蓬莱山家に産まれた (お腹減った)
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人間
産まれた


一番に言いたいのはエタルのは間違いないです
もう投稿しない可能性大

ちなみに読みは弘(ひろ)虎姫(とらひめ)弘天(ひろてん)ひろてんは言いにくいので
ひろに略称するけど


気が付いたら赤ん坊でした。・・・・・・・どういうことなんだ。なぜ赤ん坊なんだ、なぜ自我があるんだ

 

落ち着け・・・一旦落ち着いて状況整理だ。まず俺は誰だと言いたいが何も覚えてない。自分の事は分らんが一般常識はあるみたいだ。

 

とりあえず周りを見てみた所、何か・・・・・薬品臭い・・・パッと見たところ周りにはテレビや洗面台、窓が見える。あとスライド式のドアがある。それと俺は今抱かれているようだ、壊れ物を扱うように優しく抱いている。顔を見てみたらスゲー美人。服装はパジャマみたいなのを着ていて、髪型は黒の前髪ぱっつんのロングヘアー、まるで人形みたい。笑顔で俺を愛おしそうに見ている。俺の母親なのかもしれない。自分が赤ん坊なのと、この閉鎖空間を考えると、もしかしたら病院なのかもしれない。他にベッドはないし個室部屋のようだ。

 

勢いよくスライドする音がした。誰かが来たようだ

 

「すまない虎姫、遅れた!」

 

男の声だ、この状況から察するに今抱いている人の夫なのだろうか。息切れしていて顔中汗まみれ走って来たようだ

髪型は黒の短髪で男前だね服装はスーツ姿。女性の名前は虎姫か・・・・姫は分かるが虎って女性に名づける名ではないような気がするが・・・・・・てか病院で走ったらダメだろ。

 

俺の母親らしい人は夫らしき人に微笑んだ

 

「お気になさらないでください弘さん。お仕事なのですから、仕方ないですし。後、病院なんですから、走ってはいけませんよ」

 

男の名前は弘と言う名前みたいだ、母親らしき人は笑顔だったがどこか落胆したような顔だ。弘さんは注意されてどこか居心地が悪そうにして すまない、と頭を下げ謝った。二重の意味が込められてるなこれは

 

「一世一代かもしれない我が子の出産場面に立ち会えなかったのだ・・・・・・責められても文句は言えん」

 

悔しそうに唇をかみしめ手に力を込めて弘さんが言う。まぁ、仕方ないよな仕事だしまた子供作れば出産場面に立ち会えるでしょ。・・・・・・そういう問題じゃないか

 

「もう産んでしまったのですから、また次子供が出来たときは、間に合ってくださいね?」

 

顔を赤らめて弘さんに笑顔で言うとか。羨ましすぎる。俺もいつかは虎姫さんのような大和撫子な妻を、いや女を侍らすさ!!彰さんはこっちに近づきながら、ああ、次は間に合うさと言いベッドの隣にあるパイプ椅子に腰を落とした。虎姫さんは抱いていた俺を弘さんに見せた

 

「弘さん、私たちの子ですよ、抱いてみてください」

 

虎姫さんはニコニコしながら俺を弘さんに差し出した。弘さんは最初戸惑ったが、恐る恐る俺の体を触り、左腕で俺の体を包むようにして。右腕で落ちないように俺の腰に右腕を当てている。弘さんの顔を見るとさっきまで厳格な雰囲気を醸し出していたが、俺を抱いてから急ににへらにへらしだした。子供が生まれるって嬉しい事なんだな。経験ないから俺には分からんが。うーむ、考えてみたら弘さんと虎姫さんは俺の父親と母親になるわけか。何か幸せそうな家族になりそーだないい家庭に生まれたみたいだ、良かったと考えてたら虎姫さんが急にそわそわしだした何なんだと考えてると虎姫さんが喋った

 

「あの、ところで考えてくれましたか?」

 

弘さんが締まらない顔で俺を見てたが虎姫さんから聞かれて顔を引き締め厳格な雰囲気を出し始めて虎姫さんに聞かれたことを頷いて返事した

 

「男だったら俺が名付け親、女だったら虎姫が名付け親という話だったな。うむ、考えてある。悩みに悩んで考えた、半年かけてもいい名前が思い浮かばなかったので俺はシンプルに考えた」

 

虎姫さんが不安そうに弘さんの顔を見つめている。多分変な名前じゃないか心配なんだろう俺も心配だ変な名前だとしても改名できるのだろうか・・・・・弘さんが俺を虎姫さんに預け握りこぶしを天に挙げ立ち上がった

「名前は弘天!弘と言う俺の名と俺自身を超えてほしいから蓬莱山 弘天だ!!!!!」

 

弘さんはガッツポーズをして、こちらを見る目が心なしかキラキラしている、虎姫さんがほっとして弘さんを見る。どうやら虎姫さんが聞いてもおかしくない名前のようだ。いいのか悪いのか記憶がない俺は、区別がつかないので虎姫さんの様子を見て安心した。・・・・・まあ細かいことは考えないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何年か経ち歩けるようになり喋れるようになった。友達もできて遊ぶ精神年齢は他の子より高いはずなのに公園で砂遊び、鬼ごっこ、かくれんぼ、ババ抜きとかが無茶苦茶楽しい。子供時代を満喫してます。

ただ1人だけ何回声をかけても無視されるんだよな、ただしつこく声をかけすぎたのか、うるさいって言われながら、平手打ちされたけど、すごい威力だった。とても子供が出せる威力じゃない。公園にいるから一緒に遊びたいのかと思って様子を見ても、ブランコに座ったりベンチで絵を描いたり小説読んだり何か難しい本読んでる。

一緒に遊びたいって感じじゃないな、何か面倒なことは何も考えたくないって感じ。どうするべきか・・・・・友達の中に女の子もいるが、誘うとしても俺が平手打ちされたことで怖くて誘えないようだ。あ、髪型は銀色のセミロング服装は赤と青の服だね、個性的だ。

ふむ。そういえばあの子美人だったな。父さんに聞いてみようかな。母さんを落とした男だし。

 

「父さんはどうやって母さんを落としたの?」

 

帰ってきて早々父さんに聞いてみた父さんは驚愕の表情をしている母さんは左手を頬にあて、笑って まずは晩御飯にしましょうか と言いキッチンに向かう。父さんは俯いて右手でおでこを押さえているそこまで悩むことだろうか・・・・・

いや無駄に真面目な父さんだしな無駄に考えてるんだろうきっとそうだそこまで真剣に考えなくてもいいと思うが。あの堅物の父さんがどうやって母さんに惚れたのか気になるし母さんに手伝えることはないか聞いたらテーブルに座っていてと言われたのでテーブルについて晩御飯が来るのを待った。

 

母さんがおぼんに料理を置いて持ってきてくれた、カレーのようだ、俺はまだ子供味覚なので辛いのが食えないから甘口だ。父さんは激辛が好きなので激辛。母さんは甘口だ。さて、カレーをつつくのも大事だが本題に入ろう。

どうやって母さんを落としたのか。父さんの顔を見つめている、最初は父さんは目をそらしてたがしつこく見つめていたら根負けしたようだ。

 

初めて出会ったのは親友の結婚式に行ってだそうだ当時父さんは20歳母さんは19歳だったみたい

そこでたまたま母さんを見て一目ぼれしたという話だ。美人だし分かるけどね、そこで声をかけようと思ったら母さんから声をかけたらしい

そこから母さんが話に加わってきた結婚式に酔っぱらった人がいたんだけどその人が吐いたらしい

父さんはそれを物ともせず結婚式のスタッフを呼び雑巾とバケツを取ってきてもらい雑巾で拭いたそうだそれで母さんは惚れたらしい人が嫌がりそうな事を自分から進んでやったからだってさ。同じ日に同じ人間を惚れるとは運命だな運命。2人とも顔真っ赤だし見つめあってるよ俺いるの忘れてるだろ?いい話を聞いた

 

次の日になったがどうするか・・・・ただののろけ話聞かされただけだしなまずは話すか、今日は友達に別の公園で遊ぶように言っておいたし俺とあの子だけだ。よし、話をしなきゃな!ベンチに座って本を読んでる、邪魔しちゃ悪いけど仲良くなるためだ許せ、銀髪美少女。最初が肝心だ最初がな

 

「こんにちは」

 

まずは挨拶だ挨拶は大事だからな、しかし挨拶をスルー

 

「俺の名は蓬莱山 弘天 俺と友達になってくれ!」

 

右手で小説を支え立ち上がり左手でアッパーカットしてきた。顎に命中し俺の体は空中に飛んだこの女、鉄壁要塞か!?俺の体は空中から地面へと無慈悲な重力によって落ちて背中を思い切り打ち付ける

無理無理これは仲良くできないでしょ、ここはあきらめて帰ったほうが、いやしかし間違いなくこの女は美人になる仲良くしておかねば・・・・・後悔するような気がしなくもない事もないような気がする、だが顎に命中し脳が揺れてたことによって脳震盪を起こして立ち上がれん。仕方ない、寝ころんだまま言うぞ!

 

「OK、OK分かった正直に言うぞ!俺の女になれ!!!!」

 

「いやに決まってるでしょ!」

 

今度は攻撃してこないなさてはやり過ぎたと思ったって所か。何だそこまで鬼じゃないようだな

あ、そういや初めて会話ができたな、印象は最悪だろうけど仲良くなった時に過去の笑い話にはなるだろう

なんか嬉しくなってきたな脳震盪起こしてたような気がするけど治ったのか?いやいくらなんでも早すぎるけど

まぁいいや。俺は立ち上がって服やズボンについた土を落として銀髪の美少女に向き合う

 

「やっと会話してくれたな、俺は嬉しいぞ!」

 

「私は嬉しくないわよ!前々から何なの、しつこく遊ぼうとか友達になろうとか誘ってきて鬱陶しい」

 

「知っての通り私は天才なのよ、どうして私のような天才があんたみたいな人間と友達にならなきゃいけないのよ」

 

天才?この子が?仮に天才だとしても、どうして俺が知ってる前提で話してんだ俺は知らんぞ。いや、待て何かテレビで聞いたことあるような名前はや、やご、八意、何ちゃらだった気がする。珍しい苗字だったから覚えてるな

しかしこの年で天才ね・・・・俺と年はそう変わらないような気がするがしかし天才か、大変だろうなー。俺たちには寿命という概念は存在しない、100年や1000年経っても死なない、ただ寿命では死なないだけで心臓一突きにしたら死ぬし首を落とせば死ぬ穢れでも死ぬらしいがな。

でも100年はまだしも1000年もずーっと働きたくないな頭がおかしくなりそうだよ

 

「なんでそこまで人と関わるのを嫌うんだもっと視野を広げようぜ!!」

 

「あなたは馬鹿のようね、いいえ。馬鹿じゃ上等すぎる」

 

俺は馬鹿じゃ上等な人間だったようだ。馬鹿なのは認めるが酷いな。馬鹿と思ってくれていい、事実だし。でも口に出さないでおくれこれでも傷つくんだ

 

「馬鹿でいいから名前を教えてくれよ」

 

「あなたは私の話を聞いてたの?どうして名前を教えなきゃいけないのよ」

 

酷い言われようだ、要するに自分は天才 俺は良くて凡人だ住む世界が違うってわけか。じゃあ俺にも考えがあるぞ

 

「よし、じゃあ着いてこい!俺が皆住む世界は一緒だってこと教えてやるわー!はーはっはっはっ!」

 

「ちょ、ちょっと離して!何なのこの力、大人ならともかく年が近い奴にこの私が力負けするなんて!!いやああああああああああああああ!!!!!」

 

ふっ・・・・こいつとて子供、甘いものや美味しいものには弱いはず子供を相手にするにはまず胃袋を制する!

 

「着いたぞ!目的地にな!」

 

「なにここ」

 

「駄菓子屋だ!!!!」

 

駄菓子屋に着いた。ここでこの女を籠絡してくれるわ!名前を教えてくれないし、銀髪だし銀と呼ぶことにした。 何と言われようと銀と呼ぶ、銀が黙ってたのでどうしたのか聞いてみたら、駄菓子屋を知らないそうだ、いや、駄菓子屋の言葉の意味は知ってるんだが入ったことがないからどうすればいいかわからないそうだ

 

「銀よ、駄菓子屋に来たことはないのか?」

 

「無いわ、親が私は選ばれた人間なんだからこんな所にいったらダメと言われてるし。後、銀って何?」

 

顎に手を当て考える、なんか隣で銀って何!ちょっと聞いてるの!?とか聞こえるが無視だ無視無視

ちなみに金はあるお小遣いをもらってるので準備は万全いざ出陣!

 

「おや、お久しぶりです坊ちゃん。こんな店の商品を買いに来てくれて嬉しいですよ」

 

皺くちゃまみれの顔や手だが俺はおばちゃんの顔や手を美しいと感じる。駄菓子屋のおばちゃんには、坊ちゃんと呼ばれているが父さんが何か凄い偉い人なんだってさそれで坊ちゃん呼びやめてほしいんだがやめてくれといってもやめないので諦めた

 

「そうだろう!ちなみに今日は俺の女を連れて来たんだよ!」

 

「おや、坊ちゃんにも春が来たんですねぇ・・・あたしゃ嬉しいですよ」

 

はっはっは!照れてしまうなと思ったら、隣にいた銀に足を思い切り踏まれた。痛いからやめてほしいんだがやめてくれそうにない。しかもすげー睨んでる怖い怖い

よし駄菓子を入れる籠を2つ借りて1つを銀に渡すが受け取ったらおろおろしだした買い方が分からないようだ

 

「何かを買うってことしたことないのか?」

 

「無いわ、親がいつも買ってくれてきたし」

 

なるほど納得よし俺が買い方を教えて進ぜよう!

 

「見渡す限りお菓子だよな?」

 

「ええ、見たことないのが多いけどね。」

 

駄菓子屋にしかないお菓子もあるからそうだろうな

 

「欲しいお菓子を籠に入れておばちゃんに渡せばいいだけだ」

 

「そ、そう簡単なのね。」

 

目移りしてるようだなよしよし順調順調この調子で行くぞー

うむ、一通り欲しいものを籠に入れたな焼肉のたれと、10円ガム、20円ガム、うまい棒、麩菓子、まけんグミ、カメレオンキャンディ クッピーラムネ、ガリボリラーメンそして忘れてはいけない!ラーメンババアを!

等々買って買って買った俺のお金はおばちゃんのレジに吸い込まれたが後悔はしていない財布の中身は寒いけど後悔なんてしない!

 

「ありがとうございました、坊ちゃん。結婚式には呼んでくださいよ」

 

「呼ぶのはいいけど、結婚式あげるまでに死ぬなよおばちゃん」

 

「大丈夫ですよ私は後1億年生きそうな気がしますから」

 

笑顔でおばちゃんが手を振って言ってくれた、結婚できるかなー。ちなみにこのばあちゃん昔妖怪が入り込んだ時にフライパンで叩きのめしたとかいう伝説を持ってる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀と公園のベンチに座って一緒にお菓子を食ってる銀の様子を見てたらわたパチを食べてる口の中でパチパチする奴だな初めて食べたのか口を押えてんー!!って唸ってる可愛いじゃないか銀よ

 

「なあ、美味しいか?」

 

銀が右手で口を押え涙目でこちらを見る。そ、そんなに驚いたのか心配だったので背中をさすってやった

急に背中に触れたのでビクッと震えた可愛いやつよ

 

「お、美味しいわ」

 

「そっか、俺バカだからうまく説明できないけどさ、美味しいって気持ちは誰でも持ってると思うんだ。」

 

「もちろん考え方が違うっていうのはあるけどさ結局は同じ人間、頭の良い悪いもあれば力が強い弱いもあるが選ばれた人間なんているかなーって思ってさ人間に選ばれたって意味で言ってるわけじゃないだろうし」

 

「・・・・・って何言ってんだ俺。自分が何が言いたいか全く分からん」

 

まあ、戯言だ気にするな。と言い銀の頭を撫でた。実は俺の女にするとかは本気じゃない、おばちゃん嘘ついてごめんよばれてそうだけどね。あ、でも俺は女を侍らすけどねやっぱ生きるなら夢が欲しい叶えられそうな夢を。銀はいい女になったらね大人になったらだけど

 

けどあれくらいしないと銀は駄目だと思った。ただ俺はこの世界には楽しいことがあるんだって、銀にだって1つくらいあるんじゃないかなーって伝えたかったんだ。美味しいものがある大人になれば欲しいものが出てくると思う

小さなことだけど何もないよりはいいんじゃね。いーっつもつまんなそうな顔してたしな、天才かどうかは知らんがね、

俺のエゴなのは分かってる。でも美少女だし笑ってほしいじゃん。銀はいい女になる、そんな気がするなー。どんな男と結婚するのかねー、銀はー

 

 

ん?そういやまだ銀の本名を知らないな教えてほしいけど嫌がるだろうしいっか!時間はあるんだ。 長い、長い、気の遠くなる時間が

所で銀がさっきから黙って怖いんだが、銀の体が震えてる。頭撫でたらだめだったか髪がサラサラだからいつまでも撫でていたいが。しょうがない背中を撫でるか優しく撫でてやろう

 

 

「いやああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「あべし!」

 

また平手打ちを受け地面にうつ伏せに倒れた、うつ伏せになりながらも銀に視線を向けたがスゲー足が速い。ベンチから公園の出口までにいるだと?速すぎる背中を撫でただけじゃないか決して下心なぞ無かったと言うのに。これ嫌われたかなー

 

 

 

 

 

 




俺は何小説を書いてるんだもしかしなくても俺は馬鹿なのかもしれない
確実にエタルから絶対エタルから絶対だぞ!!
言い忘れてましたが銀の胸はまな板です今は
おっぱいもみたいな


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幼馴染

次の日友達を呼んで公園で皆で集まった銀はいるか探した所ブランコに座ってこっちを見ている

今日こそは成功させてみせるぞ!という意気込みを新たに銀の元へ向かう銀は俺を見つめたままで動こうとしない

銀の目の前まで行くと俺は右手を差し出し自己紹介をする

 

「俺の名は弘天。蓬莱山 弘天だ、弘って呼んでくれ。良かったら俺たちと遊ばないか?」

 

銀は俺の顔を見つめていたが俯いた。が、顔を上げ何かを決心したような目になっている何を覚悟したのかは

知らないが銀は変わろうとしているのかもしれない。視野を広げ自分が知らない事を知りに行こうとしてるのかもしれない。そして初めて知った気持ちを育むのかもしれない、だから俺は銀の目を見て右手を差し出すいつか銀と笑顔で遊ぶ日が来るように祈るのではなく。実現できるように俺は銀に嫌われようとも何度でも挨拶もするし自己紹介もするし友達になろうと遊ぼうと誘う

 

銀が重たい口を上げる。まだぎこちない笑顔だ。まだ慣れていないのだろう、でもこれからは俺が笑顔にする

俺は馬鹿だから馬鹿をやって、笑わせることしかできないけど。何もしないよりはいいだろう、だから笑わせる

その何重にも被ってる仮面を脱がせてやる俺の前では仮面なんて被せないありのままのお前が見たいんだ

 

「ねえ、弘天、いいえ、弘。私、知らないことを知りたい。友達を作って遊んで楽しいって気持ちを知りたい。友達と美味しいものを食べたいわ。」

 

「私の名前は八意、八意 永琳よ私と友達になって。弘」

 

さっきはぎこちなかったが今度は自然に笑えている・・・・・と思う銀の笑顔を見たことがなかったから。だから嫌ってなるくらい笑顔を見せてもらわなきゃな!美少女なんだから笑わなきゃ勿体ないぜ。

いつか女を侍らすんだから美少女は助けないとな! 銀、いや永琳の右手が俺の右手に絡み合うあまりの嬉しさに

右手に力を籠めかけたが永琳が痛がるだろうから、我慢した。

 

「じゃあ来い!お前が今まで楽しくなかった人生を俺が塗り替えてやる!永琳が年を取っておばあちゃんになっていい人生だったって思わせてやる!これからは楽しいことが一杯だぞー!永琳ー!」

 

俺は永琳の右手を強く握る。もう寂しい思いをさせないようにしなきゃな。まずは皆に永琳のことを紹介しないと、永琳はやっと最初の一歩を弘に引きずられながらだが踏み出すことができた。太陽がいつにも増して熱く輝いていたような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数十年俺は一人暮らしを始めた。思ったのだが母さんに甘え過ぎていた掃除してくれるしご飯作ってくれるしとまさに至れり尽くせり。ものすごく楽なのだがこれはやばいと思って一人暮らしをすることにした。

父さんと母さんに反対されたが、仕方ない、仕方ないんだ。このままでは母さんなしではいられなくなる!

ということで一人暮らしだ!合鍵は一応親に預けてある。そうそう知らなかったが蓬莱山て名門

なんだってさ後、綿月という所も名門らしいあと他にも名門があったような気がするが興味ないね。

なぜ、綿月の事を覚えてるかというと綿月の娘さんたちが永琳みたいに綺麗じゃないけど可愛いかったからですはい

話を戻すが蓬莱山は名門なのに実家は質素な家。欲がないのかね?と、父さんに聞いたらもう欲しいものは手に入れてるだってさ、母さんを見て言うんじゃねぇよいまだにラブラブ夫婦なのでそれが1人暮らしの原因の一つだったりする。仲良きことは美しきかな。

それで蓬莱山の長男だから楽できるわけもなく、妖怪から町の人を守る守護隊に入らされて毎日毎日、しごかれている、ちなみに師匠がいてその人が綿月現当主。名前は、綿月 守 妖怪から人々を守ってほしいからと、名付けられたらしい。しかも前に言った父さんの親友の結婚式は綿月 守師匠の結婚式だったそうである意味父さんと母さんをくっつけたキューピッドだね。キューピッドにしては厳ついが

最初は父さんに妖怪の戦い方を教わろうとしたけど戦いに関しては全く才能がないらしいそのかわり頭を使うことが得意なのでそっち専門だね。だが俺は頭は良くないので守さんに戦い方を学んでる最中。

毎日毎日しごかれて、帰って飯作るのめんどくせー。と最初思ってたら永琳が押しかけて来た同棲するから来ただとさ。しかも親に預けたはずの合鍵を持ってる。その後俺の部屋のカギまで取りやがった。認めてない、合鍵や俺の部屋の鍵を持つのを認めてないですよ俺は!

 

「何やってんの?」

 

「ねえ、最初に会った時の事覚えてる?」

 

台所でエプロンを着けた状態で聞いてくるちなみにエプロンはハートマークだ。永琳が持ってきた

食材を包丁で切る音が響く、まずい!非常にまずい!

しかしどうする?逃げ道はない、ならば突き進むまで!

 

「おっ、覚えてるよ。永琳に嫌われまくってたなー俺」

 

「嫌ってはいないわ。ただ自分に素直じゃなかったのよ」

 

懐かしい思い出だが今は思い出したくない俺は女を侍らすのだこんなところで死ぬわけにはいかない

実は永琳が綺麗になってまな板からナイスボディに成長したからよし!俺の女にしようと思って告白したんだ

俺の女になれ!ってそしたら永琳、嫌!って嫌がったんだよえー、と思ったねここは、はいでしょ

女を侍らす第一歩がこんな一歩から始まるなんて

小さいころから言ってるんだから女を侍らすのを認めてくれてもいいじゃないか!

いや、永琳が言うには本当は付き合うのはOKなんだけど女を侍らすのは駄目なんだってさ、俺の夢を否定しやがった!!このままでは外堀を埋められ既成事実を作る羽目になってしまう!阻止だ、断固阻止!

だがしかしエプロン姿が似合う女が台所で料理を作ってるのを後ろから見る、男の夢だが

あれは禁断の果実、食べてはいけない。食べたらGAME OVER、試合終了、レッドカードだぞ!レッドカード!

一か八かやるか。俺は立ち上がり永琳の後ろに立つ非常に腹立たしいがいい匂いがする料理と雌の匂いだ

後ろから抱き付き永琳についてる2つの無駄にデカい脂肪をモミしだく。でかい、でかいが永琳はくすぐったそうにするだけで何もしてこない

強いて言うなら、包丁持ってるから危ないだとさ。くそ、グッとくるようなセリフをどこで覚えたのだ

仕方ないから二つの脂肪の塊をもむのをやめ尻を撫でる。が永琳が食材を包丁で切る作業を止めこちらを見る

なんだか目がうるうるしてる欲情してるのかこいつは心なしか顔が赤いし。小さい声でいいよって言うし生殺しじゃないか!そこは嫌って言ってください。俺は夢に向かって進むんだー!そしていつか永琳を説得するんだ・・・・・・

 

とりあえず自分の部屋に戻ろう、永琳がしょんぼりしてたけど仕方ない夢のためだ。

俺は自分の部屋に入り服を脱ぎ捨てたそしてここからがお楽しみだベットの下に置いておいた例の物を探す

ん?ない、ないぞ!俺のお友達がいない!夜の親友たちが綺麗になくなっている。あ、あの野郎捨てやがったな。野郎じゃないが

これだから俺の部屋の鍵渡すのは嫌だったんだよ!返せ!あれ1冊自体は大した額じゃないが30冊もあったら話は別だぞ!

クソ俺の女気取りやがっていや、俺の女だが。見てくれがいいから強く言えないし

 

もういいや飯食おう。最近気が付いたんだが人間諦めが肝心だと思うんだよね俺は。

テーブルに並ぶのはご飯に味噌汁サバに納豆。うーんなんか落ち着く

せっかく一人暮らししたのに永琳が家事を全部している何のために1人暮らししているのかわからんな

 

「ねえ、結婚しましょう」

 

「い、嫌だ」

 

同棲し始めてから毎日のように言ってくる同棲しだして10年くらい経ってからだけどなそれでも何十年も言い続けているしつこい、しつこすぎる、結婚は一人だけしかできない。納得がいかないので抗議したが受け入れてもらえなかった。なぜだ!?今は少子化なんだから認めてくれてもいいだろうに。永琳は社会の常識を俺が変える前にあの手この手で結婚しようとしてくる。据え膳食わぬは男の恥というが味はうまいかもしれん、しかし食べたらもう、戻って、来れない・・・・・・・

 

「小さい頃」

 

またこの話か何度も何度も言いやがって永琳が女を侍らすのを認めてくれたら話は終わりなのにどうしてこうなる

同じ時間を永遠に繰り返しているようだ・・・・・・・

 

「小さい頃俺の女になれって言ったわよね」

 

「言ったが嫌と言ったじゃないか」

 

「言った。確かに言った。だけど弘、今私はあなたが好きなの、あなたが欲しいの、あなただけを異性として見てるのよ」

 

「だから女を侍らすことを認めてくれたら永琳を俺の女にするって言ってるじゃないか」

 

「女を侍らせるなんて私は嫌よ」

 

「俺も一人だけを愛すなんてできない」

 

堂堂巡り、平行線、どっちも妥協できない毎日毎日何十年も聞いてきて耳にタコができた。

永琳を諦めきれればいいが出来ない。俺は永琳を愛している、ただ永琳だけを愛すことはできん

永琳にごちそうさま今日も旨かったといい。皿を集めるが永琳が私がするからいいと言ってきたので

後は任せた、不味い。いや、料理は美味しかったが、この状況は不味い

ていうか俺ただのダメ男じゃん!仕事はしてるとはいえ付き合ってもいない女に家事やらすとかまずいと思う。

 

 

駄菓子屋から買って来たシャーベットペロの袋を斜めに開け、中にある飴を取り出し口に入れて噛み砕き、飴を食べ終えたら袋の中にある粉を全部口の中に入れる為に斜めに開けて置いた袋を口の中に入る様に、袋を上に上げ、それに合わせて俺の首も上に上げたら口の中に粉が全部入って来た。シャーベットペロはこの食い方が一番だな。

 

俺がベッドに寝ころんだら部屋の窓からノックをする音がしたので、ベットから降りて窓に向かいカギを開け、スライドさせて開いたが窓の奥からいつも通りスタンバイしていたのか窓を開けた直後に神綺が飛び込んで俺に抱き着いて来た。俺に首に両手を回し、抱き着きながら神綺の頬を俺の頬に擦り付けているがこれは匂いを擦り付けている為だそうだ。神綺は赤色のローブみたいなのを着ていて、髪型は銀髪のロングヘアーでサイドテールにしている。

 

「 ひろ ひろ ひろ ひろー!会いたかったよー!!」

 

「神綺、いきなり抱き着くとびっくりするじゃないか。静かに入れといつも言ってるだろう」

 

「だってだって!子供の時と違って今じゃ仕事しなきゃいけないしひろに会う時間が少ないんだもん。ひろだけじゃなく永琳はひろと住んでるからいいとしても、サリエルに会う時間は減って昔みたいに遊べないし大人になるって面倒よね」

 

神綺は首元に手を回しながら愚痴を零す、もう成熟してるんだが子供みたいに拗ねるので困ったものだ。だからいつも通り相槌を打ちながら神綺の話を聞いて頭を撫でる。神綺は昔 俺が永琳に平手打ちされて永琳を怖がってたのに今ではすっかり仲良しだ。本当は玄関から入れてやるべきなのだが神綺はドラマとかでやる不倫関係をしてみたい願望が強い、だから玄関から入らず窓から入る訳だ。永琳に内緒で会うのが興奮すると神綺が言ってた。と言ってもこんなに神綺が大声を上げて入ってきてたから永琳に気付かれていそうだけど。

 

「私 不倫相手ってやりたかったんだよね~。だから今は絶好の機会、今の内に不倫ポジションに収まらなくちゃ。三角関係で面白いわよね。んー、三角関係じゃなくて四角関係だったわね間違えちゃった」

 

「俺、神綺とサリエルに俺の女になれって言った事無いんだが」

 

「いいじゃない。私とサリエルがひろの事を好きなんだから。それに子供の頃から、俺の夢は女を侍らす事だ。って言ってたでしょ、これで三人の妻が出来た訳なんだからもっと喜びなさいよね」

 

神綺は首に回していた右手の人差指で俺の鼻を数回叩いた。だが永琳は俺の夢を認めてないから実際は二人だな 困った。神綺とサリエルは背中に三対六枚の翼があり空を飛ぶ事が出来る。サリエルの翼は天使に近い白い翼だが神綺は、どう例えればいいのか。ふむ、悪魔の翼に近い、かな。色的に。翼があると言っても二人共は生やす事も出来れば無くす事も出来るから。必要な時だけ翼を生やすといった感じだ。人差指で俺の鼻を突いていたが、神綺が首を右に思い切り捻って神綺の左頭にあるサイドテールが俺の右頬に鞭に打たれたかと錯覚を覚え、凄まじい音と威力を出した。

 

「痛いじゃないか!」

 

「ゴメンね。何だか知らないけど意地悪したくなっちゃってさ。私ね、ひろの事は好きだし愛してるけど。殺されたいほど愛してるって気持ちなんだよね」

 

こいつ、愛の形は色々あるが殺されたいほどだと来た、だが俺はそれに屈しない。言いなりになるなんて御免こうむる、しかも殺しなんてしたらせっかくの美女がこの世から一人消えてしまうじゃないか!!神綺は俺の右頬に頬擦りしながら奥にあるベッドに目を向け、妖艶な表情で俺の左頬をねっとりと舐めて顔を俺の耳に近づけて囁いた

 

「このままベッドインしちゃったら、永琳は何て言うかな」

 

「俺が引っ叩かれて泣かれるのが落ちだな。と言うか頬を舐めるな」

 

「あー!何で服の袖で拭くのよ!折角私の匂いを付けたのに!!!」

 

「付けんでいい。それと耳元で叫ぶな。全く、永琳を泣かせる気か」

 

「そんな気は無いけど、そう取られても仕方ないわね」

 

神綺は俺の耳から顔を離して、いつも通りの笑顔の表情に戻し首に回していた両手を離して窓に近づき窓際に手を置いた

 

「じゃあ今日はやめとこっか。永琳を泣かせる気は無いからね。でも昔から見ていて思ったけど、永琳は駄目男に嵌るダメ女ね、私も人の事は言えないけど」

 

俺はどうやら駄目男だったようだ。自覚してるからそこまでショックじゃないが、自覚してるとはいえクルものがある

 

「明日からはまた表向きは友達、実際は不倫相手だからその辺り忘れないでよ。私がひろの夢を叶える手伝いをするから、創って見せるから、それまで待っててね。」

 

「手伝い? 創るって何をするんだ」

 

俺の質問を無視して、ばいば~い。と翼を背中から出して羽搏かせて窓から出て行った。寝ようとしたら俺の部屋のドアをゆっくりと、静かに永琳が開けて入って来た。oh...今の状況を客観的に見たら、さしずめ今の状況は浮気現場を見られた旦那って所かな

 

「は、Hello 永琳さん。本日はお日柄もよく」

 

「今は夜よ」

 

そりゃそうだ。仕事から帰って来て風呂入って晩御飯も食べてたら日なんてとっくに落ちてるからな。こんな状況下だが、俺と永琳は結婚もしてなければ恋人同士でもない。ただ一緒に住んでるだけだ。俺は右手を腰に当てながら笑った

 

「まあ冗談はやめてだ。俺の夢を知ってるだろ永琳」

 

「知ってる。だけど私は認めない、しかも相手が私達の幼馴染、神綺だなんて、話を聞いていたらサリエルもそうみたいだし」

 

「全てを知られていても不倫関係をやめないのも悪く無いかもしれんな。不倫相手は幼馴染、昼ドラでも始まりそうだ」

 

永琳は無表情で俺を見ているが、永琳に触れれば壊れてしまいそうで、脆く、ガラス細工のように見える。だがそれでも俺は譲れないのだ、夢を諦めると言うのは、生きる意味を奪われると言う事じゃないだろうか。生きる意味が無ければ何の為に生きればいいのか分からない、他人から見て俺の夢は酷くて下らない物かもしれない。だが俺はどう思われても何を言われても、この夢を諦める気は無いんだ。他に夢を見つければいいかもしれないが、この夢だけは絶対に譲らない。永琳が泣いたとしてもだ、俺は自分勝手だからな。自分さえよければいいと思ってる屑なのだ

 

「なあ、永琳。俺の夢を認めないなら、俺の事を嫌いになればいい、もしくは愛想を尽かせばいいんじゃないか。昔からそうだが俺はこんな男なんだぞ」

 

「それが出来るならもう とうの昔にしてるわよ。そうじゃなかったら同棲なんかしないし 料理 洗濯 掃除。家事全般なんて絶対にしない」

 

俺と永琳の距離は数歩、6~7歩くらいの距離だ。永琳は扉から一歩ずつゆっくりとしずしずと近づき手を伸ばせば届く距離まで来た、だが俺は手を伸ばさない、永琳が手を伸ばさなければならんのだ。

 

「ねえ、弘。私、弘の事を愛してる。弘だけを愛してるのよ」

 

「俺も永琳を愛してる。だが、俺は永琳だけを愛さない」

 

済まない永琳。永琳が望む言葉を俺は言えないんだ、それを言ったら俺は夢を諦める事と同義なのだから。例えば、男が1人女が1人いたとする。男は女を愛し、女は男だけを愛した。男は、ただ君だけを愛してる、他の女性なんて微塵も興味もないよ。と言い数年経ったら浮気がバレ、もしくは浮気現場を見られ離婚したなんて事が良くある。だからこそ俺は最初から夢は女を侍らせることだと子供の頃から皆に言ってるのだ。最初にお前を愛すがお前以外も愛すと言っておいた方が、お互いの事を考えると嘘を付かず本当の事を言っておいた方がいい。最初にお前以外の女性、他にも妻を娶ると言っておいた方が喧嘩も少ないし、離婚するなんて事もないからだ。嘘は駄目だ、後で自分の首を絞めるからな。嘘も方便って事もあるがこの場合での方便、男女の中では碌な事が無い。過去の歴史が証明している

 

永琳は我慢できないといった顔で俺に抱き着いて来た。永琳の顔は俺のお腹辺りにある、膝を床に付いて抱き着いているからだ。永琳から啜り泣き鼻をすする音がしてきた、だが俺には何も言葉にできず永琳の頭を撫でる事しかできなかった

 

「どうして、最初で最後の愛した男性がこうなるのかしら」

 

「運が無かったんだよ永琳は。男運が」

 

「いいえ、男運は悪く無かった。この私が他人を愛する事が出来る人に出会えたんだから」

 

永琳は抱き着いて顔を上げたが、涙で俺の服が濡れている。右手で永琳の目の端に溜まってる水を拭いつつ左手で頭を撫でる。俺はあの時、永琳に関わるのをやめておいた方が良かったのだろうか。泣かせてしまった、泣かせる気は無かった、だが誰にだって譲れない物はある。それが俺の場合は夢だっただけの事だ

 

「今日は、一緒に寝かせて頂戴。朝まで一緒にいて」

 

「分かったよ、銀」

 

「馬鹿、もう銀じゃないでしょ、名前をあの時教えたんだからちゃんと永琳って呼んで」

 

「すまんすまん。お詫びとして一緒に風呂に入るか」

 

永琳はがばっと勢いよく立ち上がり、俺の右手を掴んで無理矢理引っ張られ連れて行かれた。永琳が早歩きで歩くので俺も何とか合わせて歩く

 

「早く行くわよ弘、背中を流してあげる」

 

「待て待て、焦りすぎだろ」

 

「初めて一緒にお風呂に入るのよ。早く愛しい夫の広い背中を流してみたいのよ」

 

「分かったからそう急ぐな。風呂は逃げないぞ」

 

「お風呂は逃げないけど、弘が逃げるかもしれないでしょ。気まぐれな夫なんだから妻の私は苦労するわね」

 

夫とか妻とか言ってるが、さっきも言った通り俺と永琳は結婚していない。結婚してなくても夫婦とは言えるかもしれないが

 

「あ、勿論私はタオルで体を隠して入らないわよ。裸で入るから」

 

「ですよねー 分かってたけど」

 

歩きながら話していたら脱衣所に着いた。後は脱いで風呂場に直行するだけだ。永琳はあの赤青服に手をかけ、背中を向けて脱ぎ始めながら嬉々として言葉にする

 

「さあ。夫婦水入らず、誰にも邪魔されない。お風呂に入りましょう」

 

俺も脱いで俺と永琳は風呂に入った。入り終えたら自室に戻りベッドに横たわる。

 

 

 

 

 

 

今日は疲れた寝る夢の中だけでも俺に都合のいい世界をどうか、神よ・・・・・・・!

 

 

 

 

 

気が付くと家の中にいたソファーに父さん台所に母さんと永琳がいる。おかしいよね親は同棲に大賛成だったけども何で実家にいるんだ。記憶がない、ふと足元を見ると子供がいた満面の笑みだ、どことなく母さんに似てる。

前髪おかっぱのロングヘアー。風呂上りなのか子供の体から湯気が出ている。パジャマ姿で両腕を後ろに回し

俺を見上げる。すると、とんでもない事を言った

 

「おとーさん!」

 

 

 

 

ナ、ナイスジョーク

永琳がこっちに気づいて台所からエプロン姿で来たあのハートマークがでかでかと載ってるやつだ

 

「輝夜、アイスがあるから食べなさい」

 

「うん!おかーさん!」

 

「あなた、お風呂に入っちゃって」

 

俺がおとーさんで永琳がおかーさん、なんてことでしょう。俺はいつの間にか娘ができていたようです

笑うしかないね、笑うしか。しかもあなたってすっかり若奥様ですね。

俺の女を侍らす夢が消えた、神はいなかった。

 




徹夜明けは辛い、大体このくらいの文字を3~4時間くらいでできます
だからって更新しませんエタルんで



本当は永琳の自己紹介の時に永琳に八意××って入れたかったけど泣く泣く削ることに
しょうがないね

て言うか俺たちの戦いはこれからだー!って感じで終わってるしこの2話だけで終わるかもあんまり長く続いても面倒くさい


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生き物じゃない

眠い

言い忘れてましたが戦闘関係は省きますめんどいので

後、永琳と弘天は結婚していませんし付き合ってもいません娘もいません
ただ一緒に住んでるだけです。はずです・・・・・・メイビー。


俺に娘ができる嫌な夢を見た・・・・・朝になり目が覚めると横で永琳が寝ていた。パジャマ姿で俺に抱き付いているようだ。永琳を起こすとおはよーと言いながら眠そうな顔で俺の顔に永琳が顔を近づけてきた、キスをしようとしてきたので、俺もおはよーと言い立ち上がり洗面所に向かった、どうやって女を作るかを寝ぼけた頭で考えるが、永琳がいるから何もできないので考えるのをやめた。しかし俺はあきらめない。ただ愚直に夢に向かって進むのみ。それが俺だ。と考えてると洗面所に着いた、洗面所に置いているコップに歯ブラシが2本ある、もう見慣れたな。

 

 

 

朝食を食べつつ永琳を見る。相変わらず赤と青の服だ。後ろ髪を三つ編みにして、紫色のリボンで止めている。ちなみにリボンは子供の時に俺があげた。嬉し涙流してたよ。うむ、食べ終えた俺たちは着替えて仕事に向かった

 

 

朝訓練を終え、お昼を食堂で食べている、毎日毎日 訓練 訓練 巡回 訓練これを何十年もしてきたが飽きてきた、しかし働かないと永琳に養ってもらうことになる。それは嫌なので、働いてお給料貰わなくては。養ってもらうのはさすがに御免だ。

今日の仕事は巡回だけど大体回ったしいいだろう

妖怪がいるって言っても殆どは弱い。都市に近づいてきても、遠距離兵器で一撃でもくらえば塵となり消える。お蔭で都市には近づくこともないから至って平和だ、いい事だ、楽だし。ああ、そうだ。師匠に呼ばれてるんだった行かなきゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練所で師匠を見つけたが守師匠の足元に豊姫と依姫がいるまだ子供だが将来間違いなく美人になる。間違いない。師匠がなぜかにやついている

俺が赤ん坊だった時に父さんがあんな顔してたなーと思いつつ声をかける

 

「今日は一体どういったご用件ですか?」

 

「お前に頼みがある!」

 

頼み?いやーまさか豊姫と依姫がいるのってそういうことなのだろうかこれでも俺強くなったんだぜ?師匠には10回中6回は勝てるようになってきた、毎日毎日師匠と戦った成果だな。

 

「この子たちを鍛えてほしいんだ!!」

 

「・・・・・それは師匠がやればいいのでは?」

 

「確かに俺がやるべきなのだろう、しかし!無理だ!弘天のように痛めつけて楽しむ何て・・・・・・可愛い娘に出来るわけがないだろう!!!!」

 

えー師匠今のは酷いって俺を痛めつけて楽しまれていたようだ。

 

「なら他の名門の所に頼めばいいじゃないですか」

 

「最初はそう考えたが、駄目だ。我が綿月は名門で名を馳せている。自惚れではなくな。もし我が娘に何かあったら、唯では済まない、ので他の名門に預けても、必要以上に甘やかされるだろう。それでは娘達は成長しない」

 

「まあそういうわけでやれ。」

 

鬼の形相でこちらを見ている。やらなければ俺は殺されるだろう。だから俺の返事は

 

「分かりました」

 

そう、答えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず師匠は娘達に何を教えたのか教えてください、被ると面倒です」

 

「うむ、護身術を嗜む程度には教えた」

 

護身術嗜むのか最近の子は凄いんだなー綿月は名門だし当たり前か。師匠が俺に近づいて肩を組む。娘2人についての話らしい。何でも綿月姉妹は俺に憧れてるみたいだ。

師匠が奥さんと綿月姉妹でご飯を食べてる時に俺に勝つやつがいるって話をしたらしい

師匠はこれでもこの都市最強なんだってさ。知らなかった。師匠の肩を組む力が急に強くなり真剣な表情になった。

 

「弘天。どちらかの娘がもしくは両方気に入ったらお前にやる。今は子供だが将来は綺麗な女になるだろう」

 

「急に何を言い出すんですか。娘さんに怒られますよ」

 

「いやな、今は憧れだがいつか憧れから恋になるかもしれんだろ?だから今の内に言っておく。それに他の名門に娘をやるのは癪だ」

 

「師匠。俺は昔から夢は女を侍らすと決めているんですが。」

 

「何を言っている、俺もお前も名門の出じゃないか。ならば女は多いほうがいい。子孫を残さねばならん。我ら名門の血を絶やすのは不味い、唯でさえ少子化なのだ。しかも我らは中々子供に恵まれない。今は子供は多いほうがいい、女が多ければ子供が出来る可能性は増える、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるだ。」

 

師匠が俺の肩をバンバン叩いてにやにやしながら仕事が残ってるから、後は頼むぞ。と言い俺と豊姫と依姫が残された。まあ、まだ子供だし。憧れから恋に変わるわけがないので、期待せず成長するのを待つとしよう。まずは二人を鍛えないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大体こんなもんだろう。しかし仕事に師匠との稽古に綿月姉妹を鍛えるって俺ってもしかして凄い?なわけないか慢心はだめだよな、気をつけないと。綿月姉妹を今日のノルマを終え思ったのが豊姫と依姫の性格がほぼ真逆だね。依姫は堅物で融通がきかない、豊姫は陽気で緩々した性格。見ていて面白い。

 

「よし、一旦休憩しよう。」

 

俺がそう言うと二人とも膝を地面につけた。まだ子供だし体力がないようだ、甘やかすなと言われてるので、徹底的にしごいた。何か罪悪感が・・・・・二人とも水筒を持ってきている。中身はお茶のようだ、汗をかきまくったので水分を欲しているのだろう

急いでお茶を飲んでいる。飲みっぷりが気持ちいい。じっと見ていたからか、二人ともお茶を飲むのをやめる。恥ずかしかったみたいで今はお茶をちびちび飲んでいる。可愛い。トイレに行きたくなったのでトイレに行くと二人に言いトイレに向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきたら豊姫がいない。依姫に聞いたら急に走ってどこかに行ったそうだ。もし何かあったら俺は殺される、探さねばと思ったら食堂から豊姫が出てきた、手には桃を3つ持っている。食堂で貰ったのだろうか、食堂のおばちゃんは子供に弱いからあげてそーだなー

走って来た豊姫が急ブレーキをかけ俺の前に立ち止まると桃を差し出してきた桃を受け取るともう一つを依姫に渡し、皆で一緒に食べませんかと聞いてきたので頷くと両手を空に上げやったーと言って喜んでいる。依姫は桃を受け取ってから豊姫に急にいなくならないでください、毎回毎回食堂で桃を貰わないで下さいと苦言を呈する。豊姫は苦笑しつつも謝りながら桃に齧り付く。美味そうに食うなと思い俺も桃を齧る。甘くておいしい、ありがとうと豊姫に言うと豊姫は笑顔になり俺に抱き付いてきたが、依姫に服の襟を掴まれ引き離される。食堂のおばちゃんにもお礼を言わなきゃな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅に帰ってきた。今日は永琳はいないようだ。最近忙しいみたいだ、永琳は天才らしいのであっちこっちに引っ張りだこらしい。永琳は俺といたいらしいがそうはいかないようだ。都市の発展には永琳は必要なのだ、穢れをどうにかするために最近会議が多くなってる。もちろん永琳の頭脳が必要らしいので会議には出席している。俺は蓬莱山の長男だが現当主じゃないので父さんが会議に出席している。今日は汗をかいたので風呂を沸かそうと思い風呂場に向かったが、玄関のドアが開く音がした。玄関に向かうと永琳がいた帰ってきたようだ。お帰りと言うとただいまと返ってきた。

 

「ご飯作るから待っててね」

 

そういうと靴を脱いで台所に向かった手には買い物袋がある食材を買って帰って来たようだ。風呂を沸かすかと思い風呂場に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今俺は鍋を食べつつ永琳を見る、相変わらずの料理の腕、美味すぎる。初めて永琳が料理をしたとき失敗するだろうなと思い見てたのだが、一発で成功した本人は料理本見て作ったのだから当たり前だと言ってたがそんな簡単に出来るものだろうか、俺には無理だな

くだらない事を考えてると永琳がこちらを見て口を開く

 

「ねえ、今日の会議で穢れを対処する議案が1つ出たのよ」

 

「議案?可決されたのか?」

 

「いいえ、まだよ。でもそれしかないなら可決するでしょうね」

 

「ふーん。議案の内容は」

 

「月に行く」

 

月に行く・・・・・確かに月に行けば妖怪がいないから穢れはないし穢れで死ぬことはないだろう。だがそれは俺たちに天敵がいなくなるということだ。俺たち人間に天敵がいなくなる。天敵がいなくなった生き物は生き物と呼べるのだろうか。それは生きてはいるが死んでいるのではないか。俺はそう考えてしまう。しかも俺たちには寿命の概念は存在しないのだ、時間で殺されることがなくて穢れで死ぬことはない。月に行った俺たち人間を生き物と呼んでいいのだろうか・・・・・・・

ちなみにこの議案を出したのは月読命という女性の月の神だ。元は男の人間だったが

神になってから女になったらしい。月読命が言うには神というのは元々は人間だそうだ。

衝撃の事実、興味ないが

 

「もし月に行く議案が可決されたら月に行くためにロケットが必要なの。数十年はかかるけどね」

 

俺たち人間の数は1億人を超えていて全員が乗れるロケットが完成するのは数十年かかるそうだ。永琳が真顔で俺を見て口を開く

 

「だから月に行きましょう。」

 

だから俺はこう答える

 

「嫌だ」

 

 

 




オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな このはてしなく遠いエタル坂をよぉ!


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俺は死にたくない

今回は短い

やっと出来た正直一番困った話でした本来2話で終わる予定だったから仕方ないね

今回は間違いなくおかしいです正直今回はあまり真面目に見ないでおくれ
あと細かいところは見逃して欲しい




永琳は俺の言葉を予想していたのか表情は真顔のままだ。だが俺は月に行く気はない

俺は生きたい、月に行って死ぬことの心配が無くなるなんてお断りだ。俺は自分が生きてると実感したい、死ぬ恐怖が無くなるなんて死ぬ事と変わらないような気がする

 

「ねえ、私は弘がいないと駄目なの。弘、無しでは生きられないの。だから私と月に来て」

 

「嫌だ」

 

永琳は俺の世話を甲斐甲斐しく世話を焼いているので俺が永琳に依存してると思われてるが実際は永琳が俺に依存している。だから俺の世話をするし俺の女を侍らせる夢以外は言うことを聞く。ならばと俺は考えた。永琳が俺と一緒にいたいなら月に行く必要はない。そのかわり、永琳に限らず俺もだが。家族と友達を捨てることになる、二兎を追う者は一兎をも得ずだ、両方取れないなら片方取るしかない。両方取れなくなるよりはマシだ。ごめん、父さん母さん。親不孝な俺を許さなくていい。でも親子の縁は切らないでくれ。

 

「じゃあ、永琳が月に行くのをやめて地上に残れ」

 

「あのね、私は都市を発展させた人間で天才なのよ?そんな人間をわざわざ地上に残すわけがないでしょう。皆そう言うと思うわ」

 

「ならば簡単だ永琳とついでに俺も死んだと思わせればいい」

 

「・・・・・どうするのよ」

 

「いい考えがある。」

 

「何かしら」

 

永琳の表情は無表情だがどこか落ち込んでいる。今、永琳の頭の中では俺をどうやって連れていくか考えてるんだろう、だがそうはさせん。

 

「もしロケットができて月に行くって時が来て妖怪が黙っているだろうか。」

 

「無理ね、妖怪は人間がいないと消えてしまう。だから命がけで止めに来るでしょう」

 

これは俺が小さいころから起きてる事件なんだが都市に妖怪が入り込んで来てるということだ妖怪が都市に近づいたらセンサーが鳴るはずなのに鳴らないみたいだ

しかも人を食いに来てるかと思えばそうじゃなく都市にいる人間にばれるまで都市に居続けるということだ。もしかしたら人類の情報を集めているのかもしれない。

その妖怪を殺そうと思っても目の前から急に消えセンサーにも反応しないんじゃ何もできなくて困ってると聞いたもしかしたら月に行く事もばれてるかもしれない

 

「だろうな妖怪も馬鹿じゃない、だから月に行く前日もしくは当日に攻めてくるだろう」

 

「なるほど、確かに前日、当日に攻めれば守護隊の人たち以外はロケットに乗ることができるけど妖怪の相手をしてる守護隊の人は乗れないということね」

 

「そうだ、何も俺たち人間全員を地球にいさせなくてもいい。数百人でもいいんだ。妖怪からしたら地球に人間がいればいいんだからな。力は弱まるが妖怪の存在自体が消えるよりはいいはずだ。」

 

「なるほどね。それでどうするの?」

 

「俺は守護隊だからその時は戦はなきゃならん。だから永琳にはそれまでに頼みがある」

 

「月に行ったとする。当たり前だがこの都市は持っていけない、だからそのまま残すことになるだろう。だが残すと後々面倒が起こる。だから爆弾とか核で無くすことになるだろう」

 

「そうね、今日の会議でその話はしたわ。」

 

「だから作るんだよ」

 

「何を作るの?」

 

「地下だよ地下、核に耐えられる地下シェルターを作るんだよ」

 

永琳が顔をしかめた、だがこれしかないんだ。俺は考えた、それしか思いつかなかった。無理だろうとやってもらう永琳と地上に残るにはこれしかない。幸いまだ時間はある。

 

「簡単に言ってくれるはね」

 

「言っておくが俺は核に耐える地下シェルターを作ってくれたらいいんだよ。1億人も入る地下シェルターを作れとは言わん」

 

「分かってる、けど食事はどうするの」

 

あ、考えてなかったどうするか。食べ物を地下シェルターに持っていっても時間がたてば腐るし、地上は核で何もかも無くなるしどうしたもんかまだ時間はあるし、まあいいだろう。あ、地面はあるんだから野菜とか育てたら・・・・・・無理だな

 

「そ、それについては今日考えるのはやめよう」

 

そういうと永琳が溜息を吐いて俺を薄目で見てくる。

 

「じゃあ守護隊の皆には地下シェルターを作るからそこに行けと言えばいいのね?」

 

「いや、駄目だ。俺たちは核で死んだと思わせなきゃいかん守護隊の皆が生きてるとばれるかもしれん。悪いが自分たちで何とかしてもらおう」

 

「そこでさっきの話に戻すが俺たちが死んだと思わせる事についてだが。永琳は最後の便のロケットに乗るよう上と掛け合え」

 

「次にその最後のロケットの便を遠距離で操作できるようにして永琳だけ乗らず発射させろ。発射させたら、地下シェルターに入って核が落ちるのを待て。そしたら月に行った奴らは永琳が核で死んだと思うだろう」

 

普通に考えて永琳を最初のロケットに皆乗せようとするだろうがそこは永琳に任そう。最後のロケットの便が発射されたら、妖怪と戦うのをやめ、俺は急いで地下シェルターに向かう。死んだかどうか確認に月に行った連中が来るかもしれんがすぐにはこれないはずだ月に行って都市を作らなきゃいかんし。

 

「そう、分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

「永琳、家族や友達を捨てられるか?」

 

「捨てないわ、その時にはもう会えないけど、この気持ちは大事に持ってる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いろいろ動き出し始めたけどまだ始まってもいない。始めるかわからんし、終わるかわからんけど

俺はエタルんだ。そう、決めたんだ。


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こんな日常も悪くないんじゃない?

前回暗い感じだったので明るくしました。

元々明るい作品だったはずなんだよこれは!

地の文が多いですけど大丈夫ですかね読みにくかったら言ってください。多分直します


あれから数年経ち俺は守護隊隊長まで地位を上げたが 仕事 仕事 仕事 仕事 部隊を預かる者としての責任がある立場なので結構忙しい。地位を上げたら楽できるかと思ったら、そんな事はなく。前より忙しくなってしまった隊長になったのは失敗だったようだ。しかも豊姫と依姫を師匠が俺の補佐役にと押してきた。しつこいセールスマンみたいにぐいぐい来たので断っても無理だと悟り、補佐の話を飲んだ。ちなみに隣には依姫が居て、サボろうと思っても、俺を監視してるのでサボれないのだ。何てことだ、やはり、補佐の話は飲むべきじゃなかった。豊姫は逆に俺がサボるというと私もサボりますと言い俺の後ろについてくる。どうしてここまで性格が違うのか。後、豊姫と依姫の身長は伸び、体付きも女の子らしくなってる。今は豊姫はいない。どこかでサボってるようだ。だが堅物の依姫から逃げるとっておきの方法がある。これは真面目な依姫だから効くのであって豊姫に言っても効果は薄い。喜んで抱き付いてくるからだ。今は巡回中だし今しかない。その手段とは!

 

「依姫」

 

「何でしょうか、隊長」

 

プライベートの時は依姫の俺の呼び方は弘さんだが仕事中は依姫は俺のことを隊長と呼ぶ。豊姫はプライベートでも仕事中でも弘さんと呼ぶ。仕事をサボりたいので俺の後ろにいて控えていた依姫に向かって抱き付いて大声で言った

 

「好きだ!結婚しよう!」

 

よし、今だ!と思い依姫を解放しダッシュで逃げながら後方にいる依姫を見る何回も抱き付いて告白してるのに未だに顔が真っ赤だ、愛い奴よ。周りにいた人たちも生暖かい目で俺と依姫を見ている。何回も同じことをやっているから、皆見慣れたようだ。依姫はしばらく唖然としていた。が、またからかわれたと思ったのか依姫は俺のほうに向かって走って来た。

表情は鬼でも裸足で逃げ出すくらいの表情だね。捕まったらまた説教をされるので

全力で俺は逃げ、都市を駆け抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと撒いた・・・・・なかなかのしつこさだった。だが、俺の敵じゃないぜ。途中小腹が減ったなと思い近くにある団小屋を目指す。

団子屋に着いたが、豊姫を見つけた。赤い布を被せた床机に座って団子を頬張りながら熱いお茶を飲んでる。サボってるはずなのに堂々とし過ぎじゃないだろうか。俺も人の事は言えんが。

こちらに気づいたのか豊姫は笑顔で俺に手を振ってきたので俺も振り返す

俺は団小屋の女将に団子を注文してから、豊姫に近づき床机に腰を落とした、豊姫が俺の肩に頭を乗せ寄り添ってきたので。ならば俺もと思い豊姫の腰に手を回した。

微笑ましそうに俺たちを見て女将が団子を持ってきたのでお礼を言い団子を食べる。

いつまでもこの平和な日々が続けばいいなーと思いました。

急に後ろから殺気を感じたので振り返ったら依姫がいた。

 

「隊長!お姉さまも、何してるんですか!」

 

「何って俺と豊姫は団子を食べてる」

 

「仕事をしてください!上に立つ人間がサボらないでください!周りに示しがつきません!隊長がサボると蓬莱山の名に泥を塗ることになるんですよ!?」

 

「まあまあ、落ち着いて、団子でも食べてゆっくりしましょう」

 

「お姉さま、お姉さまがしっかりしないから隊長はサボるんです。しかもお姉さまもサボると綿月の名に傷がつきます、お父様を困らせたいんですか」

 

「大丈夫よ大丈夫何とかなるわよ、だから一緒に団子でも食べましょう」

 

怒り狂ってるみたいだから落ち着かせるために、俺の食べかけ団子を口に入れてやった

驚いたのか怒りは収まり、驚愕の表情だ。今しかないと思い、依姫を無理やり隣に座らせ、依姫の腰に手を回し、抱き寄せた。今の状況を理解したのか顔が赤くなってる。 豊姫は皿に乗ってるもう一本の団子を俺の口の中に入れてくれる。

豊姫の腰に回していた手を豊姫の背中に当て撫でてやる。頭より背中のほうが気持ち良いと前に言ってきたので。気持ちよさそうに目を細めて俺を見ている。

こちらを依姫は見ていたが、素直じゃないので、して欲しいと言えないみたいだ。

だから俺が勝手に頭を撫でてやることにした。両手に花とは正にこの事。幸せだなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅に帰り、台所を見ると永琳がいた永琳が料理をしながら俺を見てお帰りと言ってきたので、ただいまと返した。今日は肉料理のようだ。美味そうだ。早く食いたいので何かできることはないかと聞いても、座って待っててくれたほうが助かるわと言われ仕方なく待つ。数分経つと台所から永琳が来た。おぼんに料理を乗せていてテーブルに置く。我慢できなかったので、箸を手に取り白米と肉を口に入れて食べ始めた。美味い!平和、そう、平和だ。仕事から帰って愛する女の手料理を食う、これぞ幸せって奴だね。だから俺は永琳に向かっていつものように言葉を口にする。

 

「美味いよ永琳、さすが俺の女だ。愛してる」

 

「私も愛してるわ、弘」

 

言葉とは自分の考えや気持ちを相手に伝えるためにある。だから俺は自分の気持ちを包み隠さず口に出す。俺たちは意思疎通できるのだ。ならば意思疎通するさ。口に出さなくても良い事があるかもしれん、だが言葉にしなきゃ分からないこともある。相手が何を考えてるかなんて分かる訳がないんだから。

 

「だから俺の夢を認めてくれ」

 

「嫌」

 

えー

 

 

 

 

 

 

 




永琳が少ないと思いました。でもくどすぎてもなー悩みどころだね

私は今悩んでいます輝夜の事です。どうしよう

ていうか一日に3回も投稿するとか何考えてんだ俺

あ、エタルんでよろしく


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酔った

一日に4話も書く事になるとは

地の文多いからくどいと感じるかも


飲み過ぎた。今日は俺が局長になった祝いに師匠に飲みに行くから来いと言われ、強制連行された。俺は下戸ではないので、酒を飲むのはいいんだが師匠は下戸。と言っても機嫌上戸なので、怒り下戸や泣き上戸みたいに面倒ではないのだが、毎回毎回いつ娘と結婚するんだと聞いてくる。しかし結婚は一人しか選べない。豊姫は愛人でもいいと言ってる本音は本妻がいいのだろう。豊姫を見ていてそう思う。愛人なんて永琳が認めないだろうし正妻なんて以ての外だろう。依姫は最初は嫌がった。けど、渋々だが側室でも言いといったが。

 

 

 

「したくても永琳が認めてくれないんですよ」

 

「だから早く何とかしろ。自分の女を説得するのも男の役目だ。まあ、弘天と八意を見てるとおしどり夫婦にしか見えないから、弘天が他の女と逢引してるのは想像できんがな」

 

 

 

 

そう、俺と永琳はおしどり夫婦として有名なのだ。結婚してないのに。何百年も一緒にいたから、当然と言ったら当然だが。しかし俺は地上に残るのだ。俺の女にしたいが豊姫と依姫は女にできない。豊姫と依姫を地上に残すわけにはいかない。そして厄介なのが豊姫の能力で海と山を繋ぐ程度の能力というものだ。詳しい事は聞いてないから知らないが、遠距離を瞬時に結びつけてワープすることが出来るそうだ。これは非常に不味い。行ったことがあるところだけワープできるらしいが、それでも不味い。もし豊姫が月について俺が核で死んだと聞かされたら地球に来そうな気がする。何か対策を打たねば。依姫の能力は神霊の依代となる程度の能力だそうだ。神を自分の体に宿し使役するらしい。神の力使えるとかやばいね。能力を使って依姫と手合せしたことはない、憶測だが俺は負けるだろう。豊姫と依姫は今は部隊を預かる隊長になってる。2人はもっと上に行くだろう。

俺を超えそうで怖い、俺は地上に残るから局長の地位も誰かが入るだろう。代わりはいるんだ。俺にも、能力があるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は自宅に帰る途中だ。さすがに飲み過ぎて酔ったので先に帰らせてもらった。師匠は、おう、気を付けろよと片手を上げ店員を呼びお酒を頼み始めた。まだ飲むのかと軽く呆れ店を出た。師匠はいつも奢ってくれるので、俺の財布は膨らんだままだ。

俺は欲しいものがあまり無いので、財布が勝手に膨らんでいく。殆どのお金は永琳に預けている。家計を任せているのでそのためにだ。お互いあまり欲しい物がないからかお金が溜まってると永琳が言ってたが何かプレゼントしてやるかと考え自宅に着いた。

電気が付いている。永琳がいるようだ。玄関に向かいドアを開けただいまと言う。奥からお帰りなさいと言い、永琳が玄関に向かって来て俺の目の前に来た。靴を脱ごうと思ったら酔っていたので前のめりに倒れ永琳を押し倒した。永琳は驚いて俺を見ているが笑顔になり

 

「遂に手を出してくれるのね」

 

この時をどれだけ待ったかと言い、でも流石に玄関でするのはやめましょう。初めてなのだしベッドに行きましょうと言いやがった。手を出したら終わりなので手は出さない。代わりに押し倒した状態で永琳の胸を俺の両手で揉んでおいた。デカい。

 

「何を勘違いしてるか知らんが、俺は酔ってて倒れただけだ勘違いするな」

 

「ならなぜ胸を揉むの」

 

「そこに胸があるからだ」

 

永琳は俺の女、詰り永琳の体は俺のだから揉んでも問題はないのだ。付き合ってないけど。そう、と言い落胆顔で永琳が俺を押しのけ立ち上がった

 

「ならお風呂に入って、綿月さんと飲みに行ったのでしょう」

 

ふらつきながらも立ち上がり俺は風呂場に向かった、服を脱ぎ捨て風呂に入る。体が温まり、寝てしまいそうだ。ぼーっとしてると急に洗面台に永琳が入ってきた、何事かと思い永琳に声をかける

 

「何だ永琳」

 

「ロケットは七割は終わったわ、地下は九割ね」

 

「そうか」

 

それだけ言いに来たわ。と言い洗面台から出た。これでいいのだろうか、いや、何を迷うことがある俺は他人のために生きてるんじゃない、自分のために生きてるんだ。なら迷うことはないじゃないか。そう考えても父さんや母さん、豊姫と依姫の顔が出てくる師匠は死んでも死ななそうなので何も思わない。永琳は俺と地上に残るので気にならない。

俺が月に行かず地上に残るのは、妻は一人だけという常識がない地球にいたいからだ。というかそれが月に行かない理由の大部分を占めている。人間は月に行っていなくなるが、俺と永琳は地上に残るので核で妖怪が全滅しても、また新しい妖怪が出てくるだろう。人間がいるから妖怪は生まれるようだし。だからこそ地上に残るのだ。前に美人な妖怪を都市の近くで見たことがある。あれを見て俺は妖怪も俺の女にしなきゃと思ったね。穢れで死ぬかもしれん。だが俺は美人、もしくは可愛い妖怪を俺の女にするのだ。そう決めたのだ。

もう時間はないロケットが七割も完成している、あと数年もしたら地球とはおさらばするのだろう。後悔のない選択をしろよ 蓬莱山 弘天 永琳は俺が決めたのならどこまでも一緒に来るだろう。永琳以外を捨てるのだ。永琳だけでも幸せにしなきゃならん。そして夢を叶えるのだ。そう考え俺は風呂から出た




遂にここまで来た、長かったような気がする疲れた

とりあえず寝る


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地上


食糧問題を考えようと思ったが知識が無いので考えるのはやめました。

戦闘は基本省く、めんどいからね。

オリキャラ出そうかと思ったけどめんどうなので出しません。今はですが








今日は仕事が無いので、買い物に来てる。月に行くまでもう数週間しかないので、永琳と豊姫と依姫にプレゼントでも買おうと思い

いろいろ見て回ってる。永琳には小さい頃はよくプレゼントしたが、豊姫と依姫にはリボンしか買った事しかない。今はまだ俺の女だし、豊姫と依姫は月に行くから、最後に何かプレゼントしようと思ったわけだ。永琳には色々プレゼントしてるから何を買えばいいのか分からんので、後回しだ。豊姫には青いリボン、依姫には赤いリボンをプレゼントした。豊姫は帽子にリボンを付け依姫はポニーテールをリボンで纏めている。リボンを買っただけなのに、豊姫は凄い喜びようだった。仕事や訓練をよく豊姫はサボるのだが、リボンをプレゼントしてから、暫くサボらなくなり、依姫との訓練を真面目に受けたそうだ。依姫が今回のように真面目に仕事や訓練してくれたらいいんですがと嘆いていた。俺もよくサボるので、豊姫を注意はできない。する気もないが。依姫は豊姫程じゃないが喜んでいた。クールビューティーな所がある依姫が笑うと、もっと見たくなる、依姫はあまり笑わないのだ。だから笑った時は、貴重なので、依姫の笑顔は脳裏に焼き付かせている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店を見て回っているがこれだと思うものがない、服やアクセサリーなどがあるが惹かれない。アクセサリーや服は似合うのだろうが、これじゃない気がする。豊姫と依姫の服装は、シャツを着てその上にサロペットスカートを着ている。2人ともシャツの色は同じだが、サロペットスカートの色が違う。豊姫は青のサロペットスカート依姫は赤のサロペットスカートを着てる。何でも永琳の服装を意識したそうだ。実は永琳は女性にも

人気だそうだ。美人だし、この都市を発展させた天才らしいので当然だな。しかも家事も出来て護身術も出来て弓を使わせたら百発百中、正に文武両道。文句の付けどころがない、後は俺の夢を認めてくれたら、何も言うことはないのだが、永琳も女と言うことなのだろう。それを聞いて俺はこの前、豊姫と依姫に永琳と会わせてみた。豊姫と依姫に内緒で連れてきたので、驚いていた。ドッキリ大成功。女3人寄れば姦しいと言うが豊姫と依姫は緊張していて、最初は上手く喋ることができないでいた。今は普通に喋れるみたいだけど。ただその日自宅に帰ったら永琳が、私は弘の夢は認めないから。と釘を刺してきた。いつになったら俺の夢を認めてくれるのか。と、2つのベルトが俺の視界に入ったどうやらお揃い物のようだ。

片方はベルトのバックルに剣の紋章があり、もう片方は鏡と思われる紋章がある、お揃い物みたいだし、これいいなーと思い購入することにした。結構高かったがお金は有り余ってるので問題ない。ちなみに溜まりに溜まったお金は父さんと母さんに渡そうと思う。都市を発展させる費用として使ってもらおう。地上で持ってても使い道ないし、永琳は地上に残り頼れないのだから。永琳はもう十分働いた。社会の発展に十分貢献しただあろう。天才としての 八意 永琳 は終わりだ、これからは1人の女として生きてもらおう。後は自分たちで発展させてもらわねば。そう思い俺は永琳のプレゼントを買うため他の店に行ったがこれだと思うものがなかったので。今日は帰ることにし。豊姫と依姫の元へ向かう事にした。永琳に明日有給取るように言わねば。俺も有給を使おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日になり、永琳に何か欲しい物はないか聞いても、何もないと返ってきた。

俺がいれば後は何もいらないそうだ、相変わらず欲がない。仕方ないのでデートに誘う事にした、デート中欲しいものがあればそれを買おうと考えた。久しぶりの休みだ

永琳が行きたいところがあると言ってきたので、目的地に向かう事にした。

隣には永琳がいて俺の右腕に腕を絡ませ俺にもたれかかりながら歩く。正直歩きにくいが、仕方ない。目的地に着くとその店は棍棒、盾、槍や原始的な物が多い店だ、今の俺たちの技術ではこれらの物とは比べ物にならないくらい進化している。殆ど永琳が作ったようだが。子供の頃はよくこの店に来たものだ。しかしせっかくのデートにここに連れてくるとはいったい何を考えているのか、と永琳をチラリと見る、永琳が俺のほうを向き

すぐに分かるわと言いながら俺は永琳に引っ張られて店に入った。

中には爺ちゃんがいる、子供の頃から俺が話しかけても全く喋らない。爺ちゃんは身振り手振りでコミュニケーションをする人間のようだ。永琳が俺を引っ張りながら爺ちゃんに近づくと口を開いた

 

「直ってるかしら」

 

永琳が爺ちゃんに聞くと爺ちゃんが頷き奥に入っていった

 

「直ってるって何だ、何か壊れたのか」

 

「いいえ、壊れてないわ、ただ古くなったからお爺さんに見てもらったのよ。とっても大事なものだから」

 

そう言い俺たちは爺ちゃんを待つ数分経つと爺ちゃんが戻ってきた手には弓矢を持ってる、弓矢の藤頭の部分にハンカチが巻いてある。あれは見間違うはずがない、あれから数百年は経つのにまだ永琳はまだ持っていたようだ。爺ちゃんが弓矢を永琳に渡し、近くにあるパイプ椅子に座った。

 

「さすがねお爺さん、やっぱりお爺さんに頼んでよかった。本当は自分でやればいいんだけど、私は忙しくて時間がなかったから」

 

爺ちゃんが当然とばかりに胸を張りこちらを見る。昔から腕は確かだったので、当たり前か。

永琳が爺ちゃんにお礼を言いつつお金を払った。爺ちゃんが笑顔で手を振って来たので俺と永琳も手を振り返し店を後にする。

 

「まだそれ持ってたのか」

 

俺たちが初めて出会った公園に着きベンチに座りながら永琳に聞く

 

「ええ、私にとっては大事な物なの」

 

そういい弓矢を撫でながら呟いた、この弓矢は俺が小さい頃にさっきの店でカッケー!と思い買ったものだ、だが弓矢の才能がないので、武器として使うのは諦めた。

そこで永琳に渡して的を撃って貰ったら百発百中だったので、スゲーな永琳!これからは弓矢を愛用の武器として使っていけばいいんじゃね!?と俺が言ってから永琳の愛用の武器は弓矢になった。だがその数日後、弓矢は古くて折れてしまったのだ、安かったのにはそう言う理由があったようだ。そしたら永琳が大泣きし始めて、俺は慌てた。そこで考えたのが、折れたところをポケットに入れて置いたハンカチで巻いたのだ、不格好だしハンカチを巻いた程度じゃ直る訳がないのは分かっていたが、それしか思いつかなかった。

安心しろ!俺が直したぞ!というと永琳は泣き止んだのだ。直ってないと気付いていただろうが、嬉しくなって泣き止んだらしい。その後はさっきの店に弓矢を持っていき直してもらった、だが直ってるのに未だに弓矢にあの時のハンカチが巻かれている。ちなみにハンカチを巻いてはいるが毎日洗濯してるので清潔だ。ただ邪魔じゃないかなーとは思うが。

 

「弘に貰ったものは私にとって宝なの。それがどんな物だろうと。だからこれ以上は望まない、弘には物だけじゃない色んな感情を貰ったわ、抱えきれないほど貰ってる。私は幸せよ」

 

俺は、子供の頃のエゴ。あの友達になろうとした選択は正解では無いかもしれん、でも間違ってもいないと今日はっきり分かった。罵倒され、平手打ちされたりもした、アッパーカットも食らった。だが諦めず、子供の頃に友達になれてよかったと思った。永琳を愛してよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遂に来た」

 

来てしまったこの日が。俺は永琳と地上に残る、見渡す限り 妖怪 妖怪 妖怪 都市は円形状になっていて妖怪たちに囲まれている、正に四面楚歌。もうロケットも残り僅か、急いで守護隊もロケットに向かわねばならんが妖怪が都市に入り込んでいるため今ロケットに向かったら妖怪がロケットに向かい破壊するだろう。守護隊が地球にいられると面倒なので、守備隊の仲間を助けつつロケットに放り込む、何をするんですか局長!?まだ戦えます!と言ってるが無視して発射させる。

 

局長なので最初のほうのロケットに乗ってくださいと言われたが、上の人間が逃げるわけにはいかんとかそれっぽい事言って説得した。今は順調、今はな。

豊姫と依姫を見つけた豊姫と依姫の隊の隊員が数名いる、豊姫と依姫の能力は強力なので、負けることはないだろうが、とっとと乗ってもらわねば、あと一台だけロケットがある。俺はまず豊姫と依姫の隊の隊員をロケットに連れて行くと豊姫と依姫に向かって言う、2人ともお願いしますと言いながら妖怪をばったばった倒してる、末恐ろしい。

このまま成長したら師匠にも負けなくなるんじゃね2人とも。俺が残って妖怪と戦いたいが、豊姫と依姫の方が強いと状況判断しロケットに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後は豊姫と依姫だけだな、さて、どうするか、と考える。いい案が思いつかないので無理やり連れて行こうと思い豊姫と依姫の元に向かった。

妖怪の波は一旦落ち着いたようだ、周りには妖怪の骸が山のようになってる。

今がチャンスと思い、説明する時間も惜しいので豊姫と依姫の前に立ちながら腰に手を回し、豊姫を右肩に依姫を左肩に乗せ荷物を抱え上げるようにしてロケットに向かう。2人とも何か言ってるが無視する、時間がないんだ、

ロケットに着いた豊姫の隊の隊員が急いでくださいと言ってロケットに入っていった。ロケットの入り口に着いた、次に豊姫と依姫を下ろしロケットの中に入れた2人とも、不機嫌顔だ、2人が考える時間を与えずロケットから出なくてはならない。じゃないと俺は月に連れていかれるだろう。さっさとロケットから出なくてはと思い、俺は口を開く。

 

「俺は月に行かないから、気を付けて行け」

 

言った、俺も月に一緒に行くと思ってたのか呆気の表情だ。今まで俺は2人に月に行くと言い続けていたので、驚いたのだろう。だから今しかない

 

「じゃあな」

 

最後にそう言い俺は急いでロケットから出る。するとロケットの入口が閉まった、永琳が操作してるのだろう、振り返ったら豊姫と依姫がロケットの入口のドアに張り付きながら何か言ってる。何を言ってるか分からないので手を振って俺は地下シェルターに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがに疲れた、ここまで働いたのは久しぶりな気がする。

地下シェルターには永琳がいた後は核が落ちるのを待つだけだな

衝撃音が鳴り響いた核が落ちたようだ、そんな事より腹が減ったので飯を食うことにしよう、別の部屋にレトルトのカレーがあるらしいので食いに行く事にした。白米はあるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上に出たら都市はなくなり辺り一面焼野原と化している。もう人類はいない、いるのは俺と永琳だけだな。まるでアダムとエバのようだ。

ここから始まるのだ、だから俺は永琳に向かい合い、右手を差し出し自己紹介をする。

 

「俺の名は弘天。蓬莱山 弘天だ、弘って呼んでくれ。これからは楽しいことが待ってる、だから俺の女となり一緒にいろ」

 

永琳は俺の顔を見て微笑する、そして俺の右手に永琳が自分の右手を差し出し絡めた

 

「なる、弘の女になるわ。私の名前は八意、八意 ××よ 永琳と呼んで」

 

これからは楽しいことが一杯だ、そんな確信を胸に俺たちは歩き出す

 

 

 

 

 




豊姫と依姫が強すぎる

あと、依姫は確か黄色いリボンでしたがここでは赤です。どうでもいいかもしれませんが

て言うか何これ、この終わり方完結したの?じゃあもう書かなくても問題ないな!

多分皆さん永琳がメインヒロインと勘違いしてるかもしれませんが違います。メインヒロインじゃありません。じゃあなんだと聞かれたら俺も分かりません、書いてたらこうなったんです。


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弘天

なんと前回で完結したはずなのに気づいたら今回の話を書いていた、もしかしたら俺は誰かに操られているのかもしれない。神話の話を書こうかと思ったけどオリキャラが出まくるので没

前回の話を見て綺麗に終わったと思ってる方がいるなら見ない方がいいと思います



このくらいならまだ健全大丈夫ったら大丈夫いけるいける

永琳はメインヒロインじゃないです、ないはずです。
いや・・・・・・・メインヒロインなのかもしれない

わっふるわっふる




核で都市が焼け野原と化した場所も今では森になっている、それだけ時間がたったようだ。

 

「ねえ、いつ子供を作るの?私は早く欲しいのだけど」

 

永琳はとんでもない事を聞いてきた俺も子供を作るのは吝かではないが、まだ俺の夢を永琳が認めないので、手は出さない。まだ手を出せないのだ。俺たち2人が地上にいるせいか、また妖怪が生まれている。と言っても、姿は美少女でもなければ、可愛くもない。生まれたばかりで理性がないせいか、食い殺そうとしてくるので、斬り捨てている。早く美少女妖怪を見たいものである。

 

「まだ駄目だ。我慢しろ」

 

「我慢しろと言われてから数千年は経つのよ。いい加減我慢の限界だわ」

 

「駄目だ」

 

したくてたまらないが、まだ駄目なのだ。耐えるのだ俺よ。そこで話を逸らそうと考え、1つ妙案が浮かんだ。旅だ旅をするのだ。永琳の右手を掴み引っ張る。

 

「じゃあ旅に出るぞ永琳」

 

「じゃあって何よ、ちょっと、離して」

 

今回は珍しく言うことを聞かない、さすがに待たせすぎたようだ。仕方ないので、俺は永琳を前から抱きしめ、顔を近づけ口づけすることにした。よく考えたら胸や尻を触っても口づけをしたことがなかった。急にしたので永琳が両眼を大きく見開いて俺を見る。状況を理解したのか俺に抱き付きながら身を任せて俺の口の中に永琳が舌を入れてきた。これ以上はやばいので永琳から離れる。永琳はまだしたいのか恨めしそうに俺を見ている。

 

「私は、この程度では騙されないわよ。だからもっとして、初めてだったんだから、責任を取ってちょうだい。そして子供を作りましょう」

 

唇を舌で舐めて左手を頬に当て、俺を見ながら言うが、やりすぎるとまた強請ってくるので、無視して永琳を連れ出した。責任は取る、俺の女なのだから、夢を認めてくれたらだけどな。そして地下シェルターから出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出たのはいいが周りは森になってる、方向感覚が狂ってしまう、どこから行こうか悩んだ。いい案が出ないので風の吹くまま気の向くままに進むことにしよう。

 

「行くぞ」

 

「行くってどこに?」

 

「分からん」

 

そう言って俺は歩き出す、歩きながら後ろを見ると、俺の言葉を聞いて呆れて溜息を出し左手をおでこに当てた。頭を痛そうにしているが、諦めたのか俺の後ろについてきた。いつも通りだ、気楽に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月旅をして色々見てきたが、何と人類が生まれているのだ。生き残りは俺と永琳だけなのに生まれるとは。地球は何を考え新たに人類を生んだのか。俺としては嬉しい、夢に近づくし。

永琳が俺の背中を思いっきり叩いてきた、痛い。俺の顔をジト目で見てくる。俺の考えを見抜いたと言うのか。口づけしてからさっきまでにやついていたのに、さすがだ永琳。

 

 

 

 

 

「ミトコンドリア・イヴ…いや、わずかに神の血を感じる。神裔か」

 

「私達がどうかしましたか?」

 

「いや、じろじろ見て失礼しました。懐かしいモノを感じたもので」

 

今はとある村にいる、何でも俺たちを見てただものじゃないと感じ。見込んで頼みがあるそうだ。永琳は赤青の服装しているので目立つしな。内容は妖怪の住処が近くにあるのだが、自分たちでは敵わないので、退治してほしいというものだ。他にすることもないので引き受けた。永琳はあきれた表情で俺を見るが諦めているので、何も言わない。

さっさと退治しに行こう。俺と永琳がいれば楽勝だろう、俺は剣を持ち永琳は弓矢を持って妖怪の所へと向かった。

その道中で、あの人間たちを観察していた永琳に問うた。

 

「あの村人たち、どう思う」

 

「神裔と見て間違いないわ」

 

「そうか…やはりそうか。アマテラス、そして神武天皇よ、お前たちの血は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきたら村人全員に土下座され、"神よ!ありがとうざいます!"と繰り返して俺と永琳に言ってくる。いつの間にか神扱いされてるし、まだ人類が月に行かず地球にいるとき、天照に聞いたが神になるには人間に信仰もしくは畏れられたらいいみたいだ。ただ一度神になったらもう人間には戻れず信仰もしくは畏れが無くなったら消えるらしい。と言うことは俺と永琳は神になったという事だろうか。その実感はない。ある村人は"すぐに弘天様の神社を建てます!"と言い走って行った。

俺の国でも作って女でも侍らすかなー。俺の国だし女を侍らしても問題はないだろう。

後は隣で胸を支えるようにしながら腕を組んで苛々している永琳をどう説得するか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のお礼がしたいというのである場所に案内された、その部屋の中には2人の子供がいる。2人共怯えた表情で俺達を見ている要は人身御供と言うものだ、頼んでもいないのに。2人の娘の髪色は片方が金、もう片方は緑だ。身寄りのない子供で妖怪らしい。なぜ妖怪がいるのかと言うと俺たちが来る前にこの村に流れ着いて最初は村人全員で助けたのだが、妖怪だと分かり閉じ込めたそうだ、どうしようかと考えてるところに村が他の妖怪に襲われ俺たちが来たというわけなのだが。

 

「俺の好きにしていいんだな?」

 

「はい、弘天様がお決めになるなら我らは従うだけです」

 

まるで狂信者だな、2人の女の子を見てみるがどちらやつれている。まともな食事を与えられていないようだ。今の俺は神、神じゃなくてもすきにするが、俺はこの2人ををどうするか考えついた、俺は2人に近づく。永琳は後ろで見ているようだ。2人は部屋の隅で互いを抱きしあい、震えて俺を見る。俺は腰を屈め目線を合わせる。子供にしかも怯えてる相手に見下ろしながら話すのは良くないだろう。まずは挨拶をしよう。

 

こんにちは(久しぶり)

 

久しぶり、とは言わなかった。二人とも、オレと永琳のコトは憶えてないだろうから。

挨拶すると、2人はきょとんとしてこちらを見ている。俺が挨拶したと言う事は分かってるようだが、なぜ急に挨拶したのか分かってないようだ。だから俺は普段通りにする。

ああ、懐かしい顔だ。この子達にあったのが、色あせてもうずいぶん昔に思える。

 

「俺の名は弘天。蓬莱山 弘天だ、弘って呼んでくれ。いきなりだが、2人共これからどうしたい」

 

聞いた途端2人共顔を俯け、だんまりだ、思いつかないのだろう。この村を出ても行く当てもないだろうし。だったら選択肢を与えることにしよう、決めるのは2人の女の子だ、永琳の時の用に無理矢理はやめたほうがいいだろう。あの時とは状況が違う。今考え付いたことを聞いて、嫌がったら俺の女にでもするかな美人になりそうな気がするし。当たり前だが、それも嫌がるね。そう考え俺は口を開く。

 

「行く当てがないなら、俺とあそこにいる銀髪で三つ編みの綺麗なお姉さんの娘にならないか」

 

俺は2人の女の子にそう尋ねることにした。




知っている方もいるかもしれませんが、実際に弘天神社は存在して福岡にあります。祭神は伊邪那岐命、伊耶那美命ですがね
神話の話を入れようと思いましたがやめました。

そしてここでは諏訪の国に弘天神社が出来たという事にします、オリジナル展開だしいいよね。弘天神社については最初から考えてましたけどこの後の展開をどうするか。
諏訪子についてはもう考えてます

ですが書く気はないので次の話はないですし、更新もありません。エタルので。
炒飯でも食おう


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諏訪国
金髪か銀髪か好きな方を


永琳がメインヒロインです、間違いない。遠回りをしましたがやっとメインヒロインの存在に気づきました。

別に洗脳されたわけじゃないと思います


「お母さんお腹すいたー」

 

「もうすぐできるから待っててね」

 

「紫、もう少し慎ましさがある方がいいわよ」

 

「幽香に言われたくない―」

 

あれから数日、妖怪二人の女の子は俺と永琳の娘になることを承諾した。金髪の女の子の名前は、紫、緑の髪の子は幽香と言うそうだ。俺の娘になったので、蓬莱山 紫 蓬莱山 幽香となった、永琳は子供が欲しがってたから、娘にした。永琳は、確かに欲しいけど、それは弘との子供が欲しいのよ。と言ってる。分かってはいるが、まだ作る訳にはいかん。とは言え血が繋がってなくても俺たちの娘と言う事なので、永琳は、紫、幽香にデレデレだ、親馬鹿になるな永琳は。娘になってから永琳は2人の事を可愛がりまくってる。2人も妖怪と言う事で今まで酷い扱いを受けていたみたいで、永琳にどう接したらいいかわからんようだ。まあ、時間をかければ、いつかは、紫と幽香も自然体になるだろう。俺の国、諏訪の国に女を侍らすまでは、永琳には手は出さん。ちなみに俺の国が諏訪の国と言う国名は近くにある諏訪湖から取ったものだ。諏訪湖の様にいつか俺の国を大きくしてみせると言う事で諏訪湖の名を貰った。自分で言うのもあれだが、中々悪くないセンスだと思う。

 

 

 

 

「美味しい。生まれて初めてこんな美味しい物食べた」

 

「おかわりはいっぱいあるから、好きなだけ食べなさい」

 

「うん」

 

幽香は感情を表情に出さないが、隣に座って一緒に食べていた母親を観ながら、内心は喜んでいるのか返事した時の声が弾んでいる。

紫と幽香を娘にしたので、永琳は紫と幽香の母親だ。紫の場合、呼び方はお母さん。幽香の場合はお母様と呼んでいる。

今は永琳が作った朝餉を食べている。俺の隣に紫、向かい合いに永琳、その隣が幽香だ。白米、みそ汁、たくあんがある。たくあんは匂いがあまり好きじゃないがポリポリした食感は好きだ。

 

「お父さん、ご飯を食べたら遊んでいい?」

 

「いいぞ。好きに遊べ」

 

紫とは簡単な受け答えをしてまた食べ始める。

 

「ごちそうさま。さっ、幽香も遊びに行きましょう」

 

「ちょ、ちょっと待って。まだ食べ終えてない」

 

紫と幽香は食べ終わったようで、永琳がお粗末さまでしたと言ったら、神社から出た。村の子供たちと遊ぶようだ。まだ子供だし遊びたいんだろう。村の皆は最初2人は妖怪だという事で最初は怖がってたが、今ではそんな事はなく、村の皆は紫と、幽香に良くしてくれている。子供たちも怖がってたが、今は皆で遊ぶほど仲良しだ。うんうん、紫と幽香は妖怪という部分を除けばどこから見ても美少女だからな、いつかは俺の女にしよう。と頷いていたら永琳が俺を見て、娘にまで手を出すのと言い呆れている。仕方ない、これが俺なのだ。俺は俺でいたい、三つ子の魂百まで。変わるなんて御免だ。と考え今がずっと続けばいいと思った。

 

一旦神社を出た紫がまた戻ってきて、大きな声を出しながら述べた。

 

「お父さんお母さん。色々ありがとー!」

 

言いたい事を言い終えたのか、またどだどだと外へ出て行った。

紫の言葉を聞いた俺は永琳と目を合わせると、先に永琳が言った。

 

「感謝されることじゃないわね」

 

「ああ。紫と幽香は憶えてないだろうが、初めまして、じゃないからな」

 

「また弘に、紫と幽香に逢えて、私は嬉しいわ」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

今山の中にいる、腕を鈍らせないため、猪でも狩ろうと来たのだ、鈍った時に諏訪の国に妖怪が攻めて来たら困るので毎日山で特訓だ。だが俺が全部してはいけない、何もかも俺が決めると村の皆は俺と永琳に頼り切ることになるだろう。それでは駄目なので村の男たちに戦い方を教えている。これでも守備隊でよく都市から妖怪を守ってたので、役には立つだろう。これで妖怪は攻めてきても、そこまで苦戦することはないだろう。大妖怪が出てきたら流石に俺が出るが、雑魚の妖怪なら諏訪の国の皆で対処できるだろう。本当は都市にあった武器、殆どは永琳が作ってるから作ってみてはどうかと聞いたら、過ぎたる文明は国を堕落させるので駄目だそうだ、とは言えいくら永琳が天才でも、作る材料がないので、作ろうと思っても作れないようだが。それとこの時代肉が少ない、人類が月に行く前は当たり前のようにあったが、この時代はそうでもないようだ。だから俺が猪を狩って諏訪の国の皆で食うのだ、その時はいつも宴会だな。皆が喜んで、かつ腕を鍛えられる。まさに一石二鳥。とは言え猪をそんな簡単に見つかる訳もなく、精々半年に一度見かけるか見かけないかだけどな。

考えながら歩いていると、妖怪の気配を感じた、殺気はない。ただ気配が少しづつ弱くなっている、気になったのでその気配の元へ行く。

 

「狐か」

 

発見したが、どうやらその正体は狐らしい。見るからに痩せていてしばらく何も食べてないようだ。栄養失調かもしれん。近づくと妖気を感じた、狐の妖怪のようだ。尻尾が3本ある、まだ生まれたばかりの妖怪みたいだ。何か食べさせてやろうと思い、狐を拾い大事に抱え、神社に戻ることにした。永琳に見てもらおう。ちなみに雌のようだ。

しかし狐だと言いにくいので名前を付けることにした。この狐毛が金色をしているので金と名付けた。

 

「永琳に診察してもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

「連れて行ってる時に金が死なれるのは後味悪いから、もう少しだけ耐えてくれよ」

 

夕方になり神社へ着く。永琳に見せたらやはり栄養失調のようだ、俺の見立てがあってた。これならすぐ良くなると言い、金に液体のものを飲ませている、永琳が言うには味はない薬で無味無臭だそうだ、さすが永琳、頼りになる。頭を撫でて良くやったと褒めてやるともっと撫でてと言ってきたので撫でてやった。

 

「さすが永琳。頼りになる」

 

「これでも都を発展させた1柱だから、これくらいはね」

 

「悪いな、いつも面倒なことばかりさせて」

 

「いいえ。弘の役に立てるなら、私も地上に残った甲斐がある。だから気にしないでいいのよ」

 

やはり永琳を地上に残してよかった、もし月に行ってたら、今でも都市の発展に貢献していただろう。今までも働き詰めだったのだ。これでよかったのだと思う、俺は永琳じゃないから永琳がどう思ってるか分からん、だが一緒にいたいのは分かる。だからずっと一緒だぞ永琳。ただいまーという声が聞こえたので娘たちが帰って来て俺と永琳の元へ来る。俺と永琳はお帰りと言い、永琳は台所に向かい、料理を持ってきて、晩御飯をみんなで仲良く食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

布団で皆で一緒に寝る。4人いるから川の字じゃないがな、端から俺、紫、幽香、永琳だ。今日は俺の隣に金も入れて寝るから4人と一匹だな。ちゃんと金の布団もある紫と幽香は寝巻を着て布団に寝転がり、俺たちに抱き付きながら寝る、紫と幽香が寝るのを確認し金も見たら寝てるようなので俺は目を閉じ寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起きたら永琳が俺に抱き付いていて、知らない子2人いました。紫と同じ金髪の子供がいて、もう一人は金色の髪をしてケモノの耳がある子供だ。ケモノ耳は金が寝ていたはずの布団で寝ている。まさか永琳とやってしまったのかと思い、俺に抱き付いている永琳の肩を揺すって起こす、起きたが寝ぼけている、緊急事態なので永琳に向かって言ってやる

 

「永琳、愛してる。俺は夢を諦めるよ、結婚しよう」

 

そう言ったら永琳がかっと見開いて立ち上がり俺を見下ろして、

 

「やっと諦めてくれるのね、待ってたずっと待ってた。私はいつでも準備はできてるわ。どこで結婚式を挙げるの、子供は2人欲しいわ、新婚旅行はどこに行きましょう」

 

などとマシンガントークをしてきた、予想以上の効果が出た。落ち着かせるため俺は立ち上がり、永琳に口づけをする。数秒経ってから口を離し、落ち着けと言う。

 

「そ、そうね。まずは諏訪の国の皆に結婚する事を伝えなきゃ」

 

あの永琳がここまで取り乱すとは、このままではマズいと思い、"愛してるのは本当だが、夢は諦めてない"と言ったら、浮かれた表情だった永琳が凍りついた、そして俺は平手打ちをされた。いい音がした。

 

 

 

 

 

 

永琳に事情を説明したら、ケモノ耳の子は昨日の薬で妖気が回復し人型になったんだろうのこと。もう一人の子は俺と永琳の信仰が多すぎて、俺たちの信仰が混ざり合い子供の形として生まれたのかも、だそうだ。信仰が多すぎて子供が生まれるとは、俺達はどれだけ神として崇められているんだ・・・・・自分たちが恐ろしい。しかし俺と永琳の信仰が多すぎて子供が生まれたなら、紫と幽香も俺たちの子供だが。血は繋がってない。もちろん俺と永琳は血のつながりは気にしないし娘だと思ってる。だがある意味この子は俺たちの本当の娘と言う事になる。まずは名前を考えよう。

 

「永琳に何かいい名前があるか」

 

「ないこともないけど、この子に関しては弘に決めて欲しいわ」

 

「…どうしようか。国に関係する名を付けたいが...」

 

諏訪の国の神つまり俺と永琳の信仰が多すぎて生まれた子供だから、諏訪の国の名前を入れたい。ので、諏訪湖から名を取って諏訪の国になって諏訪の国で生まれた子供だから、

諏訪子と名付けた 蓬莱山 諏訪子と言うわけだ。安直だが、分かりやすくていいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




名前の理由はぱっと浮かんでこの名前です。

諏訪子の髪は原作は金ですが永琳の子供でもあるので銀髪と思ってもらってもいいです。
金髪の諏訪子か銀髪の諏訪子か好きな方を選んでください

何か金の斧と銀の斧を思い出しました

今回はたまたま更新しましたがもうしません。エタルので悪しからず

気づいたんですが紫、諏訪子、金の髪色は同じ金髪ですね。書いてから気づきました。諏訪湖の髪色は金ではなく銀にするかも、銀髪が永琳と諏訪子、金髪が紫、金バランスがいいですし。するか分かりませんがね

後、神奈子については何も考えていません。この後の展開はいまから考えなければ
いい案が出なければもう書きません


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目に物見せてくれる

まさかの10話突破、元々2話で終わる気だったのになぜだ

私はどうやら台詞が苦手のようです、書いてて大変だよ

神奈子についてはやっと考えが出たので書きます、いや書きませんが






目の前には人型の金がいる。どうやら命の恩人の俺と永琳の従者となり仕えたいようだ。

別に仕えなくてもいいのだが、これ以外に恩返しできる事が無いそうだ。まあいっかと思い、従者になることを認めた。

 

「私には名前がありません、だから主に私の名前を付けて欲しいです」

 

「名前、名前か……」

 

一応、金と名づけてはいるがそれは狐の時に付けた名前で、人型の時の名が欲しいそうだ。何かないかと思い金を見る。

ケモノ耳の金髪で綺麗な振袖を着ている瞳は藍色だ、他に特徴は無いし瞳の色が藍色だったので、名前は藍になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は山に行かず子供たちが遊んでいるのを木にもたれ掛りながら見ている、永琳は俺の隣で座って一緒に見てる。藍は神社で洗濯している。永琳がやろうとしたが、主と一緒にいてあげてくださいと言い洗濯をしている。永琳は最初悩んだが、お願いと藍に言い俺と一緒にいる。

永琳は諏訪子を抱いていて、諏訪子はお昼寝のようだ。子供たちが走り回ってる。どうやら鬼ごっこのようだ、

幽香が鬼で今紫を追い掛けてる。もう少しで肩にタッチ出来そうな所で紫の目の前にスキマが開きその中に入っていってスキマが閉じる。

幽香が、また能力を使ったわねと怒りながら大声で叫び辺りを探して紫を見つけようとしている。俺の隣にスキマが出てきて中から紫が出てきた。紫の能力、境界を操る程度の能力を使ってできるようだ。

空間の境界を操って離れた場所同士を繋げることができ、どんな場所でも行けるそうだ。便利すぎる。だがその便利な能力を鬼ごっこで鬼になりたくないから使うのはどうかと思うが。

幽香の能力は花を操る程度の能力だ、その能力を使って、神社の周りに花が咲きまくっている。綺麗だが、花を傷つけたりしたら幽香にボコボコにされるので、花には細心の注意を払い、気を付けている。

紫が近付いて来て、俺と永琳の間に座る。

 

「おとーさん、おかーさん、お腹すいた」

 

走ってお腹がすいたようだ永琳がおにぎりを作ってきていたので、永琳がそれを渡す。紫が受け取り、半分も一口で食べた、具は梅干しだったようで酸っぱいのか口を手で押さえ額にしわを寄せて食べている。

足音がしてきた、見たら幽香だった。頭に蜘蛛の巣が付いて服には木があちこち刺さってる、奥まで探していたようだ。

 

「紫!能力を使うなっていつも言ってるでしょ!」

 

「えー、私鬼になりたくないし、逃げるのに楽だからこれからも使うわよー」

 

「それじゃあ鬼ごっこの意味がないじゃない!かくれんぼでも見つかりそうになったら能力使うし、いい加減使うのはやめて!」

 

いつも通り紫と幽香は言い争ってる、永琳と一緒にぼけーっと眺めていたら、そこに諏訪の国の民が俺の所に来て、まずは跪いて報告する。

 

「弘天様。永琳様。お二人にお目にかかりたいと言う物が来ております」

 

「分かった、行くぞ永琳」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お初にお目にかかります、諏訪の国の神よ。私は大和から使者として参った。八坂 神奈子と申します。忙しい中、諏訪の国の神として、有名なお二人にお目にかかれた事を心より感謝いたします」

 

「御託はいい、本題に入れ」

 

「分かりました。ならば、単刀直入に申します。この諏訪の国を大和の支配下に置きたく、此度は参った次第です」

 

最近大和が周りの国を侵略しているとは聞いていた、いつか諏訪の国にも来ると思っていたが、俺の国を侵略しに来たようだ。とは言え使者を先に送ってきてるから、ただの噂だったのかもしれん。聞いてた話とは違うな。しかし断ったら武力で支配しに来るだろう。それはマズい、神は俺と永琳と諏訪子しかいない、しかも諏訪子はまだ生まれたばかりだ。戦わせる事は出来ん。

妖怪の紫、幽香、藍、は俺が鍛えているので戦える、紫の能力、境界を操る程度の能力は強力だ。神を殺すことも容易いだろう。しかしこれは神の問題、妖怪をその問題に入らせるわけにはいかん。殺すのも後が面倒だし殺すのも無しだ。

諏訪の国が大和に支配されたら、紫、幽香、藍、は妖怪なので殺されるだろうそんな事はさせん。だからこの話は受けない。

 

「断る。俺は誰の支配も受けるつもりはない」

 

予想していたのか八坂 神奈子の表情は笑みを浮かべている、大和からしたら受けなくても問題ないのだ。受けたらその国を支配でき、受けなければ武力で制圧できる。

だから受けようが受けまいがどっちでもいいのだ。

 

「失礼を承知で申します。諏訪の国は大和の国に比べて軍事力が無いと聞いております。そして大和には神が大勢おり、大和の頭は、かの有名な天照様、月読命様、須佐之男様がおります。もし、大和と諏訪の国が戦争を始めたら勝ち目はないと思いますが、宜しいので?」

 

大和と聞いて薄々気づいていたが、天照、月読命、須佐之男がいるのか。これはなんとも好都合だ。これなら何とかなるやもしれん。天照、月読命、須佐之男はかつて都市にいた人間、月に行った人類だから月人とこれからは呼ぶ。月人がまだ地上にいたとき都市にいたのだ。要は知り合いだ。

言っておくが、知り合いだから何とかなるなんて思ってないし。知り合いだから、諏訪の国を支配はしないだろう。とかそんな甘い事は考えてない。もっと別の手段がある。目に物見せてくれるわ。

 

「くどい、俺は受けん」

 

「そうですか、残念です。分かりました、では私は御暇させていただきます」

 

八坂 神奈子は立ち上がり神社から出ようとする、相変わらず笑みを浮かべているので、困らせてやろうと思い俺は美人な八坂 神奈子に向かって言葉にする。

 

「八坂 神奈子。お前、綺麗な女だな。俺の女になれ」

 

八坂 神奈子は開いた口が塞がらずこちらを見ている、してやったりと俺は笑ってやった。八坂 神奈子はからかわれた事に気づいたのか、失礼する!と大声で言い早足で出て行った。

勝ち負けの問題ではないが、俺は勝った。勝利はいつも空しいものだ。

 

「私がいるのに他の女を口説かないで」

 

隣にいる永琳が俺の頬を抓ってきたので、俺は永琳を抱きしめた、機嫌が良くなるだろうと思ったが、抱きしめてからさらに力を込めて抓ってきた。

さらに怒らせたようだ。永琳がこちらを見てこの後どうするのかと俺を見ている、もう考えてあるさ。それは

 

「後手に回ると不味い、ので、先手必勝、大和に乗り込んで奇襲を仕掛けよう。だから永琳も来い」

 

「弘には常識が通用しないようね、攻められる大和が可愛そうだわ」

 

「当然だ、常識なんぞ破るためにあるんだ、俺は常識には縛られんぞ、型破りな神なんだよ」

 

「神が常識持ってるのもどうかと思うけどね」

 

数が多いと言う事は有象無象が多いだろう、だが例え雑魚でも数が多いのは厄介だ。手や足を斬ってもあまり意味がない、なら大和の頭を斬ることにしよう。

天照は頭はいいが、戦えない事を俺は知ってるし能力も持ってない事を知ってる。月読命と須佐之男は戦えるが、豊姫と依姫の様な能力は無い。ならば勝機はある。もしかしたらこの数億年で能力を持ったかもしれん、その時は逃げよう。命あっての物種だ。

そして大和の頭、天照、月読命、須佐之男を潰した暁には、大和を俺が支配する。俺と永琳が行くのだ負けるわけないだろう。負けたらやばいな、やばくなったら逃げて対策を打たねば。

生き物に争いが無くなるなんてことはないんだ。俺と永琳が勝ったら大和の民には恨まれるかもしれん、だが先に仕掛けて来たのは大和の方だ。なら自業自得だと思う。

大和まで行くのは面倒なので、紫には空間の境界を操ってもらい俺と永琳はスキマに入って大和に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 




急展開だね。

天照、月読命、須佐之男が急に出てきたと思うかもしれませんが天照と月読命は前に一度出てます、地の文で名前だけですけど、急に出てきたのは須佐之男だけですね。

頭を斬ると言ってますが殺すと言う事ではありません
何回も言い続けていますが戦闘は省きます

書き忘れたのですが、神奈子は神じゃありません人間です。それと藍は弘天神社の巫女です
藍は弘天と永琳の事を主と呼びます読みは 主(あるじ)です



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俺を殺してみろ

何か今回ギャグっぽいあとオリキャラがでます。本当は出す気なかったけど
神奈子の話をするには必要でした前回の話の後書きでも言いましたが
ここの神奈子は人間です。神じゃありませんそして藍は弘天神社の巫女です





やってきました大和の国、大和の街には人が賑わっている、活気があって良い事だ。見た感じ治安は悪くないようだな。

早速、天照、月読、須佐之男の元へ向かわねば。大和の頭なのだからそれっぽいところにいるはずだ、辺りを見渡すと、遠くに立派な神社がある。

もしかしたらあそこにいるのかもしれん、そう思い永琳と向かう。神社に着くと2人の女性が俺達に近づいてきた、神社の関係者なのか巫女服を着ている

 

「失礼ですが、この神社に何用でしょうか。」

 

「私達は天照様、月読様、須佐之男様の知人でして、久しぶりに顔を見に来たのです。お取次ぎ願えないだろうか」

 

「知人ですか。私はここで何十年も巫女をやっていますが、お二人を見たことはありません、失礼ですがお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「私の名は蓬莱山と言い隣の女性の名は八意と言います。この名を天照様、月読様、須佐之男様にお伝えしてもらえれば、分かると思います」

 

本当は名を名乗りたいが、俺と永琳の名は諏訪の国の神の名として知れ渡っている。なので出すわけにはいかない。

知られたら諏訪の国の神が大和に攻めてきたと思われ天照、月読、須佐之男に会えなくなるだろう。しかも敵の本拠地のど真ん中。ばれて追いかけられても

逃げれるかわからん、最悪の状況を避けるため、ここは苗字を名乗っておくべきだ。

 

「分かりました、では一度聞いてまいりますので、少々お待ちください。」

 

そう言い1人の巫女が神社に入っていった。もう1人は箒を掃き掃除しつつ俺たちを見ている、監視役と言う事だろう。まあ怪しさ満点だし仕方ない。

 

「ちょっと」

 

永琳が小声で俺に話しかけてきた

 

「何だ永琳」

 

「何だじゃないわよ、私たちは死んだ事になっているのよ。そこに実は生きていました何て言われて、信じるとは思えないのだけど。そもそも信じたとしても私は天才で、弘は名門蓬莱山の一人息子なのよ。絶対月に連れ戻されることになるわよ」

 

「大丈夫だ永琳、何とかなる」

 

そう会話してたら神社から出てきた巫女が急いで俺たちの所に来た、息切れしながら俺と永琳の前に来て頭を下げた

 

「申し訳ございません!知らなかったとはいえ、失礼なことをしました!」

 

急に頭を下げられたので驚いた、天照、月読、須佐之男の誰かもしくは3人共が何か言ったようだ。何て言ったのかは知らんがこれで神社に入れる、まずは巫女の頭を上げてもらおう

 

「頭を上げてください、気にしていません。それより天照様、月読様、須佐之男様がどこにいるか教えてもらえるでしょうか」

 

ばっと巫女が頭を上げ、はい!こちらです!と言い案内してくれた。順調満帆だ今の所は。広いので結構歩いた、

するとふすまがあり、いかにも偉い奴がこのふすまの先にいるといった感じだ。巫女の人はこれ以上近づいちゃだめらしいのであそこに入れば天照様、月読様、須佐之男様がいますと言い頭を下げてから来た道を戻っていった。

