魔法科高校の劣等生~4の名を持つエレメント~ (ウンニーニョ)
しおりを挟む

入学編
プロローグ


どうも、書きたくなって書いちゃいました。よかったら見てください。


某県、四葉第7研究所…

 

「おい、本当にこんな勝手な研究してよかったのか? 真夜様にばれたら消されるぞ」

 

「くくく、そんなことはどうでもいい。この俺の手で最高の生物兵器さえ生み出せさえすれば」

 

そう言って男は助手らしき男の手を振りほどく

 

「実験体はどうなっている?」

 

男は奥にいる女性にたずねる

 

「Iロット1~14全滅、Aロット13のみ成功、ほかは全滅ですね」

 

「そうか、ハハハ。ついに成功だ」

 

男は歓喜の声をあげる

 

 

「あら、私に知られてはいけないことってなにかしら?」

 

そう発せられた女性の声に研究所内の全員が黙る

 

「まぁ調べはついているのだけど、私と深夜の卵細胞を使って実験なんて許した覚えはないわよ?

それに、私のはもう作られない貴重なものなのだから

でもまぁ許してあげる

 

成功して私の血を継ぐ子ができたわけだし、苦しまずに殺してあげるわ

…葉山。」

 

そう言って女性、四葉真夜は右手を上げる

黒い影が動くと研究所の職員の命が消えた

マヤは培養カプセルの中の5歳くらいの少年を愛おしそうに見つめガラスをなでる

 

「真夜様、研究所の資料によりますと四葉の血を使い、エレメントの実験をしていたみたいです」

 

「そう、詳しいことは後で聞くわ」

 

葉山と呼ばれた老人の言葉に真夜はそう返すと、何も言わずに葉山は研究所を出る

 

 

 

この日、四葉真夜の血を継いだ子供が誕生した

 

 

Aロッド13番、コードD+ALLE

 

M<A>YAの遺伝子を使った<13>番目の実験体。闇のエレメントの精子を使い、遺伝子操作により光、火、水、風、雷、土のエレメントの因子の移植

 

その少年は15まで世間には隠され真夜の元で育てられる

真夜により付けられた名前は朔夜。四葉を隠す苗字は闇藤《闇藤朔夜》

この時から11年、朔夜は国立魔法大学付属第一高等学校、通称《一高》に入学する。

 

 

 

☆★☆

 

畳に一人の少年が正座で座っている

少年に向かい合うのは妖艶な女性、四葉真夜

 

「今日から一高に通うのね。 母さん心配だわ」

 

「大丈夫さ。確かに学校に通うのは初めてだけど、友達も作るし、もっと強くなるよ」

 

「そうね。がんばりなさい。あとは…そうね、あなたとは従兄妹に当たる兄妹、司波達也と深雪。彼らも入学するわ。2人とも仲良くしなさいね。」

 

「わかった。あぁっヤバイ遅刻だ。」

 

そう言って少年、朔夜は慌てて家を出る。

 

「あらあら。でもまだ時間はあるはずだけど? ねぇ葉山?」

 

「はい。一時間もございます。」

 

真夜の言葉に廊下に控えていた。葉山が返事を返した。

 

 

☆★☆★

 

猛ダッシュで学校へ向かった朔夜は校門前で息を切らし、周りを見る。しかし、あきらかに人が少ない。

 

「あ、あれ?」

 

そして、校舎の時計を見て気づく。

 

「み、見間違えたー。」

 

こうして朔夜の学園生活が始まった

 

 

 

 

 




少なめですがいかがでしたでしょうか?

次回も見てね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出会い

劣等性は0時投稿でいこう以降と思います。


時間を間違え、早く学校に着いてしまった朔夜はとりあえず校内に入りうろついていた

すると周りから聞こえてくるのはこんな言葉。

 

「ウィードの癖に張り切っちゃって。」

 

などという嘲笑

周りの上級生にあって朔夜にない物

 

それは制服のエンブレム

 

このエンブレムは一科生の証。エンブレムのない二科生は一科生の予備、一科生に劣る落ちこぼれとして扱われ、ウィードと呼ばれ、さげすまれていた

しかし、そんなこと朔夜は気にしない

歩いていると椅子に座る少年を見つけた

自分と同じエンブレムなし。しかも周りの声など気にしていない。

朔夜は声をかけてみる事にした。

 

「となり、いいですか?」

 

椅子に座っている少年は顔を上げると「どうぞ」と返事をし、少し横にずれる

朔夜は隣に腰を下ろすと話しかける

 

「君も入学生?」

 

少年は見ていた端末をしまうとこちらに顔を向け、返事をする

 

「ああ、司波達也だ。」

 

不意を疲れた朔夜はポカンと達也を見つめてしまう

いきなり母に言われた人物に出くわすとは思ってなかったからだ

 

「どうした? なにかついてるか?」

 

不審に思ったのだろうか? 達也は朔夜に質問する

 

「いや、なんでもない。僕の名前は闇藤朔夜。よろしく。」

 

そう言って朔夜は右手を出す。達也もそれに答え2人は握手を交わす

そうしている間に入学式の時間が近づき、周りの人は少なくなっていた

 

「新入生ですね。 開場の時間ですよ」

 

上級生と思われる少女が声をかけてきた

 

「あ、今行きます」

 

そういいながら朔夜は少女を観察する

 

右手首にCAD、ホウキと呼ばれるデバイスを付けている

この学校でCADの携帯を許可されているのは生徒会や風紀委員などの役職につく生徒だけである

 

「私は生徒会長を勤めています。 七草真由美です。ななくさと書いてさえぐさと読みます。よろしくね。」

 

少女がそう言った瞬間、風が吹き、少女の髪がなびく

その光景に朔夜は見とれてしまった

その間に達也が返事をする

 

「俺、いや、自分は、司波達也です。」

 

そう言って腰を折る

それを見て慌てて朔夜も自己紹介をする。

 

「自分は闇藤朔夜です」

 

そう言って腰を折ると同時に思う

 

(今、七草って言ったよな。ナンバース、しかも家と仲の悪い7の家かよ)

「司波達也君に闇藤朔夜君。そう、あなた達が噂の。」

「噂の?」

 

そう朔夜は聞き返してしまう。

 

「ええ。先生方の間ではあなた達の話で持ちきりよ。司波君は入学試験、七教科平均、百点満点中九十六点。特に魔法理論と魔法工学は両方とも小論文を含め文句なしの百点。前代未聞の高得点

闇藤君の方は魔法技能は新入生総代を超えるレベル。しかし、筆記の問題七教科中七教科とも、名前の欄から答えを書き始め0点。本来は落ちるところがきちんと直していれば平均九十四点、司波君とともに魔法理論、魔法工学は満点

苦肉の策で二科生に合格させた幻の新入生総代。名前のところに記入した答えからクレオパトラとも呼ばれていたわ。」

 

そう言って真由美はクスクスと笑う

その時、達也は驚いた顔で朔夜を見ていた。妹を超える魔法技能を持つと言うことに

朔夜は達也の視線に気づかず、真由美の言葉に頭を掻いた。

 

「ごめんなさい。そろそろ行かないと行けませんね。行きましょうか」

 

そう言って真由美は歩き出す

それにつづき、2人は入学式会場に向かった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学式

まえがき

三話目。

オリジナリティが少ない…

戦闘描写はしばしお待ちを。


朔夜と達也は講堂前で生徒会長、真由美とわかれ、2人で中に入った

講堂の中はすでに半分以上の席が埋まっていた

入学式の席は自由なようだ。しかし、明らかに席に座る生徒に規則性があった

それは、前半分に一科生、左胸にエンブレムを持つ生徒。後ろ半分に二科生、左胸が無地のままの生徒。といったように真ん中ではっきりと分かれていた

 

(最も差別意識が強いのは、差別されている者である、か…)

 

それも一種の知恵であるのは確かだ。と達也が考え、逆らうつもりも無く、後ろの方の空いている席に着こうとする

しかし、ここに一人知ってか知らずか前半分、しかもその足取りから空いている席の中では一番前に座ろうと移動して行く者がいた

朔夜である

その腕を掴み、朔夜が振り向いたところで首を振る達也だが、朔夜は達也の意図を理解していなかった。

 

「前の席が空いてるし行こう。達也」

 

達也は溜息をつくと喋りだす

 

「前と後ろで一科と二科で別れているだろう。わざわざ逆らって揉め事を起こす必要もない」

 

達也のその言葉に朔夜は周りを見回すとなるほど、とうなずき達也と後ろのほうで空いている席に座る

 

「前の方に座った方がよく見えるのになんでこんなわけかたするのかな」

 

否、わかっていなかった

 

「一科生は二科生のことを格下に見ているだろう? そこでわざわざ一科生の中に入っていって睨まれたいやつなんていないってことだろう。」

 

「達也もそうなのか?」

 

「わざわざ入学式に面倒ごとを起こして意味の無い時間を過ごすのは嫌だからな。」

 

達也の言葉に朔夜は納得し、式の始まりを待った

 

「あの、お隣は空いていますか?」

 

しばらくして、隣から女性の声が聞こえた

朔夜は声の方を確認すると4人の少女が立っていた

 

「空いてるよ」

 

朔夜がそう言うと、4人は空いていた席を埋める

 

「あの…」

 

隣から話しかけられ、朔夜はそちらを向く

 

「私、柴田美月って言います。よろしくお願いします。」

 

朔夜がキョトンと見ていると、隣から達也が脇を肘でつつき、「自己紹介だ」と耳打ちする

「ああ。」と納得した朔夜は「闇藤朔夜です。これからよろしく。」と笑顔で返す

達也はどこの箱入り娘だ(男だが)と溜息をこぼす

しかし声をかけた少女、柴田美月は朔夜の気さくな対応に、ほっとした表情を浮かべている

朔夜がこの時代にメガネなんて珍しいなと思いみつめていると美月は徐々に顔を赤くしていく

すると美月の隣から声が聞こえてきた

 

「私は千葉エリカよろしくね。それと、そんなに見つめてると美月の顔から火が出るわよ?」

 

「ご、ごめん」

 

「い、いえ…」

 

「ところで君の名前は?」

 

千葉エリカと名乗った少女は2人の反応を楽しみながら達也に尋ねる

 

「司波達也です。よろしく。」そう達也が自己紹介すると、他の2人の女子生徒も自己紹介をし、「4人は同じ中学?」「違うよ、全員初対面」などと話しているところで入学式が始まった

 

入学式は滞りなく終わった。

途中、新入生代表が「皆等しく」や「一丸となって」とか「魔法以外に」とか「総合的に」など際どいフレーズが多々盛り込まれ、それを上手く建前で包み込んだ答辞を読んでいたが、新入生代表の美貌に見とれ、誰も気にしてはいなかった

 

式が終わるとクラスのIDカードの交付がある

あらかじめ決まっているわけではなく(一科生がA~D二科生がE~Hは決まっているが)、その場でクラスが決まり、交付されるのだが、偶然か、朔夜、達也、美月、エリカの4人は同じE組みだった

他の2人は違うクラスだったため離れていった

 

「でも偶然よね、シバにシバタにチバ。似ているものどうし同じクラスなんて」

 

「僕はアンドウでまったく違うけどね。千葉さん」

 

エリカの言葉に朔夜がそう返すとエリカは苦笑いを浮かべる

 

「仲間はずれにしたわけじゃないわよ。あとエリカでいいわよ。」

 

「ま、わかってるけどさ。僕も朔夜でいいよ」

 

その流れでに美月が「私も美月って呼んでくださいね。」達也が「達也でいい」と続く

 

「どうする? あたしらもホームルーム行ってみる?」

 

とエリカがたずねた

すると達也が妹と待ち合わせをしているらしく、しかもその妹が新入生代表だということで、エリカが質問し、達也が美月の目についてふれたところで、その新入生代表、司波深雪がこちらに声をかけてきた。ある人物をつれて




あとがき

皆さん、オリ主の名前読めてました?

あんどう さくや君です。

エレメントと言う事で光井的な感じですね。


では次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新入生代表

まえがき

メリークリスマス。

お気に入り50名突破。ありがとうございます。

今日はクリスマスですので一挙二話。

ではどうぞ。




「お兄様、お待たせ致しました。」

 

背後から声がした。人垣に囲まれていた新入生代表であり、達也の妹でもある司波深雪が人垣から抜け出し声をかけてきたのだ

達也が今までよりも穏やかな声と表情で「早かったね」と答える

深雪の背後に予想外の同行者がいた

 

「こんにちは。司波君、闇藤君。また会いましたね。」

 

人懐こい笑顔でそう話す生徒会長、七草真由美に達也は無言で頭を下げ、朔夜はニッコリと笑顔を返す

その間に深雪が「お兄様、その方たちは?」そう達也に尋ねている

 

「こっちが闇藤朔夜。こちらが柴田美月さん、こちらが千葉エリカさん」

 

達也がそう紹介し、深雪が「もうデートですか?」などと痴話喧嘩している間、朔夜はこの人がもう一人の従妹か。などと考えていた

深雪の自己紹介が済むと、達也が後ろの真由美に気を聞かせ、「生徒会の方々の用は済んだのか? まだだったら適当に時間を潰しておくぞ。」と深雪に話す。しかし真由美が「大丈夫ですよ」と割ってはいる

 

「今日はご挨拶させていただいただけですから。深雪さん…と私も呼ばせてもらってもいいかしら?」

 

「あ、はい」

 

真由美に話しかけられ、深雪は真剣な表情に戻し答える

 

「しかし、会長、それでは予定が…」

 

もう一人、深雪の後ろに控えていた男子生徒が口をはさむ

 

「あらかじめ約束していたものではありませんから。別に予定があるなら、そちらを優先すべきでしょう?」

 

しかし、真由美はそう男子生徒を制す

なおも男子生徒は食い下がる気配を見せるが、真由美は深雪に、そして達也と朔夜に、意味ありげな微笑を向けると

「それでは深雪さん、今日はこれで。司波君と闇藤君もまた、ゆっくりと」

そういってさって行く。その後ろに続く男子生徒が振り返り、達也と朔夜を見下すような、きつい目でにらんでいた

 

帰り道は5人で帰った。達也と深雪の会話が本当に兄妹かと疑いたくなるような甘いものだったがエリカの食い気がそれを中和し、5人でお茶をしてから帰路についた

 

家に帰ると葉山が出迎え、「奥様が奥でお待ちですよ」と声をかけてくる

奥の座敷に入ると真夜が上座に座っていた

 

「ただいま。母さん」

 

そう言って朔夜は真夜の対面に正座する

 

「もう、ママとかお母様って呼んでって言ってるのに。それで、学校はどうだった? 楽しかった?」

 

真夜はそうたずねる。真夜は朔夜と話すときだけ他には見せないやさしい笑みを浮かべる。

 

「楽しかった。達也と深雪にも会ったよ。友達になった」

 

「そう、他には友達ができた? かわいい子はいたのかしら?」

 

朔夜の言葉に真夜はニヤリと笑い質問する

 

「そ、それは…」

 

朔夜は口ごもる。言っていいかわからなかった。桜の木下で風に揺れる髪を手で押さえる彼女に目を奪われてしまったと

 

「あ、その顔はいたわね。誰なの? 言いなさい。」

 

真夜の攻めに朔夜は答える

 

「七草…真由美…」

 

「そう」

 

朔夜の答えに真夜は表情を暗くしたが

 

「でも可愛い息子のためだもの。そのくらいの障害なんとかしなくちゃね。朔夜の初恋だものね。」

 

そう言って微笑む

 

「か、母様、初恋とは違うから。ちょっときれいな人だなって思っただけだから」

 

「そうそう。昔みたいにそうやって呼んでくれればいいのに。」

 

言えば言うほどからかわれる事に気づいていない朔夜だった

 

 

 




あとがき

楽しんでいただけてますか?

コメントなぞいただければテンションあがります。

誤字報告もお願いします


では次の話をお楽しみください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウィードとブルーム

まえがき

一挙二話目は少し長くなってしまいました。


これから長くなっていくかもですが…

一挙二話ですので今日この話から呼んでしまっている人は前の話から見てくださいね。


ではどうぞ


校門前で司波兄妹と出会った

A組である深雪と別れ、達也と朔夜はE組の教室に入った。

あ、と、し、で席が離れているかと思ったが達也の席は朔夜の右2つ後ろの席だった

達也の隣は美月らしくそこにいたエリカと美月に挨拶している。エリカが声をかけ手を上げてきたので、「おはよう」と手を上げる

席に着くとIDカードをセットし、インフォメーションをチェックする

 

履修規則、風紀規則、施設の利用規則から、入学に伴うイベント、自治活動の案内、一学期のカリキュラムまでスクロールし、確認するとキーボードオンリーの操作で受講登録を一気に打ち込んで顔を上げると後ろから声がした

 

「お前ら2人とも珍しいことするのな。」

 

男子生徒の言葉に朔夜は何を言ってるかわからず首をかしげ、達也は「珍しいか?」と返す

どうやら達也も同じことをしていたようだ

 

「珍しいと思うぜ。今時キーボードオンリーなんて。 初めて見た」

 

達也が「慣れればこっちの方が早いんだがな。」と返しているが朔夜はそれが当たり前だと思っていたらしくハテナがたくさん浮かんでいる

 

「――西条レオンハルトだ。父親がハーフ、母親がクォーターな所為で外見は純日本人だが名前は洋風。得意魔法は硬化魔法だ。レオでいいぜ。」

 

と朔夜の意識が戻ってきた時には自己紹介をしているところだった

レオとの自己紹介を終え、エリカや美月も交え話していると、予鈴がなり、オリエンテーションが始まった

 

カウンセラーの小野遥と言う女性が自己紹介を済ます。オリエンテーションはつつがなく進んだ

その日は見学がメインで授業はない

朔夜達5人は工房見学をした後、昼食をとっていた。遅れて深雪が合流したが、深雪について来た一科生が深雪の座る席しかないのを見ると、「ウィードなんだから譲れ」と言い出したのだ

朔夜はその一科生を哀れむような目で見ていたが、達也がエリカが切れそうなのを察知し、朔夜達4人に声をかけ席を立った

深雪は申し訳なさそうに頭を下げていたが、周りの一科生は当然だ。と空いた席に腰を下ろした

 

午後の見学でもそのメンバーで一揉めあった

射撃場、そう呼ばれる遠隔魔法用実習室では3年A組の実習が行われていた

只今、生徒会長、七草真由美の番

真由美は遠隔精密魔法の分野で10年に1人の英才と呼ばれ、それを裏付けるように多くのトロフィーを一高にもたらしていた

それにコケティッシュな容姿も入学式で見ている

見学の生徒は殺到した

その中で一番良い席を取っていたのは一番に食堂を出た朔夜達5人

一科生に遠慮する二科生が多い中悪目立ちしていた

 

そして今は校門前、美月が啖呵を切っていた

 

「いい加減諦めたらどうですか? 深雪さんは、お兄さんと帰ると言っているんです。他人が口を挿むことじゃないでしょう。」

 

相手はやはり昼食時の一科生

達也達5人と一緒に帰ろうとした深雪に一科生が難癖をつけたことが発端である

 

「別に深雪さんはあなた達を邪魔者扱いしてなんていないじゃないですか。一緒に帰りたければ一緒に帰ればいいんです。」

 

「僕達は彼女に相談することがあるんだ。」

 

「そうよ。司波さんには悪いけど少し時間を貸してもらうだけよ。」

 

だんだんヒートアップしている

今もエリカが正論の皮肉を言っているところだ

最後に美月の言葉

 

「同じ新入生じゃないですか。あなた達一科生が、今の時点でどれだけ優れていると言うんですか?」

 

その言葉が一科生に火をつけた

 

「…どれだけ優れているか、しりたいならおしえてやる。」

 

「ハッ、おもしれぇ。ぜひとも教えてもらいたいね。」

 

一科生の威嚇とも取れる言葉にレオが挑戦的な言葉で返す

一科生のリーダー的ポジションに居た男子生徒が反応する

 

「だったら教えてやる。」

 

男子生徒が腰に携帯していたCADを抜いた

男子生徒が抜いたのは特化型CAD。汎用型が数種類、最大99個の起動式を記憶できるのに対し、特化型は9種類。しかし、より高速に魔法を発動できる

男子生徒は拳銃型のCADをレオのほうに向ける。そして起動式が構築され始める

 

「ヒッ」

 

しかし、悲鳴を上げたのはレオではなく男子生徒

起動式は完成することはなく、CADは叩き落される

叩き落したのはエリカだった。

 

「この間合いなら体を動かしたほうが速いのよ」

 

声を上げた男子生徒に警棒型のCADで肩をポンポンと叩きながら言い放つ

その隣でレオが「俺の手ごとブッ叩くつもりだっただろ」と、文句をいっている

そのとき、一科生の後ろに居た女子生徒の腕輪形状の汎用型CADに指を走らせる

起動式がくみ上げられていく

 

そこで、朔夜が動いた

 

女子生徒の前に立つと右手を女子生徒とは反対側に向ける

 

「やめなさい」

 

そこにサイオンの弾丸が飛んできた。しかし、サイオンの弾丸は朔夜の右手に掴まれ、消える

その後に女子生徒の起動式が完成し、あたりを光が包む

女子生徒が発動した魔法はただの目くらましだった

 

「やめなさい。自衛以外の魔法による対人攻撃は校則違反以前に犯罪行為よ。」

 

「あなた達、1-Aと1-Eの生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい。」

 

現れたのは生徒会長、七草真由美と、風紀委員長の渡辺摩利だった。

 

「すいません。悪ふざけが過ぎました。」

 

「悪ふざけ?」

 

達也の言葉に摩利の眉がひそめられる

 

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうつもりだったんですが、あまりにも真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」

 

レオにCADを向けた生徒が目を丸くしている

他の生徒も絶句する中、摩利は落ちているCADとそれを叩き落としたであろおうエリカを一瞥すると

 

「ではなぜその1-Aの女子は魔法を発動させたんだ?」

 

「驚いたんでしょう。条件反射で起動プロセスを実行できるとは、さすが一科生です。」

 

「今回は目くらましだったが、攻撃性の魔法だった場合、君の友達は怪我をしていたわけだが?」

 

「攻撃性の魔法でないことはわかっていましたので。」

 

「ほう、どうやら君は、展開された起動式を読み取ることができるらしい」

 

「実技は苦手ですが、分析は得意です。」

 

「…誤魔化すのもとくいなようだ」

 

値踏みするように、睨みつけるように摩利は達也を見た

 

2人の話が終わったのを確認すると今度は朔夜が話し出した

 

「生徒会長。あなたの精密射撃は確かに正確です。だけど、このサイオンの弾丸は少しずれるだけで大怪我になりかねない。強い力を持つのならいくら自信があろうと考えてください」

 

「たしかに、少しずれれば大怪我かもしれません。ですが、私には彼のように起動式が読めない以上、攻撃性の魔法と判断してとめることしかできません

攻撃性の魔法の場合、その魔法が向けられた生徒の方が危険だと判断しています」

 

「そうですか。自分の射撃に自身を持ちすぎていたのなら危険だと思っただけなので…偉そうな事を言ってすみません」

 

真由美の言葉に朔夜は納得し、謝る。

 

「いいのよ。だけど闇藤君、あなたも起動式が見えるの?」

 

「まぁ。一応。」

 

魔法を発動した女子生徒に背を向け、自分の魔法を防いだ昨夜に真由美は疑問をぶつけてみたが返ってきたのはやはり肯定の言葉だった

そこで、真由美は気づく。自分の魔法を素手で防いだことに

 

「ところで、右手は大丈夫?」

 

「はい。なんともありません。」

 

真由美の心配そうな声に朔夜は右手をグッパと開きながら微笑む。

 

「摩利、もう良いわよね?

 司波君、闇藤君、本当にただの見学だったのよね?」

 

そういって。摩利をなかば強制的に納得させるように助け舟を出すと朔夜に微笑んでこの場から去って行く。その時に達也と朔夜は摩利に名前を聞かれたのだった

 

その後は一科生が皮肉を言って去っていった。

 

残っていた一科生、さっき魔法を発動させた女子生徒、光井ほのかとその友達、北山雫とのわだかまりも解け、一緒に帰る事になった

 

☆★☆★

 

帰り道、みんなと別れ家へと着いた朔夜は家に入る前に空に向けて右手を上げると空に向けてサイオンの弾丸が放たれる

それを放った後、朔夜は家に入った

 

奥の座敷、朔夜は真夜と向かい合って座っている

 

「今日は何かあったの? そとで《解放》を使ったみたいだけど。」

 

「ちょっと下校前にいざこざがあってね。サイオンの弾丸を《封印》したから解放しとこうかなって。」

 

「そう、でもあまり人の多いところであなたの固有魔法は見せてはだめよ。」

 

「わかってるよ。今日も手で受けたように見せたから。」

 

そう話しているところで家のメイドからご飯の支度ができましたと声がかかる

朔夜と真夜は食卓へ移動するのだった

 

 

 




あとがき


今回は朔夜の固有魔法が出てきました。封印と解放。

わかる人にはわかるものですよね。



では次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生徒会長

朝、朔夜はキャビネットを降り、欠伸をしながら学校へむけて歩いていた

 

「朔夜君、おはよう」

 

突然そう言って生徒会長、七草真由美が後ろからいきなり朔夜と腕を組んできた

朔夜はさっきまでの眠気も吹っ飛び、真由美を見たままフリーズしてしまう

 

「おはよう、朔夜君。」

 

真由美はもう一度朔夜に微笑みながら挨拶をする

 

「お、おはようございます。生徒会長。

 あ、あの…顔が、近いんですけど…」

 

「真由美でいいわよ。朔夜君。」

 

「いや、生徒会長、顔が…」

 

「真由美」

 

「ま、真由美さん」

 

「よろしい。じゃぁ行きましょう」

 

真由美はそういうと腕は組んだまま、朔夜を引っ張り歩き始める。

 

(おいおい、昨日少しもめた所じゃなかったか?)

 

そんなことを考えつつ、しかし真由美に何もいえないまま、引かれるまま歩いている

周りには登校中の一高生がおり、みんなこちらを見て驚いている

朔夜がため息をついた時、もうひとつ回りの目を集めるようなことを真由美は起こした

 

「達也くーん。深雪さーん」

 

真由美は前のほうに歩いている一行にたいして声をかけた

その一行、達也、美由紀、エリカ、レオ、美月はこちらを振り向くと驚き、何か話している

その間も、真由美は朔夜と組んでいないほうの手で達也達に手を振りながら達也と深雪の名を呼び、近づいていく

 

「達也君おはよう。深雪さんも、おはようございます。

 みなさんも、おはようございます。」

 

真由美は達也には少し砕けた感じで(ぞんざいに)、深雪やほかの面々にはきっちりとと挨拶した

 

「おはようございます。会長」

 

達也に続き、深雪達も挨拶する

エリカやレオ達が引き気味なのはしかたないだろう

 

「お二人はそういう関係だったのですか?」

 

達也が真由美に向けて質問する

 

「いいえ、さっきそこであったのよ。私は基本一人で登校するから。」

 

達也、いや、他の面々も思っただろう。 そこであっただけで腕を組んで登校などするだろうか?

