熟れた果実だからこそ……ッ! (atsuya)
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この一夏、変態である!

もう一個の方の息抜きのつもりで投稿。
自分で読み直して思う、これはひどい。


「全員いますねー。では、これから一年間よろしくお願いします。さっそくですが自己紹介から始めたいと思います!」

教室の前でにっこりと笑う担任の女教師。山田真耶先生だ。先ほど自己紹介をしていたので覚えている。

 

「「「………」」」

 

「うっ……えと……」

しかし、このクラスの者達は俺を含めて挨拶を返さない。ふむ、いささか反応が薄いのではないか? 緊張しているのだろうか。仕方ない、私が先陣を切るとしよう。

 

「よろしくお願いします。先生」

 

「はいっ!よろしくお願いします織斑くん!」

若干涙目になっていた先生だが、俺が反応したことによって満面の笑みになる。随分と可愛らしい先生だ。

しかしクラスメイト諸君達よ、折角俺がきっかけを与えたと言うのに無反応とはどうしたことだろうか。

チラリと、窓ぎわの席にいる幼馴染に視線を向けるが逸らされてしまう。

嫌われたか?

 

「織斑くん?」

 

「なんでしょう山田先生」

 

「えっとですね。自己紹介が織斑くんの番なんだけど……」

む、考え事をしているうちに自己紹介が進んでしまったのか。無視していた訳では無いが山田先生の言葉を聞いていなかったらしい。申し訳ない事をした。

 

「すいません。少しボーッとしていました」

 

「いえいえっ! 仕方ないですよね! この状況ですし」

どうやら許してくれたらしい。ありがたいことだ。しかし、この状況とはどういうことだろう。ただこのクラスには私以外に男がいないと言うことだろうか?

 

「それで、自己紹介でしたね」

 

「あ、はい。よろしくお願いしますね」

 

「はい」

そう言って俺は席を立ち、後ろを振り返る。幸いにも私の席は教室のど真ん中の最前列なのでクラスにいる人の顔がよく見える。

 

「初めまして織斑 一夏です。好きなものは熟女、好物は未亡人、趣味は熟れた果実の観察、嫌いなものは蒼い果実、こんな私だが気軽に話しかけ、仲良くしてくれるとありがたい」

 

「「「……え?」」」

口をポカンと開けるクラスメイト諸君。どうしたと言うのだ年若い乙女達が恥ずかしくは無いのだろうか。全く、これだから若者は。やはり熟女の落ち着き具合が最高だな。

 

ズッパァァァン‼︎

 

「む?」

突如後頭部に衝撃が走る。中々に痛い、しかしこの叩き方には身に覚えがあるぞ。

後ろを振り返るとそこにいたのは我が姉である織斑 千冬だった。

 

「誰が自己性壁を暴露しろと言った! 貴様はまともに自己紹介もできんのか!」

どうやら私の自己紹介が気に食わなかったらしい。ふむ、何かおかしなところでもあったのだろうか?

 

「しかし、姉よ。私の事を知って貰うには熟女好きな事を理解してもらう方が早いと思うのだがな」

 

「こいつ……どこで育て方を間違えたんだろうか……」

 

「うむ? 元気が無いな姉よ。今日は好きな料理でも作ってやろうか?」

 

「はぁ……。変な性癖さえなければ良い弟なんだがな。それと織斑、ここでは私の事は織斑先生と呼べ」

 

「なるほど、公私は分けろと言うことだな。理解した」

今日は姉の好きな料理でもたらふく食わせてやるとしよう。いつものスーパーに急がねばならんな、その時にご近所のマダムに挨拶も忘れてはならない。

 

「キャー!」

「千冬様よ!本物の千冬様よ!」

「あの、ブリュンヒルデが目の前に……」

 

おお、何とも凄い声だ。流石は我が姉と言ったところ、現役を引退したとは言え凄まじい人気だ。

まぁ、それもそうか。今の女尊男卑の御時世、憧れるのも無理はない。

それにISを使う女性にとっては知らない人などいないだろうからな。

それにしてもISか、男の私が動かしてしまうとはな。

IS、インフィニット・ストラトスのことであり。希代の天才、篠ノ之 束が開発したマルチフォーム・スーツである。本来ならば女性しか動かせないハズだが私は動かしてしまった。世の中とは不思議なものだ。

 

「毎年、毎年。私のクラスには馬鹿しか集まらんのか……」

 

「大変だな」

 