俺達は大和を牛耳る為に来たのだ。最初が肝心なので、ふすまに近づき蹴破った。中には十人以上の神がいてその中に天照、月読、須佐之男がいる

急に蹴破って来たので皆俺と永琳を見て仰天している

 

「邪魔をする、俺たち二人は諏訪国の神、弘天と永琳だ。大和を乗っ取りに来たのでよろしくはしないでくれ」

 

最初は神たちもびっくりしていたが俺の言っていることを理解したのか大笑いしている、永琳は俺の後ろで弓を構えいつでも矢を打てるようにしている

永琳は1秒に5本の矢を撃てるのだ、人間やめてるな。あっ、神だったなそういえば。人間じゃないや、永琳には雑魚を任せている。

 

「黙れ」

 

月読が無表情で笑っていた神を黙らせて俺たちを見ている、須佐之男はまだ笑っている馬鹿にしてるような笑いではなく、2人で大和を乗っ取りに来て

いい度胸だと思ってるのだろう。天照は笑顔で俺たちを見ている。

 

「感動の再会だと思ったら、まさか乗っ取りに来たとは。相変わらずだな。お前と八意は核で死んだと思っていたが。ゴキブリ並みの生命力だな」

 

「何の事だ。俺と永琳はこの場にいる神全員とは初対面だ」

 

須佐之男がそう言うが俺は知らん振りだ。俺が大和を牛耳りに来たのは天照、月読、須佐之男を俺の部下にし、俺と永琳の存在を月に知らせない為だ

だからこそ乗っ取るのだ。じゃなきゃわざわざ乗っ取るなんて面倒なことはしない。邪魔な存在なら殺せばいいのだから。だが殺すと月人の連中は地上に来るだろう

それはマズいので天照、月読、須佐之男を生かし俺の物にする。そうすれば万々歳だ。細かい問題は残るがそれは後にする

 

「なるほど、私達とは初対面ですか。世の中には似た顔の人が3人いると言いますし、そうなのでしょう。」

 

今も笑顔で天照が言うこいつは、相も変らず何を考えているのかいまいち理解できん。苦手だ。

 

「それで、我らの知り合い2人に似たお前たちはどうやってこの大和を乗っ取るのだ」

 

月読がにやつきつつ腕を組み言う。それはもう決まっている、大和は諏訪の国を力で支配しようとしたのだ。目には目を歯には歯を力には力だ。俺は勢いよく走り須佐之男に向かって走った。

まずは須佐之男を狙う。須佐之男の見た目は強そうに見えるが実は見かけ倒しだ、本来なら一番強い奴を狙わねばならんが今の須佐之男は大和の頭の一人だ。ならば倒せば数だけは多い烏合の衆の神は戦意喪失するだろう。

 

「オラぁ!」

 

「ぶべら!!!」

 

須佐之男が壁にぶつかり気絶したようだ。弱い、弱すぎる。八俣遠呂智を倒したはずなのに雑魚じゃないか。元は人間とは言え今は神なのだから一撃で負けてどうするんだ・・・・。

天照は戦えないはずなので問題は月読だ、さっきから腕を組みつつこちらを見て笑みを浮かべたまま仁王立ちだ。

 

「お前と八意の実力は知っている、2人が揃うと勝ち目があるかどうか…いや、別人だったな。他の神は大和が力で無理矢理従わせているし、大和に忠義なぞある訳もない。あっても役に立たんし。困った困った」

 

はっはっはと腰に手を当て笑い始めた。天照は笑顔のままだしどうしたもんか、どう動くべきか。

 

「知り合いに似た男よ。お前の目的は何だ」

 

急に真顔になり俺に目的を問うてきたそんな事は決まっているのだよ月読。

 

「決まっている!俺の目的は大和を乗っ取り、天照、月読、須佐之男を俺の物にし、大和の女を侍らすことだ!」

 

人差し指を天に掲げて俺は声を高らかに自分の夢を宣言する。永琳を見ると溜息を吐いている。まあ大和を乗っ取っても大和は今まで通り天照、月読、須佐之男に任すがね。部下にするには大和を乗っ取らなきゃ駄目だったからしただけだ

 

「顔だけではなく夢まで同じとは・・・・・我も今では女だが、かつては男だった故、お前の夢は分からんでもない。姉上どうしましょうか」

 

「いいんじゃありません?私たちも今まで周りの国を力で従わせてきたのです因果応報ですね。それに知り合いに似たこの人達は悪い方ではないでしょうし」

 

椅子に座って笑顔のまま髪を弄りながら言ってきた、軽いな天照。こうして俺は大和を乗っ取った。

大和を乗っ取り俺は天照、月読、須佐之男を部下にした。が、大和は天照、月読、須佐之男に任す。ただ俺の命令には従ってもらうが、基本はやりたいようにやってもらう。

他の国を侵略させるのはやめさせた。これからは大和の発展に力を注いで貰うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永琳と共に諏訪の国に帰ってきた、やはり自分の国が一番だな。そう思い永琳と神社に向かうすると、とうさんかあさーん!と大きな声で銀髪の愛しい娘が走って来て

俺にロケット頭突きをして腹に衝撃が走った。思わず口を左手で押え胃液が出ないようにし娘を抱きしめる

 

「す、諏訪子。ロケット頭突きはやめろと言ったろう」

 

「ごめんよ父さん!私帰って来てくれて嬉しくなっちゃったんだよ!」

 

諏訪子が抱き付いて来てるので頭を撫でてやった、諏訪子は俺から離れ次は永琳に抱き付いた。永琳は愛おしそうに諏訪子を抱きしめ頭を撫でている

うんうん。家族みんな仲が良くていいな。2人を眺めつつそう思った

 

「この光景を観るのは、もう何度目だろうな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後、紫にまたスキマを開いてもらい大和に向かう今回大和に向かうのは 八坂 神奈子 に会う為だ。神奈子は天照が拾った子供で八坂家に養子として育てられたそうだ。

八坂家の家族の事も親だと思っているが天照の事も自分の親だと思っているようだ。その親が俺の部下にされて腹が立ち俺に何かと突っかかって来る。

最初は刃物で殺されかけたが、天照に引っぱたかれてやめた、しかし天照が知らない所で殴る蹴るは当たり前で、俺の体はもうやばい。だが嫌われているなら好きになってもらおう

八坂家に着いた、嫌われてから始まることもあるだろう、そう思い、俺は失礼だが八坂家の玄関を開けた。

 

「神奈子ちゃーん!あっそびっましょー」

 

腹から声を上げ神奈子を呼ぶすると2階からどたどたと音がして階段から神奈子が下りてきた俺を見るや否や右手で殴りかかってきたので避けて神奈子の右腕を俺の右手で掴んだ

 

「大事な話がある、付き合え」

 

真剣な眼差しで神奈子を見て神奈子の右腕を離し玄関から外に出る。行く気になったのか神奈子は玄関から出て俺についてきた

 

空き地に着き俺と神奈子は互いを見る

 

「俺の事が刃物を使うくらい憎いんだろ」

 

神奈子は頷く、よっぽど嫌われているようだ。だからこそ俺は問うのだ

 

「俺のそばにいたら俺を殺す機会が出来るだろう、俺のそばにいる事ができる機会があるが八坂はどうする」

 

神奈子は顎に手を当てつつ俺を見ながら考えた、そして

 

「お前を殺せる事ができるなら、私は悪魔にだって魂を売るさ」

 

そう言い放ったならば迷うことはない

 

「後悔しないな」

 

「後悔ならもう十分した、しすぎただろう。お前を殺していれば天照様はお前の部下になることはなかった。大和がお前に乗っ取られなかっただろう。これ以上後悔することはない」

 

「そうか」

 

だから俺は右手を差し出し神奈子が俺を殺せる選択肢を与える。

 

「なら、諏訪の国に来て俺の女になれ」

 

そう聞いた

 

 

 

 

 

 




この話のメインは神奈子です。大和の話は前座です神奈子については本当に悩みましたが
綺麗に終わったと思います

地味に諏訪子の髪色は銀髪にしました

今回で綺麗に終わったしもう書きません。いいよね
これで完結したと言っても過言ではないでしょう


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名を呼ぶな

そう言ってからの 八坂 神奈子の表情は疑いの視線を俺に向けてくる。殺そうとした相手を自分の女にするのが理解できないのだろう。だが俺は 神奈子を俺の女にする。俺は神だ、信仰もしくは畏れが無くなったら俺は消えてしまうだろう。消えるのは別にかまわない、生き物には本来寿命がある、月人には寿命の概念がなかったから、時間で死ぬことはない、俺も寿命はないが寿命の代わりに信仰や畏れとして生きているに過ぎない。だから俺が消えるときは自然の摂理なのだ。ならばそれまで楽しく生きたい、悔いを残す気はない。 八坂 神奈子を俺の女にするのは俺を殺しに来るのが面白そうだからだ。前にも言ったが、死ぬ恐怖が無くなるなんて死ぬ事と変わらないような気がすると思ってる。俺は生きてると実感したいのだ。ここ数億年楽しいと思っても恐怖を感じたことはない。雑魚の妖怪しか会った事しかないのだ。そして神も生きて感情があるのだ、だったら死ぬ怖さもあったほうがいいだろう。恐怖は生きるためには絶対必要だ。そう思い 八坂 神奈子 を諏訪の国に連れていく。

 

「お前は一体何を考えている。殺そうとした相手をそばに、しかも自分の女にしようとするとは」

 

「1番の理由は八坂が美人だからだ、2番目の理由は俺を殺そうとする奴と一緒にいるのが面白そうだから。3番目は俺が生きてると実感するためだ」

 

「貴様正気か、殺そうとして来てる相手を面白そうだから女にするだと?狂ってるんじゃないのか」

 

「数億も生きているんだ、とっくに狂ってるさ。今更まともになる気はないがな。俺は刺激が欲しいし女を侍らせたい、八坂は俺を殺したいから俺の女になる。利害は一致してると思うが」

 

神奈子は唇を噛みしめながら、舌打ちした。他にいい方法もないのだろう。俺が大和にいれば殺すチャンスも増えるが諏訪の国にいるのだ、大和から諏訪の国は凄く遠い訳じゃないがそれでも距離はある俺は紫のスキマのおかげですぐに来れるが、神奈子はそうはいかない。仕事をサボって諏訪の国に来たら、天照と八坂家に迷惑がかかる。どうでもいいかもしれんが八坂家は名のある旧家だそうだ。だが子供に恵まれずどうしたものかと考えていると天照が神奈子を拾ってきて養子にしたそうだ。それで、恩人に迷惑をかかる、それは避けたいはずだ。だが、俺の女になれば、大和にいなくて諏訪の国にいる事が出来る。そうすれば殺す事も出来る、俺は一歩夢に近づきしかも恐怖という名の刺激が手に入る、神奈子は俺を殺せるかもしれない。つまり、お互いが得ができる。まさにWin-Winの関係だ。そんな簡単に殺される気はないが

 

「非常に腹立たしいが、他の方法もない、背に腹は代えられん。いいだろう、なってやるさ、お前の女に。だが気を付けるんだな、私はいつでもお前の首を狙っているぞ」

 

神奈子は俺を睨みつけながら両手に力を籠め、吐き捨てるように言う。ならば話は終わりだ神奈子に近づき右手を掴んで引っ張る

 

「じゃあ早いほうがいい、早速、天照や八坂家。そして大和の民に知らせに行くぞ」

 

「は?お前は何を言ってるんだ、天照様や八坂家はまだ分かるが、大和の民に知らせる必要はないだろう。それと私に気安く触れるな、自分で歩ける」

 

神奈子が俺が掴んでいた右手を振り払うようにして俺から数歩離れて距離を取った、そこまで嫌がらなくてもいいと思うんだが

 

「そう言う訳にもいかない、裏では大和は俺が支配してるが表では天照、月読命、須佐之男が大和の頭なんだよ。諏訪の国と大和は表向きは同盟と言う事にしている。だから大和の民にも知らせる」

 

大和の民は俺が裏で支配してるのを知らない、今まで大和は周りの国を力で支配してきたのだ。そこになぜ諏訪の国だけ同盟なのか分かっていない。まずは仲良くなるため諏訪の国と大和の国同士の結婚。要は政略結婚みたいなものだ、だが実際には結婚しないが。最初に結婚するのは永琳と決めているのだ。俺の夢に近づいて、大和の民と仲良くなれる。良い事しかない。納得しない奴もいるだろうが、物事において全員の民を納得させるなんて不可能だ。少なくとも不満を持つ奴は確実にいるのだ。だがそんな事知った事ではない。俺は自分のために生きるのだ、他人の事なんぞ考える気もおきん。邪魔する奴は消すまで。八坂は旧家らしいので尚更大和の民に知らせなければならない。これで両国の関係は少しは良くなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和の神社、天照、月読命、須佐之男がいる場所に着いた入口で巫女に、天照に会いに来たと伝え中に入らせてもらった。案内しましょうかと聞かれたが忘れてないので、大丈夫だ、ありがとう。と伝え中に入った。巫女が神奈子を見ている。旧家でも入っては駄目なのだろうか、俺の神社は誰でも入れる、民は遠慮して中々入って来ないが。まあいいやと思い神奈子を後ろに連れて天照の所に向かった。

 

この前来たと時に蹴破ったふすまが綺麗に直っている。今度は蹴破らずふすまをスライドさせ中に入った。今日は天照しかいないようだ。山のような書類を片付けているみたいだ。忙しいみたいなので要件を伝えよう。天照の所に近づきながら来た理由を天照に伝える。

 

 

「天照、俺は 八坂 神奈子 に惚れた、だから俺が貰っていくぞ」

 

「そうですか。私は弘天さんの物、道具ですからね。拒否権は無いでしょう。2人が納得してるなら、どうぞ好きにしてください」

 

軽すぎる、仕事しながらも笑顔だし、一応神奈子のもう1人の親だったはずだが。心配ではないのだろうか。まあ説得する手間は省けた。今回の事を民にそして八坂家に伝えるように天照に言い、部屋から出ようとすると天照に呼び止められた

 

「待ってください、神奈子は残ってください。話があります」

 

いつも笑顔な天照が真面目な顔になったので、俺は大事な話があるのではと思い、部屋から出た。神社の外で待っているとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、天照様に呼び止められた、天照様が仕事を一旦止め私に顔を向けてきたもしかしたらばれているのかもしれない、私があいつの事を好きではなく、殺すためにあいつの女になる事を。でもよく考えたら最初私はあいつを刃物で殺そうとしたんだ。そう考えてもおかしくはないか。

 

「神奈子、私は今回の事は詳しく聞きませんし、興味もありませんし、馬鹿な事をするなとも言いません。しかし言いたいことがあります、一言は大和の頭としての言葉、もう一言は親としての私の言葉。だから二言だけ言います」

 

天照様が笑顔で私に話しかけてきた、これはばれているようだ。なのになぜ止めないのだろう、知人と聞いていたが、そうでもないのだろうか。あいつは大和を乗っ取っているが、そこまで強そうに見えない。私でも殺せると勘違いしてしまうほどに。

 

「あなたは大和のために今までよく働いてくれました。大和の民に活気が出たのも、あなたが治安維持や、食料問題など他にもありますが、神奈子が解決してくれたおかげです。本当にありがとう」

 

天照様が頭を急に下げて来た頭を上げてくださいと言おうとしたが天照様が私に抱き付いてきて言葉に出来なかった

 

「そしてこれは親としての私が言います、幸せになりなさい。女として幸せになりなさい。私は大和で無病息災を祈っています」

 

天照様が私の頭を撫でながら言ってきた、胸が痛んだ。天照様はあいつの部下にされたことを不満に思ってないようだ。なら私のしようとした事は間違いだったのかもしれない。私は勝手に、天照様は不満を持っているはずだと思ったが、違ったのか、いたたまれなくなり、私は自己嫌悪になった。私は天照様から逃げるように部屋を出た。

 

神奈子に、弘天さんは殺せないわ、絶対に。そんな言葉を後ろから聞こえた気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結構時間かかってるなそれほど大事な話なんだろうか、気にはなるが大事な話だろうから、まあ気にしないようにしよう。俺はぼけーっとしてたら神奈子が神社から出て来て俺に向かって走って来た、何だと思い見ていると、神奈子が俺の左手を掴み引っ張られる。倒れそうになりながらも、神奈子に走って付いていく

 

「何をする神奈子!何をそんなに急いでいる!?」

 

「喧しい!いいからさっさと諏訪の国に行くぞ、早くしろ!後、私は名を呼ぶのを許可した覚えはない!!!!」

 

そう言いながら、神奈子に引っ張られて諏訪の国に向かった




今回はいつも引っ張る弘天が逆に神奈子に引っ張られる事が書きたくてこんな感じに

お腹へった


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満月

藍が永琳の呼び方を主と呼ぶと前に言いましたがやっぱり永琳様と呼ばせることにしました

永琳にどう説明させるかを考えるのに疲れたもう限界だ。だが、まだ書きたい話があるんだ。
しかしこの調子で行くとそこに行くまでは数十話はかかる。だから、エタル事は出来ない。エタルけど。

そこに至る結果が同じなら過程を変えてしまえばいい




諏訪の国に帰る道中俺は神奈子に聞きたい事があったので、神奈子に神になる気はないかと聞いた。最初は神になるなんて考えてなかったようだ。神になれば俺と同等の力を持つ事が出来て俺を殺せるかもしれんと言ったら、さらに考え始めた。神は不老だが不死じゃない。だから永遠に生きる事は無い。今まで人間だった奴が神になって良いのか、そこが悩みどころなんだろう。実際神になるなんて聞かれて即答できる奴は少ない。天照と同じ存在になれるぞ言うと、傾いた。これで後は諏訪の国の民に神奈子を紹介して、永琳に説明するだけだな。気が重いが、どう説得したものか。もしかしたら俺は永琳を泣かせるかもしれんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪の国に着いたまずは神社に向かう、家族に説明しよう。神社に着くと手水舎に藍がいた。どうやら箒で落ち葉を掃いているようだ。相変わらず綺麗な金髪だ、ケモノ耳は出してない。巫女服で掃除してるのを見るのは中々いいものだ。どうやらこっちに気づいたようだ。藍にも説明しなくてはいけないので、声をかける

 

「藍」

 

「お帰りなさいませ、主」

 

「急なんだが、大事な話があるんだ、神社に永琳と諏訪子、紫と幽香はいるか?」

 

「永琳様と諏訪子様はいます、紫様と幽香様は遊びに出ています」

 

紫と幽香はいないのか、仕方ない。まずは永琳と諏訪子、藍に説明しよう。藍が神奈子を見ている、前に神奈子が来たのは大和の使者として

来て大和の支配下に入れと言われたから、また諏訪の国に来ていい気はしないのだろう。しかしこれからは神奈子は俺の女になるのだ、仲良くなって貰わねば

藍が持っていた箒を掴み、手水舎に置いて神社に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永琳と諏訪子と藍を呼び机に並んで、向かい合う俺の隣が神奈子で向かい合いは藍、永琳、諏訪子だ。何だか娘さんをくださいと言わなけらばならない場面のようだ。

藍はこちらを見て話を聞こうとしている永琳は目を瞑っている、諏訪子はあまり興味がないのかぼーっとしている。さっさと話をしよう神奈子が俺を殺そうとした事、神奈子を俺を殺しに来て面白そうだから俺の女にした事、などを説明した。俺を殺そうとした事を黙っていたら後々面倒だ。だから正直に言った方がいいだろう。悪い印象を受けるだろうが、そんなのは後になったら挽回できる。現に俺と永琳がそうだったんだから。永琳が目を開けた。

 

 

「そう、女にしたのね。納得はできないけど理解はしたわ」

 

藍と諏訪子が目を見開いて永琳を見る。今まで夢を認めないと言っていた永琳がどういった心境の変化なのか、俺は今まで生きてきた中で

一番驚いているかもしれない

 

「言っておくけど、私は夢を認めていないわよ」

 

「認めてないのに、なんでそんな冷静なんだ」

 

「昔から夢を諦めてと言っているのに、諦める気配が無いんだもの。いつかこうなる日が来ると思っていたわ。でも、さっきも言ったけど勘違いしないで。私は弘の夢を認めてないんだから」

 

「俺が殺されそうになったと聞いて何も思わんのか」

 

「思わないわ。だって約束したもの」

 

「約束だと、何の事だ」

 

「教えない」

 

つまり、神奈子を女にするのはいいけど、納得はしてないし夢を認めたわけじゃないと言う事だろうか。次は諏訪子に聞こう

 

「諏訪子はどう思う」

 

「昔から女を侍らすと言ってたし、いいんじゃない?父さんは諏訪の国の王なんだし、一夫多妻でも分不相応って訳じゃないしさ」

 

ふむ、諏訪子はどっちでもいいと、我が娘ながらどこか傍観した立ち位置にいるな。見た目は子供だが精神年齢は高いのかもしれん。次は藍だ

 

「藍はどうだ」

 

「私は主が決めたのなら従うだけです」

 

俺が決めたなら賛成という訳か、後は紫と幽香に説明しなきゃならんな、まずは諏訪の国の民に俺の女が出来た事を伝えよう。今日は宴会をするから、藍と永琳に料理の準備をお願いした。まずは諏訪の国の民を集めなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、諏訪の国の民を大事な話があると集めて、神奈子を妻にした事を伝えた。神奈子の事をこれからは神として信仰し畏れよと伝え、これから問題が起こったら、藍を、弘天神社の神の使い藍を通して、話をするようにと言った。民が歓声を上げている。ここまで喜ばれるとは予想外だ。皆に宴会の準備をするよう伝え、俺は神社に戻った、やはり地球に残って正解だな。結婚は1人までという固定概念がないから、非難を受けない。これが月人だったら白い目で見られていただろう。腹が減ったので神社に戻って永琳のご飯でも食おう、帰ったら紫と幽香がいたので、説明したらお母さんが増えたと喜んでいた。無邪気でいいものだ。永琳は複雑そうな表情で2人を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今、弘天神社の裏にある蔵に背中を預けながら月を見ていた。まさか私が神になる日が来るとは、予想できなかった。人生とは分からないものである。満月を眺めていたら、神社から銀髪の三つ編みを紫色のリボンで止めていて、赤青の服を着た女性が出て来た。名前は 八意 永琳 だったな、あいつの妻と諏訪の国の民に聞いている。私はあいつを殺すために女になったのだ、だがあいつを殺そうとしてる奴があいつの女になって諏訪の国に来たのを彼女はどう思っているのか聞いてみたくなった。最初は挨拶をしよう

 

「こんばんわ」

 

「こんばんわ」

 

これからは長い付き合いになりそうなので改めて自己紹介をしようと思い軽く頭を下げる

 

「改めて自己紹介をさせてもらう、私の名は 八坂 神奈子と申します。どうぞ、よしなに」

 

「ご丁寧にどうも、私の名は 八意 永琳 こちらこそ、よろしくお願いします」

 

彼女も頭を軽く下げお互いの自己紹介を済ます、いきなりだが今回の事を聞いてみよう

 

「貴方の事は、諏訪の国の民からあいつの第一夫人と聞いている。好いている男が私に殺されるかもしれないのに、なぜ平然としている」

 

「約束してくれたから」

 

「約束?」

 

「そう、俺の女になれって、ずっと一緒だって、昔言ってくれたの。夢は女を侍らすなんて考えてる人だけど、約束だけは破ったことはないのよ。だから私は信じてる」

 

「私には理解しがたいな、好いた男が殺されそうなら私は平然とはしていられないだろう」

 

「貴方があの人の事を好きになったら分かるはずよ。今は嫌いでも、いつか好きになるかもしれないわね」

 

「無いな、天地がひっくり返ってもそんな事にはならない」

 

「私もそうだった、最初の印象は最悪だった。でも、いつの間にか好きになったのよ、そんな物よ。それに貴方には、あの人を殺せない」

 

天照様と同じ事を言うとは、私があいつに敵う訳がないと言う事だろうか。いや違う気がする、もっと何か別の事のような気がする。だがそれが一体何なのか私には理解できない。だから私はどうして殺せないのか彼女に問う

 

「なぜ、そう思う」

 

「さあ、私には分からないわ。でもいつか分かるんじゃないかしら、もう眠いから戻るわね。おやすみなさい」

 

そう言い彼女は神社に戻った、あいつを殺せない理由は分からなかったが、何か大事な事を教えようとしてくれたのかもしれない。その大事な事が何なのか理解できる日が来るんだろうか、満月を見ながらそう考えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、神社の縁側に座りながら、満月を見て酒を飲んでいる。飲んでたら永琳がやってきて左隣に座った。俺が左手で持ってた酒瓶を取り杯に酒が無くなってたので永琳が酒を注いできた。俺は永琳の横腹を左手で掴み抱き寄せ、永琳は俺にもたれ掛りながら満月を見てる。お互い何も言葉を発さず、ただ満月を見て酒を飲み。無くなったら永琳が注いでくれる。最近はゆっくりできなかったが、のんびりできて良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紫と幽香を神にしようと思いましたがこの先の展開を考えると妖怪のほうが都合がいいので神にするのをやめました


鬼殺し


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道具をうまく使って見せるさ

おかしいな。なぜこんな事になったのか、神奈子はいつも通り。ただ藍のキャラを立たせようと思って書いていたはずなんですが、こんな事になるとは。まあいっか

今回は日常回です


神社から出ると何か音がする、何かを割る音だ。神社の裏にある蔵の方から聞こえる。神社の裏を見ると神奈子が薪割りをしているようだ。なぜ薪割りをしているのか聞いてみよう

 

「神奈子、なぜ薪割りをしている。お前は俺の女だぞ、そんな事はしなくてもいい。」

 

「私に馴れ馴れしく話しかけるな、名を呼ぶのも許可していないし、殺されたいか。それに薪割りをしてるのは暇だからだ」

 

怖い怖い。斧を肩に担いで俺を親の仇でも見るような視線で見てくる。まあ間違っちゃいないか。天照を物扱いしたんだ、自分の親が物扱いされていい気はしないだろう。俺は物扱いをやめる気はないが。神奈子が斧を持ったまま近づいてきた、すると斧を振りかぶって俺の首を狙ってきたが後方に飛び避ける

 

「あ、危ないじゃないか。殺す気か」

 

「そうだ」

 

真顔でそうだと言うとは。いつになったらデレてくれるんだ、この状態の神奈子も悪くはないがデレた神奈子もみたいぞ。どうしたらいい。とりあえず、神奈子に近づくか。

目の前まで来た、俺を神奈子が見ている、何をする気かと警戒しているようだ。斧を上げた状態で、見ている。馬鹿め、今に見てろ神奈子、神奈子のような性格は、最初は相手に気を許さないが、一度許すとデレデレになるのだ。俺はその神奈子を見たい、だから馬鹿をやって神奈子の心に土足で入り込んでやろう。殺されるかもしれんが、それを承知で女にしたのだ。だからとことんやるぞ。俺の右手を神奈子の乳房に手を当て揉む。神奈子は急の事で理解できなかったのか止まってる。その間に揉みしだく。自分が何をされてるか理解したのか斧を振りかぶって来たので俺は避けて避けて避けまくる。こんな生活も悪くないと思う。今まで敵意を向けて来た女は少なかったしな。いい刺激になる。後はいつか神奈子が俺を認めてくれたらいいが。だが、氷はいつか溶けるのだ。その溶ける様子を眺めているとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神奈子を俺の女にした、俺の夢に一歩近づいた訳だがまだ足りん。だが紫と幽香はまだ子供だしまだ駄目だな。諏訪の国の民に手を出すわけにもいかんし、そうだな、藍しかいないな。一度口説くか。確か今は藍は蔵の掃除をしていたはずだ。藍は掃除洗濯をしてくれている。後は、諏訪の国の相談役だな。皆から困ったことになったら対処してもらってる。働きっぱなしだから休めと言っても聞かんので、様子見だ。倒れたら看病してやらねば。だが料理だけは永琳は譲らず台所は永琳の場所になってる。我が物顔だな。だが藍に料理を覚えさせていた方が何かあった時に助かるので、藍は永琳に料理を習っている。お昼御飯だけは藍が担当だ。まだ始めたばかりなのに美味い。教える先生がいいのだろうか、藍の物覚えがいいだけだろうか、両方だな。蔵に向かおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着いた。藍が右手に箒を持ち左手に雑巾、三角巾を頭に巻き割烹着を着ている。足元にはバケツがあり中には水がある。金髪の美女の割烹着もいい。レアな光景だ。藍は今は尻尾は無い、消しているようだ。この前諏訪の国民に藍は弘天神社の神の使いとして接するよう言った。そしたら藍は神になったようだ。しかも尻尾が3本から6本になった。体つきも前より出るとこ出てる体つきだし。何の神かというと狐の神だ、そのまんまだな。狐の神は稲荷大明神というそうだ。だから今の藍は稲荷神と言う事になる。神が俺と永琳、諏訪子と藍で4人だな。後、お揚げが好きでお揚げを渡すと表情はクールだが尻尾がぶんぶん揺れてる。嬉しいのがバレバレだ。犬みたいだな。その可愛い藍を女にしなければ。それと神になった時、能力を手に入れたようだ、式神を操る程度の能力らしい。

 

「藍」

 

「あっ、何でしょうか。主」

 

掃除に夢中で俺に気づいてなかったようだ。忙しそうだし邪魔だろうから早く言うか。

 

「俺の女になれ」

 

「嫌です」

 

そ、そんな馬鹿な。主が俺の女になれと言ってるのに、拒否された。永琳に嫌と言われた事もあるが、永琳と藍じゃ立場が違う。主と従者の関係なのだ。断るわけないと思っていたが俺の考えは甘かったようだ。どうする、いくらなんでもこの状況で居続けられるわけがない。何とかしなければ、そうだ、理由を聞こう

 

「り、理由を聞いてもいいか」

 

「私は、主と永琳様の従者なのです。言わば私は道具です。その道具を使う方の女になる訳にはいきません」

 

どういうことだ、俺の女になるのが嫌なんじゃなくて、私は物だからそう言う感情を持ち主に持ってはいけないと考えてると言う事だろうか。どう説得したものか、俺は道具とは思っていない、家族だと思ってる。大事な家族だ。大事だから女にするわけだが。まずは道具と思って無い事を分からせなきゃならん。

 

「藍、俺は道具だと思ったことは無いぞ。大事な家族だと思ってる。」

 

「そう言っていただけるのは、ありがたいです。私も他人だとは思ってはいません。ですが私は道具として生きます」

 

ここまで強情だとは、もう荒療治しかないか、嫌われるかもしれんが、その時はその時だ。まずは藍が道具ではなく1人の女であることを自覚してもらおう。藍に近づき右手を左頬に当てた

 

「道具は体温なんかないし、性別もなければ、考える事も出来んはずだ。だがそれが出来るのなら、藍は人間だ」

 

「いいえ、確かに私は生きていますから、体温もありますし、性別もあります。脳がありますから考える事も出来ます。ですが私は生きた道具なのです。ただ主のために生きる道具です」

 

なるほど、俺のために生きてるのか。だがそれは命を救ってもらったからだろう。あの時藍を助けなければ、藍は死んでいたのは間違いない。命を救ってもらった、だから自分の人生を捧げると言ったところか。どうせあの時救われなければ死んでいたんだ。などと考えていそうだな。使いたくない手だがやるしかない。藍に近づき抱き付いた

 

「俺のために生きるなら、俺の命令は絶対だな」

 

「はい、命令なら従います」

 

だったら最初は命令から始めてやろう、いつか藍が自分から女になりたいと思うまで付き合おう。命令してやる。時間はあるんだ。道具としての一歩から初めて、そして女としての一歩を歩んでもらおう。道具なら生きる理由を俺が与えてやる、道具としての人生も悪くないかもしれんが、女としての人生も悪くはないだろう。片方の人生だけではなく、両方の人生を取っても問題はないはずだ。両立できる事なんだから。別に片方の人間しか助からないって選択じゃないんだ。両手があるんだし左手を道具としての人生、右手が女としての人生の幸せを取ってもらおう。だからもう一度今度は命令口調で藍に向かって言う。

 

「藍、俺の従者で道具よ。主として命令する。俺の女になれ、そして道具の人生と女の人生両方掴んで見せろ。拒否は認めん」

 

「分かり、ました。主よ。私はあなたの女となり道具の人生も女の人生を掴みとって見せます。ただ主の為に」

 

やっと説得できたな、今は道具としての命令だが、いつか藍が1人の女として生きるようになった時はもう一度俺の女になれと言ってみよう。その時に断られたら諦めるまでだ。嫌がっているなら無理矢理女にする気はない。いつか藍が俺の為にじゃなくて自分のために生きて欲しい物である。そんな日が来るのが待ち遠しい。

 

 

 

 

 




藍はもう少し後ですが大事な役割があります、そのために諏訪の国に巫女として入れました。紫と幽香もです。ですが私は計画通りに出来ない人間なので。その展開は没になるかもしれませんがね。


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ウメ

短いです

見直してたら幽香の出番が少ないと思い幽香の話を書きました


俺の左隣に紫が、右隣に幽香がいる。神社の縁側で日向ぼっこしてる最中だ。こう気持ちいいと眠くなる。目の前には幽香が能力、花を操る程度の能力でウメが咲いている。綺麗だ、永琳に入れてもらった渋茶を飲み一息つく。幽香が俺を見て何か聞きたそうにしている。

 

「何だ幽香、聞きたいことがあるのか」

 

「お父様、永琳お母様がいるのに何で女の人を侍らせたいの?」

 

紫も興味があるのか俺に顔を向けている。俺が女を侍らす理由か。その理由は至ってシンプル、俺は楽しい人生を送りたいのだ。その楽しい人生を送るなら、嫌いな奴といるより好きな奴と居たいにきまってる。好きな奴といるのは楽しいに決まっているんだから。好きな奴と居て楽しくなかったら楽しくなることをすればいい。じっとしてるのも悪くないが。楽しい事は自分で見つけなきゃいかん。だから俺の夢は女を侍らすことなのだ。

 

「それはな、俺が女が好きだからだよ」

 

「ふーん」

 

幽香が興味なさそうに相槌を打つ。紫はウメを見ている。聞いといてどうでもいいのか、さすがにショック。悔しいので困らせてやろう

 

「言っとくが、幽香と紫も俺の女だぞ、誰にもやらん」

 

紫は顔が少し赤くなってる、幽香は表情が変わらずウメを見ている、幽香が俺を見はじめた、何だ、顔になんか付いているのか、顔は洗ったはずだぞ、まさか顔が不細工とでもいうんじゃないだろうな。幽香は結構ずばずば言うのだ。そんな事を言われたら俺は立ち直れない。永琳に慰めてもらわなきゃならん、再起不能になる。頼む、思うのはいいが、口に出すのはやめてくれ。

 

「私はいいわよ、お父様の女になっても」

 

今、何と言った。嫌われていないと思っていたが俺は娘をいつの間にか落としていたのか、気付かなかった、今の幽香は子供だが将来は美人になるだろうそれは紫もだが。そう言えば紫がさっきからだんまりだ、見たら帽子を深く被り顔を隠している。顔を見られたくないのだろうか。そこまで恥ずかしがるとは、初心な奴め。

 

「そうか、なら俺の女になれ」

 

「分かった」

 

何だこの軽さ!?もっとこう言うのはさ、うまく言葉に出来ないけどこんな軽いもんじゃないんじゃないか、女が増えるのは嬉しいが複雑だ。だが早まるな、まだ子供なのだ。期待しすぎるのはよそう。それと幽香は素直クールなのかもしれない。今俺は胡座している、この胡座した状態の足の中に入れてやろう

 

「俺の女になるなら、この中に入れ」

 

「うん」

 

一切の迷いもなく幽香が立ち上がり俺の胡座した状態の中に入って来た。こいつ・・・・出来る。今までにない女だ、これは手ごわそうだ。紫も入れてやろう

 

「紫、お前も俺の女だしこの中に入れ」

 

そう言ったら紫が帽子を深くかぶり顔を隠したままスキマを開きスキマに入っていったあれは初心な女だな。悪くない。

 

「幽香、俺はお前が好きだ。今は子供だから女にせんが、成長して美人になったら俺の女にするからな」

 

「私は愛してる。成長するその時が待ち遠しいわ」

 

間違いない、これは素直クールだ。恥ずかしいと微塵も思っていない。だがこれもいいかもしれん、幽香の頭を撫でつつウメの花を見て渋茶を飲んだ。何だか甘い気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風邪を引いた、ベットで寝ている横には永琳がいて、お粥を食べさせてくれている。さすが永琳、正に理想の嫁、俺の最初の女だけはある。永琳の隣には諏訪子がいる。

 

「父さん、神なのに風邪をひくってどういう事さ、神様が泣くよ」

 

やれやれと、諏訪子が呆れた表情で俺に言ってきた。いつもならいいが今の俺は病人なんだぞ、少しくらい甘えさせろ、そんな言葉を吐かれたら余計に風邪をこじらせる。

実の娘が冷たすぎる、こんな時は冷たくしちゃいかんのだぞ

 

「し、仕方ないだろう。俺は元は人間だ、今は神だがな。それに神は万能とかそんなんじゃないんだぞ。もう少し労われ」

 

「はいはい、喋らずにお粥を食べて、薬を飲んで頂戴。早く治してほしいんだからこじらせないでよ」

 

「ああ、永琳が女神に見える、け、結婚しよう、永琳」

 

「そんな状態で言われても嬉しくないわよ、その言葉は風邪を治してからもう一度言って婚儀を執り行うから」

 

諏訪子が溜息を出した、実の父親と母親の戯れを見せられ、あきれ果てているようだ。

そこに藍が来た、何の用だろうか。ああ、金髪美女にも看病されたい、急に永琳がお粥を地面に置き永琳の両手が俺の両頬を引っ張った。考えてることがばれるとは。まさか心が読めると言うのか。いくら天才でも心は読めるはずがないんだが

 

「主、病気の時に失礼します。実は民から耳寄りの話を聞きまして、その内容について話をしに来ました」

 

「内容は」

 

「近くの山に鬼が来たそうです」

 






俺達の戦いはこれからだ!!


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鬼ころし

鬼だし面白そうなら大抵の話も受けると思うんだ。でも今回は無理矢理だなって思いました。

出来るだけわかりやすく、かつ短めに書いてるんですが今回4000文字も行きました
疲れたのでもうこの作品は完結するんじゃないかな


次の日風邪が治り、俺は昨日の話。鬼が近くの山に来ていると言う話を聞いて、あれからずっと考えた。鬼か、鬼は確か酒を好み、勝負事が好きと聞いている。そして嘘が大っ嫌いだそうだ、鬼に嘘を吐いたら殺されても文句は言えないらしい。俺は常に自分に正直に生きている。だから問題はないな。諏訪の国は神が俺、永琳、諏訪子、藍に神奈子だ妖怪は紫と幽香しかいない。諏訪の国は戦力不足だ、雑魚の妖怪なら諏訪の国の民でもなんとかなる。だがもし大妖怪が大勢攻めて来たら、この戦力じゃ心もとない。もっと戦力を増やさなければならん。だが最近、強そうな妖怪の名前を聞いた事が無い。今はだが。だが鬼なら、腕っぷしが強いから、戦力になるだろう。鬼が強いのは誰もが知ってる。まずは強いと分かってる奴から引き込もう。どうにかして、諏訪の国に引き込めないだろうか。鬼は勝負事が好きと聞いているし、嘘が嫌いと聞いている。そして酒好き。そこをうまく使えば諏訪の国に引き込むことが出来るかもしれん。ちなみに鬼は3人だそうだ。力で無理矢理従えるのもいいかもしれんがここは別の事で勝負しよう。

そこで考えた、永琳と蔵にでも籠って大量の酒を造ってやろう。しかも妖怪が飲むとすぐに夢の世界に入る酒でも造ろう。

 

「永琳、酒を造るぞ。あの鬼でも数口飲めば夢の世界の入る強力な奴だ。実際の匂いや味は酒だが、神にはアルコールが入っていない酒、妖怪だけがアルコールが入ってる酒、神は酔わんが、妖怪は酔う、そんな酒を造る」

 

「弘、あなたはいつも急ね。付き合わされる私の身になってほしいわ」

 

「いいだろ永琳。それに、嫌じゃないんだろ」

 

「そうね、嫌じゃないわ。愛している人に求められたら応えたくなるもの」

 

諏訪の国の為だ、そして俺と永琳は諏訪の国の神だ。諏訪の国の事を考えて行動したければならん。俺は王なのだ、民の為にこんな時くらいは働かなくては。そして鬼が美人なら女にしよう。永琳が俺の足を踏んできた。痛い。そして俺たちは数週間蔵に籠った。風呂に入ったりはしたがご飯は藍に作って持って来て貰った。こんなに早く藍が料理を覚えて役に立つ日が来たとは。永琳は蔵に籠って料理が出来ないので藍に、諏訪子、紫、幽香、神奈子のご飯を藍に頼んでおいた、これで後顧の憂いが無くなった。後は任せて酒造りに集中出来る。早くしないと鬼が山から出てどこかに行ってしまうかもしれない、急がなければならない。鬼が3人いるかいないかではだいぶ違う。鬼が諏訪の国にいたら戦力もだいぶ大きくなる。諏訪の国を気に入ってくれたらいいが、まあ、大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーっはっはっはっ!出来た!出来たぞ!!」

 

徹夜明けでテンションがおかしい、しかしこれで鬼と勝負ができる。だが数週間しかなかったから、ちゃんとできてるか分からん。ちなみに酒の名は、あの鬼でも簡単に酔える酒を作る訳だから、そうだな、鬼ころしとでも名付けよう。妖怪の紫や幽香に飲ませようと思ったが、2人は鬼じゃないし参考にはならないだろう。永琳が机に突っ伏している、寝ていたようだ。

ここ数日殆ど寝ていなかったから眠たかったんだろう。大声をさっきあげてしまって起きたかと思ったが寝てるようだ、起こさないようにし毛布をかけておいた、ちなみに酒を造り過ぎて樽が500は超えてる。これどうするべきか。とりあえず紫に頼んでスキマを開き酒樽を持っていくとしよう。

紫と一緒に山に向かった。どこもかしこも緑、緑、山なのだから当たり前だが、こうも多いと鬱陶しい。さっさと鬼を探して酒飲み勝負し勝って諏訪の国に引き込まねば。

人影が見えた、髪色は赤系に近いピンク、頭には二つの角、左手首には鉄製の腕輪がある右手には特には何もない。角があるし鬼かもしれん。彼女は洞窟に入っていった、あそこに他の鬼がいるのか、入ってみるか

 

「行くぞ、紫」

 

「分かったわ、お父さん」

 

紫は俺の隣に並び洞窟に入る5メートルくらいの洞くつだ、先に進むと、鬼がいた。酒を飲んでる1人金髪ロングで赤い盃を持ちながら酒を飲み、1人は薄い茶色のロングヘアーを先っぽの方で一つに纏めていてひょうたんを持ちその中にあるものを飲んでいる。1人はさっき見た女性の鬼だ

何だか赤系のピンクの髪色の鬼はお母さんみたいだな、纏め役だろうか。皆美人だ。1人は子供体系で、美人ではなく可愛い感じだが。何か喋っていたが俺たちに気づきこちらを見る。

 

「何だいあんた、こんな所に来て、鬼がいる場所に来て殺されても文句は言えないよ。いや、この神気、あんた神だね。神が私達に何の用なの」

 

茶髪の鬼がいぶかしそうに聞いてくる、顔は酒を飲んでるからか顔が赤い、金髪の鬼も顔がほんのり赤い。赤系のピンクの髪色の鬼は酒を飲んではいるが二人ほど飲んでる訳じゃ無いのか、顔は白い。

 

「まずはお互い、自己紹介から始めてここに来た目的を聞いても遅くはないだろう。俺の名は 蓬莱山 弘天 弘って呼んでくれ、俺の隣にいる女の子は 蓬莱山 紫 で俺の娘だ。よろしく」

 

桃色の髪の子が額に人差し指を当て 蓬莱山?どこかで聞いた事が、確かその名は。と呟いた。諏訪の国の神として知られているのだろうか、いや、それなら弘天の名を呟くはず、なのに苗字を呟いた、どういう事だろうか。金髪の鬼が口の端を上げた、そうだね、まずは私達も自己紹介から初めても遅くはないねと言い、赤い盃に乗っていた酒をぐいっと飲み口を開いた

 

「私の名は 星熊 勇儀 だ、それで茶髪が 伊吹 萃香 で 桃色の髪色は 茨木 華扇 だよ。それでお前は神のようだが、私達を殺しにでも来たのかい。しかもその子から妖気を感じるし、妖怪じゃないのさ、神の娘が妖怪って、お前変わってるねぇ」

 

勇儀が笑いながら他の鬼を親指で指して自己紹介を始めた、紫は妖怪だがそんな事は知らない、俺は神の常識には縛られんぞ、常識は俺が塗り替えて俺が常識を作ってくれるわ。それと殺しに来たなんてとんでもない、諏訪の国に何かしでかしたら、例え美人だろうが可愛かろうが殺すけど、今は何もしでかしていないのだ、殺す理由はない

まだ、諏訪の国に何もしでかしていない妖怪だからこそ、諏訪の国に引き込むのだ。例えばこの鬼たちが諏訪の国の子供を攫って喰ったなら、諏訪の国に引き込む気なんてなかった。それどころかそんな事をしたら殺すつもりだったし。

それに殺さず生かしても民に不満が出るにきまってる、それは面倒だから殺すのだ。民に不満を残すのは得策じゃない。完全に不満を無くすのは不可能だが、減らす事は出来る。まあ例え話だが。今は。

 

「俺は、勇儀、萃香、華扇を俺の女に欲しくて、そして俺の国、諏訪の国に来て欲しいから酒飲みで勝負をしに来たんだ」

 

3人の鬼が予想してなかった言葉なのか、赤い盃で酒を飲みながら話してた勇儀も飲むのが止まり、萃香もひょうたんから口を離し、華扇は升を持ってたが落とした。インパクトがあったようだな。次第に3人の鬼が笑い始めた。勇儀は膝を叩き、萃香は腹を抱えて、華扇は口を手で隠しながら笑っている。神がこんなことを言うとは思わず、受けたのだろう。第一印象はまずまずだ。

 

「あ、あんた、神なのに鬼である私達を女に欲しいっていうのかい!?あっはっはっはっはっ!!最高だよあんた、最高だ!そんな神は見た事も聞いた事も無いよ!!」

 

萃香が腹を抱えて笑いながら言ってくる。当然だ、そんな神は聞いたこともないし思っても殆どの神は出来ないだろう。神と妖怪が仲良くするなんて前代未聞だ。なら俺はその一番目になるまでだ。前例を作ってくれるわ。

俺はそういう神になるまでだ、いろんな神がいるんだ妖怪と仲良くなる神もいていいだろう。俺はそう思う。この世は千差万別だ。一つの物事に囚われても仕方ない、囚われるにしても100、いや最低でも1000の考えは欲しいな。俺達はいろんな角度から見れるんだ、見れるなら見てもいいだろう。別に駄目なわけじゃないんだ。

 

「そ、それで、私達が欲しいお前、いや、弘は力で無理矢理従わせるので無く、酒飲みで勝負をして勝ったら私達を弘の女にしに来たわけだ。馬鹿だ、馬鹿だね。でもそんな馬鹿は嫌いじゃないよ」

 

勇儀が笑いを堪えて膝を強く掴み、笑いに耐えながら喋って来た。そうだ、俺は3人を女にしに来たのだ。すると華扇が手を上げて質問してきた

 

「酒飲み勝負をするのはいいですが、どこにお酒があるんでしょうか、私達鬼と酒飲み勝負をするには相当な数のお酒が必要ですが」

 

それについては問題ない、だから紫を連れて来たのだ。紫にスキマを開いてもらい蔵から一つ一つ酒樽を運ぶ、早く勝負をしたいので勇儀、萃香、華扇には酒樽を開けてもらっている。

とりあえず100は酒樽の数は超えたので洞窟だと狭いし洞窟の外で酒飲み勝負をしようと話、外に出た勝負の内容はそのまんま、酒をどれだけ飲んだか勝負する。

 

「俺が勝ったら、俺の国、諏訪の国に来て俺の女になり、諏訪の国と民を守って諏訪の国に仕えて欲しいそして国の一員になってくれ。後は、酒を飲もうが何しようが好きにしてくれていい。もし諏訪の国がつまらない場所だと思ったら諏訪の国から出てってもらっていいし、俺の女にならなくてもいい」

 

勇儀が萃香と華扇の顔を見た2人は傾いたのでそれでいいと言う事だろう。俺も鬼が数口で夢の世界に入る酒、鬼ころしを作ったのだ、効くか分からんがな。フェアじゃないので、無理強いは出来ない。だから俺の女になると言う約束も拒否権はある

だが、俺を気に入ってくれるようにするまでだ。気に入らなかったらその時は諦める。勇儀が赤い盃を俺に向けて来た。

 

「分かった、私と萃香、華扇はあんたに酒飲み勝負で負けたらその約束を守ろう。鬼は嘘をつかないから安心おし」

 

「私はちょっとは嘘を付くけどね」

 

萃香が勇儀と華扇に聞こえないように小声で呟いた、萃香、鬼なのにそれでいいのか。まあいい。

 

「ただし条件がある、お前が負けて私達が勝ったらお前を喰わせろ。私達は人間を喰った事はあっても神は喰った事が無い。どんな味か気になる」

 

勇儀が俺が負けたら俺を喰うと言ってきた。鬼に喰われるのか、美人な妖怪だし喰われてもそこまで嫌じゃないが、永琳を残して死ぬわけにはいかん。それに俺はまだ死にたくないのだ、寿命なら諦めるが、喰われて死ぬなんて納得できるわけがない。だがこの条件を飲まねば酒飲み勝負をしてくれないだろう。本当は嫌だが、この際仕方ない。

 

「分かった、俺が負けたら俺を喰っていい。ただし紫には手を出すな。この子はこの勝負には関係ない」

 

紫が俺を見て来たが、仕方ない、戦いに犠牲はつきものだ。何かを得るには何かを失う事を覚悟しなきゃならん。俺は両方を取るなんて器用な事は出来ない。だから片方だけを選ぶ

 

「いいだろう、その子には手を出さない。約束しよう。だって鬼は」

 

勇儀が赤い盃を俺に向けたまま口元を笑みで俺を見ながらお決まりの台詞を吐く

 

「嘘を付かない」

 

勇儀が赤い盃を口元に運び酒を飲み始めた。そこから俺たちは飲み始めた。紫は隣でその勝負を眺めていた

 

 




有名ですが鬼ころしと言うお酒は実際にあります。この時代には作られていません。作られたのは明治時代です。

華扇はここで出すつもりは最初ありませんでした、仙人になってから出そうと思っていたんです、ですがその展開はどう考えても諏訪の国に引き込む理由が思いつきませんでした
でも一つあるんですよ不老不死関係の話で引き込む方法が、だがしかし、ここでは永琳は最初から地上にいますし輝夜をまだ出していません、一度輝夜は出ましたけどね。ですが無理でした。私が考えた話では2人は必要でした。ので、ここで出しました。だからここの華扇は仙人ではなく鬼なので頭にはシニヨンキャップはありません、シニヨンキャップがあった所に角が二本あります。

言っておきますが華扇は四天王の1人かどうかは決めていませんし、右腕全体を包帯で巻いていません。右腕を包帯で巻く事態は起きてないので。勇儀も体操服なのか着物か決めていません。それでプロットを考えるのがかなり大変でした。




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まだ酒を飲むのか

今回は出したかったキャラの名前が出ます、オリキャラではありません。




さ、流石に神が飲んでも酔わない酒でも、100回以上飲んだら腹に溜まったぞ。強敵だった、この数億年で一番の敵だと言ってもおかしくは無いだろう。

だが、勝った。これで勇儀と萃香と華扇は俺の国に来てくれる。勇儀と萃香、華扇は今は寝ている。正々堂々と勝負したわけじゃないが、諏訪の国がつまらないと思ったら出て行ってもいいと言ったし、強制じゃないからいいだろう。

永琳と俺が造った酒なのに、ここまで飲むとは。少々鬼を舐めていたかもしれん、反省しなければならんな。

 

「大丈夫?お父さん。頭痛くない?立てる?」

 

俺は胡座していて頭を手のひらで押さえている。紫が俺の眼の前に来て俺の顔を覗き込むように伺う。酔わん酒を造ったから、頭は痛くないが腹がたぷたぷだ。さ、さすがに体を鍛えても胃は鍛えられんので仕方ないか。

 

「ゆ、紫。スキマを開いて神社に連れて行ってくれ。」

 

「分かった。すぐに開くね」

 

紫がスキマを開き勇儀と萃香と華扇を連れて神社に戻った。神社に着いたらまず藍を呼び、居間に布団を敷いてもらい、勇儀と萃香と華扇を寝かせた。さすがに飲ませすぎたようだ。

吐かないか心配だが。まあ大丈夫だろう、その時は掃除しよう。永琳が肩に毛布を掛けながら居間に来た、酒を造ると言った時点で、予想してたのか勇儀と萃香と華扇が居間で寝てても驚かずいつも通りだ

 

「やっぱり、鬼を連れて来たのね。見た感じ泥酔してるみたいだし、大方、鬼と酒飲み勝負でもしたんでしょう」

 

「ばれてたのか」

 

「当然よ、数週間前に藍から話を聞いて何か考えて上の空だったんだし、次の日には急に酒を造るぞ、なんて言ってきたんだから」

 

さすが永琳俺の考えは読まれていたみたいだ。まるで熟年夫婦みたいだな。数億年いたから強ち間違いでもないだろうが。声が聞こえて来たので見たら萃香がまず起きたようだ。起き上がって周りを見ている。

 

「どこだい、ここは。私達は確か酒飲み勝負して寝ちゃったみたいだけど」

 

「ここは諏訪の国で俺の神社だ。寝てたから連れて来たんだよ」

 

ふーん、私達負けたんだね。覚えてないけど、ここまで酔ったのは久しぶりだよ。と呟いた。どこか晴れ晴れとした表情だ。勝ったから諏訪の国の一員になってほしいが、それは諏訪の国を気に入った時の話だ。だから今はまだ諏訪の国に仕えてる訳じゃ無いし、俺の女でもない。

萃香が立ち上がり俺の前に跪いた、急だったので、反応できなかったが何を言うつもりだろう。しかも鬼が神に跪くなんて並大抵の話じゃないだろう。約束を守ろうとしているのかもしれない。

 

「私達は、あんたに、弘に、鬼が得意な酒飲み勝負で負けたんだ、約束通り私達は諏訪の国に仕えて弘の女になるよ」

 

跪きながら頭を下げて約束は守ると言ってきた。だがさっきも言ったが強制じゃない、正々堂々勝負して勝った訳じゃ無いんだ。だからまずは諏訪の国を見てもらおう。

 

「跪くのはやめてくれ、酒飲み勝負をする前にも言ったが、まずは諏訪の国が面白いか。勇儀、萃香、華扇が仕えるに値するか見てからにしよう。そう言う約束だ」

 

萃香の頭を上げさせ俺の両手で萃香の両脇持ち立ち上がらせた、軽いな。子供体系だしな、実際の年は結構いってるんだろうけど。だから諏訪の国を勇儀と萃香と華扇に見て貰うために、勇儀と華扇が起きるのを待とう。

その間は萃香と何か食べようか。永琳に頼みつまみを作ってもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「活気があっていいですね、しかも私たちは鬼なのに諏訪の国の民は怖がりません」

 

華扇が周りにいる諏訪の国の民を眺めながら、ぽつりと言う。多分俺が一緒にいるからだろう、それに紫と幽香のおかげで、諏訪の国の民は全部の妖怪が自分たち人間を食い殺そうとしてる訳じゃ無い事を知っている。

勇儀が赤い盃に乗ってる酒を飲み、笑いながら民を見る

 

「まあ、人間に鬼だと畏れられた表情で見られたことはあるけど、ここの民は全く興味がないのか私達を見ないね。変わった国だよ」

 

萃香が両腕を首の後ろに回して、あくびをして眠そうだ。酒を飲みまくったからかまだ少し酔っているんだろう。

 

「当分はここで仕えていいんじゃない?諏訪の国が面白くなくなってつまらなくなったら私達は諏訪の国から出ていいんだしさ、もう1人にも見せたかったね」

 

もう1人?鬼は3人しかいないと聞いていたが、実は4人いたのか。しかしあの洞窟には3人しかいなかったし、もしもう1人いるなら勇儀が萃香と華扇があの時教えてくれたはずだ。俺は鬼を諏訪の国の一員として来てほしいと言ったんだから。もしいるならその鬼も仲間に欲しいな、聞いてみるか

 

「もう1人はどこにいるんだ」

 

「さあ?私達4人で最初は旅をしていたんだけど、急にふらっとどっかにいっちゃったよ」

 

どうでもよさそうに萃香が言ってるが、仲間じゃないんだろうか。いや一緒に旅をしていたならそこまで関係が悪い仲じゃない鬼だと思うが。急にどこかにふらっと行って心配の裏返しだろうか、いや、多分違うな。

 

「ふむ、その鬼の名前を聞いてもいいか」

 

「名はコンガラです」

 

華扇がお団子を食べながら俺を見て教えてくれた。華扇は甘いものが好きのようだ、さっき聞いた。コンガラか、どこにいるか分からんなら仲間に出来んな、諦めるか。いつか会えるといいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社に戻って来た、居間にいる。俺の反対側に勇儀と萃香と華扇が並んで3人とも笑顔だ。面白いと思ってくれたんだろうか、そうだと嬉しい。俺の国だからな。

 

「諏訪の国を見せてもらったよ、妖怪がいてもおかしいと思うはずなのに、誰も私達鬼がいても気に留めなかった。1人も見ないとは予想してなかったよ」

 

勇儀が片手をひらひらさせて諏訪の国を見た感想を教えてくれる。良かった、第一印象は大事だからな。

 

「私は、面白くなくなったら諏訪の国から出るからね。だから諏訪の国をつまらなくしないでよ」

 

萃香がひょうたんの中にある酒を飲みながら言ってきたこんな時でも酒を飲むのか。どれだけ酒が好きなんだ。あれだけ泥酔してたのに懲りてないようだ。

 

「私は甘いものが好きです、お団子も美味しかったですし。もっと他にも美味しい物や甘い物があると聞きました。だから私達はあなたに、諏訪の国に仕えます」

 

勇儀と萃香と華扇が頭を下げて来た、これで戦力は増えた、俺の夢にも近づいた、民も助かるだろう。良いこと尽くめしかない。だから勇儀と萃香と華扇を諏訪の国が面白くないと、自分たちが仕えるに値しない国だと思わせないよう頑張らねばならん。

とりあえず諏訪の国の民に、勇儀と萃香と華扇はこの国を守って欲しくて山にいた所に諏訪の国に引き込んだと言う事を、諏訪の国に連れて来たと伝えねば。まずは宴会をしよう。ちょうど鬼ころしが山のように残っている。諏訪の国の民、そして諏訪の国の一員になった勇儀と萃香と華扇に片付けて貰おう




Konngaraの名を出しました旧作の東方キャラです、詳しくは調べてください
この作品、旧作の東方キャラが出ます。まあ幽香も元は旧作キャラですがね。Konngara以外も出します。

旧作キャラも出しますしこの作品は50話じゃ完結は出来ません。そもそもこの作品の終わりは紫に幻想郷を作らせることではありません、て言うか絶対に作らせません。最初から作らせる気はありませんでしたし。
私が考えてるこの先の話は多すぎて絶対完結出来ません。100話で何とか完結できるかどうかですね。いや、100話でも足りるか分かりません。だから最初から言ってますが書きません。エタるんです。


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勇儀と萃香、華扇が来たし戦力は増えた。だがまだまだ増やす。多ければ多いほどいいだろう。まずは鬼を入れた訓練だ、特に神奈子は元は人間だ、急に神になったからって、俺を殺せるほどの実力は無い。神奈子の事だし俺を殺せるとかなんとか言えば自主的に勇儀と萃香と華扇で訓練するだろう。

もしかしたら俺殺されるかも、やばいな俺も訓練しなくては。諏訪子はめんどくさがり屋なので無理矢理訓練をさせる。俺と永琳に何かあった時は諏訪子が諏訪の国の王なのだ。嫌だろうと訓練してもらう。もっと強くなって貰わねばならん。

それと藍が蔵を掃除してたら喜怒哀楽のお面を4つ見つけたそうだ。毎回しっかり掃除してるのに今日初めて見つけたらしい。喜怒哀楽のお面に埃が相当被っていてかなり時間が経っているようだ。こんなお面蔵に入れた記憶はないんだが、誰が入れたのだろうか。だがこの喜怒哀楽のお面まだ微弱だが神気を感じる。

もしかしたら、新しい神が生まれるかもしれん。まだ微弱だからまだ時間はかかるだろう確かこう言う神を付喪神と言うんだったか。道具や生き物に神や霊魂が宿った物が付喪神と永琳に聞いた。生まれたとして、男は嫌だな。女の子ならいいが。お面を綺麗にして壁に飾っておこう。喜怒哀楽のお面が壁に飾ってあると、どこか不気味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪国にある御射鹿池という場所で、猪を久しぶりに狩った。大物だ。100キロは優に超えているだろう。今は血抜きしている、斬る場所は大動脈、肺動脈らしい。そうすれば血抜きが出来て臭みが無くなる。と永琳にそう聞いた。あと血抜きしないと臭みが出るそうだ。藍に頼んで捌いて貰いこれで宴会でもしよう。

 

「問題はこの猪をどう運んだものか。ん?」

 

草が擦れる音がする、誰か来たのだろうか。こんな森林に来るなんてどんな物好きだ。それを言ったら俺もだが。妖気を感じたので見たら、可愛い妖怪だった。

また金髪だ、これで何人目だ。紫、藍、勇儀と目の前にいる可愛い妖怪で4人目だな。なんだ、俺は金髪妖怪に巡り合う運命なのか。悪くない運命だが、なんか怖いぞ。

お腹が鳴る音が響き、その妖怪は右手でお腹を押さえた。どことなくやつれているが、お腹が空いているのだろうか。

 

「お腹が減ったの。人間はマズいけど、仕方ないし、あなたを食べたいわ」

 

「ならば、この猪を狩ったばかりだしこれを食え、食いたいなら俺についてこい」

 

猪を両手で持ち上げるが、お、重い。100キロは優に超えてるからきつい。俺、神なのに100キロの物も軽く持てないようだ。人間の時だったら持つ事さえ不可能だっただろうが。

 

「初対面なのにいきなりついて来いってどういう事よ。私は妖怪なのよ、もう少し疑ったらどうなのよ」

 

などと言ってるが最初から疑ってかかったら、前に進めない。仲良くなる為にはまず、相手を信用しなければならん。だから俺はまず相手を信じるんだ。

それで仲良くなったら儲け物、仲良くならなかったら仕方ない。全人類と妖怪や神全部と仲良く出来るなんて思ってないしな。それでも仲のいい相手は多いほうがいい。だからまずは、人間だろうと人食い妖怪だろうと信じるさ。それに何かを疑って生きてたらきりがない。そんな人生は疲れるからお断りだ。騙されたら騙されただな。諏訪の国の民を喰ったら殺すまでだ。

まあ、喰わせ無いように気を付けるが。俺も出来る限り可愛い妖怪は殺したくない。

 

「いいから来い、そしてこの猪を運ぶのを手伝え。腹減ったんだよ」

 

「無理に決まってるでしょ、ただでさえ封印されて力が出ないっていうのに」

 

俺一人で運ぶのか、血抜きしてるが猪の血がべったりと俺の服に付いてしまっている。気持ち悪いので早く帰って着替えなければいけない。それに早く運ばなくては猪が痛んでしまう。永琳と藍に調理を頼ばねば。

そしたらまたお腹が鳴る音がした。俺じゃない、という事はさっきの妖怪だ。見たらお腹を押さえてもう限界といった感じだ。このままでは喰われる。食料として食われてしまう。それはマズいので急ごう。俺と妖怪の女は神社に向かった。

 

 

 

「まだ修行中とはいえ、藍の料理はマズくないだろ」

「美味しいわ」

 

神社に着いたが凄い食べっぷりだ。

見ていて気持ちがいい。よほど腹が減っていたんだろう、今は永琳と藍が料理を作ってる。宴会はまだしていないので猪は使っていない。

紫と幽香は遊びに行ってていない。勇儀と萃香は酒を飲みながらつまみを食ってる。華扇は肉まんを食ってはいるが。前々から思ったんだが華扇はいつ見ても何かを食べてる気がする。諏訪子と神奈子はのんびりお茶を飲んでいて、平和でいい。永琳と藍は料理で忙しいみたいだが。宴会を開く準備をしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会で勇儀と萃香は大笑いしながら飲みまくり華扇は程々に飲んでいたが、料理を食いまくっていた。食いしん坊キャラだったみたいだ。紫と幽香に酒を飲ませたが妖怪だからか酒に酔わず黙々と飲んでいた

顔はほんのり赤かったが。金髪の妖怪は寝たようだ。久しぶりに満腹になったのかもしれん。最初あった時やつれてたし。今はそこまでやつれていないが。このまま置いとくのもあれなので、神社に連れて行って寝かせてやろう。

 

こいつの喰いっぷりを見たらお腹へった、何か藍に夜食でも作ってもらおう。藍に夜食を頼もう。

金髪妖怪は熟睡してるので、布団に寝かせて置くか。確かこいつ俺と出会った時に俺を喰おうとしたが、人食い妖怪なのかもしれん。

俺が神だと気付いてなかったようだが。永琳と紫、幽香、藍、勇儀と萃香に華扇は襲われても大丈夫だろうが、問題は諏訪子に神奈子だなまだ二人ともそこまで強い訳じゃ無い。一応近くで寝ておこう。

藍がおにぎりを持って来てくれたので藍に礼を言い、寝る前の挨拶を言っておにぎりを食って寝た。

 

次の日名前を聞いたらルーミアと言う名だそうだ。名を名乗ったら永琳と藍に美味しかった、ありがとう。と頭を下げた。

お礼を言われて悪い気はしないのか、2人は照れていたが。しかし、何か、見た感じ弱そうだし妖気もそこまである訳じゃ無い。だが、実はすごい力を秘めているような気がする。封印されて力が出ないって言ってたし。

面白そうだから諏訪の国に置いて置こう。諏訪の国の民を喰ったら殺すけど。喰わせない様にルーミアの胃袋を永琳と藍が掴むだろう。一度食ったらまた食いたくなる味だ。俺も永琳と藍のご飯が無いと死ぬし。永琳と藍には感謝しなくてはならん。

 

 

 




よく考えなくても永琳、紫、幽香、藍、諏訪子に神奈子に勇儀と萃香に華扇。負ける気がしない、ですが戦力は多いほうがいい。後の話を書きやすくなるんで。まあいいか、このまま行こう行こう。どうせ戦闘は省くんだから



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蓬莱山
会話が噛み合ってないぞ


もう少しだもう少しで俺の書きたい話が出来る、長すぎた
だがあの話を書きたいんだ。まだまだかかるけど。


戦力を増やした理由の一つを今回出しました、他にも理由がありますがね。

後、今回は特に後書きを読んでほしいです。



華扇に話があると呼び止められて居間にいる。戦力は整ってきているが情報専門がいないとのことだ。確かに情報があるかないかでは、大きく違ってくる。

だが、情報専門な人間や妖怪は聞いた事が無いぞ。後、俺と華扇は永琳に頼んで作ってもらったおにぎりを食べながら話をしている。

 

「情報専門の妖怪はいます、私達が出会ったあの山です。種族は鴉天狗ですね。私達鬼よりは強くないですが、強くないからこそ情報を武器に生きています」

 

ならば、一度その鴉天狗がいる所に向かって、交渉してくるか。あまり強くないなら、俺達、諏訪の国の戦力を交渉材料にしてみるか。一度皆に聞いてみよう。

 

「なるほど、分かった。だったら諏訪の国の情報役として欲しいな。もしかしたら皆の戦力を交渉材料に使うかもしれんが、構わんか」

 

「そうですね、無理矢理力で従えたら、良好な関係は築けないでしょう。勇儀と萃香が嫌がるかもしれませんが、私から言っておきます」

 

華扇は一旦おにぎりを食べるのをやめ、お皿に置き気になることを言ってきた。

 

「それともう一つ、気になることがあります。その事について鴉天狗に聞いた方がいいかもしれません」

 

「気になる事か、何を聞けばいい」

 

「弘様の名 蓬莱山 についてです、この名を最初聞いて思い出せなかったんですが、思い出しました。この名は確か琵琶湖がある場所に 蓬莱山 と言う山があるんです」

 

右手で掴んでいたおにぎりを食べようと話を聞いてたら動きが止まった。俺は今、絶句している

 

「私は長く生きていますが、蓬莱山 の名を持つ妖怪も人も聞いた事がありません。正直、偶然とは思えません。出来過ぎています」

 

確かにいくらなんでも出来過ぎている。俺の苗字が山に 蓬莱山 として名づけられているだと。これが偶然とは思えない。しかもこの苗字は月人が地球にいた時の苗字だ。それに 蓬莱山 は名門なのだ。俺と父さんと母さんしかいなかったはずだ、親族なんていなかった。他の月人が 蓬莱山 の苗字を持っている訳がない。いや、間違いなくこの3人しか 蓬莱山 はいなかった。一体どういうことだ。この時代の人間は苗字は無く名しかないし 蓬莱山 何て苗字は諏訪の国には俺と紫と幽香と諏訪子しかいない。だが紫と幽香と諏訪子に関係があるとしていったい何の関係がある。頭がパンクしそうだ。今は考えても答えは出ないだろう。気になるが鴉天狗と交渉がうまくいったら教えて貰う事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは妖怪である紫と幽香に聞いてみるとしよう。もう2人はだいぶ強くなってる。毎日鍛え上げていたし、勇儀と萃香と華扇が入ってから、ますます訓練がヒートアップしていて2人の成長速度が早い。

紫は能力が強力だ、幽香の能力は紫ほどない、そのかわり、純粋な戦闘能力なら紫をはるかに上回るだろう。妖力や身体能力の高さが半端ではないのだ。紫は頭を使って戦うなら、幽香は力で押していく感じだ。

バランスがいいな。2人が組んだら無敵だな。

 

「紫、幽香、俺は今から鴉天狗と言う種族がいる山に向かう、もしかしたら2人の力を交渉材料に使うかもしれんがいいか」

 

2人はいいよと言った、もう少し悩んでもいいんではないだろうか。でも、その話をしたら2人は、交渉材料に使うと言う事は自分たちが交渉材料に使う程成長して、俺に頼られるのが嬉しいそうだ。もう守ってもらうのは嫌だそうだ。

諏訪子はそもそもこの国から出すわけにはいかん、俺と永琳が死んだら諏訪子が王なのだから。もしもの時はこの諏訪の国を守る王なんだし何かあってからでは遅い。神奈子は少しずつ成長してるが、交渉材料に使う程ではない。

永琳は俺がいない時に諏訪の国を守ってもらうし、藍は弘天神社の巫女だから出すわけにもいかんし、ルーミアは強くはない、はっきり言って下の下だろうな。でも封印されてるならそれ解けば良いんじゃね、と思った、早速向かおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「封印を解くって、無理よ無理。私が何回封印を解こうと思って試したけど、無理だったわ」

 

「いいから、頭を俺に向けろ。リボンを解くから」

 

今は参道にいる。それは本来の実力を封印されて、解けるほどの実力がなかったからだろう。それに俺は神だ、妖怪が出来ないことでも神ならできるかもしれん。封印は頭についてるリボンらしいので解いてみた。なんだすんなり出来たぞ。うおっまぶし、ルーミアが光りだし始めた。何だか妖気も増えてきてるし、身長も高くなってきている。

すると目の前には左手でおでこを押え、高笑いしているルーミアがいた、身長も高くなり、体つきも子供ではなくなっているリボンを解いたんだがルーミアのそばで浮いている、どういう原理で浮かんでいるんだ。

 

「遂にこの時が来た、まさか封印が解けるとは、まずはお前から殺してくれるわ!!」

 

「これは、もしかしなくても不味いんじゃないか。俺、絶体絶命」

 

俺に向かってルーミアが飛んで来た、まあ殺されん、こういう時のために、仲間にしたんだし。目の前になんか霧が出て来た、すると霧が集まり萃香が出て来た。萃香の能力は密と疎を操る程度の能力と聞いた。この能力を使って霧になることが出来るらしい。諏訪の国全体に霧を張り巡らせており、何かあった時は実体化し、対処すると言った感じだ。要は萃香は常に能力を使い諏訪の国全体を監視しているのだ。神社の方向から勇儀と華扇が走って来た。こうして見ると中々頼りがいがある。いつもは酒を飲むか何か食べてるだけだし。しかもまた華扇は何か口にくわえて食べている。後は任せよう。とりあえず逃げるか。神社に向かって走って行った。ダッシュダッシュ。

何か断末魔が聞こえてきたが気のせいだろう。一応勇儀と萃香と華扇には本能で動かず理性があって実力がある妖怪は生かし、諏訪の国に引き入れるように言っている。だから死ぬことは無いだろう。それに知らない仲じゃないんだし。あ、そういえばルーミア成長してるが分かるだろうか。まあ大丈夫だろう。

ルーミアが両手を後ろに縄で縛り上げられ連れて来られた。妖気からして大妖怪に匹敵するはずだが、流石に鬼3人はきついようだ。

 

「ほら、これルーミアだろう、何で大妖怪並に妖気が増えてるか知らないけど、仕事を増やさないでおくれ。酒が飲めないじゃないか」

 

勇儀がルーミアを担いで来ていたが、俺の前に下ろし、神社に入っていった。華扇は勇儀の背中について行ってる、萃香はいない、能力を使ってどこかに行ったんだろう、いや、滅多に仕事してないんだし、別に仕事を増やしてもいいと思うが。まあ、助けてくれたからいいけど。目の前にはうつ伏せで手を後ろに縛られているルーミアがいるどこか涙目だ。俺悪くないのに罪悪感を感じる。

今まで鬱憤が溜まっていたんだろう。封印されて本来の力が出ず、元は大妖怪なのに、今まで下の下になったんだから。まあ、誰かを殺したわけじゃないし咎める気は無い。それに楽しかった、殺されるかもと久しぶりに思った。俺は生きてる、死んでないんだ。神奈子はいつも俺を殺しに来るが、正直慣れてしまったのだ。だから早く神奈子を鍛え上げねば。そして俺を殺せるほどの実力を身に着けて欲しい物である。

 

「ルーミア、今回の事は不問にするから、安心しな。そのかわり頼みがある。これを聞いてくれたら、もう一度封印しないでやろう」

 

よっぽど嫌なのか、頷きまくってる。まだ内容を話していないのに。よし、これで言質は取った様なものだ。後は鴉天狗の種族の妖怪に会いに行こう。久しぶりに歩いていくか。まずは縄を解いてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう少しで山に着く。鴉天狗に会いに行くには、山の頂上にいるそうだ。足腰を鍛えれるな、最近衰えたような気がするし。山には行ってるが猪を狩ったりしてるくらいだしな。

 

「おいお前!!」

 

誰かが俺を呼び止めた、何だ、俺、何か気に障るような事したか。ただ歩いていたはずなんだが。振り返ったらサルの顔、鶏みたいな羽が体に、ネコ科みたいな手足をしており尾がありその尾は蛇だ。なんだこの生き物

しかも言葉を喋ったぞ女声で。人間なのか、そんな風には見えんが、妖怪か。どうやら縄張りに入ったそうだ。

 

「すまん、知らなかったんだ。すぐに出ていくから見逃してくれ」

 

「いいだろう、行けるものなら行くがいい。だが、お前はここで終わりだがな!!!!」

 

そう言いながらさっき言った生き物の姿で俺に向かって走って来た。会話が噛み合ってないようだ。

 

 

 

 




蓬莱山と言う山は実際に滋賀県にあります。日本三百名山の一つに数えられています
ですがこの時代に滋賀県なんて呼ばれてる訳がありませんし琵琶湖の名を出しました
この時代は豊聡耳神子がまだ生まれていなく、もっと昔ですから
琵琶湖がこの時代に何て呼ばれてたかは知りませんし琵琶湖がこの時代にあったのかは知りません、ですが読んでる人が蓬莱山がどこにあるのか分かりやすいよう琵琶湖の名を出しました。
なのでここは琵琶湖でお願いします。

永琳を連れて行こうかと思いましたが没、あの弘天が永琳を連れて行かないのは
華扇から話を聞いて動揺してると思ってください

余談なんですが、実際にある蓬莱という古代中国、東の海上にあった場所があり、仙人が住むといわれていた仙境の1つがあるんです。そこで華扇を出そうと思っていたんですが没。仕方ないね。理由は16話の後書きを見てください。


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情報


もし今回の話を見て納得できないなら言ってください直します。今回の話は結構大事なんですよ、だからその時は言ってください。

って20話まで来ちゃったよ!!どうしてこんなことに。前にも言いましたが本来この作品は2話で終わるはずだったんです、だったんです。




走って来たのはいいが石につまずいて、転んでうつ伏せ状態で地面を滑って俺の目の前に来て止まった。痛そうだ、顔が特に痛そうだ、思いっきり滑って来たし。今は人間みたいな姿になってる。変化でもしていたのか、外見を立派に見せて相手を脅していたのだろうか。

まずは立たせてやろう、肩を揺すってみたが反応は無い、気絶したんだろうか。実は起きてるが恥ずかしくて起き上がれないのか。

仕方ないので無理やり立たす、どうやら起きているようだ、顔が赤い。地面に転がって顔を擦ったからだろう。少し血が出てるし。

 

「大丈夫か」

 

「大丈夫なわけないだろう!?顔は痛いし、石につまずいて転ぶし、妖怪としての威厳が色々台無しだよ!!」

 

最初から威厳は無かったような気がするが、口に出すのはよしておこう。何をしていたのか聞くと、暇だったので俺を脅かそうとしたらしい。脅かすなら俺に向かって走ってこなくてもよかったような気もするが。脅かすにしても脅かす前に声をかけず近づいてから声をかけたらよかったんじゃないか

 

「暇なのか、他にすることは無いのか」

 

「無いよ、することなかったんだしお前を脅かそうとしただけだし。と言うか妖怪が怖くないの」

 

「怖くはない、今のお前はどう見ても人間にしか見えん。さっきの姿もあまり怖くなかったし。どんな生き物か理解はできなかったが」

 

ふーん、肝が大きいんだね。と興味がなさそうに山を見て腕を組んでる。する事無いのか、じゃあ諏訪の国に来て貰おうかな、もしくは友達になってみよう、暇つぶしにはなるだろう。紫と幽香と諏訪子の友達も増えるし。悪い子じゃないみたいだしな。

 

「じゃあ俺と友達になろう、それと俺の娘の友達になってほしい」

 

「お前とお前の娘と友達だって?嫌だよ!私は、友達なんか作んないからな!!」

 

嫌なのか、困ったな。しかし無理強いは出来ない。面白そうな子だったんだが。それに俺は山の頂上にいる鴉天狗に会いに行かねばならんし。一応友達になりたいなら諏訪の国に来いと言っておこうか

 

「じゃあもし、もしも友達になろうと思ったら、諏訪の国に来てくれないか。場所は分かるか」

 

「諏訪の国?あー、あの妖怪と神と人間がいる変な国ね、知ってる。でも行かないわよ!行ったとしても友達を作るんじゃなくて暇つぶしなんだから!!」

 

「暇つぶしでもいい、諏訪の国に来てほしいんだ。ただし人を驚かす程度ならいいが、殺しでもしたら」

 

「こ、殺しでもしたら?」

 

女の子が生唾を飲む音を鳴らせ、この話の続きのに興味があるのか食いついて来てる。だが詳しくはあえて教えず、俺は背中を向けて片手を上げて、鴉天狗がいる山に向かった。後ろで殺したらどうなるのさと大声で聞いて来るが聞かなかった事にしよう。聞けば誰もが教えてくれるわけではないのだ。それに気になるように言えば諏訪の国に来てくれるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山に着いたが、結構登ったぞ、さすがにキツイ、辺りは森ばっかだし、だが鴉天狗と交渉してうまく纏めて、蓬莱山の情報を聞き出さなくてはならん。俺と無関係とは正直思えない。急がねば、歩いていると、止まってください。と言われて視線を声の方に向けると鬼がいた額に勇儀みたいな角があり黒い髪で紅白の和装、右手に杯左手に鞘に入ってる刀を持ってる。なんでこんなところで鬼に出会うんだ。鴉天狗ならともかく鬼に俺を止める理由は無いと思うんだが

俺の不思議そうな表情に気付いたのか理由を教えてくれた

 

「一宿一飯の恩があるんですよ。恩を返そうと思って仕事が無いか聞いたら、見張ってくださいと頼まれまして」

 

理解した、要は見張りか。丁度いいので事情を説明して、鴉天狗の所に連れて行って貰おう。だが、いきなり来たやつを信じてくれるか分からんが。まあ物は試しだ聞いてみるとしよう。それとこの鬼、表情がムッとしている、何か気に障る事をしただろうか。してないと思うんだが、今会ったばっかだし。もしかしたら生まれつきなのかもしれない。

 

「実はこの山の頂上にいる鴉天狗に会いに来たんだよ、会わせてもらえないか」

 

「いいですよ、もし今日、神が来たら通すよう言われていますので」

 

神が来たら通すよう言われているって、ばれてたのか。いくらなんでも知ってるなんて早すぎないか。それとなぜ俺が神だと気付いた、あ、神気を感じ取ったのかもしれない。鴉天狗は情報が武器とは聞いてるが凄いんだな。これは 蓬莱山 についてますます聞かなければならんようだ。なぜ琵琶湖の近くにある 蓬莱山 に俺の苗字が同じなのか分かるかもしれん。

目の前にいる鬼は背を向け着いて来て下さいと言われて、後に続く。9割近くまで来た。門が見えて来た、門の前に門番なのか鴉天狗が2人がいる。一緒にいる鬼がその門番と少し喋っていたが、門番が門を開けてくれた。1人の門番が飛び、山の頂上に向かっている。開いた先は階段が見える。まだ登らなきゃならんようだ。自分に喝を入れて登り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと着いた、さすがにしんどい。目の前には何か塔みたいな形をした建物がある。その塔の建物の外側に穴があるパッと見た感じ2階なのか知らんが一つ上の階らへんに穴があり一つ一つ上の階に上がっていく事に穴が一つある。緊急の時はあそこに入って中にいる鴉天狗に情報を共有するためだろうか。一緒にいる鬼が先へと進んでいくので俺もついて行く。山の頂上についてもまだ登るのか。気が重い。

鴉天狗は鴉みたいな翼があるので、高い所にあろうと問題は無いんだろうが、俺は地に足付けた神なんだぞ、このままでは死ぬ。

塔の建物の頂上に着いた、扉の前には扉の両脇に鴉天狗がいて、見張っているようだ。止められるかと思ったが、鬼が扉の前に来て扉を開けても何も反応しない、俺もいるのに。さっきの門番の鴉天狗が上の鴉天狗に報告したのだろうか。まあ、楽に来れていい。いちいち敵意を向けられては困るし。

鬼は扉を開き奥に行くかと思ったが中に入ってから扉の脇にいる。奥に進んでください。と言われたので進むことにする。奥に進むと目の前には机の上に何も置かず、椅子に座り、数枚の書類を手に持ち、書類に目を通している鴉天狗がいた。俺が来たのに気づいて書類を机に置き、立ち上がって俺の所に来た。

 

「待っていたよ、いつか来ると思ってた」

 

待っていただと、しかも俺が来ると分かっていたとは、両腕を広げ笑いながら俺に来ると分かっていたと言ってきた。なぜ俺が来ると思っていた、疑問の視線を向けていると両腕を腰に当て微笑んで言ってきた。

 

「まずはお互い自己紹介から始めよう。私だけ知ってるのもあれだしね。私の名は 天魔 だよ」

 

「分かった、俺の名は 蓬莱山 弘天 だ 弘 と呼んでくれ」

 

さて、なぜ来るのが分かっていたかって話だったね、と、にやつきながら俺の疑問に答えてくれた。

 

「諏訪の国の、しかも王が、前に3人の鬼を諏訪の国に引き込んだからだね。急に国の戦力を増やしてきた。わざわざあの鬼を、そしてもう1人大妖怪を引き込んだ。戦力を増やすならいつかは情報役が必要不可欠、私達は情報に関しては一流だからいつか諏訪の国に引き込むと思っていたよ」

 

ルーミアの事はつい最近引き込んだんだ。しかも封印を解いたのは今日だぞ。それなのにもう知ってるとは、一流と言っても過言ではないのかもしれん。

 

「そしてさっきも言ったが目的も分かってるよ、情報役が欲しいんだよね」

 

笑顔で俺に人差し指を指しながら今度は微笑みではなくドヤ顔だ。ドヤ顔で言ってくるが、不思議とイラつかない、こいつの性格の魅力なのかもしれない。

 

「知っているなら話は早い。そうだ鴉天狗の情報力を諏訪の国に欲しいんだよ。そのかわり俺達諏訪の国の戦力が交渉材料だ」

 

情報が欲しい代わりに戦力が交渉材料ね・・・・・・と顎を一指し指と親指で挟み考え込む。悪くない話だと思うんだが。もし鴉天狗が対処出来ない妖怪が出たら紫と幽香、勇儀と華扇、ルーミアを向かわせる。萃香は駄目だ、あの能力で諏訪の国を監視してもらうんだから。それに紫の能力を使えば距離なんて無いようなものだ。それにそこまで諏訪の国とこの山は遠くない。歩いても1日もかからないし。それと鴉天狗は飛べるのだ、わざわざ俺みたいに山を登ったり下りたりする必要はない。しかも飛ぶとかなり早い。緊急でもすぐに諏訪の国に飛んで助けを求める事も出来るのだ。

困った時には諏訪の国に飛んで来て貰う事になるが、鴉天狗で対処できない妖怪に会っても戦力が手に入れば問題はなくなる。俺たちは情報役が手に入り、鴉天狗は戦力が手に入る、どちらも得をするのだ。その事について喋ったら、この話を受けますと即答してきた。これで諏訪の国に情報役が手に入った。鴉天狗は戦力が手に入った。後は蓬莱山について聞いてみよう

 

「実は、聞きたいことがある。 蓬莱山 と言う山だ。あれについて何か知っていないか」

 

あー、 蓬莱山 ねと右手で頭を摩りながら天魔は困った表情をする。情報は一流と聞いていたが、なぜ困る、まさか知らないんじゃないだろうな、情報の一流集団じゃなかったのか

 

「じ、実はあそこについては私達も詳しくは知らないんだ。ただ一つ知ってるのはあの山に 蓬莱山 の名がついているのは 蓬莱山 の近くに村があるんだけど、そこに旅人が来てあそこにある山の名は 蓬莱山 と言ったらしいんだ」

 

蓬莱山 は頂上から麓までもが霧が濃く鴉天狗が空中で見ても何も見えなくて、 空から 蓬莱山 に入っても霧が濃く方向感覚を失い迷うそうだ、何回入っても 蓬莱山 の麓に戻るらしい。何度試しても駄目だったので、諦めたそうだ。しかしなぜその旅人はその山に 蓬莱山 の名を付けたのか、一体なぜだ。分からん、分からんことだらけだ。

だが、蓬莱山 が一度だけ霧が薄まって何とか見えた時があるらしい、天魔がその時の目撃者がいるらしいので今から呼ぶそうだ。詳しい話を聞くとしよう。

鴉天狗の1人が入って来た、女の鴉天狗のようだ。可愛い感じの鴉天狗だ。まずは自己紹介からしよう

 

「俺の名は 蓬莱山 弘天 弘と呼んでくれ。早速なんだが、蓬莱山について何か知っていると聞いた、教えてくれないだろうか」

 

「私の名は 射命丸 文 です好きに呼んでください。蓬莱山についてですね、知っていると言っても一つだけですが、教えます」

 

お互い自己紹介し握手する。鴉天狗は背中に鴉と同じ翼があるくらいで、それ以外は人間と外見は変わらんな。

 

「実はあの 蓬莱山 を空を飛んで見ていたんですがあの深い霧が少しの間薄まったんです。そこで質素な家があって人影を見たんです。見た事が無い服装でした。髪色は、確か・・・・・・金、金です間違いない。性別は分かりませんでした」

 

髪色が金か、その情報だけではまだ分からんな、とりあえず文にはお礼を言っておいた。ちなみに文を含めた3人の鴉天狗を諏訪の国に情報役として送るらしい。これで情報に困らなくなったな。一応鴉天狗が諏訪の国の情報役として仲間になったと諏訪の国の民と家族の皆には説明しておこう。文は仕事があるらしいので部屋から出た。

しかしここまで情報が無いとは。これは俺が直接出向いた方がいいのかもしれん。あ、なぜこの山に鬼がいるのか聞いておこう。この部屋の入り口のドアの脇にいる鬼が気になるし

 

「天魔、なぜこの山に鬼がいる。ここは天狗の住処だったんじゃないか」

 

「いや、この鬼さんはただ旅をしていて。昨日、自分を鍛えるためにこの山を登ったのはいいんだけど。食料が尽きて頂上付近で倒れてたんだよ。そこで私達、鴉天狗が助けた訳」

 

食料が尽きて倒れたのか。まあ、食料無いと生きていけないのは、神も人間も妖怪も同じだしな。しかし鬼か、何かどこかで聞いたような。そんな事を考えていたら、扉の脇にいた鬼が話しかけて来た

 

「天魔さんから聞いたんですけど、勇儀と萃香と華扇が諏訪の国に仕えていると聞いたのですが、本当なのでしょうか。華扇はまだ分かるんですがあの勇儀と萃香がなぜ仕えたのか分かりません」

 

それは勝負に勝ったからなんだが、その事については天魔は喋っていないようだ。その事を教えると口元を手で押さえ驚愕している。酒飲み勝負で神が鬼に勝ったからだろう。正々堂々とは勝負してないので何か居心地が悪い。

久しぶりに勇儀と萃香と華扇に会いたいそうなので連れていくことにした。天魔は別に連れてっていいって言ったしな。元々恩に着せる気はなかったようだ、ただ恩を返したいと言われ、丁度見張りの鴉天狗が体調不良を起こし、そこに入ってもらったようだ。名前はコンガラと言うそうだ。コンガラ・・・・・・・どこかで聞いたような気がする、あ、華扇に前聞いた鬼じゃないか。早速山を下りよう。

帰る途中コンガラと喋っていたが、1人で旅をしていたのはただの気まぐれだそうだ。勇儀と萃香とは性格が全然違うな。性格は華扇に近いかな。何か、大和撫子みたいな鬼だ。美人な鬼だな。

 




コンガラはもう少し後で出そうと思いましたがここで出しました。
コンガラの性別は不明にすべきか、女にするべきか悩む。そしてルーミアは封印が解けているので髪をロングヘアーにするべきかどうか悩みどころ






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蓬莱山

あえて後半の地の文を少なくし台詞を増やしています。地の文がいくらなんでも少ないと思ったら言ってください増やします。

日常回を書きたいです、この話が終われば書くでしょうが。


一応前話を見たか確認してください


諏訪の国に戻って来た、神社に着いたらあの時の女の子がいる縄で縛られて動けないようだ。多分諏訪の国に入ったから萃香が捕えたんだろう。

前にも言ったが、本能で動かず理性があって実力がある妖怪は生かし、諏訪の国に引き入れるように言っているし。ただ今は実力は無いだろうが

将来性はあるだろう。その為に捕えたのかもしれん、近づくと俺に気づいたのか、暇つぶしに来たのにいきなり鬼が出てきて捕えられたぞ。と言っている。

説明するのを忘れていたな。仕方ないので縄を解いてやった。気になるように言ってよかった。紫と幽香の友達になってくれるか分からんが。

 

「暇つぶしに来たなら丁度いい。俺の娘に会ってほしい」

 

「嫌だと言いたいけど、どうせ嫌がっても連れて行かれるだろうし、仕方ないから行くよ。ただし、暇つぶしに来たんだからね、勘違いしないでよ!!」

 

名前は 封獣 ぬえ と言うらしい、右手を腰に当て左手で人差し指を俺に向けてる。素直ではないのかそれとも本心で言ってるのか分からんな。天邪鬼みたいだな。

 

「なんでコンガラがいるのさ、一体どういう事なの」

 

霧が集まって来て萃香が出て来た、隣にコンガラがいるから気になって出て来たんだろう。ひょうたんの中にある酒を飲みながら聞いてきた。ぬえは萃香を見た途端俺の背中に隠れて震えている。萃香に捕まって縄に縛られていたようだ。

 

「鴉天狗がいる山に行ったら出会ってな。頂上付近で食料が尽きて倒れた所に鴉天狗に助けられたらしい」

 

萃香に事情を説明した、興味なさそうに相槌をうっていたが、どこか呆れた表情で酒を飲んでいる。心配だったのかもしれんな。一緒に旅をしてたらしいし。積もる話もあると言う事でコンガラを萃香が神社の中に連れて行った。神社の中には勇儀と華扇がいるしな。邪魔しちゃあれなので、俺はこのぬえを紫と幽香と諏訪子に会わせなくては。いつもの空き地にいるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つけた、空き地で皆と遊んでいるようだ。諏訪子はいないようだ。紫と幽香を呼び、紫と幽香を抱き寄せ小声で強引にぬえをみんなと遊ばせてくれと言っておいた。ぬえは強引に遊ばせた方がいい気がする。ぬえのペースにさせるのではなく紫や幽香のペースに巻き込まねばならん性格だと思う。ならば強引に遊ばせ、ぬえのペースを崩してやろう。

 

「分かったわ、お父様。強引でいいのね」

 

「お、お父さん。いきなり抱き寄せるのは恥ずかしいからやめてよ」

 

紫は初心だなぁ、幽香はまったく表情が変わらない。ある意味2人は真逆だな。戦い方も真逆だし、個性的でいい。紫と幽香は俺の隣にいたぬえを無理やり引っ張って行った。紫には、後でスキマを開いてくれと頼んだ。諏訪の国から 蓬莱山 まではかなり距離がある一日では着かないだろう。さて、俺の目的は 蓬莱山 に向かう事だ。鴉天狗がいる山に行くときは永琳を連れて行かなかったが今回は連れて行こう。

 

「永琳、旅に出るぞ」

 

「弘、まずは理由から説明して」

 

永琳は今、蔵で何かを作っているようだ、何を作ってるかは教えてくれないけど。

いきなりなのは分かっているが 蓬莱山 について調べなければならん、一刻の猶予も許されない状況ではないが、早く知りたいのだ。永琳に 蓬莱山 について説明した、合点がいったのか、頷いて 蓬莱山 に行くと決まった。俺と永琳がいなくなるので、俺と永琳の身に何かあったら諏訪の国の王は諏訪子になる。諏訪子に会いに行かねば。

神社の縁側でお茶を飲んでまったりしてる諏訪子がいた。相変わらずの様だ。神奈子は諏訪子の左隣、藍は右隣で一緒にお茶を飲んでいる。藍は三角巾を頭に巻き、割烹着を着ているので掃除の途中で休憩なのかもしれん

 

「諏訪子、神奈子、藍。俺と永琳は旅に出ていつ帰るか分からん、諏訪の国を任せたぞ」

 

「いいよー、気を付けて行って来てね」

 

左手を上げ振って来た。諏訪子あっさりし過ぎじゃないか。もう少し別れを惜しんで欲しい物である。まさか反抗期か、いや、ただ興味が無いだけか。

 

「とっとと行け、そして二度と帰ってくるな。永琳には帰って来て貰わねば困るがな」

 

えー、神奈子は一応俺の妻って事になってるはずなんだが、妻が厳しい。これはもしや心配だけど素直になれないからこんな言葉を吐くのか、そう考えると可愛い奴よ。神奈子が睨んできたので頭を下げた。いつだって男は弱いのさ。

 

「私は、主と永琳様の弘天神社を守って待っています。お気を付けていってらっしゃいませ」

 

藍は縁側から立ち上がり綺麗に頭を下げて来た。これで後は任せてもいいだろう。こういう時の為に戦力を増やしたんだし、後は 蓬莱山 に向かうだけだ。なぜ 蓬莱山 と名づけられているのか、旅人はなぜ近くの村に来てわざわざその山の名を教えたのか。考えても答えは出ない。早速向かおう。

時間が惜しいので空き地にいる紫に頼みスキマを開いてもらい 蓬莱山 の麓に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麓に来たのはいいが聞いてた通り、辺り一面、霧が濃い、正直、あまり前が見えない。こんなんじゃ登ることができるんだろうか。永琳が懐かしそうな顔をしているここに来たことあったか、俺達ずっと諏訪の国にいたはずなんだが

 

「懐かしいわね」

 

「懐かしいってここに来たことあったか」

 

「ええ、とっても大事な所よ、思い出の場所だから」

 

ふむ、記憶にないが永琳がそう言うならそうなのだろう。しかし俺は覚えていない。まずは 蓬莱山 に入って歩いてみよう。永琳とはぐれないように手を繋ぎ霧の中に入っていった。

だいぶ歩いたが、今俺たちがどこにいるのかが全く分からん。霧が濃いのだ、だが迷わない様に永琳には道を覚えてもらっている、風の吹く向きや木の長さや種類が山の高さによって違うそうだ。それで分かるらしい。俺には全く分からんが

 

「まさか、この 蓬莱山 に人間が入り込めるとは思いませんでした」

 

いきなり声をかけられたので俺は剣を抜き戦闘態勢に入った。永琳は弓矢を相手に向けてる。相手の女は両手を上げ敵意が無い事を示し、俺たちは戦闘態勢を解いた

 

「急に話しかけてすいません。まさかここまで入り込めるとは思っていませんでしたので」

 

「お前、何者だ。なぜ 蓬莱山 にいるまさかこんな所に住んでいるとは言わんだろうな」

 

「いいえ、住んでいます。もう、ずっと」

 

霧が濃くて顔がよく見えない、だが嘘を言ってるようには感じない。丁度いい。ここに住んでるならこの 蓬莱山 について聞いてみよう

 

「俺はこの山 蓬莱山 について知りに来たんだ。知ってることを教えてくれないだろうか」

 

「なぜ、知りたいんですか」

 

「俺の名は 蓬莱山 弘天 と言う。隣にいる女性は 八意 永琳 だ。今聞いて分かっただろうが俺の名は 蓬莱山 でな、この山の名と一緒なんだよ。それで気になって来たんだ」

 

目の前にいる女は俺を見て何か考えているようだ、まあ、いきなりこの山と同じ名だから気になってこの 蓬莱山 に来たなんて信じられんだろう。だが本当だしな

 

「そうですか、あなたが 蓬莱山 様ですか。そして隣にいるのが 八意 様。この山 蓬莱山 について知りたいんでしたね、分かりました、知りたいなら着いて来て下さい」

 

そう言って彼女は背を向け俺と永琳がいた逆の方に歩いて行った、罠かもしれんが何か知れるかもしれん

 

「行くぞ、永琳。もしもの時はあいつを捕えて吐かすぞ」

 

「ええ、分かってるわ」

 

永琳とはぐれないよう手を繋ぎ、俺達は彼女について行った、奥に進むと質素な家がある、ここで暮らしているんだろうか、彼女にここで待っていてくださいと言われ俺と永琳は家の前で待つ。

 

「永琳、彼女についてどう思う」

 

「そうね、最初は敵意を感じたんだけど今は感じないわ、むしろ好意的になってるわね」

 

最初は敵意だったのに今は好意的だとどういうことだ、なぜ彼女が敵意から急に好意的になる、理解できない

 

「お待たせしました、どうぞ中に入ってください」

 

彼女は俺たちの元に来て質素な家のドアを開け中に入っていった俺と永琳も入った

 

「この部屋でお待ちください」

 

また待たされるのか、見た所客間の様だが。

 

「永琳、どうする。捕えるか」

 

「まだ駄目よ、もう少し待ちましょう」

 

もどかしい、早くして欲しいものである。すると彼女がドアを開け入って来た。て言うかなぜドアあるんだ。

 

「お二人に会わせたい方がいます、その方は私の上司です」

 

なぜわざわざ俺達に上司を会わせる必要がある、この女何を考えているのか全く分からん

 

「お待たせいたしました」

 

綺麗な女性が入って来た、文から聞いた金色の髪だ。頭には何も被ってない、彼女を文が見たんだろうか。いや待て、よく見るとこの綺麗な女

 

「お久しぶりです、弘さん、八意様」

 

「し、知らないな。あんたみたいな美人な女は俺は見た事が無い」

 

「いいえ、知っているはずです。私は弘さんの女、名は 乙姫」

 

金髪の彼女は向かい合いに座り俺を見て微笑んだ、そして思い出す。昔、俺は地球に残るため永琳以外を捨てたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一つの名は 綿月 豊姫 です。数億年かけてまた会えました。まるで織姫になった気分です。あの話は年に1度だけ会う話で数億年に一度会う話じゃ無いですけどね」

 

かつての俺の女が月に行ったはずなのに、なぜか地球にいた。そして思い出した、豊姫は金髪だったと




実は紫、藍、勇儀、ルーミアを諏訪の国に入れたのは金髪のキャラが多いと読んでる方に印象付ける為です。もちろん戦力を増やすためでもあります。
そのために金髪が多いと諏訪子が生まれた回での後書きでも言いましたし、ルーミアを最初出した時も弘天が金髪の知り合いが4人目だと地の文であえて言わせました、

金髪キャラを増やしたのは金髪キャラが戦力として強力だったと言うのもありますが、この時の為でもあります、ほとんどの方は豊姫だとは思わなかったんじゃないでしょうか。
紫、藍、勇儀、ルーミア、またはオリキャラか他の東方キャラと思ったか、何か関係があるのかも、と思ったのかもしれません。








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海底

急展開です。今回は見ない方がいいと思います。そして台詞が多いです。説明会だしね。地の文はいつも以上に少ないです

もし今回の話を見ておかしいだろと思ったら言ってください。問題部分はすぐに直します。


本当は一週間後に書く予定でしたが、事情が変わりました



意味が分からない、俺は大昔ロケットに豊姫と依姫を入れたはずだ、その時いたんだから、てか俺が入れたんだし間違いない。そもそも核が落ちた時には都市は焼け野原だったんだぞ。

あの時豊姫がロケットに乗らず地上にいたら死んでたに決まってる、地下シェルターを知らなかったんだ。俺と永琳だけが知ってた。俺の家で地下シェルターを作る話を永琳としてから誰にも話してない。精々俺の家で数回程度その事について軽く会話したくらいだ。最悪だ、俺と永琳は死んだ事になってるはずなんだ。俺と永琳が生きてるのがばれたら連れ戻される。何か打開策を考えなくては。

 

「弘さん、私は月に連れ戻す気はありませんよ」

 

豊姫が変わらぬ笑顔で俺に語りかけて来た。豊姫、一体何を考えている。しかも俺と永琳とは数億年ぶりなんだぞ、なぜ驚かない。俺が眉を寄せているのが分かったのかくすくす笑いながら口を開く

 

「私は、連れ戻す気はありません。ただ、地上人を見ているのです。この世界を、弘さんが、月を選ばずこの地球を選んでからずっと」

 

ますます意味が分からないんだが、頭が痛い

 

「そして私が驚かないのは2人が生きてると知っていたからです。まさかここに来るとは、弘さんの苗字が山に名付けられていて弘さんがそれを知ったなら来るかもとは思っていましたけどね」

 

俺と永琳は妖怪と仲良くなってる変わり者夫婦な神として名を知られているらしい。今その事を初めて聞いたのか永琳の顔は赤い。そして豊姫の考え通り俺は動いたようだ

 

「鈴仙から聞きました。この山の名 蓬莱山 について聞きたいと。教えましょう」

 

鈴仙と言うのは豊姫の後ろで控えている女性の名だそうだ、だが今はそんな事はどうでもいい。それより 蓬莱山 についてだ早く知りたい

 

「豊姫、御託はいいからさっさと教えろ」

 

「そう慌てないでください、ちゃんと説明しますから」

 

慌てるにきまってるだろ、俺の苗字が山に名づけられてるんだぞ。ありふれた苗字ならともかく、この苗字は地球には俺と、紫、幽香、諏訪子だけなんだ。親は月にいて地球にはいないんだ。誰だってほとんどない苗字が山に名づけられたら気になるに決まってる

 

「この山 蓬莱山 は元は弘さんが、かつて都市を守った土地に出来た山なんですよ」

 

俺が守っただと、永琳が俺の服の袖を引っ張って来た

 

「まだ思い出せないの?ここの山はかつて都市があった場所で、私と弘が約束した思い出の場所なのよ」

 

忘れるなんて酷いわ。と少し落ち込ん永琳が言うが、忘れていた。当たり前の事をいっただけで約束のつもりじゃなかったからだ。しかも約束って核で都市が焼け野原になり俺が、まるでアダムとエバみたいだなって思ったあの時か。じゃあなぜ山が出来ている、あの時は焼け野原で何もなかったんだぞ俺の考えに気づいたのか永琳が答えてくれた

 

「あのね、弘。あれから数億年は時間が経ってるのよ。山の一つや二つは出来るわよ」

 

永琳が溜息をつき左手で頭を押さえている。そうかそれだけ時間が経っていたのか。そんなの忘れてたな

 

「そうです。弘さんが残り、都市があった場所に山が出来て、私がこの山を 蓬莱山 と名付けました。弘さんの苗字に山が入っていましたし、丁度いいと思い苗字を使いました」

 

豊姫が右手で胸をそっと抑え目を閉じた

 

「名付けたのは豊姫か、じゃあ近くの村に旅人が来てこの山の名は 蓬莱山 と言っていたと言っていたがそれは豊姫か」

 

「いいえ、違います。それは鈴仙に頼みました」

 

そこの村で鈴仙は村人から俺と永琳の話を聞いたらしい。なぜ鈴仙は出会った事が無い俺と永琳の事を知っているのかについては、豊姫から昔から耳にタコができるくらい聞かされて、名を覚えて、俺と永琳の名を村人から聞いて豊姫に教えたそうだ。豊姫は一旦言葉を止め口を閉じ、また言葉を吐いた

 

「地上人は弘さんが都市を全月人を守った事なんて知らないでしょう。ですが、全月人を守ってくれた人の名を、好きな人の名を知って欲しかったのです。例え都市があったのを知らなくてもです」

 

俺は守ってなんかいない。ただ、俺は結婚が出来るのは1人までと言う常識が無い地球に残りたかったんだ。そんな出来た人間じゃない、俺は自分勝手で自分の為に生きてる人間なんだから。

 

「じゃあこの霧は何だ、なぜここまで霧が多い」

 

「それはこの山特有のものですね、だからこそ私と鈴仙はここに家を建てました。いえ、持ってきたと言うのが正しいですね」

 

持って来ただと月から地球にどうやって持ってくると言うんだ、焦るな俺、落ち着け、じゃないと話が理解が出来ない。俺は理解するためにここに来たのだ

 

「じゃあ鴉天狗がこの山に入っても麓に戻ると聞いていたがそれはなぜだ」

 

「ああ、あの邪魔な妖怪ですね。鈴仙の能力、物の波長を操る能力と私の能力を使って麓に戻していました。邪魔でしたが、殺すと後が面倒ですから」

 

鈴仙の能力は光や音の波長を操り幻覚を起こす事が出来るそうだ。その能力で山の霧の波長を操り迷路状にしたらしい。豊姫が手のひらを上に向けて、右手がグーの状態で左手にポンと置き何かひらめいた表情だ

 

「この質素な家で話すのはやめて、他の場所で話しましょう。いい場所があります。私の能力で行きましょう」

 

「他の場所に行くのか、それに豊姫の能力ってなんだった」

 

どこに行くんだここは山の中なんだぞ、

 

「酷いです、私は弘さんの事をひと時も忘れたことは無いのに、私の能力は海と山を繋ぐ程度の能力です」

 

豊姫は忘れられてショックだったのか頭がガクッと落ちた。鈴仙から桃を受け取り桃を齧っている。しかし数億は経ってるんだぞ、だが、忘れてすまん豊姫。俺が豊姫の能力について首をかしげていると永琳が教えてくれた

 

「豊姫の能力は海と山を繋ぐ程度の能力で遠距離を結びつけて転送させる事が出来ると昔教えたでしょう」

 

まさか、長い年月が経ってボケてしまったの、と永琳が心配そうに俺を見てる。永琳が失礼なことを言ってきた。そうか、それでさっき家を持ってきたと豊姫が言ったのか。合点がいったぞ。何だか紫に似た能力だな。遠い所に行けるし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら何か豪華な部屋に着いた、目の前には横に無駄に長い机があり机の上には綺麗な皿に桃が乗ってるこの部屋の周りには煌びやかな物がたくさんある。諏訪の国の文明では考えられないようなものばかりが周りにある。一瞬だったぞ紫のスキマでも数秒はかかるのに。凄いんだな。ちなみに鈴仙と名乗る女の子もいる、俺と永琳の後ろにあるドアの脇に立ってるさっきからだんまりだ。喋る気配が無い

