IS インフィニット・ストラトス~春夏秋冬!? 二人目の天才!!!~(仮) (村人K)
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プロローグ―天才少年の登場!?―
01


Information
 アットノベルスというサイトからの移行です。村人Bという名前で登録していましたが、こちらには既に村人B名義の方がいらっしゃったので村人Kに改名しました。

 ルビ機能をそれなりに使用しているのでPCでの閲覧はInternet ExplorerやGoogleChromeでの閲覧を推奨します。

 スマートフォンでの閲覧は色々ときりがないので自分はiPhoneのSafariで閲覧しています、とだけ。

 原作を読んでいる、またはアニメを見ている方向けで主にアニメを元に構成されています。

 タイトルは良いのが思い浮かぶまでこれっていう感じで(仮)です。いいのが思い浮かばなければ外れるかもしれませんが。

 更新は気まぐれ鈍足気味です。


 IS学園の入学式もとっくの間に終わっていて、全部のクラスが自己紹介を行っているだろうその時に“仕事”の都合上遅れてこの学園に着いた“ボク”は自分のクラスの教室に入るタイミングを伺っていた。

 

 

――織斑(おりむら)一夏(いちか)です、よろしくおねがいします

 

 

 ちょうど、幼なじみというか兄代わりというかな、この世でISを起動できる二人目の男子、織斑一夏――一兄(いちにい)が自己紹介をする番だったようで。

 

 だけどそんな短い自己紹介でISを起動できる数少ない男子に興味津々な女の子達が納得するわけなんかあるはずもない。周りがもっと何か言えと雰囲気で訴えている。

 

 

――以上です!

 

 

 聞こえてきた自信満々の言い切りにボクは脱力する。

 

「相変わらず発想がよくわからないねえ、一兄は」

 

 案の定というか教師に出席簿で思い切り叩かれてーら。小気味の良い音が扉越しの廊下にまで響いてくる。非常に痛々しい音だった。

 

「って、千冬(ちふゆ)(ねえ)だ……あー今ならいいかな」

 

 ちょっとした小言を一兄が言われているであろうタイミングで教室のドアをノックし、そのまま開ける。

 

「すいませーん、どうしても片付けなければいけない仕事があったので遅刻しましたー」

 

 気の抜けた一言でクラス中の注目がボクに集まるけど、もっともっと多い人数相手にプレゼンテーションを行う機会も少なくない――本当なんでこんな経験をこの歳でしているのやら――ので特に怯みもしない。あ、いやでも一兄以外は全員女の子(と女性二人)だからちょっと気恥ずかしいかも。

 

「遅いぞ、春人(はると)

 

 クラスの女の子達は一名の遅刻者であるボクの正体に呆気にとられていたけれど、当然、生徒の把握が済んでいる千冬姉は驚くこともなく、ボクを諫める。

 

「ごめんって千冬姉」

 

 千冬姉に対する呼び方に先程の一兄と同じく、出席簿が火を噴くかとクラスのみんなが身構える。

 

「学校では織斑先生と呼べと事前に言っておいたはずだろう……?」

 

 が、先ほどの一兄の時とは違いその出席簿が火を噴くことはなかった。クラス中が扱いの差に疑問をおぼえるけど、ボクはどうでもいい。

 

「えー千冬姉は千冬姉じゃないかー……あ、やっほー箒姉(ほーきねぇ)

 

 窓際の席に座っていた義姉(あね)であるポニーテールの少女、篠ノ之箒(しのののほうき)――ほー(ねぇ)を見つけ笑顔で手を振る。当のほー姉は他の生徒と同じくあっけにとられていた。数年ぶりなうえに予期せぬ突然の再開だもんね、そりゃそうだ。

 

 

「さって、皆、ボクがIS開発者の片割れ篠ノ之春人(しのののはると)だよ。これからよろしく」

 

 

 クラス中が呆気にとられていたのはこれが理由だ。

 

 繰り返し言うけど、ボクの名前は篠ノ之春人。恐らく現在世界一有名な男だと思う。この世界のパワーバランスを狂わせたIS―インフィニット・ストラトス―のコアを作ることができる二人の内の一人なのだから。



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02

 時間はあっという間に飛んでとっくの間に昼休み。ボクは屋上に呼び出されていた。

 

「これはどういうことなのだ? 春人」

 

 呼び出してきたのはほー姉だ。

 

 久々に再開した義姉(あね)は開口一番で問い詰めてきた。なんで昼休みかと言えば、僕のことも気になるんだろうけど、それ以上に一兄のことが気になって先に話に行ったし、ボクはボクでクラスメートから色々質問されたり、正直一兄以上にちやほやされてで慌ただしかったから。中にはボクと仲良くなることができればーなんて思ってる計算高そうなのもいたけど、それがボクにバレてる時点でそーいうのに向いてないよね。

 

 んで、今も撒いてきたんだからね、けっこーたいへんだった。

 

「どういうことってなに? ほー姉?」

 

「そ、その呼び方はやめろっ! 春人!」

 

「えー? いいじゃん?」

 