 

「深雪さんと少しお話したいこともあるし、ご一緒してもよろしいかしら?」

 

こうして真由美、朔夜、達也、深雪、エリカ、レオ、美月という奇妙なメンバーでの登校が始まった

話の内容はというとお昼のお誘いだった

生徒会のことで深雪とゆっくり話したいのでお昼ごはんでも一緒に食べましょうとのことだ

昨日の昼食時、揉めたことから深雪は生徒会室で達也とゆっくり食べられるということに深雪は目を輝かせ、達也がそれに答え、お昼を一緒することになった

エリカ達は丁重に断っていたが、朔夜は腕を組みながら朔夜君は来てくれますか? と見上げてくる真由美にため息をつきながら了承した

真由美は「よかった。朔夜君にも話したいことがあったのよ。」と笑顔で答えた時、ちょうど校門前まで来たので朔夜と組んでいた腕を解き、「それじゃぁ、お昼にね」と笑顔で去っていった

 

 

1年の教室まで向かう途中、朔夜はエリカにからかわれた

 

「よかったわね。生徒会長と腕が組めて。」

「勘弁してくれ。」

 

朔夜は疲れたように返す

 

「確かにあんなに綺麗な方となんて緊張しますよね。」

 

「そんなことより周りからの目線が…」

 

美月の言葉ももっともだが、朔夜はそれよりも周りの目が気になったようだ

そんな話を話しながら教室へと入る。

それから午前中の授業問題なく進み、朔夜、達也、深雪の3人は生徒会室へと向かった

 

☆★☆★

 

真由美は分かれた後、朔夜達から見えなくなるまでスキップで進むと駆け足で生徒会室へと向かう

ドアを閉めると生徒会室には真由美一人

真由美は顔を真っ赤に染め、両手で覆いながらしゃがみこむ。

 

(はずかし~~~~~。 でも、これも勧誘のためよ)

 

ガバッと立ち上がると拳を握る

 

「でも闇藤君と向かい合うと胸がドキドキするのよね…

 …ガンバレ、あたし。」

 

真由美は一人でそうつぶやいた

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

真由美がむずかしい

ではまた次回。



では次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勧誘

まえがき

さて大晦日ということでまず一話。

どうぞ。


昼休み

 

今朝、生徒会室での昼食の約束をした朔夜、達也、深雪の3人は生徒会室の前にいた

代表して深雪がインターホンを押す

すると、中から生徒会室のセキュリティが解除され、ロックが外れる

 

「いらっしゃい。遠慮しないで入って。」

 

ドアを開けると正面奥の机からそう声がかけられた

真由美が笑顔で手招きしている

3人は深雪を中心に中に入る。深雪は宮中晩餐会にでも招待されたかのように礼儀作法のお手本のような挨拶をする

隠してはいるが3人は十師族の四葉の血縁者、礼儀作法は仕込まれている

達也と朔夜は気にしてはいないがその様子に真由美は口角をヒクリとさせ、同席していた役員2人は雰囲気に呑まれてしまった

役員ではないが同席している風紀委員長は平静を保っているが、ポーカーフェイスだろう。目が呑まれている

 

「どうぞ掛けて。お話は昼食をとりながらしましょう。」

 

気を持ち直した真由美がそういい、3人は自分たちのために用意された席に着く

 

「お肉とお魚と精進、どれがいいですか?」

 

2年生の小柄な生徒会役員が3人にメニューを聞き、自配機を操作すると席に戻る

話し始めたのは真由美だった

一応、もう一度生徒会役員の紹介を行う

 

会計の市原鈴音、真由美いわくリンちゃん。

 

先ほど自配機を操作していた生徒、書記の中条あずさ、真由美いわくあーちゃん。

 

ここにはいないが副会長、はんぞーくん、真由美は本名をスルーした。

 

そして風紀委員長の渡辺摩利。

 

あだ名で呼ばれた2名は真由美に抗議していたが真由美は聞く耳をもたなかった

紹介が終わったところで自配機のブザーが鳴る

全員に料理が配られる。摩利は手作りのお弁当を持参していた

 

「そろそろ、本題に入りましょうか。」

 

真由美の言葉で本題に入る

内容は深雪の勧誘。はじめに生徒会に与えられている権限、風紀委員の任命権などの説明

続いて毎年、新入生総代を務めた人を生徒会に勧誘し、生徒会長の後継を育成するというシステムの説明

この勧誘中、深雪は自分の代わりに達也を押すが、二科生の生徒会入りは規則で禁止されている。その事実を聞いて深雪は書記として生徒会いりするのだった

話は変わり風紀委員

摩利が今年の生徒会推薦枠が開いている、風紀委員には一科、二科の縛りはないと言い出した。

 

それを聞いて真由美が「名案ね!」と達也を指名した

昨日のいざこざで摩利は達也に目をつけていたのだろう、達也は拒もうとするも、深雪も加わり女子3人に押し切られてしまう

そんな話の中、自分がここにいる必要があるのかと思っていた朔夜に声がかかる

 

「朔夜君、今度はあなたにお話があります。」

 

気を抜いていた朔夜は突然真由美に声を掛けられ「ふぇ」と声を出してしまう

 

「朔夜君、貴方には生徒会の役員にはなってもらえないけれど、私の補佐をしてもらいたいの」

 

その言葉に生徒会室にいた全員が固まる。摩利は口に運ぼうとした卵焼きを落としてしまった

真由美は入学テストの真相を知っているため、このままにしておくのはもったいないと補佐にしようと考えたのだ

それに、昨日の一件、普通はできない魔法式を読み取ることのできる目、彼がいれば今までやむをえなく攻撃し、怪我をさせてしまっていた人を減らせるとも考えたのだ

しかしここにいる面々は達也以外、入学テストのことも朔夜の実力も知らない

 

「真由美、いきなりだがどうして彼を補佐にしようと思ったんだ?」

 

摩利が真由美にたずねた。しかしそこでちょうどチャイムが鳴り、この話は放課後ということになった

朔夜は自分が七草の補佐についていいものか、そんなことを思いながら午後の授業へ向かうのだった

 




あとがき

明日、元旦にもう一話上げます。

やっと戦う…かも


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

模擬戦

まえがき

あけましておめでとうございます。

ではどうぞ


午後の授業は実習だった

 

レールの中央地点まで台車を加速しそこから終点まで減速して停止。これを6往復

二科生であっても初期の初期。そんなに差が出るわけでもない

授業はスムーズに進んだ

 

授業が終わって放課後

 

朔夜、達也、深雪の三人は第三演習室にいた

ここにくるまでには色々あった

三人は放課後すぐに生徒会室に行った

すると、昼にはいなかった人物、服部副会長がいた

彼は二科生にたいしていい感情を持っておらず、朔夜と達也を無視した

それに怒ったのが深雪である(達也のことに関してだが)

 

「兄は確かに魔法実技の成績が芳しくありません。しかしそれは実技テストの評価方法が兄の力に適合していないからです。実践なら兄は誰にも負けません」

 

それを戯言と批判する服部に妹の目が節穴ではないと確認させるため、達也は模擬戦をすることとなった

それに乗っかったのが風紀委員長、渡辺摩利だった

彼女は真由美の親友としても朔夜が真由美の補佐につくに値する人物なのか模擬戦で試したいのだそうだ

何しろ十師族である真由美だ。何かあったとき足手まといになっては何にもならない

朔夜の入試の真相を知らない面々はやはり不安なのだ。二科生の魔法技能では

審判として真由美、摩利と並ぶ三巨頭最後の一人。部活連会頭、十文字克人が仕切ることとなった

 

閑話休題

 

今、達也の模擬戦が終わって拳銃型の特化型CADを片付けているところだ。

この模擬戦でいろいろなことがわかった。

達也が忍術使い、九重八雲に師事を受けていること。

戦闘技術、魔法技能テストで評価されない部分での技術は群を抜いており、戦闘では一科生、それも生徒会副会長のような上位の一科生も瞬時に倒してしまう実力の持ち主であること

そして、シルバー・ホーンと言う希少なCADを2丁使っていることなどだ

 

そして、今度は朔夜と摩利の番だ

朔夜はこの模擬戦が決まるまでも、補佐を断ろうとしているのだが、言い出すタイミングで狙ったように真由美に話をさらわれ、今に至る

 

この模擬戦もお昼から放課後までに摩利が真由美にたきつけられたのでは? と思えてくる

朔夜はため息をつくと覚悟を決める。決めているのだだれにもまけないと

 

「朔夜君は特化型は使わないのかい?」

 

摩利は何も持たずに手首に汎用型CADをを付けている朔夜に話しかける

 

「使いますよ。コレ」

 

そう言って朔夜は右人差し指の指輪を見せる

コレが朔夜の特化型CAD。朔夜のオリジナルでCADの中で最小ではないだろうか

これと左の手首につけたアクセサリー型の汎用型CADを使い分ける。

 

「それがCADなのか? まぁいい、実力には関係ないか。 はじめよう。十文字、頼む。」

 

摩利の言葉で朔夜のニコニコとした表情は消え、目に鋭さが宿る。

 

「渡辺摩利と闇藤朔夜の模擬戦を始める。はじめ‼︎」

 

克人はそれを聞いてうなづくと右手を振り下ろす

それを合図に摩利はCADを操作しようと右手首に左手を向かわせる

しかし、左手はCADに届くことはなかった

今、摩利は演習室の床に顔をつけている

摩利がCADを触るより早く朔夜の魔法が摩利を床へと押しつけた

周りで見ている面々は何が起こったかわかっていない(達也はその《目》で見ていたが)

朔夜は動いてさえいないのだ

克人の右腕が振り下ろされたその瞬間、摩利が倒れたように周りには見えた

しかし実際はその瞬間、朔夜の魔法式が一瞬で構築され摩利の体を床に押しつけた

使ったのは重力の加重

特化型の指輪に記憶されている九つの魔法の内の1つ

発動キーは存在しない。思考するだけでいい

この技術は世間的にはまだ確立されていない

それを隠すための指輪型、どうやったと聞かれれば中指で擦るなどして操作したとカモフラージュすればいい

 

「もう、いいですか。」

 

朔夜の言葉に克人は朔夜のほうに手を上げ「勝者、闇藤朔夜」と宣言する

克人の判定が少し遅れてしまった

十文字の固有魔法、ファランクスで押さえつけた時に酷似していたから戸惑ったのだ

克人の言葉を聞くと朔夜は魔法を解除し、摩利の体は何もなかったように動けるようになった

摩利は立ち上がるとやられたと頭を掻きながら朔夜に近づいてくる

 

「強いな君は。私が魔法を使う暇もなかった」

 

その言葉に返したのは真由美だった。

 

「そうでしょ。なんたって幻の新入生総代だからね」

 

その言葉に全員疑問を浮かべる

真由美は自分のことのように説明して見せた。朔夜のすごさと間抜けさを

 

「これで私の補佐になっても文句はないわよね。摩利、はんぞー君」

 

「しかし、そんなことなら言ってくれればよかったんじゃないか?」

 

「見てもらうのが一番でしょ? それに私も朔夜君の実力を見たかったし」

 

ここでも朔夜がしゃべる前に真由美に持っていかれてしまう

 

「しかし闇藤が強いと言っても七草の補佐に二科生が付くとなると反論も多いだろう」

 

そこに克人が口を挟む

真由美も摩利も今更かと克人のほうを見る。

 

「風紀委員の部活連推薦枠も空いている。風紀委員室と生徒会室はつながっているわけだし、闇藤にも風紀委員に入ってもらうのはどうだ」

 

「グッドアイディアよ。十文字君。」

 

克人の提案に真由美がグッと親指を立てる

ここでも朔夜が口を挟む暇なく、風紀委員に入ることが決まった

 

☆★☆★

 

四葉家

 

帰宅した朔夜は、葉山に挨拶をし、真夜と向かい合っていた

 

「今日の学校はどうだった?」

 

「…真由美さんの補佐をすることなった。 いいのかな? 七草の補佐って…」

 

「別にいいわよ。 学校のことは十師族とは関係ないわ。それに、朔夜は闇藤でしょう? それより、もう真由美さんなんて呼んでるの? その辺をもっと聞きたいわ。」

 

真夜は朔夜の心配事をあっさりOKをだす。 それよりも息子の恋愛事情が気になるようだった

 

「母さん、そういうんじゃないって言ってるだろ」

 

こうして夜は深けて行くのだった




あとがき

ようやく戦闘?

模擬戦でした。

こんな感じだと本格的な戦闘描写はブランジュ戦か、九校戦になるかな…


では次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四葉

まえがき


今回オリジナル。


どうぞ。


模擬戦があった日の夜

 

達也と深雪は九重八雲が住職を勤める寺にきていた

 

「師匠、この間お願いした件ですが…」

 

「闇藤朔夜、だったね。しかし、調べられたことは何もないんだ」

 

八雲はそう言って細い目をさらに細める

達也は朔夜について調べてもらっていた。 初日に深雪よりもすごい魔法技能だと聞いたときから気にかけていたのである

 

「なにもない…ですか? 師匠がですか?」

 

「そうだね。僕の情報網を使っても不思議なほどに何も出なかった。ここからは踏み込むなと警告されているように何も…

苗字の闇の字からエレメントの家系とも取れるがエレメントは現存するのは火、水、雷、風、土、光。

闇の家系は一世代目で途絶えている」

 

「そうですか…師匠にも調べられないとなると…」

 

達也は朔夜に対しての警戒レベルを上げた

 

「そうだね。 警戒していたほうがいいね。」

 

八雲も同意見のようだ

2人のやり取りに、深雪は朔夜がそんなに警戒すべき人物なのかと目をパチクリさせていた

 

☆★☆★

 

翌日、達也と深雪は四葉家に呼ばれていた

今は四葉家当主、真夜と向かい合っている

 

「深雪さん、達也君。入学おめでとう。」

 

「ありがとうございます。それで、今日呼ばれたのはどのような用件でしょうか?」

 

達也は挨拶もそこそこに本題をたずねる

真夜は妖艶な笑みを浮かべると、話し出す

 

「今日、ここに呼んだのはある人物の紹介と、達也君への命令のためね。」

 

「命令ですか?」

 

「ええ。その前に紹介したほうがいいわね。入りなさい」

 

真夜が呼ぶと部屋の襖が開く。 そこには達也と深雪、2人が知る人物が立っていた

その人物は真夜の横まで来ると隣に正座し、2人にニコリと微笑みかける

達也はと深雪は固まった。どうなっているのかわからなかった

 

「知っているわよね。闇藤朔夜。」

 

「…はい。同級生ですし、ここ最近は一緒にすごしていました」

 

達也が答えると真夜はニコリと笑う

 

「そして、九重八雲に頼んで調べてもらった」

 

真夜の言葉に達也はポーカーフェイスを保つが、深雪は不安で顔を曇らせる

 

「いいのよ。深雪さんを守るためだもの。次期当主候補の深雪さんの護衛。それがガーディアンである貴方の使命。

だけどそのせいで警戒して朔夜に危害を加えられたらどうしようもないもの。

達也君、深雪さん、この子は私の実の子であり、深雪さんと同じ次期当主候補の1人よ」

 

真夜のこの言葉に驚愕のあまり達也のポーカーフェイスも崩れ、目を見開いた

真夜は12の時に誘拐され、その時に生殖機能をなくしているからだ

 

「2人が驚くのもわかるわ。確かに私は子を生せない体よ。だけど誘拐されたあの時、私の卵子は誘拐されたグループに採取されていたの。四葉のサンプルとして…

私が助けられたときにグループは全員殺されたけど、その時に四葉の研究者の1人がそれを手に入れていたらしいのよ

それを隠して、四葉に内緒で実験をしていた研究者がいたのよ。それを制裁したときに完成していたのがこの子。それから、この子が5歳のときから私の子として私が育てているわ。実際、血が繋がっているのだし…」

 

真夜の話は2人にとって衝撃だった。深雪にいたっては口が開いてしまっている

真夜は続ける。

 

「2人にとっては従兄妹なのだし、仲良くしてあげてね。…それで達也君への命令なのだけど、四葉のガーディアンとして、朔夜のことも守って頂戴ね」

 

「しかし、自分は深雪の…」

 

「もちろん深雪さんの護衛は続けて頂戴ね。 それと同時に朔夜のガーディアンも引き受けてちょうだい。四葉同士で争うのも馬鹿らしいでしょう?」

 

達也は深雪の護衛のことを言おうとするが真夜に先に言われてしまう

 

「そういうことでしたら」

 

達也は、その命令を受けることで、深雪への攻撃の心配が減るのならと引き受ける

 

「ありがとう、達也君。朔夜は十分強いのだけれど、母親としては心配でしょう?よろしく頼むわね。

…あら? もうこんな時間。私はこれから用事があるのよ。失礼させてもらうわ」

 

真夜はそういうと出て行ってしまった

真夜が出て行くと、達也が、深雪が、苦笑しながら朔夜に話しかける

 

「朔夜、そういうことなら早く言ってくれればいいじゃないか」

 

「ほんとうです。でも私達が従兄妹だったなんて驚きですね」

 

「すまない。言っていいものかわからなくて。改めて、よろしく」

 

3人は笑いながら握手をした

 

 




あとがき



私、気づいてしまいました。

…朔夜、セリフが少ない。


……次回からがんばろ。

ではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

取り締まり

今は部活勧誘週間

この期間は部活紹介、勧誘のためCADの携帯が許可される

毎年どうしても勧誘がヒートアップし、いざこざが起こる

そのいざこざにCADが使用されるとケガ人が出てしまう

そのため風紀委員が取り締まる

朔夜は今日、風紀委員の新人紹介を終えた後、見回りにでていた

適当に見回っていると、こちらに向かってくる人影が目に入る

ほのかと雫だ。追いかけられているようで(しかもボードに加速の魔法をつかっている人に)こちらを見た瞬間「助けてぇぇええ」と叫んでいる

見つけてしまったものは仕方がないと、朔夜は左手のアクセサリーに手をやると、瞬時に魔法式を展開し、加速する

ほのかと雫を通り過ぎると、追いかけている二人の女子生徒とすれちがう瞬間、女子生徒の首元を掴む

そして、先ほど加速の魔法と同時に展開し、右腕に封印しておいた魔法を解放する

それによって、女子生徒は首を痛めることもなく朔夜に引っ張られる

搭乗者を失ったボードはそのまま壁のほうへ飛んで行った

朔夜は着地し、女子生徒を下ろすと女子生徒たちに話す

 

「魔法の不正使用により補導させていただきます。」

 

女子生徒たちはそれを聞いておろおろと言い訳をはじめる

しかもこの2人の女子生徒バトルボード部のOBらしく、直接はバトルボード部に関係ないらしい

朔夜は溜息をつくと、ほのかと雫にどうしようか? と目線を送る

すると2人は笑い出し、面白かったから入部するといいだした

本人たちで解決できるならばそれでいいか。と朔夜はもう「無茶はしないように。」と言い残しこの場を去る

しばらく見回っているとサイオンの乱れをみつけ、加速を展開しそちらへと移動した

 

移動した場所は体育館

 

そこでは達也が先に仲裁に入っていたのだろうか? それとも達也が騒ぎを起こしたのだろうか?。殺気立った部員たちを相手に立ちまわっている

近くにいたエリカに事情を聞くと朔夜は一瞬で達也の横に移動する

 

「大変そうだな。手伝おうか?」 

 

朔夜は苦笑しながら達也に問いかける

 

「そうだな。これから大変なことになりそうだしな」

 

達也は苦笑しながら答える

朔夜はどういうことだ? とはてなを浮かべているが、周りを見ればわかるだろう

いきなり朔夜が現れたことに一瞬周りは固まっていたが、「手伝おうか」その言葉を発したのが二科生だとわかると諦めかけていた目に再び怒りが満ちた

問題を起こした一科生(剣術部らしい)は朔夜と達也に向けて一斉に飛びかかる

魔法を使わず飛びかかってくるので朔夜も魔法で対処することはせずに相手の勢いをつかって対処する

どうやって制圧しようかと考えているところに、騒ぎを聞き駆けつけた克人の声で剣術部の一同は観念したのかおとなしくなった

 

このあと、朔夜は大変だった。

 

達也と風紀委員室に先ほどの騒ぎの報告に行った

その道中に達也からは「護衛対象が危険に突っ込んでいくと大変だと思わないか?」と苦笑いで愚痴られる

続いて風紀委員室で報告を済ませ、退室をしようとしたところで階段から真由美が顔を出した

 

「朔夜くーん、どこに行ってたのかなぁ? 私の補佐って言ってたよねぇ?」

 

顔は笑顔だが目が笑っていないような…

そして、真由美の補佐として書類の整理をしながら空いた時間で見回りをする

 

こうして、部活勧誘週間は過ぎていった

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

昼食

生徒会での食事風景も最初のころとは、様変わりしていた。とは言っても二週間たっていないのだが…

 

最初は摩利だけだったお弁当も、今では達也と深雪、続いて真由美も持ってくるようになった

そして今日、新たに1人、朔夜が机の上にお弁当を出した

 

「まさか、君が持ってくるようになるとは思わなかった。」

 

「本当ね。朔夜君も料理するのね。」

 

摩利と真由美が意外そうに言う

 

「いえ、これは母が。」

 

カラン…

 

 

朔夜が発した言葉に驚き、深雪が達也に渡そうとしていた箸を落としてしまった

達也も驚き、固まってしまい、箸を拾えずにいた。

朔夜の母とは極東の魔王、夜の女王と呼ばれる四葉真夜なのだ。それを知っている2人がこうなってしまうのも無理はない

 

「昨日、生徒会でのことを話したら母が張り切ってしまって。」

 

朔夜はそれに触れず続ける

達也と深雪が気を持ち直し、食事は何事も無く進…まなかった

摩利が達也がカフェで女の子を口説いていた。などと言い出したときから空気が冷たくなった

しかしそこから話は急展開を見せた

達也が話の流れで《ブランシュ》と口に出したことからだ

極秘情報を一般人である達也が知っていたことに、真由美と摩利は驚愕している

朔夜は何事も無いとタコさんウインナーを口に運ぶ

それに真由美は「朔夜君も知っているの?」とたずね、朔夜はそれを肯定する

摩利は額に手を当て「何者なんだ君たちは」とため息をついていた

この後、ブランシュの話がメインで食事が進んだのだった

 

☆★☆★

 

次の日の昼休みは生徒会室へは行かなかった

エリカ、レオが授業の居残りをしているためそれに付き合っているのである

とはいっても朔夜は美月とともに眺めているだけでアドバイスをしているのは達也であるが

この課題は基礎単一系魔法の魔法式を制限時間内にコンパイルして発動すると言うもの。制限時間は1000ms

はじめは朔夜も教えてくれと頼まれ、達也がレオ、朔夜がエリカを教えることとなったが、朔夜の教え方が擬音による説明で教えるのは向いていないということで達也が二人とも教えることとなった

ただいまの結果、レオ1060ms、エリカ1052ms

2人とも頭を抱えながら達也のアドバイスを受けている

そこへ他のクラスの友人達がやってきた。深雪、ほのか、雫である

達也は3人に「これで終わるから待っててくれ」とエリカとレオにプレッシャーをかける

無事、宣言どおりに課題をクリアさせ、2人は胸をなでおろす。

 

「2人とも、お疲れ様。

 お兄様、ご注文のとおり揃えて参りましたが…足りないのではないでしょうか?」

 

深雪がそう言って達也にビニールの袋を渡す

達也は昼休みの時間がなくなるのを見越して深雪にサンドイッチなどを買ってきてもらっていたのだ

A組の3人は先に食事を済ませているのでE組の5人でありがたくいただく

食事をしながら話していると、エリカが「参考までにどのくらいのタイムかやってみてくれない?」と深雪に頼み、深雪がやって見ることとなった

深雪がコンソールに手を置くと計測が開始される

計測していた美月が「235ms?」と少し疑問げに言った。

 

「何回聞いてもすごい数値よね…」

 

「深雪の処理能力は、人間の反応速度の限界に迫っている」

 

ほのかと雫は驚くのは仕方ないと言いたげに話す

しかし、驚いていた理由はそこではなかった

 

「さ、朔夜の方が早くない?」

 

エリカのその言葉にほのかと雫は言葉をなくすが、深雪は知っていますと微笑む

 

「朔夜君のタイムも見せてもらっていいですか?」

 

ほのかが頼む。隣で雫もコクコクとうなずいている

朔夜は残りのサンドイッチを口に放り込むとコンソールの前に立つ

 

計測されたタイムは173ms

 

それを聞いたほのかと雫はまたも言葉をなくす

深雪も想像を超えていたのだろう。言葉をなくしている

 

「何か言ってくれよ。悲しくなる。」

 

「みんな驚いて言葉も出ないんだよ。みんな朔夜が幻の新入生総代ってことも知らないからな。」

 

朔夜が反応の無さに落ち込んでいると達也が茶化しながらフォローする

このことにより、仲間内には朔夜がなぜ二科生なのか知られることとなる

しかし、朔夜は他の人に言わないでくれと頼む

この話は、確かに実力は証明されるかもしれないが、同時にバカだといわれているようなものだ

実力は、今後おのずと知れ渡るだろう。あえて、バカだといって回ることもない

もちろん達也もわかっている。仲間内、気の知れたもの同士の笑い話で持ち出しただけ

バカにするものなどいない。むしろ、一目置いたのではないだろうか

 

「風紀委員に選ばれただけはあるってことだな。」

 

レオがそう話す

 

「しかも、生徒会長様の補佐なんてしてるんでしょ? 嫉妬もあるわよぉ。こりゃ」

 

エリカが茶化し始める

 

「おい、エリカ、どこでそんなこと聞いたんだ?」

 

「噂になってるわよ。生徒会長に媚売って取り入った二科生がいるって」

 

「なんだよ、僕は半ば強制的に補佐にされただけなのに…」

 

エリカの言葉に落ち込む朔夜の肩に達也はそっと手を乗せ、頷く。半ば強制的に風紀委員に入れられ、一科生から妬みや影からの攻撃をされたことから思うところがあるのだろう

 

そんな話をしている内に予鈴がなり、午後の授業が始まるのだった

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

テロ

朔夜は今、講堂内の警備をしている

発端は先日のお昼

学内の差別撤廃を目指す有志同盟とやらが放送室に立てこもったことから始まる

学校側はこの件を生徒会に一任するとしたことから今日、生徒会長である真由美と有志同盟との討論会がおこなわれる事となったのだ

四葉家の調べで、この有志同盟がブランジュとかかわりがあることはわかっている

タイミング的には今日、仕掛けてくるだろう

 

討論会はというと真由美の独壇場となっている

根拠の無い有志同盟の要求と事実を基にした真由美の発言。どちらの言葉が心を掴むかは明らかだ

 

真由美が訴えたのは差別意識の克服

 

この学校には一科二科を差別するカリキュラム、部活待遇はないそうだ

あるのは生徒の差別意識だけなのだと

それに加え真由美は今ある唯一の差別、生徒会に二科生は入れないという校則まで変えようとしていると宣言した

この真由美の発言により、講堂は拍手で包まれた

 

そのときだった

 

ガラスを割って(多分催涙弾だろう)が講堂に打ち込まれた

拍手で包まれていた講堂が静寂に包まれる

服部副会長が催涙弾の煙が出る前に無効化する

入ってきた武装集団は風紀委員で対応する

朔夜は真由美の護衛に向かう

 

そのとき、乾いた音が鳴った

 

武装集団が拳銃を発砲したのだ。壇上の真由美に向けて

朔夜は魔法で加速すると銃弾と真由美の間に入る

真由美は朔夜が撃たれたと思い、口を押さえ目を見開くが朔夜は振り向くと笑顔で話しかける

 

「大丈夫ですか? 真由美さん」

 

「朔夜君、大丈夫…なの?」

 

「はい。まだまだ真由美さんを守らないとですから。」

 

朔夜はそう言って手を見せる

するとそこには銃弾が握られていた

 

「朔夜君それ…」

 

朔夜は銃弾の回転に合わせて銃弾を握り、魔法なしで銃弾を掴んだのだ

朔夜は玉をその辺に捨てると真由美の手を握る

 

「え?ちょっと、朔夜君」

 

真由美はいきなり手を握られテンパっている

 

「服部副会長、委員長、後は任せます。 自分は会長を安全なところへ」

 

そう言って朔夜は真由美の手を引いて講堂をでる

講堂は生徒の非難は完了したもののまだ武装集団がなだれ込んできている

摩利からは「真由美の事は頼む」服部からは「会長に何かあったら許さないぞ。」と頼まれた

真由美の手を引いて走る間、真由美は「そうよね。こういうことよね。」などと独り言ちていたが朔夜には届かなかった

とりあえず生徒会室に向かっていた

 

「朔夜君、あの武装集団、何だと思う?」

 

「ブランシュでしょうね。達也の話と合わせてもそうとしか思えません」

 

達也の話とはこの前のお昼の話、達也を襲った人物がブランシュの下部組織エガリテのリストバンドをしていたと言う話だ

生徒会室の前、1人の人物が2人を待ち受けていた

 

「逃避行お疲れ様」

 

パチパチと拍手をしながら話しかけてくる少女がいた

少女と言ってもお面をしているため、声と背丈での想像だが

少女は拍手をやめると話し出す。

 

「図書館の方もやられちゃったみたいですねぇ」

 

「お前は誰だ?」

 

「誰だなんて、答えるわけ無いじゃないですか。」

 

朔夜の言葉にそう答える少女

 

「まぁ、ここでのテロなんてどうでもいいんですけどね。私の目的は朔夜、あなたに会うためにきたわけですし」

 

「どういうこと? 朔夜君に会いにって…」

 

「あなたには興味ないですよ。七草のお嬢さん。ここではこんなもんでしょう。朔夜、ブランジュの本拠地に来なさい。そこで私のことを教えてあげる…かもね」

 

そう言って少女は真由美に向けて拳銃を撃つ

先ほどのように朔夜が防いだ時、廊下が煙に包まれる

 

「何これ、湯気?」

 

真由美の言葉通り廊下に広がったのは何の害も無い水蒸気だった

水蒸気が晴れたとき、そこに先ほどの少女はいなかった

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お面の少女

学校への襲撃が沈静化した後

 

朔夜、達也、深雪、エリカ、レオ、克人それから剣術部部長、桐原武明はブランシュの本拠地へと向かっている。 情報提供はカウンセラーの小野遥。裏の顔は公安の極秘捜査官だけあって情報がはやい

ちなみに真由美はお面の少女の件もあり、ついて来たそうだったが生徒会長として勤めを果たすために学校に残った

そうしている間にブランシュの本拠地である廃棄されたバイオ燃料工場が見えてきた

突入はレオの硬化魔法を車にかけ、門をブチ破る

車を止め、全員が降りても誰も出てこない。待ち伏せでもしているのだろうか?