 

「着きました、竜宮城に」

 

「竜宮城・・・・どこにある所なんだ」

 

竜宮城は諏訪の国の西に丹後国と言う海辺の近くにある場所の近くの海底らしい。海の中にあるんだと。海底だよ海底、月人、文明進化しすぎだろう。永琳がいなかったのに。いや永琳がいなくても月人が地球にいた時にもうこの技術が出来ていたのかもしれん。俺そういうの興味が無いし。知らないんだよ。目の前にある無駄に横に長い机にある。椅子に座って待っててください。と豊姫に言われ、豊姫は自動ドアに向かいその奥に行った。自動ドアがあるのか、そう言えばさっきの質素な家にもドアがあったな。月人の家なら納得だ。俺と永琳が待っているが落ち着かない。無駄に広い部屋だし、目の前の机に乗ってる桃でも食べよう。永琳は食べなかったけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間が経ち、豊姫が入っていった自動ドアから豊姫が出て来た隣には女性がいる。だが誰かに似てるような気がする。誰だったかな、思い出せない。永琳がその子をじっと見てる。永琳は彼女を見た事があるのだろうか。スゲー美人な子だ。まるで人形みたいだな

 

「実は彼女に会ってほしくて竜宮城に連れてきました。弘さんに会いたいと言っていましたし。最初は亡くなっていると話していたので、会えなくて落ち込んでましたけどね」

 

女の子はお辞儀をし、俺を見て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、お兄様。私の名は 蓬莱山 輝夜 貴方の妹です」

 

この前髪ぱっつんで人形みたいな女の子。思い出した、母さんに似てるんだ。

 




豊姫がなぜ前話で乙姫と名乗ったのか、なぜ竜宮城に豊姫が関係するのか、俺が説明するより自分で調べてもらった方がいいでしょう。結構関係があります蓬莱山と竜宮城と豊姫はね、調べたらすぐに出て来ると思います。だからこそ豊姫を蓬莱山に出したのです

今回は有名な話、浦島太郎と御伽草子などの話が混ざって出来ています。御伽草子の話には蓬莱山の事が書かれておりその話の最後の部分と今回の話を逆にしました。詳しくは調べてください

1話で弘天の母親、虎姫の容姿について無駄に詳しく書いたのは今回の為です。ですが虎姫だけ容姿を書くのは不自然なので弘天の父、弘についても容姿を書きました。あれ実は伏線だったんです。輝夜の容姿に似せて書いたのです。虎姫の容姿については皆さん輝夜と同じだと気付いていたでしょうがね。今回で1話と似たように地の文で輝夜の容姿を説明させるために書きました。2話で弘天の夢ですが輝夜を弘天と永琳の娘として出しました。これは弘天と永琳の娘になって出るのかと思わせるためです。6話の地の文で豊姫の能力の説明も伏線でした。そして弘天をなぜ蓬莱山家として何の為に生まれさせたのかを考えこの話が出来ました。すべてはこの時の為です。地の文で出しましたが丹後国は実際にあった名です。この時代にあったかは知りませんけど。パトラッシュ、俺はもう、疲れたよ・・・・・・・・

今回の話について質問があれば聞いてください、答えます


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神使

実はこの話の次はもっと急展開の予定だったんですが、それをすると読んでる方が疲れると思いその展開はもう少し後にします。

だから次の話からは日常回になるんじゃないかな。書かないけど





妹か、俺に妹だと。そんな事俺は知らないぞ。いつの間に妹が生まれたんだ、月人が月に行くときにはそんな話は聞いていなかった。親は妹が欲しいとはいつも言ってたが、まさかできるとは。もしかしたら月に行く日には妊娠してたのかもしれん

俺達月人は寿命の概念がないせいか、子供に中々恵まれないんだが出来るとはな

 

「私と依姫は輝夜の義理の姉になりますから。輝夜の世話を弘さんのお義母様とお義父様に頼まれてまして」

 

輝夜は地球の事が気になって豊姫に頼み地上に連れて行ってもらっているらしい、豊姫の能力を使えば数秒もかからず地球に来れるからだろう。豊姫と依姫は義理の姉と言ってるが結婚した覚えはない、俺の女ではあるが。輝夜を世話と言ってるが勉強を教えたり、家事などを教えるくらいらしい。戦いは教えてないそうだ。戦いを教えてないなら依姫は一体輝夜に何を教えているのか。頭が良かったし勉強かな。

 

「つまり、その子は私の妹にもなるのね、初めまして。私の名は 八意 永琳 永琳と呼んでね」

 

何を言ってるんだ永琳は、俺と永琳はまだ結婚してないんだぞ。妹と呼ぶには気が早すぎる。輝夜は慌てて頭を下げ、輝夜です、よろしくお願いします。永琳お義姉様。と呼ばれて嬉しいのかもう一度言ってと繰り返して輝夜に言ってる。輝夜がたじたじじゃないか。今はほっとこう

 

「まあ、いいか。永琳と豊姫と依姫は俺の女だし」

 

「そうです。八意様、そして私と依姫は弘さんの女。その事実は何があろうと変わることは無いです」

 

だから早く八意様に手を出して私と依姫にも手を出してください。などと言ってる、もう手を出してもいいのかもしれんな。あれから数億年経ってるんだし、俺の夢もまだまだだが近づいている。永琳が夢を認めないから俺は手を出さなかったんだし。押し倒すか。いやしかし夢を認めてくれてないのに押し倒すのもな。

 

「それより、月に戻らなくてもいいのか、あれから数億年は経ってるんだ、偉くなってるんだろう。仕事はいいのか」

 

「いいのです、仕事はいつもサボっていますから。仕事よりも輝夜が大事です。依姫がうるさいでしょうけどね」

 

豊姫が輝夜の頭の上に手を乗せ、撫でている。俺も仕事は良くサボっていたので豊姫を叱る事は出来ない、叱る気もないが。名は輝夜だったな、美人な女だ、まだ幼いが大人になったらいい女になるだろう。そう言えば思い出したが伊邪那岐と伊耶那美は兄と妹なのに夫婦だったらしいな、俺はもしかしたら禁断の扉を開くかもしれん。俺、神だし、神話では血が繋がった身内と夫婦なんてよくある事だし問題はないだろう。だが輝夜は子供だからまだ駄目だな。

 

「それよりも、今は輝夜と話してあげてください。さっきも言いましたが弘さんに会いたがっていましたし、弘さんが地球に残ってからのお話を輝夜に聞かせてあげてくれませんか、私も聞きたいですし」

 

地球に残ってからの話か、ほとんどは永琳と一緒にいて、地下シェルターで過ごしてたからな。話す事と言えば諏訪の国が出来た時の話から始めよう

 

「分かった、可愛い妹が聞きたそうだし、話そう」

 

俺は諏訪の国が出来てから今現在までの話を永琳と思い出しながら輝夜に話した。豊姫から聞いたんだが月に行ったときに月の妖怪がいたらしい、その名はキクリだそうだ。月の神は月読命だが月の妖怪はキクリと言う事だろうか。後この竜宮城には亀がいてその亀はペットで名は玄爺、空を飛べる亀らしい。亀が空を飛べるのか・・・・・・今思えば楽しい事ばっかりだったな。俺は恵まれてる、あとは永琳がいたと言うのがデカい。永琳がいなくちゃ俺は餓死していただろう。感謝しなくちゃな、とりあえず隣にいる永琳にお礼の気持ちを込めて輝夜と豊姫にばれないよう、背中から尻を撫でておいた。目の前には横に無駄に長い机があって、向かい合いに豊姫と輝夜が椅子に座っているので、机が邪魔して見えないだろう。何か永琳の息が荒い、発情したか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話も終わり、結構な時間が経ったと思う。この竜宮城、閉鎖空間だし時計は無いし、太陽が見えないので時間が分からないのだ。豊姫に聞こう

 

「豊姫、そろそろ俺と永琳は諏訪の国に帰る。諏訪の国に連れて行ってくれ」

 

「あ、そうですね。長話をしてしまい時間を忘れていました。分かりました、輝夜、弘さんにお礼を言いなさい」

 

「はい、豊姫お義姉様。弘天お兄様、面白い話を聞けて私は嬉しかったです。ありがとうございました。また来てほしいです」

 

輝夜は椅子から立ち上がり、机から数歩離れてからお辞儀をして感謝の意を表した。別に頭を下げられる事じゃないが、昔話しただけだし。俺も懐かしい思い出を思い出し、いい気分だ。永琳も過去の思い出を語ってどこか嬉しそうだ。輝夜にはまた来ると片手をあげ輝夜に言った。それと諏訪の国に戻る事は出来ないようだ。豊姫の能力は一度行った所にしか行けないみたいで、諏訪の国に行った事が無いから連れて行く事は出来ないそうだ。だが大和には行った事があるらしいので、大和に能力で転送してもらおう

 

「諏訪の国に戻るその前にお二人には見て欲しい物があります、まずはそこに行きましょう。丁度いい時間ですし」

 

豊姫が立ち上がり、何か思いついたようだ、丁度いい時間って時間が分かるのか。腕時計でも付けているのだろうか。下らん事を考えてると気が付いたら目の前には海があり、夕日が見える。綺麗だ

 

「ここは、丹後国。ここから見る夕日が好きでして、弘さんと八意様にも見て欲しかったのです」

 

夕日が好きなのか、確かに中々の物だ。輝夜は竜宮城に残しているらしい。輝夜は戦う事が出来ないので連れて来ないのだ、右隣には永琳がいて、左隣には豊姫がいる。ここは男として抱き寄せねばと思い2人を引っ張り抱き寄せた両手に花だな

 

「弘、私はあなたを愛してるわ」

 

「私も、弘さんを愛してます。それは依姫も同じです。こんな事が依姫にばれたら説教物ですね」

 

俺に寄り添う2人を抱き寄せて夕日を見る、何か最近忙しくてゆっくり出来なかった気がする。諏訪の国の為だし仕方ないがな。俺と永琳と豊姫で夕日を眺めてたら何か海の向こうから一列になって目の前の陸まで続いてるんだが、何だあれ。目を凝らすとその一列に並んだ生き物の上で何かが、いや少女だ。その生き物の上でこっちに向かいながら一つ一つ海に浮かんでる生き物を飛び越えながらこっちに来てる。いきなりだったので頭が真っ白になった。あと陸まで少しという所でその少女は立ち止まり、海の上に浮かんでいる生き物に向かってどこか馬鹿にしたような表情で何かを喋ってる。

思い出した海の上で浮かんでるの確かあれサメじゃなかったか。なぜサメが海の上で海の向こうから一列になって目の前の陸まで海の上を浮かんでいるんだ。サメが少女に何を言われたか知らんがサメたちは少女に向かって食い殺そうとしている。何かサメを怒らせるようなことを少女は言ったのだろうか。もう少しで陸に着くはずだったが陸に続いていたサメが海に沈み道が無くなり先に進めないようだ、少女は海の上に一匹だけ浮かんでるサメの上にいて蹲ってる。不味いな、どっちが悪いか知らんが助けた方がいいだろう。

 

「豊姫、能力を使ってあの子を助けてやれ」

 

「分かりました、弘さん」

 

豊姫に頼んで少女を俺の目の前にワープさせてもらった。目の前にいる少女は蹲っていたが、何も起こらないので周りを見たら

俺達を見て唖然としてる急だったので何が起きたか分からんのだろう。豊姫の能力で陸にワープさせたと言うと、少女はホッとして豊姫に頭を下げありがとうと言った。事情を聞いたら海の向こうの大陸から来たらしい、日本に来たかったが海を渡る手段が無かったのでサメを騙して、海を越えてやって来たようだ。それを聞いて同情の余地はないと思った。この少女、一度痛い目にあわす必要があるな。良い事を思いついた。

前に神使、要は藍みたいな神の使いの中に確か兎がいたと藍が言っていたはずだ、この少女の耳、兎みたいだし元は兎なのかもしれん。丁度いい、こいつを神使として使ってやろう。藍はずっと働いていて休みが無い。少しは楽になるかもしれん。この少女が役に立つか分からんが、そこは教育してやろう。時間だけはあるんだ。あと、神使とは神の眷族で神意を代行して現世と接触する特定の動物のことだと永琳に聞いた

 

「お前を扱き使う事にした。行くぞ、兎みたいな耳をした少女」

 

「兎みたいな耳じゃなくて兎の耳だってば!離せ!!扱き使われてたまるかー!!!!」

 

サメを騙したんだ痛い目を見てもいいだろう。少女の頭にある二つの兎耳を掴んで大和に向かうか




竜宮城の話を書いたし玄爺を出しました、亀ですし。キクリも出しました。2人は旧作キャラです。

今回の話は因幡の白兎です。その因幡の白兎の話は丹後国で起きたのではなく、気多郡、今で言う鳥取県で起きた話なんですがここでは丹後国で起きた話だと言う事にしてください。

あと、この話が起きるのはこの時期じゃなくてもっと昔月人が月に行く前の話なんですが、ここではこの時期と言う事にしてください。本当は鳥取県に伝わるもう一つの話の方にしようと思ってました、天照も出してましたし。ですが没

少しずつだが東方キャラが増えてきてる


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鰯の頭

東方キャラを出しても出した東方キャラ全員が重要な意味がある訳ではありません




大和に着いた、着いたと言う実感はない一瞬だし。豊姫は来ていない、竜宮城に戻ってる。大和に着いたのはいいが雨が降ってる、お腹が減ったので兎耳の少女を連れて永琳と近くの店で食事でもしよう。

店について永琳とご飯を食べてる、兎耳の少女と話してたら名は 因幡 てゐ と言うそうだ。今てゐはニンジン料理を食ってる。ニンジンが好きなようだ、逃げるかと思ったがニンジン料理に夢中で逃げる気配が無い。俺も食う事に集中してたら後ろの席から話し声が聞こえた

 

「おい、聞いたか。最近美人で赤髪の女の緑の服を着たのが大和に来て、大和の武術家を全員倒したらしいぞ」

 

「本当か、大和の武術家は皆凄腕のはずなんだが」

 

「それだけその女が強いって事だろうよ、それに大和の武術家は自分たちの強さにどこか酔ってたしな。井の中の蛙大海を知らずって事だな、いい薬にはなったと思うぞ」

 

美人で赤髪な緑服の女が大和の武術家を倒したのか、凄いな大和の武術家は100人以上いたはずなんだが。しかも美人だと、そこまで強くて美人なら諏訪の国に欲しいな諏訪の国に来てくれたらいいが。ふと見ると店の出口に茄子の色をした傘が立てられてる。何か汚れてて埃がだいぶ被って見える。最近誰も触ってないようだ。誰かの物なのだろうか、いやでもそれだと埃が被ってるのはおかしい。使わないなら出口に置くわけがないし。気になって俺は店の女将を呼んで傘の事を聞いた

 

「ああ、あれね。お客さんの誰かが置いてったみたいだけど、日時が経っても取りに来ないんだよ、誰かが使ってくれたらいいんだけど紫色で不気味だから、皆使いたがらないんだ」

 

「そうなのか、じゃあ俺にくれ。丁度雨が降ってるし2人は入れる大きさだしな」

 

「本当かい、それはありがたいね。いいよ持って行っておくれ」

 

よし、これで雨が降ってても諏訪の国に帰れるな。傘に永琳と入りながら帰ろう。てゐは逃がさないように俺が抱いていれば傘に入るだろう。嫌がるだろうが仕方ない。俺と永琳とてゐはご飯を食べ終えて金を払い店を出た。

帰る途中銅像が見える、あれは天照、月読命、の銅像だな。かなりの完成度だ。なぜか須佐之男の銅像が無い。もしかしたら天照、月読命、の銅像を作ったのは男なのかもしれん。俺も作るなら男の銅像なんて作りたくないしな。しかしまるで本人の様だ。この時代にここまでの銅像を作れる人間がいるとは。永琳もそっくりね。と言ってるし、てゐは俺が抱いて捕まえてててゐは逃げようとしてるが力を籠め逃がさない様にしてる。良い物が見れた、諏訪の国に帰って俺も可愛い子の銅像でも作ってみるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪の国に着いた。霧が集まって萃香が出て鰯の頭を食べながら、お帰り、旅にしては早かったね。と言ってきた。今萃香は鰯を食ってるが、鬼は鰯の頭が好きらしい。酒だけが好きなわけじゃないようだ。鬼にも味覚はあるんだし他に好きなものがあってもおかしくないか。

 

「ああ、色々あったんだよ。それと萃香、頼みがあるんだが」

 

「何?」

 

「俺が今無理矢理抱いている、兎の耳みたいな耳をした女の子の名は 因幡 てゐと言うんだが諏訪の国から逃げないように見張っててくれ。また鬼ころし作ってやるから」

 

ついでに、萃香には藍にてゐを会わせて藍に教育してもらうように言っておいた。てゐは、

 

「私は神使になる気はない!離せ!」

 

と言っている、まあ、神使にするけどな。俺がてゐを神使として教育しろと藍に言えば、藍はてゐを絶対逃がさないだろう。逃げれたとしても諏訪の国には萃香が能力で監視しているのだ。正に前門の虎、後門の狼だ。いや、前門の狐に、後門の鬼か。逃げ道などないぞ。だがてゐには諏訪の国を気に入らせてやる。そしたら出ていく気が失せるだろう。どれだけ時間が経っても諏訪の国が気に入らずてゐが出ていきたくなったらてゐは神使にせず諏訪の国から出すけど。藍の仕事を減らしてやりたいんだがな、俺がするわけにもいかんし。萃香は鰯の頭を飲み込み歓喜の表情だ

 

「本当!?あれ美味しかったんだよね~、分かった!私が逃げないように見張ってるよ、任せて!!」

 

鬼ころしは勇儀と萃香と華扇には好評だったが諏訪の国の民は普通と言っていた。元々鬼の為に作った酒だし。俺が無理矢理抱いていたてゐを萃香はふんだくり神社に向かって走った。てゐは叫び声を上げてたが灸を据えてやらねばならん。それと騙すのは悪い事とは言わん、騙す事が必要な時もある。ただ、騙すにしても最後まで騙さなきゃならん。騙してたことを言うにしても陸に上がってからでもよかったと思うんだが、詰めが甘い、甘すぎる。

 

「帰るぞ永琳」

 

「ええ、帰りましょう。我が家に」

 

永琳と並んで神社に向かった。何だか久しぶりに帰った気がする。今は雨がまだぽつぽつ降っているので傘に入ってる。疲れたないろいろあり過ぎた。豊姫が地球にいるし、妹の輝夜が出て来たんだ。疲れるにきまってる。当分は何もなければいいが。そうだな、まずは銅像でも作るか。2体か3体ほど作ろう。

神社に帰る途中空き地に紫と幽香とぬえがいた、3人とも傘を手に持ってる。紫と幽香は楽しそうに話してるがぬえは戸惑っている様子だ。歳の近い女の子と喋ったことは無いのだろうか、これで諏訪の国を気に入ってくれたらいいが。別にぬえが諏訪の国に住み着かなくてもいい、ただ遊びに来てもいいかなと思ってほしいのだ。邪魔しちゃ悪いし、このまま帰るか。永琳は紫と幽香とぬえをみて母性あふれる表情だ。まだ子供作ってないのに母性あふれる表情をさせるとは。恐るべし

神社に着いたら藍が待ってた。てゐは神社の中に入れてるらしい。勇儀と華扇が中にいるので逃げれないだろうな。逃げれても萃香が出てくるし。藍が近づいて来て藍が手に持ってた手紙を永琳に渡した。

 

「手紙が主と永琳様宛に来ていました」

 

「手紙だと、俺の知り合いに手紙を送る奴なんていたか」

 

渡したら俺と永琳に頭を下げ神社に入っていった。永琳は手紙を読んでいる。読み終えたのか俺を見て手紙を渡してきた

 

「神綺からの手紙よ」

 

「・・・・そうか、月人が月に行く前以来だな」

 

「魔界が出来たらしいわ、今は地獄を作ってる途中みたいね。あとサリエルが天界を作り終えて、冥界を作ってるみたいよ」

 

「夢が叶ったか、神綺はいつか自分が世界を作ると言っていたしな。なぜサリエルが冥界と天界を作るのかは知らんが。いつか2人に会えるだろう。それより耳が痒いから耳かきしてくれ」

 

「分かったわ、じゃあ神社の縁側で膝枕してあげるから早く行きましょう」

 

俺と永琳は神社に入り紫色の傘に付いた汚れを拭き取り、神社の入り口に立てて置いた。そして俺と永琳は縁側に向かい俺は寝ころんで永琳が膝枕した状態になった。永琳が俺の頭を撫でてる、眠くなったので寝た。

 




節分の話なんですが、鬼は鰯を焼く臭気と煙で鬼が近寄らないもしくは節分の夜に柊に鰯の頭を付けて飾っておくと鬼よけになる言われていますが、
実は鬼は生臭い鰯の匂いが好きで頭を玄関先から吊るし臭いで鬼を誘うとも言われています。地域によって節分の話が違うようですね。
だから鰯の頭が好きと言う事になりました。

弘天と永琳と神綺とサリエルは幼馴染設定です。



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セクハラをしよう

セクハラ回です。いや、最近真面目な話が多かったけど元々この作品はこういうものだったと思うんですよ

だから今更ですがそういうのが嫌な人は見ない方がいいんじゃないかな。セクハラとして正しい意味だとセクハラは神奈子だけですがね、嫌がらなければセクハラじゃないし

そしてこの作品は健全です。誰が何と言ってもね。


もう一度言いますが見ない方がいいんじゃないかな



「コンガラまた旅に出るってさ」

 

「そうか、また食料が尽きて行き倒れなければいいが。コンガラは今何してるんだ」

 

コンガラか、大和撫子な女だったな。諏訪の国にいて欲しいが、酒飲み勝負でコンガラに勝って約束した訳じゃないしな。仕方ないか。それと萃香がいつも持ってる瓢箪は酒が無限に出るらしい、無限と言っても瓢箪と同じ大きさの量だけらしいがそれでも十分凄い、作った奴月人に負けない技術持ってるんじゃないか。

 

「今コンガラは諏訪の国を見てるよ。民が私達鬼を、妖怪を全く見ないって言ったらコンガラ信じられなかったみたいでさ」

 

私も逆の立場なら同じ反応するだろうけどね、萃香が酒を飲みつつ、つまみを食いながら言った。どうやら諏訪の国は鬼や妖怪から見たら異常らしい、常識に囚われない国でいいじゃないか、俺の国らしいし。

萃香は話が終わって、つまみも無くなったので、霧になって消えた。俺も話を聞き終えたので、縁側で日向ぼっこでもしようと思いふすまを開けたら、諏訪子と神奈子がいたウメを見ながら湯呑に入ったお茶を飲みぼーっとしてる。俺に気付いてないようだ、これはチャンスと思い、抜き足、差し足、忍び足で神奈子に近づいたら腰を下ろし床に膝を下ろして俺の両手を神奈子の脇の下に入れて神奈子の体の前まで両手を入れて神奈子の胸を揉んで神奈子の首筋に甘噛みした

 

「イヤああああああああああああああああ!!」

 

急に後ろから触ったから驚いたようだ、初めて女の子らしい声を聴いた気がするぞ。神奈子は逃げようとじたばたしてるが俺が逃がさないよう胸を思いっきり揉みつつ首筋を甘噛みしながら押さえつけているので逃げれない。ちなみに神奈子が持ってた湯呑は諏訪子の方に放り投げられたが、間一髪で諏訪子がキャッチしたので湯呑からお茶が零れてない。急に神奈子の動きが止まった

 

「こんな事をするのはお前しかいない。貴様、私にこんな事をしてただで済むと思っているのか」

 

俺は喋るために首筋を甘噛みしてたのをやめた、首筋に甘噛みした部分が桜色で痕が残って神奈子が俺の女になった気がしてエロイ。一応俺の妻になっているから間違ってはいないが

 

「いいじゃないか、神奈子は俺の女だし」

 

「確かに私はお前の女だが、体を許す気はない。だから胸を揉みながら話すな、胸が痛い。それと名を呼ぶな、諏訪子、ウメを見てないで助けてくれ」

 

なんだ、俺の女であることは素直に認めるのか。だったら俺のことを認めるか好きになってもいいと思うんだが。横目で諏訪子が俺と神奈子を見るが、すぐにウメに視線を戻し、お茶を飲み始めた。興味が無いのだろうか、俺も首筋に甘噛みを再開しよう

 

「面倒だしやだ」

 

「薄情者!血は繋がってないが私はもう一人の母でもあるんだぞ。母を助けてくれ!」

 

「やだ。この場にいる優先順位は父さん、神奈子だよ」

 

諏訪子は関わる気はないようだ。ならば気にせずこのまま行こう。神奈子は俺より優先順位が低いのが悔しいのか諏訪子に、あんぽんたん、おたんこなすと罵倒してる。諏訪子は全く反応しない、お茶を飲んで一息ついてる。永琳ほどじゃないが、神奈子もデカいな。揉み心地がいい

 

「貴様、やめろと言ってるだろう!!クソ、無駄に力が強いから引き離せん!!胸を揉むな!!!首筋に甘噛みするのをやめろ!!!!」

 

まあまあいいじゃないか、よいではないかよいではないか。諏訪子がウメを見るのをやめて、また俺を見るが数秒経ったらまたウメを見始めた。なんでまた見たんだ諏訪子、まあいいや。こうして俺は妻と戯れた、俺は自分の女にした皆を愛すと決めているのだ。例え神奈子に嫌われていて、俺を殺すために俺の女になったとしてもだ。だから神奈子にも俺の事を好きなってほしいものだ。こんな事してるから嫌われるんだろうけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藍が台所でせっせと料理を作ってる。てゐは蔵で永琳に料理を教わってる、いつかてゐが諏訪の国を出て行く時に役に立つだろうと思って家事も教えてる。てゐは嫌がっていたが、覚えた方がいいだろう。ルーミアは幸せそうな表情で食べてる。初めて会ったときはお腹が空いてたから結構食ってたが、今はそうでもない。少し人より多いくらいに食うだけだな。

 

「そんなに旨そうに食うとは、旅をしていた時は大変だったんだな」

 

「そうよ、封印されてたからね。大変だったわ食料探すの」

 

ルーミアは元は人食い妖怪だったはずなんだがな、ルーミアは封印されてから食料になかなか巡り会わなかったようだ。妖怪だから近くの村で食料を分けて貰う事も出来ず、人を殺すにしても封印されてるから人1人殺すのにも相当苦労したそうだ。そう言えばいったい誰がルーミアを封印したのだろうか、ルーミアを封印するほどの実力なら欲しいな、聞いてみよう

 

「しかし元は人食い妖怪じゃなかったのか、俺は今の方が殺さずに済んで助かるが」

 

「別に私はお腹を満たせたら人食い妖怪じゃなくてもいいわ。餓死して惨めに死ぬよりはよほどいいし」

 

確かに俺も餓死で死ぬなんて御免だ。そんな死に方するくらいなら妖怪に食われた方がいい、餓死と聞いてある意味では俺も他人事じゃない。地球に残った時も食料問題は永琳が解決してくれたし、永琳がいなかったら俺は野垂れ死んでただろう。今は永琳と藍のおかげで美味しい料理が食えてる、ありがたい事だ

 

「ルーミア、封印されてたみたいだが誰に封印されたか覚えてるか」

 

「忘れもしないわ、確か名は、シンギョク。シンギョクと名乗ってたわ。男だったのに女になって驚いたわね」

 

シンギョクか、男から女になれるのか・・・・・・仲間にするにしてもルーミアが嫌がるだろうな。自分を封印した奴が近くにいるんだ。殺したいと思うかもしれんし、何か考えねば、ルーミアが食べるのを再開したので、俺は藍と喋ろうと思ったが料理を作っていて忙しそうだったので、永琳と作った鬼ころしと杯を持って神社から出た

神社から出たら鳥居の所に勇儀がいた、周りを見て何か考えてるようだ。近づいたら俺に気付いたのか俺を見てきた

 

「何してるんだ勇儀」

 

「ああ、いやね。この手のひらに乗ってるの桜の種なんだけど。幽香に頼んで咲かせて貰おうと思ってね。それでどこに咲かすか周りを見てるんだよ」

 

桜か。神社の裏にウメが咲いてるが桜を神社の周りに咲かせるのもいいかもしれん。参道から鳥居まで、もしくは鳥居の両脇から神社まで咲かせてもらおうかな、花見もできていいだろうし。幽香に頼んでみよう、鳥居に近づいて鬼ころしと杯を置いて勇儀を見る

 

「いい考えだな勇儀。礼に抱きしめてやるから来い」

 

「いいよ、私は弘の女だし」

 

勇儀が近づいて来たので抱きしめあった。勇儀の額にある角が当たりかけたが何とか避けた。あぶなかった、もう少しで顔に刺さるところだったぞ、角でも凶器になるんだぞ。しかし勇儀もいい体つきをしている、とりあえず左手で胸を揉むか、胸が目の前にあったら何も考えずとりあえず揉むのだ

 

「何だい、胸が好きなのかい。いつの時代も男は胸が好きだね」

 

こいつ恥ずかしがらないようだ、多分この反応は素だな。尻を右手で撫でても、子供でも作るかい、私は構わないよ。と言ってくるし。永琳にしても喜ぶし、神奈子は嫌がるし、幽香は何を言っても素直に聞くし。藍は恥ずかしいという前に感情が薄いし、恥じらいが強い女って紫しかいないんじゃないか、勇儀の素の反応もいいが、もう少し恥じらいが強い女がいてもいいと思うんだが

酒が飲みたくなったので酒を飲もう

 

「勇儀、酒を飲むぞ。酌をしろ」

 

「はいはい、分かったよ。貸しな。酌してやる」

 

何を言ったら勇儀はいい反応をするのだ。抱きしめながら勇儀の顔を見て愛の告白でもしよう、愛してるのは本当だし嘘じゃないからいいだろう

 

「勇儀、俺はお前を愛してる」

 

「私も、弘に惚れてるよ。じゃなかったら酌なんてしないよ」

 

駄目でした。何を言っても素で返ってくる。もう酒を飲もう。俺と勇儀は鳥居にもたれ掛りながら、勇儀に酌をしてもらいつつ雑談した。雑談してたら、勇儀は何かに気付いたようで参道を見たので、俺もつられて参道を見る。どうやら女性が神社に向かって歩いて来てるようだ。諏訪の国の民はほとんどの顔を覚えてるが見たことない顔だ。見たとしても彼女は結構目立つ髪や服装をしてるし、美人だから見たら絶対に忘れないし諏訪の国の者じゃないな。鳥居に近づいてきて勇儀を見て驚いてる、諏訪の国の民じゃないから驚くのだろう。鬼が堂々と神社にいるんだし

 

「すいません、あそこにある神社は弘天神社で間違いないでしょうか」

 

「ああ、確かにあの神社は弘天神社だよ。弘天神社に何の用だい、見たところお参りに来たって感じじゃないけど」

 

勇儀が俺の杯に酒を酌しながら聞いた、俺は杯に入った酒を口元に運び話を聞いてる、いい女だ、勇儀の事でもあるが目の前にいる女の事でもある

 

「あ、そうですね。先に名を名乗ってあの神社に来た目的を言います」

 

彼女はいきなり質問した事の非を詫びる為に頭を下げた、近くで見るとかなり美人だ、腰まで伸ばしたストレートヘアーで側頭部を三つ編みみたいに編んでいてリボンで止めている。

 

「私の名は 紅 美鈴 と言います。弘天神社に鬼がいると聞いて、自分の実力を確かめる為に手合せに来ました。鬼がいると言う話は本当だったんですね」

 

 

 

 




やっとシンギョク出せたよ、長かった。シンギョクは旧作キャラです。ここでは別の歴史の人物にシンギョクを当て嵌めます。

美鈴は公式設定で人を食う妖怪とありましたが、皆その設定忘れてそうだしその設定は無しでいいんじゃないかな。それと美鈴の名、 紅美鈴 と言う名は確かレミリアが名付けたはずですけど、まあ、いいよね。



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師範

感想で前に聞かれたのですが、紫と幽香の容姿は中学生か高校生くらいと思ってください

プロット考えててオリジナル展開だと言う事を失念していたよ、この時代にこのキャラいる訳ねえじゃんと思うキャラが出るかもしれない
だから別に構わない人だけこの作品を見た方がいいと思います


今回も無理矢理ですね納得できなければ言ってください直します。そして戦闘関係は

台詞が長いです


鬼と勝負だと、・・・・・・鬼に勝てるのか、人間では鬼に勝てないと思うんだが。勇儀もその話を聞いて腕を組んで面白そうに笑ってるし、これは止められんね。萃香が美鈴を捕らえないのは、敵意を感じなかったからだろう。美鈴を見ても常識人にしか見えんし、何かする性格とは思えん。一応今も念の為に監視はしてるだろうが

 

「鬼と手合せに来ただって、あんた面白いじゃないか。鬼に手合せをしに来るやつなんてそうそういないよ」

 

勇儀が笑いながら言うが、大丈夫なのだろうか。彼女、紅 美鈴 と言ったな。彼女から妖気を感じる。妖怪のようだ、人間だと思ったんだが妖怪なのか。ならばもしかしたら勇儀に勝てる可能性があるかもしれん。面白そうだ、神社の庭で手合せする事になった。庭は広いし手合せには十分な広さがある、手合せの余波で周りの物がこわれるかもしれんが、大丈夫だろう

 

「ちょっと待った!そういう事なら私が手合せの相手になるよ!!」

 

「何言ってるんだい萃香。この話を最初に聞いたのはその場にいた私だろ、ここは私から行くよ」

 

萃香が出てきて戦いたがったが、勇儀が最初に聞いた話だし、ここは勇儀が戦う所だろう。萃香が霧状になってこの場にいて最初から話を聞いていたとか言うのは無しだ、萃香に鬼ころしをあげて機嫌を取り庭に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いい戦いだった。鬼に勝るとも劣らないとは、将来有望だな、まだ若いのに。前に聞いたが大和の武術家を全員叩きのめした、赤髪で緑の服を着た美人の女って美鈴の事か。この強さなら納得だよ。美鈴は勇儀と手合せしてる際、攻めることより守ることの方が見ていてうまいと思った。守る力が強いのか、欲しい、欲しいぞ。美鈴が欲しい、勧誘しよう

 

「美鈴、勇儀と戦ってどうだった」

 

「噂に違わぬ実力でした。さすがは鬼ですね、まだ他にも鬼はいると聞いてますから、他の鬼とも手合せしたいです。でも今は無理ですね、疲れました」

 

「久しぶりに楽しい勝負だったよ、またしたいね」

 

美鈴は息切れをしていて肩で息をしてる感じだ、勇儀は疲れてない、だが満面の笑みだ。楽しかったようだ。勇儀が美鈴に近づき右手を差し出し握手を求めた、美鈴は最初どういうことか分からなかったみたいだが、理解し、美鈴も右手を差し出し握手をして、お互いを褒め称えた。美鈴は実力試しがしたいのか。ここをうまく使えば勧誘がうまく行きそうな気がする。どう勧誘するべきか、ここは変に回り道せず、ここは直球で行こう。そっちの方が美鈴も分かりやすいだろうし。俺は美鈴の背の方向に立っていて勇儀と向かい合わせになってる状態だ。だから美鈴には俺の顔が見えない。勇儀が俺の顔を見てきた。俺の考えを勇儀は見抜いたのか、美鈴を見ながらにやにやしてる。美鈴はなぜ勇儀がにやついてるのか分からず首をかしげている

 

「俺の名は 蓬莱山 弘天 弘って呼んでほしい。いきなりで失礼だが名で呼んでいいだろうか」

 

「あ、はい。名を呼んでもらっても構いません。・・・・・あの、弘天という名は確かこの神社の名と同じなんじゃ・・・・・・」

 

名を呼んでいいと急に聞いて来たので少し照れたようだ。いきなり聞いたし、そして美鈴が俺の名を聞いて少し冷や汗が出始めてきた。ここは俺が神かどうかは言わん。そんなことを言えば話の流れが悪くなる。俺が神だということは後でもいい。そんな事より美鈴が欲しい、武術を使えると言うのはかなり大きい。それに勇儀に勝ってはいないが負けてもいないのだ、実力者は欲しい。何としても勧誘して諏訪の国にいさせなければならん

 

「美鈴は実力を試したいんだよな」

 

「は、はい。私は自分の実力を知りたくていろんな人、妖怪、神に勝負を挑んでます」

 

俺が神社の事をスルーして美鈴も流したようだ。なるほど、実力が知りたいのか。他に理由があると思ったがそれだけの様だ、ちょうどいい。この諏訪の国は結構戦力も整ってきている、腕試しなら打って付けと言えるだろう。戦力増やしてよかった、まさかこんな時に役立つとは。

 

「そうか、ならこの諏訪の国は打ってつけと言えるんじゃないか、神も妖怪も人も皆悪くない実力だと思う。美鈴の御眼鏡にかなうと思うんだが」

 

「そう、ですね、この諏訪の国は鬼だけじゃなく大妖怪、または大妖怪に匹敵する妖怪もいると聞いてますし、神も凄腕と聞きます。ここなら自分の実力を高める為にはいいかもしれません」

 

俺の話を聞いて美鈴は少し考えたようだが、自分にとって得しか無い事に気付いて笑顔で俺の話に同意した。よし、いいと思ってくれたなら良かった。話が進む。この調子で進めよう。美鈴は押しに弱い女と見た、ならば押して行くしかない。本気で嫌がったら、諦めるだけだ。

 

「じゃあ、この国、諏訪の国に仕える気はないか、もしくは暫く諏訪の国にいないか、気に入ってくれたら嬉しいし、そして何よりその武術の腕と俺の女として美鈴が欲しいんだ!!」

 

「えー!?わ、私が欲しいんですか・・・・?正直に言わせてもらいますと、物好きとしか思えないんですが。女なのに身長は高いですし、女の色香もありませんし・・・・・」

 

顔を赤くしてもじもじしながら俺を横目でチラッと見てはやめて、また見てはやめての繰り返しだ。俺の告白を聞いて恥ずかしいみたいだが、嫌がってはいないようだ。

 

「美鈴の武術を見させて貰ったがかなりのものだ。あの勇儀に粘ってたし、勝っていないが負けてもいないんだ。しかも攻めではなく守りに一頭地を抜くと来た、諏訪の国は攻める奴は多いが守りに徹する奴はいないんだ」

 

美鈴が俺の言葉を聞いて否定するが謙遜と言うものだ、あの武術はかなりの物だ。ほとんどの妖怪なら粘る事も出来ず、すぐにやられていただろう。長年武術をやっているからかもしれん。最後に止めの一言を口にする

 

「美鈴の実力も欲しいし、美鈴は美人だしどうみても女の色香ありまくりだし、身長が高めでも俺は気にせん。だから女としても欲しいんだ!!」

 

俺は妖怪との戦い方を諏訪の国の民に教えてはいるが、武術はあまり得意ではないので武術関係は教えてないのだ。だから欲しい、美鈴も欲しいが、美鈴の武術も欲しいのだ。そして諏訪の国の民も強くなる。諏訪の国の民は自ら進んで訓練を受けてる、俺が無理矢理はさせてない。だから武術も教えてくれる人がいたら、民も強くなる。勇儀達に諏訪の国民に鍛えて貰おうとも考えたが、勇儀達鬼は、鬼としての力で鍛えるので諏訪の国の民を鍛えてもらおうと考えても民が危ないからやめた。だからこそ武術を使える美鈴が欲しいのだ。鬼よりは人間に教えるのに適している

 

「あ、あの・・・・・私なんかでいいんでしょうか。急に諏訪の国に来た者をいきなり仕えさせるなんて、それに私はどこの国にも属してない者ですし、他の国の草かもしれませんよ・・・・・・?」

 

両手を後ろにやり何だか落着きなくそわそわしている。急すぎたようだ、まずは女になる話から始めるより、見ず知らずの妖怪を仕えさせてもよいのかについて話し始めるらしい。美鈴が勇儀を見ても、勇儀は普段通りだ、右手に乗ってる赤い盃に酒が乗っていて、俺の話を目を閉じながら聞き笑いながら飲んでる。確かに俺は諏訪の国の王だから、他の国のスパイとか気にしなければならん。だが諏訪の国の情報なんて筒抜けだしな。精々、神と人間と妖怪が仲良く暮らしてる国といった感じだし、隠し事なんて一つもないんだ。だからそんな事を気にしても仕方がない、それに敵が来たら殺せばいいだけだ。はっきりいって今の諏訪の国は戦力が増えて、どの国にも負けないんじゃないか、慢心はしてはいけないので気を付けるが。

 

「構わん、美鈴。この国にいたら美鈴は周りの妖怪や神や人間と戦えるのだ。だから美鈴は得するのだ、得しか無い。だから諏訪の国にいてくれ!そして俺の女になってくれ!!」

 

美鈴は耐え切れなくなったのか、美鈴の両手を美鈴の両頬に当ててから俺に背を向け蹲まった。やはり俺の目に映った美鈴は間違いではなかったようだ。妻に欲しい。何だか美鈴はぶつぶつ言ってるし、何を言ってるか聞こえない。

 

「わ、分かりました。暫くここにいます。仕えるかどうかは諏訪の国と王を見てから考えます、自分の目的を叶えるのには諏訪の国は都合がいいですし。それと」

 

蹲った状態で首だけを動かし俺を見てきた、美鈴の右手は地面に何か文字を書いていて美鈴の顔は真っ赤だ。

 

「ま、まずはお友達から始めませんか・・・・・・?」

 

あまりにも恥ずかしかったのか少し声がうわずった声だ。仕方ないか、いきなり知らん男が俺の女になれって言っても普通に考えてなりますって言う女はいないだろうし。友達から始めようって言ってくれてすごくいい人だ。普通に考えて俺が言ったことは美鈴に罵倒されるか嫌われても文句は言えんぞ、じゃあまずは友達から始めよう、

 

「じゃあ新しい仲間も増えた事だし、宴会でもしようかね。コンガラも旅に出るから丁度いいね」

 

勇儀が最後に締めて、勇儀は美鈴を連れて神社に入っていった。宴会の準備を始める為に、俺も蔵にいる永琳と台所にいる藍の所に向かった。また料理を沢山作ってもらおう。酒は諏訪の国の民には人間用の酒を、勇儀と萃香と華扇には鬼ころしを飲ませよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは道場を諏訪の国に作ろう。かなりの広さが必要だな、美鈴はその道場の師範として働いてもらおう。だが先に宴会だ、コンガラもいなくなるし丁度いい。コンガラの旅の無事を祈る為と、美鈴が仲間になった事が宴会をする理由だ、美鈴はしばらくいるだけで仕える訳じゃないけど。諏訪の国の民も集めて宴会しよう、道場を建てるんだ、民にも美鈴の顔を覚えてもらった方がいいだろう。しかも美鈴は美人だしな、男の俺が教えるより諏訪の国の男共も嬉しいだろうし、美人な女に教えて貰ったらやる気も出るだろう。そう考えると男どもが羨ましいな、俺も道場を建てたら行くか。

宴会が始まってる、永琳は俺の隣にいて、幽香は俺が胡座した状態の足の中に入ってる、どうやら幽香の特等席になったようだ。紫は俺の隣にいて紫にばれない様、横目で見る、紫は幽香をじぃーっと見てる、紫も入りたいのだろうか。諏訪子と神奈子と勇儀、萃香、華扇、ルーミア、コンガラ、美鈴は別の場所で仲良く喋ってる、どうやらお互いの名を教えあっているようだ。神奈子は俺の事は嫌いみたいだが、俺以外は嫌いではないみたいだ。良かった、俺だけならいいが他のみんなを嫌ってたら困る所だったが、一安心だ。

桜の件のついて幽香に頼んでおこう

 

「幽香、頼みがある」

 

「分かったわ、お父様」

 

まだ何を頼むか話してないのにOK出しやがった。せめて内容を聞いてからでも遅くはないと思うんだが。俺が沈黙してたら幽香が気付いたのか理由を説明してくる

 

「私がお父様の頼みを断るわけないじゃない。そんな事考えるまでもないわ、私はお父様の頼みならそれを聞かずとも了承するんだから」

 

幽香が顔を見上げて俺を見てきたので、幽香の頬を撫でてやった。表情が変わらないから気持ちがってるのかわからんな。皆で宴会してたら鵺が宴会に混ざって来た。鵺は諏訪の国に住まず、あの初めて会った場所の縄張りに住んでいる。お腹が減ったり、暇だったら諏訪の国に来てる感じだ。ぬえが俺の所に来た、紫と幽香に気付いたのか右手を挙げて2人に挨拶をする。

 

「ぬえ、来たのね。待ってたわよ、最近来ないから心配したのよ」

 

「紫も私もぬえが来るのを待っていたわ、お腹が空いて来たんでしょ」

 

ぬえは紫と幽香に心配されてぬえの左手の人差指で顔を掻いて照れている、紫と幽香とぬえは何か喋ってる。良かった、仲良くなったみたいだな。俺を見てぬえは右手と左手を腰に当て胸を張りいつもの様に聞いて来た

 

「また暇つぶしに来たわよ!!ちょうどお腹空いてたから、宴会料理を貰ってもいいでしょ」

 

「構わん、好きに食え」

 

俺の言葉を聞いて、宴会料理に一目散に向かった。いつも来てる時に勝手に食べると言う事はせず、まずは俺に確認を取るようだ、神社に永琳や藍の料理を食いに来るがお礼も言うし、その辺はぬえの考えがあるんだろう。美味しそうに食べながら諏訪の国の民達と喋ってる。ぬえの能力は正体を分からなくする程度の能力で、体の一部に例えば右腕に能力を使い何の動物かを当てる座興を民の皆でしている、盛り上がっているようだ。宴会料理を食べながらぬえは座興をしていたので、口元が汚れたみたいだ。近くにいた藍がぬえの口元を布で拭いてる、姉と妹みたいだ。てゐは藍の近くにいて神使がどんな事をしてるのか見せてる所だ。てゐは神使を嫌がるので神使になる取引として人参を渡している、時間があれば永琳と人参を作ってる。俺と永琳が作るんだ、生半可な人参は作らんぞ。泣いて人参を食べるてゐの様子が目に浮かぶ。こんな日常が続けばいいんだが、いつか終わる時がくるだろう。月人が地球にいて都市があった時も俺は今が続けばいいと思ってた、だが続かなかった。永遠にこの日常が続くわけがないんだ、だからそれまで今を楽しく生きていくと決めた

 

「ねえ、お酒を口移しで飲ませてあげましょうか」

 

「永琳、今はそんな事を聞く場面じゃないと思うんだが。しかしそそられる提案だ、よし、口移しで俺に飲ませろ」

 

「分かったわ、じゃあ料理も口移しで食べさせてあげるわね」

 

「今は酒だけだ、料理は後にしろ」

 

紫が今の話を聞いて顔が赤い。両手で顔を隠してる、指の隙間から見てるけど。永琳は平常運転の様だ。

 




美鈴のスリットの下は生足状態です。どうでもよく無い大事な事なので後書きに書いておきます

ずっと悩んでいたんですが神奈子の髪型が決まりました。セミロングのポニーテールです。これも書く上では大事なことなので言っておきます、モチベーションを上げる為だけですが

このペースで進んで行くと100話じゃ足りないことが判明しました、だから失踪します。

次の話がもう書けてますので寝なければ深夜くらいに更新します



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戯れ


戯れ回&急展開です



今回グロい表現があります、10文字にも満たないですが、気を付けてください



セクハラではなくこれからは戯れと言います戯れあるし見ない方がいいんじゃないかな


そして台詞が長い



あれから数週間。諏訪の国の民と勇儀、萃香、華扇の鬼の力を借りてすぐに出来た。道場スゲーデカいのに数週間で出来るとは・・・・・・美鈴にあのスゲーデカい道場の師範になる様に言ったら、道場が立派すぎて私には荷が重いです!!と俺の両肩を美鈴の両手で揺さぶってきたが、あれほどの実力があるんだ、俺はそれに見合う道場を建てたにすぎん。数時間の説得の末、渋々納得したので何とか助かった。建ててから断られたら困った所だ、まず説得してから道場を建てて置けばよかったようだ。

今は神社の居間にいて雨が降ってる、さっきから雷が鳴りまくってる。正直うるさい、しかし雨がないと作物が育たないので仕方ない、我慢だ。目の前には饅頭を食べてる華扇がいる、幸せそうだ。華扇を見る、何かを食ってる時しか見たことがないが、何も食ってない時も見たいものである。その場面に出会うにはツチノコに会うより難しそうだが、そういえば華扇の胸を揉んだ事が無い。一体どんな反応をしてくれるのだろうか、まずは聞いて反応を確かめよう。

 

「華扇、胸を揉ませてくれ」

 

「え、胸ですか。・・・・・よく考えたら私は弘様の女ですし、少し恥ずかしいですが、構いませんよ」

 

華扇は饅頭を掴んでないもう片方の腕で胸を隠して、顔を少し赤らめ恥ずかしそうだが、俺の女だし恥ずかしいが構わないと言う事だろう。この反応も悪くない、ならば遠慮なく。俺は立ち上がって、華扇の後ろまで行って座り、華扇の胸を揉んだ、華扇の胸もデカい、そしてやわこい。華扇は饅頭を食べてるが胸を揉まれて気になるのか、饅頭を食べるスピードが落ちている。

 

「その、弘様。胸を揉んで楽しいんでしょうか」

 

「胸を揉むのも楽しいが、揉まれた女の反応を見るのが好きなんだよ」

 

そうですか。と言い、饅頭を食べることに専念し始めた。後ろから耳が見えるが少し赤い、やはり恥ずかしいようだ。まあ気にせず揉むが、左耳が視界に入ったので左耳を俺に口に入れて優しく噛む、華扇は驚いたのか体がビクッとした、俺は気にせず胸を揉みながら耳を優しく噛みながら胸を揉む

 

「あ、あの。こそばゆいんですが」

 

「いいじゃないか、夫婦の戯れだ」

 

華扇は耳を優しく噛まれる事に体をびくびくさせながら俺が胸を揉んでたら、ふすまがピカッと光り、何だと思ったら雷が落ちた。この音から察するに、神社の近くに落ちたようだ。華扇の胸を揉みながら考えたら華扇が急に立ち上がり外に出た。何だと思い俺は玄関にある茄子の色の傘を持ち外に出る。使って分かったが茄子の色をしたこの傘はいい傘だ、元の使い主はなぜこれを捨てたのだろうか。いい傘だと思うんだが

神社を出て周りを見た、どうやら手水舎の近くに落ちたようだ、落ちた部分、地面が焦げた色をしている。手水舎に落ちなくてよかった。落ちてたら直さなきゃならん所だ。その雷が落ちたところに華扇が片膝を地面に着けて何かを見てる。近づいてみよう華扇が雨に濡れていたので俺が近くにより、華扇を傘の中に入れた、風邪を引いたら大変だ。俺も前に風邪を引いたし。

 

「あ、ありがとうございます。弘様」

 

「気にするな、それよりどうして急に傘を差さず外に出たんだ。雷が落ちてから外に出たが、気になる事でもあったか」

 

俺が近づいて傘に入れて雨に濡れなくなったのに気づいて、華扇は何かの生き物を大事に抱えながら俺を見上げてお礼を言ってきた。何だこの生き物、体の色は白、タテガミがありタテガミの色は青。瞳は閉じられていて瞳の色は分からない、見たら意識はないようだ。華扇は傘に入った状態で立ち上がって腕の中にいる生き物を見せてくる

 

「これは雷獣です、珍しいですね。雷が落ちると共に地上に降りて来てしまったようです」

 

「そうなのか、なんか気絶してるし永琳に見せるか」

 

「そうですね、私は医療関係の知識はないので、永琳様に頼りましょう」

 

俺と華扇は茄子の色の傘に入った状態で蔵にいる永琳の所に向かった、永琳は暇さえあれば人参を作ってる。てゐが納得する人参を作ってる最中なので蔵にいる、蔵についた、蔵の中に傘を立てて華扇と永琳の所に行く。奥に進むと永琳がいた周りは人参だらけだ。この人参を作る事を最近しまくってるのでここ最近ずっと人参料理が出る。てゐは嬉しそうだったが、それ以外は困った表情をしてる。さすがに飽きたのだろう、でも永琳はもう少しで納得の行く人参を作れると言っていたので、もう終わるだろうが

 

「永琳、人参を作ってる最中ですまんが、この雷獣を診て欲しいんだ」

 

永琳は椅子に座っていて人参をなんかの機械で見比べてる。どうやってそんな機械を作ったのだろうか、材料がなければ永琳は機械は作れないと言っていたような気がするんだが。永琳は椅子から立ち上がり俺と華扇の方に振り返ってきた

 

「珍しいわね、雷獣が出るなんて、さっきの雷が落ちた時近くに落ちたみたいだけど、落ちた所にその雷獣がいたのね?」

 

「はい、雷が落ちた所に雷獣がいて気絶していたので、永琳様に診て貰おうと思いまして来ました」

 

永琳は華扇に近づき華扇の腕の中にいる雷獣を割れ物を扱うように受け取り俺と華扇に待って手と言って奥に入っていった。近くにあった椅子2つに俺と華扇は座り待っていた、俺と華扇が座ってたら数分後に永琳が奥から帰ってきた。雷獣が目を開けている、瞳の色は赤だ、どうやら意識が戻ったみたいだ、良かった。

 

「はい、華扇。診たけどただの気絶ね、すぐに意識が戻ったわ」

 

永琳が華扇に雷獣を渡して、華扇は頭を下げ、ありがとうございました。と永琳に言い永琳は人参研究に戻った、雷獣を見たらどうやら華扇に懐いた様だ、華扇も雷獣を可愛がってる、もう飼えばいいんじゃないかな、お互いを気に入ってるようだし

 

「華扇、雷獣が嫌がらなければ、雷獣と一緒にいたらどうだ」

 

「え、いいんですか!?」

 

華扇は雷獣を大事に抱えたまま瞳をきらきらさせて俺の目の前に来た、近い、少し俺が動けばキスできる距離だぞ。

 

「構わん。前にも言ったが諏訪の国、民を守ってくれるなら好きにしていいと言ったしな」

 

「ありがとうございます弘様!!さっそく勇儀と萃香に雷獣を紹介してきます!!!!」

 

言うが早いか華扇は蔵からものすごい勢いで蔵を出た、雨降ってるのに傘を差せと言ってるんだが。俺は蔵の入り口に立てて置いた傘を手に取り傘を広げ外に出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主、見たことない服装をした3人の人間が主と永琳様に会いたいそうです」

 

藍が巫女服で右手に箒を持って蔵まで来た。蔵でやっと永琳と納得のいく人参を作れたのだ、疲れた。見たことない服装ね、永琳にも会いたいと言う事みたいだし永琳を呼ぼう

 

「永琳、俺たちに会いたい奴がいるらしいから行くぞ」

 

「眠たいけど仕方ないわね。早く行きましょう」

 

着いた、少し待たせてしまったので、謝罪しながら入る。見ると3人の女がいる、2人は知らんが1人は知ってる女だ、あの女の顔は月人だ、かつての俺の部下だったので間違い無い。

かつての部下の女は前に出てきていて2人は後ろで控えてる。後ろに控えてるあの2人は知らん。前に出てきてる女は月に行く日にいた、何をするんですか局長、まだ戦えます。と言った女だ。その元部下の女が俺と永琳に頭を下げてきて、数億年ぶりです。と言ってきたが無視して用件を聞く、来た理由についてはおおよそ検討できるが

 

「何の用だ」

 

「弘天局長、そして八意様。2人に月に来ていただきたく、月からお迎えに参りました」

 

いつかこの日が来るだろうと思っていたが、来てしまったようだ。前にも言ったが俺と永琳の名は知れ渡ってしまっている。普通なら死んだ人間の名があったとしても偶然と思うだろう、しかしその有名な名は弘天と永琳と言う名だ、あの日月に行かず核で死んだと思われた人間が、数億年経って地球で俺、もしくは永琳の片方だけの名ならまだ偶然と思うだろうが、両方の名があるんだ、これを偶然とは思えない。それに俺と永琳の名が妖怪と仲良くする変わった夫婦として知られているのだ、都市があった時も俺と永琳はおしどり夫婦として月人に知られていた、ここまで生きてると思われる材料があるんだ、偶然とは誰も思わないだろう。むしろ2人は生きていたと思うはずだ、どうして生きていたのかを考えても、永琳が俺といて核からどうやって生きている理由については分からないだろうが永琳が何かしたと思うだろう。俺たち月人に寿命の概念は無いから寿命については最初から考えないで済むし

 

「そうか、どうあっても月に連れていくようだな」

 

「はい、そう命令されて月から来ましたので。本来なら、この国は諏訪の国でしたか、その民、地上人全員を無力化して、この国にいる妖怪を皆殺しにしようかと思いましたが、弘天局長と八意様が月人に厭悪の気持ちを持たれると困りますし」

 

「その手段を使ってたらお前は今頃俺に殺され死んでるだろうよ、月に戻る為に来ただったな。いいだろう、戻ってやる」

 

永琳が俺の言葉に驚いて俺を見るが、今は置いておく。月からきた元部下は俺の言葉が即答だったので疑っているようだ、当然だな。前に天照、月読命、須佐之男を部下にして俺と永琳の存在を月に知らせない為に部下にしたが、あれは問題の先送りにすぎん。だから俺は諏訪の国に何が起きてもいいよう戦力を増やした。もしもの事を考えてだ。美鈴の守る力も必要だった、守ることに関しては俺や他の者も得意ではなかったからだ。永琳に兵器を作らせようと思ったが材料がなくて断念した。女の妖怪、戦力を増やしたのはもちろん俺の夢の為でもあるし民の為でもある。本来はもしもの事を考えての戦力増量だった。月人の技術の前に諏訪の国が勝てるかなんて分からなかったが、何かしないでいないと落ち着かなかった。だが前に俺の女と出会って事情が変わった。兵器を作る必要が無くなったのだ。戦力増量はやめないがな、俺の夢の為でもあるんだし

 

「では、月に戻っていただけると言う事で、いいのですね?」

 

「ああ、月に戻ってやる。ただし、俺が進むこれからの人生の終着点に行き着く為には月人は邪魔になった」

 

俺は右手の中指と親指を合わせて指を鳴らした。俺は諏訪の国を最初に作った時から腹を括っていた、迷いなんて最初からなかったが。俺の前に立ち塞がるなら消すだけだ

 

「だから月人には消えて貰う事にした、ので、月に戻ってやる」

 

スキマから幽香が出てきて、萃香が能力を解き出てきてそれぞれ月人を取り押さえた、もう一人はスキマに入れられていない。取り押さえられた元部下の女が顔を地面に着けていたが、顔を上げて質問してきた。幽香が元部下を取り押さえている。幽香は前にも言ったが妖力や身体能力の高さが半端ではない、だから力だけなら鬼にも負けない所まで来てる。成長しすぎだな、そんな力で取り押さえられたら人間ではどうしようもないだろう

 

「月人に消えて貰うと言いましたね局長、どうやって月に行くんですか私たちが乗ってきた乗り物は私を含めた3人がいないと使えませんし、そもそも乗り物は私達3人でないと見えません。それに月に行けたとしてどうやって都市にいる月人に消えて貰うんですか、いくら弘天局長と八意様とて不可能なことくらいあります」

 

「お前はそんな事気にしないでいい、それより穢れで死なないかについて心配するんだな」

 

手足を無くして逃げられないようにしようと考えたがやめた。それだとあとが面倒だ、ならば五体満足で生かして置いた方がいい。だから妖怪の穢れで死んでもらうと困るので月人の世話については、神である藍、諏訪子、神奈子そして神ではないが妖怪でもない神使のてゐに任せる、忘れる前にスキマに入れられた奴は後で出して手足を縛っておこう、何か武器を持ってるかもしれん、身ぐるみを後で藍に剥いでもらおう。後は月人3人の監視を萃香に頼めば大丈夫だろう。と言っても月人を消すには一ヶ月もかからないだろうがな。立ち上がって隣にいた永琳にいつものように言う

 

「行くぞ、永琳。月人を消しに」

 

「弘、弘の考えてることがこの私でさえ読めない時がある。でも私は弘の肯定者、弘のする事には従う、だけど月人皆を消さなくてもいいと思うのだけど。他に利用価値があるわよ」

 

「そうだな、ならば他の方法を考えよう、と言っても俺と永琳が月人をどうにかするにして成功するかは4割くらいだろう。だから4割から7割に上がる人物を引き込むぞ」

 

「引き込むって、一体誰を引き込むのよ。それに月に行くにしてもその手段がないのよ」

 

「いや、いるさ。1人だけ、月でもう1人と月人を守ってる月人が、そして月に行ける手段を持ってるのが」

 

永琳は俺の言葉を聞いて、ハッとした。気付いた様だ。永琳とあの場所に行く事にした、忙しくなるがこの先、俺の人生で月人は邪魔だ、面倒だが月人全員を消す以外について考えなければならんな。それに月人全員消すにしてもあいつが嫌がるだろうし、この案は没だな

 

「お父様、永琳お母様。行くのね」

 

幽香が月人を取り押さえた状態で元部下を気絶させ縄で縛りながら聞いて来た、萃香も月人を取り押さえていたが気絶させて縄で動けないようにしてる

 

「ああ、この国、諏訪の国を任せたぞ」

 

「ええ、任せてお父様。皆で守ってるから、安心してね」

 

ああ、心配なんてしてない。俺がいなくても諏訪の国は回っていける。もしかしたら、俺はもういらないのかもしれんな。小声でそう言うと永琳は俺の足を思い切り踏み、幽香は近づいてきて幽香の右手で俺の左頬に手のひらを当ててきた

 

「弘、馬鹿な事を言ってないで早く行きましょう。少なくともこの場にいる皆にはあなたは必要なんだから」

 

「お父様は諏訪の国だけじゃなくて、人間も妖怪も神も皆がお父様を必要としてる、神奈子お母様だって憎まれ口叩いてるけど、お父様の事を心から嫌ってるわけじゃないのよ。だから勝手にいなくならないでね。皆待ってるから」

 

俺、刃物で殺されかけた事あるんだけど、あれも心から嫌ってる訳じゃないと受け取っていいのだろうか・・・・・・スキマが幽香の隣に出てきて中から紫が出てきた、どこか怒った表情だ、紫の怒った表情なんて初めて見たな、それだけさっきの言葉を言ってはいけなかったんだろう。

 

「お父さん、永琳お母さんがいるから大丈夫だろうけど、最後まで私達と一緒にいて。私と幽香を娘にしたんだから最後まで責任を取ってよ。それに、わ、私と幽香をお父さんの女にしてもらってないし・・・・・・」

 

「まあ、弘が諏訪の国から逃げたところで私と勇儀と華扇が地の果てまで追いかけるけどね」

 

萃香は大笑いしながら気絶した月人2人を担いで持って行き神社から出た、藍の所に持って行くのだろう。紫は顔を真っ赤にしながら言ったが、恥ずかしいなら言わなくてもいいんじゃないか、しかしさっきの言葉は本心だ、前にも言ったが信仰や畏れが無くなって俺は消えてもいい、それでもいいのだ。それは自然の摂理だ。俺は数億も生きてる、普通に考えて十分すぎるくらいだろう。だが、思ってはいいけど口に出したらいけない言葉だったようだ、これからは気を付けよう。じゃあ俺は俺らしく自分勝手に月人をどうにかし月人の末路を考えよう。消す以外の考えを

 

 

 

 

 




雷獣は雷とともに地上へ降り立ち、人に害をなすと言われています。ですが、まあ、いいでしょう。出会ったのは鬼と神ですし。一説では鵺は雷獣ではないかとも言われているそうですね。

雷獣はオリキャラではありません。そして月に行ってからの話は真面目に見ない方がいいと思います









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従者

前半は見ない方がいいんじゃないかな、今回と次の話は見ない方がいいです






しつこいですが前半は見ない方がいいんじゃないかな、甘い&戯れ話になってるし



紫に頼んで永琳と共にある場所に来た、来たのは 蓬莱山 だ豊姫に会う為に来た、豊姫が敵にいると月をどうにかするにしても難しいだろう、能力を使われたら終わりだ。だから引き込む、今回は無理矢理は駄目だとは言っていられん、無理矢理でも従わす。敵だと困るんでな。だいぶ歩きあの質素な家に着いた、ノックをしたら中から鈴仙が出てきた、豊姫に用があると言い中に入れて貰った。客間で永琳と豊姫が来るのを待っていると豊姫が来た

 

「お待たせしました。弘さん、八意様。急ぎの様と聞きましたが何でしょうか」

 

豊姫は姿勢よく座り、笑顔で俺たちの話を聞く体制に入った、敵だと強力だが、味方なら強力だ。月には数秒もかからず行けるし、月の頭がいる本拠地にも一瞬で行けるだろう。奇襲を仕掛ける事も出来る。豊姫もだいぶ偉くなったと聞いたし、会議にも出るほどだと聞いてる。だから豊姫は絶対に必要だ

 

「豊姫、お前が欲しい」

 

「ストレートに言って来るのは嬉しいです。ですが私は最初から弘さんの女なんですが」

 

豊姫が両手を両頬に当てて照れてる、そういう意味じゃない。そういう意味でもあるが、豊姫は最初から俺の女だし、言うにしても急に来て言うとは思ってないだろうが言葉の通りに受け取ると嬉しかったようだ。豊姫には好きだとか愛してるとかは言ったことが無いからだろう。だから永琳も俺の横腹を抓るな

 

「そう言う意味じゃない、いや、豊姫は最初から俺の女だが、今回の意味は豊姫の力と能力が欲しいんだよ」

 

豊姫がくねくねしてたが俺の言葉を聞いてやめた。真顔で俺を見て理由を聞く。いつも笑顔な豊姫だが真顔になるとは。俺の言いたいことも分かってるんだろうか。

 

「なぜ、私の力と能力が必要なんですか」

 

「月人を俺が乗っ取る為だ」

 

豊姫は急に吹いて顔を横に向け口を手で押さえて笑いをこらえている、笑わせる為に来たんじゃないんだが。永琳も苦笑してるし

 

「ひ、弘さん、諏訪の国に月から使者が来て月に戻れと言われたんでしょう。何の為に乗っ取るかは予想が付きます。大和の時と似ていますからね、今の状況」

 

知っていたのか、じゃあ初めから教えてくれてもよかったんじゃ。それと大和を俺が乗っ取っている事を知っているとは・・・・あれについては情報を漏らしていないはずなんだがな、月人にばれたら大変だったからな。俺が考えてたら豊姫が笑顔を向けてきた

 

「教える必要はありませんでした、なぜなら弘さんと八意様2人がいるのですよ。私が教えなくても解決するでしょう」

 

豊姫が俺と永琳を笑顔のまま見てきた、豊姫は鈴仙から桃と包丁とまな板を受け取りまな板の上で桃を切り始めた。いつもは桃を齧るのに今日は切るのか。女子力を見せようとしてるのだろうか。都市があった時は豊姫は料理がからっきし駄目だったはずなんだが、成長したんだな。

 

「まさか月を乗っ取ると言うとは思いませんでしたけどね。前に一度大和を乗っ取ってますが月を乗っ取るのと、大和を乗っ取るのは天と地の差がありますし」

 

軽く笑いながら豊姫が呟く。そこま面白かっただろうか。まあいい、悪い印象を受けた訳では無いようだし引き込むか。鈴仙は驚いている、初めて表情が変わったところを見た気がする。俺が鈴仙を見てるのに気付いたのか、無表情に戻った。鈴仙は無表情のまま目を閉じ後ろに控えている

 

「じゃあ手を貸せ、豊姫。お前が欲しいんだ」

 

「・・・・・条件があります、これを飲んでくれたらいいですよ」

 

右手の人差指を立てて、俺に条件を要求してきた。無理難題な要求は困るぞ、俺と永琳でも出来ない事があるし。永琳が内容を聞く

 

「その条件は何かしら」

 

「簡単です、弘さんと八意様が月を乗っ取ったら私を仕事させないで下さい、そしたら私は自由に月に行ったり、地球に来たり、竜宮城で輝夜と過ごせます」

 

そこまで仕事をしたくなかったのか、気持ちは分かるぞ。まあいい、これで成功の4割から7割になった後は・・・・・・まずは豊姫にお礼をしよう。何が嬉しいか、分からんな。数億年ほったらかしだったんだし、女が嬉しいと思う事でもするか

 

「豊姫、抱いてやるから来い」

 

「抱いてくれるんですか!?でも・・・・八意様を抱いたんですか?抱いてないなら先に八意様からじゃないと・・・・・」

 

「いいえ、私はまだ抱かれてないわ。だから先に私を抱きなさい」

 

今のは俺の言い方が悪かったな、永琳が俺の胸ぐらを掴んで来たし、間違いだと否定しなくては。このままでは俺が月に行く前に抱く羽目になってしまう。月人を捕らえたのはいいが、時間をかけ過ぎると月にいる月人に気付かれるだろう。疾風迅雷の如く行動しなければならない、一刻の猶予も許されないのだ。だから抱く暇なんてない、

 

「す、すまん。俺の言い方が悪かった。抱きしめてやるって意味だ」

 

「ああ、そう意味でしたか。残念です・・・・ですが抱きしめても欲しいですが私はもう一つの事をして欲しいです。これなら抱きしめながら出来ますし」

 

何とか誤解は解けた。永琳も胸ぐらから手を放し、隣に並んだ。死ぬかと思った。豊姫のして欲しい事って何だ

 

「私は抱きしめて貰ったことはありますが、キスや愛の言葉言われたりをされた事がありません。ですからキスをしながら愛の言葉を囁いてください」

 

接吻しながら愛の言葉を囁くのか、まあ、それならいいか。永琳にもやったことあるし。じゃあここは男らしく行こう。豊姫を力強く抱きしめて豊姫が俺を見上げてる状態だ。接吻をした。数秒経ったら接吻をやめ

 

「豊姫、愛してる。俺の為に身も心も捧げ、月人を全員を掌握する為に力を貸せ」

 

「はい。最初から捧げていますが、私は弘さんに身も心も捧げます。一生あなたの女として・・・・・そして私は力も能力も全て弘さんの為に使います・・・・・・」

 

豊姫は俺に抱きしめられながら寄り添ってきたので、抱きしめる力を強くして逃げられないようにした。あ、胸を揉んでおこう、ふむ、手に平にちょうど収まるサイズか。右手で豊姫の胸を揉んだら甘い吐息が豊姫から出てきた。後ろからため息が聞こえてきたので永琳だろう、だが俺は止まらんぞ。鈴仙は俺と豊姫を見てる、ガン見だ。だが無表情だ。何も思わないのだろうか、実は頭の中ではお喋りで恥ずかしがり屋なのかもしれん、いや無いか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱きしめ終わった、豊姫はずっと締まらない顔だ。数億年ほったらかしだったからだろうか、数分経ったら豊姫が動き出し顔の表情を緩くしたまま俺に近づいてきた

 

「最終確認なんですが、月人を皆殺しにするとは考えてないんですよね?」

 

「最初は月人を皆殺しにするつもりだったが今は違う。月人を俺の支配下に置けば色々助かるからな」

 

「分かりました、月人を1人も殺さないなら私は弘さんに従います。じゃあ少し準備がしたいので竜宮城に行きますね。扇子が念の為に必要ですし」

 

顔を締まらせず、質問してきた。結構大事な事なのにその顔で聞くのか・・・・・それと扇子って必要なのか、扇子を使ってどうすると言うのか。まあいいや、豊姫の事だから何も考えてない事はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたら竜宮城にいた、鈴仙は来ていない。目の前にはあの無駄に横に長い机がある。豊姫が座って待っててください、と言い自動ドアに向かったので、待つ事にした。そしたら豊姫が入った自動ドアから誰かがこの部屋に入ってきた、輝夜かなと思い見たら知らない女がいた。俺がじろじろ見てたら、俺と永琳にの前にある机の方に行き向かい合いになったら頭を下げてきた

 

「初めまして、私の名は 永江 衣玖 と言います。龍宮の遣いという妖怪で龍神様と豊姫様の従者をしております。お2人の事は豊姫様と輝夜様にかねがね聞いております」

 

自己紹介をしてきたので、俺と永琳も自己紹介をして、衣玖は向かい合いの椅子に座った。仲良く話してると豊姫に挨拶するように言われたそうだ。色々話を聞いたが龍神の奴が最近まで竜宮城にいたそうだが、サリエルが天界を作ってから、天界に向かったそうだ。それで衣玖は龍宮の遣いと言う妖怪なので龍神の傍にいなくてはならんのだが、天界に向かうための準備に手間取っていて、豊姫は基本的に輝夜と過ごす以外は竜宮城にいないので天界まで連れて行って貰う為に豊姫がいないんじゃ行けなかったようだ、豊姫とさっき出会い天界に連れて行って欲しい事を話したら、二つ返事でOKを貰ったので、今は暇らしい俺たちが月に行く前に天界に行くそうなのでこの部屋に来たというわけだ。

ちなみに豊姫が天界に行ったことがある理由はサリエルが竜宮城に来て連れて行ったそうだ、豊姫の能力は海と山を繋ぐ程度の能力だ一度行ったことがある所なら一瞬で行ける、それが何かの役に立つかもと思いサリエルは豊姫を連れて天界に行って、それで豊姫の能力で天界に行けるらしい。豊姫は龍神の義理の娘で血は繋がってない、龍宮の遣いと言う種族の妖怪だし龍神の義理とは言え娘だから、豊姫の従者のようだ。どうしてそんな事になってるんだ、ちなみに衣玖は能力は空気を読む程度の能力だ。話をしてたら自動ドアから豊姫が戻ってきた

 

「お待たせしました、弘さん、八意様。まずは衣玖を先に天界に送りますね」

 

「豊姫様。従者である私の願いを聞いて下さって、ありがとうございます」

 

「衣玖、気にしないでください。私の従者ですが、衣玖は私の姉だとも思っています。姉の頼みなら断りませんよ、むしろ喜んで能力を使います」

 

衣玖は従者として鍛えられているのか、豊姫に向かって綺麗にお辞儀をした。綺麗に頭を下げると思った、さすがあの龍神と遣いなだけあるな。豊姫は片手を上げひらひらさせてる。衣玖は俺と永琳に向かい合いになり、また頭を下げた

 

「弘天様、八意様。お2人とお話ができて、良かったです。それと弘天様は豊姫様の夫と聞いていますが、間違いないのでしょうか」

 

「まあ、間違いではないな豊姫は俺の女だし」

 

「そうですか、じゃあ私は弘天様の従者と言う事になりますね。今から天界に向かいますがまた会った時はよろしくお願いします、旦那様」

 

ん?どういう事だ。豊姫は龍神の義理の娘だから分かるが、俺は血なんて繋がっていない他人だぞ。あと豊姫、俺の事を衣玖が旦那様と言ってから、顔がだらしないぞ。永琳はなんか考えてるし

 

「豊姫様の夫なら、旦那様は龍神様の義理の息子になります。ですから私はあなたの従者です」

 

なるほど、納得だ。どうやら俺は美人な従者を手に入れたようだ。しかし龍神の義理の息子か、あの女、俺、苦手なんだよな。まあいい、藍とてゐと衣玖で3人の従者を手に入れたぞ!!!と言っても衣玖は天界に向かうから、諏訪の国にいる訳じゃないがな。それは従者と言えるのだろうか

 

「そうか、なら龍神に愛想が尽きたその時は、諏訪の国に来て俺の従者として生きろ」

 

「かしこまりました、その時は諏訪の国に向かい旦那様の従者として生きます」

 

また頭を下げてから、俺と永琳に別れの挨拶をして豊姫のもとに向かい消えた。天界に向かったようだ。こうやって見ると人が一瞬で消えるなんて怖いな。便利だが。豊姫が思いっきり抱き着いて来た

 

「では行きましょうか、弘さん、八意様」

 

「ええ、月に行きましょう」

 

まあ、月に行くと言っても次にする事は決まってる。豊姫にいい隠れ場所が無いか聞いたら豊姫は豪邸を建てて依姫と一緒に住んでるらしい。師匠は一緒に住んでないらしいし、丁度いいな。月人を滅ぼすのではなく、生かして俺と永琳がこの先諏訪の国にいても問題を発生させないようにしなくてはいけない、豊姫から月について色々聞いてみよう

 




衣玖をやっと出せました。ここでしか出すタイミングが無かった、輝夜も出そうかと思いましたが没












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掌握

豊姫が住んでる豪邸に着いたようだ、周りを見ると高そうな家具がある、豊姫から聞いたがこの都市は注連縄によって月にいる妖怪から守られてるらしい。注連縄は厄や禍を祓う結界の意味を持っていてそれで都市に結界が出来て妖怪は都市に入れないようだ。そして月に玉兎がいて玉兎は月にいた妖怪だそうだ。鈴仙もその玉兎と言う妖怪だそうだ、それと玉兎は月人から奴隷のような扱いを受けているみたいだな、月にある都市の労働力と言う事みたいだ。それについては俺はとやかく言う気はない。俺はそんな事に興味が無い。奴隷と言っても酷い扱いではなく、基本的には気楽に過ごして労働も地球のに比べたら軽いみたいだが。それでも奴隷は奴隷だ、ならば俺が考え付いたのを月人を脅迫して飲ませてやろう。そういえば昔、天照は岩戸に隠れた時があったが、注連縄を俺が持ち、天照が岩戸から出てきたときに、もう岩戸に入らない様、俺と永琳が縛った事があったな。それと注連縄を使われて建御名方神が封印されたっけ、封印したのは俺と永琳じゃないぞ。どこだったかな、覚えてないな。大国主も封印されたな。永琳が言ってたが注連縄で神様を封印する事も出来るらしいぞ。まあいい、永琳には大仕事をしてもらおう。豊姫にあれがあるか聞いてみるか

 

「豊姫、この豪邸にパソコン数台とネット環境はあるか」

 

「あ、はい。ありますけど、なぜそんな事を?」

 

あるのか、ならば好都合だ。永琳には月人が使ってるネットワークを掌握してもらおう。月人が困るように仕向けなければならん。俺の目的は月人の交渉をするのでない、月人全員の首に刃物を突き付ける状態、要は脅迫なのだ。まずはネットワークを掌握し、次は戦力だ。俺と永琳と豊姫だけでも出来るかもしれんが、月人の頭を逃げられない、断れないような状況にする必要がある、あいつがいたら鬼に金棒だ。俺と永琳と豊姫とあいつがいたら敵なしだろう。7割から10割になるんだ。だからあいつを豊姫に呼んでもらわねばならん、神綺とサリエルが月にいたら分からなかったが、神綺は地獄作ってるし、サリエルは冥界を今作ってて月には来れないし、そもそも神綺とサリエルは俺に敵対はしないだろう。永琳と似た存在だし

 

「永琳、ネットワークを掌握する日時はどれだけかかる」

 

「そうね、1日か2日あれば出来るでしょう」

 

「そうか、なら頼んだぞ。次に豊姫、依姫はいつ帰ってくる。仕事でいないんだろう」

 

俺の言葉を聞いて、豊姫が少し悩んでる、だが少し考えて納得したようだ。必要なんだ、俺と永琳と豊姫でも成功するだろう。だがもしもの事がある、そのもしもの事を潰すためには必要なんだ。常に最悪の展開を考え行動しなければならない。今回俺がしでかしていることは、それだけの事だ。それに失敗したら俺と永琳は月に捕まり、豊姫もただでは済まないだろう。だからこそ、確実に物事を進めるんだ。

 

「確かに依姫がいたら戦力は増えます、なにせ依姫の能力は強力です。ですが、あの依姫を説得できるんですか」

 

「説得できなければ、無理矢理でも聞いてもらう。四の五の言っていられる状況じゃない」

 

依姫の能力は神霊の依代となる程度の能力だこの能力は八百万の神々を依姫に宿し力を借りて使役する事が出来ると言うものだ。つまり依姫を味方にすると、俺たちの戦力は俺と永琳と豊姫と依姫と八百万の神々の戦力になる。しかも依姫も月人の会議に出るほど偉くなってるらしいし、引き込んだら月人はさらに追い込まれるだろう。月人全員の首に八百万以上の刃物が向けられる状況になるわけだ。月人をどうにかするには依姫は非常に厄介だ。だから引き込んでしまえばいい。引き込めなければ豊姫の能力を使って地球に移す。依姫は豊姫のように月に一瞬で来れる能力ではないからだ。依姫を引き込めばよし。断れば地球で身動きが取れなくして俺たちの邪魔を出来ないようにさせるだけだ

 

「そう、ですか。分かりました。依姫は夜遅くまで仕事をする真面目な妹ですから、夜までには帰ってきませんよ」

 

「そうか、なら永琳をそのパソコンがある場所に案内してやってくれ」

 

「分かりました、使用人に八意様を見られ露見してしまう可能性がありますので。私が八意様の料理を作って持って行きます」

 

確かに、永琳は有名だったしな。しかも服装も赤青で目立つ奴で、使用人が見たら露見してしまう可能性があるな。ここは豊姫に頼むか

 

「ああ、頼んだぞ。そして永琳、ネットワークは任せたぞ」

 

「ええ、任せて」

 

永琳は豊姫に案内されて、豊姫の背に永琳が着いていった。俺の仕事は依姫を説得することだ。帰って来るまで月人について考えよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓の外を見たら、もう夜だ。そろそろ来るかと考えたら、ドアをノックする音がした。俺は、入ってくれ、と言って入ってもらった。豊姫が来た、依姫が帰って来たのだろう

 

「弘さん、依姫が帰ってきました」

 

「そうか、依姫をここに呼んでくれないか」

 

「呼んでも構いませんが、覚悟していてください」

 

覚悟、覚悟って何の覚悟だ。まさか殺される覚悟でもしろと言うんじゃないだろうな。依姫に殺されるわけにはいかんのだぞ

 

「弘さん、あの月に行く日私と依姫に何をしたか覚えてないんですか?」

 

「月に行く日にしたことと言えば、豊姫と依姫をロケットに入れたくらいだろ」

 

あの日は確か、月人の皆をロケットに入れて、最後に豊姫と依姫をロケットに入れたくらいだが。他に何かしただろうか。俺が分かってない様子に気付いた豊姫はため息をついた

 

「弘さん、あの日私と依姫はいきなり弘さんにロケットまで連れていかれ、さらには愛した人がロケットに乗らず私達だけ月に行きました」

 

そういう事か。俺が何も言わず勝手に地球に残って依姫は怒ったのかもしれんな。だが2人に地球に残られると面倒だったのだ。月人に俺と永琳が生きてると思われる可能性は潰す必要があったからな

 

「私もですが依姫も悲しんでいました。私は能力で地球に来て弘さんと八意様が生きてるのが分かりましたが、依姫は違うんです。未だにお二人は亡くなっていると思っています」

 

「待て、なぜ豊姫は依姫に俺と永琳が生きてると依姫に教えなかったんだ」

 

「教えましたが、信じてくれないんです。なにせロケットの窓から核で都市が消える瞬間を依姫が見てましたから」

 

なるほど、都市が核で消えて俺と永琳が生きてる訳ないと思ったんだな。都市が核で滅ばず、何億年も生きていたら信じたかもしれんな。寿命が無いんだし、しかしあの依姫が見ていたとは、俺も依姫の立場で永琳が都市に残り核で消えたら同じ反応をするだろうな

 

「話は分かった。覚悟はできてる、呼んで来てくれ」

 

「そうですね、分かりました、じゃあ呼んできますね」

 

数分経ったらドアの向こうから話し声が聞こえてきた。どうやら来たようだ

 

「ほら、依姫。早く入って」

 

「お姉さま、私は帰ったばかりで食事をしていないんですよ。一体この部屋に何があるんですか」

 

「とっても大事な事なの、数億年もかけてやっとここまで来た、依姫はあれ以来全く笑わなくなったんだから、いい加減笑ってほしいの」

 

ドアが開いて2人が入ってきた。見たら豊姫が依姫の背を押しながら来たようだ。依姫は背を押された状態で顔を依姫の背にいる豊姫に向けていたが、俺に気付いたのか顔を前に向けてきた

 

「よう、依姫。久しぶりだな」

 

「ひ、弘さん。弘さんなんですか・・・・・・?」

 

依姫を久しぶりに見たがますます綺麗になってる。豊姫も綺麗になってたがな、服装は変わってないが、都市にいたころから変わらず、髪型はポニーテールで俺がプレゼントした赤いリボンで止めている。腰には月に行く前にベルトを巻いているな。俺がプレゼントした奴だ。ベルトのバックルに剣の紋章がある。豊姫にもベルトをプレゼントして豊姫もベルトを腰に巻いてる。豊姫のベルトのバックルには鏡と思ってた紋章があるんだが、豊姫が言うには鏡ではなく満月なようだ。

依姫はおぼつかない足取りで向かってきたが、何とか俺の目の前に来た。豊姫は扉の近くで立ってる。もしもの時は頼んでいる。依姫を殺すわけではないので頼みは聞いてくれた。依姫の両手で俺の両頬を手のひらで包んできた

 

「暖かいです、生きていたんですね。じゃあ歯を食いしばってください」

 

「え、依姫何を」

 

依姫が両手を俺の両頬から離し、右手を思いっきり振りかぶって俺の頬に平手打ちをしてきた。俺は急に平手打ちをされた事が呑み込めず、仰向けで倒れた、スゲー痛いんだが。久しぶりにいい物を貰ったよ。依姫が俺の体に馬乗り状態で乗って来て仰向けの俺に抱き着いて来た。頬に生暖かい何かが落ちたと思ったら依姫が泣いているようだ。

 

「弘、さん。良かった、生きてて、本当に。良かった。お姉さまの言っていた事は本当だったんですね。ごめんなさい、お姉さま。信じる事が出来ずにいて」

 

「いいのよ、依姫。今は私の事を気にせず弘さんに甘えなさい。数億年経ってやっと愛した人と会えたんだから」

 

「はい、はい。弘さん。今だけ、今だけは何も、言わず、このまま泣きながら抱きしめさせてください」

 

まさか泣かれるとは、俺は仰向けのままの状態で依姫を抱きしめながら頭を撫でて過ごした。まだ時間はある永琳がネットワークを掌握してからが始まりだ。だからそれまでに依姫を引き込むんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから引き込みに来たんだ、俺と来い依姫。お前が欲しいんだ」

 

「意味が分かりません。数億年かけての再会の後にする話が月人を服従させる話なんて」

 

どうやって俺と永琳が生きてたかは依姫に説明した、理解したようだ。しかし、やはり依姫を説得するには骨が折れるな。どうしたらいい、豊姫はすんなり引き込めたが、依姫は駄目なようだ。どうするべきかな、真面目な所を上手く使えたらいいんだが、そうだ愛の言葉でも言ってみよう

 

「依姫、愛してる。俺の為に力を貸せ」

 

「い、嫌です。どうして私がそんな事を・・・・・それにこんな時に愛してると言われても嬉しくないです」

 

今、俺と豊姫と依姫はソファーに座ってる。真ん中が俺で左隣には豊姫で、右隣が依姫だ、さっきから依姫の表情はクールだが甘えまくって俺にべたべたくっ付いてる。豊姫はマイペースで俺と依姫を見てニコニコしてる。説得するのは俺の役目で手伝う気はないようだ。仕方ないここは無理矢理に行こう

依姫の顎を右手で持ち、俺と依姫は目を合わせ、逃げられないようにする

 

「手を貸せ、依姫」

 

「い、や、です」

 

真面目な性格の為か、こういうのに弱いようだ。だから顔が真っ赤で白い所が無いし耳までもが赤い。ここまでしても駄目なのか・・・・・じゃあ豊姫とやった似たような事をしてみよう。これで駄目なら依姫は地球にある山 蓬莱山 に移す事になってる。俺の顔を依姫の顔に近づけ接吻した。依姫は急だったので驚いて逃げようとするが依姫の顎にあった俺の右手を依姫の腰に回し、俺の左手で依姫の後頭部を抑え逃げれないようにする。逃げれないし口を塞がれてるので、

 

「んー!!んー!!!!」

 

と唸ってるが、気にせず接吻をし続ける。依姫は逃げようと依姫は両手を使って俺の体を押して逃げようとしているが俺が力づくで逃げられないようにしてるので逃げれない。あ、ついでに胸も揉んでおこう。うーん、依姫も成長したようだ。手のひらにギリギリ収まらないほどの大きさだな。依姫は自分が何をされてるのか理解してるが、逃げられないので諦めたのか俺に身を任せてきた。依姫落ちたか。

数十分してたら依姫の体から力が抜けて俺に倒れこんできた。依姫の脳の捌ける容量をオーバーしてしまったようだ。だがこれで行けるだろう、依姫にもう一度同じ質問したらまた断って来たので、さっきと同じことをもう一度した。数時間かけてやっと了承したので、これで丸く収まっただろう。後は永琳を待つだけだ。豊姫が俺の肩を豊姫の、多分人差指でトントンと叩いて来た、振り返ると豊姫が目を瞑って唇を差し出してきている。

 

「私にも同じことをしてください」

 

「疲れたから寝る」

 

寝てから次の日になった、依姫が条件があると言ってきたので今から聞いてる最中だ

 

「局長、いえ、弘さん。弘さんの目的は分かりました。ですが条件があります」

 

「聞こう」

 

「月人を殺す事はやめてください。弘さんは敵には容赦ないですからね」

 

豊姫と同じことを言ってきたか、殺しはしない、殺す以外はする予定だが

 

「分かった、月人は殺さない。誓おう」

 

「分かりました、ならば私の力をお貸しします」

 

「それと、依姫に聞きたいんだが。月人の頭が揃う時ってあるか」

 

「え、ええ。2日後に会議があります」

 

2日後に会議か、ならばその日に永琳にはネットワークを8割ほど掌握してもらって、会議に攻め込む直前に完全掌握してもらってから月の頭が揃う会議に向かうか。これで依姫は引き込んだ。後は頭を支配するだけだ、失敗は許されない。永琳と豊姫と依姫がいるからって慢心はしてはいけない、油断だけは絶対にしないようにしなければ




最初依姫はあっさり仲間になる予定でしたが、豊姫ばかりキャラが立ってこれはいかんと思いこうなりました。 

注連縄は有名ですねあのでっかい縄みたいなやつです


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感情

今回のオリキャラが出るのは前半だけです、オリキャラは極力出しませんが必要だったので出しました

台詞多めです。前話を見たか確認はしない方がいいです

30話まで来たって・・・・・嘘だろ。今回無茶苦茶だよ


依姫を何とか引き込んで、2日経った、今は夕方の時間だ、時計があるので時間が分かる。後は永琳を待つだけだ。いつ本拠地に攻め込むか、月人のお偉いさんが会議に、月の頭が全員集まるだろうしその日に豊姫の能力で会議室にワープして、奇襲を仕掛ける事になったので。今日の夜会議があるらしいので丁度いい。それまで俺は月人をどう脅迫するか考えてよう。

豊姫と依姫は会議に行かねばならんが、豊姫の能力で一瞬で行けるから、豊姫と依姫は俺と一緒にいる。考えてたら、ドアを開けて永琳が入ってきた

 

「弘、終わったわよ」

 

「そうか、じゃあ準備していくか」

 

夜になった、今は永琳にネットワークを掌握されて大慌てだろう。まずは一つ潰した、今は月人全員の首を絞めた所だ。ネットワークがないなら月人は困るだろう。次は月人 全員の首に刃物を八百万の神々が突き付ける番だ。依姫の能力、神霊の依代となる程度の能力を使い八百万の神々の神々が月人全員の敵になった。これで武力で脅迫できる。次は俺が会議室に直に向かい、脅迫内容を話すだけだ。従わねば、その時は

 

「じゃあ、豊姫頼んだぞ」

 

「はい。弘さん」

 

周りを見ると豪華な家具は無くなり、鉄、鉄、鉄、鉄ばかりが周りに見える。目の前にはハイテクで金属製の無駄にデカいドアがある。ドアの横にはなんかパスワードを入力するような機械がある。俺と永琳と豊姫と依姫でも一緒に入れるほどの大きさだ。だがこの金属製の無駄にデカいドア、数億年前に見たのと同じだぞ。永琳がいないから文明の進みが遅くなったのだろうか。永琳は不眠不休でネットワークを掌握して、寝ていろと言っても着いていくと言って聞かないので俺の隣にいる。あの弓矢も持ってきてる、豊姫と依姫は俺と永琳の後ろだ。まあいいや、金属のドアが邪魔なので、ここは依姫にまかせよう

 

「依姫、金属のドアがあって会議室に行けん。分解しろ」

 

「分かりました、弘さん」

 

依姫の能力神霊の依代となる程度の能力で使役できる神の中に 金山彦命 と言う神がいて、金属を分解したり再構成出来る神だそうだ。すごいな、こんな神が他にもいて八百万の神々を依姫は使役出来るとは。もう全部依姫一人だけでいいんじゃないかな、負ける所が想像できない。神に仕える巫女は長い手順を行い神を下ろすんだが依姫はその手順を使わず、一瞬で神を下ろせるようだ。弱点が見当たらないな。しかもその能力を使っても代償が何一つないのだ。

無駄にデカい金属ドアが分解されて、ドアがあった所は穴が開いたような感じになってる。だが分解をしただけで無くした訳じゃないので、地面にはドアだった物が地面に落ちてる、気を付けて進んで行くと、デカくて円形状のデスクの下に椅子が置いてあり、それぞれの椅子に月人が座ってる。パッと見たところ100人は超えてるな。100人以上も椅子に座って並べるほどの円形状のデスクだ。父さんや師匠もいるな、皆驚愕の表情で見ている、始めようか

 

「どうも、お久しぶりです。かつての都市にいた元局長、蓬莱山 弘天です」

 

「同じく、かつての都市を発展させた、八意 永琳です」

 

「急で申し訳ないのですが、俺と永琳は月人を脅迫しに来ました。拒否権はありません。これは交渉ではなく一方的な物なので」

 

俺の言葉を聞いて円形状のデスクの下にある椅子に座ってた月人が立ち上がって怒鳴ってる。あれは新顔だな、俺と永琳の顔を知らぬと見える。豊姫と依姫はさっきの金属ドアがあった所の両脇に立ってる。俺と永琳の事を知ってる、あの都市があった時にいた上層部の連中は黙ってる、俺と永琳だけでも脅威なのに後ろには月を守る役目なはずの豊姫と依姫が後ろに控えている、本来なら2人は俺と永琳を捕らえる役目なのだが、動く気配が無い、状況が呑み込めたのだろう。今この場にいる月人全員は俺が命を握っているのだ、新顔が煩いので黙らせよう

 

「永琳、黙らせろ」

 

「ええ」

 

目にも止まらぬ速さで矢を弓の弦に宛てがって射出させた。大和の時にも言ったが永琳は1秒に5本の矢を撃てるのだ、その上、護身術も出来るし。人間やめてるが神なので問題はない。新顔の月人は永琳が射出させた矢を頬にかすって頬が切れそこから血が流れてる。これでもう喋らんだろう、トラウマになったかもしれんが

父さんでもない師匠でもない、昔の俺の上司だった男が手を挙げて質問してきた

 

「1つ質問なんだが、今我々、月人のネットワークが何者かにハッキングされ、何者かに掌握されている状況なのだが、もしやそこにいる八意君がやったのかね」

 

「そうですね、永琳にハッキングをさせました」

 

元上司はため息を出しストレスが原因かお腹を押さえて痛そうだ。胃の調子が悪いみたいだ、ならばさっさと終わらせる。次は師匠が聞いて来た

 

「弘天と八意に対抗できるのは豊姫と依姫、そして神綺とサリエルくらいだろう。だが豊姫と依姫はお前に付いたようだし」

 

師匠は一息おいてまた喋りだした

 

「まあ、神綺とサリエルは月にいたとしても弘天と八意が相手だと抵抗はせず降伏するだろうが」

 

師匠の後に続くように父さんも聞きたい事を聞いて来た、見た目は数億経っても変わっていない

 

「弘天、我が息子よ。生きていて良かった、だが、なぜわざわざ月を乗っ取るんだ、そんな事をして弘天に何の得がある」

 

「月の事を色々聞かせて貰いました。月の民、この場にいる月人も神になってるそうですね。そして月に元々住んでた玉兎を奴隷にしてると聞いています」

 

他の月人が立ち上がり異を唱えてきた

 

「待ってくれ!確かに月人の奴隷として働かせてるが、そんな酷い物じゃない。労働と言っても大したことじゃないし、玉兎も基本的には気楽に住んで貰っているんだ!」

 

「それについては俺は何も言いません、玉兎を奴隷にしても玉兎に同情なんてしませんし、玉兎が可哀想なんて微塵も思っていません」

 

「・・・・・・・同情した訳じゃ無いなら、なぜ奴隷の話を切り出すんだ」

 

「最初から同情の気持ちなんてありません。ですが奴隷は奴隷です。奴隷にさせると言う事は自分たちも奴隷にされても文句は言えませんよね」

 

月人を皆殺しにしてもいいが、月人の利用価値について考えた。未来の話だが必要な時が来るだろう、それまでは俺の奴隷になって貰う。奴隷と言っても玉兎と似たようなものだが、そもそも俺は月にずっといる訳じゃ無い、だから奴隷と言って酷い扱いにしても反発されて終わりだ。俺と永琳は月にいないんだから、だから月人は俺の奴隷だが、酷い扱いをする訳じゃ無い。むしろ奴隷は表向きだが、実際は今までと変わらないのだ。豊姫と依姫に頼んで監視はしてもらうが、例え反抗しようとも豊姫と依姫に月人は誰一人勝てんがな

 

「打つ手がないしな、従う他ない」

 

「では師匠、この脅迫内容を今すぐ受けて貰いますよ、最初から拒否権なんてありませんがね。それと父さん名門 蓬莱山 の肩身が狭くなるけど俺は謝らないよ」

 

「分かっているさ、そもそもの始まりは我ら月人が、弘天と八意さんが地球で過ごしていた所を無理矢理連れて行こうとしたのだ、先に始めたのは我らの方だ」

 

さすがに、永琳と豊姫、依姫が敵にいると勝ち目なんてないだろう。月人の技術を使っても、確実に月人は負ける、月人は豊姫と依姫に頼りっぱなしだからだ、二人とも能力がすごいしな、だがこれで終わりじゃない、俺にはまだやることがある。

 

「永琳!馬鹿な事はやめなさい!!あなたが何故こんな馬鹿げた事をするの!?」

 

どうやら、永琳の母親も会議室にいたようだな、邪魔だがここは永琳に任せよう

 

「お母さん、ごめんなさい。もうあなたの天才としての 八意 永琳 はいないの。数億年前の核で都市と一緒に死んだのよ」

 

確か永琳は都市があった時は親には従って生きてたからな、俺と友達になってからは従う振りになったが、永琳が逆らってきたから母親の口は塞がらなくなってる。初めてだったんだろう、永琳が逆らうなんて

 

「だから今の私は 蓬莱山 弘天 の女 蓬莱山 ×× そして 蓬莱山 永琳 なの、私は夫である弘天に従い、弘天の為に生きると、私の全てを弘天に捧げると決めたの」

 

永琳の母親が何か言いかけたが、一瞬で豊姫と依姫が永琳の母親がいる所に出た、能力を豊姫が使ったようだ、豊姫と依姫を転送して依姫は永琳の母親の横に立ち鞘から抜いた刀を永琳の母親の首元に向けて、逆側に豊姫が立ってる。扇子を持っていた豊姫は永琳の母親の横に立って首に扇子を押し当ててる。

 

「喋らないで下さい、月人を殺したくはないのです。ましてや八意様の母君ならなおさらです」

 

「この扇子、どんな扇子か忘れてはいませんよね。月の最新兵器、森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす扇子ですよ。私も殺したくはないのです、黙っていただけますか」

 

豊姫と依姫のお蔭で、話がスムーズに進みやすくなった、今ので殆どの月人は喋れなくなっただろう、永琳の母は絶句して、椅子に座った。じゃあ話の続きを始めよう。まだ終わってないのだ。豊姫と依姫が消えた、後ろを見たら金属ドアの場所の脇に立ってるようだ

 

「まだ話は終わっていません、ここからが一番大事な話です」

 

ここからが大事な所だ、奴隷だけで話は終わらない。上層部の一人が話を聞く姿勢になった、どうやら周りにいる月人の代表として聞くみたいだ

 

「聞こう、抵抗はできないのだから」

 

「では、聞いていただきましょう。俺が最後に言いたいのはかつて大和に最後まで抵抗した武神、建御名方神の事です」

 

月人全員が戸惑ってる、急に建御名方神の名を出したからだろう。だが大事な事だ。建御名方神は俺が大和を支配する前に封印された神だ。忘れているかもしれないが俺が大和を支配するまで大和は周りの国を武力で侵略してたのだ。俺が大和を支配したんだし助ければいいと思うがそうはいかない

 

「なぜ、建御名方神の事を今話す」

 

「建御名方神はかつて大和に最後まで抵抗した武神です、そして大和の頭は、天照大神、月読命、須佐之男です。いわば月人の関係者です、その月人の関係者は建御名方神を注連縄で封印しました」

 

「そう、だな。確かに封印したと聞いてる、場所は確か・・・・・」

 

「昔、大国主は天津神に注連縄で封印されました、天津神も月人の関係者ですね。大和の頭もそうですが、その月人の関係者はなぜ封印するのでしょうね」

 

大国主は出雲の神社に今も封印されてる、あれからどれだけ時間が経っただろう。ずっと考えてた事だ、何のために封印してるかは分かってるが

 

「月の民に逆らう神を封じる為に月人の関係者は注連縄を使い封印しました、全ての始まりは太陽の神、天照大神が岩戸に隠れた時から始まりましたがね」

 

「結局の所何が言いたいのだ」

 

「簡単な事です、月の関係者は月に逆らう神を昔から注連縄を使い封印してきたのです、ならば月人も同じことをされても仕方ないですよね」

 

今の月人は皆神だ、注連縄を使い永遠に封印する事も出来る、大国主と大国主の息子の建御名方神を注連縄で封印してきたのだ、ならばこの場にいる月人全員が俺に逆らって封印しても因果応報だろう。逆らったらするがな、今はしない。今は。さっきからこの場にいる月人の代表として俺に質問してきていた月人の上層部が頭を痛そうに押さえた

 

「その話を持ち出してくるとは・・・・・・我らは今では神だ、注連縄で永遠に封印することも確かに出来るだろう」

 

しかも今は永琳がネットワークを掌握して神綺とサリエルは月にいないし豊姫と依姫が俺と永琳側だ、武力でも勝ち目がなく、ネットワークを掌握され、さらには逆らったらお前ら月人全員を封印するぞと脅している状況なのだ。ここまでやって逆らうバカはいないと思うが、逆らったら殺さず封印するだけだ。豊姫と依姫は月人を殺すなと言った、ならば殺さず永遠に封印してやろう。ある意味死ぬ事と変わらんが、殺してはいないのだ後ろから依姫の声が聞こえた

 

「まさか、殺すのではなく、注連縄で月人全員を封印する手段を取るとは・・・・・」

 

「依姫、月人は殺さない約束は守ったぞ。まあ、ある意味死ぬ事と変わらんがな」

 

見たら依姫は呆れている、豊姫は扇子で扇ぎ涼しそう、あれ、あの扇子月の最新兵器って言ってなかったっけ、あの扇子で扇いでいいのだろうか。永琳は弓を構えたままだ。ここまでやって月人が抵抗の意思を見せるなら天晴だ。だがそんな事をすれば地球に連れていき封印するがな。いやその前に地球にある海に月人全員を豊姫にワープさせて溺れさせるか、抵抗したら鬱陶しいからな。月人は武器が無いと無力な存在だ、能力を持ってるのは豊姫から聞いたが、豊姫と依姫だけと聞いてる。檻にでも入れられたら出る事も出来ない存在なのだ。月人なんて神になってもその程度だ、俺もだがな

 

「いいだろう、私達月人はその内容を呑むしかない状況だ。為す術がない、内容の細かい話を聞かせてくれ」

 

「いいでしょう、ならば内容の詳細について永琳を交えて話しましょう」

 

これで月人は俺の奴隷だ、そして抵抗したら注連縄で封印してやるまで。殺すわけじゃないんだし、いいだろう。大国主、その息子建御名方神は今も封印されているのだ、月人にはその時同じようにしてやるまでだ。だがまだ俺にはする事がある、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は豊姫を連れて、都市から出て月を歩いてる。永琳の護衛の為依姫は永琳の傍にいる。永琳にはまだ細かい話をしてもらってる。俺は俺の役目を果たそう

 

「弘さん、どうして月を歩いてるんですか」

 

「会いたいのがいるんだよ、豊姫から話を聞いた女性に会いたいんだ」

 

だいぶ歩いて来たが見当たらないな、探し方を変えて大声で名を呼んでるんだが、反応しない。どうでもいいが重力が地球と違うから動きにくい、上を見上げると地球がある、綺麗だな。俺が住む所は月じゃない、あの綺麗な地球だ。だからこそ探さなくては、歩いてたら目の前に急に丸い銅板みたいなのが出てきてその中から人間みたいな姿の女性が出た、丸い銅板は鏡にも見える、上半身だけを突き出して出てる。重力で落ちないのかと思ったがここは月だ、地球とは違う。顔を俺に向けてきてじっと見てる。綺麗な女だな

 

「さっきから私の名を叫び探しているようだが、一体何の用だ」

 

「会いに来たんだよ。豊姫から変わったのがいると聞いたんでな」

 

豊姫から聞いたがこいつは変わっていて、大妖怪をも上回る力があるのに都市に侵入するそぶりも見せず、ただ月にじっといるそうだ。どうやら人を襲う存在ではないらしい

 

「会いに来ただと、何の為にだ」

 

「色々理由があるが、一つ聞きたいんだ。大昔からずっと月にいると聞いたんだが」

 

「そうだ、気付いたら月にいた」

 

月にいたと言う事は、月で生まれたのだろうか。だったら感情はあるのだろうか

 

「いきなりなんだが、楽しいって感情は分かるか、もしくは色んな感情を持った事はあるか」

 

「感情、そんな物は知らん。長い時間を生きていたがそんな物持った事は無い」

 

「そうか、実は俺が会いに来た理由は、友達になろうと思ってな」

 

「友達だと、友達とは何だ」

 

友達の意味も知らないようだ、ならば俺は少しずつ教えていこう。敵意は感じないしな

 

「友達って言うのは一緒に遊んだり喋って楽しいと思う存在の事だ」

 

「さっきも言っていたな楽しいと、なんだ、その友達とやらは楽しいのか」

 

「分からん、それは仲良くならなければ分からん事だ。だから俺は知ってもらう為に来たんだ」

 

「知ってもらうだと、一体何を知ってもらうと言うのだ」

 

俺は豊姫から竜宮城で聞いてから考えてた、その話を聞いて月人に敵意を感じない存在だったと。理性もあると聞いていたし、だから友達になれるんじゃないかと思い来たんだ、あわよくば仲間になってほしかったし

 

「楽しいって言う感情だよ、もしその感情を知りたかったら俺と地球に行かないか」

 

「感情を教える為に来ただと、それに地球とは何だ」

 

「地球って言うのはあれだよ」

 

俺は人差指で地球を差した、人差指につられて見たようだ

 

「ああ、あれか。あれは地球と言うのか、前から綺麗だと思っていた」

 

「綺麗だと思う事は出来るのか、ならば感情を持っているが楽しいと思うことが今まで無かったんだな」

 

「綺麗と思う事は感情なのか、楽しいと思う事も綺麗だと思う事と同じでそれは感情なのか」

 

「綺麗と思う事と、楽しいと思う事は感情ではあるが違う感情だ。地球を見て綺麗だと思ったら俺と地球に来ないか」

 

良かった、ロボットのように感情が無いわけではないようだ。ならば俺が感情を教える役目をしよう、後はその感情を芽から少しずつ育ていつかは花を咲かせてもらおう

 

「地球に行けば楽しいと言う感情が分かるのか、地球に行けば地球以外を見て綺麗だと思う事が出来るのか」

 

「分からん、だが俺は楽しいと思う感情や地球以外を見て綺麗だって思ってほしいから、その為に俺は行動はする。思って貰う様に俺は動くが、思うのは俺が決める事じゃないんだ」

 

地球に来るかどうかは俺が決める事じゃない、月から離れたくないなら、俺は諦めて地球に帰る。だから俺は右手を差し出していつものように聞くのだ

 

「だから地球に来ないか、月にずっといるのもいいかもしれないが、一旦月から離れて色んな物を知りに行かないか。俺はその手伝いをする」

 

「その右手は何だ」

 

「色んな事を知りたいと思うなら俺の右手を掴んでくれ、そしたら地球に行こう」

 

数分経っただろうか、上半身だけを突き出してる状態だったが、丸い銅板から下半身も出してきて月に降りてきた。丸い銅板は彼女が出てきて落りたと同時に消えた。俺に近づいて右手で握手するのではなく、俺の右手の手の甲を彼女の左手で掴んで来た。握手を知らないようだ、俺も最初に右手を掴めと言ったからだろうが

