A500・D1800

LCなのは1→0 ミッドチルダ0→2

 

「ミッドチルダのLCを取り除いてユーノを特殊召喚! 場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

LCミッドチルダ2→1

A1000・D3000

 

「なのはさんの効果でデッキからスバルを手札に加える。カードを三枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

 

「その程度で我等の攻撃を防げると思うなよ。ドロー! ドラゴニック・ガードを召喚!」

 

A1500・D1800

 

ドラゴニック・ガード。モンスターが通常召喚される度に、自身にドラゴニックカウンターを乗せ、自身を墓地に送る事で、ドラゴニックカウンターの数以下のレベルを持つドラゴン族をデッキから特殊召喚するカード。

展開力の遅さから全くと言っていい程使われないが、俺のターンより前に味方三人のターンが回ってくるこのデュエルでは使える。

 

「バトル! ドラゴニック・ガードでAOA高町なのはに攻撃!」

「罠発動、フォーメーションチェンジ。なのはさんを守備にしてデッキから一枚ドロー」

 

A1500 VS D3000

 

もはやなのはさんの防御方法はこのカードのワンパターンと言っていい程なのはさんにこのカードをよく使う。守備表示に変更でなのはさんの効果を使っても攻撃力1000という低ステータスを晒さずに済むし、一枚のドロー効果があるのが美味しい。このカード一枚では発動で来て1:1効果だが、なのはさんとのシナジーを考えると1:2は軽くあるだろう。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

タイラント モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「俺のターンだな、ドロー。タイラントと違って俺は一気に行くぜ。アームド・ドラゴンLV3を召喚!」

 

A1200・D900

ドラゴニック0→1

 

「速攻魔法レベル・アップを発動! LV3をLV5に進化!」

 

A2400・D1700

 

「LV5の効果発動! 手札の真紅眼の飛竜を墓地へ送りAOA高町なのはを破壊する!」

「速攻魔法次元震を発動。お互いのプレイヤーは相手モンスター一体ずつ選択し、破壊する。その後俺は次元断層とレベル4以下のLSを手札に加え、相手は一枚ドローする。俺はLV5を選択」

「チッ! AOA高町なのはしかいない」

「更にチェーンして罠発動、Force-evolution! フィールド上のレベル7以上のLSを生贄に発動。融合デッキから生贄にしたモンスターのカード名が含まれるCX-Forceと名のついたモンスターを特殊召喚する! 来い、LS-CW-Force00X高町なのは-Fortress Strike Cannon!」

 

LS-CW-Force00X高町なのは-Fortress Strike Cannon ☆10/光/魔法使い/A2000・D3500

 

表にしたForceのカードから、なのはさんのバリアジャケットと同じ青と白をメインとした機械がなのはさんに目掛けて飛んで行った。その機械は魔導サイエンティストの元に置いてあった機械、Force。バリアジャケットの上から背中にForceのメインユニットが装着され、スタイルのいい腰や溝にも小さな機械が装着される。だがそんな装備は全体と比べると些細な物だった。なのはさんの細腕い両腕にはそれぞれ強大な機械が装備された。

右手には自分の体の三分の二は軽くある巨大な盾。左手には俺より背丈の大きい巨大な銃。どちらも先が尖った形状をしており、その重さを利用した突きだけで倒せる敵もいるだろう。更になのはさんの周りには自動で動く二つの盾があり、自動で動く様にプログラミングされているらしい。

 

「うおおお! なのはさんめっちゃカッコいいです!」

「にゃはは、ありがと。ほら、デュエル進めないと」

「はい。次元震の効果でLV5は破壊され、俺は次元断層とフェイトを手札に加え、お前は一枚ドロー。そしてLV5の効果は不発となる。そして特殊召喚成功時、なのはさんにLCを一つ置く」

 

LCなのは0→1

 

「チッ! 俺はこれでターンエンド「まだだ」なんだと!?」

「なのはさんがいる時、相手は必ずバトルフェイズを行わなければならない。そしてバトルフェイズ時に、相手フィールド上に存在する表側表示モンスターの数だけForceカウンター(以後FC)を置く」

 

FCなのは0→1

 

「攻撃するか?」

「する訳ないだろう。ドラゴニック・ガードを守備にしてターンエンドだ」

「エンドフェイズ、なのはさんの効果が発動。このカードのFCを全て取り除く。取り除いた数だけ相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを選択し、攻撃力と守備力を500下げる」

 

FCなのは1→0

 

なのはさんは左手に装着したストライクカノンから、相手の動きをマヒさせる性能を持った銃弾を放ちドラゴニック・ガードに撃つ。肉眼ではチラリとしか見えないが弾丸の先には小さな注射針の様なものが付いており、ドラゴニック・ガードの肉体に刺さると中に入っていた薬品を注入したのか、ドラゴニック・ガードは苦しそうに体を抱える。

 

ドラゴニックA1500・D1800→A1000・D1300

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター1 伏せ0 手札5 LP4000

アームド モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「流石、相手のターンが続いているのに手札が増えている。私のターン、ドロー!」

 

ホワイトナイツは女性の様で、頼りになるお姉さんボイスと言った感じだった。声は全然違うけどトーンはフェイトさんやアインスに似ている。

 

「手札断札を発動。互いのプレイヤーは手札を二枚交換する」

 

俺の手札にはフェイト、スバル、次元断層とリークされていない二枚のカード。例え相手に情報が渡っているとはいえ、フェイトとスバルは強力だ。次元断層もかなり強いが、サーチ先の虚数空間はお互いのスタンバイフェイズ時に相手のカードを一枚除外する効果なので、このルールでは自分の首を絞める危険なカードになってしまう。

 

「ドラゴン・アイスと竜の秘宝を捨てて二枚ドロー」

「次元断層とティアナを捨て二枚ドロー」

「魔法カード、ライトニング・ボルテックスを発動! 相手フィールド上の表側モンスターを全て破壊する」

「なのはさんの効果発動。フィールドのLCを一つ取り除く事で、破壊を無効にする。ミッドチルダのLCを取り除く」

 

LCミッドチルダ1→0

 

なのはさんへと降り注ぐ雷の前に、自動で浮いていた二枚の盾が薄緑のバリアを出してなのはさんを守り、更に左手の巨大な盾で僅かな衝撃を防ぐ。元々堅い防御を持っているなのはさんが防御に特化した武器を装備すると、もはやなのはさん一人で文字通り要塞、Fortressとなる。

 

「クッ、スノー・ドラゴンを守備表示で召喚」

 

A1400・D900

ドラゴニック1→2

 

「バトルフェイズに入るけど、何もする事は無いわ」

 

FCなのは0→2

 

「ターンエンド」

「エンドフェイズ時になのはさんの効果で、二体のモンスターの攻守を500下げる」

 

FCなのは2→0

ドラゴニックA1000・D1300→A500・D800

スノーA1400・D900→A900・D400

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札5 LP4000

白夜龍 モンスター2 伏せ2 手札2 LP4000

 

「我のターン!」

 

次はレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンのターン。やはり全然ターンが回って来ないからライフを減らそうと思っても減らせないし、ハンド、ボード、ライフ、墓地、全てのアドバンテージを取るのが困難だ。

 

「永続魔法、一族の結束を発動!」

 

ドラゴニックA500→A1300

スノーA900→A1700

 

「ドラゴニック・ガードの効果発動。このカードを墓地へ送り、デッキからミンゲイドラゴンを特殊召喚する」

 

A400・D200

 

ドラゴン族専用のダブルコストモンスターであり、発動に条件があるがノーコストで自分を特殊召喚できる非常に優秀なモンスター。地属性というドラゴン族の中では少し使いにくい属性ではあるが、それでも純ドラゴンデッキには入りやすい。実際にF・G・Dも使っていた。

 

「ミンゲイドラゴンは二体分の生贄になる。ミンゲイドラゴンを生贄にダーク・ホルス・ドラゴンを召喚!」

 

ダーク・ホルスA3000・D1800→A3800

 

一族の結束により相手のドラゴン族の攻撃力は一気に800も上がり、ダーク・ホルス・ドラゴンがなのはさんの守備力を上回る。一度なのはさんの攻守ダウン効果を使えばダーク・ホルス・ドラゴンの攻撃力の圏外になるのでここは何が何でも止めておきたい。

 

「バトル」

 

FCなのは0→2

 

「ダーク・ホルス・ドラゴンで高町なのはを攻撃!」

 

ダーク・ホルス・ドラゴンは、大人より一回りも二回りも大きい黒い球を形成して発射する。一族の結束でなのはさんの守備力より高い威力を誇る攻撃だが、さっきも似たような事を言ったが、ここまで安定しているなのはさんをそう簡単に破壊させる訳にはいかない。

 

「手札のスバルの効果発動。LSが戦闘を行うダメージ計算時、このカードを捨てる事で攻撃力か守備力のどちらかを1000上げる事ができる」

 

なのはD3500→D4500 VS A3800

 

スバルと二枚の盾の強靭な盾によりダーク・ホルス・ドラゴンの攻撃は弾かれ、その隙を付いてなのはさんがレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン本人に砲撃を発射する。

 

「グッ」

 

レダメLP4000→3300

 

「だが一枚カードを使わせた。ターンエンド」

「エンドフェイズ、なのはさんの効果でダーク・ホルスとスノー・ドラゴンの攻守を下げる」

 

スノーA1700・D300→A1200・D0

ダーク・ホルスA3800・D1800→A3300・D1300

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ0 手札4 LP4000

レダメ モンスター2 伏せ3 手札4 LP3300

 

「俺のターン。フェイトを通常召喚!」

 

LCフェイト1 ミッドチルダ0→1

A1800・D500

 

色々あった後にフェイトのバリアジャケット姿を見ると、改めてその露出の多さが分かる。一瞬だけいやらしい目で見てしまったが、今は大事なデュエルの真っ最中。手を思いっきり摘まんで自分に活を入れ、もう一度手札を確認する。

 

「フェイトの効果発動。スノー・ドラゴンの攻守を変更する。そしてミッドチルダのLCを取り除いてアルフを特殊召喚!」

 

LCミッドチルダ1→0

 

「場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

A2800・D500

 

「特殊召喚成功時、手札を一枚捨てドラゴン・アイスを特殊召喚!」

 

A1800・D2200

 

ホワイトナイツが捨てた数少ない水属性ドラゴン族モンスター。その体は名前通り亀裂の入った凍りで作られており、瞳と黒い翼だけがドラゴンとしての本来の姿を見せている。墓地肥やしが目的だったのか、それとも手札を減らしても壁モンスターを増やしたかったのか。どっちにしても多少計算が狂ったものの、攻撃に支障が出る程のものでもない。

 

「どんどん行くぞ! 場の黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを生贄に、迅雷の化身フェイトを特殊召喚!」

 

A3300・D0

 

カードから出てきた雷は俺のフィールドに向かわずに、ソリッドビジョンを解いて元居た玉座の間に戻すと、F・G・Dの巨体に相応しい巨大な玉座の間を二、三周グルグルと回り、それからこの広い玉座の間を飾っているドラゴンの装飾や宝石を観察し始めた。確かに人間界じゃこんな城無いから観察したい気持ちは分かるが、俺の人生が大きく変わる重要なデュエルだから、少しは周りの空気を呼んで欲しい。・・・・って内心で偉そうな事言った俺も、フェイトの事変な目で見てたんだけど・・・・。

 

「わお、面白い状況」

 

妙に閉まらないデュエルは、その緊張感の欠片も無い声でますます閉まらないデュエルとなった。

雷フェイトさんの言う面白い状況と言うのは、ドラゴン族の王になる為の試練であるこのデュエルそのものと、相手フィールド上にいる大量のドラゴン族モンスター達の二つの意味を持っていると思われる。

因みに、最後に雷フェイトさんを出したのは精霊が活動できないコブラとのデュエルだったから、雷フェイトさんと話すのは久しぶりになる。

 

「魔法・罠ゾーンにアリサとすずかを置く。アリサの効果発動! 雷フェイトさんを選択。選択したモンスターがモンスターを破壊した時LCを一つ置く。更にすずかがフィールドにいる時デッキから一枚ドロー出来る」

 

魔法・罠ゾーンに現れる、アリサとすずか。アリサはいつも通りの赤とオレンジ色をメインにしたバリアジャケットにある程度の伸縮が可能な炎の剣を持っており、すずかは白と紫をメインにしたバリアジャケットに、氷の爪が装着されたグローブを装着している。

 

「そして闇の書を雷フェイトさんに装備!」

 

フェイトA3300→A3600

 

「クッ、攻撃力3600まで行ったか。ダーク・ホルスの効果発動。相手のメインフェイズ時に魔法が発動した場合、自分の墓地のレベル4闇属性モンスターを特殊召喚する。アックス・ドラゴニュートを特殊召喚」

 

A2000・D1200

 

ドラゴン・アイスの時に墓地へ送ったカードだろう。いや、枚数的に水属性統一が難しいホワイトナイツが墓地へ送ったのかもしれない。どっちにしても見事な連携だ。まさか俺のターンに二体のモンスターを特殊召喚されるとは。

 

「バトル! 雷フェイトさんでスノー・ドラゴンを攻撃!」

「雑魚にはこれで十分」

 

A3600 VS A1200

 

そう言って雷フェイトさんは、準備体操をするかの如くゆっくりと右から左に腕を振った。すると自らの雷とアリサの炎が混合した魔力刃が飛ばされ、雪だるまのようになって雪の中に入っていた小さなドラゴンは、頭と体が真っ二つになると同時に爆発した。時々ソリッドビジョンは対象年齢を12歳か15歳以上にした方がいいと思う。まあこれはソリッドビジョンじゃなくて本物の決闘だけど。

 

レダメLP3300→900

 

「スノー・ドラゴンの効果が発動されるわ。表側表示で存在する全てのモンスターにアイスカウンターを一つ置く」

 

なのは0→1

フェイト0→1

ダーク・ホルス0→1

アックス0→1

ドラゴン・アイス0→1

 

「アリサの効果が発動される。雷フェイトさんにLCを置き、デッキから一枚ドロー。更に闇の書の効果でLCが乗る」

 

LCフェイト0→1 闇の書0→1

 

「雷フェイトさんは二回攻撃が可能! ダーク・ホルスを攻撃!」

「ばん!」

 

A3600 VS A3300

 

今度は指鉄砲から雷と炎が混ざった魔力弾を発射した。小さな弾丸はダーク・ホルスの厚い装甲を貫通し、体内に止まると大爆発を起こした。

 

レダメLP900→600

 

「後少し! 雷フェイトさんと闇の書にLCを乗せ、デッキから一枚ドロー!」

 

LCフェイト1→2 闇の書1→2

 

「なのはさんでアックス・ドラゴニュートを攻撃!」

「そのモンスターは守備表示だぞ!?」

「表側表示で存在するこのカードは、守備表示の状態で攻撃する事ができる。その場合、攻撃力の数値を適用してダメージ計算を行う」

「エクサランスカノンフルバースト!」

 

A2000 VS D1200

 

大の大人5、6人を呑み込む事が出来る程の巨大な砲撃が、左手に持っているストライクカノンから発射された。やはり俺の身長より大きいのは伊達ではなく、斧を盾にしていたアックス・ドラゴニュートは斧もろともドガーン! と爆発する。

 

「二枚の伏せは発動しないままか・・・・」

「本来なら言うべきではないが気になるみたいだから言っておこう。我等のデッキには除去カードはほんの数枚しか入っていない」

「どんなに強い者でも大量の除去カードを使われたら初期の手札枚数の差で敗れる」

「俺等は勝つ為のデュエルでは無く試す為のデュエルをしているからな」

 

そう言う事か・・・・。じゃあ少なからずプレイングも変わっていくな。除去カードを警戒して伏せカードを破壊するよりも、表になっている一族の結束等を破壊した方がデュエルは有利に進む。

 

「すずかの効果で雷フェイトさんのLCをなのはさんに移動する」

 

LCなのは1→2

 

「無限書庫を発動、アリサをデッキに戻して二枚ドロー。カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ、雷フェイトさんの効果でデッキのフォトンランサーをセットする。そして自分のエンドフェイズ時になのはさんは自分のLCを一つ取り除かなければならない」

 

LCなのは2→1

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ5 手札2 LP4000

レダメ モンスター1 伏せ3 手札3 LP600

 

「我のターン。ラヴァ・ドラゴンを召喚して効果を発動する。このカードを生贄に捧げ、手札と墓地からレベル3以下のドラゴン族をそれぞれ一体ずつ特殊召喚する。墓地のミンゲイドラゴンと手札の仮面竜を特殊召喚」 

 

ミンゲイA400・D200→A1200

仮面竜A1400・D1100→A2200

 

「リバースカードオープン、ドラゴニック・タクティクス。場のミンゲイドラゴンとドラゴン・アイスを生贄にデッキからレベル8のドラゴン族、我の分身タイラント・ドラゴンを特殊召喚する!」

 

タイラント・ドラゴンA2900・D2500→A3700

 

タイラント・ドラゴン。もう10年以上前からいる歴史あるカードで、今も昔も炎属性ドラゴン族を飾るモンスターだ。しかしフォトンランサーがある今、一族の結束の上昇効果は無いに等しい。だがそれくらいタイラント・ドラゴンも分かっている筈。

 

「永続魔法一族の結束を発動。攻撃力を800上げる」

 

タイラント・ドラゴンA3700→A4500

仮面竜A2200→A3000

 

やっぱりタイラント・ドラゴンも一族の結束を入れているか! さっきの台詞から、除去カードは余り入れていないと言ったが、火力を上げるカードに関しては何も言っていなかった。最悪あいつら全員が一族の結束を三枚入れているかもしれない。除去カードが全くなくとも一族の結束が並んでしまうと歯が立たない。

 

「バトル!」

 

FCなのは0→2

 

「タイラント・ドラゴンで迅雷の化身フェイトを攻撃!」

「ツッ・・・・」

 

セットカードの内一枚は防御カード。フォトンランサーで一族の結束を破壊し、更にこの防御カードで攻撃を防ぐか、フォトンランサーでタイラント・ドラゴンを破壊するか。どっちにしても俺が体制を立て直す前に、相手に三ターンある。次のターンも雷フェイトさんで攻撃しようと思っていたが、この状況じゃ難しいな。

 

「速攻魔法アイゼンゲホイルを発動。このターンのバトルフェイズをスキップする」

「・・・・これでターンエンド」

「なのはさんの効果でタイラント・ドラゴンと仮面竜を選択」

 

FCなのは2→0

タイラントA4500・D2500→A4000・D2000

仮面竜A3000・D1100→A2500・D600

 

「エンドフェイズ、永続罠リビングデッドの呼び声を発動。墓地のアームド・ドラゴンLV5を特殊召喚する」

 

ツッ! これはいよいよヤバくなってきた。

 

LV5 A2400・D1700→A4000

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター2 伏せ4 手札2 LP4000

タイラント モンスター2 伏せ3 手札1 LP600

 

「助かったタイラント。俺のターン! スタンバイフェイズ墓地のLV5をLV7に進化させる!」

 

LV7 A2800・D1000→A4400

 

まだだ・・・・。いくら攻撃力が上がっているとはいえ、一族の結束を破壊したら攻撃力は下がる。それにアームド・ドラゴンLV7の効果でなのはさんは破壊出来ても、フェイトさんは破壊できない。効果を使われてもさほど問題では無い。

 

「バトル!」

 

FCなのは0→3

 

「タイラント・ドラゴンで高町なのはを攻撃! 攻撃宣言時に竜の逆鱗を発動する!」

「クッ・・・・何も無い」

 

A4400 VS D3500

 

なのはさんは三枚のフォートレスを使ってアームド・ドラゴンLV7が繰り出した風の刃を防ごうとしたが、一族の結束により攻撃力が爆発的に上昇している。フォートレスは一枚ずつバリンと音を立てて粉々に割れ、遂にはなのはさんに攻撃が飛んできた。

 

遊斗LP4000→3100

 

「これでターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター1 伏せ4 手札2 LP3100

アームド モンスター3 伏せ3 手札4 LP600

 

「私のターン。カードを一枚セットしてバトル! アームド・ドラゴンLV7で迅雷の化身フェイトを攻撃!」

「速攻魔法フォトンランサーを発動。一族の結束を破壊! 更にチェーンして魔導師の甲冑を発動。これにより雷フェイトさんは破壊されない!」

「しまった!?」

 

雷フェイトさんが放った一発のフォトンランサーが一族の結束を破壊した事により、攻撃力が800ずつ下がる。

 

タイラントA4000→A3200

仮面竜A2500→A1700

LV7 A4400→A3600 VS A3600

 

「これで雷フェイトさんとLV7の攻撃力は互角! だが魔導師の甲冑により一ターンに一度雷フェイトさんは戦闘では破壊されない!」

 

LV7は体から風の刃を発射した雷フェイトさんを襲うが、体を雷で形成した雷フェイトはさんは斬られてもすぐに体を取り戻す人外と化している。LV7に二発のフォトンランサーを発射して体に大きな風穴を開け、パチンと指を鳴らすと共にフォトンランサーを爆発させてLV7を木っ端みじんにした。

 

LC闇の書2→3

 

「グッ! ターンエンド」

「エンドフェイズ、墓地のフォトンランサーをセット!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ4 手札2 LP3100

白夜龍 モンスター2 伏せ3 手札2 LP600

 

「我のターン。場の仮面竜をゲームから除外し、我が分身、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚!」

 

レダメA2800・D2400→A3600

 

ドラゴン族のエースカードと言っても過言では無いドラゴン族の最強サポートカード。現実世界でもある程度金を持っているドラゴン族使いなら必ず持っている。

 

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果発動。墓地のダーク・ホルス・ドラゴンを特殊召喚!」

 

ダーク・ホルスA3000・D1800→A3800

 

「タイラント・ドラゴンを守備表示に変更。モンスターとカードを一枚ずつ伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ時、フォトンランサーを発動。一族の結束を破壊する」

 

レダメA3600→A2800

ダーク・ホルスA3800→A3000

タイラントA3000→A2400

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ3 手札2 LP3100

レダメ モンスター4 伏せ4 手札2 LP600

 

やっと俺のターンに回って来た。このターンで決めないと次のターンまで守れる気がしない。

 

「俺のターン! すずかの効果発動。雷フェイトさんのLCをミッドチルダに移動」

 

LCフェイト2→1 ミッドチルダ0→1

 

「無限書庫を発動、すずかをデッキに戻して二枚ドロ-」

「ダーク・ホルスの効果で墓地のアックス・ドラゴニュートを特殊召喚」

 

A2000・D1200

 

「闇の書の効果発動。このカードをゲームから除外しデッキのアインスを特殊召喚。効果で融合デッキから夜天の書を特殊召喚!」

 

フェイトA3600→A3300

AD2300

AD0

 

「雷フェイトさんのLCを生贄に、はやてを召喚。効果で自身とミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ1→2 フェイト1→0 はやて1

 

「ミッドチルダの効果で、はやてのLCをミッドチルダに移動」

 

LCミッドチルダ2→3

 

「夜天の書の効果でミッドチルダのLCを全て取り除き三枚ドロー! よしっ、夜天の書をアインスに装備して、場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

LCはやて3 ミッドチルダ3→0

AD2800

 

「装備カードである夜天の書を破壊した?」

「王様はやてさんの効果発動。LCを二つ取り除き、融合デッキから祝福の騎士ヴィータを特殊召喚する!」

 

A2600・D2500

 

「そして永続魔法、LS級艦船ヴォルフラムを発動!」

 

この国まで飛んできたヴォルフラムと全く同じ機体がミッドチルダの上空に現れる。前方には巨大は戦砲を装備しているヴォルフラムだが、カードではその戦砲が使われる事は一切ないだろう。だが戦砲が使えなくとも、ヴォルフラムがあるかないかでForceの展開力と持久力が変わるので、かなり重要なカードだ。

 

「墓地のForce-evolutionの効果発動。フィールドにヴォルフラムが存在する時、手札一枚を捨てる事で墓地のこのカードを手札に加える事ができる。この効果は一ターンに一度しか発動できない。手札一枚を捨てこのカードを手札に。そしてヴォルフラムがフィールドに存在する限り、俺は手札からForce-evolutionを発動できる!」

「手札からトラップを発動!?」

「面白い戦術を使う」

「Force-evolutionの効果発動。王様はやてさんを生贄に、融合デッキからLS-CW-Force00X-S2八神はやて-Fortress Shieldを特殊召喚!」

 

LS-CW-Force00X-S2八神はやて-Fortress Shield ☆10/闇/魔法使い/A2300・D3000

 

性格は生贄にしたカードが引き継ぐのか、髪は白いままの王様はやてさんがForce-evolutionのカードから現れた巨大な盾と中型の盾を装備していく。中型の盾は王様はやてさんの腰や背中に翼の様に装着され、大型の盾は王を守る近衛兵の様に王様はやてさんの周りに集まって行く。

 

「新たなForceモンスター!」

「はやてさんの効果発動。特殊召喚時にLCを一つ乗せる」

 

LCはやて1

 

「はやてさんの効果発動。一ターンに一度自分フィールド上の融合モンスターを選択。選択したモンスターを融合デッキに戻し、その融合素材モンスター一組をデッキか墓地から特殊召喚する。祝福の騎士ヴィータをデッキに戻し、デッキにいるヴィータさんとツヴァイを特殊召喚!」

 

A1900・D1400

AD500

 

これがはやてさんの能力。完全に後方支援に特化し、フィールドにいる融合モンスターの融合を解除して新たな融合へ繋げたり、融合モンスターの効果をもう一度使う事が出来る。この効果は一ターンに一度の起動効果を持つなのはさんや、シグナムさん、シャマ姉。あと融合召喚時に効果を発動するヴィータさんやイクスと相性がいい。

 

「場のヴィータさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ! ヴィータさんの特殊召喚時、魔法・罠ゾーンにセットされた二枚のカードを破壊する!」

「コメートフリーゲン!」

 

自分の手の平よりも大きい鉄球を目の前に浮かせ、片手で握ったグラーフアイゼンでその二つの鉄球を打ち、剛速球となり飛ばされた二つの鉄球は二枚のセットカードに飛ぶ。凄まじいスピードで飛ばされた鉄球が伏せカードと接触する直前、一枚のカードが表になった。

 

「チェーンして神秘の中華鍋を発動! フィールドのダーク・ホルスを生贄に捧げライフを3000回復!」

 

レダメLP600→3600

 

だがもう一枚のカードは破壊出来た。破壊したカードは攻撃の無力化。ただでさえ攻撃する機会が少ない俺にとっては、破壊出来たのは非常に助かる。

 

「祝福の騎士ヴィータを生贄に、紅の鉄騎ヴィータを特殊召喚!」

 

A3000・D2800

 

赤い光を放ちながら上空から降りてきたのは、大人になったヴィータさん。顔つきが女性らしく成長し、手足も伸びて、胸も大きくなっている。被っていた赤い帽子は無く、変わりにのろいうさぎの髪留めを付けている。

ポンポンと最上級モンスターを出せるドラゴン族に比べたら高い攻撃力とは言えないが、いくつもの効果を持っている為十二分に強い。しかもForceを装備したはやてさんとの相性もいい。

 

「はやてさんの効果発動。このカードのLCを一つ取り除き、このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在するカード一枚にFCーを一つ置く事ができる。選択したカードが破壊される場合、変わりにFCを一つ取り除く」

 

LCはやて1→0

FCヴィータ0→1

 

「LCが0になったForceは融合デッキに戻らないといけないが、ヴォルフラムがある時その効果は発動されない。バトル! 雷フェイトさんでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンとタイラント・ドラゴンを攻撃!」

 

A3300 VS A2800

A3300 VS D2000

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンとタイラント・ドラゴンの間に飛んだ雷フェイトさんは、自分の腕から五メートルはある細長い魔力刃を作り出し、すれ違い様に二体のドラゴンの首を斬り裂く。首が落ちる演出は無いが、首元に×の切り傷が現れ二体のドラゴンはドガーンと爆発し、爆風が四体のドラゴンに襲い掛かる。

 

レダメLP3600→3100

 

「紅ヴィータさんでセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターはミンゲイドラゴンだ」

 

A3000 VS D200

 

「紅ヴィータさんは貫通効果を持つ!」

「ラケーテンハンマー!」

 

A3000 VS D200

 

ミンゲイドラゴンの上空から、グラーフアイゼンの後方から発射されるジェットを利用して落ちて行く。重力とジェット、そしてヴィータさんの力によりグラーフアイゼンが生み出すエネルギーは、おそらくt単位はある強力なものになり、ミンゲイドラゴンの体を文字通りペチャンコにした。勿論グロい演出は無い。

 

レダメLP3100→300

 

「倒せなかったか・・・・。はやてさんでアックス・ドラゴニュートを攻撃。はやてさんもなのはさんと同じく、守備表示の状態で攻撃が可能!」

「大気より集え水神の槍、彼方より来たれ銀雪の吐息、逆巻き連なり天に示せ・・・・」

 

A2300 VS D1200

 

大気の水分が一点に集中し、大型ドラゴンどころかヴォルフラムよりもはるかに大きな氷の塊が作られる。氷の塊の先は尖っているが、単純な質量だけで押しつぶせるので先が尖っていようといなかとうと余り関係が無い気がする。

 

「ヘイムダル」

 

はやてさんが杖を振り下ろした瞬間、氷の塊はアックス・ドラゴニュートに隕石の如く落ちて行く。どんな力持ちの竜でも単純な質量攻撃を相手にすると限界があり、氷の下に居た斧を持った竜は氷の塊に押しつぶされてペチャンコになった。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時にフォトンランサーをセット」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ5 手札0 LP3100

レダメ モンスター0 伏せ2 手札2 LP300

 

「流石我が君のご子息。かなりの腕だ。我のターン! 墓地のミンゲイドラゴンの効果。墓地にドラゴン族のみがいる場合特殊召喚できる」

 

A400・D200

 

「死者転生を発動。手札を一枚捨て、墓地のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを手札に加える。そしてミンゲイドラゴンをゲームから除外し、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚!」

 

A2800・D2400

 

「特殊召喚成功時、速攻魔法フォトンランサーを発動。レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを破壊!」

「やはりそう動いたか。これでターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗    モンスター3 伏せ4 手札0 LP3100

タイラント モンスター0 伏せ2 手札0 LP300

 

「俺のターン! 二枚目のミンゲイドラゴンを特殊召喚!」

 

A400・D200

 

「レベル調整を発動。相手は二枚ドローして、墓地のLV7を特殊召喚!」

 

A2800・D1000

 

「そしてLV7の効果発動。手札のホルスの黒炎竜LV8を墓地へ送り、攻撃力3000以下のモンスターを破壊する!」

「紅ヴィータさんにのったForceカウンターを取り除き、破壊を無効にする」

 

アームド・ドラゴンLV7の周りに現れた風の刃がはやてさんと紅ヴィータさんに飛ばされる。紅ヴィータさんははやてさんが装備していたFortressに守られたが、はやてさん本人の防御が薄くなっていた為、無傷と言う訳にはいかなかった。

 

「はやてさんが破壊された場合、墓地の夜天の主・八神はやてを特殊召喚する事ができるが、墓地にいない為召喚出来ない」

「カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター2 伏せ4 手札0 LP3100

アームド モンスター2 伏せ4 手札1 LP300

 

「私のターン! 場のミンゲイドラゴンを生贄に、私の分身、ブルーアイス・ホワイトナイツドラゴンを特殊召喚!」

 

A3000・D2500

 

あの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)を意識して作られた水属性ドラゴン族の代表モンスター。ブルーアイズのサポートを受けられないものの、ステータスは全く一緒であり効果を持っているこちらの方が上位互換だと言える。勿論あくまで単体ではだ。

 

「リバースカード、二重召喚(デュアルサモン)を発動。ブリザード・ドラゴンを召喚し、効果発動! 相手モンスター一体を選択。選択したモンスターを相手のエンドフェイズ時まで攻撃宣言と表示形式を封じる。雷の化身フェイトを選択!」

 

A1800・D1000

 

ブリザード・ドラゴンは口から吹雪を吐き出して雷フェイトさんを凍らせた。実際にやると下級ドラゴンがフェイトさんを凍らせる事は天地がひっくり返っても不可能なので、このアニメーションは茶番だ。

 

「装備魔法団結の力をアームド・ドラゴンLV7に装備。攻守を2400アップさせる!」

 

LV7 A2800・D1000→A5200・D3400

 

「バトル! アームド・ドラゴンLV7で紅の鉄騎ヴィータを攻撃!」

「攻撃宣言時罠発動、プロテクション! 紅ヴィータさんの戦闘破壊を無効にする!」

「だが戦闘ダメージであなたのライフは0になる!」

 

A5200 VS A3000

 

こういう場面で俺の手札には必ずと言っていい程この守護獣がいるから問題ないんだよ。手札のカード一枚をクルッと回転させると、カードの絵柄から青い狼が俺の前に登場して、バリア系の防御魔法を発動する。紅ヴィータさんはプロテクションで攻撃から身を守ったが、俺へのダメージは防ぎきれていない。だが青い狼、ザフィーラがアームド・ドラゴンLV7の攻撃を全て受け止め、俺へのダメージを0にする。

 

「手札のザフィーラを捨て戦闘ダメージを0に。その後デッキから一枚ドローし、紅ヴィータさんの効果が発動する。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊できなかった時に発動できる。墓地の祝福の騎士ヴィータをゲームから除外し、その攻撃力分アームド・ドラゴンLV7の攻撃力を下げ、もう一度戦闘を行う」

『コメートフリーゲン!』

 

紅ヴィータさんは自分の前に手の平サイズの鉄球を展開させ、グラーフアイゼンで叩き飛ばす。鉄球はアームド・ドラゴンLV7の体に直撃し、貫通まではしないものの大ダメージを与え、アームド・ドラゴンLV7の体に痛々しい青い痣を浮かばせる。

 

LV7 A5200→A2600 VS A3000

 

「お前達のライフは残り300! これで「速攻魔法非常食を発動」チッ!」

「竜の逆鱗を墓地へ送りライフを1000回復する!」

 

白夜龍LP300→1300

 

「ツェアシュテールンクスハンマー!」

 

目の前に巨大なドリル、後方には三つのジェット機を付けもはや元の面影が無くなった巨大なグラーフアイゼン。ドリルを回転させると共に後方のジェットを爆発させて、アームド・ドラゴンLV7を頭上から叩きつぶし、ドリルと質量のダブル攻撃で文字通り粉々にして破壊した。

 

白夜龍LP1300→900

 

「ッ、これでターンエンドよ」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター2 伏せ3 手札2 LP3100

白夜龍 モンスター2 伏せ0 手札0 LP900

 

「我のターン!」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンのターン。ここを凌ぎきれば勝利は見えて来る。ドローしたカードを入れて奴の手札は三枚。フィールドには二体の水属性ドラゴン族がいるが、伏せは無い。

 

「神竜アポカリプスを召喚! そして手札を一枚捨て墓地のレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを手札に加え、神竜アポカリプスをゲームから除外してレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンを特殊召喚!」

 

A2800・D2400

 

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの効果で墓地のダーク・ホルス・ドラゴンを特殊召喚!」

 

A3000・D1800

 

「バトル! ダーク・ホルス・ドラゴンで紅の鉄騎ヴィータを攻撃!」

 

A3000 VS A3000

 

紅ヴィータさんが破壊されてしまったが、このタイミングでバトルフェイズを行って来たって事は、雷フェイトさんを破壊する隠し玉は無いと言う事だろう。

 

「ブリザード・ドラゴンを守備表示に変更し、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ3 手札2 LP3100

レダメ モンスター3 伏せ1 手札0 LP900

 

指をデッキトップに置くと自然とどのカードが眠っているかが分かる。この力を手に入れてドローの緊張感やワクワク感が無くなったが、次のドローが分かる事でより柔軟なプレイングが可能になった。

デッキトップのカードはあのカードだろうが、手札一枚を墓地へ送り手札に加える事が出来るForce-evolutionがある限り何が来ようと俺の勝利に変わりは無いだろう。

おそらくこのターンで奴等のライフを0にする事が出来る。その瞬間、ライフに0の数値が刻まれたその瞬間、俺の人生は大きく傾くだろう。このドローがその人生を傾ける第一歩になり、スタンバイフェイズ、メインフェイズ、そしてバトルフェイズへと時は進んで行く。ここまで人生とフェイズを重ねたのは初めてだ。

 

「行くぞ、俺のターン!」

 

これでドローフェイズは終了。何もないスタンバイフェイズも終了。時と共にフェイズがどんどん進んでいく。

 

「墓地のForce-evolutionの効果発動。手札一枚を捨て、墓地のこのカードを手札に加える。そして手札のエリオの効果発動。このカードを墓地へ送り、墓地のLSを手札に加える。なのはを手札に加えそのまま召喚! 効果で自身とミッドチルダにLCを置く!」

 

LCミッドチルダ0→1 なのは1

 

「なのはの効果発動! 自身のLCを取り除いてセットカードを破壊する!」

「アクセルシュート!」

 

レイジングハートのコアから出てきた桃色の球体が不規則に動きながらセットカードに接近し、薄くて大きなカードに巨大な風穴を開けてバリンと破壊する。破壊したカードはモンスター一体の攻撃力を半分にする収縮。今発動しても意味が無いと判断したのだろう。

 

「例え雷フェイトさんの攻撃が封じられようとも、生贄が封じられた訳じゃない! Force-evolutionを発動! 雷フェイトさんを生贄に、融合デッキのLS-CW-Force01Xフェイト・テスタロッサ・ハラオウン-Riot Blade & ZamberⅡを特殊召喚する」

 

LS-CW-Force01Xフェイト・テスタロッサ・ハラオウン-Riot Blade & ZamberⅡ ☆10/光/魔法使い/A3300・D0

 

Force-evolutionのカードから浮かび上がって来たのは、刀身がフェイトさんの魔力光である黄色に光った二刀一対の連結使用の片手剣のみ。服でもあり鎧でもあるバリアジャケットを削ってさえスピードを重視するフェイトさんにとって余計な装備は不必要であり、なのはさんやはやてさんの様な派手な装着はない。しかしどこか派手好きである雷フェイトさんは自分の元へフワフワと飛んで来た武器を掴むと共に、自分が中心になる様に線の様に細い雷を四方八方へと飛ばし、ドラマに出て来る悪役の様にニヤリと口元を上げる。

 

「攻撃力が変化なし?」

「ああ。だがフェイトさんはForceでありながら、そのデメリットが存在しない。これで終わりだ。装備魔法バルディッシュ・ザンバーをフェイトさんに装備! これで攻撃力を1000上げる!」

 

フェイトA3300→A4300

 

フェイトさんの持つ二刀一対の剣の刀身が一気に五倍以上大きくなり、一刀で持ち主よりも刀身が大きい巨大な剣になる。しかし自分より大きい剣をフェイトさんは軽々と持って振り回し、四体のドラゴンをまるで見下すかのように睨みつける。

 

「どうやら決まった様だな」

「バトル!」

 

遂に人生の大きな岐路となるバトルフェイズに突入した。もう後戻りは出来ないし、元々後戻りをするつもりもない。首に掛けた五つに光る爪を眺めてギュッと右手で強く握ると、フェイトさんの名前を高々と上げる。

 

「行くぞ! フェイトさんでレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンに攻撃!」

 

A4300 VS A2800

 

「瞬雷・・・・」

 

ラストにしてはやけに静かなアルトの声が響くと共に、ミッドチルダの街並みを黄色の雷が駆け巡った。秒速どれくらいの速さで動いているのか見当もつかないスピードだが、少なくともフェイトさんの姿を目で捉える事は出来ない。フェイトさんが瞬雷、と口にして一秒弱経った頃先程居た場所にフェイトさんは立っており、手に持った二刀一対の剣には赤い血が付いておりポタポタと音を立てて地面に落ちて行く。

 

「13連」

 

刹那、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンの黒い体に黄色い13の線が浮かび上がり、黄色い線を境目に体がバラバラになり、地面に落ちる前に超音波と思わんばかりの振動を発する爆発音を上げて爆発した。土煙により何も見えないが、四体の竜の痛みを堪える声が奥から聞こえてきた。

構えていたデュエルディスクをスッと降ろし、消えて行くミッドチルダの空を眺めていると、デュエルをすると必ず聞く事になる、ライフが0になった事を知らせる機械音が耳に入った。

 

レダメLP900→-600

 

ソリッドビジョンが完全に消えて高さ五十メートル以上の天井が見えた。

不思議とデュエルに勝った実感も王となった実感も湧かない。あくまで俺が王となるのは戦争を止めてヨハンを助ける為だからか、あるいは余りにも現実味の無い出来事に俺自身が付いていけてないのか。そんな若干の気の迷いも、視線を降ろして正面でひざまづく四体の竜を見ると晴れた。

 

「この時を持って我々ドラゴン族はあなたを新たな王として迎えます」

「いついかなる時も我等が魂はあなたと共にあり」

「この身を呈してあなたを守る事を誓います」

「あなたが王としての誇りと使命を無くさない限り我等はあなたに付いて行きます」

「ああ。これから宜しく頼む」

 




追記)投稿した時にはForceに/バスターの共通効果の破壊された時墓地から特殊召喚する効果があったのですが消しました。また、ForceにLSとついていなかったので付け加えました。


絶対防御将軍のバーゲンセール。

相変わらず三人娘に対するエコ贔屓感が半端ない。
幼少期を元にすると発生は

    三幻魔
      ↑
幼少期→strikers→Force
↓     ↓
マテ娘  IF

そりゃあこんな事してたらデッキ枚数アウトになりますよね・・・・。しかもなのはに関しては少し違うけど、これにフェルが加わりますし。
ですので自然と三人娘の出番が多いんですけど、最近このキャラの見てないから出して! 等ありましたら言っていただけるといつもと少し違う感じのデュエルが書けると思います。


それとForceの説明かなり長いです。



Force-evolution 通常罠
自分フィールド上に存在するレベル7以上の「LS」と名のつくモンスター1体を生贄にして発動できる。生贄にしたモンスターのカード名が含まれる「CW-Force」と名のついた融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚扱いとして特殊召喚する。
自分フィールド上に「LS級艦船ヴォルフラム」が表側表示で存在する場合、手札1枚を墓地へ送りこのカードを手札に加える事ができる。「Force-evolution」のこの効果は1ターンに1度しか発動できない。


LS級艦船ヴォルフラム 永続魔法
このカードがフィールド上に存在する限り「CW-Force」と名のつくモンスターはエンドフェイズ時にLCを取り除く効果、及び融合デッキに戻る効果を発動しなくてもよい。また、このカードがフィールド上に存在する限り、自分は手札から「Force-evolution」を発動できる。


LS-CW-Force00X高町なのは-Fortress Strike Cannon ☆10/光/魔法使い/A2000・D3500
このカードは「Force-evolution」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードは、守備表示の状態で攻撃する事ができる。その場合、攻撃力の数値を適用してダメージ計算を行う。
このカードが破壊される場合、代わりに自分フィールド上に存在するLCを取り除く事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する場合、相手はバトルフェイズを行わなければならない。相手のバトルフェイズ開始時に相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの数だけこのカードにForceカウンターを乗せる。このカードが攻撃対象になった時、このカードに乗っているForceカウンターを1つ取り除く。
相手のエンドフェイズ時にこのカードに乗っているForceカウンターを全て取り除き、取り除いた数だけ相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを選択し、攻撃力と守備力を500ポイントダウンさせる。
自分のエンドフェイズ時にこのカードに乗っているLCを1つ取り除く。LCが乗っていないこのカードは融合デッキに戻る。



LS-CW-Force00X-S2八神はやて-Fortress Shield ☆10/闇/魔法使い/A2300・D3000
このカードは「Force-evolution」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードは、守備表示の状態で攻撃する事ができる。その場合、攻撃力の数値を適用してダメージ計算を行う。
このカードのLCを1つ取り除き、このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在するカード一枚にForceカウンターを1つ置く事ができる。選択したカードが破壊される場合、代わりにForceカウンターを1つ取り除く。
1ターンに1度自分フィールド上に表側表示で存在する融合モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを融合デッキに戻す。さらに、融合デッキに戻したモンスターに記された融合素材モンスター1組が自分のデッキまたは墓地に揃っていれば、この1組を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃する事ができない。
自分のエンドフェイズ時にこのカードに乗っているLCを1つ取り除く。LCが乗っていないこのカードは融合デッキに戻る。



LS-CW-Force01Xフェイト・テスタロッサ・ハラオウン-Riot Blade & ZamberⅡ ☆10/光/魔法使い/A3300・D0
このカードは「Force-evolution」の効果及びこのカードの効果でのみ特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上のLCを1つ取り除き自分の魔法・罠ゾーンにいる「LS」と名のつくモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターをデッキに戻し、戻したモンスターと同じレベルの「LS」と名のつくモンスター1体を手札に加える事ができる。このターン、この効果で手札に加えたモンスター及びその同名カードが魔法・罠ゾーンに置かなかった場合、エンドフェイズ時に自分のライフは半分になる。
相手のターンに1度、自分の墓地に存在する「LS」と名のついたモンスター1体をゲームから除外する事で、フィールド上に表側表示で存在するこのカードをゲームから除外する。次のスタンバイフェイズ時、この効果で除外したこのカードを特殊召喚する。






まずはForce-evolution。条件下では使いまわし可能なバスター・モード。


ヴォルフラム。戦えない船はただの船だ、って言いたくなるサポート効果です。まあ墓地から罠発動と手札から罠発動が同時に出来る便利なカードです。ネオスペースに似た役割もあります。


Forece全体
自分のエンドフェイズ時にLCを1つ取り除く効果と、LCが無くなった時点で融合デッキに戻る効果が共通ですね。原作でもフェイトさんはAECじゃなくて第五世代デバイスだったので、デメリットは無くしました。


Forceなのはさん。
三人娘の中では一応一番名前の短い14文字。ただ発音だと既に最も長いと思われるフォーカスの30文字を上回る47文字。リリカルシリーズって付くだけで八文字ですからね。
なんかごちゃごちゃしていますが、つまりLCを盾にして破壊を無効にできて、エンドフェイズ時にLC取り除くデメリットがあって、絶対防御将軍効果が合って、Forceカウンター乗せて攻撃力ダウンさせると。
自信のLCを取り除いて破壊を無効にしてもエクストラに戻るので単体では何もアドバンテージを取れませんが、場持ちがいいですね。破壊され時の効果を発動できれば更に場持ちがよくなり、相手も息切れしやすくなるかと。
攻撃力ダウン効果を持ちながら絶対防御将軍効果を持っているのでビートダウンデッキにはかなり辛いカードになります。効果の数=強いと言われると微妙なのですが、3500という数値は厚い。


Forceはやてさん
これは強いですね。発動条件が限られているとはいえ作中でも書いていた通り、融合デッキに戻る効果を使えばヴィータの融合召喚時の効果や、なのはさんのサーチ効果を使用できるし、ボードの数だけ見ても単純に一枚増えています。
もう一つの効果は自分のLCを取り除いて発動するカードガード効果です。自分のがネックですが一ターンの制限が無いのが逃げ道かと。LCを溜めた状態でヴォルフラムを出して効果を発動出来たら様々なカードに耐性を付けることができます。また融合デッキに戻ってしまうとは言え、一応召喚してすぐでも発動できる効果なので、ひょっとしたら今後活かせるかもしれません。
本当は自分にも耐性を付けようかと思ったのですが、基本的にForceの効果は二つと決めていたので(絶対防御将軍効果はデフォルト)


Forceフェイトさん。
驚異の発音62文字。長い方がカッコイイと思って長々とやった結果がこれです。
一つ目は魔法・罠ゾーンにいるLSのチェンジ効果。一応同レベルのLSなら何でもいいですが、ライフを半分払わないといけません。もう一つは相手ターンのみの亜空間物質。他の二人に比べるとステータスの上昇もなく効果は地味ですが、デメリットがないのでむしろ強すぎるくらいかと。











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第六十話

ついに六十話と思うと、まだ終わってないのに妙な達成感があります。


というか超今更ですけど漫画innocentってパロネタが多いですよね。はやてがやっていたいらっしゃ~いは知らないんですけど何か元ネタがあるようですし、レヴィの「僕と王ちゃまでオーバーレイ」とか「嘘だと言ってよ」とか。後者はパロでは無いですけど。
他にも気づいていないだけであるのかな?



それと本当にしつこいですが、この手の戦略系の話は苦手ですので色々とツッコミ所があると思います。(勿論見直しはしていますが)
何かあれば本文への反映が出来ないかもしれませんが言ってください。こればかりは本当にすいません。てか何で遊戯王で戦略の話があるんだよ!





「ああ。これから宜しく頼む」

 

四体の竜は深々と頭を下げて俺に忠誠を誓ってくれた。俺もそれに応えられるように、そして本当の父親であり先代のF・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)の名に恥じぬように努力しないといけない。しかし王としての使命を果たすよりも、まず第一にやらないといけないのは、この戦争を終わらせる事とヨハンを救い出す事。これだけは必要以上に伝えておかないといけないので、マスター・オブ・ドラゴンナイトにも話したがもう一度四体に言っておく。

 

「さっきも言ったが俺はこの戦争を止めようと思う。一番いいのはこれ以上誰も傷つかずに戦争を終わらせる事だがあくまで理想だ。ひょっとしたら戦争を止める為の戦いをするかもしれない。それでもいいか?」

「勿論です」

「私達はあなたの命に従い、力を使い、策を練り、あなたの手となり足となります」

「ありがとう。色々と積もる話もあるが、早速だがこれからの大まかな方針に付いて話し合いたいと思う。この世界の地図と机を持って来てくれ」

「畏まりました。すぐに手配させます」

 

モンタージュ・ドラゴンは三つの首を丁寧に下げて巨大な扉から出て行くと、すぐ近くに居たのであろう下級ドラゴンに俺が言った二つを持ってくるように命じた。モンタージュ・ドラゴンが命を下したのはボマ-・ドラゴンとハードアームドラゴンの様で、二体はそれぞれ地図と人間サイズの机を持って来てくれた。ハードアームドラゴンはともかく、爆弾を持っているボマ-・ドラゴンに物を運ばせるのは心配な気がするが、そこはツッコミを入れずに見なかった事にしておこう。

 

「すまないが人間の姿でいてくれると助かる」

「了解しました」

 

レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンに続き、四体のドラゴン族はそれぞれの属性の光を発すると共に人間の姿に戻っていく。マスター・オブ・ドラゴンナイトは元々人間サイズだからそのままだ。

口調や性格で想像していた通り、タイラント・ドラゴンは長い赤髪のクールな男性で、アームド・ドラゴンLV10はツンツン頭の緑の髪のワイルドな男。ホワイトナイツは青髪のストレートのキリッとした女性で、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは目に掛かるくらいの黒髪の紳士的な男で、モンタージュ・ドラゴンは茶髪というより栗毛の中年の男性だった。

 

「はやてさんとフェイトさんも出てきて下さい」

「んっ」

「了解や」

 

デッキケースから現れた二人は俺の両隣の席の前に立って、俺が席に座ると同時に席に座る。それから少し遅れて席に座ったドラゴン族だが、何やら俺の顔を見て少し困った顔をしていた。

 

「失礼ながら言わせていただきますが、自らの僕であるモンスターに敬語を使うのは誇り高きドラゴン族の王として・・・・」

「あ~、ん~・・・・」

「私達も呼び捨てでいいって言ってるんですけど」

「ゴメン。このメンツでいる時だけはこれで行かせてくれ。俺が敬語で話す方は、お姉さんって言うかお母さんって言うか。凄くお世話になっている人達だから」

 

いつかはスバルやティアナの様に年を追い越したらタメ口で話せるようになるかもしれないが、なのはさん、フェイトさん、はやてさんは特にお世話になった三人だ。

それにもう10年以上の癖みたいなものだし、ヴィータさんやシグナムさん、そして王様なのはさんを呼び捨てにできる自身が俺には無い。前者二人はさほど気にしていないだろうが、王様なのはさんはデュエルの最中でさえ呼び捨てにしたら怒るからな・・・・。

 

「分かりました。ですがくれぐれも、多種族との前やデュエルの最中に出ないよう」

「き、気を付けるよ」

「早速王様としての威厳がないな~。もうちょっとディアーチェや王様なのはちゃんを見習わんと」

「あ、あの二人は生まれながらの王様だからちょっと。それに俺が、ふはははは! 我が前にひれ伏すが良い! なんて台詞が似合うと思います?」

「「全然」」

「・・・・遊斗様。そろそろ本題に」

「そ、そうだったな」

 

いかんいかん。大事な会議を始める前だって言うのにいつのもアットホームな会話をしてしまった。場の空気を占める為にわざとらしく咳払いをすると、目の前に敷かれた精霊世界の地図を見る。地図には分かりやすく円と、円の中に種族のマークが描かれており、かなりザックリとだが位置関係は分かった。

 

「先にすぐに終わるだろう話題から。単刀直入に言うと、お前達はヨハン・アンデルセンという人間の少年を知らないか?」

 

予想していた通り五人は顔を見合わせて首を横に振る。そもそもどの次元のどの世界にいるかが分からないから絞り様が無いのでこれは仕方が無い。こればかりは運に身を任せるしかないが、可能な限りヨハンを探す努力をしておこう。

 

「この会議が終わった後、俺がヨハンを探していると書いた張り紙を配るように手配してくれ」

「では私が」

 

そう言って黒髪の男性、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンが手を上げる。

 

「頼むぞ。じゃあもう一つの戦争を止める話に切り替える。簡潔に言うと戦争を止める方法として俺が思いついているのは、全種族のお偉方と話して戦争を止める事と、一つの勢力がこの精霊世界全域を支配するの二つ」

「なるほど・・・・」

「全種族との話し合いは難しいかと。我々ドラゴン族は余り多種族との交流を好まず、まともに交流をしていたのは魔法使い族と鳥獣族の二つくらいです」

「予想以上に少ないですね。いや、二種族あるだけでも良い方か・・・・。今多種族に攻撃的な種族と守備的な種族はありますか?」

「フェイトさん?」

 

フェイトさんの質問にホワイトナイツが応えるのか、席を立つ。そして自らの能力を使って、氷で作られた小さな剣と盾を手の平の上に形成すると、一つ一つ地図に置いて行く。

20種族の内剣を置かれたのは8つの種族。そして残りの12の種族が盾を置かれた。剣が攻撃的な種族で盾が守備的な種族と見て間違いないだろう。意外にも攻撃的な種族が少ないのに内心驚きながらも、ようやくフェイトさんの質問の意図に気付いた。流石執務官フェイトさんと言うべきか頭の回転が早く、組んだ手の上に顎を乗せる恰好が様になっている。後者は執務官関係が無いけど。

 

「攻撃的なのはアンデット族、獣戦士族、獣族、鳥獣族、悪魔族、天使族、炎族、そしてドラゴン族か・・・・」

「ただ爬虫類族に関しては、守る事が攻める事となるので守備的とは言いにくいです」

「食虫植物の様に獲物を待っている状態です」

 

俺が王になったからにはドラゴン族の戦い方も守備的になる。俺は席を立ってドラゴン族の国の上に置いてある剣と爬虫類族に置いてある盾を交換した。

 

「守備的な種族には、今すぐ戦争を止めようと話さずに、ドラゴン族はそちらの種族を攻撃する意思は無いと伝えるだけでいいと思う」

「伝えるだけでいいんですか?」

「うん。すぐに警戒を解かないと思うけど、時間が経つにつれて警戒も薄くなるはず。そこでもう一度話し合いに行けば大分話しやすくなると思う」

「なるほど。ですが自分達の王を倒した遊斗様が出向かれると、火に油を注ぐようなものでは?」

 

俺もタイラント・ドラゴンの意見に同感だが、フェイトさんはフルフルと首を横に振る。

 

「いや。王の仇を取ったり悲願を叶えようとしているなら、守備的になんてならない筈。破滅の光に乗っ取られていた王に愛想を尽かしたのか、それとも悲願を叶えたいけど財政や食糧的に困難なのか。守備的になる理由がどうあれ、攻撃的だったドラゴン族から攻めないと宣言されたら向こうとしては大助かり。仮にドラゴン族の王が遊斗だと知って、王の仇を取る為にこっちを攻撃してきたとしたら、相手は炎に大量の油を注ぐことになる」

「しかしドラゴン族の王が遊斗様だと知られると、多種族で同名が組まれてこちらを攻撃して来る可能性も」

「いや、むしろ遊斗がドラゴン族の王って事は堂々と発表していいと思います」

「なに!?」

 

堂々と話し合いを続けるフェイトさんの横顔を感心しながら眺めていると、はやてさんがチョンチョンと指で突いてきた。何かと思いフェイトさんの反対側にいるはやてさんを眺めると、顔を近付けて会議の邪魔にならない様に小さい声で呟く。

 

「なあ、私必要無いとちゃう?」

「ま、まあそれを言ったら俺もですし、アームド・ドラゴンもポカーンとしていますし、とりあえず同席しておきましょう」

「りょ~かい。私も色々考えとく」

 

はやてさんとどうでもいい会話をしている間もフェイトさんは自分の考えを伝えていた。

 

「遊斗が王を倒したという情報がどれ程広がっているかは分かりませんが、少なくとも地位の高い精霊達は知っている。それは遊斗が私達LSを持っている事を知っていると言う事です」

「確かに。遊斗を襲って来た魔法使い族や王達は、遊斗本人じゃなくて私達LSを狙っとった。遊斗=LSは間違いなく知っている筈」

「自分達の王だけじゃなく全ての王を倒した遊斗が、最強の王だったF・G・Dの息子。果たしていくつの種族がこちらに攻撃してくるでしょうか? あっ、この話はドラゴン族の力や数が多種族より多いのを前提として話していますが」

「我々を舐めてもらっては困る。ドラゴン族は天使族と並び、多種族に比べて強さが頭二つ分程飛び出ておる。その天使族と戦っても多種族の邪魔が無ければ勝つ自信はある」

 