「ストレスの最もたる原因は黙っていろ」

……解せん。

 

「さて、これでホームルームは終わりだ。これからの授業で頑張ってもらう。私の言葉にはしっかりと反応しろ。いいな」

 

「「「はい!」」」

おお、なんとも言えん強制力だな。

それよりも姉が教師をしていたとはな、私にも少しは教えて欲しかったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふむ、授業中はチラホラとしか視線を感じなさったのだが休憩時間は酷いな。クラスメイトどころか他クラス、上級生までもが集まって私をガン見している。少しは落ち着きを持たないか諸君らは。やはり、マダム達のゆったりとした空間が至高であると再認識してしまう。

 

「少し……言いか?」

 

「箒? おお、箒ではないか!久しぶりだな」

 

「う、うむ。ここでは何だから、屋上にでも行かないか?」

 

「いや、屋上では授業に遅れるおそれがある。廊下で十分だろう」

 

「……」

何故そこで私を睨むのだ?

駄目だな箒よ、優雅にニコニコとしなければ良き歳のとり方はできんぞ?

とりあえずは廊下に移動しよう。

スタスタと歩いている箒の後ろ姿に言葉を投げかける。

 

「ああ、箒」

 

「なんだ」

 

「剣道の全国大会優勝おめでとう」

 

「あ、ありがとう。良く知っているな」

思い出した事を箒に告げる。

何故そこで顔を赤らめながら仏頂面をするのだろうか?

風邪ならばひき始めが肝心だぞ。

 

「何故知っているか? ふっ、知っていて当然だ」

 

「そ、そうか!」

随分と嬉しそうな声をあげるではないか箒。知っていて当然に決まっているではないか。

 

「あの時は行き着けの食堂で看板娘の奥方と時間を共にしていたからな。私がマダムとの時間を忘れるハズがない」

奥方との時間に起きた出来事を忘れる?

ありえないな、どんな些細なことでも覚えているに決まっているだろうが。

 

「……こっのっ!」

 

「箒、そろそろ授業が始まるぞ。席に座ろうではないか」

 

「馬鹿者がぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「おっと、危ないではないか」

私の事を叩こうとした箒の腕を掴む。全く、昔から怒ると自制が効かないのは変わらないな。そこも幼馴染として微笑ましい物もあるが、直して欲しい。その点、年配の女性は素晴らしい。あの余裕のある姿には何時も心が惹かれてしまう。

そうだ、他にも聞きたい事があった。

私は箒の腕を掴んだまま、少しこちら側に引き寄せる。

その時に、周りの女生徒が黄色い声をあげる。箒の顔も心無しか赤いようにも見える。やはり風邪か?

 

「いっ、一夏⁉︎」

 

「箒」

 

「ま、まて。まだ心の準備が」

 

「いいだろう箒?」

何を準備する必要があると言うのだ。

 

「あっ、一夏……」

 

「母上殿は元気か?」

 

「うん?」

 

「母上殿は元気かと聞いている。そして、あわよくば……ではない。柳韻殿との仲は良いか?」

あの大和撫子の様な雰囲気に、ほのかに魅せる色気。素晴らしい奥方だ。

 

「おい、どういうことだ一夏」

 

「だから、俺にチャンスは……」

 

ズッパァァァン‼︎

 

む、痛い。

またもや叩かれてしまったか。それにしても出席簿であの威力を出すとは恐れ入る。

 

「授業が始まる、席につけ」

 

「理解した。箒も早く席につけよ」

そう言い私は自分の席に着き、授業の為にノートと参考書を広げる。

 

「織斑先生」

 

「なんだ篠ノ之」

 

「治ってないんですか?」

 

「……授業が始まるぞ」

 

「……はい」

何が治って無いのだろうか。私の服装も変ではないし、怪我をした覚えもないのだがな。

それに、箒も姉も何故そんなに疲れた表情をしているのだろうか。

まあ、気にしても仕方があるまい。それよりも授業に着いて行くために集中せねばならんな。

 

「「……はぁ」」

そろってため息を吐くとは、仲の良いことだ。




このサイトにはロリコン小説やホモ小説が多かった。
でも熟女物はなくね? ってことでやらかした。
ちなみに作者はロリコンです!
チパーイ最高!


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それにしてもこの一夏、変態である!

とりあえず今日は二話まで。


現在は授業中。

黒板の前で教えているのは山田先生。大変分かりやすく良い授業だ。とても優秀な教員であるとわかるし、容姿も素晴らしいときている。

これで山田先生がもう少し年齢を重ねていれば……ッ!