 

朔夜達は手分けして突入することにする

正面から朔夜、達也、深雪

裏口から克人、桐原

レオとエリカは退路の確保と逃げ出そうとするヤツの始末

建物に入るとブランシュとの遭遇は意外と早かった

朔夜達3人は達也の魔法、雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)により遮蔽物を分解して直線に進んだためと、相手もホールに整列して待ち構えていたためだ

 

「お前がブランシュのリーダーか?」

 

「これは失礼。仰せのとおり、僕がブランシュ日本支部のリーダー。司一だ。」

 

達也の言葉に大げさな身振りで歓迎するように縁なし伊達めがねの男が答える

達也と司一が話している間、朔夜はお面の少女を探すが見当たらない

ここにはいない? そう考えているところで達也たちの話が終わったようだ

司一がペテン師のように意識干渉型系統外魔法、邪眼を使った

それを達也が当然のごとく打ち破る

日本支部のリーダーに上り詰めたのも邪眼による催眠による功績だろう。とんだ小物だ

今も達也に邪眼を破られただけで取り乱し、逃げ出した

手下に朔夜達を殺すよう命じて

その命令によって手下達は朔夜達に銃を向けた

達也がすぐさま銃を分解する

しかし命令とはいえ銃を向けたのはまずかった

3人に、いや、達也に銃を向けられたことにより深雪が切れた

 

あたりの温度がぐっと下がる

 

「お兄様、朔夜さん。追ってください。ここは私が」

 

「わかった。ほどほどにな。この連中にお前の手を汚す価値はない」

 

深雪の言葉に達也はそうと伝え、朔夜とともに司一を追う

自然と人垣がわれ朔夜と達也の姿が見えなくなった

2人がいなくなった部屋には深雪と人の形をした氷の彫像があるだけだった

 

司一に追いついたとき、司一はたいした待ち伏せもしていなかった

朔夜と達也がたどり着いてすぐ、部屋にいる全員が2人に指輪を向けてきた

アンティナイトによる魔法の阻害、キャストジャミングである

 

「雇い主はウクライナ・ベルラージ再分離独立派。その雇い主のスポンサーは大亜連合か」

 

達也の言葉に動揺しているのがわかる

動揺を見せるなどド三流もいいとこだ

 

「やれ! 魔法が使えないこいつらなど、ただのガキだ。」

 

司一の言葉に「達也、僕がやるよ。」朔夜はそういうと一歩前に出る

アンティナイトによるキャストジャミングの状況下、それを無視して魔法式を展開する

展開された魔法式は一瞬で構成され、発動された魔法。摩利にも使用した重力の加重は司一以外のブランシュメンバーを地面に押し付ける

押し付けるだけではない。摩利に発動したときの数倍の重力は体をコンクリートの床にめり込ませ、骨が少し折れる程度、内臓が潰れる手前、手下達は防衛本能で意識を飛ばす

司一を残したのは少し聞きたいことがあるため、恐怖をあおり、喋らせるため

 

「な、なぜだ。なぜキャストジャミングの中で魔法が使える…」

 

アンティナイトによるキャストジャミングは一種の無系統魔法

発生させたノイズを魔法式にぶつけて阻害する

朔夜のように阻害される前に組み上げ発動してしまえば関係ないのだ。が、そんなことを教える必要もない。

 

「司一、教えてもらいたいことがあるんだけど、答えてもらえるかな?」

 

そう言って朔夜は笑いかけるが司一は腰を抜かし、震えながら後ずさろうともがく

そこへ、深雪が追いついてきた。「お兄様、お待たせしました。」そう言って達也のとなりに並ぶ

その時、司一の体が、いや、朔夜、達也、深雪以外のここにいるブランシュ全員の体が炎に包まれた。

 

 

「「「なっ」」」

 

朔夜達が驚きの声を上げる

何が起こっているかわからない。それが本音だろう。

目の前の司一はもう息がないだろう

 

「アンティナイトまであげたって言うのに、小物はやっぱり小物ですね。」

 

その気、そう言ってお面の少女が現れた

お面の少女は階段の上で朔夜達を見下ろしながら続ける

 

「流石ですね、朔夜。いえ、A-13

そして、ご機嫌麗しゅう。お兄様、お姉さま。」

 

「俺に妹は一人しかいないはずだが?」

 

達也はそう言って警戒レベルをあげる

朔夜もA-13の言葉にお面の少女に対しての警戒を強める。

 

「そんなこと言わないでくださいよ」

 

そう言ってお面の少女はつけていた仮面をはずす

それを見て達也と深雪、朔夜は驚きのあまり目を見開き、声を失った

いや、朔夜はA-13と言われた時にどこかで分かっていたかもしれない、しかし驚かずにはいられなかった

肩につくくらいの赤いウェーブのかかった髪、両腕に包帯を巻いた少女

そして驚いたのはお面の下

そこには双子かと見間違えそうなくらいに深雪とそっくりな顔があった

 

「私の名前は炎藤 夏深(えんどう なつみ)といっても自分でつけた名前ですけどね。I-15と言ったらわかりやすいですか? A-13。」

 

朔夜はその言葉にさらに衝撃をうけた

達也達も朔夜の出生を知っていることから験体番号だと言うことはわかるだろう。 しかしなにを意味するかまではわからない

 

「お兄様とお姉さまはいまいちわかっていないようですね。A-13が意味するのはM<A>YA-13番試験体。ならI-15が意味するのは?

そうM<I>YA-15番試験体です。私は四葉深夜の遺伝子を受け継いだれっきとしたお2人の妹です。 種違いですけどね」

 

そう言って夏深はクスクスと笑う

その言葉に達也と深雪も理解はしているが頭がついていかないようだ

しかし朔夜が疑問に思っているのは15という試験体番号。 朔夜の知る限りではAもIも13番までのはず

しかも自分以外の試験体は失敗、細胞分裂が起こらず廃棄されているはずだ

 

「あぁ。A-13が考えているのは15という数字ですね。」

 

夏深と名乗った少女はわかりましたと手を叩くと説明し始める

 

「確かにあなた以外の試験体は失敗作でした。ただあなたを作り出した科学者は四葉の暗殺部隊にやられた後、奇跡的に息が残っていたんですよ。体の40パーセントを失いながらも。 びっくりですよねぇ

そして残っていた四葉深夜の遺伝子と火、水、風、雷のエレメントの遺伝子を使って新たに14~17の試験体を作ったわけです。ただし出来上がったのは彼曰く失敗作だそうです。まぁその彼ももうこの世にはいません。私達が殺しちゃいました。 私達を廃棄しようとするんですから…仕方ありませんよね。

そして私達に残ったのは失敗作というレッテルと四葉に引き取られ幸せそうに暮らすあなたへの嫉妬心、恨みだったわけです」

 

もう朔夜達は驚きすぎて言葉も出ない

 

「いきなりすぎて頭がついていきませんか? まぁゆっくり考えて、理解してください。今日は挨拶だけのつもりですし、もともとこんなやつらがあなた達をどうにかできるとも思っていません。それから朔夜。そう呼んであげますね。その代わりあたしの事も夏深と呼んでくださいね。」

 

そう言った夏深の腕の包帯の隙間から煙が出はじめる

 

「もうこんな時間ですか。それではお兄様、お姉さま、朔夜。 ごきげんよう。」

 

そう言って夏深は姿を消した。

 

 

朔夜達は追いかけることはしなかった、できなかった。それほどまでに衝撃的な話だった。その後、裏から回った克人と桐原が合流する

その時、それからレオとエリカに合流し解散するまでは悟られないようにいつもどおり振舞う

解散の後、朔夜達は状況の整理、それから真夜への報告も兼ね、四葉家へ向かった

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学習装置

まえがき

遅くなってしまいました。

すみません。

前の話で評価をしていただいたみたいでバーが黄色くなっていたのでテンションがあがってしまいました。

皆さんこれからもよろしくおねがいします。


では、どうぞ


「そう。そんなことが・・・」

 

達也と深雪はブランシュの一件が終わった後、朔夜と共に四葉邸にきていた

先ほどの一件、炎藤夏深について報告するためである

彼女は朔夜を標的とし、朔夜、達也、深雪の前に現れたがこれはもう四葉の問題だ

当主である真夜に報告しておいたほうがいいだろうということになったのだ

 

「あの研究者が生き残っていたとして、その子が生まれるのに時間が必要でしょう。治療にも、機材の調達にも」

 

真夜が朔夜達の話を元にまとめていく

 

「それだけ強い恨みを持ったのもそのせいかしらね」

 

「そのせいとは?」

 

達也が真夜の言葉に質問する。

 

「予想でしかないのだけれど、その子はあなた達と同じくらいの年齢だったのでしょう?

あの出来事のすぐ後に生まれても朔夜の5つ下。実際それ以上の時間がかかっているでしょうね」

 

真夜が言ったことは達也達も思っていたことだ。投薬などの方法により体を成長させたのだろうと

 

「投薬などを使って成長させたのでしょうけどそれだけではただのでかい赤ん坊。だからあの機材をつかったんでしょうね。」

 

「あの機材?」

 

今度は朔夜が質問する。真夜が言った機材とは何なのかと

 

「四葉の昔の研究の中に《学習装置》というものがあるのよ」

 

朔夜はチラッと達也の方を見る。達也も学習装置について知らないのだろう。聞き入っている

 

「その実験内容は普通の魔法師に有能な魔法師の記憶を移植すれば有能な魔法師を量産できるのではないかという研究・・・

学習装置はその記憶を移植するための機材。まぁ失敗に終わったのだけれど」

 

朔夜と達也がうなずく。深雪だけがなぜかと首をかしげる

それを見て真夜はクスリと笑い話し始める

 

「深雪さんはわかっていないようね。たしかに記憶の移植には成功したの。だけど所詮は普通の魔法師、使えない魔法を使えると洗脳されただけのようなもの。全員が魔法を使えなくなった

使えると思っていた魔法に裏切られた。魔法を失う典型的な理由ね。仮想型デバイスができる何年も前のことだし、そのことに気づかなかったのね。

・・・話を戻しましょうか。

その子を投薬などで成長させた後は学習装置をつかって朔夜を、四葉を恨むように記憶を植えつけたのでしょうね。」

 

その後は今後について話したが、特にこちらからできる事は何もない

真夜は黒羽家などを動かし探りを入れると言っていたがこれまで四葉の情報網にかからなかった相手だ、難しいだろう

結局、仕掛けてくるのを待つしかないのだろう

 

☆★☆★

 

朔夜達が退室した後、部屋の外に待機していた葉山が真夜に声をかける

 

「申し訳ありません。私があの時______」

 

「いいのよ葉山さん」

 

葉山の言葉を真夜がさえぎる。命令のときのように呼び捨てではなく、普段のように呼んで。

 

「あの時私も死んだと思っていたのだし。

 

それより、あの事を急がないとね」

 

真夜はこれからのことについて思いを巡らせた。

 

☆★☆★

 

 

「んんん~~~~」

 

真由美は今、自宅のベッドにダイブすると、枕に顔を押し付けもだえていた。

 

「はぁ・・・・・・」

 

仰向けに寝返ると物思いにふける

 

(今日は生徒会長としてみんなを誘導しなくちゃいけなかったのに頭に浮かんでくるのは・・・)

 

浮かんできたのは自分の前で盾となり銃弾を受け止める朔夜君、自分の手を引き走る朔夜君

あの後、ブランシュを沈静化させた後、朔夜君は達也君や十文字君と一緒にブランシュの本拠地に乗り込んで行った

自分も行くと言ったのに生徒会長だから今学園を離れるのはまずいと学園に残った

しかし、生徒を誘導しながらも頭では朔夜君は大丈夫なのかと考えてしまう

すると当然生徒の誘導はおろそかになってしまう・・・

 

(摩利とハンゾー君がいたから何とかなったものの・・・・・・)

 

「…好き、なのかな?」

 

不意に口から出た言葉、それが頭を駆け巡る

 

「んんん~~~~」

 

顔を真っ赤にしながらうつ伏せになりまた枕に顔を押し付ける

 

(でも、無事に帰って来てくれてよかった。)

 

ブランシュの本拠地から帰ってきたときはホッとした

 

(でも、少し元気がなかったような・・・

明日は元気だといいな)

 

そんなことを考えながら、真由美は眠りに落ちていった

 




あとがき

今回で入学編が終わりです。

次回からの九校戦編もよろしくお願いします。




コメント、評価お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九校戦編
選考


まえがき

それでは今回から九校戦編、どうぞ。


九校戦、北は北海道、南は九州まで日本にある九つの魔法科高校が競い合う魔法競技大会

と、その程度しか朔夜はしらない

周りは試験も終わり盛り上がっているが、九校戦には過去に二科生が出場した例はないらしいし、自分には関係ないと通常運転だ

今もエリカやレオ、美月に雫とほのかと一緒に生徒指導室の前にいる

そこに、生徒指導室から達也が出てきた

レオが達也に呼び出された理由を聞いている

これは先ほど朔夜が出てきた時にも聞かれた

呼び出された理由は先日終えたテストについて。 手を抜いたのでは? と疑われたらしい

一年生の成績は一高に衝撃を与えた

成績上位者は学内ネットに張り出されるのだが

 

理論、実技の総合点

 

一位、闇藤 朔夜 E組

 

二位、司波 深雪 A組

 

三位、光井 ほのか A組

 

四位、僅差で北山 雫 A組

 

etc

 

理論

 

一位、司波 達也 E組

 

一位、闇藤 朔夜 E組

 

三位、司波 深雪 A組

 

四位、吉田 幹比古 E組

 

etc

 

実技

 

一位、闇藤 朔夜 E組

 

二位、司波 深雪 A組

 

三位、光井 ほのか A組

 

四位、僅差で北山 雫 A組

 

etc

 

理論、実技共に二科生が首位となると学内の常識である一科生の方が優れているという法則が崩れてしまう。

 

当然不正だなんだと言われたが、先生達は入学試験の結果を知っている。 朔夜は呼び出されはしたが「大変だな」と形だけのもので済んだ

達也の場合は理論が極端に点数が高い。朔夜も同点だが平均点で三位以下を10点以上も引き離している結果だ

実技で手を抜いたのでは? と疑われるのもわかる。 普通は理論が優秀なら実技も優秀なのだ。先生の気持ちもわからなくもない

この後は今一番の話題、九校戦についての話題に移る

それが理由で生徒会は忙しく深雪はここにいないのだし、朔夜も今日は先生に呼び出されたため顔を出してはいないが、明日からは生徒会長の補佐として生徒会室に行かなければならないだろう

話題は新人戦、三高に十師族の直系、一条の御曹司がいるという話

 

「でも大丈夫でしょ。こっちには深雪がいるし、それに朔夜君もいるしね」

 

エリカのこの発言に反応したのは朔夜

 

「なに言ってるんだ、二科生が九校戦に出たことはないだろう?」

 

「え、出ないの?」

 

エリカの返しと共に達也以外の全員が朔夜に顔を向ける。みんな思っていることは同じだろう。学年首位が出ないのかと

 

「学校のみんなは僕が不正をしたと思ってるみたいだし、無理だろう」

 

「それなら実力で選手を一人倒して____」

 

「おいおい、何を物騒な…」

 

エリカの発言に朔夜が苦笑しながらツッコミを入れる

レオも達也もここにいる全員が笑っている。冗談だとわかっているからだ

 

「別に九校戦に出たいってわけじゃないし、成績順なら深雪に雫とほのかも出るんだろう? そっちに頑張ってもらうさ。」

 

朔夜の言葉に雫とほのかが頷いた。

 

☆★☆★

 

 

それから数日、朔夜は生徒会室にて生徒会長補佐として書類の整理に追われている

それも大分片付き、もうすぐ生徒会選挙だし補佐も終わりだななどと思っている横で九校戦のメンバーの選考が行われている

生徒会のメンバーに加え、部活連から克人、風紀委員から摩利が選考に来ている

ちなみに達也が深雪を待って朔夜の向かいに座っている

 

九校戦はモノリス・コード、ミラージ・バット、氷柱倒し(アイスピラーズ・ブレイク)、スピード・シューティング、クラウド・ボール、バトル・ボードの六種目

 

次々と出場選手が決まっていく

 

「問題は、エンジニアと朔夜君よね」

 

真由美の言葉で朔夜はそちらへ顔を向ける

ここにいるメンバーは朔夜の実力を知っている

九校戦3連覇を狙っている一高としては選びたいところなのだが、生徒会長にうまく取り入った。や、テストで不正をしたのでは? などと言われている朔夜を選手に選んだとなれば生徒の反感を買うだろう

それと共にエンジニア不足。一高には魔法師の志願者が多く集まるため技術方面に秀でた傾向にある

そこで書記のあずさがある提案をした

 

「だったらエンジニアには司波君がいいんじゃないでしょうか? 深雪さんのCADは司波君が調整しているようですし、一度見せてもらいましたが一流メーカーのクラフトマンに勝るとも劣らない仕上がりでした」

 

その言葉に達也は「前例がないのでは?」「二科生の俺が選ばれたのでは」などと断ろうとしていたが、真由美や摩利の中ではもう決まっているようで、どうにもならない

そこへ深雪からの援護射撃もあって決定となってしまった

 

 

「それなら朔夜もエンジニアでいけるんじゃないですか?」

 

道ずれとばかりに達也が言ったこの言葉に摩利が「そうだ。たしか自作のCADを使っていたな。」などと思い出し、真由美もナイスアイディアと指を鳴らす

こうして朔夜と達也の九校戦エンジニア入りがほぼ決定する

最終テストとして放課後、ほかの生徒に認めさせることもかねて九校戦メンバーの前で作業を披露することとなった

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

テスト

放課後

 

九校戦メンバー選定会議が行われ、内定通知を受け取ったメンバーが行動に集まった

ここで朔夜と達也のエンジニアとしての技量テストが行われた

2人に対しての反対意見を押しのけるため目の前で技量テストが行われたのである

意外にも2,3年の反対が少なかったのは驚いたがこれまでの風紀委員としての活動などからこの2人をただの二科生と思っていないものが多いということだろう

 

結果は合格だ。

 

選手は期待していた分、平凡な結果にこんなものかという意見が多かったが、エンジニアの面々からは2人のマニュアル操作の高度な技術力に文句の言いようがないと太鼓判を押された

これで選定会議も無事に終了かと思われたその時「ちょっといいだろうか?」と待ったがかかった

 

「闇藤と司波のエンジニアに文句を言うつもりはない」

 

では何だというのだろうか?

 

「先日のテストの結果を見る限り闇藤が選手に選ばれてないのはおかしいと思うのだが?」

 

待ったをかけたのは風紀委員の三年生、部活連推薦枠の二科生に偏見のない上級生だ

その後ろの何人かもうなずいている事から同意見なのだろう

 

「あの結果が闇藤の不正の結果ではという噂もある。しかし不正を見抜けないような学校ではないだろう? ここは。それでも実力が心配ならば先ほどの技能テストのように実力を測ればいい。先ほど服部福会長が言ったとおり九校戦は当校の威信をかけた大会だ、闇藤の実力が選手に勝るなら選手として採用すべきだと思うのだがどうだろうか?」

 

この意見には反対意見が多数出た、しかし賛成意見はそれよりも多かった

先ほどの技能テストの時にも感じたのだが2、3年生の中には風紀委員としての活動などから朔夜と達也をただの二科生ではなく別格としてみている者も多いようだ

こうして、場所を移して朔夜の選手としての能力テストが行われることとなった

一高内にはそれぞれの種目の練習用の設備がある

テストとは取りあえず全種目選定されている選手と試合をしてみるというもの。ただしモノリス・コードはチームワークの兼ね合いから除かれた

 

結果は朔夜の全勝

 

この結果を受けて2種目出場する選手からバトル・ボードの選手を譲り受け(うばいとり)、朔夜の新人戦バトル・ボードへの出場が決定した

 

 

☆★☆★

 

 

家に帰り食事の合間に学校でのことを真夜に話すのはもはや習慣になっている

朔夜は九校戦のメンバー入りのことを話す

 

「今年は九校戦を見に行かなくちゃいけないわね」

 

真夜は葉山に予定を空けておいてと頼む

 

「いきなり四葉の党首が見にきたら何事かと騒ぎになるだろ」

 

「大丈夫よ。いつもみたいに変装するから」

 

そう、真夜は朔夜と出かける時などは変装して出かける。 もちろんバレた事など一度もない

 

「はぁ、ところでどこまで使っていいかな?」

 

「出るからには優勝しないとね。 術式兵装も使いなさい」

 

「入学当初は封印と解放も隠せとか言ってたくせに」

 

「それは達也君に警戒させないためだったからバラしてしまった今はどうでもいいのよ」

 

 

こうして四葉家の食事の時間は過ぎていくのだった

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遅刻の理由

八月一日

 

先日、九校戦発足式も済ませ、今日から九校戦の会場へ会場入りする

出発は昼過ぎなため午前中はゆっくりできる。朔夜は自室のPCに向かっていた

 

「すごいな。トーラス・シルバーは。魔法師なら誰にでも使える飛行魔法なんて三大難関のひとつをクリアしちゃうなんてすごいな」

 

「朔夜の場合、そんなものなくても飛べるから考えたこともないでしょ?あなたが考える魔法は汎用性にはほど遠い自分だけの魔法じゃない」

 

真夜が部屋の入り口から声をかけてきた

 

「母さん」

 

「朔夜、出かけるわよ。 準備しなさい」

 

「え、でも僕はこれから九校戦へ___」

 

「達也君には連絡してあるわ。 遅れて現地へ直接むかいなさい。あ、今日はスーツを着てきなさいね。」

 

こうして九校戦前に朔夜は真夜と出かけることとなった。

 

 

☆★☆★

 

何だろうこの状況・・・

真由美はこの状況に戸惑っていた。跡取りではないが七草家の長女、こういう縁談を持ってこられることも多い

今回もささっと断って九校戦の会場に行くつもりだった

しかし、今向かい合っているのは自分のよく知る人物

 

闇藤 朔夜

 

とその母親だろう

自分はいつものことながら一人。名倉さんは外で待っている

はじめに話し出したのは朔夜君のお母さん

 

「はじめまして。 七草 真由美さん」

 

「え、あ、はい」

 

真由美はいろいろ考え事をしていて反応が遅れてしまった

 

「今日この縁談をセッティングしたのは私なのよ。」

 

「はい…」

 

真由美は意図がわからずそう返す

 

「朔夜があなたのこと好きみたいだからね」

 

「え・・・」

 

自分の顔が赤くなっていくのがわかる

目の前で朔夜が何かいっているが入ってこない

 

「あなたも朔夜のこと気になってるでしょ?」

 

「え、あの」

 

真由美はもうついていけていない

 

「真由美さん、あなたは朔夜と結婚する気がある?」

 

「え・・・と、そんな急に聞かれても___」

 

「そうよね」

 

朔夜君のお母さんは言い終わる前に話し出した

 

「だけど、待ってる時間もないのよ。あなたも知ってるわよね? ブランシュの事件のときに現れた少女」

 

「え、ちょっと待ってください」

 

何の話を? そう思って待ったをかけるが話はとまらない

 

「あの子、一応私たちの身内のようなものなのよ…だけど今は敵という立場でね、命のやり取りもあるでしょう。」

 

「命のやり取りって・・・」

 

「あなたと朔夜が惹かれあっているならあなたも狙われるかもしれない。あなたが七草と言うこともあるし守りづらいのよ。だから身内になってもらえば守れるじゃない?そうでなければ朔夜の補佐を解任してもらって近づかないでほしいのよ。」

 

むちゃくちゃな話だ。飛躍しすぎている。しかし、朔夜君が否定しないところを見ると私を思ってのことなのだろう

 

「け、結婚します。」

 

朔夜君と離れ離れになる。そう考えて口から出たのはその言葉だった。朔夜君と離れたくない。好きだ。 そう再確認した

 

「嫁に来るってことはもし私たちと七草が戦うことになったら私たちにつくってことよ?」

 

「・・・・・・はい」

 

「そう。じゃぁ私たちのことも話さないとね」

 

そういうと朔夜君のお母さんの姿が変わる

 

「魔法・・・」

 

「はじめまして。ようこそ四葉へ」

 

そういってコロコロと笑う

 

「四葉?」

 

それからの話は衝撃だった。朔夜君の本当の苗字、四葉。 自分もその一員になるのだということ

 

婚約

 

そう考えると顔が赤くなる

しかし、それよりも衝撃だったのは、朔夜君のお母さん、真夜さんにさとされ朔夜君が退席した後の話だった

 

 

☆★☆★

 

朔夜は縁側に腰掛け物思いにふけっていた

まさか、こんな展開になるとは・・・

 

「婚約か・・・」

 

口に出して顔を赤くする

 

「母さんがずっと裏で何かしてたのはこれか・・・四葉と七草は仲が悪いのに・・・」

 

そう言ってため息を吐くが顔は笑っている

 

「お待たせ」

 

そこへ真由美がやってきた

 

「もういいんですか?」

 

「婚約者なんだから敬語はやめて」

 

真由美が左手を腰にあて、右の人差し指を立て、子供にしかりつけるように言う

そして二人は笑いあう

 

「そうだ、九校戦‼︎ 集合場所に急がないと」

 

「真由美さん連絡してないんですか?」

 

「摩利に連絡したんだけどみんなが待ってるって言ってるって」

 

「それじゃ全速力でいかないと」

 

そう言って朔夜は真由美をお姫様抱っこで抱き上げると、集合場所まで雷のごとく駆け抜けた

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バス移動

朔夜と真由美は急いで九校戦メンバーと合流すると2時間半ほどバスに揺られ、無事会場入りをはたした

 

無事とはいってもトラブルは多々あった

 

炎天下の中、外で待ってくれていた達也と摩利に礼を言った後、バスに乗り込み、バスが発進する

ここまでは二科生の癖に遅れてきやがって的な視線はあったものの、仲良くしているメンバー付近に座れ(達也が技術スタッフ用の車に乗ることになったため機嫌が悪い深雪の隣が空いていたためだが)後は寝るもよし深雪やほのか達と話すもよし、二時間バスに揺られていればいいだけのはずだった

