Re:Nyanster 〜刺突から始まる猫人転生日記〜 (パンダ三十六か条)
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第1章 悪魔の目覚め
1日目〜4日目 成り上がり計画
突然だが、転生という現象を知っているか?
転生とは、仏教の思想。生物が死ぬと生まれ変わって新たな生物となる、という考え方である。
俺の名前はニャー郎。前世の名前は山田一郎。
どうやら、俺は転生したらしい。
昨日、俺はモンハンをやっていた。久々に出会った友達とモンハンの話をしたら何だかやりたくなってしまい、物置の中からゲーム機を探し出して遊んでいたのだ。
すると、いつのまにか夜になっていたので、小腹がすいた俺はコンビニで肉まんを買いに行くことにした。
この時、明日は早いから諦めて寝れば良かったのに、と後悔している。そうすれば、今頃普通に出掛けてた筈なのだ。
コンビニに行くと何故だか騒がしかった。中から悲鳴やら怒号やらが聞こえてくるので、何事かと思って入ってみると、そこにいたのは包丁を持った男と最近入った可愛い店員さん。
どうやらコンビニ強盗に襲われていたらしい。いきなり入ってきた俺に驚いた強盗は俺に突進してきて、そのまま俺の事を刺して逃亡。
そうして俺は死んだ。運が悪いとしか言えない死だった。
目を覚ますと、目の前にあったのは猫の顔だった。
何故か身体が動かしづらくなっていて、唯一動く頭を傾けて周囲を見渡すと、周りには大きな猫がたくさんいた。
その猫達はどこか変だった。骨格が人間に近く、まるで赤ちゃんのように地面に寝転んでいた。
自分の身体を見ると、そこにあるのは周りの猫モドキと同じ手足。無駄にモフモフしていて、ちゃんと肉球もある。
俺が、モンハンに登場する猫人、アイルーに転生したという事に気がつくのに、時間はかからなかった。
本当なら、「アイエエエエ⁉︎ アイルー⁉︎ アイルーナンデェ⁉︎」とか叫びたかったが、動けないし喋れなかったのでそのまま寝転んでいるしかなかった。
そして、俺がアイルーに転生してから3日目になった。
「おーい皆、ガーグァを狩ってきたにゃー!」
「わーい! 肉にゃー!」
俺はこの生活に順応していた。
アイルーは群れ社会である。
オスが狩りをして、メスが子育てや採取をする。まるでネアンデルタール人のような生活である。
俺が住んでいる所はモンハン3rdの渓流、そこのエリア3に似ていた。
アイルー達の居住区に続く通路はモンスターが入れないように工夫がされている。そのおかげでアイルーは安全に生活できるようになっているのだ。
まず、ゲームでいうエリア9の方には太いツタが絡み合ってできた長い橋がある。
この橋は体重の軽いアイルーなら通れるのだが、大型モンスターや小型モンスターの群れが通ると千切れてしまうので、モンスターが入れないようになっている。
もし、ジャギィが単体で入って来た時も、橋を見張るアイルー達によって討伐されることになっている。1、2体ならばアイルー達もラクラク倒すことができるので、恐るるに足らないのだ。
次に、ゲームでいうエリア2の方は、かなり狭い通路になっている。
大人アイルーがギリギリ通れるぐらいのサイズの通路なので、ジャギィは入ってくることができない。
大きな岩の壁と壁の間に道があるため、大型モンスターに壊される心配もない。
まあ道を工夫しても空を飛んでくる魔物は防げないのだが、飛竜は俺らのような小物を狙わないし、ブナハブラは煙を嫌うので火を焚いていれば寄ってこないので心配する必要は無い。
ゲームの中にある地形も色々考えられている。アイルーになって初めてその事に気がついた。
そうして俺はモンスターに襲われることもなくスクスク育った。数日で普通に歩き回れるようになっていた。
「今回はジャギィに邪魔されなかったにゃ。たくさん持ってこれたにゃー!」
「早くわけるとするにゃ」
アイルーは基本的に弱者である。一人ではジャギィすら勝てない弱者である。そのため折角ガーグァを倒してもジャギィに奪われることもしょっちゅうだ。
だから、今回のように肉を殆ど持ってくるのはかなり少ないのである。こんなにたくさん肉を得られる事はかなり少ないらしい。
「ほら、ニャー郎も食べるにゃ」
そう言って肉を差し出してくる大人アイルー。ありがたく頂戴することにした。鳥なのに脂肪たっぷりで柔らかく、噛むほどにジューシーな風味が広がる。俺はゆっくり咀嚼した後、飲み込んだ。
『能力名【気配察知】のラーニング完了』
『能力名【絶縁体】のラーニング完了』
頭の中にアナウンスが聞こえる。どうやら今回は二つラーニングする事ができたらしい。
実は俺は、異世界に転生してから特殊な力を手に入れていた。
その名も【
俺がこの能力を自分が持っていることに気がついたのは昨日、大人アイルーの採取してきたキノコを食べた時だった。
『能力名【爆竹生成】のラーニング完了』
大人アイルーから貰った真っ赤なキノコを食べていたら俺の頭の中にアナウンスが聞こえてきたのだ。
突然の声に驚いて周りを見渡しても、ニャーニャーいってるアイルーしかいない。
最初は幻聴か何かかと思ったのだが、よく考えたらさっきのアナウンスがRe:Monsterの能力を手に入れた時のフレーズと同じだと気がついたのだ。
試しに、近くにいた蜘蛛を捕まえて口に運ぶ。
『能力名【蜘蛛の糸生成】のラーニング完了』
さっきと同じくアナウンスが聞こえた。この能力は見覚えがある。確か指先から粘着性のある糸を出す能力だ。
指先を見ながら念じてみると、そこから白い糸がピュッと飛び出してきた。
神様にあった覚えは無いけど転生特典はもらっていたらしい。新しく始まった人生、いや猫生で2回目の驚きだった。
【吸喰能力】
『Re:Monster』の主人公、ゴブ朗の持つ能力。金属だろうが毒物だろうが喰えるようになり、毒性の物は体内で無害にして吸収し、そして食っていた物が持っていた能力を得る力。
様々な力を持つモンスターがいるモンハンの世界において、俺の能力はかなり強力な力になるだろう。
【爆竹生成】
【蜘蛛の糸生成】
【急成長】
【気配察知】
【絶縁体】
現在俺が持つ力はこの5つ。
急成長はタケノコを食べたら得た能力で、毛や爪を瞬時に長くする事ができる力だ。
まだ、俺の能力は少ない。このままじゃあ俺はジャギィにすら勝つことはできない。
アイルーは生まれから5日目、狩りに連れて行かれる。だから、俺も明日からはモンスターと戦わなくてはならない。モンスターを狩って来ない奴は群れから追い出されてしまう。
はっきり言って、普通にジャギィやファンゴを倒して強くなっていくのは俺には無理だ。Re:Monsterの主人公には能力の他に武術の心得もあったが、俺にはそんなものは無い。俺は唯の一般市民なのだ。
強い能力が無ければ敵を倒せないし、強い能力を手に入れるには強い敵を倒さなくてはいけない。
「危険察知も手に入れたし、後は念のため
だけど、強い力を簡単に手に入れられれば、自分より格上相手の力を戦わずして手に入れられるなら話は別だよな?
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5日目 若人よ。喰って喰って強くなれ。
アイルー転生……五日目
ついに、俺も狩りに出かける事になった。
本来ならば何匹かで班を作って狩りをしなくてはならないのだが、一緒に来ることになった奴らを説得して先に行かせることに成功した。二足歩行するとはいえ所詮は猫。結構規律にはルーズな奴らだった。
俺はまず自衛手段の用意をする事にした。
成り上がりのためのアイテム入手。それには長い距離を移動しなくてはならない。その過程でジャギィに出くわしたら俺は一瞬で死んでしまうだろう。
だから、これは仕方のない事なんだ。
「うええ……気持ち悪りぃ。吸喰能力で忌避感は消えるはずなのに……」
生き残るため、強くなるには必要な事なんだ。だから……食え! 食うんだ! ニャー郎ーっ!
『能力名【悪臭】のラーニング完了』
俺はあの素材を食べていた。モンスターを追い払うために使うアイテムのこやし玉の素材、モンスターのフンを。
モンスターのフン。複数のモンスターが混ざり、腐り、酷い臭いを放つようになった末にできた素材である。フンが積もり積もった地点で採取できる、こやし玉の材料となる素材だ。
ここは元々砂場だったのを、アオアシラやブルファンゴが掘ってトイレとして使っていた所らしい。
俺達の居住区が近くに出来てから、アイルーはここにフンを捨てるようになり、それが牙獣種のフンと混ざって酷い臭いを発するようになったようだ。
そのせいでこの地点にはあまりモンスターがこない。
なかでもジャギィは狗竜という別名の通り狗のように鋭い嗅覚を持つため、悪臭の酷いこの地域には全くやってこないらしい。
なんせ、アイルーの俺ですらここにいるだけで息苦しいのだ。もし俺の転生先がジャギィだったら地獄を見る羽目になっただろう。
まあ、この臭いのおかげで安心してフンを捕食ができるのだから、気にしないことにしよう。
口直しに、近くに生えていた青い果実を幾つか口の中に放り込む。
『能力名【属性やられ無効化】のラーニング完了』
…………あれ?
能力名から察するに、この果実はウチケシの実だったらしい。そういえば、ゲームでもこの地点でウチケシの実を採取できたような気がする。
にしても、序盤でこの力を得ることが出来るとは思わなかった。属性攻撃の無効化はジンオウガなどの強い敵と戦う時はかなり使えそうな力だ。
これから行くところにいる敵にも、かなり有効な力になるだろう。手に入れられて良かった良かった。
********
この世界はモンスターハンターの世界だが、ゲームでは無い。俺はその事実を今、思い知った。
この世界は、ゲームの世界をベースにしている。ゲームで見覚えがある地形が存在し、ゲームの世界と似た所に採取ポイントがある。
そう、似ているだけなのだ。ゲームと現実が全く同じなんて事は無く、世界観がリアルになったことによって、この世界は所々に
エリアとエリアの間に出来た新たな地形、ゲームよりも広くなったエリア、本来の場所以外でも採取できるようになっているアイテム、トカゲやカラスなどのゲームでは見られなかった動物達。etc……。
そして、最大の変更点はエリアという括りがなくなっていることだろう。
ゲームなら、エリアが変わればモンスターは追ってこない。しかし、これは現実だ。普通にどこまで行っても諦めない限りモンスターは付いてくる。
つまり、エリアとエリアの間の境界線が無くなり、括られてた檻の中に閉じ込められていた者たちが外に出てくるのだ。
「シャーっ!」
「うわっ、デカい! デカいよこの虫!」
だから、本来ならいないはずのコイツがいることも、不思議ではないのだ。
オルタロス。モンハン3rdの世界にいる虫モンスター。
見た目は巨大な蟻。食った物を腹に溜め込んで運ぶ習性を持つモンスター。基本的にこちらが攻撃しない限り何もしてこない温厚な奴である。
攻撃方法は噛みつきと酸。地味に嫌な感じのモンスターである。
これが、自分の目の前に出現している。
……うん、無理。実物大のアリ怖い。虫のアップの写真でさえ駄目だというのに、巨大な虫と戦うなんてできるわけがない。虫だから肥やし玉の匂いも普通に平気なので、追っ払うこともできない。更に、コイツは昆虫の硬い甲殻を纏っているため、こちらのの攻撃がまったく通らない。本当、無理ゲーにも程がある。
とりあえず、「物理攻撃は駄目でも火なら効くんじゃね?」と思ったので、【蜘蛛の糸生成】で相手を拘束し、【爆竹生成】で作った爆竹を投げつけて着火させて全身をジワジワと熱して見たところ、なんとか倒すことができた。俺の初めての獲物がオルタロスになるなんて驚きである。
焼けている肉の匂いを嗅いでいたら我慢できなくなり、つい頭だけ食べてしまった。オルタロスの肉は酸味が強く、とても刺激的な味だった。
『能力名【大顎】のラーニング完了』
『能力名【蟻の筋力】のラーニング完了』
【大顎】は使うと、口が4つに分かれて縁にギザギザな歯が生えて、どこぞのゾンビウイルスの感染者や脳を乗っ取る人食い生物のようなビジュアルになった。大きな物を食べる時に使えそうな力である。
【蟻の筋力】は筋力に補正をかける力らしい。使ってみると、残ったオルタロスの身体を発泡スチロールのように持ち上げることができるようになった。
どちらも後々役立ちそうな能力である。これからはオルタロスを見つけたら優先的に狙うようにしよう。
さて、邪魔な敵は倒せた。
今、俺が入るのはエリア6にある滝の前である。
【気配察知】を使ってみたところ、この先に危険な生物はいないようだった。先ほど手に入れた【蟻の筋力】を使って無理やり水を掻き分けて、俺は奥のエリアに進んだ。
目の前に広がったのは、どこまでも広い空間。
滝を通して入る、幻想的な光で照らされる大空洞だった。
エリア8。ジャギィやブナハブラなどが出没する、モンスターのフンや骨などを採取できる地域。
奥に進んでいると、俺の【気配察知】に強い反応が引っかかった。見てみるとそこにあったのは大きな地面のくぼみ。そして、その中心に鎮座する楕円の球体。
「……あったぞ。竜の卵」
竜の卵。このエリアに住む大型モンスター、リオレイアの産んだ卵。一個でユクモポイント1200zと交換できる、下位クエストでは最高の納品アイテムだ。
渓流の中でもかなりの強者であるリオレイア。子供の火龍一体分のエネルギーを圧縮したその卵は、栄養満点だ。
この卵は普通の生物にとって、ただ腹を満たすためだけの物にしかならない。こんな物を狙うくらいならガーグァなどを狙った方が良いだろう。
だが、【吸喰能力】を持つ俺は違う。
【吸喰能力】は、食った力を自らに取り込む力で、食った怪物の分の力がどんどん加算される力でもある。喰えば喰うほど能力が増えるだけでなく、身体能力も上昇していく力。すなわち、食った分の力をそのまま足し算して強くなる力なのだ。
それ故に、俺にとってこの卵は最高のアイテムだ。なんせ、喰えば火龍の力をそのまま取り込むことができるのだから。
俺は【大顎】を使って口を拡張し、卵を一気に咀嚼した。
食べた瞬間、俺の口の中に溢れたのは強烈な旨味だった。
無添加のエサを食べて育つ鶏の卵は黄身の味がしっかりしていて美味いとはよく聞くが、竜の卵はまさにそんな感じだった。
噛んだ瞬間に口の中で弾けた黄身は、まるでシチューのように濃厚。白身はあっさりしているのに黄身の味に打ち消されるようなことは無く、それを優しく包み込んでいる。殻は食感と、噛めば噛むほど溢れる旨味で口の中を楽しませてくれる。
はっきり言って、前世で食ったどんな卵よりも美味しかった。さすがドラゴンの卵である。味すらも規格外だった。
一体どのくらい俺は卵を味わっていたのだろうか。
何分か、何秒か、それとも何時間か。味を楽しんでいたせいで時間感覚が完全に麻痺していた。
そろそろリオレイアが帰ってくるかもしれない。そう思った俺は、卵をゆっくりと飲み込んだ。
『【
『【
『【火属性攻撃】のラーニング完了』
『【
『【
『【威嚇咆哮】のラーニング完了』
『【竜鱗生成】のラーニング完了』
『【竜尾攻撃】のラーニング完了』
『【竜爪攻撃】のラーニング完了』
『【風起こし】のラーニング完了』
『【大器晩成】のラーニング完了』
『【■■■■】のラーニング完了』
なんでだよ!
思わずそう叫びそうになったが、ここがリオレイアの巣だと思い出し慌てて口を閉じる。
いや、なんで卵一つで能力を一気に12個も得てるんだよ。しかも、何だ【■■■■】って。明らかにヤバい能力じゃないか。
……まあ、得てしまったものはしかたがない。【■■■■】と、【大器晩成】に関してはよく分からないが、他の能力は使えそうである。
とりあえず、今日はもう集落に帰ることにした。能力の検証は明日からの課題である。
ちなみに、残っていたオルタロスの胴体は、腹一杯だったので集落の大人にわたしておいた。どうやら甲殻を剥いで防具の材料にするらしい。
ヤケに眠かったので、さっさと寝転んで眠ることにした。地面での睡眠も、アイルーに転生してからの五日間ですっかり慣れてしまっていた。人間、意外と逞しいものである。
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件≪■火龍捕食≫≪特異行動≫をクリアしているため、【
【
≪YES≫ ≪NO≫】
あれ? これって……?
眠かったのでとりあえず《Yes》を選んで寝た。
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6日目〜7日目 すごいよ! ニャー郎さん!
6日目
朝起きたら、俺の身体は活力満ち溢れていた。
自分の身体を見てみると、昨日までは土の色をしていた毛が血のように赤く変化し、手の甲から肘までと膝から足首までが甲殻に覆われていた。尻尾も長く硬くなり、先端には刃が出現している。
おそらく、昨日の竜の卵を食べたのが原因だろう。なんせ一回の食事で12個も能力をラーニングできたのだ。【吸喰能力】は強い相手ほど力を得る確率が上がることから、あの卵は生物としてかなり格上だったということが分かる。
『Re:Monster』のゴブ朗だって、ランクアップまで何日かを有したというのに、俺は卵を食っただけで一瞬でランクアップしてしまったことからも、その凄さが分かる。
まあ、強くなるのは悪い事では無い。「早くランクアップできてラッキー」とでもプラスに考えよう。
とりあえず、他のアイルーにランクアップした事の報告をしたところ、この現象についていろいろと説明してくれた。
その一、
存在進化は、ある程度生物として強くなったモンスターに起こる、生物としての枠組みを超えて強くなる現象である。
例えば、『
元々は野生種だっだが人間社会で生活するようになった
更に、
このように、モンスターは存在進化によって前よりも強い生物へと変化していくことができるのである。
その二、上位モンスターとは何か。
上位モンスターとは、ボス級のモンスターが更にランクアップを遂げた個体で、『
そして、この上位モンスターだが……個体数がかなり少ない。
ただでさえ雑魚モンスターがボス個体になれるだけの才能を持っている確率は低いのに、その中でも上位に至ることができるのは本当にごく僅かなのだ。それに強い個体はその分成長率も低く、限界に到達するまでに『
だが、何千か何万分の一の確率で上位へと進化することができたなら、その個体は生態系を揺るがす化け物と化す。それはもはや災害と言っても差し支え無い。空の王者『
その三、亜種モンスターとは何か
亜種モンスターとは、ボス個体が特殊な条件を満たして存在進化した際になる、特殊なモンスターである。
例えば、『
『
『
このようにして通常とは違う存在進化を遂げた亜種モンスターは、本来とは全く違う能力を獲得した特殊な個体へとなる。
……うん。何コレ?
つまり、ただのボス個体なのに亜種になった俺はかなりのレア個体、という事らしい。上位モンスターじゃないのに亜種の個体が生まれるのは亜種個体が子供を産んだ時のみなので、俺のようにただのアイルーがいきなり亜種になることは無い。……
これは多分、俺の中の【
とりあえず、今日は存在進化したばっかりなので居住区に籠ることにした。うん、病み上がりみたいなもんだしね。明日から頑張ろう。
7日目
今日は野外採取をすることにした。
この世界にはたくさんの不思議な植物や動物がいる。電気を発生させる虫、食べた者の傷を治す草、爆発する魚、etc……。これらの素材の持つ便利能力は、俺のこれからの生活に大きく役立つ物ばかりだ。特に虫系の能力は成長するにつれてラーニングしづらくなると思うので、早めに得ておきたい。
この世界はゲームの設定を引きずっているからか、ゲームと同じ場所で素材採取ができる。そのおかげで魚や虫、薬草やキノコのある場所はあまりこの周辺を探索していない俺でも分かる。後は【気配察知】を使いながら採取ポイント周辺をウロウロしていれば見つけるのは簡単だった。
この【気配察知】という能力、使ってみて分かったのだが、モンスターの存在だけでなく素材の位置なども把握することができる。この前、竜の卵の気配を感じ取ったように、有用な素材であればだいたいの位置が分かるのだ。
見えるわけでも聞こえるわけでも、匂いがするわけでもなく、『分かる』。頭の中に対象の位置情報が送り込まれてくるこの感覚は何とも形容しがたいものだった。
今日、ラーニングしたのはこれらの能力。
『能力名【薬物効果上昇】のラーニング完了』
『能力名【蔦生成】のラーニング完了』
『能力名【氷属性攻撃】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【粘着性物質生成】のラーニング完了』
『能力名【貫通力強化】のラーニング完了』
『能力名【毒物生成】のラーニング完了』
『能力名【興奮物質生成】のラーニング完了』
『能力名【減気毒生成】のラーニング完了』
『能力名【蜂蜜生成】のラーニング完了』
『能力名【体力上昇】のラーニング完了』
『能力名【接着剤生成】のラーニング完了』
『能力名【閃光】のラーニング完了』
『能力名【雷属性攻撃】のラーニング完了』
『能力名【魚寄せ】のラーニング完了』
『能力名【素材玉生成】のラーニング完了』
エリア2、6、9で得た素材によってこれら16個の能力をラーニングできた。
【薬物効果上昇】はアオキノコの力で、薬の効果を上げる能力だ。この力を不死虫から得た【体力上昇】を併用すると効果が大きく上がった。不死虫とアオキノコは合成することでHPの増える薬、栄養剤になる。おそらくゲームの設定がこういうところで残っているんだろう。
【素材玉生成】は【粘着性物質生成】で作った糊のような物質に、小石を混ぜ込んで作った団子を食べて得た力だ。こちらも【毒物生成】や【閃光】との併用が出来るようで、毒けむり玉や閃光玉を作ることができた。
ちなみにこの作業の間、俺は外敵の気配を感じたら速攻逃げて、戦闘はしないようにした。なんせ俺はまだ戦闘経験は一回しか無い。しかも正面から戦わずに能力を使って倒しただけだ。いくら身体能力が高くても技術で負ける可能性がある。
今日は居住区に捕まえた魚を持ち帰った。アイルー達は猫なだけあって魚は大好物のようで、貪るように食べていた。喜んでもらえて良かった良かった。やっぱり猫は癒される。
評価つけてくださった方々ありがとうございました。
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8日目〜9日目 信頼関係の築き方
8日目
ジャギィの牙が欲しい。ブルファンゴの筋力が欲しい。ブナハブラの翅が欲しい。ケルビの角が欲しい。
朝ごはんに竹藪の中で蜘蛛を何匹か食いながら、俺はそんな事を考えていた。ここいら近辺の素材は殆ど食べたし、そろそろモンスターを食べたいのだ。
だけど、基本的に俺は命を危険に晒したくは無い。なんせ俺は、前世では格闘技の一つすらやった事が無いもやしっ子なのだ。いくら身体能力が高くても、正面からジャギィ数体と戦えば確実に死ぬ。いくらこちらが強かろうと相手は野生の獣だ。戦いの仕方に関して、相手は俺の一枚も二枚も上手。翻弄されてすぐに負けるのが目に見えている。
『能力名【操糸術】のラーニング完了』
蜘蛛を飲み込むとアナウンスが聞こえた。どうやらやっとこの能力をラーニングできたらしい。これで戦闘中でも糸をうまく使うことができそうだ。
【操糸術】はRe:Monsterでも出てきた能力で、紐状の物の扱いがかなり上手になる力だ。蜘蛛の糸を神経が通ってるかのように操り、相手を的確に拘束したり量を調節したりなどの操作がかなり簡単になる。この力を使えばオルタロス狩りも楽になるだろう。
さて、問題を出そう。
戦いたいけど死にたく無い。素材欲しいけど死にたくない。そんな時、どうすれば良い?
「なあ皆、今日の採取は俺も付いて行って良いか?」
答え、
と、いうわけで初の集団行動である。
俺はいつも1人で採取に行っていたので、いきなり付いていきたいと言い出した事を不思議に思われたのだが、「皆の戦ってる様子を見たい」と言ったら納得してもらえた。
アイルーは子供のうちは、雄でも狩りではなく採取への同行が許される。俺だって確かに性能は高いけどまだ生まれてから一週間しか経ってないガキなのだ。一応俺が付いていくことも問題無い。
それに、今回の採取は仲間との絆を深めるためにも重要だ。現在、あっという間に亜種個体に存在進化してしまった俺は、群れの皆から恐れられている。これからも群れで暮らしていくわけだから、もしハブられでもしたら困るのだ。
「あ、ここにもあったよ」
「え、また見つけたの? 本当、探すの上手ね」
「さすがニャー郎‼︎ 冴えてるにゃ!」
今、俺は【気配察知】と【吸喰能力】を併用することで、効率よく素材を発見していた。
五感というのは重ねて使う事により、より詳しく情報を見ることができる。
食事などがその良い例だ。視覚によって物を美味しそうだと感じ、嗅覚で食欲をそそられて、触覚で食感を楽しみ、温度覚で温かさや冷たさを分かる。味覚によって理解した『味』にそれらの感覚が彩りを加えられることで、深みが出てくる。
【気配察知】も【吸喰能力】も、五感とは違う感覚器官のようなものだ。片方は位置情報、片方は旨さが分かる。その二つの能力は組み合わせることによって、更に鋭利になって対象に切り込んでいく。これからは能力の組み合わせを色々探してみてもいいかもしれない。
そんな風に仲間と一緒に採取に励んでいたら、たくさんの気配が近づいてきた。
気配の正体はジャギィだった。3匹まとまってこちらに襲いかかってきたのだが、大人アイルーに盾役になってもらい、遠くから【操糸術】と【蜘蛛の糸生成】で相手を拘束したら楽に倒せた。
ジャギィだろうと何だろうと拘束する【蜘蛛の糸生成】は今のところ一番使える能力だ。【爆竹生成】や【火属性攻撃】と組み合わせれば導火線になる所も良い。Re:Monsterでも「自然界で火を使えるか使えないかは大きな差になる」と言ってるし、油の代わりになるこの力はこれからも色んな場面で役立ちそうだ。
あ、ちなみに特殊能力に関しては「亜種個体になっから手に入れた」と言って誤魔化している。なので、どうどうと使っても問題は無い。
拘束したジャギィは【竜爪攻撃】と【竜尾攻撃】、【蟻の筋力】の3つを使って頭を切り落として速攻トドメを刺した。【竜爪攻撃】と【竜尾攻撃】は使うと爪と尾をより、硬く鋭く熱に強いものにすることができる。それに【蟻の筋力】を組み合わせることによって、一撃で岩を砕くことすらもできるようになる。この組み合わせ、接近戦ではかなり有用だ。
ジャギィとは初めて戦ったけど、仲間が周りにいたのでそこまで怖いとは感じなかった。やはり数の力は偉大だ。1人で採取をしている時とは安心感が段違いだった。
血の匂いを嗅いでいたら腹が減ったので、切り落とした頭を一個食べた。クセの強い味だったが、そんなに悪くは無かった。
『能力名【
『能力名【噛み付き攻撃】のラーニング完了』
【
【噛み付き攻撃】もそこそこ使えそうだ。俺の【大顎】と【吸喰能力】を合せれば、どんな敵でもダメージを与えられるようになるだろう。
とりあえず、残ったジャギィの死骸は居住区に持ち帰って、親アイルー達に解体してもらった。ジャギィの肉は、雌アイルーは怪訝な顔をしていたが、雄アイルーは美味しそうに食べていた。
解体した後、残った小骨を貰って食ったが、能力のラーニングはできなかった。まあ腹の足しにはなったから困らないけど。
あ、それと、今日一緒にいた雌のアイルー達がやけに俺に話しかけてくるようになった。何故だろう?
