スキマ妖怪の弟が異世界からくるそうですよ? (凪玖)
しおりを挟む

プロローグ

はじめまして。
凪玖と申します。現在中二です。
知り合いが投稿しはじめたのと冬休みが始まったので書くことにしました。
処女作なので至らぬ点も多いと思いますが、よろしくお願いします。(なんかかたいな)
感想、アドバイス、批判等どんどん書いてもらえると嬉しいです。



 「あ~、暇だなぁ~。霊夢んとこでも遊びにいくか~。」

 

 

  俺の名前は八雲菫(やくもすみれ)。スキマ妖怪こと八雲紫の弟で人間だ。

 

 

 「え?妖怪の弟が人間?」と大抵の人が思うだろうが、まあこれにはいろいろと訳がある。

 

 

 「あーでも霊夢んとこも最近ずっと行ってるしな~。異変でも起こすか~。モグモグ。」

 

 

 「もうきてるじゃない。そもそも私の目の前で異変の予告って喧嘩売ってんの?」

  

 

 さすが霊夢。ツッコミにキレがある。

 

 

 「まあそう怒るなって。カルシウム不足してるんじゃないか?この団子食って落ち着け。カルシウム入ってないけど。」

 

 

 といって人里で買ってきてきたみたらし団子を渡す。

 

 

 「かるしうむって何?まあどうでもいいわ。ありがと。」

 と言って大人しくなる霊夢。ちょろいな。

 

 

 「今何か失礼なこと考えなかった?」

 「キノセイダ。」

 

 

 やっぱ霊夢の勘はすげえな。

 

 

 「今のは私特有の勘じゃなくて女の勘ね。」

 

 

 何故考えてることがわかった?

 

 

 「私の勘よ。」

 

 

 その後霊夢とのんびり団子を食べてると、なんか空から手紙が降ってきた。

  

 なんだこれ...。かなり高度な転送魔法組み込まれてんじゃん...。また姉さんがなんかしたのか? などと考えながらその手紙を観察すると、

 

 

 『八雲菫殿へ』という文字が目に入った。

 

 

 「何よ、これ。」

 

 「俺にもわからん。とりあえず姉さんのとこにききにいってみる。」

 

 

 「私の勘が犯人は紫じゃないって言ってるけど、何か知ってるかもね。いってらっしゃい。」

 

 

「いってきまーす」

 

 

さっそく姉さんのとこに移動。

  

 

 「きゃっ。ってなによ菫。いきなりあらわれないでよ~。びっくりするじゃない。」

 

 

 「姉さんにだけには言われたくない。それよりもこの手紙何?なんか転送魔法組み込まれてんだけど。」

 と言って手紙をヒラヒラと振ってみせると、姉さんは目を丸くした。

 

 

 「なによそれ。初めて見たわ。」

 

 

霊夢の勘はやっぱりすげえな。

 

 

 「へ~。姉さんの仕業だと思ったんだけど、違ったか~。まあいいや。俺この手紙でどっか行ってくるから。みんなに旅にでたって伝えといて。よろしく~。」

 

 

 「...はぁ。どうせ止めても聞かないしわかったわ。いってらっしゃい。でもこれだけは約束してね。必ず帰ってくるって。」

 

 

 「わかってるよ。いってきます。」

 

 

 そう言って俺は手紙を開けた。その手紙にはこう書かれていた。

 

 

 

  『悩み多き異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能を試すことを望むのならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、

 我らの“箱庭”に来られたし』

 

 そして俺の体は光に包まれ、次の瞬間...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空にいた。

 

 

 

 

 「...わお」

 

 




どうでしたか?
次から第一章に入り、問題児たちが登場します。
ちなみに菫がカルシウムの存在を知っているのは外界と自由に行き来でき、外界の知識があるからです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一章 What!? 黒ウサギが召喚したのは3人デスヨ?
第一話 ここはどこだ?


 さっそくお気に入り登録が...。
 
 ありがとうございます!


 

俺の名前は八雲菫。只今絶賛落下中である。

  

 

 「ヒャッホ~!」

 

 

 いやー風が気持ちいいな。まあ周りにいる3人と1匹はそんなこと考える余裕なさそうだけど。

 

 

 「キャア~!」

 「...。」

 「ニャアアアア!」

 「ヤハハハハハハ!」

 

 

 ...前言撤回。一人だけ楽しそうなやつがいる。

 あ、やべ、あとちょっとで下の湖だ。衝撃吸収する膜はってあるけど濡れるのは3人とも嫌だろうな~。

 俺?俺は空飛べるから。

 

 

 とりあえず2人の女の子を両肩に乗せてキャッチ。猫は右肩の女の子が抱えてる。

 あとはあの変な金髪か。

 

 

 「お~い金髪!今からそっちに巨大化する球投げるからそれ蹴って着地しろ!」

 

 

 「ヤハハハ!了解だ!」

 

 

 大丈夫そうなので、俺は野球ボールぐらいの大きさの球をパーカーから出して投げる。

 その球は、金髪の下に来ると急にバランスボールの1.5倍くらいに巨大化した。

 金髪は球を蹴って、見事湖付近の地面に着陸した。

 

 

 ...なんか着地した場所にクレーターができてるのは気のせいだろ、うん。

 

 

 俺も地面にやさしく着地し、女の子達を地面に降ろす。

 

 

 「ありがとう。助かったわ。」

 

 

 「...ありがと。」

 

 

 「どういたしまして。」

 

 

 すると金髪がこっちのほうに歩いてきた。

 

 

 「お前すげえな!あの球は何だ?」

 

 

 「ああ、これか?」

 

 

 といってさっきの球をパーカーのポケットから出すと、3人は少し驚いたような顔をした。

 

 

 「不思議な球ね。大きさが変わる上に見る角度によって色が変わるなんて。」

 

 

 「...どうやってその球を移動させたの?さっきポケットには一つしか入ってなかった。」

 

 

 「それは秘密だ。」

 

 

 この球は俺にとってかなり重要なものだからな。これに関することは初対面の人間に話す気は無い。

 

 

 「それよりもここはどこだ?世界の果てが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」

 

 

 ダイブしながらそこまで見てたのか。やっぱこいつやるな。

 

 

 「ならその亀と大蛇にも会ってみてえな。」

 

 

 と言ってやると、金髪は少し嬉しそうに目を細めた。

 

 

 「...まあ取り敢えず確認しとくがお前らにもあの変な手紙が?」

 

 

 「そうだけど、まずその”オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」

 

 

 「…春日部耀。以下同文」

 

 

 「そう。よろしく春日部さん。それで、私たちを助けてくれた貴方は?」

 

 

 「八雲菫だ。今は一応人間だ。よろしく~。」

 

 

 すると十六夜がさっきとは違う様子でこっちを見てきた。おそらく「今は」ってとこに反応したんだろうがこれに関しても教えるつもりはない。

 

 

 「よろしく八雲君。…最後に野蛮で凶暴そうな貴方は?」

 

 

 「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

 

 「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

 

 「考えるのかよ」

 

 

 「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

 

 「そしてお前は作るのかよ」

 

 

 「それにしても手紙の内容的にここは”箱庭”ってとこなんだろ?招待してくれたやつがでてくるのが普通じゃねーか?」

 

 

 あの手紙ね...。『少年少女』って書いてあったけど、俺少年っつー歳じゃねーぞ。それに体も今は少年くらいだけど本当は...。

 まあそれについて考えても来ちまったんだからしょうがないか。とりあえずそこに隠れてるやつに話でもきいてみるか~。

 

 

 

 

 

 

 一方そのころ、隠れていた黒ウサギは...

 

 

 (うわぁ……なんか問題児ばっかりみたいですねぇ...。それに黒ウサギが召喚したのは3人だけのはず...?まあ人が多くても損はないですしいいでしょう。)

 

 

 召喚しておいてアレだが……彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。黒ウサギは陰鬱そうに重くため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  ------------------------------------

 

 

「―仕方がねぇな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

 

 あ、先に言われた。

 

 

 「なんだ、あなたも気づいてたの?」

 

 

 「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?春日部も菫も気づいてたんだろ?」

 

 

 「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

 

 「妖力だだもれだしね。ま、つーわけでてこい。」

 

 

 「や、やだなあ御四人様。そんなオオカミみたいに怖い顔で見られると、黒ウサギ死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独とオオカミはウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここはひとつ穏便にお話を聞いてい ただ けたら嬉しいでございますヨ?」

 

 

 「断る」

 

 

 「却下」

 

 

 「お断りします」

 

 

 「ウドンゲみたいなやつだな。いじりやすそう。」

 

 

 「あっは、取りつくシマもないですね♪あと黒ウサギはいじるものではありません!」

 

 

 バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。だけどその目は他人を観察する目だ な。

 

 

 

 「それで、俺たちは合格か?」

 

 

 「へ?」

 

 

 「とぼけるな。俺たちのことを値踏みしてるだろ?」

 

 

 「...。」

 

 

 黒ウサギはどう返すか迷ってるようだ。俺がさらに言おうとすると...

 

 

 耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、

 

 

 「えい」

 

 

 「フギャ!」

 

 

 力いっぱい引っ張った

 

 

 「いや、空気読めよ。まいっか。」

 

 

 「いいのですか!?」

 

 

 「おもしろいからいいよ。」

 

 

 「ひ、ひどいですよ...。黒ウサギの素敵耳が...。」

 

 

 「へえ、本当にこれ本物なのか?」

 

 

 「...。じゃあ私も」

 

 

 十六夜と飛鳥も一緒になって素敵耳(笑)を引っ張る。

 

 

 左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣にこだました。

 

 




 この話で箱庭の説明までする予定だったのに...。

 途中で視点が少し変わってわかりにくかったかもしれません。

 感想、アドバイス、批判等募集してるのでぜひおねがいします。

 ではまた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 箱庭?幻想郷みたいだな。

 小説書くのって難しいな...
今回は説明回であんまおもしろくないです。


「あ、あり得ないのですよ。まさか話を聞いて貰うだけで小一時間も費やすとは。学級崩壊とはきっとこのような状態に違いないのデス」

 

 あの後せっかくなので俺も参加して四人で黒ウサギをいじってたが、それも飽きたのでこうしてとりあえず話を聞くことにした。それにしてもウサ耳って気持ちいいな。

 

 

 「なら俺たちが先生で黒ウサギが生徒だな。」

 

 「なんでですか菫さん!どう考えても逆でしょう!」

 

 「いや、暴れる問題児の黒ウサギを俺ら四人で必死に取り押さえてたんだからそうだろ(笑)」 

 

 「な!?明らかに暴れていたのは四にn「いいからさっさと始めろ。」ええい!わかりましたよ!始めればいいんでしょう!始めれば!」

 

 

 十六夜にせかされ若干ふて腐れ気味の黒ウサギだったが、気を取り直した様に咳払いをした。

 

 

 「それではいいますよ?ようこそ、『箱庭の世界』へ! 我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかなと召喚いたしました!」

 

 

 ギフトゲーム、ねぇ。弾幕ごっこ的なやつかな?

 

 

 「ギフトゲーム?」

 

 「そうです! 既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大力を持つギフト所持者がオモシロオカシク生活出来る為に造られたステージなのでございますよ!」

 

 

 え、この世界って造られたの?それなら世界の果てとかがあるのも納得だわ。でもこの世界幻想郷よりはるかにでかいぞ?これを造るって...。どんなチートだよ。

 

 他の3人は悪魔や精霊、星と言った言葉に目を輝かせている。

 まあ会ったことなさそうだしそりゃそうなるな。

 

 お、飛鳥がなんか質問するっぽい。

 

 

 「まず、初歩的な質問からしていい? 貴方の言う我々とは貴方を含めただれかなの?」

 

 「YES! 異世界から呼び出されたギフト所持者は箱庭で生活するにあたって、数多とあるコミュニティに必ず属していただきます」

 

 「「嫌だね」」

 

 お、十六夜気が合うな。組織とかそういうの面倒なんだよね~。

 

 「属していただきます! そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの主権者ホストが提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

 

 

 それにしても俺と十六夜がやだって言ったときめっちゃ必死な顔してたな。コミュニティがピンチなのかな?

