東方意識集 (ポン酢@)
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第1話:主人公、千寿 諒
「獲ったど~!!言ってみたかったんだよねこの台詞!いや~感動だわ~気持ちいいわ~」
僕、千寿 諒はとある県の山奥にいた。
というのも、年末にやってる黄○伝説の無人島生活を見てたらいてもたってもいられなくなって、僕もやりたいと思ったから本当にしてみることにしたんだ。
けど船はないから無人島は諦めて、誰もいないような山の奥の奥に来たんだけどね。
僕がここに来てからちょうど2日。
調味料とか僕のやる気とかかが切れてきたからそろそろ帰ろうと思う。
迷わないように川の上流のすぐ側にテントを立ててたから帰りはその川をまっすぐに下るだけだ。
だけなんだけど……
「なぜ川がない!?」
おかしい…おかしすぎる。
獲った魚を焼いて食べた後、夜は暗くて危ないから翌朝に出発しようと思ってたんだ。
そして朝起きると、テントの横にあるはずの川がない。
それによく見ると、木とか植物とかが見たことないようなものになっている。
あっ、そうかこれはあれか夢か。
痛みとか匂いとか感触とか考え事もできるかなりかなりリアルな夢を見ているんだな。
なら、対処法はただ1つ。
寝て、夢から覚めるしかないね。
「ということでおやすみなさ…ん?紙?」
『千寿 諒君。君の能力は、
・意識を集める程度の能力
・蘇る程度の能力 だよ。
今から人間が現れるまで結構時間があるからそのときに確認してね☆』
……うん、本当に早く寝てしまおう。
僕は自分でも気づかなかったけどかなり疲れているみたいだ。
僕にそんな能力はないとか程度って何だよとか「人間が現れるまで」って何だよ今人間いないのかよとかそもそもお前誰だよとかいろいろつっこみたいけど我慢して早く寝よう。
そして早く夢から覚めよう。
「おやすみ~」
…………何かが僕の隣にいるんですけど。
しかも鼻息荒いし血生臭いし。
これ、僕終了のお知らせ?
いや、まだ何もしてきてないから大丈夫だ。
多分、おそらく、メイビー。
僕を食べるつもりならもうとっくに食べてるはずだ。
けど、僕を食べずに体感的に5分以上何もせず動かないってことは、僕が起きるのを待ってるんじゃないの?
薄目を開けて見てみるけど、残念ながら逆光で人型をしているってことしか分からなかった。
……獣じゃなくて人なら僕はただ殺されるだけなのかな?
食べられるよりはましだけと死ぬのはどっちにせよやだなぁ。
いやでも、鼻息は何か獣っぽい気がするし……
うーん、どうしようかなぁ。
待ってても埒が明かないしここは僕から行動するべきかな。
しかたない、あと10分待ってこいつが立ち去らなかったから声をかけてみようかな。
カウントスタート!!
1,2,3,…
…598,599,600。
立ち去らなかったじゃん残念。
しかたない、声をかけてみようか。
「あのーすいません。私に何か御用ですか?」
「………………」
返事がない。
「えーと、言葉通じます?」
「………………」
返事がない。
ただのしかばねのようだ。
「あの」
「紙を、よく、読め。でないと、何も、できない」
「紙ですか、もう読みましたけど」
ようやく返ってきた返事はよく分からなかった。
ただ、声は何か言い表し難い、不気味な声だった。
「裏も、読め。それで、全てが、始まる。そして、終わる」
「はぁ、わかりました。えっと」
『今から君には痛みとか苦しみとかに慣れてもらうよ!修行ってやつだね。
君が今までに見たことも聞いたこともないような怪物や化け物たちが君を苦しめ殺すよ。何度も、何度も、何度もね。
君が苦痛に慣れて、能力についてマスターしたらこの修行は終わりだよ!
