戦極姫~戦乱に導かれしジェダイの騎士~ (四駆動戦士)
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銀河の戦い

帝国の最終兵器である第二のデス・スターの内部で、黒髪の青年が黄色に光るライトセーバーを振るいストームトルーパーの放つビームライフルの光線を全て弾き返していた。

青年の名前はサイラス・セリエース。

ジェダイの騎士として修行を積んだ戦士である。

 

「どれだけ出てくるんだ!コイツら!」

 

無数に飛んでくる光線はどれも当たれば致命傷は免れない出力を誇るが、ジェダイの騎士として厳しいフォースの修行を積んだ青年は、そのフォースの力を使い全ての光線をライトセーバーで弾き返し、敵を倒していった。

 

「こんなところでお前達の相手をしている場合ではないのに!早くルークを助けにいかなければ!」

 

ルークとは、サイラスと共にジェダイの騎士として修行を積んだ友である。

ルークは、名をルーク・スカイウォーカーと言い、あの恐れを知らない英雄とまで言われた最強のフォースの使い手であるアナキン・スカイウォーカーの息子である。

しかし、道なかばでアナキン・スカイウォーカーはフォースの暗黒面に落ち、シスの暗黒卿ダース・ベイダーとなってしまった。

それを知ったルークは絶望したが、父親を助けたいという想いから再起した。

 

「これで終わりだ!」

 

サイラスがライトセーバーを一閃し、最後のストームトルーパーを真っ二つにした。

 

「ハァ!ハァ!.....無事でいてくれ!」

 

サイラスは休む間もなく走り出した。

ルークとの出会いは惑星ダゴバでジェダイマスターであるヨーダの元で修行をしていたときだった。

 

 

 

 

 

 

昔のサイラスはただ一人で宇宙を放浪し惑星を旅するだけの流浪者だった。しかしある時、惑星でたまたま墜落船を見つけ中を調べた時、一番最後尾の貨物室の中で頑丈な金属製の箱を見つけ、サイラスはその箱の中から60センチ程の筒状の機械を見つけた。

サイラスはこの機械が何なのか最初は分からなかった。

しかし、たまたま旅の途中で出会った商人にこの機械を見せたところ、この機械はジェダイの騎士が使うライトセーバーと言う物であると判明した。

商人に売って欲しいと言われたがサイラスはそれを拒否した。

それからだろうかサイラスは正体不明の人間達から狙われるようになった。

その理由もサイラスは理解していた。

ライトセーバーだ。

ジェダイの騎士のみが扱うことが出来ると言われているこの武器はとても希少であり闇市場で高く取引される。

サイラスも一度だけジェダイの騎士の戦いを見たことがあるが、とてもではないが同じ人間とは思えなかった。

しかしある時、全身をマントで隠し顔もフードで隠した男に出会った。

その男は驚くことに同じライトセーバーを持っていた。

 

「あんたはまさか!」

 

サイラスは声をあげると男はサイラスに襲いかかってきた。

サイラスは驚いたが冷静にビームライフルを抜き男に対して撃った。

しかし、男はビームをライトセーバーで弾きそのままサイラスのビームライフルを真っ二つにした。

 

「なっ!」

 

サイラスは、素早く男と距離を取った。

すると男が口を開いた。

 

「ライトセーバーで戦え」

 

「なに?」

 

男はサイラスにライトセーバーで戦えと言ってきたのだ。

しかし、ライトセーバーはジェダイの騎士として修行した人間でなければ扱うことが難しい武器であり、素人が使えば自身を殺してしまうような危険な物だ。

サイラスは迷った。

しかし、このままでは男に殺されてしまうだろう。

サイラスは意を決して腰に吊るしてあるライトセーバーを手に取り、スイッチを入れた。

ライトセーバーから黄色の光の刃が形成される。

 

「思い出すんだ。どうやって戦っていたかを....」

 

サイラスは一度だけ見たことのあるジェダイの騎士の戦いを思い出していた。

そして、サイラスは自ら先に動き、男にライトセーバーを降り下ろした。だが、サイラスの攻撃を男は簡単に受け止めた。

そして男は反撃を繰り出してきた。

サイラスはこの反撃をギリギリの所で受けとめる。

 

「くっ.....少しは素人相手に手加減しろよ!」

 

「無駄口を叩いていると死ぬぞ」

 

男とサイラスの攻防は続いた。

サイラスは、男に手加減しろとは言ったが、男は最初から手加減をしていた。

殺そうと思えばすぐに殺せる筈なのにまるでこちらを試すかのような男の戦いにサイラスは戸惑った。

しかし、その戸惑いは大きな隙を生んだ。

サイラスはライトセーバー弾かれ、男が手をつきだすとサイラスに衝撃波が襲った。

サイラスは、後方に大きく吹き飛ばされた。

 

「うぐっ!」

 

どうあがいても勝てなかった。

力差がありすぎる。

しかし、このままではいずれ殺される。

 

「ん?」

 

サイラスはふとライトセーバーに目を落とすとあることに気が付いた。

ライトセーバーにもう一つスイッチがあるのだ。

 

「何のスイッチだ?」

 

サイラスは何故か迷わずそのスイッチを押した。

すると反対側からもう一つの光刃が生み出された。

 

「これは....」

 

サイラスはライトセーバーを握り直すと何故かどうやって戦えば良いのか、どのようにこのライトセーバーを扱えば良いのか自ずと理解した。

それが何故だか分からない。

しかし、サイラスは理解し、そしてイメージした。

守りと言うものを捨てて攻撃に撤する戦闘スタイルを....。

 

「うおおおおお!!」

 

サイラスは駆けた。

頭の中にあるのは攻撃のみ、相手に防がれようと受け流されようと相手に反撃の隙を与えない。

サイラスの猛攻は男に反撃の隙を与えなかった。

男は、サイラスの舞うような連続攻撃に防戦一方の中、サイラスの攻撃を受け流すと距離を取った。

サイラスは、男の距離を詰めようとした。

しかし、男はライトセーバーのスイッチを切り、光刃を消した。

サイラスは、それを見て驚き転びそうにながらも立ち止まった。

 

「なんのつもりだ!」

 

「素晴らしい才能だ。だが、その才能をそのままにしておけばいずれ己を破滅に導くだろう」

 

サイラスは男が何の話をしているのか分からなかった。

 

「いったい何の話をしている」

 

「惑星ダゴバへ行け。そこに居るものにフォースを学べ」

 

「ダゴバ?聞いたことがないぞ。それにフォースってなんだ?」

 

すると男は一枚の紙をその場に置き、身を翻した。

 

「待て!」

 

サイラスは男を追った。

しかし、既にそこに男の姿はなかった。

 

「なんなんだ?破滅だのフォースだの」

 

サイラスは男が置いていった紙を拾い上げた。

そこには、惑星ダゴバの座標が記されていた。

 

「.....ハァ、行かないと行けないのかな~、やっぱり.....」

 

サイラスは少し怠そうな気持ちになりながらも紙をポケットにしまった。

そして、サイラスは紙に書かれた座標を目指した。

 

 

 

 

 

 

「ここか....なんか気味悪いな」

 

サイラスが着いた惑星ダゴバは霧に覆われた惑星で地表も鬱蒼とした森林や沼地だった。

 

「こんなところに本当に居るのか?」

 

サイラスは、辺りを探索することにした。

猛獣も居ることが考えられたため、念のためライトセーバーをいつでも抜けるように心構えをした。

探索を始めてから2時間程が経過した。

 

「休憩するか....」

 

サイラスは、近くの木に腰を下ろし水筒に入った水を飲んだ。

 

「ハァ.....」

 

そもそもどんな人物なのかも知らないのにどうやって探せと言うのか、とサイラスは思った。

それにあの男の正体も一切分かっていない。

そして罠の可能性もあった。

しかし、自分のライトセーバーを奪うのであればあのとき奪えた筈だ。

わざわざ罠に嵌める必要はない。

サイラスが思考を巡らしていると後ろに何らかの気配を感じた。

 

「....っ!」

 

サイラスは、ライトセーバーを抜き両手で左右のスイッチを押した。

左右から黄色の光刃が形成される。

 

「ほう。わしに気付いたか」

 

すると木の影から杖をついた全身の緑色の小柄の老人が姿を現した。

 

「にして、わしに何の用じゃ?」

 

「何故お前に用があると分かる」

 

「こんなところにお主は観光に来たのか?」

 

確かに言われて見ればそうである。

こんな辺境の地に観光に来る物好きはそういない。

 

「それにお主はライトセーバーを持っておる。誰にわしの場所を教えて貰ったかは知らぬがな」

 

「それは....」

 

サイラスは、ライトセーバーの入手と男との出会いと戦いについて老人に教えた。

 

「ふむ.....わしの場所を知っておるものは多くはないのじゃがな」

 

「それで?教えてくれるのか?」

 

小さき老人は顎の辺りをさすっていた。

 

「辛い修行になるが覚悟は出来ておろうな」

 

「いや、キツいのは勘弁だな」

 

サイラスは渋った。

何故辛い修行をしなければならないのかと。

 

「お主はフォースが何なのかを全く理解しておらぬようじゃな。それで今のような戦いをしておったら遠からずお主は死ぬぞ」

 

サイラスは興味なさそうに腰に手を当てた。

 

「またその話か。破滅だの死ぬだの、ライトセーバーを持っているだけで本当に死ぬのか?」

 

「ライトセーバーがお主を殺すのではない。確かにライトセーバーの扱い方しだいでは死ぬだろう。しかしお主は、実際にライトセーバーを使いジェダイの騎士と戦って生き残っとる。問題は戦い方じゃ」

 

「戦い方?」

 

サイラスは疑問に思った。

サイラスは生きるために、無我夢中で戦った。

そこに流派といった高尚なものは存在しない。

ただ、ライトセーバーを振り回しただけだ。

確かにまともな戦い方ではないが自分を破滅させてしまうような問題になるのだろうか。

 

「お主の戦い方は、恐らくヴァーパッドと呼ばれるものじゃ。まだお主の戦い方を見とらんから確証はないがの」

 

「ヴァーパッド?」

 

聞き覚えのない言葉だった。

 

「今は亡き、メイス・ウィンドゥが編み出した戦い方じゃ。本来ならば全てのフォームを極めなければ辿り着けないのじゃが、どうやらお主は本能で体を動かした結果 、ヴァーパッドに辿り着いたのじゃろう」

 

「そんなことはあり得るのか?」

 

「いや、あり得えぬ。あってはならぬ事じゃ。ヴァーパッドは先にも言ったが全てのフォームを極めなければならん。そして、その過程で身に付いた強い精神力と信念がなくては、たちまち暗黒面に落ちてしまう」

 

「俺は別にそんなことはなかったがな....」

 

「それは完全なヴァーパッドに至っておらんからじゃ。じゃが、そのまま使い続ければいずれは暗黒面に落ちるじゃろう」

 

「......で、それを防ぐにはフォースを学ぶしかないと?」

 

「そうじゃ」

 

「ハァ.....分かった。俺も死にたくはないからな。頑張って学ばせて頂きますよ」

 

「よかろう。では、ついてくるのじゃ」

 

老人は森の奥へと歩みを進めた。

 

「あっ、ちょっと....」

 

サイラスは老人を呼び止めた。

 

「俺は、サイラスだ。あんたは?」

 

「.....ヨーダじゃ」

 

それからの修行は過酷を極めた。

本来ならフォースの修行は幼少の頃から段階的にするものだがサイラスはこの時点で20才と年を取りすぎていた。

しかし、ヨーダはサイラスの才能をそのままにするのは危険過ぎると判断し、サイラスにジェダイの騎士の修行を行う事にしたのだ。

しかし、あまりの過酷さに時には口論になったり、投げ出したりと問題もたくさんあった。

ある時は、ライトセーバーで喧嘩するような事もあったが、ヨーダはジェダイ・マスターと呼ばれるほど騎士で、その強さは歴代でも1、2位を争う程の強さを持っていた。

そんな者を相手に喧嘩をしたのだから結果は言うまでもなかった。

少し遊ばれた挙げ句、フォースで吹き飛ばされ水溜まりに沈められた。

それからだろうか、サイラスは文句も言わずに修行に打ち込んだ。

サイラス自身が、ヨーダの実力を認めざるを得なかったからだ。

サイラスの才能は修行が進むごとに開花していき、次々とジェダイの戦い方を吸収していった。

そして、サイラスの持つフォースの力は日増しに強くなっていった。

 

 

 

 

 

ヨーダと出会い、一年と言う時が過ぎた。

その時を境にサイラスは同じ夢を何度か見るようになった。

自分とヨーダ、そしてサイラスと同じ年くらいの見知らぬ男が話している夢だ。

 

「師よ。お話が」

 

この時、サイラスはヨーダの事を師と呼んでいた。

そこには、ジェダイの騎士として自覚があり、ここまで教えてくれたヨーダに対する敬意が表れていた。

 

「どうしたのじゃ。サイラス」

 

「実は最近同じ夢を見るのです。私と師、そして見知らぬ男との夢です」

 

サイラスは、ヨーダに夢の話をした。

 

「そうか。恐らくそれは予知夢じゃな。フォースの力が強くなると近い未来を夢で見ることがあるのじゃ」

 

「では、これは現実になると?」

 

ヨーダは、サイラスの問に頷いた。

 

 

 

 

 

それから数ヵ月が経ったある日、修行中のサイラスの耳に何かが墜落したかのような音が聞こえた。

そして、同時に強いフォースの力を感じた。

 

「師よ!」

 

サイラスは、近くにいたヨーダを呼んだ。

 

「ふむ。サイラス、見てきてくれぬか」

 

「わかりました」

 

サイラスは、フォースを感じた方向へと走り出した。

フォースを感じる場所に行くと不時着した戦闘機があった。

サイラスは、生存者を確認するため小型船に近づいくと男が一人小型船から出てきた。

 

「無事か!」

 

サイラスは大きな声を出し男に近づいた。

しかし、サイラスは男の顔が分かるまでに近づくと歩みを止めた。

 

「お前は.....!」

 

小型船から出てきた男は、夢に出てきた男だった。

男は不時着の衝撃で体を痛めたのかその場に崩れ落ちた。

 

「お、おい!」

 

サイラスは急いで男の元に駆け寄った。

幸い気を失っているだけで、目立った外傷はなかった。

 

「さて、こいつをどうするべきか」

 

すると急にどこからか声が聞こえてきた。

 

「すまないがそいつを君の師匠のところまで運んでくれるかな」

 

サイラスは、声の聞こえた方向に目を向けると、そこには半透明の老人が立っていた。

サイラスは、一瞬驚いたがその人間からフォースの力を感じ、彼が何なのかを理解した。

 

「もしや、フォースと一体化したのですか?」

 

サイラスの問に老人頷いた。

サイラスはヨーダから聞いたことがあった。

高位なジェダイは肉体をフォースと一体化させる事が出来ると。

恐らくこの老人がそれなのだろう。

だとすれば、さぞかしこの老人は強い騎士だったのであろう。

 

「師を知っているのですか?」

 

「ああ、長い付き合いだ....」

 

「そうですか。では、こちらへ」

 

サイラスは男を担ぎ上げ、ヨーダの元へと案内した。

 

 

 

 

それから一日が過ぎた。

 

「うっ.....くっ....」

 

男は覚ました。

付きっきりで看病をしていたサイラスは直ぐに水を男に与えた。

 

「大丈夫か?」

 

男は、水を受け取りすべて飲み干した。

 

「ハァ!......ああ、すまない。ここは....」

 

「我が師であるマスター・ヨーダの家だ」

 

「そうか、無事についたのか....」

 

男から安堵の表情が見てとれた。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はサイラス・セリエースだ」

 

「ルーク・スカイウォーカーだ」

 

サイラスとルークはお互い握手を交わした。

 

「師に君が起きたことを伝えてくるよ」

 

サイラスはそう言うと部屋を出ていった。

 

 

 

 

「師よ。ルークが目を覚ましました」

 

「ああ、サイラスか。今ちょうど話が終わったところだ」

 

ヨーダと霊体の男は、昨日からずっと話していた。男の名前はオビ=ワン・ケノービと言い、師であるヨーダとは古い付き合いだそうだ。

 

「ルークの事を頼む」

 

霊体の男はそう言うとサイラスはヨーダの方を向き、

 

「では、ルークに」

 

「うむ、ルークにフォースの修行をすることにした」

 

それを聞いたサイラスは笑みを浮かべた。

ルークとは歳が一緒らしくサイラスにとっても共に修行する仲間が出来るのは喜ばしいことだった。

それからは、サイラスとルークは共に修行励んだ。

二人の仲は直ぐに良くなり親友と言えるほどになった。

ルークのフォースの才能は素晴らしく、サイラスと同等、若しくはそれ以上の才能を持っていた。

しかし、ルークもまたフォースが強くなるにつれてサイラスと同じ予知を見るようになった。

それは、大切な人が窮地に陥ると言うものだった。

 

「ルーク!冷静になれ!」

 

「レイヤとソロが危ないんだ!見捨てることは出来ない!」

 

「師が行くなと言っていただろう?それにまだ修行は終わっていない」

 

「お前はレイヤとソロよりも修行が大事だと言っているのか!?」

 

「そうは言っていない。だが今の段階では救うことが難しいと言っているんだ」

 

「それでも僕は行く。大切な者を救うために.....修行を途中で投げ出してすまない、でも必ず戻ってくる」

 

