クロメがまだ帝具・八房の『奥の手』を残している。 (原作改編)
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必殺の姉と不死の妹。

アニメ22話を視聴して、あまりのもったいなさに投稿しました。



 

 

 ナイトレイドのアカメは、郊外の教会に訪れた。

 

 深夜の草木が眠るころ、だれもいないはずの教会内には、イェ―ガ―ズのクロメがお菓子をほおばりながら待っていた。

 そして、『クロメのお菓子』の中身をひとつ取り出す。

 彼女はだれにもあげたことないお菓子をアカメに勧めるのだった。

 

 ―――これがどちらかにとって最後の晩餐。

 このお菓子―――帝具使い同士の戦いには、そういう意味合いが込められていた。

 

 

 

 

「おねえちゃんを殺すにはこの場所しかないありえないよ」

 妹のクロメはそうつぶやく。

 黒を基調にしたセーラー服、黒髪セミロング、赤い篭手、腰に携えた日本刀の帝具・『八房』、なによりも、その名を体現した真っ黒な瞳をした少女だ。

「……」

 姉のアカメは沈黙で答える。

 妹と同系統のセーラー服、黒髪ロング、赤い篭手、手にするは日本刀の帝具・『村雨』 そして、その名の通り真っ赤な瞳をした少女だった。

 

 この教会は、かつてふたりが離れ離れになって、再会した場所。

 アカメが帝国を、そして妹を裏切った因縁の教会。

 だからこそ、妹はこの場所を『決戦の地』に選んだのだから。

 クロメは、無言の会話にもうれしそうに微笑んだ。

 

「なんで帝国を裏切ったの? わたしが嫌いになったから?」

「……帝国は腐りきっている。奴らの言いなりでは民を救えないと気づいたからだ」

「任務で死んでいった仲間の気持ちはどうなるの? あの世でなんて言い訳するつもり?」

「……腐った帝国を倒し、民を導くことができれば殉職していった仲間もわかってくれるはず」

 

 クロメは歯ぎしりする。

 なんて都合のいい言い分だろう。

 だれよりも死者と付き合い続けたクロメだからこそ、アカメの言葉を素直に聞き流せなかった。

 

「自分勝手すぎるよ、おねえちゃんっ!」

「……それを背負う覚悟は出来ている」

 クロメは長椅子から立ち上がる。

 アカメも同じタイミングで腰を上げた。

 

「もういいよね、そろそろ始めようか」

 妹が取り出したのは、注射器だった。

 禍々しく黒光りする液体がたっぷりと詰まった、手のひらサイズの注射器。

 クロメは、それを自分の首に刺した。

 

「――――っあぁぁ!」

 

 注射器が押し込められるとともに、

 彼女の目から、次第に正気がなくなっていくのがわかる。

 液体が注射器から消えた時、代わりにクロメの瞳から光が消えていった。

 

「この新薬は、おねえちゃんが居なくなってから開発された劇薬でねぇ……。負担は増す一方だけど、心臓を潰すかしないと止まらない不死身になっちゃうんだよ」

 

 酔ったような昂揚感と、底なしに黒い瞳。

 そして、口から零れる微量の吐血。

 生きながらにして不死身の肉体を手に入れた代償。

 アカメの目は、少しだけ険しくなった。

 

「今夜は特別だからねぇ―――、とってもキツいやつ、使ったよ? おかげでほら、全然痛くないし、怖くないよ? いまなら空だって飛べそうだよ?」

「……クロメ、お前」

「いまのわたしは、前に会った時のわたしより、ずっとずっと強いよ? この間は、うっかりおねえちゃんを見失ったけど、でもね、今度はにがさないよ―――?」

「……」

 

アカメは既に気付いていた。

クロメの瞳、醸し出すオーラがかつて妹と呼んだ彼女とは程遠いことに。

これはもう、帝国に薬漬けにされた、イェ―ガ―ズのクロメだ。

 

「あぁ、やっとだよやっとやっとやっと、おねえちゃんを殺してっ! 骸人形にできるっ! そしたらずっと、ずぅ――――っと一緒に居られるっ! あはぁ! 幸せだねっ!」

 

 クロメは勢いよく抜刀する。

 対照的に、アカメはゆっくりと刀を抜いた。

 ふたりとも、脇を開けた『突きの構え』

 姉妹揃って、まったくおなじフォームだった。

 

「さぁ、帝具戦を始めようっ! はやくはやく、おねえちゃんを―――」

 クロメは一呼吸のうちに間合いを詰める。

 狙いはアカメの首筋。

 左肩で隠れたわずかな隙間へと向かって刺突する。

 

「おねえちゃんを――――殺したい!」

 姉妹決戦最初の一刀。

 アカメの足刀が、妹の腹部に炸裂するところから始まった。

 

 

 

 

 クロメの突進に対して、アカメは冷静だった。

 帝具・村雨の必殺に慢心することなく、それどころか注意を引き付けることによって最高級の後ろ回し蹴りをお見舞いしたのだ。

 