 

 

「...主権者ホストってなに?」

 

 

次は耀か。

 

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。

 特徴として、前者は自由参加が多いですが主権者ホストが修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。主権者次第ですが、新たな恩恵を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればすべて主権者のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者は結構俗物ね……チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間……そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 

 

 

 最後ちょっと笑顔が黒かった。多分ギフトっていうのは能力のことだからな。この能力を失うのはちょっと困る。

 

 

 

「へぇ、んじゃどうやったらそのゲームを始められんだ?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加してみてくださいな」

 

 

飛鳥が黒ウサギの発言に片眉をピクリと上げる。

 

 

「...つまり『ギフトゲーム』はこの世界の法そのもの、と捉えてもいいのかしら?」

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか! そんな不逞の輩は悉く処罰します━ですが!先ほどそちらの方がおっしゃった様に、ギフトゲームの本質は勝者だけがすべて手にすることができます! 例えば店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればただで入手することも可能だと言うことですね」

 

「そう、中々野蛮ね」

「ごもっとも。しかし全て主催者の自己責任でゲームが開催されております。つまり奪われたくない腰抜けは始めからゲームに参加しなければいい話のです」

 

 

黒ウサギは一通り説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

 

 

「さて説明は以上ですが黒ウサギは皆様の質問に全て答える義務がございますが...後は取り敢えずコミュニティに戻ってから話させていただきたいのですが...よろしいですか?」

か?」

 

 

「待てよ。まだ俺が重要な質問を

してないだろ。」

 

「俺からもいくつか質問がある。」

 

 

今まで黙って聞いていた十六夜が威圧的な雰囲気を出しながら真面目な顔で聞いてきた。俺も結構真面目な顔をする。

 

 

「...どういった質問です?ゲームについてわからなかった事でもおありでしょうか?」

 

 「そんなのはどうでもいい・・・・・・。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでお前に向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは、ただひとつ。あの手紙に書いてあったことだけだ━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━この世界は……面白いか?」

 

 

 彼は何もかも見下すように発した。

 

 他の者たちも無言で返事を待つ。当然だろう。手紙に従い全てを置いてきてまでこの箱庭にやってきたのだ。半端な返事は許されない。そして黒ウサギは答えた━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「YES。『ギフトゲーム』は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊戯。

 箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪ 」

 

 

 それを聞くと、他の3人は満足そうな顔をした。だが、俺は確認しなければならないことがある。

 

 

 「あ~。いい雰囲気のところ申し訳ないが、質問してもいいか?」

 

 「は、はい。なんでしょうか?」

 

 「元の世界に帰るにはどうしたらいい?あ~別に今すぐ帰るってわけじゃないんだが、前の世界にも結構思い入れがあるからな。」

 

 

 黒ウサギはすごく困った顔をしている。なんて答えるか迷ってるようだ。

 

 

 「別に答えたくなければ答えなくてもいい。対して重要じゃないからな。」

 

 「も、申し訳ありません...。さきほどすべての質問に答えなくてはいけないといったばかりなのに...。」

 

 「気にするな。二つ目の質問だ。あの手紙以外でこの箱庭にくることはできるか?」

 

 「は、はい。できなくはありませんが、この箱庭にくるにはかなりの実力が必要ですよ?」

 

 

 これで紫が来る可能性ができたな。多分あいつのことだから十中八九くるだろ。興味本意で。

 

 

 「質問はこれで終わりだ。」

 

 「じゃあ早速行こうぜ!」

 

 

 十六夜は元気があるな。やっぱ若いってのはいいな~。どっかの胡散臭いバB...もといババアとは大違いだ。

 

 

 「はい!黒ウサギが案内します!みなさんついてきてください!」

 

 

 それじゃ、行きますか~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




途中から飛鳥と耀が空気に...。
 あと紫ファンの方々申し訳ありません。
 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 世界の果てにLet'go!

 イブも当日も塾と冬期講習でテンションがひくいです...。

 まあどうせボッチなんですけどね。


 「しかし、ほんとすげえな...。こいつは来てよかったってもんだ。」

 

 「ああ、こんな滝初めて見る。」

 

 

 今俺たちは、絶景をみている。いやまじでこれはすごいよ。この圧倒的な水量。ナイアガラなんて目じゃないね。

 

 

 「飛鳥と耀たちにもみせてやりたかったな。」

 

 『まだ・・・まだ試練は終わってないぞ、小僧ォ!!!』

 

 「そうだな。今度またみんなでくるか。」

 

 『我を無視するなぁぁ!』

 

 「「あ、すまん忘れてた。」」

 

 

 あとついでになんか変な蛇を怒らせた。なぜこいつはこんな絶景を前にこんなに怒っているのか?そしてなぜ俺たちは飛鳥と耀と別行動をしているのか?

 話は少しさかのぼる。

 

 

 

 

 --------------------------------------

 

 

 

 

 

「なあ、菫。ちょっと世界の果てに行かないか?」

 

 

 俺たちが移動してると、十六夜がそんな素敵な提案をしてきた。

 

 

 「お、いいねえ。行こうか。」

 

 

 俺はその提案をすぐ了承した。能力的に知ってる場所は多いほうがいいし、なによりおもしろそうだからな。

 

 

 「どこか行くの?」

 

 「ああ。ちょっと世界の果てに行ってくる。黒ウサギには言うなよ?」

 

 「わかったわ。いってらっしゃい。」

 

 

 よし!行くか!っていっても黒ウサギがちょっとかわいそうだな。それに町のことも知りたいし。よし、あれ使うか。

 

 

 「っ!あなたそんなこともできるの?」

 

 「...すごい。」

 

  

 まあ霊夢たちもこれ初めて見たときはびっくりしてたしな。それにしてもすごいなんて照れるな~。

 

 

 「やっぱお前おもしろいな!それじゃ行こうぜ!」

 

 「おう。」

 

 

 こうして俺たちは世界の果てに向かって走って&飛んでいく。

 

 

 「それにしてもお前どうやって飛んでいるんだ?」

 

 「これはちょっとコツを覚えれば簡単だぞ。今度十六夜にも教えてやるよ。お前めちゃくちゃ霊力あるみたいだし多分割とすぐ飛べるようになるぞ~。」

 

 「まじか!よっしゃ!霊力っつーのはよくわからんが一回空飛んでみたかったんだよな~。」

 

 

 いやほんと、こいつの霊力の量は半端ない。あの霊夢よりはるかに多いしな。人間かって疑うレベルだわ。まあ霊力だから人間なんだけど。

 

 

 「それに走るスピードも速いしな。」

 

 「お前だって余裕そうじゃねーか。」

 

 「飛ぶのと走るのじゃでるスピードが違うんだよ。」

 

 「じゃあ飛べるようになれば、もっと速く移動できるってことか?」

 

 「そういうことだな。ちょっと怖いわ。」

 

 

 いやほんと、走って魔理沙並のスピード出せるやつが飛んだらどうなるかなるかなんて、考えただけでも恐ろしい。

 そうして十六夜と雑談しながら飛んでいると、世界の果てについた。

 

 

 「おお...。」

 

 「すげえ...。」

 

 

 そしてこの滝と、

 

 

 

 

 『こんな所に人間が何の用だ?』

 

 

 

 

 変な蛇に会った。こいつ神力感じるから神様かな?

 

 

 「オイお前、空気読めよ。」

 

 『...よくわからんがすまない。』

 

 「許さん。」

 

 『グオッ!?』

 

 

 十六夜が跳んで一発腹をなぐる。変な蛇あえなく撃沈。お疲れさまでした。

 

 

 

 

 

 そして話は冒頭に戻る。

 

 

 

---------------------------------------------------------

 

 

 

 

 「十六夜任せた。」

 

 「おう、任された。」

 

 

 「確かこのあたりで巨大な水柱が...。ってえ!?菫さん!?なぜここにおられるんですか!?ってお二人とも!なにしてるんですか!どうやったらそんなに蛇神様を怒らせられるんですか!」

 

 

 あ、黒ウサギじゃん。思ったより早く来たな。

 

 

 「空気読まなかったから一発殴った。」

 

 「そういうことだ。安心しろ。」

 

 「全く安心できませんよ!」

 

 

 『貴様らぁ...。つけあがるな人間風情が!』

 

 

 

 蛇神の甲高い咆哮が響き、巻き上がる風が水柱を上げて立ち昇る。

 何百トンもの水を吸い上げ、竜巻のように渦を巻いた水柱は人間の胴体など容赦なく引き裂くだろう。

 

 

 「十六夜さん、菫さん、下がって!!」

 

 「何言ってやがる。これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。一緒にいた男鹿はともかく、手を出せばお前から潰すぞ」

 

 

 黒ウサギは悔しそうな顔をするが、まあしょうがないな。俺はいいっぽいけど、十六夜に任せるから参加しない。

 

 

 『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様らの勝利を認めてやる』

 

 

 「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」

 

 

 お、今の決め台詞?

 

 

 『フンーーーその戯言が貴様らの最期だ‼︎』

 

 渦巻く巨大な水柱が、十六夜に容赦なく襲い掛かる。ってえ?俺のほうにも?

 

 

 「ハッ、しゃらくせぇ!!!」

 

 「あぶね。」

 

 

 それを飛んで回避する俺と、腕の一振りで薙ぎ払う十六夜。...これ薙ぎ払うって、やっぱこいつ実は人の皮かぶった化け物じゃないか?勇儀並の腕力だぞ。

 

 

 「ま、なかなかだったぜお前。」

 

 

 十六夜が高速で接近して蹴り上げ、蛇神の巨体が水面から浮き上がる。

 浮き上がった蛇神はそのまま川に落下し、その衝撃で川が氾濫する。

 

 

 「くそ、今日はよく濡れる日だ。クリーニング代ぐらいは出るんだよな黒ウサギ」

 

 

 信じられないという顔をする黒ウサギ。まあそうだよな。しばらく呆然としていた彼女だったが、しばらくしてパアッと顔を輝かせた。

 

 

 「そうだ!ギフトを戴いておきませんか?十六夜さん達はご本人を倒されましたから、きっとすごいものを戴けますよ♪」

 

 

 いや、倒したのは十六夜一人だけどな。それよりもそろそろはっきりさせた方がいいな。十六夜も同じこと考えてるっぽいし。

 

 

 俺と十六夜は、蛇神の方に歩いていく黒ウサギの前に立ちふさがった。

 

 

 「な、なんですかお二人とも。怖い顔をされてますが、何か気に障りましたか?」

 

 「・・・別にぃ。勝者が敗者から得るのはギフトゲームとして真っ当なんだろうからそこに不服はねぇがーーーお前、何か決定的な事をずっと隠しているよな?」

 

 

 十六夜に指摘された黒ウサギはビクッと体を震わせた。

 

 

 「ナ、ナンノコトデショウカ...。黒ウサギは何も隠し事などしていませんよ?」

 

 「あっそ、じゃあ俺お前らのコミュニティ入らねえわ。」

 

 「な!それはやめてください!」

 

 「じゃあ話せ。」

 

 「... 承知しました。」

 

 

 

 そうして黒ウサギは語り始めた。

 

 自分達には名乗るべき名がない“ノーネーム”だということ。

 

 テリトリーを示し、尚且つ誇りでもある“旗印”もないこと。

 

 さらには中核を成す仲間は一人も残っておらず、黒ウサギとリーダーというジン以外はゲームに参加できない子供ばかりが百人以上ということ。

 

 それら全てを箱庭を襲う最大の天災ーーー“魔王”と呼ばれる、ギフトゲームを断ることができない特権階級“主催者権限”ホストマスターを利用する存在に奪われたこと。

 

 それらを取り戻してコミュニティを再建するために強大な力を持つプレイヤー・・・つまり十六夜達に力を貸して欲しいこと。

 

 

 「「もう崖っぷちだな!」」

 「ホントですねー♪」

 

 

 十六夜と共にツッコんだら、黒ウサギはどこか吹っ切れてように笑いながら肯定した。あ、これは相当やばいな。

 

 

 どうしようかと思って黙っていたら、黒ウサギが涙目に。やっぱ優曇華みたいだな。ん、十六夜がなんか言うっぽいぞ。

 

 

 「いいな、それ」

 

 「ーーー・・・は?」

 

 「HA?じゃねぇよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べ黒ウサギ」

 

 「え・・・あ、あれれ?今の流れってそんな流れでございました?」

 

 「そんな流れだったぜ。それとも俺がいらねぇのか?失礼なことを言うと本気で余所行くぞ」

 

 「だ、駄目です駄目です‼︎ 十六夜さんは私達に必要です‼︎」

 

 「素直でよろしい。それで、菫はどうするんだ?」

 

 「...とりあえず保留にしておいてくれ。」

 

  「わかりました。」

 

 「おいおい。菫。そこは空気読めよ。」

 

 「いや、これは結構重要だからな。まだ判断できない。」

 

 

 黒ウサギは少し残念そうだが悪いな。ちょっとリーダーが心配だ。

 

 

 「そうだ、とりあえずそこの蛇神がなんかくれるんだろ?貰っとこうぜ。」

 

 「そうですね♪あ、そういえば何故菫さんはここにおられるのですか?確かに黒ウサギと一緒に外門まで...」

 

 

 お、回復した。ナイス十六夜。んーなんて答えようかな

 

 「ま、戻ればわかるさ。」

 

 「さっきも同じようなこと言ってましたよね!?まあいいです。では蛇神様からギフトを貰ってくるので、お二人は少し待っててください。」

 

 「「りょーかい」」

 

 

 

 

 

 そのあと水樹の苗を貰ってテンションが高くなった黒ウサギと滝を堪能してから、俺たちは箱庭へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 菫と十六夜のどっちが喋ってんのかわかんねえ...
あと、原作では蛇神がいるところとトリトニスの大滝は違う場所ですが、同じの方が面白そうだったので同じにしました。
大滝をバックに蛇神って結構かっこよくないですか?

