~頑張れランサー無茶ぶり道中 冬木住民に明日はない~ (ケツアゴ)
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~頑張れランサー無茶ぶり道中 冬木住民に明日はない~
ウェイバー・ベルベットは己が召還した英霊に満足していた。彼が呼び出したのは双槍の騎士ディルムッド。マスターへの忠義心に溢れ宝具の魔力消費も少ない。まさに理想の英霊だ。
「マスター、まずは方針を決めましょう」
「あ、ああ、そうだな」
ウェイバーはできるだけ威厳を出すように心がけながらも口元が緩むのを抑えられない。今まで歴史の浅い魔術師の家だと見下され、長い年月をかけた論文を馬鹿にされた事に怒って講師が用意した予備の触媒を盗み出して参加した聖杯戦争。噂では嫌味なケイネスに恨みを持つ他の教師によって本命の触媒であるマントの切れ端が燃えてしまったと聞く。
(これは僕に追い風が来てるんじゃないかっ? よし! 絶対に聖杯を手に入れて僕の実力を認めさせるぞ!)
ウェイバーがそのような事を思う中、ディルムッドはウェイバーの未熟さを察しながらも何も言わず、生前果たせなかった、主への忠義を貫くという願いを果たそうと心に誓っていた。多少無茶をしがちな少年と忠義を誓いながらも諌言を出来る騎士。本来の歴史で召喚された征服王とのコンビには劣るかもしれないが、ウェイバーの成長に繋がり、やがて名物講師と呼ばれるまでになるだろう。
……ただし、他の陣営の召喚した英霊がマトモだったら、の話だが。もしこの時点で他の陣営の事をウェイバーが知れば直様逃げ出しただろう。最も、たとえ地球の裏側まで逃げても無駄な話なのだが……。
「さて、講義を始めよう。恐怖には鮮度というものがある。絶望が希望に変わり、それが再び絶望に変わった時、絶望は更に大きくなる。分かったかい?」
「スゲーよ旦那ぁ! アンタ、最高にCOOLだよ!」
龍之介は快楽殺人鬼だ。この日もとある一家を惨殺し、趣向を凝らす為に血で魔法陣を描いて家にあった古文書の呪文を唱える。そして目の前の男を召喚した。癖のある黒髪に大柄な体格を持つ外国人という以外は普通の人間にしか見えない彼だが、強烈な悪意に塗れていた。今も龍之介に最後まで残した少年を使って拷問の仕方を教えている。それも、最も苦しみ最も恐怖を与える方法でだ。
「それでよ、旦那の事はなんて呼べば良いんだ?」
「……ふむ。クラス名ならアサシンだが……シックス。シックスと呼びたまえ。ああ、それと……」
シックスはニコリと微笑むと龍之介の頭に手を置き、そのまま握りつぶした。
「私にマスターは必要ない。それに人間が私のマスターなど不快なのでね。……さて、始めよう。人間全てを滅ぼし、彼らが残した建物を遺跡として残す為。新たな血族の世界を作る為に聖杯を手に入れよう」
傾向進化、という言葉がある。馬もより早い馬が生まれる様に交配を繰り返し今の馬となった。そして馬にできるなら人間にでも出来る。ある武器職人はより人を殺せる武器を作る為、最も悪意が強い子を後継者に選んだ。そしてそれが何代も続き、人では耐えられないほどの悪意とその悪意に耐えられるだけの脳と肉体を持つ悪意の傾向進化が誕生したのだ。
「さて、まずはどの様なテロを行うか。ああ、そうそう、ちゃんと予告も残さねば。数をあまり数えられぬ幼子でも覚えられるよう『
「……貴女、誰?」
桜は生きる事に絶望し心を失った。毎日の様に蟲に犯されているが、其の日は蟲の住処を別の用件で使うからと自室で寝ていると家が突如崩れ、自分を助けようとしていた雁夜と自分を苦しめていた二人が倒れ、見慣れぬ少女の剣に蟲ごと食われた。少女は桜の顔を一瞥すると詰まらなさそうに背中を向ける。
「死にたがりに興味はないよ」
そのまま少女は去って行き、桜はその場に取り残される。そして状況を少し飲み込んだ桜の胸に希望が芽生え始めた。自分を苦しめていた二人は死に、もしかしたら家に帰れるのかもしれないと。
「良か…った…」
「そう、それはオメデトウ。そしてバイバイ♪」
そして死神は其の希望を見逃さない。殺すと楽しくなった桜は首のない自分の体を見て思った。やっぱりこの世に希望なんてありはしないと。
「あはは! あはははは! あはははははははは!」
周囲に少女の笑い声が木霊する彼女のクラスはバーサーカー。桜を救う為に雁夜が召喚し、家に居た全ての生命を喰らった存在だ。