 突進の運動エネルギーを、そのままキックに乗せ返したのだ。

 クロメは、ひとたまりもない。

 まるで大砲の弾のような勢いで教会の中庭へと吹き飛ばされた。ある意味予言通りに空を飛んだクロメに更なる衝撃が襲いかかった。

 一直線に教会の窓を突き破り、地面を転がる。それでも勢いがおさまらない身体から血を吹き出した。

 突進距離の三倍は転がったあと、ようやく止まった。

 

 クロメが気付いた時には中庭で寝転んでいた。

 おびただしい出血の数。

 クロメは現実を受け入れられない。

 

「……なに、いまの、うそ」

 新薬で限界強化した彼女がまるで相手にならない。

 かつて帝国にこの人有りと呼ばれた近接戦闘のスペシャリスト。戦い慣れているとしか言いようがない。

クロメの予想を上回る実力差がある。

 アカメの強さを、身を以って再確認した。

 クロメが突き破った窓から、アカメが急ぐでもなく歩み寄ってくる。

 彼女の無表情は、すこしも崩れていなかった。

 

「わたしの受け持ちは『白兵戦』だ。ボロボロのくせに、勝てると思うな」

「……さすが、わたしのおねえちゃん」

「―――違う。ナイトレイドのアカメだ」

「……どっちでもいいよ」

 

クロメは、八房を支えにして立ち上がる。

彼女の目から、闘志、殺意は消えていなかった。

「おねえちゃんだけは、どうしてもこの手で斬りたかったんだけどなぁ」

 クロメの後ろから、二体の骸人形が姿を現す。

「やっぱり―――このふたりにお願いしようかな」

 

 薙刀使いのナタラ。

 二丁拳銃のドーヤ。

 ふたりの骸人形はクロメを守るようにして立ちふさがる。

 骸人形に村雨の呪毒は通じない。

 これは前回、クロメ暗殺の時にアカメは確認していた。

 

「さぁ、ナタラ、ドーヤ、遠慮はいらないから。お姉ちゃんを―――ゴホゴホ」

 吐息に混じって、微量の吐血。

 苦しそうに血が混じったせきをする。

 

「限界の近い身体での八房発動、さぞ苦しいだろう。一撃で楽にしてやる」

「心配いらないよ、おねえちゃんを殺すまで、死なないもん」

 

 ナタラとドーヤは心配そうに目を配る。

 死んで骸人形になった彼らには、彼女の限界がよくわかっているのだろう。

 それを吹き飛ばすように、クロメが吠えた。

「おねえちゃんを刻んで、ナタラっ! ドーヤっ!」

 ふたりの骸人形が、動き出す。

 

 薙刀使いのナタラ。

 かつて帝具・『インクルシオ』を着けたタツミと互角以上の戦いを演じてみせた。

 二丁拳銃のドーヤ。

 ナイトレイドの砲撃手・マインの帝具・『パンプキン』を相手に敗れはしたものの、決して引けを取らなかった。

 

 ふたりは強い。

 

 帝具を持っていないにも関わらずナイトレイドの帝具使い二人分の戦力に匹敵する。

 

 そんなふたりが、アカメを攻めきれないでいた。

 ナタラの薙刀をさばき、ドーヤの銃弾を避ける。

 防戦一方に見えて、アカメは涼しい顔をしていた。

 彼女の身のこなしは常人をはるかに上回る。

 マシンガンの弾幕から逃げおおせるだけの脚力は健在だった。

 来たるべき暗殺に備えて、アカメはチャンスを待った。

 

 しかし、いくら彼女が強かろうが多勢に無勢。

 ナタラとドーヤの連携は、次第に鋭さを増していく。

 なにより、クロメには決して近づけない。

 アカメのかすかな焦り。

 戦闘の達人であるナタラは的確にスキを突いた。

 彼女が躱せないポイントで、薙刀を振り下ろしたのだ。

 受け止めざるをえない。

 でなければ喰らってしまう一撃に、アカメは反射的に防御した。

 

 轟音とともに、一瞬の硬直。

 千載一遇のチャンスをドーヤは見逃さなかった。

 

 二発の乾いた銃声。

 アカメのブーツを貫通して、左足に二発の銃弾が撃ち込まれた。

 

「――――ッ!」

 アカメはたまらず地面に倒れる。

 それを見下すように、ふたりの骸人形は立ちはだかった。

 そして、ふたりの背後からクロメがひょっこり顔を出す。

 

「はい、おしまい。ナタラが抑えてドーヤが刺す。うんうん、鉄板だよね」

「……クロメッ」

「おねえちゃん、痛い? ゴメンね、足撃っちゃったカラもう走れないよね?」

 クロメは姉に近づかない。

 手傷を負わせた今でも、アカメに対して警戒していた。

 きっと間合いに入った瞬間に帝具・村雨で切り刻まれるだろう。

 ひょっとしたら投げてくるかもしれない。

 あらゆる反撃を考えて、ナタラとドーヤの後ろが一番安全だった。

 地球上で一番安全なのだと理解していた。

 