ドラゴン族と天使族の共通点は最上級モンスターの割合が多い事。やはりこの世界では効果よりも高ステータス高火力を持つモンスターが強いのだろう。実際魔導サイエンティストやクリッターと言った、禁止カードや制限カードが平和を望む村に居た。

ドラゴン族は高いステータスが多く、全体的な枚数も戦士族・悪魔族・魔法使い族・機械族に続いて五番目で、最上級モンスターの数では一番多い。随分いい種族の王様の子に産まれたものだ。

 

「つまりこちらが防御的な種族に、攻めません、と言っても余りデメリットは無いと」

「余り?」

「さっきマスター・オブ・ドラゴンナイトが言ったけど、多種族同士で手を組んで攻めて来る可能性はある。勿論私達とドラゴン族が手を組んだら迎撃出来るだろうけど、戦争の被害が広まる。そこで少し言い方は悪いけど、攻めません、と一緒に相手を脅すんだ」

「脅す? 多種族と手を組んで攻撃してきたら真っ先にあなたの国を襲います~て?」

「うん。簡単だけど効果はあると思う。元々守備的な国が攻められたら被害はより深刻になるだろうし、脅す時に全ドラゴン族とLSの勢力を上げて、とか付け加えたらとても攻撃しようとは思えないでしょ?」

「確かに・・・・」

「それに、全体に比べて数は減るけど私達とドラゴン族の共通点は空を飛べる事と遠距離攻撃が豊富な事。例えば飛ぶ手段が少なそうな魔法使い族、戦士族とか、数の少ない恐竜族が、全精力を上げて攻撃するって言われたら、まずこちらに攻撃してくる事は無いと思う。勿論10年以上戦争を続けているから、自分達の弱点に気付いて何らかの対策はあるだろうけど」

 

す、凄い・・・・。俺だけじゃなく六体のドラゴン族も感心して、台詞や声のトーンは違うが感心の声を上げている。というか本格的に俺が蚊帳の外に置かれて話が進んでいる気が・・・・。いやいや、一応俺も相槌を打っているから、話の内容が全く分かっていないアームド・ドラゴンLV10のみが蚊帳の外に置かれていると言った方が良いだろう。やはり彼はみたまんま、頭では無く戦うのが得意の様だ。

 

「じゃあ早速話し合いに「その前に」へ?」

「こっちが守備的になったって伝えるにはまず前線で攻撃しているドラゴン族達に攻撃を止めさせないと」

「今すぐ攻撃を止めさせるように言ってきます。いや、私が行くより全く話しの無い様が分かっていないアームド・ドラゴンが行くべきでしょう」

「お、俺か? よく分かんが攻撃を止めさせればいいんだよな?」

「はい。宜しくお願いします」

 

まるで説教を受けていた少年が解放されたかの如く、嬉しそうな笑みを浮かべながら、ドラゴンの姿に戻って怪獣の足音を響かせながら玉座の間から逃げる様に去って行った。その態度にマスター・オブ・ドラゴンナイトとホワイトナイツとモンタージュ・ドラゴンは呆れており、残りの二人は無表情なまま何かを考えていた。

 

「それにまだ話し合いは終わっていないよ。もう一つ、攻撃的な種族に対する対処法だけど何かある?」

「俺は今の所思い付きませんけど。誰かあるなら順に言っていくのがいいんじゃないでしょうか? 何も無いなら時間を取ってもいいですし」

「先程のフェイト殿の話で思ったのですが、守備的な姿勢の種族と同盟を組むのはどうでしょうか?」

 

マスター・オブ・ドラゴンナイトのフェイトさんに対する呼び方が、フェイトさんからフェイト殿にランクアップした事へのツッコミは入れず、マスター・オブ・ドラゴンナイトの話をしっかりと頭に叩き込む。守備の姿勢を取る種族との同盟、攻撃的な種族に対する対処法。

 

「守備の種族と同盟を組んで、攻撃的な種族を迎撃する・・・・って事でいいんだよな?」

「はい。そうすれば攻撃的な種族の戦力を削ぐ事が出来ますし、こちらの信用も上がります」

「あっ、しかも守備的な種族の方が多いから、それぞれで同盟を組まれると攻撃する側としてはかなり辛くなる。だからと言って戦争を止めるとは思えないけど、向こうからしてみればじり貧になる」

「確かにいいかもしれません。攻撃側も戦力が落ちれば攻撃する余裕も無くなって、守備にならざる得ない。そしてまた守備的になった種族と同盟を組んで行けばいい。ただ攻撃側同士で同盟を組まれた場合、大きな戦いになるとは思うけど・・・・」

「まあこれはあくまで今後の方針を決める為の話し合い。全てがこの通りに動くとは限りませんので」

 

けど多種族とのこれからの方針に付いてはほぼこれでいいだろう。他の皆も反論は無い様で、特に何も言わない。

 

「じゃあドラゴン族の攻撃を止めて、その後俺が新しい王だと公表する。それがある程度伝わってから守備的な種族に話し合いに行く。これでいいか?」

「「「「「はい!」」」」」

「うん。今の所は問題ないと思うよ」

「私も。念の為みんなと話し合って大きな穴が無いか調べるなぁ」

 

 

 

 

それから三日の時が流れた。翼を持ったドラゴン族の速さはかなりのもので、二日経った今日ドラゴン族達は攻撃を止めた。そして今日の昼頃、俺は沢山のドラゴン族達の前に立ってカッコつけた演説をしたが、色々と恥ずかしいし、何より細かく説明すると長くなるので割合する。

演説の中、俺がF・G・Dを倒したと知るものは多く、また人間であるからほとんどのドラゴンが俺を王として受け入れようとしなかったので、ここはドラゴン族の王らしく腕に自信のあるデュエリストを文字通り片っ端から倒して実力を認めさせた。元々ドラゴン族の王に必要なのは多種族の王とは比べ物にならない圧倒的な力なので、20の王を倒した俺にはその力は十二分にある。それに加え、F・G・Dの血を引く者にしか反応しない竜の爪と、六体の大臣達が皆の前で頭を下げてくれたおかげで反発も大分減って、無事に演説を終える事が出来た。

勿論そんな簡単に認めてもらえる訳は無く、西で不満を呟くドラゴンがいればデュエルでねじ伏せ、東でデュエルを挑んできたドラゴンがいればデュエルでねじ伏せ、北でリアルファイトを挑んできた者がいればデュエルでねじ伏せた。おかげでデュエルの腕を認めて貰えた様で、演説終了後より少しだが不満を呟く輩は減った様だ。

 

「・・・・疲れた。フェイトをモフモフしたいフェイトとイチャイチャしたい」

「お疲れ様です遊斗様。好か不幸か、我々ドラゴン族は力ある者に惹かれますからね。これからも度々民とデュエルをする時があるでしょうが、頑張ってください」

「もうレッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンとミンゲイドラゴンと一族の結束は飽きた~。違う戦法は無いのか~」

「余り多種族のカードは入れませんからね。私の様に沼地の魔神王やカオス・ソルジャー等のカードを入れる方が珍しいです」

「フェイト~、出てきてくれ~」

「無視です「お疲れ様、遊斗」・・・・」

「フェイト! ああ~、やっぱりフェイトだよな~。フェイトに始まってフェイトに終わるのが俺の一日だよ」

 

フェイトが出るやすぐに抱き寄せて俺の太ももに座らせると、ぬいぐるみを抱くかのようにギューと抱きしめてサラサラした金色の髪に顔をうずくめてフェイトの甘いフルーツの様な香りを鼻孔の奥まで堪能する。くすぐったいのかフェイトは体をモジモジと動かすが、俺の腕から出ようとはしない。まだまだ堪能し足りないがフェイトの髪から一旦離れ、今度は首筋に顔を落とす。

 

「遊斗、くすぐったいよ~」

「いいだろ~。そう言えばフェイトここ弱いよな」

「きゃっ! も~」

「・・・・。お二人とも、少しは我等ドラゴン族を束ねる者としての」

「お前しかいないからだいじょーぶ。ほら、フェイト。お前もドラゴン族を束ねる者だってよ」

「えへへ・・・・。嬉しいな」

「俺も嬉しいよ」

 

首を回して振り向いたフェイトは、頬の筋肉を崩して可愛い笑みを浮かべる。おそらく俺もデレッとした情けない顔になっているだろう。何度もキスをした小さい唇を指の腹で軽く当て、ゆっくりとフェイトの唇に自分のそれを近付けていく。そしてお互いの距離が僅か数㎝になり――

 

「大変です遊斗様! って、何をされているのですか?」

 

(あわただ)しく玉座の間に入って来たのはドラゴンの姿であるホワイトナイツだった。この巨体に体当たりされたのにも関わらず、巨大なドアは傷一つ付いていない。フェイトは無言で俺から視線を逸らして、太ももの上にチョコンと座り込み、その様子をホワイトナイツは大きな首を傾げて眺めている。

 

「・・・・キスする直前」

「そ、それは申し訳ありませんでした「いい。それでどうしたんだ?」覇王軍と名乗る謎の軍団が現れ、尋常じゃないスピードで勢力を伸ばしております!」

「覇王軍?」

 

何だ? アインハルトのご先祖様がこの次元にいるのか?

なんてジョークにもならないどうでもいい反応は置いておき、ホワイトナイツがここまで驚くのは何か大きな理由がある筈。大きな理由が無くとも、そもそも種族間で争いが起こっている中で、21番目の軍勢が出来るのは驚くべきことだ。

 

「覇王と名乗る者が指揮を取り、様々な種族がその覇王の下に付いており、集落や村や国を襲っているそうです」

「種族混合の軍勢・・・・。しかも好戦的なモンスターが多いか・・・・。その覇王軍は、どの国を襲った?」

「悪魔族とアンデット族を沈め、いえ、吸収して兵力を増やしています!」

「吸収!?」

 

悪魔族やアンデット族のお偉方がどんな奴等カは知らないが、悪魔族は最上級モンスターが多く数も中々あり、アンデット族は再生能力に長けたモンスターが大勢いる筈。おそらく悪魔族もアンデット族もイメージ通り、腹黒い奴等が多い筈だ。そんな奴等を覇王軍の一部として吸収したとなるとただ事じゃない。

 

「今覇王軍がどこにいるか分かるか?」

「魔法使い族の国、エンディミオンに向けて進行しており、今は根城で待機中の様です」

「今すぐエンディミオンに向かう。ホワイトナイツは案内してくれ。マスター・オブ・ドラゴンナイトはここで待機していてくれ。ひょっとしたら戦争を止めるって言った傍から戦争をするかもしれない」

「はっ! 他の大臣達にも伝えておきます」

「こちらです」

 

 

 

 

ドラゴン族の国から魔法使い族の国まではヴォルフラムで三時間飛行して到着した。やはり覇王軍の噂を聞いてかかなり警備が厳重になっていたが、ドラゴン除くと数少ない交流があるだけあり、向こうもホワイトナイツの存在を知っている様で、ホワイトナイツを見ると素直に通してくれた。この魔法都市の中央にある建物にヴォルフラムを着地させ、ヴォルフラムから降りるとコスモクイーン、氷の女王、そしてブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールが待っていた。

 

「え!? ひょっとして遊斗君!?」

「静かにしていろ」

「でもお師匠様! だってあのLSの持ち主ですよ!」

 

フェイトのバリアジャケットに負けじと露出度の高い服を着た魔法使いの卵は、ブンブンと大きく手を振って俺を出迎えてくれた。ブラック・マジシャン・ガールと言ったらやっぱり一年生の文化祭の時にあった彼女を思い出すが、どうやら本人の様だ。ホワイトナイツより先にブラック・マジシャン・ガール達の元へ走る。

 

「やっぱりお前あの時のブラック・マジシャン・ガールか?」

「そうだよ。ってそれより何で君がここに居るの!? 確かドラゴン族の使者の話じゃ、新しいドラゴン族の王が来るって」

「ああ。その新しい王が俺だからな」

「なるほど~」

 

本当に理解できたのか、ずいぶんと軽い反応をしたブラック・マジシャン・ガールは「なるほどなるほど」と何度も同じ言葉を発して頷いていた。壊れた人形の様に同じ行動を繰り返すブラック・マジシャン・ガールを無視し、その隣にいたデュエルモンスターズの代表モンスターとも言える魔法使いに挨拶をする。

 

「あなたがブラック・マジシャンですね。まさかこの目でお会いできるとは光栄です」

「遊斗様。相手が王で無い以上、敬語を使うのは控えて下さい」

「あ、ああ。分かった」

「ありがたいお言葉です。暴走したエンディミオン様や、王達を救って頂きありがとうございます。他にも大切な話しがあるのですが、まずは現れた覇王軍について話を」

「俺もそのつもりで来た。LSの代表も同席していいか?」

「勿論です。ではこちらに」

 

ブラック・マジシャンの案内に従い歩き始めると共に、デッキケースからフェイトさんとはやてさんが現れてSPの様に俺の隣を歩き、更にホワイトナイツが俺の後ろに陣取って歩き始めた。これから一生こんなのが続くと思うと胃が痛くなるが、これも王達の尻拭いだと思って我慢するしかない。

 

「ってええええええええええ!?」

「反応遅。ガールって天然なのか?」

「恥ずかしながら」

 

人型のモンスターが半数を越えている魔法使い族の城は俺のサイズにも合っており、ブラック・マジシャンに案内されて一分程度で目的の部屋にたどり着いた。ドアが開かれると、そこにはいい素材で作られたのであろう綺麗で細長い机が置かれていた。ドラマや映画でよくオシャレな金持ちが座っている机を、まさか実際に座る事になるとは昔の俺は思いもしなかっただろう。もし座るとしても、せいぜい家具屋に行った時に買わない癖に座り心地だけ堪能するレベルの筈だ。

俺が机の中央に置いてある椅子に座ると、その両隣にフェイトさんとはやてさんが座った。そしてはやてさんの隣にホワイトナイツが座り、反対側にブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガール、コスモクイーン、氷の女王が座る。改めて見ると女性の割合が多いな。

 

「そっちも色々話したいだろうが、まずこっちから重要な事を一つ話す。俺はこの戦争を止めようと思っている。だから魔法使い族に攻撃を仕掛けたりしない。勿論信じるか信じないかはお前達次第だ」

「いえ、信じましょう。あなたが弟子の言っていた通りの方なら、あなたは信用できるデュエリストです」

「だがブラック・マジシャン!」

「分かっている、氷の女王。彼はエンディミオン様を倒した。だがあのエンディミオン様は破滅の光に操られており、もはやエンディミオン様では無かった。その件に関してはむしろ彼に感謝するべきだ」

「ありがとうブラック・マジシャン。こっちから話題を振ったのに申し訳ないが、今は俺を信じるか信じないかは別として、覇王軍について話し合いたい。俺は三時間前に、覇王軍が集落や村を襲って、悪魔族とアンデット族を吸収したとしか聞いてないが、この他に情報が無いか?」

 

やはり魔法使い族だけあり、みんなが到底使う事の出来ない、本物の魔法少女が使う様な魔法の力で様々な情報を得ているのか、俺達が知らない情報が次々と出てきた。

 

「まず一番重要な事ですが、再び覇王軍が進行を初めてこっちに向かって来ています」

「余り時間は無いのか・・・・分かった。向こうの対応次第ではドラゴン族をこちらに向かわせる」

「ありがとうございます。それともう一つ、覇王と名乗る者は王達を凌ぐほどのデュエリストの様です」

「王達を凌ぐ、か・・・・」

「それと邪悪なE・HEROモンスターを使うと」

「ツッ! 冗談でそのカテゴリを言ったのならぶっ飛ばすぞ」

「? 冗談ではございません」

 

王達を凌ぐ強さに、あいつとは正反対とはいえ邪悪なE・HEROを使う者。もし十代もこの次元に来て、この噂を聞いていたら覇王の元まで突っ走るだろう。一瞬でもその覇王と十代を繋げてしまってカッとなったが、これは十代と再会するチャンスだ。

 

「その覇王に負けたって事は悪魔族もアンデット族もその程度って事だ。覇王さえ倒せばいいんだろ? 俺がその覇王とデュエルして勝つ」

「遊斗様!? ダメです。王が前線でデュエルするなど」

「だったらドラゴン族の王に相応しいデュエルの腕はいつ使うんだ?」

「ひょっとしてE・HEROって聞いて焦ってる? 確かに十代もこの噂を聞いて覇王の元まで行くかもしれないけど」

「焦ってはいま――焦って無い。だけど十代と会いたいって思いはその通りだ。どっちにしろ覇王を倒せば、覇王の下に居る悪魔族やアンデット族、更にその他の種族の一部も軍門に下る。王より強いデュエリストの相手を俺以外の誰がやる?」

 

多種族との話し合いの最中なのでフェイトさんに敬語を使わずにタメ口で話す。

因みにさっき言った通り俺は焦っていないし、覇王一人を倒した方が両者に被害が少ないと考えた為、覇王とデュエルをすると口にした。その覇王とやらがどれ程の力を持っているか分からないが、噂通り王達を凌ぐデュエリストならこの場どころかこの次元で適任なのは、王達を倒した俺だけだ。なんて口にするとウザいので心の中で語っている。最も遠回しにだが似たような事を言っているが。

 

「分かりました・・・・。では頼んでもよろしいでしょうか?」

「ああ。その代わり、ドラゴン族と同盟を組むと約束してくれ」

「勿論です」

「おそらく覇王軍は半日ほど進行し、この破棄された城で休息を取ると思います。そこがチャンスかと」

「どうやって潜入するかだな。いかにも覇王軍にいそうなドラゴンに乗って潜入するか、堂々と全勢力を上げてぶつかってその間に俺が覇王の元に行くか」

「いかにも覇王軍にいそうなドラゴンって言うと、レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンとかディアボロスとかか、破壊竜ガンドラとか?」

「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴンは知られているので、後者二体両者かどちらか一体を呼んできます。遊斗様はディアボロスかガンドラに乗って覇王軍内に突入し覇王とデュエル」

「ああ。それで行こう」

 

 




ご覧になった作品は遊戯王GXの二次創作です。どうもこの小説の三期は遊戯王から離れる事が多いみたいです。


まずはどうしてこうなった……。だけど一話でもいいからこうやって書いて置く事で、後々この回の会話の通りに動いたらうまくいったぜ、とか一言で終わらせそうだから←オイ
それと単純に戦争関係の戦いをしてからの覇王軍が繋げやすかったので。


あとですね、これは調べても分からなかったから無難に進めたんですけど、マハードやマナってどうなってるのか分からないから、本文ではブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールとして進めました。初代遊戯王の記憶ってほぼ無いので。
他の二次創作ではマナが出る事が多いので、GX時期にマナが活動していても何の問題も無いと思うのですが。まあマハードとマナである必要は全くないです。あくまで一年の時に学校に来たブラック・マジシャン・ガールの精霊であればOKですので。




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第六十一話

( ゚∀゚)o彡゚ 覇王! 覇王! 覇王! 覇王! 覇王! 
( ゚∀゚)o彡゚ 覇王! 覇王! 覇王! 覇王! 覇王!  
( ゚∀゚)o彡゚ 覇王! 覇王! 覇王! 覇王! 覇王!  
( ゚∀゚)o彡゚ 覇王! 覇王! 覇王! 覇王! 覇王!  
( ゚∀゚)o彡゚ 覇王! 覇王! 覇王! 覇王! 覇王!

因みに闇魔界の覇王も一緒に覇王コールをしています(アニメで)




会議を始めてから半日が経過した。ブラック・マジシャンの読み通り覇王軍は破棄された城を根城にして休んでおり、魔法都市エンディミオンへの侵攻に向けて準備を整えている。覇王がいる城に近付くにつれて邪悪なモンスターの数が増え、地上にも空にも海にも覇王の元へ集まるモンスターが大勢いた。覇王軍の元へ集まるモンスター達の種族はバラバラで、本来なら種族間通しで争っている筈だが、喧嘩をしている様子は見えずに共に並んで覇王の元へ進行しており、本当に種族間同士で争っているのか違和感を覚えた。

ブラック・マジシャンの話では血の気の多いモンスターが覇王の元へ集まって、精霊世界を更なる戦乱の世にしようとしているらしい。この世界が自分好みになるなら、種族間同士の争いはどうでもいいと考えている者が集まっているのだろう。

 

「全く、こんなに争いを好む精霊がいるとは世も末だな」

「我も争いは好きだ。戦争が好きだ。王が変わらなければ今も戦っておっただろう」

 

下に居る魔王ディアボロスのワイルドな重低音が耳に入って来ると、俺は乾いた笑い声を上げた。

カードのディアボロスは特殊召喚出来ない、生贄召喚する時生贄は闇属性じゃないといけない、トレード・インに対応できていない、攻撃力2800守備力1000と悲惨なステータスで、デッキトップを操作する些細な効果しかないと、とにかく不遇なモンスターだが、この精霊の世界では魔王の名に相応しく悪名高いドラゴンの様で、ディアボロスの前を飛ぶモンスター達は慌てて道を開いて行く。

 

「しかし凄いな。争いを好むモンスターでさえ避けているぞ」

「我は破壊竜ガンドラと各地で暴れ回っておるからな」

「あはは・・・・そりゃあ向こうからしたら悪夢だろう。ん?」

「どうした?」

 

戦争を止めようと思っている俺にとっては笑えない話をしていると、数百メートル先に見覚えのあるモンスターが飛んでいた。それは世界に一枚しか無い――と言う訳ではないが、封印されていたそのカードは、あの人以外使っているのを見た事が無いモンスターだ。三つの邪悪な機械の竜が合体して生まれ、ドラゴン族を吸収するモンスター――鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンが飛んでいたのだ。

 

「二時の方向に飛んでいるサイバー・ダーク・ドラゴンの近くに飛んでくれ」

「余り奴に近付きたくは無いが」

 

ディアボロスは嫌そうに言いながらも、俺が言った通りにサイバー・ダーク・ドラゴンに近付いて行く。300メートルぐらいまで近づいた頃にはサイバー・ダーク・ドラゴンの上に複数の人影がいるのを確認し、200メートルまで近づくとその人影の正体も分かった。ずっと会いたかったデュエルアカデミアの仲間達、エド、オブライエン、亮さんの三人がサイバー・ダーク・ドラゴンの背中にいた。三人は近付いてくるディアボロスに警戒していたが、三人に見える様に大きく手を振ると敵ではないと見極めてくれたのか、ゆっくりとこっちに近付いてきた。

三人が俺の顔を見た時は大層驚いた顔をしており、オブライエンに関してはオバケでも見たかのように驚いている。

 

「「遊斗!」」

「今まで何をしてたんだ遊斗!」

「まあ俺もかなり色々あってね。でも目的は一緒の筈だ。俺は覇王に用がある」

 

すると三人は難しい顔を見合わせる。亮さんはエドとオブライエンから視線を外して前を向いたが、二人は俺の方をジッと見て来る。何か覇王に裏でもあるのか? 冷静な三人がここまで難しい顔をするとなると、かなりの事情があると思うが。

 

「覇王軍まで来たぞ。身を屈めてジッとしていろ」

 

どうやら三人に話を聞くのは後になるようだ。ディアボロスの言う通り俺達は身を屈めて周りから見えない様にする。火山口の様に山に囲まれた中に建っている城を中心に、地面を埋め尽くす程のモンスター達が囲み「覇王! 覇王! 覇王!」とひたすら覇王コールを繰り返していた。空を飛ぶモンスターも少なくは無く、地上に居るモンスターと同じ様に覇王コールを永遠繰り返している。

まるで野球ドームやライブハウスにいる様な煩さに耳を塞ぎたくなるが、覇王コールに夢中になっているのか、ディアボロスとサイバー・ダーク・ドラゴンが覇王城に着地しても怪しむ様子は無い。むしろディアボロスの覇王軍の参戦に喜んでいるのか、更に覇王コールが増えていく。

 

「遊斗。お前はいったいどこでディアボロス何かを」

「話せば長くなるから説明は後だ。お出迎えが来たようだ」

 

現代で言う所のヘリポートに着陸すると、城の中から覇王の側近であろうデビルゾアや首狩り魔人、冥界の魔王ハ・デスの闇属性上級モンスターが出迎えに来た。ディアボロスは是が非でも味方に付けたい様で、時代劇に出て来る小悪党の様に手を擦りながら中腰で歩いて来る。

 

「これはこれは。あの悪名高い魔王ディアボロス様ではありませんか。おや? その人型の精霊達は?」

「どうでもいい。そんな事より覇王様はどこにいる?」

「最上階でお待ちしております」

「そうか・・・・、ではお前達にもう用は無い。先程の質問だが答えてやろう。こいつは我が主だ」

 

ディアボロスはその言葉と同時に、禍々しい闇のオーラを纏いながらも、重力をイメージさせる宇宙空間の様な光を放つ手の平サイズの球体を作り出し、出迎えに来た三体のモンスターに向けて発射した。ディアボロスの攻撃を真正面から不意をくらって受けた三体のモンスターは、闇の球体に押されて城の壁を突き破り、足場の無い空へと飛ばされる。

 

「ふん!」

 

そしてディアボロスが左手をギュッと握ると、ドガーン! と黒い球体が空気を震わす爆発音を上げて大爆発を起こし、数百メートル離れた俺達でさえ確かな爆風を感じる事ができる威力だった。

先程まで覇王コールが広まっていた城は一気にシーンと静かになり、それを挑発するように巨大な翼を羽ばたかせてディアボロスが吠えた。

 

「注意を惹きつけておく。帰りはLSかその人間にでも送ってもらえ」

「ああ、しかしもう少し隠密に出来なかったのか?」

「我等がそんな事出来る訳ないだろう。特に我の様に気が短い竜はな」

 

ディアボロスは先程と同じ黒い球体を両手に作り出し、地上にいる覇王軍と空にいる覇王軍に向けて発射。見事巨大な爆発を起こした黒い球体を合図に、覇王軍が一斉に怒涛の声を上げ、遠距離攻撃が可能なモンスターはディアボロスに攻撃を始めた。

 

「大丈夫なのか? たった一体で?」

「分からないが、ディアボロスの頑張りの為にも今は覇王の元へ行かないと」

「待ってくれ遊斗! 覇王の相手は、俺に、俺にやらせてくれ!」

 

オブライエンは右手に持った何かをギュッと握りしめながら、一世一代の、それこそ一生のお願いという言葉が相応しい勢いだった。オブライエンの力を侮っている訳ではないが、噂通りであれば覇王は王達を凌ぐ力を持っている。この世界で両者の内どちらか片方が決闘と認めたデュエルは命を掛けたものとなるので、仮に負けてしまったらオブライエンは消えてしまう。

だがオブライエンだってそんな事は知っているだろう。それでもなお、オブライエンの瞳は揺るぐ事は無く、覇王との決闘を望んでいる。

 

「覇王に勝つのなら構わないが、どうしたんだオブライエン?」

「・・・・来れば分かる」

「じゃあ僕と亮はこっちに来る雑魚の相手をしておく」

「ああ、頼むぞエド、亮さん」

 

鍛えているオブライエンでも半分精霊の俺より脚力があるとは思えないので、オブライエンの手引っ張って覇王がいる最上階に向かって走り出す。エドと亮さんと別れて数十秒後には最上階への階段が見え、そこに覇王の親衛隊らしきモンスターがいた。悪魔族の代表カテゴリ、暗黒界のエースモンスター暗黒界の龍神グラファだ。ディアボロスにも劣らない巨体には、刃となった銀の鎧が装着されており、巨体を飛ばす黒い翼もまた金属の様なもので作られている。いや、人間界には無い物質と言った方がいいのかもしれない。奴に肉は無く、骸骨が露出している顔からは、赤い獣の瞳が光って侵入者である俺とオブライエンを睨みつけている。

 

「なっ、覇王が暗黒界モンスターを!?」

「チッ、邪魔がいたか。オブライエン、先に行け。こいつは俺が相手をする」

「通すと思っているのか!」

 

グラファは挨拶もせずに両手から糸の様に細い無数の黒いエネルギーを発射して、俺とオブライエンに向けて飛ばす。だがそのエネルギーは俺達に届く事は無く、デッキから実体化したなのはさんの堅く厚いバリアによってオブライエンを狙った攻撃は全て防がれ、俺は天井スレスレまで跳んで攻撃を回避し、グラファの攻撃でボロボロになった床に着地する。

 

「そのモンスターはLSか」

「オブライエン、先に行け。お前と覇王の関係は後で教えてくれよ」

「ああ! ありがとう遊斗!」

 

LSが相手となってはグラファもデュエルを受けるしかないと判断したのか、横切るオブライエンの邪魔はせずに素直に通してくれた。

 

「オブライエンを通すんだな」

「誰かと思えば、あの時逃げだした小僧。そんな小僧が覇王様に勝つ可能性など万に一つも無い」

 

逃げだした? あのオブライエンが?

その言葉が引っかかったが、後で事情を知っているだろうエド、オブライエン、亮さんに聞けば何が起こっていたかは分かるので、わざわざ敵に聞く必要は無い。

グラファが使うデッキは100%登場時から猛威を振るっている暗黒界というカテゴリ。しかも一年前くらいに発売されたパックにより更に強化され、今ではその使用者も増えてきている。デュエルアカデミアには暗黒界使いがいなかったので、噂に聞く暗黒界の強さを体験できるチャンスだ。

 

「LSの持ち主と知って逃げださなかったのは褒めてやる」

「それはこちらの台詞だ。暗黒界の龍神である俺を前にしてそんな態度が取れるとはな!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺が貰う、ドロー! トランス・デーモンを召喚!」

 

A1500・D500

 

宇宙人の様な半円の目の形をした青い体の悪魔。腕は細い木の枝の様で、背中に付いている羽は飾りかと思う程に小さいが、その羽を羽ばたかせて空を浮いている。

 

「トランス・デーモンの効果発動。手札の悪魔族モンスターを一体捨て、このカードの攻撃力を500ポイントアップする」

 

トランスA1500→A2000

 

「そして捨てた暗黒界の術師スノウの効果発動。デッキの暗黒界と名のつくカードを手札に加える。フィールド魔法暗黒界の門を選択しそのまま発動!」

 

先程まで石作りで出来ていた城が一変して薄い紫の瘴気が辺りに充満し、奴の背後に機械で作られたタコの足の様なものが埋め込まれている気味の悪い門が生えてきた。暗黒界と名のつく事でスノウからのサーチが可能で、更に毎ターン暗黒界の効果発動条件である手札を捨てる事によりデッキから一枚ドロー出来る優秀なフィールド魔法。フィールド魔法の多くは手札事故が弱点と言えるが、滅多な事が起こらない限りこのカードが事故の原因になる事はないだろう。

 

「暗黒界の門の効果発動。フィールド上の悪魔族モンスターの攻守を300上げる」

 

トランスA2000・D500→A2300・D800

 

「そして一ターンに一度、墓地の悪魔族モンスターをゲームから除外し手札の悪魔族を捨てる。その後デッキから一枚ドローする。スノウを除外し手札の暗黒界の武神ゴルドを捨ててデッキから一枚ドロー。そして捨てられたゴルドの効果で特殊召喚!」

 

ゴルドA2300・D1400→A2600・D1700

 

流石暗黒界と言うべきか早い展開力と持久力を持っている。昔は火力が無かったから暗黒界単体と言うよりも、他のデッキのパーツとして使われていた事が多かったが、今では純暗黒界でも火力を叩き出せる様になったのが大きい。

ゴルドは金のゴールドを由来にしているのか、金色の斧を持った悪魔。グラファやトランス・デーモンに比べると見た目は比較的普通だ。

 

「そしてドローした暗黒界の取引を発動。互いのプレイヤーは手札を一枚ドローして、その後一枚捨てる」

「はいよ。効果処理をどうぞ」

「俺は捨てた暗黒界の軍神シルバの効果を発動。このカードを特殊召喚」

 

シルバA2300・D1400→A2600・D1700

 

今度は銀のシルバーのシルバ。剣を持っている悪魔、以上。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

トランスA2300→A1800

 

場 暗黒界の門

グラファ モンスター3 伏せ1 手札2

 

早速攻撃力2500を越えたモンスターが二体と、破壊されたら除外されている悪魔を手札に加えるトランス・デーモンか。猛威を振るっているカテゴリだけあり、相手にとって不足は無い。

 

「ドロー。レヴィを通常召喚し、召喚成功時効果で自身にLCを置く」

 

LCレヴィ1

A1900・D400

 

「じゃんじゃじゃ~ん! 凄いぞ! 強いぞ! カッコイイ! 切り込み隊長のレヴィ・ザ・スラッシャー登場!」

「カートリッジロードを「無視!?」レヴィに発動。LCを置く」

 

LCレヴィ1→2

 

一々レヴィの言動にツッコミを入れていたら対してデッキを回さなくてもメインフェイズだけで二、三分は軽く使ってしまう。十代やヨハン辺りのノリのいい奴等なら乗ってくれるだろうが、目の前の暗黒界の龍神がアホ丸出しの少女の相手をするなど、天地が引っ繰り返らない限りありえないだろう。

 

「更に魔法・罠ゾーンにアリサを置く。アリサの効果発動。一ターンに一度フィールドのモンスターを選択し、選択したモンスターが相手を破壊したら選択したモンスターにLCを置く。選択するのは当然レヴィ。バトル。レヴィでトランス・デーモンを攻撃」

「光翼斬!」

 

A1900 VS A1800

 

レヴィの出番は度々あるがディアーチェの効果で魔法がパワーアップしていたので光翼斬を見るのはずいぶん久しぶりな気がする。鎌の刀身となっていた三日月の形をした魔力刃は、レヴィがバルファニクスを横に振ると同時に回転しながら発射され、グルグルと回りながらトランス・デーモンの小さい体を上下に真っ二つにした。

 

「レヴィの効果発動。レヴィのLCを二つ取り除いて、デッキからアインハルトとシャンテを特殊召喚する」

 

LCレヴィ2→0

A1300・D1000

A1400・D500

 

古代ベルカの魔法陣とミッドチルダ式の魔法陣がモンスターゾーンに広がると共に、その二つの魔法陣の中心にアインハルトとシャンテが現れた。除去手段が豊富な暗黒界相手には、破壊効果でもリクルート効果を発動できるシャンテは非常に使いやすいモンスターだ。

 

「そしてアリサの効果でレヴィにLCを置く」

 

LCレヴィ0→1

 

「だが破壊されたトランス・デーモンの効果も発動する。除外された悪魔族を手札に加える。スノウを手札に」

「レヴィの効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できない。フィールドにアインハルトがいる時、ティオは特殊召喚できる。そして特殊召喚に成功した時、自身以外のフィールドのLSのレベル×100ポイント俺のライフを回復する」

「ティオ、お願いします」

「にゃ~ん」

 

戦場に似つかわしくない、欠伸と一緒に出たのんびりとした鳴き声を上げると、俺の体がアインハルトの魔力光の色に包まれてライフを回復される。

 

遊斗LP4000→5000

 

「場のアインハルトとティオを融合。来い、覇王アインハルト」

 

A2700・D2200

 

「その小娘が覇王だと? 笑わせる」

「笑うなら勝ってからにするんだな。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズカートリッジロードを手札に加える。更にアインハルトの効果が発動される。このカードを融合デッキに戻し、融合デッキの聖王か冥王を融合召喚扱いとして特殊召喚する。聖王ヴィヴィオを特殊召喚」

 

ヴィヴィオAD?→AD800

 

「ヴィヴィオさんは墓地のLSの数×400攻守が上がる。そして特殊召喚成功時、デッキの聖王の鎧を手札に加え、このカードに装備する事ができる」

 

場 暗黒界の門

遊斗   モンスター3 伏せ3 手札2 LP5000

グラファ モンスター2 伏せ1 手札3 LP3900

 

「俺のターン! 暗黒界の門の効果発動。墓地のトランス・デーモンを除外してスノウを捨てる。その後デッキから一枚ドローし、捨てられたスノウの効果でデッキから俺の分身、暗黒界の龍神-グラファを手札に加える」

 

さ~て、早くもグラファを手札に加えられたか。あのカードは非常に、というかかなり厄介だから出来れば除外したいものだ。グラファはニヤリと笑いまずはリバースカードをオープンさせた。

 

「罠発動、暗黒の謀略を発動。お互いのプレイヤーは二枚手札を捨てて二枚ドローする。このカードの発動に相手は手札一枚を捨てる事で無効にできる」

「もちろん手札を捨てる。LSを捨てた事でヴィヴィオさんの攻撃力が400上がる」

 

ヴィヴィオAD800→AD1200

 

「暗黒界の雷を発動。フィールド上のセットされたカードを一枚選択して破壊する。貴様の伏せカードを選択」

「チェーンして罠発動、Strikersの収集。墓地の三枚のLSをデッキに戻して二枚ドローする。暗黒界の雷は破壊した後に手札一枚を捨てられるが、不発になると捨てる効果を発動できない」

 

ヴィヴィオAD1200→AD0

 

「まだだ。二枚目の暗黒界の取引を発動。互いのプレイヤーは一枚ドローして一枚捨てる」

「結局か・・・・。何も無い」

 

大人しくデッキから一枚ドローした後、必要無いと判断したカードを墓地へ捨てる。暗黒界の取引は相手にも手札交換をさせてしまい、一枚のカードを消費して手札交換を行うカードなのでディスアドバンテージのカードなのだが、暗黒界とついてあるだけあって暗黒界とのシナジーは抜群だ。

 

「そして捨てたグラファの効果発動。相手フィールド上のカード一枚を破壊する。戦闘では破壊できない聖王ヴィヴィオを破壊だ!」

 

グラファが手に装着している禍々しいデュエルディスクから、暗黒の名に相応しい不気味な瘴気を纏った光線がヴィヴィオさんに向けて吐き出され、ヴィヴィオさんの体を貫通して破壊する。やはり暗黒界のアドバンテージの取り方は凄まじい。これだけやって手札三枚ってどういう事なの?

 

「そして暗黒界の狂王ブロンを召喚し、墓地のグラファの効果を発動する。フィールドの暗黒界を手札に戻す事で墓地のこのカードを特殊召喚できる。ブロンを手札に戻し、グラファを特殊召喚!」

 

グラファA2700・D1800→A3000・D2100

 

このカードは本当にインチキと思いたくなる程の性能を持っている。フィールドの暗黒界を墓地へ送って特殊召喚するだけでも下級モンスターからポンと最上級モンスターが出るのに、特殊召喚するコストは手札に戻す効果と来たものだ。しかも手札から効果を発動する暗黒界だ。おまけに手札から捨てられたら先程の様に破壊効果を持っており、この一枚でアドバンテージを大量に稼げる。

 

「バトル。暗黒界の武神ゴルドでレヴィを攻撃!」

「ラッキー。ダメージステップに手札のスバルの効果発動。レヴィの攻撃力を1000上げる」

 

レヴィA1900→A2900 VS A2600

 

「ハッハッハ! 馬鹿め! 光翼斬!」

 

絶対にレヴィにだけは言われたくないワード第一位を、舐めた口調で言われたゴルドは頭をカッとしたのか、巨大な斧を頭上で振り回しながらレヴィに突撃する。しかし遠距離攻撃を持つレヴィは慌てずにバルファニクスに魔力を込めて、今度は縦にバルファニクスを振って魔力刃を飛ばす。冷静さを失ったゴルドは突然飛んできた光翼斬に対応できずに真っ二つになった。

 

「ぐあっ!」

 

グラファLP3900→3600

 

「更にレヴィの効果発動。LCを取り除き、デッキからクロノを特殊召喚する。そしてクロノの特殊召喚成功時、デッキからバインドと名のついたカードを手札に加える。手札に加えるのはストラグルバインド」

 

LCレヴィ1→0

A1700・D1500

 

「だがグラファの方が攻撃力は上だ! グラファでレヴィを攻撃! 魔神龍激波!」

 

A3000 VS A2900

 

モンスターのグラファは黒い巨大な翼を羽ばたかせて強風を起こし、その風に乗せて黒い刃をレヴィに向けて飛ばした。回避能力の高いレヴィはひょいひょいと回避していたが、風に乗って飛ばされてきた巨大な石を頭にぶつけ、アニメの様に頭の上にひよこを羽ばたかせながら墓地へ送られた。

もはやレヴィの馬鹿はソリッドビジョンも公認しているのか、レヴィの倒され方にはどうも閉まりが無い。

 

遊斗LP5000→4900

 

「シルバでクロノを攻撃! 暗黒剣!」

 

A2600 VS D1500

 

どうもデュエルをプレイしているグラファ本人はネーミングセンスが無いのか、単調な攻撃名が続いている。そんなどうでもいい事を考えていると、シルバの剣に切り裂かれたクロノが目に入った。実際の戦いなら、器用で経験豊富なクロノならシルバ程度倒せるだろうが、これはデュエルだからな~。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 暗黒界の門

遊斗   モンスター1 伏せ1 手札3 LP4900

グラファ モンスター2 伏せ1 手札2 LP2600

 

「俺のターン。速攻魔法次元震を発動。互いのプレイヤーはお互いのフィールドにいるモンスター一体を選択して破壊する。俺はグラファを選択」

「貴様のフィールドにはシャンテしかいない」

「選択したカードは破壊だ。そして俺はデッキから次元断層とレベル4以下のLSを手札に加え、お前はデッキから一枚ドローする。俺が手札に加えるのはすずかだ」

 

次元震のカードの絵から発射された緑色の光線によりシャンテとグラファはバリーンと音を立てて破壊されたが、グラファと違い破壊される時のシャンテはニヤリと笑みを浮かべていた。

 

「シャンテの効果発動。このカードが破壊され墓地へ送られた時、このカードをデッキに戻す。そしてこの効果で墓地に存在するこのカードがデッキに戻った場合、自分以外のLSを特殊召喚できる。フェイトを特殊召喚」

 

A1800・D500

 

シャンテの強い所は効果破壊でも良い所と、リクルート対象に制限が無い所、タイミングを逃さない所と、まあかなり優秀で使いやすいリクルーターである。リクルートの対象がカテゴリに限定されているカードは何かと優秀な効果を持っているリクルーターだが、シャンテ程使いやすいリクルーターもそうそういないだろう。

唯一使いにくい所と言えば、デッキに戻る為墓地肥やしが出来ない所だろうか。

 

「頑張ろうね遊斗」

「ああ。カートリッジロードをフェイトに発動。そして魔法・罠ゾーンにすずかを置く」

 

LCフェイト0→1

 

「アリサの効果をフェイトに対して発動。そしてフィールドにすずかがいる時、選択したモンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、LCを乗せる効果に加えデッキから一枚ドローする効果を得る。そしてフェイトの効果発動。LCを取り除いてシルバの攻守を変更」

 

LCフェイト1→0

 

シルバもゴルドも、手札から捨てられただけで特殊召喚できる優秀なモンスターだけあり、上級モンスターにしてはステータスがさほど高くは無い。暗黒界の門で攻守が300上がっているとはいえ、元々の守備力は1400。フェイトの攻撃圏内だ。

 

「バトル。フェイトでシルバを攻撃」

「ハーケンセイバー!」

 

A1800 VS D1700

 

レヴィの光翼斬と同じ様に三日月の魔力刃を飛ばし相手を切断する魔力刃は、アリサの効果も加わって電気だけでなく炎の力も纏っている。それが攻撃力に繋がっている訳ではないが、より演出がカッコ良くなり見栄えもいい。シルバの剣諸とも体を切断し、デュエルモンスターズお決まりの爆発でグロい演出を防ぐ。

 

「アリサの効果でデッキから一枚ドロー」

 

LCフェイト0→1

 

「フィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動。このカードの発動により暗黒界の門は破壊される」

「チッ!」

 

紫の瘴気が漂う不気味な空間と、グラファの背中にあった巨大な門はガラスの欠片の様にバリンと割れて破壊され、都だが青空の気持ちい近未来の魔法都市になって見栄えが良くなる。最もグラファからしたら太陽の光が降り注ぐミッドチルダよりも、薄暗い暗黒界の門の方が居心地がいいだろう。

 

「ミッドチルダの効果発動。フェイトのLCをミッドチルダに移動する」

 

LCミッドチルダ0→1

 

「カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時にカートリッジロードを手札に加える」

「エンドフェイズ時に速攻魔法、暗黒界の結界通路を発動。墓地の暗黒界の軍神ゴルドを特殊召喚!」

 

A2300・D1400

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター1 伏せ4 手札2 LP4900

グラファ モンスター1 伏せ0 手札3 LP2600

 

「俺のターン! 手札抹殺を発動。互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その枚数分ドローする」

 

ッツ、手札抹殺を発動されてしまったか。暗黒界は手札を捨てる事で効果を発動する。手札を全て捨てる手札抹殺やメタモルポットと言ったカードとは相性が良過ぎて、専用のサポートカードと思うレベルの力を発揮する。

 

「二枚捨て二枚ドローする」

「俺は三枚だ。そして捨てた暗黒界の導師セルリの効果が発動する。捨てられたセルリを相手フィールド上に特殊召喚する」

 

A100・D300

 

「面倒なカードを・・・・」

「そしてセルリの効果。自身の効果で特殊召喚に成功した時、相手の手札、つまり俺の手札を一枚捨てる。俺が捨てるのは暗黒界の魔神レイン」

 

相手のフィールドにモンスターを召喚したあげく自分の手札を一枚捨てないといけないデメリット置きモンスターに見えるが、暗黒界の多くが相手の効果によって捨てられる事により大量のアドバンテージを稼げる効果を発動できる。いや、それよりも気になるのが・・・・。

 

「暗黒界の魔神レイン? 初めて聞くカードだ」

「クックック、そうだろう。これは最近狂王ブロンが作り上げた新たな暗黒界のカード。レインが相手の効果によって墓地へ送られた場合、墓地のこのカードを特殊召喚する」

 

A2500・D1800

 

槍の先が二つに絵だ別れしている槍、双槍と言うのだろうか? すくなくとも人間が持てる大きさでは無い槍を持ち、悪魔らしく羊の角の様に曲がった角をしている暗黒界モンスター。暗黒界は強いが、見た目はさほどインパクトがある訳ではないので簡潔な説明になってしまう。

始めて見る暗黒界モンスターがどんな効果を持っているのか・・・・。

 

「この効果で特殊召喚に成功した時、相手のモンスターか魔法・罠のどちらか全てを破壊できる。俺が選択するのは魔法・罠だ!」

「ほう、だがさせない。速攻魔法ロングアーチサポートを発動。LSがいる時に発動可能。相手フィールド上のカードの効果を無効にする。レインの効果は無効だ」

「チッ! 暗黒界の斥候スカーを召喚。そしてグラファの効果でスカーを手札に戻して特殊召喚する!」

 

A2700・D1800

 

前のターンから出てくるのは分かっていたとは言え、こうノーコストでポンポン出てくるとため息を吐きたくなる。というか既にため息を吐いており、もう一枚のセットカードが破壊されない事を神に願いながらグラファの次の行動に警戒する。

 

「バトル! ゴルドでセルリを攻撃!」

「カウンター罠、クラールゲホイルを発動。相手モンスターの攻撃宣言時に自分フィールド上のモンスター一体を選択し発動。相手モンスターの攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了。その後選択したモンスターをデッキに戻してデッキから夜天と名のつくモンスター一体を、LCを一つ乗せた状態で特殊召喚する。セルリを戻してシグナムさんを特殊召喚する」

 

ゴルドの前にシャマ姉の魔力光で作られたキューブ状の物体が現れて進行を止める。害が無いと判断したゴルドが再び突撃しようとしたその時、キューブが眩い光と耳がキーンとする高い音を出して爆発した。プレイヤーであるグラファを含む暗黒界全員は目と耳を塞ぎ、その間セルリを叩き戻してシグナムさんがデッキから現れた。

 

LCシグナム1

A1800・D1400

 

「サーチしたストラグルバインドでは無かったのか・・・・。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 ミッドチルダ

遊斗   モンスター2 伏せ2 手札2 LP4900

グラファ モンスター3 伏せ2 手札3 LP2600

 

「俺のターン。すずかの効果発動。フィールドのLCを移動させる。シグナムさんのLCを自身に移動」

 

LCシグナム1→0 すずか0→1

 

「ツヴァイを通常召喚。効果でミッドチルダにLCを置く」

 

LCミッドチルダ1→2

AD500

 

「場のシグナムさんとツヴァイを融合。来い、祝福の将シグナム。融合召喚成功時に自身にLCを置く」

 

LCシグナム

A2700・D2200

 

このシグナムさんを王様はやてさんの効果以外で呼ぶのはずいぶんと久々な気がする。十分に強いし良いフィニッシャーにもなるんだけど、融合素材の二人が揃わない時が多かったから中々呼べなかった。ユニゾンしたシグナムさんの背中は、まるで父親の背中の様に大きくて安心感がある。実際俺よりも細くて滑らかであろう背中だが、こう強者のオーラと言うか、武士のオーラと言うか、兎に角安心できるオーラを放っている。

 

「融合素材として墓地へ送られたツヴァイの効果発動。フィールドのLCを一つ取り除いてこのカードを手札に加える。ミッドチルダのLCを取り除いて手札に」

 

LCミッドチルダ2→1

 

「デッキのアルフの効果発動し、すずかのLCを取り除いて特殊召喚する。場のフェイトとアルフを融合。来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」

 

LCすずか1→0

A2800・D500

 

フェイトとアルフがグニャグニャになって融合の渦に呑み込まれ、そこから現れたフェイトさんはチラリと俺の方を見ると言った。

 

「遊斗、さっきからテンション低くない?」

「そうですか? まあさほど心躍るデュエルでは無いのは確かですけど」

「ッツ! 何だと!? 俺が弱いとでも言いたいのか!?」

「そうかもな。もう少しライフを削ってもらえると楽しめるが。シグナムさんの効果発動。自身のLCを取り除いて、相手フィールド上に存在するモンスターの攻守を0にする。グラファの攻守を0にする」

「何だと!?」

「「捉えよ、凍てつく足枷! フリーレンフェッセルン!」」

 

シグナムさんの手の平から渦の様に回転する氷が現れ、その渦は徐々に大きくなってサイクロンと同じ大きさの竜巻となり、シグナムさんが手を横に振ると同時に氷の竜巻は飛ばされてグラファの巨体を数秒間竜巻の中に閉じ込める。竜巻が晴れるとそこにあったのはカチンコチンに凍って氷象となった暗黒界の龍神-グラファだった。

 

LCシグナム1→0

グラファA2700・D2200→AD0

 

しかしシグナムさんの効果も十二分に強い。発動コストであるカウンターを融合召喚時に乗せる事が出来るし、自身の攻撃力は2700と初期ライフの半分を上回っている。

プレイヤーであるグラファは大声を出したが、さほど慌てた様子を見せないので、グラファが伏せたあの二枚のカードにより戦闘ダメージを回避してくるだろう。それが分かった所で、伏せ除去がある訳ではないので突っ込んでいいだろう。

 

「アリサの効果を、シグナムさんを対象に発動。バトル。シグナムさんでグラファを攻撃」

「「紫電一閃!」」

 

A2700 VS A0

 

シグナムさんはひとっ跳びでグラファの頭上まで跳び上がり、両手で持った赤い炎を纏う剣、レヴァンティンを振り下ろして氷象となった龍神を豆腐の様に切る。綺麗に真っ二つになったグラファの体はゴトンと地面に落ちて爆発し、その爆発に乗せてシグナムさんが左手から氷の魔力弾をグラファ本人に放つ。

 

「罠発動、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にしてデッキから一枚ドロー!」

「やはり止めてきたか。アリサの効果でシグナムさんにLCを置いてデッキから一枚ドロー」

 

LCシグナム0→1

 

「フェイトさんでレインを攻撃。フェイトさんは自分の目の前のモンスターゾーンにいるカードと戦闘を行う時、700攻撃力を上げる」

 

フェイトA2800→A3500 VS A2500

 

「トライデントスマッシャー!」

 

自分の前に広げたミッドチルダ式の魔法陣の中央に向け、バルディッシュを持った手の反対、つまり左手を前に伸ばすと、フェイトさんの手の平から黄色の砲撃が飛びだした。レインは跳ね返せると思ったのか、右手の双槍の間から小さくジグザグに動く黒いエネルギーを発射して迎え撃ったが、結果は一目瞭然。魔神と名乗るには低い攻撃力を持つレインの体は、四分の三を黄色の砲撃によって貫通され、プレイヤーであるグラファの体をトライデントスマッシャーが襲う。

 

グラファLP2600→1600

 

「墓地の次元断層をゲームから除外して虚数空間を発動。互いのプレイヤーはスタンバイフェイズ時に相手フィールド上のカード一体を選択してゲームから除外する」

 

太陽が降り注ぐ近未来都市に、突然血の様に濃い赤く白い粒粒が混ざった空間があちこちに現れ、たった一枚のカードで平和だった近未来都市は不気味な都市へと変化した。

虚数空間は強いと言えば強いが、最初に効果を発動するのが相手のスタンバイフェイズ時だから使いにくい所がある。

 

「ミッドチルダの効果発動。シグナムさんのLCをすずかに移動」

 

LCシグナム1→0 すずか0→1

 

「そしてすずかの効果発動。フィールドにアリサが存在する時、自身のLCを一つ取り除き相手フィールド上のモンスターを選択して発動する。選択したモンスターは次の相手のエンドフェイズ時まで表示形式及び攻撃宣言する事はできない」

 

LCすずか1→0

 

グラファの効果でゴルドを戻されたらすずかの効果も消えてしまうが、その場合手札のスカーでは無くゴルドを戻さないといけないので、相手はゴルドを戻してグラファを特殊召喚するか、スカーを召喚してグラファを戻すかの二択の内どちらかを選択しなければならない。前者の場合上級モンスターが一体減り、後者の場合上級モンスターが並ぶが片方は表示形式と攻撃宣言ができない。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター2 伏せ5 手札1 LP4900

グラファ モンスター1 伏せ1 手札4 LP1600

 

「俺のターン!」

「スタンバイ。虚数空間の効果でお前はフィールドの俺のフィールドのモンスター一体を選択する」

「邪魔な黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウンをゲームから除外する」

「勿論対策はしてる。チェーンして罠発動Force-evolutionを発動。レベル7以上のLSを生贄に発動し、生贄にしたモンスターの名前が含まれているForceを特殊召喚する。フェイトさんを生贄に、融合デッキからLS-CW-Force01Xフェイト・テスタロッサ・ハラオウン-Riot Blade & ZamberⅡを特殊召喚」

 

A3300・D0

 

一昨日の大臣達とのデュエルと同じ様に、フェイトさんはForce-evolutionのカードから浮かび上がって来た二刀一対となっている連結剣を右手で取ると、素早く自分の足元に現れた小さい虚数空間から飛び出す。先程までフェイトさんがいた場所は、広がっていく虚数空間に支配されており、気付くのが遅かったらフェイトさんも呑み込まれていただろう。

 

「元から敵のカードなどあてにしていない。闇の誘惑を発動。デッキから二枚ドローし、手札にある二枚目のグラファをゲームから除外する」

「除外するのはスカーじゃない・・・・。となるとセットカードか」

「その通りだ。永続罠、闇次元の解放を発動。除外されたグラファを特殊召喚する!」

 

A2700・D1400

 

「墓地のグラファの効果を発動。フィールドのゴルドを手札に戻して特殊召喚! 更にトランス・デーモンを守備表示で召喚して効果発動。手札のゴルドを墓地へ送り自身の攻撃力をアップ。ゴルドを特殊召喚!」

 

トランスA1500・D500→A2000

A2300・D1400

 

「ハァ・・・・。グラファの効果考えた奴誰だよ」

「更に装備魔法巨大化をグラファに装備。攻撃力を倍にする」

 

グラファA2700→A5400

 

暗黒界に装備魔法・・・・。ドラゴン族や天使族等に比べたら火力不足かもしれないが、それより手札を捨てるカードを入れた方が強い気がする。まあ巨大化を発動されて少なからずピンチになっている俺が言える台詞ではないが。

 

「バトルだ! 巨大化を装備したグラファでフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃!」

「罠発動、ポジションチェンジ。相手の攻撃宣言時及び自分フィールド上のモンスターを対象にする効果が発動した時に発動可能。その対象を自分フィールド上の別のモンスターに移す。フェイトさんへの攻撃対象をシグナムさんに変更する」

「すいませんシグナム」

「構わん。後は任せたぞ」

 

A5400 VS A2700

 

巨大化より大きさが二倍となったグラファは、体と同じく二倍になった翼を羽ばたかせ、風に乗せて黒い暗黒の刃をシグナムさんに飛ばす。フェイトさんへ飛んでくる黒い刃をレヴァンティンで斬り裂きながら、その身で黒い刃を受けて甲冑はボロボロになって満身創痍だ。防ぎきれなかった黒い刃が俺に向かって飛んで来る。上半身だけを動かして黒い刃を避けて、回避しきれなかった刃が皮膚を斬り裂いて血がポタポタと流れていく。

 

遊斗LP4900→2200

 

「ふ、ふははっ」

「何がおかしい?」

「いや、中々やるじゃんって思ってな。やっぱデュエルはこうじゃないと面白くない!」

「俺の分身が与えた2700のダメージを受けてそのダメージとは、お前本当に人間か?」

「残念だが一年前から人間止めててな。おかげでお前の2700のダメージもかすり傷だ。ポジションチェンジの効果発動。このカードを発動したターンに対象を変更したモンスターが破壊された時、融合デッキの好きなカードを墓地に送る事ができる。俺が墓地に送るのは烈火の剣聖シグナム」

「ふん。お前が何者であろうと俺には関係ない。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター1 伏せ4 手札1 LP2200

グラファ モンスター4 伏せ3 手札2 LP1600

 

「俺のターン! スタンバイフェイズ時に虚数空間の効果発動。除外するのは巨大化を装備したグラファだ」

 

俺が指差したグラファの足元を血の様な赤で塗られた虚数空間が占領し始め、その上にいたグラファは虚数空間の掟の通りに、赤い空間に引きずり込まれた。

 

「アリサの効果をフェイトさんに発動する。バトル! フェイトさんでゴルドを攻撃!」

 

A3300 VS A2300

 