 追記 文章を一部変えました。結構重要な部分です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話 紳士(笑)

 
 第三話を修正しました。結構重要なのでそれを読んでから読むことをお勧めします。
 じゃないと「?」ってなります。


説明を聞いた後、黒ウサギに連れられて歩いていると大きな門が見えてきた。まあ途中でいろいろあったけどねw

 

 

「ジン坊っちゃーん。新しい方々を連れて来ましたよ!」

 

「そちらの御三方が?」

 

「はいっ!こちらの御三方がそうで・・えっ!?三人?」

 

 

振り返って急に驚く黒ウサギ。ニタニタする俺たち。

 

「どうかしたの?」

 

「呼ばれたのは本当は四人なんです。それで、もう一人の目付きと口が悪い"ザ・問題児"みたいな人はどうされたんですか?」

 

 「ああ、十六夜君なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言って駆け出していったわ。

あっちの方に」

 

 「なんで止めてくれなかったんですか!?」

 

 「止めてくれるなよ、と言われたもの」

 

 「どうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!」

 

 「黒ウサギにはいうなよ?と言われたから」

 

 「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう皆さん!」

 

 「「「うん」」」

 

 お、ピッタリ合った。

 

 がくりとうなだれる黒ウサギ

 

 

 「た、大変です!"世界の果て"には野放しにされている幻獣がいるんです!」

 

 「「幻獣?」」

 

 「不死鳥とかか?」

 

 「ギフトを持った獣を指す言葉で、特に"世界の果て"付近には強力なギフトを持ったものがたくさんいるんですいます!場所によっては神格を持ったものも!まあ不死鳥はさすがにいませんが...。でも出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」

 

 ジンは焦った様子で言う。その様子が事態の重大さを物語っている。

 

 「それは残念ね。もう彼らは・・・・・」

 

 「ゲーム参加前にゲームオーバー?・・・・・斬新」

 

 「冗談を言っている場合じゃありません!」

 

 こんな時にも平常運転の飛鳥と耀。

 

 「でも彼は無事なのでしょう?」

 

 「ああ。無事だ。俺がここにいられる限りは死ぬことはないぞ。」

 

 「それはどういう意味ですか?」

 

 「まあ行けばわかるかもしれないな。3割くらいの確率で。」

 

 「低いですね!はぁ、取り敢えずジン坊っちゃんはこの四名の案内をお願い出来ますでしょうか? 黒ウサギはあの問題児を捕まえに参ります」

 

 「わかった。」

 

 「事のついでに″箱庭の貴族″と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、この上無く後悔させてやります!」

 

 

 箱庭の貴族ってなんだろう?

 

 

 「一刻程で戻ります! 皆様はゆっくりと箱庭の生活を御堪能下さいませ!」

 

 

 その言葉置き去りにして全力で跳躍した黒ウサギは弾丸のように飛び去っていった。結構速いな。

 

 

 「へえ。箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」

 

 

 まあそうだろうな。それにしても黒ウサギ向こうについたらびっくりするだろうな~。

 

 

 「それでは黒ウサギも言っていたし、箱庭に入るとしましょうか、エスコートは貴方がしてくださるの?」

 

 「あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一のかなりの若輩ですがよろしくお願いします。四人の名前は?」

 

 こいつがリーダーなのか...。少し不安だな。

 

 「私は久遠飛鳥よ。」

 

 「春日部耀」

 

 「八雲菫だ。」

 

 「それじゃあ箱庭に入りましょう。軽い食事でも取りながら話をしましょうか」

 

 

 ------------------------------------------------------------------------------

 

 

 俺たちは近くのカフェテラスで軽食を取ることにした

 

 

 「あら?外から天幕に入った筈なのにお日様が見えるのだけれど?」

 

 「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの天幕は太陽の光を受けられない種族のためにあるものですから」

 

 「あら、じゃあ箱庭には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」

 

 「え、居ますけど」

 

 「...そう。」

 

 

 へ~。レミリアやフランが聞いたら喜びそうだな。あ、店員さんが来た。

 

 

 「いらっしゃいませー。ご注文をどうぞ」

 

 「えーと、紅茶を四つに緑茶を一つ。後軽食にこれとこれを」

 

 「はいはーい。ティーセット五つにネコマンマですね」

 

 

 ...ん?

 

 

 「三毛猫の言葉、分かるの?」

 

 

 へ~。普通の猫と意思疎通ができるのか。すげえな。てか春日部もわかるの?

 

 

 「そりゃ分かりますよー私も猫族何ですから。お歳のわりに随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスさせていただきますー」

 

 『にゃー、にゃにゃーにゃー』

 

 「やだもーお客さんったらお上手なんだから♪」

 

 

...さっぱりわからん。

 

 

 「ちょ、ちょっと待って。貴方猫と会話出来るの?」

 

 「うん。生きてる動物なら誰とでも話は出来る」

 

 

 やっぱそうなのか。すげえな。

 

 

 「それは便利そうだな。」

 

 「そう……春日部さんは素敵な力があるのね。羨ましいわ」

 

 「久遠さんは」

 

 「飛鳥でいいわ。菫君もそう呼んで頂戴。」

 

 「りょ~かい」

 

 「う、うん。飛鳥はどんな力持ってるの?」

 

 「私?私の力は最低よ。だって「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ″名無しの権兵衛″のリーダー、ジン君じゃないですか。」あら。」

 

 

 いや、空気読めよ。つーか品のねえやつだな。

 

 

 「僕らのコミュニティは″ノーネーム″です。″フォレス・ガロ″のガルド=ガスパー」

 

 「黙れ名無しが。聞けばまた新しい人材を呼び寄せたらしいな」

 

 「失礼ですけど、同席を求めるのでしたら名乗って、一言添えるのが礼儀では?」

 

 「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ″六百六十六の獣″の傘下である」

 

 

 「烏合の衆の」

 

 

 「コミュニティのリーダーをしている、って待てやゴラァ!!」

 

 

 ナイスジン。お前才能あるな。

 

 

 「ありがとうございます。」

 

 「俺を無視するな!それに口慎めや小僧...紳士で通ってる俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ?」

 

 

 へえ、紳士ねえ...。飛鳥と輝も苦笑してる。さて、そろそろ質問するか。

 

 

 「なあ。悪いがちょっといいか?そいつが言ってる”名無し”ってのはなんなんだ?それにコミュニティの現状についても教えてほしい。さっき最底辺がどうのこうの言ってたからな。」

 

 

 まあ大方予想はついてるが。

 

 

 「...。」

 

 

 ジンは俯いている。これで俺の予想の裏付けがとれたな。

 

 

 「こいつが話さないので変わりに私がこいつのギルドについて説明してもいいですか?「ちょ、ちょっと待っ」うるせえ小僧。勝手に箱庭に連れてきたんだがら、自分のコミュニティについて語る義務がお前にはあるだろうが。」

 

 「うっ...」

 

 「というわけでみなさん私がコミュニティの重要性とこの小僧...じゃなくてジン=ラッセル率いるノーネームについて客観的にお話したいのですが、よろしいですか?」

 

 

 ジンは俯いてるし。こいつにお願いしようか。

 

 「じゃあ頼む。」

 

 「承りました。まず、コミュニティとは読んで字のごとく複数名で作られる組織の総称です。受け取り方は種によって様々でしょう。人間はその大小で家族とも組織とも国とも言い換えますし、幻獣は ”群れ” とも言い換えられる」

 

 「それぐらい分かるわ」

 

 「はい、一応確認までに。そしてコミュニティの縄張りを主張する大事な物。この店にも大きな旗が掲げられているでしょう? あれがそうです」

 

 

 ガルドはカフェテラスの店頭に掲げられてある ”六本傷” が描かれた旗を指さす。なるほどね。

 

 

 「六本の傷が入ったあの旗印は、この店を経営するコミュニティの縄張りであることを示しています。もし自分のコミュニティを大きくしたいと望むのであれば、あの旗印はのコミュニティに両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければいいのです。私のコミュニティは実際にそうやって大きくしました」

 

 

 自慢げに語るガルドはタキシードの胸ポケットに刻まれた模様を指さす。

 そこには虎の紋様をモチーフにした刺繍が施されていた。

 ん、これそこらじゅうにあるじゃん。結構大きいコミュニティなんだな。

 

 

 「その紋様が縄張りを示しているのなら...この辺りはほぼ貴方達のコミュニティが支配している、と考えていいのかしら?」

 

 「ええ、残念なことにこの店のコミュニティは南区画に本拠を構えているため手出しできませんが...。この二一〇五三八〇外門付近で活動可能な中流コミュニティは全て私の支配下です。残すは本拠が他区か上層にあるコミュニティと───奪うに値しない名もなきコミュニティくらいです」

 

 

 クックッと嫌味を込めた笑いを浮かべるガルド。その視線はジンへと向いており、当の本人はやはり顔を背けたままローブをぐっと握りしめている。悔しそうだな。

 

 

 「さて、私のコミュニティの話はここまでにしましょう。そしてここからがレディ達のコミュニティの問題。実は貴女達の所属するコミュニティは数年前まで、この東区画最大手のコミュニティでした」

 

 

 ガルドの突然な内容に飛鳥が驚きの声を上げる。俺もそれは意外だな。最初からそこまで大きくないと思ってた。

 

 

 「あら、それは意外ね」

 

 「とはいえリーダーは別人でしたけどね。ジン君とは比べようもない優秀な男だったそうですよ。ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた東区画最強のコミュニティだったそうですから」

 

 

 ガルドは一転してつまらなそうな口調で語る。まあ今のこいつにとってはどうでもいいのだろう。

 

 

 「彼は東西南北に分かれたこの箱庭で、東のほかに南北の主軸コミュニティとも親交が深かったらしいのです。私はジン君のことは毛嫌いしてますが、これは本当に凄い事なんですよ。南区画の幻獣王格や北区画の悪鬼羅刹が認め、箱庭上層に食い込むコミュニティだったというのは嫉妬を通り越して尊敬に値する凄さです。───まぁ先代は...ですがね。」

 

 

 ジンは歯を食いしばり耐える。なるほどね。失礼だけどジンにそれが可能とは思えない。

 ガルドはそんな彼を気にせず話を続けた。

 

 

 「人間の立ち上げたコミュニティではまさに快挙ともいえる数々の栄華を築いたコミュニティは………敵に回してはいけないモノに目を付けられた。そして彼らはギフトゲームに強制的に参加させられ、たった一夜で滅ぼされた。『ギフトゲーム』が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」

 

 「「「天災?」」」

 

 

 俺たちは同時に聞き返した。自然災害でそんな大きなコミュニティが潰れるとは思えない。

 

 

 「それは比喩にあらず、ですよレディ達に紳士殿。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災───俗に ”魔王” と呼ばれる者達によって………ね」

 

 

 今までで一番真剣にガルドは言い放った。魔王ねえ...。神綺みたいな?まああんなのがゴロゴロいたら怖いが。てかあいつは魔神か。

 

 

 「魔王?」

 

 

 新たに聞き覚えのない言葉に首を傾げる二人。俺も気になる。

 

 

 「えぇ、貴女達の世界で取り上げられている ”魔王” とは少し差異がありますがね。”主催者権限” という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏、それが ”魔王” です」

 

 

 主催者権限?なにそれおいしいの?

