兄妹の紡ぎ出す物語 (雨宮陽花)
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第0話

たいしたものではありません


ある日の朝。

私はいつものように起きる。2段ベッドなので、一度降りないといけない。

音をあまりださないようにして降りると兄の連が寝ていた。

紅(まぁ、朝食を作るために早起きしているのだから当たり前か…)

寝ているのを確認したので扉を起こさぬよう開け、廊下に出る。

廊下に出ると少し歩いただけで階段があるので、ゆっくり降りた。

リビングにつくなり私は台所へと向かい、料理を始めた…。

 

いい香りがしてきたので目を開ける。

多分あいつだな、そう確信すると俺は迷いなく下のベッドから出る。

見慣れた部屋だが、なんとなく見渡す。

寝室として使っている2階のこの部屋は2段ベッドしかないため、少し広い部屋という風に見える。

それから部屋を出る。廊下に出て、階段を降りる。

リビングにつくと未だに寝間着の紅羽が朝食を作っていた。

連「あー…手伝うか?」

俺も寝間着のまま、困ったように笑ってそう尋ねる。

紅「ん…?あぁ、大丈夫だよ。でも配膳は手伝ってね」

…どうやら問題はないようだ。仕方ないので待っている間、椅子に座って台所を眺めることにする。

 

連(…大人になったらすぐに嫁に貰ってもらえそうだよな、こいつ)

眺めて早々、思ってしまう。やっぱり俺よりも料理を作っているせいだろうか?

一応俺も家庭料理は出来るから…まぁ、いいか。

せめてこの時だけでもいいからポニーテールにすればいいと思うのだが…何故結ばないのだろう。

連(結べば楽だろうに…)

これも何度思っただろう。しかし、見ていて問題はなさそうだから言わない。

 

それから10~20分しただろうか。

紅「連ー、配膳手伝ってー」

と言う声が台所からした。

連「ん…?あ、あぁ…分かった。今行く」

そう返事をしてから椅子から立ち上がり、台所へ向かう。

台所に用意された軽食にも近い軽食を見ると…相変わらず栄養の整ったものだな、と思う。

それを見て苦笑したのち、紅羽と共にテーブルに朝食を置く。

テーブルをはさんでお互い椅子に座り、「いただきます」と同時に言ってから食べる。

その間は他愛も無い会話をした。もちろん今日することについても話した。

 

食べ終えて、歯を磨き、互い自室に行って着替える。

春だから、薄い長袖に長めのズボン。

連(季節にあわせるとこんなもんだよな…)

姿見を見ながら俺はそう思う。

ずっと見ていても見慣れた自分の姿が見えるだけなので、自室を出た。

出ると紅羽が、白いワンピースを着ているのが見える。靴下も白い。

連(…まぁ、暖かくなる時期だから問題ないか)

そう思いながら紅羽を見る。すると不思議そうにこちらを見つめ

紅「…私の服装がどうかした?ちゃんと季節にはあわせてあるはずだけど」

と言ってくる。少し悪い気がし、つい

連「あぁ、悪い。そんなつもりはない」

と言ってしまう。しかし、やっぱり分かっていたのか

紅「まぁ、いいよ。んじゃ、行こうか、外出しに」

そう言って、階段を降りようとする。俺もその後を追って素直に降りる。

リビングを過ぎ、そのまま玄関に近づいた俺たちは靴を履くなり外へ出かけたのだった。




登場人物
水無月紅羽(みなづき くれは)
水無月連(みなづき れん)

一応兄妹です


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第1話

面白い場面なんてありませんよ


家から必要な物だけ持った俺たちは家を出た。最後に出た俺は玄関のドアの鍵を閉め、2回ほど開くかどうかを確認してから紅羽に声をかける。

連「んじゃ、行くか」

振り向きながら紅羽を見ると…

紅「そうだね。場所は…どうせ決めてないんだろうからちょっと近場の店でも行かない?」

と微笑を浮かべながらこちらを見ている。

大方喫茶店か女子向けの店のどっちかだろ、と思ったがあえてつっこまない。

俺が買い物に同伴するのはいつものことだからだ。

連「あぁ…分かった。そうするか」

ついでに首を縦にふる。紅羽は分かったらしく、こちらもうなずき歩道を歩いてその店へと向かう。

 

