タバサのTS物語 (ディア)
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1話

~ガリア~

ここガリアで第二王子であるシャルルはそわそわしていた…というのも兄であるジョゼフは娘しかいない。ここでシャルルの息子が生まれれば王位継承権は自分に寄りやすくなる…そう考えていたがシャルルが息子を待ち望んでいたのはそれだけではなかった。

「おぎゃー!」

ついにシャルルの子供が産まれ…シャルルは顔を緩めた。

「おぎゃー!」

しかしシャルルは二つの産声が聞こえたことに不審に思い、そこを覗くと…双子だった。

 

ガリアでは双子は忌み子とされている。というのも科学的な根拠としては母体が耐えきれず母親を亡くしたり、そうじゃなかったとしても寿命はいくらか縮むという根拠があった。しかし科学的根拠がないガリア…いやハルケギニアでは呪いやその類だと信じられている。それ故にガリアでは双子は忌み子の象徴としていた。

「一人は息子で一人は娘か…娘の方を修道院に預けて身元がばれないようにしろ!」

「手続きをする為に名前は…どうします…?」

「ジョゼット。それがその娘の名前さ。兄さんにちなんで名付けた。」

シャルルはそう言って冷たく娘を見る。

「そしてこの男の子はシャルロット…この子の名前はシャルロット・エレーヌ・オルレアンだ!」

何処からどう聴いても男の名前ではなく女の名前である。

「いい名前ね…」

しかし妻の方は納得してしまった…何処からどう聴いても女の子につける名前であるのに関わらずだ。

 

数日後…シャルルの娘ジョゼットは無事修道院に届けられそこで育つことになった。

「シャルル!お前に息子が産まれたそうだな!」

そこへ機嫌が偶々めちゃくちゃに良く陽気になったジョゼフが話掛けた。

「うん。そうだよ。」

「それで名前は何だ?…俺の考えたルイとかにしたのか?」

「ううん…シャルロットだよ…」

ビシッ!…産まれて初めてジョゼフが凍った瞬間だった。

「いいでしょ?この名前…」

そう言って満足げにシャルルは話す。

「なあ…シャルル…俺の聞き間違いでなければ息子が産まれたって言っていたよな?」

ジョゼフは流石におかしいと思い、シャルルに産まれた赤ん坊が男だと自分の耳で聞こうとした。

「そうだけど?どうかしたの?」

しかし現実は残酷だった。シャルルはあっさりとシャルロットが男だと言った…

「それは女の名前につけるものだぞ…?」

ジョゼフは頭が痛くなった…俺はこんな馬鹿に劣等感を持っていたのかと…ジョゼフが常識人となった瞬間だった。

「でも父さんに話したら『よくやった!シャルル!!これでこの世に未練はない!』っていってめちゃくちゃ喜んでいたよ。」

ジョゼフはますます頭痛くなった…自分の父がこんな馬鹿だとは思いもしなかった。というかそんな父親に認められたら何かが終わる予感がした。

「(シャルル…俺が悪かったなら謝ろう…だから元のシャルルに戻ってくれ!!)」

ジョゼフは本気でそう願った…

 

ジョゼフは心配になったので生まれたてのシャルロットを見に行くと…そこにはフリルのついたピンク色の服を着た赤ん坊がいた。

「…シャルロット。絶対にお前を男に戻してやるからな。」

ジョゼフはシャルロットを見て絶対に男として育てようと決意した。

「あうー!」

シャルロットは喜んだように見えてジョゼフは「お前だけが味方だ」と思った。

 

~その夜~

ジョゼフは自分の寝室のベッドで寝ていた…

「(何だ…暑苦しい?)」

しかしあまりの暑苦しさに耐え切れずジョゼフは起きた。

「zzz…」

そこにいたのは髪の毛の長い女性だった…しかしジョゼフはこの顔を何度も見たことがある…

「まさか…こいつは…」

ジョゼフはそういってよく観察すると。この女性…いや女装した男はシャルルだということに気がついた。

「ぬわぁぁぁぁぁっ!?」

ジョゼフは大声をあげてしまい、シャルルが起きた。幸いというか不幸というべきかサイレントがかけられていて寝室から音が漏れることはなかった。

「ん~うるさいよ…兄様。」

女装したシャルルはまさしく完璧な男の娘だった…その為一瞬ジョゼフは見惚れてしまったが相手がシャルルだとわかると話は別だ。

「黙れこのオカマ!今すぐこの部屋から出て行け!」

ジョゼフがそう言うとシャルルは涙目になり上目遣いをした。

「兄様は僕のこと嫌いなの?」

それはまさしく妹の極みだった…ジョゼフは罪悪感が一気に増したがすぐに相手が弟のシャルルだと思い出した。

「出・て・行・け!」

そういってジョゼフはシャルルを部屋から追い出してベッドに横たわるが…

「(もうこんな弟は嫌だ。絶対にガリアを変えなければならん。)」

弟のホモ&女装癖をノーマルに治すために、別世界では狂王と呼ばれたジョゼフがこの世界ではガリア史上偉大な国王になる方向へ変わったのはこの時かもしれない。



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2話

僕の名前はシャルロット・エレーヌ・オルレアン。4歳になった僕はお父様に魔法を教わっているんだけど…

「良いかい?シャルロット…手首はこうしてこう唱えるんだ…」

お父様はやたら僕の身体を触ってくる…お母様は止めようとしないし、これが普通なのかな?

「はぁはぁ…」

お父様の息が荒いけど大丈夫かな…そう思って僕が振り向くとお父様は鼻血を出していた。

「お父様…大丈夫?」

僕はお父様を心配して声をかけるとお父様は笑顔で

「なんでもないよシャルロット…」

といっていたから大丈夫だと思って魔法の練習を再開した。お父様…また息が荒いけど大丈夫かな?

 

「よう、シャルル!」

この声は…ジョゼフ伯父様だ。陽気で優しい人なんだけど僕に何回か「シャルルには近寄るな。最低限のコミュニケーションで済ませ…」とか言っていたけどお父様は僕に近寄ってくるし、それを回避しようにも何処からともなく現れて、優しく「こんな遠くに行っちゃダメだよ。シャルロット。」って笑顔で注意するから遠ざけるのは諦めた。

 

「あ、兄さん。今日はシャルロットに魔法を教える日だからちょっと待ってくれない?」

お父様…この調子だと仕事またサボったね…

「お前なぁ…お前がいないせいでどれだけの人が迷惑していると思っているんだ!?」

伯父様の怒鳴り声を初めて聞いて僕はびっくりしてしまい…

「ヒッ…ウエェェェェェェン!!」

僕は男の子なのに泣いてしまった。

「ああシャルロット…泣かないで…」

お父様が慰めるが一度泣いてしまったら止められない…それが僕のコンプレックスだった。

「兄さん怒鳴らいでよ!」

 

「元はといえばお前の責任だろうが!何なんだこのふざけた理由は!?」

うう~~…なんか鼻かむものないの?服はダメだし…ハンカチは?

「シャルロットが可愛いんだからしょうがないじゃないか!」

あった!僕は1枚目のハンカチで鼻をかんで2枚目のハンカチで涙を拭いた。もう大丈夫だよね…?

 

「あのな…どこの王族に子供可愛さに仕事をサボるんだ?スクエアの段階に入る魔法の練習ならともかくコモンスペルなら家庭教師でもなんでもよかろう…」

「この日の為に仕事を2倍のスピードで終わしてきたのに不満なのかい兄さん?」

「だからといっていきなり休む馬鹿がいるか!」

 

それから僕はお父様と伯父様の話を無視してお母様に教わることにした…えっと…レビテーションはこうやるんだね?ありがとうお母様。僕はそう言ってお辞儀をするとお母様も鼻血を出していた…僕も鼻血出しやすいのかな?

 

「「シャルロット!どっちが正しい!?」」

「ひぅっ!?」

だから僕に振らないでよ!僕はお父様や伯父様みたいに大人じゃないんだから!

「ほらシャルロットが泣くからもう帰ってよ!兄さん!」

お父様は伯父様にそう大声で叫んだ…

「黙れ!お前の……ぶりをうつすならこのまま純粋なほうがマシだ!」

伯父様の途中の声が聞き取れず…何がなんだかわからないけど…お父様を馬鹿にしているのはよくわかった。

「喧嘩しないで!」

僕は大声でそう叫ぶと二人とも収まった。

 

「チッ、シャルル!今度シャルロットを見て異常があったら俺はお前を殴る!」

「だから喧嘩しないでよ…」

僕の叫びは伯父様に届かずに伯父様はそのまま立ち去ってしまった。

「さ、シャルロット…魔法の練習の続きをやろうか…」

お父様がそう言って魔法の練習の続きを再開した。

「うん…」

僕はそれに頷いた。

 

1ヶ月後…僕はキチンと練習してロックとアンロック、ライトなどのコモンスペルは使えるようになった。

 

「じゃあ基本的な魔法は教えたから今度は系統を調べるよ。シャルロット…四系統を言ってごらん。」

「えっと…火、水、土、風の四つです。」

「よく出来たね。シャルロット。」

お父様はそう言って僕の頭を撫でると続けてこう言った。

「その適正…つまりどれが一番出来るか調べるから僕の言った通りやってごらん。」

そう言ってお父様は杖を持ち出した。

「ブレイド!」

お父様の杖から光る棒みたいなものが出来た。白いけどちょっと緑が多い…?

「このブレイドは魔力によって色が変わる…つまり自分の系統の色…火なら赤色、水なら青色、土なら黄色、風なら緑色に変わると言った特徴があるんだ。僕は風が得意だけど他も使えるから白に限りなく近い緑色になったんだ。さあやってごらん。」

「うん!ブレイド!!」

お父様の杖から魔力が飛びたしたのをイメージして僕の杖からも魔力を出す感じでブレイドを成功させた。

「うん上出来だ。緑色にちょっと青色が混ざっているからシャルロットは風が1番得意で水が2番目に得意そうだね。」

僕の得意系統がわかったことでお父様は上機嫌になった…

「それじゃ僕は風と水を中心に教えてやっていくよ。」

つまりそれ以外はお父様以外の方に学んでほしいと…火や土は僕の得意分野じゃない上にお父様も忙しいと思うしね。

「わかりました…お父様。」

僕はそういってお辞儀をするとお父様の目が一瞬焦点合っていなかったけど大丈夫かな?

「それじゃまずウインドって唱えて…僕が見本を見せるから。ウインド!!」

お父様がそう言うとお父様の3倍近いデカイ木にめがけてウインドを放った…

 

ブォンッ!!ガサガサ…

 

あんなデカイ木を揺らすなんて…凄いや…僕のもあんな風になれるのかな?

「どうだい?イメージはついたかい?」

お父様はそう言ってニコリと笑顔で言う。

「うん…ありがとう!お父様。」

僕は大体のイメージが出来たのでお礼を言った。

「こらこら…まだ早いよ。そうだね…初めはこのろうそくの火を消してごらん。」

お父様はそう言ってろうそくを取り出して台の上に置いた。

「さ…やってごらん。シャルロット。」

さっきのお父様のウインドみたいに木を揺らすほど強力な風をイメージして…

「ウインド!」

僕がそう唱えた時、突風が吹き、ろうそくの火は消え、その延長線にあるお父様が少しヨレた。

「…凄いぞ!シャルロット!」

お父様がそう言って僕を抱きしめた…ちょっと苦しいな。

 

「まさか僕のウインドを見せただけでここまでできるとは思わなかった。」

お父様はそう言って僕を褒めるけど…僕はちょっと不満だ。

「でもお父様を少し動かした程度で…お父様にはまだまだ遠く及ばないよ…」

そう…僕はお父様を少し動かした程度であんな大きな木は動かしていない…だからちょっと悔しかった。

「大丈夫!練習すれば僕よりももっと凄くなるさ!僕ですらこんなことはできなかったんだから。」

お父様はそう言って僕を励ました…

「練習すれば僕も出来るようになるのかな…?」

僕はそう言ってお父様に尋ねた。

「なるさ!いっぱい練習すればするほど強力な魔法が使えるようになった僕が言うんだから間違いないよ。」

お父様を信じよう…お父様もそうやったんだから僕もそうする。

「うん…それじゃ練習する。」

 

「その前に…水の魔法の基本の凝縮をやろう。凝縮も見本を見せるからきちんと見るんだぞ…」

凝縮っていうからには何が縮んでいるのかな…?

「凝縮!」

お父様がそう言うと屋敷一つ覆うほどデカイ水の玉が出来た。

「それじゃやってごらん。イメージは雲の中にある雨を集めて小さくする感じだよ。」

雲の中にある雨を集めて小さくするイメージ…雲は雨が降るからそれを一つにして…

「凝縮!」

僕がそう言うとお父様を覆うほどの水の玉が出来た。

「シャルロット、偉いぞ。」

お父様はそう言って僕の頭を撫でた…なんか恥ずかしいな。

 

結局僕はその後、その二つの魔法を練習するように言われて僕の魔法の特訓が始まった。

 



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3話

魔法を教わってから数年…僕はお父様みたいにスクエアどころかトライアングルにもなれずライン止まりのまま、僕の12回目の誕生日がやってきた。

「12歳の誕生日おめでとう…シャルロット。」

お父様を始め、お母様、伯父様、そして僕の従姉妹にあたるイザベラお姉ちゃんが祝福してくれた。

「ありがとう…みんな。」

僕がそう言うとお父様とお母様は鼻血を出しながら涙を流していた…大丈夫かな…?

 

「ロッテ、ちょっといいかい?」

この荒々しい口調はイザベラお姉ちゃんだ…強くて優しくて尊敬しているお姉ちゃんなんだ。

 

例えば僕が転んで泣いた時、自分も転んで泣かずに立って僕の方に近づいて

「ロッテ…男の子なら泣くんじゃないよ。こうやって転んだのに女の私ですら泣いていないのに情け無いとは思わないの?」

って言って僕を泣き止ませようとした。僕もこうなりたいな…って初めて思ったんだ。だから僕はすぐに泣くのを止めてイザベラお姉ちゃんのように強くなろうって思ったんだ。だから僕はイザベラお姉ちゃんのことを尊敬している。

 

「何?イザベラお姉ちゃん。」

僕がそう言ってイザベラお姉ちゃんに近づくとイザベラお姉ちゃんはちょっと恥ずかしげに箱を出した。

「ロッテ…私からの誕生日プレゼントだよ。受け取りな。」

そう言ってイザベラお姉ちゃんは僕に箱を渡すとすぐに去って行った…恥ずかしいのかな?それはともかく箱の中は何が入っているんだろう!楽しみだな~…

「これって…ネックレス?」

イザベラお姉ちゃんが用意したのは割と清楚な感じのネックレスだった。うん…早速つけよう。

「これでいいのかな…」

僕はイザベラお姉ちゃんに感想を聞きたかったけど本人がいないので次のチャンスに聞くことにした。

 

「ねえ、お父様とお母様が用意してくれた誕生日プレゼントはどんなの?」

僕はお父様とお母様が用意した誕生日プレゼントの中身が気になったから直接聞くことにした。

「「これがシャルロットの誕生日プレゼントだよ」」

そう言って二人が取り出したのは…フリフリのふわふわのドレスだった…

「え…?」

僕は固まってしまった…これまでは杖とか本とかだったのにどうして今回の誕生日プレゼントが女の子が喜ぶようなドレスなのかという疑問とお父様とお母様が手をワキワキさせながら着せようとしているのかという点だ。

 

「錬金…」

バコン!

 

するとドレスが爆発してチリとなった…うん。いらなかったからチリとなってよかった。

「シャルロット…少しシャルルと話してくるから俺からの誕生日プレゼントを楽しみにしていろ。」

そう言うと伯父様はお父様を引きずって行った…お父様大丈夫かな?

 

「そしてお前もだ!」

あ…お母様も連れ去られた。イザベラお姉ちゃんがいない今、話せるのって執事長のペルスランしかいないや。

 

「ペルスラン…お父様とお母様どうなっちゃうの?」

僕がペルスランにそう聞くとペルスランはちょっと考えて…こう言った。

「少なくともお嬢…いえシャルロット様にドレスを与えることはなくなるでしょう。」

ドレスを与えることはなくなるって二人とも本気だったの?…ん?

「いまお嬢様っていいかけたよね?」

ペルスランが僕のことを女の子としてみていたかどうか判断するためにそう聞いたらペルスランは…

「存じませぬ。そんな過去のことは。それよりもイザベラ様が帰って来ましたよ。」

と言ってイザベラお姉ちゃんの元に誘導した。…はかったな。

 

「お姉ちゃん…」

僕がそう言って近づくとイザベラお姉ちゃんは僕のことを抱きしめた。

「よしよし…もう大丈夫だよ。私はどんな時もお前の味方だよ。」

イザベラお姉ちゃん…やっぱり優しいや。

「うん…」

僕はそう言ってイザベラお姉ちゃんに抱きついて思い切り甘えた。

 

ドゴーン!!

 

あれは…お父様と伯父様?なんで魔法を使って喧嘩しているの?…伯父様は魔法じゃなくてただの爆発だけど…

「真剣だね…こりゃ。ペルスラン!」

イザベラお姉ちゃんはペルスランを呼んだ。

「なんでしょうか?」

ペルスランはすぐにイザベラお姉ちゃんの声に反応した。

「ロッテを安全な場所に避難させな!私は後で行く!」

え…それって…!

「かしこまりました。さ、ここにいては危険です、行きましょう。お嬢様。」

「やだよ!ここでイザベラお姉ちゃんを見捨てる訳にはいかないよ!というかペルスラン、さりげなく僕を女の子扱いしないでよ!?」

「ダメです!イザベラ様のお気持ちわからないのですか!ここにいたらお嬢様も巻き込まれます!」

ペルスランはそう言うと僕を担いでこの場から走り去ろうとした。

「だから女の子扱いしないで~!!」

「お嬢様失礼!」

そう言ってペルスランは僕の首にトンッとあてた…あれ?意識がなくなっていく…

 

~翌日~

 

僕の誕生日に起こった乱闘は魔法を失敗して爆発を起こしまくった伯父様が勝ち、無能と言われた伯父様に負けたお父様の二つ名は天才から変態に変わりお母様も牢獄へと入れられた。

ペルスランに僕をお嬢様と呼ぶようにしたのはお父様と聞いたのでそれでいいと思うけど歴史は勝者が語るっていうし伯父様が事実を変えているのかもしれない。そうなると僕は真実が知りたい…

 

「シャルロット様はいますか?」

そんな時1人の兵士が僕を呼んだ。

「どうしたの?」

「ジョゼフ様がお呼びです。至急風竜にお乗りください。」

そう言って兵士が風竜に乗ると僕も乗るように促した。

「ありがとう…」

僕は杖を持って風竜にのった。

 

~リュティス~

「来たか…シャルロット。」

伯父様がそう言って僕に近づく。

「なあ…シャルロット…シャルルのことどう思う?」

「お父様のことですか?」

「そうだ…お前に対するシャルルの認識だ。」

お父様の認識…

「優しくて、凄い魔法をいとも簡単に扱えるけどよく鼻血を出す…尊敬するけど残念な人だと思います…」

うん…尊敬はするけど鼻血をよく出すよね。

「やはりか…だが自制してそれだ。奴はお前が生まれた時から変態だ。昨日は氷山の一角を見せただけだ。見ただろう…お前にドレスを渡す時のシャルルの目を…」

そう言って伯父様の目が死に始めた…

「ええ…」

僕もあの時の目は忘れない…真剣で僕にドレスを着せようとする感じだった。

「なんでだろうな…あいつはこれでもかという程、頭はよく、魔法も俺とは違ってキチンと使える…嫌味になる程にな。」

伯父様はその時のことを思い出して目が少し生き始めたと思ったらまた死んだ。

「だがそれが俺の一番の幸せだった時期だと思い知らされたのはシャルルが変態だと知ってからだ!俺はコンプレックスに悩まされた子供の頃が懐かしすぎて涙が血になるぞ!」

そう言って伯父様は本当に血の涙を流した…ひょっとして今まで対立して来たのはそのせい?

 

「シャルロット…お前もその名前が女につける名前だと気付いているだろう?」

そういえばよく女の子に間違われるのって…名前のせい?

「あいつはな…生まれた当初からお前を性欲の対象にしていたんだ。」

…どういうこと?僕、男の子だよ?

「その年では何を言っているかわからんか?簡単にいえばシャルルはお前に対してエッチなことを考えていたってことだ。」

え…?

「お前の頭が混乱するのは無理もない…俺も初めてシャルルが同性愛だと知った時はショックを受けた。思い切り泣け…今回は許す。」

僕はお父様がそんな目で見ていたなんて…知りたくもなかった!!

「うぁぁぁぁぁぁ!!」

その事実を話した伯父様にトライアングルスペルを唱えて伯父様に攻撃してしまった…

「落ち着け!シャルロット!」

伯父様は暴れる僕を取り押さえた…

 

しばらくして落ちつくと伯父様は僕の魔法を受けてボロボロになっていた。

「落ち着いたか?」

伯父様が声をかけて来た…

「うん…それとごめんなさい。」

僕はそれしかいうことがなかった。

「…いや許さん。お前には罰を受けて貰う。お前の罰は北花壇警護騎士団に入って貰う。」

そう言って伯父様は僕に命令した…

「北花壇警護騎士団…?」

だけど僕はそんな騎士団は聞いたことはない…騎士団は東、南、西の三つだったはずだ。

「北花壇警護騎士団…わかりやすく言うと暗部だ。お前はそこに入って貰う。お前の任務は団長のイザベラが選ぶ…つまりお前の命をネタにシャルル達をノーマルに戻すという訳だ…しかし万一死なれたら俺としても困る。だからある程度は任務の中で鍛えて貰う。わかったな?」

お父様は僕にエッチなことを望んでいるから死なれたら困る…だからクソ難しい任務を与えたことにして死んだことにしてもらうってことか。その上伯父様は僕の魔法のランクを上げようとしている…寛大すぎる罰だ。

「わかりました…このシャルロット・エレーヌ・オルレアン、北花壇警護騎士団に入団を願います。」

僕はそう言って北花壇警護騎士団に入ることを決意した。

「シャルロット…お前を北花壇警護騎士団7号として認める。本名は俺と団長以外には知られてはならぬ故にタバサと名乗れ。」

「了解しました。」

そしてこの時僕はタバサとなった。



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4話

「いけません!お嬢様!」

ペルスランに北花壇警護騎士団に入団したことを報告したらそういってきた。

「ペルスラン、お父様とお母様を救う為なんだ。それと女の子扱いしないで。」

あの変態達をノーマルに戻す為には僕が頑張る必要がある。伯父様は飴と鞭を使って変態達を治そうとしている。今の時点で鞭はすでに用意出来ているけど飴はまだ用意出来ていない…その飴こそが僕の役割。僕が頑張れば頑張るほど伯父様も困らなくて済むし、あの二人も治りやすい…

「ですが…暗部の北花壇警護騎士団となれば汚れ仕事も多いはずです!シャルロット様お考え直してください!」

ペルスランの気持ちもよくわかるよ…だけど伯父様は何も考えずに北花壇警護騎士団に入れた訳じゃないんだよね。僕自身の為でもある。国王ともなれば必ず汚い物を見なくてはならないし、戦争になった時強い精神力がものをいうしね。

「それにこれは伯父様の命令…僕が選べるものではないよ。」

僕はそういってペルスランを納得させた。

「仕方ありませんな…私達一同はこの屋敷を綺麗にして待つしかありません。」

ペルスランは諦めてそう言った。

「ありがとう…ペルスラン。」

僕は納得して貰えたことに少し安心した。

「ではお嬢様、北花壇警護騎士団の仕事頑張ってください。」

「だから女の子扱いしないでてっば!台無しだよ!」

ペルスランの一言で全て台無しになった。

 

結局僕達は一度やりなおすことにした。

「ではシャルロット様、私達はここでシャルロット様及びシャルル様、奥様のお帰りを望んでいます。」

「うん…それじゃ行ってくる!」

僕はそういってイザベラお姉ちゃんがいるプチ・トロワへと向かおうとした。

 

「その必要はない!」

そういって僕を止めたのはガリアの兵士…いやイザベラお姉ちゃんの部下にあたる人だろう。

「その必要がないとは…?」

ペルスランがそう言って僕の聞きたかったことを聞く。

「7号…任務がある。受け取れ。」

そういって渡して来たのは依頼書だった。

「では任務が終わり次第イザベラ様のところへ行くんだ。」

彼が竜に乗って立ち去って、僕はそれを開いた…

 

その依頼内容は…『地方に住む竜の討伐』早速ハードなものが来た…

「なっ…竜の討伐ですと!?」

ペルスランが驚くのは無理もなかった…竜を殺せば竜殺しと呼ばれ、戦うメイジとしては名誉とされているほど竜は危険な生き物だった。それを狩るということは相当辛いはず…だけどあの変態達を治すためにも僕はやらなくてはならない。

「お嬢様!あまりにも危険すぎます!」

ペルスランが僕のことをまたお嬢様と言ったのでイザベラお姉ちゃんに会ったら髪の毛を切って貰うことを決意した。

「僕は大丈夫!」

僕はそういってその場所へと向かった。

 

~某地方~

馬車を使って移動すると目的地に着いた。

「ここが…竜の生息地…」

僕はそう呟くとトライアングルになったので風の動きを読むことが出来るようになったので、風の動きで竜を感知した。

「…!」

早速感知してその場に向かった。すると目的の竜を見つけた。幸いにもこっちには気付かれていないみたいだ。気付かれていたら真正面から戦うしかない…何故なら竜は犬よりかは劣るけど鼻はとてもいい。そんな竜が僕の匂いを覚えて民間に被害を与える可能性も否定出来ない。そうなれば僕は囮になりつつも応援を呼ぶしかないからだ。

「グゥゥゥ…!」

しかしトライアングルになると風の動きに敏感になるって本当なんだ…信じられなかったよ…この感覚を感じるまでは…

「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ…ウィンディ・アイシクル!」

僕はまともに竜と戦えるほどの強さを持ってもいなければ蛮勇でもない…それゆえに不意打ちをかけた。

「グォォォォォッ!?」

当然、竜は不意打ちに対応できずに氷の矢が突き刺さった。だけどまだまだ終わらない!

「アイス・ストーム!」

竜に当たらなかった氷の矢と新しく増やした氷の矢を利用して氷の嵐を作り…竜は先ほどとは違い氷の矢が前後左右上下関係なく突き刺さり…心臓のあたりに命中すると絶命した。

「グァ…ァ…!」

竜の断末魔が聞こえたので僕は突き刺さった氷を錬金で油に変えて竜を発火で処理した…

 

そしてその感想は…

「グロかった…」

僕はこれしか言えなかった。というのも途中で内臓とか、骨とか中途半端に出てくるから気持ち悪くなったけどあの変態達を治す為だと思い僕は我慢した。でももう限界だ。

「おえぇぇ…」

僕はグロさに耐えきることが出来ず吐いてしまった…

 

~プチ・トロワ前~

それから僕は思い切り、出したのでプチ・トロワへと向かった。だけどそこへ待ち構えたのは…

「ロッテ…いや7号よく帰ってきたね。」

なんとイザベラお姉ちゃんだった。

「おっと…7号、よく聞きな。お前のことだ。私のことをイザベラお姉ちゃんなんて呼ぼうとしているんだろう?少なくとも北花壇警護騎士団の一員である以上は私のことは団長か1号と呼びな。」

イザベラお姉ちゃん…いや団長はそういって私の手を引っ張って広間まで歩いていった。

「さて7号…もうわかっているとは思うけどお前は私の配下だ。それ故に仕事の依頼は絶対にこなして来な。そうすりゃ私もお前も得をする。わかったね…?」

「う…いえ、はい。」

危うく、うんっていうところだった…今話しているのはイザベラお姉ちゃんではなく団長なんだよね…

「それと、ある程度は自由にしてもいいけどここに来るように指示があったらここへ来ること。」

団長はそれだけ言うと「もう用件はないから帰りな…後プレゼントのネックレスつけてくれてありがとう…」と最後はボソッといって僕をオルレアン領に帰らせた。やっぱりイザベラお姉ちゃんはイザベラお姉ちゃんだ。ああいうこと言われたら僕も頑張ってみようって気になるなる。

 

あ…そういえば誰に髪の毛切って貰おうかな?あの感じだとイザベラお姉ちゃんは無理っぽいし、やっぱり自分で切るべきかな?今まであの変態達に任せて来たから女の子と間違われる羽目になったし自分で切ろう…

 

~おまけ~

その頃、牢獄では…

「おい!まただ、また逃げたぞ!」

どうやら脱獄が起きたようで兵士が騒々しく動いていた。

「急いで一班はジョゼフ様を呼べ!二班は女たちを使って止めろ!男に近寄らせ…」

そこで指揮官らしき男の声が止まった…というのもそこに現れたのは女装癖、ホモとなり変態化したシャルル・オルレアン公が立っていたからだ。

「男《獲物》達をどこにやるつもりだい?」

シャルルの言った男というキーワードは指揮官からは獲物と聞こえてしまったのは無理ないといえる。

「あーっ!!」

指揮官は速攻で逃げようとしたが…シャルルはどこからともなく杖を出して空気の手錠をかけた。

「そこまでだ!シャルル!!」

ようやく我らがヒーロー、ジョゼフが現れ、シャルルを止めに来た。

「ああ…兄様、なんて素敵な顔なんだい?」

ジョゼフはそのセリフを聞いて戸惑うことなくシャルルの服を錬金するようなイメージで爆発させ…シャルルを気絶させた。

「シャルルを止める人材が欲しい…」

ガリアではジョゼフ以外にシャルルを止められる人間がいないのはわかっていた…というのもシャルルは魔法に関しては天才的である。そのため予測不可能なジョゼフの爆発以外の魔法だと見極められ、返り討ちにあう。メイジ殺しも聞いた話しだと精々トライアングルが最高でシャルルには到底及ばない…割とジョゼフは本気で悩んでいた。

「全く情けない限りだ…」

ジョゼフは弟がこんな変態になったのも、その弟を止められるのも自分だけが頼りだと言う事実に胃に穴が開きそうだった。



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5話

そしてお祖父様が死に、正式に伯父様が国王となった…あの変態が国王になったら、このガリア王国は色んな意味で終わる…女装ホモだらけの国…嫌すぎる。そんなことになったら僕は絶対に国外逃亡して永遠にタバサとして生きる。

 

ちなみにお祖父様が伯父様を国王として認める際のやりとりは…こんな感じ。

「この国の王をジョゼフ、お前とする。」

「だろうな…」

「…シャルルはなんでああなったのか聞いているか?私はせめてそれだけが知りたい…」

「父上…少なくともシャルロットが産まれてから暴走し始めたことは確かだ。」

「シャルロットが産まれた時からか…しかしだ。例えシャルルがまともであっても私はお前を後継者として選んだだろう…」

「何故?」

「それは…」

「父上?」

その後伯父様はお祖父様が亡くなったことを確認して自分が国王となったことを発表した。ちなみにあの変態達も亡くなったことになっており新しいオルレアン領主が僕に変わったことも発表された。

 

そのせいか…

「オルレアン公!優秀な職人がまたこの地を去りました!」

「オルレアン公!新田開発についてですが…」

「オルレアン公!私めを罵倒して下さい!」

おかげで大忙し…髪の毛も切る暇もなかった。当然最後のは監獄行きにした。ちなみに団長から出された僕の任務は領土の内政をして経験しろ…だって。おかげで本を読んで知識を得ないと何も出来ない…

 

「お嬢様…少し休んだらどうですか?」

そう言ってペルスランが心配し、声をかけた。

「ペルスラン…人が苦しんでいるのに僕だけ楽する訳にはいかないよ。それと女の子扱いしないでって何回も言っているでしょ?」

なんで僕のことを女の子扱いするんだろう…絶対に今年中には切ろう。

「しかしこのままではあまりにもシャルロット様の負担が大き過ぎます。せめてシャルロット様以上の方がそれを何とか出来れば…」

そう言ってペルスランは悔しそうな顔をする…待てよ…?!

「そうか!人が足りなきゃ集めればいいんだ!!」

「お、お嬢様?」

「ペルスラン、どうやら何とかなりそうだよ!今回は女の子扱いしたことは許すよ!」

そう言って僕は準備をした。

 

~1ヶ月後~

オルレアン領に様々な人が集まった…

「シャルロット様、一体何をするつもりですか?」

ペルスランがそう聞いて来る。そういえば説明してなかった。

「まあこれからやることは引き抜きだよ。」

「引き抜き…?」

「そう…何か一番の特技を持っていればオルレアン領で優遇するって言って人を集めさせた。」

「なるほど、『竜骨より始めよ』ですな。」

 

竜骨より始めよ…それはかつてトリステインの全盛期に最も近づけたルイ1世の取った策だ。ルイ1世は史上最強の竜と言われた竜の骨をかなり高値が買い取り、こう言った…

「もしこの竜を超える竜が生きているならばこれよりもずっと高値で買おう、そしてその者には名誉も与えよう」と…

そうして貴族達は皆、その金額と名誉に目が眩み、竜を捕まえて国に献上した。次にルイ1世は同様にして竜騎士達を集め…結果トリステインは最強の竜騎士団を結成し、全盛期並の力を誇ることが出来た。

 

つまり僕はそれを別の方面に生かし優秀な人材を揃えようと考えた。

「これなら僕の負担も少しはマシになるはずだよ。」

「う~む…まさか私の一言でこんな発想が産まれるとは思いもしませんでした。」

「それじゃ頑張ってくるよ。」

僕はそう言って杖を持った。

 

「あーあー…皆さん聞こえますか?」

僕は拡声の魔法を使って一箇所に集まった皆に呼びかけた。

「…オホン!僕の名前はシャルロット・エレーヌ・オルレアン。この場にいる皆さんを集めた本人だ。」

僕がそう言うと場は騒がしくなる…僕は顔をフェイスチェンジで変えているがそれでも幼い声に驚いたからだ。

「それでは早速特技を説明して貰うために面接を行いたいので番号を係員に呼ばれたら目の前にある赤いテントに入って下さい。」

そう言って僕はテントの中に入っていった。

 

「それでは貴方はなんの特技があってここに来たんですか?」

僕や他の二人を合わせた三人が一人に聞くタイプの面接でどんな特技があるか聞いて、それを書き込む…

「はい、私は数学を研究しているのですがゲルマニアやアルビオンでは中々認めてもらえずここにきました。数学のことならなんでも聞いて下さい!」

なるほど数学者か…どのくらい出来るのか試してみるか。

「では貴方が得意としている数学、およびわかっている数学の式を四則法則以外で書いて下さい。」

そう言って僕は紙を渡した。

「では失礼して…」

すると僕ですらまだ見たことのない式が次々と書かれていく…有用だな。

「このくらいですかどうでしょうか?」

もうこの時点で決まったようなものだ。

「こんな訳のわからない式をスラスラと書けるようであれば優遇しましょう。一月20エキューの支給!」

そう言って僕は大声を出してテントの外にいる人たちにも聞こえるようにした。

「やった!」

「では明日からよろしくお願いします。」

 

こんな感じで面接は順序良く進んだ…ちなみに戦いが得意という人たちは翌日戦わせて誰が一番強いかを決める大会を開くことにした。

 

そして最後の面接が終わり…

「お二人方ご苦労様でした…」

そう言って付き合ってくれた二人に礼を言った。

「いえ、このくらいはたやすいものです。」

この二人は東西の花壇騎士団の人たちだ。おかげでスムーズに面接が進んだよ。

 

~さらに1ヶ月後~

 

そして案の定、大成功して僕の代わりの人材がいくらでもいるようになった。

「これで僕がしばらくの間はいなくとも大丈夫だね。」

もう集めた人たちが優秀過ぎて少し自由にさせた程度で勝手にいい方向へと動くし、特産品も増えてオルレアン領単体で貿易とかも出来るようになったせいで蓄えも前よりも多くなったし、いいことずくめだよ。ただ変態を治す医者はいなかったけどね。

「まさかここまでとは…」

ペルスランが感心したように頷く。

「まあこれでオルレアン領は安泰だよ。」

王家に結構特産品とか献上しているし、王家からは睨まれることはないしむしろ後ろ盾になる…とはいれこれは任務の一貫だけど、やるときはやんないとね…

 

~おまけ~

 

グラン・トロワにて…ジョゼフはご機嫌だった。というのも…シャルロットが内政に励んでおり、まさか単体で外交も出来るようになっていたからだ。その上献上品も数多くガリアの金は潤っていた。

「シャルロット…やはりお前はシャルルの息子だ。お前さえまともに育っていればこの国も安心だ。」

そう言ってジョゼフは次の資料を見て一気に憂鬱になる…

「しかし、どうやってあいつはこんなところに仕込んでいるんだ?」

それはとある話しが書かれている小説もどきの紙の束だった。

「またか…俺はシャルルとは違ってその耐性はない…錬金。」

ジョゼフはその紙束を錬金で爆発させて粉々にした

そう…その中身はBLの小説だった。しかも今までもそんなことがあった。多い順からシャルル×シャルロット、シャルロット×シャルル、ジョゼフ×シャルル、ジョゼフ×シャルロット…(以下省略)となっていた。

 

とにかく中身はBLである。これを書いた著者は…なんとシャルロットの母親にしてシャルルの妻…前オルレアン公夫人…いやオルレアン公腐人となっていた。しかも牢獄にいるにもかかわらずどうやっているのかわからないが紙を用意して書き終わったらそれを報告書と報告書との間に入れるのだ。

「あいつはシャルルよりも厄介だ…」

ジョゼフがそう言ったのには理由がある…腐女だという理由ならまだマシだ。

「会いに行けばS○Xに来たと思われる、かと言って放っておけば何故か喜ぶ、シャルルを連れて説得しようとしても発狂しながら喜ぶ…何か打つ手はないのか…?」

そう…オルレアン公腐人は究極のドM、腐女子だった。その為、シャルルとシャルロットがくっつくことを強く望んでいた。そうすれば自分は寝取られたことになりドMの魂に火がつくし、腐女子としての魂も火がつく…まさにシャルル×シャルロットはオルレアン公腐人にとっては理想の関係だった。

「シャルロット…本当にお前の人材に変態を止められる奴はいないのか?」

しかしシャルロットに1週間前にそう聞いたところ、いなかったらしいのでどうしようもなかった…

「この世に誰かあいつを止められる奴はいないのか…?シャルルは止められてもあいつは止められん…」

ジョゼフは胃の穴が開いていくのを感じて早めに寝た。




今回は内政でしたね…まあかなりオリキャラっぽいことしていますがタバサは原作では女王となっていますし問題はないと思い書きました。


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6話

団長から「内政や外交はもういい…」と言われたので僕はいつも通りの北花壇警護騎士団の仕事に戻った…

 

「7号、これからお前の任務を説明するよ…」

そう言って団長が僕の目の前に立つ…それにしても団長の身長高いから少し分けて欲しいな…

「今回の任務は命の危険はほとんどないと言っていいほど危険度はないけど難しい任務だ。引きこもりの貴族の子供を学院に通わせてくれって任務だよ。…なんでこんな任務が北に来るのかわからないけど、そういうことだからこの任務こなして来な!!」

そう言って団長は椅子に座って美味しそうにケーキを食べ始めた…やっぱりこうしてみると可愛いな…

「ほらとっとといきな!!私の食事する姿を見ているんじゃないよ!」

目の保養になったし、とっとと行こう…

 

~某貴族の家~

コンコン!

僕はドアをノックして中に入ると許可を取ろうとするが…

がばっ!

と向こうがドアを開けた

「おお!よく来た…な…?」

最初は勢い良かったけど最後は途切れ途切れに僕に話しかけた…こういうのって竜頭蛇尾っていうんだっけ?

「お前が…北花壇警護騎士団でいいのか?」

そう言って貴族の男性は僕に尋ねてきた。

「そう。」

僕はそう言って肯定した…ちなみにタバサというか7号としての僕は無口で通している。そうしないとオルレアン公などとバレてそう呼ばれたら仕事どころではない…

「ところでお名前はなんでしょうか?」

嫌味全開で貴族がそういくが表情を変えずに僕は簡潔に

「タバサ。」

と答えた…喋ることが出来ないのは辛い。

 

「おいおい…それって犬猫につける名前じゃねえか…」

そうでなければなんだというんだ…この貴族は?暗部が本名言ったらダメだと知らないの?

「それよりも依頼は?」

そんなことはどうでもいいので僕は用件を済ませてあのイザベラお姉ちゃんのケーキを頬張る姿をみたいんだ…

 

「ああ…そういえばそうだった。俺はシークレット・ユーロ。この家の当主だ。依頼内容はうちのアルフレッドを学院に行かせてやってくれ。」

シークレットが自己紹介と依頼内容を同時に言った。

「一つ聞きたいことがある。」

そう言って僕はシークレットに質問をした。

「ん?」

「アルフレッドはどんな性格?」

これを知っているのと知っていないのとでは大違いだ。性格によって対処法を変えなければならない…

「性格が卑屈だな。それが原因で友達も出来ねえ、婚約者もいねえ…できればその性格もなんとか直してやってくれ…でなければあいつは一生あそこに閉じこもったままだ。」

性格が卑屈…なら大丈夫かな?まだまだ改善の余地が大きいしやりやすいほうだ。

「わかった。」

そう言って僕はアルフレッドの部屋へ向かった。

 

「誰だ…?」

そう言ってアルフレッドは素直にドアを開けた…

「…ガリアの北花壇騎士団のタバサ。貴方をが「帰れ!」…どうして?!」

アルフレッドは僕の言葉を遮ってドアを閉めようとするけど僕は必死に抑えた。

「俺なんざよ…あの場所にいるべき人間じゃねえんだ…」

確かに卑屈…だけど卑屈になる理由がわからない…

「それを聞いている。」

僕はそう言って彼に質問した。

「…入れ。」

するとアルフレッドは手を緩めて僕を部屋の中に入れた。

 

「俺はな、学院の奴ら全員に兄貴達と比較されるんだよ…どんなに頑張っても兄貴級と言われ、学院トップになっても兄貴級と言われ続けた。お前にはわかるか!?どんなに頑張っても報われない惨めな気持ちがよ…!!」

…卑屈というよりも比較され続けることに嫌気がさしたってとこだね。

「俺はもうあの学院にいても居場所はありゃしねえ…そういうことだ。わかったら出て行ってくれ。」

「そうはいかない。」

僕はそう言って拒否する。ここで諦めたら任務失敗になりイザベラお姉ちゃんの悲しむ顔を見ることになるからだ。僕はイザベラお姉ちゃんの顔を悲しみで歪ませたくはない。

「俺はお前みたいな女には暴力を振るわないことにしているんだ…」

なんで僕のことを女の子と勘違いするんだ?確かに女の子のような顔をしていて小柄だけどそれでも男の子の雰囲気があるでしょ?!

「僕は男。」

だから思い切り言ってやった…

「…嘘だろ?」

アルフレッドはそう言って僕に聞く…よっぽど女の子らしく見えたんだ…そのことにショックを受けるけど負けるものか。

「嘘じゃない。」

僕はアルフレッドに真顔でそう言った。

 

「で…学院に一回行けばいいんだろ?それでお前は帰れ。」

アルフレッドはとんでもない発言をした…そんなことを僕の目の前で言っていいのかと思った。

「いや…その卑屈な性格も治すように言われた。」

僕はアルフレッドにそう言った。

「なんだと…俺のどこが卑屈なんだよ!?」

当然アルフレッドは動揺した…アルフレッドは本気でその評価が正しいと思っていたんだ…

「じゃあ貴方は誰?」

僕がそう言うとアルフレッドは少し戸惑った。

「あ、アルフレッド・ユーロ…」

そう言ってアルフレッドは答えるが実際には違う…

「…少なくとも今の貴方はアルフレッドでもなければ貴方の兄達でもない。もし本当に貴方が貴方でありたいなら学院に通って自分の居場所を見つけるべきだと思う。」

「ちっ!これ以上言っても聞かねんだろ!?明日学院に一回だけ行ってやるとも!」

そう言ってアルフレッドは学院へ行く準備をした。

 

〜翌日〜

「全く面倒なことを…」

そう言ってアルフレッドは馬車を用いて学院に向かった…

「やっとアルフレッドの奴学院に行く気になったか…」

そう言って当主シークレットは頷く…

「まだ僕が居るからそうしているだけ。」

実際はそうだ。僕がいなくなった途端ああいうのは学院に通わなくなる。

「まあ確かにな…あいつが自分に自信が持てないのはわかっただろう?どうしても優秀な軍人の兄達と比較されるんだ。俺も出来る限りのことはやったんだが…返ってあいつを傷つけただけに終わってしまった…だからもう一度頼む!あいつを、アルフレッドを…精神的に強くしてやってくれ!」

この当主熱いよな…お父様もこんな感じだったら良かったのに。いや良くないか…もし熱かったら変態が感染する可能性は高まっていたかもしれないから熱くないだけマシだったのかもしれない。

「元からその気。馬を貸して欲しい。」

僕はそう言って馬を借りてアルフレッドを追いかけた。イザベラお姉ちゃん…今回の任務は結構うまく行きそうだから待ってて!!