 

 

 

 

 「ちょっと待って。その ”主催者権限ホストマスター” というのは───」

 

 「もちろん、そのことについても説明させていただきます」

 

 

 そしてガルドは語り始めた。

 

 ”主催者権限” とは、ギフトゲームを自由に開催できる権限のことで、いかなる難易度のゲームも、 ”主催者権限” にかかればどんな理由であろうと参加させられる。そして先に待つものは圧倒的な力で滅ぼされるという絶望。

 

 

 故に ”魔王”、故に ”天災”。

 

 

 その ”魔王” のゲームに敗北したジンのコミュニティは、コミュニティに必要な全てを奪われた。全てとはそれすなわち、名と旗印。そして寝食をともにし支え合った仲間。

 その全てがたった一つのゲームで消え去ったという。

 

 すげえな。魔王。てか主催者権限俺もほしいな。

 

 

 「...なるほどね。だいたい理解したわ。つまり ”魔王” というのはこの世界で特権階級を振り回す修羅神仏のことを指し、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として滅ぼされた。そういうこと?」

 

 「その通り。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなるのはよくあることなんですよ」

 

 

 ガルドはカフェテラスの椅子の上で大きく両手を広げ、皮肉そうに笑う。

 

 

 「名も旗印も主力陣も全て失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。今や失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません」

 

 「...」

 

 「それに、名乗ることを禁じられたコミュニティに一体どんな活動ができるでしょう。商売? 主催者ホスト? 名も無き組織など信用されません。優秀な人材も失墜したコミュニティに加入したいと思うでしょうか?」

 

 「...誰もそうは思わないでしょうね。」

 

 

 ガルドが言いたいことがわかった。

 

 

 「もっと言えば彼はコミュニティの再建を掲げてはいるものの、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけ。ウサギといえばコミュニティにとって所持しているだけで大きな ”箔” のつく存在。どこのコミュニティでも破格の待遇で愛でられる筈です。なのに彼女は毎日毎日子供達の為に僅かな路銀でやりくりしている」

 

 

それが非常に残念でなりません。と付け加る。

 

 

「...事情はよくわかったわ。それで、貴方はどうして私達に丁寧に話をしてくれるのかしら?」

 

 

 やっぱきずいてたか。

 

 

 「単刀直入に言います。もしよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

 

 「な...なにを!?」

 

 

 うわ、ジンめっちゃ焦ってる。まあでも少し安心しろ。十六夜は入ったみたいだから。

 

 

 「そうね...確かに話を聞いている限りだと貴方のコミュニティに入った方が賢明な選択といえるでしょうね。崖っぷちギリギリのコミュニティと支配者だと天と地ほど差があるもの」

 

 

 ガルドがいやらしい笑みを浮かべ、ジンがぎゅっと目をつぶる。飛鳥もいい性格してるな。さっさと言えばいいのに。

 

 

 

 

 「でも結構よ」

 

 ジンとガルドは理解できないような惚けた表情で「はっ?」と間抜けた声を出し、飛鳥の顔を窺う。どうせ今の反応が欲しかったんだろ。うん、GJ。

 

 

 「聞こえなかった? 「結構よ」と言ったのよ。私はジン君のコミュニティで間に合ってるわ」

 

 

 彼女は再び言うと何事もなかったようにティーカップの紅茶を飲み干すと、俺たちに話しかけてきた。

 

 

 「春日部さんと菫君は今の話をどう思う?」

 

 「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの。どっちのコミュニティに属するかなんてどうでもいい」

 

 「あら意外。じゃあ私が友達第一号に立候補していいかしら? 私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするのよ」

 

 

 飛鳥は自分の髪を触りながら耀に問う。多分そういうの慣れてないんだな。恥ずかしそう。

 耀は無言で少し考えた後、小さく笑って頷いた。

 

 

 「...うん。飛鳥は私の知る女の子とはちょっと違うから大丈夫かも」

 

 「そう、嬉しいわ。なら今度黒ウサギも交えて女の子同士、お茶でも飲みながら話ましょうか。それで菫君は?」

 

 「保留で。あ、でもこのガルドってやつのコミュニティは入らん。」

 

 

 ガルドは顔をひきつらせている。

 

 

 「...理由を教えてもらっても?」

 

 「だから、間に合ってるのよ。春日部さんは聞いての通り。そうよね?」

 

 「うん」

 

 「私は裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払ってこの箱庭にきたのよ? それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力を感じるとでも思ったのかしら。だとしたら笑い物ね。貴方自身の身の丈にあった台詞を言われた方がマシよ」

 

 「んーなんかこいつ小物臭がするし、正直魅力を感じない。それにちょっと気になることがあるし。」

 

 

 ピキリとガルドに青筋が立つ。

 おお、怖い怖い(笑)

 そんなガルドを無視して飛鳥はさらに言葉を続ける。

 

 

 「何よりこの久遠飛鳥がもっとも好きなことの一つは、自分の思い通りに事が運ぶと思っているヤツにキッパリと断ってあげる事よ...。わかったら修行して出直して来なさい、エセ虎紳士さん?」

 

 

 ピシャリと言い切る。お~。いうねえ。さすがお嬢様。

 

 

 「お...お言葉ですが───」

 

 「私の話はまだ終わっていないわ」

 

 

 ガルドの有無を言わさずに話し出す飛鳥。多分今俺が考えてることと一緒だな。

 

 

 「貴方はこの地域のコミュニティに ”両者合意” の上で勝負を挑み、勝利したと言っていたわ。けれど………ねぇ、ジン君。コミュニティそのものをチップにするゲームはそうそうあることなの?」

 

 「い、いいえ。どうしようもない時なら稀に、でもかなりのレアケースです」

 

 「そうよね。では ”魔王” でもない貴方がコミュニティを賭けあうような大勝負を強制的に続けることが出来たのか、そこに座っておしえてくださる・・・・・・・・・・・・・・?」

 

 

 飛鳥がそう言うと、ガルドは椅子にヒビが入るほど勢いよく座り込む。ん、他人を支配できるのか。強力だな。あ、さっきの店員さん。

 

 

 「お、お客さん! 当店で揉め事は控えてくだ───」

 

 「ちょうどいいわ。猫の定員さんも第三者として聞いていてくれないかしら? きっと、面白いことが聞けるハズよ」

 

 

 飛鳥が話せと呟くと、ガルドは語り始めた。

 

 

 「...相手コミュニティの女子供を攫って脅迫し、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫するっ。コミュニティを、吸収した後も...」

 

 「吸収した後も?」

 

 「ガルド=ガスパー………?」

 

 

 がんばって抵抗してるけど無理だね。脅迫はまあ常套手段だね.

 

 

「数人ずつにとってある」

 

 

 ピクリと飛鳥の片眉が動く。言葉や表情には出さないものの、嫌悪感が滲み出ていた。コミュニティには無関心だった耀も不快そうに目を細めている。まあ2人ともそういうのに慣れてないんだな。

 

 

 「...そう、それで? その子供達は何処に幽閉されているの?」

 

 「もう殺したッ」

 

 

 ...まじか。

 

 

 「始めてガキ……共をッ…連れてきた日、泣き声が頭にき……て殺した。それ以降は自重しようと……ッ思ったが、泣き続けるのでやっぱり殺…した。だから……ッ! 連れてきたらすぐに殺すことに決め───」

 

 「黙れ・・」

 

 

 飛鳥がキレている。多分俺も怖い顔してるな。意味がある殺人はまあしょうがない。俺だって何人も殺している。だが、こいつのそれは明らかにいみがない。

 

 

「...すがすがしいほどに外道ね。さすがは人外魔境の箱庭の世界といったところかしら」

 

 

 絶対零度の目のままジンに話を投げかける飛鳥。その冷ややかな視線に慌てて否定する。

 

 

「か、彼のような悪党は箱庭でもそうそういません!」

 

 

 まあこんなんがゴロゴロいたら治安やばいしな。

 

 

 

「なら、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるのかしら?」

 

「...厳しいです。もちろんガルドの行為は違法ですが...裁かれるまでに箱庭の外に逃げてしまえばそれまでです」

 

 

 それはある意味裁きといえなくもないが、それじゃ物足りないな。

 

 

「そう。なら仕方がないわ」

 

 

 飛鳥が苛立たしげに指を鳴らす。それが合図なのだろう。ガルドを縛り付けていた力が拡散し、体に自由が戻る。

 

 

「俺に………手を出したな……」

 

 

 ワナワナと体を震わせ不自然に膨張していくガルド。顔は虎に変わり、体毛も変色して黒と黄色のストライプ模様が浮かび上がる。

 彼を包んでいたスーツは耐えきれずに弾け飛んだ。今更何言ってんのコイツ。

 

 

 「この───小娘がアァァァァァ!」

 

 

 雄叫びとともにテーブルを粉砕する。逆切れなんていい身分だねえ?

 

 

 「テメェ、どういうつもりかは知らねぇが………俺の上に誰が居るかわかってんだろうなぁ!?箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見に...!」

 

 

 あ、殺気もれてた。

 

 

 「今更怒るなよ。悪いのはどう考えてもお前だ。さてジン?お前は魔王が背後にいるコイツに屈して見逃すのか?」

 

 「...僕たちのコミュニティは ”打倒魔王” を目指しています。貴方の脅しに屈する気はありません」

 

 「だそうだ。」

 

 

 よく言ったな。少し見直したぞ。

 

 

 「く………クソッ……!」

 

 「というわけでだ。提案があるんだがいいか?」

 

 「何かしら?」

 

 

 俺は笑みを浮かべる

 

 

 

 

 「フォレス・ガロとノーネームで、ギフトゲームをしないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ちょっと原作コピーしすぎたかなぁ...?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話 神様ってのはどこの世界でもロリかBBAしかいないらしい


 あれ?今回で白夜叉が決闘か挑戦かきくはずだったのに...


 

「と、いうわけでフォレス・ガロとギフトゲームをする事になりました」

 

「どういうわけですか、この問題児様ぁあ!」

 

 

 あの後黒ウサギ&十六夜と合流して、さっきのことを報告したら、さっそく突っ込まれた。いやでもあれはしょうがないようん。

 

 

 「「「ムシャクシャしてやった、今は反省している」」」

 

 「後悔も反省もしていない。」

 

 「3人とも口だけでしょう!さらに菫さんに至ってはする素振りすらないじゃないですか!」

 

 「まあいいだろ。運ゲーにはしないよう言っておいたし、多分勝てる。」

 

 「そういう問題では...。はあ、もういいです...。」

 

 

 そうだ黒ウサギ。人生諦めも肝心だぞ。

 

 

 「まあフォレス・ガロ程度なら十六夜さんがいれば楽勝ですし。」

 

 「何言ってんだ?俺は参加しねえぞ。」

 

 「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ」

 

 

 まあこいつらならそうだろうな。黒ウサギ泣きそう。かわいそうにww

 

 

 「だ、駄目ですよ! 御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと...」

 

「そうじゃねえよ黒ウサギ。この喧嘩は、コイツらが売った。そしてヤツらが買った。なのに俺が手を出すのは無粋だってことだ」

 

「あら、分かっているじゃない」

 

「当然! そこら辺はわきまえてるつもりだぜ?」

 

 「あ、ちなみに俺もでないからよろしく。」

 

 「菫さんまで!?何故ですか!?」

 

 「俺はいまんとこノーネームの一員じゃないからな。コミュニティ同士の争いに手を出すわけにはいかないだろ。」

 

 「はあ...。」

 

 「ヤハハ!まあいいじゃねえか!」

 

 

 そうだ黒ウサギ。老けるぞ?

 

 

 「誰のせいだと思ってるんですか!」

 

 

 ------------------------------------------------------

 

 

「そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎する為にいろいろ準備をしていたのですが...」

 

 

 とりあえず復活した黒ウサギがそう言った。ちなみに十六夜たちの方であったことは説明済みだ。それにしても耀の言葉を聞いたジンの反応からして、そうとう水不足だったんだな。

 

 

 「いいわよ、無理しなくて。私達のコミュニティってそれはもう崖っぷちなんでしょう?」

 

 「そこまで気を遣わなくても大丈夫」

 

 「ごめん黒ウサギ。言っちゃった。」

 

 「いえ、いいですジン坊ちゃん。」

 

 「それじゃあ今日はコミュニティに帰る?」

 

 

 ん、じゃあここでお別れかな?

 

 

 「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰り下さい。ギフトゲームが明日なら『サウザンドアイズ』に鑑定をお願いしないと。水樹の事もありますし。」

 

 

 千の目か...。姉さんのスキマを思い出すな。いや~あれは今でも慣れない。

 

 

 「それって俺も行っていいの?」

 

 「ぜひ来てください。菫さんのギフトはとても気になります。空を飛べるうえに分身までできるなんて...。」

 

 「分身はびっくりしたわ。」

 

 「あの球を移動させたのもびっくりした。」

 

 

 まあ飛鳥たちと十六夜の両方についていくには分身が一番手っ取り早いからな。それにしても、十六夜たちと飛鳥たちが合流したとき俺が二人いたときの、黒ウサギとジンの顔は忘れられないな。目を丸くして硬直してた。

 

 

 「まあどんなギフトかは鑑定してもらえばわかるだろ。行こうぜ。」

 

 「そうですね。早速行きましょう♪」

 

 

 

 

 少年少女(約二名違うが)移動中...