 

「ここまでで分からない所はありますか? 織斑くんは大丈夫ですか?」

 

「はい、少々不安な部分もありましたが先生の授業が分かりやすいので問題なく理解できました」

 

「そうですか!」

 

「ええ、マダム達と予習をしっかり行っただけはあります」

 

「そ、そうですか」

俺がIS学園に入学すると聞いたからか、マダム達は丁寧に教えてくれた。ふふっ、天にも昇る時間帯であった。

 

ズッパァァァン‼︎

 

「聞かれてもない事を話すな」

やはり痛いな。

まあ、マダム達との時間を想像するだけで私は十分耐えれる。この程度の痛み、まだまだ甘い。

 

「「……はぁ」」

どうした箒に姉よ。

先ほどもため息を吐いていたではないか。悩み事があるなら私に相談でもしてくれれば良いのに。全力で力になろう! 弟と幼馴染として!

 

 

 

 

 

 

 

 

対した問題も無く、授業が終了した。

またもや廊下や教室からはものすごい量の視線を感じる。しかし、自分は予習などを欠かしてはならない。マダム達に教えてもらったとは言え、自分が一番遅れているだろうからだ。

少しでも追いつかなければならん。何より、マダム達に無様な報告など出来るものか!

 

「少しよろしくて?」

 

「む? 何ようかオルコットさん」

 

「あら、私の事をご存じで? しかし言葉使いがなってませんわ。わたくしに話しかけられたのだからもっと感謝するべきではなくて?」

ふむ。

女尊男卑に染められた輩か。正直、このての奴は苦手だ。ISの登場により、このような輩が増えてしまったのは嘆かわしい。何よりマダム……いや、ババアにもいるのが悲しいことだ。誇りの無いババアに敬意などは払えない。やはり誇りがあり生き方が素晴らしいマダムはオーラが違うからな。

 

「聴いてますの?」

 

「ん? ああ、すまない聞いてなかった」

うっかりしてしまった。

自分でもマダムの事を考えていると周囲への配慮がどうしても疎かになってしまう。見直さなければならないな。

 

「なっ! このイギリス代表候補生であるわたくしの話しを聞いてなかった!」

 

「ほう、イギリスの代表候補生か。素晴らしいことだな。だが、真に素晴らしいのはイギリスのマダム達だな。うん」

 

「馬鹿にしてますの⁉︎」

 

「巫山戯ないでもらおうか! 私がマダム達を馬鹿にすることなどある訳がない!」

 

「そう言う事ではありませんわ‼︎」

なんと。

マダムの素晴らしさを馬鹿にしたわけでは無かったのか。それはすまない事をした。マダムが絡んだ話しになると沸点が低くなってしまうな。これも直さなければならない点だ、マダム達に相応しくなるために。

 

「先ずはその性癖をなおせ」

うん?

箒が何か言っているな。席も遠いし、声も小さいから良く聞き取れなかった。

 

「全く、これだから男は……。まあ、ISの事で分からないのであれば泣いて頼めば教えて差し上げてもよろしくてよ」

以外と優しい奴なのか?

言葉は少しイラッとくるが教えてくれると言っているのだろう。

 

「なんせ、わたくしは入試で唯一! 試験官を倒したエリートですから!」

 

「それならば私も倒したぞ」

 

「は? わ、わたくしだけと聞きましたが⁉︎」

 

「女生徒の受験報告が終わってから私の試験をしたからではないか? 男がISを動かすとは考えてなかったから、日程のズレでもあったのだろう」

本当の所はどうかは知らんがな。あくまで、今のは私が現段階で行った推測にすぎん。

 

「な、な、な」

キーンコーンカーンコーン。

 

「どうやら次の授業が始まるようだ。疾く席に着くべきだろうオルコットさん」

 

「また来ますわ!」

ふむ、私と話すと若い女性は何故に機嫌を悪くするのだろうか。なるべく丁寧な言葉使いを心がけているのだがな。やはり何時も落ち着きを払っているマダム達は流石と言ったところだな。

 

「さて、授業を始めるぞ。その前にだ、クラス対抗戦が行われる為にこのクラスの代表を決めたいと思う。自薦でも他薦でも構わん」

ほう、一年のこの時期にクラス対抗戦を行うのか。入学した時点での実力を測るためか、それともデータ取りのためか。

 

「はい! 織斑くんを推薦します!」

「私も!」

「賛成ー!」

私が推薦されてしまったか。

物珍しさでの推薦はやめてほしいものだ。

 

「織斑 一夏が候補者か……。他にはいないか? いないのか? 本当にいないんだな? いないのなら織斑になってしまうぞ? 本っ当ぉぉぉぉにいないのか⁈」

おや?