じゃ、またその時に連絡するね~☆』
……もう僕は嫌な予感しかしていなかった。
というかもうほとんど確信していた。
ずっと目を背けてきたけど、寝て、何かが入ってきたから起きたのに同じテントの中だったり血生臭かかったりした理由で、もう気づいていたんだ。
これは夢でも幻でもなく、現実なんだと。
自分で言うのもアレだけど、僕は諦めるのが早い人間だ。
勉強だって、部活だって、だいたいの事をすぐに諦めてきた。
僕には無理だ、と。
限界だ、と。
そんな僕だけど、決して人生だけは諦めなかった。
人生を諦めてしまったら、今まで僕がしてきたことや自分自身を否定してしまうと、怖かったから。
他人にどう思われようと、否定されようと、僕だけは、僕を認め続けようと、肯定し続けようと思ってるから。
僕が僕であること。
これだけは絶対に諦めたくないから。
もし、これがただの修行だったら僕はまたすぐに、いつものように諦めていただろう。
けど、これに僕の人生がかかっているとなれば話は別だ。
おそらく、あの紙に書いてあることは本当なのだろう。
なら、僕には蘇る程度の能力とやらがあるらしい。
それを使えば僕は自分を否定せずにいられるのだろう。
この体じゃない僕になってしまうが、中身は変わらない、以前と同じ僕でいられるのだろう。
人生を諦めずにいられるのだろう。
ならば、僕がすべき事は1つ。
さっさとこの修行を終わらせる。
たとえ何千年かかろうと。
たとえ何万回死のうと。
たとえ僕の姿形が変わろうと。
たとえ僕の考え方、価値観が変わろうと。
僕が、僕で、あるために。
僕はこれから、何度も苦しみ死ぬのだろう。
死にたいって、思ってしまうかもしれないだろう。
けどそれも、僕が僕であるためなら、自分を失わないためならきっと、我慢できるさ。
もう、覚悟は決まった。
「ほう、貴様、覚悟が、決まった、ようだな。中々に、芯が、強い、人間だ。
普通、こんな、状況に、なると、誰もが、状況を、理解できなかった。いや、理解しようと、しなかった。そして、殺され、続けたから、皆、精神が、崩壊し、生きながらに、死んでいた。だか、貴様は、この、状況を、理解した。受け入れた。こんな、事は、初めてだ。
貴様の、精神が、いつ、崩壊するか、実に、楽しみだ。」
「大絶賛ですね、ありがとう。けど、申し訳ないな。精神は崩壊しないから、楽しませてやれないわ。僕は自分をなくさないって決めたからな。
さぁ、修行を始めようか?お互いにとって楽しくない修行を!!」
こうして、僕の長い長い修行が始まった。
僕は寝転がって空を見ていた。
雲1つない、素晴らしい天気だ。
あれからどれだけの年月がたったのだろうか。
数える気が失せるほどだと思うけど。
自分の年齢くらいは知っておきたいなぁ。
まぁ数える手段がないんだから諦めるか。
あの修行は本当にきつかった。
いったい何回、何種類の殺され方をされたのだろうか。
アブノーマルな殺人者よろしく、絞殺、刺殺、格殺、毒殺、斬殺、圧殺、殴殺、扼殺、轢殺、抉殺、飢殺、撲殺、銃殺、爆殺に溺殺、病殺、焼殺、薬殺等々……
覚えてないけど、これの10倍くらいはあったきがする。
ただ、あいつが言ってた通り僕は、芯が強く自分をしっかり持ってたから幻術の類は通じなかったらしい。
……僕って本当に人間なのかな。
あんだけ殺されて、精神崩壊を起こすことなく自分を保ってられるってな。
まぁ僕は僕なんだから今さら自分の種族が人間じゃないって分かったところで、特に何もないんですけどね。
いや僕は自分が人間だと信じてますよ?
まぁ、こんなこともあってあの紙の通り、苦しみとか痛みとかを感じなくなった。
いや、意識したら分かるんだけどね。
辛くはないけど。
苦痛を感じないってのは面白いって知ってる?
本来、痛みとか疲れとかってのは体を守るためのものだけど、僕にはそれが必要ないから疲れを感じることなく全力で走り続けることができるのよ。
でも当然僕の体は人間なんだから限界は存在する。
限界がくると、いきなり足がもつれて、パタッて倒れてそのまま死んじゃうんだぜ。
まぁ疲れで死なずとも、化け物から人間が逃げられるわけがないんだから捕まって殺されるんだけどね。
それと、今言ったけど僕は体を守る必要がないから常に火事場の馬鹿力を出せるみたい。
これも、脳が体を守るために制限してるんだから当然かな。
まぁこれも、所詮人間の馬鹿力だから化け物の手抜きの力にも劣るんだけどね。
人間からみたら、僕は身体能力だけは素晴らしいと思う。
人間からみたら。
ここ、重要ね?
まぁそれは置いといて、超特大級の大問題があるんだ。
肉体的な苦痛には完璧に慣れたんだけど、精神的な苦痛……主に「孤独」の痛みはむしろひどくなっていった。
前の世界では、友達作りとかもほとんど諦めてきたから友達は少ししかいなかったんだけど、1人ではなかったから孤独ではなかったんだ。
いや、1人は好きですよ?