 ボクはこの呼び方を気に入っているのだけれど、ほー姉曰く、骨と呼ばれてるように聞こえるのであんまりよろしくないようで。ボクは気に入ってるんだけどなぁ。

 

「うぉっほんっ! それで? どういうことなのだ?」

 

 ごまかされたことに憤るようにわざとらしく咳払いをしてからほー姉は詰め寄ってきた。

 

「だからどういうことって?」

 

「なんでお前がここにいる? お前はまだ十二歳だろう?」

 

 うん、たしかにボクはまだ十二歳。本来なら高等学校のIS学園ではなくて義務教育課程の中等学校へ通うべきなのだ。

 

「んーっとね、ちょっと面倒だからいろいろ端折(はしょ)るよ? ついこの間、ボクの誕生日だったでしょ?」

 

「う、うむ」

 

束姉(たばねえ)に誕生日プレゼントは何がいい? って聞かれたんだ」

 

 束姉――篠ノ之束(しのののたばね)、もう一人のIS開発者にして天才の名を欲しいままにする義姉だけど、性格に難ありなうえに行動が突拍子もなく、天才にして天災とも呼ばれる存在。

 

 束姉の突拍子もない計画にボクはどれだけ振り回されたか……まあ楽しいのが八割だからいいっちゃいいんだけどね。

 

「なんでもいいってゆーうから学校に行きたいって言ったら色々な手回ししたみたいでここに通うことになったんだ」

 

「どうしてそうなるっ!」

 

「だって、ボクってどう考えても普通の学校に通えないでしょ?」

 

 各国はパワーバランスを左右するISの開発に躍起になっているし、中には怪しげな組織も存在したりして、普通の学校に通ってちゃ誘拐や、最悪ISで武装した奴からの強襲の危険もあるからボクはIS開発に関わって以来、学校に通わず、束姉と色々な場所を転々とする生活をおくっていた。

 

「ここなら他に比べれば安全? だと思うし」

 

 少々の疑問が混ざった言い様にほー姉は明らかに不機嫌そうだ。まあ、ボクがその気になればザルな警備体制だし、本職じゃないボクが出来るんだから多分結構な本職で怪しい人たちが入ってこれるんじゃないかなぁ。

 

「ボクがいちゃ、迷惑?」

 

「うっ……そういうわけではない。私だって義弟(おとうと)に会えて嬉しいとは思うぞ?」

 

 ふと不安そうに小首を傾げて聞くと、その様に箒姉は罪悪感を募らせてしまったのか、腑に落ちないが、納得せざるを得ないみたいで……計算通りです、ええ。

 

「あ、そうだ、箒姉(ほうきねぇ)

 

 しゃーなしに言葉としてはとりあえずほー姉は封印しましょう。心の中ではずっとほー姉と呼ぶよ、ほー姉。

 

「ん……なんだ? 春人」

 

「やっぱりまだ一兄のこと好きなんだね」

 

「な、なにを!」

 

「いやー昔っからバレバレだよ? それにボクより先にまずは一夏を呼び出したりしてたし」

 

 そう、今は昼休み。さっきも言ったけど朝一の授業前にほー姉はボクよりもまず、一兄の方へ向かったのだ。

 

「べ、別にただ久々に再開した幼なじみと話したかっただけだぞ!?」

 

「そんな動転してればバレバレだよ、一兄以外には」

 

 ボクは知っている、織斑一夏という存在がどれだけ鈍感なのかを。昔、どう考えても一兄のことを意識しだしたほー姉の仕草には気づかないし、ボクとか束姉とかがけしかけてさせたアプローチとか、全部無駄に終わるという光景を見ていた時期もあるのだから。

 

「でだ、箒姉。ボクが一兄と箒姉をくっつけてあげるよ」

 

「な、なにを急に!」

 

 おーおーほー姉の顔がこれでもかというくらいに一気に赤みを帯びていく。熱そう、物理的に。

 

「家族には幸せになってほしいからね。箒姉はまだ一兄のことが好きなんでしょ?」

 

「う、うむ、そ、そうだ」

 

 あれ、どもってるけど珍しく素直に認めた。見て分かる通り、結構頑固な義姉なんだけど、まあさすがに突然のお別れとか経験したら素直にならざるを得ないのかな。まあ、それでも直接一兄に告ったりは気恥ずかしくて出来ないんだろうな、ということでボクの出番。

 

「それじゃ、ボクがほー姉の手伝いをしてあげるよ」

 

「何故そうなる! というかほー姉呼ぶな!」

 

 あ、口が滑った。

 

「これでも結構経験値はあるよ? 経験値は」

 

 IS開発者ともなればそれ目当てで色を当ててこようとする奴らなんてわんさかいたもの。まあボクの年齢を考えられない程の下賎な輩ってことでもあるんだけど。

 

 なので多分ずっと一兄一筋で離れていた時にはひたすらに剣道に打ち込んでたほー姉より経験値はあると思うんだ。経験はないよ。うん。

 

「ほ、ほぉ……? 十二歳の義弟が経験とはこれはまた」

 

「いや、だから経験“値”ね。ボクを籠絡しようと色を当てる奴なんてわんさかいたんだってば」

 