 

~おまけ~

ジュリオ・チェザーレことジュリオは非常に憂鬱だった…というのも自分の上司であるヴィットーリオ・セレヴァレに虚無の候補であるジョゼット…つまりシャルロットの双子の妹に接触して友好度をあげて来いとの命令だった。当然最初はその命令に歓喜した。しかし最近は違う…その理由は…

「竜のお兄様…大好き♡」

このセリフだけならジュリオにとってどれだけ良かっただろうか…こう言っているからには何かないはずがないのだ。ジョゼットはジュリオの息子を蹴った。

「ひぐっ!!」

当然ジュリオは自身の息子を蹴られて縮こまってしまう…

 

これ以上はあまりに過激な表現が多くてよろしくない表現があるのでジョゼットとジュリオのセリフは省略させて貰う。

 

ジョゼットは変態達…シャルルとオルレアン公腐人の変態の部分だけを抜き取ったかのような女の子だった。

 

シャルロットとは真逆で変態の遺伝子がありすぎるジョゼットはジュリオの偽りの笑顔ではなく泣き顔が好きだった。早い話超ドSだった…更に周りがジョゼットを止めるどころか感染していた…もう修道院とは言わず臭道院と言っていいだろう。

 

しかもジュリオが反撃に出てもジョゼットの上目遣いがジュリオに炸裂してジュリオに罪悪感を抱かせ、結局元通りになってしまう…

 

かつてこの修道院のガキ大将だったジュリオはいい年こいてみっともなく涙をボロボロと流し、ジョゼットと別れようとしたが…そうはいかなかった。

「それじゃ、また来てね?竜のお兄様♡」

そしてこの笑顔でジュリオをここに来させるのである。今、ジュリオはヴィットーリオの命令だと思ってここに来ているようだが実際にはDV夫から離れられない妻の状態となっていた。

 

頑張れジュリオ!ガリアには変態が二人もいてもっと大変な人がいるから安心しろ!!



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7話

僕はアルフレッドを追いかけて学院へと着き、こっそりとアルフレッドを観察したがアルフレッドは別にトラブルも起こしていないし、勉強、魔法においても何ら問題はなかった。

あの教師が出てくるまでは…

「おい、アルフレッド!」

そいつは教師であるにもかかわらずかなり口調が荒く、服装も決していい趣味とは呼べないような感じだった。

「なんでしょうか?」

アルフレッドは表情こそ変えなかったがそいつを見て嫌そうな雰囲気を出した…僕もあんな奴が教師だったらそうする。

「そういえば何日ぶりの登校?」

教師はその雰囲気をガン無視して嫌味全開でアルフレッドにそう聞いた…

「1ヶ月ぶりです…」

アルフレッドがそう答えると教師は新しいオモチャを見つけた子供のような顔をした。

「ほほ~う…つまり君のお兄さん達が頑張っているにもかかわらず、君は1ヶ月間学院をサボっていたの?それともお兄さん達が死んだって話なら謝るけど、そうなの?そうなの?ねえねえ!」

ウザい…第三者の僕から見てもあいつのボール蹴り飛ばして去勢させたいくらいウザい…だからといって飛び出す訳にはいかない。

「いえ、僕が学院をサボっていました…」

…まあ普通ならそう言うよね。だけどそれを言ったら加速するだけなんだよね。

「いや~良かった良かった…」

あれ?加速しなかった?

「君のひねくれた性格がねじりにねじってくれて本当に助かったよ。なあそうだろ!?皆。」

…僕はこんな教師のボールの一つや二つが無くなっても問題ないと思った。なんのボールかは察して欲しい。

「ええ、そうです。」

1人の生徒が賛同すると周りも賛同し始めた…あの教師を首にさせた方が話は早いね。

 

僕はそう思い、この学院の学院長の元へとやってきたが

「何?ミスタ・アールを辞めさせろと?部外者風情が首を突っ込むでないわ!」

と言われ更には

「それに部外者じゃないにしても無理じゃ。ミスタ・アールの家からは大量の寄付金がある…辞めさせたら私の首が飛ぶ。」

と言われた。自分の身分を可愛がっている馬鹿ばかりだ。

あの教師は辞職させるしかない。かと言って僕の本当の身分を明かせば厄介なことになるし、お金もそんなには使えない…あれしかないか。

 

僕はドアのところまで歩いてドアを開ける直前で立ち止まった。

「そういえば…学院長は孫がいましたよね…?お元気ですか?」

こんなこともあろうかと学院長のことを調べておいて良かった…下準備がものを言うしね。

「…?まあいたって普通だが…」

学院長はそう言って何が言いたいのかわからず首を傾げ、僕に尋ねようとするが僕は有無を言わず遮る。

「そう…それならいい。最近は不慮の事故が増えているから注意したほうが良い…事故というのはいつ起こるかわからないから…」

僕の選んだ手段はいたってシンプルなものだ。学院長に軽い脅しをかける。

「なっ…!?」

学院長が目を丸くして絶句する…

「ここの教師とて同じこと…特にあの教師は不慮の事故に巻き込まれる可能性が高いから警告した。」

僕はそれだけいうと学院長室から出て行った。だいぶ焦っていたし、これで辞めさせなかったら実際にやるだけ。どこからどう見ても勧善懲悪ではなくチンピラを食い物にする極道だがガリア公認の暗部なので問題はない…と思う。多分…

 

そして授業が終わり夜になった。ちなみにここは学寮があるのでアルフレッドも夜になったら学寮へと向かうはずだけど何故か学院外へと出た。

「それで俺をつけて楽しかったか?」

アルフレッドが僕に気付いてそう話しかけてきた。

「…いつから気がついたの?」

「そりゃお前が学院長室に入ったところだよ。」

そういえばアルフレッドは学年成績トップになっているなんて話しもしていたし魔法のランクも相当高いはずだから僕を探知するのは不可能ではないのかもしれない。

「…そう。」

でも止めなかったということは僕のことはある程度は信頼しているということだ…

 

「それで何をしていたんだ?」

アルフレッドは僕にそう尋ねた。

「秘密。」

当然あんなことを言うわけにはいかないのでそういった。

「秘密って…学院長室で何を話していたんだ?今日の授業ほとんど自習になったから何かしたんだろ?」

「秘密。」

そんなことになっていたとは知らなかったけど言うわけにもいかない。

「はあ…仕方ねえ。まあ明日になればわかるだろうな。それじゃ俺はもう寝るから寮に戻るぞ…」

「ん…」

さて…この間に色々と準備しないと。ふっふっふ…

 

~翌日~

「いい朝…」

お日様の光を浴びて今日は気持ち良く朝を迎えることが出来た…

「いい朝、じゃねえーっ!!」

アルフレッドがそう僕に突っ込み、頭を殴った…

「痛い…」

僕は恨めしい思いをアルフレッドに向けるがアルフレッドは怒っていた。

「タバサ、てめえだろ…この手紙!」

そう言って取り出したのは『大切なものを奪います。by土くれのフーケ』と書かれていた手紙だった。

「それが何?」

土くれのフーケ…それは盗賊の名前でなんでも盗んだ後は『○○を頂戴いたしました。土くれのフーケ』と書くことで有名な盗賊だ。貴族をバカにしているとしか思えないので逆に今回はそれを利用させてもらった。

「惚けるな!お前が書いたんだろうが!!」

まあそう思うのは無理ないよね…フーケの手段とは違うし、僕くらいしかそんなことは出来ない…

「それで?」

「あ?!」

「それでアルフレッドになんのデメリットがあるの?」

僕はそう尋ねた…

「…確かにねえわな。」

普通ならアルフレッドが疑われてもおかしくないけど僕は学院長の家に脅迫状…もとい手紙を書いて送った。その内容はもしもアルフレッドについている護衛のタバサ(つまり僕)に敵対することがあればガリア北花壇警護騎士団に敵対するということを警告してやった。あながち間違いでもないんだけどね。

「それよりも学院はもう一人でいける?」

「…まあな。もうあの教師もいなくなったし、他の生徒たちもそれに同乗しなくなったし…いい気分だ。」

「なら良かった。」

そう言って僕はユーロの領主のシークレットに一人で行かせたことを報告してプチ・トロワへと向かった。

 

~プチ・トロワ~

「7号…ご苦労。」

団長がそう言って僕を褒める…褒めていないように見えるけど実際には目が褒めているからそう解釈した。

「次の任務についてはまた手紙で報告するから休んでおきな!」

団長はそう言ってパンの耳を食べる…なんでパンの耳?

「私がパンの耳食っちゃいけないのかい?」

団長は僕の心を読んだかのようにそう言った…

「心読まないでよ…」

僕は思わずそう言ってしまった…

「この世に理不尽は結構あるのさ。」

そう言って団長…いやイザベラお姉ちゃんはまたパンの耳を食べた…かわいいな。

「…ほら、とっととこんなところにいないで休みな!」

イザベラお姉ちゃんの食べる姿見たかったけれどこれ以上いると嫌われそうだし、行こう…

 

~おまけ~

牢獄にて…二人の変態ことシャルルとオルレアン公腐人がとうとう暴れ出した。

「ウホッいい男。」

そう言っては牢獄にいる男達を狩るシャルル。

「はあはあ…これはこれで…!」

そして息を荒くしながらもその現場を見て何かを書いているオルレアン公腐人。

牢獄はまさに地獄だった。ちなみに牢獄にいる女性陣は既に変態達の犠牲となってしまった。合掌…

「はーっはっはっ!今日もお前達の企みもおしまいだ。」

そして現れたのは全身青色タイツの青髭、青髪、青づくしの男だった。

「そ、その声は兄さん!?」

シャルルは男達を捨てて喜ぶが…

「いや、俺の名前はムノー戦隊のムノーブルーだ!」

などと抜かすジョゼフだった…とうとうストレスに耐えられずにジョゼフははっちゃっけてしまったのだ。常識人だった頃は何処へやら…

 

するとジョゼフ…いやムノーブルーは杖を構えた。

「待ってよ!この牢獄にいる人たちがどうなってもいいの!?」

当然シャルルは爆発を受けたくないのでそう説得するが女装姿だと全く意味がないぞ。

「正義の為なら多少の犠牲も止むを得ん!それにこいつらは元々悪いことをしたからここに入っているから問題なしだ!」

などと抜かすムノーブルーだった…もはや常識人の欠片もない。

「という訳でブルーボンバー!」

そしてシャルルとオルレアン公腐人共々数十名を懲らしめた。

「正義は勝つ!」

そしてムノーブルーは高笑いをして帰っていった。どっちが悪党だかわからない瞬間だった。

 

なおその話は本となり、劇場化されハルケギニア中で大ヒットし、自称ムノー戦隊のムノーピンクやムノーイエロー、ムノーブラックと名乗る者が出没したり、ガリア王国が潤ったのは余談である



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8話

~図書館~

僕はせっかくの休みなので本を読もうと考えた。しかし周りにある本は読み尽くしてしまったので新しい本を探す為に図書館へと向かっていた。

「…」

すると面白い本を見つけた。タイトルは『始祖と愉快なお友達』…その内容が非常に気になったので僕はレビテーションでそれを取ろうとした…

 

レビテーションのせいで周りにあった本は巻き添えになり、僕の元へ落ちた…

「ふぁっ!?」

僕はそれに対応出来ずに本に頭をぶつけるという失態をしてしまい、気絶した…ダサすぎる。

 

「起きたかい?」

すると長身のイケメンが目に映った…モゲロ。

「…誰?」

僕がそう聞くとイケメンはこう答えた。

「私の名前はフォルサテ…ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリの弟子さ。君の名前は?」

その名前って…始祖ブリミル!?イヤイヤ…そんな訳ない。仮に本当だとしてもこれは夢だ。深く追求しないことにしよう…

「タバサ…一応男。もう一度言うけど男。」

大切なことだから二回言っておいた。

「それじゃタバサ君、ちょっと事情聴取させて貰うよ。」

まあ普通に考えたらそうだよね…僕のいた図書館とは別の構造をしているし、おそらく僕が別の部屋に運ばれたと考えるのがベスト。

 

「ん…」

僕がそう答えると隣から女性の声が聞こえてきた…

「この変態、変態、変態!!」

誰かを罵倒しているのがよくわかる…

「ああっ…サーシャ、そこはっ!はうっ…」

なんかものすごく息の荒い声が聞こえた…この台詞だけだと変態確定だ。

「この馬鹿蛮人!私になんてことすんのよ!」

…聞かなかったことにしよう。サーシャって女の人が誰かを罵倒していたことは忘れよう。

「デルフリンガーはやめて!?ひぐーっ!」

チン!

などという音が聞こえたのも気のせいだ。

 

「はぁ…またですか。タバサ君、少し待って下さいね、」

そう言うとフォルサテは隣の部屋に行ってサーシャ達を止めに言った。

 

それまでの間、自分の所持品を確認しておこう。杖は…ある。財布もある…後は…

「お待たせいたしました。こちらが私の師匠のブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリことブリミル師匠です。」

そう言ってフォルサテが現れ、髪こと金髪だけど僕同様に女の子みたいな男を紹介した…内股にしてさらに女の子らしくなっているのはあれだろうね…うん。

「初めましてタバサ…フォルサテから聞いているとは思うけどブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリだ。気軽にブリミルって呼んで…よろしく…」

呼べるか!そんな恐れ多いことをしたらロマリアのパラディンが黙っていないから!それに無理しないで!!顔が青くなっているから!

「…よろしく。ブリミル。」

とはいえもうヤケだ!この場にパラディンがいたら馴れ馴れしく呼ぶな!って叫ぶだろうね…

「そしてこちらの女性がサーシャさんです。」

…ってエルフ!?エルフはブリミルの敵じゃないの!!?

「よろしくね、タバサちゃん。」

わざとか?もう今の僕ならエルフだろうがなんだろうがそんな常識覆せる予感がしてきた。

「サーシャさん、タバサ君は男ですって…」

そう言ってフォルサテがフォローしてくるがサーシャの言葉は予想外のものだった。

「それよりもタバサちゃん、ドレスとかに興味ある!?」

エルフってのはこんな変態だけなの?

「サーシャ、浮気する気!?」

ブリミルがそう言ってサーシャに問いかけるが…

「何か?」

と低めの声で言って長槍を構え、左手のルーンを輝かせた。…もしかしてサーシャがガンダールヴ?

「デルフリンガーをそんなことに使っていいのかい!?だいたいそんなことをしたらデルフリンガーも嫌がるはずだろ!?」

しかしブリミルはそれに怯えずなんとか答えた。…これが始祖ブリミルなんて思うにはかなりみっともなさすぎた。だって口ではああ言っているけど喜んでいるんだよ?さっきのことと言い幻滅して当然でしょ…

 

「いーや、どうせなら去勢しちまおうぜ!相棒!」

するとその長槍から男らしい声が聞こえた…しかも下品。

「そこまではやらないけど、この蛮人にはお仕置きが必要だからね…」

サーシャは槍の柄の方でブリミルの急所を思い切り突いた…

「っ!!」

ブリミルは流石に耐え切れず泡吹いて気絶してしまった…僕も思わず下半身がキュッ!ってなったよ…

「…あらあらどうしたの?」

サーシャさん…今のその台詞めちゃくちゃ怖いから…フォルサテを呼んで止めようとしたら既にいなくなっていた。

「さあヌギヌギしましょうね~…」

それから僕が着せ替え人形になったのは言うまでもない…

 

僕が着せ替え人形となりしばらくすると…

「うう…サーシャ酷いよ…」

そう言ってブリミルが復活した…かなりタフだね。ちなみに金的は女性が子供を150人同時に産むくらいの痛みだから婦人の方々には理解出来ない…当然サーシャも然り…

 

「もう一回!」

と言ってサーシャはキン…いやブリミルのボールを蹴った。ブリミルは余りにも痛そうだったので僕は耳を閉じて目も閉じた。

「さあ続き続き!」

今度はブリミルが目覚めても平気なようにサーシャは笑顔でブリミルを縄で縛った…これは酷すぎる。

 

「これがいいわね。うん!」

サーシャはそう言って僕をメイド服に着せ替えて僕の頭を撫でる…

「…う~んあれね。タバサちゃん。ちょっとお姉ちゃんって呼んでみて。お願い!」

サーシャさん…それは脅しでしょう?

「サーシャお姉ちゃん…」

僕がそう言うとサーシャさんは飛びついた。

「可愛い過ぎる!一生いたい!!」

フォルサテェェェ!!助けてええぇぇ!!!このままだと色々とマズイから!

「ゲフッ!!」

僕の願いが通じたのかサーシャの顔に本が飛んできた。

「サーシャさん…少しは自重しましょう。」

フォルサテ遅いよ!!

「てめえ!よくも相棒を!」

長槍がそう言うけどフォルサテはガン無視して長槍を取った。

「さあデルフ…あなたは溶かされたいですか?それとも折られたいですか?」

フォルサテは液体が入っているビーカーを取り出して手元にあった金をそこに入れた。すると金が溶けていった…

「わかった、わかったから俺っちをその液体に近づけないでーっ!!」

やはり武器は武器だった。所詮キレているフォルサテに敵うはずがなかったのだ。

「よろしい…さてタバサ君、君の着替えだ。着替えたまえ。」

そう言って取り出したのはごくごく普通の男の子用の着替えだった…

「ありがとう…」

 

そして着替え終わると僕の事情聴取が再び始まった…違うことといえばこの場で二人が寝ていることくらいだ。サーシャの方はフォルサテが緊縛していた。何故緊縛かと聞いたらフォルサテ曰く「このくらいきつく縛らないと縄が千切れて逆襲にあう。」らしい…サーシャさん一体どんだけ力があるんですか?

「ふうむ…つまりタバサ君は本棚の本が崩れてそれに巻き込まれて気絶したら…気がついたらここに居たという訳だな。」

「そう。」

僕は簡潔に答えた。

「それじゃ帰る手立てを探しましょうか。」

「ありがとう…」

「いいんですよ…この二人に付き合わせられるくらいならタバサ君の手伝いをした方が良いですし。」

それって師匠に言っていい言葉?よっぽど信頼されていないんだね…ブリミル…

「さ、デルフも少しは手伝いなさい。」

そう言ってフォルサテはデルフこと長槍を持った。

「けっ!なんで俺が…」

デルフは抗うけど少し空気読んだほうが良いよ…

「デルフ?」

フォルサテのドスの効いた声が部屋中に響く…

「…手伝えばいいんだろ!!」

デルフは諦めてフォルサテに従った…

 

「さて、見つけましたが…これを実行するには私では無理ですね。我が師匠である変態ドM野郎…いえ失礼ブリミルにやって貰いましょう。」

主従逆転しているけど突っ込んだら負けな気がした…

「起きてください…我が師匠ブリミル。」

フォルサテはブリミルを起こした。

「ん~?」

ブリミルは寝ぼけ、内股でもなんとか立ち上がった…

「師匠…タバサ君を元の世界に戻したいのですが私では実力が不足しています…どうかお願いします!」

そう言ってフォルサテは頭を下げた。

「お願いします。」

僕もそれに従って頭を下げた。

「いいよ…タバサがいなくなった方が好都合だし。」

そう言ってブリミルはサーシャを見て顔を赤くする…やっぱり変態ドM野郎だ。

 

「ブツブツ…」

ブリミルはクソ長い呪文を唱えた…これだけなら始祖だって信じられるんだけどな…

「ちょっと!?何しているの!?」

サーシャが目覚めて力をめちゃくちゃ入れている…あれで解けるの?

「さあこのゲートを潜れば君の世界に帰れる!早く行けっ!」

フォルサテがそう言って僕にゲートを潜らせるように促す…

「ありがとう、ブリミル、フォルサテ!」

僕はそう言ってゲートを潜り、元の場所へと戻っていった。

 

「ここは…?」

周りの景色を見ると元いた図書館に戻っており、ブリミルやフォルサテ、そしてサーシャやデルフもいなくなっていた。

「…もう夕方?」

しかし決定的に違ったのは朝日から夕日に変わっていたことだ。

「また明日読もう…」

僕はそう言って図書館から退出した…

 

しかし僕は気がつかなかった。『始祖と愉快なお友達』のイラストに僕に酷似していた絵があったことを…

 

~おまけ~

ムノーブルーことジョゼフは気分的な意味でブルーになっていた。

「…やはりあれはない。」

先日ジョゼフがムノーブルーとして暴れたことは余りにも有名である。しかし、あの時ジョゼフは気が狂ってやってしまったので所謂黒歴史となってしまった…

「あれから家来に青タイツの贈り物が頻繁に届くのは聞きたくもない…」

ジョゼフは家来達に生暖かい目で見られてしまい、マジで悩んでいた。

「あんな格好だからダメなのか?」

しかし変な所にジョゼフは執着してしまった…

「やはり青タイツではダメだな!」

そしてジョゼフは新しいムノーブルーの服を考え…現代の戦隊物のヒーローが着るような服が浮かんだ。

「ふははははは!これだ!これぞ、ムノーブルーの服だ!!」

そう言ってジョゼフは服のデザインを書き上げ、特注で頼んだ。

 

数日後…ジョゼフは子供に大人気となりムノーブルーの服と同じ服を注文する人々が大勢おり、生産が間に合わなくなったのは完全に余談である。



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9話

お気に入り件数こそ高評価の割に少ないほうですが、何故かスラスラとネタが思いつく…そんな自分が来ていると思ってしまった作者です。


~グラン・トロワ~

ブリミル達と別れてから少したったある日晴れた日…伯父様に呼ばれた。

「シャルロット…トリステイン魔法学院に行け。」

いきなり伯父様からそう告げられた。

「何故ですか?」

取り敢えず理由を聞くことにした…そうでなければ訳がわからない…このガリアにも魔法学院はある。

「トリステインの王女…アンリエッタと交換留学をすることになった。ところがイザベラは公務などもあって不可能…そこでお前しか頼れる相手はいなかった。」

まあ確かにイザベラお姉ちゃんはガリアからいなくなったら大変だけど…アンリエッタ王女はもっと大変じゃないの?

「それを言ったらアンリエッタには兄弟姉妹がいないから尚更ダメじゃないのですか?」

僕は疑問に思ったことを口にして伯父様に聞いた。

「アンリエッタは政務に関わることはない…言って見ればお飾りの姫様だ。実際に関わっているのはマザリーニ宰相だけだ。」

トリステイン…こんなので大丈夫なのかな?僕も内政を他の人に任せているけど北花壇騎士団の仕事があるからだけど…少しは関わった方が良いんじゃないの?

「それにアンリエッタはこのガリアの技術を真似ようと考えているのだろう…」

出たよ…伝統にうるさいトリステインお得意の『良いところは吸収する』…簡単に言えばパクリ。

「まあどうせ見たところで真似することは出来るはずもあるまい…いっそのことあの変態達を見せてアンリエッタも変態にさせてやるか。」

…恐ろしすぎる。そんなことをすればアンリエッタの権威は間違いなく落ちる。

「それはジョークだが…お前の留学は決まっている。一週間後にオルレアン領に馬車が迎えに来る…それまでに支度はしておけ。」

目がかなり本気だったな…相当ストレス溜まっていたんだな。

「了解しました。」

僕は今日中にトリステイン魔法学院へと行く準備をした。

 

~オルレアン領~

「お嬢様!どうかお元気で…!」

性懲りもなくペルスランは僕のことをお嬢様と呼んでいる…

「だから女の子扱いは止めてってば!」

僕はそう怒るけど、ペルスランはまるで小さな少女を見るような目で仕方ないなと言わんばかりに

「失礼いたしました…ではシャルロット様、向こうでもお元気で。」

と言った…屈辱。

「ペルスラン、今度会う時にはお嬢様呼びは止めてね。」

僕は冷静に対処した…うん、これで良いよね。

「はい…善処します。」

ペルスランは笑顔でそう言った。

「善処って何!?」

僕がそう言うとペルスランはその場にはいなかった。

「はぁっ!!」

ペルスランは後ろに回りこんで僕の首を叩いた…また眠気が…

 

~トリステイン魔法学院~

 

「タバサ様、そろそろですよ。」

あれからしばらく経って僕は起きた。

「ん…?」

おそらくペルスランが僕を馬車に乗せたのだろう…僕は馬車に乗っていた。

「おはようございます。タバサ様。」

そう言うのは何処かで見たことのあるガリア兵士だった…

「おはよう…」

僕はそれだけ返して起き上がった…

「さ、着きましたよ。」

兵士がそう言って馬車を止めた。そこを出るとトリステイン魔法学院の敷地内に入っていた。

「では失礼します。お荷物の方はすでに運んでありますのでご心配なく。」

仕事早いな…まあ何はともあれ僕の学院生活の始まりだ。アルフレッドの時は監視だったから本を読むことが出来ないからつまらなかったけど今回は違う…たっぷりと時間はある上に図書室も自由に使える。まさに僕にとっては快適な生活の始まりだ。

 

ドンッ!

「…っ!」

僕は思わず倒れそうになるが杖を使ってバランスをとった。

「おっと…ごめんなさいね。」

ぶつかって来たのはスタイル抜群の赤髪の褐色肌の女生徒だ…しかも背が高い…羨ましい。

「気にしないで。」

僕はそう声をかけた。

「ん?貴方なんで男子生徒の制服を着ているの?」

その生徒は僕のことを女の子扱いした…そんなに女の子らしいかな?とはいえ努力はしたんだよ?ただ体を鍛えても筋肉はつかなかったし、髪の毛を切ってみたけどこの顔のせいで意味がないし…僕の悩みの種である女の子扱いされるのはどうにかならないだろうか?

「僕は男。一応男…大事なことなので二回言った。」

「ふ~ん…私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。ゲルマニアからやってきた留学生よ…そっちは?」

…どうしよう…本名だと絶対に女の子扱いされる。タバサと名乗った方が良いかもしれない。笑われるけど…

「…タバサ。」

僕がそう言うと案の定キュルケは…

「あっはっはっ!そんな犬や猫につける名前があんたの名前!?」

…まあ女の子扱いされるよりかマシか。それから僕は続けて言った…

「ガリアから来た。」

僕はそう言ってもキュルケは大笑いで気付かず…キュルケは放っておいてもう行こう…

「あっはーっはっはっ!!」

…ちょっと下品だよね。デルフ程じゃないけど。

 

そして入学式が始まった…

「よいさ!」

学院長こと、かつてハルケギニアに名前を轟かせたオールド・オスマンがそう言って二階から身を乗り出し、杖を出してフライを唱え…

「グエッ!!」

…なれなかった。これに会場は大爆笑…呆れた。

その後オスマン氏は毎年恒例と思われる挨拶を終え、生徒達は解散となった。

 

僕はその時間を図書室で過ごすことにした…うん、いい本が入っているね。

僕はしばらく、図書室の本を読みまくった。

「…おや?君は確か…」

するとメガネをかけて、知的なイメージがありそうだがハゲのせいでそれらを台無しにしている残念な教師が現れた…

「タバサ。ここで本を読んでいる。」

僕はそう名前を告げた。

「いや〜感心感心…最近の貴族はそういう学習意欲がないのですが君のような生徒がいて嬉しい…おっと!これは失礼。私の名前はジャン・コルベール。もしわからないことがあるなら私に聞きなさい。ミスタ。」

…初めて男の子だと認められた。

「わかりました。」

僕はそう言って本の世界に再び入った…うん。いいね。

「ではまたお会いしましょう。」

そう言ってコルベールは図書室にある本を持って立ち去っていった。…まあ、ああ言っているからには研究者なのだろう。少しまとも?な人が増えて良かった。

 

~おまけ~

キュルケはスタイル抜群で顔もかなり良い方だ。その為、男にモテると言う意味では不自由はしない。だが一人だけ気になった生徒がいた。

「(ん~…あの青髪のちびっ子、どこいったのかしら。)」

何を隠そうタバサのことである。タバサは自分の身体を見てもうんともすんとも言わなかった…そんなことは初めてだった。少なくとも上級生や同級生は自分に告白してくるし、告白していないのはタバサと接していない男子生徒の一部だけだった。

「(本当に男なの…?)」

キュルケはそう疑問に思ってしまう。社交界でも婚約者がいない男性はキュルケに迫って来たし、唯一キュルケが迫っても顔を赤くもしなかったタバサを男として認めなかった。

「これはちょっと調べる必要があるわね…」

キュルケはすぐさま行動に移し、とある場所へと向かった。その際にルイズに出くわし、ギャーギャーわめいていたがガン無視した。



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10話

~トリステイン魔法学院~

「決闘だ!!」

どうしてこうなった…

 

それは数十分前のことだった…

お風呂の時間だったので僕は腰にタオルを巻いて入った…するとそこには

「どうだ!この僕、ヴィリエ・ロレーヌの息子はお前たちの息子ごときが敵うはずがないだろう!!」

…下半身のとある器官の大きさを比べていた。…流石に下品すぎる。

周りはなんか「ロレーヌの息子、すげぇ~…」「デカすぎる…」だの皆が絶望していた。

そんな景色をみてしまい、頭痛くなった僕は立ち去ろうとしたが…

「待て!」

するとヴィリエ・ロレーヌが僕に声をかけた。

「お前、まさか風呂にタオルを持ち込む…それも腰に巻くという外道極まりないことをやるんじゃないよな?」

なんか変だよ!?それ!?

「お前も学院の男子生徒なんだ…女っぽいけど…」

取り巻きがそう言って僕の顔を叩く…

「もしかして…ペチャパイ女か?」

取り巻きその2がそう言うと全員が笑った。

「はははっ!そいつはいいや!おうお前ら、こいつのタオル取ったれや!」

取り巻きその3が生徒全員にそう言って僕を捕まえて、僕のタオルを取ろうとする…

「やめて!」

僕はそう言ってタオルを抑えるけど彼らにとっては僕の息子の方が気になるわけで…

「はははっ!お前が男か女か証明するいい機会じゃないか!せーの!」

そう言って取り巻き達が僕のタオルを取ろうとするけど暗部の中では力がない方とはいえ仮にも暗部である以上は僕の方が力はある…その為生徒如きの力じゃ離れない。

「ならくすぐれ!」

生徒達のうち数人は僕の脇をくすぐるけど無駄…前に拷問に耐える訓練とイザベラお姉ちゃんに言われて少しでも笑ったらハシバミ草を目の前で食べられるという罰ゲームとお尻に蹴りを入れられるという罰ゲームがあった…しかも一回笑うたびに。おかげで表情筋は固まったままになって笑うこともなくなった…言ってて悲しい…

「…なら後ろからだ!」

後ろから殺気を感じず僕は後ろからタオルを外された…

 

「「「…」」」

取り巻き達とヴィリエは絶句した。僕って身長は男女混合でも一番小さい癖にアレはでかいんだよね…だから見せたくなかったのに…

「…タオルは返して貰う。」

もう僕はこんな頭痛のするところに入りたくないからとっとと出て行くことにした。

 

そして数十分後…

「貴様!よくも僕に恥をかかせたな!」

さっきの男子生徒ことヴィリエがそう怒って僕につっかかる…ウザい…

「先につっかかってきたのはそっち…僕は何もしていない。むしろ被害者。」

「やたらとその根暗な雰囲気がウザいんだよ!その癖息子はでかいし…決めた!」

そしてヴィリエは驚くべき言葉を発した。

「決闘だ!」

そして冒頭に戻る…

 

そんなことを言われても僕の答えは決まっている…

「断る。」

だってね…こんな馬鹿げた理由で決闘するくらいなら普通に本を読んだ方が楽しい。

「はっ…どうやら息子の方はデカくとも誇りは息子よりも小さいってことか。」

バカバカしい…そんな挑発に乗るほど僕は単純ではない。

「どうせお前の親達も大したことないんだろう?」

あの変態達は性格はあれだけど魔法はかなり使える…

「どうしたチビ助?僕が怖いのかい?」

こいつは今なんて言った?…チビ助…チビ助だって…!?僕のコンプレックスを刺激するなんて…決めた。徹底的に〆る。

「…」

僕は無言で立ち上がって杖を持った。

「ははっ…やっとやる気になったな。」

ヴィリエはそう言って杖を構える…

 

「エアハンマー!」

風メイジか…となれば相手を僕だと仮想して戦ってみよう…

「エアハンマー!」

僕はカウンターの要領でヴィリエを叩きつけた…

「グフッ!?」

ヴィリエは対応出来ずに壁まで吹き飛ばされ、壁にぶつかると血を吐いた。

「ウインディ・アイシクル!」

今回は氷の矢ではなく丸い弾にしておいた…決闘は所詮決闘。命のやりとりまではしない…

「うぎゃーっ!!」

あ…ミスった。ヴィリエの股間に勢いついた弾が当たって、ヴィリエはすぐさま杖を離して股間に手を添えた…合掌。

「…僕の勝ち。」

僕は勝者宣言をして一応医務室の先生にヴィリエが股間を事故で打ったことを連絡しておいた。…大丈夫だよね?後で謝っておこう。

 

「へえ~結構えげつないわね。」

すると入学式前にからかってきた彼女キュルケが目の前に現れた。

「あれは事故。」

僕だってそんなことをしたくてした訳じゃない…ヴィリエにやってしまった罪悪感がまだ残っているから僕は本を読んで罪悪感をなくそうとするけど…

「人の話の最中は本は読まないのがマナーってものよ?」

そう言ってキュルケに僕の読んでいた本を没取された…

「…」

僕はそれに頷いた。早く本を読みたいからだ。

「そう…それじゃ私にちょっと付き合って?」

キュルケはそう言ってウインクをして僕の手を握った。

「わかった。」

僕は本を取り返す為に頷くしか選択肢はなかった。

 

キュルケは僕の部屋に堂々と入り込み、図々しくベッドに座った。

「ねえタバサ…もしよかったら私と舞踏会で踊らない?」

…?何故キュルケはそんなことを聞いてくる?相手がいない…なんてことはない。むしろ誘われるくらいには人気があると思う。

「舞踏会には興味ない。」

舞踏会にでても僕は暗部である以上は途中退席しなきゃいけないし、僕が踊ると男女逆転させられて惨めになるから興味はないと答えた。

「そう…それよりも僕なんて一人称やめて一人称を私に変えた方が良いんじゃない?」

それ変えると僕は完全に女の子みたいになるから絶対にやらない。

「やだ。」

僕は簡潔に答えるとキュルケは本気じゃなかったみたいで頷いた。

「まあ、人それぞれ個性ってものがあるしそれは強要しないわ。だけど一人称を私に変えてくれたらもっと付き合っても良いのよ…?」

キュルケはそう言って膝を曲げて徐々にスカートの中身をあらわにする…

「面倒。」

僕は確かに男の子だけど読書家である方が強いのでキュルケと付き合うよりも本を返して貰う方が重要だ。

「…貴方本当に殿方?私の誘惑に敵わなかった殿方なんていなかったわよ?」

キュルケはそう言って僕を顔を見つめる

「僕にとっては本は恋人。それに浮気をすることは許されない。」

僕はそれから本を読んで無視した。

「本は恋人…ね。私も少しは読んでみようかしら?」

キュルケはそう言って退室した。

 

それからしばらくして学院行事の一つである舞踏会が開催された…

しかし驚いたことに僕の着る服がなくなっていた。

「…何故ドレス?」

実家…というかガリアから届けられたのはフリルを大量につけたドレスで決して男の子である僕が着るような服ではない。そして付いてきた手紙にはこう書かれていた。

 

『私の愛しいシャルロットへ。舞踏会があると聞いてプレゼントを用意しました。私が幼い頃に着ていたドレスをあげますのでぜひ着てくださいね。貴方の母より♡』

 

あの親かぁぁぁっ!?牢獄にいるのにどうやってここに届けた?!…ん?もう一つ手紙があるけど嫌な予感しかない…

 

『僕の愛するシャルロットへ。本来であれば僕も出席したかったけど牢屋に入れられている以上、参加することは出来ないのでシャルロットのドレス姿を思い浮かべてオ(R18によりこの言葉は削除されました。)をして待っています。恋人シャルルより。』

 

色々と突っ込みどころがありすぎて突っ込めない…今日の舞踏会は休もう。

 

〜おまけ〜

 

ジョゼフが壊れた理由はシャルルやオルレアン公腐人だけではない。元素兄弟だ。

元素兄弟はかなり優秀な傭兵であるが個性が強すぎる…

 

元素兄弟の紅一点、ジャネット。彼女の容姿は人形のように可愛らしく、タバサとは違いれっきとした女性なのだが…女性が好きという…所謂同性愛である。そのため暗殺などで女性がターゲットになったら真っ先に飛び込む…

 

次に紹介するのはドゥドゥー…ドMである。自らに硬化をかけて戦闘を楽しみつつもその一方で傷つけられることを想像するとゾクゾクするらしい…

 

元素兄弟の中では常識人のジャック。三人に比べたら比較的マシな方だが自分の筋肉を見て楽しむナルシストである…性癖は普通なだけに残念な男である。

 

そしてダミアン…彼は見た目10歳ほどしか見えないショタだが実際にはその容姿を生かしてショタ好きの女を狩りまくるという外道である。ちなみに元素兄弟の中ではリーダーらしい…

 

当然彼らを雇っているジョゼフは彼らの被害報告にため息を吐く…

「今度はジャネットか…」

今回はどうやらジャネットが被害を与えたようでジョゼフは猫の手も借りたい思いだった。

「…あの手があったか。」

ジョゼフは杖を持つといきなりサモン・サーヴァント…つまり使い魔召喚の儀式を始めた。

「我が名はジョゼフ・ド・ガリア…我を救いし使い魔を召喚せよ!」

そして出てきたのは…見慣れない服を着た黒髪の女性だった。

「(おおおおっ!?早速悩みを解決しそうな使い魔が降臨したぞ!!)」

ジョゼフはテンパる…ジャネットの女性好きを治すには女性しかないと思っていたからだ。

「あ、あのここは…?」

その女性はジョゼフに召喚されたことを理解出来ずにパニックになっていた…

その隙をジョゼフが逃がすはずがない。ここで逃がしたら自分だけが苦労することになるからだ。ジョゼフといえどもやはり人だった…そしてジョゼフはコントラクト・サーヴァントを唱えて女性にキスをして契約を交わした…

「えっ!?ちょっ…!?痛ぁ!?頭痛いっ!!」

当然シェフィールド(ジョゼフが勝手に名前をつけた。)は頭を抑え、額に文字が刻まれた…勝手に呼び出され、勝手に契約され、ジョゼフの変態達の始末に巻き込まれたシェフィールドに合掌…



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11話

久しぶりの投稿の上に短くてすみません…


~トリステイン魔法学院~

舞踏会から1日が経ち、学院長に呼ばれた。

「あ~…ミスタ・タバサ。君を呼び出したのは他でもない…男子浴場の出入りを禁止を言い渡したかったんじゃよ。」

イミフなことを言ってくる学院長にイラっときたが堪えた。

「何故?」

「実は先日ミスタ・ロレーヌを始め男子生徒達が、ミスタ・タバサのあれ以外を見れば腰を低くしてしまう…があれを見れば生徒達がしょぼくれる…こんなことをしていたら間違いなく不能になりかねないから訴えて来たんじゃよ。中には寄付金を大量に押し付けてくる貴族の子息もおったからワシは断ることもできなかった…その代わり時間外では浴場の出入りを許可する。」

無茶苦茶だ。女子風呂に入れとか言われないだけまだマシかも…これで女子風呂に入れとか言われたらあの変態達と同列に扱われる…嫌すぎる。

「わかりました。」

そう言って僕は退出した…憂鬱だ。

 

そして僕は部屋に戻ると…

「はぁい?元気?タバサ。」

ベッドにキュルケが座っていた…なんで?

「タバサ…あんた私の服切り裂いたって本当?」

キュルケがそう言って僕に尋ねてきた…

「…?何のこと?」

僕はその日仮病を使って舞踏会に参加せずに本を読んでいた…だから僕がキュルケの服を切り裂くなんてことは無理だ。

「もう…そんなに見たいなら言えばいいのに…」

そう言ってキュルケは顔を少し赤くして服を乱し始めた…

「みっともない。」

僕はそう言ってキュルケを止める…こうでもしなきゃダメだと思う。

「結構ウブなのね…ふふふっ!」

そう言ってキュルケは僕をベッドに引きずりこんで僕を下敷きにして胸を顔で埋めさせた。

「むーっ!むーっ!」

かなり息苦しいので僕は必死に足掻くけどキュルケは僕をうまく押さえて逃がさない…

「もう…そんなに胸が好きなのね?」

それから僕はあまりの刺激に気絶してしまい僕の記憶は一切ない…

 

「…ん?」

なんか暑苦しくなったので僕は目覚めた…

「あれ?」

ちょっと後ろから抱きつかれているような感じがしたので後ろを見ると…そこにはキュルケがいた。

「…!?」

久しぶりに表情筋が動くほど驚いた…多分こんなに動いたのは変態達が変態だとわかった時以来だろう。僕を抱き枕にして眠っているのはキュルケが初めてだし…

「うう~ん…」

キュルケがそう唸って目を開けた。

「おはよう。タバサ。」

清々しいまでの笑顔で僕に挨拶をした…

 

ゴンッ!

僕はキュルケを挨拶代わりに杖で殴った。

「~っ!!ちょっとタバサ痛いじゃない!」

キュルケが文句を言ってきたけど僕にも文句を言う権利はある。

「不法侵入。」

まずキュルケが何回もやっていることはこれだ…

「それはタバサの事情を聞くため…」

事情を聞くにしても大人しければそう言わない…

「逆レ○プ。」

記憶は曖昧だけど逆レ○プされた記憶はある…

「あれはタバサが可愛かったからつい…」

ついで済まされるほど世の中は甘くない。

「童貞キラー。」

だから僕はキュルケに新しい二つ名を送った。

「ちょっとタバサ!私の二つ名は微熱よ!」

「童貞キラーのキュルケ。」

僕は調子に乗って童貞キラーを強調した。それが間違いだった…

「あら…そう。その口を開かなくするほど体力を使わせてあげるわ!」

キュルケの前髪がもう片方の目も隠して、キュルケは僕に襲いかかってきた。

「謝るから!それだけは…んんんっ!?」

そして僕の意識は翌日まで回復しなかった…

 

〜おまけ〜

数日前のこと…ヴィリエ・ロレーヌことヴィリエはタバサに金玉打たれて保健室で寝ていた。

「あの男女…殺す!」

ヴィリエはそう決意して立ち上がろうとしたが…

「いだだだだっ!?」

ガタンっ!

かなり腫れ上がった金玉を足で挟んでしまい保健室のベッドに逆戻りしてしまった。

「これで去勢とかになるハメなったら始祖ブリミルやアンリエッタ王女が許しても僕は許さない…!!覚えてろ!」

ヴィリエはその後、キュルケに嫉妬した女子達とグルとなり、舞踏会でキュルケの服を切り裂き、タバサがやったと入れ知恵を入れた。そして後はキュルケとタバサが決闘をすればヴィリエの復讐は終わる。その予定だった。そして…ヴィリエはキュルケの後をこっそりとつけてタバサの部屋を覗いた

「(あああぁぁっ!?キュルケとタバサが…)」

そうタバサとキュルケのR18行為のことである。ヴィリエはキュルケに惚れていた。それ故にタバサに復讐するどころか自分の恋したキュルケにタバサを童貞卒業させてしまったことに脱力してしまい…砂となった。タバサも嫌がっていたからヴィリエの復讐は半分成功したと言えるだろう。

 

~おまけ2~

その頃臭道院…間違えた、修道院にて…シャルロットことタバサの妹のジョゼットは身体の年齢が若返るという薬を手に入れた。

「竜のお兄様の子供時代を調教すれば…ふふふっ!」

ジョゼットはジュリオのドM化計画を企んでおり、その為ならどんなことをしてでもやり遂げる必要があった…例えそれが違法の薬でも…

「竜のお兄様…ゆっくり飲んでくださいね…」

トクトクトク…

そう言ってジョゼットはベッドに縛られているジュリオの口に薬を入れた…何故縛られているかはジョゼットが涙目になって交渉したおかげだ。

ボンッ!

薬を飲ませるとジュリオは若返り、下手したらジョゼットよりも幼い姿になっていた。

「大成功!」

ジョゼットは笑顔でジュリオを顔をみた。

「いい顔ね…殴りたくなっちゃう…」

そしてジョゼットはジュリオを殴った。

「げふっ!?」

ジュリオはいきなり攻撃されたことに驚き周りを見渡す。

「おはよう、竜のお兄…いいえ私の奴隷ちゃん♡」

それからジョゼットはジュリオを調教した…内容はジュリオが逆らえばジョゼットが殴り、ジュリオが従えばジョゼットはジュリオの股を優しくさするというものだった。ジュリオがわんわん泣く声が修道院中に響いたのは完全に余談だ。



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12話

文字数が少なくなってきて悩んでいる作者です…
コラボしたくともどうコラボしていいのかわからない作者です…
たくさんネタは思いついても途中でつっかかる作者です……

そんな作者の愚痴でした…ではどうぞ。


「ん…」

…ああそうか。あれからキュルケに襲われたんだ。

「タバサ、可愛いよ。タバサ。」

キュルケは寝言でそう言って僕に抱きついてきた。

 

ガンッ!

「痛っ!?」

結構邪魔だったので僕はキュルケを杖で叩き起こした。

「今日は授業がある。」

僕はそう告げるとベッドから離れ、制服に着替え始めた…羞恥心?そんなものはキュルケの前じゃ今更だ。

「そう…まあ仕方ないわね。それじゃタバサ、授業が終わったらまた会いましょう。」

キュルケはそう言って部屋から出て行った…あんなにヤッタのによく平気で立てるね…

 

そして僕は着替え終わり、授業へと向かった。すると仁王立ちしていたピンク色の髪をした少女が立っていた…ちなみにこの少女は女子の中では一番小柄だが僕よりも身長は高い。…なんで僕よりも身長が高いの?

「あんたがキュルケの恋人?」

ふんすっ!

