目の腐ったSAO2 (ウルトラマンイザーク)
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プロローグ

なんやかんやで「2」とか出しちまいました。
まぁ飽きてなかったら読んでください。




 

 

 

俺、比企谷八幡がまだSAOに囚われてた時の話。

 

 

 

 

 

 

 

56層。

ボス攻略会議に参加していた俺は、一番後ろで話も聞かずにぽけーっとしていた。すると、なんか聞いたことある声の二つが言い合いを始めた。へいへい、精々身内で潰し合えよ。

俺はといえばせっかく料理スキルが身についたため(MAXコーヒーのためとは言えない)、今日の晩飯をなににしようか考えていた。肉…魚……いや、炭水化物系がいいな…よし、炒飯にしよう。さっそく帰って仕込みをしないと…、

 

「待ちなさい!そこの黒髪!」

 

血盟騎士団副団長様に呼ばれて振り返る。おい、黒髪なんてたくさんいんだろうが。そんなに俺の特徴ないですかねぇ…。

 

「どこに行くのよ!まだ会議は終わってないのよ!?」

 

あーそうだった…会議の途中だった。ついうっかりフェードアウトするところだったぜ…それにしてもあいつ、よく俺に気が付いたな。

そのまま会議は進み、全員解散となった。

 

「よう。エイト」

 

声を掛けられて振り返るとキリトとエギル。

 

「あぁ…てかなんであいつあんな機嫌悪いの?」

 

「お前が帰ろうとしたからだろ」

 

エギルに冷静に言われる。

 

「か、帰ろうとしてねぇよ!晩飯の御菜買いに行こうと思っただけだよ!」

 

「いやダメだろ…」

 

なんて話してるとキリトがつぶやいた。

 

「まさか、攻略の鬼になってるとはなぁ…」

 

「バッカお前、あの程度全然鬼じゃねぇよ。本当の鬼って言うのはな、職場見学希望調査書出して痛々しく『衝撃のファーストブリットォッ!』とか叫びながらボディブローしてくる人のこと言うんだよ」

 

「な、中々濃い人だなエイトマンの知り合いは…」

 

「だろ?それに比べたらあんなん攻略の鬼(笑)だろ…」

 

「聞こえてるんですけど?」

 

聞き覚えのある声がして振り返ると、攻略の鬼(怒)が立っていた。

 

「や、今のはお前のことじゃなくてだな…そう、あれあのゴッドフリードとかいう…」

 

「ゴドフリーよ」

 

「その人のことだよ!見てみろあの顔!鬼だろ!」

 

が、俺の言い訳などまるで聞いておらず、アスナはため息をついてボソッと言った。

 

「結局、本気で帰ろうとしてる人なんて数人よね……」

 

キリトにもエギルにも届かなかったような小さな声だったが、俺にはハッキリ聞こえた。いや別に中学の頃から悪口に敏感で地獄耳になったとかそういうことじゃないからね?

しかし、今のアスナの状態はあんまり良くないな。余り気を入れすぎると空回りする。あまりメールし過ぎると「ごめん寝てたーまた学校でね」って朝にメール帰ってくるのと同じだ。ま、そんなん俺には関係ないし、早く家帰って炒飯作ろう。

 

 

 



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事件

 

 

 

 

場所変わって59層。今日はアインクラッドでも最高の天気なんだとかで、俺は飲み物を買いに行かされた。キリトとじゃん負けした。

なんか最近はキリトと仲良くし過ぎてる気がすんな…いや仲良くすることは間違いではないが、このゲームをクリアしたら確実に会わなくなる仲だ。それも物理的に。あまり仲良くし過ぎるのは良くないかもしれないな。

っと、到着。したのはいいんですがなんでアスナもいるんですかねぇー。まぁいいや、関係ない。

 

「こんな日に迷宮なんかに潜ってちゃ勿体無い」

 

「だからって…」

 

「おーいキリトージュース買ってきたよー」

 

「あぁもうっ!どいつもこいつも!」

 

俺が戻ってきて声を荒げたのはアスナ。この後、クリアする気はあるのかだの、一日も無駄に出来る日はないだの、高校受験涙目だの、途中から完全にただの愚痴になっていたが、怒られた挙句、結局アスナもお昼寝した。

こいつ、黙ってれば可愛いのになぁ…。さて、俺も寝よう。

 

 

 

________________

 

 

 

それから数時間後、俺の顔面に何かがめり込んだところで目を覚ました。んだよ気持ちよく寝てたのによとか思いながら目を開けると、顔を真っ赤にしてるアスナ。

 

「おい、お前か殴ったの…」

 

「う、うるさい!」

 

「キリト、こいつ五回殺していいかな?」

 

「落ち着けエイトマン。アスナの寝相が悪くて気が付いたらエイトマンに抱き付いてただけだ」

 

「それ完全に被害者だろ俺」

 

ボヤいてると、急にばっと飛び退いて剣を抜こうとするアスナ。お?なに?やる?と、思ったら、涎を垂らした口から「………一回」と、声がした。

 

「は?」

 

「ご飯一回!それでチャラ!」

 

「「………なにが?」」

 

 

_______________________

 

 

 

57層の飯屋。アスナに飯を奢ってもらってるキリト。なぜか俺だけ自腹である。殴られたの俺なのに。

そのまま、キリトとアスナはお話中。なんで俺来たんだろうか…いや断ったんだけどアスナに引き摺り込まれたんだよな。まぁいいや、今日の晩飯会議でも開くか。

1、炒飯。この前食ったばっか。却下。

2、カレー。ありきたり過ぎんだよなぁ…却下。

3、ラーメン。決定。

そうと決まれば帰るしかないな。

 

「んじゃ俺帰るわ。この後ちょっと用あるし」

 

「おう。お疲れー」

 

「………ふん」

 