なぜか姉が私が代表になるのがとても嫌そうに見えるな。私の事を心配してくれているのだろうか。公私は分けろと言ったのに、なんとも優しい姉だ。

 

「そうじゃない織斑……ッ!」

心を読まれてしまった。そんなに私の考えは顔に出やすいのだろうか。

 

「がんばれ千冬さん」

箒よここでは織斑先生と呼ばねば注意されてしまう。今回は偶然にも聞こえなかったからいいが、気をつけた方がいい。

 

「まってください。納得いきませんわ! クラス代表が男だなんて、一年間このわたくしに屈辱を味わえと言うことですか⁉︎」

ふう、面倒な事態になる気がする。

やはりマダム達といる方が時間も落ち着き、心地が良いな。

 

「実力から言えばわたくしがクラス代表になるべき! それをこんな極東の島国の猿に! ましてや変な性癖を持っている輩に従えと言うのですか‼︎ 大体、文化も後進的な国で暮らすことすら耐え難いのに……」

 

「セシリア・オルコット。そこまでにしておけ」

ダメだな。

我慢ができなかった。こう言うことにはやはり沸点が低くなってしまうな。熱くなりやすい性格は考えるべきだな。

 

「なんですの!」

 

「変な性癖とは言ってくれるな、私は純粋に熟女に敬意を払い、崇拝していると言うだけだ!」

 

「一夏ッ! 日本の文化と国が馬鹿にされてるんだ! 怒るところはそんなところではないッ!」

 

「そんなところとはなんだ箒ッ‼︎」

 

「助けてください織斑先生ッ‼︎」

いかに箒といえども、そんなところとは言ってもらっては困るな。

今度、じっくりと話し合う必要がありそうだな。

 

ズッパァァァン‼︎

 

「落ち着け馬鹿者ども」

馬鹿者どもという割には何故私だけが叩かれてしまうのだろうか。……解せん。

 

「一週間後にISで貴様らには勝負をさせる。決着はそれでつけるといい。言い訳は許さん‼︎ 以上だ」

相変わらずのイケメン具合だな姉よ。

弟としては誇らしいのもあるがもう少し女らしくして欲しいがな。

嫁の貰い手が無いのは正直心配だ。いや、しかし姉もあと十年たてば……。むむ、嫁にやりたくないな。恋愛感情はないがやりたくないな。

 

その後も、授業は進んで行った。

時折、姉と箒がため息を吐いたり、頭を抱えていたりしたのだが……。やはり悩み事があるのだろうか。心配だ。

そして現在は放課後。

我がクラスにて今日の授業の復習をしている。しかし、辺りもオレンジになってきた、そろそろスーパーに向かうべきだな。

 

「ああ、よかった。まだ教室にいたんですね」

 

「ん? 山田先生、自分に何か?」

教室に入ってきたのは山田先生だった。クラスにいるのは私だけなので、様があるのは私だろう。

 

「寮の部屋が決まりました!」

 

「寮の部屋? 私は暫くは自宅からの通学だと聞いていましたが」

 

「すいません、事情が事情なんで。こちらの方で入寮を早めさせてもらいました」

 

「なるほど、そう言うことでしたか」

世界初のIS男性操縦者。誘拐などのことがあってはたまらないから早急に監視をしたいのだろう。家に解剖させてくれと来た輩もいたが、姉の一声で直ぐに散っていったからな。

 

「では、荷物を取りに一旦家に帰ってよろしいでしょうか? 急なことだったので何も準備してないもので」

私が現在持っているものと言えば、携帯に教科書、カバン、マダム達からの手紙だけだ。これだけでは寮での生活は心許ない。

 

「心配するな、私が取り寄せておいた」

 

「む、織斑先生ではないか」

教室の中にいたのは私と山田先生だけだと思ったら、いつの間にか姉がいた。気配を消して入ってくるとは、嫌らしい性格をしているな姉よ!

