仮面ライダーW ~魔法世界に吹く風~ (オレンジタロス)
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EP1/切り札の再来

はい。『なろう』のものをこちらでもこりずに。
とはいえこの作品は僕をかつてのユーザー様や今も見てくれてている皆さんを出会わせてくれた思い出の作品なので大切な作品です。
パソコンを使い始めましたのでコピペがだいぶ楽に(笑)


ここは風都。

 

風とエコの街であり、街の象徴として街の真ん中には巨大な風車のような建物、風都タワーがそびえたつ。

 

一見平和な街だが、この街には以前ミュージアムという組織により地球の記憶が内包されたUSB型アイテム、ガイアメモリがばら蒔かれており、そのガイアメモリにより変貌した怪人・ドーパントにより街は度々涙を流していた。

 

しかしその涙を拭う者もいる。

 

この街の人々が希望を託した存在。

 

"仮面ライダー"である。

 

この街に現れた仮面ライダーは5人。

 

左右非対称の色により多彩な力を発揮するW。

 

自らがバイクとなり、呪われた運命を振りきったアクセル。

帽子の底に優しさと悲しさを隠して散ったスカル。

 

街の新たな希望を自称する白き悪魔・エターナル。

 

そして、Wの空白を埋め、対NEVER戦においては名の通り切札となった漆黒の切札・ジョーカー。

 

ジョーカーはWの再来により眠りについた。

 

しかし彼の復活は必然的に決まっていた。

 

第二の故郷を守るために。

 

 

―――――――――――

 

 

「「ダブルエクストリーム!」」

 

「があああああああ!」

 

仮面ライダーWサイクロンジョーカーエクストリームの必殺キック、ダブルエクストリームがドーパントに放たれ、ドーパントは爆発。

 

犯人の男が現れ倒れる。

 

それを確認すると、Wはエクストリームメモリを閉じ変身解除、私立探偵・左翔太郎と彼の相棒・フィリップが現れた。

 

「これで今回の事件は解決だね、翔太郎」

 

「ああ。後は照井達に任せるか」

 

二人が背中を向け、歩き始める。

 

「仮面・・・ライダぁーー!」

 

その時犯人が手にドスを持ってフィリップに襲いかかる。

 

「うわああああああ!」

 

「フィリップぅ――!」

 

フィリップを突き飛ばす翔太郎。

 

結果犯人のドスは・・・。

 

「! がっ!」

 

翔太郎に突き刺さり、翔太郎は膝を突き仰向けに倒れる。

 

「翔太郎ぉ―――!」

 

フィリップは犯人に蹴りをかまし翔太郎の元に向かう。

 

犯人は吹き飛ばされ気絶するのを確認もせず、フィリップは翔太郎を抱き抱える。

 

「翔太郎!」

 

翔太郎の左の胸からは血が溢れ出る。

 

「フィ・・・リップ・・・。すま・・・ねぇ。俺はもう・・・駄目みたい・・・だ」

 

「駄目だ! 翔太郎! 僕達は二人で一人の仮面ライダーだろ! 君が死んだら僕はどうしたらいいんだ!」

 

「大丈・・・夫だ。お前なら一人でも仮面ライダーになれる。これからは一人で変身する・・・んだ」

 

「無理だ。君がいなければ・・・僕は・・・」

「俺はもうすぐ・・・死ぬ。フィリップ。約束・・・してくれ。たとえ一人になっても・・・仮面ライダーとしてこの街を守っていってくれ。・・・頼・・・む。相棒の・・・・・最後の頼みだ」

 

「・・・・・分かった」

 

フィリップは泣き出すが、答えを聞いた翔太郎は静かに笑う。

 

「ありがとな・・・フィリップ。・・・やっぱり風都は・・・いい風が・・・吹くぜぇ・・・」

 

翔太郎は右手でソフト帽を掴み、自分の顔を隠す。

そしてその右手は力なく床に落ちた。

 

「翔太郎? 翔太郎!? 翔太郎!」

 

フィリップは翔太郎の身体を揺らすが翔太郎は何も答えない。

 

さらに唐突に空から大粒の雨が降り出した。

 

まるでこの風都そのものが彼の死を嘆き悲しむかのように。

 

 

―――――――――――

 

 

「─────ろ・・・」

 

(だれだ・・・・・。俺を呼ぶのは・・・)

 

「────きろ・・・」

 

(なんだ・・・。なんか懐かしい声がすんなぁ・・・)

 

「起きろ・・・・・、翔太郎・・・」

 

(え? この声ってまさか!?)

「おやっさん!」

 

彼の師であり鳴海探偵事務所の初代所長、鳴海荘吉が立っていた。

 

「でも・・・なんで・・・そうか。俺・・・死んだんだな。あ〜あ、どうせなら恋愛の一つや二つしとくんだったな〜〜〜」

 

「・・・その望み・・・叶えてやる」

 

「は? んだよその未来人の砂怪人みたいな台詞は」

 

「弟子の最後の頼みなんだ。それぐらい叶えられないでどうする」

 

すると荘吉は後ろを向いて歩きだす。

 

「おい、待ってくれ。おやっさん! ・・・・・おやっさ――ん!」

 

 

―――――――――――

 

 

「おやっさん!」

 

翔太郎は勢いよく目覚める。

 

部屋の真ん中の布団に一人、周りを見回しても無論荘吉はいない。

 

「な〜んだ。夢かよ」

 

翔太郎は再び横になる。

 

「って何処だここはぁ!」

 

その刹那、再び勢いよく起きる。

 

それは当然の反応である。

 

「・・・事務所じゃねえ・・・。」

 

なぜならここは翔太郎の本来の仕事場である鳴海探偵事務所とはかけ離れた部屋であるからだった。

 

すると、心地よい音でドアがノックされる。

 

(誰だ?)

 

「どうぞ」

 

翔太郎は考えながらもドアの開けることを了承する。

 

「失礼するぜ」

 

現れたのは、50代ぐらいの男性、短髪と長髪の青髪の女性が二人だった。

 

「おう。起きたか」

 

男性が口を開く。

 

「何処の誰かは知りませんが、なんかお世話になったみたいで・・・ありがとうございます」

翔太郎は男性に礼をすると男性がやれやれと言わんばかりに一息はく。

 

「人様の家の前でバイクと行き倒れてた割には、マナーがあるじゃねぇか」

 

「行き倒れてた? ここは一体? 風都じゃないのか・・・」

 

翔太郎の反応を気にしたのか長髪の女性が語りかける。

 

「風都? ここはミッドチルダの首都、クラナガンですよ?」

 

「ミッドチルダぁ? どこの外国だ? だが日本語は通じる。・・・どういうことだ・・・」

 

「ギン姐、この人まさか・・・・・」

 

すると青い短髪の女性が喋りだし、姉らしき長髪の女性に話しかける。

 

「うん。多分次元漂流者かも・・・えっとお名前は・・・。私はギンガ・ナカジマといいます」

 

「あ、あたしはスバル・ナカジマです」

 

「ゲンヤ・ナカジマだ」

 

「俺は左翔太郎。私立探偵です」

 

「私立探偵!? かっこいい! 何か映画みたい!」

 

「そ、そうか?」

 

すると私立探偵と聞いた直後スバルが目を輝かせて翔太郎を間近で眺める。

そんなスバルに翔太郎自身もその迫力に若干たじろぐ。

 

「まぁまぁスバル・・・」

 

「・・・・・とりあえず話を聞かせてくれるか? えっと・・・翔太郎でいいか?」

 

「あ、はい・・・。全部は数年前のクリスマスに・・・」

 

スバルをなだめるギンガを横目にゲンヤは翔太郎へ事情説明を要求、翔太郎もそれに従い語り出した。

 

 

〜〜〜〜数分後〜〜〜〜

 

 

「・・・信じ難いが、嘘じゃなさそうだな」

 

「何だか凄い話ですね。地球の記憶って・・・」

 

ゲンヤとギンガが唖然とする。

しかしただ一人、スバルだけは目を輝かせる。

 

「すごぉい。翔太郎さん! ぜひ変身してみてください!」

 

「はぁ!?」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「スバル・・・」

 

翔太郎、ギンガ、ゲンヤがそれぞれの反応を示す。

 

(しっかしどうすっかな〜。ドライバーがあっても一人じゃWには・・・・・あ!)

 

「ま、まぁWにはなれねぇが、もう一人にならなれます。論より証拠。外に案内してくれますか?」

 

翔太郎はソフト帽を被り直す。

 

「あ、ああ」

 

四人は退室し、庭へ歩き出した。

 

 

―――――――――――

 

 

ナカジマ家の庭。

そこのテーブルにはゲンヤ、スバル、ギンガ。

 

そして新たに赤髪のノーヴェ、眼帯のチンク、温厚なディエチ、元気っ娘なウェンディが新たに集まる。

 

 

 

「仮面ライダーっだっけ?何か嘘くせぇなぁ」

 

「まぁまぁ」

 

頭をかくノーヴェをディエチがなだめる。

 

「そうそう。それになんか面白そうっすよ」

 

「そうだな。異世界の文化に触れておくのも、大事なことだ」

 

そんな二人にのしかかるウェンディをチンクが年長者らしく彼女らをまとめる。

 

対し翔太郎は一緒に行き倒れていた愛車、ハードボイルダーの側で妙な感覚に襲われていた。

 

(何だ、この身体のそこから湧き出る力は・・・。風都にいたときはこんなことはなかったのに・・・)

 

「じゃあお見せします」

 

翔太郎は七人の視線を一気に浴びる。

 

 

 

翔太郎は慣れた手つきで左手にジョーカーメモリ、右手でロストドライバーを持つと腰に当て、ベルトが巻かれ装着される

 

『ジョーカー!』

 

ジョーカーメモリのスタートアップスイッチを押しドライバーにスロット、紫色の波動が放たれる。

 

右拳を掲げ、左拳を左腰に当てる。

 

「変身!」

 

左手でスロットを展開する。

 

『ジョーカー!』

 

翔太郎の顔に回路状の模様が現れ、風が覆い、塵状のエネルギーが翔太郎を纏う。

 

翔太郎は仮面ライダージョーカーとしてミッドチルダの大地に立った。

 

 

―――――――――――

 

 

その頃・風都

 

翔太郎の墓前でフィリップも妙な感覚を覚えていた。

 

 

手にしたサイクロンメモリが光を放ち始めたのだ。

 

放つことがない紫の光を。

 

「翔・・・太郎・・・。どこかで・・・生きているのか?」

 

フィリップは空にダブルドライバーを掲げる。

 

腰には自作したロストドライバー。

 

「翔太郎。約束したよね。例え一人でも仮面ライダーとしてこの街を守っていくって。例えバラバラでも君と僕は同じ空の下にいる。。だから・・・」

 

『サイクロン!』

 

フィリップはサイクロンメモリをロストドライバーにスロットし展開する。

 

『サイクロン!』

 

フィリップの肉体は緑の風に覆われ全身緑色・赤い複眼の仮面ライダーに変身した。

 

「守りきるよ。一人でも。君が仮面ライダージョーカーとして戦うのなら、・・・・・僕は仮面ライダーサイクロンとして風都を・・・。鳴海荘吉や君が愛したこの街を・・・」

 

サイクロンは翔太郎の墓に誓った。

 

風がサイクロンのウィンディースタビライザーをなびかせる。

 

それはまるで仮面ライダーサイクロンとして戦うことを心に決めたフィリップを後押しするようであった。

 

 



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EP2/新たな繋がり

連投です。


ナカジマ家・庭

 

「おおお・・・。すっげぇスねぇ・・・」

 

「ふむ。異世界のテクノロジーとは新鮮なものだな。それが仮面ライダーというものか・・・」

 

皆が目の前のジョーカーに唖然とする中、ウェンディとチンクだけが言動に表す。

 

「それが貴方のいってた・・・」

 

「仮面ライダー・・・ですか?」

 

「ああ。これはWじゃねぇがな。この姿は俺がWに変身出来なかったときに変身してた仮面ライダージョーカーだ」

 

スバル、ギンガにジョーカーは腰に手を当て答える。

 

そのままジョーカーはドライバーを立てメモリを抜き、変身を解く。

 

しかしこんなことでも新鮮に感じたのか、ナカジマ家の面々は拍手。

 

翔太郎も照れくさいのか、そっぽを向きながらほほをかく。

 

(とりあえずはジョーカーにはなれるみたいだな・・・。でも危機って一体・・・)

 

鳴海荘吉の言っていた“危機”という言葉に頭を傾げる翔太郎。

その直後、街から爆音が響く。

 

「な、何?」

 

スバルが驚く。

それもそのはずでかなりの出力の魔力砲でなければ出ない程の爆音であるからだった。

 

すると翔太郎は一瞬で目付きを変え、すぐさまハードボイルダーに跨る。

 

「お、おい!」

 

ゲンヤの制止を振りきり、翔太郎は無言のままヘルメットを被りアクセルを捻ると、そのまま街へとハードボイルダーを走らせた。

 

「スバル! 私たちも!」

 

「うん!」

 

二人も現場に駆けつけるため、それぞれのデバイスを掲げた。

 

 

―――――――――――

 

 

クラナガン都内

 

「はっはぁ〜〜。いいなぁ、この力! たまらないねぇ〜〜!」

 

そこには次々に街に発砲する武器の記憶の怪人【アームズドーパント】がいた。

 

対し瓦礫の固まりを盾に傷ついた局員が集まっていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・何あれ? でたらめだわ。」

 

その中にはオレンジのロングヘアーの執務官【ティアナ・ランスター】が息を切らしながらクロスミラージュを構えている。

 

隙をついて瓦礫から撃とうとするが完全に狙いを定めたアームズの弾丸が徐々にティアナ達が盾にしている瓦礫を削っていく。

 

「はぁ・・・。さっきから無駄に足掻きやがって・・・、管理局の犬どもが・・・。まぁそろそろあきたし・・・、さよならだ!」

 