「ホントはわたしの帝具で人形にしたいケド、もうワタシに時間がないからね。だからここで最期のお別れをしようカナ」

 徐々に言葉がおかしくなるクロメ。

 地にひざをつく姉は、覚悟を決めるのだった。

 

「それじゃあ、おねえちゃん。バイバイ」

 振りかぶるナタラの薙刀。

 上空に飛び、討ちもらしを埋めるドーヤの拳銃。

 そして、クロメは知ることになる。

 ナイトレイドのアカメが、本当に強いという現実を―――。

 

 

 

 

「――――葬る」

 一瞬だった。

 ナタラが薙刀を振り下ろした時。

 ドーヤが二丁拳銃の引き金に力を込めた時。

 すでに彼らの頭部は、宙を舞っていたのである。

 村雨の毒が効かない骸人形にもかかわらず、どうしようもなく絶命していた。

 圧倒的な斬撃の速さ。

 制空権。

 間合いの支配率。

 あのナタラとドーヤのほんのちょっぴりの油断。

 トドメを刺す時の一瞬、慢心というにはあまりにもかすかな緩みを切り刻む。

 一斬必殺『村雨』を持つから必殺なのではない。

 ナイトレイドのアカメが持つことによって、初めて一斬必殺の二つ名が輝くのだ。

 アカメは実行してみせた。

 葬る、と。

 そして、それはふたりだけの話じゃない。

 

 ―ーードスッ、と鈍い音が脳を揺らす。

 クロメのわき腹に、村雨が突き刺さる音だった。

 とっさに心臓をガードした八房のおかげで胸の串刺しは免れたが、問題ではない。

 一斬必殺『村雨』

 解毒不能の『呪毒』を流し込む帝具に急所など関係ないのだ。

 

「……エ? アレ、なんデ……?」

 クロメは、わき腹から生える村雨を見て、唖然としていた。

「わたしはもう、昔のアカメじゃない。止まってるお前たちと違って、生きてるからだ」

 クロメは納得してしまう。

 あぁ、勝てないわけだ。おねえちゃんはいまも進化しているから。生きてるから。

 ナタラとドーヤも、そしてわたしも、死んでる人間だから。勝てない。

 クロメはわき腹の異物感を味わうと同時に、呪毒の奔流を感じていた。

 呪毒の紋様が、クロメの身体を侵食していく。

 彼女は抵抗しない。

 手にしている八房で反撃できそうなものだけど、脱力したままだ。

 アカメはそれが、クロメの限界なのだと知る。

 数多くの命を殺めてきた彼女にはよくわかっていた。

 

 ―――クロメは死ぬ。呪毒に侵されて死ぬ。

 

「お、ねえちゃ―――」

「こんどこそ、本当にさよならだ。クロメ」

 村雨を引き抜き、鞘に収める。

 同時に、クロメの身体が地面に崩れ落ちた。

 アカメは、ゆっくりとその場を後にする。

 こうして、熾烈を極めた姉妹決戦はついに幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――おねえチャン……?」

 しかし、まだ終わりではなかった。

 アカメは振り返る。

 たしかにクロメは死に体。呪毒の紋様が手や足にまで伸びきっている。

 身体が完全に毒で犯されている。

 それでも、上体を起こしてみせた。

 まだ、クロメは生きていたのだ。

 

「すごぃね。ワタシの身体、アノ村雨の『呪毒』でも死なないらしいよ。あはは、おかしいよネ。必殺じゃなくなっちゃうネ。アは、アハハハ―――」

 クロメの身体に『毒への耐性』が出来あがっていた。

 アカメも知らない。呪毒で即死しない生物。

 戦慄した。実の妹だったものが、まさか必殺を超えてくるだなんて。

 しかし、アカメにはわかっていた。

 クロメは長くは続かない。

 じきに死に至る。

 毒で死なないだろうが、首を落とせばいい。

 頭だけになれば、さすがに生きてはいまい。

 生きていようと、細切れになるまで殺しきる。

 必殺の覚悟で、地面にへたれこんだクロメに歩みよった。

 鬼をも殺せるアカメの顔を見上げたクロメは、

 

「―――うれしいなァ」

 アカメの予想とは異なり、喜びを感じていた。

「おねえちゃん、さっきはワタシが苦しまないように、ちゃんと心臓を狙ってくれたンダよね。ワタシのために、ヨウシャなくコロシにきてくれるんだよね?」

「……」

「大好きなおねえチャン。でも、ザンネン。時間切れみたぃ」

 クロメの薬が切れた。

 これでようやく終わる。

 楽に殺すことはできなかったけど、やっと殺してやれる。

 これ以上、クロメが苦しむことはなくなった。

 アカメはほんのすこし、安心していた。

 その油断が、クロメに反撃を許してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「バイバイ、おねえちゃん。―――先に逝ってるね」