ある世界が滅びの危機に貧していた。魂の行き来する関係にあるもう一つ世界から一方的に魂を奪われ続け出生率が下がり、そのままでは世界其のものが消え去ってしまう。それを案じた神は魂を取り戻す為、もう一つの世界の住人を殺す為の人型兵器を作り出す。だが、何も知らずに隠れ里で育った彼女は承諾なしに死神を宿され、自分を利用する為に育てたと知って豹変。育ての親と幼馴染、赤子を含む里の者全てを殺戮し、やがて自分を相棒と呼んで慕う死神すら喰らい、二つ世界を管理する神二人すら殺戮して世界を滅ぼした。世界が滅びる前、彼女はこう呼ばれていた。『全てを喰らう者』もしくは『
彼女の望みは世界の破滅。理由? それは極めて単純至極。
「楽しければ良いんだよ」
「貴様、名を名乗れ」
ケイネスは非常に苛立っていた。聖杯戦争の為に用意した触媒を二つとも失い、触媒無しに呼び出したのは謎の男。時計を思わせる異形をしており先程から何も話さない。かろうじてクラスがライダーである事しか分からなかった。
「おい!」
ケイネスが怒鳴ったその時である。ライダーは時計のイラストが書かれた謎の物体を放り投げたかと思うと其れに触れる。次の瞬間、ケイネスの婚約者であるソラウの目前に漫画の様な爆弾が出現し、爆発した。
「ソ、ソラウ? き、貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」
怒りで我を忘れたケイネスがライダーに飛び掛った時、ライダーの周囲を青い光が包む。それに触れたケイネスの体は消滅した。
ライダーの真名はテロリン。独房に収容されていた囚人を脱獄させた異次元の帝王であリ、テロリンワールドを作り出した全ての元凶である。
「……さて、どうするか」
時臣は召喚した英霊を見て呟く。用意した世界最古の蛇の抜け殻はうっかり捨ててしまって触媒なしに召喚した。のだが、出てきたのは謎の少年。クラスはアーチャーらしく身体能力は力や耐久重視だ。どうしようかと彼がアーチャーに背中を見せた時、巨大な刃が彼を貫いた。
「うがっ……?」
「ごめんね。でも、僕には君は必要ないんだ。……頂きます」
アーチャーはそのまま時臣を丸呑みにする。彼の手の甲に礼呪が出現した。
「さて、楽しみだな。障害全てを倒した時、僕の夢が叶うんだから。幸せになるって夢がさ」
彼の真名はアノン。全ての生命を抹殺し、障害一つ無い世界で生きる事が何よりの幸せだと考える地獄の住人。生きたまま飲み込んだ相手の体を扱えるという能力を持っているのだ。
「……遅いな。召喚につきそう約束だったのだが。仕方ないな……」
その頃、時臣の協力者である綺礼は時臣が彼にとっての最高の召喚時期をうっかり勘違いしていた為に付き添いなしで召喚する事となった。彼が召喚を望んだのは諜報に役立つであろうアサシン。だが、召喚されたのは銀髪の剣士だった。
「サーヴァントセイバーだ。お前が私のマスターか?」
「……まさかセイバーが出るとは。それでお前の真名は何だ?」
「セフィロスだ。よろしく頼むぞ、空虚なる我がマスターよ」
セイバーは真名を名乗ると霊体化を行い姿を消す。だが、決して魔力消費の事を気遣ったのではない。嫌いな人間に使えるのが嫌で今すぐ殺したいが彼の目に興味を持って保留としたのだ。今は利用する為に怒りの形相を隠そうと姿を消している。そんな心境など知らない綺礼は時臣と連絡をとって此れからの方針を考えねばと思っていた。
セフィロスの目的は自分の先祖だと思い込んでいる古代種を迫害した人類を滅ぼし星の支配を取り戻す、というもの。その為に星と一体化して神になろうとしていた。実際は彼は古代種ではなく、母だと思い込んでいるジェノバこそが古代種を滅ぼした元凶なのだ。彼の持つ宝具は愛刀である政宗と……黒マテリア。今は消費魔力の問題で使えないのだが……。
「……ふむ。中々興味深いな」
触媒である聖剣の鞘が飛行機の墜落で失われた為に触媒なしで所管されたキャスターは虚ろな目のマスターとその妻から話を聞き出して嬉しそうに呟く。聖杯戦争は彼の好奇心を満たすに十分なものだった。
「では、戦争の準備にとりかかろう。この世界を含む四つの世界を私のものにする為になっ!」
彼の名はソーダ・ライト。三世界支配を目論んだ悪人で洗脳や異次元創造、生命創造すら行える程の知能と魔力を持っているのだ。
こうして一騎を除いて最悪の反英霊が召喚された。唯一残された希望は未熟な凡才魔術師とランサーのみ。なお。聖杯は汚されてないので彼らが勝ち残れば世界は助かる。世界の命運は彼らに掛かっているのだっ!
……ぶっちゃけ、無理じゃね?
言っておくが続きを書けなどと無茶ぶりはしてくれるな ランサーが勝てるとお思いか?
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