ユウキが行くSAO (雪零)
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プロローグ

観覧ありがとうございます。
アニメのユウキは可愛かった。テンション上がった。
結果書いてしまった…そんな作品ですが、お付き合いください。


 

 

sideキリト

 

 

 

「リンクスタート!」

 

俺は製品版ソードアート・オンラインにログインする為に、そのコマンドを口にした。

そして…

 

 

 

 

「帰ってきた…この世界に!」

 

俺ことキリトは、このゲーム『ソードアート・オンライン』通称SAOの正式サービス開始初日にこのゲームにログインした。

すぐ傍のガラスを見る。長身でイケメンの姿が写っている。βテスト時から愛用しているキリトのアバターだ。

割と早い時間にログインしたつもりだったのだが、思ったよりもプレイヤーがいる。

俺は逸る気持ちを抑え、とりあえず片手剣でも買いに行こうか、と思い駆け出した矢先に、

 

「うわっ!」

「うおっ!スミマセン!」

 

誰かにぶつかってしまった。

転んでしまった様なので、起き上がれるように手を貸す。

 

「大丈夫ですか?」

「うん。ごめんねおにーさん。ちょっと注意が散漫になってたみたいで…」

「いや、俺の方こそごめんなさい。ログインしたばっかりではしゃいでしまって…」

 

ペコペコと謝り合う俺たち。そして何処からともなく2人で笑い合う。

 

「あはは。おにーさん謝りすぎだよ。あ、ごめんね。自己紹介がまだだったよね。ボクはユウキ。よろしくね、おにーさん。それと敬語はいらないよ?」

「そう…か。それじゃよろしくユウキ。俺の名前はキリト。キリトでいいぞ。よろしくな」

「うん!よろしく、キリト!…ってキリトってまさか…」

「……はっ!ってどうかしたのか?ユウキ」

 

満面の笑みで微笑むユウキに見とれてしまっていたら、なにやらユウキが考え事をしていた。

 

「う、ううん何でもないよ。それより!キリトはどこかに行こうとしてたんじゃないの?」

「あ、ああ。いや、武器を買って早速狩りに繰り出そうかと思って」

「それなら、ボクもついて行っていいかな?ほら、キリトβテスターでしょ?この世界のこととか教えてよ!」

「オーケー、わかった。ってあれ?俺βテスターだってユウキに言ったか?」

「そ、そそそれは!?あ、えーと、その…ほら!なんとなく慣れた感じの動きだったからだよ!」

「ん…そんなもんなのかな。んじゃ、早速行くとしようか」

 

こうして俺と、ユウキと名乗る美少女アバターの奇妙な臨時パーティが結成された。

 

 

 

 

 

 

sideユウキ

 

 

はぁ…なんとか誤魔化せてよかったぁ…

キリトが鋭いのか、ボクが抜けてるのか。うん。『後者だ』ってツッコミを皆にされるのは目に見えてるね。

実はボク、ユウキこと紺野木綿季(こんのゆうき)は、キリトの事をこのSAOにログインする前から知っていた。なんと、僕は転生したようなのだ。その時の経緯を語ると…

 

 

あの時、アスナたちとALOの中で遊んでいたら、キリトに街を見てみたいか?と聞かれたのだ。

ボクは迷わず頷いた。ボクにとって外の世界はとても遠いものだったからだ。。見れるわけが無いと思っていたのだが…

キリトに言われるまま、STL(ソウルトランスレーター)という機器を使いダイブした。仮想世界で街を見るということかな?と思っていると、そこには現実と何ら遜色ない街並みが広がっていた。

同じくダイブしてきたキリトにどういう訳かを聞くと、どうやらこのSTLというマシン、フラクトライトという人間の魂に直接仮想世界の光景を映し出している様なのだ。詳しい原理はわからなかったが、ここではリアルと全く変わりなく仮想世界を感じられるのだと言う。

ちなみに街並みはキリトとアスナがわざわざ撮影してきてくれたようだ。

キリトとアスナに抱きついてお礼を言う。死ぬ前に見たかった街の景色が見れてボクは感動していた。

そのまま長い間はしゃいじゃったけど、しばらくするとお別れの時間が近づいてくる。

最後、死ぬ前にアスナにOSS『マザーズ・ロザリオ』をたくしたくて、ボクは再度ALOに行こうとした。そのとき奇跡?が起こった。

なんとボクの意識だけが並行世界のボクに上書き?移行?憑依?されたようなのだ。

あとから調べたことによると、どうやら量子コンピューターというものは並行世界に干渉する可能性があるらしいのだ…SFの世界では。どんな低確率な事象を引き当てたんだと思わなくもないけど、運が良かった(?)と納得しておこう。

 

並行世界のボクは当時3歳。集められる情報はごく僅かだったが、自分や家族がHIVキャリアではなくなっていることが判明。健康に過ごせるということで、嬉しすぎて号泣してしまった。お姉ちゃんを心配させてしまった。反省。

ともあれボクはどうやらもう一度人生を歩めるらしい。こんなチャンスは無駄にできないとばかりにボクは遊んだり運動したりしてとにかく体を動かしていた。…あ、勉強もちゃんとやってたよ?

そんなこんなでボクももう12歳。普通ならこのまま小学校を卒業して、 平和な人生を送ることになるんだろうけど…

ボクはその時ひとつのことで悩んでいた。それは『ソードアート・オンラインをプレイするか否か』ということ。

入手に関しては問題ない。実はボク、β版SAO持ってるんだ。ログイン1回もしてないけどね。

ボクは迷っているのだ。SAOに囚われれば、現実世界より簡単にアスナ達に会える。だけど、それは同時にボクが死ぬ可能性も出てくることを指す。家族にも心配をかけるだろう。

ボクは散々悩んだ末に答えを出した。

 

 

 

 

 

SAOをプレイすると。

 

 

 

 

 

 




ユウキ「という訳で冒頭に戻るんだよね」
キリト「一体誰に向かって話してるんだ?」
ユウキ「このページを観覧してくれた皆様?」
キリト「一体何の話だ…?」
ユウキ「事情が飲み込めてないキリトは置いておいて、1話はこれで終了!次回!野武士づらのあの人が登場!こうご期待っ!」
キリト「だからなんの話なんだっ!?」


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クラインと行く

遅くなりました…ちょっとリアルでごたついていたので、本当なら昨日投稿できた筈なんですが…すみません。


 

 

sideキリト

 

 

 

「へぇ…ユウキも片手剣か。これなら俺と同じだから、だいぶ教えやすいな」

 

俺たちはあの後、武器を買うために武器屋に行った。

ユウキに好きな武器を選ばせたところ片手剣を選んだので、これなら教えやすい…なんて考えていたこの時の俺は浅はかだった。

その後、ユウキの要望もあって初心者には少しキツめの狩場に来ていた。「ちょっと強めのモンスターと戦いたい」なんて言うから、ゴブリン辺りと少し戦えばまだ早いのがわかるだろう。と思っていたのだが…

 

 

キュイーン

 

「はぁあああ!!」

 

ズバァァン

 

パリィィン

 

 

 

今の音は、ユウキが1撃で(・・・)ゴブリンを倒した時のソードスキルと、モンスターがポリゴン片になった効果音だ。

…そう。1撃でだ。ユウキはソードスキルのモーションに合わせて自分の体を動かしてスピードと威力をブーストし、かつクリティカルになるように弱点を狙った結果1撃で敵を倒す事に成功したのだ。

 

そんなことβテスターでも一部の人間しかできないと思っていたんだが…しかも今ユウキが見せたソードスキルの速度はかなりのものだった。

正直俺ですらかなうかどうか怪しい。そんな技術、どこで身につけたのだろうか…

 

「なぁ、ちょっt「おーい!そこの兄ちゃん!」…。まあ後でもいっか」

 

 

 

 

 

 

sideユウキ

 

 

流石にちょっとやり過ぎたかな…キリト思いっきり怪しんでるよ…。

まあ、それも仕方ないかな。ボクの要望で少しレベルが高めの狩場に連れてきてもらったけど、この世界の知識はともかく、ソードスキルならボクにはALOでの経験があるから、狩りはだいぶ楽に進んだ。

SAOのALO版アインクラッドとは違う部分に関するレクチャーをキリトにちょくちょくしてもらいつつモンスターを狩ること1時間とちょっと。ボクたちのレベルは5まで上がっていた。

 

「やっぱやり過ぎたよね…なんて説明すr「おーい!そこの兄ちゃん!」…。ま、後でもいっか!」

 

面倒なので後回しにする事にした。キリトを呼び止めてくれた誰かさんに感謝。

 

「おう、お連れの嬢ちゃんにも頼みてぇ事があるんだけどよ?その実力、あんたらβテスト経験者だろ?」

「ボクは違うよ?キリトはβテスターだけどね?」

「うっそマジかよ!ニュービーでもうこんなに強い奴がいんのか。まあそれならそれでも構わねぇんだけどよ。ああ、俺はクライン。よろしくな」

「ボクはユウキ。よろしくね、クライン!…って、クラインってまさか……あれ、この感じなんかデジャビュ…」

「俺はキリトだ。よろしくな。それでクライン、俺達に頼みってのは?」

「あ、ああそうだった。いや、俺実はフルダイブはSAOが初でよ。良ければ戦闘のコツなんかをちょこーっとレクチャーしてくんねーかなと思ってよ?」

 

そういえば、ALO時代にキリトが言ってた気がする。クラインが雑魚モンスター相手に苦戦していた時レクチャーしてあげたって。

 

「まあ、別に構わないけど。それにしても、そんなんでよくここまで来れたな。この辺は割とレベルが高めのモンスターが多い筈なんだが」

「あ、そうなのか?道理で苦労すると思ったぜ…。ログインしてからどこに行けばいいのかもわからずさまようこと30分。たまたま襲ってきたモンスターに追いかけ回されてるうちにそれ以上の時間が費やされて、気づいたらここにいるんだからよぉ…」

「あ、あははは。それは災難だったね…」

 

若干苦笑いのボク。

多分、ボクがキリトを連れ出さなければクラインがそんな目に合うことはなかった筈。始まりの街でキリトを見つけて、ボクが聞いた話のとおりにレクチャーを受けたんだろう。そう考えるとなんだか悪いことをしてしまったみたい。戦闘のコツを教えるくらいのことは無償でしてあげて当然かもしれない。

 

「じゃあ、クラインのレクチャーしながら狩りを続けようか。ユウキも、それでいいよな?」

「うん。ボクは問題ないよ。ただ、いきなりここでレクチャーしても大丈夫かな?」

 

ボク達がいるのは森の中で、上級者向けのレベル設定だ。クラインにレクチャーするにはちょっとキツイんじゃないかな?

 

「確かに、ドラ〇エでもスラ〇ム狩りを怠ったやつから死んでいくからなぁ…」

「俺らがパ〇ス役するから、なんとかなるって」

「じゃあ、ボクはビア〇カかな?」

「…いや、それは強過ぎるだろビ〇ンカ…」

「んじゃ、護衛もいる事だし早速戦闘開始と行こうじゃねーの!」

「おう!」「おー!」

 

そんな感じでボクたちの狩り兼レクチャーほ進んでいった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ!とぉりゃぁ!」

「「おおー」」

 

そろそろ日が傾いて来たかなーという頃。ちょっと休憩しよう?と提案すると、クラインが

 

「見てやがれキリト、ユウキ!」

 

なんて言い出すから何事かな?と思ったら、クラインもモンスターをソードスキルの1撃だけで倒していた。

レベルが上がっているとはいえ、クラインの上達ぶりには目を見張るものがあるよね。

 

「凄いな、クライン。もう並のβテスターじゃかなわないんじゃないか?」

「お、そうか?いや、そう言われると照れるぜ」

「まあ、それが確実にできたらね?」

「うぐっ!い、いやそう言われると…」

 

実はクライン、さっき成功させるまでに2回ほど失敗している。本人曰く、成功率は5分の1とのこと。

 

「まあ、弱点を狙うのは難しいからねー」

「ソードスキルのブーストの方は反復練習あるのみだな。ソードスキルの素振り1000本くらいやれば少しくらいマシになるんじゃないか?」

「こ、今度考えとくぜ。今度。そ、それより!休憩すんだろ!?」

「あ、逃げた」

「逃げたな」

「とりあえず、クラインの言うとおり休憩しよー」

「ああ…流石に3時間ぶっ続けでの戦闘はキツイもんがあるな…」

「お前ら俺が悪戦苦闘してる間も蜂だのゴブリンだの狩り続けてたもんなぁ。レベルもかなり上がったんじゃねぇか?」

「ボクは今8だね。キリトは?」

「俺も8だな」

「はっえーなぁ…俺なんてまだ4だぜ…」

「最初は苦戦してたしねー」

「ま、とにかく街の周りまで戻ろうか」

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで街の周りの草原まで戻ってきたボクたち。綺麗な夕焼けが見えるので、そろそろいい時間のようだ。

近くでクラインがソードスキルの素振りをしているとキリトが語りかけた。

 

「ハマるだろ?」

「ああ。最高だぜ」

「だよな」

「そういや、スキルって武器作ったりとかいろいろあんだろ?」

「そうみたいだねー。鍛冶だけじゃなくて、料理に釣り、裁縫なんてモノもあるみたいだよ?」

「その代わり、魔法は無いけどな」

「RPGで魔法無しなんざ、大胆な設定だぜ」

「自分で体を動かして戦った方が楽しいだろ?」

「だよね!ボクもそう思う!」

 

ALOでは魔法はあったけど、あまり使わなかったからね。もしALOで魔法主体で戦っていたら、ボクはこの世界(SAO)に来ようとは思わなかったかもしれない。そんなことを考えていたら、キリトが剣を抜き放ちつつ言った。

 

「この世界は、コイツ一本でどこまでも上って行けるんだ」

 

ボクも自分の剣を腰から抜き放つ。

 

「仮想空間なのにさ。現実世界よりも、『生きてる』って感じがするんだ…」

「…そうだね。ボクもそんな気がする」

 

気がすると言うより、前の世界では仮想世界がボクの全てだったと言っても過言じゃなかったくらいだ。今でこそそんなことないけれど、当時は仮想世界じゃないと何も出来なかったからね。

なんてしんみりしていたのだが。

 

 

ぐうぅぅ〜

 

「あっはは、わり、腹減っちまってよ?」

「こっちの飯は空腹感が紛れるだけだからな」

「5時半に熱々のピザを注文済みよ!」

「用意周到だね。クライン」

「ま、食ったらすぐログインするけどな。そうだ、この後他のゲームで知り合った奴等と会う約束してんだ。どうだ?そいつらともフレンド登録しねぇか?」

「い、いや、俺は…」

 

キリトはいきなりの誘いに戸惑っている。前にキリトは自分の事をコミュ障だ、なんて言ってて、その時のボクは、そんなことない!と思っていたけど…こういうところを見るとSAOでだいぶ改善されたんだなぁ…って思う。

 

「いや、無理にとは言わねぇよ。都合ってもんがあるしな。それに、いつか紹介する機会もあんだろ」

 

クライン…こんなにいい人だったんだね…ALOでたくさん蹴っ飛ばしてゴメンよ…

 

「ユウキはどうする?」

「んー、ボクもまた今度、かな?」

「そうか。わかった」

「悪いな、ありがとう」

「おいおい、そりゃこっちの台詞だぜ。いろいろ教えてくれてありがとな。このお礼は必ずするぜ?精神的にな」

「期待しないで待ってるよ」

「楽しみにしてるね!」

 

そう言いながら、ボクとキリトはそれぞれクラインと握手をする。

 

「マジ、サンキューな。これからもよろしく頼むぜ」

「うん!戦闘に関してわからないことがあったらいつでもメッセージ飛ばしてよ?」

「情報に関しては俺に聞いてくれ。βテスターだからな。美味い狩場とかクエストとか、教えるぜ」

「ああ。ガンガン頼らせてもらうぜ!…っと、さて。そろそろピザを食いに行くとするか。…ああ、腹へったぁ…」

「ハハハ。またなクライン」

 

そうボヤくクライン。だけどクラインの希望は叶わない筈だ。おそらく…

 

「あ、あれ?ログアウトボタンが無ぇ…」

「よく見てみろよ。メニューの一番下にあるだろ?」

「それがねぇんだよ。ほんとに」

「そんな筈………ホントだ」

 

やっぱり。ボクも一応確認してみるが、やっぱりログアウトのボタンは消失していた。

無駄になると分かっていてもボクは提案してみる。

 

「GMコールは試した?」

「いや、さっきから試してんだけどよ?反応ねぇんだよ」

「…おかしいな」

「バグかなんかか?今頃運営は半泣きだろうな」

「いや…これはおかしい。ログアウトボタンが消えるなんて、今後のゲームの信用に関わる。こんなの、一度サーバーの電源を落として強制ログアウトさせればいいのに、アナウンスすら無いなんて…」

「確かにそうだな。でもよ。他にログアウトする方法はねぇのか?」

 

ボクとキリトは口をそろえて言う。

 

「「無い」」

 

「メニューの操作以外のログアウト方法は、存在しないんだ」

「マニュアルにも、緊急切断方法は乗ってなかった」

「じ、じゃあよ?頭からナーヴギアを外しちまえばいいんじゃねえのか?」

 

クラインがナーヴギアを頭から外そうともがいているが、それも無駄だ。むしろ今ナーヴギアを外してしまうと、ボクたちの命は無いだろう。

 

「無理だよクライン。脳から体に伝わる信号は、全てナーヴギアがココでカットしている」

「そんなぁ…他に方法はねぇのかよ…」

「現実世界の俺達から誰かがナーヴギアを取り外してくれれば、脱出は可能だが…」

「俺一人暮らしだぜ」

「俺は親と妹がいる。夕飯の時間になれば呼びに来るとは思う「キリト妹さんがいるのか!いくつ?」や、あいつ体育会系だし、ゲーム嫌いだし、俺達みたいな人種と接点無いって…」

 

妹って事はリーファかな?懐かしいなぁ…リーファに会いに行くためにも、頑張って生き残らないとね。

それにしても、キリトの妹には反応するのに、ボクには何もコメントはないのかな…女としてちょっと負けた気分。

 

「ボクも親とお姉ちゃんがいるけど、外されることは無いかなぁ」

 

ここに来る前に、外さないでね?って言っちゃったし。って言うか、外されたら死んじゃうし…

 

その時、この世界全体に響くような、大きな鐘の音が鳴り響いた。

 

 

 

リンゴーン…リンゴーン…

 

 

 

「うわっ!?」

「キリト!?ってうわっ!?ボクも!?」

「なんだこれ!?」

 

鐘が鳴ると同時に青い転移光に包まれたボクたち。目を開けると、そこにははじまりの街の風景が広がっていた。

 

「っつ…ここは…?」

「はじまりの街…みてぇだな」

「みんなここに転移させられてるみたいだね」

「なんだ?ようやくアナウンスでもあんのか?」

「いや、それは違うと思う…」

 

ボクの予想が正しければ、多分…

 

 

「あ!おい!あれを見ろ!」

 

 

遠くで誰かの声が上がる。

ボクたち3人も、その声に従って上を見上げると、そこにはWARNING!の文字と赤色…血のような赤で埋め尽くされた空と、そこから現れた巨大なローブ姿のアバターが鎮座していた。

そのアバターは広場のボクたちを…恐らく1万人いるであろうプレイヤーを睥睨すると、そう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。私の名前は茅場晶彦、今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ。」

 

 

 

 




キリトとクラインの会話は、なるべく原作orアニメを思い出しながら書いたのですが、思ったより自分の記憶って当てにならない…


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次の村へ行く

3話も無事投稿できました!
読んでいただけると嬉しいです!


 

 

sideユウキ

 

 

 

茅場晶彦を名乗るアバターが語ったのは、おおよそボクが知っている通りの、キリトたちにとっては驚愕の、ソードアート・オンライン本来の仕様。

ナーヴギアを外したら死ぬ。

HPが0になっても死ぬ。

脱出方法は第100層の突破のみ。

…事前に知っていたボクでさえショックは大きい。今聞かされた他のプレイヤーの心境は推して知るべしだろう。

ローブ姿のアバターは更にこう告げた。

 

「最後に、私から囁かなプレゼントを用意した。諸君らのアイテムストレージに入っている。使ってみたまえ」

 

ボクたち3人も言われた通りアイテム欄を見る。

そこにあったのは…

 

「「「手鏡?」」」

 

使ってみると、全身が青い光に包まれる。

 

「ええっ!?またっ!?」

「転移!?いや、違う!」

「うおぁ!?なんじゃこりゃ!?」

 

目を開けると、そこには…

 

 

 

 

 

 

sideキリト

 

 

「っつ…なんだったんだ今のは…おい!大丈夫か!…って、お前、誰…?」

 

そこには、俺の知らない野武士づらした男が立っていた。

 

「おめぇこそ誰だよ…?」

 

そう言われて俺は持っていた手鏡を見る。

って現実の顔になってる!?さっきの光はこれか!

 

「えっと…キリトにクライン…で、いいのかな?」

 

なっ!って事はさっきの野武士づらの男は…

 

「お前クライン!?」「お前キリトかよ!?」

 

言ったあとに気づく。今の声は誰だと。目の前にいるのがクラインという事は、必然的にもう一人は…

 

「「お前がユウ…キ…っ!?」」

 

その時、俺とクラインの体に電流が走った。

 

 

 

「「美少女アバターの中身が…美少女…だと…!?」」

 

 

 

 

俺たちの思考はこの時完全に一致していただろう。

即ち「美少女アバターなのにネカマじゃなかったのか!?」的な事である。

偏見なのは分かっていても、あれ程の美少女アバター。中身が女の子で、ましてやリアルの容姿とさほど変わりないなどと誰が予想できるだろうか。

 

「…ちょっと二人とも?後で話があるんだけど?」

「「すみませんでしたっ!!!」」

 

…笑顔でそう言うユウキは物凄く怖かった。

 

 

 

 

sideユウキ

 

 

「以上で、製品版ソードアート・オンラインのチュートリアルを終了する。諸君らの健闘を祈る…」

 

最後にそう告げてローブ姿のアバターは消えていった。

それと同時に広場の封鎖も解かれる。…辺りには絶望に泣き叫ぶ人達が大勢いる。

こんな…こんな所から始まったんだ。このゲームは。

 

すると、突然キリトがボクとクラインの手を引く。

 

「ちょっと来い、ユウキ、クライン」

 

そのまま近くの路地まで連れていかれると、キリトから提案が出た。

 

「俺はこのまま次の村へ行く。お前らも一緒に来い」

「どういうこと?キリト」

「アイツの言っていたことが本当なら、このはじまりの街周辺のリソースは全て狩りつくされる。その前に次の村を拠点にしておけば、安定して金や経験値を稼ぐことができる。俺はβテスターだから、安全な道も危険なポイントも全て把握してるし、レベル1でも安全にたどり着ける筈だ。まして俺たちは、昼間の狩りでレベルが上がってるしな」

 

確かにいい案だと思う。ボクはそれで構わないけど…

 

「で、でもよ。広場の中に、俺の知り合いがいる筈なんだ。そいつらを置いてはいけねぇ」

 

…レベルが高いボクはともかく、クラインはSAO初心者。ここに更にLv.1のニュービーが加わるとなると…3人、いや2人増やすのが限界かも…。

ボクとキリトがそう考えていたのを察した様で、クラインが言う。

 

「これ以上、お前らの世話になる訳にもいかねぇな。俺の事はいいから、先に進んでくれ」

「なっ…でも…」

「お前らに教わったテクで、なんとかしてやんよ!」

 

教わった…?あ!

