インフィニット・ストラトス ~獅子の咆哮~ (レティス)
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プロローグ
俺はガキの頃、星が瞬く夜空を見上げながら親父にこう言った。「ロボットみたいなものを着ることって出来るのかな?」と。それに対して親父は「いつか出来るさ。」と答えた。
それは、ある事件を機に突然話題を呼んだ。インフィニット・ストラトス 通称[IS]だ。もともとISは宇宙での活動を想定して開発されたマルチフォーム・スーツで当初は宇宙服の代わりということで別に大した話題はなかった。だがその一ヶ月後に起きた【白騎士事件】によって従来の軍事兵器を凌駕する性能が世界に知れ渡り、ISはパワードスーツとして軍事転用された。
ISは攻撃力・防御力・機動力全てにおいて優れた兵器で、全世界にとってISは無くてはならないものになっていった。しかし一つ問題があった。それはISは女性にしか動かすことができないことだ。その日から社会的パワーバランスは反転。女尊男卑の世界と化してしまった。
研究者だった親父はその日から男性にも動かせるISの開発を始めた。やっぱりその道のりは苦難の連続だった。ISは何故女性にしか反応しないのかが分からなかったのだ。
だが親父はあきらめなかった。女尊男卑の世の中でありながら親父の心が折れることは無かった。
そして白騎士事件から4年後、ついに男性が動かすことの出来るISのコアを完成させた。親父は新型コアを完成させた記念の第一号として専用機[ブレードライガー]を作成した。それはまさに、女尊男卑の中で雄のライオンが勝利の雄叫びを吼える瞬間だった……。
しかし、親父は政府からの圧力を受けて新型コアを受け入れてもらえなかった。結局…親父の苦労と成果は徒労に終わってしまった。俺は悔しかった。どんな絶望的な状況でも心を折らずに新型コアを造った親父が容易く嘲笑われるのを…。
そして翌年、親父は俺を残してドイツに渡ったが、飛行機の墜落事故で死んだ。俺はそれを知った後、親父の部屋に入って机に置いてある手紙を読んだ。
~翔汰へ~
お前がこの手紙を読んでる頃には俺はもう死んでいるだろう。だが、心を強く持つんだ。俺を失っただけで挫けては駄目だ。俺は新型コアの作成の時やその成果を受け入れられなくても一切挫けなかった。だからお前も決して諦めるな。
その手紙の隣にISがある。それはお前の専用機だ。いつかお前が俺の成果を成就させてくれ。そして………強くなれ!
父・獅子神雷雄より
俺は手紙を読み終えると、隣に置いてある白いISに目を向ける。ISは全身装甲【フルスキン】タイプで、見た感じ白いライオンを模している。俺はISに触れるとISは俺を待っていたかのように反応した。やっぱり親父の成果は無駄じゃなかったんだな。
俺はISを装着すると、すぐさまISの一次移行【ファースト・シフト】が起こった。専用機の名前は【ライガーゼロ】、つまり獅子の起点と意味だ。
「これが親父の遺作か……。」
そして今、俺はIS学園の前に立っている。一人の男として。
俺は親父との約束を果たす。そして強くなる!
次回は入学後の出来事のところを書きたいと思います。
では、次回もお楽しみに
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少々カオスな自己紹介
ゲオでISのDVD借りてこようかな?と思っています。
では、どうぞ
長い入学式を終え、俺は1年1組の教室に入る。席は窓側の前から2番目だ。俺は右手中指にはめられたライオンの意匠があるシルバーリングを見つめる。このリングは一見、普通のシルバーアクセサリーに見えるが、実際は専用機【ライガーゼロ】の待機状態だ。
基本的にISは普段はこのようにアクセサリーの状態になり、起動するときにアーマーになって展開されるらしい。
「は~い、全員揃ってますね~。SHRを始めますよ~。」
俺がそうしていると、教室のドアが開いてそこから女教師が入ってきた。
「私はこのクラスの副担任になる事になりました。山田真耶と言います。皆さん、一年間よろしくお願いしますね。」
山田先生はおっとりとした様子で自己紹介する。しかし周りの女子達は山田先生の話を聞くどころか見向きも一切しない。それに数人の女子は俺ともう一人の男子の方を見てくる。
なんだこの哀愁感は…山田先生ものすごい困った顔をしているな。
「そ、それじゃ自己紹介を始めましょうか?出席番号順でお願いします。」
自己紹介か…趣味とか言えばいいか。どんな質問攻めが待っているか分からないからな。
「では次、獅子神くん。」
「はい。」
俺の番か。とりあえずさっき考えたように言えばいいか。
「名前は獅子神 翔汰です。趣味はシルバーアクセサリー集めと音楽を聴くことです。男性にも関わらずISを動かせる点に疑問を抱く人が多いと思いますが、何卒よろしく。以上です。」
俺が自己紹介を終えると、数名の女子が何か噂話をし始めた。その中には俺の親父のことまで噂する奴らもいたが、無視して席に座る。
それからこの後は女子達の自己紹介が続き
「はい。では次、織斑君。」
いよいよもう一人の男子である織斑に自己紹介の番が回った。だが織斑の様子がおかしい。ボーッとしてるのか?
「織斑君。織斑一夏君!」
「あっ、はい!」
やっぱりボーッとしてたらしいな。山田先生の声でようやく織斑は返事をした。何を考えたんだ?