ルークはサイラスの呼び止めに応じず、惑星ダゴバを後にした。

 

サイラスは、ヨーダのもとへ戻りルークの後を追う許可を求めた。

 

「ダメじゃ!」

 

ヨーダはこれに強く反発した。

 

「しかしこのままではルークが....!」

 

「それでもじゃ!お前を暗黒面に触れさせる訳にはいかん!」

 

「私は貴方の修行のお陰で強くなりました。暗黒面に屈する事はありません!」

 

「何を傲慢になっておる!今のお前では誰も救うことはできん!」

 

「くっ.....!!」

 

サイラスは、ヨーダの叱責に怒りを感じたものの直ぐに冷静になった。

 

「修行に戻ります」

 

そして、サイラスは身を翻し外へと出ていった。

サイラスが外へと出ていったのを見送るとヨーダは嘆息した。

それを見たオビ=ワンはヨーダに話しかけた。

 

「ルークにもあれくらいの我慢強さがあればよかったですな」

 

「いや、サイラスも一昔前はルークのように我慢のない子じゃったよ。今はかなりましになった方じゃ」

 

ヨーダの言葉にオビ=ワンは苦笑した。

そこには、サイラスの成長を認めるヨーダの気持ちが感じられたからだ。

そしてその頃、サイラスは一心不乱に修行をしていた。来る時に友の助けになるために。

 

 

 

 

 

 

 

それから1年と言う時が流れた。

サイラスは、心身ともにジェダイの騎士として成長を果たしていた。

その力は、ヨーダですら推し量れない程のものであった。

しかし、そのヨーダも病床に伏してしまいヨーダ自身も己の死を悟っていた。

サイラスもヨーダが病床に伏してからと言うもの修行よりもヨーダの看病に力を入れていた。

 

「大丈夫ですか?師よ」

 

「ああ、ルークが戻ってくるまでは死ねんからのう」

 

「大丈夫です、もうじき来ます。フォースがそう教えてくれました」

 

「サイラス、お主のフォースは強すぎる。フォースにバランスをもたらす者以外にこれ程のフォースを持った者が居るとは思わなかったのじゃよ」

 

「師よ。私が暗黒面に落ちることを心配しているのですか?」

 

ヨーダは肯定するかのようにサイラスから目をそらした。

 

「フォースにバランスをもたらす者は暗黒面へと堕ち、シスの暗黒卿へとなってしまった」

 

「はい。だからこそ私とルークがいます。貴方の教えは暗黒面に屈する事はありません」

 

その時ヨーダとサライスは強力なフォースの力を感じた。

二人はそのフォースが誰の者なのか直ぐにわかり、別段驚きもしなかった。

来るべき時が来たのだから当然である。

 

「来たようですね」

 

「そうじゃな」

 

「迎えに行ってきてもよろしいですか?」

 

サライスの問にヨーダは頷いた。

 

 

 

 

 

「久しぶりだなルーク!」

 

「サライスか!よくわかったな」

 

「お前ほどのフォースを感じとれないわけないだろう?」

 

二人は、お互いの再会を喜ぶように抱擁を交わした。

 

「サイラス」

 

ルークは笑顔から一転、真剣な表情になりサイラスの名を呼んだ。

サイラスもその意味を理解していた。

 

「わかっている。こっちだ」

 

サイラスは、ルークをヨーダの元へと案内した。

しかし、病床に伏したヨーダの姿を見たルークは驚き、悲痛の声をあげた。

 

「マスター!!」

 

「ルークか....待っていたぞ」

 

「何故っ....僕は修行を終えるためにここに来たのに、まだ貴方から全てを教わっていない....」

 

「ルークよ。もう儂から教える事は何もない。じゃが、ジェダイの修行を終えるためには、皇帝とベイダーを倒さなければならん」

 

「父さんを....そんなこと....」

 

「師よ。ルークの父を救う方法はないのですか?」

 

サイラスの問にヨーダは首を横にふった。

それを見たルークは唇を噛み締めた。

 

「ルークよ。皇帝は恐らくお前を狙っておる。くれぐれも気を付けるのじゃ」

 

「分かりました、マスター。今までありがとうございました」

 

そう言うと、ルークはヨーダの家を出ていった。

 

「サイラスよ。お主も行くのじゃ。ルークの助けになってくれ」

 

「勿論です。その為に修行をしてきました」

 

サイラスの言葉にヨーダは微笑みを返した。

 

「最後にお前たちを育てることが出来て良かった」

 

「師よ。逝かれるのですか.....」

 

サイラスは、別れを惜しむかのように目を落とした。

そんなサイラスにヨーダは優しく語りかけた。

 

「 フォースが強くても死は免れん。わしはもう黄昏時だ。すぐに夜が来る。

それが人生だ。フォースの定めだ」

 

「......分かりました。師よ....今までありがとうございました」

 

その言葉を聞いたヨーダはゆっくりと目を閉じていった。

そして、オビ=ワン・ケノービと同様に肉体とフォースが一体化していった。

それを見届けたサイラスはルークの元へと向かった。

 

「サイラス。マスターは....」

 

ルークも分かっている筈だった。

ヨーダが時を迎えたことは。

 

「フォースと一体になったよ。これからも見守ってくれるだろう」

 

「そうか....」

 

「それよりルーク。本当に父親と戦うのか?」

 

「いや、まだ迷ってる。でも、父さんと戦って負けたとき父さんは僕を殺さなかった。もしかしたらまだ父さんには『善』の心が残っているのかも」

 

「なるほど。しかし、暗黒面から光明面に戻ることが出来るのか?」

 

「出来る筈だ。フォースはつまり心の在り方で決まる」

 

「ならその役目はルークじゃないといけないな。その他の些事は俺に任しておけ、ルークは父親と皇帝の事だけを考えて先に進め」

 

「.....ありがとうサイラス」

 

そして二人はダース・ベイダーとパルパティーン皇帝のいるデス・スターへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

フォースの力を使い超人的なスピードで走るその姿は敵にとってまさに脅威だろう。

サイラスは、進路を妨げる敵だけを倒しルークの元へと走っていた。

同盟軍の帝国への攻撃は順調のようだった。

しかし、惑星一個程の大きさをもつ最終兵器デス・スターを制圧するにはやはり動力室を抑えてその機能を停止させる必要があった。

そして、そこにはルークの父親と皇帝がいる筈だ。

もしかしたらルークは既に戦っているのかもしれない。

サイラスは走る足を更に加速し動力室へと目指した。

 

 

 

 

 

 

ルークは自分の父親と今まさに戦っていた。

その戦いは熾烈を極めた。

それも当然である。フォースにバランスをもたらす者と言われたルークの父親の強さは確かに圧倒的だが、その遺伝子を継いだルークもまたその才能を持っていた。

二人の力量は互角であった。

だがルークは、父親と倒しに来たのではなく救いに来たのだ。

その思いは本来のルークの力を妨げた。

しかし、一方のベイダーは自分の息子にも関わらず本気でライトセーバーを振るってくる。

 

「父さん。僕は父さんと戦いに来たんじゃない!」

 

「そんな甘い考えで私の前に来たのか」

 

ルークはベイダーの攻撃を防ぐものの反撃を一切しなかった。

いや、出来ないでいた。

 

「私を救う前に別に救うものがいるのではないか?」

 

「何!?」

 

「例えばレイヤ姫....」

 

ベイダーの言葉にルークは驚愕した。

 

「レイヤに何をした!!」

 

「彼女は今や人質だ。私を倒せなければレイヤ姫の命はない」

 

ベイダーの言葉にルークの中で何かがキレた。

そこには、レイヤを人質にとったベイダーへの憎しみと怒りがあった。

 

「ぐっ....うあああああ」

 

ルークは絶叫しベイダーへと突進した。

ルークの攻撃はベイダーの予想越えるものだった。

ルークの連続攻撃にベイダーは次第に対処しきれなくなっていく。

 

「ハァッ!」

 

ルークの激情に任せた攻撃はベイダーのライトセーバーを持った右手首を切り落とした。

 

「ぐうっ!!」

 

ベイダーは崩れ落ち方膝をついた。

ベイダーの喉先にライトセーバーが突きつけられる。

 

「父さん、貴方の敗けだ....」

 

その時、後ろから声が聞こえてきた。

 

「さあ殺すのだ。父親を....」

 

声の正体は黒色のローブを纏った老人だった。

そしてこの老人こそがすべての元凶であり、ルークの父を暗黒面に堕としいれた原因であるダース・シディアス、パルパティーン皇帝である。

 

「........」

 

「どうした。さあ、殺すのだ。憎いのであろう」

 

ルークはライトセーバーを納め、毅然とした態度で皇帝に言い放った。

 

「.....僕は父さんを殺さない」

 

「なんだと?」

 

「僕はジェダイだ。かつて父がそうであったように!」

 

皇帝にとってルークの言葉は予想外だった。

皇帝は今いるベイダーの代わりにルークを新たにシスの暗黒卿として仕立てるつもりだった。

しかし、パルパティーンの誘惑はジェダイの騎士として成長を果たしたルークには通用しなかった。

 

「そうか....ならばお前には用はない!」

 

パルパティーンは手からフォースの雷を放ちルークに襲いかかった。

 

「くっ.....」

 

こんなところで....

ルークは目を閉じた。

しかし、パルパティーンの雷は一向に襲ってこなかった。

ルークは恐る恐る目を開くと目の前に一人の男が立っていた。

 

「サイラス!!」

 

「ルーク!すまない遅くなった!」

 

サイラスはルークの前に立ち、ライトセーバーで雷を受けていた。

 

「誰だ貴様は!」

 

パルパティーンは突然のサイラスの乱入に動揺した。

 

「お前の嫌いなジェダイの騎士だよ。さて、ルークの父よ」

 

サイラスはパルパティーンを横目にベイダーに話しかけた。

 

「ルークは暗黒面に打ち勝った。次はあんたがルークに示す番じゃないのか?」

 

「いつまで余裕でいるつもりだ!」

 

パルパティーンの雷は更に威力を増してサイラスに襲いかかった。

 

「ぐっ......」

 

いくらサイラスとて暗黒面の化身であるパルパティーンのダークフォースを受け続けるのは難しかった。

 

「父さん!」

 

ルークはベイダーに手を差し伸べた。

 

「ルーク....」

 

ベイダーはルークの手を握った。

するとベイダーは自分の中のフォースが変化したことに気付いた。

そしてそれはこの場いる誰もが気付いた事だった。

 

「父さん...!」

 

「私は....」

 

それは、ベイダーの暗黒面から光明面へのフォースの帰還だった。

 

「おのれぇ!ジェダイぃぃ!」

 

パルパティーンはジェダイへの憎しみを更に増幅させてダークフォースの力を強くした。

 

「ぐうっ!!」

 

サイラスは限界に近づいていた。

後ろにルークがいた状態だったため雷をライトセーバーで受け、更にその余波をも自分のフォースで打ち消していたのだ。

 

「流石に....限界だな....」

 

「サイラスと言ったか。もう少し耐えてくれ」

 

「父さん何を....」

 

するとベイダーはフォースの力で宙に浮き、パルパティーンに突進していった。

 

「ちょ、あんた!まさか!」

 

「これで終わりだパルパティーン!」

 

「な、何をする!」

 

ベイダーはパルパティーンを掴み、巨大な動力炉へと投げ入れた。

パルパティーンの断末魔が響き渡りやがて沈黙が訪れた。

 

「やったのか?」

 

「父さん!」

 

ルークが父親の元へと駆け寄る。

ベイダーはパルパティーンを動力炉に投げ入れたあと力尽きるように仰向けに倒れていた。

サイラスもベイダーの元へと駆け寄よった。

 

「これは....!」

 

ルークに続いてベイダーの元へとたどり着いたサイラスは顔を歪ませた。

その理由はベイダーの胸に取り付けられている機械にあった。

ベイダーがパルパティーンを掴んだ際にパルパティーンの雷がベイダーの胸の機械を壊していた。

そしてその機械はダース・ベイダーが生きるために必要不可欠な物である生命維持装置だった。

 

「そんな!父さん!」

 

「同盟軍に持っていけば直せる筈だ。取り敢えず運ぼう!」

 

ルークとサイラスはベイダーを担ぎ上げ、同盟軍と合流すべく脱出をはかった。

動力室の出入り口にさしかかろうとしたところで担がれているベイダーが口を開いた。

 

「......降ろしてくれ」

 

「今そんな余裕はない!我慢してくれ」

 

サイラスがベイダーの言葉を拒否した。

 

「頼む.....」

 

しかし、ベイダーはそれでも降ろすよう懇願した。

 

「サイラス、降ろそう」

 

「ルーク....」

 

サイラスはルークの言葉に従ってベイダーを降ろした。

 

「ルーク....すまないがマスクをとってくれるか」

 

「でも、そんなことしたら....」

 

「最後にこの目でお前の顔が見たいのだ」

 

「父さん...」

 

ルークはマスクに手をかけゆっくりと外していった。

そこには青白く、しわくちゃの老人のような顔の父がいた。

 

「ルーク....すまなかった」

 

「いいんだ.....父さん....もう....」

 

「最後にお前の成長を見れて良かった....」

 

「僕も....父さんに会えて良かった」

 

ルークの目から大粒の涙が流れた。

そして、ベイダーはゆっくりと目を閉じ息を引き取った。

そしてそれは最初で最後の親子の再会と別れを意味することになった。

シスの暗黒卿ダース・ベイダーは最後の最後でジェダイの騎士としてパルパティーン皇帝を倒し、そしてフォースにバランスをもたらす者アナキン・スカイウォーカーとして役目を果たし、その生涯を閉じた。

 

「帰ったらちゃんと供養しないとな。これほどのフォースの持ち主だ。フォースとの一体化が出来る筈だ」

 

「ああ、そうだな」

 

ルークとサイラスはベイダーの体を持ち上げ、再び歩き出した。

 

「「........!!」」

 

その時だった。

二人の背筋にゾッとするほどの寒気が襲った。

二人は後ろを振り向きライトセーバーを抜いた。

サイラスとルークの視線の先にはパルパティーン皇帝を投げ落とした動力炉があった。

しかし、明らかに様子がおかしかった。

 

「これは....!」

 

それは動力炉の中からパルパティーン皇帝と同じフォースの雷が放たれていた。

 

「ルーク、父親を連れて先に行け」

 

「な、何を言っているんだ!」

 

「最初に言っただろ?些事は俺に任しておけと」

 

「ば、馬鹿かお前は!」

 

ルークはサイラスに怒りにも似た怒声をあげた。

 

「お前には大事な父親の供養が残ってるだろう?」

 

サイラスは茶化すような表情で言った。

 

「お前が死んだら意味がないだろう!」

 

「いつ死ぬなんて言った?ちゃんと戻るから心配するなって」

 

その時、雷がサイラスを襲った。

サイラスはライトセーバーでこれを防ぐとルークを急かした。

 

「早く行け!お前が生き残らないとジェダイの再興何て出来ないだろう!」

 

「お前!まさかそれが....」

 

「ハハハ、俺は存外めんどくさがりでな。ジェダイの再興なんて言うめんどくさい事はしたくない」

 

「サイラス....」

 

「早く行け!....なぁに死ぬ気なんてこれっぽっちも思ってない。直ぐに合流してやるさ」

 

「ぐっ....すまない」

 

ルークは拳を握りしめるとライトセーバーを納め、父親を担ぎ動力室を出ていった。

 

「俺もいい友達を持ったものだ。.....ハァ!」

 

サイラスは雷を縦一閃に両断する。

 

「さあ、パルパティーン。決着を着けよう」

 

サイラスはライトセーバーを納め、手をつき出しパルパティーンのフォースを自分のフォースで迎え撃った。

 

「ここからはお前の大好きな力勝負だ!」

 

雷の正体は、パルパティーンが死に際に残した力の残滓だった。

しかしそれはパルパティーンが死に際にジェダイへの憎しみを最大まで高めて残した力で残滓と言えどその力は他に類見ない強力なものだった。

しかしサイラスもフォースの力では最強と言われていたヨーダですら危険と感じるほどのフォースの才能を持っていた。

そしてその潜在能力は今、パルパティーンと言う最強の相手を前にして命の危険を感じ、そして友のために道を切り開くためにと言う想いがサイラスの潜在能力を限界まで開花させた。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

サイラスのフォースはパルパティーンのダークフォースすら飲み込む勢いだった。

しかし、空前絶後の正と負の力のぶつかり合いはやがて破壊のエネルギーに変わり空間を震わせた。

そしてその時だった。強烈な閃光がフォースがぶつかり合っている境から生み出されサイラスを包み込んだ。

 

「なに!?」

 

サイラスの意識はその光に包み込まれた瞬間暗闇へと墜ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ......!」

 

サイラスは目を覚まし、脳を覚醒させた。

 

「はっ!ここは!?」

 

サイラスは身を無理矢理起こし周りを確認した。

周りは暗闇に包まれ、木に囲まれていた。一見すると夜の森の中に見える。

 

「デス・スターの中ではないな。ならダゴバか?」

 

しかし、その可能性は低かった。

理由はダゴバと比べるとあまりにも清廉な空気が流れていたからである。

それに身の危険を全く感じないのである。

惑星ダゴバには危険なクリーチャーが数多く住み着いておりサイラスも何回も襲われた事があった。

今でも思い出すだけで寒気がする程だ。

 

「取り敢えず辺りを調べるか」

 

しかし、どうしてこのようなことになったのだろうか。記憶ではパルパティーンの力の残滓と戦っていたところまで覚えている。そのあと何が起こった?