 

「そうだ!」

「どうした?ユウキ」

 

いきなり声をあげたボクを不思議そうに見つめてくるキリトたち。

 

「キリトは、クラインを置いていかなきゃいけないのが嫌なんだよね?」

「あ、ああ。そんなとこだ」

「うん。それはボクも嫌だなーって思った。だから、クラインには頼み事をしようと思うんだ」

「「頼み事?」」

「そう。クラインにはボクたちが戦闘技術を教えこんだよね?だから、それをニュービーの皆にレクチャーしてあげて欲しいんだ」

「そ、そりゃ構わねぇけどよ?キリトやユウキがやった方がいいんじゃねぇのか?」

「キリトは人と関わるのが苦手みたいだし、ボクはそもそも教えるのが苦手だしね」

「…わかった。任されたぜ」

「それともう一つ。今からボクたちは次の村へ進む訳だけど、ボクたちはその時に情報を集める。もちろんβテスターのキリトがいる以上、β版との変更点なんかを特にね。その情報をメッセージで送って、クラインから皆に伝えておいて欲しい」

「?βテスターなら製品版との変更点くらい自分で探し出すんじゃねぇのか?それ以外の、クエストなんかの情報も他のβテスターが教えると思うんだが」

「…いや、恐らくそれはない。β版SAOに当選した1000人の中に、俺やクラインみたいな本格的なネットゲーマーはほとんどいなかった。大多数のβテスターが、情報と経験に慢心して無茶な狩りなんかに勤しむ可能性が高い。クエストの情報なんてもっての他だ。この危機的状況の中、自分のアドバンテージを捨ててまで情報を開示するプレイヤーなんて極わずか。…俺もさっきまで他のプレイヤーの事なんて全く考えていなかった」

「さっきはさっき、今は今、だよ?あんまり気にし過ぎない方がいいよ。それでクライン、事情はわかってくれた?」

「ああ。100層までのぼらなきゃならねぇってのに、初っ端から被害出してる場合じゃねぇしな」

 

その通りだ。こんなところで被害を出してる場合じゃない。

前の世界では、このゲームは75層でクリアされたが、今回もそうなるとは限らない。この世界は前の世界とは違うんだから。

だから被害は最小限にとどめなくちゃいけない。本当なら0が最善だけど…いつでも他のプレイヤーを気にしてられるわけでもない以上、それは不可能に近いからね。

 

「それじゃ、これで決まりね!いい、キリト?ボクたちはクラインを置いていくんじゃなくて、役割分担をするんだ。おっけー?」

「…ああ、オーケーだ。クライン…後は任せた」

「おう!これでも他のMMOじゃギルドで頭張ってたんだぜ。ニュービー相手のレクチャーとβテスターへの忠告くらい、楽にこなしてみせらァ」

「期待してるぜ」「お願いね?」

 

そう言ってボクたちは拳をぶつけ合う。

お互い必ず生き残る。そう信じて。

 

「それじゃあ、ボクたちはもう行くよ。クライン、またね!」

「いろいろ世話になった。これからもよろしく頼む」

「おう!前も言ったが、こっちもガンガン頼らせて貰うからな!覚悟しとけよ?」

 

その言葉に苦笑した後、ボクたちはクラインに背を向ける。するとクラインが、激励?を飛ばしてきた。

 

「キリト!ユウキ!…おめぇら、ホントは案外可愛い顔してんな。結構好みだぜ?」

 

あ、これ聞いたことある!ALOでキリトが話してた。

確か、こう返したって言ってたよね?

 

「「お前(クライン)のその野武士づらの方が、10倍似合ってるよ!!」」

 

声を揃えてボクたちは言う。顔を見合わせて苦笑。そして駆け出す。

もう未練はない。…とは言わないけど、どのみちボクたちは行かなきゃならない。クラインの為にも。

それがわかっているからか、キリトも振り向きはしない。ただ次の村へ全速力で走る。

 

「キリト」

「なんだ?」

「必ず生き残る。絶対に。これは約束だよ?」

「…ああ。その約束、絶対に守らせてもらうよ」

 

そうだ。ボクたちは必ず生き残る。そしてそれは、この世界のアスナ達を助けることにも繋がるはず。

 

だから生き残る。絶対に。その為にはまず…

 

「……(じーっ」

「な、なんだよ」

「なんでもなーい」

 

…このコミュ障気味の相棒(パートナー)をどうやって集団に溶け込ませるか、考えなくては…。

 

「なんか失礼なこと考えてないか?」

「い、いやいや。ソンナコトハナイヨ?」

「まあ、いっか」

 

流石にちょっと失礼だったかな…

なんてことを考えつつも、そんな感じでボクたちのSAOは、スタートを切ったのであった。

 

 




ユウキ「正座」
キリト「は?え?ちょ、まてって!今は次の村に急がないと!?」

ユウキ「あとがきに時間軸は関係ないの!いいから正座!」
キリト「は、はい…」

ユウキ「…キリト。しょーじきに答えて。キリトは最初からボクの事を女の子だと思ってなかった…って事でいいのかな?」
キリト「い、いやそんなことはないぞ。ちゃんと女の子だと「本当に?」はいすいません本当に最初はともかくアバターだって気づいた時から疑ってました」

ユウキ「はぁ…ボクってそんな魅力ないのかな…原作を読んで男だって勘違いする人もいるみたいだし…」
キリト「いや!ユウキに魅力が無いのはありえないって!ユウキみたいな美少女なかなかリアルじゃお目にかかれないし!…ってか原作ってなんのことだよ…」

ユウキ「そ、そうはっきり言われるのも照れるけど…」
キリト「(か、可愛い…顔を赤らめたユウキの破壊力はちょっと信じられないレベルだなこれ…)」

ユウキ「はっ!?誤魔化されるところだったよ!そうだよ罰だよ罰!ボクの事を疑ったキリトにはそれ相応の罰が必要だと思うんだけど?」
キリト「…あはは。お手柔らかに…」

ユウキ「んーそれじゃあ、次のクエスト、フォアードはキリトね?」
キリト「え!?ちょっと待て、フォアードは交t「何か文句でも?」いえ謹んでフォアードを務めさせていただきます」

ユウキ「うん。よろしい!という訳で次回はボクたち初クエスト!キリト御用達のあの剣が出てくるよ!」
キリト「だから一体なんのこと「誰が立っていいって?(ニコッ」ガクガクガクガク」

ユウキ「それでは、また次回!お楽しみにー!」
キリト「こ、怖いってユウキ。凄く怖いって」

ユウキ「ちょっと!〆に入ってる雰囲気察してよ!もう…。それじゃ、take2!それでは、また次回!お楽しみにー!」
キリト「お、お楽しみにー?(だから結局なんの事なんだ…)」


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初クエストに行く

戦闘描写が書けない…

いや、そんなものユウキへの愛で乗り切って見せる!

書き終えて真っ白な灰に←イマココ

…戦闘はグダグダかもしれませんが、大目に見ていただけると幸いです。


 

 

sideユウキ

 

とりあえず次の村のへ着いた。いま夜8時だけど。

一応キリトの話だと、ボクたちのレベルなら一直線に来ても問題なかったらしいんだけど、SAOがデスゲームと化した今慢心は死を招く。という事で安全なルートを通ってきた結果、夜までかかってしまったのだ。

 

「もう夜になっちゃったけど、これからどうする?」

「流石に今日はもう動く気にならないなぁ…昼間の狩りが地味にキツかった…」

 

ああ…確かにあれはちょっとハイペース過ぎたかも…

 

「それじゃ、宿屋でも探そっか」

「そうだな。明日はまた疲れるハメになるし…」

「…?何か予定でもあるの?」

「ああ。『森の秘薬』ってクエストをやろうと思ってな。クエストの報酬でいい片手剣が貰えるんだが…」

 

片手剣…へぇ…

 

「…物凄っごくニッコニコしてるな。まあ、剣って聞いたら俺もテンション上がるけど…。まあ話を戻すと、そのクエストは『リトルネペント』ってモンスターからドロップする胚珠が必要なんだが…それが『花付き』って呼ばれる特殊なモンスターからしかドロップしないんだ」

「そんなの、倒せばいいだけなんじゃ?」

「出現率が低いんだなこれが。それに、偶に『実付き』ってやつも出てくるんだ。ソイツの実を間違って攻撃しようものなら、もううじゃうじゃとリトルネペントが湧き出てくる。…まあ、今の俺達なら問題なく倒せるレベルだけどな」

「なるほどねー。だから今からすぐクエスト受けに行かなかったんだね」

 

ボクはキリトなら「今日のうちに出来ることはやっておく」とか言い出すかなーなんて思ったりしてたんだけど。

 

「いつもの俺なら、デスゲームに放り込まれたのに焦って無茶をしてたって事も、あったかもな。クラインを…いや、ニュービーのプレイヤー達を置いてきた罪悪感を紛らわす為にレベリングに勤しんだりしたかもしれない」

「今は違うの?」

「ユウキのおかげでな。ユウキが一緒にいてくれたから、だいぶ心に余裕ができた。少なくとも、こんな状況でも冷静な判断ができる程度にはな」

「えへへ…それはどうも」

 

そう言われると照れるねー。アスナもキリトのこういうとこにやられちゃったのかな?もう少し詳しく聞いとけばよかったなー。

ともあれボク達は、デスゲーム開始初日を無事終えることが出来たのであった。

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

「キリトー!朝だよー!!起きてー!!!」

「うおっ!?なんだ!?敵襲か!?」

「敵襲って…普段からそんな殺伐とした日常を過ごしてるの?キリト」

 

起こされる度に敵襲を警戒する日常…うん。嫌だそんなの。

 

「あ、あはは。こんな状況になったからな。夕べは緊張してなかなか寝付けなかったんだよ。」

「フィールドならまだしも、ここは圏内で、しかも宿屋だよ?流石に敵襲は無いって」

「(そっちじゃない!宿代節約の為とはいえ、美少女と同室で眠るという行為に緊張しない男がいるだろうか。いや、いない!)…ま、まあそれはともかく、おはようユウキ。いい朝だな」

 

聞こえてるけど、美少女って言葉に免じて許してあげなくもないかな?

 

「ん。おはよ。じゃあ早速行こうよ!」

「!?今、朝の4時半…で、合ってるよな…。気が早すぎないか…?」

「いやーこのゲーム初クエストな訳だし、報酬が片手剣って聞いたらどうもねー」

 

遠足前の小学生みたいかもしれないが、夕べも余り眠れなかったくらいだ。10時には寝たけど。

 

「よくこんな状況でゲームをそこまで楽しめるな…」

「こんな状況だからこそだよ。安全マージンも十分すぎるほど取れてるし、楽しめる部分は楽しまないとね!」

「そうか…それもそうだな。俺もあんまり気負わないで、製品版SAOを楽しむとするか…」

「という事で、早速出発…」

「しない。それとこれとは話が別だ」

「えーキリトのケチ」

「うっ…拗ねてみせてもダメなものはダメだ。あ、しょんぼりもダメだって!やめろ!罪悪感凄いから!」

 

えー。もう一押しなのになのになぁ。

あ!そうだ!…いい事思いついた。

 

「そんなこと言っていいのー?あーあ。お願い聞いてくれたら許してあげようと思ったのに。えーっと、送信ボタンは…」

「ちょ、ちょっと待て!誰に、何を送信する気だ!」

「クラインに、ボクたちの現在状況を報告、かな?」

「なん…だと…た、頼む!それだけは勘弁!」

「顔も知らないキリトの妹にすら反応したクラインだからね。キリトが女の子と同室で一晩過ごした、なんて聞いたら…」

 

あの時ボクには反応しなかったけどね。ボクには反応しなかったけどね!

 

「わ、わかった。行く、行くからその送信ボタンに添えられた手を離すんだ」

「…ほんとに?」

「男に二言はない。…というか選択肢がない」

「やった!」

 

という訳で、朝の5時頃から丸一日かけた狩りが決定したのだった。

後から一日狩りずくめだと聞いたキリトが抵抗したのは言うまでもない事だね。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…ユウキ、今何匹だ?」

「ちょっと待ってね、っと!…今ので346匹目!」

 

今ボクたちはリトルネペント狩りの真っ最中。クエストとレベリング、互いの戦闘の仕方や連携の確認を兼ねて行っているため、胚珠が出た後も狩り続けている。

 

「よっ!胚珠は今何個だ?」

「8個!はっ!」

「はあっ!…もう切り上げてよくないか?実付き、5匹分くらい倒してるだろ」

「せいっ!…他のプレイヤーがミスしたのを助けた結果だよ?文句言わないの!」

 

ここでボクたちが戦い始めてから、ポツポツとプレイヤーがこの村に来始めた様で、森の秘薬クエストをクリアする為にここに来たプレイヤーも何人かいた。中でもニュービーや慢心したβテスターは、実付きを攻撃して窮地に陥ったりしていたので、ボクたちで助けに入ったりしていたのだ。さっき言った討伐数も大体がそのせい。

 

「それにしてもな。もう3時間超えてるぞ。流石に狩り過ぎだろ!」

「別にそこまで疲れてないよね?」

「それはまあ、そうだけど…」

 

ボクたちのレベルは昨日の道中、今日の狩りもあって10まで上がっている。この辺の敵なら、もう苦戦することはまず無いだろう。とはキリトの弁だ。

実際、ボクたちのプレイヤースキルの高さも相まって、リトルネペント狩りは最早作業にしかならない。勿論、自分の実力を過信したりはしないけど、余り過小評価するのもよくない事だ。…って昔アスナに教わった。

 

という訳で、その後も休憩を挟みつつ、延々とリトルネペント狩りを続けることさらに数時間…

 

「キリトー。そろそろ数えるの疲れてきた…よっと!596匹!」

「そもそも、わざわざ数える必要あるのか…?」

「…今まで数えてきたボクの苦労は一体…」

「…どんまい。あ、胚珠の方もかなり溜まってるだろ」

「後一個で20個だよ。あ、今落ちた。これで20個だね!」

「そろそろ帰るか?流石に集中力も切れてくるだろうし、今の状況でそれは避けたい」

 

確かに、余裕だからといって狩りを続けてもあんまりメリットは無い。むしろこれ以上はデメリットしかないかもしれない。

 

「そうだね。そろそろ帰ろっか」

 

こうしてボクたちは、無事『森の秘薬』クエストをクリアし、目的だった片手剣『アニールブレード』をゲットして終わる……筈だったのだけど。

 

「えっと…クエスト『森の守護者』?…キリトなにこれ?」

「いや…俺も知らない。βとの変更点か…?」

 

なにやら新しいクエストフラグがたった。でもキリトは知らないみたいだね。

っと思って話を聞いていると、βとの変更点かどうかはわからないが、話の内容からして、特殊条件達成済みの『森の秘薬』クエストクリアがこのクエストの開放条件らしい。

キリト曰く、「おそらく胚珠20個以上を持ってクリアが条件だろう」とのこと。

 

「『森に巣食う化け物に捧げる生贄に選ばれてしまった。胚珠でたくさん作った秘薬で勘弁してもらえるよう頼んできてくれ』か…。クエスト名も『森の守護者』だし、化け物を倒して森を守れ!って事かな?」

「頼んできてくれって依頼だけど、おそらくそうだな。…何が起こるかわからないんだ。このクエストを放棄する事だって出来るぞ?」

「まっさか!ボクがクエスト放棄なんてすると思った?」

 

こんな面白そうなこと放っておく訳無いのに。死なないように準備したらすぐにでも出発するつもりだよ?

 

「思わない。まだ会って2日目だけど、なんとなくユウキの性格はわかってきたからな。どうせ『準備したらすぐ出発!』とか考えてたんだろ?」

「キリト…エスパーだったの…?」

「…ほんとに考えてたのか。まあ、それには賛成だ。暗くなる前にとっとと終わらせて帰ろうぜ」

「おー!」

 

という訳で村人の案内を受けて化け物がいるらしい所まで…っと思って歩いていると、急にマップが切り替わった。

 

「えっとこれはもしかして」

「ボス戦だな」

「やっぱり?準備してきてよかったー」

「レベルも上がってるし、剣も変えた。無茶しないで慎重に行けば大丈夫だろう」

「りょーかい!」

 

そこまで会話した所で、奥からボスらしきモンスターが登場した。HPバーは2本。姿はリトルネペントを大きくしたような感じだ。

 

「んー『ラージネペント』って…そのまんまだね」

「だけど、純粋に大きさとステータス向上って訳でもなさそうだ」

 

それは見ればわかるよねー。なんか体にヌメヌメした液体纏ってるし。麻痺とか毒とか、そんなところかな?

 

「結晶アイテムはここじゃゲットできないからな…ポーションでなんとかするしかないか…」

「そもそも食らわなければいいんだよね?じゃあ、その方針で行こう!」

「はぁ…ハハッ。ユウキにはほんと、頭が上がらないよ」

 

苦笑しながらそんなこと言うキリト。感謝されるようなことなんてしたかな?ま、貰えるものは貰っておこっか。

 

「くるぞ!」

「午前中みっちり練習した連携見せてあげようよ!」

「こんな早くに役立つとは思っても見なかったけどなっ…ぜああっ!」

 

キリトがソードスキル『スラント』を発動させて斬りかかる。続けて『レイジスパイク』。

それに合わせてボクも後ろへ回りこんで『ホリゾンタル』を放つ。

 

「せいっ!って、あ、あれ?ほとんどHPが減ってない!?」

「は?俺達のレベルは10だぞ。このレベルでほとんどHPが減らないなんて、それこそ10層レベルじゃないと出てくるわけが…これはどういう…って、そうか!」

「なにかわかったのキリト!」

 

ラージネペントの攻撃をよけつつ、キリトに訪ねると、納得なんだけど、納得したくない答えが帰ってきた。

 

「普通、最初からリトルネペントを何百匹も狩って胚珠を20個も手に入れるプレイヤーなんていないだろ?つまりそう言う事だ」

「あーそれは確かに。上の層のどこかで情報手に入れたあと、2回目を挑みに来ることが前提に設定されてるのかな。ってことはこのボスは…」

「間違いなく10層クラスの敵だ」

 

うわぁ、それって割とピンチなんじゃ…。

 

「でも、10層クラスって言っても1層のボスだ。そこまで厄介な攻撃はしてこないはず。元はさっきまでさんざん戦ってたリトルネペントなんだ。冷静に対処すれば、時間をかけて倒せない相手じゃない」

「それもそっか。うん。キリトのお陰でだいぶ気が楽になったよ」

「お互い様だ。さて、相手もそう待っちゃくれないし、そろそろ戦闘再開と行くか」

「うん!」

 

そんな感じで、ボクたちのボス戦は幕を開けた。

 

 

 

「うおおっ!はぁ…はぁ…ユウキ!スイッチ!」

「了解、スイッチ!やあっ!」

 

もう何時間戦闘しているんだか分からなくなってきた。丸一日くらい戦闘してるような感覚もする。あ、もうこれ末期だね。

 

「はぁ…はぁ…流石に…はぁ…ちょっと疲れて…はぁ…来たんだけど」

「ふぅ…俺も、そろそろ…限界が、近いかな…でももう、ボスの体力も、赤ゲージだ。なんとか、なる…だろ…はぁ…はぁ」

 

一気に決めてしまいたいところなんだけど、ここは我慢して地道に削っていくしかない。

油断は禁物、と言う言葉を身に染みて実感する今日この頃だね。

 

そして更に30分後、ついに…

 

「お、終わったぁ……」

「つ、疲れたよぉ…」

 

なんとかラージネペントの撃破に成功。終わってみれば全く苦戦なんてしなかったのに、なぜだか異様に疲れた。二人で一緒にその場で座り込んでしまった。

 

「はぁ…この緊張感…慣れないなぁ…」

「ボスの緊張感を先に味わえたと思えば、フロアボスとの戦い楽になるかもよ?」

「そこまでポジティブに考えるのは、まだ無理かな」

「そうだねー。流石にボクも、今回は疲れたよ」

 

でも、いつまでもこうやって座り込んでる訳にも行かないし、クエストの報告に行かなくてはならない。という事でキリトを促して気力を振り絞り、村人の元まで帰る。

 

「これで、このクエストクリアか…」

「報酬はなんだろうね?ここまでのクエストなんだから、そこそこいい物が貰えそうな気がするけど…」

 

少しワクワクしつつ村人のみんなにクリア報告。すると、鍛冶屋でボク達に渡したいものがあると言われた。

 

「剣?剣かな!?」

「片手剣とは限らないからな。あんまり期待しない方がいいぞ」

「ええー。そんなのつまんないよ」

 

そんなことを言いつつ、鍛冶屋に到着。すると、何か変な石を渡された。

 

「これは一体…?」

「おじさん?この石はなんなの?」

「そいつはな。今の自分の装備を参考に、自分に最適な武器を作り出してくれるっつー鉱石だ。ほんとなら、あんたらが森の化け物に会いに行くとき、護身用に持たせようと思ってたんだがよ。準備に手間取っちまって。無事戻ってきたから、その祝いにちょうどいいと思ってな」

「って、ことは…片手剣!?うわ、やった!キリト、剣だよ剣!」

「わかった、わかったから落ち着け。…にしても、自分に最適にって、どういう事だ?」

「その石をもって、使って見ればわかる」

「使って…あ、キリト、タップしたらタイプ選択画面が出てきたよ?」

「なるほどな…欲しいタイプを選んで、そのタイプの剣をランダムに生成するってところか…面白いな」

「それじゃ、早速。えーと、ボクはスピードタイプ、と」

「俺はパワータイプかな」

 

ボクたちが選択すると、突然石光りだした。

 

「うおっ!眩しっ!」

「なんかこのゲーム始まってからこんなのばっかり!」

 

光が収まると、そこにはふた振りの剣があった。

 

「お、おお…えーとなになに『ソニックリッパー』…うん。手に馴染む。軽くていい剣だね!」

「俺のはちゃんと俺好みに重い剣になってるな。『ストロングブレード』…ん。こっちもいい剣だ」

「えへへー。アニールブレードだけかと思ってたのに、これはとんだサプライズだね!」

「苦労したかいがあったな。クエストの難易度もあって性能も現時点では破格だ。しばらくこの剣で戦って行けると思うぞ」

「ほんと!?いやー苦労してゲットした剣だから、あんまり手放したくなかったんだよねー。よかったー」

「ま、気持ちはわかるな」

 

そんなこんなで、クエストを全て終えて、ポーション等の補給を済ませたらもう夕方。時間的にも体力的にも、今日はもう帰って休んだほうがいいかな。

 

「という訳で、宿屋にかえろー!」

「何が、という訳でなのかわからないけど、俺も賛成。流石に今日はもう疲れた…」

「あはは。それ、昨日も言ってなかった?」

「ユウキといると疲れることが多いんだよきっと」

「…そんなこというキリトはクラインにメッセージ送ってあげるから制裁を食らえばいいんだよ」

「悪かった!冗談だって!…ユウキがいてくれて助かったよ。今日だって、俺一人じゃ危なかっただろうし」

「それも、昨日似たようなこと聞いたよ?」

「そうだっけか?あはは」

「そうだよー。ふふふ」

 

嬉しいけど、照れくさいので誤魔化す。ボクはアスナとは違うから、この程度じゃ絆されたりしないんだよ?なんてね。

 

 

「…今日も約束が守れてよかったよ」

「約束?」

「しただろ?必ず生き残るって約束」

「…そうだね。ヒヤッとした時もあったけど、無事だったし、約束はしっかり守れたって事になるね」

「改めて誓うよ。明日も、明後日も、その先も…ゲームクリアまで、この約束、絶対に守ってみせる」

「うん。ボクも絶対に守ってみせるよ」

 

願わくば、クラインや、この世界にいるはずで、まだ出会ってないアスナ達とも約束しよう。

 

ボクたちは、そんな風にそれぞれ決意を固めつつ、ゲーム開始2日目の夜はふけていくのであった…。

 

 




ユウキ「クラインに送信っと」
キリト「うおぉい!何送信してるんだ!?許してくれたんじゃなかったのか!?」

ユウキ「いやーボク的には許してあげても良かったけどね?『キリトなんて爆ぜろっ!』っていう宇宙意思がボクを突き動かしたんだよ」
キリト「そんな良く分からないものの為に俺は犠牲になったのか…」

ユウキ「あ、返信きた。なになにー?えーっと『本来ならすぐにでもそこへ行って、キリトのヤロウをけちょんけちょんに叩きのめしてやりたい。でもまだ行けそうに無いので、かわりにこの情報もプレイヤーへレクチャーしてやります』…これボクにも被害がくるよね」
キリト「自業自得だろ。訳わからん理由で人を陥れようとするからそうなるんだ」

ユウキ「訳わからなくなんてないよ!?きっと読者のみなさんだって、ボクたちを暖かく見守ると同時に心のどこかで『キリト爆ぜろっ!』って願ってる筈なんだ!」
キリト「俺はその読者のみなさんとやらになぜ恨まれてるんだ…」

ユウキ「え」
キリト「?」

ユウキ「自覚ない…!?凄まじいね主人公補正…だけど残念!この小説の主人公はボクだからね!ハーレムなんて築かせないよ!」
キリト「今までで一番話が読めない…一体なんのことを…」

ユウキ「相変わらずなキリトは放っておいて次回予告!こ、これは…ようやくボクがあの人と出会う話みたいだね!くぅー楽しみだなぁ!」
キリト「あの人?って一体誰だ?」

ユウキ「それ言っちゃったら面白くないでしょ?楽しみは後にとっておかないとね」
キリト「まあ、ユウキが喜んでるし、なんでもいいけどな」

ユウキ「それではまた次回〜」
キリト「え、えっと、また次回〜?」

ユウキ「キリトが空気を読んだ…!?前回教えた甲斐があったなあ。次もこの調子でね!」
キリト「つ、次があるのか…」



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アスナと行く

今回かなり短いです。すみませんm(_ _)m


 

 

sideユウキ

 

 

第一層 迷宮区

 

あれから2週間が経った。

ボクたちのパーティ(と言ってもボクとキリトの二人きりだけど)は、クライン経由でクエストや狩場の情報、βとの変更点を教えつつ、時々窮地に陥ったプレイヤーの補助をしながら、1週間で第一層、迷宮区に一番近い街『トールバーナ』へたどり着いた。

それから1週間。ボクとキリトはトールバーナを拠点に、迷宮区で攻略とレベリングを進めているんだけど…

 

 

「キリトー。まだボス部屋行かないのー?」

「ああ。いくら俺達が強くても、2人では限界があるしな」

「知り合った人に声かけて行けばいいんじゃないの?もうボス部屋までのマッピングは済ませた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)んだし」

 

そう。実はボクたち、既にボス部屋を見つけているのだ。流石に中に入ったりはしてないけどね。

 

「…ねぇ、キリト?もしかして、リーダーやるのがめんどくさい、なんて理由だったり…しないよねぇ?」

「ぐっ…し、仕方無いだろ。俺はそういうの苦手なんだよ。…それに、もうマップデータはアルゴに渡してある。信頼できるやつに渡すよう頼んであるし、直に攻略のための会議が開かれる筈だからそれまで我慢しろって…」

「アルゴさんなら確かに信頼できるけど…でもやっぱり「ちょっと待て、ユウキ」…ん?どしたの?」

「プレイヤーだ」

 

そう言ってキリトが指を指した方向を見ると、そこには…

 

 

「はあっ!!!」

 

ズバンッ!!