「え~っと………織斑一夏です。よろしくお願いします…。」
一夏って言うのか。読み方難しいな…。にしても自己紹介なのに緊張し過ぎだろ。それに女子達は明らかに「それだけ?」と思っているだろうし。
織斑は助けを求める視線を女子達や俺に向けて送る。
それに対して俺は、とりあえずさっきの俺みたいにやればいいんじゃない?という視線を返す。すると理解したかのように再び前を向いた。なーんだ。一夏もさすがに場の空気は理解でk
「“以上”です。」
できないんかい!俺や女子数名は途端にズッコケるという…これどこのドリフ?それはともかく何だコイツ…一夏が指名されて行った行動=前に出る→名前言う→以上。
どこが自己紹介だよ!?趣味一つぐらい言えるだろ!?どこぞの観察処分者でも趣味や特技は言えたぞ!?
見てみろ一夏、山田先生涙目だよ…。
ガラッ
その時、教室のドアが開いてそこからもう一人の女教師が入ってきた。なんか目つきがキリッとしてるな。
その女教師は一夏のところに近づいていく。ん?出席簿を両手持ちした?
スパァン!
予想通りだったが、出席簿で叩くとこんな感じの音が響き渡るんだな。
「げぇっ!?関羽!」
スパァン!
「いっ…!」
「誰が三国志の英雄だ、馬鹿者。」
こうして見ると、織斑一夏は二度死ぬ(笑)…って言いたくなるな。にしてもあの先生ちょっとやり過ぎじゃないのか?何あの暴力教師……って俺のところに近づいてくる?…まさか……!
スパァン!
「oh…」
「お前が変なことを考えるからだ。」
「はい…すみません。」
後が怖いからもうやめとこう、うん。あの出席簿、縁が鉄でコーティングされてる…。
「さて諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな。」
ちょっと言葉遣いそんなんでいいの?折角のカリスマ性が勿体ない気がするんですけど……
「「キャアアアアアアアア!!!」」
その瞬間、女子達が一気に叫び始めた。み、耳が痛い…。畜生こんなことなら耳栓持ってこればよかった。
「千冬様!本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
女子達は千冬先生を見てメチャはしゃいでるな…。あーうるせぇなこれ。これ鼓膜破れたらどうしてくれるんだよ?
「全く…どうしてこう私の受け持つクラスには馬鹿多いんだ?それとも裏で私に集中させてるのか?」
まぁ、仰る通りだな。3年間これが続いたら絶対嫌になってくる。俺は御免だからな。これが続いて鼓膜破れるの。
「キャアアアア!お姉様!もっと叱って!」
「でも時に優しく!」
……もう駄目だ。お前ら病院行ってこい。そうしないと俺まで耳鼻科行く羽目になるだろうが。
「で…お前はまともな自己紹介もできんのか?」
「い、いや千冬姉、俺は…」
スパァン!
「ここでは織斑先生と呼べ。」
「………はい。」
一夏、本日三度目のお仕置き。千冬先生はあれか?必殺仕置人なのか?そして千冬先生と一夏は姉弟関係だったのか……ってまたこっちk
スパァン!
「oh…」
「誰が必殺仕置人だ。」
「それは貴女だ。」
グキィィ!
「イ”ェアアア!」
「静まれ“シシ”神。」
「あ、はい……。」
痛てぇ……まさかのうなじに出席簿とは……そして断末魔あげた瞬間、静まれと言われたし。それと千冬先生、俺の苗字は“獅子”神ですからね?断じてどこぞの人面鹿でもないし生命を操ったりもしないですからね?
「さあ、SHRは終わりだ。」
こうしてカオスな自己紹介は終わった。ううっ…まだうなじが痛い……。
今回はやたらパロディが多かったです。次回はセシリア登場です。
それでは次回もお楽しみに
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英国の代表候補生
俺は今、一限目の授業を受けている最中だ。どうもIS学園では入学式の後にいきなり授業があるらしい。一応最初の授業だから内容は基礎中の基礎だ。入学前に渡された分厚い参考書や親父の遺した資料が役に立ったかもしれないな。そんなこんなで授業は進行しているのだが、現在の状況は一夏の
「全部分かりません。」
という発言で教室がフリーズしたかのような空気になってしまっていた。
「他に分からない人はいませんか……?」
山田先生の問いかけには俺も含め、誰一人答えない。一夏は同じ男である俺に驚いた表情を見せる。
「お前も手をあげないのか!?」
「俺はある程度は知識を理解しているからな。」
「そ、そうなのか…?」
いやいやいやいや、参考書読めば大体の内容は理解できるぞ?もしかしてこいつ参考書の内容を理解できてないのか?
「織斑、ISの参考書はどうした?」
案の定、千冬先生も参考書のことを一夏に問いかけた。
「“古い電話帳”と間違えて捨てました。」
スパァン!
「必読だと書いてあっただろうが、馬鹿者め。」
「すみません……。」
参考書を読むどころかゴミ箱に捨てたんかよ!?そうか、一夏にとって参考書は古い電話帳同然だったのか。なんということでしょう(笑)。
「仕方ない。再発行してやるから、一週間で覚えろ。」
「え………いやいや無理でしょあんなぶ厚i「いいな?」…はい。」
まぁこれは自業自得としか言いようがない。
「それと“シシ”神「“獅子”神です。」…お前はついでに織斑の手伝いをしてやれ。」
「参考書のですか?」
「そうだ。」
「…甘んじて引き受けます。」
叩かれるのが嫌だからおとなしく千冬先生の命令を受け入れた。
…ってかまた人面鹿の方の“シシ”神で言われたし…そんなに人面鹿の方で名前呼び続けるなら夜間に生命吸いとったろうか?
スパァン!
