もしもタツミがワンパンマンだったら (安全第一)
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1.趣味でヒーローやってるヤツ

なんか思い浮かんだから書いてみた。


 千年続いた栄華を誇る帝国、に属するとある小さな村に一人の少年が居た。

 少年の住む村は貧困である。そして少年は自身を育ててくれた村を救いたいと思っていた。

 だが少年には力が無かった。力が無ければ村を救うどころか一人で生きる事など出来はしない。

 そんなある日、危険種が村を襲った。結果としてその危険種は元武術師範の退役軍人が斃したが、何も出来ず逃げ回るしかなかった少年の心には悔しさや虚しさが募り、自身の非力さを呪った。

 

 故に少年は強くなろうと決意する。

 

 少年は自らの肉体を虐めて虐め抜いた。内容とすれはただのトレーニング。一日に腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回、ランニングを10km。これらを毎日休む事なくこなした。

 食事は勿論一日三色きちんと食べた。朝は果物など軽い物を食べた事もある。そして極め付けは夏も冬も同じ服(替えは沢山あった)で過ごした。

 当然ながら、最初は死ぬほど辛いと感じてしまい、一日くらい休もうかと考えた事もある。

 だが少年は強くなり村を救う為、どんなに苦しくても血反吐をぶちまけても毎日続けた。

 足が重くなり動かなくなってもスクワットをやり続け、腕がプチプチと変な音を立てても腕立て伏せを断行し、精神的限界を超え肉体的限界が来ようとも一度として休む事は無かった。

 そしてトレーニングから四年が過ぎた頃、ある変化が訪れる。

 

 

 

 髪が色んな意味で物凄く強くなっていた。

 

 

 

 風呂に入りどんなに頭を洗ってもその髪型が崩れる事は決して無かった。それどころかその髪は尋常外の硬度を誇り、あらゆる刃を受け付け無い髪となっていたのだ。

 髪を切ろうとしてナイフを使おうとすると、逆にナイフが刃こぼれしてしまう程に。

 時に元武術師範の退役軍人に剣で頭を斬って欲しいと頼み、退役軍人はその頼みに対して抵抗したが、最後はどうにでもなれとなり半ばヤケ気味で剣を振るう。結果として少年の頭が斬れる事は無く、逆に剣が刃こぼれするどころか折れてしまった。その光景を見た退役軍人はその場でしばらく呆然としていたそうだ。

 

 戦闘面は更にとんでもなかった。再び危険種が村を襲った時があったのだが、その時は最悪な事に超級危険種が襲来してしまったのだ。

 村の人々は超級危険種を見て終わったと誰もが思ってしまう。退役軍人ですら太刀打ち出来ないほどであるそれは村を駆逐してしまうと誰もが思い、諦めていた。

 そんな絶望的な状況をたった一人の少年が打ち砕く。

 

 

 それもワンパンで。

 

 

 村の人々は目を疑った。だがそれよりも村が壊滅しなかった事を喜んだ。そしてそれ以降少年は村の人々から英雄視されたのだ。

 だが同時に彼は知る。自分の力は己の想像以上に荒唐無稽になっていた事を。超級危険種をワンパンで屠った彼は自身の力の全てを悟った。しかし少年はトレーニングを辞めるつもりは毛頭無かった。寧ろこのままもう一年間続けて更に強くなってやろうと思ったのだ。

 村の危機を救ってくれた少年をヒーローと呼んでくれた事が嬉しかったから。無力さに打ちひしがれていたあの頃とは違うと村の人々が証明してくれたから。少年は更に強くなろうと思い、トレーニングを続けた。何よりこのトレーニングが好きになっていたのだ。

 その日から『趣味』でヒーローを始め、トレーニングをこなし、危険種をワンパンで狩り、子供達と遊ぶ、そんな日々を過ごした。

 

 

 

 そんなこんなであと一年間トレーニングを続けた結果───

 

 

 

 

 

 

 

 ───少年は強くなり過ぎたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 帝歴1024年。とある街道にて。

 

「あー……長い。道のりが長い」

 

 少年は一人歩き続けていた。

 

 その少年の名をタツミと言う。

 