歩道の道路側の端には同間隔で植えてある桜の木が生えていて、もうすぐで見ごろだろうと言うぐらいには咲いていた。

横目で見ながら、紅羽の行く後をゆっくりと歩く。

それから紅羽の髪型をしっかりと見てみる。

綺麗な白い髪をツーサイドアップに結んでいて、その飾りとして鈴のついたリボンをつけている。

連(今日はピンク色なんだな…)

なんで色を変えたりするのかいまいち分からないが…それが紅羽のやり方なのだろう。

まぁ、いちいち確認する俺も俺だが。

暫く歩いていると

紅「あぁ、そうだ。せめて場所ぐらいは言っておこうかな」

と俺の横に並んで言ってくる。

行く場所も知らずに行くのはさすがに…な。

連「そういや聞いてなかったな。どこなんだ?」

横目で見ながら不思議そうに尋ねる。

クスクス、とイタズラっぽく微笑むと

紅「まずは服屋行こうかなってね。んで、次はちょっとした店でも寄ろうと思ってるの」

なんて俺をほぼ見ながら言った。

ちょっとした店…多分ダ○ソーみたいな場所なんだろう。

あそこは懐にも優しいからな。だからそこにも寄るのだろう。

まぁ、どうせ服屋は見るだけだろうけどな。欲しいのあんまりないし。

 

5分かそこら歩いて服屋に寄った俺たちはちょっと商品見てから外に出た。

紅「うーん…あんまりいいのないなぁ」

そうぼやく紅羽。俺は呆れたように笑い、それから

連「一店舗しか見てないのにそれはないと思うな」

と紅羽を向きながら言った。

他にも店があるのだが…それは乗り物を使うか、琴音って奴に連れて行ってもらうしか方法はない。

他にも手段はあるのだろうが…あいにく俺たちはこれ以外のことはあまり出来ない。

紅「…まぁ、そうだね。んじゃ、ちょっと物買おう?」

うなずいたのち、そう提案してくる。きっとダ○ソーのことを言っているのだろう。

連「ああ、そうだな」

そこから比較的近いところにも似た百円均一があるので一緒に向かう。

 

コンビニのような大きさしかないが、百円均一でよく世話になっている場所。

親戚の琴音がいない限りには仕方ないが、ここで我慢するしかない。

俺たちは必要な物を数個買い、帰路につく。

すると日はちょうど上の方になっていた。時間が気になり、スマホを取り出し確認する。

連(…大体11時か…。今日は外食にするか)

そう思った俺はスマホをしまい、買い物袋を1つ持ちながら

連「なぁ、紅羽。今日の昼は外食にしないか?」

…と提案してみた。時間的に帰る頃には12時を過ぎるかもしれないし、悪い相談ではないだろうと思ったからだ。

それは察してくれたのかうなずいてくれた。

紅「そうだね、そうしよう」

 

帰っている最中、いいところに小さな食事処があったのでそこに入る。

互い違うメニューを頼んだのだった……




いいところがあまり見つからないどうしよう。まぁ、なんとかするか


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第2話

ある程度リアルが混ざってます。


俺たちは昼食を終えてレストランから出る。

少しばかり早くなってしまったが、遅い昼食よりかはだいぶマシだろう。

連(あとは家に帰ってしまうだけか…)

そう思い、隣に歩く紅羽を見る。男女、なだけあって身長差がある。

たまに恋人だと勘違いされることがあって困ることもある。

紅「…勘違いされやすいことでも気にしてるの?もう慣れたことじゃない」

図星だ。だから思わず…

連「うっ…。い、いくら慣れたことだからと言ってだな?」

と、言葉を半ば濁らすように言う。

ついでに少しばかり苦笑を浮かべる。

まぁ、確かに仕方ない。女子同士、男子同士ならある程度は似るだろうが―――俺たちは男女だ。

同性同士と違って似る場所が少ない。だから勘違いするのも無理はないのだろうが…。

そろそろ慣れなくてはいけないのだろうが。しかし、あまり慣れたくない。

兄妹って理由ではない。間違いなく。

紅「まぁ、そうだね。でも私たちの関係なんだから大丈夫なんだって。それに説明したら大抵の人は信じてくれるから、ね?」

丸め込まれている気もしないまでもないが、事実だ。

だから俺はうなづく。

連「…そうだな。んでもそろそろ紅羽も異性だって認識してくれないかなぁ」

半ば呆れ顔になって前を向く。

すると紅羽はクスクスと笑い出す。

紅「そりゃ異性だって分かってるよ。兄妹って言うぐらいなんだからさ。だから兄として、ね♪」

連(こいつ…からかうのが好きなのか?)