 クロメは、八房を逆手に持って―――

 ――自分の心臓を、刺し貫いたのだった。

 

「―――ックロメ!」

 呼びかけても、遅かった。

 自らの心臓に八房を刺したクロメは、

 持ち主を失った八房の、骸人形になったのである。

 

 

 



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帝具・八房の『奥の手』

 アカメは思い出す。

 

 あれは首切りザンクを退治しに出かけたときのことだ。

 ナイトレイドに入りたてのタツミに帝具の危険性を教えるとき、私の帝具『村雨』を使って説明したんだ。

 

「……その刀、かすっただけで即死かよ!!」

 

 タツミは顔を真っ青にする。

 無理もないだろう。彼は一度、この村雨で私に胸を刺されている。

 偶然、懐に木像が入ってなければ死んでいたのだから。

 

「……こいつを手に入れてずいぶん経つが、一斬必殺の妖刀としてすっかり有名になってしまった」

「そりゃそうだろ。無敵じゃん」

「……いや、この刀にも弱点はある」

「どんな?」

「……手入れの時に気を使う」

「あー」

「……相手をじかに斬りつけないと毒を流し込めない」

「鎧相手にはつらいな」

「……」

 

 私はこの時、あることを思い当たる。

 ――村雨の天敵。クロメの持つ『帝具・八房』の存在。

 しかし、アカメは口を閉じた。

 いまこの場でタツミに言えば、近い将来かならず『死んだ仲間を生き返らせる帝具』を探すに決まっている。

 生き返りなんてあるわけがない。死んだらそれまでだ。

 だが、もし『八房』について話してたらどうだろうか。

 

 タツミは喜んで、帝具・八房を求めるだろうか。

 クロメに――親友のイエヤスとサヨを骸人形にしてほしいと願うのだろうか。

 どんな命令をも聞く、操り人形のような親友を、喜んだだろうか。

 アカメは考える。

 自分の妹が、骸人形にされた今だからこそ考える。

 

 

 

 

 

 

 

「八房を、自分に刺した……だと?」

 アカメは動けないでいた。

 一見すれば絶好のチャンス。

 彼女にとって首から心臓からとやりたい放題だ。

 しかし、アカメは動くことができなかった。

 これは暗殺を生業とする彼女特有の『金縛り』だった。

 

 ―――相手が未知数の内には手を出すな。

 かならず殺せると確信するまで機会を待て。

 

 でなければ―――〇ぬ。

 今日までアカメを活かし続けた直感が警鐘を鳴らす。

 

 いま攻めてはいけない。

 機会を待て。

 そして、沈黙を破ったのは血濡れの少女だった。

 

 クロメが起き上がる。

 おぼつかない手つきで胸に突き刺さった帝具・八房を引き抜いた。

 クロメの顔を見て、アカメは息を飲む。

 青白い顔は濃い『死相』が出ていた。

 もうクロメは死んでいる。

 村雨の呪毒が効かない骸人形になってしまった。

 

 アカメは疑問に思う。

 しかし、なぜ動く?

 なにがクロメの骸人形を操っている?

 その答えを私は知っている。

 おそらく『クロメの遺志』だ。

 

 以前、アカメはかつての仲間であるチェルシーに話したことがある。

 『骸人形は生前の強い想いに縛られている』

 『強い想いで自分から動き出すことがある』

 帝国時代、クロメの帝具を見て知っていた。

 

 それが、いまのクロメだった。

 アカメを殺したい、という強い怨念が、死後クロメの身体を突き動かす。

 

 ―――これが、八房の奥の手。

 骸人形を失った八房は、最後に持ち主を骸人形にする。

 そして、次の所有者が見つかるまで延々と生者を斬り殺し続けるのだ。

 前所有者の骸人形より強い実力者に倒されるまで、止まらない。

九体目の骸人形、クロメが死ぬまで。

 

「……許せないッ」

 アカメは骸人形ではなく、八房の存在に怒りを覚えた。

「……おまえは、この世にあってはならない帝具だッ!」

 クロメが持つ八房に向かって、吠えた。

 アカメの言葉に反応したのは、骸人形の方であった。

 ゆっくりと、壊れた人形は、姉の方を向く。

「――――オネエチャン」

 地から響くような低音だった。

 背筋が凍るような、重く引きずるような声。

 クロメだったものは、姉を呼んだ。

 

 見るだけで体温を奪っていく、氷のように冷たい肌。

 元気だったあの子の面影はどこにもない。

 クロメが死に、そしていま遺体が操られている。

 ここで八房を破壊しなければ、解放されることはない。

 なら、答えはひとつだった。

 

 アカメが突きの構えを取る。

 そして、瞑想した。

月明かりはあるものの、闇夜で視界は良くない。ならば、視覚を捨てて『直感』で動いたほうがいいと判断した。

その行動のうらに、いまのクロメを見ていたくないという気持ちがあるのは否定できないだろう。

アカメは、状況を整理する。

 標的は、はるか間合いの外にいるクロメの骸人形。

 まず、突進の勢いを殺さずに、八房をクロメの腕ごと切り離す。

 