 

 

 

 「ここがサウザンドアイズの支店です。」

 

 

 へ~。ここが。ってかあの人店じまいしようとしてるけど大丈夫?

 

 

 「大丈夫じゃないです!ちょっとま「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」な...」

 

 

 お~。なかなか厳格な人だね。

 

 

 「なんて商売っ気のない店なのかしら」

 

 「ま、全くです! 閉店時間の5分前に客を締め出すなんて!」

 

 「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です。出禁。」

 

 「出禁!? これだけで出禁とかお客様舐めすぎでございますよ!?」

 

 

 まあ気持ちはわかるが落ち着け。黒ウサギ。

 

 

 「なるほど、『箱庭の貴族』であるウサギのお客様の無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

 

 あ~この人わかってやってるな。なかなか性根が悪い。まあノーネームなんて相手にしたくないだろうしな。

 

 

 「...わかって言ってますね?」

 

 「ええ。それがなにか?」

 

 

 ふーむ。

 

 

 「黒ウサギ。帰った方がいい。」

 

 「な、何故ですか!?それでは負けを認めるようなものじゃないですか!」

 

 「お前らがノーネームってことをわかってて聞いてくるやつが店番してるとこなんて、どうせ碌なとこじゃない。でかいだけで大したことない店だ。いずれコミュニティを元ぐらいに戻すつもりなら、今から付き合う店を選んだほうだいい。」

 

 「なっ...」

 

 「何を怒ったような顔してんだよ店員さん。サービスが悪い店なんて3流だろ?」

 

 

 こんな客に無愛想な店がいい店なわけがない。これなら小さくても信頼できる店を選んだほうがいいからな。ん、店の奥から何か白いのが飛んできて...

 

 

「いぃぃぃやほぉぉぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」

 

 「キャ、キャア___」

 

 

 お、見事に飛んでって...浅い水路に落ちた。まあ俺たちを湖に落とそうとしたし自業自得だなww つーかあいつ神か?半端ない神力を感じるんだが。

 

 

 「...おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

 

 「ありません」

 

 「じゃあ有料なら」

 

 「やりません」

 

 

  店員さん頭痛そう。まああんな諏訪子みたいなのがのがいたら普通そうなるよな。

 

 

 「フフ!やっぱり黒ウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここかここが良いか!」

 

 「し、白夜叉様!?どうして貴方がここに!?」

 

 

 あいつらまだ水路の中にいるよ。つーか白夜叉ってやつうらやま...ゲフンゲフnけしからん。頼むから飛鳥と耀そんな目で見るな。

 

 

 「ていうか!早く離れて下さい!!」

 

 

 白夜叉と呼ばれる少女を無理やり引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。いい回転だ。そしてそれを十六夜が

 

 

 「菫、パス。」

 

 

 「ゴフッ!?」

 

 

 こっちに蹴ってきた。いや、こんなんいらないんだけど。

 

 

 「よっ。店員さんパース。」 「ガホ!」

 

 「こっちに蹴らないでください。」「なっ!」 ドンガラガッシャーン______

 

 

 店員さんの華麗なスルーにより、店の中は派手に崩れた。

 

 

 「おんしら!飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!それと!何故優しく受け止めなかった店員よ!」

 

 「十六夜様だぜ。以後よろしくな和装ロリ」

 

 「八雲菫。よろしく神様。」

 

 「受け止めるわけないでしょう。はあ...。店の片づけ手伝ってクダサイネ?」

 

 「ヒイッ。わかった。わかったから落ち着け。」

 

 

 店員さん怖え。神様ビビらせるってどんだけだよ。

 

 

 「うう...まさか私まで濡れるなんて」

 

 「菫、コイツ神様なのか?」

 

 「ああ。かなり神力を感じる。」

 

 「ほお。おんし中々おもしろいの。」

 

 「無視しないでください!」

 

 「「因果応報かな/ね」」

 

 「ひどいです...。」

 

 

 黒ウサギいじるのはやっぱおもしろいな。

 

 「お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は...遂に黒ウサギが私のペットに」

 

「なりません!どういう起承転結があってそんなことなるんですか!」

 

 「はっはっは。まあよい。話があるなら店内で聞こう。」

 

 

 こうして俺たちは店の暖簾をくぐった。店員さんは嫌そうだったが、白夜叉が入れてくれた。

 

 

 

 

 

 「このとき、あんな事が起きるのがわかっていたら、決して通らなかっただろうに...。」

 

 「そういうフラグを建てるのはやめてください!」バシーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






分身についてどこで説明するか迷ってたら、すげえ簡単に終わっちゃいました...。

 あんだけひっぱといてごめんなさい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話 やっぱり神様はヤバい。

 明けましておめでとうございます。凪玖です。(←遅えよ)

 実家に帰省してゴロゴロしてました~。

 もうすぐ学校が始まることが非常に残念です。


 

 「生憎店は閉めてしまってな。私の部屋で勘弁してくれ。」

 

 

 お~。この中庭すげえな。白玉楼と同じくらいあるんじゃないか?

 

 

 「改めて自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えておるサウザンドアイズの幹部の一人白夜叉じゃ。この黒ウサギとは少々縁があってな、コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸している器の大きい美少女と認識してくれ。」

 

 

 自分で器が大きいって言うやつって大抵小さいよな。

 

 

 「外門って何?」

 

 「箱庭の階層を示す、外壁にある門でございます。数字が若い程都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つモノたちが住んでいます。ちなみに、私たちのコミュニティは一番外側にある七桁の外門ですね。」

 

 「そして私がいる四桁以上が上層と呼ばれる階層だ。その水樹を持っていた白蛇の神格も私が与えた恩恵なのだぞ。ところでその水樹はどうやって手に入れたのじゃ?」

 

 「十六夜がぶっとばした。」

 

 「なんと!?ゲームをしたのではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格の神童か?」

 

 「いえ、違うと思います。神格なら白夜叉様も見た瞬間に分かる筈ですし」

 

 

 神格っつーのを持ってると神力が使えるのかな?

 

 

 「その神格ってのはなんだ?」

 

 「神格というのは神霊に神として認められた位を指し、種族・物質の霊格を最高位にまで引き上げる恩恵じゃな。例えば、蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に、人に与えれば現人神や神童に、鬼に与えれば天地を揺るがす鬼神となる。」

 

 

 ん?じゃあ早苗ってああ見えて人の最高位なのか。霊夢に捻り潰されてたけど。

 

 

 「どうした?不思議そうな顔をして。」

 

 「いや、知り合いに現人神がいるんだけど、人間の巫女に捻り潰されてたなーって思って。」

 

 「...その巫女、相当やばいぞ。」

 

 「お前の世界にもおもしろいやつがいるんだな。」

 

 「ああ。楽しいところだぞ。」

 

 

 そうかー。やっぱ霊夢って天才なんだな。

 

 

 「そういえば夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

 「知り合いも何もアレに神格を与えたのはこの私だ」

 

 

 あ、十六夜の目がキラキラしてる。

 

 

 「へぇ?じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」

 

 「ふふん、当然だ。私は東側の“階層支配者フロアマスター”だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティで並ぶ者がいない、最強の主催者ホストなのだからの」

 

 

 ...あ~3人とも目がキラキラしちゃってるよ。

 

 

 「なんだここにいるじゃねぇーか。面白そうな相手がよぉ!!」

 

 「つまり貴方のゲームに勝てば私達のコミュニティは東側で最強になるわよね」

 

 「...うん」

 

 「やめとけって3人とも今のお前らじゃ勝てねえって。」

 

 「ほう。俺が負けると?」

 

 

 そんな睨むなって。

 

 

 「まあ無理だな。コイツから半端ない神力を感じる。十六夜の霊力の数倍はあるぞ。」

 

 

 でもなんかちょっと違和感があるんだよな~。なんでだろう。

 

 

 「菫さんの言うとおりですよ!!御三人様は一体何を考えているのですか!?」

 

 

 慌てる黒ウサギを右手で制す白夜叉。

 

 

 「よいよい黒ウサギ。私も遊び相手に窮しておるうえな」

 

 「ノリがいいわね。そういうの好きよ」

 

 「やめとけって...。」

 

 「ふふ、そうか。じゃがしかし、一つ確認しておく事がある」

 

 「なんだ?」

 

 

 白夜叉は着物の裾から何やらカードらしきものを取り出し、壮絶な笑顔で一言、

 

 

 

 

 「おんしらが望むのは“挑戦”か

もしくは“決闘”か?」

 

 

 

 

 

刹那、視界に爆発的な変化が起きた。光に包まれ、俺たちが投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔。そして、水平に太陽が廻る世界だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 短え...。

 次は今回よりはだいぶ長くなる予定です。
 
 それでもあんまり長くないけど。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話 ここは広いな大きいな

 祝UA5000突破&お気に入り登録50突破!

 これからもがんばります!


 「「「「...なっ...!?」」」」

 

 

 いや何これ。おかしいでしょ。白夜叉どんだけ広い土地持ってんだよ。

 

 

 「今一度名乗り直し、問おうかの。私は"白き夜の魔王"――――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への"挑戦"か?それとも対等な"決闘か?"」

 

 白き夜の魔王ね...

 

 

「水平に回る太陽と……そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

 

白夜叉が両手を上げると、地平線の彼方の雲海が瞬く間に裂け、薄明の太陽がさらされる。チートだろこれ。

 

 

 「なあ白夜叉。」

 

 「なんじゃ?」

 

 「さっきから気になってたんだが、お前から2種類の神力を感じるんだ。しかも、片方の神力がもう片方を抑えている。これはどういうことだ?」

 

 

 神力には、個人差がある。例えば、神奈子と諏訪子では神力の雰囲気が違うので、後ろにどちらかが立っていたら、どちらが立っているのかわかるのだ。そして、こいつからは2種類の神力を感じる。こんなことは初めてだ。

 

 

 「...鋭いの。説明してやる。階層支配者である私は下層に干渉する条件として仏門に帰依し、本来持つ星霊の力を封印しているんじゃよ。魔王も実は昔のことで、今は元魔王じゃ。」

 

 「ってことは、封印が解かれたらもっと強くなるのか?」

 

 「当然じゃ。」

 

 「「「「うわあ...」」」

 

 

 これより強くなるって...。さすが太陽の星霊だわ。

 

 

 「さて、話を戻すか。おんしらの返答は?"挑戦"ならば、手慰み程度に遊んでやる。――――だがしかし、"決闘"を望むのならば、話は別。命と誇りの限り戦おうではないか」

 

 

 ...さて。おもしろくなってきた。十六夜たちはプライドが邪魔して取り下げられないみたいだな。

 

 

 「...参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

 「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるということかの?」

 

 「ああ。これだけのゲーム盤を用意できるんだからな。アンタには資格がある。――――――いいぜ、今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

 苦笑とともに吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は堪えきれず高らかに笑い飛ばした。プライドの高い十六夜にしては最大限の譲歩なのだろうが、「試されてやる」ってwww 

 

 

 「く、くく……して、ほかの者たちも同じか?」

 

 「……ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

 「右に同じ」

 

 苦虫をかみつぶしたような表情で返事をする二人。まあここは空気を読んで...。

 

 

 

 

 

 

 「決闘で。」

 

 「ななな何を考えているのですか菫さん!?」

 

 「ただ、普通に決闘したら瞬殺されるから、俺が設定したルールで決闘な。」

 

 「それ決闘って言うの?」

 

 「対等なルールで命と誇りの限り戦うなら決闘だろ?」

 

 「なるほどな。その手があったか。」

 

 

 正直断られたら挑戦にするしかないけど、多分白夜叉なら断らないだろ。

 

 

 「かっかっか。おもしろいやつだの。よろしい、決闘をしようではないか。ただ、先にその3人の挑戦を終わらせてからでいいか?」

 

 「ああ。構わない。」

 

 「よし。では試練だ。」

 

 

 そう言って白夜叉が左手を上げる。すると、彼方にある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。何だ今の。

 

 「何、今の声。初めて聞いた」

 

 「ふむ………あやつか。おんしら三人を試すにはうってつけかもしれんの」

 

 湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、ちょいちょいと手招きをする白夜叉。すると体調5mはあろうかという獣が巨大な翼を広げて空を滑空し、風のごとく4人のもとに現れた。

 こいつまさかグリフォン?