そう思いながら家に入る。

 

…誰に向かって言ってるのか知らないが、自己紹介をしよう。

俺は水無月連(みなづきれん)。一応15歳だ。

身長はその年齢の男として高い方。数字は知らない。

髪色は黒、男としては珍しく手入れはしてる方。短いおかげでそんなに苦労はしないが。

目も黒だ。形は至って普通…だと思う。鏡を見てもいまいち分からない。

それでさっきから紅羽、と呼んでいる俺より小さい女子は水無月紅羽(くれは)だ。

所謂俺の妹で、確か14歳だったと思う。

こいつは髪の毛が白い。銀髪と言ってやればいいのか白髪と言ってやればいいのか凄く悩む。

白い髪は長く、いつも自分で軽く結んでいる。どっかでそれをツーサイドアップ、だと聞いた。

因みに紅羽って奴、目が赤い。綺麗なんだが…名前の由来はここからなのか?といつも悩んでしまう。

しかし、聞いたことはない。なにせ名前があるだけマシだからだ。

 

そんなこんなで俺たちは買ったものを2人で手分けして片付けた。

一緒にしただけあって手早く片付け終わる。

連「今日買った分はこれぐらいか…」

ふぅ、とリビングにある身近な椅子に腰掛けてそうつぶやく。

大体1~2日分ぐらい買う。賞味期限や消費期限によっては3日分買う。

紅「本当男なのに家庭的だよね。もう主夫になれるんじゃない?」

悪戯げに笑いながら俺の前に立つ紅羽。

苦笑してから俺は思ったことを言う。

連「お前こそすぐにでも主婦になれるんじゃないか?」

お互い、料理を作っているのだから無理はないが。

因みに裁縫などは紅羽が上だ。洗濯は…同じくらいか。

紅「んじゃ、お互いどっかの専業しゅふにならない?」

ニコニコ、と笑いながらちょうど俺と対面する場所にある椅子に座り、そう言う。

相変わらずだな、そう思った俺は困ったように笑いかけて言う。

連「それは相手見つけてから言わないか?」

俺は彼女なし、紅羽も彼氏なし。片思いすらしてはいない。

…そのあとは30分辺り、沈黙が続いた。

 

13時半過ぎ。俺はなんとなくおやつを作っていた。

生卵、牛乳、生地の元になる粉…を泡だて器である程度混ぜる。

それをクッキングペーパーの上に形を整えつつのせる。

のせたあとは温めておいたオーブン機能付きの電子レンジの中にいれる。

それで数分焼く。

焼き終えると良い匂いがしてきて…。

紅羽がきていることに気がついたのはクッキーを取り出して皿にのせ終えた時だった。

連「食べたいのか?紅羽」

さりげなく一瞥してから、クスッと笑う。

チラッと見た程度ではいまいち分からない…。

紅「そりゃあ…少しはね。あ、でもちゃんと練習してるんだよね?」

男でも料理は出来た方がいい、とでも言いたいのだろうか。

連「それに関しては食べたら分かるよ。ま、味は保障するから」

あえて練習している、とは言わない。

言ったところで食べてみないと分からないからだ。

その考えを汲み取ったのかそれとも察したのか…

紅「ん、そうなの。分かった。…そうじゃなかったら本屋でレシピ本買ってくるからね」

半眼で俺を見ながらそう言ってくる。

優しいんだか、冷たいんだかよく分からない奴だ。

クッキーをのせた皿をリビングにあるテーブルに置く。

それからテーブルをはさんで対面に座るように椅子に腰をおろす。

紅「……」

連「……」

お互い無言で俺の作ったクッキーを食べる。

連(俺からしたら…こんな感じか?)