「これ以上ドローはさせん! 罠発動、威嚇する咆哮! このターンのバトルフェイズを終了させる」

 

威嚇する咆哮のカードから浮かび上がった暗黒のマンティコアの顔が、口から衝撃波の様に目で確認できる程の咆哮をフェイトさんに上げる。その程度の咆哮で臆するフェイトさんではないが、ルールはルールだ。バトルフェイズは終了される。ドロー効果を使えなかったのは辛いが、アリサもすずかも今まで十二分にアドバンテージを稼いでくれた。十分に働いてくれたから誰かとチェンジしよう。

 

「Forceフェイトさんの効果発動。一ターンに一度自分フィールド上のLCを一つ取り除いて魔法・罠ゾーンにいるLSを選択して発動。選択したモンスターをデッキに戻し、戻したモンスターと同じレベルのLSを手札に加える。ミッドチルダのLCを取り除き、アリサをデッキに戻して同レベルのルーテシアを手札に加える」

 

LCミッドチルダ1→0

 

「ルーテシアの効果発動。このターンの通常召喚権を放棄する代わりに、戦闘で破壊されたLSを特殊召喚する。特殊召喚するのはクロノ」

 

A1700・D1500

 

「特殊召喚したクロノの効果発動。デッキから設置型バインドを手札に加える。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗   モンスター2 伏せ5 手札2 LP2200

グラファ モンスター3 伏せ2 手札2 LP1600

 

「俺のターン! 貴様の虚数空間の効果でフェイト・テスタロッサ・ハラオウンをゲームから除外する!」

「フェイトさんの効果発動。相手のターン墓地のLSをゲームから除外し、次の自分のスタンバイフェイズ時までゲームから除外する」

 

次のターンアルハザードを手札に加えられるので虚数空間で除外されてもさほど問題は無いが、万が一虚数空間やアルハザードが破壊されたら元も子もない。虚数空間のデメリットをカバーしているつもりだが、やはり自分のカードも除外されてしまうのは辛い。

 

「これで貴様のフィールドは下級モンスター一体だけ。まあ念には念をだ。罠発動、暗黒よりの軍勢。墓地の暗黒界モンスターを二体手札に加える。手札に加えるのはスノウとシルバ。フィールド魔法暗黒界の門を発動!」

 

ミッドチルダの街並みは暗黒界の門が上書きされた時と同じ様に、ガラスの様に砕け散って、再び暗黒界の門がグラファの背中から生えてきた。しかし先程と違うのは虚数空間で、このフィールドのメインとなる暗黒界の門にまるで生き物の様に、赤い空間が張り付いている。

 

「暗黒界の門の効果発動」

 

ゴルドA2300・D1400→A2600・D1700

グラファA2700・D1800→A3000・D2100

トランスA1500・D500→A1800・D800

 

「墓地のブロンを除外して手札のスノウを捨て一枚ドロー。その効果でデッキから暗黒界の取引を手札に加える。暗黒界の取引を発動。何も無いなら一枚ドローして捨ててもらう。俺が捨てたのは暗黒界の刺客カーキ。その下級モンスターも破壊だ!」

 

クロノまで破壊されてしまったか。この場面でクロノを破壊したと言う事は伏せ除去は無いと見ていいだろう。

 

「更にトランス・デーモンの効果発動。手札のシルバを捨てて攻撃力を500アップ。そしてシルバを特殊召喚」

 

トランスA1800→A2300

シルバA2300・D1400→A2600

 

グラファに続いてゴルドにシルバ。暗黒界ではないが暗黒界と相性抜群のトランス・デーモンが並んだか。念には念の為か、トランス・デーモンだけは守備表示だが、残りの三体は攻撃表示になっている。

 

「バトル! グラファでダイレクトアタック!」

「もし今後デュエルをする機会があれば、もう少し伏せ除去を豊富にするんだな。罠発動、ディフェンス・スクラム。相手モンスターの攻撃宣言時に発動可能。自分フィールド上に武装隊トークンを可能な限り特殊召喚する」

 

AD500

 

レイジングハートのカノンモードを地味にして個性を無くした簡易デバイスを持った管理局職員達が一斉にシールド魔法を発動した状態で俺のフィールドに現れる。バリアジャケットも皆同じで個性が無く、髪型も顔も整ってはいるが全体的に特徴が無い。

 

「こざかしい! グラファ、ゴルド、シルバでその雑魚共を粉砕する!」

「グラファの攻撃は設置型バインドで防ぐ。効果ですずかにLCを置く」

 

LCすずか0→1

 

A2600 VS D500

A2600 VS D500

 

ゴルドの斧とシルバの剣によって二人の魔導師はシールドもろとも切断され、アッサリと破壊されてしまった。

 

「次のターンで決めてやる。カードを一枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズ時に武装隊トークンは破壊され、破壊された枚数以下のレベルを持つLSを手札に加える。破壊される枚数は三枚だがレベル3以下のLSは墓地にいない」

 

場 暗黒界の門

遊斗   モンスター0 伏せ4 手札2 LP2200

グラファ モンスター4 伏せ2 手札2 LP1600

 

「俺のターン! スタンバイフェイズフェイトさんが戻り、虚数空間の効果発動。まあゴルドを除外だ」

 

A3300・D0

 

「ゴルドを除外だと?」

「どっちにしろ除外したモンスターは戻る。四回効果を使用した虚数空間の効果発動。デッキからフィールド魔法アルハザードを手札に加える。お前ごときにこのフィールド魔法を使うとはな。フィールド魔法アルハザードを発動!」

 

グラファA3000・D2100→A2700・D1800

ゴルド&シルバA2600・D1700→A2300・D1400

トランスA1800・D800→A1500・D500

 

デュエルディスクにパン! と勢いよくカードをセットすると、本日三回目のフィールド魔法の上書きと共に、新たなるフィールドが生まれてくる。そこは心地よい太陽の光が降り注ぎ、広々とした草原には優しく髪や草を撫でてくれる風が靡く、強力な効果とは裏腹にマイナスイオンを発する空間だった。発動されたフィールド魔法が余りに呑気な場所だったので、グラファは弱い効果と呼んだのかニヤリと骨を動かして笑う。

 

「こんなフィールドで何が出来る」

「慌てるな。まずはアルハザードを発動時に虚数空間の効果が発動される。虚数空間で除外したモンスターをフィールドに戻す。グラファとゴルドがお前のフィールドに戻る。お前のモンスターゾーンには四体居るから、どっちか好きな方を選べ」

「勿論グラファをフィールドに戻す」

 

A2700・D1800

 

「そしてアルハザードの効果を発動。一ターンに一度、三つの効果の内一つを選択して発動できる。俺は第三の効果を発動。墓地の魔法・罠カードを一枚選択しデッキに戻す。その後二枚ドローした後に手札を一枚捨てる。クラールゲホイルを選択しデッキから二枚ドローし、一枚捨てる」

 

これで手札は四枚まで増えた。アルハザードの第三の効果を使い続ければ更に手札を増やす事が出来るが、このターンで終わらせる予定だ。

 

「ヴィータさんを通常召喚。そしてすずかのLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚する!」

 

LCすずか1→0

A1900・D1200

AD500

 

「場のヴィータさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ!」

 

A2600・D2500

 

「ヴィータさんの効果発動! 融合召喚時にセットされたカードを二枚まで破壊する! そのリバースカードを破壊だ!」

「クッ!」

 

手の平サイズの鉄球を飛ばして破壊したリバースカードは、みんな大好き聖なるバリア-ミラーフォース。正直この状況で発動されていたら洒落にならなかったのでかなり助かったと言える。

 

「永続魔法LS級戦艦ヴォルフラムを発動!」

 

のどかな草原の上に現れたのは俺の移動手段でもあるヴォルフラム。せっかくの気持ちの良い太陽の光を遮らない様に上手く登場したヴォルフラムは、ワープ装置を使って一枚のカードを俺の前に落してくれた。

 

「墓地のForce-evolutionの効果発動。ヴォルフラムがある時に手札一枚を捨てることにより、このカードを手札に加える事ができる。そしてヴォルフラムがある時Force-evolutionは手札から発動できる!」

「手札から罠を発動だと!?」

「Force-evolutionで生贄にするのは祝福の騎士ヴィータ! ヴィータさんを生贄に、LS-CW-Force03X紅の鉄騎ヴィータ-War Hammerを特殊召喚する!」

 

LS-CW-Force03X紅の鉄騎ヴィータ-War Hammer ☆10/地/魔法使い/A3500・D1000

 

フェイトさんの武器と同じ様にヴィータさんの装備もまたハンマーだけの装備だった。しかしそのハンマーは、彼女のデバイスであるグラーフアイゼンにも負けずとも劣らない派手さでゴツい姿をしており、ヴィータさんの小さな体には似合わない筈なのだが、持ち手のオーラというものなのだろう。ヴィータさんの体には不思議と巨大なハンマーが似合っていた。

杭の様になって先は槍の様に尖っており、そこを支えるのがハンマーの中心部分――ハンマーをTの文字で現すと二つの線がクロスする部分だ。当たり前だが中心部分からは持ち手や、後方に付いているジェットに繋がっており、中心部分の少し下にはオーバーヒートしない様に熱の排出口が付いている。

 

「攻撃力3500!?」

「特殊召喚成功時にヴィータさんにLCを置く」

 

LCヴィータ1

 

「バトル! ヴィータさんでトランス・デーモンを攻撃し、攻撃宣言時にヴィータさんの効果発動。フィールドのLCを取り除き、このバトルの間貫通効果を得る!」

「ば、馬鹿な! 俺が人間の小僧に!」

 

ヴィータLC1→0

A3500 VS D500

 

「行くぞ! プラズマパイル!」

 

ウォーハンマーの後方に付いているプラズマジェット噴射機能を用いる事で、グラーフアイゼンのジェットよりも更に強力な噴射を行う打撃攻撃。その単純で分かりやすくも強大な攻撃は、大型兵器の粉砕もたやすく、頭上で飛んでいるヴォルフラムも破壊しようと思えばできるらしい。

ヴィータさんの大声と共に起動されたプラズマジェットにより、ヴィータさんの姿がうっすらと霞む程のスピードで移動し、ほんの0.数秒の間でトランス・デーモンの元まで飛び、巨大なハンマーをスピードを一切殺さずに細い悪魔へとぶつける。ヴィータさんにとっては紙の様に柔らかい悪魔はちょっとした障害物程度にしかならず、そのままのスピードでプレイヤーであるグラファにハンマーを叩きこんだ。

 

「ぐあああああっ!」

 

グラファLP1600→-1400

 

強大な体でも衝撃を押し殺す事は出来なかったグラファは与えられる痛みへの悲鳴と共に、ドガンドガンドガン! と城に巨大な破壊音が鳴り、破壊音が鳴る度に城が揺れる。飛ばされたグラファは城の壁を何枚も貫通し、外の景色が見える大きな穴を開けた。

 

「さっすがヴィータさん!」

「あたぼうよ。もっとあたしの力を見せてやりたかったが、それはまた今度みたいだな」

 

排出口から蒸気を噴出するウォーハンマーを肩で担いだヴィータさんは、オブライエンが上った階段を眺めながらカードに帰って行った。もう一度グラファのライフが0になったのをデュエルディスクで確認すると、僅かにカーブしている長い階段を掛け足で上って行く。

あのオブライエンの事だから負ける筈はないが、万が一、万が一があるかもしれないので、オブライエンの無事を願って走っていると、日本の城でいう天守閣の様な場所に出た。勿論天守閣の様に綺麗で整った場所では無く、どちらかと言えば見張り台と言った方がいいだろう。そこは少し狭いがデュエル出来るには申し分ないスペースがあり、現在進行形でオブライエンと黒い鎧と死神の様なマントを付けた男がデュエルをしていた。

 

「遊斗!」

「まだ雑魚がいたか・・・・」

「その声は!? う、嘘だろ・・・・」

 

覇王がいる方角から聞こえた声には聞き覚えがあった。いや、聞き覚えがあるなんてものじゃない。トーンが凄く低く冷たいが、生まれて初めて出来た親友の声だった。声だけじゃない。鎧の中から覗くその顔は、一生忘れる事の出来ない大切な親友、遊城十代の顔。

混乱しているのだろう。俺は十代の瞳の色が変わっている事に気付かず、ただ茫然と暗黒の甲冑を着た親友を眺めていた。

 

「何故、十代が・・・・。いや、お前は本当に十代なのかっ?」

「我は覇王だ」

「ッツ! オブライエン! 簡潔でいいから説明しろ!」

「仲間達・・・・万丈目、天上院兄弟、剣山を消されたショックで、本来の十代の人格は中に閉じこもり、代わりに隠されていたもう一つの人格が十代の肉体を支配したんだ」

 

十代の中にあったもう一つの人格ッ!? 残虐卑劣で村や国を襲って自らの力に吸収するのが、もう一人の十代!? 

混乱している俺に見せる様にオブライエンはギュッと握っていた右手を開き、右手で隠れていた綺麗な宝石を露わにした。

 

「これはジムが残してくれた想い、そして力だ!」

「その力とやらも我がE(イービル)-HEROの前では無力、これで終わりだ。バトル。マリシャス・デビルでヴォルカニック・デビルを攻撃。エッジ・ストリーム!」

 

A3500 VS A3000

 

悪魔の様な翼を広げ両手の指と指の間に鋭利な針を持った邪悪なE-HEROは、オブライエンの切り札であるヴォルカニック・デビルに向けて両手に持った針を投げた。禍々しいオーラを纏った針はヴォルカニック・デビルの灼熱の炎を諸ともせずに突き進み、ヴォルカニック・デビルのマグマの体を貫通し、ヴォルカニック・デビルがガクッと手を地面に付けると同時に、爆発して火の子を散らせた。

 

オブライエンLP500→0

 

「オブライエン!? 覇王ッ、貴様ぁぁあ!」

「待て遊斗! 俺は最後の作戦を完了している!」

 

黒い土煙の中からオブライエンの声が聞こえ、次の瞬間オブライエンは覇王に向かって走り出した。

 

「悪足掻きとはな。ライフがゼロになった者の力等無意味だ」

「俺が戦闘ダメージを受けた時、墓地のヴォルカニック・カウンターの効果が発動していた! 俺が戦闘ダメージを受けた時、このカードを除外して受けた戦闘ダメージと同じ数値分のダメージを相手に与える!」

 

覇王のライフは僅か100だ。先程の戦闘でオブライエンは500のダメージを受けたから、この効果を受けたら覇王のライフは0になる。この世界で合い打ちがどんな結末になるかは知らないが、このままオブライエンが持った宝石が覇王に触れた時何かが起きる気がする。

 

「させん。カウンター罠、天罰を発動。手札一枚を捨て、モンスター効果の発動を無効にする」

「なっ!?」

「ずっと伏せていたカード! 覇王は万が一を予想してずっと使わなかったのかッ!?」

 

天罰のカードから発射された白い稲妻がオブライエンの墓地にいるヴォルカニック・カウンターに目掛けて飛ばされ、電子音を上げるデュエルディスクは無情にもコストとして除外されたヴォルカニック・カウンターを吐き出した。これによりオブライエンのライフだけが0になり、先程まで吠えていたオブライエンはピタリと足を止めた。否、足が動かないのだろう。

 

「ッツ、遊斗! このオリハルコンの眼、ジムの、俺達の想いをッ!」

 

体から白い光を放つオブライエンは、右手に持った宝石を俺に投げてきた。茫然としていた俺だが、反射的にパシッと受け取ると、オブライエンは唇を小さく動かして「後は任せたぞ・・・・」と弱弱しい声で言って、最初から誰も居なかったかの様にスッと消えた。

これが・・・・、デュエルで負けた者の末路・・・・。敵を倒した時の達成感からは程遠い感情が俺の中を渦巻いた。大声で泣き喚きたくなる悲しい感情と、覇王に対する怒りの感情。そして、こんな気持ちを沢山味わった十代への同情。

 

「十代・・・・。お前はこんな光景を沢山見てきたのか。万丈目、明日香、剣山、吹雪さんの消えていく姿を・・・・」

「知らんな」

 

告げられたのは冷徹な言葉。仲間のオブライエンを消しても表情一つ変わらない冷徹な心。これが十代のもう一つの人格・・・・いや、十代と思うのは止めよう。王が破滅の光に操られていた様に、十代は覇王に乗っ取られたんだ。奴を倒す事で十代を救う事ができ、オブライエンとジムの悲願を叶える事が出来る。

 

「覇王ッ、デュエルだ! 竜の王として! ジムとオブライエン、そして十代の友としてお前を倒すッ!」

 

喉が千切れそうな程の大声を上げてデュエルディスクを構え、目の前の覇王を睨みつける。すると何が起こったのか、胸に掲げた竜の爪がカタカタと独りでに動いて、この薄暗い不気味な夜を赤・青・茶・緑・黒の光で包み込んだ。冷たい心を持つ覇王も少し驚いたのか、一瞬だけピクリと頬を動かしたのがチラリと見えたが、自分の体の変化の方に気が行ってしまい、その光景はあっと言う間に記憶から消えてしまう。

今までとは比べ物にならない力が体の奥底から溢れ出て、それと同時に眉に掛かる程の前髪が目を隠して鼻に当たる程度に伸び、後ろも肩を隠してしまう程に伸びた。視界を覆う髪の一部が、人間形態のF・G・Dの様に赤・青・金・茶・黒の五つの首の色が螺旋状になっている。何より変化があったのは左手に装着したデュエルディスク。デュエルアカデミア入学時に無料で配布される平凡で白くて丸っこいデュエルディスクだったのが一気に黒に染まり、それぞれのモンスターゾーンが薄い赤・青・茶・緑・黒で染められて、丸っこい形をしていたのが初代のデュエルディスクの様に三角になった形へと変わる。

 

「・・・・力を貸してくれるのか、F・G・D・・・・」

 

色々な事があり過ぎて突然の展開に慣れたのか、それとも無意識の内に力を解放できる事を知っていたのか、自分の変化にはさほど驚かなかった。覇王は無言で手裏剣の形をしていたデュエルディスクを回転させる。デッキや墓地の役割をしている場所を中心に、刃となったモンスターゾーンや伏せカードをセットする場所が回転しているのだ。覇王のデュエルディスクが、いつものデュエルディスクになると同時に俺達は揃えて声を上げた。

 

「「デュエル!」」

 




安定のデュエルマッスル。姿が変化する=デュエルで更なる力が発揮される。この式はデュエリストなら切っても切れない存在。

カードゲームと全く関係ないじゃんww

と思ってる方はまだまだ甘いですぞ……なんて言いましたが、あろうとなかろうと変わらないって言うね。


オブライエンのあのシーンめっちゃ名シーンなんですけど、やっぱり主人公と戦わせたいからこうなってしまいました。これ以上オリジナル展開を考えたく無かったとは言え、やはりあの名シーンを崩すのは辛かったです。
ヴォルカニック・カウンター通用しなかったのは遊斗の存在で十代がより強くなったと思っていただければ。(どっちにしろOCGでは通用しませんが)


というかグラファとのデュエルの存在が最後の流れで流されてしまいましたが、やっぱり暗黒界は強いですね。使われないカードを多数使用しましたが、グラファのデッキにウイルス系が入っていたら遊斗普通に負けていましたし、デュエルの構成も遊斗が有利になる様にしながらやっていたので。
そんな暗黒界でも最近では結果を残せなくなってきたのが現状。流石遊戯王!




LS-CW-Force03X紅の鉄騎ヴィータ-War Hammer ☆10/地/魔法使い/A3500・D1000
このカードは「Force-evolution」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。
攻撃宣言時、自分フィールド上のLCを1つ取り除くことでこのバトルフェイズの間、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地へ送った時、墓地へ送ったモンスターのレベルの数と同じ数だけこのカードにForceカウンターを乗せる。このカードが攻撃を行うダメージステップ、このカードに乗ったForceカウンターを全て取り除き、取り除いた数×100ポイントこのカードの攻撃力をエンドフェイズまでアップさせる。
自分のエンドフェイズ時にこのカードに乗っているLCを1つ取り除く。LCが乗っていないこのカードは融合デッキに戻る。






今日のオリカはこの一枚です。攻撃力3500とかなり高いですが、原作的には正直これでも低すぎるくらい。何しろ戦艦辺りの兵器に作られた武器ですからね~。だから元々の攻撃力を更に上げるか、それとも攻撃力をアップさせる効果を入れるかのどちらかにしたのですが、後者の方がバランスもいいので。
ヴィータらしく当然貫通効果も持っていますが、攻撃力が高いのでLCを消費しないと貫通効果を得られない様になっています。





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第六十二話 (修正)

昨日言った通り、デュエルでのミスがあったので修正しました。
感想でも沢山のご指摘をいただき、どんだけミスがあるんだよと自分で自分を呆れました。しかもフュージョン・ウェポンでの守備力上昇の効果を忘れていたのは、実はジムとのデュエルの時にもあったんですよね。

ミスをご指摘してくれてありがとうございました。以降の前書きと後書きは修正前と同じにしておきます。



更新が遅れて申し訳ありません。
簡単に説明しますと、作者が雨や台風の日などによく体調を壊す体質でして、座ってパソコンピコピコ出来ないくらいノックダウンしております。流石に報告なしで二週間放置はヤバいと思ったので慌てて投稿しましたが、次話の更新も遅れるかもしれません。やっぱり梅雨はしんどい。


まあ作者の超どうでもいい話は置いておき、そろそろ三期も終わります。おそらくこの回入れてもあと三話か、多くても四話か。十代にはまだまだ山場があっても、遊斗のやるべき事が余り無いんですよね。
最初は十代と一緒に三期のラスボスであるヤンデレと戦わせようと思っていたのですが、やっぱり愛のあるデュエルには遊斗は邪魔なので。



「先攻は貰う、ドロー! コロナを召喚!」

 

A500・D1700

 

コロナは召喚されるやすぐに俺の恰好を見てギョッと目を開き、ゴシゴシと目を擦ってから複数回パチパチと瞬きする。本人はその気は無いのだろうが、ゴシゴシと目を擦る姿が猫の様で素直に可愛らしいと思った。

 

「ゆ、遊斗さん? 何だか凄い恰好ですね・・・・」

「F・G・Dが力を貸してくれたみたいだ。お前の力も借りるぞ。コロナの効果発動。一ターンに一度手札を一枚墓地へ送り、デッキからゴライアスを特殊召喚する!」

創成起動(クリエイション)!」

 

AD2300

 

地面が盛り上がり、足場の土や石を体にしたゴーレムがフィールドに現れる。攻撃対象を変更できる効果を持っている他、フィールドにコロナがいれば500のライフを払う事で蘇生も可能。二体とも守備表示なのでライフを500以下に削られる事は無いだろうし、安定した初手だ。

 

「・・・・」

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP4000

 

「我のターン。アームズ・ホールを発動。デッキトップを墓地へ送り、フュージョン・ウェポンを手札に加える。そしてダーク・コーリングを発動」

「ダーク・コーリング・・・・?」

 

初めて聞くカード名に首を傾げていると、覇王の前に闇がグニャグニャした様な、例えるならファントム・オブ・カオスが大きくなった渦が現れた。その闇の渦の隣に十代がよく使っているE・HERO二体が現れ、まるで融合のアニメーションの如く体をグニャグニャと曲げながら渦に入って行く。

 

「墓地のフェザーマンと手札のバーストレディを融合。現れろ、インフェルノ・ウィング」

 

A2100・D1200

 

十代のフェイバリットモンスターと同じ融合素材から出された融合モンスターは、ダーク・コーリングにより不気味なHEROへと変わった。フレイム・ウィングマンとは違い、バーストレディをメインにしているのか女性の体つきで、背中には黒くなったフェザーマンの翼が付いている。両手にもフェザーマンの面影が残っており、熊の様になっている手には、刃の如く鋭い爪が生えていた。

 

「フュージョン・ウェポンをインフェルノ・ウィングに装備」

 

インフェルノA2100・D1200→A3600・D2700

 

「初っ端から攻撃力3600。流石だな」

「バトルだ。インフェルノ・ウィングでコロナを攻撃。インフェルノ・ブラスト!」

「ゴライアスの効果発動。攻撃対象をゴライアスに変更する」

 

A3600 VS D2300

 

ロナの前に現れたゴライアスに攻撃対象を変更したインフェルノ・ウィングは、両手から一つの炎の球を作り出してゴライアスに発射。禍々しい灼熱の炎を耐えきれなかったゴライアスは粉々になって破壊され、その炎は消える事無く俺に飛んで来て、足元に着弾すると同時に俺の体を炎で呑み込む。

 

遊斗LP4000→2700

 

「貫通効果持ちかよ。罠発動、Asの収集。デッキからレベル4以下のLSを特殊召喚する。カリム姉を特殊召喚」

 

AD500

 

「インフェルノ・ウィングの効果発動。破壊したモンスターの攻撃力か守備力の高い方の数値分のダメージを相手に与える。ヘルバック・ファイア!」

 

インフェルノ・ウィングは口元をニヤリと不気味に上げながら、禍々しい黒で染められた炎を発射して来た。ダメージを受けるにしても好き好んで炎を浴びる趣味は無いので、飛んでくる黒い炎を右手で薙ぎ払って外へと飛ばす。空を響かせる爆発音と、不気味な黒い火の粉を撒き散らした火の玉を見聞きして覇王はポツリと呟く。

 

遊斗LP2700→400

 

「我の攻撃を跳ね返すとは。貴様ただ者では無いな」

「遊城十代の友達だ」

「・・・・だが早くもお前のライフは風前の灯火。永続魔法強欲なカケラを二枚発動し、ターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札3 LP400

覇王 モンスター1 伏せ3 手札1 LP4000

 

「相変わらず手札消費が激しいのは変わらないな。ネオスペーシアンを使ってないならなお息切れしそうだが、覇王様にはそんなもの関係ないのか? 俺のターン! まずはカリム姉の効果発動。カードの種類を選択し、デッキトップのカードが宣言した種類だったら手札に加える。モンスターを選択。デッキトップはイクス。よって手札に加える」

 

さてと・・・・。貫通効果に攻守の高い方のダメージを与えるフレイム・ウィングマン効果か。戦闘で破壊されたらインフェルノ・ウィングの攻撃力分のダメージを受けてしまうって厄介だな。覇王相手にライフ400というのも心もとないし。

 

「イクスを召喚して効果発動。デッキ・手札・墓地からマリアージュを特殊召喚する」

 

AD500

A1700・D1200

 

「場のイクス、マリアージュ、コロナを生贄にユーリを特殊召喚!」

 

AD4000

 

ユーリを呼ぶのはジムとのデュエル以来だからもう随分と召喚していなかった。久しぶりの出番に少し喜んでいてユーリだったが、覇王の黄金の瞳を見た途端サササッとカリム姉の背中に隠れてブルブル震え、そのカリム姉もユーリ程ではないが体が震えていた。攻撃力守備力4000という神や三幻魔と同等のステータスを持っていながらの行動だ。ただそれだけ覇王の放つ覇気と言うのは強大で、強大な覇気の余りオーラが実体化し、黒い風が向かい風となって俺達の髪を揺らしている。

 

「早くも攻守4000か」

「紫天の書が無いユーリは攻撃できない。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP400

覇王 モンスター1 伏せ3 手札1 LP4000

 

「我のターン。ドローフェイズ時に通常のドローを行った時、二枚の強欲なカケラに強欲カウンターが乗る」

 

強欲なカケラ0→1

 

「攻撃が通るならそれまでだ。バトル、インフェルノ・ウィングでカリムを攻撃」

「勿論通らない。罠発動、ソニックムーブ。エンドフェイズ時までカリム姉を除外する」

 

カリム姉が飛ばされて一人ぼっちになったユーリは、今度は俺の背中まで飛んできて覇王から隠れる。これだと守備モンスターがいない様に見えてしまうが、覇王は攻撃を中断しバトルフェイズを終了させた。

 

「ターンエンド」

「エンドフェイズ時にカリム姉が帰って来る」

 

遊斗 モンスター2 伏せ0 手札3 LP400

覇王 モンスター1 伏せ3 手札2 LP4000

 

「俺のターン! カリム姉の効果で魔法を選択。デッキトップはロングアーチサポートだ」

 

デッキトップのカードが感覚的にだが分かる様になった今、入れないけど、デーモンの宣告とかも相性いいだろうな。好き嫌いじゃなくて、プレイヤーそのものと相性のいいカードって言い方も珍しいけど。ライフ僅か400にも関わらず、呑気な事を考えながらバルディッシュを手札に加えると、ユーリが俺の顔を見ながら震える唇を動かした。

 

「は、早くディアーチェを・・・・」

「俺もディアーチェを呼びたいけど、難しいから我慢してくれ。フェイトを召喚し、効果で自身にLCを置く」

 

LCフェイト1

A1800・D500

 

「わっ。凄い恰好だね遊斗。でも似合ってる、カッコ良いよ」

「ん、ありがとう。フェイトの効果発動! LCを取り除いてインフェルノ・ウィングの攻守を変更する」

 

LCフェイト1→0

 

「魔法・罠ゾーンにキャロを置く。キャロがフィールドにいる限り、LSの攻守が300上がる」

 

フェイトA1800・D500→A2100→800

カリムAD500→AD800

ユーリAD4000→AD4300

「バトル! フェイトでインフェルノ・ウィングを攻撃! 攻撃宣言時にロングアーチサポートを発動! フュージョン・ウェポンの効果を無効にする!」

「ハーケンセイバー!」

 

インフェルノD2700→D1200 VS A1800

鎌の刀身となっていた黄色に光る三日月の魔力刃は、フェイトがバルディッシュを振ると同時に発射され、黒い悪魔の翼を盾にして座っているインフェルノ・ウィングを羽ごと横に真っ二つにした。インフェルノ・ウィングは金切り声を上げてバリーンと粉々になる。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター3 伏せ2 手札1 LP400

覇王 モンスター0 伏せ2 手札2 LP4000

 

「我のターン。強欲なカケラにカウンターが乗る」

 

強欲なカケラ1→2

 

「そして強欲なカケラの効果発動。二個以上カウンターが溜まったこのカードを墓地へ送り二枚ドローできる。二枚の強欲なカケラを墓地へ送って四枚ドロー」

 

説明するのが遅れたが強欲なカケラは今覇王が使った様に、一枚で二枚ドローができるカード。その効果は強欲な壺と同じ効果だが、発動後二回の通常のドローが必要な為タイムラグが大きい。また、永続故に破壊される確率も高いのだが、さほど伏せ除去が豊富ではない俺のデッキでは破壊しにくい。

 

「自分フィールド上にモンスターが存在しない時、手札のヘル・ブラットを特殊召喚できる」

 

A300・D600

 

融合召喚じゃなく特殊召喚か。となると普通に考えると生贄要因だろうが、上級のHEROと言ったらネクロダークマンくらいしか思い浮かばない。

 

「そしてヘル・ブラット生贄にマリシャス・エッジを召喚!」

 

A2600・D1800

 

同じステータスとレベル、微妙に似た見た目。どうやらE・HEROエッジマンがイービル化したモンスターの様だ。レベル7で召喚できるのはマリシャス・エッジか生贄にしたヘル・ブラットか自身の効果だろうが、エッジマンもずいぶん変わったものだ。猛犬につけていそうな針のついた首輪の様なものを体中に装備しており、両手の指と指の間に長い針を装備しており、背中には鎌の刀身に形が似た翼が付いている。

 

「マリシャス・エッジは相手フィールド上にモンスターが存在する時、生贄を一体にして召喚する事ができる。ダーク・フュージョンを発動。手札のスパークマンとクレイマンを融合し、E-HEROライトニング・ゴーレムを特殊召喚する」

 

A2400・D1500

 

E・HEROサンダー・ジャイアントと同じ融合素材を必要する融合モンスター。その恰好もサンダー・ジャイアントによく似ており、逆に色素が黒くなって、よりアメリカンなダークヒーローっぽくなったが逆に言うとそれぐらいしか変化は見られない。まあ十分の変化だが。

先程のインフェルノ・ウィングやマリシャス・エッジの事を考えると、こいつもサンダー・ジャイアントの上位効果を持っていると考えていい。

 

「ライトニング・ゴーレムの効果発動。一ターンに一度相手モンスターを破壊できる。フェイトを選択。ボルティック・ボム!」

「ユーリを選択しない辺り俺のカードの記憶はあるみたいだな。墓地のソニックムーブの効果発動。このカードをゲームから除外して、フェイトをエンドフェイズ時まで除外する」

 

ソニックムーブは本来の使い方をして初めて派手なアニメーションが行われる。フェイトは体から黄色の魔力光を薄く放ち、ライトニング・ゴーレムが放った黒い電気の球体を回避して、その後グニャグニャと体を揺らしながらスッと消えていった。

 

「バトル。マリシャス・エッジでカリムを攻撃。ニードル・バースト!」

「どうせ貫通効果持ちだろ。罠発動、フォーメーションチェンジ。攻撃対象になったLSの表示形式を変更し一枚ドロー。このカードを発動したバトルで発生する戦闘ダメージは0になる」

 

A2600 VS A800

 

マリシャス・エッジは両手に持った細い針をカリム姉に投げ飛ばす。想像以上の速さで飛ばされた針はかなりの威力を込めている様で、カリム姉の体を貫通して破壊した。エッジマンと同じ貫通効果持ちとの予想は当たっていた様で、覇王は「チッ」と小さく舌打ちをして、静かにフェイズの移行を行う。

 

「我はこれでターンエンド。エンドフェイズ時に生贄にしたヘル・ブラットの効果発動。HEROの生贄にされた場合、デッキから一枚ドロー出来る」

「エンドフェイズ時にフェイトが戻る」

 

遊斗 モンスター2 伏せ1 手札3 LP400

覇王 モンスター2 伏せ0 手札2 LP4000

 

「俺のターン!」

 

覇王のフィールドのモンスターが強力な効果を持っているとはいえ攻撃力2600と2400とさほど攻撃力は高くなく、ディアーチェを呼べれば一発でライフを0に出来るのだが手札に来てくれない。覇王の伏せが無い今がチャンスなのだが、今無いカードの事を考えても進まない・・・・。

 

「永続魔法時空管理局を発動。LSを特殊召喚する度にLCを置く。カートリッジロードを発動し、時空管理局にLCを置く。そしてそのLCを取り除いてアルフを特殊召喚」

 

LC時空管理局0→1

 

「場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LC時空管理局1→2

フェイトA2800・D500→A3100・D800

 

「攻撃力3100・・・・」

「厄介な効果破壊のゴーレムから倒してやる。バトル! フェイトさんでライトニング・ゴーレムを攻撃!」

「トライデントスマッシャー!」

 

フェイトA3100 VS A2400

 

ライトニング・ゴーレムが発射した黒い雷の球を、斧になっているバルディッシュの刀身で弾き、手前に展開した黄色の魔法陣の中心に左手を付き出して黄色の砲撃を撃つ。電気を操るE-HEROもオーバーSランク魔導師であるフェイトさんには敵わず、純粋で綺麗な黄色の魔力砲に呑み込まれた。

 

覇王LP4000→3300

 

「・・・・」

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時にカートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札2 LP400

覇王 モンスター1 伏せ0 手札2 LP3300

 

「どうして覇王様。最初のターンの勢いが無くなって来てるぞ」

「黙れ。我のターン」

 

ドローしたカードを手札に加え、それから自分のフィールド上のカードと手札のカードを交互に眺め、二枚のカードをデュエルディスクにセットした。

 

「マリシャス・エッジを守備表示に変更。モンスターとカードを一枚ずつセットしてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札2 LP400

覇王 モンスター2 伏せ1 手札1 LP3300

 

「俺のターン。まずはカートリッジロードをキャロに発動。LCを一つ乗せ、キャロの効果でフィールドのLSの攻守は更に300上がる」

 

フェイトA3100・D800→A3400・D1100

ユーリAD4300→AD4600

 

「シュテルを召喚」

 

シュテルA800・D1500→A1400・D1800

 

「おや。中々いかした格好ではありませんか。少し痛々しいですがお似合いですよ」

「い、痛々しいのか・・・・。ええい、バトル! シュテルでマリシャス・エッジを攻撃! ダメージステップシュテルの効果で戦闘を行う相手モンスターのレベル×300攻撃力を上げる!」

 

シュテルA1400→A3500 VS D1800

 

「ブラストファイアー!」

 

カノンモードとなったルシフェリオンは竜の横顔の様に見える為、シュテルが放つ砲撃は竜が吐き出す炎の様だった。キャロの支援があるからとはいえ、レベル4とは思えない攻撃力となったシュテルが発射した炎は、闇のHEROの抵抗すら許さずに塵も残さず燃やしつくした。

 

「フェイトさんでそのセットモンスターを攻撃!」

「攻撃宣言時、罠発動、DNA定期健診。自分フィールド上のセットされたモンスターを選択し発動。相手は二つ属性を宣言し、選択したモンスターが宣言した属性だったらお前は二枚ドロー。違った場合我が二枚ドローする。さあ、宣言しろ」

 

二つの属性・・・・まずは他にも未知のE-HEROがいる可能性も十分にあるので闇属性は確定。闇属性には汎用性の高いカードも多々あるし、この状況なら誰もが闇属性を宣言するだろう。もう一つの属性だが、下級E・HEROで出ていないのはバブルマンとワイルドマンの水属性と地属性。覇王の手札は一枚しか無いからメタモルポット警戒で地属性を選択してもいいが、どっちにしても攻撃は止まらないのでメタモルポットだった場合効果が発動される。いや、もしメタモルポットならそもそもこのタイミングで効果を発動したりはしない。でもまあ地属性も優秀なモンスターが多いから地属性にしよう。

 

「闇属性と地属性を選択」

「我がセットしたカードは魔導雑貨商人。光属性の為デッキから二枚ドローする。この効果で表にするのは確認の為なのでリバース効果は発動しないが、どちらにしろ攻撃された為表になる」

 

A3400 VS D700

 

「魔導雑貨商人のリバース効果発動。自分のデッキを上からめくり、一番初めに出た魔法・罠カード一枚を手札に加える。モンスターをめくった場合墓地へ送られる。磁石の戦士マグネット・バルキリオン。冥府の使者ゴーズ。邪帝ガイウス。ネクロ・ガードナー。騎士死霊デスカリバー・ナイト。融合呪印生物闇。キラー・トマト。ダーク・コーリング。ダーク・コーリングを手札に加える」

「・・・・やっぱ体は十代だな」

 

いやいや、デッキトップを当てられる俺がツッコミを入れるのも野暮と言えるだろう。計7枚のモンスターカードが墓地へ送られ、その内ネクロ・ガードナーは墓地から攻撃を止める事ができる。E-HERO版のミラクル・フュージョンとも呼べるダーク・コーリングも厄介だし、一番初めにめくられた、磁石の戦士マグネット・バルキリオンも気になる。

 

「バトルフェイズ終了時に戦闘を行ったシュテルはゲームから除外される。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時にデッキからカートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札1 LP400

覇王 モンスター0 伏せ0 手札4 LP3300

 

「我のターン。ダーク・コーリングを発動。墓地のライトニング・ゴーレムと磁石の戦士マグネット・バルキリオンをダーク・フュージョンさせる」

「マグネット・バルキリオンを!?」

 

数あるカードからマグネット・バルキリオンを選んだと言う事はおそらく岩石族モンスターが必要なカードなのだろう。岩石族モンスターにも優秀なカードがいるから事故要因になるマグネット・バルキリオンじゃなくてもよさそうだが、融合先のモンスターが高レベルの岩石族モンスターを要求するのだろうか?

 

「来い、E-HEROダーク・ガイア」

 

A?D0

 

融合カードの中でも珍しい攻撃力?のモンスター。亮さんのキメラテック・オーバー・ドラゴンや翔のユーフォロイド・ファイター等からすると融合素材に左右されるカードかもしれない。

それは巨大な悪魔の翼を背中から生やし、融合素材にした岩石族の岩の鎧を着ているE-HERO。マリシャス・エッジの時までは何も感じなかったが、ダーク・ガイアが登場すると共に覇王から放たれる尋常じゃない強者のオーラが襲い掛かってきた。流石十代の第二人格と言うだけあり、三幻魔やF・G・Dを除く王よりも遥かに強いその覇気は肌で感じられ、デュエリストとの魂が煮え滾り、体中がゾクゾクと武者震いする。

 

「ダーク・ガイアの攻撃力は融合素材にしたモンスターの攻撃力の合計した数値になる。ライトニング・ゴーレムの攻撃力は2400。マグネット・バルキリオンの攻撃力は3500。よって攻撃力は5900となる」

 

ダーク・ガイアA?→A5900

 

「ッツ! さっきの魔導雑貨商人で色々と下準備されたって事か」

「バトル。ダーク・ガイアでフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを攻撃。ダーク・カタストロフ!」

 

A5900 VS A3400

 

ダーク・ガイアは天井ギリギリまで飛び上がり、邪帝ガイウスの様に両手を前に合わせて闇のオーラで球体を作り出して、その球体を辺りの岩石で覆い隠して小さい隕石を作り出した。そして翼から先の尖った鋭利な石を吐き出してフェイトさんへ飛ばす。プロテクションで石を防いだフェイトさんだったが、そこにダーク・ガイアは作り出した隕石を飛ばし、プロテクションを薄いガラスの様にアッサリと割ってフェイトさんを粉砕する。

 

「だが攻撃宣言時に罠発動、フィジカルヒール! フィールドのLS一体を選択し、選択したLSのレベル×400のライフを回復する。レベル10のユーリを選択し、ライフを4000回復!」

 

遊斗LP400→4400→1900

 

「ダーク・ガイアの攻撃を防いだか。速攻魔法異次元からの埋葬を発動。除外されているシュテル、フェザーマン、磁石の戦士マグネット・バルキリオンを墓地へ送る」

 

これで次のターンシュテルが戻って来れ無い。強いカード故に早い段階で処理されてしまったか。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札1 LP1900

覇王 モンスター1 伏せ2 手札1 LP3300

 

攻撃力5900の超火力モンスター。効果による上昇の為効果を無効にしたり、フェイトの効果で表示形式を変更すればアッサリと破壊できるカードだが、果たしてそのアッサリを覇王が通してくれるかどうか。それ以前に表示形式変更か効果無効のカードを俺が引けるかどうか。

 

「俺のターン! 罠発動Strikersの収集。墓地のフェイト、カリム姉、イクスをデッキに戻し二枚ドローする。魔法・罠ゾーンにルーテシアを置く。ルーテシアは通常召喚を放棄する代わりに、戦闘で破壊されたLSを特殊召喚できる。フェイトさんを特殊召喚!」

 

LC時空管理局2→3

フェイトA2800・D500→A3400・D1100

 

「そして究極竜騎召喚を発動! フィールドにキャロかルーテシア、またはその両方がいる時に発動可能。キャロならヴォルテールを、ルーテシアなら白天王を、二人ともいるならその両方を特殊召喚する!」

 

ピンクのミッドチルダ式の魔法陣と紫のベルカ式の魔法陣がキャロとルーテシアの前に広がり、二人のデバイスがそれぞれの魔力光を発する。二人が数秒間目を閉じて集中すると、二つの魔法陣の中から赤い頭と白い頭が浮かび上がって来た。

 

「来て、ヴォルテール!」

「おいで白天王!」

 

LC時空管理局3→4

ヴォルテールAD3000→AD3600

白天王AD3000→AD3600

 

キャロが呼んだ大地の守護者ヴォルテール。ルーテシアが呼んだ白紫の蠱王・白天王。体長15メートルはある召喚された二体は、手入れされていない汚い石で作られた天井を壊し、丸い月に似た惑星を見上げ空気の震えを肌で感じる程の大声を上げた。バラバラとなった天井が土煙を飛ばしながら俺達の周りに落下し、二体の咆哮と土煙が収まった頃を見計らって覇王が口を開く。

 

「だが何をやってもダーク・ガイアの攻撃力を越える事は不可能」

「確かにそう簡単にその攻撃力を越える事は出来ないが、そいつの弱点は守備力が上昇しない所。究極竜騎召喚をしたターン、俺はこの効果で特殊召喚したモンスター一体しか攻撃できない。バトル! 白天王でダーク・ガイアを攻撃!」

「何を考えている?」

「十代にもこのカードは見せた事無いからな。初見のモンスター効果を楽しめ! 白天王の効果発動! 攻撃対象になったモンスターの攻守をバトルフェイズ終了時まで入れ替える」

「させん。リバースカードオープン、攻撃の無力化。攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了する」

 

白天王が胸に付けている紫色のコアから放った巨大な砲撃は、ダーク・ガイアの前に突如現れた不規則な動きをする青と赤色の渦によって受け止められた。白天王の攻撃を受け止めたその渦は、俺のデュエルディスクに向けて赤と青の光を当て、強制的にバトルフェイズを終了させる。

俺のフィールドには攻撃力3000オーバーの最上級モンスターが四体並んでいるが、覇王のフィールドには攻撃力5900のでかい壁がある。どれだけ強力なモンスターを並べようとも、一体のモンスターを突破できなければ意味をなさない。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター4 伏せ4 手札1 LP1900

覇王 モンスター1 伏せ1 手札1 LP3300

 

流石十代の第二人格。新たな力Force-evolutionが来ていないとは言え、ここまでギリギリの緊迫感を覚えるデュエルは久しぶりだ。俺が強くなっていくと同時に十代も強くなっているのが肌で感じられる。

また楽しいデュエルをする為にも絶対に十代、お前を助ける。

 

「我のターン。カードを一枚伏せ、バトル。ダーク・ガイアでヴォルテールを攻撃。ダーク・カタストロフ!」

 

ヴォルテールは自身以外のモンスターを攻撃対象にした場合守備表示に変更する事で攻撃を止める効果を持っている。だから白天王に攻撃するにはヴォルテールからまず攻撃しないといけないが――。

 

「単純に攻撃してくれて助かった! 罠発動、ディバイトエナジー! モンスターが攻撃対象となった時、攻撃対象となったモンスター以外のLSを除外して発動。攻撃対象になったモンスターの攻撃力を、除外したモンスターの攻撃力分アップさせる。ユーリを除外してヴォルテールの攻撃力を4600上げる!」

 

ヴォルテールA3600→A8200 VS A5600

 

「攻撃力8200!?」

「流石の覇王様も驚いたか。反撃しろヴォルテール!」

 

と、カッコ良く宣言したがヴォルテールは俺の言葉には全く動かなかった。僅かにシーンとなった中、キャロは申し訳なさそうに小さく口を開いてヴォルテールの技名「大地の咆哮(ギオ・エルガ)」と告げた。LSの主でもありドラゴン族の王F・G・Dの血を引く俺よりもキャロの言葉が大切らしい。いや、その忠誠心と言うか仲の良さは良い事だが、カッコ良く宣言した時ぐらい言う事を聞いて欲しいものだ。

ダーク・ガイアは先程と同じ様に悪魔の翼から鋭利な石を生やし、それを風に乗せて飛ばして行く。だが堅い鱗に覆われたヴォルテールは蚊に刺された程度にも感じず、巨大な四つの翼を広げ、それぞれの翼の中心に炎を溜めて発射した。

 

「ぐあああっ!」

 

覇王LP3300→700

 

ユーリの力が加わったヴォルテールの炎はダーク・ガイアを覇王諸とも焼き払い、覇王のライフに大ダメージを与える。今まで口数が少なく冷静だった覇王も苦しい叫び声を上げ、ダーク・ガイアを破壊した守護竜をギロリと睨み上げる。

 

「クッ・・・・。モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

遊斗 モンスター3 伏せ3 手札1 LP1900

覇王 モンスター1 伏せ2 手札0 LP700

 

「俺のターン!」

 

ドローしたカードはこの状況では何も使えないカード。フィールドは十二分に整っているのでこのまま攻撃で問題ない。伏せカードが若干怖いが、相手が守りに入った今が最大のチャンス。

 

「このままバトルだ! ヴォルテールでセットモンスターを攻撃!」

大地の咆哮(ギオ・エルガ)!」

「セットモンスターはメタモルポット。リバース効果が発動する」

 

A3600 VS D700

 

表になったメタモルポットは俺の二枚の手札を壺の中に吸い込み、その後壺の中から俺と覇王のカードを五枚ずつ、計十枚を俺達に吐き出す。飛ばされた五枚のカードをキャッチすると同時にヴォルテールの炎によりメタモルポットは焼き払われる。

 

「フェイトさんでダイレクトアタック!」

「攻撃宣言時に罠発動、補充要員。自分の墓地にモンスターが五体以上いる時に発動可能。自分の墓地の効果モンスター以外の攻撃力1500以下のモンスターを三体まで選択し手札に加える。我が手札に加えるのはフェザーマン、バーストレディ、クレイマンの三体。更に補充要員にチェーンして永続罠、強制終了を発動。補充要員を墓地へ送りバトルフェイズを終了させる」

 

手札を一気に八枚まで増やしたあげくバトルフェイズを終了させたか。やはりネオスペーシアンをデッキから外した代わりに、十代が普段入れていないカードが多数入っている。こんなシチュエーションでなければよりワクワク出来てラッキーな状況だが、命を掛けたデュエルだと相手のデッキが未知数になっているのは余り嬉しくない。

 

「なのはを召喚。効果で自身にLCを置き、効果で強制終了を破壊だ」

「アクセルシュート!」

 

LCなのは1→0

A500・D1800

 

強制終了は残されると厄介だからなるべく早い段階で破壊しておかないと。メタモルポットのドローでなのはを引けたのは不幸中の幸いだった。

 

「時空管理局のLCを取り除いてユーノを特殊召喚。時空管理局自身の効果でLCはプラマイゼロとなる。場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

LC時空管理局4→5

なのはA1000・D3000→A1600・D3600

 

「なのはさんの効果発動。このカードを攻撃表示に変更し、デッキからザフィーラを手札に加える。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター4 伏せ4 手札4 LP1900

覇王 モンスター0 伏せ0 手札8 LP700

 

「我のターン。死者蘇生を発動。墓地のマリシャス・エッジを特殊召喚」

 

A2600・D1800

 

「E-HEROヘル・ゲイナーを召喚」

 

A1600・D0

 

今まで出てきたE-HEROは、E・HEROや十代が使っていたカードがイービル化したモンスターが多かったが、このモンスターは違った。ステータスに見覚えが無く、見た目はデーモン系に多い、生肉の様な色をした赤い肌に黒い線が入った皮膚をしており、体の一部に黒い鎧を装着している。また、背中には尻尾が付いており、肩や頭からは刃が生えているのが特徴だろうか。

 

「装備魔法ヴィシャス・クローをマリシャス・エッジに装備。攻撃力を300上げる」

 

マリシャスA2600→A2900

 

装備魔法にしては低い300の上昇値。覇王が使うからには何か裏がある装備魔法だろうが、現段階でそれを知る手段は俺には無い。この段階でマリシャス・エッジより攻撃力が低いのはなのはさんだけだが、俺が伏せたカードはForce-evolution。なのはさんにForceを装備させる事が出来るが、覇王が消費したカードはまだ三枚。残り六枚の内三枚はサーチしたカードとは言え、まだ俺が知らないカードを三枚持っているのだ。

 

「ヘル・ゲイナーの効果発動。このカードを除外し、自分フィールド上の悪魔族モンスターを選択して発動する。選択したモンスターは一度のバトルフェイズ中に二度の攻撃が可能」

 

だが攻撃力が上がった訳ではない。例え低ステータスである攻撃力を晒しているなのはさんを攻撃してきたとしてもForce-evolutionで止める事ができる。しかしそうはさせないと言わんばかりのタイミングで、覇王は手札のカード一枚をデュエルディスクにセットした。

 

「装備魔法団結の力をマリシャス・エッジに装備」

 

マリシャスA2900→A3700

 

「無理やり越えてきたか。罠発動Force-evolution! なのはさんを生贄に融合デッキからLS-CW-Force00X高町なのは-Fortress Strike Cannonを特殊召喚する!」

 

LC時空管理局5→6

なのはA2000・D3500→A2600・D4100

 

マリシャス・エッジの攻撃力がヴォルテールや白天王達を越えたが、誰を攻撃されてもまだライフが0になる事は無い。そうなるとなのはさんの効果で、マリシャス・エッジの攻撃力を下げておきたい。

 

「バトル」

「バトルフェイズ開始時になのはさんにFCが置かれる」

 

FCなのは0→1

 

「マリシャス・エッジでヴォルテールを攻撃。ニードル・バースト!」

 

A3700 VS A3600

 

二つの装備魔法を装備しても攻撃モーションと技名は変わらず、マリシャス・エッジは両手の指で挟んだ針をヴォルテールに向けて飛ばす。あの巨体を小さな針で貫通するのは無理かと思われたが、闇のオーラを纏う針はその細さからは想像出来ない程の貫通力と爆破能力を兼ね備えており、ヴォルテールの厚い鱗を付き貫けて体内に入り込むと、マリシャス・エッジの不気味な笑い声を合図に爆発した。

 

遊斗LP1900→1800

 

「クッ!」

「ヘル・ゲイナーの効果でもう一度攻撃が可能。フェイトに攻撃!」

 

A3700 VS A3400

 

白天王を破壊してもフェイトさんを破壊してもルーテシアがいる限り戦闘で破壊されたモンスターは復活できる。ならば少しでもダメージを与えられるフェイトさんを選んだのは正解と言える。先程と全く同じ方法でフェイトさんを破壊し、フェイトさんの体を貫通してきた針が俺に飛んで来たので、デュエルディスクを盾にして弾き返す。

 

遊斗LP1800→1500

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

「エンドフェイズになのはさんの効果発動。FCを全て取り除き、取り除いた数だけ相手モンスターを選択し、選択したモンスターの攻守を500下げる」

 

FC1→0

マリシャスA3700・D1800→A3200・D1300

 

遊斗 モンスター2 伏せ3 手札4 LP1500

覇王 モンスター1 伏せ4 手札3 LP700

 

「俺のターン! このスタンバイフェイズ、ディバイトエナジーの効果でゲームから除外したユーリが攻撃表示で戻って来る」

 

ユーリAD4000→AD4600

 

ユーリが攻撃に加わってくれたら一気に戦況が変わるが、紫天の書が無いと攻撃できないのは辛い。しかも覇王が使ったメタモルポットの時に紫天の書が墓地へ送られてしまったので、ユーリで攻撃するにはなのは様を呼ばないといけないが、今フィールドにいるなのはさんはAOAなのはさんでは無く、Forceなのはさんなのでなのは様を呼ぶには時間が掛かる。呼び別けているとはいえ、なのはさんの派生が多くてややこしい・・・・。

 

「ルーテシアの効果発動。戦闘で破壊されたヴォルテールを特殊召喚!」

 

ヴォルテールAD3000→AD3600

 

「バトル! 白天王でマリシャス・エッジを攻撃!」

「墓地の、ネクロ・ガードナーの効果発動。このカードを除外して白天王の攻撃を止める」

 

マリシャス・エッジの前に現れた白い長髪の男が持った盾により防がれるが、ネクロ・ガードナーを使わせただけでもよしとしよう。

 

「まだだ。ヴォルテールでマリシャス・エッジを攻撃!」

「行くよヴォルテール、大地の咆哮(ギオ・エルガ)!」

 

A3600 VS A3200

 

ヴォルテールの両翼の中心から発射された炎の砲撃。おそらく二枚のリバースカードで止めて来るだろうがそれでも構わない。だが俺の予想とは反し、覇王は一向に動かずにマリシャス・エッジに近寄って来る炎の砲撃を眺めている。そして態々数枚のカードを使用して攻撃力を上昇させたマリシャス・エッジは呆気なく炎に飲み込まれ、僅かな火の粉が覇王に襲い掛かる。

 

十代LP700→300

 

「くらっただと!?」

「装備モンスターが破壊される時、ヴィシャス・クローの効果が発動される。戦闘破壊の代わりにこのカードを手札に戻す。更に戦闘を行った相手モンスター以外のモンスター一体を破壊し、相手ライフに600のダメージを与える。その後相手フィールド上に悪魔族レベル7、攻守2500のイービル・トークンを特殊召喚する。このターンヴィシャス・クローは使用できない」

 

装備モンスターの破壊耐性、再利用が可能、相手モンスターを破壊、更に600のバーンダメージ。だが代償として俺のフィールドに最上級モンスターを呼ぶ装備魔法・・・・。前半の効果はバランスブレイカーと言って良い程強力だが、その分相手にバニラの最上級トークンを出すデメリットが大きい。かなり独特な効果を持っている装備魔法を覇王はどうやって利用しようとしている?

 

「・・・・何も無い」

「ならばヴィシャス・クローを手札に戻し、白天王を破壊し600のダメージを与える。その後イービル・トークンを特殊召喚」

 

ヴィシャス・クローのカードが覇王の手札に自動で戻って行き、戻したヴィシャス・クローのカードから白い矢の形をしたエネルギーが放たれて白天王の紫のコアを貫通し、そのまま俺に向かって飛んで来たので、首をクイッと曲げて回避する。

 

マリシャスA3200→A2900

AD2500

遊斗LP1500→900

 

「そしてこの瞬間、手札一枚を捨て速攻魔法を発動する」

「このタイミングで!?」

「これが我が切り札! 絶対無敵、究極の力を解き放て! 解放せよ!」

「ッツ! 何をっ!?」

 

覇王が足元にセットしていたカードを表にすると同時に、辺り柱や瓦礫を崩す程の衝撃が走る。咄嗟に両手で体を守ったので小幅一歩程後ろに飛ばされた程度で済んだが、ヴォルテールと白天王が予め天井を崩していなかったら、今天井が落ちてきていただろう。

そして発動しただけで異様なまでの衝撃を放つカード名を覇王は高々と告げる。

 

「超融合発動!」

 

その刹那、俺のフィールドだけがまるで竜巻に吸い込まれる様に強い風が体を引っ張って来た。俺は勿論、ヴォルテール以外のフィールドのみんなも、吸い込まれぬ様に足を踏ん張って耐えるが、覇王が呼びだしたイービル・トークンは耐えきれず、徐々に覇王のフィールドに引きずり込まれて行く。その時はただの演出かと思ったが、すぐに違うと分かった。

超融合。融合と名のつくだけあり、必ず何かしらのモンスターを融合素材にして、融合召喚する筈。しかし覇王が言う最強の切り札が、果たして俺の想像内に収まる効果を持ったカードとは思えない。

 

「超融合はフィールドにいるあらゆるモンスターを融合素材に使う事が出来る」

「なッ!? 相手のモンスターも融合素材に使えるだと!?」

 

覇王がイービル・トークンを指差した途端、イービル・トークンは覇王のモンスターゾーンに引きずり込まれる。おそらく覇王が新たに呼び出すモンスターは融合素材の種族が悪魔族で無いといけないモンスター。ヴィシャス・クローの大きなデメリットを新たなE-HEROを呼びだす布石としてしたのか!