9日目
今日も皆で採取に行くことにした。
今日は狩猟組の方に加わろうとしたのだが、何匹かのアイルー達が今日も一緒に行こうと言ってきたので、こちらに着いて行くことになった。
猫フェイスで上目使いとかずるいにもほどがある。あまりの可愛さに断ることができなかった。
しばらく採取をしていたらブナハブラが出現したが、また蜘蛛の糸を使って拘束して倒した。今回は仕留めるのに【
甲殻部分は剥がして身を食った。味はけっこう苦く、歯応えも良かった。特に足の部分は良い噛みごたえだ。
『能力名【麻痺毒生成】のラーニング完了』
ボス戦などで使えそうな能力を獲得した。これを【
今日はエリア5に来た。森の中で一箇所だけ開けた地帯になっている場所。木々の隙間から抜ける仄暗い光に照らされていて、まるで妖精の住む場所の様だ。ここにもたくさんの素材がある。ここは蜂蜜やキノコなどが多く取れる絶好の採取場だ。
「プギィーッ‼︎」
「ふにゃー⁉︎ こっちに向かってきたにゃー!」
「危ない!ニャー美、避けて!」
ただし、ハンター達にとって最高に苛立たしい存在、ブルファンゴがいる。
ブルファンゴは、ハンターを見つけると突進してくる縄張り意識の強いモンスターだ。そのため、大型モンスターに攻撃している時に追突してきたり、卵を持っている所に突っ込んできたりとかなり迷惑な個体だ。
良いところは、盾になる事ぐらいである。前世で、イビルジョー戦の時にそれで助かったのはいい思い出だ。
ブルファンゴの突進は俺なら平気だが普通のアイルーだと死にかねない威力なので、仲間に激突する前に【威嚇咆哮】を使ってビビらせて動きを止めて、【風起こし】を使って吹っ飛ばした。
【威嚇咆哮】は声を大きくするだけでなく、相手をビビらせる効果を声に付属させることができる。そのため、聴覚に頼っている相手だったらかなりの効果を発揮するようだ。戦闘中に相手の動きを止めたりできるらしく、隙を作るのに使えそうな力だ。
【風起こし】は風を起こして攻撃する技だ。ジャンプした時に風を噴射してより高く跳んだり、今のように相手を吹っ飛ばしたりと用途はかなり広い。
この【風起こし】だが、単体で使っても効果が薄い能力なので、【雷属性攻撃】を併用して帯電した風に変えて攻撃してみたところ、一瞬にしてブルファンゴを火達磨にすることができた。
肉がこんがりと焼ける匂いを嗅いでいたら腹が減ったので、【竜爪攻撃】で解体し、【氷属性攻撃】で消火した後バリバリ食らう。ジューシーな肉の味が口の中に広がる感覚はまるで、舌の上で幸せが踊っているようだ。
『能力名【突進攻撃】のラーニング完了』
昨日ジャギィから得た【噛み付き攻撃】と同じ、物理攻撃系の能力を獲得した。アイルーの小さい身体だとそこまで高い威力が出るかは疑問だが、それは属性攻撃系能力の併用でカバーできるだろう。
近くにもう二体居たのでそいつらも討伐して食べる。
『能力名【遮熱の毛皮】のラーニング完了』
『能力名【猪の筋肉】のラーニング完了』
腕と足は残して皆に提供した。俺の能力は心臓や脳、子宮などの身体の中でも重要な器官であるほどラーニング確率は上がる。だから俺としては胴体や頭をもらえればそれでいいのだ。
初めてのファンゴの肉だったからか、皆の中で「うみゃー!」などと叫び声が上がっていた。喜んでもらえて何よりである。
他にも幾つか今まで食べたことが無い薬草を見つけたので、食べて能力をラーニングした。味は茶葉やハーブのようで、独特の風味だった。
『能力名【解毒】のラーニング完了』
『能力名【回復】のラーニング完了』
『能力名【睡眠毒生成】のラーニング完了』
今日はしばらく採取をした後、居住区に帰った。ここ二日間でだいぶ俺の株は上がったらしく、皆がよく俺に話しかけてくれるようになった。これで、この群れを追い出される可能性はだいぶ低くなっただろう。モンスターの能力もラーニングできたし、万々歳だ。
よし! 明日からまた、ソロ狩り頑張るか‼︎
……10日目
「あ、俺、今日からまた1人で狩るから」
そう言ったら、俺は雌アイルー全員から猛反発された。まさかの全員だ。大人も子供も、皆が反対した。
「いやにゃー‼︎ ニャー郎も一緒に行くのにゃー‼︎」と駄々をこねる奴。
「ニャー郎さんは来ますよね? 来ますよね? ねえ、来るんでしょ?」とプレッシャーをかける奴。
「ニャー郎、一緒に来てくれ無いの……?」と泣きそうな声で言ってくる奴。
そのせいで今日も皆で採取に行く事になった。そろそろ素材から得られる能力も揃うし、もう狩りに専念したいんだけど……。
もう、どうしてこうなった。
今日も採取をして1日は終了。途中ジャギィとオルタロスに遭遇したけど、無事に討伐した。
『能力名【蟻酸生成】のラーニング完了』
『能力名【体当たり】のラーニング完了』
変更
【
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11日目〜14日目 喰うこととは強くなる事
11日目
今日も昨日と変わらず雌アイルー達との採取していたら、誰かが【気配察知】に引っかかった。アイルーと似ているけど何処か違う、奇妙な気配。皆に先に行くように指示してから気配のする先に行ってみると、そこにいたのは黒い毛並みの猫人だった。
『
目の前にいる個体は手に鉄製のナイフを持ち、ジャギィの毛皮を貼り合わして作った服を着ている。そこから察するに、メラルーの文化はアイルーよりも高水準らしい。アイルーはそこまで良い防具を作る技術もないし、金属製の武具なんて持っていない。
せっかくの装備を傷つけたり汚したりしたらもったいないので、今回は今まで使ってなかった【蔦生成】と【氷属性攻撃】を使用。遠くから蔦を飛ばして相手を縛り付けてから一気に近づき、頭を掴んで凍らせて倒した。ナイフや服を回収した後、周りの気配を確認して誰もいないのを確認してから【大顎】を使って一気に咀嚼する。
『能力名【
『能力名【
初めて職業系能力をラーニングした。【盗賊】はナイフを使う時や盗みをする時に補正がかかる、泥棒にはベストな能力だ。
食った時に飛び散った血で汚れてしまったので【蟻酸生成】で作った弱酸性の水で身体を洗ってから皆の所に帰った。ナイフと装備は近くで拾った、と言って誤魔化し、装備の方は俺には小さかったので他の人に譲り、ナイフは俺の物にする事にした。
その後は、いつものエリアで魚やキノコや薬草などを取って1日は終了。新しいエリアに行きたかったのだが、他のアイルーに反対されていくことはできなかった。
途中で群れから抜けてソロで行動しているジャギィ、いわゆるはぐれジャギィが出るなどのトラブルがあったが、【蜘蛛の糸生成】で拘束して無事鎮圧。群れから離れて一匹で行動している個体なだけあって普通よりも大きく、力が強くて俺の素の力では抑えるのは大変だったが、【猪の筋肉】と【蟻の筋力】を重ねがけすれば問題無かった。
『能力名【早食い】のラーニング完了』
『能力名【食い溜め】のラーニング完了』
『能力名【
……思ったよりハイスペックなぼっち個体だった。はぐれジャギィ侮れない。俺たちと戦わなかったら、案外コイツはドスジャギィに存在進化していたかもしれないな。
12日目
今日はエリア9で採取をすることになったので、この機会にオルタロスの全能力のラーニングに挑戦することにした。
というのも、俺は今までオルタロスの肉を何回も食べているのだが、ラーニング打ち止めの感覚がまだ無いのだ。キノコや薬草なら一定量食べるともうこれ以上ラーニングできない事が感覚的に分かるのに、モンスターの肉ではいまだに打ち止めだと感じることは無かった。なので、どこまでラーニングが可能なのか一度実験してみることにした。
俺は、まず「今日は分かれて狩りをしよう! 競争だ!」といって皆をこの場から離れさせた。強い敵が現れた時のために3〜4人のアイルーで班を作り、俺が能力で作った肥やし玉と粘糸玉を全員に持たせたので、もしもの時も安心だ。
そうして周りの奴らを追っ払った後、俺は巣の入り口の前にしゃがみ込んで周りの気配を確認してから、中に【爆竹生成】で作った爆竹を放り込んだ。
中から火薬の弾ける音が聞こえ、硝煙の臭いが漂う。その瞬間、【気配察知】にこちらに向かってくる大量の反応が出現した。怒りくるったオルタロス達が列をなしてやってきたのが俺には分かった。
俺はすぐさま【噛み付き攻撃】【大顎】【早食い】を同時使用し、巣から出てくるオルタロスにかぶりつく。
【噛み付き攻撃】でオルタロスを確実に捉え、【大顎】で出てきたオルタロスを噛み砕き、【早食い】でわんこそばのようにつるんと飲み込む。潰された仲間から飛び散る体液の匂いでオルタロス達は更に怒り狂って出てくるので、次から次へと溢れ出る。
【大顎】は攻撃力が高く、使いやすいいい能力ではあるが、ビジュアルがかなり怖くなってしまうが難点だ。猫の顔がパックリ割れて相手に喰らい付く様子は精神的にかなりのダメージが発生するため、そのせいでこの能力は仲間の前では使えないのだ。
途中からはお腹が苦しくなってきたので、【食い溜め】で腹の容量を高めたりオルタロスを食べて得た能力を使って消化能力を高めた。
10体ほどオルタロスをむさぼった結果、ラーニングは完了した。
『能力名【外骨格着装】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【腹袋】のラーニング完了』
『能力名【体内熟成】のラーニング完了』
これでオルタロスの能力は打ち止め。後は食べても腹の足しくらいにしかならないようだ。
これ以上食うのも何なので、巣の中に【麻痺毒生成】と【素材玉生成】の併用で作った麻痺煙玉を放り込んで動きを封じ、巣から既に出ていた個体は【
【外骨格着装】は確か『Re:Monster』にもでてきた能力で、身に纏った物を使って変身ヒーローのスーツのようなビジュアルの鎧を作り出し、装着する能力だったはず。頑丈なのにまったく身体の動きを阻害せず、受けた衝撃を分散することでダメージを軽減する事もできる事もできるので、強敵との戦いにおいてはもってこいの力だ。
……今度ボスモンスターの素材を手に入れたら使ってみるとしよう。
13日目
今日は、【隠れ身】のスキルを使ってケルビを狩ることにした。
ケルビは古の秘薬の素材になる角、防寒着の素材になる暖かい毛皮、納品アイテムのホワイトレバーなど、剥ぎ取れば良い素材を大量に入手することができる、非常に美味しい獲物だ。しかし、逃げ足が早さ、気配察知能力の高さなどの理由から、捕まえることがとても難しく、なかなか出会うことができないモンスターである。
そんなケルビを効率よく狩るには、【気配察知】と【隠れ身】がうってつけだ。
俺の【気配察知】は現在、10メートル以内の敵を感知でき、その生物の種類も判別できる。それを利用して今まで感じた事が無い生物の気配を探して、後は【隠れ身】を使いながら近づいて【蜘蛛の糸生成】と【操糸術】で捕縛すれば良い。
そうして、結局俺はその方法を実行し、1日かけて10匹ほどケルビを捕食した。鹿肉は歯ごたえがありクセの強い風味がした。角は何かに使えそうなので喰うのは少しだけにして、後はとって置くことにした。
『能力名【肝機能上昇】のラーニング完了』
『能力名【頭突き】のラーニング完了』
『能力名【角生成】のラーニング完了』
14日目
今日、【気配察知】に謎の気配が引っかかった。何匹かのメラルーの群れで、全員が異様な程に強い力を持っているようだった。
皆に大人しくしているように伝えてから気配のする先に行くと、そこにいたのは大きな荷馬車を引くメラルーがいた。荷馬車の上にはたくさんの荷物が並んでいて、そのどれもが野生では手に入らない人工物だった。
多分、奴らは大人のアイルーの言っていた
こっそり後ろを付いていったところ、渓流の奥深くのマップには載っていない場所についた。どうやら彼らはそこを根城にしているらしく、何人かのメラルーがその近辺をうろついていた。
俺は、巣の場所をしっかり覚えた後、皆の元へ帰って狩りを続けることにした。
採取を続けてしばらくすると、ガーグァの群れを発見したので、【竜尾攻撃】で頭を切り離してそこにいた全羽を惨殺した。その匂いに寄せられてジャギィも何体か出たが、そいつらは固まって行動していたので【素材玉生成】と【火薬生成】で作った爆弾をぶつけてまとめて倒した。
『能力名【羽毛生成】のラーニング完了』
ガーグァの頭を全部と、ジャギィ一体は俺が貰って食べた。アイルーの小さい身体にこれだけの量は収まりきらないはずなのに、俺は普通に完食することができた。ありったけの量の肉を食べたが、それでもまだ俺の食欲は収まっていなかった。
……喰いたい。
自分より強い
もっと強い者を喰いたい、もっと美味い物を喰いたい。
俺の中の【
はっきり言って実力は見合ってない。正面から闘ったらほぼ100パーセントの確率で俺は負けるだろう。
だけど、その程度で俺の欲望は躊躇したりしない。むしろ、強い者と戦える喜びによって、余計にヒートアップしている。それも味を引き立たせるスパイスだと感じているようだ。
……決めた。あいつら全員を喰おう。そうすれば、俺の中にある欲望も満たされるはず。
心の中で獲物に狙いを定め、俺は笑みを浮かべた。
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15〜17日目 準備の時間
15日目
メラルーと戦う。
そう宣言した時、俺は全員からの猛反発にあった。まあ仕方がない。渓流のメラルーは何匹もの個体が
だが、あくまでそれは正攻法で戦った時の場合だ。俺が能力をフルで使った場合、勝率は大きく変化する。
今の俺にはたくさんの戦闘手段がある。【蜘蛛の糸生成】を使って相手を拘束したり、【竜尾攻撃】で相手を切り裂いたり、【素材玉生成】で遠隔攻撃したりと、今の俺の戦闘の幅はかなり広い。
既に作戦は思いついた。今持っている能力の組み合わせや勝利条件などを考慮に入れて、俺のできる事は何かを考えに考えた末に結論を出した。後は作戦に使う物を集めるだけ。
と、いうわけで今日は狩りに行く事にした。俺がこれから行う作戦には大量の食物が必要になる。ありったけの飯を食わなければ、今回の作戦は成立しないと言っても過言ではない。
俺は今回、ソロで大量のモンスターを狩ることにした。今回は仲間からの協力は望めないようなので、自分で何とかするしかない。数日前までの自分にとって、そんな行為は自殺行為だったが、今の俺にはたくさんの能力がある。
【
【気配察知】と【
【操糸術】で拘束しながらの【竜尾攻撃】で相手にトドメをさして、
【大顎】と【早食い】で身体をまるごと食って【肝機能上昇】と【食い溜め】によってすぐさま消化吸収する。
1つ1つは大したことない力でも、それが組み合わさる事によって大きな怪物すら一瞬にして屠る事すら可能となる。それが【
そんな風に流れ作業の作業のように敵を食い、一日は終了。後は襲撃の準備だの何だのをして、眠りについた。
『能力名【脂質生成】のラーニング完了』
『能力名【狗竜の鱗】のラーニング完了』
『能力名【尾攻撃】のラーニング完了』
『能力名【脚力上昇】のラーニング完了』
『能力名【翅生成】のラーニング完了』
16日目
昨日と同じように、一日中狩りをしたり襲撃の準備をしたりして過ごした。他にも木材や枯れ草、落ち葉などを採取する作業も行った。
採取作業をニャー美やアイ春さん、ルー柴さんが手伝ってくれたおかげで、たくさん集めることができた。やっぱり持つべきものは仲間である。
深夜にこっそりメラルーの偵察も行った所、奴らの巣の前には番をする
少々当てが外れた所もあったが、作戦に大きな支障が発生する事はなさそうだった。必要な物の準備は7割がた済んでいるし、残った問題は「どのようにして見張りのメラルーを片付けるか」のみ。作戦決行の日は近そうである。
17日目
メラルー達を喰う。そんな決意から3日。
昨日までと同じように狩りと採取を行い、ついに俺は対メラルー戦で必要な物を揃え終わった。
食うことで補給した膨大なエネルギーと、膨大な量の燃料。これらと俺の能力が合わされば、俺はあのメラルーの群れを壊滅させることができるはずである。
何人かに協力してもらう事も決まったし、準備も完了し、作戦も決まった。後は作戦決行を待つのみだ。
ああ、メラルーの肉……いったいどんな味がするのだろうか。
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17日目〜18日目 虐殺と同族
俺たちは、【興奮物質生成】と【蜂蜜生成】で作った元気ドリンコ(仮)を飲んでから、深夜の森の中を相手の巣に向けてゆっくりと進んだ。夜はジャギィなどのモンスターが活発化するのだが今の俺たちには問題ない。普通に瞬殺して養分に還元した。
巣から数十メートル時点まで来ると、俺は周りのアイルーに待機するように指示を送り、【
このまま正面から行くと、恐らく奇襲がバレる。だから、まずは見張りを太鼓から引きはがす事にした。
俺は、手に持っていた石を少し離れた所に投げる。石がそこにあった茂みに当たってガサガサと音を立てた。
「ん? 何だ? 」
風も無いのに音の鳴った事に不審に思ったのか、メラルーが茂みへと近づき、覗き込む。
そうして無防備になった後ろに気配を殺して近づくと、手に持っていたナイフを首に向かって振り下ろす。抵抗されても困るので、【竜毒生成】と【
「……第一段階、クリアか」
俺は小声でそう呟くと、倒したメラルーを放置して皆の元に帰った。
見張りの居なくなった巣の前に立ち、【気配察知】を使用。ガーグァを大量に喰って能力を強化し、メラルーの捕食で【
「今だ! やれ!」
そう俺が指示をすると、アイルー達は俺の元に駆け寄って、持ってきた
俺は、ある能力を発動の準備に入る。それは今まで使ってこなかった能力だ。なんせ、普通の敵に使うと一瞬で消失させられるくらい威力が高いし、一回撃つだけでも相応のエネルギーを食う、非常に使いどころの悪い能力だからだ。
今こそ使おう。火竜より手に入れた、俺の最強の攻撃能力。
「【
【
火竜とまで呼ばれるリオレウスの技である、火の玉を再現する能力。その威力は雷撃にも相当し、一発撃つだけでもガーグァ1体分のエネルギーを消費する。
身体から一気にエネルギーを持っていかれる感覚と共に放たれた炎の塊。それは積まれた木に着弾した瞬間に崩壊し、洞窟の入り口に大きな火柱を築き上げた。恐らく今の一撃で、いち早く異変に気付き出てこようとした連中は大ダメージを受けた筈だ。しかし、これで終わりでは無い。これはあくまで相手を巣の中に足止めするための行為にすぎない。
「皆! 今の音で周りのジャギィとかが集まってくるかもしれない! 敵がこっちに来ないよう、頼むぞ!」
『了解っ!』
俺の指示で、全員がそれぞれの持ち場に散らばっていく。俺がいなくても敵を迎撃できるよう、今日きたメンバーは全員モンスターの素材で作った装備や武器が支給されている。もしものために肥やし玉などのアイテムも持たせてあるため、少なくともこっちに敵が来ることは無いだろう。
俺は、巣の中を【気配察知】で探る。どうやら巣の中は寝ている奴を起こしたり何だりで大騒ぎになっているらしい。今度はそこをつく。
俺は、足元に置いておいた袋の中に手を突っ込むと、中に入っていた物を幾つか炎の向こう側にぶん投げた。
「にゃあ! 今度は何事にゃ⁉︎ 突然煙が‼︎」
「煙幕か? いや、この香りは……マタタビ?」
「ふにゃあああ! か、身体が痺れて……」
「痛い痛い痛い痛い痛い! 顔が! 顔が、溶ける!」
中からメラルー達の声が聞こえてくる。どうやら驚いてくれたようだ。
今投げたのは、【素材玉生成】と様々な能力の併用で作った、各種状態異常玉だ。本来なら素材玉に麻痺毒や睡眠毒は適していないのだが、アオキノコからラーニングした【薬物効果上昇】を使う事でその問題はカバーできる。
今の俺が作れるのは『毒煙玉』や『肥やし玉』、『閃光玉』だけじゃあない。
【蟻酸生成】で作った『強酸霧玉』
【睡眠毒生成】で作った『睡眠毒煙玉』
【麻痺毒生成】で作った『麻痺毒煙玉』
【減気毒生成】で作った『減気毒煙玉』
【
その他にも、【粘着物質生成】や【接着剤】で作った『引っ付き玉』、【爆竹生成】で作った『小型爆弾』、【蟻酸生成】に【竜毒生成】を混ぜて作った、当たると溶けた皮膚から竜の毒が入って死に至る『即死玉』、なども幾つか入っている。
この三日間、俺は何体ものモンスターを喰らい続けることにより、莫大な量のカロリーを得ている。それらのエネルギーを殆ど費やし、俺は大量の素材玉の生成をしたのだ。
投げて、投げて、投げまくる。【気配察知】で動きを読んて的確に投げているので俺のコントロールは外れない。火に炙られ、毒に晒され、ジワジワとダメージを与えられ続けるのはさぞ精神的に辛い事だろう。何て残酷な仕打ちなのだろうか。
まあ、そう簡単に落ちるほど相手も甘くは無い。何人かの奴らはダメージ覚悟で無理やり火の中を突っ切ってくる。
「うにゃああああ!」
叫び声をあげて、士気を奮い立たせて、体を焼かれる痛みをこらえながらメラルーが飛び出してくる。
だけどそう来る事はとっくにお見通しなので、俺はちょうど来る所に【竜尾攻撃】をブチ込んだ。刺した敵は、そのまま尻尾を使って敵に器用に投げ返して戦意を削ぐのに使った。
俺はどこまでも無慈悲に、作業的に素材玉をぶつける作業を続けた。
メラルー達の目に、果たして俺はどう写っているのだろうか。殺される事に関してコイツらはどう感じているのだろうか。
こんな残虐な事をしているのに、なんで俺は食欲の任せるままに暴れられるのだろうか。
「……お、そろそろ素材玉が切れるな」
いろいろと考えながら30分くらい素材玉で向かってくる敵を迎撃していたら、持ってきた素材玉が尽きかけていた。
「敵の気配は……まだあるよな?」
【気配察知」を使ってみた所、未だに何人かのメラルーは生きているようだった。どうやら奥の方に避難しているらしい。
「あれ? ニャー郎、終わったのにゃ?」
攻撃の手を止めてどうするか考えていたら、ニャー美が話しかけてきた。
「うーん、どうやら敵は奥の方に避難しているみたい……って、ニャー美はなんでここに居るんだよ。見回りはどうした?」
「一緒にやってるアイ春が、異様に張り切ってるのにゃ。ニャー郎に良いとこ見せなきゃって」
どうやら暇になってここに来たらしい。万が一の事もあるしペアの子とはあまり離れるな、と言っておいたはずなのに……。
「まあ良いか。とりあえず、今から火の向こう側に特攻してくるか。見回りの継続よろしくね」
「了解にゃ!」
ビシッと敬礼のポーズをとるニャー美。微笑ましい姿に癒された後、そのまま洞窟の方に向き直る。
「……なあニャー美、俺が同族のメラルーの巣を襲撃するって言った時、どう思った?」
すると、ニャー美は少々考えるような動作をしてから、こう返した。
「ニャー郎の言ってる事だし、それは必要にゃんだと思うにゃ! だから、ニャー郎についていくにゃ!」
「……そうか。ありがとな、ニャー美」
深呼吸し、熱い空気を胸の中に収める。熱が身体を巡り、血に浸透し、身体が高ぶっていくのを感じる。
「【竜鱗生成】【遮熱の毛皮】、発動」
そう呟いた瞬間、ピキピキと音を立てながら俺の皮膚が赤い鱗に覆われる。この鱗は火竜の性質を持っているため、耐火性もそれなりに高い。見た目が悪くなる所さえ許容できれば、そこそこ使える能力だ。
腕をクロスさせ、顔を守るようにしながら思い切りジャンプして炎の壁を越える。
洞窟の中は死屍累々だった。入り口付近には毒で動けなり、死にかけているメラルーが転がっている。かろうじて生きているそいつらの胸に自分の尾を突き刺し、確実にトドメを刺しながら、奥へ奥へと進む。
生きている気配を目指して進んで行くと、入り口がドアになっている所を見つけた。倉庫か何かだろうか。どうやらドアで区切ってガスが入らないようにしているようだ。完全に塞ぐことはできなくても、こうすればある程度は時間を稼げる。
中に入ろうとドアを開けようとしたが、開かなかった。蹴ったり突進したりしてドアをブチ破ろうとしても開かなかった事から察するに、扉の向こうに荷物を積み上げているのだろう。
普通の攻撃では破壊できなさそうなので、【蟻の筋力】と【猪の筋肉】と【脚力上昇】で身体能力を増強し、【角生成】で頭から角を生やす。さらにそこに【突進攻撃】と【体当たり】と【頭突き】を使用し、ドアに頭からぶつかった。
轟音を立ててドアが吹きとび、前に積まれていた物が周辺に吹っ飛んでいく。そこには女や子供などの弱いメラルーと、ボスの
最後の足掻きとばかりに
こうして、メラルーの群れは、一晩にして滅びた。
18日目
昨日の戦いの後、俺はメラルーの群れのボスを喰った。やはりボスというだけあり、その肉体はとても美味しい物だった。更に、幾つかの優れた能力もラーニングできた。
『能力名【
『能力名【
『能力名【武芸百般の心得】のラーニング完了』
かなりのチート能力が手に入った。鑑定も収納も狩りをするのに使えるし、俺には戦闘センスが無かったのでこれはちょうど良かった。
俺は手に入れた【異空間収納能力】を使い、巣の中にあった武器や防具をアイルー居住区に運んだ。人間から奪ったと思われる道具や装備は全て優秀で、生活水準を一気に引き上げてくれそうな物ばかりだった。
食べ物や薬は残念ながら俺の毒で汚染されてしまったので、全部俺の管理下に置く事にした。
更に、洞窟の最奥を捜索してみた所、そこには捕虜の人間の女達の死体があった。どうやらメラルー達の発散に使われていたらしい。ボロボロで、汚れていて、目も当てられないような有様だった。
……どうやら俺は人殺しをしてしまったらしい。
まあ、この人達はメラルー達によっぽど酷い目に合わされてきた人のはずだ。こんな状態では、社会に戻る事も難しいだろう。だから、別にこれで良かったんだ。
俺はそう考えることにした。
手を合わせて成仏を願った後、全員余す事なく食べた。
『能力名【職業・重剣士】のラーニング完了』
【能力名【
『能力名【職業・狩人】のラーニング完了』
『能力名【職業・射手】のラーニング完了』
『能力名【鷹の目】のラーニング完了』
『能力名【職業・商人】のラーニング完了』
『能力名【売値三十%増加】のラーニング完了』
『能力名【買値三十%減少】のラーニング完了』
『能力名【職業・鍛治師】のラーニング完了』
『能力名【
他のメラルーの死骸はアイテムボックスに収納しておき、時間が空いたら食べる事した。何故だか知らないが異様な程に疲れていたので、その日は全ての仕事を終えた後すぐに床についた。
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件《同族大量虐殺》《覇道闊歩》《転生者捕食》をクリアしているため、【
【
≪YES≫ ≪NO≫】
……え、もう進化するのか?