 とある小さな村にてトレーニングを続けて五年、強くなり過ぎた(・・・・・・・)と感じた彼はもう十分だろうと思い、貧困である故郷を救うべく帝国へ出稼ぎに向かっていた。

 

「どんだけ道のり長ぇんだよ。道中で盗賊に出くわすとかツイてないな俺……」

 

 嘆息しながら言うタツミの言葉通り、二時間前に彼は盗賊と遭遇していた。結果は今の彼を見れば分かるだろう。

 

「とゆーか俺が出稼ぎに行く直前でサヨとイエヤスも一緒に行くとか無理があるだろ。まだ俺より七歳も年下なのに」

 

 故郷には妹分と弟分がいる。二人はよくタツミに懐き、タツミもよく遊んだものだ。二人と遊ぶ前にトレーニングは終えていた為、遊ぶ時間は幾らでもあった。

 特に妹分であるサヨはタツミをお兄ちゃんと呼び、いつも引っ付いていた事を思い出す。勿論イエヤスもだが、二人とも素直なのでこのまますくすくと育っていってくれれば嬉しいと思ったタツミである。

 

「可愛い奴らなんだけど、どうしても俺に依存しすぎだと思うんだよなぁ。出稼ぎに行く日とかめっちゃ泣きまくってたし」

 

 そしてタツミが帝国に出稼ぎに行く日は二人して泣き叫んだものだ。タツミは二人をあやすのに三時間も掛かってしまった。強くなり過ぎたタツミだが、彼が最も倒せないと思うのはこの二人だけかも知れない。思わずタツミは苦笑していた。

 

「まあ結果的に泣き止んだから良しとするか。ここまで手を焼いたのは初めてだけど」

 

 最終的に二人ともタツミについて行くという爆弾発言までしてしまったのだからタツミも困り果てた。まあ最後は退役軍人の人が巧妙に言いくるめて収拾を着けてくれたのだが。あの退役軍人にはトレーニングの時代から世話になっており、タツミが一生頭が上がらない人物である。今でも感謝してもしきれない程だ。

 

「……ん?」

 

 そんな事を考えながら歩いていると、タツミは先の街道で起こっている異変を感じ取る。というか視力も尋常外なので普通に見えているのだが。

 

「なんだあれ、危険種か?」

 

 先にいる光景では街道に土竜が表れ、一つの馬車を襲っていた。

 

「ど、土竜だぁああぁああぁぁ!!!」

「こんな街道に出るなんて聞いてないぞ!?」

「逃げろぉおぉお!!」

『ヴオ"ォオォォオ"オォオ"!!!』

「ギャアアアアアア!」

 

「……行くか」

 

 タツミは一歩足を踏み出す。その瞬間姿が消え、土竜の前へと立ち塞がる。

 

「ッ! 君は!?」

「人助けと名前売り、か。……まあ好きじゃないけどやっておいて損は無いな」

 

 背中のバッグから手袋を取り出し、それを手に嵌める。そしてそのまま悠々と土竜に向かって歩き出した。

 

「少年! 何をしている! 君が敵う相手じゃない!」

 

 兵士の一人がタツミにそう叫ぶ。普通の人間では到底太刀打ち出来ないのが危険種だからだ。見た目一般人のタツミを見てそう思ったのだろう。

 

『オ"オォォオ"オォォオ"ォオッ!!!』

 

 土竜が鋭い爪をタツミに向けて振りかぶる。このまま土竜の爪は彼を抉り、血みどろの光景を作り出すに違いない。そう確信してしまった兵士は目を瞑る。

 目を瞑った彼は見えなかったのだが、もう一人の兵士がその一部始終を見ており、彼もタツミが殺される未来を思い浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「せい」

『グボオ"オォォオ"ォオォォオ"!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「は……!?」

 

 一瞬にして肉塊と化す土竜。その光景を目の当たりにした兵士は目を疑った。

 

 信じられない。

 今、何が起こったのだろうか。

 彼は先程の光景を思い返す。土竜に襲い掛かられたタツミが何をしたのかと。

 

 

 

 ───ワンパン。

 

 

 