アスナ、お前は本当に覚えてやがれ。さて、店出て食材買いに行かないとな。ラーメン、ラーメンか…麺とかあんのかな。

 

 

________________________

 

 

 

※アスナ視点になります。

 

まったく…誘ってあげたのに帰っちゃうなんて…。これじゃなんのために来たか分からないじゃない……。エイトくんめ…。でもこの場でもうすぐにサヨナラしちゃったらキリトくんに悪いもんね。

てことでしばらくお話すること数分。

 

「そろそろ、行くわね」

 

「おう。じゃあな」

 

そう思った時だ。外から悲鳴が聞こえた。急いで外に出ると、人のお腹に剣が刺さっていて、それが壁に…こう、なんか、イメージ沸くよね?まぁそんな感じになってた。

急いで助けに行こうとしたが遅い。ガラスのように砕け散ってしまった。

 

「キリトくん!」

 

「デュエルのウィナー表示を探せ!」

 

だが見当たらない。私は男の人が突き刺さっていた建物に向かう。そこには意外な人物がいた。

 

「をっ。アスナ」

 

「なにしてんのよあんた…」

 

エイトくんだった。

 

 

 

 



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容疑者

 

 

 

 

俺は今、アスナとキリトに問い詰められている。

 

「で、動機は?」

 

「いや俺が犯人が犯人確定かよ…」

 

どうやら、圏内PKなるものが起こったらしく、その場にたまたま居合わせてしまった俺が犯人だと思われているらしい。まったく、冤罪もいいところだ。

 

「証拠出せ証拠」

 

「その台詞が犯人と言っていいわね」

 

おい、こんなやり取りなんか前にもあったぞ。確か雪ノ下だったな…。そういえば懐かしいなぁ奉仕部。大して楽しかったわけでもないが、思い出だけは残ってる。だから、失うとダメージだけは残るのだ。だから今までボッチをキープしていたはずなのに。

きっと、キリトやアスナとの思い出も消えるのだ。なら、一層の事……、

 

「おいエイトマン!聞いてんのか?」

 

急に呼ばれて我に帰った。

 

「あ、あぁ悪い。聞いてた。で、なに?」

 

「聞いてなかったんじゃないか…」

 

「で、なんて言ったの?俺、ラーメンの具材買わないといけないんだけど」

 

「ラーメン…?あ、いやそうじゃなくて!お前犯人だろ?」

 

「いやいやいや。違うから。そもそも圏内でPKとか無理でしょう」

 

「その方法を吐いてもらおうか」

 

「だから知らねっつの」

 

そこで、アスナに胸ぐらを掴まれる。

 

「あんたねぇ!今、あんたが容疑者なのよ!?あの場で塔の中にいたのはあんたしかいないんだから!」

 

「……へ?そーなの?」

 

あれ?ってことはこれ…。

 

「俺、牢獄行き?」

 

「このままだとね」

 

「待て!俺は犯人じゃない!そもそも俺がそんなことしてもメリットないだろ」

 

「じゃあなんであんなところにいたの?」

 

言えない、あの見晴らしの良さそうな所に立って「フハハハッ!人がゴミのようだ!」と心の中でやりたかったとは言えない。

 

「とにかく!俺は犯人じゃない!そもそも俺がPKするなら圏内なんかじゃなくても十分出来るだろ!」

 

「でもお前のその腐った目なら犯人にされてもおかしくないと思うぞ」

 

「あの…その人は犯人じゃないと思いますが…」

 

おぉ!弁護士来た!

 

「その…私、被害者の人と元同じギルドだったんですけど…あ、ヨルコっていいます」

 

「キリトだ」

 

「アスナよ」

 

「弾よりも速く走る…」

 

ポカッ

 

「え、エイトマンです…」

 

いきなり殴ることないじゃないですかーアスナさーん。

 

「それで…その、私達のギルドはこの人と関わったことないし…私、基本的に彼…あ、カインズっていうんですけど、彼と一緒にいましたから…」

 

「………」

 

俺は改心のドヤ顔で二人を見る。その笑顔にはもちろん、「ほら見ろ?俺犯人じゃねぇだろ?探偵気取りも大概にしろよ?お前らみたいなガキが探偵になるなんて一万年と二千年早ぇーんだよ?」的なニュアンスを含めてやった。

 

「とにかくヨルコさん。今日は俺達が送っていくから、明日、また話を聞かせてもらえるか?」

 

「は、はい……」

 

キリトが言うと、三人は歩き出す。

 

「じゃ、俺帰るから」

 

反対側に歩こうとすると、アスナに襟を掴まれた。

 

「待ちなさい」

 

「なんだよ…」

 

「あなたも手伝いなさい。どうせ暇なんでしょ?」

 

まぁこうなることは分かってたよ。働きたくないーって言っててもなんやかんやで働く羽目になるんだよな…こんな現実嫌だ。

 

 

____________________________

 

 

 

ヨルコさんを送った後、

 

「さて、どうする?」

 

「帰る」

 

「あなたは黙ってて。とりあえず、手持ちの情報を検証しましょう。あのスピアの出処が分かれば、犯人が分かるかもしれない」

 

「となると、鑑定スキルがいるな…お前は上げて、ないよな」

 

「当然、君もね。ていうか、そのお前っていうのやめてくれない?」

 

「ねぇ、俺にナチュラルに質問しないのもやめてくれない?一応、俺もいるからね?」

 

「じゃああげてるの?」

 

「……あげてませんけど」

 

ゴミを見る目で一瞥された後、アスナはキリトに向き直る。

 

「ていうか、そのお前ってやめてくれない?」

 

「あ、あぁ…えっと、じゃあ…あなた?」

 

「……」

 

「副団長様」

 

「…………」

 

「閃光様」

 

「………………普通にアスナでいいわよ」

 

キリト、その気持ち、痛いほどわかるぜ!