 そして、次の太刀で八房を―――完全に葬る。

 それで決着、迷いはない。

 

 自分の中にある感覚のスイッチを切りかえる。

 脈を正常に保ち、任務を成功させるための機械と化す。

 必殺を誓った時にしか言わない。あの呪文。

 アカメは開眼すると、同時に放った。

「――――葬……え?」

 しかし、アカメの言葉は遮られた。

 必殺の言葉は、クロメの奇行によって阻止されたのだ。

 

「――――オネエチャン、オネエチャン」

 クロメは、すでに間合いの内側にいた。

 もはや密着、鼻と鼻がくっつくほどの距離まで近づいていたことに、アカメは気付くことができなかったのだ。

 

 アカメにとって初めての感覚だった。

 彼女にとって、視覚よりも絶対的な信頼を持つ『直感』を掻い潜ってきた。

 まるで瞬きした最中、懐にいきなり現れたかのようだった。

 

 絶対的硬直の一秒間。

 クロメはスッと、右手をアカメの黒髪に伸ばす。

 

 

「オネエチャン、オネエチャンオネエチャン」

 

 クロメは、アカメの髪を鷲づかみして、

 ブチブチと、髪の束を引き抜き始めたのだ。

 あまりの激痛、斬撃とはまた違う痛みに顔を歪ませる。、

 

「……クッ、放せ!」

 

 あまりに近すぎて、村雨での反撃ができない。

 なにより、クロメの握力が尋常じゃない。

 空いた左手で、押し返そうとするが、びくともしないのである。

 

「――――ッ!」

 アカメは、自らの髪を切り離した。

 クロメが掴んでいる部分だけ、決して自身の肉体に刃を通さないように細心の注意を払っての行動である。

 おかげで、クロメから離れることに成功した。

 アカメは急いで距離を開ける。

 さっきクロメと対峙したときより倍の間合いをとることは仕方ないことだった。

 

 クロメは、追ってこない。

 代わりに斬り落としたアカメの髪をかき集めていた。

 戦闘には関係ない、予測不可能な行動にアカメは困惑する。

 

 アカメを殺したい怨念。

 髪の毛一本さえ許さないということだろうか。

 

 アカメは、迎撃の体勢を取る。

 今度は一瞬たりとも目を離さない。淡々と間合いに踏み込んできたところを迎撃する。

 

「――――八房ッ、お前だけはなにがあっても破壊するッ!」

 アカメは、片膝をつく。

 先ほどナタラとドーヤ、二人の凄腕を屠り去ったあの一撃。

 絶対的な信頼を置く最高速の剣技。

 間合いに入った瞬間に、八房を両断するつもりだ。

 

 対してクロメは無警戒に近づいてくる。

 彼女の間合いに平然と侵入してこようとしていた。

 そして、制空権に入る直前、アカメがつぶやいた。

 

 

 

 

「――――――葬る」

 

 アカメの判断はおおむね正しい。

 現状、八房を攻略するにはベストな選択だったと言える。

 ただ、誤算があるとすれば、標的を八房に絞ったこと。

 そして、八房の真価は骸人形のスペックに大きく依存する点である。

 

 

 

 

 ―ーーポーン、と八房の刀身が宙を舞う。

 クロメの骸人形がはるか上空へと放り投げたのだ。

 

 理解不能、あまりの緊張感に頭がおかしくなったのか。

 それともクロメの骸人形が斬られているうちに、刀身がアカメを殺そうと言うのか。

 いずれにせよ、八房を見逃すほどアカメは甘くはない。

 

 アカメは体勢を対空迎撃用に変える。

 村雨を縦に構えて、振ってきた八房をもう二度と使用できないようにバラバラにする用意はできていた。

 放物線を描く帝具・八房。

 

 

 

 

 八房に集中しすぎたからであろう。

 アカメは何が起こったのか理解できなかった。

 自分の身体が地面に押し倒されるまでわからなかった。

 

 あの、クロメの呪文を聞くことで、ようやくなにをされたのか理解する。

 

「オネエチャン、オネエチャン」

 

 ―――クロメに馬乗りにされていた。

 油断というよりは認識の違いだった。

 八房から手が離れれば、骸人形は止まるのだと。

 勝手な先入観が、アカメの瞳を曇らせた。

 この体勢ではアカメは動けない。

 自慢の速さがまったくと言っていいほど役に立たかった。

 

 ヒュンヒュンと風を斬る八房が地面に刺さる。

 ちょうどアカメが倒れているすぐそばに落ちていた。

 反射的に、アカメは手を伸ばす。

 この八房を、破壊すればクロメは解放される。

 アカメは握力でへし折るつもりで、手を伸ばす。

 しかし、それを知っていたかのようにクロメは先に八房を取り上げた。

 

