ドイツ第3帝国~鋼鉄の意志を持つ兵士達〜 (オルクス001)
しおりを挟む

プロローグ

 やっと書けたミリタリー物。
 タイトルはのちのち変えるかもです。


 真っ黒な雲が厚く覆う空に一筋の光が流れる。

 その正体はドイツ第三帝国の戦闘機【Bf109(メッサーシュミット)】だ。

 機体は穴だらけで、後部から出火している。

 そんな状態でパイロットは静かに言う。

 

「エンジン部分から出火したか……。生き残りは……いないのか……」

 

 地上にはいくつもの壊れた戦車と、兵士の死体が転がっている。

 それを確認した後、コックピット内に貼り付けてある写真をとる。

 そこには彼と同じくらいの歳の女性と、子供が写っている。

 写真は何度も手にしたせいか、ボロボロだ。

 

「今までありがとう……強く生きるんだぞ……」

 

 その直後火の手が強まり、機体は彼を乗せたまま空中で爆発した。

 

 × × ×

 

 その様子を地上から見ていた男が1人。

 装備から見るに、どうやら武装SS(親衛隊)のようだ。

 左目に包帯を巻いており、血がにじんでいる。

 

「フルーレンス、どうだ?」

 

 彼は背後の茂みに向かって呼びかける。

 すると茂みから1人の兵士が出てきた。

 左手にレンチを握っており、顔に油が付いている。

 どうやら後ろに見える、戦車を修理していたようだ。

 

「砲塔回転装置の損傷で、手動での回転になりますが、まだ戦えます」

「そうか。他の2人を呼べ! 帰還するぞ!」

了解(ヤヴォール)!」

 

 数分後2人の元にやってきたのは、なんと1人の女性兵士だ。

 ワルサーGewを肩に担いでいる彼女もSS隊員のようだ。

 

「こっちからは何も見えなかったわ。それより傷の具合は?」

「大丈夫だ、ルナ。幾分か痛みも引いた。この左目はもう使い物にならないがな」

 

 その時、彼女の背後から慌てた様子で、大男がこちらに向かってきた。

 

「大佐! 大変です」

「どうした? ウルフ」

「帰還中にイワンの大部隊が見えました!」

 

 それを聞くと、大佐と呼ばれた男は軽く舌打ちをして全員にVK 30.01(D)に乗り込むよう命令する。

 その後荒野を進んでいると、上空をドイツの偵察機が2機通過していった。

 どうやら前線基地もソ連の大部隊に気づいたようだ。

 

「ウルフ! 主砲の残弾数は?」

「約20発です!」

「よし。これより味方部隊と合流し、戦闘に参加する」

 

 しばらくすると、前線基地近くに展開する味方部隊が見えてきた。

 念のため信号弾を上げ、敵でないことを知らせる。

 通信機が壊れているため、連絡手段がこれしかないのだ。

 運良く味方が信じてくれたようで、殺されることはなかった。

 味方部隊の補給車両に近づき声をかける。

 

「特務連隊長のオルクス・レーリヒだ。生き残りは俺たち以外にいない」

 

 それを聞いた相手の搭乗員の1人が、「ゲシュペンスト(亡霊)か」と呟いたのを彼は聞き逃さなかった。

 

「そうか。帰還して早々だが、もうすぐイワンの大部隊が来る。戦闘に参加せよ」

了解(ヤヴォール)!」

 

 オルクス達はその場で10発ほど榴弾を補充すると、すぐさま迎撃のため移動する。

 しばらく進むと、前方からソ連の戦車部隊が現れた。

 分隊長から攻撃開始の無線が入り、主砲を撃ちながら全速力で突撃していく。

 標的からそれた砲弾が地面に着弾して、土を巻き上げていく中を無数の戦車が行き交う。

 敵、敵、味方、敵、360度どこを見渡しても敵がいる戦場。戦車は絶え間なく動き、停止は死を意味する。

 これはドイツの戦車部隊が得意とする戦法で、ソ連は縦横無尽に走り回る無数の戦車に圧倒され、次々とその数を減らしていく。

 

「砲塔10時、榴弾用意! フォイア!」

 

 オルクスの掛け声とともに主砲が火を噴き、側面に直撃したソ連の軽戦車は大破した。

 その後も彼らが次々に戦車を破壊していると、突然あたりが無数の爆発に見舞われた。

 

「スターリンのオルガンだ!」

 

 スターリンのオルガンとは、ソ連の自走式多連装ロケット砲【BM-13】である。

 制度は甘いものの当たれば脅威となる。

 

「おい、まだ終わらないのか? そろそろ車両が持たないぞ」

「奴ら数だけはいっちょ前だからな」

 

 フルーレンスとウルフが、忌々しく吐き捨てる。

 その時だった。VK30.01(D)の履帯が切れたのだ。

 車体は少し前進した後停止する。

 それでも彼等は攻撃の手を緩めず、近づく敵を次々と倒していった。

 

 × × ×

 

「しばらく休暇が欲しいぜ」

 

 揺れる車内で、ウルフがため息と共に言う。

 彼等は現在帰還用の輸送車両の中にいる。中では、怪我をした兵士が血まみれの包帯を巻き横たわっている。

 車両が止まり、到着を告げる。

 

「負傷者を運べ」

「新しい包帯がいる!」

 

 外では救護班が慌ただしく走り回る。

 

「さて、行くぞ」

 

 もちろん彼らに休暇は無い。次の作戦に備えて準備をしなければならないからだ。

 オルクス達はそれぞれの銃を手に取ると、ブリーフィングルームへと歩みを進めた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。