アームズが腕の銃からグレネード弾を放つため、銃口を向ける。

 

その時、ハードボイルダーに乗った翔太郎がアームズを突き飛ばす。

 

吹き飛んだアームズを睨み付けながら翔太郎はヘルメットを外す。

 

「お前、何者だ!」

 

「何でドーパントが!? おいお前! どこでガイアメモリを」

 

「ガイアメモリ? へぇ。ガイアメモリって言うのか・・・。聞きたけりゃあ力づくで聞いてみろ!」

 

「・・・・・しゃあねぇ・・・。なら口を割らしてもらうぜ!」

 

「貴方は?」

 

「俺は左翔太郎。またの名を・・・」

 

急に介入したにも関わらず目の前の怪物に妙に慣れた翔太郎にティアナは頭を傾げる。

翔太郎は答えながらドライバーを腰にセットし左手にジョーカーメモリを持つ。

 

『ジョーカー!』

 

ジョーカーメモリをドライバーにスロットする。

 

「変身!」

 

左手でドライバーを展開し、構えていた右拳を開く。

 

『ジョーカー!』

 

翔太郎の身体は風に覆われ仮面ライダージョーカーへと変身を遂げる。

 

「仮面ライダー・・・ジョーカー」

 

「「仮面・・・ライダー?」」

 

ティアナとアームズは聞きなれない言葉を言い返すが、ジョーカーは気にもせずにアームズに左の人差し指を向ける。

 

「さぁ、・・・・・お前の罪を数えろ!」

 

「ふっざけるなぁ!」

 

アームズは走り、発砲しながら接近してくる。

 

「うおおおおおおお!」

 

しかしジョーカーは弾丸をひたすら回し蹴りで叩き落としていく。

 

「何!」

 

「行くぜ? おらぁぁ!」

 

ジョーカーはストレート、フック、アッパーのラッシュでアームズを打ちのめしていく。

 

「ならぁ!」

 

「おっと危ねぇ!」

 

アームズは両手に剣を装備し斬りかかるが、ジョーカーはすれすれで避ける。

 

伊達に以前、偽仮面ライダー事件で手合わせしただけに戦闘パターンは既に把握していた。

 

ジョーカーは斬撃を蹴りで弾くとアームズの後ろに回り込み、後ろ蹴りを叩き込む。

 

「ならぁ!」

 

「ならこれで・・・・・、どうだぁ!」

 

後ろに剣を振るアームズの手を受け止めるジョーカーは、そのまま懐に連打を打ち込み、蹴り飛ばす。

 

「これで決めるぜ?」

 

ジョーカーはドライバーのジョーカーメモリを右腰のマキシマムスロットにセットしボタンを叩く。

 

『ジョーカー・マキシマムドライブ!』

 

「ライダーキック!」

 

ジョーカーは高く跳躍。

そのまま右足に紫色のエネルギーを纏った飛び蹴り【ライダーキック】を放つ。

 

腹部にライダーキックを受けたアームズは吹き飛ぶ。

 

さらに身体にプラズマが走せたかと思わせた直後、身体が爆発。

 

「や、やったの?」

 

ティアナは唖然とする。

 

アームズが爆発した後には一人倒れている男と破壊されたアームズメモリだけ。

 

「え? どういうこと?」

 

ティアナだけでなく他の局員も驚く。

 

それもそのはずで彼女らは仮面ライダーも知らなければドーパントも知らない。

 

ただ襲われたから対抗したにすぎなかった。

 

ティアナ達に変身を解いた翔太郎は歩み寄る。

 

「どういうことですか? これは。えっと・・・左さん・・・でしたっけ?」

 

「あ、ああ。えっとだな・・・」

 

「ティア―――!」

 

するとスバルとギンガがバリアジャケットの姿で駆け付けた。

 

「スバル! ギンガさん!」

 

「ティアナ。大丈夫よ。この人は敵じゃないわ」

 

「えっ? あの・・・その・・・どういうことよ!」

 

「あ――、詳しくは俺から話す。改めて・・・左翔太郎だ」

 

「ティ、ティアナ・ランスターです」

 

翔太郎とティアナは握手を交す。

 

 

その後翔太郎はティアナにもスバル達に話した一部始終をなるべく簡潔に話す。

 

〜〜〜〜数分後〜〜〜〜

 

 

「というとドーパントっていうのは地球の記憶が詰まったガイアメモリっていうアイテムで人が変貌した姿で、翔太郎さんはそのドーパントを倒す仮面ライダーっていう姿に変身して・・・戦ってた?」

 

「まぁ信じがたいって思うかもしんねぇけど事実だ・・・」

 

「貴方が倒れていたのはなんでですか?」

 

「・・・それなんだがわからねぇ。前の世界で意識が消えたら変な空間にいて、そこで俺の師匠の後をついていったら俺はスバル達の家で寝てた・・・。ただその人は転生とか言ってたけどなぁ・・・」

 

「転生って・・・。よくあるSFみたいな・・・」

 

信じがたいであろう話を信じるティアナのに翔太郎は内心舌を巻く。

 

「で、スバル達の家の前で左さんが行き倒れていた・・・と」

 

「うん」

 

「なかなか信じがたいけど、実際この目で見たし、助けられたからどうも言えないわね・・・」

 

「あ、そうだ。そういや、君らの力はなんなんだ? 外の世界から来た俺にはよく分からねぇんだが・・・」

 

翔太郎の素朴な疑問にスバルが答える。

 

「あ〜、あれは魔法ですよ」

 

「そうかぁ。魔法・・・・・、魔法だぁ!?」

 

「はい、魔法です」

 

「・・・・・はああああああ!? じゃ、じゃあ俺は魔法使いの世界に来ちまったのかぁ!?」

 

翔太郎のあまりにも大きい反応にスバル達は驚いている。

スバル達には魔法が生活の一部と化しているため、翔太郎の反応が妙に可笑しく見えている。

 

「そ、そんなに凄いことですか?」

 

ギンガが若干ひきながら聞く。

 

「・・・・・魔法ってーのは俺がいた世界だと仮想空想の産物なんだ。それなのに・・・。ありえねぇ・・・。あ〜〜、めまいがしてきた」

 

そんな翔太郎を三人は唖然としながらも、警戒を解いたように笑う。

 

「でも・・・左さん。悪い人じゃなさそうですし・・・スバル、ギンガさん。左さんの身柄の保護、お願い出来ますか?」

 

「分かった」

 

「任せて!」

 

ギンガとスバルが了承する。

 

「じゃあ改めてよろしくね、左さん!」

 

スバルが翔太郎にウインクする。

 

「おう! 後な・・・翔太郎でいいぞ。スバル」

 

翔太郎は右拳を突き出す。

 

「・・・はい?」

 

「俺流の挨拶だ。わかるか?」

 

「はい♪」

 

スバルは右拳を出し翔太郎の拳に合わせる。

 

(なぁフィリップ・・・。お前とはまた離ればなれになっちまったが・・・。お前なら大丈夫だよな。・・・俺はなんとかこの世界でやってくよ。仮面ライダーとして。じゃなきゃ・・・お前とまた会ったときに情けねぇツラ見せちまうからよ。俺達は例え離れていても相棒だぜ。なぁ・・・フィリップ)

 

翔太郎は内心で誓う。

この街で再び仮面ライダーとして戦っていくことを・・・。

 

この街の涙を拭う存在として戦っていくことを。

 

 

―――――――――――

 

その夜。

 

「ではではぁ〜〜、新しい家族に〜〜〜」

 

「「「「「「「「かんぱぁ〜〜い!」」」」」」」」

 

ナカジマ家ではウィンディの仕切りを皮切りに翔太郎の親睦会が開かれた。

ナカジマ家の女性六人にゲンヤ、その勢いに押され気味な翔太郎の八人のグラスがぶつかる。

 

「しっかし、ちょっと気ぃ晴れたな。明らかに中年の俺一人に年頃の娘が六人だぞ? こんな中で明らかに浮いてると思わねぇか?」

 

「ま、まぁ・・・」

 

ゲンヤは腕を翔太郎に絡ませる。

 

ちなみにまだ酒は入っていない。

 

「す、すんません」

 

ゲンヤの迫力に翔太郎は思わず平誤りする。

 

「まぁまぁまぁ。ハーレムと思えばいいじゃないっスか〜〜〜」

 

そんなゲンヤにウェンディは笑顔だ。

 

「だが、ハーレムもいいがお前ら、俺が死ぬまでに全員ウェディングドレスを見せてくれよ。じゃなきゃ俺、成仏できねぇからな」

 

「怖いこと言わないでよ・・・」

 

ゲンヤの言葉にディエチが苦笑いをする。

 

「・・・・・」

(・・・・・妹達に先を越されそうな気が・・・)

 

隣ではチンクが妙な危機感を感じていることも知らずに。

 

「そういや翔太郎さんはなんか格闘技をやってんのか? 素手だろ?」

 

「あ? ああ。やってはいねぇが、今までの仕事で覚えた実戦的な体術をちょっとな」

 

「ふぅ〜〜ん」

 

質問を返されたノーヴェは一人納得。

すると、スバルが翔太郎に料理を異様に盛った皿を差し出す。

 

「翔太郎さん。どうぞ」

 

「・・・もう食えねぇって・・・。つーか・・・・・食い過ぎだろお前ら!」

 

スバルがテレビで見るようなデカ盛りの皿に翔太郎は大きくつっこむ。

 

「「「「「「そう?」」」」」」

 

ナカジマ家の六人の女性は口に何かを入れた、又は入れ掛けた状態で見事なシンクロを見せる。

 

「スバル・・・。翔太郎さんは普通の方なんだから、あまり無理言わないの」

 

「は〜〜〜い」

 

「そうだ、翔太郎。お前仕事はどうするんだ? ウチは働かざる者食うべからずだぞ」

 

するとギンガがスバルに注意した直後、ゲンヤが現実的な言葉を翔太郎に叩きつける。

 

「ごちそう様。そうなんすよ。何で明日ちょっと仕事を探すのにちょっと早く出かけます」

 

「そうか。じゃあ先に風呂入ってこいよ。スバル、案内してやってくれ」

 

「は〜〜〜い」

 

「すんません。じゃあおやすみな、皆」

 

「「「「「「お休み」」」」」」

 

翔太郎とスバルと共にリビングを出る。

 

 

ちなみにこの日の晩の夕御飯は残らずに綺麗にナカジマ家の面々の胃袋に収まりきったとか。

 

 

―――――――――――

 

 

廊下を歩く二人。

 

「あの・・・翔太郎さんって彼女いたんですか?」

 

しかし突然スバルが急に桃色のような話題を持ち出す。

 

「な、なななな何でだ?」

 

思わず驚く翔太郎。

鳴海探偵事務所では確実と言ってもいいほど持ち上がらない話題であるからだ。

 

自称美人所長ののろけ話は別としてもだ。

 

「だって・・・顔も悪くないし、性格も優しいし、強いし・・・。彼女の一人くらいいてもおかしくないはずだけど・・・」

 

「お、わかってるなぁ〜〜〜。実際いなかったし、いたこともなかったぜ。この歳でまだファーストキスも出来てないんだよなぁ〜。なんせ青春時代を全部探偵に尽くしてきたからな」

 

「そんなに探偵っていう仕事が好きだったんですね」

 

「ああ。探偵っていうのは警察や人にいえないような涙を拭える唯一の方法と俺は思ってる。俺は前にいた街で誰一人泣いて欲しくなかった。だから探偵っていう仕事は好きとかを通りこして俺の生き甲斐だった。この街にはまだ来たばっかだが、今ではこの街を守りてぇ。誰一人この街で泣いてて欲しくねぇ。もちろんスバルやギンガや皆もな」

 

「そ、そうですか。こ、ここがお風呂です」

 

スバルは照れ隠しにそっぽを向きながら、言う。

 

「あ、ありがとな」

 

翔太郎は風呂場に入っていった。

 

「なんだか凄いひとだなぁ」

 

するとスバルは妙な感覚に襲われた。

 

胸の奥がうずくような感覚に。

 

「・・・・・なんか妙な・・・」

 

妙な感覚を持ちながらスバルはリビングに戻っていった。

 

 

―――――――――――

 

 

湯船につかる翔太郎は頭の中で今日、身の回りに起きたことを整理していた。

 

(えっと風都で俺が死んで、おやっさんを追っかけて、気が着いたらこのミッドチルダのクラナガン・・・・・)

「あああああ! わ・・・っかんねぇ!」

 

翔太郎は湯船に潜る。

 

(そういや・・・)

 

そして浮上。

 

(前はジョーカーだけでもなんとかなったからアレを試してなかったな)

 

翔太郎はあることを思いついた。

 

実際考えてはいたが、ジョーカーだけで十分だった故に使用しなかった二つの力。

 

「試してみる価値はありそうだよな。サイクロンやヒートらが使えねぇ以上、レパートリーはあるに越したことはねぇしな」

 

翔太郎は風呂を出て寝間着に着替え、部屋に戻った。

 

「今日は色んなことが有りすぎて疲れた。寝っかなぁ」

 

翔太郎は疲労故かすぐに眠りにつく。

 

その夢には予知夢のように棒術を使う銀色の闘士、一撃必殺の青い銃撃手が現れていた。

 

 

―――――――――――

 

 

翌朝。

ボイルダーの側で手袋を付ける翔太郎。

 

「じゃあ出かけてくるな。夕方までには戻っから」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

「おみあげよろしくっス〜〜」

 

ギンガとディエチ、ウェンディが翔太郎を見送る。

 

 

―――――――――――

 

 

あれから数時間。

 

 

「なんかねぇかなぁ〜〜〜」

 

翔太郎はあちこちを見て回ってはいたが、なかなかいい仕事が見つからなかった。

 

「つーか、俺探偵しか頭になかったからあんまかけ離れたことできなさそうなんだよなぁ〜〜〜。なんか良いところは・・・」

 