 

 

 

あれは…

 

 

 

 

 

…ああ、涙が出そう。あの声。それにまだまだ荒削りだけど、見覚えのある『リニアー』。あれは間違いなく、この世界の…

 

「ア、スナ…?って、ええ!?アスナ!大丈夫、アスナ!?」

 

感動に浸ってる暇はなかった。アスナが急に倒れたのだ。

どうしたんだろ?と、とにかく、安全エリアまで運ばないと…

 

「キリト!手伝って!て、ああ!キリトどこ触ってるの!ボクが運ぶから、キリトは護衛ね!頼んだよ!」

「理不尽だ…」

前の世界ならいざ知らず、この世界のキリトはアスナと初対面の筈なんだから、もうちょっとデリカシーを持ってもらわないと。

 

 

 

安全エリアまで運んで一息つくと、キリトが質問してきた。

 

「なあ、ユウキ?このプレイヤーのこと、知ってるのか?」

「あー…うん。まあね」

「どこで知り合ったんだ…?ユウキは、ゲーム開始からずっと俺と一緒にいた筈だと思ったんだが…」

「え、えーとほら!アルゴさんに教えてもらったんだよ!なんか凄腕の細剣使い(フェンサー)がいるって」

「なるほど…。それがこの、えーと、アスナだったか?な訳だ。確かにさっきのリニアーは強烈だった」

 

…なんとか納得してもらえたけど、これは後でアルゴさんにお金を積んで、口裏合わせをしないと…ああ、出費がかさむ…

 

「ん、…あ、貴方達、誰!?」

 

なんて考えている間にアスナが起きちゃったみたい。

 

「と、とりあえず落ち着いてくれないか。事情を説明するから」

 

おお。キリトが話しかけた。アスナがフードを被ってて顔が見えないからかな?

 

「そっちの人はキリト。ボクはユウキ。よろしくね!さっき、キミがモンスターと戦ってた所をたまたま見ててね。そしたら、モンスター倒した後急に倒れちゃうからびっくりして。それで、このキリトと一緒に貴方をここに運んだんだよ」

 

「…そう。ありがとう」

 

そう言ってアスナは立ち上がって迷宮区の奥へ続く道へ歩き出す。

 

「お、おい!どこに行くつもりだ!?」

「どこって…この奥だけど。」

「わかってるのか?倒れたばっかりなんだぞ。このまま狩りを続けても、集中力が切れて死ぬだけだ」

「そうそう。無理しちゃダメだって。無闇に狩りを続けるのは効率悪いしね」

「…(ユウキもかなり無茶な狩り続けること多いだろ…)」

「聞こえてるよキリト!せめて聞こえないように呟こうよ!…それにアs……キミも、もう少しで第一層のボス攻略会議があるはずだから。それまでに無理しちゃダメだって」

 

アルゴさんのことだから、そんなに時間はかからないと踏んでるんだけど、これで攻略会議が開かれなかったりしたら…ボクだいぶ恥ずかしいよね…。

 

「会議って…何の為に」

「もちろんボスを倒すためだろ。早めに一層をクリアできれば、希望も見えてくるだろうしな」

「…ほんとにクリアできると思ってるの?100層なんて…」

「可能性は0じゃない。安全マージンさえしっかり取っておけば、死ぬことは早々無いしな」

 

しばらく睨み合い?を続けるキリトとアスナ。珍しくキリトがコミュ障を発揮しない所を見ると、やっぱり相性がいいのかもねー。

 

「まあ、そんなことより!今は早くここから出ることが先決だよね!」

「出るって…私はまだ「(ついて来てくれたらお風呂は入れるよ)」早くこんな所から出ましょう」

 

うんうん。やっぱり女の子にとってお風呂は大事だよね。キリトはそのへんわかってないから、そんな説得の仕方はしなさそうだったし。言ってみて正解!

 

「何を言ったんだ…?」

「女の子のひ・み・つ♪」

 

ウインクをひとつ。あ、キリト固まった。おーい。

 

「…はっ!?あ、ご、ゴメン!え、えと、さっさと脱出してゆっくりするためにも、早く出ようぜ!」

 

物凄い挙動不信になってしまった。なんか申し訳なくなってくるね。

じゃ、キリトがこれ以上パニくる前に、さっさと脱出するとしますか!

 

「じゃ、キリト戦闘よろしくー」

「え!?俺一人でか!?」

「女の子にはガールズトークしたい時もあるの。つまり男子禁制。女心を慮ってあげないとモテないよ?大丈夫。危なくなったら助けるから」

 

まあキリトなら女心なんてわかってなくてもモテる事は前の世界で証明されてるんだけどね。

 

「うっ…い、いいんだよ俺はモテなくても…はぁ…わかった。戦闘は引き受けたから、危なくなったらフォロー頼んだ」

「らじゃっ!」

「大丈夫なの…?一人に任せて」

「うーん、大丈夫だと思うよ?よっぽどのことがない限り、キリトがこの辺で危なくなる事はないんじゃないかな」

「…そう」

 

そうして、ボクは久しぶりのアスナとの会話を楽しみつつ、トールバーナの街へ戻ったのだった。

 

 

 




ユウキ「恒例の後書きコーナー!」
キリト「なんの恒例だよ…というか、あんまり時間たってないはずなのに、なんでか久しぶりな気がする…」

ユウキ「まさかのキリトからメタい発言が。まあ、久しぶりな理由としてはね?えーっと、作者曰く『コミケとかコミケとかコミケとかの準備で忙しい。金が足りないんだ金が!』…だってさ。なんだか世知辛いねー」
キリト「作者さんとやらが誰だか知らないけど、金の問題とはまたシビアだな…」

ユウキ「『更新を遅らせるくらいなら短くてもできてるところまで出してしまえばいいんじゃないか?』って思ったんだって。確かに攻略会議とか長そうだもんねー。って言うか、後書きこうやって書いてる暇があるなら本編書いた方がいいんじゃない?」
キリト「後書きはスラスラかけるんだ!伏線とか設定の矛盾とかフラグとか気にしなくていいから!」

ユウキ「キリトが作者化した!?あ、倒れた……おーい。起きろー」
キリト「っつ…俺は今まで何を…」

ユウキ「作者の干渉力流石だね…っと、!?な、な、なぁ!?」
キリト「どうしたんだ?ユウキ」

ユウキ「『これ以上作者をdisる真似はヒロイン&主人公といえど許さない。おイタが過ぎるようなら原作シリカの用に触手刑に処す。…こっちだって!こっちだって大変なの!わかって!』………なんだろ、脅迫文の筈なのに哀愁漂うメッセージだね」
キリト「なんかよくわからないけど、苦労してんだな…」

ユウキ「触手はボクも嫌だからそろそろ作者のフォロー…っと思ったけど時間がないからいいよね!うん!ボクを脅迫する作者なんてフォローされずに読者にdisられてればいいんだ!」
キリト「なんかだいぶ根に持ってるな…」

ユウキ「それじゃ!また次回!次は年明けかな!」
キリト「年明け?あと1ヶ月以上あるぞ」

ユウキ「それはこっちの話。向こうは関係ないの!ではでは、次の話でまた会おうねー!」
キリト「(合わせないと怒られる…)よ、よろしくなー?」






作者「え?ほんとにフォロー無しで終わっちゃうの!?作者のハートはガラスで「うるさいっ!!〆ぐらいきっちりしてよ!」…はい」




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アルゴと行く

遅れてすみませんっ!!!

年明けに更新するとか言っておいて既に7日…面目次第もありません…

今後はできる限り予定通りに投稿できるようにしたいと思います。

ボス攻略会議になかなかたどり着かない…


 

 

sideアスナ

 

「ふぅ…」

 

この世界でも、こんな風にお湯に浸かれるなんて思わなかったな…

 

「キリト君とユウキ、か…」

 

強い。そう思った。

二人は私よりも遥かに強い。

レベルや技術的なことももちろんあるけど、なんだろう…心構え?が違う気がする。

二人…キリト君とユウキは、一体何を思ってこのゲームをプレイしてきたんだろう…。

私は…私はこの世界に来て、恐怖した。絶望したと言っていい。

それ程に、私にとって『現実に帰れない』っていう事実は重かった。

でも、こんなゲームに負けたくない。モンスターにやられて死んだとしても、この世界には負けたくないって。そう思って、私ははじまりの街を飛び出した。それからは無茶な戦闘を繰り返して、その結果が今日の昏倒。

…でも、そんな自暴自棄に近い形で戦意を保って戦っていた私とは、もっと根本的に考えてることが違う気がする。

…知りたい。二人の事を。知れば何かが分かる。そんな気がするから…。

私は、二人について行こうと思う。できる限りキリト君とユウキを近くで見るんだ。それが、二人の事を知る近道になる筈だから。

 

そう決意して、お風呂から上がり、騒ぎが落ち着いた頃に、私は話を切り出した。

 

「お願いが、あるの」

 

 

 

 

 

 

sideユウキ

 

 

 

アスナったら酷いなーもう。「ユウキさん」だって。ユウキでいいのに。

まあ、この世界では面識が無いのはわかってたし、呼び方くらい後からなんとでもなるし、別にいっか。

なんてとりとめのない思考をしてると、いつの間にかトールバーナの街に帰ってきていた。

 

「よし。ここまで来れば圏内だから安全だ。俺とユウキはこれから泊まってる宿に行くけど、アスナ……もついてくるんだったな。了解」

 

流石アスナ。無言の圧力はこの頃から健在だったんだね…キリトに質問すらさせずに威圧感だけで意見を通したよ…。

という訳で、ボク達は宿に向かって歩き出………そうとしたのだけど。

キリトが急に立ち止まった。

 

「どうかした?キリト」

「ん?ああ。アルゴからメッセージが来た」

「…ってことは、まさか!」

「そのまさか。第一層ボス攻略会議のお知らせ、だとさ。1週間後にやるらしい」

「ほんとにやるのね…攻略会議」

 

?アスナはやらないと思ってたのかな。

 

「あ、そうじゃなくて…どうして、もうすぐボスの攻略会議があるのがわかったのかなって思って。いつ、誰がボスの部屋にたどり着けるかなんてわからないのに…」

 

あーなるほどねー。確かにボクもあの時、言ってて信憑性ないなーとは思ってたんだよね。

 

「あーそれはだな…」

「ボス部屋までのマップデータを提供したのがボク達だからだよ」

「!?…貴方達、強いとは思っていたけど、そんなに凄いプレイヤーだったの…?」

「い、いや、凄くなんて無いって。今この時点ではレベル差なんて大したことないし、プレイヤースキルだってそこまで要求されないから…たまたま一番最初にボス部屋に着いたのが俺達だっただけだよ」

 

キリト…誤魔化す時によく喋るのは悪い癖だよ…知り合いが見たらバレバレだって。

…でも、初対面のアスナはなんとか誤魔化せた様で。

 

「ふーん。そうなんだ」

 

と納得していた。

 

「(あっぶなかった…ユウキ。余計なこと言うなって)」

「(事実を言っただけなのに)」

「(正直に言って、俺達のレベルは他のプレイヤーとはかけ離れてる。目立って追求されたら面倒なことになるだろ)」

 

んーそういうものなのかな。

 

「(でも、別にチートした訳でも無いのに、何を追求するっていうの?)」

「(この世界にはあるだろ。少なくとも今はまだ、プレイヤーに隔たる大きな壁が)」

 

あ、そっか。

 

「βテスターとニュービーの壁、か…」

「そういうこと」

「何を話してるの?」

「「うわっ!?」」

 

び、びっくりしたー。アスナか…

 

「二人ともこそこそして…それにβテスターがどうとかって言ってたし…」

「え''」

「き、聞こえてたのか…?」

「ちょっとだけ…。なにか不味かった?」

「まあ、アスナなら言いふらしたりはしないだろうしさ。いいんじゃない?」

「…そうだな。ユウキがそう言うなら。アスナ、宿に行ったら説明するよ。とにかく一旦帰ろう」

「わかったわ」

 

そうしてボク達は宿に戻ったんだけど…

 

 

 

まさか…まさかあんな悲劇が待ってるなんてっ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

sideキリト

 

 

「えぇええええ!?アスナ!一緒にお風呂入ってくれないの!?」

 

俺たちが泊まっている宿に着いて早々に、ユウキが騒ぎ出した。

…一体ユウキは何を言い出してるんだ…。狩りのしすぎで頭がおかしくなってしまったのだろうか。

 

「あ、あの…ユウキさん?急にどうしたの…?」

「どうしたもこうしたも無いよ!アスナ、一緒にお風呂入れないの…?」

「(うっ…何故か凄い罪悪感)…で、でもほら。やっぱり恥ずかしいし…」

「恥ずかしくなんてないよ!ボク、アスナになら何されたって平気だよ!」

 

な、何をされても平気って…

ユウキはそっち側の人間だったのか…あ、そう考えたらなんか二人の後ろに百合の花が見えて…

 

「キリト」

「っ!!はいっ!」

 

底冷えする様な声が響いた。ユウキが怖い。よく「目が笑ってない」なんて表現があるが、目どころか全身どこも笑ってる所なんてない。

 

「勘違いしないでね?ボクは至ってノーマルだから」

「あ、ああ。わかった、いや、わかりました。ハイ」

「アスナ、聞いてた通りだよ!ボクにそっちの気はないから!安心して!」

 

ちっとも安心出来ないと思うのは俺だけなんだろうか。なんだか今日のユウキは暴走と言う言葉がぴったり当てはまるな。

 

「身の危険までは感じないけど…何故か途方も無い不安がこみ上げてくるわ…」

「アスナ………ダメ?」

 

涙目で上目遣いのユウキ…やられたのは俺じゃなくアスナだと言うのに、ここから見ていても物凄く可愛い。このお願いを断れる人なんて…

 

「ご、ごめんなさい。やっぱり一緒には入れないわ…」

「「断っただと!?」」

 

何故かユウキまで一緒になって驚いていた。まさか…今の行動が全て計算だった…?

…風呂にどこまで本気なんだよ。ちょっと引くぞ。

 

「えっと、それ以外のお願いを何か一つ聞くから。それで許して?ね?」

 

アスナが大人だ…子供(ユウキ)のあやしかたを心得てる…

 

「じゃあ呼び方!」

「呼び方?」

「そうだよ。ユウキさん、なんて他人行儀だもん。ユウキって呼んで!」

「わ、わかったわ…えっと、ユウキ?」

「うん!そうそう!やっぱりアスナはそうじゃなくちゃ!」

 

出会って数時間しか経っていないのだが、二人の仲はかなりいいようだ。もしかしたら、前世からの親友だった……なんてな。そんなことあるわけ無いか。

 

コンコン

 

「キー坊、ユーちゃん、いるカ?」

「アルゴさん?はいはーい。今出まーす」

 

アルゴか。おそらくさっきの攻略会議の件…って、ああっ!?

 

「ユウキ!ちょっと待て!」

「?」

「何を待つんダ?キー坊」

「遅かったか…」

「ふーン。オレッチに言えない隠し事があると見たんだが、どうなんダ?ユーちゃん」

 

問いかけられたユウキは、数瞬考えた(のち)、俺がなぜ止めたのか理解したのだろう。物凄く慌てふためきながらアルゴを連れ出そうとしていた。

 

「ア、アルゴさん!何もないから!ほら、今日のところは引き上げて!お願い!」

「ユウキ…それじゃ逆になにかありますって言ってるようなもんだろ…」

 

ユウキの説得(自白?)を受けたアルゴは、何かあると確信したのだろう。そのまま俺の部屋に居座った。

 

「あ、そうだユーちゃん。そろそろさん付けはいらないゼ。もう知らない仲じゃないしナ」

「あ、うん。じゃあ、アルゴ…それは嬉しいんだけど…えっと、なにか要件があって来たんだよね?ほら、早く済ませちゃおうよ!」

 

どうやら要件を済ませて帰らせる方向にシフトした様子のユウキ。確かに、ここからアルゴを追い出すのも変だ。アルゴにバレずにこの場を切り抜けるにはそれしかないだろう。

……この前戦ったラージネペントの時より緊張しているのは気のせいだと信じたい。

 

「それでアルゴ。要件はやっぱりボス攻略会議のことか?」

「まあ、それもあるナ。とりあえず、日時はさっき送ったメッセージの通りダ。あと、今回のレイドを束ねるリーダーの情報を少しナ」

「…アルゴから情報をタダで貰えるなんて、嫌な予感しかしないんだが…」

「安心しろヨ。タダじゃあないからナ」

「?それはどういう…」

「さっきから、キー坊もユーちゃんも、向こうの部屋をチラチラ見てたからナー。隠したい物があるのはここカ」

 

そう言ってドアを開けようとするアルゴ。…って!それはマズイって!

 

「ご開帳〜!」

「きゃあっ!えっ!?な、なに!?なんなの!?」

 

咄嗟に顔を背ける俺。…だがチラッと見えてってうおっ!?

 

「キリトは見ちゃダメ!」

「ユウキ!?離せっ、何も見えないから!」

「そんな!?ボクは失望したよキリト!キリトがアスナの裸を見たがる様な人だったなんて…!」

「いやそういうことじゃなくて!そっちを見ないように起こしてくれればいいだろ!」

 

そう。今俺はユウキに馬乗りになって組み敷かれているのだ。おそらく確実にアスナが見えないようにするためだろうが、この体制は少しばかりマズイ。何がマズイって、ユウキの体の柔らかさが直に伝わってくるのがマズイ。

一刻も早く抜け出したいのだが、本人はそんなことよりも俺の目を塞ぐ事の方が重要な様で、一向に俺を離そうとしない。

 

「あっばれない…でよ!抑えるのも大変なのに!…ってあれ?アスナ、もう服着たの?」

「う、うん。この世界の着替えは一瞬で済むから…それより、キリト君?」

「ハイ」

「一応聞いておくわ。言い残すことは?」

「悪いのは俺じゃなくアルゴだと言う事を理解していただきたいです」

「大丈夫よ。アルゴさんとは今後情報料の3割引って事で話はついたから」

 

あのアルゴが情報料を3割も値引きするなんて…余程恐ろしかったのだろう…

 

「という訳で、キリト君にも何らかの罰が必要だと思うんだけど?」

「仰る通りです…」

「…じゃあ1つ。キリトとユウキに。お願いが、あるの」

 

お願い?罰という割には消極的な言い方だけど…随分真面目な雰囲気だ。それにユウキにまで。一体なんなんだ?

 

「…私を、貴方達のパーティに入れてくれませんか?」

 

そう言って頭を下げてくるアスナ。

でも、それは…

 

「パーティに入れてくれって言われてもなぁ…」

「…やっぱり無理言っちゃったよね。ごめんなさい。今の、ナシにしていいわよ」

「いや、そうじゃなくて。俺達はもうアスナをパーティに入れるつもりだったんだが…」

「…え?」

「俺はともかく、ユウキは最初からそのつもりだったみたいだぞ」

「うん!アスナとはいい友達になれそうだから!」

「実力はあの時の戦闘を見れば、ある程度わかるしな」

「…本当に?」

「…俺はそこまで乗り気じゃ無かった。でも、ユウキがあそこまで懐いてるのを見ると、な」

「えへへー」

「…ありがとう」

 

もう一度頭を下げてくるアスナ。その表情は、先程よりも幾分か明るくなっていた。

 

「おーイ。オレッチを忘れてもらっちゃ困るんだけどナー」

「あ。アルゴいたのか。忘れてたぞ」

「…ふーン。オレッチをそんな風に扱うなんて、いい度胸だナ、キー坊。…この写真、なんだと思う?」

「なっ!?そ、それは!」

 

その写真は、先程の俺とユウキを写していた。ユウキが俺に馬乗りになって、抵抗する俺を押さえつけているところだ。

 

「ボク、あんなに恥ずかしいことしてたんだね…」

 

今更気づいたのか、若干顔を赤らめながら言うユウキ。くっ…可愛い…

 

「…それで、その写真と引換に、何をしようってんだ?アルゴ」

「なーに。簡単なことダ。これからもオレッチを御贔屓に、ってのと、もう一つは…」

 

アルゴから告げられた内容は、俺達にかなりの衝撃を与えた。

 

 

 

 

「「「ギルドを作ってくれ!?」」」

 

 

 

 

ボス攻略会議すらまだなのに一体何を言い出すんだ…。

俺達に平穏はしばらく訪れないらしかった。

 

 




ユウキ「あ☆と☆が☆きっ!イェイ!」
キリト「急にどうしたんだ?本当に頭でも打ったのか…?」

ユウキ「失礼な、ボクは至って正常だよ!」
キリト「正常なやつはたかがお風呂にあそこまで必死になったりはしないはずなんだがな…」

ユウキ「あ、あれは…ほら。久しぶりに会えた反動というか何と言うか…」
キリト「???」

ユウキ「あーもう!なんでもないの!」
キリト「そ、そうか」

ユウキ「それより、今回の後書きにはゲストがいるよ!今までボクとキリトだけだったのに!」
キリト「仕方ないだろ!ネタに限界があるんだよ!」

ユウキ「あ、また作者憑依してる…。まあ、そんなキリトは置いといて、ゲストさんの登場でーす!どうぞー!」



アルゴ「ゲストはオレッチだゼ」



ユウキ・キリト「「アスナじゃないの!?」」

ユウキ「記念すべき初回ゲスト…ボク、キリト、と来て次に出るのがアルゴだなんて…」
キリト「ってかアルゴまだいたのかよ」

アルゴ「衝撃の要求をして終わったばっかりだロ。居なくなる訳ないじゃないカ。…それと、あんまりオレッチを虐めると、キー坊が自分の宿にアーちゃんを連れ込んだって情報…格安で売っぱらっちゃおうかナー」

キリト「覚えてたのか…有耶無耶にできたと思ってたのに…」
ユウキ「最後の要求のインパクトが強かったもんねー。ボクもあの引きは酷いと思うよ。」

アルゴ「そんなことオレッチに言われてもナー。眠い中作者が頑張って書き上げたんだ。大目に見てやれよ」
ユウキ「おお、アルゴさんもメタ発言。これでよくわかっていない人はキリトだけという事に…」

キリト「なんでもいいけど、それよりアルゴ。攻略会議についての何かで俺のとこに来たんじゃなかったのか?」
アルゴ「それについては後で本編で書くから、それまでまってナ」
キリト「そ、そうか…(本編ってなんなんだ…)」

バンッ!
ユウキ「そんなことよりっ!」
キリト「うお!?どうしたんだ、急にテーブルなんて叩いて…」

ユウキ「作者だよ作者!なんで結局アスナの裸見せちゃうの!?この作品、主人公もヒロインもボクだよね!?」
キリト「えっと…その説は誠に申し訳ありませんでした」

アルゴ「アーちゃんの好感度も原作より高かったみたいだしナー」
ユウキ「ダメだよキリト!アスナは絶対に渡さないんだから!」

アルゴ「だってサー、キー坊。アーちゃん攻略は諦めた方が懸命じゃないカー?」
キリト「攻略って…そんなことするつもりは別に…」

ユウキ「そんなつもり無くても攻略しにかかるでしょ!キリト!…くぅぅぅ、この作品の主人公はボクだからキリトに主人公補正は働かないと思ってたのにぃー!」
アルゴ「むしろユーちゃんが加わった分だけ主人公補正増してるよナー」

ユウキ「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!アルゴのバカァァァァァァ!!」
アルゴ「あ、ちょっと待てってユーちゃん!キー坊!後は頼んダ」

キリト「…収集つかなくなってきたな…このままだと長ったらしく話すハメになるからこの辺で切り上げるか…(作者)」

キリト「…はっ!なんでだろう…『〆よろしく』って声が聞こえた気がする…〆ってどうすれば…え?なに?ユウキの真似すればいいって?お、おう(この声は一体…)」

キリト「おほん。えーっと、次回をお楽しみにー!また会おうねーっ!」






キリト「え?ユウキのモノマネをしろって意味じゃない?先に言えよ!物凄く恥ずかしいだろ!……えー、では、今度こそ。観覧ありがとうございました。また次回、お会いしましょう。それでは!」





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アルゴと行くpart2

1週間過ぎてしまった…そして攻略会議が遠い…

グダグダだと思いますがご容赦ください


sideユウキ

 

「「「ギルドを作ってくれ!?」」」

 

急にアルゴがそんなことを言い出した。ギルドって…そもそもギルド作成のクエストなんてまだ出てないよ…?