「1人」は好きだけど「1人ぼっち」であることが嫌いなんだ。
じゃなかったら、1人で山奥なんざ行きませんしね。
まぁそんなんで、僕はこの世界に来てから孤独になってしまった。
孤独ってのは、かなり、かなり辛い。
どんな事も自分1人で受け入れるしかなかったから。
苦痛を、恐怖を、悲しみを、共有することができないから。
まぁ、そんな存在がいたら同じ苦しみを味わわせていたと考えるとある意味1人でよかったと思う。
結果論だけどね。
あと、この孤独であった経験によって、今の僕の強さの理由の1つとなっている側面もあるんだけどね。
一概にも孤独が悪かったとは言い切れないのがなんとも。
まぁ辛かったんですけど。
とにかく、何が言いたいかっていうと、苦痛に慣れきってないからこの修行は終わらないかもしれないのね。
苦痛に慣れてない→修行が終わらない→孤独だからまた辛い→……
無限ループって恐くね?
でも最近、あの化け物ども見てないしなー。
終わる可能性がないわけじゃない状況なのが、せめてもの救いかなぁ。
しかし、何もない。
恐怖にも慣れたはずの僕が少しびびるほどに何もない。
これはあれか、嵐の前の静けさってやつか。
何でもいいから起きて、この「無」な状態から解放してほしいね。
……訂正、何でもはよくない。
修行の終わり告げられろ。
頼む。
わりとまじで。
すると、僕の願いが通じたのか空から紙が降ってきた。
きたでこれ!
いや待て、油断するな。
上げてから落とすのかもしれない。
もう経験済みじゃないか。
精神的にも、物理的にも。
『苦痛には慣れたみたいだね!よし、じゃあ私からの最終試験だよ!
今までで分かった自分の能力について、説明して。
正解だったら修行は終わりだよ~☆
不正解だったら……恐っろしい事が待ってるよぉ?』
……なんだよ何されるんだよ。
もう苦痛に慣れたはずの僕が恐ろしいと感じる事……?
うん、無くね?
精神的なそれか?
もう進行形で辛いんだけどなぁ~……
現時点で恐ろしいんだからそれは無いよね?
……無いよね?
というかこの……人?神様?いや邪神?は僕がまだ苦痛に慣れきっていないって知らな「いや、もちろん知ってるよ?でもこれはいいのです!私なりの優しさだよ?……あと邪神言うな」知ってましたかそうですか。
つか勝手に頭の中に入ってくるのやめてくれませんかね。
びっくりするだろうが。
まぁ見逃してくれるのは僕にとっても好都合だから素直に優しさに甘えるとしますかね。
苦い経験も山ほどあるけど。
さて、その最終試験とやらに臨みますかな。
見えないけど、そこにいることは分かってるしそこに話したらいいのかな?
やっぱりこれは便利だな。
これって能力なのかな?
あと、僕に幻術系は通じないんじゃ「うん、私のいる場所は分かってるでしょ?そこに話してね。うん、それは君が作った能力だよ。正解したら教えてあげるよ!あと、こんなことできるのは私だけだから安心してね?」そうですか。
……全く安心できねぇ。
この世界に来たのだってこの神様が原因なんだから。
あと、勝手に頭の中に(ry。
「えー、まず意識を集める程度の能力から。僕を中心に一定範囲……だいたい100㎞くらいかな?に存在する者の意識を集めることができる。幽霊とか無機物とかの『生きてないもの』には通じない。格上相手に使う時は、全身に痛みが走る。もう痛くないけど。どう?」
「正解だよ!じゃあ次!」
「えっと、じゃあ蘇る程度の能力について。僕が動けなくされた時……死亡、封印、拘束とかかな?に僕を中心とするだいたい30mくらいの範囲内で蘇ることができる。死体が蘇るんじゃなくて、新しい体で発生する。だから死体は消えない。あと、蘇る時は死んだ時の服装、持ち物で蘇る。生きた者を持って蘇ってもそるは複製されない。蘇る時の年齢は僕が今までになったことがある年齢なら変更可能。どうじゃ!」
「パーフェクト!完璧だよ!1ついいことを教えてあげるよ!人間に会ったら、人間にのみ使える効果や、使えるようになる効果があるよ!楽しみにしててね!じゃあこれで、修行は終わりだよ~!ここから南にまっすぐ行ったら人間がいるよ!じゃあね~♪」
「ちょっと待って!質問したいことがあるんだ!」
「ごめんごめん忘れてたよ!それは君の能力の副産物みたいなものだよ!そうだね、『視線を感知する程度の能力』と名付けよう♪自分で新しい能力を作っちゃうって凄いね!見直したよ!あと、君は今1億年ほど生きてるよ!じゃ、今度こそじゃあね~☆」
だから勝手に人の思考読まないでくれませんかね。
そうか、僕は1億年も生きてきたのか。
まぁ何億回も死んでるんですけどね。
そりゃ痛みとか慣れるはずだわ。
まだ慣れてないのがあるけど。
つかあいつ僕の質問分かってるのに「何者だ」っていう質問は無視したな。
さすが、神様!
汚い!超汚い!