 

 

 

 

「きゃああああああ!」

 

すると悲鳴が聞こえる。

 

「! マジかよ!」

 

『バット!』

 

翔太郎は懐からメモリガジェット【バットショット】を取り出すとギジメモリをスロットする。

 

そして現場に飛んで行くライブモードのバットショットを、翔太郎はボイルダーで追いかけた。

 

 

―――――――――――

 

 

「この力。心地いい」

 

「い〜〜っぱい暴れられるわぁぁぁ!」

 

街を壊すのはと【カメレオンドーパント】と【ティーレックスドーパント】。

 

そのまま二体は逃げ遅れ震える二人の子供に接近する。

 

「怖いよぉぉ、お兄ちゃん・・・」

 

「大丈夫だよ。僕がいるから。僕がいるから」

 

二人兄弟の兄らしき少年が弟を励ます。

 

しかしドーパント二体の気は変わらない。

 

「安心しな」

 

「一瞬で終らせてあ・げ・る・わ♪」

 

2体が襲いかかり二人の子供は目をつむる。

 

 

 

 

 

「させるかぁぁぁぁ!」

 

しかし横からハードボイルダーにのった翔太郎がぶつかり、二体のドーパントを吹き飛ばす。

 

「貴様ぁ!」

 

「邪魔するなら容赦しないわよ!」

 

二体は殺気立つが翔太郎は臆することなくドライバーを腰に当てる。

 

「悪いがてめぇらには新しいのに付き合ってもらうぜ! 覚悟しな!」

 

そして左手にメモリを持つ。しかしそれはいつものジョーカーメモリではなかった。

 

『メタル!』

 

手に持っているのは“闘志の記憶”を宿したスケルトン色の【メタルメモリ】。翔太郎はメタルメモリをドライバーにスロットする。

 

「変身!」

 

そのままスロットを展開する。

 

『メタル!』

 

翔太郎の身体は銀色のジョーカー、いや銀色の新たな姿【仮面ライダーメタル】へと変身を遂げた。

 

メタルは背中のメタルシャフトを持ち、ドーパント達に構える。

 

「さぁ・・・お前達の罪を数えろ!」

 

メタルはドーパントに飛び込む。

 

ティーレックスの鳴き声波動をシャフトで相殺しながら懐に入り突きや払いでたじろがせる。

 

カメレオンは拳を叩き込むが、メタルはシャフトで受け止め逆に顔面を殴り返す。

 

そして二体を双方ともに逆方向に吹き飛ばし、ティーレックスに狙いを定める。

 

「決めるぜ?」

 

メタルはメタルメモリをシャフトにスロットする。

 

『メタル・マキシマムドライブ!』

 

「はあああああああ!」

 

シャフトに銀色のエネルギーが纏われていく。

 

「え―っと技名技名・・・。メタル・・・、メタル! インパクトスマッシュ!」

 

そしてシャフトで強烈な突きのマキシマム【メタルインパクトスマッシュ】を叩き込む。

 

ティーレックスは爆発し女性が倒れて現れる。

 

「後はお前だな」

 

「ひぃ! なら!」

 

カメレオンは透明になる。

 

そしてメタルの身体からは透明になったカメレオンの攻撃により火花が散る。

 

「ぐっ! やるじゃねぇか。だがコイツを試すにはちょうどいいぜ!」

 

『トリガー!』

 

メタルは何処からかトリガーメモリを出す。

 

そしてトリガーメモリをドライバーにスロットし展開する。

 

『トリガー!』

 

メタルは新たに青い仮面ライダー【仮面ライダートリガー】となる。

 

それによりシャフトは消滅し、トリガーは左胸に新たに現れたトリガーマグナムを右手に持つ。

 

そしてその場に立つと、動かなくなる。

 

「・・・・・・・・、!」

 

すると首を真横に動かし、目の前にマグナムを発砲する。

 

何もいないはずのところから火花が散り、カメレオンドーパントが現れた。

カメレオンはさっき、トリガーの顔面に拳を放ったが避けられ、代わりに銃撃を浴び、吹き飛ばされていた。

 

トリガーはトリガーマグナムにトリガーメモリをスロットし、マグナムをマキシマムモードにする。

 

『トリガー・マキシマムドライブ!』

 

「終わりだ!」

 

トリガーはカメレオンに向けてマグナムを構える。

 

「えっと、トリガー・・・ストレートバースト!」

 

引金を弾かれたマグナムから放たれた巨大な青色の弾丸のマキシマム【トリガーストレートバースト】はカメレオンドーパントに命中、爆発。

後には犯人の男が倒れていた。

 

「ふぅ。・・・後は管理局に任せるか。」

 

トリガーはハードボイルダーに寄る。

 

「あの・・・。」

 

「あぁ?」

 

呼ばれたトリガーは振り向く。

そこには彼が助けた兄弟が。

 

「ありがとう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「怪我は無かったか?」

 

トリガーは二人に近寄る。

 

「「うん!(はい)」」

 

「そっか。なら良かったぜ」

 

トリガーは二人の頭を撫でる。

 

「お兄ちゃん、名前は?」

 

「俺か? 俺はな・・・仮面ライダーって言うんだ。」

 

トリガーは訪ねてきた弟に指を向けながら答える。

 

「「仮面ライダー?」」

 

「ああ。おっと、こうしちゃいられねぇ。またな」

 

トリガーはトリガーマグナムを胸に取り付けた後、ハードボイルダーに乗って走り去っていった。

 

「僕達もいつかあんなふうになりたいなぁ」

 

「うん」

 

そんなトリガーを二人は見えなくなるまで見つめ続けた。

 

 

―――――――――――

 

 

ナカジマ家・夕方

 

 

「どうだ? 何か見つかったか?」

 

「なんなんすかねぇ〜。仕事はあるはずなんですけど、探偵の仕事を捨てきれねぇっていうか・・・未練たらたらっていうか・・・」

 

「そっか〜。ならよ、俺の部隊に入らねぇか?」

 

「え?」

 

「探偵やったんなら、頭もキレんだろうし、仮面ライダーとしての実力もティアナから聞いてるぜ。わかんねぇことがあったら俺だけじゃなくギンガも一緒だからいざって時に困んねぇし、基本この街で動く。どうだ?」

 

ゲンヤが訪ねると翔太郎は曖昧に答えを返す。

 

「え〜と・・・」

 

翔太郎は悩む。

 

 

 

 

「翔太郎さん! 私の秘書っていうかサポートをしてくれませんか!? 出来れば同居で」

 

するとスバルが笑顔で爆弾発言をいい放つ。

 

スバルが身体を乗り出す。

 

「・・・・・。はあああああああああ!?」

 

無論翔太郎は声を荒げて驚く。

 

当然と言えば当然。

翔太郎は少年時代に見た荘吉に憧れ探偵を目指し、学生時代のほとんどを荘吉のもとで探偵として勉強してきた。

 

なので女性との付き合いはほとんど皆無であり、依頼人ともその時だけであった。

 

事務所の自称所長・鳴海亜樹子は女性としてみていなかったし、学生関係の情報屋のクイーンとエリザベスもただの情報を買う側売る側の関係。

にも関わらず突然の同居と来ては当然の反応だ。

 

「お、いいな。スバルも一応上に立つ側になったからな。翔太郎ぐらいに頭がキレれば十分だろうしなぁ。それにお前とはなんか気が合うしなぁ」

 

(って止めろよ! あんた親父だろ! つーか、この歳で部下ぁ!?)

 

「スバル、そんなにすごいのか?」

 

「スバルは一応湾岸警備隊の防災士長だ」

 

ノーヴェが入り込む。

 

「マジかよ・・・」

 

「警備隊なら翔太郎さんも動きやすいですし、同じ近距離型なら相性もいいですし。ねっ!」

 

「あ、ああ。でもよぉ、同居する必要はないような気が・・・」

 

「よし、決定! ささ、明日から早速お願いしま〜す!」

 

(・・・駄目だ。コイツの強引さは亜樹子を越えてる。いくら言ったってどうせ無駄な気がすんな)

 

翔太郎は諦める。

彼はなにやら強引な女性と縁があるらしい。

 

「あ―――! もう、わ―ったよ! こうなりゃ郷に従ーってやらぁ! じゃあ明日からよろしくな! スバル!」

 

「よろしい♪」

 

完全にやけになった翔太郎に対してスバルはほんのり顔を赤らめながらの笑顔を浮かべた。

 

 

―――――――――――

 

 

翔太郎の即席の部屋で翔太郎は布団に寝転ぶ。

 

(この部屋ともおさらばか。ずいぶんあっという間だったな。しっかし・・・ある意味スバルはドーパントよりキツイな。まぁ、美人ではあるけどなぁ。犯人二人も管理局に任せたが、奴らも被害者。必ずこの手で黒幕を掴んでみせるぜ。それと考えていたメタルとトリガーによる単独変身はジョーカー同様に可能だった。これからの事件で力になってくれれば幸いだ。だがそんな反面、この力を得たために何かを失うことがあるかもしれない。だとしてもそんなことはさせない。この俺が仮面ライダーを捨てない限りはな)

 

そして妙に疲労感を感じつついつの間にか翔太郎は眠りについた。

 

 

―――――――――――

 

 

暗闇の中、荘吉が一人立つ。

 

「翔太郎・・・。いずれお前にも必要なときがくる。俺からのプレゼントだ」

 

荘吉がはどこからか白い箱を出す。

 

さらに荘吉の後ろから装甲車のような小型のマシンが現れた。

 

前面は斜めになっており、そこには今までのユニットや仲間であった仮面ライダーアクセルのユニット、ガンナーAのように数字[5]が刻まれていた。

 

 



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EP3/鉄の戦車

最後だいぶ変えました。
今見るとだいぶ文がお粗末に見えます(笑)
まぁ今もどうかとおもいますが。


朝。

 

誰もいない公園に空き缶を並べる翔太郎。

 

そして離れると翔太郎は白い箱を取り出す。

 

その箱、荘吉が持っていた箱には黒いトリガーマグナムと一枚のメモが入っていた。

 

トリガーマグナムのマガジン部のWの文字は一部が赤くなっており、まるで[J]を描くようであった。

 

「さしずめジョーカー・・・マグナムってとこか」

 

翔太郎はマグナムを左手に持ち変え、右手でメモを開く。

 

[きっとお前のことを守ってくれるだろう。]

 

メモにはそれだけ書かれていた。

 

翔太郎はメモを懐ポケットにしまい右手にマグナムを持ち変え空き缶に狙いを定め撃つ。

 

空き缶のど真ん中には綺麗な円で貫通されていた。

 

変身せずとも翔太郎は仮面ライダー。

 

今昔問わず多彩な姿、戦闘スタイルで戦ってきた。

 

変身せずともジョーカーの体術やメタルの棒術、トリガーの銃技は身体に染み付いている。

 

そのまま翔太郎は空き缶を撃ち抜いていく。

 

たまに隠されたダイヤルで威力を調整して缶を弾いたり、凹ませたりしながら新たな力を試す。

 

そして弾かせて空き缶全てをゴミ箱に叩き込む。

 

「ふぅ〜」

 

息を吐く翔太郎。生身で銃撃という慣れないことをしたせいか肩に力が入っていた証拠だ。

 

「すごぉ〜い」

 

「あ?」

 

いきなり賞賛された翔太郎は声の元を見る。

そこには十代入りたてであろう片方の額が現れたトレーニングウェア姿の金髪の少女がいた。

 

「君、ここら辺の娘か?」

 

「あ、はい。いつものコースで・・・。そしたら音が聞こえたから・・・」

 

「何だか恥ずかしいな」

 

「でもカッコいいですね。帽子・・・」

 

早朝ながらも翔太郎の服装は抜かりない。

 

「お、わかるか? 小さい割にはしっかりしてるな」

 

「えへへへ♪」

 

少女は照れながらも満面の笑みだ。

少女はふと公園の時計を見る。

 

「あ、戻らないと遅刻しちゃう。さようなら・・・えっと・・・」

 

「左翔太郎だ。今は探偵・・・じゃねぇが・・・まぁわかりやすく言えば正義の味方だな」

 

「へ、へぇ〜」

 

少女は苦笑い。

 

(今俺、外したか?)

 

「私、高町ヴィヴィオって言います」

 

「そうか。じゃあな、ヴィヴィオ!」

 

翔太郎は指鉄砲をヴィヴィオに向ける。

 

「はい。左さん!」

 

ヴィヴィオもウインクして返す。

 

二人はまた会おうことを知らずに公園を出る。

 

 

―――――――――――

 

 

「・・・・・大変お世話になりました」

 

翔太郎はゲンヤ達にお辞儀をする。

 

「まぁ、これからもだろうがな。ちなみにスバルの性感帯はt・・・・、あべしぃ!」

 

禁句を言いかけスバルから鉄拳をもらい悶絶するゲンヤに翔太郎は苦笑いを浮かべる。

 

「じゃあ行こっ! 翔太郎さん」

 

スバルが翔太郎の手を引っ張る。

 

「あ、ああ。じゃあまたな、皆ぁ!」

 

無愛想なノーヴェを含め他の四人も二人を見送る。

 

ゲンヤのお下がりの服装や生活良品をスバルの車に任せ、翔太郎はハードボイルダーに乗る。

 

 

―――――――――――

 

 

スバルの家についた二人。

 

と言ってもあまり実家からは離れていないが。

 

「・・・・・あり得ねぇ。19でこんな家買えるなんざ・・・」

 

「実際管理局ってあまり年齢関係ないんですよ。知り合いには10歳で入った子だっていますし・・・」

 

「マジかよ・・・。つーかマジで俺、お前と二人きりで住むのか?」

 

「いけませんか?」

 

スバルが上目使いで聞く。

 

(ぐはっ! 駄目だ! 断れねぇ!)