 そして、クロメは、八房でアカメの左手を串刺しにした。

「……! ぐ、あ、あああ……!」

 押さえの効かない悲鳴が、アカメの喉から絞り出される。

 地面に深々と突き刺さった八房に縫い付けられたのだ。

 

 押し殺せる痛みじゃない。

 姉の本能的な悲鳴を聞いて、クロメは満足そうにほほ笑んだような気がした。

 

「オネエチャン、オネエチャンオネエチャン」

 

 クロメが、姉のことを呼ぶ。

 気遣っての問いかけなのか、とアカメはぼんやりと考えていた。

 

 クロメの呼びかけに対して、アカメが反撃で応える。

 馬乗りにされた状態だが、右手には帝具・村雨がある。

 村雨を逆手に持ち、どこでもいいからクロメの身体を刺す。

 そして、無理やり馬乗りの状態から脱出して、八房を破壊する。

 

 アカメのプランは固まっていた。

 考えるのが先か、実行するのが先か。

 アカメは、村雨をギュッと逆手に握り直したのだ。

 

 しかし、クロメにとってアカメの行動はお見通しだった。

 クロメは、左手で村雨の鍔を掴む。

 村雨の刃に触れ、出血しながらも地面へと抑え込んだのだ。

 アカメは驚いた。

 いままで村雨と奪われたことはあったが、あろうことか刃を気にせず鷲づかみにしてくる相手など皆無だったからだ。

 

 村雨の毒が効かない。

 しかし、村雨を奪われるわけにはいかない。

 アカメは力比べでクロメから村雨の主導権を奪わなければならない。

 体勢による絶望的な腕力差。

 彼女には、埋めるだけの力がなかった。

 

 

 ついに、姉を追い詰めたクロメ。

 彼女は遠慮することなく、姉の胸に顔をうずめる。

 そして、アカメは知る。

 妹を突き動かす強い想いは、ただの殺意だけではない。

 

 

「オネエチャン、ズット、サミシカッタ」

 クロメの口から出たのは、悲壮感に満ちた言葉だった。

 

 

「ナンデ、ワタシヲ、オイテイッタノ?」

 

 アカメは答えない。

 かつて彼女はクロメも一緒に帝国を抜けようと誘った。

 その時、クロメは拒絶してきたのだ。

 ――任務で死んでいった仲間を裏切れない、とアカメの手を振り払った。

 ならば、置いていくしか、ないではないか。

 

 

 クロメは、血の涙を流す。

 そして搾りだすかのように、内に秘めた想いをこぼした。

 

「ホント、ハ、オネエチャン、ト、イッショニ、イキタカッタ、ヨ」

 

「デモ、ワタシ、『クスリ』、ナイ、ト、イキラレナイ、カラ、ヌケラレ、ナカッタ」

 

「イッタラ、オネエチャン、ヲ、コマラセル、カラ、イケナカッタ」

 

 

 

 アカメの右手から、力が抜ける。

 妹の想い。理性の奥底に押し殺した本心を聞いた。

 

 クロメは決して、望んで帝国に残ったわけじゃなかった。

 むしろだれよりも抜けたかった。

 最愛の姉、この世で唯一の家族と離れなければならないのだから。

 

「キヅイテ、ホシカッタ。ワタシ、ヲ、エランデ、ホシカッタ」

 

「タミ、ヨリモ、クロメ、ヲ、エランデ、ホシカッタ」

 

 アカメの胸に、内側から裂かれるような痛みが走った。

 八房に刺された左手よりも、ドーヤに撃たれた足よりも。

 クロメの言葉が、容赦なくアカメの心を抉る。

 

「ダイスキ、オネエチャン。ズット、ズット、クロメト、イッショ二、イテ」

 

「モウ、クロメ、ヲ、オイテイカナイ、デ」

 

 クロメはアカメの首筋に噛みつく。

 首筋から走る痛みと無視できない出血、そしてクロメから流れてくる想い。

頸動脈から、血が吹き出した。

 彼女を縛っている気持ちが傷口から注ぎ込まれた。

 アカメはほとんど抵抗できていなかった。

 いつしか村雨は完全にクロメの左手に抑え込まれ、首筋を噛まれていようと、逃げる素振りさえみられない。

 

 アカメは自分を責めていた。

 なぜ気付けなかった。

 クロメが帝国脱出を拒んだのは?

 ――『薬』がないと生きていけないから。

 裏切り者の私を、妹が無表情で見送ったのは?

 ――私を困らせたくないから。

 私の命を狙う理由は?