 

「り、了解…で、フレンドに鑑定スキル上げてる子は…」

 

「んー…友達に武器屋やってる子がいるけど…今は一番忙しい時間だし…」

 

「一応聞くけど、エイトマンは?」

 

「一応ってなんだ一応って…いや友達いませんけどね?」

 

「じゃ、俺の知り合いの雑貨屋にでも頼むか」

 

で、今度は50層。その知り合いの雑貨屋はエギルさんの店だった。

 

「相変わらず、アコギな商売してるようだな」

 

「安く仕入れて、安く提供するのがうちのモットーなんでね」

 

「ついでに安い人間関係はぶった切っといた方がいいぞ」

 

「おう。エイトマンも一緒だったのか」

 

さらに俺の後ろからアスナがひょこっと顔を出す。その瞬間、キリトの首を掴んで尋問するエギル。

 

「どうしたキリト…ソロのお前がアスナと一緒って…どういうことだ?」

 

丸聞こえ、丸聞こえですよ…アスナ苦笑いしてるじゃん。ていうか、いいからさっさと話し聞けや。

その願いが届いたのか、奥の部屋でお話タイム。

 

「圏内でHPが0に?デュエルとかじゃないのか?」

 

「ウィナー表示は確認出来なかった」

 

「直前までヨルコさんと歩いていたなら、睡眠PKもないしね」

 

「突発的デュエルなら、やり口が複雑過ぎる。事前に計画されたPKなのは、確実を思っていい。そこで、こいつだ」

 

キリトの視線の先には剣が置いてある。多分、これが被害者を殺した武器なんだろうな。エギルさんが武器を手に取ってさっそく検証。

 

「……プレイヤーメイドだ」

 

「本当か?」

 

「誰ですか?作成者は」

 

「グリムロック…聞いたことねぇな。少なくとも一流じゃない。それどころか武器にもこれといった特殊なことはない」

 

「でも、手掛かりにはなるはずよ」

 

「一応、固有名も教えてくれ」

 

「ギルティソーンとなっているな。罪の茨ってところか」

 

「中2臭っ」

 

「エイトマン本当黙れ」

 

言われて俺が黙るはずもない。

 

「ていうかお前ら、本当に武器に原因があると思ってんの?」

 

「「はぁ?」」

 

「そんな武器が実在したらフェアじゃないだろ。茅場がそんなもん作ると思ってんの?」

 

「でも、これ以外に方法は…」

 

「なにより、」

 

そこで言葉を切ってエギルから剣を取り上げる。そして、キリトを突き刺した。

 

「なっ!?」

 

「え、エイトマン!?」

 

「お、おい!」

 

だが、なんも起こらない。キリトはピンピンしている。

 

「これが全てを言ってるだろ」

 

「あ、あなたねぇ!それで本当に死んだ人がいるのよ!?」

 

「そもそも俺は今回、本当にあの人が死んだとは思ってない。圏内でPKなんてさっきも言ったようにフェアじゃないし、茅場がそんな機能を着けるとは思えない。だから、なにかしらあるはずだ。見落としてることが」

 

「で、でも!実際に私達は見たのよ!?」

 

「それも問題だろ。圏内だろうと圏外だろうと、犯人に取っては周りに見られたくないはずだ。だが、カインズさんはあんな目立つところで消えた。これは犯人にとってメリットがあることなのか?」

 

そこまで言うと、全員が俺を目を丸くして見る。なんだよ?っと視線で問うと、アスナが答えた。

 

「エイトマン…意外に頭良いのね…」

 

「常に一人だったからな。ボッチは思考力と洞察力にたけるんだよ。ていうか意外ってなんだ意外って。こう見えても国語は学年三位なんだぞ俺」

 

「そ、そう…」

 

「で、エイトマン。お前が言いたいことはよく分かった。で、なんで俺を刺した?死なないって分かってなるなら自分でも良かったんじゃないか?」

 

「や、万が一ってこともあるから…」

 

「訂正。やっぱあなたバカよ」

 

「エイトマンちょっとこい。圏内ならいくら殴られてもダメージないんだよな?ならいいよな?」

 

「待ってキリトちょっとタンマ俺が悪かった俺が…待って待って待っ……」

 

外でボコボコにされた。

 

 



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解決

 

 

 

 

翌日。サボってホームでダラダラしてたらキリトとアスナに連行された。なんで俺ん家知ってんだよ。

で、ヨルコさんと四者面談。なんで俺がヨルコさんの隣なの?まだ容疑者ってことなのこれ?

 

「ねぇ、ヨルコさん。グリムロックって、聞いたことある?」

 

アスナが聞くと、ヨルコさんは反応する。

 

「は、はい…昔、私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」

 

「!」

 

マジでか。

 

「実は、昨日の剣を鑑定したら、その剣を作成したのはグリムロックさんだったんだ」

 

その瞬間、口に手を抑えて反応する。

 

「なにか、思いあたらことはないか?」

 

そのキリトの問いに、少し間を空けて答えた。

 

「はい、あります…昨日、お話出来なくてすいませんでした。あまり、思い出したくない話だったし…でも、お話しします。そのせいで、私達のギルドは消滅したんです」

 

早い話が、レアアイテムがドロップしてそれ使うか売るかの多数決で売ることになってそれを売りに行った人が帰ってこなくて後になって調べたらその人死んでたらしい。

 

「……つまり、睡眠PKか。犯人は黄金リンゴのメンバー、それも反対した三人のうちの誰かだろ」

 

俺が言うと三人は頷く。そこまでは考えられていたみたいだ。だが、その時の犯人を探しても仕方ない。

 

「そのグリセルダさんって人はどんな人だったんですか?」

 

俺の気も知らずにアスナは質問する。

 