そう鼻息を立てて威張り散らして僕に尋ねた…

「…恋人ではない。」

キュルケはあくまで僕を襲った加害者であり僕は被害者だ。それ以上の関係はない…

「嘘を言いなさい…色ボケツェルプストーから聞いたわ。あんたの部屋に寝泊まりしたんですって?」

確かに泊まったけど…キュルケは僕のことを完全に子供扱いしているもんな…

「貴方には関係ない。」

そのことを思い出すと不機嫌になったので僕はそう言って本を開いて立ち去ろうとしたが…

「ちょっと待ちなさい!」

と言って僕の目の前に立ち塞がった。

「…何?」

そう言ってピンク(もう彼女の名前はこれでいい)に不機嫌な声を出すがまるでピンクは気づかない。

「あんたね…人が話しっ!」

このピンクは何を言っているのだろうか…?僕は思わず杖で叩いてしまった。

「じゃあ…」

そう言って僕はピンクが頭を抱えている間に教室へと入っていった…なんで僕と関わる人間って濃いんだろ…?

 

そんなこんなで僕は授業を真面目に受けて教室を出た。

「ゲルマニアン!私の恋人返してよ!」

教室から出るといきなり修羅場に遭遇した。一人はキュルケでもう一人は…知らないや。

「あんたの恋人なんて知らないわ。むしろあんたの恋人って誰って聞きたいくらいだわ…」

キュルケが反論してどうでも良さそうにため息を吐く。

「その態度は何よ!?」

ヒステリックに女子生徒が発狂し、キュルケにつっかかる…こういう女は嫌いな方だ。あのピンクもそうだけど…

「だってね…私にはもう恋人がいるし、その恋人以外は興味ないわ。」

そう言って僕に目を合わせた…これが原因か!キュルケのせいでピンクにもつっかかれたんだから後でキュルケにお仕置きしよう…

「人から奪うだけ奪って捨てる…?ふざけないで!!私がどれだけ彼のこと好きだったかわかるの?!」

気持ちはわからないでもない。人かや自分の大切なものを奪われたらいい気分ではない。理想の父親が変態になったりしたように…だけど僕には関係ないしお暇させて貰おう…

「努力不足ね。本当に彼のことが好きなら彼を振り向かせてみなさいよ!根性なし!」

キュルケは珍しく怒ってそう言った…本当に好きなら彼を振り向かせてみなさい…か。いい言葉だね。まだ少し残ってみようかな。

「そんなこと出来る訳ないじゃない!」

女子生徒はそう言って叫ぶがもうキュルケの罠に嵌っていた。

「なら彼のことはそれほど好きじゃなかったってことになるわ。本当に好きなら私の入る余地がない程ラブラブになっているわ。」

キュルケはそう言って切り捨てた…

「ううう…!わーんっ!!」

あ…泣いて逃げた。そう思っているとキュルケが僕に近づいて僕の身長に合わせてかがんだ。

「タバサ、そういう事だからプロポーズするわ…好きよタバサ。」

…どうしてだろう。僕が断ったらなんか悪者扱いされそうだ。

「ん…」

僕は承諾せざるを得なかった…だってキュルケのキューピッドの矢が僕のハートを貫通したんだから仕方ないよ。

「ありがとう。タバサ。んっ…」

そう言ってキュルケは僕にキスをした…キュルケのキスってこんなにも甘かったんだ…

 

~おまけ~

タバサとキュルケが恋人となった。翌日、タバサとキュルケは常に一緒におり、たまにキュルケが一人で歩いている時はタバサが学院内にいない時だけだ。しかしそれを不満に思う生徒もいた。

 

「これで全員集まったようだな…」

某所にて…覆面や仮面を被った生徒達が集まっていた。

「ええ…会議を始めましょ。」

そう言って女子生徒が促す。

「まあ待て。その前にこの資料を見て頂きたい…」

そして議長らしき生徒が出したのは…とある資料だった。

「なっ…議長、これをどこで手に入れたんですか!?」

そう言って一人の男子生徒が立ち上がる。

「まあ待ちたまえ。これから説明するところだ…」

そして議長は鼻血をダラダラと垂らし始めた。

「おっといかん。私とあろうものがっ!?」

そう言って鼻血を止めようとしたが資料を見てしまい再び鼻血をだしてしまった。

「議長ぉ~っ!!しっかりしてくだせえ!」

そして男子生徒が駆け寄る…資料にはこう書かれていた…

 

【タバサたんを愛する会、極秘資料タバサたんエロイラスト集】と…

 

「やっぱり男の娘いいわ…私も倒れそう…」

バタッ!

そう言って貧血で女子生徒が倒れ、保健室送りとなった。

「それにしてもあのゲルマニアンめ…我々のタバサたんを奪うとは何事だ!」

この男子生徒は顔も悪くはなく女に興味はあるのだが残念なことにタバサを見て一目惚れしてしまい、彼女なる者はいない。むしろタバサの告白の邪魔になる女子生徒のことをうっとしいく思っている。無論キュルケも例外ではない…

「おのれ〜っ!!」

ギリギリと歯を食いしばり、その資料を眺めて心を落ち着かせる…

「ふう…やっぱりタバサたんを見ると落ち着く…」

 

この場にタバサが居たならこう呟いただろう…

「どうしてこうなった?」

と…



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13話

昨日の夜に完成したのですが…何故かコピーできずに今日投稿する羽目になりました…


キュルケと交際してからしばらくして僕は手紙を読んでいた。

「…っ!?」

その内容は…イザベラお姉ちゃんがぶっ倒れたから至急戻ってこいのことだ。…イザベラお姉ちゃんは大切な人だしどんな状態なのか気になるし僕はガリアへ帰国することにした。

 

僕はキュルケのところに行って事情を説明した。

「あらそう…でも浮気しないでよ?私はタバサのことが好きなんだから…」

キュルケは優しくギュ…と抱きしめてくれた。

「ん…」

キュルケの体温が僕を包み込んでくれて心地よくなったところでキュルケが離してくれた。

「さ、行ってらっしゃい。私は男作らずに待っているわ…」

キュルケは笑顔で僕を見つめた。優しいな…キュルケは。

「ありがとう…」

僕はそう言ってキュルケのおでこにキスをして帰国した。

 

~グラン・トロワ~

「よく来たな…7号。」

伯父様がそう言って迎えてくれた。

「いえ。伯父様や団長の為なら…なんでもありません。」

変態を少しでも改善しようと動いてる伯父様にイザベラお姉ちゃんはありがたい存在だ。もし二人がいなければ僕は今頃変態に汚染されていただろう…

「さて、イザベラの様子だが…過労による疲れだ。俺は何とか耐え切ったがイザベラが倒れるのも無理もあるまい。朝から晩まであの変態達のせいで始末書に追われる毎日だ。倒れるなというのが無理だ。しかしイザベラの代行者がお前しか見つからない…というわけでやってくれるな?」

イザベラお姉ちゃんが過労でぶっ倒れたから僕が代わりに団長をやれってことか。なんとも面倒くさい…

「わかりました。やります。」

イザベラお姉ちゃんがどれだけ大変か知りたいし、少しでも役に立たないと…

「それじゃフェイスチェンジを唱えてイザベラに化けろ。そうしたらプチ・トロワに向かって堂々と座って苦情が出たら対応しろ…書類の方は俺がなんとかする。」

「御意。」

僕はイザベラお姉ちゃんが着ているドレス、背を誤魔化す為の靴などあらゆる物を使ってイザベラお姉ちゃんに変装し…僕の団長代行任務は始まった…

 

~プチ・トロワ~

「団長!過労から立ち直られたのですか!?」

そう言って北花壇警護騎士団の1人が僕に話しかけてきた。

「問題ないよっ!全く…ほらやるべきことやって散れ!」

僕はそう言ってイザベラお姉ちゃんの団長としての姿を演じた…

これでいいのかな?イザベラお姉ちゃんってこんな感じで威張っているし大丈夫でしょ。

「は、はいっ!」

ふう~…一応上手く行ったみたいで良かった。

「ところで団長…座高が縮んっ!?」

僕が最も気にしているところを突かれたので僕は思い切り腹を殴っておいた。

「なんか言ったかい?」

僕は威圧をだしてその場にいた兵士たちやメイド達を黙らせた。

「いいえ!なんでもありません!」

そう言って全員が答えたのでイザベラお姉ちゃんが団長やっている時の空気の重さに似てきたので僕は内心笑った。

 

その後、色々あったが僕の名演技が功を奏して誤魔化せたが…一番の問題が目の前に現れた。

「シャルロット~!!会いたかったよ!!!」

そう言って現れたのは変態こと僕の父であるシャルル・オルレアンだ。何故ここにいるのかはどうでもいい。やるべきことはひとつ…刑務所に脱獄した変態を戻すことだ。

「叔父上…とうとうボケましたか。」

僕は全力でぶん殴った。すると…

「残念!それは偏在だ!」

などとほざきやがって変態は僕の背後をとってドヤ顔していた。

「スンスン…!やっぱりシャルロットの匂いだ!ちょっとイザベラとは違う匂いも入っているけど…間違いない!」

変態は背後から僕に抱きつき、匂いを嗅いだ。

「ちょっ…やめっ!!」

僕は必死で抵抗するが変態は離れなかった。

 

「はっはっはー。脱獄者シャルル・オルレアン。貴様の企みもそこまでだー。」

いきなり登場したのは目元をハイカラな青のメガネで隠し、貴族が着るような服装ではなくこれもハイカラな服装の男だった。

 

「カッコイイ…」

僕はそのセンスの良さに惹かれてそう呟いていた。

「どこまでも邪魔をするんだね…兄さん。」

えっ!?あれが伯父様?!…いやいやどこに伯父様の要素があるの?伯父様はもっと老けた感じがするし(とは言え30代前後に見える)、彼は20代後半に見えるくらい若々しい感じがする。

「違うぞシャルル。俺の名前はムノーブルーだ。何度言えばわかる。決して貴様の兄などではないっ!」

ほら、ムノーブルーだってそう言っているじゃん。

「ムノーブルー!そんなことやってないで助けなさい!」

とは言え僕の状況は変態に触られていることに変わりない…僕はムノーブルーに助けを求めた。

「待ってろイザベラ姫!今行くぞ!」

ムノーブルーは一瞬で僕のところに詰め寄り、僕をつかんで変態の手から離れた。

「やるじゃない。後で表彰しておくよ…」

僕の本音は「ありがとう!サインして!」だが今の僕はイザベラお姉ちゃんなのでそうしか言えなかった。もしも僕が女の子だったら目をハートにして告白しているだろう…

「いや気持ちだけで充分だ。それよりもやるべきことがあるから下がってな。」

気取らないところがカッコイイな…

「わかったよ。」

僕はそう言って下がった。

 

「くたばれ!ムノーボンバー!!」

ムノーブルーが手を前に出してそう唱えると変態が爆発した。

「グフッ…!」

そして変態はボロボロになり気絶してムノーブルーは高笑いした。

「正義は勝つ!」

そう言ってムノーブルーは変態を運んで去っていった…後で伯父様に聞いてみよう…

 

~グラン・トロワ~

そして仕事が終わり…グラン・トロワに伯父様に今日のことを報告した。

「ムノーブルーって一体何者なんですか?」

僕は伯父様にムノーブルーが何者か尋ねた。

「ムノーブルーはそうだな…ガリア、いやハルケギニアの平和を守るためにいる人物だろうな。ガリアにとっては必要な人物だ…どこにいるのかわからんがお前が無事だっただけでもムノーブルーに感謝しよう…」

平和を守るためか…カッコイイな。

「ムノーブルーのように僕も頑張ります。」

「そうだな。俺も見習うべきところがあるしムノーブルーのように頑張るか!」

僕達2人はムノーブルーを尊敬するようになった…

 

~おまけ~

今回ジョゼフが用いた服装は東方…所謂シェフィールドの故郷よりもさらに東にある極東の服装をモチーフにしたものだった。

「まだまだジョゼフ様の魅力を引き出せたわけじゃないわ…」

もちろんそれはシェフィールドの知識を用いて製作したのだがまだまだ改良の余地はあった。

「ムノーブルーがハルケギニア中…いやエルフの砂漠や東方においても響き渡るようにしないといけないわ!」

シェフィールドは再び思考し始めた…彼女の場合はジョゼフの壊れたところを見て悪影響を受けてしまった被害者である。

 

~おまけ2~

その頃…トリステイン魔法学院では…

「あのキュルケのボーイフレンド…生意気…!!」

ダンっ!

ルイズは机を叩き、苛立ちを少しでも減らそうとするがタバサをことを思い出してしまいどうしようもなかった…

「なら…タバサとかいったっけ?そいつのあれ…チョッキンしちゃうしかないわね。」

ルイズがここまでキュルケの恋人のことを気にするのは珍しい…その原因はタバサがルイズを攻撃したことにある。

 

「そんなことはこのタバサたんを愛する会一同が許さん!」

前回鼻血で倒れた議長がそう言うとルイズの周りにいた生徒たちが覆面及び仮面を被った。

「な、何よ!?あんた達!?」

ルイズはそれに怯えてしまい、足が震えた…

「我々はタバサたんを愛する紳士及び婦人だ。故に貴様の発言は許されんことだ。やれ!」

議長がそう言うと生徒たちはルイズを取り押さえた。ここにいる生徒たちはタバサに対して欲情はするがルイズに対して欲情もしない…そのためルイズを抑えることはなんでもなかった。

「ちょっと放しなさいよっ!」

ルイズは抵抗するが多人数の力には敵わなかった…

「さあ…覚悟しやがれ!」

そして処刑が始まった。

「あははははっ!やめて~っ!!」

その処刑は10分間くすぐりの刑だった。ルイズの整った顔はヨダレや涙でベトベトになり汚くなりルイズは気絶した。

「よし!撤収!」

そう言って議長が解散させるといつもの学院に戻った…汚染しすぎであるこの学院。




えー…この小説のR18版を要望する読者の皆様に答えるか答えないべきか迷っています。
そこで活動報告にて詳しくアンケートを取りたいと思いますのでくれぐれも感想に書いたりしないで活動報告にてお答えください。


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14話

新年明けましておめでとうございます!これからもこの作品をよろしくお願いします!


僕はトリステインに戻り、キュルケを探した…

「誰を探しているの?」

するとキュルケが後ろから話しかけてきた。

「…」

僕は無言でキュルケを指差した。

「もうタバサったら可愛い~っ!」

そう言ってキュルケは僕に抱きついた…

「!!?」

いくら童貞を卒業したとはいえ恥ずかしいものは恥ずかしい…僕は顔を赤くした。

「ん…?ねえ、タバサ。ちょっと女の匂いがするわよ?」

何でだぁぁっ!?そりゃイザベラお姉ちゃんを看病したけど…制服にはついていないはずだよ!?

「タバサ…まさか浮気したんじゃないでしょうね?」

キュルケの声が怖い…僕は正直に言うことにした。

「それは姉の看病をしていたから…」

僕にとってのお姉ちゃん…イザベラお姉ちゃんの看病をしていた。何故かメイド服に着替えさせられて部屋に行かされてとっても恥ずかしかった…イザベラお姉ちゃんは顔を真っ赤にしながら僕に同情してくれた。

僕にメイド服を渡した馬鹿女はその後処分され変態のいる牢獄にいる。その姿をみて同情する程だったけど変態が治るならそれでいいやと思って懇願も無視した。

「姉?タバサに姉なんていたの?」

キュルケは僕に姉がいたことを疑問に思ったのかそう尋ねた。

「うん…といっても血筋からすれば従姉妹だけど僕にとっては姉だよ。」

僕はこれを言った瞬間後悔した…キュルケの雰囲気が変わった。

「浮気確定ね。」

キュルケはそう言うと僕の腕を掴んで、首にキスをした。

「どうして?」

僕はそれしか聞けなかった…イザベラお姉ちゃんとは姉弟みたいな中だし大丈夫でしょ?

「従姉妹ってのは結婚出来るからこうでもしないとね~…」

「でも!」

「タバサ、男らしくないよ。そこは認めないと。」

「あの人とは姉弟みたいな間柄だもん!」

僕のそのセリフで空気が凍った…

 

「フォォォーッ!!」

すると僕の近くにいたデ…ふとましい男子生徒が覆面を被った…変態だ。

「タバサたん、もう一度お願いいたします!」

その変態は一瞬で僕に近づき、アンコールを求めた。

「何を…?」

僕はそいつに呆気に取られ、反射的にそう尋ねた。

「もちろん!『あの人とは姉弟みたいな間柄だもん!』の部分です!」

僕は無言でデブを蹴った。

「ああっ!ありがとうございます!」

こいつ変態過ぎ…

「貴様ぁ~っ!タバサたんに蹴られるとは何事だ!?」

僕がドン引きしていると男子生徒がそういって仮面をかぶって現れた。

「私だって蹴られたことないのよ!」

今度は女子生徒が仮面をかぶって現れ、現れた男子生徒と共に変態を縛り上げた。なにこの集団…

「やめろ!何をする!」

覆面の男子生徒は豚の丸焼き状態になりもがいて縄を解こうとするけど…

「貴様にはたっぷりと聞きたいことがある。さあ行くぞ!」

男子生徒と女子生徒は豚を連れて立ち去って行った。

その際に「酔う!酔う…オェェェッ!」「汚ねえ!」「ヒャッハーッ、汚物は消毒だ!」などの声が聞こえた気がするが関係ない。

 

「…ところでキュルケ…なんで僕の腕を縛っているの?」

それよりも気になるのはキュルケがさりげなく僕の腕を縛っていたということだ。

「もちろん…私の部屋に行くからに決まっているじゃない。」

「そんなことしたら僕も変態の仲間入りだよ!解いて!」

このまま歩いたら絶対ドン引きされるから!

「あら、SMカップルは私達の代名詞で既に知られているわよ?」

もう嫌だ…こんな世界…だからと言ってブリミルがいる時代にはもっと行きたくない…

「…うう~っ、僕は変態じゃないのに…」

僕はそう言って渋々とキュルケの部屋に歩いて行った。その後たっぷりとイザベラお姉ちゃんのことに聞かれ、白い何かを搾られた…

 

~翌日~

「ここは…?」

見慣れた天井に見慣れたベッド…そして見慣れたドレス…ドレス?

「…~っ!!」

どうして!?なんで!?なんであの変態達が送ったドレスを僕が来ているの!?とにかく着替えないと…

僕は慌てて制服を探した。

 

ガチャッ…

「あら、タバサおはよう…」

…終わった。僕の常識人の学園生活…

 

「…タバサそのドレスよく似合っているわよ。」

そういってキュルケは笑いながら部屋に入るとドアをロックした。

「キュルケ…何するつもり…?」

僕は顔を引きつらせながらそう聞いた…そのくらいキュルケが怖かった…

「もちろん、タバサの着せ替えショーよ!」

その後僕は抵抗出来ずにキュルケの着せ替え人形となってしまいましたとさ。

めでたくないめでたくない。

 

~おまけ~

キュルケはタバサ不在の時にタバサの部屋を荒らしていた…というのも…

「タバサって読書好きだから春画(エロ本)とかあってもおかしくないのよね~…」

そう…タバサのエロ本探しだ。タバサがどんな女性を好みとしているのかキュルケは知りたかった…

「ん?何よこれ…?」

キュルケが見つけたのは箱だった。キュルケはその箱の中身が気になりそれを開けると目を開いた。

「タバサって女装趣味だったのね…」

そう…シャルルとオルレアン公腐人の送ったドレスが入っていた。タバサはそれを見てすぐさま処分用の箱に入れていたが…キュルケはその処分用の箱を開けてしまった。

「これは大切な資料だから私の部屋に持って行った方がいいわね。」

そう言ってキュルケは資料と言って箱ごと持ち運び、自分の部屋へと向かって行った。



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15話

今更ですが原作と大幅に違うところがあります!注意してください!


そして遂に二年生の進級試験…使い魔召喚の儀式が始まった。…変態ご先祖様ことブリミルはSMカップルという意味で相性の良いサーシャが召喚されたみたいだけど…そんなことはないよね…?あれは僕の夢ってことにしたい。伯父様やイザベラお姉ちゃんのような常識人のフォルサテが全力を尽くしてドMのご先祖様から偉大なご先祖様に書き換えたとかありそうだから…それはそれで凄いけど。

「さて、それでは皆さん。名前を呼ばれたら前に出て使い魔を召喚してくださいね。」

火の魔法教師ことコルベールがそう言うと名前が次々と呼ばれて行った。

 

「ねえ、タバサ…どんな使い魔が召喚したいの?」

同じクラスになった恋人のキュルケがそう言って僕に話しかけてきた。

「もちろん…まともで強くて有能な使い魔。」

そうでもないと僕の身が持たない。

「それではミスタ・タバサ。召喚をお願いします。」

おっと…僕の番がきたようだ。

「行ってくる。」

僕はそう言って前に出てスペルを唱え始めた。

「我が名はタバサ。まともかつ、有能で強い使い魔を召喚せよ!」

僕は通常とは違う方法で使い魔を呼び出した。すると出てきたのは…フォルサテかそれ以上のイケメンだった…モゲロ!

「私を呼んだのは君か?」

うわっ、声までイケメン…マジでモゲロ!!

「そう…」

絶対に関わりたくない…その思いが伝わったのか彼は眉をハの字にした。

「ミスタ・コルベール。やり直しを申請する。」

僕はそう言って彼を指さし、抗議した。

「ミスタ・タバサ…いくら彼がイケメンで気にくわないとは言えそれは出来ない。個人的には許したいくらいですが我慢してください。」

ミスタ・コルベールの手を見ていると確かに今すぐにでも魔法を唱える準備をしていた…

「それに召喚した生き物が死なない限りサモン・サーヴァントは出来ない。さっさとやってください。」

ぐっ…でもこいつにキスするってことはキュルケを裏切るってことになる…見た目は確かに美人同士のキスでいいんだけど…僕からしてみれば同性とキスするってことになるからどうしても嫌悪感がする。

どうするか迷った僕はキュルケとアイコンタクトを交わしたが…「ヤらなきゃ殺る!」と目で言っていたので僕は唇を軽く交わし、契約を終えた。

「これが使い魔のルーン…」

そう言って彼はルーンが刻まれた右手を見た…

「ほほう…なるほどありがとうございます。では次、ミス・ツェルプストー!」

コルベールがいつの間にか来ており、彼の右手のルーンをスケッチした…どっから湧いてきたんだ?

「は~い!」

そう言ってキュルケは草を炎で燃やし、最後は炎上して消した…ド派手すぎだし、魔力のことを考えなよ…

「それじゃ行きます…」

 

その後キュルケは魔力を消費した所為もあって火竜ではなくサラマンダーを召喚した。…キュルケの実力なら火竜を召喚してもおかしくないくらいなのに…勿体無い。

 

ルイズ?ゼロのルイズならちょっと変わった服を着た平民を呼び出した。

「あんた誰?」

ルイズはその平民に尋ねた。

「俺は平賀あ…いや平賀才人。そっちの呼び方だとサイト・ヒラガになるのかな?」

そう言って平民はニコリと笑ってルイズを赤面させた。…今のはこいつ以上にイケメンだったからむかつく!殴って良し!

 

などと思っているとルイズは僕と同じやりとりをして契約を交わした…そっちは異性同士で羨ましいことだよ…サイトは痛がっていたけど笑顔になった。

「なあ…俺、めちゃ幸せだわ。だからさ…」

サイトは純粋な笑顔でルイズにそう言った。

「だから何よ…」

ルイズはプイと真っ赤になった顔を逸らしてそう聞いた。

「だから殴ってくれないか?本当に夢なら覚めないはずだ。」

それを聞いてルイズはプルプルと震え…爆発した。

「この馬鹿犬ぅ~!!」

ルイズはサイトの望んだ通りに思い切り殴った…GJ!

 

「あらルイズ、彼気絶させてよかったの?」

それを見てキュルケがルイズをからかいに来た…

「うるさいわね!」

キュルケ曰く、ルイズの家はキュルケの家と敵対関係にあり、ルイズはそれを根に持っているとかでルイズはキュルケのことを一方的に嫌っている。

「それじゃ私が運んであげるからあんたは指を咥えて見てなさい。」

キュルケがレビテーションで持ち上げ、召喚したサラマンダーに乗せた。

「あ!こら~っ!!待ちなさい、キュルケ!」

「ゼロのルイズはどうせ魔法使えないんだから大人しくしてなさいって。」

なんだかんだいって親切なキュルケを見て微笑ましい…

 

そして僕も帰ろうとしたその際に彼…僕の使い魔がここに残るように言われたので残ることにした。

「何のよう?」

僕は使い魔にそう聞いた。

「さて…誰もいなくなったところで自己紹介しよう。私はイルルクゥ…こう見えても人間ではない。」

人間ではない…?それじゃ亜人?

「私の種族は韻竜…かつて絶滅したとされている種族だ。」

「!!」

僕はそれを聞いて目を開いた…韻竜といえばお伽話しか出てこない動物だ。

「驚いているようだな…ふふふっ!」

こいつ一回殴っておこう…僕は杖をイルルクゥに振ったが…掴まれた。

「全くデリカシーのないご主人様だ。女である私を殴るなんて…」

へっ!?…こいつ女なの?!

「まあ私は韻竜の間でも男だとよく間違われるが女だ。」

衝撃的な事実を知った僕は固まった…信じたくない!こんな奴が僕よりも男らしいなんて信じたくな~い!!

「まあご主人も性別間違われるだろう?」

僕はそれを聞いて立ち直った。僕のことを男として見られたのは久しぶりだ…

「ご主人様は女だろ?」

 

ドガッドガッドガッ!

 

僕は目にも見えないスピードでイルルクゥを殴った…

「痛い…」

イルルクゥは頭を抑え、涙目になっていた。

「自業自得…僕は男。」

僕はそう言ってイルルクゥを睨んだ。

「すまない…ところで使い魔としての名前をつけてくれないか?」

イルルクゥはそう言って名前をつけるように提案した…確かにイルルクゥなんて名前はあまり思いつかない名前だし、怪しまれるね…

「わかった。」

何がいいかな…イルルクゥの雰囲気といえばイケメンだけど…女性だからあまり男っぽい名前は止めておこう…せめて女の子らしい名前なら…決めた!

「シルフィールド…なんてどう?」

「シルフィールド…風の妖精の名前か…なるほどいい名前だ。」

イルルクゥには絶対似合わないからシルフって略するけど!

 

「それじゃ帰ろうかご主人様。」

そう言ってイルルクゥ…もといシルフは僕をお姫様抱っこした。

「この馬鹿シルフゥ~っ!!」

僕はシルフを思い切り杖で殴った。

「げふっ!?」

シルフは僕を落とした後、さらにタンコブが増え気絶した。

 

~おまけ~

その頃、ルイズ達はというと…

「だからツェルプストーの助けなんかいらないわよ!」

ルイズはキュルケに抗議していた。

「でもその華奢な身体じゃ無理でしょう?彼…持ち上げられるの?」

そう言ってキュルケが指さし、サイトをサラマンダー(以後フレイム)から降ろすように命じた。

「ふんっ!うに~っ!!」

ルイズが顔を真っ赤にしてそう叫んで持ち上げようとするがルイズの華奢な身体では無理だった。

「ほら、おとなしく私に任せなさいって…」

そう言ってキュルケはレビテーションで再び持ち上げた。

「後少しで持ち上げられたのに邪魔しないでよ!」

ルイズはキュルケがレビテーションをするとそう抗議してキュルケの杖を掴んで振り回して止めようとした。

「こら!やめなさいって!」

結果レビテーションの操作がめちゃくちゃになりサイトは寝ながら酔った。

「うぇ…ぷ…」

顔はどんどん青くなり、ルイズが諦めるまでそれは止まらなかった。

そしてその際に二人は気づかなかった…サイトに喉仏がなかったことに…



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16話

使い魔シルフを召喚し…困ったことがあった。

「ベッドが足りない…」

そう…困ったこととはシルフを寝かすためのベッドがない…ということ。これじゃ一緒に寝ることになる…一緒に寝たらキュルケにめちゃくちゃにからかわれるのがわかる。

「ご主人様、私は廊下でも構わないぞ?」

シルフが廊下に出ようとするが…僕は引き止めた。

「そう言う訳にはいかない。」

シルフは韻竜とはいえ見た目は人間だ。廊下で寝かせたら鬼畜扱いされることを予想出来るのは赤子の手を捻るよりも簡単だ。

「それじゃあどうする?」

シルフはそう言って僕に尋ねた…

「シルフはベッドで寝て。」

「ベッドで寝てって…まさか椅子とかで寝るつもりか…」

 

バサバサ…!

 

シルフのセリフを遮るかのように手紙が送られてきたので僕はそれを受け取った。

「これは何?」

シルフはその手紙を覗き込んだ。

「これはガリア本国からの手紙。今すぐガリアのプチ・トロワに迎え…だって。」

最近あまり行きたくないんだよね…あそこ。だってあそこ行くたびに変態がどこからともなく現れるし…キュルケも僕が帰ってきた時、ハードになるし…だからと言って行かなければ常識人である2人の負担が増えるだけだから行かなきゃいけない。

「シルフ…竜の形態になれる?」

「一応なれるけど少し離れた場所でやるよ。」

「ん…わかった。」

僕達はガリアへ向かい、翌朝プチ・トロワへ着いた。

 

~プチ・トロワ~

「そら!」

そう言ってイザベラお姉ちゃんがトーストを僕に向かって回しながら投げた。

「モガッ!」

僕はあえて口でキャッチしてイザベラお姉ちゃんの機嫌をとる…まあ実際は周りにイザベラお姉ちゃんとこういうやりとりをしろって前もって決めているんだよね。これは僕…シャルロット・エレーヌ・オルレアンがガリアの傀儡だと知らせる為でもあるんだよね。

その傀儡を操っているのはイザベラお姉ちゃんの父親である…ジョゼフ伯父様。つまり、シャルル派こと変態派の奴らをまとめてボコすための処置でもある。

「あっはっはっ!いい様だね、7号!フリスビー咥えた犬のようだよ!」

このセリフは僕が考えたものを緩くしたものだ。イザベラお姉ちゃんはあまりにもきつすぎるという理由で妥協してきたのでそうなった。

「…」

僕はトーストを咥えているので喋れない。そのため、黙ったままだ。

「7号…こっちへ来なさい。」

イザベラお姉ちゃんは不機嫌そうに眉を寄せ、手で招いた。その雰囲気は何か悪巧みをする悪女のような雰囲気を出しており、まさしくイメージ通りだった。

イザベラお姉ちゃんの名誉の為に言っておく…顔が悪女の面なのでその様は良く似合っているけどあの変態の100倍は常識人であり、僕の言ったこともある程度はやってくれる優しいお姉ちゃんだ。

「…7号、あんたに任務を渡すわ。」

そう言ってイザベラお姉ちゃんから依頼書を貰い、僕は咥えていたトーストを食べながらそれを見た。

「今回は翼人退治だよ。竜倒して来たあんたには足らないだろうから付け足しておいたよ。感謝しな。」

そう言ってイザベラお姉ちゃんはもう一枚依頼書を僕に渡した。

「さ、これで私の用事は終わりだからとっとと行きな!」

そう言ってイザベラお姉ちゃんは手をシッシッ!とやって僕を追い出した…板についてきたね…その仕草。

 

~上空~

「翼人退治…それがご主人様の任務かい?」

青い鱗を持った韻竜…シルフがそう言って僕の任務を確認した。

「そう。」

「知っているとは思うが翼人といえば私やエルフと同じ精霊魔法を使うから注意が必要だね。」

精霊魔法…?先住魔法じゃなくて?もしかしたら言い方が違うのかもしれない。エルフとは対峙したことがあるけど相手がサーシャだったから無傷で済んだ…もっとも心が無傷と言えばそうではないけど。

「…」

僕は黙って頷き、下を見ると…翼人と村人がドンパチやっているのが見えた。

「行ってくる。」

僕はそう言って飛び降りるとフライの呪文を唱え、地面に着地するとすぐにウインド・ブレイクの魔法を放った。

 

「お、女の子!?」

…村人からそんな声が聞こえたが無視だ。無視しなければ北花壇警護騎士団はやっていけない。そんなこんなで村人を翼人から守った。

「凄え…翼人と互角に戦ってやがる…」

僕はその声に反応した。普通ならその行為は命取りだがあえて反応したの理由は簡単だ。

シルフや翼人のような先住魔法を使えるほど賢い生き物となれば、僕が作った隙を見て、僕の急所を狙うはず…逆に言えば急所しか狙わないということだ。だが急所というのは数カ所に限られている。その一方で急所を狙われた時の対策は数多くある。

つまり今の僕はどんな攻撃が来るかもわかっていて、対策も整っているということだ。そして僕は杖を握り締め…

「みんな止めて!!」

…ようとしたが途中で翼人の女性と思われる声が割って入った。その声を出したところを見ると長髪の翼人女性が悲しそうに訴えていた。

「アイーシャ様!?」

アイーシャとやらが翼人のボスらしく、僕はそちらに杖を向け魔法を放とうとするが…

「お、お願いです!杖を収めて下さい!」

金髪長髪の人間の青年が僕を止めようと懇願してきた。

「…」

僕は魔力を分散させ、杖を収めた。

 

「も、もしかしてあんた…お城の騎士様では…!?」

そう言って頰に×の傷がついた金髪の青年が僕にそう尋ねた。

「ガリア花壇騎士、タバサ。」

僕はそう言って自己紹介すると…

「おお!騎士様だ!」

「騎士様が来て下さったぞ!」

「男の娘キタコレ」

…最後のはともかく、村が歓喜に満ちた。

「こら、ヨシア!騎士様から離れろ!そんなに引っ付いて羨ま…じゃない!魔法の邪魔をするとは何事だ!」

そう言って傷の青年は長髪の青年ヨシアを叩くと、すぐに僕へと振り返り笑顔になった。

「ささ、騎士様…早速ですが翼人共の排除をお願いし…」

クキュルルルルゥゥゥ〜

などと僕のお腹から可愛らしい腹の音が聞こえた。

「空腹…」

まあ仕方ないよね…パン一枚だけだったし…食堂くらいの食事の量じゃないとお腹も満足出来ないようだった。

「こ、これは失礼しました!おい!みんな村中の上手いもん持ってこい!」

「おお!」

そして僕の腹ごしらえの為にしばらくの間待たされることになった。

 

〜おまけ〜

「うへへ…」

などと寝言を言っているのはルイズの使い魔サイトである。

「なんの夢見てんのよ…」

サイトの横にはげっそりとしたルイズがおり、ベッドでねっころがっていた。

…ここで気付いた人もいるだろうが一応解説しよう。…サイトはルイズのベッドで寝ているということだ。「はぁ?どういうこと?」などと思うのは正常だ。…サイトは平賀彩人という男装女子高校生だ。アヤトだと男らしくないので彩の部分を音読みにすることでサイトという男らしい名前になるのだ。

 

「大きくなれ〜!大きくなれ〜!」

そして何度目になるだろうか…寝ぼけたサイトが後ろからルイズの胸を揉み始めた。

「な、なにすんのよ!」

そう言ってルイズはサイトを退けようとするが…

 

むにっ

 

という感触がルイズを襲うのだ。

「なんでこんな男らしい使い魔が私よりも胸が大きいわけ…?!」

ルイズはサイトの嫌味になる胸を見て、何度も何度も押し返すが…

 

むにっむにっ!

 

と胸の感触を感じてしまうのでルイズは諦めようとするが…

「大きくなれ〜!」

とサイトが揉み出すのだ。これでは悪循環である。ルイズはサイトが女だからと言ってベッドの中に入れるべきではなかったと後悔するのだった…



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17話

「村一番の料理人に作らせました!ささ、食べてくだせえ!」

そう言って村長らしき男が僕を促すと僕はフォークとナイフをとり、ステーキを食べ、サラダを食べ、スプーンに持ち替えるとスープを飲み、食事は長々と続いた。

 

ちびっこ達からこんな声が聞こえたが僕は心の中で反論した。

「あんなちんちくりんで大丈夫なのかね~?」

僕よりもちんちくりんのお前には言われなくない…

「…」

「おい、どうした?」

「いや綺麗だな~って。」

綺麗ね…多分形式上だけとは言え僕が公爵だからそのマナーが綺麗に見えたのだろう…父であるオルレアン公が牢獄にいる以上は僕が内政をやらなきゃいけないから現在、形式上は僕がオルレアン公爵となっている。

「ばか、あいつは男だぞ?見てみろ…でなきゃあんなに食わないだろ?」

女の子でも食べるときは食べるけどね…

「こら!滅多なことを言うな!」

心の中で反論していると保護者らしき男がそう叱り、僕の反論は終わりを迎えた。

「このハルケギニアでもっとも恐ろしいのは竜ではない…魔法を使える王族や貴族…つまりメイジなんだぞ!あんな年端のいかない子でも…」

一応これでも15なんだけど子供扱いされるって…成長が遅いのかな?まあいいや。僕は杖を持って退治…

「ま、まだまだお代わりもありますよ!」

…退治は明日にしよう。腹は減っては戦は出来ぬというし。

 

数分後…食器の塔が何個も出来上がり、「まだ食うのかよ…」「でもお腹デッカくならないね~…」と呑気な子供の声が聞こえるが気のせいだ。

「あら?ハシバミ草お好きなんですか?」

そう言って村の女性が僕に尋ねてきたので僕は頷いた…これ美味いんだよね。何故みんなが残すのか気がしれない…

「ハシバミ草って苦くてまずいだけじゃん…」

「やっぱり、あのくらい綺麗になるにはあれも食べなきゃダメなのかな?」

…そこの君達、ひそひそ声で話しているけど聞こえているぞ?後でハシバミ草の美味さについてたっぷり教えてあげるから覚悟しておいたほうがいいよ?

 

ダンダンダン!

 

などとアホなことを考えているとドアを叩く音が聞こえた。

「酷いじゃないかご主人様!」

ドアをぶち破ってやってきたのはシルフだった。

「あ…。」

シルフのことすっかり忘れてた。

「あのう…彼は一体?」

村長がそう言って僕にシルフのことを尋ねてきた。

「彼はシルフィールド。訳ありの僕の従者。」

僕はそう言ってハシバミ草をもしゃもしゃと食べ続けた。

「あーっ!!ご主人様だけずるいぞ!」

そう言ってシルフは下品に僕のハシバミ草を横取りして食べた…

「…っ!?」

シルフの顔は元の姿の鱗のように青くなりそして…

「苦い~っ!ご主人様、何食べているの!?」

悲鳴をあげ、僕の目の前でハシバミ草を吐くという勇者様にもほどがあることをしてくれた。

「シルフ…吐いたから後でお仕置き。」

僕は当然許さない…このお馬鹿が悪いんだから。

「理不尽すぎる~っ!?」

などと悲鳴が再び上がった。

 

ドサっ!

…そんな音が聞こえたのでそちらを見てみると×の傷の男がヨシアを縛って僕の目の前に出してきた…

「騎士様…先ほどは弟が大変失礼を…この愚弟を煮るなり焼くなり好きにしてください。」

そう言ってヨシア兄が首を下げる…

 

煮るなり焼くなりするとなれば…

変態の場合…公開R18行為の恥辱まみれの刑。

ムノーブルーの場合…笑って許す。

 

僕の選択肢は決まり、首を横に振った。

「…騎士様の優しさに感謝しろ!本来ならば殺されても文句は言えない無礼なことだ!」

ヨシア兄がそう言ってヨシアの縄を解くとヨシアは少し暗い顔をした。

「お前まさかまたあの翼人と…おい!!まて!!」

…どうやらこの依頼一筋縄では行かなそうだ。

 

そして夜になり、僕とシルフは一緒に寝ることにした…これはノーカウントだよね?

「ほらおいで…僕のタバッ!?」

悪ふざけをしたシルフを杖で思い切り殴るとシルフは頭を抱えてゴロゴロと痛そうに転がった…タフだね。

「…誰?」

…そんなことを考えているとドアの外から気配を感じたので杖を持った。

「ぼ…僕です…騎士様にお話が…」

その気配の持ち主はヨシアだった。

「明日にして。」

しかし話しを聞く気はない。その理由は簡単だ。僕はもうパジャマに着替えて寝る準備をしている。これから寝ようって時に長話をダラダラと話して聞くのは嫌だ。

「お願いです!どうしても今話したいんです!」

…このままだと籠城するという面倒なパターンだ。話しをとっとと終わらせるしかない…

「入って。」

僕はヨシアを部屋の中に入らせた。

 

「…実は翼人達に危害を加えるのを止めて欲しいんです。」

「それは出来ない。」

僕はあっさりと答えた。

「事情を聞いてください!」

事情を聞くと、ヨシアは翼人は村人の生活費となる木の上に住んでいる…そのため村人は翼人が邪魔になり追い出そうとしている…しかしヨシアは翼人が先に住んでいたから翼人を追い出すのは筋違いと主張した。

「お願いです!どうか…止めてください!」

確かに気持ちはわからないでもない。だけど…それは出来ない。僕は首を横に振った。

「どうして!?騎士様にはお情けはないんですか?!」

「所詮ガリアの駒がギャーギャー騒いだところで無駄だって言っているんだよ…ご主人様は。」

いつの間にか復活したのかシルフが僕の伝えたい言葉に+αしてくれた…

「どういうことですか…?」

「今のご主人様は一介の騎士…つまりいつでも切り捨てられる駒だ。下手に逆らったら首が飛ぶ!…ってことだよ。もしも止めさせたければガリアの王族に文句でも言っとけ。」

…僕もガリア王族の一人なんだけどね?

「ヨシア!」

すると外から翼人…アイーシャが現れたので杖を持った…

「待ってください!彼女は敵じゃない!!」

…なるほど。そういうことか。

 

そして本音が入った事情を聞くと…ヨシアはアイーシャに助けられ、惚れてしまい、互いに両思いだということがわかった。そして2人はその後いちゃいちゃし始めた…こんな感じなのかな?キュルケと僕がいちゃいちゃすると…

「ごめんなさいヨシア。今日はお別れを言いに来たの…」

いちゃいちゃムードから一転、アイーシャがヨシアに別れを告げようとした。

「え…」

「そっちは強力な騎士が派遣されたし、精霊の力を争いには使えない…それならいっそのこと出て行ったほうがいいってなったの。」

「…騎士様!なんとかお城の方に訴えて頂ける訳にはいきませんか!?」

「それは無理。」

そんなことをすれば変態を治す手立ては無くなるし、僕の信頼も無くなる…

「っ…!」

ヨシアは僕に掴み掛かって僕の首を絞めてきた。

「騎士様には心がないのか!?命令でしか動けないならただのガーゴイルと一緒だろ!?」

…こいつは何を言っているんだか。僕はあくまで村の総意でやっているからでしかない。こいつの言うことを聞けばそれこそヨシアのガーゴイルだ。

「ヨシア…何を!」

「この子が死ねば時間は稼げる!」

…王位継承権を持っている僕が死んだら、多分ヨシアどころかガリアにいる翼人、この村…いや領地そのものが滅ぼされかねない。

 

ボウンッ!ドカッ!

 

僕はウインド・ブレイクを放ちヨシアの手から逃れた。

「うっ!」

ヨシアは壁に激突し、呻く…そして僕が一歩近づくと…アイーシャが割りこんだ。

「やめて!彼を殺すなら私からにして!」

アイーシャはヨシアを庇うように抱きつ…閃いた!

「それで行く。」

「…は?」

2人は狐につままれたかのような顔をしていた。

 

〜おまけ〜

「おい、なんか落ちたぞ?色男。」

彩人ことサイトがそう言って金髪の生徒…ギーシュに一枚の紙を渡す…とギーシュは無視した。

「なあ…もしかしてこれ落としたのお前達か?」

サイトは無視されたので隣にいた生徒達に尋ねた。

「いいやそれはギーシュのもんだよな?」

「そんな低レベルの奴を持っているのはギーシュくらいしかいないだろ?」

その言葉がギーシュの無視を止めさせた。

「なんだと!?君達はこれ以上の物を持っているというのかい?!」

そう言ってギーシュはサイトが持っていた紙を奪い取り見せた。

「ギーシュ様…それはなんですか?春画などではありませんよね?」

下級生の女子生徒ケティがそれを見て涙目でギーシュに迫るとギーシュは必死で弁解した。

「ち、違うんだ!ケティ!僕はね、友人に届ける為に持っていただけなんだ!」

ギーシュはそれをしまおうとしたが後ろから何者かに取られ…振り向くと…同級生の女子生徒モンモランシーが鬼のような顔でギーシュを見ていた。

「ギーシュ?ちょっといい?」

そしてモンモランシーは笑い、悪魔のような笑みを浮かべた。

「モンモランシー!それは誤解だ!彼女は」

ギーシュはモンモランシーに弁解しようとしたがモンモランシーのパンチが頭を揺らした。

「この浮気者ぉぉぉっ!」

ガスッ!!

モンモランシーの会心の一撃がギーシュに炸裂!

「ふん!あんたなんかタバサたんに嫌われればいいんだわ!」

そう言ってモンモランシーは立ち去っていった。

「まさかモンモランシーが…タバサたんを愛する会のメンバーだとは思わなかったよ…」

そう言ってギーシュは膝をつくとケティが迫ってきた…

「ところでギーシュ様…もしタバサたんの絵が欲しければ提供しますよ?」

ケティはギーシュに耳打ちするとギーシュはすぐに反応した。

「本当かい!?…あ。」

そしてギーシュは気づいてしまった。ケティの蹴りが目の前に迫ってきていることを…

ゲシッ!