 

「ふ、ふつつか者だがよろしく頼む・・・ぜ」

 

「はい! 頼まれました♪」

 

少々下がり気味の翔太郎に対しスバルは満面の笑み。

外から見れば十分なバカップルに見える二人はそのままスバルの家に入っていった。

 

 

―――――――――――

 

 

その頃翔太郎が会っていた少女、高町ヴィヴィオは初等部4年生の始業式が終わり教室で記念撮影をして図書館に向かっていた。

 

ヴィヴィオは友人のコロナとリオに朝のことについて話し始める。

 

「左? 何だか変わった名字だね―?」

 

「朝から洋服で公園って・・・変わった人だね」

 

「でも優しい雰囲気だったよ。悪い人には全然見えなかったよ?」

 

「まぁ、ヴィヴィオが言うんだったら間違いないね。へぇ〜〜〜。そういえば知ってる? 二人ともあのこと」

 

「「あのこと?」」

 

リオの急な話題にヴィヴィオとコロナはシンクロして聞く。

 

「やだなぁ。あのことって言ったら"仮面ライダー"のことだよ」

 

「「かめんらいだぁ?」」

 

「そう。バイクに乗って怪人を倒すヒーロー。しかも三つ色があるんだってー」

 

リオの声のトーンが上がる。

 

「へぇ〜〜〜」

 

「仮面ライダーか〜。会ってみたいね」

 

コロナとヴィヴィオは興味を持つ。

 

「でも怪人には会いたくないけどね」

 

「「だね」」

 

三人は笑いながら図書館に向かう。

 

 

―――――――――――

 

 

特別救助隊オフィス。

 

スバルは簡潔に翔太郎のことを、頬に傷のある上司や同僚達に説明していた。

ちなみに速攻な就職だったので翔太郎は普段の格好である。

 

「そうか。まぁナカジマも側近がいた方が楽だろうからな。じゃ、今日からよろしくな。えっと・・・」

 

「あ〜、左翔太郎です。よろしくお願いします」

 

一応上司になる人の前であるため翔太郎は帽子を取って挨拶する。

 

「そういや左さんの格好は何ですか?」

 

男性の同僚が聞く。

 

「あ〜、これは前の職業だった探偵の格好で・・・、長かったからこの格好が一番落ち着くっつ―か、他の格好が慣れないっつーか・・・」

 

翔太郎は曖昧に答える。

 

「じゃあ左さんって彼女いたんですか。っていうかいるんですか?」

 

唐突にもほどがあるが色恋事が好きそうな女性の同僚が目を光らせながら聞く。

よくいる他人の恋路に興味がある女性の類だ。

これには若干スバルも耳を傾ける。

 

「いや〜、いたこともないすねぇ〜。それにこの街には来たばっかだから今もいねぇっすよ」

 

「じゃあ今は何処に住んでるんだ?」

 

「ああ。今は・・・」

 

上司が聞く。

実際はスバルの家に同棲しているが、こんなことを答えられる訳がなく・・・。

 

(よし、スバルの近所に越したって言えば・・・。)

 

しかしスバルのライダーキック並の破壊力の一言により翔太郎のプランは粉々にぶち壊される。

 

「翔太郎さんなら私と一緒に住んでます。」

 

「そうそう。スバルと同棲・・・・・、あぁぁぁ!」

 

翔太郎は弾丸並のスピードでスバルを見る。

 

「・・・・・」

(スバルぅぅぅぅ〜〜〜〜!)

 

開いた口が塞がらない翔太郎だったが、心の中では元の世界で所長様を呼ぶようなトーンで大絶叫がこだまする。

 

「はっはっはっは。マジかぁ〜〜〜」

 

こんな事実に上司は笑う。

 

「「「えぇ〜〜〜〜」」」

 

その場の同僚達は戦隊ヒーローを軽くしのぐチームワークで叫ぶ。

 

その後二人は質問責め、特に翔太郎は男性の同僚から殺気立たれて聞かれ続けた。

実際明るいキャラクター、美人、スタイル抜群のスバルの倍率は低いわけがなく多くの男性の同僚がスバルを狙っていた。

 

しかし突如現れた何処の馬の骨かもわからない輩が憧れの存在と同棲とは心底穏やかなわけがなかった。

挙句翔太郎の出勤初日の大半は同僚質問により消化されてしまったことは言うまでもない。

 

 

―――――――――――

 

 

「スバルぅぅぅ〜〜〜!」

 

スバル宅で翔太郎はスバルに吠える。

夜ではあるもののそんなことで今の翔太郎は止まらない。

 

「な・ん・で・事実をいうんだぁ? あぁ?」

 

まるでチンピラな翔太郎。

 

「・・・・・すいません。あんなことになるとは思わなくて、翔太郎さんに迷惑かけちゃって・・・」

 

笑いながら答えるスバル。

激情している翔太郎だったが、半ば呆れたのかさすがにブレーキをかける。

 

「・・・・・わ―った、わ―った、分かった。俺が悪かった。お前には俺と同居とかどーでもいいことだったな」

 

「・・・・・あんな風にすればライバルができないと思ったんですよ~~~だ」

 

「ん? なんか言ったか?」

 

「なんでもないですよ~~~」

 

「? 変な奴だな」

 

「あ~~~。今の失礼です! 傷つきました~~~!」

 

「嘘つけ! バイオ〇イダーみたいにタフなメンタル持ってるくせに何言ってんだ!」

 

「レディーを泣かせるなんて男の風上にもおけませんよぉ」

 

「ぐはぁ!」

 

「・・・・・ま、まぁ頼み事を聞いてくれるなら許してあげます」

 

「なんで上から目線?」

 

「ズバリ今日はあたしの隣で一緒に寝ることです!」

 

「無視したうえで爆弾ぶっ放すな!」

 

翔太郎は思わず叫ぶように聞く。

 

「怒る翔太郎さん、怖かったです。思い出したら夜怖くて眠れません。なので隣で寝てくださ~~~い♪」

 

「思い出さなきゃいいだろうが!」

 

「わ、私は寝るときに一日のことを頭で整理しなければ寝られないんです!」

 

嘘である。

基本スバルは熟睡だ。

 

「・・・・・俺に拒否権は?」

 

「そんなのありません♪」

 

スバルの笑顔は翔太郎にはダークに見えて仕方がなかった。

 

(あ〜、ドーパントが出てくれれば疲れですぐ熟睡できんのに! 頼む! 何でもいいから出てきてくれぇ〜〜〜)

 

初めてドーパントの出現を求める翔太郎。

すると神様は翔太郎を見捨てなかった。

 

スバルのマッハキャリバーが鳴り出し上司が映る。

 

《スバル! 今夜到着する豪華客船内で怪人が暴れてる。至急来てくれるか?》

 

「そうそう、ドーパントが現れて・・・、あぁ!」

 

「え? わかりました。現場に向かいます。翔太郎さんは・・・あれっ?」

 

スバルが振り向いたときにはそこに翔太郎はいず、既にハードボイルダーにまたがっていた。

 

 

―――――――――――

 

 

翔太郎は夜のミッドをハードボイルダーに乗って走る。

 

腰には既に巻かれたロストドライバー。

左手をジョーカーメモリを持つ。

 

『ジョーカー!』

 

ジョーカーメモリをスロットし右手を目の前で握る。

 

「変身!」

 

右拳を開き、左手でドライバーを開く。

 

『ジョーカー!』

 

翔太郎の身体を風が覆い、仮面ライダージョーカーとなる。

ジョーカーはハードボイルダーを走らせる。

 

走り去る道端の市民は唖然としてジョーカーを眺める。

 

「おい、あれって・・・」

 

「仮面・・・・ライダー?」

 

「マジかよ」

 

外野が視線を向けていることも知らず、ジョーカーは現場に向かっていった。

 

 

 

そんなジョーカーを上空から追いかける影。

しかしそれは人型ではなくまるで戦車のようなシルエットであった。

 

 

―――――――――――

 

 

野次馬が集まる現場から一番近い海湾冲。

 

「落ち着いて! みなさん落ち着いてください!」

 

管理局が精一杯に野次馬達を押さえている。

 

すると野次馬達を飛び越してハードボイルダーに乗ったジョーカーが現れる。

 

「仮面ライダー・・・」

 

「仮面ライダーだ・・・」

 

「本物?」

 

野次馬達の話題は一気にジョーカーに集まる。

 

マスコミに限ってはジョーカーにカメラを向け、シャッターを切り続ける。

局員はジョーカーに近寄る。

 

「仮面ライダー・・・さん・・・ですか?」

 

「さんはいらねぇ。状況はどうなんだ?」

 

「・・・。あぁ。はい。状況は屋上に怪人が一体、屋内にはまだ一人女の子が閉じ込められています」

 

「くっそぉー、俺が飛べれば・・・、せめてタービュラーユニットがありゃあな〜〜〜」

 

ジョーカーがうなだれたその瞬間、空から黒い装甲車のようなビークルが飛んできた。

前面の斜めった部分には今までのようなユニットと同じような数字、しかも[5]と刻まれていた。

 

「あぁん!? 何だおめぇ?」

 

ジョーカーが聞くと、黒いユニットは返事のように電子音を鳴らす。

それによりジョーカーは敵ではないことを悟った。

 

そしてユニットに一枚の紙が張り付けてあることに気付き、剥がす。

 

[いざ飛べないと不便だろう。使え]

 

ただそれだけが書かれていた。

 

「おやっさんらしいな。・・・まぁ、助かったぜ! 名前は・・・え〜っと・・・ブラスターユニットだ!」

 

ジョーカーが即興で名づけられた黒いユニット、ブラスターユニットは喜ぶように高い電子音を出す。

 

「っしゃあ! 行くぜ! ブラスターユニット!」

 

ジョーカーは左手をスナップしてハードボイルダーに乗る。

するとブラスターユニットが後部に合体、ハードブラスターになる。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

ジョーカーはハードブラスターで燃え上がる客船に向かった。

 

 

―――――――――――

 

 

「足りない。まだ暴れ足りないぃぃぃぃ!」

 

客船ではトライセラトップスドーパントが手に棍棒型武器を手に吠えていた。

 

「誰かぁ、俺と遊んでくれないのかぁ!」

 

 

 

「うおりゃあああああ!」

 

すると上空からジョーカーが飛び交ってきた。

 

「てめぇは!」

 

「どりゃあぁ!」

 

「ぐお!」

 

ジョーカーはトライセラトップスに横蹴りを叩き込み吹き飛ばす。

 

「俺か? 俺は仮面ライダー・・・ジョーカー」

 

「仮面ライダぁ?」

 

「さぁ・・・お前の罪を・・・数えろ」

 

ジョーカーは左の人差し指をトライセラトップスに向ける。

 

「誰がだぁぁぁ!」

 

「行くぜ!」

 

トライセラトップスとジョーカーは互いに走って取っ組み合った。

 

 

―――――――――――

 

 

相変わらず人がうごめく海湾。

そこにバリアジャケットのスバルが駆け付けた。

 

「湾岸警備隊、防災士長のスバル・ナカジマです。どんな状況ですか?」

 

スバルは場の局員に聞く。

 

「はい。今夜入港予定だった豪華客船アルセール号内で怪人が現れて火災を起こし、現在怪人は屋上。内部に要救助者が一名。今さっき仮面ライダーという方が変な乗り物で飛んで行ってしまいましたが・・・・・」

 

「翔太郎さ・・・、仮面ライダーが!?」

 

「? はい!」

 

「・・・私も合流します。後から来た方にも説明お願いします」

 

「えっ? ちょっ・・・ナカジマ士長? すでに船の炎はバリアジャケットに耐えられる温度では・・・・」

 

「ウイングロード!」

 

局員の制止を聞かずスバルはウイングロードを客船に伸ばし、走っていった。

 

 

―――――――――――

 

 

「はっ!」

 

「ぐおっ!」

 

トライセラトップスの棍棒がジョーカーの腹部に放たれ火花を散らす。

 

トライセラトップスは引き続き棍棒を叩き込み続ける。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

 

ジョーカーは吹き飛ばされる。

 

「っつ〜〜〜。んなろぉ!」

 

『メタル!』

 

ジョーカーはメタルメモリを鳴らしながら立ち上がりメタルメモリをロストドライバーにスロットし開く。

 

『メタル!』

 

ジョーカーは風を纏い仮面ライダーメタルになり、背中のメタルシャフトを持つ。

 

「行くぜ!」

 

メタルとトライセラトップスは互いの武器をぶつけ始める。

メタルはシャフトを縦、横、後ろ払いで振り回し互いの武器をぶつけ合う。

 

 

「翔太郎さぁ〜ん!」

 

「この声は・・・・」

 

聞いたことのある声にメタルはやな予感を感じつつ、声のもとに首を向ける。

スバルがウイングロードで走ってきた。

 

「うおっ!? なんだそりゃあ! 魔法ってやつか?」

 

「私のはこういうので・・・」

 

「・・・まぁ良いぜ! こいつは俺がなんとかすっから、スバルは中の人を頼む!」

 

「はい!」

 

スバルはウイングロードで船内に入る。

 

「させるかぁ!」

 

「こっちの台詞だ!」

 

トライセラトップスはスバルの後を追おうとするが、メタルが拒み二人は再び武器を交える。

正面、横、後ろからメタルはシャフトを振り回しトライセラトップスに放つ。

 

トライセラトップスも棍棒で受け止めるがその素早さや技により徐々に追い詰められる。

 

「どりゃあ!」

 

トライセラトップスの手から棍棒が弾かれる。

やはりパワーとパワーでは経験状メタルが有利らしい。

 

「うおりゃあぁぁぁ!」

 

メタルは下からの突き上げによりトライセラトップスを宙に浮かせ突きで吹き飛ばす。

 

「ぐおぉぉぉぉ!」

 

「っしゃあ!」

 

メタルは左手をスナップさせる。

 

「まだだ! まだだぁぁぁ!」

 

しかしトライセラトップスは手から巨大化し、巨大トライセラトップスになる。

 