 ――私に置いてきぼりにされたから。

 

 私が気付いてあげられなかったからクロメはこうなった。

 ――ならばもう、殺されてもしかたないではないか。

 

 アカメは、考える。

 私の目的は、『クロメを救済(ころ)してやること』だ。

 この骸人形にクロメの魂はない。すでに課せられた使命は果たした。

 八房を破壊できなかったのは、心残りではあるけれど、イェ―ガ―ズの一員と相打ちしたと思えば、もう充分ではないか。

 

 もう、クロメの側へといってあげる方がいいのではないか。

 あぁ、ずいぶん寂しい思いをさせてしまった。

 せめて、最期くらい、あの子の願いを叶えてあげたい。

 もう絶対に、クロメの手は離さないから。

 

 クロメ

 

 クロメ

 

 私の、最愛の妹。

 

 こんどこそ、ずっと一緒に。

 

 

 

 

 アカメの視界に思い出たちが走馬灯のように流れる。

 

 彼女の脳裏に―――ある『約束』がよぎった。

 

 



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最愛だからこそ…早く救済(ころ)してやりたかった、はずなのに。

~~~

 

 アカメが約束を思い出す。

 あれは、ここへと出発する直前の記憶。

 タツミと交わした約束だった。

「無事生きて帰ると約束しろ」

 タツミは真剣な面持ちでそう言う。

 これからクロメとの果し合いに臨むのだから、無理もない。

 わたしが驚いたのは、依然わたしがタツミに押し付けた約束と同じなことだった。

「おれだけに約束させといて、自分は約束しないなんてなしだ」

「ああ、約束だ」

 私は約束したんだ。

 

 

~~~

 

 アカメはカッと目を見開く。

 眠っていた血が騒ぐ、血を失ってクラクラしていた頭は嘘のような煮だってる。

 アカメが吠えた。

 死を受け入れたはずの彼女は最後の力を振り絞る。

 アカメは村雨から手を離した。

「死・ね・な・いッ!」

 怒号とともにクロメのわき腹に渾身の当て身を喰らわせた。

 苦悶とともに、クロメの体が浮く。

 アカメは、何度も拳を叩き込む。

「死ねないッ! 死ねないッ! 私は! もう多くのものを! 背負ってしまっているッ!」

 一撃ごとに、クロメの身体が軋みを上げる。

 何度も、何度も、繰り返した。

 村雨を抑えるため、脇の空いたクロメに、当て身を打ち込み続けた。

「お前のもだ、クロメッ! お前の分も背負ったわたしは、死ぬわけにはいかないッ! 死んでなんかやらないッ!」

 アカメは生きる気力を拳に乗せる。

 ああ、帝国が憎い。

 妹を薬漬けにして、利用したやつらが憎い。

「帝国を倒し、もうお前みたいなやつを生まないためにも、わたしは死ねないんだッ!」

 クロメはたまらず村雨を左手から放して防御に移る。

 アカメはこの瞬間を待っていた。

 左足首をクロメの右足首に絡める。

 そして逆の足で地面を上げ、反動でクロメを馬乗りから引きずり下ろすことに成功した。

 アカメはクロメが取りこぼした村雨を手に取る。

「――――葬るッ!」

 アカメは村雨で帝具・八房の腹を全力で打ち付ける。

 八房の悲鳴が、闇に響いた。

 アカメの左手に突き刺さった八房を叩き折ったからだ。

 そして折れた刃から、アカメは左手を引き抜く。

 宙を舞う帝具・八房。

 しかし、どうやら運命の女神はまだクロメを見離していないらしい。

 折れた八房は倒れ込んだクロメの手元へと転がり込んだのだから。

 クロメは、欠けた八房を姉より早く手に取った。

 八房は欠けていてもまだ発動している。

 やはり柄も含めたすべてを粉みじんにしなければならないらしい。

 アカメは、間合いの外にいる妹に標準を定めた。

 クロメはつぶやく。

 壊れかけた人形はうわ言のように、言い続ける。

「オネエチャン、ダイスキ、ダレヨリモ、ナニヨルモ、スキ」

「……ああ、わたしもだ」

 アカメは初めて、骸人形の想いに答える。

 彼女は今一度、村雨を構えた。

 もうアカメの瞳から、迷いはなくなっていた。

「最愛だからこそ…早く救済(ころ)してやりたいんだ」

 

 

そして、訪れる最後の交錯。

 ――決着は不意に、実にあっけなくついた。

 

 

 

 

静かな教会の庭では、雨の音だけが響く。

 雨がふたりの身体を冷たく打ち付けるのだった。

 果し合いは終わった。

 完全に砕いた八房の欠片。そして地に横たわるクロメ。

 これらが死闘の結果を如実に示していた。

 