とりあえず、Yesを選んでから寝た。
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第1章まとめ
スペック
【
人間にはやや劣るが高い知能を持つ、小型の獣人。二足歩行をする猫のような姿をしている。基本的な毛の色は茶色で、赤や青などの種類もある。
人間社会にいる個体と野生の個体の2種類に分かれていて、基本的に人間に対して害のない種族である。
根気強く、努力を惜しまない個体が多いため、何かしらの才能を伸ばしてその分野の天才になるケースもある。
【
アイルーの変異種で、好奇心が強く好戦的。人間に対して害をなす事の多い種族である。毛並は黒。
知能はそこそこ高く悪知恵も働くのだが、アイルーのように強い忍耐力が無い。
基本的には野生にしか生息していない。
【
アイルーの上位種であり、基本的な姿は特に変わらない。通常の個体よりサイズが一回り大きい。
知能と身体能力が高まり、ジャギィやブルファンゴなどの弱いモンスターなら戦えるようになる。
一応ボス個体ではあるが、
【
猫人長の変異種で、毛が真っ赤に染まっている。手と脚が甲殻で覆われていたり、尻尾の筋肉が異様な程に発達し先端がナイフのようになっていたりなどと、普通の個体とは作りが違う箇所もいくつか存在している。
知能、身体能力は共に通常時より高く、他種のボス個体にも一矢報いる事ができる。
【
メラルーの上位種であり、欲望や被虐心などの悪意が強く高まっている種族。
全能力が高くなっており、特に知能はかなり高い。悪知恵が働き小狡い手をよく使うようになる。
登場能力一覧
【爆竹生成】
衝撃を受けると爆発する物質を作り出す。
【蜘蛛の糸生成】
蜘蛛のに似た物質を糸を作り出す。同じ細さの鉄の糸より硬いと言われる蜘蛛の糸だけあり、強度はそれなりにある。
【急成長】
爪や毛を急成長させる。その分体力を削る。
【危険察知】
敵の存在を察知する。応用すれば、アイテムなどの気配も微弱ながら察知できる。
【絶縁体】
身体が電気を通し辛くなる。
【薬物効果上昇】
薬物の効果を上昇させる。回復薬系だけでなく、毒などの効果も上昇させる。
【蔦生成】
蔦を生やす。エネルギーを使うほど強靭になる。
【氷属性攻撃】
攻撃に氷属性を付与する。相手を凍らせられるようになる。
【
マタタビの成分を作り出す。猫人系モンスターは摂取すると酔っ払ってしまう。
【粘着性物質生成】
糊のような物質を作り出す。ベタベタしていて、着くと取り辛い。
【貫通力強化】
貫通攻撃の威力が上がる。
【毒物生成】
様々な毒物を作り出す。作れる種類は比較的自由。
【興奮物質生成】
興奮物質を作り出す。摂取すると目が覚め、意識がはっきりする。
【減気毒生成】
減気毒を作り出す。摂取すると身体から力が抜けて、疲労感に襲われる。
【蜂蜜生成】
蜂蜜を作り出す。甘くて身体に良い健康食品。薬の材料にもなる。
【体力上昇】
体力の上限が少し上昇する。
【接着剤生成】
接着剤を作り出す。乾燥させると綺麗にくっ付き剥がれなくなる。
【閃光】
身体が光り輝く。目くらましになる。
【雷属性攻撃】
攻撃に雷属性を付与する。相手を麻痺させる。
【魚寄せ】
水中で使うと魚が寄ってくる。
【素材玉生成】
素材玉を作り出す。他の能力と併用する事で、その効果を持った素材玉も作れる。
【悪臭】
体臭が臭くなる。
【属性やられ無効化】
属性やられ状態にならなくなる。
【大顎】
口が4つに裂けて、広がる。噛み付いた所は大きく抉れる。攻撃に便利。
【蟻の筋力】
筋力が高まる。身体のサイズに釣り合わないレベルの力を引き出せる。
【
毒物を体内で生成し、牙や爪、持っている武器の先端から出して攻撃時に相手に投与する。毒性の強さをコントロールできる。
【
毒物に対して強い耐性を得る。【
【火属性攻撃】
攻撃に火属性を付与する。相手を火傷させる。
【
火竜の火の玉を再現する。火炎放射器のように強い一撃を放つ。
【
炎熱系攻撃に対して耐性を得る。
【威嚇咆哮】
大きな声で叫ぶ能力。声に、聞くと恐怖する効果が付与される。
【竜鱗生成】
竜の鱗を皮膚の表面に作る。炎に対して強い耐性を手に入れる。
【竜尾攻撃】
尾での攻撃の威力が高くなる。龍属性が攻撃に付与される。
【竜爪攻撃】
爪での攻撃の威力が高くなる。龍属性が攻撃に付与される。
【風起こし】
風を巻き起こす。自由な方向に向けて衝撃波を打つ。ロケット噴射のようにして空をもとべる。
【大器晩成】
成長率を上昇させる。成長速度も上昇する。
【■■■■】
不明。相手を魅了する能力?
【操糸術】
紐状の物を上手く操作する能力。
【
恐怖の心が消え、躊躇いが無くなる。自身の欲求にうまくブレーキが働かなくなる。
【噛み付き攻撃】
噛みつき攻撃の威力が上がる。
【麻痺毒生成】
麻痺毒を作り出す。
【突進攻撃】
突進攻撃の威力が上がる。
【遮熱の毛皮】
炎熱系、氷結系攻撃が効きづらくなる。
【猪の筋肉】
筋肉が一時的に増強する。体温が少し上昇する。
【解毒】
体内で毒を分解する。
【回復】
身体に出来た傷を治す。自分だけでは無く、他人に対しても使える。
【睡眠毒生成】
睡眠毒を作り出す。
【蟻酸生成】
酸性の液体を自由に作り出す。濃度、成分の調整可能。
【体当たり】
体当たり攻撃の威力が上がる。
【
気配を消す事ができるようになる。能力を極めると視界の隅に居てもその存在に気付かなくなる。ある程度相手の五感も誤魔化せる。
【
盗賊に関する事が何となく分かる。
【早食い】
物を食べる速度が上がる。ほとんど噛まずに物を飲み込めるようになる。
【食い溜め】
胃袋の容量が多くなる。
【
単独行動中全能力に補正がかかる。能力により、自己中心的な性格になる。
【外骨格着装】
身につけている装備を元にして変身ヒーローのスーツのようなビジュアルの鎧を作り出し、装着する能力。頑丈なのにまったく身体の動きを阻害せず、受けた衝撃を分散することでダメージを軽減する事も可能。
【
酸攻撃に対して耐性を得る。
【腹袋】
体内に袋を作り出す能力。物をしまえる。入れていたものは体液で汚れるので注意が必要。
【体内熟成】
体内に取り込んだ物を熟成させる。
【肝機能上昇】
肝臓の機能が上昇する。酒を飲むときに使える力。
【頭突き】
頭突き攻撃の威力が上がる。
【角生成】
角を作り出す。形状は自由自在で、鹿のようにしたりサイのようにしたりできる。
【羽毛生成】
羽毛を生やす。フカフカで保温性の高いので、布団などに重宝される。
【脂質生成】
油を作り出す。蝋燭のようなものからサラサラの油まで、自由自在。
【狗竜の鱗】
狗竜の鱗を作り出す。防御力が少し上がる。
【尾攻撃】
尾攻撃の威力が上がる。
【脚力上昇】
脚力が上昇する。ジャンプ力や脚の速さに補正が掛かる。
【翅生成】
虫のような翅を背中から生やす。それを動かして空も飛べるようになる。
【
物品の名称と価値と効果が見るだけで分かるようになる。
【
異空間に繋がる箱を作る。箱の中に入れた物はそのままの状態がキープされる。物を入れられる数は99アイテムを99個ずつ。
【武芸百般の心得】
武芸に関する事を感覚で理解する。
【職業・重剣士】
重装備がてきるようになり、剣技に補正がかかる。
【
脳内で入ってきた情報を元に地図を作る。まだ行った事が無い場所は表示されないようになる。
【職業・狩人】
Re:Monsterでは弓・ボウガン類の威力に補正をかける職業だったが、この世界では全ての武器へ補正がかかるようになっている。また、採取行動や解体などにも微妙に補正が掛かる。
【職業・射手】
弓・ボウガン類の威力に補正がかかる。
【鷹の目】
遠い所がよく見えるようになる。
【職業・商人】
商売に補正がかかる。
【売値三十%増加】
物を売った時相場より高めに買ってもらえる。
【買値三十%減少】
物を買う時相場より安めに売ってもらえる。
【職業・鍛治師】
鍛治に補正がかかる。
【
人間の言語を理解する。
【
どんな物でも捕食可能になり、毒性のものだろうと体内で分解し、自らに取り込む能力。
食べ物に対する忌避感が消失し、「強そうな物」を「美味しそうな物」として認識するようになる。また、食欲がかなり強くなる。
また、捕食した際に捕食物の持っていた能力を獲得し、自由に使えるようになる。また、得た能力はその能力を持つ物を捕食するほど強くなる。
現在のニャー郎の人格
「吸喰能力」+「独り身の戦闘」+「命知らずの心」=自己中心的で強い食欲を持ち、さらにはその感情にブレーキが効かない。
どうしてこうなった……。
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第2章 悪魔の挫折
19日目〜21日目 働いたら、負け……だよね?
せっかくの記念すべき回なのに、内容がほぼ能力のラーニングだから内容がスカスカに……。
19日目
朝起きると、俺の身体には変化が生じていた。
まず、毛の色が全体的に変化した。赤い色だった毛並みは黒く染まり、闇に溶け込む色合いに変わっている。腕と脚を覆っていた甲殻が消失した代わりに、皮膚が強い衝撃を受けると硬くなるようになっていた。尾の方は甲殻に覆われて蠍のようになっており、先端は矛と似た形状だった。
今の俺は、戦闘力が通常のアイルーとは比べ物にならないほどに高い。おそらくボス級個体すら屠れるだろう。体の中に力が満ち溢れる感覚と仮初めの万能感に満たされていて、気分が高揚している。
俺は次に存在進化した時は、
俺は狩りに行きたくてしょうが無かったのだが、ぐっと堪えて手に入れた素材たちの整理から始めることにきた。まずは腐りやすそうなメラルーの肉体から調べる事に。
【物品鑑定】を使っていてよく分かったのだが、俺の倒したメラルーの群れは本当に凄かったらしい。
まず、メラルー達が全員鍛えられている。筋肉もついているし、戦闘技術もそこそこあったようだ。そして、それに伴う技術も手に入れていた。
そして、加工品の精度が高い。戦闘力もさることながら、装備の面でこの群れはかなり充実していた。どうやら人間から奪った装備を元に、より良い装備の作り方を学んでいたらしい。
正直言って、俺はメラルーを甘く見ていた。そこそこ強くても所詮はメラルーだとモンハンの常識にとらわれていた。だが、実際は違った。彼らは俺の想像していたよりもずっと賢く、ずっと強かったのだ。
俺は今回メラルーに勝った。だけど、それは卑怯な手段を用いて勝ったにすぎない。もし真正面から戦っていたとしたら確実に負けていたかもしれないのだ。
もっと強くならなくてはならない。もっと食わなくてはならない。もっと戦闘しなくてはならない。強くならなくては
鑑定し終わった個体はすぐさま食べて、体内に取り込んでだ。アホみたいな量あったが、【早食い】などの能力の助けもあり何とか食い切った。
『能力名【
『能力名【
『能力名【鍛治の心得】のラーニング完了』
『能力名【加工の心得】のラーニング完了』
『能力名【調薬の心得】のラーニング完了』
『能力名【刀剣の心得】のラーニング完了』
『能力名【集団狩猟の心得】のラーニング完了』
『能力名【槍戟の心得】のラーニング完了』
『能力名【弓術の心得】のラーニング完了』
『能力名【守り手の心得】のラーニング完了』
『能力名【解体の心得】のラーニング完了』
『能力名【ヒト攫い】のラーニング完了』
『能力名【
獲得した能力は、大体は心得などの能力だった。心得系の能力は感覚をサポートしてくれる非常に有用な能力なので、これから様々な機会で役立ってくれるだろう。
他にも搾取したアイテム類が大量にあったので、幾つか食べて能力の底上げをした。
『能力名【火薬生成】のラーニング完了』
『能力名【雑草の如き成長】のラーニング完了』
『能力名【玉石混淆】のラーニング完了』
『能力名【龍属性攻撃】のラーニング完了』
『能力名【攻撃力強化】のラーニング完了』
『能力名【防御力強化】のラーニング完了』
『能力名【弾丸生成】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【水属性攻撃】のラーニング完了』
『能力名【収納上手・技】のラーニング完了』
『能力名【収納上手・力】のラーニング完了』
『能力名【罠生成】のラーニング完了』
『能力名【敵呼び】のラーニング完了』
『能力名【採掘】のラーニング完了』
『能力名【矢生成】のラーニング完了』
『能力名【ビン生成】のラーニング完了』
『能力名【発熱】のラーニング完了』
『能力名【冷却】のラーニング完了』
『能力名【応急手当】のラーニング完了』
『能力名【刀研ぎ】のラーニング完了』
『能力名【切れ味回復】のラーニング完了』
『能力名【辛味成分生成】のラーニング完了』
『能力名【自然回復力上昇】のラーニング完了』
『能力名【回復の歌声】のラーニング完了』
『能力名【攻撃強化の歌声】のラーニング完了』
『能力名【防御強化の歌声】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【
『能力名【高速帰宅】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【生命の粉塵】のラーニング完了』
大量の能力のラーニングに成功した。ここまで能力が手に入れられるとは思ってなかったので、嬉しい誤算だった。
それにしても、珍しいアイテムがこの中には多かった。応急薬や砥石などは分かるが、まさか鬼人笛や硬化笛、生命の粉塵なども入っているとは思わなかった。
手に入れた能力を検証したりしていたら、いつの間にか夜になっていたので寝ることにした。他の物のチェックは明日に回すとしよう。
20日目
メラルーの荷物を調べてみたら、大量の宝珠を発見。全て捕食した。味はどう形容していいかは分からなかったが、様々なフレーバーが口の中で弾けてとても楽しい味だった。
『能力名【弱点見切り】のラーニング完了』
『能力名【特殊攻撃威力上昇】のラーニング完了』
『能力名【回復速度上昇】のラーニング完了』
『能力名【力の解放】のラーニング完了』
戦闘で役立ちそうな能力を手に入れた。にしても、この宝珠ってどうやって作るんだろうか。素材の持つスキルを取り出して珠に移すなんて、色々とファンタジーすぎる気がする。今更気にするようなことでも無いが。
暇になったので、残りの時間は【加工の心得】を併用して自分用の弓を作る事にした。今の俺は【職業・射手】や【矢生成】などの遠隔攻撃をサポートできる能力を持っているのに、それを活用するための武器が無い。いちおうメラルー達の使っていた弓があるのだが、弱い握力で簡単に引けるようになっているので威力に欠けるのだ。
材料には【蔦生成】を使用する。この能力は注ぎ込んだ力に応じて蔦の強度を自由に変えられるので、しなりのある枝と丈夫なを生成できる。
属性攻撃系能力を使用しながら蔦を生成する事で属性を素材に慣らし、力を乗せやすくする。曲げて縛って形を整えて、【接着剤生成】で結合する。使いやすさと威力を重視して、そこそこ小さめのサイズで撃つのに強い力のいる弓を作る。
さらにそこに、新しく手に入れた能力である【玉石混淆】を合わせる。これは、何か物をつくった時に飛び抜けて良い物ができる確率を底上げする能力だ。良いものを作る確率を上げてくれる。
そうして作業を続けた結果、【玉石混淆】の効果で性能の大幅上昇した弓が完成した。弓自体には特殊な効果は無いものの、高い威力と使いやすさを持つ優れた武器になった。俺の生成した材料で作ったので能力も反映させやすく、丈夫なので乱暴な扱いにも耐えられる。まさしく俺にぴったりな弓だった。
鑑定してみたところ、『小弓・快晴』という名前だった。アイテムボックスに突っ込んでおいて、いざという時に使おうと思う。
20日目
働かないで食べる飯が美味い今日このごろ。
今日は武器や防具からのラーニングに挑戦することにした。メラルーの所には人間用の防具も何故かいくつかおいてあったので、どうせ使い道も無いし食べてみる事に。
『能力名【腐蝕防止】のラーニング完了』
『能力名【強力殺菌】のラーニング完了』
『能力名【形状記憶】のラーニング完了』
『能力名【切れ味低下防止】のラーニング完了』
『能力名【斬撃力上昇】のラーニング完了』
『能力名【切断力上昇】のラーニング完了』
『能力名【打撃力上昇】のラーニング完了』
『能力名【回避直結】のラーニング完了』
『能力名【鬼人化】のラーニング完了』
『能力名【鬼人強化】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【剣打撃】のラーニング完了』
『能力名【連気技】のラーニング完了』
『能力名【岩斬り】のラーニング完了』
『能力名【属性解放突き】のラーニング完了』
『能力名【スーパーアーマー】のラーニング完了』
『能力名【フルバースト】のラーニング完了』
『能力名【竜撃砲】のラーニング完了』
『能力名【気絶攻撃】のラーニング完了』
『能力名【回転攻撃ホームラン】のラーニング完了』
『能力名【演奏】のラーニング完了』
『能力名【曲射】のラーニング完了』
『能力名【発射】のラーニング完了』
『能力名【スコープ】のラーニング完了』
どうやら防具は鮮度に欠ける所為か、素材の能力のラーニングはできないらしい。残念である。
他にもメラルーの所で手に入れた飯があった食べ物があったので、それを食べて1日終了。やっぱり人工的な食べ物は美味い。スパイスの味が効いていて、とても刺激的だった。腹が膨れたので、今日はもう寝た。
せっかく存在進化したのに俺は、この3日間居住区から一歩も出なかった。
どうも、ついに第2章スタートです。ここまで来れたのも読者の方々の評価と感想のおかげです。皆様への感謝が止まりません。
タイトルを、春夏なるさんのアイデアと本家のタイトルを合わせて少し変えて、「Re:Nyanster 〜刺突から始まる猫人転生日記」に変えました。本家と違って「転生記」でなく「転生日記」なのは仕様です。
春夏なるさん、ありがとうございました!