「イ“ェアア!」
「何を考えていた?」
「何でもございません。」
「そうか…山田先生、授業の続きを。」
「…はい、分かりました。」
こうして再び授業が再開した。結局叩かれた…
授業が終わり、俺は机に突っ伏す。はぁ~…先生にシバかれるわ一夏の勉強の手伝いせなあかんわ“シシ”神で呼ばれるわで…もう最悪だよ。
「なぁ…“シシ”神「ヒドォチョグテルトヴッドバスゾ!!」あ……ごめん。」
一夏…お前もか。千冬先生と姉弟関係だからってせめて“獅子”神で呼んでくれよ(涙)!
「ったく…で、何だ?」
「ISについて教えてほしいんだ。」
「そうきたか……分かったよ。」
「そうか。ありがとな。」
「はぁ……。」
俺は渋々と一夏にISについてを教えることにした。俺が教える中、一夏は俺の指にはめられた【ライガーゼロ】を見始めた。
「それってお前が集めてるアクセサリー?」
「まぁな。けどこれは厳密にはただのアクセサリーじゃないさ。」
「じゃあ何?」
「これh「ちょっと、よろしくて?」…ん?」
「へ?」
俺が説明しようとした時、突然一人の女子生徒が話しかけてきた。
肌は白く綺麗で、瞳の色はサファイア。そして金髪のロールヘアーにフリル付きのカチューシャを頭に着けている。
「まぁ、なんてお返事!?私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、“それ相応の態度”というものがあるのではないかしら!?」
「悪いな。俺、君が誰だか知らないんだ。ゴメンな。」
「俺もあんたが誰なのか分からない。」
初対面な上に知らない人なのに“それ相応”は無理がありすぎる。
「知らないっ!?この『セシリア・オルコット』を…イギリスの代表候補生にして、入試首席のこの私をッ!?」
名前知らないだけでめっさ訴えかけてきたな。てか俺の机をそんな強く叩くなよ。そして顔が近いから。
「あ、質問。」
ここで一夏がセシリアに質問をするようだ。
「フッ、下々の要求に答えるのも貴族の務めですわ。宜しくてよ?」
「…ダイヒョウコウホセイって、何?」
一夏の爆弾発言で本日二度目の総ズッコケが起こった。一夏…お前はバカかよ!?
「あ……あ……!」
セシリアも一夏の発言には頬をヒクヒクさせながら固まってしまった。それもそうだよな。まさか一夏がそんなことを質問するとは思ってなかったもんな。
「あ……あなたはぁっ!!」
その瞬間、怒りで再起動したセシリア。だから顔が近いって!
「信じられませんわ!!日本の男性というのは、こんなにも野蛮で知識までも乏しいものなのかしら!?」
「今の俺じゃねぇだろ?こいつ(一夏)と一緒にするなよ。」
「酷くねぇか“シシ”神!?」
一夏お前………“シシ”神で呼んだらどうなるか分からないようだな。
「……一夏
いい加減“獅子”神って呼べやぁあああああ!!!」
グキィ!!
「ウボァーー!!!」
俺は怒鳴りながら一夏のうなじをチョップでKU★TI★KUしてやった。その瞬間、一夏は某皇帝のような断末魔を叫んで悶絶した。南無三!
「ふぅ…。これにて一見落着。」
「ちょっと!?まだ話は終わってま…」
キーンコーンカーンコーン…
セシリアが何か言おうとした時にちょうどチャイムが鳴った。
「ん?どうかしたか?」
「っ……この続きは、また改めてしますわ!!」
また一夏と共に揉め合いしないとならないようだ…。セシリアは怒りが収まらないまま自分の席に戻っていった。
「ほら、お前も戻れって。」
「……痛い。」
一夏も痛みに耐えながら自分の席に戻った。俺も席に座り、二限目の準備をした。
次回はクラス代表を決めるところを書きたいと思います。
では次回もお楽しみに!
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クラス代表決めでの口論
セシリアとの口論を終えて、二限目が始まった。すると千冬先生が何かを忘れていたかのような顔をしながら山田先生に代わって教壇に立った。
「…授業中すまない。クラス代表を決めるのを忘れていた。今から決めようと思う。」
クラス代表とは、再来週行われるクラス対抗戦に出場する選手であり、このクラスの室長も兼行する存在だ。しかもクラス代表だからには生徒会や委員会にも駆り出されるのだ。俺の答えは簡単…絶対にNOだ!!
「はい。」
まず一人の生徒が手をあげた。俺に投票しないよな?
「織斑君に投票します!」
「なっ………!?」
「私もそれがいいと思います!」
「私も~!」
よし!一夏に投票が回ったぞ!一夏…まぁ、代表になってもがんばr
「私は獅子神君に投票します!」
「私も同じく獅子神君に投票します。」
「私も~。」
な、何だってーー!?嘘だろ?俺まで推薦されちまったよ…ってか一夏、何げにお前はそんなにニヤけた顔でこっち向いてるんだ?道連れにされてザマァ(笑)って言いてぇのかぁ?よかろう、お前また後で悶絶チョップぶち込んでやるからな!?
その後、投票は俺と一夏に交互に割り振られ続けた。と、その時
「納得できませんわ!!」
ここでセシリアが机を叩きながら怒鳴り始めた。何だろう…この裁判で「異議ありっ!」って感じの怒鳴りは…?