 

「我はマリシャス・エッジと貴様のフィールドのイービル・トークンを融合! 現れろ、最凶のE-HEROマリシャス・デビル!」

 

覇王の正面に現れた融合の渦。だがその融合の渦は十代がいつも使っていた融合とは大きく異なり、不気味な白い光、そう、例えるなら破滅の光のような神々しさとは程遠い光を放つ融合の渦だった。マリシャス・エッジとイービル・トークンの二体は体をグニャグニャに捻じ曲げながら超融合の渦に飲み込まれ、渦が徐々に小さくなって指で作る○程度の大きさになると、眩い不気味な白い光を放ち、渦からモンスターが現れた。

 

A3500・D2100

 

おそらく目の前のモンスターの融合素材には、必ずマリシャス・エッジが必要なのだろう。マリシャス・エッジを思わせる、猛犬が装着していそうな刃の付いた輪を足に装着しており、手にはマリシャス・エッジが使っていた針を、より長くより太くより鋭利にした鍵爪があった。背中には斧の様な形をした先の尖った翼があり、頭からは髪の様に生えた刃が無数にある。まさに不気味、E(イービル)の名に相応しいHEROだった。

 

「マリシャス・デビルの効果。相手のターンのバトルフェイズ中に相手フィールド上に存在するカードは全て表側攻撃表示になり、全てのモンスターでこのカードを攻撃しなければならない。攻撃していないのは貴様のフィールドのなのはのみ」

 

なのはさんの攻撃力は2000。ザフィーラが手札にいる分まだ余裕はあるが、どちらにしてもこのターンのエンドフェイズ時になのはさんは自身のLCを取り除かないと融合デッキに戻ってしまう。手札にはヴォルフラムもLCを置くカードも無い。なら。

 

「攻撃はしない! 速攻魔法あの日のリボンを発動! なのはさんのLCを取り除いてなのはさんを融合デッキに戻す。その後デッキに戻したなのはさんと同じレベルのフェイトと名のつくモンスターを、デッキか融合デッキから、召喚条件を無視して特殊召喚する。戻したなのはさんのレベルは10。デッキから雷フェイトさんを特殊召喚する」

 

LCなのは1→0 時空管理局6→7

フェイトA3300・D0→A3900・D600

 

「そしてこの効果で特殊召喚したモンスターは攻撃ができない。フィールドにいるユーリも紫天の書が無いと攻撃できない為同じ。マリシャス・デビルを攻撃出来ない」

 

というか時空管理局のLCが過去最高と言っていい程溜まっている。夜天の書を呼ぶ事が出来たら七枚のドローが可能になるが、とてもでは無いがアインスを呼べる状況では無い。せめてミッドチルダかすずかがいてくれたらLCを別ける事ができるのだが、どうも今回は時空管理局を上手く使えていない。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター3 伏せ4 手札3 LP900

覇王 モンスター1 伏せ0 手札3 LP300

 

「我のターン。終りの始まりを発動。墓地に闇属性が七体居る時発動できる。闇属性五体をゲームから除外して三枚ドローする。冥府の使者ゴーズ、邪帝ガイウス、キラー・トマト、融合呪印生物闇、騎士死霊デスカリバー・ナイをゲームから除外して三枚ドロー」

 

今度のドローカードは終りの始まりか。何かと色んなカードを使って手札を増やして来るので、手札消費が荒い癖にすぐに手札が溜まっていく。現在覇王の手札は六枚。その内の三枚は補充要員で手札に加えたE・HERO二体とヴィシャス・クロー。

 

「ヴィシャス・クローをマリシャス・デビルに装備」

 

マリシャス・デビルA3500→A3800

 

「バトル。マリシャス・デビルでヴォルテールを攻撃! エッジ・ストリーム!」

 

A3800 VS A3600

 

マリシャス・エッジが両手にそれぞれ持った三つの鍵爪、計六つがマリシャス・デビルの体から発せられた闇のオーラを纏い、その六つの鍵爪に自らの闇全てを注ぎ込む。そして斧の様な翼を使ってヴォルテールの元まで飛び、闇の力が纏った鍵爪で巨体を切り裂き、赤子を捻るかのように一瞬でヴォルテールの体を木っ端みじんにした。ガラスの様に割れたヴォルテールが爆発すると、まるで数千のダメージを受けたかのような衝撃が俺を襲い、踏ん張ったのにも関わらず、俺の背中は瓦礫となった元柱に激突した。

 

「ぐあっ! ()ぅ~っ! いってな~」

 

遊斗LP900→700

 

ぶつかった瓦礫が比較的平らだったのは幸いで、痛いで済む程度だった。服に付いた土煙をパンパンと掃いながらさっき立っていた場所まで戻ると、覇王が僅かばかり感情の籠った声を発した。

 

「我がマリシャス・デビルの力を受けてもその程度とは・・・・、やはりただ者ではないな。エア・サーキュレーターを召喚」

 

A600・D0

 

「召喚成功時に自分の手札二枚をデッキに戻しシャッフル。その後二枚ドロー」

 

融合モンスターを使ってしまった今、手札に必要無い二体の通常HEROを戻したと見て間違いないだろう。しかし流石は体が十代だけあって、何とかして手札を補充して息切れをしないうようにしている。どれだけのドローカードがあのデッキに入っているのやら。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター2 伏せ4 手札3 LP700

覇王 モンスター2 伏せ3 手札2 LP300

 

「俺のターン!」

 

マリシャス・デビルの効果はバトルフェイズに入らないと発動できない。このまま時間を稼ぐのも可能と言えば可能だが、今俺のフィールドには二回攻撃が可能な雷フェイトさんがいる。このまま3900の二回攻撃を決めれば終わる。二枚のリバースカードには必ず何かあるが、覇王程のデュエリスト相手に時間稼ぎが一番やってはいけない事、それこそ自殺行為だ。

 

「バトル! 雷フェイトさんでマリシャス・デビルを攻撃!」

 

A3900 VS A3800

 

雷フェイトさんは目にも止まらぬ速さでマリシャス・デビルに接近し、両手から生やした雷の魔力刃でマリシャス・デビルを切断した。だがマリシャス・デビルが手に装着していたヴィシャス・クローの効果が発動される。

 

覇王LP300→200

 

「ヴィシャス・クローの効果発動。マリシャス・デビルが破壊される代わりにこのカードを手札に戻し、攻撃モンスター以外のモンスター、エア・サーキュレーターを破壊し、貴様に600のダメージを与える。そしてイービル・トークンを特殊召喚」

 

ッツ! エア・サーキュレーターはその為の布石でもあったのか。ヴィシャス・クローの効果でモンスターを破壊できなかった場合、600のダメージもトークンを呼びだす効果も発動できない。だから破壊に耐性のあるユーリがいれば問題ないと思っていたが、何故か先入観でヴィシャス・クローの効果で破壊できるモンスターは俺のフィールドだけと勘違いしていた。

 

遊斗LP700→100

マリシャス・デビルA3800→A3500

AD2500

 

「そしてエア・サーキュレーターが破壊された事でデッキから一枚ドローする」

「だがこれで終わりだ! 雷フェイトさんでマリシャス・デビルを攻撃!」

 

A3900 VS A3500

 

雷フェイトさんはパチンと指を鳴らしてフォトンスフィアを大量に展開し、全てのフォトンスフィアの標準をマリシャス・デビルに合わせたが、その瞬間、覇王はセットしていた一枚のカードを表にする。

 

「罠発動、砂塵の大竜巻。キャロを破壊する」

「ッツ! チェーンしてリバースカードオープン、アイゼンゲホイルを発動! バトルフェイズを終了させる!」

 

覇王と俺が発動したカードに「チッ」と小さく舌打ちをした雷フェイトさんの前に、ヴィータさんの魔力で作られた赤い球体が現れる。それはキーンと高い音と眩い光を発するフラッシュボムで、眩い紅の光がフィールドを包み込む。それからすぐに砂塵の大竜巻から、文字通り大竜巻が現れてキャロへと飛び、小さな少女の体を飲み込んだ。竜巻の中でバリンとカードが割られる音が聞こえると、フィールドにいる二人のステータスが変化する。

 

ユーリAD4600→AD4000

フェイトA3900・D600→A3300・D0

 

「永続魔法LS戦艦ヴォルフラムを発動。そして墓地のForce-evolutionの効果を発動。ヴォルフラムがある時手札一枚を捨て自身をサルベージする。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

A3300・D0

 

このターンルーテシアの効果を使い、戦闘破壊されたLSを呼ぶ事が出来たがそれはしない。フェイトさん等の最上級モンスターを戻せばフィールドアドバンテージが有利になるが、モンスターを守る手段が乏しい今、下手にマリシャス・デビルより攻撃力の低いモンスターを出したくない。

 

遊斗 モンスター3 伏せ4 手札2 LP100

覇王 モンスター1 伏せ1 手札3 LP200

 

「我のターン。スタンバイフェイズ時に自身の効果で特殊召喚したヘル・ゲイナーが戻って来る」

 

A1600・D0

 

「ヘル・ゲイナーを除外してマリシャス・デビルを二回攻撃が可能にする。装備魔法ヴィシャス・クローをマリシャス・デビルに装備」

 

マリシャスA3500→A3800

 

「バトル。マリシャス・デビルでフェイトを攻撃!」

「罠発動Force-evolution! 雷フェイトさんを生贄に、融合デッキからCW-Force01Xフェイト・テスタロッサ・ハラオウン-Riot Blade & ZamberⅡを特殊召喚!」

 

A3300・D0

LC時空管理局7→8

 

Force-evolutionから浮かび上がる二体一刀の剣を装備した雷フェイトさん。マリシャス・デビルを

倒す事は不可能だが、戦闘から逃れる事が出来る。

 

「フェイトさんの効果発動。相手のターンのみ、墓地のLSを除外して次の自分のスタンバイフェイズ時まで除外する事が出来る。墓地のコロナをゲームから除外し、フェイトさんを除外! 更に除外されたコロナの効果でデッキから一枚ドロー!」

「面倒な。ならマリシャス・デビルでイービル・トークンを攻撃! エッジ・ストリーム!」

 

A3500 VS A2500

 

マリシャス・デビルは闇を纏わせた鍵爪で空を斬り、鍵爪から闇の刃を飛ばしてイービル・トークンを襲う。複数の闇の刃はイービル・トークンを豆腐の様に容易く切り裂き、そのまま俺に向かって飛んでくるが、俺の前に登場した一体の狼により進行が封じられた。

 

「手札のザフィーラを捨てて戦闘ダメージを0に! その後一枚ドロー!」

「我はこのままターンエンド」

 

遊斗 モンスター1 伏せ3 手札3 LP100

覇王 モンスター1 伏せ1 手札3 LP200

 

「俺のターン! スタンバイフェイズ時にフェイトさんを特殊召喚!」

 

LC時空管理局8→9

 

いよいよ時空管理局のLCがカオスな事になって来たが、夜天の書が無ければここまでの数を取り除くのはまず不可能だろう。あって困る訳では無いので問題ないのだが、ここまで溜まったのならもう少し上手く扱いたいものだ。

 

「フェイトさんの効果発動。LCを取り除き、魔法・罠ゾーンのLSをデッキに戻す。その後戻したLSと同じレベルのLSをデッキから手札に加える。ルーテシアをデッキに戻し、エリオを手札に加える。そしてエリオの効果で自身を捨て、墓地のザフィーラを手札に加える」

 

LC時空管理局9→8

 

「ティアナを召喚!」

 

A1200・D1000

 

「LCを取り除いて効果で効果発動! 墓地のAOA高町なのはをゲームから除外し、同名トークンを特殊召喚! そして特殊召喚したトークンを生贄に、蒼穹の王高町なのはを特殊召喚する!」

 

AD2500

 

久しぶりに思いっきり力を解放できるデュエルの為か、いつもより巨大な竜巻が俺のフィールドに発生した。堂々と吹き荒れる竜巻はプレイヤーである俺と覇王の事を全く考えずに、辺りに散らばった瓦礫をも飛ばす。実際に瓦礫に当たりそうになったが、一応ぶつからない様に考えてくれているのか、瓦礫は変わった軌道をして曲がった。竜巻の中に美しくも不気味に光るサファイアの眼光を覇王とマリシャス・デビルに浴びせて登場したのは、黄金の王座に座ったなのは様。

 

「お願いしますよなのは様!」

「今日は気分がいい。貴様等の愉快な恰好もだが、この混沌とした世界は実に私に相応しい」

「相変わらずだね君は。平和な世界で笑顔に過ごす君も可愛いと思うけど?」

 

そう言えば現在フィールドにいるフェイトさんは雷フェイトさんだから、王様なのはさんとの共演って訳か。コブラの時もそうだが、やはりなのはとフェイトとはやての出番が多くなるデッキだから、二人の共演はさほど珍しく無いのかも。

 

「そ、そんな訳あるか! 私はこういう場所でこそ輝くのだ! 遊斗、さっさと続けろ!」

「お、お二人が話始めたんじゃないですか。なのは様の効果でデッキからギンガを墓地へ送る。そしてなのは様の効果で墓地の紫天の書を装備! 攻撃力を500上げる!」

 

なのはA2500→A3000

 

「更に装備魔法レイジングハートを装備し、攻撃力を1500ポイントアップさせる!」

 

なのはA3000→A4500

 

これでユーリは攻撃が可能になり、更になのは様の攻撃力がマリシャス・デビルを大きく上回った。ヴィシャス・クローの効果は戦闘ダメージが発生して、戦闘モンスターが破壊される時に手札に戻す効果から発動される。つまり戦闘ダメージを与えてライフを0にさえすれば、バーン効果に対して俺が恐れる事は何も無い。

 

「バトル!」

「この瞬間貴様のフィールドのモンスターは全て攻撃表示になる」

「どっちにしろ終りだ! バトル! ユーリでマリシャス・デビルを攻撃!」

「やっと攻撃です!」

 

A4000 VS A3800

 

「罠発動、攻撃宣言前に威嚇する咆哮」

「チッ、止めてきたか!」

 

ユーリが放った闇の炎を纏った炎の塊は、獣の咆哮により掻き消されてしまった。バトルフェイズに移行した事でティアナが攻撃表示になってしまい、次のターンでの攻撃の機会を与えてしまった。いくら手札にザフィーラがいるとは言え、極力温存しておきたいんだが。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時フェイトさんの効果で、自身の効果でサーチしたモンスターを魔法・罠ゾーンに置かなかった場合、俺はライフを半分払う」

 

遊斗LP100→50

 

遊斗 モンスター4 伏せ5 手札1 LP50

覇王 モンスター1 伏せ0 手札3 LP200

 

「我のターン」

 

4000オーバーのモンスターが二体と、相手のターンほぼ無敵のフェイトさんがいるこの状況。このまま押されたら負けると覇王も分かっている。ティアナに攻撃するだけで後はエンド宣言してくれるのが一番助かるのだが、覇王の事だから必ず何かしら動いて来る筈。

 

「貪欲な壺を発動。墓地のダーク・ガイア、ヘル・ブラッド、マグネット・バルキリオン、エア・サーキュレーター、マリシャス・エッジをデッキに戻し二枚ドロー。ダーク・フュージョンを発動。手札のマグネット・バルキリオンとカオスハンターを融合。再び現れろ、ダーク・ガイア!」

 

ダーク・ガイアA?・D0→A6000

 

攻撃力3500と2500のモンスター二体を融合素材にしたダーク・ガイアとか笑えないんだけど・・・・。いくら事故率の高い最上級モンスターを使っているとはいえ、これ程の火力を叩き出せる融合は強力だ。今回はダーク・フュージョンだったから手札消費も荒いが、ダーク・コーリングからのこいつは鬼畜としか言えない。それに手札事故も十代には無縁の存在である。あくまで淡々と進める覇王は、スッとユーリに標準を定めた。

 

「バトル。ダーク・ガイアでユーリを攻撃!」

 

A6000 VS A4000

 

ダーク・ガイアは自ら作り出した隕石をユーリへと飛ばす。破壊に対して無敵の防御を誇るユーリはグロテスクな手の形をした両翼で隕石から身を守り、そして俺へと飛んで来た隕石の破片を、再び現れたザフィーラが止めてくれた。

 

「ザフィーラの効果発動! このカードを捨ててデッキから一枚ドロー!」

「ならばマリシャス・デビルでティアナを攻撃!」

「させるか! 攻撃宣言時にクラールゲホイルを発動! 俺のモンスター一体をデッキに戻し、バトルフェイズを終了させた後、デッキから夜天と名の付いたモンスターをLCを乗せて特殊召喚する。今まで守りをありがとなユーリ。ユーリを戻してデッキから夜天の将シグナムを特殊召喚する!」

 

表になったクラールゲホイルのカードからシャマ姉の魔力光のキューブがフィールドの中心に飛びだし、ピタリと止まると共にキーンと来る音と眩い光を発射した。ほとんど攻撃はできなかったものの攻守4000と破壊されないと言う鉄壁の守りでフィールドを守り続けてくれたユーリはデッキに戻り、新たにシグナムさんが登場した。

 

LC時空管理局8→9 シグナム1

A1800・D1400

 

「マリシャス・デビルを守備表示に変更し、カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 モンスター4 伏せ4 手札1 LP50

覇王 モンスター2 伏せ2 手札1 LP200

 

次のターン覇王のフィールドにはヘル・ゲイナーが呼び出される。マリシャス・デビルもその効果で二回攻撃が可能であり、更に攻撃力6000のダーク・ガイアも二回攻撃されたら俺は一貫の終りだ。しかもマリシャス・デビルが守備表示になった事で、戦闘で勝ってもヴィシャス・クローの効果で俺のライフは0になる。いよいよこのデュエルも終盤と言えるだろう。

 

「ドロー! 速攻魔法フォトンランサーを発動。右側の伏せたカードを破壊する!」

 

フェイトさんは左手で素早くフォトンバレットを形成して、俺が宣言したカードに向けて超スピードで発射してカードの裏の渦の模様の中心に穴をあけて破壊した。破壊したカードは安定と信頼の聖なるバリア-ミラーフォース。そう言えば入学当時の十代はこのカードや神の宣告とか、汎用性の高いカードを多く入れていたっけ。

 

「無限書庫を発動! 魔法・罠ゾーンのカードと自身をデッキに戻し二枚ドローする」

 

この二枚のドローに全てが掛かっている。覇王のもう一枚のリバースカードを破壊するカードと、二体の最上級E-HEROを倒すカードを同時に引かないといけない。しかし気配から察するに、デッキトップのカードだけではどうする事も出来ないので、二枚目のカードで何とかしなければならない。デッキトップにギュッと力を込めると、オブライエンから貰ったオリハルコンの眼が赤く光った。

ジムとオブライエンの想いがこの瞳に宿り、そして今俺に力を貸してくれるのか、俺の右手に二人の腕が重なっている感覚を覚えた。すると不思議とデッキトップのカードの気配が別のカードに変わった気がした。

 

「そうか・・・・。お前達がいるなら絶対逆転できるよな。俺は紫天の書を戻してデッキから二枚ドロー!」

 

なのはA4500→A4000

 

「来た! 時空管理局のLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚! 場のシグナムさんとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士シグナム! ツヴァイの効果でLCを取り除いて手札に加える」

 

LC時空管理局10→9 シグナム1

A2700・D2000

 

「面倒な。永続罠発動、デモンズ・チェーン。そのモンスターの効果を無効にする」

 

禍々しい暗い緑色の鎖がシグナムさんに目掛けて飛び、体とレヴァンティンに巻き着いて行動は勿論効果も封じられる。俺の手札は先程手札に加えたツヴァイともう一枚のコンバットトリックカードのみ。リバースカードも何も無い。だが・・・・。

 

「俺の勝ちだ」

「なに?」

 

守りのカードを使いきったこの時点で俺の勝ちが決定した。覇王には十代の様な感情が無く、淡々とデュエルを進めるのが特徴的な人格だ。それ故にもしもの時を想定していなかった。本当の十代だったら、なのはさん、フェイトさんとForceの派生が続いた場合、新たなシグナムさんの派生もあるのでは? と予想していただろう。だが覇王にはそんな感情が無いのでそこまで読んで来なかった。

 

「墓地のForce-evolutionの効果発動! 手札のツヴァイを墓地へ送り、このカードを手札に加える。そしてヴォルフラムがある時Force-evolutionは手札から発動できる!」

「手札から罠だと!?」

「祝福の騎士シグナムを生贄に、融合デッキからLS-Force005X-烈火の将シグナム-Gladiatorを特殊召喚する!」

 

今日三度目のForce-evolutionのカードからシグナムさんの元へ飛んでいく武器は、剣と盾のありきたりの組み合わせだが、それ故に安定性のある武器。左手に装着する盾は、持ち主の負担にならない様にコンパクトに作られており、よく見ると盾の先に発射口が見える。剣はなのはさんやはやてさんが装備するFortressを剣にした様な形をしており、刀身は日本刀の様に少し曲がっている。

一度シグナムさんから出たツヴァイが、シグナムさんの体を縛り上げるデモンズ・チェーンを砕き、再びユニゾンすると飛んで来た武器を持った。

 

LS-Force005X-烈火の将シグナム-Gladiator ☆10/炎/魔法使い/A3000・D2000

 

「シグナムさんの特殊召喚成功時、自身にLCを置く」

 

シグナムLC1

 

「またForce・・・・。だがその程度の攻撃力では我のモンスター達を倒す事は不可能だ。いや、マリシャス・デビルは可能だが、ヴィシャス・クローによりライフが0になる」

「ヴィシャス・クローを過信するのはいけないな。ヴィシャス・クローで止められるのは戦闘破壊のみ! シグナムさんの効果発動! 一ターンに一度フィールドのLCを一つ取り除き、属性を一つ選択! 次の相手のターンのエンドフェイズ時までその属性のモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する!」

「なっ!?」

「俺が選択するのは当然マリシャス・デビルの炎属性!」

 

LC時空管理局9→8

 

俺が属性を宣言すると共に、シグナムさんが右手に持ったグラディエーターのコアの様な丸い宝石が、炎を連想させる赤の光をボンヤリと放つ。これでマリシャス・デビルの攻撃対象封じとヴィシャス・クローの戦闘破壊耐性及びバーンダメージを回避できる。

 

「バトル! シグナムさんでマリシャス・デビルを攻撃!」

「「紫電一閃!」」

 

A3000 VS D2100

 

斧の様な翼で身を隠したマリシャス・デビルに対し、シグナムさんは左手に装着した盾から合金ニードル弾を放つ。杭の形をした弾丸はマリシャス・デビルの翼に埋め込まれ、マリシャス・デビルが苦痛の声を上げる。僅かに防御が緩んだその時を素早く見極め、右手のグラディエーターで悪に染まったHEROを切り裂いた。実戦とは思えない程綺麗な太刀は、自分より大きいHEROの体を真っ二つにした。

 

「マリシャス・デビルがやられたか。だがダーク・ガイアの攻撃力は6000。貴様のフィールドのモンスターでは届かない」

「それはどうかな? 覇王だか何だか知らないが、俺が知る本物の王様の強さってものを見せてやるよ! なのは様でダーク・ガイアを攻撃!」

「攻撃力4000のモンスターで?」

「速攻魔法ACSを発動! レイジングハートを装備したモンスターの攻撃力を2000上げる!」

 

なのはA4000→A6000 VS A6000

 

なのは様はACSから供給されるカートリッジを自分の周りに展開させた四つのブラスタービットと手に持ったレイジングハートに全て装填させ、普通ならコントロールできずに暴発してしまう様な量のカートリッジロードを行う。レイジングハートとブラスタービットの杖先に収束された桃色の魔力が、ゴゴゴゴ! とフィールドを揺るがし、足場が不安定になってきた。

 

「ハッハッハ! その二体を融合しておいて正解だったな! この世界で私の攻撃を100でもくらっていたら大変な事になっていたぞ!」

「クッ!」

「消し飛べ! ディバインバスターエクステンション!」

 

それディバインバスターだったのかよ! というツッコミは発射された砲撃の音で聞こえず、桃色の砲撃はダーク・ガイアに接近する。ダーク・ガイアは心なしか辛そうな顔をしながら両手で闇の球体を作り出して放ち、桃色の砲撃の進行を止める。なのは様は一向に笑い声を止めず「アハハハハ!」と狂った様に笑いながら砲撃を続けていた。一応攻撃力が同じなので、ダーク・ガイアの体を桃色の砲撃が飲み込む事は無く、二つの攻撃は相殺されて大爆発を起こした。

 

「ぐぅ! ダーク・ガイア!」

「レイジングハートの効果でなのは様代わりに破壊する」

 

なのはA6000→A4500

 

「馬鹿な! 覇王である我が!」

「ジムとオブライエン、いや、二人だけじゃない。亮さん、エド、そして俺の想いをその身で受けろ! フェイトさんでダイレクトアタック!」

 

A3300

 

「カッコつけちゃって。フォトンランサーファランクスシフト・・・・」

 

そう言うフェイトさんもカッコつけてパチンと指を鳴らし、計五つのフォトンスフィアを展開する。相手が十代だから手加減してくれるのだろう。隣にいるなのは様は不服そうにしているが、フェイトさんはスッと左手を前に付きだし、ただ茫然と目の前の光景を見ている覇王に向けて宣告を告げた。

 

「打ち砕け、ファイア!」

「ぐあああああっ!」

 

計五つのスフィアを毎秒四発撃つ攻撃を四秒続ける集中砲火。その数八十とフェイトさんにしては少ないが、それでも生身の人間に対しては十分過ぎる程の火力を持っており、土煙の中から覇王の悲鳴と、僅かなライフが削れていく音がフィールドに響き渡る。ポケットに入っているオリハルコンの眼が赤く光ると共に、土煙の中から優しい赤の光が輝いた。

たった四秒間、されど長い四秒間が終わると、覇王がガクッと膝を地面に付けそのまま前から地面に倒れた。

 

覇王LP200→-3100

 

「十代!」

 

爆発の途中に外れた兜がガタンと音を立てて地面へと落ちた。

慌てて十代の元へ駆け寄ると、突然装着していた覇王の鎧がスッと粒子の様にバラバラになって消えた。腕の中で眠る十代はいつものレッド寮の制服を着ており、スヤスヤと寝息を立てて眠っている。デュエルで負けた十代が未だにここにいる、それはつまりデュエルをしていた覇王の人格だけが消えて十代が戻って来たという事だろう。

タッタッタと足音が聞こえると、階段から亮さんとエドが走って来た。

 

「遊斗!」

「その様子なら無事に勝った様だな」

「はい。だがオブライエンは負けて・・・・」

「・・・・そうか」

 

オブライエンも負ける可能性はあった。いや、覇王が十代だと知っていた亮さんやエドそしてオブライエン自身、覇王に負けると予想していたのかもしれない。そう思うと何ともやりきれないが、今は悲しんでいる場合では無いので、俺はF・G・Dの力を解いていつもの姿に戻ると、寝ている十代を背負う。すると階段からまたタッタッタと誰かが走って来る足音が聞こえ、階段からダーク・グレファーがやってきた。

 

「は、覇王様はどこだ!?」

 

キョロキョロと辺りを見渡すダーク・グレファーを鬱陶しそうに睨みつけた亮さんは、床に落ちていた覇王の兜をダーク・グレファーの足元へ投げ、ヘルカイザーの瞳で言った。

 

「覇王は死んだ」

「ひ、ひいいぃ!」

 

覇王の兜を見た途端、ダーク・グレファーは尻持ちを付き四つん這いになりながら俺達の視界から去って行った。覇王がいなくなった今、覇王軍は統率を失って崩壊しただろう。残党が暴れ出すかもしれないし、まだブラック・マジシャン達との話が終わっていないので、一度魔法都市エンディミオンに戻るとするか。

 

「俺は魔法都市エンディミオンに戻りますが、二人はどうします?」

「遊斗の事も聞きたいし、一度そうしよう。いいだろ、亮?」

「構わん」

 

 

 




デュエル構成を練っていた時、勝手に覇王の手札を一枚増やしていたり、戻って来る筈のシュテルが戻って来なかったり、フュージョン・ウェポンで守備力が上がっていなかったり、一枚しか入れていないソニックムーブを複数枚使ったりとミスがあったので、無理やり覇王の手札を増やしたり、修正したりしました。もう三期だとアニメGXでも強欲な壷使ってないですし頑張って封印したのですが、その結果が強欲なカケラ二枚と言うね。


公式のアンケートで
カードカーDと強欲なカケラのどちらかをデッキに入れるとしたら? と言う公開処刑がありましたが、小説的にはカケラは助かります。


あと超融合では本来E-HERO呼べませんがOCG効果にしてしまうと漫画版HEROに頼らないといけないので普通にE-HERO呼びました。


それと覇王がネクガを使った時「墓地の、ネクロガードナー」って区切ってますけど、十代VSヤンデレ戦での十代の台詞の区切りが好きだったのでわざと区切っています。あれは地味だけど何故かインパクトある台詞だった。まあ十二次元宇宙を―――程じゃないですけど




LS-Force005X-烈火の将シグナム-Gladiator ☆10/炎/魔法使い/A3000・D2000
このカードは「Force-evolution」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが特殊召喚に成功した時、このカードにLCを1つ置く。
1ターンに1度自分のメインフェイズ時に以下の効果から1つ選択して発動する事ができる。
●フィールドのLCを1つ取り除き、属性を1つ宣言する。次の相手のターンのエンドフェイズ時まで、このカードが宣言した属性のモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずにそのモンスターを破壊する。
●LCを1つ取り除く事で自分のデッキの一番上のカードを裏側表示でゲームから除外する。自分が融合デッキから融合モンスターの特殊召喚に成功した時、この効果で除外したカード1枚を手札に加えることができる。この効果で手札に加えられるのは1ターンに1枚のみ。
自分のエンドフェイズ時にこのカードに乗っているLCを1つ取り除く。LCが乗っていないこのカードは融合デッキに戻る。






これでForceは最後となります、シグナムさんのオリカですね。このままだと三期最後で登場してしまうので、このタイミングで登場させました。
一ターン目の封魔の伝承者効果は考えていましたが、二回目のサイガールとハイパーライブラリアンが合体して半分に割ったような効果はやっつけです。手間のきる最上級でコスト必要で速効性がないのですが、シグナム本人がフィールドにいなくとも手札に加えられます。その辺りのバランスは実際に現物かゲームでやってみないと分からないので、強すぎるとの声があれば変えようと思います。



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第六十三話

宣言した通りすっかり投稿が遅れました。更新ペース安定しませんが完結に向けて頑張っていきます。



遂にブルーアイズのストラクが登場しましたね。強靭にして無敵! 我が魂! あの宣伝は今までで一番愛のある宣伝だった。そしてキサラの強さにドラゴンヌートが嫉妬。キサラとヌートを軸に、ブルーアイズとレッドアイズを展開するデッキを組みましたが、やはり事故率が酷い。あーだこーだとデュエル脳をフル回転させてとりあえずある程度まとまりました。



そして今回はおそらく皆さんすっかり忘れていたであろう結構重要なフラグを回収します。


覇王を倒し、十代を取り戻した俺達はヴォルフラムで魔法都市エンディミオンに戻っていた。十代を医務室のベッドで寝かせ、俺は亮さんとエドに事の全てを順に話した。破滅の光と王達の事、俺が王の中のF・G・Dの息子だと言う事、今この次元世界では戦争が起こっているのでそれを止めようと動いている事。二人とも、二つ目の俺の体の事に付いては今一実感が無いようなので、もう一度F・G・Dの力を解放して覇王とデュエルをしていた姿になると複雑な顔をしながらも納得した。

 

「遊斗の事は凄いデュエリストだと思っていたが、まさかここまでとはね」

「エド・フェニックスに褒められるなんて光栄だな。エドと亮さんは俺が知らない情報を持っていますか?」

「ああ。だが俺、と言うより今も後を付けてきている翔とオブライエンの情報だが」

「あれで隠れているつもりだったのであえて何も言いませんでしたが、やっぱり翔も何かあったんですか?」

「よくは知らん。ただ二人から聞いた話を纏めるとこうだ」

 

数分後、亮さんは全てを伝え終え「そこ等を歩く」と言って医務室から出て行った。亮さんから聞いた話を纏めるとこうなる。

まずこの次元にやって来る段階で三つのグループに別れて飛ばされた。一つが俺一人。二つが亮さんとエド。三つ目が十代、翔、万丈目、明日香、吹雪さん、剣山、ジム、オブライエン、それから・・・・そ、そう三沢だ。三沢はすぐにその三つ目のグループから脱退し、俺達と同じく次元の歪に飲み込まれた元セブンスターズの一人タニヤと行動しているらしい。

三沢が脱退した後、万丈目、明日香、吹雪さん、剣山は暗黒界の魔王ブロンに掴まり、十代は四人を助ける為にブロンとデュエルをした。しかし十代は四人を守る事が出来ず、目の前で四人は消えて行った。四人が掴まったのは十代が突っ走った所為というのもあり、少し頭を冷やさせる為にジムとオブライエンは翔を連れて少しの間十代を一人にした。そして三人が帰って来ると十代の姿は何処にも無く、翔はジムとオブライエンの元を離れて一人でどこかに行った。

それからジムとオブライエンは十代を探す為にあちこち動き回り、翔は生き残った万丈目のおジャマ・イエローと旅をしており、翔はそこで亮さんと再会したらしい。最もすぐに別れた様だが。翔が俺達を付けているのは、十代を行う事を最後まで見届ける為らしい。

 

「そっちはそっちで大変だったみたいだな。特に十代は」

「だね。僕と亮は雑魚と戦うだけだったからさほど苦労はしなかったが」

 

それからエドとさほど大事では無い、世間話の様なものをしていると、ベッドに眠っていた十代の口から息が漏れた。

 

「んっ・・・・、ここは?」

「起きたか十代」

「遊斗、それにエド。俺は一体・・・・」

 

覇王となった時の事を覚えていないのか、或いは起きたばかりで頭が回らないのか。どうやら後者だった様で、何を言えばいいのか迷っている最中、十代は全てを思い出したのか、急に両手で頭を抱え始め小さな嗚咽を漏らす。そして自分の手の平を見ると体を震わしながら。

 

「そうだ・・・・、俺はこの手で、みんなを・・・・。万丈目も明日香も剣山も吹雪さんもジムもオブライエンもッ!」

「・・・・お前の所為じゃない。だがお前に全く非が無い訳でも無いのも事実だ」

「遊斗。少し一人にさせておいてやろう。十代も混乱している」

「ああ。最低限の事は伝えておく。ここは俺のカード、艦船ヴォルフラムの中で今この船は魔法使い族がいるエンディミオンに向かっている」

 

それだけ十代に伝えるとエドと一緒に医務室から出た。扉が閉じると同時に、背中から十代の小さい泣き声が聞こえ、俺達は静かに医務室から離れて行った。エンディミオンに到着したのはそれから二時間後で、その三十分前に医務室に戻った俺は、この世界で体験した事全てを十代に伝えたが、十代はほとんど反応を見せずにただうずくまっていた。

 

 

 

 

再びエンディミオンに戻ると、ホワイトナイツと氷の女王、ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールが待っていてくれた。俺が安全無事に帰って来た、それはつまり無事に覇王を倒したと言う事であり、皆喜んで出迎えてくれた。

十代が覇王だと伝えてもデメリットしか無いので、ホワイトナイツにも黙って置く事にしよう。俺の友人であり当事者でもある、十代、亮さん、エドの三人も一緒に会議室に入れるように魔法使い族三人に願う。

 

「分かりました。ではご案内します」

 

かなり落ち込んでいた十代も本物のブラック・マジシャンの精霊に会えたのは嬉しかったのか、少しだけ笑みを浮かばせるが、それもすぐに消えた。ブラック・マジシャンが案内したのはこの前来た会議室と全く同じ場所。最も態々ここで話し合う事など殆ど無いのだが。初めに俺が席に付き、その後十代、亮さん、エドが座り、他の皆が席に座る。

 

「遊斗様がお帰りになられたと言う事は、覇王を倒したと言う事でよろしいのでしょうか?」

「ああ、覇王は消えた。覇王軍の統率も無くなり、自然消滅するだろう。念の為、残党が手を組まない様に、あの辺りを巡回させるようにしておく。これでいいよな?」

「はい。我等魔法使い族からも力に自信のある者を出しておきます。それとホワイトナイツ殿から聞いたのですが、遊斗様はヨハンと言う人間の少年を探しているとの事」

 

すると亮さんとエドの眉がピクッと動き、十代がドンと机を叩いて席を立った。

 

「ヨハンを見つけたのか!?」

「あ~、悪いみんな。十代、とりあえず座って話を聞け」

「あ、ああ・・・・。それでどうなんだ?」

「少年では無いのですが、妙な語尾を付ける中年の男性と角刈りの頭の女性が、つい先日ここから歩いて数時間程にある洞窟の近場にいたそうです」

 

妙な語尾を付ける中年の男性って言ったらあの人しか思い浮かばない。ただもう一人の角刈りの頭の女性は知らないな。そもそも角刈りの頭の女性がいるのか・・・・ってまあ、髪型は人それぞれだしな。あのデュエルキングの遊戯さんもかなり独特な髪形をしていらっしゃるし。

 

「クロノス教諭だな」

「ですね。その洞窟はどこにあるんだ?」

「今地図をお持ちします。ガール、取って来い」

「は~い!」

 

元気よく席から立ったブラック・マジシャン・ガールは短いスカートを揺らしながら部屋から出て行った。何でこの次元にクロノス先生がいるかは分からないが、理由がどうであれ、これからの目的が無い亮さん達はクロノス先生の元へ向かう筈。

 

「次の目的が決まったな。俺はクロノス教諭の所へ行く。遊斗、お前はどうする?」

「俺はもう少しここにいます。まだブラック・マジシャンの大事な話しとやらを聞いていないんで」

「そうか・・・・」

「僕も亮に付いて行く」

「お、俺は「お前は付いて来い。お前みたいな不抜けが居ては遊斗も迷惑だ」・・・・ああ」

 

もう少しオブラートに包んで欲しいものだが、甘やかすばかりでは何もならないし、十代は亮さんの元へ置いておくのがいいのかもしれない。実際俺は十代に何て言えばいいのか分からない。例え第二の人格の覇王が原因であれ、十代がその体でジムとオブライエンを殺し、沢山の精霊を苦しめたのには変わりは無い。そんな十代をどうやって励ませばいいのか、そもそも励ますのが十代の為になるのか。

・・・・でも一つだけ言える事があった。

 

「十代、お前には俺や仲間達がいる。E・HEROやネオスペーシアン達がいる。それを忘れるな」

「・・・・ありがとう」

「それはお前が元通りになってから言え」

「地図持ってきましたよ~」

 

元気よく扉を開けてきたブラック・マジシャン・ガールは俺の元へ広げた地図を持って来る。そして右手の魔法の杖を光らせると、クロノス先生が居たと言う洞窟の場所に黒い円を描く。地図の中心に描かれている城が魔法都市エンディミオンだから、ここから西へ進んだ所の様だ。両隣にいた亮さんとエドもこの地図を眺め、エドは二三頭を縦に振り「なるほど」と呟く。この中で何だかんだで一番しっかりしていそうな最年少のエドに丸めた地図を渡すと、エドは「助かるよ」と言ってジャケットの中に地図をしまう。

 

「ブラック・マジシャンの大事な話と言うのは俺達が聞いてはいけないものだろう。俺達は早速ここを出る」

「すまないが数人分の食糧をくれると助かる」

「頼みごとばかりですまないが、宜しく頼む」

「覇王軍を壊滅してくれたのです。これくらい些細なものですよ」

「じゃあ十代。今度会う時はいつものお前になって・・・・なくてもいいけど、せめてみんなの願いを成し遂げる為にヨハンを見つけておけよ」

「あ、ああ・・・・」

 

十代はぎこちない返事をしながら亮さんとエドと共に席を立ち、氷の女王に案内されながら部屋から出て行った。四人が出て行った後、ホワイトナイツは「では用事がありますので」と頭を下げて部屋を出て行った。あっと言う間にブラック・マジシャン、ガールと俺の三人だけとなってしまい、どうにも落ち着かない。

大事な話って何だ? 今後の精霊界の事? それとも魔法使い族との関係? 死んだ王の代わりの者を探すとか?

ここ一週間で立場が一転した所為で様々な事が頭を過り、段々と頭が混乱して来た。そもそも数時間の休息があったとはいえ、数時間前は覇王となった十代と命がけのデュエルをしたり、オブライエンが消えていく姿を見たりと、色んな事が一気に起こって俺も疲れていた。

 

「では、今から非常に重要な事をお伝えしようと思います」

 

そんな俺の心境を察してくれたのか、ブラック・マジシャンは勿体つけずに、全国の校長先生に見習って欲しい短い出だしから、本題に入ってくれた。

 

「実はここ最近、三週間程前からとある地点に非常に強大な時空の歪が現れています」

「じくうのひずみ? えっと、それは俺や十代達がこの次元に来た時の歪が未だに残っていたって事か?」

 

聞き覚えのある時空の歪という単語。前の砂漠の次元から俺達の次元に戻った時の余波で現れた、文字通り歪で、俺達はそこを通ってこの次元にやって来た。しかし俺は感の悪いと言うか、さほど頭がよくないと言うべきか、首を横に振るブラック・マジシャンの姿を見て再び頭を混乱させ始めた。

 

「それとは別です。遊斗様がこの次元に来る数日前から起こっており、その時空の歪は着々と大きくなってきています」

「はぁ・・・・。それで、えっと?」

「勿体ぶり過ぎだよお師匠様。ほら、その歪を広げている犯人を言わないと」

「分かっている。その時空の歪を広げている者は、名前を持たなかったカード・・・・」

 

そう言ってブラック・マジシャンは俺の目をジッと眺め、ゆっくりと唇を動かした。

 

「フェルシュトラーフェ」

「ッツ!? フェル!?」

 

前の次元で俺やみんなを助けてくれた三幻魔の力を持っている少女。予想していなかったその名を聞いた途端、俺はガタンと音を立てて座っていた椅子を倒して勢いよく立ち上がった。

何故立ち上がったかは分からない。フェルがそんな事をする筈が無いと言いたいのか、何故フェルがそんな事をしているのかと聞きたいのか。ただその名を聞いた途端ジッとしていられなかったのは頭で理解出来た。

ブラック・マジシャンはローブの中から、占い師が使っていそうなバスケットボールより二回り程小さい水晶の玉を机の上に置き、あくまで冷静なトーンで説明を続けていった。

 

「彼女が何故そんな事をしているのかは分かりません。ただ彼女を調べる内に分かったのが、彼女こそ本来なら存在する筈の無いカードを呼び寄せた張本人です」

「なっ!? ・・・・本来なら、存在する筈の無いカード・・・・」

 

二年前から度々聞く機会があった。本来なら存在する筈の無いカード。例えばカオス・ソーサラーが使っていたエフェクト・ヴェーラー。梶木さんが使っていた忘却の海底神殿。F・G・Dが使っていた四征竜。覇王が使っていたE-HEROもそれに当たるのかは知らないが、どれだけ調べても、どこの誰が使っているとかどんなパックに入っていたかなど、正体を掴めないカードを俺はこの二年間と数ヶ月の間に出会っている。

そもそも事の発端は、LSが本来なら存在する筈の無いカードを生み出した原因だと言われたのがきっかけだった。LSが強力な力を持っているという事で精霊達が襲って来て、そしてそれから王達が襲って来て、王達の正体が破滅の光だって気付いて・・・・。

 

「そういえばその問題、まだ解決していない・・・・。色々あり過ぎてすっかり忘れてた・・・・」

「二年前の文化祭の時に私が言った通り、原因はLSじゃ無かったんだよ。あっ、今フェルシュトラーフェはLSみたいだけど」

「おそらく彼女は強すぎる余り存在するだけで、時空を歪め、そこから様々な時間や世界のカードを運んでいるのかと」

 

まるでフェルが存在してはいけない様な言い方にムッと来たが、ありのままを話しているブラック・マジシャンに当たっても何の解決もしない。それなら混乱して疲れきっている頭を少しでも回復させて、冷静に物事を判断した方がいい。三十秒近い間無言で考えていると、さっきのブラック・マジシャンの台詞と、ふと父さんの考えがクロスした。

フェルが存在するだけで時空を歪めて、色んな時間のカードを運ぶ? 確かにそれならいくら調べても正体が掴めないカードがあるのにもまだ納得できる部分もある。だがそれなら、この時間にも絶対にある筈の未来のカードが無い。

 

「合計レベル・・・・」

「は?」

「フィールドのモンスターのレベルを足す事で召喚できるモンスター群。お前達はそんなカードを知っているか?」

「ううん」

「いえ・・・・。そんなカード見た事も聞いた事もありません」

 

二人の返答は予想通りだった。逆に首を縦に振っていたら俺は混乱の余り大声を上げていただろう。なにしろ質問した俺すらも知らないカードだから。だがそれ等のカードは絶対に未来に生まれる。それは断言できるのだ。

 

「俺の父さん、ジェイル・スカリエッティが考えている新しい召喚方法だよ。どんな呼び方をされるのか、どんなカード枠になるのか、どんな効果を持っているのか全く分からない。だが父さんは絶対にそれらの召喚方法を持つモンスターを作り出す」

「え? だって未来の事なんでしょ? 何でそんな自信満々に「父さんならやりかねない」は?」

「どうしてそんな召喚方法を思いついたのかは知らないが、LSの一部の融合モンスターはその試作段階と言ってもいい。あの人が態々試作までしたんだ。絶対何らかの形でその召喚方法を復旧させるに決まっている」

 

未来の出来事になるのでそれを証明する方法は無いが、その召喚方法を必要とするモンスターは絶対に現れる。根拠も証拠も無い。強いて言うならジェイル・スカリエッティという名が根拠でもあり証拠である。

 

「つまり俺が言いたいのは、フェルが様々な時間のカードを移動させるのなら、どうしてその召喚方法を必要とするモンスターがいないのかって話だ」

「さ、さあ。我々は本来なら存在する筈の無いカードの正体が、未来や別次元から来たカードであり、それをフェルシュトラーフェが運んでいると言う事しか・・・・」

「本人に聞かないと分からない、か。他にも分からない事がいくつかあるし、フェルを放って置くわけにもいかない。フェルが居る場所はどこだ?」

 

問うとブラック・マジシャンは再びローブの中から精霊世界の地図を取りした。ブラック・マジシャンの行動に連動し、ガールは先程ブラック・マジシャンが机に置いた水晶に、手の平から桃色に光るエネルギーを送り込み始める。ブラック・マジシャンが地図を広げるのと同じタイミングで、ガールの魔力を供給されていた水晶に映っていた俺の顔が消え、突如砂漠地帯を上から見た景色が映し出される。かなり気候が悪いその砂漠は、ビュゥゥと拭き叫ぶ風が大量の砂を舞わせて視界を霞ませるが、その中でもハッキリと確認できるものがあった。それはポツンと宇宙の様に黒く、白い小さい粒が無数にあるドーム状の空間。

 

「あの中にフェルがいるのか?」

「うん。そしてこの砂漠はここ」

 

ガールは俺の前に広げられた地図の白い空間を指す。指した場所を中心に半径五センチ辺りの場所は真っ白で、山や建物や森等が細かく書いてある地図の中で唯一浮いている場所というのがやけに気になる。実際その事を質問すると理由は簡単で、この次元での砂漠の地域はここしかないので空白にしているらしい。砂漠なら砂漠で砂の絵を描けばいいと思うのだが、後々何か発見した時にすぐ付け加えられるようにだと。

どうでもいい話になったので、一度閑話休題。

兎に角その砂漠にあるドームの中にフェルが居ると言う事だ。精霊界の事で色々やらないといけない事もあるが、フェルの話を聞いたからには真っ先にフェルを優先したい。俺やみんなを助けてくれた命の恩人って言うのは勿論、単純にあの子は危なっかしくて放っておけない。

 

「俺はいますぐその砂漠に向かう」

「待って下さい。遊斗様は覇王とのデュエルでお疲れになっています。せめて今夜はお休みになって下さい」

「けどっ!」

「いざという時に万全な状態でなければ、彼女を助ける事が出来ないかもしれません」

「ッツ・・・・。分かった。じゃあ明日朝一に出発する」

 

上手くブラック・マジシャンに丸めこまれたが、確かにもしもの時に万全の状態で無いと困るのは俺自身だ。そのもしもがどんな状況なのかは分からないし、どんな理由があってフェルがあんな事をしているのかは分からないが、強大な力を持っているフェルが次元の歪を大きくしているのは事実。万全の状態でいて損する事は無い。

ブラック・マジシャンに案内された部屋に入り、随分と豪華なベッドにドサッと横になって「ハァ~」とため息を吐く。覇王化した十代。未だに掴めないヨハンの行方。いなくなってしまった万丈目、明日香、吹雪さん、剣山、ジム、オブライエン。クロノス先生と角刈りの女性。次元の歪を広げているフェル。

思えば今日一日で色んな事を聞いて、色んな事があった。ドラゴン族の国にいたのが何ヶ月も前の様に感じる程長い二日間だった。

 

「・・・・どこに行ってたと思ったら、まさかこの次元にいるなんて・・・・」

「フェルの事が気になる?」

 

ベッドのスプリングが軋む音と共に、アルトの心地よいトーンが耳に入って来た。視線を動かした先にはフェイトがベッドに座っており、俺はフェイトの質問に首を縦に振って答えた。

 

「前の次元でみんなの力が弱まっていた時にな、フェルに命を助けてもらったんだ。その時フェルはエクゾディアをいとも簡単に倒したり、みんなに力を与えたりしてくれた。ユベルとのデュエルもフェルがいなかったら負けていたし、そもそもデュエルする前に俺は死んでいた」

「うん。私達も今度会ったらお礼しなくちゃね」

「ああ。喜んでくれるよ、きっと・・・・」

「あの子の事、放っておけないんだ?」

「そうなるのかな? あの子は強力すぎる程の力を持っている。純粋故に誰かに騙されたり、誰かを悲しませる事があるかもしれない。それが心配でな。大丈夫、こんな可愛い彼女が居て浮気はしないよ」

 

横になっていた手を上げて、座っているフェイトの頬に添えて優しく撫でる。心地よかったのかフェイトは少し目を細めながら笑みを零し、ゆっくりと俺の隣に倒れてきてベッドに横になる。カーテンの隙間から光るフェイトの顔がとても綺麗で、一緒のベッドに横になっているのにも関わらず、全く邪な心が出ない程美しい姿。

 

「知ってる」

「ん。ならいいんだ。それとさ、ふと思ったんだけど、フェルがこの次元にいるって事は、砂漠の次元に残っていたヨハンやユベルもこの次元にいる可能性があるかもしれないな」

「確かに・・・・。私達と別れてからフェルが次元移動をしてないなら、ヨハンとユベルがこの次元にいる可能性は高いかも」

「先に十代に伝えておくべきだったな。そうすれば少しでも希望を与えてやれたのに」

「そうだね。でも十代なら大丈夫。十代もきっと立ち直る事が出来る」

「ああ、あいつなら絶対に大丈夫だ。俺達は俺達に出来る事を頑張ろう」

 

 

 

 




安定のデュエル脳としか言いようの無い超展開。うん、細かい理由とかそういう難しいのは作者には無理です。フェル=本来なら存在するはずの無いカードの原因って深く考えずに結び付けてくれたら幸いです。


時々出てきたGX時代に無いカードとかは主にフェルの力で運ばれた物と思っていただいて構いません。ただ遊斗が作中で説明したカードとかは、この時代に元々あるカードです。


遊斗の出生と、本来なら存在する筈の無いカード。そして後者はスカさん=シンクロ召喚の部分をちょっぴり入れております。主にこの二つを中心にフラグを立てて来ました。そしてこのフラグを回収して三期終了。以降は未だに構成していない四期という流れでやっていこうと思います。
遊戯王GXの二次創作ではおそらく二期の終わり~三期が物語にオリキャラを混ぜる一番の山場だと思うので、ここを乗り越えたら完結まで近いんじゃないかな~(フラグ)



誤字脱字などありましたらお願いします。


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第六十四話

やたらと文字数が少ないおかげで早く投稿することができました。次回が三期の最終回となります。相変わらず原作との絡みが無いですが、原作のサイドストーリー的な感じと思っていただければ。


もうそろそろダウンロード発売が開始されるTF6ですが、ほとんどのサイトではvitaでプレイ可能と書いてありますが、一部のサイトではvitaではプレイできないと書いてあるので少し不安な気持ちがあります。数年前のゲームなのでカードプールが少なくとも組めるデッキは大量にあるし、pspでやっていた頃は5Dsを全く見てなかったので、是が非でもやりたいんですよね。





翌日の早朝。昨日ブラック・マジシャンに宣言した通り、俺は朝一にエンディミオンを出て砂漠へと向かっていた。道中特にトラブルも無く、エンディミオンを発って六時間程度で砂漠地帯に到着した。ヴォルフラムの外から見る荒れる砂漠地帯は、水晶に映っていた時より荒れており、あちらこちらにある竜巻が、砂や岩石を吹き飛ばしていた。それはフェルがいるドームに近付くにつれて勢いを増し、遂にはヴォルフラムでさえ進行できなくなる程の竜巻と砂嵐になって来た。

 

「私達もこの砂嵐の中飛ぶのは厳しいから、ここからは歩きになるね」

 

ガラス越しに映る、何十本もの竜巻と薄らと見える黒いドームによって起こっている悪天候になのはさんは苦笑しながら告げる。いくらF・G・Dの力を使えるようになったとはいえ、俺にはこの悪天候を前に進む自信は無く、なのはさんと同じ様に苦笑するしか出来なかった。そんな俺の心境を察してくれたのか、後ろにいたヴィータさんが「大丈夫だ、あたし等二人がバリアを張るからな」と言ってくれた。

 

「助かります。じゃあ行きましょう」

 

余り大人数で行動する意味も無いので、俺となのはさんとヴィータさんの三人で移動する事にした。何故この二人かと言うと、堅い防御力を持ち、尚且つ前衛と後衛で相性のいい二人だからだ。精霊になる前も、よくこの二人でコンビを組んで任務をしていたと言う。ヴォルフラムから降りてズシャと砂漠に着地すると、早速球体状の桃色のバリアと紅のバリアによって俺達三人の体は、吹き荒れる風や、飛ばされる砂や岩石から守られた。

相変わらず魔法って便利だな~、と感心しながらヴィータさんの小さい背中に付いて行きフェルがいるドーム状の空間へと向かう。

 

「しっかし凄ぇ砂漠だな。あたし等も色々な場所に行って来たけど、ここまで荒れる砂漠は初めてだ」

「仮にも混沌幻魔を名乗ってるフェルが中心に居ますからね」

「あの子も昔の私とそっくりな顔なんだよね~。遊斗に見せてもらった、ユベルの混沌幻魔みたいな見た目じゃなくてよかったよ」

「同感です」

 

融合素材の三人はなのはさんとフェイトさんとはやてさんだからな。美しい容姿を持つあの三人が融合してアーミタイルみたいなのが出て来たら、何か色々と残念だ。けど改めて思い出してみるとアーミタイルの大きさは、三幻魔を融合しているだけあり暴走状態のナハトヴァールと同じかそれ以上だった。体積ではナハトが勝っているかもしれないけど、高さではあっちの方が大きいだろうな~。

 

「あたしからすれば、これ以上お前に増えて欲しく無いんだがな。シュテルみたいに賢いならともかく、お前は一人でも十二分に面倒だ」

「え~、酷いよヴィータちゃん」

「でも実際、なのはさんの派生ってかなり多いですよね。シュテルになのは様に三幻魔にフェル。Forceはちょっと違うから省きますけど。なのはさん的にはどんな感じなんですか?」

「ん~、みんな姉妹みたいで面白いよ。顔は似てるけど性格は全然違うし」

 

空の様に広い心を持っているなこの人は・・・・。自分と同じ顔の奴が自分の周りに大量にいたら、想像しただけで嫌だと思うんだが。

なんて会話していると黒いドームの手前まで来ていた。流石Sランク級の魔導師が防御に徹しているだけあり、バリアの中に砂が飛んできたりする事は無く、岩石が飛んできても弾き返したりと、バリアの中に害は一切無かった。

しかし無事にドームの麓まで来たのはいいが、中に出入り出来そうな場所は無い。あったらあったで不自然なのだが、中に入れないとフェルと会う事すらできない。ヴィータさんは試しにグラーフアイゼンで黒いドームを叩こうとすると、グラーフアイゼンはグニュリと黒い空間に呑み込まれた。慌ててグラーフアイゼンを引っこ抜くと、グラーフアイゼンの赤と銀の装甲は正常なまま俺達の前に戻って来た。

 

「入れるみたいだね」

「ですね・・・・」

「安全かどうか分からないけどな」

「大丈夫ですよ。中にいるのはフェル何だから通してくれますって。じゃあ行きましょう」

 

ここに来て引き返す訳にはいかない。先の見えない空間に足を踏み入れるのは怖いが、先陣を切ってドームの中に入った。中に入ると、先程まで叫んでいた砂漠の風の音がピタリと止み、シーンと何の音も無い空間に一転した。ドームの中はまるで宇宙空間の様で、星の様に輝く白い点と、宇宙の様な黒しかそこにはなかった。クルッと後ろを向くと、そこには既になのはさんとヴィータさんが居り、辺りをキョロキョロと見渡していた。