「マジかよっ!」

 

メタルはハードブラスターに跳躍して乗り込む。

 

巨大トライセラトップスは足を踏み込み船上で暴れる。

その度に炎は燃え上がる。

 

「! あんにゃろ〜〜! させっか!」

 

メタルはハードブラスターで接近。

 

巨大トライセラトップスの尻尾が迫るが、避けブラスターの二つの砲身からは光弾、ハードの前輪の二つのバルカンからは実弾を放ち巨大トライセラトップスを攻撃する。

 

「ぎゃおおおおおお!」

 

巨大トライセラトップスは叫びながらのけぞる。

 

「決めるぜ!」

 

『バット!』

 

メタルはシャフトにバットショットを合体しドライバーから抜いたメタルメモリをシャフトにスロットする。

 

『メタル・マキシマムドライブ!』

 

「はあああああああ!」

 

シャフトの先端に真空の鎚が生成されてゆく。

メタルはそのままブラスターから飛びシャフトを振りかざしながら巨大トライセラトップスにとびかかる。

 

「メタルソニックプレッシャー!」

 

鎚を纏ったシャフトが巨大トライセラトップスの後頭部に炸裂。

 

「うおおおお。おりゃあああああ!」

 

そのまま押し潰し巨大トライセラトップスは爆発を起こし、犯人らしき男が横たわっていた。

 

「後は局に任せるか」

 

メタルは跳躍し犯人をブラスターに乗せる。

そして自らは再び船上に。

 

「頼んだぜ!」

 

ブラスターは犯人を乗せ局員達が野次馬達を押さえている海湾に向かい飛んでいった。

 

「さてと・・・行くか! あのじゃじゃ馬を助けに!」

 

メタルは火の中に飛び込んでいった。

 

 

―――――――――――

 

 

燃え盛る炎の中。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「・・・お姉ちゃん・・・」

 

「・・・大丈夫・・・。絶対助けるから!」

 

スバルは要救助者らしき少女を抱え、息を切らしてした。

実際トライセラトップスの放った光弾が火種になり燃え上がった炎の勢いはすでにバリアジャケットが耐えられる温度ではなく、スバルの皮膚を一部焦がす。

 

(どうしよう・・・。障壁でも受け切れないし、バリアジャケットも耐えられない。このままじゃ・・・・・翔太郎さん・・・)

 

スバルが心の中で強く願った瞬間炎を浴び天井の一部が落ちてきた。

 

「!」

 

少女、そしてスバルが目をつむった瞬間。

 

『ジョーカー・マキシマムドライブ!』

 

「ライダーパンチ!」

 

「うおりぁああああ!」

 

駆け寄ってきたジョーカーがライダーパンチで落ちてきた天井を粉々に砕く。

 

「助けに来たぜ! スバル!」

 

「翔・・・太郎・・・さん?」

 

「ああ、遅れ・・・うおっ!」

 

ジョーカーが喋っている最中にスバルは右手で軽くジョーカーの腹部に一撃。

 

「ホントだよ! 全く、女性を待たせるなんて! 探偵さん失格だよ!」

 

スバルは立ち上がりジョーカーに説教。

 

(翔太郎さん・・・)

 

しかしその顔は駆けつけていたジョーカーに安心し安堵の表情が浮かぶ。

 

「とりあえずはこっから出ねぇとな。しっかし・・・」

 

ジョーカーはやけどを負っているスバルを見る。

 

「正面からはきっつそうだな」

 

「いざとなったら翔太郎さん、この子を連れて・・・」

 

「ざけんな! この街で誰一人死なせやしねぇ。・・・今の俺は・・・この街を・・・笑顔を守る仮面ライダーなんだ。それが・・・俺が俺に決めた誓いだ! だから・・・。んな弱きなこと言うんじゃねぇよ!」

 

弱音を吐くスバルにジョーカーが激を入れる。

 

「翔太郎さん・・・」

 

「安心しな! 男は一度決めたことは必ずやり遂げる。それがハード・・・ボイルドだからな。」

 

ジョーカーはスバルの頭をなでる。

スバルは耳まで赤くなる。

 

これは炎の影響で見えるのではなかった。

しかし現実は厳しい。

実際にはジョーカーだけであれば正面からの脱出はたやすい。

 

しかし今はスバルと少女がいる。

少女は生身、スバルのジャケットも耐えきれないのは明らかだった。

 

(どうすりゃいい。考えろ、考えろ・・・。俺に水かなんかを使えたら・・・。俺は・・・肝心な時に・・・無力だ・・・)

 

「ちっ・・・きしょおがぁ!」

 

ジョーカーは壁を殴る。

すると。

 

「翔太郎さん? それは?」

 

「ああん? ! これは・・・」

 

ジョーカーは足元を見る。

 

そこにはジョーカーの足元から魔法陣が現れていた。

 

「すごい。これは魔力変換? こんなの見たことない・・・・・」

 

スバルはジョーカーを呆然と眺める。

 

「・・・・・へっ・・・、やっぱり切り札って奴は常に俺に味方するようだな・・・。有りがたく使わせてもらうぜ! はああああああああ!」

 

ジョーカーは手首をスナップし力を込める。

 

すると魔法陣はを右手に集まり、留まる。

ジョーカーは炎が立ち込める廊下に身体を向ける。

 

「はあああああああ・・・・・、はあ!」

 

そのまま力を込め、正拳突きを放つ。

するとジョーカーの右拳から水色の波動が放たれ、廊下に燃え盛っていた炎を一瞬で消し去る。

 

「マジかよ・・・。・・・・やっべ、ンなこと言ってる場合じゃなかった。行くぞ! スバル!」

 

ジョーカーはスバルに手を伸ばす。

 

「はい!」

 

スバルは手を掴み、少女を抱き立ち上がる。

 

三人はジョーカーを先頭に船上を目指す。

 

 

―――――――――――

 

 

船上に出る三人。

 

「来たか」

 

犯人を海湾の局員に預け戻ってきたハードブラスターが浮遊していた。

ジョーカーは少女を抱き抱えるスバルを抱き、跳躍してハードブラスターに乗り込むとまたがる。

 

「目ぇ開けな」

 

ジョーカーは少女に言い、少女は泣きながら目を開ける。

 

「もう心配いらねぇぜ! お母さんに合わせてやっからな。」

 

ジョーカーは少女の頭を撫でる。

 

「・・・・・うん!」

 

少女は涙を拭き笑う。

 

「へっ! さぁ、戻るか!」

 

そんなジョーカーをスバルは、微笑ましく眺めていた。

そんなことも知らずジョーカーはハードブラスターのアクセルを捻る。

 

 

―――――――――――

 

 

「お母さん!」

 

少女は母親らしき女性と抱き合う。

 

二人ともボロボロではあるが、顔は嬉しさに溢れていた。

 

「・・・・・良かったですね」

 

「あぁ。」

 

親子を見て笑うスバルと仮面の鼻に当たる場所を拭うようにこするジョーカー。

そんな余韻に浸る二人に一気にマスコミが駆け寄る。

 

「仮面ライダーさん! 貴方は一体何者なんですか?」

 

「管理局の関係者なんですか?」

 

「何故そんな姿なんですか?」

 

マスコミがジョーカーにたかる。

その迫力にはさすがのジョーカーもたじろぐ。

 

「わりぃな。ちょっと用事を思い出した」

 

すぐさまハードボイルダーにまたがり走っていった。

 

「ま、待ってください!」

 

マスコミは追いかけるも相手はバイク、ましてや時速580kmのモンスターマシンだ。

あっという間に見えなくなってしまった。

 

 

その後マスコミはスバルにも迫ったが、当のスバルはウイングロードで離脱し、その場を他の局員に任せ、去っていった。

 

 

―――――――――――

 

 

ベッドの上で寝間着姿の翔太郎はスタッグフォンで報告書を打つ。

 

[二日続きで起こったドーパントの事件。この街に何が起きているのかは今の俺にもわからない。とりあえず明日ドーパントになっていた連中を拘束しているらしい108部隊に行って何かの情報を得たい。今後の、新たな戦いに向けて」

 

「ふぅ。」

 

保存し息を吐く翔太郎。

 

「翔太郎さん♪」

 

そこにスバルが走ってベッド、というより翔太郎にダイブ。

 

「うお! おい、スバル!」

 

「翔太郎さ〜ん」

 

「おい、スバ・・・・・、うお!」

 

「んぎゅううううううう!」

 

翔太郎に抱き付くスバルの胸が大きく形を崩す。

 

「すすすスバル。おまっ・・・・あ、柔らかい・・・・。いやいやいや! 離れろ! 恥ずかしいだろうが!」

 

「翔太郎ってばかわいいの〜〜〜♪」

 

「からかうな!」

 

半ギレの翔太郎に対しスバルは嬉しそうだ。

 

「それに翔太郎さん、さっき一生懸命に助けてくれた。だからお礼! それに・・・」

 

「それに?」

 

「ちょっとは意識してもらおうと思って♪」

 

「んな!?」

 

再び翔太郎に抱きつく。

 

「は、離れろスバル! あ、いい匂い・・・・、じゃなくて!」

 

「本当は?」

 

「もっと強く・・・・・、じゃなくて!」

 

「えい♪」

 

「おおう!」

 

「翔太郎さん!」

 

「な、なんだよ・・・・」

 

(大好きです・・・・・)

「べっつに~~~~♪」

 

翔太郎に笑顔で返すスバル。

 

「・・・・・あああああ~~~。んもうわっけわかんねえええええええ!」

 

頭をかきむしりながら翔太郎の絶叫がミッドチルダの夜空にこだました。



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EP4/覇王との出会い

頑張って当時投稿していた3章まで出したいです。
わがままをいうならフォーゼ以降のライダーも4章的な内容で出したいです。


目が覚める翔太郎。

 

「あぁぁぁ」

 

起き上がるためにベッドに手を置く。

 

「ん・・・、んふ」

 

置いたはずであった。

変な擬音が鳴る上やたらと柔らかい。

相当高級なベッドでもここまでの触感はない。

 

(? 何だ? ・・・はっ!)

 

翔太郎は昨日の夜を思い出す。

 

「つ、つい疲れているとはいえ若い女とおんなじベッド・・・で・・・」

 

そのまま疲れ果てて寝てしまった翔太郎の顔から一気に血の気が引く。

 

恐る恐る手先を見る翔太郎。

その手はが見るワイシャツしか着ていないスバルの胸を鷲掴みにしていた。

 

「んむ〜〜〜、駄目だよ翔太郎さ〜ん。そんなに激しいと私壊れちゃうよ〜〜」

 

(どんな夢見てんだお前はぁ!)

 

内心突っ込む翔太郎の気も知らないスバルが寝言を言いながら寝ぼけていた。

 

「・・・証拠隠滅・・・」

 

あまりの状況で元探偵らしからぬ発言をする翔太郎は静かにスバルの身体に毛布をかける。

 

そのまま翔太郎は無言のまま起き上がり洗面台に向かった。

顔を洗う兼、夢にしか思えないこの非日常から醒めるために。

 

「頼む・・・・夢なら醒めてくれ」

 