「ウワーン!!」

そしてケティはその場から消えて行った…




今回はおまけというよりか学院の出来事ですね…


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18話

「それで行く。」

「は…?」

「なるほど…つまりだ、ご主人様は人間と翼人が協力し合う必要性を見せようってわけだ。」

「でもどうやって…?」

「方法は簡単。少し待って。」

僕はシルフを連れて外に出た。

 

「シルフ…竜の形態になって。」

「ああ…そういうことか。私が悪い竜になってここの村人を絶望させればいい…ということだな?」

「そう。」

「じゃあイルルクゥの楽しい楽しいを演劇始めますか。クックックック…」

シルフは悪人と言われても違いないほどの笑みで笑い、声も低くした。

 

そして演劇は始まった…

 

通常時とはかなり印象が変わったシルフが村と翼人の住処の間にドスンッ!と音を立て、駆けつけた村人や翼人を見ると舌を出し、獲物を見つけたかのような目つきで村人を見た。

「我が名は韻竜ダークムート…翌朝、我はこの森と村を我の住処にするため破壊する。」

その声はいつものおちゃらけたシルフとは思えないほど凶悪な声だった…

シルフ、ビビらせるとは言えちょっとやりすぎ…

皆が「もうだめだぁ…おしまいだぁ…」とか言い始めて目も死んでいるから!その辺にして上げて!

「翌朝、楽しみにしているぞ!グァハッハッ!」

そう言って高笑いしながらシルフは飛んで行った…

「き、騎士様!あの竜をなんとかして下せえ!」

ヨシア兄がそう言って僕の肩を掴んでガッタガッタと揺らした。

「あれは無理。」

「そんな!お願いです!他の騎士様を呼ぶなりなんなりしますから!」

「それは時間が間に合わない。そんなことをしている間に皆死んでしまう。」

騎士追加派遣には領主の申請とかの手続きが面倒なんだよね…特にこういう田舎は。

「そんな…っ!」

「…でも方法がないわけでもない。」

「本当ですか!?」

ヨシア兄は地獄から一本の蜘蛛の糸を見つけたかのような顔をして僕の手を取った。

「翼人と協力して時間稼ぎをすること。」

「なっ…騎士様の任務は翼人退治でしょう!?私達ならともかく、騎士様はそれでいいんですか!?」

「緊急事態。それに村が滅ぼされては元も子もない。」

「ご配慮ありがとうございます!!」

「問題は翼人との交渉を誰がするかということ…」

僕がそう言うと村人が気まずそうに顔を伏せた。まあ当然だよね…今まで翼人を退治しようとして来たんだからね…

「それなら僕がやるよ!皆待ってて!」

ヨシアがそう言って手を挙げると翼人の森の方…アイーシャがいるところへと向かい、翼人達に協力要請を貰った。

 

~翌日~

 

「ブツブツ…」

僕は適当にブツブツ言ってシルフを待っていた。

「騎士様…本当に大丈夫なんでしょうか?」

そう言ってきたのは顔が青くなっていたヨシア兄だった。

「今回は討伐ではない。時間稼ぎだから大丈夫。」

「そういえば騎士様の従者様は…どちらに?」

「シルフはガリア本国に救援を呼んだ。」

「そこまでしていたのですか…何から何までありがとうございます。」

 

「昨日の竜が来たぞぉーっ!!」

その声から僕は杖を握りしめ、シルフを見つめた。

「あれほど言ったのに逃げないとはいい度胸ではないか…とりあえず挨拶代わりだ。受け取れぃ!」

シルフは風のブレスを吐き、村を襲撃した。

「ウインド・ブレイク!」

僕は割とガチな強さでウインド・ブレイクを放ったが打ち消すことは出来ず、体重の軽い僕は吹っ飛ばされた。てか手加減しろ!僕がトライアングルでなかったら全員ミンチにされてたぞ!

 

「ほう面白い…我のブレスをそこまで打ち消せるとは…む?」

シルフのセリフを遮るかのように先住魔法で操っていると思われる木がシルフを巻きつけた。

「今です!皆さん!」

アイーシャが合図をかけると翼人が先住魔法版ファイヤーボールでシルフを焼き韻竜にしようとするが…

「無駄だぁっ!」

とか言ってシルフがブレスを吐いて炎を消してしまった。嘘…

「どうした?人間共は何もしないのか?何もしないのであれば地上でいたぶってくれるわ!」

そう言ってシルフは地上に着地すると落とし穴に嵌った。

「落とし穴か…だがそれがどうした?」

シルフは背中から先住魔法の嵐が来ることに気づかない…いや気づいていないフリをした。シルフの顔の動作と視覚共有でそれがわかった。

「ヌォォッ!?」

そしてシルフはそれを受け、初めて狼狽えた。

「今だ!皆!」

僕はウインド・ブレイクを放ち、翼人は先住魔法を放ち、村人達は矢を射る…そしてシルフに一斉にそれが襲いかかり、煙が舞った。

 

煙が晴れるとそこに現れたのはほぼ無傷のシルフだった…てかなんでこんなに強いの?

「フフフ…面白い!我をここまで追い詰めたのはお前達で152回目だ!」

シルフは褒め言葉と言っていいのか悪いのかわからないことを言った。無傷なのに追い詰めたって…どういうこと?

「お前達の攻撃に免じてこの場は去ろう…だが100年後にまた来る。さらばだ。」

そう言ってシルフは見えなくなるまで高く上がって行った…

 

「やったぞ~っ!!」

村中、いや森の中からも歓喜の声が上がった。

「ありがとうございます!騎士様!」

そう言ってヨシア兄が僕の手を取って感謝の言葉を出した。

「…僕だけじゃない。僕だけならあの竜を撃退出来なかった。皆が協力したから撃退出来た。」

「いえ、それを言ったら騎士様の力もなければなりませんでした。騎士様がいなければ弟もあの翼人と結婚出来るってもんです。」

「…そう。」

「なんにせよ、ありがとうございました。」

その後、ヨシアとアイーシャは結婚し、僕とシルフは次の任務へと向かった。

 

~おまけ~

ギーシュは顔面に蹴りを喰らいしばらくして…サイトを呼び止めた。

「そこの平民君…ちょっと待ちたまえ。」

「何か?」

「少しは…『Hey〜!Myname is mach○san!』おいっ!話を聞きたまえ!」

ギーシュのセリフの途中でサイトはどこからともなくラジオを取り出し、スイッチを入れて踊り始めた。

「平民君、これは何の真似だい?」

ゲシッ!

ギーシュの顔が赤いメロン熊となりこめかみをピクピクと痙攣させて、ラジオを蹴飛ばして強制的に踊りを止めさせた。

「見りゃわかんだろ?馬鹿なの?アホなの?カバーなの?」

何言っているんだこいつ?みたいな目でギーシュはサイトに見られた。

「それはどういう意味かね?」

それが原因でギーシュの限界が少しずつ迫っていた。

「頭の毛がなくなると説きまして~落ち込んでいる人を助けると説きます~そのこころは…皆さん一緒にせーの!!」

サイトがそう言ってギーシュ以外全員が口を揃えた。

「励(ハゲ)ます!!」

そして学校中にその声が響いた。

 

「いい度胸をしているね…貴族をこんな怒らせて済むのかい?」

ギーシュはまだまだ我慢していた…ギーシュは貴族の中では温厚な方でここで余程酷いことを言わない限り、サイトを見逃そうとしたが…

「貴族ぅ~?俺の国じゃそんなもの50年以上も前に廃止されましたよ~ん!」

そしてその酷さにギーシュは切れた。

「いいだろう…君が何一つ言わないで去ったのなら良かったが、君の貴族を馬鹿にする腐った根性を叩き直してあげよう…決闘だ!」

そして周りは騒然とし始めた…何故ならギーシュがキレるということは余程、ストレスが溜まっていたということである。

「え~?そんなことより、いい女見つけようぜ~…なっ!」

しかしサイトはブレない。サイトはギーシュに歯をキランッ!と見せ、清々しいまでの笑顔でそう答えた。

「ええい!うるさい!とにかくヴェストリの広場にて待つ!」

そう言ってギーシュは立ち去っていった。

「全く自分勝手な奴だ。」

サイト…お前には言われたくない。



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19話

キャラ崩壊注意!


そして…しばらくするともう一つ目の依頼…吸血鬼がいると言われる村、サビエラ村付近に着いた。

「それじゃあそろそろ人間に化けて…と…」

ボンッ!

シルフは人間に化け、いつも通りのむかつくまでのイケメンの顔になった…

「シルフ…何故その顔?」

僕は何故その顔にするのか気になって尋ねてみた。

「ん〜趣味♡」

「…そう。」

僕は呆れてこれだけしか言えず、本を取り出した。

「そう言うご主人様は何読んでいるんだい?」

そう言ってシルフは僕の本の内容を尋ねて来た。

「吸血鬼の生態の報告書。」

「吸血鬼…今回は吸血鬼をやるの?」

「今回はって…翼人退治の時は明らかにやりすぎ。」

「う〜ん…?そうかな?私は少なくとも手加減したつもりなんだけど…」

「僕の魔法を打ち消すどころか打ち負かすのは手加減とは言わない。」

「今度から気をつけま〜す。」

全然反省してない…また何かやらかしそうな気がして僕にも胃薬が必要になりそうだ…イザベラお姉ちゃんの気持ちがよくわかる…

 

「それよりも今回はどうする?吸血鬼をビビらせてみる?」

「人間に紛れ混んでいる以上は無理。」

「チッチッチ…甘い、甘いよ〜ご主人様。韻竜の鼻は犬ほどじゃないけど生き物の中じゃトップクラスにいいって知ってた?」

「知らない。」

「つまり!吸血鬼の養分である血の匂いも嗅ぎ取ることも出来るから誰が吸血鬼なんて一発でわかる!」

そう言ってシルフは胸を張って僕に主張してきた。

「吸血鬼は人間と見分けがつかない…それをわかって言っている?」

「もちろん!」

「だったらなおさらダメ。」

「何故!?」

「あの村の付近はメイジや傭兵が数多くいる。そんなことをすれば…僕達の立場は危うくなる。こっそりとやるのがいい。」

「わかりましたよ…そこまで言うなら仕方ありませんね。」

そう言ってシルフは納得したので僕は着替えを取り出し、着替えた。

「って…何しているのご主人様!?」

「変装。」

「変装って…それ女子用の制服じゃないの…?」

そう…僕は現在進行形であの変態達が僕のサイズに合わせた女子用制服に着替えている。

「僕だって出来ることなら男子の制服がいい…けど欺くにはこれくらいが丁度良い。」

僕はそう言って長い靴下を履いて着替え終えた…

「ご主人様にはプライドなんてものはないの…?」

シルフが珍しく僕にそう尋ねた。

「プライドなら犬に食べさせた。」

「プライドって食べられるものなの…?」

時々天然入るよね…シルフって。

 

「あとこれ持って。」

シルフに軍人メイジの象徴である杖剣を渡した。

「え?これは杖剣…?なんで私がこんなものを?」

「私見習い騎士、貴方騎士…OK?」

僕は声を高くし、女の子のように振る舞った。

「…作戦は?」

…やっぱりダメだったか。

「ぼ…私達はダメな騎士を演じる。今回の吸血鬼はメイジを真っ先に殺ると報告がでている。」

実際、うちの騎士も来て3日で殺られているんだよね…

「油断させておいて一気に仕留める…って作戦でいいの?」

シルフはそれに気づき、僕の意図が伝わったようだ。

「ん。」

僕は頷いて歩いて村へと向かった。

 

「随分と殺風景な村だ…」

シルフの言う通り、吸血鬼の所為なのか随分寂れていた。…オルレアン領?オルレアン領は潤っているからこんな寂れる心配はない。

「おおっ!これはこれは…騎士様、ようこそいらっしゃいました。」

そう言って駆けつけて来たのは1人の老人だった。

「私は村長のアイザックと申します。このようなところへ来て頂きまことに感謝しております。」

その村長の言葉と目はまるで反対の言葉に聞こえた…僕からは「チッ…また来やがったのか…城の連中もご苦労なこった…」と目で言っていた。

 

「はっはっはっ…ナイスな歓迎ありがとう…」

その目線に理解しているのかいないのかわからないがそう言ってシルフは両袖を捲った。

「私はっ!」

シルフが右腕に力を入れると力こぶがムキムキと出来…

「ガリア騎士団のおぉぉぉっ!!」

今度は左腕に力を入れるとメリメリッ!と音がなり力こぶが出来上がった。

「シィィィルゥゥゥフィィィィールゥゥゥドォォォっ!!!」

そしてシルフはドヤ顔でポーズを取った…確かにアホ丸出しだけど村長がポカンとしているよ…

「ははは…素晴らしい筋肉ですね。」

しばらくすると村長が乾いた笑いを出して、成功した…のかな…?

「そして、私の隣にいぃぃるぅぅのはぁぁっ!!」

シルフはまだ暑苦しく演技をしてビシィッ!と僕のことを指差した。

「見習い騎士のぉぉぉっタバヴァァァァサァァァ!!」

もういいや…シルフも頑張って演技しているし、僕も演技しよう…

 

「見習い騎士のタバサですっ!よろしくお願いしますっ!」

あれから頑張って表情筋を柔らかくして笑顔を作れるようにして僕は極上のスマイルを村長にくれてやった。

「…はっ!?すみません。ボケッとしてしまいまして。お名前はタバサ様ですね…」

そう言って村長は僕のことを確認した。

「はいっ!」

僕の演技上のイメージはこうだ…明るくて背伸びしている女の子…というイメージだ。そんな女の子はまず騎士としてはダメ…とまではいかないけど騎士には向いていない。騎士は最低限のコミュニケーション能力があればいい。

「おお…ここではなんですし、私の家に案内しましょう…タバサ様のお荷物をお持ちしましょうか?」

「大丈夫ですっ!」

僕は頰を膨らませてそう言った。

「これは失礼。それでは参りましょう。」

村長が歩くとその隙を見たシルフが僕に近づいてきた。

「ご主人様…気づいているとは思うけど…」

シルフはチラリと窓を見た。

「うん…かなり疑われているね。」

窓の視線は僕達を監視していた。

 

〜おまけ〜

「ちょっとサイト!あんた何やっているのよ!」

ルイズがサイトに掴みかかり、その顔は激怒のあまり真っ赤だ。

「見てわからないのかい?愛しいルイズちゃん。」

 

「ちゃん付けするな!私はあんたのご主人様なのよ!?あんたが傷ついたら私が疑われるわ!」

「安心しな、もう決着はついてある。」

「は?どういうことよ?」

「いずれわかるさ…」

サイトはそう言って手を合わせた。

「やめろ、何をするっ!」

するとギーシュの悲鳴が聞こえ、ルイズは悲鳴の方向へと駆けつけた。そこで見たものとは覆面と仮面を被った生徒達がギーシュを貼り付けていた。

「さて…ギーシュお前はやってはいけないことをしてしまった。」

「タバサたんを愛する会の会員規則第17条、二股をしてはいけない(タバサたんを除く)を破った為、百叩きの刑の執行をする!」

「やめ…ぎゃーっ!!」

 

「なにこれ…?」

ルイズはそれを見て呆れてしまった…それもそのはず、ルイズはジョゼフ同様にハルケギニアの中ではまだ常識人な方でその感覚が理解出来なかった。

「いや〜俺も驚いたんだけどさ、ギーシュはタバサたんを愛する会に所属していて俺はその規則を会員にチクってやったのさ。」

「そんなものあったの…?」

「俺はタバサって奴がどんな奴か知らないけど多いに利用させて貰ったって訳だ。」

「あ、あんたねぇ…」

貴族を利用すると聞いてルイズのこめかみはピクピクと動いていた。

「おっと!それじゃトドメ刺して来るわ!」

そしてサイトはどっから持ち出したのか不明だがメイドインオルレアンの鉄パイプを持ちギーシュに近づいてトドメを刺そうとした…がギーシュは百叩きの刑から逃れ、杖を持った。

「おっと!」

ギーシュはすぐさまワルキューレを作ってサイトの攻撃を免れた。

「いけ!ワルキューレ!」

そしてワルキューレがサイトに襲いかかり決闘が始まった。




ここで補足。
タバサを演技させたのは…まあ、あれです。表面上だけとはいえ可愛らしい姿を見せたいという気持ちで作りました。そのため批判はあるとは思いますがご許しください。
ではまた次回。


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20話

「では…詳しく状況を説明していただけますか?」

シルフがそう言って村長に状況を説明させた…

「最初の犠牲者は12歳の少女、それから2ヶ月で9人…内1人は王宮からいらした騎士様です。騎士様を除いて全員若い女性です。」

…なるほど、もう既に団長の手には回っていたのか。

「忌々しい吸血鬼は夜…何処から忍び込み、血を吸い取ります。」

…夜忍び込める方法は色々あるが吸血鬼はメイジでないためアンロックは使えない。似たような魔法を使ったとしてもその騎士が感づいて退治は終了…となれば侵入方法はかなり限られてくる。この村の家を見る限りでは煙突しか侵入方法はない。そうなると僕よりも小柄な者でなければ煙突には入れない…

「そして血を吸われ干からびた姿を家族が発見するのです。」

「…では一つ、聞きたいことがある…」

シルフがそう言って手を挙げた。

「なんでしょうか?」

「グールというものをご存知かな?」

「もちろんです…村の者も知っております。誰かがグールとして手引きをしていると…村の皆はお互いに疑心暗鬼になっております。」

「しかし、グールは…」

シルフがそう言いかけるとドアが開いた。

 

「おじいちゃん…?」

そこを見ると可愛らしい金髪の少女が村長を見ていた。

「彼女は…?」

シルフは村長に少女のことを尋ねた…

「彼女は私の娘…といっても拾い子です。ささ、エルザ。騎士様にご挨拶なさい。」

「エルザ…です…」

少女…もといエルザは未熟ながらも可愛らしい挨拶をした。

「よろしくねエルザちゃん。私は見習い騎士のタバサ。こっちが騎士のシルフィールド様だよ。」

…何度目になるだろうか?笑顔で喋る度に僕の黒歴史がどんどん増えていく。ちなみに僕の表情筋は固まっていたが顔をマッサージをして笑顔を作れるようにした…所詮一時凌ぎでしかないけど。

 

「…村長さん。グールには吸血鬼に噛まれた跡があります。誰がグールかわからない…調査の前に二人の体を調べさせてください。」

「ワシは構いません…ですがエルザは勘弁してくれませんか?」

…あの目線といい、今の言い方といい、どうにも気になるよね。

「例外は許されない。許したらエルザちゃんがグールだってことになって村長さんが吸血鬼ってことになるからね…」

シルフはそうバッサリと切り捨てた。

…あれ?ひょっとして僕がエルザの体を見るの?女装したのが返って仇になっている?

「…」

シルフと目を合わせると目がヤレ!と言っていたので…相手は幼女だと僕は頭でそう暗示をかけながら仕方なく体を調べた。

 

結果から言うとエルザと村長はグールでなかった。となればもう一つの可能性が高いな。

「タバサ、エルザちゃんと一緒に遊んできなさい。」

「えっ!?」

いきなりそんなことを言われ、僕は本心で動揺してしまった。

「見習い騎士たる者子供の一人や二人と遊んでやれなくてどうするの?」

「でも仕事は!?」

「私に任せて。私が今日中に探してみせる!」

「う~…」

「…私もお姉ちゃんと一緒にいたいの?ダメ?」

トドメにエルザから支援が来てしまい僕は敗北した…

「わかりました。シルフィールド様。でも絶対に吸血鬼を探してくださいよ!?」

「大丈夫!」

シルフは笑顔でそういった…本当に大丈夫なんだろうね?

 

「エルザちゃん、何して遊ぶの?」

僕はそう言ってエルザに何をするか尋ねた…これで良いんだよね?

「これを読んで!」

そう言ってエルザは僕が読みなれている本を渡してきた。

「イーヴァルディの勇者でいいの?」

イーヴァルディの勇者…僕がまだまだ幼い頃、お母様にたくさん聞かせてもらったな…内容をちょっと変えたり、面白くしたりして僕を楽しませた…鼻血のせいで僕の頭は真っ赤になっていた時もあったけどそれでもいい思い出であることには違いない。

「うん!私はパパとママを殺したメイジが嫌いだもん。だからメイジをばったばったと倒すイーヴァルディが好きなの…でもお姉ちゃんのことは違うよ。お姉ちゃんは優しそうな雰囲気があるもの。」

そう言ってエルザはちょこんと僕の膝の上に座った。

「そっか。それじゃ読むよ。」

そう言って本を開こうとするが外で騒ぎが起こった。

「…今のは?」

「マゼンタさんっていう人が吸血鬼って疑われているの…その息子のアレクサンドルさんが必死に弁解しているんだけど皆余所者が怪しいって…」

「…後で読んであげるからちょっと待ってて!止めてくる!」

僕はそう言って騒動の元へと向かった。

 

ナス頭の男とその他大勢が口論しあっていたところを止めたのはシルフだった。

「全く…勝手に解決しようとしちゃ困るんだよ。」

そう言ってシルフは呆れた声を出した。

「な、何おう!?」

そう言ってその他大勢の方の一人が掴みかかった。

「わからないか?愚民共。てめえらは邪魔なんだよ。」

…なんでシルフはこうも過激なんだ?シルフには油断させるという言葉が伝わらないの?

「な、なんでですか!?」

「吸血鬼をなめるな愚民共。仮にもうちの騎士を殺っているんだ。メイジすらも殺すような奴相手にどうするんだ?そこにいる婆さんが吸血鬼だとしたら殺そうとしたところで返り討ちにあうのがオチだ。止めておけ。」

「騎士様…少しよろしいでしょうか?」

するとナス頭のアレクサンドルがシルフに話しかけてきた。

「ん?」

「実はおふくろが騎士様とその従者に会いたいって言ってます。あってくれませんか?」

「…それはどうして?」

「さあ…?理由はわかりませんがとにかく会いたいって。」

シルフは僕の目を見てアイコンタクトを送った。…僕の推測だとエルザか村長が怪しいし、行っても問題はない。そう返すとシルフは軽く頷き口を開いた。

「それでは行きましょう。」

シルフと僕はアレクサンドルの母マゼンタに会いに向かった。

 

「オッセーンだよ!アレクサンドル!」

…なんかハッスルしているお婆さんがアレクサンドルにガラスの玉を投げた。

「イデッ!」

それをアレクサンドルは避ける間も無く顔に当たり倒れた。

「てめえのそのトロトロした性格のせいで疑われるんだよ。このバッ!このバッ!」

そう言ってお婆さんはアレクサンドルを蹴り続けた。

「止めてください!」

僕は流石にそれをスルーする訳にはいかなかったので止めた。

「全く…このバッのせいですまないね。あたしゃ、マゼンタ。そこにいるアレクサンドルの母親だよ。」

本当にアレクサンドルの母親なの…?

「アレクサンドル!お客さんがいるんだ!席外しときな。」

そう言ってマゼンタさんはアレクサンドルを無理矢理追い出し、水晶玉を取り出した。

「あたしは見ての通り占い師だ。」

占い師ならあんな暴力を振るわないと思う…

「占い師ならあんな暴力を振るわないと思う…そう思ったね?騎士様?」

僕と同じ考えをしているとは思わなかったよ…シルフ。

「そんなことを思っていないぞ?」

あれ?シルフがそう思っていないならマゼンタさんは占い師としては優秀ではない…のかな?

「…あんたは騎士様じゃないだろう?騎士様は…眼鏡の方だろ?違うかい?」

「…いつから知っていた?」

僕はマゼンタさんに問い詰めた。

「何、あたしゃねアレクサンドルがグールとなって以来どうにか出来ないかと必死で足掻いたんだよ。そこに映っていたのはあんた…だからあんた達が来た時に気づいたのさ。」

…僕の周りにはどうしてこうも性格も能力も常識外れな人たちがいるんだろう?あの変態といい、シルフといい…馬鹿げているよ。

「アレクサンドルがグール…?」

シルフは流石にアレクサンドルがグールだとは思わず驚いた声を出した。

「そうさ。非力なあたしじゃアレクサンドルも吸血鬼も殺すことすら出来ない。だからあんた達が来るのを待っていた。」

「じゃあ私が韻竜だということも知っているの?」

「当然。そしてこの村の吸血鬼の正体も知っている。」

「じゃあ教えて。」

僕は騎士としてのタバサらしくそう命令した。

「その代わり条件がある。」

条件?

「吸血鬼の正体と引き換えに…その子を助けてやってくれ。」

「…え?」

「…もう騎士様は気づいているのだろう?村長の娘さんが吸血鬼だというのは。あの子の両親は吸血鬼というだけで殺された…そのせいかあの子は人間不信に陥っている。それを救って欲しい…あたしの望みはそれだけのことなんだよ。」

エルザが人間不信…?とても僕の前ではそうは見えなかったけど…

「ご主人、どうするの?」

シルフがそう言って僕の方に向いた。

「決まっているよ。」

僕はエルザをどうするかを決めた。

 

~おまけ~

その頃、シャルルはと言うと…物の見事に脱獄していた。ガリアの牢獄が決して悪い訳ではない。何時でも脱獄出来るシャルルと今回はいないがオルレアン公夫人が異常なのだ。

「もうすぐ…もうすぐシャルロットに会えるんだ。僕のシャルロットレーダがサビエラ村にいると言っている!」

もはや人間の変態どころか人をやめてしまっておりシャルルはシャルロットレーダなるものの感知スキルを身につけてしまった。

「シャルルゥ〜、貴様を逮捕する!」

しかしどこぞの某警部を思い出させたのはムノーブルーことジョゼフだった。ジョゼフ以外にシャルルを牢獄に連れ戻せるのは皆無である。イザベラやシェフィールド、シャルロットですらも捕まえても牢獄まで連れ戻せない。

 

…エアー○ンが倒せないの替え歌でシャルルを牢獄まで連れていけないとかムノーブルーが倒せないとか頭の中で流れていそうな気がするのは気のせいだろう。

 

「げっ…兄さん!」

「何度言えばわかる!俺はお前の兄などではない!」

「いやいや、その青髭とか声とか正しく兄さんそのものだよ!?」

ちなみに今のジョゼフの格好は青のヘルメットに服、そして白のマントと靴…だいぶタイツよりかマシになったがそれでもセンスはない。

「黙れ!ブルーボンバー!」

ブルーボンバー…ジョゼフがムノーブルーとして最初にシャルルに繰り出した技であり範囲こそ小さいが威力は絶大である。

「わっ!?ちょっと兄さん!不意打ちなんて卑怯だよ!?」

しかし流石はシャルルというべきかそれを難なくよけたが…ジョゼフは不意打ち上等!とでも言いたげに次の予備動作を終了していた。

「ムノーボンバー!」

ムノーボンバー…ブルーボンバーに比べ威力、範囲ともに大きくなり屋外ならブルーボンバーよりも使い勝手が良い。

「げふっ!?」

不意打ちが二連続も続けばシャルルといえど無事ではなかったが…

「おのれ…また逃がしたか!」

シャルルは元々天才の二つ名で知られた人物だ。何回もやられていくうちにうまく逃げる方法を思いつく。ジョゼフはここ最近こうしてシャルルに逃げられぱなっしだった。

「絶対にあれを国外に出すわけにはいかん!」

ジョゼフはシェフィールドが開発したシャルル探知機を使い、シャルルを探し始めた。




元ネタ…
「このバッ!」→ワンピース
某警部、シャルル探知機→ルパン三世


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21話

~夜~

それから数時間が過ぎ、夜となり…シルフがマゼンタさんの死体を偽造し、グールとなったアレクサンドルを「シルフ風竜拳!」などとほざいて拳一つで殺している一方、僕はエルザに連れられこの村の特産品、ムラサキヨモギの場所に来ている途中だった。…シルフが拳一つで解決してしまうのは突っ込んではいけない。

 

「お姉ちゃん…その口笛どんな歌なの?」

僕の口笛を聞いてエルザは首を傾げながら聞いてきた。

「魔除けの口笛だよ。これで吸血鬼に襲われるなんてことはないから大丈夫!」

僕は僕本来の言葉で子供を安心させるような言葉を言った。

「ふうん…あ、着いたよ!」

エルザが指を指すとムラサキヨモギとは思えない程桃色の草が生えていた。

「驚いた?ムラサキヨモギはね、生えている時と土から離れてしばらく経つ時の色が違う色になるのよ。好きなだけ摘み取ってね!」

「エルザちゃん、こっちにおいで。」

僕はそう言ってエルザを近寄らせるとムラサキヨモギを使って花の輪を作り、それをエルザの頭の上に乗せた。

「はい、可愛いエルザちゃんにプレゼントだよ。」

僕はエルザを頭を撫でてあげた。

「お姉ちゃん大好き!」

エルザは僕に抱きつき…僕の股間を握った。

「ひゃうっ!?」

僕は思わず声を上げてしまい、みっともない姿を見せてしまった。

「あはっ♡やっぱり…お姉ちゃんはお兄ちゃんだったんだ。」

エルザの顔は紅潮しておりエロさ満点(といっても幼女なので全然興奮しない)の顔で僕のパンツを脱がせ、僕の息子がポロリと出た。

「このおち「チェストー!!」げふっ!?」

顔をピンク色にしたエルザは僕の息子を見て感想を述べようとした瞬間何かに蹴っ飛ばされ、エルザはぶっ飛んだ。シルフにしてはちょっと華奢だし…誰?

「久しぶりだね、シャルロット。」

…12歳の誕生日会の時の服装をしたお父様だった。

「お父様…?」

僕は思わず変態ではなくお父様と呼んでしまった。何故そう呼んだのかは助かったからだろう…

「さて、僕のシャルロットを襲ったからには覚悟は出来ているんだろうね?」

その威圧感は間違いなく本物だった。つい最近までのイザベラお姉ちゃんのような柔い威圧とはまるで違う…まさしく王者の威圧だ。

「うぐっ…ひぐっ…」

その殺気にエルザは完全にビビって涙目になっていた。側から見れば間違いなくお父様が悪者に見える。

「ようやく見つけたぞ…!シャルル!」

そう言って現れたのはムノーブルーだった…

「あ…」

そして僕はスカート越しに息子ぶら下げた状態でムノーブルーと目を合わせてしまった。

「ひぃゃぁぁぁぁーっ!!?」

僕はこれまでにないほど大声を出して悲鳴を上げた…死にたい…

 

「大丈夫かい?ご主人?」

しばらくしてシルフが現れると僕を抱きしめ、パンツを履かせて泣き止ませていた。

「うん…ごめんね。」

僕は泣き止むとシルフに謝った。

「そもそも問題はこのエロリババアが原因だからお仕置きをやっておくよ。」

エロリババアって…シルフ、それを言ったら君は一体何さ…なんでもないから殺気抑えて!

「その件についてはもう大丈夫だよ、シャルロット…僕が制裁しておいたからね。」

お父様がそう言って目の回したエルザをシルフに渡した。

「さて、これで一件落着したことだ…シャルル!貴様を逮捕する!」

ムノーブルーがそう言ってお父様の腕を縄で縛り上げた。

「わっ!?ちょっと兄さん!シャルロットともっと話したいんだけど!」

…なんでお父様はムノーブルーを伯父様って言っているの?そこが変態だということ以外で理解できない点だ。

「問答無用!」

そう言ってムノーブルーはお父様を気絶させた。

「さて、シャルロット…イザベラ姫から手紙を預かっている。」

そう言ってムノーブルーは僕に手紙を渡した。

「シャルロット、お前の失態は見なかったことにしておくから安心しろ。」

僕はそれを聞いて真っ赤になって反論しようとするがすでにムノーブルーはいなかった。

「う〜☆」

僕は頭を抱えてしゃがんだ…

「…さ、ご主人様戻りましょうか?」

シルフは顔に鼻血の跡をつけながらも僕に優しく声をかけた。

「うん…だけとエルザはどうする?」

このままだと間違いなく村長にエルザを傷つけられたことを責められて僕の罪悪感が増す…

「それなら私に考えがあるから、ご主人様はエルザを頼むよ。」

シルフの姿はすでになく残されたのは僕と気絶したエルザだけだった。

 

〜翌朝〜

僕はそれからやることがなくなったので男子の制服に着替え、少し仮眠して起きるとエルザがまだ寝ていたのでエルザが起きるのを待っていた。

「う…お姉ちゃん?」

エルザは僕の目を見つめて起き上がった。

「起きた?」

僕はエルザの頭を軽く撫でると気持ち良さそうに笑顔になった。

「おはよう、お姉ちゃん。」

「タバサ。」

「え?」

「僕のことはタバサでいい。」

シルフ以外で普通にタバサと呼んで貰わないと背中が痒くなるしどうしようもないんだよね…タバサって名前はあくまでもビジネスネームだし…

「タバサお姉ちゃん。」

「タバサでいい。」

「タバサお兄ちゃん。」

「…タバサでいい。」

「タバサたん。」

「タバサでいい。」

「タバサお姉様。」

「タバサでいい。」

「タバサお兄様。」

「…タバサでいい。」

「タバサ。」

「ん。」

なんども同じことを言えば諦めるので僕はそれを利用した。…途中でお兄ちゃんとかお兄様とかで迷ってないよ?

「タバサ、これから私どうなるの?」

エルザは不安そうに僕の顔を見つめた。

「一緒に仕事をしてもらう。血なら提供する。」

僕は北花壇騎士団としてのタバサとしての口調に戻してそう言い放った。

「仕事…?それって騎士様のお仕事?」

「そう。」

「夜になったらタバサの血を吸ってもいい?」

「直接はダメ。」

「む〜…まあいいや。タバサの血が吸えるなら。」

「ありがとう。」

僕が礼を言うとエルザは照れ臭そうにして笑っていた。

「えへへ…」

「それじゃ行こうかご主人様。」

そう言ってシルフが竜の形態になると僕はシルフに乗ってエルザをエスコートした。

「トリステインへ。」

僕は簡潔にシルフに命令するとシルフは上空に飛んでトリステインへと向かった。

 

「一つ良い?」

僕はシルフの背中で気になったことを思い出し、エルザに聞いた。

「なあに?」

「なんでわざわざ幼女の血を吸ったの?」

「趣味♡私は女の子が嫌がっている姿が好きなの…タバサみたいな男の娘も好きよ。」

僕はそれを聞いて後悔した。

「シルフ。」

僕がそう言うとシルフは身体をひねり、エルザは真っ逆さまになり落ちた。

「全く…」

まあもっともエルザは先住魔法使えるし、ほとんど意味ないんだけどね。

「キャーッ!」

…まさか飛べないとか?そんなことはないよね?…なんか不安になって来た。

「シルフ。エルザを咥えてあげて。」

「了解!」

シルフは加速すると落っこちて行ったエルザの頭を咥えたまま空を飛んだ。

「酷いよ!タバサ!」

エルザが抗議しているが無視だ。

「ご主人様…なんか咥えているとお腹減ってくるからパス!」

そう言ってエルザをぽいっと僕の手元…所謂お姫様だっこの状態になるように投げた。

「わっ…タバサァ…」

エルザが涙目で僕に迫っているが僕はエルザの顔を押しのけた。

 

そんなアホことをやっている間に時は流れ…トリステイン魔法学院に着いた。シルフ?すでに人間に化けているけどなにか?

「タバサー!」

キュルケが僕を窒息させんばかりに抱きしめた。

「むーっ!」

僕は軽くポカポカと叩いてキュルケから離れるようにした。

「タバサ分も補給出来たところで…その子誰?」

キュルケがそう言ってエルザを指した。

「エルザ。こんな姿でも僕の仕事仲間。」

エルザは僕よりも小柄で見かけは幼女その物なんだよね…だけど中々の役者だ。

「仕事仲間…ってどんな仕事仲間よ。」

「騎士。」

僕は率直にキュルケにいった。

「貴方騎士だったの…?」

「そう。」

「とてもじゃないけどそうは思えないわね〜…」

「確かにキュルケに何回も主導権を握られたけど…純粋な戦闘となれば話しは別。」

「ふ〜ん…まあいいわ。エルザちゃんって言ったけ?」

「うん。」

「タバサは……ないからね。」

キュルケがこっそりとエルザに耳打ちをしたみたいだけどあまり聞こえなかったな…なんだろう?

「さ、戻りましょう。」

キュルケは僕の手を掴むと学院へと引っ張って行った…

 

〜おまけ〜

サイトとギーシュの決闘の行方はどうなったかと言うと…

「ハハハハ!ほらどーした!?」

サイトが襲いかかって来たワルキューレを受け流しの応用で掴み、踊りながらギーシュのワルキューレを倒して行った…

「せ、制御出来ない!?」

しかし当然ギーシュはサイトに掴まれたワルキューレを操ろうとするが逆にそれを利用されて躍らされていた。

「それじゃ行くか。」

サイトのステップがギーシュに迫り、そしてサイトのガンダールヴの力でパワーアップしたワルキューレの拳が迫る!

「げほぉっ!!」

そしてギーシュはそれを避ける間も無く顔面にあたり、次の攻撃が襲いかかる!

「や、やめ…!」

ギーシュは頭をガードをするが今度は腹にサイトのフックがめり込んだ。

「ぐぇっ!」

そしてギーシュはサイトとワルキューレのダンスに巻き込まれ、ルイズが止めるまで続いた。

「(貴族の恥晒しめ…)」

当然これを見て不快な者はいる。その代表格がヴィリエ・ド・ロレーヌだ。ヴィリエは格下だと思っていた相手に金玉を打たれたことや、そいつにキュルケを寝取られこと、そして今回の決闘でかなり不快な気分になった。

「…つまらん。」

そしてヴィリエはその場を立ち去った。



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22話

投稿遅れました!文字数少ないです!すみません!


~翌朝~

「ん…」

僕が目覚めるとそこにいたのはエルザだった…しかし妙に下半身がスースーする…僕は下半身を見ると裸だった。

「!?」

僕は顔を真っ赤にしてズボンとパンツを探そうとするがエルザがしがみついて離れない。このまま誰か入って来れば僕は確実にペド扱いだ。

「あ…」

…なんでこうも都合良くキュルケが入って来るんだろう…てかアンロックは禁じられているんだよ?

「タバサ…」

キュルケの声は限りなく低くかつてない恐怖が僕を襲った。

「ひゃい!」

僕は恐怖のあまり噛んでしまいブルブルと震えた。

「お話しましょうか?」

キュルケの口は笑っていたが目は笑っておらず、僕はされるがままにされた…

 

「うん。今日の罰はこれね。」

そう言ってキュルケが取り出してきたのは僕用のサイズの女子用の制服だった…ちなみに男子用の制服はキュルケに没取されてここにはない。

「うう…そんなに僕の女装見たいの?」

僕は涙目でキュルケに訴えるがキュルケは何を馬鹿なと言いたげに溜息を吐いた。

「タバサの女装そのものは興味ないけどタバサの涙目になる姿は見ていて興奮するわ…」

ドSだ…ドSがここにいるよ。僕の涙が食事になるなんて…

「今日は授業もあるし、それで勘弁してあげるわ。虚無の曜日は楽しみにしててね…可愛くデコレーションしてあげるから。」

…僕の男らしさはどこかにあるだろうか?ガリアやトリステインにはなさそうだから旅行はロマリアに行こう…

「ミスタ・タバサ。その格好は一体…?」

などと現実逃避は許されず僕は女装したまま授業を受けることになった。ちなみにエルザはシルフと行動している。

「事情有り、説明不要。」

僕はそれだけ言って本を読み始めた。

「ああ…わかりました。では始めましょう。」

 

それから授業を一通り受け終わり、昼食を取ろうと食堂の椅子に座ろうとしたが…そこにいたのはデブの貴族が「さあ!タバサよ、このデブの身体に座るが良い!!」と言わんばかりに四つん這いになっていた。

「…」

当然僕は無視して隣にあった椅子に座り、何も問題なく食べた。

「放置プレイっ…!」

隣でデブがビクビクと感激していて周りは引いていたけど僕はスルーした。てか僕の女装はスルーするくせにこのデブの行動は気にするんだね…

「お嬢様、デザートをお届けしました。」

お嬢様…って女装しているけど僕は男だよ?新人なのかそう思い、少し顔を上げてみるとそこにはルイズの使い魔がいた。

こいつは極々平凡そうな顔をしているが所謂隠れイケメンという奴であり、カッコつけるときに限ってカッコイイというフザケタ野郎だ。僕なんかカッコつけても女の子が無理やり男の子のように見せているようにした見えないし…

「そう。」

僕は軽くそう言ってお嬢様と呼んだことはスルーした。もうスルーが一番良いんだよね…デザートを取ろうとした瞬間強風が吹いてぐちゃぐちゃになった。

「ようやく見つけたぞ…タバサ!」

タマ打たれて去勢寸前まで逝ったヴィリエ・ロレーヌが僕のデザートを吹き飛ばしたことがわかり僕は立った。

「ヴィリエ…なんの真似?」

しかしデザートに罪はない。罪があるとしたらヴィリエのタマが去勢寸前まで逝かせた僕の方だ。

「この前の僕とは違う…今回は前のようにはいかないぞ。」

前のようにね…本当にならないで欲しいよ。それでヴィリエがオネエやゲイ、バイの道に走ったら冗談抜きで魔法学院は終わる…

「決闘は禁止されている。」

僕はそんなことをさせない。せめて僕のことを敵視してもヴィリエは常識人のまま卒業させてやりたい。

「ならこれでどうだ!」

そう言ってヴィリエは僕の履いているスカートをめくり上げた。

「なっ…な、な…!」

僕の顔は真っ赤、頭の中は真っ白になり言葉が出なくなった。瞬時、ヴィリエを除くその場にいた男子生徒は腰を屈め、女子生徒はキャーキャー騒いでいた…

「もしお前が決闘を断るなら風の魔法でスカートをめくり続ける!」

なんて嫌がらせだ…一日中警戒しなきゃいけない…って、皆でヴィリエを応援しないでよ!

「がはっ!」

誰かがヴィリエをぶん殴り吹っ飛ばした…そこまでする必要はないけどね。一応変態ではないし…

「くだらねえ奴だなてめえは。」

その殴った奴はルイズの使い魔でヴィリエを呆れた目で見ていた。

「くだらないだと…!」

たかが一回やられた程度でそんなことをやるのはくだらないと思う。

「全く以ってくだらねえ。そんなロマン溢れないことをしてどうする!?」

ん…?なんかおかしな方向に向かっている…

「スカートを履いているならパンチラがいいんじゃねえか!!」

…ダメだこいつ。トリステインで色物として有名なモット伯と話しが合うんじゃない?

「パ、パンチラ?」

ヴィリエは僕の代わりにそう言って動揺していた。

「屈んだ時、あるいは風が吹いた時、パンツがチラッ!と見えた時が萌える瞬間じゃねえか!!それをお前は常に見せるような真似をして恥ずかしくないのか!!?」

「おおおっ!?」などと歓喜している諸君、後でエアハンマーの刑。

「恥ずかしくないね。むしろタバサに恥をかかせるためにやるんだ。」

恥をかかせるって…とにかく決闘すれば解決しそうだからするしかない。

 

「ヴィリエ、その決闘受けた。」

ルイズの使い魔がズィッと僕の前に立ち、そう宣言した…

「貴様がか?笑わせるなよ…平民。確かにギーシュを倒したとはいえあいつは所詮ドット…風のラインである僕に敵うものか。」

あのギーシュに勝ったのか…ギーシュは一応ドットの中では戦闘はトップクラスで、ドットよりも強いはずのラインの生徒を打ち負かす程度には強い。ただし例外を除いてだけどね。その例外はラインでも1桁くらいの人数しかいないがヴィリエはその例外に入る。

「もしヴィリエがこの平民の使い魔に勝ったら僕は決闘を受ける。」

当然僕はその平民がどこまで戦えるか興味が湧き、そう告げた。

「ふっ…ウォーミングアップには丁度いいかもな。」

ヴィリエは人が変わったかのようにルイズの使い魔と決闘することを認めた。

「ウォーミングアップ中にくたばっちゃ意味はないけどな。」

…確かに。

「お互い様だ。」

売り言葉に買い言葉…二人の目は完全に笑っておらずその場にいた生徒達が引いていた。

 

~オマケ~

臭道院こと修道院にて…

「ジュレッド!やり直し!!」

ジョゼットがジュレッドと呼ばれた女性に食事を投げやり直しを求めた。

「うう…っ!」

ジュレッドは溢れた食材を片付けようとするがジョゼットがジュレッドの股間を蹴った。

「うっ!!」

さて…もうお気づきだろうがこのジュレッドは女性と書いたが実際には男である。さらに言うならジュレッドの正体はジョゼットによって調教されたジュリオ…かつてのガキ大将の姿はどこにもなかった。

「(ああ…楽しい。)」

ジョゼットはその様子を見て完全に楽しんでいた。兄のタバサとは真逆である。

「ほらとっとと動く!!」

今日もジョゼットのジュリオ苛めは続く。



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23話

そんなこんなで広場に出て来たのはいいけど…

「タバサァ~…」

スリスリ

キュルケが真昼間から酔っ払い、僕の顔を擦る。そんなに酒飲んで大丈夫なの?