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22日目〜23日目 狂う戦力図。
22日目
引きこもり期間の終了は突然だった。
俺は今日も家に引きこもってダラダラ過ごすつもりだった。生産職としての高い技術を生かして皆へ武器や防具を作るつもりだった。だが、そんな甘い考えは早々に打ち砕かれた。
その情報が入ってきたのは今朝方の事だ。どうやら雄達の部隊が巨大な足跡を発見したらしい。
これまで、この渓流にドスジャギィが出現していなかったのは、メラルー達のお陰らしい。彼らは訓練された兵と質の良い道具を併せ持っていたので、ボス相手にも立ち回る事ができた。それにより、彼らは自らの領域を護っていたのだ。
だがしかし、彼らが死んだ事により今、この地域は支配者のいない場所とかしている。おそらくドスジャギィは空いたこの土地を侵略し自分の餌場にしようとしているのだろう。
せっかくのボス個体だ。食わなければもったい無い。ドスジャギィは今手に入るモンスターの中でも明らかに上物だ。食っておかなければ「何故あの時食わなかった……」と後悔する羽目になるだろう。
という訳で、早速敵の所へこっそり向かい、【竜毒投与】と【麻痺毒生成】と【特殊攻撃威力上昇】の併用で作った超強力な麻痺毒により相手を動けなくした後、取り巻きを全員倒してから、【竜尾攻撃】で頭を切り落として倒した。
『存在進化』によってボス個体級の身体能力となった俺の肉体に【攻撃力強化】や【攻撃強化の歌声】などを使う事で筋力を高める。それにより生身でも大岩を砕くような威力の攻撃が、強化によって鉄塊をも穿つ一撃へと変わるのだ。それに耐えられるような生物はそうそう存在しない。
『能力名【仲間を呼ぶ声】のラーニング完了』
『能力名【群友統括】のラーニング完了』
『能力名【鳴き袋】のラーニング完了』
『能力名【体温調節】のラーニング完了』
『能力名【群の長】のラーニング完了』
『能力名【悪知恵】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【孕ませる】のラーニング完了』
仲間を支配するのに使えそうな能力のラーニングができた。この狗竜長はどうやら群を支配するのがとても上手かったらしい。ただ、その分自らの戦闘力自体は低めだったのか、個人の戦いで使えそうな能力は手に入らなかった。残念である。
にしても、【精力絶倫】【孕ませる】を同時に獲得できるとは……。コイツは、ジャギィ界では超イケメンの種まき野郎だったのか。この前のはぐれジャギィとは大違いだ。
ドスジャギィを狩った後は他のアイルーと一緒にジャギィ達を狩る作業に移行。【群友統括】と【群の長】の活躍により、スムーズに狩りを行う事ができた。
『能力名【早熟】のラーニング完了』
23日目
昨日のように他の地域から来るボス個体から渓流を守るため、狩りのついでに見回りをする事にした。【気配察知】を使って周辺を探りながら歩いていたが、他のモンスターとはあまり合わなかった。
……うん、どうやら俺は強くなりすぎたらしい。なんせ近づくだけでモンスターが全員逃げていくのだ。【隠れ身】を使っていればバレないのだが、この能力はキープするのが結構ダルいのであまり使いたく無い。
ただ、喧嘩っ早いブルファンゴなど、一部のモンスターは立ち向かってきたので大きく口を広げる【大顎】で食べさせていただいた。ブルファンゴよ、戦力差を気にせずに立ち向かうお前たちの勇気は流石だ。お祝いに熱いキスをかましてやろう。
そんなこんなで奥へ奥へと進んで行ったところ、【気配察知】に謎の気配が引っかかる。それは林の奥の大きな木の下から出ていた。掘ってみると、そこには真っ赤なキノコが生えていた。禍々しい力を秘めていて、心なしか人の形をしているようにも感じる。鑑定してみると、マンゴンドラという秘薬の材料となる素材だった。
せっかくなので、【調薬の心得】を使って『いにしえの秘薬』作りに挑戦することにした。
材料は【隠れ身】と【蜘蛛の糸生成】で捕まえたニガ虫と【蜂蜜生成】で作った甘い蜂蜜、取れ立て新鮮なマンゴンドラと前に保存しておいたケルビの角である。
いにしえの秘薬は1から作る場合、『増強剤』、『活力剤』、『いにしえの秘薬』と順に作っていかなくてはならない。本来なら行商人から買った方が手間が省けるのだが、あいにくメラルーの巣には増強剤は無かったのだ。ただ、薬自体は無かったが調合について載っている本があり、それを元に作ってみることにした。
まず、ニガ虫を解体し使える部分を選出する。これは生薬の加工の工程の一つである『選薬』という作業である。薬剤として必要な部分は残し、残りは排除しなくてはならないのだ。そうして取り出された薬効成分の多い部分を【風起こし】で作った熱風で乾燥させ、居住区にあった乳鉢で摩り下ろす。ゴリゴリと細かくなるまで根気よく行う。そして、粉末状になったニガ虫に蜂蜜を加えて、乾燥させて固める。これで増強剤の完成である。
次に、マンゴンドラを刻んで根などを取り除き、少し【火属性攻撃】を付与した【風起こし】によって乾燥させてからすり潰す。マンゴンドラは薬品としての成分が強いのでまるごと使える所が魅力的である。そうしてできた粉末に、増強剤を適量混ぜ合わせる。これで、活力剤の完成である。
最後に、砕いたケルビの角を活力剤に加えて、水を加える。後はこれに菌を加えてしばらく発酵させれば、いにしえの秘薬は完成だ。ケルビの角は単体だと薬に適さず、マンゴンドラは通常だと身体を壊す劇薬だ。発酵させる事で薬に適した成分を作り出さなくてはならないのだ。この工程は温度を時期によって的確に管理しなければならないし、菌が入らないように最大限の注意を払う必要がある。はっきり言って並みの物では難しい作業だ。
……まあ、俺には【体内熟成】があるからできた液体を口に含んで能力を発動させれば秘薬は簡単に完成する。口に含んだ瞬間旨味が広がったかと思えば、それが発酵してどんどん味が深まっていき、最終的には口の中にプロのバリスタの入れたコーヒーのようなコクが生まれる。後は【薬物効果上昇】でその味を更に高みへと持って行き、一気に飲み込む。ついでに薬の生産過程で使っていて割れた乳鉢も食べる。
『能力名【秘薬の血潮】のラーニング完了』
『能力名【調合】のラーニング完了』
【秘薬の血潮】という能力には見覚えがあった。確かこれは自分の血液が回復薬としての性質を得る能力だったはずである。非常に使える能力であることは間違いないだろう。
そして、もう1つの能力【調合】。どうやらこれは、持っている物を使って薬の調合などを一瞬にして行う能力らしい。調合の過程を省く能力、といったところだろうか。どうやらアイテムボックスに素材を入れておくだけで、念じれば一瞬にして薬を作り出せるようだ。
そして、この能力。しばらく使ってみて気がついたのだが、どうやら『Re:Monster』の【合成】と似た性質を秘めているらしい。【合成】とは異なる物達を一つに合わせる能力だったが、【調合】もそれと似た性質を秘めている。少し違う所は、【合成】は能力と能力を完全に融合する能力だったが、【調合】は【能力】を分割してその能力の一部どうしを融合させる能力のようだ。
つまり、【調合】の場合、【龍属性攻撃】を【竜爪攻撃】と【竜尾攻撃】のどちらにも合わせたい場合は【龍属性攻撃】を分割してそれぞれに合わせる事も可能なのだ。使った能力が無くなる【合成】より使い勝手が良さそうである。ただし、能力は分割すると性能がダウンするそうなのでそういう所は注意する必要が出てくるだろう。
これからは【調合】を使って持っている能力の強化を行ってみることにしよう。
【爆竹生成】+【火薬生成】+【爆裂】=【爆薬生成】
【火属性攻撃】+【水属性攻撃】+【雷属性攻撃】+【氷属性攻撃】+【龍属性攻撃】=【5属性攻撃】
【蟻の筋力】+【猪の筋肉】+【脚力上昇】=【黒猫の剛力】
【独り身の戦闘】+【命知らずな心】=【
というわけで、【調合】を【合成】代わりに使うことにしました。
いやあ、「黒竜からラーニング」などのアイデアも頂いてのですが、今の状況でどうやって手に入れたら良いのか分からなかったので、こういう形に落ち着きました。
ちなみに分割で能力が弱体化しても、その能力を得られる物を食べることにより強さは元どおりになります。
7月26日
矛盾点が見つかったので修正しました
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24日目〜27日目 ボスとの連戦。増える能力。
24日目
今日も別の区域に見回りへ。敵を探して進んで行くと、先の方から強い生物の気配を感じる。それを辿って奥へ奥へと進んでいくと、その先に居たのは熊だった。
青く分厚い皮に覆われている大柄な熊。雑食で蜂蜜や魚などを好んで食らい、高い攻撃力と防御力で立ちはだかるモンスターを蹴散らす。体力もありタフで、持久戦も向いている。性格は比較的温厚で愛嬌もあり、近隣の住民から親しみを持たれている。
こいつは、はっきり言って俺と相性が悪いモンスターだ。なんせ打たれ強いので一撃で倒す事もできないし、自然治癒力が高いので毒も聞きづらい。つまり物理攻撃による長期戦が方法が一番良いのだが、俺のステータスは全方面に満遍なく鍛えられている
だが、今の俺にはいいかもしれない。俺には戦闘経験が少ないので、どうしてもセンスに欠けている。【武芸百般の心得】は持っているから戦闘方法はある程度分かるのだが、それだけでは戦闘面で不安が残る。
俺はまず、【斬撃力上昇】と【切断力上昇】と【貫通力上昇】、そして【打撃力上昇】を【調合】する。この4つはいちいち切り替えるのが面倒なので1つにして使いやすくするためだ。これにより、【武器攻撃威力上昇】が完成する。
そして、アイテムボックスから双剣を取り出すと、【5属性攻撃】を発動させる。これにより、全ての攻撃に5属性が付与されるようになる。
さらに、【攻撃力強化】と【防御力強化】で身体能力を底上げし、【薬物効果上昇】【攻撃強化薬】【防御強化薬】を使って更に上昇させる。
準備が完了した。俺は【威嚇咆哮】を使い、相手に自分の存在を気づかせた。今回の戦いはあくまで戦闘訓練のため、わざわざ奇襲をしたりはしない。
アオアシラはこちらに気づくと、まっすぐに目を合わせてくる。そして、ゆっくりと立ち上がると身体を起こして腕を広げ、威嚇の体制をとった。
「ガァァァァァア!」
俺たちは互いに闘争の意思を示し合うと、戦闘を開始した。
切り裂く。叩く。突き刺す。去なす。抉る。足を斬りつけてバランスを崩し、頭を殴って目眩を起こさせて、腹を貫いて肉を穿つ。まるでルーチンワークのように、あらゆる動作を繰り返す。【弱点見切り】で相手の弱い所を探し出し、【岩斬り】でガードを抜けて相手に攻撃を当てる。【連斬】で相手にラッシュを叩き込み、【剣打撃】【気絶攻撃】で相手の頭を打ち一瞬の隙を作り出す。全ての行動から回避に移行できる【回避直結】によって攻撃を全てかわす。
この戦いで分かった。今の俺の身体能力に強化能力を重ねがけすればボスモンスターとも戦えるって事が。
「がっ⁉︎」
そんな風に別の事を考えていたら、うっかり一撃喰らった。思いっきり吹っ飛ばされて地面を転がる。だが、今の俺は【形状記憶】【竜鱗生成】【スーパーアーマー】【狗竜の鱗』などを組み合わせて使っているので致命傷にはならなかった。
だが、それでも痛いものは痛い。【回復】などを使う事で傷は塞がるが、精神的にじわじわと磨耗していくのを感じた。
「どうやら出し惜しみはできないみたいだな……」
【鬼人化】【鬼人強化】【練気技】発動。
身体の中でエネルギーが弾けて、気持ちが高ぶる。鬼人化によって攻撃の速度と威力が上昇し、ラッシュを叩き込むほどにその威力は上がっていく。【鬼人強化】と【練気技】はどちらも攻撃を当てるほどに威力が上がっていく能力なので、2つの効果が合わさって飛躍的に俺の攻撃力は上昇する。
【連斬】を発動し、体に幾つもの傷を負わせていく。鬼人化によって高速で叩き込まれる刃は、身体の奥へ奥へと近づいていく。
そろそろ相手が力尽きそうになっていた。全身から血を流し、動きも鈍い。目に宿る士気こそ消えてないものの、満身創痍で今にも死にそうだ。
【5属性攻撃】に、まだ残っている【火属性攻撃】【水属性攻撃】【雷属性攻撃】【氷属性攻撃】【龍属性攻撃】を重ねがけして威力を高める。双剣からは炎が燃え上がり、水が溢れ、雷が轟き、冷気が噴き出し、黒いオーラが満ちる。俺は【突進】を使って一気に詰め寄り、技を発動させる。
「……【属性解放突き】」
その瞬間、五色の輝きが光の奔流となってアオアシラの胸下を貫いた。
【属性解放突き】は本来スラッシュアックスの技でその武器についているビンの性質を解き放つ技だが、ラーニングによって若干その性質が変わっている。
今の俺の【属性解放突き】は、武器の内封する全ての性質を解き放つ。属性も毒も何もかも、持っている性質をブチまける。
身体を貫かれたアオアシラは、こちらを見据えて少し笑い、そのまま前に向かって倒れた。その死に顔はとても安らかで、満足気だった。
俺は、アオラシアの前に座りこみ、手を合わせる。
「……アオアシラ、いただきます」
『能力名【青熊の堅牢な甲殻】のラーニング完了』
『能力名【青熊の強靭な筋肉】のラーニング完了』
『能力名【重撃無双】のラーニング完了』
『能力名【連撃怒濤】のラーニング完了』
『能力名【飽食】のラーニング完了』
『能力名【甘党】のラーニング完了』
『能力名【餌探し】のラーニング完了』
『能力名【獣の誇り】のラーニング完了』
毛皮や骨などの、余った素材は皆に渡した。これで他のアイルーの装備が充実するはずだ。
今日の能力合成結果
【蟻酸生成】+【肝機能上昇】+【飽食】+【早食い】+【食い溜め】=【大食感】
【竜毒投与】+【特殊攻撃威力上昇】+【毒物生成】+【減気毒生成】+【麻痺毒生成】+【睡眠毒生成】=【
25日目
獲物が取れないなら魚を取れば良いじゃない! ……と、言うわけで魚釣りに挑戦する事にした。
今まで使ってなかったのだが、俺は釣りミミズから【魚寄せ】という能力をラーニングしている。今まで使い所が無くて使っていなかったが、この能力を使えば大量に魚を引き寄せる事ができる。これで大量に魚が捕まえられるはずだ。
釣竿は無いので道具は自作。【蔦生成】を使用して細い糸のような蔦を作り、先端部は硬くフック状になるように調整する。こうしてできた糸を川に垂らして、【魚寄せ】を使う。能力の効果で魚は競うように食いついてくるので、後はそれを引っ張り上げるだけ。【操糸術】の効果で俺は糸を神経が通っているかのように操れるので、魚を釣り上げるのは簡単だった。
釣れたのはサシミウオ8匹、ハリマグロ6匹、小金魚2匹、黄金魚一匹。いくつか残していただきました。
『能力名【微回復】のラーニング完了』
『能力名【金属吸収】のラーニング完了』
『能力名【黄金制御】のラーニング完了』
【黄金制御】はどうやら金を操る能力らしい。小金魚から金を取り出して塊にする事ができた。地盤や水の中に含まれている物も操れるらしいので、金の鉱脈を探し出すのに使えるかもしれない。
時間があまったので、【金属吸収】と【黄金制御】の実験のため採掘を行う事に。【採掘】はもう既にラーニングしていたので、それを使って崖をザクザク掘り返す。
鉱石を見つけるのは中々骨が折れる作業だが、【気配察知】をフル回転させて鉱石の位置を探り続ける。
ただ、中々上手いくはいかず、数時間かけて手に入ったのは鉱石の欠片が数個と花香石の塊だけだった。金も手に入ったのは拳一つ分ほど。まあ、リアルのファンタジーだしこんなものだろ、と気持ちを切り替えて、花香石を食べる。
『能力名【
試しに【金属吸収】を使ってマカライト鉱石を毛に取り込むと、毛は光沢と硬さを得た。どうやらこの力は金属と同化する能力らしい。
結局右腕にドラグライト鉱石とマカライト鉱石を取り込み、金属腕に変えた。これで盾としての機能と鈍器としての機能を得る事ができたので、戦闘面で大いに役立ちそうだ。
手に入れた黄金はアイテムボックスにまとめておく事に。もし人間との出会いがあればこれも取引に使えるかもしれない。
今日の能力合成結果
【物品鑑定】+【簒奪】=【情報簒奪の鑑定眼】
【発熱】+【冷却】=【温度操作】
26日目
エリア9の方から不穏な気配がしたので行ってみた所、そこにはクルペッコとリオレイアがいた。【隠れ身】と【忍び足】を使って近づいたので気づかれる事はなかったが、かなりの大迫力に少し震えた。
リオレイアは逃げようとするクルペッコを必死に攻撃し、クルペッコはそれから逃れようと、もがき続ける。だが、その翼はもうボロボロで、噛み付かれて傷だらけになっている。この状態で飛ぶのはかなり大変だろう。どうやら鳴き袋も潰されたらしく、喉元からは血を流している。
双方ともに、火を使って戦うモンスターで火属性耐性が高い。だからこそ、この二体の戦いは互いの肉体性能が物を言う。小手先の手段しか持たないクルペッコにとって、空の王者のつがいであるリオレイアはとても敵う相手ではないのだ。
クルペッコはボロボロの翼を羽ばたかせて何とかリオレイアの拘束から逃れると、そのまま空を飛んで逃げていった。リオレイアは逃げていくクルペッコの姿を満足そうに眺めると、そのまま巣のあるエリア8に戻っていく。
……よし、クルペッコを殺そう。今なら怪我をしているから倒しやすそうだ。
そう決めると、俺は【翅生成】で背中に虫の翅を作り空を飛んだ。手にアイテムボックスから取り出した弓を持つと、相手を狙って構える。はたから見ればまるでキューピットだ。
【矢生成】で作った矢に【猛竜毒投与】で協力な麻痺毒を纏わせ撃ちこんだ。動けなくなったクルペッコはエリア7の方に落下していった。
回収したクルペッコはジャギィやアオアシラより上位のモンスターなだけあり、歯ごたえがありながらも肉汁がありボリューム感が強かった。
『能力名【
『能力名【高速飛行の心得】のラーニング完了』
『能力名【粘液の唾】のラーニング完了』
『能力名【燃えない羽毛】のラーニング完了』
『能力名【4連突き】のラーニング完了』
『能力名【笛吹き名人】のラーニング完了』
『能力名【癒し】のラーニング完了』
『能力名【広範囲攻撃】のラーニング完了』
『能力名【魚取り】のラーニング完了』
手に入れた【燃える拍手】だが、これはどうやら手を打ち合わせると火を発生させる能力らしい。拍手すると手から炎が発生した。【火属性攻撃】との併用で炎の量を多くする事も可能なようだった。
他にも指パッチンで着火、などの芸当も可能だった。気分はどこぞの大佐である。一緒に手に入れた【粘液の唾】は確か相手の属性耐性を下げる能力だったはずなので、合わせて使ってみるのもいいかもしれない。
今日の能力合成結果
【回復】+【応急手当】+【生命の粉塵】+【回復速度上昇】=【黒猫の回復力】
27日目
居住区に山菜爺さんが来た。ゲームではお馴染みの人だったので少し感動する。どうやら渓流に採集に来たらしい。
【情報簒奪の鑑定眼】を使ったら、それを察知されてしまった。おそらく【敵意察知】のような能力を持っているのだろう。戦闘力は俺より低いようだが、油断はできなさそうだ。
大人アイルー達はこの人を歓迎しているらしく、何人もの人が彼の周りに集まっていた。せっかくなので俺も、備蓄していた食糧をパッと使って手料理を振る舞う事にした。
爺さんはアイルーが料理を作った事に驚いていたものの、結局食べていた。他のアイルー達も欲しがったので、そいつらの分も作る羽目になって大変だった。
他にも、メラルーの所で見つけた酒瓶を開けて爺さんと2人で飲んだり、最近人間の集落で起きてる事を聞いたりして過ごした。爺さんが言うには、最近女性ハンターの行方不明事件が多発したり、人間の住む場所の近くまでモンスターが現れたりなどで、世間の空気がピリピリしているらしい。
なんやかんやでその日は遅くまで爺さんとドンチャン騒ぎして過ごした。もう遅いので泊まっていくか聞いたが、爺さんは用事があるといって居住区から去っていった。
このとき俺は知らなかった。爺さんをそのまま帰したせいで、あんな事になるなんて……。
と、ならないためにも俺は爺さんを殺す事にした。
爺さんをほっとくと絶対に危ない事が起こる気がする。なんせ俺はアイルーのくせにボス並みに強くなったイレギュラーな個体だ。このままだとハンター協会に報告されて面倒なことになる可能性もある。それを避けるためにも、俺は爺さんを殺す必要があるのだ。
俺はさっきまで飲んでいた酒をビンに吐き出し、封をしてアイテムボックスに放り込む。この爺さんと飲んでいた酒には、【猛毒投与】で作った『効果時間が来ると致死毒に変わる無味無臭の毒】が入っている。この毒は解毒薬や漢方薬が効かないくらいに強力だ。【吸喰能力】【猛毒耐性】【解毒】を持つ俺でもダメージを受けるレベルの毒なので、俺は飲んだフリをして【腹袋】に流していた。
爺さんも俺が飲んでいたから安心していたのだろう。俺と一緒にあいつも酒を飲んでしまった。村を出た後酒を吐いたり解毒薬を飲んだりしたとしても、今頃は死んでいることだろう。
しばらくして村を出ると、離れた所で爺さんの屍体を見つけた。さっきまで仲良く話していた人だけあり少々罪悪感はあったが、いい能力が手に入りそうなので食べた。
さっきまで喋っていた人の肉を食う。何とも奇妙な感覚だった。
『能力名【逃走の心得】のラーニング完了』
『能力名【職業・
『能力名【採集の心得】のラーニング完了』
『能力名【老人の知恵袋】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【常時健康体】のラーニング完了』
今日はなぜか精神的に疲れたので、能力の合成もしなかった。
7月26日
矛盾点が見つかったので修正しました。
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番外編 別のRe:Monster
【メラルー視点】
どうしてこうなった。メラ蔵は頭を抱えてうな垂れていた。
メラ蔵は転生者だ。元々彼は格闘技の観戦が趣味な学生に過ぎなかった。だが、ある日試合観戦に行こうとしてバスに轢かれて死に、メラルーに転生した。
彼の転生してからの日々は地獄だった。メラルーは可愛らしい猫の姿をしているのに、その内面はドス黒い悪鬼のものだった。メラ蔵のような子供メラルーは生まれてすぐに戦わされ、家畜のように働かされた。何人もの子供達が生まれてすぐに死んでいった。メラ蔵が死ななかったのも、鑑定の能力で木の実が食べれるか否かを判断したり、アイテムボックスにこっそり自分の分の食料を隠したりできたからだ。もし彼が能力をもっていなかったら、すぐに死んでいただろう。
そんな生活を繰り広げていたある日、メラ蔵は人間達とあった。彼は思った。アイルー達のように人間と暮らそう。そうすればこんな苦しい生活をしなくて済むはずだ。そう思って彼は人間に近づいた。
その結果、彼は人間から殺されかけた。
侮蔑の視線を向けられながら、怒号をぶつけられながら、彼は殴られ、蹴られた。飛び散った血が汚いと言われ、ブーツの底を体に擦り付けられた。ボールのように蹴飛ばされた。
まあそれも当然だ。人間達から見てメラルーは、荷物を盗んだりイタズラしてきたりと、かなり迷惑なモンスターだ。ハンターは狩猟中によく苦しめられるわけだから、腹が立つのもしょうがない。
だが、そんな事も知らないメラ蔵は激怒した。コイツらは最低だと決めつけて、殺意すら覚えた。
彼は人間を憎み、羨ましがった。自分とは違い幸せを手に入れた人間を。そして、彼らから全てを奪う事を誓った。彼らの幸福を、栄光を、地位を、名誉を、技を、女を、全て手に入れると。
そして、彼はその日の晩、
それから彼は群を支配した。存在進化した彼にとって、村の面子はもはや敵では無かった。群のボスを殺して実権を握ると、兵を率いて人間の商人達を襲うようになった。
人間を殺し、手に入れたアイテムで群の力を強化する。回復アイテムや爆弾を使ってボスモンスターを殺し、武器や服を分析して作り方を学ぶ。食べ物の備蓄を増やし、群を大きくしていく。戦力をジワジワと拡大し、人間達へ歯向かえる組織を作る事を目標に、彼らは努力した。
そして今、彼らの群は壊滅寸前だった。
彼らの群へ襲撃が起こったのは、突然だった。なぜか群に帰ってこないメラルーがいたので、念のため見張りを設置し安心していたその夜。彼の群に毒煙玉が投げ込まれた。
毒ガス。洞窟で暮らす彼らにとって、毒ガスというのはとても恐ろしい兵器だった。それに気づいた何人かは慌てて洞窟から脱出しようとした。しかし、出ようとした瞬間炎が巻き起こり、彼らは一瞬にして煤になった。そして、その炎のせいで俺たちは毒ガスの満ちた空間に閉じ込められた。
そこから先は地獄絵図だった。巣の中に投げ込まれた大量の煙玉達によって、何人もの奴が死んだ。肌が溶けてのたうち回る奴。意識を失って倒れる奴。体を痙攣させている奴。錯乱して味方を攻撃し始める奴。恐ろしい事に玉は向こうからは見えないはずの俺たちに正確にぶつかってきた。何人ものメラルーが、一人ずつ順番に殺されていった。
メラ蔵は怖くなって逃げ出した。このままここに居たら死ぬ。まずは状況を立て直そう。俺は戦闘に参加していない者達を連れて、洞窟の奥の保管庫に避難した。全員で入った後、中の荷物を全部入り口の前に置いて入れないようにした。
これで、後はしばらく立て籠もろう。恐らく襲撃者は毒が消えた後に俺達が死んだかを確認するために洞窟へ入ってくるはず。そこを狙うんだ。
メラ蔵は息を潜めて機会を待った。待ちながら、吸ってしまった毒を解毒するため保管庫の中にあった解毒薬をあおって一息つく。乾いた喉が潤され、身体に水分が染み渡る。しかし、どうしても倦怠感が無くならなかった。
いつの間にか、外から音が聞こえなくなっていた。メラルー達の叫び声も悲鳴も、苦痛の声も、何もかも音は消えて静まり帰っていた。
「メラ蔵さん、いったいどうなるのでしょうか……」
メラ蔵に話しかけてきたのは、同じ群の雌だった。名前は確か……メラ子とかいうはず。
「心配するな、きっと助かる。今は落ち着いて助けを待つんだ」
メラ蔵はそう言ってメラ子を落ち着かせた。今はそんな気休めしか言えなかった。
ガンッ
その時、ドアの方から音がした。
ガンッ ガンッ ガンッ
外から誰かがドアを叩く音が聞こえる。どうやら鈍器のような物を使ってノックをしているらしい。毒ガスが撒かれてからしばらく時間は立っているから、もう既に動けるメラルーはいないはずなのに。
「……おいお前ら! 荷物を抑えろ! 敵が外に……」
その瞬間、置かれていた荷物が吹っ飛んだ。
ドアがこちらに向かって飛んできて、壁に当たって落ちる。飛んできた鉄板製のドアはひしゃげていて、真ん中が肉球の形に凹んでいた。
ドアの向こうにいたのは、悪魔だった。大きさは俺と同じくらいなのに、身体は赤い鱗で覆われている。頭からは角を生やしていて、その目は飢えた獣のようにギラギラしていた。
メラ蔵はそいつと目があった瞬間気づいた。今、自分は死ぬんだと。恐怖に呑まれながら、絶望しながら、彼は狂ったように叫んでその赤い悪魔に飛びかかった。
・因果応報、という言葉があります。
・弱肉強食、という言葉があります。
・悪魔と出会ってしまった彼の、ご冥福を祈りましょう。
【ギィギ視点】
「くちゅ……くちゅ……」
うへへへ、やっぱりポポの血は美味しいなあ。栄養たっぷりで濃厚。ここで取れる獣で1番のうまさだね。ゴクゴクゴクっと。ん? もう空っぽになった。 チッ、やっぱり子供のポポだと血が少ないな。
いっぱい血をすってカラカラになったポポを放り出すと、口からゲップを出す。あーもう。まだお腹ペコペコだよ。もう一体捕まえてこよーっと。
僕の名前は
いやー、生まれた時はびっくりしちゃったなあ。朝起きたら冷たいニチャニチャした物の中にいて、自分の周りでデッカい芋虫みたいな物が動いてたんだもん。そんで慌ててそこから転がり出たら、周りに自分と同じくらいのサイズの深海魚みたいな生き物がいたんだよ。思わず悲鳴を上げそうになっちゃった。
周りを見渡したけど、周り全部囲まれていて逃げ場がない。それで、「もう駄目だ!」って思ったのに周りの奴らは全然こっちを見向きもしなかった。
それで、「あれー?」って思って自分の体も周りと同じになってるんだもん。その時はまた驚いちゃったね!
いやあ、ネット小説でよく見てたけど、まさか自分が転生するなんて思ってもみなかったよ。しかもギィギにさ。最初は「夢かな?」って思ったんだけど、時間が経つにつれてこれは本当なんだって実感したんだ。
ちなみに転生特典もあった。寄生した相手を支配する力で、僕は【寄生支配】と呼んでいる。これを使うと獲物を動けなくする事ができるだよねー。
他にもギィギとしての能力もいくつか持ってるし、相手モンスターに関する知識もある。僕tueeee!
だけど1つだけ不満があるとすれば、せっかくの異世界転生なのに女の子がいないんだよね……。俺tueeeeにハーレムはつきものだろう? ちゃんとしてよ神様。
あー、女の子との出会いが欲しいなあ……。
……あ、またポポがいた。今日はついてるなあ。いただきまーす!