 

~~~~数分後~~~~

 

 

「・・・・・」

 

「あ、おはようございます翔太郎さん♪」

 

「お、おう・・・」

 

がっくりしながら寝室に戻ってきた翔太郎のことも気にせず、スバルが背伸びをしながら前かがみに挨拶を交わす。

それにより見える谷間に翔太郎は呆れながらため息を吐く。

 

「お前・・・、ちゃんとかくせ、スバル! 見えんだろうが!」

 

「見せてるんですよ?」

 

「ああああああああああああああああ!」

 

わざとらしく谷間を見せるスバルに対して頭を抑え自己嫌悪するのは翔太郎。

はたから見たら中々カオスな現状である。

 

(全然ハードボイルドじゃねええええええ! 何か、何かこの状況から離れられることを! ・・・あっ!)

 

翔太郎の頭にこの現状を切り開く切札が浮かぶ。

 

「おう、そうだ! 犯人の連中はどうなったんだ? メモリをどうやって手に入れたのか気になるんだが・・・」

 

「あ、そうだったね。犯人の人達の事情聴取は108部隊に任せてて。あそこにはお父さんやギン姐がいるよ」

 

「わ、分かった。じゃあ俺はその、108部隊ってとこに行ってっからな」

 

「え? 今日休むんですか? 報告書は?」

 

ちなみにスバルは未だにデスクワークが苦手であるため、正直翔太郎の補佐は二重の意味で嬉しかった。

 

「あ〜、じゃあ今夜手伝ってやるから、部隊長には言っといてくれ! な! 頼むぜ!」

 

「ん〜〜〜、じゃあ・・・、今後はデートしましょう。ね? 約束してくれたら、仕方ありませんが今日は一人で頑張ってあげます」

 

(このぉぉぉぉ。人が下手にでてりゃあ・・・。つーかプロセス逆だろが! 何でデートを通り越して同じベッドだぁ!? だが・・・)

 

「まぁ、いいか。いずれな」

 

「やった♪」

 

スバルは抱きつく。

ワイシャツ一丁なせいか胸の感触がほぼダイレクトに伝わる。

 

(ぐおおおおお。なんつー破壊力だ!)

 

「うおっ! それよりもスバル! ちゃんと服着ろ! それに早くしねぇと遅刻すっぞ!」

 

「・・・・・あっ!」

 

スバルは時計を見て血相を変える。

途端に翔太郎とスバルは服を着て、せわしなく動き始める。

 

「おま、スバル! 着替えんなら言えよ!」

 

「え~~~~。ほんとは見たいくせに~~~♪」

 

「んな! んなわけねぇだろがぁ! 偶然踏んだんだ! そもそもこんなとこにっ・・・ってぇ!」

 

翔太郎は昨晩スバルの脱いだ服で豪快に転ぶ。

 

 

 

こんなドタバタがあったものの、互いに家を出て翔太郎は108部隊の本部に到着し、スバルはギリギリ遅刻せずに通勤できた。

 

 

―――――――――――

 

 

108部隊・退舎・取調室

 

 

「知らねぇよ! 怪物なんざ!」

 

「冗談を言うな! お前が怪物になって人々を襲っていたのは明らかなんだぞ!」

 

「知らねぇってんだろが!」

 

取り調べ室で取り調べが行われており、それを翔太郎とギンガはまじまじと眺める。

行われているのは、昨日翔太郎が捕えたトライセラトップスドーパントだった男である。

 

「こんな調子なんです。しかもこの方だけじゃなくて、他の方々も・・・」

 

「・・・嘘はいってなさそうだな」

 

「? そうなんです。まぁ専門の方が言うには脈数や動悸から嘘は言ってないみたいなんですが、どうしてそう思ったんです?」

 

「ズバリ言えば・・・探偵の勘だな」

 

「また反応の困る答えを・・・」

 

翔太郎の答えにギンガは苦笑いである。

 

「なぁ、ギンガ。壊れたガイアメモリ、もとい凶器はあるか?」

 

「は、はい。こちらに」

 

ギンガはしまってあった袋を差し出す。

 

中には破壊れたトライセラトップスのメモリの残骸が入っている。

ミュージアム製のまがまがしいものだ。

 

ディスプレイは砕け、本体はまっぷたつに折れている。

 

「!」

 

手に取った翔太郎は何かに気づき、目を疑った。

 

「こいつは・・・。そうか。これなら納得がいく」

 

「ど、どうしたんです?」

 

「こいつと比べれば、わかる」

 

翔太郎はジョーカーメモリを出し、メモリの残骸と並べギンガに見比べさせる。

 

「翔太郎さんのは随分しっかりしてますね。こっちは何だか怖い感じなのに」

 

「問題はそこじゃねぇ。先端だ」

 

「先端? ・・・あれ?」

 

ギンガはあることに気づく。

 

「そうだ。そのメモリの接続部分は青いんだ。メモリブレイクされた上、見た目が違うから気づかなかったがな」

 

破壊されたトライセラトップスのメモリの先端が青い。

 

「それとあいつらの身体の何処かになんか変な模様が無かったか?」

 

「? いいえ。これといっては何も・・・」

 

これにより翔太郎の頭の中で一つの結論が現れた。

 

青い先端のメモリとアダプタの存在しない被告。

 

「おそらく、こいつはT2ガイアメモリだ」

 

翔太郎はジョーカーメモリをしまい、メモリの残骸を見ながら言う。

 

「T2ガイアメモリ?」

 

T2ガイアメモリはかつて財団Xが作り出した次世代型のガイアメモリ。見た目は先端が青く、仮面ライダーのメモリに似た純正のメモリ。ブレイクできない強度を誇り、アダプタを介せず人体に直接入り、場合によるとメモリ自体が自立し本人の意思無しに暴れる。

 

実際に翔太郎の知り合い、ウォッチャマンとサンタちゃんはそれにより自我を忘れ暴れてしまった。

 

しかし現在はない。

いや、ある訳が無かった。

 

何故なら以前翔太郎が仮面ライダーWとして仮面ライダーエターナルと戦い、Wサイクロンジョーカーゴールドエクストリームの一撃により全て破壊したからだ。

 

ただし今回はミュージアム製のものと特徴が混同した初めてのケースである。

 

「財団製じゃねぇのか? だとしたらミュージアムが・・・黒幕?」

 

「ミュージアムって翔太郎さんが戦ってたって言う組織ですか?」

 

「あぁ。だがミュージアムは滅んだはずだ。だが実際奴らのメモリがある。つまりは・・・」

 

「その組織が復活?」

 

「もしくは模倣犯みたいな連中だな。どっちしにしろ自我無しに暴れさせられた以上、あいつらも被害者ってことだ」

 

「・・・ひどい」

 

「許せねぇ・・・。この街を泣かせるなんざ、俺が」

 

感情をむき出しにしつつ翔太郎が壁を殴る。

 

「翔太郎さん・・・」

 

「・・・ギンガ、実際俺は一人じゃミュージアムには勝てなかった。これからはスバルやギンガ、ゲンヤさんや皆に世話をかけるかもしれねぇ。力を・・・」

 

翔太郎が言いかけたとき、指さし指を立てギンガが発言を遮る。

 

「行き倒れさんが今更何いってるんですか。もちろんですよ。ねっ、お父さん♪」

 

「ああ」

 

いつの間にかあらわれていたゲンヤが返事を返す。

 

「ゲンヤさん・・・」

 

「お前も頑張ってくれてる。なら俺達も出来る限りをしねぇとな」

 

「・・・ありがとうございます」

 

翔太郎は深々と二人に頭を下げた。

 

二人もそんな翔太郎を見て安心したように笑って顔を合わせた。

 

 

―――――――――――

 

 

「翔太郎、この後どうだ? 男二人で一杯行かねぇか?」

 

廊下を歩きながらゲンヤが誘う。

 

「すんません。今夜はスバルとちょっと約束が・・・」

 

「そうか。そういや昨晩は何かあったか?」

 

「・・・・・」

 

沈黙しか答えを返せない翔太郎である。

 

「な、何かってなんすか?」

 

「若い男女が二人きりで一つ屋根の下だぜ? 何かあったって不思議じゃねぇだろ?」

 

にやけながらゲンヤが言う。

 

(楽しんでね―か、この人? とはいえあんなことがあったなんざ・・・口が裂けても言えねぇ!)

 

「いやいやいや、何でも無かったッスよ。ホントに、マジで!」

 

「んだよ。何かあったら規制事実で一つ肩の荷が降りるんだがな・・・」

 

「どういうことっすか?」

 

「正直俺はあいつらの相手が誰だろうが構わねぇ。あいつらにはそいつと笑って生きていって欲しいだけだ。きっとお前とならスバルも笑顔で生きていける」

 

「・・・・・中々のプレッシャーッスね」

 

「だからスバルを泣かした時にゃあ、わかってんだろうなぁ?」

 

「もちろんッスよ。一度決めたことは曲げねぇ。あいつがいっちょ前に男作るまで俺がおいつを守るっす」

 

「ま、まぁ頼んだぜ・・・」

 

「とーぜんッスよ!」

 

二人は肩を掛け合いながら廊下を歩く。

 

その後すっかり日が落ちていたため二人は解散しゲンヤは再び仕事、翔太郎は家に戻ることにした。

 

 

―――――――――――

 

 

ハードボイルダーを走らせ帰宅途中の翔太郎。

 

(今日は無理言っちまったからな。夕飯は俺が作るか)

 

その時そんな考えを払拭するかのように近くで爆音が鳴る。

 

「!」

 

(まさか・・・ドーパントか? それともさっき聴いた件か・・・)

 

翔太郎は数時間前を思い出した。

 

 

〜〜~~数時間前~~〜〜

 

 

廊下を歩いていた翔太郎とギンガ。

 

「後、翔太郎さん。怪人もそうなんですが、こちらにも注意を」

 

ギンガはモニターを翔太郎に見せる。

 

「なんだこりゃあ」

 

そこには倒れた大男とその側に立つ仮面を付けた女性が写っていた。

 

「最近起きている連続障害事件・・・といっても被害届けが来ていないため事件ではないんですが。こちらにも気を付けてくださいね」

 

「あぁ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

(・・・・・そのまさかかよ)

 

翔太郎は到着した現場には人影が二つ。

 

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ・・・・」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「こいつは・・・」

 

その場にいたのはやたらと飛び跳ねるホッパードーパント。

 

「君は・・・障害事件の・・」

 

そして片方はギンガが見せた映像の仮面の女性であった。

 

肩を揺らして息を切らしている彼女にはあちこちに傷が。

 

(とりあえずはドーパントだ!)

 

『ジョーカー!』

 

「変身!」

 

翔太郎は考えるよりも目の前のドーパント退治を優先し、ホッパーに向け走りながらドライバーにメモリをスロットし展開する。

 

『ジョーカー!』

 

風を翔太郎が覆い、ジョーカーに変身する。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ! うおりゃあ!」

 

そのままジョーカーはホッパーに飛びかかり、地面に叩きつける。

 

「なんだぁ、貴様!」

 

「貴方は一体・・・」

 

起き上がるホッパーと仮面の女性はジョーカーに尋ねる。

 

「俺は・・・仮面ライダーだ」

 

「仮面ライダー。貴方が・・・」

 

「嬢ちゃん。君も自分の罪を数えな。君は何でこんな障害事件を起こすんだ?」

 

「それは・・・」

 

「俺を忘れてんじゃねぇ!」

 

「おっと」

 

「くっ!」

 

ホッパーの飛び蹴りを二人は避ける。

 

「そもそもなんでこんなことに・・・」

 

「実は・・・」

 

「言わねぇでもわかる。ストライクアーツの有段者を襲ったらそいつがたまたまあれだったんだろ?」

 

「・・・はい」

 

ジョーカーと仮面の女性は並び立つ。

 

「とりあえずはぶっ倒しとくか」

「え? でも・・・、あの方はとても強くて。私では・・・」

 

「安心しな。俺の専門だぁ!」

 

ジョーカーはホッパーにかかる。

 

「だっ!」

 

「おらぁ!」

 

ホッパーとジョーカーの蹴りが交差し激しくぶつかる。

 

「ふん!」

 

「うおっ! っとぉ! おわっ! っぶな・・・」

 

ホッパーはそのまま連続して回し蹴りを叩きこんでいき、ジョーカーは身を捻らせひたすらよける。

 

かつて翔太郎はホッパーと交戦したことがあった。

 

しかし交戦時間は少なく、当時の相手はスピードを生かしたアクロバティックなスタイルだった。

対し今のホッパーはキックボクシングのように最低限な動きからのラッシュでの戦い方だ。

 

「どうした、どうしたぁ! 仮面ライダぁ!」

 

「うおっ!」

 

ホッパーの横蹴りがジョーカーの腹部に放たれ、ジョーカーは吹き飛ぶ。

 

「いっつ〜〜〜」

 

ジョーカーはぶつけた腹部を擦りながら立ち上がる。

 

「とう!」

 

「てめぇっ!」

 

ホッパーの飛び蹴りをジョーカーは両手で受け止める。

 

「こっちの番だぜ」

 

そのままホッパーの足をもちながら振り回す。

 

「うおりゃああああああ・・・!」

 

「どりゃあああ!」

 

そのあまジョーカーはホッパーを投げ飛ばし、地面に叩きつける。

 

「ぐおっ!」

 

「すごい・・・。あんな素早い蹴りを・・・」

 

「やろぉ! 調子に・・・。 はっ!」

 

少女が感嘆の声を上げる中ホッパーは怒り噴騰で立ち上がり、後ろ飛び回し蹴りを放つ。

 

『ジョーカー・マキシマムドライブ!』

 

「ライダー・・・パンチ!」

 

しかしジョーカーはしゃがんで避けた後、メモリをマキシマムスロットにスロットする。

 

「うおりゃあああああ!」

 

そのままホッパーの顎にアッパータイプのライダーパンチを叩き込む。

 

「ぬおおおおお!」

 

耐えきったのか、ホッパー爆発せずに上に吹き飛ばされる。

 

しかしジョーカーは動じずにメモリを抜き、再度スロットする。

 

『ジョーカー・マキシマムドライブ!』

 

「決めるぜ! ライダー・・・キック!」

 

「うおりぁああああ!」

 

そのまま顎にライダーキックを放ち、ホッパーは爆発。

犯人が落ちてきたがブラスターユニットが激突寸前で砲身に服を引っ掛けて、助ける。

 

「よくやったぜ」

 

変身を解いた翔太郎は局に連絡する。

 

「おい、君」

 

「・・・はい」

 

翔太郎は去ろうとした仮面の少女を呼び、少女は振り向く。

 

「君は一体何者なんだ・・・。どうしてこんなことを・・・」

 

「私は・・・覇王イングヴァルト」

 

「覇王・・・だと?」

 

「・・・私は・・・ただ自分の強さを知りたいんです」

 

「強さを知りたいって・・・それなら・・・こんなとこじゃなく、どっかの道場やらジムでやりゃあ・・・」

 

「あいにく・・・、私の生きる意味は表部舞台にはないんです」

 

振り向いた少女は歩き出す。

 

「お、おい。」

 

翔太郎が呼ぶも、少女は跳躍してどこかにいってしまった。