「そんな選出は認められません!男がクラス代表だなんて、いい恥さらしですわ!!このセシリア・オルコットに、そんな屈辱を一年間も味わえとおっしゃるのですか!!?」
さっきの口論で頭に血が上ったせいか、ものすごい威圧感とプライドを放っている。女尊男卑主義者と言っても過言じゃないな。まぁ…俺と一夏もクラス代表になりたい訳じゃないし、別にこいつに代表の座に譲っても何にも問題は……
「実力で言えば、この私が代表になるのが当然です!!それを珍しい極東の猿にされては困ります!!それに、極東の猿そのものに代表の座を譲るなんてもっての他ですわ!!」
……前言撤回だこの野郎……!俺と一夏のみならず日本そのものに侮辱するつもりなのか?喧嘩売る気なのかこの野郎ぉ……!!俺は苛立ちながらシャーペンを握り閉め続ける。あいつの首根っこを“握り潰す”ように…
「大体、文化としても後進的なこんな国で暮らさなくてはいけない事自体、私にとっては耐え難い屈辱だというのに!!」
バンッ!!
俺はとうとう頭に血が上り、シャーペン諸とも机を叩きつけながら立ち上がり、セシリアの方を獅子の如く鋭い眼で睨みつける。ここまで侮辱されたら我慢できねぇな………セシリア……!もう絶対許さねぇ!!
「おい…。」
「何ですの!?」
「実力、実力ってほざきやがって……実力だけで代表になれると思ったら大間違いだ!!」
俺は心に溜まり続けた慎怒の声を教室全体に響くように怒鳴った。
「実力が無くては代表は務まらないのは当然のことですわ!!」
「セシリア……俺か一夏が代表になることが気に入らないことならまだいい。それだけだったら別に代表の座をお前に譲ってやっても俺は気にしない。けどよぉ、日本そのものに侮辱することは絶対許さねぇぞ!!」
俺はさらに怒りを露にして怒鳴る。何せこれはセシリアから日本への宣戦布告だからだ。
「それによぉ、日本を侮辱した時点でお前が代表になれないことは確定なんだよ。」
「な、何を言いますの!?極東に大して良いものなんてあるはずがありませんわ!!」
「…それを言われたらイギリスだって大したお国自慢は一つも無いだろ。世界一不味い料理で何年制覇だよ?」
ここで一夏も頭にきたのか、セシリアに対して暴言を吐いた。そう、まさにその通りだ。案外お前も腹黒いこと考えるんだな。
「っ!?あなた、私の祖国を侮辱しますの!?」
「その侮辱を先にやったのはお前だろうがっ!!」
やっぱりお前も頭に血が上ったみたいだな。一夏の怒りの言葉が、セシリアの怒りに油を注いだ。そしてセシリアは俺たちに指を差してこう言った。
「決闘ですわ!!」
ほぅ…いよいよ俺と一夏に宣戦布告したか。
「おぉ、いいぜ?四の五の言うよりは、よっぽど分かり易い!」
「私が勝ったらあなた達二人を小間使い…いえ、奴隷にして差し上げますわ!!」
「好きにしろよ。で、ハンデはどのくらいつける?」
「あら……早速、お願いかしら?」
「“俺が”どのくらい、ハンデをつければ良いかって事だよ。」
「は………?」
一夏がそう発言した瞬間、クラス中が爆笑し始めた。お前何を言ってるんだよ?
「ちょっと織斑君、それ本気?」
「男が女より強いなんて、大昔の話だよ?」
予想した通りの展開であった。一夏は迂闊な発言に後悔している。
「女が常に男よりも勝るというのは間違いだな。」
「どういうことですの!?」
「女が男より強いとはっきりと主張できるのはあくまでISを動かせるからだ。こんな状況を考えてみろ。女がISを動かせない、もしくは使用不能に陥った時と、男もISを動かせる時の2パターンだ。これもまとめて考えると戦況はどうなると思う?」
「「「「「……っ!」」」」」
やはりクラスの殆どが目を見開いたか。まぁ単純だな。現に女が強いのはISの恩恵があるからだ。それさえ断ち切ればこっちの手玉だ。
「それに証拠としてISを動かせる男は俺も含めて二人“ここ”にいるんだ。だから女は決して“男より強い”とは言い切れないはずだ。」
俺の発言にクラスは一気に静まりかえった。こんな重要なことにすら目を通してなかったんだろうな。
「あと一夏、お前代表候補生がどれだけISの操縦技量を積んでるか分かるか?」
「いや…全く…。」
「あんな奴にハンデなんて自殺行為だ。一緒に粛清してやろうぜ!」
「ああ!」
俺が一夏にそう言うと、一段落ついたかと判断した千冬先生がクラスを静めた。
「それでは、勝負は次の月曜日、第三アリーナで行う。織斑と獅子神とオルコットはそれぞれ、勝負の準備をしておけ。」
「分かりました。」
「了解です。」
「承知しましたわ。」
とりあえず来週に勝負するらしい。来週の内に【ライガーゼロ】の調整をしないとな。
ちなみに授業が終わった後に女子が何人か謝罪しに来たのはまた別のお話だ。
やっぱりパロディネタが多い……そして眼が痛いです。
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部屋の決定
授業が終わり、放課後の教室で俺は一夏に勉強を手伝っている。最初は本当にこいつはマジもんの観察処分者と思っていたけど意外にも呑み込みは早いらしく、勉強が全くできない訳ではないらしい。まぁ出来なかったらその時は悶絶チョップをうなじにぶち込むだけだ。
「あ!織斑君、“シシ”神君。まだ教室にいたんですね。ちょうどよかったです。」
山田先生は教室に入ってくると、俺たちを見てそう言った…ってかあんたもそっちの“シシ”神で呼ぶんかい。それよりも何か用件があるのか?
「えっとですね。寮の部屋が決まりました。」
………は?何でだ?そんな唐突なことを言いながら番号書かれた紙とルームキー渡されても困るんですけど?