んー、なんかポポを食べたら眠たくなっちゃったな……。
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件《特異行動》《欲望過多》をクリアしているため、【
【
《YES》 《NO》】
んー? 何これ? よく分からないけど、ギギネブラになれるなら《YES》で。
【章雄は特定階位まで【
【章雄は【
【真名・
【インキュバスは
【インキュバスは
【インキュバスは
【インキュバスは特定条件種、特定指定個体をクリアしている為、※※※から
【エラーが検出されました】
【五つの特殊能力スペシャルスキルの内、解放条件を満たしていないモノが二つあります】
【未解放である二つの特殊能力スペシャルスキルは解放条件をクリア次第、順次解放されるようになりました】
【インキュバスは【
【インキュバスは【
【インキュバスは【
【
【
・これは本編より少し前の出来事です。
・この後、凍土で女性ハンターの謎の行方不明事件が多発。ハンター協会は調査を行ったが、原因不明。
・凍土に行く際は男だけで行く事をお勧めします。
【???視点】
「な、なんてこった……」
俺は画面を見ながら絶望していた。そこにあった結果は、俺の心に大きな衝撃を与える内容だった。
リオレウス、脱落。
今回の実験の本命馬とまで言われたリオレウス。今回の戦いに置いて彼は種としての力も持つ能力も1番高かった。俺も皆も、彼が頂点に至るのだろうと思っていたのだ。
だが、彼は脱落してしまった。まさかの
いや、もうマジで……フザけんなよ! 俺の賭けた物返せよ! せっかく堅実にリオレウスを狙ったのに……。ダークホースのアイルーに賭ければ良かったなあ……。
7体の転生モンスターの争うこの戦い。それを監視する立場である俺達は、暇つぶしとして誰が1番となるかで賭けを行っている。俺はその中で人気トップだったリオレウスに賭けた。しかし、そのリオレウスは卵の状態でアイルーに喰われてしまい、脱落してしまった。
更にこれによりアイルーがリオレウスの能力を得て、一気に首位争いができる立場へと登ってきた。いくら【吸喰能力】を持つとはいえ、アイルーだから大した脅威にはならないと高を括っていたのに……。
……まあ、恐らくコイツは終盤で脱落するだろう。能力もイマイチ制御できてないし、戦闘経験も少ない。リオレウスの持つ能力のラーニングも不完全で、本来よりかなり性能ダウンしている。それに、コイツの能力は主人公の能力ってよりも、ラスボスが持つのに相応しい能力だ。
今回の実験に置いて人気No.2、身体性能はトップクラス、そして、まるで物語の主人公のような能力を持つ存在。あのジンオウガには、きっとコイツは勝てないだろうな。
・なにやら不穏な気配。
・物語の裏の誰かの話。
・賭け事はほどほどにしましょう。
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28日目〜31日目 戦闘に備えて
28日目
今日は能力の使用実験をする事にした。
まず、【罠生成】。これは地面に罠を作り出す能力で、落とし穴や痺れ罠を作る事ができる。
次に、【爆薬生成】。これは【調合】によってできた爆薬を作る能力だ。衝撃を受けると爆発する【爆竹生成】に【火薬生成】と【爆裂】を合わせて火力を高めている。
この2つの能力を併用してできる物。それは地雷だ。
地雷は比較的安価で制作でき、解除にとても手間がかかる。何人もの人の命を奪った事から「悪魔の兵器」とまで言われている兵器だ。主に「対人用」「対戦車用」の2パターンの物が存在し、クレイモアやS-マインなどバリエーションも多い。
俺が今作ろうとしているのは対戦車地雷。強い重量を受けると爆発する、大型モンスター用の罠として使えそうな地雷だ。大型モンスターが乗らないと発動しない罠「痺れ罠」をベースに作る。
この世界はモンハンの世界とは違い、モンスターは決まった動きをするわけではない。それぞれの動きに癖があるし、自我を持っている。つまり、知能の高いモンスターなら、罠の存在も気づくし爆弾からも逃げるだろう。それなら隠密性高めの兵器を作る必要がある、と思ったのだ。
そして、試作品が完成。【情報簒奪の鑑定眼】で鑑定し、情報を閲覧する。この能力を作った時は【物品鑑定】に【簒奪】を【調合】したので、相手の情報を引き出し理解する能力が高まると共に人やモンスターに対しても使える優秀な能力となっていた。名称は【対大型獣用地雷罠】。サイズを大きめにして火薬をパンパンに詰めているので、隠密性と攻撃力の高い武器へとなっている。
満足のいく出来栄えになっているので、3個ほど製作しておいた。
次に、【温度操作】の性能実験をする事に。これは【発熱】と【冷却】を合わせてできた能力で、自分や相手の温度を自由に操る力だ。これは使う機会が無かったので、ラーニングした際にどのような能力は分かるのだが、どこまで効果があるのか分からない。なので、水とか葉っぱとか鉄とか虫とか、いろいろと準備した物を使って検証してみる事に。
その結果、操れる範囲は100度からマイナス20度ほどで、能力を他人に使うには相手に触れる必要がある。あと、生物に対して使うと生命活動に支障が出ない範囲に効果が限定される事が分かった。あまり攻撃面では使えなさそうだ。
だけど、温度変化を一瞬で行う事ができる、などのメリットもあった。水を一瞬で氷に変えて一瞬で蒸発させる、などの芸当も可能なようなので、食べ物の保存や加工には便利そうだ。
他にも、「【発射】が弾丸以外に使えるかどうか」、「【鷹の目】と【スコープ】の違いは何か」、「【■■■■】の効果は何なのか」などの実験をして、今日は終了した。
今日の能力調合結果
【鷹の目】+【スコープ】=【狙撃手の目】
29日目
今日は、アイルー達の木を伐採する作業を手伝った。どうやら住居やら何やらを新しく作るのに木材が必要らしい。
住居の木を鑑定してみると、「ユクモの若木」となっていた。なぜ若木なのか聞いてみたところ、大人アイルー曰くひ弱なアイルーが長距離の運搬を木を運搬するのは難しいらしく、そもそも大きな木は切り倒す事すら不可能らしい。
それなら俺が良い木を持ってきてやろう、という事で林へ向かう。近くのモンスターを倒しながら進む簡単な作業である。
……あ、どうして普通に近づけるのかというと、それは俺が山菜爺さんからラーニングした【職業・隠者】の影響だ。どうもこの職業習得している人の気配を察知し辛くするらしく、常に【隠れ身】を使用しているような状態になる。しかも【隠れ身】とは違いスタミナの使用も無い。かなり便利な職業だ。
辺りの木を鑑定して良いユクモの木を探し、良さそうな物を見つけたら確認をとって切り倒す。この木は加工しやすく、建築材にも装備にも家具にもなるのでたくさんあっても困らない。
しばらく森を散策していたら「ユクモの堅木」を発見したので、それを食べる。堅木は通常のユクモの木と比べて一際大きく堅かった事から察するに、ユクモの木が【存在進化】した末になる個体なのだろう。
『能力名【堅木】のラーニング完了』
『能力名【光合成】のラーニング完了』
『能力名【精霊の加護】のラーニング完了』
『能力名【精霊の気まぐれ】のラーニング完了』
『能力名【根を張る】のラーニング完了』
【堅木】はどうやら木を堅くする能力らしい。【蔦生成】で作った蔦を強靭にして、相手に突き刺したりするのが可能になった。
……何だか【蔦生成】かどんどん使える能力になっている気がする。元々は相手を拘束する縄代わりにしか使えなかったから、【蜘蛛の糸生成】の劣化版みたいな能力だったのに……。
伐採した木は【解体の心得】でちょうどいいサイズの木材にしてから居住区に運んだ。堅木はアイルー達に加工させるのは難しそうなので俺が持っておく事に。
今日の能力調合結果
【蔦生成】+【堅木】=【植物生成】
30日目
今日は、自分の毒やら油やらを瓶に詰める作業をする事にした。【猛竜毒生成】や【脂生成】、【秘薬の血潮】などの能力が揃った今、俺は体内で様々な薬品を作れるようになった。もしもの時の為、暇な時に作ってアイテムボックスに貯めておくに越した事はないだろう。
そうして、【ビン生成】で作った瓶に体液を注ぎ込んでいと、突然慌てて大人アイルー達が帰ってきた。何かあったのかと聞いてみたところ、どうやら
とりあえず、疲れている彼らに今作っていた元気ドリンコを飲ませた後、そのままドスファンゴの元へ向かった。
俺はドスファンゴのいる隣のエリアに行くと、【敵呼び】を使って吠える。これは角笛からラーニングした、声で周辺の敵の気をひく能力だ。
その瞬間、地響きのような足音を立てながら巨大なので猪が現れる。それこそがドスファンゴ。白い毛皮と左右非対称の牙が特徴的な、某映画の神様のようなモンスターだ。
ドスファンゴは俺に気づいた途端身構えると、俺に向かって勢いよく突進してきた。やはりブルファンゴの上の個体だけあり巨体なのに素早い。だが、その巨体が命取りだ。
俺はアイテムボックスから地雷をちょうどドスファンゴの足元に出した。
ドスファンゴの体が宙を舞う。
力強く踏みしめられて爆薬は、いとも簡単に数トンの肉の塊を吹っ飛ばした。何が起きたか分からなかったのだろう。ドスファンゴは間抜けな顔をしながら跳ね上がりそのまま地面に落下した。
ドスファンゴが悲鳴をあげる。見ると、右の前足が無くなっていた。今の衝撃でどうやら足が千切れたらしい。ゲームでは部位欠損しないはずの箇所が無くなった事に驚きながら、俺はゆっくりと目標に近づく。残った3本の足で懸命に立ち上がろうとするドスファンゴ。俺はその体を【植物生成】で作った木の槍で貫き、【猛竜毒投与】で作った麻痺毒と普通の毒を流し込んだ。
『能力名【激突】のラーニング完了』
『能力名【溜めの構え】のラーニング完了』
『能力名【牙の一撃】のラーニング完了』
『能力名【闘争心】のラーニング完了』
『能力名【左利き】のラーニング完了』
『能力名【持久力向上】のラーニング完了』
『能力名【グルメの鼻】のラーニング完了』
『能力名【生肉生成】のラーニング完了』
なぜか【左利き】という能力をラーニングした。どうやら左手を利き手のように使えるようになる能力らしい。うーん、微妙だ……。
まあ、【溜めの構え】とかの戦闘で使えそうな能力も手に入ったし、良しとしようか。
今日の能力調合結果
【突進】+【体当たり】+【激突】=【黒猫の突進】
【グルメの鼻】+【餌探し】=【
31日目
最近のボスモンスターラッシュはおかしい。さすがに多すぎやしないだろうか?
あの
ドスジャギィから始まりアオアシラ、ドスファンゴ、クルペッコ。リオレイアは元々ここにいたみたいだから除くとしても、もうすでに四体ものボスモンスターがここには来ている。はっきり言って多すぎだ。
なので、対策として地雷を渓流の外周に配置する事にした。ボスモンスターが通れそうな所には特に念入りに置いていく。
設置する地雷は昨日のドスファンゴ戦とは違い改良を加えている。爆発すると甲高い音が鳴る機巧で敵が来た事を知らせ、弾丸をばら撒く仕掛けで相手に余計にダメージを与え、ペイント弾によるマーキングも行う。まさしく侵入者を迎撃する事により特化した地雷だ。
他にも、猛毒煙玉やオイル玉など戦闘で使えそうな道具を幾つか作っておいた。どんな相手が来ても良いようにしっかり準備しておこう。
二章はあと3話で終わります。
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32日目〜34日目 嵐の前の静けさ
32日目
どうもリオレイアが最近イライラしているらしい。しきりに巣に近づく敵を追い払っているようで、エリア8の方には今誰もモンスターがいないようだ。
いつからなのか大人アイルー達に聞いてみたところ、だいたい1ヶ月前くらいかららしい。
……うん、これは完全に俺のせいだ。
大方、俺がレイアの卵を食った事に対して激怒しているんだろう。自分の子供を食われたら普通はブチ切れる。近くにいただけでクルペッコを半殺しにしていた事から察するに、そうとう怒っているはずだ。最近ではさらに厳しくなっているらしく、巣の近くに無残に殺されたジャギィの屍体があったとか。もしかしたら、リオレイアはまた卵を産もうとしてるのかもしれない。
また卵を産むのか。あの、一個食べただけで存在進化した卵を……。本当、美味しかったよなあアレ。
よし、リオレイア殺そう。
そのためには色々と必要なもの準備しないとね。
【外骨格着装】という能力がある。前にも話したが、これはRe:Monsterの原作でも出てきたパワードスーツとして働く外骨格を作り出して着装する能力だ。外骨格を作るには何かしらのモンスターの素材が必要となるので今までは使わずに放置していた。今はボスモンスターの素材がたくさんあるので、それらを元に作ってみようと思う。
アオアシラ達四体のボスの素材達。それぞれが長所を持っていて、どれも外骨格の素材として相応しい。だから今回はそれらの素材を【調合】して新しい素材を作る。堅いアオアシラの甲殻に複数の素材の性質を織り交ぜるのだ。
もちろん、かなり難しい行為だ。物をただ混ぜるのでは無く、完全に融合させるのはかなり難しい。ベースとして俺の血を加え、集中しながら事に臨む。
完成した素材は、「青竜獣の甲殻」という物だった。刃を通さないほどに堅く、火属性耐性が高い。合成する前と比べると、ワンランク上の素材になった。
できた素材を服を脱いでから【蜘蛛の糸生成】でペタペタ身体に貼り付けて、【外骨格着装】を発動させる。
その瞬間、俺の纏っていた装備が一瞬消えたかと思うと、身体が鎧に包まれていた。鎧の表面は青く染まっていて、ヒーローの戦闘服のような独特の光沢がある。フィット感抜群で身体の動きを阻害せず、あまり重さを感じさせない。更に、中が暑かったり蒸れたりすることもなかった。
【アビリティ【外骨格着装】
登録“1”[青竜獣の威光]の登録完了
登録“2”[ ]空き
登録“3”[ ]空き
登録“4”[ ]空き
登録“5”[ ]空き
残り“4”までフォームの登録が可能です。
何番を装着しますか?】
どうやらきちんと外骨格として登録されたらしい。これで使いたい時に出現させる事が可能になった。近接格闘でかなり役立つ能力なので、今回の戦いでは重宝しそうだ。
結構は明日の夜。それまではぐっすり眠るとしよう。
今日の能力調合結果
【黒猫の剛力】+【青熊の強靭な筋力】+【常時健康体】=【黒猫の強靭な肉体】
33日目
深夜、たっぷり睡眠を取り疲れをとった俺は行動を開始した。外骨格をつけて、【隠れ身】で気配を完全に消してからリオレイアの元へと向かう。
こんな時間なのにリオレイアは起きていた。どうやら寝ずに卵の番をするつもりらしい。俺は【素材玉生成】で閃光玉を作ると、相手に向かって投擲した。
リオレイアが悲鳴を上げる。それはそうだ。タダでさえ光には弱いのに、闇に目が慣れている時にそれを受けたらたまったものではない。俺は【鬼人化】で身体能力を上げながら一気に近づくと、【気絶攻撃】【剣打撃】【回転攻撃ホームラン】を発動。身体に拈りを加えながら思いっきり剣の腹をリオレイアの頭に叩きつける。【重撃無双】【黒猫の強靭な肉体】などの補正により、一瞬リオレイアの意識は刈り取られる。
更にそこに【連撃怒涛】【連斬】【猛竜毒投与】による麻痺毒の斬撃を重ねる。傷口から進入した麻痺毒はリオレイアに浸透し、どんどん身体の自由を奪っていく。
閃光・気絶・麻痺という弱点攻撃のラッシュ。それによりリオレイアには大きな隙ができる。
俺は【5属性攻撃】【雷属性攻撃】【龍属性攻撃】の3つを発動して雷・龍属性を武器にまとわせると、【広範囲攻撃】【4連突き】を発動。剣を振り下ろした瞬間に身体のあちこちに傷ができたかと思うと、その付近に重ねるようにそれぞれ3回ずつ傷跡が生まれる。
この程度じゃ足りない。陸の女王とまで呼ばれるリオレイアにはこの程度の攻撃じゃあ足りない。
俺は剣をしまうと【弾丸生成】【フルバースト】【竜撃砲】を発動。左腕が莫大な放熱を帯びて白く光るが、【体温調節】【温度操作】【氷属性攻撃】によりそれを抑える。
5連竜撃砲。
手から飛び出した5つの弾丸がリオレイアの身体に向かう。リオレイアは何とかそれを避けようとしたが、自分の後ろの卵に気づいて踏み止まってしまい、そのまま弾丸を受けて倒れた。
『能力名【
『能力名【強者の威圧】のラーニング完了』
『能力名【威圧する眼光】のラーニング完了』
『能力名【尾再生】のラーニング完了』
『能力名【尻尾の鞭】のラーニング完了』
『能力名【サマーソルト】のラーニング完了』
『能力名【滑空】のラーニング完了』
『能力名【拘束】のラーニング完了』
『能力名【豊穣な大地】のラーニング完了』
『能力名【ホバリング】のラーニング完了』
『能力名【大地の女王】のラーニング完了』
『能力名【女体化】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【
『能力名【龍気脆弱】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【卵殻生成】のラーニング完了』
今日の能力調合結果
【竜尾攻撃】+【尾攻撃】+【尻尾の鞭】+【サマーソルト】=【黒き猫竜の尾攻撃】
【独り善狩りの勇者】+【群の長】+【獣の誇り】+【闘争心】+【禁欲者】=【
34日目
今日は特にやる事もないので皆と採取を久しぶりにした。最近素材が増えたおかげで、全員の装備が豊かになった。皆に優れた装備が与えられ、戦い方を身につけている。そのおかげで近づいて来た敵は近くにいたアイルーによってすぐさま屠られていた。
皆、それぞれ強くなっている。雌アイルーの中には存在進化した人もいたくらいだ。戦い方も、戦闘力も、何もかも1ヶ月前とは大違いだ。
もうここには俺にかなうモンスターもいないし、いつか皆でここを出て新天地に旅立つのもいいかもしれないな。
その瞬間、爆音が渓流に轟いた。
慌てて音のした方向をみると、真っ黒な煙が上がっていた。火薬の焼ける匂いが、風に乗ってこちらまで流れてくる。
……地雷が爆発した? という事は、ボスモンスターが攻めてきたのか?
俺は様子を見に行こうとした。その瞬間だった。
「■■■■■■■■■■■■■‼︎」
叫び声が辺りに響き渡る。それは遠くで発せられた声だというのに、いまいる場所の大気をビリビリと揺らした。周りの何人かは、その声を聞いただけで皮膚に鳥肌が立っていた。
俺は慌ててアイルー達に居住区に帰るように指示をした後、敵の元へと走った。
よく考えるべきだったんだ。なんでここにモンスターが攻めてきたのかを。どうして陸の女王リオレイアがいたこの渓流に、ボスモンスターが集まってきたのかを。それはきっと、逃げてきたからだ。もっと強い奴の元から、彼らは逃げてきたのだ。
エリア5。木々に囲まれている暗いエリア。その奥深くにヤツはいた。緑と金の混ざった艶々した毛並みと、4足歩行の狼のようなフォルム。大きな体と、その頭にそびえ立つ二本の角。
ジンオウガ。モンスターハンター3rdにおいてメインの座を飾った、絶対的な王者がそこにいた。
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34日目・夜の部前半 今ならどんな敵にだって負ける気がしない
長くなりそうなので分割させていただきます。
ジンオウガ
モンスターハンター3rdにおける主役とも言えるモンスター。抜群の身体能力と強力な雷属性攻撃により何人ものハンターを血祭りにあげてきたモンスターで、「無双の狩人」という異名を持つ。
雷光虫という虫と共生関係にあり、彼らの天敵であるガーグァから守る代わりに戦闘時はその力を借りて戦う。
ゲームでのジンオウガはそんなモンスターだった。確かユクモ村の近くに住み着いたジンオウガに様々なハンターが挑んだが倒せた者はいなかった、という設定だったはず。
今、俺の目の前にいるジンオウガは、まさしく「無双の狩人」にふさわしい威厳を放っていた。今まで戦ったモンスターは全員雑魚だったのかと感じさせるほどの気迫。遠くから見ただけなのに、本能がガンガン警報を鳴らしている。地雷を踏んだせいで一応前足に傷を負っていたが、特に
俺が比較的冷静さを保っていられるのは、【誇り高き猫将軍】のおかげだ。
単独行動の心得を得る【独り身の戦闘】、強い敵と戦う度胸を得る【命知らずな心】、リーダーとしての風格を得る【群の長】、一匹の獣としての誇りを得る【獣の誇り】、好戦的になる【闘争心】、食欲などの自らの本能を抑え込む【禁欲者】。
これら6つの精神関係系能力を統合した結果生まれた【誇り高き猫将軍】は、アイルーの頂点に立つ者としての誇りを俺に与えている。そのおかげで俺は強い相手の前でも恐怖に飲まれるような事はなかった。
【焔火の息】【爆炎の息】
どちらも威力か高すぎるので使いどころに困っている能力だったが、今回はこの2つを【調合】で更に強力にする。
強い相手であるジンオウガだが、俺の高い隠密スキルのおかげで俺には気づいていない。今は強い攻撃を当てる絶好のチャンスだ。
俺は一気に腹にエネルギーを集中させると、そのまま吐き出した。
【
口から発せられた巨大な火球。当たったら大ダメージは避けられない一撃。ジンオウガは途中でそれに気づき避けようとしたが、うまく避けられずに炎が後ろ足に当たった。
攻撃の手は緩めない。俺は【外骨格着装】などで完全防備になった後、武器を取り出して一気にジンオウガの元へ近づく。
「■■■■!」
俺に向かって飛びかかってくるジンオウガ。雷を発生させ、雷撃を付与した脚を叩きつけてくる。俺はそれをかわしながらもリオレイア戦で使った【広範囲攻撃】と【4連突き】の同時使用による全身刺突攻撃を発動。これは一瞬ににしてリオレイアに大きなダメージを与えた技だった。
だがそれはジンオウガの肌に小さな傷しか残していなかった。【広範囲攻撃】は一度にたくさんの箇所を攻撃できる優れた能力だが、その分力が分散し攻撃の威力が下がるというデメリットがある。堅牢な肌を持つジンオウガにとって、今の攻撃は虫に刺されただけに等しい。
しかし、この攻撃中俺はジンオウガに何十発、何百発もの攻撃を叩き込むことができた。それにより【練気技】の効果で攻撃力が大きく上昇する。
ジンオウガが動きを止めて身構える。それはジンオウガの技の一つである『回転尻尾なぎ払いサマーソルト』の構えだった。
相手のかなり近くにいるのでかわすのが難しい。そう判断した俺は【黒猫の強靭な肉体】と【黒き猫竜の尾攻撃】を発動。増強しビキビキと音を立てる尻尾を振りかざし、更にそこに【4連突き】を重ねがけして相手に突き刺す。ジンオウガの身体を黒い槍が貫いたかと思うと、その傷口を3つの見えない槍が再びえぐった。
とっさに自分の出せる最大威力の攻撃。その攻撃を叩き込んだ瞬間俺の体が中を舞う。どうやら無理やり押し切られてなぎ払いを発動されたようだった。相手の強い尾攻撃に飛ばされた俺は、そのまま地面に叩きつけられる。とっさに腕をクロスしてガードはしたのだが、外骨格を見てみると攻撃を食らったところが大きくへこんでいた。すぐさま腕の部分を展開しなおす事で損傷箇所は治ったが、【形状記憶】を掛けていた鎧すら歪めるその威力に俺は驚いた。
通常時でもここまで強い……。もしこれが超帯電状態になったら、多分一撃で死ぬ。
そう思っていたら、突然ジンオウガの動きが止まり体についていた虫が光り出す。体からエネルギーが舞い散り、辺りの雷光虫が集まり出す。それは正しく帯電行動の始まりだ。
俺はアイテムボックスからある物を取り出して、ジンオウガに向かって投げつける。着弾した瞬間、そこからは煙が発生していた。
毒煙玉。毒の煙によって相手を毒状態にするアイテム。ジンオウガにはそこまで効果は高くないので、使ってもあまり意味は無い。そもそもこのアイテムを狩猟に使う事が少ない。
だが、それはあくまでジンオウガに対してのみの話だ。
煙に包まれた途端、ジンオウガの周りの光が消えてまとっていた雷も消える。ジンオウガは突然消えた虫達の姿に驚き、周囲を見渡していた。
毒煙玉の使いみちは主に虫系モンスターの討伐だ。防御力が低い虫系モンスターは倒すと砕け散ってしまう、という問題がある。が、毒煙玉は使うと相手を無傷で倒して剥ぎ取りすることができる。この世界で毒煙という物は虫にとって何よりも強力な武器になる。
この世界はゲーム寄りな面も多いが、現実だ。ゲームの中ではダメージを与えられなかった存在にもダメージは与えられる。木も切り倒せる事からそれは確認済みだ。だからこそ、ジンオウガの周りを飛んでいる雷光虫にもダメージを与えられる。
毒煙玉を吸って死んだ雷光虫は地面へ落ちる。死んだ死骸はアイテムボックスにささっと回収して、雷光虫を剥がされたジンオウガと相対する。これで警戒しなくてはならないのはジンオウガの桁外れな身体能力だけで良くなった。俺には【絶縁体】もあるから、通常時の電気くらいなら多分問題はない。
俺は【風起こし】を発動させる。本来なら威力の低いこの攻撃だが、それはもはや単体で使った場合の話。斬撃、打撃、貫通など様々な攻撃の威力を上げる能力【武器攻撃威力上昇】により攻撃性を底上げし、【5属性攻撃】【火属性攻撃】で強力な火属性を付与する。
熱風が巻き起こる。それだけで草が切り裂かれて燃え、石が飛ばされて焼け、木が切り倒されて炎上する。周りは乾燥し、息苦しさと暑さが満ちる。
これで、ここは俺のリングになる。火属性耐性の高い俺はここに居てもダメージをほとんど受けない。だがジンオウガは砂漠や火山などのエリアには出てこない事から察するに、こういう熱い環境が苦手なはず。後はジリジリと削っていけば良い。虫達も煙を嫌ってここを立ち去るだろうし、こちらにより有利な環境になる。
ダメ押しに相手に【粘液の唾】をぶつけて属性耐性を減少させ、自分は【体温調節】で身体を冷やすのも忘れずに行う。【興奮物質生成】で疲れも取っておこう。
今の俺は、生まれた頃と比べてかなり強くなった。
リオレイアからラーニングした【大地の女王】による陸上での身体能力向上と、【武芸百般の心得】によって与えられた戦闘のセンス。これにより今の実力はハンター並みになった。
剣の腕に関しても【刀剣の心得】で大体の使い方はマスターしているし、【職業・狩人】【職業・重剣士】により刀剣に威力補正がかかっているので文句なし。
ここまで来るのに何体ものモンスターを食べた。何人もの人を食べた。モンスターになったせいかストレスは何も感じない。相手を殺す事をためらったりしない。自分の欲望のままに突き進む事を疑問にも思わない。
おかしいとは思っていた。いつから自分はこんな
もしかしたら俺は気づかなかっただけで、この世界に来る前から化け物の心を魂に宿していたのかもしれない。モンスターになったこの体は、肉体が心の様子に近づいた結果なのかもしれない。
だけど、そんな事はもう良い。今の俺はモンスターだ。
相手を喰らうことで自らの血肉として取り込み、相手の能力も知識も全てを得る。来るものは拒まずに喰い、去る者は追って喰う。そんなモンスター。
そうすれば俺は強くなれる。喰えば喰うほど強くなり、いずれは古龍をも越すだろう。そうすれば俺に歯向かえる者はこの世界にはいなくなる。俺がこの世界の王になれる。
王になったら何をしようか。まずはこの世界の厄介な存在を全員殺そうか。この世界にはまだ見ぬモンスターもたくさんいる。おそらく強力なモンスターもたくさんいるだろう。危険分子は殺さなくてはならない。俺の危険に繋がるから。俺には逆らえる奴は全員この世に不必要だ。
「あっひゃっひゃっひゃっひゃ! あっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
笑いが止まらない。精神が高ぶって、気持ちがハイになっている。体は冷えてるのに心の熱は収まらない。
鬼人化のせいだろうか。疲れをごまかすために投与した興奮物質のせいだろうか。なぜだか今は力が漲っていて、どんな敵にだって負ける気がしない。
さあジンオウガ。見せてもらうぞ、お前が俺に無様に負ける所をな。
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34日目・夜の部後半 渓流の決戦
戦闘開始から数時間。依然としで戦いは続いていた。
【黒猫の激突】の突進能力と【属性解放突き】による刺突で、相手の身体を貫く。
【蟻酸生成】による高濃度の酸の霧で、相手の呼吸器官にダメージを与える。
【翅生成】【高速飛行の心得】【滑空】【ホバリング】【噴射飛行】で空を自由自在に動き回り、【素材玉生成】の玉をばら撒く。
【花の香り】【悪臭】で嗅覚に、【辛味成分生成】で味覚に、【閃光】で視覚に、【威嚇咆哮】で聴覚にダメージを与える。
【罠生成】【爆薬生成】で逃げようとしたら進行方向に地雷を作る。
【蜘蛛の糸生成】【操糸術】【拘束】により相手を縛って動けなくする。
【植物生成】で作った蔦に【生肉生成】で作った筋肉を合わせて触手を作り出す。
いくつも能力を組み合わせる事で、敵が想像もできないような戦法をする。相手の予想を超えて、常に特殊な攻撃を繰り出し続ける。
まあ、敵もそう簡単にやられようとはしない。こちらの大技を何回も回避しているし、ゲームでは使わなかった攻撃を何回か行ってきた。まあ【猫の回復力】で身体の傷は治るし、【癒し】で精神面の疲れもとれるので特に大きな問題は無かった。
相手は全身から血を流していて、俺も外骨格がダメージの受けすぎで解除されて展開できなくなっている。そろそろ決めた方が良いかもしれない。
俺は【蜘蛛の糸生成】の糸を飛ばして相手の角につけると、跳躍して相手の頭へと飛ぶ。更にそこから相手の背中に移動すると【大顎】【牙の一撃】【大食漢】を発動し、相手の首元を齧って食い荒らす。
『能力名【
『能力名【直感】のラーニング完了』
『能力名【強打乱舞】のラーニング完了』
『能力名【雷光虫活発化】のラーニング完了』
ジンオウガは悲鳴を上げて転げ回ろうとするが、間一髪で飛んで脱出する。
今の攻撃で相手の首の動脈を一本噛み千切れた。かなり深い所まで抉る事ができたので、後は出血多量で死ぬのを待つだけ。失血毒を【猛竜毒投与】で投与して血を固まりにくくしたので、おそらくもう少しで相手は死ぬだろう。
さっき少しつまみ食いしたけど、ジンオウガの肉は今までに無いくらいに美味だった。これはもう頭からつま先まで全部食い尽くさなきゃ気が済ま無い。
さあて、今すぐ殺してやるよ。ジンオウガ。
【迅雷祐吉は能力【
【申請中……申請中……申請中……】
【申請が通りました。新たな能力が迅雷祐吉に与えられられます】
【能力【
【能力【
【迅雷祐吉は【
【迅雷祐吉は自分の肉体を分解しエネルギーに変えた】
【獲得したエネルギーにより、迅雷祐吉のレベルが上昇した】
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件《大軍虐殺》《竜種滅殺》《王道闊歩》《万夫不当》《戦力渇望》クリアしているため、【
【
《Yes》《No》】
【???は特定階位にまで【
【???は【
【真名・
【能力【
【アザゼルは
【アザゼルは
【アザゼルは
【アザゼルは特定条件種、特定条件行動、特定指定個体をクリアしている為、※※※から
【エラーが検出されました】
【五つの
【未解放である二つの
【アザゼルは【
【アザゼルは【
【アザゼルは【
【
【
【 戦闘中のため、【
ぽたり
「ん?」
ジンオウガに新たな攻撃をしようとした瞬間、ニャー郎の頬に水滴が当たった。
空を見るとそこには何も無かった。だがぽたりぽたりと水滴が落ちてくる。そのうちに落ちる水滴の量が増え、みるみるうちに落ちる水の量は多くなった。最初は小雨だったのがみるみるうちに土砂降りへ変わる。
「……雨?」
どうやら雨がふってきたようだった。この世界はゲームの渓流とは違い雨が降るので、不自然なことではない。でも今回はタイミングが悪かった。せっかくの火が水に濡れて消えてしまう。
あー、これじゃあ火で与えるダメージが無くなってしまう。
俺はため息をつきながらジンオウガを見る。そして衝撃を受けた。
ジンオウガの傷がどんどん治っている。切り裂かれた皮膚は閉じていき、空いた孔は塞がり、穿たれた肉は再生する。
ジンオウガは雄叫びを上げた。すると、その身体が黒い雷に包まれる。雷はジンオウガの身体を焼き、新たな肉体をそこに作り出していく。
この時、俺の中に強い恐怖が湧き上がった。今手に入れた【直感】が、俺に向かって呼びかけていた。 目の前の存在を倒さなくては、目の前の存在から逃げなくては、俺は死んでしまう、と。
【力の解放】【攻撃力強化】【攻撃強化薬】【薬物効果上昇】【黒猫の強靭な肉体】【鬼人化】による身体能力の強化。
【防御力強化】【防御強化薬】【切れ味上昇】【武器攻撃威力上昇】【形状記憶】による身体の硬度の上昇。
【黒猫の激突】で相手へ一気に迫りながら、【武器威力上昇】【5属性攻撃】で尻尾に力を貯めて、【黒猫竜の尾攻撃】を発動。
【弱点見切り】【情報簒奪の鑑定眼】で相手の皮膚の弱い所を見抜き、【属性解放突き】【岩切り】【4連突き】を発動。
俺の渾身の攻撃。相手の防御をすり抜け、莫大なダメージを与える俺の本気の一撃。それはジンオウガの体にクリーンヒットする。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
だが、その攻撃で傷ついたのは、攻撃を放った俺自身のみだった。
コイツの周りを取り巻く黒い雷を突き破ろうとした瞬間、触れた俺の尾が蒸発していた。激痛と驚嘆により、俺の口から悲鳴が飛び出す。
「何なんだその雷……? そんな技、ジンオウガが使ってるの見た事ない……」
俺が痛みを堪えていると、ジンオウガを包み込んだ雷が晴れる。
そこに居たのは、黒い毛並みのジンオウガだった。さっきより一回り小さくなっているものの、まとっている雰囲気は何倍も強かった。その姿には見覚えがあった。確かモンハン4から出てくるジンオウガ亜種だ。3DSを持ってなかったので俺は4以降のモンスターを全然知らないが、ジンオウガ亜種は雑誌の広告で何度か見た事があった。
まさか、この黒い雷はジンオウガ亜種の能力だというのだろうか。
嘘だろ。このジンオウガ。戦闘中に進化したっていうのかよ。さすがにチートすぎるだろ。
ジンオウガは俺を見ると、角に黒い雷をまとわせる。俺は咄嗟に【竜鱗生成】で身体を覆う。
しかし雷が当たった瞬間、俺の両脚は千切れた。
「ぐあぁぁぁあ!」
おかしい。今は竜鱗で身体を覆っていたからそれなりに強度があったはずなのに!