後には翔太郎と倒れている犯人のみ。

 

「覇王イングヴァルト・・・。ああ、もう! 何なんだよ~~~!」

 

翔太郎はただたちすくむしか無かった。

 

その後局員により犯人は連行されたが、翔太郎の悩みは解決しなかった。

 

 

―――――――――――

 

 

「・・・・・」

 

「・・・・・説明してください」

 

リビングで正座をしている翔太郎にスバルが笑顔で聞く。

 

スバルの手にはさっきのイングヴァルトの髪の毛。

リビングでくつろいでいた翔太郎についていたことをスバルが気づき、今に至る。

 

しかし笑顔のスバルのバックに究〇大獣神と大〇龍が見える。

 

「・・・・いや、だから・・・たまたまドーパントが現れて。そいつから女の子を助けたときに・・・」

 

「・・・・・ついた・・・と」

 

「イ、イエス」

 

「そ・・・」

 

「そ?」

 

するとスバルはバリアジャケットとリボルバーナックルを装備する。

 

「そんな言い訳が通用するほど私はバカじゃな〜〜〜い!」

 

そしていきなり翔太郎に殴りかかる。

 

「うお〜〜〜い!」

 

かろうじて避ける翔太郎。

 

「待てぇ〜〜〜!」

 

スバルは鬼の形相で翔太郎を追いかける。

 

「スバルぅぅぅぅ〜〜〜! お前は〜〜〜!」

 

そんな翔太郎に無情にもリボルバーナックルが。

 

「どわああああああああ!」

 

響き渡る翔太郎の悲鳴。

 

 

その後翔太郎は向こう側に綺麗なお花畑がある綺麗な川を渡りかけたとか、かけなかったとか。

 

ただ一つ確実なのは、ギンガの通信であの映像をスバルが見て寸前の所で止まらなかったら、翔太郎は本当にその川を渡っていたことである。

 

 

―――――――――――

 

 

「すいません!」

 

スバルが半べそで正座。

頭にはたんこぶがひとつ。

 

そんなスバルを翔太郎が見下ろす。

 

「わかりゃあいいんだ」

 

ただし頭からは血がでて、身体はボロボロである。

100中100人が見ても明らかにわかる位に怒りを黒い、いや暗闇の笑顔に表す。

 

「だって・・・」

 

「あ?」

 

「私・・・女っぽくないから・・・ふらっと誰かに翔太郎さんを捕られそうで・・・不安で・・・」

 

スバルが涙目になる。

 

「・・・おまえなぁ、俺ら付き合ってるわけじゃねえんだからそんなオーバーなことじゃねえだろ」

 

「で、でもぉ・・・」

 

「・・・ったく」

 

翔太郎はスバルの隣に座り、頭を撫でる。

 

「安心しろ・・・。ゲンヤさんからは頼まれてっからお前を差し置いててめぇの恋路に走ったりしねぇよ。どんな時も依頼人のために戦うのがハードボイルドってやつだ。おやっさんにもそう叩き込まれたからな」

 

「・・・・・鈍感です」

 

「あ?」

 

そっぽをむくスバルに翔太郎は頭をかしげる。

 

「・・・まぁそう簡単に? 話が伝わるほど? 世の中甘くないですし、あたし変なとこ不器用だからそんなすぐに思いが伝わるとな思ってませんよ」

 

「何の話をしてんだよ一体・・・」

 

「そんなのほほん顔してるのも今のうちです!」

 

「いや話がうまく読めねえんだが!」

 

「ふーんだ! しーらない! お風呂入ってきまーす!」

 

スバルはタオルを手に脱衣所に向かい、リビングに一人翔太郎だけが残される。

 

「・・・あああああああ! わっけわかんねえええええええええええ!」

 

帽子をとり頭をかきむしる翔太郎はそのままソファにダイブし顔を帽子で隠した。

 

「・・・やっぱし女ってのは難しいぜおやっさん」

 

 

--------

 

 

「・・・・ふう」

 

浴槽の中で天井を見つめるスバル。

 

「まったく手のかかる人です・・・。でもあたしの六課時代は問題児だったから人のこといえないかなぁ。参ったなぁ。あたし恋愛経験ないからどう頑張ればいいかわからないなぁ。・・・・でも」

 

口元を湯船につけるスバル。

 

「あたしには真っ直ぐしかないから走り続けないと。でもなんで言えないんだろう・・・。一言・・・、あなたが好きですって」

 

身体以上に顔が熱くなり頬の赤色がより濃くなるスバル。

そのまま頭まで湯船に沈め、気泡が水面に泡立つ。

 

そのまま時間は刻々と過ぎていった。

 

 

その後めまいがするほどのぼせ全裸で脱衣所に逃げるまで、スバルはこの体制を変えることはなかった。



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EP5/会合の覇王

遅れましたが新年明けましておめでとうございます。
今年初投稿です。

後感想をなかなか返せずにすいません(m'□'m)
早く返せるよう善処します。



「スバル・・・、これでどうだ?」

 

「・・・うん。大丈夫です。はぁ〜〜、これでで〜っきた!」

 

二人は揃って出勤し、翔太郎はオフィスでスバルの書類を手伝っていた。

翔太郎とスバルのことに関して根に持つ多くの男性局員に睨まれるも、逆に睨み返して黙らせたのは秘密だ。

 

「っても、ほとんど俺がやったけどな。おんまえ、こんなんでよく今まで仕事できたな」

 

「あはははは。すいません。私デスクワークが苦手で・・・」

 

「まぁ、人間皆得手不得手あるからな。俺も人のこと言えねぇし」

 

「そうそう♪」

 

「調子に乗んな」

 

軽くスバルをこずく翔太郎。

その後二人は書類仕事、主に七割近くを翔太郎がこなして昼休みになった。

 

 

―――――――――――

 

 

昼休み。

食堂で翔太郎とスバルは昼食をとる。

 

「しっかし、制服っつ―のはな〜んか慣れねぇな。堅っ苦しくて好きじゃねぇ」

 

翔太郎は首元のボタンを第三まで外す。

 

「まぁ、まぁ。私も着てるんですし。我慢してください。ほら。あたしはどうですか? 制服女子ってムラムラと・・・」

 

「発言を自重しろよ。まだ昼間だぞ」

 

「じゃあ夜だったらいいんですかぁ?」

 

スバルはテーブルに胸を押し付ける。

大きく形を崩すスバルの胸を翔太郎はちらちらとわき見する。

 

「てんめ~~~。よ~~~し! だったら夜はちゃんと着ろよ。ぐったりするまで攻めまくってやるぜ!」

 

「え・・・、えええええええ!」

 

いたずら半分に冗談を言った翔太郎だったがスバルの反応は意外だった。

顔を真っ赤にして椅子ごと思い切り後ろに傾きそのまま床に倒れる。

 

「お、おいスバル?」

 

「えっと・・・、だ、だめですよ。制服は仕事で毎日着るんだから外に出しちゃ」

 

「あ?」

 

「せめて汚れないように脱いでから・・・。あ、でも着たままのほうが興奮するって確か聞いたことが・・・」

 

「お、おいスバル・・・」

 

「そ、それに中に出したほうが後々・・・、ハッ! そういえば今日あたし危険日だったっけ・・・」

 

「正気にもどれスバル! 頼むから戻ってくれ!」

 

「はへ?」

 

こんなバカップルに周りからの視線が突き刺さる。

 

「もおおおおおおおお! 翔太郎さんのばかぁ! まるであたし〇女じゃないですかぁ!」

 

「俺関係ねえだろがぁ!」

 

バカップルの絡みが漫才にシフトする。

 

「・・・もう! なんだかみせものみたいになっっちゃってますよぉ!」

 

「いや、俺のせいじゃ・・・、もういい。腹も膨れただろ。屋上で一息入れようぜ」

 

「あ、待ってくださいよぉ~~~。せめてパンを十個買ってから・・・」

 

「どんだけ食うんだお前は!」

 

スバルの胃袋の許容範囲にツッコミをいれた翔太郎をよそにスバルはパンを買いに売店に並ぶのだった。

 

 

―――――――――――

 

 

屋上で缶コーヒーを片手に景色を見つめる翔太郎。

隣のベンチではスバルが大量のパンと格闘していた。とはいえスバルは苦しげな様子も見せずにパンを口の中に放り込んでいくのだが。

 

「しっかし・・・。スバルといい、ギンガやノーヴェといい、一体どんな胃袋してんだ?」

 

スバルは顔を赤らめる。

 

「恥ずかしいからみないでくださいようぉ~~~」

 

「いや食べる量を恥じろよ・・・」

 

「そうですか? いつもこんなもんですよ?」

 

「マジかよ・・・・・。どんだけ食費がかかんだ?」

 

「え〜と、ざっと言えば・・・・」

 

「・・・・・はぁ・・・」

 

翔太郎はめまいがしたのか目頭を抑え意識を保つ。

 

「・・・そうだ、スバル。確か今日は残業だよな?」

 

「え? 残業というより夜勤ですね。翔太郎さんは先に帰ってて大丈夫ですよ」

 

「いいや。なるべくならお前に無理はさせたくねぇな。俺も付き合うぜ」

 

「え? で、でも・・・」

 

「俺もお前が心配だからな。それにいざとなりゃあ、俺も一緒にいたほうが何かといいだろうし、何より今の俺の仕事はお前のサポートなんだからな。嫌ならいいぜ?」

 

「いやいやいや、嫌じゃないです。・・・ありがとうございます♪」

 

「お、おう・・・。そうしてりゃ美人なんだけどなお前は」

 

「ひどいです翔太郎さん~~~」

 

スバルが見せた笑顔に翔太郎は照れくさそうに鼻をかき景色に視線を戻した。

 

 

 

しかしその後二人は夜勤に入るも、結局アラームは鳴らず暇を持て余す二人だったが、暇つぶしに翔太郎が過去のドーパント事件についての話であっという間に時間は過ぎていった。

 

後にノーヴェからの連絡までは。

 

 

―――――――――――

 

 

救助隊の呼び出し帰りでご機嫌に街を歩くノーヴェ。

 

「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします」

 

「!」

 

いきなり呼ばれたノーヴェは声の元を見る。

そこには仮面をつけた銀髪の女性が電灯の上からノ-ヴェを見下ろしていた。

 

「貴方にいくつか伺いたい事と・・・、確かめさせて頂きたい事が・・・」

 

 

―――――――――――

 

 

局のオフィス

 

向かい合って昔話を話し終えた翔太郎。

 

「すごぉい。翔太郎さん、そんなに事件を解決してきたんですねぇ」

 

拍手するスバル。二人きりしかいないため当然と言えば当然である。

翔太郎については過去であっても、他から見ればまるでドラマや小説の話である。

 

「でもなぁ。これらは俺一人じゃ解決出来なかった。亜樹子や照井、風都の皆、・・・それに・・・相棒がいたからやれてきたことなんだ」

 

「・・・翔太郎さん」

 

「それにおやっさんは教えてくれた。Nobody's Perfect・・・、誰も完璧じゃないって。それでもそれを隠して戦う。それがハードボイルドだってな」

 

「相棒・・・、フィリップって言う人と別れちゃって辛いですか?」

 

「・・・例え離ればなれでも俺とあいつは永遠に相棒だ。少なくとも俺はそう思ってる」

 

「・・・・きっとフィリップさんも相棒って思ってますよ」

 

「ありがとなスバル」

 

「・・・・・でも」

 

「あ?」

 

スバルは椅子ごと翔太郎の隣に移動する。

 

「・・・・今でも一人じゃないですよ。私達がいますから・・・」

 

「・・・・・そうだな」

 

肩に頭をつけるスバル。

翔太郎はほくそ笑みながらスバルの頭をなでる。

 

「俺は・・・・一人じゃねぇな。今は・・・少なくとも今がお前が隣にいてくれてる。ありがとなスバル・・・」

 

「・・・・・はい」

 

スバルも身体を完全に翔太郎に任せようとしたときだった。

 

「「うおっ(きゃあ)!」」

 

突如スバルのデバイス、待機状態のマッハキャリバーが鳴り出す。

 

「な、何だ?」

 

「ノーヴェからみたいですね」

 

スバルは通信に出る。

モニターが現れ、そこにはノーヴェが映っていた。

 

「はい、スバルです。ノーヴェ、どうかした?」

 

「よう、ノーヴェ」

 

翔太郎もモニターに顔を出す。

 

《よう、翔太郎。もしかしてスバルといいところだったか?》

 

「う、うっせぇ!」

 

「え〜と、それで何、ノーヴェ?」

 

《ああ、悪ィ、スバル。ちょっと頼まれてくれ。喧嘩で負けて動けね――》

 

「ええッ!?」

 

「はぁ!?」

 

スバルと翔太郎は唖然とする。

 

《相手は例の襲撃犯。きっちりダメージブチ込んだし、蹴りついでにセンサーもくっつけた。今ならすぐに補足できる》

 

「襲撃犯って・・・、覇王って言う女の子か?」

 

《ああ。頼めるか?》

 

「おう。スバルはここにいてくれ。一応夜勤だからな」

 

「は、はい」

 

翔太郎は局を出るとスタッグフォンを頼りにハードボイルダーで走っていった。

 

 

その後翔太郎は疑うものの気絶しているイングウ゛ァルト、もとい彼女であった女の子を見つけた。

また変身魔法について知った翔太郎はかなりのリアクションを現したとか。

 

 

―――――――――――

 

 

少女を背負いながら家に帰ってきた翔太郎。

玄関には靴はもうひと組・・・。

 

気にしながら翔太郎は上がる。

 

「ただいまぁ」

 

「お帰りなさい、翔太郎さん」

 

「おお、ティアナ。久々だなぁ」

 

迎えに来たのはティアナだった。

 

「翔太郎さんも元気そうで。それにドーパント事件も積極的に協力してくれて・・・。こっちも助かってます」

 

「ああ、いや、大したことじゃねぇぜ。元々は俺の専門だしな。それにこの街を泣かせるヤツは許せねぇだけさ」

 

一旦イングヴァルトだった少女を二階に寝かせると翔太郎はリビングのソファに倒れこみネクタイを外し投げ飛ばす。

 

「ところで翔太郎さん?」

 

「何だ?」

 

「仕事でパートナーになったとは聞きましたけど何で翔太郎さんが当然のようにスバルの家に帰ってきてるんです? しかもただいまって・・・」

 

「!」

 

ティアナの疑問に一瞬で硬直する翔太郎。

 

「な〜んだ、そんなことか〜。簡単だよ。翔太郎さんは私といっ・・・、むぐっ!」

 

苦し紛れの翔太郎は"一緒に住んでいる"と言いかけるスバルの口を電光石化の勢いで塞いだ。

 

その動きは先輩ライダーの〇クセルフォームにも匹敵した。

 

「いやいやいや、多分集まるんだったらスバルの家かな〜と思ってな・・・。ははははは、ドンピシャだったろ? 伊達に探偵はしてなかったってことだ。ははははは。それに"ただいま"ってのはあれだ・・・。何だか家に上がると癖でな・・・」

 

「?」

 

(・・・・・やべぇ〜〜)

 

あくまで真顔の翔太郎だが、心の中では尋常でない発汗。

 

そんなことも知らず、うさんくさそうにティアナは翔太郎を見つめる。

 

「そ、そうですか」

 

(っぶねぇ〜〜〜)

 

翔太郎は心の中で安堵の表情を浮かべる。

 

 