「クロメ、わたしは……」

 アカメは考える。

 どうしてこうなってしまったのか。

 仲良し姉妹でいられなかったのか。

 なんで、大好きなのに殺し合わなければいけないのか。

 どうしてクロメを選んでやれなかったのか。

 なぜこんな時に、涙が出てこないのか。

 悔しい、ただ悔しい。

 何もかもが、手遅れだった。

 アカメは、横たわるクロメの遺体に手をあてる。

 クロメの目をそっと閉じた。

 死相が消えて、綺麗な顔。

 いまにも目覚めて、お姉ちゃんと呼んでくれそうなほどに。

 けれど、それはない。

 帝具・八房は完全に破壊してしまった。

 もう一生、クロメが私をお姉ちゃんと呼んでくれることはない。

 これから先、私を姉と慕ってくれる者などいないだろう。

 アカメは後悔を断ち切るように、決闘の場を後にする。

 クロメの遺体を抱えて、教会へと向かった。

 アカメは深呼吸する。

 ――帰ろう、タツミが、ナイトレイドの皆が待っている。

 そして、アカメは耳を疑った。

「――おねえちゃん!」

 クロメの声が聞こえたのだ。

 温かさのある、いつも一緒だったころのあの子の声。

 手を取り合って生きてたころの、クロメの声だ。

 これは、クロメの遺志だ。

 八房の能力の残滓が、わずかに残っていたのだろう。

 もう聞けるはずのないクロメの想いが、直接流れ込んでくる。

 アカメは目を閉じる。

たとえどんな罵倒でも、恨み言でもかまわない。

 妹の最期の想いを受け止めるために覚悟を決めた。

しかし、そんな覚悟は必要なかった。

 

「――――ありがとぅ、だいすきだよ」

 それっきり、クロメの声は止んだ。

最期に、クロメが遺したものは『姉への感謝』だった。

 

 気がつけば、アカメは泣いていた。

 最愛の妹の亡骸を力いっぱいに抱き締めながら、泣き崩れた。

 わたしも大好きだ、クロメ。

 クロメ。クロメ。クロメ。

 こんなわたしをおねえちゃんと呼んでくれてありがとう。

 大好きと言ってくれて、ありがとう。

 

雨降って、地固まる。

来世では幸せになってくれと、アカメは心から願った。

 

 



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あとがき

 

 TⅤアニメ版アカメが斬る!『アカメ対クロメ』の原作改変いかがでしたでしょうか。

 

 アカメ&クロメの魅力がちょっとでも伝わったのなら幸いです。

 ふたりの帝具は『大好きな相手に向けた気持ち』なのではないかと思います。

 アカメは『薬の末期症状で苦しむ妹を楽に殺してやりたい』がゆえの帝具・村雨。

 クロメは『もう置いてかれたくない。ずっと一緒にいたい』がゆえの帝具・八房。

 この関係性に気付いたとき、絶対に書ききりたいと思ったのです。

 

 アカメが斬る!の魅力のひとつに『死ぬときは死ぬ』というのがあります。

 死=敗北ではなく、壮絶な死は生者を変えるパワーがあるのです。

 クロメを殺めたアカメは、なにがなんでもオネスト大臣を始末するでしょう。

 エスデス将軍は……どうでしょうね。想像できません。

 

 人はいずれ死にます。

 帝具・八房の『奥の手』は、生前言えなかった強い想いを素直に、相手を気にすることなく伝えることができる帝具だったのです。あくまで死者蘇生の帝具なので、攻撃力は上がりません。

 

 今回の話でアカメがとことん追い詰められたは、クロメが持つ『おねえちゃんへの愛』ゆえにです。八房を使うのがクロメだから、そして相手が最愛の姉であるアカメだからクロメはここまで強くなれました。

 アカメは最愛の妹が相手だからこそ、普通なら倒せないだろうナタラとドーヤを突破することができ、容赦なくクロメを殺しにいけたのだと思います。

 結局は、愛ゆえにふたりは強くなれたのです。

 

 私はもっとアカメは、無双しても良いと思います。

 特にクロメ戦は覚醒スーさん以上に強くてもいいと思うのです。

 理由は、『楽に殺してやりたいから』と『妹に対する見栄』です。

 ナタラとドーヤも強いけど、クロメに対する気持ちはもっと強いみたいな理由です。

 

 おそらく、クロメは白兵戦でアカメに敵いません。

 薬の末期症状なので斬り合いになれば、この話のように一蹴されると思います。

 しかし、骸人形と不死身の体、なによりおねちゃんへの愛があります。

 敵役としてこれほど魅力的なキャラに出会えて嬉しかったです。

 

 個人的に、クロメはおねえちゃんが帝国を裏切ったこと自体それほど怒っていないんじゃないかと思います。クロメが怒っているのは『おねえちゃんが気付かなかったから』だと思うのです。

 きっと『薬がないと生きられないクロメ、逃げたくても逃げられないクロメ』に気付かなかったからこそ、恨んだのです。ヤンデレですね。

 

 そして、アカメに置いてかれたくないから、骸人形にしてずっと一緒に居たかったのです。でないと、憎い姉に対して『おねえちゃん』なんで絶対に言わないはずです。

 きっと本気で憎いなら『ナイトレイドのアカメさん』と呼ぶでしょう。

 クロメは最期の最後まで、おねえちゃんの事が大好きだったのではないでしょうか。ふたりはお互いが大好きだったのに両者生存の可能性はない。

それが、この二次創作で書きたかったテーマでした。

 

 また、どうしても書きたくなる衝動に駆られたら書きたいと思います。

 ご精読ありがとうございました。

 

 2014/12/04

 



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