「暑い…」

キュルケの体温が高いせいか抱きしめている僕を暑くさせる…

「そう~?私はタバサが冷たいから心地いいわ~…」

酔っ払いは嫌いだ…口は臭いし、悪い意味で暑苦しいし…

「もう!」

牛のようにキュルケは声を出すと僕にのしかかった。

「へぶっ!?」

僕はキュルケの体重に逆らえずにそのまま倒れた。

「タバサァ…」

キュルケはハァハァと息が荒くなり、欲情しているのがよくわかった。この体勢から欲情しているということはつまり…僕が履いているスカートの中に手を入れて来た。

「ストップ!ストップ!キュルケ、この場でこれ以上はマズイよ!!」

キュルケは完全に酔っ払って僕の言うことなど無視してパンツを脱がそうとした…

 

「ぐえっ!?」

女らしくない悲鳴を上げ、キュルケはその場に倒れた。

おそらく今のはヴィリエが放った魔法がルイズの使い魔に当てようとしたけど使い魔が避けてキュルケに当たったって所だろうね。ラッキーにも程があるよ…

「ちょこまかとうるさい奴だ。」

あれは…ジャベリン!?ヴィリエがそんな魔法を使うなんて…でもそれは失敗だよ。ジャベリンは通常、竜などといった的がデカイ敵に使う魔法…僕のように任務を経験している訳じゃないんだし使い魔に当たる訳がない。当たったとしてもオーバキルで死んで問題になる可能性だって否めない。

「こんなデカイの当たるかよ!」

当然使い魔は避けてジャベリンは地面に突き刺さり魔力の無駄となった。

「エアハンマー!」

今度はエアハンマーで使い魔を叩きに行った…

「バーカ!」

使い魔はそれも避けてヴィリエに徐々に迫る…がそれを許さないのがヴィリエ。

「バカは貴様だ!」

罵倒しながらもしっかりと魔法を使えるあたりヴィリエは器用になったけどそれでも隙が多いよ…

「ほらよっ!」

使い魔が足払いをしてヴィリエを転ばすとヴィリエは杖を落とし、決着がついた。

「まだだ!」

ヴィリエは杖を手に吸い付かせるように持ち上げると謎のスペルを唱えた。

「これはタバサ用に作った魔法だが仕方ない。行け!」

作ったって…ヴィリエも相当やるね。休みの間誰かに鍛えられてたの?

「危なっ!」

エアハンマーによって砕かれたジャベリンの氷がヴィリエの操る風によって使い魔に襲いかかる。しかも破片状だから中々防ぎたくとも防げない…上手い手だ。近距離はともかく遠距離なら強い。

「くそったれーっ!」

使い魔が愚直にヴィリエに突っ込み、ヴィリエはエアハンマーを放ち勝利を収め…

「うおおおぉぉぉっ!!」

収められなかった。その理由は使い魔がエアハンマーを受けてもヴィリエに突っ込み続け、懐に入ったからだ。

「バカな!?」

ヴィリエも僕も驚いている…まさかあんな手でやられるとは思わなかったからね。

「魔法を上回る純粋な強さ!それこそがパワーだ!!」

そして使い魔はヴィリエの腹に殴った。

「がふっ!?」

ヴィリエはくの字にして胃液を吐いた…汚い。

「オラオラオラオラ!」

そして使い魔はヴィリエをボコボコに殴り杖を奪ってそれをヴィリエの顔に叩きつけてヴィリエを気絶させた。

「ふーっ、ふーっ!」

使い魔はまだ興奮しているのか息が荒くゆっくりと落ち着かせていた。

 

「こんのバカ犬~ぅ!!」

その場にはいなかったルイズが駆けつけ、問答無用でラリアットで使い魔にアタックした。

「げふっ!?」

いや避けられるでしょ?ヴィリエの魔法を避けれたんだから…

「皆さん、うちの使い魔がご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。」

ルイズはそそくさと謝り使い魔を引きずり去ってしまった。

「何このカオス…」

僕もレビテーションでキュルケを持ち上げ、キュルケの部屋に置いて自分の部屋に戻りムノーブルーから渡された手紙を読むことにした。

 

【7号、任務を遂行して貰う。その内容は土くれのフーケを捕まえ、ガリアに引き渡せ】

結構無茶言うなぁ…フーケの情報はほとんどない。罠を仕掛けておびき出すしかないか。

 

~数日後~

「最後の日に…こんな服を着て街へ来るなんて…」

数日間、キュルケの着せ替え人形となり今日が最後の日となった。当然キュルケは最後ということで僕に可愛らしくフリルたっぷりの水色のゴスロリ服(モット伯案、製作者タバサたんを愛する会一同)を着せてキュルケは大満足していたが街へ行こうなどと言って僕を無理やり街へと来させていた。シルフもエルザも同行中である。

「ご主人…」

シルフに助けを求めてもうっとりとしていて助けにならずエルザを見ても…

「タバサちゃん…大好き。」

エルザは僕に抱きつき、寝ていた。その様子からすると仲の良い姉妹(僕の見かけ上兄妹とは言えない)のように見えた。

「ん?あれは…」

キュルケが何かを見つけ、僕もそっちを見るとルイズとその使い魔が買い物をしていた。

「いい事考えちゃった…」

キュルケは何処ぞの悪代官のような笑みで僕を見るとエルザがキュルケと目を合わせアイコンタクトを取った。

「タバサ、向こうに行くわよ。」

向こうってのはつまりルイズ達の元の事だ。僕は拒絶しようとしたがエルザが飛び降りて僕の手を掴んだ。

「タバサちゃん、行こ!」

エルザは僕の手を引っ張り、ルイズ達の元へと誘導した。吸血鬼の力にはかなわず僕は引きずられた…こいつら仲良いんじゃない?

「さすがキュルケ…わかっている!」

おいコラ!シルフ後でお仕置きしてやるからな!覚えてろ!!

「けっけっけっけっ…」

もうヤダこいつら…

 

「ルイズー!」

ルイズはキュルケを見て嫌そうな顔をした…まあそれが常識だよね。

「ツェルプストー…あんたなんでこんなところにいるのよ。」

ルイズがツェルプストーと言う時は大体不機嫌な時だ。更に不機嫌な時だと野蛮人やゲルマニアンなどに変わる。

「ちょっとね。それより何をしているのよ?」

「あんたに言う義理はないわ。」

「もしかして~もしかしてだけど~…彼に惚れちゃった?」

キュルケはリズムに乗ってルイズをからかった。

「馬鹿言うんじゃないわよ!誰があんな変態に惚れるもんですか!」

ルイズはそう言って使い魔を指差したのでそちらを見ると…彼は訳のわからない服を見て「うえっへっへっ…」などとニヤついていた。確かに変態だ。

「あらあれくらいならタバサの服に限ってならやるわよ。」

もうだめだ…キュルケとは縁切ろうかな…?

「あんた少しは常識を持った方が良いんじゃないの?」

全くその通りである。

「何よ…ゲルマニアンジョークがわからない人は出世出来ないわよ?」ゲルマニアンジョークって何!?

「ふんっ!サイト、そんな変態行為はやめて武器屋にいくわよ。」

使い魔…サイトはルイズに引きずられて行った。

「後1分だけ~!」

「行くわよ!」

ルイズは有無を言わせずにサイトを引きずった。

「はい…」

サイトは返事をして大人しくなった…最初からやれよ!

 

~武器屋~

「ここは貴族様の満足いくようなものはありませんぜ。」

僕達はルイズと同行することにして武器屋へと着いた。

「客よ。こいつに合う武器を持ってきて頂戴。」

ルイズはそう言ってサイトを指した。見た目は隠れイケメンの普通の男子…嫉妬してしまうのは何故?

「これはすみませんでした!しばらくお待ちくだせえ!」

店主はそう言って奥へと入って行った…僕はそれまでの間何か良い武器がないか探してみた。

「…何?」

片刃の剣を見つけ、それを手に取り鞘から取り出すと…

「よう!」

ピシャン!

僕は思い切り剣を鞘に収めた…今の声どこかで聞いたことあるけど気のせい、気のせい…あれは槍だったし絶対に剣になるとかありえないし…

「ん?そいつは…日本刀じゃねえか。」

サイトが僕の手に持っている剣を取った。

「ニホントウ?」

僕はその名前を聞いた…あれとは違うと思いたいからだ。

「そうだ。俺の所にあった剣なんだがこんなオンボロじゃマトモに切れりゃしねえ…」

そう言ってサイトは剣を鞘から出してみた。

「悪かったな!オンボロでよ!」

「あっ!?てめえ喋るなって言っただろうが!!デル公!!!」

いつの間にか店主が戻って来たのかこの剣を叱り飛ばしていた。

「うるせえ!そんな短気だから店が儲からないんだよ!」

「てめえがいるからだろうが!二束三文で闇の商人に売り飛ばしてやろうか!?」

「上等だ!」

売り言葉に買い言葉…少なくとも客の前ですることではないね。

 

「店主、この剣買うわ。」

するとルイズがその剣を買うことに決めた。

「へえ…?よろしいので?」

店主は貴族が宝石で装飾された剣が目の前にあるのに買わないことに不思議がっている…まあ見栄っ張りの無能の貴族なら迷わず買うけどね。

「ボロ剣だけど錆を落とせばなんとかなるでしょうし、使う本人がいいっていうんだから良いんじゃない。」

錆を落とせは確かに良い武器になるのは違いないけど僕は気が進まない。

「それなら50エキューでさ。本当なら100エキューと言いたい所なんですが…迷惑をかけたお詫び代として半額にさせてもらいます。」

「そ。それじゃ帰るわよ。サイト。」

「おう!」

「おい!勝手に…驚いた…使い手か?」

デルコウの声が聞こえ、僕も店を出ようとしたが…

「ねえ店主さん…それ300エキューで売ってくださらない?」

キュルケが店主に色仕掛けをして装飾剣の値引きをしていた。

「おじさん私からもお願い。」

エルザァァァ!?なんで君も上目遣いで値引きしているの!?シルフも不安になってきた…シルフは…流石にやらないか。それでこそ僕の相棒だよ。

「店主、これを買いたい。」

そう言ってシルフが取り出したのはナイフ…?

「それでしたら100エキューです。」

店主は店主らしい顔になり、それを売った。

「これで良いか?」

シルフは袋から金貨を取り出してそれを渡した。そういえば最低限のお小遣いしかやっていないのにシルフはどうやって稼いでいるんだ…?この前口に血がついていたのと関係がありそうで怖い。

「毎度!」

店主は上機嫌で二人を見ると交渉していた。器用な人だ。

「300エキュー♡」

猫なで声でキュルケは迫り…遂に店主が折れた。

「毎度ありーっ!!」

ダメだこの店…終わったな。




ABC「いよいよタバサとデルフが再会。果たしてタバサはどうなってしまうのか…続く。」
タバサ「続く…じゃないよ!なんでここにいるの?!君達は『魔軍司令親衛隊隊長の恋愛』の後書きコーナーでしょ!?」
A「お祝いですよ、お祝い。この小説が俺達の出る『魔軍司令親衛隊隊長の恋愛』のお気に入り件数、感想数ともに超えたからお祝いに来たんですよ。」
B「そうそう…お祝いとしてクロスオーバーをすることにしたんだよ。だけど流石に本編に出るわけにもいかないし後書きでクロスをやったって訳だ。」
C「要望があればやりますよね!」
ABC「おーっ!そういう訳でみんな!作者の活動報告のアンケートに答えてくれ!」
タバサ「とにかく帰れ!」
ABC「次回もお楽しみに!」


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24話

ようやく投稿出来ました…


やれやれ…結局ルイズ達に会うことは出来なかったか。

「タバサ様。例の件はうまくいきました。」

すれ違い様に僕にそう告げたのはオルレアン領の工作員だ。彼は一見一般人にか見えないがオルレアン流シノビ軍団という組織の一員で暗殺、情報収集…などなど、紛れこんで行動するのが上手く、この組織は伯父様の使い魔…シェフィールドが案を出してくれたというかガリアの制度は大きく変わりつつある。シェフィールドはなんか東方に住んでいるとかほざいていたけど本当は違うんじゃないか?と思うのは秘密だ。

「ご苦労様、今の手持ちは少ないからオルレアン領に請求書を出しておいて。」

僕は小さい声でつぶやくと彼は消えていた…これでフーケを呼び出す準備は整った。

「タバサ、帰るわよ!」

キュルケは上機嫌で僕にそういった。

「わかった。」

シルフはすでに竜の姿になっており、ビシッと決まっていた…前の翼人退治のような威厳たっぷりとまでは言わないけどこれくらいは欲しいよ。

「そういえばタバサの使い魔いないけど…どこいったの?」

「シルフはバイト。」

「ふ~ん…彼、大丈夫なの?」

「いつの間にか帰ってきているから心配ないわ。キュルケお姉ちゃん。」

エルザがそう補足を入れて優しい笑顔で笑った。

「まあ二人がそういうならいいけど…ちゃんと管理しておきなさいよ?貴方の使い魔なんだから…」

キュルケが初めて常識人に見えるのは気のせい?それだけキュルケの行動が異常だったってこと?

「学園へ。」

 

~魔法学園~

「だからなんでこんな目に遭うの…?」

僕はそう呟いた…何しろ学園についた途端キュルケが薬を使って僕を眠らせ、気が付いたらロープで縛られていた…しかも杖はないし、吊り上げられているし…

「タバサちゃん!頑張って!」

エルザがそう言って僕を応援するが僕はジト目で見た。

「その前にこれ…何の罰ゲーム?」

「あのピンクの人とキュルケお姉ちゃんが決闘することになったの。ペチャパイピンクは魔法がマトモに使えないからこうやって景品を吊り上げているって訳。」

「僕景品!?」

「タバサちゃんの腰についている剣もそうだよ。」

剣って…このナマクラ?

「ご主人、骨は拾っておこう。」

「それ酷くない!?」

僕が反論するとルイズが杖を構え、僕に向けた…って危ない危ないって!

「ファイヤーボール!!」

僕は振り子の原理で避けたのは良いけど後ろにある宝物庫に穴が開いてしまった…これ絶対マズイよ。

「あっはっは!下手ね!ルイズは!」

もう少しで彼氏が殺されそうだっていうのにキュルケはよく笑っていられるよね。本当に縁切る?

「それじゃ私の番ね…ファイヤーボール!」

ファイヤーボールによって僕の縄が解け、僕は予備用の杖を取り出そうとしてナイフを取り出してしまった。

「これじゃ…フライ!」

これじゃない!と言おうとしたけど握った瞬間口が勝手に動き、フライの魔法を唱えていた。

『全く、結構な修羅場に遭遇しちまったな?』

誰…?

『俺の名前は地下水。裏の世界でちっとは知られたものさ。』

地下水…聞いたことがある。確か対象者を殺す前に対象者の前に現れ宣言して殺すという奇妙な殺し屋…その姿はコロコロと変わる為正体は不明…まさか武器であるナイフだとは思わなかったよ。

『正確にいえば俺は雇われ傭兵だが…まあそこんところはどうでもいいか。とある失敗で俺はあの店に安値で売られたんだよ。店主も店主で節穴だしもういいや~って諦めた時に坊主達がやってきたって訳。幸いなことにあの韻竜の嬢ちゃんは俺の存在に気づいていたみたいで身体を乗っ取ろうとしたところ、逆に永久に身体を乗っ取れなくするなんて脅されて坊主の手に渡ったんだよ。』

話長いよ…それよりもそろそろ身体返してくれない?

『あの韻竜の嬢ちゃんがその場を見逃す代わりに坊主の身体でとあることをしたら許してくれるからな。悪く思うなよ。』

裏切り者!永久にシルフに従ったことを後悔させてやるから覚悟しておけ!

『おお、怖い怖い。』

フォルサテの作った液体の正体は確かシェフィールドによると王水というらしく金すらも溶かす超強力な酸…らしい。

『…俺はお前を助けたんだから五分五分な?それでいいだろ?』

地下水は僕の有無を確認せずにシルフの近くまで飛んだ。

「シルフ~っ!」

そして僕の身体はシルフに抱きつき、僕の舌がシルフの口の中へと入りディープキスをした。

「あぁぁぁっ!?」

キュルケごめん…これもそれも地下水が悪いんだ。後で〆ておくから信じて。

「シルフ、僕のことをどう思っている…?」

これは拷問だ…恋人の前でこんなことをさせられたら拷問よりもキツイよ。

「もちろん好きさ。」

シルフはそう言って僕を押し倒した。

「僕も大好き!」

そして僕の身体は勝手に動き、シルフへと抱きついた…終わった。

 

「このホモ共が!!」

ゲシッ!

意外なことにそれを救ったのはルイズでシルフの顔を蹴っ飛ばした。

「人の恋路を邪魔するなんていい度胸じゃないか?」

シルフはゆらりと立ち上がり、ルイズを見る。

「あんたバッカじゃないの!?」

「バカはお前だろう?どこからどう見てもいちゃいちゃのラブラブカップルじゃないか?それに私は女だ。」

「それがバカだって言っているのよ!私の目は誤魔化されないわ。あんたといちゃいちゃしていたタバサの目はまるで死んでいた!普通なら生き生きとしている物よ!例えばキュルケと話している時なんかそうよ!」

ルイズ…そこまで僕のことを見ていたんだね。でも目が死んでいたのはキュルケに嫌われたと思ったから…シルフの舌が嫌だった訳じゃ…って僕は絶対に二股なんかしないよ!

「おそらくあんたは主人であるタバサに好かれたいが故に何か細工をした…その細工は…」

ルイズがそう言った瞬間巨大なゴーレムが出てきた。

 

『おいおい、ありゃ噂のフーケじゃねえか?裏世界で働いている人間がこうもサクサク出てくるのは驚きだね~…』

…地下水、持っている片手だけを操作することは出来る?

『もしかして二刀流でもやる気か?』

そう、フーケを捕まえる義務が僕にはあるしね…

『まああんまりバカみたいに使えないぞ…それは覚えておいてくれ。』

了解!

「ジャベリン!」

僕はゴーレムの足に当たる部分を攻撃し、バランスを崩そうとするが中々上手くいかない…

「嘘…フライをしたまま魔法を唱えているわ!」

キュルケもルイズも驚いていた…まあ当然だよね。通常フライを唱えたまま魔法は唱えられない。だけと僕は地下水によってそれが可能になっている…今度から杖剣にしてみるかな?

「ぐっ…!?」

ジャベリンを放つと魔力を大きく持って行かれ、僕は少しふらついた…これが二つ同時に魔法を使うデメリットか…とんでもないな。

「タバサ!危ねえ!」

サイトの声で僕はゴーレムの方に集中しなおすとゴーレムが僕を掴み掛かろうとしていた。

『一旦フライを解くぞ!下以外逃げ場所はねえ!』

地下水はフライを解き、僕は真っ逆さまに落ちた。

「ほいさっ!」

シルフとエルザが僕を助け、僕はそれに跨がろうとしたが…

「あ…」

僕は足を滑らせてしまい落ちた…なんで肝心なところでドジ踏むの?

「その首貰ったぁっ!」と言わんばかりにゴーレムが僕を握り締め、僕は圧迫されていった。

「がぁぁぁっ…!ぐっ…」

僕は必死で振り解こうとするが中々離れない…

「う…」

僕の目の前が真っ暗になった。

 

〜翌日〜

「ん…?」

見慣れない天井だ…などと言いたかったけどそれは出来なかった。手首足首は縛られ口も轡を嵌められて喋れない…多分これはフーケの仕業だろう。フーケも変態だったと…僕の頭の中に入れておいた。

「おはようございます、ミスタ・タバサ。」

そう言ってやってきたのは学院長の秘書のロングビルだった…

「なんで私がここにいるか知りたそうですね?フフフっ!」

ロングビルは僕が着ているゴスロリのスカートをめくり、パンツを脱がした。

「さて、宝物庫にあった宝とミスタ・タバサの童貞は奪えませんでしたが種は頂こうかね?」

ロングビル…いやフーケは笑ってそう言った…



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25話

中々原作沿いにはなりませんね…


~ウェストウッド村~

「ここは…?」

確か僕はフーケに絞られて…ダメだ思い出したくない。

「起きた?」

ヒョコッと僕の前に現れたのはエルフの耳をした妖精だった。

「…妖精?」

「私は妖精なんかじゃないよ。私はティファニア。テファって呼んでね。マチルダ姉さんからタバサ…君の事を頼まれたの…」

マチルダ?フーケのことなのかそれともフーケとは別人なのかわからないがそんなことはどうでもよくここがどこなのかテファに尋ねた。というかフーケの正体は世間には知られていないのでフーケと言っても無理だろう。

「テファ…ここは?」

「ウェストウッド村。アルビオンの一つの村だよ。」

「アルビオン…」

マチルダ…アルビオン…思い出した!モード大公の事件だ。確か数年前にモード大公は謎の静粛をされ死んだ事件だ。その時に一緒に静粛された貴族…の娘の名前がマチルダだったんだ。…どうでも良いけどこっちの静粛はモード大公が変態だったからではなくもっとまともな理由であって欲しい。ガリアの静粛のような事だったらロマリアに逃げるしかないんだから…

「どうしたの?怖い顔をして…」

なんかテファってイザベラお姉ちゃんとは違ったお姉さんっぽい感じがする…やっぱりこの爆乳か!?イザベラお姉ちゃんも胸でっかいし…でもキュルケはデカくともお姉さんっぽい感じはしないな。うん。

「なんでもないよ。」

僕ははっきりとそう言った。

「ところでテファ…なんで僕の格好が女の子の格好なの?」

僕の今の格好は水色のゴスロリではなく素朴な格好でテファと同じ格好だった。

「え?だってタバサって女の子でしょ?」

僕達に無言の空間が出来る…

「…とりあえず今日はその服しかないからちょっと待って…きゃあっ!」

テファは僕を下敷きにしてあまりにもデカすぎるその胸で僕を圧迫した…

「ん~っ!!」

キュルケやエルザ、シルフは手加減しなくても謎の復活を遂げるから容赦なくやっても問題ないがテファは僕の恩人だ。さすがに恩人を相手に殴ったりはしない。

「ごめんなさい!」

テファは真っ赤になり僕から離れた…

「僕はもう大丈夫だよ…それよりもテファは?」

「うん…私は平気だよ。」

「そっか。それなら良かった。」

僕はテファの優しさに触れたのかタバサとしての仮面をとり僕らしく接した。

「…」

テファはまだ顔を真っ赤にして僕の顔を見ていた。

「テファ?」

そんなに凝視されたらスルー検定1段の僕でも気になる…ちなみに5段になればどんなことでもスルーすることが出来るようになるらしい。

「っ!なんでもないよ!」

テファは慌てて目をそらしてその場を離れた。

 

~トリステイン魔法学院~

その頃学院では…

「フーケの野郎!許すまじ!!」

タバサが誘拐された事をキッカケにタバサたんを愛する会のメンバー達とその他数名が学院長室に押しかけていた。その数、合計数百人!教師が止めても生徒達が反乱を起こして授業は無くなってしまったのである。タバサたんを愛する会のメンバーの数が増えているとは突っ込んではいけない。

「(とんでもない影響力じゃな…オルレアン公は…)」

オスマンはそれを見て現在オルレアン公のタバサを思い出していた。弄られキャラなのでカリスマはなかったが魅力はあった…

 

「学院長!我々をフーケ討伐…いえ抹殺の任務に就かせて下さい!」

生徒の中でも過激なのがヴィリエだ。ヴィリエはタバサがいなくなったと聞き、勝ち逃げされたと思い込んでいたがフーケが誘拐したと聞くと学院長室に押しかけて来たのだ。

「ミスタ・ロレーヌ?なんで君はミスタ・タバサの事を嫌っていたのではないのかな?」

「当たり前です!ですが何よりも気にくわないのがミスタ・タバサがフーケとかいう盗賊如きにやられたこと…情けないあいつを生徒全員で嘲笑いに行くだけのことです!」

ヴィリエのそれはまさしくツンデレそのものであり、タバサに負けた怒りをフーケに向けていた。本人がこのことを聞いたらキレるが…

「なりませんぞ!ミスタ・ロレーヌ、私は絶対にフーケ討伐に遠征することは認めません!」

それに反発したのがコルベールだ。コルベールはかつての職業からか命を失うことを重みを理解している。それ故にフーケ討伐という命を落としかねないことを生徒達にやらせる訳には行かなかった。

「ま、その通りじゃ。お主達が殺されたらワシの首が飛ぶ…そう言うことでこれは教師が解決」

バンッ!!

「僕は風の名門、ロレーヌの跡取りですがそれよりも大切なことがある…タバサとの決着です。」

そう言ってヴィリエがおいたのは数百枚の書類だ。その一つ一つが全て契約書だ。

「これが生徒達がフーケを討伐したいという気持ちです。」

流石のオスマンもここまで言われたらどうしようもなく、首を縦に振ろうとした。

「ならん!絶対にならん!」

コルベールはかつての職業の口調で頑固反対し続けた。

「もう良いコルベール君。彼らを止めたところで無駄じゃよ。それに流石にフーケといえどもこれだけのメイジがいたら数の暴力に押されるじゃろう。」

オスマンはそう言ってキセルの煙を吐き、溜息も吐いた。

「しかし!」

「ならば君が行くかね?」

それでもなお反対するコルベールにオスマンは止めを刺した。

「う…わかりました。」

「よろしい。ではミスタ・ギトー、生徒達の総率は任せた。」

風の魔法教師ギトーにオスマンは現場指示を任せた。その理由は彼は曲がりなりにもスクエアかつ軍事経験はあるからである。

「誰一人死なせずに無事取り戻して見せましょう。」

タバサたんを愛する会のメンバー、ヴィリエ、ルイズ、キュルケ、ギトーがフーケ討伐に行くことになった…

 

「(狭い、暑苦しい…)」

フーケことロングビルはタバサの種をしぼるだけ絞り取り学院に戻っていたが生徒達の渋滞に巻き込まれすし詰めとなっていた。

「(チッ…仕方ない。)」

そしてロングビルは口を開いた。

「皆さん!フーケの居場所がわかりましたので通して下さい!」

ロングビルは大声で叫ぶと生徒達はそちらを見た。

「それは本当ですか!?」

余計に暑苦しくなり、ロングビルは思わず舌打ちをした。

「それを糞爺に報告するから邪魔だって言っているんだよ!どきな!」

ロングビルの素の口調が現れ、生徒を退かそうとする。

「じゃかましいわ!聞いているのはこっちじゃ!」

と生徒はヤ9ザじみた暴言を吐き、殺気も放つ…その行為にロングビルを怯えさせた。

「(なんなのこいつら!?いつもの平和ボケした生徒はどこへいった!?)」

ロングビルが驚くのは無理ない…ボンボンのお坊ちゃんの学校が一夜にしてヤ9ザ養成学校となってしまったのだ。

「早く言った方が身のためですよ?ミス・ロングビル?」

そこに現れたのは血管が浮き出ているギーシュだった…とはいってもいつものフリルの服は着ていない代わりに黒と赤の服を着ておりその姿は完全にプッツンする寸前の悪魔そのものだった。

「確かアルビオンに向かって行ったと思われます。」

その威圧に完全押されたロングビルは思わずアルビオンにいると答えてしまった。

「アルビオンか!よし!ラ・ロシェールまで続けーっ!!」

「おおーっ!!」

「待ちなさい!あそこは激戦地です!あそこに生徒達だけで行くのは…」

ロングビルは何が何でも止めたかった…その理由はタバサではない。ティファニアという自分の妹みたいなハーフエルフがいるからだ。あんな人数でフーケを探そうものなら必ずティファニアと接触するだろう…十数人なら忘却の魔法でなんとかなっても数百人もいるとなれば相当無理ゲーだ…タバサは自分を恨んでいるだろうから期待はできない。

「あぁっ?」

悪魔となってしまった全員がロングビルを睨む…

「ナンデモアリマセン。」

ロングビルは生徒達の威圧に負け、行かせてしまった。

 

「(ひどい目にあった…)」

そして学院長室に入るとそこにいたのはやつれたコルベールとオスマンだけだった。

「オールド・オスマン…?先ほどの生徒達は一体…?」

「ああ…よくぞ来てくれた。先ほどの生徒達はミスタ・タバサを誘拐したフーケを抹殺する為にワシのところに来たんじゃよ。それよりもミス・ロングビル…もう少し早く来れなかったのかね?」

「フーケの情報を手に入れるのに少々時間がかかりまして…」

「そういうことなら仕方ないの…休暇をとって休みなさい。…最後にミス・ロングビルの尻ぉっ!?」

ロングビルはオスマンの言葉を遮り、回し蹴りをしてオスマンを吹っ飛ばした。

「ええ、ぜひ休暇は頂きます。では失礼します、オールド・オスマン。」

ロングビルは向かった先はもちろんアルビオンだった…



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26話

「それにしても羨ましいわ…このサラサラの髪…」

テファは僕の髪を触ってそう感想を述べた…まあ髪の毛に関しては手入れもしてないしどうでもいい。ただ…その胸後ろから押し付けるのはやめてくれない!?僕の息子が立っちゃうんだよ…女性物の服を着た状態で僕の息子が立つと…どうなるか想像して欲しい。

「あっ…」

テファが僕の股間の変化に気付き、僕の顔を見る…

「えっ?…タバサって男の子?」

僕は顔を赤くしながら首を縦に振った。

「うーん…信じられないわ。だって男の子って言ったら…もっとムキムキになっているはずだよ?」

ムキムキとは言わずとも僕は華奢な身体の中ではパワーはついている。

ただ周りがおかしいだけで僕自身は筋力がないって訳じゃない。

「おうテファの姉貴、飯取ってきたぞ。」

…丁度良く現れたのは超ムキムキマッチョの大男だった。姉貴って言っていたことからテファを慕っていることはわかる…

「トム、おかえり。今日の収穫はどうだった?」

トムは申し訳なさそうな顔をして頭を下げた…

「今日はオーク鬼10体しか取れなかったぜ…姉貴すまんね。」

オーク鬼10体って…絶対に平和ボケした貴族じゃ無理だよ。どんだけワイルドなのさ。

「それだけあれば十分よ。頭を上げなさい。」

テファは僕がドキっとしてしまう位優しい笑顔でトムを許した…

「いつもなら15体位は欲しいんだけどな…ところでそっちの青髪の方は?」

トムがそう言って僕を見るとテファが口を開こうとした。

「タバサ。トリステイン魔法学院に所属している男子生徒。」

変な自己紹介されても困るので僕はそう言った。

「タバサ…そういえばタバサで思い出したんだが村の外でタバサたんを愛する会とかいう連中に遭遇してな…そいつらに追いかけられて背中に傷を負ってオーク鬼10体しか狩れなかった。」

…間違いない。あの馬鹿達だ。止めに行…地下水と予備の杖がない。フーケに盗られた?

 

「でこっちがトム。男の子の中で一番のスレンダーよ。」

スレンダーって…これでも痩せているの!?

「トムだ。まさか俺よりも華奢な男を見るとは思わなかったがスレンダー同士よろしくな。」

スレンダー同士って…明らかに僕が華奢でしょ!?確かに男として見られたいけどそっちの仲間入りもしたくないよ!!

 

「トム、それじゃ皆を連れてその人達を誘導させて。」

「わかったよ。それじゃ行ってくる。」

そう言ってトムは「ヒョァッ!!」などとほざき、窓の外からジャンプして飛んで去った…ドア使いなよ!

「もしかしてテファって男はトムみたいな体格していると思っているの?」

僕はその非常識さに呆れてそう尋ねた…当然といえば当然だけど。

「うん。」

…テファは常識がないだけだ。まだ治療は出来る。あの変態達の二の舞にはさせない。

「あのね言っておくけど世の中には」

「テファ無事かい!?」

僕の台詞を遮ったのはフーケだった。

「あ、おかえり~マチルダ姉さん。」

…なるほど、フーケとマチルダは同一人物だったって事か。それなら納得がいく。

「良かった…」

フーケ…いやマチルダはそう言って僕にセクハラしてくる…

僕はイラッと来たのでマチルダに関節技を決める。

「痛い痛いっ!ギブギブ!!」

マチルダが苦しむが何故か幸せそうな顔をしていた。

数分後…

「大丈夫?マチルダ姉さん…」

テファがそう言って少し幸せそうなマチルダに近寄り、介護する。

「全く…あんたは女にも容赦ないね。」

「自業自得。」

ここであえてマチルダが盗賊フーケだと告げなかったのは、マチルダがフーケだとバレたらテファの悲しむ顔を見ることになるからだ。

「マチルダ…ところで僕の杖は?」

「ん?ああ、これだろ?」

そう言って持ってきたのはオリジナルの方だった。

「…ナイフは?」

「ナイフってこれのこと?」

そう言ってテファが取り出したのは地下水だった。

「それそれ…良かった~…」

僕はそう言って地下水を掴むと声が聞こえた。

 

『いや~酷え目にあったぜ。』

どんな目にあったの?

『そりゃ大変だったぜ?あのハーフエルフの嬢ちゃんの身体乗っとろうとしたら逆に支配されるわ、支配を解く代わりにめっちゃいい笑顔で脅されるわ、そして一番嫌な思い出は俺をオーク鬼の解体専用のナイフとして使うわ…とにかくこの地下水生まれて初めてとも言えるくらい嫌な目にあったんだぜ?』

…ごめん。ところで彼女…テファはハーフエルフなの?

『ん?まあ人間とエルフの血が丁度半分ずつ混ざっていたしな。その代わり嬢ちゃんは先住魔法は使えないし、系統魔法も使えないぜ?』

人間でもエルフでもないと使えないのかな?…でも伯父様やルイズなんかは魔法は無条件で爆発するし、イーヴァルティに出てくるお姫様なんかはどの系統魔法が使えるのか書かれていない…

『…そりゃ妙だな。ちょいと調べた方が良いかもしれねえな。』

そうだね。

 

「タバサ?」

うわっ!?テファ近いって!!そんなエロい身体で誘惑しないでよ!!

「これ返してくれる?僕のなんだ…テファ。」

『きゃーっ!坊主の物だって!!』

地下水うっさい!

「うんいいよ。どうせ解体にしか使わなかったし。」

清々しいまでに笑顔で答えたテファは僕に地下水を返した。てか本当に解体しか使われなかったんだね…

『酷えだろ?』

でもナイフってのはもともと解体する為に使われる道具だし…あながち間違いじゃないかもね。

『坊主までそんなこと言うか!?こうなったら復讐じゃーっ!!』

僕の抵抗も虚しく、地下水は身体を乗っ取った。

『さてと…坊主とハーフエルフの嬢ちゃんにお仕置きだ!』

やめてぇぇえ!!

 

「マチルダお姉ちゃん…」

地下水が僕の声を色っぽくしてマチルダに近づいた…

「なっ…なっ…!?」

マチルダが顔を真っ赤にして僕にヨロヨロと近づいた。

「マチルダお姉ちゃん…僕の責任は重いよ?」

そう言って地下水はマチルダを縛り付け、動きを止めた。

「なんの真似だい!?タバサ!!」

「マチルダお姉ちゃんが僕にやったことをテファにやるだけのこと…さあ覚悟!!」

そう言って僕の体はテファの胸に飛びかかった…終わった…僕の人生。

「嫌っ!!!」

テファが手を振り回し、ちょうど飛びかかった僕の顎にあたり僕は吹っ飛び、地下水が僕の手から離れた。

『そんなアホな…』

僕自身もそう思う。

 

数分後…僕達は外に出ていた。

 

「さて…地下水さん?タバサの体で何をしていたの?」

テファは僕に地下水を持たせ白状させていた。

「いや~その~俺も戦闘用のナイフとして生まれたからには戦闘に使って欲しいのに解体しか使わせて貰わなかったからつい…」

僕の声で地下水は喋り、言い訳をする。

「ついで済まされるのなら私もつい地下水さんを壊しちゃうことになるかもしれないわ。ふふふ…」

テファの目が笑っていない…しかも僕に迫って言ってきているから尚更怖い。

「今まで会ってきた奴らの中で一番怖えよ…嬢ちゃん。」

ドカッ!!

地下水がそういうとテファは巨大な大木を殴り、折った…僕よりも力あるんじゃないの…?

「反省する?」

「します!!」

テファの質問に地下水は即行で答えた。地下水弱っ!!

『坊主…後で絶対に』

ドンッ!!

「こんなことは?」

僕と地下水の会話を見透かしたかのようにテファは先ほどと同じように木を殴って脅した…

「二度と致しません!!!」

地下水は僕との話を止めてそう答えた。

「それじゃもういいですよ。」

鬼神となったテファはどこにもなく代わりにあったのは妖精のような笑顔をしているテファだった。

『坊主…一番怒らせちゃいけねえのは坊主の使い魔じゃねえ…このお方だ!!』

確かにあの時のテファは翼人退治の時のシルフが可愛く見えるくらい怖かった…

 

~おまけ~

タバサたんを愛する会はトリステインに全員がいる訳ではない。中にはガリアは当然、アルビオンやゲルマニアにもいるのだ。トムが見かけたのはそのアルビオンの会員でしかない…

では学院の生徒達はというと…

「オラオラ!とっとと行かんかい!!」

ビシビシッ!!

グリフォン、風竜…とにかくありとあらゆる空を飛べる手段を使ってアルビオンに向かっていた。

 

「(全く…竜使いの荒い人だ。)」

シルフは幸いにも鞭は入れられてなかったがそれでも無茶をいうのだ。

「早くしないとタバサが~っ!!」

そういって大泣きしているのはキュルケ…タバサがいなくなってからこんな調子である。

「落ち着いて。キュルケお姉ちゃん。」

エルザがキュルケを慰める…見た目的には逆だが年齢的には問題はない。

「おい!空賊だ!!」

ヴィリエがそう言い、指をさし、全員が船を見るとアイコンタクトを送った。

「エアハンマー!」

ヴィリエの一撃が船に入ると風メイジ達もそれに続き、一斉に攻撃した。

「錬金!!」

さらにそれに続き、土メイジ達が自前の紙などを船に被せるように誘導した後、油に錬金をした…

「ファイヤーボール!!」

そして一斉にファイヤーボールが船に襲いかかる…

 

アルビオンの王子ウェールズは焦っていた。アルビオンは現在内戦状態で堂々と王子だと言えば大将である自分の身が危なくなるのはわかっていた。空賊に紛れていれば貴族派である人物達の目を誤魔化せると思ったのが逆に仇となった。まさか集団で竜やグリフィンなどを使いこちらに襲ってくるとは思っていなかったのだ。空賊は襲っても襲われても仕方ない。それだけ空賊は嫌われているのだ。

「(こんなところで死ぬのか…?)」

ウェールズはもはや絶望しか残らず落ちていった。

しかしそれを救ったのはシルフだった。

「(ふっ…墜落死ではなく風竜に食われて死ぬか。なんとも情けない姿だな…)」

ウェールズはシルフが敵だと思い、捕虜の身となったと勘違いして目を瞑り諦めた。



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27話

ようやく更新出来ました!


改めて杖を持ち、僕はシルフと感覚を共有した。

「タバサ~っ!!」

…なんかキュルケがものすごい大声で泣いている…僕はそれを信じられなかったので感覚共有をやめた。

 

「タバサ。どうしたの?」

「もうそろそろ僕はここを出なきゃいけない。」

「それって…?お別れってこと?」

「そう。だからお礼を言うね。ありがとうテファ。」

「ううん…お礼はいいよ。その代わりちょっといい?」

?何だろう…

 

チュッ!

 

テファは僕に近づくと僕の額にキスをした。

「…」

僕はそれに対応できずボーッとしていた。

「えへへ…これでタバサも私の家族ね。これから困ったらここに来てね。」

「え…うん。」

僕はそれしか言えずテファの笑顔しか見ることが出来なかった。

 

ドンっ!!

そしてそれを台無しにしたのは1人の金髪のイケメンだった。

「うっ…ここは?」

そしてその男はそう呟き、起き上がった…

「ぐえっ!?」

そしてその上から降ってきたのはキュルケだった。キュルケ…なんてことをしているんだい?多分だけどこの人結構なお偉い方だよ?

「タバサ!!」

キュルケはテファをガン無視して僕を抱き締め、涙を流していた。

「怪我はない?!何かされなかった!?」

「されていない。」

「良かった…タバサが誘拐された日から一睡も眠れなかったのよ。だから…タバサ、眠らせて…」

僕の場合、騎士としての任務がある為一睡も眠れない時は何回かある。キュルケは騎士ではなく普通の貴族だから僕みたいに一睡も出来ないなんてことはほとんどないはず。だから相当キュルケにとって堪えた…

「うん。お休み…キュルケ。」

僕はキュルケをおとなしく眠らせ、キュルケをおぶり、もう一人の青年をレビテーションで持ち上げた。

 

「そういえばマチルダ…こっち来て。」

流石にテファの前でマチルダが怪盗フーケという訳にもいかないので地下水を使ってサイレントをかけた。

「なんだい…?わざわざサイレントなんかかけて…」

「フーケ…怪盗業をやめて僕のところで働かない?僕の場所で働けばテファ達を養うことが出来るよ。」

「やだね。私は貴族に復讐するためにこの業界にいるんだ。今更やめられるか。」

「明らかにその盗んだお金でテファ達を養っているよね?そうでなきゃトムみたいにガチムチのマッチョなんてできないはずだよ?」

あそこまでの筋肉があるってことは環境が良いって証拠…だからと言って環境は良すぎても僕みたいに成長しないパターンもある。

「うぐっ…確かにそうさ。でもあの子達のお腹空いたって声を聞くと私は放って置けないんだよ…」

「だからって盗んだお金で育ちましたなんてテファ達は胸張れるの?」

「…う…わかったよ。だけどそのガキが誠心誠意込めて謝ったらね。」

「…もしかして彼?」

そう言って僕はレビテーションで持ち上げた青年を見るとマチルダは頷く…

「こいつはプリンス・オブ・ウェールズの名前で知られている王子様さ。知らなかったのかい?」

いやまさかね…マヌケなことをやらかすのが王子様なんて信じられる訳ないでしょ?それを言ったら僕も大概だけど…

『坊主の場合は女装させられて王子様というよりも姫様みたいだしな。』

地下水は後で〆るのは確定と…

『事実だろ!?』

うるさいよ、地下水。

 

「僕の方でなんとかしてみせるよ…」

一国の王子に謝罪を求めるのは難しいけれどウェールズ個人に謝罪を求めるのは簡単だ。その理由はウェールズはモード大公静粛事件にほとんど関わっていない。しかしこの事件は王族にテファというハーフエルフの存在を隠すためでもあり、公式に謝罪をしたらテファの存在がバレ殺される…だから内密に謝罪して向こうが何も求めないのがベストなんだけどそうもいかない。謝罪を受け入れる代わりとしてアルビオンに何かを求めるはず…

「嘘だよ。貰える物はちゃんと貰ったしね。」

そう言ってマチルダは腹をポンと叩く…まさか妊娠なんかしてないよね?

「ふふっ…」

僕と目が合うとマチルダは笑っていた…これでマチルダが緑髪の子供じゃなくて青髪の子供産んだらとんでもないスキャンダルになるから早めに手を打たないと…

 

僕達はシルフにのり、魔法学院へと帰宅しようとしていた。

「よし!全員帰還する!」

意外なことに生徒を総率していたのはヴィリエだった。つい最近までの面影はどこにもなく、まさにカリスマだった…僕にもそのカリスマよこせ!

『坊主、そうおこんなよー大体坊主はあいつに勝っているんだろ?』

まあそうだけど…ってなんで知ってるの!?

『坊主の記憶から少しな。あとお前を背負っている竜だ。』

…どんだけ有能なのさ君は。

『それにしても驚いたぜ…まさかブリミルの時代にいったことがあるなんてな。』

あの事件は思い出したくないからあまりほじくらないでね。

『ガンダールヴが変態ドSエロフとか?』

うっ!?

『ブリミルはドMとか?』

ぐぉぉぉ…

『フォルサテしか常識人がいなかったとか?』

がはっ…

『知られたら末代の恥になる秘密を持つ変態達がご先祖様なんて相棒達は運が悪すぎるぜ。』

もうやめて!僕のライフはゼロだよ!!

『坊主弄りはここまでにしてだ…なんでフーケをスカウトしたんだ?』

スカウトする気は無かったんだけどね…僕の子供身ごもっている可能性も否定出来ないし、ガリアから命令されているんだ。

『ほう?どんな?』

フーケをガリアに連れてけって任務。

『フーケ死ぬぜ…?』

いざとなったら僕が伯父様に頼んで弁護するから。

『伯父様って…まさか坊主、シャルロット・エレーヌ・オルレアンか?』

そうだよ。女の子っぽい名前だからタバサって名乗っているんだ。

『ふーん…それよりもその伯父様とやらに頼んでも無駄だと思うぜ。フーケは確実に死ぬぜ。』

北花壇警護騎士団って知っている?あそこは本来死刑で死んでいるはずの人間がうようよいるんだよ?

『なるほど…フーケを世間的に殺しておいて北花壇警護騎士団に入団させようって腹か。』

その通り。その代わり結構ブラックだけどね。僕以外の人は過労で倒れたことがあるし、酷い人だと一週間で過労死するって聞くくらい酷い。

『むちゃくちゃだな。』

でしょ?僕の父親にあたる人物が3日に一回脱獄するから負担も凄いんだ。

『あ~なるほどな。』

「ねえ、タバサちゃん。」

エルザが僕の首に手を当てて今にも噛みつきそうになっていたので僕はそれを払った。

「ちゃんをつけないでくれるかな?エルザ。こう見えても僕男だし。」

「へえ~モテ男だね~…キュルケお姉ちゃんは気づかなかったけどキスマーク付いているよ?」

僕は慌てて額を隠すとエルザはニヤニヤと笑っていた。

「ふふっ、カマかけたのに引っかかっちゃって…タバサちゃん面白~い!」

「誰にも言わないでよ?」

「え~?どうしようかな?これで許してあげるよ。」

そう言ってエルザが取り出したのはエルザの服を少し大きくした紺色のゴスロリだった。

「これを僕に着ろと?」

エルザはこくりと頷いた。

「だってタバサちゃんの恥ずかしがる姿かわいいんだもん。」

「かわいいとか言わないでよ…」

『坊主はモテるねえ…弄られるけど。』

地下水!後で叩っ斬るよ!?

『おお怖い怖い。』

「それよりも着るの?着ないの?」

ここで着ないを選んだら…キュルケが竜よりも恐ろしい存在になるのは目に見えている以上選択肢は一つしか無かった。

「着るよ…だけど今空飛んでいるから学院についたらでいい?」

「うん!」

その笑顔は吸血鬼らしい小悪魔の笑みだった…ちくせう。




評価のところが真っ赤になっていました…ただ高評価をくれた皆様に感謝です!!ありがとうございます!