キリトもやっぱり同じ考えみたいで

 

「いや、アルゴ…ギルド設立のクエストなんて発見されてないし、βテストの時もそれがあったのは3層だったはずだ」

「暫定でいいんダ。『ギルドを作る』っていう姿勢を保ってくれればナ」

「どういうこと?ボク達には知名度なんてないし、そんなことしても意味ないと思うんだけど…」

 

それこそ「ふーん」で流されて終わるような事だ。話のタネにもならないんじゃ…

 

「まあ、メリットいろいろあるんだけどナ。とりあえずは一つ、勘違いを訂正しておくヨ」

「勘違い?」

「そうダ。知名度云々ってところのナ」

「???」

 

ボク達はそろって頭に?を浮かべる。え?まさかボク達って物凄く有名だったりするの…?

 

「アーちゃんはともかく、キー坊とユーちゃん。ふたりは相当有名だゼ。アーちゃんも知る人ぞ知る、ってくらいには有名人ダ。あ、勿論悪い意味じゃなくナ」

 

やっぱりそうなんだ…。っていうかアスナまで。んーっ!嬉しいような照れくさいような…でもやっぱり嬉しいね!

そんな風にボクが内心小躍りしてると、隣に若干青い顔の人物が一名。言うまでもなくキリトだね。

コミュ障気味なキリトには「実はアナタ有名人です」なんて報告、嬉しくないか…

ボクは結構嬉しいんだけどなー。ALO時代にデュエルの宣伝とかしてたからなれちゃったのかも。

アスナも微妙な顔。やっぱり喜んでるのってボクだけなのかな…ちょっと寂しい。

 

「ユーちゃんはともかく、キー坊とアーちゃんは嫌そうだナ」

「当たり前だろ…。第一、なんで俺が有名なんだよ。悪名ならわからんでもないが、いい方向で有名になるようなことなんてした覚えないぞ」

「ボクも同意見かなー。確かに危ないプレイヤーを何人か助けたりしたけど、それだけでそんなに有名になるとは思えないし…」

「私も心当たりなんて全くないんだけど…」

 

ボク達は三人そろって首を捻る。なんでそんな有名に…。っていうかその前に

 

「アスナ。アスナが有名な理由ならボク知ってるよ?」

「え?本当?」

「うん。キリトにも言ったと思うけど、前線に出て戦ってるプレイヤーには知ってる人も少なくないんじゃないかな?『凄腕の細剣使い(フェンサー)がいる』って」

 

キリトもボクに聞いた話を思い出したようで、あーそういえばそんなことも…。なんて言っている。あの時言ったことは全くの口からでまかせなんかじゃなくて、割と真実なんだ。ただ、アルゴから情報を買う前から知っていたってだけでね。

一方、アスナは初耳だったようで、それを聞いて顔を赤くして蹲っている。うう、可愛い!思わず抱きしめたくなっちゃうよ!

 

「…なんだろう、今少し寒気が」

 

すぐに持ち直してしまった。さすがアスナ。自分を律するのが上手だね。うん。決してボクが邪なことを考えたのを察知されたわけじゃないから。察知されたわけじゃないから!

 

「それで?アスナはわかったけど、俺たちはどうしてなんだ」

 

それはボクも気になる。『前の』アスナによると、キリトはずっとソロだったって言ってた。つまり、このアルゴからの頼みは存在しなかった、もしくは断ったってこと。だけど、キリトがずっとソロだったのは、キリトがニュービーからβテスターに向けられた恨みを一身に背負ったからだとも聞いてる。それも踏まえて考えると、そんな事件がまだ起きてないことから見ても、断る理由のないキリトがこのときアルゴの話を断った可能性は低いと思う。…コミュ障を理由に断った可能性も残ってるけど、割とお人好しのキリトが、女の人の頼みをそんな理由で断ったりはしないと思う。キリトっていわゆる『天然ジゴロ』ってやつだし。最近だと『一級フラグ建築士』とも言うんだっけ。…この2週間だけでもかなりやらかしてたもんね。コンビ組んでるボクをほったらかしにして。…って、思考が盛大に逸れてる逸れてる。

 

ともかく、『前の』キリトがこの頼みを受けてないと仮定すると、頼みを持ち掛けられた、つまりプレイヤーたちに有名になった理由はボクにあるって考えた方が良さそう。勿論、ボクがいなくてもこの世界では『そう』なるんだって言われると反論できないけどね。その場合どうしようもないから可能性からは除外。

ボクがこの世界でやったことを、順に洗い出していこう。特にキリトに関係することと言えば…

 

①キリトとはじまりの街で出会って一緒に狩りへ

 

うん。この時点でもう行動が違うのは確定だよね。『前』はボク、SAOにログインすらしてなかったし。そもそも年齢が…ゲフンゲフン。

 

②一緒にクラインにレクチャー

 

③はじまりの街から出るときにキリトについていく

 

④一緒にホルンカへ

 

⑤クエスト『森の秘薬』『森の守護者』クリア

 

⑥時々プレイヤーを助けつつトールバーナへ

 

⑦迷宮区でアスナを助け、今に至る

 

 

うーん…確かにちょくちょくキリトの行動に干渉してるけど…それによって有名になる要素が見えない。もう諦めてアルゴに聞こうか。う~なんか凄い敗北感…

 

「ボクも考えてみたけど、全然わかんないや。アルゴ教えて~」

「ユーちゃんに頼まれたんじゃ仕方ないナ。教えてやるヨ」

「それは俺だったら教えないってことなのか…」

 

なんかキリトが落ち込んでるけど、ほっとこう。今は理由を聞くのが先だよね。

 

「クラインってプレイヤーに心当たりはあるカ?」

「クライン?うん。今もちょくちょく連絡取り合ってるけど…それがどうかした?」

「そいつがナ、はじまりの街でレクチャーしてるんだが、レクチャーした相手に必ず伝えてることがあるんダ」

「「伝えてること?」」

「『情報源はβテスターのキリト。それと相棒のユウキってプレイヤーだ』ってナ」

「「なっ!?」」

「あ、それ、私も聞いたことある」

「「ええっ!?」」

 

驚愕の事実。原因はクラインだった。

っていうか、アスナ知ってたんだね…なんで教えてくれなかったのさ。

 

「あ、あははは。はじまりの街にいたころは、私いっぱいいっぱいで…。そういう噂があったなーってくらいにしか知らなかったから。キリトとユウキって名前も聞かなかったし」

「ちなみに、どんな噂だったんだ?」

「えっと、確か…『情報提供してニュービーの手助けをするプレイヤー達がいる。情報源はβテスターとニュービーのペアらしい』って」

「まあ、大体そんなとこだナ。アーちゃんは名前で伝わってない方の噂を聞いたみたいだけどナ。他には『キリトとユウキってプレイヤーが率先して情報を集めてみんなの手助けをしている』とか、『キリトとユウキは、βテスターとニュービーの垣根を取り払うためにβテスターとニュービーでパーティを組んで、手を取り合えと示唆している』とかだナ。あとは、実際にキー坊達に助けられたプレイヤー達が、体験談を広めてるらしいゾ」

「クラインのやつ…余計なことを…」

 

まさか、クラインがねー…。まあ、理由は大体察しがつく。

多分、βテスターにもいい人がいるっていう事を示して、プレイヤー間の摩擦を減らすのと、もう一つは…

 

「そういってやるナ。多分、これもキー坊の為なんだからナ」

「俺の為?どういうことだ?」

「この話が広まれば、少なくともキー坊がβテスターってだけで疎まれることはなくなるだロ?」

「あ…」

 

やっぱりアルゴもそう考えたんだね。後でメッセージでも送ってクラインに確認しておこっと。

…フフ、クラインが照れて悶絶する様子が目に浮かぶね♪

しばらくその暖かい空気を堪能していたボク達だけど、そこでアスナがおずおずと切り出した。

 

 

「あ、あのー。キリト君とユウキが有名人なのはわかったけど…それがギルド設立にどう関わってくるの?」

「「「あ…」」」

 

ボクとキリトとアルゴはそろって間抜けな声を出す。完全に本題を忘れてたね…。

 

「そ、そうだよアルゴ。ボクたちが有名なのがどうギルド設立に関わるのさ」

「ま、一言で言っちまえば攻略の為だナ。今言った通り、キー坊とユーちゃんにご執心の前線プレイヤーは割と多イ。ソイツらが無所属で放っておかれるよりもキー坊達がまとめちまった方が足並みが揃うからナ」

 

なるほど。確かにそうかもしれないけど…でもそれなら3層まで進んでからでも構わないんじゃ?

今から「ギルドを作る」なんて宣言しても…そりゃ、人員募集にはなるだろうけど、やっぱりそれだけだ。

そんな疑問を察したのだろう。アルゴが説明を続ける。

 

「今からギルド設立の姿勢を見せる訳は、キー坊達の安全のため、いや、βテスターとニュービーのこれ以上の確執を防ぐ為ダ」

「えーっと、さらに訳が分からないんだけど…」

 

クラインのおかげ(?)で確執は減ったんじゃ…

 

「いくらクラインのおかげでだいぶ改善されたって言ってもナー。まだまだβテスターを疎んでるやつは多イ。それに、問題はそれだけじゃないんダ」

「聞かせてくれ。アルゴ」

「ああ。キー坊達が有名になった経緯はさっき話したロ?そのせいで…って言うとクラインが悪いように聞こえるがそうじゃなイ。ようは、キー坊に嫉妬するβテスターがいるんダ」

「は?嫉妬?なんで」

「『自分たちがニュービーに疎まれててやりにくいのに、一人だけ楽しやがって』みたいな感じだナ。ニュービーからも『所詮βテスターのくせにいい気になるな』って声があがってル」

 

逆恨みと八つ当たりだし…。でも、なんでアルゴがギルドを作れって言ったのかはこれでわかった。

アルゴが警戒してるのは、反発するプレイヤー達によるキリト(とついでにボク)の攻略阻害。あと、それに伴うプレイヤー間の確執。ボク達の邪魔をすれば、逆にそれを快く思わないプレイヤーも出てくる。そうなったら泥沼になっちゃうからね。

露骨に邪魔してくるかはまだわからないけど、少なくとも、ボク達が評価されるのが気に入らないプレイヤーが、このまま最前線にボク達を置いておくことはしないと思う。なんらかの形でボク達の邪魔をしてくるはず。

それを防ぐには、今のうちにボク達を慕ってくれてるプレイヤーに声をかけて、ギルドができるまでの間所謂一つの勢力を作ること。そうすれば、それをまとめるボクたちは攻略のためにそれなりに重要なはず。確執を埋められるかはわからないけど、足を引っ張り合うようなことにはならなくなる…と、思いたい。

それに一番問題なのが、それをしないと…

 

「PK、か…」

 

…やっぱり。ボクと同じことに思い至ったらしいキリトが、そう呟く。アルゴもそれに頷く。プレイヤーが直接手を下さなくても、MPKなんて手段もあるし、確率は低くないと思う。アスナはよくわかっていないのか、首をかしげていた。うん。可愛い…じゃなくて、キリトはネットゲーマーとしての経験から、ボクは前の世界の情報からPKに思い至ったけど、アスナには考えもしないことなんだろうな…。HPが0になったら、現実でも死に至るこの世界で、同じプレイヤー同士で殺し合うなんてことは。ボクだって信じたくないけど、実際にそういうプレイヤーがいる以上、警戒しなきゃいけない。

 

「…お話を遮って申し訳ないんだけど」

「…うん。何でも聞いてよ」

 

アスナもボク達と一緒にいるなら、知っておかなきゃならないことだから。ちゃんと説明しよう。

 

「…PKって、なに?」

「「「そこから!?」」」

 

…どうやら説明はまだ長引きそう。

 

 




ユウキ「…あとがき、かー」
キリト「テンション低いな。こんなこと言い出したときはいつもハイテンションなのに」

ユウキ「作者のテンションがこんなだから…じゃないや。ほら。本編でボク、割と場を和ませようと必死なのに、話題的にシリアスになっちゃうから。…ボク頭使うより戦ってるほうが性に合ってるんだよねー」
キリト「俺も戦ってた方が気が楽だな…。ってか、どの辺が和ませようとしてたんだよ」

ユウキ「そこはほら…地の文とか?」
キリト「他人の心なんて読めるか!」

ユウキ「えっ!?ボクって他人なの!?」
キリト「いやそこじゃないだろ」

ユウキ「ひどいよキリト…大事な相棒だと思ってたのに…」
キリト「あ、いや、俺もその、ユウキには感謝してるし、えーと」

ユウキ「キリトがデレた!」
キリト「わざとかよわかってたよチクショウ!」

ユウキ「残念だったねーキリト。どれくらい残念かというと、家にあるラノベ整理してたら被ってたのが3冊分くらいあって落ち込んでる作者くらい残念」
キリト「それはなんか方向性が違う」

ユウキ「じゃあ、某推理アクションゲームの残姉ちゃんくらい?」
キリト「これって起こった出来事が残念って話で、人間性が残念って話じゃないよな?それとも俺自体が残念って言いたいのかそうなのか」

ユウキ「やだなー冗談だって。ほら落ち込まないで」
キリト「」

ユウキ「うごかなくなっちゃった…まあそうそろそろ(文字数的に)いい時間だしこの辺でおしまいだね。ではまた次回!
















…攻略会議まだかな~」
作者「頑張るからもう少しまってお願い!」


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アルゴと行くpart3

遅れてすみません。ちょっとリアルでごたついてまして…言い訳ですねはい。

べ、別にごちうさ300万再生に貢献する為に遅れたとかじゃないです(震え声)

また…攻略会議にたどりつかなかった…。つ、次こそは!


 

 

sideユウキ

 

 

 

「現実世界に戻る為には協力しないといけないのに…そんなことでPKするなんて許せないわ!」

「ああ…うん。そうだねーゆるせないねー」

「もう…勘弁してくれ…」

 

あの後、ボクとキリトによる用語説明コーナーが唐突に開始されたんだけど…

アスナ~…知らないこと多すぎだよ…『この機にネットゲーム用語をいろいろ教えておこう』なんてキリトが言い出すから…でも教えないわけにも行かないし…。

というか、アスナこんなに知識なくてよく生き残れたね…あ、キリトがいたからか…

確かにアスナは所謂箱入り娘ってやつだけど、ネットゲームやってなくても知ってそうなことまで知らないのは驚いた…これがカルチャーギャップか…

 

「お疲れさまだナ」

「あーアルゴまだいたのか…ってか、いたなら手伝えよ!」

「そうだよ!なに一人でくつろいでるのさ!」

「まあまあ。今度情報一つタダにしてやるから落ち着ケ」

「くっ…今回はそれで勘弁してやる。次はないぞ」

「そのときは2回分タダにしてやるヨ」

「なら許す」

「なに漫才みたいなことやってるの?ボクは許さないからね?」

 

そう言ってにっこり笑うと二人が震えだした。失礼な。ボクそんなに怖い顔してるかな。

あ、アスナが自分の世界から戻ってきた。

 

「?アルゴさんとキリト君はなんで震えてるの?」

「な、何でもないよ。な!アルゴ!」

「あ、ああ。何でもないぜアーちゃん」

 

 (「…今回だけだよ?」)

 

「「はい」」

「…?あ、そうだ。ギルド作るんだよね?なら名前決めちゃおうよ」

「そうだナ。1週間後の攻略会議までには情報を広めておきたいからナ」

「名前かぁ…」

 

ボクはALO時代のギルド、スリーピングナイツを思い出していた。ボクにとってギルドと言って真っ先に思い浮かぶのはあそこだから。

みんな元気かなー。ボクや姉ちゃんみたいにみんなの病気も治ってるといいんだけど…

あ、そうだ!いい名前思いついた!

 

ライジングナイツ(rising knights)…っていうのはどうかな」

「ライジング?日の出って意味?」

「普通はそうなんだけどね。riseには『起きる』って意味もあるから、それにingをつけてrisingにしたんだよ。ボク、前のMMOで『スリーピングナイツ』ってギルドにいたから…。今回は、眠る(死ぬ)より起きる(生きる)ほうがいいかなって思ったんだ」

「ライジングナイツ。ユウキの言うとうり訳すと…『騎士団の目覚め』ってところか」

「目覚めはwakeningよ?」

「あ、あはは…まあ、さっきのrisingも含めて意味を曲解して使うのは、ネットゲームでのお約束みたいなものだしね。ボクはそれでいいと思うよ?」

 

ルビ振りに意味をいちいち気にしてたらきりがないしね。真面目なアスナ的には微妙かもしれないけど、そこは妥協してもらうしかない。

 

「他に意見は?」

「ボクはもうないよ」

「私も、別にこれといった意見はないかな」

「よし!なら俺達のギルド名は『騎士団の目覚め(ライジングナイツ)』だ。二人とも、これからもよろしくな」

 

あ、マズイ。決めることがもう一つある。アスナは今日パーティに加入したばっかりだから除外されるし、このままだとボクに回ってきかねない。先手を打たないと…

 

「うん!これからもよろしくね!団長(・・)!」

「あ、キリト君が団長やるんだ。よろしくね。団長」

「は?ちょっと待て、俺は団長なんてやらないぞ」

 

ふふふ…そういうわけにはいかないよキリト…ボクは団長として大人数をまとめるなんてことできないからね。少人数ならともかく。

それにキリトが団長をやった方が断然お得だし。今現在、唯一βテスターとして名が知れてるのはキリトだけ。なら、キリト(βテスター)が団長を務めるギルドには人が集まる。βテスターの協力を得たいニュービーに、キリトを隠れ蓑にしたいβテスター。βテスト時キリトと知り合いだったプレイヤーなんかも集まるかもしれない。……あとはキリト目当ての女性プレイヤーとか。

 

「ま、キー坊が団長やるのが妥当だナ」

「アルゴまで…」

「自分が団長やった方がメリットが多いことくらいキー坊もわかってるだロ?」

「それは…そうだけど…あーもうわかったよ。やればいいんだろやれば」

 

うんうん。人間諦めが肝心だよ?

とにかく、これで情報を広める準備は整った。アルゴが広めるならこの情報はすぐに広まるはず。そうすればボク達側につきたい人たちは、少なくとも敵対はしなくなる。後からそのことが原因でギルドに入れないなんてことにはなりたくないだろうから。

そして、名が広まってしまえばボク達を最前線から追い出すことも難しくなる。下手にボク達をないがしろにすると、いらない敵を大勢作ることになるから。…それすら無視して排除しようとしてくるならその時はその時だし、そんなことを今から気にしていてもしかたない。

と、ボクのなかで結論が出たときキリトが問いかけた。

 

「ところでアルゴ」

「ン?なんだキー坊」

「今日はボス攻略会議に関する情報を貰えるんじゃなかったか?」

「ああ。そういえばそうだったナ」

 

そういえばそんなことも言っていたような…。アスナが見つからないようにするのが手一杯で覚えてなかったよ。

 

「とりあえず、今持ってる情報は全部教えてやル」

「珍しく太っ腹だな」

「頼みが頼みだったしナ。それに大した情報も持ってなイ」

「まあ、聞かせてくれ」

「まず、オレッチがマップデータを渡した相手、つまり今回の攻略会議のまとめ役の名前はディアベル。確証はないガ、おそらくβテスターだナ。情報をあつめた限りでは悪評もないし、コイツを慕うプレイヤーもそこそこいるらしイ」

「実力があって統率力もあるならいう事なしだな。…それで?わざわざ情報を持ってきたんだ。それだけじゃないんだろ?」

 

確かにアルゴがこの程度でわざわざ直接情報を伝えに来るとは思えない。何か裏が…とまでは言わないけど、これだけでもないはず。

 

「実は、このディアベル氏からの依頼でナ。キー坊の『アニールプレード+6』を売ってほしいそうダ」

「ふーん…まあ、別に構わないぞ」

「いいのカ?」

「おおかた、みんなをまとめるには力が必要って思ったんだろ。それに、βテスターなら俺の名前も知っているはずだ。なら、うまくすれば俺の戦力をダウンさせて、自分がLA(ラストアタックボーナス)を取れる…そう考えたはずだ。俺はβでLA取りまくってたからな」

「それがわかってて売るのカ?それも値段も聞かないデ」

「まあ、リーダーが弱くちゃ成り立たないのも事実だし、それにアニールブレードを売ったところで戦力は変わらないしな」

 

だよねぇ…。ボク達はこの層にしては破格の武器があるし、アニールブレードも一応サブとして強化はしてあるけど、性能が違いすぎて使う機会はなさそうだし…。それを売ってそのディアベルさんが強化されるなら、こっちには得しかない。

アルゴは不思議がってるけど、聞くのは後回しにしたみたいだ。

 

「あ、あと値段だけど」

「ン?」

「金はいらない。『貸し一つだ』って伝えておいてくれ」

「ハイハイ。しっかり伝えといてやるヨ」

 

そうしてアルゴとキリトはトレードを始めた。うわあ…アニールブレード、それも強化済みが1コルでトレードされてる…。これを見たら激怒するプレイヤーが多そうだね…。

 

「んじゃ、オレッチはこれでお暇するとするヨ。またナ、キー坊、ユーちゃん、アーちゃん」

「ああ。情報サンキュ」

「またねー!」

「ありがとうございました」

 

そうしてアルゴは帰っていった。次に会うのは攻略会議の後…もしかしたら、ボス戦の後になるかもね。

攻略会議まで一週間。まだまだレベルも上げたりないし、アスナもいれた連携の確認も必要。やることは盛りだくさん。休みなしで気合い入れて準備しないとね!