バスが発進してすぐ、真由美の隣の席にいた鈴音が疑問を口にしたのだ

 

「闇藤君と一緒だったんですね」

 

遅れるとしか伝えていなかったのだから当然と言えば当然、バスにいる全員が抱いているであろう疑問だろう

 

「ええ。・・・家の用事で・・・お見合いだったのだけれどその相手が朔夜君でね。驚いたわよ。だいたいいつも相手の名前も知らずに行くのだけれど知らない人だし、だいたいは年上の方なのよね。軽く話した後丁重に断わって終わりだし。なのに今日は襖を開けたら朔夜君が入るんだもの」

 

「しかし、いつもと同じだろう? 結婚とか婚約とかまだ早いし考えてもいないって言ってたじゃないか」

 

摩利が鈴音とは反対側、通路を挟んだ向こうから話に入ってきた

 

「・・・えっとね」

 

ここで真由美は正直に爆弾を落とす。 仲のいい友達との恋話のように、周りの生徒が聞き耳を立てているとも知らずに

 

「お話を受けたの」

 

鈴音が固まり、摩利がくわえていたポッキーをポロリと落とす。摩利の向こう側から二年生の千代田花音が確認の質問を言う

 

「お話を受けたって、婚約したってことっですか?」

 

「ええ。まぁ朔夜君は結婚できる年齢じゃないから許婚のようなものかしら?」

 

真由美は顔を赤らめそう口にする

その話は一気にバス中に広がり所々殺気のこもった目が朔夜に向けられることとなり、雫やほのかに質問攻めにあうことにもなる

そんな中、外の出来事に気づいたのは、自分は許婚と同じバスではないことに少しふてくされながら窓の外を見た花音と、朔夜が質問攻めにあっているのを微笑ましく思いながら自分の兄のことを思い窓の外を見た深雪だけだった

 

「危ない!」

 

叫んだのは花音だった

花音の声にバスの中の全員が外を見る

パンクか脱輪でも起こしたのだろうか。反対車線の大型車(とは言ってもこのバスよりは小さい車だが)がこちらに近づいてくる

しかし反対車線とは堅固なガードで阻まれている。誰も危機感などもっていなかった

その瞬間、どんな力が加わったのか、車はガードにあたると宙返りし、こちらの車線に侵入すると、燃え盛り、スピンしながらこちらへ向かってくる

バスは急停止するが、あの体積のものがぶつかれば大惨事は免れないだろう

 

「吹っ飛べ」

 

「消えろ」

 

「止まって」

 

「っっ!」

 

何人かの生徒が魔法を発動する

しかし、とっさの判断、未熟であるが故、優秀さが裏目に出てしまう

自分の魔法ならなんとかできる

 

しかし同一の対象に無秩序にかけられた魔法は効果を表さない。それどころか通常その魔法式が消えるまでは魔法式の上書きはできない

 

圧倒的な力で上書きする以外は

朔夜は対処の相談をする克人と摩利、真由美に「自分がやります」と声をかけると、3人の了解の声も聞かずに魔法を発動する

発動された魔法により構築された魔法式はそれまでに掛けられていた魔法式を吹き飛ばし瞬時に構築される

 

凍てつく氷柩(ゲリドゥスカプルス)

 

そう名づけられた魔法は瞬時に燃え盛る炎を鎮火し車を氷柱に閉じ込める

こうしてバスや技術スタッフ用の車に被害もなくこの件は幕を閉じた

ともいえ無事に着いた一同は宿泊先のホテルに荷物を運び込む

運び込んだ後は夕方から予定されているパーティーに出席する

九校戦参加者全員参加の懇親会だそうだ

 

同室だった達也にさとされ、朔夜は婚約者である真由美を迎えにむかった

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

懇親会

懇親会

 

会場までは真由美と一緒に来たのだが、真由美は他校の生徒会との挨拶に行ってしまった

懇親会は立食形式なのでお皿にポテトを取り摘んでいると後ろからポテトに手が伸びてきた

 

「生徒会長は大忙しねぇ」

 

「その格好でポテトを摘むのはまずいんじゃないか?」

 

誰かと顔を向けるとウェイトレス姿のエリカが居たのでそう声を掛ける

 

「あれ? あんまり驚かないのね」

 

「達也からエリカと美月が来ているって聞いてたからな」

 

「そう。あ、ミキとレオもいるわよ」

 

そんな話をして時間を潰す。ちなみにミキとは吉田幹比古、同じクラスで先日体育の時間に仲良くなったエリカの幼馴染だ

 

「そろそろフィアンセのところに行ったら?たぶん生徒会以外の人に絡まれてるわよ? 十師族の美女なわけだし」

 

「・・・」

 

「驚いたわよ。この話を雫とほのかから聞いたときには。それで? 詳しくききたいんだけど」

 

「・・・行ってくる」

 

「そう。それじゃ、私は仕事に戻りましょうかね」

 

いつもおどけている様でこういうところでエリカは気をきかせる

そう思いながら朔夜は真由美のもとへ歩いていく

エリカも仕事に戻る・・・とグラスを持ち次なる友人、達也と深雪のもとへ向かった

 

 

 

真由美は明後日から戦う他校の生徒会との挨拶を済ませると大勢の男子生徒に囲まれた

毎度のことながら九校戦や論文コンペなどの他校との行事ではこの有様だ

笑顔で受け流し、終わるのを待つ

毎度、摩利や鈴音、克人達が通りかかるのを見計らって逃げるわけだが、今回は違う人物が迎えに来てくれたようだ

 

「真由美さん、向こうで十文字会頭が呼んでいましたよ」

 

「ありがとう。朔夜君。それでは皆さん失礼します」

 

そう笑顔で挨拶すると朔夜とともにこの場を後にした

 

 

 

 

「朔夜君、本当に十文字君が呼んでたの?」

 

真由美は朔夜と歩きながら質問する

 

「いえ。真由美さんが困っていそうだったから…」

 

朔夜はそういってサンドイッチの乗っているお皿を真由美に差し出す

 

「ならもうちょっとカッコよく連れ出してほしかったな。十文字君の名前とか使わずに」

 

真由美はサンドイッチを口に運びながらそんなことを話す

 

「・・・努力します」

 

「本当? それじゃ、次はよろしくね。」

 

朔夜の言葉に真由美はそう微笑んだ

 

 

そんな話をしているうちに来賓の挨拶が始まり、「老師」と呼ばれている十師族の長老九島烈、司会者がその名を告げた

老師と呼ばれるだけあってどんな人物なのかと会場内の高校生は息を呑んで登壇を待つ

会場がざわめいた

現れたのはライトで綺麗な金髪を輝かせた若い女性だったからだ

真由美は隣の朔夜に「なにかあったのかしら?」と話しかける

しかし朔夜はその意味がわからなかった。

朔夜には女性の隣に九島烈と思われる老人が見えている

朔夜の瞳は魔法式を紐解く特殊な瞳

精神干渉魔法にて姿を隠している九島列など簡単に見つけてしまう。と言うより見えてしまう

朔夜はなるほどと呆れたように九島烈を見る

 

「真由美さん、精神干渉魔法です。よく見てください」

 

そしてそう真由美に教える

真由美は目を凝らすと九島烈の姿を確認することができたようだ

同じ十師族だから合ったこともあるのだろうか「もう。悪戯好きなんだから」と口にしている

そのとき、九島烈は自分が見えている生徒を確認するとニヤリと笑い姿を現す

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する」

 

九島烈が話し始める

今のは精神干渉により視線をずらす手品の類だと

この中で気づけたのは6人、もし九島烈がテロリストであったならその6人以外は阻止することはできなかったと

しかし今使った魔法は低ランクの魔法、それでも使い方しだいではこのように大勢を騙すことができる

この九校戦での魔法の使い方、工夫を期待していると

この挨拶が終わると懇親会のメインも終わり、徐々に退室しはじめ今日が終わる

 

遠いところから来る学校もあるため一日の休養をはさんで明後日、九校戦の幕が上げる

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三高生

朔夜は朝から1人、外へ出歩いていた。東京の闇藤邸からあまり出たことがないため散策したくなったのだ

しばらく歩いているとある人物を見つけた

昨日、興味はあったが女子生徒に囲まれていたため話しかけることができなかった人物

 

一条の御曹司ことクリムゾン・プリンス 一条将輝だ

 

朔夜は同い年の十師族ということもあり話してみたかった

今は横にいる人物と何か話している

話が途切れたのを見計らって朔夜は声をかける

 

「はじめまして。一条将輝君だよね?」

 

朔夜の声に2人が振り向いた

 

「ああ。えっと、君は?」

 

「突然で驚かせたよね。僕は闇藤朔夜、朔夜って呼んでくれると嬉しいかな

 

君とは話してみたかったんだけど昨日は女の子に囲まれていたからさ

 

今は話せるかな? 一条将輝君。それと、えっと・・・」

 

「吉祥寺真紅朗。真紅朗でいいですよ」

 

「俺も将輝でいい」

 

「よろしく。将輝、真紅朗。」

 

3人はこうして自己紹介をし、朔夜が「真紅朗ってもしかしてカーディナル・ジョージ?」と話し出した時、ある声が割って入った

 

「一条さんここにいらしたんですね。吉祥寺さんも。」

 

朔夜達3人は声のほうに振り向くとそこには3人の女子生徒がいた

 

「先輩方が明日のことでミーティングがしたいそうです。

・・・そちらの方は?」

 

3人の女子生徒の真ん中の1人が朔夜を見て目を細めた

懇親会以外で九校戦前に話しかけてくる他校の生徒だし怪しまれたかな? と思いつつ朔夜は先ほどと同じように自己紹介をし、ニッコリと笑いかける

すると女子生徒は細めていた目をそらし頬を赤く染める

朔夜も真夜の血を受けついているわけだし、深雪に負けず劣らずの美形なのだから無理もないことだろう(深雪とは性別も違うのだし比べるのはおかしな話だが)

後ろの2人にからかわれると女子生徒は気を取り直し朔夜の方を見ると

 

「あなた、その制服は一高よね? スパイにでもきたのかしら? それに・・・闇藤なんて聞いたことない名前だけど何かの優勝経験は?」

 

その女子生徒は名前も告げずにそう朔夜に問う。目線が制服のエンブレムがあるはずの部分を見ていたところを見ると一高の二科生制度を承知の上での質問だろう

 

「一色、それはいくらなんでも失礼だろう!」

 

将輝が女子生徒にそう促すと女子生徒はしぶしぶといった感じで自己紹介をする

女子生徒の名前は一色愛梨、後ろの2人は十七夜栞と四十九院沓子と言うらしい

 

「よろしく。一色さん、十七夜さん、四十九院さん。さっきの質問だけど僕はどの大会の優勝経験もないよ。それにスパイでもない。クリムゾン・プリンスがどんな人なのか気になっただけだよ

…だけどそうだよね。九校戦前に不謹慎だったよね。将輝、真紅朗、九校戦が終わったらまた話に来るよ。あっそうだ。九校戦、正々堂々と戦おう」

 

そう言って朔夜はニッコリと笑い立ち去ろうとする

 

「あなたも出場するの?」

 

愛梨はまさかと声に出して問う

 

「新人戦のバトル・ボードに出るんだ。三高にも負けないからね」

 

朔夜は上半身だけ振り向くとそう言い、手を振ると宿舎の方へと歩いていった

残った将輝達5人も自分達の宿舎へ向かう。その道中

 

「あんなのハッタリよ。エンブレムもなかったし、闇藤なんて聞いたこともないわ」

 

「油断は禁物ですよ。九高戦に出てくるならそれなりの実力の持ち主だと言うことです」

 

愛梨の言葉を今度は真紅朗がさとす

愛理も三高のブレインの言葉にそれはそうだけどと思いながらもプイっとそっぽを向く

宿舎に着くとミーティングの行われる部屋へと向かった

 

 

☆★☆★

 

 

「あれ? 朔夜君出かけていたの?」

 

「真由美さんただいま。ちょっとね。他校の選手に話しかけたら九校戦前に不謹慎だって怒られちゃった」

 

「今はみんなピリピリしてるものね。 朔夜君朝ごはんは食べた?」

 

「まだだけど?」

 

「じゃぁ一緒に食べない? 私今からなの」

 

そんな話をしながら朔夜と真由美は食堂へ向かった



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

事故

まえがき

遅くなりました

楽しみにしていただいた読者の皆様申し訳ない




九校戦3日目

 

これまでの戦績は一高の狙い通りとはいかず、男子本戦では3位までの入賞がなくポイントを伸ばせずにいた

とはいう物の女子本戦の調子はよく、真由美がスピード・シューティングとクラウド・ボールの二種目で優勝を飾ったほか、ほかの先輩方も上位入賞をはたしており独走とは行かないまでも現在首位。僅差で三高が追いかける形となっている

 

そして今は女子バトルボード本戦決勝

 

予選をぶっちぎりで突破した摩利に優勝してもらい総合優勝に弾みをつけたいところである

 

そのバトル・ボード本戦決勝を見に来た朔夜達一行だが、周りの席には人がいないものの離れた席からの視線が集まっている

もちろん深雪が絶世の美女であるとともに朔夜も母親に似て顔が整っているし、それに達也にエリカ、雫、ほのか、レオ、美月に幹比古。全員世間一般では美男美女と言われる部類の顔立ちだ。目を引く

しかしこの視線は明らかに別の意図を持った視線。それも朔夜に注がれているものである

 

というのも九校戦初日と二日目

 

観客の注目を集めたのはエルフィン・スナイパーや妖精姫と呼ばれ男女問わず人気のある真由美だった

初日に行われたスピード・シューティングで優勝を決めたときには観客席に笑顔とともに手を振っていた

 

しかし二日目、クラウド・ボールで優勝したときには真っ先に手を振ったのはコート脇

 

真由美のエンジニアは都合上一日目、スピード・シューティングを達也。二日目、クラウド・ボールを朔夜が担当した

真由美は何気なしに朔夜に手を振っただけだが周りのファン達からすれば「誰だアイツ」となったのだろう

そのため今日は朔夜に視線が集中しなにやらヒソヒソと予想が飛び交っているのである

 

「あんたも大変よね。いっそのこと僕は婚約者です。って言っちゃえば?」

 

エリカが朔夜をからかう

 

「いきなりそんな事言ったらおかしいだろう」

 

「し、試合が始まればみんな試合に集中するだろうし」

 

「そうですよ。それまでの辛抱です」

 

朔夜は溜息混じりに答え、それを見たほのかと美月がと気を使う

そこへ後ろから誰かが話しかけてきた

 

「試合もまだなのに注目されてるわね」

 

振り向くとそこには二人組、真由美ととある女性が立っていた

話しかけてきたのは真由美の隣の女性の方、その女性を見た瞬間達也のポーカーフェイスがヒクリと崩れた。

 

「母さん、なんでここに?」

 

そこにいたのは魔法にて変装をした朔夜の母、四葉真夜。達也は変装を見抜き突然のことに驚いたのだろう

 

義娘(真由美さん)に優勝のお祝いを言いに来たの、さっきまでお茶してたのよ。それに朔夜の試合も見ないといけないじゃない?

皆さん始めまして。朔夜がいつもお世話になってます」

 

真夜の挨拶にそれぞれが挨拶していく。深雪は朔夜の言葉のあたりから真夜の変装に気づき固まっていたが、達也に肘でつつかれ戻ってくると、皆に続き違和感なく挨拶していた

とこんな感じで話しているが、朔夜の元に真由美が現れたことで周りのヒソヒソ話はヒートアップしている

 

「ほら、決勝が始まるみたいよ」

 

真夜と真由美が席に座ると決勝戦の選手入場が始まった。それとともに朔夜に向いていた視線もそちらに向かっていく

 

そして始まったバトル・ボード本戦決勝

 

何事もなく摩利の優勝。とはいかなかった

問題が起きたのはスタンド前の蛇行ゾーンを抜けて鋭角コーナーに差し掛かった時だった

僅差で摩利を追っていた七高の選手が減速しカーブに差し掛かるところで加速したのだ

しかもボードが水つかんでいない。飛ぶように水面を走る七高の選手はそのままフェンスに突っ込むしかない

しかし、それに気づいた摩利は減速し、加速するはずだった魔法をキャンセルし、体制を整えると七高の選手を受け止めるために2つの魔法をマルチキャストする

これで七高の選手を受け止め、試合は中断になるだろうが事故は回避できるはずだった

受け止める瞬間、不意に水面が沈み込んだ

これにより魔法の発動タイミングが狂ったのである

摩利の足を刈り取ろうとしたボードを弾く事には成功した

しかし七高の選手を受け止めるための慣性中和魔法が発動する前に七高の選手は摩利に衝突し、そのまま2人はもつれるようにフェンスに飛ばされる

 

いくつもの悲鳴が上がりレース中断の旗が振られる

 

会場が騒然とする中、朔夜と真由美、達也が立ち上がる

 

「ここは私が見ておくからあなた達は行ってきなさい。深雪さん手伝ってくれる?」

 

真夜はそういうと目の前でおきた大惨事にうろたえるほのか達を落ち着かせるために話しかける

 

それを見て朔夜、真由美、達也の3人は摩利の元へと向った

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

検証とバトル・ボード

まえがき

今回は朔夜の試合。

うまく表現できているでしょうか?

私の表現力が不安です


摩利の容態は全治一週間、肋骨が折れてはいたが今の時代魔法でどうにかなる

しかし魔法による治療は瞬時に治るような万能なものではなく、応急処置

定着までに何回もかけなおさなければならない

摩利はまだ意識が戻ってはいなかったが時期に戻るだろうということで真由美が付き添っている

 

廊下を歩きながら朔夜と達也は話しをする

 

「朔夜、さっきの渡辺先輩の足元、不自然に沈んだように見えなかったか?」

 

「悪い、その瞬間はモニターから戻したばかりで見ていなかったんだ。

だけどその跡に精霊の軌跡が見えた。 人為的の可能性が高いけど立証が難しいよな」

 

「事故の映像を検証してみる必要があるだろうな。幹比古と美月に声をかけておく」

 

「それじゃ僕は五十里先輩に声をかけておく」

 

こうして2人は分かれた。

その後、朔夜は真夜と会い少し話をした

真夜も今回の件に人為的なものを疑っているらしい。それに人為的なものであるなら炎藤夏深にも気を付けなさいとのことだ

 

 

閑話休題

 

 

その日の夜、朔夜と達也の部屋にて解析をしている

朔夜と達也、それに五十里啓の確認によりやはり第三者の介入があったと見て間違いない

そこに美月と幹比古がやってきた

呼んだ理由を話すと2人は驚いていたが快く協力してくれた

美月は眼鏡をかけていたため精霊は見えなかったらしいが幹比古の話から精霊を使ってこの事故を仕込むことができるとわかった

達也の予想としてこの件の犯人は大会委員の線が強かったが、立証は難しく次を警戒するしかなかった

朔夜はというと幹比古の話、地脈や地形の話に目を輝かせていた。

 

☆★☆★

 

新人戦、朔夜は予選を難なく通過し、今から決勝へ向かう

これまでの競技女子は優勝準優勝を連発したものの、男子の成績は森崎がスピード・シューティングで準優勝したものの後は予選落ちと思わしくない

 

「男子でも一つくらい優勝を出して弾みをつけたいところですよね」

 

「そうね。でもそんな心配しなくても優勝して笑顔で私に手を振ってくれると思うんだけどな」

 

意気込む朔夜に真由美は笑顔でそんなことを話す

 

「そう言っても注目は七高と三高の選手ですよ・・・

はぁ、わかりました。楽々優勝してみせますよ」

 

朔夜は真由美の笑顔に負け、そう苦笑し入場するため足をすすめた

 

 

客席では三高の5人。将輝、真紅朗、愛梨、栞、沓子が話していた

 

「予選を見ましたけど一高の彼、意気込んでいたわりにはたいした事ありませんでしたね。これはバトル・ボードももらったも同然ですね」

 

「それはどうかな? 予選では手の内を見せないために手を抜いたのかもしれない。」

 

愛梨の言葉に真紅朗が待ったをかける

 

「それもこれからの試合を見ればわかるさ。」

 

これ以上ヒートアップすると収集がつかなくなりそうだったので将輝が落としどころをつける

そこで選手の入場が始まりバトルボードの新人戦男子決勝が始まった

 

 

レースは注目されていた三高、七高の他に朔夜が加わり会場を盛り上げた

レースが動いたのはスタンド前の蛇行ゾーンを抜けて鋭角コーナーに差し掛かったところ

そう先日事故が起きたポイントだ

三高、七高の選手が減速したのに対し朔夜は加速したのだ

客席では少なくない人が目をふさいだだろう

 

しかし事故は起こらなかった

 

朔夜は水流操作で水の傾斜を作りそのままのスピードで斜めに駆け上がると飛び上がり、側転気味に一回転すると何事もなかったかのようにコースに着地。トップスピードを維持したままカーブを通過したことにより2位以下との間に決定的な差をつけ優勝した

 

ゴールした瞬間は加速したときの静けさが嘘のように歓声につつまれた

約束通り笑顔で真由美に手を振って帰ってきた朔夜を無言で真由美がギュッと抱きしめる

 

「真由美さん、周りが見てるんですけど・・・」

 

「別に見られたってかまわないわよ。心配したんだから。」

 

「・・・すみません」

 

本当に心配してくれたのだろう。いつまでも顔を上げてくれない真由美の頭を朔夜はゆっくりと撫でる

周りにいたのは一高の女子生徒の先輩だったため気を利かせて先に言ってくれたようだ

しばらく無言のまま頭を撫でていたが、すっと真由美が朔夜の胸から顔を離し一歩は離れると笑顔で腰に手を当てる

 

「今度からあーいうことするときは心配させないようにちゃんと最初に教えてよね」

 

そういってニッコリと笑う真由美

 

「わかりました。できるだけ心配かけないようにがんばります」

 

そういいながら朔夜はこの笑顔を悲しみで染める事はしないと心に決める

 

「がんばるじゃなくて、わかりましたでしょ」

 

「わかりました」

 

そう言って2人は控え室を後にした

 

 

☆★☆★

 

「あの走り方は彼にしかできないだろうね。将輝、気づきましたか?」

 

「ああ。空中で方向修正のために空気の壁をけってるな。その反動で一回転した。」

 

「それにかなりの技術がなければ曲がるどころかまっすぐ飛び上がり大事故ですわね。認めるしかありませんわ。彼が口だけではなかったと…」

 

真紅朗の質問に将輝が答え愛梨が補足する

そう話しながら三高の面々も会場を後にした

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

モノリス・コード予選

まえがき

話の都合上モノリス・コードが4対4になっています。あしからず


今回の九校戦はトラブルが多いようだ。

 

しかも一高に関係するトラブルが・・・

 

摩利の事故に続き、新人戦のモノリス・コードでも事故が起きた

事故とは言っているものの故意だったのではないかという疑問が付きまとうような事故だった

一高対四高の予選開始直前、フライングをする形で破城槌を発動させたのだ

スタート地点が廃ビルの中だった一高の選手4人には逃げるまもなく崩れた瓦礫が降り注いだ

軍用のプロテクターを装備していたことや、審判が重力魔法で瓦礫のスピードを殺した事で大事にはいたらなかったが全員、全治2週間、3日間はベットの上だそうだ

この出来事で一高は新人戦モノリス・コードを辞退せざるをえないかと思われたが、克人が委員会に掛け合い、異例ではあるが別選手での予選参加を勝ち取ってきたのだ

 

そこで代わりの選手として白羽の矢がたったのが朔夜と達也だった。

家のこともあり渋る2人に対しての克人の言葉はお願いの類ではなく、甘えるな、逃げるな。だった

この言葉は九校戦のことだけではなく、これからの2人の、数字付ではないのに強力な力を持った2人への言葉だったのだろう

その言葉が心に響いた2人はモノリス・コードへの出場を決める。残りの2人は2人が選んでいいとのことだったため、達也と朔夜はレオと幹比古を推薦する

そんなわけでレオと幹比古も召集され、作戦会議も終了した

 

そして新人戦5日目、新人戦モノリス・コード予選は困惑の空気とともに幕が上がった

 

一高の予選、入場する選手に注目するものたちが観客席には大勢いた。三高の5人、将輝、真紅朗、愛梨、栞、沓子も注目していた

 

「出てきたね。彼らが」

 

「そうだね。」

 

「彼の他にも注目している選手がいましたの?それに彼がバトル・ボード以外でも活躍できるなら初めから選手に登録されていたのではなくて?」

 

「あの二丁拳銃スタイルに加えてブレスレット型をしている彼さ。この前ミーティングで話した一高の技術者だよ。彼が選手として出てくるとは思わなかったが・・・

それにモノリス・コードはチーム戦だ。朔夜がメンバーとの相性ではずされていたのだとすればそうとも言い切れないだろう」

 

「同時に3つのデバイスなんて使いこなせるのかな?」

 

「あいつがやることだ伊達や張ったりじゃないだろう」

 

「なんにしてもこの試合を見ればわかりますわ」

 

こうして注目が集まる中、一高の予選が始まった

 

相手は八高、ステージは森林

開始5分も立たないうちに大きく動いた。達也が木々の間を抜け敵側のモノリスまで到達したのだ

途中、八高の選手が達也に向けて魔法を放ったが達也は魔法式が構築される前に術式解体で魔法式を吹き飛ばすとそのまま八高の選手の隣を通り過ぎ、置き去りにするとそのまま追っ手が来る前にモノリスを開けると木々の中へ飛び込んだ

 

「今のは、まさか・・・術式解体」

 

「術式解体だって?」

 

将輝は達也のスピードに関心を持つが、それよりも真紅朗が言った術式解体の言葉に驚きの声を上げる

術式解体は簡単に言えばサイオンの塊を魔法式にぶつけて爆発、破壊する魔法。つまり相手よりも強大なサイオンをぶつけなければならないのだから使う人間のサイオン保有量の高さがわかる

そうしているうちに八高も一高側の本陣までたどり着く

 

ここで、会場を沸かせてのはレオだった

 

分割させる事ができるデバイス(伸ばすの方が正しいかもしれない)を横なぎに振るい相手の足を刈り取る

はじめて見るデバイスと魔法に観客は盛り上がる

レオが足止めしている間に達也はディフェンスの八高の選手を倒し、モノリスにコードを打ち込んだ

 

こうして一高が勝利した。

 

もちろん幹比古や朔夜がなにもしていなかったわけではない。幹比古は精霊を駆使して通信やサポートをしていた

朔夜は・・・周りから見れば何もしていなかった。ただ森に隠れていただけのようにみえただろう

いや、実際たいしたことはなにもしていない達也の作戦上温存されているからだ。

一高がピンチにならない限り相手をひきつけるおとりの役に徹底している。朔夜から攻撃する事はない。

しかしバトル・ボードで優勝しているのだから相手も目を離すわけにもいかない

 

「本当にいいおとり役だな」

 

「そういうな朔夜。出るからには目指すのは優勝だ。簡単にジョーカーを見せる必要もないだろう?」

 

不完全燃焼でむくれる朔夜を達也がなだめている

 

「朔夜はそんなに僕たちが信用できないかい?」

 

「いや、そうじゃないけど・・・」

 

「だったら今は僕たちに任せて。決勝で大暴れしてよ」

 

幹比古の言葉にうまく乗せられ朔夜は決勝までおとりに徹する事を了承した

 

☆★☆★

 

「今の試合どう思う?」

 

「どうもこうもあなた達が注目していた彼のワンマンチームじゃないかしら。ディフェンスのデバイスには驚かされましたが一度見てしまえば対処はできるでしょう。それに彼は特に目立ったところもありませんでしたし」

 

「違うよ一色さん。将輝が聞きたいのは彼の事だろう」

 