「美人で、頭も良くて強くて、それとグリムロックさんと結婚していました。もし、仮に昨日の犯人がグリムロックさんなら、指輪の売却に反対した三人を狙っているんでしょうね。指輪の売却に反対した三人は、私とカインズなんです」

 

「!」

 

「じゃあ、もう一人は!?」

 

「シュミットというタンクです。今は青龍連合に所属していると聞きました」

 

「シュミット…聞いたことあるな」

 

なんて話をしている中、俺は俺なりに考える。

さっきのヨルコさんの仮説、あれはかなり性格を悪く解釈すれば指輪売却をした三人を庇っているようにも見える。そもそも、ヨルコさんには話していないが、俺はカインズという男が死んだとは思っていない。

だとすれば話を誘導しようとしているヨルコさんと、昨日死んだことになっているカインズは共犯者で、なにかを企んでいるように見える。だが、あの殺人(仮)を起こしてなにをしたかったのかが分からない。そこに辿り着くにはまだ情報が足りない。

 

「シュミットに会わせてもらえませんか?もしかしたら、彼も狙われているかも…」

 

「分かった。ヨルコさんは自分の宿屋から出ないで」

 

ってことで、そのシュミットって人に会いに行く。その途中でアスナが聞いた。

 

「君は、今回の圏内殺人、どう考えてる?」

 

「おおまかに四通りだな。昨日、エイトマンが言ったようにそもそも死んでないか、デュエルか、システムの抜け道か、未知のスキルか、だが四つ目はないだろう。昨日、エイトマンが言ったようにフェアじゃない」

 

「でも、死んでないっていうのもないんじゃないの?だって私達は見たのよこの目で」

 

「それをも誤魔化す、スキルかあるいはなにかしらがあるかもしれない…」

 

なんて話してる二人。

 

「悪い。すぐ戻るからちょっと抜けるわ」

 

「はぁ?どこに行くのよ」

 

「すぐ戻るって。じゃな」

 

それだけ言って俺は抜けた。カインズが死んだかどうか?そんなことすぐに確かめられる。俺の考えが正しければやりたいことは分からずとも方法だけは…、

 

 

_______________________________

 

 

 

少し遅れて戻って来た。なんかヨルコさんのすごい声が聞こえたんだけど……。とりあえず宿の中に入る。

 

「よう。なんか分かった?」

 

窓に座ってる。ヨルコさんにさっきから貧乏ゆすりが半端ない男の人。こいつがシュミットか。あとはキリトとアスナ。で、なんで俺の質問には誰も答えてくれないの?と、思ったらヨルコさんが口を開いた。

 

「ただ一人、グリムロックさんはグリセルダさんに任せると言った。だから、あの人は私達全員に復讐して、グリセルダさんの仇を撃つ権利があるんだわ」

 

「冗談じゃねぇ…冗談じゃないぞ…今更、半年も経ってから!今更!お前はいいのかよヨルコ!こんなわけの分からない方法で殺されてもいいのか!?」

 

だが、そこでドスッと音がした。それと共にヨルコさんの目が見開かれる。

 

「………!」

 

全員が呆気に取られ、ヨルコさんは倒れそうになる。そして、背中にナイフが刺さっているのが見えた。その瞬間、確信した。

 

「キリト!ヨルコさんを逃がすな!」

 

「はぁ?」

 

ダメだ。理解してない。俺は二階から落ちるヨルコさんに手を伸ばそうとするが間に合わず、そのまま死亡エフェクトが見えた。

いや、まだ平気だ。殺されたように見せ掛ける必要がある以上、近くに犯人と思わせるためのプレイヤーがいるはず。

 

「アスナ!後は頼む!キリト、手伝え!」

 

返事を待たずに窓からジャンプして追い掛ける。圏内ならダメージはない。ならいくら斬っても死なないってことだ。俺は剣を抜いて一気に近付く。が、向こうは逃げながらなんか釘みたいな奴を投げ付けて来た。それを弾いている間に転移結晶で逃がしてしまった。

 

「クッソ……」

 

渋々、元の場所に戻る。ドアを開けて中に入ると、アスナが剣を突きつけていた。

 

「えっなにこれ」

 

「バカ!無茶しないでよ!」

 

「え?や、だからなんで剣」

 

「……それで、どうだったの?」

 

「悪い、逃がした」

 

すると、キリトが壁を叩く。

 

「クッソ!宿の中はシステム的に保護されているから平気だと思ったのに…!」

 

「大丈夫だキリト。問題ない」

 

「なにが!?どういう意味だ!」

 

「ヨルコさん、ついでに言うならカインズも死んでない」

 

「そういえばさっき、ヨルコさんを逃がすなとか…」

 

アスナも呟く。

 

「今から説明する。グリセルダさんがどうしたとかは分からないが、圏内殺人の方は犯人はいない」

 

「「はぁ?」」

 

バカにしたように二人に言われるが、それを余裕まんまで言い返す。

 

「二人とも死んでないってことだ」

 

「どうしてそんなことが言えるのよ」

 

「まずヨルコさんの時、50層まで来てるプレイヤーがナイフ一発、後ろから刺されただけで死なないだろ。しかも、このゲーム内では痛みなんて感じないはずだ、背中になにか刺さった感覚はあっても精々、蚊に刺された程度の感覚しかこないだろ?それなのにナイフが刺さったと分かっていたかのように、激痛が走ったかのようにヨルコさんは倒れ込んだ。これは演技だ」

 

俺の話を黙って聞く二人。

 

「で、二人が死んだように見えた件だが、アイテムが耐久値を切らして消える時、プレイヤーが死ぬ時と同じエフェクトが見える。ヨルコさんとカインズは自分の鎧の耐久値が切らして消える瞬間に、転移結晶を使ってあたかも死んだかのように見せたんだ」

 

「なるほど……」

 

「じゃあ、あの二人は一体なにをしたかったの……?」

 

「そこまでは分からない」

 