「なっ!?」

 

 まーたほー姉の顔が真っ赤に染まった。やかん乗せたらお湯が沸きそうだ。まあありえないけど。

 

「あー春人君見っけー!」

 

 屋上入り口から何やら嫌な声が聞こえたと思った時にはもう遅い。その声に気づいた女子が階段を駆け上がってくる音が響いてく……ちょっと音多過ぎじゃないかな。多分これはクラスメートどころか同じ学年、下手したらその上も混ざってそうだ。

 

「んじゃ、ボクはここから逃げなきゃ面倒だしっ」

 

 そういってそのまま屋上から飛び降りる。

 

「なっ! 春人っ!?」

 

 後ろでほー姉が驚いてるのは当然だけど、もーまんたいもーまんたい。自分のISの背中だけ部分展開してそのままブースター吹かして着地。

 

「また後でね、ほー姉っ!」

 

 屋上からこちらを唖然と見ているほー姉に手を振ってそのまま教室へ。うん、丁度予冷も鳴っていることだしね。皆も早く戻らないと出席簿が火を吹くよ。



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03

 まー予想通りというか、何人かは千冬姉の出席簿で思いっ切りぶったたかれてからの授業開始。

 

「えーISのコアは~」

 

 すっごく気まずそうに山田真耶(やまだまや)先生ーー逆から読んでもやまだまやだねーーこと真耶ちゃんがISの理論について説明している。

 いやー開発者の一人が教え子として教室にいる中で授業ってのはやりづらいだろうね。何か間違いがあれば即座に否定されるかもーとか考えてるんだろうなぁ。パっと見凄く気弱そうな人だし。

 

 いや、別にボクはISの常識から外れたすっとんきょーなことでも言い出さなきゃ特に指摘したりしないけどね。

 でもまあ、当然開発者にしてテストパイロットもできるボクとしては当然のごとく分かりきってることばかりなわけで凄く暇。え? なんで操縦できるかって? 知らないよ。

 

 周りの皆もさすがにIS学園入試を突破しただけあって、現段階、初歩の初歩の説明は特にわからないことはなさそ……と思ったところで一人、頭を抱えてるのがいたり。

 

「織斑君?」

 

 そう、一兄だ。頭を抱えてついでに顔を真っ青にしてる様は見た感じとってもおかしいわけで、真耶ちゃんが気づかないわけがないよね。あ、なんか千冬姉にマニュアルについて聞かれてら。

 

「えーと、さすがにちょっと憶えきれないです」

 

 気まずそうに一兄(いちにい)は言ってるけどさすがにそりゃーそうだ。一兄がISを起動できると判明したのが数ヶ月前。それからは本来の進路からIS学園への入学に切り替えになったり政府のお偉いさんと会ったり、様々な手続きとか、政治的保護とかとかで色々忙しい中で百科事典並に分厚いマニュアルを読んでそれらを憶えるのは余程の天才じゃなけりゃ到底無理があるよ。

 千冬姉の出席簿が火を噴くことは当然なく、やれやれと溜息をついてこっちを見た。え? ボクなんかした?

 

春人(はると)! 暇な時でいいから織斑にIS(アイエス)について教えてやれ!」

 

「えー……」

 

 飛んだ藪蛇(やぶへび)……いや、つついてもいないんだけどさ。

 

「お前が適任だろう?」

 

 ニヤリと笑う千冬姉。まーたしかに? 自分だけ解れば良いや他の人なんて知ーらないっって感じの束姉(たばねぇ)のわけのわからない理論をわかりやすく訳したりするのもボクの仕事だから他人に教えるのは造作も無いことだけど、めんどーだなー……でも千冬姉の頼みだし、しゃーないかぁ。

 

「分かったよ千冬姉」

 

 ただ、一兄の意思はそこにはなかったんだけどね。どう考えても置いてきぼりくらってらぁ。

 あと、ほー(ねぇ)からの殺気に近い視線が痛い痛い。

 

 

 

 案の定ほー姉に呼び出されてーら……昼休み、ボクは屋上に呼び出されていた。もはや定番?

 相手がほー姉ってこともあって気分的にはどうってことないんだけど、シチュエーションだけ見ればこれ、人気のない場所へ呼び出されてカツアゲされる図になってない? 丁度いい感じに周りにボクら以外の人はいないし。

 

「どういうことだ!」

 

 いやいや、ほー姉、今のところほとんどそれしか言ってないよ? テンプレになっちゃってるよ? 絶叫キャラ?