 

 

 

 「グリフォン……嘘、本物!?」

 

 「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。"力" "知恵" "勇気"のすべてを備えたギフトゲームを代表する獣だ」

 

 

 白夜叉が手招きする。グリフォンは彼女のもとに舞い降り、深く頭を下げて礼を示した。礼儀正しいグリフォンだな。

 

 

 「さて、肝心の試練だがの。おんしら三人とこのグリフォンで、"力" "知恵" "勇気"の何れかを比べあい、背にまたがって湖畔を舞うことができればクリア、という事にしようか」

 

 

 白夜叉が双女神の紋が入ったカードを取り出す。すると虚空から輝く羊皮紙が現れた。白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記していく。ああやってやるんだ。

 

 

 「ギフトゲーム名 "鷲獅子の手綱"

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

         久遠 飛鳥

         春日部 耀

         

 ・クリア条件   グリフォンの背にまたがり、湖畔を舞う。

         "力" "知恵" "勇気"の何れかでグリフォンに認められる。

 

 ・敗北条件    降参か、プレイヤーが上記の条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名のもと、ギフトゲームを開催します。

                           "サウザンドアイズ" 印」

 

 

 

 「私がやる」

 

 

 手挙げるの早。てかすごい熱い視線だな。そんなこいつが好きなのか?

 

 

 「にゃ~ににゃ~。」

 

 「大丈夫、問題ない」

 

 

 耀、それフラグ。

 

 

 「ok、先手は譲ってやる。失敗するなよ」

 

 「気を付けてね、春日部さん」

 

 「うん、頑張る」

 

 

 

 

 

 

---------------------------------------

 

 

 

 

 

 この後耀は無事にクリアした。

 

 

 空飛んだ(というか歩いた?)ときはびっくりしたな~。

 

 

 「さて、おんしの番じゃ。待たせたな。してどのようなルールだ?」

 

 

 それじゃ、やりますか~。

 

 

 「ああ。ルールは_____」

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回は決闘になります。内容は東方わかる人ならわかるあれと、もう一つのどちらにしようか考えているのですが、おそらく後者になります。
 理由としては、白夜叉ができなさそうというのと、作者の文章力だとうまく表現できないというのがあります。
 でもそうすると東方要素かなり無くなるんですよねえ...。

 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話 はじめてのぎふとげえむ

 こんにちは。凪玖です。今回は少し書き方が変わります。

 

 今回は決闘です。あまり期待はしないでください。

 




             

 「ルールは簡単だ。まず、お前がこの球を真上に投げる。そして俺とお前が戦う。球が地面に着く前にお前が俺を戦闘不能にするか、俺が降参すればお前の勝ち。球が地面に着くか、俺がお前を戦闘不能にしたり、お前が降参したりすれば俺の勝ちだ。ただし、球は全力で投げろ。」

 

 

 そう言って俺は例の球を出す。さて、どうくるか。

 

 

 「なるほど。時間制限を設けるわけか。考えたの。その球を投げるのは私、つまり私が制限時間を設定できるから、それで対等ということか。ただ、使うのはそれではなくこの球でいいか?仕掛けなどはないから安心しろ。」

 

 

 あ、球に仕掛けがあるのばれてた。ま、そりゃそうか。

 

 

 「別にいいよ。」

 

 「よかろう。その勝負受けた。念のため、もう一度確認するが、球が地面に着いたら、私の負けだな?」

 

 「ああ、そうだ。」

 

 

 白夜叉はニタリと笑った。やっぱりこの決闘のポイントに気付いたみたいだな。

 

 

 「では始めようか。」

 

 

 そういうと、俺と白夜叉の手にさっきみたいな契約書類があらわれた。

 

 

 『ギフトゲーム名“太陽との球遊び”

 

 ・プレイヤー一覧 八雲菫

 

 ・クリア条件 白夜叉が投げた球が地面に着く

        白夜叉を戦闘不能にする

        白夜叉の降参

 

 ・クリア方法 白夜叉と戦い、打倒する。

        球を地面に着かせる

       

 

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと旗印とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 “サウザンドアイズ”印』

 

 

 「では球を貰おうか。」

 

 「ほい。」

 

 

 俺は白夜叉に球を渡した。

 

 

 「よし。ではいくぞ。そりゃあああ!」

 

 

 そして白夜叉思いっきり球を真上にブン投げる。そして俺は、

 

 

 

 

 全速力で真上に飛んだ。。

 

 

菫side out

 

 

-----------------------------------------------

 

十六夜side

 

 「なんで真上にとんだんですか!?それになんで白夜叉様は動かないんですか!?」

 

 「わかってねえな黒ウサギ。この決闘で最も重要な所は、球の行方だ。それで勝負が決まる。」

 

 

 そう、この勝負は、どちらが球を確保するか。それが最も大きなポイントだ。

 

 

 「どういうことですか?」

 

 「黒ウサギ、白夜叉と菫はどっちが強い?」

 

 「それはもちろん白夜叉様です。」

 

 「だろ?しかもおそらくかなり圧倒的な差がある。となると、白夜叉が戦闘不能になったり、降参したりするのはまずありえない。つまり、菫が勝つには、球を地面に着かせるしかないし、白夜叉は球が地面につかなければ勝てる。どうすれば球が絶対に地面に着かないと思う?また、どうすれば確実に地面に球を着かせられる?」

 

 

 ハッとした顔をする黒ウサギ。やっとわかったか。

 

 「自分で球を持つ...。」

 

 「そうだ。白夜叉は自分で持ってれば確実に地面に着かないし、菫も自分で持てば白夜叉に球を取られる可能性がぐっと減る。つまり球をとったほうが勝つ。」

 

 白夜叉が動かないのはおそらく飛べないからだろう。タイミングをはかって跳躍するのだろう。このままだと菫が勝つ可能性が高いが...。どうなるだろうな。楽しみだ。

 

 

 十六夜side out

 

------------------------------

 

 菫side

 

 

 さて、全力で飛んでいるのはいいものの、一向に球に追いつける気配がしない。むしろ引き離されていく。おそらく追いつくのは最高点に達して自由落下を始めた後だろう。白夜叉怪力すぎだろ...。

 

 

 

 

 

 あ、止まって落下し始めた。白夜叉も動かないし、これは勝ったかな....!?

 

 なんか白夜叉が凄いスピードで来た。ヤバイ。俺の数倍はあるぞ。ここままだとすぐに追いつかれ...

 

 

 「久しぶりじゃの。そしてさらばじゃ。」

 

 

 速すぎだろ!?そして白夜叉の踵落としをくらった俺は、猛スピードで落下していく。あ、あいつ勝ち誇った顔してやがる。

 

 

 菫side out

 

 

---------------------------

 

 

 白夜叉side

 

 

ふむ。中々やるやつじゃったな。空を飛べることを利用して球を確保しようとしていたのは評価できる。まあだがやはり私の脚力には及ばんな。さらに炎を跳躍するときのブースターにすれば、あの程度の距離ならすぐ埋められる。

 

 

 さて、球がすぐそこに来たし、これを確保して菫を倒すk...!?

 

 

 

球が消えた!?

 

 

 そして次の瞬間、私の手に羊皮紙があらわれた。

 

 

 

 

 『勝者 八雲菫』

 

 

 




 いかがでしたでしょうか。今回はいろんな人物の視点ですこしわかりにくかったかもしれません。

 さて、次回は菫君ののギフトがわかります。

 ...結構チートです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話 完全って不可能じゃないの?

 お久しぶりです。
 とある知り合いにこれ書いてることがばれて馬鹿にされてちょっと鬱です。


 どうでもいいんですけどマッスグマって波乗り覚えるんですね。(ほんとにどうでもいい)


 決闘が終わると、黒ウサギたちが駆け寄ってきた。

 

 

 「お見事でしたよ!」

 

 「ああ。なかなか見応えがあったぞ。」

 

 「ん。さんきゅ。」

 

 「まさか私が負けるとは思わなかったぞ。あの球も最後一瞬消えたかと思ったぞ。」

 

 「え、消えたんじゃないの?」

 

 「違うぞ飛鳥。まあ普通はそう見えるだろうけどな。あれはギフトによって高速で移動させたんだ。」

 

 「へ~。どんなギフトなのかしら。」

 

 「白夜叉に聞いてみれば?」

 

 「いや、私にはわからん。」

 

 

 なんだ、わかんないのかよ。そういうのは苦手なのか?まあそっちのほうが知られないで済むからありがたいんだけど。

 黒ウサギなんでちょっとがっかりした顔してるんだ?

 

 「え?白夜叉様でも鑑定出来ないのですか? 今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

 なるほどそういうことか。

 

 黒ウサギの言葉にゲッ、と気まずそうな顔をする白夜叉。

 

 「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

 白夜叉はゲームの賞品として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。

 しばらく考える素振りを見せ、ふっと思い付いたように顔を上げた。なんか代案があるのかな?

 

 「ふむ。何にせよ“主催者ホスト”として、“星霊”のはしくれとして、見事試練を乗り越え決闘を制したおんしらには“恩恵ギフト”を与えねばならん。ちょいと贅沢ぜいたくな代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

 パンパンと二つ柏手かしわでを打つ。

 すると前に、光り輝くカードが現れた。菫色だ。なんだろうこれ?ん、なんか書いてある。

 

 

 八雲菫 

 ギフトネーム “間の調整者《はざまのちょうせいしゃ》”

        “同化《どうか》”

        “完全な球《かんぜんなきゅう》”

 

 

 これってギフトか?ってことは俺の「間を操る程度の能力」が「間の調整者」でこの球がこの「完全な球」ってことか?つーか完全ってそのままの意味だとしたらこれそうとうやばいぞ...。

 ん、黒ウサギが覗き込んできた。

 

 

 「ギフトカード!」

 「お中元?」

 「お歳暮?」

 「お年玉?」

 「いや、何か書いてあるし年賀状だな。」

 「ち、違います! というかなんで皆さんそんなに息が合っているのです!? このギフトカードは顕現けんげんしているギフトを収納可能で、それも好きな時に再顕現させることの出来る超高価なカードなのですよ!」

 「つまり、素敵アイテムって事でオッケーか?」

 「だからなんで適当に聞き流すんですか! あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

 へ~。これそんなレア物なんだ。

 そこに白夜叉が説明を加えた。

 

 「そのギフトカードとは、正式名称を“ラプラスの紙片”──即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとは、おんしらの魂と繋がった“恩恵”の名称。鑑定は出来ずとも、それを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

 じゃあやっぱりこれは...。

 

 「へえ? じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

 へ? と白夜叉が十六夜のギフトカードを覗き込む。

 そこには確かに“正体不明”と書いてあった。

 白夜叉は怪訝けげんに眉を顰ひそめる。ぬえみたいな能力かな?

 

 「...いや、そんな馬鹿な」

 

 パシッと白夜叉は彼の手からギフトカードを奪い取る。

 何やら尋常ならざる雰囲気を感じるので、誰も何も言わず静観する。

 

 「“正体不明”にだと...? いいやありえん。全知である“ラプラスの紙片”がエラーを起こすはずなど」

 「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的はこの方がありがたいさ」

 

 

 そう言って、十六夜は白夜叉からギフトカードを取り上げる。

 しかし白夜叉は未だ納得できていないのか、探るような視線を向けていた。

 どうやらギフトそのものが正体不明らしい。すげえな。

 さて、俺のも聞いてみるとするか。

 

 

 「なあ白夜叉。これってどういう意味だ?」

 

 「なんじゃ?間の調整者か。なかなか面白そうなギフトじゃな。他には...。なっ。完全な球だと!?」

 

 この反応はそのままの意味ってことだな。やばえな、これ。

 

 

 「おいおい、まじかよ...。それ俺の正体不明並にやばくないか?」

 

 「俺もそう思う。十六夜。」

 

 「完全な球ってそんなすごいの?」

 

 

 耀はわかってないみたいだな。

 

 

 「凄いなんてものじゃない!これは人類最終試練並の物じゃぞ!」

 

 「じ、人類最終試練!?」

 

 

 黒ウサギがかつてないほど驚いてる。人類最終試練ってやばそう。

 

 

 「何がそんなすごいの?」

 

 「ん~まあ簡単に言うと、球を作るには円周率を使うんだけど、その円周率は無限に数字が続くんだ。」

 

 「そんなの矛盾してるじゃない。」

 

 「その通りだ飛鳥。だから、完全な球に限りなく近づけることはできるが、完全な球は絶対に作れない。はずなんだけどなあ...。」

 

 「...これは、誰が、どうやって作ったんじゃ?」

 

 「俺と姉さんが協力して作った。まあ作った目的は違って、完全な球ってことは今初めて知ったんだけどな。」

 

 「そうか...。おんしいったい何者だ?」

 

 「秘密。まあそんな大した者じゃないよ。」

 

 「人類最終試練並の物を作る奴が大したことない奴なわけないじゃろうが...。まあ、今日の所は本拠に帰るといい。元の世界に戻るぞ。」

 

 

-----------------------------------------------------------

 

 

 