 そう、タツミはただ土竜を殴っただけだ。だがその拳の速さが余りにも速過ぎた為、殴った右腕が全く見えなかった。

 理解が追いつかない兵士は呆然とし、もう一人も目を開けたら土竜が肉塊となって死んでいる光景を目の当たりにして同じく呆然としてしまう。

 そんな兵士達を他所にタツミは手袋を外した後、手拭いを取り出して血が付着した手袋を拭いている。

 

「き、君は一体何者なんだ……!?」

「ん、俺? 俺は───」

 

 土竜をワンパンで倒した後にも関わらず平然としている彼は、その顔に少し笑みを含めてこう言った───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───趣味でヒーローをやっている者だ」

 

 

 

 ───彼はこの先もワンパンで様々な危機を乗り越えて行く事になる。

 

 




もしかしたら続くかも知れないし続かないかも知れない。


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2.入隊試験のペーパーテストの内容がワケワカメなんだが

またまたやってしまった……
短編だったこれを連載してしまう暴挙に出てしまった!
だって、だって読者様が「続き待ってます!」って期待を込めた感想が多かったんだもぉぉぉぉぉん!!!
そしてこれを連載するにあたって絶対「計画通り」とか思ってるんだよぉ!!(泣

私ガデー! ジョウゼヅガイデデモ! オンナジオンナジヤオモデェー!
ンァッ! ハッハッハッハッー! この小説ンフンフンッハアアアアアアアアアアァン!
アゥッアゥオゥウアアアアアアアアアアアアアアーゥアン!
コノショウセツンァゥァゥー……アー! 世の中を……ヴッ……ガエダイ!






「ここが帝都か……」

 

 ほえー、とタツミが感嘆の声を上げた先には巨大な建物が聳え立っていた。

 

 帝都。

 

 そこは帝国の都市であり、様々な人が集う場所。一見すれば賑やかであり、活気ある光景が広がっている。

 

「そういや、あのオッサン達が言ってたな……」

 

 しかし、タツミは此処に来る前に助けた兵士から良くない噂ばかりを聞く事になった。

 

 それは少し前に遡る。

 

『アンタもしかして帝都で一旗上げようってのか?』

『んー、一旗上げるというか、一番稼げる場所は帝都しかないからなぁ……』

『……』

『どうしたんだ? 帝都には何かあんのか?』

 

 タツミがそう答えると、兵士達がお互いに目を合わせて黙り込む。その様子にタツミは気になり、彼等に問い掛けた。

 そしてタツミの質問に兵士の一人が重々しく口を開ける。

 

『帝都は……君が思うような夢のある場所じゃないぞ。賑わってはいるが、君が倒した土竜よりもタチの悪い化物が一杯いるんだ……』

『それって街中で危険種でも出るのか?』

『人だ……人だけど心は化物。そんな連中ばかりなんだ……』

『へー』

 

 軽い気持ちで兵士の話を聞くタツミ。人外を超えた何かになってしまったタツミにとって化物と言われても強さの基準が分からない。一度だけ村の外で帝国軍を率いている電撃を使う筋肉モリモリマッチョマンの変態将軍と鉢合わせて戦った事があるが、ワンパンでお星さまにして即終了だったので拍子抜けしたのは懐かしい思い出だ。

 まあ強い奴と戦えるならそれで良いか、と兵士達の心配を他所にそんな事を考えていたのだった。

 

『まぁ、オッサン達がそう言うなら観光程度で済ませて故郷にスタコラサッサするわ。働き口なんて他にもあるし。ふわぁ〜……』

((本当に大丈夫かこの少年……?))

 

 欠伸をしながらそう言うタツミに兵士達が心配するのも無理は無かった。

 

 そして現在に至る。

 

「……なんつーか嫌な感じしかしねーなぁ。どっからか悲鳴とかも聞こえるし」

 

 帝都に到着してから既にタツミは帝都に嫌悪感を抱いていた。活気あるこの光景は見掛け倒しなのだと理解する。

 

 血生臭い。あと悲鳴ばかりで煩い。

 

 普通なら血の匂いはしないし、人々の声ばかりで悲鳴などは一切聞こえない。だが人外を超えたタツミの耳と鼻がそれらを捉えていた。

 

「うん、オッサン達の言う通りだわ。観光程度で済ませて帰ろ」

 