 

 

 

 

 

 

 

 




キリト「いや休ませろよ!」
ユウキ「おおう。珍しくキリトから始まったよあとがき」

キリト「ユウキお前鬼か!ただでさえ既にレベルが上がりづらくなってるのに休みなしでレベル上げはないだろ!」
ユウキ「そこはほら。アスナへのレクチャーの時間が休憩ってことで」

キリト「確実に休憩にならない…。今日の二の舞になる未来しか見えない…。いくらなんでも知らないこと多すぎだアスナ…」
ユウキ「あ、あははは…まあ、諦めよう?」

キリト「それにしても、なんでこんなに久しぶりな感じがするんだ…?あれ、なんかデジャヴ…」
ユウキ「今回は前以上に間が空いたからねー。作者曰く、『リアルの用事とごちうさが悪い』」

キリト「ごちうさって何だよ」
ユウキ「キリトもぴょんぴょんしてみればきっとわかるよ。だけどそれを理由に遅らせるのはダメ…って、んん?なになに、『ユウキの髪の色つながりでリゼを思い出してそこからライズ→rize→rise→risingと連想されてネタにつながったんだから悪いことばっかりじゃない』…ええー…あの名前そんなとこから思いついたの…」

キリト「俺はその名前かっこいいから好きだぞ?」
ユウキ「それはキリトが中学二年生的な年齢だからだと思うよ」

キリト「厨二で何が悪い」
ユウキ「開き直った!?…まあそれは置いといて…って、またごちうさかけてるし作者。どんだけごちうさ推しなの…え?この話書きながら第一羽ずっとバックグラウンド再生安定?いやそんなこと言われても」

キリト「あ、そろそろア終わりの時間じゃないか?」
ユウキ「今のキリトに見せかけてるけど作者だよね?なに自然といい逃げしようとしてるの?」

キリト「それじゃ、また次回!」
ユウキ「あ、無理やりシメた!ちょ、まだ話は…あーもう次はちゃんと攻略会議まで進んでよ!?」


作者「善処します!」




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攻略会議に行く

やっと攻略会議入った…(それでも進んでないとか言ってはいけない)


sideユウキ

 

 

「ついに…ついにこの日が来たよ!」

「ん…ふぁ…。…朝っぱらから声がでかいぞー…。ってか、まだ4時かよ…」

 

横にいるキリトが寝起きの眠そうな声を上げる。

今日はアルゴからギルド設立の依頼を受けた日から一週間、つまり第一層フロアボス攻略会議の日。そう、ボスの攻略会議の日なのだ。大事なことだから二回言ったよ!

 

「今日はただの会議だろ…?実際に戦うわけでもないのに、よくそこまではしゃげるな…ふぁ…ねむ…」

「ボスの部屋はもう見つけてたのに何も進展がない状態からやっと解放されるんだよ!?一歩前進した!って感じられるのが大事なんだよ」

「…ボス戦の準備ならさんざんしてきただろ…それはもう、ほんとイヤってほど」

 

確かにあれからボクたちは、ボス戦の為にいろいろやった。戦闘における連携の確認から、個々人の技量やレベルのアップ。…ギルド設立(予告)の情報があるから危険性はだいぶ減るだろうけど、PKを警戒しての対人戦の訓練とか。

おかげでボクたちのレベルはキリトが14、ボクが13、アスナが11まで上がっている。このデスゲームが始まって、しばらくははじまりの街に籠っていたらしいアスナは、ボクとキリトよりかなりレベルが低かったので重点的にレベルを上げた。プレイヤースキルも勿論大事だけど、それ以前にレベルを上げないと話にならない。それがMMOだ…ってドヤ顔でキリトが言ってた。あと、レベルが上がりすぎてこの辺のモンスターはほとんど相手にならないし、経験値もほとんど入らないから戦うだけ損だ、とも言ってたかな。

確かに、キリトが言う安全マージンの目安(現在の層+10)は超えてるし、一応安全だと思う。でも挑むのはボス戦。何があるかわからないよね!ってことで、4日で今のレベルまで上げたにも関わらず、残り2日をプレイヤースキルの向上…というかボクによる対人戦指導(デュエル)に費やされた。伊達にALOで辻デュエルなんかやってない。対人戦(PvP)には一日の長…いや一生の長?があるからね。

 

「いやー楽しかったなー。二人とのデュエル!」

「プライドはズタズタにされたけどな…なんであんなに強いんだよ…」

「人には向き、不向きってものがあるんだよきっと。ほら、対モンスター戦はキリトの方が強いし」

 

これはキリトと一緒にたくさん狩りをしているうちにわかったことなんだけど、どうやらキリトの方が対モンスターには優れているみたいなんだ。ボクが対人戦ばっかり得意なだけとも言う。ALOのときは、メディキュボイドを使って仮想世界で過ごした三年間、そしてそれによって培った異常とも言える反応速度があったから戦えたけど、今のボクの反応速度は恐らく人並み…とは言わなくても、キリトとあまり変わらないくらいだと思う。

 

「だからもっと特訓して力を付けないとね!反応速度も、今のままじゃ物足りないし」

「どう考えたらあれ以上に特訓しようとか思えるんだ…。それに、今のままで十分ユウキは速いと思うぞ?」

「え?そうかな?」

 

そんなことないと思うんだけどなぁ。前世?のボクは例外にしても、あの時魔法さえ斬って見せたキリトの速さにはまだ追いつかないし、それに姉ちゃんはもっと速かった。多分、今のボクたちより初めてフルダイブしたときの姉ちゃんの方が速い。

 

「いや、仮にも俺はβテスターだぞ?ログイン時間は圧倒的に俺の方が長いはずなのに、そんなに速度に差がないんだ。伸びしろを考えれば十分すぎるだろ」

「ところでキリト」

「それに反応速度なしでも十分ユウキは強「いい加減現実を見よっか?」…物凄く直視したくないんだが…なんで俺がユウキやアスナと同じベッドで寝てる(・・・・・・・・・)んだ?」

 

キリトの言う通り、さっきからボクとキリトは同じベッドの上で会話している。ついでにアスナもまだ眠ってるけどいる。アスナ、ボク、キリトの順に川の字になって寝ている状態。

ちなみに、キリトと二人きりだったときは節約のために同じ部屋に泊まっていたけど、アスナが加わってからはもう一部屋取ってボクとアスナで一部屋、キリトがもう一部屋、という風に割り振っているから、普通は同じベッドで寝ているなんて現象起こらない。まあ今回は例外だけど。

 

「昨日、いつもみたいにボクとアスナの部屋で一日の反省会(ミーティング)しようとしてたら、疲れ果てたキリトがボク達が使ってるベッドで寝ちゃったんだよ。で、キリトの部屋に入ろうにもキリトは寝ちゃってるし、かといって床とかソファーで寝るのも嫌だなーって話になって、相談した結果この構図になったってわけ」

「あー…。言われてみれば確かに、この部屋に入ってからの記憶がない…」

「まあ、アスナが起きるまでに早くベッドから出た方がいいんじゃない?」

「…そうするか」

 

パニックになってキリトのことを吹っ飛ばすだろう未来を回避させてあげるボク偉い!なんてことを考えながら朝の支度(と言っても装備を整えるだけなんだけど)をする。

 

「もう行くのか?まだ早朝だぞ?」

「うーんなんか落ち着かなくて。ちょっとその辺でモンスター2、30匹狩ってくるよ」

 

そう言ってボクは宿屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、なんで『ちょっとその辺で2,30匹』とか言っておいてレベル上げて帰ってくるんだよ…」

「えへへ。テンション上がっちゃってつい」

「つい、で狩られた推定100匹以上のモンスターが哀れだ…」

 

キリトはこめかみを抑えながらそんなことを言う。しょうがないよね?だって早朝だから誰もいなかったし、ソロだったからどんどんモンスターがリポップしてくるのが楽しくて、気が付いたらレベルが上がってたんだから。

そんなやり取りをしていると、横合いからアスナの声が。

 

「それで、もう10時になるし人も結構集まってきたけど、えーっと、ディアベルさん?はまだ来てないのかな」

「そうみたいだな…って言いたいとこだけど、噂をすれば、ってやつみたいだ」

 

キリトが目を向けた方向には、三人ほどの人影が見えた。先頭に立っているのは騎士風の鎧装備をした青い髪の男の人。多分、あの人がディアベルさんだ。

ディアベルさんはステージに立つと、集まったボク達を見回しつつ話を始めた。

 

「じゃあ、そろそろ始めさせてもらいまーす!今日は呼びかけに応じてくれてありがとう!俺はディアベル。職業は…気持ち的に、騎士(ナイト)やってます!」

 

騎士かぁ…思えばボクはALOでも今でも騎士って名前がつくギルドに入ってるけど、全然騎士っぽくないよね。キリトもそうだけど、鎧とか着ない派だし、片手剣だけど盾とか使わないし。あ、でもアスナは騎士って言われても違和感ないかな。

なんて考えてるとアスナからデコピンが一発。

 

「こら。話はちゃんと聞かないとダメでしょ」

「はーい」

 

アスナに言われてディアベルさんの方を見ると、ちょうど話が再開された。

 

「先日、とあるパーティがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した。俺たちはボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームも…いつかきっとクリアできるってことを、はじまりの街で待っている人たちに伝えなくちゃならない。それが!今この場所にいる俺たちの義務なんだ!そうだろ、みんな!」

 

そのセリフにあちこちから拍手や歓声が上がる。ディアベルさんはみんなを先導するのがうまいね。士気も上がって、いい感じにまとまってる。

 

「オッケ。じゃあ早速、攻略会議を始めたいと思う。まずは、6人のパーティを組んでくれ。フロアボスは、単なるパーティじゃ対抗できない。パーティを束ねた、レイドを作るんだ」

 

6人パーティかー。ボクとキリトとアスナで三人。後の三人は…どうしよ。

 

「キリト、メンバーに当ては?」

「あるわけないだろ?」

「自慢げにいう事じゃないわよ…」

「そういうアスナは?」

「私は…ほら、二人に会うまでずっと戦ってばかりだったから…」

「つまりアスナもダメ、と」

 

困ったなー。3人パーティだと、ボスをメインに相手する役割がもらえないよ…

実際、ボク達なら3人で6人以上の働きができると思うけど、それがわかるのはボク達自身だけだし…ホント困ったどうしよう。

と、なかば諦めていると…

 

「あ、あの!」

「「「ん?」」」

「わ、私を、パーティに入れてもらえませんか?」

「君は確か…」

「この前キリトが助けた…」

 

「シリカちゃん?」

 

「あ、アスナさん!お久しぶりです!」

 

 

え?…二人とも知り合いだったの…?

 

 

 

 

 

 

 




ユウキ「え、シリカ出てくるの早くない?」
キリト「なにが早いんだ?」

ユウキ「いや、シリカって本来キリトのレベルが70とかになってから出てくる人だし…」
キリト「一層でそんなにレベルが上がるわけないだろ?何言ってるんだ…?」

ユウキ「…まあいっか。すべて作者のせいってことで」
キリト「いやよくないだろ」

ユウキ「いいの!…それより、なんか思わせぶりに反応速度とか出してたけど、作者あんまり伏線上手じゃn」
作者「ストーップ!ネタバレも作者批判もストップ!もうキリトに頼んであとがき終わらせるよ!?」

ユウキ「頼むっていうかあやつ「それじゃあまた次回!」…ネタが思いつかないから終わらせ「また次回ったらまた次回!」はあ…しょうがないなー。それでは、また次回!感想もらえると作者が喜ぶからどんどん批判「あんまりされると耐えられないからほどほどで」…さっきから作者のセリフ改変が酷いです。訴えたら勝てるよ!それじゃあ今度こそまた次回!」

作者「あ、〆はきっちりやってくれるのね」
ユウキ「読者の為だからね!」


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攻略会議に行くpart2

キリト君マジメインヒロイン(困惑)

キバオウファンの方がいたら注意です。少しきつく当たっています。


sideユウキ

 

「アスナとシリカは知り合いだったんだ?」

 

現在、攻略会議の途中。6人パーティを作ろうにも、当てがなくて困っていたところにシリカが来てくれた…と思ったら、実はアスナの知り合いらしい。

 

「うん。はじまりの街で閉じこもってたときに知り合って。一緒に初心者指導も行ったんだよ。ほら、ユウキたちが情報提供したっていう。その時はまだ閉じ込められたばかりで焦ってたから、最近までユウキたちの名前は思い出せなかったけど」

 

へー、そんな繋がりが。世間は狭いねー…って、1万人全員が第一層にいるんだし、こういう事もあるか。

 

「それで、そのあともシリカちゃんと話してるうちに、こんな子まで頑張ってるのになに自分だけ閉じこもってるんだーって思って。それで街を出たの」

「アスナさんにはいろいろ教えてもらったんですよ!舐められない交渉の仕方とか、揉め事の仲裁の仕方とか!パーティを組んだときに役立つかもって!」

 

うん。12歳に教えることじゃないよね…。まあボクも12歳だけど。というかアスナなんでそんなこと知って…って、アスナは現実世界ではお嬢様だったっけ。それくらい出来てもおかしくないか。

…シリカがそれを活用できてるかって点は置いておいて。

 

「それで、キリト君たちはどんな知り合いなの?」

「ああ。ちょっと前にモンスター相手に苦戦してるとこを助けたんだよ。ソロだったし、まだソードスキルに慣れてなかったみたいだったから俺とユウキでちょっとだけレクチャーしてあげたんだ」

「その節はほんっとーにありがとうございました!お礼に私、お二人の為なら何でもします!」

 

「「何でも」」

 

「二人とも反応しないの。しかもなんでユウキまで反応してるのよ…。いい?シリカちゃん。女の子が不用意に『何でも』なんて言っちゃダメ。わかった?」

「はい…わかりました」

 

可愛い女の子が「何でもします!」なんて言ったら反応して当然じゃないかな。あ、女の子じゃなくて、キリトが何でもするっていうのも面白そうだけどね。

 

「それじゃあ、4人目はシリカでいいとして…後二人…あっ!」

「どうした?ユウキ」

「ちょっと待ってて!」

 

キリトにそう言い残して席を数段駆け降りる。目指すのは少し離れたところにいる、坊主頭の斧を背負った大男。ALOでは、キリト達のことを優しく見守るお兄さんポジションだった人。

 

「あのー、ちょっといい?」

「?なんだ?何か用か?」

「ボク達とパーティ組まない?ちょうどパワーアタッカーが欲しかったんだ」

「俺でいいならそっちに入れてもらおう…って言いたいとこなんだがな。一人先約がいてな」

「ならその人も一緒でいいよ。こっちが今4人だから、ちょうど6人でぴったりだし!」

 

もう一人が気になるけど、この人が選んだなら悪い人じゃないと思う。…でもどこにいるんだろ。周りにそれっぽいプレイヤーはいないけど…

そう思ってるのがわかったのか、目の前から再度声がかかった。

 

「もう一人なんだが、今日はちょっと用事があって今はいないんだ。会議の内容を後で教えてくれって言われてる」

「そっか、了解。後で挨拶させてね!じゃあ、ボクは向こうに戻ってるから、会議が終わったらまた合流しよっか」

「ああ。俺はエギル。よろしくな」

「ボクはユウキ。こっちこそよろしくね!」

 

エギルと握手をしてから別れる。終わった後、もう一人の人とも合流して、そのあといろいろ話をすればいいよね。

キリトたちのところに戻ると、みんなから声がかかる。

 

「どうだった?」

「OK!入ってくれるって。ついでに6人目も確保してきたよ!」

「「「おおー」」」

 

3人から感嘆の声が上がる。でもこれ、アスナが少し声かければすぐに集まったんじゃ…。まあいっか。

と、そこでディアベルさんからお声がかかる。

 

「よーし、そろそろ組み終わったかな。じゃあ」

「ちょーまってんか!」

 

…話を遮ったその声に上を見上げる。ボク達のいるところより上の最上段に、なんかトゲトゲした髪型のおじさんが立っている。あの人が声の主みたい。

そのおじさんは階段を数段飛ばしながら駆け降りて、ディアベルさんの前に降り立った。

 

「わいはキバオウってもんや。ボスと戦う前に、言わせてもらいたいことがある。こん中に、今まで死んでいった700人に詫び入れなあかんヤツがおるはずや!」

「キバオウさん…それは、元βテスターのことかな?」

 

その言葉に、隣でキリトが反応したのがわかった。キリトは元βテスター。あの口ぶりからして、何を言われるのかは想像に難くないからね。

安心して。キリトはボクが守るから。そんな思いを込めてキリトの手を握る。それが伝わったのか、少しほっとした様子が伝わってきた。

 

「決まってるやないか!β上がりどもは、こんくそゲームが始まった瞬間、ビギナーを見捨てて消えよった。やつらはうまい狩場やら、ボロいクエストを独り占めして。自分らだけポンポン強なって、そのあともずーっと知らんぷりや」

 

そんなことないとおもうけどなー。…まあ、情報提供はしたけどクラインに任せっきりで放置してるから、そういう意味では知らんぷりなのかも。

 

「こん中にもおるはずやで!薄汚いβ上がりの奴らが!」

 

「そいつらに土下座さして!ため込んだ金やアイテム吐き出してもらぁな!」

 

「パーティメンバーとして命預けられんし、預かれん!」

 

…ムカッ。ニュービーの人たちがβテスターに怒るのはわからないわけじゃないけど、さすがにそれは言い過ぎなんじゃないかな。

と、ボクがこらえきれずに反論しようとしたときに、エギルが手を挙げた。

 

「発言いいか」

 

そう言って立ちあがり、キバオウの元へ歩いていく。

 

「俺の名前はエギルだ。キバオウさん…あんたの言いたいことはつまり、元βテスターが面倒を見なかったから、ビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って、謝罪、賠償しろ…ということだな」

「そ、そうや」

「アイテムなんかはともかく、情報ならあったはずだ。…このガイドブック。あんたも読んだだろ?道具屋で無料配布してるからな」

 

え、無料配布?…ボク達500コルも払ったんだけど…アルゴ…ニュービーのためとはいえそんな阿漕な商売してたの…。

 

「もろたで?それがなんや!」

「配布していたのは、元βテスター達だ」

「っな…」

 

その事実にキバオウは慄く。他の人たちはどうやら知っていたみたいで、冷めた目で見つめている。アスナやシリカを初めとしたキバオウを睨み付けてるプレイヤーは、恐らくβテスターと仲が良かったり、助けられたりした人たちだと思う。

 

「それ以外にもあるぞ。はじまりの街でやっているレクチャーのことは知っているか」

「知ってるで。クラインっちゅープレイヤーがやっとるやつやろ。クエストの情報なんかも配布しとるらしいな」

「そのクラインに情報を提供してるのも元βテスターとビギナーのコンビだ。ついでに、、そうするように指示したのもな」

「っぐ…」

「しかもそのプレイヤー達は、攻略をしながらビギナーを助けたり、レクチャーしたりしている。そういう利己的でないβテスターもいるんだ」

 

あ、あははは。エギルにまで知られてたかー…。実際に有名なのを実感すると、なんか恥ずかしいね。それにそこまで言われると、少し申し訳なくなる。あの時はそんなこと考えてなかったからね。

キリトなんてほら。さっきからすっごい恥ずかしがっちゃって、顔伏せてプルプルしてるもん。無意識にボクの手も一緒に胸元に握りこんでるし。

そうこうしてるうちにも会話は進んで行く。

 

「いいか、情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて、俺たちはどうボスに挑むべきなのか。それがこの場で論議されると、俺は思ってたんだがな」

 

お、大人だ…。感情的になって反論しようとしてた自分が恥ずかしいよ…。ボクももう少し冷静に対処できるように……うん。無理。そう言うのはアスナに任せよう。

なんて事を思ってたけど、やっぱりエギルも少しは頭に来ていたみたいで。

 

「それとキバオウさん。俺個人も、βテスターには恩がある。あまり偏見で見てほしくはないな」

 

なんて言葉を残していった。これがきっかけになったのか、周りの静観していたプレイヤー達から「そうだそうだ!」「キリトさんを悪く言わないで!」「薄汚いのはそっちだろ!」といった野次が飛ぶ。

最初のはともかく、3番目のってβテスターってばれてるばれてる。そして2番目はキリト目当ての……今更か。

 

「……っふん!」

 

キバオウもどうやら空気を読んだみたい。確かにこのままβテスターが~って話を続けても批判が強くなる一方だしね。エギルに一度論破されてる分余計に。

 

「よし、じゃあ再開していいかな。…ボスの情報だが、実は先ほど、ガイドブックの最新版が公開された。それによると、ボスの名前は、イルファング・ザ・コボルトロード。それと、ルイン・コボルト・センチネルという取り巻きがいる」

 

ざわめき声が上がる。ボスの情報を実際に手に入れたことで、緊張感が高まってきてるみたいだね。

 

「ボスの武器は、斧とバックラー。4段ある、HPバーの最後の1段が赤くなると、曲刀カテゴリのタルアールに武器を持ち替える。攻撃パターンも変わる、ということだ。…攻略会議は以上だ。それと、アイテム分配についてだが、金は全員で自動均等割り。経験値は、モンスターを倒したパーティのもの。アイテムは、ゲットした人のものとする。異存はないかな?」

 

ディアベルさんもズルい言い方するねー。この分配の仕方は、公平ではなくても最適な分配だと思う。だから、このやり方に不満がある、と言えば、そのまま『報酬をよこせとわがままを言っている』ことになる。そんな中異存なんてあるわけない。

 

「よし、明日は朝10時に出発とする。では、解散!」

「あーっ終わったーっ!疲れたーっ!」

「…ほんとに…疲れた……もう人前で名乗れない…」

 

キリトがまだ有名になった件で落ち込んでる。…というか燃え尽きてる?あ、ボクの手抱きこんでるのに気づいた。と思ったらもっと顔を赤くして…あ、倒れた。おーい大丈夫ー?

あ、アスナもキリトの様子に気づいたみたい。

 

「ユウキ、キリトく…ん…ってキリト君!?大丈夫!?ちょっと目を離した隙に一体何があったの!?」

「アスナ落ち着け…俺は大丈夫だ…大丈夫だから放っておいてくれ……」

「哀愁漂う姿ですね…」

「うーん、どうしたんだろうね?」

 

そういうとシリカは苦笑い。何か知ってるの?と、聞いても

 

「一部始終を見てましたけど、本人が耐え切れそうにないのでこれは言えません」

 

って言われた。そしてそれを聞いたキリトはさらに縮こまる。きれいに丸に見える体育座り…うん。こういうキリトも可愛くていいね!

 

「もうやめてくれ…」

 

あれ、声に出てた?