 

「これはな握手って言う行為なんだよ」

 

「握手とはどうするのだ」

 

「俺の右手とそっちの右手を合わせる感じだ」

 

「こうか」

 

「そうそう、これが握手。握手したんだし、地球に来るって事でいいんだな」

 

俺の言葉を聞いて頷いた、迷いはないようだ。じゃあ豊姫に頼んで先に地球に戻らせてもらおう

 

「豊姫、すまんが先に地球に戻る事にした、永琳に謝っておいてくれ」

 

「分かりました、では気を付けて行ってください。行先は大和の近くです。今は真夜中でしょうから」

 

「ああ、頼む」

 

豊姫は能力ですぐに都市に戻れるし、永琳の傍には依姫がいるし、いまだにネットワークを掌握してる状態だ、今頃月人はパニックになってるだろう。だから逆らう事はしない、したらその時は

気付いて周りを見たら大和が見える、大和の外にいるようだ。今は深夜で周りが見にくい、月の光で何とか見えてる状態だ。どうやら周りを見てきょろきょろしてる、初めてだから興味深いんだろう

 

「ここが地球か」

 

「そうだ、ここが地球だ」

 

「そうか、もしやあれは月か、あれから月の力を感じる」

 

「ああ、月だよ」

 

上を見上げてる、月を見てるようだ。俺も見上げたら満月の様だ、満月だと月からの力が強いんだっけか、どこかで聞いたことがある気がする

 

「Ma Lune d'Or」

 

何語だ、俺に通じるように言ってほしいんだが空を見上げてたが俺を見てきた

 

「月が綺麗だな」

 

今まで無表情だったが、笑えるじゃないか、だがまた月を見るのに戻った。綺麗だと思う感情は持ってる。だったら次は楽しいと思ってくれたらいいんだが、綺麗だと思う物を他にも見せよう。後は永琳と藍の料理でも食わせよう。不味くはないだろう、美味しいと思うはずだ。そしたら美味しいって思う感情も分かるだろう、そういえば、お互い自己紹介をしてなかったな。また俺は右手を差し出す

 

「自己紹介をしよう。俺の名は 蓬莱山 弘天 弘って呼んでくれ」

 

「自己紹介とは何だ」

 

「自己紹介って言うのはお互いを知る為にまず名を名乗るんだよ」

 

「そうなのか、分かった」

 

月を見てたが俺を見て向かい合いになった、そして俺に近づいて来た、さっきまで満月を見ていて綺麗だと思っていたのか表情は微笑みのままだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名は キクリ だ」

 

キクリは微笑みのまま右手を差し出し俺の右手に絡めてきた、今度はちゃんと握手出来た




キクリは旧作キャラですが竜宮城に初めて行ったときに名だけ出ています。月の話を書いたのはキクリと依姫の為でした、依姫は出番がなかったですし

綺麗に終わった様な気がしますし完結します、もう書きません。まだ考えてる話がありますが書きませんし更新しません丁度30話まで来ましたし、いいと思うんですよ

諏訪の国と建御名方神は結構関係あります、東方にも関係あります。調べたらすぐ出てきます。本当はその話を書きたかったんですがね、没

旧作キャラは名だけ出す訳じゃ無いんだなこれが、次は何の話を書こうか書かないけど


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技術

今回の話を見て気になった人は後書きを見た方がいいです

それと今回オリキャラと呼べるのか微妙なキャラが出ます。いえ、二次創作キャラなのは間違いないんですがね、
ですがそのキャラの設定が今回の話をうまく混ぜる事が出来るんで出しました



キクリを連れて諏訪の国に戻っている、もうすぐで着く、キクリはきょろきょろしていて落ち着きが無い。

 

「あれは何だ」

 

「あれは林だな」

 

「あれは何だ」

 

「あれは雲だな」

 

さっきから質問の嵐だ。それほど興味があると言う事なんだろうが、何かに興味を持ってくれて嬉しいが全ての質問に答えるのも大変だな。100以上の質問は答えている、俺が言い出し始めた事だから最後まで責任はとる。帰りながら質問をされ続けてきたが、諏訪の国に着いた。やっとだな、あ、須佐之男に手紙を書くの忘れてた、書いておこう。

 

「お帰り、こんな真夜中に帰ってくるなんてどうしたの。それに永琳もいないし、隣にいるのは誰?凄い妖気を感じるけど」

 

「ただいま萃香。永琳は遅れて帰ってくる。隣にいる女性の名は キクリ だ諏訪の国の一員になるかは分からんが、暫く一緒だからよろしくしてやってくれ」

 

萃香が近づいてきて、キリクの前に立った、萃香は身長が低いからキクリを見上げている状態だ

 

「私は 伊吹 萃香 よろしくね」

 

「私の名は キクリ だよろしく、でいいのか弘天」

 

「ああ、それでいい。キクリは箱入り娘でな、世間について疎いんだ。だから萃香はキクリに色んな事を教えてやってくれ」

 

萃香は持ってた瓢箪を掲げて頷いた

 

「任せてよ、じゃあまずは親睦を深める為に酒を飲もう!まだ神社で皆起きてるから、キクリも一緒に飲もう」

 

「待て、いきなりキクリに酒を飲ませるのか。それはやめておいた方が」

 

「いいじゃないか、まずは理性を取っ払うんだよ、お互いを深く知る為にもね」

 

萃香は霧になって消えた、これはいいのだろうか、だがキクリには色んな事を知って貰う為にも酒を飲ませた方がいいか

 

「よくわからないんだが、私は酒とやらを飲めばいいのか」

 

「のようだ。さすがに鬼が飲むような酒は出さないだろうが、神社に行こうか」

 

「神社とは何だ」

 

「俺の家だ。キクリで言うと月みたいなもんだな」

 

キクリを連れて神社に着いた。どうやら桜の木の下で呑んでいるようだ。今の季節は冬に近い、だが勇儀の持ってきた桜の種は一年中咲く桜だったみたいで、幽香に桜を咲かせてからは毎日桜が咲いている、藍は料理を作っていて皆に配っているようだ。てゐもそれを手伝っている。他の皆は酒を飲みつつ談笑してるようだ。美鈴もまだ来たばかりだが皆と仲良く料理を食べながら酒を飲んでいる。俺とキクリも行こう、まずは挨拶からしようか

 

「皆、酒を飲みつつ料理を食いながら聞いてくれ」

 

皆俺を見て隣にいるキクリを見てる、萃香からある程度は聞いているようだ

 

「俺の隣にいる女性は皆聞いてるかもしれないが箱入り娘でな。だから皆彼女に色んな事を教えてやってくれ。じゃあキクリ皆に名を名乗ってくれないか」

 

「分かった」

 

キクリは前に出て皆の顔を見渡して名を名乗った

 

「私の名は キクリ だ。地球には色んな物があると聞いて来た。だから私に色んな事を教えて欲しい。よろしく」

 

キクリが名乗ったらみんなよろしくー、と言って萃香がキクリの手を引っ張り皆の中に混じっていった。

 

「酷いわね、私を置いて先に行くなんて」

 

「すまんな永琳。どうしても大事な事があってな」

 

後ろから永琳の声が聞こえて来た。どうやら話を終えて帰って来たようだ、後ろにいる永琳に振り向いた

 

「それで、話は終わったんだな」

 

「ええ、これ以上ないくらいね」

 

永琳に近づき抱きしめ頭を撫でた、いつも俺のせいで振り回しているから罪悪感を感じる時がある。これでよかったのだろうかは分からない、だが永琳を不幸にしてはいないだろうか

 

「そうか、ありがとう。永琳、嫌になったら言ってくれ、俺は永琳に頼り過ぎているから永琳を追い込んでいないか心配だ」

 

「気にしないで。都市があった時にデートして弓矢を取りに行った時、私は幸せよって昔言ったでしょ。弘に頼られなかったら私、困るわ」

 

永琳も俺に抱き着いて永琳の顔を俺の耳の横に並べてきた

 

「だから頼って、私を使って。ずっと一緒だって、俺の女になれって、これからは楽しい事が待ってるって。昔、約束してくれたでしょ。ちゃんとその約束は守ってくれてる。私は果報者よ、ありがとう弘」

 

「ああ、そうだったな。俺らしくなかったな、じゃあ俺たちもあの中に入るか、その前に永琳」

 

「どうしたの、弘」

 

「愛してる」

 

「ええ、私も愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し飲み過ぎた、起きたら昼になっているようだ、酒を飲みながらだがやっと手紙を書き終えた。永琳は不眠不休だったので部屋に戻って寝てる、キクリと俺は居間にいる。キクリは色々見たせい、それと酒を飲ませられたせいか寝てる。初めの事ばかりだったんだろう、捕らえていた月人は月に戻した。あの3人も神だったそうだ、じゃあ妖怪の穢れで死ぬことはなかったんだな。疲れた、俺も寝ころんで寝たい

 

「萃香、膝枕してくれ」

 

「いいよ、じゃあしてあげるから寝てね」

 

萃香は基本、諏訪の国のどこにでもいるが霧になって見えないだけなので、呼べばすぐに出てくる。あんなに飲んだのにけろっとしてる、鬼の肝臓は強いんだな、急に出てくるからたまに驚くときもあるけど、俺は萃香の膝に頭を乗せ寝ころんだ、萃香の髪は茶色のロングヘアーで髪の先の方を黒色のゴムみたいなので止めている。立ってる時は床に髪は地面に付かないが、座ると長い為床に髪が床に付くほどの髪の長さだ。暇なので床につくほどの長さの髪を撫でよう。サラサラだ、触っていて気持ちいい。しかもいい匂いがする、女の匂いだ。容姿は子供にしか見えんが、色香はちゃんと女性なんだな。俺が萃香の髪を撫でてたら、俺の頭を撫でながら萃香が呟く

 

「この前天狗が来て教えてくれたんだけど、天狗がいる山に河童が住み着いたらしいよ」

 

「河童か、どんな生き物なんだ」

 

「河童はね、綺麗な水の場所でしか住めないんだって。あの山にある川は綺麗だったからね。それで住んでるんじゃないかな」

 

河童は綺麗な川でしか住めないのか。萃香が言うには河童は技術力が優れているんだと。欲しいな、技術があれば諏訪の国も発展するだろう。本当は国を発展させない方がいいだろう。例えば民が知恵を付けて来たら王としての立場から言えば面倒で邪魔な存在だ。だがその時は俺の存在は民からしたら邪魔な存在になるだろう。その時はその時を受け入れるまでだな。それと河童の容姿なんだが殆どが似た青いもしくは水色の服装だが一人だけ違う服装の河童がいるらしい、その河童の服装は赤い服を着てるそうだ。

萃香の話を聞きながら寝ようと思ったが、藍が居間に入って来た。最近藍の尻尾が6本から8本になった、それにつれて体も大人の女性になってきてる。

 

「主、天狗が来ています。主に話があるそうです」

 

「話か、ここに呼んでくれ。それとこの手紙を大和にいる須佐之男に届けてくれ」

 

「分かりました、主。お任せを」

 

藍が傾き居間から出て行った。本当はてゐに頼みたいんだが、逃げそうだし仕方ない。てゐのお蔭で藍の仕事が減ってる。仕事の報酬として俺と永琳が作った人参に夢中だ、だから俺の言う事は今の所聞いている。だから藍も少しは楽できてる、本人が言うには苦じゃないそうだ。そういえば天魔と交渉したんだっけか、天狗が困ったら諏訪の国が助けるって話だったな、だがなぜ俺に用があるんだ、勇儀とかルーミアに話をして紫に頼んでスキマで移動したらいいと思うんだが。足音がする、どうやら来たようだ、誰が来るのかと思ったが、文だ、俺が萃香に膝枕してもらってるのに見ても全く動じないとは

 

「お久しぶりです、今回来たのは困った事が起きまして諏訪の国に来ました」

 

「その困った事とはなんだ」

 

「最近河童があの山に来たんですが、私たち天狗は縄張り意識が強くないので、天狗の事は気にしないでもらい住んでもらったんです」

 

意外だな、天狗は縄張り意識が強いと思ってたんだが、俺の勘違いだったようだ。そういえば最初あの山に行ったときはコンガラに止められたか、コンガラは今何してるのやら

 

「その河童があの山の近くを通る旅人を殺すとまではいきませんが、害を成すみたいでして。鴉天狗の力で無理矢理抑える訳にもいきませんし」

 

「害か、それは困るな。旅人が諏訪の国に近寄らなくなってしまう」

 

「本来私達、天狗で出来る範囲なのですが、河童の技術力は侮れません。そこで天魔様が一計、あの技術力を諏訪の国の傘下に入れないかと考えた次第です」

 

天狗が河童を諏訪の国に引き込むように動くより、諏訪の国の王で神である俺が動いて河童を引き込んだほうがいいと言うわけか。そこで今回は俺に話をしに来たと言う訳だな。

 

「話は分かった、萃香。俺は出かけるから諏訪の国を頼んだぞ」

 

「うん、任せて。気を付けて行って来てね、あなた」

 

俺が立ち上がったら萃香が霧になって消えた、今の萃香が言ったあなたって言い方どこか色っぽい言い方だったぞ。話は終わったので文も山に戻った。旅人に害をなしているのか。諏訪の国の民は安全だろう。萃香が能力で諏訪の国の全体を見てるんだし、だが旅人を襲われると、諏訪の国に来る旅人が減ってしまう、それは困る。あの山から諏訪の国は近い、諏訪の国に近づくと河童に襲われるとでも言われたらたまったものではない、呑気にしていたら話が広まってしまう。山に向かおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟に着いた、少し肌寒い。もう少しで冬になるかもしれん。文から話を聞いたが、河童がいる場所は俺が、勇儀と萃香と華扇と初めて出会ったあの洞窟の近くの川の奥にあるそうだ。洞窟の近くを歩いてたら川を見つけた。叫び声が聞こえたので周りを見たら女の子が走って何かから逃げてる様子だ、女の子は俺に近づいて来ていたが、女の子は後方を見ていたので、前にいた俺を見て驚いたのか急ブレーキをかけて止まった、俺の目の前で止まったがあたふたしてるだけだ。彼女の後ろにある林から何かが来てる。女の子は俺の背に隠れて来た。何が追って来てるのかと思ったが、妖怪の様だ。だが理性が無く本能で動いているようなので斬り捨てた。女の子が俺の前に来てお礼を言いながら頭を下げて名を名乗った。この子の服装は赤色だな

 

「本当にありがとう、助かったわ。私の名は 河城 みとり 良かったら名前を教えてくれない?」

 

「俺の名は 蓬莱山 弘天 だ。よろしく」

 

「蓬莱山 弘天・・・・・ああ、鴉天狗に聞いた神ね。そうね、人間じゃなく神なら何とかなるかもしれない。ついて来て」

 

どうやら鴉天狗が根回ししていたようだな、俺の名が知られてるみたいだし。この山は鴉天狗が取り締まってる訳じゃ無いので、普通に妖怪はいる。鴉天狗がいるのは山の頂上だしな。理性が無いとはいえわざわざ頂上に行く妖怪なんていないだろうがな。みとりについていく。文に川の奥に滝があると聞いたので奥に向かったらものすごく大きい滝がある、聞いてた通りだ。滝の裏に河童がいるらしい、だがこの滝の勢いがすごい、入ったらただでは済まないだろう、周りを見てたらみとりが人差指を壁に指した。見たら壁伝いがあってそれが滝の裏に続いているようだ、落ちないようにみとりと壁伝いを進んで滝の裏に来た。中は洞窟で明るい、河童の技術力だろうか、ランプみたいなのがあって、それが一定の距離に壁に並べてある。ランプみたいなのは壁に刺さってる感じで奥まで壁に並んでる。進んだら木製の扉があった、扉を作る技術まで持ってるのか、今の時代はふすまが普通なんだがな。

みとりにが扉を開けると、中には数十人くらいの河童らしきのがいる。皆似た青いもしくは水色の服装だ、だがみとり一人だけ赤い服装だが、扉が開く音に一人の河童が見て。驚いて奥に逃げた、それに続くように他の河童も奥に逃げた、俺がいたから驚いたのかもしれん。だが1人だけ残ったようだ、1人は青い色らしきスカートの服装だ、その河童が近づいて来たが敵意は感じない。だが興味があるのかもしれん。

 

「人間に見えるけど人間には見えないね、こんな洞窟の奥に何の用なの。それにみとりもいるし」

 

「俺は神だ。河童が人間に害をなすと聞いてな、止めに来た。ついでに河童の技術力が欲しくてな。それと名を名乗ろう俺の名は 蓬莱山 弘天 だ。みとりとは外で会ってな」

 

「へー。貴方、天狗に聞いたあの神なんだ。私の名は 河城 にとり 河童の代表だよ、よろしく」

 

にとりは俺をじろじろ見てきている、神が初めてなのかもしれん。みとりは俺の隣にいるが、ただにとりを見てる、もしかしたらにとりと何か関係があるのかもしれん

 

「まず順番に話を進めようか。河童が人間に害をなすと聞いて止めに来たんだよね」

 

「そうだ、それをされると困るんでな。だから止めに来た。まずは旅人を襲う理由を聞かせてくれないか」

 

「・・・・・・・そうだね、いいよ。私達河童は、元は人間が持ってた、ただの人形だったんだ。だけど私達元人形を捨てた人間に腹が立ち、化けて河童になったんだ」

 

人間に勝手に作られ、いらなくなったら勝手に捨てられて腹も立って旅人を襲ったと言う事か、だがそれは旅人を襲う理由にしては弱い、だが河童の技術力が欲しいな。みとりが前に出てにとりと話し始めた

 

「にとり、いい加減人間と仲良くなりましょうよ」

 

「嫌だよ、みとりも曖昧な存在のせいで苦労してるじゃないか。異母姉が産んで出来た子がみとりでしょ。もっと自分の親を憎んだらどうなのさ」

 

「でも、生まれてきて私は後悔してないわよ。私は河童と人間から生まれた曖昧な存在。人間でも河童でもない。だけど、どっちの血もあって、どっちでもある存在、だから私は両者のかけ橋になる」

 

どうやらみとりは河童と人間のハーフのみたいだ、にとりは近くにあった椅子に座り、何とも言えない表情。にとりは椅子に座ったまま両足を交互にぶらぶらさせて顔を俯かせている。

 

「私たち河童はやられる前にやるって決めたんだ。だから人間に害をなすのはやめないよ。さすがに殺す事はしないけどね」

 

「じゃあやられる前に誰かが守ってやればいいんだな?」

 

今しかない。この話から繋いで行かなくてはいかん。聞いていたがただ河童は人間に何かされて恐怖に怯えるのが嫌だから、恐怖に駆られる前にやってしまおうと言っている感じかもしれん、ならその恐怖の部分を刈り取ってしまえばいい

 

「守るって、どうやって守るのさ」

 

「俺の事は天狗から聞いていると言ったな、じゃあ俺の国にいる妖怪や神も知っているだろう」

 

「知ってるよ、聞いたけどなにあれ、鬼が3人もいて大妖怪や大妖怪並に強いのもいて鬼にも勝るとも劣らないのもいるって聞いてるよ。しかも神が並大抵ではない実力と聞いてるし、天下統一出来るんじゃない?」

 

天下統一か、面白そうだな。だがそれをするにしてもまだだ、もう少し後でやるかもしれん、やる理由はそうだな、この大陸を全て支配し海の向こうにいる妖怪をも支配するのも面白そうだ、美人がいるかもしれん、月人を奴隷にしたのも、もしかしたら世界統一するかもしれない時に備えてだ。他の考えもある、月の関係者の大和も天下統一しようとしていたのかは知らんが、周りの国を支配したんだ。月人を使っても構わんだろ、戦力を増やした最後の理由はそれだ、だが諏訪の国はまだ戦力も少ない上に技術もまだまだだ。永琳が前に、過ぎたる文明は国を堕落させる。と言ってた、急に文明が発達しても国を堕落させる、ならば過ぎさらない文明を少しずつ築いていけばいい。俺の夢は昔から変わらない、女を侍らせる事この一点のみだが、だがもう一つ増えそうな気がする。世界統一だ。だが仮に、世界統一してもそれを維持出来るのだろうか、そこが心配だが。世界統一が終えたら次はそうだな、魔界、地獄、天界、冥界に攻め込むか。それとも先に魔界、地獄、天界、冥界を攻めるか。だが今は無理だ、いつかだ

 

「その天下統一出来る力を河童を守る為にも使ってやる。諏訪の国が睨みをきかせたら人間も神も妖怪、誰も手を出さんだろう」

 

萃香に頼んで萃香の能力で河童が住んでる場所まで範囲を広げて貰うように言っておくか。出来るか分からんが、あの能力地球全体を霧になれる範囲を持ってるんじゃないだろうか。萃香には鬼ころしを数十本あげよう、あげなくても基本的に、萃香は俺に従順だが。にとりは両足をぶらぶらするのをやめて、顔を上げて俺を見る。無表情だ

 

「私達河童は人間をまだ許す事は出来ないよ」

 

「別に今許さなくてもいい、時間はあるんだ。だが諏訪の国の民に手を出したら容赦はせんぞ」

 

「さすがに諏訪の国の民には手を出せないよ。河童は頭は良くても、力が無くてか弱い存在なんだから。自分たちの力量は分かってる」

 

にとりは椅子から降りて立ち上がって俺を見上げる。河童の身長は基本低いようだ。みとりも低いしさっきの河童達も身長は低めだった。じゃあ右手を差し出し握手をしよう

 

「俺は河童の技術が欲しい、河童はもう人間から酷い目に合いたくない。だから諏訪の国の傘下に入れ。そのかわり諏訪の国が守ってやる」

 

「人間をまだ好きになれないしまだ許せない、だけどもう人間に何かされるのは嫌だ、人間だけじゃない、妖怪にも何もされたくない。ただ平和に生きたい」

 

にとりが握手してきて握力の力を強くして俺を見上げたまま縋る様に言ってきた。今まで大変だったのかもしれん。河童は弱い種族と聞いたし

 

「河童は諏訪の国に仕え、河童の技術提供をする。だから、脆弱な存在の河童を守ってほしい」

 

「分かった。諏訪の国の王として、河童を守るとここに誓う」

 

にとりと握手してたら隣にいたみとりが喋った

 

「まだ、前に踏み出せたのか分からない。けど、後退した訳じゃ無いのは分かる、いつか前進させて見せるからね、にとり」

 

「嫌だよみとり。私はまだ人間と仲良くなるなんて出来ないし、前進する気もないよ」

 

「今は無理でもいつか出来るんじゃない?河童の技術は最初から優れて無かった、でも時間をかけて今は色んな物を河童は作れるような技術を手に入れたんだから」

 

にとりはみとりがいない方向を見てる。握力の力が強くなってきた、痛いので手を離さす。にとりと握手をし終えて話も終わったし帰ろうとしたらにとりに呼び止められ、俺の後方にいたにとりの方に振り向いた

 

「待って、頼みがあるんだ、この人形二つだけなぜか私達の様に河童にならず、人形のままなんだ。私達河童じゃ分からなくて、神で盟友である弘天さんに頼みたいんだ」

 

にとりとみとりから二つの人形を受け取って見たがどちらも綺麗だ。多分河童の皆が綺麗にしたのだろう。片方は雛人形に似た人形だ。髪は緑色、後ろからサイドにかけてすべてを胸元で一本になっていて、頭部にはフリル付きの暗い赤色のリボンを結んだヘッドドレス。リボンに何か文字が書かれてるが、長い年月のせいでか見えなくなってる。服装はゴスロリに似た感じだ。スカートの左側には、何て読むんだこれ、厄って読むのか、多分厄だ。

もう片方は金髪で頭には赤いリボンがヘアバンドで結ばれてる。服装は黒い洋服と赤いロングスカート、胸元には赤いリボン、腰には白の大きなリボンがある。これ、持って分かったがこの2つの人形




今回の話は河童の話とひょうすべとみとりの設定の話が混ざって出来てます。ひょうすべは河童の仲間と言われ、佐賀県では河童やガワッパ(河童)、長崎県ではガタロ(河童)の別名と言われてるらしいです。

菅原道真が河童を助けた話も混ざってます
人形が河童に化けて人間に害をなすという話はひょうすべの話です

河城 みとりについては出しましたが公式キャラではありません、あるスレで生まれた二次創作キャラです。ここのみとりが能力持ちかは決めてません


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月の話を見直して直す予定です、予定。急ぎすぎましたからね。戯れ話は絶対消しません

でもあの月人を奴隷にする話大した話じゃ。


河童と交渉を終え、萃香に河童がいる所まで能力を使って範囲を広げてくれと頼んでおいた、神社に帰る道中雪が降り始めてきて寒い、後は何をするか。にとりとあとりに貰った人形でも調べるか、神社に着いたらキクリとルーミアがいた

 

「二人とも何してるんだ」

 

「ああ、弘天か。ルーミアから色々話を聞いていてな」

 

キクリはルーミアから話を聞いていたのか。だがいったい何の話だろうか、二人に何か接点はなかったような気がするが

 

「私がキクリに話をしたのは永琳や藍が作ってくれた色んな料理の事よ。絶品だからね」

 

「確かに、二人の料理は絶品だな。キクリは美味しいって気持ちが分かったのか」

 

キクリは月から力、栄養みたいなのを貰っていたらしい、食事という行為をしたことが無いそうだ。俺たちが普段行っている当たり前の行為、何かを食べて寝ると言った事はした事が無いそうだ。よく気が狂わなかったな、それがキクリには当たり前で生きていたからだろうか

 

「食べるという行為については分かった。また食べたいと思った。だがこれが美味しいと思う感情なのかはまだ分からん」

 

キクリは小食なんだが、食べ物を見るのが初めてで色んな料理を少しだけ取り、それを皿に乗せて食べていた。だが表情は食べていても変わらなかった、食べる事はやめなかったが

 

「そうか、まだ感情は薄いようだがいつか分かるだろう。それまでここにいたらどうだ」

 

「そうだな、それまではここにいよう。だが国、だったか他の国も見てみたいぞ」

 

「分かった、連れて行ってやる。それまでは諏訪の国にいて色んな事を体験しておけ、それからでも遅くはないだろう」

 

「ああ、ルーミアから料理について聞いたから今度は私がその料理とやらをするぞ。してみたくなった」

 

キクリが料理をするのか、美味しければいいんだが、永琳と藍が教えるんだし大丈夫だろう。不味い事も覚悟しなければならん。俺の胃が持てばいいが

 

「それと、天狗が来て聞いたんだけど。前に言ったシンギョクについて情報収集してもらったのよ」

 

「天狗って文の事か。ルーミアが前に言ってたな、ルーミアを封印した奴と聞いたが。どんな話だ」

 

「なんでも、どこぞの国で今は偉くなってるらしいわ。妖怪に対する腕を見込まれたそうよ、私を封印するほどの腕だから当然ね」

 

シンギョクについて鴉天狗に頼んでいたのか。ルーミアはシンギョクをどうしたいんだろうな、殺すとは聞いてないが憎んでいそうだが。今まで苦労させられた人物なんだし

 

「殺しに行くのか」

 

「無理よ、あいつの事は嫌いだけど私が殺しに行ってもかなわないわ」

 

「じゃあ殺せるほどの実力が手に入ったら殺しに行くのか」

 

「もちろん」

 

そうか、殺したいほど憎んでいるようだな。いつかルーミアは出ていくかもしれん、その時は止めるが、まあいいや、最近忘れてたけど銅像作るってことをすっかり頭から抜け落ちていた、さっそく取り掛からねば。蔵にある材料を取って来て、キクリとルーミアがいた場所まで戻った

 

「なにそれ、何か作る気なの」

 

「そうだルーミア。美女の銅像でも作ろうかと思ってな」

 

「何の為に」

 

「美女の銅像があったら、参拝客も増えるんじゃないか。男限定だが。男の銅像を作れなんて言うなよ、そんな物作るくらいなら俺は神奈子に殺される事を選ぶ」

 

ふーん。とルーミアが興味なさそうにしていたが、これは大事な事だ。作り方は永琳から聞いたり大和にいる職人さんに聞いて覚えた。これで問題はない、後は作るだけだ

 

「銅像とやらを作って、弘天は参拝客とやらが増えて欲しいのか」

 

「いや、それは建前で本音はただ美女の銅像を作って民に信仰させて神を増やしたいだけだ。キクリに分かる日が来るといいがその日は来ないだろうな。キクリは女だし」

 

「まさか、あんた女に見境が無いと思っていたけど銅像にまで手を出すの!?しかも自分が作った銅像に!?いくらなんでもそれは・・・・・どうかと思うわよ」

 

「んなわけないだろルーミア!!!いくら俺でも銅像にまで手を出す訳ないだろ!!銅像じゃなくなったら分からんがな」

 

ルーミアは俺の事をいったい何だと思っているんだ。いくらなんでも酷いぞ、仕方ない、黙々と作ってやるさ!どんな銅像を作るべきか。1体は確実に作るが、もう1~2体くらい銅像を作るかもしれん。巨乳にするべきかそれとも貧乳か、考えて分かったがなぜ俺は両極端なのだろうか。美乳の選択肢もあるな、鰯の頭も信心からと言う言葉がある、だが鰯の頭と違って俺が作るのは美女のもしくは可愛い女の子の銅像だ。女の民からは受けないだろうが、男の民なら喜んでこの銅像を信仰するだろう。そしたら神が生まれるかもしれない。あ、ルーミアの顔を見て思い出した。居間に置いてある喜怒哀楽のお面、そろそろかもしれん。付喪神と言う神だったな、あのお面を見つけたのはルーミアと初めて会った日で藍が蔵から見つけたんだな、付喪神になって生まれてきたらどうするか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は諏訪の国の民の今後の未来が左右する事について調べなければならない。だからその諏訪の国の王として彼女に聞きに行かねばならない、今回は諏訪の国の王として聞くのだ、生半可な覚悟で聞きに来てはいない。道場に着いた、中を覗くと諏訪の国の民が師範である美鈴から武術について学んでいるようだ、中にいるのは男しかいない、当然だな。たまにだが女性は差し入れを作って道場に来て男どもに配ってる、今は女性の民はいないようだ。だがもうすぐで休憩に入る事は知っている、大体の時間は決まっているのだ、待っていたら休憩に入った。美鈴は休憩して汗を拭いて水を飲んでいたが、道場の外から見ていた俺に気付いたのか近づいて来た

 

「弘天様、今日はどうしたんですか」

 

「ああ、今回の要件は、諏訪の国の民の今後が左右される質問に来たんだ」

 

俺の真剣な趣に美鈴も顔を笑顔から真摯になった。俺の真面目な雰囲気を察したようだ。美鈴はまだ諏訪の国に仕えてる訳じゃ無いが、俺が諏訪の国の王なのでその為に美鈴は弘天様と呼んでいる。だが今は聞きたい事がある

 

「美鈴の事なんだ」

 

「わ、私ですか?私如きが諏訪の国の今後を左右するほどの者とは思えないんですが」

 

いいや、とても重要な事だ。休憩していた男共も俺と美鈴の話を聞いている、諏訪の国の民の未来がかかっているんだ。皆、真剣な表情だ。

 

「単刀直入に言う!俺が聞きたいのは美鈴のその生足についてだ!!」

 

「え」

 

美鈴の服装はチャイナドレスに似ているんだが、その服の長さは脛くらいまであって美鈴の左足の太もも辺りから切れ目が服の先まであって、そこから左足だけが出てる状態。だから左足だけだが生足が拝める、綺麗な脚線美だと常に思っている、そして俺は美鈴と最初に出会った時から気になっていた。その切れ目の先には何があるのか

 

「美鈴、俺はずっと気になっていた。その生足状態の左足が出てる太ももの先に何があるのかについて・・・・・・下着を履いているか否かについてを!!」

 

道場にいた男共は俺の言葉を聞いて歓声を上げている、やはり諏訪の国の民には大事な事だったようだ、男限定だが。美鈴が俺の質問を聞いてから迷いなく、そして勢いよく走って俺の横をすり抜けて道場から出て行った。まだ美鈴から答えを聞いていないので道場から出た美鈴を俺も走って追いかける

 

「待て美鈴どこへ行く!?まだ話は終わってないぞ!!」

 

「追って来ないで下さいー!!そんな事が諏訪の国の民の今後について関係あるとは思えません!!!!」

 

「何を言う!!この質問の答えによっては道場にいる男連中、しいては諏訪の国の男の民の未来がかかってるんだ!今後についての大事な事なんだぞ!!逃げるな美鈴!!」

 

「嫌です!!それについて答えられる訳が無いじゃないですかー!!!」

 

美鈴の逃げるスピードが速すぎる、逃げ足がここまで早いなんて、紫に最初頼もうと思ったがこれは諏訪の国の王として一人の男としての問題。紫に手伝わさせる訳にはいかない、て言うかそんな事頼んだら紫に説教される。俺の探求心としての力を全て足に捧げ何とか美鈴に追いついた。美鈴が曲がり角に曲がっていった、美鈴そっちの道に行くとは好都合だ。俺も曲がり角を曲がって進むと美鈴が壁際にいる。追い詰めたようだ。美鈴は諏訪の国に来てまだ浅い、だからどんな道に続いてるか分かってはいない、もう袋の鼠だ。

 

「さあ、美鈴。答えたくないなら仕方ない、ならば俺が切れ目の部分をめくって見てくれる」

 

「じょ、女性に対してそんな事が許されるとお思いですか、それと両手の指10本とも開けたり閉じたりしながら近づいて来ないで下さい」

 

「大丈夫、大丈夫ったら大丈夫」

 

「一体何が大丈夫なんですか!?致し方ないです、この手しかありません。諏訪の国の王である弘天様に手でも出したら大変です、今も萃香様は見てるでしょうからね」

 

美鈴は身を屈め空を飛んだ。美鈴が空に飛んだ状態で俺を飛び越えて行った。俺の上を飛び越えたので、美鈴の生足で左足のスリットの下をガン見したが、美鈴に気付かれた

 

「何見てるんですか!?」

 

「待て!今のは不可抗力だろ!?そもそも美鈴が俺を飛び越えたからじゃないか!」

 

「わざわざ左足をじっと見ないで地面でも見てたら良かったじゃないですか!馬鹿ー!!!」

 

美鈴は叫び声を上げながら逃げて行った。下着を履いているかが分からなかった、千載一遇のチャンスを逃してしまった!?何て事だこの俺がそんな機会を逃すなんて・・・・・だがまだだ諦めないぞ、追いかけねば!走って追いかけようと思ったら霧が俺の前に集まって来た

 

「待った弘!大変だよ一大事だよ緊急事態だよ!!!」

 

「何だ萃香!!!今美鈴が下着を履いているか否かについて以上に大事な事があるのか!?」

 

「さっき諏訪の国に妖怪が来たんだけど、話を聞いたら弘の妻になりに来たって言ったんだよ!!!」




うん

困った事にねこの作品はまだ始まってないんですよ、スタート地点にはまだまだかかります。ゴールに着こうとなんて考えたら、もっとかかりますこのままでは俺が死ぬ

急ぎたい、しかしそれでは支離滅裂になってしまう。難しいものですね


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まだ日常回を書くべきか、また急展開を書くべきか。どうしましょうかね

今回の話は有名なあの話と別の話が混ざってます
気になる人は後書きで元ネタを書いていますので見てください

戯れあり



一体その女性は何を考えてるのか。俺の妻になりに来たって物好きとしか思えないんだが、どう考えても俺だけに話がうますぎる、絶対罠だ!罠に決まってる!!!!玉の輿を狙っているのか、だが諏訪の国ってそこまで裕福だろうか。毎日ご飯を食べられているからある意味裕福ではあるが金があるかと聞かれると何とも言えん。まずはその女性に会ってみよう、萃香が言うには諏訪の国の外にいるらしいので見に行こう

諏訪の国から出たら女性が立っている。雪が降っていて、女性の肩に少し雪が積もっている。待たせてしまったようだ、だがその女性の服装は防寒着を着ていない、服装は普通だ。こんな寒いのに平然としている

 

「待たせてしまって済まない、俺の妻になりに来たと聞いて来たんだが俺の名を知っているだろうか。それと名を聞かせてくれないか」

 

「存じております。貴方様は 蓬莱山 弘天様だと言う事を。私の名はレティ・ホワイトロックと言います。貴方様の妻になりたく諏訪の国に来ました」

 

「何の為に俺の女になるんだ、あんた、見た所かなり美人な女だ。わざわざ俺じゃなくても、もっと他にいい男を捕まえられると思うぞ」

 

「いいえ、私は貴方様がいいのです。今の時代、神が妖怪を妻に娶るなんて聞いたことがありません。私は妖怪です、人間にも神にも邪見にされてしまう存在なのです」

 

確かに、俺以外の神が妖怪を妻に娶ったなんて聞いたことが無い。海の向こうにある大陸の神は妖怪を妻にしたと聞いたような気がするが、この大陸にはそんな話はない

 

「最初は噂で聞いただけでしたから半信半疑でした。ですが諏訪の国に来て貴方様の妻、萃香様に色んなお話を聞いたら妖怪も神も人間も仲良く生きていると聞いて、私は貴方様に対しお慕いの気持ちが一層強く出てきました」

 

「あー、つまり俺が妖怪と仲良くする変わった神だから惚れたって事でいいのか」

 

「はい、私は貴方様の妻になりたいです。私を、貴方様のお傍にいさせていただけないでしょうか」

 

変わった女だ、今までは俺から女性に向かって俺の女になれと言ってきたが、女性の方から女にしてくれと言ってきたのは、永琳とあの二人くらいか。だが永琳は最初俺の女になるの嫌がってたし、後になってから俺の女にしてと言ってきたから違うな。

 

「そうか、奇特な妖怪だな、そして奇特な女だ」

 

「貴方様の妻になりに来た女ですから、それに貴方様も奇特なお方、神が妖怪を妻にするんです。ならば私も奇特な方がいいのではないですか?」

 

「それもそうだな、よし。じゃあレティ、着いて来い、今日からレティは俺の妻だ。後になって嫌だって言っても逃がさんぞ」

 

「はい、私は貴方様のお傍に。ずっとお傍におります。どこにも行きません、ただ貴方様の女として・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社に着いた。俺とレティは鳥居の下に立ってる、鳥居の脇から神社まで桜が並んで咲いているので、辺り一面ピンク色だ。この桜、一体何の桜なんだ。一年中咲いてるし宴会する時はいいんだが桜の落ち葉が多いから掃除が大変だ。幽香は最初に桜を咲かす事を頼んで咲かしてもらったが、ずっと咲いているしまさか何か憑いているのか、憑いているなら美人な女性がいいな。

 

「綺麗ですね、今の季節は冬だと思うんですが。なぜ桜が咲いているんですか」

 

「それが理由が分からないんだ。だから諏訪の国の謎の1つと民に言われている」

 

「1つと言いますと他にもあるんですか」

 

「あるが、それはまたの機会に教える」

 

鳥居からレティと神社に向かっていたらてゐが神社から巫女服を着て出て来た。てゐは体も身長も小さいからてゐに合う巫女服が無かったのでてゐ専用の巫女服を作ってある、寒そうにして箒で桜の落ち葉を集めながらくしゃみをしている、今の季節に巫女服だけでは寒いだろうな、もっと厚着させた方がいい、防寒着あっただろうか。作ってみるか。

 

「あ、祭神様。隣にいる女は誰?また妻を増やしたの」

 

「そうだ、また愛する妻を増やしたんだよ。てゐ」

 

「お師匠様に怒られないの?お師匠様ああ見えて寂しがりやなんだから、気を付けてよ。お師匠様に何かあったら人参を貰えないし」

 

「大丈夫だ。永琳は寂しくなったら自分から甘えにくるし」

 

ならいいや、とてゐは箒で桜の落ち葉を集める作業を始めた。てゐは永琳の事をお師匠様と言うが、どうやら弟子入りしたらしい。あの人参を永琳が作ったからどうやって作ったか学んでいるそうだ。後ついでに医学関係の方も学んでいる。てゐが言うにはおまけみたいな物らしいが。レティがてゐに近づいた

 

「今日から 蓬莱山 弘天様の妻になりました。レティと言います、不束者ではありますがよろしくお願いします」

 

レティがてゐにお辞儀をした、急だったのでてゐは驚いている。今まであった事が無いタイプだったんだろう。てゐは身長が低いのでレティを見上げたまま頭を下げた

 

「こちらこそよろしく。私の名は 因幡 てゐ そんな服装じゃ寒いでしょ、早く神社に入って入って」

 

「いえ、私は寒くはないんですが」

 

「いいから、ほら早く入った入った」

 

てゐは背伸びをしながらレティを押して神社に入っていった。俺も入るか、神社に入ったら奥から藍が来た

 

「主、須佐之男様から手紙が来ています」

 

「早いな、どうやってこんなに早く手紙が来たんだ」

 

藍から手紙を受け取って懐に入れる。後で読もう、藍がお辞儀をして奥に行こうとしたので

 

「待て、藍。巫女服のままだが寒くないのか」

 

「はい、寒くはありません。今の所はですが」

 

藍は振り返り俺を見る、藍はいつも通り巫女服を着ている状態だ、今日は尻尾が出ていて尻尾はふりふりしている。あったかそうだ

 

「藍、俺に背を向けろ」

 

「はい」

 

俺の言葉を聞いて藍は俺に背を向けて立っている、俺は靴を脱ぎ玄関の段差を上がり藍の背に立って藍の尻尾8本に体を入れた。尻尾に包まれて温かい、

 

「温かいな。藍、今日から俺の抱き枕として俺の部屋に来い」

 

「分かりました、主」

 

反応が薄いな、お揚げをあげる時は表情は変わらないが、尻尾は犬みたいにぶんぶん振っていて喜んでいると分かるんだが、それ以外の時は全く感情が読めない。まだ時間はかかりそうだ

藍と奥に進んだらレティは居間にいた、てゐもいる。レティは正座をしていて、てゐと話をしている。

 

「レティ、料理は作れるか」

 

「はい、人並ですが」

 

作れるのか、食べてみたいな。小腹が空いたし何か作ってもらうか。食材や調理器具は藍に教えてもらえれば分かるだろう

 

「藍、彼女の名は レティ と言って今日から俺の妻になったんだ、だから仲良くしてくれ」

 

「分かりました、主。 レティ様、私の名は藍と言います、今日からよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

お互い自己紹介をし終わったので、レティと藍は台所に向かった。藍にはレティに教えたら戻る様に伝え、てゐが俺の隣に来て座って来た

 

「ねえねえ、祭神様。祭神様は一体何を企んでるの」

 

「企むだなんて人聞き、いや。神聞きが悪いぞてゐ。俺は何も企んでなんかいないぞ」

 

「本当かなー。私はまだ祭神様を深く知ってる訳じゃない。見ていて思ったんだけど、いつも女を侍らすなんて言ってる、だけどそれって何かの隠れ蓑なんじゃないの」

 

横目で隣に座っているてゐを見た。てゐは俺の隣に座り机に突っ伏しながら台所の方を見ていて、てゐの表情が分からない。

 

「まあ、本心で女を侍らすって言ってるのは間違いないんだろうけど、本心だからこそ、それを使って隠れ蓑にしてるって感じるよ」

 

俺はなぜ生まれたのだろうか。気付いたら赤ん坊で 蓬莱山家に産まれた 何の為に俺は赤ん坊の頃から自我を持ち、一般常識を持ったまま生まれたのか。何かが関わっているのだろうか、普通に考えてそんな生まれ方はあり得ない。赤ん坊から少しずつ時間をかけて成長してから自我を持ち、最初は本能で生きる。だが本能だけで生きるのではなくいつかは理性を持つ、そして成長して人間、世の中のルールを覚えていく、だが俺は最初からそれを持っていた、一体俺はなんなんだ

 

「私がいつも見てる諏訪の国の王で祭神様で 蓬莱山 弘天 は、はたしてそれが実体なのか違うのか。そもそも実体があるのかどうか。どうなんだろうね」

 

「てゐ。余計な詮索は寿命を縮めるぞ」

 

「そうだね、でも気になったんだ。気のせいだといいけどね」

 

それから俺とてゐは喋らずただ時間が流れた。てゐの背中辺りを見たら腰の下らへんに尻尾が見えた、どうやら尻尾が出るよう巫女服を作っていたようだ。ウサギの尻尾だろうか、球体な尻尾なので、それを掴み引っ張ったらてゐが飛び上がった

 

「痛いよ!何すんのさ!?なんで尻尾を引っ張るの!?」

 

「尻尾があったら引っ張りたくなるだろう。それでだ」

 

「そんな理由で納得できるわけないでしょ!お師匠様に祭神様が藍を抱き枕にして寝てるって告げ口してやる!!」

 

「待て!!!まだしてない、未遂だ!だから永琳に伝えても無駄だぞ!!」

 

「まだってするつもりだったんじゃないか!私の尻尾は繊細なんだよ、大事に扱ってよ!もう祭神様なんて知らない!絶対にお師匠様に告げ口してやるー!」

 

てゐは走って居間から出て行った。これは非常にまずいな、まあ、いいか。入れ替わりに台所から藍が居間に戻って来た

 

「主、てゐの怒鳴り声が聞こえたんですが」

 

「ああ、怒らせてしまったようだ。それより藍、俺の隣に来て背中を向けてくれ」

 

「分かりました」

 

藍は俺の隣に来て俺に背を向け座って来たので俺は後ろから藍に抱き着き、尻尾に包まれて温まった。あ、右手で胸を揉んでおこう。藍の胸はデカい。手のひらから余裕で零れてしまうほどだ。左手で藍の獣耳でも触ろう

 

「藍も成長したな。最初に出会ったときは胸なんて無かったのにここまで育つなんて」

 

「はい、神になったのと尻尾が増えた事で体つきも成長しています」

 

「うむ。だが藍の胸を揉んでいるんだからもう少し何か反応してくれてもいいんじゃないか」

 

「私は主の道具で女ですから。別に何も思いません。ですが耳を触られるのは気持ちいいです」

 

胸を揉んでもなにも思わないとは寂しいものである。獣耳は気持ちいいのか、胸を触られて気持ちいいって言ってくれたらいいのに。道具としての人生は進んでいるが女としての人生はまだまだのようだ。胸を揉むのをやめて尻尾に包まれて温まった

 

「お待たせしました。貴方様、料理をお持ちしました」

 

「おお。レティ、来たか。待っていた、では早速・・・・・・」

 

見たら料理は冷めたご飯に豆腐、湯気が出てない味噌汁、ご飯と味噌汁をあの短時間でどうやって冷やしたんだ。それと沢山氷が入った器に麺が入っている。今の季節は冬なんだぞ、俺はレティを怒らせるような事でもしたんだろうか、それなら土下座したら許してもらえる程度の事ならいいんだが

 

「レティ、これは何だ」

 

「今は冬ですから、冷たい物を持ってきました」

 

「待て、もしかして嫌がらせか。冬なら温かい物を作って持って来るべきじゃないか。夏に冷たい物を出すべきじゃないだろうか」

 

「え、そうなのですか。私は冬はいつもこうなのですが。夏はもっと冷えた料理を作っていますから」

 

何て事だ、まさか素だったとは。良かった俺はレティを怒らせるような事はしていないんだよかった・・・・のだろうか藍の尻尾に入って現実逃避でもしていよう。尻尾で温まっていたらレティが傍に来た

 

「さあ、貴方様。食べてください」

 

「これを食えと」

 

「はい」

 

遺書を書くべきだったかもしれん。俺はまだしたい事があるのに死ぬわけにはいかないんだ、だが妻が作ってくれた料理が不味いならまだしも見た目、ご飯とみそ汁の湯気が立っていないので普通と言えないが、見た目の判断から味は悪くないと推測できる。残すなんて出来ない

 

「分かった、俺、食うよ。藍、俺にもしもの事があったら、永琳には俺の後を追うなと。諏訪子に、諏訪の国を頼むよう伝えてくれ。そして妻の皆には愛していたと伝えておけ」

 

「分かりました、主。命に代えても伝えます」

 

「酷いです貴方様。味は悪くないですよ」

 

「ああ、すまない。味はな。味は悪くないだろう、ではいただこう」

 

俺は箸を掴み、冷えた料理を食べた。何の妖怪かをレティに聞いたらレティは雪女の一種だそうだ




今回の話は雪女とつらら女の話が混ざっています。雪女はしがま女房とも呼ばれていて、雪女の話は綺麗な女性がある男の家を訪ね自ら望んで嫁になる話ですね

つらら女は秋田県に伝わる話で夫婦の家を1人の女が訪ね、宿を借りたいと頼んだと言う話です、つらら女の話は他の話も混ぜていますが

だからレティが諏訪の国に来ていきなり妻になるっていう話になりました
レティは種族的には雪女の一種ですから


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日常回だと思います


オリキャラが1人だけ今回出ます、なんだこのオリキャラ・・・・・




もう夜だ、レティの料理を食ってから腹の調子が悪い。これは、何とかしなくては。その前に須佐之男の手紙を読んでおこう、俺は自分の部屋のふすまを開け、布団の上で胡坐をかく、懐から手紙を広げ読んだ、内容は大国主の事だ。月に行ったとき大国主の話をして思い出したんだよ。昔、大国主、大穴牟遅命は須佐之男の娘、須世理姫を妻にする為に、須佐之男は娘、須世理姫を大穴牟遅命の妻にさせない為に、須佐之男は大穴牟遅命に試練を与えた。虎穴に入らずんば虎子を得ずって事だ、で、その試練の中に確かいたって言うか、出会ったんだよ神使としての動物。大穴牟遅命の命の恩人な存在が、昔その動物は出雲神社で大穴牟遅命の神使として生きていたが、今は大国主が封印されていて出雲の神社にはいない、大和にいる須佐之男の所にいるんだ。てゐがいるから藍の仕事は減っているが、まだ仕事量が多い。俺は道具としての人生の道も歩ませるが、女としての人生も藍に歩んでもらうと決めたのだ。だから神使は多い方がいい。それで手紙を出し、須佐之男の所にいるのを貰おうと決めた

明日か明後日にでも大和に行こうかね。その動物は妖怪だそうだ。神使になったのも気紛れらしい、内はホラホラ、外はスブスブ。須佐之男の神使って海蛇だったっけ、

 

手紙を読んでたら、ふすまが開いて藍が来た。

 

「主、お待たせしました」

 

「ん、ああ。抱き枕として今日から来いって言ったな」

 

「はい。では寝ましょうか」

 

「うむ。待て、何故寝巻に手をかけ脱ぎ始めている」

 

「ですから抱き枕として」

 

何を考えているんだ藍は、上着を脱いでいて胸が出てるし、こんな所誰かに見られたら大変じゃないか。俺を殺す気か、こんな事が知られたら・・・・・

 

「脱がなくていい。服を着ろ、着たら抱き枕として布団に入れ」

 

「分かりました」

 

藍は布団に入ったので俺も入って藍を抱きしめ寝た。藍は俺に背を向けて寝ている、尻尾が結構大きいので布団は盛り上がっているが。まあ、気にせず寝よう。藍を後ろから抱きしめ尻尾に包まれながら寝た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、眩しい」

 

眩しい。朝になったようだ、俺は藍の背中に抱き着いていている。いい匂いだ。寒いから布団から出たくないんだが、藍にいつまでも抱き着いている訳にはいかない

 

「主、起きましたか」

 

「ああ、藍。起きてたのか。すまん。抱き着いていてたから動けなかったんだな、仕事があるのに悪い事をした」

 

「いえ、お気になさらず。私を抱き枕としての道具として使っていただけて嬉しいです」

 

あー。道具ね。抱き枕として来いって言ったから強ち間違いでもないか、藍を離したら、藍は立ち上がった

 

「主。私は仕事があるのでこれで失礼します」

 

「ああ、分かった。抱き枕としてまた来い」

 

「はい、主。では失礼します」

 

藍は頭を下げてからふすまを開け仕事をしに出て行った。俺も立ち上がりたいんだが、後ろから誰かが抱き着いているから立てない。誰かは分かっているが

 

「永琳。いつまで寝たふりをしてるつもりだ」

 

「あら。ばれてたのね。いいじゃない、夫婦の戯れよ」

 

「それなら俺の背中からじゃなくて向かい合って抱き着け。と言いたいが藍がいたから無理か」

 

「そうよ。だから背中に抱き着いてるの」

 

永琳が俺の部屋にいるのはてゐが告げ口したからだろう。まあ、構わんが。

 

「腹が減ったし、起きないか」

 

「まだこうしていたいけど、仕方ないわね。皆が食べる料理を作らなきゃいけないし。大家族ね」

 

俺と永琳は立ち上がって部屋から出て皆で料理を食べた。結構な人数だ、俺と永琳と紫に幽香に、諏訪子に神奈子に勇儀と萃香に華扇。ルーミアにぬえにてゐに美鈴にキクリにレティ。これやばいな、この先ももっと増えるだろう。部屋はまだまだ広いが、これからの事を考えると広げた方がいいかもしれん。リフォームでも考えとこう

レティだけ冷たい料理を食べてた。皆寒がってたよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様は死ね!」

 

「雪合戦で死んでたまるか神奈子!」

 

神奈子が雪玉を投げて来たので避けながら、地面に積もってる雪を拾って両手を使い丸く固めている。雪が結構積もっていたので神社から出て雪合戦をしてる。永琳と諏訪子と萃香に華扇。ルーミアにキクリにレティは雪合戦をしてない。雪合戦の様子を酒を飲みながら見てるか、雪合戦してない皆と喋っているようだ

 

「てゐ。逃げてばかりいないで勝負しなさい!」

 

「ちょっと、待った!!幽香の力は鬼にも負けないほどなんだよ!?そんな力で雪玉を投げられたら私死んじゃうよ!!」

 

「大丈夫よ、てゐ。この前花を踏んだ事なんて私、気にしてないから。だから私の雪玉を受け取って。てゐの頬に痕が残るくらいの力で投げるから」

 

「気にしてるじゃないか!わざとじゃないよ!知らなかったんだよ。それにあの時謝ったじゃないか!私はまだ死ぬわけには・・・・・誰か助けてー!」

 

てゐは涙目で幽香から逃げているようだ。幽香は雪玉を沢山右手で抱えて左手で抱えてる雪玉を取りてゐに投げている

 

「手合せでは決着が付きませんでしたが雪合戦では勝ってみせます!勝負です勇儀様!!」

 

「その心意気やよし、ならば私も全力で当たらせてもらうよ!」

 

勇儀が持ってた雪玉が投げられたが、凄い速さだ。剛速球だな、あんなの当たったら死ぬんじゃないか。美鈴は巧みに避けて当たっていないが、美鈴の投げた雪玉は勇儀が避けてて当たってない。雪合戦は雪玉が当たったら終わりってルールだし

 

「友達でも容赦しないわよぬえ!」

 

「当然!私の雪玉をくらえー!」

 

ぬえは雪玉を投げたが紫の目の前にスキマが出てきて雪玉はスキマの中に入っていった。便利だなー、あの能力。俺も何か能力があったらいいんだが今は持ってない

 

「その能力本当に厄介だね。対処法が私じゃ思いつかないよ」

 

「そうかしら。これ便利に見えて結構使い勝手が悪いのよ。でもこんな事も出来る」

 

紫は目の前にあったスキマに雪玉を投げたらスキマが消えてぬえの隣にスキマが出て来た。するとスキマの中から二つの雪玉が出てきてぬえを襲うがスキマが見えてるので対処は出来る。

 

「危な!紫は一歩も動いてないのにスキマを使えばどこからでも雪玉が出てくるね。だが、紫はここで終わりだがな!」

 

「まさか闇雲に私に向かって走ってくるなんて。もう少し何か考えはなかったのぬえ」

 

ぬえはいつぞや聞いた台詞を吐いて紫に突っ込んでいったが。紫は横にあるスキマに雪玉を投げたらぬえの後ろにスキマが出てきて中から雪玉が出てきてぬえに当たった

 

「ああん」

 

ぬえは雪玉が当たった衝撃で倒れうつ伏せで雪が積もっている地面の中に入っていった。ぬえは黒い服装なので、雪が積もっている時、もしくは雪が降ってる時、雪は白、ぬえは黒で対極な色をしていて綺麗だ。雪の上には桜の落ち葉が積もってるからさらに綺麗だな、紫はぬえをスキマの中に入れて地面にある雪を集めて両手でせっせと固める作業に入っていった

 

「よそ見をしている場合か!」

 

紫とぬえを見ていたら神奈子が雪玉を投げて来たのでまた避ける。さっきから神奈子は雪玉を物凄く固くして俺に投げて来てる。本気で俺を殺したいようだ

 

「おっと。そうだったな、神奈子の服と下着を脱がすんだった。この寒空の下で服を脱がされて生まれたままの姿になるがいい」

 

「ふざけるな!そんな事されてたまるか!!」

 

「馬鹿め!!神奈子。俺を殺そうとしているんだ、それくらいの覚悟はあるだろう。だから俺はお前を脱がす」

 

「ならば私はその前にお前を殺すまでだ!!」

 

神奈子は懐から刃物を出してきた。右手に雪玉、左手に刃物だ。え、これ雪合戦じゃ

 

「待て!今は雪合戦だろ刃物は」

 

「喧しい!!お前が私を脱がすつもりなら、私は刃物でお前の息の根を止めてくれるわ!!」

 

「くっ!だがしかし!!殺されるくらいなら、神奈子を気絶させ縄で縛って布団で無理矢理抱いて純潔を奪ってやる!」

 

「出来るものならやってみろ!!」

 

俺は命を神奈子は貞操をかけてお互い戦い始めた。だが神奈子の後ろから何かが飛んできてる、あれは矢だ。矢が飛んで来て俺の頬にかすった、かすった部分が切れて血が流れてる。神奈子はびっくりした様子で動きが止まった。そりゃ神奈子の後ろから矢が飛んで来たんだし、驚くよな。神奈子の後方で永琳が弓を構えてもう一本の矢をまた弦に宛てがって構えてる。どうやら永琳には見過ごせない話だったようだ、結構距離があったのに聞こえるとは、地獄耳か。あ、俺と神奈子大声で喋ってたの思い出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪合戦も終わり皆は神社に入って温まっている。寒い。また雪降り始めたよ。何かの屋台でも行って温かい物でも食うか

 

「私落ちてるー!空を飛んでるよー!!」

 

何だ今の声、周りを見渡しても姿は見えない。女の声なのは分かるが、上を見てみたら女性が空から落ちてきている、あの距離から地面に激突したら確実に死ぬ、俺は走って彼女が落ちそうな所まで走った。彼女は参道辺りに落ちそうだ

 

「待った!来ないで!!私を受け止めたら君が死んじゃうよ!私は大丈夫だからそこで見ていて!」

 

だ、大丈夫ってあんな速度で落ちてたら死ぬと思うんだが。彼女は地面に激突して土煙が立ってる。彼女が落ちた所はクレーターみたいになっている、痛そうなんて音じゃないぞ。死んでるんじゃないのか、見てたら彼女が土煙から出てきて体に着いた土を払ってる

 

「いやー、死ぬかと思ったよ。ついにこの日が来るなんてね、、長い時間がかかったけどやっと私の使命が果たせそうだよ」

 

彼女は頭を掻きながら俺に語り掛けてきている。何を話したらいいか分からないんだが。なぜ生きてるんだ、彼女は胸を張って名を名乗った

 

「私の名は白澤!あ、この大陸では白沢って呼ばれてるんだっけ。よろしくね!」

 

「そうか、俺の名は 蓬莱山 弘天 だ。よろしく」

 

「蓬莱山?これは偶然かなー?」

 

「何の事だ」

 

「あのね、四霊ってのがいるんだけど四霊の中に霊亀ってのがいてね。その霊亀はその名の通り亀で凄く大きいんだけど甲羅の上に 蓬莱山 って呼ばれる山を背負った巨大な亀の姿をしてるんだ」

 

またか、また 蓬莱山 が出てくるのか。もうお腹一杯なんだが。だが、気になるな。この大陸にある山 蓬莱山 は豊姫が関わっていたがなぜ海の向こうの大陸にいる霊亀がわざわざ 蓬莱山 の山を甲羅の上に背負ってるんだ。また誰かが豊姫のように関わっているのか

 

「それとね!その 蓬莱山 には不老不死となった仙人が住んでるんだってさ!!驚きだよねー!ちなみに四霊は、麒麟・霊亀・応龍・鳳凰だよ!!」

 

仙人ね、前に華扇が言ってたが。俺に仕えることなく旅をしていたら仙人になっていたかもしれないと言っていたな。華扇には仙人の知り合いがいてその人から学ぶかもしれなかったと言っていた

 

「あ、それと最近四神がどこかに行ったんだ。四神は青竜、朱雀、白虎、玄武だね!どこに行ったんだろうねー。でも四神はある人間に何かされたって聞いたけど、どうなのかなー」

 

四神って天の四方の方角を司る霊獣だったか、うろ覚えだが

 

「そう言えば。白沢、白沢って確か海の向こうの大陸にいる聖獣だったな。後は鳳凰と麒麟だったか。どうやって海を渡った、てかなぜ空から落ちてくる」

 

「海は渡ってないよ。ただ天界にいたんだけど、天界から落ちたらここに来たんだ。ちなみに麒麟の名は冴月麟!鳳凰は妹紅だよ!!先代の鳳凰はどっかいっちゃってその子供、妹紅が今は鳳凰になってるけどね!!」

 

天界って、サリエルが作った所か。なんでそんな所にいたんだろうか、サリエル。一体何を考えている。冴月麟と妹紅ね

 

「そんな事より。私は仕事をしなきゃいけない!代々続く聖獣 白沢 の使命を。白沢は代々続いてるけど、1人も死んでないよ。長生きだし」

 

「使命、使命って何だ」

 

「私達白沢は、徳の高い王が世を治める。もしくは徳が高い王が国を治めてる所に現れる生き物なんだ、空から落ちてる時見たけどここ国なんだね」

 

「ああ、確かに国だが」

 

「そして君と、 蓬莱山 弘天 と出会った。最初に出会った人が王って先代から聞いてるし、君が王で間違いないでしょ」

 

いきなりあった奴を王と断言するのか。もう少しちゃんと調べた方がいいと思うが・・・・・・それでいいのか聖獣。それと俺に徳が多いのは気のせいだと思うんだが

 

「私の、白沢の使命、それは出会った王と自分の子供が異性だった場合夫婦になるって使命が!でも鳳凰も私達白沢と似ていて、徳の高い王者による平安な治世、優れた知性を持つ人が生まれると姿を現すって言われてるし」

 

「いや、ちょっと話を」

 

「もしかしたら鳳凰も来るかもね!麒麟は仁の心を持つ君主が生まれると姿を現すと言われてるよ!麒麟も来るのかなー!来たら面白いよね!!」

 

マシンガントーク炸裂中。話について行けない。この女せっかちだな。もう何が何だか、簡潔に言うと娘をやるから娘と夫婦になれって事でいいのか

 

「君は男、私の娘は女。ならこれは使命を果たす時が来た。娘の名は 慧音 だよ!仲睦まじくしてあげてね!!やっと私白沢から身を引く事が出来るよ!!ありがとう!!!弘天の徳が高い王だったから私はこの国に来れたんだよ!」

 

白沢は両手で俺の両手を掴んで上下に振った。何だこの女、頭が痛い。数億年生きて来た俺でさえ出会った事の無い女だ

 




白沢はオリキャラですが冴月麟はオリキャラではありません。冴月麟は東方紅魔郷に自機として出るはずだったキャラです。調べたらすぐに出てくるでしょう

霊亀が 蓬莱山 を甲羅の上に乗せてるのはオリジナル設定ではなく、中国神話での話です。



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山7つ

種は撒いた、後は

書いてて誰かに何かを説明するのって難しいと思いました、頭が良ければなー


話を聞いたが、つまり娘と夫婦になって貰ってくれって事なんだろうが、娘の気持ちはどうなるんだ。俺としては嬉しいが娘さんの気持ちを無視して無理矢理ってのも困るな。娘さんの名は、慧音だったか。嫌がってるのに無理矢理嫁いで来ても幸せにはなれないだろう

 

「いくらなんでも使命だからってその慧音って子の気持ちを無視して妻に貰うのは気が引けるんだが」

 

「何言ってるの?子供の結婚相手を親が勝手に決めて夫婦にするなんてこの時代よくあるよ、私の時もそうだったからね、それは神も妖怪も人間も聖獣も同じだよ」

 

都市があった時は当人が納得して付き合い、結婚だったが、この時代は違う。親が勝手に子供の結婚相手を決める時代だ、だからこの時代は親の言う事は絶対で子供はそれに従う時代だ。子供は自由恋愛が出来る時代じゃない、まれに片方、もしくは両方の人間がその相手を一目惚れしてそのまま結婚する話はよく聞く、俺の父さん母さんもそうだったし、神話でもよくある話だ。俺には関係ないと思ってたがそんな事はなかったみたいだな

 

「まあ、そうだな。だがいきなりすぎてな、そもそも俺が善人ではなく暴君かもしれないんだぞ、そんな得体のしれない奴に娘を嫁がせてどうするんだ」

 

「それはないね、弘天は間違いなく暴君じゃない。そんな人間の所なら私はこの国に来てない。白沢は暴君の所には絶対来ないから。だから問題ないよ」

 

また断言した。白沢は不思議な霊獣だな、他の霊獣も白沢と似たような感じなのだろうか。自分の種族を信じてるんだな

 

「それに、天界から落ちたけど、落ちた先は決まってないんだ。地上の景色は天界から見えるけど、何て説明したらいいかなー同じ場所で落ちても毎回違う所に落ちるんだ」

 

白沢は両手で頭を抱えてうんうん唸ってる、上手く説明できないようだ、頭を抱えたまま説明してきた

 

「例えば玄関の段差の上に立ってて段差の下に自分の履物が見える、何回も段差の下に降りてその履物を履こうと思っても履けなくて、履物が置いてる場所以外に降りる感じ、かな。だから運命。宿命だよ。履物に足を入れたら履物の使命を果たす時だよ」

 

分かりづらいがどうやら天界の落ちる先はランダムの様だ。だからこの国に落ちて俺と出会ったから使命を果たそうとしている。この国に落ちたのは偶然じゃないと信じてるんだろう。白沢は前にも天界から同じ場所で落ちたそうだが、その時は海やどこかの山に落ちたみたいだ、だが今回は国に落ちた、白沢風に言うなら親が新しい履物が作って長い時間をかけてやっと自分の履物を履ける時が来た。だから履物の使命を果たすために玄関から外に出ようとと言う事だろうか。履物に足を入れて履いたら外に出て、初めて履物の役目を果たせるって事か。分かりづらい説明だな、難しい説明でもあるが、要は役目を果たそうとしてるだけだ、履物の、白沢という種族の役目を

 

「でも娘を連れてくるって言っても、まだ少し後の話だよ。私も忙しくてね、慧音に立場を譲る仕事や他にもする事あるから。1年以内にまた来るよ」

 

1年、俺からしたら一瞬の時間だ。意外に早いな、この国は諏訪の国だと白沢に伝えると、白沢は、諏訪の国ね。と呟き、白沢は話を終えたのか俺に背を向け神社の反対側にある参道に歩いて行ったが立ち止まって振り返った

 

「忘れてた。麒麟と鳳凰はこの大陸にいるんだけど、鳳凰と麒麟にはそれぞれ山があって、この大陸にあるんだ。その名の通りで、鳳凰山と麒麟山って呼ばれてるよ」

 

「また、また山なのか。どこにあるんだその山は」

 

「麒麟山はこの国から北にある越後国。鳳凰山は甲斐国にあってこの国から東にあるよ。一番近いのは鳳凰山だね、鳳凰も麒麟も今は山にいるよ、でも鳳凰山はもう一つあるんだ」

 

「もう一つあるだと、それじゃあまるで蓬莱山みたいじゃないか。場所は」

 

「出羽国。これは越後国のもっと北にある所。だから相当遠いから行く時は気を付けてね、娘の旦那さんに何かあったら困るから。鳳凰、妹紅はどの山にいるのかなー」

 

なぜこの大陸に海の向こうの霊獣がいるんだ、何かが動き始めているのか。だとすれば一体何が原因で動き始めている、それに蓬莱山と麒麟山と鳳凰山。3つの山が出て来た、しかも鳳凰山は二つあると来た、蓬莱山も二つある、俺は山と関わる運命なのか

 

「あ、言っておくけど甲斐国にある鳳凰山は3つあってね。鳳凰山は3つの山の総称なんだ。地蔵岳・観音岳・薬師岳の3山の総称として鳳凰三山とも言われてるよ、だから鳳凰山はある意味4つあると言う事かな」

 

4つだと!?麒麟山は1つ蓬莱山は2つ鳳凰山は4つ。なんだか足し算してるみたいだ。一体どれだけの山があるんだこの大陸には、俺はもしかして山に愛された山の神、山神なんだろうか。白沢は俺に背を向けて参道の方に歩き出した

 

「じゃあねー弘天!次来るときは娘を連れてくるからねー!!サリエルによろしく言っておくよ弘天!」

 

白沢は振り返り手を振って参道を走って行った。俺も手を振って見送る、どうやって帰るのだろうか。それとサリエルと知り合いだったようだ、嵐のような女だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和に行こうかと思ったがまた雪が降っていて寒いので神社の中で温まろうと思い神社に入った。居間に着いたら、諏訪子と華扇とレティがいた。お団子を皆で食べてるようだ、それぞれに湯呑が置いてある。華扇とレティは隣同士で諏訪子は向かい側に座ってる、俺は諏訪子の隣に座った

 

「ちょっと父さん、何でわざわざ隣に座るの。向かいに妻が2人いるじゃないさ」

 

「いいじゃないか、娘を間近で見たいんだよ」

 

諏訪子はまだ子供だ、だが身長は子供にしては高い。少しこの部屋は寒い、だから諏訪子に抱き着いて体温を上げる。抱き着いたまま諏訪子の髪を撫でる、永琳に似て綺麗な銀髪だ。髪の根元に手を突っ込んで5本の指を櫛のように髪の毛先まで流しても指が髪に絡まり止まる事はない。髪は傷んでないようだ、さらさらしてる

 

「相変わらず弘様と諏訪子様は仲がいいです」

 

「仲がいいのか私には分からないんだけどね、父さん寒いからって抱き着かないでよ、抱き着くにしても横からじゃなくて後ろからにして。お団子が食べにくいから」

 

「レティに抱き着こうかと思ったが、レティって雪女の一種だろ。抱き着いたらもっと寒くなるじゃないか、そこで諏訪子に抱き着いたわけだ。だからいいじゃないか」

 

「そうですね、私の体温は低いですから。抱き着くと貴方様がさらに寒くなりますからね、少し残念ですけど」

 

華扇はお団子を頬張ってる、華扇の肩には雷獣が乗ってトウモロコシを齧って食べてる、雷獣はトウモロコシを好んで食べるそうだ。雷獣は雷を出せるので雷獣がいたら電気に困らない。電気を使う電気器具が無いけど、レティは冷たいお茶を飲んでる。雪女だし冷たい飲み物の方がいいそうだ、諏訪子は自分の事なのに傍観者みたいな言い方だ。酷い話だ、諏訪子にも常に愛情をもって接していると言うのに、レティが右手を頬に当て微笑した

 

「羨ましいです。貴方様と永琳様の子供ですから、私も貴方様の子供が欲しいです」

 

「んぐぅ!」

 

レティの言葉を聞いて華扇はお団子を喉に詰まらせてしまった。急いで湯呑を掴みお茶を喉に流し飲もうとしたが湯呑の中にあるお茶は少ししか無く、お団子を喉から流せなかった様子、レティの湯呑に入ってるお茶はとても冷たいから飲んだら大変なことになる。だからレティの湯呑には手を出さない、レティは驚いて華扇の背中をさすったがレティは雪女だ。レティの体は冷たい、急に背中がひんやりしたから左手で口を押えた、お茶が出そうになったんだろう。諏訪子は落ち着いて見ながらお団子を食べてる。諏訪子の湯呑にもお茶が無いのでそれを渡す事は出来ない、もう少し慌ててもいいんじゃないか諏訪子。俺はいい考えが浮かんだので立ち上がって華扇の後ろに立った、レティはさするのをやめて俺を見上げる。俺は両手を使い華扇の胸を揉んだが華扇はさらに驚いて立ち上がって俺を平手打ちしてきて、壁に激突した。鬼の力は半端ないので俺は壁にめり込んでる。木製なので壁の耐久性は強くない、痛い、雷獣は華扇が立ち上がる前に肩から降りて床でトウモロコシを食べてる。雷獣が俺を見てるがその視線はどこか軽蔑の眼差しだ。

 

「ぐはぁ!き、強烈。さすが鬼なだけある、見た目は角が生えてる美女にしか見えないのに」

 

「だ、大丈夫ですか貴方様。吐血したようですが」

 

「死んではいないから大丈夫だろう、吐血したけど」

 

レティが立ち上がって壁にめり込んでる俺に近づきレティの右手で俺の頬を撫でた。痛い体に冷たいのが気持ちいい

 

「大丈夫か華扇。お団子が喉に詰まっていたようだが」

 

「どうして喉を詰まらせたときに胸を揉むんですか!?そこは背中をさする状況だと思います!」

 

「驚かすのが目的だったからだし、現に今は団子を喉に詰まらせてないだろう」

 

華扇は気付いたのか、喉に手を当て俺の言ったことが呑み込めたようだ。俺が体を張った代償として充分だろ、餅を喉に詰まらせて死ぬことは諏訪の国でもあるから一大事だった。華扇はお団子だったが。邪な気持ちがあった訳じゃ無いと思う

 

「そ、そうだったんですか。すいません、思い切り叩いて」

 

「あれ叩くとかの威力じゃないと思うんだが。誰か助けてくれ壁にめり込んで抜けない」

 

「すぐに弘様を出します、壁を後で直しておきますね」

 

俺は華扇に腕を引っ張られて壁から抜け出せた。体中が痛い、永琳に診てもらおう

 

 

 

 

蔵に着いた。永琳は蔵の中で何かしてる、何をしてるのかは聞いていない。奥に進むと永琳がいた。俺が声をかけると永琳は俺に背を向け椅子に座ってたが立って振り返った

 

「どうしたの弘、ボロボロだけど」

 

「色々あってな、悪いんだが体を診てくれ」

 

「いいわよ、じゃあ服を脱いで」

 

近くにあった椅子に座って俺は服を脱いだ。永琳は真剣な表情で俺の体の周りを診て背中に回って診てる

 

「大丈夫よ、大した怪我じゃない」

 

「そうか、診てくれてありがとう。じゃあ俺は行く」

 

「ええ、あまり無茶はしないでね」

 

椅子から立ち上がって、蔵から出ようとしたが永琳が何か考えてる様子だ

 

「どうした永琳、気になる事があるのか」

 

「そうね、確認なんだけど。弘の妹ってかぐやって名だったわよね」

 

「ああ、そうだが。かぐやについて話があるのか」

 

「そう、よね。話したいけどまだ話せないの。弘が混乱するでしょうから」

 

永琳は椅子に座って俺に背を向けた、かぐやがどうしたんだろうか。気になるがいつか分かるだろう、かぐやは竜宮城にいて豊姫が傍にいるし何かあっても大丈夫だ、それに竜宮城は海の底にある、そんな簡単に行ける場所じゃない。だから何も起こる訳が無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弘天。ちょうどいい、弘天に話があるんだ」

 

蔵から出たら、俺の名が呼ばれた。見たらキクリがいた、キクリは空に浮かんでる、キクリは空を飛べると前に聞いたのを思い出した、だからキクリは空に浮かんでいて話かけてる。でもキクリは丸い銅板から上半身を突き出して下半身は丸い銅板の中にある状態で少し怖い。あの丸い銅板は何なんだろうか、原理を知りたいな、俺には理解できないが永琳なら理解できるだろう

 

「何だ、キクリ」

 

「ルーミアの事についてだ」

 

ルーミア、昨日話してたなキクリとルーミアが神社の前で。確か昨日キクリはルーミアに料理の事を聞いていたんだったな

 

「ルーミアに昨日料理とやらの事を聞いたが本当は違う。他の目的があった」

 

「目的って何だ。キクリが地球に来た目的は感情を知る事と地球にある色んな綺麗なものを見るって話だったろ」

 

「そうだ、最初はそうだった。昨日ルーミアの話を聞いて目的が1つ増えた。だから昨日は料理の事を聞き、聞きながらルーミアを見ていた。だがまだ確証はない話だ」

 

「見るって、見るだけで分かる何かをルーミアは持ってるのか。一体何を見てたんだ」

 

「ルーミアが私と似た力を持っている。私は月の妖怪だがルーミアも月の妖怪なのかもしれん、あるいは私達月の妖怪に似た何か別の存在か、今の所分からん。だが昨日力が欲しいと言っていたから、その手伝いをしようと思ってな」

 




越後国は今で言う新潟県、甲斐国は山梨県、出羽国は秋田県、諏方国は長野県です。諏方国からどれだけの距離があるかこれで分かると思います。

この時代に車がある訳が無いですし電車もありませんから歩いたらかなりの距離があります。甲斐国は諏方国の隣にありますから他のに比べて近いです。紫がいたら距離なんて無いようなものですが。
前にも言いましたが蓬莱山は実際にありますし、麒麟山も鳳凰山も日本に実際あります。

ルーミアはどうなってしまうのかは、まあ、あまり気にしないで下さい。
ルーミアは他の役割があります。この話をしなくても他の話で出番ありますからしない可能性があります。気が向いたらします。

キクリについても以下同文、何の為に月から連れて来たと・・・・・


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かぐや姫
人形みたいに綺麗な女


台詞が長い




馬鹿な、月の妖怪は玉兎とキクリだけだと聞いていた。月でキクリを探していた時月の妖怪は他に見てない。それにルーミアは今では人を喰っていないが元は人食い妖怪だ、月の妖怪だったとしたら月にいた時は何を栄養に生きて来たんだ。月に生物は玉兎とキクリしかいなかったんだぞ、他に食べられる物は無かった

 

「月の妖怪はキクリと玉兎じゃなかったのか。俺は月人からキクリと玉兎以外の妖怪の話は聞いていない」

 

「私が月の妖怪は私と玉兎だけだと言ったか?言ってないはずだ、他にもいるぞ月の妖怪。その妖怪は月人が来る前にいたが今はいない」

 

豊姫と依姫から他に妖怪はいないと聞いていたからいないと考えていた、キクリは月人が来る前から月にいたと聞いている。月人が来る前にいた妖怪がいるのか、だがいたとして月からどうやって地球に行くんだ

 

「ルーミアの今の状態は何かが欠けてる、何かが邪魔していて力が出せない状態だ。だから私はその何かを埋める、何かを取り除こうと思ってな」

 

「待て、まずその妖怪の名と、その妖怪がどうやって地球に行った」

 

「その妖怪の名は桂男。そうだな、桂男がどうやって地球に行ったのかは知らん、興味もない」

 

興味が無いだと、大事な話じゃないか。だが桂男と言ったが、桂『男』っておかしくないか、ルーミアはどうみても絶世の美女だぞ、断じて男なんて話はあり得ない

 

「桂男って名からして男じゃないか、ルーミアと関係ないと思うんだが」

 

「さあな、もしかしたら桂女なんてのもいたのかもしれんが、私は桂男しか見た事が無いんでな。だが桂男が言うには絶世の美男子と言われてたそうだ」

 

「判断材料が少なすぎる、桂男がどんな妖怪か教えてくれ」

 

キクリが言うには桂男は月に立ちながら地球に向かって手招きをしているだけで、他は特に言う事もない妖怪だそうだ。だがたまに地球を見つめては一瞬でその場から消えて行くらしい、もしかしたらこの時に地球に行ってるのかもしれん。時間が経ったらまた月にひょっこり帰ってきてるらしいが

 

「何かその桂男とルーミアが結びつくような事は無いのか。例えば服装が似てるとか、桂男が持っていたのをルーミアが持っていたとか」

 

「いや、特に似た物は持っていなかった。だが容姿で似た物か、そんな物は。いや待て、桂男の髪色は確か、私とルーミアと同じ金、金髪だったぞ」

 

ここでも金髪が出てくるのか、これじゃあ 蓬莱山 の時と同じじゃないか、だが髪色が同じだけではまだルーミアは月の関係者とは言えない、髪色が金色で月の妖怪だったら、紫、藍、勇儀も同じ月の妖怪と言う事になる。それは絶対にあり得ない。

 

「そう言えば桂男が言っていたが、桂男は人の寿命を減らして魂を抜いていると前に聞いた、それはルーミア、人食い妖怪と似ていないか。人食い妖怪に出会ったら喰い殺され寿命が無くなる」

 

「人が関係してる所は似ている、だが同じじゃない。桂男は人の魂を抜いているし、ルーミアは人を喰っているぞ。人を喰うと言う事は魂をも喰うと言う事に等しいかもしれんが違うだろ」

 

「なら違うのかもしれんな。じゃあ月の力で出来た妖怪なのか、月と言う概念から生まれた妖怪か、私も似たような生まれ方をしているからそれかもしれん」

 

「概念から生まれたと言うと、否定できん。諏訪子も俺と永琳の信仰と言う概念から生まれている、だから概念から生まれた前例がある」

 

忘れているかもしれないが、諏訪子は俺と永琳がまぐわって、肉体関係を結んで出来た子じゃない、信仰と言う目に見えない概念から生まれた存在で俺と永琳の信仰を人間と同じ形になったのが諏訪子だ。だから諏訪子は信仰の塊で出来ている

 

「そうか、私も月の力、概念から生まれた存在、だがそうだとしてなぜ地球にいるのかが分からん、私と同じ生まれなら月にいるのではないか」

 

「それもそうだが、仮にそうだとしてなぜ人食い妖怪になっているのか謎だ。キクリは人を喰いたいと思う欲求はないんだろ」

 

「前にも言ったが、私は月から力、弘天の言う栄養に近い物を貰って生きていた。だが地球に来てからは月からの力が弱くてな。何かを食べないと倒れてしまう。満月の日は月の力が強いからその日は何も食べないで済むが」

 

「満月・・・・・そう言えばルーミアは満月の日は何も食べていない、その日は作らなくてもいいと言っているそうだ、あのルーミアが」

 

ルーミアは満月の日は何も食べず外で過ごしている、何をしてるんだと思ったが月から力や、栄養を貰っていたのかもしれない。それとルーミアは封印が解かれる前、解かれてからも太陽の光が苦手でルーミアの能力、闇を操る程度の能力を使い光を遮断出来るそうだ。神社の中で、もしくは外で黒色の闇の球体の中にルーミアは入って光を遮断しているので中の様子が分からないから何をしてるのかが分からない、ちなみに闇だけじゃなく光も操れるそうだが見た事が無いので本当か分からない

 

「キクリ、これ以上話すのはやめて、また日を改めて話す事にしよう。今日は色んな事がありすぎた」

 

「そうだな、分かった。ならば神社に入るか、雪も降っているからな。しかしこれが寒いと言う感情なのか」

 

「寒いってのが分かったか。これからも色んな感情が分かるといいな」

 

「そうか、これが寒いって事なのか。これからも色んな事を知って行くぞ。言い忘れていたが桂男は仙人だったそうだ」

 

仙人ね、仙人については聞いたばかりだな。ルーミアは桂男と関係があるのか、月の概念から生まれた妖怪がルーミアなのか、どっちが本当なのか、そもそもこの2つの中に正解があるのかわからない。この話は保留にしてキクリにはルーミアに何かする時は俺に声をかけるように言いキクリと神社に入っていった、どうするルーミア。もしかしたら昨日言っていた力が手に入るかもしれないぞ、力を手にいれたらルーミア、お前はどうするんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になった。俺の隣には、紫がいる。幽香は指定席に座っていて俺と幽香は密着している状態だ、神社の中で火鉢を傍に置き寒さから逃げていたが、美鈴が帰って来た。道場は夕方までだが掃除があるので帰りはいつも夜に帰ってくる、広いので時間がかかるのだ。美鈴は厚着をしていて寒さ対策しているようだ。寒いのか美鈴は自分の体を両手で抱きしめるようにして両手で体を擦っている

 

「寒い寒い。って弘天様!?に、逃げなきゃ」

 

「待て待て、今日は何もしない。寒いから動きたくないんでな」

 

「今日はと言う事は明日はするんですか」

 

「もちろん」

 

もう許してください、美鈴はそう言い向かい合いに座った。美鈴は向かい合いに座って寒そうにしてるのに紫は気付き紫は立ち上がって、さっきお湯を沸かして、急須の中にお湯と茶葉を入れて置いたので、急須は蒸れ、急須に入っている茶葉も蒸れて急須に入ってたお湯が熱い茶になってる。熱い茶が入った急須と湯呑を紫が持って、美鈴の前に置き湯呑に熱い茶を入れた、気が利く女だ。

 

「ありがとうございます。紫様」

 

「気にしないで、私はこれくらいしか出来ないから」

 

美鈴はもう一度紫に礼を言い目の前にある湯呑を手に取り口元に持って行った。あれで温まるだろう。美鈴には戯れをしたことが無い、まだ美鈴は俺の女じゃないから手を出せないのだ。紫は俺の隣に来て座った。座りながら机に置いてあるお茶を上品に飲んでる、

 

「美鈴、仕えるかどうかはまだいいけど、いつになったらお父様の女になるの」

 

「う」

 

美鈴は幽香の台詞を聞いて動きが止まってる、今の美鈴は湯呑に口を付けたままだ。そう言えばそんな話を前にしたな。色んな事が最近ありすぎて忘れてた、隣にいる紫は何だかそわそわして落着きが無い。落ち着かせる為に紫の背中を撫でたら紫が驚いて立ち上がった

 

「幽香と美鈴がいるのに今この場で私に手を出すの!?せめて誰もいない2人っきりの所でしてよ私初めてなんだから!お、お父さんの助平!」

 

爆弾発言をした紫はスキマを出してスキマの中に入っていった。助平って背中撫でただけなんだけど、まあ、いいか。気にしないでおこう、美鈴は止まってたがまた動き出し手に持ってた湯呑を机に置いた。どうやら紫の事は流すようだ

 

「あのー、弘天様は素敵な女性が周りにいますから私を妻にしなくてもいいんじゃないですか。私みたいな無骨者まで妻にしなくても」

 

「お父様はね、女好きな神だし。美鈴は女の私から見ても素敵な女性よ。もう少し自信を持っていいと思うのだけど。それに無骨者って美鈴は無礼じゃないし役に立たない妖怪なんて誰も思ってない」

 

「あ、ありがとうございます。幽香様」

 

幽香の素直な気持の言葉に美鈴は照れて左手の指で美鈴の頬を掻いてる。ストレートな気持ちに弱いんだな

 

「は、話を戻します。神でなくても男性なら皆そうだと思うんですが、それに私が素敵、今まで男性から女になってくれなんて弘天様を除いて言われた事ないんですが」

 

美鈴は気付いてないようだ。道場にいる男どもからは美鈴を女として見ていることに。鈍感なんだな、だが道場の男どもは見てるだけだ、高嶺の花と思ってるみたいで、花には手を出すのではなくて、ただ綺麗な花を眺めているのがいいと言ってた

 

「美鈴は鈍感だなー。今まで生きて来て気付いてないと見える」

 

「私は鈍感なんでしょうか。では今まで気付かなかっただけで実は周りからは女として見られていたんですかね」

 

「他の男は知らんが俺は美鈴を女として見てるぞ。それは最初に出会った時に言っただろう」

 

美鈴は顔を赤くして顔を俯かせた、今は冬で寒いのに顔と耳が赤くなるほど恥ずかしいとは、体温が上がって寒くなくなってよかったじゃないか。美鈴のこれは初心ではなく恋愛事とかに慣れて無い女のタイプだ。今まで男性に好意を寄せられた事が無いと言ってたし

 

「もう少し、もう少し日を置いて待ってください。私から仕えるかどうかも含めて絶対に言いますから」

 

顔を俯かせたまま美鈴は呟いた。いつかその日が来るのを待てばいい、俺はもう女になれと美鈴に告白してるんだし、後は美鈴次第だ。幽香の頭を撫でつつ、その日が来るのはいつ来るだろうかと考えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日になったが寒い、雪は降ってないが寒気が冷えてる、何かいい考えはないだろうか。大和に向かうには紫に頼んですぐに着くから問題は無いが、外に出たくない

 

「大和にそろそろ行かないと不味いな、そうだ。レティに頼もう」

 

俺は自分に部屋のふすまを開けてレティの部屋に向かった。ふすまを開けたらレティがいた。レティの服装は長襦袢で色は白一色。だがこの長襦袢は薄っぺらい浴衣のようなもので。そうだな、例えるなら下着みたいな薄いのを体全体に着けてる感じだから普通の人が着たら間違いなく風邪を引く、しかもレティの長襦袢はスカートみたいになっているので両足が生足だ。レティは雪女なのでこれくらいがいいらしい、スカートみたいなやつの長さはレティの太もも辺りまでだ。両足の生足が見れるので俺はこのままがいいが

 

「貴方様どうしましたか」

 

「レティに頼みがあってな」

 

 

 

 

 

 

大和に着いた、レティの能力で冬の寒さがあまりない。レティの寒気を操る程度の能力で寒気を操って貰っているから丁度いい気温だ、レティは少し暑いと言っていたので冷水浴で涼んでもらってる。神社に着いて神社の中に入った。顔を巫女に覚えられているのですぐに中に入れる。顔パスと言うやつだ、巫女2人が神社の前にいたが俺を見たら俺に頭を下げてる、俺は一応神様なので頭を下げてるのだろう。それに大和と諏訪の国は表向きは同盟関係だし、奥まで進みふすまを開けると須佐之男がいたので俺は中に入り座った。大和の状況報告を須佐之男から聞いて話し始めた、俺は大和の裏での支配者なので聞いてる。

話し終えた、須佐之男に聞きたい事があったので聞いておこう

 

「しかし天照、月読命、須佐之男は俺の道具で拒否権は無いとはいえ、確か鼠の妖怪だったな。その神使を貰って行ってもいいのか」

 

「何だよ気持ち悪い。お前がそんな事を気にする男な訳ないだろう。まあ大丈夫だ、玉兎がいるから人手が足りなければ月から連れてくる、兎だし」

 

「そうか、じゃあついでに聞きたい事がある、神使になれる動物であまり見ない動物を教えてくれ」

 

「神使って、おいおいまだ増やす気かよ。弘天、お前何を焦ってるのか知らんが。いや、俺が口出しする事じゃないか」

 

須佐之男に聞いたところ、狼、猫、虎、河童、狸、烏、鳳凰。これくらいか、この大陸には日本狼と言うのがいる、捕まえるか、猫は野良猫でもいいだろう。虎か、この大陸に虎はいなかった気がするが、どうするか。河童はあの山にいるし後でいいだろう、狸もこの大陸にいる。烏はどうするか、賢いからな。捕まえられるかどうか、確か天照が烏を神使にしてる、名は八咫烏。天照は太陽の神で、八咫烏は太陽の化身として知られている。後は導きの神として信仰されているな。そして鳳凰は鳳が雄で凰が雌って意味らしい、鳳凰も神使に使えるのか丁度いい

 

「そうそう、弘天。興味深い話を聞いたんだよ」

 

「うむ。どうでもいいから須佐之男の所にいる神使の子をくれ」

 

「待て待て、弘天に関係する話なんだよ。だから大事な話だ。後で神使の奴はやる。神使じゃ言いにくいし名を今の内教えておくが名はナズーリンだ」

 

俺に関係する事って何だ。大和は俺が支配してるし、月人は俺の奴隷だ。月人が逆らっても豊姫と依姫がいるから問題は無いし。ナズーリンってこの大陸の名前ではないな、向こうの大陸にある女性に付ける名、もしくは姓がナズリンだと聞いた事がある。海の向こうから来た妖怪なのだろうか、そうだとするならてゐと似てるな。てゐも海の向こうの大陸から来てるし、てゐは妖怪じゃないが

 

「弘天、妹が確かいたよな。名はかぐやだったか。月で生まれた時は全月人が騒いだもんだ、月人は子供に恵まれないからな」

 

「いるが、何だ。妻に欲しいのか、かぐやは俺の女だやらんぞ」

 

人間の常識じゃあ問題あるかもしれんが俺は神だ、近親相愛しても問題は無い。昔、妹を妻にした神がいるからな。前例はある。もし俺が神じゃなくて人間だとしても常識なんぞ知った事ではないが

 

「そうじゃねーよ、それにかぐやを妻にしようと思ったら弘天に殺されるからな。しかし実の妹を俺の女宣言とは。俺の親父と一緒だな」

 

「親父って伊邪那岐命だったな。妹を妻にした神で有名だ、それで興味深い話を早く言え」

 

「お前、男には厳しいのな。クソ、姉貴達に話をさせるべきだったか。2人とも女だし、1人は元男だが」

 

須佐之男命は面倒だと言う表情で俺を見て後悔してるようだ。いつまでも引っ張る様に話すから俺はこんな話し方をしてるだけだ、俺は女好きだが男の存在を嫌ってる訳じゃ無い、嫌ってたら俺は諏訪の国の男の民にも冷たい態度をしている

 

「まあいい、最近大和の北にある山城国で話を聞いてな。その山城国にはかぐやって女がいるらしい。顔は一部の人間しか見てないそうだが人形みたいに綺麗な女らしいぞ。これは偶然の産物か、それとも必然か。どっちだと思う弘天」




大和は奈良県で山城国は京都、山城国は大和のすぐ上にある場所ですからすごく近いですね。

桂男は妖怪で月の住人と言われて、またの名を呉剛と言われてます。桂男は有名ですね、月読命と同一視されてますから。月読命は須佐之男命とも同一神説があります、月読命は神話であまり目立ってないせいかそんな話が多いです
関係ないですが桂男と華扇って似てます、仙人で妖怪ですから。ここの華扇は鬼で仙人じゃないですし、公式で華扇は鬼で妖怪と決まった訳じゃ無いですけど


永琳を連れて行こうと思いましたが今回永琳を連れていくと困るので没


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送り狼

多分暫くは諏訪の国に戻ってもすぐに出かける事になるでしょうね、忙しくなる。書く俺が

今回の話も元ネタがあります


名はかぐやか、俺の妹と同じ名だが偶然なのかそれとも本人なのか。かぐや本人だとして豊姫は何を考えてるのか、かぐやは豊姫に任せてるからな。考えてても分からんし、会いに行ってみるか。山城国は大和の近くだし1日かけたら行けるだろう

 

「丁度いい。今から山城国に向かう事にしよう、かぐやは山城国のどこにいるんだ」

 

「え、本当に今から行く気かよ。かぐやはある老夫婦の所にいるらしいがそれ以上は知らんな」

 

知らないのか、どうするべきか。虱潰しで探すのをいいかもしれんがあまり時間をかけ過ぎると面倒だし。誰か山城国に詳しい人物はいないだろうか。俺の周りにはそんな人物はいないしな

 

「仕方ねえな。じゃあ一筆認めてやるよ、それを山城国にいるある人物に八咫烏に頼んで渡してもらうか、烏だから空を飛べるしな」

 

「おっ、気が利くじゃないか。その人物って誰だ」

 

「そいつの名は 小野 篁 妖怪のスペシャリストで最近地位を上げて来てる人物だ。だが何でも屋でもあるらしいから道案内を頼んでおく」

 

ふーん。小野篁ね、しかも妖怪のスペシャリストとは、かなりの腕なのだろう。妖怪専門で地位を上げて来てるか、何だかその話どこかで聞いた気がする。

 

「あ、忘れてたな。俺が一筆を認めてる間に紹介しておく。入ってくれナズーリン」

 

ふすまを開けて女の子が入って来た。クセ毛があってセミロング。髪色は黒に近いグレー、頭には丸くて鼠の耳らしき物がある。腰から鼠の尻尾みたいのがあって、結構長い。尻尾の先にはバスケットを吊っていて中には子鼠が数匹いる、服装はセミロングスカートだが、先のほうが切り抜かれた奇妙スカートだ。肩には水色のケープを羽織って首からはペンデュラムみたいなのを首から下げている。片手には二本のダウジングロッドがある、ダウジングなのかあれ

 

「初めまして。私の名は ナズーリン ご主人様、どうか幾久しくよろしくお願いします」

 

ナズーリンは俺の前に来てから跪いて敬意を表してきた。これで新しい神使が増えたし藍も少しは楽になるだろう、ナズーリンは気まぐれで神使になったと聞いていたんだ違うのだろうか。いい加減な性格と思いきや真面目に見えるんだが

 

「俺の名は 蓬莱山 弘天 だよろしく、ナズーリン」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

ナズーリンは跪いたまま顔を俯かせていたが、顔を上げてお互いのこれからをよろしくしあった。ナズーリンと話したら能力を持っていてナズーリンの能力は探し物を探し当てる程度の能力だそうだ、あの片手に持ってるダウジングロッドらしき物を使い探すそうだ。ナズーリンには悪いけど一緒に山城国に行くか、かぐやって女が気になるし。何だか最近忙しいな、やる事が増えて来てる

 

「ナズーリン。早速で悪いが今から山城国に行くことになった、悪いが着いて来てくれ」

 

「はい、ご主人様。私も共に行きます」

 

「そうか、それじゃあな須佐之男。大和を頼んだぞ」

 

「おう。任せろ、気を付けて行きな。最近物騒だからな、それと1日で着くとはいえ山城国に行くなら食料と縄を持って行け、弘天が倒れたら八意が発狂しちまう」

 

俺とナズーリンは立ち上がって部屋から出ようとしたが須佐之男に呼び止められた

 

「待て待て、ナズーリンの頭にある鼠耳が見えるのは不味い、神使とはいえ妖怪なんだから隠せ、騒ぎが大きくなれば面倒だ。何か頭を隠す帽子みたいなのをやるよ。笠があるからそれを使え」

 

あ、そうか。忘れていたが諏訪の国と大和は妖怪がいても問題は無いが、山城国は違うかもしれん。民は妖怪を見たら大声を上げて皆に知らせるだろうし鬱陶しいからな、一歩間違えたら大和を巻き込んだ諏訪の国と山城国との戦争になる。諏訪の国と大和は表向きは同盟国だからだ、それと頭耳を隠す為に使う笠は今の時代では一般的に使われているので、別段おかしくはない。須佐之男にお礼を言い、ナズーリンと一緒に神社を出たら巫女に食料を貰って大和の国から山城国に向かった。紫がいないのでスキマですぐには行けない、だから1日歩きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は山を越える為山道を歩いてる。夜中だから暗い、月明かりのお蔭で前は見えるので歩けるが。ナズーリンを見たが全く疲れてない、意外にやるなナズーリン。俺はもう疲れて来た、ナズーリンと歩いてたらナズーリンが俺の隣に来た、密着した状態で小声で俺に話しかけた

 

「ご主人様。誰かが後ろから来てる」

 

「よく気付いたな、俺は気付かなかった。やるなナズーリン」

 

「ご主人様からお褒めに預かり恐悦至極。私は耳がいいんだよ、弱い妖怪だからね。危機管理能力が優れてるんだ」

 

歩きながら耳を澄ました、確かに足音がする、山道の地面には落ち葉や木の枝が落ちてるからそれを踏んで音が聞こえるようだ。だがその音は小さく微々たるもので俺は気付けなかったが。気にせず俺は巫女から貰った焼いた鮭を食いながら歩いてた、ナズーリンはさつま芋を食べてる、好物だそうだ。バスケットに入ってる数匹の子鼠もさつま芋を食べてる、俺は鮭を食べながら歩いてたら足元にある石に躓いて顔から地面に倒れた。鼻打った鼻、痛い。立ち上がり鼻を擦ってたらナズーリンが右手で俺の服の裾を掴み軽く引っ張った、ナズーリンは俺の後方を見てる

 

「ご主人様、後方にいた奴が走って来てますよ。どうやら私たちを喰い殺そうとしてるみたいですね」

 

「何を落ち着いているんだ。ナズーリン、もう少し危機感を持ってくれ」

 

「大丈夫でしょう。ご主人様は弱くはないですから」

 

俺は振り返り後ろを見た、見たら藍やてゐ。ナズーリンのように頭に獣耳をした女が走って来てる、容姿は女の人間しか見えないが、獣耳があるので妖怪かもしれん。俺たちを襲うと言う事は腹が減ってるのだろうか、ならば焼いた鮭を食わせるか。その前に取り押さえるがどうするべきだ。考えてたらその女はナズーリンの方に走っている。弱そうな奴から襲って喰うと言う事か。俺は前に出てナズーリンを背中に置いた。ナズーリンとの距離を開けて、あれをする事にした。

俺は構え、女が走って来ていたのでその推進力を利用しようと、既に目前へと迫って来ていた女の片手を掴み、流れるように背負い投げをした。

 

「ぷぎゃ!」

 

蛙が潰されたような声を出して咳払いをしてる。綺麗に決まった。美鈴から教わっていて良かった、まさか役立つときが来るとは。背負い投げは、相手の力を利用する技だそうなのでそれを使った。俺は女が仰向けの状態だったのでうつ伏せにして女の両手を背中でクロス状態にさせ抑えた、

 

「いたたたたたたたたた!痛い痛い!」

 

「気にするな、痛いのは最初だけだ。ナズーリン、須佐之男から貰った縄をくれ」

 

「はい、ご主人様」

 

ナズーリンから縄を貰い女の両手を縄で縛った、やったぞ生捕った!身動きが出来ない女を眺めているのもなかなかどうして悪くない。お腹が減ってるだろうし焼いた鮭を食わせよう

 

「ほれ、食え。腹減ってるんだろう」

 

「何これ」

 

「鮭。魚だ、気にせず食え。鮭は素晴らしい食材だからむしろ食え。あ、骨には気を付けろよ。それと食べて美味しくないと思ったら無理して食うな他の食べ物をやる」

 

女はうつ伏せで縄で縛られて両手が使えないんで体を捩りながら首だけを動かして焼いてある鮭を食べてる。何だろう、動けない相手に何かを食べさせるって何か変な感情が芽生えそう、開いてはいけない扉を開くのか俺。ナズーリンは俺の隣に来てさつま芋を食べながら見てる。ナズーリンは小声で

 

「尻尾の先のかごに入ってる子鼠にこの女を喰わせますか」

 

と聞いて来た。さすが妖怪だ、本来妖怪とはこんな生き物だ。諏訪の国にいる妖怪は本来の妖怪での生き方では無くなっているからナズーリンが言ったことはおかしくない。むしろ普通の妖怪からしたら諏訪の国にいる妖怪は異端だろう、妖怪の食糧、人間と仲良くしてるんだから。そんな妖怪での普通な事とか俺は知った事ではないが、妖怪の常識くらいぶち壊して貰わねば困る、俺の妻なんだから。一部妻じゃないのもいるが。女は鮭を少し齧って食べた、噛んで味を確かめてるが美味しかったのか歓喜の表情だ

 

「何これ美味しい!全部食べていいの!?」

 

「うむ、気にするな。もっと食え、ナズーリン肉まんをくれ」

 

「どうぞ、ご主人様」

 

ナズーリンから肉まんを受け取り食べる、喉が渇いたので水を飲む。女が鮭を食べながら見て来た、初めて見るのだろうか、それとも水筒は知っていて水が欲しいのだろうか

 

「なんだ、喉が渇いたのか。飲ませてやるからうつ伏せから仰向けにするぞ」

 

俺は女の体を掴み仰向けにして女の顔を月がある空の方向に向かせた。水筒を女の口につけ水筒に入った水を飲ませた、一気にやると飲めないだろうから少しずつ飲ませてる。もういいかと思い水筒を女の口から離して俺も水筒の水を飲む

 

「久しぶりに美味しい物が食べられたよ、飲み水も美味しかった。ありがとう」

 

「気にするな、それでお前、名は何て言うんだ。俺は 蓬莱山 弘天 だ」

 

「私の名はナズーリンだよ。よろしく」

 

女は仰向け状態で首を動かし俺とナズーリンを見て名乗った。女は月夜に照らされて綺麗だ、仰向けだからなんか情けないし鮭を食べながら話し始めてるし

 

「私は 今泉 影狼 だよ」

 

今泉 影狼 か、珍しい苗字と名だ。今泉って苗字はこの大陸で聞いたことが無いし、一体何の妖怪なのだろうか。気になるから聞いてみよう

 

「見た所、影狼は妖怪の様だが何の妖怪なんだ」

 

「私は狼の妖怪。二ホンオオカミって名の狼の妖怪だよ」

 

狼か、丁度いいな。欲しかった神使の動物が目の前にいる、手懐けて引き込むか。頭はあまりよくないかもしれんが体力はありそうだし力仕事なら出来るだろう。後は狼だからか足も速かったし連絡役にも使える、諏訪の国の民を襲いそうだが萃香がいるし、他の皆もいるから大丈夫だろう。俺はこんな時の為に懐から紙を出して紙に書いて置く。墨は小さい瓶の中に入ってるのが懐に入れてあるので、それを使って書く。後は影狼が諏訪の国に行ってこの手紙を見せたら問題は無い、手紙の内容も監視は常にしとけと書いて置いたしこれでいいだろう。向かう途中手紙を影狼が見ても問題は無い、見て諏訪の国に来なくても俺は困らないし。来たら儲けものと言う事だ、影狼は字を読めるかは知らんが

 

「なあ、美味しい食べ物がお腹一杯食べられる国があったらどうする影狼」

 

「そんな国があるの!?あるなら行きたい行きたい!」

 

純粋な女め、もう少し疑う事も覚えた方がいいぞ、俺は楽に事が運ぶから構わんが。食べ物で釣って興味を促し諏訪の国に行くよう仕向けなくては、俺が連れて行けばいいんだが、かぐやを見に行かなくてはいけないし連れて行けないんだ。だから影狼がちゃんといけるか心配だがそこは影狼の鼻次第だな。影狼の両手を縛ってた縄を解き影狼を立ち上がらせた。お腹が空いてなければ襲う理由は無いだろう。襲っても返り討ちにするけど、ナズーリンが食糧を持っていて袋に入れて置いた食べ物を少しだけ持たせて俺は右手でさっき書いた手紙を揺らして影狼に話しかける

 

「そうか、その国の名は諏訪の国って言うんだが。俺が持ってる手紙を諏訪の国の関係者に渡せばお腹一杯食べ物が食べられるが」

 

「諏訪の国だね!手紙を渡せば食べ物をお腹一杯食べられるんだよね、じゃあ早速行って来るよー!匂いを辿れば分かるからねー!」

 

影狼は言うが早いか俺が右手で持ってた手紙を奪い取り走って行った。猪突猛進な女だ、影狼が諏訪の国に着くかどうか気になるが。まあ、大丈夫だろう。気にせず山を越え山城国に向かおう、ナズーリンと歩き出してその場を後にした




今回の話は高知県に伝わる送り狼と言う話です。有名なのは送り犬ですが、あの話も山犬だったり狼だったりと地域によって若干の違いはあります

困った事に影狼は満月時の容姿は分かってるんですが、満月時じゃない時の容姿がまだ分かってないんですよね。慧音の様に変わるんでしょうか、気になりますね

余談ですが、今で言う送り狼は女性にいい顔をして女性を女性の自宅に送り悪さを働くのを送り狼と言いますが、この妖怪の話、送り狼の妖怪伝承が由来だそうです


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赫奕

今回は後書きを見た方がいいと思います。ですが無茶苦茶長い、ドン引きするほどですのでやっぱり見ない方がいいと思います

この話は長くなるだろうなー


山城国に着いた、山城国に入ったら人がいっぱいだが諏訪の国の民とは違う。当たり前だがな、諏訪の国の民はどちらかと言うと騒がしい方だが、山城国は静かだ。上品な国なのかもしれん、着いたのはいいが例の人物はどこにいるのか。ナズーリンを連れてぶらぶらしようと思ったら声をかけられた

 

「もし、そこのお方。 蓬莱山 弘天 様ではありませんか」

 

俺の名を呼ばれたので振り返ったら女性がいた、赤髪でロングヘアー髪の横から角みたいなのが左右2本ずつあって合わせると4本ある。あれは角なのか、それとも髪飾り的なものなのかは不明だ。白い服に紺色のマントに似た物を羽織り、太陽と雷の模様が入った赤い袴みたいなのをもしくはスカートみたいなのを穿き、右手に杖を持っていて、両目は赤い。

 

「いかにも俺は 蓬莱山 弘天 だ、どちら様だ。あんたを見るのは初めてなんだが」

 

「私の名は 小野 篁 と申す者。須佐之男様から便りが届きお迎えに参りました」

 

あー、須佐之男が一筆認めると言い八咫烏にその手紙を送ってもらったんだっけ。忘れてた、え、見た感じ女性なんだが。小野 篁の名を聞いて男だと思ってたんだが女なのか、女に付ける名じゃないと思うぞ篁は。この女は美人系ではなく可愛い系だ

 

「そうか、じゃあ案内を頼む。それとその口調何とかならんのか、俺は堅苦しいのは嫌いなんだ、もっと崩して話せ」

 