 此処にいると面倒臭い事に巻き込まれかねない。よく分からないが、なんとなく本能がそう伝えているので、帝都で一稼ぎする事をすっぱり諦めたタツミだった。というかやる気ゼロになるの早過ぎだろお前。

 

「でもまぁ観光するんだし兵舎とかも見ておいて損は無いよな」

 

 もしかしたらという思いもあり、一応入隊試験がどんなものなのか確認する為にタツミは兵舎へと向かうのだった。

 

 ついでに金髪のおっぱいデカいねーちゃんが尾行していたのには気付いていたが、敢えて無視。ただこの先も尾行を続けているのならそのデカいおっぱい揉んでやろうかとか考えたがセクハラは趣味じゃないのでやめた。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「アー、お前も入隊希望者か?」

「いや、入隊希望というか兵士になろうかなーとか思って試験の内容次第なら受けようかなーと。という訳で試験内容どんなんなの? 教えてくれるとありがたいなーなんて」

「教えるかバカ」

「えー」

 

 入隊希望者が集う兵舎にてタツミとオッサン(名前知らない)がそんな会話があったとかなかったとか。

 

「じゃあ前の試験内容はどないなん?」

「なんで関西弁やねん。ホッ○ペッパーのグルメサイトのCMに出て関西弁にアフレコされてる訳ちゃうねんで」

「お前も関西弁やん。というかちゃうねんとか大阪さん弁やでそれ」

「……アホな」

 

 関西弁同士の会話もあったとかなかったとか。ホット○ッパーは別やで。

 

「まさかこれも教えるかバカで返って来るんだろ? 言わせねーよ」

「あ、前回のなら良いよ」

「良いんかい」

 

 あっさりと試験内容(前回のだが)を教えてくれる事にオッケーを出したオッサン。オッサンもやる気ゼロの目をしているので似た者同士なのかも知れない。アホか。

 

「ほい、これが前回の試験内容」

「どらどら」

 

 試験内容の用紙を差し出すオッサン。その用紙を受け取ったタツミは内容はどんなものなのか、と思い用紙を見る。

 

 

 

 

 

 事前事項

 この入隊試験の内容は全て筆記試験でーす。体力テストとか実技テストだと思った? 残念! 知力テストでしたー! ふへへ、引っかかってやんのー!

 んでその内容なんだけど、問題はたったの5問! こんなにお得なキャンペ……ゲフンゲフン、テストは無い! さあ張り切って答えてくれたまえーーー!!!

 

 ①:極東の国ジャポンにある世界最古の木造建築物は何でしょう?

 

 ②:『7+7÷7+7×7-7=?』の答えは?

 

 ③:あずにゃんで有名な中野梓の誕生日は?

 

 ④:ていうかこれ真面目に答えている人っているのかな? あときんモザのアリス超可愛いよね。

 

 ⑤:ちくわ大明神。

 

 

 

 

 

「ボール(クッシャクシャに丸めた用紙)をゴミ箱へシュウゥゥゥゥーーーッ!! 超! エキサイティン!!」

「いきなりどうしたお前!?」

 

 用紙をクシャクシャに丸めてジャイロボールでゴミ箱にぶち込んだタツミ。なんだかそうしなければいけないという使命感を感じた。

 

「オッサン……」

「お、おう。何だ?」

 

 するとタツミは物凄く真剣な表情でオッサンに詰め寄る。何処と無く禍々しい狂気を感じたオッサンは顔を引き攣らせながら次の言葉を待ち、一体何が来るのかと身構えた。

 

 そして───

 

 

 

「俺……やっぱ兵士になるのやめた!!」

「諦め早過ぎだろ!?」

 

 

 

 兵舎の中にいた全員がズッコケた。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「はぁ〜……」

 

 とぼとぼと帝都の中を歩くタツミ。志願はすっぱり諦めたタツミだったが、オッサンは賢明な判断だと言ってくれた。

 曰く、経済不況・政治不信の今の世の中なので兵士になるにも一苦労するとか。志願を募った兵士達でもあのワケワカメな筆記試験の結果で分けられるらしい。そして更に合格した兵士の中で抽選を行い決定するのだとか。しかも合格した兵士達はみんな辺境行き。はっきり言って使い捨ての捨て駒同然なのだ。オッサンも出来るならこんな事はしたくないと言っていた。

 