「とにかく、俺達の役割はもう終わりだな」

 

キリトがそう言うと、アスナも息を着く。

 

「いや、まだだ。グリムロックという奴がいる以上、あの三人は狙われている可能性が高い。シュミット、お前はしばらく俺達と一緒に…」

 

「……いないよ?」

 

「「へ?」」

 

捜索開始。結局、探偵って足が命なんだな。

 

 

___________________________

 

 

 

19層の丘。ヨルコさん達がそこにいるというのでそこに向かうと、ラフコフのメンバーがそこにいた。それとヨルコさん、シュミット、そしてもう一人はおそらくカインズであろう。

 

「先行くぞ」

 

俺はそれを見るなりキリトとアスナを置いて走った。で、斧が振り下ろされる瞬間、後ろから仮面ライダーバリのライダーキックで蹴り飛ばした。

 

「頭!?」

 

ラフコフの面子は俺に剣を向ける。

 

「なんだ、お前は」

 

「よくもやりやがったな!ははっ!」

 

「ヨルコさん、カインズ、シュミット。お前ら早く逃げろ。ここからは殺し合いになるぞ。転移結晶持ってんだろ」

 

「で、でも…!」

 

「いいから。邪魔だ」

 

それだけ言うと、三人は走ってどっかに隠れる。おい、転移結晶って言ったろ。さて、始めるか。俺も剣を抜いて構え、後ろからキリトも来る。アスナにはグリムロックさんの方を任せた。

 

「お前は、黒の剣士、か…」

 

「攻略組二人相手にするか。あ、もう一人血盟騎士団の副団長様もいるぞ」

 

それだけ言うと、ラフコフの面子は逃げた。ま、そんなもんでしょ。この後、捉えてきたグリムロックと前にいる三人がなんかお話ししてたが、俺には生憎興味ないのでぼーっとしてた。

 

「あなたがグリセルダさんに抱いてたのは、ただの所有欲だわ!」

 

「えっ!?な、なに!?」

 

「………なんであんたが反応すんのよ」

 

び、びっくりした…大きい声出すから……。で、そのまま三人がグリムロックを連行。取り残された俺も、キリト、アスナ。

 

「ねぇ、二人とも」

 

「「あ?」」

 

急に声を掛けられ、俺とキリトもヤンキーみたいな返事をしてしまった。が、まったくヒビることなく、アスナは続ける。

 

「ねぇ、もし仮に誰かと結婚して、その人の隠れた一面に気づいた時、どう思う?」

 

先に答えたのはキリトだ。

 

「ら、ラッキーだったって思うかな。だってさ、結婚するってことは、それまでに見えてた面はすでに好きになってたわけだろ。だから、其の後に新しい面にきづいて、そこも好きになれたら、二倍じゃないですか…」

 

キリトビビり過ぎだろ…。

 

「ま、いいわ。あなたは?」

 

俺か。

 

「や、その面にもよるけど悪い面なら慰謝料と教育費ふんだくって離婚」

 

「…………そんなことよりお腹空いたわ。せっかくご飯作ってきたのに耐久値切らしちゃったかもしんないし」

 

おい、俺の意見。丸々なかったことにされたぞ。

 

「2日も前線から離れちゃったわ。明日からまた頑張りなくちゃ」

 

「あぁ、今週中に、今の層は突破したいな」

 

で、その場から離れようとした時、グリセルダさんを見た気がしたが、まぁ気のせいだろう。

 

 

 

 



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プロローグ2

 

 

 

 

朝。自室のベッドの中。二度寝しようとしたらメールが来た。

 

『ほむん。八幡、我と聖剣を手にする覚悟はあるか?』

 

『ない』

 

材木座かよ。マジでやめてくんない?気持ち悪い。

 

『ちょっ二文字はないですしおすし。ならば今夜、我のホームで待ち合わせとしよう』

 

『お前話聞いてる…ていうか文章読めてんのかよ。てかお前のホーム知らないし』

 

この国語力でラノベ作家を目指してるんだから本当に人間、何を考えてるか分からない。特にこいつの場合。

 

『今夜、サラマンダー領に集結せよ』

 

『集結?俺以外に誰か誘ったのか?てか誘える奴いるのか?』

 

『なにをぬかしおる。そんな奴、いるわけなかろう。それは八幡が一番よく分かってるはずでござろう』

 

これは流石の俺も同情するぞ…。まぁいいや、一応こいつ領主だしここでバックれたりしたらサラマンダー全体を敵に回しかねない。

 

『了解した。で、聖剣ってなに?』

 

『なにっ八幡、貴様ニュース見てないのか?その情報力のなさは流石の我も引くぞ。見つかったのだ。エクスキャリバー』

 

『ふーん。それ手伝えばいいんだな。つーかエクスカリバーじゃないの?』

 

『ふむん。最初は我もそう思ったのだが、エクスキャリバーで間違いないらしい』

 

『あっそ。じゃ、寝る』

 

『ではな八幡、我らの血でかわされた契約、忘れるでないぞ』

 

あーあ、めんどくせぇ…。また夜に仕事が増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。さっそくリンクスタート。サラマンダー領の前に到着すると、マッチョ材木座が待っていた。

 

「遅いぞ!八幡!」

 

「エイトマンな。つーか時間ピッタリだし」

 

「ゴラムゴラム。では参ろうか」

 

「えっ待て二人?お前、責めてサラマンダーの誰かしら誘ったりしてねぇの?」

 

え、それだったら俄然行きたくないんですけど…いや誰かいても困るんだけどね。ただ、材木座と二人っていう空間が耐えられる気しない。

 

「何度も同じことを言わすなよ八幡。我に八幡以外誘える人がいると思うなよ」

 

「いやだってお前領主じゃ…」

 

「権力を振り回すダメ上司にはなりたくないのでござるよ。……せっかく手に入れた地位だから嫌われたくないし」

 