……返事なしっと。
視線もないし、帰ったみたいだね。
煽るだけ無駄か。
まぁ、そのことは置いといて人間がいるらしいじゃん!
長かったなぁ。
これでようやく孤独ともおさらばできるのかな?
……言葉通じるかな?
うん、知らん。
行ってから考えよう。
「さぁ参ろうか、南へ!!!」
僕は南へ向かって全力で走り出した。
あれ?私「まぁ」使いすぎじゃね?
まぁこれが私の口癖だからしかたない実にしかたない。
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第2話:都市へ
いよいよ原作キャラが出てきます。
キャラ崩壊は許してくだせぁ。
僕が南へ走りだして、数時間がたっただろうか。
ここで、改めて思った事がある。
蘇る程度の能力まじ便利。
走って限界→死んで蘇って全快で何時間も全力疾走できるから速い速い。
まぁもともと、速度も体力もかなり優れてるんですけどね。
しかも体質で疲れも痛みも感じないし、孤独が終わると考えると心は軽く、足も軽い。
こんなにテンション上がったの、この世界に来てから初めてなんじゃないかな?
最高にハイってやつだ!!
まぁこんなに遠いと、流石にうんざりしてきますがね。
ともかく、走りだして数時間。
ようやく目的地が見えてきた。
見えてきたけど……
えっと、今って前の世界よりも過去なんだよね?
「人間が現れるまで」って書いてあったし、人間が現れたばっかりの今は少なくとも縄文時代とかそれくらいなんだよね?
でもなんで、前の世界並に発達してるんですかねぇ。
いや、都市だけ見たら、だよ?
そこ以外は、森とか平原とかばっかだから全体的には前の世界の方が発達してるんだよ?
見えてきた都市は、かなりかなり高いビルが建ってるし、大きな大きな壁に囲まれてるから場違い感が半端ないです。
今からあそこに行くんですね。
予想のはるか上をいく光景ですよ。
こうなに、小さな集落みたいなのを想像してました。
まぁ、あの壁は近づいたら増えてきたこの化け物対策だと思うけどね。
しかし、何なのこいつら?
修行中の人型のやつらの強さを100とすると、こいつら獣型やら蜘蛛型やら百足型やらは5くらいしかないよ?
え?
弱すぎじゃね?
それとも逆に、あいつらが強すぎるの?
これが普通なの?
まぁ人間を狩る側の存在だから、人間よりは強いんですけどね。
さっきから手足とか頭とかモグモグされてるし。
個体によっては速度だけは勝てる相手もいるんだけどね。
しかし、抵抗する必要がないって素晴らしい。
やっぱり、蘇る程度の能力まじ便利。
でも、面倒な事になったなぁ。
こいつら引き連れたまま、都市に行く訳にもいかんよなぁ。
こいつらを追っ払うしかないんだけど、僕にそんな力はないんで、あの方法しかないよなぁ。
僕を十分食べて、満足してから帰ってもらうしかないな。
殺戮がしたいだけのやつがいないことを祈ります。
今からどれだけ時間かかるんだろ……
テンション下がるなぁ……
まぁこのまま行ったら間違いなく100%敵扱いされるからここは我慢だ我慢。
何かをしたい時は何かを我慢しなくてはならないものなのである。
さぁ毎度お馴染み我慢の時間だ。
痛みのではないよ?
今回は。
よし、ほとんどいなくなったな。
もう少しいるけど、こいつらは行ってる途中で満足して帰ってくれるだろう。
他のやつはちゃんと帰ってくれたし。
計画通り。
しかし、あいつらバカなの?
同じ人間の姿で、怯えもせず、逃げもせず、その場から動かないような人間なのに何も疑わず、何も考えずに襲ってきたみたいだけど。
あいつらには思考がないのかな?
多分そうなんだろう。
いや食欲が勝ったのか。
まぁどっちでもいいや。
特に興味ありませんし。
今はそれどころじゃありませんし。
さて、行きますか。
目的地はもう目の前だ。
見知らぬ者を、壁の外にいた身元不明な者を受け入れてくれると、そう信じて。
受け入れられずとも、拒絶されないと、そう信じて。
さぁ行こう。
千寿諒の人生第3章、開幕だ。
「早く走りなさい!後ろから妖怪が来てるわ!!早く走って!」
ん?誰の声だ?