「俺たちの部屋ってまだ決まってないんじゃなかったんですか?」
「そうですよ。俺は1週間は自宅通学としか聞かれてないんですが?」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。」
うそぉ…しかも紙をよく見たら一夏と俺は部屋が別々になってるな。まぁ部屋が問題って訳じゃないしな。
「先生、じゃあ俺たちの荷物は「私が手配してやった。ありがたく思え。「あっ、はい。ありがとうございます…。」
千冬先生の威圧感が桁違いだ…。腕組むだけでこんなにジョ○ョっぽくなるんだな。
「“シシ”神の場合はZOITEC社の大嶋という者から荷物を授かっただけだが。」
大嶋さんが荷物を送ってくれたのか。そして千冬先生、何で“獅子”神って呼ばないんですか?そんなにジ○リにハマッてるんですか?
「え?翔汰って企業に所属してるのか?」
「ああ。」
俺はZOITEC社に所属している。俺が自宅で親父の遺作【ライガーゼロ】を手に入れた後、親父の研究仲間であった大嶋さんが社長に手引きしてくれたらしく、何とか企業に所属できた。そうでもないと絶対怪しまれること間違いないからだ。
「織斑先生。俺の荷物は…?」
「着替えと携帯電話の充電器“だけ”で良いだろう?」
“だけ”って……姉弟関係だからか一夏がものすごく可哀想だ。まあドンマイ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
プルルルル
「ん?」
俺は一夏より先に寮に向かう途中、携帯が鳴った。通話相手は……大嶋さんだ。
「もしもし、大嶋さん?」
『ああ、翔汰君。荷物の方は自宅から色々なものを詰め込んでおいたからね。』
「変なもの入れてないですよね?」
『大丈夫大丈夫!変なものは入れてはいないから。』
本当だろうな…もし入ってたら電話で抗議してやろうかな…。
「大嶋さん。ちょっとお願いがあるんですが…。」
『ん?』
「実は1週間後に決闘することになったんですよ。だからそれまでに[CAS]の導入を急いでもらえないですか?一つだけでもいいので。」
[CAS【チェンジング・アーマー・システム】]、専用機で言うオートクチュールのことを差す。通常の機能特化パッケージとは違い、[CAS]はライガーゼロのコンセプトまでを180度切り換えると同時にその局地戦に応じて幅広い戦略的運用が可能になるライガーゼロの最大の特徴だ。
『うーん、それは難しいね。何せどのユニットもまだ完成度が40%も満たないからね。』
「そうですか。」
やっぱり[CAS]の導入はまだ早いか。CASはコストも桁違いらしいしな。
『ユニットは完成したら一つずつ導入していくからそれまでは辛抱しててくれ。』
「分かりました。」
俺は電話を切ると、そのまま部屋に向かう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「1026…ここか。」
俺は部屋の前に到着すると、ドアをノックする。
コンコン……
「は~~い。」
すると、ものすごいふんわりとした声と共にドアが開いた。そしてそこから本音が出てきた。そういえばこいつ俺を推薦していたな。
「なんの用かな~?」
「ああ、部屋の割り振りで先生にここに住めと言われたから来たんだ。」
「ん~、そうなのか~、よろしくガオガオ~。」
何だその犬につける名前みたいなあだ名。俺は苦笑いの表情を浮かべながら荷解きを始める。
「お~、キラキラしたのがあるね~。」
「シルバーアクセだよ。ほら、自己紹介のときにこれを集めるのが俺の趣味ってi「おーい“シシ”神!俺だ!開けてくれ!」………。」
一夏……お前何回言ったら分かるんだ?“シシ”神って呼ぶなというのを学習してねぇのか?俺はドアを開けて……
「“シシ”神、実h「ガァァァッデェェェム!!」イ"ェェアアアア!?」
そして思いっきり教科書で叩いた。その瞬間、一夏はそのまま悶絶した。
この後俺は悶絶した一夏を元の部屋に送り返した。そして隣からものすごい断末魔が響いたのは言うまでもない。
CASってISだとオートクチュールの立場になると思うんですよね。
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決闘の準備
翌日、俺は朝食を食べる為、本音と一緒に食堂に入る。ちなみに本音は洋食、俺は和食を選んだ。
「あ、おはよう翔汰。それに本音さん。」
「………。」
「ん?ああ、一夏か。おはよう。」
「おりむ~、おはよ~。」
一夏の隣に座っている少女・篠ノ之箒を除いた俺たちは挨拶をする。
「なぁ翔汰。昨日から箒が「名前で呼ぶな!」…あ、ごめん篠ノ之さん……で、篠ノ之さんの機嫌が悪いんだけど…。」
「一夏、部屋入る時にノックしたか?」
「…してない。」
「やっぱりな。昨日俺たちの部屋に逃げてきた理由が分かったよ。」
「は、はは……。」
一夏は汗を流しながら苦笑いした。用はラッキースケベってやつか?そりゃ箒も怒るって。
「そーいえばがおがお~。」
「ちょっ!?…そのあだ名やめろって…!」
「“がおがお”って……くくく……」
「…………ふっ…。」
のほほんさん………何故そのあだ名使うんだよ…それどっかで見たことあるぞ…。“シシ”神よりはマシな方だけどはっきり言って恥ずかしい……箒や他の生徒も笑ってるよ……そして一夏、お前は後で覚えてろよ?