 

「中身は着替えと、携帯の充電器だけで構わんだろう」

 

「構わんな、携帯があればいつでもマダム達と連絡がとれる。感謝する織斑先生」

 

「……失敗したか」

 

「何をだ? 織斑先生」

姉にしては珍しく、小声だったではないか? やはり心配だな。体調管理はしっかりとしなければならんぞ!

 

「え、えと……これが織斑くんの部屋の鍵です」

 

「ありがとうございます。では私は部屋に行かせてもらいます」

 

「あ、はい。寄り道はダメですよ!」

 

「ふふ、分かってますよ」

山田先生から部屋の鍵をもらい私は帰路に着く。姉が荷物を送ってくれたらしいが足りないものがないかチェックはしておきたい。

どんな部屋なのだろうか?




ふぅ……。
やり切ったぜ。


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やはりこの一夏、変態である。

遅くなりました。
感想で思った以上にみなさん好意的でビックリしました。
避難ごうごうだとビクビクしてましたからね。


「1025……1025……。む、ここか」

部屋の番号と、持っている鍵の番号を確認して扉を開ける。うむ? 鍵が既に空いている? まさか、一人部屋ではないと言う事なのか?

部屋に入ると見た感じでは誰もいない。あるのはベッドが二つにテーブルが一つにテレビが一つ。そこらのホテルより豪華だ、素晴らしい。

窓際のベッド付近に荷物を置き、ベッドに倒れこむ。

少々無様だが今日は疲れたので勘弁したい。

 

ガチャリ

 

目をつぶっていると、扉が空く音が耳に入ってきた。迂闊だった、先ほど一人部屋ではない可能性を確認したばかりだと言うのに。

 

「同室のものか? この様な姿で申し訳ない。私は……」

 

「ふむ、同室は箒か。よろしく頼む」

 

「な、な、な、な、なぁっ⁉︎」

 

「ん? 湯浴み中だったか。すまんな後ろを向いていよう、着替えをとってシャワールームに行くといい」

やはり、部屋の中に居ないとは言え個室などに外から声をかけておくベきだったな。箒も私なんぞにバスタオル一枚の姿を見られては機嫌が悪かろう。だが安心すると良い、反応はせん!

 

「見るなぁっ!」

 

「いや、後ろを向いているから見てないぞ」

ふむ、箒の行動がワンテンポ遅くなっているのか? 私は既に後ろを向いているし、目も瞑っている。問題はなかろう。マダム達がバスタオル一枚ならば私はまずかったがな。

 

「いかんな、眠くなってきた。 後ろを向いたままで悪いが私は一足先に眠らせてもらおう。おやすみ箒」

 

「あ、ああ」

座っていた状態からベッドに横になり、布団を頭の上から被る。これなら安心して着替えもできるだろう。それにしても、やはり慣れない環境だったのか、疲れが溜まっていたようだ。眠たくてしょうがない。

 

「……なんの反応も……自信が無くなるな……」

む? 箒が何か言っているようだが……。意識が……。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「む? どうした箒、何故起きてから機嫌が悪いのだ」

現在は入学式の翌日の朝、食堂である。辺りを見渡せば女子、女子、女性教員。なるほど、流石IS学園。見事なほどに女性ばかりだな。

 

「……いつも通りだ」

 

「なるほど低血圧か。ならば朝食をしっかり取ると良いぞ。いくらかはスッキリするだろう」

 

「……違うわ」

 

「ん? すまないな箒。声が小さくてあまり聞こえなかった。もう一度言ってはくれないか?」

朝から機嫌が悪かったり、声が小さくなったり、箒は大丈夫なのか? 風邪か? 風邪ならば安静しなくてはな。幼馴染であるし何よりルームメイトだ看病しようではないか。

 

「うるさい! 何でもないわ!」

 

「そうか、ならば朝餉としよう。箒は何を食べるのだ? 私はこの朝和食セットにしようと思う」

 

「私も同じ物を頼む」

 

「承知した。先に席を取っていてくれないか? 私は食券を届けてくる」

 

「ああ」

目の前にあった食券売機のボタンを二度押し、出てきた食券を取り出す。さて、どこに出せば……。む、あそこか。

 

「これ二つをお願いしたい」

 

「はいよ」

 

「はっ⁉︎ お名前を伺ってもよろしいでしょうかマダム」

何という事だ!

このIS学園にこんなにも素晴らしいマダムが居たとは⁉︎

くっ、私としたことが……。IS学園の職員一覧の顔はパンフレットなどで調べていたが、食堂にこのような素晴らしいマダムが居るとはっ‼︎ 昨日のウチに挨拶にくるべきだった……いや! まだだ、今からでも遅くないはずっ!