 

「あ、あはは…なんとなくわかったかも」

「?アスナまで?なんかボクだけ仲間はずれみたいになっちゃった…」

「うん。ユウキもそのうちわかるから。ね?今はそっとしておいてあげよう?」

「アスナがそういうなら…」

 

アスナがそのうちわかるって言うなら、多分きっとわかる。だってアスナのいう事だもん。間違ってたとしても、信じて後悔するようなことにはならないから。

あ、エギルもこっち来たみたい。

 

「ユウキ、そっちの3人が?」

「うん!今回のパーティメンバーだよ!」

「アスナです。よろしくお願いします、エギルさん」

「シリカです!よ、よろしくお願いします!」

 

アスナは何ともないみたいだけど、シリカは若干緊張してる。…この場合シリカがおどおどしてるのか、アスナが反応なさすぎなのか…どっちだろう?…って、そんなことよりキリトの紹介をしないと。キリト今行動不能だし。

 

「こっちで倒れてるのはキリト。このパーティのリーダーだね。今はいろいろあってへこんでるけど、いつもはかっこよく戦闘の指揮取ったりするんだ。キリトのこともよろしくね?」

「…落としてから持ち上げる…ユウキさん天然なのに恐ろしいです…でも、負けません!」

「…キリト君…今は休むといいわ…少し落ち着いてから戻りましょ?ね?」

 

なんかキリト()をあやすアスナ()っていう図式が成立してる…。キリトって、焦ると子供っぽくなるんだね。

 

「ああ、よろしく。って、まさかとは思ったが、さっき俺が話した『クラインに情報提供してるβテスター』ってのは…」

「あ、それボク達だよ。βテスターなのはボクじゃなくてキリトだけどね」

 

エギルなら別に話しても大丈夫だよね?いい人なのはわかってるし、というか半分ばれてるようなものだし。

 

「やっぱりか。…もしかして、それでキリトは倒れてるのか?」

「あーうん。そうみたい。恥ずかしかったんだって。まあ、あんなに有名だとはボクも思ってなかったし、しょうがないのかな?」

 

未だコミュ障気味だし。と思ったけど口には出さないでおく。今のキリト、精神的にライフが0っぽいし。

 

「お前たちに感謝してるプレイヤーは多いみたいだぞ?ここに来るまでに何度かそういう話を聞いたからな」

「へー。ならうまくいきそうだね」

「何の話だ?」

「ナイショ♪」

 

ホントはギルドのことだから隠さなくてもいいんだけどね。やっぱりサプライズは大事だと思うんだ。うん。

そのあとは、エギルのパーティ申請を受け、キリトが改めて自己紹介したあと、みんなで町へ繰り出すことになった。まあ、6人目のメンバーの合流するためだけど。

そして、町をぶらぶらすること1時間弱。ようやく6人目さんとご対面みたい。

 

「あ、エギルさん。すみません、待ちましたか?」

「いや、時間ピッタリだ。気にするな。それと、こっちの4人がさっきメッセージで伝えたパーティメンバーだ」

 

その人を見てボクは固まっていた。ここにいないはずの人だから?それもあるけど、それだけじゃない。

そんなボクに気づいたキリトが声をかけてくれるけど、それもうまく耳に入らない。

その人と目が合った。すると、その人も固まった。周りのみんなも、ボク達を見比べて驚いている。でも、驚くのは不思議じゃない。ボクとその人の容姿は、文字通り”驚くほど似ている”から。

それも当然だ。だってこの人は肉親。それも、瓜二つの容姿を持ったボクの─

 

 

 

「姉…ちゃん?」

 

「ユウキ…なの?」

 

 

 

──双子の姉なんだから。

 

 

 

 




ユウキ「間に合わなかったね」
キリト「なににだ?」

ユウキ「バレンタインに決まってるでしょ!?2月14日をなんだと思ってるのキリト!」
キリト「いやまだ年越してな「あとがきに時間軸は?」関係ないです」

ユウキ「よくできました」
キリト「物凄く理不尽だ…」

ユウキ「間に合ってたらチョコもらえたかもしれないんだよ?少しは気にしたら?」
キリト「さ、なんかユウキの姉らしきひとが出てきてるみたいだけど、そこんとこどうなんだ?」

ユウキ「あ、逃げたね。さすが思春期。…ってそうだよ!なんで姉ちゃんなんかだしたの作者!?」
キリト「なんかってことはないだろ。姉なんだし」

ユウキ「そんなこと言ってる場合じゃないって!マズイマズイマズイ、今まではボクが優位に立ってたのに、姉ちゃんが来たら確実に立場が逆転する…今日のキリトみたいになるー!」
キリト「言うなよ…落ち込むから…」

ユウキ「姉ちゃんには弱みを握られて…いやむしろボクの黒歴史情報を集めるのが趣味みたいな人だし…知られてはいけないボクの恥ずかしい77の秘密が…」
キリト「そんなにあるのかよ…ってか、今盛大に自爆してるぞ」

ユウキ「それくらいあってもおかしくないんだって!ボクの知らないことまで知ってたりするから…ガクガクプルプル」
キリト「…今度はユウキのSAN値が0になったっぽいから、今回は俺がやらなくちゃな…。えー、それでは皆さん、また次回にお会いしましょう!それでは。



…この不思議空間に慣れてきてるよ俺…」


作者「まあ二人ともがんばれ。作者も頑張る。(77の秘密をほんとに全て決めるかどうか的な方向で)」
ユウキ「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


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姉ちゃんと行く

1週間ジャスト(恐らく初)
毎日更新してる人って凄い…としみじみ思う今日この頃です

みんなお待ちかねのボス戦!……じゃないんですすみません。
ボスはまた次回で。



sideユウキ

 

「姉…ちゃん?」

「ユウキ…なの…?」

 

なんで…姉ちゃんがここに……

 

「ユウキ…やっぱりあなただったのね…」

「どうして…姉ちゃんは…ここにはいないはずじゃ…」

「βテストに当選したのは1つだけだったでしょ?ユウキの分しかSAOのソフトがないって言ったら、お父さんが無理して買ってきてくれたの」

「なっ…!?」

 

そんな……姉ちゃんがSAOにログインしないようにボクなりに…頑張ったのに…。

そう思っていると、キリトから声がかかった。

 

「アンタ…もしかして、ランか?」

「そうだけど…アナタは?」

「キリトだ。久しぶりだな、ラン」

「!…そう、あなたがユウキを守ってくれたのね…ありがとう」

 

そう言って頭を下げる姉ちゃんと、それを見てあわてるキリト。…今日は世間の狭さに驚くことがいっぱいだよ…なんで二人とも知り合いなの…?

 

「い、いや、むしろ俺の方が守られてるというか…世話になってるというか…とにかく頭を上げてくれ」

「ねえ、キリト君…こちらの…えーっと、ランさん?とはどういう知り合いなの?」

「そ、そうですよキリトさん!説明してください!」

 

ボクも気になる。今ちょっと姉ちゃんが目も前にいることに対して整理がついてないけど、それでも聞きたい。……主に姉ちゃんに手を出してないかとかその辺をじーっくりと。

ボクとシリカのそんな視線に耐えかねたのか、キリトが説明を始める。

 

「βテストのときに知り合ったんだよ。βで俺の攻略ペースについてこれたのは、ランだけだったからな」

「そうよねぇ…上の階層では、アルゴをのぞいたらほとんど二人きりだったもん」

「二人っきり…うう、なんでこんなに美人さんばっかり…」

「ボクからしたら、キリトのほうが姉ちゃんより攻略を進めてた事実に驚いてるんだけど…」

 

姉ちゃんの強さはボクが一番知ってる。いくらキリトでも、βテストの時点で姉ちゃんより強いとは考えにくいんだけど…。もしかして、この世界では姉ちゃんそんなに強くない…とか?

と、そう不安に思ったけど、そういうわけでもないらしい。

 

「それはログイン時間の関係だと思うぞ。…俺は使える時間のほぼ全てをSAOに費やしてきたけど、ランはそこまでじゃなかったしな」

 

なるほど…。たしかに姉ちゃんがどれだけ強くても、プレイ時間が少なければ攻略速度は下がるよね。

そんな風にうんうんうなずいて納得していると、今度はキリトの方から質問が上がった。

 

「それより、さっきのはどういうことだ?」

「さっきの?」

「『ユウキの分しかSAOのソフトがない』って話だよ。…ユウキはβテスターじゃないだろ?しかも、ランはβテスター。…どういうことだ?」

「ああ、それはね?」

 

姉ちゃんがキリトに事の経緯を説明し始める。

そう、あれはまだ、ボクがSAOにログインする決意を固めていなかった頃……

 

 

 

 

 

……

 

「木綿季!見てこよれ!ほら!」

「姉ちゃん?どうしたの?」

 

とある休日の日。姉ちゃんがいきなりハイテンションでボクの部屋に駆け込んできたことがあった。…これが全てのはじまり。

この日の出来事がなければ、ボクはSAOにいなかったと思う。

 

「SAOのβテストなんだけど、応募してみたら、当選したんだって!」

「…え?」

 

その言葉を最初、ボクは理解できなかった。いや、理解したくなかった。

ソードアート・オンライン。通称SAO。ボクが知る限り、クリアまでに2年の歳月と約4000人もの犠牲を払った最悪のゲーム。

前のときは、ボクはこの事件にはあまり触れなかった。すぐにメディキュボイドの実験台になったから。でも、今回は話が違う。

…ボクも姉ちゃんも、健康体そのものだし、ボクがせがんでやってもらった血液検査も、特別おかしな反応は出なかった。だから、ゲームが好きな姉ちゃんがSAOに関わるのは、ある意味必然だった。

でも…でも、ボクは姉ちゃんにあの世界には行ってほしくない。ボクは姉ちゃんが必死で生きていたことを知ってる。先が短くても、今を目一杯楽しんで生きていたことを知ってる。そんな姉ちゃんを…今度こそ、死なせたくないんだ。

だからボクは、このあと姉ちゃんに頼み込んだんだ。「SAOをボクにやらせてほしい」って。

 

「…ダメ、かな?」

「うーん…木綿季のお願いだから聞いてあげたいけど…あ、それなら、こういうのはどう?」

 

そう言って姉ちゃんが出してきた交換条件は「βテストを姉ちゃんがプレイする」って条件。

βテストなら被害はない。SAO事件が起きるのは正式サービス初日だから、ボクもやるフリをして事件が起きるまでやり過ごせば危険はない。そう思ってボクは了承した。

 

それから少し経った。姉ちゃんは暇なときは大体SAOにログインするようになっていて、βテスターの友達も数人できたらしい。

 

「木綿季も楽しみにしててね?正式サービスが始まったらなるべく早くSAOを買って、すぐに先行した木綿季に追いついてみせるから」

「『木綿季”も”?』…どういうこと?」

「それがね、すっごい強いプレイヤーが一人いるのよ。だから、その人にも早く追いついて見せる!って思って、いまいろいろがんばってるところなの。ギルドにも入ってない一匹狼で、それなのにLAをバンバン持って行っちゃうような人だから、なるべく差はつけられたくないかなぁ」

 

その姉さんの言葉──今思えばこれがキリトのことだった──でボクにとって一つ、聞き逃せない単語があった。

 

─ギルド。

 

ボクにとってギルドといえば、姉ちゃんから受け継いだスリーピングナイツ。メンバーのみんなはSAOにログインしないはず…いや、ボクみたいに病気になってなくて、それが原因でログインする可能性はあるけど…そこまでは予測できない。

でも、スリーピングナイツで、もう一人思い出す人がいる。…アスナだ。

アスナはSAOにログインする。…多分だけど。逆にいえば、ログインすればアスナに会える。

…勿論、現実世界でも会うことはできなくもないけど。大体の場所は覚えてるし。でも…それじゃ、前と同じ。アスナが一番辛いときに、ボクは何もできない。アスナだけじゃない。キリトたちにだってお世話になった。なのに指をくわえて──それも、2年間も──見てなくちゃならない。

 

それからボクは悩んだ。それはもう盛大に悩んだ。姉ちゃんにも心配されるくらいに悩んだ。

SAOに行ける手段はもうある。でも、ボクがログインすれば姉ちゃん達家族を心配させることになるし、それに、せっかく生きられる体なのに…今度こそ、死んじゃうかもしれない。前みたいな奇跡なんて、そう何度も起きないから。

でも、ログインすればアスナたちを…おこがましいけど、助けられるかもしれない。力になってあげたい。

 

そんな風に1か月以上も悩み続けた。そして…ボクが答えをだしたきっかけは、一つの雑誌のインタビュー記事。載っていたのは──

 

 

──茅場晶彦。ナーヴキア、ひいてはSAOを作った稀代の天才。そして、記事には大きく、こう書かれていた。

 

 

 

「これはゲームであっても、遊びではない」

 

 

 

その記事を見て、ボクは覚悟を決めた。SAOにログインするって。

やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい。後悔するようなことにならなければもっといい。

SAOは遊びじゃない。そう思ってまず考えたのは……アスナが死んじゃう事。

ボクがログインしなかったとして、前と同じ結果になるとは限らない。もしかしたら、アスナ達がログインしない、なんてこともあるかもしれない。でも…ボクが何も知らないところで、何も手出しできないところで、アスナが死んじゃうかもしれない。そう思ったら、ログインしない、なんて事考えられなかった。

姉ちゃんたちには心配かけるけど、必ず生きて戻ってくるから。だから、それまで待っててね。

 

そう決意して、ボクはSAOにログインした………のに。

 

「それでね、ユウキったら─」

「ふふ。ユウキ、リアルでもそんな感じなんですか?」

「でもでも、戦闘してる時のユウキさんはすごくかっこいいですよ?」

「そうだな。…戦闘してるときのユウキは、戦乙女、なんてのが似合いそうな感じだしな」

「「((流石にそれは褒めすぎなんじゃ…))」」

 

和やかに談笑してる姉ちゃんたちを見る。…ボクがどれだけ悩んだと思ってるのさ………戻ったら姉ちゃんに怒られる覚悟でログインしたのに…。

どうでもいいけど姉ちゃんは怒るとすごく怖い。具体的には、冷え切った目をしたアスナの1,5倍くらい。

なんて考えてると、ポンっと肩を叩かれる。ごついから多分エギル。

 

「ま、そう気を落とすな。…確かに姉がログインしてて落ち込むのはわかるが、過ぎたことだ。後悔したって何が変わるわけでもない。だから、今は素直に早いうちに再開できたことを喜んでおけ」

「エギル……うん、そうだね!ボクが落ち込んでるとキリトが泣いちゃうし!」

「だそうだ。キリト」

「べ、別に泣いたりなんて…。まあ、心配はするだろうけど」

「キリトって…ツンデレだったのね…」

「ぷっ…ははは」

 

姉ちゃんのそんな言葉につい吹き出してしまう。アスナ達もよく見ると笑いをこらえているみたい。…キリトは恥ずかしそうにしてたけど。

そのまましばらく、そんな穏やかな空気の中会話を続けてると、キリトが話をきりだした。

 

「さて、これ以上ここで話しててもなんだし、それに明日はボス戦だ。準備の為にも、そろそろ行動開始としよう」

「たしかに、結構時間経ってるね…そうね。準備は早く済ませて、明日の為にゆっくり休もっか」

 

二人の言葉によってボク達は歩き出す。…そうだ。明日はボス戦。気を引き締めないと…

姉ちゃんがいるのはもうどうにもできない。なら、みんなで一緒に生き残るしかない。

 

絶対にみんなは死なせない。

 

そう決意して、ボクはみんなと一緒に準備を進める。第一層のボス、イルファング・ザ・コボルトロード。

─決戦まで、あと22時間。

 

 

 

 

 




ユウキ「ヒロインってなんだっけ()」
キリト「前に自分のことヒロインだとか言ってなかったか?」

ユウキ「うん…そうなんだけどね…そうなはずなんだけどね!?」
キリト「なんか荒れてるな」

ユウキ「作者が悪いんだ…キリトの方がヒロインっぽいのもボクのアバターの描写についてあいまいなのもすべて作者のせい…」
キリト「作者ってのはひどいやつなんだな」

ユウキ「すっごい適当そうに言われても。それとキリト、今言った通りボクのアバターについて質問が挙がってるんだけど、どう?」
キリト「超絶美少女」

ユウキ「いやそういうことじゃなくて…。って何気なく、しかもあとがきでデレないでよキリト…」
キリト「今すぐ忘れてください。…で、アバターだったか?はじまりの街でも言ったと思うけど、元のアバターからリアルの再現アバターになってもあんまり変わりなかったな。黒い髪が少し短くなった程度か?」

ユウキ「アバターはALOのを思い出しながら作ったから髪が長いんだよねー。まあ、ALOではあんまりリアルの容姿からはかけ離れないようにできてたし、今回は現実でもALOに影響されて伸ばしてたんだけど、やっぱり邪魔なときもあるから、もう少し短いかな」
キリト「髪の色も変えたいとか言ってたな、そういえば」

ユウキ「ボクのイメージカラーと言ったら紫でしょ」
キリト「いや初めて知ったんだが…装備も色に統一性とかないし」

ユウキ「今本編でやってる買い物で買う予定!今まではいいのがなかっただけだし」
キリト「まあ、楽しみに待ってるよ」

ユウキ「…なに?いちゃいちゃは飽きた?眠いからもう終わらせて?…書いてるの作者じゃん…後終わらせ方が毎回唐t「それじゃあ、また次回!」終わらせに来た…本気で終わらせに来たよ…」
キリト「気にしない気にしない」

ユウキ「はぁ~。…気を取り直して、それじゃ、また次回に!今度こそ待ちに待ったボス戦だよ!しーゆーあげいん!」
キリト「なぜにひらがな」

ユウキ「この方が可愛くない?」
キリト「次回をお楽しみに!」

ユウキ「スルーされた…」






※この会話には多分に作者の自己解釈が含まれています。



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ボス戦に行く

ついに…ついにボス戦までたどり着いた!

…のはいいけど、まだ終わりません。相変わらず展開遅くてすみません

書きたいことが少しづつかけそうでよかったと思う話でした。お楽しみいただければ幸いです。


sideユウキ

 

 

あの後準備をしっかり終え、現在、ボス攻略に向けて48人が進軍中。

その中でも、ボク達A隊の6人は先頭から2番目──指揮隊、ディアベルさん達の後ろ──を歩いている。役割はアタッカー。まあ、このパーティ編成じゃあ、アタッカーか遊撃しかできそうにないしね。

 

「いいか、俺達はA隊だからC隊…壁役(タンク)がボスの攻撃をはじいた後、そこですかさずスイッチして俺たちA隊が攻撃を叩き込む。基本的にはこれの繰り返しだ。…タンクとかスイッチとか、この前説明したばっかりだけど、覚えてるか?アスナ」

 

この前たっぷりと教え込んだもんねー。…本当に、あの時はほんっとーに疲れた。もうあれを繰り返すような真似はしたくない…まあそう思ってキリトも今聞いたんだろうけど。

 

「大丈夫。ちゃんと覚えてるから。それに…あれだけ練習したのに、忘れるわけないじゃない」

 

どうやら大丈夫みたい。でもなあ…アスナが頭いいのは知ってるけど、時々…いや、本当に時々抜けてるところがあるから…。そしてどうやらキリトも同意見みたい。

 

「ははは…あの無知っぷりを知っている身としては何とも言えないな…なんで壁役が存在するのか、の説明からはじめないとダメって……まあ、それに今回は個人間でのスイッチじゃなくて、パーティごとのスイッチだからな。タイミングは変わらないけど、感覚は変わるはずだから油断はするなよ」

「だいじょーぶだよ。失敗してもボクがフォローするから」

 

これは冗談じゃなく割と本気。…みんなは仮想空間での大規模戦闘──レイドを組むボス戦──は初めてだけど、ボクはある程度の経験がある。あの時ほど動けるとは思わないけど、それでもアスナ達をフォローするくらいのことはできるはず。

─と、思っていたんだけど

 

 

コツンッ

 

「痛っ…くはないけど、なにすんのさ姉ちゃん」

「フォローするなとは言わないけど、無理したらダメ。それにユウキだってそんなこと言えるほど強くないんだから。ユウキが助けるんじゃなくて、みんなで助け合うの。わかった?」

「はーい。…でも、今の姉ちゃんよりは強いよ?………多分、きっと、おそらく」

 

言ってて自信なくなってきた…。

実は昨日、準備が終わった後ある程度の力を見るためにみんなでデュエルをした。ボクと姉ちゃんの戦績は…3戦して、2勝1敗。…正直ギリギリ。

やっぱり姉ちゃんは強かったよ…。まあ、勝因は姉ちゃんがまだ技術的にキリト以下だからかな。…ボクがモンスター戦に弱すぎるだけじゃなくて普通にキリトが万能型なだけってわかってほっとしたのはナイショ。

でも多分、キリトじゃまだ姉ちゃんには勝てない…と思う。10回やったら6回くらいは姉ちゃんが勝つ。…それくらい姉ちゃんの”アレ”は反則じみてる。第六感(シックスセンス)くらい反則。

まあその話は一旦おいといて。

どうやらついたみたい。…ボスがいる扉の前に。

 

「いよいよ…か」

 

キリトがそう呟く。目の前にある扉は、ALOのときよりもはるかに重く、大きく、…ボク達の行き先(未来)に立ちふさがる。

でも、これを…そしてこの先にいるボスを乗り越えないと()には進め(昇れ)ない。何が何でも、生きて、ここにいる48人全員で第二層にたどり着いて見せる。

 

「キリト…約束、覚えてるよね?」

「もちろん」

 

「「必ず生き残る」」

 

そうして、ディアベルさんの号令のもと、ボク達は扉を開け放ち、ボスの部屋へと入って行った──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「A隊B隊、スイッチして攻撃!C隊D隊!その間にポーションで回復を!」

 

フロアにディアベルさんの指示が響き渡る。ボクたちはその指示にしたがって、C隊とスイッチ。ボスがまでひるんでいる間にソードスキルを叩き込むべく接近する。

 

「はぁああああ!!」

 

ソードスキル『スラント』。片手用直剣のカテゴリでも一般的なソードスキルだけど、出が速いし、汎用性が高いから重宝してる。ボクはそれを使ってボスの右足のあたりに切りかかる。

 

「せいっ!!」

「はっ!!」

 

キリトやアスナもそれに続いてソードスキルを放つ。それを食らってボスが一瞬だけ硬直する。

だけど、その隙をつく余裕はソードスキルの技後硬直で動けないボク達にはない。

けど、今はボク達3人だけじゃなくて、頼もしいパーティメンバーが他に3人もいる。

 

「えいっ!!」

「うおおおおお!!」

「……」

 

シリカ、エギル、姉ちゃんの三人が隙を見せたボスに対して追撃をかける。ていうか、姉ちゃんなんで無言なの…すっごいこわいよ…

B隊もボクたちとほぼ同じタイミングで反対側──左足側──から攻撃を加え、ボスの立て直しまでの時間を稼ぐ。

その間に3人の技後硬直が終了すると、ボスも立て直しこっちに攻撃を仕掛けてくる。それをみたディアベルさんが素早く指示を出す。

 

「C隊B隊!A隊とスイッチしてヘイトを集めてくれ!」

『『了解!』』

「俺が弾く!準備しててくれ!」

 

キリトの声を聞いてスイッチしやすいように下がる準備を整えるボク達A隊とB隊。そしてそれと同時にキリトに向かってボスが攻撃をする。

 

「グオオオオオオ!!」

「…っはああ!!」

 

ボスの斧による振り下ろしを『ホリゾンタル』を使って迎撃するキリト。攻撃は相殺されて、ボスもキリトも一緒にのけ反る。その隙にC隊、D隊と入れ替わるようにしつつ叫ぶ。

 

「「スイッチ!!」」

 

キリトも壁役(タンク)隊を、文字通り壁にしてボスの攻撃を避けてボク達のところまで戻って来る。

 

「どうだ、ボスの様子は」

「うーん、あとちょっとでHPがレッドゾーンに、ってところかな」

「まだ、HP残ってるのね…」

「まあ、まだ武器の持ち替えは来てないけど…結構時間経ってると思ってたのに、そうでもなかったみたいね」

 

ほんとにね…いやになっちゃうよ。もう3時間くらいここで戦ってる気がする。気がするだけみたいだけど。

そして、キリトもポーションを飲み終わって、ボク達がまたスイッチのタイミングに備えて剣を構えなおしたときそれは起こった。

 

「グ…グアアアア!!!!!!」

 

うわっ!?なに、今部屋が揺れ…てはいないけど、それくらいおっきい叫び声が…ってボスしかいないか。

ってことは……やっぱり。HPバーが赤くなってる。もう一息、と同時に、ボスが武器を持ち替える合図。

 

「情報通りみたいやな」

 

キバオウがそんなことを言う。そう、情報通りならボスはここでタルワールに持ち替えるはず。でも…なんか様子が…なんだろう、この違和感…

 

「下がれ、俺が出る!」

 

ディアベルさんがそう言って一人前に飛び出る。えっ…ふつうならここは、取り囲んで一気に倒すのがセオリーなんじゃ…まあ、毎回飛び出すボクが言うと皮肉にしかならないけど。

そんなことを考えていたら、ボスが腰から武器を抜きはな……っ!!あれって!

キリトと姉ちゃんも気づいたみたいで、ディアベルさんに向けて慌てて叫ぶ。

 

「タルワールじゃなくて、野太刀!βテストと違う!」

「ダメ!戻って!っ…全員、全力で後ろに飛んで!!!」

 

姉ちゃんの声が聞こえたらしい前衛組(A~D隊)が後退する。C隊D隊はほんとに飛んでこっちに来た。なりふり構っていられないようで、何人かでもつれ合っているところもあった。

その様子を察してディアベルさんがこっちの声に気が付くけど…多分もう遅い。あの位置じゃもう引き返せない。だったら…

 

──ボクが防ぐしかない!