材料は間違っていない。

だから問題は無い上、味も普通だと思う。

一枚を食べてから紅羽を見つめる。

どうやら表情がそんなに悪くないから味は平気なのだろう。

紅「へぇ…多少は上手くなったんだ」

口元を緩めてそう言ってくる。

連「おっ?そうか?そりゃしてよかった。んじゃあ、材料の配分はあれぐらいか…」

さっきの量を思い返しながら。

その後は俺たちにとってごく普通の一日が過ぎた。

寝る前、明日は琴音が来るかもしれないな、と紅羽に伝えて寝た。




バトルは…考えてます。


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第3話

新しいキャラが出ます


次の日。いつもの如く朝食の匂いでリビングまで降りる。

毎日毎日紅羽が作っているものだからたまには作ってやりたいと思う。

それを伝えると俺は俺で違うことをすればそれでいい、だなんて止められる。

因みに台所に立つ男は嫌いじゃないそうだ。…うん?誰に向かって言ったんだこれ?

まぁ、いいか。

リビングにある椅子に腰をかけて、今日の朝食を眺める。

ご飯、味噌汁、焼き魚(鮭)、少しのサラダ。

連(なんだか和食だな…)

大抵和、だからもう慣れた。

しかし…ここまで和食にするか?食べやすいからいいけど。

連「紅羽、今日の朝食は食べやすそうだな」

クスッ、と微笑んでからそう言ってやる。

すると嬉しそうに微笑む。

紅「そりゃそうでしょ。朝からボリュームのある食事は避けたいし…なによりバランス整えないと体に悪いよ?」

…だから焼肉とか、肉系の料理の時は決まって野菜に悩んでいたのか。

と、言うか肉にあう野菜なんてバランスよくとってりゃ問題ないだろうに。

よく分からない奴だ。

連「まぁ、そうだな。…だったら野菜増やさないか?」

バランスよくとるならご飯、味噌汁、焼き魚(鮭)、野菜。

その方が和食っぽいし、尚且つバランスがいいと思うが―――別に問題ない、のか?

紅「野菜、か。考えておくね」

クスクス、と悪戯げに笑いながらそう言ってくる。

どうしたんだろうか。男としておかしなことでも言ったか…?

健康面の話としては真面目に話したつもりなんだけどな。

まぁ、別にいいか…。

 

食事、歯磨き、洗顔からの着替え。

それから再びリビングで対面になるように座る。

連「連絡ぐらいよこしてほしいんだけどな…」

そう言ってから軽くため息をつく。

まるで神出鬼没みたいに戻ってきたりするもんだから困る。

紅「まぁね。でもそろそろな感じがするよ」

なんだか楽しそうに微笑みながら言う紅羽。

誰に似たんだか本当に分からなくなる。

連「そうか。…助かるよ」

一応携帯電話の電話番号(俺と紅羽の分)を交換してあるはずなんだけどな。

なんで連絡してこないのだろう。

さすがに携帯電話…いや、スマホの扱い方を知らない人じゃないはずだけど。

俺たちがガラケーの頃にスマホにしないか、とすすめてきたし。

しかもその時に紫色のスマートフォンを見せてきた。

説明もしてきたし…。

紅「っと…そろそろかな」

本当どうして分かるのか。疑問に思う。

聞けばいいんだろうけど…なんだか気まずい。

 

それから10分後、家の近くで車の止まる音がした。

続いてドアをしめる音もする。

間違いなく琴音がきたんだ、と分かった。

俺は紅羽と目線をあわせるべく、顔を向ける。

言いたいことがお互い分かっているのでうなずきあうだけで終わる。

しばらくすると玄関の扉が3回ノックされた。

出迎えに行かなくとも勝手に入ってくるのが分かっていたので無視した。

すると案の定、琴音はノックした後、当たり前のように入ってきた。(靴は脱いでる)

琴「あら、さすがに準備もしてくれているのね」

クスクス、と微笑みながら言う琴音。

苦笑する俺に対し、紅羽は半眼で呆れたように見つめる。

紅「なんとなくあなたが来る、って思ってね。…いい加減突然戻ってくるのは勘弁してほしいな」

全くだ、と思った俺はすぐに補足するようにして

連「せめて連絡の1つぐらいは欲しい…ってな。俺たち、もうスマホは扱えるんだぜ?」

と言った。

さすがに話の分からない奴ではないのでうなずく。

琴「そりゃ長い間スマホを触っているみたいだものね。扱えるようにはなるわ」

言い終えてから近くにある椅子に腰をおろす。

俺からすれば左、紅羽からすれば右。

連(また暫くはいそうだな…)

そう感じた俺だった。




霜月琴音は兄妹と知り合いのような関係です


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