 

「どうして私と一夏が同室なんだ!」

 

 あ、そっちか。そーだよね、千冬姉がちゃんと説明してくれるわけがないよね。っていうか千冬姉が苦手な方だったっけ、ほー姉。

 真耶ちゃんに聞くと恐らく脅してるみたいになるから聞かないんだろうし。

 

「なんでそんなことボクに聞くのさ?」

 

「千冬さんに聞いたら春人に聞けと言われたんだ」

 

 ここでお互い、示し合わせたようにため息。やっぱり説明してくれてない。

 

「それは放課後に分かるよ」

 

 バラしてもいいけど黙ってた方が面白そうだし、ここでは言わないでおこう。放課後のお楽しみ。

 

「そんなことより、これはチャンスだよほー姉」

 

「な、なにがだ?」

 

 明らかにほー姉はわかっててごまかしてるけどボクは言葉を続ける。

 

「同室なんてめったにないチャンスじゃない。ちゃんとアプローチはした?」

 

 してないんだろうなーとは思いつつ聞いたけどやっぱりしてない。それどころか撲殺しかけたと聞いてさすがにボクはやれやれとわざとらしく首を振ってため息なんてついちゃったりして。

 

「ダメだなーほー姉」

 

「な!? ダメとはなんだ! ダメとは!」

 

「バスタオル一枚の姿を見られた程度でそこまで恥ずかしがってたら二人仲はいつまで経っても進展しないよ?」

 

「し、進展……」

 

 ほー姉の顔が真っ赤になった。誰かヤカン持ってきて。

 

「それに恥ずかしいのはわかるけど撲殺しかけるのはどうかと思うんだ」

 

「うっ」

 

 ボクの指摘に今度はうめいてカチリと固まってほんのり青ざめる。ちょっと面白いけど別に遊んでるわけじゃないよ。

 

「手が出るのはもー性格だからすぐに直せないのは仕方ないとしても木刀はねえ。もうちょっとおしとやかにいかないと、一兄に嫌われちゃうんじゃないかなぁ」

 

「それは困るっ!」

 

 固まってたほー姉が復活して懇願してくる。いや、ボクにそんな顔しても。一兄の前でやんなよね。

 

「それじゃ放課後、ボクの部屋に来てよ。秘策があるから」

 

「秘策?」

 

 不思議そうに首を傾げるほー姉だけど、これも放課後のお楽しみってことで一つ。



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04

 そして授業はあっという間に流れていって放課後。色々新鮮で楽しいから時間の流れが早い早い。

 IS学園の授業は聞いた感じで知ってる専門学校と近いと思う。ISについて比重を起きつつも必要最低限の高等学校相当の授業があったり。

 ま、でも今はそれは置いといて

 

「ふっふーん」

 

 得意気にしてるボクの前で一兄とほー姉が唖然としている。その理由はボクの後ろ。グラウンドの横、空けてもらったスペースに絶賛着陸中のボクの“家”だ。

 

「これがボクの家、スプリング号だよ」

 

 ネーミングセンスに関しては自分で認める数少ない欠点、非常に悪い。だから自分の名前からモジって春っていう安直なネーミング。あまり好評ではないよ、当然。なんか呑気だもの。

 

「いや、これは家じゃなくて」

「どう見ても輸送艦だろう……」

 

 あっけにとられていた二人が息ぴったりに弱く突っ込んできた。

 

「ま、細かいことは気にしない気にしない」

 

 実際この中で生活してるしおくれるんだから家で間違いない。これは現在何もかもが最新鋭の設備を搭載しつつ、生活空間も完備してる技術者から見れば夢の様な空間のはず。外見はガ●ペリーの飛行機部分をおっきくして前まで持ってきてもっと現代的にして後ろに居住区追加した感じ……って大分ガン●リーじゃないね。

 

「さ、中に入った入った」

 

 静かにほんのわずかに地面が揺れる程度に着陸したスプリング号の入り口へ二人を引っ張っていく。

 

『ツヴァイ、二人の認証追加お願い』

『了解しました、マスター』

 

 その間にスプリング号のセキュリティを担当してもらってるツヴァイにプライベートチャネルで通信。これでボクと一緒の時はパスなしで入れるわけで。認証の仕方は技術上、セキュリティ上の問題もあるので秘密。

 

「おかえり、ご主人」

 

 ボクらを迎えたのは赤を基調としたメイド服を身にまとうアインだ。

 

「ご主人……?」

 

 まあ、だいたいの人は第一声を聞くと疑問に思うよね。

 

「これはまーテンプレだけど、ボクはそういう趣味の持ち主じゃないから。この娘はアイン。ボクの警護、世話係のアンドロイドだよ」

 

「アンドロイド? どう見ても人間にしか見えないぞ?」

 

 一兄が疑問に思うほどにアインはパっと見では頭の上に様々な機能が圧縮された猫耳型のレシーバーをつけている点以外は人間にしか見えない。派手な赤髪が似合うキリッとした容姿は女性的でありながらも凛々しさを伺わせるし、出るところは出てるってボク何説明してんだろ。

 

 とにかく、アンドロイド自体は現在の技術で作ることはできるけど、それらに見られガチなロボット的特徴はほぼない。

 

 精巧に人を模して産み出されたアイン、ツヴァイは人間のそれに構造上はもっとも近く、そして比べ物にならないくらいに頑丈な金属骨格と人工筋肉、人口皮膚を身体として持ち、様々な経験を元に進化する電脳――まあAIって言った方がいいかな? を頭脳として搭載した自己進化する人により近い二人だ。

 

「束姉がボクのために産みだしたのがこの娘らだよ」

 