「いつまで食べている!さっさと行動しろ!遅い者はグラウンドを10周させるぞ!」
ここで千冬先生が食堂に入ってきて、出席簿を叩きながらそう言った。すると周りの生徒たちが大急ぎで食べ始めた。普通の先生なら無視する生徒達も千冬先生だとすぐ行動するな。千冬先生のカリスマ性は尋常じゃないな。
「じゃ、俺は先に行く。」
「私も先に行くね~。」
「え!?ちょっと待って!?」
朝っぱらからグラウンド走るのは御免だ。俺と本音は先に教室まで向かった。ちなみにこの後、一夏は何とか間に合ったそうだが、千冬先生に叩かれた。まぁ、お約束か。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
授業が終わり、俺と一夏はクラスの生徒ほぼ全員から質問攻めを受けていた。というより昼休みと放課後は暇かと尋ねているだけに聞こえるが。
ちょうどその時、教室に千冬先生が入ってきて、何故か一夏を叩く。何を言ったんだろう…。
「一夏、お前の使用するISなんだが、学園で使える予備機が無いため準備に時間がかかる。それで学園がお前の専用機を用意するそうだ。」
一夏が未だに理解していない中、千冬先生の言葉に教室中がざわめきはじめた。
「せ、専用機!?一年で!?」
「という事は政府から支援が出てるのかな?」
「いいなー、私も専用機欲しいなー。」
クラスの女子達がそんなことを言ってる中、一夏は未だ理解できていない。
「え?…どういうこと?」
スパァン!
「教科書を読め。」
「は、はい。」
千冬先生に何回も叩かれた一夏は教科書を開く。内容をまとめると、まずISのコアを作成する技術は非公開。世界中にあるIS467機のコアは全て篠ノ之博士が作った。ブラックボックス故に作れるのは篠ノ之博士だけだが、それ以上の作成は拒絶している…ということだ。
「理解できたか?」
「はい、何とか…。」
その顔、絶対理解してないだろ。
「先生、そういえば翔汰の専用機は?」
「ああ、それは既に獅子神の元に渡っている。」
「…え!?」
千冬先生の言葉を聞いて一夏は驚きを隠せなかった。それは一夏だけでなくクラスの女子達もだ。
「あの、先生。思ったんですけど、篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」
ここで一人の女子が千冬先生に質問した。おいおい、それってプライバシーを守ってない質問じゃないのか?
「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ。」
あっさり答えちゃったよ。教師がプライバシーを守らないでどうするんだよ。クラスの女子達はそれを聞いて一斉に箒のもとに集まり、質問攻めをする。ただでさえ箒の機嫌が悪いのに、余計刺激することになるぞ…?
「あの人は関係ない!!!」
ああ、とうとう箒が怒号をあげてしまった。質問攻めしていた女子達が全員硬直した。
「……大声出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない。」
箒はそう言うと、窓の外に顔を向けた。女子達はそれぞれ困惑や不快な表情をして席に戻った。
どうやら箒は姉に対して良いイメージを持っていないらしい……俺とは正反対だな。
「さて、授業を始めるぞ。」
そんな中、千冬先生の言葉で授業が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思ってなかったでしょうけど。」
休み時間、俺と一夏のもとにセシリアが再びやってきた。よく見ると昨日とポーズが一緒だ。
「まあ?一応勝負は見えていますけど?さすがにフェアではありませんものね。」
「何で?」
「……。」
一夏は理解できない様子で聞き返し、俺は無言のまま立つ。
「あら、ご存じないのね。いいですわ、庶民の貴方達に教えて差し上げましょう。」
決闘に巻き込まれた影響か、俺も含まれていた。一夏と違って俺は大体のことは知っている。
「このわたくし、セシリア・オルコットはイギリスの代表候補生…つまり、現時点で専用機を持っていますの。」
「へー。」
「あっそ…。」
「……馬鹿にしていますの?」
セシリアの自慢話に俺は適当なこ返事を言い、一夏は頷きをした。俺たちの態度に苛立ったセシリアが顔を引きつらせていた。
「一夏はまだしも、俺は既に専用機を所持してるんだ。そんな自慢話されても驚く訳ないだろ?」
「何ですって!?」
すぐ頭に血が上ったセシリアはそう言って一夏の机を両手で叩いた。
「貴方達、覚悟しておきなさいよ!貴方達が私に敗北することを!」
「その台詞そっくりそのまま返すよ。」
「~~~!わたくしに勝てると思ってるのですか、身の程知らずも大概にしなさい!」
「身の程知らずも何も、『強者が勝つのではなく、勝った者が強い』って言うじゃないか。それなら俺はこう宣言しておくぜ。“俺は狙った獲物は必ず仕留める”。」
「キィ~~~~!!!もう泣いても謝っても許しませんわ!覚悟しておくように!」
セシリアは怒りが頂点に達してそのまま教室から出ていった。
「ふぅ…これで面倒なのも行ったな。」
「ところで、どうする?」
「俺は今から食堂に行くよ。」
俺は一夏にそう言ってひとまず食堂に向かう。
ピロロロン
「ん?メール?」
俺は途中で立ち止まり、携帯を取り出してメールの内容を確認した。送り主は大嶋さんだ。えーと、『夕食を食べ終えたらアリーナに来てくれ。ちなみに先生には許可をもらったよ。』か。決闘を控えてるし、ちょうどいいか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は一夏達よりも先に夕食を食べ終え、アリーナに行く。そして更衣室に行き、ISを使用するためのスーツに着替える。着替え終えてアリーナの中央まで行くと、そこには例のごとく大嶋さんが待っていた。
「やぁ翔汰君。急に呼び出してすまないね。」
「いや、ちょうどいいですよ。決闘が控えているもので……それで、用件は何ですか?」
「決闘前の特訓だよ。とりあえず翔汰君、まずはISを展開してくれ。」
「分かりました。」
やっぱりメールの内容は特訓だったか。俺は大嶋さんの指示を受け、指輪をはめた右手を左手で添える。すると眩い光と共に指輪がアーマーに変形し、俺はIS【ライガーゼロ】を纏った状態になる。
「そういえば大嶋さん。千冬先生は俺のISのコアが親父の作ったものということは知ってるんですか?」
「うーん…ISを持たせていることは伝えたが、そこまではまだ伝えてないね。その時が来たら私が伝えるよ。」