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28話

ようやく投稿出来た上に、ギャグだけの話です。それでもいいのならご覧くださいませ。


アルビオンからトリステインに戻ってきた僕は魔法学院でのんびりと過ごしていた。

「♡〜」

僕の腕にしがみつくのはエルザ。なんでしがみついているのかはエルザの格好を僕がしているから…?

「エルザ、もう少し離れない?暑いんだけど…」

「や〜♡」

かつてない程デレデレなエルザは余計に僕にしがみついて離れようとしない…

 

『坊主も大変だな。ケケケ…』

地下水、叩き折るよ?…シルフがだけど。

『あの風韻竜かよ。…そういえばその風韻竜の姿が見えないけどどうしたんだ?』

さあ?確か餌を採ってくるとか言っていたけど…シルフの食べる物ってわかんないだよね。この前は油虫(ゴキブリ)とか真顔で食べていたし、オーク肉とかもボリボリと骨まで食べていたから多分肉食なのかな?その割にはハシバミ草は食べられなかったから例外もあるんだろうね。

『ハシバミ草を食べる物好きは坊主くらいのもんだぜ。俺は少なくともハシバミ草を好んで食べる奴は坊主しか見たことはねえよ。』

あんなに美味いのに?

『普通の奴らと坊主とは舌の感覚が違うからな。それを抜きにしてもあの風韻竜は変わっているけどな。』

 

「上ォォトゥゥゥゥウォォォォォだァァァァ!!貴様ァァァァ!!」

僕の目の前にサイトが転がり、その先にはシルフが仁王立ちしていた。

「けっ!てめえとは分かり合えるとは思っていたが…拳でどうやら決着をつけなきゃいけねえようだな!!」

サイトが立ち上がり片刃の剣を構えるとシルフも訳のわからない拳法の構えをとった。これは止めないと…

 

「お前の主人と私のご主人のような貧乳がいいんだろうが!!この分からず屋が!!」

…なんてくだらないことを争っているんだ…ってさりげなく僕のことを女の子扱いしてなかった?

「バッキャロー!!巨乳にきまっているだろ!!!アレはな…人類に与えられた究極の至宝なんだぞ!!」

サイト…ルイズに聞かれたら殺されるよ?というか去勢されてもおかしくないよ…

「貧乳ゥゥゥ!!!」

「巨乳ゥゥゥ!!!」

出来れば関わりたくないので僕はこっそりと逃げようとした。

「おお!ご主人ではないか!!それにエルザも!!丁度いい!貧乳の素晴らしさをこの平民に教えてくれないか!!」

「え!?ちょっと…!!」

シルフは僕の意見をガン無視して僕をサイトの前に立たせると僕の杖と地下水を取り上げて胸をクリクリ弄った。

「シルフ…!それはちょっ…!!」

僕は真っ赤になって止めようとするが流石は韻竜。僕の力では逆らえなかった。

「見ろっ!この寂しいがなんとも言えない保護欲を駆り立てる胸…これが貧乳の素晴らしさだ!!」

「黙れい!巨乳にはな…色々な希望と夢が詰まっているんだよ!!キュルケ程の胸になると…俺のオカズにもなって…ゴチソウサマです!!」

も、もう突っ込みきれない…

「巨乳ゥゥゥ!!!」

「貧乳ゥゥゥ!!!」

 

「ちょっとうるさいわよ!」

この争いを止めたのは巻き毛の貴族モンモランシーだった。止めようとしたのはありがたいけど…火の中に火薬をぶち込むような真似だよ。それは。

「「微乳には聞いていない!!!」」

ドカッ!!

モンモランシーは一頭と1人にぶっ飛ばされてしまい、ストッパーにもならなかった。

 

「さらに貧乳ってのは誰もが通る道なんだ!巨乳なんてものはイレギュラーでしかないんだよ!」

「何おう!?巨乳は…グエッ!?」

サイトの首に長い鞭が絞めつけ、サイトは呻き声を出すと気絶してしまい、シルフはその黒いオーラに包まれた人物に恐れて思わず僕を離した。その隙に僕は杖と地下水を回収した。

 

鞭を持った人物はトーンを落とした声で語った。

「バカ犬ぅ〜?何をやっているのかしら?ふふふ…」

その犯人はサイトの主人ルイズだった。ルイズはサイトを引きずって自分の部屋へと戻っていくとサイトの断末魔が聞こえた…

「流石、ルイズ嬢。貧乳の素晴らしさをわかっていただけるとは…イタッ!?」

僕はシルフを杖で殴るとシルフは汗をダラダラと流していた。

「えーとご主人?怒っている?」

「やだなぁ…シルフ。僕は怒っていないよ。」

僕はそう言って地下水に命令を出した。

「そうか安心した…」

「僕はね。激怒しているんだよ。」

シルフは突如、悟ったかのような顔になると僕に背中をむけた。

「おっと、学院中に貧乳についての素晴らしさを教えなければ。」

シルフはそう言ってダッシュで逃げようとするけどそれが仇となる…

「(エルザ、GO!)」

と僕がアイコンタクトで合図するとエルザは真っ先にシルフに飛びかかってシルフを転倒させた。

 

「ご主人…そんな怖い顔だとモテないよ?」

シルフが言い訳にもならないことを抜かしやがったので僕の中で何かがキレた。

「お仕置き。」

その後、シルフは反省したので許した。

 

~おまけ~

 

聖エイジス32世こと教皇ヴィットーリオ・セレヴァレは困惑していた…その理由はジョゼットを傀儡にするために自分の部下兼使い魔を使って手懐けようとしたらそのジョゼットに調教されジュリオは男の娘となっていたからだ。報告は使い魔と主人が成り立つ念話なのでジュリオが男の娘になっていたなどとは知らされていないので尚更驚いていた。

「ジュリオ…」

「教皇様、この子の名前はジュレッドですわ。」

ヴィットーリオがジュリオの名前を呼ぼうとすると目が笑っていないジョゼットに指摘されてしまい、冷や汗をダラダラとかいた。もしここで無視すれば何が起こるかわからない…あのガキ大将だったジュリオを調教したほどの人物だ。貞操の危機などは覚悟した方がいいだろう。そう判断したヴィットーリオはジュリオを売った。所詮部下などそんな扱いである。

「ジュレッド…一体何があったのです?」

「実は…」

それからジュリオことジュレッドは話した。

ジョゼットを手懐けようとしたら逆に調教されてしまい、男の娘にされてしまったこと。

そして今回は帰る際に運悪く捕まり、無理やりヴィットーリオのところに連れて来させるように指示されたこと…

「ヴィットーリオ様…私は…私は…わーーっ!!」

そしてヴィットーリオにジュレッドは泣きつき、胸に顔を埋めた。その時、ジョゼットは笑った…

「ひゃっ!?何をするのですか!?ジュリオ!!」

そう、ジュリオはヴィットーリオの胸を揉んだのだ。…ヴィットーリオは女性的な顔つきの男性である。教会ではそう認識されていた。だが…実際には女性だった。ヴィットーリオが女性だと知っているのは現在進行形で胸を揉んでいるこのジュリオのみ…だがこの部下がそんなことをする訳がない。となれば…この少女が指示したと考えられるだろう。情報提供者は先ほどよりも涙を多く流しているジュレッドだろう。

「お~や~?教皇様、もしかして女性なんですか?」

いやらしい笑みでジョゼットは笑う…ヴィットーリオはそれが何を意味しているのかわかった。女性というのは差別を受けやすい。ルイズの母カリーヌも男装して騎士になったくらいだ…女性だとバレればスキャンダルの格好の餌食だろう。

もしここでイエスと答えれば教皇を降りることになる…ノーと答えれば恥辱の刑にあう。どちらか迷ったが答えは決まった。

「いいえ、れっきとした男性ですよ。だからジュレッド…私の胸を揉むのをやめなさい。」

答えはノーだった。教皇という立場は各国の王よりも立場が上なのだ。そんな立場を捨ててまでイエスと答えることではないのだ。それにジュレッドも男としての誇りを捨てている…ここで男と主張しなければジュレッドに申し訳ないという罪悪感もある。しかしさりげなくジュレッドに胸を揉むのを止めさせるあたり流石と言えるが…それが間違いだった。

「じゃあ教皇様、私に胸を触らせて!」

ヴィットーリオはそれを聞いて頭を抱えた。

 

「殿方の胸など触るものではありませんよ。」や「無礼者!教皇である私の胸を触るとは何事だ!!」などと言えればいいがそこで言ってしまったら間違いなくジョゼットはあることないことを教会に告げるだろう。

かといって「どうぞご自由に…」といってしまえば女性としてナニカを捨てることになる。

しかしもう選択肢は決まっていた。いや正確には揉んでも良いと選択肢しか選べなかったと言った方がいい。

「ありがとうございます!」

ジョゼットは早速触り、その感触を確かめ…

 

ここからは省略させて頂く。なんでかって?ジョゼットが満足気に修道院に帰るときにはヴィットーリオは足が生まれたての子鹿よりも震えてしまい立てなくなっていたからだ。

余談だがジョゼットの破天荒ぶりをモデルにしたコメディー小説がバカ売れしたのは言うまでもない。




【速報】教皇は女だった!
…うん、予想なんて出来ませんよね(汗)…原作じゃあ男でしたし。

これで予想出来たならジョゼットドS協会のメンバーにしてあげよう!byジョゼット

次回こそはストーリーを進めたいと思います。


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29話

作者から一言。
文章力欲しいヨォォォォっ!!

…という訳でまたもやアンケートを実施します。詳しいことは活動報告にて説明します!


「シルフ…少しは反省した?」

「はい…」

僕はシルフを正座させて説教していた。シルフは風韻竜だっていうのはなんでこんなバカなことしか出来ないんだろう…と僕は思う。確かに翼人の依頼の時は凄かったけど…この残念すぎる竜をどうにかして欲しい。特にサイトと絡むと残念さが酷くなる。もうそろそろ使い魔の発表会が近いって言うのに…

「くっ…ぷ…ご主人後ろ!」

シルフが笑いを抑えた声で僕に後ろを振り向かせるとそこには犬の扮装をしたサイトがいた。

「その格好何?」

驚きすぎて返って冷静になり、僕はサイトに聞くと犬の声で「ワンッ!ヴゥ~ヴァン!」と答えた。

「そんな格好で歩くんじゃないわよ!このバカーッ!!」

ルイズの魔法もどきがサイトにあたりサイトが吹っ飛び「キャィン!キャィン!」と犬の声で悲鳴を上げた…ルイズの罰でやらせているかと思ったけど今の様子からそれは違ったみたいで良かった。

「ヴゥ~…バヴーッ!!」

サイトは転げ回りシルフに襲いかかる…だけどシルフは人間の状態でもグールを圧倒して倒せる実力がある。当然サイトは直線的な攻撃でシルフに通用する訳もなく宙を舞って頭から地面に激突し…煙が舞った。

「出直して来い。ガンダルーヴ。」

シルフがそういって笑うと煙が晴れ、その状態に僕とルイズは目を丸くした。

「ちょっとサイト大丈夫!?」

ルイズがそういってサイトに駆け寄るけど返事はない。

「…何これ。」

下半身から上の胴体はすっぽりと地面の中に埋まっていた。その為返事も「ゥ~」だのなんだのとしか聞こえない。

「タバサ手伝って!」

「ん。」

ルイズは僕同様に華奢な身体つきだけど箱庭で育ったはずのお嬢様とは思えないほど力はある。そのルイズが僕に助けを求めることは本来ありえない。悔しいけど僕の方が力はないから手伝って貰うなんてことは彼女のプライドが許さないはず…もっとも常識人なのでプライドが高いというイメージはほとんどないけど。話しを戻そう。プライドの高いルイズが僕を使ってまで助けようとすることからこの使い魔を大切にしていることがわかる。本人がこのことを聞いたら「バカ言っているんじゃないわよ。一応使い魔なんだから助ける時に私のプライドくらいは捨てるのは当たり前よ。」とか言いそうだけど。

「中々抜けないわね…」

しかし僕達2人がサイトを持ち上げようとしても地面から抜けない。つーか元々シルフの責任だしシルフに手伝わせるのが筋でしょ!?僕はそんなことを思い、シルフに呼びかける。

「シルフ。手伝って。このままだとサイトが死ぬ。」

サイトが死ぬなんてことはまず想像つかないけどこんな状態だったら普通は窒息死する。

「こんなところで死ぬような奴か?まあご主人の言うことだ。一気に引っこ抜くからご主人やルイズは離れてくれ。」

うわ…すごい上から目線。後でお仕置きしよう。

「はぁぁぁあッ!シルフ土竜振動拳!」

またもや訳のわからない拳法で地面を拳で叩くとその反動からサイトが飛び出してきた。…本当に抜けたよ。

 

「いや~…まいった参った。」

すっかり元通りに戻ったサイトがそういってスボンを叩いた。

「犬、犬、犬ってルイズがうっさいからさ~本当の犬ってどんな奴なのかな~?って思って催眠術で自分が犬だと思いこませたら暴走しちまった。」

…やっぱり理解出来ない。サイトはおっぱいが好きだし、変なところに拘る…絶対にテファに会わせちゃいけない人物だというのは理解出来た。

「…じゃあ、あの犬の扮装は?」

「あれはルイズが用意した罰。」

僕の中で一気にルイズの評価が低くなった。唯一の常識人かと思ったのに…

「ち、違うわよ!こいつが勝手に扮装しただけよ!」

ルイズは僕の視線に気づいたのか慌てて弁解するけどサイトがルイズの肩に手をおいて首を横に振った。

「ルイズ君、言い訳は見苦しいぞ。」

その一言でルイズはぶち切れた。

「この犬~っ…どうやら立場わかっていないようね。」

そういってルイズは杖と鞭を構えるとサイトの様子が変わった。

「…ヴ~っ!!」

またもやサイトが犬となりシルフに襲いかかるけど…また地面に頭から埋まりシルフに助けだされた。

その後色々と検証した結果「犬」と言葉で聞くとサイトは性格が犬になることがわかりサイトの前では犬は禁句となった…

 

それからサイトたちと別れ、僕はシルフについて考えていた。シルフは「シルフ風竜拳!」などとほざきながら腕を振って木の枝を細かく切り刻んで彫刻を作っている…これはこれで良いかもしれないけどキュルケのフレイムに比べたら大したことない…って感じちゃうんだよね。それなら風竜の姿になって飛んだ方がまだアピールが出来る。

『坊主、俺暇なんだけど…なんかないのか?』

地下水…そういえば存在自体忘れてた。

『ひっでぇ~…まあ俺も寝てたし仕方ないちゃ仕方ないけどよ。』

そういえば地下水は人間が犬みたいになったのって見たことある?

『犬ねえ…そいつはねえが人間が亜人の身体を乗っ取ったって噂は聞いたことはあるぜ』

…噂か。見たことはないってこと?

『まあ俺の場合傭兵とは言え暗殺の仕事が主だったからな。見たことがあるのは貴族どもの使い魔や騎乗竜くらいのもんだ。あとは無茶苦茶な依頼でエルフくらいのもんだな…吸血鬼も見るのはエルザが初めてなんだぜ。もちろん韻竜も初めてだ。』

そうなの!?

『そのおかげで坊主に起こるトラブルは楽しいったらありゃしねえ。…ところでフーケをガリアに持っていかなくて良いのかよ?一応入団させるんだろ?』

そういえば忘れてた。でも大丈夫だよ。一応ガリアの本部にマチルダのことは連絡しておいた…!?って…紙?イザベラお姉ちゃんの仕事の紹介だね。

『向こうは激おこプンプン丸のようだぜ。』

激おこプンプン丸…って何それ。

『めちゃくちゃ怒っているってことだよ。それよりも坊主、中身はなんだ?』

え~と…ミノタウルス討伐だって。場所はエズレ村…

『エズレ村か…あそこはしけた村で盗賊どもの絶好のカモだから盗賊がミノタウルスに化けているって可能性が高いだろうな。』

よく知っているね…そんなこと。

『あの武器屋でいろんな連中に触られて来たからな。そん時に知ったんだよ。』

地下水やっぱり反則だよ…その能力。

 

「ご主人行くのか?」

シルフは10個目の彫刻を終えると僕に駆け寄ってそう言ってきた。

「ん。ロングビルを持ってきて。」

「イエスマ…イエッサー!」

シルフも僕のことを女の子扱いしてきたな…やっぱりしばいておこう。ペルスランもあの風韻竜も有能なのに…どうしてこうなるんだろうね。

『そりゃ坊主が女みたいな格好しているからだろ?』

これはエルザに脅されていて…僕に女装癖があるわけじゃないよ!?

『それじゃ俺が坊主に乗っ取った状態で赤髪の嬢ちゃんに言っちゃおかな~?「僕はテファと結婚するから別れよう」ってな!』

ちょっとやめてよ!!そんなことしたら本当に叩き折るからね!!

『冗談だよ。冗談。ケケケ…』

もうやだこいつ…なんとかして…

 

「ご主人連れてきたぞ。」

シルフが気絶したマチルダを担いで来たので僕は唖然としてしまった…仮にも僕を実力で倒した怪盗フーケが人間形態のシルフにやられるなんて…どんだけ強いのさ?シルフは。ひょっとしてあの翼人退治の時の雰囲気並…いやそれ以上に実力はあるんじゃないの?

『深く考えないほうが良いぜ。あいつは風韻竜じゃなくて多分シルフっていう生き物だ。』

そうだね…あんなのに勝てるのは伯父様と変態と烈風カリンくらいしか想像出来ないよ。

『…坊主の記憶から推測しても勝てる相手はいねえと思うぜ。』

従者としては頼もしいのに…どうして残念なんだろ?

『さあな。そういう体質なんじゃないか?』

…あり得そう。伯父様によるとあの変態も変態になったのは僕が生まれてからって聞くし。

「それじゃご主人、行こうか!」

シルフは風竜の形態になり僕と地下水を背中に乗せ…ガリアのエズレ村へと向かった。



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30話

~エズレ村~

 

そんな訳で僕達はエズレ村にやってきた訳だけど…

「この村は活気がないわ…。まだサビエラ村の方が生き生きとしてるよ。」

エルザの言う通り、この村には活気がない。サビエラ村の時ですらピリピリしていたのにこの村は諦めしか感じない。

「全くこんな村じゃやってらんないね。これで領主がクソ野郎だったらタマ潰して屋敷にあるもん全部盗んでやりたいくらいだよ。」

「タマ潰して…ってさりげなく恐ろしいこと言わないでよ。領主がこの無力化した村人達を危惧して依頼は届いている訳だし、物騒なことは止めてよ?」

まあマチルダの気持ちもわかるけどね。これで領主がクズだったら謎の風韻竜が屋敷を襲う可能性もあったと思う。…その風韻竜を倒そうなんて考えたら返り討ちにあうのがオチだけど。

「はいはい。ところでミノタウルスだったけか?その情報がなきゃ話にならないしとっとと聞き込みをしにいくよ。」

流石魔法学院の秘書を務めているだけあってこういうことは得意みたいだ。

「それじゃ私は憂さ晴らしに行ってくる。ミノタウルスと遭遇したら念話で報告する。」

シルフは憂さ晴らしに向かい、肩を振り回しながら森の中へと入って行った…僕はもう何も突っ込まないよ。

「それじゃ私は村の子供達に聞いてくるね。マチルダお姉ちゃんだと聞けないことも聞けるから。」

聞けないことも聞けるって…大丈夫なんだろうね?この中で一番変態チックなエルザに任せるととんでもなく卑猥な事になりそうで怖い。女の子の表現だとエルザ×ロリな展開になりそう。

…仕方ない、一番マシなマチルダについて行こう。

 

マチルダと僕はそんな訳で生贄になるジンという男の子の家で事情聴取していた。

「ミノタウルスはまだ10にも満たない子供…それも男を生贄に村に手を出さないと言っているんですが…もう限界です。これ以上殺されたら私達の元に若い男はいなくなり…子供もいなくなります。そうなればこの村は滅びてしまいます。我が孫ジンの為だけでなくこの村の為にも…どうか騎士様…ミノタウルスを、ミノタウルスを退治して下さい。」

ジンの祖父に当たる人物がそう言って泣いて懇願して来た。僕はそんなことをせずとも引き受けるし、ミノタウルスがどんな奴なのか興味あるしね。

「元々そのつもり。」

「おお…ありがとうございます。」

僕が引き受けるとそのお爺さんはまるでブリミルを崇めるかのように崇めた。…実際にはブリミルなんてただの変態だけど。

「少しよろしいでしょうか?ミノタウルスは何故村のショタ…失礼、少年達を生贄にするのでしょうか?」

マチルダ…ショタって言っちゃったよ…でも気になるよね。生贄にするなら男の子じゃなくても問題はないはず…

「それはわかりません。ただミノタウルスがそう要求してきているのです。」

「ミノタウルスが…?」

「これをご覧下さい。」

そう言って持ってきたのは獣の毛皮だった。その内側に文字が書かれていた。その文字はガリア語で書かれているが荒すぎて僕には読めなかった…

「えーと…『次に月が重なる時、森の洞窟前にジンなる子供を用意するべし。』…期限は明日ですか!?」

マチルダって有能だよね…こういう時一番役に立つ…というか今回は僕が無能なだけだけど。

「ええ…騎士様がギリギリとはいえ到着してくださりありがとうございました。おかげでジンも一安心出来ます!」

「ありがとう騎士のお姉ちゃん達!」

そう言ってジンはマチルダにお礼を言った…決して僕に対して言ってない!だってお姉ちゃんなんて呼ばれるのはマチルダしかいないし小柄な僕じゃ頼りなさそうだし…あれ?なんか言ってて悲しくなってきた…

 

「それじゃその洞窟の場所を教えて下さい。」

マチルダが進行係りを務め、お爺さんに洞窟の場所を尋ねるとお爺さんは地図を出した。

「これを持って行って下さい…これはこの村とその洞窟付近までを書いた地図です。」

本来地図というのは価値が高い。素材に紙を使ったりするのでこんな貧乏なところでは買えない…それは当たり前だ。だけどその貧乏なところから地図を渡したということから本気でミノタウルスの騒動を解決したいって思っているということだ。

「ここからここまでの道を歩いていけば洞窟付近までたどり着くでしょう。どうかお気をつけて。」

「絶対に成功させます。」

僕は柄にもなくそう言って返事をした。

『おっ!?珍しく坊主が燃えてやがる!頑張れ頑張れ坊主!行け行け坊主!』

うるさい。

『ショボーン…』

 

うるさい地下水を静め、僕とマチルダは洞窟まで歩いていたけどハプニングが発生した。

「にしてもずいぶんこの道荒れているね。まるで誰かが魔法を使ったみたいに…」

そのハプニングとは木々がなぎ倒され道幅が狭くなり、土は盛り上がり荒くなっていることだ。おかげで歩きづらい。

「うん…ミノタウルスはこんなことはやらないだろうし、第三者がいるのかな?」

『坊主…相棒の竜に心当たりないか? 』

言わないでよ!だいたい想像したけどそんなこと予測もしたくないよ!

『現実はこんなものさ。』

確かにそうだけど…

「タバサ…どうする?」

地下水と会話をしているとマチルダが突然話しかけて来たので僕は対応出来なかった。

「何が?」

「この先は木が邪魔で流石に通れないし、フライも森の中でやったら傷だらけになるし洞窟の場所もわからない。…引き返す?」

確かにこの惨状は酷い…ここから先は木が邪魔でフライで飛ぼうにも上の枝葉が邪魔をして飛べない状況だ。確かに風メイジの僕なら問題はない。だけどマチルダは風の魔法とは相性の悪い土メイジ。おそらく風に関してはドットクラス…いや、それ以下の可能性が高い。その理由としてマチルダこと怪盗フーケは逃亡手段にフライではなくゴーレムを使って逃げていた。これは僕達だけでなく他の被害者からも得られた情報だ。とはいえ馬鹿でかいゴーレムではなく馬型のゴーレムだ。

フライを使えば目立つというのもあるが…問題は今までフーケがフライを使ったのを見たことがある人間はいなかったということだ。数百件にも及ぶ怪盗フーケの目撃情報はあるのにフライを使っている目撃情報はない。

つまりマチルダはフライを極端に嫌っている傾向がある。それは何故か?当然フライが苦手だから。とはいえ苦手と言われても二つある。他者と比べて遅いのか、それとも制御が出来ないのかのどちらかだ。ノロノロとフライで飛んでも制御さえ出来ていればぶつかることも傷だらけになることはない。となれば制御出来ないと考えていい。だから僕はフライを諦めて下を向いて状況を整理した。

 

「…いや考えがある。」

地下水…ゴーレムは作れる?出来ればこの木を退かせるような奴。

『ゴーレムは専門外だ。ドットクラスくらいのしか作れねえよ。それに坊主の魔力を使うんだ。ミノタウルス退治に使う魔力を今使うんじゃねえよ。』

いや…マチルダがミノタウルス退治をやる。というかやらせる。風メイジは洞窟の中だと不利だけど土メイジは逆に得意なステージだ。僕が洞窟の中で戦うよりもはるかにマチルダの方が良い。

『じゃあなんで坊主は付いてきたんだ?』

僕がやるのはマチルダがミノタウルスを退治するのを見届けるのとフォローだけ。

『だったらそれをマチルダに伝えたらどうなんだ?』

マチルダに伝えたら絶対嫌がると思う。それにこれはマチルダがやらなきゃ意味がない。それしかマチルダの生きる道はないんだよ。

『なるほど北花壇警護騎士団の入団試験がこれってことか?』

そういうこと。ミノタウルス退治だけでなく護衛が務まるかどうかの試験なんだよね。試験官は僕。この試験は試験者が知らない状態でやることが条件。

『なるほどね。そういう理由じゃあ仕方ねえ。出来るだけやるか。』

僕は地下水を持ち、地下水にゴーレムを作らせ前にある木をどかした。

 

「なるほどね。そういう考えか…それじゃ私も軽くやるか。」

マチルダは地下水よりもスムーズにゴーレムを作り、木をさっさとどかし始めた。




まだまだミノタウルス編は続きます。


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31話

書いている作品で一番評価高いのがこの作品なのは…やっぱりタバサが振り回される主人公だからなんでしょうね。


それから偵察として洞窟前に辿り着いたのは良いけれど…

「やあご主人。遅かったね。」

シルフが人らしきものを蹴っ飛ばすと呻き声が聞こえた。

「シルフ…それは何?」

それとはもちろん拘束された男達だ。

「ああ…こいつらは盗賊だ。私を騎士と間違えて攻撃したから反撃して尋問したらベラベラと喋ってくれたよ。ミノタウルスを騙って子供をアッチ系の貴族に売ろうとしたらしい。これが証拠だ。」

そう言ってシルフが出したのは書類とミノタウルスに似せた毛皮だった。

「こりゃ確かに目がくらむよ…1人につき500エキュー…美少年であればさらに1000エキュー追加。どんだけ欲しいんだよ…この貴族。」

マチルダを素の話し方に戻す程ふざけた値段だった。この盗賊と依頼した貴族のタマ壊しても問題ないよね?

「それよりも今まで何人犠牲にしてきた?」

僕がそういうと盗賊達は顔を真っ青にした。

「し、知らねえ!今回が初めてなんだ!!まだ1人もやっちゃいねえ!」

「本当だ!だから許してくれ!」

「もうあれはいやだ!!」

…どんな尋問をしたのさ?シルフ。まあいいや。こんな時こそ…地下水の出番だ。

『任しておけ。』

僕は1人の盗賊に地下水を装備させ記憶を読み取らせた。

「…ダメだ。こいつらはミノタウルス騒動を利用して金稼ぎしようって企んでいたみたいだが実行に移すのは本当に初めてだ。」

そう言って地下水が盗賊の口を使って語ると盗賊の一味が不気味がっていると僕は異変に気がついた。メイジはトライアングル以上になるとその性質にあった探知が出来るようになる。土だったら地面の感覚、風は空気の動き…という風に。

 

「なるほどね…それじゃ後ろのミノタウルスは無関係なんだね?」

僕がそういうと洞窟から物凄いプレッシャーが襲いかかってきた。間違いなく僕が出会ってきた中でもシルフや伯父様含めて五本の指に入れるクラスの実力者だ。チンケなドラゴン相手10匹の方がまだマシなくらいだ。

「…」

土のトライアングルであるマチルダも気がついていたんだろう…まるで桁が違うと。無理もない。現にそこの盗賊はあまりのプレッシャーに気絶し、こういう仕事に慣れている僕ですらこんなプレッシャーを感じたのはあの変態親父を除けば初めてだ。

「ほう…面白い。」

シルフはまるで玩具を与えた子供のように笑顔になり、構えた。

「ふむ…どうやらそちらの方々は相当な実力者ですね。」

そう言って現れたのは獣耳とミノタウルスの特徴であるねじれた角を持った女性だった。

「これは失礼…私は元貴族のラルカス。今はただのミノタウルスだよ。」

ラルカスって…男の名前だよね?なんで女になっているの!?…という突っ込みは出来ない。それだけこの自称ミノタウルスのプレッシャーが凄い。

「ミノタウルス?その姿がミノタウルスだっていうのかい?」

マチルダは二番目に聞きたかったことを聞き出そうとするとラルカスは顎に手を添えた。

「詳しい話は奥でしよう。付いて来い。」

ラルカスはそういって背を向けて洞窟の中に入っていった。

「…っ。」

シルフが洞窟の中に入った途端眉を寄せた。

「シルフ?」

「…何でもない。」

絶対怪しい。

「こいつは驚いた…こんな鍾乳洞の壁があるなんてね…」

マチルダはそれを見ようと近づくとラルカスが大声を上げた。

「近づくな!」

その怒鳴り声は僕とマチルダを震えさせるには十分な威圧があり、マチルダは顔を青ざめ悲鳴を上げた。

「ひっ!?」

「…すまん。そっちは土が剥き出しになっていて大変危険な場所なんだ。さあこっちだ。付いて来い。」

そういってラルカスは謝り、僕達を洞窟の奥まで連れて行った。

 

「私はかつて人間だった…それも当時のガリアでは珍しい女の騎士だった。私は10年ほど前、不治の病にかかり旅をしていたところエズレ村の依頼でミノタウルスと戦い、勝利した。そこまではよかった。だがミノタウルスと戦ったことによって人間である身体の寿命を縮めることになった。だが窒息死させたミノタウルスはほぼ無傷…そこで私はミノタウルスに脳を移植しミノタウルスの身体を得た。これでも医療に心得があったからな。」

「脳を移植って私には完全に理解出来ない世界だよ…」

マチルダはそうだろうね…僕と地下水はあらかじめそういう知識があったからやっぱりあったのか…って程度だけど。

『坊主、言っておくが俺はこいつのことを言ったんじゃないからな?』

わかっているよ。でもこれって裏はともかく表の世界でやると外道みたいな扱いをされるんだよね。

「だが…ミノタウルスの身体で村の連中に挨拶に行こうものなら間違いなく話を聞かないだろう。鋼鉄の身体に水のスクエア…確かに戦闘なら無敵かもしれない。だが私は村の連中にミノタウルスを倒したことを伝えたくフェイスチェンジの応用で人間の身体に近づけようとしたが…これが限界だった。」

「普通に手紙で良くない?」

僕の呟きは無視され、マチルダが少し考えるような素振りをしていた。

「さっきから気になっていたんだが…ミノタウルスは雌だったのかい?私はそういう医療系の知識は乏しいけどなるべく同性の方がいいんじゃないのかい?」

確かに…マチルダのいうこともわからないでもない。これでミノタウルスが雄だったらラルカスは男として生きなければならないし、それはどれだけ辛いか想像に難い。

「ああ…幸いなことに雌だった。このミノタウルスが雄だったら私は男として生きなければならなかっ…っ!!」

いきなりラルカスが頭を抑え、マチルダが駆け寄るとラルカスは手を伸ばしてマチルダが駆け寄るのを止めさせた。

「心配無用だ。これは脳を移植した時に現れた副作用みたいなものだ。エズレ村に行って伝えておいてくれ。ラルカスとミノタウルスは相打ちになって共に死んでいた…と。」

「わかった。マチルダ、シルフ行くよ。」

僕はそう返事をして帰ることにした。

 

「お帰り、タバサちゃん。」

村に帰るとエルザが笑顔で迎えていたけれどその笑みは殺気がこもっておりエルザが不機嫌だとわかった。

「エルザ…ただいま。」

僕はなるべくそのことに触れず逃げようとした…しかしエルザは逃してくれなかった。

「…他に言うことないの?」

完全にエルザから笑みが消え、僕は汗をダラダラと流した。

「置いていってごめん。」

僕は呟くようにそういって謝ったがそれでは許さないのか

「ん~っ…じゃあミルクちょうだい。それで考えてあげる。」

ミルク?…牛の乳かな?それくらいなら酪農家にでも頼んで買えばいいだけだし問題はないよね。

「別にいいけど…」

「やったーっ!!」

…何だろう、ものすごく嫌な予感がしてきた。

「やっぱりなしで。」

「ふ~ん…タバサちゃんって約束を破るんだ?男の子なのに?」

うっ…それを言われるとキツイ…

「こんなでっかいモノがあるのに女の子なんて…言えないよね?」

エルザはスボン越しに僕の股間を握り、それが何を意味するか理解してしまった。

「エルザ…ミルクを用意するからその手を離して…」

「ありがと♡タバサちゃん。」

その夜、僕はエルザに自分のミルクをたっぷり絞られることになった。




ミノタウルス編続きます。


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32話

最近18時に投稿するのが多いような…まあそんなことは気にせずどうぞ!


~翌朝~

僕はエルザに絞られげっそりとしていたけどシルフが妙な違和感を感じ取っていたので再び洞窟に向かっていた。

「ふぅん…そのラスカルさんだったけ?あんまり鵜呑みにしない方がいいんじゃないかな?ミノタウルスに移植した云々はともかく、相打ちとかミノタウルスを倒したと伝えるのは向こうにとって行動しやすくする為の口実だと思うよ。私も同じ立場ならそうするでしょうし…」

エルザにそのことを伝えるともっともらしい答えが返ってきた。

「流石に50年も長生きしている吸血鬼は違うね。脳筋馬鹿とは大違いだよ。」

ビキッ!

マチルダが皮肉るとシルフの米神に青筋が入った。

「ほほう…脳筋馬鹿とは誰のことを言っているのかな?怪盗(笑)フーケ。」

ビキッ!!

シルフはマチルダを皮肉り、互いに米神に青筋が入った。

「反応するってことは自覚あるんじゃないか?」

「「…」」

一匹と一人が対峙し今にも決闘になりそうな最悪の雰囲気の中、僕は報告する。

「着いた。」

僕は2人を止めると舌打ちをしながらも喧嘩を止め、全員で洞窟の中へと入り鍾乳洞前まで辿り着いた。

 

「マチルダ。ここを魔法で掘って。」

僕がそう言って土を杖で指すとマチルダは首を傾げながら尋ねた。

「…こんなところを掘ってどうするんだい?」

「掘ればわかる。」

「わかったよ。」

マチルダは魔法で掘り始め次第に白い何かが見えてきた。

「…こいつは…!?」

僕はそれを何度も見てきた。そしてシルフも…同じようにそれを見てきた。

「人間の骨かい!?」

マチルダは流石に予測していなかったようで大声を出してしまった。

「声がデカイ。僕達はラスカルが本当に子供を殺していないか調査しに来たんだからラスカルにバレると面倒なことになる。」

「…すまない。それより何でこんな物が?」

「おそらくだけど…「それは子猿の骨だ。」…」

僕のセリフを遮ったのは先日会ったミノタウルスことラスカル。気配を消して来るなんて相変わらず恐ろしい相手だ。

 

「違う。こいつは人間の子供だ。しかもちょうど成長期に突入した頃のね。」

シルフはそう言って反論すると続けていった。

「私はね、鼻が利くんだ。最初にこの洞窟の奥まで入った時青臭い人間の精○の匂いがしたんだ。それこそご主人よりも幼い子供の臭いがね。」

言っちゃったよ…エルザですらミルクって比喩表現だったのに…

「それは子猿だ!私が埋めたのだから違いない!!」

ラスカルは大声で否定しその様子は滑稽だった。

「その割には随分と必死だな。もしかして図星か?」

シルフ…これ以上挑発しないで…

「黙レエェッ!!」

ラスカルは持っていた斧でシルフに襲いかかるとシルフはそれを受け止めた。勝手に喧嘩しないでよ…このままじゃミノタウルスがシルフに殺られかねない…

『どうするんだ?このままやったらあのラスカルって女死ぬんじゃないか?』

だろうね…その場合少し違反するけど仕方ない。

「シルフ爆裂蹴り!!」

シルフが回し蹴りで吹っ飛ばし、ラスカルが鍾乳洞の壁にぶつかり気絶すると洞窟が崩れ始めた。

「バカシルフ!もっと状況考えて!!」

もしここで洞窟が崩れれば僕達は生き埋めになる。そう思うと僕は怒鳴らずにはいられなかった。

「なぁに安心しろご主人。万が一洞窟が崩れても、私のシルフ風神拳で土を払ってやるさ。」

だめだこりゃ…シルフは当てにならない。…出来そうだけど。

「マチルダ、地下水は錬金で表面だけでも出口まで鉄にして固定化をかけて。エルザは先住魔法でラスカルを保護して。」

仕方なく僕は3人に指示した。この中で人間なのはマチルダしかいないけど…

「ったく…仕方ないね。錬金!私は右側をやるからナイフは左側をやんな!」

マチルダはそう言って地下水に命令すると地下水を持っている僕の左腕が動いた。どうでもいいが地下水のことはマチルダは知っている。

「それじゃ坊主。少し魔力喰うけど我慢しな!錬金!」

地下水は僕の口を使い、錬金の呪文を唱えた。

「もう大丈夫だよ…ラスカルさん。」

エルザはとっくにラスカルを救出しており、おぶっていた。

「全員退避!」

僕がそれだけ言うと四人とラスカルは出口に向かった。

 

ドドドド!!!

 

「ふう…危なかったね。」

マチルダはホッと一息つくとエルザにシルフを睨みつける。

「何故私を睨む!?」

訳がわからないと言いたげに反論するが元凶たる本人が言っても説得力皆無。

「…お仕置き。」

当然主人である僕はシルフを〆ることにした。

「何故だぁぁぁっ!?」

シルフの叫びは虚しく山彦となって消えていった。

 

シルフのお仕置きが終わりシルフは気絶するとラスカルが目を覚ました。

「う…ここは?」

ラスカルは頭を振って起き上がるが二日酔いにやられた人間のように頭を抱えてまた横になった。

「ラスカルさん。私達を襲った事は覚えている?」

エルザが尋ねるとラスカルは首を振り「覚えていない…」と答えた後影を落とした。

「…そうか。やはりか。」

ラスカルが呟くのが聞こえそれに僕は反応した。

「やはり?」

ラスカルはぽつりぽつりとこれまで何があったのか説明し始めた。

「…数年前から私はある夢を見続けていた。それは私が少年を腹上死させて死体を貪った夢だ。最初見た時は何の冗談だと思ったよ。そして3年前口元に血が付いているのがわかり、ようやく自分が子供を性的にも物理的にも食べていたことがわかった。それから私は私であろうと必死でいた。」

なるほどね。それがあの骨か…

「それがその姿なの?」

エルザが尋ねるとラスカルは頷いた。

「そうだ。人間の姿でいれば私は私でいられる。そう思っていたが一昨年と去年も理性を失ってしまい犠牲者を出した。」

「そう…」

「恥を忍んで頼みたい。私は私のまま死にたい…どうか私を殺してくれないか?」

「…本当に死んでも後悔しないの?」

エルザが口を開いてそう尋ねるとラスカルは首を振って答えた。

「…未練無くして旅をしていたのだ。今更未練などはない。」

「子供達を殺したんだからその分まで生きようとは思わないの?私だったら何としてでも生きようって思うよ。」

エルザらしいセリフだ…普段は僕をからかっているけど根元は泥臭い戦士なんだよね。

「少女よ…一体何者だ?」

「吸血鬼。そこの騎士様に仕えている騎士様の従者だけどね。」

エルザはそう言って僕のことを指差した。

「グールにしている訳ではなさそうだな…目が生きている。」

「あることを条件に仕えているからね。グールになんかにしたら元も子もないから。」

確かにね…血を吸うにはグールじゃ意味ないしね…昨日はミルクを吸い取られたけど。

「吸血鬼を従わせるとは大したものだ。少年。」

エルザはブルブルと震え…キレた。

「上から目線で言ってないでさっきの言葉取り消したらどうなの?!馬鹿ミノタウルス!」

エルザが狂気に呑まれたかのように怒鳴り、ラスカルの目が丸くなった。

「…私を殺さぬというのか?いつ暴走するかわからぬ亜人を!?」

ラスカルのその瞳は黒く染まり闇に呑まれたかのように歪んでいた。こんな目を見るのも久しぶりだ。

「そう。死んで自分だけ楽になるのは許せない。」

だから僕はそう言った。僕の言葉は遠回しに生きて希望を見つけろって意味だけど伝わるのは数年後くらいだろうね。それにここで殺してもマチルダの為にもならないしね。

「私は反対だよ!こんな奴生かしておいたらとんでもないことになるよ!」

「マチルダお姉ちゃん…ちょっといい?」

エルザはそう言って先住魔法で念話するとマチルダは光悦の笑みを浮かべていた。どうしよう…ものすごくさっきの言葉取り消したくなってきた。

「…いや。ラスカル。あんたは生きな。死んで罪を償うよりも生きて罪を償う方が良い。」

心変わり早っ!?後でエルザに問い詰めるか。

「きゅう…」

シルフは気絶しているので無視。

 

「だがしかし…」

それでもラスカルはここで生きるべきか死ぬべきかを迷っていた。そこで提案した。

「だったら使い魔になったら?」

「使い魔…?そういうことか。使い魔になれば理性は保てる上にこの姿でいても怪しまれない。考えたな。」

「決まりだね。それじゃマチルダやっちゃって。」

「「えっ!?」」

マチルダとラスカルが同時に僕の方に振り向き驚きの声を上げた。ラスカルはともかくマチルダが驚くのことはないでしょ?僕の使い魔はすでにいるんだから…

『相棒も人が悪いね〜!この人垂らしめ!』

地下水うっさい!!




おまけをやろうとしたのですがネタが思いつかなかったのと文字数がかなり多くなってしまうのでまた次回。そしてミノタウルス編は次でラストです。

それにしても文章力が欲しい…


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33話

今回は2000字超えた程度と超短めです。


「私が…こいつを使い魔にするのかい?」

マチルダは混乱し、状況を把握する為に僕に尋ねたが僕は無情に答えた。

「そう。」

「確かに私は使い魔がいないけど…別にタバサでもよくないかい?ブリミルだって4人の使い魔を従えたんだし…」

まあ確かにね…でも理由がある。

「それはブリミルだからこそ出来たことだと思う。僕みたいにトライアングルごときのメイジが使い魔を複数従えるなんてのは無理。」

あのご先祖様は行動も変態だけど魔法も変態だ。4人の使い魔を従わせるなんてことはブリミルだからこそできることだ。烈風カリンや現代に生きる変態は出来そうだけど、地下水の力を借りて二つ同時に魔法を使っただけでヘタレるような僕じゃ無理だ。

『ま、確かに…烈風カリンやお前の親父さんは出来そうだよな。』

うん…そんな非常識に染まった奴らがいると思うと頭が痛くなってくる。

「だから使い魔がいないマチルダが適任なんだよ。」

他にも理由はあるんだけどね…マチルダが凶暴なミノタウルスを従えていることでボディーガードにもなるし、マチルダが死ねばミノタウルスことラスカルが暴走するので謀略面でも下手に殺されることもなくなる。

「まあそうなんだけどね…使い魔の契約をしていないで吸血鬼従えている奴に言われると説得力がないよ…」

「エルザは僕の血と引き換えに手伝って貰っている従者だしね。シルフとは違ってほとんど口約束みたいな契約だよ。」

実際には血ではなくあれだとは思わなかったけどね!

「はぁ…わかったよ。にしてもこの姿でやるには抵抗があるよ…」

僕だって契約する時シルフが男だと思っていたからその抵抗感はわかる…シルフがその後女だとわかったからよかったけどね。

「それじゃ行くよ…」

マチルダはやけくそ気味にブチュッ!とキスをするとラスカルはその仕返し(以下略…マチルダはラスカルの技術に惑わされ、顔が紅潮した状態でイッた。…ラスカル、百合も行けたんだね…物凄く嫌な予感がするのは僕だけだろうか?