 

「何も無いですね」

「そんな事無いみたいだよ。ほら」

 

前を指したなのはさんの指先を見ると、そこには先程まで無かった白く光る洋風の扉が置かれていた。こっちに来いと言うフェルのメッセージなのかもしれない。足場の見え無い場所をコツコツと足音を立てて歩く感覚は気持ち悪く、少し早足になって扉へと近付く。そしてドアノブに手を当て、スーと深呼吸をしてゆっくりとドアノブを回して扉を開ける。

すると先程まで9割以上が黒で埋められていた空間は一転し、世界の終りの様な不気味な荒野が広がっていた。空は心地よい青空とは程遠い暗い色が混ざった不気味な青が広がり、黄色い稲妻が天地を行き来して轟雷を鳴らし、割れた地面から覗くマグマが爆発して天へと昇る。寒い様で熱く、空気が綺麗な様で汚く、重力が地球の倍ある様で半分も無い様な、言葉では表せない不気味な空間。

そして扉から出た俺達の視界の中央にいたのは、なのはとそっくりな容姿を持つ黒のドレスを着た混沌幻魔フェルシュトラーフェ。

「いらっしゃい遊斗」

 

フェルらしからぬ落ち着いた挨拶が、この不気味な空間に重なってより一層不気味に感じられた。そんな感情が表に出ていたのか、フェルはクスクスと笑みを浮かべて小さい唇を動かした。

 

「変な遊斗。私に会いに来てくれたんでしょ?」

「私?」

 

フェルの一人称は女の子ではかなり珍しい僕。普段なら見た目にあった年相応の笑みを浮かべて飼い犬の様に人懐っこいオーラを放っているが、今目の前にいる少女は普段のフェルとは正反対のオーラを放っており、明らかにいつものフェルでは無い。

フェルとの面識が薄いなのはさんとヴィータさんもその変化に気付いたのか、デバイスを構えて目の前の少女に警戒する。

 

「お前、何者だ?」

「フフッ、混乱してるね。せっかくここまで来たんだから私の知ってる事全部教えてあげる。だけど私の正体をすぐに教えても面白くないから、この質問には最後にしか答えないわ」

 

俺の感情とは裏腹に嬉しそうなその雰囲気は決して気分がいいものでは無く、数秒間目の前の少女を睨みつける。しかし混沌幻魔であるフェルを乗っ取っているだけあり、俺如きの睨みではビクともせず、彼女の好意に素直に甘えて質問をする事にした。

 

「・・・・。じゃあまず、何故次元の歪を大きくしている?」

「簡単だよ。君達LSに力を送った時に失った力を取り戻し、そして更なる力を手に入れる為さ。普通のカードじゃない私は次元の歪にある膨大なエネルギーを吸収できるからね。でも驚いたよ。三幻魔を融合してようやくカードとして収められるのがフェル(彼女)だよ? まさか力を送っただけでこんなに疲れるなんて、LSもかなりの力を持ってるよね。まっ、そのおかげで私が出てこれたんだけど」

 

最後の一言が気になったが、それは目の前の少女の正体を聞いた時に解るだろう。少女の口から紡がれた言葉を忘れないようにしっかりと頭に刻みながら、次の謎を頭の中に浮かばせる。昨日のブラック・マジシャンとの話の時に明かされ無かった謎。

 

「フェルが存在するだけで様々な次元や時間のカードを運ぶのは本当か?」

「ええ、その通りよ」

「・・・・俺の父さんは今までに無い、新たな召喚方法を作ろうとしている。あの父さんがやるんだ、未来に新しいモンスター群が出る筈だ」

「? ・・・・ああ、ひょっとしてシンクロ召喚の事を言ってるの?」

「シンクロ、召喚?」

 

全く聞き覚えの無い単語。最後に召喚と付くから、儀式召喚や融合召喚の様なものだろう。

 

「未来に現れる召喚方法よ。呼び出したいシンクロモンスターのレベルと同じになるように、フィールドのモンスターを墓地へ送る。つまりあなたが聞きたいのは、未来に現れるシンクロモンスターが、何故この時間に現れないのか。そう言う事でしょ?」

「ああ」

 

父さんがレベルを必要とする召喚方法をシンクロ召喚と名付けたと仮定するなら、その質問で間違いない。目の前の少女は再びクスクスと小さく笑い、それからすぐに俺の質問に答えてくれた。その小さい口から出てきたのは、しばらくの間茫然としてしまう程スケールが大きい話だった。

 

「それは私も上手く言葉で説明できないから困るんだけど。何て言うのか、運命、この言葉が合ってるのかな? 彼女は時間を歪めて様々な時間から様々なカードを運んでしまう。けどその時代に絶対に存在してはならないカードを運ぶ事が出来ない。遠い未来、そのシンクロモンスターが辿る運命がある。だけどこの時代にシンクロモンスターがあったらその運命は滅茶苦茶になっちゃう」

「うん、めい・・・・?」

「最初に言ったでしょ、言葉で説明するのは難しいの。あくまで運命って言葉を使ったけど、世界の抑止力、時間の修正。兎に角目に見えない力が抑えているって言ったら分かる?」

「まあ、何となく」

 

そう答えると少女はまるで先生の様に「よくできました~」と手をパチパチと叩いて、見た目にあった年相応の笑みを見せた。

 

「・・・・じゃあ次。砂漠の次元から元の次元に戻った時、なんでフェルは俺の元を離れた?」

「その質問は私の正体に付いても話す事になるけどいい?」

 

つまりこれ以上質問は受け付けないと言う事だろう。他に気になる謎は無いので、後ろにいるなのはさんとヴィータさんが首を振るのを見て、俺もコクンと首を縦に振った。少女は「私の正体って言っても大した事無いんだけどね~」と落ち着いた表情で言った後に、その正体を暴露した。

 

「私の正体はフェルシュトラーフェに宿るもう一つの人格」

「もう一つの人格?」

「そう。存在するだけで様々な次元や時空に存在するカードを運んでしまう彼女の強大すぎる力は、とても一人でコントロールできる物じゃ無かった。だから彼女は無意識の内にもう一つの人格を作り、自分の力を半分に減らして力をコントロールした。その時生まれた人格が私」

 

もう一つの人格を作り、負担を半分にしても存在するだけでカードを運んでしまう・・・・。フェルの持つ力は俺の想像を越える程の力を持っているのかもしれない。今の今までフェルは自分の中にもう一つの人格がある等一言も言わなかったし、そんな素振りも見せなかった。先程彼女が行った通り、無意識の内に人格を作っていたため、今まで気付かなかったのだろう。

そして一番初めの質問の時に彼女が口にした「そのおかげで私が出てこれたんだけどね」という言葉。何となくだが何故もう一つの人格が表に出ているか分かって来た。

 

「お前はフェルがみんなに力を与えて弱っている間に表に出てきたって事か」

「正解。で、それが分かった遊斗は私をどうするつもり? 元の人格を表に出す為に私を倒す?」

「お前がその要件をすんなりと受け入れてくれたら戦わない。けど・・・・」

 

こいつは一番初めの質問の時、もう一つ重要な台詞を放った。「更なる力を手に入れる」と。今までの話が全て本当なら、より強大な力を求めている目の前の少女はとある行動に出る筈。その推理に至ったキーワードはついさっき彼女が説明してくれた、人格を二つにする事で力を半分にしたという発言。

目の前の少女はより一層警戒を強めた俺を見て、俺の思考に気付いたのか、先程まで浮かべていた笑みをスッと消して、なのはと同じ顔とは思えない悪魔の様な瞳と冷たい表情で俺を睨みつけた。

 

「気付いたみたいだね。そう、私は本来の人格を消してこの体に宿る力を全て私の物にする」

「ッツ! やっぱりそうか・・・・。何で、何でそんな事をしようとする! たった少ししか話していないが俺には分かる! フェルはこれ以上の力を求めていない!」

「逆に私が質問したいよ。何で本来の人格は力を全て自分の物にしなかったのか。コントロール出来なくても力は使える。その力を使って何でこの次元世界を滅茶苦茶にしなかったのか。君から実体を貰ってからもそう。彼女はただ次元世界を回って色んな物を食べたりするだけで、一度も破壊をしようとしなかった。私には理解できない」

 

今の一言で分かった。これ以上こいつにフェルを帰してくれと説得するのは意味が無い。そしてこいつにフェルの力を与えるのはダメだ。フェルの純粋な心が光りとするなら、こいつの歪んだ性格は闇。そんな危険な奴を放って置くわけにはいかないし、命の恩人であり仲間でもあるフェルが苦しんでいる。

後ろで待機していたなのはさんとヴィータさんが融合デッキに戻ると共に、俺はF・G・Dの力を解放してデュエルディスクを起動させる。F・G・Dの力を解放すると共に発生した風が三色のメッシュの入った髪を靡かせると共に、奴は自分の腕に炎の様にユラユラと揺らめく黒い炎を纏わせた。

 

「デュエルだ! 俺が勝てばフェルを帰して貰う!」

「フフッ、いいよ。本来の人格を消すまでの暇つぶしには丁度いいね」

「「デュエル!」」

 

 




今回は5500文字と今まででもかなり短い方です。まあ次回のVSフェルのもう一つの人格戦では長くなると思いますが。

元々フェルと戦う予定はあって戦う理由もザックリと決めていたのですが、いざ文にすると色々と絡み合わない点が多かったので、構成していた内容を全てリセットしました。体調不良の他にもそれが理由で更新に時間がかかりました。その結果がつい数話前と同じ二重人格って言うね。


しかしグダグダな点も多々ありますが、次回で遂に三期完結と思うと達成感があります。


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第六十五話

投稿が遅れてすいません。自分も更新がしたかったのですが、リアルの方で色々あって執筆の時間がありませんでした。それで同じような理由でこれから二ヶ月間更新ができなくなるかもしれません。
ひょっとしたら二ヶ月間空く前に一話ぐらい投稿できるかもしれませんが、それもできない可能性の方が高いです。

更新ペースがガタ落ちですが、リアルの事情なのでご了承願います。


あともう一つ更新が遅れた理由は、今回の文字数です。
一期のボスが20000前後、二期が25000弱、今回は・・・・ね。

初心者のデッキ構築の様に、あれやろうこれやろうと考えていたらいつの間にか文字数が増えていました。




「先攻は私が貰うわ。ドロー。フフッ、D-HEROダイヤモンドガイを召喚」

「なっ! エドのカード!?」

 

A1400・D1600

 

去年一度だけエドとデュエルした時に活躍した、体からダイヤモンドを生やしたアメリカン風のタッチのHERO。D-HEROはエドの父がエドに上げた、エドしか使う事ができないHERO。あらゆる次元や時間からカードを運ぶ為、世界の抑止力を受けないカードは全て自分の物に出来るって事か。

エドのパーソナリティであるD-HEROを当たり前に使うのは気分のいいものでは無い。

 

「エドのカードをッ」

「勘違いしないで。別に彼から奪った訳じゃないわ。それそのエドって子も今はもうこの次元には居ないみたいだし」

「どういう事だ!? まさかお前が!?」

「する訳無いでしょ。デュエルで負けたんじゃないの? さっ、行くよ。ダイヤモンドガイの効果発動。デッキトップをめくり、それが通常魔法だったら次のターン発動できる。デッキトップはトレード・イン。次のドローが確定ね」

 

エドの事も気になるが、エドの心配をしながら戦って勝てる相手でも無い。エドには申し訳ないが深呼吸と共に一旦エドの事を忘れ、目の前の敵に集中する。普段なら唐突に何かを忘れて、一つの事に集中するのは困難だが、デュエルとなると話は別だった。ダイヤモンドガイを眺め、そのモンスター効果の厄介さを再認識した時には、デュエルに集中していた。

ダイヤモンドガイは魔法カードを発動する時にコストを必要としない。レベル8のモンスターを捨て二枚ドローするトレード・インは強欲な壺と同じ二枚ドローするカードに早変わりだ。

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

フェル モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「俺のターン!」

 

次のターン二枚ドローが確定している今、出来るだけ素早く展開して奴へ後れを取らない様にする。奴のデッキがD-HEROなのか、ダイヤモンドガイだけを入れているのかは分からないが、ダイヤモンドガイは早めに倒しておきたい。

 

「フィールド魔法ミッドチルダを発動し、カートリッジロードを発動。ミッドチルダにLCを乗せ、そのLCを生贄にはやてを召喚! 自身とミッドチルダにLCを乗せる」

 

ミッドチルダ0→1 はやて1

A2000・D1700

 

「闇の書をはやてに装備」

 

はやてA2000→A2300

 

「そしてはやての効果。自身のLCを取り除き、このターン二回攻撃を可能にする」

 

LCはやて1→0

 

「バトル! はやてでダイヤモンドガイを攻撃!」

「ディアボリックエミッション!」

 

A2300 VS D1600

 

シュベルトクロイツの先に黒い魔力が集まり、サッカーボールより二回りほど大きい球体となる。はやてがシュベルトクロイツを振り下ろすと共に、放たれた球体がダイヤモンドガイに着弾。黒い球体は巨大なドーム状になってダイヤモンドガイを奴ごと呑み込み、凄まじい攻撃を与える。

 

「闇の書にLCを乗せる」

 

LC闇の書0→1

 

「はやてで二回目の攻撃!」

「永続罠発動、メタル・リフレクト・スライム。攻撃力0、守備力3000の罠モンスターとなる」

 

表になったカードの絵から、銀が混ざった巨大なスライムが現れ、奴の盾となって鉄よりも堅くスライムの様に柔らかい特殊な防御でディアボリックエミッションを防いだ。ダイヤモンドガイの次は罠モンスター・・・・。奴のデッキは何だ?

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時にカートリッジロードを手札に加える」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ2 手札2 LP4000

フェル モンスター1 伏せ2 手札3 LP4000

 

「私のターン。墓地のトレード・インの効果発動。デッキから二枚ドロー。ワン・フォー・ワンを発動。手札のモンスターを墓地へ送り、デッキからレベル・スティーラーを特殊召喚」

 

A600・D0

 

レベル・スティーラー。と言う事は上級、最上級モンスターを多用するデッキ。レベル・スティーラーは召喚以外の方法で生贄にする事はできないので、フィールドの三体を生贄に特殊召喚する最上級のD-HERO、ドグマガイが出てくる事はまず無いだろう。つまり奴のデッキは少なくともD-HEROでは無い。

 

「戦士の生還を発動。墓地のダイヤモンドガイを手札に加えてそのまま召喚。効果を発動。デッキトップのカードは終わりの始まり。よって次のターンの効果発動が確定」

 

二回連続でダイヤモンドガイの効果を成功させたか。運がいいで済ませられるならそれに越した事は無いが、デュエリストの感がダイヤモンドガイを放っておいたら次々に通常魔法を発動されると告げている。デッキトップを操作しているのか、デッキが応えてくれているのか。デュエルモンスターズは人智を越えた力を持っているので理由なんて分からないが、奴は自らのデッキを操っている。

 

「最高のデュエルにする為の最初の1ページ。それがこのモンスター。フィールドのメタル・リフレクト・スライム、レベル・スティーラー、ダイヤモンドガイを墓地へ送り、アルカナフォースEX-THE LIGHT RULER(ザ・ライト・ルーラー)を特殊召喚!」

 

AD4000

 

三幻神、三幻魔と同じ攻撃力守備力共に4000の最上級モンスター。それは余りにも地上にいる生物とは違い過ぎる為、全体像をどう説明していいのかが分からない。ただ特徴的な部位が三つ。黄金の瞳光らせる俺の体よりも大きい一つの巨大な目。胴体の下にはおそらくコアであろう巨大な丸い宝石。そして胴体から伸びる巨大な二体の細長い竜。

 

「アルカナフォース・・・・。そして大アルカナから外れたカード。斎王が使っていた切り札・・・・」

「そうみたいね。私はあなた以外の人間に興味ないから知らないけど。あっ、あなたは人間じゃないのよね。気を悪くしないでね」

「別に気にして無い」

「そう? ありがとう。さて、ライト・ルーラーの効果。特殊召喚に成功した時、コイントスを行い、その結果で別々の効果を得る」

 

ライト・ルーラーの頭上に現れたライト・ルーラーのカードが、時計回りにゆっくりと動き、元の向きになるとピタリと止まった。コイントスの結果は表、コイントスを行うカードのほとんどは表がメリット効果の事が多い。ライト・ルーラーの存在は十代から聞いていたので知っていたが、効果までは知らない。しかしデュエルモンスターのギャンブルカードらしく、裏よりも強力な効果を得る筈。

 

「ライト・ルーラーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚。バトル。ライト・ルーラーではやてを攻撃! ジ・エンド・オブ・レイ!」

 

A4000 VS A2300

 

「させるか! 罠発動、プロテクション! はやての破壊を無効にする!」

「けど戦闘ダメージは受けてね」

 

ライト・ルーラーは二つの竜の口から、破滅の光の力を宿した不気味な白い光をはやてに向けて放つ。はやてはプロテクションのカードから配給された魔力を使い、純白の魔力で強力な盾を作り出す。はやて自身の破壊を防ぐ事が出来たが、攻撃全てを無効化する事が不可能だった。攻撃力の差分のダメージが放たれた光の形で俺に襲ってくる。

 

「ぐああああっ!」

 

遊斗LP4000→2300

光が俺の体を呑み込んだ途端、巨大なトラックにひかれたのかと錯覚するほどの衝撃が前方から発生し、突然の衝撃に対応できなかった俺は一気に後方まで吹き飛ばされた。光によって飛ばされ、ミッドチルダのビルを一つ貫通。その一瞬の出来事に本能のまま痛みに叫ぶ事しか出来ず、二つ目のビルの支柱によってようやく体の自由を取り戻した。

 

「ッツ! 今までの、闇のデュエルと比べ物にならない・・・・」

 

光に呑み込まれた時の衝撃。トラックにひかれたと比喩したがそんなレベルじゃない。今まで闇のデュエルをしてきた俺だが、あれは1700の衝撃では無かった。F・G・Dの力を解放してこのダメージ。F・G・Dの力を完全に解放する前の俺だったら今のダメージで気絶、最悪死んでいただろう。突き破って来た道を歩きさっきの立ち位置に戻ると、奴はパチパチと小さい手を叩いてニコッと笑みを浮かべた。

 

「流石遊斗。普通の人間や下級の精霊なら今ので死んでるんだけどな~」

「お前は俺を殺したい訳だ」

「外れ。わざわざギリギリ殺さない様に調整してるのよ? あなたが負けたら私の傍にずっといてもらうわ。そして私が行う破壊をその目で見るの。そっちの方がより面白いでしょ?」

「冗談。フェルを助ける為にもお前に負ける訳にはいかない。今のでバトルフェイズは終わりか?」

「ええ。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター1 伏せ1 手札2 LP2300

フェル モンスター2 伏せ3 手札1 LP4000

 

たった二ターン目で攻守4000の最上級モンスター。こっちもユーリで対抗するか? いや、ただやみくもにユーリを呼んでも何らかの方法で突破される可能性もある。落ち着け、俺は俺のデュエルをやって奴に勝つだけだ。

 

「俺のターン! カートリッジロードとミッドチルダの効果発動! 闇の書にLCを一つずつ乗せる!」

 

LCミッドチルダ1→0 闇の書1→3

 

「永続魔法時空管理局を発動し、闇の書の効果発動! このカードをゲームから除外し、デッキからアインスを特殊召喚する! そして特殊召喚したアインスの効果で、融合デッキからナハトヴァールを特殊召喚!」

 

LC時空管理局0→2

AD2300

AD0

 

開いた闇の書から放たれた闇のオーラが具現化し、その闇はアインスとなりはやての隣に立つ。そしてアインスを具現化した直後、闇の書の中から黒紫色の無数の蛇が闇の書を包み込み、その不気味な姿からは想像できない程静かにアインスの隣を浮く。

 

「場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

融合デッキから取り出した一枚のカードをデュエルディスクにセットすると共に、デュエルディスクに装着している腕に強い衝撃が走り、昼のミッドチルダの街並みは夜に包まれて姿を隠す。光さえも包み込む夜天の空間を、空から漏れる一筋の光の柱が薄らと照らし、一人の女性が光りと共に俺のフィールドにゆっくりと舞い降りた。

 

LCはやて3

AD2800

 

「出たね。遊斗の切り札の一角」

「王様はやてさんの効果発動! 一ターンに一度、LCを二つ取り除き、融合デッキの祝福と名のついたモンスターを特殊召喚する! 祝福の癒し手シャマルを特殊召喚!」

 

はやてLC3→1

A1000・D2300

 

「そして王様はやてさんの更なる効果。LCを取り除き「させない。永続罠、安全地帯をライト・ルーラーに発動。効果を無効にはさせないわ」チッ」

 

ライト・ルーラーは特殊召喚成功時にコイントスを行い、効果を得る効果を持つ。一度効果を無効にされたり、裏側守備表示になった場合、効果を得る効果が無効となるのでただのバニラモンスターとなる。それでも攻守4000は強力だが、未知の効果は味わう前に無効化しておきたかった。

 

「速攻魔法ユニゾンアウトを発動! 王様はやてさんの融合を解除し、墓地のはやてとアインスを復活! そして特殊召喚したアインスの効果で融合デッキから夜天の書を特殊召喚する!」

 

AD0

 

「場のはやてとアインスを融合! 再び現れろ、夜天の王・八神はやて!」

 

LCはやて3

AD2800

 

「夜天の書とナハトヴァールを王様はやてさんに装備! 攻撃力が1000アップする!」

 

はやてA2800→A3800

 

重力に逆らってフワフワと浮く闇の書に纏わりついた無数の蛇の塊は、闇の書から王様はやてさんの左腕に移動し、グニャグニャと触手の様に動いて徐々に形を変えていく。先程までヌルヌルとした感じの体はいつの間にか堅い金属へと代わり、パイルバンカーが内蔵された装着型の武器へと変化する。これにより王様はやてさんは左手にナハトヴァール。右手に夜天の書を持った姿となり、その威圧感は混沌幻魔の力半分を持っている目の前の少女でさえ僅かに顔をしかめた。

 

「再び王様はやてさんの効果発動! LCを二つ取り除き、融合デッキから祝福の騎士ヴィータを特殊召喚!」

 

LCはやて3→1

A2600・D2500

 

「そして夜天の書の効果。時空管理局のLCを二つ取り除き、デッキから二枚ドロー。行くぞ! フィールドの祝福の癒し手シャマルを生贄にホーリーカタルシス・シャマルを特殊召喚する!」

 

A2000・D3000

 

夜が包み込むミッドチルダの天から、翡翠の光が柱となって地上へと降り注ぎ、俺の目の前に一人の夜天の騎士が現れた。

 

「ホーリーシャマ姉の効果! 手札の枚数×300俺のライフを回復し、その数値分のダメージを相手に与える! 俺の手札は一枚!」

「戒めの鎖」

 

遊斗LP2300→2600

フェルLP4000→3700

 

「そして祝福の騎士ヴィータを生贄に、紅の鉄騎ヴィータを特殊召喚する!」

 

A3000・D2800

 

ホーリーシャマ姉と同じ様に、夜天の空か紅の光と共に、背丈が伸びて大人の女性になったヴィータさんが舞い降りる。

 

「ホーリーシャマ姉の効果で、王様はやてさんにLCを二つ乗せる」

 

LCはやて1→3

 

「またカウンターが・・・・」

「バトル! 紅ヴィータさんでレベル・スティーラーを攻撃!」

「永続罠、強制終了を発動。レベル・スティーラーを墓地へ送りバトルフェイズを終了する」

 

ツッ! あれだけやったのに一枚のカードで止められてしまった。強制終了はコストとなるカードがフィールドにあり続ける限り何度でも効果を使用する事ができる。上級モンスターが存在すれば何度でも蘇る事ができるレベル・スティーラーとは分かりやすい分強力なシナジーを持つ。

まずは強制終了からぶっ潰すか。

 

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズ時にカートリッジロードを手札に加える」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ3 手札1 LP2600

フェル モンスター2 伏せ3 手札1 LP3700

 

「私のターン。墓地の終わりの始まりの効果発動。デッキから三枚ドロー。永続魔法、魔法吸収を発動して、その後天変地異を発動。このカードがある限り互いのプレイヤーはデッキを裏返しにしてプレイする」

「天変地異!? そんな特殊なカードを最上級デッキに・・・・」

 

一瞬嫌な予感が脳裏を過ったが、三幻魔はおそらく今も生きているであろうユベルの手中にある筈。しかし態々単体でアドバンテージを取れない永続魔法を入れる意味も無い。ダイヤモンドガイの効果を確実に当てる為だと言うのか? こんなカードが無くとも奴は必ず効果を成功させる筈。

 

「あなたのデッキトップのカードは見ないわ。それじゃあ面白く無いもの」

「なら俺も、お前のデッキトップのカードは見ない。面白くないからな」

「へぇ? ハンデを上げたつもりだったけどいらないみたいね。魔法吸収の効果で魔法カードが発動される度に私はライフを500回復する」

 

フェルLP3700→4200

 

「そしてデーモンの宣告を発動。魔法吸収でライフを回復し、その分のライフを支払いデーモンの宣告の効果を発動。デッキトップのバッド・エンド・クイーン・ドラゴンを選択して手札に加える」

「また知らないカードか」

「バッド・エンド・クイーン・ドラゴンは自分フィールド上に三枚以上の永続魔法がある時手札から特殊召喚できる」

 

A1900・D2600

 

現れ出たのは何とも不気味なドラゴンだった。まず一番真っ先に目に入ったのは、人間で言う耳に当たる部分から飛び出している指の様に五本に別れた物。よく見ると、手も人間そっくりの五本指で老人の様にしわくちゃだ。手だけでなく体も、巨大な緑の翼も皺だらけで、同じドラゴンの血が流れているが生理的に苦手だ。

 

「バトルよ。ライト・ルーラーで紅の鉄騎ヴィータを攻撃! ジ・エンド・オブ・レイ!」

 

A4000 VS A3000

 

ライト・ルーラーは再び二つのドラゴンの口から悪のオーラを持つ光をヴィータさんに向けて吐き出す。例え歴戦の騎士であるヴィータさんでもライト・ルーラーの攻撃力を一人で受け止めるのは不可能。

 

「ホーリーシャマ姉の効果発動! 王様はやてさんのLCを二つ取り除き、フィールドから離れるのを無効にする!」

「フフッ、けど戦闘ダメージは受けてもらうわ。この台詞、結構お気に入りなの」

 

LCはやて3→1

遊斗LP2600→1600

 

奴が余裕の表情をしている間にもライト・ルーラーの光が俺の体を襲い、体中が文字通り引き千切れそうな痛みが走る。俺は両手で自分の体を抱いて、体が引き千切られない様に耐えるので精一杯だった。

 

「ぐああああっ!」

 

さっきより700分のダメージ量が少ない筈だが、ダメージが蓄積されているのか、ライト・ルーラーの攻撃が終わった時には、足がふらついて体を支えるのが困難になり視界が霞んでいる。口の中は血の味と胃液が僅かに逆流した酸味で広がっていた。

 

「ホント、面白いわね。一応サレンダーは許してあげるよ?」

「ペッ! サレンダーするくらいなら勝てないリアルファイトを挑んだ方がましだ」

 

血が混ざった唾を吐き出してそう答えると、奴はクスクスと不気味に笑って静かに「そう・・・・」と返事をした。

 

「ライト・ルーラーのレベルを下げて、墓地のレベル・スティーラーを特殊召喚。ターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ3 手札1 LP1600

フェル モンスター3 伏せ5 手札2 LP4200

 

天変地異の効果で今現在デッキトップのカードはアギト。前のターン使えなかったホーリーシャマ姉と合わせると、そこそこのダメージを与える事が出来そうだ。

 

「ドロー。アギトを通常召喚! 効果でミッドチルダにLCを乗せる」

 

LCミッドチルダ0→1

 

「ミッドチルダの効果。LCを王様はやてさんに移動」

 

LCはやて1→2 ミッドチルダ1→0

 

「そしてホーリーシャマ姉とカートリッジロードの効果発動。王様はやてさんに更に三つLCを乗せる」

 

フェルLP4200→4700

LCはやて2→5

 

「夜天の書の効果発動! 王様はやてさんのLCを四つ取り除き、デッキから四枚カードをドローする」

「一気に手札補充。ドローした枚数は多いけど、フィールドのLCは一つだけになったわよ」

「ならドローしたカードで補えばいいのさ。まずはホーリーシャマ姉の効果発動! 自分の手札の枚数×300のライフを回復し、その数値分のダメージを相手に与える! 俺の手札は四枚」

「戒めの鎖」

 

ホーリーシャマ姉が放った先が槍の様に尖った鎖が奴の体を貫き、生命エネルギーを吸収する。だが奴は鎖が自分の体を貫通していても余裕の表情を崩さず、合計2400のライフが変化したのをただ眺めているだけだった。

 

遊斗 LP1600→2800

フェルLP4700→3500

 

「フィールドに八神はやてが存在する時、LCを一つ取り除く事で、夜天の将シグナムを特殊召喚できる! そしてこの効果で特殊召喚に成功した時、自身にLCを置く」

 

LCはやて1→0 時空管理局0→1 シグナム1

A1800・D1400

 

「場のシグナムさんとアギトを融合! 現れろ、烈火の剣聖シグナム!」

 

LC時空管理局1→2

A3000・D2000

 

同じ炎熱変換の素質を持った者通しのユニゾン。篭手は金色になり、瞳は薄紫、普段より少し鮮度の低いピンクの髪。そんなシグナムさんを真正面から見る事になる相手は、髪や瞳の変化に目が行きがちだが、その姿を後ろから見ると背中に二対計四枚の炎の羽が生えている。そして肝心のその能力は殲滅力が高く、運が良ければ大量展開した相手を全滅させる事ができる。

 

「シグナムさんの効果発動! 融合召喚成功時、このカードの攻撃力よりも攻撃力の低い相手モンスターを全て破壊する!」

「剣閃烈火!」

 

始めに、シグナムさんの中にいるアギトが、左手の篭手に二人分の炎を収束させる。シグナムさんは炎を宿した左手を、反対の手まで持って来る。そして必殺技と言ってもおかしくない威力を持った技名を、重なった二人の声が告げる。

 

「「火龍一閃!」」

 

シグナムさんが左手を振り抜いた刹那。相手フィールド上のライト・ルーラー以外のモンスターが灼熱の炎に包みこまれた。二体のモンスターはその炎から逃げ出す事も、シグナムさんの力にあらがう事も出来ず、悲鳴と共に破壊されフィールドから消えて行った。

 

「この効果を使用するターン、俺はバトルフェイズを行えない。ヴィータさんを守備表示に変更し、カードを一枚伏せてターンエンド。そしてエンドフェイズ、融合素材になったアギトの効果。このターン破壊した相手モンスターのレベル合計×100ポイントのダメージを相手に与える。破壊したレベルの合計は7。700のダメージを受けろ!」

「ブレネン・クリューガー!」

 

フェルLP3500→2800

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ4 手札2 LP2800

フェル モンスター1 伏せ5 手札2 LP2800

 

何とかライフコスト以外でのダメージを与える事が出来て、ライフを並ぶ事ができた。しかしホーリーシャマ姉のバーンの数値はむらがあるので、強制終了を破壊し、戦闘ダメージを中心にダメージを与えて行きたい。その為には魔法・罠を気軽に破壊できるなのはか、フェイトを呼んでフォトンランサーで破壊したい所だ。

 

「私のターン。デーモンの宣告の効果発動。降雷皇ハモンを宣言。デッキトップのカードは当然降雷皇ハモン」

 

フェルLP2800→2300

 

「クッ! 嫌な予感はしていたが、その三幻魔もお前が持っているのか!」

「当然。私は三幻魔が融合した姿。弱まっているあのユベルとかいう精霊から奪うのは容易い事。さあ、私を楽しませて。フィールドのデーモンの宣告と天変地異と魔法吸収を墓地へ送り、光来せよ! 降雷皇ハモン!」

 

AD4000

 

ミッドチルダの街並みに落ちる巨大な落雷。その大きさは高層ビルを軽く呑み込む事が出来る激流となり、奴のフィールドの前に降り注いで行く。吸収しきれなかった電圧がフィールドを駆け巡り、熱に耐えきれないコンクリートがマグマの様に赤く光ってドロドロになって行く。そして雷が落ち着くと、そこに居たのは三度目の対峙となる、三幻魔の一角、降雷皇ハモン。

 

「フフッ、どう? 三幻魔の一角を相手にした気分は?」

「三度目になると新鮮な感情なんて無い・・・・と思っていたが、斎王の切り札と並ぶと厄介だ」

 

攻撃力4000のモンスターが二体。どちらかのダイレクトアタックをくらえば例え初期ライフのままでも一発で削られる程の超火力。そしてライフは2500と心もとない為、下手にハモンの効果を使わせる訳にもいかない。

 

「ハモンのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚して、バトルよ。ハモンでシグナムに攻撃! 失楽の霹靂!」

「ヴィータさんの効果発動! 攻撃対象をこのカードへと変更! 更にホーリーシャマ姉の効果で時空管理局のLCを取り除いて破壊を無効にする!」

 

A4000 VS D2800

LC時空管理局2→0

 

三角形の形をした紅の魔法陣と、ユラユラと蠢く緑のプロテクションがハモンの雷を受け止めて無力化。ハモンの攻撃が途切れた隙を狙い、ヴィータさんはグラーフアイゼンに装弾できる三つのカートリッジを全て使って魔力を爆発的に上げ、自分の体より遥かに大きい工事現場で見られる鉄球を頭上に出してグラーフアイゼンで叩き飛ばす。

 

「そして戦闘で相手モンスターが破壊されなかった時、墓地のヴィータと名のつくモンスターを除外する事で、戦闘を行った相手モンスター一体の攻撃力を除外したカードの攻撃力分ダウン。そしてもう一度ヴィータさんと戦闘を行う。墓地の祝福の騎士ヴィータをゲームから除外し、ハモンの攻撃力を2600下げる!」

 

ハモンA4000→A1400

 

ヴィータさんが叩き飛ばした鉄球はハモンの片翼に大きな穴を空け、ハモンの全身に強烈な痛みを味あわせる。痛みの余り辺り一帯の高層ビルのガラスが割れる程の咆哮を放つハモンに、ヴィータさんは巨大化したグラーフアイゼンを叩きこんだ。

 

「ツェアシュテールンクスハンマー!」

 

D2800 VS A1400

 

一応ハモンからの攻撃なのだが、そんなのを無視してグラーフアイゼンを叩きこみ、強大な力同士がぶつかり合った時の衝撃が奴を襲う。

 

フェルLP2300→900

 

「フフッ、ならライト・ルーラーでシグナムを攻撃! ジ・エンド・オブ・レイ!」

「ヴィータさんの効果! 再び攻撃対象を自身へと変更する!」

「けど戦闘破壊はできるわ」

 

A4000 VS D2800

 

今までは何とかして防ぐ事ができたライト・ルーラーの攻撃も遂に通ってしまい、ヴィータさんは白い邪悪な光の息吹に呑み込まれて破壊されてしまった。けどヴィータさんの攻撃力低下効果は永続である為、これでハモンの攻撃を防いだと言ってもいい。

 

「この瞬間ライト・ルーラーの効果発動! 相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った時、自分の墓地のカード一枚を手札に加える事ができる」

「なっ! サルベージに縛りが無いだと!?」

「三体のモンスターを墓地へ送って呼んだんですもの。そうね、メタル・リフレクト・スライムを手札に加えるわ。カードを三枚伏せてターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター3 伏せ4 手札2 LP2800

フェル モンスター3 伏せ5 手札1 LP900

 

奴のライフは残り僅か600。ホーリーシャマ姉の効果を使えば倒す事ができるが、そんなにアッサリと奴が倒れるとは到底思えない。あくまでホーリーシャマ姉の効果は様子見として使う。

 

「俺のターン! ホーリーシャマ姉の効果発動!」

「永続罠発動、デモンズ・チェーン。シャマルの効果及び攻撃を封じるわ」

 

王様はやてさんがよく使っている鎖によく似た、禍々しい悪魔の鎖がシャマ姉の細い体を縛り上げる。本人は特に気にしていないようだが、尖っている鎖で縛られるのはかなり痛いだろう。けどそのおかげで自由に動く事ができる。

 

「頼むぞ、フェイトを通常召喚! 効果で自身とミッドチルダにLCを置く!」

 

LCフェイト1 ミッドチルダ0→1

 

「頑張ってフェルを取り返そう」

「ああ。ミッドチルダのLCを取り除きアルフを特殊召喚! そしてミッドチルダの効果でフェイトのLCを時空管理局に移動する」

 

LCミッドチルダ1→0 フェイト1→0 時空管理局0→2

 

「場のフェイトとアルフを融合! 来い、黒騎士フェイト・テスタロッサ・ハラオウン!」

 

LC時空管理局2→3

A2800・D500

 

「夜天の書の効果発動。時空管理局のLCを三つ取り除き、三枚ドロー! 速攻魔法フォトンランサーを発動。強制終了を破壊だ」

「あらら~。けど引くタイミングが少し遅かったみたいね」

 

デモンズ・チェーンの発動に対しフォトンランサーを発動していたら、ホーリーシャマ姉の効果が通ってダメージを与えられたが、先のタイミングで引けなかったカードでウダウダ言っても仕方ない。ようやくこれで攻撃が通る様になった。それで十分。

俺がバトルフェイズ移行の宣言をすると共に、地面から十センチ弱浮いていた王様はやてさんはゆっくりと上空に飛び、巨大なハモンを見下す程の高さまで来るとピタリと止まった。

 

「王様はやてさんでハモンを攻撃!」

「「フォトンランサージェノサイドシフト」」

 

雷を司る幻魔には雷で倒してやろうと言う、王様はやてさんの挑発なのかもしれない。夜天の書は、風に吹き飛ばされたかと一瞬心配してしまう程のスピードでページをめくって行き、王様はやてさんが求む術式を綴っているページでピタリと止まる。するとその刹那、ハモンの――いや、このデュエルフィールドの周囲を薄い黄色の魔力光で作られた球体、フォトンスフィアが現れた。その数は雷フェイトさんが使うフォトンランサーファランクスシフトと同等かそれ以上。

 

「「打ち砕け」」

 

A3800 VS A1400

 

王様はやてさんとアインスの発射の合図と共に、辺りにあるフォトンスフィアから魔力弾が発射され、その全てがハモンへ向かって飛んでいく。ハモンへと向かって飛んでくる魔力弾を緊張感の無い顔で眺めながら、奴はセットされた一枚のカードを発動させた。

 

「ん~、攻撃宣言時に永続罠、スピリットバリアを発動。自分フィールド上にモンスターが存在する限り、私への戦闘ダメージは0になる」

「だがハモンは破壊だ!」

 

おそらく1000は軽く超えているだろう魔力弾を受けたハモンは、例え雷を司る幻魔でも耐える事ができなかった。容赦の無い王様はやてさんの攻撃はハモンの巨大な体をボロボロにし、そして墓地で休ませる事も許さずに左手のナハトヴァールから鎖を発射してハモンの体を縛り上げ、ハモンの巨大な体を黄色の球体へと変えてナハトヴァールの中へ呑み込んだ。

 

「ナハトヴァールの効果発動。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、装備モンスターの装備カードとする。そして装備モンスターの攻撃力は、吸収したモンスターの攻撃力の半分アップする」

 

はやてA3800→A5800

 

「攻撃力5800ね~。けど他のモンスターじゃライト・ルーラーを倒せないわよ?」

「分かってる。フェイトさんでレベル・スティーラーを攻撃」

 

A2800 VS D0

 

「シグナムさんを守備表示に変更し、ターンエンド」

 

場 魔法都市ミッドチルダ

遊斗  モンスター4 伏せ5 手札4 LP2800

フェル モンスター1 伏せ4 手札1 LP900

 

フィールドでも手札でもライフでも圧倒しているが、まだ奴は一枚の幻魔しか召喚していない。そう簡単に召喚させる気は無いが、あらゆる手を使って召喚して来る筈。妨害カードの少ないこのデッキだと召喚を封じるのは難しい。

 

「私のターン。永続罠、メタル・リフレクト・スライムを発動」

「このタイミングで発動して来たって事は・・・・」

「ご明察。メタル・リフレクト・スライム、スピリットバリア、デモンズ・チェーンを墓地へ送り、新来せよ! 神炎皇ウリア!」

 

AD0

 

突如奴の後方から、火柱が地面から噴き上がった。いや、火柱と言うには余りにも巨大な物だ。それはミッドチルダの街の中でも一際大きいビルを二つは軽く呑み込める程の巨大さを持ち、奴の後ろに建っていたビルは気が付けば黒い塵となって静かに飛んで行った。燃えぬ物も燃やし、塵とならぬ物も塵とする人智を越えた火力を持つ幻魔。

 

「次はお前か」

「フフッ、ウリアの攻撃力は墓地の永続罠×1000。よって攻撃力は4000」

 

ウリアA0→A4000

 

「ウリアの特殊召喚成功時に罠発動、Force-evolution! フェイトさんを生贄に、融合デッキのCW-Force01Xフェイト・テスタロッサ・ハラオウン-Riot Blade & ZamberⅡを特殊召喚する!」

 

A3300・D0

 

この次元に来て新たな進化を遂げたForce。このカードはフェルも知らないカード故、奴も始めて見るカードだ。二刀一対となった黄色の刀身の剣を構えるフェイトさんを見、奴は嬉しそうに、だが不気味にニヤリと口元を上げる。

 

「へぇ? 見た事無いモンスター、面白いわね。フィールド魔法、失楽園を発動」

「チッ、厄介なカードを」

 

ミッドチルダの街並みがガラスの様にバリンと砕けると共に、辺りの景色が一変する。暗い雲、骸骨の浮んだ毒沼、枯れたリンゴの樹。まさに失楽園と言えるこのフィールドは、三幻魔によってエネルギーを吸収された、楽園だった場所。このフィールド魔法には随分と苦しめられたが、どうやらこのデュエルでも苦しめられそうだ。

 

「効果は言わなくても分かってるわよね? 私のフィールドには幻魔の一角がいる。よってデッキから二枚ドロー。いいカードね。速攻魔法サイクロンを発動。ナハトヴァールを破壊。そしてナハトヴァールの効果で装備されていたハモンも破壊される」

 

はやてA5800→A2800

 

奴がサイクロンのカードを前に突き出すと同時に、サイクロンのカードの絵柄から汚い黒の竜巻が発生し、王様はやてさんの左手に装着されているナハトヴァールを引き剥がす。

 

「一気に形勢逆転ね。まずはその面倒なバーン効果モンスターから。ウリアでホーリーカタルシス・シャマルを攻撃! ハイパーブレイズ!」

 

A4000 VS D3000

 

「ホーリーシャマ姉の効果! 一ターンに一度、戦闘では破壊されない!」

 

ウリアが放つ炎を無表情で防いだホーリーシャマ姉。だが奴のフィールドにはライト・ルーラーがいる。俺のフィールドにLCが無いこの状況だともう一つの破壊無効効果は使えない。またライト・ルーラーに効果を使わせてしまうが仕方が無い。

 

「続けてライト・ルーラーで攻撃! ジ・エンド・オブ・レイ!」

 

A4000 VS D3000

 

ウリアの攻撃に続き、巨大な二体の竜の口から放たれる禍々しい光の息吹を防ぐ事は、いくらホーリーシャマ姉でも不可能だった。ホーリーシャマ姉は静かに白い息吹に呑み込まれ、攻撃の余波が静電気の様にバチッと皮膚を刺激する。

 

「ライト・ルーラーの効果。墓地の強制終了を手札に加える」

 

ウリアA4000→A3000

 

ウリアの攻撃力を下げてまで守りのカードを手札に加えたか。墓地にレベル・スティーラーがいる以上コストには困る事は無いし、ウリアの攻撃力が1000下がってもまだライト・ルーラーがいる。

 

「ライト・ルーラーのレベルを下げて、レベル・スティーラーを特殊召喚。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札4 LP2800

フェル モンスター3 伏せ3 手札0 LP900

 

「俺のターン! なのはを召喚! 効果で自身にLCを置く!」

 

LCなのは1

A500・D1800

 

やっぱり幼少期も大人になってもなのはの効果は安定性が高い。伏せられたリバースカードの内、片方は強制終了と分かっているが、これ以上墓地のカードをサルベージされるとより厄介なので、まず安全地帯から破壊。失楽園も破壊しておきたいが、攻撃力4000を一体減らせるのは楽だ。

 

「なのはの効果。自身のLCを取り除き、安全地帯を破壊する!」

「アクセルシュート!」

 

LCなのは1→0

ウリアA3000→A4000

 

なのはが地面と垂直になって浮かんでいる安全地帯を破壊すると共に、ライト・ルーラーの巨大な姿は、生贄になったモンスターと同じアニメーションで下からスッと消えて行った。しかし奴の表情が曇る事は無く、自分と同じ顔のなのはの顔をジーと眺めていた。

 

「な、何かな?」

「流石本人は可愛いわね。それに私の本来の人格とは違った形で純粋そう」

「どっかの誰かにも少しは見習って欲しいが」

「フフッ、あなたにそんな事を言わせるのはどこの誰かしらね?」

「さあな。永続魔法、ヴォルフラムを発動! このカードがフィールドにある時、Forceのデメリット効果が無効となり、手札一枚を捨てる事で墓地のForce-evolutionを手札に加える事ができる。手札一枚を捨て、Force-evolutionを手札に加え、そのまま発動!」

「罠カードを手札から。ユニークなカードね」

「王様はやてさんを生贄に、融合デッキからCW-Force00X-S2八神はやて-Fortress Shieldを特殊召喚する!」

 

俺が手に持っているForce-evolutionの絵柄から、あらゆる物理法則を無視してコンパクトサイズのForce装備が飛び出す。フィギアが持てる程の小さいForce装備は王様はやてさんの元へと飛ぶ道中に急激に大きくなり、本来の大きさになる。なのはさんと同じく装備量が多い王様はやてさんは、翼の様に背中にシールドを装着した。

 

LCはやて1 時空管理局0→1

A2300・D3000

 

「特殊召喚成功時、はやてさんは自身にLCを置く。そしてはやてさんの効果発動! 自分フィールド上の融合モンスターを選択し、融合デッキに戻す。そしてその融合素材モンスター一組をデッキか墓地から特殊召喚する。烈火の剣聖シグナムを融合デッキに戻し、墓地からシグナムさんとアギトを特殊召喚する!」

 

LC時空管理局1→2

A1800・D1400

AD500

 

「速攻魔法フェイク・シルエットを発動。デッキのツヴァイを墓地へ送り、はやてさんをツヴァイとして扱う」

「態々呼んだForceモンスターを融合素材に使う、ねぇ」

「場のシグナムさんとはやてさんとアギトを融合! 現れろ、氷炎の剣聖神シグナム!」

 

A3500・D2000

 

俺の掛け声と共に、ウリアに負けずとも劣らない巨大な火柱が俺の後方から吹きだした。それはウリア程の密度を持ってはいないが、代わりに火柱の周りをもう吹雪が螺旋状に回っていた。その光景は幻想的で美しく、だが異様な怪奇現象にゾクッと鳥肌が立つ。そんな平凡な日常を過ごしていたら、到底目にする事の出来ない光景を作り上げたのは、氷と炎の翼を持つベルカの騎士。

 

「そのモンスターも記憶に無いわね」

「強力な分、召喚条件が厳しいからな。時空管理局のLCを取り除き、ユーノを特殊召喚! 場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

LC時空管理局2→1

A1000・D3000

 

「また色々と並んだか~」

「なのはさんの効果発動。デッキからコロナを手札に加える。そして墓地のForce-evolutionの効果。手札一枚を捨て、墓地のこのカードを手札に」

 

奴のセットカードの内一枚は強制終了。攻撃は無効化されてしまうが、せめてどっちのリバースカードが強制終了かは見て置いた方がいい。

 

「シグナムさんでレベル・スティーラーを攻撃。シグナムさんは戦闘でモンスターを破壊した時、その攻撃力分のダメージを与える事ができる」

「勿論強制終了を発動。レベル・スティーラーを墓地へ送るわ」

「ターンエンドだ」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP2800

フェル モンスター1 伏せ2 手札0 LP900

 

「私のターン。失楽園の効果でデッキから二枚ドロー。マジック・プランターを発動。強制終了を墓地へ送ってデッキから更に二枚ドロー」

 

ウリアA4000→A5000

 

相変わらずウリアの攻撃力は他の三幻魔をどんどん突き離して行く。その分効果を無効にすればただのカモになるのだが。

 

「幻銃士を召喚。効果で二体の銃士トークンを特殊召喚」

 

A1100・D800

AD500

 

生贄の必要無い悪魔族でありながら、一枚で同じ悪魔族モンスターを複数枚召喚できるこのモンスター。今まで三幻魔と二回戦ったが、そのどちらもラビエルはこのモンスターから召喚された。おそらく今回も。

 

「その様子だと分かっている様ね。フィールドの幻銃士と銃士トークン二体を生贄に、現出せよ! 幻魔皇ラビエル!」

 

AD4000

 

黒い雲が突如穴を空け、その開いた穴からなのはさんが好きな青空とは程遠い不気味な青の光が降り注いできた。その光そのものにはフィールドにこれと言った影響を及ぼさないが、次の瞬間青の光の中に、濃い青の物体がフィールドに落ちてきた。ドスーン!と耳を塞ぎたくなる爆音と共に、グラグラと地面が揺れ、次の瞬間には青い光が消えてそこに幻魔皇ラビエルの姿があった。

 

「ウリアとラビエルが並んだか」

「まだよ。ウリアのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚。そしてリバースカードオープン、二重召喚(デュアルサモン)。このターンもう一度通常召喚ができる。レベル・スティーラーを生贄に、暗黒の召喚神を召喚」

 

AD0

 

マルタン君の体を操るユベルと戦った時、ユベルが何度も使い回ししていたモンスター。自身の生贄とこのターンの攻撃宣言を封じる代わりに、墓地の三幻魔の内一体を召喚条件を無視して蘇生させるモンスター。奴の墓地には蘇生制限を満たしたハモンがいる。

 

「暗黒の召喚神を生贄に捧げ、墓地の降雷皇ハモンを特殊召喚する!」

 

AD4000

 

暗黒の召喚神の生贄により蘇ったハモン。これで奴のフィールドに三幻魔が並んだ。この光景ももう三度目。そう考えると俺の高校生活は世間一般の高校生に比べると、かなり刺激的なものだ。その異常なまでの威圧感は相変わらず恐ろしいものだが、様々な相手と戦って来たのでもはや今更だ。

暗黒の召喚神の効果でこのターン奴は攻撃する事が出来ないが、ユベルと同じく手札に残った最後の一枚で自身と同じ混沌幻魔の二つ名を持つアーミタイルを呼んでくるのか?