サイラスはあやふやになっている記憶の映像を鮮明にしようと脳をフル活動させた。

 

「......!そうだ!」

 

サイラスは何か思い出し空を見上げた。

 

「光だ!あのとき光に包まれたんだ」

 

だが、あの光の正体はなんなのかは皆目検討もつかなかった。

だが、銀河の何処かの惑星であると言うのは確かであろう。

 

「取り敢えず人を探すか....」

 

方角も定かではないがここいるよりはましだろう。

 

「しかし、暗いな。ライトセーバーで照らせば見えるか?」

 

サイラスは腰のライトセーバーに手をかけようとしたが少し考えるとその手を降ろした。

 

「いや、止めておこう。師にバレたら大目玉を食らうからな」

 

それにフォースを使えば周りが見えなくても道くらい進むことができる。

サイラスは、フォースを使って木々を避けながら進むことにした。

 

 

 

「な、なんだお前たちは!」

 

サイラスが道を探して進んでから数分が経った所で何処からか男の声が聞こえてきた。

 

「人か?!」

 

サイラスは声の聞こえてきた方向へと急いだ。

するとサイラスが探していたしっかりと整備された道へと出た。

そして、幸運なことに5人の人間も発見することが出来た。

 

「助かった。すまないがここが何処か教えてくれるか?あと、惑星間通信が出来る場所も教えて欲しいのだが」

 

サイラスの言葉に目の前の人間は何をいっているだといった感じでサイラスを見ていた。

 

「兄貴、変なやつが出てきましたよ」

 

5人の中で一番小柄な男が口を開いた。

 

「ああそうだな。見た感じ金目の物は持ってなさそうだがな」

 

次は、逆に一番体格の大きい男が何やら不吉な言葉をしゃべった。

そもそもよく見たら5人のうち4人は見たこともないボロボロの装甲を身にまとっており、もう一人も見たことがないような形状の服を着ていた。

 

「すみません!助けてください!」

 

装甲を身に纏っていない男が急ぎ足でサイラスの元へと駆け寄って来てサイラスの後ろに隠れた。

 

「なんだ襲われていたのか」

 

「はい。あいつらが急に現れて金目の物を全て置いていけと」

 

「そうかそれは災難だな。そうだお前この辺りには詳しいか?」

 

「え?まあ土地勘はありますよ」

 

「何を喋ってやがる!そこの変わったやつも死にたくなかったら身ぐるみ全部置いていけ!」

 

「断る」

 

サイラスは考える間もなく即答した。

 

「はん!どうやら死にたいようだな!おい!」

 

リーダー各と思われる大柄の男が合図を出すと三人の男がサイラスの前に立ちはだかった。

サイラスはため息をついて三人の男たちに話しかけた。

 

「悪いことは言わないから止めておけ」

 

すると男たちはゲラゲラと笑いだした。

 

「ハハハハハ、こいつ頭おかしいぜ」

 

「ああ、そうだな。さっさとやっちまおうぜ」

 

「そうだな。さっさと済まして酒でも飲もうぜ」

 

三人はそう言うと腰に差してあった剣を鞘から抜いた。

サイラスは再度ため息をつき、目を閉じた。

 

「なんだ?死ぬ覚悟が出来たのか?」

 

そう言うと三人は同時に駆け出しサイラスに剣を降り降ろした。

 

「もうダメだ!」

 

サイラスの後ろの男は目を強く瞑った。

 

「.........」

 

しかし、訪れるはずの肉を裂く音や肉を貫く音が一向に訪れなかった。

男は恐る恐る目を開けると、目の前の光景に目を見開いた。

 

「な、何がどうなっているんだ」

 

男が見た光景とは、サイラスに襲い掛かった三本の刀がサイラスから30センチメートル程だ離れた位置で止まっているのだ。

男たちもいったい何が起きているのかわからないでいた。

 

「どうした?さっさと終わらせるんじゃなかったのか?」

 

「こいつ....なんなんだ!刀が全く動かねぇ!」

 

サイラスは手を自分の外側へと払うと三人の男は大きく後ろに吹き飛んだ。

 

「「「うわあああああ!!」」」

 

「て、テメェら何してやがる!」

 

「あ、兄貴あいつなんかおかしいです!」

 

「分かっただろう。だったら直ぐにこの場から去れ」

 

サイラスはこれ以上の争いは無意味であると伝えた。

正直サイラスはこれ以上争いたくなかった。

何故ならこれ以上争えば相手を傷付ける事になる可能性があるからだ。

それはジェダイの騎士の掟に反するものだ。

 

「ふざけやがって!なら俺が相手をしてやる!」

 

サイラスはこの展開が予見できたのか、首を横にふり人生で一番のため息をついた。

ここまで来ると仕方ないと、サイラスはリーダー各の男を倒すことにした。

倒すといっても殺すわけではなく、装甲が無い脇腹に一発入れるだけだ。

 

「おおおおおお!」

 

男が野太い雄叫びをあげながら剣を抜き突進してきた。

サイラスはギリギリまで引き付けたのち、降り下ろしてきた剣を必要最小限でかわしすかさず男の脇腹に一発入れた。

男の顔が苦悶の表情に変わり、その場に両膝をついた。

 

「ぐふっ!」

 

「あ、兄貴!!」

 

男たちが大柄の男の元へ駆け寄ってくる。

しかし、大柄の男は大声を出し男たちを制止した。

 

「来るな!」

 

大柄の男はサイラスに向き直るとそのまま両手とおでこを地面につけ土下座の姿勢をとった。

 

「何のつもりだ?」

 

「すまねぇ。俺はあんたを見誤っちまったようだ。完全に俺らの負けだ」

 

「そ、そうか。わかってくれたか」

 

サイラスは、男の態度の変わりようについていけてなかった。

 

「本来なら俺達はあんたに殺されても文句はいえねぇ。だが頼む!俺はどうなったっていい、あいつら三人は見逃してくれ」

 

「い、いや待て!別に俺はお前たちを殺そうなんて思ってはいない。ただ、抵抗を止めて、反省すれば何もしない」

 

「ほ、本当ですかい!?」

 

男は両手膝を付いたままサイラスの足元まで寄ってきた。

 

「あ、ああ本当だ。だから頼むから離れてくれ」

 

「あ、すんません、つい」

 

「まあ、今後は悪いことは止めて。正しく生きるんだな」

 

「へい!あんたに救ってもらった命、無駄にはしません」

 

「そ、そうだな。その通りだ」

 

何故だろうか、話が成り立っているようで成り立ってないようなそんな違和感をサイラスは感じていた。

恐らく価値観がかなり違うからだろうとサイラスは思った。

 

「そうだ。あんたにこの刀をやるよ。名のある刀匠が打った刀らしいですぜ」

 

男は一本の刀を手渡してきた。

サイラスはこれ以上話が長引くのは嫌だったので大人しくその刀を受けとる。

 

「なんだ....その...ありがとう?」

 

「いえいえ、これで命が救われるなら安いもんです。それではあっしはこれで。おいいくぞ!」

 

大柄の男は三人の男を連れて何処かへ歩いていった。

 

「いったいなんだったんだ?」

 

サイラスは首を傾げ貰った刀を見た。

鞘はとてもシンプルな作りで無駄はなく、

ライトセーバーよりも重いが形がライトセーバーに似ているので扱う事は出来る。

 

「申し訳ない。助かりました」

 

後ろにいた男が深く頭を下げた。

 

「無事でなによりだ」

 

「私は天城颯馬と言うものです。仕官先を探して旅をしている者です」

 

「サイラス・セリエースだ。同盟軍のジェダイの騎士だ」

 

 

 

 



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祭りでの出会い

何気に2話目です。
こんな駄文を読んでくださった方、お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます
これからも頑張っていきたいと思います



『考えるな、感じろ』と我が師であるジェダイマスター・ヨーダから教わったが、状況によってはそれは無理なこともある。

確かにフォースの力を使うことによって解決出来ることは多くある。

しかし今のこの状況を感じて理解出来るとは到底思えなかった。

 

「天城颯馬か、変わった名前だな」

 

当の本人を目の前にして言うのはかなり失礼な事だとわかっていたのだがつい口に出してしまった。

 

「ハハハ、そうか?だが俺もサイラスなんて名前は聞いたことがないぞ?異国の人間なのかい?」

 

天城颯馬は思いの外寛容な人間のようだった。

この人間なら自分の事を話しても問題ないのではないだろうか。

しかし、天城颯馬が自分の事を信じるか信じないかは別問題だか....。

 

「ふむ、天城颯馬と言ったか....悪いが色々と聞きたいことがあるだが」

 

「ああ、良いぜ。歩きながらで構わないか?もう少し先に進めば町が見えてくるからな。後それと俺の事は颯馬で良いよ」

 

「そうか、分かった颯馬。じゃあ、俺の事もサイラスと呼んでくれ」

 

「分かったサイラス」

 

二人は町へと向かうため歩みを進めた。

 

「それで、聞きたいことって?」

 

「ああ、取り敢えずこの星の名前を教えてくれないか?」

 

「星?国ではなくてか?」

 

颯馬の疑問にサイラスの中で一抹の不安がよぎった。

それは出来れば考えたくはないことだった。

 

「え?ああ、そうだな。国の名前だ。すまない....」

 

大概は星に名前がついているが稀に星自体が国として成り立っている場合がある。

そう言う場合は国の名前が星の名前となる。もしかしたらこの星はその稀な星の一つなのかもしれない。

 

「ここは日の本だよ。今は第15代将軍足利義昭様が治めている」

 

「日の本?」

 

聞き覚えの無い名前だ。これでも銀河を旅していたから惑星については詳しいつもりだったが....。

もしかしたら想像以上に遠い銀河に飛ばされたのかもしれない。

 

「颯馬、俺が今から言う言葉に知っている言葉があれば教えてほしい」

 

「分かった」

 

サイラスは颯馬に自分の事や銀河帝国の事、そしてジェダイについて話した。

 

「サイラス、君はいったい何処の国から来たんだ?俺は足利学校で様々な事を学んできたが、こんな言葉は聞いたこともない」

 

颯馬の答えはサイラスの予想の中で最も最悪の答えだった。

つまりこの星の住人は銀河帝国やジェダイの事以前に宇宙そのものが分かっていなかった。

 

「颯馬、最後に一つ聞いてもいいか?颯馬達が立っているこの大地は一つの球体の上に成り立っているということを知っているか?」

 

すると颯馬は声高らかに笑いだした。

 

「ハハハハハハ、流石にそれは無いだろう。それだと途中で落ちてしまうじゃないか」

 

サイラスは諦めたように項垂れた。

ここはもしかしたら遠い銀河とかではなく時間軸そのものが違うのではないだろうか。

文明が自分の知っているものよりも遥かに後退している。

だとしたら通信で助けを呼ぶなんて事は出来ないのではないだろうか。

だとしたら完全に八方塞がりだ。

 

「あ....いや、忘れてくれ」

 

「フム....だがサイラス、俺は笑いはしたが君が嘘をついてるとは思えないんだ」

 

颯馬は急に先程とは売って変わって真剣な顔つきになった。

それはどちらかと言うとサイラスの話に興味をもった感じの顔だった。

 

「颯馬....分かった、俺が出した結論を聞いてくれ」

 

二人は歩みを止めて近くにあった手頃な石に腰かけた。

 

「颯馬、俺はどうやらこの世界とは違う世界から来たようだ」

 

今度は颯馬は笑うことはなかった。

だが、全く信じてはいない顔だった。

 

「何故そう思う?」

 

「俺が颯馬に言った質問は全て俺の世界では常識であり誰もが知っている事だ」

 

「知らない奴もいるかもしれない。俺のように....」

 

「そうだな。だがそれでも知らなさすぎるんだ。そしてこの星の技術力はあまりにも低すぎる」

 

するとサイラスは腰に吊るしてあるライトセーバーを出した。

 

「これがなんだかわかるか?」

 

颯馬は近くでそれを見て首をふった。

 

「ただの複雑な金属の筒にしか見えないな」

 

「そうか、じゃあ質問を変えよう」

 

サイラスは、近くの大きめの木に手をついた。

 

「こいつをたった一振りで真っ二つに出来ると言ったら信じるか?」

 

颯馬は首を横に振り、無理だと言った。

 

「自然の木はとても固いんだ。どれだけ切れ味の鋭い刀を使っても人間の腕力じゃあとてもじゃないが無理だ」

 

「そうだな。確かに颯馬達が使っているこの刀という物では無理だろうな」

 

サイラスは、ライトセーバーのスイッチを入れると黄色の光刃が形成される。

 

「なっ、なんだそれは!?」

 

サイラスは颯馬の驚愕の顔を横目で見ながら木に対して袈裟懸けに斬った。

超高出力のプラズマの刃は木を紙を切るかのように簡単に焼き切った。

 

「これが俺のいた世界の武器だ」

 

「ああ.....」

 

颯馬はまるで夢を見ているのではないかといった表情で口を開けて固まっていた。

 

「あともう一つ、俺がジェダイの騎士として扱える力、フォースも見せておく」

 

サイラスは、木に対して手をかざすとフォースの力を使い宙へと浮かした。

 

「う、嘘だろ....俺は夢でも見ているのか?」

 

サイラスのフォースはパルパティーン皇帝との戦いでフォースの力では歴代最強とまでいわれたヨーダをも凌ぐ程にまで覚醒しており、大木一本浮かす事など造作もない事だった。

 

「颯馬、理解してくれとは言わない。だが信じてほしい、そして力を貸してほしい」

 

颯馬は今だ固まったままだったが、辛うじて頷いた。

 

「分かった、信じよう。だからその刀を納めて木を下ろしてくれ」

 

かなり強引で脅迫じみた説得になってしまったが颯馬を説得することが出来た。

後は、颯馬が力を貸してくれるかどうかだ。

 

「そうか、ありがとう」

 

サイラスは、ライトセーバーを腰に納めるとフォースで浮かしていた木をその場に置いた。

 

「それで?サイラスは何が望みなんだ?」

 

「颯馬、お前は仕官先を探して旅をしていると言ったな」

 

「ああ、そうだ。中々見つからないがな」

 

「その旅に俺も同行させてほしい」

 

「旅に?」

 

「ああ、俺は元の世界に戻らなければならない。だが、戻る方法が分からないこの状況ではこの世界に順応するしか今は手はない」

 

「なるほど。そこでこの世界に詳しい俺と旅をしながら元の世界に帰る方法を探すんだな?」

 

「そう言うことだ」

 

「う~ん。しかしなぁ」

 

颯馬は少し困ったような顔で考え込んだ。

何か不都合なことがあるのだろうか?

いや、それが普通なのかもしれない。こんな得体のしれない人間と旅をしたいとは思わないだろう。

 

「俺の旅の目的は軍師として仕官先を探すことなんだよ」

 

「それはさっき聞いたな。『軍師として』は初耳だがな....」

 

「となると俺がもし仕官先を見つけた場合、サイラスはどうするんだ?」

 

「ん?ああ、そういうことか」

 

颯馬は自分と旅をする不安ではなく、旅の目的を達成したあとの話をしているようだった。

 

「颯馬はよくお人好しと言われないか?」

 

「え?そうかな?」

 

「ハハハハハ、大丈夫だよ。颯馬がもし仕官先を見つけたら俺も共にそこに志願兵として仕えるよ」

 

確かに様々な所に行って帰る方法を探すのも良いだろうが闇雲に探しても時間の無駄である。今は何より手掛かりが必要だ。

それには情報がある程度得られる場所に行かなくてはならない。

颯馬は仕官先を探して町を巡る。

つまり情報が集まりやすい場所を転々とするということだ。

それにもし、颯馬が仕官先を見つけても寧ろ好都合と言える。何故なら今が戦乱の時代だからだ。先程颯馬と歩いているときにこの世界についてもある程度話を聞いた。

今は各地の力ある家が兵を挙げ天下統一を果たそうと躍起になっている。

つまり戦争が各地で多発しているということだ。

戦争は何も力とのぶつかり合いではない。

戦争とは情報戦も行われる訳だ。

各地の情報を集めているとなれば、もしかしたら帰る手掛かりがその中にあるかもしれない。

 

「サイラスが志願兵に?サイラス程の実力なら将になることも出来るぞ」

 

颯馬の言葉にサイラスは首をふった。

確かにフォースの力はこの世界においては絶対的な強さを誇るかもしれない。

しかし、争いとは総じてフォースの暗黒面に触れる事になる。

将ともなれば尚更だ。

だから、兵として戦に立つことになれば己の身を守るために、そして尚且つ不殺に心掛けなければならない。

 

「いや、遠慮させて貰うよ。ジェダイの騎士は色々と誓約が多くてね」

 

「そうか、サイラスなら良い武将になると思ったんだがな」

 

「過大評価しすぎだな。さあ、もう行こう」

 

「そうだな。俺もかなり疲れてきたよ。早く宿で休みたい」

 

颯馬も道中長かったのか心身共に疲れていて、少し足取りが重かった。

そしてサイラスもパルパティーン皇帝との戦いの後、全く休憩をとっていなかった為かなりの疲労感に見舞われていた。

 

「町まではどれくらいだ?」

 

「この山道を抜ければ直ぐだ」

 

颯馬の言うとおり山道を下った後、30分もしないうちに町に着いた。

町は木で作られた木造建築が多く、多くの人間で賑わっていた。

 