どうやら僕に警告してくれてるみたいだ。
つか自分以外の人語を久しぶりに聞いたな……
視線の質が今まで感知してきたものと全く違うからこの者は化け物……妖怪って言ってたか?とは違う、人間なんだと思う。
少なくとも、僕を食べたいとか、殺したいとか、そんな命を狙ってくる者じゃないことは確かだ。
というか、もう見えたしね。
白衣を着て、その下に変わった服を着て、弓を持っている女性が。
あの神様が言ってた事の1つが分かったよ。
僕の「視線を感知する程度の能力」は、ただ自分に向けられてる視線を感知するだけでなく、ある程度の質も分かるみたいだね。
化け物……僕も妖怪と呼ぼうか、妖怪は食欲の塊みたいな質だったからな。
なんか、こう、べっとりとした感じ。
おっと、無視はいけない返事しなくては。
無視されるのは、辛いもんな。
まぁ、この場合は違うだろうけど。
「あー大丈夫ですよ。僕は死なないので。いや、死にますけど、蘇れるので。無視してたらそのうちどっか行きますから」
「何馬鹿な事言ってるの!確かにたちは寿命はないけれど、死んだら死ぬのよ!だから早く私の後ろに来て!」
「ならその弓で仕留めて下さい。僕が囮になるので」
「ッ!分かったわ!絶対に死なせないから死なないでね!」
「いやだからですね……まぁいいか」
おっと、数体が僕から彼女へと意識を移したな。
僕へ意識を集めさせて……よし、完璧。
ちゃんとこいつらにも聞いてくれるみたいだね。
よかったよかった。
あと、やっぱりこいつら格下じゃん。
能力使っても痛くないし。
まぁ僕は格下にすら負けてしまうんですけどね。
あれ?
格下ってなんだろう?
僕はどういう基準で格下と格上を判断してるんだろう?
強さ?生きた年月?
強さなら妖怪は全員格上だろうし、生きた年月なら全員格下だろうし……
わっかんねぇなぁ……
あの時聞かれなくてよかったぁ……
多分分かってたと思うけどね。
ありがとう神様。
死なないで、って彼女は言ってたけど、ここで走り回ったら狙いづらいよな。
死ぬ事になるけど狙いやすくなるだろうし、ここはじっと動かないのが一番だろう。
お説教なら、後で喜んでうけるさ。
人間と会話できるなら、どんな事だって嬉しいし。
いや、どんな事でもではないね。
つか、寿命がないってどういうこと?
人間じゃないの?
この僕が言うのもアレだけどさ。
でも、一応僕に寿命はあるよ?
ただ蘇るだけで。
まぁ寿命で死んだ事って少ししかないんだけどさ。
妖怪が襲いかかってきた。
けど僕はその場から動かない。
彼女が何か言ってるけど、ここは無視だ。
ごめんなさい……
でもこっちの方が効率いいですし。
動かなくていいから楽ですし。
彼女も狙いやすいですし。
一石二鳥な、二兎追う者二兎を得る完全無欠な作戦やでぇ。
いや、この場合は三兎かな?
早くも一体から断末魔が聞こえてきた。
けど、妖怪は数十体いる。
いかに彼女が弓の名手でも、この数相手じゃ厳しいだろう。
それに、ここで誤算……というか当たり前の事なんだけど気づかなかった事が起きた。
何で気づかなかったんだろう……
断末魔を聞いて、妖怪が集まってきてる。
視線を、感じる。
それも中々の数だ。
この数相手に矢が足りるかどうか。
彼女もそれは分かっているようで、妖怪の急所に的確に、最小限の本数で仕留めていっている。
けど、足りないと思う。
……しかたない。
都市に行くのは、もう少し後にしよう。
今はこいつらを何とかしなくては。
少し前のと同じ方法で帰ってもらおう。
これには時間がかかるし、ちょっと人には見せられない光景になるから、彼女には先に帰ってもらおう。
正直、少し邪魔になるからね。
「聞こえますか?今、妖怪が結構集まってきてます。見て分かったと思いますが、僕は死んでも蘇るから、死なないんです。だから大丈夫です。むしろ、今あなたが殺すとその声を聞いて集まってくるからあなたがいない方が早く終わります。だから帰ってくれませんか?今日、明日には都市に行けると思うので」
やべ、少し強く言い過ぎたかな?