「『ほんまこの帝都はブラック企業ばっかやで……』って関西弁で言ってくれたなー」

 

 やっぱり似た者同士なのだろう。就職したくても出来ないタツミと辞めたくても辞めることが出来ないオッサン。早く革命軍がここを制圧してくれねーかなー、とまでボヤいていたので最早末期である。

 

「………はぁ」

 

 タツミが立ち止まりため息を吐く。するとその場から一瞬で姿を消した。

 

「!?」

 

 その光景を見て驚愕した人物が一人。一体何処に、と辺りを見回したがタツミはどこにもいなかった。

 

「さっきからなに俺のストーカーしてんだ金髪おっぱいねーちゃん」

「ファッ!?」

 

 そして金髪おっぱいねーちゃんの背後に一瞬で現れるタツミ。そんなビックリドッキリな現象に思わず変な声が出てしまった。

 

「び、びっくりしたぁ!? あと私はストーカーじゃない!」

「いや、帝都に入ってからずっと俺をストーカーしてるねーちゃんが否定してもなぁ……」

「な、なんの事かな〜?」

(え、まさか最初からバレてた!?)

 

 出来るだけ一般人を装い気配まで辺りと同化していたのにも関わらずタツミは気付いていた。おっぱいねーちゃんは冷や汗ダラダラになりながらもなんとか平静を保とうとする。まあバレバレなのだがタツミはそこに敢えて突っ込まず問い掛けた。

 

「んで、ねーちゃんが俺に何の用だ?」

「あ、あぁ〜、えーとね、少年が随分とお困りの様だったからお姉さんが力を貸してやろうかと思ってね」

「いや別に要らないけど」

「要らないんかい!?」

 

 まさかの要らない宣言。予想外の返答に再びビックリなおっぱいねーちゃん。

 

「いや、その少年はさ、帝都にロマンを求めて地方からやって来たんだろ?」

「ん? 別にそこまでロマン求めてないし志願諦めてこれから観光した後普通に帰ろうとしてたんだが」

「やる気ないのかお前は!?」

「ない!」

「胸張って言うな! あとドヤ顔が地味にウザい!」

 

 なにこの少年。全然ペースが掴めないんだけど。おっぱいねーちゃんはそこまでやる気なさそうな態度のタツミに戦慄する。こういう男の子は見た目おっぱいに見惚れてあっさり人を信用しそうな人柄だなと思ったのだが全くの正反対と来た。とんでもない大物である。

 

「今の世の中が不況でも決して働く事が出来ない訳じゃないし。それに───」

「それに?」

 

 タツミは帝都を見渡し、顰めっ面を浮かべる。明らかに不機嫌そうなその表情が気になったねーちゃんはつい聞き返した。

 

「───ここ、スゲー血生臭いんだよな。しかも悲鳴まで聞こえて来て煩いったらありゃしねぇ」

「!」

 

 何気なく吐いたタツミのその発言にねーちゃんが目を見開く。それはある集団に所属している彼女として決して看過出来ないものだった。しかもねーちゃんですら『アレ』を使わなければ察知出来ないそれを目の前の少年は難なく感じ取っているのだ。もしかしたらこの少年はとんでもない逸材なのかも知れない。

 

「少年、話がある」

「ん? 今度は何の話だ? もしかして就職の話か?」

 

 さっきとは打って変わり険しい表情をしているねーちゃんにタツミは気にせずに話を聞く。もしかしたら良い働き口を用意してくれているのかと淡い期待を込めながらだが。

 

「あぁ、勿論就職の話だ。少年が良いって言うなら即採用かもね」

「ふーん、そりゃあ良い話だ」

 

 就職出来るなら問題ないタツミだが、給料が高くなければすぐにお断りするつもりである。いかんせん故郷の村は貧困。沢山稼いだ方が良いに決まっているのだ。

 

「それで、給料は?」

「月給三十五万だけど? 沢山働いてくれたらボーナスもあるよ」

「よしそこに就職する」

「あっさり決めたな少年!?」

 

 月給三十五万円。それは公務員の月給に匹敵し、経済不況である現在の帝国では破格の待遇である。もうこの時点でタツミは決心が着いていた。そこで働こうと。

 

「それじゃ付いて来なよ。とびっきり良い仕事だからさ!」

「どんな仕事なんだろうな〜、オラワクワクすっぞ。あ、俺の名はタツミ。ねーちゃんは?」

「私はレオーネ。よろしくなタツミ」

(さて、あとはこの少年の実力がどうなのか……剣を持っていないから素人かな?)