~~~~数分後~~~~

 

 

「よう、翔太郎」

 

「おう、ノーヴェ。やりあったんだって? 大丈夫だったのか?」

 

少女が寝ている部屋の入り口に寄りかかる翔太郎のそばに先ほどやってきたノ-ヴェが歩み寄る。

 

「まぁな。私もそれなりにストライクアーツやってるからな。受け身はとれる。大したことねぇよ」

 

「そっか。ならいいんだ」

 

するとノーヴェが寝ている少女の隣に入る。

 

「ノーヴェ?」

 

「気にしないでくれ。起きたときちょっと脅かしてやろうかと思ってな」

 

「意地がわりぃなぁ。そこんとこ素直な姉貴達を見習ったらどうだ?」

 

「う、うるせぇ!」

 

「でっけぇ声出すなよ。その子起きちまうぞ」

 

「わ、やべっ」

 

「ったく。じゃあおれは下にいっからな」

 

「ああ。運んでくれてサンキューな」

 

翔太郎は帽子を直すように返事を返し一階に降りて行った。

 

 

―――――――――――

 

 

「しっかし、変身魔法って・・・。やっぱ魔法ってのはなんでもありだよなぁ」

 

「ま、まぁ・・・」

 

スバルはキッチンで料理を作っているリビングで翔太郎はティアナと会話をする。

 

「そういえば翔太郎さん・・」

 

「ん?」

 

「スバルの秘書って大変じゃありません?」

 

「ちょ、ちょっとティア〜〜」

 

「そうだった。ティアナに聞こうと思ってたんだが、何でこいつこんなに書類仕事が出来ねぇんだ? 何とか士長なんて偉そうな立場なのによぉ」

 

「そ、それはぁ・・・」

 

翔太郎の問いにスバルはバツが悪そうに視線を空に向ける。

 

「お恥ずかしながら・・・、スバルは昔から机に向いてのことが苦手なんです。私も甘やかし過ぎました。以前仕事が一緒だったときもかなり私が代わりにやりましたから。まぁ、人間だれしも得手不得手はありますからね」

 

「まぁな・・・。しかし甘やかしすぎはだめじゃねぇのか? お陰様で今俺がきついぜ」

 

「す、すいません・・・」

 

「うう・・・、耳が痛い~~」

 

ティアナは情けなさそうにするのに対し、スバルはちょっぴり涙目で手を動かす。

 

「そういえば翔太郎さんとスバルってどんな関係なんですか? かなり親密な気がしますけど?」

 

するとティアナは翔太郎がもっとも触れて欲しくない部分に話題を移す。

 

「そ、それはなぁ・・・」

 

完全に形勢逆転である。

 

(やべぇ。どうすっかなぁ。多分こいつはスバルと違って頭がキレそうだからな。スバルを騙せることでも簡単にばれそうだ)

 

「くしゅん! そういえばティアには言ってなかったっけ? 私達、一つ屋根の下で暮らしてるんだよ♪」

 

このくしゃみの後のスバルの爆弾発言。

そして約二名が硬直中。

 

「「・・・・・」」

 

ティアナは単純にフリーズ中。

 

翔太郎は右の顔面を押さえながら"やっちまった"感全開である。

 

「・・・・・はい?」

 

「・・・・・ああああああああ・・・」

 

聞き返すティアナと呆然とする翔太郎。

 

「だ・か・ら・翔太郎さんとは同居していて・・・。大事なことなので二回言いました♪」

 

「おんまええええええええええええええええええええええええ!」

 

再び爆弾を投下したスバルに翔太郎が爆発した。

 

「はあああああああああ!?」

 

「スバルぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

ティアナと翔太郎の声が響く。

少女が起きなかったのは奇跡ではある。

 

「事実ですか?」

 

「あ、ああ。認めたくないが、ホントだ」

 

(なにかしら・・・。この色々と先を越された感は・・・)

 

ティアナは妙な敗北感。

 

「翔太郎さんは・・・」

 

「あ?」

 

「スバルのことどう思っているんです?」

 

この話題になるとスバルもばれないように耳を傾ける。

 

「スバルについてはな、短刀直入に言えば・・・」

 

「・・・・・」

 

「手のかかる妹みてぇなもんだな」

 

かるくずっこけるスバルにティアナは心の片隅で若干安堵したのは内緒。

 

「まぁ妹は妹でかわいいもんだぜ?」

 

直後スバルは弾丸のように飛びかかり押し倒す。

 

「お、おい。スバル!」

 

「あ~~~ん! ぐやじい~~~~! い、今に見ててくださいよ! そんな発言撤回させて見せるんですから~~~~!」

 

「ズ、ズバル離せ~~~~~!」

 

スバルに肩を掴まれひたすらゆすられる翔太郎。

 

「スバル・・・あんた強引ね・・・。改めて思うわ」

 

そんな二人を漫才でも見るかのように顎に手を当てて眺めるティアナ。

 

 

ここまで大騒動を起こしながらもまだ少女は起きない。

 

 

〜〜〜〜数時間後〜〜〜〜

 

 

スバル宅、二階の寝室。

 

「! !?」

 

起き上がる銀髪の少女は見慣れない部屋にいることに驚きおもいきり毛布を上げる。

 

「よう。やっと起きたか」

 

隣に寝ていたノーヴェがまるで待っていたかのようにいたずらに笑う。

 

「・・・あの、ここは・・・・?」

 

少女は状況を理解しようと尋ねかけた時ドアがノックされる。

 

「はい」

 

「おはよう。ノーヴェ」

 

「よう。ドッキリはうまくいったか?」

 

ドアからはティアナと翔太郎が現れる。

 

「まぁまぁだったな」

 

ノーヴェはいたずらに笑う。

 

「それから自称イングヴァルト。本名アインハルト・ストラトス。Stヒルデ魔法学院中等科1年生。ごめんね。コインロッカーの荷物出させてもらったの。ちゃんと持ってきてあるから」

 

「制服と学生証持ち歩いてっとはずいぶんとぼけた喧嘩屋だな」

 

「またすっげぇとぼけ方だな・・・」

 

翔太郎が笑う。

 

「学校帰りだったんです。それにあんな所で倒れるなんて・・・」

 

アインハルトが若干睨む。

 

「おはよ―。おまたせ♪ あさごはんで―す。」

 

エプロン姿のスバルが手に朝食を持って入ってきた。

 

「おお ベーコンエッグ!」

 

「あと野菜スープね。あ・・・はじめましてだね、アインハルト。スバル・ナカジマです。事情とか色々あると思うんだけど、まずは朝ごはんでも食べながら。お話聞かせてくれたら嬉しいな」

 

 

―――――――――――

 

 

スバル野用意した朝食をリビングで食べ始める五人はリビングで朝食を取り始める。

 

「んじゃ、一応説明しとくぞ。ここはこいつ・・・、あたしの姉貴スバルの家。でその姉貴の親友で本局執務官」

 

「ティアナ・ランスターです。」

 

ノ-ヴェから紹介されたティアナ。そのままノ-ヴェの紹介は続く。

 

「それと姉貴の秘書謙同居人をしてる・・・」

 

「左翔太郎だ。つっても君と会うのは二度目だな、覇王さん」

 

翔太郎はアインハルトに指鉄砲を向ける。

 

「貴方はまさか・・・・仮面ライダー・・・さん?」

 

「おう。よろしくな。」

 

アインハルトは小さくお礼をする。

 

「お前を保護したのはこの三人。感謝しろよな」

 

「でもダメだよ、ノーヴェ。いくら同意の上だからってこんなちっちゃい子にひどい事しちゃ」

 

「大人気ねぇぞ、ノーヴェ。大人なら加減を覚えろよ」

 

付けたしたノーヴェにスバルと翔太郎が注意を促す。

 

「うっせぇ! こっちだって思いっきりやられて、まだ全身痛てぇんだぞ」

 

ノーヴェは少し反発。

するとティアナがアインハルトに聞く。

 

「格闘家相手の連続襲撃犯があなたっていうのは本当・・・?」

 

「・・・はい」

 

アインハルトは小さく返事をする。

 

「・・・何か理由がありそうだな」

 

翔太郎がつぶやく。

 

「大昔のベルカの戦争がこいつの中ではまだ終わってねぇんだよ」

 

「?」

 

ノーヴェの言葉に翔太郎は頭を傾げる。

 

 

それもそのはずである。翔太郎はまだこの世界を理解しきっているわけではないからだ。

無論歴史も。

 

そして過去の事件やスバル達が普通の人間でないことも。

 

 

(俺はまたこの世界についてなんも知らねぇな。今後図書館にでも行くか・・・)

 

翔太郎は自分の無知を悔いる。

引き続きノーヴェの話は続く。

 

「んで自分の強さを知りたくて・・・。あとはなんだ、聖王と冥王をブッ飛ばしたいんだったか?」

 

スバルはフォークを進ませながら、ティアナと翔太郎は呆然と聞く。

するとアインハルトが閉じていた口を開く。

 

「最後のは・・・少し違います。古きベルカのどの王よりも覇王のこの身が強くなること。・・・・それを証明出来ればいいだけで」

 

「聖王家や冥王家に恨みがあるわけではない?」

 

「はい」

 

ティアナの質問にアインハルトは即答する。

 

「そう。ならよかった」

 

スバルは微笑む。

アインハルトは唖然とするが、翔太郎もそんなスバルにつられ笑顔になる。

 

「スバルはね、そのふたりと仲良しだから」

 

「そうなの」

 

スバルはニコッと笑う。

 

「ああ、冷めちゃうから良かったら食べて」

 

「・・・・・はい」

 

翔太郎にはアインハルトの肩の荷が少し降りた気がした。

 

「あとで近くの署に一緒に行きましょ。被害届は出てないって話だし、もう路上で喧嘩とかはしないって約束してくれたらすぐに帰れるはずだから」

 

「あの・・・ティアナ。今回の事については先に手ェ出したのあたしなんだ」

 

「あら」

 

「だからあたしも一緒に行く。喧嘩両成敗ってやつにしてもらう」

 

ティアナに告白するノーヴェ。

 

「ノーヴェ。よくわからねぇが・・・、意外と素直でいいやつだな」

 

翔太郎はノーヴェに笑いかける。

ノーヴェはなんだか照れ臭そうである。

 

「う、うっせ。お前もそれでいいな」

 

「はい。・・・・・・ありがとうございます」

 

アインハルトはフォークを進め始める。

 

 

その後は五人は近くの湾岸第六警防署に向かうこととなった。

 

 

―――――――――――

 

 

署内。

 

ノーヴェとアインハルトは受付、他の三人はちょっと離れた椅子に座っていた。

すると翔太郎が立ち上がる。

 

「悪りぃが俺はこっから別行動させてもらうぜ」

 

「「えっ?」」

 

「なんで? 翔太郎さん?」

 

スバルが尋ねる。

 

「俺はこの世界について全くと言って良いほどなんも知らねぇ。知っとかねぇと何だかかやの外になるからちょっと勉強にな。夕飯までには戻る」

 

翔太郎が駐輪場に向かって歩きかけたとき。

 

「え〜〜〜、翔太郎さんもいようよ〜〜〜」

 

「こら、スバル。翔太郎さんだって一人の時間は必要よ。行かせてあげなさいよ」

「む〜〜〜、わかりました。じゃあ夕飯には帰ってきてくださいね」

 

スバルが逃がすまいと翔太郎の手を掴んで拒むが、ティアナの一言でやむなく手を緩める。

 

「おう」

 

「後・・・」

 

「?」

 

「・・・浮気しないでくださいよ」

 

肩がガクッと下がり呆れる翔太郎。

 

「・・・お前なぁ、同居人として心配してくれるのはうれしいけど俺だって子供じゃねぇんだから変な女には引っかからねぇよ」

 

「えっ? いや・・・そういうんじゃなくて・・・・もういいです」

 

「なんだよ・・・、バツの悪そうな顔しやがって」

 

 

「何でもないです・・・。はいはい、行ってらっしゃい」

 

頬をほんのり赤らめながら不機嫌そうなスバルに見送られながら翔太郎はボイルダーで走り去っていった。

 

「・・・あんた、早いとこ告白しちゃえばいいじゃない」

 

ティアナがジト目で言う。

 

「あははは・・・・。言えるもんならとっくにいってるんだけどねぇ~~~~」

 

ティアナにスバルは困り顔で返すしかなかった。

 

 

―――――――――――

 

 

「そういえばあの方・・・」

 

「あの方?」

 

一方署内のベンチでアインハルトはノ-ヴェに喋りだす。

 

「あの左って方・・・、何者なんですか?」

 

「ああ、翔太郎のことか」

 

「はい」

 

「あいつは自分自身が言う通り、仮面ライダー・・・っなんだと。ちょっとしたことでミッドに来てな。あいつは自分が生まれ育った街を愛して守り抜こうとしたらしいぜ。今じゃあ来たにも関わらず、この街のために頑張ってる。正直最初聞いたときは、何だこいつと思ったけどな。でもアイツはなんかな・・・。どこか暗い過去を背負って頑張ってる。そこら辺はちょっとは尊敬してっかな。近いうち、あたしの義兄になるだろうしな」

 

「・・・守る・・・強さ」

 

「ああ。街を守るために戦う。それが以前の街に街の人々から名付けられた仮面ライダーの名前の意味なんだってさ」

「・・・かっこいいですね」

 

「面通してあいつに言うんじゃねぇぞ。どうせ図に乗るのが目に見えてんだから。案外あいつ単純だからな」

 

笑うノ−ヴェにアインハルトは小さく頷いた。

 

 

その後アインハルトとノーヴェの用は済み、アインハルトを学校に送った後、ノーヴェ達三人はヴィヴィオとの待ち時間まで暇を潰すこととなった。

 

こうしている間にも翔太郎は図書館においてミッドチルダの暗黒の歴史を知ることになる。

 



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