「 蓬莱山 様は諏訪の国の王ですから、私のような者が下々の者がその様に喋るのは恐れ多い事です。本来ならちゃんとした手続きの元、案内に相応しい人物を送るのですが急でしたので私の様な者が来ました次第です」

 

申し訳ありません、と頭を下げてきたが固い固い、固すぎるし真面目過ぎる。これでは肩が凝るし疲れる、俺はかぐやを見に来たのもあるが観光しに来てる訳でもあるのだ。だからもっと気楽にしてもらいたいんだが、こんな言葉遣いを民に聞かれたら俺が偉い人と感づく奴も出てくる。それは不味い、俺は諏訪の国の王で神なのだ。お忍びで来てるのにばれたら大騒ぎになる。何とかしなくてはばれてしまう

 

「失礼ですが、隣の女性は妖怪ですね。須佐之男様からの便りに書いてありました、神使とは言え妖怪。山城国の民は妖怪を怖がっている人が多いです、気を付けてくださいね」

 

「申し訳ない、ご主人様の傍にいるのが神使の役目でもあるんでね。人間にばれない様、気を付けるよ」

 

ナズーリンは優雅に頭を下げた、顔は笑顔だがどこか腹黒さを感じる。須佐之男が手紙にナズーリンの事を書いて置いてくれたようだ、根回ししてくれて説明の手間が省けた。確か小野 篁 は妖怪専門をしてるんだったな、強いのだろうか。観光したい所だが徹夜で大和から山城国に来てるので眠い。今日はどこかの宿に泊まろう

 

「すまない、俺とナズーリンは1日かけて大和から来たから眠いんだ。今日は案内しなくてもいいから、どこかで寝れる場所に連れて行ってくれないか」

 

「須佐之男様の便りからも蓬莱山様が来たら宿に止めて、明日案内しろと言われているのでお任せ下さい。こちらです」

 

俺とナズーリンは篁の背の後を追いながら歩いていく。周りは綺麗だし、服装も皆上品なものだ。この国の民は裕福なのだろうか、いい事だ。と思うかもしれないがこんなの表面上だけだろう、他の場所では違うだろうな。山城国は見た感じ広い、だからどこか別の場所で裕福じゃない家が集まってる場所もあるだろう。山城国の入り口に裕福じゃない家を置いたら山城国の品格が問われるとかなんとかいいそうだ、それとこの時代に宿なんて無い。寝床を提供して商売すると言う考えが無いのだ、だから寝床を探さなくてはいけない

結構歩いたら目の前にはどこにでもある普通の屋敷だ、地位が高い人間はそれ相応の屋敷に住むものじゃないんだろうか。篁は大きい屋では落ち着かない人種なのか

 

「篁、地位が高いと聞いていたがなぜ屋敷はありふれた物なんだ」

 

「私は何でも屋、万事屋をしていますから。こんな屋敷の方が皆さん入りやすいんですよ」

 

そんな理由があったのか、まあ、豪華な屋敷があって中に入ろうとしたら気後れする人もいるだろうからな。万事屋をするならこれくらいがいいのかもしれん、周りを見てみると井戸があった、一見、普通の井戸だが何か、気になる。俺の何かのセンサーが反応してる。まあ、いいか。屋敷にナズーリンと入って行って寝床まで案内してもらった、仕事があるそうなので篁は屋敷を出て行って仕事場に向かった様だ。布団は二つあるのでナズーリンとはそれぞれの布団に入って寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜか夜中に目が覚めて起きてしまった、俺はあの井戸が気になって仕方ない、もう一度見に行こう。俺は立ち上がりふすまを開けて部屋から出た。ナズーリンはまだ寝てる。縁側を歩いて井戸の場所まで行く。屋敷の入り口の傍に井戸があるので入り口まで歩かなくてはいけない、考えながら歩いていると井戸を見つけた、だがよく見ると人影が見える。少し暗いから見にくいがどうやら男だ、男がこの屋敷に何の用だろう。その男は気でも狂ったか井戸の中に入って行った、俺は驚き裸足だが急いで井戸に向かって走った。井戸の中を覗き込むと井戸の中は水があるのではなく、赤い地面があり近くには赤い湖が見える、大きい釜があって沸騰して湯気が立ってる、熱そう。針の山もあって他の場所には火が集まってる場所もある、火の反対の場所には辺り一面白い世界で極寒の世界の様だ。後は色んな場所に子鬼や餓鬼がいるな。それと臭気が漂ってきて臭い、これは血の匂いか。まさか俺が見てるのは八大地獄か。もしかしなくてもこの井戸は地獄に通じてるみたいだ、さっきの男は誰だったんだろう。気になるが答えは出ない、しかし地獄を作ったのは神綺だ。さっきの男は神綺に関係してるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに良く寝た、目を開けたら朝の様だ。日差しが眩しいし気温が冷えてる、ナズーリンを見たらまだ寝てるようだ。日差しを浴びようと思いふすまを開けて部屋から出た、朝日が眩しい。ぼーっとしてたら厠に行きたくなった、厠に行こうと思ったが場所を知らないので屋敷を歩いてる。縁側の道を歩いて厠を探していたら縁側に座って屋敷の庭を眺めてる女性がいた、丁度いいので厠の場所を聞こう

 

「すまない縁側に座ってる赤い髪色の女子さん、厠に行きたいんだが場所はどこだろうか」

 

赤い髪色の女性は庭を見て座っていたが首を動かして見上げた状態で俺を見て来た

 

「んー?誰だいあんた。この屋敷に勝手に入っちゃだめだよ」

 

「あれ、篁は屋敷の人に言ってないのか。俺の名は 蓬莱山 弘天 って名だが聞いていないか」

 

女性は俺に向けてた視線をまた庭に戻し顎に手を当て考え込んだが、思い出したのか俺を見上げて来た

 

「あー、思い出した。聞いてる聞いてる。忘れてたよ」

 

女性は頭を右手で掻いてばつが悪そうな表情だ、良かった篁は言うのを忘れてたわけじゃないのか。不審者扱いで捕まる所だった

 

「それで厠に行きたいんだが場所を教えてくれ」

 

「いいよ、着いてきな。案内するから」

 

俺は女性に着いていきながら話始めた、この女性は髪色は赤髪でくせ毛の髪をツインテールにしていて、瞳の色は赤い。服装は長袖のロングスカートの着物を着ていてお腹辺りに腰巻みたいなのを巻いている。身長はかなり高い

 

「そう言えば私、あたいの名を教えて無かったね。あたいの名は 小野 小町 だよ、よろしくね」

 

「小野 小町って篁の娘なのか。篁も髪色は赤髪だったし」

 

「違う違う。確かにお互い赤髪だから娘かと思うかもしれないけど違う、養子としているから娘だけど本当の娘じゃないよ」

 

俺の前を歩きながら首を後ろにいる俺に向けて小町は右手で違う違うとひらひら動かして否定してきた。髪色が同じなのは偶然だったようだ、なぜ娘になってるのかは知らないが理由があるんだろう。この時代知らない子供を養子にするのは別におかしくない。代々受け継いできた血も大事だが有能な人材なら拾った子供を養子にしたり婿養子にしたりとよくある事だ。厠に着いたので小町とは別れた

 

 

 

部屋に戻ったらナズーリンは起きていて篁が部屋の中にいた、朝食が出来ているそうなので呼びに来たらしいのでついて行ってナズーリンと篁で朝食を食べてる。

 

「篁、小町も一緒に食べないのか」

 

「もう小町と知り合ったのですか、小町はいいのです。たるんでいる娘でして今の時間は朝餉を取りません、あれでは嫁の貰い手がいないでしょうね」

 

「嫁の貰い手が出てきたら嫁に出すのか」

 

「はい。ですが怠け癖があるので困った娘です。家事も出来ない娘ですから物好きな殿方しか貰い手がいないでしょう」

 

ふっ。言質は取った、俺はその物好きな男だ。全て終わったら迎えに来るのもいいかもしれない。もう少し先の話だが、それといい加減篁の喋り方を何とかしなくてはいけない。ここは強引に行こう

 

「おい、篁。俺は諏訪の国の王で神だよな、そして篁は人間な訳だ」

 

「はい、蓬莱山様は諏訪の国の王で神です、私も人で間違いないですね。それがどうかしましたか」

 

「じゃあ神として王として命令する、その喋り方何とかしろ。疲れるんでな」

 

篁は俺の言葉を聞いて戸惑ってる、諏訪の国の王としてと神としての命令、だが篁は下々の者だから崩した喋り方は出来ない板挟み状態だ。だが会話をして疲れるのは御免だ、俺の為に俺の立場を使い命令してやる

 

「ご容赦ください、私にはその命令を聞くことが」

 

「駄目だ、篁よ。聞いて貰うぞ」

 

篁は箸を使う動きが止まって考え込んでる。悩んでいるんだろう、悩んだ所で俺の命令は聞いて貰うが。篁は考え付いたのか茶碗を机に置き箸を茶碗の上に2本置いて首を動かして来た

 

「わ、分かりました。ですが時と場合によって使い分けると言う事にしてください、これ以上はご容赦を」

 

「分かった、それでいい。それと篁、今日は頼みがある」

 

「私で出来る事なら喜んで従います、ではなく。従いますよ」

 

「そうか、かぐやと言う女性に会いに来たんだが。会いたいんだどこにいる」

 

篁は俺の方に体を向け頭を下げて来たのでこれ以上は無理だと悟り頷いた。これでましにはなるだろう、後は最大の理由かぐやに会わねばならん

 

「須佐之男様からの便りにかぐや姫に会いたいと書いてありましたので、昨日のうちに取り計らってます、じゃなかった取り計らっておいたわ」

 

「うむ、良きに計らえ」

 

「ついでに私にもその話し方で」

 

「嫌です」

 

ナズーリンが提案をしてきたが篁に却下された。まだ慣れないのか篁は俺に対し話し方がぎこちない、だがいつか慣れるだろう。それに見てるのが楽しいし、朝餉を食べ終え屋敷を出て行こうとしたが今日中に会えるかもしれないそうだ。今日はかぐやを妻にしようと五人の公達が行くそうなのでそれに乗っかるかもしれないと言う話だ、だからナズーリンと屋敷で寛いでいる。ナズーリンと部屋で過ごしてたらふすまが開いた

 

「おー、ここにいたかい。探したよ」

 

「小町か、どうしたんだ」

 

「おっとその前にその子に名乗らせておくれ。私の名は 小野 小町 よろしく」

 

「私の名はナズーリンだ。こちらこそよろしく」

 

ナズーリンと小町を交えて話し始めた、どうやら暇だったそうだ。する事はあるんだが面倒らしいのでサボってる、小町を見てると誰かの事を思い出す。俺もその事については人の事は言えないので注意はしないしする気もないが

 

「それで、かぐや姫って女を見に行くんだろう。妻にでもする気かい」

 

「妻にするかは未定だが。俺が知ってる女なら攫っていく予定だ」

 

「攫う!?あっはっはっはっはっ!馬鹿だねあんた!」

 

酷いな、実際馬鹿だから否定はできないが。ナズーリンは机にあった煎餅をばりぼり食っている、ナズーリンはあまり気になってないようだ

 

「ナズーリン、あんたも大変だねぇ。神使、だっけ?ご主人に従わなくちゃいけないんだからさ」

 

「これくらいの人じゃないと退屈するから丁度いいよ」

 

ナズーリンは机にあった急須を掴み湯呑にお茶を注いでいる。懐が大きいな、ナズーリンは本来暇潰しする為に神使になったみたいだし退屈するのは嫌なんだろう、話に花を咲かせていたらふすまが開き篁が入って来た

 

「お、お待たせ弘天。かぐやに会う準備は済ませたよ、早速行こう」

 

篁はふすまを開けながら台詞を吐いたので小町の存在に気付かなかったようだ、小町は呆気に取られた表情だったが小町は体を小町の背中にいる篁に向き、篁を見て篁が何を言ったか理解してお腹を押さえ捩って大笑いしてる

 

「あははははははははははははは!!!!あんたそんな性格じゃないのにどうしたんだいその言葉遣いは!?お、お腹痛い!!」

 

篁は小町がいるのが想定外だったようだ。俺とナズーリンを無理矢理立たせて連れていかれた。部屋から出たが笑い声がするし、まだ小町は笑っている、よっぽど面白かったらしい。屋敷を出るまで引っ張られたが屋敷から出ると、着いてきてください。と言い歩いて行った。あまり遠くないらしいので歩きで行くそうだ

 

「着いたよ、いや、着きましたよ 蓬莱山様」

 

「そうか、ここにいるのか」

 

着いたが普通の家だ、その家の周りには蓬莱竹が家を覆い茂ってる。ここにかぐやがいるのか。篁が先に入って行って案内してくれたので俺とナズーリンも着いていき奥に進む、客間らしき部屋にに着いたのはいいが5人の男が先に入っていたようでそれぞれかぐやについて話し始めてるようだ。俺たちが入ったから見てきたがすぐに興味を無くしまた話し始めた、ナズーリンと篁と一緒に待ってたら客間の奥にあるふすまが開き女性が入って来た

 

「お待たせしました、では話を始めましょう、誰がこの赫奕姫と呼ばれた私を妻にするか。そして」

 

この女、髪色が永琳や諏訪子、それに神綺とサリエルや依姫と同じだ。神や妖怪ならまだ分かるがこの女は人間。なぜ永琳と諏訪子と同じ髪色をしてるんだ、地上人の髪色は黒と決まってるんだぞ、海の向こうの大陸の人間は金髪がいるそうだがこの大陸にはいない。女は左手に持ってた扇子で女の口元を隠してから女は少し声を高めに出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰がこの私、咲夜を妻にするかについて」

 




咲夜はもちろんあの咲夜です。次は説明回になるでしょう、次の話で説明してもいいんですが面倒なので説明します

まず咲夜がなぜかぐや姫として出てくるのかについて、かぐや姫の内容についてはご存知の方も多いでしょうが、かぐや姫のモデルは迦具夜比売命ではないかと言われています。後は、かぐや姫は、木花之佐久夜毘売、木花咲耶姫ではないかと言われて同一視されています。咲夜の咲と夜の字が入ってますね、儚月抄には咲耶姫と言う名の神が出てきています、それと十六夜咲夜という名はレミリアが付けた名です。紅美鈴と同じです

次は小町です。小町はあの有名な小野小町ですが、本来、小野小町の小町は本名ではなく小町とは役職や官位を表す記号の様なものらしいです。その時代は女性を実名で呼ぶことは少なかったそうです、だから実名は不明です、別の説ですが小野小町の正体は、小野吉子ではないかとも言われていますね。だから最初は小町を吉子で出そうと思いましたが読んでる人が分かりにくいでしょうし没。小野小町の名は有名ですがどんな女性だったのかは不明だそうです。それで小野塚小町ですが塚が無いですね、今は

最後に今ではかぐや姫と言うのが主流ですが、かぐや姫は赫奕姫とも書きます。赫奕は光り輝くという意味があります。ですが眩しいとかそんな意味ではなく、神々しい、尊いなどの意味があります。名を体で表すって事です。光り輝く美しさ、絶世の美女で姫の様って意味で呼ばれていたんですね、ので、ここのかぐやは実名じゃなかったと言う訳です、だから数話前から輝夜をかぐやとひらがなで書いてました、あれは意図的です。竜宮城で輝夜を出したのもこの話をする為ですし、竜宮城から諏訪の国に連れて行けなかったのもこの為です


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ダウジングロッド

この女が赫奕姫と呼ばれた女か、確かに人形みたいに綺麗な女だ。噂になる訳だな、だがこの中からどうやって夫を選ぶのだろうか

 

「私の様な者を妻にしたいとわざわざご足労頂き、ありがとうございます。ですが私は皆さんの事を深く存じておりません、私の事を本当に妻として来て欲しいのか、失礼な話ですが皆さんを試したいのです」

 

まあ、当然だな。見知らぬ男に言い寄られても困るだろうし、お互いの事を全く知らないのだ。俺以外の男は位が高い身分の男らしいが、やはりそれでも困るだろう。咲夜は自分の事を本当に愛してくれるか知りたいんだろう。この時代夫婦になったら一生付き合って生きていかなくてはいけない、夫婦になったとしてそいつと縁を切ってしまえばいいと思うかもしれないが、さっきも言った通り俺以外の男は位が高い身分だそうだ。もし縁を切る事になったら周りの人間がうるさいだろうな。咲夜は老夫婦に育てられてるんだ、恩を仇で返す事はしたくはないのだろう。老夫婦と咲夜の身分は高くないそうだし、今の時代は男の方が偉く女は立場が弱い、男尊女卑時代だからな。

 

「では今から言う物を次の満月までに持ってきて下さい、1つは仏の御石の鉢。1つは火鼠の裘。1つは燕の産んだ子安貝。1つは龍の首の珠」

 

何だかどれも凄そうな物の名、どれも聞いたことはあるがこの大陸では手に入らない物ばかりだ。殆どは海の向こうにある大陸で手に入るし、この大陸で手に入るのって燕の産んだ子安貝だが燕が産んだのって無いと思うんだが。

 

「そして最後に、蓬莱の玉の枝。今話した物どれか一つで構いません、次の満月までに持って来て下さい」

 

またか、また俺の苗字が関係するのか。山は無いけど蓬莱の玉の枝か、何だこれは偶然か。それともまた誰かが関わっているのか、咲夜に聞いてみよう

 

「話の腰を折って申し訳ない、質問なのだが、赫奕姫が言った蓬莱の玉の枝と言う物はなぜそんな名を付けられているんでしょうか」

 

咲夜は正座をしていて口元を扇子で隠しているが、俺の質問に鼻で笑って答えた。この女、俺が咲夜を妻にして後悔させてやる

 

「それは琵琶湖の近くにある 蓬莱山 にある物です、本当かどうかは知りませんが 蓬莱の玉の枝は大昔に 蓬莱山 で見つけた事があるそうです。だから 蓬莱の玉の枝 と言われていますね。根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝と言われています」

 

そういう事か、本当かどうかは知らないが俺は関わっていないようだ。良かったのかどうかは分からないが、蓬莱の玉の枝以外はどこにあるのか俺は知ってるが海の向こうの大陸でしか取れない物ばかりだし。蓬莱の玉の枝を探すか

 

「私からの話は以上です。私と話をしたい方、妻にしたい方がいるなら次の満月までに一つで構いませんので持ってきて下さい。では失礼します」

 

咲夜は正座をしていたが立ち上がり、上品に頭を下げて奥にあるふすまを開けて部屋から出て行った。取りあえず次の満月までに持って来ればいいんだな。楽勝、楽勝。俺以外の男達は咲夜から話を聞いたら急いで部屋から出て行った。大丈夫だろうか、この大陸の人間に入手できる代物じゃないと思うんだが。蓬莱の玉の枝はこの大陸で手に入るみたいだがあの山は霧が濃いから前が見えないし、枝を探すなんて無理だろう

 

「ナズーリン、篁。俺たちも御暇しようか」

 

「そうですね蓬莱山様。御暇しましょう」

 

「でもご主人様、この後はどうするんだい」

 

「この後か、取りあえず蓬莱山に向かう事にしよう。まずは蓬莱の玉の枝を取りに行こう」

 

屋敷から出て真ん中が俺でナズーリン、篁と並んで歩いてる。風が気持ちいい。そう言えばさっきの咲夜がいたあの屋敷。周りが蓬莱竹や竹林に包まれた屋敷だったな

 

「しかし蓬莱山様。あの山は霧が濃いと聞いておりますが大丈夫なのですか。じゃなかった大丈夫なのか」

 

「大丈夫だ。旅のお供にナズーリンがいるしな」

 

ナズーリンの頭を撫でようと思ったが笠を頭にかぶってるので撫でられない。だからナズーリンの背中を左手で撫でてる、ついでに篁の背中を右手で撫でた

 

「な、何をしてるんだ弘天」

 

「気にするな」

 

「気にするなって、気になるだろう背中を撫でられたら」

 

篁のお蔭で色んな事を助けてもらってるし背中を撫でるのは感謝の気持ちだ、篁の背中を撫でつつ屋敷に戻った。明日蓬莱山に向かうか。今日は篁の屋敷でナズーリンと英気を養おう。琵琶湖がある近江国は山城国の隣にあるからな。すぐに行ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篁は俺とナズーリンを送ったらまた仕事があるとかで屋敷から出て行った。忙しいんだな、屋敷に着いたので部屋に入って蜜柑をナズーリンと食べてたら小町がまた来た、晴れ晴れとした表情で左手でふすまを開けて右手を軽く上げて来た

 

「お帰りー。どうだった赫奕姫は。攫ったって話を聞いてないし知り合いじゃなかったんだろう。それで赫奕姫を妻にするのかい」

 

「うむ。妻にするぞ、これが偶然の出会いとは思えんのでな。一期一会ってやつだ」

 

「どうやって妻にするか知らないけど気を付けなよ」

 

「そうだな、死んだら終わりだからな。小町も蜜柑を食うか、ほれ」

 

小町に机にの上に数個乗せてた蜜柑を渡して俺は黙々と蜜柑を剥いて食べ続ける、高い蜜柑なのかとても甘い。これならいくらでも食えるな、ナズーリンは蜜柑が飽きたのか煎餅を食べながら熱い茶を飲み始めた。小町が立ち上がり俺の隣に来て正座してから隣にいる俺の顔を見て質問してきた、俺と小町は見つめあってる状態だ

 

「ねえねえ、思い出したんだけどさ 蓬莱山 弘天 って確か諏訪の国の君主の名じゃなかったかい」

 

「そうだな、女好きで有名だ」

 

「気になるんだけど、その君主、王様は私、あたいみたいな女も妻にしてくれるかね」

 

「するだろうな、そいつは好みの女ならどんな手段を使っても女にする男だと聞いてるし。攫ってでも妻にするんじゃないか」

 

「そうかい、その日が待ち遠しいねぇ」

 

小町は顔を俺に向けてたが、微笑の表情で小町は両手に持ってた蜜柑を剥いて蜜柑を食べ始めた、俺も蜜柑を食べるのを再開した、ナズーリンはやれやれと肩を竦めて煎餅を食べた、口が甘くなったそうなのでしょっぱい煎餅を食べたそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中になったあの男は今日もいるかもしれない、見に行こう。井戸の近くまで来たらまたあの男がいた、だが井戸の中に入らず井戸の近くにある柿の木の下でじっとしてる。俺がいるのを気付いていたのか顔は俺に向けてるので俺は男に近づいた

 

「こんばんは」

 

「こんばんは。こんな夜分遅くにこの屋敷に何の用だ、ここは篁の屋敷だぞ。勝手に入ったら捕まるから早く逃げた方がいい」

 

「はっはっはっ 問題ありません、彼女とは知り合いでしてね。今日はあなたに大事な話がありましてこの場にいます」

 

話って俺はこの男とは初めて会うし顔をお互い見た事もないんだが

 

「話とは他でもありません、あなたが神になっている事についてです」

 

「何だ、俺は神だと困るのか」

 

「いいえ、ただあなたは少し勘違いをされているので、訂正しておいた方がいいと思いまして」

 

勘違いって、俺が一体何を勘違いしたのだ。俺は諏訪の国が出来る前の村人を助けて、その村人に信仰されて神になったはずだ。永琳だって俺と一緒に神になってる

 

「あなたは月人が月に行ってから神になったと思っていますね。違います、あなたは最初から神だったんです。八意さんも同じです。と言いますか全月人は最初から神です」

 

馬鹿な、そんな話を信じろと言うのか。突拍子な話しですぐには信じられない、だが今まで信じていたものが崩れていく、信憑性が無い話ではないからだ。だがなぜこの男月人の存在を知っている、地上人では絶対に知りえない情報だ

 

「先ほども言いましたが私はあなたが勘違いしてる部分を訂正する為この場にいます、それ以上についてはお答えできないのです」

 

「おい、自分が何を言っているのか分かっているのか」

 

「もちろんです、月人は寿命が無く穢れで死ぬと言われてましたが、あなたは妖怪の穢れで月人が死ぬ所を見た事がありますか」

 

俺は都市があった時の記憶を掘り返すが、実際には見た事が無い。俺が妖怪の穢れで死ぬと言われたのは大人たちに教わって妖怪の穢れで死ぬと思ってた。だが実際は妖怪の穢れで死ななかったと言うのか。そうだとすれば穢れで死ぬ所を見た事がない事と寿命について納得できる、本来生物は寿命がある、だが月人には寿命が無かった。寿命に関しては辻褄が合う、神は不老だからだ、不死ではないが。だがなぜ月人たちは俺たち子どもになぜそんな嘘を教えていたんだ、そもそも神は信仰や畏れが無いと生きていけないのではないか、いや。この話は確か天照に聞いた話だ、だから神は信仰や畏れで生きるのは真実じゃないのかもしれない。だがそうなら神奈子はどうなる。神奈子は諏訪の国の民の信仰から神になったんじゃないか。いや、そう言えば神奈子は天照の娘でもあったな。だが神奈子は養子として娘になったはず、血は繋がっていない。次は藍だ藍は元は妖怪だが今では神だ。神奈子と同じ信仰されて神になった。諏訪子は俺と永琳の信仰が人型に形を成して生まれた娘なはずだ、考えれば考えるほど分からなくなってくる。一体何が真実で嘘なのか。だがおかしいとは思っていた、月人を奴隷にする前に豊姫と依姫から全月人が神になっていると言う話を聞いてから

 

「訂正できましたし私は失礼します、これでも忙しいので。あ、八意さんに聞いても八意さんは元から神だった事は知っていませんよ。では」

 

男は走って井戸の中に入って行った。俺も井戸に走り中を見るが今度は地獄じゃない、中を見たら亡霊や怨霊が沢山いる、他の場所には鳥居が並んで参道が見える、奥には大きなお屋敷がある、それとすごく大きい桜が見える。これは冥界か、まさか地獄だけじゃなくこの井戸、冥界に繋がってるのか。あの男、冥界を作ったサリエルとも関わっているのか。だが誰かに教えてくれと頼んでも、誰もがちゃんと教えてくれる訳が無いのだ。だから自分でその意味を探さなくてはいけない、だが意味が分からない、もう寝よう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝になった、今日は 蓬莱山 に向かう日だ。さて、考えよう。仏の御石の鉢は確か天竺にあるんだっけ、これは海の向こうにある大陸に行かないと駄目だし行く気はない。龍の首の珠は、龍は天竺や唐土にいると言われてるがこの大陸にも龍はいる。それに龍の首の珠はどこにあるかは知ってる、俺には龍神がいるし。天界にいる龍神が首元にぶら下げてるやつだったな、豊姫に頼んで天界に連れて行って貰うのもいいかもしれない。そしたら龍宮の遣いの 衣玖 に頼んで龍神に会わせて貰おう。俺が豊姫の夫だから俺の従者だって 衣玖 が言ってたし聞いてくれるはずだ。燕の産んだ子安貝か、子安貝は簡単に手に入るが問題は燕が産んだ子安貝だと言う事だ。俺が知らないだけかもしれないが燕が子安貝を生む訳が無い、それに今の季節は冬だ。燕はこの大陸には確か夏に飛んでくるが今は冬なので海の向こうの大陸にいるだろう。燕は北半球に生息する生き物らしいが。だが燕が子安貝だけはなんか簡単に手に入る感じがする。他のは無理難題なんだがこれだけは別だ、どこかで綺麗な子安貝を手に入れて燕が産んだ子安貝って言いながら持ってきたらどうするんだ。咲夜は無理難題を言って誰とも夫婦になる気は無いと思ったが、実はそんな事は無いのかもしれない。難癖をつけるかもしれないが、それと子安貝は安産のお守りとして有名だな。もしやこれは夫になった人との子供の事を考えて燕の生んだ子安貝を持って来いと言ったのだろうか。咲夜、実は夫婦になるのは乗り気なんじゃないか。冷たい態度だったけど

 

考え終えたのでナズーリンと篁と小町で朝餉を食べてる、今日は小町がいるようだ

 

「一体どういう風の吹き回しですか小町。小町はこの時間に朝餉はいつも取らないでしょう」

 

「いいじゃないのさ、たまにはこんな日があってもさ」

 

俺の両隣にはナズーリンと小町がいて一緒に朝餉を食べてる、向かい合いには篁がいる。篁は頭を痛そうに抑えて話し始めた

 

「頭が痛いです、小町。小町の頭の中を見てみたいものです」

 

「見せれるなら見せてもいいけど見られないよ。それとなんだいその口調は、昨日のような口調を聞かせておくれよ。それとも隣にいる人だけの前でしか話せないのかい」

 

「小町!」

 

「おっと、藪蛇だったかい。ごちそうさまー!」

 

小町は食べ終えてたから立ち上がり後ろのふすまを開けて走って逃げた。綺麗に朝餉を食べ終えていているから残して逃げていない、元気でよろしい

 

「騒がしい朝餉だねご主人様、嫌いじゃないけど」

 

「そうだなナズーリン」

 

ナズーリンの頭には笠は今は無いので今回は頭を撫でられた。鼠耳を撫でるのも悪くない、朝餉を食べ終え 蓬莱山 に向かう準備を済ませて屋敷を出た

 

「じゃあ弘天、気を付けて行って来てね。私は弘天がまた来るのを待ってるよ」

 

「うむ、じゃあな篁色々ありがとう。また来る」

 

「あれ?私には何も言わないのかい篁」

 

「気を付けて行ってきてくださいナズーリンさん」

 

「こんな時でも私にはその口調なのか・・・・」

 

俺とナズーリンは篁に手を振りながら 蓬莱山 に向かった。あーする事が多いな、神使、麒麟、鳳凰、咲夜、小町、蓬莱の玉の枝。まずは蓬莱の玉の枝だな

 

「そう言えばナズーリンの能力ってなんだっけ」

 

「私の能力は探し物を探し当てる程度の能力だよ」




一度も月人が穢れで死ぬ所を1人も書いていません
ただ月人の大人たちが月人は妖怪の穢れで死ぬから妖怪は殺す存在だとは書きましたがね



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優曇華

皆さん勘違いしてるかもしれませんがこの時代はまだ聖徳太子が生まれていないですもっと昔ですから。諏訪国作ってまだ50年も経ってないです多分

今回の後書きは見ない方がいいです




蓬莱山の麓に着いたがいつも通りこの山は霧が濃い、いつもは永琳が傍にいたから迷わなかったが今回永琳を連れて来てないし迷うかもしれない

 

「ナズーリンの能力はどれだけの精度があるんだ」

 

「最初はこの能力も精度が悪くて使い物にならなかったけど、あの大国主の話から数億年経ってるからね。今では探し物を見つけるのはお手の物だよ」

 

妖怪は長く生きれば生きるほど強力な存在になりいずれは大妖怪になるんだがナズーリンは能力の精度の方が上がったそうなので、数億年生きてはいるが弱い妖怪なようだ。無理難題の中に火鼠の裘と言うのがあったな

 

「ナズーリンって鼠の妖怪だし火鼠の裘を持ってたりしないのか」

 

「私は確かに鼠の妖怪だけど、火鼠の裘は海の向こうにある大陸に生息する火鼠でしか手に入らないよ」

 

火鼠とは海の向こうにある大陸で生息する怪物の一種で火光獣と呼ばれてるそうだ。後は南方の果てに生息しているらしいがいるかどうかは不明だ、火鼠の裘は燃やしても燃えないそうだがそれって石綿の事じゃないだろうか、それを持って行く気はないが。ナズーリンが両手にダウジングロッドを持ちながら使い歩いているが霧が濃いのではぐれてしまいそうだ、結構歩いたがナズーリンの反応は無い。まだ見つからない様子

 

「ご主人様、どうやらこの山に蓬莱の玉の枝は存在しないよ。反応がないし」

 

無いのか、じゃあ諦めるか。今は 蓬莱山 に丁度いるし豊姫に頼んで天界に連れて行ってもらおう。だけど豊姫が住んでた質素な家ってどこにあったかな

 

「仕方ない、ナズーリン。その能力で質素な家を探知してくれ」

 

「質素な家。分かりました、でもこんな山に家など存在するんですか」

 

「大丈夫だ、間違いなくあるから」

 

俺とナズーリンは歩き出して奥に進む、ナズーリンがダウジングロッドを使って反応が出たのでナズーリンの背中について行ってる、人影が見えた。どうやら鈴仙の様だ

 

「これは蓬莱山様。今日はどうしたのですか」

 

「ちょっと探し物をしていてな。豊姫が必要で会いに来たんだ」

 

「そうですか、分かりました。では着いて来て下さい」

 

鈴仙は背を向け歩き出した、霧が濃いので表情が見えなかったがナズーリンを見て見下した表情に見えたが気のせいだろうか。月人もそうだが地上の生物の存在を見下す傾向があるので玉兎の鈴仙もそうなのかもしれん。俺はそれを否定する気はないが

 

「ご主人様。私は彼女に何か失礼な事をしただろうか」

 

「いや、してないな。まあ、気にするな。何か言って来たら俺が守るから」

 

ナズーリンはダウジングロッド二つを左手に持ち、右手で俺の左手と繋いではぐれないようにして鈴仙の後を追った。だが鈴仙はどうして迷わないのだろうか。鈴仙の後を追い進んでいたらあの質素な家に着いた、鈴仙が玄関のドアを開きっぱなしにして中に入ったようだ。豊姫に俺が来た事を伝える為だろう、失礼だがナズーリンと中に入って客間までお邪魔した。ナズーリンと待ってたら豊姫と輝夜が入って来た。今回は輝夜もいたみたいだ

 

「今日はどうされたのですか、弘さん。八意様はいないようですが」

 

「まあ、色々あってな。まずは紹介しておこうか、隣にいるのはナズーリンで俺の神使だ」

 

「ナズーリンです、よろしくお願いします」

 

「弘さんの神使ですか、私は 綿月 豊姫 隣にいるのは義妹の 輝夜 後ろで控えているのは愛玩動物の鈴仙です」

 

お互い名を名乗ったし本題に入ろう。ナズーリンと輝夜は二人で喋ってる。鈴仙はその輪に入る気はないのか豊姫の後ろでじっとして立ってる。俺が蓬莱の玉の枝を探していると言ったら、豊姫はそんな枝の事を知らないのかぼんやりしている

 

「この山にそんな枝が存在するなんて聞いた事がありませんね、私は長い時をこの 蓬莱山 で過ごして生きて来ましたが見た事はありませんし聞いた事もありません」

 

「そうなのか、俺が聞いた感じだとその枝は、根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝と聞いたのだが何か似たような物を聞いた事は無いか」

 

「・・・・・もしやそれは優曇華の花の事ではないでしょうか。地上にある花で優曇華の花は3000年に一度咲く花と言われています」

 

3000年!?それは困ったな。そんな物実在したとして今年が都合よく3000年な訳が無いし、この山にあったとしても咲いてないんじゃナズーリンの能力に反応する訳が無いか。もう天界に行くしかない。

 

「ですが月にも似た様な物ですがあります、木ですが、木の名は優曇華です」

 

「優曇華、月にあるその優曇華はどんな木なんだ」

 

「月の優曇華は、先ほども言いました様に木の名です、そしてその木にの枝に実がなり、その実は栄養、穢れを糧として成長し枝に美しい七色の実を付けてる物です」

 

ふむ、俺が聞いた蓬莱の玉の枝は根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝と聞いたが豊姫が言うのは美しい七色の実を付けた物か。一体どうするか。咲夜が言ったのは根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝と言ったけど豊姫が言うその実は美しい七色の実を付けた枝だしそっちを持って行った方がいいかもしれん。七色の方が綺麗で豪華だし

 

「じゃあ月に行くか、その実はどれだけの時間をかけたら実が出るんだ」

 

「そうですね、穢れの度合いにもよりますが一月もかからないでしょう。ですが丁度この家にその枝は置いてあります、それを持って行ってください」

 

助かった、月に行かなくてもいいようだ、一瞬とは言え月に行くの面倒だし。鈴仙が取りに行ったようで部屋から出た、観賞用でこの家に置いていたそうだ。地上は穢れてるので実がなるのが早いらしい。俺とナズーリンと豊姫と輝夜で話し始める

 

「会いたかったぞ輝夜。相変わらず綺麗だ」

 

「お戯れをお兄様。ですが嬉しいです」

 

輝夜は左手の服の袖で輝夜の口を隠した、少し笑った様ではしたないと思ったのか隠したようだ。輝夜は服がピンクで胸元に白いリボンがある、そのピンクの服の袖は長く手が見えないほどだ。それと赤いスカートを履いておりこのスカートも非常に長い、スカートは床についているが輝夜が立っていてもそのスカートは地面に付いてスカートが横に広がるくらいには長い。露出度が全くない。顔以外は全て隠れてる、十二単みたいな服装だ

 

「弘さん、まさか輝夜までも妻にする気ですか。実妹までも妻に娶ると。そうおっしゃるんですか」

 

「当然だ俺は神だぞ。それは輝夜もだ、実妹を妻にした日本神話の伊邪那岐命もいるし、実妹を妻にしたエジプト神話オシリスもいる。ウガリット神話バアルも実妹を妻に、ギリシア神話クロノスも実妹を妻にして有名じゃないか」

 

「それも、そう、ですね」

 

豊姫は俺の言葉を聞いて右手に持ってた扇子を広げ扇子を扇ぎ風を顔に送って涼んでいる。他にも妹を妻にした神がいたような気がするがこれだけいれば十分だろう、だから俺が輝夜を妻にする事はおかしくない。隣にいるナズーリンが俺の服を軽く掴み引っ張った

 

「ご主人様。輝夜様、妹君様はご主人様の実の妹と聞いてますけど妻にしても問題は無いんですか」

 

「無い。妹を妻にするなんて神じゃ普通だ」

 

俺は断言してナズーリンを無理矢理納得させた。別に身内に手を出すのはおかしくない。むしろなぜ身内を妻にしてはいけないのかが謎だ、意味わからん。結局身内でも体は男で女なのだ血なんぞ知るか。俺と輝夜は神だ、だから問題は無い。それと実妹を妻にした神ばかり話してるが実姉を妻にした神もいる。ギリシヤ神話ゼウスが実姉ヘラと言う女神を妻にしてる

 

「お、お兄様。本当に私を妻にする気ですか」

 

「嫌だと言っても絶対するぞ、強制だ。あ、もしかして許婚の相手でもいるのか。じゃあそいつを殺して刀の錆びにしてだなその後は」

 

「いません!そんな人はいません!」

 

何だいないのか。いたら殺す気だったがいないならいい。輝夜は服の袖で輝夜の顎から鼻と目の間くらいまで隠してるからどんな表情か分からない、だが戸惑っているのは分かる。まあ、嫌がっても妻にするが。これは決定事項だ。だがまだパンチが弱い、何か輝夜の興味を促す様な話題を話そう。地上に興味があるって言ってたし

 

「そうだな、輝夜が俺の妻になったら行きたい場所にどこでも連れて行ってやろう。どこでもだ。いいか、どこでもだぞ。好きな所へ連れて行ってやる」

 

「どこでも、どこでもですか。本当に好きな所へ連れて行ってくれるんですね?」

 

俺は頷いて肯定した。まあ、紫がいるしどこにでも行けるようなものだ。行くときは紫を連れて行かねばならない。後は念の為、幽香と勇儀でも連れていくか、そしたら問題は無い

 

「豊姫は何も言う気はないのか」

 

「私が言っても弘さんは聞いてくれませんから最初から諦めてます。いつかこんな日が来るかもしれないと思ってましたし」

 

豊姫は右手にあった扇子を閉じて右手で掴んだまま右手を豊姫の右頬に当ててため息を出した。諦めの境地にいるな、輝夜は服の袖で顔を隠して考えていたが、決心したのか手が袖の中に隠れてたが手を出して正座した状態で床に三つ指を床に軽くついて、丁寧に礼をする。

 

「分かりました、私 蓬莱山 輝夜 はお兄様の妻になります。だから私の知らない色んな場所に連れて行って下さい。そして、私を妻にするなら私をちゃんと愛して下さい」

 

「もちろん妻にするんだから愛する、良し。これで輝夜は俺の妻だ、じゃあ抱きしめてやるから来い」

 

「え!?そんな、いきなり抱きしめるなんて私にはハードルが・・・・・・と、豊姫お姉様」

 

「仕方ないですね、それでは輝夜の代わりに私を抱きしめて下さい。決して私がして欲しいとかじゃなく輝夜にはまだ早いから私が変わると言う訳です。本当に仕方ない事です」

 

豊姫は嫌々な態度で仕方ないと両手を広げて待っているが、あれはただ抱きしめて欲しいから口実を作ってるだけだ、俺は輝夜を抱きしめようとしたんだが。ここは隣にいるナズーリンを抱きしめておこう。抱きしめた時に尻尾の先にあるバスケットに体が当たって中にいる子鼠に鳴いて怒られた。すいません子鼠さん

 

「ご主人様、なぜ私を抱きしめてるんですか」

 

「気にするな」

 

隣にいるナズーリンを抱きしめて頭を撫でてたら前にいた豊姫が立ち上がり俺の背中まで来て抱き着いて来た、思ったより重くないむしろ軽い。

 

「妻を放置するなんて酷いです。私も抱きしめて下さい」

 

「ええい、今はナズーリンを愛でているのだ。後だ後」

 

「私は二人の体重分がのしかかって重いんだけど」

 

輝夜を見たら混ざりたいようだが混ざる勇気が無いようだ。まだ若いから恥じらいが強いんだろう。あれ、でも輝夜って何歳だ。俺と永琳が地球に残って月で生まれたんじゃなかったっけ、じゃあ間違いなく1億歳は行ってるんじゃ・・・・・不老とは言えこれは若いと言えるのだろうか。輝夜を見つつ考えてたらドアを開き鈴仙が入って来た

 

「お待たせしました、これがその枝です」

 

「おお、これがそうか。ちなみにこれ名は無いのか」

 

「はい、木は優曇華ですが枝の名は付いていませんね」

 

「そうか、この枝に実が付いてるが4つだけだが綺麗な色だ。名を付けるべきか」

 

鈴仙が近づいて来て枝を俺に渡した。そしたら鈴仙はいつも通りの場所で立ってる、真面目なのだろうか。他人に興味が無い感じがする、何だか昔の永琳みたいだ。昔、永琳も他人に興味が無いから関わるの避けてたし。枝を見てみると実が数個だが光ってる、赤、黄、青、緑だ。後3つの実が残ってる、何だか虹と似てるな。そうだとするなら残りは、橙色、藍色、紫色になる。ん?そう言えば虹の色には藍と紫の名があるのか、橙は知らないけど

 

「これで一つは手に入ったがこれでは不安だしな。豊姫、天界に行こう」

 

「弘さんいきなりすぎます。理由を聞かせて下さい」

 

背中に抱き着いている豊姫に説明して納得してもらった。龍神に会いに行かねばならん、だから豊姫が必要だ。能力で一瞬で行けるし

 

「そうですか、分かりました。じゃあ久しぶりに龍神様に会いに行きましょうか」

 

「うむ。それと輝夜は天界に行ったことはあるのか。行った事無いなら一緒に行くか」

 

「良いんですか!?行きたいです!」

 

輝夜は俺に近づいて前のめりに聞いて来た、今まで外の世界を知らなかったみたいだし丁度いいだろう。だが戦う術は持っていないそうなので守らなくてはいけない、豊姫もいるし大丈夫だろう。天界の治安が悪くなければいいが

 

「良し、ナズーリンは当然として鈴仙は行かないのか」

 

「私はいいです。気を付けて行って来て下さい」

 

突き放したような言い方だ、これは昔の永琳の様に荒療治がいいかもしれない。俺はナズーリンに抱き着いていたが離して、背中に抱き着いていた豊姫を背中に抱き着かせたまま鈴仙に近づき鈴仙の腕を取った。

 

「な、何を」

 

「よーし行くぞ豊姫」

 

「分かりました弘さん、それでは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りを見たら雲が近くに見える、天界に来たみたいだ、雲の上に地面があって浮いてる。雲を突き抜けて山が生えてる状態にもなってる場所もある。高い所にあるせいか冷たい風が強く吹いて寒い。近くには林があり、あちこちに林が生えてる、よく見たらその林にはどうやら桃が実ってる。豊姫は桃が好物なので食べるかと思いきや興味が無さそうにしてる、美味しくないのだろうか。

 

「凄いですお兄様、私こんな場所初めて見ました!豊姫お姉様。あの林にある桃を食べてもいいんでしょうか」

 

「駄目よ輝夜、あれは私でも食べられない桃なのよ」

 

輝夜は桃の実がなってる林に早歩きで向かって桃を取ろうと飛んでるが結構高い所に桃があって飛んでも取れないようだ。ナズーリンも辺りを興味がそそられる様で見てる。鈴仙はいつも通りだ。豊姫が周りを見た

 

「あ、間違えました。ここではありません龍神様がいるのは違う所です。もう一度能力を使いますね」

 

輝夜は桃が実ってる林の所でジャンプしていたので豊姫の言葉が聞こえなかったようだが気付いたら俺の目の前に輝夜がいた。能力で一緒に来たようだ。輝夜の前には大きな城がある

 

「あれ?私は桃の林の所で飛んでいたはずじゃ。目の前にはお城が見える」

 

「輝夜。龍神様に会いに行くんだからそのお城の中に入るのよ」

 

豊姫は先陣を切って城に入り進んだ、城門が開いているので入れる様だ。輝夜は城を面白そうに眺めてる、ナズーリンと鈴仙も奥に進んで行って城の中に入って行ったので俺も輝夜と一緒に進もうと思ったら後ろから声をかけられた

 

「ちょっと待ちなさい」

 

少女の声で呼び止められたので俺は立ち止まり輝夜と一緒に声のする方を向いた。髪色は青髪に腰まで届くロングヘアー、半袖でロングスカート、寒くないのか。それとブーツを履いてる。服がエプロンみたいになって虹色の飾りがついてる。俺が右手に持ってる枝と同じ色だな。まだ枝には紫色と藍色と橙色は無いけど。胸には赤いリボン、腰には大きな青いリボンがある。少女の周りには要石が浮かんでいて数は5つだ

 

「誰よ貴方達、初めて見る顔と服装ね、天界に何しに来たの。まあいいわ、天界に仇なす物は排除するまで。覚悟はいいわね」

 

少女は右手に持ってた刀を俺に向けて来た。その刀の刃が揺れて形が不明瞭だ、もしや振動剣、高周波ブレードか。迎撃しようとしたら少女の動きが止まった、さっきまで風も強く吹いてたのに今では風を感じない。何だこれ。俺だけが極限に加速してる感じだ

 

「どうしたんだ少女」

 

少女を見ても動く気配が無く刀を構えたまま静止している。どうしたものかと腕を組んで考えてたら輝夜が隣に来た

 

「お兄様、どうして私の能力を使ってる時に動けるのですか」

 

「何だ、輝夜って能力持ってたのか」

 

「はい。私の能力 永遠と須臾を操る程度の能力 です」

 

なんだ、時間でも操るのだろうか。まあ、いいか。何だか知らないけど少女は止まっていて動かないし今のうちに城に入ってしまおう

 

「行くぞ輝夜」

 

「えっ その前にどうして私の能力を使ってる時に、なぜお兄様は須臾の時間で動けるか考えた方がいいのでは。あ、待ってくださいお兄様!」

 

俺は歩き出して城に入った、輝夜も俺の隣に来て一緒に城に入った。早く衣玖に会いに行こうそして龍の首の珠を貰いに行こう。早く諏訪の国に帰りたいし




やっと輝夜を出せた、これからは輝夜の出番が増えるでしょうね

人間で身内を妻にし近親相姦で子供を作って有名なのはファラオですね。側室と子を成していたらしいですが近親相姦した事実はあります。近親相姦をして生んだ子供に王位を継承した話もあります、庶民だって近親相姦しまくりでしたそうですし。まあ、今の時代と昔の時代では考え方が違いますがね。昔の王は人間ではなく神として崇められていたそうです、外国の話ですが。後、天皇家は近親婚、近親相姦が多いですね。歴史的に見たらよくある事です、外国でもそうですし。特に近親婚はね。昔は血が尊く純血を守る為に近親婚や近親相姦が多かったのかもしれませんね。

かぐや姫の難題で実際に蓬莱の玉の枝が優曇華の花になっている話もあるので今回はこうなりました


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不良天人

次の話は咲夜の話をするべきか、一旦諏訪の国に戻って満月までの3週間の間に他の話を進めるべきか悩んで困って話を書くのを躊躇ってる。


今回戯れみたいなのあり


城の中を歩いてるがこの城は洋風だ。この城を作った技術は月人のサリエルが協力の元で作っているのだろう多分、後は神綺が協力したんだろう。神綺は何かを創る事に関しては他の追随を許さない女だったし

 

「お兄様天界のお城はこんなに広いのですね。竜宮城も広いのですがお城と言えば竜宮城でしか見た事が無いので興味が尽きません」

 

「竜宮城か、確かにあれも竜宮『城』の名があるから城と言える、だが本当にあれは城と言えるのだろうか」

 

竜宮城は海中奥深くにある、城とは色んな意味があるが、生活の場であり、住民達の拠点。という意味でも城は使われるからあってるのかもしれん。周りを注意深く見ても埃が窓際などに積もっている感じがしない手入れが行き届いている様だ、掃除する人が大変そうだな。奥に歩いていたら豊姫と鈴仙とナズーリンが立ち止まってる。どうやら衣玖と話しているようだ。

 

「衣玖、龍神様に会いたいのだけどいるかしら」

 

「はい、豊姫様。龍神様は奥に御出でですので皆さん私に着いてきてください」

 

衣玖は俺の方に体を向けて両手をお腹に辺りに重ねてお辞儀した、し終えたら衣玖は歩き出して皆衣玖の後に着いて行く、豊姫と衣玖は久しぶりに会ったから話しながら歩いて、輝夜は周りを見て目を輝かせて見てる、鈴仙は淡々として歩いてる、ナズーリンは俺の隣にいる。小声でナズーリンと会話しよう

 

「ナズーリン、数億年生きた女性として鈴仙を落とすにはどうしたらいいか教えてくれ」

 

「そうだね、彼女を落とすのは大変そうに見えるけどあれはただ臆病者だから案外簡単に落ちそうだからね。単純な方法がいいんじゃないかな」

 

単純か、単純って簡単そうに見えて難しいんだよな。どうするべきか、鈴仙を落とす為の案を考えて置こう、でも俺って月の支配者だよな、そして玉兎も支配してるようなものだが。つまり、ナズーリンと会話しながら歩いたら目の前には大きな扉がある。龍が入れるほどの大きさだ。と言っても龍神はテレポートみたいなのを使うので道とか扉とかあんまり意味はない。衣玖がその扉を触れたら扉が開いた、中には龍の姿の龍神がいる。龍神は黒一色で黒龍だ、天井には大きなシャンデリアがあって周りには何も無い、ただ龍神がその部屋にいるだけだ。邪魔だから何も置いていないのだろうか、龍神は姿が大きいし。龍神の目は閉じていたが衣玖が近づいて龍神に何か喋ってる、喋り終えたら龍神の目が開いた

 

「お久しぶりー弘ちゃんに豊姫ちゃん、弘ちゃんとは数億年ぶりだね」

 

「お久しぶりです義お父様、または義お母様」

 

龍神は豊姫の義理の親だそうだが、龍神は性別不明なのでこんな呼び方の様だ。俺に対しても龍神はちゃん付けだ。さすがにこれは見逃せない、男にちゃん付けとか俺からしたら屈辱以外の何物でもない

 

「相変わらず男か女か分からない声をしやがって、それと弘ちゃんと呼ぶなと何度言えば分かる」

 

「いいじゃないのー私達の仲じゃない」

 

「俺はそんな仲になった覚えはない。早速だが龍神の首元にある龍の首の珠を借りに来た、だから一月か二月貸してくれ」

 

「忘れてるみたいだけどー豊姫は私の義理の娘なんだよ、そして弘ちゃんは豊姫の旦那様だし弘ちゃんは私の義理の息子になるんだよ。それと龍の首の珠かー」

 

そうだった、俺、龍神と身内の関係になったって事か。何て事だ、悪夢じゃないか。もう弘ちゃんと呼ぶのをやめろと言って絶対やめないだろう。龍の首の珠について咲夜は持って来いと言ったが欲しいから持って来いとは言ってなかったし借りるのだ。貰うのではない。俺が貰っても大した事には使えないし

 

「別に貰ったままでいいよー月日が経てばまた出てくるしーじゃあ衣玖悪いけど私の首元にある宝玉取ってくれるかな」

 

「はい、龍神様」

 

龍神は首だけを動かして顔を衣玖に近づけ龍神の首元にある宝玉を取らせた、宝玉は五つあり色は赤、青、黄、白、黒だ。衣玖は丁寧に宝玉を取って小さいキャリーバッグみたいなのに入れた、龍の首の珠はよっぽどの衝撃などが無い限り割れないそうなのであのまま入れてもいいそうだ。衣玖が龍の首の珠をキャリーバッグに入れ終わり、取っ手の部分を右手で掴みながら俺に近づいて来る

 

「お待たせしました旦那様、ではどうぞ」

 

「ありがとう衣玖、助かったよ」

 

衣玖はキャリーバッグの取っ手を俺の方に向けて俺が取っ手を掴みやすい様にしてくれたので取っ手の部分を掴んでキャリーバッグを手繰り寄せた。意外に簡単だった、驪竜頷下の珠という言葉があるが問題は無かったな、驪竜頷下の珠は虎穴に入らずんば虎子を得ずと似た意味の言葉だ

 

「あのねー聞いたんだけど弘ちゃんって月の支配者なんだよね」

 

「うむ、そうだが。何か龍神に対して問題があるか、あるなら改善するが」

 

「特に無いね、それに弘ちゃんが月人の支配者になったってある意味元に戻ったと言えるしー」

 

元に戻ったってどういう事だろう、俺が知らない過去を龍神は知っているのだろうか、衣玖は龍神の傍に戻ってる

 

「弘ちゃんが生まれる前、月に行く前の月人には王様がいたんだよーでもその王様は王の立場を廃止したんだーその王は変わり者でね、王なんて必要ないと考えたみたいだよー」

 

「月人には王様がいたなんて誰にも聞いた事が無いな、豊姫はその王の名を知ってるか」

 

「いいえ、聞いた事もありませんね」

 

「当然だよー弘ちゃんと豊姫ちゃんが生まれる前でずっと大昔だからねーその王は子供達には王の息子の立場も関係なくただ友達を作って欲しいと思い子供たちはその王の息子の事については何も知らないよー」

 

気のせいかもしれないが龍神は輝夜を一瞬見た気がする、だが今の視線は俺に向いている

 

「最初は王の息子だけだったけど今は姫がいる、数億年前に王の息子は一人の女性と一緒に亡くなったと思われてたけど生きていたねー」

 

「・・・・・・もしかしてその王の息子が俺だとでも言うのかそして輝夜は月人の姫なのか」

 

「さあねー息子と姫の名を出す訳にはいかないんだよー怒られるし。でも月人は内心喜んだだろうね、王はともかく月人は王の存在を廃止した事にまだ納得してない者が多かったんだよー王は頭を抱えてそうだけどねー」

 

数億年前で死んだと思われたのは俺と永琳だけのはずだ、龍神はその人物の名を出していないが今の言葉で人物は特定できたようなものだぞ。だが衝撃の事実でもないなこれは、俺と輝夜が王と姫でも何か問題がある訳が無い。なぜなら俺はその事実を知る前に諏訪の国の王で輝夜は俺の妹だから諏訪の国の姫になる訳だし。俺と輝夜の名を出した訳じゃないから確定ではないが

 

「ふむ、どうでもいいな」

 

「そうだねーどうでもいいねーだけど古株の月人は喜んでるよ。外面は怯えた振りをしてる、月人の若い子たちは怯えてるかもしれないけどねーじゃあもう一眠りするよ、あ、今喋ったのは寝言だから気にしないでねー」

 

龍神は大きな顔を龍神の胴に置いて目を瞑り眠った。寝言なら仕方ない、嘘八百の言葉を聞いたと思っておこう

 

「つまり昔月人には王が存在していたんでしょうか」

 

「聞いた感じだとそうね鈴仙。誰が王で誰が王の息子かは大体の目星が付いたけど名は出していないから絶対じゃない」

 

豊姫と鈴仙がお互い今の話を確認してるが名を出してないから推測でしか話せない、今更誰が王で王の息子だったかはどうでもいいと思うが気になるんだろう

 

「月人は複雑な種族なようだねご主人様」

 

「そうだなナズーリン。だが昔の事だ深くは考えるな」

 

それに龍神が言ったのは本当かどうか分からんのだ、嘘を言ってる様には見えなかったがな。しかし本当なら輝夜は姫になるのか。ならば姫らしい扱いをしてやろう、輝夜に近づいて右手を輝夜の背中に当て左手で輝夜のふくらはぎを持って横抱きならぬお姫様だっこした。やはり姫と言えばこれだろう

 

「お兄様皆が見て恥ずかしいです!私これでも億は年を取っているんですよ!!」

 

「いいじゃないか、今まで構ってやれなかったんだ。少しは兄としての行動をしようとだな」

 

輝夜は今お姫様抱っこ状態だが暴れず大人しい、我が妹ながら綺麗だ。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花の言葉がよく似合う。この言葉は元々は生薬の用い方を例えた言葉だそうだが今では美人を形容する言葉だ。

 

「後で私にもお姫様抱っこして下さい」

 

「後でな後で」

 

背中に抱き着いて豊姫が甘えてきた、しかし今日は輝夜を愛でる日だからしないけど。衣玖は龍神が寝たのを確認するとこっちに来た

 

「旦那様、この後はご予定はあるのでしょうか」

 

「いや、急ぎの予定はない」

 

「ではお食事の用意をしますので召し上がりませんか」

 

「ふむ、食べる食べる、ちなみに天界の食べ物って美味しいのか」

 

「正直に申しまして不味い事はありませんが美味しくもないです。だから地上の食材を用意しております、ですが天界のお酒は美味しいですのでお酒は天界の物です」

 

天界の食べ物は美味しいと思ったんだが。美味しくないのか、美味しくない天界の料理も食べてみたいが残しそうだしやめておいた方がいいだろう。

 

「では皆様こちらへどうぞ」

 

衣玖が扉に向かったので輝夜は俺がお姫様抱っこで連れて行く。これで龍の首の珠は手に入れた、蓬莱の玉の枝はまだ3つ光ってないのが残ってる。用は済んだ、しかし一週間も経ってないのに持って行っても本物かどうか疑われるんじゃないか。満月まであと三週間くらいあるしな。どうしようか、諏訪の国に戻るべきか咲夜の所に行くべきか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行ってしまったようです、弘君と話そうかと思いましたが今はいいでしょう。私は龍神様の背にある扉を開けて中に入り龍神様の隣まで来たら龍神様が顔を動かし龍神様のお顔が隣にいる私に向けました

 

「良かったのー?せっかく会えたのに」

 

「いいのです。私一人だけ先に会うと神綺に怒られますから」

 

私は背中にある6枚の翼を広げ空を飛びながら龍神様と話して弘君がこの部屋から出て行った扉を眺めている。生きていて良かった。本当に。永琳、永ちゃんにも会いたいけど今はまだ駄目。もう少し後で会いましょう。まだ冥界を作り終えていないですから

 

「弘ちゃん、永ちゃん、神ちゃん。そしてサリーちゃん。いつも一緒だった4人が今ではそれぞれ別々の道を歩いてる、行き着く先は皆同じに見えるけど。どうなのー」

 

「そうですね。ですがいつかそれぞれの道が交わる時が来るでしょう。それまでは私は私の仕事をするまでです」

 

「そっかーその道は神か妖怪か人間か。それとも別の存在が。月人の元、王はどう考えてるのー?」

 

「王と言うと蓬莱山家当主 弘様 の事ですね。弘様は諦めて息子の弘天様に任せるそうです。弘天様は月の王の立場にいますから」

 

「そっかー大昔に王の立場を引退したような物だもんねー口出しは出来ないかー。そうそう気になったんだけど弘ちゃんから龍の匂いがしたよ」

 

私も弘君と永ちゃんと神綺と同じ時期に生まれたので王がいるとは知りませんでしたが、月人の事を神綺と調べて行く内に知りました。まさか弘君が次期国王だったなんて考えもしていませんでしたね。弘様が王をやめて皆と同じ存在として生きたいと言い王の存在を廃止したそうですが月人はそれは困ると王に進言し蓬莱山家は名門蓬莱山になったそうです。元々八意家、綿月は王である弘様に仕えた名門だそうです、そしてもう一つの名門もありました。その名門は時間に関係する能力を持つ一族でしたね、名門八意と綿月と肩を並べた名門だったそうです。

そして龍。弘君の治める諏訪国に龍の存在はいなかったはずですが実はいたのでしょうか

 

「龍の匂いですか。それは龍の体臭のような物ですか、それとも龍の力に似た感じですか」

 

「分かりやすく言うなら体臭かなー厳密に言うと違うけどね。これは雌の匂い、間違いないねー確か弘ちゃんって諏訪国の王だっけ、妖怪も沢山いるらしいしその中に龍に関係する子がいるのかもねー。例えば応龍とか」

 

「応龍ですか、そう言えば応龍は海の向こうの大陸にいる最初の皇帝、黄帝に仕えた過去があります、弘天様も諏訪国の最初の王ですから似た様な立場ですしある意味諏訪国は帝国とも言える国ですね。色んな種族が住んでいますから」

 

色んな種族を纏め広大な土地を統治する国の事を帝国と言われていますから間違ってはいないでしょう。ならば弘君は王の上位の観念である皇帝と言う事になり弘君は諏訪国での皇帝の存在と言えるのでしょうか

 

「サリーちゃん。弘ちゃんがいる大陸には今、霊獣が揃ってるんだよー麒麟に鳳凰。そして白澤もいる、白澤はこの天界にいるけど地上によく落ちてるからいるようなものだしーだけど応龍だけがいないねーこれっておかしくないかなー」

 

「おかしいでしょうか。霊獣は常に霊獣の傍にいる訳はありませんが、そもそもなぜあの大陸に霊獣が集まっているのでしょうか」

 

「大した理由は無いと思うけど私にも分かんないやーでも間違いなくあの匂いは龍の匂いだよー流石に龍神である私が間違えないと思うけどなー応龍の子供なのかなー」

 

「後、有名なのは虹が龍とも呼ばれてるしー虹から生まれた龍かもしれない、人間が虹を見て龍と思い生まれたのかも妖怪とは人間から生まれた産物でもあるし似た様な存在かもしれないねー」

 

「どちらかと言えば虹から生まれた方の根拠が強いですね。応龍の子供かもしれないなら少し調べてみます。諏訪国に応龍の娘、龍がいるかどうかを、では失礼します龍神様」

 

話し終えて冥界を創る仕事に戻ろうと床に降りて龍神様の背にある扉に戻り中に入った。応龍の娘なら調べが付きますけど、虹から生まれたなんて事実なら確かめようがないですね。ですが1人だけ該当する妖怪で女性がいます、その名は紅美鈴。考えても始まりませんからまずは紅美鈴が応龍の子供かどうかを調べましょうか、神綺も地獄をもうすぐで創り終えると言っていましたし私も早く冥界を作り終えなければなりません、それまで弘君と永ちゃんに会うのは我慢です。冥界は天界の下にある様な場所ですから天界から飛んで降りて行きましょうか。私には翼がありますので空を飛べますから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サリエルは行ったみたいだねー応龍の子供の線もあるけど虹から生まれた可能性もあるけどーどっちが正解なのかなー龍は神扱いされるけど妖怪扱いの龍もいるからその子が神なのか妖怪なのか判断がつかないねー。弘ちゃんのいる大陸には、九頭龍、八大竜王 、青竜 、五頭竜、そして私の名龍神くらいが有名かなーこの中の龍に関係する子の可能性もある

 

「まあ、虹から生まれた線が強いだろうけどーもし虹から生まれた龍ならどんな龍なのか。生まれたばかりならまだ弱いはず、だけど月日が経ったら強力な龍になるのかなーまずは新しい種族の龍が生まれた事を祝福だねーいやまだ新しい種族か分かんないか」

 

考えたら眠くなってきたから顔を私の胴体に置き目を瞑って寝る事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事を終えてそれぞれ好きに行動してる、城の外に俺と衣玖がいて俺は城にもたれ掛りながら衣玖に天人の事を色々聞いてる、衣玖の服装は黒い帽子とフリフリの洋服を着て長いスカートだ、だがこの衣玖の周りに纏わり付いてる羽衣が非常に長い。衣玖が羽衣を纏っている感じで羽衣が傍にある、この衣玖が纏っているのが羽衣らしい。それと羽衣は着ると空を飛べるそうだ、空を飛べるのは便利だな。衣玖は羽衣が無くても空を飛べるそうだが

 

「衣玖、悪いんだが羽衣を一着くれないか。空を飛べるのは便利だ」

 

「旦那様、羽衣は女性物しかありませんので旦那様には似合わないと思います」

 

「いやなぜ俺が使う前提で話してるんだ。俺じゃなくて他の者に使ってもらうんだぞ」

 

「そうですか、分かりました。まずは龍神様に確認を取ります、それと厳重に保管されている物でして少々時間がかかります。それまでお待ちください」

 

隣にいた衣玖は礼をして城の中に入って行った。時間があるがどうするか、周りを見てもこの地面雲の上乗っかってる感じなので落ちそうで怖い。城の反対側は林に包まれて奥が見えないほどだ、奥には桃が実っているそうなので輝夜と鈴仙は取りに行ってる豊姫は城の中で龍神と話してる。ナズーリンは城の中を探索するそうでいない。林の方向を眺めてたら奥から輝夜と鈴仙が小走りで来た、輝夜は桃を両手いっぱい抱えてる

 

「お兄様ー!桃を取って来ましたー!」

 

「お待ち下さい輝夜様。輝夜様が持たなくても私めが持って行きますよ」

 

「駄目よ鈴仙、私が持って努力の結晶をお兄様に見てもらうんだから。お兄様どうぞ」

 

輝夜と鈴仙が小走りで来て目の前に来たら輝夜は両手が塞がって渡せないので抱えた状態で桃を差し出してきた。左手で一つ貰い齧って右手で輝夜の頭を撫でて置いた

 

「ありがとう輝夜、上手い桃だ」

 

「良かったですお兄様。この桃は食べると体が頑丈になると豊姫お姉様が言ってました、だからもっと食べてお体を丈夫にしてください」

 

豊姫がこの桃を食べないのは体が頑丈になるからだそうだ。昔食べ過ぎて料理をしてる時包丁で指をカスっても包丁が指に弾かれて傷が付かないほど食べたのでもう食べないそうだ。これ以上頑丈になったら怖いらしい。だから輝夜には食べさせたくなかったそうだが結局食べる羽目になってる、右手でもう一つ桃を取って輝夜の口に持って行き口の中に入れ齧らせた。両手が塞がって桃を輝夜が食べられないからだ

 

「ほれ、輝夜も食べて体を丈夫にしろ。いつか輝夜は俺の子供を産む時が来るだろうから今の内食っておけ」

 

輝夜は桃を口の中に入れてるので喋れない、両手も塞がっているので顔を袖に隠せないし輝夜は隣にいた鈴仙の後ろに隠れた。

 

「蓬莱山様、輝夜様をからかわないで下さい」

 

「俺は本気だ。冗談で言ってないぞ、それと苗字で呼ぶな紛らわしい」

 

「それもそうですね、分かりました。これからは弘天様とお呼びします」

 

まずは名前を呼ばせる事に輝夜のお蔭で成功した、ナズーリンが言うには鈴仙は難しそうに見えて案外簡単に見えると言っていたがどうなのだろうか。そうだな、一ついい考えが浮かんだので鈴仙に近づいた。鈴仙は首をかしげて俺を見上げている

 

「何でしょうか弘天様」

 

「へーい」

 

鈴仙の服装は女子高生の制服みたいなんだがスカートが非常に短い。天界は風が強いのでスカートを鈴仙は来た時から押さえていて下着が見えないようにしてたが俺が近づいてスカートを押さえていた鈴仙の右腕を俺の左手で取り空いてる右手でスカートを捲った

 

「ふむ、紐パンか。少し大胆すぎないか。しかも色は黒と来たスカート短いのに冒険してるな。だが白いスカートに黒い紐パンは合ってると言えば合ってる」

 

「何を冷静に話しているんですか!いきなり私のスカートを捲るなんて!!」

 

「お兄様・・・・・・・」

 

鈴仙は両手でスカートを押え怒声をあげる、怒っている様だ。だが鈴仙のペースに合わせてたら時間がかかるし俺のペースに持って行ってやろう。輝夜が悲しい声を出したような気がするが気のせいだ

 

「勘違いしないで下さい!これは豊姫様から無理矢理着せられた下着です!!」

 

「ああ、そうなのか。着せ替え人形みたいな扱いなんだな・・・・・・」

 

「そんな憐憫の眼差しで見ないで!!この助平!!!」

 

「はっはっはっはっはっ!!!そうだ、俺は助平だ。そして鈴仙、鈴仙はその助平の目に留まっちまったんだよ。諦めるんだな、まずはその紐パンの紐を解いてやろう」

 

俺は生まれた時から助平だし間違ってないのでここは乗って肯定しておこう、鈴仙が今素になってるしここは乗る所だ。俺は鈴仙に一歩ずつ近づいて行くが鈴仙は背中にいる輝夜を背に置き俺に合わせて輝夜と一歩ずつ下がる。鈴仙は両手をスカートを押え涙声で言った

 

「意地悪!!」

 

目の端に少し涙を溜めて涙声で言われたが女性を困らせるのもいいかもしれない。もっと鈴仙を困らせようとしたら

 

「やっと見つけたわよ!!!!」

 

林の方から大声がしたので輝夜と鈴仙が振り返ったらまた少女が来た様だ。しつこいな、俺たちは敵じゃ無い事を知らないのだろうか。ここは一時休戦だ、鈴仙と輝夜に近づいて二人の真ん中に立ち輝夜と鈴仙の肩を組んだ

 

「鈴仙、輝夜。一時休戦だ。あの少女を何とかしなければならん」

 

「・・・・・・仕方ないわ、今だけだからね」

 

「しかしどうするんですかお兄様。また私の能力で逃げますか、それだと鈴仙は置き去りですけど」

 

「えっ、輝夜様それはいくらなんでも酷いです・・・・・」

 

「いや、ここは鈴仙の出番だ。豊姫に聞いたが鈴仙は物の波長を操る能力を上手く使いこなせてると聞いたし少女の波長を長く操ってくれ」

 

「成程。分かったわ、やっておくわね」

 

物の波長を操る能力は結構便利だ。少女は波長が短いみたいだし波長を操ってもらって落ち着かせるべきだ。長ければ暢気、短ければ短気って感じだ

 

「何を喋ってるか知らないけど死ぬ覚悟は済ませたでしょ、じゃあ行くわよ!!」

 

少女は右手に剣を持って要石を出現させ空を飛んで向かって来た、天人は空を飛べるそうだ。だがあまり怖くないな、命の危機に晒されてるのに。

 

「終わったわ」

 

俺が肩を組んで顔が鈴仙の真横にある俺の顔に鈴仙の顔を向けて言ったら、少女は飛んで向かって来ていたが急に止まって地面に降り立ち近づいて来た。笑顔だが急に態度が変わって怖い

 

「御免なさいね、いきなり斬りかかって。退屈で誰でもいいから攻撃したかったのよ~」

 

この少女とんでもない性格だ。暇だから斬りかかるとは、要石が周りに浮かんでいたが少女は要石を消して右手に持ってた剣みたいなのを地面に刺した。地面は土なので剣は刺せる、鞘は持って無いようだ。

 

「過ぎた事だからいいがそんなに退屈なのか天人は」

 

「そうね、のんびりしていて退屈な所だからね。天界の料理は美味しくは無いし、精々桃くらいねいい所は」

 

「そうか、年が近い子と遊んだりはしないのか」

 

「皆真面目で私は不良みたいな立ち位置だから子供の親が私と遊ばせないようにしてるのよ。だから友達は皆無ね」

 

天人に不良がいるとは、天人は基本陽気な性格が多いのに珍しい天人な少女だ。じゃあ退屈凌ぎに付き合おう

 

「じゃあ友達になろう、俺たち時間が開いてるから一緒に時間を潰そうぜ。俺は 蓬莱山 弘天 見目麗しき女は俺の妹 輝夜 兎みたいな耳を付けた女は 鈴仙 だ」

 

「友達か~なるわなるわ。じゃあ私も名乗ろうかしら。私の名は 比那名居 天子 よ。3人共よろしくね」




応龍ですが中国神話では、帝王である黄帝に直属していた龍とありますね。
美鈴は中国神話の応龍と虹の龍の設定を混ぜてます。応龍の話は黄帝に仕える話で、虹についてはまだ何とも言えませんが

そう言えば神様って元は妖怪が多いですよね、仏教の神の話です


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十六夜

今回は独自解釈が強めですので私の考えを後書きで書いて置きます、ですが今回もドン引きするほどですので気を付けて下さい。今回の話は元ネタがあるので気になる人は後書きで

それと今回は少し早く進み過ぎたかも、しかしこの赫奕姫の話だけで今回を含めると7話くらい続けてますからとっとと終わらせます。今回の話を見て、ここは何とかしろ飛びすぎだ。と思ったら言ってくださいその部分を書きますんで

天子は確か地上で生まれて名を地子と言いましたがここでの天子は最初から天人です

今回の話はギャグです


名は天子か。天界人の子供だから天子と名付けられたのだろうか

 

「天子だな、よし何して遊ぶか」

 

「う~んそうね~お兄さん達って天界の者じゃないみたいだけど、どこから来たの」

 

「地上から来たな」

 

「地上か~私天界で生まれたから天界以外の場所の事を全く知らないの。良かったら地球のお話してくれない?」

 

「ふむ、ならば地球にはどんな生き物がいてどんな場所か話そう」

 

俺は地上の事を離したが今まで諏訪の国にいたので話せることと言っても少ないが、諏訪の国の事や民。後は知りうる限りの生き物と海や山、後は美味しい食べ物について話した。天子は天界の料理は美味しくないと言っていたので料理については詳細に話した。永琳と藍の料理は絶品だから天子もその話を聞いたら興味が湧くだろう

 

「色んな料理があるのね~天界の果物は桃しかないから蜜柑も知らないし食べてみたいわね」

 

「食べたいなら地上に降り立つ事は駄目なのか、天人は空を飛べるんだろ」

 

「そうしようと思って地上に向かおうとしたら衣玖に怒られちゃってね~まだ駄目だって言われたのよ」

 

天子は照れた表情でそっぽ向いて左手で天子の頬を掻いた。まだなのか、じゃあいつかいい時が来るって事か。その日はいつ来るんだろう

 

「ならばもしその日が来たら諏訪の国って所に天界から空を飛んで来たらいい。それで第一声がこの国の王を殺しに来た!って言えば刺激的な状況になるぞ」

 

「その諏訪の国?って所の国王が治める国でそんなこと言ったら私殺されるんじゃないの?」

 

「大丈夫だ大丈夫。そこは無益な殺生はしない国だから、だからその時はその地面に刺さってる剣と要石を出しておけ目印として分かりやすいし」

 

天子の事は帰って皆に話しておこう。そしたら殺される事は無い、ただその日がいつかが分からないので皆、月日が経てば忘れそうだけど。俺からは話し終えて輝夜と天子が話し始めた、鈴仙を見たら天子を見る目がナズーリンと初めて会った時の視線だ俺は立ち上がって鈴仙の左手を掴んで天子と輝夜から離れた

 

「な、何ですか」

 

「鈴仙、隠すのが下手だな。天人を見下すなと言わんがせめてその視線は誰にも悟られないようにしろ。無用なトラブルは御免だぞ」

 

「無理です、これだけは私はやめられないです。どうしても地上の生き物は見下してしまう、月から見れば同じ地上で穢れた存在なのです」

 

これは時間がかかりそうだ、内心で見下すのはいいんだ。ただ見下した視線を相手に向けて欲しくは無い、そんな事を続けてたら確実に面倒事が起こる。鈴仙は月人や玉兎以外を見下してる感じだ、俺は両手を鈴仙の両頬に当てて両頬を引っ張った

 

「いひゃいいひゃい!ひゃにひゅるの!?」

 

「視野が狭いぞ鈴仙。見方が一面的すぎる、月人と地上人は別の存在なんだから比べてどうする。天人も別の存在だ、比べていいのは日常で使う箸とか道具だけだ」

 

道具を比べるって言っても藍とかの事じゃなく人間が使う工具とかそんな物だ。鈴仙の両頬を離して、鈴仙は両頬を両手で擦ってキッと俺を睨む。

 

「嫌、私はやめないわよ。もうこの考えが染みついてるの、今更直せないし直す気もないわよ」

 

「別に直さなくてもいいとさっき言っただろう、ただ誰にも悟られるなと言ったんだ。俺は頭の中までとやかく言う気はないんでな、頭の中なら何を言っても構わんし見下した考えでもいい」

 

そんな考えを持つなとは言う気はないがせめて頭の中だけで押さえて欲しい物である。例えば死んで欲しい奴がいて嫌な顔をしてその死んで欲しい奴にわざわざ口に出して死ねって言うのではなく、表面上は笑顔だが頭の中で死ねと死んで欲しい奴に言ってほしいのだ。胸三寸に納めるだな

 

「難しい事を言うわね。それでも嫌だと言ったらどうするの」

 

「鈴仙。お前、忘れてるか知らんが俺は月を牛耳ってる男だぞ。ここまで言えば十分だろ」

 

この考えをほったらかしにしてたら面倒だ。余計なトラブルの種を放置して芽が出て花が咲いたら非常に困るのだ、鈴仙の考えを否定だけはする気は無い。ただどんな相手でも表面上は笑顔でいて欲しい。それに天界って色究竟天と言える場所だし月の関係者が見下せる場所だろうか

 

「分かりました月の王よ。貴方の顔を立て従います。ふんだ!あっかんべー!!」

 

鈴仙は数歩下がって跪き従うと言ったがすぐに立ち上がり腹が立ったのか腕を組んでから鼻を鳴らして右手で鈴仙の右目の下瞼を下げ、口から舌を出した。子供か

 

「どうやら懲りてないようだな。じゃあ鈴仙の紐パンを奪って皆に鈴仙は下着を履かずに過ごしている痴女だと周知に知らしめてやろう!!!月人や玉兎からどんな目で見られるか楽しみだな」

 

「何て恐ろしい事を・・・・・ここは一時撤退をしなくては・・・・・!」

 

「甘いな、俺には須臾を操る妹がいるのだぞ。須臾の時間の前に逃げる事など不可能」

 

輝夜の元へ行って能力を使ってもらおうと考えたが城の中から衣玖が戻って来た。内心舌打ちしながら鈴仙に俺の両手を上げてじゃれ合うのは終わりだと示して衣玖に近づく

 

「お待たせしました旦那様。これが羽衣です」

 

「ありがとう衣玖。助かる」

 

衣玖から羽衣を受け取ってキャリーバッグに入れて置こうかと考えたが輝夜に羽衣を纏ってもらおうと考え鈴仙と衣玖と共に輝夜と天子の元へ行く。二人とも立ちながら城にもたれ掛って話してるようだ、こうして見ると女の子だな二人とも。輝夜は億歳だし天子はいきなり斬りかかって来たから女の子と言っていいのか少し迷った、輝夜と天子が俺と鈴仙に気付いて顔を向けた

 

「あ、お兄様。鈴仙とのいちゃいちゃは終わったのですか」

 

「うむ。終わったぞ、まだ続けたかったがな」

 

「輝夜様、私と弘天様はいちゃいちゃなどしておりません!!!勘違いなさっては困ります!!」

 

鈴仙は両目を瞑り両手を両足にそれぞれ合わせるようにし力を込めて大声をあげた。そこまでして否定しなくてもいいと思うんだ、照れてるだけかもしれんがな。会話をしながら輝夜が持ってた数十個の桃をキャリーバッグに入れて置く。衣玖から袋を貰ったのでその袋の中に桃を入れて置くから大丈夫だろう

 

「はいはい。そうね鈴仙、それでお兄様が持ってるのは何ですか」

 

「ああ、これは羽衣と言ってこれを纏うと空を飛べるそうだ。輝夜、空を飛びたいか」

 

「空を飛べるんですか!?やったー!!早く羽衣を私に纏わせて下さい!!!」

 

「ならば輝夜様。私にお任せ下さい」

 

「そうね。衣玖お願いするわね」

 

忘れていたが輝夜と衣玖は竜宮城でお互い知っていたな。二人とも最初は竜宮城にいたし、衣玖は羽衣を輝夜に纏わせたら輝夜が空を飛んだ。本当に飛べるんだな

 

「お兄様見て下さい!!私空を飛んでいます!!!」

 

「見てる見てる。気を付けるんだぞ輝夜、何かあったら困るからな」

 

「分かりましたお兄様。私はお城のてっぺんまで飛んで来ます!一緒に行きましょう天子!」

 

「そういう事なら私も一緒に行くわよ~!行きましょ輝夜!!」

 

輝夜と天子は空を飛んで城のてっぺんまで向かった。楽しそうで何よりだ。うーむ咲夜をどうするべきか、そうだ閃いた。龍神の所に戻るか。龍神と話し終えて城の外に戻ったら輝夜と天子も戻って来るだろう

 

「衣玖、龍神にまた会いたいんだがいいか」

 

「分かりました、それでは行きましょう旦那様」

 

「私は輝夜様を待ってるから行ってらっしゃい」

 

鈴仙は城のてっぺんに飛んでいった輝夜と天子を見ながら左手を俺に向けてひらひらさせた。行く気は無いようだ、ならば一人で行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着いた、扉を開けて中に入るとさっきの状態で龍神がいる。衣玖が龍神に近づいて何か喋ると龍神は目を開けた。あれ何言って起こしてるんだろうか

 

「弘ちゃん話があるそうだけど何か用ー?」

 

「うむ、頼みがある。実は地上に姿を現してほしいんだ」

 

「地上に私が来たら騒ぎになると思うけどーどうして地上に私が必要なのー?」

 

「うむ、実はな」

 

俺は龍神に説明した。どうしても龍神は必要だ、龍神は能力は持っていないが豊姫の能力と似ていてワープして移動できるんだ。豊姫は一度行った所限定だが龍神はそれが無い。

 

「なるほどねーじゃあ私が渡した龍の首の珠に私の名を呼んでよー。そしたら超特急で向かうからさー私はワープしてるから早さなんて無いけどねー」

 

龍神はそう言い話を終えたのでまた顔を胴体に乗せて眠った。これで問題は無くなったな、後は咲夜に会いに行こう。衣玖を連れて城の外に出たら輝夜と天子が戻ってきてる、楽しかったのか二人とも笑顔だ。豊姫とナズーリンも戻ってきてるしもう天界からおさらばしよう

 

「待たせたか、じゃあ天界から地上に戻ろう。豊姫頼んだぞ」

 

「はい、任せて下さい」

 

「衣玖と天子。今日はありがとう、特に天子。輝夜とは仲良くしてやってくれ、また会おう」

 

「また皆様が天界に来るのを旦那様と豊姫様の従者、衣玖。お待ちしております」

 

「当然輝夜とはこれからも仲良くするわよ、じゃあね~楽しかったわ。また天界に来てよね~来なかったら私から向かうからね」

 

衣玖はお辞儀をして天子はウインクをした。衣玖が天子のセリフを聞いて天子を睨んだ気がするが気のせいだろう。皆で手を振ってお別れをするが鈴仙はぎこちない笑顔で右手を振ってお別れしている、悟られるなと言ったんだがまだ無理なようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には霧があって霧が濃い、背中を見たらあの質素な家がある。蓬莱山に着いた様だ。中で休もうと思い皆で家の中に入り客間で寛いでる。豊姫が神妙な顔で正座しながら俺を見てる

 

「弘さん、輝夜を連れて行くんですか」

 

「そうだが嫌か豊姫」

 

「正直に申しまして私は輝夜と一緒にいられないのは寂しいです、でも仕方ありません。ですが連れて行くなら私にも考えがあります」

 

「あ、豊姫お姉様が嫌なら私は別に行かなくても構いませんが・・・・・」

 

「今までは私と依姫が過保護過ぎた所もあるからそれはいいのよ輝夜。ですが心配ですので一月に数回は諏訪の国に顔を出します、勿論依姫と鈴仙も一緒です」

 

豊姫と依姫と鈴仙が一月に数回だが諏訪の国に顔を出すのか。別に構わないがなぜ今まで諏訪の国に来なかったんだろう、俺が生きてるのを知っていたなら来る機会があっただろうに。それと豊姫の言葉を鈴仙が聞いてから鈴仙は狼狽してる、そんなに嫌か

 

「1つ聞くがどうして今まで諏訪の国に来なかったんだ。時間はあっただろう」

 

「それは・・・・・怖かったからです。もし見に行って実は同姓同名の他人だったなら、私は立ち直れませんでしたから」

 

豊姫は顔を俯かせて少し落ち込んだ様子。ふむ、大体分かった。その人物を見て知らない人間だったらショックだから見たいけど見れなかったんだな。臆病だな豊姫、豊姫に近づいて頭を撫でながら抱きしめた

 

「じゃあ生きていたからこれからは気にせず諏訪の国に来れるな。待ってるぞ」

 

「はい、待ってくれるなら私はいつでも弘さんのお傍に行きます。邪魔だと言われても絶対に抱き着いて離さず逃がしません」

 

「うむうむ。じゃあ輝夜を連れて行く。それで悪いんだが山城国に能力で送ってくれ」

 

「今いい雰囲気だったのに台無しですよ弘さん・・・・惚れた弱みですね、じゃあ送りますから気を付けて下さいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲れますわ、私は地上に興味があって来たのにどうして私を妻にする男が出てくるのでしょうか。私はただ地上を見ていたいだけなのに。ですが道端で行き倒れかけていた私を助けてくれたお爺さんとお婆さんには助けて貰った恩がありますし男共を無下には出来ません、お爺さんとお婆さんは喜んでいましたし。位が高い男性と夫婦になれば私がもう困る事は無いからです。縁起でもない話ですがお爺さんとお婆さんはお年寄りですから私より先に亡くなってしまいます、だから私の事を心残りに亡くなりたくないとおっしゃっていました。私の部屋のふすまの前でお爺さんが私の名を呼びながらふすまを開けた

 

「咲夜、5人の中の男性から好みの人はおったかい?」

 

「お爺さん、もう一人男性はいましたよ。全員で6人の男性です」

 

「おお、そうだったか。どうも年を取ると忘れてしまう。だが6人目の男性は失礼な言い方だがどこの馬の骨か分からない人だがその人が気に入ったのかい」

 

「そうですね。他の男性よりは私にとって都合がいいんですよお爺さん」

 

特にどこにも属してないのがいい、他の5人の男は山城国に住んでる男。ですがそんな男の妻になったら一生私は山城国で過ごす事になる、私はそれが嫌だ。それに私には寿命が無いのだから数十年山城国にいると面倒な事になる。それに山城国から離れて旅をしていざとなればその男を殺せばいい。私は時の支配者だから簡単に殺せる

 

「そうか、咲夜が選んだのなら何も言わない。だけど後悔の無い様にするんだよ」

 

お爺さんは聞きたい事を聞いたら部屋から出てふすまを閉めた、まき割りをするようで外に行くそうです。満月までまだ時間がありますが誰が本物を持って来れるでしょう、山城国に住んでる誰が持って来れるか分かりませんが無理でしょうね、どれも人間には取って来る事は不可能。そう、人間には。私は火鉢に近づいて体を温めていたら外から驚いた声が聞こえましたがお爺さんの声ですねこの声は、お爺さんは家に入って走って音が響いてます

 

「大変だよ咲夜!咲夜が出した難題を持って来たそうだよ!!」

 

「そんな、馬鹿な」

 

私は慌てて立ち上がりお爺さんと部屋から出て家の外にいる男を見に行きました、家から出て見たらその男は6人目の男で右手には枝を持っていて左手にはキャリーバッグらしき物の取っ手を掴んでます、なぜキャリーバッグがこの時代にあるのでしょうか。その男の隣には笠を頭に被ってる少女がいて、反対には輝夜様がいました、何故この場所に輝夜様が・・・・・輝夜様は私を見て少し驚いてましたがすぐに表情を戻して笑顔で私を見てきています。

 

「まだ満月までは時間がありますのにもう難題の物を取って来られたと聞きましたが、拝見してもよろしいでしょうか」

 

「ああ、少し待ってくれ。今取り出すからな」

 

男はキャリーバッグのチャックを掴んで中にある綺麗な宝玉を取り出して私に見せてきました、宝玉は5つあり色は赤、青、黄、白、黒。間違いありません、昔私は龍神様に見せて貰ったことがありますからこれは龍の首の珠だと断言できます。ですが、そんな簡単に認める訳にはいきません

 

「確かにこれは宝玉ですね、ですがこれが作り物じゃないと証明できる物はありませんか?龍から取って来たのなら何か龍の爪や牙など見せて下さい」

 

「ふむ、証明か。ならば実物を見せてやる」

 

男は右手に持っていた枝を隣にいる人形みたいに綺麗な女性に渡してキャリーバッグの中にあった5つの宝玉を両手に持ちそれを空に掲げて大声で言った

 

「いでよ龍神!!!・・・・・・流石にこの年でこれやるの恥ずかしいんだが」

 

男が龍神様の名を出したら宝玉が光辺りに風が吹き宝玉は光ったまま男の両手から空に浮かんで凝視出来ないほど辺り一面光ると目の前には龍神様が出てこられた。間違いないこの黒い鱗にこの大きさに過去の龍神様と瓜二つ、この私が間違える訳が無い

 

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。久しぶりに地上に来たよー懐かしいねーあれ?そこにいる女性は確か」

 

龍神様は口を開かずどうやらテレパシーでこの場にいる皆と喋っているみたい、龍神様が私を見てる、あれから私が成長したとは言え龍神様の目は誤魔化せないから私が誰か納得したでしょう、お爺さんは龍神様にひれ伏してる。まさか龍神様を見れる日が来るとは思ってなかったでしょうね

 

「さあ、龍神を見せてやったぞ。これで龍の首の珠が本物だと証明できたな、他に言いたい事があるなら聞こう」

 

「まさか龍神様を呼べるほどのお方だったとは・・・・・咲夜、咲夜の目にはそれほどのお方だと見抜いていたのか」

 

男は腕を組みながらほくそ笑む、認め合くはありませんが龍神様を出されては私に何か言うにも言葉は無くなりました。お爺さん、流石に私でもこれは見抜けませんでしたよ。しかしなぜ龍神様を呼べたのでしょう、この男、私が思っていたよりも大物だったのでしょうか

 

「何て日でしょう、今日は厄日ですね。ですが約束は約束です、私も一度言った言葉を撤回する気はありません」

 

男は満足そうに笑っている。早い物勝ちの様な話しでしたから一番に来たこの男の妻にならなければなりません、私は現実逃避でもしようかと考えたら龍神様が山城国の入り口方面を見て何かを考えています、どうしたのでしょうか

 

「大変だよ弘ちゃん。面倒な奴がこの山城国の近くに来てるね」

 

「面倒って何だ龍神でも倒せないような奴なのか」

 

「いや、この私が向かったら簡単に殺せるけど問題はそこじゃない。殺した後が面倒なんだよ、まずはその場所まで向かうよ」

 

「待て待て、まだ行くな。そこの爺さんは咲夜の親代わりか。話を聞いていたと思うが咲夜は貰っていくぞ。咲夜に出された難題は終えたからな」

 

「はい!龍神様を呼べるお方が我が義娘を妻にする事に不満などありません!!どうか、咲夜をよろしくお願いします」

 

お爺さんは龍神様にひれ伏したままで男に言いました、ありがとうお爺さん。今まで本当に、ですが私がこの男の妻になるのは茨の道な気がします。嫌ですけど約束ですから仕方ないです。

 

「じゃあ行くよー早くしないと大変だからねー」

 

龍神様がそう言うと私も一緒に連れて来られたのか山城国の外に出て目の前には妖怪に人が襲われていて、咄嗟に私は能力を使い時間を止めました。時間を止めたので殺されかけた人間もまだ死んではいませんがこの後が問題です。私の能力は一度起こった事態は撒き戻せません、ですが時間を加速減速は出来ます、そして空間も操れますが今はいいでしょう。龍神様がテレパシーを使い私の頭の中で会話をし始めました、これは未だに私は慣れません

 

『流石咲ちゃん。咲ちゃんの一族は時間に関係する能力を持っていて、咲ちゃんの能力は時間を操る程度の能力だったねーあのままだとあの人間が殺される所だったよー』

 

『龍神様、相変わらず私の能力が効きませんね。龍神様はまだ分かるのですが』「そこの二人がなぜ動けるのでしょうか、笠を頭にかぶってる少女は動いていないんですが」

 

「さあ、俺には分からん。そう言えば名を名乗ってなかったな。俺は 蓬莱山 弘天 だ」

 

「初めまして、私は 蓬莱山 輝夜と申します。よろしくね咲夜」

 

蓬莱山 弘天、じゃあ私が仕えるはずだった王が私の目の前にいると言う事になるのですか。一体何の巡り会わせでしょうか、まさかこんな日が来るなんて。輝夜様は少し意地悪な顔で初対面だと言ってきましたが私達は初対面じゃないですよ輝夜様。

 

「それよりーあの妖怪なんだけどー少し面倒なんだよー」

 

「ふむ、面倒と言うとどう面倒なんだ」

 

「あの妖怪はねー殺すと殺した相手がその妖怪になるんだーだから殺した後が面倒なんだよー殺さなければその妖怪になる事は無いけどねー」

 

『咲ちゃんーあの妖怪だけに能力を使う事って出来たよねー?悪いんだけどやってくれるかなー?』

 

『分かりました龍神様。では能力をあの妖怪だけに使います』

 

私の能力は周りの時間を止める事も出来ますが、一部だけ、例えば生き物だけの時間、または手や足などの時間を止める事も出来ます。その部分の、手や足の時間を止めると言う事はその手や足の場所にある空間をも止めるのでその部分を止められたら動く事は不可能。私は能力を妖怪だけに使ったので襲われてた人間や笠を被っていた女性も動き出し目の前にいる妖怪を人間は畏れ、叫び声を上げながら山城国に逃げて行きました。死なずに済んでよかったです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すげー輝夜は時間を止める能力じゃないからな、妖怪が動かずそのまま人間を喰い殺そうとしてるポーズで止まってて少し面白い。だがこの妖怪を俺が殺したら俺がその妖怪になるみたいだからなーどうするべきか。この妖怪はさっきの人間を押し倒して喰い殺そうとしていたから四つん這い状態だ

 

「もう襲われた人がいないし咲夜、能力を解いてくれ」

 

「それもそうですね、このまま放置する訳にはいかないし」

 

咲夜が右手で指を鳴らしたら妖怪は動き出した、だが目の前には人間がいないので四つん這いのまま周りを見渡すと俺に狙いを定めたのか立ち上がり走って来た。俺は焦らずキャリーバッグの中にあって袋の中に入れて置いた桃を数十個をその妖怪に渡そうと思い咲夜に妖怪の足と手の部分だけ時間を止めるように言い妖怪は走って来ていたが急に足が動かず狼狽してる。俺は袋に入ってる桃を持って行きながら妖怪に近づく

 

「まあまあ落ち着け。まずはこれを食べて話をしようじゃないか」

 

「ちょ、ちょっと何を」

 

何か言う前に俺は袋から桃を取り出し妖怪の口に入れて腹を満たせた、数十個あったのに全部の桃を食われたが仕方ない、それにこの桃は体を丈夫にするそうだし食わせて中々死なない様にする為にこの桃を食わせた

 

「初めて食べましたが美味しい果実ですね。もう無いのですか」

 

「無いな、全部食っちまったし」

 

「そうですか・・・・・ですがまだお腹が空いてます貴方を食べさせてください」

 

「飢えては食を択ばずと言うが俺は煮ても焼いても食えぬ男だぞ。お腹が空いたなら何か食わしてやろう」

 

と言っても山城国が見えてるが山城国は駄目だ、もしもの事があったらこの妖怪は殺されるだろう。あそこには篁がいる、もしこの妖怪が篁に殺されたら篁に乗っ取るかもしれない。それは非常に困るので諏訪の国に連れて行こう

 

「それで名は何て言うんだ。俺は 蓬莱山 弘天 で俺の両脇にいるのが 輝夜 とナズーリンだ」

 

「私は 寅丸 星 で虎の妖怪です。それより早く何か食べさせてください。そして私の足と手が動かないので何とかして下さい」

 

「ふむ、腹が減ってるようだし諏訪の国に連れ帰るか。龍神って確か行った所が無い場所でも一瞬で行けるんだったよな、悪いが諏訪の国に連れて行ってくれ」

 

「いいよーじゃあ行くよー」

 

 

 

(まさか弘ちゃんから聞いた妻にする女って咲ちゃんの事だったなんて、名門の御三家、八意、綿月、十六夜 が王の元に揃ったことになるねーこれも運命かなー?そうだ、十六夜は確か王のメイドで執事でもあったよねーメイド服を弘ちゃんに渡して咲ちゃんにメイド服を着せておかなくちゃー)




今回の話を見て鬼太郎の牛鬼を思い出した方もいるかもしれませんね。この話は人虎、虎憑き、ワータイガーと言われている話でこの虎人にはあの鬼太郎の牛鬼と似た話があるんです。細かい話は省きますが人が虎の姿になり夜中に人を襲い喰ったらその虎は元の人の姿に戻り、次は替わってその喰われた人が虎になると言う話ですね。今回はその話を使いました。それで寅丸 星ですが人虎と鬼太郎の牛鬼の設定が混ざっています。人虎はインドネシア・ジャワ島のmagan gadunganという虎人の伝説の話で、鬼太郎の牛鬼は殺されると殺した相手が牛鬼になる話です。

時間と永遠は同じ概念だと思ってる方がいるかもしれませんが私は時間とは物事の変化を認識するための概念、永遠は時間とは逆の概念で物事が変化しなく、不変の概念だと思ってます。永遠は変化を拒む概念だと思うんですよ。だから輝夜は咲夜に時間の干渉をうけなかったんではないか、咲夜に時間を止められるのも私は変化ではないかと思ってます、それと時間は有限で永遠は無限が私の考えでして、時間は無限だと考える方もいるかもしれませんが私は有限だと考えてます。だから有限の時間が無限の永遠を操る事は出来ないんじゃないかと、咲夜は輝夜を操る事が出来ないと思い今回の話はこうなりました。もし輝夜が須臾だけを操る能力だったら咲夜に時間を操られたはずです須臾も一瞬とは言え時間ですから。

何だか自分が何言ってるのか理解できなくなってきた、簡潔に言うと咲夜は時間を操っても輝夜に時間で干渉する事は出来ないと思ってください、それと二つ、永遠が変化を拒む概念だという事。輝夜は時間を止める能力じゃ無い事を覚えて下されば助かります


そして咲夜は絶対にメイド服を着せます決定事項です


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人格神
蓮の花


名門の十六夜が急に出て来たと思うかもしれませんが私は2話でそれっぽい事を地の文で書いてます。皆さん忘れてるかもしれませんがね。その十六夜を最初に出すとかぐや姫の話をする時気付かれそうだったので出しませんでしたが


戯れa

これくらいなら大丈夫ったら大丈夫

しかしこれ以上書いたらこの作品は消されてしまう!!