 

「ちょ、ユウキ!待て!」

「ユウキ!あなたカタナスキルなんて知らないのに!…ああ、もう!」

 

キリトと姉ちゃんがボクの後を追ってくる。ほんとなら二人にも協力してもらいたいけど、今間に合うのはボクだけ。あと、ごめんね姉ちゃん。ボクカタナ系のソードスキルなら、嫌ってほどALOで見て来たんだ。

だけど、どんな技を最初に撃って来るのかまでは知らない。だからどのみち危険な事には変わりないんだけど…

 

──でも、1撃。1撃でいい。それさえ防げば、あとは姉ちゃんたちが追いつく。

 

問題はその1撃をどう防ぐか。…正確には、最初に使ってくる技をどうやって察知するか。…システム外スキル『見切り』?いや、予備動作が似ているソードスキルはいくつもある。それだけじゃ正確には判断できない。避けるだけならそれでもいいんだけど…今回は、こっちもソードスキルを使って相殺しなきゃ意味がない。ディアベルさんを助けられなきゃダメなんだから。

何かない?この状況を打開できる、何か!

ボクは走りながらそう必死で考え続ける。多分今、過去最高に頭が回転してる気がする。

 

──ボクが姉ちゃんかキリトなら、ボスが使うカタナスキルを知ってるのにっ!

 

そこまで考えて気づく。姉ちゃん(・・・・・)?…そうだよ、姉ちゃんだよ。姉ちゃんの”アレ”があればたとえフェイントだって……でもあれは姉ちゃんだからできることで…いや、悩んでる暇なんていらんないよ!やらなきゃ助けられないならやって見せる!

幸いボクにはカタナスキルの知識はあるから、完全再現できなくても、なんとか補えるはず…!

 

集中する。意識を深いところに沈ませて、それ以外なにも入ってこないように。

 

─あと3歩。

ボクは剣を構える。どんな攻撃にも対処できるように、あくまで自然体で。

 

─あと2歩。

ボスを見る。相手の動き出しを見逃さないように。今からやることは相手をしっかり”見”ないとできないことだから。

 

─あと1歩。

体を動かす準備をする。速く。姉ちゃんみたいに速く。脳からナーヴギアに信号が出力され、それが(アバター)を動かすまでのプロセス──反応速度を、限界まで速めるつもりで集中する。

 

そしてボクはようやくディアベルさんの元にたどり着く。そして、それと同時にボスがソードスキルを放つ。

まだ、まだダメ…まだ動かないで…見るんだ。限界ギリギリまで…いや、”本来間に合わない”タイミングまで…あと少し、見る…

 

─上…?…ッ違う!

 

「下ぁああ!!!!」

 

──動けっ!!!

その思いが体を突き動かしたのか…ボクの体は、間に合わないはずのタイミングで動き出したにも関わらず、ボスのソードスキル──『幻月』を『バーチカル』で迎撃した。

 

「できたぁぁあ!」

 

その歓喜の叫びの後、ボクは膝をついた。

 

「あとはよろしく!キリト!姉ちゃん!」

「任せろ!」

「任せて!」

 

…そう言ってボクの左右から飛び出していった二人を見た後、ボクはちょっとだけ思った。

 

「息ピッタリ…姉ちゃんばっかりずるい」

 

…って、戦闘中に考えることじゃなかったかもね。

 

 

 

 

 




ユウキ「さーて、やっとあとがきだよ…」
キリト「なんでそんなに疲れてるんだ?」

ユウキ「いやほら、本編でボクメッチャ頑張ってるじゃん?なんかすっごいことやってるよね?」
キリト「まあそうだな。あれって結局、どういう事だったんだ?」

ユウキ「これ以上はネタバレだから後回しかなー。きっと次話で作者が書いてくれるから、それまでまっててね!」
キリト「すがすがしいほどの人任せだな…」

ユウキ「どっちにしろ、最終的に作者には負担かかるんだからしょうがないしょうがない」
キリト「哀れ…作者…(合掌)」

ユウキ「自分で自分を慰めるってどういう気分なんだろうね」
キリト「それは言ったらダメなやつなんじゃないか?」

ユウキ「大丈夫大丈夫。作者の心はガラス細工よりちょっとは堅いから」
キリト「あんまり変わらないな」

ユウキ「でも結局。今回あんまりエギルとかしゃべらなかったね。あ、シリカも」
キリト「そうだな。まあ、ボス戦の最中に話し込むのもどうかと思うけど…」

シリカ「本編に出ないからって、会話がないとは限りませんよ!」
ユウキ「え!?あとがきのゲスト二人目はシリカ!?…アスナや姉ちゃんは?…ん?本編でいっぱいでてるからいいだろ?…シリカも出してあげればいいだけの話なんじゃ…」

シリカ「いいんです!むしろここのほうが、ライバルが少ないし…ええ?そういうのは本編でやれ?その機会を作ってくれないんじゃないですか!あ、ちょ、ま、まって、まってくださいいいいぃぃぃぃ......」
キリト「哀れだ……でもなんか助かった気がする」

ユウキ「…シリカもいなくなっちゃったし、今回はこの辺にしておこっか」
キリト「…そうだな。でも、結局エギルは…」

ユウキ「あっ…作者…今度は可哀想だからエギルも…ね。…それではまた次回!ばいばーい!」






作者「エギルは…うん。うまい絡みが思いつかなかったんだ…」







次も早めに更新できるよう頑張ります


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ボス戦に行くpart2

遅れてすみませんでした!!!

昨日投稿できそうだったんですが…いいところでWi-Fiが死ぬという事故が発生。復旧したので投稿します。(昨日でも遅れているという事は言ってはいけない)

ボス戦パート2。久しぶりのキリト君視点があります。
今回、紺野姉妹には暴虐の限りを尽くしてもらいました。だけど困惑するキリト君、キミも大概です。
と、そんな回になっていると思います。楽しんでいただければ幸いです。


sideユウキ

 

 

 

ボクは目の前の戦闘を見ながら、昨日の出来事──姉ちゃんとのデュエルを思い出していた。

 

姉ちゃんは強かった。というかめちゃくちゃ速かった。それはもうとてつもなく速かった。それもAGIのステータス的な速さじゃなくて、プレイヤーごとに異なる反応速度。それが異常だった。ボクとキリトも結構鍛えてたはずだったんだけど…

反応速度って言うのは、脳から伝達される信号がナーヴギアに伝わり、体…アバターを動かすまでの速度のこと(だと思っている)。それが速い姉ちゃんは、みんなよりワンテンポ早く動くことができる。例えば、不意打ちを受けたときに、普通の人なら振り向いて防御、までが精一杯のところ、姉ちゃんの場合は躱して反撃までする余裕が生まれる。

そしてそれは、フェイントなんかの無効化にもなる。みんなより遅く判断しても同じタイミングで動き出せる姉ちゃんは、攻撃を”見てから”対処できる。視線や動きから行動を予想する必要がなくなって、ただ圧倒的なまでの反応速度を駆使して攻撃を避ければいい。おかげでボクもかなり苦戦した。まあ、”わかっても避けられない”攻撃には意味ないから、躱せない状況に持ち込むか、ステータスの速さ的に対処不可能な攻撃をすれば勝てるんだけど…でも、姉ちゃんがレベルも上がって、反応速度に体がついてこれるようになったら、対人戦──1対1のデュエルなら無敵といってもいい。

 

 

システム外スキル──『超反応(リアクト)

 

 

 

それは、今のところ姉ちゃんだけに許された特権。あらゆる攻撃をその反応速度を以て対処する。

ボクはさっき、その『超反応(リアクト)』を中途半端にだけど、模倣してボスのソードスキル『幻月』を防いだ。

足りない反応速度は経験で、ステータス的な速さは……ALOみたいに反応速度がそのままアバターの速度になればよかったんだけど…ここはSAO。アバターの速度はステータスで決まる。だからソードスキルをブースト──ソードスキルに合わせて体を動かす──して補った。

…だけど、やっぱりそれは真似事だったって…目の前の姉ちゃんはそう思わせる。

 

「なんだ…あれ…」

「さっき止めたあいつもそうだが…A隊ってのは化け物揃いかよ…」

 

ちょっとまった。なんか聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするんだけど…。化け物って…姉ちゃんのことならわかるけど…百歩譲ってもキリトも別にいいけど…ボクまで巻き込まないでよ!?

って思ったけど、改めて考えてみれば、ボクはボスの攻撃を──それも、まわりのみんなからすれば知らないはずのソードスキルを──とっさに防いでディアベルさんを助けてるし…ひじょーに遺憾だけど納得は…うん。一応できなくもなくもないような気がしなくもない。

でもまあ、それを差し引いてもやっぱり姉ちゃんは頭一つ抜けてると思う。だって、さっきから”ボスの攻撃を一人で全部防ぎきってる”んだから。

……うん。つい、何を言ってるのかわからないと思うが──っていうアレを言いたくなる。流石におかしいよ姉ちゃん…なんで武器防御(パリィ)だけで壁役(タンク)と同じことができるの…。ボク達よりレベルは低いはずなのに。

まあ、このボスが姉ちゃん一人で対処できる技しか使ってこないせいもあるけど…それに、さすがに防御以外に気は回らないみたいだし。むしろ回ってたら怖い。

だけど今回のボス戦は姉ちゃんだけじゃない。防御の必要がなくなった今、残りのメンバーは──攻撃に集中できる。

 

キリト、アスナ、エギル。

 

やっぱりっていうかなんというか、この三人が図抜けてると思う。エギルはもともと斧を使から重要なダメージソースだし、アスナは得意の素早い剣技でまわりの隙を埋めるような立ち回り。一見地味だけど大事なことをやってる。アスナらしく、堅実な戦い方。…時々フォローをシリカに任せて突っ込むけど。

そして何といってもキリト。姉ちゃんが武器防御(パリィ)で作った隙にもの凄く生き生きとした様子でボスに突っ込んでいく。…ソードスキルで攻撃。ボスが大きく怯む。うんHPの減りがおかしい。片手剣なのにエギル並にダメージ与えてない?…βテスターって、みんな姉ちゃんやキリトみたいな人ばっかりなのかな…?ちょっと自身なくしそう…。

『人のこと言えるの?』って幻聴が聞こえた気がした。無視無視。

あ、そうそうシリカはアスナと連携をとりつつ他の隊に指示を出してる。主に、ボスのHP現象に伴ってまた出てきた取り巻き…ルイン・コボルト・センチネルなんかを近づけさせないために。…どう考えてもアスナがこっちの方がいい…って最初は思ってたけど、案外きちんと統率が取れてる。少なくともボクよりもうまい。みんなそれぞれ凄いことをしてると思う。っていうか、なんかボク達のパーティだけで戦ってない…?

そんなことを考えてると、どうにか我を取り戻したらしいディアベルさんに声をかけられる。

 

「俺はもう大丈夫だ。キミも向こうの援護に向かってくれ」

「援護…必要なのかな…?」

 

ボクはもう一度姉ちゃんたちを見つつそう言った。絶対、やることない…でも行かないわけにもいかないし……あ、援護が必要ないならもうボクも好き勝手に暴れちゃえばいいんじゃ…?

そこまで考えて、僕はディアベルさんに堂々と言い放った。

 

「援護は多分いらないと思うけど、ボクも行ってくる」

「…?援護じゃないなら、何をしに…?」

「ボスのLAを取りに!」

 

あ、言ってから思ったけど…そういえばディアベルさんの目的って、ボスのLAだったような…悪いことしたかな?…まあいっか。そのときはそのとき…ってことで。

そんな無責任なことを考えつつ、ボクはキリト達の元に駆け出した。

 

 

 

 

sideキリト

 

 

「ユウキ!私が攻撃を弾いたらキリトと一緒に突っ込んで!」

「了解、姉ちゃん!」

 

後ろから追いついてきたユウキにランが指示を出す。それに答えてユウキが俺のところまで来る。…って、一緒に!?いやいや、ただでさえアスナと同時に攻撃してるのに、ユウキも同時攻撃はさすがにマズイ。最悪、互いの武器がぶつかってソードスキルがキャンセルされる。それを避ける技量は俺にもアスナにもないぞ…?

 

「でもさっきみたいな無茶はしないでよ?一人でボスの初見のソードスキルを…それも、避けられない状況で受けようなんて…私たちみたいに作業分担して戦って!」

 

「「「「いやそれはおかしい(です)」」」」

 

ユウキと、二人の会話が聞こえてたらしいアスナ、エギル、シリカの三人が突っ込む。俺も声には出さなかったものの概ね同感だ。…ボス相手にその”分担”が俺達のパーティ内で完結していること自体がおかしいことに気づいてくれ…

と、ランの意外な天然に出鼻を挫かれたけど、それよりさっきのことを…って、もう遅いか…

ランに作戦の可否を問う前に、ボスが動きが出していた。

 

「グオオオオオオォ」

「来たぞ!」

 

エギルの注意が飛ぶ。ランもそれに合わせて迎撃の構え。…最初こそ不安だったけど、もうランに防御を任せることに異議はない。というかアレを見せられてどう不安に思えばいいんだ…?俺ほどカタナスキルについては詳しくなかったはずなんだけど…

そういうわけで、とりあえず防御はすべてランが引き受けてくれる。俺は攻撃に専念すればいい…んだけど…ホントにユウキどうするつもりなんだ…?…まあ、ここはユウキを信じて突っ込むしかない、か。ユウキの技量の高さはここにいる誰よりも知ってるし、何よりパートナーを信頼できないような奴は、パーティを率いるのも、これからギルドのトップにつくこともできないと俺は思う。だから、俺はユウキを信じる。

 

「行くわよ……スイッチ!!」

 

ランがその言葉と同時にボスの攻撃を弾く。そして俺たちは駆け出した。だけど、そのあとのランの様子を見て絶句した。

 

 

 

 

パリィィィン

 

 

 

 

そんな効果音とともに、ランの剣が砕け散る。

 

「─えっ!?嘘っ!!」

 

──耐久地限界!?なんで…いや、あれだけの攻撃を単独で相殺し続けたんだ…そうなってもしかたないか。

俺がここで戻って防御に…いや、なにする気なのかはいまだにわからないけど、ユウキもいる。ここはこのまま突っ込む。そして……絶対に削りきる!

 

「ユウキ!アスナ!ここで仕留めるぞ!エギル!シリカ!あとのフォロー頼んだ!」

 

これでもし削り切れなくても少しは大丈夫だ。シリカが俺達が戦っている間に他のプレイヤーを立て直しているし、エギルのパワーがあればユウキが最初に防いだソードスキル──『幻月』を初めとした、初見では防ぎにくいソードスキル以外には対応可能だ。

そうして、まずは俺からボスの右側から『スラント』を放つ。それに続いて、アスナの『リニアー』が左側から繰り出される。

真ん中にほとんどスペースなんてないぞ…?ユウキはどこに…

そんなソードスキルを放ちながらの俺の思考は、目に入ったユウキを見て、このボス戦で二度目の絶句した。

 

ユウキは──”上”にいた。

 

剣から放たれるのは黄緑色の燐光。片手剣突進技──『ソニックリープ』だ。同じ突進系の『レイジスパイク』よりも射程は短いものの、現状唯一、”空中に向けて”放てるソードスキル。

左右は俺たちがいる。かといって真ん中は狭すぎてダメだ。…だから、上。考えれ見れば当然の結論ではあるけど、普通思いつかないし実践もしない。それに、ユウキ…着地した後のことまで考えてるのか…?…いや、考えてないな。そんな妙な確信があった。

そしてソードスキルが終了する。ボスのHPは……まだ残ってるか。もう一撃──そう思うが、未だ俺の体は技後硬直に縛られている。先に硬直が終わるだろうアスナがこの隙を埋めてくれるはず。…そう思っていた俺は、本日三度目の絶句をする羽目になった。原因はまたしてもユウキ。

 

「はぁあああ!!!」

 

絶句、というかもはや唖然。となりのアスナを見ても、やっぱり似たような表情をしていた。恐らく他のみんなもそんな感じだろう。

だって、ユウキは未だ空中。…にもかかわらず、その手に握る片手剣『ソニックリッパ―』からは、青色の燐光。

 

そう、ユウキは”空中で”ソードスキルを発動させていた。

 

…確かに、システム的に不可能ではない。ソードスキルはモーションさえしっかりしていれば発動する。だけどそれを体制が不安定な空中で…しかもぶっつけ本番──恐らくソニックリープを放ちながら思いついた──で成功させる。その姿はまるで空中で舞う一匹の蝶の様だ…なんてらしくないことを考えつつ、ユウキの仮想世界での体の動かし方に関する才能に戦慄する。まるで何年もこの世界で過ごしたことのあるような…。そんなことはあり得ないにも関わらず、そんな気さえしていた。

 

「せぁああっ!」

「うぉおおお!」

 

そしてユウキは『バーチカル』をきっちり発動させ、ボスを両断するべく落ちてくる。それに一瞬遅れて硬直から立ち直ったアスナが『オブリーク』を放つ。二人よりさらに一瞬遅れて、俺は『バーチカルアーク』で追撃する。

三人の攻撃がほぼ同時にボスに突き刺さる。だが、まだボスのHPは残っている。恐らくあと一撃。そして俺のソードスキルは2連撃だ。

 

──倒せる

 

「あぁあああああ!!!」

 

俺の渾身の2撃目がボスへ襲い掛かる。ユウキとは逆に、下から上へ両断せんとばかりに全力で切り払う。

 

「─っらあ!!」

 

そのまま勢い余ってふらつく。技後硬直を経て倒れそうになったところを剣で支えてなんとか姿勢を保つ。

 

 

──これで終わった

 

 

その事実を実感するとともに、ランの剣とは比べ物にならない莫大な効果音とともに、ボスはポリゴン片となって砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   《Congratulations!!》

 

 

 

 

   《You got tha last attacking bonus!》

 

 

 

 

 

 

 




ユウキ「へーいキリト!ついにボス戦が終わりそうだよ!喜べー!話が進むよ!」
キリト「なんかわからないけど、楽しそうだな」

ユウキ「そりゃ楽しくもなるよ!話の展開が遅いと定評のあるこの作品が一つの節目(作者認識)を迎えたんだよ!?」
キリト「まあ、1層突破って考えたら確かに節目なのかもな」

ユウキ「ここまで長かったね…1層…1か月経ってないのに、もう3か月くらいたった気がするよ…」
キリト「俺でもわかるメタ発言だな」

ユウキ「実際に攻略するよりも多くの時間をかけて書いた文がこれ…うん。作者もボクたちに習って特訓するべきだよ」
キリト「あれは特訓と呼べるのか…?どう考えてもユウキの個人的趣味な気がするんだが」

ユウキ「そこは気にしないの!趣味と実益を兼ねてるんだって!」
キリト「趣味…か。俺はあんまり趣味とかないんだよなー」

ユウキ「そんなことないよね?機械弄りとか好きじゃなかったっけ」
キリト「あれ?そんなこと話したっけか?まあ、たしかに好きだが趣味って言うにはなんか趣味っぽくないような…」

ユウキ「うーん…趣味っぽい趣味かー。…あ!ボク裁縫とか得意だよ?」
キリト「!?…なんだと」

ユウキ「…何その反応。ボクだって一応女の子なんだけど?」
キリト「いや…ユウキなら絶対アウトドア系だと思ってたからな…」

ユウキ「あーわからなくもないけど、体調崩すことが多かった時期もあったからその時に覚えたんだ。何もしないのが辛い!っていうときもあるよね?」
キリト「なろほどな…俺は体調崩してもパソコンに向かい合ってた気がするよ」

ユウキ「イメージのまんま過ぎて何も言えない…そして作者とまったく変わらないその性質に驚いてるよボク…」
キリト「へぇ…気が合いそうだなその人」

ユウキ「コミュ障なところまで変わらないから気は合わないんじゃないかな」
キリト「あっ無理だな」

ユウキ「…自分で言っててなんだけど判断早いね…?コミュ障同士にしかわからないなにかがあるのかな」
キリト「まあユウキは誰にも物怖じしないしな。そういうのとは無縁だろ?」

ユウキ「まあねー。そりゃキリトよりはね」
キリト「その勢いでギルドの団長も引き受けてくれればよかったのに…」

ユウキ「さーてそろそろ(文字数的に)次回のあらすじかなー!?」
キリト「文字数を盾にして逃げやがったな…」

ユウキ「突っ込みは無視!次回!ボクが落ち込む!キリトが落ち込む!姉ちゃんが落ち込む…かもしれない!以上!」
キリト「あらすじにしてもあらすぎるだろそれは…。というかなんでそんなにみんなして落ち込むんだよ」

ユウキ「だいたいキリトのせい」
キリト「ええ!?いやいや、俺がなにしたって言うんだよ」

ユウキ「その辺も含めて、次回にこうご期待!またねー!」
キリト「あ、また逃げたな…あー、えっと、ま、また次回ー。…何回やっても慣れないなこれ…」







内容あまり進んでない点については誠に申し訳ないです。もっと精進します!


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第二層に行く

ロストソングでユウキがでる!よっしゃあ!キリト放置してユウキしか使わないぜ!

昨日投稿しようと思ってたのですが↑なんて思ってるうちにかなり遅れました。すみません


sideユウキ

 

「うおおおおおお!!」

「やった!やったぞ!」

「ボスを…倒したっ!!」

 

キリトがボスを『バーチカルアーク』でぶった切ったあと、みんなは喜びの声をあげた。まあ、誰も死なずに無事1層のボスを倒せたんだから、喜ぶ気持ちは痛いほどわかる。ボクも、ボスを倒したこと自体は喜んでるけど…現在絶賛落ち込み中。ついでに姉ちゃんも隣で落ち込み中。

 

「キリトさん!やりましたね!」

「ああ。シリカもお疲れ様」

「キリト君、大丈夫?なんだかふらふらしてるように感じるけど…」

「いや、大丈夫だよ。終わった…って実感したら、なんか体から力抜けちゃってさ」

 

向こうでキリトたちがそんな会話を交わしていた。エギルはそれを微笑ましそうに見ている。いつもならボクもあそこに混じってるんだけど…ちょっと落ち込んでてそれどころじゃない。

全身で落ち込みを表現…というか、膝をついてうなだれていると、それに気づいたのかキリトが声をかけてきた。

 

「ユウキ…?どうしたんだ?なにかあったのか?」

「あ、あははは…いやーちょっとねー」

 

元凶は目の前のキリトなんだけど……いや、キリトが悪いわけでは全くなく…ただ、ね…ゲーマーとして譲れない何かがあったというか…

 

「あ……もしかして、LA…か?」

「うぐっ」

 

図星である。ボクはあのときの空中『バーチカル』でとどめを刺すつもりだったんだけど…やっぱり空中で無理やり発動したからか、体制があまり整わない中ソードスキルのブーストなんて真似はできず…結果、システムアシストに体を任せるしかなかった。

当然、それで大ダメージが出せるはずもなく…キリトに全部持っていかれた…ってわけ。

 

「あー…その、なんだ…えっと」

「下手な慰めはいらないって…余計悲しくなるから…」

 

まあこれはボクが飛んだのが悪いというか…そんなことをせざる負えない指示をだした姉ちゃんが悪……いやボクもノリノリで突っ込んでいったけど…

まあそんなこと言ってても始まらないし、もう気にしないようにしよう…うん。切り替えは大事。

 

「うう……剣が……私の剣が……」

 

忘れてたけどここにも落ち込んでる人が…そういえば剣砕けてたね、姉ちゃん…。強化したアニールブレードみたいだったし…残念だったろうなぁ…

うん。ここはボクがひと肌脱ぐしかないよね。姉妹だし。

 

「元気出して姉ちゃん…ほら、ボクのサブ武器の強化済みアニールブレードあげるから…」

「ユウキ…あなた…ううっユウキも落ち込んでるでしょうに…」

「姉ちゃん!」

「ユウキ!」

 

だきっ

 

みたいな擬音が出そうな感じで抱き合うボクと姉ちゃん。麗しき姉妹愛って奴だね!