いやでも、彼女はさっきのやりとりから推測するに、なかなか強情な人だと思うからこれくらいがちょうどいいのかもしれん。
でも、ごめんなさいね。
「確かに、この数相手じゃ矢が足りないわ。でも私にはまだこれがある!私特製の剣よ!これなら断末魔すらあげさせず仕留めることができるわ!」
「いやだめです。今はまだこの程度の数しかいませんけど、今からもっと増える。そいつらも意識は僕へ向けるからあなたが襲われる事はないけど、万が一がありえます。払った手足に当たるとか。あなたは見たところ人間なんだからそれでも十分致命傷となります。ここからちょうど壁の方向には妖怪はいないんで、そこから早く帰ってください!」
……今この状況、かなりカオスだな。
僕と彼女の間には妖怪の壁があって、僕は死に蘇りながら、彼女は矢を射ちながら会話してる。
よくお互い、会話を成立させてるよ。
それしても、僕はテンション上がりすぎでしょ。
こんな状況なのに口数がすごいすごい。
久しぶりの人間との会話なんだ、しかたないね。
まぁ彼女を説得するための言葉ばっかりだけど。
あぁ、普通の会話がしたい……
笑い合いたいなぁ……
「あなた、私を舐めてるの?こんな妖怪の攻撃、当たらないわ!」
「攻撃なら当たらないのかもしれないけど、これは意識した攻撃じゃなく、無意識の行動なんです!予測できないから、危ないんです!だから早く帰ってください!」
「くっ!ならあの壁の所まで走れる!?ちょうどその道に妖怪はいないって言ったわね!あの壁にある兵器なら、簡単に、殲滅することができるわ!」
「それだと、僕が妖怪の仲間だと思われるかもしれないじゃないですか。僕の目的は、都市に行って平穏に暮らすこと。孤独じゃ、なくなること。それが出来ないのなら、都市に行く意味がないんです。だから、落ち着いてから行きます」
今の人間達は武器を使うとはいえ、この数を圧倒できるらしい。
すごいね。
少し、人間を舐めすぎていたかな?
「もし、ここに残るなら私が帰ったあとあることないこと言いふらすわよ?今から来る人間は実は妖怪の仲間だから壁の中に入れると危ない~とか」
「……そんな話、誰も信じませんよ。たかが1人騒いだところで、何も変わりませんよ」
「自慢ではないけれど、私は都市でかなり上位の地位にいるの。そんな人の言葉なんだから適当に説明をでっち上げれば、みんな信じてくれるわ」
「いや、でも」
「ああもう、しつこいわね!私について来たら都市で暮らせるようにしてあげる。私について来なければ、都市で暮らせないようにするわ!」
「脅迫じゃないですか、それ。はぁ、そんなにこの方法が嫌ですか。誰も疲れず、誰も傷つかず、何も消費しない、最高の方法なのに」
「あなたが傷つくじゃない」
「こんなのもう慣れてますよ。今さら傷つくようなことじゃないです」
「……そう。じゃあ行くわよ」
「いや、先に行って用意してきてもらえますか?何か合図をくれたら後から行きますから」
「何言ってるの。一緒に行くわよ。いつでも準備はできてるから問題ないわ」
「いや、多分僕の方が足速いので、妖怪の群れに飲み込まれるかもしれないんですよ」
「だから、私を舐めてるのかしら?おそらくあなたは、蘇るから体を守る必要がなく、力に制限がかからないーとかでしょうけど、霊力を使わない人間の限界速度は霊力を使った人間の速度と同じというデータがあるわ。だから大丈夫」
「じゃあ僕も霊力を使って……」
「残念ながらあなたに使えるほどの霊力はないわ。それに、仮にあったとしてもすぐに使えるようなものではないわ」
「まじですか……まぁ分かりました。じゃあ行きます……よっと!」
蘇る時に範囲ギリギリに蘇り、妖怪の壁を越えて僕は走り出す。
すると、すぐ横に彼女も走ってきた。
……本当に同じ速度じゃないですかやだー。
人間の中では優秀だと思ってたのに違ったじゃないか。
別にいいですしー死にませんしー。
ここだけは人間だけじゃなく妖怪にも負けませんしー。
別に悲しくなんてない。
ないったらない。
悔しいけど。
つかなんでこの人僕の速さの理由分かったの?
説明してないよね?
上位の地位にいるって言ってたし、賢い人なのかな?
だとしても、鋭すぎるでしょうよ。
それともエスパー?能力?
なんにせよ、すごい。うん。
まぁ多分、この速度なら追い付かれることもないだろう。
幸い、群れていた妖怪は足が遅いやつばっかりだったし。
それに、僕が全力疾走すると出る死体(自分)である程度の時間稼ぎはできるし。
さぁいよいよ壁が近くなってきた。
本当に大きいな、これ。
50mはあるんじゃないの?
こんなにしなくても、絶対突破できないでしょ。
それとも、こんなにする必要があるくらいの化け物妖怪がいるのかな?
意味被ってる気がするけど。
ともかく、これからどうするのかと彼女を見てみると、
「司令塔!今、妖怪の群れに追われてるの!北門に向かってるからそこで撃退してくれないかしら!?もうすぐ着くから準備して早く!」
『了解しました。少し待ってください。……今、あなた方を確認しました。妖怪との距離が十分にあるので門を開きます。そこに入ってください。後はおまかせください』
「了解ありがとう!だ、そうよ!さぁもう少し頑張って!」
「もちろんです、まだまだ行けますよ!」
しばらくして、僕たちは無事門の中に入ることができた。
門が閉まった直後、壁の外からすごい音が聞こえてきた。
多分、片付けてくれたのだろう。
まじ、感謝です。
もちろん、一番は彼女ですけどね。
しかし、後になって僕はこの事をかなり悔やむことになる。
彼女を無理やりでもいいから先に帰らせておくべきだったと。
例え自分が都市で暮らせないことになろうとも。
例え自分が孤独から解放されずとも。
この事のせいで……あんな思いをさせてしまうのだから。
あんな思いを、してしまうのだから。
あれ……?