 

「マダムなんてやめな。オバちゃんでいいよ。固い固い」

 

「しかしっ‼︎」

 

「あと名前なんて知らなくても十分さ。あんたは私の料理を食べる。私はあんたらに料理を作る。これだけ知ってりゃあんたはいいんだよ」

 

「なるほど、私も失礼なことをした。許してほしい」

この朝の忙しい時間帯に、このマダムに無駄な時間を取らせてしまうとは私もまだまだのようだ。しかし、この程度で諦める程度の私ではない!

 

「いいよいいよ。さっ朝和食セット二人前だよ」

 

「ありがとうございます。また、話しにきます」

 

「食券持ってきなよ」

ニヤリとマダムが笑う。……美しい。

先ほどの朗らかな姿からのその笑方、なんとも魅力的だ。

 

「ふっ、もちろんですとも」

こちらも笑って挨拶をかわす。食券を持っていくごとに口説くチャンスができたな。急ぐ必要などない、じっくりと時間をかけていこう。なんせ、毎日の朝昼晩にチャンスがあるのだから。

二つのお盆を持ちながら、箒を探す。いた、箒も私に気づいたのか軽く手をあげている。

 

「どうした一夏、そんなに笑って」

 

「いや、IS学園も素晴らしいと思ってな」

 

「??」

 

「冷めないうちに頂こう。マダムに失礼にあたってしまえ」

 

「そういうことかっ‼︎」

ん? 何故箒はまた大声を?

ああ、早く朝餉を食べたかったのだな。まったく、お腹が空いていたのならそう言えばいい物を。いや、女性だから言いにくかったのか。

 

「お、織斑くんっ。隣いいかな?」

 

「む?」

横を見るとお盆を持った三人の女子がいた。顔ぶれを見るに三人とも私と同じクラスの者たちだ。

 

「構わないぞ、ここは食堂だ。学園の者ならば誰でも座っていいからな」

 

「あ、ありがとうね!」

 

「箒も構わんだろう?」

 

「む、好きにすると言い」

箒の了承も取れたので、三人の女子に顔で座るように促す。すると三人の女子は嬉しそうに俺の隣の空いている三つの席に座った。

 

「ああっ!私もいけばよかったっ!」

「大丈夫!まだ、早い段階。巻き返せるわ!」

「でも、彼って噂じゃ……」

女性が三人よれば姦しいとはよく言ったものだ。三人以上になるとかなり騒がしいな。まぁ、しょうがない事なのかもしれんがな。

 

「うわぁ、織斑くんって朝から結構食べるんだね」

 

「ん? 当然だ。夜は少なめに取るタイプだからな。ちなみにおやつ時にはマダム達と紅茶を嗜むぞ、通常ならばな」

 

「え、あ、うん」

む? なぜに戸惑ったような顔をしているのだ?

箒も箒で頭に手を当ててため息を吐いているし。やはり何処か体調が悪いのか……。心配だな。

後で、マダム達に体調が悪い時の接しかたのアドバイスでも聞こう。

 

「一夏、私は先に行くぞ」

 

「わかった。しかし、今度からはもっと良く噛んで食べるといい」

箒は一つため息をこれ見よがしに吐いて、トレーを持ってその場から立ち去って行ってしまった。

 

「あ、あの織斑くんと篠ノ之さんって仲良いの?」

 

「ん? ああ、幼馴染だからな。仲が悪いわけがないさ。だが、一番仲が良いのは箒の母上と我が家の近所のマダム達だ!」

 

「そ、そう」

どうしたのだ、この女子達は。顔が引きつっているではないか。いや、私がいきなり大声をだしたからビックリしたのか。くっ、いかなる時も落ち着きを持とうとしていたが、マダム達の話になるとどうもな。

 

「おりむ〜は真性だね〜」

真性? どう言うことだ?

のほほんとした女子生徒の言葉に首をかしげていると。

後ろから我が姉の声が聞こえてきた。

 

「いつまで食べている! 授業に遅れたものはグラウンド十周だぞ!」

この声が聞こえて、周りにいた生徒達は食を一斉に早める。全くもって身体に悪いな。

そして、皆気づいていないが姉の着ている服にシワがより過ぎている。

後でアイロンをかけねばな!

マダム達に教えてもらった全ての技術を生かして、服のシワを消してやろう。

姉の服よ、シワの貯蔵は十分か?