 

 タツミを一目見てセンスが良いだけの素人と判断したレオーネ。あまりやる気のなさそうな目つきからしてまさか大した戦力にならないのでは、という思いがよぎる。

 

 だがレオーネは知らない。

 

 彼の武器は拳一つなのだという事を。

 

 そしてこの少年、タツミが人外を超えた何かなのだという事を。

 

 

 

 まあタツミ自身は面倒事に巻き込まれる事になるなんて思いも寄らないんだけどね!

 

 

 

 




タツミがあの筆記試験に回答した場合。

 ①:極東の国ジャポンにある世界最古の木造建築物は何でしょう?
 A:アパホテル

 ②:『7+7÷7+7×7-7=?』の答えは?
 A:スリーセブン

 ③:あずにゃんで有名な中野梓の誕生日は?
 A:マスオが早稲田大学卒なのは知ってる。

 ④:ていうかこれ真面目に答えている人っているのかな? あときんモザのアリス超可愛いよね。
 A:これ答えた俺がバカみてーじゃねーか。あとこの世界にアニメないと思う。

 ⑤:ちくわ大明神。
 A:なんでや! そこはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲やろ!




 結論:タツミはおバカなのである。



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3.就職先にはおっぱい・天然・ツンデレ・ホモォ・変態・野生児といった個性豊かな社員仲間がいました。

はい続き更新しまっせー!

面白さは保証出来ないけど読んでくれると嬉しいな!(白目


「ほらタツミ、ここが新しい就職先だよ!」

「山ん中じゃねーか」

 

 月給三十五万円という餌にホイホイ釣られて就職を決めたタツミ。そんな彼の前に待っていたものは帝都から北に10km離れた山の中に建っている巨大な建物だった。

 

「んで、社長とかいるんだろ? 一応ここで働く身になる訳だし挨拶ぐらいしておかねーとな」

「いるけど今は留守にしてるよ?」

「社長不在で俺を勧誘しても良かったのかよ」

 

 なんで代表取締役が不在なんだよ、と心の中で突っ込んだがまあ後から挨拶しても問題ないかとあっさり放り投げる。不在の社長が悪いのだという事にした。あと社長が不在だという事を忘れていたレオーネもギルティで。

 

「……細けぇこたぁいいんだよ!」

「後で絶対シバかれるぞねーちゃん」

 

 いずれやってくる社長の制裁を思い出し冷や汗ダラダラのレオーネにタツミは心の中で合掌する。こんな適当な部下を持って大丈夫なのかこの職場。あと社長がいない間にこの職に携わる訳にはいかないので社長が帰って来るまでは非正規社員という事になった。要するにアルバイトという訳だ。

 

「それで社長はいつ帰って来るんだ?」

「えっと……三日後だったっけ?」

「うろ覚えじゃねーか。しかも疑問形ってなんだよオイ」

 

 というかボス(どうやら社長じゃなくボスと呼ばれているらしい)帰って来るの遅過ぎだろ。一体どこで道草食ったらそんなに遅くなるのやら。タツミはほとほと呆れていた。

 

「まぁ取り敢えずこの事は社長に即行で報告するから」

「い" や" あ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ" ま" っ" て" え" ぇ" ぇ" ぇ" ぇ" ぇ" ぇ" ぇ" ぇ" ぇ" な" ん" て" も" す" る" か" ら" あ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ" ぁ"!!!」

「正社員が非正規社員に泣きつく光景なんて初めて見たぞ」

 

 レオーネが過去に何をやらかしてボスの制裁を恐れているのかは分からないがこんなになるとは予想外だった。まあ幾ら泣きついても報告するつもりなので制裁は免れない。哀れレオーネ。

 そして非正規社員が正社員よりも高い権力を得た瞬間である。まだ職場に着いて三十分も経っていないのに力関係(権力とかその他諸々)があっさり変動するアッパッパーな職業があるとは知る由もなかったタツミだった。