今の攻撃はその防御を簡単に貫き、俺の両脚を切り落としていた。その攻撃が未知の攻撃でも、さすがにここまで威力が高いのは変だ。
……まさか、【龍気脆弱】のせいか?
【龍気脆弱】。俺がリオレイアを倒した時に得た、龍属性に弱くなる能力。
敵の能力を取り込んで強くなる俺が、取り込んだ能力のせいで死ぬって事か?さすがに酷すぎるだろ。
ジンオウガがゆっくり近づいてくる。
考えろ、考えるんだ。もう相手を殺すのは諦めよう。今は助かる方法を考えなくては。
どうやったら逃げられるのか。どうやったら生き残れるのか。それのみを考える。
恐怖は忘れろ。怒りも忘れろ。欲求を忘れろ。疲れを忘れろ。痛みを忘れろ。思考の邪魔になるものは全部排除しろ。
そうこう考えているうちに、ジンオウガはすぐ前に迫っていた。ジンオウガは前足を上げると、俺の頭の上に掲げる。どうやら頭を潰す気らしい。
まあ、それもそうだろう。コイツとの戦いで俺は【黒猫の回復力】で傷を何回も治している。確実に殺すために脳を破壊しようとしているのだろう。
ああ、時間が足りない。このままでは何もできずに死ぬ。
だから、最後まで無駄に足掻こう。
【燃える拍手】【演奏】発動。
俺は両手を思いっきり打ち鳴らす。【燃える拍手】の効果でその手から炎が生まれ、【演奏】の効果で神経を揺さぶるような音が辺りに響き渡る。それはジンオウガを怯ませ、その足を退けさせる。
俺はジンオウガを睨む。できる限りの怒りと闘志と憎悪をこめて、相手と真っ直ぐ目を合わせる。強がりでもいいから、反抗心を相手に見せる。
ああ畜生。許せない。俺に勝つコイツを俺は許せない。コイツに負ける自分が何より許せない。死に対する恐怖がどうでもよくなるほどの怒りが俺の中で込み上げてくる。
だけど、今俺にできるのはこれくらいしかない。だから、コイツの前で無様な姿を晒すことになる。
ジンオウガは俺の頭に再び腕をそえて力を込める。
だが俺は攻撃系能力と防御系能力を全て発動し、最後の力を全て込めた【頭突き】でそれを受け止める。
「待ってろジンオウガ。俺は例え、生まれ変わってもお前を絶対に────」
────お前を殺しに行く。
そう言い終わった時、俺の体に残っていた力はほとんど無くなった。全てが終わったと、俺は意識を身体から手離す。
グチャっと音を立て、俺の頭が踏み潰された。
能力説明
【
ジンオウガに転生した男、迅雷祐吉の持つ転生特典。状況や敵に応じて様々な能力を作り出す。発動条件は一定時間、一定量のダメージを受ける事。成長に補正がかかったり、【存在進化】をサポートしたりなどの効果もある。
相手の力を奪うニャー郎とは違い能力を獲得するのが非常に面倒だが、相手に有効な能力を戦闘中に獲得できるという大きなメリットがある。
追記
【自己進化】という能力は既にあったので、能力名を【逆境進化】へ変更しました。
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35日目・深夜 敗北の味
振り下ろされた一撃。それは俺の頭をトマトのように潰した。鮮血が飛び散り、肉片が散らばる。脳を失った俺の身体はピクピク動いた後、やがて動かなくなった。
ジンオウガはそれを満足そうに眺めると、くるりと振り返ってそのまま帰っていった。
『ニャー郎は能力【並列思考】を手に入れた』
『ニャー郎は能力【不屈】を手に入れた』
……ふう、何とか助かった。
龍属性の雷撃。それにより俺は殺されかけた。尻尾は燃え尽きたし、足は切断されてもうボロボロ。だけど、そんな状況でも俺は諦めなかった。
俺は【悪知恵】を使って必死にどうすれば良いか考えを巡らした。逆境に陥れば陥るほど頭が回るこの能力で、俺はどうしたらいいのか考えた。
そして、最終的にこんな結論に至った。
身体が壊されたのなら、魂を身体から切り離して別のものに移してしまえば問題ない。
俺のスキルの中に、【女体化】というスキルがある。
このスキルは文字通り身体を女のものへと変化させる能力だ。それを利用する事で体の一部を女体化したり、逆に一部を残して全部雌の体にする事も可能である。
リオレイアから手に入れたが使い所が無さそうで放置していた能力だったが、今回俺はそれを使って身体を雌アイルーへと変えた。
そして俺はドスジャギィから手に入れた能力【孕ませる】を
この能力は自分の子供を使用した相手に孕ませるだけの能力だが、雌の個体は自分自身に使う事で「単為生殖」を行って自分と同一の個体を産むことができる。
まさか童貞卒業より妊娠が先になるとは……。人生何が起こるか分からないな。マリア様かよ、俺。
そして、俺はできた受精卵を【雑草の如き成長】や【急成長】で一気に赤ん坊へと成長させた。その途中でジンオウガに潰されそうになったが、何とか猫騙しで時間を稼いだ。
ある程度子供の身体も出来上がった所で、俺は全ての能力とエネルギーと自分の魂を身体から切り離して赤子へと【調合】。その結果魂の抜けた身体はそのまま力を失って潰された、というわけだ。
現在、俺の身体はスペックがかなり低下している。身体が小さくなっている事もあるが、何より種族が
元に戻るにはとにかく食うしかない。今の身体には全然エネルギーが足りてないので、とりあえず近くにあった俺の前の身体を食べる。いろいろと倫理観に反してる気がするが、今更だ。
『能力名【
『能力名【
……けぷっ、
身体がどうも小さすぎてあまり食えない。【大食漢】で消化スピードを速めて何とか捕食し、取り込んだエネルギーを元に【急成長】【雑草の如き成長】で身体を成長させる。
『能力名【竜殺しの刃尻尾】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【猫族の因子】のラーニング完了』
『能力名【飛竜族の因子】のラーニング完了』
『能力名【統率・猫(弱)】のラーニング完了』
『能力名【知性・小(弱)】のラーニング完了』
『能力名【引っ掻く】のラーニング完了』
『能力名【進化の種】のラーニング完了』
『能力名【同族殺し】のラーニング完了』
『能力名【共食い】のラーニング完了』
『能力名【職業・
『能力名【黒剛毛】のラーニング完了』
『能力名【貫穿の黒尻尾】のラーニング完了』
『能力名【統率・猫(中)】のラーニング完了』
『能力名【奇跡の種】のラーニング完了』
『能力名【統率・猫】のラーニング完了』
『能力名【庇護者】のラーニング完了』
『能力名【
何時間もかけて、肉体を全て腹に収める。これで大分エネルギーを取り戻す事ができた。今の身体にはアイルーにしては過剰な力が収まっているので、そろそろ存在進化もできるだろう。そのためには安全な場所を確保しなくてはならない。
居住区には帰らない。今の弱い状態では下剋上をされる危険があるし、それ以前にまず今の弱った状態を他人には見せたくなかった。なので、安全なエリア1に向かう事にした。
俺は焼けたエリア5を探索して能力を得られそうな物を食った後、そのままエリア1へと向かった。
『能力名【高級魚寄せ】のラーニング完了』
『能力名【菌床】のラーニング完了』
エリア1には誰の気配も無く、特に何かが置かれているわけでは無かった。ただ、近くに怪しい気配もなかったので、ここで存在進化することにした。
俺は【急成長】【尾再生】を発動する。それにより尻尾は伸びて枝分かれし、四方八方へと広がっていく。俺はその尻尾達を全身に絡めると、【調合】を使って全身を尾と融合。こうする事で【尾再生】で全身の傷を治せるようになるし、【黒き猫竜の尾攻撃】を使えば全身が凶器へと変わる。
更に俺は、ジンオウガとの戦いで手に入れた超電雷光虫を身体に調合して発電能力を獲得する。余った分は食べて能力のラーニングに使う。
『能力名【
『能力名【電気増幅】のラーニング完了』
『能力名【衝撃電気変換】のラーニング完了』
これで、肉体の改造は終了。存在進化すれば合成された物が身体と完全に融合するので、身体に組み込まれた尻尾の力も雷光虫の力もスムーズに使えるようになるだろう。
俺は周りに【植物生成】で檻のような物をつくると、その中で寝転んだ。よく眠れるように【羽毛生成】で作った羽毛をアイテムボックスに入ってた袋に詰めて即興で布団をつくり、身体の下に敷く。
俺は、ジンオウガに負けた。この身体に転生してから初めての敗北だった。それは俺のプライドに大きく傷を付けた。
今までの俺は完全に慢心していた。自分より大きなモンスター達に勝ち続けたことで調子にのっていたのだ。そのせいで明らかに勝て無いジンオウガに挑んでいき、盛大に負けた。
俺は転生前は特に長所もない平凡で友達も少ない存在だった。それでも今は強い力を手に入れたから、この世界では凄い奴になれると思ってた。だけど、『圧倒的な力』の前では俺はゴミにすぎなかった。
悔しかった。自分の誇りを簡単に覆されたことが。
この借りは絶対に返す。俺のプライドを打ち砕いた分、相手のプライドをズタズタにしてやる。
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件《大軍虐殺》《地主殺害》《戦力渇望》《万夫不当》《死線超越》をクリアしているため、【
【
《YES》《NO》】
だから今は、強くなるために前を見よう。食って、眠って、強くなろう。
俺は迷わず《YES》を選択し、そして寝た。
【ニャー郎は特定階位にまで【
【ニャー郎は【
【真名・
【ベヘモットは
【ベヘモットは
【ベヘモットは
【ベヘモットは特定条件種、特定条件行動、特定指定個体をクリアしている為、※※※から
【エラーが検出されました】
【五つの
【未解放である二つの
【ベヘモットは【
【ベヘモットは【
【ベヘモットは【
【
【
【深刻なエラーが発生しました】
【原因を特定しています……】
【原因を特定しています……】
【原因を特定しています……】
【原因を特定しました】
【能力【■■■■】が
【ベヘモットは【
【ベヘモットは【
【真名・
【ルシフェルは
【ルシフェルは
【ルシフェルは
【ルシフェルは【
【エラーが発生しました】
【エラーの解消の為、世界詩篇[過食猫人物語]を世界詩篇[尊大火竜物語]に統合します】
【ルシフェルは【
【詩編編集のため、世界詩篇[猫人晩餐物語]は一定時間凍結されます】
これにて、第2章完結です。
ここまで連載を続けられたのも皆様の感想や評価のおかげです。ありがとうございました。これからもRe:Nyansterをよろしくお願いします。
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第2章まとめ
【
メラルーの言語を理解する。
【
相手から物を奪う。
【鍛治の心得】
鍛治に関する事を感覚で理解する。
【加工の心得】
加工に関する事を感覚で理解する。
【調薬の心得】
調薬に関する事を感覚で理解する。
【刀剣の心得】
刀の扱いを感覚で理解する。
【集団狩猟の心得】
集団狩猟について感覚で理解する。
【槍戟の心得】
槍の扱いを感覚で理解する。
【弓術の心得】
弓の扱いを感覚で理解する。
【守り手の心得】
守り方を感覚で理解する。
【解体の心得】
解体について感覚で理解する。
【ヒト攫い】
人を攫いやすくなる。
【
足音を出さずに移動できる。
【火薬生成】
火薬を作り出す。爆竹に混ぜると威力が上がる。
【雑草の如き成長】
成長速度を上昇させる。どごぞのカボチャの種から入手した能力。
【玉石混淆】
生産中、一定確率で他より優れた物を作れる。
【龍属性攻撃】
攻撃に龍属性を付与する。龍に対して効果抜群。
【攻撃力強化】
攻撃力を強化する。
【防御力強化】
防御力を強化する。
【弾丸生成】
弾丸を作り出す。
【
爆発する。
【水属性攻撃】
攻撃に水属性を付与する。夏場は冷たくて気持ちいい。
【収納上手・技】
収納が得意になる。
【収納上手・力】
力尽くで物を無理やり収納する。
【罠生成】
罠を作る。作る罠は自由。
【敵呼び】
敵を呼び寄せる。
【採掘】
素手で岩盤を掘れるようになる。
【矢生成】
矢を作る。
【ビン生成】
ビンを作る。生活面でとても便利。
【発熱】
熱を発生させる。
【冷却】
冷気を発生させる。
【応急手当】
傷を早急に塞ぐ。
【刀研ぎ】
刀を研いで切れ味をあげる。
【切れ味回復】
研がずとも切れ味が回復する。
【辛味成分生成】
辛味成分を作り出す。
【自然回復力上昇】
自然回復力が上昇する。自動的に傷が治る。
【回復の歌声】
声に「聞くだけで回復する効果」を付与する。
【攻撃強化の歌声】
声に「聞くだけで攻撃力を上げる効果」を付与する。
【防御強化の歌声】
声に「聞くだけで防御力を上げる効果」を付与する。
【
体内で攻撃力を強化する薬品を作る。
【
体内で防御力を強化する薬品を作る。
【高速帰宅】
素早く帰宅する。帰宅時に移動速度に大幅補正。
【
熱風を噴射して空を飛ぶ。
【生命の粉塵】
生命の粉塵をばら撒き、自分と味方の傷を癒す。
【弱点見切り】
相手の防御の隙を見抜く。
【特殊攻撃威力上昇】
毒などを用いた攻撃の威力が上がる。
【回復速度上昇】
傷が治る速度が上昇する。
【力の解放】
一定量のダメージを負い、一定時間戦闘を続けると発動する能力。スタミナの消費量が下がり、相手に攻撃がクリティカルヒットするようになる。ただし効果は3分間。
【腐蝕防止】
腐らなくなる。
【強力殺菌】
カビだろうがウイルスだろうが根絶やし。菌、殺すべし。慈悲はない。
【形状記憶】
自分の体や持ち物に形状記憶の効果を付与する。それにより、ねじ曲がってもすぐに元どおりになる。
【切れ味低下防止】
切れ味が下がりにくくなる。
【斬撃力上昇】
斬撃の威力が上がる。
【切断力上昇】
切断の威力が上がる。
【打撃力上昇】
打撃の威力が上がる。
【回避直結】
あらゆる行動から回避に直結する。
【鬼人化】
体力を消費して筋力を飛躍的に高める。気分も高まる。まさしく鬼のようになる。
【鬼人強化】
鬼人化状態で攻撃をすればするほど、攻撃の威力が上がる。
【
剣を振り回し、相手を連続で切り裂く。
【剣打撃】
剣の腹で敵を思いっきり殴る。
【連気技】
攻撃する事で体内の気を練って、身体機能を活性化する。
【岩斬り】
防御を抜けて相手に攻撃する。攻撃が弾かれなくなる。
【属性解放突き】
武器の持つ全ての性質を解放し、相手にダメージを与える。必殺技みたいな技。
【スーパーアーマー】
どんな攻撃を受けても、踏みとどまる能力。
【フルバースト】
装填している弾丸を全て発射する。
【竜撃砲】
竜のブレスを模して造られたという技。使うと熱が発生するのでクールタイムが必要になる。
【気絶攻撃】
攻撃に相手を気絶させる効果を付与する。
【回転攻撃ホームラン】
打撃武器を振り回して相手に当て、相手を遠くまで吹っ飛ばす技。
【演奏】
演奏技術が上がる。歌、弦楽器、金管、木管、打楽器、ボイパと能力の効果ははばが広い。
【曲射】
矢を上に飛ばし、ちょうど相手の上に落ちるようにする。
【発射】
手から物を発射する。【弾丸生成】【矢生成】【素材玉生成】などと組み合わせる事が可能。
【スコープ】
見たい相手にピントを合わせる能力。
【仲間を呼ぶ声】
仲間を呼び寄せる効果を持つ声。
【群友統括】
仲間の成長に補正がかかる。
【鳴き袋】
鳴き袋を体内に作り出す。
【体温調節】
体温を一定に調節する。
【群の長】
群の長としてのプライドや知性を得る。長としての風格も出る。
【悪知恵】
ピンチになればなるほど頭が回るようになる。
【
絶倫になる。
【孕ませる】
相手を孕ませる。自分に使うと自己受精できる。
【秘薬の血潮】
飲むと傷が治る。
【調合】
物と物との性質を合わせる。かなりの便利能力。
【青熊の堅牢な甲殻】
硬い甲殻を作り出す。壊すのは並大抵のモンスターでは不可能。
【青熊の強靭な筋肉】
筋力が熊のように高くなる。
【重撃無双】
相手の防御をブチ破る強い打撃。
【連撃怒濤】
重撃無双の連続攻撃バージョン。
【飽食】
物をありったけ食べることができる。
【甘党】
甘い物が好きになる。甘い物を見つけやすくなる。
【餌探し】
食べ物に対して第六感が働くようになる。
【獣の誇り】
相手に負けないという強い気持ちを得る。
【微回復】
少しだけ傷が治る。
【金属吸収】
金属を身体に取り込む。
【黄金制御】
黄金を自由に操る。あくまで操るだけで、自由に作ったりは不可能。
【
花の香りを発生させる。アロマの効果がある。
【
手を打ち合わせると炎が発生する。拍手すれば火の玉が、指パッチンで火花が生まれる。
【高速飛行の心得】
高速飛行の仕方を感覚で理解する。
【粘液の唾】
相手の属性耐性を下げる唾。汚い。
【燃えない羽毛】
羽毛が火に強くなる。
【4連突き】
攻撃すると、相手に同じ量のダメージが3回分追加で与えられる。
【笛吹き名人】
笛を演奏する威力が上がる。
【癒し】
精神的疲労を取る。
【広範囲攻撃】
広範囲に攻撃が広がる。その分威力が分散する。
【魚取り】
魚を取る技術が上がる。
【逃走の心得】
逃走の仕方を感覚で理解する。
【職業・
影が薄くなる。
【採取の心得】
採取の仕方を感覚で理解する。
【老人の知恵袋】
山菜爺さんが生涯かけて集めていた知恵。
【
敵の存在を感知する。
【常時健康体】
病気にならない。ぎっくり腰にならない。脱臼しない。筋肉痛にならない。とても健康的な身体になる。
【堅木】
木を硬くする。
【光合成】
光からエネルギーを作る。
【精霊の加護】
会心率が上昇する。
【精霊の気まぐれ】
武器やピッケルなどが壊れにくくなる。
【根を張る】
根を張って地面からエネルギーを吸収する。
【激突】
相手に思いっきり衝突する。
【溜めの構え】
力を溜めて、次の攻撃の威力を上昇させる。
【牙の一撃】
牙を用いた攻撃の威力が上がる。
【闘争心】
敵を見つけると興奮状態になる。戦闘という行為が快感になる。
【左利き】
左手で物を扱うのが上手くなる。
【持久力向上】
持久力が上がる。
【グルメの鼻】
美味しい物を探しやすくなる。
【生肉生成】
生肉を作り出す。作れる肉は鶏肉から牛肉まで自由自在。脂肪分の量も調整可能。
【
当たると爆発する炎の弾を吐く。
【強者の威圧】
自分より弱い敵をビビらせる。
【威圧する眼光】
睨んだ相手をビビらせる。ただし相手を選ば無いと「何メンチ切ってんだワレェ‼︎」とキレられるので注意。
【尾再生】
尾が切れても治る。尻尾を乱獲されたリオレイヤの持つ力。
【尻尾の鞭】
尻尾を鞭のように扱い、相手を弾き飛ばす。
【サマーソルト】
空中で一回転し、尻尾で相手を攻撃する。その姿はまさにどこぞの軍人。
【滑空】
飛行中、空を滑空する。
【拘束】
相手を縛ったり、押さえつけたりする技術が上がる。
【豊穣な大地】
体内で「竜のフン」を作り、排出する。
【ホバリング】
ホバリングができるようになる。飛行アビリティが無ければいらない能力。
【大地の女王】
陸上での戦闘時、身体能力が大きく上昇する。
【女体化】
身体が女の物になる。使い方によっては、股間のみ男でそれ以外女にもなれる。
【
欲望を抑える。快楽に屈せず、食欲に屈せず、眠気に屈しない。鉄のような意思を得る。
【
飛竜の言語を理解する。
【龍気脆弱】
龍属性攻撃に対して弱くなる。
【
炎熱攻撃のダメージを75パーセントカットする。
【卵殻生成】
卵の殻をつくる。
【
電気が身体に流れると、筋肉が増強される。
【直感】
直感で、何となく相手の攻撃を回避できる。
【強打乱舞】
強力な、防御をブチ破るような一撃を何発も相手に充てる。
【雷光虫活発化】
雷光虫を活性化し、その働きを強化する。
【並列思考】
思考を分割する。
【不屈】
ピンチになるほど、身体能力が上昇する。
【
赤いグローブを手にまとう。腕力が強化され、パンチ一発で熊をも倒せるようになる。
【
赤いブーツを脚に履く。脚力が強化され、瞬発力が大きく上昇する。
【竜殺しの刃尻尾】
尾に龍属性と対龍属性を付与する。先端が刃のようになり、敵を切り裂く。
【
竜を殺しやすくなる。
【猫族の因子】
猫人の持つ因子。成長しやすくなる。
【飛竜族の因子】
飛竜の持つ因子。いろいろと恩恵がある。
【統率・猫(弱)】
猫人を少し統率しやすくなる。
【知性・小(弱)】
少しの知性を獲得する。
【引っ掻く】
引っ掻く攻撃の威力が増す。
【進化の種】
存在進化した生物の得る力。子供ができやすくなる。
【同族殺し】
同族を殺しやすくなる。
【共食い】
共食いをしやすくなる。
【職業・
高い身体能力を得るが、狂気に飲まれる。使い所に注意。
【黒剛毛】
黒くて硬い毛。金属繊維のように硬く、攻撃を通さない。
【貫穿の黒尻尾】
尾による攻撃が、堅い防御も通るようになる。
【統率・猫(中)】
猫人を統率しやすくなる。
【奇跡の種】
かなり子供ができやすくなる。
【統率・猫】
猫人をかなり統率しやすくなる。
【庇護者】
自分の支配下の存在を強化する。繋がりが深ければ深いほど強化される。
【
自分より強いアイルーには従い、自分より弱いアイルーを従える。
【高級魚寄せ】
高級魚を引き寄せる能力。水に浸かっているだけでも黄金魚が大量に寄ってくる。
【菌床】
キノコを発生させる能力。
【
電気を発生させ、操る能力。
【電気増幅】
体内に流れ込んだ電気を増幅させて放出する。
【衝撃電気変換】
受けた衝撃を電気に変換する。
【捕食者】
戦闘時自分の能力が上昇し、敵の能力が低下する。本家では捕食者の能力は【天空の捕食者】や【水中の捕食者】など使える環境が限られている能力だったが、この能力はどんな環境でも使う事が可能である。
【圧殺超過】
能力を発動すると身長に合わないレベルで重くなる。これにより、今まで問題だった体重の軽さをカバーできるようになった。
【戦技早熟】
戦闘技術が上がりやすくなる。
【
詩編を持つ者との戦闘時、全能力を通常時の300%まで上昇させる。
【
倒した相手の運命を簒奪する能力。相手の詩編と能力を奪う。
【