将輝の問いにまじめに答えた愛梨の言葉を真紅朗が訂正する。いつの間にか朔夜さんと呼び方が変わっているところはあえてスルーして・・・

 

「そうだ。この試合僕たちならどう攻める?」

 

「術式解体には驚かされたけど跡の内容はいたって平凡、それどころか彼は背後からの攻撃で相手の意識を刈り取るところまではいかなかった。術式解体に警戒していれば作戦の立てようはいくつだってある。朔夜に関しては今のところ保留かな」

 

このあと一高は予選第二試合、準決勝と作戦通り勝ち進み、決勝へと駒を進めるのだった

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決勝の幕開け

新人戦モノリス・コード決勝

 

入場前の三高の選手控え室ではこんな会話がおこなわれていた

 

「将輝、どう思う?これまでの朔夜の行動、温存か、ハッタリか」

 

「わからない。バトル・ボードのことを思うと警戒したほうがいいだろうが、他の学校は警戒のしすぎで負けている」

 

「いやハッタリだろ。バトル・ボードで注目を集めたのを利用したんだろ」

 

「お前は馬鹿か? あいつの実力がこんなもんなはずがないだろ。」

 

三高3人目の選手、中野新がハッタリと否定しかけたところに4人目西条遥人が否定する

 

「遥人、朔夜のことを知っているのか?」

 

「いや、決勝にまで来るチームだし気をつけたほうがいいと思っただけさ。 ほら入場の時間だ」

 

そう言って遥人と呼ばれた生徒は将輝達に気づかれないように振り向きざまニヤリと笑いながら入場口へ向かう

 

「とにかく警戒のしすぎもよくないが警戒しないのもまずい・・・か」

 

「それじゃ結局何も変わらないじゃないか」

 

将輝と真紅朗は笑いながら入場口へと向かった

 

 

新人戦モノリス・コード決勝が開始すると同時、会場は静まり返った。開始のブザーが鳴ると同時、朔夜は一瞬で魔法式を構築すると三高の選手に向けて魔法を放った

 

光の1矢(ウナ・ルークス)

 

流星の様に光の軌跡を残し三高の中野新に命中すると意識を刈り取る

真紅郎は考えてしまった。そのまま言葉が口に出る

 

「警戒していたのに、一瞬で?」

 

その一瞬が命取り、朔夜の攻撃はまだ続いている

 

連弾・光の7矢(セリエス・ルーキス)

 

真紅郎にあたる、その前に突如目の前に遥人が現れると7矢すべてを弾く

 

「やっぱりこうじゃなけりゃなぁ、朔夜ァ」

 

そういい残すと朔夜に向かって走っていった

真紅郎は遥人ってこんなに強かったか? と疑問に思いながらも自分の作戦を遂行するため一高側のモノリスに向かった

 

そして幹比古も朔夜の魔法に目を奪われたうちの1人だ

 

「君はどれだけすごいんだい朔夜・・・」

 

達也にも驚かされた。今自分が使っているCAD、古式魔法を使うために無駄をなくしてくれた古式魔法を使うための現代の道具

古式と現代の融合(ハイブリット)。そう思った

しかし朔夜の魔法もまさに融合(ハイブリット)

現代魔法に古式魔法の象徴である精霊を乗せて発射していた

 

「おい幹比古、ぼうっとしてるとやられるぞ」

 

レオの声でハッとする。 気を取り直しこちらに向かってくる真紅郎を迎え撃つ準備に入った

 

 

観客席はその光景に静まりかえった

 

注目も薄れてきていた朔夜のいきなりの攻撃、注目していなかった三高選手がそれを防いだという予想外の出来事

その静まり返った観客席の中で深雪はほかの事に言葉をなくす

隣に座って試合を見ていた真夜のやさしい顔

深雪は思う。これが真夜の本当の顔なのだろうと。四葉や夜の女王といった衣をまとわない真夜本来の顔なのだろうと

 

 

 

真夜は昔を思い出していた

 

きっかけは今日はじめて見る朔夜の魔法

 

…そう、あれは朔夜が7歳の時。初めて作った魔法

 

 

「ねーねー母さま。見てください」

 

「どうしたの? 朔夜」

 

朔夜は庭に練習用においてある的に向けて右手を向けると魔法式を組み始める。しばらくすると魔法式が組みあがり、空気中の水を集め氷の欠片を作ると、光の軌跡を伴って的に向かっていった

 

「攻撃に使うにはまだまだの魔法ですけど僕のオリジナルです」

 

そう言って笑顔を向ける朔夜に真夜はたずねる

 

「朔夜、攻撃魔法なら後ろに光の軌跡を描くような複雑な魔法式よりもその分氷を大きくして威力を上げたほうがいいんじゃない?」

 

「そうですね。でもあの光の軌跡を描かないと意味がないんです」

 

「どうして?」

 

「葉山さんに聞きました。母さまの固有魔法は光のラインを作り出す流星群という魔法だって。だから僕は母さまのような魔法を使いたいんです」

 

 

 

静まり返っていた会場が歓声で沸き、真夜は現実に引き戻される

 

「完成させたのね。おめでとう朔夜」

 

そう誰にも聞き取れないような声でささやき、真夜は息子が活躍するであろう試合に見入った

 

 




あとがき

はい、本当に幕があがっただけでした。

次回戦闘回ですお楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決勝の行方

まえがき

やっぱり戦闘描写にがてですかね?

いや、そのほかがどうかって聞かれるとなにもいえないですけど笑


決勝戦は今、三つに分かれて戦いが繰り広げられている

 

一つは達也対将輝。開始直後の朔夜の魔法に気をとられることなく、注目株同士の戦いが繰り広げられる

 

二つ目はモノリス前、レオ、幹比古対真紅郎。開始後は朔夜の魔法に気をとられた幹比古と真紅郎だったが気を取り直してからは真紅郎の攻めをレオと幹比古が防いでいる形である

 

三つ目が朔夜と遥人。朔夜も遥人も決勝までピンとくる活躍がなかったため(遥人にいたっては三高の生徒も驚くほどに)注目はされていなかったが今は将輝VS達也以上に注目を集めている

 

朔夜の魔法を遥人は風を手に纏わせ弾くといった方法で躱しながら近づいていく

朔夜の魔法(セリエス・ルーキス)が途切れた隙を狙って遥人は手に纏った風を朔夜に向けて放つ

 

風は刃となって朔夜を切り裂こうとする

しかしその手前で朔夜は右足をトンッと踏み込む

すると地面がせり上がり、壁となって刃を防ぐ

その後、朔夜は壁に手をそえる

手をそえた瞬間壁は砕け、砕けた欠片は遥人に向かって三弾銃のように向かっていく

 

「あぶね・・・えな!!」

 

遥人はそう言いながら迫りくる欠片ごと風を圧縮し集めるとそのまま乱気流で粉々に砕き宙にまわせる

ここまできて、静まり返っていた観客がその攻防のすごさに一斉に沸いた

その間に別の場所でも動きがあった。それもこの歓声の理由のひとつだ

 

達也が片膝をつき、将輝が倒れている。達也に軍配が上がったようだが達也ももう動けそうにない

 

レオと幹比古の方もレオが倒れている。そして幹比古も真紅郎に標準をつけられている

 

それを見た朔夜は右手を幹比古達の方へ向ける

真紅郎は幹比古に向けて不可視の弾丸を放ったことで勝利を確信した顔をしている

しかし幹比古に不可視の弾丸は当たらなかった

レオの体が突如現れて不可視の弾丸を防ぐ

 

「レオ! やられていたはずじゃ・・・」

 

幹比古はそう呼びかけるがレオは気を失ったままだ

 

レオの体は朔夜が動かしていた

 

五本の指それぞれから頭、手、足のプロテクターに軸を硬化魔法で固定し、マリオネットのように操ったのである(もちろんレオの頑丈さを信じてのことである)

朔夜の目論見通り先ほどの不可視の弾丸でレオは意識を取り戻し自分の状況に驚く

 

「痛ってー。 どうなってんだコレ? 体が勝手に動く?」

 

目線を向けられた幹比古もわからないと固まっている。

その隙に真紅郎は状況が理解できず戸惑いながらももう一度不可視の弾丸を放とうとするがその前にレオの体はひとりでに動きレオ本人でさえも持っていることを忘れていたマントを前に出す

 

「レオ、防御だ」

 

朔夜の声にレオはハッと気づき硬化魔法を発動する

するとマントは壁となり真紅郎の攻撃を防ぐとレオの体が自由になった

 

「レオ、幹比古、行けるか?」

 

朔夜のこの一言により今までのことが朔夜の仕業だと納得したレオと幹比古は大丈夫だと合図をするのだった

 

 

 

「戦ってる最中に余所見とはずいぶん余裕じゃねえか?」

 

「待っててくれる君も君だと思うけど?」

 

「よそに気を取られたお前を倒しても意味がないんだよ」

 

そう言って遥人はニヤリと口角を吊り上げると遥人の上空に巨大な魔法式が描かれ風を集め始める

遥人のとっておきだろう。そう思った朔夜は自分も試合を終わらせるため自分のとっておきをだすことにする

朔夜の目の前に千の雷(せんのいかずち)、そう呼ばれる魔法の魔法式が描かれたかと思うと朔夜に吸い込まれるように消える

 

術式兵装(じゅつしきへいそう) 雷天大壮(らいてんたいそう)

 

闇藤家の固有魔法、封印と解放と朔夜に埋め込まれた(かみなり)のエレメントの因子が共鳴して起こるとっておき(レギュレーションのため千の雷(せんのいかずち)の威力をB相当に減らしているため通常より威力は劣る)

 

魔法式が消えると同時に朔夜に変化が起きる

 

朔夜の夜色の髪も黒曜石のような瞳も黄金に輝く。そして、さらに朔夜は魔法式を左右の腕に封印する

双腕開放。右腕固定、千の雷(せんのいかずち)。左腕固定、雷の投擲(いかずちのとうてき)。術式統合。

 

雷神槍(ディオス・ロンケーイ)

 

普通はありえない魔法式の重ねがけを朔夜は封印と開放を使い自分の体の中で混ぜ合わせる

そして朔夜の右手に神殺しの雷槍が顕現する

 

「それがお前のとっておきかよ。俺のとっておきとどっちが上か勝負といこうじゃなねえか」

 

そう言った遥人の頭上には風が圧縮し、暴風となり、さらには(プラズマ)まで帯電している

遥人がその暴風を朔夜に向けて放ったと同時、朔夜も動いた

雷と同化した朔夜は紫電と共に加速し、暴風に向けて雷槍を放つ

雷槍は暴風をものともせずに貫き、遥人を穿った

 

倒れた遥人は意識はあるものの雷のせいで指一本うごかせない

 

「俺の負けだ。でも、試合じゃなかったらこうはいかないからな」

 

そう言って遥人は目を閉じる

 

朔夜はそれを聞いて苦笑しながらレオと幹比古の方を見る

加勢しようかとも思ったが、あちらもちょうどレオと幹比古の勝利で決着がついたようだ

一高の勝利を知らせるブザーが響き渡る

それを確認した朔夜は雷天大壮(らいてんたいそう)を解き、遥人を起こそうと振り向く

 

しかし、そこはすでに遥人のすがたはなく草原の草が風に揺られているだけだった

 

 

 

このあと、トイレにて縛られたまま気を失っている三高の西条遥人が見つかり、決勝に出ていた西条遥人が別人だったことがわかる

それを受けて先ほどの決勝を没収試合にするかの協議がおこなわれるが、決勝に出ていた偽者が西条春人本人の実力を上回っていたこと、加えてそれでも一高が勝利したことなどを踏まえ

新人戦モノリス・コード優勝を一高。入れ替わられていたのが決勝だけと断定できることから準優勝を三高とすることが決まった

 

 

☆★☆★

 

 

「どうだった?楽しかった?お遊戯は?」

 

少女は少年にたずねる

 

「見世物としては楽しめただろう?」

 

ニヤリと笑いながら少年は答える

二人はクスクスと笑いながらどこかへ消えていった

 





あとがき

レオを操った朔夜ですが小通連の応用みたいな感じです

自在に長さを変えるのを利用して人形師のように操って見せたわけです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

風、満つる少年

本戦ミラージ・バット

 

この競技の前にもトラブルがあった

九校戦運営委員のなかにCADに細工をしている者がいたのだ

九校戦の運営委員が深雪のCADに電子金蚕というSB魔法を仕掛けられたことにより達也が気づき発覚した。

試合前だったことから試合には影響なく、予選では深雪が飛行魔法を使い会場を沸かせた

それを受けて、今ここでは話し合いが行われている

 

「十七号から連絡があった。第二試合のターゲットが予選を通過した」

 

「電子金蚕を見抜く相手だ。順当な結果だろうが…まずいな」

 

「それだけではない飛行魔法をつかったそうだ」

 

「バカな」

 

「これで力を使い果たしてくれればいいのだが・・・そううまくは行かないだろうな」

 

「最早手段を選んでいる場合ではないと思うのだが」

 

「賛成だ。百人ほど殺して中止にさせよう」

 

「ではジェネレータ十七号のリミッターを解除」

 

 

それを聞いて

 

「この人たちも見切り時ですかね」

 

そういった少女がいたとかいなかったとか

 

 

閑話休題

 

 

本戦ミラージ・バット決勝までの時間、観客は予選で見た飛行魔法の興奮に席を立つものは少なかった

その裏で十七号の暴走に気づき独立魔装大隊・柳連、真田繁留、藤林響子によって外へと放り出され駆逐されようとしていた

 

しかしその瞬間急に魔力の量が異常に膨れ上がった

 

「まずい、自爆する気か? ここだと会場を巻き込む」

 

連がそう叫ぶと同時、十七号の体は無数の光のラインに貫かれ、バラバラになって活動を止めた。

3人が魔法の出所へと顔を向けるとそこにいたのは夜色の髪の少年、朔夜が笑顔で立っていた。

 

「すみません。情報が得られなくなってしまいましたね」

 

「…いいのよ。状況が状況だったもの。 えっと闇藤朔夜くんよね?」

 

「よろしくおねがいします。柳連さん、真田繁留さん、藤林響子さん」

 

その言葉に柳達3人は警戒し、構える。

 

「そんなに警戒しないでください。達也の<家>の関係者ですから」

 

しかしその言葉に3人は警戒は解かないまでも構えは解き話そうと近づく。

 

 

「あーあーこんなにしちゃって」

 

 

その声に4人は十七号がいた場所へと顔を向ける。

そこには十七号のバラバラになった体の一部を摘み上げる少年がいた

その少年は朔夜がモノリス・コードで戦った少年、西条遥人

 

「君は本人かい?」

 

朔夜は少年に疑問をぶつける

 

「…ああ、これか」

 

そういって少年は顔に手をやるとその顔の表面をバリバリと剥がす

出てきたのは銀色の先が太陽の光を受けて薄く緑色に光る外ハネの髪の少年、どこか達也に似た顔の雰囲気の少年は話し始める

 

「はじめましてでいいよなァ朔夜。 俺の名前は風霧満夜(かざきりみつや)。夏深と同じ失敗作さ。」

 

独立魔装大隊の3人も達也に聞いていた夏深という人物の名前が出たことに構える

 

「あんたらには興味はねーし、今は戦うつもりもないさ。今日はこれの出所を教えてあげようと思ってね」

 

そう言ってプラプラと振り回していた十七号の腕をポイッと捨てると紙飛行機をとばす

 

「これを信じろと?」

 

「信じるかどうかはあんた等しだいだ。それにそれは朔夜へのプレゼントなんだけどなァ」

 

質問する響子にそう返すと満夜は朔夜に話しかける

 

「今はまだお前を殺す用意ができてないんだ。」

 

「だからって逃がすと思っているのかい?」

 

「逃がすさ。だってお前は今から大事な人を助けに行かないと行けないんだから」

 

「どういうことだ」

 

朔夜の問いにニィっと口を吊り上げるだけの満夜

そこで朔夜は考える。ここにはいない炎藤夏深はどこへ行ったのか

 

「クソッ」

 

朔夜は真由美の元へと走り出す

 

「朔夜君がいなくなっても私達がいるんだけど」

 

「あんた等じゃ役不足だ」

 

そう言って満夜は一瞬で響子に肉薄すると鳩尾に手刀を突き出す。

響子は両腕を交差し受けとめ、そこを連と繁留が叩こうとするが手刀は受けられる前に幻と消え、風が舞っただけだった。

そして満夜の姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

「お前はまだあまいなァ朔夜」

 

 

 

 

バン、と急にあいたドアのほうに真由美は振り向き、驚く

 

「どうしたの? 朔夜君」

 

雷天大壮(らいてんたいそう)で雷化した朔夜が立っていたのだ。

朔夜は雷天大壮(らいてんたいそう)を解くと真由美を抱きしめる。

 

「真由美、よかった。」

 

「ち、ちょっと、みんな見てるから」

 

朔夜はハッと離れると周りを見渡す。

 

「そういうことは二人だけのときにしてください」

 

ここには生徒会に摩利がミラージ・バットを観戦しておりみんなが注目している。

 

「決勝が始まるわよ。朔夜君も一緒にみましょう」

 

真由美は話題を変えようと試合のほうに話を持っていく。

周りはニヤニヤとしながら決勝に注目する。

朔夜は満夜にしてやられたと思いながらも何もなくてよかったと決勝を見る。

全員に飛行魔法がもたらされた決勝戦深雪以外は飛行を維持できずに深雪が優勝する。

 

最後まで競っていたのは三高。一色愛梨だった。

 

 

この時、初めて呼び捨てで呼ばれたことに試合を集中して見ることができなかった少女がいたのはナイショである

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

後夜祭

満夜の紙飛行機に挟まっていたメモリチップのデータによって九校戦にトラブルを持ち込んでいたのが無頭竜(ノーヘッドドラゴン)だとわかった

 

データの中には幹部の位置データも入っており解決は簡単だった

 

とはいっても朔夜は深雪にちょっかいを出されたことで怒っている達也にすべて任せ、独立魔装大隊で処理した

 

朔夜は達也に事後報告を聞いただけだが炎藤夏深の姿はなかったそうだ

 

風霧満夜が情報をくれたのだから当然といえば当然だ

 

 

閑話休題

 

 

昨日の深雪のミラージ・バットで一種目残して一高の総合優勝が決まり

 

そして九校戦の残りの種目、本戦モノリス・コードも一高が優勝

 

一高の三年連続総合優勝で九校戦は幕を下ろした

 

 

今は後夜祭合同パーティーが開かれている

 

懇親会では九校戦のことを考えてほかの学校の生徒とかかわらないようにしていた者も今はフレンドリーに交流している

 

朔夜は九校戦での活躍もありいろんな生徒に囲まれていたが今は一人ポツンと立つ顔見知りに話しかけようとしているところだ

 

「一色さん、そんな難しい顔をしてどうしたんですか?」

 

愛梨は朔夜の呼びかけに驚いたように振り向く

 

「朔夜さん。難しい顔なんてしていませんわ。 ただ、そうですわね。すこし引きずっているのかもしれません。ずっと飛んでいられなかったことを」

 

「ミラージ・バット綺麗でしたよ。一色さんも。初めてであれだけ飛べたのなら来年はもっと飛べるはずです。がんばってください」

 

「朔夜さん…」

 

「朔夜、将輝達が話したいそうだ」

 

愛梨がなにか言いかけたところで達也に深雪、将輝と真紅朗がやってきた

 

「君には本当に驚かされたよ。魔法の発動スピードといい見たこともない魔法といい…」

 

来るなり真紅朗が話し出しいろいろな話をした。魔法以外にも将輝が深雪と達也を兄弟ではないと思っていたことや愛梨が深雪にライバル宣言をしたことなどだ

 

話しているうちに音楽が流れ出し、ダンスタイムと鳴った

 

達也にさとされた深雪と将輝がダンスをしに向かった

 

「あの、朔夜さ…」

 

愛梨が朔夜に話しかけようとした時、朔夜は歩き出す

 

「達也、ちょっと行ってくる。真紅朗も一色さんもまた。」

 

そう言って朔夜は人だかりの中にいる一人の少女に声をかける

 

「真由美さん、僕と一緒に踊ってくれませんか?」

 

「ちょっと君、七草さんは僕からも誘われているんだ。ここは僕、五頭和雅に譲りたまえ。七草さんは師補十八家である僕と踊る」

 

朔夜が真由美を誘うと周りから視線が集中し、その中から五頭というナンバーズが諦めろと言う

 

それを無視し朔夜は手を伸ばす

 

「朔夜君、喜んで。 みなさん婚約者(フィアンセ)が迎えに来てくれましたので私はこれで」

 

そう笑顔で朔夜の手を握り返し二人は中央のダンススペースへ向かった

 

残された五頭含め男たちは一瞬固まり、婚約者(フィアンセ)という言葉に騒然となった

 

 

そしてここにも驚く少年少女がいる

 

「し、司波さん、今のは本当ですの?」

 

「ああ。」

 

「すごいじゃないか朔夜。将来は七草家なんだね」

 

「七草先輩が嫁入りするらしいぞ」

 

「そうなのかい? でもすごいことにはかわらないよ」

 

興奮する少年のそばで

 

「まだ…まだわかりませんわ」

 

そう言って少女がコブシを強く握っていた

 

 

 

 

ダンススペースではペアになった少年少女が踊っている

 

「真由美さん、あんなこと言って…」

 

「いいじゃない。本当のことなんだし。これで言い寄ってくる人もいなくなるといいなぁ」

 

そう言って笑いあいながら音楽が終わるまで2人は踊り続けた。

 

 

______________________________________________________________

 

 

「あんな楽しそうに踊っちゃって、この幸せを壊して歪む顔が早くみたいですねぇ」

 

「そのためには少し力を蓄えないとな。俺も今回は力を使いすぎたし、お前も無茶はするな。」

 

「そんなことは言っても信用させるにはこちらもいろいろしないとですよ。 でもそのおかげでこれも手に入れたことですし結果オーライでしょう」

 

少女はそういって少年に今回手に入れた物をみせる

 

「ケッ。俺はあまり気が進まないけどなァ。 他人の脳(ソーサリー・ブースター)なんて」

 

「失敗作が成功品を壊すために私たちはどこまでも堕ちると決めたでしょう?」

 

「わかってるよ。そのためならお前とどこまででも堕ちてやる」

 

「そういうところ大好きですよ。満夜クン」

 

「姉貴ずらするな」

 

「あなたの方が後に生まれたのだから弟ですよ。 手土産もできたことですし次に日本にちょっかいかけそうなのはあそこですね」

 

 

そう言って後夜祭会場が見えるビルの上にいた二つの影は風とともに消えた

 

 




あとがき


無頭竜戦を楽しみにしていただいた皆様ごめんなさい。朔夜はかかわりませんでした
一緒にいても達也が消して終わりですしね

次回で九校戦編最後ですお楽しみに


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

朝の食卓

まえがき

今回は短めです

ちなみ話し方とか呼び方がおかしいかもしれません
こうじゃない?
ってのがあったら教えてください。


朔夜は今、東京の闇藤邸に3人で暮らしている

 

朔夜、そして驚くことに真由美、それから家政婦として桜井水波というガーディアン見習いだ

九校戦から帰ってくると真夜から「話は通してあるから一緒に住みなさい」と言われ一緒に住むことになった

そして真夜は家政婦として水波を置いて四葉の本邸がある旧長野県と旧山梨県の県境へと引越ししてしまった

 

それから1日がたち、今はインターホンが悪戯のごとく連続で鳴らされている

 

「僕が出るから水波はそれを続けて」

 

朝ごはんを作っていた水波にそう言うと朔夜は玄関のドアを開ける

 

「あ、やっと出た。お前か、お姉ちゃんを誑かしたヤツは」

 

「いきなり失礼だよ香澄ちゃん」

 

そこには2人の少女が立っていた。そこへ真由美が2階から降りてくる

 

「朔夜君、さっきのは… 香澄ちゃんに泉美ちゃん!?」

 

真由美は、そこにいた自分の妹達に驚く

 

「お姉さまおはようございます」

 

「お姉ちゃん、迎えに来たよ。帰ろう!」

 

「ちょっとまって。私はここに嫁いできたのだし…」

 

「そんなの勝手に決められたことでしょう」

 

「香澄ちゃんそれはまだわからないでしょ?」

 

「そうに決まってる‼︎ お姉ちゃんがこんな男…に…」

 

香澄は勢いのあまり見ていなかった朔夜の顔を見て言葉をなくしてしまう

 

「真由美さん、ここで話すのもあれだから中に入ってもらったら?」

 

朔夜の提案で2人を中へ迎え入れ机を囲んだ。水波の気の利くところはしっかりと2人の分までちゃんと用意しているところだ

昨日、話し合って家政婦だからと堅苦しいのは嫌だという朔夜と真由美の提案で妹のように接すると決まったので水波も一緒に机を囲む

 

「それでお姉さま、私たちは無理やり婚約をさせられたのなら助けに行こうと香澄ちゃんが言い出したので来たのです。 でもこれまでの縁談はお姉さまも断ってきたわけですし私は兄になる人がどんな人か見にきただけです」

 

「そうなの? でもこんなに朝早くにこなくても」

 

「私もそう思いますが香澄ちゃんが止まらなくて」

 

こんな話をしている間にも入って来そうな雰囲気だった香澄だが今はおとなしくご飯をつついている

 

「でも香澄ちゃんもお兄さまを見たらそんな気もなくなったようです。なにせ九校戦のモノリス・コードを見て一番騒いでいたのは香澄ちゃんですから」

 

「な、なんでそんなこと言うの泉美」

 

香澄は泉美の言葉に慌てている

 

「香澄ちゃん、僕と真由美さんの婚約を許してくれないかな?」

 

このタイミングでの朔夜のこの言葉に香澄は頬を赤く染めてうなずく

 

「これからもたまに遊びに来ていいですか? 私達もいきなりお姉ちゃんがいなくなるのは寂しいですし、それに香澄ちゃんも憧れのお兄さまに会いたいだろうし」

 

「な、い、泉美…」

 

香澄は言葉が続かずに顔がさらに赤くなる

 

「いつでも遊びに来てよ。真由美さんも喜ぶだろうし」

 

言葉をなくして恥ずかしさをごまかすようにご飯を食べる香澄に水波はおかわりをすすめる

この後は楽しく朝食が進んだ

香澄の緊張も徐々にほぐれ、水波も香澄と泉美と同い年ということでもりあがる

そして時間が来ると各々学校へと向かう

 

登校中、朔夜は真由美に「妹達に手を出したらゆるさないからね」と言われ苦笑いで「大丈夫だよ」と返すのだった

 

 




あとがき

それでは次回から夏休み編をすこしはさみまして横浜騒乱編です

あとは読みにくいとの意見をいただきましたので行間隔を変更しました。ご意見お待ちしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏休み編
夏休み①


九校戦が終わると魔法科高校の生徒たちは夏休みを満喫する。

しかし、生徒会長である真由美は夏休みが終わってすぐにある次の生徒会への引継ぎの準備のため、たびたび学校へと登校している。

今も午前中で切り上げてきたところだ。

今日は特別な日。 と言っても朔夜君と出かけるだけなのだが、実は朔夜君と2人で出かけるのはこれが初めてなのだ。

つまり、初デートだ。

真由美は鼻歌を歌いながら校舎を出た。

 

 

「朔夜君、お待たせ」

 

「お疲れ様。 僕も今来たところだから」

 

そう言って2人は校門へ向けて歩き始める

 

「そういえば初めて朔夜君に会ったのもここだったよね」

 

「入学式の時だよね。あの時は桜が綺麗だったな」

 

(桜の舞う中の真由美さんは綺麗だったな…)

 

「今はもう花は散って青々としているもんね。ってどうしたの? ニヤニヤして」

 

「え? いや、なんでもない。それよりさ______」

 

顔に出ていたようだ。朔夜は慌てて話題を変えると2人は目的の場所へと向かった。

 

 

☆★☆★

 

 

「おっまたせー。え?」

 

「しぃー。」

 

「えっ?どうしたの?」

 