 そう言ったら二人とも「あー」とか言いながら納得。束姉がやったと言えば大抵のことは納得されるんだよね。ちなみにボクは一切知らなかったよ。

 

「マスター、着陸場所は間違いありませんね?」

 

 さらにもう一人。長い青髪をポニーテールにまとめたツヴァイが操縦席がある方からやってきた。つり目がちで相変わらず知的な雰囲気を漂わせてる。

 ツヴァイには主に技術面でのサポートを担当してもらってる。アインはロボットなのに精密作業があまり得意な方ではなく、ツヴァイは得意中の得意だからだ。逆に荒事になるとアインの方が強い。

 とはいえ二人ともスーパーとついてもおかしくない最新鋭のアンドロイドだ。学習によって得た経験からの得手不得手はあれど、ほぼ全ての事柄が平均より上だけどね。

 

「うん、バッチリ。おつかれ、ツヴァイ」

 

「ありがとうございます、マスター」

 

「ウチの妹は相変わらずこういうことは得意すぎるんだよなぁ。こりゃコンマのズレ程度しかないな」

 

「正確で()いことなら正確にするのは()いことでしょう? 姉さん」

 

 アインがセンサーをピクピクと稼働させながらぼやくのにツヴァイが突っ込みを入れてるけどそれは日常的な光景。

 

 二人は同時に産み出されから双子よりも厳密に姉とか妹とかの区別はないはずなんだけど、なぜだかアインが姉でツヴァイが妹ってことで決まってるらしい。ここらへんは束姉ですら知らずの内に二人の間で決まったみたいだ。

 

 怖いってほどじゃないけど、実際に自己進化してるところを見ると世間一般に普及しちゃまずいっていうのが凄く分かる。悪いことを悪いことだと“教えない”主の元にいれば非常に危険だ。もちろん、ボクはそこらへんはちゃんと教えてるし、教育プログラムもちゃんとしたものだから問題はないよ。

 

 ついでに言うとISに積まれてる自己進化技術は二人の一個下のバージョンです。あれ? ISの次の技術? とか疑問に思ったけど細かいことを考えだすと束姉のやることはワケガワカラナイヨとか言っちゃいそうだから考えないようにしてる。聞いたら聞いたでボクの面倒が増えるだけだろうしね。

 

「さって、アイン、連絡した通り箒姉をお願い」

 

「あいよ、ご主人。ほら、箒、こっちに来な」

 

 一兄とほー姉は二人の登場とアンドロイドということについていけずに唖然としていたけど、アインが箒の腕を引っ張ってキッチンの方まで連れて行く。

 

「な、ちょっと待てなんなんだ一体」

 

「まあまあ箒姉。アインに任せれば上手くいくから」

 

 アインは料理が超絶的に上手い。そしてそれを人に教えるのも上手いのでこれ以上の適任は他にいない。胃袋を掴めっていうしね。

 

「お? なにすんだ?」

 

「おっと、一兄はこれからボクの授業を受けてもらうよ」

 

「へ?」

 

 ここは隠しておきたいところだし、アインと箒姉についていこうとする一兄の腕を引っ張ってボクは満面の笑みを浮かべてそう言った。

 

「んー最低でも一ヶ月かなぁ。一兄は覚え始めれば早いんだから充分だよね」

 

 あの分厚いマニュアルよりも効率的に教えるわけだし、と内心では付け足しておくけど、ここは後から周りにえこひいきだーとか言われたりしないように言わないでおこう。ボクが教えるって時点で反則的だーとか言い出す輩はいるかもしれないし、念には念を入れてね。

 

「あーその、お手柔らかに頼む、春人」

 

 まあ、少なくとも鬼教官のようにはいかないから、そこのところは安心してくれていいよ、一兄。でも面倒なこともあったし、ちょっと今週は詰め込み教育気味にいこうか。

 

「マスター、私はここでの生活環境を整えに各種設備の設置や申請をしてまいりますので失礼します」

 

 ツヴァイは光熱水を整えに外に出て行ったわけだし、一兄にほー姉が料理してるところを見せるわけにもいかないからとりあえずはリビングルームでファーストレッスンだ。



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05

 ファーストレッスンで疲れて机に突っ伏してる一兄は放っておいて朝からボクはほー姉と内緒話。

 

「んで、昨日はどうだったん? 箒姉」

 

 あの後、一兄はボクのファーストレッスン――必要最低限抑えておくべきISの基礎を一週間で叩きこむことを前提にした授業――を終えてクタクタに疲れきっていたはず。そこに箒姉がおいしい料理を振る舞えば多少なりとも心は動くでしょ。

 

「それが……」

 

 とはいえやっぱりほー姉だ。素直になること事態に手一杯で料理のレシピが飛んだらしく、見た目はいいけど味付けを間違えたとか。

 

でもその味付けを間違えた恐らくは食べれたもんじゃない料理を一兄はちゃんと食べてくれたらしい。そういうことをさらりとやるんだから一兄は困る。そりゃぁ全方位にモテちゃうよね。

 

「春人さん? この間のこと、忘れてはいらっしゃらないですわよね?」

 

 なんて話をしていたら面倒ですっかり忘れてたクラスメートにいきなり声をかけられてボクはちょっとげんなり。

 