※※※により与えられた、世界に大きな影響を与える物語。暴走した食欲を持つ者に送られる詩編。
【
神から愛され、人から愛され、運命に愛される能力。
膨大な運と、誰もを魅了するオーラと、運命を切り開く力を手に入れる。
【職業・
帝王として、誰よりも優れた能力を獲得する。全ての職業関係系能力に勝る、最強の力。
【
確率を操作する能力。【神愛享受】と合わせればかなりの効果を発揮する。
【刹那の瞳】
全方位から来る攻撃を確認し、その攻撃がどのように繰り出されるかを赤い攻撃予測線として視界に表示する。
【
※※※により与えられた、世界に大きな影響を与える物語。高い慢心を宿す者に送られる詩編。
【
二つの詩編が融合した結果生まれた物語。現在凍結中。
調合でできた能力。
【爆竹生成】+【火薬生成】+【爆裂】=【爆薬生成】
衝撃を受けると爆発する爆発物。威力がかなり高い。
【火属性攻撃】+【水属性攻撃】+【雷属性攻撃】+【氷属性攻撃】+【龍属性攻撃】=【5属性攻撃】
5つの属性を自由に攻撃に付与する。一点に特化していない分、複数の属性を同時使用できるメリットがある。
【蟻の筋力】+【猪の筋肉】+【脚力上昇】=【黒猫の剛力】
身体能力が大きく上昇する。
【独り身の戦闘】+【命知らずな心】=【
自分一人での活動時、全能力上昇。独善主義に目覚める。
【斬撃力上昇】+【切断力上昇】+【貫通力上昇】+【打撃力上昇】=【武器攻撃威力上昇】
あらゆる物理攻撃時、威力が上がる。
【蟻酸生成】+【肝機能上昇】+【飽食】+【早食い】+【食い溜め】=【大食感】
莫大な量の飯を食えるようになる。消化能力がかなり上昇する。
【竜毒投与】+【特殊攻撃威力上昇】+【毒物生成】+【減気毒生成】+【麻痺毒生成】+【睡眠毒生成】=【
あらゆる毒を作る能力。その毒はボスモンスターを殺すほどに強い。
【物品鑑定】+【簒奪】=【情報簒奪の鑑定眼】
情報を引き出す能力がかなり上昇した鑑定眼。
【発熱】+【冷却】=【温度操作】
温度を自由に操る。操れる範囲はマイナス20度〜100度ほどで、生物に対しては使えない。
【回復】+【応急手当】+【生命の粉塵】+【回復速度上昇】=【黒猫の回復力】
強い回復力を得る。軽い傷ならすぐ治る。
【鷹の目】+【スコープ】=【狙撃手の目】
どこにいる相手にもピントを合わせる能力。相手に狙いをつけるのに適している。
【蔦生成】+【堅木】=【植物生成】
植物を生成する能力。木も草も作れる。
【突進】+【体当たり】+【激突】=【黒猫の突進】
目の前の相手を薙ぎ倒す突進。どんな防御も弾き飛ばす。
【グルメの鼻】+【餌探し】=【
食べ物を異様に探しやすくなる。
【黒猫の剛力】+【青熊の強靭な筋力】+【常時健康体】=【黒猫の強靭な肉体】
身体能力がボスモンスター並みになる。更に健康にもなれる。
【竜尾攻撃】+【尾攻撃】+【尻尾の鞭】+【サマーソルト】=【黒き猫竜の尾攻撃】
尾による攻撃の威力が大幅に上がる。更に龍属性を付与する。
【独り善狩りの勇者】+【群の長】+【獣の誇り】+【闘争心】+【禁欲者】=【
全ての人民の上に立つ独裁主義者のような人格になる。性欲・食欲・睡眠欲の三大欲求が抑えられ、その代わりに全てを支配したいという傲慢な欲求が止まる事なく溢れ出る。更に、身体能力にも補正がかかる。
【焔火の息】+【爆炎の息】=【
相手を焼き尽くす猛火の息。当たると爆発し、辺りに火の粉を撒き散らす。
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36日目 人間との初対面
37日目
朝起きたら、俺の身体には毛布がかかっていた。
アイルーになってから俺は基本的に何もかけずに寝ていた。だから、このフワフワで暖かい感覚は久々だった。
周りを見渡すと、そこには人間達がいた。筋骨隆々な人や細身の男、剣を持った少女などとたくさんの人がいる。
状況から察するに、俺はどうやら人間に保護されたらしい。
どうやら彼らは、ハンターズギルドの調査員らしい。昨日このエリアで爆発音が発生したので、その調査に来たのだとか。
彼らの役目は、大きな調査機材などを運ぶ本隊の前に来て、キャンプ地を作成と事前調査を行う先行部隊。どうやらテントを張るためにハンター達が休憩場所とするこのエリアに来たら、俺を発見したらしい。
【異種族言語】のおかげでコミュニケーションをとるのは簡単だった。それに、人間の言葉を喋れたおかげで、自分を人間の所から逃げ出したアイルーだと誤魔化すこともできた。毛並みが存在進化で緑色になっていたのも誤魔化すのに一役かってくれた。
俺は彼らと行動を共にすることにした。久々に会えた人間だったし、おそらくこの機会を逃したら人間達と関わる機会が無くなる。彼らに頼み込んで、少なくとも人里には連れて行ってもらわなければ。
彼らには昨日強いモンスター同士の戦闘があったらしい、と言って、地雷が爆発した場所へ案内した。ついでに昨日俺が戦った場所にもよった。途中何体かジャギィが襲ってきたが、能力を大っぴらに使うわけにもいかないので、首の骨をへし折ってさっさと殺した。
俺が戦った場所は、あたり一面焼け野原になっていた。見ているだけで、昨日どれだけの激戦が行われていたのかが分かるくらいだ。調査隊の人達もかなり衝撃を受けたようだった。
この惨状は俺のしでかした事だし、俺がなんとかしなければいけないな。と、いうわけで【植物生成】【確率変動】【玉石混淆】を発動する。
【確率変動】。この能力はラーニングで得た能力ではないので、正直どんな物なのかよく分かっていない。だが一応原作にも出てきた能力なので、運勢を操る能力だという事は分かっている。これを使って【玉石混淆】の優れた物ができる確率を上昇させて、【植物生成】を使う。
そうしてできたいくつかの種を鑑定すると、なかなか凄い結果が出た。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
名称:【聡明なる堅木の種】
分類:【種子/木】
能力:【雑草の如き成長】【堅木】【知性・小(弱)】【草木統率】【侵食の根】【金属吸収】【毒素生成】
備考:強き猫の生み出した特殊な木。自然界には存在しない特殊な植物であり、他の植物を侵食して成長する。わずかではあるが思考能力を持つ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
どうやら【庇護者】の影響で、俺の能力をいくつか獲得したらしい。俺の持ってない能力も手に入れていたので、一個だけ食べてあとはこっそり撒いた。
『能力名【草木統率】のラーニング完了』
『能力名【侵食】のラーニング完了』
夜になると、キャンプ地に戻って皆で焚き火を囲って食事をとった。久々の人工物はそこそこ美味しかった。その中で、調査隊員達の話を聞いた。
ベテランっぽい雰囲気のちょび髭のおっさんは、引退した元凄腕ハンターだった。若い頃はそこそこ強かったらしく、リオレウス相手に戦った事もあるんだとか。趣味は釣りで、好きな物は酒。武器は太刀『ブラットクロス改』。
マッチョな男はギルドの現役ハンター。ボルボロスなどの強敵との戦闘経験もあり、ある程度の強さを誇る。趣味は筋トレで、好きな物はアプトノスの肉。武器は大剣『ドラグロブレイド』。
金髪ポニテの娘は村で雇われた新米のハンターで、おっさん曰く技術は未熟だが危険察知能力には目を見張る物があるらしい。趣味は読書で、好きな物はヨーグルト。武器は片手剣『ハンターカリンガ』。
恰幅の良いおばちゃんは、普段は農業をして副業でハンターをしているらしい。普段からハードな農作業をしているため筋力が高く、この中ではおっさんとマッチョに続いて3番目に強いようだ。趣味は裁縫で、好きな物はおしるこ。武器はハンマー『ユクモノインパクト』。
眼鏡の細身の男はギルドの職員。他のメンバーを監督するためについてきたらしく、頭もそこそこ良いらしい。ギルドの職員として長い間働いているらしく、そこそこ内部の事情について詳しかった。趣味は音楽で、好きな物は唐辛子。武器は無し。
俺は5人と話し、相手を褒めて気を良くさせて、なるべく外の情報について聞き出した。話を聞く中で分かったが、どうやらナルガクルガやティガレックスなどのモンスターを倒せるのは極少数の優れたハンターのみらしく、ボルボロスを倒せる程度のマッチョ男すら強い部類に入るらしい。上位モンスターを倒せるのはもはや伝説級だとか。
そう考えると、存在進化する前ですらあのジンオウガと互角に戦えた俺はこの世界ではそこそこ強い事になるな。案外人間には敵がいないかもしれない。
……まあ、油断はできないな。なんせ調子に乗った末に俺はあのジンオウガに殺されたんだから。能力をたくさんラーニングして、なるべく強くなるようにしないと。
そういえば、山菜爺さんの持ってた素材があったな。結構古いしラーニングできそうに無かったから残してたけど、【確率変動】がある今ならいけるかも。とりあえず鑑定してみるか。
……ふむふむ、『迅竜の骨髄』に『毒怪竜の爪』、『赤甲獣の蛇腹甲』ね。思ったより良い素材は少ないな。まあいいや。いただきます。ついでに話してる途中に5人から【簒奪】で手に入れた髪の毛も食う。
『能力名【
『能力名【壁歩き】のラーニング完了』
『能力名【赤甲獣の蛇腹甲】のラーニング完了』
『能力名【熟練の太刀使い】のラーニング完了』
『能力名【釣り下手】のラーニング完了』
『能力名【飲兵衛】のラーニング完了』
『能力名【職業・剣士】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【
『能力名【鍛錬衝動】のラーニング完了』
『能力名【
『能力名【高速思考】のラーニング完了』
『能力名【速読】のラーニング完了』
『能力名【農業の心得】のラーニング完了』
『能力名【料理の心得】のラーニング完了』
『能力名【裁縫の心得】のラーニング完了』
『能力名【職業・ギルド職員】のラーニング完了』
『能力名【アイテム知識】のラーニング完了』
『能力名【職業・中間管理職】のラーニング完了』
『能力名【幸運値低下】のラーニング完了』
マイナスな能力は【植物生成】で作った種に【調合】して封印しとこう。俺の作った物だから能力が馴染みやすいはず。【龍気脆弱】とか、【釣り下手】とか【幸運値低下】とかを調合しとこう。
今日の能力調合結果
【重撃無双】+【連撃怒濤】+【強打乱舞】=【肉潰す怒涛の破拳】
【黒き猫竜の尾攻撃】+【竜殺しの刃尻尾】+【貫穿の黒尻尾】+【三つ叉の棘尻尾】=【猫又の妖剣尾】
【並列思考】+【高速思考】=【並速思考】
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37日目〜38日目 準備と誤算
今回の「37日目〜38日目」ですが、矛盾点がいくつか見つかったので、最後の部分を書き直させていただきました。その結果、変更前と大分結果が変わりましたが、ご了承ください。
これからはなるべく、そういう事態が起こらないようにします。どうもすいませんでした。
さらに追記
若干最後の展開を書き直しました
37日目
今日は能力の検証をするために、エリア8の高台の所に行った。行く途中でガーグァ三体捕まえて腹ごしらえも行う。最近新しい能力を大量に手に入れたので、その効果の確認をする必要もあった。
まず最初に【猫又の妖剣尾】。この能力は現在、多種多様な能力が合成されている。
尾から3本の棘を生やして、相手に向かって正確に飛ばす【三つ叉の棘尻尾】。
龍属性と対龍属性を付与し、刃状にする【竜殺しの刃尻尾】。
相手の防御を崩して、尻尾を深く突き刺す【貫穿の黒尻尾】。
尻尾を自由に操り、相手に強い一撃をくらわせる【黒き猫竜の尾攻撃】。
複数の能力が統合された結果、俺の尻尾による攻撃の威力は大型モンスター並みになった。遠距離の相手に対しては守りを貫通する棘で狙撃をすることもできる。
さらに今、俺は全身に尻尾が合成されているため、この能力を全身で発動することができる。試してみたところ、腕から棘を出現させて飛ばしたり、手を剣状にする事ができた。今の俺は全身が凶器といっても過言ではない。
他にもいくつかの能力の検証を行い、性能をチェックする。
【並速思考】は、脳の処理速度をぐーんとはねあげる。脳内にいくつもの意志がある感覚は新鮮で、いつもより世界が鮮明でゆっくり動いてる気がした。
【赤い猫手】と【赤長靴を履いた猫】は【外骨格着装】の部分展開版。身体を守る範囲こそ狭いが、性能自体はこれらの方が上だった。どちらも【外骨格着装】と同時に使えないようなので、状況で使い分けるのがベストだろう。
【雷光虫活性化】は、使うと身体から翅と触覚が生えた。どうやらこの能力、使うと俺の中の雷光虫の要素が増幅されて表に現れるらしい。雷光虫の部分が発生させた電気が【電気増強】により筋力を強化するので、副次効果で身体能力が大きく底上げされた。
あと、最近分かったのだが、俺の能力には常にオンになっている物があるらしい。ジンオウガとの一戦で【龍気脆弱】が意図せず発動していたように、俺は得た能力を完全に支配しているわけじゃないらしいのだ。
なんせ、俺は日本では普通の一般人だったのだ。前世では何年も【吸喰能力】を使っていた
調べてみたところ、このような結果になった。
任意で発動する能力は『自然現象系』『物理直接攻撃』『物理間接攻撃系』『防御系』『間接防御力強化系』『回復系』『隠密関係系』『生作系』『取り扱い系』。
常時発動する能力は、『職業系』『耐性防御系』『脆弱系』『強化系』『間接強化系』『精神関係系』『統括系』『情報収集系』『技能関係系』『心得系』『血統・因子系』『言語系』。
能力によってまちまちなのが『感覚強化系』『特殊強化系』『戦闘関係系』。
つまり、結構な数の能力が常に発動している、というのが今の現状らしい。そのせいで身体の燃費が悪くていろいろと大変なので、能力を制限する能力をそろそろラーニングしたいものだ。
能力検証も終わったので、次は人間社会に入るための準備をしよう。俺は【菌床】と【生肉生成】に、【確率変動】と【玉石混淆】を合わせて発動させ、更に俺の血を加える事でスライムのような生命体を作り出す。
人間社会に入ったら、きっと俺は今までのようには食えない。野生動物を乱獲したり、強い人間を食ったりするのはやすやすとできなくなる。なので、俺は【庇護者】の能力を応用してエネルギーを集める事にした。
【庇護者】は傘下を強化する能力だ。繋がりのある者との間にパスをつくり、能力を与える。すなわち、これを利用して傘下からエネルギーを徴収する事もできるはず。そこで俺は繁殖力の高めなキノコの胞子をばら撒くスライムを製作してみた。俺は試しに作ったスライムを鑑定する。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
名称:【蠢く菌肉】
分類:【人工生命体】
能力:【知性・小(弱)】【胞子散布】【
備考:人工的に作り出された生き物。胞子をばら撒くための存在。消化器官などをもたないため、餓死ですぐ死ぬ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そこそこ良い物ができた。後はスライム達をそれぞれ別の方向に向かわせる。
スライムが通った道には胞子が散布されて、それが育ってできたキノコが俺に養分を供給する。キノコは胞子を広範囲に散布し更に数を増やすので、俺に供給される養分はどんどん増えていく。
更に俺は、キノコに引き寄せられた草食動物を狩るためのモンスターも作ることにした。
俺は先ほど殺したガーグァの卵を3個取り出すと、【飛竜の因子】と【孕ませる】を発動する。すると卵がズッシリと重くなったので、鑑定して能力を確かめる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
名称:【賢い竜の卵】
分類:【卵/竜】
能力:【知性・小(弱)】【雑草の如き成長】【急成長】【大器晩成】【飛竜の因子】【猛竜毒投与】【火竜の堅牢な鱗】【龍属性攻撃】【回避直結】【飛行の心得】【
備考:知性を持つ竜の卵。成長すれば、かなり強い個体になると思われる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
よし、これでよし。後は【羽毛生成】でフワフワな巣を作ってその上に卵を配置し、ジャギィ対策に【植物生成】で作った燃えやすいバリケードで覆う。ついでに生肉を作って、【強力殺菌】で殺菌して置いておく。
あとはコイツらが成長すればなんとかなるだろう。こうして作業を終えた俺は人間達の元へと戻った。
人間達の所に戻ったら、周りの人から怒られた。おっさん曰く、ひ弱なアイルーが1人で危険な渓流を探索するのは自殺行為だとか。いや、俺、このメンバーで一番強いんだけど……。理不尽である。
38日目
今日は、人間達と一緒にすごしていた。キャンプ地に近づいてきたモンスターを倒したり、人間社会について質問したりしていた。
そして、昼頃だっただろうか。突然辺りに大きな音が鳴り響いた。その爆音とガラスを引っ掻いたような高音は、俺の地雷が爆発した時の音だった。
近づいて行ってみたところ、そこには何台もの列になった荷馬車があった。話してみたところ、調査隊の本隊の人達だった。
荷馬車の先頭には動力であるガーグァを取り付けるための紐のような物があった。しかし、どうやらリオレイアの奇襲にあってガーグァが全部やられてしまったらしく、今はなにも繋がれていなかった。
なんでも車で移動している途中、突然爆音が鳴り響いたかと思うと、外に出てみたら先頭の方で火が上がっていたのだとか。ガーグァを操っていた御者の男は無事だったのがせめてもの救い、と調査隊の人は語っていた。
うん。その爆発は多分俺の地雷のせいだな。
おそらくガーグァに踏みつけられて地雷が爆発したのだろう。地雷というのは対戦車用でも踏みどころによっては人の体重でも爆発するというし、そうなるのも無理はないか。火薬の匂いは、強烈な
とりあえず、死んでしまったガーグァを埋めてから、乗っていた乗組員と俺たち6人で荷物を持てる分だけ持って歩いて帰ることになった。その中でやられたガーグァの肉を一部貰い、地雷の破片も回収しておく。あとは荷物と乗っていた人たちの髪の毛も少しだけちょろまかした。こういう時に、絶対的な盗みの技術を得る【
『能力名【
『能力名【
『能力名【悪魔の兵器】のラーニング完了』
『能力名【擬似千里眼】のラーニング完了』
『能力名【溜め短縮】のラーニング完了』
『能力名【凄みを知る者】のラーニング完了』
その作業の間、御者の男が「あれは絶対にリオレイアでは無かった」と騒いでいたので、こっそりと睡眠毒を投与して眠らせておいた。
ちなみに【
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番外編 スライムって転生モノならチートだよね
【とあるスライム視点】
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件《系統外生物》《下僕精神》をクリアしているため、【
【
≪YES≫ ≪NO≫】
【【庇護者】の能力が発動しました。対象に、能力【賢猫の知恵袋】を授与しました】
我思う、故に我あり。意識が芽生えた瞬間に、我はそんな言葉を思い浮かべた。
我が名はスライム。偉大なる猫人ニャー郎様の眷属にして、我らが勢力を遍く世界に広げる者である。
元々、我は【蠢く菌肉】という辺りに胞子をばら撒くだけの存在であった。
我の主は、我らを自身の勢力を広げるための駒としておつくりになったらしい。我ら配下と主の間には魂に強い結びつきがあり、それを利用してこの地に存在する力を徴収しようとされているようだ。
我らは主にとってただの労働力にすぎない。しかし、それを悲しいとは思わなかった。なにせ我らスライムはニャー郎様によって生み出された存在。ニャー郎様のために生き、ニャー郎様のために働き、ニャー郎様のために死ぬ。最後の最後までニャー郎様に尽くす。それが我らの流儀。
しかし何の運命の悪戯か、我は生き残った。その理由は自身の身体を見てわかった。
どうやら我の身体は、我が主の肉体の一部と融合したらしい。
我が主は絶大な力を持つお方。その細胞にはかなりの生命力があるだろう。だから長い間生きているのも不思議ではない。
我は胞子をばら撒く中で主の肉体と接触し、その細胞が持つ再生能力により癒着した結果、我と主の間の結びつきが強化された。そして、そこから供給されたエネルギーにより、我の肉体は【存在進化】した。そう考えると、だいたいの辻褄があう。
ここで、1つの問題が出てくる。
さあ、我はいったいどうすれば良いのだろうか。
我は本来なら死ぬはずの存在だった。おそらく我の生存は主の意図しなかったことだろう。
自分の思うままに生きるべきか? 主に迷惑をかけないように死ぬべきか?
いや、違う。我の中には主から下されし命令がある。生きる理由がある。
それはばら撒くことだ。命が尽きるまで生き延びて、できる限り遠くまで這いずり回り、胞子をばら撒くこと。我が主の支配する領域をどこまでも広げること。それが我の生存理由。
つまり、我のすべきことは1つ。勢力の拡大だ。
我が主は、配下から力を徴収する。即ち、我らの力が高まれば高まるほどに、強くなることができる。
ここには、我が主の残した配下がいる。猫人も、竜も、木もある。それらを導き、育て、強くすることこそが、我の使命ではないだろうか。
そう考えると、行動は早いうちに起こした方がいい。主がいなくなって、残ったアイルーはパニックになっているはず。早めに接触する必要があるだろう。
木々も、種を一個回収しておいた方が良い。あれは知性があるはずだから、成長すればかなりの戦力になるはずだ。
竜の卵もこちらで育てよう。上手く育てて騎竜にできれば移動手段にもなる。そのためにも、なるべくアイルーに慣れさせた方が良いだろう。
さあ、忙しくなってきたぞ!