「分かりました。」
千冬先生はまだ知らないのか。
「翔汰君、CASはまだだけど、これを作った。」
ここで大嶋さんは思い出したかのように鞄から何かを取り出した。
「これは…光線銃?」
「そうだ、名称は【グリーヴァ】だ。ライガーゼロの武装が突撃銃と近接用の爪だけだったからね。決闘となるとそれだけじゃ厳しいと思って作っておいたんだ。」
「なるほど…。」
俺はグリーヴァを手に取る。そしてアサルトライフル【レーベ】を実体化させてグリーヴァと比べてみた。
「…レーベと同じくカービン化されてるな。」
「その通り。ライガーゼロは機動性がメインだからね。武装はあえて軽いものにしているんだ。」
「なるほど。」
「とりあえず、話はここまでにして特訓を始めようか。」
「はい!」
大嶋さんはそう言うと、俺はさっそく特訓を始めた。
この特訓は決闘の日まで続いた。
倫理が授業で出ているために、何げに翔汰にある名言を言わせました。
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VSセシリア
あの口論から一週間が経ち、とうとう決闘の日がやってきた。俺たちはアリーナのピット・ゲートで待機していた。そこには俺と一夏の他に、箒、千冬先生、山田先生もいた。ちなみに俺と一夏は既にISスーツに着替えている。
さて、大嶋さんとの特訓でISを操る感覚をなんとか取り戻した。後は時間になるのを待つばかりだ。
「なぁ、箒。」
「なんだ?」
「ISのことを教えてくれるって話だったよな?」
「……」
「あっ、目をそらすな!」
そんな俺とは正反対に、一夏は箒に散々無視されていた。この感じだとISについて全く学習していないようだ。
「なぁ獅子神。」
ようやく一夏の癖が一つ治ってきたか。
「どうした?」
「さっきから箒が俺の話に目をそらすんだよ…。」
「そういえば一夏、お前一週間何してたんだ?」
「……ずっと剣道で稽古してた。」
まじか…それってやばくないか?そんな状態だとISを操縦することもままならないのに…。
「し、仕方ないだろ。訓練機が借りられなかったのだから。」
「それでもISの知識や基本的なことがあるだろ?」
「……」
「だから目をそらすな!」
箒…それは一夏が可哀想だ。しかも一夏は俺と違って専用機がまだ出来ていない。だから試合までに完成していなければ不戦敗になってしまう。
そんな時、画面が出てきた。
「あれが、あいつの専用機…。」
そこにはセシリアの専用機の図が描かれていた。名前は蒼い雫を意味する【ブルー・ティアーズ】。予想する辺り、射撃特化のISのようだ。
「獅子神、お前が先にオルコットと対決だ。」
「分かりました。」
このままだと一夏の専用機の到着が間に合わないか、千冬先生は俺が先に行くよう指示した。
「獅子神君、ISを装着して下さい。」
「分かりました。」
俺は指輪をはめた右手に左手を添える。そして眩い光と共に、俺は【ライガーゼロ】を装着した。
「山田先生、獅子神のISの名前は?」
「獅子神君のISは【ライガーゼロ】です。」
「あれが、翔汰の専用機か。」
「全身装甲[フルスキン]…?」
一夏と箒は俺のISを見てそれぞれ何か言っている。確かに全身装甲型は滅多に見られないから当然か。
「獅子神君、カタパルトに乗って下さい。」
とうとう公に初披露する時が来たか。
俺はアリーナに出るためのカタパルトに乗る。
「あ、そうだ。一夏、箒。」
「何?」
「何だ?」
「行ってくるぜ。」
俺は一夏と箒にサムズアップする。
「頑張れよ!」
「あぁ、勝ってこい。」
一夏と箒はそう言い返した。よし、行くぜ!
「ゴー! ライガー!」
俺の掛け声と共にカタパルトが作動。俺はゲートから射出されてアリーナに出る。そこには待ってたかのようにISを纏ったセシリアの姿があった。
「あら、逃げずに来ましたね。」
「そりゃあ特訓したからな。」
「それが貴方のISですの?…愚かな男にはぴったりですわね。」
「好きなだけ言ってろ。後で後悔することになるぞ?」
「…まぁ良いでしょう。それならば貴方に最後のチャンスを与えますわ。」
「何だよ?」
「わたくしが一方的に勝利を獲ることは当然のこと、今ならまだ土下座をすることで私とイギリスを侮辱したことを、恥を掻かせたことを特別に許して差し上げてもよろしくてよ?」
セシリアはその傲慢な態度を一切崩さず、おまけには降伏勧告まで言ってきた。
「絶対にNOだ。それと、前に言わなかったか?“俺は狙った獲物は必ず仕留める”ってな。戦う前から逃げるなんて一切考えてないぜ?普段あんな風だけど……俺の心は、常にライオンハートだ!」
俺は前にセシリアに向かって言った言葉を言うと、グリーヴァを展開した。
「……残念ですわ。それならば……。」
セシリアがレーザーライフル【スターライトMK-3】を構え、射撃体制に入った。途端、俺のバイザーに警告の文字が表示された。
「お別れですわね!!」
そして案の定、レーザーを撃ってきた。俺は素早くかわし、セシリアの射撃を避けていく。
「さぁ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」
「お断りだ!!」
俺はレーザーを避け、隙を見計らってビームを撃つ。放たれたビームはセシリアに命中した。あいつの狙いは正確だが直線故に軌道を読みやすい。
「くっ、このブルー・ティアーズを前にして初見でこうしてまで耐えたのは貴方が初めてですわね。褒めて差し上げますわ。」
別に嬉しくねぇよ…。
「でもそろそろ終曲(フィナーレ)と参りましょう!お行きなさい、ブルー・ティアーズ!」
するとセシリアはここで一気にたたみかけようと4つのビットを射出した。4つのビットはレーザーを撃って変則的に攻撃してきた。避ける際にいくつか喰らってしまった。これはちょっと不味いな…。俺はさらに左手にレーベを展開してビットを迎撃する。
「ちっ…当たらない…!」
レーベの弾ならビットに当たるが、グリーヴァから放つビームは避けられてしまう。レーベだけだとビットを破壊するには時間がかかる。何とか1機目のビットを破壊するも、これ以上射撃武器で戦ってはシールドを減らすだけだ。
「なら…こいつを使うか!」
俺はグリーヴァとレーベをしまうと、両手に近接用クロー【ストライクレーザークロー】を展開する。その爪は、ライオンの如く鋭い。
「はあっ!」
俺はレーザーを掻い潜り、クローで2機目のビットを破壊する。そして残り2つとなったビットも破壊した。これで全て…いや、まだある…!