「賑わってるな」

 

「ここは中々大きい城下町だからな。賑わいもするさ」

 

「なるほど」

 

文明はしっかりと存在しているところを見るとやはり元の時代よりも遥かに昔なのだろう。

何故なら機械というものが一切見当たらないからだ。

何もかもが自分の手でやり、自らの足で物を運んでいる。

もちろん戦闘機等は見当たらない。

 

「宿はこっちだ」

 

サイラスは颯馬の後に付いて行くと少し年季のはいった宿に着いた。

宿に入ると若い女性がパタパタと近づいて来て頭を下げた。

この宿の女中だろうか。

 

「ようこそおいでくださいました」

 

「今日一泊出来るか?」

 

「はい。空いております。そちらのお連れ様は....」

 

すると女中はサイラスの方に目をやった。

サイラスは、答えを颯馬に頼むように颯馬の顔を見た。

颯馬はその意図を理解したのか頷いた。

 

「ああ、同じ部屋で頼む」

 

ここら辺の事は颯馬に任せるしかなく、この世界の常識を覚えるまでは颯馬に判断を委ねるしかない。

 

「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」

 

颯馬とサイラスは、女中に促され宿の一室へと案内された。

 

「ほう、中々良い部屋だな」

 

案内された部屋は二人が泊まるには充分な部屋で宿の外見の割りには綺麗な部屋だった。

 

「食事はどうされますか?」

 

「直ぐにお願いします。サイラスもそれで良いよな」

 

「ああ」

 

サイラスは頷いた。

 

「かしこまりました。直ぐにお持ちしますね」

 

食事は女中が部屋を去ってから直ぐに運ばれてきた。

食事は白米に焼き魚、味噌汁と質素だったが腹を満たすには充分だった。

 

「この魚は美味しいな」

 

サイラスは、魚の味に少し感動した。

肉厚な身に適度に焼かれた皮の芳ばしさは今まで食べた事がないほど美味しかった。

惑星ダゴバにも魚はいたがどれも泥臭くて食べれたものではなかった。

 

「この国は海に面してるからな。至る所に港があるから新鮮な魚が手にはいるんだよ」

 

「なるほど。そういえば俺たちは今どこにいるんだ?」

 

「今か?今は伊勢と言う国だよ。尾張の左隣の国だよ」

 

「尾張と言われてもな。全く分からん」

 

サイラスは肩をすくめた。

すると颯馬が懐から地図を取り出した。

 

「ほら、ここだよ」

 

颯馬は地図の上の一箇所を指差す。

 

「なんだ。地図があるのか」

 

「そりゃあ、地図がなかったら旅なんて出来ないだろう」

 

「確かに。で?これからは颯馬はどうするんだ?」

 

「もちろん仕官先を探すよ。明日、朝に出発して大和の高取城に行こうと思う」

 

「そこで仕官先を探すのか?」

 

「いや、それはまだ分からないけど....取り敢えずここの人間に大和の情勢を聞いてこようと思う。ついでにサイラスの探している事についても聞いてくるよ」

 

「良いのか?」

 

「ついでだよ。気にしないでくれ」

 

そう言って夕食を食べ終わった颯馬は部屋を出ていった。

サイラスは、色々と世話をしてくれる颯馬に感謝しつつ少し申し訳ない気持ちになった。

 

「ふぅ、何か悪い気がしてきたな。だが、俺が颯馬にしてやれる事といったら用心棒くらいか」

 

サイラスは、宿の窓から町に目を向けると楽しそうに歩いてうる親子や酒に酔って足元がふらふらな男が多くいた。

 

「ルークは無事だろうか....」

 

ルークの実力なら無事にデス・スターから脱出しているだろう。

パルパティーン亡き今、同盟軍が負ける要素はない。

帝国軍の殆どは抵抗せずに投降するだろう。

 

「やっぱり俺は死んでることになってるのかなぁ」

 

事実、元の世界にルークが生きている痕跡がない以上、死亡扱いされてもおかしくない。

 

「全くなんでこうなったんだ?」

 

サイラスは、少し考え込んだ。

 

「物事には全て意味がある筈だ。つまり俺はここに来た理由があると言うことだ」

 

すると襖が開き颯馬が入ってきた。

 

「どうしたんだ?一人でぶつぶつと....」

 

「あ、いや。元の世界の事を考えててな」

 

「そうか。こっちは少し情報が手に入ったよ」

 

「どんな情報だ?」

 

「一つは大和の国についてだ。大和の高取城の城下町で近く祭りがあるみたいだ」

 

「祭りか....」

 

「あと、もう一つはサイラスが探している情報についてだ」

 

颯馬の言葉にサイラスは、目を見開く。

 

「何かあったのか!?」

 

「ああ、少し前にここの民が俺達の居た山で大きな光を見たそうだ」

 

「光....」

 

「民は雷じゃないかと言っていたがな」

 

やはりあの光が原因か....

 

「恐らく俺が元の世界で襲われた光と同じものだろう」

 

「つまりその光の正体を追えばサイラスが元の世界に戻る方法が見つかるわけだな」

 

「そう言うことだな」

 

「どうする?ここに留まるか?」

 

「いや、颯馬と共に行くよ。俺がこの世界に来たのには理由がある筈だ。その理由を探すためにも今は行動を起こすべきだ」

 

「そうか。なら良かった」

 

「良かった?」

 

「ああ、さっき祭りがあると言っていただろう?だからもしかしたら当日に宿がとれないかもしれないんだ。そこでさっき今から大和に向かう飛脚がいたから小銭を持たせて宿を予約してもらうように頼んだんだ。一部屋二人でね」

 

颯馬はそう言うと笑みを見せた。

その顔に邪な感情はなく純粋な善意だった。

 

「何からなにまですまないな」

 

「いや、助けてもらったお礼だよ。サイラスが助けてくれなかったら今頃丸裸だよ」

 

颯馬は恥ずかしそうに頭の後ろを掻いた。

 

「そうだな。颯馬は少し強くなった方が良いのでは?」

 

サイラスは冗談ぽく言うと颯馬は額に手を当てて困った顔をした。

 

「頭を使うのは楽しいんだがな。剣術は全然ダメでな。だが、それも解消されたからな」

 

颯馬はサイラスを見る。

 

「まさか、俺のことか?」

 

「そう言うことだ」

 

サイラスは、わざとらしく溜め息をつく。

 

「精々頑張るよ」

 

「頼りにしているぜ。サイラス」

 

 

 

 

 

 

 

サイラスと颯馬は朝早く起きて準備を済まし出発した。

大和までの道は整備されており、天候にも恵まれたおかげで予定通り着くことが出来た。

 

「盛り上がってるな~!」

 

颯馬がその人の多さに驚いていた。

祭りが始まるのは夜だがその準備のために慌ただしく人が動いていた。

 

「宿で一旦休むか?」

 

「そうだな。これでは動くに動けんからな」

 

二人は予約されているはずの宿へと向かった。

話通り部屋は予約されており、スムーズに部屋を借りることが出来た。

 

「皆、楽しそうだな」

 

「戦乱の世でなければいつもこのような光景が見れたのだろうが、今ではいつこの場が戦場になってもおかしくない時代だ。将軍でさえこの乱世では安全ではないのだからな」

 

「誰かが天下統一を成し遂げなければ争いは続くということか」

 

「ああ、早く終われば良いのだがな」

 

「颯馬なら天下統一を果たせるんじゃないのか?軍師を目指してるんだろう?」

 

すると颯馬はキョトンとしたあと大笑いした。

 

「ハハハハハッ!確かに軍師として仕えた家を天下統一に導く事が出来たのならこれ以上の名誉はないな」

 

「なんだ?颯馬はそれくらいの野望は持ってないのか?」

 

「そうだな。今は軍師になることしか考えていなかったからな。そのあとの事は考えていなかった。ハァ、今日は良い酒が飲めそうだ」

 

「それは良かったよ。じゃあ是非とも付き合わせて頂くよ」

 

そのあと颯馬は酒を交えながら夜が来るまでサイラスにこの国の事を語り続けた。

途中でサイラスがあまりの話の長さに途中で聞くのを止める程にまで話し続けた。

 

 

 

 

そして、夜がやって来た。

至るところで火が灯り、音楽が鳴り響く。

音楽に合わせて踊る人や出店で買った食べ物を食べる人、そして何処にでもいる酔っ払い。

 

「こんなに賑やかな祭りは久しぶりに見たな」

 

「人に酔いそうだ」

 

サイラスは、あまり人混みが好きではなかった。

 

「あっ!そうだ。サイラス、これを渡しておくよ」

 

颯馬は懐から小袋をサイラスに渡した。

 

「これは....金か?」

 

袋の中身には銅銭が入っていた。

 

「少ないけどな。祭りを楽しむ事は出来ると思う」

 

「しかしこれは旅の資金だろう?」

 

「いいんだよ。大したお金は入っていない」

 

「だけど....」

 

「サイラスが早くこの世界に馴染むためだよ。受け取ってくれ」

 

颯馬は厚意でいってくれているのであろう。

ならば無下にすることは出来ない。

 

「分かった。ありがとう」

 

「ここからは別行動にしよう。満足したら宿に戻る事。それで良いか?」

 

「分かった」

 

「それじゃ、またあとでな」

 

颯馬と別れ一人になると取り敢えず祭りの中を歩いた。

サイラスの全身を覆うフードの着いたマントは周りから少し奇異の目で見られたが祭りと言うこともありサイラスの格好よりも祭りの方に意識が向いていた。

 

「そこのあんた!」

 

横から急に声をかけられサイラスは、顔を向けると出店の人間が笑顔でこちらを見ていた。

 

「どうだい?焼きたての餅はいらないかい?」

 

店主の前には程よく焼けた餅があり、芳ばしい匂いが漂っていた。

サイラス自身、餅といった物は初めて見る。

 

「ふむ、じゃあ一つもらえるか」

 

「あいよ!」

 

サイラスは、金を店主に払うと店主は手頃な焼けた餅に海苔を巻いて渡してくれた。

サイラスは、一口その餅を食べると外側はパリッとしていて中はモチモチの食感に海苔の風味が鼻を抜けた。

 

「これは美味しいな!」

 

「あんた、餅を食べるのは初めてかい?」

 

店主の質問にサイラスは頷く。

 

「なるほどね。もしかして異国の人間かい?」

 

「まあ、そんなところだ」

 

「だから見たこともない格好をしてるわけだ。そうだ、そんなお前さんに是非とも食べてほしいものがあるんだ」

 

すると店主は先程の白い餅とは違い、茶色い餅に海苔を巻いた物をサイラスの差し出してきた。

 

「これは試作品でよ。醤油で味付けをした餅だ。食べて見てくれ」

 

サイラスは、促されるままその餅を食べる。

 

「ほお、これも美味しいな。味が濃くて少し喉が渇くけど....酒によくあうかもしれない」

 

「なるほど酒か!なら居酒屋に売り込むのもありだな。ありがとよ兄ちゃん。ちなみにその餅は俺の奢りだ」

 

「すまないな。ありがとう」

 

店主と別れを告げるとサイラスは、再び町を歩き出した。

しばらく祭りの雰囲気を楽しんでいると再び声を掛けられた。

 

「そこのあんた、どうだいいっちょ賭けてみないかい?」

 

「賭ける?」

 

「ああ、簡単だ。丁か半かどちらかを決めて当てることが出来たら金が貰える。簡単だろ?」

 

男が言うには、二つのサイコロを水などを入れる容器の中で見えないように転がし出た目の合計の偶数か奇数を当てるそうだ。

当てることができれば賭けた額の同額を報酬として貰うことが出来る。

逆に外してしまうと賭けた金は没収される。

 

「ようは当てれば良いのか?」

 

「そう言うことだ。どうだいやってみないかい?」

 

「まあ、少しなら....」

 

「よしきた!じゃあこっちだ」

 

賭博は家屋の中で行っているらしく、サイラスはその家屋のなかの空いてる場所に腰を下ろした。

既にサイラス以外にも十人程の客がいた。

 

「それでは、揃いましたので始めます」

 

審査及び進行役の中盆と呼ばれる人間が賭博の開始を宣言する。

するとツボ振りと呼ばれる女性が茶碗の様な器とサイコロ二つを準備する。

準備が終わると中盆が掛け声を発した。

 

「はい、ツボ」

 

「はい、ツボをかぶります」

 

そしてツボ振りが縦に器を振る。

 

「さあ、張った!張った!」

 

中盆の進行で客が丁か半か張っていく。

サイラスは、サイコロが入っている器をじっと凝視した。

 

「客人どちらか決まりましたかな」

 

中盆がサイラスに問いかけた。

他の人間は既に賭け終えてサイラスを待っていた。

 

「すまない。では、丁で....」

 

サイラスは、それと同時に颯馬に貰った金を全額賭けた。

 

「出揃いました」

 

中盆が全員が賭けた事を確認する。

 

「勝負!」

 

そして中盆の掛け声と共にツボ振りが器を開く。

中盆がサイコロを確認し声をあげる。

 

「サンゾロの丁!」

 

サイラスは、見事に的中させた。

だが、サイラスにとってこの賭博は既に賭博ではなくなっていた。

何故なら、サイラスはフォースの透視の力で器の中のサイコロの目を透視していたのである。

フォースの存在を知っている人にとってはイカサマであると気付くかも知れないが、この世界の住人はフォースの存在を知らない。

つまりバレる事は無いのだ。

 

「.........」

 

ただ、サイラスはあることを考えいた。

このフォースの使い方は暗黒面に触れるのだろうか?

正直言って触れている気がする。

だが、確かに私欲の為に使っていると言われればそうなのかもしれないが、颯馬に金を返す為だと考えれば別に大丈夫だろう。

返す段階で少し返す額が増えても文句は言われないだろうし暗黒面に触れる訳ではないだろう。と

自身で正当化することで暗黒面に触れていることを否定した。

その後もサイラスは一回もはずすことなく丁半賭博を終えた。

最後の方は貸し元の顔が青くなっていたがサイラスは気にしないことした。

 

「さてともうそろそろ宿に戻るか」

 

サイラスは充分に『祭り?』を楽しんだと思い宿へと向かった。

 

「ん?あれは颯馬か?」

 

宿に戻る途中偶然にも颯馬を見つけた。

だが、颯馬は一人ではなく一人の女性と話をしていた。

それも身なりの良い綺麗な服に身を包んだ女性とだった。

 

「.....お邪魔かな」

 

サイラスは、別の道から宿へと帰ることにした。

宿に戻り颯馬を待っていると程なくして颯馬が帰ってきた。

 

「遅かっ.....」

 

サイラスは言葉を詰まらせた。

何故なら颯馬の後ろには先程颯馬と話していた綺麗な身なりの女性が立っていたからだ。

 

「すまないサイラス。事情はあとで話す」

 

すると後ろの女性が颯馬の前に出てきた。

 

「主がサイラスか?」

 

何やら随分と上から目線の口調に驚きつつもサイラスは平静を装った。

 

「そうだが、貴女は?」

 

「妾か?妾は足利義輝じゃ。これからよろしく頼むぞサイラス」

 

 

 

 




ありがとうございました。
もう少しテンポよく話を進めたいのですが自分の能力では、それも難しく....お恥ずかしい限りです
次の話も書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。


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京へ道のり ~前編~

3話です!
段々、文字の数が減っていっているような...