 

「ふぅ…これで私はマチルダの使い魔になったはずだ。」

マチルダが幸せそうな顔をして倒れてなければ格好つけられたのに…勿体無い。

「む?おお…ミノタウルスからの視点で刻まれるルーンはむず痒いものだな。」

僕がそんなことを考えているとラスカルが左胸を突き出そうとしたのでエルザに手で塞がれ僕にはルーンが刻まれた瞬間がわからなかった。

「ラスカルさん…もっと恥じらい持ってよ!ミノタウルスでも女の子でしょ!?」

「女の子と呼ばれるような年ではないのだが…むしろこんなおばさんの肌を見て誰が喜ぶのかね?」

おばさんって…確かに精神年齢はそうだけど見た目はマチルダに勝るとも劣らないくらいの年齢くらいだよ…

「タバサちゃんだよ!タバサちゃんはね、ラスカルさんやマチルダみたいなでっぱい(でっかいおっぱい)が大好きなんだよ!」

そんなことはない!…と否定したかったけど僕の周りにはエルザとルイズ以外巨乳しかいなかったので否定出来なかった。

「それは困った…」

「「いや困らないでよ!」」

僕とエルザが初めてハモり、互いに見ると恥ずかしくなった。

「と、とにかく!ラスカルさんは貴族として生活していたんだからその時の生活に戻ればいいの!!」

「仕方ない。そうしよう。」

…こうしていろいろあったけどミノタウルス退治は終わった。常識がぬけている常識人ラスカルが味方になった。

 

〜プチ・トロワ〜

 

「さて7号…土くれのフーケは連れてきたんだろうね?」

団長ことイザベラお姉ちゃんがそういって僕を睨み付けるとマチルダがラスカルを連れて後ろからやってきた。

「な、なんだい!?この亜人は!?」

流石にイザベラお姉ちゃんは予想外だったのか驚いた声を上げ、構えさせる。

「彼女はミノタウロスのラスカル。フーケの使い魔。」

「…まさかミノタウロスを退治するどころか味方にするなんて予想外だよ。流石は土くれのフーケってとこかね。」

「そいつはどうも団長さん。」

マチルダは返事するとイザベラお姉ちゃんは(演技だけど)面白くなさそうな顔をした。

「口の聞き方ってものがなっちゃいないけどまあいいさ。土くれのフーケ…あんたをガリア北花壇警護騎士団の団員に任命するよ。ありがた〜く受け取りな!」

マチルダを怒らせない程度にわざと小物らしさを演出するのは流石だね…

「任命ありがとうございます。」

マチルダはそれをアルビオン流の礼儀で返して僕と同じガリア北花壇警護騎士団となった。

 

~おまけ~

「ジョゼット様、例の物が出来ました。」

弱みを握られたヴィートリオはジョゼットに敬語を使って書類を渡すとジョゼットはそれを受け取った。

「…レコンキスタって何?」

ジョゼットは不機嫌そうに足元にいたジュリオの顔を踏みつける。普通なら激怒するなり抵抗するなりするが調教済みの男の娘ジュリオは満更でもない顔だった。

「それが…聖地奪還を唱えるアルビオンをはじめとした貴族達の集まりのようでして…ジョゼット様の故郷であるガリアからは一切その貴族はいないようです。」

「『かも』とか『よう』とかなんで推測の言葉しか出ないの?」

「情報不足です…でもその代わりこんな物が手に入りました!」

ヴィートリオはそう言ってとある服を差し出すとジョゼットは笑った。

「ふ~ん…それじゃ着いて来なさい!ジュレッド!」

ジョゼットはジュリオの首輪につながれた首輪を引っ張るとジュリオは抵抗する間もなくとある部屋に引きこもった。その後ジョゼットは満足になり、ジュリオの身体はミミズ腫れのような痕が残っておりジュリオ自身はヘトヘトになっていた。



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34話

久しぶりの投稿です…遅れました!その上ストーリーには関係ない日常回です。


深夜

真夜中…僕はキュルケの部屋にいた。…これは事情がある。僕の部屋はエルザとシルフの2人が寝ているからだ。エルザは変態吸血鬼という理由から預ける訳にもいかないし、シルフはシルフで外で何かやからしそうなので2人とも室内で寝させている。それに最近なんか変な声が聞こえるから寝れないんだよね…幽霊なんて信じてないよ?2人が早く寝て怖くなったなんて思ってないからね?

「タバサ~…私に黙っていくなんて水臭いじゃない?」

デロンデロンに酔ったキュルケが絡み、僕の息子を触りに行こうしたのでサッと避けるとキュルケは頬を膨らませた。

「あ~ん!タバサのいぢわる!」

キュルケは泣き顔になり、上目遣いを始め僕にすり寄り頬擦りを始めてすぐに止めた。

「タバサぁ…zzz」

えっ?!キュルケも寝ちゃった…どうしよう…

 

ギィ…

その音を聞いた途端僕はベッドに潜り込んだ。幽霊にびびったんじゃないからね!

「あれ~?おかしいわね…タバサがここにいると思ったんだけど…」

ルイズの声がドアの方から聞こえ布団の隙間からそっちを見るとルイズがノートを持っていた。もしかして僕に座学のテストのことで聞きに来たのかな?ルイズも僕も学年主席を争う立場だけど勉強仲間だ。僕が2勝1敗と少し有利だけどそれでも僕の勉強仲間なのは変わらない。

「…そんなところで何をしているのよ?タバサ。」

ルイズと目が合ってしまいルイズに失望されそうになったので僕は弁解した。

「これは訓練。万が一敵が来た時の為に伏せる訓練。」

僕はそう言って布団をめくってベッドから起きた。

「見苦しい言い訳…それよりもテスト勉強しましょう?あと…」

ルイズの様子がおかしくなり僕が近づくと…ルイズに唇を奪われた。

「んんーっ!?」

あまりにも突然だった。ルイズはこんなことをする性格ではなくイザベラお姉ちゃんと同様に常識人だ。シルフに唇を奪われた時もフォローしてくれたからまさかこんなことをするとは思わなかった。

「んんっぅ…」

ルイズが舌を入れると僕の気持ちも高ぶり始めた…いや違う。ルイズが可愛く見えた。テファと同じくらいの可愛い顔つきに加え、エルザのような体つきだけどルイズのは可愛らしく見え、僕を興奮させた。どんなことをしても手に入れたい…そう思ったけどキュルケを捨てることは今更出来ない。うまく言いのがれてしまおうとキュルケを幸せにしつつもルイズを手に入れようと僕は最低なことを考えていた。

「ぷはぁっ…ねえタバサ。キュルケと私…どっちがいい?」

ここで素直に答えるならルイズって答えたい…だけどそれはキュルケに対する裏切り。でもキュルケは今寝ている…言っても問題ない。

「…ルイズだよ。」

「本当?!」

「うん…ルイズ愛している。」

僕達はルイズの部屋へ直行して舌と舌の戦争が始まった。

 

☆☆☆☆

 

さて何故タバサがこうなったかというとルイズに原因があった。それはルイズがキュルケの部屋に来る5分前の事だ。

 

「何か飲み物ないのかしら…あの犬はメイドといちゃいちゃしているし…」

ルイズはブツブツと愚痴りながら歩いているとバカップルことギーシュとモンモランシーがテーブルの上でいちゃいちゃしていた。

「これ飲まないなら飲むわよ!」

ルイズはそのバカップルさにイラつき、それを飲んでしまった。それこそが原因だったのだ。それは遅効性の惚れ薬であり飲んでから数分経った後、異性を見るとその異性の人物を好きになるというものだった。どうでもいいがギーシュもそれに引っかかっていた。

そして数分後…丁度その時にルイズの前に異性であるタバサがいたのだ。ルイズはタバサをタバサたんを愛する会のメンバーのように男の娘とは見ておらず友達という意味でのボーイフレンドとして扱ってきた。だが今回はそれが逆に仇となった。友達としての感情が恋の感情に変わり一気に発情した。その結果がタバサへの接吻だ。さらにその接吻には惚れ薬の成分が残った唾液が含まれており、タバサにそれを味わせて惚れさせたのだ。

しかしそれでは遅効性の惚れ薬なのに関わらず何故すぐにタバサがルイズに惚れたのかという説明がつかない。遅効性の惚れ薬は唾液によって成分が分解されるのでルイズの口の中ですでに惚れさせる惚れ薬が出来上がっていたのだ。つまりタバサは効果の強い即効性の惚れ薬を飲まされたのだ。

 

早い話がモンモランシーはディープキスをしてしまえば2人とも相思相愛になれるような惚れ薬を作りそれを実証してギーシュとモンモランシーは相思相愛になったが夢中になりすぎてルイズが飲むのは誤算だったのだ。その結果が今の有様である。ちなみにギーシュ達2人を除くタバサたんを愛する会のメンバー達は会議をしており、タバサが幽霊の声だと思ったのもその会議によって生み出された声である。解説もこれで終わりである。

 

☆☆☆☆

 

「タバサぁ…大好きぃ…」

ルイズの可愛らしい声が僕の目覚ましになって僕は接吻してその口を塞いだ。

「もう…タバサったら…」

「ルイズは拒否してない。」

「そうじゃないわよ…ムードよ。ムード!誰にも入られないようにロックがかかっているから一日私を食べてね♡」

か、可愛い…僕は生まれて初めてケダモノになりルイズを食べようとすると…キュルケが無理やり入ってきた。

「ちょっとルイズ!タバサ知らない!?昨日はいたのに今日はい…ない…の…よ…?」

僕とルイズがいちゃいちゃしているとキュルケが僕達の前に現れた。…最悪だ。

「タバサ…これはどういうこと?」

キュルケのドスの効いた声が僕の耳に響き、僕は身体を縮こませてしまった。

「だってキュルケ…僕をおもちゃみたいに扱うんだもん…」

女の子として見られるよりも恥ずかしいもん…

「仕方ないじゃない…タバサが可愛いのが悪いんだから!」

「それだよ!僕は男として見られたいのに…可愛いなんて褒め言葉でもなんでもないよ!」

皆そう…イザベラお姉ちゃんや伯父様以外は僕を子供か女の子として扱ってない。唯一生徒の中ではルイズが僕を男…それも友達として扱ってくれた。だからルイズに惹かれたのかもしれない。

「そう…もう知らないわ。お別れね。」

それを聞いた僕は内心慌てた。謝りたい。だけどそれをすればルイズは拗ねる。ルイズが拗ねているのも可愛いけど笑っている方が良い。

「タバサ…ごめんね。私にはこんなことしかできないの…」

そしてルイズは僕にキスをした。

 

〜〜

 

「何これ…?」

それがこの本を読んだ僕の感想だった。そう、これは僕の視点でキュルケが書いた小説だ。確かに僕みたいだけど…

「え〜?それだけ〜?せっかく私が振られるような小説を書いたのに?」

いやそれは良いんだけどさ…

「なんで僕達の名前を使っているの?それに色々と突っ込みたいところがあるよ!」

例えば僕が幽霊を怖がっているとか!全然怖くないんだからね!

「え〜?だってタバサって時々怖くなって私のところに来るじゃない。それに怖くておねしょしたことも知っているのよ!」

「違う。それはキュルケが無理やり引き連れた。」

1人の時にフレイム使われたら僕じゃ抵抗出来ないよ…

「でもおねしょは本当でしょ?」

おねしょっていうけど実際はあれだよ?ほら…その…男ならしてしまう白い液を寝ている最中に出す行為の事だよ。

「それは男なら当然の現象!女の子なら生理みたいなものだよ!」

「ふ〜ん…でもタバサがエッチなのは変わりないわね。エルザから聞いたわよー…亜人まで手を出すなんて…この下はどうなっているのかしら?」

「それは違うよ。偶にそうしないと暴走しちゃう。」

「でも今日は私のエッチ確定!」

そして僕は久しぶりにキュルケに襲われた…



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35話

最近投稿ペースが落ちているような…まあそんなことより本編をお楽しみに!


〜夜〜

「(なんでこんな格好しなきゃいけないの?)」

あれからキュルケにフリルのついたメイド服を着せられて「その格好でワイン持ってこないと制服返してあげないわよ」と脅され、仕方なくこんな格好で歩き回っているんだけど…物凄い視線を感じる。

「ウォォォオーっ!!タバサたーん!!」

そしてその視線の先から魔法も発動していないのにデブが服を一瞬でパンツ一丁になり僕に飛びかかり、その顔はニヤついていた。

「ふんっ!」

しかし不意打ち上等の裏の世界に踏み込んだ人間である以上、そんなことに慣れている…

「い…ゲフゥっ!!」

このデブは変なことを言いそうだったので蹴っ飛ばして失神させた。

「自業自得。」

僕はデブの顔を踏みつけた後立ち去った。その後ほとんどの男子生徒と女子生徒が腰を動かしすぎて痛めたみたいだけど僕には関係ないはず…

 

「ワインは白…だったよね?」

ぶつぶつ言いながら僕はワインを探していた。

「こらぁ〜!しんひん!」

酔っ払った黒髪黒目黄色肌のメイドが僕を指差し、千鳥足で歩み寄った。

「しんひんらしんひんらひくフェットれおとらしくれてらひゃい!(新人は新人らしくベッドで大人しく寝てなさい!)」

呂律が回ってなさ過ぎてもはや何を言っているのかわからない…

「ほれへもやるとゆうならわたひにひゅひあえ!(それでもやると言うなら私に付き合え!)」

メイドはぐびぐびと持っていたワイン瓶の中身を口に含み、僕にキスしてそれを流した。

 

「んーっ!?」

僕は慌ててメイドを離そうとするがどういう訳か離れず、口に含んだワインを全部僕の口の中に流し込ませて無理やり飲ませた。

「ふぅ…ろーだ!わたひのされは!(ふぅ…どうだ!私の酒は!)」

「うぇ…」

無理やり飲まされたので気分が悪い。その上、視界はブレてメイドが三人に増えた。

「あははは!三人に増えたー!」

僕は意味もなく笑い、酔っ払っていることを自覚した。それにしても僕が一気に酔っ払うなんて相当酒精(アルコール)が強くない?

「ほーか!ほーか!ほれらもらっとろめ!(そうか!そうか!それじゃもっと飲め!)」

ぶちゅーっ♡

メイドが僕の口にワインを注ぎ、だんだんと気持ちよくなってきた。

「お姉ひゃんってろんでもいい?(お姉ちゃんって呼んでいい?)」

よくよく見てみるとこのメイドはイザベラお姉ちゃんとよく似ている。だからそんなことを口走った。

「えーよ!らあわたひのいもーとがでひらひねんにひゃんぱい!(いいよ!じゃあ私の妹が出来た記念に乾杯!)」

「ひゃんぱい!」

その後、心配になったキュルケが泥酔している僕とメイドを見つけ、回収したのは余談だ。

 

〜翌日〜

 

「頭痛い…」

あれからガンガン飲みまくり、二日酔いになった僕はキュルケのベッドで寝ていた。

「無理するからよ…」

「そうは言っても僕が飲んだお酒、相当酒精が強かったよ?これでもまだマシだと言えるよ…」

「それはそうとワイン持ってこれなかったからお仕置き決定よ。」

キュルケは僕を押し倒し、腕を掴んだところで…ギィ…と音が聞こえそちらを見た。

「あ、お楽しみの最中でした?」

…そこにはルイズの使い魔のサイトがいた。

「キャァァァァーーッッ!!」

学校中に僕の絹を裂くような悲鳴が響き、窓ガラスなどが割れた。

 

数分後、僕はパニックから戻り、泣きべそをかきながらもなんとか持ちこたえた。…泣きべそかくのは情けないって思うかもしれないけど実際怖いからね?自分のモノを見て他人が狂気とも言えるほど興奮するのって…

「それで私に何のよう?」

キュルケは泣きべそをかいている僕の事なんか御構い無しにサイトに尋ねた。

「あー実はさ、シエスタ…って言ってもわからないか。とにかく俺と同じ肌のメイドがモット伯ってデブ貴族に取られたんだけど…何とか出来ないか?」

モット伯…王宮に仕える貴族で噂によると平民や下級貴族の女性の足元を見て自分の慰め者にするクズ貴族らしい。しかしガリアの密偵からの情報によると待遇は良く、1人も不満を言わずむしろ大満足しているとの情報だ。

「う〜ん…じゃあこれあげるわ。」

キュルケがそう言って取り出したのは謎の本だった。

「こ、これは!?」

サイトが驚いているあたりものすごい価値のある本なんだろうけど…一体何なの?

「どう?これならモット伯も大満足してシエスタってメイドも取り戻せるわよ。」

「ありがとな!キュルケ!」

サイトは本を閉じて音速の貴公子の如く去っていった…

 

「キュルケ…いったいどんな本を渡したの?」

「別に気にしなくていいわ。私にはタバサがいるもの。」

「気になる。」

「そんなに気になる?」

僕はそれに頷いた。

「…じゃあこう言ってみて。」

キュルケの唇の風が僕の耳を刺激し、その中身を確認する。

「どう?出来る?」

その中身は僕の精神を抉るものだった。

「やって見る。」

だけど僕の本の欲求はとても強い。よほど偏屈なものでない限りは読む。

「さ、言ってみて。」

そしてキュルケが促し、僕の口が開くのを待つ。

 

「キュルケお姉ちゃんだーい好き♡」

 

言った瞬間、僕の顔が真っ赤になり頭は恥ずかしい思いで一杯になり、着ているメイド服のスカートを見るような形で顔を伏せた。…キュルケは「笑いながらキュルケお姉ちゃんだーい好き♡って言ってみて。そうすれば教えてあげるわ。」と言って胸を高鳴らせていた。だから…

「えへ、えへへへ…」

こんな風にキュルケはキュルケでアヘ顔で幸せの頂点へと走って行った。

 

更に数分後…僕とキュルケは元に戻り、キュルケは口を開いた。

「あの本のことなんだけど…タバサのコスプレをモデルにした春画よ。」

つまり僕をモデルにしたエロ本がモット伯に渡ったって事?

「嘘。」

「嘘じゃないわ。あの本ものすごい人気で品切れ状態なのよ?だからモット伯も喜ぶわ…」

聞きたくない。そして何で僕をモデルとした春画が出回っているの?あっ!?…あの変態達か!!

前に伯父様が「あいつらが妄想でお前の女装した姿を思い描き、獄内でシャルロットの春画を書いていて獄内がイカ臭くて敵わん」って言ってたし。

まあ、そのおかげで清掃業なる業者も生まれてガリアの衛生も良くなったのも事実だけど…嬉しくない。

「そんなことより…行かなくていいの?」

「もう諦めた。」

おそらくフライで追いかけてもサイトは馬なりなんなり使っているだろうし、シルフ達は協力しないのは目に見えている。むしろサイトに協力してそうだ。というかシルフを使ってモット伯の所に行っている。

「じゃあ授業行きましょう。」

「うん…」

制服に着替え、僕達は普通に授業を受けた。



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36話

ディア「俺…この小説が完結したらこれのシリアスverを書くんだ。」
タバサ「完結出来るの?色々な小説を放置プレイしまくっているあなたに?特にNARUTO原作の小説やhunter×hunterの原作の小説などなど…待たせている人が多いのに無視している貴方に?」
ディア「…本編スタート!!!」


「タバサ!」

授業を受け終わり、図書館へといくとそこにはサイトがいた。

「お前の相棒貸してくれてありがとな!おかげでシエスタも無事に済んだぜ。」

貸してくれてって…シルフが勝手に動いたんだけどね。

「そう。」

「お礼を言いたいんだけどさ…何か出来ることないか?」

「貸し一つ。それだけで充分。」

僕はそう言って本のところへと向かっていった。ブリミルに関する本なんてものは調べたくない。ブリミルの美化した姿を書くというフォルサテの苦労する姿を思い浮かべてしまい、同情して読めなくなる。

「そう言わずにさ、ほら!俺が本探すのを手伝うから!」

僕はイーヴァルティの勇者を手に取り、それを歩きながら読み始める。

「必要ない。本の場所は覚えている。」

イーヴァルティは謎が多く、著者によって老若男女が分かれるが主人が魔法は使えないけど立場の高い貴族(公爵やその近親)だったり王族だったりと王家に連なり、主人公であるイーヴァルティ本人はその逆…つまり平民であることが多い。

貴族が見栄を張るこの世界では普通は逆で主人公は貴族、ヒロインが平民となるがこれだけは別…だから面白いのかもしれない。

「じゃあ紅茶でも淹れるよ、俺紅茶淹れるの得意なんだ。」

まだいたのか…僕は本を閉じて机へと向かった。

「飲食禁止。」

僕はサイトを突き放し、その場を去ろうとした。

「ちょっ…待て…うわぁっ!?」

サイトが転び、僕は左肩を掴まれその巻き添えを食らいサイトを上にするような形で仰向けに倒れた。

 

プニッ♡

 

「…ん?」

男であるサイトに胸にあってはならないものがそれはあった。

「あの〜?タバサさん?」

いやいや、僕の勘違いだということも考えられる。サイトが困惑しているけど僕に関係ない!

「…」

僕はサイトの腹を両手で囲み…腕を上げていく…そして…

 

プニッ♡

 

…僕の親指が胸の脂肪にあたり、サイトは気持ち良さげにしている。

「サイト?この胸は何?」

「おっぱいだよ、おぱーい!」

ふざけた態度で返事したので腹に一発殴った。

 

「そう言えば言ってなかったけか?俺は女だよ。」

どっからどう見ても顔の整った男にしか見えない…しかし胸はものすごく気持ちよかった。確かに量(大きさ)はキュルケやテファ──あんなものに勝てる巨乳の方が知りたい──の方が上だけど弾力や柔らかさ、質においては完璧だ。これは女だと言わざるを得ない。

「いいな…男らしくて。」

だけど僕は羨ましかった。あの変態の息子とはいえ王族の一員であるので暴走することはあっても貴族の教養があり、ガサツには生きられない。上品さはあってもサイトのような男らしさは僕にはない。

「親の影響でそうやって生きてきたからな。俺は。でもそうしていくうちに俺は女としての感情が薄くなってしまった…」

「サイト…」

僕は女装させられることはあっても恋愛対象が男になることはない。僕の中で感心と同情の二つの感情が混じっていた。

「だからかな?俺はシエスタを取り戻そうと動いたのもそうだし、何かが俺を動かしているんだ。」

サイトはどこか遠い目をしてその表情は自分が何者なのか理解していないような悲しげな感じだった。

「…」

僕は何も言えない。何故ならサイトは苦しんでいるとは言っていないし、助けたところでサイトの性格上、逆に怒らせるだけだ。

「だからタバサ。お前には感謝しているんだぜ。」

そう言って僕の頭をクチャクチャと撫で、微笑んだ。イザベラお姉ちゃんが男になったらこんな感じなんだろうな…

「そう…」

「じゃあな!いつか借りは返すぜ!」

サイトは図書館から去り、ルイズと合流した。

 

「ご主人、ここにいたのか!?」

後ろからシルフに話しかけられ、本を閉じる。

「シルフ…何?」

「サイトについてだが…ナニがついてなかったぞ!」

「知ってる。」

だから大声だすな。図書館ではお静かに…

「え?まさかご主人…私の性別は見切れなかった癖にあいつの性別は見切ったというのかーッ!?」

「うるさい。」

杖で思い切り叩き、シルフを黙らせた。

「きゅい〜…酷い。」

潤んだ目で見てくるがイケメンの顔なので尚更ムカつく。

「黙れ。」

「冷たい!ご主人が渾名のように冷た…」

シルフのセリフを遮り、黙るまで杖でボコボコにした。

 

それから数分後、シルフは完全に黙り、土下座した。

「…」

流石にここまでやっては僕が悪者なので土下座を止めさせ、口を開いた。

「サイトの性別は本人から聞いた。」

「え?」

「サイトは親の影響でああなった。僕は何とかしてやりたいけど彼女はそれを望まない。」

「だったら簡単だ。私とサイトは度合いが違うだけでほぼ同類だ。故にサイトの気持ちも共感出来る!」

「理解出来るわけない。サイトとシルフは別。」

「ご主人…まさか風韻竜である私がサイトを乗せたのが悪ふざけだと思っているのか?」

「それ以外に何がある。」

今思えばこいつは悪ふざけしかしていない。翼人退治は悪ノリ全開、吸血鬼退治はマッチョ、ミノタウルスは洞窟破壊。どれもシルフの悪ふざけだ。それだけでもお仕置きする価値はあったと思うと残念だ。

「ご主人…私の背中を預けるのは信頼出来る奴とご主人の仲間だけだ。何故だかわかるか?」

「悪ふざけをしても許されるから?」

「半分は正か…痛っ!」

このやろう。そんな風に見ていたのか。

「ちょっ、待ってって!ご主人!私が背中を預けているのは悪ふざけをしても許されると思ってしまうほど信頼している人たちなんだよ。ご主人の仲間も基本的には善人だから殺すような真似はしないでしょ?」

…まぁその通りなんだけど、伯父様とイザベラお姉ちゃんは殺る時は殺るし意外と冷徹なんだよね。ただそこまでさせるほどシルフはアホじゃないし、イザベラお姉ちゃん達の沸点はそんなに低くない。

殺す殺さないの以前の問題にマジになったシルフを倒せるかって聞かれたら無理と答えられる自信がある。だって悪ふざけでトライアングルの僕のウインド・ブレイクを相殺するような奴だよ?そんなのに勝てる訳がない。風韻竜じゃなくてエンシェントドラゴンの親戚なんじゃないかって最近は思う。

「それは怒らせなければの話し。怒ればマジに殺しにかかる。」

もっとも殺しにかかるだけで実際は不可能といっていい。仮に出来たとしても何千何万の犠牲の上にハルケギニアは世紀末となる。…イーヴァルティの勇者と言われているケンオウの例えなら国が荒れ、治安などが乱れることを世紀末というらしい。

「そりゃ気をつけないとな…まあ何にしても私に任せてくれ。何せ乳を語り合うなまかだからな!」

最後にシルフを蹴り出した僕は何も悪くないと思う。

 

「ん?ご主人…どうやらまた手紙だ。」

シルフが立ち直るとまたガリアから手紙が届き、僕はため息を吐いた。

「…」

今度は賭博場潰し…タチの悪い賭博場を経済的に潰せ…か。難しいことを言っている。物理的ならシルフに任せればどうとでもなるけどそういったことはシルフの専門外だし…仕方ない。マチルダを使うか。




ディア「ターニア冒険記がネタが思いつかずに今年中に書き終わらねえ…」
そんな状況なのに関わらずこれを書いている私はやっぱりバカ。

ちなみに、なまかは誤字ではありません(笑)


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37話

今更ですが新年明けましておめでとうございます…まさかこんなにネタが思いつかないとは思いませんでした…しかも短い…


 〜上空〜

 

 シルフに乗った僕たちは作戦を立てていた。

「しかし賭博場となると難しいことを言ってくれるね」

 今回は胴元がイカサマをしてボロ儲けしている賭博場を潰すというマフィアの粛清みたいな任務だ。それだけに裏の世界を知っているマチルダを呼んだんだけど頭を抱えていた。

「何が難しいの?」

 エルザが首をかしげ、マチルダに尋ねるとマチルダはため息を吐いて説明し始めた。

「賭博場ってのは客が暴れないように武器を没収するのさ。特にメイジは杖を失ったら何もできないからね。仮に向こうがイカサマをやって見抜いたとしても杖を取られている以上何も出来やしない」

 確かに。僕なんかは杖なしでも何とか戦えるけどマチルダからしてみれば杖なしで戦うなんて想像もしたくない。

「それだけじゃねえ。俺やラスカルは身体そのものが武器だから入ることすら無理がある。入り口で待機だな」

 地下水が僕の口を借りてマチルダに付け加えるように発言するとエルザが手を挙げた。

「じゃあ私とシルフが実力行使で潰せば問題ないよね?」

 シルフは人間に化ければ問題はない。エルザは人間そのままだし潜り込むことは可能。だけどそれは意味をなさない。

「エルザ、話を聞いていたのか? この任務は経済的、社会的に潰さなかったら意味をなさん。物理的に潰したとしても第二、第三のイカサマ賭博場が出来るだけだ」

 エルザの意見をラスカルがバッサリと切り捨てた。つまりそういうこと。シルフやエルザの出番は最後の方になる。

「それにあまり大勢で行っても怪しまれるだけだ。ご主人達四人、いや二人と吸血鬼一匹にナイフ一本か? まあどうでもいい。賭博場に入る潜入者はこれだけで十分だろう?」

 めずらしくシルフがまともなことを言っている。これは天変地異の前触れだろうか?

「シルフとラスカルさんはどうするの?」

「私とラスカルは外で賭博場の奴らが逃げられないように工作する。だからご主人達は安心してやってきてくれ」

 工作って、何をするつもりなんだろう? シルフのことだから工作(物理)になりそうな予感がするのは決して僕の間違いじゃない。

『俺は?』

 地下水はスタッフに乗っ取って情報を得るという重大かつ重要な任務があるでしょ? 

『またそれか……つまんねー。俺は道具で一応坊主の持ち物だし坊主の言うことは聞くぜ』

 

 〜賭博場〜

 

 それから団長に教わった方法で賭博場に入り、スタッフに地下水を渡した。

「へえ。なかなか洒落たところじゃないか」

 マチルダがその様子を褒め作戦は実行した。

「ありがとうございます」

 哀れにもそのスタッフは地下水に乗っ取られて目が無機質になっていた。

「それでは案内いたし──」

「ざけんなてめえ! イカサマしただろうが!」

 地下水の言葉を遮るようにトランプのエリアから怒鳴り声が聞こえ、そちらへ見ると貴族と支配人が揉めていた。

「イカサマと言われましてもお客様がカードを切っていた以上イカサマなどとても出来る状況ではございません。魔法を使ったイカサマというなら魔法でも何でもして調べたらどうですかな?」

「くそっ!!」

 その貴族は入り口の方へ向かい、立ち去ってしまった。……どうやらトランプの方に仕掛けがあるみたいだ。有り金すべて増やしてぼったくってやろう。地下水に乗っ取られたのが運の尽きだよね。

「失礼しました。それではマルク様、ロングビル様ご案内します」

 流石地下水、何人もの貴族を殺してきただけあって冷静に対処している……ちなみにマルクは僕の偽名だ。シャルロットとかタバサとか女の子っぽい名前が嫌とかそんな理由じゃないよ? 誰に言っているんだろうか僕は

 

「てや、おらぁっ!」

 どの方言だろうか? とにかく先程の男が杖を持ち出し、支配人にそれを向ける。

「やれトマ」

 支配人は低い声で地下水(の身体の持ち主)を見ると地下水はとっくに動いて首の骨を折った……やりすぎだよ! 何やってるの!? 

「……」

 ほら! 支配人も唖然としているし!! 話が違うと言いたげにしているよ!? 

「おっと死んでしまいましたか。手加減したつもりでしたがここまで貴族の方が脆いとは思いませんでしたよ」

 首を折られたら竜でも死ぬよ! わざとでしょそれ絶対。

「トマ、やりすぎるな……」

 ボソリと支配人が近づき、叱るが地下水はそんなの関係ないと言わんばかりに無視した。

「えー、皆様。このようにうちの従業員はやたらと過激でして私でも止められない場合があります。故に言いがかりは止めてくださるようお願い申し上げます」

 いや、支配人がやれって言ったんだよね? ……あれ? いつもシルフとかに振り回されている僕の感覚がおかしくなったのかな? 

 

「しかし言いがかりさえつけなければ私たちはより良いサービスを致しますので何卒よろしくお願いいたします」

 う〜ん……あの支配人の様子を見ると地下水の身体の持ち主トマは平気でメイジをあしらってきたように思える。

 

 ん? そういえばエルザはどこに行った? 僕が辺りを見渡すとマチルダ、地下水の二人もエルザを目で探し始めた。

 

「ロンッ!」

 エルザが三人の男にテーブル越しに囲まれて宣言すると一人の男が「あそこは中だったか……」とぼやいてエルザにコインを払っている。何なのあれ……? 

「あれは……マージャンという東方の賭け事ですね」

 地下水が僕の心を読んでいたかのように説明する。

「あれは私はやりたくないね。周りが親父しかいないし」

 それはそうだ。マージャンは新しい遊び故かエルザを除いていい年こいたおっさんしかいない。……エルザも僕の三倍以上は生きているんだけど見た目が幼女だから含まない。

「同じく」

 必然的に僕もマチルダと同じ意見となり別の場所へ案内された。それにしてもエルザは何であんなのをやっているんだろう……?




エルザが麻雀にハマりました。ちなみに私は麻雀は素人どころかルールもよくわからないような初心者です。その代わり何故か役が揃いやすいんですよね…それで一度大逆転したのは忘れません。

そんな作者の麻雀語りは置いといて今年もよろしくお願いします!


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38話

トウカイテイオーだ!ビワハヤヒデとトウカイテイオー!ダービー馬の意地を見せるか!トウカイテイオー、奇跡の復活!(93年有馬記念より)

そしてこの小説も一年振りの復活!

そんなわけで1年ぶりに復活しました。ですが感覚らしきものを忘れていたせいか文字数が2500文字くらいしかありません。


「それではマルク様。こちらへ」

 僕は自らの強運で賽子を使った賭博で圧勝し、別の部屋へ案内された。

 ちなみに何故か僕は昔から賭け事が強く負けたことがない。あったとしてもその貴族がイカサマをしていた記憶しかない。かつて団長、もといイザベラお姉ちゃんが僕が賭け事に本当に強いかどうかを確かめる為に5つの賽子を三回投げて一回でもピンゾロが出なかったら王女を辞めるとか言い出して大騒ぎになった。もちろん僕は一発でピンゾロを出した。

 

 ちなみにマチルダは程々に僕と一緒に賭けていたので案内されていない。

 

「さて、マルク様。これから私どもがやる賭け事はサンクと呼ばれるゲームにございます」

 サンク……ああ、配られた5枚のカードで役を競い合うゲームのことだね。聞いたことはあってもやったことはない。だからと言ってぼったくられる心配はない。こっちにはそっちの給士が味方なんだから。

「公平さを期す為にマルク様にカードを切って貰います。好きなようにカードを切って下さいね」

 そんなことを考えていると目の前の支配人からカードを渡され、僕の手に渡る。見たところ普通のカードっぽいし、魔力も感じない。となれば場所かな? 

「ちょっと良い?」

 給士もとい、地下水に耳を近づけさせて内緒話を始めた。

 

「どういうトリック?」

「精霊魔法だ。エコーって言う動物達がカードに化けている」

「そう。それじゃエルザを連れてきて。中で騒ぎ出したら入るように指示もお願い」

 色々と聞きたいことがあるけど詳しくは聞かない。これ以上話を長引かせたらこの支配人から怪しまれる。

「畏まりました。マルク様」

 地下水はそれを察してくれたのか、すぐに敬礼し、席を外した。

 

「あの給士と何を話していたのですか?」

「イカサマをしていないかの確認。席を外させて貰ったよ。構わないね?」

「トマがいなくとも構いませんよ。マルク様の公平さを期す為であるならばね」

 果たしてその余裕はばれていないとでも思っているんだろうか。あまりにも愉快過ぎて笑みを浮かべてしまう。タネが分かった以上こっちのものだ。僕が適当にシャッフルし、それを支配人に渡すとごく普通にカードが配られた。

「さあ、始めましょうか」

 

 サンクの役割はトランプのポーカーとほとんど変わらない。例えば今僕の手札にある風の13、12、11、10、9は高貴なる風という名前の役で二番目に強い役。これに唯一勝てるのは炎の13〜9まで揃えた高貴なる火という役しかない。通常であればここで勝負に出て一気に大金を稼ぐが、相手はイカサマをしている。そこで僕被害を最小限にして勝負を降りて提案した。

「支配人。始まっておいてなんだけどこのカードは切り刻まなくていいの?」

「切り刻む? なぜそのようなことを?」

「とある賭博場じゃお互いにイカサマをしないように一度使ったカードは客の目の前で切り刻んでイカサマが出来ないようにしているらしいけど」

 そんなことをすればエコーの輪切りが出来るのはわかっているけどね。

「経費がかかります故にそれは出来ません」

「それが公平さを期さなくとも?」

「嫌ですね、お客様。私がイカサマをしているみたいに言わないで下さいよ……ハハハ」

 その瞬間、ドンッ! とドアを蹴飛ばす音が聞こえ、思わずそちらに振り向く。そこにいたのはエルザではなくシルフだった。

 

「よう、ご主人。さっきの話聞かせて貰ったよ。そのカードを切り刻めない理由……それはこれだ」

 シルフの服から小動物達が飛び出し、頭に乗るとカードに化けていたエコーがシルフの頭に乗った。その様子を見て思わず可愛らしいと思ってしまうのは間違いじゃない。

「なっ!? 貴様どうやってそいつらを……!! それにトマはどうした!?」

「トマなら残念だけど来ない。あいつは王国専属のスパイ。いつでも支配人、お前を見捨てるように躾けてある」

 嘘だけど。実際には地下水が乗っ取っているだけなんだけどね。

「なんだと!? そうか、あの時に話していたのはこうなることを予想して……!!」

「それでシルフ、彼らはなんて言っている?」

「子供達が人質に取られたから従っただけで貧しい者に分けるとか言っておきながらその金を懐に入れるような胸糞親父に従いたくない……だそうだ」

 想像以上にクズ野郎だ。フーケことマチルダはテファ達を養う為に盗賊やっていたのに。今盗賊業は廃止しているけどね。

「まあなんにせよ。大人しくして貰おうかイカサマ支配人」

 

「嫌だ! こんなところで捕まってたまるか!!」

 支配者がシルフが蹴飛ばしたドアから出て行き、逃げ出した。

「抵抗すればするほど恐ろしくなると言うのに」

 

「うぎゃぁっ!!」

 支配人の悲鳴が賭博場に短く響く。それを聞いて僕とシルフは悲鳴が聞こえた場所に行くとエルザが爪を立てて支配人の腹を突き破っていた。

「どこにいくのかしら? まだこっちは換金していないわよ?」

 エルザがここぞと言わんばかりに吸血鬼の本領を発揮。牙を見せ、支配人の血がついた手を舐め回す。

「き、吸血鬼……っ!」

「お金がないなら貴方の命を頂戴?」

 エルザは喉元を掻き切り、支配人を殺すと支配人からピューピュー出てくる血を飲み物のように飲んだ。

「……やっぱり不味いわ」

 こうしてイカサマ賭博場は支配人が死亡し、経済的かつ社会的かつ物理的に潰れた。

 

 〜上空〜

 

「私たちの役割はほとんどなかったな」

 一番外で待機していたラスカルがそう頷き、腕を組む。

「しかしスカッとしたよ。あの支配人はとんでもないクソヤローだったしね」

 マチルダはホクホク顔で賭博場にあった金を触りながら賭博場を物理的に潰したことを思い出していた。

「何にせよ。今回の件でイカサマ賭博場には吸血鬼が現れるって噂も立つだろうし、金目のものはとったから報告しても大丈夫でしょ」

 経済的に潰せとは言ったけどやり過ぎるなとは言ってないしね。

 

『ところで坊主。あのトマって奴は哀れだよな。あんな貴族に拾われたばかりに放浪するハメになっちまったんだからな』

 トマ? ああ、彼なら大丈夫。本当に王宮のスパイとして雇うことになっているから。

『そうか。まあ坊主がそういうなら大丈夫だな』

 実際には地下水、君が情報を集めるんだけどね。

『うわぁ酷えっ! 労働基準法で訴えてやる!』

 地下水はそんなことを言いながらも何処か楽しげだった。




去年、今年もよろしくお願いしますとか言っておきながらまるまる一年放置するハメになるとは思いもしませんでした。いろんな誘惑に負けたのが原因です。申し訳御座いません。

…しかしグーグルでタバサのTS物語と調べたら、スレで紹介されていて(NEVEAまとめで私の小説がいくらか紹介されていますがその中でスレに登場したのは魔軍司令と、この小説だけ)その中でこの小説が高評価だったのが嬉しくなり、モチベーションが上がりどうにか書き上げることができました。

どうかこんな気まぐれな作者ですがこれからもよろしくお願い致します。


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39話

ようやくここまで来れました。


 学院に戻ってからと言うもの。僕はとある授業に出席していた。その授業は風魔法の授業。担当は元軍人という経歴も持ちながら何故かこの学院で教師をしているギドーという男だ。元軍人という経歴とスクエアであるからかやや傲慢さが隠せず、風最強の持論を持つ困った教師だ。

 

 確かに戦闘面、特に対人戦なら他の魔法よりも習得度の割に応用が効きかつ強力な魔法が多いし、軍人の中でも火あるいは風の魔法の使い手の割合は他の魔法の使い手よりも多い。特に烈風カリンという怪物が登場し、シャルル・オルレアンが12歳で風のスクエアとなってから風魔法の使い手が増えている。

 

 だからと言って他の魔法が弱いという訳じゃない。例えばフーケことマチルダの作るゴーレムは僕単体じゃかなりキツイ、というか負けることを前提にして挑まなければならないけど火と土の魔法を使えばゴーレムをふっくらこんがり焼くことができる。

 

 要するに風魔法は破壊には向いてない。ライトニング・クラウドですら雷を劣化させたようなものだし。その点ゲルマニアの軍隊を一人で薙ぎはらった烈風カリンは化け物としか言いようがない。

 

「ではミスタ・タバサ。ミス・ツェルプストーの攻撃を風魔法を用いて防ぐか反撃したまえ」

「えっ!?」

 隣にいたキュルケが驚いた声を上げ、オロオロと僕を見る。

「キュルケ、僕は大丈夫だから思い切りやっていい」

「でも……」

「なら賭ける?」

「何を?」

「この授業でキュルケが僕に向けて魔法を放って僕が無傷じゃなかったら僕は女装したまま一か月間学院生活を送る」

「乗ったわ!」

 よし、勝った! 野次馬達がキュルケを応援しているけど勝った! 

 

「フレイム・ボール!」

 キュルケのフレイム・ボールが僕を襲うが僕はこれまでの相手と比較し、大したことのない魔法と判断する。これくらいなら普通に防げるんだけど油断はしない。目の前に餌がぶら下がっている以上、本気で来ることは明らか。こんなフレイム・ボールだけで終わるほどキュルケは甘くない。

「ツイン・トルネード」

 二つの竜巻がフレイム・ボールの中心を抉るように貫き、フレイム・ボールを消失させる。そのことにキュルケが驚いた顔をし……あれ? もしかしてあれが本気のフレイム・ボールだったの? このままだとキュルケが死にかけないから軌道を壁に当てよう。

 

 でもあれくらいはシルフとかだと「甘いわご主人! ゴエーッ!」なんて言いながら風のブレスで竜巻を掻き消しちゃうし、マチルダは錬金で鉛の壁を作って防ぐし、ラスカルは二つの竜巻の中心をウォータ・カッターで一つずつ消していくからこれくらいは当たり前だと思ったんだけどね。これを攻略出来なかったのは魔法が不得意なエルザくらいだから大丈夫だと思ったんだけどキュルケも防げないか。

 

 壁に当てると轟音を立てながら隣の教室の壁と繋がる。その先には自称タバサ(僕)のライバル、ヴィリエ・ロレーヌと目があった。

「……タバサ、それで勝ったと思うなよ。今は出来ずとも、いずれ僕はお前を超える」

「そう」

「首を洗って待っていろ」

 ヴィリエがそう告げた瞬間ドアが開く。そこにはギーシュのような格好をしたミスタ・コルベールがドアから入ってきた。

「ミスタ・ギドー、授業中失礼いたしますぞ」

「なんでしょうか?」

「皆さんもご存知かと思われますが、ガリアに留学していたアンリエッタ女殿下が本日帰国され、それの折を利用し……このトリステイン魔法学院に行幸されます!」

 アンリエッタ? ……ああ、僕と交換留学で入れ替わった王女様か。本来僕がガリアの魔法学院に行く予定だったんだけどアンリエッタがガリアの様子を見たいというのと、僕の避難場所がガリアにないという理由から交換留学することになったんだっけ。魔法学院に来てから色々と濃い生活をしていたから完全に忘れていた。

「従いまして、粗相があってはいけません! 今から全力を挙げ、歓迎式典の準備をしますので本日の授業は休こ……あぁっ!?」

 ミスタ・コルベールの被っていたヅラが取れ、床に落ちる。それを見て思わず呟いてしまう。

「ツルツルで滑りやすい」

 僕がそう告げた瞬間、キュルケがクスリと笑い始め、次第にゲラゲラと笑う。

「タバサ、上手いこと言うわね! 最高よ、タバサ〜〜っ!」

 その笑いがクラス、いや隣にも浸透し、ヴィリエを除いてほぼ全員が大声で笑った。

「黙りなさい小童ども! 口を開け大声で笑うとは下品にもほどがある! 貴族ならば歯を隠し静かに笑うものですぞ!」

 物凄い迫力でミスタ・コルベールが笑っているキュルケ達を黙らせ、静まり返る。

「姫殿下は貴方達の使い魔品評会にも参加しますので、失礼のないように準備をしておくのですぞ」

 ミスタ・コルベールがそう言って去るといきなり場は騒然とし始め、僕はその煩さに眉を顰める。……決して僕の使い魔がポンコツとか、そういうことで眉を顰めたんじゃないよ? むしろ強さを感じさせるという意味では余裕で最優秀賞を取れるから。

「あらタバサ、どこに行くの?」

「ちょっと本を読みに」

「嘘仰い、タバサのことだから式典に参加したくないんでしょう?」

「姫殿下の顔を見るのは使い魔品評会の時で十分」

「もしかして会いたくない事情でもあるの?」

「キュルケと本以外に興味がないだけ」

「可愛いこと言ってくれるじゃない!」

 ムギュッ! 

 そんな擬音が聞こえそうなくらい強く抱きしめられ、僕はキュルケの胸に……ってギブ! ギブ! 

「あらあら、私の胸がそんなに嬉しいの?」

 違う……! 呼吸が出来ないから! 誰か助けて……アレ? 何で死んだお祖父様がここにいるの? 

 

「衛生兵! 衛生兵を呼びなさい!」

 ルイズらしき声が僕の耳に響くけど、僕はお祖父様とのご対面を優先し、そっちの花畑に踏み入れる。だけどお祖父様は険しい顔で首を振って「お前はまだ来るべきじゃない」と告げ足を動かすと花畑に穴が開いて僕はその中に落ちた。

 

「バサ……タバサ!」

 目を開けるとルイズが目に映り、心配そうに僕の顔を伺う。

「……何?」

「良かった……これで目が覚めなかったらどうしようかと思ったわ」

「どうして?」

「そりゃ私だって数少ない常識人を失いたくないもの。お父様は偽名を使って出張と偽って各地の剣士をボコボコにしているし、エレオノール姉様は結婚出来ないし、唯一の救いのちい姉様も病気で私と会えないわ。もし、貴方がいなくなったらストレスで死にそうだもの」

 ルイズのお父様ってヴァリエール公爵だよね。そんな人が道場破りみたいなことをして大丈夫なの? 