やっと諏訪の国に帰って来れた、数週間諏訪の国に俺はいなかったが変わってない様で良かった。流石の民も龍神を見て驚いてるが数秒経つとみんなそれぞれの仕事に戻った。たくましい事だ

 

「やっと帰って来れた、早く星を連れて行かねば喰い殺せれてしまう急ごう」

 

「弘ちゃんー星ちゃんと咲ちゃんを先に神社に連れて行くねー」

 

「え、おい待て」

 

背中にいた龍神は消え、咲夜と星も一緒に消えてしまった。待てと言ったのにもう連れて行くとは

 

「仕方ない、輝夜とナズーリン。行くぞー」

 

「はい、ご主人様」

 

「これが国ですかー。私は月の都市だけしか見た事は無いですが、聞いてた通り文明は月と違うんですねー」

 

ナズーリンは俺の隣で並んで歩いてる、ちなみに笠は取ってるから鼠耳も出てる状態だ。ここは諏訪の国のだし大丈夫だろう、俺も傍にいるし。輝夜はあちこち歩き回り民を眺めてる、眺められても平然と仕事をしてる、流石は我が民、屈強な民だ。

 

「お帰りー弘。今回は帰って来るの遅かったね。それとまた女の子を連れてるし」

 

「ああ、萃香か。ただいま。俺はこういう男だからな仕方ない」

 

「別にいいけどね、じゃあ私はまた霧になるよ」

 

萃香が手を振って霧になった。先に進もう

参道を歩き鳥居の下に着くと神社の裏辺りに龍神がいる。多分あそこで何かしてるのだろう、輝夜は走り出して桜の下まで行く

 

「お兄様ー!これは桜と言う木ですねー!!竜宮城でも見ましたが綺麗ですー!」

 

「風流だねご主人様。でも今は冬の季節で本来桜は咲かないはずなんだけど」

 

「気にするなナズーリン」

 

輝夜とナズーリンを連れて一緒に神社に入りてゐとぬえが奥から来た。ぬえは左手に肉まんを持ちてゐは人参を右手に持ちながら出迎えた。食事中だったようだ

 

「お帰りー祭神様」

 

「ただいま。ぬえも食べてたんだな」

 

「ご飯は今日も頂いてるわよ!」

 

ぬえが左手を突き出し持ってた肉まんを俺に見せてまた確認をしてきた。しかし食事中なら早く戻さなくては

 

「分かった分かった。ほら、早く戻れ。まだ食べてるんだろう」

 

「そうね、早くご飯食べなくちゃ無くなっちゃうわよ!」

 

ぬえは背中を翻し奥に走って行った、てゐも後に続こうとしたが止まって振り返る

 

「そうそう、星ってのが奥で料理を食べてるよ。藍は忙しそうにしてるけど。じゃあね~」

 

てゐは片手を上げて奥に入って行った、星はもう食べてるのか料理を。それなら腹も膨れて人間を襲わないだろう。龍神の所に行くか

 

「輝夜とナズーリンはどうする、神社の中を探検してきてもいいぞ」

 

「ナズーリン早速行くわよ!!」

 

「お待ちください妹様!そんな急がなくても神社は逃げません!!」

 

輝夜は言うが早いかナズーリンの腕を掴み奥に走って行った。元気でよろしい、俺は神社を出て神社の裏に向かう、着いたら白い花のウメに赤色に近いピンク色な花のウメの木がある。ウメの傍には龍神と咲夜がいた。咲夜は元は着物を着ていたが今はメイド服を着てる

 

「何やってるんだ」

 

「あ、弘ちゃんー実はねー咲ちゃんにメイド服を着せてたんだよー」

 

「なぜこんな事に・・・・・」

 

咲夜は左手で右腕の二の腕辺りを掴んで恨めしそうな顔で龍神を見上げている、龍神はその視線を流して咲夜が来てたメイド服が一瞬で着替えられた。どうやら龍神の力で一瞬で着替えられるようだ

 

「バカな、ここはお色気シーンだろう龍神!?」

 

「咲ちゃんはー弘ちゃんの妻なんだからわざわざここでお色気も何もないでしょうー見たいなら閨でねー」

 

龍神は悩んだ声を出しながら咲夜のメイド服を色んなメイド服に取っ替え引っ替えしてる、だが決まらないようだ。目を凝らしても胸が見えない、一瞬で変わるのだから見える時があるはずなんだ多分

 

「決めたーこれでいいやー」

 

咲夜は銀髪で両方のもみあげから三つ編みにして三つ編みの先端を黒のリボンで結っている。メイド服は黒と白を基調としてる、頭にはホワイトブリムがありお腹辺りに前掛けみたいな白いエプロンがある。腰には白くて大きなリボンがある

 

「永ちゃんは赤と青ー豊姫ちゃんは青、依姫ちゃんは赤だしここは黒と白でいいでしょー」

 

「なぜその三人の名が出るんだ龍神」

 

「んーまあ気にしないでー」

 

そうか、ならば気にせず行こう。咲夜を見たらスカートを両手で押さえて困ってる、このスカート極端に短い大腿四頭筋の上辺りにスカートの先端がある

 

「これは、いくらなんでも短すぎるのでは」

 

「大丈夫だよー咲ちゃんのお母さんもこんな感じだったしー」

 

「し、しかし恥ずかしいです。それと足が寒い・・・・・」

 

「いいからいいからーこれも天の巡り会わせだよーじゃあ私は帰るねー」

 

龍神が消えて俺と咲夜だけが残された、気まずい。何を話していいかと思ったが咲夜がウメを数秒眺めながら、ため息を出して片膝を付けこうべを垂れる。ウメって花言葉あったよな、確か、艶やかさ、高潔、忍耐、そして忠実だったか。白の花のウメは気品だったな。他にも意味があった気がするが忘れた

 

「王よ、私は貴方に仕えたくはありませんが仕方ありません。自分の運命を呪い生きていきます、どうかこれからもお願いします貴方」

 

「結構ズバズバ言うんだな。何だか良く分からんが仕えるって事と妻になる事でいいんだな。よろしく」

 

「ええ、仕えますし妻になりますとも。私は誰の物になりたくは無いけど難題を出した時に妻になると約束した死ね、一言既に出ずれば駟馬も追い難しって言葉もある死ね」

 

「気のせいか今俺に2回も死ねって言わなかったか」

 

「気のせいですわダーリン」

 

咲夜は片膝付け跪いた状態で顔を上げて、右手を口元にやり、おほほと笑った。微妙にしねのニュアンスが違ったような気がするが、まあ、いいだろう。

 

「じゃあ私は行くわね、それと貴方かダーリンどっちがお好みかしら」

 

「どっちも好きだが」

 

「そう、ああ、忘れていたわね。この神社狭いから私が拡張しておくわねダーリン」

 

咲夜は神社の中に入って奥に消えた。拡張ってどういう事だろうか、神社の裏にあるウメを眺める、あのウメも一年中咲いてるがどういう事だろうか。まあいいや。ちょうど神社の裏にいるから近くにある蔵に入る、周りは酒樽や色んな物が置いてある、この蔵に地下を永琳が作ってる。奥に永琳がいるので迎えに行こう

 

 

奥まで来たがいつの間にか研究施設みたいになってるんだけど、色んな資材や器具がある。あと薬品臭い。どこから調達したんだ・・・・・奥に進むと永琳がいた、なんか眼鏡をかけて山のように積んでるカルテを一枚ずつとり紙を見て考え込んでる。一体何のカルテだ、俺の背にある壁を数回叩いて気付いて貰おうとするが気付いた様子は無い、仕方ないので永琳の後ろから抱き着いて首に思い切り噛みつく。今回は甘噛みじゃない

 

「いっ、もっと痛くして頂戴。弘の物だと証を私の体に刻み付けて。首輪でもいいわよ」

 

俺は噛みつくのをやめて永琳の首筋を見るが思いっきり噛んだから俺の歯形が永琳の首筋にくっきりと痕が残ってる。噛み痕を見てから俺の顔を永琳の左肩に置く

 

「何を言ってるんだ永琳、気付いていたのに無視するとは」

 

「押してダメなら引いてみろって言葉があるじゃない。それを実践したのよ」

 

俺は永琳に抱き着いていて俺の顔が永琳の左肩にある状態、永琳は首を動かし永琳の左手で俺の後頭部を押さえて口吸いしてきた、口吸いしてからすぐに俺の口の中に舌を入れて来て俺の舌と絡め、数秒だけ俺も永琳の舌に絡めながら両手を使い永琳の胸を揉みしだく、揉みながら口吸いしてると永琳の鼻息が荒くなる、この部屋は静かで部屋にはジュルジュルとお互いの唾液と舌が混ざり合う音が響いてる。永琳は俺の唾液を喉を鳴らして呑み込みながら俺の舌と永琳の舌を絡めつつ俺の前歯を舌で歯ブラシの様に歯を磨く様 舐め取り、後歯にも永琳は舌を動かして俺の歯を舐め取って来た。数秒経ったので俺は左手で俺の後頭部を押さえていた永琳の左手を退かして離れる。離れる際に俺と永琳の口から唾液の橋が出来た。

 

「あん、もっとしたいのに。ご馳走様、美味しかったわよ。だからもっとしましょう」

 

永琳は口の中に残ってた俺と永琳の混ざった唾液を呑み込む音を出して永琳の口の周りに付いてた唾液を舌で舐め取り、眼鏡を外して机の上に置いた

 

「駄目だ、ほら永琳。散歩に行くぞ」

 

「仕方ないわね。じゃあ行きましょうか」

 

俺と永琳は蔵から出て参道を歩き、参道の途中にある木材の橋の上に立って橋の周りにある花を見てる。その花は橋の周りにある池の上に咲いていて花の色は白だ

 

「永琳。あの花は何だ」

 

「あれは蓮の花ね。だけど今は冬なのにどうして咲いてるのかしら、蓮の花は夏に咲く花なのに」

 

夏に咲く花なのか、幽香が咲かせたのだろうか。蓮という花は白いのもあればピンク色の花を咲かせてるのもある。風流だな、参道の途中に蓮の花が生えていたとは気付かなかったが咲いてから気付いてよかった、綺麗だし。蓮の花の咲き方が気になったので永琳に聞こう

 

「どうやって蓮の花は咲くんだ永琳」

 

「蓮は変わった花でね。蓮は綺麗な水だと小さな花しか咲かないけど、とっても汚い泥水だったら大輪の花を咲かせる少し変わった花なのよ」

 

俺と永琳は橋の欄干に両手を置いてもたれ掛り蓮の花を眺めた。汚い泥水から綺麗な花を咲かせるのか、屈強や困難な環境ほど綺麗な花を咲かせるのはいいな。そういうのは一際輝いて見える、花でも人間でも

 

「永琳との子供が出来たら蓮の花を使った名を考えるか」

 

「あら、私は今すぐにでも子供を作ってもいいわよ。私はいつでも準備は出来てるんだから」

 

「そうだな、じゃあ今日の夜にでも子供でも作るか」

 

俺は橋の手すりに両手を置き橋に体を橋にもたれ掛りながら蓮の花を見てる。永琳は隣にいる俺を見て開いた口が塞がらないのか放心してる。いい加減永琳に手を出すべきだ、元々永琳に手を出さなかったのは俺の女を侍らす夢を認めなかったからだし。だから月人が地球にいた時は手を出さなかった、そして地球に残って最初は女がまだ永琳しかいなかったしこの時も手を出せなかった。だが今では両手の指では足りなくなる所まで来てる、だからもう手を出していいだろう

 

「本当に、嘘じゃないわよね?嘘だったら許さないわよ」

 

「俺は昔から今まで包み隠さず喋って来ただろう。だから本当だ」

 

「私、まだ弘の夢を認めてないわよ」

 

「知ってる、だから無理矢理する。嫌がっても泣き喚いても知らん。無理矢理抱く」

 

「嫌がる女性を無理矢理だなんて、まるで鬼畜ね」

 

永琳は両手を永琳の両頬に当てて蓮の花を見ながら笑顔だ。今日の夜に強姦されるはずなのに笑顔だとは、待たせすぎたんだな。永琳が隣にいるので俺の右手を動かし永琳の左頬に当て撫でる。永琳が顔を俺に向けて来たので俺の右手が永琳の唇に当たった。そのまま永琳が俺の右手の小指と薬指を口に入れてぴちゃぴちゃと音を立てながら舐めてる

 

「何をしている永琳」

 

「え、弘が右手の指を舐めろと私に右手を差し出したんじゃないの。手を舐めたけど塩味が強いわね」

 

「当たり前だろう。そんなに待たせたか」

 

「当たり前よ、今までずっと数億年も待ってたんだから。明日から股が痛い日々が続くわね、でもその痛みが私には嬉しい」

 

永琳は右手で永琳のお腹を撫で始めた、お腹の方はまだ気が早いと思うんだが。俺たち月人は子供に恵まれないから出来る可能性は低い、一回で当てるのは無理だろうな

 

「覚悟するんだな永琳、一回じゃ終わらせんぞ」

 

「そうね、覚悟はとっくの昔に出来てるけどいざとなると緊張するわね。それと弘の部屋にあった本は全部燃やしたからね」

 

馬鹿な!?あれは俺が月から持って来た大事なエロ本なのに!なぜばれた、厳重にして天井裏に保管したはずなんだが

 

「お前、凌辱されながら犯されたい様だな永琳」

 

「どうぞ」

 

永琳は両手を広げて待ってる。する訳ないだろうこんな参道で、誰かに見られたらどうする気だ永琳がいる方向は神社があるんだが奥から誰かが走って来た、スゲー早い。そいつは近くまで来ると両手を前に出しながら飛びつき襲って来たので

 

「いただきまーす!!」

 

「神使の者が神を喰い殺すなんて前代未聞だぞ」

 

俺は体を横にずらして避けた、俺が避けたせいで橋の周りにある池に落ちて沈んだ。生きてるだろうか、永琳と池を見てたら浮かんで、犬かきしながら顔を揺らして水気を飛ばし顔を橋に立ってる俺と永琳に見上げた状態になってる

 

「冷たい冷たい冷たい寒い寒い寒い!!神様どうして避けるのさー!?私の愛の抱擁を抱き留めてよー!!」

 

「いただきますって言ったじゃないか。あれは抱擁に使う言葉じゃないぞ影狼」

 

「私達二ホンオオカミはいただきますを愛してますって言うんだよー!だから私が噛みついても喰われても気にせず抱き留めてよねー!!」

 

「影狼、俺を殺すのは神奈子と決まってるんだぞ。俺を殺す前に神奈子と話し合え、噛みつくにしてもせめて殺さない程度に噛みついてくれよ」

 

「うーん、善処するよー!!」

 

善処するとは曖昧な返事をしやがって、善処は了承といった意味ではなく努力しますと言った言葉だぞ。俺は影狼を池から出そうと思い橋の上で右手を差し出す。今は冬だからこのままだと凍え死んでしまう。影狼も右手を差し出して俺の右手と絡めてきたので引っ張るが影狼の服に水が蓄えられて重い。渾身の力を振り絞って引っ張り影狼を橋の上まで上げたが影狼は両手で影狼の体を抱きしめるようにして震えて縮こまる

 

「ありがとう神様。でも寒いよ寒いよ!!鮭を食べたいよ!」

 

「仕方ないな、神社に戻るか。行くぞ永琳」

 

「そうね、風邪を引かれたら困るからね」

 

俺と永琳と影狼は神社に向かって歩き出す、影狼は長いストレートの黒髪、狼の耳が頭に生えて両手の爪は長めで赤い爪がある。服装はロングドレスを重ねて着てる感じで、下から着てる順に言うと黒、赤、白だ。それと鎖骨辺りに黒いドレスを纏める為かトパーズみたいな装飾品を付けてる。ドレスに水気をたっぷり吸ってるので重そうにして歩いてる、流石にここで脱がせるわけにはいかないし神社に向かおう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社に着いたので影狼の服を永琳が脱がして客間にある火鉢に影狼は温まって貰う事にした、影狼の傍には永琳がついてるし大丈夫だろう。それとこの神社は広くなってる、龍神が言うには咲夜は空間も操る事が出来るそうなので空間を操り神社を拡張したそうだ。外から神社を見ても前と変わってないんだが、中に入ってうろつくと広くなって部屋も増えてる。凄い便利な能力だ、前にリフォームでもしようかと考えたがこれなら問題は無くなった。しかし時間を操れて空間をも操るとは時間の神クロノスとギリシア神話のカオスが合わさった能力だな。カオスは厳密に言えば違う意味かもしれないが

 

台所に向かったらまだ藍が料理を作ってるようで忙しそうだ

 

「星はまだご飯を食べてるのか」

 

「はい、凄い食べっぷりですね。作ってる私としては美味しそうに食べてくれるのでうれしい限りです」

 

藍は無駄のない動きで、てきぱきと料理を作りながら俺の質問に答えてる、星を見ようかと隣の部屋に行くと星はお椀に白米をてんこ盛りにして右手にある箸を使いおかずを取りながら白米を口に入れて食べてる。凄い速さで食ってる、俺が星の向かいに座ると星は一旦食べるのをやめた

 

「食事中に済まない。少し聞きたい事があってな」

 

「いえ、私は食べさせて貰ってる身ですからお気になさらず。それで聞きたい事とは何でしょう」

 

「二つ聞きたい事がある。星は虎の妖怪なんだよな、この大陸に虎っていなかった気がするんだがどうやって生まれたんだ」

 

「そうですね、この大陸には虎がいませんが海の向こうの大陸には虎が有名でして。海を越えて虎の話がこの大陸の人間に伝わり、人間が虎をどんな生き物か考えて生まれたのが私です。ですから私は虎の妖怪ですが虎の妖怪ではありませんね」

 

成程、だから星は藍やてゐ、ナズーリンと影狼みたいに頭に獣耳が無いのか。藍、てゐ、ナズーリン、影狼は獣から変化した生き物、妖獣と言う存在で人間みたいな姿になり妖怪化した生き物だ。てゐは妖怪じゃないけど、だが星は髪色が金色と黒が所々にあり髪をメッシュしてる感じ、背中には羽衣みたいな白い輪があり背中に纏ってる。これは天衣かもしれない、羽衣に似てるし。腰には虎柄の腰巻をしてるが虎柄の腰巻なんてヒンドゥー教のシヴァみたいだな、あの神は破壊を司る神だったか

 

「じゃあ最後に、星が殺されたら殺した相手の体に乗り移ると聞いたが、詳細を差し支えなければ聞かせてくれないか」

 

星は机に乗ってるお椀を眺め、間を置いてから俺の顔を見て口を開く

 

「私ははっきり言って脆弱な妖怪です、この国にいる妖怪ですが私では勝ち目はないです。その代りに私は殺した相手に乗り移りますが、正確に言えば乗り移るのではないのです」

 

「だが殺した相手の体の主導権を握るんだよな?だったら乗り移るんじゃないのか」

 

「いいえ、乗り移るとは相手の体を奪う事だけの意味ですが。私はその先、乗り移ったその体を作り変える、つまり今の私の様な姿になります。どんなに抵抗しても無駄ですね」

 

つまり、俺が星を殺したとして星は俺の体の主導権を握るが握った後は体が作り変えられて、俺の体が目の前にいる星の姿に作り変わるって事だろうか。何だかややこしいな、だが力は弱くてもそんな力があるなら弱くは無いと思うんだが。弱いけど厄介な妖怪って事か

 

「私は殺されることはあっても魂だけはこの世に残りますし黄泉に行くことはまずあり得ません。魂と言いましたがこれを魂と言っていいのか微妙な所ですが。私の名 寅丸星も今までに乗っ取った人間の名を貰ってますから本当の名でもありませんね」

 

「何だか弱いのか強いのか分からないな星は。まあ、いいや。これからは神使としていてもらうし気にするのはやめる。だから名が本名じゃないとか気にしないぞ」

 

「自分で言うのもなんですが私は神も妖怪も相手の体を乗っ取るような物なんです。もう少し考えてはいかがですか、ある意味私は不老不死の存在なんですよもっと考えて下さい」

 

「と言ってもそんな口から涎が出てる妖怪に言われても怖くないな」

 

星は机にあるハンカチで口から垂れてた涎を拭き、机に並んでる料理を凝視してる。長話しすぎたか

 

「食事中に済まなかった、もう話は終わりだ。気にせず食べてくれ」

 

「申し訳ないです、ではいただきます」

 

星は机に乗ってたお椀を左手で掴み白米を口に入れて、机に並んであるおかずに右手に持ってる箸で掴み。口に入れて噛んで呑み込んだら箸を持ちながら、湯呑を掴み口に持って行って飲んでる。餓死寸前の者にはお粥がいいそうだ、急いで食べると胃が破裂し死ぬと聞いた、だが最初に桃を食わしたし大丈夫だろう多分。星の食べっぷりを眺めていたらふすまを開けて、てゐが来た

 

「祭神様ー民が祭神様にお目にかかりたいってさー」

 

「珍しいな、民が来るとは。よし向かうか」

 

立ち上がり民の元へ向かおうとしたら壁に飾ってた喜怒哀楽の仮面が光る。光り終わると壁に飾ってた喜怒哀楽の仮面の床には女の子が寝ころんでいた、緊急事態、どうやら生まれた様だ。付喪神が

 

「何てタイミング。悪いがてゐ、永琳を呼んで来てこの女の子を診て置いてくれと永琳に伝えておいてくれ

 

「分かったー確か客間にいたよね。じゃあお師匠様に言って来るね祭神様ー!」

 

てゐは駆け出し客間に向かった、星は食べる事に夢中で気付いていない。この女の子ピンクのロングヘアーで睫毛もピンクだ、服は青のチェック柄の上着にバルーンスカートを履いてる。胸元にピンクのリボンがあり。このスカート見てるとかぼちゃパンツを思い出す。それと女の子の周りに色んな仮面がオーラみたいなのを纏い浮かんで幽霊みたいに飛んでるので怖い。だが今は民に会いに行くのが優先なので今は置いて行こう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民がいる部屋に向かいふすまを開けて中に入り民と向かい合いになる。民はひれ伏したままで俺は座る。

 

「珍しいじゃないか、神社に来るとはどうした」

 

「お忙しい所恐縮です、まずは会って下さりありがとうございます」

 

「ええい、やめろやめろ。そんな堅苦しいのはやめろとお前が子供のころに何度も言ってるだろう」

 

「いいえ、弘天様はこの国の神、そして君主様であらせられます。ですからこれこそが私達民が王に接する態度なのです。昔の私は愚かでした」

 

どうして俺の周りには堅苦しい奴が多いんだ。もっと気楽にしてほしい物だ。そもそもこいつはやんちゃな悪戯小僧だったはず、俺にもタメ口で話すいい子供だったのに大人になってからはこんな口調だ。時間とは悲しい物だな

 

「石頭め、それで何の用だ」

 

「実は私に子が、娘が生まれました、名を付けたいのですが私が付けるより、この国の王で神の弘天様が名付け親だと縁起がよく、無病息災な娘になると考えまして」

 

「そうか、娘か。美人な娘になったら妻に貰おうか」

 

「弘天様になら私めは構いません。むしろ貰って下さい」

 

「おいおい、嫌がってくれなきゃ困るぞ。それに娘が嫌がるだろうからやめて置け」

 

「そうでしょうか、ですが子供の頃に洗脳、もとい言っておけばすんなり行きそうですが・・・・・」

 

聖はひれ伏したまま小声でぶつぶつと何か言って考えてる、恐ろしい奴だ。そう言えば娘の名だったな、ちなみにこの民の名は聖と言う。苗字じゃなく名は聖だ

 

「それで、聖よ。娘の名だったな」

 

「おお、そうでした。では弘天様。何かいい名は無いでしょうか」

 

丁度いいのを考えてたしそれを使うか

 

「蓮という花は泥の中から綺麗な花を咲かせると聞く、だからどんな環境でも汚い泥の中、世の中でも清らかな心を持って綺麗な女性になって欲しい。だから白蓮、白蓮だ」




この白蓮が諏訪国(長野県)に生まれた話ですが信貴山縁起を参考にして、蓮の花の花言葉は、清らかな心、神聖、沈着があり白蓮の名はその意味も含め名付けました。

付喪神は「神」の名がありますが妖怪扱いですからね。どうした物か、神にするべきか妖怪にするべきか


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諏方大明神画詞

予約投稿

ここでは付喪神は神、九十九神は妖怪扱いで行きます。ですがこころについては神にするか妖怪にするか未定です。後書きが馬鹿みたいに多いので今回も気を付けて下さい




誰がこの名を聞いてもおかしくと思う名では無い名だと思う。聖の娘を白蓮と名付けたから俺は白蓮の名付け親になったと言う事だな、聖はひれ伏したまま俺が言った名を 白蓮 と呟いて間を開ける。正直、男と二人っきりで向かい合って間を開けられると困る

 

「弘天様。私めの娘の為に素晴らしい名をありがとうございます。本当にその名を賜ってもよろしいのですか?」

 

「気にせず貰え貰え。聖は俺の義理の父親になるのかもしれんのだからな、今の内にお父様とでも呼んでやろうか」

 

「ご、ご冗談を。そんな事が民に知られたら私は民の皆に何とも畏れ多い事をさせてるなと雷を落とされます。いいえ、最悪私めが民に殺され死の可能性も・・・・・」

 

聖は顔を上げたが真っ青だ。いくら諏訪の国の民は狂信者が多いとはいえそんな事しないと思うが、否定できない部分があるから恐ろしい

 

「じゃあ聖。早速奥さんの所に戻って娘の名、白蓮の名を教えに行け。聖の奥さんも気になってるかもしれん」

 

「そうですね。では弘天様、本日は娘の為に名を授かりありがとうございました。私めの娘は身に余る光栄でございます、諏訪の国の王で神が名付け親なのですから」

 

話を終えたので解散することにした。俺はさっきの喜怒哀楽の仮面から生まれた少女を見に行こうと思い歩き出す。聖の子供の頃みたいに生意気で盾突く人物は諏訪の国にいて欲しいな、生意気な奴や盾つく奴は好きだ。俺は諏訪の国の王で神だから崇拝されて崇められてしまう。だから俺に対して嫌ってくれたり軽く接してくれる人物は貴重だ、もっとそういう人物や子供は増えて欲しいんだが、親が子に教えてるらしい。俺に対しては常に畏れ、敬い、崇拝して崇めるようにと教育、もとい洗脳をしているらしい。そんな事しなくてもいいと言っても民は頷かず頑なに譲らない。民は俺の命令ならどんな事でも聞くがこれだけは全く聞かないから困ったものだ。お蔭で俺の男友達は皆無。部屋に戻ると永琳と諏訪子、紫と幽香が部屋にいて机の上にはお椀などの物が無くなってる。星は食べ終えた様だが部屋にはいないので腹ごなしに散歩にでも行ったのだろうか、少女は布団に寝ころんでいてまだ目を覚ましてない様子。隣の部屋の台所から水が流れる音が聞こえる。藍が皿などを洗ってるのだろう

 

「少女の状態はどうだ永琳」

 

「生まれて間もないから寝てるだけみたいね。時期に目を覚ますわよ」

 

永琳は医療器具を片付けつつ答えた。問題は無いようだ、目を覚ますまで気長に待つとしよう。布団の横にいる諏訪子と幽香の間に入り、胡坐しながら左足の太ももに左手の肘を置いて手のひらを使い顎を支えるようにして眺めているが、この少女は神なのか妖怪なのか。神気や妖気などが感じ取れず、九十九神なのか付喪神なのか今は分からない。はっきり言って、諏訪の国は妖怪は沢山増えたが神は俺と永琳と諏訪子と藍と神奈子しかいないから少ないし神だといいんだが九十九神だと恨みを抱いて妖怪になるが付喪神は違う。付喪神は道具や生き物に神や霊魂が宿った物が付喪神と言われてるからだ、どっちも同じ存在で妖怪と言われてるがな。

 

「幽香、来い」

 

「うん」

 

いつも通りに隣にいた幽香は特等席に入ってきて座る、幽香の頭を撫でつつどうしたものかと考えるが考えてもどうしようもないので考えるのをやめた。向かい合いの永琳の隣にいる紫は少女に顔を向けていたが首を動かして顔を俺に向けて来た

 

「この子、今は曖昧な存在になってるよお父さん。それと誰と会ってたの」

 

曖昧、それはこの少女から神気も妖気を感じ取れないからそう言ってるんだろうか、紫の能力の境界も結構曖昧な物だから感じ取れるのかもしれない

 

「会ってた奴は聖だよ聖」

 

聖の子供の頃はよく紫と幽香と遊んでいて二人の友達、今じゃあ見た目は聖の方が大人になっちまった。紫と幽香はあれから、まだ村で国の名は無名だったあの頃から見た目は変わって無いのに

 

「そう、最近会ってなかったけど聖が来たんだ」

 

紫は正座しながらまた少女に無表情で顔を向けて見てる、隣にいる諏訪子が俺の服の袖を引っ張って来た

 

「この子が神になったらいいけどね。諏訪の国は神が少ないなって前から思ってたから」

 

「確かにそうだな諏訪子、諏訪の国は神が少ない。だが神を増やすにしても中々巡り会わんからな」

 

本当に神は信仰や畏れで生きているのかは山城国、篁の屋敷であの男に話を聞いてからは分からなくなった。例えばだ、言い方は悪いが月人は神として上位互換の存在で、地球で生まれた神は下位互換の存在の可能性も考えられる。吸血鬼で例えるなら吸血鬼は日光に弱かったり、流水が駄目だと言われてる。この場合の吸血鬼は地上で生まれた神と言う事で、吸血鬼の弱点、日光や流水。その他もろもろの弱点が無くなり克服した吸血鬼、信仰や畏れがいらない神が月人ではないかと言う考え。まあ、今の所は憶測だが。

 

「どうしたの弘、眉を顰めて難しい顔をしてるけど」

 

「ん、ああ。気にするな永琳」

 

永琳に何でもないと首を振り、幽香を抱きしめる。俺の頭では考え付かないな、永琳に頼るか?いや、駄目だ。まだ話す訳にはいかない。無意識に幽香の体を抱きしめる力を強くしてしまい、幽香の口から声が漏れた

 

「すまんすまん、幽香痛くなかったか」

 

「大丈夫よお父様。こんなに激しく求められて私は嬉しいから」

 

誤解を招きそうな発言をしてるが、幽香の体を後ろから抱きしめただけだ。紫は少女を見るのに集中していて気付いて無いし医療器具を片付けた永琳は笑顔のままで俺と幽香を見てる。いつもなら永琳は呆れるんだが今日俺と永琳はまぐわう、レイプするからか笑顔のままだ。隣にいる諏訪子の腰に手をまわし、手のひらを使い諏訪子の体を俺の方に引きずるが、諏訪子の体を引きずったが引きずった感じが軽すぎる。ちゃんとご飯を食べてるのだろうか。諏訪子も抱き寄せたが諏訪子の表情は無表情で変化は無い、何かリアクションが欲しいと思ったのでいま思いついたことを実行することにした

 

「諏訪子、俺は諏訪子が好きだ」

 

「私は別に好きじゃないよ父さん」

 

ぐはぁ!!!!!今の言葉は深く心に刺さった。今まで生きて来た人生の言葉で一番効いたぞ・・・・!!娘から好きじゃないと言われてもう無理だ。立ち直れない。向かい合いにいた永琳はため息出して諏訪子に何か言ったみたいで、腰に手をまわしていた俺の左腕を諏訪子は剥がし、諏訪子は立ち上がってから二人で部屋を出て行く。俺は打ちひしがれて動かず止まっている、咲夜に俺の時間を止められたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の顔を見終えてお父さんの顔を見たけど傷心の表情。幽香はいつも通り無表情、幽香は表情の変化は薄いけどその分言葉にして相手に自分の気持ちを素直に伝える女の子みたい。幽香はお父さんの胡坐した上に座ってお父さんにもたれ掛り後ろから抱きしめられてるから、羨ましい。私がしてもらうと正気じゃいられなくなるから仕方ないけど

 

「ど、どうしたの幽香。お父さん魂でも抜けてるんじゃないかって思うほどの表情だけど」

 

「そうね、紫ってお父様に好きじゃないって言った事あるかしら?」

 

幽香はいつも通りの口調で聞いて来たけどそんな事言える訳が無い。あの頃、初めてお父さんと永琳お母さんと出会ったあの日、お父さんと永琳お母さんが諏訪の国が出来る前の村に来て私と幽香を娘にして助けてくれた。私と幽香は妖怪なのに不自由なく生活できてるのはお父さんと永琳お母さんのお蔭、だからそんな言葉は私だけじゃなく幽香もそんな事を言うなんてあり得ない。私は人間が好きかと聞かれたら好きだと即答できない、むしろ嫌い、大っ嫌い。もちろん諏訪の国の民の皆は大好き。皆大事な家族だと思ってる。諏訪の国にいる神も妖怪も皆 皆大好き。だけど他の国の人間、私は他の国の人間に対して胸に抱いてるこの感情は間違いなく憎悪。私は神と妖怪と人間が手を取り合って本当に生きて行けるのかが疑問、結果論で言えば諏訪の国は生きて行けてる。種族の壁なんて関係なく皆で手を取り合っていける国、神も妖怪も人間も皆仲良く生きてる、神も妖怪も人間もみんな仲良く生きて行けると考える人には理想郷と言える場所。平等ではないけどね、諏訪の国には王がいるから皆 王には逆らわないし逆らう気もない。

 

「そんな事私は言えない。幽香がそんな事言う訳ないし諏訪子が言ったの?」

 

「そうよ、私達の妹 諏訪子が言ったのよ。素直じゃない妹。生まれたばかりの頃は素直だったけどね」

 

私と幽香はお父さんが諏訪の国を作る前の村、諏訪子より先にお父さんと永琳お母さんに出会って娘になったから私と幽香は諏訪子のお姉ちゃんで諏訪子は私と幽香の妹。

 

「素直じゃないって、誰に似たのかな。お父さんと永琳お母さんを見てもどっちも自分に正直で素直な性格だけど」

 

「今はそうでも昔は違ったんじゃないかしら。永琳お母様も昔は素直じゃなかったのかもしれないわね」

 

永琳お母さんが素直じゃない・・・・・頭の中で思い描いてみたけどダメ。思い描けないし永琳お母さんに素直じゃない時代があったなんて正直信じられない。

 

「えー無い無い。あの永琳お母さんに限ってそんな訳が。想像できないわよ」

 

「お父様と永琳お母様は神様だから、その答えは言葉通り神のみぞ知るって事ね」

 

確かにお父さんと永琳お母さんは神様だから言葉通り、そう言えばお父さんは放任主義の様にしてるけど実際は過保護と言えるくらい親馬鹿。多分、お父さんはその事に気付いて無いだろうけど。

 

「時々思うけどお父さんって永琳お母さんより親馬鹿じゃない?」

 

「私もそう思う。親馬鹿だけど私はそんなお父様でも愛してるわよ」

 

「よくそんな恥ずかしげも無く言えるわね。私には無理よ」

 

「紫は照れ屋さんだから、今は無理でも大人の女性になれば今より余裕が出来て言える様になるわよ」

 

大人の女性になりたいけど、まだ私の体の発育は良くない。目標は永琳お母さんみたいな大人になりたいけど私が永琳お母さんの様な大人の女性になる日が来るのかな、その日が来たらお父さんを誘惑して・・・・・考えてみたけどそんな事私に出来る訳ない!!!!

 

「そうだといいけど・・・じゃあ幽香。今はまだ私達はお父さんと永琳お母さんの娘だから娘としてお父さんを慰めましょうか」

 

「慰めて立ち直ればいいけど、分かったわ紫、やってみましょうか」

 

私はお父さんに近づこうと正座をやめて立ち上がり少女を横目で見ると、お布団で眠っていた少女が目を閉じたまま起き上がった。ちょっと驚いたけど私は恐る恐る話しかけたけど、少女の周りを色んなお面が浮かんで怖いよ

 

「お、お目覚めかしら。気分は悪くない?」

 

私が話しかけたら少女は首を動かして私を見上げた。少女は無表情で何を考えてるか読めない。お互い見つめあってたら少女は口を動かした

 

「私の名」

 

「名?名前がどうしたの」

 

「生まれたばかりで名が無い。だから名を付けて欲しい」

 

この少女、無表情だけかと思ったけど酷く棒読みで言葉を口にしても感情がこもってない。いきなり名を付けろと言われて私は慌てふためくけどいい考えが思い浮かばくて困ってたら幽香が助け船を出してくれた

 

「落ち着きなさい紫、不測の事態が起こると頭が真っ白になるのは紫の困った所なんだから」

 

「そ、そうよね幽香。まずは深呼吸して落ち着くのよ私」

 

数回ほど大きく深呼吸をして落ち着かせる、少しは落ち着いた気がする。名前を付けろと言われてもどうしようかしら、私にいい名を付けるのは自信が無い。

 

「まずは私たちの名を教えましょう。私は幽香でそっちは紫よ。それで貴方の名だけど、どうしようかしら」

 

「幽香と紫」

 

少女は私たちの名を口にして、幽香はお父さんに抱き着かれながら考える、いい名が思い浮かばないみたいだけど。

 

「聞いた感じこの子言葉に感情が無いわね。心が欠落してるのかしら」

 

「幽香、それは無いと思うわよ。キクリみたいな感じじゃないかな、キクリはただ感情、色んな事が無知なだけって感じがしてこの子と似て無いかもしれないけど」

 

少女は無知な感じがしない、最初に名を付けて欲しいと頼まれたからある程度の事は、自分が何者かは理解してると思う。こうなったらお父さんに助けを乞うしかない!お父さんに近づこうとしたけど、お父さんの表情がいつの間にか元に戻ってる。話を多分途中からだと思うけど聞いていたから思慮の表情で名を考えてるみたい、最初から聞かれてたら困る。親馬鹿とか言っちゃったし嫌われたら私は幽香に抱きついて泣くしかない

 

「そうだな、まだ生まれたばかりだからか心を持ってない様子だ、だから心じゃなくひらがなでこころ。今日からお前の名はこころだ。いや、待てよ」

 

「急に喋らないでよお父さん、怖いから」

 

「悪い、怖がらせる気は無かったが。諏訪子の言葉が強烈過ぎた。この俺が言葉で心を抉られるとは恐ろしい娘だ、流石永琳の子だな。そうだ、奏とは品物の種類や形をそろえて、神や君主の前に差し出すと言う意味がある。だから 奏 こころにしよう」

 

まだお父さんの顔は青白いけど何とか正気で気は確かみたい。ここまで弱ったお父さんは初めて見るけどやっぱり親馬鹿なんだね、少女。奏 こころと名付けられた女の子は右手を左胸の、心の臓に手を当てて自分が名付けられた名を復唱した

 

「奏 こころ。心じゃなくてこころ。それが名」

 

「そうだ。今はまだ心が不完全だから平仮名で書くがな。いつか、こころから心になって心を持てる様にだ。後はこころが神か妖怪か、どっちだろうな。」

 

お父さんはこころと喋ってる、さっき言ったお父さんの言葉、奏とは品物の種類や形をそろえて、神や君主の前に差し出す、つまり形をそろえて、心の感情を全て揃えてと言う意味もあるはず。それとお父さんは神で諏訪の国の君主だから丁度いい名だ。とか考えてそう。お父さんとこころは話し終えたみたい。お父さんは用事があると言い部屋から出ようと立ち上がろうとしたけど幽香が特等席に座ってたから、お父さんは幽香に一声かけた

 

「立ち上がるぞ幽香」

 

「分かったわ」

 

幽香は特等席に座るのをやめて私の隣まで来て正座した。お父さんにこころを頼むぞと言われて私と幽香はこころのお世話をする事にした。だけどこころが欠伸をして布団に寝転がりまたこころはまた眠った。そう言えばさっきお父さんは聖と会ってたって言ってた、聖か、聖は友達だけどあれから私達の肉体はまだ成長せず聖だけは大人になってる。私達だけ取り残されてる気分。このまま行くと聖は近い時間に

 

「…ねえ、幽香。諏訪の国が出来る前の村の人間、私達の、あの時の事を知ってる人間は減って来てる。人間以外は私達と幽香、それにお父さんと永琳お母さん。人間はどうしてこうも、脆いのか」

 

「私達 妖怪、お父様達 神と比べてもしょうがないでしょう」

 

「分かってる、分かってるよ。でも、私はあの時の人間達とまたお話したい、寂しいよ。あの時の、私達の事を知ってる人間が減るのはやだ、いやだ。まだ私が蓬莱山 紫 じゃなくてまだただの紫だった頃の、私の事を覚えている人は多い方が嬉しい」

 

「全く、紫は妖怪なのに人間みたいな事を。自然の摂理なのよ紫。いくらお父様や永琳お母様でも無くす術があったとしてもそれをしないでしょうね。それに私達は何度も村の皆が黄泉、常世に行く所を見送ったけど、皆、後悔が無さそうな安らかな表情で死んでいったじゃない、本人が幸せそうならそれに越した事は無いわよ」

 

「幽香は何もせずにただじっと皆が亡くなっていくのを見ていろって言うの」

 

「そうよ。これは生きていく上で、生き物として死ぬ事は必要な事なのよそれは私達妖怪も同じこと。私達妖怪には寿命があるんだから気が遠くなるような遠い未来でも亡くなる日が来るわよ」

 

「理解できても私は納得できないよ幽香」

 

私の能力を使えば皆の寿命を、死という概念を無くす事は出来る。だけどそれを使うとお父さんと永琳お母さんは黙ってない。だから能力を使って生き永らえさせることは出来ない、私は人間、諏訪の国の民の皆以外はどうでもいい、皆とずっとずーっと一緒にいたい、ただそれだけなのに。私はどうしたらいいの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんに着いて来てと言われたので、母さんの背に着いて行く。部屋を出て廊下を歩く、歩いて分かったけどこの神社広くなってる、何で?一本道の廊下まで来て奥まで歩くと一つのふすまがある。中に入ると畳とちゃぶ台だけがあり他には何も無い。見た感じだと内密の話をする為の部屋みたい。とりあえず座りましょうかと母さんに言われたので正座して座り、向かい合いに母さんが座ると思ったら正座をしてる私の背に来てそのまま腰を下ろし、母さんは座った。と思う、背中だから見られないからね。どうしてわざわざ背に座るのだろうと考えてたら、母さんが後ろから抱き着いて来た

 

「本当に不器用な子。本心を隠して言いたくもない言葉で誤魔化すなんて、あの人似じゃなくて私似ね。私の娘だから似てるのも当然かしら、私の時と違って諏訪子は大人しいけどね」

 

母さんが後ろから私を抱きしめ、右手を使い私の頭を撫でながら次は私の右頬を優しく撫でた。母さんが何の為にこの部屋に私を連れて来たのかやっと理解した。蛙の子は蛙と言う事かな、だとしたら嬉しい。大好きな母さんに似てるなら嬉しいに決まってる

 

「私は母さんみたいに父さんには素直に話せないよ。どうやったらもっと上手に父さんと話せるかな」

 

「私の時はあの人が無理矢理引っ張ってくれたからね。私の時と諏訪子の時と比べて状況も違うからどうしましょうか」

 

母さんは私の右頬を撫でつつ軽く笑いながら語り掛けている。母さんは知恵の神と諏訪の国の神として崇められている。つまり母さんは天才らしいけど天才でも分からない事があるんだね

 

「当然よ諏訪子。私でも分からない事もあるわよ」

 

「す、凄いね母さん、私の考えを読むなんて」

 

「大事な娘の事よ、母親として当然。諏訪子が母親になった時に分かると思うわよ。そんな事になったらあの人は発狂するか、その相手を始末するでしょうけどね」

 

「父さんって冷めてる感じだけど実際は母さんより娘を可愛がってるよね、喋っててそう思うよ」

 

母さんはクスクス笑いながら、私が言った言葉を肯定する

 

「そうね。娘三人持てば身代潰すって言葉があるわ、諏訪子、紫、幽香。この三人は私とあの人の娘だけど絶対に嫁に出さないでしょうね。本当に馬鹿な人よ。お金には今の所困って無いけどね」

 

だけど私にはそんな馬鹿な人でも。と小声で聞こえたけど、それを聞くと惚気話が長引くのでそこは触れずに会話する。母さんは惚気話を喋りたいようで隙あらば会話してる途中に惚気話を振って来るので、私と私以外の皆は極力触れずに会話してるよ。うっかり聞いてしまい延々と惚気話を聞かされ、1日かけて聞き終えたら皆げっそりしてるけどね。母さんはまだ喋り足りないそうだけど。だけど私の姉さん達、紫と幽香は父さんの妻になるのは決定事項らしいから、残ってる娘は私だけだ。だから母さんに聞く

 

「私、誰かに嫁がなくてもいいの?今の時代、今の時代だけじゃ無いけど娘を政略結婚に使うのも珍しくないんだし私を使ってもいいんだよ母さん」

 

母さんは私の右頬を撫でていた右手と空いていた左手を使い私の両頬を引っ張った。結構痛いし怒らせちゃったみたい。父さん母さんに限った話じゃないけど諏訪の国にいる皆が怒った所を見た事が無い

 

「お馬鹿。諏訪子はそんな事気にしなくてもいいのよ、諏訪子の旦那さんは諏訪子自身が見つけるのよ。このまま過ごせばあの人の妻の一人になるのは間違いないけどね」

 

だから、あの人みたいに自由に。好きに生きなさいと。母さんは私の両頬を抓っていた両手を頬から離した両手で私の体を抱きしめて小声で呟いた。私は父さんと母さんの娘だけど血は繋がってない、父さんと母さんの信仰が多すぎて混ざり合い、私は生まれたから血は繋がってるとも言えるかもしれないけどその辺は結構曖昧。私の体は信仰の塊だからね、信仰は親子の血より濃いのか薄いのかが微妙な所だから、いくらあの父さんでも流石に私まで妻にするとは思えないんだけど

 

「そっか。ごめんよ母さん。考えが足らなかったよ」

 

「気にしないで諏訪子。子が悩んでいるなら親はどんな事でも助けるのよ。家族なんだからね。諏訪子は私とあの人に何かあったら諏訪の国の王って言われてるけど、そんな事は気にしちゃ駄目よ」

 

「・・・・・・うん。分かったよ母さん。私、父さんと母さんの娘として生まれて幸せだよ。ありがとう母さん」

 

「それは私の台詞よ諏訪子。諏訪子が生まれてくれて私もあの人も嬉しい、生まれて来てくれて本当にありがとう諏訪子。紫と幽香もだけど、諏訪子も大事な娘なのよ。それを忘れないでね」

 

私は、果報者だ。父さんと母さんは自慢の親だと、父さんと母さんの娘として生まれて来て本当に良かったって思える。だから私は、娘として、父さんと母さんを支えて行かなくちゃ。一番になれなくてもいい、ただ少しでもいいから、父さんと母さんの二人を支えたい

 

「思ったのだけど、諏訪子は今のままでもいいんじゃないかしら」

 

「今のままでいいの?」

 

「さあ、それは諏訪子が考えなくちゃ。ただ私の役目は色んな選択肢を増やす事だけでその中から選り抜きするのは諏訪子なのよ」

 

「私が選ぶの?」

 

「そう、諏訪子が選ぶの。諏訪子が思いつくのが、選択できるのが一つしかないなら私が二つにでも三つにでも増やす。そうすれば諏訪子自身が四つ目の考えを思い付いてそれを選ぶかもしれないでしょう」

 

私はまだ数百年も生きてない小娘だから、そんな考えは無かった。人生経験が浅いから思慮が足らないんだ。母さんは数億年は生きてると聞いたしどう考えても人生経験は豊富そう。容姿も中身も大人の女性って感じだし、亀の甲より年の功って事かな

 

「実はね、これは受け売りなのよ。ただ私が受け売りした言葉を諏訪子に教えてるだけなのよ」

 

「母さんにそんな事言うなんて、その人は母さんより賢いの?」

 

母さんの顔は私の背の方にあるからどんな表情か分からないけど、少し困った表情をしてるような気がする。十中八九父さんの事だろうけどね。母さんは色んな考え、表情みたいな事を隠すのが上手、だけど父さんの事限定だと反応が分かりやすい。

 

「賢くは無かった。でも頭は悪くは、いいえ。馬鹿じゃ上等すぎる人ね」

 

「馬鹿でも上等な人なのにそんな人の言葉が母さん、その人が本当に受け売り言葉の相手なの?」

 

「頭が良ければいいってものじゃないのよ諏訪子。頭が良すぎると人に頼られてしまう、そのせいで私はあの人と一緒にいられる時間が減ったわね。だから今は幸せよ。私が甘えたい時に甘えられるんだから。時間って本当に大事ね」

 

母さんは昔は考えが固く柔軟な発想が無かったのかな、今の母さんは色んな考えが出来る女性だけど、昔は違ったなんて言われても信じられないや。母さんがまた惚気話を始めた、これが始まると長い。だから私は軽く咳払いをして、母さんの気を逸らす。母さんも脱線した事に気付いたのか口を閉じた

 

「この話はお終い。じゃあ選択肢を増やすから諏訪子は私が言った選択肢を選ぶか、それとも自分が考えた物を選ぶか。どっちを選ぶかは諏訪子次第」

 

母さんは私を抱きしめ、耳元で囁きながら私に選択肢を増やした。だけど、どの選択肢も父さんに辛く当たる物ばかりで選ばせる気があるのか気になるんだけど。多分、選ばせる気は無いのだろう。意図的に父さんに辛く当たる考えばかりを出して、辛く当たる真逆の考えを私に選ばせる気みたいだね。何だかんだ言っても、父さんに負けず劣らず、母さんも娘には甘いよ。私は呆れつつそう思ったけど、急に母さんが軽く笑ったからどうしたのと聞いてみたら

 

「話は変わるけど諏訪子。弟か妹が欲しくない?」

 

「いきなり何言いだすのさ母さん・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社の中を見回ったけど広いな~ 何だか急に広くなった気がする。もしかして咲夜かな?咲夜と言えばこの諏訪の国にいる月人は、お兄様、永琳お義姉様、咲夜、そして私。豊姫お義姉様と依姫お義姉様は諏訪の国に留まる事は無いけど私の様子を見に顔を出しには来るって聞いた、本音はただお兄様に会いたいだけだと思う。思ったけど月人は銀髪が多い。永琳お義姉様、依姫お義姉様、咲夜、この3人は銀髪だから、依姫お義姉様は薄紫色に近い銀髪、私は黒髪だけどね。後、私は会った事無いけど、神綺さんとサリエルさんはお兄様と永琳お義姉様と幼馴染らしくて、二人とも銀髪だって聞いた。合わせて銀髪が5人だから、こうして数えると私の周りの月の関係者は銀髪が多い。

 

「妹様、この神社外から見た時は大きく見えませんでしたが、中に入ると意外と広いですね」

 

「面白くていいじゃないのナズーリン」

 

廊下をナズーリンと喋りつつ歩きながら探検してると、向かい側から誰かが歩いて来た。誰かと思ったら咲夜がこちらに向かって歩いて来てる、咲夜は歩きながら能力を使って時間を止めた。時間が止まってるから隣にいるナズーリンは時間を止められて動けないし喋れない

 

「あら、咲夜じゃない。久しぶりね」

 

「あまり面倒事を起こさないで下さいませ輝夜様、貴方に何かあったら私は、私の使命が」

 

「いいじゃない、従者に面倒をかけるのも主としての仕事よ。そう言えば、咲夜はお兄様の妻になったと聞いたけど。咲夜お義姉様とでも呼べばいいかしら」

 

「そ、それはご勘弁を・・・・・・」

 

咲夜は困窮した表情で私から目線を逸らした。実は咲夜は二卵性で夢子と言う名の身内がいる。どっちが姉か妹かは知らないけど、夢子は神綺さんと一緒にいると前に聞いた。咲夜の髪色は銀、夢子の髪色は金。何だか豊姫お義姉様と依姫お義姉様を彷彿とさせる。咲夜と夢子も姉妹だから。夢子もメイド服を着ていたけど赤と白を基調としたメイド服。もし咲夜のメイド服の色が青と白、そして夢子は赤と白だったなら。赤と青なら永琳お義姉様、豊姫お義姉様、依姫お義姉様と被っていた所だ。咲夜と夢子も姉妹な上に髪色まで被って服色まで被っても困る。

 

「まあいいけど。咲夜、メイド服を着てるわね、しかも色は白と黒 お葬式みたいなメイド服だけど誰かのお葬式でもあるのかしら」

 

「確かに白と黒を基調としたメイド服です、そうですね。輝夜様の兄上、あの方が不慮の事故で亡くなるかもしれませんわね。悲しい事ですが、輝夜様はあの方の死を、乗り越えて下さると信じています」

 

咲夜は嘆き悲しむ振りをしながら、メイド服のスカートのポケットにあったハンカチを取り出して目を拭った。お兄様がお亡くなりになる、ねえ?想像してみたけど、どんな状況でも生き残りそうな気がして軽く嘲笑う。私の髪色は黒、龍神様は私の髪色に合わせたメイド服を咲夜に着せたのかしら。咲夜は私の従者だから、咲夜のメイド服は白と黒を基調としてるのかもしれない。あ、でも龍神様の鱗は黒だった。だから龍神様は黒竜。天界には白龍がいて鱗は白色だって豊姫お義姉様から聞いたからそれでその色にしたのかも。それと咲夜の両足にソックスが履かれていて絶対領域? みたいな感じになってる。今の季節は冬だから寒くて履いたのでしょうね。

 

「そう、そんな日は来ないでしょうけど、来る日を楽しみに待ってるわ。ねえ、咲夜。月人って何なのかしら」

 

「月人は月人ですよ、月人が何者かなんてどうでもよくないでしょうか。その問いは妖怪は何なのか、人間とは何なのかと同義の問いになります。輝夜様は哲学のお話をご所望ですか」

 

「そう、ね。どうでもいいのかもしれない。気にしないで今のは忘れて」

 

「そうでございますか。それより輝夜様、輝夜様が月にいなくなってから私は弱り目に祟り目ですわ」

 

「何言ってるの咲夜。貴方も私と同様 神なのだから弱り目に祟り目な訳が無いでしょう」

 

私は従者の咲夜を月に置いて、豊姫お義姉様に頼んで地上に、竜宮城に住まわせてもらってた。地上の事をよく豊姫お義姉様から話を聞いていて興味があったから。幸い豊姫お義姉さまも地上によく来ていた、だから楽々と私は地上に来られた、でも咲夜を連れてきたら口うるさくなるから連れて行かなかったけど。まさか咲夜が地上に来ていたなんて考え付かなかったけどね。全く、誰に似たのかしら。依姫お義姉様の影響を受けてこうなったんでしょうけど困った物ね

 

「言葉の綾です。輝夜様は従者の私を月に置いて今までどちらに御出ででしたのですか」

 

「月よりも、月人が見下す地上よりも、もっと、もっと。下にいたのよ。良かったじゃない咲夜。お兄様の妻になれたんだから、泣きっ面に蜂な事があってもお兄様の妻になれて相殺、いいえ。プラスでしょう?」

 

「良くないですしプラスになる訳がありません。むしろ損失です」

 

損失だなんて、手厳しい妻ね。お兄様が聞いたら泣いてしまわれるわよ

 

「咲夜。諏訪の国にいる月人。永琳お義姉様、豊姫お義姉様、依姫お義姉様はお兄様の、 蓬莱山 弘天の何だと思う」

 

「八意様は言うまでもないかもしれませんが、あの方と諏訪の国の脳の役割ですね。天才と聞いてますから。豊姫様は能力で考えるなら両足、依姫様は両手でしょうか。最強の称号が相応しいと言える方ですので」

 

「そう。そして私はお兄様の、蓬莱山 弘天 の影。咲夜は」

 

「言わないで下さい、聞きたくありませんわ」

 

「つまらない女ね」

 

「輝夜様の視点で私は面白い女になりたくないですから良かったです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は神社から出てこれからどうしたものかと考えてたら空から何かが飛んで来た。あれは、文とはたての様だ。二人は大急ぎの様子で飛んできて、猛スピードで俺の前に降りて来て、はたてが早口で喋った。文は隣にいて話すのは、はたてに任せるようだ。

 

「危機的状況よ!鬼の大群が諏訪の国に向かって来てる!!しかもその中には三大妖怪で有名な大嶽丸までいて鬼の長は悪路王と来て大鬼人と言われている犬神丸もいる、私達の盟約に従い何とかして!」

 

「鬼の大群とな、悪路王と大嶽丸と犬神丸までいるとは厄介だな。まずは皆をこの場に呼ぶか。今も霧になっていて話を聞いていた萃香。悪いんだが皆を集めてくれ」

 

「うーん。悪路王と大嶽丸に犬神丸、ね。考えても仕方ないし、皆を集めるよ」

 

萃香は霧のまま鬼の名を小声で話して霧のまま皆を呼びに行った。ふぅん。こんな時の為に俺は戦力を増やして置いたのだ。備えててよかった・・・・・時間が惜しいのですぐさま皆を集める様 萃香に言い、文とはたてに顔を向けて仕事を言い渡す前に鬼が今どこにいるか聞いておこう

 

「さて、まず鬼達は今どの辺りだ」

 

「奥三界岳、南木曽岳の山辺りでしょうね。その二つの山を越えたら越百山に来ちゃう。越百山を越えられたら困るなんてものじゃない。それにこのまま行けば私達天狗が住んでる山、八ヶ岳まで来てしまうのよ」

 

奥三界岳、南木曽岳か。どうやら南西から来てるようだな、鬼を俺の支配下に置くべきか。いや、大群と聞いたしな、一桁以上いるだろうから、一桁ならともかく二桁以上もいるんじゃ駄目だな。そうだ、鬼達を天狗と河童が住んでる八ヶ岳に住まわせて萃香、勇儀、華扇に鬼達を管理させるか。鬼達も神である俺の支配下より同族の元にいた方がいいだろうし

 

「成程理解した。ならば最初にお前たち二人は偵察役だ。その機動力を生かし鬼達の視察に向かって情報を集めてくれ。ただし深追いはするな、こちらの動きに気付かれたら面倒だ、それに文とはたてじゃ絶対に鬼に敵わんだろうからな」

 

「それもそうね。分かったわ、指を咥えて見ていて諏訪の国を乗っ取られたら私達もただじゃ済まないからね!行くわよ文!!」

 

「正直面倒だけど仕方ないわねー。命がかかってるから行くけど。あ、それとですね弘天さん、他にも有名な鬼がいます、 鈴鹿 御前 滝夜叉姫がいるそうでして、二人は女性の鬼だそうです」

 

文ははたてに続いて飛び立とうとしたが振り返って、鬼の大群の中にいる女性の鬼の名を教えてくれた。気が利くではないか文よ。文は、では。と羽を羽搏かせて空を飛んではたての後を追い遠い彼方に向かって行った。勇儀と萃香と華扇は何て言うだろうな、同族と戦わせるのは気が引けるが最悪三人だけに任せるかもしれん。月人の問題は月人が片付けるように鬼の事は鬼同士で事を終えるのがいいからだ。神社から勇儀が出て来たが口元は口角を上げてる。表情から察するに萃香に話を聞いた様だな

 

「話は萃香から聞いたよ弘。悪路王に大嶽丸に犬神丸。しかも鈴鹿 御前 に 滝夜叉姫 までいるとは楽しくなってきたね。」

 

「楽しんでくれるのはいいがこれからどうする。勇儀と同族な訳だが、やれるのか」

 

「愚問だね。あの時弘は言ったじゃないのさ、諏訪の国と民を守って諏訪の国に仕えて欲しいそして国の一員になってくれ。って。私はあの時の言葉を、約諾を忘れてないよ。勿論萃香と華扇もね」

 

勇儀は両手を腰に当てからから笑う。勇儀は今赤い盃を持ってないがあの赤い盃は神社に置いて来たそうだ。そう言えばそんな約束したな、あの時はまだ戦力が俺と永琳と紫に幽香、藍に諏訪子に神奈子だけだったか。そう考えればよくここまで増えたもんだ

 

「それにね。悪路王と大嶽丸に犬神丸。鈴鹿 御前 に 滝夜叉姫とは私達と昔なじみでね、久々に本気でぶつかり合えるんだ、これ程 心を弾ませてるんだから気にする必要ないよ」

 

鈴鹿 御前は鬼だそうだが、鬼でありながらあの妖怪、土蜘蛛だそうだ。鈴鹿、どこかで聞いたような気がしたと思ったらあの鈴鹿山脈か。それと土蜘蛛は山の民とも言われてるそうだし山関係で繋がっているのだろうか。

 

「そうなのか。じゃあ気にせず前線で戦ってもらおうか。それと、鈴鹿 御前 に 滝夜叉姫は女性の鬼だと聞いたんだが美人か否か」

 

「同じ女として見ても二人は辨天だよ。ついでに言うと二人共その名は嫌っていてね、鈴鹿 御前 はヤマメと 滝夜叉姫 はパルスィと呼べって煩く言うんだよ。だからそっちの名で呼んでやった方が喜ぶんじゃないかね」

 

「ふむ。ヤマメとパルスィか」

 

確か、海の向こうの大陸にいる者も同じ名、パルスィと言う名があったが海の向こうの大陸から来たのだろうか

 

「そうそう。鈴鹿 御前 ・・・・・・じゃなかった。ヤマメ は桶を常に片手に持っていてね。中にはキスメって女の子がいるんだよ。」

 

桶にキスメって女の子が入っているのか。世の中には色んな妖怪がいるんだな。鬼達をどうやって屈服させるか。今パッと思いついたのがレティを使う案がある。今は冬だしレティの能力は寒気を操る程度の能力だ。つまり、冬の季節限定で寒気、気温を操る事が出来る訳だが、気温を操ると言う事は無差別攻撃な訳だから味方に被害が出るのでこの考えは無しだな。しかしだ、卑怯な手を使って勝っても鬼達は納得しないだろう。と言うかそんな事したら俺は萃香と勇儀と華扇に殺されるからしないが、鬼に横道はない、ただ、真っ直ぐにだ。だからここは今まで避けてしなかった、力で屈服させるか。まずは、そうだな。天界から持って来た羽衣を使う時が早速来た様だ。

 

「おやおや、私の亭主は一体何を考えてるのかね」

 

「どうやって叩きのめすか考えてるんだが、どうしたらいいと思う勇儀」

 

「私にそれを聞くと言う事は、勿論分かってるよね」

 

勇儀は両手を握り締めた状態で右手を俺に向けて来た

 

「無論だ。分かっているとは思うが萃香と華扇も連れて行け、置いて行ったら拗ねるからな。鬼達の場所は奥三界岳、南木曽岳辺りだそうだ」

 

幽香と美鈴を俺の護衛につけて、紫には他の仕事をして貰おう。これから始まるのは天下泰平でもなければ和平交渉でもましてや今までして来た様にお互いが得する様、穏便に交渉して済ます気もない。鬼に対して卑怯な手を使わず正々堂々と力で屈服させる、そう、これから始まるのは諏訪の国と鬼族との命運を賭けた、食うか食われるかの戦争だ。




今回の話は諏方大明神画詞に出てくる悪路王と橋姫が鬼女になる話と鈴鹿御前と食わず女房、別名二口女と滝夜叉姫と夜叉丸の話が混ざってます。諏方大明神画詞は坂上田村麻呂が諏訪大明神に祈った話しと安倍高丸を討伐する話、悪路王を安倍高丸と同一視される事があるのでその話を使いました。悪路王は他にも異称は多く存在してますがね。もう一人の鬼、犬神丸についてですが犬神丸は坂上田村麻呂が鬼人征伐に向かうんですが。鬼人の頭目犬神丸は、手下に夜叉丸がいましてね、あの鈴鹿山に出てくるんです、だから出しました。鈴鹿 御前 を出したんでね。夜叉丸も鈴鹿山に出てくるのでパルスィはあの有名な滝夜叉姫と夜叉丸を混ぜています。

ヤマメは食わず女房の話を混ぜてますね。食わず女房の正体は鬼だったり山姥だったりと言われてますが、地域によっては食わず女房の正体は蜘蛛だったりしますのでもうヤマメは土蜘蛛でありつつ鬼でいいんじゃね?と思って鈴鹿 御前 になりました。鈴鹿 御前と土蜘蛛は山に関係する者 同士ですからね。土蜘蛛の名の元は山の民だったと言われていますし、鈴鹿 御前は三重県と滋賀県の境にある鈴鹿山に由来した名ですから。それと土蜘蛛は人前に出てくるときの顔は鬼の顔、虎の胴体に長いクモの手足と言われて山に住んでると言われていますから鈴鹿 御前に丁度いいと思い、顔は鬼で出てるから鬼でも問題ないでしょう。ヤマメはあの有名な話源頼光のお話に出てくる土蜘蛛のお話で出そうと思ってましたがよく考えたら源頼光のお話は萃香と勇儀と華扇を仲間にする時の話で使ったのでやめました。使った話は大江山の鬼伝説です。

鈴鹿 御前はパルスィにしようと思っていたんですがパルスィは滝夜叉姫にしました、公式がそう言った訳ではありませんけど、パルスィの元ネタは橋姫だと思いますが、橋姫が鬼になる話がありますし、滝夜叉姫は怨念の塊で鬼になり滝夜叉姫は宇治の橋姫に関係してますし、夜叉丸も鬼なので滝夜叉姫と夜叉丸の話を混ぜてます。夜叉丸と滝夜叉姫は名が似てますが同じ人物ではありません。実は宇治の橋姫の橋姫は瀬織津媛と同一視されていまして、その瀬織津媛は木花開耶姫とも同一視されています、その話を最初書こうとしたのですが断念しました。咲夜とパルスィは姉妹の関係にでもしようと思ったんですが夢子と同じ金髪で被るので諦めねばなりませんでした。非常に残念です

キスメについてですが食わず女房には桶の話が出るんですよ。だからもうヤマメが桶を縄で括って縄を手のひらに持ってキスメを持ち歩いてる事にしました。ヤマメには食わず女房の設定も混ぜてるので。それと食わず女房は雪女の話と似てますよね、

諏訪の国(長野県~山梨県)にある八ヶ岳に天狗が住んでるのは公式設定ですし八ヶ岳の名を出しました。これで天狗がどこに住んでるか分かりやすくなったと思います。それで神話でですが富士山と八ヶ岳の背くらべと言う話で、その名の通りどっちが高いかと言う話ですが、八ヶ岳は富士山より高かったそうですが富士山の女神・木花開耶姫がそれに憤怒して八ヶ岳は富士山に蹴り飛ばされて八つの峰になったと言われていますがここではその話は起きていないので、八つに分かれず一つの山としてあります。他の話ではでいだらぼっちが蹴散らした話なんてのもありますがね、ですから富士山より高いです


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第六天魔王波旬

鈴鹿御前をヤマメ、滝夜叉姫はパルスィと踏まえた上で今回は読んで頂きたい。それと今回台詞と地の文が多すぎるのと独自解釈が強いので気を付けて下さい、

今更ですが、愚かにも私は旧作はともかく東方キャラを全員出す気でいます。前にも言いましたが紫には幻想郷を作らせる気は無いので。どうするか未だに悩んでいる東方キャラもいますけど。
私は基本気まぐれで嘘つきですので戯言と思って読み流してください。どうせエタルし



「盟主様に勇儀さんお話し中すいません。はたてと文はどこにいますか?すぐに帰って来るかと思ったんですが帰りが遅くて」

 

急に話しかけられて振り返ったが見たら天狗の一人椛がいた。

 

「ああ、すまんが二人には軽く偵察に向かってもらってる。軽くだからすぐに帰ってくるぞ」

 

「そうですか。では、待っている間に盟主様のお耳に入れたい話があります」

 

「おや、私はいない方がいいかね?」

 

「いえ、勇儀さんにも聞いて頂きたい事です」

 

天狗である椛、犬走椛は白髪で背中に少し大きめの刀と紅葉が描かれた盾を背負っている。今回椛が来たのは、どうも他国に住む人間共の動きがきな臭いと言う事で報告しに来たそうだ。萃香からも似た様な事を聞いていて、放って置くかと思っていたが、椛から話を聞いてそうも行かないかもしれん。人間か、俺は神だが他国の人間から見たら邪神だろうしな、神使以外の妖怪も住まわせてるし。俺を殺す為画策しているのかもしれん。まあ、その時俺の邪魔になるなら人間だろうと皆殺しだが。

 

「ふむ、人間か。殺すべきか、生かすべきか、悩むな。何か対策を考えねばならん」

 

「その時になって邪魔なら殺せばいいじゃない。今は鬼達を何とかするのが先だよ」

 

「む、それもそうだな勇儀。わざわざ知らせてくれてありがとう 椛。」

 

俺は椛に近づいて椛の右手を取り握手した。握手しながら面と向かって椛にお礼を言ったら椛は顔を俯かせた。椛の手はすべすべしていて触っているのが気持ちいい、勇儀は笑って静観している。天狗や河童は諏訪の国の盟約相手な訳だが、河童は神使にする予定だ、だが天狗はどうするべきか。いっその事、天魔に文とはたてと椛をくれと言ってみようか。くれなさそうだが。待てよ、鴉って烏だよな。白狼も狼な訳だ。これはアリなのか無しなのか

 

「い、いいえ。盟約に従っただけですのでお気になさらないで下さい」

 

握手を終えて、勇儀を鬼達の所へ向かわせようとしたが、はたてが帰って来た。早いな、まあ偵察だけだしな、文はまだ上空で偵察を続けているようだ

 

「偵察報告!どうやら鬼は男と女で分かれて別々で進軍して来てるみたいよ。さっきまでは男女ともに一緒に進軍してたんだけどね」

 

「あーそれは鬼女の中に男嫌いがいるからだね。別々になったのは我慢の限界だったんだと思うよ、前にも似た様な事があったし。だけど」

 

勇儀が流し目で俺を見てきたが、流石俺の妻の一人だ。良く分かってる。はたてが言うには、南木曽岳に女の鬼が、奥三界岳には男の鬼が集まってこちらに向かっているそうだが、男の鬼はこちらに来ている様だが、女の鬼は今の所動かずただ酒を飲んでるらしい。

 

「大体分かったな、はたて、もう十分だ。俺は女の方に向かう、勇儀達は男の方を頼んだぞ。どうするかは三人の判断に任せる。はたては文を連れ戻し八ヶ岳に戻ってくれ。偵察してもらってありがとう。文にも伝えて後は任せておけ」

 

俺は天狗が持つ情報力が欲しくて天魔と交渉した。そして交渉の時、情報を貰う代わりに何かあった時は諏訪の国の戦力を使うと言った盟約だ。だから文とはたてをこれ以上巻き込むのは不味い、文とはたてに何かあった時は責任が取れない、二人は諏訪の国に仕えてる訳じゃ無いのだから

 

「了解よ。だけど一応他の情報を伝えておくわね。鬼が諏訪の国に向かって来てる目的はね」

 

 

 

「と言う訳だから、気を付けなさいよね。盟約相手が死なれたら困るし、椛も文を一緒に迎えに行く?」

 

「うん、行く。文が帰ってきてまた仕事を疎かにしないか見張る必要があるからね」

 

「ええ・・・・あんた真面目ぶってるけど実際は文の事言えないじゃない。文を迎えに行くのは仕事をサボる口実でしょ?」

 

「勿論」

 

椛は両目を瞑り誇らしげに言ったが、言ってる事はかなり情けない。俺も人の事は言えない、よくサボってたし

 

「やっぱりねー ん。じゃあ行くわよ椛!私より遅れたら諏訪の国の美味しい料理でも奢りなさいよね!!」

 

「狡い!そう言いながら先に飛ぶのはやめて!背中に刀と盾を背負ってるのよはたて!!」

 

はたてから鬼の話を聞いて、聞き終えたらはたては文に偵察は終わりだと伝える為に椛と一緒に飛び去った。どうやら男の鬼の頭は悪路王だが、女の鬼の頭はヤマメとパルスィの様だ。しかし天狗は相変わらず飛ぶの早いなー。飛ぶ時にミニスカートが捲れて下着が見えた。はたての下着の色はパープルの様だ。はたては茶髪のツインテールに頭になんか、パープル色の天狗の帽子って言えばいいのか、まあそんなのがあって服装は襟で薄いピンク色のブラウスを着ていて黒いネクタイを付け紫色のフリルが付いている。下はミニスカートを履いているが黒と紫色の市松模様なミニスカートだ。靴は一本足の下駄。服やミニスカートだが河童が作った服だそうだ。まるで月人がいた時の服装だと思った、ギャルっぽいし。永琳が一枚噛んでると聞いたが真実なのか不明だ。参道から華扇が歩いて来たが、今回は右手に鬼饅頭を持ち、口の中に入れて食べている。雷獣はいつも通り華扇の左肩にいる

 

「お待たせしました弘様。今までの話は萃香から聞いていますので、早速向かいます」

 

「待った、焦っちゃだめだよ華扇。ヤマメとパルスィがいるんだよ、この二人は絶対に弘に従わせなきゃいけない。あの二人強いからね」

 

「パルスィは男嫌い。一応ヤマメとパルスィは鬼だから勝負に勝てば従うと思うけど、キスメは鬼じゃないからね。ヤマメに勝てば芋づる式にキスメも従うと思うけど」

 

萃香が霧から実体化し、華扇を引き留め、瓢箪の中にある酒を飲みつつ考えているがいい考えが出ない。俺もいい案が無いや。しかも勇儀が言うにはパルスィとやらは男嫌いと来た。ふむ、俺が萃香と勇儀と華扇を仲間にしたときも鬼が酒が好きで勝負好きそして嘘が嫌いと聞いたからあの酒飲み勝負にしたわけだが、今鬼ころしは底をついて無くなっている。作るにしても数週間はかかるので前と同じように酒飲み勝負は出来ない。何か良い案は・・・・・・・おっ、閃いた。

 

「いい考えが出た、気にせず行って暴れて来い。後 向かうなら紫にスキマを開いて貰い向かえばいい、徒歩で行くなよ」

 

「そうかい。じゃあ早速 紫に頼んで向かうとするかね」

 

勇儀は俺に近づいて両手を勇儀の尻辺りに回して組みながら顔を突き出し、唇と唇が軽く触れ合うだけのキスしてきた。勇儀は両手を後ろに回したまま数歩離れ、麗しい表情で笑った。萃香はそんな事を気にせずいつも通りに話しかけるが。華扇は今のを見て照れてるのか赤面だ。まあ、夫婦のスキンシップだから別におかしくは無いけど。今する事かと聞かれたら何も言えないが

 

「そう言えば、これが初めてだね。夫婦らしいことをしたのは。でも前に胸やお尻を揉まれた事もあったから二回目か。悪く無いよ、私が妻で旦那がいて夫婦として心の交流をする行為ってのは」

 

勇儀は右手で上唇から下唇へとなぞりながら微笑んだが、言葉だけを聞いていたら何だか俺セクハラ親父みたいじゃないか!!いやいや、俺と勇儀は伉儷、夫妻なのだ。だからセクハラじゃない、夫婦の戯れなんだ。しかし勇儀を見たら何て見目麗しい表情なのだ。勇儀を見ていたらいつもの衝動に駆られ勇儀の両肩を両手で掴んだ

 

「勇儀、俺の妻になってくれ!!!!」

 

「もう私 弘の女房だよ」

 

「あ、そう言えばそうだな。衝動とは怖いな」

 

「はいはい、二人とも乳繰り合ってないで行くよ勇儀。紫は神社の中にいるから中に入るよ。華扇もね。あ、弘。パルスィは少し変わった耳だから見たらすぐに分かると思うよ、ヤマメはいつも片手に桶を持っていて桶の中にキスメもいるからヤマメも分かりやすいし」

 

萃香は霧から実体化して俺にパルスィの事を教え、勇儀と華扇を引っ張って中に入った。俺は今思いついたことを始めようと俺も神社の中に入る。俺は神使である、藍、てゐ、ナズーリン、影狼、星と増やしてきたが神使を増やしたのは藍の仕事の負担を減らす為なんだ。戦力としては最初から数えてない、時と場合によっては働いてもらうかもしれないが今は使うときじゃない。ルーミアはともかくキクリも大妖怪だが、キクリはただ地球に来て色んな事を知って貰う為だから戦わせる訳にも行かない。ルーミアは防衛戦に徹してもらうから連れてはいけない。空き巣にして乗っ取られたら元も子もないからだ。ある人物を探してうろうろしてると廊下にいたので頼みごとをする為に近づいて声をかけた

 

「ここに居たか、悪いが頼みがあってな」

 

頼み事を終えて神社から出ようとしたが。一度、試しておこうか。俺の右手にある脇差、刀身を右手で抜き、鞘を左手で床に置いて、右手に刀身を持ち、腰を屈め、左手を床に、手の甲が上になる様に置き。右手にある脇差の切先を左手の手の甲に思いっきりぶっ刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

萃香様から弘天様が集まってくれと聞いて神社の外、鳥居の近くに幽香様と待っていますが、中々弘天様が来ません。紫様は幽香様と一緒に神社の中にいたんですが萃香様達に捕まりスキマを広げ鬼達がいる場所まで送るそうです。

 

「まさか、こんな日が来るなんて。腕が鳴るわね」

 

「幽香様は変わりませんね。肝が据わっています。鬼が数人ならいいんですが大群と聞いていますからね」

 

ですが私達の出番はなさそうですけど。念の為に連れて行かれるみたいですから。諏訪の国で生まれた私が諏訪の国に住み、関わる事になる事になるなんて。こんな事もある物なんですね。私は諏訪の国にある美鈴湖で生まれました、今の話を聞いて私の名、紅美鈴。この名を見ればお分かりかと思いますが、紅は私の髪色を、美鈴は諏訪の国にある美鈴湖という名を頂きました。実は私、諏訪の国に結構関係があるんですよ。生まれと名が諏訪の国に関係してますからね。それと美鈴湖ですけど湖と言ってもまだ小さいです、でもいずれは大きな湖になる日を見てみたいですね。私は妖怪ですがまだ百も生きていない若輩者。早く年を重ねたいものです。妖怪は長く生きれば生きられるほど妖力が高まり強力な妖怪、大妖怪になりますから。後は畏れられればられるほどですね

 

「幽香様。私、決心しました。私は諏訪の国に、弘天様に仕えます」

 

「そう。良かったわ。じゃあ妻になるのよね?」

 

隣にいる幽香様は私を無表情で見上げ、聞いてきますがその話については即答できないです。私の意気地なし。幽香様は私の考えを予想していたのか落ち着いていますけど、幽香様が驚く所なんて想像できません。それは怒った所もですが。

 

「心配しなくても大丈夫でしょうけどね。もう落ちてるから」

 

「落ちてるって何がですか?空から何か落ちて来てるんですかね?」

 

私は空を見上げてみましたが太陽と青空と雲しかありませんでした。空を見ても何も落ちてきている形跡はありませんね。幽香様は背を向けていましたが、顔だけ振り返り、お馬鹿。と言いながらため息を出して舌を出しながら

 

「鈍感」

 

と言いいました。一体何が鈍感なんでしょうか?首を傾げる私に幽香様はあきれ果てた表情です。

 

「まさか本当に気付いて無いの?自分の事なのに」

 

「気付くとは何がでしょうか?もしや敵襲ですか!?気付きませんでした、すいません幽香様!!!」

 

「これはもう駄目ね。天然って奴かしら。あと少しなんだけど、何か強力な出来事が無いと駄目な気がするわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社から出たら紫、幽香、美鈴がいた。他の者は防衛戦に徹してもらう。鬼達に勝っても諏訪の国を空き巣にして乗っ取られたら話にならんからな。例えば咲夜の能力とか守りには最適だし。守りに入っていてもらった方が助かる。ぬえはそもそも諏訪の国に住んでないし仕えてる訳でも、俺の妻な訳でもないから関わらせるのは駄目だ。鬼は卑怯な事をしないから護衛なんてそもそもいらない、幽香と美鈴も守りに回すかと考えたがやっぱり連れて行くことにした。美鈴から話があると言われたので内容を聞くと仕える事に決心したようだ。ならば最初の命を下してみよう

 

「そうか。ならば最初の命令をさせて貰おうか」

 

「はい!何なりとお申し付け下さい!!」

 

元気がいい事だ。だが、これを聞いたら無くなるだろうが。俺は右手に持っている脇差を美鈴に渡そうと思い右手の手のひらに乗せている脇差を取りやすいように手のひらを上に向け柄を美鈴に向けた。後は美鈴が鞘に収まっている刀身を抜くだけだ

 

 

「うむ、俺の右手にあるこの脇差で俺を刺してくれ。あ、心臓辺りに頼むぞ」

 

「・・・・・・はあ!?」

 

美鈴はいきなりの事で茫然自失してる。だが必要な事だ。ヤマメとパルスィを仲間にする為にはこれは必要な事だ。しかしこれは幽香と紫にはさせない、美鈴じゃないとだめなのだ

 

「美鈴。本当に俺に仕えたいなら俺をこの脇差で刺せ、それが出来なければ美鈴は俺の女にしないし、仕えさせる話も白紙だ。まあ、はっきりいって俺を刺さない方がいいと思うぞ。刺したら俺に仕えるばかりか、妻にならなければならんのだからな」

 

「そ、そんな事私に出来る訳が!」

 

「難しく考えず、もっと簡単に考えるんだ。要は俺を刺せば俺に仕えて妻になる。刺せなければ俺に仕える事も無ければ、妻にならなくてもいい。どっちを選んでもいい。元々美鈴は暫くここに居るだけという話だったからな」

 

「・・・・・何てお方なんですか。最初の命が仕えるはずのお人を刺せだなんて。私はただ仕えたいだけなのに、むごい仕打ちです」

 

美鈴が俺の右手にあった脇差を受け取り、脇差の柄を両手で持った。これは実験なのだ、鬼共に勝負を吹っ掛け勝つために知る必要がある。美鈴の甘さは時に弱点になる。その甘さを捨ててはいけないが、もしもの時は非情にならなければいけない。例えば、俺は今は王な訳だがいつ民を苦しめる暴君になるか分からない。俺が暴君になったら誰かに殺してもらわなければならないんだ。迷いがあったら俺を殺す事は出来ないだろう。だから心臓に刺すように命じた。美鈴は覚悟を決めたのか、柄にある両手をしっかりと握りしめて刀身の先を俺に向けた

 

「・・・・・・・・じゃあ、行きますよ弘天様。」

 

「いつでもいいぞ」

 

美鈴は走り出して脇差を俺の心臓に刺した

 

 

 

 

美鈴が俺を刺し終えたので、美鈴は地面に脇差を投げ捨て、俺に抱き着いて来た。美鈴の背中に左手を回し右手で頭を撫でつつ思ったんだ。紅は園生に植えても隠れなしという言葉がある。守りに徹する美鈴は地味かもしれない、だが守りで紅は園生に植えても隠れなしと言われる女になって欲しかった。丁度美鈴の髪色は紅だしな。諏訪の国の攻めで名を知らしめる事にしても美鈴は目立たないだろう。幽香や鬼の三人が真っ先に出るからだ。だからこそ、守りで美鈴の名を轟かせる為にもしもの時の覚悟が必要だった。例えば、他の者は必要なら俺を殺すし俺を切り捨てる事が出来る。だが、美鈴はそれが出来る妖怪じゃない。まるで人間みたいに甘く、だが妖怪の女性だからだ。

 

「よしよし。辛い事をさせてしまったな。済まない美鈴。だが時には王である俺を殺す事もして欲しいんだ。仕える前に美鈴にはそれをして欲しかった、二つのうち一つしか取れないなら俺を切り捨てて欲しいからな、美鈴両方取ろうとしそうだし」

 

「私の、初恋。初恋相手がこんな人だなんて・・・・・もうやだー!!!バカバカバカバカバカーーーーー!!!!!大ッ嫌いーー!」

 

美鈴は抱き着いて離れず子供みたいに泣きじゃくり、美鈴は両手の拳を握り、俺の胸筋辺りに何度も叩いた。美鈴が抱き着いてるので左手で背中を撫でて幽香に話しかける。どうでもいいが地面に落ちてる脇差はぽっきりと折れてる、妖怪の力は強いから人間が作った刀はすぐに傷むな。

 

「美鈴が泣き終え、紫が来たら鬼の所まで向かうか幽香。それと俺の左手にある羽衣を幽香が纏ってくれないか」

 

「ええ。分かったわお父様。良かったわね美鈴、仕える事が出来るばかりか妻になれたんだから」

 

「良くないですよ幽香様!!!」

 

美鈴は涙目で後ろにいる幽香に振り返ったが、また俺の胸に顔を埋めて来て泣き出した。美鈴の胸が俺の胸に当たっていてとてもいい

 

「すまん美鈴。だけどそんな顔も好きだぞ」

 

「泣き顔を見られて好きだと言われてもちっとも嬉しくないですよ!!」

 

美鈴は俺の両頬を引っ張ったが結構痛い。妖怪は人間より力が強いので、美鈴も見た目通りなら力はひ弱に見えるが、実際は怪力だ。人間と比べたらだが。だから幽香はともかく紫に腕相撲で勝てるのはいない。神社から紫が出て来た、鬼の所に向かう為、紫に頼もう。

 

「紫、スキマで俺と幽香と美鈴を南木曽岳の上空に連れて行ってくれないか」

 

「いいけど。私はどうしたらいいの」

 

「この場で待機だ、神社の中で寛いでいてもいいが俺の近くに常に小さめにスキマを近くに開いて、紫は俺の監視役だ。もしもの時は幽香と美鈴を諏訪の国にスキマで連れて行ってやってくれ。後、俺に何かあったらこの手紙を永琳と諏訪子に見せておけ」

 

「お父さん。もしもって、この手紙もしかして」

 

「俺に何かあった時だからな。何も起こらなかったら捨てておいてくれ」

 

紫は逃がし屋をしてもらう。まあ、大丈夫だと思うが念の為だ。勝負内容があれなので俺が無事に生還出来るか分からない。しかし美鈴は泣き終えたが、俺の左手に抱き着き離れようとしない。しかも俺の左腕を美鈴の巨乳で挟んでるので慶福。

 

「美鈴、あのな」

 

「嫌です!私は離れませんからね。逃げないで下さいよ弘天様!!これは家妻としてのお願いです!」

 

離すなよと言おうとしたが、自分から離れる気は無いと来た。ラッキーと思い紫にスキマを開けて貰い向かった

 

 

 

南木曽岳の上空に出たので見下ろしたが高い、高すぎる。高所恐怖症じゃなくてもこれは怖いな。今は幽香が羽衣を着てるので空を飛んでいる。幽香に俺と美鈴を支えて貰って飛んでいるから落ちる心配はないと思うがそれでも怖い。望遠鏡で周囲を探った。この望遠鏡は永琳と河童が作った物だ。前々から永琳が蔵で何してるんだと思ったら河童と共同で望遠鏡以外にも作っていた様だ。限られた材料で何かを作るのは楽しいと永琳が言ってた。まあ、望遠鏡は簡単に作れるからな。もし材料が欲しいなら月に行けばいいだけだが。望遠鏡で周りを見ていたら一瞬だが森に女性の姿が見えた。しかも複数人。こんな山に人間が来る訳がないし、鬼かもしれないと思い。幽香に頼んで地上に下ろしてもらい見えた所まで歩いて行くが、道に雪が積もっていて歩きにくいし寒いし木に積もってる雪が落ちて来たりで鬱陶しいが何とか先に進んで行くと、鹿の死体があり、女の鬼が鹿の腹を腕力で引き裂いていた。えー・・・・・力で無理矢理腹を掻っ捌くのか・・・・・・鹿の周りは雪があって雪の白い色のせいで目立つ血しぶきがある。食料の為に殺したんだろう。女の鬼の体や両手は血まみれになっているが、なぜか女の鬼の隣、雪の上に小石が積まれている。鬼女に声をかけようとしたら鬼女が隣に積んでいた小石を右手で掴み、、投げるぞ。言ってから立ち上がって俺に向けて投げて来た。鬼の力は女といえど強力なので物を軽く投げても威力が半端ない。当たったら即死は免れないな。美鈴が近くにあった小石を拾い、女が投げた小石に目掛け投げると撃ち落とした。撃ち落とすとは美鈴は器用だな。美鈴が俺に無事ですかと聞いて来たが、大丈夫だと返して、左手で美鈴の頭を撫で、右手を上げて話しかける。

 

「おー怖。まあまあ鬼さん。まずは落ち着いてくれ。俺は神なんだが、実はヤマメとパルスィと言う女性を探していてな、お目にかかりたいんだが会わせて貰えないだろうか」

 

「・・・・・神が姉さん達に何の用なんだ」

 

「勝負しに来たんだよ。女の鬼の族長達とな。俺の名は 弘天 あんたの右手にいるのが美鈴、左手にいるのが幽香だ。よろしく」

 

鬼は数秒俺の目を見つめ、見終えたら、着いて来いと言われて鬼女の背に幽香と美鈴を連れて向かった。鬼は卑怯な事をし無いとは言え、投げるぞと言ってから急に小石を投げてくるのはやめて欲しい物だ。女の鬼は俺達の前を先行しながら背を向けて名を名乗った

 

「私の名は呉葉、いや。紅葉だ」

 

女の鬼、紅葉は獣道に入って行ったので俺達も獣道の先へ進む。奥に進んでいくと滝が見えた。と言ってもそこまで大きな滝じゃないが。南木曽岳には女滝という物があり、そこに鬼女が群がって酒を飲みつつ談笑している。それぞれ木にもたれ掛ったり岩に胡坐を座ってるのもいるが、俺達に気付いて話し声が途絶えた。俺たちを連れて来た紅葉が他の鬼と話をし始め、奥に連れて行かれたが、横30m、高さ10m、奥行き6mくらいの洞穴があった。女は洞穴の近くにある大岩座って酒を飲んでる。が、女の右手にお猪口を持っていて何か酔っぱらってるように見える。鬼は酒に強いからどれだけ飲んでも酔っぱらう事は無く、基本は素面なのだ。鬼ころしは別だがな。金髪の鬼は立ち上がるが足取りが覚束無く、千鳥足で近づいて来た

 

「聞いたよぉ、私ともう一人と勝負しに来たんだってねぇ。で、勝負をしに来たって聞いたけど何の為にするんだい?私達これでも忙しいんだけどねぇ」

 

「俺は諏訪の国の神、弘天だ。何の為に来たかなんてこれで分かるだろう」

 

この女の鬼が頭の一人か。合点が行ったのか、あぁー。諏訪大明神ねぇ。と頭を痛そうに抑えてる

 

「成程、どうやって情報を掴んだか知らないけど私達の目的を分かってるみたいだ。神気を感じるし神と言うのも嘘じゃないみたいだねぇ、あんたを今この場で殺せば諏訪の国は私達鬼の物になる訳なんだけど、その辺分かってるのかい」

 

「鬼は正々堂々と生きてる種族だ。数に任せて俺を殺す事はしないだろ」

 

幽香と美鈴を連れて来ているが、念の為だ。俺が死んだ時、勝負に負けた時は諏訪の国に伝えて欲しいから連れて来た。力で鬼を従わせるのは萃香達の役目だ

 

「鬼って言っても色んなのがいるんだよ。全部の鬼が嘘を嫌ってる訳でもなければ、卑怯な事をするのもいるんだけどねぇ?」

 

どうでもいい。要は俺が勝負を鬼に吹っかけ、それに俺が勝ち、女の鬼共を俺の召使にするのだ。召使と言っても奴隷的扱いではなく、実際は天狗と河童が住んでる八ヶ岳に住んで貰ってあそこに住んでる知能が低い妖怪を懲らしめて欲しいだけなんだが。最近妖怪の数が増えて来てるし、誰かが八ヶ岳を管理しなきゃいかん。萃香じゃ対処できない時もあるだろうし、にとりとの約束もある。もう一つ理由があるが、だからこそ鬼を引き込むのだ。鬼が管理してる山なら雑魚の妖怪も従うし、河童も平和に暮らせる。天狗が住んでる頂上付近に妖怪は来ないから天狗は平和なもんだがな

 

「御託はいいから勝負を受けるのか受けないのかはっきりしてくれ」

 

「そうだねぇ。まずは勝負内容を聞こうじゃないのさ」

 

「俺の右手に持っているこの刀を使い、一度だけで俺の首を切り落とせたら鬼の勝ち。諏訪の国を丸ごとくれてやる。だが切り落とせず、俺が勝ったらお前達鬼女は俺の女中にして、諏訪の国に、俺に仕えて貰う。分かりやすくていいだろう」

 

女は酔っている様子だが、不審な表情。この条件、鬼だけにうますぎるのだ。だが、基本鬼は相手を疑う事はしない。どんな事でも信じてしまうほど純粋な種族だ。萃香達もあの時の酒飲み勝負に使った鬼ころしに毒が入ってるのかもしれなかったのに疑わずに飲んだしな。

 

「あんた、鬼を仕えさせるって意味わかってるのかい?」

 

「分かっている。だが今回が初めてではないんでな、それに、抑止力が欲しいんだよ。強力な抑止力が。だからお前達が欲しいんだ」

 

女は、抑止力ねぇ。と右手に持っていたお猪口を口に蓋って飲み、吐息を漏らす。椛や萃香が言うにはどうも最近人間共の動きがきな臭いと聞いた、椛については説明はいらないだろうが萃香は能力で諏訪の国の土地全体を監視しているからだ。だが勿論諏訪の国の民の事じゃない。諏訪の国に入り込んでる他国の人間だ、雲行きが怪しくなってきて目に余りつつあるので抑止力が必要かもしれないと考えた。諏訪の国からしたら妖怪がいるのは当然だ、だがそれは諏訪の国や大和の国の話。他国の神はともかく人間共はそれが異常だと考えてるのが多い。なにせ俺は神使だけならともかく、神使じゃない妖怪まで国に住まわせているからだ。だから鬼が必要だ、人間に対する抑止力として。まあ、人間だろうと妖怪だろうと神だろうと俺の邪魔をするなら消し去るだけだ。女だとしても例外ではない、俺の邪魔になるならこの世から消すまで。強そうで使えそうな奴なら引き込むが、抵抗するなら月に連れて行って、頭を開き脳みそでも弄らせるか

 

「まぁいいや。難しい事は考えないでおこうか。要はあんたの首を一度で落とせば諏訪の国が丸々 私達の物になるってことだねぇ?悪く無いね、首を斬りおとせたら諏訪の国が私達の物になるんだから私達の目的も達成する。よぉし、この話受けるとするかねぇ」

 

「ちょっと待った!」

 

俺の背にある森の奥から声がしたら、周りを囲んでいた鬼女たちが広がり道を開けて奥からまた金髪の女性が来た。その女性の三振りの刀が腰に差してある

 

「あんた、勝負するのはいいけどその刀に何か細工でもしてるんじゃないでしょうね。真剣勝負に水を差すような事をしたら殺す・・・・・わ・・・・・・よ」

 

ふむ、確かにそう思うのは当然か。何せ俺から勝負を仕掛けて俺の刀で俺の首を切り落とせたら鬼の勝ちって話だからな。俺が勝負内容を提案してるから疑う気持ちがあるのは分かる。だが、奥の林から来たこの女、最初は目を瞑って喋っていたが、最後に目を開け、俺を見つめているが。急に俺を見る視線が変わったような気がする、一体何だ

 

「ならば、あんたが腰に差している三振りの刀でもいい。それを使って俺の首を切り落として貰おうか。俺は一歩も動かないから好きな時にやってくれ」

 

鬼には約束さえして俺が勝てばこちらの物だ。鬼は嘘をつかないし、約束を破るなんて事が出来る種族じゃないからだ。だから一度約束した事は絶対に破らない。片方の女の鬼は髪色は金、髪型はポニーテール、茶色の大きなリボンで髪をとめている。服装は黒色の上着の上に、茶色のジャンパースカートを着て、胸辺りに飾りボタンが六つある。スカートの上から黄色いベルトみたいなやつをクロスさせつつ何重にも巻いている。右手に桶を持っていて中には少女がいるが寝ている様だ。もう片方は金髪のショートボブ、耳は先の尖ったエルフ耳みたいな感じ。服装はペルシアンドレスに似ている

 

「い、いいわよ。だけど貴方の首じゃなくて右腕を切り落とす勝負内容にしてよ。それと私が勝ったらを貴方を生かすも殺すも私次第に追加してくれない?」

 

「まあ、構わんが。じゃあ早い所やってくれ」

 

俺が承諾して傾き、右腕を差し出した。三振りの刀を持っている女性が俺にを指し、もう一人の金髪の鬼を見て昂ぶッた様子で自分がこの勝負を受けてよいか聞いた。幽香と美鈴は落ち付いていて、二人は目を閉じじっと立っている。二人とも勝負の邪魔をする気は当然ない。

 

「いいいいい、いいわよね?私がやっちゃってもいいわよね!?」

 

「何を焦ってるんだいあんたは。好きにおし、私の妖術よりもあんたの神通力の方が神には効きそうだからねぇ」

 

「ああああ、焦ってない。焦ってないわよ私は」

 

三振りの刀の一つを鞘から抜いたが、とても切れ味がよさそうだ。だがあれは妖刀、もしくは魔剣の類。見ていてそう感じた。あれならすっぱり右手を斬れるだろう。刀を持った女性は鞘から抜いた刀身を俺の右手に軽く当ててから、頭上に刀身を上げたが、何故か一度刀を下ろし、急にモジモジしながら俺の名を聞いて来た

 

「あ、貴方のお名前聞いてもいいかしら」

 

「ん、名前か。俺、蓬莱山 弘天って言うんだが。あんたの名も教えてくれないか」

 

「わ、私の名!?聞きたいのね?どうしても聞きたいのね!?しょうがないわね。そこまで言われたら答えるのも吝かじゃないわよ」

 

最初は気が動転していたが、上機嫌になり女が右手の手のひらを鎖骨辺りに当てて名乗った。

 

「私の名は」

 

彼女の名を聞き終え、どこ出身かも教えてくれたが、やはり、そうだったようだ。彼女はこの大陸の者じゃない。何せ、天竺にいるはずの第六天魔王の娘と来たんだからな。名を聞き終えて話は終わり後は俺の右腕を切り落とすだけだ。彼女はまた刀を頭上まで上げて振り下ろす体制に入った

 

「行くわよ」

 

彼女は刀を振り下ろして俺の右腕に接した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪路王達鬼は、奥三界岳を越え諏訪の国までやって来た。麓に着くと、前方には女性三人が待ち構えていた。

 

「貴様らは、萃香と勇儀と華扇ではないか。何しに来た、と言いたいが検討は付いている」

 

「おや、その口ぶりからして私達がこの場にいる理由も分かってそうだね。分かってるなら話は早い。実は私達、あんた達に話があってね、だから三人で来たんだよ悪路王」

 

勇儀が答え、次に萃香が右手に持ってた瓢箪を軽く呑み、飲み終え、一息ついた

 

「その話はね、私達の王が鬼達を叩きのめせてと仰せなのよ。だから叩きのめしに来たの」

 

「冗談、ではなさそうだな。予想通りだが」

 

「ええ。残念ながら冗談ではありません。悪路王」

 

華扇は右手に少しだけ残っていた鬼饅頭を口にいれて、数回噛み、呑み込んだ。華扇の左肩に乗っている雷獣は毛を逆立てている。雷獣とは、雷を呼ぶ事が出来る妖怪だ。だが雷を呼ぶと同時に毒を放ち、毒に当てられた者は何も考えられない廃人になる。その毒に当たったものは、トウモロコシを芯ごと噛み砕き飲めば治ると言われていが雷獣はなりは小さい、しかし面倒な妖怪だ。

 

「待て、聞きたい事がある、お前達三人の事は聞いている。お前達三人が諏訪大明神に仕え、人間どもと共存していると。これは事実に相違ないか華扇」

 

「相違ありませんよ犬神丸。事実です」

 

華扇は左肩に乗せた雷獣に右手の人差指で雷獣の頭を優しく撫でつつ雷獣を落ちつかせて答えたが、それを聞いた大男、大嶽丸は体を震えさせ、腹から怒声をあげた

 

「恥さらしどもが!鬼が神に仕えるなど我ら鬼の名を汚すつもりか!それだけならまだしも人間と仲良く共存するだと?鬼とは、妖怪とは人間の恐怖心から生まれ、嫌われ畏れられ、人間を攫い喰う存在なのだぞ!その鬼が、妖怪が人間と、食料と仲良くしてどうする貴様ら正気か!?」

 

「何言ってるんだい大嶽丸、私達以外の鬼が神に仕えるのもいるじゃないか。約束したんだ。鬼は嘘をつかない、だから人間に手を出さない。人間を喰わなくても美味しい料理を作ってくれるから人間を喰う気も起きないけどね」

 

と言っても、実際は改心してだ。鬼子母神がいい例だね、鬼子母神は神になってるけど。鬼ってのは人間の金品を奪い、人を喰らう、もしくは人間と勝負し、勝ったら負けた人間を攫うという鬼もいる。だが最終的には英雄と呼ばれる人間に倒され、改心し仕えるといった事しかない。実際は殺される方が多いけどね、勧善懲悪と言う事だ。初めから特定の人物に仕える鬼なんていない。私達鬼はどんな時でも最初は人間の敵だ。鬼でありながら神の存在もいるけど。あの子みたいにね。しかし、この考えがコンガラもだけど私達には合わなかったから旅に出た訳だ、結果的には良かったかもしれないね。毎日が楽しいし、鬼ころしも美味しいし、食べ物も調理が美味い者がいるから不便もないし、この私が惚れた旦那もいる。贅沢を言えばもう少し戦える奴が欲しいけどね

 

「俺様はそんな事認めんぞ勇儀!鬼は神や人間なんぞと共存せん!これからも人間の恐怖心の象徴、敵として好きな様にただ不羈奔放に生きていくのみ!!それが鬼の存在理由だ!だから俺様は、人間の恐怖心の象徴である鬼が人間共と仲良く共存するなど断じて認めん!」

 

「言いたい事は分かるよ大嶽丸。だけど鬼はいつまでもそれだけの存在理由じゃダメだよ。それだけを存在理由としていたら鬼という種族、違う、鬼だけじゃない。妖怪はいずれ消えてしまう。まあ私は諏訪の国が面白いからいる訳だけど、民も私達に畏れず手合せを頼む者もいるからね。悪路王はどう考えてるの」

 

萃香が悪路王に問うたが、悪路王は今までの話を目を閉じ佇むんで聞いていたのでいい考えは無いかと聞いたのだ。だが悪路王は瞼を上げて首を振った。確かに鬼はその生き方が普通かもしれない。だが、コンガラ、萃香、勇儀、華扇は大嶽丸達を過激派だと感じ4人は旅に出たのだ。何事も限度がある。やりすぎては鬼は人間、または神に鬼という種族を滅ぼされるからかもしれないと考えた。だからこそ4人は悪路王達鬼とは距離を置いた。人間同士でも分かり合えない、価値観の違いで理解できない者は必ずいる、人間にも色んな人間がいる様に、そこは鬼も同じだ。鬼達も正々堂々と勝負し、負けてしまったなら滅んでしまっても別に構わないと考えている、だが悲しい事に神はともかく人間に例外はいるが鬼に力で適う訳が無い。鬼の前で人間は力では無力、為す術がない。そこで頭を使うだろう。しかし頭を使うと言う事は、純粋に力勝負をするのではなく、罠を仕掛けたりして鬼を1人ずつ減らしていき、鬼達を滅ぼすと言う事なのだ。それでは鬼達は納得する訳が無い。例え人間たちが力のかわりに知恵で差を埋めようとしても人間は鬼に卑怯者呼ばわりされるのが落ちだ

 

「各々の考えがある、だが折衷案が無い。元々我らは袂を分かったのだから当然だがな。ならば手段は一つだ。我らを従えたいなら正々堂々力で勝負し、力で無理矢理従えさせ我らの負けだと納得させろ。それが鬼だ、当たり前だがもし我らが負けたとして、従うのは諏訪大明神ではなく、萃香、勇儀、華扇に従うのだ。念の為に言っておく」

 

弘は初めから悪路王、大嶽丸、犬神丸、男の鬼達を従えようとはしていない。最初から弘が狙ってるのはあの二人と女の鬼達だけだ、だから二人以外が弘に従わなくても問題は無い、何故なら私達が勝てば悪路王達は私達に従う、弘に仕えている私達に従うと言う事だからだ。だがあの二人は弘に仕えて貰わなくてはいけない、必要だからだ。特にあの三振りの刀を、大通連、小通連、顕明連を持ってるあの鬼姫、鬼神は特に必要だ。神通力も使えるからね、もう一人は妖術も使える、これも必要になる時が来る。だからこそ、二人を弘に仕えさせる必要があるんだよ。女の鬼は女だから、弘が欲しがるだろうけど男の鬼はただ力が強いだけで他にはこれと言った事がない、力だけなら私と萃香と華扇だけで十分だ、だから絶対に悪路王達が必要かと問われたら必要じゃないね。だけどこのまま放っておいたら悪路王達は人間、もしくは神に殺されるだろう。その前に引き込まなきゃいけない、そして私達に従わせる。悪路王達は美濃国と諏訪国の境目を越えて諏訪の国の土地に入ってきている、諏訪の国に入って来てるなら郷に入っては郷に従えだ。いらぬお節介とは言え同族が殺されてしまうのを見ているだけなんて私達には出来ないよ。鬼の目にも涙だね

 

「分かってるよ。それで、勝負内容はどうするかね?」

 

「我は全戦力をぶつけ合うつもりはない。我らはあくまでも正々堂々と勝負し白黒はっきりさせる。我と大嶽丸と犬神丸が出よう。勝負内容は三回勝負、我らか、もしくはお前達、どちらかが二回勝てばいい。勝てば官軍、負ければ賊軍だ」

 

「じゃあまずは私からだ。私の相手は大嶽丸で頼むよ、華扇は犬神丸を、萃香は悪路王を頼んだよ」

 

勇儀が前に出てくるが、あの赤い盃は持っていない。赤い盃の名は 星熊杯 という物。神社に置いて来たのは全力を出すのに邪魔だったからだ。

 

「ふん。俺様を選んだ事を後悔するんだな勇儀」

 

「後悔なんてしないよ。お互い力に長けているんだ、いい勝負相手じゃないか」

 

悪路王、大嶽丸、犬神丸に勝てば他の鬼も降す事が出来る。だが、言い方を変えると勇儀達が負けたら勇儀達は悪路王達の傘下に入らなければならない。勇儀達は悪路王達に負けたら降れと言った。それはつまり勇儀達が負けたら悪路王に降ってやると言っているのだ。

 

「俺様は三大妖怪の一人に数えられた大嶽丸!来い勇儀、俺様を力で無理矢理従えて見せろ!!」

 

大嶽丸、鬼にも 泣いた赤鬼 みたいな鬼がいていいんじゃないかい。悪を貫くのも結構な事だけど、それだけじゃ私は面白くない。コンガラ、萃香、華扇、ヤマメやパルスィはどう思ってるか知らないけどね。だけど私は、鬼の定義を一つだけにしたくないんだよ。

 

「私は諏訪の国に仕えている鬼の1人 星熊 勇儀 王の命令によりお前を諏訪の国の王ではなく、王に仕える私達に降してやる。怪力乱神の異名は伊達じゃない所を見せてあげるよ!」

 

勇儀と大嶽丸はぶつかり合うと、地面にクレーターが出来るほどの衝撃を放ち、地は大きく揺れ、嵐でも来たんじゃないかと思うほど風が吹いたが、双方の鬼はただ黙って酒を飲み、勝負の行く末を眺め、萃香も酒を飲んでいたが、隣にいる華扇を見てみると華扇は真剣な表情でどこから取り出したのか右手にある鬼饅頭をまた食べ始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は最初いきなり来た、神と言っている男を三振りの一つ小通連を神通力で抜き、殺そうかと思った。男なんてこの世から無くなればいいと思うけど、そんな事になったら子孫を残せないから口には出さない。だけど、この男、男性を見ていると何だか。この気持ちの正体は分からない、でも急に目の前にいる男性の名を聞きたくなって、小通連を頭上に上げていたけど一度下ろした

 

「あ、貴方のお名前聞いてもいいかしら」

 

「ん、名前か。蓬莱山 弘天って言うんだが。あんたの名も教えてくれないか」

 

名、名前!?どどどどどうしよう。何て答えたら、いや、落ち着くのよ私。ただ名を聞かれただけじゃない!愛の告白をされた訳じゃ無いんだから!!

 

「わ、私の名!?聞きたいのね?どうしても聞きたいのね!?しょうがないわねそこまで言われたら答えるのも吝かじゃないわよ」

 

男性の容姿を見てみたけど正直これと言って特徴も無ければ対して男前でもない。そこら辺にいそうな普通で平凡な男性。でも、なぜかこの男性に胸をときめかせ私の胸は動悸が激しく高鳴り、顔は熱でもあるんじゃないかと思うくらい熱く耳までもが熱くなり、頭はくらくらして目の前にいる男性から目を離せない、今の私の表情はきっと忘我だ。まさかと思うけどこれは、俗に言う一目惚れ?この私が?

 

「私の名は滝夜叉姫と呼ばれてるけど、それはこの大陸での名。本当の名を教えてあげる」

 

私は第六天魔王の娘、だけど最近 渾名みたいなもので自称はしてないけど第六天魔王と呼ばれる女性がいる。その子の名は 蘇我 入鹿 と言う女性。豊聡耳 神子とかでも呼ばれてる。私と神子は姉妹なの。神子は何でか知らないけど鬼神じゃなく半神、人間で神。神子は神の部分が強いから実際は神みたいな存在。だけど今は人間の振りをしていて過ごしている。今は大和にいるらしいわね。久しぶりに会いたいけど、今はまだ会えない。平将門も第六天魔王と呼ばれ恐れられてる、でも今は置いて置く。私は諏訪の国に第六天魔王がいると噂で聞いたから今回は付いて来た、第六天魔王は今天竺にいないけど一体どこに行ったのか。

 

「私は、天竺にいる第六天魔王波旬の娘で鬼神。 実名をパルスィ。 よ、よろしくね」

 

名乗り終えた。後はこの、親からもらった三振りの刀、大通連、小通連、顕明連がある。今回は小通連を使おうと思い鞘から抜いて、 蓬莱山 弘天 という名の彼の右腕を斬りおとそうと思い、頭上に刀身を上げて、振り下ろした。これで彼は私の好きに出来る!つまり良人に出来る!彼の右腕が無くなるけど、そこは良妻の私が支えればいいわよね!!!もし私が負けても私達はこの弘天という神に仕えればいいんだから、私にとっては勝っても負けても同じこと。勝つか負けるかなんて結果はどっちでもいい、私が勝てば彼を私の物に出来るし、負けても私が彼の物になるからだ。勿論手を抜かないけどね。だけど、私はただこの 蓬莱山 弘天 の傍にいたい。その気持ちしかない。第六天魔王の事や、蘇我 入鹿 ・・・・はどうでも良くないけど、今はどうでもよくなったわ!!