待ち合わせに少し遅れてやってきた少女、エリカは、待ち合わせをしていた少女達の反応に戸惑う。

人差し指を口の前に立て静かに。と伝えてきた少女、雫は、言葉を発さずに人差し指を残りの2人ほのかと美月がこそこそと覗いている方を指差す。

エリカは「なによ?」と指の指す方をみると「これはこれは。」と目をかがやかせる。

そこにはこのショッピングモールに買い物に来たと思われる一組のカップルが仲むつまじく。しかし初々しさを残しながらショッピングを楽しんでいた。

 

 

 

そして、エリカ達が覗いている場所から少し離れた場所。ここにも、カップルの行動を覗いている少年がいた。

 

「あれ? はんぞー君何してるの?」

 

ビクゥッっと少年、服部半蔵は肩を震わせる

 

「あっほんとだ。お久しぶりです。半蔵先輩」

 

少年がギギギッとゆっくり振り向くと3人の少女が立っていた。

 

「ひ、久しぶりだね。香澄ちゃん、泉美ちゃん・・・」

 

「はい。お久しぶりです」

 

「・・・この方は?」

 

挨拶をかわす3人に一人置いてけぼりを食らっていた少女が質問をする

 

「あ、この人は服部半蔵先輩。お姉ちゃんの学校の後輩で副会長をしてるんだよ。朔夜さんの先輩でもあるね。 服部先輩、彼女は桜井水波さん。」

 

「はじめまして。服部形部です、よろしく。 ところでなぜ闇藤が?」

 

「桜井水波といいます。 今は朔夜兄様と真由美姉様の家でお世話になっています。 ところで形部? 半蔵先輩ではないのですか?」

 

「闇藤と会長の家って___」

 

「ところでさっきから何ちらちら見てるんですか?」

 

「え、あ…」

 

自己紹介の間もちらちらと他を気にする半蔵が気になって香澄がズイッと体を乗り出しちらちらと見ていたほうを覗く。

 

「あ、お姉ちゃんと朔夜さん」

 

「本当ですね。今日はお昼から初デートだと真由美お姉様が私服で学校へ行かれましたがここだったのですね」

 

「はんぞー君はの覗いてたんですねぇ。」

 

ニシシ。と半蔵を見る香澄に半蔵は口ごもるがそんなことは気にせずに面白いものを見つけたと香澄はこっそり覗くことを提案する。

泉美も水波も興味のある年頃だ。もちろん。と同意する。

そして4人は行動を共にするのだった____

 

ちなみに、泉美が私服で学校に行っていいの? と疑問を浮かべたが、夏休みだしね。と無理やり納得したり、半蔵の疑問が解決されないままだったりしたのは言うまでもない。

 

 

閑話休題

 

 

カップルが移動したことにより、こちら側の4人の少女も移動する。

そこで、エリカがカップルに集中しすぎて人にぶつかってしまう。

ぶつかった相手は子供だったため突き飛ばされてしまう。

 

「ごめん!! 大丈夫?」

 

エリカはぶつかってしまった子供に駆け寄る

 

「あ、大丈夫です。 すみません、私も人を探してたので」

 

ぶつかった子供は10歳くらいの腰まで届く透き通る様な水色の髪をポニーテールに結い上げた白いワンピースの少女。

少女は年に似合わない丁寧な言葉で話す

 

「人を探してたって、迷子?」

 

「いえ、兄弟を___」

 

「お姉ちゃん達が一緒に探してあげるわ。 でも、お姉ちゃん達もちょっと用事があるからそれをしながらだけど」

 

「じゃぁ、お願いします」

 

勝手に進む話にクスクスと10歳らしい笑顔で笑いながらお願いする少女。

 

「あたしはエリカ。でこっちから雫、ほのか、美月ね。」

 

「私は深冬です、よろしくお願いします。 エリカお姉ちゃん、雫お姉ちゃん、ほのかお姉ちゃん、美月お姉ちゃん」

 

その用事がカップルの尾行だと知った深冬は「探偵みたいで面白そうです」と自分の人探しは置いて夢中になった。

 

 

 

 

朔夜と真由美はひとしきり服などを見た後、食事をするために中華に洋食、ラーメン屋やとんかつ店などが集まるブースに来ていた

 

「朔夜君はなにが食べたい?」

 

「そうだな。朝に魚を食べたから肉が食べたいな。真由美さんは?」

 

「私は中華がいいな。」

 

「じゃあ中華にしようか。」

 

2人は食事をしながら楽しく会話をした。これからの夏休みの予定や今日買った水波へのお土産はよろこんでくれるかなど会話は尽きない。

特にこれから向かう今日のメインイベントについては盛り上がっていた

 

食事を終えるとメインイベントなのだが真由美と朔夜は失敗した。と店の前に立ち尽くしていた

失敗とは先ほどまでの楽しい食事。

 

「真由美さん、なにも考えてなかったね…」

 

「そうね。どうしよう。」

 

立ち尽くしているのはこのショッピングモールで一番高級な貴金属店の前である。

すると中から店員さんがガラスの扉を開け、2人に話しかけてきた。

 

「どうされました?」

 

「実は先ほど中華を食べてしまって…」

 

「大丈夫ですよ。どうぞお入りください」

 

真由美の言葉に店員はニッコリと笑い店に招き入れてくれた

 

「今日はどういったご用件で?」」

 

「婚約指輪を買いに来ました」

 

「おめでとうございます。そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ」

 

緊張しながら話す朔夜に店員はニッコリと笑いながら話しかける

色々な指輪をみながら店員から「お若く見えますね」と言われ年齢を告げるとすごく驚かれた

実際、朔夜は満15で真由美は満18なのだから驚くのも当然なのだが。

そして2人の足が止まる

 

「朔夜君これ。」

 

「うん、僕達にぴったりかも。」

 

「よかったらお出ししましょうか?」

 

店員はそう言ってショーケースから指輪を取り出す

その指輪はピンクゴールドでできており、桜の花が彫刻されている

ここに来る前に出会った時の桜の話をしたからだろうか? この指輪が気に入った2人は顔を見合わせると笑いあい、購入するうことを伝える。

裏側にお互いに向けた名前を彫ってもらい、その場でお互いに交換し合う。

「どう?」朔夜に付けてもらった指輪を見せながら真由美ははにかむ。

店員はお似合いだなぁ。と2人を見ていた。

 

 

 

 

店を出た2人はフードコートに向かうとソフトクリームを購入し席に座ると話し始める

そのとき、後ろから何かが崩れる音と悲鳴が聞こえた

 

 

 

 

朔夜と真由美が貴金属店に入ったあたりから尾行していた2グループは合流していた

深冬がメンバーとしてすっかりなじみ、エリカに懐いたのか2人で率先して、楽しそうに偵察に行っていた

そして今はメンバー総出で物陰から顔を出し、朔夜と真由美を覗いている

 

「やっと見つけた。深冬!!」

 

いきなり呼ばれた深冬は驚き、バランスを崩してしまう。

それを助けようとエリカが動いたことにより、背中に手を置いていた美月が支えを失いバランスを崩す。

連鎖は重なり全員がこけてしまう

悲鳴も上げたことから朔夜と真由美にも見つかってしまうのだった。

 

「これは・・・どういう状況?」

 

そうたずねる真由美に代表して泉美が説明する

真由美はそれを聞いて「はんぞー君まで」と溜息をつき、朔夜は苦笑いを浮かべる

 

「もういいか?」

 

中学生くらいの黄色い髪の少年が話しかけてくる。

今まで待っていたのだろう。少しイライラしているようだ。

 

「ごめんね。えっと、深冬のお兄さん?」

 

エリカが謝りながら確認をする

 

「違う。僕は深冬の妹だ。名前は深雷(みらい)。」

 

「えーー!!!」

 

「エリカ、その反応は失礼だろう」

 

朔夜もこう言っているが驚いているし、他もそうだろう。

しかし、そこまであからさまは失礼だとたしなめる

 

「いいよ。べつに。こんなしゃべり方だしこの身長に髪型だから仕方ないだろう。ちなみに深冬は少し背が低めだ」

 

「あんた達いくつよ?」

 

「僕が12で深冬が14だ。」

 

「深冬中学生だったの? てっきり小学生かと___」

 

「ひどいよ。エリカお姉ちゃん」

 

「ま、でも深冬と仲良くしてくれてありがとな。こいつ目話すとどっか行っちまうから」

 

深冬の頭をぽんぽん叩きながら話す少年を見て全員が本当に妹か? などと思ったのは内緒だ。

 

深雷(みらい)ちゃんもひどいよー」

 

はじめは丁寧に話していたが、なれるほど言葉が崩れて言ったのも子供っぽく見える理由の一つだなとエリカは思うが口には出さなかった

その後は深雷も加わり全員でフードコートで話した後岐路に着く。

こうして夏休みの一日は幕を閉じた

 

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

 

 

「楽しかったね。深雷(みらい)ちゃん」

 

「いいね、ああいうの」

 

「今度は達也お兄ちゃんと深雪お姉ちゃんとも遊びたいな」

 

「そうだね。」

 

夕日に染まる道をそんな話をしながら深冬と深雷は歩いた。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

はんぞー君は肩を落として帰ったとか帰ってないとか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

婚約発表+α

夏休みももう終わろうという時期

朔夜と真由美、そして水波は静岡と山梨の県境にある四葉の本家に来ていた。

突然朔夜の母、真夜に招集を受けたからだ。

駅に着いたところで3人はよく知る人物とであう。同じ一高に通う生徒でもある達也と深雪である

 

「朔夜。お前も伯母上に呼ばれたのか?」

 

「達也達も? いったい何を始める気なのか…」

 

「え? 達也君に深雪さん? どうしてここに?」

 

「朔夜さん、私達のこと会長には?」

 

「話してない。内緒だと思ってたから。でもこうして2人も呼ばれたことを考えると内緒ってわけでもないみたいだ」

 

「そうだな。思い浮かぶのは朔夜の婚約発表だろう。」

 

「って僕、四葉の分家にはあったことない人もいるんだけど…」

 

「あったことはなくても話は通っているだろう。当主候補の一人だ」

 

そんな話をしながら4人は迎えの車を待つ

真由美は司波の兄妹が四葉の人間だと聞いて驚く反面、納得もしていた。

そう思わせるだけの実力を2人は入学からこれまで見せてきたのだから。

 

 

四葉本家に着くと達也達とは別の部屋が用意されていた。

 

「朔夜様、真由美様、失礼いたします。」

 

その声に返事をすると襖が開けられ、そこには四葉の家政婦の正装に着替えた水波が膝を突いていた。

 

「夕歌様より伝言を預かっております。 お話できないかと。」

 

「こっちに来るって言ってた? 来いっていってた?」

 

「そこまではおっしゃっていませんでした。」

 

「そう。じゃ、すぐに行くって伝えて。」

 

「かしこまりました」

 

そう言って水波は襖を閉めると伝言を伝えに行ってしまった。

朔夜は真由美に夕歌について説明しながら___と言っても、一高のOBなので少しは知っているようだったが___夕歌の元へ向かった

 

 

津久葉夕歌 四葉家時期当主候補の1人。一高OBで元生徒会副会長。東京に住んでいるということで朔夜が小さいころはよく遊んでいたお姉ちゃん的な存在。今は大学が忙しいのか会う機会は少なくなった。年は20歳。

 

 

閑話休題

 

 

今はその夕歌の向かい合わせる形で朔夜と真由美は座っている。

ちょうど自己紹介が済んだところだ。

 

「改めておめでとう、朔夜ちゃん。だけどびっくりしたわ。朔夜ちゃんがこんなに早く、しかも七草のご令嬢と婚約するなんて思ってもみなかったから。 あ、別に変な意味じゃないのよ。真由美さん、気を悪くしたらごめんなさい。」

 

「大丈夫です」

 

真由美はにこやかに答える

 

「夕歌さん、朔夜ちゃんはやめてよ。 でも、ありがとう」

 

「でも明日は大変だよ。 四葉の分家が集合してるし、その中に放り込まれる真由美さんを守らなくちゃいけないんだから」

 

「大げさだなー。大丈夫だからね。真由美さん。」

 

「うん。もしもの時も助けてくれるでしょう?」

 

「あー。アツいアツい」

 

2人の行動に夕歌は手で扇ぎ茶化す。

真由美も徐々に打ち解け、久しぶりの再会で話は盛り上がった。

 

 

 

次の日、当主候補は正装をして入場を待っている

なんでも当主候補は一人一人入場するのだそうだ。

 

新発田家の四葉当主候補、勝茂が呼ばれた後は夕歌が呼ばれ、黒羽家の四葉家当主候補、文弥とその姉の亜夜子が呼ばれ、深雪が呼ばれた後は朔夜と真由美だけになった。

そして2人も呼ばれ部屋の中に入る。入場の時の掛け声は夕歌に聞いていたとはいえ、吹き出しそうになったのはご愛嬌だ。

水波の後ろについて部屋の中に入ると真夜の隣に案内された。

他の当主候補はそれぞれ真夜と向かい合うようにして座っている達也は深雪の後ろにガーディアンとして控えている。

 

「それではみなさん、急な呼び出しに欠席もなく集まってくれてありがとう。今日呼び出したのは重要な発表が3つあるからよ」

 

3つ。その言葉に周りが少しざわつく。

 

「1つ目は私の隣にいる朔夜。正式に皆に紹介するのは初めてだったでしょう。私の息子。 2つ目、このたび朔夜の婚約が決まりました。お相手は隣にいる真由美さん。七草のご令嬢だけど嫁いでもらうのだからもう四葉の人間。仲良くしてあげてね。」

 

朔夜と真由美は名前を呼ばれたところで頭を下げ挨拶をする。朔夜は膝に手を置いたまま、真由美はちょんと地面に手を添えてふかぶかと頭を下げる。

 

「そして3つ目」

 

全員の注目が集まる予想していなかった3つ目の発表とは何かと。

 

「次の四葉家当主を私の息子、朔夜に任せたいと思います。」

 

誰もが予想していない言葉だった。ここに集まったも者の半分以上は次期当主は深雪だと思っていたし、その発表もまだ先の話だと思っていたからだ。

 

「失礼ですがご当主」

 

「何かしら。貢さん?」

 

真夜は黒羽殿でわなく貢さんと言う事でプレッシャーをかける

 

「朔夜君を紹介なされてすぐに当主とは時期尚早ではございませんか?」

 

「大丈夫よ。当主となるに相応しい実力は有しているわ」

 

「し、しかし、聞くところによると朔夜君は精神干渉魔法が使えないとか。それを考慮するに、深雪さんの方が四葉家当主に適正があるかと。2人もまだ若いわけですしもう少し様子を見てはどうかと…」

 

「私も精神干渉魔法は使えないわ。でも立派な当主でしょう?」

 

「しかしご当主は四葉としての固有魔法をお使いになられる。しかし朔夜君は闇藤の固有魔法は使えても四葉としての固有魔法はお使いになれないでしょう」

 

「そんなことはないわ。 第一四葉は全員が別々の固有魔法を発現する家系ですし、朔夜もきちんと四葉として強力な固有魔法も使うことができます。しかし強力すぎるがゆえ、禁術として一度も使わせたことがありませんけど」

 

「なにをそんなに急いでおいでなのですか? ご当主」

 

四葉家の当主は前当主の指名によって決まる。本来なら黒羽貢はこのような反論もできないはずなのだがこれは分家の全員の主張である。今わだかまりを残せば後のクーデターにつながりかねない。

それを見越して貢も意見しているのだと真夜はわかっているので咎めるような事はしない。しかし急ぐ理由を言うわけにはいかない。それはとても不確定なものでもあるから。

そこでこの話を終わらせる一言が放り込まれる。

 

「私、司波深雪は、当主候補を辞退。朔夜さんを支持します。」

 

分家の者にとっては一番の当主候補の辞退と推薦。それを始まりに夕歌、文弥、勝茂とつづく。

当主候補には昨晩この話が伝えられ、説得されていた。深雪にいたっては当主にならなければ結婚しなくてもいいと大喜びで辞退したくらいだ。

この当主候補全員の辞退と推薦を受けて周りの分家も了承するしかなかった。

とはいえ、急に言われて深雪こそ相応しいという考えを捨て、落ち着いて考えてみれば朔夜は当主として十分な才能を有しており。まだ若すぎるということを除けばなにももんだいはない。

すぐに真夜が引退して朔夜が当主として勤めるわけでもないということで一応、満場一致で朔夜が次期当主になることが決まった。

それが終われば祝いの席だ。同年代の親戚同士、交流を深め、真由美との結婚を祝福された

 

 

翌日、四葉家から魔法協会を通じて十師族、師補十八家、百家数字付きなどの有力魔法師に通知が出された。

 

四葉家次期当主に四葉朔夜を指名したこと。

 

四葉朔夜と七草真由美が婚約したこと。

 

有力魔法師はその日のうちに祝伝を打った。

もちろん、七草弘一もである。 四葉で発表する前に真夜にしっかり説得されたのだから。

 




あとがき

横浜以降のオリジナルを書くための布石です。

四葉継承編をよんで即書いちゃいました。

少し手直しを入れるかも。そのときは報告入れます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

夏休み②

「おっまたせー♪」

 

「って、誘った奴が遅れてくるってどうなの?」

 

「まーまー。待つのも男の甲斐性ってやつでしょ。」

 

「あのな。…はぁ。」

 

いつも通りレオとエリカの痴話喧嘩が始まりそうなのだが今日は初対面の相手もいる。レオが飲み込もうとしたところで美月が話し出した

 

「ごめんなさい。先に知り合いと合流したんですけど、エリカちゃん待ち合わせ時間を同じにしちゃってたみたいで…」

 

「大丈夫だよ、柴田さん。それより後の二人が?」

 

「はい。______」

 

「あーゆう大きな器を持ちなさいよ。あんたも」

 

収まりかけていたレオだがエリカの一言に爆発しそうになる。

いつもなら周りから温かい目で見守られる痴話喧嘩だが、その光景を不安そうに見ている2人の目線に気づいた幹比古はレオの服の裾を軽く引っ張る。

レオも分かっているとヒクつきながらも笑顔をつくる。

それを見て美月は気を取り直して2人の紹介をはじめた。

 

「彼女達がこの間はなした深冬ちゃんと深雷ちゃんです。」

 

美月が紹介すると幹比古、レオ、深冬と深雷はお互いに簡単な自己紹介をする

初めて会った時にエリカと深冬は意気投合し、連絡先を交換してちょくちょく遊んでいた。

そして今日、お馴染みのメンバーに紹介し、親交を深めようと思ったわけなのだが…

 

「でもごめんね、深冬。深冬が会うの楽しみにしてた深雪とそのお兄さんの達也君とか、この前の朔夜君とかはどうしてもはずせない用事があるらしくて。 また今度紹介するね」

 

「そんなこと。 エリカと遊ぶだけでも楽しいし今日は二人もお友達を紹介してもらったし。」

 

笑顔でそう返しながら深冬は少しほっとしている。達也と深雪、それに朔夜も、会いたい反面自分の素性がバレてしまわないか不安に思うと言うのが大きい。

朔夜とこの間少し放した時も内心ドキドキしていたのだから。

自己紹介が終われば後は遊ぶだけだ今日はスポーツレジャー施設で思いっきり遊ぶことになっている。

いつものエリカや美月と4人でのショッピングなども楽しいが、男子が加わって思い切りはしゃぐと言うのは学校に通っていない深冬と深雷はとても楽しみだった。

 

3対3でバスケやフットサルをしたり、ローラースケートを履いて魔法の補助なしに追いかけっこをしたり。

途中盛大にこけるレオやエリカ。もちろん深冬もこけたのだが、痛さなどよりも楽しさが勝ち、目いっぱい楽しんだ。

楽しい時間というのは早く過ぎ去っていくもので、昼前に集合したにもかかわらず、あっという間に夕方、夏とはいえ日が暮れ始める時間になっていた。

 

「あー。遊んだ遊んだ。」

 

「しかし、あんたの転びようはすごかったわ。」

 

「お前もこけてたじゃねーか。だけど一番すごかったのは…」

 

「「深冬だよな(よねぇ)」」

 

「もぅ。そのことは忘れてってば。」

 

半笑いで口に手を添えてそう言うエリカとレオに必死で講義する深冬。もうすっかり仲良くなっていた。

 

「まーまー。深冬…ぷっ」

 

「もー深雷ちゃん。それに美月にミキまで」

 

慰めようとした深雷もこらえられなかったようで笑ってしまい、飛び火して幹比古や美月も笑っている。それだけダイナミックだったのだ。深冬のこけ方は。

幹比古が「だから僕は幹比古___」と言っているが誰も取り合わない。その光景はエリカと深冬、それに深雷。合わせたら今日だけで何回見ただろうか。

そうして笑いながら歩いてるうちにキャビネット乗り場まで来てしまい、別れの時間がやってきてしまう。

ここから深冬と深雷はキャビネットに乗り、残りは歩いて帰路に着く。

 

「じゃあ、深冬、深雷。こんどは今日これなかったメンバーも誘っとくから。」

 

「…うん。それじゃ、さよなら」

 

深冬の言葉の後にドアが閉まり深冬と深雷は行ってしまった。2人はずっと手を振っていた。

 

「エリカちゃん。どうしたの?」

 

キャビネットが行ってしまってから少しボーっとしていたエリカに美月が声をかける。

 

「え、なんでもない。さ、帰ろ帰ろ。」

 

エリカはさっきの別れに少し違和感を感じたが、美月の言葉に「ま、気のせいよね。」と先に歩き始めているレオと幹比古の方へ美月の手を引っ張り歩いていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

 

「深冬、今日は楽しかったね。」

 

深雷のそんな言葉に深冬は言葉を返さない

 

「本当に…本当に楽しかったよね」

 

深雷の涙ぐんだ言葉を聞いて深冬はギュッと深雷の手を握る。

深雷もその手をギュッと握り返す。

楽しかった夏休みの日々も、もう終わりを告げる時間なのだ。

 

 

家に帰ると2人の姉、兄である2人が出迎えてくれた。

 

「深冬、深雷、今日は楽しかった?」

 

2人は何も返さずに二階へと上がろうとする

 

「明後日、本を取りに行くわ。あなた達も準備しておきなさい。」

 

深雷の方がビクっと震えるがそれを隠すように深冬が肩を抱くと2人は2階へ上がっていった。

 

 

「夏深…」

 

何も言わない夏深に満夜が心配そうに声をかける

 

「大丈夫。…分かってはいるのよ。学習装置を受けても人によって感じ方が違う。事実あの子達は四葉や朔夜に恨みを抱いてはいない。むしろ司波の兄弟には憧れてさえいる。私は憎しみに向けるしかなかった感情をあなただって違う方向に向けているでしょう? でも、私は自分の憎しみを抑えられない。 それに…私たちには時間がない。」

 

「…俺はいつでも姉さん(夏深)の味方だよ。」

 

学習装置で刷り込まれる過程や知識が同じでも固体によって感じ方が違う。

満夜も朔夜に憎しみや恨みを抱いてはいない。満夜を戦いに導いているのは(夏深)への依存。

真夜の為に崑崙方院及び大漢に命を賭して報復を行った四葉元造や深雪を守る達也、達也のことを思う深雪のように四葉の血がそうさせるのかは分からない。しかし満夜は夏深に誰も味方につかなくても、自分だけはと決めているのだ。

だから、自分を偽る。朔夜を憎んでいると。

 

「…ありがとう」

 

こうして夜は更けていく。

 

 

 

 

2日後、世間では知られていない夏休み最後の事件が起こることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

襲撃

まえがき

2日連続投稿。
夏休み偏ラストです、ではどうぞ。




朔夜と真由美の婚約発表から3日がたった。

昨日にはここに集まっていた分家のほとんどが帰っており、今残っているのは黒羽貢と津久葉冬歌の二人だけ。もちろん朔夜も真由美も達也も深雪も東京に帰った。

明日から新学期が始まるからだ。

真夜は書斎ではなく広間で名残惜しそうにコーヒーを飲んでいた。

 

(みんな帰ると静かになるわね。以前は平気だったのに朔夜と東京に住んで騒がしいのに慣れたからかしら?)