俺はそんなことを考えながらセシリアに突撃する。
「…かかりましたね。」
セシリアはそう言って残っていた2つのビットを射出した。やっぱりか。
「お生憎様、ブルー・ティアーズは6機あってよ!」
2つのビットは、レーザーではなくミサイルを撃ってきた。だが俺は逃げない。むしろこのまま突っ込む!
「はあっ!」
俺はミサイルを切り裂くと、そのままブースターを噴かして加速する。
「うおおおおおおお!」
俺が気合いを込めた瞬間、獅子の雄叫びと共にクローが白熱した。
「な!?…インターセプター!」
セシリアは近接武器をコールして展開するが、もう遅い。何故なら俺は既に斬りかかるところまで来ているからだ。
「ストライクレーザークロー!!」
俺はその掛け声と共にセシリアのシールドバリアーを切り裂いた。その一撃は、セシリアのシールドエネルギーを一気に0にした。その瞬間、試合終了のブザーが鳴り響いた。
『勝者 獅子神 翔汰』
すると、観客席から盛大な声が響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はビットに戻り、着地するとISを解除した。
「ふぃ~…。」
「やったな…翔汰。」
「凄いな、まさかビットを切り抜けるなんてな!」
ピットに帰ると、一夏と箒が誉めてくれた。次は一夏の番か。
「獅子神君、お疲れ様です。」
「獅子神、よくやったな。」
「ありがとうございます。」
先生達からも誉めの言葉をいただいた。
「獅子神君、すみませんが獅子神君のISを調べてもらいますので…。」
「分かりました、これを…。」
「それでは…。」
俺は山田先生に【ライガーゼロ】を渡すと、山田先生はそのままピットを後にした。先生達は【ライガーゼロ】についてまだ知らなかったもんな。あれに新型コアが使われてることも………そういえば喉が乾いたな…一夏に一言言ってから出るか。俺はIS【白式】を装着している一夏に近づく。
「一夏…白星取ってこいよ!」
「ああ!」
俺は一夏にそう言うと、ピットを後にする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はピットを出た後、モニターから試合の様子を見ていた。一夏が負けてしまったらしい。どうやら【白式】の単一仕様能力【ワンオフ・アビリティ ー】を使用した際にエネルギーが切れてしまったらしい。俺がピットに戻ると、一夏が千冬先生に叩かれていた。もちろん箒もこの様子を見ていた。あれ…山田先生はまだかな……?
「千冬先生!」
「?…どうした?」
「これを…!」
山田先生が突然大慌てで戻ってきて、【ライガーゼロ】のデータを千冬先生に見せた……とうとう知ったのか。
「獅子神、話がある。」
「はい…。」
俺は先生達のところへ近づく。一夏と箒も内容が気になって近寄ってきた。
「獅子神君、【ライガーゼロ】について調べたんですけど、獅子神君のISのコアが今までのものとは別系統のものだと言うことが判明したんです。」
「……。」
「何だと…?」
「何だって!?」
俺は知っていたが、これを知らない一夏と箒は思わず声を出した。
「どういう事だ?」
「………。」
「それに関しては私が説明しましょう。」
その言葉と共に、大嶋さんがピットに入ってきた。
「【ライガーゼロ】 のコア系統が違うのは、そのコアの製作者が“獅子神博士”だからです。」
「え?確かその方って…。」
「…獅子神雷雄。【白騎士事件】の4年後に新型コアを完成させた男だ……そういうことか。だがその申請は政府の圧力で却下されたはずでは?」
「そうです。却下されると、新型コアも使用禁止のはず…。」
「これを。」
大嶋さんはある書類を千冬先生に渡した。
「何…?」
「『既に作成された22個の新型コアを以下の条件付きの下、特別に使用を許可する。』!?」
それは使用許可書であった。千冬先生と山田先生はこれを見て驚きの表情を見せた。
「そうか…獅子神がそのISを所持しているのも、獅子神雷雄の息子だからか。」
「それで…俺の【ライガーゼロ】はどうなるんですか?」
俺は恐る恐る質問してみる。
「とりあえず、滅多なことがない限りは経過観察する。それでいいな?」
「はい、ありがとうございます!」
「獅子神君、これを。」
俺は【ライガーゼロ】を返してもらった。そしてこの後、一夏と戦うことになったが、まだISを扱いきれてない一夏をクローで斬りまくったら勝ったのはまた別の話だ。
うーむ、胃腸が痛い…
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