 

「フフッ、残念。遊斗の予想はハズレ。私も一応女の子だから、同じ混沌幻魔としてあんな気持ち悪い奴は使いたくないの。遊斗だって自分と同じ名前の気持ち悪い見た目のカード何て使いたくないでしょ?」

「さあな、考えた事も無い。じゃあお前はこのままその三幻魔で戦うのか?」

 

確かに三幻魔の力は強力だが、俺は二年前に既により強力な効果を持っていた三幻魔を倒している。その時はLSの三幻魔の力を使って勝利したが、弱体化しているこの三幻魔相手なら今の俺のデッキでも勝つ手段は十分にある。

奴は俺の質問にクスクスと笑みを浮かべながら「まさか」と否定した。

 

「既に二年前に三幻魔を倒したあなたにこの三幻魔じゃ約不足よ」

「この三幻魔? ッツ、まさかお前!」

 

その嫌な予感は的中し、奴は手に持っていた最後の一枚をデュエルディスクにセットした。現れたのは神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエルがそれぞれ杖、鎧、棺桶となった姿が描かれていた魔法カード。

 

「これが私の切り札達、魔法カード、幻魔の鏡を発動! 自分のライフが1000以下で、フィールド上に神炎皇ウリア、降雷皇ハモン、幻魔皇ラビエルが存在する時に発動可能。自分フィールド上の三幻魔全てをゲームから除外し、融合デッキから神炎皇なのは、降雷皇フェイト、幻魔皇はやてを召喚条件を無視して特殊召喚する!」

 

AD0

AD4000

AD4000

 

それは見たくない光景だった。奴のフィールドには二年生の頃、何度も何度も窮地を救ってくれたLSの三幻魔の姿があった。

杖と化したウリアを操る神炎皇なのは。別れる前は超火力で様々な敵を屠って来た、俺のデッキで最強の火力を持った幻魔。

鎧と化したハモンを操る降雷皇フェイト。その再生能力と防御能力であらゆる攻撃を防ぎ、俺を守ってくれた最強の守りを持つ幻魔。

棺桶と化したラビエルを操る幻魔皇はやて。召喚条件、蘇生制限等を無視してあらゆるモンスターをフィールドに置く事ができるその能力は、他の三幻魔をも復活させてフィールドを制圧する、最強の蘇生効果を持つ幻魔。

 

「まさか、お前達と戦う事になるなんて」

「「「・・・・」」」

 

三体とも無言だった。いや、無言以前に表情に生気が無かった。精霊の力が宿っていないカードの様に、ただソリッドビジョンがカードを映す様な。奴が何らかの方法で三人を操っているのかもしれない。はたまた三体が自らの意思で口を開かないのかもしれない。だがどちらにせよ、俺は自分が使っていた三幻魔を相手にしなくてはいけない。

変な感覚だ。寂しいとも悲しいとも違う。だが嬉しい訳では無いし、三体へ怒りの感情がある訳でも無い。

 

「いや、違うか」

 

寂しいのだろう。悲しいのだろう。俺に対峙する三体への怒りもあるのだろう。だがそれ以上にデュエリストの魂が、本能が、俺のデッキに宿っていた最強の三体を倒したいとウズウズしている。こんな状況であろうとこの感覚は止められない。より強い敵と戦うこの瞬間。

 

「また一つ、お前を倒す理由が出来た。お前に勝ってフェルを助け、そして三幻魔も返してもらう」

「フフッ、そうこなくっちゃ。特殊召喚に成功した幻魔皇はやての効果。墓地のライト・ルーラーと二体目のアルカナフォースEX(エクストラ)THE DARK RULER(ザ・ダーク・ルーラー)を魔法・罠ゾーンへ置く」

「そんなカード・・・・ワン・フォー・ワンのコストか。けど幻魔皇はやての効果の対象はLSだけ」

「今三幻魔は私のデッキのモンスターだからね。LSの縛りは消させて貰ったわ。そして同じく特殊召喚成功時、新炎皇なのはにSLC(スターライトカウンター)を乗せる」

 

SLCなのは1

 

「暗黒の召喚神の効果で攻撃宣言する事ができない。私はこれでターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター3 伏せ2 手札2 LP2800

フェル モンスター3 伏せ2 手札0 LP900

 

父さんが作り上げたカードが本来の三幻魔の力を吸収して、新たに作り出されたもう一つの三幻魔。二年生の頃の闇のデュエルでは三体のカードは俺の切り札となって王達を倒してきた。そしてフェルと一緒に飛んで行った三幻魔が俺の敵となって戻って来るとは、まさに因果応報。

さて、気持ちを切り替えて、っと。

神炎皇なのはの効果はSLCの数だけ墓地のモンスターをデッキに戻し、戻したモンスターのレベル合計×500攻撃力をアップする。おそらく俺のデッキに存在するモンスター単体では火力で破壊するのは無理だ。

降雷皇フェイトは戦闘を行う場合持ち主への戦闘ダメージを0にし、更に破壊されたターンダメージを0にするハネクリボーの上位互換効果。そして次のスタンバイフェイズ時に手札のモンスター一体を墓地へ送る事で復活。

幻魔皇はやては相手が特殊召喚した時、自身の効果で魔法・罠ゾーンに置いているモンスターをモンスターゾーンに置く効果。

 

「味方だと頼りになるが敵だと厄介だ。俺のターン、ドロー!」

「この瞬間神炎皇なのはの効果発動。ドローする度にこのカードにSLCを置く」

 

SLCなのは1→2

 

奴の墓地にいるモンスターは余り多く無い。しかも三幻魔が除外され、二体のアルカナフォースが魔法・罠ゾーンにいる今、奴の墓地にいる一番レベルの高いモンスターはバッド・エンド・クイーン・ドラゴンの筈。しかしそのモンスターをデッキに戻すだけで神炎皇なのはの攻撃力は3000アップし、それに加えダイヤモンドガイか幻銃士を戻したら攻撃力は5000となる。

 

「まずはなのはさんの効果発動! デッキからディアーチェを手札に加える。そして時空管理局のLCを生贄にディアーチェを守備表示で召喚!」

 

LCディアーチェ1

A2100・D1600

 

「そのモンスターは・・・・」

「単体で神炎皇なのはを戦闘破壊するのは不可能だが、ディアーチェの力を使えばそれも容易い。行くぞディアーチェ!」

「いいだろう。我が力でフィールドの魔力を束ねてやろう!」

 

ディアーチェはエルシニアクロイツを天へと掲げ、なのはさん、フェイトさん、そして自分の持つ魔力を杖先へと集める。杖先には三人の魔力光が順番に光る手の平サイズの球体が形成され、ディアーチェはその球体をシグナムさんへとゆっくりと飛ばす。その球体はシグナムさんの胸から体内へと入った。するとシグナムさんの纏う氷炎の魔力が威力を増し、右手に持つレヴァンティンが赤と水色の輝きを放つ。

 

LCディアーチェ1→0

シグナムA3500→A8900

 

「バトル! シグナムさんで神炎皇なのはに攻撃!」

 

奴のフィールドには三幻魔と二体のアルカナフォースのみ。手札も0の状態でこの攻撃を封じるのは不可能だ。

フィールドの気温を一瞬で数十度も変化させる魔剣レヴァンティンを構え、シグナムさんは神炎皇なのはへと跳ぶ。シグナムさんはレヴァンティンを振り上げ、何人ものデュエリストを倒して来た剣技、紫電一閃の名を叫ぼうとしたその瞬間。

 

「この瞬間、墓地に眠る幻魔の鏡が発動される」

「幻魔の鏡!? しかもこのタイミングで発動だと!?」

「自分フィールド上のモンスターが三幻魔だけの時、相手の攻撃対象を降雷皇フェイトへと変更できる」

 

A8900 VS A4000

 

幻魔皇はやての姿が突如消え、ついさっきまで幻魔皇はやてがいた場所に降雷皇フェイトが立っていた。三幻魔の力を持っている降雷皇フェイトでさえ、シグナムさんの強烈な太刀を浴びると一溜まりも無く、呆気なく幻魔の一角は破壊された。だが降雷皇フェイトは守りの幻魔。

 

「このカードの効果は君が一番知っているよね?」

「ッツ。降雷皇フェイトの戦闘で発生する持ち主のダメージは0。更に降雷皇フェイトが破壊されたターン自分はダメージを受けない。よってシグナムさんのバーンダメージも無効・・・・」

「そして私はデッキから一枚ドロー出来る。ドローした事で、新炎皇なのはにSLCが置かれる」

 

SLCなのは2→3

 

一気に決めるつもりだったが、まさか墓地のカードを使って攻撃を止めて来るとは思わなかった。しかも奴は墓地の幻魔の鏡を除外する素振りを見せない。それはつまり、墓地に存在する限りその効果を何度でも使えると言う事だろう。しかし奴の説明からするに、幻魔の鏡は奴のモンスターが三幻魔のみ効果を発動するカード。魔法・罠ゾーンのカードをモンスターゾーンに置く幻魔皇はやてとの相性がいいとは言えない。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター4 伏せ3 手札2 LP2800

フェル モンスター2 伏せ2 手札1 LP900

 

「私のターン」

 

SLCなのは3→4

 

「スタンバイフェイズ、手札のレベル7以上のモンスターを捨てることにより、降雷皇フェイトは復活できる。復活しなさい、降雷皇フェイト!」

 

AD4000

 

地面から天へと噴き上がる雷に乗って、再び降雷皇フェイトが奴のフィールドに戻って来た。降雷皇フェイトの厄介な所は戦闘ダメージを与えられない所もだが、一番は毎ターンスタンバイフェイズ時に特殊召喚する復活効果。自身の効果で特殊召喚した降雷皇フェイトは俺に戦闘ダメージを与える事ができない。更に効果で破壊すれば、フィールドに存在しない者が無いと復活できない。この弱点を上手く利用して除去できればいいんだが・・・・。

 

「このままバトル」

「メインフェイズ終了時にForce-evolutionを発動! なのはさんを生贄に、融合デッキからCW-Force00X高町なのは-Fortress Strike Cannonを特殊召喚する!」

 

LCなのは1 時空管理局1→2

A2000・D3500

 

フェイトさんやはやてさんの時と同じ様に、Force-evolutionの絵柄から飛び出してきたForce装備がなのはさんの元へと飛び、右手には先の尖った巨大な盾、左手にはなのはさんの身長よりも高さのあるカノン。そしてなのはさんの周りに待機された複数の要塞()

 

「なのはさんが特殊召喚に成功した時、自身にLCを置く。そしてバトルフェイズ開始時に、相手フィールド上のモンスターの数だけFCを置く」

 

FCなのは0→3

 

「やっぱり遊斗は面白いわ。自分のエースだったモンスターを前にしても一歩も引かずに立ち向かって来る。けど幻魔皇はやての効果を忘れないで。魔法・罠ゾーンにいるライト・ルーラーをモンスターゾーンに置く。特殊召喚じゃないからコイントスは行えない」

 

AD4000

 

ラビエルを素材として作られた不気味な棺桶は、ギィィと古くなった扉の様に音を立てながらゆっくりと開き、中から棺桶よりも何十倍も大きいライト・ルーラーが出てきた。

 

「降雷皇フェイトでシグナムに攻撃!」

「シグナムさんの効果! 相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをゲームから除外して発動! 俺のエンドフェイズ時まで攻撃モンスターの攻撃力を0にし、守備表示に変更する!」

「なるほど~。降雷皇フェイトで攻撃したのはラッキーだったね」

 

フェイトA4000→A0

 

シグナムさんは降雷皇フェイトの手足を氷の枷で、体を炎の縄で縛り、攻撃力を根こそぎ削って無理やり守備表示へと変更させる。相反する二つの属性に縛られた者は、熱と冷気によって激しい痛みを感じるだろうが、降雷皇フェイトはピクリとも顔を動かさず、ただ静かに立っている。

攻撃力3500という高ステータスとこの効果がある限り、氷炎シグナムさんは戦闘では無敵と言っても過言では無い。

 

「なら神炎皇なのはでフェイトを攻撃!」

「させない! フェイトさんの効果発動! 墓地のLSを除外して次のスタンバイフェイズ時まで自身をゲームから除外する。コロナをゲームから除外して、フェイトさんを除外する。そしてLSの効果で除外されたコロナの効果でデッキから一枚ドロー!」

 

SLCなのは4→5

 

「う~ん。なら神炎皇なのはでForceなのはを攻撃! 何も無いならダメージステップ、SLCを二つ取り除いて墓地のバッド・エンド・クイーン・ドラゴンと幻銃士をデッキに戻し、攻撃力を5000にアップする!」

 

SLCなのは5→3

 

神炎皇なのはは墓地に存在する二体のモンスターの力を吸収し、それを炎に変えて杖となったウリアの口元に収束させる。その炎の熱さは、失楽園の中でも何とか生きていた植物を触れずに燃やしている。

恐怖からの汗か、それとも熱さからの汗か、なのはさんは額から一滴の汗を流しながら、自分の周りを飛ぶFortress一機を自分の前に待機させ、右手に持っている盾を構えた。その直後、収束された炎が砲撃となってなのはさんへと発射される。

 

なのはA0→A5000 VS D3500

 

「凄い(ねつ)ッ! 遊斗!」

「分かってます! なのはさんの効果発動! 一ターンに一度、フィールドのLCを取り除き、自身の破壊を無効にする! 時空管理局のLCを取り除く!」

 

LC時空管理局2→1

 

シールドを張って炎を真っ向から受けていた一機のFortressの犠牲があったが、何とかなのはさんの戦闘破壊を避ける事ができた。

 

「なのはさんが攻撃対象になった時、FCを一つ取り除く」

 

FCなのは3→2

 

「幻魔皇はやてを忘れたらいけないよ。幻魔皇はやてで再びなのはに攻撃!」

「攻撃対象になった時なのはさんのFCカウンターを取り除く。そしてダメージステップに手札のスバルの効果を発動! なのはさんの守備力を1000アップする!」

 

FCなのは2→1

なのはD3500→D4500 VS A4000

 

幻魔皇はやての攻撃は石化の力を持つミストルティン。なのはさん一人だと防ぐ事が出来なかった攻撃だが、スバルの助太刀もあって攻撃を防ぎながらも奴へ反射ダメージを与える事ができた。幻魔皇はやてが放った二本の槍をFortressと持ち前のバリアを使って防ぎ、その間スバルが幻魔皇はやてに一発入れる。

これにより奴のライフは残り僅か400となった。

 

フェルLP900→400

 

「これはちょっと厳しいね。流石遊斗。ならライト・ルーラーでディアーチェを攻撃」

「すまんな。何も貢献できなかった様だ」

「いや、十分に活躍してくれた。助かったよディアーチェ」

 

A4000 VS D1700

 

「あなたは優しいのね。アドバンスドローを発動。ライト・ルーラーを生贄に、デッキから二枚ドロー。カードを二枚伏せてターンエンドだよ」

 

SLCなのは3→4

 

「エンドフェイズ時に除外したシグナムさんを特殊召喚し、更になのはさんの効果発動! 相手のエンドフェイズ時にFCを全て取り除き、取り除いた数だけ相手モンスターを選択。選択したモンスターの攻守を500下げる。幻魔皇はやてを選択!」

 

FCなのは1→0

幻魔皇はやてAD4000→AD3500

 

場 失楽園

遊斗  モンスター2 伏せ2 手札2 LP2800

フェル モンスター3 伏せ3 手札0 LP400

 

攻守4000のライト・ルーラーを生贄にデッキから二枚ドローしたか。確かにライト・ルーラーが存在していれば墓地に存在する幻魔の鏡の効果を発動できない。幻魔皇はやての特殊召喚効果と幻魔の鏡の攻撃対象制限効果を上手く兼ね合わせている。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

SLCなのは4→5

 

「このスタンバイフェイズ、除外したフェイトさんを特殊召喚する!」

「幻魔皇はやての効果発動! 魔法・罠ゾーンのダーク・ルーラーを特殊召喚」

 

LC時空管理局1→2

AD4000

 

エクストラとルーラーの名を持つモンスターだけあり、ライト・ルーラーに非常によく似たモンスター。胴体から伸びる二つの竜や、UFOキャッチャーの形をした手は全くと言っていい程同じ。違うのはライト・ルーラーの胴体が扇型なのに対し、ダーク・ルーラーは胴体の部分に複数の水色の球体がある。

 

「迷い子ヴィヴィオを召喚! そして時空管理局のLCを取り除いてレリックを特殊召喚! LCの移動はプラマイ0だ」

 

AD0

 

「また随分とちっちゃい女の子ね。この身体のオリジナルの子よりちっちゃいみたい」

「だが融合すれば別人になる。場のヴィヴィオとレリックを融合! 来い、聖王ヴィヴィオ!」

 

AD?

 

「ヴィヴィオさんの攻撃力は墓地のLSの数×400になる。墓地のLSは21枚! 攻撃力は8400!」

 

ヴィヴィオAD?→AD8400

 

「攻撃力8400・・・・」

 

通常のデュエルでは滅多に見られる事ができない圧倒的な数値。三幻魔を並べている奴でさえも冷や汗を流す程の攻撃力と、墓地に存在するあらゆるLSの能力を得る事が出来る聖王の力。

 

「ヴィヴィオさんの特殊召喚成功時、デッキの聖王の鎧を手札に加える。そして効果を発動。墓地のホーリーシャマ姉の効果を得る」

「遊斗の手札は二枚。私のライフは400ッ」

「そうだ。これで終わりだ! ヴィヴィオさんの効果発動! 俺のライフを600回復し、その数値分のダメージをお前に与える!」

 

ヴィヴィオさんの傍の地面が突如盛り上がり、地面から虹色に光る先が槍の様に尖った鋭利な一本の鎖が飛び出した。その鎖は蛇の様に不規則に動きながら高速のスピードで飛び、三体の幻魔とダーク・ルーラーを通り抜ける。奴は負けを確信したのか失楽園の空を向いて茫然と立ちすくんでおり、虹色の鎖が視界に入ると共にフルフルと体を震わせた。

 

「そ、そんな・・・・。私がッあああああ!」

「これで終わりだぁぁぁあっ!」

 

声帯が壊れそうに痛かったがそれを無視して勝利の雄叫びを上げたその時。突如奴の足元にセットしてあったカードが動き、ダーク・ルーラーの巨体がガラスの様にバリンと割れた。ダーク・ルーラーの破壊音が俺の耳に入ってすぐ、虹色の鎖が奴の体を貫いた――が、ライフが0になった旋律がこのフィールドを刻む事はなかった。

 

「なん、てね?」

 

俺を馬鹿にしている純粋な笑みと、命の奪い合いをしているとは思えない明るい声。それは勝ちを確信していた俺の中に、体全身が凍りつく様な不安の感情を植え付けた。震える体を何とか動かし、恐る恐る自分のライフを映しているデュエルディスクを確認すると、俺のライフは2800から3400になっている。つまり効果は通っている。じゃあ奴のさっきの声は何だったのか? それは次の瞬間嫌でも理解した。

 

フェルLP400→4400→3800

遊斗LP2800→3400

 

突如破壊されたダーク・ルーラーと、本来なら0になっているライフは3800。そこから導き出せる答えは随分と簡単だった。

 

「私は罠カード、デストラクト・ポーションを発動していたんだ。ダーク・ルーラーを破壊し、ライフを4000回復したって事。フフッ、この台詞も一度言ってみたかったんだよね~」

「クッ!」

 

たったそれだけの台詞を言いたいだけに演技までして、俺を弄んだって事か・・・・。

 

「これで私のモンスターは三幻魔のみとなった。墓地の幻魔の鏡の効果を発動できる」

 

けど降雷皇フェイトはモンスターの破壊まで無効にする事はできない。ダメージは与えられなくても攻撃する価値は十分にある。

 

「魔法・罠ゾーンにキャロを置く。これで俺のフィールドのLSの攻守が300上がる」

 

なのはA2000・D3500→A2300・D3800

フェイトA3300・D0→A3600・D300

ヴィヴィオAD8400→AD8700

シグナムA3500・D2000→A3800・D2300

 

「バトル! ヴィヴィオさんで降雷皇フェイトを攻撃!」

 

A8700 VS D4000

 

ヴィヴィオさんの放つ七色の砲撃が降雷皇フェイトを呑み込んで破壊する――が、降雷皇フェイトは破壊されるのが仕事と言っても言い。これでこのターンどう足掻いても奴のライフを0にする事は出来なくなった。

 

「この瞬間降雷皇フェイトの効果発動。デッキから一枚ドロー」

 

SLCなのは5→6

 

「シグナムさんで幻魔皇はやてを攻撃!」

 

A3800 VS D3500

 

「一体でも減らされると幻魔の鏡が機能しないからね。罠発動フローラル・シールド。相手モンスターの攻撃を無効にして、私はデッキから一枚ドローする」

 

SLCなのは6→7

 

カードの絵柄から飛び出してきた桃色の花弁が幻魔皇はやての前に集まり、名前の通り花を使った盾となってシグナムさんの一閃を封じる。

 

「クッ・・・・。これでターンエンド。エンドフェイズ時にヴィヴィオさんを融合デッキに戻し、イクスを守備表示で特殊召喚する」

 

イクスA2000・D2500→A2300・D2800

 

場 失楽園

遊斗  モンスター4 伏せ3 手札1 LP3400

フェル モンスター2 伏せ0 手札2 LP3800

 

あと僅かで0に出来たライフも一気に回復され、このターン降雷皇フェイトが復活するのも考えれば三幻魔も未だ健在。だが俺だって諦めたわけではない。相手の攻撃を無効にできる0にできるシグナムさん。俺のライフが0にならない限り、破壊される事の無いフェイトさん。相手のステータスを下げる事が出来るなのはさんがいる。

 

「まだだ、まだやれる」

「フフッ、どうだろうね? 私のターン。スタンバイフェイズ、手札一枚を捨て、降雷皇フェイトを特殊召喚する」

 

SLCなのは7→8

AD4000

 

前のターンから分かっていたことだが、やはり三幻魔が並ぶとその威圧感は何倍にも何十倍にも膨れ上がるし、威圧感だけでなく幻魔の鏡の効果で三幻魔を並べる事はゲームの進行にも関係する。

ん? そう言えば奴は三幻魔を並べたのに何故フェルのカードを使わない? 三幻魔の力も強力だが、フェルの力があれば俺は今よりももっと危機的な状況に置かれていただろう。

 

「フフッ、何で彼女のカードを使わないのかって顔ね。答えは簡単よ。まだ彼女が消えた訳じゃないからね。彼女が消えた時、混沌幻魔フェルシュトラーフェのカードは私自身となり、私の物になる」

「そう言う事か・・・・」

「最も、この三幻魔でも十分な力を持ってるから別に必要無いけどね。閃光の双剣-トライスを神炎皇なのはに装備して、バトルフェイズ!」

 

FCなのは0→3

 

「降雷皇フェイトでシグナムを攻撃!」

「シグナムさんの効果! 降雷皇フェイトの攻撃力を0にし、守備表示にする!」

 

フェイトA4000→A0

 

「続いて神炎皇なのはでフェイトを攻撃!」

「フェイトさんの効果。墓地のLSを除外して、自身を除外する!」

「なら神炎皇なのはでなのはを攻撃。この瞬間神炎皇なのはの効果発動。SLCを二つ取り除き、墓地のライト・ルーラーと神獣王バルバロスをデッキに戻して攻撃力を9000にアップする」

 

SLCなのは8→6

神炎皇なのはA0→A9000→A8500 VS D3800

 

「一回目の攻撃は効果で無効にする!」

 

LC時空管理局2→1

 

またもや神炎皇なのはの攻撃がなのはさんを襲い掛かる。だが今度は炎の質も量も、何より攻撃回数さえも違う。なのはさんがFortressをフル投入して神炎皇なのはの攻撃を防いでも、閃光の双剣-トライスの効果でもう一度攻撃される。

 

「なら二回目の攻撃で破壊するだけ」

「クッ! なのはさんッ!」

 

神炎皇なのはの容赦ない攻撃を右手に持ったシールドと、自らの魔力で作りだしたバリアで防ぐが、その力の差は、誰の目から見ても明らかだった。金属をも軽々と溶かして、物理法則を無視して灰にする神炎皇なのはの炎により、なのはさんの持つシールドは形を崩して行き、桃色のバリアはパキパキと音を立てて亀裂を増やしていく。

その時、なのはさんはクルリと俺の方を向いてニッコリと笑みを浮かべた。

 

「ゴメンね、最後まで一緒に戦えないみたい。でも遊斗が勝ってくれるって信じてるから」

 

なのはさんが言い終えると共に、炎の進行を僅かながら防いでいた盾は灰となり、紅蓮の炎がなのはさんの体を呑み込んだ。

 

「幻魔皇はやてでイクスヴェリアを攻撃!」

 

A3500 VS D2800

 

白銀の魔法陣から放たれた二十メートルはある槍。夜天の王と冥王。同じ王だが幻魔の力を得ている夜天の王には敵う訳が無く、イクスの抵抗は空しいまま白銀の槍が冥王の体を貫いて、ここに一つの石像が作られた。

 

「二人が倒されてしまったか・・・・」

「二人だけ? 残念、全員いなくなるんだよ。速攻魔法異次元からの埋葬を発動。あなたが除外しているシグナムとフェイトを墓地に戻す」

「なッ!」

 

フィールドの中央に突如暗い緑をメインに作られ、細長い眼鏡に似た形の棺桶が空から降って来た。土煙を上げて着地したそれは、ゴゴゴと巨大な石と石が擦れる音を鳴らしながらゆっくりと開いて行く。露わになった棺桶の中は、グニャグニャと揺らめく青と不規則に並ぶ白の線。そして中が完全に露わになると同時に棺の上から突如二枚のカードが出現し、吸い込まれるように二枚のカード――フェイトさんとシグナムさんは呑み込まれた。

 

「フフッ、これで遊斗のモンスターは0になったね。それだけじゃない。リバースカードも無し、手札もさっき手札に加えた聖王の鎧だけ。ライフも三幻魔の一回の攻撃で終わる」

「ッツ!」

「これでターンエンド」

 

場 失楽園

遊斗  モンスター0 伏せ3 手札1 LP3400

フェル モンスター3 伏せ1 手札0 LP3800

 

奴の言う通り、俺の手札は聖王の鎧一枚のみ。ヴィヴィオさんがいない今、もはやブラフかコストにしか使用できない。仮にこのドローで次の奴の攻撃を防ぎきれたとしても、逆転の一手を引かなければいずれ攻撃が通ってしまう。仮に三幻魔の一体を倒せるカードを引けても、墓地の幻魔の鏡によって降雷皇フェイトへと攻撃対象が変更されるだけ。しかも墓地に高レベルモンスターがいるこの状況で神炎皇なのはの攻撃を越えるモンスターを召喚するのは、亮さんでも不可能だ。

 

「クッ」

 

しかもデッキトップに眠っているこのカードは気配からするにディバイトエナジー。仮にディバイトエナジーじゃなくてもこの状況を、たった一枚で打破するカードは俺のデッキに眠っていない。ドローカード、防御カード、高火力カード、蘇生カード。何を使っても次のターン俺のライフは0になり、仮にライフが0にならなくとも次のターンでライフが0になる。

 

「これで終わり・・・・?」

 

嫌だ。絶対に嫌だッ! ここで負ける訳にはいかない! 奴を放っておけばこの次元、いや、12次元世界全てが危険だ。それだけじゃない。俺の大切な人、大切な友達、大切な仲間も奴の手によって殺されてしまうかもしれない。

何よりフェルを、奴に閉じ込められている少女を助ける事が出来ない。俺を、俺の大切な人達を守ってくれ、助けてくれた少女に恩返しの一つも出来ない!

 

「負けるか! 絶対に負けるか!」

「フフッ、いいね~。けどどうする事のできない状況も世の中には沢山あるんだよ? それが今の遊斗の状況」

「ッツ、冗談じゃない! 確かに世の中にはどうする事の出来ない状況は沢山あるだろう! だが今はその時じゃない! どんな手を使ってでもお前に勝つ!」

 

デッキトップにあるカードをこれ以上無い鋭い目で睨みつけ、この状況を打破できるカードを持つ親友の顔を頭の中で浮かべ、羞恥心を捨てて大声で叫ぶ。

 

「十代! お前の事だからもう全て終わってるんだろ!? だったらあのカードを俺に貸してくれ! 俺と、お前の絆の力であのカードをッ!」

「何言って・・・・」

「この絶対絶命の状況、唯一打破できるカードを俺は知っているッ! そのカードを、十代が持っているそのカードを俺はドローする! 行くぞ! 俺のッ・・・・、ターンッッ!」

 

デッキトップのカードを力強く、無駄だと分かっているがそれでも精一杯の力でカードを引いた。ドローしたカードはまだ見えない、いや、見ていない。このドローで全てが決まると思うと、恐怖心の余りどうしても見る事が出来なかった。このカードがもし願ったカードで無かったら、一ターンでも奴の攻撃を防げるカードで無ければ、俺は何も助ける事ができない。

・・・・いや、恐れたらダメだ。恐れると言う事は、俺が十代を心から信用していないことになる。俺と十代の絆を信じるんだ。

 

「ッ」

 

瞼をゆっくりと開くと、目の前に持って来たドローカードが目に入った。それは緑の枠で囲まれ、速攻魔法のアイコンが付いている。まるで全てのモノを呑み込むかのような不気味な絵。そして名前の所に書いてあるのは三つの漢字。

 

「速攻魔法発動!」

「無駄よ! どんなカードを使ってもこの状況を覆す事は出来ない!」

「超融合発動!」

 

その瞬間、天に軽く男一人を呑み込める程の闇の渦が現れた。それは十代がよく使う融合の渦が、ドス黒く染まった様な、だが宇宙空間の様に黒い中に白い光がある謎の空間。それはまるで重力の様に俺を除く辺り全てのモノを引き込もうと風を起こす。

 

「な、何が!?」

 

自分のフィールドに並んでいる三体の幻魔が徐々に吸い込まれるように動くのを見て、奴は初めて本気の焦った表情と声を見せた。

 

「超融合は最強の融合カード。その効果はフィールド上のあらゆるカードを融合する!」

「そんなっ!? クッ、だけどフェルシュトラーフェのカードは私の手の中にある! 三幻魔を融合する事はあなたには出来ない!」

「だったら奪う、いや、返してもらうだけだ! 聞こえるかフェル! さっさとそんな奴から逃げ出して俺の所に帰って来い! 俺の作ったご飯食べるって言ってただろ! それにもっともっともお前には沢山の恩返しがしたい!」

 

その刹那、奴の体は炎の様に揺らめく黒いオーラで包み込まれ、奴の口から放たれる甲高い叫び声が鼓膜を響かせる。奴は叫びながら背中を少しだけ海老反りにし、僅かに上を向いた胸の中から一枚のカードがゆっくりと浮かび上がって来た。それは奴に消されようとしていた、俺が知っているフェルシュトラーフェ。禍々しい闇のオーラを放つカードは徐々にその姿を外界へと現して行き、ついに奴の体から飛び出して俺の手へと飛んで来た。俺は躊躇なく闇のオーラを放つカードをキャッチすると、そのままデュエルディスクにセットした。

 

「降魔しろ! 混沌幻魔-フェルシュトラーフェ!」

 

失楽園の暗い黒紫の雲が突如割れ、上空にデュエルアカデミア本校の数倍の大きさがある巨大な魔法陣が現れた。外周を囲う術式言語はミッドチルダと古代ベルカ語が混合しており、中央には先程発生した超融合の渦が大きくなり、天を埋め尽くされていた。超融合の渦は、奴のフィールドにいる三幻魔に反攻の術を与える事無くいとも簡単にアッサリと吸収し、三幻魔が渦に入ると共にドゴォォォン!と地面を揺らす程の重低音がこの空間に響き渡る。

 

AD0

 

上空に浮かんだ渦から出てきた赤・青・黄色に螺旋状に光る者が俺のフィールドに着地する。三色の光が収まると、その中にいた奴と全く同じ容姿、服を着た女の子が現れた。その女の子、フェルは自分を消そうとした奴を睨みつけるのではなく、クルリと振り返って俺を見ると数メートル離れた俺の所に跳んで来た。

 

「遊斗ッ!」

「久しぶりだな、フェル」

 

跳んで来たフェルを抱き止めて、ポンポンと優しく頭を撫でる。

 

「そ、そんな・・・・。何であなたが」

「遊斗の声とLSのみんなの攻撃が僕に届いた。だから僕は消えずにキミの前に立っている。それだけ」

「そう・・・・」

 

奴は怒りも、驚きも、悲しみも見せずに静かに言った。

その反応が少し不気味に感じながらも、俺はこのデュエルを終わらせる為、フェルの効果を発動した。

 

「これで終わりだ! フェルの効果発動! デッキトップ四枚を墓地へ送り、その中にLSがいたらそのモンスター一体を選択して発動。選択したモンスターの属性によって異なる効果を得る。墓地へ送られたヴィータさんを選択。属性は地だ」

墓地の影(フリートシャッテン)!」

 

突如フェルの周りを地属性を連想させる黒の入った茶色のオーラが包み込んだ。そのオーラの影響を受けてか、デュエルモンスターズの中で一番低い攻撃力が、神と同レベルの攻撃力まで跳ね上がる。

 

フェルA0→A4000

 

「属性が地か風の時は・・・・」

「そう。墓地のLSを除外し、エンドフェイズ時までその攻撃力分アップする。俺はさっき墓地に送られたユーリをゲームから除外した」

「これで終わり、ね。面白かったわ、遊斗」

 

奴は構えていたデュエルディスクをスッと下ろし、嘘偽りの無い年相応の笑みを浮かべて告げた。その笑みを見て一瞬攻撃するのを戸惑ってしまったが、ここで全てを終わらせないと、奴に挽回のチャンスを与えてしまう。それ以前に、俺は絶対にこのデュエルを勝たないといけない。

 

「バトル! フェルでダイレクトアタック!」

死に絶える運命(アオス・シュテルベン)!」

 

A4000

 

フェルが頭上に開いた右手を掲げると、頭上に超融合の渦によく似ている暗くて不気味な空間が現出する。姿形は全てを呑み込んで一つにする超融合に似ているが、フェルが作り出した渦は呑み込むのではなく吐き出すもの。

老若男女どれにも当てはまらない、キヒヒヒと笑う声。バサバサと翼を羽ばたかせる音。カンカンカンと金属がぶつかり合う音。その他にもドスンドスンと巨大な生き物が歩く足音や、ゴオオオッと炎が燃える音が渦の中から聞こえ、その音が徐々に徐々に大きくなって行く。そして暗く底の見えない渦の中から一匹の小柄な悪魔が現れ、それに続く様に大量の悪魔が飛び出した。三幻魔が生気を吸い尽くした元楽園は、あっと言う間に悪魔の楽園へとなり、たった一人の少女を囲む。

 

「いっけえええええっ!」

 

悪魔たちが放つあらゆる自然現象。数百、数千もの武器。軽く30メートルはあるであろう悪魔の拳。その全てが先程まで奴が立っていた場所に直撃し、攻撃――いや、殲滅の余波で、微弱な爆風や振動、熱や冷気、静電気が俺にまで来る。それでも俺は、悪魔たちがおこした楽しそうに舞っている土煙が晴れるまで瞬き一つせず、十数秒後に晴れた土煙の中にいたボロボロの奴の姿を確認すると、後ろからバタンと地面に倒れた。

 

LPフェル3800→-200

 

「終わった、のか?」

「うん。お疲れ様、そしてありがとう、遊斗」

 

フェルがデュエルの終了を告げてくれた直後、失楽園を埋め尽くしていた悪魔と黒紫色の雲が消えて、随分と騒がしく視界の悪い悪天候の砂漠へと戻って来た。

横になっている俺の真正面にぴょこっと顔を持って来たフェルは、吹き荒れる砂嵐が鬱陶しいのか顔をしかめ、シッシっと追い払う様に手を振ると、砂嵐が逃げて行くように去って行った。つくづく常識を通り越した力を持っている。

 

「気にするな。これでようやく一つ借りを返せたんだ。ところでアイツは?」

「ここよ」

 

フェルと同じ様に、突然目の前になのは(フェル)と全く同じ顔が現れ、思わずビクッと肩を震わせて、それからすぐ静かにボロボロの恰好をした少女を睨みつけた。

するとボロボロの恰好をした少女はクスクスと静かに、けど喜劇を見た時の様におかしそうに笑った。

 

「そんな身構えないで――って言うのも無理な話かしら。今のデュエルで私は主人格である彼女に力の大半を持って行かれた。今の私じゃあ彼女にどう足掻いても勝てないわ」

「ふふっ、そう言う事だから安心して遊斗」

「安心しろって言わ「ねえ、キミはこれからどうするの?」

 

安心しろって言われても、無理に決まってるだろ。と言おうとしたが、ボロボロの恰好をした少女に対するフェルの質問に消されてしまった。

その質問にボロボロの恰好をした少女は随分と不思議そうな顔をした。おそらく今ここに鏡があったら、俺も彼女と同じ様な表情をしているだろう。

 

「どうする? 変な質問ね。今から私はあなたに消される。そうでしょ?」

「? そんな事しないよ?」

 

キョトンと首を傾げながら、さも当たり前の様に言うフェルに、痛む体を無視して俺は大声を上げていた。

 

「何言ってんだフェル!? コイツはッ――(つぅ)~ッ!?」

「私が言うのも何だけど、遊斗は少し落ち着きなさい。ほら、治療してあげるから。それで? どうしてあなたは私を消さない訳?」

 

先程までデュエルをしていたボロボロの恰好をした少女に治療されながら、同じ顔を持つ純粋少女の言い分を聞く。しかも砂漠のど真ん中で。数十秒前のデュエルが遠い昔の出来事に感じられる状況だ。

これがフェルの純粋さがなせる技なのだろうか? まるで二年前の十代VS影丸理事長の時の様だ。

 

「キミは僕が力を制御する為に生み出した人格なんでしょ? そんなキミを消したら僕は力を上手く制御できなくなってしまうみたいだからね」

「へぇ? 私を生かしてくれるの? あなたを消そうとした私を?」

「うん!」

 

自分の体を乗っ取り、更には自分を消そうとした人格に対し、よくこんな優しさが出るものだ。俺がフェルの立場だったら迷いなくフェルと正反対の行動に出ていただろう。

コンマ一秒の迷いの無い返事に俺は思わず「ハァ」とため息を吐いてしまった。ため息を吐いたのは俺だけでなく、ボロボロの恰好をした少女も俺と同じく呆れたようにため息を吐いていた。

 

「それにね、キミも遊斗のご飯食べたいんだよね? ほら、遊斗の手作りご飯って聞いた時、キミの集中力が一瞬切れてたし。だから僕もキミから出られたんだ」

「まあ、興味が無い訳じゃないけど・・・・」

 

僅かに頬を赤らめて俺から視線を逸らすボロボロの恰好をした少女を見ると、俺は体の痛みより頭の痛みの方が強くなって来た。頭痛の原因は山ほどあるのだが、一番の原因は。

 

「何だよそれ・・・・。何かさっきの命がけのデュエルがアホらしくなってきた・・・・」

「別にあなたが負けても死ぬわけじゃないわ。まあ彼女は消えて、私は好き勝手してたでしょうけど」

「俺が人間だったらデュエルの最中に死んでいただろ・・・・」

 

ある時はトラックにひかれたと思ったし、またある時は文字通り体全身がバラバラになるような痛みを味わった。ダメージを受けなくても三幻魔の攻撃の余波は凄まじいものだったし、どう考えても俺を殺そうとしていた。

だだもう深く考えるのが馬鹿らしくなってきたので、これ以上あーだこーだ言うのは止める事にした。しつこい様だが、深く考えるのが馬鹿らしくなった。

 

「もうコイツの判断はフェルに任せる。その代わりもう二度とフェルを消そうとするな。それと破壊するのや傷つける行動も絶対にダメだ」

「フフッ、約束はできないわ」

「あのなぁ・・・・」

 




文字数は30000みたいです。どうしてこうなった・・・・。
そしてデュエルでミスが無いのを祈るしかない。手札に関してはほぼ無駄なくやってきたので、ちょっとでもミスがあると、ドミノの様に構成に矛盾点が増えていくので。
蟹「これがドミノだ」


本当はドグマガイとかも使わせたかったんですけど無理でした。遊斗のライフも鉄壁とは程遠いラインですし、自分の力量の限界です。
元々もう一人のフェルがオリジナル三幻魔を使い、最後は超融合で終わらせようと決めていたのですが、思えばこの作品ってボス戦では度々新カードや、他人のカードの力で勝っていますね。


一期、二期と違い、今回はボスは死なずに物語が終わりました。何だかんだでこのキャラも好きですし、殺して終わりって言うのも後味が悪いので。



そして以降は四期についてになります。(軽いネタバレと言うか、今後のストーリーの方針を書いています)



基本的にこの作品の主人公である遊斗のストーリーはこれで終わりになります。勿論四期もやりますが、今までより原作沿いになってオリジナルストーリーは少ないです。
というのも、遊斗の伏線としてはF・G・D関係と本来なら存在しない筈のカードの二つだったので、それを回収した今、もうオリジナルストーリーは書けないといいますか。

何故こんな事を話したかと言うと、二ヶ月間更新が空くからです。二ヶ月後の自分のハードルを上げない為と、捻りの無いストーリーを二ヶ月も引っ張るのは抵抗があるので。

なんか上手く説明できていない気がするので、伝えたい事を簡潔に言いますと、この作品のメインの部分は終わったので、後は短い四期をのんびりとやっていくだけです。
勿論楽しみに待っていただけるのなら、それが何より嬉しいのですが、お気に入りの片隅にでもこの作品を入れていただいて「おっ? こいつ久々に投稿してんじゃん。暇だし見るか」的な感じでこれからも見て頂いた方が、楽かもしれません。




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四期
第六十六話


お久しぶりです。ようやく投稿できるようになりました。とはいえ、まだどたばたしておりまして、投稿ペースは遅くなると思います。ひょっとしたら感想の返信も遅れるかもしれません。


それから今更ですが、エンドフェイズ時の表記を少し変えております。ひょっとしたらまた次に遊戯王作品書くかもしれないので、その練習的なノリです。まあいくら短いとはいえ、四期にも時間がかかると思うので、次作を書く確率はかなり低いでしょうが・・・・。書いたとしても100%完結しませんね←オイ





「帰って来たか。デュエルアカデミアに・・・・」

 

マイナスイオンを放つ穏やかな波を背に、俺は海岸からデュエルアカデミア本校を見上げた。あれから、もう一人のフェル(フィンスター)とのいざこざから早一ヶ月と数週間。さっきの独り言の通り、俺はようやくデュエルアカデミアに帰って来る事ができた。

あれから色々な事が起こった。一から順に全て説明すると日が暮れてしまうので、簡単に説明する。

まずもう一人のフェル(フィンスター)との戦いが終わった後、あの次元に旅立っていた俺以外の全員はこの次元にフェルが帰し、俺はあの次元で、ドラゴン族の王としてまだやらないといけない事があったので残った。あの次元でやったのは、ドラゴン族の国で、フェイトさんが組み立てたプランにほぼ変わりない。俺の元にある戦力による脅しもあり、種族間の戦争は一時休戦と言う形で少しだけ平和になった。

その一ヶ月の間、もう一人のフェルの事をずっと、奴だとか、ボロボロの恰好をした少女とか言うのもかわいそうなので、フィンスターと名を与えた。因みにみんなで考えた名である。

フィンスターも随分と穏やかと言うか、平和な性格になり落ち着いた。まあ元々落ち着いた正確であるが、どこか歪んでいて、その歪みが徐々に和らいでいったと言った方がいいかもしれない。

因みに。

 

「ね~ね~遊斗! 早く遊斗の部屋に行こうよ! フィンスターも遊斗の部屋に行きたいって!」

「その前に校長先生に挨拶して、十代に超融合を返してからな。それに俺の部屋って言うより、みんなの部屋って言った方が合ってる」

「けど置いてあるものは遊斗の物が多いから、遊斗の部屋でいいんじゃない?」

「まあそう、なのか?」

 

フェルとフィンスターは二重人格。二人の内一人が表に出て、もう一人が内側におり、二人の気分によって表に出る人格が変わる。まるで初代デュエルキングの武藤遊戯さんと、名も無きファラオの魂の様だと、今でもしみじみ思う。

閑話休題。

それで精霊世界でのいざこざが一段落ついたので、俺は一ヶ月ぶりにデュエルアカデミアに帰って来たのだ。因みに先程、俺の部屋に行きたいと口にしたのがフェル。何だかんだで俺の部屋じゃないか? と言ったのがフェイト。美少女二人を両手に歩くのは男として悪くないが、フェルは妹や近所の子供感覚で接しているので、両手に花って感覚では無い。

久しぶりのデュエルアカデミアを懐かしみながら歩いていると、目の前で男女が言い争っていた。いや、正確には争いでは無く、女が男を一方的に怒鳴っていると言った方がいい。

 

「どうして十代様の相手が明日香さんなの!?」

「いや、俺に言われても困るザウルス。レイちゃんはそんなに俺と組むのが嫌ザウルス?」

「嫌とかそういう問題じゃなくて、何で卒業生同士でしかペアが組めない様にしたの!?」

 

もはや顔を見ず、変声機で声を変えようとも誰と誰が言い争っているか一目瞭然である。男に文句を言っているのは十代大好きなレイちゃん。方や怒鳴られている方は同じく別の意味で十代が大好きで、それに加え恐竜も好きな剣山。

そのやり取りを見て、二人を知らないフェルは首をチョコンと傾げ、二人と仲の良いフェイトは「あはは・・・・」と俺と同じ様に苦笑している。

話の内容はよく分からないが、とりあえずかなり困った顔をしている剣山を助ける為に二人に声を掛けた。

 

「よっ。二人とも、何してるんだこんな所で?」

「遊斗先輩!?」

「遊斗さん!?」

「そんな幽霊を見たかの様に驚かなくても・・・・」

 

虫の居所が悪かったレイちゃんも、困っていた剣山も、二人揃って目と口を開いてポカーンという表現が一番あった顔をしている。ネットのポカーンの顔文字を二人の横に並べると、かなり似ているだろう。

 

「い、今までどうしてたんですか!? みんなが帰って来ても遊斗さんだけ帰って来ないし!」

「あ~、あれから色々あってな。向こうの次元でいくつかやらないといけない事があって。エドやオブライエン、亮さんから何か話を聞かなかったか?」

「そういえばあの三人も、遊斗先輩は向こうで何かする事がある。心配しなくてもいいドンと言っていたザウルス!」

「あの三人は語尾にドンって付けないが、そういう事だ。やる事やって帰って来た訳。それで今度はこっちの質問だがレイちゃんは何に怒ってたんだ?」

 

するとレイちゃんはグイッと背伸びして、俺に顔を近づけて、か~な~り怒った表情で説明を始めた。が、感情的になっていて説明がかなり断片的で分かりにくく、仕方無いので事情を全て知っている剣山に説明を求める事にし、その間フェイトにレイちゃんを宥めてもらう事にした。

 

「え~と、出来れば始めから説明して欲しいんだが」

「分かったザウルス。まずそもそもの始まりは、もうすぐ卒業する卒業生との交流の為のペアデュエル――簡単な言い方をするとタッグデュエル大会ドン。卒業生は卒業生同士で、1・2年生は1・2年生同士でペアを組むザウルス。因みにペアの相手は異性じゃないとダメザウルス」

「あ~、去年のカップルデュエルみたいなものか。で、レイちゃんは十代と組めなくて怒っていると。まあ去年はレイちゃんが十代とタッグ組んだんだからもうすぐ卒業する明日香に譲ってやっても「ダメなの!」そうなの?」

「十代様何か変わって、だからボクが元気にさせてあげようって! だから!」

「フェイト。翻訳を頼む」

 

何をどう俺に伝えたいのか全く分からないレイちゃんの説明は、俺の想像力で補う事は出来なかったのでさっきまでレイちゃんを宥めていたフェイトに説明してもらう事にした。

 

「ね~遊斗~。早く遊斗の部屋行こ~」

「はいはい。お前はそこ等辺で遊んできなさい」

「え~っ」

「そう言えばその子、誰ザウルス? まさか遊斗先輩、二股――」

「――違う違う。あ~も~話が進まない!」

 

それから数分後、俺の部屋に行きたがっていたフェルはなのはさんに案内を頼んで先に部屋に行って貰い、剣山にはフェルがカードの精霊だと説明し、レイちゃんを落ち着かせて、そしてフェイトから説明をしてもらった。

フェイトの説明を纏めるとこうなる。

約一ヶ月前にみんながデュエルアカデミアに帰って来てから、十代の様子が変わったらしい。何でも一週間前まではずっとレッド寮に引き籠っていたらしく、ようやく外に出てからも余り他人と関わらない様にしていた。そんな十代を見ていたレイちゃんと剣山は、十代を元気づける為にペアデュエル大会を開催。

しかしレイちゃんは自分が十代のタッグを組んで十代を元気づけようと考えていたらしく、卒業生は卒業生としかタッグを組めないルールを作った剣山に文句を言っていた。

 

「で、その後は俺達と会ってこうしている、と。ま~、とりあえず剣山、お疲れさん」

「あ、ありがとうザウルス~!」

 

学校行事を一から作るなんてかなり大変な作業を剣山は頑張ってきたのにもかかわらず、レイちゃんにあ~だこ~だ言われて剣山も結構辛かったのだろう。まるでアニメの様に滝の様な涙を流しながら俺に抱き着いて来た。

とはいえ、恋に一直線のレイちゃんに悪意があった訳じゃない。

 

「ね、レイちゃん。今の十代がどんな感じになっているのかは知らないけど、十代はデュエルが強い女の子が好みだと思うよ。だからこの大会でレイちゃんが強いって事を改めて証明したら、十代に良いアピールができるんじゃないかな?」

「・・・・さ、流石遊斗さん!」

 

どうやらレイちゃんなりに納得してくれた様だ。さっきまで鬼の百面相だった顔は、花の様な明るい笑顔へと変わる。

 

「なら遊斗さん! ボクとペアデュエル大会決勝に出て下さい!」

「へ? 決勝? ってもう決勝まで勝ち進んだのかよ!?」

 

チラリと胸元で泣いている剣山に視線を動かすと、もう疲れたザウルス! お願いだから変わって欲しいドン! と訴えかけてくるような視線で見つめられていた。確かに今までも散々言われて来た上げく、仲良くデュエルをする十代と明日香を見るレイちゃんをパートナーにしてデュエルして、更に自分より強い十代と明日香を相手にするのは中々骨の折れる仕事だ。まあ剣山の恐竜の骨がそんな事で折れるとは思えないが。

 

「分かった。一応聞くが剣山はそれでいいのか?」

「勿論ザウルス! 二人とも頑張るドン!」

 

剣山って語尾と恰好は常識から大きく外れているが、意外と真面目というか常識人だよな・・・・。

 

「頑張ってね遊斗。観客席で応援しているから」

「ああ・・・・って、ちょっとぐらい嫉妬して欲しいんだが・・・・」

「ん? 何か言った?」

「いや、何でも無い。じゃっ、行こうかレイちゃん」

「はい!」

 

デュエルアカデミアに帰って早々デュエルとは、まさにデュエルを教えるデュエルアカデミアらしい。思えばあの次元世界では、デュエル=命のやり取りなので、こうやってのんびりやるデュエルは随分と久しぶりだ。腰に掛けたホルダーからデッキ取り出し、デッキの中を確認しようとすると、背中からフェイトの声が聞こえた。

 

「遊斗」

「ん? どうかしたか?」

「私は遊斗を信じてるから、妬いたりなんてしないよ」

「ッ!?」

「ふふっ、頑張ってね」

 

太陽の様に明るくも、優しくて何もかも包み込むような大人の笑顔。その笑顔を見た俺の頬はすっかりと赤くなっていたらしく、デュエル会場に向かう間ずっとレイちゃんに冷やかされていた。

 

 

 

 

「レディース&ジェントルメ~ン! つい~に、このペアデュエル大会~も決勝戦なノーネ!」

【うおおおおおっ!】

 

会場を繋ぐ出場者専用の廊下で待機していると、マイクによって何倍にも大きくなった懐かしい声と、盛り上がりがピークになった生徒達の声が会場を包み込んでいた。

思えばクロノス先生もあの次元に来ていたんだっけ? 結局会う事無かったが、おそらくあのクロノス先生の事だから、生徒達(俺達)の事を心配して付いて来てくれたのだろう。

 

「まず~は、卒業生からにゅうじょ~う! ブルー寮の天上院明日香とレッド寮の遊城十代なノーネ!」

【うおおおおっ!】

【明日香さーん!】

【十代さーん!】

 

流石一年の頃から人気のある明日香と、様々な伝説を作った十代である。その歓声はさっきよりも何倍も大きかった。会場が明るくて、この廊下は薄暗いのでライトの中にいる十代と明日香の姿をハッキリと見る事は出来なかったが、十代の背が伸びた気がする。

 

「そして~っ! 在校生はブルー寮の早乙女レイとイエロー寮のティラにょにょっ!? シニョール遊斗!?」

「「遊斗!?」」

 

廊下を出て会場へ入ると、会場からの歓声は無く、ざわざわとざわめき始めた。俺は気にすること無くレイちゃんと共にデュエルフィールドに上って、先に待っていた十代と明日香に軽く手を上げる。

 

「よっ。二人とも久しぶり。クロノス先生もお久しぶりです」

「お、お久しぶり~・・・・じゃないノーネ!」

「そうよ遊斗! あなたいつ帰って来たの!?」

「ついさっきだ。たまたまレイちゃんと剣山と会ってな。剣山は体調不良らしいから、代わりに俺が出る事になった。それから十代」

「なんだ?」

 

確かに十代の雰囲気が随分と変わった。いや、雰囲気だけじゃなく見た目も変わっている。デュエルアカデミアにいる時の十代の定番である、レッド寮の服に白いズボンの組み合わせは、黒いズボンへと変わっており、制服の下に着ていた黒いTシャツは黒のタートルネックへと変化。髪も僅かに伸びており、アホ毛が無くなっている。顔立ちも大人びたと言うか、よりイケメンになったと言うか、幼い感じの可愛い系だったのがカッコイイ系になっている。

う~む。男の俺でも、かなり良い男と惚れ惚れする感じになっている。

 

「このカード、助かったよ。おかげで大事なデュエルに勝つ事ができた」

 

シュッと十代に向けて一枚のカードを飛ばすと、十代は人差し指と中指の間に挟んでキャッチした。そのカードを見て十代は一瞬顔をしかめるが、すぐに無表情になり、キャッチしたカードをデッキホルダーの中ではなく、ポケットの中に入れた。

 

「本当に、役にたったのか? このカードが?」

「ああ。無かったら今頃――想像しただけでもやになる」

「そうか。なら・・・・よかった」

「いいデュエルをしような、十代、明日香」

「ええ」

「え~と、何か色々ありました~が! もうどうでも良いノーネ! みんなもブルー寮遊斗・スカリエッティの乱入に異存は無いノーネ?」

【うぉぉぉぉ!】

【遊斗先ぱ~い!】

【頑張ってくださーい!】

 

いや~、久々の帰還にこうやって歓迎されるのは素直に嬉しい。観客席にいる皆に軽く手を振ると、デュエルディスクを起動させ、デッキをデュエルディスクに装着する。

 

「遊斗さん。さっきのカードは?」

「超凄い融合カードさ。ほら、そんな事より、十代にアピールするんだろ?」

「はい! 十代さまー! 私、十代様に勝って強いデュエリストって証明してみせます!」

「あ、ああ?」

「それじゃあ行くノーネ!」

【「「「「デュエル!」」」」】

「先攻は僕が貰うよ! ドロー! ライトロード・マジシャンライラを召喚!」

 

A1700・D200

 

「ゴブホッ!?」

「ゆ、遊斗さん? どうかしたの?」

「い、いや。何でも無い。レレレ、レイちゃんデッキ変えたんだね~」

「はい! ちょっと落ち込んでいる時、この子達が助けてくれたんです!」

 

いやいや、落ちつけ落ち着け。まだライトロードと決まった訳じゃない。ライラはその汎用性の高さからライトロードデッキ以外にも様々なデッキに使われる。そもそも高額のライトロードデッキを年齢的にはまだ中学生であるレイちゃんが持てるとは思わない。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズライラの効果でデッキトップ三枚を墓地へ送るよ。やった! 墓地へ送られたライトロード・ビーストウォルフの効果で、デッキから墓地へ送られたこのカードを特殊召喚!」

 

A2100・D300

 

・・・・この子のデッキ、絶対ライトロードだ。いやいや、別にライトロードが悪い訳ではない。だがやはり俺も向こうの次元では、ライトロードモンスターの精霊と戦った事があり、ライフが削られる事は無かったにしろ、かなり苦戦されたモンスター群だ。軽くトラウマになったと言っても過言では無い。エンドフェイズ時にデッキトップのカードを墓地へ送る(デ?)メリット効果を持っており、その共通効果を使って展開力を爆発的に上げるデッキ。

思い出してみると、精霊世界で裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)とデュエルした時「少女の流す純潔な涙が我等を呼ぶ」って言ってた。レイちゃんが泣いた原因は――ま~十代関連だろうが、まさかライトロードを呼ぶとは思わなかった・・・・。

 

遊斗&レイ 手札4 LP4000 TPレイ

モンスター ライラ ウォルフ

魔法&罠  セット×1

 

「エンドフェイズ時にデッキのカードを墓地へ送るライトロードデッキ。相手にとって不足は無いわ。私のターン!」

 

この三年間明日香とデュエルした回数は片手で数えられる程度だからあんまり記憶に無いが、確か機械天使とサイバー・エンジェルの混合型だっけ? 俺が言える立場ではないが、明日香のデッキもかなり滅茶苦茶だ。強欲な壺が遂に禁止になった今、あの手札消費の激しいデッキをどうやって回すんだろうか?

 

「さっそく行くわ! 融合発動! 手札のエトワール・サイバーとブレード・スケーターを融合! 来て、サイバー・ブレイダー!」

 

A2100・D800

 

明日香のデッキに多い、機械仕掛けのバレリーナモンスター。他のバレリーナモンスターと違って、明日香の切り札であるこのモンスターの放つオーラは中々のもの。

二年前、翔が覗き疑惑をかけられた時のデュエルでコイツと戦ったっけ。密度の濃い学園生活を送って来たからか、もう遠い昔の様に感じられる。

 

ブレイダーA2100→A4200

 

「攻撃力が4200に!?」

「サイバー・ブレイダーは相手のモンスターの数によって効果が変わるモンスター。二体の時は攻撃力が倍になる。バトル! サイバー・ブレイダーでライラを攻撃!」

 

A4200 VS A1700

 

「キャッ!」

 

サイバー・ブレイダーはフィールドを滑ってライラに接近し、鍛えられた足を武器としたキックを使い、ライラを場外へと蹴り飛ばす。サイバー・ブレイダーに比べると攻撃力が貧しいライラは壁に激突し、バリーンと音と共に破壊された。

 

レイLP4000→1500

 

「ぅぅっ、すいません遊斗さん」

「ん、気にするな。初っ端らから攻撃力4200なんて出されたらそうなってしまうのは当然だって」

「モンスターの数が変化した事で、サイバー・ブレイダーのモンスター効果が変わる」

 

ブレイダーA4200→A2100

 

明日香のモンスターは表記されているステータスは決して高くはない。その分ステータスを上昇する装備モンスターや、サイバー・ブレイダー等の特殊な効果を持つモンスターが花を咲かせる。が、やはり火力不足感が否めないが、そこは気合とプレイングで補っているのだろう。

 

「マンジュ・ゴッドを守備表示で召喚。効果でデッキからサイバー・エンジェル-荼吉尼を手札に加える。カードを一枚伏せてターンエンドよ」

 

A1400・D1000

 

召喚と同時に儀式カードを手札に加える事ができるモンスター。有名な仏像を意識したイラストだろおう。ただ仏様が天使族なのは、違和感を覚えずにはいられない。

 

遊斗&レイ  手札4 LP1500 TPレイ

モンスター ウォルフ

魔法&罠  セット×1

十代&明日香 手札3 LP4000 TP明日香

モンスター ブレイダー マンジュ・ゴッド

魔法&罠  セット×1

 

さてと、タッグデュエルもずいぶん久しぶりだな。十代と一緒にコブラとデュエルをした時以来か。あれもタッグデュエルよりも変則デュエルに近い。

まっ、デュエルに関係無い事はこれくらいにして、と。

 

「俺のターン、ドロー! 相手が十代なら、手加減する必要も無いか。レヴィを通常召喚! 効果で自身にLCを置く!」

『やっほー! 久しぶりだね~・・・・って、十代何か変わったね』

 

LCレヴィ1

A1900・D400

 

「みたいだな。カートリッジロードをレヴィに発動し、LCを乗せる」

 

LCレヴィ1→2

 

「魔法・罠ゾーンにアリサとすずかを置く! アリサの効果でレヴィを支援! バトルだ! レヴィでマンジュ・ゴッドを攻撃!」

『ひっさしぶりの光翼斬!』

 

A1900 VS D1000

 

円を描く三日月状の魔力刃が放たれ、マンジュ・ゴッドの体と沢山の手を切断する。グロテスクな光景にならないよう、マンジュ・ゴッドは爆発してフィールドから去り、その代わりに俺のフィールドにそれぞれ少女と女性が守備表示で現れる。

 

「レヴィの効果。戦闘で相手モンスターを破壊した時、自身のLCを取り除き、取り除いた数だけデッキからLSを特殊召喚する。コロナとカリムを特殊召喚する」

 

レヴィLC2→0

A500・D1700

AD500

 

「これで遊斗のフィールドにモンスターは四体。サイバー・ブレイダーの効果が無効になる。変わらないな、お前は」

「いや、お前ほどじゃないが結構変わったさ。アリサの効果発動。支援したモンスターが戦闘でモンスターを破壊した時、対象のモンスターにLCを乗せる。更にフィールドにすずかがいる場合デッキから一枚ドロー」

 

LCレヴィ0→1

 

「カリムの効果発動。カードの種類を宣言し、デッキトップが宣言したカードだったら手札に加える。魔法を宣言。デッキトップはレイジングハート。手札に加える。そしてコロナの効果発動! 手札一枚を墓地へ送り、デッキからゴライアスを特殊召喚する!」

 

AD2300

 

コロナの隣の地面が盛り上がり、地中に埋まっていた岩や土を使って作られたゴーレムが白いライトの元に姿を現す。かなり理想的なパターンで動いている分、手札消費もさほど多くは無い。

 

「すずかの効果発動。レヴィのLCを自身へ移動」

 

LCレヴィ1→0 すずか0→1

 

「そしてすずかのもう一つの効果。アリサがいる時、自身のLCを取り除き、相手モンスターを選択。選択したモンスターは次の相手のエンドフェイズ時まで攻撃、表示形式の変更ができない。サイバー・ブレイダーを封じる」

「クッ!」

 

LCすずか1→0

 

「さっすが遊斗さん! フィールドを埋めてサイバー・ブレイダーの効果を無効にして、更に攻撃まで封じるなんて!」

「いや、まだデュエルは始まったばかりだ。油断はできない。ターンエンド。エンドフェイズ時にデッキからカートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗&レイ  手札4 LP1500 TP遊斗

モンスター ウォルフ レヴィ カリム コロナ ゴライアス

魔法&罠  セット×1 アリサ すずか

十代&明日香 手札3 LP4000 TP明日香

モンスター ブレイダー

魔法&罠  セット×1

 

「ごめんなさい、十代」

「別にいい。俺のターン」

 

明日香の謝罪に返事一言、か。見た目が大人っぽくなったと同時に、随分性格もクールになっている。前の十代だったら「へへっ、気にすんなって! ピンチの方がワクワクするぜ!」なんて言いそうだけど。何よりデュエルを楽しもうとする気持ちが今の十代の中には無い。

十代はフィールドにいるサイバー・ブレイダーを面倒くさそうな顔で見ながら、チラリと自分の手札を眺める。コンバート・コンタクトかバブルマンでも持っているのだろうか。

 

「手札抹殺を発動。手札を全て捨て、俺は五枚ドローする」

「TPである俺が効果を受ける。俺は四枚ドロー」

「ブラック・パンサーを召喚」

 

A1000・D500

 

ネオスペーシアンか。彼等とこうやって対峙するのもずいぶん久しぶりだ。ブラック・パンサーって事はカリム姉の効果を奪うか、ブラック・ネオスの融合素材にするか。

 

「ブラック・パンサーの効果発動。お前のカリムの名前と効果を得る」

「効果を奪われたか」

「カリムの効果発動。魔法を宣言。O-オーバーソウル。手札に加え、そのまま発動。墓地のネオスを特殊召喚!」

 

A2500・D2000

 

さっそくエースであるネオスを呼んだか。久しぶりのネオスに、軽く手を上げて挨拶をすると、ネオスはコクンと小さく頷いて返事をしてくれた。しかしこの状況でネオスを呼んでも――まさか初っ端からあのカードを・・・・。

 

「魔法カード、ラス・オブ・ネオスを発動。ネオスをデッキに戻しフィールドのカード全て破壊する!」

「ちょっと十代!?」

 

上空に飛び上がったネオスは、フィールドの中央に向け怒りの手刀を振り下ろす。ネオスの手刀に耐えきれなかった地面にはクレーターが作られ、攻撃の衝撃が敵味方関係なくフィールドにいるあらゆるカードを破壊する。

エースカードであるサイバー・ブレイダーとせっかく伏せたカードが破壊された明日香は怒っている。

 

「別にいいだろ。遊斗の厄介なモンスターを全滅できたんだ」

「けどもう少しやりかたってものが」

「二人とも全然に気が合ってないじゃないですか?」

「みたいだね。破壊されたリ・バウンドの効果を発動する。セットされたこのカードが破壊された時、デッキから一枚ドローする」

「コンバート・コンタクトを発動。手札のグロー・モスとデッキのフレア・スカラベを墓地へ送って二枚ドロー。死者蘇生を発動。墓地のバブルマンを特殊召喚し、デッキから二枚ドロー」

 

A800・D1200

 

墓地に明日香の切り札であるサイバー・ブレイダーがいるのにも関わらず、二枚ドロー出来るバブルマンを特殊召喚か。ますます明日香の機嫌が悪くなっているが、この二人、よく決勝まで勝ち上がって来られたな・・・・。

 

「装備魔法バブル・ショットを発動。バブルマンの攻撃力を800アップする。バトル! バブルマンでダイレクトアタック!」

「これが決まったら僕達負けちゃう!」

「大丈夫って。手札のザフィーラの効果を使い、戦闘ダメージを0に。その後デッキから一枚ドロー」

「やはりそう簡単にはやられてくれないか。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗&レイ  手札5 LP1500 TP遊斗

モンスター 

魔法&罠  

十代&明日香 手札2 LP4000 TP十代

モンスター バブルマン

魔法&罠  バブル・ショット セット×1

 

「僕のターン! ライトロード・サモナールミナスを召喚!」

 

AD1000

 

レイちゃんが召喚したのは、踊子の様な少し露出度の高い恰好をした黒い肌をした女性。サモナーと名乗っているだけあり、両手首には腕輪の様に魔法陣が展開されており、魔法使いらしさをアピールしている。

 

「ルミナスの効果発動! 手札を捨て、墓地のライラを特殊召喚するよ!」

 

A1700・D200

 

俺ならここでライラの効果を使って、十代のリバースカードを破壊するがレイちゃんはどうする?