人との出会いは運命であり必ずそこに意味がある。

サイラスも一本のライトセーバーを持ったがゆえに正体不明の男と出会い、そしてヨーダの元へと導かれた挙げ句、銀河の命運を左右する戦いに巻き込まれた。

しかし、サイラス自身それが不運だとは今は思っていない。

ヨーダの元でフォースを学んだことで様々な知識を得ることが出来たうえ、ろくに友達もいなかったサイラスにルークと言うかけがえのない友と合うことが出来た。

そして、この世界で颯馬と出会い、そして今足利と名乗る女性との出会いで旅は新たな方向へと向かおうとしていた。

 

「足利....義輝?」

 

何処かで聞いたような名前にサイラスは、首を捻る。

 

「サイラス、ちょっと!」

 

颯馬に腕を掴まれ部屋の端の方に連れていかれ、義輝に聞かれないように小さな声で話し出した。

 

「サイラス、足利義輝が誰か分かるか?」

 

「俺を誰だと思っている?この世界のことを何も知らない異世界の人間だぞ?」

 

「.....そうだったな、悪い。えっと、足利義輝は前の将軍なんだよ」

 

「つまりお偉いさんって事か。でもなんでこんなところに?」

 

それほどの人物が目の前にいるのに颯馬は驚くどころか疑いの目で義輝の事を見ていた。

 

「サイラスは知らなくて当然だな。実は前の将軍足利義輝は数年前暗殺されたんだよ」

 

颯馬の言葉にサイラスは目を細める。

つまりこの世に生きている筈がない人間が今、目の前にいるということだ。

 

「だが現に今、目の前にいるじゃないか」

 

「たぶん偽名を使っているんだよ。自分を隠すために」

 

颯馬の推測にサイラスは、疑問を隠しきれなかった。

自分の名前を隠すならありふれた名前で通すべきである。

わざわざ暗殺された事が殆どの人間に知られている名前を偽名に使うのは怪しんで下さいと言っているようなものだ。

 

「なんでわざわざ前の将軍の名前を使うんだ?」

 

「それは....あの女の頭が少しおかしいんだろう」

 

「.....まあ、颯馬がそう言うなら俺は特に口は出さないが....」

 

義輝と名乗る女性に何かしらの危険が無いとは言えないが、あまり怪しさを感じなかった。

それは、義輝が嘘をついている様に見えなかったからだ。

もし隙があればフォースを使って義輝の感情を読み取り、義輝が本音を言っているのか嘘をついているか調べる事が出来るが、今そこまでこの人物に警戒をもつ必要はないように感じた。

今は様子だけ見ていればいいだろう。

 

「何をコソコソと話しておるのじゃ?」

 

「いや、なんでもないんだ。それより飯がまだだろう?せっかくの祭りだから食べ歩きでもしないか?」

 

颯馬の提案に義輝が目を輝かせる。

 

「おお!いい考えじゃの。サイラスもそれで良いか?」

 

「ああ、構わない。それより颯馬、お前にこれを返しておくよ」

 

サイラスは、丁半賭博で得た金を全額颯馬に渡した。

 

「なんだこれは?」

 

少し重量のある小袋を渡されて颯馬は首をかしげた。

 

「颯馬に貸りた金だ。少し増えたが気にしないでくれ」

 

「増えた?」

 

何を言ってるんだと思いながら颯馬は袋の中を覗きこんだ。

 

「......え?」

 

颯馬は間の抜けた声を出した。

袋の中には、金色に輝く小判一枚と銀銭が詰まっていた。

 

「ほう、旅の資金には多すぎじゃないかのう。まあ、多いことに越したことはないがな」

 

義輝は颯馬の後ろから袋を覗き見ていた。

颯馬とは違い袋の中を見ても顔色を変えることはなかった。

 

「サイラスこの金はいったい....」

 

「賭け事をしたら勝った」

 

実際はイカサマ同然の力を使って得た金だがその事は伏せておいても良いだろう。

 

「あれだけの金でこれだけ勝つって....まさか。あのちか.....」

 

颯馬はサイラスの力の事を口走りそうになるが、サイラスはそれを遮った。

 

「颯馬、義輝が早く行きたそうにしているぞ?早く行こう」

 

「え?ああ....分かった」

 

「サイラス、妾はそんなに食い意地は張ってはおらぬぞ」

 

「お腹減ってそうな顔して何を言ってるんだか」

 

サイラスは、義輝の背中を押しながら部屋を出ていった。

その間も義輝はサイラスに文句をいい続けた。

確かに若い女性に言う言葉ではないとは思ったがフォースの事をあまり知られたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

あれから祭りを楽しみ過ぎて疲れ果て、宿で泥の様に眠ってから町を出てた。そしてそれから一ヶ月と言う時がたった。

 

「颯馬、次は何処に向かうのじゃ?」

 

何故かその後も義輝は颯馬達の後を付いてきた。

颯馬は色々と迷惑しているようだが、今となっては諦めているようだった。

ちなみに未だ颯馬は仕官先を見つける事ができないでいた。

その理由はやはり義輝にあった。

義輝は颯馬の仕官先に何故か城の中までついていき持ち前の不遜な態度で城主に接し、ほぼ門前払い扱いされていたのだ。

 

「ん~、そうだなぁ。この際だから京に行ってみようと思う」

 

颯馬の言葉に義輝の眉が少し動いた。

 

「京....近いのか?」

 

「京のある山城は隣だからゆっくり行っても三日もあれば着くんじゃないか?」

 

今、颯馬達が居るのは摂津と言う国だ。

有名な石山本願寺があるがサイラスはこの国の神やら仏には関係のない人間だ。

サイラスの信じるものはフォースである。

 

「なるほど。そう言えば京には将軍が居るんだったか?今の将軍とはどんな関係なんだ?義輝」

 

義輝の事を前将軍とはサイラスも颯馬も未だ信じてはいないが試しにきいてみた。

ただ、これまでの見てきた義輝の振る舞いにはやはり何処か常人離れしておりサイラスは心の何処かで義輝は本当に将軍ではないのだろうかと思い始めていた。

 

「....義昭は妾の妹じゃ。あまり話す機会はなかったがの」

 

義輝は微笑みを浮かべながら話した。

その顔に嘘は見当たらなかった。

 

「妹か....なら京に行くんだから、顔くらい見て行かなくて良いのか?そもそも、戻るべきだろう?暗殺されずに生きてるんだから」

 

義輝はサイラスの問に目を伏せた。

 

「いいのじゃ。義昭は妾よりも将軍としての役目を果たしておる。今更会いに行ったところで邪魔になるだけじゃ」

 

「そうか?姉が生きているとなれば妹も喜ぶだろう」

 

「確かに義昭は喜ぶかもしれんのう。じゃが、その後混乱が生じる可能性がある」

 

義輝の言っている混乱の意味はサイラスにも理解できた。

つまり義輝が暗殺されたから義昭が今の将軍の座についた。

しかし、その義輝が生きているとなれば当然、義輝に再び将軍の位に復帰する話が出てくるだろう。

だが、もし義昭を擁護する人間がいた場合、義輝の復帰を望むもの達とが争うことになる。

ようやく新たな将軍を立てることによって安定してきた家中がまた崩れてしまう。

そうなっては元も子もない。

 

「だが、義輝の妹はまだ年端もいかない少女なのだろう。姉が共に居てくれたら心強いと思うがな」

 

「べつに妾は義昭の事を見捨てた訳ではないぞ。もし、義昭に助けが必要と分かれば直ぐに助けに行くつもりじゃ」

 

「そうか。まあ、俺が口出しすることではないな。すまない」

 

「よいのじゃ。サイラスは妾の事を心配してくれたのじゃろ?」

 

「それもどうやら杞憂だったようだな。家族は大事にしろよ」

 

「わかっておる」

 

この義輝がもし本当に前の将軍であるなら何故暗殺されそうになったのだろうか?今の義輝を見る限りでは人間性に問題はないと思うのだが....

 

「おーい!置いてくぞ~!」

 

義輝と話しすぎたのかいつの間にか颯馬は随分と前を歩いていた。

 

「わるい!今行く」

 

「そう言えばサイラス。お主、颯馬の用心棒をしておるのだったな」

 

「そうだが?何故今更....」

 

何か嫌な予感がサイラスの脳裏をよぎる。

 

「なら腕に自信があるのじゃろう?どうじゃ、妾と剣を交えてみぬか」

 

そうだろうと思った。義輝は重度の剣の収集家であり、既に体の至るところに幾つもの剣が差してある。

それだけではなく、剣術の心得もあるようでその腕も達人級らしい。

これについては颯馬が話してくれたのだが、どうやら颯馬は自分の知らない間に義輝に手を出したらしく、その時にひどい目にあったようだった。

 

「お断りだ。負けでもしたら颯馬に示しがつかん」

 

「なんじゃ、つまらぬ。大丈夫じゃ。颯馬はそんなことで主を見捨てはせぬ」

 

義輝は、どうしてもサイラスと戦いたいらしくしつこく懇願してきた。

そのしつこさに負け、サイラスも諦めて戦うことを了承した。

そのあと、颯馬にその事を話し今日は今いる町に滞在することになった。

颯馬は大丈夫かと言っていたが、上手くやるしかなかった。

サイラスの心の中には勝ちたくない気持ちと負けたくない気持ちと言う矛盾した気持ちが心の中に存在していた。

義輝との試合は日が沈む前に行われることになった。

 

 

 

 

 

辺りが夕焼け色に染まり少し冷たい風が頬をくすぐった。

試合は町外れの草原で行われた。

サイラスの目の前には長い金色の髪をなびかせ悠然と立っている義輝の姿があった。

夕焼けに色に染まる義輝の髪は輝きを放っており、より一層の美しさを放っていた。

試合は木刀で行われ、頭以外の部位を先に打つことが出来きた方の勝ちと言う一本勝負とした。

審判は颯馬が行い、判定は颯馬に委ねられる。

 

「準備はいいかのう、サイラス」

 

「いつでもどうぞ」

 

「余裕じゃな」

 

「まさか、びびりまくっているよ」

 

サイラスはそう言い肩をすくめる。

 

「そうは見えぬがな.....。まあ良い、早く始めるとするかの。颯馬」

 

義輝に呼ばれ颯馬は頷く。

 

「それでは双方前へ!」

 

サイラスと義輝は木刀を持ち、一歩前へ出る。

 

「試合は一本勝負とし、頭部への攻撃は禁止とする」

 

サイラスと義輝は同時に頷き構えをとる。

サイラスは人差し指と中指を伸ばして前に突きだし、木刀を持った手は後ろに大きく引くという弓を引いたような特徴的な構えをとった。

逆に義輝は木刀を両手で持ち正面体に構える基本的な構えをとった。

それらを見た颯馬は唾を飲み込み叫んだ。

 

「始め!!」

 

先に動いたのは義輝だった。

 

「行くぞ!サイラス!」

 

瞬時にサイラスとの間合いを詰めサイラスの右肩を突いてきた。

サイラスは慌てることなく右半身をを引き、突きをかわした。

義輝は突いた木刀を直ぐに戻し、狙いを上半身から一転して下半身に移し、左の太股を打ってきた。

サイラスは、それを木刀で受け止める。

義輝は更に手を休めることなく剣を繰り出すが、サイラスはこれを全てかわしたり木刀で受け止めた。

 

「はあッ!」

 

サイラスは受け止めた木刀を受け流し、義輝の胴を狙った。

義輝はすぐさま反応しギリギリの所で防いだ。

それと同時に義輝の顔に驚きの表情が浮かんだ。

二人は一旦距離をとった。

義輝の剣捌きは確かに達人級だ、並の人間なら瞬殺されてしまうだろう。

しかし、相手はフォースという超越的な力を使うジェダイの騎士なのだ。

普通では図ることは出来ない。

現にサイラスはフォースの力である予知能力を応用し非常に高い空間把握能力をもって義輝の高速剣を防いでいた。

更に戦い方もジェダイの騎士達が編み出した戦闘の型を使用しており、今サイラスが使っているのはソーレスと呼ばれる防御を重視した戦闘方法だ。

この戦闘方法は本来であればフォースによる先読みと高い反射神経を用いることにより光速に近い速度で飛んでくるレーザーやブラスター等を反射したり偏光させたりするのに使うが対人戦も行うことができる。ただ、反撃が主体なため長期戦や集団戦の方がこの型は向いている。

 

「サイラス、お主強いではないか。まるでこちらの動きが読まれているようじゃ」

 

流石に勘が鋭いようだった。

ならこれ以上余計な事を感付かれる前に勝負を決めなければならない。

ならば次の一刀で決めよう。

どちらも文句のない決着の付け方をしようと思った。

上手く行くかは義輝次第だが。

 

「行くぞ!」

 

今度はサイラスが間合いを詰めた。

 

「....!なるほど面白い!」

 

それに対し義輝もまた間合いを詰めた。

そして、お互いの距離が縮まり攻撃の間合いに入った瞬間、サイラスと義輝は同時に剣を出した。

 

「......ッ!」

 

「......クッ!」

 

二人は同時に動きを止めた。

そこには、サイラスと義輝の喉元に剣先が向けられていた。

 

「りょ...両者、引き分け!」

 

颯馬はお互いが行動不能と判断し引き分けとした。

これはサイラスの狙いでもあった。

勝ちでもなく、負けでもない結果、引き分けと言う結果を。

しかし、この結果に導くためにはお互い勝負に出ないといけない。

もしあのとき、義輝がサイラスの突撃に応えず防御に徹した場合、違う結果になっていただろう。

 

「サイラス、この結果を狙ったじゃろ?」

 

義輝は少し不満そうな顔でサイラスを見た。

 

「義輝程の相手にそんな余裕があるわけないだろう」

 

「あれだけ簡単に妾の攻撃を受けきっておいて何をいっておるのじゃ」

 

「義輝が俺の誘いに乗ってくれなかったら少し厳しか.....ッ!!」

 

サイラスは何者かの気配を感じた。

それはフォースによる空間把握能力がなければ気づかない程で颯馬と義輝は気付いていなかった。

サイラスは、近くの小石を掴み人が隠れらるほどの茂みに勢いよく投げた。

すると、キンッ!と金属に当たったような高い音が響いた。

突然の出来事に颯馬も義輝も口を開けて固まっていた。

少しして茂みの中から白い装束をきた女性が現れた。

 

「ほっほっほっ、まさか気付かれるとは思わなかったでおじゃるよ」

 

その女性の姿を見た義輝が何か気付いたように声を発した。

 

「まさかお主は公家の人間か?」

 

「なんだ?義輝、知り合いか?」

 

「いや、面識はないが...お主、公家の人間なら官位があるはずじゃ。教えよ」

 

「義輝.....まさかとは思ったが、そちは足利義輝かえ?」

 

「そうじゃ」

 

「そうでおじゃるか、なら名乗らなければならぬなぁ。麿の名は烏丸光広、官位は正二位行権大納言じゃ」

 

義輝と烏丸の会話はサイラスにとって何をいっているのか分からなかった。

しかし、横にいる颯馬は何故か目を見開き、口を開けて間抜け面をしていた。

 

「颯馬、公家ってなんだ?」

 

「..........」

 

サイラスの声が聞こえていないのか颯馬は固まったままだった。

サイラスは、颯馬の脇腹を拳で小突いた。

 

「ぐふっ!なにするんだよサイラス!」

 

「お前が無視するからだろう?で、公家ってなんだ」

 

「えっ?ああ、公家は朝廷に仕える貴族の事だよ。それで烏丸家はかなり有名な家なんだ」

 

「ヘェ、いまいちよくわからないな」

 

サイラスは別段興味を示すことはなかった。

何故ならそんなことよりも別に疑問があるからだ。

 

「しかし、何故その公家の人間がこんなところにいるんだ?」

 

「それは分からないけど....物見遊山じゃないか?」

 

颯馬も分からないようだった。

さて、そうなると直接本人に聞くしかないようだが、その本人は義輝と話している。

 

「しかし、義輝や。こんなところで油を売っていていいのでおじゃるか?」

 

「何の事じゃ?」

 

「なんじゃ聞いておらぬのでおじゃるか?ほんの数日前、今の将軍を京から追放しようと織田が兵を上げたそうな」

 

「!!」

 

義輝は激しく動揺した。

 

「はよういかねば。お主の妹が織田に殺されてしまうぞよ」

 

すると烏丸はおもむろに腰に差してある刀を抜いた。

 

「何の真似じゃ?そこを退かぬか」

 

「せっかく教えてやったのじゃ。麿と少し遊んでくれても罰はあたらぬじゃろ?」

 

「そんな暇はない!早くせねば義昭が殺されるのじゃ!」

 

義輝の怒声が響き渡る。

颯馬とサイラスは、いつも飄々としている義輝とは似ても似つかぬその姿に驚いた。

 

「おいおい、いったいどうなっている?颯馬」

 

「俺にも分からん!ただ、分かるのは義輝が京に行きたがってる事くらいだ!」

 

「なら、行かせてやるべきだろう。妹の命がかかってるんだから」

 

「だが、あの烏丸をどうにかしないと行けないし、もう戦う気満々だぞ」

 

「颯馬、義輝を連れて京に行け。あいつの相手は俺がする」

 

「お前はどうするだ!?」

 

「あいつを何とかしたら直ぐに追い付く、だから早く行け」

 

するとサイラスは、この世界に来たときに盗賊から貰った刀を抜き、跳躍した。

フォースによる身体強化での跳躍の高さはゆうに五メートルを越え、烏丸の頭上から強襲した。

 

「おじゃ!?」

 

上空から振り下ろされたサイラスの刀を烏丸は防いだものの、耐えきれず後方に吹き飛ばされた。

 

「義輝!こっちだ!」

 

颯馬は義輝に叫んだ。

義輝はサイラスを一瞥し、すまないと言い残し颯馬と町に戻っていった。

恐らく町で馬を借りるのだろう。

 

「さて、俺もあいつらに追い付かなくてはならない。さっさと終わらせてもらうぞ」

 

「そちは何者じゃ?あのような跳躍、人間とは思えぬ」

 

「お前はこの世の全ての人間にあったことがあるのか?お前の知らない人間もいるだろう?その一人が俺だ」

 

「ふむ....まあ良いでおじゃる。お互い思う存分戯れようぞ」

 

サイラスは、大きく息を吐いた。

時間はかけられない。

ならば戦い方は一つしかない。

あらゆるジェダイの戦闘の型を極めた物しか習得、制御出来ないとされる究極の型、ジュヨーをもって目の前の敵を戦おう。

それがもっとも早く目の前の敵を倒すことができる。

サイラスは僅かに、心の中に戦闘による高揚感を灯らせた。

 

 

 

 

 