 「今日はどうもありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦する時は対等な条件で挑むのだもの」

 「ああ。吐いた唾つばを呑み込むなんて、恰好かっこう付かねえからな。次は懇親こんしんの大舞台で挑むぜ」

「ま、がんばれ~。」

 「ふふ、よかろう。楽しみにしている。……ところで」

 

 白夜叉はスッと真剣な顔で日向達を見る。

 

 「今更だが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは黒ウサギ達のコミュニティの現状を把握はあくしているのか?」

 「あん? ああ、名前とか旗とかの話か? それなら聞いたぜ」

 「ならそれを取り戻すために、“魔王”と戦わねばならんことも?」

 「勿論もちろんだ。全てを承知した上で、俺達は黒ウサギ達に協力することにした」

 「まだ俺は決めてないけどな。」

 「そうか。……ふむ、黒ウサギは良き同士と巡り会えたようだの」

 

 白夜叉は優しげな笑みを黒ウサギに向ける。

 彼女の苦労を誰よりも知っているからこそ、色々と思うところがあるのだろう。こういう一面も持ってるんだな。

 しかし次の瞬間、白夜叉は一転して厳しい表情になった。

 

 「じゃが、だからこそ言っておく。仮に今後、おんしらが魔王と一戦交える事があるとすれば……そこの娘二人は確実に死ぬぞ」

 

 咄嗟とっさに言い返そうとする飛鳥と耀だったが、白夜叉の放つ有無を言わせない威圧感に押し黙る。まあそうだろうな。こいつらはまだまだ未熟だ。

 

 「..ご忠告ありがと。肝に命じておくわ」

 

 白夜叉はそれだけを伝えると、再び柔和な笑みに戻った。

 

 「うむ、くれぐれも用心するようにな。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来るといい」

 

 「では本拠に行きましょうか。」

 

 あ、やべ。俺ノーネームに入ってないジャン。

 

 

 「菫様は本日は客人として扱いますよ。一緒に行きましょう。」

 

 「さんきゅー。助かる。」

 

 

 こうして俺たちは、“サウザンドアイズ”支店を後した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 “同化”についてはいずれわかります。

 ちなみに菫色というのは紫みたいな色です。彼の名前もこの菫色からとりました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十話 魔王の名は伊達じゃない!

 更新ペースが下がっていく上に、文字数も減っていく...。


  白夜叉とのゲームを終え、噴水広場を越えて俺たちは30分ほど歩いた後、“ノーネーム”の居住区画の門前に到着した。

 門を見上げると、旗が掲げてあった名残のようなものが見える。それにしてもずいぶんと広いな。

 

 「この中が我々のコミュニティでございます。しかし本拠の館は入り口から更に歩かねばならないので御容赦ごようしゃください。この近辺はまだ戦いの名残がありますので……」

 「戦いの名残? 噂の魔王って素敵なネーミングな奴との戦いか?」

 「は、はい」

 「丁度いいわ。箱庭最悪の天災が残した傷跡、見せてもらおうかしら」

 

 さっきから飛鳥は機嫌が悪いな。

 プライドの高い彼女からすれば、虫のように見下されたという事実が気にくわないのだろう。ま、それをばねにして強くなってくれればいいけどな。

 黒ウサギは躊躇とまどいつつも門を開ける。

 すると正面から乾ききった風が吹き抜けた。

 ちょ、砂で前がよくみえん。

 やがて開けた視界の先には、見渡す限りの廃墟が広がっていた。

 

 

「……っ、これは……!?」

 

  街並みに刻まれた傷跡を見た飛鳥と耀は息を呑み、十六夜は無言のままスッと瞳を細める。

 俺もこれには顔を顰めざるをえなかった。

 十六夜は木造の廃墟に歩み寄って、囲いの残骸をその手に取る。

 少し握ると、木材は乾いた音を立てながら崩れていった。

 

「……おい、黒ウサギ。魔王とのゲームがあったのは──今から何百年前の話だ?」

「僅か三年前でこざいます」

「ハッ、そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この風化しきった街並みが年前と?」

 

 ──そう。

 彼ら“ノーネーム”のコミュニティは、まるで何百年という時間経過で滅んだように崩れ去っていたのだ。

 咲夜の能力に似ていいるが、あいつはここまで広い範囲の時間の経過を早めることができないし、こんな長時間を早めることもできない。これは相当だぞ...。下手したら白夜叉よりやばいんじゃないか?

 

 「時間の経過を早められるのは知り合いにいるが、ここまで広い範囲、長時間は無理だ。これをするには白夜叉と同等かそれ以上の実力がいるな。」

 「ああ。これはあり得ない。」

 

 「ベランダのティーセットがそのままテーブルに出ているわ。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」

 「……生物の気配も全くない。整備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて」

 

 彼女達の感想は、俺や十六夜の声よりも遙かに重い。おそらく相当ショックなんだろう。

 黒ウサギは廃墟から目を逸そらし、朽ちた街路を進む。

 

 「……魔王とのギフトゲームは、それほど未知の戦いだったのでございます。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないように屈服させます。僅かに残った仲間達も皆心を折られ...コミュニティから、箱庭から去って行きました」

 

 そうか...。確かにこれくらいすれば反抗する気も失せるだろうな...。現に耀と飛鳥はこれと戦うなんて信じられないといった顔をしている。

 

 「魔王──か。ハッ、いいぜいいぜ、いいなぁオイ。想像以上に面白そうじゃねえか……!」

 

 こいつは例外だが、それでもまだまだ実力が足りない。

 黒ウサギは不安そうな顔をしている。おそらく十六夜達を巻き込んでしまっていいのか悩んでるのだろう。

 

 「なあ黒ウサギ。」

 「な、なんでしょうか?」

 「悩む気持ちがわかるが、もう戻れないだろ?だったら覚悟を決めろ。俺も協力するから。」

 「え、ということは?」

 「ああ。俺もこのコミュニティに入る。」

 「あ、ありがとうございます!しかし何故ですか?魔王の恐ろしさがわかったのに。」

 「ん~、なんつーか、このコミュニティに入れば、成長できそうだなって思ったんだよ。」

 「成長ですか?」

 「ああ。十六夜達もこれからどんどん成長していくだろうし、このコミュニティもどんどんこれから成長していくだろ。そんな所にいたら、俺も成長できそうだな~と思って。」

 

 そう。俺は強くならなければならない。あんなことを2度と起こさないように。

 

 「お、菫も入るのか?」

 「ああ。みんなこれからよろしくな。」

 「ええ、よろしく。」

 「よろしく。」

 

 「さて、菫も入ったし、マジで魔王をぶっ倒して旗印と名を取り戻さないとな!」

 「そうね。強くならないと。」

 「うん。がんばる。」

 「ま、がんばろ~ぜ。」

 

 あ~やっぱ仲間っていいね。

 

 「み、みなさん...。」

 「つーわけでだ黒ウサギ。俺もよろしく頼むぜ」

 「私もよろしくお願いするわ、黒ウサギ」

 「……よろしく、黒ウサギ」

 「よろしく~。」

 

 

 「...YES。よろしく、お願い致します」

 

  黒ウサギは涙ながらも満面の笑みで、彼らにそう告げた。

 

 

 

 

 





 次はがんばって早く投稿します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十一話 ここは賑やかだ。

 すいませんでした。
 きずいたら活動報告を書いてから3週間たっていました。
 修学旅行もテストもオワッタので、これからペース戻します。
 理科が...。


 その後俺たちは廃墟を抜け、徐々に外観が整った空き地が立ち並ぶ場所に出た。

 そしてそのまま居住区を素通りし、水樹が貯水池に設置されるのを見物しに行った。

 貯水池にはどうやら先客がいたらしく、ジンとコミュニティの子供達が清掃道具を持って水路の掃除を行っていた。

 

「あ、みなさん! 水路と貯水池の準備は整っています!」

 

 ワイワイと騒ぐ子供達は、黒ウサギが帰って来たと見るや否や途端に彼女の傍そばに群がる。黒ウサギ人気者だな。

 

「黒ウサのねーちゃんお帰り!」

「眠たいけどお掃除手伝ったよ!」

「ねえねえ、新しい人達って誰!?」

「強いの!? カッコいい!?」

「YES! とても強くて可愛い人達ですよ! それにとびきりカッコいいです! 皆に紹介するから一列に並んでくださいね」

 

 パチン、と黒ウサギが指を鳴らすと、子供達は一糸乱れぬ動きで横一列に並ぶ。

 数は二十人前後だろう。

 中には猫耳や狐耳の少年少女もいた。

 それにしても...多いな。

 まあこれからこいつらと生活していくわけだし、楽しくやってけたらいいな~。。

 コホン、と仰々ぎょうぎょうしく咳き込んだ黒ウサギは、皆に俺たちを紹介する。

 

「右から順に八雲菫さん、逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さんです。皆も知っての通り、コミュニティを支えるのは力あるギフトプレイヤー達です。ギフトゲームに参加できない者達はギフトプレイヤーの私生活を支え、励まし、時に彼らのために身を粉こにして尽くさねばなりません」

「あら、別にそんなのは必要ないわよ? もっとフランクにしてくれても」

「駄目です。それでは組織は成り立ちません」

 

 飛鳥の言葉を、黒ウサギは厳しい音で断じる。

 やっぱりしっかりするところはするんだな。こういうきちっと雰囲気久しぶりだな。

 

 「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し、彼らのもたらす恩恵で初めて生活が成り立つのでございます。これは箱庭の世界で生きていく以上、避けることが出来ない掟おきて。子供のうちから甘やかせば、この子達の将来のためにもなりません」

 「...そう」

 「俺ら責任重大だな。」

 

 黒ウサギめっちゃ真剣だな。たった一人でコミュニティを支えていた者だけが知る厳しさなのだろう。これからはがんばらないとな。

 

 「此処ここにいるのは子供達の年長組です。ゲームには参加出来ないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子もおりますから、何か用事を言い付ける時にはこの子達を使ってくださいな。みんなも、それでいいですね?」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

 キーーーーーーーーーーン。...耳痛てえ。

 

 「ハハ、元気がよくていいじゃねえか」

 「そ、そうね……」

 

 十六夜よく笑えるな。そういうところは尊敬するわ。

 

 

----------------------------------------------------

 

 

 

 「ちょ、少しはマテやゴラァ!! 流石に今日はこれ以上濡れたくねぇぞオイ!!」

 「お前水難の相あるなwwwwwwww」

 

 

 ----------------------------------------------------

 

 

 いやーさっきはおもしろかったw それにしてもあの水樹すごかったな~。これで子供たちがバケツで水汲みに行く必要も無くなったしよかったよかった。

 

 そして屋敷に着いたわけですが...。

 

 

...デカい。これ紅魔館並にあるんじゃね?

 

 「遠目から見てもかなり大きいけど........近づくと一層大きいね。どこに泊まればいい?」

 「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位から最上階に住む事になっております……けど、今は好きなところを使っていただいて結構でございますよ。移動も不便でしょうし」

 「そう。そこにある別館は使っていいの?」

 

そう言って飛鳥は屋敷の脇に建つ建物を指さした。

 

 「ああ、あれは子供達の館ですよ。本来は別の用途があるのですが、警備の問題でみんな此処に住んでいます。飛鳥さんが百二十人の子供と一緒の館でよければ..「遠慮するわ」」

 

 即答だな。まあ騒がしそうだし俺も遠慮したいな。

 

 「これからどうしますか?」

 「「「「風呂入りたい」」」」

 「...息ピッタリですね。わかりました。湯殿に行きましょう。」

 

 やった~。ここの風呂きっとでかいんだろうな~。

 

 

 少年少女移動中...。

 

 

 「い、一刻ほどお待ちください! すぐに綺麗にいたしますから!」

 「掃除がんば~。」

 「これからどうする?」

 「じゃあ一旦自分の部屋に行って、その後貴賓室に集合しましょう。」

 「わかった。」

 

 --------------------------------------------------------

 

 

「ニャー、ニャニャーニャーニャ?」

「駄目だよ。ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと」

 

 うーむなんて言ってんのかさっぱりわからん。

 

 「へぇ~。本当に猫の言葉が分かるのね」

 「春日部すげえな。」

 「フシャー! ニャニャーニャー! ニャニャニャーニャニャ!」

 「駄目だよ、そんなこと言うの」

 

 三毛猫なんて言ったんだ?。そのあと少しばかり話していると、廊下から黒ウサギの声がした。

 

 「ゆ、湯殿の用意ができました! 女性様方からどうぞ!」

 「ありがと。先に入らせてもらうわよ、十六夜君、菫君。」

 

 まあなんかいるしな。それでいいだろ。

 

 「俺は二番風呂が好きな男だから特に問題はねえよ」

 「俺もいいよ。十六夜と話したいことがあるしな」

 

 

 

 さて、女性陣は行ったな。

 

 

 

 「さて───今のうちに、外の奴らと話をつけにいくか」

 「やっぱ気づいてたんだね。」

 「ヤハハ。この俺が気付かないわけねーだろ」

 「まあそりゃそうか。んじゃいくか。」

 「おう!」

 

 外にいるのは5人か。霊力と妖力の両方を感じるから、半人半妖か?