 

「バトル! ライラでバブルマンを攻撃!」

 

A1700 VS A1600

 

ライラは木で作られた杖の先に埋め込まれている白い宝石に魔力を込めたのだろう。白い宝石は綺麗な明るい光を放ち、ライラが杖を振ると同時に宝石からドッジボールサイズの白い魔力弾が発射された。

 

「バブル・ショットの効果でバブルマンの破壊を無効にし、戦闘ダメージを0にする」

「ならルミナスでバブルマンに攻撃!」

 

A1000 VS A800

 

サポートをメインとするルミナスは攻撃手段が乏しい様で、なんと拳でバブルマンに立ち向かい、あろう事か普通に戦闘破壊してしまった。エドの使うD-HEROもだけど、下級HEROはHEROの名に相応しく無い低ステータスモンスターが多い。

 

十代LP4000→3800

 

「罠発動、ヒーロー・シグナル。デッキからレベル4以下のE・HEROを特殊召喚する。E・HEROエアーマンを特殊召喚。効果でデッキからネオスを手札に加える」

 

A1800・D300

 

「さっすが十代様。私の攻撃を少ないダメージで抑えながらネオスを手札に加えるなんて」

「いくら十代だからって敵を褒めてどうする・・・・」

「だって十代様だもん!」

「ハァ~。だってさ十代」

「ん? ああ。ありがとな、レイ」

 

自分の時は愛想の無い返事ばかりをしていた十代が、レイちゃんに対してはしっかりと礼をした。それが面白く無かった様で、明日香の機嫌が段々と悪くなっていた。一方、冷めていた十代から「ありがとう」と言われたレイちゃんは、それはそれは嬉しそうに頬を崩している。

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンドです。エンドフェイズ時にライラとルミナスの効果でデッキのカード六枚を墓地へ送るよ。そしてデッキから墓地へ送られたライトロード・レイピアをライラに装備。ライラの攻撃力は700ポイントアップ」

 

ライラA1700→A2400

 

遊斗&レイ  手札2 LP1500 TPレイ

モンスター ライラ ルミナス

魔法&罠  レイピア セット×1

十代&明日香 手札3 LP3800 TP十代

モンスター エアーマン

魔法&罠  

 

「私のターン! 再びマンジュ・ゴッドを召喚し、デッキから機械天使の儀式を手札に加える。十代、あなたのモンスター借りるわよ」

「ああ。好きに使え」

 

まるでタッグプレイヤーである明日香の事を全く考えていない様な返事に、そろそろ明日香も限界の様だ。まあ明日香も余り我慢強い方じゃないし、十代を軽く睨みつけながらきつい口調で返した。

 

「そうさせて貰うわッ。機械天使の儀式を発動! フィールドのエアーマンとマンジュ・ゴッドを生贄に、サイバー・エンジェル-荼吉尼を特殊召喚!」

 

A2700・D2300

 

おそらく日本神話の登場人物がモチーフになっているのだろうが、俺はその辺りに詳しくないのでよく分からない。体のラインがきっちりと見えるセクシーな恰好をしているモンスターだが、肌は青で腕は四本あり、二本の腕で二本の刀を、残りの腕で一本の長槍を持つそのモンスターは、セクシーの言葉からかけ離れている。

 

「荼吉尼は特殊召喚成功時、モンスター一体を破壊する! ライラを破壊!」

 

荼吉尼は空へ跳び、ライラに向かって長槍を投げる。

 

「これで終わりよ! 荼吉尼でルミナスに攻撃!」

「そう簡単に終わらせない! 永続罠、ライトロード・バリア発動! ライトロードが攻撃対象になった時、デッキのカード二枚を墓地へ送る事で攻撃を無効にするよ!」

 

ルミナスの前にLS(みんな)がよく使うバリアタイプの防御魔法が展開される。長槍で牽制し、その直後二本の刀でルミナスを倒そうとしていた荼吉尼だったが、白のバリアによって攻撃を封じられ、大人しく明日香のフィールドに引き返す。

 

「やるわね。カードを二枚伏せてターンエンドよ」

 

遊斗&レイ  手札2 LP1500 TPレイ

モンスター ルミナス

魔法&罠  バリア

十代&明日香 手札0 LP3800 TP明日香

モンスター 荼吉尼

魔法&罠  セット×2

 

「俺のターン。レイちゃん、悪いけどルミナスを」

「はい、大丈夫です」

「ありがとね。フィールド魔法ミッドチルダを発動! ルミナスを生贄に、ディアーチェを召喚!」

 

LCディアーチェ1 ミッドチルダ0→1

A2100・D1600

 

久しぶりの十代とのデュエルが嬉しいのか、僅かに見えるディアーチェの口元が少しだけ上に上がった気がした。

 

「魔法・罠ゾーンにキャロを置く。これでディアーチェの攻守が300アップ」

 

ディアーチェA2100・D1600→2400・D1900

 

「そしてキャロが存在する時、遠隔転移を発動できる。遠隔転移はLS専用の死者蘇生。墓地のレヴィを特殊召喚!」

『呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃ~ん!』

『テンポが間違ごうておるぞレヴィ』

 

レヴィA1900・D400→A2200・D700

 

「悪いな明日香。お前のエースモンスターの出番は一ターンのみだ。ミッドチルダの効果で、ミッドチルダに乗ったLCをレヴィに移動する」

 

LCミッドチルダ1→0 レヴィ0→1

 

「バトル! レヴィで荼吉尼を攻撃!」

「へ? 相手のモンスターの方が攻撃力高いですよ?」

「ッツ! 何も無いわッ」

 

レイちゃんは俺のデュエルを余り見て無いからディアーチェの効果は知らないが、明日香は知っている。荼吉尼に向けてレヴィが光翼斬を放った直後、青い刃に続いて紫色の砲撃が発射された。

 

「ディアーチェの効果発動。自身を除くマテリアルズかユーリが戦闘を行うダメージステップ時、自身のLCを取り除く事で、フィールドのLSの攻撃力を戦闘モンスターに収束させる」

 

LCディアーチェ1→0

レヴィA2200→A4500 VS A2800

 

レヴィの放った三日月状の魔力刃を二本の刀をクロスさせて防いだ荼吉尼だったが、追撃として放たれたディアーチェのアロンダイトまで止める事が出来ずに爆発。レヴィは満足そうに笑みを浮かべながら『シュテる~ん!』とデッキに眠っているもう一人のマテリアルズの名を呼んだ。

 

明日香LP3800→2100

レヴィLC1→0

 

「レヴィの効果でデッキからシュテルを特殊召喚」

 

シュテルAD800→AD1100

 

『呼んでいただき感謝します。レヴィ』

『へへ~ん、もっと褒めてもいいんだよ~?』

 

マテリアルズが揃った事で三人を融合させる事ができるが、キャロの効果もあってディアーチェとレヴィの攻撃力は2000を超え、シュテルもレベル3以上のモンスターと戦闘を行う場合攻撃力が2000を超える。しかし十代の手札にネオスがいるのも気にはなるが、その時は伏せカードを使うか。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗&レイ  手札0 LP1500 TP遊斗

モンスター ディアーチェ シュテル レヴィ

魔法&罠  バリア キャロ セット×1

十代&明日香 手札2 LP2100 TP明日香

モンスター 

魔法&罠  セット×2

手札3

 

「ハァ・・・・。三年にもなって学校行事のさなか、子供っぽい喧嘩するなよ・・・・」

「ん? なにか言ったか?」

「・・・・十代、それに明日香。このままデュエルをしていたら俺達が間違いなく勝つ。それが嫌ならもう少しコミュニケーションを取るんだな」

 

二人とも仲直りするつもりがあるのか、互いに顔を見合わせるものの、明日香がすぐにそっぽを向いてしまい十代も俺達へと視線を戻す。明日香の素直になれない性格が裏目に出ている。

しかもパートナーであるレイちゃんからは「相手へのアドバイスはデュエルが終わった後にして下さい!」と怒られるし、まさに踏んだり蹴ったりだ。

 

「でも確かに遊斗先輩の言う通りですね」

「え?」

「だって十代様も明日香先輩も思ってたより全然弱くて、正直決勝って感じがしませんし、弱い者苛めしているみたい」

 

相手を――大好きな十代を挑発するような事を言って良かったのか? そんな言葉を込めた目でレイちゃんをチラッと見つめると、二人に見えない様に小さく舌をペロッと出した。

なるほどね・・・・。悪役になってでもいいから、少しでも前の十代に戻って欲しいと。

 

「なっ!? あなた達の方がライフは下なのよ! そんな事言える立場!?」

「確かに俺達の方がライフは低いが、フィールドで勝っている。マテリアルズの攻撃一つ通るだけでライフは並ぶ。お前達が追い詰められているなんて、小学生だって分かる事だ」

「何ですって!」

 

滅多な事じゃない限り挑発なんてしないので、わざとらしくないか心配だったが、どうやら冷静さを失っている明日香には効いた。怒鳴り声と共に前に乗り出した明日香。その前に、十代の手が伸びた。

 

「落ち着け明日香。確かに今追い詰められているのは俺達だ。このままだったら負けてしまうかもしれない」

「十代・・・・?」

 

僅かに首を傾げる明日香の視線の先には、デュエルディスクを眺めて何かを確認する十代の姿。

 

「明日香、お前のセットカード使わせて貰う」

「・・・・ええ! 思いっきりやりなさい!」

 

単純な作戦だったが上手くいった様だ。二人に見えない様にガッツポーズをすると、レイちゃんはニコッと笑みを浮かべて小声で「ありがとうございます」と頭を下げた。

十代もいい娘に好かれたものだ。明日香とレイちゃん、十代はどっちを選ぶのか、そもそも二人を選ぶかもわからないが、俺はレイちゃんを応援したいな。やっぱり鈍い十代に対してはストレートで想いを伝えるレイちゃんの方が――って話がズレたな。今はデュエルに集中。

 

「俺のターン! ゴブリンのやりくり上手を発動し、チェーンして非常食を発動。ライフを1000回復し、墓地のやりくり上手は二枚となったのでデッキから三枚ドローして一枚をデッキの一番下に置く」

 

十代LP2100→3100

 

あれ? 一枚目のやりくり上手を墓地へ送るタイミングってあったっけ? 十代はデッキに入れていないから、考えられるのは最初のターン明日香が伏せたカード。だけどあれがやりくり上手だったら十代が発動していた筈。

あの時の事を思い返してみると、十代は明日香がセットしたカードを確認する素振りを見せなかった。明日香はサイバー・ブレイダーが破壊されたのと同時に、フリーチェーンであるやりくり上手を使わなかった事に怒っているのか。

 

「装備魔法、再融合を発動! ライフを800払い、墓地のサイバー・ブレイダーを特殊召喚する!」

 

A2100・D800

 

「あなた達のフィールドのモンスターは三体。よってキャロの効果が無効となり攻撃力が下がるわ!」

 

ディアーチェA2400・D1900→A2100・D1600

シュテルAD1100→AD800

レヴィA2200・D700→A1900・D400

 

「戦士の生還を発動! 墓地のバブルマンを手札に加え、融合発動! 手札のバブルマンとフェザーマンを融合し、スチーム・ヒーラーを融合召喚!」

 

A1400・D1000

 

「速攻魔法融合解除を発動。墓地のバブルマンとフェザーマンを特殊召喚。そしてバブルマンとフェザーマンを生贄に、ネオスを召喚!」

 

A2500・D2000

 

五枚使ってネオスを召喚か。非効率的な召喚だが、このターンで決着を付けるのなら話は別だ。十代は明日香に向け今日初めて小さく笑う。それに明日香も応え、少しだけ口元を嬉しそうに上げる。

 

「バトル! ネオスでシュテルを攻撃! ラス・オブ・ネオス!」

 

A2500 VS A1100

 

シュテルは炎の魔力弾、パイロシューターを突進してくるネオスに撃って時間を稼ぎ、その間にクルッと俺の方を向いて、いつもと変わらない無表情な顔と感情の籠っていない声で呟いた。

 

『・・・・後ほどお話があります』

「あ~、お菓子あげるから許してくれないかな?」

 

レヴィとディアーチェが活躍し、ようやく自分が登場したのにもかかわらず、何も出来ないまま破壊される。戦闘に関してプライドの高いシュテルには、大げさな表現かもしれないが屈辱的だろう。と思っていたが、シュテルはフフッと息を吐くと『冗談です。あくまでこれはデュエルですので』と言って、振り下ろされたネオスの手刀を受けて破壊された。

しかし俺の目を見るシュテルの瞳が、とても冗談を言っている様には見えなかった・・・・。さっき言った通り、シュテルには美味しいお菓子を奢らないと・・・・。

 

遊斗LP1500→100

 

「相手のモンスターの数が変わった事でサイバー・ブレイダーの攻撃力が二倍になるわ!」

 

ブレイダーA2100→A4200

ディアーチェA2100・D1600→ A2400・D1900

レヴィA1900・D400→A2200・D700

 

だがこれでセットしたリバースカードが発動できる。リバースカードは攻撃対象になったモンスターに、攻撃を収束させるディバイトエナジー。ディアーチェとレヴィの攻撃力の合計は4600。ギリギリサイバー・ブレイダーを迎撃できる。

 

「行くぞ明日香!」

「ええ! サイバー・ブレイダーでディアーチェを攻撃!」

 

攻撃宣言時と同時にディバイトエナジーを発動しようとしたその時、右手が小さい何かによって掴まれた。この状況で俺を掴むものはただ一つ、レイちゃんの手だった。攻撃宣言を受けたサイバー・ブレイダーは待ってはくれず、ディアーチェに迫って来る。

 

「レイちゃん?」

「せっかく十代様が笑ってくれたんです。その、良かったら・・・・」

 

十代と明日香を勝たせたい、か。

・・・・元より俺は剣山の代役であり、この決勝の舞台に立つ事を許されない者。そしてこのデュエルはエンターテイーメント。今この会場の皆が、二体のエースモンスターの連続攻撃によって十代と明日香の勝利を願っている。

 

「いいよ。レイちゃんがそれでいいなら」

「ありがとうございます」

「「グリッサード・スラッシュ!」」

 

A4200 VS A2400

 

ディアーチェは『仕方無い』と小さくため息を吐き、その後ニヤリとあくどい笑みを浮かべると迫りくるサイバー・ブレイダーに向けて紫色の魔力弾を発射する。しかしサイバー・ブレイダーは氷の上で踊っているかの様にスイスイと華麗に移動して魔力弾を回避する。どうやらディアーチェの放った魔力弾は、場を盛り上げる為に多少改良されているのか、魔力弾が地面や壁に着弾すると同時に派手な爆発を起こしている。

そしてとうとうサイバー・ブレイダーの間合いに入ってしまい、ディアーチェはサイバー・ブレイダー自慢の蹴りによって蹴り飛ばされ、壁に激突して小さいクレーターを作ると共に破壊された。

 

遊斗LP100→-1700

 

「サイバー・ブレイダーの攻撃が決まったノーネ! よってペアデュエル大会優勝はシニョール十代とシニョール明日香のペアナノーネ!」

【うおおおおおおーーーっ!】

 

 

 

 

その夜。三年になるまではよく一緒につるんでいたいつものメンバーと、ペアデュエル大会の後夜祭をして盛り上がっていた。会場は懐かしのおんぼろレッド寮。

レッド寮に入るや、人の気配が全く無いので、何故かと問いた。どうやら皆イエローやブルーに上がって、レッド寮は今十代一人しかいないらしい。つまり、レッド寮の制服は十代のトレードマークになったって事。レッド寮の制服は、他寮の制服よりカッコイイ為、十代がちょっとだけうらやましいと思った。何て少し外れた感想を抱いている俺自身も、今はブルーの制服を着ずに私服なのだが。

 

「けど万丈目や翔だけじゃなくて、他の同級生のレッド生までいなくなったと思うと少し寂しいな。お前もそうだろ? 十代?」

「別に。一人だと落ち着くし、あいつ等も上に行ったんだ。だったら喜ぶべきじゃないか?」

「ま~そうだけどさ」

 

デュエルした時から分かっていたことだが、随分と十代の性格が変わっており、パーティー始まってすぐの時はかなり戸惑っていた。今も違和感を覚えるものの、元々冷めているところもあったし、だいぶ慣れてきた。

俺は空になったガラスコップにオレンジジュースを七割程注ぎ込み、ゴクッゴクッと喉を鳴らしてジュースを飲み乾す。そして周りでワーワー騒いでいる皆に聞こえない様に、ボソッと十代の耳元で呟いた。

 

「で? さっき明日香と二人で話してたみたいだけど、何かあったのか?」

「ん? ああ。ちゃんと明日香とは仲直りした。サンキュー」

「俺は何もしてない。その言葉はレイちゃんに言ってあげな。・・・・結局明日香とは何にも無かったのか・・・・」

「何か言ったか?」

「何にも」

 

卒業あと間近って時に想い人と二人っきり。てっきり告白したのとばかり思っていたが、明日香も恋に関しては奥手。結局二人は友達同士って訳か・・・・。

数ヶ月ぶりの地球世界のジャンクフードを噛みながら、なのはさんが揚げてくれた海老フライを堪能している鈍感野郎の横顔を眺め、ハァと内心で溜息を吐く。まあ明日香の様な、自分の気持ちを素直に伝えられない女の子の気持ちを十代が察せる訳ないと前々から知ってはいたが、18にもなって花より海老フライ(だんご)、か。

なんてジャンクフード特有の上手さを堪能しながら考えていると、ポンポンと肩を叩かれた。振り向くと万丈目が立っており、俺だけでなく十代の肩も叩いていたようだ。

 

「二人とも、そんな隅で何をこそこそしているんだ。二人にはまだ話していなかったな。お前達がいなかった間に生まれた、この万丈目サンダーの伝説を」

「は? 伝説?」

「そうだ。お前達にも1から聞かせてやる」

「聞かない方がいいッスよ。どうでもいい話ッスから」

「どうでもいいとは何だ!?」

「実際くだらない話ザウルス」

「そうね。それこそ本当の伝説を作ってる十代や遊斗に自慢できる話じゃないわよ」

「ええい! どいつもこいつも! いいか、二人ともよく聞け! そもそも事の切っ掛けは一ヶ月前の――」

 

万丈目の話は何度も何度も途中で遮られ、結局その話が何だったのかは分からなかった。その事に関してはいささか不満ではあるが、それよりもいつものみんなとこうやってワイワイと騒いでいた時間は、今年の数多の嫌な事、苦しい事を忘れさせてくれる最高の時間だった。

それからすぐにあんな大事件が起こるなど、この時の俺達は誰も予想していなかった。

 

 

 

 

 




二十代カッコイイよ二十代。

遊戯王作品の中で一番好きなキャラですね二十代。ATMとかカイザーとか元キンとか満足先生とか、遊馬神とかベクターとか沢山の魅力的なキャラがいますが、作者は二十代押しです。

――なんですが、他作品で二十代って見た事無いんで、どんな感じにしたらいいのかいささか不安な面もあったり。最後に本編見たのもかなり前ですし、二十代らしさが出ていればいいんですが。


今回のデュエルは結構早く終わったのですが、これでもかなり文字数使っておりまして・・・・。本当はもっと伸ばすつもりだったんですが、あそこで決めないと、いよいよジャッジメントさんがアップを始めるし、デッキ枚数数えるのとか絶対やりたくないんで。


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第六十七話

ちょいとPCを使える時間が少なくなり、合間を見て執筆していた為投稿が遅れました。もうあと八話くらいなのでラストスパートと思って頑張りたいのですが、中々できません。

あと最近デュエルの構成に勝手に自分でハードル上げていたので、勝手に上げていたハードルを下ろすかもしれません。まあラスボスとかに関しては無理やり上げる予定ですが。
更新ペースが落ちてきた理由に勝手にハードル上げたっていうのも大きいと思いますし。


「遊斗、ご飯はまだかしら?」

「・・・・まだだ」

「もうボクお腹ペコペコだよ~」

「・・・・そうか」

「先日の件は甘い物で許してあげましょう」

「優しいシスターシャンテはステーキであなたの罪を許してあげるよ」

「・・・・そう思うなら、お前ら降りろ! 雑技団じゃないんだぞ!?」

 

学生寮とは思えない豪華な一室。その隅にある世間一般の主婦が指を咥える豪華なキッチンに立っている俺。その俺の背中にはフィンスター、レヴィ、シュテル、シャンテがいた。皆小さい女の子だが、四人となると結構な重みになり、非常に料理の邪魔になる。それでも100キロ前後なので楽々担いでいるが。

 

「それにレヴィとシャンテ。なにさらっとお前達がいるんだ」

「え~、堅い事言わないで御馳走してよ~」

「シュテるんとフィンスターだけなんてズルい~」

 

俺の上の上、つまりフィンスターの上にいるレヴィと、天辺にいるシャンテ。二人の顔は口を尖らせていることだろう。ブーブーと二人のブーイングを受け「仕方ない」とボソッと呟きながら、更に二人分の材料を追加する。すると頭上からレヴィとシャンテの喜びの声が聞こえ、静かに溜息を吐く。

 

「へいへい。ったく、仮にもお前達の主なんだから、もう少しこう尊敬というか敬意というものを――」

「――では料理ができるまでの間、皆でデュエルでもやりましょうか」

「いいわね、暇潰しになるわ」

「今日こそフィンスターに勝つぞぉ!」

「シュテルにすら勝てないあなたが私に勝てる訳ないでしょ? 異世界でのラスボスよ、私」

「ムッ、サラッと私を馬鹿にするのは止めて下さい」

「だって、実際二人がかりでも倒せないでしょ? ところで遊斗、さっき何か言った?」

「・・・・なんでも無い」

 

分かってますよ。俺に主としての威厳が無いのは、今に始まった事じゃない。未だにカードにさん付け、IFなのはさんに関しては様を付けで、初対面のディアーチェにはパッとしないと言われるし。それでもさぁ、一応一つの次元を束ねる王様でもあるんですよ? せめて材料を切るなり、混ざるなり単純な作業ぐらい手伝ってくれても――

 

「――大変だね遊斗。良かったら手伝おうか?」

「マイエンジェルフェイト」

 

 

 

 

全ての料理が出来上がり、皆が「美味しい」と言ってバクバク料理を食べる光景を見るのに、結構な時間が掛かった。

普段はなのはさんやはやてさんディアーチェの料理が得意な三人が作ってくれる事が多いが、今日はフィンスターが俺の料理が食べたいと脅してきた(甘えてきた)ので、久しぶりにキッチンに立った。

どっちにしろシュテルにも何か美味しい物を上げる約束をしていたので、丁度いいかな~なんて思って了承したのが間違いだった。気が付けばレヴィにシャンテの我が儘少女が飛び出し、二人に釣られて三王娘とリオとコロナが出てきて、シュテルに脅されディアーチェとユーリの分も作り、それからも何だかんだあってかなりの人数の料理を作らされた。

 

「ふぁ~あ。疲れた~」

「お疲れ様、遊斗」

 

祭りの様に盛り上がっている部屋の中で、ようやくソファーに腰を下ろす事ができたので、背筋をグーと伸ばしてリラックス。そして一回気の抜けた息を吐いて、隣にいるフェイトに礼を言った。

 

「ホントに助かった。ありがとな、フェイト」

「ううん、気にしないで」

「全く。アカデミア帰って早々これだ」

「フフッ。でも向こうもこんな感じじゃなかった?」

「・・・・言われてみれば。ハァ、もうちょっとゆっくり日常を送りたい・・・・」

 

なんて爺臭い事を呟くと、フェイトがクスクスと微笑ましそうに優しく笑った。何か変な事言ったかな? と意味を込めて首を傾げると、周りの雑音に消されない様にハッキリした、だけどいつもの優しいトーンでフェイトは告げる。

 

「口ではそう言ってるけど、今の生活楽しんでるでしょ?」

「・・・・バレた?」

「遊斗の彼女ですから」

「ほんと、フェイトには敵わないな~」

 

大人びた雰囲気で男心をグッと掴む言葉を放つフェイトへのささやかな反抗に、フェイトの頭を子供をあやすかの様に頭を撫でた。するとフェイトはプーと、先程よりも少し赤くなった頬を膨らませる。

 

「貴様等。乳繰り合うのは構わんが、客人が来ておる。そのくらいにしておけ」

 

ディアーチェが指す先には、ハンカチを噛み締めて俺とフェイトを睨みつける翔の姿があった。

 

 

 

 

「こんな時間に用って何だよ翔」

 

冬の終りの冷たい夜風を遮るものが無いブルー寮の屋上。月明かりとデュエルアカデミア本校の明りを頼りに歩く俺の前には、大人びた雰囲気を纏う翔の姿があった。翔はクルッと振り返り俺を見ると、左手に装着したデュエルディスクを起動させる。

 

「遊斗君にデュエルを申し込むッス」

「デュエル? 別にいいが、急にどうした?」

「昨日、サイバー流を敵視するサイコ流と名乗るデュエリストとデュエルをして勝ったッス」

「おお。それは凄い事じゃないか」

 

と、素直に褒めるものの、翔は嬉しそうな顔をせずに淡々と話を進める。

 

「そのデュエルで僕はお兄さんのデッキと僕のロイドデッキ、二つのデッキを混合したデッキを作り上げたっス。そう、カイザーと名乗っていたお兄さんのカードを引き継いだ。少し話がズレるけど、今のデュエルアカデミア、遊斗君は自分から名乗って無いけど、キミはカイザーと呼ばれているのを知ってるッスか?」

「そうらしいな」

 

どうやら俺達が別次元にいる間に、俺の噂が飛び交っていたらしく、気が付けば現カイザーは遊斗・スカリエッティ、って事になったらしい。

 

「お兄さんのカードを受け継いだのに、このデュエルアカデミアのカイザーは僕じゃない。ううん、このデッキじゃない!」

 

翔はそう言ってデュエルディスクからデッキを取り外し、一番下に眠っていたサイバー・ドラゴンのカードを俺に見せる。

 

「お兄さんのカード達は叫んでるッス。自分達より強いデッキはこの世に存在しないって! それに僕のロイド達も共感して、遊斗君、そしてアニキを倒したいって疼いてるッス!」

「なるほど。つまり、カードの為にカイザーになりたいと?」

「ううん。カードの為だけじゃない。僕自身も君を倒してカイザーになりたいって思ってる。お兄さんの後を継ぎたい!」

 

俺の目の前にいる翔は、数年前までコンプレックスの塊だった翔とは別人だった。兄より下と見られたくないからカイザーになりたい。そんな邪な考えは翔の瞳には無く、ただ純粋に、リスペクトしている亮さんの後を継ぎたいと願っている。

 

「・・・・一度爆発したら止まらない所は兄譲りか・・・・」

「何か言ったッスか?」

「いや、何でも無い。分かった翔。お前の三年間の成長見せてみろ。だが俺も加減はしない!」

 

俺がデュエルディスクを起動したその刹那、俺を中心に強風が巻き起こり、曲線が印象的だった第二世代のデュエルディスクがグニャリと形を変える。赤をメインとした色は漆黒に染まり、曲線は第一世代の三角の形になる。そして靡く前髪の一部が、赤・青・金・茶・黒の五つの色で螺旋状に並ぶ。

 

「ッツ!」

 

俺が睨みつけると、翔はビクッと肩を震わせ、ガタガタと震える足を数歩後ろへ動かす。

 

「どうした翔? まさか、ビビって逃げるなんて事無いよな?」

「そ、そんな事・・・・あるわけ無いッス!」

「面白い! いくぞ翔!」

「「デュエル!」」

「せ、先攻は僕! ドロー! ビークロイド・コネクション・ゾーン発動! 手札のスチームロイド、ドリルロイド、サブマリンロイドを融合し、スーパービークロイド-ジャンボドリルを融合召喚!」

 

A3000・D2000

 

いきなり攻撃力3000の融合モンスター。しかもコネクション・ゾーンの効果で融合召喚されたモンスターは効果で破壊する事ができない。とは言え、いきなり四枚の手札消費。亮さんのデッキを追加したって事は、ただでさえ事故率と手札消費が激しい筈だがどうやってその壁を潜りぬけて来るのか。

 

「エクスプレスロイドを守備表示で召喚! 効果で墓地のサブマリンロイドとドリルロイドを手札に!」

 

A400・D1500

 

「速攻魔法手札断殺! 互いのプレイヤーは手札を二枚墓地へ送り二枚ドロー。永続魔法、機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)を発動し、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

翔  手札0 LP4000

モンスター ジャンボドリル エクスプレス

魔法&罠  最前線 セット×1

 

「いきなり手札全て使うとは。俺のターン! 相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、カリム姉は特殊召喚できる」

 

AD500

 

「効果発動。カードの種類を宣言し、デッキトップがその種類だったら手札に加える。モンスターを宣言、デッキトップはなのは、手札に加える。なのはを通常召喚! 効果でLCを乗せる」

 

なのはLC1

A500・D1800

 

「魔法・罠ゾーンにすずかを置き、その効果でなのはのLCを自身へと移動。そしてなのは以外に乗っているLCを取り除く事で、ユーノを特殊召喚!」

 

LCなのは1→0 すずか0→1→0

 

「遊斗君もいきなりエースをッ」

「場のなのはとユーノを融合! 来い、AOA高町なのは!」

 

A1000・D3000

 

「なのはさんの効果発動。デッキからスバルを手札に加える。そしてレイジングハートをなのはさんに装備させ、攻撃力を1500アップ!」

 

なのはA1000→A2500

 

「バトル! なのはさんでジャンボドリルに攻撃!」

「攻撃宣言時、スーパーチャージを発動! フィールドのモンスターがロイドのみの時、ロイドへの攻撃宣言時に発動可能。デッキから二枚ドローする!」

 

亮さんのカードを入れても、スーパーチャージは入れているか・・・・。亮さんのカードを何枚デッキに入れているかは分からないが、デッキが翔に応えてくれている。無茶苦茶なデッキでも無理やり回している。

 

「ダメージ計算時、手札のスバルを捨ててなのはさんの攻撃力を1000上げる!」

 

なのはA2500→A3500 VS A3000

 

接近して来るなのはさんを追撃しようとドリルを回転させ突進してくるジャンボドリル。しかしなのはさんは空へと飛んでジャンボドリルの攻撃をアッサリと回避し、空から一方的にディバインバスターを放つ。それだけでは僅かに火力不足だったのか、巨大なドリルによって受け止められるが、その隙にジャンボドリルの後方へと回ったスバルがディバインバスターを零距離で打ちこんだ。

 

翔LP4000→3500

 

「クッ! フロントラインの効果発動! デッキから二体目のスチームロイドを特殊召喚!」

 

AD1800

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗 手札1 LP4000

モンスター なのは カリム

魔法&罠  レイジングハート セット×2 すずか

翔  手札2 LP3500

モンスター エクスプレス スチーム

魔法&罠  最前線

 

「僕のターン! サイバー・ヴァリーを召喚!」

 

AD0

 

「機械複製術を発動! デッキから二体のサイバー・ヴァリーを特殊召喚!」

 

ヴァリーを並べた。主にサイバー・ヴァリーとエクスプレスロイドを使用して手札を稼ぎ、融合モンスターを沢山召喚するつもりか。

 

「二体のサイバー・ヴァリーの第二の効果! エクスプレスロイドとスチームロイドをゲームから除外して、デッキから四枚ドロー!」

 

これで翔の手札は一気に五枚になった。だが手札融合をすればすぐに息切れするライン。まだ狙って来る筈だ。

 

「装備魔法D・D・Rを発動! 手札一枚を捨て、除外されたエクスプレスロイドを特殊召喚! その効果で墓地のドリルロイドとサブマリンロイドを手札に加える」

 

A400・D1500

 

「上手いッ! 手札を補充しつつサイバー・ヴァリーのドロー要員を確保した」

「再びサイバー・ヴァリーの効果でエクスプレスロイドと自身を除外して二枚ドロー!」

 

これで翔の手札は七枚。十二分に動ける。更に翔のフィールドはガラ空きになった為、あのモンスターを呼べる。

 

「相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、手札からサイバー・ドラゴンを特殊召喚できる!」

 

A2100・D1600

 

「来たか。亮さんのエースモンスター」

「そして手札抹殺! 僕は五枚のカードを捨てデッキから五枚ドロー!」

「俺は一枚だ」

「死者蘇生を発動し、墓地のジャンボドリルを特殊召喚!」

 

A3000・D2000

 

まああれだけドローすればなのはさんの火力を越えるモンスターを呼ぶ手段はいくらでもあるよな。さてと、せっかく復活したのに申し訳ないが、そのモンスターの火力は無意味になる。

 

「バトル! ジャンボドリルで――」

「――メインフェイズ終了時に罠発動! Force-evolution! なのはさんを生贄に、融合デッキからCW-Force00X高町なのは-Fortress Strike Cannonを特殊召喚する!」

 

LCなのは1

A2000・D3500

 

月の光を避けていたカードが表になった時、翔の表情が一気に険しくなる。Force-evolutionから装備を託されたなのはさんの守備力は更に上昇し、ジャンボドリルの攻撃力よりも高い3500。しかもこのカードは相手モンスターのステータスを永続的に下げる効果を持つ。

 

「バトル!」

「バトルフェイズ開始時になのはさんの効果発動! 相手フィールド上に存在するモンスターの数だけこのカードにFCを乗せる」

 

FCなのは0→2

 

「そしてこのカードが攻撃対象になった時、このカードのFCを取り除く。だがお前のエンドフェイズ時になのはさんにFCが乗っていたら、FCの数だけモンスターを選択し、選択したモンスターの攻守を500下げる」

「厄介なカードッス・・・・。ならジャンボドリルでカリムを攻撃!」

「それも通さない。罠発動、協力防御! LSが二体以上いる時発動可能。このターン俺はダメージを受けず、LSは戦闘破壊されない。更に発動後デッキから一枚ドローできる」

 

A3000 VS D500

 

ジャンボドリルの攻撃はカリム姉の前に立ったなのはさんのシールドによって防がれ、アッサリと後退。

 

「メインフェイズ2に永続魔法、未来融合-フューチャー・フュージョンを発動! 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンを選択して発動! デッキのホーン、エッジ、キールを墓地へ! カードを三枚伏せてターンエンド!」

「エンドフェイズ、なのはさんの効果発動! 乗っている二つのFCを取り除き、お前のモンスター二体の攻守を下げる!」

 

なのはFC2→0

ジャンボドリルA3000・D2000→A2500・D1500

サイドラA2100・D1600→A1600・D1100

 

遊斗 手札2 LP4000

モンスター なのは カリム

魔法&罠  すずか

翔  手札0 LP3500

モンスター サイドラ ジャンボドリル

魔法&罠  最前線 未来融合 セット×3

 

未来融合の対象はキメラテックじゃなくサイバー・ダーク。確かにキメラテックは融合召喚成功時に自身を除くフィールドのカードを全て墓地へ送らなくてはならない。とはいえデッキの機械族を全て墓地へ送れる立派なメリットはあるが、今の翔にはそこまでの墓地肥やしは必要無いらしい。

 

「俺のターン! まずはカリム姉の効果発動! デッキトップはヴォルフラムだから魔法と宣言。勿論デッキトップはヴォルフラムだ」

「うぐっ! インチキ臭いッス」

「なにを今更。俺くらいになるとデッキトップを読めるくらい当然だ。永続魔法ヴォルフラムを発動! これによりForceは俺のエンドフェイズ時にLCを取り除く効果、融合デッキに戻るデメリットが消えた」

 

これで思う存分Force形態を呼べる――のだが、肝心のForceを呼ぼうにもこの手札では無理だ。翔のフィールドには貫通持ちのジャンボドリルがいるからさっさと奴を片づけたい。なら・・・・。

 

「フィールド魔法聖王教会を発動!」

 

ミッドチルダの方が使い勝手がいい為、どうしても出番が少なくなってしまうフィールド魔法だが、一部のLSを支えてくれる優秀なフィールド魔法。

殺風景な夜のブルー寮屋上は消え、太陽が真上に上る気持ちの良い昼へと時が動く。更に色とりどりの花々、巨大な鐘を抱えているシンメトリーになっている塔、そして俺達がいる中庭を囲う聖王教会。

 

「シャッハを攻撃表示で召喚! 召喚成功時にLCを置き、聖王教会の効果でシャッハの攻守が500上がる」

 

LCシャッハ1

シャッハA1800・D1000→A2300・D1500

 

「シャッハの効果発動。LCを二つ取り除く事で、デッキからシャンテを特殊召喚できる。が、聖王教会がある時、LCのコストを一つにする事ができる。シャンテを特殊召喚!」

 

LCシャッハ1→0

シャンテA1400・D500→A1900・D1000

 

シャッハに呼びだされて跳んで来たシャンテの頭には、大きなたんこぶがあった。そのたんこぶを作った原因であるシャッハは、ペコリと俺に頭を下げた。

シャンテがおこられた理由。それは聖王教会のシスターであるにも関わらず、他人にステーキを奢らせた事。シスターに相応しい言動で日常を過ごさないといけない、と言うのがシャッハの信念みたいだ。まあ俺はシャッハ程厳しくはないから、シャンテにご飯作ってあげてもいい。食べてる時のシャンテって大人しくて可愛いし。

 

「魔法・罠ゾーンにアリサを置く。そしてアリサの効果でシャッハを支援。バトル! シャンテでジャンボドリルを攻撃!」

「攻撃力が低いモンスターで? いや、確かそのモンスターの効果は・・・・ッ」

 

A1900 VS A2500

 

ジャンボドリルへと稲妻を思わせるステップで接近して行くシャンテ。突進してくるシャンテを感知し、巨大なドリルを回転させて迎撃しようとしたジャンボドリル。だが次の瞬間、ジャンボドリルの瞳に焦りが現れた。さっきまで突進して来たシャンテの姿が三人に増えていたのだ。更にジャンボドリルの後方、つまり翔の頭上に一人の少女が浮いていた。

 

「そう。シャンテは幻影の使い手。お前がシャンテだと思っていた子は、実は別の子だったりしてな。さあ出番だシュテル!」

 

A800・D1500

 

「しまった!」

「シュテルでジャンボドリルに攻撃! シュテルが戦闘を行う時、攻撃対象のレベル×300ポイント攻撃力をアップする」

『呼んでくれ感謝します遊斗。ブラストファイアー!』

 

シュテルA800→A3200 VS A2500

 

シャンテの幻影に惑わされたジャンボドリル。ただでさえ戦闘準備ができていないのに、そこからシュテルの超火力砲が後方からくればたまったもんじゃない。襲って来た衝撃に耐えきれずに転倒したジャンボドリルの背中には、シュテルのマグマの様に熱い炎の砲撃によって空けられた穴があった。

 

「ジャンボドリルッ!」

「シュテルの戦闘によって相手が受けるダメージは0になる。シャッハでサイバー・ドラゴンを攻撃!」

 

A2300 VS A1600

 

シャッハはシャンテよりも更に速いスピードでサイバー・ドラゴンに接近し、厚い装甲に覆われたサイバー・ドラゴンをいとも簡単にトンファー型のデバイスで叩き斬った。

そしてアリサがシャッハに与えた炎の加護によってシャッハに魔力が与えられ、更にデッキトップがオレンジ色の炎で燃え盛る。

 

翔LP3500→2800

 

「ぐうぅっ! フロントラインの効果発動! デッキからサイバー・ドラゴン・ツヴァイを特殊召喚!」

 

A1500・D1000

 

「アリサが支援したモンスターが戦闘で相手を破壊した時、LCを置く。更にフィールドにすずかがいる時、デッキから一枚ドローできる」

 

シャッハLC0→1

 

「バトルフェイズ終了時、シュテルは次の俺のバトルフェイズ時までゲームから除外される。そしてもう一度シャッハの効果発動。LCを取り除き、デッキからシャンテを特殊召喚する」

『え~、また出番?』

『何か文句でも?』

『ありません・・・・』

 

シャッハLC1→0

シャンテA1400・D500→A1900・D1000

 

シャッハとシャンテのやり取りを、なのはさんとカリム姉は微笑ましそうにフフッと笑っている。カリム姉が優しく笑っても全然違和感無いが、Forceを装備した今のなのはさんが優しく笑うと、無論可愛いのだが、装備とのギャップが激しい。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 聖王教会

遊斗 手札0 LP4000

モンスター なのは カリム シャッハ シャンテ

魔法&罠  すずか アリサ ヴォルフラム セット×1

翔  手札0 LP2800

モンスター サイドラツヴァイ

魔法&罠  最前線 未来融合 セット×3

 

カードを一枚も持っていない左手は非常に心細いが、フィールドに戦力が集まっているので不安は無い。だが油断はしない。俺が対峙しているデュエリストの瞳はこの状況に諦めていない。何とかして巻き返そうとドローする手に全神経を集中させている。

 

「僕のターン! よしっ! 罠発動、チェーン・マテリアル! このカードの発動ターン、手札・デッキ・フィールド・墓地から融合素材モンスターを融合できる!」

「またコネクション・ゾーンか?」

「違うよ。フィールド魔法フュージョン・ゲートを発動!」

「フュージョン・ゲート!? ・・・・上書きによって聖王教会は破壊される」

 

シャンテA1900・D1000→A1400・D500

シャッハA2300・D1500→A1800・D1000

 

チェーン・マテリアルとフュージョン・ゲート。このコンボはマニアックだが結構有名で、チェーン・マテリアルのデメリットがあるが、フィールドを融合モンスターで埋める事ができる非常に面白いコンボ。とは言え翔のデッキでメリットがあるコンボなのか?

 

「フュージョン・ゲートの効果発動。デッキと墓地、三体のサイバー・ドラゴンを融合してサイバー・エンド・ドラゴンを特殊召喚!」

 

A4000・D2800

 

亮さんの切り札、サイバー・エンド・ドラゴン。だがチェーン・マテリアルにより攻撃できず、エンドフェイズ時に破壊されてしまうサイバー・エンドの威圧感は無いも同然だった。

 

「まだまだ! デッキのトラックロイド、エクスプレスロイド、ステルスロイド、墓地のドリルロイドをゲームから除外して、スーパービークロイド-ステルス・ユニオンを召喚!」

 

A3600・D3000

 

「やっぱ呼んできたか。チェーン・マテリアルで召喚したモンスターは効果を発動できる」

「そうッス! ステルス・ユニオンの効果! なのはをこのカードに装備!」

「チッ」

 

ステルス・ユニオンの胸の所がパカッと開き、掃除機の様になのはさんを吸い取って体内に封じ込めた。見た目の割には地味な演出かもしれないが、相手を装備する事でモンスターを除去できる数少ないカード。それを防ぐカードは結構少ない。

 

「まだ! デッキのレスキューロイド、キューキューロイド。ジャイロイド、スチームロイドをゲームから除外してレスキューキューロイドとスチームジャイロイドを特殊召喚!」

 

A2300・D1800

A2200・D1600

 

「なっ!? そいつ等まで!?」

 

どういう事だ・・・・。攻撃が出来ないサイバー・エンド・ドラゴンを呼んだからには何か狙っていると思っていたが、フィールドをサイバー・ドラゴン・ツヴァイと融合モンスターで埋めやがった。一瞬カタパルト1キルの存在が頭を過ったが、翔がループ系の1キルをする訳がない。第一フィールドを全て埋めては何の意味も無い。

 

「流石の遊斗君も驚いてるッスね」

「当たり前だ。多分名高いデュエル評論家やデュエルキングでも今のお前のプレイングには驚くだろうよ」

「お兄さんのサイバー・ドラゴンデッキと僕のロイドデッキ。その共通点は同種族で、融合モンスターをエースとする。それぐらいしかない。だから僕はその二点で無理やり繋ぎ合わせた。これが僕のサイバー・ロイドデッキ! 罠発動、ハイレート・ドロー!」

「なっ・・・・!? なるほど。自分フィールドのモンスターを全て破壊するカード」

 

口にした通り、ハイレート・ドローが表になった瞬間、翔のフィールドを埋め尽くしていた五体のモンスターは全て破壊された。ただのデメリットカード。これだけではそう見えてしまうが、問題はこの次の効果。

 

「そしてこの効果で破壊した機械族モンスター一体につき一枚デッキからドローする! 僕が破壊したモンスターは全て機械族! よってデッキから五枚ドロー!」

「無茶苦茶だが最高に面白いぞ翔!」

「ありがとう遊斗君! でも僕は君を楽しませる為にデュエルをしてるんじゃない。君に勝つ為にデュエルをしているんだ! 再びフュージョン・ゲートの効果発動! 墓地のレスキューキューロイド、ジャンボドリル、スチームジャイロイド、ステルス・ユニオン、デッキのジェットロイドを融合し、極戦機王ヴァルバロイドを特殊召喚!」

 

AD4000

 

いつか、翔とタッグを組んだ時があった。その時活躍してくれたロイドの本当の切り札とも言える融合モンスター。

 

「ヴァルバロイドまで・・・・」

「まだ僕は通常召喚を行っていない。強化支援メカ・ヘビーウェポンを召喚し、ヴァルバロイドに装備」

 

ヴァルバロイドAD4000→AD4500

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時に、チェーン・マテリアルの効果でヴァルバロイドは破壊されるけど、メカ・ヘビーウェポンを身代わりにして破壊を免れる!」

 

ヴァルバロイドAD4500→AD4000

 

場 フュージョン・ゲート

遊斗 手札0 LP4000

モンスター カリム シャッハ シャンテ (シュテル)

魔法&罠  すずか アリサ ヴォルフラム セット×1

翔  手札3 LP2800

モンスター ヴァルバロイド

魔法&罠  最前線 未来融合 セット×2

 

攻撃していないのにド派手なターンだった・・・・。さっきのターン翔はデッキと融合デッキ、かなりの枚数のカードを使って手札を補充したが、目的はそれだけでは無い。フュージョン・ゲートの効果で融合召喚したモンスターは、蘇生制限を満たす事ができる。ドローと一緒に、墓地に蘇生制限を満たした強力な融合モンスターを送った。

 

「ふぅ・・・・。昔のお前はどこに行ったのやら。嬉しい半面少し寂しいよ」

「人間離れした遊斗君に言われたくは無いッス」

「それもそうだな。俺のターン! まずはカリム姉の効果。モンスターを宣言。デッキトップはティアナ。よって手札に加える」

 

さて・・・・。この手札じゃヴァルバロイドどころか、おそらく近い内に召喚されるサイバー・エンドの攻撃力すら突破できない。次のターンにはサイバー・ダーク・ドラゴンも来る・・・・。

 

「罠発動、strikersの収集を発動。墓地のなのは、ユーノ、AOAなのはさんをデッキに戻し二枚ドロー。永続魔法時空管理局発動! そしてフィールドのシャッハ、シャンテ、カリム姉を生贄に、ユーリを特殊召喚!」

 

LC時空管理局0→1

AD4000

 

ヴァルバロイドとユーリ。俺と翔がタッグを組んだ時に相手を倒すキーカードとなったカード達。たった一回のタッグデュエルだったが、いい意味でも悪い意味でも思い出の詰まったデュエルだったな・・・・。

 

「遊斗君もあの時の事を思い出してるッスね」

「ああ。あの頃から俺の人生大きく変わったし、昨日のことの様に覚えてるよ」

「うん・・・・。でも容赦はしないッス! 確かにユーリちゃんは破壊できないッスけど、ディアーチェちゃんがいなければ攻撃できないッス」

「すぐに反撃してやるさ。ティアナを通常召喚!」

 

A1200・D1000

 

「ティアナの効果! 時空管理局のLCを一つ取り除き、墓地のLS一体を除外。除外したモンスターと同じ名前のトークンを特殊召喚する。俺はディアーチェを選択し、ゲームから除外!」

 

LC時空管理局1→0→1

AD0

 

手札抹殺の時、墓地にディアーチェを送る事ができた。あの時は高火力アタッカーとなるディアーチェの損失は大きかったが、結果オーライ。

 

「そしてバトルフェイズ開始時、除外されているシュテルが特殊召喚される」

 

A800・D1500

 

ここでシュテルで攻撃したらヴァルバロイドの攻撃力を上回る事ができる。だがあの二枚のセットカードの内、一枚がシュテルを除去するカードだったら、次に繋げる事ができなくなり一貫の終わりだ。破壊されないユーリと、ユーリがいる時攻撃対象にされないディアーチェを呼んでおくのが安全だ。

 

「戦闘は行わずそのままメイン2に移動。速攻魔法フェイクシルエット。デッキのレヴィを墓地へ送り、ティアナを対象に発動。ティアナをレヴィとして扱う」

「これでマテリアルズが三人揃った!」

「場のディアーチェ、シュテル、レヴィを融合! 現れろ、紫天の王-ロード・ディアーチェ!」

 

A2500・D2000

 

ディアーチェの両隣にいたシュテルとレヴィの体が自らの魔力光で包まれ、ほんの一瞬の内に手の平サイズの球体へと形を変える。そしてシュテルとレヴィ、二つの球体がディアーチェの胸に入った瞬間、ディアーチェの背中の黒い翼に炎と雷が宿り、ディアーチェ自身からもその二つの属性のパワーが溢れ出た。

 

「ディアーチェの効果。融合召喚に成功した時、デッキから紫天の書を手札に加える。紫天の王-ロード・ディアーチェは、レベル5の闇統べし王(ロード・ディアーチェ)としても扱う。よって紫天の書は装備可能。最も、今は紫天の書は発動しない」

 

魔法・罠ゾーンの内四つが永続カードで埋まっている今、下手に紫天の書は発動できない。せめてどれか一枚フィールドから去った後にしないと。

 

「すずかの効果発動。時空管理局のLCを自身へ移動。そのLCを使用し、次のターンのヴァルバロイドの攻撃と表示形式の変更を封じる」

 

LC時空管理局1→0 すずか0→1→0

 

すずかはまるでバイオリンの奏でるかのようにそっと、だが強く空を撫でた。すずかの氷の力が大気の水分と共鳴し、ヴァルバロイドの手足を巨大な氷の枷が縛り、ヴァルバロイドの動きを封じる。

 

「ヴァルバロイドの効果はダメージ計算後に戦闘を行ったモンスターの効果を無効にする。このままじゃユーリはサイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃で破壊されてしまう」

「やっぱり気付いてたッスね」

「俺はこれでターンエンド」

 

場 フュージョン・ゲート

遊斗 手札1 LP4000

モンスター ディアーチェ ユーリ

魔法&罠  すずか アリサ ヴォルフラム 時空管理局

翔  手札3 LP2800

モンスター ヴァルバロイド

魔法&罠  最前線 未来融合 セット×2

 

「僕のターン! このスタンバイフェイズ、未来融合の効果でサイバー・ダーク・ドラゴンを融合召喚!」

 

A1000・D1000

 

ヴァルバロイドの左側に出現した大きな融合の渦から現れたのは、全てを染める暗黒の装甲で覆われた機械の竜。それは三体の下級サイバー・ダークが合体し、一つとなった姿。ホーンは刃の様に鋭い翼となり、エッジは全エネルギーを収束させる牙となり、キールは墓地のドラゴンの力を吸収する尾となる。

 

「サイバー・ダーク・ドラゴンの効果発動! 融合召喚に成功した時、墓地のドラゴン族をこのカードに装備できる。墓地のドラゴンロイドを選択し、このカードに装備!」

「ドラゴンロイド・・・・。初めて聞くモンスターだ」

 

サイバー・ダーク・ドラゴンは墓地から、機械で作られた可愛らしい赤い竜を引きずり出して自らに装着。どうやらドラゴンロイドの攻撃力は2900の様で、攻撃力が一気に3900までアップした。

 

サイバー・ダークA1000→A3900

 

「ドラゴンロイドが墓地に存在する限り、自身の種族をドラゴン族として扱う」

「なるほど。デッキや手札では機械族として扱い、墓地ではドラゴン族として扱うロイドモンスター。お前のデッキとは相性がいい」

 

更にサイバー・ダーク・ドラゴンのもう一つの効果が発動される。自分の墓地のモンスター一体につき、攻撃力を100ポイントアップする。色々回していたので翔の墓地のカードはもはや把握していないのだが、一体何枚あるのやら。

 

「僕の墓地のモンスターは十一体! よって攻撃力は5000!」

 

サイバー・ダークA3900→A5000

 

「攻撃力5000か・・・・」

 

とはいえ俺のフィールドにはユーリがいる。場にユーリがいる時、相手はディアーチェを攻撃対象にする事ができない。守備表示のユーリに対しては、攻撃が可能なサイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃は無意味――

 

「――バトル! サイバー・ダーク・ドラゴンでユーリに攻撃! 攻撃宣言時にリバースカードオープン! ストライク・ショット! 攻撃モンスターの攻撃力を700アップさせ、貫通効果を与える」

「サイバー・エンド以外にも貫通カードを入れていたか。何も無い、攻撃は通る」

 

サイバー・ダークA5000→A5700 VS D4000

 

サイバー・ダーク・ドラゴンはドラゴンロイドと墓地のモンスター達の力を吸収し、牙と牙の間に、血の様に赤く、闇の様に暗いエネルギーを溜め、ユーリに発射。ユーリは自分の体よりも大きい手形の翼で身を包み、サイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃を見事に受け止めた。が、ストライク・ショットの効果によって暗黒のエネルギーは、翼を、そしてユーリをも無視して俺へと飛んで来た。

 

遊斗LP4000→2300

 

「なるほど。流石亮さんの、いや、封じられていた裏サイバーのカード。ソリッドビジョンにしては衝撃が強い」

「その割にはリアクションが薄いッス。僕はこれでターンエンド」

 

場 フュージョン・ゲート

遊斗 手札1 LP2300

モンスター ディアーチェ ユーリ

魔法&罠  すずか アリサ ヴォルフラム 時空管理局

翔  手札4 LP2800

モンスター ヴァルバロイド サイバー・ダーク

魔法&罠  最前線 未来融合 セット×1 ドラゴンロイド

 

あのリバースカードが不気味だが、さっきのサイバー・ダーク・ドラゴンの時に発動しなかったって事はリミッター解除では無い。

 

「俺のターン! 無限書庫を発動。魔法・罠ゾーンに表側表示で存在するカード一枚とこのカードをデッキに戻し、二枚ドローする。時空管理局をデッキに戻して二枚ドロー! 装備魔法紫天の書をディアーチェに装備!」

 

ディアーチェA2500・D2000→A3000・D2500

 

「アリサの効果でディアーチェを支援!」

 

アリサが右手に持っていた剣に纏う炎が、蛇の様に動いてディアーチェの右腕に纏う。

 

「バトル! ディアーチェでヴァルバロイドを攻撃!」

「ヴァルバロイドの方が攻撃力が上だよ!」

「残念。シュテルの効果を受け継いだディアーチェが戦闘を行う時、相手モンスターのレベル×100ポイント攻撃力を上げる。ヴァルバロイドのレベルは12」

 

ディアーチェA3000→A4200 VS A4000

 

ディアーチェの背中に付いた煉獄の焔と、右手を纏う業火が闇を統べる王に更に力を与える。デュエルモンスターズの神々や三幻魔と等しい攻撃力を持つヴァルバロイドさえも、ディアーチェには勝てない。

 

『スクラップとなるがいい! エクスカリバー!』

 

炎を螺旋状に纏う紫色の砲撃が放たれ、全長十数メートルはあるヴァルバロイドの巨体を呑み込んで破壊。高熱に耐えきれず爆発したヴァルバロイドの破片と火の粉が翔に襲い掛かり、200とは思えない程後方に吹き飛ばされる。

 

「うわあああっ! うっ、フロントラインの効果は使わない」

 

翔LP2800→2600

 

「アリサの二つの効果と、紫天の書の効果発動! アリサの効果でディアーチェに一つLCを乗せ、一枚ドロー。そして紫天の書の効果で自身にLCを乗せる」

 