美鈴湖というのは実際にあります。人造湖ですけどね。しかも長野県にあるんですよ。だから美鈴をあんなに早く出しました、後は戦力を増やしたかったからですけど。八意思兼神も結構 長野県に関係があります。信之阿智祝の祖の話です。

鬼って本当に色んな意味があります。死んだ人の魂だったり化け物、または人間の敵や朝敵としての意味もあります。他にもありますけど多すぎて書けない。土蜘蛛も色んな意味があります。山の民だったり朝敵に敵対した蔑称とも言われています。時代によって言葉なんて変わるもんですけど鬼も土蜘蛛も意味が多すぎる。

今回オリキャラで紅葉という鬼を出しました。紅葉、またの名を呉葉で長野県に伝わる紅葉伝説の話、北向山霊験記戸隠山鬼女紅葉退治之傳全です。最初椛は紅葉伝説の話で出そうと思いました、第六天魔王が出てくるのとどちらも もみじ と読めるからです。が、やめました。鬼はもう十分いるからです。そう言えば、紅葉は秋の季節になる物ですね


なぜパルスィが鈴鹿御前の話が混じってるのかと言うと、パルスィと言う名はペルシャ人(ペルシヤ人)としての意味があるそうです。つまり外国の名みたいな物で、パルスィは外国の人物って事にしてます。古名だと波斯国(ペルシア)です。だからパルスィを鈴鹿御前の話を混ぜました。鬼は外国人説もありますし、鈴鹿御前も外国にある天竺(インド)から来たとも言われてますから。それで二人は金髪でしたので丁度いいと思いましてね。絵ならともかく地の文でだと どっちがパルスィでヤマメか分かりませんから。鈴鹿御前(立烏帽子)は有名なのが第四天魔王の娘とも言われていますが第六天魔王の娘とも言われてるんでこうなりました。ヤマメを鈴鹿御前にする訳にはいきませんでした。名は別にいいんです。鈴鹿御前は鈴鹿山に由来しただけの名で愛称みたいな名ですし、ただヤマメの能力が問題でした。妖怪には効きにくい能力とは言え、人間には効きますからね。その点パルスィの能力はそこまでですので屈強の戦乙女で強キャラにしました。鈴鹿御前は神通力を持っていて、チート妖刀、または魔剣、小通連はともかくとして、大通連、顕明連を持っていますからね。ちなみにヤマメには滝夜叉姫を混ぜていますので妖術が使えます、ヤマメの能力と合ってる感じがするし。パルスィは鬼ですが神扱いで行きます。鈴鹿御前は鬼神とも言われてますし、橋姫も鬼と言われていますが神とも言われていますので

で、あの聖徳太子は本当に、本当に悩んだ内の1人。悩んだ末で蘇我 入鹿にしたのはまあ、蘇我 入鹿はどこぞの戦国時代の人みたいに自称ではありませんが渾名みたいな物で第六天魔王と言われていたのと、神の子、神の血を引く家系とも言われていたのと、聖徳太子はペルシャ人説があったのと、聖徳太子は蘇我入鹿ではないかと言う説もあったので。第六天魔王は仏教の敵とも言われてますが、確か朝廷の敵としての意味でも使われてた筈です。土蜘蛛や鬼も朝敵としての意味でも昔は使われてますね。つまり弘天が支配してる大和。大和朝廷・・・・・でもね仏教や道教。宗教や政治の話を書こうと思ったけどスゲー面倒。基本的に政治もですが宗教の話は色々面倒で複雑すぎるんですよ、この作品はまだスタートラインに立って無いんで書きません。この作品は1+1=2みたいな単純な作品です

てか何だ今回の話は。後半真面目なバトル漫画みたいになってるじゃないか!そういう作品じゃないのに。どうでもいいかもしれませんが南木曽岳で金太郎が生まれたと言われていますね。下に横30m、高さ10m、奥行き6mとか地の文で書きましたがあれコピ・・・・


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信仏法 尊神道

グロイ話と今回も地の文と台詞と前書き後書きが多い。気を付けておくれ。そして宗教関係も今回で終わり。本当に厄介な人物だよ聖徳太子と藤原氏、藤原不比等は。悪路王とか出した。けど全くと言っていいほど出番はありません。オリキャラだし。オリキャラを活躍させる気も、ましてやオリキャラと原作キャラとくっつける気はありませんよ。念の為に。

別視点を書いてみましたけどテンポ悪くなる、だから今回限りだと思います。ここから先は多分ですけどオリジナル展開が強くなっていくと思います。嫌な人は見ない方がいいですよ。それとまだ先の話ですがルーミアの正体の話をする事にしました。暇潰し程度に考えて当てて下さい、ただ急に正体の名が出てくるので少しずつ分かっていく感じでは無いです。一つか二つはヒントが出る筈です。一応書いて置きますがルーミアは空亡でもなければ常闇ノ皇ではないと断言します。

歴史に出てくる話を書いてますが細かく書くの面倒なので結構端折ってます。もっと詳しく書けと言うなら書きます、書かなくてもいいなら書きません。でも真面目に書きすぎて自分でそれを見た時ドン引きしました。


結論から言うと勇儀と大嶽丸の勝負の結果は勇儀の勝ち。だが余波で周りの土地が無茶苦茶になっていて酷い有様だが。勇儀はついつい久しぶりの勝負が楽しくて調子に乗ってやりすぎたと思い、冷や汗が止まらずどうやって永琳と紫と諏訪子と藍に許してもらうか頭を抱えて悩ませ、萃香は勇儀を見て大笑いしている。今は華扇と犬神丸の勝負なのだが、はっきり言って犬神丸は強者じゃない。華扇に押されつつある、華扇が犬神丸の顎を掌底で突いて犬神丸は脳が揺れたからかふらふらしだし、華扇が回し蹴りを犬神丸の頭に炸裂。回し蹴りをくらった犬神丸は地面に倒れ気絶した。これで勇儀と華扇で二回勝った事になり、悪路王達は勇儀達の配下になる訳だが、この事実に耐えられないのか大笑いしていた萃香はぴたりと笑い声が止み、次に萃香はわなわな震えている。これに気付いた華扇が萃香に近づいて鬼饅頭を差し出すが、これを萃香は拒否。

 

「いらないわよ!」

 

「ま、まあまあ。ここは鬼饅頭と言う素晴らしい和菓子を食べて落ち着いてですね。話を」

 

「落ち着け? 落ち着けですって? そんなの・・・・・そんなの・・・・・」

 

これは不味いと勇儀が萃香に近寄って肩を揺すって落ち着かせようとするが時すでに遅し。萃香は勇儀の両手を振り払い片手を髪に持って行く。萃香は髪の毛を抜いて小さい萃香を100は超え、萃香の体が巨大化した。髪の毛を抜いて無数の小さい萃香になったが、これは西遊記で有名な孫悟空が使う体毛を小猿や虫などに変化させる術 身外身の法 だ。

 

「納得できる訳ないわよーーーーーー!!!!!!誰でもいいから私と戦えーーーー!!!!」

 

萃香の密と疎を操る能力は、自身の体の密度を下げることで巨大化出来る。それ以外にも圧縮して高熱を物体に持たせたり、石や岩を集めて巨岩にして投げつけたり、全てのものを集めたりバラしたり出来る。例えば桜の落ち葉を簡単に集めたりすることも出来るし。ブラックホールやホワイトホール、天を割ることも可能。霧状になれば相手の攻撃を受け流しつつ一方的に攻撃する事も出来る。勇儀と華扇が巨大化した萃香を見上げている。悪路王達は萃香や小さい萃香に蹴散らされている。大嶽丸と犬神丸は気絶していて役に立たず、残りの悪路王が何とか抵抗しているが、今の萃香には雀の涙だろう。周りは衝撃で地割れをしていてさっきより酷くなっている。これでは永琳達に一日説教をされる羽目になってしまう。

 

「あー まるでダイダラボッチだよ。でも不味いよねこれ。永琳と紫と諏訪子と藍に更に叱られるよ」

 

「ええ。ここの土地は諏訪の国な訳ですから、さっきの勝負。勇儀達の余波で土地が傷ついているのでこれ以上は不味いですね」

 

「うっ 私の傷を抉るのはやめてよ。そ、そうさねー。萃香、最近欲求不満で溜まってるって言ってたからね、それで限界が来たんだろうけど」

 

「・・・・・・・溜まってるって戦闘欲ですよね?」

 

「ん? それ以外に何があるって言うんだい」

 

「い、いえ。何でもありません、気にしないで下さい」

 

勇儀は素で聞いたが華扇は咳払いをして言葉を濁す、いい加減に萃香を止めなければ鬼ころしを飲むのが禁止されてしまう、ではなく永琳達の説教が長引くと勇儀と華扇が走り出した。萃香を押さえたら宴会の前に悪路王達を連れ、八ヶ岳に向かおうと二人は決めて萃香の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは天界。今は地上で萃香が暴れているが、暴れる衝撃で地が大きく揺れていて天界に住む天子はその揺れを感じ取った。感じ取ったのだ。

 

あれ?何か揺れてない?天界に私はいるから分かりにくいけど間違いなく揺れてる。揺れからして地震じゃなさそう。だけどこれは見過ごせないわね。これは仕方ない事よ、そう。仕方ない。だから飛んで地上に向かいましょうか。私は大地を操る事が出来るんだからね。地上に向かう為に桃の木の林から離れて雲から降りようとしたら止められた。

 

「どこへ行く気ですか」

 

「ちょっと遊び、じゃなくて地上で大きな地震みたいに揺れてる原因を探ろうとこの私自ら向かおうと思って」

 

「駄目です」

 

「いいじゃない衣玖!!私 暇なのよ地上で何か面白そうなことが起きてそうなんだからいいでしょ!」

 

「開き直らないで下さい駄目に決まってます」

 

衣玖は私を地上に行かせる気は無いようね。飛んで地上に向かっても衣玖も空を飛べるから撒く事は出来ないでしょうし、ここは力づくで逃げるしかない。私は右手にある緋想の剣を衣玖に向けて大声を出す。ついでに要石も出して置く。

 

「どうやら私の人生での宿敵は衣玖の様ね。行くわよ宿敵!!構えなさい!!」

 

「いきなり何を言い出すのですか、構えませんよ。天子という名は地上では不味いのです。人間の誰かに聞かれたら困ります」

 

なーんだ。そんな事を気にしていたのね。じゃあ地上での名を考えたらいいのよね、私は天界で生まれた子供で、天帝の娘だから天子って名前になったそうだけど、ここはシンプルに地子でいいでしょう。地上の子供で地子って事でね

 

「じゃあ名前を変えて地上で過ごせばいいわよね?これで解決早速地上に行くわね~」

 

衣玖に背を向けて行こうとしたら衣玖が左腕を羽衣で巻きつけドリルの様に纏わせてから、私に向かって羽衣ドリルを使い私の太ももに刺そうとしてきたけど緋想の剣で薙ぎ払った。衣玖は羽衣ドリルを薙ぎ払われたので一旦距離を取ってから指先から電撃を放つ。今度は私が衣玖に向かって要石から衣玖にレーザーを何発も撃ち出し衣玖が撃ち出していた電撃を相殺させて右手にある緋想の剣を両手で掴み衣玖に斬りかかったが衣玖の羽衣ドリルで防がれた。

 

「なぜ私達はこんな事をしているのでしょうか」

 

「私がこんなつまんない天界から降りて地上で面白い物を見る為に、宿敵を倒して未来を掴み取る為よ!!」

 

「そうですか。ですが我が儘も大概にして下さい」

 

私と衣玖は鍔迫り合い状態で話していたけど、衣玖は羽衣ドリルから電流を流し、私の緋想の剣から電流が伝わり感電した。だけどこの程度なら効かない。今まで私が天界の桃をどれだけ食べたと思ってるのか。少し服が焦げたけど、替えはある。

 

「地上の人間だと感電死するほどのボルトを流したのですが流石に天人は頑丈で気絶しませんね。これなら気にせず痛めつけられます」

 

「このサド女」

 

「私はサドではありません。ただ地上に向かわせないように止めているだけです。貴方は天帝の娘だとお忘れですか」

 

「天帝の娘だからって束縛されるなら、そんなのいらないわよ。面白くもないからね。面倒事は織姫と彦星に任せるわ、衣玖は天帝の娘の私にも容赦ないから困ったものよね~」

 

「私は。龍神様、豊姫様、旦那様に仕えてるのであって天帝に仕えてる訳ではありませんので」

 

流石私の宿敵。厄介ね。だけど早く地上に行かないといけない。揺れが弱くなってきてる。このままじゃ地上に降りて揺れの原因も分からず気になって眠れない、仕方ないから奥の手を使う事にした。衣玖から後退して緋想の剣を掲げた

 

「来なさい私の眷属白龍!」

 

私が呼ぶと、目の前に空を覆い尽くすほどの巨体が出て来た。鱗が白一色の白龍だ。これで地上に行ける。龍は基本的に空を飛べるけど、白龍は特に空を飛ぶ速度が速いらしい。これならだれにも追いつけられないと思う。だけど黒竜様が来たら逃げられないけど。けど、大丈夫でしょ。多分。白龍の背に飛び移り、白龍は地上に飛んで行ったけど衣玖を見たら追いかけてくる気は無いみたい。でも、衣玖って確か竜宮の遣いよね?黒竜様を使って追いかけて来なければいいけど。白龍が地上に向かいながら私の目の前まで顔を動かした

 

「いやいや。天子様に仕えてませんよ私は、天子様のお父上 天帝 様に仕えてるんですから間違えてますよ」

 

「いいのよ!天帝に仕えてるなら天帝の娘である私にも仕えてるって事でしょ」

 

「それは暴論です。どうしてこうなるのか。天子様が友達が出来ないのは不良だと言ってますけどただ 天帝 様の娘で皆近寄りがたいからなんですから」

 

「もうお説教はやめてよ白龍~私はこんな退屈な天界は嫌~死にたくないなら急いで地上に向かいなさい」

 

右手にある緋想の剣を白龍に突き付けて脅す。違うわね。脅しじゃなくてこれはお願い。誰が何と言おうとこれはお願いよ!!緋想の剣は必ず相手の弱点を突く事が出来る剣。いくら白龍でも刺されたら無傷ではいられない。白竜は首を動かし顔を地上に向けて嘆いた

 

「黒竜は 月人 の王に仕えて、青竜は 第六天魔王 の娘に仕えて、どちらの主もまだまともなのにどうして私はこうなるんですかね・・・・・・赤竜と黄竜は私の様にならずいい主を見つけて欲しい」

 

「何よ、もしかして不満があるの?この私に仕えられてるんだから泣いて感謝しなさい」

 

「ええ。嬉しすぎて涙が止まらないですよ。ああ、涙で前が見えないや。お腹が痛い・・・・」

 

「いいからさっさと地上に向かいなさい。終わっちゃうじゃないの」

 

「アホー!行かせる訳ないでしょうー!!!」

 

白竜と共に地上に向かっていたら蝙蝠が天界の方向から飛んで来た。どうやらエリスが止めに来たようね、エリスは蝙蝠から人型になって左手に持っている先端部分にある星型のステッキを私に向けて来たけど、エリスは長い金髪にリボンを付け、耳は長く尖っていて蝙蝠の羽を背中に生えていて蝙蝠になる事が出来るらしいわよ。背にある蝙蝠みたいな翼で飛んでる様ね。エリスの左頬には赤い星のマークがついてるけどあれってシールなのかしら。

 

「エリス。邪魔よ、退きなさい」

 

「そんな事したら私が怒られるじゃない!観念して神妙にお縄につきなさい!!」

 

「ふふん。諦めると言う事は死ぬ事と変わらない。私は抗ういつまでも」

 

「何 あのバカ男が言いそうな意味の分からない事を言ってるのよ!」

 

ステッキの先端に付いている星から魔法陣が展開して。魔法陣から小悪魔が出て来た。小悪魔如きにこの私と白竜は止められないと思うんだけど。エリスは小悪魔を見て目をパチクリさせてる。でも私の目の前に、しかも天界に悪魔がいるっておかしな話ね。

 

「あれ? 小悪魔だけ? 幻月と夢月は?」

 

「面倒だそうです」

 

「あの双子!私に逆らうなんてー!魅魔もユウゲンマガンもくるみも見張りの仕事サボって一体どこで何してるのよー!!」

 

私達は空中にいるけどエリスは空中で足元に何も無いのに地団太を踏んで怒声をあげてる。正直助かった、あの双子が出てくると夢幻世界に連れて行かれて終わってたかもしれない。小悪魔はエリスを見てびくびく震えて縮こまっている。一応、エリスは小悪魔の主人な訳だから下僕の小悪魔からしたら辛抱出来る訳が無い。八つ当たりされたら逆らえないし、逆らっても適う訳が無い。

 

「小悪魔じゃ私は止められないと思うけど」

 

「・・・・・そうね。でも盾役にはなるでしょ」

 

「エリス様酷いです!嘘ですよね!? ちょっとしたお茶目ですよね? そうですよね?」

 

小悪魔がエリスに詰め寄るがエリスの真顔で表情は変わらない。これは本気だと感じたのか小悪魔はエリスを止めるのではなくこの私を止める為に矛先を変えて来た。

 

「天子様、ここは私の為にも諦めてですね」

 

「バイバイ小悪魔。貴方の事地上に行くまで忘れないわよ」

 

「一寸の迷いも無いなんて。しかも そ、即答。私もう死ぬのは確定ですか・・・・・それに地上に行くまでっていくらなんでも忘れるのが早すぎます!!」

 

エリスは小悪魔を羽交い絞めにして小悪魔を盾にしてるけど、あれじゃあエリスが戦えないんじゃない? 小悪魔は必死に抵抗してるけど、エリスはあれでも悪魔だから小悪魔からしたら敵わないでしょうね。エリスは小悪魔を羽交い絞めにして立てこもり犯みたいなことを言い出す

 

「さあ! 小悪魔がどうなってもいいの!? 小悪魔を無事に返してほしいなら諦めて天界に帰りなさい!!」

 

「て、天子様ー・・・・・・助けて下さいー・・・・・・」

 

小悪魔は涙目で助けを求めるけど甘いわね。いくら小悪魔が魔性の女でもそれは同姓には効かないわよ、あの人なら効きそうだけど。でも私に対して小悪魔じゃ人質の価値は無いわ。

 

「どうするんですか天子様。私としては天界に帰って寝たいんですが、地上に行くのも面倒、じゃなく危険ですし」

 

「何言ってるの白龍。私を誰だと思ってるのよ」

 

「忘れてました。天子様は悪い意味で月の王と似てるんでした。どうでもいいですが天子様とあの方の名前も天が入ってますね」

 

緋想の剣をしっかりと握り締めて小悪魔ごとエリスに斬りかかった。まさか斬りかかって来るとは思わなかったかエリスの目は点になってる。考えが足らないわよエリス、私は目的の為ならば誰であろうと斬るまで。エリスは小悪魔を羽交い絞めにしてたけど右手の手のひらを私に向けて待ったとかけて来たけどもう止まらない。

 

「え、ちょ。ま」

 

「成敗!」

 

小悪魔ごとエリスを斬り伏せた。気絶してるからエリスと小悪魔は地上に向かって落ちてるから急いで回収しに行かなくちゃ行けないけど、私は地に落ちていく二人に背を向けて格好つける。

 

「峰内よ。安心なさい」

 

「え、確か緋想の剣は両刃なので峰の部分は無いはずなんですが・・・・・しかも成敗って、本来私達が処罰される方なんですけど」

 

「・・・・地上への道は果てしなく遠いわね」

 

「天子様、聞かなかったことにしないで下さい」

 

白竜は放って置いて、エリスと小悪魔が気絶したから地上に落ちて行ったけど何とか拾って白竜に乗せて地上に向かった。これで退屈はしないかな、多分。まずは揺れの原因を調べに行って、色んな大陸でも見ましょうか。焦らずのんびり行きましょ~。最初はどこから行こうかしら、あ、天竺に行ってみよう!そうしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら斬り落とせなかったようだな。ならば勝負は俺の勝ち、お前達鬼女は俺に仕えて貰うぞ」

 

そんな、この私が斬り落とせなかった。神通力を小通連に使って彼の右腕を斬っても傷一つない。右腕に刃を当てても右腕に触れるだけで刃がそれ以上右腕に通らなかった。まるで何かが刃が通るのを拒んだ感じがしたわね。神だからかしら? それなら私も同じ神だし違うと思う、勝っても負けてもどっちでも良かったとはいえちょっと落ち込むわ・・・・・

 

「どうして右腕を斬り落とせないの。神ってそんな力あったかしら、貴方は特別な神なの?」

 

「いや、ただ妹に頼んで一時的にだが永遠の存在になっただけだ」

 

永遠って不変の概念よね。不変とは変化を拒む、割れ物が割れない、人は老いる事も無ければ食べ物が腐る事は無いし穢れる事は無い。 覆水盆に返らず が 覆水盆に返る と言う事?何それ、それって痛みも感じない不老不死って事で守りに関しては無敵な存在って事じゃない!そんな相手の右腕を斬り落とせる訳が無いわよ!! 負けは負けだし私は彼の物になるから別にいいんだけど。ヤマメは眉間にしわを寄せてたけど枡にある酒を飲んだら気持ちを切り替えたのか周りにいた鬼女たちを見渡す。足音がして地面から私の肩に飛んで来たけど私の飼い猫お燐だった。今までどこにいっていたのか、取りあえず安心して撫でる。お燐の頭を撫でると、目を瞑りゴロゴロと喉を鳴らす。いつもお燐と一緒の死体が見当たらないけど。

 

「まさあのパルスィが神1人の右腕を斬り落とせなかったなんてねぇ。こりゃ面白い。だけど負けは負けだ、約束通り私達鬼女はあんたに仕えるとするよ。お前達もいいね」

 

鬼女全員がヤマメに返事をしてから、彼は無表情で右腕を見ている。見終えたらスキマ?とかいうのが彼の前の空間から出て来て幽香と美鈴という女性が中に入って行った。どうやら諏訪の国に通じているらしい。意味が分からない。私の神通力でもそんな事は出来ない、精々空を飛べるくらい。ヤマメが最初にスキマに入り鬼女たちも後に続いてスキマに入って諏訪の国に向かう。残ったのは私と彼だけになった。彼が私の肩に乗っている猫を見つめてる。

 

「その猫どうしたんだ。パルスィの飼い猫なのか」

 

「そうよ。この子の名は燐って言うの。愛称で皆はお隣って言ってるけどね」

 

彼はお燐を見てほくそ笑んだ、何かいい事でもあったのかしら。でも彼のほくそ笑む顔を初めて見たけどいい、好き、大好き。お燐は海の向こうにいる妖怪で 仙狸 という妖怪。私が天竺にいた頃の私の飼い猫な訳だけど、神通力を身につけさせてるから神通力を使ってすぐにどこかへ行くから困る。しかもこの子は死体が好きで死体を私の元へ持って来る、褒められたいからかもしれないけどやめて欲しい。前に持って来た死体が死んで間もない死体でヤマメが妖術で死体に死体の元の魂を入れて甦らせたけど。名は確か、芳香 だった筈。芳香は蘇って意識はあるんだけど、お燐が操ってる時は何も覚えてないらしい。人間の死体だから時間が経てば腐るけどヤマメの妖術で腐る事は無い、お燐は怨霊や死体を操る事が出来る凄い猫。お燐に芳香の事を聞いても、大丈夫だと言いたげに鳴いたから気にするのをやめ、彼が、先に入ってくれ。と声をかけたからスキマの中に私も入る。入る途中で彼の声が小声だったけど何とか聞こえた。

 

「皮肉な話だな。片腕を斬り落とすとはまるで羅城門の鬼じゃないか」

 

羅城門の鬼。そんな鬼聞いた事が無い。鬼はともかく羅城門なんてこの大陸にあったかしら。羅城 門 があるから門なんでしょうけど私は聞いた事が無い。だけど、ヤマメの目的はこれで終わったわね。今回の発案者はヤマメなんだけど、ヤマメは鬼族の治める国家を創ろうとして、そこに悪路王達も乗って来た。何故諏訪の国を選んだかは、そこに鬼が3人いたからだ。萃香、勇儀、華扇が。鬼が治める国家を創るならこの3人も国の一員として引き込みたかったみたいね、袂は分かったとは言え同じ鬼なんだから。コンガラはどこかに旅に出たらしいから無理だったみたいだけど。

 

スキマとかいう穴に入り、奥に進むと出口らしき穴があったのでそこに入ると国に出た。何とも言えばいいのか。人間の住処がずらーっと奥に並んで、その道には色んな人間が沢山いる。だが人間は私を気にせず働いたり雑談しながら食べ歩きしたりしている、何だか怖くなった。今までの常識がこの国には無くなっている。鬼に限らず妖怪とは人間に畏れられなきゃいけないのに、その根本を崩されてしまっているからだ。ヤマメ達鬼女はこの光景に絶句だ、今まで鬼の姿を見られたら人間や小者妖怪は一目散に逃げられていた。だけど、萃香達が諏訪国の王に仕えてると話を聞いた時は信じられなかったけど、こんな光景を見せられたら信じるしかない。先に来ていた幽香と美鈴と言う女性はある1人の男に話し込み頼んでいるみたい。

 

「じゃあ頼んだわよ聖。美鈴と宴会の準備があるからね」

 

「お願いしますね聖さん」

 

「お任せあれご両人」

 

その男が近づいて来て頭を下げて私達鬼に挨拶を交わす。

 

「初めまして。諏訪国の北側にある聖山から名付けられました聖と言います。ってどうでもいいですねそんな事。」

 

聖と言う男は軽い態度で笑って、だけど敬意を払って接してきている、人間の敵で妖怪である私達鬼にだ。私は鬼神だから神な訳だけど。あの人に仕えるのはいい、でも住んでる人間にはいい感情は持たれないと思っていたけどそんな事は無かったみたい。安心、すべきなのよねこれって。妖怪からしたら落ち着かないでしょうけどね。聖の両脇に、二人の女性がいる。片方は元気に片手を上げて、もう片方は腕を組み冷淡に名を名乗る。

 

「私は 今泉 影狼! よろしくね。」

 

「私の名は 寅丸 星 どうぞ、よろしく」

 

二人は最近来たばかりだそうで二人も交えて案内をするらしい。どうやらあの人の神使の様ね。鬼はともかく神使なら妖怪でもおかしくは無い。私達も名乗ると聖が前に出た。

 

「話は幽香様と美鈴様より仰せつかっており、宴会の準備は済ませております。ですがその前に諏訪の国を案内しますので皆さん見ていかれませんか?」

 

人間を見ていて度胆を抜かれていたヤマメ達鬼女は、男の話を聞いて気を取り直す。酒を飲むほどの余裕は無いみたいね。しかも鬼を人間が歓迎して宴会って、もう何を信じればいいのか。でもこの国なら鬼の楽園を築けるんじゃない、ねえヤマメ。

 

「よ、よぉし。じゃあ案内してもらうかね、行くよお前達」

 

ヤマメは鬼女たちを連れて聖とかいう男について行ったけど途中で桶に入ってたキスメが起きたみたいで聖を喰らおうとしたけど避けられ返り討ちにあった。人間なのにあの動き、素人じゃないわね。誰かいい師でもいるのかしら。ヤマメはキスメの首根っこを掴み頭に拳骨する。鬼の力凄まじいし拳骨されて頭にたんこぶが出来たでしょうね、頭を痛そうに両手で抑えて泣いた。キスメが泣いたので紅葉がキスメをあやして先に進む。私は断った、彼がいないからだ。でも、これで私はヤマメと紅葉もだけど鬼女達は本当に彼の物になってしまったと言う事になる。私は う、嬉しいけどちょっぴり照れる。だけどこのちょっとした気恥ずかしさが心地いい。世の中は三日見ぬ間の桜かなって言葉があるけどがらりと、劇的に変わるものなのね。後は私の良人になってくれたらいいんだけど。どうしたらいいのか。こんな感情生まれて来て初めて感じた物でどうすればいいのか分からない。・・・・・これじゃあ私、恋する乙女みたいじゃない! こんなに彼の事で頭を覆い尽くすなんて私は彼の事がどれだけ好きなのよ!! 一目惚れって怖いわ、昔の私、と言うか日の出が出た時の私が今の私を見たら絶対認めず今の私を斬るでしょうね。私の背にあったスキマとか言う穴から彼が出て来た。私が待ってると思わなかったのか少し驚いた。彼の驚く所を初めて見るので何だか嬉しい、もっと彼の色んな表情を見たい、彼と色んな事を喋りたい。あ、後は子供とか・・・

 

「何だ、一緒に行かなかったのか。案内してくれるのがいただろう」

 

「いたけど私は貴方に案内してほしいの。ほら、早く行きましょう」

 

彼の手を強引に取り歩く。私は離れないわよ絶対に。嫌がられてもどこでもくっ付いて離れずにいてやるんだから。でも私達鬼女は八ヶ岳に行って住まなきゃ駄目らしいけどね・・・・・私は勝負に負けて彼の物だし命令に逆らったら彼に嫌われそうだから従うけど会えないのは寂しい。まあ、諏訪国から八ヶ岳は一日もかからないほどの距離だから会いたいときはすぐに会えるけど。それに私には神通力があるから空を飛べるし。

 

「この国の人間は変わってる。でも妖怪は人間がいて生きているからこの国にいる妖怪が死ぬ心配はないわね。」

 

「人間がいるから妖怪は生きて行ける。だからこそ、民を守らねばならんが、俺は無能で頭もよくない、だから戦力を集める事しかしてやれないし他に何もしてやれん。俺が民の役に立てていればいいんだがな」

 

彼は仕事に励む民を見ていたけど手を私と彼は繋いでいたけど、今度は彼が私の手を引っ張り先に進んだ。彼は隠すのが下手なのか、どう思っているのか知り合って間もないこの私でも分かるほどだった。私が彼にしてあげられる事は何だろう、今は分からないけどいつか分かる日が来るといいな。

 

 

かつて、似た様な話をした。諏訪の国の民、人間全員を不老不死にしたとする。だがそれは果たして人間なのだろうか。妖怪は人間がいるから生きている、しかし人間が人間でなくなったら妖怪はどうなるのか。輝夜と咲夜がいたら人間を不老不死に出来るとは言えそんな博打に乗る事は弘天に出来なかった。自然の摂理に逆らう事は弘天は嫌がるが、ただそれは本人だけの話。本人以外が自然の摂理に逆らう事をしても何も言わないし、止める気も無い。むしろ推奨する。もし、もしだ。目的はどうあれ、数人の人間、ある人間が不老不死になりたいと言って来たら弘天は喜んで、迷いなくその人間を不老不死にするだろう。一緒にいられる者が増えるのだから。

 

人間とは短命だ。妖怪は仏教と共にやってきた概念とも言われているが、妖怪は人間の恐怖心から産まれた産物。人間が妖怪という概念を忘れてしまえば妖怪は死ぬのではなくこの世から消える。妖怪の寿命はこれだ、人間から忘れ去られればこの世からいなくなる。だからこそ妖怪は妖怪の印象を強烈に残す為に例外もいるが人を攫うし、人を喰らうし人間の敵になる。妖怪は人間の敵だと人間達の脳に強烈に印象付ける為にしている。ルーミアの様な人食い妖怪がわざわざ不味い人間を喰らうのはそれでだ。だがすべての妖怪がそうではない、何も印象付ける為なら人に嫌われるだけではなく好かれればいい。しかしほとんどの妖怪はそれが出来ない。嫌われるのは簡単だが好かれるのは難しいからだ。だからこそ簡単な方をほとんどの妖怪は取っている。ただ人間の友ではなく敵になればいいだけ、お互いの手を差し出し取り合うのではなく妖怪が人間の首元に刃物を当ててしまえばいい話。妖怪という概念を忘れさせなければいいんだから。本来、神と妖怪は全てがそうではないが同じ人格神でざっくり言えば信仰されるかされないかの違い。本質は対して変わらない。神は恩恵を、妖怪は災厄をもたらす存在と思われてるが神が災厄の原因の時もあれば妖怪が恩恵を与える時もある。分かりやすく言うなら祟り神がいい例だ、恩恵をうけるも災厄がふりかかるも信仰次第な神、神や妖怪が敵になるか味方になるかは人間次第と言う事だ。

 

 

 

「思ったんだけどもしも勝負に負けて、諏訪国が私達鬼の土地になったらどうする気だったの」

 

「あー それはな。俺は諏訪の国以外で二つの国を持っていて、もしもの時はどちらかに民と共に移り住めばよかったんだよ。だから諏訪の国をくれてやっても問題は無かったんだ」

 

欠伸をしながら話す弘天が今何を考えてるのか、それは。鬼が結構増えたが鬼の四天王とか格好良くね。頭は意外性で萃香、纏め役、抑え役の副頭領、華扇。配下の四天王は勇儀、ヤマメ、パルスィ。紅葉。またはコンガラとか。格好いいな。と、下らない事を考えてた。

 

「じゃあ勝っても負けてもどっちでも良かったんじゃない!」

 

「いや、移り住むって言っても俺の娘が大変だからな。全てをスキマで持って行くんだからこの手はあまり使いたくは無かったんだよ。それに移り住むって言っても色々面倒事があるしな、これは奥の手なんだよ」

 

彼も勝っても負けてもどっちでも良かったって、私と同じ考えだなんて私達って相性は悪く無い? 嬉しすぎて倒れそう。こんな事で喜ぶなんて私は意外と単純なのかしら。私って安い女ね。でも一目惚れとは言え彼の傍から離れたくないほど好きなんだもん、大好きで愛してるんだもん。彼との子供だって欲しいもん。安くても別にいい。一緒にいられて添い遂げられるならそれで、十分。まだ夫婦じゃないけど。あ、この国の決まり事ってあるのかしら、彼の国の事だから覚えておきたい。

 

「この国って何か法とかあるの? あるなら覚えとかなきゃいけないんだけど」

 

「特にないから構わん。この国だけではないが強いて言うなら俺が法だ」

 

「それってただの独裁主義者じゃないの」

 

「国を治める王なんて実際はそんなもんだ、それといい事を教えてやる」

 

彼は両手を使い私の両肩を力強く掴んで動けないようにして、私と彼は見つめあう。もしかして、これって・・・・・接吻!? いきなり!? そそそそそんな私どうしたら ま、まずは落ち着いて・・・・・って こんなの落ち着ける訳が無いでしょ!!!

 

「そ、そんな急に求められても私困っちゃう・・・・それにこんな道の真ん中で、皆見てる。せめて人気が無い所で・・・・・」

 

ってあれ? 横目で民を見てみたけど、どうしてか諏訪の国の民はこれが日常茶飯事だと言った感じで全く気にせず通り過ぎていく。横目ですら一切見なくて誰も気に留めないなんてこの国おかしいんじゃないの。彼の方が背が高いから私は見上げて上目遣いから両目を瞑り彼がするのを待つけど、彼はしてこない。ここまでして期待させておいて放置するなんて酷い人と思い両目を開けるけど彼は、何してるんだ。と言いたそうな顔で私を見てる。そこは気付いてよ。

 

「何してるんだパルスィ。まあいいや。いいか、俺は自分勝手。自分さえよければいいと思ってる屑だ、だから気を付けろよ」

 

「えっ」

 

彼は私の両肩から両手を離して先に進んだけど、進む途中民から籠を無理矢理先に渡されて籠の中に食べ物を入れて貰って行き、彼が持ってる籠の中に食べ物がいっぱいある。断っても無理矢理持たされるので断るのはやめたみたい。華扇がいるから簡単に無くなるでしょうけど、一応彼は民からは慕われてはいるみたいね。そして黄色い声が煩い。だけどこんなの、私に、乙女に恥をかかせるなんて。

 

「おいおい。こんなに食えんぞ」

 

「そんなこと言わず私の野菜貰ってください弘天様! 藍様に調理してもらえないなら私が神社にお邪魔して調理しますよ!!」

 

「ふざけないで。抜け駆けするんじゃないわよ、丹精込めた私の野菜の方が美味しいんだから。受け取ってください弘天様。そして私を神社に」

 

「ここは永琳様に作ってもらった精力剤を飲ませ、もとい弘天様にお肉を食べさせ精力を付けてもらい一夜の過ちを起こさなきゃ・・・・・!」

 

彼は民に囲まれて苦笑してるけど、女性の民を愛おしそうに頭を撫でて笑った。好きなのね、人間が。だけど、どうして若い女性が多いのよ!少し男も交じってるけど女性が多すぎ!! こんなの嫉妬するに決まってるじゃない! 左手の親指の爪を噛んで愛おしいけど恨めしい彼を睨む、彼は籠に入っていた鬼饅頭を食べながら振り返る。関係ないけど私 鬼饅頭大好き。彼も好きみたいだからこれって、両想い!?キャー!じゃあ体を重ねて子供、知り合って一夜も経ってないのにそんな、子供だなんて・・・・・いいかも。

 

「よーし行くぞパルスィー」

 

「そんな殺生なー!!これじゃあ生殺しじゃないのよー!!!!」

 

肩に乗っているお燐がやれやれとでも言いたげに鳴いた、でも泣きたいのは私よ。

 

「てかさっきからスゲー地面が揺れて地鳴りが聞こえる、何だこれ。地震か。こんな時でも民が俺の所に来て喋ったり、平然と仕事をするのは恐怖を感じる。民の肝が据わりすぎている、死ぬ恐怖は必要だがこの類の恐怖はいらんぞ。鍛えすぎたか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は変わるが、乙巳の変というのをご存知だろうか。それは飛鳥時代に起こり蘇我入鹿が暗殺された事件で有名な話だ。が、今は飛鳥時代ではない。飛鳥時代ではないとは言え乙巳の変が起こった。歴史通りなら入鹿は殺されていた。入鹿は聖人で秀才。内政、外交ともに、非常に優れた政治家だ。顕彰される人物。しかし、それを妬む者がいた。出る杭は打たれると言う事だ。いつの時代も優秀過ぎても良い事ばかりじゃない、面倒事はある。だが、今回は結果は変わらず過程が変わった、歴史通りになったが少し違う。それはなぜか、一つは神が実在していた。もう一つは入鹿がこの大陸で産まれた人間ではなく、天竺にいる第六天魔王の娘、そして半神だったからだ。もし、入鹿がただの人間でなら歴史通りに殺されたいただろう。ただ結果は変わらず過程が変わった、ほんの少し、ボタンの掛け違いで歴史が一瞬とは言え変わった。そんなお話。

 

 

 

 

 

ここは大和大国の大和朝廷。入鹿が大和朝廷に第六天魔王と言われる少し前。ある日、三韓から進貢の使者が来朝した。三国の調の儀式は朝廷で行われ、皇極天皇が大極殿に出御、大臣である入鹿も出席する事となったが、この場で入鹿を暗殺が企てられていた。ある首謀者が企てた関係者の一人、蘇我倉山田石川麻呂が上表文を読み。1人は長槍を持って殿側に隠れ、1人は弓矢を取って潜んだ。しかしいざとなると2人は恐怖し、暗殺を実行できなかった。蘇我倉山田石川麻呂はまだかまだかと汗だくになり、読み上げていると声も上擦る。だが入鹿は見抜いていた、自分が暗殺されることに。神通力の一つに他心通がある。これは相手の心を読み取る事が出来るものだ。蘇我倉山田石川麻呂を不審に思った入鹿は神通力を用いた訳だ。だがこの場から出る事は出来ない。心を読み取った時に判明したが衛門府に命じて宮門を閉じさせた様だ。入鹿は今でこそ人間の振りをしているが実際は第六天魔王の娘だ。暗殺者を返り討ちにする事も出来るしこの場から逃げる事も可能。が、それは出来ない。それをすると自分が人間ではないと悟られるからだ。時間が経ちついに一人の男が腹を括ったのか、飛び出して入鹿の頭と肩を斬りつけようとした

 

 

                  その時

 

 

神が、降臨した。この場にいた人間は静まり返り驚いた、何せ余程の事が無い限り出てこないあの月読命だったからだ。腰まで届くストレートの金色の髪を靡かせ、その場にいた人間に有無を言わせぬ態度で命じ、後ろに控えていた神使に指示を出す。

 

「この者は神を愚弄した大罪人、我がこの者を預かる。直ちにその者、入鹿を独房に入れて置け小兎姫」

 

「はーい。やっぱり地上人って美しくない、醜く、穢れてるわね」

 

月読命の神使である兎、名は 小兎姫 を使い縄で入鹿の両手を縛り小兎姫が人間を蔑んだ目つきで見ながら入鹿を牢獄に連れて行く。その場にいた人間はいくら三貴神の一人に命じられても納得できる訳が無かった。暗殺を企てた自分たちはどうなるのだと、そう考えたが。どうでもいいといった感じに月読命は、お前達に御咎めは無い。誰を殺そうとそれは人間の問題だからだ。だが入鹿は我ら天津神を愚弄したと耳に入ったのでな。入鹿は我ら三貴神が処す。そう言い、皇極天皇に話をする為に天皇の御座へと向かった。

 

人間の振りをしていた神だとは困った事をしてくれたものだ。なんと姉上に伝えればよいか。これでは我ら三貴神があれの物では、道具ではなくなってしまうかもしれないではないか。第六天魔王の娘だとすれば。国際問題に発展しかねん。何としても入鹿の命だけは助けなければならん。例え、入鹿が歴史に悪者、大悪人として名を残す事になろうとも。表舞台から殺す理由などいくらでも作れるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入鹿は独房に入れられ、ただ瞼を閉じ正座をしてじっと待った。右目を開けて周りを見ても何もない、ただ目の前に鉄でできた鉄格子があり、桶が独房の隅に置かれているくらいか。どうやら隅にある桶に排泄物を出すようだ。この程度ならすぐに壊して出られる。今は仮の姿で人間でも実体は神なのだから。。誰かが来る気配を感じたので瞼を上げると天照大神がいた。天照大神は独房のカギらしき物と剣を入鹿が入っている独房の中に投げ入れて、入鹿が入っている独房の中に入れて出るように促した。入鹿はさっきは縄で両手を縛られていたが、小兎姫に連れて来られて独房の中に入れられた時に縄を解かれているので両手は動く。入鹿の胸元に入れて置いた笏を取り出し入鹿の右手には笏を持っている。不本意だが大和の神に迷惑をかけてしまって、入鹿は慙愧に耐えないと眉を顰めて身の縮む思いだ。

 

「人間ならば出す気はありませんでしたしそもそも助ける気はありませんでした。人間の政治にあまり神が関わる訳にはいきませんので。ですがあの時人間の振りをしていた神ならば殺されると大変、諏訪の国に知られたら面倒です」

 

面倒をかけたのは入鹿、神子の方で何も言えない。だがそんな事を入鹿は私に聞かれてもよいかと聞いても天照大神はにっこりして首を振り、気にした様子は無い。

 

「すぐに知られてしまいます。あの国には情報屋がいますので、厄介な事をしてくれたものです、神気を感じませんので神通力を使っているのでしょうが余計な事をしないでいただきたいです」

 

天照大神は大和の頭の一人ではあるが、今は政治などには関わっていない。それは人間が行っている。天照達の役目は人間が誤った道に行きそうな時は人間に悟らせ、止める役目がある。そして、弘天の為の道具として働いている。どちらかと言え人間より弘天の為が大きい。だからこそ、ここで国際問題に発展したら弘天に迷惑がかかる。それだけは避け、自分達、弘天の為に入鹿を助けたのだ。

 

「本当に申し訳ない。私はこの大陸の宗教、神道が好きでしてね。だからこの国の人間になっていたんですが。仏教発祥の地、天竺は、私の出身国で仏教については聞き飽きて目新しくもなく興味もない。興味深い神道を知る為に海を越えてやって来たんですけどね」

 

この国にある大和朝廷は仏教か神道かの二つの派閥に分かれてる。違うわね、分かれていたけど神道派は滅ぼされた。仏教派の蘇我氏に。渡来人と交流の厚かった蘇我稲目も余計な事をしてくれたのものよね、よりにもよって仏教をこの大陸に持って来るなんて。そしてこの私がよりにもよって仏教派にならなきゃいけなかったなんて屈辱。昔は神道なんて言葉が無かったそうだけど、この大陸の人間は山や川などの自然や自然現象を神として一体的に認識されている宗教。面白い、実に面白い。仏教や道教には無かった考えだ。それに他の宗教と違うところは、神道は開祖や創始者がいない。この点もいい。

 

「宗教など政治の道具に過ぎません。それに神道なんて言葉、昔はありませんでしたが仏教が来てから急に仏教との対比によって言われはじめましたからね」

 

まあ神道は宗教色は強くないけどね。宗教ではなく信教。個々によって信じるものが違う。それが神道だね。そして仏教は民の心の拠り所になる。だから一概にこの大陸から無くせとは言えない。それに一度知ってしまったならもう離れる事は出来ない人間もいる筈。だからこそ対立してたんだ。仏教か、神道かについて。私は仏教を崇拝してる事で知られてるけどそれは表向きで実際は神道派だ。もし私がこの大陸の人間だったなら道教を選んだかもしれないわね。不老不死になる為に、この大陸の人間だったなら道教なんて知る機会が無かっただろけど。だけど私は半神とは言え神だから不老不死みたいなものだし。神道を学ぶために私はこの大陸に来た。そして、神道派の物部氏は滅ぼされたけど生き残りが一人いる。あの子も私が連れ出さなくてはいけない。私の関係者なら、殺されるかもしれないから。私はあの子には憎まれてるけどね、私は蘇我一族の者で、本意ではなくとも仏教派だった事に変わりはない。でも、あの子は一族を根絶やしにされて今は蘇我一族への憎しみだけで生きている。憎しみで生きる糧になるなら憎まれても構わない。生きていてくれたらいい、この私が崇拝する神道の。神道派で廃仏派の一族なんだから。神である私が神を崇拝するのもおかしな話だけどね。

 

「全く持ってその通り。だけど仏教や道教なんて私は大ッ嫌いでね。もう嫌になる。政治利用はしますけどね」

 

「ですが貴方の、信仏法、尊神道。神仏習合思想はいいと思います。折衷案としてはですが」

 

最近、人間の中には神身離脱の考えが出始めつつある。ふざけている、この大陸の神が神身離脱、日本の神も人間と同じように、輪廻の中で煩悩に苦しんでいる身であり、仏法に依って救済される? 日本の神々は、神身を離れて、仏法に帰依し、その迷い、苦しみから逃れることを願っている? バカバカしい。そんな事はあり得ない。それは人間の思い込み。私が余所者、天竺から来た半神でもそれは違うと断言できる。いくら神道の神は無謬の存在ではなく、人間味に溢れる神だとしてもだ。それは神が考える事であって人間が考える事じゃない。それに天照大神様を見ても、とてもそう考えてるとは思えない。常に笑顔だが、どうでも良さそうな、そんな顔。日本神話の神は本当に人間臭い存在。神話の話を昔聞いてみてそう思った。

 

「神道の神で、三貴神の一人である天照大神様がそれをいい案だなんて言っていいのでしょうか? 神道と仏教が習合されるのです。元々いた国の神を他所からやってきた神と習合されるなんて屈辱もいい所だと思うのですが」

 

「構いません。納得しない者もいるでしょうがその時はその時です。私達神が人間に必要無くなったらこの惑星から姿を消しますから、その時は道具らしくあの人の傍にでも寄り添って使ってもらいましょうかね」

 

 

私はつい無粋にもあの人 と呟いてしまい、失礼な事を聞いた事を謝罪するけど天照大神様は気にせず話してくれた。

 

神道の為に仏教を無くす事も考えた。でもいくら私が表面上は仏教派で、実は神道派で廃仏派でも無理だった。この大陸から仏教を無くすには仏教派を皆殺しか、またはこの世から仏教の概念を無くすか。仏教派の脳みそを弄り仏教を忘却の彼方にするか。それしかなかった。だけど、どれもする訳にはいかない、それに仏教を求める民がいるのも事実だ。そして私は神道派で廃仏派だけど過激派じゃない。だから習合しかなかった。神道は神身離脱のせいで人間から薄れつつあった。神を人間と似た存在に見始めたからだ。神道を靄にかけさせず、この大陸の人間に忘れさせない為にはこれしかなかった。神道を崇拝する私としてはこの状況は見過ごせなかった。これが初めて、私の人生の汚点。天照大神様が仏教と習合されたら大日如来と同一視される事になる。

 

「そうですね、それについて答える前に貴方の事を調べ上げましたが、姉妹のパルスィという名の女性がいますね」

 

急に姉妹の名を出されて面食らったけど、よく考えたら私の事を調べ上げてあの時助けてくれたんだから知ってるのは当たり前か。私は第六天魔王の娘だからすぐに調べがつくだろうし。

 

「いますけど、パルスィは天竺にいる筈です。パルスィがどうかしたのですか」

 

「彼女がこの大陸にいて、ある方に仕えたそうです。その相手があの諏訪国の王ですよ」

 

この時、まだパルスィは諏訪の国に仕えてはいない。パルスィは今諏訪の国に向かっている途中で琵琶湖辺りだろうか。この時の入鹿はまだ第六天魔王として名を残さず、神に邪魔をされたせいで入鹿は朝敵なのかあやふやなままだ。ならば何故まだパルスィが諏訪の国に仕えていないのに仕えていると言うのか。読んでいるのだ。この先どうなるか。だから嘘は言っていない、少し早いが事実になるのだから。

 

「そう、ですか。それで、どうしてそんな話を私にしたのですか」

 

これは驚いた、そっか、パルスィが諏訪国にいるのは第六天魔王が天竺にいなくなって諏訪国にいるからね。今 第六天魔王は諏訪の国にいる筈でとっくの昔に諏訪国の王に接触していて、仲は良好だと聞いてる。実際は諏訪国の王から接触したらしいわね。気になったんだけど、天照様がその諏訪の国の王と言った時は生娘みたいな顔になったような気が。

 

「さあ。あえて言うなら気まぐれですかね」

 

奥から綺麗な女性が来たけど私をさっき助けてくれた月読命様と小兎姫様が来た。月読命様の髪は金髪でパルスィを思い出す。あの子は仕えたそうで元気にやってるといいんだけど。あの子が仕えるんだから悪い人じゃないと思う、でもあの子って男嫌いじゃなかったっけ。一目惚れでもしたりして、まさかね。

 

「姉上。この後はどうするので?」

 

「入鹿は私が殺した事にしましょう、入鹿は人間だと思われてます、ですが数百年もすれば名はともかく容姿を覚えてる人間はいなくなります。入鹿に寿命は無いのですから問題は無いでしょう。その代り歴史に名を残す事になりますがね、悪い意味で」

 

天照大神様は、そしてそこにいる龍を使って、助けたい人間がいるなら助けなさい。このままではあなたの関係者は殺されるでしょう、私は関知する気は無いので。そう言った。天照大神様が神道の最高神では無いとは言え、気付いておられたとは感服だ、上手く擬態させてたのに。

 

入鹿が今回の暗殺される理由は入鹿が、皇族を滅ぼして、皇位を奪おう。としていたという名目で入鹿は暗殺されかけた。殺すにしても殺す名目が必要だったからだ。そこに朝敵だけでなく神に逆らった大罪人としても追加されて歴史に名を残すのだ。蘇我入鹿の名を捨てて生きなければならない。蘇我入鹿、蘇我は養子として入ったので貰い名、入鹿は人間の振りをする為の仮初の名だ。捨てる事になっても対して未練が無く気にならない様だが。神子はこれからどうするか考えたが青竜に頼んで久しぶりに琵琶湖に行って人魚のわかさぎ姫に会おうかと考えた。容姿や服装を神通力で変えておくのを忘れない様に今の内に変える。これで入鹿かどうかは分からないだろう。あと二人も神通力で容姿を変えて置こうと思い、あとは脱獄だ。天照と月読命は独房に背を向けて、来た道を戻る。神子がこうなった以上布都は勿論の事、神子の身内である屠自古も連れ出さなくてはいけない。

 

早くしなければ二人とも朝廷に殺されるだろう。疾風迅雷に動かねば手遅れになる。布都は何としても生かし、高貴な方に嫁がせ物部を再興してもらう。布都もそれを望んでいる。物部氏のたった一人の生き残り、血を絶やす訳にはいかない。布都には子孫を、子を成してもらわなきゃいけない。物部氏はこの私が崇拝する神道、神道派で廃仏派の生き残りなんだから。だけど物部を再興させるなら高貴な方の国は朝敵になるだろう。その時、私は参謀役として働かせてもらおう。大和朝廷は西はともかくなぜか東の土地を統一しようとせず。東は朝廷の手が伸びていない。だから東に行こうと決め、そろそろ出ようと思った神子は立ち上がって右手にある笏に語り掛ける。神子は蘇我についてはどうでもよく、未練はない。もう大和に、天照に恩を返して十分貢献したからだ。

 

そう言えば、月読命様の一人称は我だけど、あの子、それを真似て一人称が我になったわね。そして物部氏の祖先は神で名は 宇摩志麻治命 や 邇藝速日命 ね。だからあの子にも神の血と呼ぶべきか分からないけど神の末裔ではある。

 

「じゃあ行きましょうか青竜。あの子達を迎えに、しばらくは野宿です」

 

右手に持っていた笏が変形して、笏の先が少しずつ竜の頭になり、口も出て来て返事をする。

 

「うい」

 

今の私はもう大和朝廷の有力者 入鹿 ではなく半神の神子。そして第六天魔王の娘。なら仏教の敵に徹しましょう。独房のカギを開けて外に出る途中見張りがいたので、見張りを気絶させて外に出る。日差しが眩しく、息を吐くと吐いた息が白くない、この前まで寒かったですが今は暖かくなり、寒さが無くなりつつあります。もう春ですね。この春が、いい季節になればいいのですが。でも私は諦めない。仏教を無くす事は出来なくても、いつか神仏分離をしてみせます。この私が崇拝する神道の為に。私が考えた神仏習合をこの私が無くし、神仏分離するなんてね。おかしすぎて誰かに気付かれそうだったけどお腹を抱えて大笑いした。あの子たちが住める住処も探さなくちゃね。どこか私達を受け入れてくれる物好きな国、王様とかに。

 

 

 

 

 

 

 

こうして入鹿は死んだ。歴史的にだが。だが入鹿が死んだ後はある屋敷に住んでる者が落雷で亡くなるのではなく、入鹿が歴史的に死んだ後は大和の空を覆うほどの龍が現れ、太陽が隠れた。大和は暗黒の世界になり、まるで天照の岩戸隠れの時の様だ。しかし視界は悪いが薄らとは見える。今回の首謀者の屋敷に龍が来て首謀者の屋敷を壊され屋敷から首謀者が出て来た時、龍に丸飲みはされず、まずは逃げれないようにする為に足先から膝まで喰った。喰われた時にあおむけで倒れた、そしてそのまま膝から頭に向けて少しずつ、薄らとしか見えない視界で、自分の膝から激痛と共に少しずつぐちぁぐちゃと音を立てながらゆっくり喰われる所を想像しただけで恐怖と言う言葉では足りないだろう。喰われているその間、喰われた者の絶叫が辺りに良く響いた。首謀者は顔や頭は無事で足先から膝まで喰われ膝辺りから先は無くなり出血は酷くても即死は出来ない。あまりの痛み、耐え切れず両手が無事なので龍の顔を両手で殴ったりして藻掻くが効果は無い。ただ動いた分だけ痛みで悶えるだけだ。だからそのまま自分が膝から頭まで喰われて行くのを見ているしかなかった。首まで来て首謀者は声も出せず白目を剥き、ついには顔まで来てそのまま髪の毛ごと頭蓋骨をバリバリと噛み砕いて呑み込んだ。ある人間が龍の背の方から女性の声がして豪快に笑ってたそうな。スカッとした様だ。だがその声は入鹿に似ていて、のちにその話を聞いた者達は入鹿が亡霊になり青竜を操って首謀者を祟り殺したんだと思ったらしい。その事態に大和の神は動かなかったそうな。龍は首謀者を喰い終えた後は、パッと姿が消え、空に太陽が戻って来た。どこに行ったか不明。

 

余談だが、太陽が隠れ、暗闇になった大和を見て太陽神はトラウマを思い出しいつぞやの様に天岩戸ではなく今回は神社に引きこもった、月読命が神社から何とか出そうとするが、月読命もかつてのトラウマを思いましてダウン。天照のトラウマの話に女性が一人死んでいる。それで月読命は過去を思い出した。月読命が保食神を殺して天照が怒り、太陽と月、昼と夜が分かれたあの話だ。天照のトラウマは、須佐之男がトラウマの原因なので須佐之男から天照に会わす顔が無く、仕事をこなしつつあの頃は若かったなと感傷に浸った。女性を一人殺してる訳だがそこは神の図太さだ。それを言ったら月読命もだが。どこかの女好きで馬鹿な王がそのどれにも関わってるので須佐之男はともかくそれぞれトラウマになっている。

 

話はずれたがその首謀者の名はあの藤原氏。藤原氏始祖である 中臣 鎌足 だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青竜が大和に現れる少し前。天照と月読命は神社に戻り、ここならだれも聞いてないと思い話の続きをする。

 

「では姉上。後で入鹿かどうか判別できない惨い、直視できない死体をあの場にいた人間に見せておきます。しかし。もう潮時かもしれませんな姉上」

 

「ん、もう隠居してもいいかもしれない。別にまだいてもいいんですけどね、あの人はどうする気かしら」

 

「あそこの民は狂信者しかいませんし、私達の大和と同じ道を辿るとは思えませんね。しかもあの国には土蜘蛛が目撃されています。諏訪国が裏では大和を従えてますから土蜘蛛からしてみればいい国でしょうな」

 

諏訪国が大和を従えてる事については 豊姫 以外に情報を漏らしていないので偶然にも安息の地に住み着こうとしている訳だ。問題なのが土蜘蛛が目撃されたのは諏訪国の北にある岩戸が落ちた付近だ。岩戸はあの天岩戸の岩戸だ。こんな話を姉上が聞いたらトラウマを思い出し、またいじけて引きこもるのでこの情報は暈して伝える。

 

 

 

土蜘蛛とは、妖怪、山の民の意味もあるが、まつろわぬ民。朝廷に従わない、上古に天皇に恭順しなかった土豪者の事を指す言葉としての意味もある。土蜘蛛に限らず鬼もだが。鬼や土蜘蛛は、神話の時代から朝廷へ戦いを仕掛けた者を朝廷は鬼や土蜘蛛と呼び、軽蔑され、恐れられていたと言われている。だから諏訪国はあの時、大和がこの大陸を統一しようとしていた時、それを邪魔しに弘天と永琳が大和を支配しに行った時から朝敵の国ということだ。今は表向きは諏訪国と大和は同盟関係で裏で大和を牛耳っているので朝敵と呼ぶかどうかは微妙な所だが。

 

 

 

「そう。あの人はまつろわぬ神。建御名方神や天津甕星の様に、あの時 私達はあの人に止められてこの大陸の統一は成し遂げられなかった」

 

「西はともかく東を統一しようとしても諏訪国が途中にある。私達に出来なかった事を人間が出来る訳が無い 人間では今の諏訪国に敵わないでしょう」

 

「そのおかげで東国は手を出せていないのが現状ですが。魔王の座をかけて争う神野悪五郎と山本五郎左衛門。東には平将門とかいう面倒も増えましたし。まあ、平将門は人間だそうですので我らには関係ありませんがな」

 

これもそうだ。本来なら大和は大陸を統一しようと動きそれが果たされていた筈だ。だが出来なかった。 あの時、 蓬莱山 弘天 と 八意 永琳 に邪魔をされたからだ。だから諏訪国より東を侵略する事も出来ないし、そもそも侵略はするなと言われてるのでする気も無いようだが。しかし言い方を変えればだ、もし、仮に大和が西方面を統一できていたとして、大和を裏で支配してる弘天は西方面を支配してるとも言えるだろう。そして今までの出来事を思い出してほしい。最初に諏訪の国が出来て次に大和が諏訪国を支配しに来た。次に 近江国にある 蓬莱山 に丹後国の海付近、海底にある竜宮城 、次は 山城国の かぐや姫 最後に悪路王達 鬼が諏訪国の南西から来た。今までの出来事を振り返るとどれも諏訪の国より西なのだ。だから何だと思うかもしれないが。

 

天照大神は月読命と二人は世間話をして笑うが、いい考えが出たとばかりに天照は月読命にとびきりの笑顔で話す。この笑顔はとんでもない事を考えてるなと月読命は思ったが、気付かなかった事にするといじけて愚痴を漏らすので、聞きたくないが聞くしかなかった。

 

「どうかされましたか姉上。今 思いついた事は何も言わず、ただ黙って歩いていただきたいのですが」

 

「酷いですね月読命。そんなこと言っても私は言いますよ。いっその事、八咫烏と、小兎姫も連れて私と豊受比売と月読命とで諏訪国に住み着きましょうか。私と豊受比売と月読命の色気であの人を落とせば住めますよきっと」

 

やはり面倒な事を考えていたと月読命は思い、無駄だと思いつつも何とかこの姉を止めようとするが、やはり無駄だと悟りやめた。だが、月読命は元とは言え男だったのだ。今でこそ月読命は女の体だが、男の心を持つ者が男に靡き、添う事など出来る訳が無い。

 

「姉上、須佐之男の事を忘れています。それに冗談が過ぎますよ諏訪国に住むなんて、ましてや我は元とは言え男ですので、素直に頷けませんな」

 

「あ。忘れてた。じゃあ須佐之男もついでにね。それに冗談じゃなく本気。私達はあの人の道具、本来道具は手元置いて置くものです。月読命は体は女で心は男。ギャップ萌え? で落とせば大丈夫。私や豊受比売もその時が来たら協力するから。ね?」

 

「・・・・・我が弟ながら哀れな。いや、我もか」

 

どうしてこうなる。何が、ね? なのか。豊受比売は姉上に逆らえないだろうし。全く恐ろしい姉だ、下らない事を言っているがこの姉の手のひらの上なのだから。

 

 

 

 

諏訪の国にいる月人は、蓬莱山 弘天 八意 永琳 蓬莱山 輝夜 そして姉上の命じられた須佐之男があいつに流した情報のせいであいつの妻になる羽目になった 十六夜 咲夜 あいつは輝夜の名で釣れば簡単だった。そして姉上の目論み通り咲夜はあいつの妻になった。

 

                                             だが諏訪国にいる月人はこの4人だけではない。

                                             諏訪国にいる月人は正確に言えば                  

 

 

 

 

                 『5人』 だ。




実際に神道なんて言葉が大昔は無くて仏教が来てから言われ始めたそうですね。今回の入鹿は乙巳の変の話です。歴史通りなら布都は入鹿の祖母ですけどいいよねオリジナル展開だし。物部氏の祖先は神、宇摩志麻治命や邇藝速日命と言われてます。他にもいた様な気がするけど。断言はできないんですが今の時代は縄文時代で飛鳥時代ではないと思います。下手をしたら神話時代、良くて旧石器時代かもしれません。色々おかしくて曖昧ですがそんな感じでお願いします。あまり時代を進ませる訳にはいかないので。でもオリジナル展開だし。

滋賀県にある琵琶湖には人魚伝説。有名な話の一つ、聖徳太子が滋賀県に訪れ、琵琶湖で人魚に出会い、人魚の願いを聞き入れ観音正寺を建て、千手観音を祀ったと言われる話があります、それで神子とわかさぎ姫が知り合いと言う事にしてます。四神の一人、人と呼ぶべきかどうか悩むけど青竜についてはやっと出せました。美鈴湖が無かったら美鈴は青竜として出していたでしょうね、服装が緑なので。青竜の名を出したあの話からだいぶかかりました。夢殿にこもって聖徳太子の魂だけが青龍に乗って中国に渡り、仏教の経典を取って来たという話がありますのでその話を使ってます。後は聖徳太子がして来た偉業は入鹿がしていると思います。分かんないけど。そしてここの神子は仏教と道教。宗教を政治利用はしますが仏教と道教が大嫌いです。 霍青娥? うん・・・・・彼女は・・・・ 実はとっくの前にもう匂わせてる感じで出してるんですよ・・・・・地の文であっさり書いてます。かつての神綺みたいな感じです、同じように名を出していませんがね。それと実はね、龍や牛とか鹿も神使に出来て人。

それとここでの大和は日本を統一できていません。統一する前に弘天と永琳に邪魔されたからです、あの話からやっとここまで来れた、何の為に大和を牛耳ったと。大和の人間は大和が諏訪の国に支配されてる事を知らないとは言えとはいえ大和朝廷と呼ぶべきなのかどうか、そもそも朝廷を存在させてよいか悩みましたが結局は出す事にしました。きっと今回だけですけど。東の方面は途中にある諏訪国に邪魔されたので出来ていませんが西方面は統一できてるんじゃないですかね多分。もしそうなら弘天は西方面は牛耳ってる事になります。

月読命は神使が兎だと言われてますので小兎姫を出しました。それだけの理由です。一応書いて置きますが、くるみに幻月と夢月、エリスに魅魔にユウゲンマガンは旧作キャラです。これで東方靈異伝のキャラは全て出せた事になります。長かった・・・・白龍は天帝に仕えてると言う話があるので、天子の奴隷になってます。ここの天子は天帝の娘なので。

何て事だ。東方紺珠伝が月に関係する話だと!?これは痛い、よりにもよって月の話をするとは・・・・・これはプロット考え直さねばならんなー。プロットを練り直すので次に更新するのは宇宙の真理を私が理解した時です。


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妹紅

前回は20000万文字、今回は30000万文字越えました。新記録達成ですがそんな記録いらない。今回の話を最後まで見てある人物の名に疑問に感じるでしょうが、今回の後書きは長いですけど一応見て欲しいです。
今は春の季節にしてますが一気に冬の季節に変えるかもしれません。

今回ゲロとかエロ話がしょっぱなからあります、地の文と台詞と後書きも多い。



宴会を始めるまで時間はあるからキクリを俺の部屋に連れ込んで、無知なキクリに性教育を学ばせようと思った。とりあえず参考資料として、エロ本をほとんど永琳に処分されたがなぜか一冊だけ生き残っていたエロ本を部屋の隅に俺とキクリで詰め寄り、一枚一枚舐めるように丁寧に見る。まあ、エロ本と言ってもただのグラビアだが。流石にいきなりキクリにエロ本は早いかと思いもう少し後にする事にした。

 

「いいかキクリ。これは、そう。女体の神秘を学ぶ時間だ」

 

「何だこれは」

 

「まあまあ、まずは見ようじゃないか」

 

一枚一枚捲ってキクリと共に観賞する。キクリは無知、なので俺が見せたエロ本も何の本だか、そもそも本の意味や女性のあられもない写真を見せても意味が分からないだろうな。つうかキクリ女だし。だが、無知とは純粋で穢れが無い事、そこで少しずつ汚す事にした。真っ白な紙があったら黒いペンキで塗りこみたいじゃないか。しかしここは最初白色に近い灰色の塗料で汚していき、少しずつ黒色の塗料を灰色の塗料に混ぜて塗っている感じだな。いきなり黒い塗料で思いっきりぶっかけてから塗って無い筈だ、と思う。

 

「なぜ女がこの薄い紙の中に入っているんだ。しかも服を、いや布きれ一枚を一部にしか巻いてないぞ」

 

「この中にいる女性は天宇受賣命みたいに露出狂なんだよ多分。だからほとんど裸なんだ」

 

あの時の八百万の神たちは大笑いしていたが。

 

「私には分からないんだが、弘天はそれを見ていて面白いのか」

 

「面白いって言うか、ただ将来の為、キクリに見せて性知識を学んでもらおうと俺の親心というか親切心がだな。決してキクリを辱める為とかやましい気持ちは無いと言えると思う」

 

キクリはキクリって名だが、まるで菊理媛命みたいだな。あの神は黄泉の国に通じる道の番人の一人で確か伊邪那岐と伊邪那美を仲直りさせた神だったか。謎だらけの神の一人。一体菊理媛命に何を言われてかは知らんが伊邪那岐は醜くなった伊邪那美と和解して黄泉に住む事にした様で、その後の和解後、伊邪那岐は三貴神を生み出し、伊邪那岐は俺を指さして三貴神に何か言った、何を言ったかは教えてくれなかったが三貴神を連れて菊理媛神は黄泉の番人をほっぽって菊理媛神は俺と永琳と共に三貴神を世話をして、三貴神が大人に成長したらどこかに行った。菊理媛命は天照の伯母で養育係をしていた女だ。しかし二人共、顔が似てはいる。偶然だろうがまさかな。だが、もし偶然じゃなかったら、キクリは。何を考えてるんだ俺は、やめだやめ。伊邪那岐は伊邪那美と共に黄泉にいる。天岩戸の時に天照を無理矢理出して、活躍した天手力男神は諏訪の国の北には天の岩戸の岩戸が飛来して山になったと言う戸隠山と言うのがある。そこに天手力男神は住んでいたがだいぶ前に伊勢国に行った。菊理媛命が隠居したなんて話は聞いてないから、どこかにはいると思う。何故か古い神は時代が進み、神が増えれば身を隠す、もしくは没した。後は封印されたのもいる。しかし没するや、封印ならともかく何故そんな身を隠す事をしているのだろうか。神としての役割を終えたからか、菊理媛命。お前、一体どこに行ったんだ。自然と一体化してそこにいるが目に見えないだけなのか。

 

「学んだらどうなるんだ」

 

「どうもならん。ただキクリに性に関する知識が蓄えられるだけだ、やったなキクリ。これでキクリも大人の階段を上り始めたぞ。後は誰かに恋をする機会があればな」

 

「恋とは人間や神 特有の男と女がするというやつか。私は女だ、弘天は男だから私は弘天に恋をすればいいのか?」

 

「確かに俺は男でキクリは女だが、別に俺じゃなくてもいい。多分、俺以外の男に恋をするんじゃないか」

 

「この艶本とやらは皆、女しか見えないが男のは無いのか」

 

「キクリ。お前は俺が嫌いなのか。もしくは死んで欲しいのか」

 

キクリは右手で左胸を押さえて隣にいる俺を見る。そして右手を胸から離すが俺への視線は終わらない。キクリは無知だ。だが無知なだけで心が無い訳じゃ無い。だから知らない事を一度でも知ってしまえば後は簡単だ。

 

「まだ恋や好きという感情を完全に理解してはいないが。私は、弘天の事が好きだと思うぞ」

 

キクリが、真顔で告白してきた。だがキクリよ。そのキクリの俺に対する好きって気持ちは恋愛感情ではないと思うんだ。その好きは友達に対しての好きだ、と俺は思う。好きと言われるのは嬉しいがな。

 

「そうか、俺もキクリの事は好きだ」

 

「ん? これは両想いと言うやつか。なら私と弘天は恋人というのになるのか」

 

「どうなんだろうなキクリ」

 

好きと言われて嬉しかったから俺の右手で俺を見てるキクリの左頬を撫でる、左頬を撫でてるからキクリの左目は閉じている。何故頬を撫でられてるかは表情を見るに理解してないだろうがキクリはされるがままだ。これでは悪い虫が付かないか心配だなキクリ。だがそんなキクリも俺も好きだが。あの時の約束、俺は忘れてない。いつかその約束を果たすからな。もしも将来キクリに好きな男が出来たら、性知識が皆無じゃ相手も困るだろうと俺の粋な計らいだ。あ、でもその相手が自分から教えて行きたいと思う男なら俺は余計な事してる事になる。しまったな、その可能性を考えてなかった。キクリと部屋の隅に詰め合ってエロ本を観賞していたら、俺の部屋のふすまが滑る音がして、後ろにいる誰かに頭を多分手で軽く叩かれたが小気味好い、いい音を出した。頭を左手で叩かれた所を擦って誰だと思い後ろを振り返るとルーミアがいた。どうやら俺の部屋に入って来た様だ、なぜ入って来たルーミア。

 

「何をしてるのよ」

 

「何って、キクリと艶本読んでる」

 

「ふーん」

 

俺がキクリと部屋の隅に詰め寄っていたが、ルーミアも詰め寄り混じって来た。どうやら一緒に観賞する様だ。えー・・・・・何だこの展開!? しかし官能小説の方が良かったか。でもキクリに官能小説を読ませても意味が分からないと思う。文字で読み手に伝える物だからな。だが男一人に女二人でグラビアとは言えエロ本を読むとかおかしくないか。三人でエロ本読んでたら、隣にいたルーミアがエロ本に移っていた女性を人差指でエロ本に写る女性の胸を指す。

 

「この女性乳房大きすぎでしょ、いくらなんでもこれは無いわね。こっちは逆になさすぎ、断崖絶壁じゃない」

 

「そうなのか。私にも乳房とやらはあるがたまに邪魔だ」

 

「んー 確かに邪魔ね。でもいつかそれが武器になるんじゃないキクリ。やっぱり掌に収まる胸が一番と思うのよ」

 

右隣にいるキクリは自分の乳房を両手で揉みつつ触りながら邪魔だと言い、左隣にいるルーミアは胸を張りキクリとルーミアに挟まれている俺を気にせず話すが、俺を置いて女性二人で話し始めるのはやめろ。何だか生々しい話を聞かされると気まずいじゃないか。まさか、これがルーミアの狙いか!何て策士、恐ろしい女だ・・・・・

 

「これキクリに見せたら穢れるんじゃない? 無垢なままでいさせるのも悪く無いと思うわよ。それ燃やすから早く渡しなさい」

 

穢れるか、菊理媛命は穢れを払う神だったな。キクリは菊理媛命じゃないだろうが、同じキクリの名がある同士穢れなさそうだ。まあ、そもそもキクリは妖怪だが。ルーミアは俺が持ってるエロ本を掴もうと手を出すが、その前に危機的本能で部屋の隅からふすまの前まで逃げる。ふっ、都市があった時に何度永琳が俺の部屋に部屋に入って、しかもタイミングが悪い時に、俺がエロ本を観賞してる所に来て俺のエロ本を奪って燃やそうとするのが日課だったこの俺が。片手にあるエロ本とは言え親友を守るために永琳から逃げる夫婦じゃなかったが夫婦喧嘩をどれだけしたと思ってるのだ。だが永琳が俺のいない間に俺の部屋に入りエロ本を燃やす変化球は都市の時は無く、諏訪の国に来てからだが。エロ本は月人を奴隷にした時に持ってきました。この一冊以外燃やされたけど。でもこのエロ本に写ってる女性ってなんか永琳に似てる気が。まさか、永琳の奴・・・・・

 

「急に鞍替えるとはどういう了見だルーミア!? 一体何の陰謀があるんだ!無知で無垢な女を少しずつ汚していこうという俺の崇高な目的をなぜ邪魔をする!」

 

「本音が漏れてるわよ、それに崇高じゃなくて低俗の間違い」

 

しかしこれしかエロ本が無い、これを取られたら月に行かなきゃもう永琳のせいで何もないんだ。俺の命と引き換えに死守しなければ・・・・・! そこに、二人の救世主が俺の部屋のふすまを開け、入って来て現れた。俺はこの時を一生忘れない、この救世主達に俺の一生をかけて崇拝することを決めた瞬間だった。

 

「ご主人様、宴会が。って三人で何してるの」

 

「宴会、準備出来たから呼びに来た」

 

「ナズーリンとこころ、お前達は最高の女だ」

 

二人に抱き着くが、背中から舌打ちが聞こえた様な。キクリな訳が無いだろうけど。いきなり二人に抱き着いたからナズーリンは困惑してる。こころは何をされてるのか理解してる様だが、ポーカーフェイスで表情は変わらない。

 

「ご、ご主人様。急に抱き着かれたら危ないよ」

 

「早く行こー」

 

二人から離れて、ナズーリンは俺の左手を、こころは俺の右手を掴んで宴会の場所に向かう。今日の宴会場は決まってる。鳥居から神社まで桜が咲いてるから桜の下で花見をしながら宴会をする事にした。ちなみに石段にもだが桜と同じように鳥居から神社にある参道の途中から灯籠が並んでいるので、夜でもあまり暗くない。薄暗い所で宴会も悪く無いかもしれんが危ないので一応だ。まだ少し寒いがもう春だな。寒くても宴会で騒ぐ、それに熱気も出るし酒を飲んだら熱くなるし問題は無い。こんな宴会 時しか神社に来ないんだよな民って。悲しい物だ。気軽に来ればいいものを。

 

「行こう行こう光の速さで早く行こう。ルーミアにキクリも早く行くぞ」

 

ナズーリンとこころに引っ張られながら歩く、ルーミアとキクリを読んだら二人も俺の背に付いて来たが、顔だけ振り返ると何かルーミアはぶつぶつ言ってついて来てる。キクリは、待ってくれ弘天。私を置いて行かないでくれ。と言いながら小走りでついて来た。愛い奴だ、可愛いなキクリよ。

 

聖からまだ子供の白蓮を抱かせてもらいながらあやして神社の前に立ち、宴会を眺めている。ぬえが飛び回って暴れているが幽香に取り押さえられた。萃香と勇儀は正座をしながら紫と諏訪子に説教され、河童を見てみるが人間に対しては話そうともしないしまだ駄目なようだ。鳥居の下に天狗と河童が集まって雑談してるが、鳥居の下と言っても少数だけでほとんどが鬼の所にいる。これから八ヶ岳に住んでもらうのだから仲良くする為だろう。あそこに天狗や河童、そして新しく鬼が住む事になるのだから。民は今回取り込んだ鬼の所に誰一人恐れず鬼に対して話しかける。もう知ってる鬼女は驚かないが知らなかった男の鬼は驚いていた。皆友達と話す軽い感じで話しかけるからだ。宴会が始まってるので俺も神社の前にいつまでも突っ立ってないで手水舎の近くに集まってる鬼の所に交流を深める為に向かう、ついたらまず鬼ころしを悪路王達男の鬼と鬼女達に飲ませる。悪路王は静かに飲んでいたが、それ以外の男の鬼。大嶽丸や犬神丸は自棄酒している。あれ鬼には強力な酒だからあの感じの様子だと酔っぱらってるな、自棄酒していて俺には 殺意をむき出しで睨まれていたが、近くにいた華扇は片手に鬼ころしが入ったB升を持ちながら、二人の顔を思いっきり回し蹴りで吹き飛ばしてどこか遠くの大空に飛んで行き星になった。他の男の鬼も自棄酒をしていて、飲み過ぎたせいか一斉に吐いた。鬼ころしは鬼の為の酒だから鬼が飲みすぎれば酔うし吐いてしまう。今吐いたのは華扇に恐怖して胃に緊張やストレスが走った為だろう。パルスィやヤマメにも鬼ころし飲ませていた、鬼ころしは鬼以外には不評だがあれを呑めば鬼はすぐに酔ってしまう酒だ。パルスィも鬼ころしを少し口に含んだ時に、天狗の天魔が来た。その時にパルスィは口に含んでいた酒、鬼ころしを俺に向けて吹き出してきたので俺の顔に被ってるお面はパルスィの唾液と鬼ころしまみれだ。なんかすまんこころ。パルスィは事態を理解して近くにあった拭き物で俺が被ってるお面を拭いて謝る。抱いている白蓮は濡れずに無事だ。

 

「いやー! ごめんなさいごめんなさい!! 今拭くから!」

 

「楽しそうで何よりだね。本当に良かった。ちなみに弘天、何で真っ白な子供の顔のお面被ってるの?」

 

「気にするな」

 

俺はお面を被っているがこれはこころだ。こころはお面になる事が出来ると聞いたので被ってる。藍は今では人型の女性になってるが、かつて狐。金と言う名の狐になる事と似た様な感じだ。今でも金になる事が出来るそうだが。パルスィは俺の顔を布巾で拭いているが顔は天魔に向けていて、天魔は艶笑してパルスィを見つつ片手にある酒瓶をラッパ飲みで呷る。パルスィが興奮してるせいか拭き方が激しくて地味にお面になってるこころは痛そう。近くにいたキスメが問答無用で俺の首を刈って来たが俺は永遠の概念となっていて殺される訳が無いのでそれを無視して話を続ける。パルスィや天魔はそれに苦笑いだ。キスメは問答無用、残忍な面があり今回の元凶である俺を殺しに来た様だが素晴らしい、妖怪らしくていいじゃないか。正統派の妖怪みたいで俺は好きだなそういうの、正統派の妖怪、そんな妖怪を無理矢理 屈服させるのがとてもいい。

 

「あんた。性別が無かったのになんで女みたいに、って 私より胸が大きいし!」

 

「色々、あったんだよ。色々、ね。」

 

パルスィは天魔にツッコミを入れて、天魔は遠い目をして喋るが、俺の顔を必死に拭くパルスィを見ている。パルスィを見る顔が優しくて印象に残った。今まで天魔にはドヤ顔しか見た事が無かったからだ。天魔って魔縁とかいうのだそうだ。魔縁って何だろうな。キスメは俺の首を刈って来てたが俺を殺せず、俺が無反応で無視しているので次第にキスメは涙目になって大泣きした。泣いた後は酔ってる紅葉に抱き着いてあやしてもらってる。ふっ、勝った。

 

「二人が知り合いか知らんが久しぶりじゃないか天魔、丁度いい。頼みがあるんだが」

 

「いいよ」

 

天魔はドヤ顔で俺が何を頼むか言ってないのに承諾した。俺が何を言いたいのか理解してるようだ。流石だ、と言いたいが凄すぎだろ。心でも読めたりするのか、まさかな。しかしまだ俺は一時的とはいえ永遠の存在になってる。永遠の存在から心を読み取る事って出来るのか。そう言えば最初に出会った時もまるで心を読んだみたいな感じだったが。話がスムーズに進んだし。天狗の翼で色んな所に行けると言うのもあるだろうが、もしやその情報力を握ってるのは。

 

「文とはたてと椛、欲しいんでしょ?」

 

「まあ、そうだ。俺達は盟約関係なんだから天魔も何か俺に欲しい物は無いか。ある程度の物ならすぐに渡せるが」

 

「んー そうだねー じゃあ」

 

天魔はいつものドヤ顔だったが背を向け、左手の人差指と中指を立てて無慈悲に言い放つ。

 

「仏教を諏訪の国にも、諏訪の国より東に来させるな。それだけでいい。あれ東に来るのうざいし邪魔」

 

天魔は背を向けて月を見ていたが、中指を折り、人差指だけを立てながら振り返り俺と向かい合う。しかし天魔よ、それがどういう意味か分かっているのか。それをすると言う事はどういう事か、仏教の敵になれと言う事だぞ。まあ俺は構わんが。まずは仏教が諏訪の国と諏訪の国より東の土地に入って来ない様に、俺は仏教派の人間を食い止める。最悪粛清、皆殺しにするか。そっちの方が分かりやすく簡単で丁度いい、小町を迎えに行くついでに出来る。だが殺す以外の手はある。例えば、歴史を食わせ、その食った歴史の部分を新しく創るとか。仏教が大和に来たと言う事実を歴史から抹消する、代わりに、そうだな。不自然が起きないような都合の良い出来事にしてやろうか、あの仏教派か神道派の争いは歴史が変わると宗教争いではなく権力、勢力争いにするみたいな感じ。歴史を編纂する事が出来る者がいればの話だが。

 

「まずはこれ、聞いてくれるよね。我ら天狗の盟約相手、諏訪の国の王よ」

 

「いいだろう。諏訪国の王である我が盟約相手。天狗の長、そして魔縁である天魔よ。謹んでお受けしよう」

 

迷いなく返したので天魔は動転したが、もしかしたら即答で返すと予想してたのかすぐにいつものドヤ顔天魔に戻った。魔縁とか意味は知らないが格好を付ける為に言った。俺は仏教があろうが無かろうがどっちでもいい、俺の邪魔になら無ければ何もしないでいたが同盟相手、天狗の長である天魔に頼まれたら俺に断る理由が無い。仏教があろうが無かろうが俺にとってどちらでもいいのだから。最初に大和、次に月人。今度は人間相手か。仏教は神や仏が広めているのではなく、人間が広めているから今回は人間が敵になる。西は神仏習合されつつあるが東はそんな事は無いから東に住む人間を守らねばならん。まあ、神と仏が習合されるのはまあいい。しかし本地垂迹だけは阻止しなくてはいけない。これだけは認めてたまるか、神々の正体は仏とかふざけんな!

 

「こんなに早く、即答するなんて思わなかったよ」

 

「その方がお互い分かりやすくていいだろ」

 

そうだね、そういう男だったね。と、天魔は左手の人差指を俺にドヤ顔で向ける。神道って元々そんな言葉も無かったが仏教が来るまでは今まで上手く行ってた。まあ、俺は神道の神じゃないし本来関係ない話だが。どこぞの誰かが言った 和を以て貴しとなす と。そんな事は無理な話だ、しかし何もかも混ざったこの大陸、本朝も見てみたい気はする。はっきり言って人間が敵になると言っても今までとあまり変わらない。天魔の話を聞くに、ただ仏教を東に侵食させなければいい話みたいだし。諏訪の国の役目は、仏教が東に来ない様に諏訪の国で抑えればいい。最悪、邪魔なら殺す。

 

「私もただ黙って指を咥える訳じゃ無いよ。平将門は東大陸の全てを治めつつある。でも私は平将門や春姫と協力関係にあってね」

 

「天狗は妖怪なのにそれに西はともかく東の人間が協力するとは思えないんだが」

 

天魔が言うには春姫とは平将門の娘で、春のような陽気さといたずら好きで神秘的な魅力を兼ね備え妖精の様な美しさだそうだ。

 

「私もそう思うけど向こうからそう言って来たんだもん。協力しないかって、利害が一致したから私も一時的に協力してるけどね」

 

「言って来たってまさか、あれを登ったのか。あの高い山を」

 

「んーん。弘天の様に馬鹿正直に登ってないよ。式神とか言うのを飛ばして来て念話して話したんだ」

 

そんなズバズバ言うとか酷いな天魔、しかしそう言う事か。東の大陸は俺と永琳が邪魔したせいで大和はこの大陸を全て統一できていない。俺は侵略行為に興味は無かったから今まで放置していたがどうやらその平将門という人物は東の大陸を治めつつある様だ。そして平将門が天狗と協力しに来たのは仏教に抵抗する為だそうで、その為に東の大陸を治めようと動いているらしい。神仏習合については殆ど人間共がやった事だし、西は人間共が手をまわして神仏習合が侵食しつつある。だが東はその侵食の手に落ちていない。だからこそ東国は神道の国として独立し、大和に対抗する気のようだ。神が出てきたら俺と永琳が行けば大抵の神は終わるし俺や永琳とかが必要なのだろう。西の神を従えてるんだから。その事は平将門は知らないだろうが。そしてその境目として諏訪の国に白羽の矢が立つ事になったようだ。まあ、要はだ。仏教が東に来たら諏訪の国で防衛、食い止めたらいい話な訳だ。懐かしいな、大和が諏訪の国を侵略しに来た時を思い出す。あの時は大変だった、一番大変だったのって大和を従えるより神奈子をどうやって妻にするかが悩んだものだ。

 

「平将門と会った事は無いのか」

 

「いや、会った事はあるよ。えっとね、頭に烏帽子を被ってて、服装は陰陽師に似てる男性だったよ」

 

頭に烏帽子。服装は陰陽師。それって篁の屋敷で出会ったあの男の容姿に似てるんだが。偶然かもしれないが、念の為にもっと深く聞いておこう。関係ないがさっきから白蓮は俺の顔を揉んで遊んでいる、俺の顔は福笑いじゃないんだぞ白蓮。

白蓮は飽きたのか降りたそうにしたので下ろして二足歩行で悪路王達の所に聖がいるのでそっちに行った。やはり実の父がいいんだな。てかもう二足歩行とか言葉も喋れるし成長速度早すぎじゃね。まるで月人じゃん、かつての都市に産まれた俺の子供の頃を思い出す、あの頃は若かった。

 

「もしかしなくてもその平将門って赤い目で、黒髪で後ろ髪が長くてその長い髪を束ねていたか」

 

「おー 凄い。良く分かったね。もしかして私の心が見えるのかな? もし見えるならあんまり見ないでよね恥ずかしいから」

 

何か いやん、とか キャッ! とか言って恥ずかしがってる天魔をほっとくが、これって間違いないんじゃね。あの男、平将門だったのか。あいつは、月人の事を知ってたしただの人間ではない筈だ。

 

「無視された・・・・パルスィ慰めて」

 

「嫌よ。ってこっちに来ないで近づかないで!」

 

天魔はパルスィに抱き着こうとしたが、パルスィは俺の背に隠れて天魔の抱き着きから逃れた。俺を盾にするなよパルスィ。パルスィに抱き着けなかったから天魔は前から俺に抱き着いて話の続きを始めた。酒臭い。

 

「じゃあ最後にパルスィを借りてもいいかな? ちょっと話したい事があるんだ」

 

そんな事でいいのか。俺は構わないがパルスィにどうするか聞いてみるとぶんぶん上下に頭を振って来たので問題は無いと思いこの話を受けた。天魔とパルスィは空を飛んで八ヶ岳の方に飛んで行った。天魔とパルスィに接点ってあったか、俺は分からんな。ただパルスィが言ってたが諏訪の国に来たのは第六天魔王を探しに来たと言っていた。第六天魔王に天魔って関係あるのかね。あれ?何か第六天魔王と天魔って名を口に出すとどこか似てる気が。ってまんまじゃないか! ただの偶然だろうから気にしないが。八ヶ岳と言えば木花開耶姫の姉、岩永姫が住んでいた。木花開耶姫はニニギの野郎に嫁いだ、その姉の石長姫もニニギの野郎に嫁いだが一悶着あった。お世辞にも美人とは言えない容姿だったからだ。が、何とか今ではニニギの妻になっている。岩長姫、あの女は美人ではなかったが男を立てるいい女だった、俺から見てだがあの女は美人ではなかったが不細工でもなかった。ニニギから見たら醜いと思った顔の様だが。しかし顔を差し引いてもいい女だったと断言できる。もし、ニニギの妻にならなかったらどうなっていたんだろうな。

 

日本神話には『バナナ型神話』と似た話がある。バナナ型神話とは死や短命にまつわる起源神話の物だ。簡単に説明させてもらうなら、神が人間にバナナと石、どちらかを選ばせる。硬く変質しない石は不老不死の象徴、石を選べば不老不死、または長命になれる、バナナは石と違い食べ物で放置すればいずれは腐る。つまり寿命があり、バナナのように脆く腐りやすい体になって、人間は死ぬ。または短命になってしまう話だ。そして弘天が関わった日本神話ではこのバナナ型神話は起きていない。石長姫をニニギに嫁がせ、天孫が岩のように永遠のものとなるように、木花開耶姫を嫁がせたのは天孫が花のように繁栄するようにと誓約を立てたからの為に酒解神は二人をニニギ差し上げた。長々と話したとは言え、この寿命に関する話はニニギの子孫、大和にいる天皇家での話だ。それに天皇家はこの話のせいでニニギ自身とその子孫、天皇達の寿命は永遠から有限に、短命になったと言えるので全部ニニギが悪い。

ついでに人間の寿命について書かかせてもらう、有名な話だが伊邪那美命は死の国の神、人間の寿命を司る神。そして黄泉の国の支配者、黄泉津大神だ。黄泉にいて黄泉の女神としている。伊邪那岐命も一緒だ。今でも仲良し夫婦な兄妹夫婦として存在している。本来の日本神話なら2人は黄泉に一緒にはいないし伊邪那岐は伊邪那美と別れた後は隠居、または隠れた神な筈だ。つまり人間の寿命の起源となったあの話、二人の別れのくだりから、人間の寿命が定められたあの話も起きていない。もうお分かりかもしれないがこの時代の人間の寿命は短い、だがそれは他の種族と比べての話だ。天皇家に限らず100年以上生きてる人間はざらにいる、諏訪の国の人間、例えば聖も100の年齢を余裕で重ねている。しかし不老不死ではないのでいつかは死ぬ、平均寿命は無いので死ぬ時は突発的に死ぬが。日本神話は神と人の区別が曖昧で困った物だ。

 

岩長姫の事を考えてたら、キスメをあやしていた筈の紅葉が急に立ち上がり、足取りもおぼつきながら上擦った声で、どこから取り出したのか両手に装着した赤い琴爪やお琴を出して上機嫌で神社の前に立ち、片手を勢いよく上げて、ちゅうも~くと酔った声で皆の前に出る。キスメにも鬼ころしを飲ませたがキスメは鬼じゃないので鬼ころしは不評だった。紅葉が皆の前に出たのでキスメはおろおろしてまた涙目になり始め、俺の隣にいるヤマメがキスメを呼ぶと、涙を流したままヤマメの右手に持ってた桶に入ってまためそめそする。残忍な性格なのに泣き虫なようだ。

 

「皆、初めまして。私は鬼女で、名は紅葉。今からお琴を弾きます。どうか、談笑しながらでいいので聞いて欲しい」

 

いきなりで何も言えなかったが、神社の前に立つ紅葉が正座をして両手にある琴爪でお琴に触れる。紅葉の言葉を理解したら皆から拍手が起こり、拍手が鳴り止むと紅葉が両手の琴爪でお琴を弾き始めた。談笑しようにもあまりの上手さに皆 静かになってお琴を聞き入る。やるじゃないか紅葉、月並みだが綺麗な演奏だ。お琴も悪く無い、むしろいい。後は居酒屋でもあれば最高だな。俺は胡坐をかいていて隣にはヤマメがいて一緒に聞き入ってるが、俺に質問してきた。

 

「紅葉って容姿端麗、才色備えた美しい女性で、お琴が上手な女性と思わないかい」

 

「第一印象で言うならそう見えるな」

 

「鬼ころしってお酒が凄く美味しいお蔭で軽く酔って上機嫌で弾いてるけどねぇ、紅葉はお琴があまり好きじゃないそうだよ」

 

お琴で嫌な事でもあったのだろうか、しかし紅葉がお琴を弾けるのはとてもいいな。仕えさせて良かった。たまに聞かせて貰おう、嫌がっても弾いて貰うし。ヤマメと話していたその時。何故か俺の隣にいたヤマメは、うっ と片手で口を押え、吐いた。桶に吐けばいいんじゃと思ったが、桶はキスメの家なので駄目だそうだ。吐いたのはいいが胃液まで出て来ていて酸っぱい匂いが俺の元に来た。酒だけを飲んで何も食べていなかったのが不幸中の幸いか、どうやら鬼ころしを飲み過ぎた様だ。今は紅葉のお琴に皆 夢中になっていて気付かれていない。吐瀉物を藍に任せようと藍を見たが何故か藍は一歩も動かずただ正座して俯いている。俺の恐れていたことが、体調でも悪いのかと思い、変わりに俺が雑巾で拭く事にした。畳に吐いたならやばかったが幸い床は畳ではなく木の板だ。匂いが染みつくかもしれんがまた床を作り変えたらいい話だし。ヤマメは吐いて酔いが覚めた様子で俺がヤマメの吐瀉物を床に方膝を付けて拭いていたら酔っぱらってるからかヤマメは顔を真っ赤にして俺の片手にあった雑巾を奪い取る。

 

「い、いいよそんな事しなくて。汚いし私が拭くからねぇ」

 

「俺は気にしないから返せ。まだ拭き終えてないんだ」

 

キスメも桶から出てヤマメの手伝いをしようとしたが、ヤマメは、いいんだよ。と片手でキスメを静止して拭く作業を続ける。桶を除くとキスメはヤマメにしなくていいと言われたからか、落ち込んだ。よく涙目になるなキスメよ。キスメが桶の中を覗いていた俺に気付いて威嚇してきたのでキスメを見るのはやめた。紅葉のお琴演奏が終わり拍手が鳴り響く、紅葉は立ち上がり頭を下げてお琴を持ってこっちに戻って来た。急がねばヤマメが吐いた吐瀉物を見られてしまう。もう一枚雑巾が無いか宴会場を見渡すが無かった。

 

「私が気にするからしなくていいんだよぉ。私が吐いたんだから自分で片づける」

 

ヤマメは吐瀉物を雑巾で拭き始めた。ヤマメは四つん這いなので、俺はヤマメを見下ろして立っている。何か知らんがヤマメが 顔を赤くしてチラ見で何回も俺を見ていたので、何だと思いヤマメを見ると視線が交わり、酔ってるせいで顔が赤いヤマメは俺と目が合ったら俯いて雑巾で拭くことに没投し始めた。きっと吐瀉物を他人に見られて、しかもそれを他人に拭かれたから恥ずかしいんだろうな。ヤマメも女の子な訳だから。後は私がするから宴会に混じってきなとヤマメに言われるが迫りくる紅葉に近づいて足止めする事にした。

 

「綺麗だったぞ紅葉。結婚しよう」

 

「私はもうお前の物ではないか」

 

鳥居から神社にある参道の所で紅葉と会話する。どうやらお琴を弾いて紅葉は酔いが醒めた様だ。足止めの為に、紅葉が嫌がる様な事を言ってみたがもうお前の物だと言われて会話が終わった。ば、馬鹿な。百戦錬磨であるこの俺が一言で終わるなんて。俺はその場に座り話題を変える為にお琴の話をする。紅葉のお琴の演奏を終えたので、今は宴会の騒ぎで結構煩いから声を大きめに出す。

 

「そ、それより。紅葉はお琴をどこで習ったんだ、まさか我流と言わないだろうな」

 

「私は元々、悪路王達といた訳では無い。各地を転々と旅していた所に出会ってな」

 

「旅をしていた頃の私はお琴に興味などなかったが、ある人間が鬼の私を恐れず教えてくれたんだ。この私が言うのもおかしいが、お人好しでいい人間だったぞ」

 

「変わった人間だな」

 

「どの口が言うか」

 

紅葉と二人で座って話していたが、ヤマメの方を見ると片付け終えたみたいなので話を終えて紅葉をヤマメの所に返した。藍の事が気がかりだったので藍の元に向かい声をかける。

 

「藍。お揚げに手を付けてないみたいだがいらないのか」

 

藍の目の前にはお揚げを積んだ皿があるんだが、一つも食べてないようだ。どこか体調でも悪いのだろうか。俺は立っていて、正座してる藍の肩に手を置くが、藍の肩に置いた手を藍は睨みつけて大声をあげて思いっきり俺の手が払われた。えっ、道具の反抗期か。嬉しいと言えば嬉しいが悲しいな。

 

「触らないで!」

 

藍は感情に任せて怒声を出したが、自分が誰に何をしたか理解した様で冷静になり立ち上がって頭を下げて、申し訳ありません。疲れているのでもう寝ます。と早口でいい部屋に向かった。藍は大声を出したが、今は宴会でどんちゃん騒ぎをしていて煩いので皆には聞かれていない。安心した、今のが皆に聞かれたら宴会 所じゃなくなるからな。近くに輝夜と咲夜がいたので咲夜に近づいて名を呼ぶ。咲夜は阿吽の呼吸で、返事をしながら時間を止めた。

 

「咲夜」

 

「はいはい」

 

咲夜に時間を止めて貰い、宴会をしてる皆が最高潮で止まっている。時間は止まり、ルーミアがキクリと料理を食べてる所が視界に入って一瞬だが、ルーミアの体全体にノイズみたいなのが出た。何だあれ、ルーミアの正体はまだ分かっていないが今は咲夜に頼んで時間を止めている。そこにルーミアの体全体にノイズみたいなのが出た。もしや時間に関係してるのか。咲夜は今のルーミアを見て訝しんでいたがまあ今はいいやと俺は思い、これなら大丈夫だと俺は項垂れた。今なら落ち込んでも咲夜と輝夜に見られるだけだ。俺はあの藍を怒らせるようなことをした大馬鹿者だったのだろうか。どうすれば許してもらえるだろう。半端じゃないぜこのショックは、俺の言う事なら何でも従う藍に、大声で触らないでと怒鳴られて言われたのだ。ショックに決まってるじゃないか。見方を変えたら女としての人生を歩んでいるとも取れるが、まさかこんな事になるとは。ただ俺は女としての人生を掴んで欲しかっただけなのに。輝夜が近づいて来て項垂れてる俺の頭を撫でる、この子は天使かな? 輝夜に抱き着いて告白した。

 

「輝夜、俺と結婚しよう!」

 

「結婚しようってお兄様は女性になら誰にでも言ってますよね、嬉しいですけど今言う事じゃありませんよお兄様。それと少し抱きしめる力が強くて苦しいです」

 

誰にもは言ってないぞ、好きな女だけにしか言ってない。輝夜に抱き着く力を抑えていたつもりだが、まだ強かったようだ。輝夜に謝るが抱きつくのをやめない。俺は最初失意体前屈だったが、この状態で輝夜に抱き着いたので俺の顔は輝夜のお腹辺りにある。しかし俺の妹は天使だな。俺はシスコンじゃないが輝夜を誰が見てもそう言うだろう。間違いない。俺と輝夜の様子を見ていた咲夜が鼻で笑う。

 

「誰とは言いませんがシスコンにブラコンで似た物夫婦ですね」

 

「私はブラコンじゃないわよ咲夜。お兄様が甘えるんだから仕方がないじゃない!」

 

「反応しましたね輝夜様。自覚はあるんですね」

 

俺は輝夜に抱き着いて言ってるから輝夜の顔が見えない。ただ今の咲夜の自覚云々という台詞を言った時に輝夜の体が止まった。咲夜に何を言われたか輝夜は理解し俺の頭を輝夜の両手を使いながら上から押して俺から輝夜は離れようとしたが、俺が逃がさない様に輝夜の腰に両手を回して抱き着いてるので逃げられない。咲夜は溜息を出して、輝夜を俺から離そうとする為に汚れ役をするようだ。俺は驚いて輝夜を離したら、輝夜は逃げ神社に入って行った。輝夜を離したから今俺は両手両膝を床に付けている状態だ。今は時間が止まっていて動けるのは俺と咲夜しかいない。俺の前に咲夜が来た。

 

「仕方ない。おいでダーリン、私の体に抱き着かせてあげる」

 

「聞き間違いかと思ったらマジか」

 

前にいる咲夜が両膝を床に付け、正座をしてから両手を広げて待つ。顔を動かして極端に短い咲夜の白と黒を基調としたメイド服のスカートを見る、だが目を凝らしても下着が見えない。何故だ、あんなに咲夜のスカートが短い上に正座状態なのに。まさか下着が見えない様に空間を操っているとでもいうのか。俺は正座をしてる咲夜の太ももまで顔を乗せて、スカートの中を見ようとしたが俺の頭を咲夜の両手で押さえられて見られない。悔しいので咲夜の左手で胸を揉もうとしたら見えないのでお腹に手が当たってお腹を撫でてしまった。だが、お腹を撫でられて咲夜がくすぐったそうな声を出した気がする。お腹が弱いのか。次にお腹から左手を上げて胸を揉んだら俺の頭を押さえていた右手で俺の頬を抓られた。未だに揉んでいるがメイド服が邪魔して胸の感触が固い。服の中に手を突っ込んで揉もうとしたが、咲夜のメイド服は前掛けがあり、背に大きなリボンが邪魔で手を服の中に入れられず滑り込ませられない。クソ! 下着は無理でも生の胸を揉みたかったのに! 今も頬を咲夜に抓られてるが胸を揉むのをやめてはいない。メイド服の上からなので断言はできないが、咲夜の胸は形が整っていて美乳の様だ。美乳と言っても貧乳ではない、揉めるほど胸あるし。

 

「お腹はいいけど何どさくさに紛れて胸を揉んでるのよ」

 

「お腹はいいのか・・・・いや女性の胸には男の傷心を癒す魔法の部位であって傷心を癒す為揉んだんだやましい気持ちは無いと断言はできない。だが」

 

「殺してもいいわよね」

 

永遠があるから俺を殺す事は不可能。早口で俺が言い訳してるとナイフをどこから取り出したのか俺の首元に当てるが、咲夜って俺の妻なんだから揉んでも別いいんじゃ・・・・・あっ!胸じゃなくて尻を揉んでほしいんだな! 左手は咲夜の胸にあり、右手は咲夜の膝に当てて置いていたので少しずつ膝から太ももに動かし、スカートの中に右手を入れようとするが右手の咲夜の左手で掴まれて終わった。ガード固すぎだろ。一体誰が咲夜をこんなお堅い女に。俺達は夫婦なんだ、恋人じゃ無い訳でもないのに。

 

「何してるの」

 

「いやー 咲夜の大きなお尻を揉んでこねくり回そうと」

 

咲夜に胸ぐらを掴まれて睨まれた。どうやらお尻が大きいのを気にしている様だ、いいじゃん大きくて。大きなお尻をこねくり回したいです、咲夜ってスタイルはいいんだから大きな尻が後ろから見た時ちょっと目立つ。それに加えてスカートの丈が短いってのもあるだろうけど。スカートだから分かりにくいが、そう言えば、永琳の胸や尻は全く垂れず形は整っている。あれから数億経ってるのに、年を取らないってなんか怖いな。

 

「顔が近いな。これじゃあ少し動くだけでキスできるぞ」

 

俺が冗談で言ったら咲夜が俺も正座をしてと言われたので正座をしたら。俺の顔を両手で掴んで両目を瞑り俺の唇に咲夜の唇が思いっきり押し当て口づけしてきた。舌は入れて無いので絡めてはいないが。こいつ・・・出来る・・・・! 時が止まった気がした、いや時間止まってるけど。やられっぱなしは癪なので、俺の舌を勢いよく咲夜の唇に当てて、無理矢理 咲夜の口内に入れ咲夜の舌を絡めてみたが咲夜はそれを拒否せず受け入れた。周りの時間は止まっていて、輝夜は神社に入って行ってるし、俺と咲夜しかいないから延々と俺の舌と咲夜の舌が絡まっているだけだった。こいつ、何だこいつ!? 俺の妻になるの嫌がってた女が何でこんな熱い口付けしてるんだおかしいだろ!! 俺は動こうにも咲夜の両手で頭を押さえられて動けない。ただ咲夜は顔を赤くし、咲夜は自分の口内にある唾液を舌に纏わり付かせて取り、俺の舌と絡ませる時に唾液を俺の舌に渡しての繰り返しで俺は咲夜の唾液を強引に飲ませられる。さっきから咲夜は俺の舌と咲夜の舌を絡める事ばかりに集中している。後は、鼻で呼吸したらいいのに口で呼吸しようとするからたまに咲夜は唾液の糸を引きながら唇を離して、何回か荒く息をして息を整えたらまた口付けを再開する。このままではまずいと思い、さっきは失敗したがもう一度チャレンジしようと考え、咲夜は正座をしていて今は俺の顔を咲夜の目の前に両手で固定されているし、俺の右手が咲夜の左足の膝にあったのでまずは膝を軽く撫でてすーっと次に太ももから付け根まですりすりと撫で続ける。もういいかと思い膝から太ももの付け根に動かし、そしてそのままスカートの中に右手を突っ込む。そしてそのまま咲夜の尻まで動かして揉みしだき、右手で咲夜の尻を時計回りにこねくり回す。咲夜は正座をしているから尻をこねくり回す時に咲夜の足の裏に当たりやりにくい。が、さっきまでの嫌悪感を咲夜は出してこないしそのまま受け入れている。こいつもしかして、お堅そうに見えて、いざ本番になると我を忘れて夢中になるタイプか。咲夜は正気に戻ったのか俺の顔を両手で掴む力が弱まるがまだ掴んだままで見詰め合いながら俺の唇から咲夜の唇をねっとり離す。やりすぎたせいで舌は疲れるし、唇を離す時に唾液が混ざり合ったせいで混ざり合った唾液の糸が口から引きまくってるし、俺の口回り咲夜の唾液でべっとべと。俺の口回りがべとべとなので自分の舌で口回りにある俺と咲夜の混ざった唾液を舐め取って呑み込む。咲夜も口回りが俺の唾液と咲夜の唾液が混ざったのが口回りにべとべとで付いていたが、咲夜はそっぽ向いて片手で口を隠した。どうやら舐め取る所を見られたくない様だ。咲夜は片手で口を隠しているが、ゴクリと大きな音で呑み込む音がした。舐め取るのが終わり、俺と咲夜の混ざった唾液を呑み込んだらしい。咲夜、お前気付いて無いようだが夢中でキスしてきたぞ。こいつキス魔だな、間違いない。

 

「気が済んだかしらダーリン」

 

「はい・・・・・もう十分です・・・何か吸い取られた気分・・・・・」

 

「そう」

 

このキス魔。クールぶってるが中身は情熱的な女じゃないか。まだ咲夜は俺の頭から両手を離さないのでお互い見詰め合ってる状態。

 

「あのー、お聞きしたいんですが咲夜様は口付けなどの経験はおありでしょうか」

 

「無いわ。でも、キスをしながら唾液交換って気持ちいい物なのね。もう少し、しましょうか貴方」

 

無いからこんなに夢中なのか。一度味を占めたらそれに夢中になるのはよくいるが。

 

「わ、悪く無い提案なんですが俺としましてもいい加減宴会を始めるべきだと思うんですよ。恐縮ですが、咲夜様には時間を動かして頂きたいんです・・・・」

 

「嫌。まだするわ。時間は止まっているんだから私達は延々と出来るわよダーリン」

 

「え、待て!」

 

咲夜はまた唇を俺に押し当てて、今度は咲夜から無理矢理舌を入れて来た。またそのまま舌と舌を絡める時間が流れる、やられっぱなしだったので両手を咲夜の両肩に置いてそのまま無理矢理押し倒し、口付けしてるから咲夜の舌を絡めながら右手で胸を揉んで、左手で尻を揉む。だが咲夜はキスに夢中で抵抗しない。無理矢理押し倒したのに咲夜は更に息も荒くなり、キスも激しく、舌を絡める速さも増した。無理矢理押し倒されて興奮してるようだ。咲夜の両手は俺の首に両手を回してるがこの馬鹿抵抗しろよな。レイプするにしても嫌がられなきゃ興奮しないだろ! 押し倒した状態で左手で咲夜の右尻を揉んでたら左手の小指が温かく、ぬめっとした液体の温い何かに小指が触れた。こいつ、発情してるからか濡れてるんだが。ベットの上では人が変わるってやつか、もういいだろうと俺は押し倒すのをやめて立ち上がり服の袖で口回りを拭きながら咲夜から離れ立ち上がる。ついでに咲夜の口回りを服の袖で拭いて置く。立ち上がる際、咲夜は両手を俺の首に回していたので立ち上がる時に離れない様に力を込める。まだしたい様子だがどこまで欲情してるんだ。立ち上がったのはいいが咲夜は両手を俺の首に回しているので、爪先立ちして立っている。

 

「もう終わりだし離れてくれ」

 

「嫌」

 

真顔で嫌だと来た。頼み事する感じだと聞かないみたいなので、命令形なら従うかと思い命令口調で言う事にした。

 

「離れろ」

 

「はい」

 

そう言うと間を置かずに返事して咲夜は俺の首に回していた両手を離し、数歩離れた。咲夜、お前はもっと気高い女だと思ってたがお前もただの女なんだな。何だかウメの花言葉を思い出す。艶やかさ、高潔、忍耐、そして忠実。白の花のウメは気品。って 当てはまるの艶やかさと忠実だけじゃん。咲夜は人前だと素じゃないが、二人っきりの時は素になって豹変するんだなーと思いました、まる。まあ周りには宴会途中で動かない神や妖怪や人がいるけど。

 

「咲夜、三回まわってワンと鳴いて見せろ」

 

「嫌よ」

 

「ふむ。ならその両足に吐いてるソックスを脱げ。俺は素足が好きなんだよ」

 

「分かりました。ダーリン」

 

最初の問いを嫌がったので良かった。安堵したよ。と思ったらソックスを脱げと言うと片足を立ててソックスを脱ぎ始めた。そこは変態とか寒いから嫌って言えよ。今の咲夜は元の咲夜の態度に戻ってると思ったらそんな事は無かった。あの時の、燕の小安貝が気のせいならいいが。まあ、いいや。咲夜は両足にあった脱いだソックスを右手に持ち俺に渡して来た。ソックスを咲夜がずっと履いてた様なので人肌に温まってそう。

 

「はい。随分マニアックなのね」

 

「なぜ俺にソックスを渡そうとする」

 

「何故って、欲しいから脱げって言ったんじゃ」

 

「違う!」

 

俺はただ咲夜の素足を見たかっただけだ。他意無い。背に神社があるが物音がしたので振り返ったら、輝夜が玄関から顔を半分出して見ていた。今までの出来事を見ていた様だ、少し輝夜にはディープすぎたのか少し赤らめて狼狽している。輝夜は半分だけ顔を出しながら、その玄関から咲夜に左手の人差指を向けて大声を出す。

 

「咲夜! あ、貴方 お兄様の事が好きじゃなかったんじゃ!」

 

「私は嫌いなどと一言も言っておりませんよ」

 

「好きとも言われてないが」

 

 

死ねとは言われたような気がするが。輝夜は玄関から早歩きで咲夜の所まで来て、咲夜を神社に連れ込んだ。何か歩いてる途中に喋ってたけど。しかし、そろそろ小町に会いに行くか。何だかあれからスゲー時間が経った気がする、小町に初めて会った時からと、今のキス魔の二重な意味で。キス魔の方は時間が止められてるので経ってないが。その前に宴会を再開しようと咲夜に神社の中に入られる前に時間停止を解除してもらった。時間が動き出したのでまた宴会の騒ぎが響く。一時的に永遠の存在になってる筈なのに、キス魔と延々と舌を絡めながらキスしていた事と時間が止める前は酒を飲んでたからか何だか熱くなってきたし、レティに抱き着いて涼もうか。咲夜は輝夜と共に神社の中に行ってもういない。名残惜しそうだったが。レティに抱き着くと今度はレティが暑がるからレティが涼めるように水風呂の用意をしておこう。レティを探していると、レティが鳥居の近くにある桜の下、鳥居から神社に続く桜の下で皆が騒いでいる宴会を見つめていた。どうやらレティは座って桜にもたれ掛り離れた所から見て楽しんでる。騒がしいのは嫌いじゃないが、騒がしい所に混ざるのは苦手なようだ。

 

「あ、貴方様。どうかされましたか」

 

「うむ。体が火照ってな、レティ。膝枕して体を冷やしてくれ」

 

「膝枕も魅力的な提案です。ですが体が火照ってるなら閨で私と涼みますか」

 

「尚更熱くなりそうだな。大量の汗もかくほど。悪く無いが」

 

「私は熱いのは嫌いです。ですけど貴方様の熱を熱く感じられるほどに傍にいて下さるなら熱くても構いません。貴方様の温もりを感じられて、貴方様との子が出来るなら」

 

俺は立ちながら、座って桜にもたれ掛ってるレティに近づき頭を撫でて会話は終わる。レティは頭を撫でられながら俺を見上げて両目を閉じ、微笑して話を変える事にしたようだ。左手で太ももをぽんぽん叩いた。

 

「私の膝でよろしければどうぞ」

 

レティは足を崩していて桜にもたれ掛り座っていたが、正座をして膝枕がしやすいようにしてくれた。俺は寝っ転がって頭をレティの太ももに乗せるが頭から伝わる太ももの感触と雪女の一種だからかレティの体は冷気が出ていてひんやりするから涼しくて気持ちがいい。何で冷たさとか感じるのか、永遠という概念も曖昧だな。そして思い出す。あの時の俺は永琳しかいなかった。が、今はここまで増えた。宴会の中には人間、月人、妖怪の種族で言えば有名なので鬼に、天狗。河童。妖獣は鼠に狼に虎。妖獣ではないが狐に兎もいる。ここまで来ている。ただこの幸せはいつまで続くだろうか、出来るだけ長く続いて欲しい物だ。ちなみに河童はまだ人間嫌いなので妖怪たちと酒を飲んでる。酒を飲んでると言っても飲んでるのは鬼ころしじゃない。河童のあの問題は俺がどうこうする訳にはいかない。今はまだ子供だが白蓮、お前に任せる。無責任かもしれん、しかし俺は人間じゃなく神で河童達との盟約相手だから駄目だ。これは人間からじゃなきゃ駄目なんだ。レティは酒を飲んで騒いでいる皆を見て呟いた。

 

「私は貴方様の妻になれて良かったと。あの時 貴方様の妻になる事を決めた事は間違ってなかったと。この光景を見てそう思います」

 

「河童はあの様子だが気にならんのか」

 

「私は貴方様がそのまま何もしないとは考えておりません。いつかその日が来るでしょう。それにすべての河童がそうではありません、みとり様もいます」

 

そうか、みとりは河童と人間の子だった。どうやら人間、民とは仲良く喋っている様だな。良かった。レティが俺の妻になったのは俺が妖怪を妻に娶る話を他国で噂でだが聞いたからだった筈だ。なら今の光景はレティが望んだものが実現してると言う事だろうか。俺は自分勝手に色んな者を引き込んだ。強引な時もあったが、ここまで増えた。数億年に比べると諏訪の国が出来てからそこまで時間は経ってない。だが今までで一番長い時を、悠久の時間を過ごしている気がする。俺はレティの言葉に何て言うべきか分からずレティの名を呼びながら右手をレティの顎に当て擦った。レティの顎に当てていた俺の右手をレティは右手で取り、そのまま俺が何が言いたいのか分かったのかレティの膝枕に頭を乗せてる俺を見る。今は春でもう冬じゃない。そしてレティは雪女の一種だ。