 

「そういえば他にも社員っているんだろ? まだ分からねーから紹介してくれ」

「あ、確かに仲間を紹介するのを忘れてたな。あと仲間であって社員とかじゃないんだけど……」

「あ、そっち(社員仲間)の方か」

「多分だけど分かってないだろお前」

 

 そんなこんなで仲間の元に案内する事にしたレオーネの後を付いていく。レオーネの後ろ姿を見て尻でけーなとか安産型だなとかセクハラっぽい事を考えていた。ただしタツミ自身にいやらしい感情など微塵もないので突っ込んでいいのやら突っ込まなくていいのやら。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「こいつはシェーレ。基本天然キャラだ」

「ふーん」

 

 会議室にいたのは眼鏡を掛けた紫色が特徴の女性。見た目読書が好きそうだが本の内容が『天然ボケを直す100の方法』というものに対して突っ込んではいけない。

 

「あれ、その人は誰ですか?」

「あー、私が連れて来た新人だよ」

「ボスに報告しなくて良いんですか?」

「それはほっといてくれ」

 

 視線を明後日の方向に向けるレオーネ。

 

「俺の名はタツミ。この職場に働く事になったからまあよろしく」

「よろしくお願いします。というかここに働きに来て良かったのですか?」

「何が?」

「ここの仕事上、仲間にならないと殺されちゃいますよ?」

「そん時はこの職場全壊させて行くから問題ナッシング」

「えっ」

 

 

 

 

 

「ちょっとレオーネ! ソイツ一体誰よ!」

「誰だあのピンク」

「あいつにはマインって名前があるからピンクと呼んでやらないでやってくれ」

 

 ツインテールのピンク、マイン。以上。

 

「私の説明雑すぎない!? ちょっと! 文句あるなら(ry」

 

 

 

 

 

 

「ここは訓練所という名のストレス発散所だ」

「結構豪華なんだな」

「まあね。んで、あそこにいるのがブラートだ」

 

 訓練所と呼ばれる場所は江戸時代の武士が住んでいる家とかに良くありそうな庭があった。

 そしてそこで目にも留まらぬ速さで重り付きの槍を振るう男性が一人。

 

「どぉりやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「汗臭そうだろ?」

「汗臭そうだな」

 

 誰がどう見ても汗臭い印象しかない。しかも髪型はリーゼントと来た。そしてマッチョである。

 

(この世界のマッチョ率高えなオイ)

 

 原作でもマッチョキャラは多かったと思う。これはタツミが思った事ではなく作者が思った事だが。

 

「おっ、何だレオーネじゃん! ん? そこの少年は……?」

「コイツはタツミ。私が勧誘したから見込みはあるぞ」

「なるほどな。お前が推薦した奴なら構わないが信用出来る奴なのか?」

「あ、コイツ裏切る危険性ゼロだから大丈夫。給料で釣れたし」

「なら良いか」

「アンタ等マジで軽いな。あとさりげなく俺の事バカにしてるだろ」

 

 ホントにここの職場大丈夫なのか、と再び心配するタツミ。するとブラートが此方に向かって来る。そして爽やかな笑顔を浮かべ手を差し出した。

 

「俺はブラート、ヨロシクな! 俺の事はハンサムか兄貴と呼んでくれ!」

「あいよ」

 

 その差し出された手にタツミも手を差し出し互いに握り合う。そこにレオーネがタツミに耳打ちする。

 

「気を付けろ。コイツホモだぞ」

「マジか」

「オイオイ、誤解されちまうだろ? なぁ♂」

「よし、アンタはこれからハンサムホモ兄貴と呼ばせて貰うわ」

 

 しょうがないね♂

 

 

 

 

 

 

「こちらラバック。水浴び場に潜入した」

 

 匍匐(ほふく)前進という隠密行動に最適な移動法で水浴び場に潜入している変態が一人。もしかしなくても覗きを行おうとしているスケベ丸出しの緑色が特徴の少年がそこにいた。

 

「ふへ、ふへへ、そろそろ姐さんが水浴びをしている時間だ……! 俺はあの胸をこの目で見る為ならどんな危険を省みない!」

「じゃあ指二本貰おうか」

「☆♪○→♭★♡♂♀♨︎↑!?」

「……うわぁ」

 