最後、素だったぞお前。まぁ気持ちは痛いほど分かるし、権力振り回す上司は本当に屑だとは俺も思う。

 

「では、改めて参ろうか」

 

材木座の号令で再び出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかメチャクチャ寒いところ。おい聞いてねぇぞコラ。アイスヘルかよ。

 

「で、材木座。ここからどうすんの?」

 

「剣豪将軍と呼べ。まぁ見ておれ」

 

すると、前に立って大きく息を吸い込んだ。気持ち悪い。

 

「風雲再起ィーーーッッ‼︎‼︎」

 

バカデカイ声を出す材木座。出てきたのはデッカいゾウとクラゲが合体したような生き物。

 

「………なにこれ」

 

「さぁ乗れ八幡」

 

言われるがまま乗って出発。すると、確かにエクスキャリバーと呼ばれてもおかしくない金色の剣が光って見えるのが見えた。ふーん、あれを取りに行くのかと思ってたらお隣にまたゾウクラゲ。

 

「げっ」

 

「む?」

 

「あっ」

 

隣のゾウクラゲにはキリト、クライン、アスナ、リーファ、シリカ、リズ、シノンが乗っていた。

なんでこうなった………。

 

 

 



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突入

 

 

 

 

 

「な、なんでエイトくんがこんなとこにいんのよ!?」

 

「なんでって…目的は一つだろ……」

 

リーファが食って掛かって来るが、それを冷たくあしらう。面倒臭ぇもん。

 

「おうエイトマン!久しぶりだな」

 

キリトがまるで友達のように挨拶してきた。それを会釈で返す。すると、「エイトくん久しぶりだね」「おうエイト!」「エイトさぁーん!」「エイトー」「な、なんであいつが…!」「パパ二号ー!」みたいにどっかで見たことある連中が声をかけて来る。

すると、額に汗を流した材木座が俺の肩をちょんちょんと突ついてくる。

 

「ぬぅ、八幡…この者達は一体……」

 

「あぁ、ほとんどSAOん時の知り合いだ。名前は面倒だから言わない」

 

「えーっと…エイトマン。確か世界樹攻略の時にいたサラマンダーの人だよな?」

 

キリトがきいてきた。

 

「えっと…材木座義輝。高校時代の知り合い」

 

「我が名は剣豪将軍!控えおろぉーうっ!」

 

「って感じでめんどくさい中二だ。一応、ALO最強プレイヤーってことになってる。世界樹攻略の時にいただろ?」

 

が、今の中二パートを無視してキリト達は挨拶した。

 

「キリトだ。よろしくな、世界樹の時は助かった。ありがとな」

 

「む、むはははっ!なぁに!あれしきのこと…」

 

「アスナです。よろしくね剣豪くん」

 

「え?あ、はい」

 

「クラインだ。よろしくな援交将軍!」

 

「いや、援交じゃなくて剣ご…」

 

「クライン!あ、あああんた何変なこと言ってんのよ!……あ、あたしはリズベットよ。リズでいいわ」

 

「………」

 

「あ、あの…シリカですぅ…」

 

「……………」

 

「リーファよ。会談の時にいたの、覚えてる?」

 

「シノンよ。そこの目が死んでるのに助けられたの」

 

「ユイです。よろしくお願いします!剣豪さん!」

 

「………………………でゅふ」

 

材木座がやられたか…まぁそうだよな。多分、いきなりボッチがこんなにたくさんの人間と関わったら俺でもこうのる。と思う。でも材木座くんはちょっとアレですね。剣豪くんと呼ばれて少し嬉しそうですね。

 

「ていうか、トンキーの上にいるってことはエイトマンも助けたのか?」

 

キリトに声を掛けられた。

 

「トンキー?なにそれ?」

 

「そうだエイトくん!この子、可愛いよね!?」

 

「ん?あーそうだな。雑巾の次に可愛い」

 

「……それ可愛いって言ってるつもりなの?」

 

リーファにジト目で見られるが、それを無視してキリトに向き直る。

 

「いや、俺は材木座の付き添いだから詳しいことは知らん。おい、どうなんだ材木座?」

 

「八幡、我はここに来てからこの風雲再起と変な巨人みたいなのが争いをしているのを偶然見掛けてな。紛争を根絶したわけだ。その時に先に巨人の方を倒すと、クエストが始まったわけだ」

 

「………お前、その前にリアルでダブルオー見てただろ」

 

「げげっ!八幡エスパー!?」

 

バーカお前の今の台詞聞けば誰だって分かるっつーの。

 

「そういうわけだキリト」

 

「なるほどな…なら、今日はエクスキャリバー取りにきたんだろ?一緒に行かないか?」

 

「あー…」

 

断ろうと思ったが、こいつら全員いれば俺はなにもせずに済みそうだからな。

 

「俺はいいけど…材木座、お前はどうする?」

 

「な、なぁ八幡。ひょっとして、我今誘われているのか?」

 

「え?あーそうだと思うぞ」

 

「むふ、むふふふ。誘いを断るのは失礼に値するよかろう!同行しようではないか!」

 

「だってよキリト」

 

「そ、そうか…」

 

そんなわけで話がまとまった時、俺達の前になんか雪女みてぇな人が現れた。しかも三メートル以上。ホラーか。

 

「私は、《湖の女王》ウルズ」

 

あーはいはいこれ長いお話ね。

 

「材木座、話終わったら言ってくれ」

 

「エイトくん…真面目に聞こうよ…」

 

いつの間にかど、ドンキー?ホーテ?から風雲再起の上に乗り移っていたリーファが言った。

 

「つーかなんでお前こっちにいんの?」

 

「い、いいじゃん!こっちの方が広いんだもん!」

 

と、思ったら反対側にシノンがいる。

 

「や、だからなんでお前らこっち来るんだよ」

 

「文句あるわけ?」

 

「ないです……」

 

シノンに睨まれてつい敬語になってしまった。材木座がペッと唾を吐いた。うわあ…うぜぇこいつ。

 

「あの、そろそろ話始めてもいい?」

 

外見とは裏腹にまったく緊張感のない声で言われてしまった。律儀にも待っていたのだろう。ってことはAIか?