 

「本当に、いい弟なんだがなぁ」

なんと、我が姉も体調が悪いと言うのか!

箒と一緒で風邪か何かなのか?

まぁ今は朝餉を食べて、教室にでも向かうとするか。




そろそろ、ISを出さないとね。
ただのマダムリスペクト小説になっちゃうよ!


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しかしこの一夏、変態である!

やっと更新。


朝の素晴らしい邂逅を終え、授業中だ。

流石IS学園。

なんとも素晴らしいマダム……ではない授業内容だ。教師のレベルも高い。

マダム達からの知恵が無くては授業についていくことはなかっただろう。

 

「ISは操縦者の生態機能を補助する役割があり、心拍数、などを安定した状態に保つことができます。その他にも……」

山田先生の言葉を遮り、一人の女生徒が質問をとばす。

 

「先生ー。それってなんか体の中を弄られてる様ですけど大丈夫なんですか?」

なるほど、ISを動かした時に感じる物は捉え方によっては不安の材料となってしまう。

その質問もわからないわけではないな。自分も偶然に動かした時には戸惑ったものだ。表情には出ていなかったとのことだが。そこまで、無表情のつもりはないのだがな。マダム達にも「一夏くんは表情がわかりやすいわ」と言われるしな。

 

「大丈夫ですよ。皆さんはブラジャーをつけていますよね? それと同じで……」

ん?

山田先生の声が俺と目が合った瞬間に止まってしまった。どういうことだ?

 

「あ、織斑くんはわかりませんよね。あは、あはは」

まあ、確かにブラジャーはしてないからな。

逆に男が下着のブラジャーの着け心地を詳しく知っていたら、それこそ問題であろう。いや、男性用のブラジャーもあるからこの考えは早計か?

 

「そうですね、ブラジャーの事については良く分かりませんが先生が何を言いたいかは理解できました。サポーター等の物と同じ、と言うことでしょう。どうぞ授業を続けて下さい」

 

「あ、ありがとうね織斑くん」

 

「いえ、それに私はマダムにしか興味がありませんので安心してください」

 

「そ、そうですか」

ふっ。

これで授業のフォローも完璧だろう。故に胸をさりげなく隠しているクラスメイト諸君よ、心配することはない。

 

「完璧なフォローではないわ馬鹿者め」

ん?

相変わらず箒は独り言が多いな。もしや、かまってちゃんなのか? 授業中は無理だが休み時間は話しているだろうに。

 

「コホン、山田先生。授業の続きを」

 

「はいっ!」

姉の一言により緩かった教室内の空気が変わる。流石としか言いようが無いな。俺の場合はマダム達といる時が一番緩やかで厳格な空気だと思うがな。

その後は私の姉が睨みを効かせているのもあってか、授業は滞りなくスムーズに進んで行った。

 

キーンコーンカーンコーン。

 

「織斑くーん!」

「質問とかいいかなぁ〜!」

「夜ヒマ? ベッドは空いてる? 抱き枕は必要?」

初日の時とは打って変わり、クラスにいる女生徒達が大量に私の席の元へと集まってきた。

 

「質問ならばかまわんよ。ただベッドはマダム達にしか空ける予定はないな」

フッ……。マダムとの添い寝、考えるだけでも素晴らしいイベント行事だな。まさに至高……!

おや? 後ろの方で整理券を配っている女生徒がいるな。後で商売のわけ前でも頂きにいくとしよう。私を使って儲けだしたのだ、それ位は構わんはずだ。

そして、そのお金を使いマダム達に細やかな贈り物を……いや、食堂のマダ……おばちゃんに贈るのもアリだな。ふふふ、夢が広がる。

 

「ねぇねぇ千冬お姉さまって家でどんなかんじ?」

おっと、自らの思考に没頭しすぎていた様だ。いかんいかん、こんな体たらくでは礼儀作法を教えてくださったマダム達に申し訳ないな。

 

「姉のことか? ふむ、幾ら姉弟と言えどプライベートを軽く話してはいかんだろう。申し訳ないがその質問には答えられんな。因みに私は家ではマダムについて学んでいるぞ」

 

「そ、そう……」

 

スパンッ‼︎

 

「一々、クラスのSAN値を下げにかかるな!」

む? 姉が私の後ろにいつの間にか立っていた。相変わらずスペックが尋常ではないな我が姉よ!