LCディアーチェ0→1 紫天の書0→1

 

「クッ、またすずかの効果が」

「その通り。すずかの効果発動。ディアーチェのLCを自身へと移動させ、そのカウンターを使用してサイバー・ダークの攻撃を封じる!」

 

LCディアーチェ1→0 すずか0→1→0

 

「クッ!」

 

前のターンのヴァルバロイドの様に、氷漬けにされたサイバー・ダーク。いかに強力な攻撃力を持っていようとも、その力を発揮できなければただの壁だ。それもいつ砕けるか分からない脆い壁だ。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

場 フュージョン・ゲート

遊斗 手札2 LP2300

モンスター ディアーチェ ユーリ

魔法&罠  すずか アリサ ヴォルフラム 紫天の書 セット×1

翔  手札4 LP2600

モンスター サイバー・ダーク

魔法&罠  最前線 未来融合 セット×1 ドラゴンロイド

 

「僕のターン!」

 

翔はドローしたカードを見、その後俺のフィールドを眺める。その視線の先は俺の魔法・罠ゾーン。警戒すべきカードはリバースカード一枚だが、アリサとすずかのコンビ、ディアーチェの火力増強とユーリの攻撃を可能にする紫天の書。Forceが居ればデメリットを解除できるヴォルフラムと、相手からすれば非常に厄介なカードが多い。

翔が今引いたカードがサイクロン等の単体除去ならともかく、大嵐の様な全体除去だった場合、未来融合が破壊され、サイバー・ダークは破壊される。

 

「僕、この三年間色々な人のデュエルを見て気付いたッス」

「ん?」

「人によって色んなデュエルをするんだって。明日香さんは相手のモンスターや表示形式を利用するデュエル、万丈目君はコンボを重要視するデュエル、剣山君やレイちゃんは自分の好きなカードを使うデュエル。エドは時間を利用するデュエル。そしてアニキは流れを操るデュエル」

 

皆のデュエルに対する翔の評価はしっくり来る。明日香は貫通効果持ちのモンスターや、ドゥーブルパッセ。万丈目はおジャマ・デルタハリケーンやVWXYZの召喚。剣山は恐竜、レイちゃんは恋する乙女や可愛いモンスター。エドはD-HEROで時間を操り、十代はE-HERO達との結束によりデュエルの流れを一手で変える。

 

「・・・・確かに。じゃあ、俺は?」

「遊斗君は、フィールドを支配するデュエル。安定性のあるカードや永続カードを軸に、高火力モンスター、モンスター除去、防御、手札補充をしていくデュエル」

「なるほど。悪くない」

「ただ相手の魔法・罠を破壊するカードや、妨害カードが無いのが弱点だけど」

「ははっ、違い無い。それで翔はフィールドを支配するデュエルをする俺に、どうやって勝つつもりだ?」

「こうやるッス! 大嵐を発動!」

 

俺の予想とは少し違い、翔は前から手札にあったカードを発動した。カードから発生した嵐によってフィールドの魔法・罠カードが全て吹き飛ばされ、フュージョン・ゲートが破壊された事により辺りの景色がブルー寮の屋上へと戻る。

 

「だがお前のフィールドはがら空きになった」

 

ディアーチェA3000→A2500

 

フィールドに並んでいたカードを蹂躙していった嵐が消えると同時に、未来融合の効果で特殊召喚されたサイバー・ダークは消えて行く。心強い永続カード達が破壊されたのは痛いが、それ以上に翔の痛手の方が大きい筈。

 

「ただじゃやられないッスよ。フィールドをよく見るッス」

 

翔に言われ自分のフィールドを見ると、そこにはさっきまで居た筈のユーリの姿が消えており、ユーリの消失に少し困惑しているディアーチェの姿があった。

 

「何が?」

「大嵐にチェーンして強制脱出装置を発動していたッス。対象はユーリちゃん」

「なるほど。だがまだディアーチェが残っている」

「ライフを800払い、装備魔法再融合を発動! 墓地のサイバー・エンド・ドラゴンを特殊召喚!」

 

サイバー・エンド・ドラゴン。二年前からずっと亮さんと戦う度に毎回対峙して来たサイバー流最強の融合モンスター。三体のサイバー・ドラゴンが融合したそのモンスターは、一体何体のモンスターを破壊し、何人のモンスターを屠って来ただろうか。

 

「ヴァルバロイドは召喚しないのか」

「僕はサイバー・エンドで遊斗君を倒す! アームズ・ホールを発動! デッキトップを墓地へ送り、墓地のD・D・Rを手札に加え、そのまま発動! 除外されたステルス・ユニオンを特殊召喚!」

 

A3600・D3000

 

「またそいつか!」

「ステルス・ユニオンの効果でディアーチェを装備する!」

 

これで俺のフィールドはモンスターも、魔法・罠カードも無いがら空き状態になってしまった。そして俺のライフは2300、対する翔のフィールドには攻撃力3600と4000の二体の融合モンスター。ステルス・ユニオンは攻撃する時攻撃力が半分になるが、翔が持っている最後の一枚・・・・。

 

「バトル! サイバー・エンド・ドラゴンでダイレクトアタック! エターナル・エヴォリューション・バースト!」

「させるか! 墓地のフェイクシルエットの効果発動! このカードとティアナをゲームから除外し、相手の攻撃を一度だけ無効にする!」

 

サイバー・エンド・ドラゴンの体内に貯蔵されているエネルギーの全てを放射する最強の攻撃も、当たらなければライフが減る事は無い。機械竜の破壊光線は、墓地のティアナの力によって生み出された幻影へ放たれ、ブーンという空気の震える音を放つだけの空しい攻撃となった。

 

「まだまだ! ステルス・ユニオンでダイレクトアタック!」

 

ステルスA3600→A1800

 

ステルス・ユニオンはおもちゃのロボットの様にゆっくり右手を標的()へと向け、腕を胴体から切り離して飛ばしてきた。所謂ロケットパンチである。一見可愛らしく聞こえる攻撃名だが、自分に、高速で巨大な拳が飛んでくる光景は生きた心地がしない。更にその拳は道中で更にスピードを上げる。

 

「勝ったッ! ダメージステップリミッター解除を発動! ステルス・ユニオンの攻撃力を倍にする!」

 

ステルスA1800→A3600

サイバー・エンドA4000→A8000

 

先程の倍のスピードで飛んでくる拳。あと数秒もすれば拳は俺に届き、俺のライフは尽きるだろう。勝利を確信した翔はグッと手を握っている。その目は、自らの全力を出し切ったこと、何より勝利を確信した事に満足している。

デュエルアカデミアにいる三年間、ずっとつるんで来た大切な親友の一人。最後くらいその親友に見せ場を作るのも悪くないかもしれないが、まだまだ発展途上の翔にカイザーの名を渡してしまうと亮さんに怒られそうだ。

 

「手札の・・・・、ザフィーラの効果発動ッ!」

「なっ!?」

 

一枚のカードを墓地へ送ると、俺の目の前に青い大きな狼が立ちふさがった。盾の守護獣ザフィーラ。例えどんな攻撃であろうとも、防いでくれる盾。例えリミッターが解除されたステルス・ユニオンの攻撃も例外では無かった。

ザフィーラが作り出した青いバリアによって拳の進行は阻止され、ザフィーラが『ておおおお!』と咆哮を上げると、ステルス・ユニオンの拳は弾かれて明後日の方向へと飛んで行った。

 

「ザフィーラの効果でデッキから一枚ドロー」

「アハハ・・・・。墓地のフェイクシルエットの存在は覚えていたんスけど、やっぱり遊斗君には敵わないッス。僕はこれでターンエンド。リミッター解除の効果で二体は破壊されるッス」

 

遊斗 手札2 LP2300

モンスター 

魔法&罠  

翔  手札0 LP2600

モンスター 

魔法&罠  

 

「ドロー。フェイトを召喚し、バルディッシュを装備」

 

フェイトA1800・D500→A2800

 

「ビックリしたよ翔。あんなに遊斗を追い詰めるなんて」

 

バルディッシュをザンバーモードにしながら現れたフェイトは、翔に話しかけた。

 

「その言い方だと、やっぱりフェイトちゃんは遊斗君が勝つって思ってたんスね」

「うん!」

 

俺にはフェイトの背中しか見えないが、きっと翔は優しく明るいフェイトの天使の様な笑みを見ているだろう。翔が俺に向けて来る顔は、嫉妬半分、呆れ半分の複雑な表情だった。

 

「全く、遊斗君は幸せ者ッス」

「知ってるさ。バトル! フェイトでダイレクトアタック!」

 

A2800

翔LP2600→-200

 

 

 

 

その翌日、デュエルアカデミア内にある亮さんが入院している病院に行き、このデュエルの事を話すと、亮さんは嬉しそうに「そうか」と呟いた。ただ亮さんから受け継いだカードと自分のカードを混ぜるだけじゃない、二つのカテゴリを融合させた自分オリジナルのデッキを弟が作ってくれたのを喜んでいるのだろう。

ダーク・サイバーの持つ力によって体が弱ってしまった亮さんが、デュエル界に復帰するのは随分と時間が掛かるそうだ。

 

「そう言えば亮さん。俺っていつの間にかみんなからカイザーって呼ばれているんですけど、亮さんは何でカイザーって呼ばれる様になったんですか?」

「ああ。俺は自分で言うのも何だが、デュエルに強くてかなり目立っていてな。派手好きな吹雪が勝手に俺の称号をカイザーにしたんだ」

「そのついでに自分もキングと名乗ったと・・・・。あの人らしいですね」

「だろう? あの頃は楽しかったよ」

 

 




翔のデッキって何枚あるんだろう(他人事)

どうも丸藤兄弟はデッキを使いまくる傾向があるようで、おそらく40枚だったらデッキ切れてただろうなぁ・・・・。
まあ相変わらずちょくちょくTFのオリカとかも使っていますが、ノーコス複数枚ドローカードは使っていないので許して下さい(許してやるよォ!)


最初ヴァルバロイドの攻撃力を5000と考えて進めている所があったので、ヴァルバロイドが出て数ターンの間のやり取りが変だったりするんですが、許して下さい (許してry


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第六十八話

やっぱりPC時間制限はきついです。と、初っ端から投稿遅れたいい訳をしていくスタイル。


翔とデュエルをしてから一週間が過ぎた頃。相変わらずデュエルアカデミアは平和そのもの。

在校生は卒業生と最後の思い出を作る為に、クラブ活動やデュエル、プライベートで卒業生と遊んだりしており、卒業生は、卒業後に向けてそれぞれ悩み、努力し笑い合っている。すっかり卒業ムードと言う訳だ。

そんな空気に触発され、改めて、あと少しで卒業と思うと、無事にこの学校で三年間を過ごした達成感や充実感はあるが、やはり寂しい気持ちが無い訳ではない。

今思えば退学を賭けたクロノス先生や放った刺客とのデュエルや、ブルーの嫌な先輩からのちょっかいも笑えるいい思い出だ。

それからセブンスターズ、三幻魔、破滅の光、精霊の王、ユベル、フィンスターとの苦しい戦いはどれも今でも鮮明に覚えている。

・・・・いや、訂正しよう。どれも苦しい戦いだったが、それを通じて沢山のものを手に入れた。何だかんだで苦しいだけでは無い。

 

「どうした遊斗、たそがれた顔をして。お前がやってもカッコ良くないぞ。俺の様な男こそ、たそがれるのが似合うんだ」

「・・・・何だ。万丈目か」

 

ボケっとして歩いていた様で、声をかけられるまで、真正面に立っていた万丈目に気付かなかった。

 

「何だとは何だ!? お前はいつまでたっても礼儀を覚えんな。この、エド・フェニックスを倒した万丈目サンダーに向かって」

「えーと。わー、エドを倒したなんて凄いなー。憧れちゃうなー」

 

万丈目は色々あってエドとデュエルをした。その時のエドはプロを引退させられ、代わりに万丈目が“オじゃ万丈目”としてプロ(どっちかと言うとセミプロ)になっていた。エドとのデュエルの最中、万丈目のマネージャーに近い立場の男が、とあるカードを使って、このデュエルを負けろとエドを脅したが、最終的には十代の働きによって正々堂々のデュエルとなった。

がだ十代が助けに入るまで、エドは脅しにより罠カードを一回だけ発動しなかった。

万丈目の勝利を貶す訳ではないが、あの罠カードを発動していれば、エドが勝っていた可能性もある。エドもエドで頑張っていた。

 

「お、お前ッ!」

「いや、素直に凄いとは思っているよ。ただ一度勝ったくらいで調子に乗るその癖、いい加減に治した方がいいぞ」

「だが断る! 調子に乗ってでかい口を叩く。それがこの俺! 一!」

【【【十!】】】

【【【百!】】】

【【【千!】】】

「万丈目サンダーだからだ!」

 

万丈目の合図と共に、辺りにいた俺以外の生と全てがお決まりの掛け声を、カーブのかかった長い廊下に響かせる。

異世界に行ってサバイバルをしても、このデュエルアカデミアの生徒のノリの良さは変わらないらしい。嬉しい半面、この子達の将来が心配な気がしなくもない。まあ万丈目の妙なカリスマの賜物だと思えばこのノリの良さも納得できる・・・・か?

 

「自覚ある分余計に太刀が悪い。まあお前らしくて安心するよ」

「そうだろう?」

 

そんなドヤ顔されても反応に困るんだが・・・・。

 

「とっ、そういやさっきまで卒業後の事考えてたんだけど、万丈目はやっぱりプロリーグに行くのか?」

「ああ。いずれプロリーグの舞台で、お前や十代を倒す! 覚悟しておくんだな!」

 

ん? プロリーグで俺と十代を? ああ・・・・。そういや万丈目は俺がドラゴン族の王って知らないんだっけ。だとしたら、卒業後俺がプロリーグに行くと勘違いするのも頷ける。実際俺自身も、自分の正体を知るまでは、卒業後プロリーグに行こうと思っていた。

 

「悪いな万丈目。俺は卒業後プロリーグに行く予定は無い」

「な、何だと!? お前ほどのデュエリストがプロにならなくてどうする!?」

「俺も色々あるんだ。多分卒業後、お前達と会えるかどうかも分からない。かなり遠くに行くからな。ん? 万丈目? どうした万丈目?」

 

異世界の事を頭に浮かべながらそう語っていると、万丈目はプルプルと肩を震わせていた。どうしたのかと、俯いている顔を覗き込むと、そこは憤怒の感情を宿した万丈目の顔があった。

 

「俺とデュエルだ遊斗!」

「な、何?」

「お前が何をやるつもりかは知らんが、貴様がプロに行かない事はこの万丈目サンダーが許さん! プロリーグに行きたくなければこの俺を倒すんだな!」

「えー、んな理不尽な・・・・って言いたいけど、構わないぞ。俺もお前とは最後にデュエルしたかったし、そんな条件があっても無くても勝つのは俺だからな」

 

 

 

 

と言う事で万丈目とデュエルする事になったんだが、デュエルフィールドに行くといつの間にか観客席が一杯になっていた。三年生のトップにいる俺と万丈目がデュエルをすると、万丈目本人が言いふらしたらしい。

まあ観客がいようがいなかろうが、俺は俺のデュエルをやるだけだ。

万丈目がデュエルディスクを展開するのに合わせ、俺も左腕のデュエルディスクを起動して、デュエルディスクに4000のライフを浮ばせる。

 

「行くぞ万丈目!」

「今度こそ俺が勝つ!」

「「デュエル!」」

「先攻は俺が頂く! ドロー! ジェイドナイトを守備表示で召喚!」

 

A1000・D1800

 

ジェイドナイト。光属性機械族で、戦闘破壊された時に光属性・機械族・レベル4のモンスターを手札に加えるカード。そいつを出したと言う事は、今回万丈目はアームド・ドラゴンじゃなく、VWXYZ(ヴィトゥズィ)で勝負をしかけてくるのだろうか?

思えば万丈目は、アームド・ドラゴン、VWXYZ、おジャマの三つのカテゴリを使うが、全部同じデッキに入っているのだろうか? おジャマはアームド・ドラゴンを使って来た時にも、VWXYZを使って来た時にも出てきた記憶はあるが、アームド・ドラゴンとVWXYZの共闘は見た事無い気がする。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

万丈目 手札4 LP4000

モンスター ジェドナイト

魔法&罠  セット×1

 

「さてと。俺のターン! イクスを召喚し、効果発動! デッキからマリアージュを特殊召喚する!」

 

AD500

A1700・D1200

 

俺のデッキが薄いオレンジ色の光を放った直後、イクスの隣のモンスターゾーンへとデッキからマリアージュが飛び出した。

 

「ぐっ、お前はよく俺との戦いでそいつを使うな」

「序盤の展開が遅い万丈目君にピッタシだからな。魔法・罠ゾーンにキャロを置き、LSの攻守を300アップ!

 

イクスAD500→AD800

マリアージュAD1700・D1200→A2000・D1500

 

「バトル! マリアージュでジェドナイトを攻撃!」

無限の武器(ウンエントリッヒカイト・アームズ)

 

A2000 VS D1800

 

相も変わらず感情の籠っていない、僅かに電子音が混ざった無機質な声だった。マリアージュが技名を口にすると共に、マリアージュの細い両腕が何の前触れも無くガトリングガンへと変化し、ドガガガガ! と派手な銃声を鳴らし、百発近くの弾丸で戦闘機に穴を空けた。

 

「なんの! 破壊されたジェドナイトの効果発動! X-ヘッド・キャノンを手札に加える!」

「マリアージュの効果。戦闘で相手モンスターを破壊した時、自身の分身をトークンとして呼び出す。来い、マリアージュトークン!」

 

A2000・D1500

 

マリアージュの体の一部がドロドロとした黒く汚れた液体となり、それは意思のある生き物の様にマリアージュの隣のモンスターゾーンへと移動する。そして自分の持ち場へ付いたのか、液体は姿かたちを変え、様々な色彩を付け、高身長の美女へと変化する。

 

「相変わらず気持ちの悪い奴だ」

「そう言うな。バイザーを取ったらかなりの美人だぜ。マリアージュトークンでダイレクトアタック!」

「あいにく俺は天上院君一筋だ! 罠発動、ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にして、カードを一枚ドロー!」

「お前も諦めの悪い奴だな~。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  手札3 LP4000

モンスター イクス マリアージュ×2

魔法&罠  キャロ セット×1

万丈目 手札6 LP4000

モンスター 

魔法&罠

 

「何とでも言え、俺のターン! 永続魔法、前線基地を発動! X-ヘッド・キャノンを召喚!」

 

A1800・D1500

 

「更に前線基地の効果でY-ドラゴン・ヘッドを特殊召喚!」

 

A1500・D1600

 

「X-ヘッド・キャノンにY-ドラゴン・ヘッドをユニオンさせる! これでX-ヘッド・キャノンの攻守が400アップ!」

 

ヘッド・キャノンA1800・D1500→A2200・D1900

 

「バトル! X-ヘッド・キャノンでマリアージュを攻撃!」

「罠発動、ポジションチェンジ! フィールド上のモンスターが戦闘対象、または効果対象になった時、フィールド上のLS一体に対象を変更する事ができる。戦闘対象をマリアージュトークンに」

「むっ。シフトチェンジの下位互換か? 焼き払え!」

 

A2200 VS A2000

遊斗LP4000→3800

 

「いや、下位互換じゃないさ。このカードの発動ターン、対象を変更されたモンスターが破壊された時、融合デッキから一枚墓地へ送る事ができる。俺はAOA高町なのはを墓地へ」

「何となく貴様のやりたい事がわかったぞ。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  手札3 LP3800

モンスター イクス マリアージュ

魔法&罠  キャロ

万丈目 手札2 LP4000

モンスター X-ヘッド

魔法&罠  最前線 Y-ドラゴン セット×2

 

万丈目はおそらく、このターンティアナを召喚し、その効果で墓地のなのはさんを除外してトークンを特殊召喚。そのトークンを生贄になのは様を呼んでくると読んだのだろうが、俺の目的はそっちじゃない。三王娘はエンドフェイズ時に他の王と交代できる。その効果を利用し、次のターン聖王に繋げる。

 

「俺のターン。まずは永続魔法、時空管理局を発動し、場のイクスとマリアージュを融合! 来い、冥王イクスヴェリア!」

 

イクスA2000・D2500→A2300・D2800

LC時空管理局0→1

 

ヴィヴィオやアインハルトとは違い、融合しても背丈は変わらないが、先程までマリアージュに守られていたボロボロの布を纏った少女はどこにもいない。冥王の名に相応しい血を連想させる黒みのある赤のマントと着、自らの力を制御する銀の鎖を体に巻いた、王の威圧を放つ少女がそこにいた。

 

「イクスは特殊召喚成功時、場のマリアージュと名のつくカードの数だけカードを破壊できるけど、俺の場にマリアージュはいない。イクスの効果発動! 一ターンに一度、攻守2000のマリアージュ軍隊長トークンを特殊召喚する!」

 

軍隊長AD2000→AD2300

LC時空管理局1→2

 

「コロナを守備表示で召喚! そして手札一枚を墓地へ送る事で、デッキからゴライアスを特殊召喚!」

『行きます! 創成起動(クリエイション)!』

 

コロナA500・D1700→A800・D2000

ゴライアスAD2300→AD2600

 

「バトル! マリアージュ軍隊長で攻撃!」

「冗談じゃない。全部受けたら大ダメージだ! 罠発動、光子化(フォトナイズ)! マリアージュの攻撃を無効にし、その攻撃力分だけX-ヘッド・キャノンの攻撃力を上げる!」

 

マリアージュ軍隊長が放ったミサイルの群が突如、光子へと分解された。蛍の様にゆらゆらと浮く光子の群はX-ヘッド・キャノンへと集まって、内に秘めた力をX-ヘッド・キャノンへと与える。

 

ヘッド・キャノンA2200→A4500

 

「また厄介なカードを。俺はこれでターンエンド。エンドフェイズ時に、イクスを融合デッキに戻し、融合デッキからアインハルトを特殊召喚する」

 

アインハルトA2700・D2000→A3000・D2300

 

遊斗  手札1 LP3800

モンスター アインハルト マリアージュ軍隊長 コロナ ゴライアス

魔法&罠  キャロ 時空管理局

万丈目 手札2 LP4000

モンスター X-ヘッド

魔法&罠  最前線 Y-ドラゴン セット×1

 

「俺のターン! アームド・ドラゴンLV3を召喚!」

 

A1200・D900

 

デュエル開始時に僅かながら期待していた、VWXYZとアームド・ドラゴンの共闘を見られるかもしれない・・・・が、万丈目の手札はこれで二枚。万丈目のデッキは手札補充手段が余り豊富では無いので、VWXYZとアームド・ドラゴンのギミックを動かすのは難しい。

フィールドを制圧してしまえば一気に形勢は逆転する。

 

「レベルアップを発動! アームド・ドラゴンLV3をLV5へと進化させる!」

 

A2400・D1700

 

「このままバトル! X-ヘッド・キャノンでゴライアスを攻撃! Xキャノンフルバースト!」

 

A4500 VS A2600

 

X-ヘッド・キャノンは光子化とユニオンしているY-ドラゴン・ヘッドから貰ったパワーを、肩の二砲から発射。光のキャノンは下級モンスターとは思えない大きさで、ゴライアスの巨体に大きな穴を空けた。

一度大きな傷を受けたゴライアスはすぐに再生は出来ず、ゴライアスの残骸が俺を襲う。

 

遊斗LP3800→1900

 

「ととっ。結構追い詰められてるか」

「その割には余裕の表情だな」

「まあね」

「そんな表情もすぐに消える! アームド・ドラゴンLV5でマリアージュ軍隊長を攻撃! アームド・バスター!」

 

A2400 VS A2300

 

刃の付いた鎧を装着したアームド・ドラゴン。その刃は拳の先にも付いており、拳の刃で殴ってマリアージュ軍隊長を破壊する。

 

遊斗LP1900→1800

 

「最前線の効果で、手札からZ-メタル・キャタピラーを特殊召喚!」

 

A1500・D1300

 

「そしてY-ドラゴン・ヘッドをXから解除し、特殊召喚! これでXYZが揃った! フィールドのXYZをゲームから除外し、XYZドラゴン・キャノンを召喚!」

 

A2800・D2600

 

Z-メタル・キャタピラーが一番下で足となり、Y-ドラゴン・ヘッドがXとZを繋ぐ中間点となり、X-ヘッド・キャノンが砲台とそれぞれの役割を活かす為に合体した姿。

 

「リバースカードオープン、ミスト・ボディ! XYZに装備する。俺はこれでターンエンド! エンドフェイズ時に、アームド・ドラゴンLV5はLV7と進化する!」

 

A2800・D1000

 

「こっちもエンドフェイズ時にアインハルトを融合デッキに戻し、融合デッキから聖王ヴィヴィオを特殊召喚する! 聖王ヴィヴィオの特殊召喚成功時、デッキから聖王の鎧を手札に加える。そしてヴィヴィオの攻守は墓地のLSの数×400になる。墓地のLSは五体」

 

ヴィヴィオAD?→AD2000→AD2300

LC時空管理局2→3

 

遊斗  手札2 LP1800

モンスター ヴィヴィオ コロナ

魔法&罠  キャロ レリック 時空管理局

万丈目 手札0 LP4000

モンスター LV7 XYZ

魔法&罠  最前線 ミスト・ボディ

 

辺りにいる生徒達から「サンダーが遊斗を押してる」「万丈目先輩がカイザーを倒すのか!?」「遊斗先輩かなり厳しいね」等と聞こえてくる。確かにフィールドとライフでは押されているが、これで万丈目の手札は0。巻き返しの厳しい万丈目には、フィールドが切り札でもあり最後の砦となった。

 

「俺のターン! この瞬間、墓地のゴライアスとリオの効果を発動!」

「二体のモンスター効果を!?」

「リオは手札から墓地へ送られた次の俺のスタンバイフェイズ、墓地のこのカードを手札に戻す事ができる。更にゴライアスはフィールドにコロナがいる時、ライフを500払う事で攻撃力を500上げた状態で復活する!」

『創主コロナと魔導器ブランゼルの名のもとに、蘇れ巨神!』

 

遊斗LP1800→1300

 

コロナがブランゼルを振り上げると共に、フィールドに散らばっていたゴライアスの破片が一点へと集まり、数秒も経たない内に前のターンに破壊された巨神が復活していた。

 

ゴライアスAD2300→A3100・D2600

ヴィヴィオAD2300→AD1500

LC時空管理局3→4

 

「攻撃力3100ッ!」

「更にヴィヴィオの効果発動! 墓地のLS一体を選択し、エンドフェイズ時までその効果を得る。AOA高町なのはの効果を得、そのまま発動! デッキからレリックを手札に加える!」

「一気に手札が五枚に・・・・」

「そしてLCを一つ使い、レリックの効果発動。ヴィヴィオがいる時特殊召喚できる」

 

LC時空管理局4→3→4

レリックAD0→AD300

 

先が尖った細長い赤い宝石はフィールドに現れるとすぐ、ヴィヴィオさんの胸へとゆっくりと飛行し、ヴィヴィオさんの胸の中へと入って行く。

 

「レリックをヴィヴィオに装備。これでヴィヴィオは戦闘で破壊されず、相手の魔法・罠・モンスター効果を受けず、エンドフェイズ時に融合デッキに戻る事は無い。ただ攻撃力が心もとないから守備表示にしておこうか。バトル! ゴライアスでアームド・ドラゴンLV7を攻撃!」

 

ゴライアスの巨大で頑丈な岩の拳が、鉄の鎧を着たドラゴンの胴体へと放たれる。鉄と岩がぶつかり合う鈍い、だがカーンと高い音が響き渡る。それから数秒の静寂の後、アームド・ドラゴンLV7の鎧のあちらことらに罅が現れ、鎧がバリンと割れると共に、アームド・ドラゴンが地響きを鳴らして倒れた。

 

A3100 VS A2800

万丈目LP4000→3700

 

「この程度ッ、何のこれしき」

「俺はこれでターンエンド」

 

遊斗  手札4 LP1300

モンスター ヴィヴィオ コロナ ゴライアス

魔法&罠  キャロ レリック 時空管理局

万丈目 手札0 LP3700

モンスター XYZ

魔法&罠  最前線 ミスト・ボディ

 

「ドロー! おジャマジックを捨て、XYZの効果発動! 一ターンに一度、相手フィールド上のカードを破壊する! ゴライアスを破壊!」

 

フィールドにズドーンと空気が重たく振動する爆発音が響き、その直後、岩石が地面と衝突するガラガラと音がした。XYZドラゴン・キャノンが砲撃を放ち、ゴライアスを打ち砕いたのだ。

ゴライアスの復活効果は戦闘破壊に対してのみ。効果破壊されたゴライアスは自身の効果で復活する事はできない。

 

ヴィヴィオAD1500→AD1900

 

「更におジャマジックの効果。デッキからおジャマ三兄弟を手札に加える。バトル! XYZでコロナを攻撃! X・Y・Zハイパー・ディストラクション!」

 

A2800 VS D2000

ヴィヴィオAD1900→AD2300

 

Xヘッド・キャノンの大砲、Yドラゴン・ヘッドの口、Zメタル・キャタピラーの目から、それぞれ青・赤・黄色の電気エネルギーがコロナ目掛けて撃たれ、コロナはなすすべも無く破壊される。

 

「どうだ! 俺はターンエンドだ」

 

遊斗  手札4 LP1300

モンスター ヴィヴィオ

魔法&罠  キャロ レリック 時空管理局

万丈目 手札3 LP3700

モンスター XYZ

魔法&罠  最前線 ミスト・ボディ

 

おジャマ三兄弟が手札に加わり、XYZドラゴン・キャノンの弾丸が一気に増えたか・・・・。XYZドラゴン・キャノンにはもう効果を使って欲しくないが、ちょっと今の手札ではミスト・ボディを破壊し、尚且つ戦闘破壊するのは厳しいか。効果破壊もこの手札じゃ難しい。

 

「俺のターン。ヴィヴィオの効果。墓地のAOAなのはの効果をコピーして発動! デッキからティアナを手札に加える。そしてリオを召喚し、効果発動。墓地のLSを二体まで選択し、ゲームから除外。除外した枚数×100ポイント攻撃力を上げる」

 

リオA1700・D500→A2000・D800

 

「ずいぶんと可愛い効果だ」

「馬鹿にするのは早いぞ。この効果で光または炎属性モンスターをゲームから除外した場合、上昇値は400になる。AOAなのはとコロナを除外。二体とも光属性の為、攻撃力800アップ!」

 

リオA2000→A2800

ヴィヴィオAD2300→AD1500

 

「攻撃力がXYZと並んだか」

「更にLSの効果で墓地に存在するコロナが除外された時、一枚ドロー。カートリッジロードをキャロに発動! LCが増えた事で、上昇値アップ!」

 

LCキャロ1→2

リオA2800・D800→AD3100・D1100

ヴィヴィオAD1500→AD2100

 

「バトル! リオでXYZドラゴン・キャノンを攻撃!」

『破壊できなくても全力で行きます! 轟雷砲!』

 

A3100 VS A2800

 

XYZドラゴン・キャノンへ打たれたキックは、ただのキックでは無かった。リオの右足からバチバチと電気が荒々しく歌う、轟雷砲の名に相応しい力強い蹴りだ。軽く2メートル半はあり、三機の機械が合体してできた故、おそらく戦車より重いだろうそれを、リオの蹴りは後方へと飛ばす。飛ばされたXYZドラゴン・キャノンは、後ろで自分を操っていた万丈目へ向かう。

 

「おわあああっ!?」

 

万丈目LP3700→3400

 

XYZドラゴン・キャノンにひかれた万丈目はデュエルフィールドの外へと飛んで行き、頭から地面に激突しそうになる。見るだけで頭が痛くなりそうと、万丈目の頭が地面とぶつかる直前、目を瞑ると「ふんぎゃっ!」とマヌケな声が耳に入った。

 

『わわわっ! やりすぎちゃった!』

「あ~あ~。まあ万丈目だから気にすること無いよ」

「どういう意味だ遊斗! ったく、お前の精霊は」

「まあまあ。こんなに可愛い女の子のお茶目なんだから許してやってくれ。ヴィヴィオを守備表示にし、カードを二枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時にカートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗  手札5 LP1300

モンスター ヴィヴィオ リオ

魔法&罠  キャロ 時空管理局 レリック セット×2

万丈目 手札3 LP3400

モンスター XYZ

魔法&罠  最前線 ミスト・ボディ

 

リオの謝る姿を見て、万丈目は少々不満そうにしながらも大人しくドローした。

 

「俺のターン。まずは手札一枚を捨て、レリックを破壊する」

「ヴィヴィオを狙って来たか」

「どうせお前の事だ。除外したAOAなのはを墓地へ戻す策がある筈だ。最前線の効果で、オイルメンを特殊召喚し、XYZにユニオン!」

 

機械族モンスターのユニオンは、ユニオンモンスターが分裂して装備モンスターの装甲を強化する。と言うのが俺の中でのイメージだが、ヒーローマントを羽織ったオイルメンは体からオイルを出してXYZ-ドラゴン・キャノンの体に塗り始めた。高速で動いているオイルメンは、XYZ-ドラゴン・キャノンの周りに数体の残像を作り上げ、残像が消えるとXYZ-ドラゴン・キャノンの装甲はピカピカになっていた。

 

『万丈目さんのソリッドビジョンって何かがおかしい気がする・・・・』

「同感だ・・・・。さっきのリオの蹴りも、あいつの自作自演なんじゃ――」

「――そんな訳あるか! バトル。XYZでヴィヴィオを攻撃! X・Y・Zハイパー・ディストラクション!」

 

オイルメンを装備したモンスターが戦闘で相手を破壊した時、カードを一枚ドローできる。出来ればドローを阻止したい所だけど、あいにくセットしたリバースカードで止める事はできない。

 

A2800 VS D1500

 

ヴィヴィオさんを破壊した直後、どこからともなくXYZ-ドラゴン・キャノンの上に現れたオイルメン。その手?には一枚のカードが握られており、万丈目へとカードを投げる。

 

「オイルメンの効果でカードを一枚ドロー。カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「お前のエンドフェイズ、リオの攻撃力が元に戻る。そして永続罠、ウイングロードを発動!」

 

リオA3100→A2300

 

遊斗  手札5 LP1300

モンスター リオ

魔法&罠  キャロ 時空管理局 ウイングロード セット×1

万丈目 手札2 LP3400

モンスター XYZ

魔法&罠  最前線 ミスト・ボディ オイルメン セット×1

 

「俺のターン。ウイングロードの効果発動。通常召喚できるLSをドローフェイズ時のドロー、またはデッキから手札に加えた時、そのモンスターを特殊召喚できる。ドローしたなのはを特殊召喚」

 

なのはA500・D1800→A1100・D2400

LC時空管理局4→5

 

「そしてカートリッジロードをなのはに使用し、なのはの効果発動。まずは面倒なミスト・ボディを破壊だ」

『アクセルシュート!』

 

桃色の弾丸が表側になっている装備魔法一枚を破壊すると、XYZ-ドラゴン・キャノンを包み込む怪しい霧が晴れた。

 

「速攻魔法Asの回収を発動。除外されたLS二体を墓地へ戻して一枚ドローする。AOAなのはとコロナを戻してドロー。ティアナを召喚」

 

ティアナA1200・D1000→A1800・D1600

時空管理局5→4

 

「ティアナの効果。時空管理局のLCを使用し、墓地のAOAなのはを除外。同名トークンを特殊召喚する。そしてAOA高町なのはトークンを生贄に、蒼穹の王・高町なのはを特殊召喚する!」

 

AD2500

 

ツッコミ所はあるが平和なデュエルフィールドに突如吹き荒れる、力強い黒い嵐。嵐の中にいる者は、強風と共にその青い瞳で威圧感を万丈目へと放つ。嵐が収まると、武器を自在に操る最強の魔導師、蒼穹の王が姿を現した。

 

「なのはの効果発動。特殊召喚成功時、デッキのカード一枚を墓地へ送る」

「させん! カウンター罠、神の宣告! ライフを半分払い、そのモンスターの特殊召喚を無効にする」

「んな!?」

 

万丈目LP3400→1700

 

ま、まさかの神の宣告。その効果は強力で、モンスターの召喚や魔法・罠の発動を無効にする事ができる。ただしライフを半分支払わなければならない為、このデュエルアカデミアでは使っている人物は滅多に見ない為、警戒心を怠っていた。

 

「・・・・帰ったらなのは様に半殺しにされるな・・・・」

「何か言ったか?」

「いや、何でも無い。なら墓地のヴィヴィオとコロナをゲームから除外して、リオの攻撃力を800上げる。そしてコロナの効果で一枚ドロー」

『二人の力を貰って元気100倍です!』

 

リオA2300→A3100

 

「バトル! リオでXYZ-ドラゴン・キャノンを攻撃!」

『轟雷砲!』

 

A3100 VS A2800

万丈目LP1700→1400

 

「何のこれしき! オイルメンを身代わりにしてXYZの破壊を無効に!」

「しぶとい。カードを一枚伏せてターンエンド。エンドフェイズ時にカートリッジロードを手札に加える」

 

遊斗  手札4 LP1300

モンスター リオ なのは ティアナ

魔法&罠  キャロ 時空管理局 ウイングロード セット×1

万丈目 手札2 LP1400

モンスター XYZ

魔法&罠  最前線

 

「俺のターン! 手札断札を発動! 互いに手札を二枚捨て、二枚ドローする」

 

万丈目が捨てたカードは100%おジャマ三兄弟の二体。これで万丈目の手札は分からなくなったか・・・・。万丈目の手札が分からなくなったのは少々厄介だが、俺も最後のカートリッジロードとヴィヴィオさんの効果で手札に加えた聖王の鎧の処理に困っていたので丁度よかった。

 

「更に貪欲な壺を発動! 墓地のオイルメン、ジェドナイト、おジャマ三兄弟をデッキに戻して二枚ドロー! 最前線の効果で再びオイルメンを特殊召喚し、XYZにユニオン」

「またその組み合わせ。厄介だな・・・・」

「更に装備魔法ブレイク・ドローをXYZに装備だ」

「まだドローするか!」

 

この二年で強欲な壺や天使の施しと言った万能ドローカードが禁止になった事で、今まで禁止ドローカードの影に隠れていたカード達が日の光を浴び始めた。オイルメンやブレイク・ドローも影に隠れていたカードだ。まあ亮さんは二年前からブレイク・ドローを使っていたが。

 

「バトル! XYZでティアナを攻撃! X・Y・Zハイパー・ディストラクション!」

 

A2800 VS D1600

 

「ぐぅっ。防御カードを引けない自分が怨めしい」

「ハッハッハ! オイルメンとブレイク・ドローの効果で二枚ドロー!」

 

ノリノリで二枚のカードをドローした万丈目は更にいいカードを引いたらしく、ニヤリとあくどい笑みを浮かべた。一瞬一年の頃の嫌な奴だった万丈目を思い出させる、イラッとするがどこか愛嬌のある表情だ。

 

「ライフを800払い、魔の試着部屋発動! デッキトップ四枚めくって、めくった中にレベル3以下通常モンスターを特殊召喚する」

 

万丈目LP1400→600

 

「・・・・やな予感」

「デッキトップ四枚はこれだ」

 

デッキトップ四枚がソリッドビジョンの力でフィールドまで飛び、(相手プレイヤー)にも見えやすいように人間サイズの大きさになる。左からおジャマ・イエロー、おジャマ・グリーン、おジャマ・ブラック、死者蘇生。

ちゃんとシャッフルしたのか問い詰めたくなる引きの良さだが、万丈目がそんな事する訳ないし、デッキトップを読める俺がツッコムのも変な話だ。

 

「よっておジャマ三兄弟を特殊召喚!」

『俺達!』

『おジャマ!』

『三兄弟なのよ~!』

 

A0・D1000

 

攻撃力0、守備力1000で効果を持たない弱小モンスター。顔は宇宙人の様な奇奇怪怪で、見た目はパンツ一丁とみすぼらしい。とてもデュエルアカデミアオベリスクブルー三年生が使う様なカードでは無い。・・・・見た目だけなら。

おジャマ三兄弟と万丈目は堅い絆で結ばれており、幾度となく万丈目を手助けし、二年の頃にはホワイトサンダーになった万丈目を正気に戻したりもした。そしてつい先日、エドとの戦いでフィニッシャーになったのもおジャマ・イエロー。

そんなおジャマ三兄弟は、下手なデュエリストが召喚する最上級モンスターよりもずっと強力なモンスターに見える。

 

「行くぞお前等!」

『『『イエーイ!』』』

「おジャマ・デルタハリケーンを発動! おジャマ三兄弟の力で、お前のフィールドのカード全てを破壊する!」

『行くぞー兄弟!』

 

必殺カードの発動と共に、フィールドにいたおジャマ・グリーンが空へと跳び、それに続きイエローとブラックも跳ぶ。おジャマ三兄弟は円の形になる様にお尻をくっつかせると、扇風機の強も真っ青な速さでグルグルと回転する。

 

『カイザーがなんだってんだー!』

『『『おジャマ・デルタハリケーン!』』』

 

おジャマ三兄弟が起こしたハリケーンにより俺のフィールドのカードは全壊。せっかく溜まっていた時空管理局のLCも、攻撃力が3000を超えていたリオもおジャマ三兄弟の真の力には敵わなかった。

 

「だがそれにチェーンしてStrikersの回収を発動させてもらう。墓地のティアナ、イクス、マリアージュをデッキに戻して二枚ドローする。そしてウイングロードの効果。フィールドから離れた時、俺は手札一枚を捨てなくてはならない」

「ただではやられんか。さて、雑魚の役目は終わりだ。馬の骨の対価を発動。おジャマ・イエローを墓地へ送って二枚ドロー!」

『ちょっ!? アニキー!?』

 

・・・・堅い絆で結ばれて――

 

「いいカードを引いた。更にもう一枚、馬の骨の対価を発動! ドローの糧となるがいい!」

『そんなああああ!?』

 

堅い絆で――

 

「ふむ。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

遊斗  手札5 LP1300

モンスター 

魔法&罠  

万丈目 手札1 LP600

モンスター XYZ おジャマ・グリーン

魔法&罠  最前線 オイルメン ブレイク セット×2

 

魔の試着部屋で三枚揃い、おジャマ・デルタハリケーンを決めたと言うのにこの扱い。いともたやすく行われるえげつない行為とはこのことだ。

 

「お、俺のターン。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない時、カリムは特殊召喚できる」

 

AD500

 

「カリムの効果発動。魔法を宣言。デッキトップはミッドチルダの為手札に加える。そしてフィールド魔法、魔法都市ミッドチルダを発動!」

 

LCの補充と移動ができ、このデッキの要ともなるフィールド魔法の登場に、ドヤ顔になっていた万丈目の顔が真剣なものへと変わる。

 

「ヴィータを通常召喚し、ミッドチルダの効果でLCが乗り、そのLCを取り除いてツヴァイを特殊召喚」

 

LCミッドチルダ0→1→0

A1900・D1200

AD500

 

「場のヴィータとツヴァイを融合! 来い、祝福の騎士ヴィータ! 融合召喚成功時、相手のセットされたカード二枚を破壊できる。その二枚のセットカードを破壊!」

 

A2600・D2500

 

「ならチェーンして神事の獣葬を発動! 獣族モンスターを破壊し、次のスタンバイフェイズ時に二枚ドローする。グリーンを破壊!」

『ア、アニキィィィ!?』

 

見事三枚のカードを使って三兄弟を自ら墓地へ送りやがった・・・・。いくら何でもおジャマ三兄弟が不憫でかわいそうだが、通常モンスター獣族であることを上手く利用したプレイングだ。三体の為にあのカードを入れていると思うと、万丈目の優しさが分かる・・・・かも?

 

「更に神事の獣葬にチェーンして和睦の使者を発動。このターン俺は戦闘ダメージを受けず、XYZは破壊されない!」

 

二枚とも上手い具合にかわされてしまったか・・・・。まあリバースカードを使わせたと思えばさほど痛手では無い。とは言え、和睦の使者の所為でダメージを与えられないのは辛い。XYZの効果もある今、ヴィータさん一人では心もとない。

 

「墓地のギンガの効果。このカードと墓地のスバル、またはティアナをゲームから除外する事で、異なるモンスターを融合デッキから特殊召喚する。ギンガとティアナを除外し、融合デッキからミラージュガンナー・ティアナを特殊召喚する」

 

A1500・D2000

 

六課時代のティアナから数年後のティアナ。着ているバリアジャケットは同じだが、一段と女性らしくなり、胸やお尻と言った女性を象徴する部位が大きくなっており、ツインテールだった髪もストレートに伸ばしている。

 

「ティアナの効果。除外されたモンスター二体まで選択して発動。選択したモンスターを墓地へ戻し、同名トークンを特殊召喚する。ただし二体墓地へ戻した場合、そのトークンは融合素材に出来ない。そしてトークンは攻撃対象になった時破壊される。俺はコロナとティアナを墓地へ戻す」

 

AD0

 

「つまり墓地から効果を発動するモンスターを戻しておきたかったのか」

「まあそういうこった。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

場 ミッドチルダ

遊斗  手札1 LP1300

モンスター カリム ヴィータ ティアナ トークン×2

魔法&罠  セット×2

万丈目 手札1 LP600

モンスター XYZ 

魔法&罠  最前線 オイルメン ブレイク

 

「俺のターン! このスタンバイフェイズ、神事の獣葬の効果でデッキから二枚ドローする! アームド・ドラゴンLV10を捨て、ダブルアタックを発動! このターンXYZは二回の攻撃が可能となる!」

 

俺のフィールドには二枚のリバースカードがあるのにも関わらず、躊躇なく発動して来たか。まあ例によって例の如く攻撃は通るんですけどね! このデュエル、中々防御カードが来ない・・・・。デュエルの女神様の悪戯だろうか。

 

「とことんドローしようってか」

「その通りだ、バトル! まずはトークン二体を攻撃対象にする」

「攻撃対象にされた時、トークンは破壊される。巻き戻しが起こり、攻撃対象を変更できる」

「XYZでカリムとヴィータを攻撃!」

「カリムへは通さない。罠発動、ソニックムーブ! カリムをエンドフェイズ時まで除外する」

「ならティアナへ攻撃!」

 

A2800 VS A2600

A2800 VS D2000

遊斗LP1300→1100

 

XYZ-ドラゴン・キャノンが放つ三色のエネルギー。その内黄色のエネルギーがティアナを破壊し、青と赤の二色のエネルギー砲がヴィータさんの小さい体を呑み込んで消滅させる。更にオイルメンの支援と、ブレイク・ドローの効果がそれぞれ二回ずつ発動される。

 

「二体戦闘破壊した為、カードを四枚ドローする。来たぞ!」

 

ドローした四枚の中に望んでいたカードがあったのだろう。待ってましたと言わんばかりの表情で、四枚のカードを手札に加えると、その内二枚を取り出してデュエルディスクに叩きつける様に置いた。

 

「V-タイガー・ジェットを召喚し、最前線の効果でW-ウィング・カタパルトを特殊召喚!」

 

A1600・D1800

A1300・D1500

 

「場の二体をゲームから除外し、VW-タイガー・カタパルトを融合召喚!」

 

A2000・D2100

 

「そしてフィールドのVWとXYZを合体! 融合召喚! VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン!」

 

A3000・D2800

 

二機の戦車サイズの巨大な機械が合体した、VWXYZシリーズの最終形態。XYZは戦車、VWは戦闘機に似た形をしていたが、このモンスターは二つの足を持ったロボット。Vが頭、Wが足、Xが砲台、Yが尾と翼、Zが腕。五体ものモンスターを融合素材にするだけはあり、その効果は強力だ。十代もこのカードに苦しめられた経験がある。

 

「VWXYZの効果発動! 一ターンに一度、相手カード一枚を除外する。そのセットカードを除外だ」

「チッ!」

「まだだ。レベル調整を発動! 相手に二枚のドローを許す代わりに、墓地のLVモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚する! アームド・ドラゴンLV7を特殊召喚!」

 

A2800・D1000

 

「更に死者転生を発動! 手札一枚を捨て、墓地のアームド・ドラゴンLV10を手札に加える。そしてアームド・ドラゴンLV7を生贄に、アームド・ドラゴンLV10を特殊召喚!」

 

A3000・D2000

 

VWXYZに続きアームド・ドラゴンの最終形態が登場。アームド・ドラゴンLV7が付けていた鎧よりも更に刃が追加され、背中には翼を連想させる二つの斧の刃。肩には悪魔の角の様なグニャリと曲線を描く刃もあり、手や足にはドリルの様なものもある。LV7の時まで見せていた顔も鎧によって隠されているが、鎧の隙間から見える黄金の瞳から放たれるプレッシャーは中々のものだ。

 

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

「エンドフェイズ時にカリムが戻って来る」

 

場 ミッドチルダ

遊斗  手札3 LP1100

モンスター カリム

魔法&罠  

万丈目 手札0 LP600

モンスター VWXYZ アームド・ドラゴンLV10

魔法&罠  最前線 セット×1

 

「どうだ遊斗! 俺の切り札、VWXYZとアームド・ドラゴンLV10を同時に相手する感覚は?」

「実に面白い、としか言えないよ! 最高だぜ万丈目! けどな・・・・このターンでケリを付ける!」

「上等だ! 掛かって来い!」

「ああ! 俺のターン!」

 

ドローしたカードは闇の書。手札ははやて、シャマ姉、すずか。そしてデッキトップは・・・・。なるほど、どうやら万丈目とあの人は何らかの縁があるようだ。

 

「まずはカリムの効果発動! 魔法を宣言。デッキトップは遠隔転移。手札に加える。カリムを生贄に、はやてを召喚!」

 

LCミッドチルダ0→1 はやて1

A2000・D1700

 

「そしてフィールドにはやてがいる時、LCを一つ取り除く事でシャマルは特殊召喚できる。この効果で特殊召喚に成功した時、自身にLCを乗せる」

 

LCはやて1→0 シャマル1

A800・D1800

 

「はやてに闇の書を装備!」

 

はやてA2000・D1700→A2300・D2000

 

「まさかお前、またあのモンスターをッ?」

「どうやらお前と相性がいいみたいだ。魔法・罠ゾーンにすずかを置く。そしてシャマルの効果で闇の書にLCを置く」

 

LC闇の書0→1

 

「そしてミッドチルダとすずかの効果。それぞれ一ターンに一度、LCを移動する事ができる。ミッドチルダとシャマルのLCを闇の書に移動」

 

LCミッドチルダ1→0 シャマル1→0 闇の書1→3

 

「これで闇の書に魔力が集った。闇の書をゲームから除外し、デッキからアインスを特殊召喚する!」

 

AD2300

 

突然、強風が吹いた訳でも無く、闇の書のページが凄まじいスピードでめくられる。666ページある魔導書はその真ん中――おそらく400ページ辺りでピタッと動きを止めた。

闇の書からはその名に相応しい、瘴気の様なモヤモヤした闇の霧が現れ、その霧は徐々に人の形になっていく。

スラッとした長い脚、モデルも裸足になって逃げていく豊満な胸と、括れた腰。手や首も脚と同じく、スラッとしているが痩せ過ぎと感じない健康的な太さ。そんな完璧なボディを持つ銀髪灼眼の美女が、いつの間にかフィールドに立っていた。

 

「アインスの効果発動! 特殊召喚成功時、融合デッキから夜天の書、またはナハトヴァールのどちらか一体を特殊召喚できる。夜天の書を特殊召喚!」

 

AD0

 

「場のはやてとアインスを融合! 来い、夜天の王・八神はやて!」

 

デュエルフィールドを包み込むのは闇では無く夜。暗い暗い、だけど不思議と落ち着く様な不思議な暗さ。この会場全てが夜に包まれ、この演出を知らない下級生達のざわつく声もすぐに夜に包み込まれた。数秒の静寂の後、夜に一つの光柱が出現し、柱の中から黒い羽をつけた女性が現れた。

肩までかかる短い銀色の髪をした、静かだが尋常ならざる威圧感を放つ夜天の王。

 

AD2800

はやてLC3

 

「夜天の王・八神はやて。何度そいつにやられた事か。だが今日はそうはいかん! 永続罠、デモンズ・チェーンを発動! これでそいつの効果は無効化され、LCも消える!」

 

LCはやて3→0

 

登場して突如、獲物を狙う蛇の群の様に一斉に跳びかかって来た鎖に対応できず、王様はやてさんは無表情のまま刃の付いた鎖に締め付けられた。魔力が込められた鎖に縛られたものは、攻撃は勿論、効果を発動する事も許されない。王様はやてさんの高い制圧力も、効果が使えなければただの攻撃力2800の最上級モンスターだ。

 

「どうだ! これでお前の手札は僅か一枚! 通常召喚もできん! 次のターンアームド・ドラゴンLV10の効果を発動し、貴様のフィールドをガラ空きにすれば、俺の勝ちは確定だ!」

 

どうやら勝ちを確信した様だが・・・・やれやれ。やっぱり万丈目もまだまだだ。たった一枚のカードに泣き、笑う。それがデュエルモンスターズの醍醐味である。

それに俺が手札に持っている最後の一枚は万丈目にも情報がリークされている。結局デモンズ・チェーンを使おうが、取っておこうが勝敗に変わりは無いが、それに気付いていないとは。

このデュエル、万丈目には改めて色々と学んで貰おうか。

 

「それはどうかな?」

「何ッ!?」

「フィールドにシャマルかキャロがいる時、遠隔転移は発動できる! これにより墓地のLS一体を特殊召喚。戻って来いアインス!」

 

AD2300

 

「アインスの効果発動。融合デッキよりナハトを特殊召喚!」

 

AD0

 

「場のアインスとナハトを融合! 現れろ! 絶望への旅路-闇の書の意思!」

 

王様はやてさんが纏う夜とは違う闇を纏う女性。銀髪の女性が纏うのは文字通り闇。そうとしか表現できないモノ。耳の裏と腰から生えた長い黒の羽は、薄汚い野生のカラスの羽よりも比べ物にならない程暗黒に染まっている。

アインスが自らの運命を呪い、そして諦めた姿。それが闇の書の意思。

 

「闇の書の意思の融合召喚に成功した時、除外されている闇の書をこのカードに装備する」

 

闇の書の意思AD3000→AD3300

 

「攻撃力3300ッ! だが俺のライフを削りきる事はできない! どちらか片方でも残したら、そのモンスターは消える!」

「言っただろ。このターンでケリを付けるって。闇の書の意思の効果! 相手の墓地の通常魔法を一枚選択し、その効果を発動できる。お前の墓地からおジャマ・デルタハリケーンを発動!」

「なっ!? 俺の墓地から魔法を発動するだと!?」

 

闇の書の意思は夜天の書を万丈目の方へと掲げる。すると万丈目のデュエルディスクからおジャマ・デルタハリケーンが取り出され、闇の書の中へと吸収された。カードを吸収した闇の書は、ポワッと薄い緑色の光を発し、空白のページに新たな呪文を刻み込む。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

掛け声と共に放たれたのは、地面と平行に進む巨大な竜巻。トンネルの様に真ん中に穴が空いた竜巻はVWXYZとアームド・ドラゴンLV10を呑み込み、王様はやてさんを縛っていたデモンズ・チェーンを吹き飛ばす。

竜巻が吹き荒れていたのはたった数秒。しかしその数秒でフィールドは一転していた。

万丈目のフィールドには何も無い。対する俺のフィールドには動きを取り戻した王様はやてさん。

 

「ツッ・・・・今回は俺の負けの様だな」

「こんかい“も”だろ? バトルだ! はやてでダイレクトアタック!」

 

A2800

万丈目LP600→-2200

 

王様はやてさんの静かな魔力弾の攻撃が万丈目に当たると、万丈目はドサッと地面に倒れた。慌てて万丈目の元へと走ると、万丈目は清々しい表情をして笑っており、俺は安堵の息を吐くと同時に「驚かせるな」と嫌味っぽく言う。

 

「どうだ遊斗? 今みたいなデュエル、もっと沢山の人に見てもらいたいと思わないか?」

 

万丈目の声はとても小さかったが、拍手喝采が響き合うこのデュエル会場でもハッキリと聞こえた。

万丈目を称える声。俺を称えてくれる声。素晴らしいデュエルだったと言ってくれる声。他にも沢山の言葉が、俺と万丈目へ飛んでくる。

悪い気はしない。いや、最高だ。自分の好きなデュエルをこんなにも沢山の人が見て、褒めてくれる。これ程嬉しい事はデュエリストとして他には無い。

俺も昔はこの瞬間を味わいたくて、余り口にはしなかったがプロになりたいと思っていた。

だけど――

 

「悪い。俺にはしなくちゃいけない事があるんだ。本当ならこうやって学校生活を送っていい立場じゃない」

「・・・・そうか。残念だ・・・・」

「けどありがとな。俺を想ってプロリーグを勧めてくれたんだろ?」

「なっ!? 勘違いするな! 俺は貴様を世界中の観衆の前で倒す為にプロを勧めたんだ。だが今となってはどうでもいい! 今度デュエルした時は、勝つのはこの俺!」

【【【一!】】】

【【【十!】】】

【【【百!】】】

【【【千!】】】

「万丈目サンダーだ! 覚えておくんだな!」

 

 

 




ハードル下げても結局文字数は17000って言うね。どうしてこうなった。


本当ならもっとVWXYZやアームド・ドラゴンに活躍して欲しかったですけど、手札や文字数の都合上噛ませになってもらいました。VWXYZは効果使ったからともかく、LV10はカワイソス。
しかし万丈目や翔とかの中途半端にOCGカードを使っているキャラはデッキの事も考えないといけないので難しいんですよね。やっぱり時々強欲な壷が使いたくなったりしますけど、そこはデュエル構成三種の神器の、貪欲、マジック・プランター、メタポとかに助けてもらいます。(ガードブロック? 知らんな)

てかシンクロエクシーズめっちゃ使いたい・・・・。構成の幅が広がるんだよなぁ




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