読んで下さってありがとうございました。
更新ペースを一定にしていきたいのですが中々難しいですね
次も頑張って書きたいと思います。


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京への道のり~後編~

皆様、更新が遅れたこと申し訳ありませんでした
一ヶ月以上期間があいての更新になりましたが読んで頂ければ幸いです


ジェダイは遥か古の時代から存在してきた。そして、その長きにわたる時の中でライトセイバーを使った戦闘方法が幾つも生み出された。

現在では、ジェダイの戦い方は七つ存在する。そして、サイラスは抜群の戦闘センスに恵まれその七つ全てを使用することが出来る。

そのなかでもサイラスがよく使用するのはシャイ=チョーとソーレスと呼ばれる二つの型だ。

シャイ=チョーと呼ばれる型はジェダイの騎士として最初に覚える型であり、攻撃と防御といった基本的な技を組み合わせた最もシンプルな型だ。

そして、シンプル故に習熟すれば隙のない安定した戦いが出来る。

若いジェダイがよく使っているが使い勝手の良さから熟練したジェダイの騎士も使用している。

サイラスも並の相手ならこの戦いで戦っている。

ソーレスに関しては防御重視の型でジェダイの理念に最も適している戦いと言える。

何故なら、ジェダイは自由と正義を守る騎士であり、自ら誰かを攻撃したり傷つけたりするのはジェダイの理念に反し、フォースの暗黒面に触れることになる。

そのため、ジェダイの騎士は相手の攻撃を受けてから自己の防衛の為に初めて攻撃が出来る。

その点を踏まえると防御重視のソーレスはジェダイとして理にかなった戦いと言える。

そして、今サイラスはその七つの戦いの内の一つ、ジュヨー呼ばれる型で烏丸と対峙した。

 

「公家の人間は朝廷に仕えているんじゃないのか?」

 

目の前にいる白に近い長い銀髪に白い装束を着た烏丸光広という女性はサイラスに対し微笑んでいた。

それは、遊んでくれるのを待っている子供のような微笑みだった。

 

「ほっほっ、そうでおじゃるよ」

 

「じゃあ何故、将軍を助けに行かない?」

 

「麿も人間じゃ。仕えたいと思った人間には命すら懸けて戦おうと思うじゃろう。じゃが、その逆は.....」

 

烏丸は空いている手で服の中から扇子を取りだし口元を隠した。

 

「言いたいことは分かるがお前たちは将軍を補佐する義務を負っているのではないのか?」

 

「そうでおじゃるが、麿は自由人でなぁ」

 

サイラスは話が通じる相手ではないことを悟った。烏丸にとって今の将軍は守るに値しないと言いたいらしい。

 

「どうやら、いくら話し合っても無駄のようだな」

 

「そうでおじゃるよ。無駄な事に時間を使わずに麿と戯れようぞ」

 

くすくすと笑う烏丸はサイラスに刃を向ける。

得体の知れない相手との戦いは、いくらフォースがあるからと言っても油断は出来ない。

 

「では、いくぞよ....」

 

烏丸はゆっくりと体を前に倒すと、地面を蹴った。

そしてそのまま上体が低い姿勢のまま、下から上に切り上げた。

サイラスは、後方に下がりギリギリの所で刀を避けた。

烏丸の速さは常人とは比べ物にならないほど速さで、フォースによる先読みの力がなければ避ける事が難しかっただろう。

サイラスは、後ろに残った重心の反発を利用し、前へ一歩踏み込み水平に凪ぎ払った。

烏丸はこれに反応し刀で受け止めた。

刀同士がぶつかり合い火花が散った。

二人は一瞬のつばぜり合いの後、距離をとった。

 

「簡単にはいかせて貰えないか....」

 

「そち、妙な太刀筋でおじゃるな....」

 

烏丸がそう思うのも無理はない。

サイラスの使っている型、ジュヨーは静と動、相反する特性を同時に併せ持もち、高度な体術と非常に精度の高い剣捌きが要求される難易度の高い型だ。

しかし、その動きは極めて予測困難な戦い方で相手を圧倒することが出来る。

 

「お前もかなりの速さで動くな...」

 

「ほっほっ、京ではこの速さについていける者はあらぬでなぁ。剣を避けられたのは久方ぶりでおじゃるよ」

 

「そうか、それは光栄だな。だが、先も言ったが時間は掛けられないんだ」

 

今度はサイラスが先に動いた。

フォースによる高速移動を使い一瞬で間合いを詰め、烏丸の頚部を狙って刀を水平に振った。

 

「......っ!」

 

烏丸はサイラスの速さに驚いたものの、反応しサイラスの一撃を受け止める。

 

「...!?」

 

しかし、烏丸は受け止めた刀に違和感を覚えた。

異様に軽いのだ。

それもまるで受け止めたのかすら分からないほどに....。

その時、烏丸は気づいた。

これは、陽動だと。

攻撃する剣ではなく注意を反らす為の剣だと言うことを。

しかし、気付くのが遅かった。

既にサイラスは、烏丸の脇腹に二撃目を放っていた。

 

「くっ.....!」

 

何とか烏丸はギリギリの所で反応し二撃目を防いだ。

しかし、ギリギリの所で受けた為、受けきる事が出来ずに体勢を大きく崩した。

その隙をサイラスが見逃す事はなく、サイラスは烏丸の腹部に強烈な蹴りを放った。

 

「かはっ!」

 

サイラスの蹴りを腹部に受けた烏丸は大きく後方に吹き飛ばされた。

 

「うっ....ぐっ...」

 

吹き飛ばされた烏丸は腹部の痛みに耐えながらも立ち上がろうとするが、想像以上に強い蹴りに呼吸すらもままならない状態だった。

 

「ここまでだな」

 

サイラスは、烏丸の目の前に立ち刀を突き付けた。

 

「麿の....敗けでおじゃるな....」

 

烏丸は刀をその場に置き、降参の意思を示した。

 

「敗けを認めるのか?」

 

「そうじゃな。そちの勝ちでおじゃる。首を取るのも、慰みものにするのも好きにするがよい」

 

すると、サイラスは刀を納めて烏丸の刀を回収すると烏丸を抱き抱えた。

烏丸の体は思ったよりも軽く華奢な体つきをしていた。

抱き抱えられた烏丸は一瞬何が起こったのか分からず体を硬直させた。

 

「そ、そち!いったい何のつもりでおじゃる!?」

 

「降参した相手を殺したり、傷つけたりするのはジェダイの掟に反する」

 

サイラスは、烏丸を抱えたまま町に行き宿に戻った。

烏丸はサイラスの腕の中で半ば放心状態に陥っていたが部屋に着くと烏丸がサイラスの腕の中で小さく呟いた。

 

「そち、麿はもう大丈夫でおじゃる。下ろしてたも....」

 

気付けば、部屋まで烏丸を抱えたまま来たため、非常に目立ってしまっていた。

宿の主人は何やらニヤニヤしていたがサイラスは気にも止めなかった。

 

「もう、大丈夫なのか?」

 

「う、うむ。平気でおじゃる」

 

サイラスに下ろされ畳の上に下りた烏丸は突然膝を着いた。

 

「ぐっ....」

 

サイラスから受けた蹴りは想像以上にダメージが大きかった。

立とうとお腹に力を入れた時に激しい鈍痛に見舞われた。

 

「本当に大丈夫なのか?......少し待っていろ」

 

するとサイラスは、布団を敷きだした。

 

「そ、そち、何をしておるのじゃ?」

 

サイラスは、腹の痛みに耐えながら首を傾げる烏丸には気にせず手際よく布団を敷いていく。

 

「さあ、横になれ」

 

「........おじゃ?」

 

布団を敷き終わったサイラスの一言に烏丸は口を開けたまま固まった。

布団が敷かれて男から横になれと言われてしまっては思い付く事は一つしかなかった。

 

「どうした?早く布団の上で寝そべると良い」

 

「そちよ、酷いことはせぬと言っておったでおじゃろう?」

 

「痛くはしないから安心しろ」

 

烏丸は首を横に振り拒絶した。

 

「い、嫌じゃ!」

 

「はぁ....負けたのだから言うことを聞け」

 

確かに烏丸はサイラスとの戦いに負けたとき、首を取るのも慰みものにするのも好きにしろと言った。

今さらそれを覆すのは負けた者として、そして武士として情けないことである。

 

「うう....少しでも信じた麿が馬鹿でおじゃる....」

 

その場で斬らず宿まで運んでくれたサイラスの優しさを信じた自分を憎んだ。

烏丸は少し涙ぐみながら布団の上に横になった。

 

「ならいくぞ。痛かったら言え」

 

サイラスは、蹴った烏丸の腹部に軽く手を置き、手にフォースを集中させた。

 

「そ、そち。何を.....」

 

烏丸はサイラスの手が置かれた腹部に異変を感じた。

それは先程まで立てないほどに痛かった腹部の痛みが、みるみるうちに無くなっていったのだ。

 

「まあ、こんなものか。どうだ?まだ痛いか?」

 

「いや、大丈夫じゃ。全く痛くないでおじゃる」

 

「少し虚脱感が生じるが大丈夫だ。今日はゆっくりと休め」

 

サイラスが行ったのはフォースによる治療だ。

ジェダイはフォースを使う事によって精神の沈静や疲労の回復、短い時間で十分な睡眠を取ったり等をすることが出来る。ちなみにこれらの能力は、ジェダイならほぼ必ず備えている一般的な能力である。

他にも呼吸法や瞑想を行い、自己暗示をかけトランス状態になる、などの方法がある。 これは精神的に怪我や火傷の痛みを感じないようにさせて苦痛を和らげるというものから、熟練すれば物理的に体内の毒を除去したり、かなりの大怪我傷を治すこともできるようになる。

そしてサイラスが烏丸に行ったのは他人に対するフォースによる治療だ。

これは、癒される側の身体エネルギーを使い疾病を治したり、傷を治したりすることが出来る。

ただし、これは相手の身体構造を把握しておかなければ逆効果になってしまう。

烏丸の場合は同じ人間であり、腹部の打撲と言う原因がはっきりとしていた為、完璧に治すことが出来た。

 

「確かに、少し体がだるいでおじゃるな。しかし、治療をしてくれるのならそう言ってくれれば良かったのものを....」

 

「治す方法を言って信じたか?」

 

「も、もちろんじゃ」

 

そう言っている烏丸の目は泳いでいた。

 

「そうか。....少ししたら眠気が襲ってくる。抗う必要はない。しっかり眠れば明日には万全な体調で目を覚ますことが出来る筈だ」

 

「....知らなかったとはいえ疑って悪かったでおじゃる」

 

「それは仕方ない事だ。この世界ではあり得ない方法で治したから説明が出来なくてな」

 

この世界の人間にフォースの事を話しても理解しては貰えないだろう。

唯一、フォースについて話した颯馬も理解出来ていないと言えた。

なら、あまり無用な事を話しても仕方ないと思ったのだ。

 

「何か飲み物を取ってくる」

 

サイラスは立ち上がり飲み物を取りに部屋を出た。

途中で会った女中に飲み物を頼み、これを受けとると部屋に戻った。

 

「.....スゥ.....スゥ.....」

 

部屋に入ると烏丸は目を閉じていた。

サイラスは烏丸に近づくと寝息が聞こえてきた。

そのまま、烏丸の顔を覗き込むと完全に寝ていることを確認した。

 

「なんだ寝たのか?.....仕方ない、颯馬を追うのは諦めるか。こいつをこのままにしておくことは出来ないからな」

 

今から颯馬達を追いかけても追い付くことは無理だろう。それに今からでは直ぐに日がおちて、辺りが真っ暗になってしまう。

そして何よりサイラスは、京までの道のりを知らなかった。

 

「そういえば、こいつは京の貴族だったよな。なら明日、案内して貰えば良いのか」

 

サイラスは、寝ている烏丸を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

朝、木の窓の隙間から日の光が射し込みサイラスを眠りから覚醒させた。

 

「.....さてと、行くか」

 

サイラスは、布団から出ると手早く着替えを済ませ、隣で今も寝ている烏丸の体を揺すった。

 

「おい、起きろ。朝だぞ」

 

「う....まだ眠いでおじゃる....」

 

烏丸は布団を頭まで深くかぶりまた寝息を立てた。

 

「ダメだ。さっさ起きろ」

 

サイラスは、再び体を揺する。

 

「....なんじゃ?しつこいのう」

 

烏丸は嫌々布団から顔を出した。

すると、近くに座って烏丸を見ているサイラスの顔を見て飛び上がった。

 

「な!なんでそちがおるでおじゃるか!?」

 

「いや、なんでって....」

 

「よ、義輝を追って京に行ったのではないでおじゃるか?」

 

「それが京までの道を知らなくてな。そこでお前に案内してもらうと思ってな」

 

「そんなのおことわ...」

 

ガシッ....

 

サイラスは、烏丸が言い終わる前に烏丸の肩を掴んだ。

烏丸の体が驚きで一瞬震えた。

 

「まあ、そんなことを言うな。旅は道連れ世は情けと言うだろう?迷える子羊を助けると思って案内してくれ」

 

サイラスの言葉に烏丸は呆れたように顔を項垂れた

 

「何が子羊でおじゃるか、そちは狩られる側よりも狩る側の方でおじゃろうが。そんな奴は迷わせておいた方が世のためじゃ」

 

「まあ、そんなつれない事を言うな。俺と京までの楽しい旅をしようじゃないか」

 

そう言うと烏丸を無理やり肩に担ぎ上げた。

 

「おじゃぁぁぁ!何をするでおじゃるか!下ろさぬか」

 

「言っておくが負けたお前に拒否権はない」

 

「うぐっ.....」

 

戦いに負けた事を言われては烏丸は何も言い返す事は出来なかった。

この世界での一騎討ちはそれなりの意味のある戦いのようだった。

それは、勝った者と負けた者で完全に上下が分かれるほどだ。

最悪、敗者は切腹し死ぬことになる場合もあるし、勝者の名を上げるために首を取られる場合もある。

無論サイラスは、敗者に切腹を要求することも、この世界で名を売るために首を取ることもしない。

何故なら彼がジェダイの騎士だからだ。

自由と正義を守る為に戦う彼が自分の自己満足の為に誰かを傷付けたり命を奪ったりはしない。

そんなことをすればいくらサイラスと言えど暗黒面に堕ちてしまう可能性がある。

 

「分かったら。行くぞ」

 

サイラスは、烏丸を担いだまま部屋を出ようとする。

しかし、烏丸はそれを必死に制した。

 

「ま、待つでおじゃる!せめて服を着替えさせてくれなのでおじゃる!」

 

見ると烏丸はいつの間に着替えたのか宿に常備されている寝間着に着替えていた。

 

「いつの間に着替えたんだ?まあ、良い。早く着替えてくれ」

 

サイラスは、烏丸を下ろし烏丸が着替えるのを部屋の外で待った。

少しして烏丸は昨日着ていた白いろの装束に着替えて部屋を出てきた。

 

「さて、行くぞ」

 

「言っておくが、京に行っても手遅れかも知れぬぞ」

 

「まあ、その時はその時だ。取り敢えずは颯馬と義輝と合流する」

 

すると、サイラスは昨日回収した烏丸の刀を烏丸へ返した。

 

「なんじゃ、返してくれるでおじゃるか」

 

「お守りは苦手でな」

 

「自分の身は自分で守れ、でおじゃるか」

 

「まあ、危なくなったら助けてやる」

 

「そちよ、麿を誰だと思っている」

 

「.....俺に負けたやつだろ」

 

サイラスは、ため息混じりに言った。

 

「うぐっ.....」

 

烏丸は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「冗談だ。お前が強いのは分かっている。それにこの国の事はお前の方が詳しいだろうから頼りにしている」

 

「そういえばそちよ、お主何処の国の者でおじゃる?」

 

「...........」

 

サイラスは、言葉に詰まった。

それも当然であるサイラスの故郷は別の世界にあるのだから出身を聞かれても答えることはできない。

 

「若いときから流浪の旅をしていてな。故郷の事は忘れてしまったよ」

 

サイラスの答えに烏丸は不思議そうに首をかしげた。

 

「ふむ、そんな前から旅をしておるのに京までの道がわからぬのでおじゃるか?」

 

「.....いや、まぁ、方向音痴でな」

 

「よく死ななかったものでおじゃるな」

 

「運には恵まれていてな」

 

「ならその運を使って京まで行くでおじゃる」

 

「さてと、行くか。いつまでもここで長居しなも仕方ないしな」

 

「遂に話を無視しよったか....」

 

「そう言えばいつまでもお前では不便だから名前で読んで良いか?」

 

「もう、好きにするでおじゃる....」

 

その後、サイラスと烏丸は町で馬を貸りて京のある山城を目指した。

 

 

 

 

 

早馬で二日間ろくに休憩もとらずに走り続けた為に二人はかなりの疲労に見舞われながらも京がある山城へと到着した。

日は既に沈んでおり城下町は提灯の光で幻想的な雰囲気を出していた。

 

「麿の役目もここまででおじゃるな。では、麿は屋敷に帰るでおじゃる」

 

烏丸は公家なので当然住んでいる屋敷も京にある。

 

「まあ、待て。せっかくだから城まで案内がてら観光しようではないか」

 

烏丸は露骨に嫌そうな表情を浮かべた。

 

「何故自分の住んでいる所で観光せねばならんのじゃ?それに城ならここからでも見えるでおじゃろう」

 

「全く光広はわがままだな。そんなんじゃ結婚出来ないぞ?」

 

「どっちがわがままでおじゃるか!そ、それに結婚は関係ないじゃろう!」

 

サイラスが冗談で言った結婚という言葉に烏丸は顔を真っ赤にしながら反応した。

サイラスはそれを見て不敵に笑った。

 

「何を焦っているんだ?まさか....」

 

「し、城に向かうのでおじゃろう?さっさと付いてくるでおじゃる」

 

「そうだな。助かるよ」

 

「ハァ...そちというやつは」

 

烏丸はため息を吐きながらも城の方向に馬を歩かせた。

サイラスは、烏丸の横に並ぶように馬を歩かせ烏丸に付いていった。

京の町に入って程なくしてサイラスはある違和感に気付いた。

 

「信長とか言うやつに攻められたにしては綺麗な町並みだな」

 

「確かに...変でおじゃるな」

 

普通であれば攻められて町がある程度壊されていても不思議ではない。

そして何より最も標的になるはずの城がまだ遠目であるがしっかりと健在していた。

つまり、信長は京に入っていないと言うことになる。

 

「まあ、城に行って颯馬と義輝に会えば分かるか」

 

「そうでおじゃるな」

 

二人は京の現状に違和感を抱き、少し急いで将軍が居る城へと向かった。

城の門にはもちろん兵が配置されており周囲を警戒していたが、そこは公家である烏丸が門番と話を通してくれたお陰で問題なく通ることが出来た。

 

「助かった。俺だけだったら門前払いを受けていたよ」

 

「まあ、麿も少し気になることがあるしのう。気にするでない」

 

「将軍の事か?」

 

「うむ。義輝が今の将軍義昭様を助けに行ったのであれば確実に問題になっている筈でおじゃる」

 

「まあ、死んだ筈の前将軍が生きていたんだからな」

 

「そうじゃな。そしてその状況を....」

 

そこでサイラスと烏丸は歩みと会話を止めた。

理由は、前からこちらに向かって歩いてくる三人組がいたからだ一人は背の高いかなり年をとった老人ともう一人は紫色を基調とした装束と長い黒髪が特徴的なまだ二十を越えないくらいの少女、そしてもう一人は....