 バレバレやでぇ。タツミは心の中でそう思う。あとどうやったらその声にならない悲鳴を上げられるのか不思議だとも思った。

 

「懲りないなーラバは」

「クソッまだいける! どこまでも!」

「じゃあ次は腕一本な」

「¥%#*♧♥︎♠︎♪♪♪♪♪!? いや、むしろこれはこれでアリか!」

「……という訳で、このバカはラバックな!」

 

 そしてドM属性持ち。色々ひでぇよお前、と口に出掛けたが出してしまうと更に変態属性が追加されそうだったのでやめた。

 

 

 

 

 

「個性的な奴らばっかだなここの職場」

「アハハ……まあそういうなよ。次は美少女だから期待しろってー」

「美少女(笑)の間違いじゃないよな?」

「本人の前でそれ言って殺されても知らんぞ」

 

 そんな二人が向かっているのは河原。そしてそこには社員仲間の一人がいるらしい。レオーネ曰く美少女とか。まあタツミ自身は興味の一欠片も持っていないが。

 

「ホラ、あそこにいるのがアカメだ」

 

 レオーネがそう言って指差した先に居たのはアカメと呼ばれた一人の少女、と丸焼きにされているやたらデカいヒヨコがいた。

 

「可愛いだろ?」

「あのヒヨコ美味そうだな」

「着眼点そこかよ!?」

 

 ヨダレを垂らしているタツミにビックリなレオーネ。まさか美少女よりもやたらデカいヒヨコに興味を持つとか思いも寄らなかった。いや、まぁ確かにあのヒヨコ美味そうだけど、とレオーネも思っていたので否定出来ないのがなんか悔しい。

 

「つーかあのヒヨコなんて言う奴だっけ? エ、エビ、海老……」

「鳥類から魚介類になって来てるぞ。あれはエビルバードな。特級危険種の」

「そうそう海老流BAR度だった」

「物凄い誤変換してるじゃん!?」

 

 そんな他愛のない会話をしているとアカメがこちらを見てくる。そして手に持った骨つき肉をレオーネに向けて放り投げた。

 

「レオーネも喰え」

「おっサンキュ」

「俺にもあるのか?」

「……お前は誰だ?」

「あぁ、まだ紹介してなかったな。こいつはタツミ。私が勧誘した」

「つーわけでこれからよろしく」

「よろしく」

 

 しかしアカメがタツミに肉をあげる気配は無い。

 

「あれ、肉くれないのか」

「お前はまだ本当の仲間になっていない。だからまだこの肉をやる訳にはいかない」

「そっか、そりゃ残念だ」

 

 まだ本当にこの職場の一員になった訳ではないので信頼していないのも当たり前である。タツミ自身もすぐに信頼する人間などいないという事は承知していたのであっさり諦めた。

 そこでアカメがレオーネに問い掛ける。

 

「そういえばレオーネ。私達が何を仕事としているのかタツミに伝えた上で勧誘したのか?」

「いや、まだ伝えてないけど」

「あー、そういやまだ仕事の内容とか知らなかったな。月給だけしか聞いてない」

 

 まあ月給三十五万円という高給を逃す手はないのでどんな仕事の内容でも引き受けるつもりである。

 

「だけどタツミはここで働く気満々なんだろ?」

「ん、まあそうだな。月給三十五万なんて美味しい話逃す手はないしな。やるならとことん働くぞ」

「なら私達が何を仕事としてるのか伝えた後に辞める事は出来なくなるけど良いって事だな?」

「なんかブラック企業染みたオーラが漂うんだが」

 

 あれ、これってもしかして面倒臭い職場にホイホイ入っちまったんじゃ。タツミはこの後、後悔したかも知れないし後悔してないのかも知れない。

 

「私達がやっている事はな───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───殺し屋だよ」

「そーなのかー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ん? 殺し屋? へー……」

 

 

 

 ……ナンテコッタ、パンナコッタ。

 

 

 

 心の中でそうボヤいたが時すでに遅し。ここもブラック企業なのであった。

 

 タツミがこの先どうなっちゃうのかは神の味噌汁。

 

 

 




次回☆
タツミ「社畜王に! 俺はなる!」


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