 

「何を漫才やってるんだお前ら…」

 

失礼だなーキリトにはこの姉妹愛がわからないの?との思いを込めたジト目×2セットの視線がキリトを貫く。

 

「いやそんな目されても…ほら、そろそろあっちに集合するぞ」

 

あっち…?とおもってキリトの示す方を見ると、みんなが未だ喜びの声を上げつつディアベルさんの元に集合してた。あと集まってないのはボク達だけみたいだ。

 

「はーい。今行くよ」

「ふーん。…なんかキリトとユウキって…」

 

?ボク達がどうかしたのかな。姉ちゃんはボクとキリトを交互に見比べながらこういった。

 

「…兄妹みたいだね!」

「…!た、確かに…キリトってなんか兄っぽいかも…」

「き、兄妹…」

「えーっと、…兄ちゃん?」

「うっ…い、いいから行くぞ!……はぁ」

 

キリトは顔を赤くして踵を返す。と思ったらため息をついて落ち込む。顔を上げて明るい顔になった…と思いきやまた落ち込む。…キリトは何故に百面相してるんだろう。

 

「あ、あはは。あの、ラン…キリトくんはね、その」

「うん、今ので大体わかった。ちょっと悪いことしたかな…」

「…?なんの話?…それより、アスナと姉ちゃんも早く行こうよ!」

「…うんそうね。ユウキがこんなんじゃ…キリト、ガンバ」

 

なんか姉ちゃんがキリトを応援してるけど、何を応援してるんだろう…

そんな疑問を置き去りにするように二人はキリトのあとに続く。…まあ、いっか。大事なことならいつか教えてくれるよね。

そうしてボクも二人の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!ボス討伐お疲れ様!全員生きて勝つことができて、本当によかった!まあ、俺が少しヘマしちゃったけど。…でも!ミスをしてもフォローし合えるような仲間がいるってことがわかって良かったと思う!みんな、どうだ?」

 

「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

ディアベルさんのそんな声に雄叫びで応えるみんな。でも、相変わらずディアベルさんって演説得意だなー。今だって、多分ボク達の強さを誤魔化すために言ったんだろうし。

ボク達は今回あまりにも活躍しすぎた…と思う。自意識過剰とかじゃなければ。そして、そんなボクたち…正確にはキリトと姉ちゃんがβテスターだってばれたら、カタナスキルの情報。ボス相手に1パーティで立ち回れる強さ。あとは…LAに対する嫉妬、かな?その辺のことでまた揉め事が起きてたと思う。ディアベルさんは確かキリトがβテスターだって知ってたし、キリトの推測ではディアベルさん自身もβテスター。隠してるとはいえ、厄介事になるのは避けたかったんだと思う。

 

「じゃ、ここで今回の立役者達に出てきてもらおうと思う。…A隊の人たち、出てきてくれないか!」

 

え、なんか呼ばれた。どうしよう、凄い目立ってる。みんなにどうするか聞いてみようっと。キリト……はダメだね。うん。完全にテンパってる。じゃあここはアスナに頼ることにしよう。

 

「(アスナ、どうするの?)」

「(どうする、って…出ていくしかないんじゃない?面倒臭いことにならないといいけど…)」

「(凄い目立つもんね…でも呼ばれてるし、行かない方が面倒になりそうなんだよね…ああ逃げ場がない…)」

「(とりあえず行きましょう)」

 

アスナはシリカとエギル、そして姉ちゃんに声をかけて、人込みをかき分けつつディアベルさんの元へ歩いていく。

じゃあボクはキリトをっと…ってまだ戻ってこないよ…これ以上待たせてもなんだし、手早くいかないとね。

ボクはキリトの手を取ってアスナたちの後を追う。

 

「うぇえ!?」

 

なんか変な声出してさらにテンパった。…そんなに人前が嫌なのかな?まあどのみち拒否権はないし、我慢してもらわないとね。

 

 

 

 

 

「今回、俺を助けてくれて、ボスの討伐にも大きく貢献してくれたA隊のみんなだ!みんな、拍手!」

 

ディアベルさんに呼ばれて前に出たボク達は、ボス戦に参加したみんなからの大きな拍手と歓声に迎えられた。うわあ…キリトじゃないけど、これすっごく恥ずかしいね…。

でも目立つのも悪いことばっかりじゃないと思う。歩いてる途中で気づいたけど、ボク達はギルドを作らなきゃならないんだし、有名になるのは必要なこと。ならこういう機会は丁度いいのかもしれない。

 

「それじゃ、A隊のみんなから誰か代表して一言、お願いできるか?」

「えーっと…」

「キリトー頑張ってねー」

「お願いね、キリト君」

「…やっぱりそうなるのか…」

 

悩むキリトを無視してみんなでキリト推し…ボクも言ってて少し可哀想になってきたよ…

でもここはキリトが言っておいた方がさっき思った知名度アップに役立つし…多分アスナもそう思ってキリトに任せたんだと思う。…多分。めんどくさかっただけかもしれない…。

 

「じゃあ、俺から一言。…俺はキリト。普段はそこのユウキと二人でコンビを組んでる。まずはみんな、ボス戦お疲れ様」

 

キリトはそう言って話し出した。…キリトもギルド設立の宣伝、気づいてるのかな?わざわざボクの名前も出してるし。…あと地味に省かれたアスナが怒ってて怖い。後でキリトに謝らせよう。

 

「多分、知ってるプレイヤーがほとんどだと思うが…俺はβテスターだ」

 

その言葉に、場がざわめく。いくらクラインとアルゴの影響で周知されてても、自分から断言するとは思わなかった…ってところかな。しらなかったプレイヤーもいるだろうし。…でもまあ、確かにどのみち話すことだけど…そこから切り込む?…こういう時だけ大胆というか、向こう見ずになるよね…キリトって。

 

「さっきのボスのスキル…カタナスキルも、βテスターでも上の方まで上った俺と…ユウキの隣にいる、ランくらいしか知らなかった。だからあそこまで有利に戦えたんだ。……それをよく思わないプレイヤーがいるのも知ってる。情報の独占…確かにその通りだ。今回のボスみたいなβテスターでもわからなかった変更点はともかく、ほかの情報…クエストや狩場の情報、それになにより、”この世界での戦い方”を知ってる。その恩恵が大きいことは否定しない」

 

…みんな、なにも言わない。擁護の声もなければ、批判の声もない。みんながみんな、雰囲気にのまれている。…やっぱりキリトに話させてよかったと思う。ボク達じゃ、ここまで聞き入らせるような空気は作れない。

 

「俺もクライン経由で情報を広めたりはしたけど…それだけじゃダメなのはわかる。…だからギルドを作ることにした」

 

また場がざわめく。キリトの言葉の意味を測り兼ねてるのかもしれない。まあ、話が急すぎるしね…ギルドの設立とか、まだできないし。

 

「今すぐ作るわけじゃない。ギルド設立のクエストができるようになったらの話だ。そのギルドはβテスターも、βテスターじゃなくても平等に受け入れる。目標はただ一つ。”必ず生き残る”こと。…そのためにはβテスターと初心者プレイヤーの間で小競り合いなんてしてる場合じゃない…と俺は思ってる。βテスターも、あんたらみたいな生粋のゲーマーばかりじゃない。レベリングのやり方すら知らない素人がほとんどだった。…だから、βテスターだからって、初心者プレイヤーだからって反発してたら進めないんだ。…”MMOのやり方”を知ってるβテスターがどれだけ戦力になるかは、さっき俺たちが見せたはずだ。でもそれだけじゃなく、俺たちのパーティは初心者だったプレイヤーだっている。俺達について来れば強くなれる、なんてことは言わない。けど…初心者はβテスターから情報を、βテスターは自分の知らないことを教え合う。戦いたくないプレイヤーは生産職で戦闘をする人のフォローを。…そんなギルドがつくれたら、現状を少しは改善できると思うんだが…ディアベルさん。アンタはどう思う」

「うん。俺も賛成だ。攻略には、βテスターだけじゃ数が足らない。初心者プレイヤーだけじゃ質が低い。そのお互いの欠点を補いあうギルドができたら…最高だと思わないか?みんな!」

 

ディアベルさんの問いかけにはっと我に返るみんな。そして言われたことを理解し始めたのか、近くの人たちと今のキリトの宣言について話し合っている。

そして、そのタイミングでキリトは黒いコートを装備して、2層に続く階段の方へ踵を返す。…多分あれが今回のLA。…いいなぁ…かっこよくて。次こそはボクも…

そしてキリトは顔だけ振り返り、こう続けた。

 

「強制的に入らせようだなんて思ってない。自分たちでよく考えて決めてくれ。…もし入りたいって決めたやつがいたら、情報屋の”鼠のアルゴ”に連絡を入れてくれ。そうすれば俺達と連絡が取れる」

「待たんかい!自分ら、どこ行くつもりや!」

 

そんなキリトを呼び止める声が。あれはたしか…キバオウ…だったっけ?とりあえずなんかムカッとした人だ。

 

「どこって…2層の転移門のアクティベートだよ」

「…なんでわざわざ自分らがいくねん。他の奴らにまかしたってええやろが」

「…ボス戦で疲れが残ったまま知らないモンスターに襲われたいならどうぞ。…ここはβテスターに任せた方がいいと思うが」

「ぐっ………はよ行けや」

 

って、眺めてる場合じゃないって、キリトの後追いかけないと!

ボク達は小走りでキリトの後を追う。…って、姉ちゃんはわかるけど、シリカとエギルはついてきちゃってもいいのかな…?

 

「ねえ、エギル。今ついてくるとキリトの仲間認定されて、ギルドに入らざる負えなくなるよ?いいの」

「何言ってんだ。そんなのさっき前に立たされた時点で似たようなモンだろうが。それに、俺たちは仲間じゃねえってのか?」

「いやいや、そんなことはないよ!ただ、いろいろと面倒事がありそうなボク達についてきてよかったのかなーっておもったからさ」

「面倒事から子供を守るのも、大人の仕事だ。それに、やりたいこともあるしな」

 

やりたいこと…?まあ、あとで聞けばいっか。それより、エギルが仲間になってくれるって方がうれしい。あとはシリカだけど…

 

「シリカは?いいの?」

「はい!ダメって言われたならともかく、自分からキリトさんの傍を離れるなんて考えられません!」

「あ、そうですか…」

 

シリカはすごい単純だったよ…まあ、それもそっか。キリトの傍を離れるって、ボクも考え付かないし。

 

 

「じゃ、いろいろあると思うけど、これからもよろしくね!」

 

そうしてボク達は第一層の迷宮区のボス部屋、その長い階段を駆け上り、第二層へと到達した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、一応聞くけど姉ちゃんは?」

「妹がいるのに離れるわけないでしょ?」

「ごもっともです」

 

こっちは物凄く予想通り(シスコン)だった。

 

 

 

 

 




ユウキ「ゲームだよゲーム!ボクがついにゲーム出演!」
キリト「前作でも出てただろ」

ユウキ「キリトがメタ発言…だと…」
キリト「作者がメタ発言できないキャラを書くむずかしさに辟易したらしい」

ユウキ「ネタ切れか…切実な悩みだね…でもあとがきで1000文字近く使う作者の自業自得だと思うんだボクは…」
キリト「肩の力を抜いて書けるのがいいらしいぞ」

ユウキ「なあ、そんなことよりゲームだよ!みんな予約した?作者はボクが出るってわかって予約してきたよ!」
キリト「新手のステマかよ…流行らないぞ今時」

ユウキ「前書きで作者に放置宣言されたからってイライラしないの。ボクの魅力にみんながやられちゃうのは当然だからね。仕方ないよ」
キリト「べ、別にイライラなんてしてないぞ?…それに、どうせ二刀流のチート性能に頼る場面が出てくるんだから、その宣言に意味はないな」

ユウキ「作者、ホロウフラグメントではキリトLv135でボクはLv154らしいけど…(ボソッ」
キリト「なん…だと…」

ユウキ「あ、打ちひしがれてる…まあ、こういう時は放置に限るよね。それじゃ、文字数が長くなる前にこの辺でお別れ!また次回!お楽しみにー!」





みなさんはロストソング買いますか?なかなかおもしろそうなので楽しみです(それが理由で更新ペースが落ちそうという懸念はありますが)


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第8層に行く

しれっと更新再開します。約一年も更新せず本当にすみません。

ゆるしてくださいなんでもしますから()

とまあ冗談はともかく、あのままボス戦後第二層、プログレッシブの話には進みません。飛ばして第8層です。
理由?書ける気がしなかったからです…。
待っていてくださった方がいるかはわかりませんが、またちょくちょく更新すると思いますので、どうぞよろしくお願いします。


 

 

ボク達が第1層を攻略してから一ヶ月と少し。ボク達は今、第8層の主街区『フリーベン』にいる。

ギルド『ライジングナイツ』も無事設立されて、当初の予定通りキリトが団長、ボクは副団長になった。副団長、って言うほど偉そうなことは、ほとんどしてないんだけどね。

そんな中目を引くのは、やっぱりアスナの活躍かな。ボクもキリトも、人を率いるのはあんまり得意じゃないけど、アスナがいるおかげでかなり助かっている。実質的な指揮はほとんどアスナが取っているって言っても過言じゃないね。

 

さて、それなら団長と副団長たるボク達は何をしているのか。それは─

 

「キリト君、この後宿にアルゴさんが来るはずだから、対応よろしくね、団長」

「お、おう」

「ユウキ、あなたは私と一緒に来て。ギルドのメンバーとこの階層の情報共有、それと偵察に行くつもりだから」

「ちょ、アスナまた少人数でフィールド駆けまわるつもり!?いくら階層が上がるごとに狭くなるって言っても、この広いフィールドを数人で調査するのは無理があるよ!それに情報だって、キリトがいなきゃろくに…」

「大丈夫、ランもいるし、キリト君が知ってる情報も全部聞いて、メモ取ったから。どの道、主に調査するのはβ版との変更点。慎重に警戒して進むから、多少の情報の差異はあっても変わらないと思う」

 

─こんな感じで、団員のみんなと同じように、アスナに率いられてた。

あっれー…おっかしいなぁ…ボク達一応、上司なんだけど…。なんて、こうなるのは目に見えてたし、全然不満には思ってない。キリトもそれは同じみたいで、基本的に指示はアスナに任せていた。

 

ただ、このギルドが完全にアスナに依存してるかというと、そうじゃなかったりする。

勿論、さっきのボクみたいに、アスナに反対したりもすれば、ボクやキリトが指揮を執る時だってある。あと、得意分野では初期パーティ─姉ちゃんやシリカ、エギル─のみんながそれぞれ指示を出したりしてるし。

 

とまあそんなことを考えてはいるけど、基本アスナの言う事は適格だし、ボク達は補足、修正、あと前に立つのが主な仕事。それ以外は門外漢である事に変わりはないし、話は終わりにして、ゆっくりこの第8層の眺めを楽しむとしますか…。

そう思って、ボクが歩きながらこの欧州風の街を見渡していると、話は終わっていなかったみたいで、キリトがアスナに意見していた。

 

「アスナ、まあ情報の方は、俺がいなくてもなんとかなると思うんだが…少人数で行くのはやめた方がいい」

「何か理由があるの?」

「いや、戦力的には問題ないし、幹部連中も、8層に昨日着いたばかりでやることもないだろ。けど、ギルドに入ったばかりのプレイヤー、特にゲーム慣れしてない連中には、今のうちに探索に慣れておいて欲しい」

「どういう事?」

「今はまだ、俺やラン─つまり、βテスト時の情報がある。けどそのアドバンテージももうすぐ消える。だからその前、そして戦闘慣れして来た今のうちに、マップを探る時の感覚を覚えておいてほしいんだ。今ならまだ俺達がフォローに入れる余裕もあるけど、階層が進めば進むほどそれも難しくなるし…最終的には俺達だけじゃ手が足りなくなるからな。ボスも手ごわくなって来るだろうから、全体的にレベルアップさせて行きたい」

「なるほどね…。いずれは、ただついてくるだけじゃダメになる…か。…うん、わかった。なるべくβテスターとそれ以外が混ざるようにパーティを組ませて、各パーティに一人か二人、監督役を用意するね」

「ああ。それと、そういうメンバーを多めに動員する以上、疲れてるプレイヤーもいるだろうし…本格的に動くのは明日でもいいだろ。今日は通達だけにしておこう」

 

おお…なんかギルドのトップっぽい会話してる…。…ボクずっと空気だけど、忘れられたりしてないよね…?

そんな事を考えてる間に話はまとまったみたいで、キリトは東側にあるボク達の宿屋を目指し歩き出そうとしていた。

 

「それじゃ、私はエギルさんのところで生産職の人たちの様子、見てくるから」

 

アスナもそう言って、ボク達とは反対側、街の西側に向かった。それを追いかけようとボクも足を踏み出……そうと思ったところで、キリトに襟をつかんで引き寄せられた。

 

「ああ…アスナが遠ざかっていく…」

 

未練がましく両手を突き出してアスナを求めるボクと、それを邪魔するキリトの図。どう見てもキリトが意地悪しているようにしか見えない光景だけど、まわりをちらほら歩いているうちのギルドのプレイヤーも、見慣れたのか特に誰も突っ込まない。むしろ微笑ましそうに見てくる。…むぅ。副団長として不満だよ!

 

「あのなぁ…同じ宿なんだから、最悪夜には会えるだろ?」

「そうだけど…そもそもなんでボクキリト側にいるの?偵察に行く時は付いてきてって言われたのに…予定が変わったらさらりと置いて行かれるし…」

 

そもともとボクはアスナと一緒に行動する予定だったのに、どうして邪魔するのさ。

そう内心で言いながら、襟をつかんでいる手を振り向きざまに払い、腰に手を当て異議申し立てをする。

だけど、キリトは呆れ顔をしながら反論してきた。

 

「さっきの話聞いてたか?これからアスナがやるのは、団員達へ明日の予定の通達をすることと、生産職プレイヤーの様子見だ。つまり戦闘は無し、エギル達との会議のみ。…副団長らしく団員達とバチバチ討論したいなら止めなかったぞ?」

 

肩をすくめながら、諭すようにボクに説明するキリト。…ああそれは無理かなぁ…ボク会議とか向いてないし…。特に生産職の人たちとの話って、大体ギルドの予算云々の話だし…。

うん。これからもボクは戦闘面で頼りになる副団長で行こう。難しい話はアスナに任せた。

そうしてうんうん頷いて納得しているボクを見て、またも呆れたような顔をするキリト。でも今度は諦めたように一つ息をつき、ボクに向かって一つのウインドウを表示してきた。

 

「ほら、これを見ろ、ユウキ」

「ん?何これ、クエスト?」

「ああ。ここに来る途中、少し遠くに見えた森があっただろ?そこで受けられるクエストだよ。因みに戦闘系クエスト。昼過ぎたらこれに連れて行ってやるから、今は我慢して俺に付き合ってくれよ、副団長さん」

「む、餌付けみたいで尺だけど…その話乗った!」

 

まあよくよく考えてみれば、アルゴが来るって事はおそらくギルドの新メンバー候補が来るってことで…つまり面接だ。ボクもいた方がいいのは当然か。

それでもアスナについてきてと言われたのは、単純に戦力の問題だね。基本、このギルドはキリト、姉ちゃん、ボク、アスナが最高戦力だし。ただしこれは技術どうこうもあるけど、単純にレベル差の話だ。

 

「餌付けみたいって…クエストは餌かよ。…ま、いっか。納得したなら行くぞ、ユウキ」

「はーい」

 

ボクは元気よく手を上げて返事をし、踵を返したキリトの後に続いた。

 

 

 

 

 

「ふぃー。…おわったぁー」

「おつかれさん。少し休憩して、昼飯でも食ってからクエスト行くか」

 

ギルドに加入したいという人たちとの面談…面接?を終えて数分。ボクとキリトは宿のソファーにぐったりと体を預けていた。

いやー、特に加入条件とかないから断ることなんてないんだけど…一応、副団長だし、それっぽい雰囲気出してなきゃいけないって、姉ちゃんやアスナに言われたしなぁ。

 

ともあれ疲れる時間も終わり、これからは楽しい時間の到来!ってね。

 

「うん。そうだね。あ、でもちょっと待った、一応、姉ちゃんに連絡入れてくるから」

「ランに…?ああ、心配するからか。相変わらずシスコンだな、あいつは」

 

ホントだよ…ボクももう子供じゃない…いや子供だった。しょうがない、後で説教くらい覚悟して、メッセージだけ残して行こう。流石に連絡なしはちょっとマズイしね。不測の事態があった時とか。

 

「これでよし……っと」

「なんて言い訳したんだ?」

「言い訳だなんて失礼だなぁ。ちゃんとした連絡だよ!…ちょーっと誤解を招く書き方をしたかもしれないけど」

「はぁ…。…まあ、あとで一緒に怒られてやるから、ちゃんと説明しておけよ」

「ホント!?ありがとう!やっぱり持つべきものは頼れる団長だよね!」

 

キリトがいれば姉ちゃんの怒りも和らぐだろうし。キリトと姉ちゃんの仲が良すぎるのも複雑だけど、背に腹は変えられない。…キリトも姉ちゃんがどれだけ怖いか知ったらドン引きするんじゃ…おっと寒気が。この辺にしておこう。

 

「オッケー。じゃあ、今度こそ行こっか」

 

そうしてボク達は、8層の入り口付近から見えた森へ向けて繰り出すこととなった。

キリト曰く、そのフィールドダンジョンの名前は『聖獣の墓』。

 

あれ、森じゃなかったっけ?墓……?

 

 

 

 




ユウキ「久しぶり!」
キリト「実に一年ぶりだな」

ユウキ「遅すぎるよね。さすがにそれは無いよ、作者」
キリト「まあいろいろあったんだろ」

ユウキ「そういう自己弁護はいいから素直に書かなくてごめんなさいって謝ろっか」

作者「更新を待ってくれていた皆さん本当にすみませんでした!!1」

キリト「イメージはジャンピング土下座でいいか?」
ユウキ「五体投地でも足りないと思うけどね」

ユウキ「それよりキリト、もうすぐホワイトデーだけど…ボクには何かくれないの?」
キリト「お返しもなにもバレンタインに何も貰ってないんだが」

ユウキ「それは作者に言ってよ!バレンタインなんてネタにしやすいイベントを見事にスルーしたせいでボク達何もできなかったんだから!」
キリト「縁がないから気づいたら終わってたとは作者の弁だが」

ユウキ「そんなものなのかなぁ。女の子にとっては結構大事らしいけどね」
キリト「らしいってなんだ、ユウキも女の子だろ?」

ユウキ「ボク恋愛より遊んでる方が好きな子供だったし…やりたいことが多くてそれどころじゃなかったのかもね」
キリト「よくわからないな。俺はやることなんて、もっぱら機械いじりかゲームだけだったし。遊びが好きって意味では似てるのかもしれないけど」

ユウキ「ボクはアウトドアがほとんどだったけどね。もう楽しくて。旅行とか旅行とか旅行とか」
キリト「旅行ばっかりかよ…親御さんも苦労しそうだな」

ユウキ「姉ちゃんも『こっち側』だから大丈夫大丈夫」
キリト「あのシスコン…目に浮かぶようだな」
ラン「シスコンで悪かったわね」

ユウキ・キリト「「!?」」

ユウキ「久々の更新でいきなり…」
キリト「三人目のゲスト…だと…?」

※ただのネタ切れです

ユウキ「でどうしたのさお姉ちゃん」
キリト「シスコンは事実だろ」
ラン「シスコンの何が悪いの?いいじゃないシスコン。誇ることよシスコン。妹を大事にして何が悪いのかしら」

ユウキ「ボクは結構恥ずかしいけどね…」
キリト「日常での苦労が伺えるな」
ラン「そういえば、放課後クラスのみんなの前でシスコンの何が悪いか力説したときユウキが…」

ユウキ「わー!ちょっとストップストップ!それ以上はダメ!語るの禁止!あの後しばらく学校行きづらかったんだから!」
キリト「詳しく」
ラン「流石キリト。気が合うわ。でね…」

ユウキ「これ以上はホントにダメ!もう切り上げるからね!久々の更新で後書き千文字とかそのやる気本文に回してよ!それじゃ、また次回ー!」
ラン「あ、ちょ、勝手に切り上げないでよ!それ言いたかったのにー!」




作者「更新1年もあけてしまい本当にすみませんでした!ではまた次回!」



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