なんでこんだけしか進んでないの……?
予定では2話で都市の半分くらいを終わらせるつもりだったのに……
まぁいいか。
気にしない気にしない。
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第3話:自己紹介
あいもかわらず駄文のオンパレード&進まない。
まぁそんなこんなでいろいろあれですがどうぞー
いろいろあって、都市の中に入ることができた。
僕1人でも行けただろうけど、こんなに早く入れるとは思ってなかった。
それに、1人で入るなら門なんて開けてもらえるかわからないから能力でこの壁を越えるしかなかったんだよねぇ。
能力で上に上に蘇って、死体を大量生産するはた迷惑な方法で。
そんな方法を使わなくてすんで、こんなに早く入れたのは間違いなく彼女のおかげだ。
感謝を言葉で、態度で伝えねば。
それを1度に伝えるには……うん、土下座だな。
日本語が通じるからここは日本。
そして日本において土下座は最強。Q,E,D
誰に証明してんだろう……
そうと決まればすぐ実行!
急な門の開閉、爆音とで人がけっこう集まってるが気にしない。
むしろここでする方が誠意とかがわかってもらえるだろう。
そんな汚いことを考えている私でした。
そして、僕は流れるように土下座へと移る。
彼女が驚いている。
野次馬もまた、驚いている。
いきなり土下座をしたことか、あまりに綺麗だったことか。
どっちもだと思いますはい。
ふっ、僕をなめるなよ?
昔何度してきたと思っている?
僕は土下座のプロなんだよ。
キャリアが違うキャリアが。
まぁ形だけで、成功例は皆無ですがね。
さぁ態度は示した。
次は言葉だ。
「この度は本当に」
「動くな!じっとしてろ!動いたら射殺する!」
……だれだよいきなり話の腰を折るのは。
つかこの姿勢でじっとしろと?
土下座で?
もう少し前に出てきて欲しかった……っ!
ほら野次馬が写真撮ってんじゃん!
いまさらだけど恥ずかしくなってきたよ!
こんなの初めてですよぉぉぉ!?
「そのままで答えろ!貴様何物だ!」
……このままで?
せめて別の場所に連行しろやぁぁぁぁ……
もういいや。
汚い事考えたからバチが当たったかぁ。
「僕は」
「ちょっと、何してるのかしら?」
……また折られた。
ぐすん。
あと貴女確信犯でしょう?
笑いが隠せてませんよ?
ぐすん。
「申し訳ございません、八意様。貴女がいらっしやったので門は開けましたが本来、外の者は中に入れないのです。なので、ここで事情聴取を」
「私がするから問題ないわ」
「いえ、これは規則ですので」
「問題ないわ」
「いや、その」
「問題ないわ」
「……はい」
あわれなり、モブAよ。
「じゃあ着いてきてくれるかしら?」
「はいもちろんです喜んで!」
ここでするもんだと思ってたけど違った!
この人ほんとに神様やでぇ……
ん?もう神様には会っただろって?
あの神はもはや神ではなく駄『さぁ、覚悟はできてますかぁ?』すいません何でもないです。
……え?
いるの?
どこに?
視線ないぞ?
……腐っても神様か。
あぁ肝が冷えたら冷静になれた。
さぁ早く着いていこう。
待たせて心変わりしたら大惨事。
おとなしく彼女に着いていくこと数十分。
一軒の大きな家が見えてきた。
……家……なのか?
ホワイトハウスと肩を並べるぞ。
本当に権力者だったんですね。
けたはずれな。
「いやここは研究所。家はこっち」
また心読まれた。
僕はわかりやすいのか。
ポーカーフェイスいと難しきかな。
「……え?」
ここでこんな声が出るのは仕方ないと思う。
案内された本当の家は、その隣にある家だった。
これまでのと同じような。
どれたけ研究好きなんですかぁ……
「あら、何か言いたいことでも?」
「い、いえなにもないれすよ?」
「そ、ならいいけど」
ジトーっとした目で見てきた。
ふぇぇ怖かったよう。
なんで僕が恐怖してるんだよう。
美人のジト目は怖いんだよう。
「さ、中に入って。そこで話を聞くわ」
「いや、あの、会ってすぐの、それも男をいきなり家に入れるのはどうかと思うのですが」
「あなたは何かするつもりなの?」
「いやいや!何もしませんしできませんけど」
「なら大丈夫じゃない。いいから中に入って」
「いやほら、研究所の中は」
「問題ないわ」
「ですけど」
「問題ないわ」
「……はい」
あわれなり、諒よ。
あれ、なんかデジャヴ?