 

 ------------------------------------------

 

あーもう30分くらいたつよ。早くしてくんねえかなー。

 

 「おーい…….そろそろ決めてくれねえと、俺達が風呂に入れねえだろうが」

 「早くしてもらえないかなー。」

 

 十六夜が幾つかの石を広い、木陰に軽く投石した。

 

 「よっと!」

 

 ズドガァァン!! と軽いフォームからは考えられないデタラメな爆発音が辺り一帯の木々を吹き飛ばし、同時に現れた人影を空中高く蹴散らせ、別館の窓ガラスが振動した。相変わらずの馬鹿力。

 

 「な、なにごとですか!?」

 

 別館から、何事かと出てきたジンが慌てながら俺達に問う。

 

 「侵入者じゃねえの? ほら、フォレスト・ガロとか言う所の」

 「な、なんというデタラメな力…….! 蛇神を倒したというのは本当の話だったのか」

 「あぁ…….これならばガルドの奴とのゲームに勝てるかもしれない」

 

 意識が残っていた侵入者はかろうじて立ち上がり、十六夜達を見つめる。

 

 「なんだ? 人間じゃねえのか?」

 「我々は人をベースに様々な“獣”の恩恵ギフトを持つ者。しかし恩恵ギフトの格が低いため、このような中途半端な変幻しかできないのだ」

 

 妖怪じゃなくて獣だったか。

 「恥を忍んで頼む! 我々の….いや、魔王の傘下であるコミュニティ“フォレスト・ガロ”を、完膚なきまでに叩き潰してはいただけないでしょうか‼」

 「嫌だね」

 「うわ十六夜バッサリ言うねー。」

 「まあな。オマエ達、アレだろ? ガルドとやらに人質取られてる連中だろ? ここにいるのも、命令されてガキ共を拉致しに来たってところか?」

 「は、はい。まさかそこまで御見通しだったとは露知らず失礼な真似を…….我々も人質を取られている身分、ガルドには逆らうこともできz「あぁ、その人質な。もうこの世にいねぇから。はいこの話題終了、サヨナラ~」――….なっ!?」

 「い、十六夜さん!!」

 「あー待て、ジン」

 

 ジンが慌てた様子で入ってくる。でも今は十六夜に任せたほうがいいな。

 

 「何で止めるんですか! 菫さん!」

 「オマエこそ何で隠そうとするんだ?どうせ、耀達が勝てばバレることだろ?」

 「まったくだぜ」

 「それにしたって言い方というものがあるでしょう!」

 「ハッ、気を使えってか? 冗談キツいぜ御チビ様。よーく考えてみろ。」

 「まあそうだな。人質さらってんのはこいつらだからな。

 

 ジンは漸く気づいた様で、はっと振り返る。きずくの遅いな。

 

 「犯罪者のお願い聞くほど優しくないからね~。」

 「そ、それなら、俺達の仲間や人質は本当に…….」

 

 侵入者は震えた声で聞いてきた。

 

 「...はい。ガルドは人質をさらったその日に殺していたそうです」

 「..そ、そんな!」

 

 ...犯罪者とはいえ同上するな。

 

 突如、十六夜がクルリと振り返った。まるで新しい悪戯を思い付いた子供のような笑顔で侵入者の肩を叩き、

 

 

 「お前達、“フォレスト・ガロ”とガルドが憎いか? 叩き潰してほしいか?」

 「あ、当たり前だ! 俺達がアイツのせいでどんな目にあってきたか….!」

 

 あーなるほどねー。考えるねえ十六夜。

 

 「でもお前たちではできないと?」

 

 唇を噛みしめる侵入者達。

 

 「ア、アイツはあれでも魔王の配下。恩恵ギフトの格も遥かに上だ。俺達がゲームを挑んでも勝てるはずがない! いや、万が一勝てても魔王に目を付けられたら」

 「その“魔王”を倒す為のコミュニティがあるとしたら?」

 「ど、どういうことです?」

 「このジンが、魔王を倒すためのコミュティを・作ると言っているんだ」

 「なっ!?」

 

 侵入者一同含め、ジンでさえ驚愕した。

 

 「魔王を倒すためのコミュニティ…….? そ、それはいったい」

 「言葉の通りに決まってるだろ? 俺達は魔王のコミュニティ、その傘下も含め全てのコミュニティを魔王の脅威から守る。そして守られるコミュニティはこう言え。“押し売り・勧誘・魔王関係御断り。まずはジン=ラッセルの元に問い合わせください”とな」

 「まあそんな感じ。」

 「じょ、」

 

 冗談でしょう!? と言いたかったジンの口を塞ぐ。

 十六夜は勢いよく立ち上がり、まるで強風を受け止めるように腕を広げ、

 

 「人質の事は残念だった。だけど安心していい。明日ジン=ラッセル率いるメンバーがお前達の仇を取ってくれる! その後の心配もしなくていいぞ! なぜなら俺達のジン=ラッセルが“魔王”を倒すために立ち上がったのだから!」

 「おお…..!」

 

大仰な口調で語る十六夜。それに希望を見る侵入者一同。第一段階はうまくいったな。

 

「さぁ、自分たちのコミュニティに帰れ! そして仲間達に言いふらせよ! 俺達のジン=ラッセルが“魔王”を倒してくれると!」

 「わ、わかった! 明日は頑張ってくれ! ジン坊っちゃん!」

 「ま…..待っ…...…..!」

 

ジンの声は、走り去る侵入者一同には届かなかった。俺の腕が解けた時、ジンは茫然自失になって膝を折るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 次の投稿は来週の月曜日です。また遅れないように予告しときます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十二話 打倒魔王って響きいいよね♪




前回指摘があったため、今回から色々書き方を変えました。文字数が減ると思いますがどうか許してください。


凄い形相で俺と十六夜を連れてきたジンは、堪りかねたように大声で叫んだ。

 

「どういうつもりですか!」

「まあそう怒るなよ。“打倒魔王”が“打倒全ての魔王とその関係者”になっただけだろ。」

「まあそうだな。“魔王にお困りの方、ジン=ラッセルまでご連絡ください。”って感じでいんじゃね?」

「全然笑えませんし笑い事じゃありません!魔王の力はさっき充分理解したでしょう!?」

「勿論。あんな面白そうな力を持った奴と戦えるなんて最高じゃねえか。」

 

今のは流石に自重すべきだろ十六夜。流石にそれはふざけすぎだ。案の定ジンは絶句して信じられないといった顔をしている。

 

「お面白そう? では十六夜さんは、自分の趣味の為ためにコミュニティを滅亡に追いやるつもりですか?」

 

まあそうなるよなー。ここはフォロー入れとくか。

 

「まあ落ち着けってジン。十六夜はこんなこと言ってるけど、一応これコミュニティ再建のための作戦でもあるから。」

「作戦...?どういうことです?」

 

これは自力でわかって欲しいな。

 

「まず先に確認しておきたいんだけどな。ジンは俺達を呼び出して、一体どうやって魔王と戦うつもりだったんだ? あの廃墟を作った相手や、白夜叉みたいな力を持つのが“魔王”なんだろ?」

 

ジンは黙り込んだ。多分全然考えてなかったんだろう。リーダーがこれじゃほんと心配だな。入るのやめるか。

 

「まず……水源を確保するつもりでした。新しい人材と作戦を的確に組めば、水神クラスは無理でも水を確保する方法はありましたから。けどそれに関しては御二人が想像以上の成果を上げてくれたので、素直に感謝しています」

「おう、感謝しつくせ」

 

ケラケラ笑う十六夜。

 

「んで、続きは?」

「ギフトゲームを堅実にクリアしていけばコミュニティは必ず大きくなります。たとえ力のない同士が呼び出されても、力を合わせればコミュニティは必ず大きくできます。ましてやこれだけ才ある方々が集まれば、どんなギフトゲームにも対応できるはずだったのに...。」

 

うーんまあ10歳のやつが考えたらそんなもんか。

 

「だけど十六夜があんなこといったから、力を付ける前に魔王とゲームしなくちゃいけたいってことか。」

「そうです。それがどれだけ大変なことかわかってるんですか!?」

 

 

ジンは叫ぶと同時に大広間の壁を強く叩いた。よほど腹に据えかねたのだろう。

 

「なるほどねー。要するに何も考えてなかったわけね。」

「なっ。どういう意味ですか?」

「ギフトゲームに参加して力を付けるなんて当たり前だろ。問題は、どうやって魔王を倒すかだ。今お前らは“ノーネーム”なんだぞ?」

「...」

 

ジンは考え込んだ顔をしている。ここまで言ってわかんなかったら俺このコミュニティ入るのやめよう。

 

「おチビ様にヒントだ。前のコミュニティが大きくなったのは、ギフトゲームだけだったのか?」

「...」

「オイ十六夜ヒント出すなよ。」

「まあ許せ。多分このままじゃわかんなかっただろうからな。」

 

やがてジンはハッとした顔をした。まあここまで言えばわかるだろ。

 

「そうか...。先代はギフトゲームだけで大きくなったんじゃない。優れた人材もたくさんいたんだ。でも僕たちは“ノーネーム”。名も旗印もないコミュニティに、十六夜さんたち以外に人材が集まるわけじゃない...。だからリーダーである僕の名前を売って、人材を集めようってわけか。」

 

わかったみたいだな。

 

「80点ってとこかな。さらにいえば、それでもし魔王を倒せば、必ず波紋が広がる。その波紋に反応するのは、魔王と誰かわかるか?」

「同じく“打倒魔王”を胸に秘めた奴ら、だろ?」

「オイ答えいうなよ」

「いや俺としてはここまでおチビ様が理解してくれれば十分だったからな。」

「なるほど...。」

 

ちゃんと理解したみたいだな。まあ及第点だろ。

 

「だから今回はチャンスだぜ?相手は魔王の傘下、しかも勝てるゲーム。被害者は数多のコミュニティ。ここでしっかりおチビの名前を売れば、好スタートが切れるぞ。」

「ま、ジンが懸念するように他の魔王を引き寄せる恐れは大きいだろうが、黒ウサギが言ってたように魔王って隷属させられるんだろ?だったら逆にコミュニティを強くするチャンスにもなるぞ。」

 

ジンはまだ迷った顔をしている。この作戦はリスクが大きいからな。実力がわかんなかったら不安なのだろう。

 

「一つだけ条件があります。今度開かれる“サウザンドアイズ”のギフトゲームに、十六夜さん一人で参加してもらってもいいですか?」

「俺の力をみせろってことか?」

「それもあります。ですがもう一つ理由があります。このゲームには僕らが取り戻さなければならない、もう一つの大事な物が出品されます」

 

大事なもの...

 

「「まさか...昔の仲間か?」」

「はい。それも元・魔王だった仲間です」

 

その瞬間、十六夜の瞳が光った。

軽薄な笑いには凄みが増し、危険な香りのする雰囲気を漂わせ始める。

危ないやつだなー。

 

「へえ? つまりお前らは、魔王に勝利し隷属させた経験があるのか。そしてそんな強大なコミュニティでさえも滅ぼせる──仮称・超魔王とも呼べる超素敵ネーミングな奴も存在している、と」

 

十六夜ってネーミングセンスないな。

 

「そ、そんなネーミングでは呼ばれていません。魔王にも力関係はありますし、十人十色です。魔王とはあくまで“主催者権限”を悪用する者達のことですから」

 

ようするに主催者権限っつーのを悪用したらなんでも魔王ってことか。

 

「ゲームの主催は“サウザンドアイズ”の幹部の一人です。商業コミュニティですし、僕らを倒した魔王と何らかの取引をして仲間の所有権を手に入れたのでしょう」 

「なるほどな。とにかく俺が、その仲間を取り戻せばいいんだな?」

「はい、その通りです」

「俺それ見に行くわ。」

「あいよ。んじゃ、話はここまでだな。部屋行くか、菫。」

「ああ。そうだな。明日がんばれよ。」

「そうだな。負けるなよおチビ。」

「はい。ありがとうございます。」

「負けたら俺、コミュニティ抜けるから。」

「はい。.....え?」

「あ、俺も明日のゲームで入るか決めるから。活躍しろよ。」

「ええええ......。」

 

さて、明日が楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 







次の投稿は3/1です。
なんか塾に本格的に通うことになったので、文字数がさらに減るかもしれません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。