 

「そなたらに、私と二人の妹から…」

 

「あーそういうのいいから。やって欲しいことだけ掻い摘んで説明してくれる?」

 

「エイトマン。黙ってろ」

 

キリトに言われたので素直に黙る。が、話は全くら聞いておらず、材木座と指スマをしながら待機していた。

 

「オッシャ、今年最後の大クエストだ!ばしーんとキメて、明日のMトモの一面載ったろうぜ!」

 

『おおー!』

 

「あ、話終わった?おー」

 

「応!」

 

全員の唱和の後に続く俺と材木座。その俺たちをキリト達は軽く睨むと、このゾウクラゲから降りて進む。それに俺と材木座も続いた。が、キリトが振り返る。

 

「エイトマンと剣豪将軍が加わったから少しフォーメーションを変えるぞ。前衛にエイトマンと剣豪将軍が入って、リーファは中衛を頼む」

 

それに素直に従って、俺達は扉の中へ入った。どうでもいいけど「剣豪将軍」と呼ばれて嬉しそうな顔をする材木座がとてもウザかった。

 

 

 



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正座

 

 

 

「う、うわあ……」

 

後ろからドン引きしたような声がした。まぁそれもわかる気がする。前衛に俺、キリト、材木座、クラインの男四人グループ。分かりやすく言うと、ヒースクリフを倒した二人とALO最強プレイヤーがいるのだ。途中で出てくる雑魚は俺達四人で片付け、後ろの五人は暇そうにしている。

 

「ふはははっ!幻紅刃閃ァァァッッ‼︎‼︎」

 

多少うるせぇけど、豪快にかつ広範囲に攻撃する材木座。

剣を二本持って、素早く敵を仕留めるキリト。

一人一人を一撃で確実に素早く仕留める俺。

材木座に謎の対抗意識を持って暴れるクライン。

後ろの女性陣はずっと世間話をしている。

 

「おい待てお前らコラ。働け」

 

俺が言うも、シノンがジト目で返して来る。

 

「そんなこと言われたって、あんたらが全部倒しちゃうんじゃない」

 

「や、魔法とかで後ろから援護とかあるだろ。つーかその弓はなんのための弓だっつーの」

 

「あんたらのこと撃っちゃうのかもしれないわよ?」

 

「へぇ…GGOの三代目チャンピオンの腕ってその程度ですか」

 

俺が挑発的なことを言うと、プチんッと音がした気がした。そして、シノンが弓を取り出す。

 

「上等じゃない…やってやるわ!」

 

シノンがブチギレたお陰で俺は元から高い隠蔽を使って後衛へ回り、「団体の三歩後ろを歩く作戦」に出た。これなら誰にも気付かれないと思ったらアスナがいつの間にか隣にいた。

 

「…なんだよ」

 

「うぅん。エイトくんと一緒に歩きたいなぁって思って」

 

「おい、お前冗談でもそういうこと言うのやめろ。思わず俺こと好きなのかと思っちゃうだろうが」

 

「好きだよ?」

 

「は………?」

 

今なんつったこの子。

 

「……なんてね」

 

「年上をからかうんじゃねぇよ……」

 

なんて話してると、いつの間にか全員がこっちを見ていた。

 

「………なに」

 

「エイトマン、お前殺す」

 

「エイトくんのバカァーッ!」

 

「火矢ぶっ込んでやるんだから!」

 

なぜか攻撃してくるキリト、リーファ、シノン。俺達がバトルロワってる時、後ろからこんな声がした。

 

「ママ、浮気はダメですよ」

 

「分かってるよ。ごめんねユイちゃん」

 

「パパ二号だったからまだいいものの…」

 

「ユイちゃん!?」

 

 

_______________________________

 

 

 

なんやかんやでボス部屋。敵はバカみたいに物理耐性の高い敵。

 

「キリトくん!今のペースだと、あと百五十秒でMPが切れる!」

 

後ろからアスナの声が聞こえ、歯噛みするキリト。はっ、情けねぇな。俺は常に一人プレイだから隠蔽と防御以外のステを全部均等に上げてるからこういう時に困ることはない。

一人、前に出て言った。

 

「全員回復してろ。俺が殺しといてやるよ」

 

返事を待たずに突っ込んだ。今の俺、超かっこいい。とりあえず攻撃を全部かわして殴る。殴ったらバカ高い隠蔽を利用して、相手のロックオンから外れ、後ろからタコ殴りにする。

 

「あ、相変わらずだなエイトマンは…」

 

「ひ、一人でやってる…化け物」

 

キリトやシリカがボソッと呟きを漏らす。ちなみに俺の種族はウンディーネだから回復に困ることもない。

 

「でもなんか、隠蔽が関係なくても早くない?」

 

「おっ確かに」

 

リズの言葉にクラインが反応する。当然だ。音速のソニックを参考にしてるからな。風刃脚!とも言わんばかりに相手の顎を蹴り上げる。でもね、これ弱点があるのよ。いくら回復があっても防御がないからね。つまり、一発でももらうとHPが八割減る。回復がギリギリ間に合わない。

一発もらって遠くへ吹き飛ばされた。

 

「うおっ」

 

そこから追い討ちを掛けてくる変なの。が、その前にキリトと材木座が立ち塞がり、助けてもらった。で、全員で距離を取り、キリトが声を上げた。

 

「みんな!一か八かソードスキルで集中攻撃するぞ!」

 

「うっしゃあっ!その一言を待ってたぜキリの字!」

 

「シリカ!泡頼む!」

 

「ピナ!バブルブレス!」

 

そのまま袋叩きにした。キリトが二刀を使ってたりとまぁ倒したよね。で、残りの魔法耐性の強い方。

え………とでも言いそうな顔をする奴にクラインが刀を向ける。

 

「おーし、牛野郎。そこで正座」

 

まぁ、材木座含めてもそれなりに仲良くやれてるようでなにより、かな?