「当然、忘れるわけないよ」

 

 わざとらしい皮肉った笑みと一緒に返す。忘れてたけどね。

 

 声をかけてきたのは金髪碧眼の見た目美少女なイギリス国家代表候補生セシリア・オルコット。

 

 この前、一兄にちょっと上から目線で絡んだりしたようなこのクラスメートとは面倒なことがあったり。まあ代表候補生になれるのはほんの一握りの人間だし、驕ってもおかしくはないんだけどさぁ。

 

 ではその回想をどうぞ。

 

「これより、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める」

 

 IS学園での生活が始まって二日目のLHRで千冬姉がクラス代表者について自薦他薦は問わずに誰かいないかと聞くといきなり

 

「はい! 織斑君を推薦します」

「はーい、私は春人君を推薦しまーす」

 

 なんて意見が上がりだしたもんで、突然自分の名前が挙げられた一兄が慌てふためく中、ボクは手を上げて千冬姉に進言した。

 

「ボクは忙しい時と重なったら無理だよ? 千冬姉?」

 

「ふむ、なら織斑のみが推薦されたことになるな」

 

 ボクにはIS開発という立派な仕事があって、学園へ入学してもそれは続けてる。さすがに量は束姉に言って抑えてもらってるけど、それでも忙しくなって通学すら危うくなることも当然あるだろうし、それらは既に特例として認められている。

 

 ボクは別に卒業することが目的じゃなくて学園生活を送りたいだけだし、認められなかったらここはISについて教える学び舎とは言えないでしょ。

 

「他にはいないか? いないなら無投票当選となるぞ?」

 

「納得いきませんわ!」

 

 突然叫びながらガタリと立ち上がったのはもちろん、セシリア・オルコットだった。

 

「男子がクラス代表だなんてクラスの恥です! そのような屈辱を一年間もわたくしに味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 典型的女尊男卑思想に染まってるなぁ。そもそもISが起動できるのがボクと一兄を除いて女性、しかも適正がある者のみだし、社会の全てが女性によって回ってるわけじゃないんだけどなぁ。

 

「まだ春人さんがクラス代表になる方がいいですわ」

 

 ありゃ飛び火。

 

「だからボクは仕事があるって言ってるじゃない?」

 

「しかし、開発者でもなければ男子がクラス代表なんてクラスの恥です! それに春人さんもISを起動できるんでしょう?」

 

 部分展開したりするようなこともあったし、噂は流れてるよねそりゃぁ。

 

 でもこれじゃ堂々巡りだ。

 

「いい加減にしろっ」

 

 って一兄? おかんむり?

 

「さっきから聞いてりゃ好き勝手言いやがって。大体イギリスも何年まずいメシで世界一だよ」

 

「な、貴方、わたくしの祖国を侮辱しますの!」

 

 火花が散ってるかのように二人は睨みっている。

 

「決闘ですわ!」

 

 口火を切ったのはセシリアだった。

 

「ああ、おもしろい、受けて立つぜ」

 

「もちろん春人さん、貴方もですわよ!」

 

 ビシっと指を指される。いや、なんでボクまで巻き込まれるんだこの流れで。

 

 他にも色々あったけど、こんな感じでボクとセシリア、一兄が決闘することになった。

 

 ことの発端は一兄とセシリアなので二人が戦い、勝った方がボクと戦うってことらしいんだけど、ボクと戦う意味なんてあるの? とか考えちゃうなぁ。

 

「あなたがどれだけの実力を持っているのか、わたくしは非常に興味がありましてよ」

 

「んー……セシリアはIS起動時間はどれくらい?」

 

「300時間ほどですわ」

 

 それを聞いた周りのクラスメートたちがざわつくけど、ボクは大して驚くこともない。代表候補生ならそれくらいは当然だろうし。

 

「大したことないね」

 

 誇らしげにしていたセシリアが何かを言いかけるけど、それを許さずにボクはすぐに言う。

 

「ざっと6000時間」

 

「は?」

 

「だーかーら、起動時間。ボクのIS起動時間は6000時間越えてるの。君の20倍以上。開発者兼操縦者なんだから当然じゃない?」

 

 ボクは十歳の頃からISの操縦もしてる。半分以上が戦闘時間じゃなくてテスト時間だけど、それでも代表候補生程度じゃ敵わない程の時間でしょ。

 

 起動できるって時点で予想はつきそうなものだけど、周りの皆はざわつくどころかポカーンと沈黙しちゃってる。

 

 そんなに驚くことかな?