 

「颯馬!」

 

サイラスは三日ぶりにその名を呼んだ。

自分の名前を呼ぶ声に颯馬はこちらを向き一瞬驚いた表情を見せたがすぐに笑みへと変わった。

 

「サイラス!無事だったのか!」

 

颯馬は足早にこちらに近づいてきた。

 

「俺が死んだと思ったか?」

 

「そ、そんなことはない。ただ、少し遅かったから心配になっただけだ」

 

「そうなのか?それは悪かったな。光広をそのままにすることが出来なくてな」

 

「光広?」

 

すると、烏丸がサイラスの後ろから姿を現した。

 

「お、お前は!」

 

「また会ったでおじゃるな」

 

烏丸を見た颯馬は後ろに飛び退いて刀を抜いた。

 

「なんでお前がここにいるんだ!」

 

「麿は公家なのじゃからここにおっても不思議ではないじゃろう?」

 

「そうだが、お前が俺たち味方とは限らないだろう!」

 

「ふむ、麿はそれで構わぬでおじゃるが、後ろにいる者と一度話をした方がよいのではおじゃらんか?」

 

「え?」

 

颯馬は後ろを振り向くとそこには、鬼のような形相で立っている老人が立っていた。

 

「この....馬鹿者が~~~!!!」

 

ゴンッ!

 

颯馬の頭に拳が降り下ろされた。

その音は、鈍いのに何故か周りに響き渡った。

サイラスも烏丸もその音から痛みを想像し颯馬から目をそらした。

 

「城の中で刀を抜く者が何処におるか!しかも公家である烏丸殿に刃を向けるとは...この恥知らずめ!一から教育しなおしてやるわ!」

 

すると、頭を抱えて悶絶している颯馬の首根っこを掴まえてずるずると引きずって何処かへ行ってしまった。

その姿を見送ると先程颯馬と老人と一緒に歩いていた少女が声をかけてきた。

 

「ええと...なんかごめんなさい。お父さん、なんか颯馬には厳しくて」

 

「あれは痛そうだったなぁ、光広」

 

「そうでおじゃるな。じゃが、そちの蹴りの方がもっと痛いでおじゃる」

 

「なんだよ。まだ、根に持ってるのか?治してやっただろう?」

 

「治して貰った事には感謝しておるが、負けた事を考えると悔しいのじゃ」

 

「じゃあ、また暇な時に戦ってやるよ。」

 

「本当でおじゃるか!?」

 

烏丸は目を輝かせ笑みを浮かべサイラスに詰め寄った。

ここまで戦う事が好きと言うのはもう戦闘狂だ。

ジェダイナなら確実にダークサイド落ちが確定する。

 

「その代わり木刀な。命の奪い合いは勘弁してくれ」

 

「あの~、もうそろそろ良いですか?」

 

サイラスと烏丸の話が終わるのを待ちきれなかったのか少女が話に割り込んできた。

 

「おっと、すまない。大事な方を放っておいてしまった。すまない話してくれ」

 

「あ、うん。光広様は当然ですけど、サイ...ラスだったっけ?も義輝様と知り合いなんだよね?」

 

「そうだ。まあ、知り合いといっても最近知り合ったぐらいの間柄だがな」

 

「そうなの?義輝様が貴方のことを凄く心配してたわよ?光広は凄く強いから心配だって」

 

少女の話を聞いてサイラスは一瞬、烏丸を見ると烏丸は扇子で口元を隠してサイラスから目をそらした。

 

「確かに強かった....気がするな」

 

「気がする?」

 

サイラスの一言に少女は首を傾げる。

 

「そちは一言余計でおじゃる!」

 

烏丸はサイラスの足を踏んづけようとするがサイラスは足を引いてこれを避ける。

 

「ぐぬぬ....!」

 

サイラスは悔しがっている烏丸を他所に少女との話を続けた。

 

「それで?今日は義輝に会えるのか?」

 

「聞いてみないと分からないけど...今から貴方が生きていた事を伝えにいくからそのと時に聞いてみるわ」

 

「そうか。では、頼む」

 

「うん。じゃあ、客室で待ってて!光広様はどうなさいますか?お屋敷に戻られますか?」

 

「いや、麿もちと義輝と話がしたいからのう、サイラスと待たせて貰うでおじゃる」

 

「分かりました。では、案内しますね」

 

「そう言えば、君の名前をまだ聞いていなかったな」

 

「あっ、そうだった!ごめんなさい、名乗ってなかったわね。私は細川忠興。今は足利義昭様に仕えているわ」

 

「忠興...。忠興殿と呼べば良いか?」

 

「う~ん。あまり堅苦しいのは好きじゃないから、私しか居なかったら呼び捨てでもいいけどお爺ちゃん....さっき颯馬を連れていった人ね、がいるときとかは気を付けてね」

 

「分かった。そうしよう」

 

どうやら、先程の老人は礼儀や作法にうるさいらしい。

この世界の事をあまり知らない内はあまり関わりたくはないと思った。

 

 

 

 

 

忠興に客室に通されたサイラスと光広は取り敢えず腰を下ろした。

畳と木の薫りがする部屋は、最初は慣れなかったサイラスも今では落ち着けるようになっていた。

 

「惑星ダゴバにいた頃に比べれば快適だよな」

 

「ん?何か言ったでおじゃるか?」

 

独り言のつもりで小さな声で言ったのだが烏丸にかすかに聞こえたらしい。

 

「いや、こっちの話だ」

 

「そうでおじゃるか。して、サイラスよ。そちはこれからどうするのじゃ?」

 

「どうするとは?」

 

「旅の共であった義輝ともう一人の男は今の状況から察するに足利家に仕えておるじゃろう。そちはどうするのかと思うてな」

 

「ふむ、俺の目的を達成するのには颯馬の協力が不可欠でな。颯馬がこの家に仕えるのであれば俺もこの家に仕官しようと思っている」

 

それを聞いた烏丸は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「そうでおじゃるか。そちなら良い武将になれるじゃろう」

 

烏丸の言葉にサイラスは首を振った。

 

「いや、武将として志願せずに兵として始めようと思っている」

 

烏丸は目を見開き驚いた。

 

「何故じゃ!?そちほどの力の持ち主であれば将として武功を上げることも容易いのでおじゃるぞ」

 

「別に名声や金が欲しい訳じゃない。目的を達成出来ればそれでいいんだ」

 

「先程から目的と言っておるが、そちの目的とはなんなのじゃ?」

 

サイラスは言うのを躊躇った。言っても信じて貰うのに今は時間がないからだ。

それに今はできるだけ自分の力は隠しておきたかった。

兵として始めるのにもその理由からだ。

戦いでフォースを使うのは仕方ない。

ただし、それが目立ってしまっては駄目だ。

そこでサイラスは、混戦した中で戦えば目立たないと思ったのだ。

もし、武将として戦えば兵はその将の戦いに注目するだろう。

だが、混戦した中で戦える兵であれば目立つことなく戦えるだけでなくジェダイとしての戦いも可能だ。

だから、今は出来るだけ目立たない選択をとろうとサイラスは考えた。

 

「悪いな。それはまだ言えないんだ」

 

「そうでおじゃるか。まあ、構わぬでおじゃる。そちと戦えるのであれば兵でも武将でも麿は構わぬ」

 

「結局そこなんだな....」

 

サイラスはため息をつくと、誰かの足音が近づいてくるのに気付いた。

 

「ん?忠興か?」

 

「まあ、そうじゃろうな」

 

足跡が部屋の前で止まると呼び掛けの言葉もなく勢いよく襖が開かれた。

 

「え?」

 

「おじゃ?」

 

開かれた襖から入ってきた人物を見て二人は言葉を失った。

 

「サイラス!無事であったか!」

 

そう入ってきたのは義輝だった。

忠興が謁見の伺いをたててくれた筈なのだが本人がこっちに来てしまったらしい。

 

「義輝様~!待ってくださいってば~!」

 

パタパタと足音が聞こえて来ると遅れて忠興が部屋に入ってきた。

 

「忠興、遅かったな」

 

サイラスが冗談ぽく言うと、忠興が膨れっ面で反抗した。

 

「だって、義輝様にサイラスが生きてたって言ったら凄い勢いで走っていったんだもん」

 

「よくこの部屋が分かったな」

 

「妾は前の将軍じゃからな。城の構造は知っておるぞ」

 

「ああ、そうだったな....それで?なんでこの部屋にいるのが分かったんだ?」

 

「しかし、よく生きておったの。後で知ったのじゃが光広の剣術はかなり強いと聞いたから心配しておったのじゃぞ?」

 

義輝はサイラスの疑問をスルーして話を続けた。サイラスも特に聞きたいことではなかったので気にしないことにした。

 

「ああ、光広は強かったよ。危うく負けるところだった」

 

「そうか。しかし、その光広に勝ったのじゃから誇りに思うと良いぞ」

 

「ああ、そうするよ.......光広、このくらいで良いか?」

 

「じゃから一言多いといっておるじゃろう!それに別にそんなこと頼んでおらんでおじゃる!」

 

「相変わらず我が儘だな。だから結婚できないんだろ」

 

「なっ!一度ならず二度までも...!もう、容赦はせんでおじゃる!」

 

烏丸の我慢が限界を越えたのか烏丸は抜刀しサイラスに襲い掛かった。

 

「おいおい、いくらなんでも急過ぎるだろ!」

 

「おじゃ!」

 

手加減が一切ない烏丸の刃がサイラスの腹を薙ごうとする。

しかし、サイラスは素早く反応しこれを避ける。

 

「ぐぬぬ!不意打ちでも当たらぬか!」

 

「不意打ちかよ!武士としての正々堂々は何処に消えた!」

 

ちなみにジェダイの騎士に不意打ちは通用しない何故ならフォースによる先読みが出来るからだ。

 

「そち相手なら仏も許してくれるでおじゃる」

 

「意味が分からん!」

 

刀を持って暴れる烏丸とそれを必死に避けるサイラスを見て、驚きのあまり戸惑っている忠興とその横で腹を抱えて笑っている義輝がそこにいた。

 

「義輝!笑ってないで止めてくれ!」

 

「お主は烏丸に勝ったのじゃろ?なら自分で止めれるじゃろう」

 

「また俺が勝ったら次は絶対に拗ねるぞ?こいつ」

 

サイラスは、烏丸の攻撃を避けながら義輝と話してると、余計に烏丸の攻撃が激しくなる。

 

「分かった!謝るから、許してくれ!」

 

「許さんでおじゃる!」

 

その後、約二十分間刀を振り続けた烏丸は力尽きてその場に倒れた。

 

「もう....無理でおじゃる...」

 

そして、それに付き合ったサイラスも同時に畳の上に倒れた。

 

「烏丸、お前....しつこいぞ....」

 

「そちが、さっさと麿に斬られれば直ぐに終わったでおじゃる」

 

「俺のせいかよ」

 

「主らよう頑張ったのう。で?何から話せば良いかのう?」

 

サイラスと烏丸は互いに顔を見合わせ頷き、義輝に告げた。

 

「明日にしてくれ」

 

「明日にしてたも」

 

 

 




ありがとうございました
これからも腐らず少しづつ書いていこうと思います


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新たな旅路へ

約1年ぶりの更新となりました
今更な更新ですが読んで頂けたら幸いです


朝、与えられた部屋でサイラスは目を覚ました。

サイラスは、起き上がり襖を開けると少し冷たい空気がサイラスの寝ぼけた頭を覚醒させた。

 

「全く、結局昨日は話が進まなかったな」

 

それには自分に原因があるため誰も咎めることは出来なかった。

 

「もう少し、辛抱する力を鍛えないとなアイツは」

 

我慢強さは戦いの中でも非常に重要なことだ。攻め急ぐと相手の罠に嵌ってしまうし、攻められているからといって慌てて攻め返すと致命的な隙が生まれてしまう。

サイラス自身も昔、その我慢強さがなくてヨーダに叱られていた。

戦闘センスとフォースの力に恵まれていたサイラスはその飲み込みの速さに慢心していた時期があった。

しかし、その慢心も圧倒的な強さを誇るヨーダに粉々に砕かれた後は大人しくヨーダの教えを忠実に守り、いつ如何なる時もフォースの教えに従うことを心に決めていた。

 

「まぁ、それよりもこれからどうするかを考えないとな。颯馬には悪い事をするがここを出て行こう」

 

サイラスは、始めはここに兵として志願するつもりだった。

それは、颯馬との約束もあったし烏丸とも約束していた事だったが、昨日の夜考えた末にやはりあまりこの世界に干渉すべきでないと思ったのだ。

そして今この国は戦乱の世であり、各地で戦争が起こっていた。

となれば少なからず戦いに身を投じなければならない。今のサイラスであればそう簡単に暗黒面に落ちる事はないが避けれるのであれば避けるべきだ。

サイラスは、身支度を済ませると取り敢えず義輝に会いに向かった。

向かう途中で兵に何度か呼び止められたが名前を告げると、失礼した、と軽く頭を下げれた。

おそらく義輝辺りが便宜を図ってくれたのだろう。

サイラスの格好はこの世界においてはあまりにも不自然であり呼び止められのも無理はなかった。

サイラスは、近くの警備をしている兵に義輝の所在を聞くと軍議の間に居ると答えたためサイラスは軍議の間に向かった。

 

「ここか…」

 

サイラスは、フォースで襖を開けると部屋にいた将兵達がサイラスに目を向けた。

サイラスは特にためらうこともなく部屋に入りフォースで襖を閉めた。

その一連のサイラスの行動は将兵達に驚きを与え、とっさに将の一人が刀に手をかける。

 

「止めぬか」

 

そこで、一人の女性が将を言葉で止めた。

それは、見事なものでまるで氷ったかのように将は動きを止めていた。

声の正体は義輝だった。大声を出したわけではない、しかし、発した言葉には殺気が込められておりそれが将の動きを止めていた。

 

「流石だな義輝」

 

義輝は、軽く溜息を吐くと、まったくと苦笑した。

 

「お主が奇天烈な入り方をするからこうなるのじゃぞ?」

 

「ん?ああ、そういうことか。すまないないつもの癖でな」

 

ジェダイの騎士はフォースを日常的に使用する。

例えば、物を取る時もフォースを使って自分の所に持ってくるし、物を動かす時もフォースを使う。サイラスが軍議の間に入った時のように扉などもフォースで開け閉めする。

そうやってジェダイはフォースの力を日常的に使うことでフォースを自在に操っている。

 

「それで、どうしたんじゃ?」

 

「ああ、これから俺はどうすれば良いのかと思ってな」

 

「なるほどのう、それなら義昭に聞くと良い。今の将軍は義昭じゃからの」

 

すると義輝は軍議の間の一番奥に目を向けた。

そこには、綺麗な銀の髪のまだ年端もいかない少女が座っていた。

 

「(この子が将軍?)」

 

まるで飾られているのではないかと思ってしまうほどその目には生気が感じられなかった。

 

「あなたがサイラスですね。話は聞いています。烏丸と義輝様を連れてくれたことに感謝します」

 

「成り行きでそうなっただけです」

 

サイラスの言葉に義昭は首を振った。

 

「いえ、貴方のおかげです。今の私ではできる事は少ないないですが、できる限り貴方の望みを叶えましょう」

 

「……では、少しばかりの金をよろしいでしょうか」

 

「分かりました。直ぐに用意させましょう」

 

義昭は淡々答える。

まるで機械を相手にしているかのようだとサイラスは思った。

 

「後もう一つ。この城を出て行く許可を頂きたい」

 

「なっ!」

 

「なんじゃと!」

 

颯馬と烏丸が驚きの声を上げ、立ち上がる。

 

「これ止さぬか!義昭様の御前であるぞ」

 

しかし、忠興の父である細川藤孝に制され二人は渋々といった感じで元の場所に座った。

 

「それとサイラス殿」

 

藤孝は次にサイラスの方を向く。

 

「なんでしょう」

 

「サイラス殿も義昭様の御前で頭が高いのではないか?」

 

周りを見れば確かに皆座っていた。

 