「ああ、こう言っておいて何だけどお父様はちゃんと働いているわよ。剣士をボコボコにするのは趣味みたいなものらしいしね」

 もっとおとなしい趣味にしてください。ヴァリエール公爵。

「ヴァリエール公爵のストッパーは?」

「そりゃお母様だけど、完璧に仕事をこなすから強く言えないのよね」

 わかる。有能だけど頭を抱えたくなる人が近くにいるとストレスになるのはものすごくわかる。

「それじゃここに長くいてもキュルケに誤解されるし、お暇させてもらうわタバサ」

 ルイズがそう言ってその場から立ち去り、僕の視界から消えた。

 

 〜おまけ〜

 

 某所にて銀髪の中年の男性と若い赤髪の青年が対峙していた。そんな二人を見守るのはお互いの取り巻きであった。

「よく来たな。その度胸は褒めてやろう」

「黙れ! サンドリオン、兄者達の仇取ってくれる!」

「今日は連絡用のフクロウは来ない。何故って妻は温泉旅行に行っているからな。娘達も連絡は取れん。心置きなく相手が出来るというものよ」

 サンドリオンが笑みを浮かべ杖を取り出し、ブレイドを出すと赤髪の青年の取り巻きが口を開いた。

「もしもし、ピエールさん。奥さんが来られていますよ」

「ひ、ヒィーッ!!」

 

 取り巻きが笑顔でそう告げた瞬間青年達はとんでもないものをみた。ピエール、もといサンドリオンの身体が消えたと思った瞬間赤髪の青年がボロボロになっていた。

 

「なっ……!?」

 赤髪の青年が倒れ、その場に倒れる。

「なんだ今のは!? サンドリオンの姿が消えた?」

「信じられん……! サンドリオン様は奥様を恐れるあまり身体能力を覚醒させ目に捉えられん程に高速で動き、ラードを何発も攻撃したのだ」

 サンドリオンの取り巻きが解説し、頷く。

「つ、妻はどこに!?」

「安心してください、サンドリオン様。すべてあやつの嘘です」

「では出張と嘘ついて果し合いに臨んだのがバレたのではないのだな!?」

「はい。そうです」

「ふぅ〜……おい、貴様あっ!」

 サンドリオンは溜息を吐き、すぐさまラードの取り巻きを睨みつけた。

「はい、何でしょう!?」

「世の中には言っていい嘘と言っちゃいけない嘘があるって親御さんから教わらなかったのか!! ワシは今死んだかと思ったぞ!!」

「でもそんなに奥さんが怖いなら奥さんと別れればいいのに」

「あのなぁ……ワシが離婚をしたら妻が黙っていると思うのか? 必ず報復に来る。だから離婚などは出来んし、何だかんだ言いつつも最後は許してくれるから離婚はせん」

「しないのかよ……」

「小僧、言っておくが結婚は大事に考えておけよ。ワシは幸いな事に妻にお仕置きされる程度で済んでいるが結婚して不幸になる者も数多くおるのだからな。……決着も着いたことだし、ワシは帰る」

 サンドリオンは勝利したのに関わらずどこか疲れたように肩を落としてその場を去った。




おまけの元ネタわかった人いますか?


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40話

色々書いていたら遅くなりました。特にポケモンとか。


突然だけど、目の前で自分の部屋を荒らし、下着の臭いを嗅いで自慰行為している泥棒がいるんだけどどうしたらいいんだろう? マニュアルだと捕らえて、兵士に突き出すのが理想なんだけど、目の前にいるこの変態は王族独特の雰囲気を醸し出している。

 

「これが、タバサたんの靴下、んっ……」

黒いフードから残念な女の声がぼそりと聞こえる。仕方ない。捕らえて【私は変態です】と書かれた看板を無理やり持たせて反省してもらおう。

「おいこら変態」

「きゃぁっ!?」

変態なのに何でこんなかわいらしい声出すの? と問い詰めたくなる。それだけに残念さが漂うこの女の子は誰なんだろう。

「さ、流石タバサたん。魔法学院で座学・実技ともに満点なだけありますわ」

何故だろう。12歳の時の僕なら純粋に誉められたとしか思えないのに、今の僕は卑猥にしか聞こえない。それだけこの世界の変態達に染まっていた証拠だった。

「さあ、その顔を見せて貰おうか」

「あっ、ダメっ……」

フードから顔を覗こうとするも必死に抵抗し顔を隠そうとする。一瞬だけ顔が見えた彼女は可愛らしいけど、変態の仲間のうちの一人なのでまるで罪悪感がない。

「抵抗するならもっと酷い目に遭うよ」

「えっ?」

彼女が隙を見せた一瞬。僕の指が彼女の背中を滑り、擽る。

「ひゃっ!」

ゾクゾクと背中を震わせ、彼女が抵抗を見せるけど僕が取り押さえているために彼女の抵抗は全くの無駄に終わる。

「ほら、抵抗しない。抵抗するともっと酷くなるよ」

イザベラお姉ちゃんから教わった擽り攻撃。これをやられるとどんな無表情な無口な人でも大声を上げて笑ってしまうという恐ろしい技。これをキュルケやマチルダにやらなかったのはすでに僕の味方だったからかな? キュルケはなんだかんだ言って優しいし、マチルダが敵対していた時は僕が縛り付けられていたからどうしようもなかった。

ところが目の前で涙と鼻水、涎の三点セットを床に流し悶え苦しんでいる女の子は違う。僕の下着をべちょべちょにするだけじゃなく、楽器のように決まった音も出せない。これが楽器なら不良品そのものだよ。

 

「ひ、酷いですわ……」

数分後、ようやく声を出せるまで回復した彼女が顔を見せ僕と対峙する。

「それで何で僕の部屋を荒らした挙げ句、自慰行為なんかしていたんですか? アンリエッタ姫」

彼女の名前はアンリエッタ・ド・トリステイン。つまりここトリステインの王女様。その彼女の治める国が水の国なだけに股下から洪水させるとは思わなかったよ。

「お、オナニーなんてしていませんわ!」

オナニーなんて言わないでよ。どうして僕の周りは下品な言い回ししか出来ないのかな?

「はい嘘。だったら僕の部屋がこんなに濡れているわけないでしょう」

「それは貴方が擽ったからで……」

「何? 僕の擽りがそんなに気持ちよかったの?」

「ひっ!」

僕の指の動きを見て、怯える姫様ことアンリエッタ。どうしよう物凄く可愛い。僕はこれまで今のアンリエッタみたいに弄られる立場だったけど、今ならキュルケやマチルダ達の気持ちがよく分かる。物凄く可愛がりたい。そして弄ってみたい。そんな気持ちを抑え尋問する。

「アンリエッタ姫、僕の部屋を荒らした挙げ句自慰行為をしていたことは不問にしましょう。まさか王女様が一介の生徒の部屋に入るなんて思いもしませんしね」

「いいえ、オルレアン公の部屋を訪ねるという名目でここに来ましたわ」

「尚更悪いよ! なんで他国の公爵を訪ねていなかったらその部屋で自慰行為に入るんですか!?」

「ふふっ、やはりシャルロット・エレーヌ・オルレアンは貴方でしたか。学院長に尋ねてもオルレアン公の居場所を教えて下さりませんでしたので、ガリアに伝わる王家の特徴……青髪の少年の突き止めれば良いと思いましたのでカマをかけましたのよ」

やられた。僕より5つも離れていないのに誘導尋問をされるなんてこの王女様は噂で言われるほど馬鹿じゃないみたい。

「ところですみませんが、貴方の擽りのせいで腰を抜かしてしまったので立たせてくれませんか?」

……なんだろう。このやるせなさは。

 

 

 

「さて、オルレアン公。我が国の印象を教えてくれませんか?」

僕の部屋にあったキュルケの着替えをアンリエッタ姫に渡し、ベッドに腰を下ろさせるとそう質問した。

「一言で言うなら女が強いね」

女が強い……かなり遠回しな言い方だけど、家庭での男の立場はなきに等しく、かかあ天下が流行っている。少なくとも僕の周りでは。……ってアレ? トリステイン出身の知り合いの方が少なくない? キュルケはゲルマニア、シルフは不明、マチルダとテファはアルビオン、エルザとラスカルはガリア。トリステインの娘が誰一人もいないよ? ルイズは常識人で、ヴェリエは男だけど一年生の時は下品だったけど今ではカリスマ性を兼ねた優等生。だからトリステインはむしろ常識の塊? いやそんなはずがない。モット伯やデブはかなりの変態だし、【タバサたんを愛する会】だったけ? そんな組織の発祥地はトリステインだもん。

「女が強いですか。それはそうでしょう。女がいなければ男も産まれない。女あっての男だと私は思いますわ」

「今度はこちらから尋ねるけど、ガリアの印象は?」

「豊かですわ。とても無能王が政治をしているとは思えないくらいに」

 

無能王。伯父様の二つ名だ。政務などせず遊んでばかりいるからそう渾名をつけられたらしいけど、実際のところ無能なのは魔法のみで他は完璧。内政も優秀だけど特に外交に関しては歴代のガリア国王を見てもトップクラスに優秀。史上初めてエルフと交流を深めたことを公表しただけじゃなく、ブリミル教の動きを封じ込めた功績がある。

ブリミル教は各国の国教で有るが故に異端認定されれば社会的に殺されるのと同義で発言力や影響力が他の国に比べ相当高い。ブリミル教に反抗するには矛盾を理詰めでやるしか方法がなく、それでも異端認定されてしまう場合もある。そのブリミル教が何も言わない、いや言えなくした伯父様の功績がどれ程のものかスケールが大きすぎて想像出来ない。

そんな伯父様を無能と呼ぶには早計すぎるとしか言いようがないんだよね。この王女様は伯父様が無能でないことは勘付いているし。

 

「オルレアン公、私がここに来たのは他でもありません。後々私が貴方と結婚したいと言ったらお嫁に貰ってくれますか?」

「何それ」

「ご存知とは思いますが我が国トリステインの国王は空位。私が女王になるか別の者を婿にして王にするしかありません。しかしトリステイン王国で女王になった前例が二人ほどしかいない上に政の経験などありません。前例のお二方はどちらも政に手を出していましたから」

「王妃、アンリエッタ姫の母君は? あの方はフィリップ三世の教育を受けたと聞く」

「それも無理です。母は父ヘンリー王が崩御した後、女王になる気はないと誓い、表舞台から姿を消してしまいました」

「生きているの?」

「ええ。本を読む毎日ですが王族としての力はもはや血だけになったも同然ですわ」

毎日が本に囲まれる生活とか本好きの僕からすればうらやましいんだけど。

 

「とにかくそんな本の虫になった母に政など出来るはずもありません。しかし私には政の経験はない……そこでガリア王族の血を継ぐオルレアン公に白羽の矢が立ちました」

いや確かに納得できるけど、こっちにも事情があるんだよね……自分ではあまり言いたくないけどこんな女の子と言われてもしょうがないくらいに可愛らしい容姿だけど僕は男だからガリア国王の後継者候補一位なんだよね。伯父様に息子つまりイザベラお姉ちゃんに男の兄弟がいたならその子が後継者になるんだけど、現実はそうじゃない。変態を除いた男の王族の中で一番ガリア国王と血が近い僕がオルレアンだけじゃなくガリアをも引き継ぐことになる。

「本当ならウェールズ様がよろしかったのですが私とウェールズ様は従兄弟。貴方とイザベラ姫の関係と同じですわ」

……! この王女様、実はとんでもなく優秀なんじゃないかな。僕とイザベラお姉ちゃんは確かに従兄弟だけど、表面上冷えきった関係だ。その冷えきった関係が偽りだと知っているのはごく一部の人間のみ。それを知っているということはガリアの魔法学院に情報を垂れ流しているお馬鹿がいるか自力でその関係に気づいたかのどちらか。どちらにせよこの王女様は情報を収集する力を持っている。それに対して僕は口下手だから彼女の掌で踊らされることになる。話を反らそう。

「それじゃなんで僕の下着を使って自慰行為していたの? アルビオンの王子が好きならアルビオンの王子の下着を使えば良いのに」

「確かにウェールズ様は好きですわ。例えばオルレアン公とイザベラ姫が結婚しても血の繋がりを強くする為と言い訳出来ます。しかし私とウェールズ様は別の国同士の王族。別の国同士の王族が結婚すればその国と繋がりを強くするのと同じで、これ以上トリステインとアルビオンの繋がりが強くなってもメリットはほぼありませんわ。私やウェールズ様に反抗する貴族が増えるだけなのです。私の感情の為にウェールズ様を犠牲にすることなど出来ません……」

「自慰行為の理由は?」

「これから好きにならなければならない殿方の下着を確認していたら物凄く良い臭いでしたのでつい……」

良い臭いって何? それって何なのと突っ込みたかったけど薮蛇にしかならないので止めよう。

 

「僕の候補の他にゲルマニアの皇帝がいたはずだけどそっちは? 一応今の僕よりも格は上だし正室もいなかったはず」

「この問題は私の感情と言うよりも、国内を纏めることや牽制するという意味での問題ですわ。トリステイン貴族の多くはゲルマニアを快く思っておらずゲルマニアと小競り合いをするのが日常。しかしゲルマニアが強いのも事実。ゲルマニアに対抗するにはガリアの力があれば対抗出来ると思っている貴族が大勢います」

「そんな都合の良いことをする訳がない」

「ええ。ですが彼らが勝手に思っているのは好都合。ガリアとトリステインが同盟したとなればゲルマニアは迂闊に動けなくなります。これだけでも十分にトリステインの利と言えるでしょう」

「それで嫁?」

「ええ、ガリアの利はトリステイン王女である私を公爵の嫁にさせることで数十年間はトリステインを掌で操ることが出来るでしょう」

「なっ……!?」

僕はその言葉に絶句してしまった。




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41話

【朗報】俺が書いた小説に低評価を入れまくるユーザーの二人が同一人物で不正行為を行った結果BANされる

この朗報のおかげでこの小説を始め、私の小説の評価がうなぎ登りでモチベーションアーップ!!

さらにこの小説では二年ぶりの感想(しかも二件!)到来に大歓喜ぃぃっ! でモチベーションアーップ!

おかげでここまで速く書けることが出来ました。それでは本編どうぞ。


この目の前にいる王女様は自分の価値を理解していない?

そう思ってしまうくらいにトリステインには利益はない。ガリアとの同盟でトリステインが得られる利益はゲルマニアの牽制の他にもある。

例えば関税の緩和や魔法技術の共有化。同盟している以上無駄に搾取し合うよりもお互いに商業を自由にした方が良い。関税を緩和させることで商業が発達して貴族達にも恩恵を与えられるだけでなく平民の生活も豊かになるし、魔法技術を共有すれば魔法で遅れを取っているトリステインが魔法技術に関して発展するようになる。

 

しかしトリステインのメリットはたったその程度でしかない。ガリアと同盟を結ぶ為だけにこの王女がオルレアン公こと僕に嫁ぐということは、トリステインの国王は僕の子供それも次男が15歳になるまで空位のまま。つまり最低でも今から17年──双子の場合、16年だがガリアでは忌み子と見なされてしまう──かかる。長男が継ぐとしても五十歩百歩だ。ルイズの父親ことヴァリエール公爵も一応国王になれるだけの資格を持っていることには持っているけど、ヘンリー王が亡くなってからも宰相にならず領地に籠って領地経営をしていることから彼はトリステイン王国を継ぐ気はないと思われる。

 

それなら僕が婿になれば、僕がトリステインの国王になり次男が生まれるまでの空位を埋めることができる。しかし向こうから同盟を申し込む以上、それは出来ない。男の中ではお祖父様の血を直接継いでいるのは伯父様や先代オルレアン公、僕の三名のみ。先代オルレアン公ことあの変態は死んだも同然。実質二人でその内一人はガリア国王。つまり僕は次期ガリア国王候補ナンバーワン。そんな同盟国の国王になるかもしれない相手に婿になれとトリステインが言える訳がない。言えるのはただのバカ。あの外交得意の伯父様相手に言おうものなら従属して公国にさせられるのがオチだ。

 

そんな選択をするくらいならこの王女様を嫁に送った方がマシなのかもしれないけど、向こうからしてみれば同盟しない方が良いと思えるくらいに痛手だ。何せこっちの言いなりにしかならない……言いなり?

 

読めてきた。王女様が僕の正室になっている状態でトリステインを見捨ててしまえばガリアが薄情者にされてしまう上に、言いなりになったトリステインから得られる利益は莫大な物だ。それを見捨てるなんてことは出来ない。謂わば強い拘束力をガリアに持たせるのが目的な訳だ。

「……っ!」

その瞬間、目の前にいる王女様に寒気を覚えた。見た目や雰囲気こそ可愛らしく綺麗な花のような少女だけど中身は食虫植物。政治のことで冷や汗をかかせたのは彼女が初めてだ。

 

「どうされました?」

「アンリエッタ姫、その話は僕の一存では決められない。ガリアに帰って報告させてもらうよ」

「あら、その必要はありませんわ。あくまでももしもの話ですわ」

「まだ決まっていないということ?」

「ええ。ウェールズ様どころかマザリーニ枢機卿も預かり知らぬことですわ。何せずっと政に関わらなかった私が考えたことですし、言ったとしても諭されることでしょう」

確かに王女様を次期ガリア国王とはいえ公爵に嫁ぐことを許さないに決まっている。僕を婿にさせてトリステイン国王にさせるのが筋だ。出来る訳ないけど。

「僕からも、もしもの事を言って良いかな?」

「何でしょうか?」

「もしもアンリエッタ姫が僕に嫁いだら、僕に全身全霊協力して」

この王女様、いやアンリエッタ姫を敵に回したら恐ろしいけれど、味方になったらこれ以上ないまでに頼もしいことはない。それほどまで僕は彼女を恐れていた。

「喜んで!」

僕にとって彼女の微笑む笑顔は一生忘れられないものとなった。

 

 

 

「ではミスタ・タバサ。これにて失礼します」

「待って。出ていく前に僕の下着を返してもらうよ」

彼女のポケットから僕の靴下が微妙にはみ出したのが見え、持って帰ろうとしたので引き留めると硬直し、すぐに油虫の如く逃げようとした。

「ロック」

逃げる前に扉にロックの魔法をかけ、鍵を閉めると慌てていた彼女が無理に抉じ開けようとドアノブを何度も回そうとする。

「さあ、そういう悪い子にはお仕置きだよ」

彼女を拘束し、指を動かす。僕が見ても気持ち悪い動きをしているんだから彼女からしてみれば恐怖の対象でしかない。

「わかりました、ごめんなさい! すぐ返しますから! それだけは止めて!」

政治力に富んだ彼女もこの擽りの前では女の子みたいになっていた。

「さあ、覚悟……!」

そして僕の手が彼女の脇に触れ──そして、アンロックされた音がその場に響く。

 

「タバサいる……って何をしているのかしら?」

キュルケが乱入し、アンリエッタと僕を見た瞬間声のトーンが低くなり、空気が冷える。

「求婚されまして、その共同作業の練習ですわ」

「タバサ?」

「違うから! そんなこと言ってない!」

「酷い、酷いですわミスタ。私とのことはお遊びでしたのね?」

王女様が泣き声で涙を流し、いかにも悲劇のヒロインらしく泣いた。そして僕だけが見えるようにあくどい笑みを浮かべていた。

「は、謀られた……」

「タバサ、私と本以外興味ないとか言っておいて王女様に手を出すなんて……」

『坊主、随分修羅場だな?』

いいからキュルケを止めて!そうでないと僕の貞操が危ないから! もしやらなかったらバラす!

『おっかねえ。そこまで言うってことは余程マズイ状況なのか。仕方ねえな坊主、キュルケの嬢ちゃんに俺を渡しな』

「キュルケ、僕を信じて」

キュルケの手を握り、さりげなくキュルケに地下水を渡す。そうすることで地下水がキュルケの体を乗っ取り、状況を説明してくれる。

 

「はい、返すわ」

数分後、大人しくなったキュルケが僕に地下水を渡してため息を吐いた。

『すまない坊主。北花壇騎士団に所属していることは話さなかったが、坊主の出自を話させて貰った』

仕方ないよ。いずれ早かれ遅かれバレることだしね。

「アンリエッタ姫、タバサに聞きたいことがあるので席を外してもらえませんでしょうか?」

「元々そのつもりでしたわ。それでは失礼します」

王女様が僕の靴下をさりげなく持っていき、部屋の外に出る。何に使うかはだいたい察するけれど、想像したくない。

「驚いたわ。そのナイフにそんな力があるなんて」

ルイズなんかはこの地下水の力を見抜いていたみたいだけどね。

「ナイフとして使うよりもこの効果の方が強力」

「それはそうでしょうね。だから頼んじゃった」

「何を?」

その瞬間、地下水が僕の体を乗っ取り話しかけてきた。

『すまない……坊主、北花壇騎士団の情報を漏らさないようにするにはこれしかなかったんだ』

漏らさないようにって、話したの!?

『いや話してはない。キュルケの嬢ちゃんが坊主の秘密つまり北花壇騎士団のことを探らない代わりにこの取引を持ちかけてきたんだ。俺はそれに応じた』

よくやったと言うべきと誉めるべきなのか交渉が下手くそと罵倒すべきなのか判断に迷う。

『そう言うわけで今夜は坊主の体でキュルケの嬢ちゃんの命令に従わせてもらうぞ』

「さあ、今夜は寝かせないわよ!」

北花壇騎士団だと知ってもいいのは裏の人間とその関係者だけ。下手にキュルケが関われば命を落としかねない。今夜だけなら我慢しよう。




解説。
アンリエッタの策はトリステインとガリアが現代における日本と米国ような関係築き上げることでトリステインに依存性を持たせるということですね。これ以上のことは規約違反するので解説出来ませんが概ねそのような認識でお願いします。


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42話

政治の話しばっかです。エロが少なくてすみません


酷い目にあった。

 

キュルケが寝るまで何度も搾り取られる羽目になったけど僕の秘密は守りきったから良しとしよう。

『しかし坊主凄えな。お嬢ちゃんの10倍はイッたのにお嬢ちゃんの方が先にダウンしちまうなんて……相当な精雄じゃねえの?』

いやあれはマチルダに鍛えられただけだから! マチルダに鍛えられる前だと一回イッただけてもヘトヘトになっていたんだよ。

『と、そのマチルダが来たようだぜ』

え?

「ミスタ・タバサ。起きていますか?」

その瞬間部屋のドアを叩く音とマチルダの声が響く。

「ちょっと待って」

キュルケをレビテーションでベッドの下に放り込み、着替える。

「お待たせ」

ドアを開くとマチルダがベッドのほうを見つめ、口を開く

「おはようございます……昨夜はお楽しみでしたねミスタ・タバサ?」

「ミス・ロングビル、何の用?」

サイレンスを唱え、そう尋ねるとマチルダが目が笑わない笑顔で答えた。ああ、何か僕の知らないところで変な噂が流れたパターンだ。

「アンリエッタ王女がお呼びです。準備が出来次第、学院長室に向かいます」

その一言であの姫様が外堀を埋めたことを察した。

 

~学院長室~

 

「オルレアン公、よく来てくれました」

笑顔で王女様が迎え、頭を下げる。王女様が頭を下げるということは僕に対して悪気があったんだろう。

「王女様、それで僕に用事があるみたいだけど?」

「ええ。その前にここからは三人でお話をしたいのでミス・ロングビル、席を外してくれませんか?」

「かしこまりました」

不満げにマチルダが退室して、この部屋にいるのが三人だけになる。

「そこにいるオールド・オスマンに私達の結婚式が決まり次第、仲人になって貰おうと思いまして」

「学院長に?」

「ほほう。興味深い話じゃな……」

この様子を見ると学院長は既に買収された様だ。

「ええ。本来であればマザリーニ枢機卿に任せるべきことなのですが、彼は私達の結婚に反対しており仲人を勤められる状況にありません」

昨日の今日でそこまで話が行ったことに驚きだよ。

「反対か……まあ枢機卿の言うこともわからんではない。ガリアに少々良からぬ噂がある上に、オルレアン公を婿にする声も上がってきている。トリステインの王族は姫様と王妃様の二人だけで、王妃様は政に手を出さぬ以上、実質姫様一人となる。しかしガリアの王族は現国王とその娘イザベラ姫、そしてオルレアン公の三名。しかも三人ともに政治が出来るというのじゃから誰か一人くらいいなくなっても支障は出ないから問題はないと考えているのじゃろう」

……無能王と無能姫の二つ名が息をしていない? トリステインの貴族ってこんなに頭柔らかかったけ?

「僕がガリアを継げなかったとしてもイザベラ姫様が後を継げば良いだけだしね。それか優秀な貴族を婿にして継がせる」

「うむ。枢機卿はトリステインの例をごり押しして現国王の直系の血筋をガリア王家にさせることでオルレアン公が婿に行っても問題ないようにするのじゃろうて。過去の例からそんなことを出来るはずもないのに」

「それどころかガリアとトリステインの大戦争待ったなし」

こればかりは避けられないだろうね。唯一無二の男のガリア王族がガリアの王になれないなんて馬鹿げた話は聞いたことない。それをマザリーニ枢機卿は引き起こそうとしているからとんでもないな。

「儂はこういったことにあまり口出しすべきことではないが、この学院の可愛い生徒達を戦場の駒にされてはたまったものではない。アンリエッタ様、その話ぜひ受けましょう」

僕がそう言ったことでオスマンが仲人になることがほぼ決まり、アンリエッタ王女が笑顔で頭を下げる。

「ありがとうございます。オールド・オスマン」

「そうと決まれば早速、マザリーニ枢機卿を説得しなければな」

学院長が鈴を鳴らすとマチルダが再び入室し、僕に目で何かあったのかを尋ねる。それに対して僕は、姫様と結婚することになったことを目で語った。

「お呼びでしょうか?」

「マザリーニ枢機卿を呼んで来てくれ。早急にな」

「かしこまりました」

マチルダが退室するとアンリエッタが耳打ちする為に僕の耳元で囁いた。

「ところでミスタ・タバサ。貴方が婿になれば立場上妾は出来ませんが私が嫁に行けば妾も出来ますわ」

「なっ!?」

「あの奥方の悲しむ顔、見たくないでしょう?」

奥方……キュルケのことだね。いやキュルケだけじゃない。マチルダやテファ、エルザの悲しむ顔が目に浮かぶ。

「でも王女様はいいの?」

「私は、構いませんわ。何せ私、頭がお花畑で綺麗事が大好きですわ。独占するよりも共有した方が幸せになれますわ」

お花畑って、好き勝手言っている貴族に対する皮肉?

「ありがとう……」

「まだ喜ぶのは早急ですわ。これからマザリーニを説得しなければなりません」

「そうだね」

その数分後、学院に滞在していたマザリーニ枢機卿が学院長室に入室してきた。

 

 

 

「さてオールド・オスマン。私に話したいことがあるようですが一体?」

「うむ。その前に一つ宜しいかの。そこにいる少年を紹介させて貰おう。彼の名前はシャルロット・エレーヌ・オルレアン。現オルレアン公じゃ」

「貴方がそうでしたか……はじめまして枢機卿のマザリーニと申します」

「どうも」

「それでそのオルレアン公を会話に入れると言うことは、やはりガリアとの同盟の件ですかな?」

「その通りです。マザリーニ枢機卿は姫様を嫁に行かせることを反対しているそうですな」

「ええ。しかし何も考えずに反対している訳ではありません」

「と言うと?」

「姫様の人気が原因なのです」

「私の?」

「このような歌が街で流行っています」

「トリステイン王家には美貌があっても杖がない。杖を振るは枢機卿、灰色帽子の鳥の骨……でしょ?」

僕がその歌を歌うと枢機卿が頷いた。

「その通り。姫様には政治力がないと認識されているにもかかわらず、平民からの人気が絶えませぬ」

「それで?」

「只でさえ、姫様を外国に留学させて不満を募らせているのにその外国の王族に嫁ぐとなれば暴動を起こします」

「マザリーニ、そうでしょうか?」

「ええ。正確には姫様を国外に出さずに傀儡としたい貴族が姫様の人気を利用して焚き付ける。私の所にもその活動をするように推進されています。もっともやる気は全くありませんが」

王女様を傀儡にしたい貴族にとって僕は邪魔な訳だ。

「オルレアン公の婿入りは何故反対しないのですか?」

「トリステインにオルレアン公を婿入りさせることで平民達の不満を減らすだけでなく、オルレアン公の発言力を減らしたい訳です。王家の権力があまりにも強いと貴族達が弱体化し、王家自らの首を締めることになるのです」

王女様とは真逆の考え方だ。王女様はガリアに全任させることでトリステインの旨味を味わせてトリステインに依存させ、最終的にはトリステインなくしてガリアが成り立たないような仕組みにさせるのが目的。しかしマザリーニはそのリスクを見越している。

 

「しかし枢機卿、そのようなことではいつまで経ってもトリステインは弱体化し続けたままですぞ。歌にあるように王家は何もない状態なのです。フィリップ三世の時代ですら政治のことは大公に任せきりではありませんでしたか。フィリップ三世は軍事に手を出していたからどうにかなりましたが、今後は王家が政治に口出ししなければなりませぬぞ」

「何も全てこちらでやるとは言ってはない。政治のことを誰か一人に任せきりにすることはどういうことか私自身よく理解しております故に、オルレアンの婿入りを望んでいるのです」

「枢機卿、お主の考えは良く分かった。しかしトリステインだけでなくガリアのことも考えて下され。ガリアの王族には国王以外の男はそのオルレアン公のみ。それを奪うような真似をすれば戦争になります」

もう正攻法では敵わないとみて学院長が最終手段を取り出す。これで説得出来なければ10時間かけて説得するしかない。

「ではこうしましょう。ガリア王家に問い合わせて婿入りを認めたらオルレアン公を婿入りさせ、トリステインの王に。婿入りを認めなかったら姫様を嫁に行かせる。そこの御二人も構いませんか?」

「私は構いませんわ」

「わかりました」

「では早速、ガリアに連絡致しましょう」

枢機卿がその場を去り、ガリアとトリステインの会談をすることになった。

 

「ところでミス・ロングビル。この事は他言無用じゃぞ」

「わ、……承知しました!」

それまで気が動転していたのかマチルダが顔を紅潮させそう答えた。




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43話

「お帰り、タバサ」

僕の自室で待機していたキュルケが本を閉じて迎えてくれた。

「タバサという偽りの名前は僕が僕でない為に着けた名前。親しい人にいつまでもその名前で呼ばれると嫌になる」

「何よ、もう……ってあれ? そう言うってことは私のことを」

「キュルケ、僕ことシャルロット・エレーヌ・オルレアンの妾になって。不自由はさせないし、捨てたりもしない」

「妾って言うとやっぱり、第一夫人はあの姫様?」

「形式上そうなるけど、政略結婚だから仕方なくそうなるけど僕は平等に愛を注ぐよ」

「ふふっ、引き受けるわ。言っていることは最低の男のそれなのに憎めないのはそれだけ貴方を愛している証拠だもの」

「う……」

「でも一つ聞いてもいいかしら?」

「何?」

「私、ゲルマニアの人間よ。ゲルマニアと仲悪くなるようなことをしておいてゲルマニア人の私を妾にするなんて挑発行為以外の何者でもないわ。それでもいいの?」

挑発行為ね。確かにそうだけど、ガリアとトリステインが同盟している以上それはない。戦争するなんてことはやりたくとも出来ない。プライドの高いトリステインならやりかねないけどゲルマニアは合理主義で勝ち目がなければやらない。

「それで仮にゲルマニアと戦争になることがあっても僕は構わないよ。僕は君を離さないから」

それに僕はキュルケを愛している。戦争が起こったとしてもキュルケを手放すなんてことはやらないしさせない。

「そう……ありがとうタバサ」

「シャルロット・エレーヌ・オルレアン」

眉を顰めながら訂正する。

 

「じゃあシャルロット、私の他に妾の候補いるんでしょ? その人達と話し合いましょうか」

「気づいていたの?」

「そりゃね。最初の内こそ初なシャルロットがどんどんタフでテクニシャンになっていくもの。余程経験を積まないとああはならないわよ?」

「ゴメン……」

「それで後の人達は?」

「三人。そのうち二人は人外」

「人外? それって人じゃないってことよね? 亜人か何か?」

「一人はキュルケも知っているエルザ」

エルザは僕の棒から出るアレが大好物でそれ提供する代わりに大人しくする契約を結んでいる。故にメイドにするとあらぬ噂が一人旅してしまう為、妾にせざるを得なかった。

 

「……ロリコン」

確かにエルザの見た目は少女そのものだけど吸血鬼で、実年齢はこの学院で学院長に次いで年を取っている。あのコルベール先生や枢機卿よりも年上。その事をキュルケは地下水を通して知っている筈なんだけど、エルザの見た目を考えてかそう罵って来た。

「それを言ったらキュルケだってショタコン」

自分で自分のことをショタと言うのはアレだけど、小柄で童顔、しかも身体は華奢だから成長途中の少年としか言いようがない。

「あら心外ね。私はタバサコンプレックス、略してタバコンよ」

キュルケが虚を突かれた僕の口を塞ぎ、大人のキスをする。

「ぷはっ……やっぱり巧いね。キュルケ」

おかげでこっちまでエッチな気分になってくるよ。そしてキュルケを押し倒そうとするとキュルケが僕の口を人差し指で抑えた。

「ダーメ。シャルロット、貴方にはすべきことがあるわ」

「すること?」

「そうよ。私の他に奥方になる人を私の前に連れて来なさい。そしたらエッチ解禁よ」

「う……」

キュルケが出し惜しみするなんてよっぽどのことだ。それほど僕の妾や王女様が気になるんだろうね。

「さ、行ってらっしゃい。全員揃ったらヤリましょう」

今、この場で嘘を言ってキュルケと結婚してもいい。だけどキュルケ以外に守れなくなる。それだけは嫌だ。僕は初めて自分の欲望の為に行動する。

 

 

 

エルザには今までと変わらないことを伝え、マチルダの元に向かう。

「あらミスタ・タバサ。私に何かご用ですか?」

あくまでも他人行儀で対応するマチルダに耳元でささやく。

「マチルダ、僕の妾にならない?」

「なっ、な、何を……!?」

「アレだけ摂取しておいて何を今更」

「いや、あんたの口からそれを言われるとは思わなかったんだよ。あの王女様の夫になるとなればその妾もそれなりの者じゃないと釣り合わないんじゃないかって思っていたから」

「妾って普通にメイドとかそんな立場の人でもなれるから……」

「そりゃそうなんだけどね。いざ言われると恥ずかしいもんだよ」

「じゃあ引き受けてくれるの?」

「いや、御断りさせて──」

「そうそう、テファも妾にする予定だから」

マチルダが断ろうとした瞬間に僕が声を被せる。この言葉こそ切り札だった。

 

「あんた、モード大公の悲劇を知らないのかい?」

「アルビオンの大公様が何らかの理由で殺されたんでしょ? 表向きはモード大公がアルビオン王家に反逆しようとしていたからだと聞くけど、実際はモード大公はエルフとの間に子供を作ってしまった……その子供の名前はティファニアでしょ?」

「……信じられないね。テファと一度会っただけでそこまで推測していたなんて」

「マチルダの素性でピンと来たんだ。マチルダの家系は大公に仕える家で、大公以外で唯一その騒ぎで家を失った貴族。その繋がりでテファがモード大公の娘だと気づいたんだ」

「参ったね。でもテファはガリアには連れていけないよ」

「耳の心配なら大丈夫。エルフの耳を幻術で人間の耳に見せる道具がある。確かガリアに来たエルフのお偉いさんがそれを着けて観光していたよ」

「じゃあそれさえ着ければ人並みの生活が出来るのかい?」

「うん……だけど」

「だけど?」

「胸をごまかす道具はまだ出来てないんだ」

テファの胸はとにかくデカイ。キュルケがメロンならテファのは特大メロン。キュルケだって普通に注目されるほどデカイのにその一回りどころか二回り上のそれを見て平気でいられる男は何人いるだろうか。おそらく僕の知る限りでは皆無。

「安心しな私がついているさ。私の屍を越えない限りテファに近づくことすらできない。それはあんたも一緒よ」

マチルダが僕の股間を叩き、セクハラする。

「なっ……!」

「その下の杖で私をイカせてからヤりな。もっともテファを泣かすような真似をしたら……ここをチョッキンしますわ」

マチルダが営業スマイルで僕の股間の棒を指二本で挟み、それが何を意味するのか理解して頷いた。

「それじゃあ妹には伝えて置きますわ。ミスタ」

「じゃあね」

妹か……それだけテファのことを大事に思っているんだろうな。テファもマチルダのことをマチルダ姉さんって言っていたしね。何にせよ皆、僕の妾になったからには絶対に僕が幸せにしてみせるよ。そして「貴方と一緒に居られて世界一幸せだった」と言わせてやる。




急ぎ過ぎ、と言われても仕方ない。だって次回で一旦完結したいもの。

それはそうと感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります。


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ハーレムEND

ようやく終わった……


それから、数年後。魔法学院を卒業した僕はアンリエッタと結婚した。

 

「アンリエッタ皇太子妃様ばんざーい!」

「シャルロット皇太子様ばんざーい!」

僕達を祝う大歓声がその場に響くけれどもそれは次第に遠くなる。何故なら僕達は馬車に乗って移動していたからだ。

アンリエッタの方に向くと白いウエディングドレスに包まれたアンリエッタが可愛らしく、そしていとおしく見えた。

「アン。これから僕の妾がいるから紹介するよ」

アンリエッタは心のどこかでウェールズのことを愛していて、それを打ち消す為に夫になった僕にアンと呼ばせている。

「仲良くやっていけるかしら」

「大丈夫だよ。皆、からかうことはしても意地悪なことはしないから」

「そう……なら楽しそうで何よりだわ。何せ友達がルイズしかいなかったものだから、そのような人達と付き合えるとなると楽しみで楽しみで!」

「もしかして、そのために妾を許したの?」

「ええ。物語では妾と奥方の関係は大体ドス黒いものだけれども、実際の歴史はそのような例は稀で仲良くやっていくことが多かったわよ」

「そうなの?」

「実際には外敵に備えられないから、喧嘩なんてする暇すらもなかったというのがほとんどで後は本当に仲良くしていたのがトリステインの歴史よ」

意外だ。だけど理屈はわかる。僕とイザベラお姉ちゃんが表面上仲悪いということになっている。理由はお互いに対立する立場で仲が悪くないとガリア王家の力が集中し過ぎてしまう。

自分で言うのもなんだけど僕は内政官としても優秀だと思っている。しかしイザベラお姉ちゃんや伯父様は苦手分野にも関わらず僕以上に優秀。僕達三人が力を合わせればガリアはもっと強い力を手に入れることは出来るけどそれ以上に衰退してしまう。貴族がガリア王家に口出し出来ないほどに弱ってしまい、誰も咎めることは出来なくなるからだ。それを防ぐ為の不仲なんだよね。

「ガリアだと兄弟でも喧嘩するのに……」

「さて、まずどのような方がいるか教えて下さらない? 旦那様」

「それは着いてからの楽しみだよ。シルフ!」

「はいはいご主人」

「皆のところに案内して」

「りょーかい!」

シルフが空をひとっ飛びして、オルレアン領の敷地に入る。その屋敷には僕達の妾が待っていた。

 

「お帰り、私のシャルロット様」

「私の、じゃなく私達のだろ? 小娘」

マチルダがキュルケを挑発して、小突く。それに腹を立てたキュルケがこめかみに青筋を浮かび上がらせ口を開く。

「あらオバサンは嫌だわ。歳を取ると細かいところまで気にするんだから」

そしてキュルケとマチルダがにらみ合い、そして取っ組み合いに発展した。

「このオバひゃんら!」

「ほむひゅめ!」

お互いに口を引っ張り合ってもまだ口喧嘩は止まらない。これくらいで止まるようなら月に一回決闘を申し込むロレーヌを止められるよ。

「……止めなくてもいいのかしら?」

「アレが日常茶飯事だし、本気で喧嘩している訳じゃない。ただのじゃれあい。ちなみにあの赤い髪がキュルケで、緑の髪がマチルダ」

「私にはキュルケとマチルダの取っ組み合いがじゃれあいには見えないけど……」

「まあ巨乳の女神様が止めるから大丈夫だよ」

「ふ、二人ともやめて下さい~!」

マチルダとキュルケの取っ組み合いに割って入って二人を吹っ飛ばしたのはテファ。彼女こそ巨乳の女神様であり、世界一の乳を持つ女性だ。

「ね、大丈夫でしょ」

「あのおっぱいお化けも、ロッテの妾?」

ロッテとは僕のことでアンリエッタがアンと呼ぶなら僕も愛称のロッテを使うようにさせた。

「そうだよ。それだけじゃなく性格も一番穏やかだからアンと一番仲良くなれそうだよ」

「……この敗北感は私だけじゃないはずよ。アンリエッタ」

アンリエッタがテファの顔を見て、ぶつぶつと呟く。誰だって女の子ならあの顔を見て敗北感を感じてしまう。学院でも美少女として有名だったルイズですら「馬鹿でかい乳だけじゃなく顔まで美少女なんて反則よ!」と認めてしまうくらいだ。ちなみにテファの乳を見たサイトが真っ先に揉みに行こうとしてルイズに股関を蹴られたのは記憶に新しい。

 

ちなみにルイズとサイトについてどうなったかというと、ルイズは大人のオモチャを作り出し、それを販売している。サイトはウェールズと仲良くなって相談役になったらしい。ルイズとサイトの立場が逆なんじゃないかと思ったけど、サイトの名前で大人のオモチャを販売しても効果が薄い、ウェールズの相談役にルイズがいるとアルビオン王家やヴァリエール公爵に取っても不都合だから名前を互いに貸している。おかげでルイズのストレスはマッハ。サイトはアルビオンの救世主扱いされる有り様だ。

 

「ところであそこにいるのは、イザベラ姫よね?」

アンリエッタの指差した方へ向くとそこにはメイド姿のイザベラお姉ちゃんがいた。

「お呼びでしょうか? 皇太子様、皇太子妃様」

瞬速で僕達の元に駆けつけ、イザベラお姉ちゃんが本物のメイドのように頭を下げる。

「何をやってるの?イザベラお姉ちゃん……」

「いやですわ皇太子様。メイドの私はエリザベス。イザベラ姫とは全くの別人です」

「こらエリザベスさん。ここしっかり拭いて下さい!」

かつて学院にいた黒髪黄色肌のメイドがイザベラお姉ちゃんを叱る。

「おや、メイド長にしかられてしまいましたので失礼しますよ」

そそくさとその場を逃げるイザベラお姉ちゃんと入れ替わるようにメイド長と呼ばれたメイドが僕達の元にやってくる。

「すみません。皇太子様、皇太子妃様。あのエリザベスはもうわかっているとは思いますがイザベラ姫様です。イザベラ姫様が皇太子様の様子を時折観察するためにあのようにメイドに変装しています」

「別にメイドでなくとも……」

僕がそう呟くとメイドが耳元で囁いた。

「後、皇太子様のメイド姿を見たいとか」

確かに時々メイドになってメイドの仕事をしているけどあれは調査であって趣味じゃないんだよ! それよりもイザベラお姉ちゃん、遂に吹っ切れたんだ……

「それでは失礼します。皇太子様、皇太子妃様」

「良いメイド長ですわね。彼女」

メイドが立ち去るとアンリエッタが笑みを浮かべていた。

 

「ところでロッテ、妾はそれだけ?」

「いやいやあの二人は妾じゃないよ。もう一人はアンも知っているあの子だよ」

「お兄ちゃん!」

エルザが僕に抱きついて僕の胸板を擦り、幸悦な表情になる。エルザは事前に彼女が吸血鬼で保護するために学院に通っていた時に紹介した。本当はテファも紹介したかったんだけどテファはマチルダが過保護なこともあって紹介できなかった。

「えへへ~っ♥️」

「まあ、幼い女の子にお兄ちゃんと呼ばせるなんて不潔ですわ、フケツ!」

「アン、棒読みで言わなくても……もう知っているとは思うけど妾の一人エルザだよ」

「冗談よ、ロッテ……よろしくお願いいたしますわエルザ」

「よろしくねアンお姉ちゃん!」

「やっぱりこのお姉ちゃん呼びは良いですわね……」

「妾の中で一番年寄りなのはエルザだけどね」

「あ゛?」

エルザがアンリエッタに見られないように睨み付けるその様はまさしく吸血鬼のそれだった。

「ロッテ、エルザは年長者でも私達よりも幼い女の子よ」

「お姉ちゃん大好き!」

今度はアンリエッタに抱きついてアンリエッタについている2つの桃を揺らす。冥福と言えるくらいに成長してしまった僕は、キュルケ達に汚れてしまったんだなと思うようになっていた。

 

「なんにせよこれでシャルロットファミリー集合したわね」

「そうね。さあシャルロット」

「坊や」

「シャルロットさん」

「お兄ちゃん」

皆で一斉に僕に問いかけながら僕の手足をつかんだ。

「貴方のミルク下さいな」

この後、めちゃくちゃ搾られた。

 

~ハーレムEND完~




納得出来ないという方もいらっしゃると思いますが誰が何と言おうと一応完結です。

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詳しいことは活動報告にて


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