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06

「特訓ねえー」

 

 場所は演習場。ぽけーっと周りを見渡すとクラスメートだけじゃなくてたくさんの女の子が観客席に座ってる。皆暇人だなぁーやることなんてたくさんあるはずなんだけど。

 

「お前ならISの一機や二機手元に余らせてあるだろう?」

 

 というほー姉の一言でボクが試験用に手元で遊ばせてある打鉄とリヴァイブをそれぞれ一兄とほー姉に貸すことになってしまった。

 

 別に問題はないんだけど、巻き込まれて決闘なんてことになった身としては正直そこまで進んで協力する気にはなれない。

 

 けれどもボクがいるとはいえほー姉と一兄が一緒にいる時間が増えることはくっつけるために必須だからーと自分に言い聞かせてたり。

 

「行くぞ! 一夏!」

 

「お、おう! こい! 箒!」

 

 気合充分なほー姉とまだ二回目の起動でちょっと気後れ気味な一兄。

 

 ほー姉には近接武装多めのリヴァイブ。一兄には近接武装オンリーの打鉄をそれぞれ貸し出した。

 

 それぞれ理由は簡単。

 

 ほー姉は剣道全国大会優勝者なのでISの技術を除けば近接戦が得意なのだから近接装備をメインにしつつ、今回一兄が戦う相手、セシリア・オルコットが有するブルーティアーズを想定して遠距離装備をサブとして持たせた機体。

 

 一兄には専用機が用意されるとのことだけど、提供元にボクが問い合わせたら白式というブレードオンリー、機動性重視のどう考えてもIS初心者に持たせるとは思えない近接特化型のISが用意されてるらしいので機動性については劣るけども近接戦をメインにした打鉄というわけ。

 

 ちなみにボクはジャッジ兼コーチ。特に今日はISを使う予定はないよ。

 

「うぉぉぉっ!」

 

 一兄が刀を構え真正面から突っ込んでいく。それじゃどう考えても返り討ちでしょうに。

 

「はぁっ!」

 

「うぁっ!」

 

 予想通り正面からの切り込みに対してほー姉はカウンター気味にブレードを一閃。ものの見事に一兄は直撃して吹っ飛んでいった。あー壁にめり込んでらー。

 

『あー一兄は真正面から突っ込まないで。ほー姉はできるだけ銃撃戦で』

 

 プライベートチャンネルで通信を繋いである二人にそれぞれ指示をおくる。

 

 どうやら一兄は中学時代はアルバイトをして過ごしたみたいで剣道をやっていなかったそうで、相当腕が鈍ってるみたい。

 

 ほー姉はほー姉でやはり相手が近接戦で来れば反射的自分の得意な近接戦で応戦しちゃってるけど、ブルーティアーズはBT装備を搭載した中、遠距離戦闘メインの第三世代機なのだから一兄には最低でも銃撃戦に対する近接戦の処理方法を学んでもらわなければ困るので、ある程度遠距離装備も使ってもらわないと困る。

 

『『わかった』』

 

 二人同時にハモり気味に返事がくる。無駄に息ぴったりじゃないか。

 

 まあ目的はISに一兄を慣らすためだからこのままでも問題ないけど、セシリアに負けてほしくはないんだよなぁ。女尊男卑思想に染まりまくってる典型的なアレだし。

 

 なんてことをぼーぜんと考えながら二人の訓練を見守っているんだけど、周りからの視線がちょっと煩わしい。ボクはISを使わないのかといった声が聞こえてくる気がするくらいには視線が集中してらー……だから今日は使わないってば。

 

「はぁっ!」

 

「せいっ!」

 

 二人が空中でつばぜり合いをしている。いつの間にやら空中戦に移行していたし、二回目とは思えない程に一兄は良い動きをしていた。

 

 が

 

「やっぱ近接戦メインになっちゃうよねー」

 

 ほー姉もIS起動に関しては数回目だし不慣れな射撃戦は難しいだろうしねーこれはこっちで対策を練るしかなさそうだ。



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07

 特訓を終えて解散した後、一兄を呼び出してISについてのレッスンを終えての夜遅め、ついでにやることがあるとスプリング号のハンガーに一兄を連れて行った。

 

「なあ春人」

 

 作業中、ISスーツに着替えてもらった一兄から声をかけられた。

 

「なに? 一兄?」

 

「なんの用だ?」

 

 あ、そうだ呼び出したはいいけどなんでか全くもってこれっきりも伝えてなかった。

 

「一兄は今日でISの起動は二回目。起動時間は数時間程度。これって大きなハンデだと思うんだ」

 

 物理キーボードをガシガシ叩きながらの会話。ボクはどうもキーボードに限っては物理キーボード――要は昔のアナログなもの――じゃないとテンションが上がらない。

 

「あーまあそうだな」

 

「そこでそのハンデを埋めるためのシュミレーションを用意したんだ」

 

 IS用に六個用意しているハンガーの内、一際大きい二つのハンガーに常備してあるのはISのシュミュレーター。最低限のISパーツと仮想空間演算装置を組み合わせて様々なISのプログラムを走らせ、それを使用者に体験させることが出来るものだ。

 

 最新鋭のスーパーコンピュータを十以上並列処理させてるのでかなり実践的なシュミレーションが体験できる。普段は開発中の技術をテストするために使ってるけど、今回はこれで一兄に学習してもらうってこと。

 

 当然、開発した技術の中には厳密に言うならブルーティアーズに搭載されてる物とは違うけどBT装備の技術ももちろんあるのでこのシュミレーターの中で戦闘を再現できるし、なるべく白式に近いであろうスペック、武装を設定済みなのでバッチリ。

 