「さぁいらっしゃい。お互いこんな状況だけど歓迎するわ」
「お、おじゃまします……」
前世に生きて18年。
現世に生きて1億年。
私千寿諒、初めて女性の家に入ります!
……あれ?
もっとこうなに、女性の家に入るって甘酸っぱいものじゃないの?
ドキドキするものじゃないの?
いや、めちゃめちゃドキドキしてるけどちょっと違うよこのドキドキは!
もっと違うドキドキを経験したかった……
いやまぁ、しかたないんですけれども。
状況が状況ですし。
私おもいっきり不審者ですし。
これで警戒されなけりゃむしろ逆に警戒するし。
「じゃあ床に座ってくれるかしら?」
「はい」
なにこの人ドS?
いや、理由はわかりますけどね。
「あら、大人しいのね。逆らったら新薬の実け……お灸を据えてあげようと思ったのに残念」
「そりゃ逆らえないてすよ……」
……新薬の実験って何?
やっぱドSじゃないですかー。
マッドサイエンティストじゃないですかー。
見た目通りです。
ぴったりです。
……だから睨まないでください心を読まないでください。
「じゃあ質問していくわ。私の名前は八意永琳。この都市で科学者をしているわ」
「千寿諒といいます」
「どこから来たの?」
「正確にはわかりませんが北の方です」
「なぜ、わからないの?」
「気がついたらそこにいたから、としか……」
「……まぁいいわ。やはり貴方は都市にいた人間ではないのね。何者かしら?」
「一応人間です。……のはずです。ただちょっと長生きな」
「へぇ、今いくつなの?」
「約1億年です」
「……本当に人間かしら?そういえばあの時蘇っていたけど、あれは能力かしら?」
「ええそうです。えっとですね」
~少年?説明中~
「なるほど……なかなか強力じゃない。ちなみに私は『あらゆる薬を作る程度の能力』よ」
「ここの人たちは能力を持っているんですか?」
「一部はね、全員ではないわ。じゃあ最後の質問よ。貴方がここに来た目的はあの時言っていたことだけかしら?」
「ええ、もちろんです」
「実は妖怪の仲間で都市を混乱とか、そんな目的もあるんじゃないの?」
「そんなことありません!証拠は何もないですが、本当にそんなことありません!」
「……どうやらそのようね。実は私が開発した嘘発見器を使っていたの。ごめんなさいね」
「いや、疑われて当然ですからね。何も言えませんよ」
「ありがとう。じゃあこれから貴方はどうするの?」
「えっと……」
やばい何も考えてなかった。
なんとかなるとしか考えてなかった。
家も仕事もないし、当然お金なんてないし、そもそも身分を証明できないし。
あれ、詰んでるんじゃないのこれ?
あ……あった。
1つだけ心当たりがある。
現状これしかないし、どうすることもできないんでこれは許してください。
「えっと、新薬の実験と言っていましたがそれを手伝う……というのはだめですか」
「貴方、薬学の知識があるの?」
「いえ、さっぱりです。ですが被験者になることはできます。それに僕は擬似的とはいえ不死なのでなんらかの研究には役立てるかな……と」
「わかったわ採用よ家もここに住んでもらっていいわさぁ早く着いてきてちょうど試したい薬があるのさぁ早く時間は待ってはくれないわ」
さすがマッドサイエンティスト。
被験者の辺りから目の色が変わったよ。
でもきつそうな仕事だなぁ。
ま、まぁ職も家もみつかったんだ。
さらにあんな綺麗な人と住めるんだ。
それに。
「フフッ……これであの薬の研究が本格的にスタートできるかもしれないわね♪」
あんなに嬉しそうなんだ。
これで役立てるならどんなことだってやるさ。
……やっぱり笑ってる目は少し怖いですれけども。
「えっと、これを飲むのですか?」
「これから長い付き合いになるのだから敬語はいいわ」
「はい……って違う!騙されませんよ!話をそらさないで!」
「ちっ……まぁ敬語のことは本当よ。早く飲んで」
「この形容し難いなんとも言えないようなこれを?」
「ええ」
「……はい」
グビッ
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「あああ)ry」
「やっぱりこうなるのね。じゃあ次よ」
「ちょっ、待」
感想頂いたのですが、蘇る程度の能力=リスボーンと考えてください。
あと最後主人公が苦しんでいるのは、ワ○ピースで航海士がゴム人間を殴るみたいなものと考えてください。
ようするに、ご都合主義です。
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