しかし、クラスのSAN値を下げてしまったか。

 

「皆、済まないな。姉のプライベートを話せず」

 

「そっちじゃないわ⁉︎ 戯け!」

箒よ! 幾ら休み時間に一人で座っていたからと言って、いきなり声を荒げるのはどうかと思うぞ。部屋でコミュニケーションの本でも進めてみるか?

あと姉よ、何故ため息を吐いているのだ?

 

「本当に良い弟なんだがなぁ……」

よしてくれこんなところで、照れるではないか。

すると、どうだろう姉と箒が同じタイミングでため息を吐き出した。

仲がよろしいことで私はとても嬉しい。

それよりも何故に考えていることがすぐに読まれてしまうのだろうか。

 

「ところで織斑、お前のISだが準備までに時間がかかる」

我が姉の言葉を聞き、クラスからはざわめきの声が上がる。それもそのはずだ、専用機が貰えると言う事なのだから。

 

ISのコアと言う物は世界に467機しか存在していない。そして、そのコアは開発者である篠ノ之束にしか作ることができない。しかしながら束さんはすでにISのコアを作っていない。専用機を頂けるのは余程の訓練に耐えたものだけであり、私は男子であるが故の特例と言うことだ。

 

「なるほど、それはISのコアを受け取るものとして恥ずべき行いはできんな」

 

「そう言うことだ」

 

「無様にならん仕草をマダム達に早速教わらねば……」

 

「無様で恥ずべき行動いきなりするな⁉︎」

無様で恥ずべき行いを私がすでに行っている……だと⁉︎

い、いったいどういうことなんだ。

まさか……はっ! 分かった、分かったぞ姉よ!

 

「織斑先生」

 

「なんだ織斑」

 

「確かに私は無様な行動をしていた」

 

「何⁈ わ、分かってくれたか!」

ああ、姉よ。

確かに私は無様だった。これが今、ハッキリとわかった。

 

「直ぐにマダムに頼るのはダメだと言うことだな!」

 

「は?」

 

「迂闊だった、私はすでにマダム達から無様にならん行動を学んでいたはずだというのに……! マダム達に連絡を取ることばかりを優先してしまった! ありがとう織斑先生、いや我が姉よ!私の間違いを正してくれるとは、最高の姉を持って幸せだ。出来れば十年後もそのままでいてくれ」

 

ズゴッ‼︎

 

「………織斑先生だ」

私の脳天に今まで以上の衝撃が突き刺さる。流石にこれは効くぞ。

 

「千冬さん。ツッコミどころが違いますよ」

やはり、織斑先生と言わなければダメだったか。箒もそこのところは気をつけたほうが良いぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間になり先ほどとは違い、セシリア・オルコットが私の目の前までやって来た。

 

「安心しましたわ。まさか訓練機が相手ではただでさえ詰まらない試合が、もっと詰まらなくなるところでしたわ」

腰に手を当てて、お決まりのポーズをとる。ふむ、似合ってはいるな。しかしマダム達の気品のある行動はどんな仕草をしていても美しい。あれは何故なのだろうな、まさに神の奇跡としか言いようが無い。

 

「聞いてますの?」

 

「ああ、聞いている。マダム達の行動は何故ああも神秘的なのか? だったか?」

 

「全然違いますわ⁈ あなた全く聞いてませんでしたわね⁈」

 

「失礼、マダムの事を考えると思考がズレてしまうのでな。許して欲しい」

 

「この方末期ですわ⁉︎」

何が末期だというのだ、失礼も甚だしいな。

 

「さて、昼餉の時間故私は失礼する。箒よ食堂に行こうではないか」

 

「う、うむ」

 

「ちょ⁈ 無視ですの!」

 

「すまんなセシリア・オルコット。昼餉の為には重大ミッションがあるのでな」

 

「何の話しですのっ‼︎」

それはもちろん重大ミッションのことだ。

おばちゃんを口説き落とすと言う名のな。ふっ……時間は多い方が良い。早く行かねばな。

席を立ち、箒を伴って食堂へと向かう。後ろでセシリア・オルコットがギャーギャー騒いでいる気がするが今はそんな事はどうでもいいのだ!

 

「箒よ食券は私にまかせろ」

 

「こいつがおばちゃんを口説く為に私は呼ばれたのか……?」

んん?

小声ではよく聞こえんぞ箒。

さあ! 私の戦場へと急ごうではないか!




まだ、ISがでない。
何故だ……。


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