 

カップを口につけてから中身が無くなっている事に気づく。

 

「ふふふ」

 

「真夜様、お注ぎ致しましょうか?」

 

「いいわ。ねぇ葉山さん、朔夜は上手くやっていけるかしら?」

 

「朔夜様なら立派に四葉当主としてやっていかれると思います。」

 

「もう。そうじゃなくって___」

 

「失礼いたします。当主様、黒羽様から何者かが結界を抜けて侵入したと報告がありまして。」

 

真夜の許しを待たずに報告に来た家政婦をとがめる事も無く真夜は話し出す

 

「なんですって?」

(物思いにふけって見逃すなんて私も落ちたものね)

「貢さんと、…冬歌さんもまだいたかしら? 呼んできてちょうだい。」

 

「かしこまりました。」

 

そういって家政婦が下がると準備していたのだろう2人はすぐにやってきた

貢の報告によると感知できたのは4人だそうだ。すでに貢の配下と冬歌のガーディアンの内1人を向かわせたそうだ。

葉山は真夜の警護から動けないとして冬歌は戦闘能力がないので門までたどり着かれた場合は貢1人で対処することになる。

しかしここにいる者は心配していない。ゆるしなく四葉の敷居をまたげたものはいないのだから。

 

 

 

 

「あらぁ。四葉の皆さんに気づかれちゃいましたね。」

 

「結界を越えたからなァ」

 

「深冬、深雷、お願いできますかぁ?」

 

「「…」」

 

2人は何も言わずに魔法を行使する。

 

深冬は左側、深雷は右側。

魔法式の展開は直ぐに終わる。

左は氷付け、右は感電し、痙攣している

 

「さすがですよ。2人とも♪ でも倒れない人が2人いたみたい。」

 

「おこちゃまにしては良くやったよなァ。残りは俺が____」

 

「いい。私たちがする。2人は先に行って。」

 

「そうですか。それじゃ、2人ともがんばってくださいねぇ。」

 

満夜がやろうとするのを深冬は自分達がやると止める

夏深は嬉々としてスキップで四葉邸へ向かい、満夜は少し苦々しい顔をするが歩き出すとニヤリと笑い先程の顔は無かったかのように歩き出す。

深冬も深雷もわかっているからここを引き受けるのだ。2人の優しさを。

これから先、もっと強敵になるだろうからここに自分たちをおいていく為に支持を出した夏深。

この残りの相手は周りのように命を奪わないわけには行かないだろう。それをさせないように引き受けようとした満夜。

これまで4人で暮らしてきたのだ2人の優しさも、壊れていく様も見ている。

だから協力するのだ。

家族だから。

 

「大丈夫? 深冬?」

 

「うん。お姉ちゃんだからね。深雷ちゃんこそ大丈夫?」

 

「うん。もう、戻れないから。」

 

そう言うと2人は魔法式を展開する。

深冬の周りに複数の魔法式が展開されたかと思うと空気中の水分を集め氷の剣が次々と空中に創られる。

深雷の方は自分の下に大きな魔法式が描かれ、地面から砂鉄を磁力によって拾い上げると自分の周りに漂わせる。

それが完成すると二人は前に踏み出した。

深雷は|周りで気絶したりコールドスリープ状態にある者のリーダーと思われる男《貢の配下》、深冬は別の命令系統と思われる女性(冬歌のガーディアン)

深冬は氷の剣を飛ばし牽制すると周りの剣の内2本を器用に動かし切りかかっていく。

深雷は砂鉄を纏い格闘戦に入る。

四葉邸に向かった2人に気を向けようとした相手にそうはさせないと向かっていった。

 

 

 

「凄い音ですねぇ。気になりますか?」

 

「気になるわけないだろォ。それよりコイツは俺がもらうぞ?」

 

「いいですよぉ。早めに戻ってきますから死なないでくださいねぇ」

 

「死ぬかよ。」

 

四葉の門の前で待ち受けていた貢に向けて満夜は風の刃を飛ばす。

 

「お前の相手は俺だ。あっちを気にしてる暇なんてないぜェ」

 

貢も仕方なく夏深を行かせる。満夜が片てまで相手できる実力では無いと先程の攻撃で分かったからだ。

2人がかりでやられて2人行かせるよりも1人の足止めを選んだ。

葉山と冬歌のガーディアンが1人いる。大丈夫だと考えての行動だ。

貢は満夜の掌底をかわす。掌底の時の手の平に暴風が渦巻いていたからだ。

貢は一旦後ろに下がるがそれを満夜が追撃する。

しかし攻めていないとやられそうだと満夜は焦っているのもある。

 

(早く帰ってこいよ。夏深ィ)

 

そう思いながら満夜は攻め続けていった。

 

 

 

 

「ありましたありました。コレですコレです。」

 

「狙いはそれだったの。でも持っては行かせないわよ?」

 

ここは真夜の自室。葉山と朔夜以外誰も入ったことの無い部屋。それこそ葉山も一度入ったことがあるだけの部屋だ。

ここに夏深の探している本があった。

 

「どこで知ったの? それ。」

 

「以前ここにいた使用人の頭を何人かいじった時に知りました。捨てたようなこと行ってましたが朔夜を溺愛している貴女が捨てられるわけありませんから」

 

「任務中に死亡が確認できていない者の何人かはあなた達だったの。」

 

「そう言うことです。それでは貰っていきます。誰も連れてこなかったのは失敗でしたね。」

 

「させると思う?」

 

真夜はそう言って手を前に出し、流星群を発動しようとする。

しかしその瞬間、夏深の姿はぼやけて消える。

話している間に蜃気楼を利用して移動していたのだ。

真夜は舌打ちすると踵をかえし、葉山たちの元へもどる。この部屋にはあまり人を入れたくないため無理を言ってきたのだから心配をかけるのもほどほどにしないといけないから。

 

 

 

満夜と貢の戦闘は一進一退の攻防が続いていた。

そこに敵を倒したのか深冬と深雷がやってきた。

深冬は氷で足を止め、氷の剣で串刺しにした。

深雷は相手のガードを誘い、ガードされる瞬間に纏っている砂鉄をチェーンソーの用に高速に動かしガードごと心臓を突き破った。

そして時を同じくして夏深も合流する。

 

「手に入れて来ましたよぉ。あらあら、深雷ちゃんすごい返り血浴びてるじゃないですか。がんばりましたねぇ。もちろん深冬ちゃんもですよぉ。」

 

そういって夏深はハンカチを出すと深雷の顔を拭き始める。

 

「手に入れたなら引くか。」

 

「そうですねぇ。あなたを殺してからでもいいんですけど、今は機嫌がいいので見逃してあげます。」

 

そういって貢をニコリと見る夏深。

それだけで貢は金縛りに会ったように動けなくなってしまう。

4人が去ったあと、貢は膝をつき、大きく息をする。少しの間、息をするのを忘れていた? いや、できなかった。

四葉邸から戻ってきた夏深はそれほどの威圧感をもっていた。

膝の震えが止まると貢は四葉邸にもどって行く。当主の安否の確認と、自分の失態の報告をしに。

 

 

 

 

 

「それが例の本かよ?」

 

「はい。言うならば魔法書です。」

 

「でも、CADですよね?」

 

「コレは朔夜の作ったCADの第一作目。無邪気で子供だった朔夜がみんな魔法がつかえたらいいのに。と作った悪魔のCADです。」

 

「悪魔…の?」

 

深冬と深雷は悪魔と言う部分に引っかかり首をかしげる。あのやさしい朔夜が作ったのに悪魔のCADなんてと。

 

「無邪気な子供が作ったがゆえですね。実際このCADは魔法の才能が乏しい四葉の家政婦でさえ強力な魔法を発動、使いこなしたそうです。」

 

「それってすごくねえか? 少しでも魔法師の素質があれば誰でも強力な魔法師になれるわけだ。」

 

「いえ、なんの素質も無くてもです。だから魔法書。だけど魔法を使うために自分の寿命をサイオンとして出力する。」

 

「それって…」

 

「まさに悪魔の魔法書。朔夜みたいにもともと莫大な魔力があればなんとも無いですが自分の実力以上の魔法を使えば命を削る。それが分かってすぐに破棄したことになっていましたが、朔夜を溺愛している真夜は捨てられなかったんでしょうね。」

 

3人は言葉をなくす。それが本当なら子供の時に朔夜はトーラス・シルバーなんて目じゃないほどの技術を持っていたことになる。

それに、この魔法書を、命までも使おうとする夏深の憎しみの深さに。

 

この後は会話も無く4人はアジトにしている家へとかえる。

ただ、夏深がうっとりと魔法書を見ながらこう口にした。

 

 

「あとはあの人たちを利用して朔夜に仕掛けましょう♪」

 




あとがき

これで夏休み偏終了です。次回より横浜騒乱偏です。

お楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

横浜騒乱編
幕開け


まえがき

おまたせしました。
なかなか考えがまとまらなくて…
そして一巻飛ばして下からはじまります。
上の内容は没になりましたので原作を読んでない方は読んでからのほうが楽しめるかと思います。
というか、これまでの話も原作ありきですけどね…

ではどうぞ


全国高校生魔法学論文コンペディション

通称論文コンペは各学校が魔法学、魔法工学の研究の成果を大学、企業、研究機関に向けて発表する舞台である。

九校戦を運動会にたとえるならこの論文コンペは発表会だろう。

 

今回、朔夜はこの論文コンペに参加しているわけだが、発表する側というわけではなく、会場の警備という形で参加していた。

発表に参加しない上に先日四葉の次期当主と通達されたため、仕方なく警備に参加している。

朔夜としてはゆっくりと真由美と共に発表を見たいと思っているわけだが…

とは言え、救いだったのはペアを組んで警備するのが顔見知りである一条将輝であることと、一高と三高の発表の時間に休憩がもらえた事だろうか。

 

というわけで今、一高、三高の発表を見に来ているわけだが、もう席が一杯になってしまっていたため、立ち見をしている。

これだけ席が一杯だと真由美に席を取ってもらっておくのも申し訳がないし、どうせ一高と三高しかみれない。立ち見で十分だ。

 

ちなみに一高の発表はこの三高の前に発表する。

発表内容は重力制魔法式型熱核融合炉の技術的問題点と解決策について。

しかし、以前朔夜が達也に聞いたものとは少し違っていた。

この発表のリーダーである鈴音の研究に基づいた発表だったからだろう。

達也のは常駐型。常駐型重力制魔法式型熱核融合炉だ。

達也は理論をほぼほぼ完成させているが、その実現にはある特殊なCADが必要になる。

そのCADとは魔法式を保存するCAD。

魔法師を部品として組み込むのではなく、魔法師がいなくても動き続ける重力制魔法式型熱核融合炉を作るにはどうしても必要なもの。

そこで朔夜の固有魔法〈封印〉に目をつけ、協力を求めてきたのである。しかし達也の目をもってしても封印の魔法式を紐解くことはまだできていないようだ。

この魔法式を保存するCADは朔夜が子供のときに完成させているのだが、達也に伝えていない。重大な欠陥があるためと、そのCAD以降、万人の為の物は作らないと決めているためだ。

 

閑話休題

 

次は三校の発表である。

テーマは基本コードの重複限界。

今回の論文コンペで一番前注目を集めている発表。

しかし発表の直前、会場に轟音が轟く。

その瞬間、朔夜は真由美の元へ一瞬で移動する。達也も深雪を守るために同じタイミングでやってきた。

朔夜と達也は視線を交わすと周りを警戒する。

そのとき、ライフルで武装した集団がなだれ込んだ。

 

これが後に横浜事変と呼ばれる事になる争いの始まり。

 

この時の僕はまだ、こんなテロなんてすぐに終わらせて、みんなといつもの喫茶店で笑ってお茶会でも開ける日々が続く。そう思っていた。




あとがき

今回はプロローグ的なもので文字数も(何時もの様に)少ないですね。
次回をおたのしみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

対処

会場に突入してきたテロリストたちは勇敢にも立ち向かおうとした舞台上の三高生徒が魔法を展開しようとCADに手を伸ばしたのを見て威嚇射撃を行う。

威力を上げられたパワードライフルは三高生徒の顔の横を通り過ぎ壁をえぐる。

それに三高生徒は「ヒッ」と悲鳴をあげ腰を抜かしてしまう。

 

「大人しくしろっ」

 

テロリストは次は当てると会場の全員を脅す。

現代では銃器よりも魔法のほうが優れているとされているがそれは1対1の状況や軍のように統率されている状況だろう。

警護に当たっているのは優秀な魔法師とはいえ9つの高校が入り乱れている。怪我人を出さないように全員を対処するのは困難。たとえ1人で全員を対処できる実力があろうとももしもの時に自身に責任がのしかかるとすれば尻込みしてしまうだろう。

そう。圧倒的な力で怪我人を出さずにテロリストを対処できる自信があるか自分の大事なもの意外はどうなっても興味がないもの以外は。

しかしここにはその例外が2人もいる。

朔夜と達也だ。

朔夜は四葉次期当主として達也の力をまだ秘匿しておきたいと考え達也に向けて唇を動かす。

達也は朔夜の唇の動きを読み取ると任せたとばかりに手から力を抜いた。

そして朔夜は動く。さきほどのテロリストの威嚇など関係ないとばかりに真由美に向かって歩き出す。

「デバイスをはずして床に置け」と指示をされ、大人しく従おうとしていた周りの生徒からすれば朔夜の行動は愚行だっただろう。指示に従わずに勝手に動くなどということは。

案の定、テロリストは引き金に指をかけ、「動くなっ」ともう一度威嚇する。

その威嚇も気にせずに朔夜はCADに手を向かわせる。

そうすればテロリストたちは魔法を使われる前に対処しようとするだろう。引き金は引かれ銃口からは朔夜に向かって弾が発射される。

朔夜の手は手首のCADに触れていないが、魔法は発動する。朔夜の行動は銃を撃たせることが朔夜の目的で、魔法は人差し指のCADを意識で操作し発動する。

発動した魔法は慣性を逆転させる魔法。

魔法を受けた銃弾はすべて進行方向を逆転させ、銃口に戻り、銃は暴発する。

銃をなくしたテロリストなど魔法師の敵ではない。

 

「取り押さえろ」

 

どこからか聞こえた言葉で共同警備隊が一斉に取り押さえる。

このあと朔夜は将輝にCADに触れずに魔法を発動したことを問われるが、いつものように指輪型のCADを親指で操作したと誤魔化す。

 

 

そのあと、あずさの魔法と真由美の演説で会場を鎮めると、現生徒会長のあずさをリーダーにシェルターへの非難が決まる。

しかし、論文コンペのメンバーはデモ機のデータの消去に向かうこととなり、朔夜もそちらに同行した。

 

 

 

データの消去も完了し、控え室にて今後の方針を決めた

達也は独立魔装大隊としての任務に向かい、残りのメンバーで非難することに。

 

 

「朔夜ぁ。待ってましたよぉ」

 

外に出たときに一人の少女がそう声をかけてきた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

説得

「朔夜ぁ、待ってましたよぉ」

 

そう声をかけてきたのは赤い髪の少女。

朔夜と真由美、深雪、それと、同行していた独立魔装大隊の響子はいつでも魔法が使えるように構える。

エリカ、レオ、美月、幹比古、雫、ほのか、摩利、花音、啓、鈴音、壬生、桐原は驚きのあまり固まっている。

現れたのは深雪と同じ顔をした少女だったのだから。

 

 

「そんなに構えなくてもすぐに攻撃したりしませんよぉ。後ろの人たちに自己紹介をしないといけませんから。 私の名前は夏深です。以後お見知りおきを。」

 

「朔夜君、彼女って・・・」

 

「詳しく話すと長くなるけど、敵だから。」

 

「後で教えなさいよね。」

 

エリカは朔夜の言葉に警棒型のCADを構え、それに続き全員がCADを構える。みんな、長々と話している場合ではないと悟ったのだろう。

 

「この数は一人ではキツイだろォ。夏深ィ。」

 

「朔夜だけですよ。他はどうにでもなります♪」

 

「舐めるな!!」

 

後ろから現れた銀髪の少年に夏深が返した言葉に花音は逆上し、魔法を発動する。

しかし地雷源は不発に終わる。銀髪の少年の魔法により発動場所の周りを無酸素状態にされた為だ。

 

「風霧…満夜…」

 

響子が漏らした名前に真由美は反応し、自分の中の警戒レベルを一気に引き上げる。九校戦の後に聞いた強力な魔法師。炎藤夏深の仲間。

もちろん、周りのみんなも警戒する。花音の地雷源を止められたのだから。

 

「そう急かすなァ。こっちの紹介も終わってないだろォ? 俺の名前はそこの軍人が言ったけどよォ。こっちにも後2人いるんだからさァ。 隠れてないで出てこいよ。もう後戻りはできないだろォ?」

 

そう言ってニヤァと口を三日月型に変える満夜に堪忍したのか2人の少女が姿を現す。

その姿に朔夜はもちろん真由美、エリカ、レオ、幹比古、美月、雫、ほのかは驚愕する。

 

「なんで…」

 

エリカはそう声を漏らす

現れたのは水色の髪の少女と黄色い髪の少女。夏休みに仲良くなった2人、深冬と深雷。

 

「こんな形では会いたくなかったです。深雪お姉さま。それに…」

 

そう言ってエリカに悲しげな視線を送る深冬。

その視線でエリカは気づいてしまった。あの時自分が見落としてしまった違和感に。

いつも、またねとお別れをする深冬がいったさよならの言葉。あの時、引き止めてほしかったのではないかということに。

 

「深冬___」

 

「もう遅いんです。」

 

深冬は会話をしたくないと一瞬で魔法式を組上げ氷の剣を作るとエリカに向かって飛ばす。

 

(もう遅いんです。私達は人の命を使ってしまったのだから)

 

「それじゃぁ任せますよ♪ 朔夜、行きますよ。」

 

そう言って夏深が取り出した本を見て朔夜は冷静さを失ってしまう

 

「それを使うなぁぁぁ!!!」

 

いつもの朔夜らしからぬ言葉使い、行動。

夏深につられて2人は双方魔法を繰り広げながら行ってしまった。

 

「こいつらはお前らがやりなァ。俺ァ夏深に加勢してくる。いらないとか言われそうだけどなァ」

 

満夜の言葉に頷く深冬と深雷。

満夜が行ったあと深冬と深雷は先に戦力の分担をはかる。

深雷が砂鉄の刃を波のように飛ばし分断したのは深冬のほうにエリカ、真由美、雫、ほのか、啓、花音、響子。深雷のほうにレオ、深雪、幹比古、美月、壬生、桐原、摩利、鈴音。

 

 

☆★☆★

 

 

 

深雷は分断した後、高速で壬生、桐原の前に移動すると2人の鳩尾に手を添え、電撃を叩き込み気絶させる。

そこにレオの拳が振り下ろされた。深雷は後ろに飛びながら砂鉄の壁を作りガードするとレオと向かい合う

 

「柴田、鈴音、2人を見てあげてくれ。」

 

摩利の指示で美月と鈴音は倒れた2人に駆け寄る。

向かい合うレオの隣に深雪、摩利、幹比古が並ぶ。

 

「なぁ深雷、やめないか。 こんなの、意味ないだろう?」

 

レオは悲しそうな顔をして深雷に問いかける。しかし、深雷は何も答えずに砂鉄で人形を3体作り出す。

 

「今ならまだやり直せる。またみんなで遊ぼう。 ほら、深雪さんとも友達になりたいって言ってたじゃないか?」

 

「君達は彼女を知っているのか?」

 

「「夏休みに仲良くなった友達です。」」

 

レオと幹比古の説得を聞いて疑問に思った摩利の質問に2人は迷わずに答える。

 

「あの時は楽しかった。でも、もうそんな楽しい時間も終わり。深雪お姉ちゃんは知ってるよね? 私達には_____」

 

「「____時間がない」」

 

深雷と深雪の声が重なった。達也と朔夜、それに、真夜が言っていたことが的中してしまったことに深雪は唇を噛む。

 

「だから私達は家族のために時間を使うって決めた。あの、やさしかった夏深ちゃんのために。だから、楽しい時間は終わり。」

 

そう言う深雷の目に迷いはなかった。

その説明に、摩利は深雪にも先ほどレオ達に言ったのと同じ質問を投げかける。

レオも幹比古も気になっていた。今度会わせると約束したはずなのにもう知り合いのようなのだから。

そして深雪の口から出たのは思いもよらない言葉だった。

 

「彼女は、いえ彼女達は私の妹達です。すみません。私達の家の問題に巻き込んでしまって。」

 

深雪の家の問題。そう聞いて聞こえた全員が驚く。

それは達也が離脱するときに朔夜から聞いた血縁関係。

つまりは深冬に深雷、そしてさっきの2人も四葉の人間ということになる。

 

「もういいよね」

 

そう言って深雷は驚愕し固まっているレオ、幹比古、摩利に砂鉄の人形をけしかけ、自分は深雪に攻撃を仕掛けた。

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

「深冬、やめよう?」

 

この言葉は何度目だろう。

こちらではエリカの説得が続いていた。

もちろん攻防を繰り返しながらだ。

 

「あの時、笑ってた深冬は嘘だったの?」

 

その言葉に、深冬は無言で攻撃を返す。

答えてしまえば、ダムが決壊してしまう。押し込めている思いが全部出てきてしまうから。

 

「そんなことないよね? あの時の深冬は心の底から笑ってた。」

 

その言葉一つ一つが心に染み渡らないように、話す暇をなるだけ与えないように、深冬の攻撃は激しさを増す。

しかし1対多の攻防なだけに完全に話す暇を奪うことはできない。

そして、深冬は自分が無意識に攻撃を弱めていることに気づかない。

 

「ならなんで、そんな悲しそうな顔してるの!!!」

 

エリカの悲痛な叫びはついに深冬のダムに亀裂をいれた。

 

「もう遅いんだよ!!!」

 

口から漏れた一言は、ダムの亀裂を進行させ、決壊に導く。

 

「エリカ、見てよ。これ」

 

深冬が見せたのは正方形の四角い箱。

この場にいる者のほとんどが訝しげにそれを見る中、響子は驚愕の表情を表す。

 

「軍人さんはわかったんだね。エリカ、これはね、ソーサリー・ブースターっていうの。魔法師が強力な魔法を使う時の演算補助デバイス。」

 

「そんなものが・・・」

 

啓の口から驚愕の言葉が漏れる。それは魔法師にとっては夢のデバイス。そんなものがあるなら一科(ブルーム)二科(ウィード)なんていう差別もなく、すべての魔法師が強力な魔法を使うことができる。

 

「ただ問題はこのデバイスの材用。生きた魔法師の脳。」

 

その言葉に響子以外の全員が驚愕する。

 

「私たちは自分が生きるために人の命を使ったんです。もうあのころに戻れるわけないじゃない。」

 

「そ____」

 

エリカが何かを言おうとした時、その言葉をかき消すようにミサイルが打ち込まれた。

そのミサイルは深冬が深雪を思わせる氷の壁を作りすべて防ぐ

 

「わ、私たちの足止めももう必要ないみたいですね。」

 

深冬は顔をしかめながらそう言うと深雷と共にこの場を去った。

 

「さよなら」

 

エリカは2度目のこの言葉に手を伸ばすことしかできず、その届かなかった手を握り締めながら呆然と立ち尽くす。

 

「エリカ、辛いのはわかるけど居間は立ち尽くしてる暇なんてないぞ。」

 

そのレオの言葉にパンッと両手で自分の顔を叩くと笑顔を作りこう返した。

 

「辛いのなんてみんなもでしょ。とりあえずこいつ等で憂さ晴らししないとね。」

 

その後、千葉寿和が持ってきた刀型デバイスを手にエリカは戦闘用ロボットに立ち向かっていった。

 

 

 

☆★☆★

 

 

 

「深雷、大丈夫だった?」

 

深冬は口から白い息を吐きながらたずねる。

 

「ソーサリー・ブースターのおかげでなんとか。でももう少し長引いてたらやばかったかな」

 

ほら。と深雷は痙攣する両腕をみせる。

 

「強力な魔法の連発には注意しないとね。」

 

そう話しながら2人は夏深と満夜の元へ向かった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

傷跡


まえがき

お待たせしたのに短くてすみません。
ダンまちの読み切りを書いてたのもありますが、この話を書くのに迷いが出てしまって…

言い訳はこの辺にして、本編をどうぞ。




 

「それを使うなぁぁぁぁ」

 

「ふふふ。 朔夜、本気を出してくれてうれしいですよ。」

 

そう言って夏深は術式兵装、雷天大壮で雷帝化した朔夜の攻撃をかわしていく。

 

「でも、頭に血が上ったあなたの攻撃をよけるのは簡単です。すこし、つまらないですね。」

 

攻撃が当たらないとみた朔夜は両腕に封印された魔法を夏深に向けて放つ。

虚を突かれた夏深だが体を捻って魔法をかわす。

朔夜は夏深の視線が外れた隙に新しい魔法を自身に封印する。

 

解放・固定、術式装填《千年氷華》

 

朔夜の前に一際大きな魔法式が構築され、それを朔夜がそれを潜る。

それと同時に朔夜の体に魔法が取り込まれ体に変化を及ぼす。

朔夜の髪の毛は雪原のように青白く変化し、その長さは腰の辺りまで伸びる。

瞳は蒼星石の様に青く透き通り、まつげも髪と同じように青白く変化する。

そして朔夜の前に頭部が雪の結晶でできた錫杖が顕現する。

 

術式兵装《氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)

 

変化が終わると同時、朔夜は錫杖を右手で持ち、空いた左手を前にかざすと夏深の周りに無数の魔法式が構築される。

夏深の状況は絶体絶命に見えた。

 

「あれ?」

 

夏深が何かを言おうとした時、一迅の風が吹き、夏深の姿が消える。

それと同時に夏深がいた場所に無数の氷柱が突き刺さる。

 

「油断するな夏深ィ。 頭に血が上ってるうちに殺さないとなァ」

 

「何言ってるんですか。もうとっくに冷え切ってますよ。」

 

そう、朔夜が術式兵装を換装したのは無理やりにでも頭を冷やすため。

今はクールに冴え渡っている。

 

「それに、満夜が邪魔するから私の魔法が無駄になったじゃないですかぁ。」

 

そう言う夏深の周りには紅い魔法式が無数に構築されていた。

「悪りィな」と謝る満夜に「もういいです」と溜息をつきながら夏深は右手に持った箱を見る。するとその箱は命を失ったかのように光を失い崩れ去る。

 

「あーあ。一つ無駄にしましたか。 それに満夜、今ここで朔夜を殺しはしません。朔夜にはもっと絶望を味わってから死んでもらわないと。 深冬達も戻ってきたみたいですしそろそろいいですかね。 引きましょう。」

 

「絶望させるならもう一工夫必要だろう。 夏深ィ、別行動だァ。」

 

逃げる4人を朔夜も逃がすわけがない。

無数の魔法式を展開し攻撃しようとする。

しかし魔法式の構築が終わろうとしたその時、突如朔夜は膝から崩れ落ち、同時に氷の女王(クリュスタリネー・バシレイア)も解けてしまったのである。

 

「く、そ」

 

朔夜は額に汗をにじませ夏深達を逃がしてしまったのであった。

 

 

☆★☆★

 

 

一方、深冬と深雷が去った真由美たちの状況はというと・・・

 

無事に戦闘用ロボットを大破させた後、ヘリで非難をしようとしていた。

しかし、最後の最後でイレギュラーが起こる。

 

無所属兵(ゲリラ)の強襲。

 

無所属兵(ゲリラ)は無事殲滅したものの桐原が銃で撃たれ花音の足が切り飛ばされてしまったのだ。

 

「お兄様!!」

 

深雪が空へ向かって叫ぶ。

そして黒尽くめの兵士が舞い降りる。

バイザーをあげると達也であることが確認できた。

 

「お兄様、お願いします」

 

深雪の言葉に達也は桐原にCADを向け、引き金を引く。

展開されたのは達也の固有魔法《再成》

その魔法によって桐原の体は光だし、傷は何事もなかったようにふさがる。 壬生が「大丈夫なの?」と声をかけている。

続いて達也はCADを花音に向け、引き金を引く。

花音もまた、体が光り、切り飛ばされていた足は元の位置に戻り、何事もなかったかのようにくっつく。

 

「花音、大丈夫なの?」

 

「うん。なんともないみたい。」

 

達也もCADをホルスターに戻し、深雪と話し出す。

緊張の糸が緩んでしまった。ほんの一瞬だった。

 

 

 

「残念でしたァ」

 

 

達也達がいる場所から離れた場所で銀髪の少年の口が三日月型に裂けた。

 

「よかった。花の」

 

ドス

 

無事だった許婚の下に駆け寄ろうと歩みだした啓の言葉はそこで費えた。

銀髪の少年が魔法とともに打ち出した鉄骨に心臓を打ち抜かれて。

 

「うそ・・・啓ぃぃぃ」

 

花音の叫びにそこにいた全員が反応する。

口を押さえ驚愕するもの、目を背けるもの、胃の中のものを吐き出してしまうものそれぞれいる中、花音はただ一つの望みを持って達也をみる。

しかしその希望は達也が首を横に振ることで完全に費える。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁああ」

 

 

達也の再成で元に戻せるのは少しでも息があるうちだ。心臓を打ち抜かれ即死だと手の施しようがない。

 

沈黙が続く中、朔夜が合流する。

 

「朔夜、お前…」

 

達也が何か言おうとするのを朔夜は首を横に振って止める。

 

「すみません…僕が、あいつ等を逃がしたから…」

 

その言葉に花音は朔夜をキッと睨む。

その目線に朔夜は悔しそうに奥歯を噛む。

 

「君のせいじゃない…」

 

摩利が間に入って花音を慰める。

 

 

 

このすぐ後、一つの戦略級魔法によってこの争いは終結する。

一高の生徒に確かな傷跡をのこして。





あとがき。

今回の話、苦手な方も多々いるかとは思います。それがこの話の迷ったところでもあるのですが・・・

それはそうと今回で横浜騒乱編が終了し、次回よりオリジナル最終章、第一高校崩壊編(仮)をお送りします。

今後ともよろしくおねがいします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一高校崩壊編
学園崩壊


横浜の事件から数週間…

 

魔法科第一高校は、あの日背負った傷跡と向き合い、前に進もうとしていた。

 

「本日はこちらの呼びかけに賛同してくださってありがとうございます。」

 

全国の魔法科高校に呼びかけ、話し合いの場を設けることとなった。

各校から3~4人集まり円卓を囲んでの話し合いだ。

一高からは生徒会からあずさ、深雪、風紀委員長代理として朔夜。

一高で開催することから真由美と克人が十師族としての立場から意見をするということで立ち会っている。

 

「それでは、話し合いを始めさせていただきたいと____」

 

ドゴゥン!!!