 

 

 

 

 



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その後も俺たちは進んだ。

 

「して八幡、我の新しい小説の設定が出来たのだが?」

 

「エイトマンな、今は」

 

一応、訂正しておいたが、多分治らないだろうな。俺だってこいつを剣豪将軍とか呼びたくないし。

 

「で、それが何?」

 

どーせ「別に見せてもいいんだが?」的な腹立つイントネーションで少し上からで言うんだろ?分かってんだよ。

 

「別に見せてもいいんだが?」

 

一字一句間違えずに完封勝利しちゃったよ。

 

「いやそういうのいいから、まずは完成原稿を持ってこいよ。本当にお前その辺は変わってねぇのな」

 

「今回のは自信作なのだ。これが完成すればアニメ化され、声優さんと結婚出来るかもしれん」

 

「アニメ化されても声優さんと結婚は無理だろ。てか、自信作なら早く原稿を書けよ」

 

と、なんだか懐かしいやりとりをしながら廊下を進む。

 

「何々?剣豪さん、小説書いてるの?」

 

突然、リーファが入ってきた。

 

「えっ⁉︎お、おううんはい」

 

おい、返事三回したよ。つーか一発で素に戻るのなこいつ。

 

「今度見せてよ」

 

「え?や、いや……あ、あれは、その……う、うむっいや、はい……」

 

戸惑い過ぎだろ。高校の時より悪化してんじゃねぇか。見ればチラッチラとこっちを見ている。こんな奴、ほっといてもいいとも思うが、ちょっと可哀想で見てられない。

 

「あー、リーファ。まだそいつ原稿書いてないんだ。完成したら見せてやるから」

 

「ゲェッ⁉︎八幡⁉︎」

 

「分かった!楽しみにしてるねー」

 

すると、材木座が俺の肩をいきなり組んでくる。

 

「お、おいどういうつもり?俺に自殺して欲しいの?」

 

完全に素に戻ってるよ。そのまま巣に戻ってくんないかな。

 

「安心しろ。完成したら、って言っただろ。永遠に完成してないって言っとけばなんとかなるだろ」

 

「むぅ……流石屑の王者……」

 

「お前に言われたくねんだよ。つーかお前こそどういうつもり?せっかく女子がお前に声掛けてくれたのに。もう二度とないんじゃねぇのか?」

 

「むう、確かにそれはあるかもしれん。それに少しならサラマンダーの女性と話すことも可能だ」

 

おぉ、少し成長してるじゃねぇか。

 

「だがしかし、それはリアルで顔が見えないから可能なのだ。しかし、彼女らは八幡の知り合いであろう?もしかしたらリアルで遭遇する可能性も無しに非もあらず……」

 

「いやねーから。そういう希望は捨てろって言ったろ」

 

大体、そう思うならまずその中二キャラを捨てろよ。と、思った時だ。

 

「出して……」

 

声がした。見ると、氷の檻に入れられた女性が中にいた。わ、罠臭ぇーー………。同じ事を思ったのか、助けようとするクラインの襟をキリトが掴んだ。

 

「罠だ」

 

「罠よ」

 

「罠だね」

 

キリト、シノン、リズと謎のジェットストリームアタックが決まる。

 

「お、おう……罠だよな。……罠、かな?」

 

クラインが言う。ちなみに材木座も隣で「罠なの…?」みたいに呟いていた。だが、更にそのバカマンダー2人に、

 

「罠だよ」

 

「罠ですね」

 

「罠だと思う」

 

と、アスナ、シリカ、リーファと言った。いや実際、罠だとは俺も思う。そのまま俺たちが通り過ぎようとした時だ。

 

「幻紅刃閃ァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

気が付けば材木座が檻を壊していた。今まで、何回材木座に殴りたいと思ったかは分からないが、今回はぶっちぎりでイラっとした。

 

「おい、材木座……」

 

文句をいってやろうと口を開きかけた時だ。俺の前にクラインが出て来て、材木座の手を熱く握った。

 

「おい剣豪!お前ならやってれると、思ってたぜィ!」

 

「むは?むははははっ!我くらい偉大になるとこれくらい当然の事であろう!」

 

………バカマンダー同士、分かり合えたようで何より。イイハナシダナー。見れば全員が大きくため息をついていた。

 

「なんか、すまんな……」

 

代わりに謝っておいた。

 

「気にするな。悪いのはエイトマンじゃない」

 

で、材木座は腹立つ声でNPCに手を差し出した。

 

「ありがとう、妖精の剣士」

 

「弱き民を助けるのも、将軍の努めよ。気にするな」

 

あー……こ、殺してぇ……。

 

「私はこのまま城から逃げるわけにはいかないのです。巨人の王スリュムに盗まれた、一族の宝物を取り戻すために城に忍び込んだのですが、三番目の門番に見つかり、捕らえられてしまいました。宝物を取り返さずして戻ることは出来ません。どうか、私を一緒にスリュムの部屋に連れていって頂けませんか」

 

「え?う、うむ……」

 

で、俺を見る材木座。俺に判断を委ねられても困るので俺はキリトを見た。すると、ため息をつくキリト。

 

「はぁ……分かったよ剣豪さん……」

 

「ふむっ…妥当な判断と言えよう……」

 

「む、ムカつく……」

 

「抑えろキリト」

 

そんなわけで、新たな罠丸出しの仲間が出来た。

 

 

 

 

 

 



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