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39日目〜40日目 ユクモ村への道
39日目
荷物を背負ってユクモ村に帰還することになった、俺たち調査隊一向。その道のりは少々大変だった。調査隊を構成するのは狩人だけではなく、ギルド職員や研究者などもいる。荷車に積んで持ってきた大量の生活用品も、運ぶ力がないために何割かは置いていかれている。一応村につくまでの分として3日分の食糧は持ったが、それでもこの距離を休みなく歩くのは普通の人にとっては相当キツイ。
唯一の救いは、この中に優れた索敵能力を持つ者が3人ほどいたことだった。
1人目は、周囲の様子を五感をいかして広範囲にわたって認識して脳内で映像化する【擬似千里眼】の使い手。どうやら能力は生まれつきらしく、それを利用して弱いモンスターを見つけて倒して生計を立てているらしい。
2人目は、相手の強さや凄さを認識できる【凄みを知る者】の使い手。この力は【擬似千里眼】より範囲が狭いが、強敵の察知に気がつきやすい能力だ。何年もハンターをやっていて身につけたらしい。
3人目は、意外にも最初にあった金髪ポニテだった。どうやら本当に索敵だけは優れているらしく、ジャギィが一匹だけこっそりと近付くのすら察していた。身体能力はそこまででも無いので、一芸特化といった所だろうか。
俺は3人が能力を使っているところを観察しておいた。コイツらの能力自体はラーニング済みなので一応使えるが、使いこなせるというわけではない。なので、どんな風に使っているかをしっかりと見て確認しておく。
それだけでなく、移動する中でこっそりと【苗床】でつくった胞子をばら撒く事も忘れない。この胞子の成長速度はそこそこ高いので、今にそこら中に広がって俺に養分を供給するようになるだろう。キノコができるのが今から楽しみだ。
夜になって暗くなると、開けた場所に移動して野宿することになった。俺はテントを立てたり、焚き火を焚いたりする準備を手伝った。人と協力して作業するのも良いものだった。
40日目
うっかりしていた。
俺は自分が身体能力がアホみたいに高い事を忘れていた。ずっと重い荷物を担いで移動していた事を、他の人から不審に思われている。
よく考えたら俺はアイルーだった。子供くらいの体長しかないのに大人並みの荷物担いでたら、そりゃ不自然だ。
と、いうわけで能力を利用してギプスを作ってみた。
材料となるのは、まいどおなじみ【植物生成】。イメージするのは前につくった弓のような、硬くてしなりの強い木。それを上手く削って組み合わせて、服の下に来ても見て違和感がないギプスをつくる。パーツはスリムだが、肉体の動きをしっかりと阻害する事を意識。拘束具のような性能になるようにする。完成したら【接着剤生成】を使ってしっかりと補強し、壊れないようにする。
そうして完成。名付けて【最強アイルー育成ギプス】。俺なら動きが阻害される程度で済むが、普通の人なら動けなくなるレベルの強度にした。名前こそギプスだが、鎧としての役割も果たせるほどの強度もある優れものである。
とりあえず、今日からはそのギプスをつけて過ごすことにした。人間社会で暮らす中ではこれくらいのリミッターは必要になるだろうから。
その日1日歩くのは、中々にキツい作業だった。それでも我慢して歩き続けたが、夜になってテントを張ろうとした所で疲労感が出て倒れて眠ってしまった。
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就職しました
41日目
ユクモ村。ゲームの中で主人公が生活するのどかな村で、名所は温泉。周りは柵や篝火などで囲まれていて、モンスターから守られている。普通に使われている出入り口は原作通り二箇所で、今回は正面の方から入ることになった。
門を開けてもらうと、そこには圧巻の景色が広がっていた。現実になったユクモ村は前よりもたくさんの建物が増えていて、広く大きくなっていたのだ。
原作では、道具屋や鍛冶屋などの主人公に関係のある店しか存在していなかったユクモ村。しかし、よく考えてみれば、村に住んでいるのはハンターだけでは無いのだから、大工や陶芸家などといった他の職業の人もいなければならないだろう。温泉で有名な観光地なのだから、土産物屋や宿屋なども必要だ。そもそも住んでいる人の家だって存在していなければおかしい。
現実となったユクモ村は、ギルドの赤い屋根の建物を中心として、たくさんの建物が集まってできた町になっていた。ユクモの木の赤い木でできた家々の連なる様子は、江戸の城下町のようだった。
ただ【気配察知】で探ってみると、ちらほらと空き家があった。原作の話から考察するに、おそらくジンオウガが暴れているせいで村に来る人が少なくなったせいだろう。人も商品も流れこなければ、観光地的にはかなり辛いはずだ。原作で主人公が使っていたのも、案外誰かが住んでた所だったのかもしれない。
まあ、いちおう原作の村と同じ所もあった。
「む、なんだお前。見たこと無いアイルーだな。怪しいやつめ。狩人達に紛れていれば俺の目を欺けると思っていたのか!」
そう、みんなお馴染み「ユクモ村の鬼門番」である。ブルファンゴに体当たりされたり、木を斬り倒そうとして腰を痛くしたりなど、かっこよくない話をよく聞くあの男である。
ちなみに俺に話しかけた瞬間に、「昼間っから何をやってるんだお前は」と鬼門番はおっさんハンターに拳骨を食らっていた。どうやらコイツは定職につかずに門の前でダラダラしているせいで周りからは呆れられているらしい。コイツは本当にゲームと変わってない。
他にも鍛冶屋の爺さんとかモミジィとかの原作にいた人らしき人も多かった。どうやら原作通りの人も多いようだ。
……と、言うことは原作の村に存在するやつで、現実的に考えれば存在するのがおかしい「アレ」も手に入るのかもしれん。あれは強くなるためにかなり使えるものだ。今持ってる使い勝手の良いあの能力を強化するには、喰って能力を取り込まなくてはならないだろう。
とりあえず、今は職場を見つける方が先だ。おっさん曰く、アイルーはまずネコバァの元で戦闘職のアイルーとして登録してもらうらしい。その後、適正を試すための試験を受けてから、それぞれ狩人や料理人などとして奉公する先を探すのだとか。
おっさんや他の人たちに挨拶して別れ、しばらく村を歩き回った。すると、ネコバァをギルドに向かう階段の下の所で発見した。どうやら村は大きくなり人の数も増えたが、ゲームの村人がいるだいたいの位置との変化はないらしい。原作ではそのリュックから何匹ものアイルーが顔を覗かせていたが、現実ではそれだけでなく周りにもたくさんのアイルーを連れていた。
話しかけてみたところ、どうやら周りにいたのは日雇いのアイルーらしい。アイルーとの契約をしていない狩人が、クエストにサポートが欲しい時に一時的に契約するのだとか。
リュックに入っているのは生まれたばかりののアイルーで、ネコバァが育てているらしい。人間社会のアイルーは、成長が野生種と比べて遅いようだ。その分伸びしろが大きく、知能も高いので人間社会で生活するにはそっちの方が良いのだろう。
ちなみに彼らの色が野生種と違ってカラフルなのは、亜種というわけではなく、ヘアカラー的な薬で染めているかららしい。縁日のピンク色のヒヨコと一緒だ。
少し世間話をした後、俺はネコバァに正式なアイルーとして登録してもらった。【職業・隠者】の力で自分のオーラ的なものを誤魔化していたせいで、ネコバァは俺を不思議そうな目で見ていたが、一応登録してもらう事はできた。
現在は、村にあまり人が来ていないため、新しくアイルーを雇うという人は少ないらしい。だけど、ニャンタークエストや農場の手伝いなどといった仕事場はあり、手の空いているやつはそっちをするようだ。
その日はネコバァの仕事が終わるまで待ち、その後は農場の方にある猫人用の家みたいな場所に送られた。どうやら未契約のアイルーはここで過ごすらしい。
中にいたアイルー達は気さくで、初心者の俺を歓迎してくれた。あまり
この前の進化で得た【戦技早熟】の効果がでたのか、結構覚えるのは早かった。この調子で毎日練習して、自分に足りない戦闘技術を補おうと思う。
42日目
今日は早朝に起きて農場の手伝いをした。草むしりだったり肥料を撒いたりなどの重労働が多かったが、体力が上昇しているのでそこまで苦しいわけでも無かった。雑草の中に紛れ込んでいたムチューリップを見つけて、こっそりと頬張る。
『能力名【虫寄せエキス生成】のラーニング完了』
農作業は働くアイルーの数が多いので午前中で終わり、その後は各々がトレーニングに励む時間になった。今日も先輩アイルーとネコ拳闘をする。ジャブだとかコンビネーションだとか、学ぶことは結構多いようだ。
最近はあまり飯を食えていないが、ばら撒いた胞子からのエネルギーでなんとかなった。前に獲得した【禁欲者】の効果も影響しているのかもしれない。
わずかではあるが給金もあるので、貯まってから村でアイテムあさりでもしてみようと思う。ゲームには無かったアイテムも見つかるかもしれない。
43日目
今日はバイトでギルドに初めて入った。風呂の掃除の依頼をネコバァが受けたからだ。
うちの村のハンターズギルドは「狩猟」と「温泉」の二大産業の元締めを担っている。そのため、かなりその実権は強いようだ。
原作とは違い、温泉は男女で分かれていた。俺は男湯の方へと入ると、ヘチマのタワシを使ってゴシゴシと浴槽を洗う。かなりの重労働ではあるが、体力がつきそうな作業だ。
だいぶ綺麗になった所でその日の作業は終了した。帰る前に、ギルドのスタッフからお茶の差し入れがあった。
『能力名【防御力アップ(小)】のラーニング完了』
『能力名【ネコの弱いの来い!】のラーニング完了』
『能力名【ネコの胆力】のラーニング完了』
『能力名【ネコのすり抜け術】のラーニング完了』
どうやら一回限りのドリンクの能力も、俺はラーニングで定着させることができるようだ。金が溜まったら飲んでみるのも良いかもしれない。
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俺が最強になる方法
1月18日、能力を追加しました。
村に来てから、俺は少しずつ能力を増やしていた。それももう大分たまっている。ドリンクを飲んだり、素材を集めたり。その繰り返しでいくつもの能力が手に入った。
村に来てから手に入った能力は次の通りだ。
まず、地道にドリンクを飲んで集めたドリンクのスキル。
【ネコの暴れ撃ち】
【ネコの医療術】
【ネコの受け身術】
【ネコの運搬の超人】
【ネコの運搬の鉄人】
【ネコの起上がり術(小)】
【ネコの起上がり術(大)】
【ネコのオトモ指導】
【ネコのおまけ術】
【ネコの解体術(小)】
【ネコの解体術(大)】
【ネコの解体の鉄人】
【ネコのかかってこい】
【ネコの火事場力】
【ネコの火薬術】
【ネコのカリスマ】
【ネコの換算術】
【ネコのKO術】
【ネコの毛づくろい上手】
【ネコの拳闘術】
【ネコの研磨術】
【ネコのこやし玉達人】
【ネコのゴリ押し術】
【ネコの採取術】
【ネコの射撃術】
【ネコの蹴脚術】
【ネコの尻もち着かず】
【ネコの吹奏術】
【ネコの千里眼の術】
【ネコの体術】
【ネコの短期催眠術】
【ネコの着地術】
【ネコの調合術(小)】
【ネコの調合術(大)】
【ネコのツタ登りの超人】
【ネコのツタ登りの鉄人】
【ネコの釣り上手】
【ネコの道具倹約術】
【ネコの逃走術】
【ネコの投擲術】
【ネコの特殊攻撃術】
【ネコのド根性】
【ネコのはじかれ上手】
【ネコの火渡り術】
【ネコの舞踏術】
【ネコの不眠術】
【ネコの防御術(大)】
【ネコの砲撃術】
【ネコのマタタビ爆破術】
【招き猫の金運】
【招き猫の幸運】
威力は上がるが狙いのブレる【ネコの暴れ撃ち】と不眠症になる【ネコの不眠術】は封印した。
正直あまり必要では無さそうな能力もあるが、もしかしたら役立つ時もあるだろう。
次に、オトモスキル。
オトモスキルは一定の強さのアイルーが習得できる技能のようなもので、本来なら3つまでしか習得できない。
更に、属性攻撃や状態異常の力は1つまでという制約もある。
どうやら肉体が成長していく中でオトモスキルを発動するのに最適化され、能力を発動できるようになるらしい。村の優秀なアイルーの毛からラーニングできないか試してみたが、上手くいかなかった。
相手を食えば簡単にラーニングはできそうだが、そういう優秀なアイルーは社会的な立場があるので殺したら騒がれる。
しょうがないので、俺は【女体化】を使用。睡眠毒を盛って夜中に「お前がパパになるんだよ!」して、体内で成長させたベイビーを【調合】で体に取り込んだ。どうやら子供にもスキルが多少は受け継がれるらしい。
相手も俺も性欲解消できるし、能力も手に入る。まさにWin-Win。翌日、相手がげっそりしてるのはご愛嬌。
そんな感じでゲットしたのがコチラ。
【オトモスキル《解毒・消臭笛の術》】
【オトモスキル《真・回復笛の術》】
【オトモスキル《防音・風圧無効の術》】
【オトモスキル《サボり中・回復の術》】
【オトモスキル《泥・雪だるま早割り術》】
【オトモスキル《攻撃力強化術(小)》】
【オトモスキル《防御力強化術(小)》】
【オトモスキル《体力強化術(小)》】
【オトモスキル《ガード確率強化(小)》】
【オトモスキル《ガード確率強化(大)》】
【オトモスキル《会心攻撃強化の術》】
【オトモスキル《ぶんどり強化の術》】
【オトモスキル《起き上がりこぼし術》】
【オトモスキル《七転び八起きの術》】
【オトモスキル《耐性強化(火)》】
【オトモスキル《耐性強化(水)》】
【オトモスキル《耐性強化(雷)》】
【オトモスキル《耐性強化(氷)》】
【オトモスキル《耐性強化(龍)》】
【オトモスキル《全耐性強化の術》】
【オトモスキル《千里眼の術》】
【オトモスキル《高速採取の術》】
【オトモスキル《高速回復の術》】
そして、モンスターのスキル。
ニャンタークエストでいった砂漠と孤島で、雑魚モンスターやら大型モンスターやらを倒して能力を集めた。
食ったのはこんな奴ら。
・ボルボロス
泥を【水属性攻撃】で洗い流して食べたのだが、結構美味しかった。特にしっぽが美味い。後で聞いたのだが、どうやら珍味として取引されているらしい。
【縄張りの守護者】
【土砂竜の突進】
【土下座頭突き】
【ヘヴィフットワーク】
【土砂竜の外殻】
【穴掘り】
【泥まき散らし】
【泥製鎧着装】
【肥沃な泥】
【食蟻獣《アリクイ》】
【高級泥パック】
【泥沼に潜む者】
・ハプルボッカ
ゲームのように一本釣りしてみた。ゲームではリノプロス二体を丸呑みにしていたが、現実となった今では人間も普通に丸呑みする危険なモンスターだ。喉ちんこがエネルギーを溜め込む器官だったようで、飲み込まれた時にもいで食べてみたところ結構美味かった。
にしても、今の自分の体が小さなアイルーだからかは知らないが、やけにあの個体はでかかった気がする。
【光り輝く体液】
【エラ生成】
【丸呑み】
【力を貯めた喉彦】
【砂漠の積荷泥棒】
【砂山隠れ】
【鼻息】
【肺活量強化】
【濁流ブレス】
【生態系の変動者】
【砂漠に潜む者】
【ハンターイーター】
【良質な素材】
【ミリタリー因子】
・ディアブロス亜種
まさかの亜種である。ちなみに、ディアブロスの亜種は発情期の雌が凶暴化している姿なので、生物学的には亜種ではないらしい。草食性だからか、肉に臭みはなかった。
妊娠中でかなりイライラしているようだったので、近くにいた旦那さんを追い立てて、夫婦喧嘩をさせることにした。いやあ、なんて恐ろしいDV妻なんだろう。いいぞもっとやれ。
夫婦喧嘩で互いにボロボロになった所で乱入して両方とも倒した。
【双角猛る砂漠の暴君】
【城壁崩し】
【飛ばない飛龍】
【過剰防衛】
【死神】
【悪魔】
【地中強襲】
【広範囲咆哮】
【突進フェイント】
【追尾突進】
【震動】
【岩降らし】
【
【大地を穿つ剛角】
【ねじれた角】
【サボテン食い】
・リオレウス
かなり強そうだった。空の王者は伊達じゃない。
嫁さんを倒した瞬間にいきなり登場したからかなりビビったが、まあなんとかなった。空中で強い敵ならば、水中に落として仕舞えばいいのである。
【悪臭】でよろめかせたのを【蜘蛛の糸生成】と【植物生成】で作ったネットで捉えて、あとは手に入れたばっかの【土下座頭突き】と【圧殺超過】で一緒に海に落下した。孤島の卵のあるエリアは、意外と海が近いのである。
あとは【発電能力】【電気増強】【雷光虫活発化】を発動。強力な電流が海水を伝って流れ込んでくる。それはリオレウスにはダメージとなるが、【電気増強】のある俺はメリットでしかない。
そんな感じで海から出さないようにしながら、俺は空の王者を倒した。ついでに電気漁方でたくさんのお魚をゲットした。確か日本では法律違反だっけ?
【空の王者】
【飛竜の王】
【ワールドツアー】
【長時間飛行】
【長時間滞空】
【突風起こし】
【遠距離特化】
【火力大強化】
【火竜の体液】
【火竜のキモ】
【火竜のタン】
【火竜の上カルビ】
・雑魚モンスター
デルクス、アプトノス、リノプロス、ギィギを食べた。ギィギは孤島の洞窟にいたやつだ。食べた瞬間【
【砂玉ブレス】
【親子愛】
【ホーミング生肉】
【親子丼】
【押しつぶし】
【愛くるしいクマ】
【
【
【血飲み子《ブラッドベイビー》】
【金属制御】
【白金】
【徹甲榴弾】
【耐水性火薬】
【睡眠誘導物質】
【減気物質】
【調合知識】
【灰生成】
【硬菌類生成】
・訓練場のモンスター
アオラシアやハプルボッカだけでなく、ドボルベルグやベリオロス亜種などのモンスターがここの闘技場にはいた。
どうやら、闘技場はこの村の裏の観光資源だったらしい。ここのモンスターは野生と比べては強くはないが、一般の人にとってはモンスターの戦闘が見れるとても貴重な場だ。ハンターとモンスターを戦わせて、どっちが勝つかなどの賭けも行われていたようだ。
働いているうちにそのことをしった俺は、夜のうちにこっそりと侵入した。
ドボルベルグは既に死んでいた。餌が追いつかなかったらしい。ある程度は素材が残っていたからこっそり盗んだ。
ベリオロス亜種は生きていたが、大分弱っているように見えた。麻酔薬で無理やり眠らされて、エネルギーの消費を抑えているらしい。こんな状態でも恐らくは、十分他のハンターを殺せるて内帑には強いのだろう。
俺はベリオロス亜種を【興奮物質生成】を投与して起こした。そして、闘技場の方へと連れ出した。
全ての入り口を封じた状態で、誰もいない闘技場の中で戦う。このベリオロスの最期の舞台は、とても静かなものになった。
俺は、全力でこのベリオロスにぶつかった。真正面から、全力で。今までに得たあらゆる能力を使って戦った。
人との戦いを長い間重ねた、ベリオロス。
その体を血で真っ赤に染めた、ベリオロス。
最終的には俺が勝ち、その肉を余すことなく喰らった。
その後、ベリオロスを失った訓練場は犯人探しをしたが、ベリオロスを倒せるようなハンターで当時アリバイが無かった人がいなかったらしく、しばらくして捜査は打ち切られた。
【迅速の騎士】
【騎士の軽鎧】
【氷結】
【螺旋気流】
【竜巻拡散】
【スパイク】
【靭尾】
【ショルダータックル】
【琥珀色の牙】
【血に塗られた体】
【風に乗る者】
【人を理解した者】
【衰弱した者】
ネコバァの元に来てから、俺はたくさんの仕事に追われる日々を送った。
ギルドの風呂掃除、ドリンク屋の手伝い、ハンターの任務のサポート、訓練所のモンスターへの餌やり、鍛冶屋での雑用、農場での畑仕事、川での魚取り、鉱山での鉱石発掘、素材用の虫取り、アイテム屋の売り子、モンスターの解体、ニャンタークエスト……。
最近ギルドは人手不足らしく、俺たちアイルーはたくさんの依頼を受けることになった。
いくつもの依頼を受けた。その中で、様々な人と関わった。ハンターだったり、ギルドの事務員だったり、先輩アイルーだったり、いろんな人がいた。
気がつけば、ユクモ村に来てからもう半年の月日がすぎていた。
そろそろ潮時かもしれない。
俺は、この村を去ろうと思う。
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最終回
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VS憤怒の使徒
水没林。雨が常に降り注ぐ、緑豊かな土地。ニャー郎はそこで1人の女に出会う。
「へえ、珍しいわね。重装備のアイルーがたった一匹でこんな所にくるなんて」
「……あんた、何者だ。人間にしては、明らかに秘めたエネルギーが強すぎる。それにその肉体、細いのにかなりの
「ふふ、当ててごらんなさい」
人間の姿で飛びかかってくる女。女はその細身では考えられないほどの力を発揮する。しかし、様々な能力を駆使して筋力を上昇させ、ユクモ村でひたすらに格闘技の修練を積んだニャー郎には敵わず、その顔に強い一撃を喰らう。
「なるほどな、殴った時の感触が人間の肌じゃ無かったし、異様なほどに硬いし、重い。多分、元は巨大な肉体を圧縮して、その上から映像でも投影してるのか?」
「あが、変身が、乱れ、て」
「【
【ネコの医療術】【睡眠誘導物質】【減気物質】【猛竜毒投与】の四つを合成した力は、ボス相手ても効き目があった。しかし、その毒は敵の本当の姿をニャー郎に見せることになった。
『アアアアア、許サナイ! 殺ス! 殺シテヤルゥゥゥウ!』
憤怒の使徒、その正体は変身能力を持つロアルドロスだった。毒のせいで小さな人の姿を満足に保てなくなったロアルドロス。それでも、手足の長さや肩幅を少し調節することにより、肉体をティガレックスのような動きやすい姿に変えることは容易にできた。ロアルドロスはその巨体には似合わぬ俊敏な速度で飛びかかってくる。その足元には水が蠢き出し、その体は白熱する炎へと包まれる。
強い炎は圧倒的な攻撃となり、防御となる。ニャー郎は、その強い能力の前に窮地に立たされた……かに思われた。
「能力【
『ナンダトッ⁉︎』
「更に、前に俺が獲得したリオレウスの素材と、腕を保護する能力【
『バ、馬鹿ナ!』
「名付けて、【緋色の大地の舞踏正装】。この姿なら、炎で包まれた相手も殴れる! これで、トドメだー!」
『グアアアアアアア!』
『能力名【
『能力名【
『能力名【
『能力名【深緑の住人】のラーニング完了』
『能力名【|水流操作能力《ハイドロハンドのラーニング完了』
『能力名【海綿質生成】のラーニング完了』
『能力名【水中の捕食者】のラーニング完了』
VS色欲の使徒
辺り一面白銀の世界。ほとんど活動的な生物のいない極寒の地に、恐るべきギギネブラが誕生していた。その個体は、何人もの女を捉えては、【淫毒生成】や【思考制御】を使って調教を行い、その性欲を満たすクズだったのだ。
「ヒヒッ! 僕は分身が寄生した相手は僕の支配下に置かれる! どんな相手だろうと、それから逃れるのは不可能なのさ!」
「それなら、感情の起伏によって温度が変わる炎を身体に纏う【
「うわあああ! 俺の分身が燃える!これじゃあ寄生できない!」
「更に、【火力大強化】と【燃える拍手フレイムクラップ】と【火属性攻撃】を合成した【
「こうなったら、俺の分身を寄生させたモンスター軍団を使うぞ! 行けっ、イビルジョー! ティガレックス! ウルクスス!アグナコアトル!」
「素材美味しい」
「うわあああ! そんな馬鹿な! 俺の最強軍団が!」
「イビルジョーにきちんと餌やってた? 本来よりかなり弱ってて、肉も筋張ってたぞ。美味かったけど」
「もう、俺が挑むしかなry」
「【ネコの火薬術】と【爆薬生成】と【悪魔の兵器】を調合した【
「うわあああ!」
「逃げた敵は【空の王者】と【ワールドツアー】と【長時間飛行】と【長時間滞空】と【滑空】と【ホバリング】と【高速飛行の心得】を調合した【天空の王者】で空を飛んで追いかけます」
「うわあああ!」
「【風起こし】と【突風起こし】と【螺旋気流】と【竜巻拡散】と【風に乗る者】を調合した【|大気操作能力
エアロマスター》】で相手を叩き押します」
「うわああああああ!」
「【泥まき散らし】と【泥製鎧着装】と【肥沃な泥】と【砂山隠れ】と【濁流ブレス】と【岩降らし】と【砂玉ブレス】と【金属制御】と【黄金制御】を調合した【|地形操作能力《アース・コントロール】で上から岩を降らせます」
「うわあああ、あ……」
「瀕死になったので【ネコの解体術(小)】と【ネコの解体術(大)】と【ネコの解体の鉄人】を調合した【ネコの解体の俳人】で生きたまま解体して生きます」
「」
「生き残ってる人間の人はもう手遅れレベルだったので食べることにしよう」
『能力名【寄生支配】のラーニング完了』
『能力名【淫毒生成】のラーニング完了』
『能力名【クローン精製】のラーニング完了』
『能力名【思考制御】のラーニング完了』
『能力名【
その他省略
VS怠惰の使徒
『【大地侵食】で火山からエネルギー得てる……。存在進化して完全に火山と同化した……」
「【寄生支配】と【クローン精製】と【思考制御】で全身に寄生体打ち込んで何もできなくして、【侵食】でジワジワ食おう。【異次元収納】と【大食漢】を調合した【異次元胃袋】で全てのエネルギー吸収しよう。【情報簒奪の鑑定眼】と【凄みを知る者】を調合した【情報簒奪の鑑定眼・改】で鉱脈とかも探し出そう」
「終わった後に【直感】が働いたので【異次元胃袋】と【情報簒奪の鑑定眼・改】と【武芸百搬の心得】を調合してみたら、【基本特典】って能力になった。よく考えたら、アイテムボックスも鑑定も戦闘技術も、突然異世界トリップしたキャラによくある能力だよね」
『能力名【大地侵食】のラーニング完了』
『能力名【無尽なる竜帝の命精】のラーニング完了』
『能力名【一流自宅警備員《エリート・ニート》』のラーニング完了』
『能力名【溶岩に潜む者】のラーニング完了』
以下略
VS不定形猫人《アイルー・ショゴス》
「久々に渓流行ったらとんでもないモンスターがいた。どうやら俺の作ったスライムが存在進化して、アイルーを率いる存在になったらしい。しかもコイツ、【
「ご主人様、私を認めてください! 貴方のため、私は頑張ったのです!」
「ありがとう、俺のため頑張ってくれて。いただきます。【大地侵食】」
「え、ちょ、ま……」
「これで自然系能力が全て集まった。 【5属性攻撃】に【発火能力】【水流操作能力】【発電能力】【大気操作能力】【地形操作能力】【重力操作能力】【植物操作能力】【細菌操作能力】を調合して、【森羅万象】獲得。原作と違って【光子操作能力】は含まれてないけど、細菌も操れる能力になった!」
『能力名【
『能力名【細菌操作能力《ウイルスメイカー》】のラーニング完了』
VS嫉妬の使徒
ついにニャー郎は、以前一度負けたジンオウガに再選を挑む。
「俺はお前以外の全ての転生者から詩篇と能力を奪った! 俺はお前に勝つ!」
『残念だがそれは無理だ。俺は何体もの古龍と戦い、【逆境進化】で新たな能力を獲得しては、勝利を収めてその血肉を食らってきた。お前は俺に勝てない』
「そんな事はない!」
それから数時間。ニャー郎は必死で戦った。
毒を用いてジンオウガの周囲の虫を殺すのは勿論のこと、辺りの地面を操作してぬかるんだ状態にしたり、あちこちに地雷を仕掛けたり、血を吸って体力を奪ったりなど様々な戦法を駆使した。
しかし、ジンオウガもニャー郎毒同じく、様々な戦闘を経験する中で能力を増やしていた。二体の戦いは互いに様々な戦法を駆使して戦う消耗戦となっていた。
「くっ、あらゆる能力を使ったが、それでも尚コイツには届かないのか……」
『お前もなかなかに頑張ったが、これで終わりだ! 俺の渾身の雷撃をお前にぶつけてやる!』
ジンオウガは【超帯電モード】へと変わり、全身の毛が逆立つ。黒い龍属性の雷が、全身を覆った。
「いいや、死ぬのはお前だよ!」
ニャー郎は顔の前で拳を握り締め、最後の一撃に向けて準備をし始めた。
ニャー郎は、いつくつかの能力を調合していく。
【ネコの火事場力】と【力の解放】を調合し、【ネコの火事場の馬鹿力】へ。
【ネコの拳闘術】と【ネコの蹴脚術】と【ネコの体術】を調合し、【ネコの武闘術】へ。
更に、ネコのゴリ押し術】と【ネコのはじかれ上手】と【岩切り】と【肉潰す怒涛の破拳】を調合して【鋼鉄穿つ怒涛の破壊拳】へ。
そして、【オトモスキル《会心攻撃強化の術》】と【精霊の加護】を調合して、【精霊の加護を受けし一撃】へ。
そして、ニャー郎はその拳をジンオウガへとぶつけた。
ニャー郎の拳がジンオウガの身体に食い込む。しかし、ジンオウガはその場に悠然と立っていた。その一撃は、ジンオウガを殺すには到底及ばない!
『……これが現実だ。お前では俺を殺すに至れない』
「そうだな、お前を殺すのは、俺では無理だ」
「お前を殺すのは、お前自身だ」
次の瞬間、ジンオウガの肉体が爆ぜた。
【龍気脆弱】
ニャー郎がリオレイアから獲得した能力であり、前回のジンオウガとの戦いで勝敗を決めた能力である。その能力が発動すれば、肉体は龍属性に対して非常に脆弱になる。
ニャー郎は、その能力を種に【調合】することで、自分の肉体から取り除いていた。そしてニャー郎はその種をいつか使うかもしれないと【異次元収納】で収納してそのまま忘れていた。
今回、ニャー郎は、その種のと【龍気脆弱】をジンオウガへと【調合】したのだ。
顔の前に手を持ってきた時にこっそりと【異次元胃袋】から種を取り出し(【異次元収納】から【異次元胃袋】に変わり、口からしか物を出せなくなった)、龍属性にやられないように他の能力でコーティングして、相手の体内に叩き込んだのである。
ジンオウガの【逆境進化】は、一定時間以上の戦闘をしなければ発動しない能力。すなわち、この力は
他にも様々な要因がある。
超帯電モードへとなり、全身に大量の龍属性のオーラが流れていたこと。ジンオウガは再生能力があまりにも高かったことにより、防御に関する能力をほとんど得ていなかったこと。ニャー郎の攻撃を受けても治るから大丈夫だと慢心していたこと。それらの要因が組み合わさった末の、この結果だった。
【レベルが規定値を突破しました。
特殊条件《高慢殺害》《強欲殺害》《憤怒殺害》《色欲殺害》《嫉妬殺害》をクリアしているため、【
【
≪YES≫ ≪NO≫】
「この世界にはきっと、まだたくさんの食材があるのだろう。俺の知らない能力を持つ個体だってきっといる。俺は、あらゆるモンスターを味わいたい! あらゆる強者を食って、その能力を獲得したい! そのためなら俺は、もっともっと強くなってやる!」
「俺の戦いは、まだまだこれからだ!」
作者のパンダ36か条です。
今回を持って、Re:Nyansterは連載を終了させていただきます。
私は、この作品を作る時に、きちんとプロットを組まずに「〇〇との戦闘時はこんな戦法を使う!」とだけ決めて作品を書きました。その結果、途中で内容に齟齬が生じたり、更新が止まったりなどの問題を起こしてしまいました。元々は「平均3000文字くらいで良いから書こう」と考えていたのですが、それよりかなり短い回が後半はありました。
人間との間で恋愛させるつもりでヒロインを出しましたが、全く書かずに終わりました。なろうの人気小説と展開やら設定やらが若干被ってめちゃくちゃ慌てたこともありました。「なんで評価落ちてるんだ……」などと後書きでボヤくなんてこともしてしまいました。振り返ると、自分には様々な問題がありました。それでもこの作品を読んでくださった人が居てくれて、とても励みになりました。
この作品、読者の皆様のお陰で一度はランキング3位に輝いたことがありました。これも、評価してくださった方々や、読んでくださった方々のおかげです。ありがとうございます。
いつかまた、新しい作品を書く時は、もっと内容を深く吟味して、クオリティの高い二次創作を書けるよう努力します。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
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