 

あずさが話し合いを始めようと話し始めた時、轟音とともに建物が揺れた。

この場にいる全員が何事かと混乱する中、轟音は2、3と続いていった。

 

☆★☆★

 

 

授業が終わると生徒達は下校前に預けたCADを受け取りに来る。

CADの学内携帯が許されているのは生徒会と風紀委員のみのため、風紀委員を退いた摩利も例外ではない。

CADを受け取り、校門までの道を歩いていると校門から一人の少女が入ってくるのが見えた。

 

その少女は数週間学校に顔を出さなかった自身の後輩であり、ずっと心配していた摩利は話をするために駆け出す。

その時、目の前の少女はアクセサリー型のCADに手を添えると魔法を発動させた。

 

 

「…どうして?…」

 

摩利は立ち尽くし、そんな言葉が漏れていた。

摩利の後ろでは校舎の一つが音を立てて崩れていく。

下校時刻で人は少ないだろうがまだ中には残っている生徒もいただろう。それを目の前にいる自分の後輩は己の魔法を持って吹き飛ばしたのだ。

無論、そんなことをすれば中の生徒達がただで済むわけがない。

 

「花音、これはどういうことだ!!」

 

摩利は目の前にいる後輩、現風紀委員長である千代田花音に向かってそう叫んだ。

 

 

しかし、花音はただ冷たい目を摩利に向けるだけで言葉を口にしない。

 

「いったいこれはどういうことよ? 帰ろうと思ったらいきなり校舎が崩れるなんて、ねえ先輩?」

 

「あれやったのって、先輩っすよね? どういうことっすか?」

 

そこにエリカとレオがやってきて質問を浴びせるも花音は返事を返さない。

しかし、変わりにその後ろから来た人物が答えを返してきた。

 

「それはコイツがこっち側についたからに決まってんだろうがァ」

 

後ろから歩いてきたのは3人。横浜で敵として現れた満夜、深冬、深雷の3人だった。

 

「深冬、深雷…」

 

エリカがそう呟き、決意の目を2人に向ける中、摩利が訳がわからないと花音に語りかける。

 

「花音、なぜそんなやつらといる? 自分が何をしたのかわかっているのか? お前は人を…人を___」

 

「分かってますよ。摩利さん。私はあいつの居場所を奪ってやるって決めたんです。啓を奪ったあいつに絶望を与えるために。」

 

花音から帰って来たのは摩利が意図していたのとは別の回答だった。

 

「何言ってんの? 五十里先輩を殺したのはテロリストでしょう?」

 

言葉のでなかった摩利の代わりにエリカが質問をかえす。

 

「あの横浜の事件はある一人の人物を狙って怒ったこと。あいつさえいなければ啓は死なずにすんだんだ。闇藤さえいなければ!!!」

 

またしても花音の回答は的を得ていない。エリカが話そうとした時、後ろから満夜が割って入ってきた。

 

「ほんとうのことだぜェ。俺らがあいつを狙うために消しかけたんだ。 クククッ。あの横浜の事件はあいつのせいだよなぁ。だったらあいつに絶望を味合わせてから殺さないとなぁ。」

 

そう言って満夜はエリカに喋らせまいと風の刃を放つ。

エリカは警防型のCADで受けると後ろへ受け流す。その行為でエリカのCADにはヒビが入ってしまった。

 

「あの言動に納得して向こう側についているとなると操られてるんでしょうね」

 

そこに達也が拳銃型のCADを満夜に向けてやってきた。

 

「渡辺先輩、何をほうけているんですか。操られているのなら、それを解いてやればいいだけの話です。 エリカ、そのCADは使い物にならないだろう? これを使え。それに、渡辺先輩も。」

 

そう言って達也が2人に渡したのは日本刀の形をしたCAD。

 

「これはエリカに頼まれて五十里先輩が作っていたCADとそれを完成系にしたものです。渡辺先輩、そのCADで千代田先輩を止めてあげてください。」

 

2人がしっかりとCADを構えると戦闘が始まる。

摩利VS花音、エリカVS深冬、レオVS深雷、達也VS満夜

戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

学園崩壊2

轟音が轟いた後、会議室は以外にも落ち着いていた。

さすがは各校の代表と言った所だろうか?

一番慌てていたのがあずさだったのが少し恥ずかしい所だ。

状況の把握、整理をしようと朔夜が呼びかけようとした時、会議室のドアが開き、一人の少女が入って来た。

 

「朔夜ぁ、楽しんでますかぁ?」

 

そう言ってニヤリと笑うのは炎藤夏深。

思わぬ人物の登場に朔夜や深雪、真由美など夏深を知っている人物は身構えた。

 

「何なんだ君は? 今は会議中だ」

 

四高の生徒会長はそう言って訝しげに夏深に近づく。

その時、四高の生徒会長は後ろから側頭部を蹴られ、倒れてしまう。

蹴り倒したのは同じ四高の生徒だった。

 

「夏深さんに近づくなよ。」

 

その場は静まり返ってしまった。

訳がわからないと言うのが本音だろう。

 

「訳がわかりませんか?」

 

はじめに話し出したのは夏深だった。

 

「苦労したんですよ、この舞台を用意するの。 でも朔夜、貴方はブランシュの事で何も学ばなかったんですか? この場でのCADの携帯を許可するなんて。」

 

そう言って夏深はクツクツと笑う。

この会議を開くのに問題に上がった事だ。

しかし他校を信じなければ始まら無いとあえてCADの携帯を許可したのだ。

しかし今はそれが裏目に出てしまったと言うことだろう

 

「時間がかかったおかげで私たちの時間も残り少ないですけど貴方を絶望へ導くには十分な時間です。 …これだけの同士を迎えられたのですから。」

 

夏深の言葉で会議に集まった生徒の内半分以上が夏深の元へ集う。

その中には真紅郎や愛梨の姿もあり、将輝も混乱しているようだ。

 

「今校舎を破壊したのは花音さんなんですよ。今頃は誰かと殺しあってる頃でしょうか?」

 

「なんで…」

 

夏深の言葉に真由美が声を漏らす。

 

「人の心なんて脆いものです。 怒り、嫉妬、絶望。 心に隙間さえあれば私は心を書き換えられる。 失敗作と言われようと四葉の血を引き、母の力を受け継いだのだから。」

 

夏深の親と言うのは司波深夜の事だ。彼女は特別な精神干渉系魔法の使い手だった。

その才能を受け継いでいるのならこの情景も頷ける。

 

「さぁ、パーティを始めましょう。」

 

夏深のこの言葉で会議室は乱戦へと突入する。

愛梨は朔夜への想いを利用され剣を構え真由美へと襲いかかる。

 

 

貴方さへいなければ朔夜君の隣には私がいたかもしれない。

 

 

真紅郎は達也へのライバル心を利用された。

 

一高の生徒を根絶やしにすればそれを止められなかった達也さんよりすごいと言うことです。

 

自分がしている事のおかしな所にさえ気づかない。

 

 

「私たちは外へ行きましょうか。 朔夜」

 

そう言って外へと出て行く夏深。

朔夜はここに留まろうかと迷いが出たが、真由美がここは任せてとばかりの笑顔に夏深を追って外へ飛び出した。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エレメントの行き着く先

地雷源の間を縫うように加速し、摩利は花音に近づき剣を振るう。

しかし花音はそれを躱すと今まで摩利に見せた事もないような動きで追随する。

 

魔力量が上がっている?

 

摩利の考えは的中していた。

夏深側に付いた者達はブースターを所持し、能力を底上げされている。使う事への抵抗は精神操作により失われているだろう。

 

花音が無差別に地雷源を使うのもそのせいだ。

威力の上がった地雷源はことごとく校舎を破壊し瓦礫へと変えていく。

混乱の中、逃げ遅れた生徒のなかには瓦礫の下敷きになっている者もいるだろう。

 

一刻も早く花音を止めて救助しなければ

 

そんな思いが摩利を焦らせ、剣を鈍らせ、膠着状態が続いていた。

 

☆★☆★

 

崩れた校舎の近く、会議室にいた者も崩れる前に脱出し、外でたたかいが繰り広げられていた。

あずさは梓弓を使い自体を終息させようとしたが、効果がなかった。

自分の無力さに唇を噛みながら見つめる先では、真由美と愛梨が戦いを繰り広げていた。

 

エクレールと言う二つ名のとおり、加速し、レイピア型の特化型CADを振るう愛梨。

紙一重で避け、制服を切り裂かれながらも魔弾の射手で反撃する。

しかし全てレイピアで弾かれてしまう。

その間も愛梨の説得を続けるが、愛梨は聞く耳を持たず、嫉妬を真由美にぶつけるだけだ。

 

その時、真由美が瓦礫に足をすくわれてしまった。

レイピアは真由美の心臓めがけて突き進んでくる。

 

(朔夜君…)

 

防げない。真由美は恐怖で目を閉じてしまった。

 

しかし、いつまでたっても痛みは襲って来なかった。

 

「大丈夫か?七草」

 

目の前には克人のファランクスが展開されており、レイピアを止めていた。

克人はあらかたの人数の意識を刈り取り、真由美の元へ駆けつけた。

ちょうど、深雪と将輝もこちらに集まってきた。

将輝は真紅郎の意識を刈り取ると無事なところへ移動させたようだ。

 

「こんな事、人の心を弄ぶなんて…許せない!」

 

「これも、私達四葉の招いた事です。申し訳ありません」

 

「深雪さん…」

 

「真由美先輩、私も当主候補に選ばれていた人間です。四葉として、止めなければなりません。 夏深の姉としても」

 

将輝の怒りに深雪が謝罪し、全てを話す。深雪と真由美の知っている全てを。

 

「七草と司波は行け。 ここは俺と一条が引き受ける」

 

「でも___」

 

「行ってください。一色は三高生として、同じ一の家として自分が止めます。」

 

将輝は、そう言ってファランクスを破壊しようとレイピアを振るう愛梨を見る

以前の少し高飛車なところが可愛く見えるくらいに狂気に満ちている。

 

「朔夜と達也に伝えて下さい。 こんな事、早く終わらせようって」

 

将輝のその言葉に深雪と真由美は頷くと、それぞれの行かなければいけない場所へ向かった。

 

☆★☆★

 

エリカは横浜で深冬の覚悟を知った。

だから今回は説得なんてことはせずに、自分達の貫き通したいもののために全力で戦った。

エリカのCADは刃入れをしていないので魔法で刃を作らなければいつもの警棒型と同じだ。

しかしエリカ専用に達也がチューニングしたのだから恐ろしく鋭く、速い。

 

エリカは一瞬で深冬に肉迫し、袈裟斬りを見舞う。

しかし深冬はそれを左手に持つ氷の剣で受け止めると右手に持つ氷の剣で逆袈裟斬りを返す。

エリカはギリギリで躱し、距離を取り、深冬を見据える。

2人の一進一退の攻防はまだまだ続くかの様に思えた。

 

終わりは突然だった。

 

今度は深冬が加速し、エリカはの方え向かう。

エリカは防御のために刀を構える。

しかし、深冬は剣を振るう事なく、エリカを通り越した。

何事かとエリカは振り返ると、そこには横浜で見たものがデジャブでもあるかの様に鉄骨に貫かれた深冬の姿があった。

 

「え?」

 

エリカは刀を放り出し、倒れる深冬を受け止めた。

鉄骨は心臓からずれているため、まだ息はある様だ。

 

 

「嫌ぁぁぁぁああ‼︎」

 

静寂を破ったのはエリカでも深雷の叫びでは無く、花音の叫びだった。

夏深の精神操作で無理矢理心の奥に閉じ込められていた感情が噴き出したのだ。

目の前で婚約者が死んでから数週間しか経っていないのだ。

本来なら悲しみに暮れていてもいい時期なのである。

啓が死んだ光景と同じ光景をみて、悲しみが噴き出したのだ。

噴き出す感情と与えられた復讐心、それに悲しみを閉じ込めようとする力が加わり心が悲鳴をあげた。

 

「花音‼︎」

 

摩利が駆け寄っても花音は頭を抱えたままうずくまっている

摩利は何もできない自分に無力さを感じながら啓の作った刀型CADを花音に握らせ、落ち着かせようと肩を抱いた。

 

 

深冬のもとえも戦闘を中止してレオと深雷も駆け寄った。

 

「深冬‼︎」

 

「お姉ちゃん‼︎」

 

深雷は深冬の事を昔の呼び方で呼んでいる事さえも気づかないほど狼狽えている。

 

「エ…リカは…ちゃん…と…回りにも…目を配らな…きゃね」

 

「深冬⁉︎ 喋らないで‼︎ 達也君‼︎」

 

深冬が笑顔でエリカに注意する中、エリカは達也に必死に訴える。

まだ息はあるのだ今なら、達也なら助けられるのだ。

 

達也もそれが分かっている為、満夜に注意しながら深冬のもとへとやってくる。

満夜は自分の攻撃が深冬に当たってしまった事に動揺し、動けずにいた。

 

しかし深冬は首を横に振る

 

「わた…しの時…間はも…う少ないか…ら、だから」

 

最後にエリカを守れて良かった。

 

最後の言葉は言葉として出なかった。

声を出す力さえ無く、唇を動かすだけで精一杯だった。

それを言い終わると深冬の体はまるでガラスが割れる様に砕け散った。

エリカの腕に残った破片が体温で溶けていく。

これが失敗作の最後。

自分の中の属性(エレメント)に体を蝕まれしに至る。

 

「満夜ぁぁあ‼︎」

 

エリカとレオが悲しみに暮れる中、深雷が怒りに任せて力を解放した。

涙は一瞬にして蒸発し、深雷の体を雷が包み、砂鉄を纏う。

 

擬似的に術式兵装を再現したと言ってもい姿。

 

「止めろぉ! 深雷ィ‼︎」

満夜の叫びに深雷は耳を貸すことなく、光の速さで加速すると砂鉄を右手に集中させると爪の鎧を作り出し、満夜の心臓を貫いた。

同時に深雷の雷が右手に集中し、弾ける。

 

だから止めろって言ったじゃないかよ

 

満夜はそう思いながら絶命した。

 

「深雷?」

 

動かない深雷を不思議に思ったレオが声をかけるが返事がない。

レオの肩に達也が手を置き、首を横に振る。

 

「達也…どういう事だよ…」

 

レオの顔が悲しみに歪む。

深雷もまた、息を引き取っていた。

レオとの戦いの最中も四肢から麻痺していく感覚があったのだが、最後に術式兵装を再現した事で限界に至り心臓まで麻痺し、ついには停止してしまった。 満夜が止めたかったのはこれなのだろう。

 

「お兄様…」

 

深雪が合流する。

悲しみに暮れる友人達を見て間に合わなかったと顔をしかめる

 

「これが本当にこの方達のしたかった事なのでしょうか?」

 

「わからないな。だが、これから先はあいつに任せるしか無いのかもしれないな。」

 

達也と深雪はそう言ってたった今、火柱の上がった空を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あとがき

作者はハッピーエンドを目指しております。

しかし、雲行きが怪しすぎる…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

真夜の思い

「このへんで良いですかね? …あぁ…その顔ですよ朔夜ぁ。もっと、もっと絶望して下さい」

 

夏深が振り返ると追いかけて来た朔夜は顔を歪めていた。

 

「貴方の瞳は全てを見通してしまいますからね。 この状況にこの場所。 用意したかいがあったというものです」

 

そう言って夏深は口角を釣り上げる。

 

先生、先輩、何より共に授業を受けた同級生達が瓦礫の下敷きになっている。

その上その瞳は瓦礫の中の学友の魂が体から離れていく所さえ写してしまう。

この状況の原因が自分だというのは辛いという言葉だけでは言い表せ無いだろう。

 

ドサッ

 

急に夏深が倒れこんだ。

 

「足までダメになってしまいましたか… まあ今日さえ保てば十分ですけどね」

 

夏深は本を開くとそこに封じられている魔法を解放する。

炎が夏深の足となり、夏深静かに立ち上がる。

これが炎のエレメントに蝕まれている証拠だった。

体を侵し、燃やし、炭化させる。

夏深は魔法で無くした部分を補い、生きているのだ。

 

「今ので分かりましたか? 貴方と同じ力がこの本のおかげで手に入りました… さあ、殺し合いましょうか」

 

そう言い夏深は本を上へ放り投げる。

本が夏深の頭上で停止したかと思うとページが開かれ魔法が発動する。

本の封印と解放の力を利用した術式兵装《獄炎煉我》

 

夏深の魔力が増大し体を炎が包み込む。

その炎が弾け、中から出てきた夏深の姿は炎と一つに融合した炎帝の姿だった。

 

相対する朔夜も雷天大壮で雷帝化し夏深を迎え撃った。

 

☆★☆★

 

本当にここは昨日まで自分達がかよっていた一高なのだろうか?

一科とニ科のわだかまりもなくならないものの少しずつ良い方へ向かっていて、ここにあった筈の学び舎は学生達の笑顔で溢れていた。

しかし今、学び舎は瓦礫と化し、その下にはどれだけの生徒が下敷きになっているのだろうか?

 

朔夜君、無事でいて…

 

真由美は唇を噛み締め、愛する人の場所へと急いだ。

 

 

 

「え?」

 

真由美が朔夜の元へとたどり着いた時、術式兵装は解け、向かって来る夏深に反撃できないまま立ち尽くしている朔夜がいた。

 

怒りをあらわにした夏深が朔夜の服に手を掛け、剥ぎ取った。

 

「どうゆう事ですか⁈これは‼︎」

 

夏深が朔夜に向かって叫ぶ

服の下の朔夜の身体は真っ黒に染まっていたのだ。

体を闇に侵食され、足から崩れ落ちる朔夜に真由美は駆け寄り、抱き上げる。

 

「貴方も…失敗作だったって事ですか?」

 

そう問う夏深の身体は震えている。

深夜より真夜の遺伝子の方がただ単に少し耐性が強かった。それだけなら…

 

「貴方が失敗作なら、私は誰にこの憎しみを向ければいいんですか? 答えなさい朔夜‼︎」

 

答えられない程弱っている朔夜に、受け入れない現実に夏深の心は耐えられなかったのだろう。

まるで、何かを探すように、「I16…何処に…」と呟きながら何処かへ行ってしまった

 

 

「朔夜君、朔夜君‼︎」

 

真由美は諦めずに朔夜に声をかける。

するとゆっくり、しかし確実に朔夜は真由美に言葉を返す。

 

「真由…美…ん、一……高は大…丈夫……から…僕…四……葉の…魔法師…だ…ら」

 

一高は大丈夫。僕は四葉の魔法師だから

 

朔夜のその言葉に真由美は朔夜が何をしようと理解する。

それはあの日、朔夜とのお見合いの日に真夜に聞いた朔夜の禁断の固有魔法。

 

「ダメよ! 朔夜君‼︎」

 

真由美の制止と同時に朔夜の魔法が発動した。

 

 

☆★☆★

 

 

「葉山さん、少し付き合わない?」

 

「いえ、私は…はい。頂きましょう」

 

真夜の誘いを葉山が受ける。

本来ならば決して受けないのだが、今が特別な時だと理解したのだ。

 

「私は何もできなかったわ」

 

一口酒を酌み交わし、真夜が語り始める。

 

「こうならない為に朔夜と真由美さんの縁談を持ち出したり、当主を決めるのだって早めたり、色々してきたのに…」

 

真夜はそう話しながら空を見上げ、星を読む。

昔から何度見ても変わらない星達(運命)。その運命を変える為にこれまで色々としてきたのに、結局は変える事はできなかった。

 

酒をもう一口口に運ぶ真夜の頬にはツーっと涙が溢れた。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

朔夜の魔法

 

「真由美さん、貴女に知っておいてもらわなければいけないことがあります。」

 

真由美が朔夜との結婚を受け入れた後、朔夜を先に退室させて真夜は真由美に話し始めた。

 

朔夜の出生について、炎藤夏深について、そして朔夜の固有魔法について。

 

封印と解放。

 

そして、もう一つ……

 

「この2つが闇藤の固有魔法。次はあの子の四葉としての固有魔法」

 

真由美はゴクリと喉を鳴らす。

封印と解放も十分に戦略級と呼べる魔法だった。

次に出てくる魔法はどんな魔法だろうか?

 

「真由美さん、貴女は戦略級魔法とはどんな魔法だと思うかしら?」

 

「え?」

 

真由美は不意の質問にそんな言葉を返してしまう。

 

「ふふ、戦略級とは都市又は艦隊規模の標的を一撃で壊滅させる事が出来る魔法の事を言うわ。……ではそれ以上の魔法はなんというのかしらね?」

 

答えられない真由美を見て真夜はニコリと笑いかけ話を続ける

 

「かつてそれ以上の魔法を使う魔法師を確認した例はないのだけど、国を一撃で壊滅させる事が出来る魔法を国防級、大陸を一撃で破壊させる事が出来る魔法を大陸級、世界の存続、法則、運命を左右出来る魔法を世界級。……朔夜の魔法は世界級にあたるわ」

 

世界級魔法《神の悪戯》

 

今存在する物を無かった事にする魔法。

聞いた感じは物を消す、達也の雲散霧消と類似に聞こえるが全く違う魔法である。

 

例えば、aを無かった事にするとしよう。

すると、この世界にaという物が初めから存在しなかった事になり、そこから派生したbやcなども存在しない世界が出来上がる。

世界を書き換える魔法

 

「今まで使われた事はないはずだし、これからも使うことはない魔法よ。朔夜にも絶対に使わないように言ってあるわ。だけど妻になる貴女には知っておいてもらわないとね。…後は孫はいつ見られるのかしら?」

 

今までの雰囲気が嘘のように真夜は話を変えた。

 

☆★☆★

 

魔法式は構築され範囲を広げていく。

 

達也は深雪に影響を与えそうな魔法の発動を阻止するために雲散霧消を発動し阻止しようとするが、その巨大な魔法式は少しの破壊を物ともせずに世界に広がり、そして発動する。

 

原因でさる朔夜という存在は無かった事になり、朔夜がいたから起きた炎藤夏深ら4人の誕生もそれによって起こったブランジュメンバーの死も、啓の死も、一高の崩壊も生徒の死も、そして、もちろん真由美との婚約も出会いも無かった事になり、朔夜のいない歴史が出来上がっていった。

 

☆★☆★

 

卒業式、卒業パーティーも終わり、真由美と摩利は校門前で在校生と話していた。

 

「摩利しゃん、ほんどうにぼめでとうござゃいましゅう」

 

摩利の卒業を泣きながら祝う花音の背中を苦笑しながら啓が撫でている。

 

「でも、明日からみんなの顔が見れないのはちょっと寂しいかな」

 

「会いたくなったらいつでも来てくれたらいいんですよ、七草先輩!」

 

「そういうわけにもいかないでしょう」

 

別れを惜しむ真由美にエリカがいつもの調子で答える。

真由美は一高の思い出を思い出しながら後輩たちを順番に見る。

啓、花音、雫、ほのか、幹比古、美月、エリカ、レオ、深雪、達也…

その時、勢いよく風が吹き桜の花が舞った。

 

「真由美、どうしたんだ? 涙なんか流して、今になってさみしくなったか?」

 

「え? 本当だ、なんでだろうね?」

 

真由美が摩利に言われて頬を触ると、確かに涙が溢れていた。

それをネタに少しからかわれた後、解散となり真由美と摩利は後輩達に見送られながら校門をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

偶然の奇跡

真由美は摩利と別れた後、ある場所へ向かっていた。

気持ちと共に足取りは早歩き、駆け足と速くなり、そして、とある場所へとたどり着いた。

 

しかし、そこには真由美のの望んでいた物はなく、力無くうずくまってしまう。

 

「どうして…どうして…」

 

溢れてくる涙が止まらない…

どうして、思い出して(、、、、、)しまったのだろう…

どうして、ここにあの場所(、、、、)が無いのだろう…

 

 

ここはどこにでもある閑静な住宅街。

だけどここはかつて、いや、真由美の記憶の中では御屋敷があった。

3人で住むには広すぎるくらいの家。

たった数ヶ月ではあったけど大切な彼と過ごした思い出の場所。

 

ただ、楽しかった学校生活を惜しんで後輩を順番に見ただけだった。

一人足りない様な気がして桜の木を見上げた時思い出してしまった。

学校で過ごした3年間よりもとても大切な、一年にも満たない時間を思い出してしまった。……彼の笑顔を思い出してしまった。

 

「会いたい…会いたいよ…朔夜君……」

 

「真由美さん」

 

聞こえるはずのない声に真由美は振り向き、目を見開いた。

そこには朔夜が、今の世界に居ないはずの人が立っていたのだから。

 

朔夜君。と涙で掠れた声を出して真由美は朔夜の胸に飛び込んだ。

 

「ただいま」

 

そう言って朔夜は愛おしそうに真由美の頭を優しく撫でる。

 

なぜここに朔夜が居るのか。

それは小さな偶然の積み重ねだった。

 

達也が放った雲散霧消が神の悪戯の魔法式に欠けた部分を作った。

普通ならそこで魔法式は壊れてしまうのだが、世界へ広がる世界に描かれた魔法式は問題なく発動した。

しかしその欠けた部分があったために神の悪戯は完璧な形では発動せす、朔夜が居たと言う記憶を閉じ込めるだけにとどめてしまった。

真由美が思い出してしまった事で世界に矛盾が生じ、朔夜は戻って来れたのだろうと朔夜は話す。

魔法式の欠けた部分がズレていれば夏深だったかもしれないし他の誰かだったかも知れない。

欠けた部分が大きければ朔夜の他にも誰か戻って来てまたあの出来事が起こったかも知れない。

 

朔夜だけが戻って来れたのは奇跡の様な確率だろう。

 

 

「真由美、僕はもう四葉の当主候補ですらないし有名な魔法師にもなれない。七草の家にはふさわしくないかもしれない。それでも、真由美さんと一緒に居たいから……真由美さん、僕と結婚してくれませんか?」

 

「はい!」

 

朔夜のプロポーズに真由美は涙でぐしゃぐしゃになって目が腫れ上がった顔で、しかし、今までで一番の笑顔で返事を返した。

 

 

☆★☆★

 

 

「朔夜、真由美さん、みんなが来てくれたわよ」

 

「はーい、母さん!」

 

真夜の呼ぶ声に朔夜が答える。

ここは旧長野県と旧山梨県の県境にある四葉家の本邸。の隣に立つ離れ。

6年前、朔夜のプロポーズを受けた真由美は大学への進学をやめ、七草を捨てて駆け落ちした。

 

転がりこんだのは四葉家、朔夜を見るなり全てを思い出し、涙を流して迎え入れた真夜。

それから達也ら一人一人に会い、今にいたる。

思い出した時のみんなの反応は今でも笑えるぐらい抜けた顔や申し訳ないくらい涙を流してくれた人もいた。

 

「朔夜君、行くよ?」

 

手を差し出した真由美の手を笑顔で握り返すとみんなを迎えに玄関へ向かう。

二人の左薬指には桜の花が彫刻された指輪が輝いていた。

 

☆★☆★

 

「ねぇ、エリカも来た?」

 

「レオわレオわー?」

 

「ほら二人共ちゃんと並んで!」

 

「父様、母様速くー!」

 

「「「「「「いらっしゃい」」」」」」

 

訪ねて来てくれた達也、深雪、エリカ、レオ、美月、幹比古、雫、ほのか、摩利

 

それぞれに挨拶をする中、朔夜と真由美の前に並ぶ四人の子供はその後遊んでもらうのが待ちどうしそうな顔をしている。

 

子供達は両親と同じ黒い髪に赤、水色、黄色の目をした女の子と緑の目をした男の子の四ツ子だった。

 

真由美が四ツ子を妊娠したと聞いた時はみんな驚いた物だ。

 

名前は朔夜と真由美が彼女達にも幸せに生きて欲しいと祈りを込めて、夏深、満夜、深冬、深雷。

 

深冬と深雷がエリカとレオの手を引き中庭へ遊びに向かう。

夏深は深雪の話を聞きたがり、満夜は恥ずかしそうに夏深の後ろへ隠れている。

 

この後、深雪へ真夜が早く当主を継いでもらって、四葉の仕事から解放され、孫達とずっと遊んでいたいとぼやいたりするのはご愛嬌。

 

朔夜は四葉を継がないのか?

 

朔夜はこの世界になってから魔法を一度も使っていない。

失敗作であろうともこの幸せな時間を真由美と、家族と1日でも長く過ごすために。

 

 

 

ー完ー

 

 

 

 




あとがき

この話で魔法科高校の劣等生〜四の名を持つエレメント〜を最終話とさせていただきます。

この作品を読んでくださった皆様、お気に入りに入れてくれてくださった皆様、評価してくださった皆様、本当にありがとうございました。

あとはただいま、ダンまちの二次創作を書いておりますそちらも楽しんでいただければ幸いです。
《ベル君が生き倒れを拾ってきたのは間違いだっただろうか》を読んでくださる方はこれからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。