「申し訳ありません。まだ、この国の礼儀作法が分かっていないために失礼をしました」

 

元の世界では偉い人間は椅子に座り下の人間は立っていた。

なのでサイラスは立っているのが当たり前だと思い、座らずにいたのだがどうやらこの世界では逆らしい。

サイラスは、直ぐに正座する。それを見た藤孝は頷き、再び正面へと向き直る。

 

「サイラス、貴方の実力は義輝様と烏丸から聞いています。我が足利家で働くつもりはありませんか?」

 

義昭の言葉にサイラスは首を振る。

 

「申し訳ありません。私には目的がありますので…」

 

「そうですか…。なら無理に引き止めるのは止しましょう」

 

「ありがとうございます」

 

サイラスは頭を下げ、立ち上がる。

今からサイラスはこの家の者ではない。

そんな者が軍議の間に居るのは良くないと考えたからだ。

 

「藤孝、見送りをお願い出来ますか」

 

「承知致しました。では、サイラス殿こちらへ」

 

サイラスは、藤孝に先導されながら軍議の間を後にした。

城門に向かう途中、隣に居る藤孝が口を開いた。

 

「お主はこの城を出たらどうするのだ」

 

「正直言えば分かりません」

 

「分からない?お主、さっき目的があると言ってはおらんかったか?」

 

「はい。しかし、その目的を果たす為にどうすれば良いのか分からないのです」

 

「ふむ、なら堺に行ってみてはどうじゃ?」

 

「堺ですか?」

 

「左様、ここから南に下った所に和泉という国がある。そこに堺という町がある」

 

「そこには何があるのですか?」

 

「そこは他国との貿易が盛んな場所じゃ。自然と情報が集まる場所でな。お主の求めている物も見つかるやもしれん」

 

情報が不足している今、藤孝がもたらした情報はサイラスに希望を与えるのに十分な情報だった。

 

「感謝します。闇雲に探すつもりでしたので助かります」

 

「うむ。では、ついでと言ってはなんだが一つ頼まれてはくれんかの?」

 

「…なんでしょう」

 

どうやら情報はタダではなかった。

しかし、サイラスも情報を貰い感謝の言葉まで言った手前、断ることが出来ず承諾してしまった。

 

「書状をある人物に渡して欲しいのじゃよ」

 

「ある人物とは?」

 

サイラスの疑問に少し俯き黙りをきめると意を決したように口を開いた。

 

「三好長慶じゃよ」

 

藤孝の重くるしい声音とは裏腹にサイラスの頭の上にはクエスチョンマークが出ているかのように首を傾けていた。

しかし、そんなサイラスを放って藤孝は言葉を続ける。

 

「分かっておる。今の情勢で三好家に赴くのは非常に危険なことじゃ。しかし、今後の足利家を存続させる為にも三好家とも友好を築いておく必要があるのじゃ。義輝様が生きてお戻りなった今、それが可能かもしれん」

 

サイラスは既に藤孝の話をほとんど聞いていなかった。要は手紙を渡せばいいんだろ、くらいしか考えていなかった。

 

「手紙を渡すだけで良いんですよね」

 

「引き受けてくれるのか」

 

「まぁ、そのくらいだったらついでの範疇でしょう」

 

「そうか、恩にきるぞサイラス殿。では、少し書状を整えてくるから城門で待っていてもらえぬだろうか」

 

「分かりました。では、先に行って待っています」

 

その後サイラスは城門で門番と世間話という名の情報収集をしていると、良く聞き入った声が聞こえてきた。

 

「見つけたでおじゃる!」

 

その声にサイラスは深いため息をついた。

 

「光広、お前もしつこい奴だな」

 

「お主が約束を破るからでおじゃる!」

 

「む、それを言われると痛いな。だが、考えを変えるつもりはない」

 

この場に颯馬が居ないのは諦めてくれたからなのか、それとも約束を破った男として見限ったのか。

少なからず今は烏丸を説得する必要があった。

 

「なら、勝負するでおじゃる。お主と麿との本気の真剣勝負でおじゃる」

 

烏丸は真剣を抜き、サイラスに殺気を向ける。

それは、前に戦ったときよりも鋭さを増していた。

サイラスは笑みを浮かべた。やはりお前は分かりやすくて助かると、そしてありがとうと、心の中で呟きサイラスはローブの中でライトセーバーを握った。

 

「……良いだろう。なら俺も本気をだそう。自分の力と自分の本当の武器で戦おう」

 

サイラスはローブを脱ぎ去ると同時にライトセーバーのスイッチを入れる。

柄の両端から黄色の光刃が形成される。その長さは2メートル超ほどあり高周波のプラズマブレードは振動するかのように異音が響いていた。

サイラスのライトセーバーを見た周囲の兵は驚きの声を上げ腰を抜かしていた。

烏丸も顔には出していないが、目の前で起こっている非現実に少し震えていた。

 

「行くぞ光広」

 

先に動いたのはサイラスだった。

フォースによる肉体強化で一気に間合いを詰めると上段に斬り払った。

 

「……っ!」

 

烏丸は間一髪のところで後方に下がりそれを避ける。それに対してサイラスは斬り払った勢いのまま体を回転させもう一方の光刃で下段に斬り払った。

 

「くっ!」

 

烏丸は真上に跳躍しそれも避ける。

そして、上空からサイラスの首を狙う。

 

「おじゃ!」

 

しかし、烏丸の動きはサイラスには分かっていた。

フォースによる先読みの力と光線ですら反応しうる超人的な反射神経がそれを可能にしていた。

サイラスは、烏丸に手を突き出しフォースプッシュを放った。

 

「なっ!」

 

烏丸はサイラスのフォースプッシュを受け数メートル吹き飛ばされ後ろの城壁に激突した。

フォースプッシュによるダメージもそうだが壁に激突した際のダメージは大きく肺の酸素が全て吐き出された。

 

「がはっ、はっ、はっ…!」

 

既に二人の強さに差がありすぎた。

そして、それと同時に烏丸の中でサイラスの存在が変わりつつあった。

今までは努力すれば勝てる相手だと思っていた、サイラスと今後共に剣を交えればその強さに辿りつけると思っていた。

しかし、今は違う。

烏丸も今まで感じたことのない敗北感とどうやってもその強さに辿り着けないという絶望感に支配されつつあった。

 

「烏丸……」

 

サイラスは今も苦しそうに呻いている烏丸に近づく。

烏丸はサイラスを睨め付け、刀を握り締める。

その目には敗北感と絶望感に支配されつつも、目の前の相手に対して決して屈しないという強い意志があった。

 

「そなたは何者なのじゃ。その力と武器は何なのじゃ」

 

「卑怯だと思うかもしれないな。だが、これが俺の戦いだ」

 

サイラスは、城壁の一部にライトセイバーを振るった。

ライトセーバーは、いとも簡単に城壁の石垣を切断し、切断面を溶かした。

それを見た烏丸は静かに目を閉じ、小さな声で呟いた。

 

「麿の負けでおじゃる」

 

その言葉を聞き取ったサイラスはライトセーバーのスイッチを切り、烏丸に手を差し出した。

烏丸は、少しためらった後、渋々サイラスの手を取った。

 

「光広、お前には全て話そう。俺が何者なのかを」

 

サイラスは光広に全てを話すことにした。

 

「良いのでおじゃるか?」

 

「別に大した話しでもないんだ。ただ、信じてもらえるかは別の話だがな」

 

「もう既に信じられぬような事を目にしたからある程度のことなら信じるでおじゃる」

 

「そうか。まぁ、こんなところで話すのも何だ、場所を移そう。そうだな、光広の部屋でいいか?」

 

「ダメでおじゃる」

 

即答だった。本当に何の迷いも感じられない清々しいまでの回答だった。

 

「別にいいじゃないか。この城で光広に割り当てられた部屋だろう?見られて困るものはないだろう?」

 

「ダメなものはダメじゃ!」

 

何をそんなに頑なにしているんだとサイラスは思った。

しかし、そうなると困った。

サイラスも既にこの城の者ではないため自分が使っていた部屋を使う訳にはいかなかった。

しかし、ここでサイラスは城内の方に進んでいった。

 

「何処へ向かうのじゃ?」

 

「使えそうな部屋がないか聞いてくる」

 

サイラスは城内で近くに居た女中に話しかけた。

 

「少しよろしいでしょうか?」

 

「はい、なんでしょう」

 

「光広殿の部屋を探しているのですが、なかなか見つからず…」

 

「それでしたらそこの突き当たりを右に行った一番奥の部屋がそうですよ」

 

「そんな近くに…ありがとうございます」

 

サイラスは烏丸に部屋があったと伝え烏丸を連れて烏丸の部屋へと向かった。

もちろん烏丸には誰の部屋かは伝えていない。

烏丸の部屋まで後少しのところで烏丸は歩みを止めた。

 

「ちっ…」

 

サイラスはつい舌打ちをしてしまった。

 

「主よ、何故今舌打ちしたでおじゃるか?」

 

「気のせいだろう?ほらあの一番奥の部屋だ」

 

「そこは麿の部屋でおじゃる!」

 

「なに?そうだったのか?まぁ、この際仕方ないだろう」

 

「何が仕方ないでおじゃるか!」

 

烏丸はサイラスの前に立ち両手をいっぱいに広げた。

 

「…いっておくが部屋の扉だったらここからでも開けることが出来るぞ」

 

そう言ってサイラスは部屋の襖に手を向けた。

襖はフォースによって開かれ、その瞬間烏丸の絶叫が響き渡った。

 

「おじゃ〜〜〜!!」

 

烏丸は全力で襖を閉めに行くが、サイラスの強力なフォースはそれを許さず烏丸がどれだけ力を入れてもびくともしなった。

その隙に烏丸の後ろからサイラスは部屋を覗き見た。

 

「なるほど。部屋が汚いから見せたくなかったのか」

 

烏丸の部屋は少しの汚いの度を越え魔窟のようになっていた。

どうやったら一日でここまで汚くなるんだろうかと考えてしまう程だ。

 

「取り敢えず、ここに突っ立っていても仕方ないから入るぞ」

 

「い、いやじゃ」

 

「…あのなぁ、もう手遅れなんだから気にするなよ。さぁ、入った、入った」

 

烏丸を強引に部屋に押し込み、腰が下ろせる場所を探し、腰を下ろした。

 

「さてと、何から話そうか」

 

しかし、烏丸は小刻みに震えており、話せる状態ではなかった。

ここまで来るとサイラスにも罪悪感が生まれてくる。

 

「光広悪かった。この通りだ」

 

「そなたにだけは見れれたくなったじゃ」

 

「俺は別に気にしてないぞ」

 

「麿が気にするのじゃ」

 

サイラスはどうにかして烏丸の機嫌を取ろうと考えた。

 

「そ、そうだ。光広、この刀をお前にやろう。なにか知らんが業物らしいぞ」

 

サイラスは盗賊から貰った刀を烏丸に渡す。烏丸もやはり武人として刀には興味があるらしく、刀を受け取った。

 

「この刀は…!サイラス、この刀を何処で手に入れたのでおじゃるか」

 

「なんだ突然?こっちに来た時に盗賊から貰ったものだが?」

 

烏丸は先程とは打って変わって興奮気味だった。

何をそんなに興奮しているんだとサイラスは首を傾げた。

 

「これは大包平と呼ばれる名刀でのう」

 

「あ〜、長くなるんだったら止めてくれあまり時間がなくてな」

 

あまり時間をかけすぎると藤孝が戻ってくる可能性があったので手短に済ませたかった。

 

「そうかのう。それで本当にこの刀を麿にくれるのかえ」

 

「ライトセーバーより切れるんなら考えるが?」

 

サイラスの答えに烏丸は肩をすくめた。

 

「なら、この刀は有難く麿が使わせて頂くでおじゃる」

 

サイラスは、頷くとライトセーバーを烏丸の前に置いた。

 

「さて、話を戻すぞ。まずは、俺の世界の話からだ」

 

サイラスは全てを話した。

銀河帝国、ジェダイ、フォース、サイラスの知っている向こうの世界の事について全て話した。

烏丸は興味が湧いたのかサイラスの話を聞き入っていた。

 

「まるで絵空物語よのう。しかし、そなたの存在とこのライトセーバーと呼ばれる刀を見た今、その話も真の事なのじゃろ」

 

「理解してくれて助かるよ。と言うわけで俺は情報が集まるらしい堺という場所に向かうことにした訳だ」

 

「堺?あの和泉のかのう?」

 

「流石だな。その堺で合っている」

 

「今は三好領じゃからのう。行くなら気をつけた方が良いかもしれんでおじゃるな」

 

「そうか。忠告感謝するよ」

 

と、そこでサイラスは烏丸が口にした三好と言う言葉で藤孝の書状の事を思い出した。

 

「光広、三好長慶と言う名前に心当たりはないか?」

 

「三好長慶?心当たりも何も、現三好家の当主でおじゃるぞ」

 

「な、なに?」

 

烏丸の答えにサイラスは動揺した。

 

「(まさかかなり面倒くさい事を引き受けてしまったのか?)」

 

サイラスは心中そう呟く。

 

「何かあったのかえ?」

 

「いや、何でもない。たまたまその名前を耳にしただけだ」

 

「なるほど。確かに義輝暗殺を企てたのは三好長慶とも言われておるからのう。この足利家にいればその名前くらい耳にするでおじゃろう」

 

「そうだったのか。すまないな色々世話になった」

 

「なに、また来る時があったら共に戯れようぞ」

 

「その時は歓迎会でも開いてくれ」

 

「うむ、貴族の宴を開いてしんぜよう」

 

サイラスは立ち上がり、急ぎ城門へと向かった。

烏丸も見送りくらいさせいて欲しいと付いてきた

城門には既に藤孝が手に書状のような物を持ち待ち構えていた。

 

「申し訳ありません。世話になった者たちに別れを遂げていたら遅くなりました」

 

「なに、それは致し方ない事、それよりこちらをお持ちいただきたい」

 

藤孝は書状をサイラスに渡すと、さらに懐から少しの大きめの袋も手渡した。

それはサイラスが義昭に頼んだ金だった。

 

「これくらいあれば当分は心配いらんじゃろう」

 

「助かります」

 

「道中気をつけるのじゃぞ」

 

「はい。お世話になりました」

 

「いつでも戻ってくるがよい」

 

「そうだな、困ったらまた来るよ」

 

そう言うとサイラスは突然烏丸を抱きしめた。

 

「な、なにをするでおじゃるか!放すでおじゃる!」

 

少し間、烏丸を抱きしめるとサイラスは抱擁を解いた。

烏丸の顔は赤く染まり、少し放心状態になっていた。

 

「俺の国での親しい者との別れの挨拶だ」

 

そしてサイラスはそのまま反転し城門を出るべく歩き出す。

 

「そう言えば光広」

 

城門を出ようとした所でサイラスは振り向き烏丸の名前を呼んだ。

名前を呼ばれた光広は我に返った。

 

「部屋の掃除もそうだが、たまには風呂にも入った方がいいぞ?」

 

「なっ!余計なお世話でおじゃる!」

 

再び烏丸の顔が赤く染まり、それを見たサイラスは満足げに笑いながら再び前を歩き出した。

そして、サイラスの旅は始まった。

最初に目指すのは交易の町”堺”。

 

 

 

 

 

後日談

 

サイラスが去って数日後、烏丸は部屋で忙しなく動いていた。

 

「うーむ、何故か余計散らかっているような」

 

そこへ一人の女中が烏丸の部屋の異変に気付く。

 

「光広様?何をなさっているのですか?」

 

「む?いや、ちと掃除しようかと思おうてな」

 

烏丸の言葉に女中が目を見開き驚きの表情を浮かべる

そして、女中が急ぎ足で何処かへ向かって行ったと思えば…。

 

「大変よ!光広様が部屋の掃除をされているわ!」

 

その女中が大声で騒ぎ出した。

光広が部屋を掃除している事は直ぐに城内に駆け巡った。

そして、挙げ句の果てに城の重鎮にまで話が伝わってしまい…。

 

「あの光広がですか?」

 

「なに?光広様が?」

 

「あの光広がのう」

 

「えぇ!あの光広様が掃除ぃ!」

 

城の将達も烏丸が掃除している事に大きな衝撃を受けた。

そして、部屋の掃除は女中数人がかりで行われ半日近くを要した。

ちなみに烏丸は掃除しようとしても散らかすだけなので女中に追い出された。

 

「光広様。お部屋の掃除が終わりました」

 

「すまぬのう。麿一人では到底出来なんだ」

 

と烏丸は女中達に礼を言い、部屋を出て行った。

 

「光広様?どちらに行かれるのですか?」

 

「ん?ちと風呂にな」

 

烏丸の言葉に女中達はまたしても驚きの表情を浮かべた。

そして、例に同じく大声で騒ぎ出した。

もちろん、その事は城の重鎮達に伝わり…。

 

「あの光広がお風呂にですか?」

 

「なに?光広様が風呂に?」

 

「あの光広が風呂にのう」

 

「えぇ!光広様がお風呂ぉ!」

 

烏丸が何故急に身の回りを綺麗にしだしたのかは様々な憶測を呼んだが、当の本人は気が向いたからだと言い張り真相は謎のままとなった。

藤孝が心当たりがあるような口振りだったが烏丸に口止めされたのか話す事はなかったという。

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました
自分の知識不足な所が多く不快に思われた方が多々おられるかもしれませんが
これからもよろしくお願いします


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