「それってなんかズルくないか?」

 

 一兄って結構こういうことに潔癖だよね。

 

「全然ずるくないよ? 体感時間を延ばしたり、自分の技量以上のことができたりはしない。ただ場所の制約がなくて条件を自由に選べるってことだし」

 

「そーそー別にずるくないぜ? 努力する時間が増えるだけだっ」

 

 頭の上にぼふんとアインが乗っかってくる。今回、一兄の相手をするのはツヴァイなんで暇を持て余してる感じ。

 

 ツヴァイは既に準備を終えてシュミレータの片方で待機中。元々あまり感情を表に出さないのでさっきからただ黙々とBT装備など、今回のシュミレーションに必要なデータをセットアップしている。

 

「そうか……分かった。やろう」

 

「よしきた。ツヴァイ、準備終えた?」

 

「イエス、マスター。データセットアップ済みです。いつでもどうぞ」

 

 ボクが打ち込んでたのは聞いた白式のデータに限りなく近くするための各種調整。このシュミレータはかなり細部まで調整できる反面、調整に時間がかかるといったデメリットがある。とはいえボクや束姉がやれば五分もかからないんだけどっとセットアップ完了。

 

 並みの技術者なら早くて三十分、遅くて一時間オーバーってところ? それをものの数分で終わらせるんだからボクって天才。自画自賛だよ。

 

「じゃあ一兄、セットアップするからシュミレーターに乗ってー」

 

「おう」

 

 ボクに促されてシュミレーターである擬似ISに身を任せる一兄。フィッティングやノーマライズなど必要なデータは既に入力済みなので即座に準備が完了した。

 

「それじゃ、ツヴァイ、“遊んで”あげて」

 

「イエス、マスター」

 

「シュミレーション、スタートッ!」

 

 二人の頭部にシュミレーターのコアとなるバイザーが被さり、シュミレーションがスタートする。

 

 ボクの目の前に展開されたディスプレイに二人が姿が映し出される。

 

 白式に限りなく近くチューンナップされた打鉄に乗っている一兄と、ファンネじゃなかったBT装備を搭載したリヴァイブという現実的にはありえない機体に乗っているツヴァイ。

 

『行きます、一夏様』

 

『おう! かかってこい!』

 

 二人が戦闘を開始する。BT装備に慣らすのが目的でツヴァイには最初からBT装備を使用する様に指示してあるのですぐさまリヴァイブの肩部からBT装備が計六機射出される。

 

『のわぁっ!』

 

 射出された計六発のレーザーが一兄の死角をついて二発直撃していた。

 

「初めての装備相手にあの反応ならなかなかやるんじゃねーの? ご主人」

 

 ボクの上にのっかったまんまアインが話しかけてくる。ボクはモニターから視線は外さずに返事を返す。

 

「まー元々反射神経は良い方だし、これは想定範囲内かな。あとは死角から飛んでくる攻撃にどう対応できるかだよね」

 

 ぽふぽふとアインの頭を撫でるとちょっと機嫌良さ気に鼻を鳴らす。ペット扱いみたいに見えるかもしれないけどアインもツヴァイも誕生してからまだ数年だ。

 

 美人さんでボクよりも見た目は年上だけどまだまだ子供。それにしては賢すぎるけどね。

 

「センスはあるんじゃねーの?」

 

 アインの言う通り、三回目の起動でここまで動ければイイ線はいけると思う。だけど勝てるかと言われるとなぁ。ブルーティアーズについてボクが知ってることを一通り話すのはいくらなんでも反則だと思うし、この訓練でいけるところまでいけるといいんだけど。

 

『はぁ!』

 

 お、レーザーの雨をかいくぐって一兄がツヴァイにブレードで斬りかかった。この状況に持って行って維持することができれば近接武装がほぼないブルーティアーズに対して優位に戦況を運ぶことは出来る。

 

『せいっ!』

 

 とはいえ今の相手はセシリアではなく、ツヴァイだ。ツヴァイは“射撃の方が得意”なだけであって近接戦もできる。ブレードを回し蹴りで弾いて体制を崩した一兄へ右ストレートをお見舞いする。

 

『うぁっ!』

 

 距離が空いた隙にBT兵器のレーザーの雨が一兄を襲う。

 

「こりゃ決まったねー」

 

 アインの言う通り、徐々に削られていた打鉄のシールドエネルギーは今の攻撃で一気にゼロになった。

 

 お互いの視界にシュミレーション終了のサインが出て、一旦シュミレーションは終了。

 

「おつかれさま、一兄、ツヴァイ」

 

「くっそ、行けたと思ったんだけどな」

 

 一兄が疲れながらも悔しげにしてる。対するツヴァイは無表情。疲れの欠片も感じさせない。

 

「これでよろしかったでしょうか?」

 

 うん、ばっちりと言葉には出さずにアインと同じように頭をぽふぽふと撫でてあげる。

 

「んじゃ一兄、今日はもう遅いし帰っていいよ。明日も同じ感じで慣らしていくからね」

 

「おう、分かった。よろしく頼む」

 

 せっかくここまでやってるんだから勝ってほしいもんね。



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