 

「貴方様の傍以外、どこにも行きません。それは最初 出会った時に申しましたよ、貴方様」

 

それで会話は終わり、俺とレティは恋人繋ぎをしながら膝枕をしてもらいじっと宴会が終わるまでレティと眺めていた。

 

その後は宴会も終わり、後片付けを皆はしている。どうでもいいが二通手紙が届いた、俺はその二通を右手に持っている。差出人はどちらも天照からだった。一通は俺宛てで神在月でもなく、てかもう神在月は過ぎてるのに西の神を集め、本来なら大和の神や西の神も出雲国にある出雲大社に 神集ふ だとさ、今回で第1010回目らしいが。だが今、出雲大社に大国主は封印されている。まあ、出雲の祖神である須佐之男命がいるから、大国主がいなくても須佐之男命を使えばいい話なんだが。だから大和に神を集めて神仏習合の件について神議るとの事。 神議る とは多くの神が集まって相談する事。諏訪の国の東にある大陸の神も来る様だ。面倒なのでいつも通り俺は行かない。今はある目的の為に神社の裏にあるウメを眺めている、俺は後ろに迫って来ている物をあえて、回は避けずに受ける事にした。月人が月に行き、永琳と数億年過ごし、地上に残った時に出来た最初の女だ。氷はいつか溶ける。しかしその溶ける様子を眺めているのは飽いた、だから無理矢理溶かす事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刺した、本当に刺してしまった。こんなにもあっけない終わり方だとは。いつもは避けられて終わりだと言うに、今回は避けずにこいつは今も地面に突っ伏している。私は何故肩肘を張っていたのだろうか。今まで殺してやりたいと思った奴が死んだら、今度はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。今まで殺す事ばかり考えてその後はどうするか考えてなかった。もう一度死体を軽く見て、何かおかしいと思ったが死体に背を向け、神社の裏から参道の方に行こうかと歩き出した。萃香、何故出てこない。私はお前の夫を殺したのだぞ。何故守らなかった、何故私を殺そうとしない。

 

 

 

 

 

 

 

「俺を刺した感想はどうだ」

 

私の背からあいつの声が聞こえて来た。安堵した、この私がだ。あいつをいつもいつも殺してやりたいと思っていたこの私が安堵した。生きていた、死んでいなかった。良かった、本当に良かった。今の私を悟らせない為に背を向けたまま私はいつも通り高飛車な態度と口調で喋る。

 

「不愉快だ、本当に、不愉快」

 

私は右手にある脇差を眺めてる。刃先に血は付いていない、理由は不明だが、あいつに刺さっていないようだ。血が付かないほどの傷にはなっていないだけでもしかしたら刺さったのかもしれないが、今はどうでもいいか。私は振り返りこの馬鹿と向き合う。思えば、初めてだな。お前の女になって私からお前に向き合うのは。

 

「なあ、神奈子。俺達夫婦なんだ、愛には色んな形があるとは言えいい加減夫婦らしい事をしないか。いつまでも俺を殺す為に妻になった関係もいいかもしれないが、その関係はもう終わらせよう。神奈子」

 

「ふん。そうだな。それも悪く無いのかもしれない。もう私はやるべき事を終えた、お前を殺す為に刺して殺せないなら私がする事はもう無い」

 

「俺は神奈子が好きだし愛してる、それはあの時、妻にした時からこの気持ちは変わっていない、今回、神奈子が俺をその脇差で刺してもこの気持ちは変わっていない。神奈子はどうだ」

 

そんな事聞かれても分かってる筈だぞこの馬鹿。

 

「私は、私はお前が嫌いだ。だが、しょうがないから情けないお前の事を。1人の女としてお前の事を大嫌いから少しだけ嫌いになってやってもいい」

 

「全く、こんな時でも神奈子はそうなのか。前よりマシだからいいんだが複雑だな」

 

あいつは両手を組んで両目を瞑り、ため息を出している。もう私にはこの馬鹿に対する殺意の感情は持ち合わせていない。私は、あいつを刺してから気付いた、気付いてしまった。やっと殺せたと思う筈なのに、私に歓喜の感情は無く動揺や不安しかなかった。そして殺意の奥に眠る私の感情が、私はかつて、それを認めたくなかった。認めたくないから私は殺意を選んだ。私はいつからこの馬鹿に惹かれていたのだろう、私達が最初に出会った時、私はこの馬鹿に口説かれた。もしやあれか、もしそうだとしたら私はそんな言葉で落ちるほどの単純で軽くて安い女だったのか。それにあの口説きは嘘でないだろうが間違いなく私をからかう為の言葉なのに。だが悪く無い。それも悪く無い。天照様、貴方は私に女として幸せになりなさいと仰いました。その言葉を果たせそうです。まさか、天照様。天照様はあいつの道具とは言え、こうなる事が分かっていて私の様ながさつな女を、諏訪の国に行きあいつの妻になる事を許したのですか。

 

「今までの出来事、これから始まる人生。そして私の夫よ、お前はあの時、最初はお前から私に歩み寄ってくれたな。今度は私がお前、いや。そうじゃない」

 

私はいつもこの馬鹿を殺す時 以外は避けていた。この感情を認めたくなかったから、だけど殺意が無くなったら残っているのは殺意の奥に眠っていた感情しかない。もう奥にあった感情を認めちゃったんだ私は。それを最初に認めてしまったら私は、どうなっていたのかな。この馬鹿に甘えていたのかな。夫婦らしい事をしてたのかな、お互いの手を繋いで、公共の場所で衆目を意識せず甘えていたのかな。考えてみたがありえない光景だ。しかしそんな道もあったのかな、この私にも。疲れた、疲れちゃったよ私は。もう素直になってもいいよね、甘えてもいいんだよね。私達は夫婦なんだから別におかしくないよね。

 

「今度は私が 蓬莱山 弘天、弘天に歩み寄る事にする。ちゃんと見ていろ、弘天」

 

高圧的な喋り方はもうやめよう、女の様に喋ろう。弘天は開いた口が塞がらないみたい、ここまで驚く所を見るのは初めて。余程の事だったんだろうと思う。私もそう思うから。でもすぐには口調が直せなかったけど。だから時間をかけて変えて行こう。また1から始めるんだから。でもあの時から始まった私達の今までの関係を白紙にはしない、大切な思い出だ。ただあの関係を踏まえた上でもう一度始めるんだ。今度はお互いが向き合って行く時。いつも弘天しか私に向き合ってなくて私は向き合わずにそっぽ向くか、どこかに逃げるかだったから。

 

「今回は流石に驚いたぞ。妻になってから初めて、やっと名を呼んでくれたな。長かった、長すぎたこの日が」

 

今まで私は弘天の名を呼んだことが無い。ごめん弘天。待たせたよね、いつも殺そうとした私を笑って気にしないでいてくれてた。本当なら私は殺されても文句は言えないのに気にせずいつも通り接してくれてた。

 

乾を創造するの乾は天の意味もある。天は言わずもがもな、創は物事を始める、造はくっつく、または手間をかけて物事を仕上げる意味もある。だからもう全て仕上げよう。

 

「私達は夫婦になり、私が弘天の妻に。弘天を殺す関係が始まった。だけどもう終わり」

 

「ああ。もういいだろう。いい加減俺の傍にいろ、いつも離れていくからな」

 

「もう離れないから安心して欲しい。だけどまた離れそうならちゃんと捕まえて、無理矢理でもいい」

 

私はあの時、空き地にいた弘天が差し出した右手を掴まなかった、掴めなかった。でも今度こそ差し出された手を掴んで見せる、あの時の始まりを少しだけ変えるんだ。永琳、あの時の言葉が本当に来る日が来るとは思ってなかったよ。天地がひっくり返ってもそんな事にはならないってあの時言ったけどひっくり返った。脇差で刺したのに弘天は死ななかった。ただあり得ないことが起こったんだ。何もかも。

 

「弘天、私達が夫婦になると決めた大和のあの空き地での出来事をもう一度して欲しい。頼む」

 

「空き地って、ああ、あれか。構わんがちょっと待てよ、確か」

 

弘天は思い出したのかあの空き地の時の様に右手を差し出した。後は私だ。

 

「俺の傍にいたら俺を殺す機会が出来るだろう、俺の傍にいる事ができる機会があるが八坂はどうする」

 

始まった、あれから時は流れている。だけどまた同じ事を繰り返す。やり直すんだ、私達の関係を。もう私は弘天を殺す気は無い。ただ一人の女になるだけ。

 

「私は弘天を殺す気は無いし、私は悪魔に魂を売る気は無い。だけど、弘天の傍にいるのはいいかもしれない。その機会を教えてもらおうか」

 

私の言葉に弘天は言葉を失ったけど、すぐに理解したみたい、何故今あの時の出来事を再現しているのかを。弘天は大声で笑って涙目になってる。落ち着いたらお腹を押さえて続きを始めた。まだ頬が動いていて笑うのを堪えているみたいだけど。

 

「そうか、俺を殺す気も無ければ、悪魔に魂を売る気は無いか。ならば」

 

「俺は 神奈子 を妃神として欲しい。どうか、諏訪の国に来てずっと俺の傍にいてくれないだろうか。そして俺を支えて欲しい」

 

弘天は右手を差し出した。私はあの時この右手を掴まなかった。手に取れなかった。だけど今は違う。今度は私が弘天に歩み寄る番、弘天に近づいて差し出していた右手を取り、私の右手と弘天の右手を絡め、弘天の右手を引っ張ったけど急に引っ張ったから驚いてる。そのまま弘天の体に両手を回して抱きしめる。でも女の私じゃ支えきれず少し足に力が足らなくて後ろに倒れかけたけど、弘天が何とか私を抱きしめながら踏ん張ってくれた。

 

「私には至らない点が多々あるかと思います。こんな不器用な私ですが、貴方が望んでくれるのなら私は喜んで妃神になりましょう」

 

時間がかかったけどやっと、言葉にできた。

 

「あ、大和と同盟関係を終わらせてもう一度大和と戦争始めるから手を貸せよ神奈子。まあ今度の相手は人間や仏教とかいう概念だが」

 

この馬鹿、いい雰囲気だったのに台無しよ。嘘を言う性格じゃないし本気なんだと思うけど、また大和と争う事になるなんて。弘天は私の腰に両手を回していたけど腰に回していた右手を腰から離して、右手にある文通を私に見せた。

 

「何、これは」

 

「天照から神奈子にだってよ」

 

天照様の名を聞いたと同時に弘天が持っていた手紙を奪い取る。私も行かなければいけない様ですけど、用件だけ言わせてもらうなら弘天を無理矢理にでも連行しろとの事、諏訪子もこの手紙に必要と書かれています。永琳は弘天が行くと言えば間違いなくついて来ますし、絶対に弘天を連れて行かなければいけないみたいですね。後、輝夜と咲夜も連れて来て下さいとの事。この人選、天照様は一体何をお考えなのか、多すぎな気がします。

 

「これを読んだりはしてないですよね」

 

「ああ。読んでないぞ」

 

私は天照様から届いた手紙を懐に入れ、弘天の右手を掴んで無理矢理 神社に引っ張る。急な事で弘天は面食らったが何故引っ張るのか問われたので私は。

 

「決まっています。向かう準備をするのです、永琳も呼んでおかねばなりません」

 

「は? 向かうって神奈子、お前まさか」

 

「そうです」

 

弘天は察したのか逃げようとするが、私の渾身の力で引っ張っているので逃げられない。これでも私はいつも影で鍛えていたんだ。萃香や勇儀に華扇とも手合せしたし、幽香ともしていた。全ては弘天を殺す為だったがけどもう意味は無いなと考えていた。でも意外な所で役に立ちました。私を殴って無理矢理 離せば早い話なのに弘天はただ右腕を私の右手から離そうともがいて動かすだけです。

 

「何て力だ神奈子。いつの間にこんな力を。あの太陽神め余計な事を書きやがって、離せ神奈子!」

 

「駄目」

 

「えーと、あれだ! 神奈子、俺は神奈子が嫌いだ!」

 

甘い、そんな事を言って私を怒らせて離させる気だろうけど今の私には無駄。もう昔の私じゃないし、それに今回の事は天照様の指示なんだから。

 

「そうですか、私は好きで愛してますからずっと尽くしますよ」

 

私が即答で返す。背にいる弘天の顔は見えないけど絶句してる筈。

 

「すいません、俺は嘘をつきました。俺は神奈子が好きだ、愛してる。だから離してくれ、いや連れて行くのを諦めてくれ。お願いします」

 

弘天は歩きながらですけど珍しく頭を下げて謝りましたけど、余程 嫌なんですね。

 

「そうですか、私も愛してます。でも駄目、さっさと行きますよ」

 

「嘘だろ、神奈子がこんな素直だなんて。俺の右腕を掴みながら神社に入っていく、セミロングのポニーテールで俺好みな、綺麗な女性は一体誰なんだ・・・・」

 

「八坂 神奈子です」

 

「いきなり変わりすぎだろ口調も変わってるし何があった!? 誰か助けてくれー! 相手が神とは言え、何で同盟を解消する戦争相手共と仲良く神議るをせにゃならんのだー!」

 

懐かしい、この状況。あの時と逆です。大和に向かうから祭神が諏訪の国にいなくなる、だから藍に留守神を任せておかなくてはなりません。先程から気になってたけど弘天はお面を被ってます。これ、こころですよね。なんで頭に被ってるのですか弘天。

 

「クソ。か、かくなる上は。大和に向かわせるのは・・・・・そうだ龍神にしよう。龍神を呼び出し全部任せて」

 

「何、馬鹿な事を言ってるんですか」

 

「いや、諏訪大明神は龍神という事にしておけば、あまりの巨体に神共が 諏訪大明神に限っては、大和にわざわざ出向かずとも良い とか言ってくれそうじゃないか!」

 

「馬鹿な事を言ってないで行きますよ。弘天」

 

「何て事だ。神奈子、俺の邪魔をするなら無理矢理 押し倒しておぼこを貰うぞ」

 

「いいですよ」

 

弘天はもう何も言わなくなった。永琳は弘天に従順、弘天が白と言えば白、黒と言えば黒にする女。なら私はその逆。永琳が肯定者なら私は否定者です、この私が無理矢理弘天を引っ張る。永琳に出来ない事は私がする事にしましょう。そしてさっきの問いですけど。

 

「嘘に決まってるだろ弘天」

 

「おい、どこからどこまでが嘘だ神奈子よ。そうか分かった、やっぱり行かなくていいんだな。流石俺の妃神」

 

「それは嘘じゃないです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会も終わり、真夜中にちょっとお腹が空いたから台所で何かくすねて食べようと思い部屋から出て台所に向かう為に廊下を歩く。祭神様とお師匠様に神奈子 諏訪子。祭神様の妹と咲夜は紫のスキマで大和に向かって諏訪の国にいない。台所に向かう途中に藍とすれ違った。いつもと藍の様子が違う。早歩きだし、私に気付かず表情に余裕が無かった。悪いと思っても気になって後を付けた。藍が台所まで来て、流しの所で嘔吐して咳をする。体調でも悪いのか、さっきの宴会では藍はお酒を飲んでいなかったから酔って吐いた訳じゃ無い筈。今の藍を見てるとどこかで聞いた症状だと思い藍に声をかける。決して、藍に何かあったら私の仕事が増えるとかそんな心配はしていない。

 

「藍。どうしたの、大丈夫」

 

私が藍に声をかけると私に気付いていなかったのか狐なのに鬼の形相で振り返る。台所の水は止まらず今も流れていて、水の流れる音だけが響く。怖かったけど、この嘔吐、症状に思い当たる事があるから藍に問う。

 

「あんた、まさかおめで」

 

「言うな!」

 

初めて藍の怒声を聞いて、私は戸惑いを隠せなかった。藍は大きな声を上げた事を謝るけど、初めて見たよこんな藍。8本の尻尾も逆立ってるし警戒心が半端ないね。もしかして私は殺されるのかな? 冗談だけど。

 

「すまん。でもてゐ、何も言うな」

 

「だけど」

 

「いいから。お願いだから何も、誰にも言わないで」

 

藍は台所の水を流し、水を口の中に含んで濯ぎ、水を口から流しに吐き出したらすれ違い様に私に口止めして辛そうに部屋に戻った。でも、藍。私はお師匠様からおまけとは言え医学を学んでいるんだ。その症状、お師匠様に聞いた妊婦特有の症状、まるでつわりじゃないか。今はもう春だけど、冬の季節に藍は何の為か知らないけど毎晩 祭神様の部屋に行ってたって聞いた。もしかして、その時に祭神様の子を孕んで。妊娠、してるの、藍。台所の周りを見渡して、今までの一部始終を見ていたもう一人の名を呼ぶ。

 

「聞いてたでしょ萃香」

 

「まあ、聞いてたと言うより一部始終見てたよ」

 

台所に霧が立ち込めて来て萃香は霧のまま話しかけてくる。やっぱり一部始終見てたね。萃香の能力は便利だけど、隠し事がこれじゃあ出来ないじゃないか。

 

「どうしようか萃香」

 

「どうもこうも素直に弘に話せばいいじゃない」

 

「そんな事したら私が藍に怒られるじゃないか! 口止めされるんだから言えないよ」

 

このまま見て見ぬ振りをしても、もし祭神様の子を孕んでいるならいつかお腹が大きくなっていく。そんな事したら妊娠してるのは一目瞭然だし、お腹が大きくなる前にお師匠様に気付かれると思う。諏訪の国全体を霧になって監視してる萃香なら何で藍が孕んでいるのか、まだ妊娠してるって決まってないけど萃香なら知ってるかなと思い聞いてみる。

 

「ねえねえ。萃香ってどこにでもいるんだよね、じゃあ祭神様と藍が何があったか知ってるんじゃ」

 

「知らないわよ私は」

 

萃香は霧のまま喰い気味に知らないと言ってきた。鬼は、嘘はつかない。だから本当に知らないのかと私は思ったけど、やっぱり何か知ってる気がしてならない。祭神様が酔った時に聞いたけど萃香達を引き込んだ時に、勇儀は鬼は嘘は付かないとか紫には手を出さないとかそんな約束を交わしたと聞いている。そしてその時、萃香の台詞は確か。何だっけ、まあいいや。萃香は知らないと否定してからそのまま台所漁りを続ける。私は嘘をついた事がかつてあった、その嘘で祭神様に連れて来られた訳だけど。

 

「私は嘘は言えないからどうする事も出来ないけど、聞かれない限りは何も話さないでおくから。じゃあね、てゐ」

 

じゃあねって、萃香は諏訪の国ならどこにでもいるじゃないか、今も台所に霧が立ち込めてるし。台所に何か食べ物が無いかと思い漁りながら藍の事を考える。藍、隠すのはいいけどいつまでも隠し通す事は出来ない、いつか絶対悟られる。私の能力じゃ役に立たないか、私と人間限定だし。祭神様が聞いたらどんな反応をするか、私が祭神様を落とし穴に落とした時の表情より面白いのか、つまらないのか気になるね。

 

藍のあの様子は動揺、してるんだよね。藍の性格から考えるに道具の自分が最初に祭神様の子を孕んでしまった。自分は永琳様や神奈子様を差し置いて不埒を働き主や永琳様の道具の価値が無いのではないかとか考えてそう。いや聞いた話じゃ紫と幽香は娘でも養女みたいなもので、諏訪子は祭神様とお師匠様の子なのは間違いないけどお師匠様が妊娠してお腹を痛めて産んだ子じゃない。だから藍が初めて妊娠した妻になる訳。藍の頭はいいし頭の回転も速い、でもはっきり言って祭神様に似て馬鹿だね。そんなのだれも気にしないってのにさ、驚きはするだろうけど。それに祭神様は妻を増やすけど側室が一人もいない。皆、祭神様の正妻だ。だからあんたは道具の前に正妻の一人で順番なんか気にしなくていいんだからね。無茶だけはしないでよ藍。あんたに倒れられたら私の仕事が増える、だから早く、全部祭神様に話してしばらく休めばいい。今まで休まず働き詰めだったんだ。誰にも悟らせず色んな事を溜めこむ性格なんだからいい加減楽になったら? 溜めこんでるのを自覚してないだろうけどね。誰かに似て、自分の事より他人の為に動くんだから。道具って言ってるけど、結局は道具の前に一人の女なんだ。甘えたいなら祭神様に甘えればいい、辛かったら祭神様に辛いって言っていいんだ。私はいつも祭神様に愚痴言ってるし祭神様はいつも黙って聞いてくれてる、たまに寝てる時もあるけど。

 

何の為に祭神様が私や、ナズーリン、影狼、星を神使にしたと思ってるのさ にぶちん。妻を増やす為? いいや違うね。それなら藍の次である私が神使になった時にこの美少女。すれ違う男、10人中10人があまりの美貌に振り返る女神に愛された私を無理矢理でも妻にしていた。だけどしなかった。それはナズーリンや影狼や星もだ。女を侍らす為ではある。それ、少しは本音も入ってるだろうけど、神使を増やすのはそれが建前。本音は藍の為だ。そうじゃないからあんた以外の神使は妻にせず一度も手を出していないんじゃないか。けッ! 藍。誰かさんに好意をいつも向けられているし、自覚が無いんだろうけど傍から見てるとうざいくらい愛され過ぎ。私の様な健気で見目麗しく、夫の為に働き、夫を立てる妻の鑑で純情可憐な乙女であるこの私を妻にせず私の唇を人差指でなぞるか頬を撫でるか尻尾を引っ張るくらいしかしない。それ以外の他は一切手を出さないんだからそうに違いない。多分。いや絶対そうだ。とは言え、今だけの話だ。ただ今は藍の事で頭が一杯で妻にしようとする考えが無いだけだろうけど、藍の様に藍以外の神使にもいつかその日が来るかもね。私の体型が問題で妻にしない事は無い筈。確かに私の胸は慎ましやかで体の発育が良くない、でもまだ成長段階だし、体型を差し引いてでも大きくあり余るほどの素晴らしさと誰にでも愛される性格と愛らしい容姿がある。それに体型を言うなら萃香はどうなるのさって話だし。おや、藍の話してたのに何か途中から私の愚痴の話になってない?

 

「何をやっている」

 

「え」

 

私は考えながら台所を漁ってたけど、背中から聞き覚えがある声がした。て言うかさっき聞いた声だ。後ろにいる人物は私の頭を右手で鷲掴みにして力を込める。痛い痛い!可愛い私の頭に何かあったらどうするのさ!

 

「い、いやね藍。私は台所の掃除や整理整頓をしようと思って。邪魔な食べ物があれば慈悲深いこの私が片付けようと」

 

「掃除も整理整頓も常に私がしている」

 

「で、ですよねー」

 

「てゐ。台所にある大事な食料に手を付けようとしたな、これは言い逃れは出来ん。そして今の私は珍しく機嫌が悪い、てゐで憂さを晴らさせてもらうぞ」

 

「うさぎだけに?」

 

「いたたたたたたたた!! 痛いって藍! 兎は物理的にも精神的緊張にも弱いんだからもっと労ってよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうさ、俺が天皇になって大和を統治したらいいんじゃないかな、または俺の息がかかった奴を天皇にするとか。もし俺が天皇になるなら名は応神天皇。弘文天皇とか弘天天皇。あ、天が二つあるし弘天は駄目だな。やはり応神天皇とか弘文天皇とかいいんじゃね、俺が天皇なったら摂関政治とかは絶対させないが。どうでもいいが今の天皇は皇極天皇の息子、天智天皇だ。

 

「何でこの俺が天岩戸以来とは言え八百万の神共とまた顔を合わせなければならんのだ神奈子」

 

「いいからきりきり歩け、仮にも諏訪の国の王がだらしない。もっと神としての威厳を持て。威風堂々としろ」

 

「俺に威厳なんて言葉は似合わないだろ神奈子。俺達夫婦なんだからもう少し夫には優しくだな」

 

「夫婦だからこそだ。飴は永琳、鞭は私。私はお前を蹴ってでも無理矢理連れて行く」

 

「永琳。助けてくれ、神奈子が鞭で俺を叩くんだよ」

 

「じゃあ私は飴ね、さあ、来て。私の豊満な胸で甘えていいのよ。癒してあげる」

 

「私がいるのにやめてよ母さん・・・・」

 

紫に頼んでスキマに入り、今は真夜中なのに大和に無理矢理連れて来られた。天照め余計な事をしてくれたな。大和に来たが真夜中だし皆 寝静まってる様で周りには誰もいない、雑談しながら神社に着くと、提灯を灯し持っていかにも偉い人って感じの服装をした男と中性的な計二人が神社の前で待ち構えていた。男の名は不比等、中性的な容姿の方は稗田阿礼だとさ。稗田阿礼は舎人ではないそうだ。不比等と稗田阿礼は先行して案内をする仕事らしいので俺達もついて行く。こんなぞろぞろと行く必要ないと思うんだがな。俺と永琳、神奈子はまだ分かる。あの時の関係者だし、諏訪子も、まあ俺がいない時は諏訪の国の女王だし分かる。だが今回輝夜や咲夜も連れて来てるし。輝夜にとってつまらん話しかしないから、連れて行くのは渋る。それに輝夜は両目を瞑り口元を袖で隠して見られ無い様にしたが欠伸をした、間違いない。天照が煩いかもしれんが俺にとって輝夜は大事だ。輝夜のお蔭で鬼女たちを仕えさせる事が出来たし、輝夜のお肌に何かあったらどうする気だ。神は老化しないが。

 

「すまない稗田阿礼。輝夜についてはどこかで寝かせてやってくれないか」

 

「分かりました。では私の屋敷で恐縮ですが、そこでお休みになられてもよろしいでしょうか。1人、私の屋敷で休んでいる子もおりますのでそこはご了承ください」

 

「ありがとう。無茶言って済まないな、じゃあ輝夜。早速」

 

「お兄様。私は眠くありません」

 

「無理をするな、咲夜。輝夜の付き添いを頼むぞ」

 

「ええ」

 

言われなくともと咲夜は輝夜と共に阿礼について行った。これで安心だ。何かあっても咲夜がいれば事たりる、時間を止めるとか凄すぎだろ。輝夜も輝夜で凄いが、永遠と須臾を操るんだし。もう一人いた不比等に案内してもらいあの神社の中に入るが、いつもと違う部屋で集まる様なので神社の中を案内する案内役がいる様だ。殆どの神が大和に集まる訳だから相当広い部屋じゃなきゃいかんな。とは言え、全部の神が来る訳じゃ無いし、神の中には神通力を用い、時間空間を飛び越えて、意識のみ集う神もいる。歩いて考えてたら先行する不比等が振り返るといきなり平身低頭をしながら話しかけた。

 

「不肖、藤原 不比等 私如きの様な者が、神と会話するなど恐れ多い事で僭越です。しかし何卒、私めの。発言の許可を頂けないでしょうか」

 

「いや固すぎだし。平身低頭とかやめろ、立ったままでもいいからもっと楽にして気にせず話してくれ」

 

「おお。何と慈悲深いお方。流石は諏訪の国の神、懐も大きいのですね。ところでなぜお面を」

 

「それは気にするな」

 

不比等は立ち上がると先行しながら歩きながら不比等と話すが、どうやら話の内容は諏訪子の様だ。さっきまでいた輝夜と咲夜にもだが、永琳と神奈子と諏訪子の事をお美しいとべた褒めし始めたが、娘と言えば。と急に不比等の娘の話になり話を聞いていると、俺と同じく娘がいるらしいが可愛くてしゃーなくいつも誰かに聞いてほしくて話すそうだ。永琳達が美しいとは本気で思ったようだがそれは娘の諏訪子から自分の娘の話に繋げる為だったらしい。まさかその話を神にまでぶっちゃけるとは将来大物だな。永琳は諏訪子を褒められて嬉しそうに、諏訪子は複雑そうな顔で。神奈子は親馬鹿な不比等の話を聞いて微笑してる。義父が龍に喰われて死んだようだが仲が悪く考え方が相容れなかったのでそれについてはどうでもいいらしい。俺もそんな事はどうでもいい。

藤原氏の始祖は天児屋命、月読命の子孫が藤原とも言われている、それが本当ならの話だが。そして稗田氏、猿女君の始祖は天岩戸の時に活躍した1人、胸、陰部を晒した露出狂。天宇受賣命が始祖だ。流石に大和には神の末裔が多い。大和に貢献していた有名な入鹿は死に、物部は滅んだらしいが。後、昔 神道派の中臣勝海とかも死んだな。

 

この不比等は青竜に喰われた中臣鎌足の実の子ではない、天智天皇の落胤だ。だからこの不比等は天皇の血縁者と言う事になる。とは言え落胤なら父親に認知されない事なので正式な血統の一族ではないが。しかし不比等が天皇の正当な血統を継承する者として利用は出来る。

 

「娘が褒められる所を聞くのはいいものね」

 

「母さん。私は恥ずかしいんだけど」

 

「あら、いいじゃない。褒められてるんだから喜んでおきなさい」

 

俺の左手側に永琳は右手に弓、背に矢。左手で諏訪子は手を繋いで喋りながら歩いている。さっきから俺の左手で永琳の尻を撫でているが二人っきりじゃないから無反応。右手側に神奈子がいるから俺の右手を神奈子の右肩に回してついでにそのまま神奈子の右胸を軽く揉みながら歩く。神奈子は流し目で俺を見るが何も言わなかった。えー そこは殺すぞとか言ってほしい。永琳にその事を言っても微笑して。そう、やっとね。とか意味深な発言をするし。仕方ないから神奈子の胸を揉むのはやめて永琳同様、神奈子の尻を撫でながら話の続きを話をする。が、急に永琳が右手を使って永琳の尻を撫でていた俺の左手を掴んで恋人繋ぎをした、甘えたくなったようだ。

 

「それでその娘の名は何て言うんだ」

 

「私めの娘の名を聞いて下さいますか神よ! 感謝感激雨あられでございます!!」

 

先行していた不比等は振り返り、親馬鹿丸出しのとびきりの笑顔で俺に近づいて俺の両肩に両手を置いて、俺を揺さぶって話し始める。永琳は手を繋いでいたが離して、そのまま俺を気にせず諏訪子と先に進んで行く。危機を感じたのか小走りで先を行く永琳を追って神奈子は逃げた。首や頭が振られているが永遠のお蔭で何ともない。やっぱりいいな、こういうの。神とか人間とか関係なしに話すってのはやはりいい。いい友達になれそうだな不比等よ。ちなみに娘の容姿も話したが髪色は黒髪だそうだ。永琳達は俺と不比等を置いて先に行った、場所分かるのか。この神社複雑な構造で迷路なんだよな、無駄にデカ過ぎなんだよこの神社。

 

「娘の名は 妹紅 です。弘天様、もう娘の妹紅が可愛くて、可愛すぎて神相手だろうが娘の話したくて自慢したくて仕方ないんですよ!」

 

「お、OKOK。分かったから、気持ちは痛いほど良く分かるから落ち着け」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何で豊姫と依姫が大和にいるのかしら」

 

「色々ありまして。八意様、その子は弘さんと八意様のお子さん、諏訪子さんですね。初めまして、私の名は豊姫と言います。貴方のお父さんの愛人です」

 

「何馬鹿な事を言い出すのですかお姉様」

 

「いいじゃないの依姫。場を和ませる為よ」

 

「お姉様、気付いて無いならお教えしますが滑ってます」

 

輝夜と咲夜に弘さんは八意様達とはいないようですね。弘さんと八意様の娘、諏訪子さんは八意様の袖を引っ張り本当かどうか聞きましたけど八意様は、嘘であり本当よ。とややこしく諏訪子さんに伝えて、諏訪子さんは混乱して目をまわしています。そして、もう一人の方を見る。変わって無い、あの時から見た目だけは何も。ただ中身は変わったまま。

 

「でも、懐かしい顔を久しぶりに見ましたね」

 

「なぜ私を見る。私達は初対面の筈だ」

 

「気に障ったらすいません。身内に似た顔で懐かしくなったものですから、初めまして。私の名は 綿月 豊姫と言います、隣にいるのは私の妹、綿月 依姫です」

 

「初めまして、依姫です。よろしくお願いします」

 

私達は初めましてじゃない、貴方は忘れている。とても大事な事を。太陽神に今まで任せていましたけどまだ、戻ってないのですね。私達、都市があった時は私と依姫で二姉妹でしたけど月では私と依姫で二姉妹ではなく、三姉妹。そして貴方はその三姉妹の末っ子、私と依姫の可愛い可愛い妹、その子の名は

 

「ご丁寧に痛み入る、私の名は神奈子だ こちらこそよろしく」




最初に言って置くなら私は鳳凰の事を忘れてません。そして最初から神奈子はこうする気でした、その為に最初 天照を無駄に絡めてましたけど、まあ、この神奈子の話は全てが私のオリジナルではありませんが。

永琳は赤と青。豊姫は服装が白と青、依姫は赤と白。本来の咲夜のメイド服は白と青を基調としたメイド服、夢子は白と赤のメイド服。神綺は白と赤色のローブみたいなのを、サリエルは白と青の服装をしています。そして神奈子は。キャラに説明させるの面倒ですから後書きに書いて置きます。神奈子の神気はどうやって隠していたんだと思うかもしれませんが、天照が神力を用いて神奈子の神気を隠しました。要は入鹿と同じ事をした訳です。豊姫と天照を初めて出した頃から思ってたんですけど二人はこの作品の影の黒幕か何かですかね?

やっと藍の話だ。あの話、藍を巫女にした話からだいぶ経ちましたね。何の為に巫女にしたのかはこの話の為です。藍は最初の巫女で最初の神使、そして藍の種族は狐です。巫女で狐というのが後で必要でしたので藍を最初の方に出して巫女にしました。

戦争始めるとか書きましたけど相手が人間なので基本今までと変わりませんし、そもそも私は必要じゃない限り政治とか宗教とか戦闘関係は書くの面倒であまり書く気無いです。戦争始めると相手が人間ならすぐに終わっちゃいますから。そして私はかぐや姫の話を書きました。ですが私の書いたかぐや姫、男5人は全員別人ですから不比等も今回初めて出ました。私が書いたかぐや姫の話、あの5人の中に車持皇子も不比等はいません。だからかぐや姫の話で出て来た5人の男は誰一人名を出してないです。オリキャラで別人ですので。

ここの歴史、日本神話は相当変えています。今回の話でも書いていますけどね

で、何故ニニギのバナナ型神話の話、天皇家の寿命の話をするかと言えばかぐや姫に出てくる車持皇子。架空の人物と言われてますが車持皇子は藤原不比等ではないかと言われ有名ですね、そもそも車持皇子のモデルではないかと言われているだけで直接関係はありませんけど。藤原不比等は天智天皇の落胤説があります。もう何の為にニニギの話をしたかお分かりかもしれませんが、私が言いたいのはまず大前提に、藤原不比等の天智天皇の落胤説が必要ですが、藤原不比等には天皇の血があるという事になり天皇の始祖はニニギと言われてるのでその子供もそう言う事に。全く、これっぽっちも関係ないけど火と太陽って似てる。火と太陽は昔は神性な物として見られたそうですので。

神仏習合してからですけど日本には第六天魔王を祀る第六天神社と言うのがあります。第六天神社は関東にあり、西には殆ど見られない神社だそうです。それでその神社は長野県にもあり、第六天魔王は天狗説もありますね。ついでにいうなら八雲神社も長野県にありますけど。長野県の神社と言えば、穂高神社があります。福岡県志賀島の志賀海神社が発祥地と言われて、志賀海神社には摂末社ですけど弘天神社があります。前にも書きましたが弘天神社は実在する物です。穂高神社の祭神は穂高見命、綿津見命、瓊々杵命、天照大御神がいます。他にもいますがこの場では省きます。

それと紅葉がお琴を弾く話ですが、鬼女紅葉は琴の名手と言う話があるので紅葉はお琴が上手な事にしてます。違和感無く諏訪の国に上手くお琴を潜りこませられました。多分。


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輝夜

これ本当に後数話で小町まで行けるのか不安だ。

ちょっと今回は蟲の話が出ます。気持ち悪い表現が含まれます。だから見ない方がいいと思います。そして今回はオリキャラ祭りです、こんな感じになるから神話を書かなかったんですがね。こんなに出すのは確実に今回だけですけど。前半真面目が多いので戯れ、ラブコメ話があります。



「あ、遅いですよ! じゃあ再会のハグを」

 

天照が抱き着いて来ようとしたので右手を天照の顔に当てながら押しのけて奥に進む。須佐之男はともかく天照と月読は結婚していなくて子供がいない。天照に子供はいる、名は 正哉吾勝々速日天押穂耳 が、しかしそれは天照と須佐之男の誓約の時に無機物から生まれた子でお腹を痛めた子じゃないしな。ニニギも天照の孫ではあるがこれは孫と言っていいのだろうか。

 

部屋についてみたのはいいが。神が少ないな、殆どは肉体は置いて意識だけ来てるようだ。見た限り、有名な神しかいないし実態があるのは、倭大国魂 稚日女尊、賀茂別雷命、建御雷神、経津主、国津神の椎根津彦、一言主、久津媛、泣沢女、かつては西にいたが今は本朝の東部に住む民である蝦夷、まつろわぬ民の蝦夷達を守った荒脛巾もいる。富士山を神格化した浅間大神に二ホンオオカミが神格化した真神 鋤を神格化した農耕神である 迦毛大御 天津甕星 東北の神の一人で、家の神 蚕の神 馬の神 の神と言われる おしら 厄神に人形神 瀬織津姫 出羽国にある鳥海山。そこに住む大物忌 織物の神、機織の神 そして天津甕星を征服した 天羽槌雄神 月人を牛耳る時に出た鉱山の神 金山彦 土の神、埴山彦と埴山姫、水の神の淤加美神と罔象女。風の神の 志那都比古と国津神の伊勢津彦 二姉妹の秋の神 竜田姫 春の女神 佐保姫 木の神 久久能智 国津神の猿田彦 その妻の天宇受賣 高倉下に石押分之子に井氷鹿、贄持之子もいた。天岩戸に活躍した神もいる、天手力男、さっき言った天宇受賣、天太玉、天児屋、天津麻羅、天目一箇、天日鷲、天石門別 他の天津神 天表春もいれば大和にいる始祖もいるな。天火明とか天照国照彦火明櫛玉饒速日とか天児屋とかいるし。実体化してるのは西の神が多いが、しかし天岩戸の時と比べると少ない、琵琶湖に住む金龍と言われる伊豆能売もいた。他は意識だけ来てるようだ。他にも実体化している神がいる、しかしいい加減面倒だ。が、この3人の名は言って置こう、水蛭子に淡島。そして鳥之石楠船 3人は実体化してこの場にいる。久しぶりに八束水臣津野を見たかったがあいつも隠れた神になってしまった。

椅子に座っている天照の背には豊受比売が控えて。天照の両脇には月読に須佐之男が座り、月読の背には白兎神の小兎姫が控え、須佐之男の神使は海蛇と言われている。須佐之男の頭に蛇がまきぐそで乗っているんだがその蛇は蛇の神、大物主と言われる蛇で須佐之男の頭にまきぐそ、とぐろになって乗っている。蛇とは言えのまきぐそになって須佐之男の頭に乗っていると、天照の神殿にうんこした須佐之男の馬鹿話を思い出す。天照の両肩には2匹の金鵄、または金烏の八咫烏が乗っているが、一応八咫烏も神だし。天照が軽く咳払いをして周りを見渡す。それとなぜか大和に豊姫と依姫がいた、月に行くと決めた神がいれば連れて行く為だそうだ。始めるのかと思ったらまだ来てない者がいるらしいと天照が言った時に扉を乱暴に開けて早歩きでサリエルと息切れした神綺が入って来た。後、咲夜が着ている似たメイド服を着ている金髪の女性も遅れて入って来たが綺麗な女だ。サリエルは両目を瞑り御淑やかだが、神綺は神々に謝りながらばつが悪そうにして、メイド服の女性は神綺の後ろで控えている。

 

「ごめんごめん。遅れちゃった」

 

「すいません、神綺が寝ていて起こすのに時間がかかりました」

 

「そ、そんな事無いわよサリエル! ただ地獄を創る最中で手が離せなくて」

 

神綺とサリエルが何か言い合っているが懐かしい顔ぶれだ。こうして月人が集まるのは天岩戸以来の数億年ぶりだな、神綺とサリエルは俺と永琳に気付いて神綺はウインクしながら片手をひらひらさせて、サリエルは頭を下げた。その後は実体で来てる神と同じく椅子に座って神議るに混ざる。もう一度天照は咳払いをして今度こそちゃんと始める。八百萬神、八百万の神は目に見えないがこの部屋のそこらじゅうにいる。

 

「お久しぶりです。皆さんお忙しい所集まって頂きありがとうございます」

 

「懐かしい顔ぶれが多いですが、さっそく本題に。神仏習合についての神議るを始めたいと思います」

 

久しぶりの神議るだ。前に俺が出た会議は天照をどうやって天岩戸から出すか話し合ったものだ、とは言え、あの時に比べて神が減った様だが。秋の神の竜田姫。その妹の方が片手を上げてまず何について話すか聞く。俺と永琳、神綺にサリエル この場にいる月人はもうどうするかは都市があった時からとっくに決めている。だからこそ俺はこの場に来る気は無かったんだが。他の神はただ黙って聞いている、天照が何を言いたいのか検討は付いてこの場にいるからだ。だから口を挟まない。

 

「そうは言ってもさ。もう神仏習合は決まって今更どうする事も出来ないんじゃないの」

 

「そうですね」

 

「そうですねってあんたね」

 

「問題はそこではなく、私達がどうするかについてです」

 

竜田姫の妹の方は首を傾げいるが、天照が何を言いたいのか理解できないようだ。天照は左手の人差指を立てて竜田姫の妹の方に分かりやすく説明する。

 

「いいですか? 神仏習合はもう起きた事です。まだ神仏習合が決まって時間もそれほど経っていません。それ程の時が過ぎていないのに今更 覆すのはまだ不可能です」

 

竜田姫が何か言いかけたが天照の右手の掌を向けて竜田姫を静止させた。まだ話は終わってないようだ。神仏習合は大和の神が関わっていないとは言え、西の大陸を治めている大和の人間が決めた事だ。今更あれは無しで。とか通用する訳ないし民も納得しない。しかしそれは大和の神だからだ、だからこそ俺は大和との同盟を解消してその覆せない事を俺が覆す気だった。俺は諏訪の国の神の一人で大和の神では無い。大和と諏訪の国の同盟を解消をしたらもうお互いが味方では無くなる。昔の様に敵の関係にまた戻るのだ。神仏習合を神仏分離するにしても大和の味方で、内側から変えられる事じゃない。だから外側からで変えるしかないんだ。どうやら仏教は民にとってはいい宗教のようだな、色眼鏡で見過ぎていた部分があるかもしれんが俺は東には絶対侵食だけはさせるつもりはない。何でも混ざればいいって物じゃない、棲み分けは大事だ。その何もかも混ぜるのが本朝の特徴だとしても。 ミノタウロスの皿、いや。それ程の話じゃないかもしれんが。神にとって一瞬の時間、近い未来に廃仏毀釈運動が起こるだろう。そもそも。天照などの大和の神は政治に関わって無いそうだからどうする事も出来なかった。

 

「私が言いたいのはこれからの、神の身の振り方についてなのですよ」

 

「訳分かんないわよ。前置きはいいから本題に入ってちょうだい」

 

「相変わらずせっかちですね。西は神仏習合が侵食しつつあります。ですが、東はそうではありません」

 

竜田姫の妹は最初欠伸をしながら天照の話を聞いていたが、何が言いたいのか理解して黙った。それを言う事は自分が、竜田姫姉妹が住んでる河内国と大和国の境目にある竜田山を捨てると言う事だからだ。竜田姫の姉は悲しそうに否目。だが天照は容赦なく言い放つ。本朝の人間の特徴は外来の文化を吸収し、本朝文化にそれを混ぜて、独自に発達させる民族だ。だからこそ本朝の人間は何でも吸収し、吸収した物を文化に習合させ、そして本朝独自に発達させていくスタンス。蔵王権現や陰陽道がいい例だな。陰陽道は自然哲学思想、陰陽五行説を起源として、日本で独自の発展を遂げた呪術や占術の技術体系。あそこまで発展、発達させたのは本朝だけだ。蔵王権現だって天竺に起源を持たない本朝独自の仏だ。分かってる、分かっているさ。俺や他の神も神仏習合の事だって全否定している訳じゃ無いんだ。ただ何故混ぜる必要があるのか、味噌も糞も一緒と言う言葉がある、神道も仏教は宗教と言う視点で見たら同じだが、性質が異なっているし価値観が違う事を無視して神道と仏教を混ぜて、神仏習合して扱うのは困る。共存するにしても神道、仏教と区別の上での共存を望む者もいる。神道と仏教が同じ性質、価値観その他もろもろが同じなら混ぜるのはまだ分かる。しかし神に対する考え、仏に対する考え方が全く違う。別物じゃないか。そしてその理由を聞いた、渡来人と交流の厚かった蘇我稲目が仏教を大和に伝わらせて神道の神が人間によって神身離脱の考えが出始めた。実際は誰一人そんな事を考えてはいない。神身離脱のせいで神が人間から薄れつつあった。神を人間と似た存在に見始めたから習合しかなかったと。両方立てれば身が立たぬと入鹿はそう考えたそうだ。だから仏教と神道を分ける事が出来なかったらしい。仏教と言っても原型の仏教はすでにこの世にないが。

 

「この場にいる神の中に神仏習合に納得できない神がいるなら、生まれた故郷、統治している土地を捨てて東に行ってください」

 

天照は立ち上がり、意識だけの神に向かって頭を下げる。仮にも、大和の頭が下げたのだ。無下に出来ない神もいるだろう。それでも嫌がる神もいるかもしれないが。そもそもだ、天照、月読、須佐之男。他にもいるが天津神たちはわざわざ東に行かなくてもいい、何せ月があるからだ。この場に豊姫もいる、行こうと思えばすぐに向かう事は出来る。が、天津神の中にも今住んでいる土地に愛着が湧いてる者もいるだろうし、国津神の猿田彦であるその妻、天津神の天宇受賣がいる。国津神は大昔からその国にいる神だ。国津神はいつの間にかいた神で、都市あった時は国津神なんていなかったはずなんだがな。月人は全員が天津神じゃない、月人の中に天津神が混じっているだけの話。

 

「どうか、西の神が東に住む事になればお願いします。このまま時が経てば神が減ってしまう恐れがあります。それは避けるべきだと私は考えています」

 

皆が平等なんて不可能。皆が皆仲良くするなんて不可能。神道派と仏教派全員が手を取り合うのも不可能。生き物に争いが無くなるなんてことはないんだ。天神地祇、神祇である天津神や国津神も最初は争っていたんだし、今でこそ天津神と国津神との婚姻は積極的だがな。天津神である天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸、国津神である木花咲耶姫、石長姫の様に。仏教派と神道派が争うのはもう目に見えている。西は神仏習合、東は神道の国、神国か。言葉が通じると言う事は仲良くなる事も出来るが、その真逆にもなりえる。言葉とは、難しい物だな。仏教が来る前は巨石や山、大木が自然物が信仰の対象だった。神道なんて言葉は無かったし。神、仏。それは本当に人間に必要なのだろうか。しかし仏教と言う宗教で救われる人間がいるのは事実だ、まあ。俺のする事は女を侍らす事であって、仏教がどうとか考える事じゃない。天魔との約束があるから諏訪の国より東には仏教を行かせる訳には行かないが。俺は今の所仏教を無くそうとか考えていない、仏教を求める人間を無下には出来ないし。ただ神と仏を区別を付けて分けて欲しいだけだ。東の神は実体化しているのが少ない、意識だけでこの場に集っている、その東の神は意識だけで喋った。

 

「東の神、そして東の土地が仏教に侵食されず神道だけの国になっている。そもそも仏教が東に来なかったのは諏訪の国があったから」

 

諏訪の国の北西にある越中国から越後国。諏訪の国の南西にある三河国から遠江国に進んで東に行く国境沿いのルートもあるがどちらも人が登るには高く険しい山脈しかなく、とてもそこから東に進もうとするのは不可能。何せ崖ばかりで道と言う道が全くないのだ、人の手が入っていないから道が無いのは当たり前と言ったら当たり前だが。なら諏訪の国から行けばいい話だが、諏訪の国には妖怪がいすぎている。しかもその中には鬼がいた、俺は鬼の萃香、勇儀、華扇を最初の内に諏訪の国に引き込んだ。だから人間も滅多に東に来ない者が多い。要は諏訪の国は鬼がいたから東に来る人間の抑止力になっていた。鬼を仕えさせてる神は俺くらいしかいなかったし。鬼は強力な存在で山一つ持ち上げるほどの力があり、例外もいるが人間を攫い、喰う。それだけ分かっていれば近づこうと思う人間は少ない、だからこそ諏訪の国から東に行く人間は余程の理由がある人間しかいなかった。まつろわぬ民の蝦夷達を守った荒脛巾とかも諏訪の国に来て、俺にまつろわぬ民の蝦夷達を東部に連れさせて行きたいと来た時もあった。荒脛巾はかつて俺と永琳が大和を支配してる事を知ってる数少ない神の一人だったし、だから諏訪の国より東部に蝦夷達を連れて守りながら東部に逃げ、今も東の神の一人として東部にいる。その時は荒脛巾だったが他国の人間にとって鬼は怖畏の存在でしかないんだから。ここで重要なのは萃香と椛だ。萃香は諏訪の国全体にいるし、椛は能力で千里先まで見通す事が出来る。この二つ、仏教対策だけではないが結構大事だ。しかし萃香は陸限定、椛は諏訪の国から千里先だから相当な距離の陸と海を見通す事が出来るが見通す事が出来るだけの話、椛が能力で見つけて報告してくれるのは助かる部分はあるが食い止めなければならないのだ。いつかは海を使って東に来るかもしれない。そこは天魔たち天狗の出番だ。翼があって空を飛べるから空から監視できるし天狗は鬼より弱いだけであって人間に負けるような雑魚ではない。

 

「そして、この場に来ていない神も。この場にいる神も神道が仏教より上か下か、仏は神より下なのか上なのか。そんな事はどうでもいいと考える者ばかり。だから東の神も神仏習合されようとされまいと、正直どちらでも構わない」

 

暴れる神や妖怪が敵なら俺達が出向いて抑えるか討伐すればいい話、しかし相手は人間。

年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず 自然はともかく世の中は移ろいやすいし、色々変わっていく。後はそれを受け入れられるかどうか、受け入れられる者もいれば無理な者もいる、東の蝦夷達の様に。何事も自然の様には行かないもんだ。神はこの場に集まっているが、妖怪。魑魅魍魎共はどうかんがえてるんだろうな。俺は隣にいる永琳の背中を左手で撫でながら見る、本朝の人間は、有力な人物や恨みを残して亡くなった人物を神として祀り、祟りから逃れようとする人間だ、後は病、疫病が流行る、まあこれは原始宗教の話だが、災害や天災、作物が不作だったりすると神々がお怒りでこれは祟りだと思う者ばかり。そこで一計を案じよう。今言った病、西の人間にヤマメを使う一計を。何の病気にするか、結核だと死ぬし瘧とか風土病にするか。どちらも最悪死ぬがどちらも死なない程度にヤマメには操ってもらおう、ヤマメは病を操る事が出来るんだし。そして一気にではなく徐々に病が流行らせたら神仏習合について神々がお怒りなのだと西の人間に旅人の振りをしながら言って置けば間違いなく信じる。永琳は理解したのか頷いた。ヤマメがいなかったら疫病神を使っただろうな。

 

「そこで、諏訪の国王であり諏訪の国の神 そしてかつての天岩戸の関係者の一人 蓬莱山 弘天 殿。貴方だけは神仏習合をどうでもいいと考えてない様子だ、貴方の意見を伺いたい」

 

何故かばれていた。しかも東の神にだ。意識だけの神は分からんが実体で来てる大和の神は俺に注目してどう答えるか聞き入った、俺の考えは最初から決まっている。神とは、人間の味方の存在と思われがちだがそうではない、むしろ敵だろう。夜刀神の様に人間に仇成す神もいる上に本朝の神は基本的に祟る神が多いし。実際は悪魔とかの方が味方か、そして命は尊いと言うのがたまにいるが命に尊さなんてある訳が無い。

 

「神仏習合に対する俺の最終的な考えは、今は、だが。仏教を無くす事ではなく、まず初めに神仏分離。民に神道と仏教、そして神と仏の区別を付ける事だ」

 

「神仏習合を考えた入鹿とやらは、人間が神道の神が神身離脱の考えを持ち始めたから止むおえず神仏習合するしかなかったと聞く。もし神と仏の区別を付けたらまた元に戻る事になるのではないだろうか」

 

「いいじゃないか、元に戻っても」

 

天照。お前、この為に輝夜と咲夜を呼んだのか。目の前にいる天照を見て見るがニコニコしたまま俺の話を聞いている。お前が考えた事ならお前が言えばいい物を、道具としての役割を超えているぞ天照よ。意識だけの東の神は俺が何が言いたいのか理解できていないようだ、当たり前か。輝夜や咲夜の事を知らないだろうし。天神地祇、八百萬神どもよ。お前達には消えて貰ってはこの先困るんだよ。これ以上古い神が身を隠す事になるのは俺の計画に支障が出る。俺が目指す先には天津神、国津神、八百万の神が必要なんだ。もう八束水臣津野身みたいに身を隠して減らす訳には行かない、だからこそ俺は、俺の様に一時的ではなく本当の、永遠の存在にしてやる。

 

「この場にいる天津神、国津神。そして八百万の神、咲夜に信仰の時を止めてもらい、輝夜に頼んでお前達を永遠の存在にする考えがある」

 

俺は信仰が無くなって消えた神を見た事が無い。だが もし神道の神が信仰無しでは生きられないなら、信仰の時を止めて、永遠の存在にする。神が減れば妖怪は無尽蔵に増えていく、妖怪と対等に渡り合える存在はいなくてはいけない。このまま放って置いたら近い将来の話だが、神は減り、最後にはこの惑星で神を目撃する事は叶わないだろう。神を空想上の存在ではなく、ちゃんと実在している存在だと人間に分からせる必要がある。入鹿が見過ごせなかった神身離脱の様に俺が見過ごせないのはこの先産まれる人間たちに。神や妖怪が空想上の存在だと思われたくないのだ。最悪、神道の考えは無くなってもいい。しかし、もう神が消えるのは困る。神道かただの神かどちらかを選べと言うなら俺はただの神を選ぶさ。この場にいる神に、俺の様に国を治める神道の神じゃないただの神か、それとも万物に住む神道の神がいいか。どちらかを選んでもらおう。

 

俺が目指すのは神も妖怪も人間も皆平等で、しかも仲良く過ごせる世の中ではない、皆が皆仲良くするのは不可能だし妖怪の差別を無くして人間も神も妖怪の種族を平等にするなんて出来る訳が無い。諏訪の国も皆平等かと聞かれたら平等じゃないと俺は答える。俺はそんなありもしない夢物語や幻想を昔から、都市があった時から見る事は無かったし、この先も見る気は無い。俺は夢物語を見ている暇があるなら現実的な夢物語を見る、神も妖怪。他にもいるが、そんな存在が当たり前のようにいる世界。俺が目指すのはその世の中だ。これは俺の夢、女を侍らす夢を叶えながら出来る事だし。神や妖怪が当たり前にいる世界、神と妖怪と人間が仲良く過ごせる世界。どちらが難しくてどちらが簡単かは分かる。そもそも仲良くするなんて後で考えればいい事だ、まずは神や妖怪が当たり前にいる今の世の中を維持しなくてはいけない。俺の国だけでも絶対に維持するがやはり俺の国だけではなくもっと多い方がいい。女を侍らす夢か、それとも神も妖怪も人間も皆仲良く過ごせる世界を創るか。どっちが夢物語で現実的だろうな。前者は過程はどうあれ傍に女がいたらいい話。後者は過程も結果も重要な話になる。俺は無能だ、だからこそ出来ない事はしない、出来る事だけをする。神とは、日本神話の神とは。ゼウスの様に全知全能の神では無い、そして俺も全知全能ではないのだから。蟹は甲羅に似せて穴を掘るだ、無能は無能だからこそ周りにいる有能な者を巻き込んでやるしかない。天照が話を終えた俺を見てから口を開く。

 

「神仏習合についての話は以上でよろしいですね?」

 

「何だ、まだ他の話があるのか。咲夜と輝夜に頼んで八百萬神を永遠にし終えたらさっさと帰りたいんだが」

 

「そんな寂しい事を言わないで下さい、もう一つありますが神仏習合はどうでもよくてこちらの方が本題かもしれません。では田心姫、お願いします」

 

田心姫は下野国にある女峰山、その山の女神で宗像三女神の一柱。だから須佐之男の娘だ。女峰山の女神である田心姫は実体化してこの場にいて、立ち上がって両手をデスクに勢いよく叩きつける。天照と須佐之男の誓約の時に須佐之男が生み出した宗像三女神の一柱で女峰山の女神である田心姫と言えば、女峰山の近くにある男体山の神は大蛇だったな。確か名はミシャグジ様だったか。国津神の一人でもある。

 

「実は諏訪国の隣、上野国にある赤城山で大百足が暴れていたのです」

 

なら殺せばいいではないかと他の東の神は言うが、大百足って見た目は大きいがそれだけで雑魚中の雑魚。この場にいる神が後れを取る様な妖怪ではない。妖蟲は雑魚と言ったが妖蟲は衰えていない、現役だ。ただ神にとって雑魚と言う話だ、妖怪や妖獣にとっては天敵かもしれんがな。そもそも大百足はこちらから手を出さなければ何もしない妖怪だ、この場にいる神は関わって無いとすると今回の騒動の原因は神ではないのか。と考えたが、赤城山の神は大百足だった。あいつはこの場にいないみたいだ、てか知らなかった、諏訪国の隣にある上野国の事なのに大百足が赤城山で暴れていたとは。通りで赤城山の神がこの場にいない訳だ。赤城山の神は大百足なんだが、あいつは神でもあるが蟲でもある。今は下野国にある戦場ヶ原で暴れてるそうだ。

 

「戦場ヶ原で今は男体山の神が大蛇になり大百足を抑えてはいます。赤城山の神は神ですが大百足で蟲でもあります。大百足は元来。暴れるような、気性が激しい蟲ではありません」

 

右手を使って耳を軽く掻いて欠伸をする。今回は蟲だが妖蟲はさっきも言ったように神にとっては雑魚だ、神が聞いて困る様な話題ではない。が、赤城山の神は大百足でもあり蟲でもある。このまま放置は出来ん。もしもその誰かが蟲、妖蟲を操れるなら人間にとっても色々不味い。恙虫とか操られたらすぐに人間は死ぬだろうな。その誰かが蟲、または妖蟲を操れるならヤマメの能力と相性がよさそうだ。大百足を操っている者が大量の、人間を一番殺している生き物の蚊を操り、ヤマメは病を操ってその大量の蚊を病原菌持ちにさせ人間に感染させるとか。そう考えるとその人物が欲しいな、今の百足は仏教が入って来てからだが、天竺の神の財宝神クベーラが前身で今は毘沙門天。教の毘沙門天の眷属と言われてる。後は龍神とも関わりが深いな、百足は龍神と同等の存在だと言われてるし。赤城山の神が大百足になって操られているならその操っている者の名を掴んでいるのか問うと田心姫は頷いて今度は天照が呟いた。

 

「その名は リグル 蠱毒使いで妖蟲の頂点に立つ妖怪ですよ」

 

リグル、蟲、妖蟲を操れるなら拷問とかに使えそうだな。動けない相手に一匹一匹足元から蟲を登らせて最後にはそいつの頭から顔も含めて体全体が蟲で埋め尽くされるとか。俺は一時的に永遠の存在で無敵になっているが、精神的に来るやり方で来られたら永遠の存在である俺でもこれほど恐ろしい事は無い。俺なら間違いなく発狂する。どうするべきか、幸いにもこの場には依姫がいる。依姫がいたら敵なしだ。しかし、赤城山の神は蟲でもあるが神でもある。これ以上神を減らす訳にも行かないので殺す訳には行かない。話は終わったのか、以上。と田心姫は椅子に座り次は天照が話し始めた。最後の話だ。

 

「本当はまだあるのですが、今日はこれで最後です。実は、大鯰が動きだそうとしているのですよ」

 

大鯰って昔地震の神である なゐの神 が大鯰を要石で動きを抑え、そのまま大鯰は眠りについた。場所は確か日向国、あそこで大鯰は今も要石で動きが抑えられて身動きが出来なかった筈だが今は違うようだ。あれ程迷惑な生き物を大鯰以外俺は知らない。何せ起きてる時は常に地震を起こして困ったものだ、幸いにも地震の神であるなゐの神のお蔭で何とかなったが。そう言えば鯰も神使の一匹の内でもある。どうしてこうも面倒事が立て続けに起こるのだ、仏教、次に赤城山の神の大百足、最後に大鯰。小町に会いに行きたいと言うのにこれでは行けないじゃないか。

 

「先程も言いましたが、戦場ヶ原で大百足が暴れて大陸が大きく揺れたのです。まるで地震でも起きたかのように」

 

それだけではありませんが、と天照は俺を見たが目線を逸らして聞かなかった事にする。どうやらあの時、諏訪の国に鬼女たちを連れて行った時の揺れは萃香と勇儀だけが原因では無かった様だな。今の大百足は動かず戦場ヶ原でただじっとしているらしい。大鯰は頭を日向国、尾を下総国に要石で抑えられてると言われてるがそれが事実ならどれだけ巨体なんだよ大鯰。遠い、遠すぎる。下野国はともかく日向の国って本朝の西の果てだぞ。

 

「それが日向国にいる大鯰にまで揺れが届き大鯰は要石の抑えが弱まり今にも動き出そうとしています、要石が無くなったらまた地震を起こそうとするでしょう。これも見過ごせません。神仏習合なんてどうでもいいですけどこれは何とかしなくてはいけません」

 

「いや、大鯰はなゐの神を呼べば万事解決じゃないか。この場にはいないようだがどこに行った」

 

「消えました、現在捜索中ですが行方知れずです。大方海の向こうの大陸で女性を口説いている最中でしょう」

 

またか、また神が行方知れずか。天照は椅子に座ってる依姫を見る、納得した。何故豊姫だけならともかく依姫がいるのか。依姫は神を、神霊の依代になる事が出来る。八百万の神を自分の体に宿らせ、力を借りて使役する事が出来る。この能力はリスクが無い、しかも素早くあらゆる神を降ろせるし強制的に体に宿らせるからなゐの神がどこにいようと関係ない。どこにいても強制的に、しかもすぐに呼び出せるからだ。しかし、もしなゐの神が身を隠して自然と一体化していたら呼ぶ事は可能なのだろうか。

 

「そこで、この場にはいない久延毘古と塩椎神。以前から文通していた八意さんに聞いてみた所、依姫さんに頼んではどうかと書いてありましたので」

 

「成程、その為に私がこの場にいるのですね」

 

はい、お願いしても構わないでしょうかと天照は依姫に頼んだがデスクに身を乗り出してから数隣にいる俺を覗き込むように見る。俺の両脇には左に永琳、右にサリエルがいる。神綺は俺の股の間に座って体重を俺に預けている。この状況でも何も言わない他の神たちは一体何を考えてるのだろうか。一応は大事な会議なのに。ついでに二つ言われたが大和の北西にある摂津国で積乱雲が妖怪化したのがいて困ってるそうだがかっこいいな、積乱雲が妖怪になっているとは。積乱雲が妖怪になってるなら大きな妖怪だろう。

 

「む、隊長。構わないでしょうか?」

 

俺はもう隊長でも局長でもないぞ依姫。そう言ったら依姫は都市があった時から今も昔も俺の部下だから俺の命令に従うのがいいとの事、じゃあ頼むと言うと依姫は椅子から立ち上が、離れてなゐの神を呼び出すが神霊の依代にすると言う事は依姫に憑りつかせると言う事だ、憑りつかせても依姫は体の所有権を神に奪われない能力、だからそれでは話が出来ない。だから憑りつかせる寸前に中断して、霊魂、他の神の様に意識だけで依姫の近くにいたが、なゐの神は霊魂から実体化した。中断したのでなゐの神が出てきたがご立腹の様子で地震を起こして怒りを露にする。さっき言ったように実体化してない神は意識だけでこの場にいる。意識、霊魂が出来るのは神道の神だけで実体化して大和に来るのが面倒な神たちは霊魂だけでこの場にいる。

 

「誰よ私を呼んだの!? あ、依姫ね! 折角綺麗な女口説いてる最中でいい所だったのに!! もう少しで心も体も落とせそうだったのに!!!!」

 

なゐの神が騒ぎ立て隣にいた依姫に気付き、怒っているせいか地震を起こして喧しい、今は真夜中だし大和の民も他の土地の民も迷惑極まりないだろう。俺は神綺の頭に右手を置いて退いてもらって立ち上がる。なゐの神の隣にいる依姫に近づき実体化してる武甕槌を呼んでなゐの神を床抑えつけて貰った、なゐの神は武甕槌と仲があまりよろしくない。緊急事態なので有無を言わせず命令する事にしよう、時間があまりないようだし。

 

「なゐの神よ、早速だが武甕槌と共に日向国に向かい大鯰をもう一度要石で押さえつけて来い。それだけしたら後は自由にしてやる」

 

「ってそれ脅迫じゃん! 何で男臭い武甕槌と日向国に向かわにゃならんの」

 

武甕槌はどうみても優男で男臭くは無いと思うんだが。お前、相変わらず女なのに女が好きなのかと言うと。武甕槌に抑えつけられながらとびっきりの笑顔で当ったり前じゃん! 女が女を好きで悪いか! と大声で言うが、変わらなさ過ぎて他の八百万の神はあきれ果てて言葉も出ない。俺は椅子に座ってる天照を指さして苦渋の決断をしよう。人柱ならぬ神柱だ。

 

「仕方ない、天照をくれてやるからそれでいいだろう」

 

「え、待ってください。私を売るなんて酷いですよ! 私は生まれたあの時、弘天さんに育ててもらった時から月読も私と一緒に弘天さんに嫁ぐと決めてるんです!!」

 

「勝手に我を巻き込むのはやめていただきたいですな姉上」

 

天照が椅子から立ち上がり異を唱え、天照の肩に乗っていた片方の八咫烏が俺を嘴で思いっきり突いて来たが今の俺には効かない。なゐの神は悩んだが、天照はいいや。と提案を蹴った、まさか断られるとは予想してなかったのか落ち込んだ天照は部屋の端に向かい、三角座りをしながらいじけてしまった。月読と須佐之男は椅子から立ち上がり天照の元へ行き慰め始める。

 

「おい、なゐの神よ。あれの中身は残念でも顔は悪く無いと思うんだが」

 

「私は人の、神の恋路を邪魔する気は無いの。そんな奴は馬に蹴られて死んでしまえばいいのよ、惚れた病に薬なし。太陽神が冷静になる日が来たらいいけどね」

 

舌打ちしてなゐの神を見るが、口笛を吹いてなゐの神はそっぽ向く。なゐの神は、冗談は置いといて。と話の続きを始める。泣いて暮らすも一生笑って暮らすも一生、私は私の好きな様に生きて、笑って生きるんだから邪魔しないでよと言われた、それを言われたら俺は何も言えなくなる。俺も好き勝手に生きてるし、泣いて暮らすも一生笑って暮らすも一生。俺に相応しい言葉じゃないか。

 

「私これでも忙しいんだよね、だから必要な時に呼んでよ。その時はちゃんと協力するからさ」

 

「お前、大和から日向国までどれだけ距離があると思ってるんだ」

 

「私、武甕槌に床に抑えつけられて実体化してる神がどれだけいるか分かんないんだけど。弘天の隣に依姫がいるでしょ? じゃあ豊姫もいるよね、豊姫に頼んで武甕槌大と一緒に向かえばいいじゃない」

 

そもそも弘天には龍神がいるでしょと言うがこいつ、ただ面倒なだけじゃないだろうな。そう思ったがそうではないようだ、西の妖怪である神野悪五郎と山本五郎左衛門が争っているので依姫にはそれを片付けて欲しいみたいだな。後は七人ミサキを何とかしてくれとの事。七人ミサキとは溺死した人間の死霊だ、なゐの神は武甕槌に床に抑えつけられながら顔だけ動かして武甕槌を見る。

 

「あれ、武甕槌。腰にいつも差してた布都御魂と布都御魂剣が無いじゃん。あれ大事な物なのにあんたが手放してるなんてどったのよ」

 

「布都御魂と布都御魂剣ならくれてやった」

 

「えー? 誰にやったのよ。 まさかお金に困って骨董屋に売ったんじゃないでしょうね!?」

 

「違う、太陽神 経津主 経由であそこにいる天照国照彦火明櫛玉饒速日と天火明の神裔にだ」

 

納得したのかなゐの神は何も言わなくなった。そこで妙案とばかりな表情で、この場にいる八百万の神達に聞こえる様に大きな声で俺に向かって言う。その時他の神を見たがまた竜田姫 の妹の方と佐保姫が口喧嘩している、相変わらず仲が悪い。竜田姫の姉の方は二人を宥めようとするが更に悪化させてしまい無駄だった。今は春の季節で佐保姫は絶好調、だが今だけで秋の扇の様。今は春だが。竜田姫の姉の方の名は紅葉の神 静葉だ。妹は豊穣の神、名は穣子。二人とも昔から綾羅錦繍だ。

 

「じゃあ弘天が来たらいいんだよ!」

 

「来たらいいって、どこに」

 

「日向国に決まってるじゃないのさ!! ん 依姫も弘天が一緒だと嬉しいよねー?」

 

なゐの神はこれは面白いと言った顔で依姫に聞く、隣にいた依姫を見るが俺と目が合うと背を向けて縮こまる。豊姫が依姫に近づいて何か言ってるが依姫は首を横に振る。近くにいた神奈子はどうでもよさそうだが、永琳は諏訪子を連れ俺に近づいて実家に帰らせていただきますと、背を向けて部屋から出て諏訪の国に行こうとしたが止めた。神綺とサリエルは笑ってるが俺は笑う余裕が無いぞ。とりあえず諸悪の根源であるなゐの神の背中を踏ん付ける。

 

「痛いじゃないの! 女性に手、じゃなくて足を上げるなんて最低!! このケダモノ!」

 

「ケダモノは否定しない、だが俺は相手が美女だろうが殺す男でな。とりあえずお前をひん剝いて皆にお前の裸体でも見てもらい、天宇受賣の時の様に八百万の神達に笑っていただくか」

 

そんな、美女だなんて。 なゐの神が最初は素で照れたがその後の裸体の事を聞くと青ざめた。俺はなゐの神の服に手をかけて脱がそうと動いたのはいいが、どうでもいいがなゐの神は神なのに巫女装束を着ている、着ているのは可愛いからだそうだ。

 

「えっ、あ。ちょっと巫女服を脱がすの手慣れすぎ! 嘘 嘘! も、もう~冗談きついってばこのお茶目さん!」

 

「どうしてまた踏むのさ!? さっきより痛いし!」

 

俺はなゐの神を踏ん付けるのをやめ、俺に背を向けて豊姫とまだ喋ってる依姫に近づくが、豊姫は俺を見て依姫から数歩離れる。手の届く距離まで来たら俺は右手を依姫の肩に置いた。いきなりだったので依姫の体がびくついたが、怖ず怖ずと首を回して顔を背中にいる俺に向けるが、顔を赤くしてテンパっている。そう言えば、俺は都市があった時依姫をデートに誘った事が無かったと思い、少し遠出のデートに誘う事にした。

 

「依姫、二人きりで日向国まで逢引しようか」

 

依姫が体ごと勢いよく振りかって抱き着いて来た。俺の胸筋に顔を埋めて顔を見られないようにしてから依姫は上目遣いで俺を見る。依姫、実体化してるのが少ないとは言え意識だけで来てる神がいるからこの場には神が埋め尽くした状況で何かのプレイされてるような状況。依姫はそんな事眼中になく感極まった表情で返事をしてくれた。

 

「はい」

 

 

永琳、悪いが俺は諏訪国に戻れなくなった。ヤマメにさっきの事を伝えて西の人間に病を流行らしといてくれ。他の野次馬な神共が拍手して騒ぎ立て、依姫は一部始終を八百万の神達に見られたと恥ずかしがり、俺から離れてこの部屋から光速で扉を開けず壊して逃げた。天照もニコニコしたまま拍手していたが俺に近づいて天照の両手の上にある物を渡されたので受け取って見たら、勾玉が付いていて首にかけるような玉飾品だった。天照は目を閉じて たまのををあわ緒によりて結べらばありて後にも逢はざらめやも と言ったがどういう意味だ。

 

「それは御頸珠、御倉棚神です。私の父から弘天さんへの餞別ですよ。この御頚珠を私から渡す意味、お分かりですよね」

 

いや知らないんだが。後で永琳に聞いておこう、天照に御頚珠を首にかけて欲しいと言われたので首に回してかけてみたが、実体化してる三貴神を含めた天津神以外もいるが神達が俺の前に来て跪く。何だこの状況。天火明と天照国照彦火明櫛玉饒速日が跪いたまま近づいて婚姻届を俺に渡してきたが、俺の婚姻相手を見ると天照国照彦火明櫛玉饒速日と天火明の子孫と言われる物部氏だった。どうやら生き残りがいるそうだ、二人は片目を閉じて親指だけを立てる、ムカついたので婚姻届を破いてみたが二人は絶叫、しかし即座に懐からもう一枚の婚姻届を渡されて破いても無駄だった。その後の神議るは終わり結局俺は日向国に行く事にした。周りを見ると神奈子は天照と嬉しそうに笑って話している。諏訪子は気を使ってくれて神奈子と共にいる、豊姫は依姫を探しに行ったが見つからなかった様子で今は月読や須佐之男と話してる。豊姫の神奈子を見る目が悲しそうだったが、眠いしどこかで寝ようと思い永琳を連れて出て行こうとしたが、俺の左手を誰かが掴んで止めた。見たら神綺だった。

 

「数億年ぶりの幼馴染を放って行くなんて酷い! ここは感動の再会でしょそしてベッドインでしょ! そのまま私はひろの子供をお腹に宿して」

 

神綺は右手をお腹に当てて擦り、次に両手を両頬に当てて、にやけて妄想に浸った。サリエルが神綺に近づいて神綺のサイドポニーを軽く引っ張って正常に戻す。数億年経ってもいつも通りだ。正気に戻った神綺は、俺にこの後どうするか聞いて来たので俺は今日は本来、永琳を閨に連れて来んでやる筈だったのでそれを説明した。

 

「この後 永琳の寝込みを無理矢理 襲って子供でも作ろうかと」

 

あの蓮の花を見てる時言ってしまったからな。今日犯すしかない、今日の昼には依姫と日向国に向かわねばならんし。この後どうするか説明したら神綺は真顔になって俺に近寄り顔を寄せて来た。ホラーかよ、怖いぞ。そのまま真顔で口吸いをしてしようとして来たが、またサリエルに神綺のサイドポニーを引っ張られる、しかし今回は神綺も抵抗する為に立ったまま俺に抱き着いて来た。俺に抱き着いたまま俺に擦り寄って来て俺の右頬と神綺の左頬で頬ずりして甘える。俺の右手で神綺の顎に添えて、見詰め合う。左手で神綺の右頬を撫でてそのまま顎に、次に首に行きそのまま少しずつ左手を下ろして、ローブの下に着ている白の服の下にくっきりと出ている神綺の鎖骨をなぞる。綺麗な鎖骨だな。そしてそのままローブの中に左手を入れて神綺の左胸を揉んでやろうとしたがその前にキスしようと思って、神綺の顎に添えていた右手を、俺の方に軽く引っ張って神綺を少しずつ俺に近づける。神綺は俺にされるがままだった。神綺は両目を瞑り、俺の唇と神綺の唇が後 数cmの所まで来たら俺も両目を閉じてキスしようとして俺の唇と神綺の唇が交わる。ただ唇を押し付けているだけで、お互いの舌を絡めていない。神綺は俺の腰に両手を回して抱き着いていたので、俺も左手を神綺の腰に回して神綺を逃がさない様に力を込めて抱きしめるとキスしていた神綺の口から声と吐息が漏れた。そしてそのまま右手を使い神綺の左胸を円形状に揉む。そしてそのまま俺の舌を神綺の唇に当て神綺は驚かずそのまま俺の舌が神綺の口内に入るのを待つ。嫌がっていなかったので俺の舌をゆっくり神綺の口内に侵入させる。俺の舌が半分程神綺の口内に入れて、神綺の舌に当たると神綺は待ってましたと言わんばかりに神綺の舌を俺の舌に纏わり付かせてお互いの唾液が混ざる音が、ぐちゃぐちゃ音を立てて俺の舌と絡めて来た。激しい女だ。しかも俺が神綺の口内に舌を入れたのに、神綺は俺の舌を押し込めて俺の口内に神綺の舌が侵入してきた。ヒートアップさせようと右手で胸を撫でていたが、神綺の太ももをいやらしく擦る。神綺を押し倒そうとしたがサリエルに横から俺の肩を軽く叩いて来たのでこれ以上はやめようと思い神綺から離れようとしたが。抱き着いている神綺が離れないで欲しいのか俺の舌を神綺が口内に吸ってしまい離れようとすると俺の舌が神綺の口内に置き去りにされて動けない。何とか離れて俺は舌から唾液の糸を引かせて永琳を見るが俺を見る目がジト目で諦めモードだ。

 

「ちょっと。私のキスの初めてを何で邪魔するのよサリエル!! せっかくいい所だったのに! もしかしなくてもサリエル嫉妬?」

 

「そうですよ。弘君に神綺、私を置いてするなんてずるいです。まぐわうなら私も混ぜて下さい」

 

「それ以前にこの場には八百万の神がいるのを忘れていない? 弘と神綺、貴方達の濃厚なキスシーンが皆に見られてたわよ」

 

「さっきの依姫や天岩戸の時も似た様な感じだったじゃないか。今更だな、もう八百万の神も見飽きていると思うが」

 

ハンカチで俺の口周りを拭こうとしたが神綺がまた抱き着いて来て俺の口回りを舐めた。神綺は首元をサリエルに引っ張られて引き離されるが、俺はまた舐められたのでハンカチで拭こうとしたが神綺に止められて、私の匂いを拭かないで。と怒られたが俺は無視してハンカチで拭いた。拭いたら神綺の叫び声が大きく響いて床にへたり込んでしまった。ショックだったようだ、しょうがないと思いへたり込んでいる神綺に近寄って俺もへたり込んでいる神綺に合わせて腰を落としたら軽くキスだけをして離れる。神綺は軽い口付けだけで喜んでまた俺に抱き着こうとしたがサリエルに止められて暴れているが終わった。神綺の表情はきらきらしだして、何かを思い出したのかサリエルに止められながら片手を上げる。

 

「この後永琳の寝込みを襲うんでしょ。なら私も」

 

「駄目に決まってるでしょ神綺」

 

「いいじゃないのよ永琳。男は妻からと言うじゃない、妻の一人である永琳がそれを認めてくれたら私、じゃなくてひろが良くなるか悪くなるかの瀬戸際なのよ」

 

「駄目、それに弘は正妻の私が何言っても聞く夫じゃないもの。弘に男は妻からの言葉は当て嵌まらないわよ」

 

俺の幼馴染三人。サリエルは二人に呆れ、神綺と永琳には火花が散っている。いい女たちだ、特に永琳は地上に残る為に色々苦労を掛けさせた、糟糠の妻は堂より下さず だな。大事な女の一人だ。だからこそもう苦労はあまりかけたくないし、女としての幸せ、子供を産ませる事もさせたい。とは言え、俺はこの場にいる永琳と神綺とサリエル。この中にいる妻の三人の内の一人である永琳に最初に出会った訳じゃ無い。永琳、神綺どちらに最初に出会ったと言えば神綺の方だ。都市があった時に出会った永琳、その前に子供の頃だが友達がいた。その友達の中に神綺がいたんだ。だから初めての幼馴染は神綺になる、最初に女にしようとしたのは永琳からだが。俺は妻を増やしてきたが側室は1人もいない、皆正妻だ。ここは大事な所だ。永琳は俺の最初の幼馴染にはなれなくても俺の最初の妻にはなったからどっこいどっこい、いや。一番最初に妻になってるだけ永琳が押してるな。

 

「私 今までひろに会って無くて数億年ぶりに再会したのよ? 少しくらいいいじゃない。永琳はひろと今まで一緒にいたんだから!」

 

「絶対ダメ。 ダメったらダメ! いくら神綺でもこれは譲る気は無いわ、私は弘の子供が早く欲しいのよ」

 

「それを言ったら私もひろと私の愛が形になった子が欲しいわよ! 私知ってるんだからね、ひろと永琳に三人も子供がいるじゃないの! まだ欲しいなんて欲張り過ぎなのよ!!」

 

また永琳と神綺が口喧、またはじゃれ合いを始めた、永琳は基本的に落ち着いている女だが神綺 相手だと子供の頃に戻る。素になっているとも言う。仲が良くていいじゃないか、数億年経っても変わらない事はあると言う事だな。サリエルは俺の横に立ち、俺の右手を左手で取ってそのままサリエルの左手を握らせた。握らせた後は俺と一緒にサリエルは永琳と神綺を見てサリエルは微笑んでいる、かつての日常がまた見れる日が来て嬉しいのかもしれん。いっその事、4Pでもしようか。そんな事したら俺が持たないな。サリエルは俺が何を考えてるのか読み取り、手を繋いでいたサリエルの左手に少し力が入って隣にいる俺を見ながら承諾する。

 

「弘君。私はいいですよ」

 

「サリエルよ、俺は何も言ってないんだが」

 

さっきから気になっていた咲夜みたいなメイド服を着た女性を見る。咲夜のメイド服は白と黒を基調としているが、彼女のメイド服は赤と白を基調としたメイド服だった。彼女を見ていたら彼女は永琳と神綺の口喧嘩を見ていた。彼女は俺の視線に気づいて硬い表情だったが、表情を緩め、熟練された動きでお辞儀をする。手を繋いでいたサリエルが俺が彼女を見ている事に気付いて綻びながら彼女の名と、俺とどういう関係か教えてくれた。

 

「彼女の名は 夢子 弘君が子供の頃に私のお義父上である弘様とお義母様の虎姫様、そして十六夜家の親が私達を差し置いて勝手に決めた許婚です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竺って色んなのがいるのね。アルプって言う天竺にいる妖精とか、妖魔のローレライに空を住処にしてる龍のリントヴルム。幽霊のディブク。ザントマン、またの名を砂男。まるで砂かけ婆ね。綺麗なウンディーネもいた。そうそう、インプとか言うのは魔女の使いでまるで衣玖みたいよね。衣玖は龍神様の遣いだし。後、天竺には華陽夫人に吸血鬼や魔女がいるらしい。まだ少ないけど魔女狩りとかの考えを広めてる人間もいた。魔女は大変ね、でもどこも争いばかりで疲れちゃう。今日は Hexennacht、 意味は魔女の夜で今日はその日らしい。あ、地震の様な揺れの原因は鬼と大百足のせいだったから興味も失せて天竺に今はいる。そしたら白龍が大鯰が起きかけているとか言って私を日向国に行こうと言いだした、私の要石で大鯰の動きを抑えようと考えたみたい。面倒だったから行かなかったけど。

 

「いつまで月を眺めている気ですか。もしや恋煩い、今日はお赤飯ですね」

 

「煩いわね白龍、何で月を眺めてるだけで恋煩いなのよ。月が綺麗だから眺めてるだけだからね」

 

「そんな事より早く天界に帰るわよ~」

 

「帰る訳ないでしょエリス~」

 

小悪魔は魔界に帰って今はいない。天竺に来たのはいいけど何も考えずに来ちゃったから何をしたらいいか分からないわね。今の私は隣にいるエリスと共に海辺で三角座りをしながら海岸で黄昏て月を眺めている。どうでもいいけどさっき海辺で倒れていた遣唐使 清原 俊蔭 とか言う人間を助けた。どうやら難破して天竺に漂着したみたいね。今は白龍の背に乗せて寝かせているけど。折角天竺に来たんだから、取りあえず仏の御石の鉢を手に入れた方がいいかしら。海をぼーっと月を眺めていたら海の中から何かが出て来た。それは少しずつ海から出て来て見ていたら甲羅の上に大きな山らしき物を背負った巨大な亀? みたいな顔をした生き物が出て来た。だけど海の上に出て来ただけでそのまま陸に上がろうともせずにただ半分だけ出ている大きな顔に白髭を蓄えている亀の視線は白龍を見てる。私は何がしたいのかと思ってその亀を見ていたけど、亀が背負っている山から何かが飛んで、その何かは月明かりに照らされて見えた。人間か分からないけど性別は間違いなく女性。まるで、天界にいる天女の様だった。羽衣を纏ってたし。天界で見た事ある様な顔ではある気がするけど思い出せないわね。私の隣で三角座りしているエリスが、海に浮かぶ巨大な亀を見てから私を見る。

 

「亀がこっち見てるわよ天子。私達食べられちゃうんじゃないの」

 

「大丈夫。その視線は白龍に向いてるし」

 

「天子様、あの巨大な亀は霊亀ですよ。霊亀の背に乗っている山は蓬莱山と言われる山ですね」

 

蓬莱山って。あの亀、輝夜とあの人の関係者なのかしら。天女の様な女性は海から陸まで羽衣を纏いながら飛んで来て、陸に着地した。陸に着いたら海辺の砂の上を歩いて鳴き砂を鳴らしながら私達に近づいて来た。霊亀じゃなくてこの女性が輝夜とあの人の関係者なのか。天女の様な女性は三角座りをしている私とエリスに合わせる為に腰を落とし、その場に正座をして両手を膝に置いたら頭を下げて名を名乗るかと思ったら右手に持っていた袋に詰まった何かを私に渡した。

 

「名乗る前にまずはこれを」

 

「何これ」

 

「その袋の中には火鼠の皮衣が入ってます。あの霊亀が背負う山の名、その人宛てで、天子様に届けて貰おうと思いまして」

 

もしかしなくてもその人って、と思った私の顔に出ていたのか。女性は頷く。私の隣に正座をして、両手を両膝に乗せていたけど。紅潮させている両頬を押さえてにやけて言う。

 

「はい。私が恋焦がれてる方です」

 

 

 

「と言うのは冗談です」

 

頬にあった紅潮を一瞬で消して、笑顔のまま即座に嘘ですと言った。ふざけて言ったのか本心なのか、分からないけど反応に困る女性ね。私の隣にいる名も知らない女性は海の上に浮かぶ霊亀を見ながら答えたけど、何で私の名を知ってるのよ。天女の様な女性は霊亀を見るのをやめて、私と数秒見詰め合ったらもう一度頭を下げて今度こそ名を名乗った。

 

「では改めまして、天子様にエリス様。初めまして。私の名は 青娥 と申します。以後、お見知り置きを」

 

「青娥、ね。多分覚えたわ。それと確かに私は天子だけど今の私は地子よ。天子じゃなくて地子と呼んでよね」

 

「天子様ではなく地子様とお呼びすればいいのですね。分かりました」

 

地子と呼ぶように訂正させてから私も名乗り返そうと思ったけど何故か青娥は私とエリスの事を知ってる様だったしエリスもだけど私は名乗るのをやめた。隣で正座をしていた青娥は立ち上がって足に付いた砂を片手で払うと三角座りしていた私の肩に左手を置いて、行きましょうか。と言ってきた。どこに行くのか問うと青娥は右手を口元にやり驚く。

 

「決まってるじゃありませんか。今日は Hexennacht、魔女の夜なんですよ? 魔女達はブロッケン山にいるそうですので早速行きましょう」

 

「いや 意味が分からないわよ。そんな事よりも天子を天界に返すのを手伝って」

 

「エリス様、天子様と天竺を回ってご存知かもしれませんが、少ないとは言え魔女狩りを主張する人間がいます。私は魔女を滅ぼさせないでと頼まれ、本朝に引き込む手伝いをしていただきたいのですよ」

 

「ちょっと、今の私は天子じゃなくて地子って言ってるじゃないのよ」

 

頼まれたっていったい誰によ。面倒臭いわね、見ず知らずの者を助ける理由が欲しいけど暇つぶしにはなるか。じゃあまずは邪魔な清原俊蔭を何とかしなきゃいけないわね。青娥に頼んで任せよう。眠ってる清原俊蔭を持ち上げて青娥の前に寝かせた、後は青娥に任せる。今 ブロッケン山には魔女たちが集まって饗宴しているらしいから今しかないらしいわよ、それと魔女狩りは本朝ではしてないからとは言え、生まれた土地を捨てて魔女たちが本朝に来るとは思えないんだけど。

 

「天子様、貴方は常に監視されております」

 

遠回りに脅してきた、常に監視していると言う事は私は結局逃げられていなかった訳ね。私の我が儘を聞く代わりに今回は魔女を引き込めと、あ~ 面倒~ 束の間の幸せは儚い事を学んだわね。

 

「ふん。暇つぶしにはなるからいいけど、その前に青娥。清原俊蔭を本朝に戻してあげて、難破して天竺に漂着したらしいから」

 

私は青娥に背を向けてから飛んで白竜の背に乗って、清原俊蔭はあの霊亀を使えば本朝に戻れるでしょう。エリスも私に続いて白龍に乗った。一緒に行くみたいね。白龍が飛ぼうとする前に私は青娥に背を向けていて青娥の表情は分からないけど、何か企んでいそうな顔をしてると直感で思った。清原俊蔭、諦めず強く生きるのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー 凄いわね」

 

「この程度、造作もありませんよ」

 

「輝夜様、その口調は似合っていません。もっと阿婆擦れな方が合っています」

 

咲夜、主である私に対して言うに事欠いて阿婆擦れですって、後で覚えてなさいよ。今は縁側で私の故郷、月を眺めながら右手にあるお手玉5つをまたジャグリングして遊んでいる。豊姫お義姉様と依姫お義姉様がよくお手玉を何個ジャグリング出来るか勝負していた、いつも引き分けで終わるけど。私もその勝負を見ていたらいつの間にか出来ていた。本当は寝る為に阿礼のお屋敷で睡眠させて貰おうと連れて来てもらったけど、布団に入って寝ようとしたら私の部屋に女性の来訪者が来た。私に後れを取らない綺麗な黒髪、この女性、只者じゃないと警戒していたら物珍しそうに私と咲夜を見て来たから理由を聞いたら申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「あ、ごめんなさい。とっても綺麗な女性がこの屋敷に、しかも二人もいるとは思わなくて」

 

「聞いた咲夜? この子とってもいい子よ」

 

「籠絡されるのが早すぎますよ輝夜様」

 

私が布団に横になっていながら来訪者を褒めたら、布団の隣で正座をしている咲夜は片目を瞑り私に呆れた。私の周りの女性って皆 素敵な女性ばかりで私影が薄いのよね。直球で私の容姿を褒めてくれる人なんてお兄様か豊姫お義姉様か依姫お義姉様くらいだったから。後は私の親かな。私が生まれたばかりの頃は大変だったみたい、お兄様と永琳お義姉様は亡くなったと月人に思われていて皆泣いたと聞いてる、特に依姫お義姉様は酷かったらしい。永琳お義姉様は都市の貢献者で悲しむのは分かるけどお兄様は局長だっただけなのに何故か知らないけど若い月人じゃなくて性別は問わなく大人の方が、皆号泣だったみたいね。遺体を豊姫お義姉様は探したけど核で全部なくなってるからある訳もなく。結局亡くなって無かったから遺体なんて無いに決まってるけど。お兄様が亡くなって月人が月に着いた矢先に私が産まれたから大騒動、お兄様のお蔭で私は大事に大事に育てられた、籠の鳥の様に。だから地上が知りたくなった、月より面白そうだっから。そして豊姫お義姉様に頼んで竜宮城まで連れて行ってもらって私は地上に行けた、竜宮城で豊姫お義姉様と依姫お義姉様が付きっきりで私に色んな勉強させられたけど背に腹は代えられなかった。でも親馬鹿な二人が豊姫お義姉様に何を言われたのか知らないけどあっさり許可が下りてその時は豊姫お義姉様に恐怖を感じたわね。そうそう、お兄様と永琳お義姉様がよく行っていたと言う駄菓子屋に豊姫お義姉様と依姫お義姉様に連れて行ってもらっていた。月に行ってもあったから。そこの店主はお婆ちゃんな訳だけどそこがそもそもおかしい、私達月人は年を取らない、確かに月人は赤ん坊から成人まで成長する。だけどそこまででご老体にまで老化するのは。これは一体どういう事か。

 

私は今はそんな事を考えてる時じゃないかと布団から起き上がり、来訪者の女性が右手に持ってるお手玉が目に入った。私のお手玉実力を魅せ付けようと彼女に提案する事に。

 

「ねえ、縁側で月を眺めながら貴方が持ってるお手玉で遊ばない? 私は 蓬莱山 輝夜 隣にいるすまし顔な女は 十六夜 咲夜 貴方の名も教えてちょうだい」

 

来訪者は持っていたお手玉を見て、次に私と咲夜を見て太陽の様な笑顔でお手玉を私と咲夜に見せて名乗る。

 

「私の名は、妹紅」

 

 

そして縁側で月を眺めてつつ今に至る。ジャグリングしていたお手玉を一旦止めて、右手にある5つのお手玉を今度は彼女に手渡した。妹紅はお手玉を受け取るとまずは3つからジャグリングするけどまだ難しい様で1つを床に落としたから2つから始める。2つのお手玉をジャグリングしながら縁側に座って隣にいる私を称賛。

 

「本当に凄いわ、私はそんな事できないわよ。まるでかの聖徳太子、蘇我入鹿の様ね。入鹿は100は超えるお手玉で遊んでいたし」

 

聖徳太子は、火取水取玉や石名取玉という水晶で出来たお手玉で遊んでいたらしい。どうやら知人の様ね。私でも100はちょっと、でも須臾を使えば何とか。お手玉なんて何千年ぶりか、懐かしい。紅妹がお手玉をジャグリングしながらかつての私が空に浮かぶ月を指さして何て呼ばれていたか自慢する。

 

「こう見えても私はお手玉姫と呼ばれていたんですよ、あの月で」

 

「えー 嘘だー」

 

月を右手の人差指で自慢げに妹紅に言うと妹紅は俄に信じられないのか軽く笑いながらお手玉で遊んでいる。左隣にいる咲夜は今の言葉を聞いて鼻で笑った。私は両手を咲夜の両頬に当てて引っ張る。咲夜も抵抗して私の両頬を引っ張りお互い争っていたら右隣にいる妹紅はお手玉で遊ぶのをやめて今度はお手玉を10個渡してきた。

 

「今度は咲夜がやってみない?」

 

「いいですよ」

 

私がお手玉10個受け取ると、そのまま流すように咲夜にお手玉を10個渡した。咲夜は左手右手にお手玉を5つ持って右手から左手のお手玉を交互にジャグリングをするけど、時を止めながらジャグリングし始めた。って、いかさまじゃない! 妹紅は時を止めながら咲夜はお手玉をしてるのは気付く訳もなく、純粋に咲夜を褒め称えたけど。

 

「凄い凄い!」

 

「この程度、褒める事ではありませんよ」

 

とかなんとか言ってるけど咲夜は妹紅に褒められて満更でもなさそう。調子に乗った咲夜は10個以上のお手玉をジャグリングし始めまた妹紅はそれを称える。だけど私は今の不正を正すべく徹底抗議する。過ちは正さなくてはいけない、妹紅は純粋に感心して水を差すのもどうかなと思うけど。妹紅は自分の右手の人差指を見て考え込んでる。

 

「狡いわよ咲夜! 時を止めながらするなんて!」

 

「何の事でしょうか」

 

咲夜がジャグリングをやめて、私を見ながら右手で口元を押さえて驚く振りをしてから恍ける。私は左隣にいる咲夜の方に体を向けて騒いでいたら、紅妹が私の背を多分人差指で軽く数回叩いたので何だろうと振り返る、妹紅が私の目の前に右手の人差指を差し出して見せて来たけどただの人差指にしか見えない。

 

「ねえ、二人とも。これ見てくれない?」

 

「これって言っても、右手の人差指がどうしたの」

 

妹紅は右手の人差指の先から炎が出て来て数秒経ったら消えた。炎が出せるなんて便利ね、生きて行く上で炎は必要不可欠な物だし。今の人間には太陽や炎は神聖な物として見られてるし妹紅が炎を操れるなら神として崇められるわよ。まあ、何故炎が使えるのかについては大体把握した。隣にいる妹紅を見ると表情が暗い、今の炎を見せたのは相当な決心があった筈。普通の人間に炎を指先から出すなんて出来ない事だ、他の人間が見たら気持ち悪いと思う輩もいるかもしれない。そんな恐怖が妹紅にはあるのかもしれないわね。妹紅は顔を俯かせて表情が分からないけど恐怖に包まれた様子で私と咲夜に今の炎について問う。

 

「今の見て、どう思った?」

 

 

「それ、妹紅が天照の子孫だからでしょ」

 

「そうですね、それに炎が出せるだけなら可愛いものですわ」

 

妹紅が顔を俯かせていたけどゆっくり顔を上げて隣にいる私を見るけど私と咲夜は月を眺めながら郷愁の気持ちに浸る。私は永遠に須臾。咲夜は時の支配者。他の月人、お義姉様達も相当ぶっ飛んでるから炎が出せるだけじゃ驚きもしない。依姫お義姉様なんて能力で神の一人愛宕を呼び出して腕が火そのものと化すから人差指から火が出た程度じゃ驚けと言う方が無茶。勿論、妹紅が相当な覚悟を持って、私と咲夜に炎が出せる所を見せたのは分かってる。だからそんな下らない事か。とかいい加減な気持ちで答えてる訳じゃ無い。いいじゃない、炎を操るなんていかにも男性が好きそうで男性からは人気になるのは間違いないわね。諏訪国の民にとか。妹紅は太陽のように輝いてとっても綺麗。私は月。じゃあ天照の子孫の妹紅は太陽。お互い対極の存在で交わる事は決してない、と思ったけど日蝕があった。まあ、それは置いといて月と太陽は見えない時もあるけどいつもそこにある。太陽や月、どちらも欠けてはならない。私はもしかしたら月の姫かもしれない、じゃあ妹紅は。私は縁側に座っていたけど立ち上がる。咲夜が何か言いかけたけど私は言わせまいと喰い気味に、右隣にいる妹紅に向き私の右手を差し出した。縁側に座っている妹紅が立っている私を見上げて事態が呑み込めてないのか未だ呆然としてるから今畳みかけなくてはと思って無我夢中。

 

「妹紅。私、そして咲夜とお友達になりましょう」

 

太陽は日蝕の様に、月が太陽に重なる様に、妹紅は輝夜が差し出したその右手を妹紅の右手と重ねて妹紅は顔を上げた。その時、一点の曇りもない真夜中の空にある無数の星、色褪せない、輝く夜空を見て、輝夜の背に重なる月、そして輝く夜の星空が太陽よりも眩しく見え、妹紅が差し出した輝夜の右手を取ると輝夜は答えた。

 

「私は貴方の欠けた部分になる。だから妹紅は私の欠けた部分になってくれないかしら、月と太陽。お互いを補い合う関係にならない?」

 

友達とはそういう関係でもあるんだから。




下野国は栃木県、日向国は宮崎県です。日向国は日本神話に関わりが色々多い所ですね。なゐの神は名居神なのか未定。しかし、やっぱりどうしても山に関係する話が多くなります、飽k

ブロッケン山はドイツにある山です、そこで魔女達が年に一度集まると言われています。この時代ではなくもっと未来の話ですけどインドでもですけどドイツでも魔女狩りがあって、ドイツには吸血鬼、またはノインテーターの話がありますのでそれで。ノインテーターって何かヤマメに似てます能力的に。天竺にいたと言う華陽夫人は皆さんご存知でしょうが玉藻前と言われて同一視されてますね。中国神話では月に逃げた仙女がいましたね、桂男と関わりが深い月の蟾蜍になったと言われるあの話です。青娥はもしかしたら嫦 
天子はもう一人の主人公になるんじゃないかな、多分。天子の話は気まぐれで書くので弘天の話とは時間の繋がりが含まれませんので。
ドイツではアーデルハイトが女性の名としてあります、コピペで申し訳ないですけど
古高ドイツ語では Adalheidis であり、 adel は 高貴な を、 heit は 姿 や 形 を意味した。アデライード、アデレード、『アリス』アリシアなどに対応してる
だそうです。後はドイツでエレンやエリー、サラ などの女性名がいますね。三人とも旧作キャラで1人は魔法使い、または魔女です。最後にドイツにはスイス・『フラン』という通貨があります、そして魔法少女と言われるのが紅魔郷にいましたね。魔理沙の事ではないと思います。旧作キャラの魔梨沙、または魔理沙はどうしましょうかね、いっその事魔女として、いやしかしそれは。

清原俊蔭とか出しましたけど元ネタは宇津保物語、またはうつほ物語です。本来なら天竺ではなく波斯国(ペルシア)ですけど。うつほ物語には天人、仙人が出て来るので青娥を出しました。青娥はどうしましょうかね、仙人はともかく天女にするべきか、元人妻か、もしくは無しで行くか。須佐之男の神使は海蛇と言われてるのと出雲関係でここの須佐之男の神使は大物主になってます。赤城山の神は大百足と言われ、男体山の神は大蛇と言われてるのでこんな感じになりました。いや、分かってるんですよ。ミシャグジ様が本来諏訪国の神だって事は。多分諏訪国の蛇の神であるソソウ神も大物主になるかもしれんね。ややこしいですけど赤城山の神は大百足と言われてますが今回の話で出した大百足は三上山の大百足とは無関係です。大百足ですが本当は有名な方の三上山の方を使う予定でした、しかし断念。折角 平将門を出したから藤原秀郷の話をしたかった、龍神と龍神一族の美しい娘がでるから依姫を使おうと思ってたんですけどね。だから今回の話はこうなりました、リグルも使うなら本当は三上山の大百足にしたかったですけど。そっちの方が使いやすかったし。どうでもいいかもしれませんが荒脛巾神には蝦夷の神説だけでは無く五行説が関係しますが蛇神説があります。男体山の神は大蛇と言われていなければ荒脛巾神をミシャグジ様にしたでしょうね。大和に抵抗する所が似てるので。

輝夜は月、妹紅はどうしても太陽にこじつk、ではなくちゃんと関係させて輝夜と対極の存在にさせたかったんだ。だからこそ藤原不比等の天智天皇の落胤説が必要でした。ですが妹紅に藤原を名乗らせるか未定。何故妹紅が稗田阿礼の屋敷にいるかについては藤原不比等と同一人物説があるからです。だから仲がいいんじゃないかな、多分。もう面倒なのでぶっちゃけますけど今回の話で鳳凰は出してます。天照と鳳凰に繋がりがありますしそもそも鳳凰に限った話じゃないんですけど鳳凰の同義って多すぎるんですよ、例えば朱雀とかフェニックスとかも鳳凰の同義になります。だから鳳凰は朱雀とかフェニックスの設定を混ぜてます。これで青竜、朱雀を出せたので後は白虎と玄武ですけどもう霊亀が玄武でいいんじゃ、同じ亀だし。決して考えて出すのが面倒だとかそんな事は考えていません。しかし玄武に欠かせない蛇の存在ですが先程も言いましたように須佐之男の神使は海蛇と言われています。

そう言えば、天津神の神の名は最初に天が多いですね。そして弘天は最後に天があります。西の人間だけ病を流行らせるとか自分で書いててあれなんですけど考える事が酷いです。勘違いしては困りますが弘天は仏教を否定してる訳でも嫌ってる訳でも無い事は知っておいてほしいです。仏教が邪魔だとは思っていますけど神道と仏教、神と仏を人間に区別させようと動いているだけです。私の気分次第で仏教の概念は無くしますけど、あってもなくてもこの先あまり困らないので。

本当は天照って天皇と関係ないそうですが、仕方ないね。思ったんだ、もう今回で完結でいいんじゃないかと。


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悪神
物部 守屋


今回の後書きはセクシュアリティで不健全な言葉が多数あります。18歳以下の人は見ないで下さい。そして今回の話を最後まで見ても『稲に関わる語彙』を絶対検索して調べたらいけません。誰の事か分かるから調べちゃいけない、絶対だから!

この話書いてて思ったんですけどこのままでは考えていた一つの没案、西の人間皆殺し√に入ってしまう! な、何とか軌道修正しなくてはいけない。



「咲夜、悪いけどお願い」

 

「はい」

 

寝る時間が遅かったからか部屋から縁側に出て太陽の上り具合を見る。上り具合からするにお昼くらいの時間に起きた様だ。服の袖で口を隠して欠伸をしながら縁側に座り、咲夜を呼んで私の髪に櫛を入れてもらい私の髪を梳かす。

寝癖なんて無いけど念の為に。私はストレートの長髪でくせ毛が無く、ちゃんと髪の手入れをしていて髪が傷んでないからか櫛を使って髪に梳かす時、櫛に絡まる事は無い。咲夜に髪をとかしてもらい、縁側に座りながら屋敷の庭を見ていたら私と咲夜が寝ていた後方にある部屋から足音がした。足音から察するに妹紅かな。一緒に三人で寝てたから。

咲夜に櫛で髪をとかしてもらってるから、気を付けながらゆっくりと首を動かして後ろを見ると、右手で目を擦りながら片目を瞑って涎を垂らしながらふすまを開けて、縁側にまで来た。だけど、殿方に見られたらはしたないと思い。私は妹紅を呼んで私の隣に座らせて懐からハンカチを取り出して妹紅の目脂を取って、涎を拭く。

 

「駄目でしょう妹紅。女の子なんだから身嗜みに気を付けなくちゃ」

 

「んー」

 

この時代、例外もいるらしいけど殆どは男尊女卑の考えで女性は男性に比べて立場が弱い。しかも妻問婚。だから女性は基本的に屋敷に籠ってばかり。貴族の女性は屋敷から出たらダメだそうよ。これじゃ籠の鳥ね、つまらない。そんな人生何の為に生きてるか分からなくなる。とは言え、それは私が月人だから言える事。妹紅に聞いてもそれは当たり前と言われた。この生き方が当たり前と思っているから、他の生き方もあるんじゃないかと言う不満や疑問を抱かないのね。

藤原不比等は公卿。だから雑用は普通、あまりいい意味ではないけど私奴婢がいて掃除に料理に洗濯、家事全般ではないけど、ある程度はその人がやっているから大変だ。

妹紅はある程度の家事、 炊事 洗濯 料理 などは1人でやってるとの事。親の不比等はよく食べるそうなので大変で他にも屋敷が大きすぎるので手が回らない所は女中に任せてるそうよ、まだ若いのに凄いわね。咲夜は私の髪を櫛でとかしていたけど終わったのか立ち上がって櫛を懐に仕舞い、私の左隣に座ったので、感謝の言葉を口に出す。

 

「ありがとね、咲夜」

 

「いいえ。これが私の役目ですから」

 

妹紅と咲夜とでのんびりしていたら足音が聞こえ、足音の方に顔を向けると屋敷の庭にお面を側頭部に被せているお兄様と依姫お義姉様が屋敷に来訪。お兄様が私と咲夜に話しかけようとしたけど、お兄様は妹紅を見て近づき、妹紅の両手を優しく取って、面と向き合いながら口説く。相変わらず、可愛くて綺麗な女性をすぐ口説く。お兄様、隣にいる依姫お義姉様が悲しそうにしてますよ。依姫お義姉様がお兄様が死んだと聞かされた時に一番悲しんだのです。都市があった時からの妻を悲しませるのは流石に酷ではありませんか。そこまで、鈍感じゃありませんよね。お兄様。

 

「君、可愛いね」

 

「お上手ですね。ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです、あら。貴方の首にかけているのは確か」

 

あれは、お世辞じゃないと思うわよ妹紅。隣にいる妹紅を見ると、妹紅が諏訪大明神でもあるお兄様の首にかけている玉飾品をどこかで見た事があるのか凝視している。妹紅がお兄様に何か聞こうとしたその時、お兄様の側頭部に被っていたお面が、お面から人型に、彼女の周りに色んなお面を纏わせながら興味深そうに妹紅をじろじろ見る。

妹紅は事態が呑み込めず、お兄様に何を聞こうとしたのか忘れたのか思い出そうと唸っているけど、確かお面で面霊気の少女の名は 秦 こころ。偶然なのか大和にも渡来系氏族、大和朝廷に仕えている渡来人の秦氏。秦河勝がいる。

お兄様がこころの名を考えたそうなのでただの偶然だろうけど。私は神仏習合なんて正直どうでもいい、お兄様はどうでもいいとは思ってないようだけどね。お兄様が手を貸せと言われたら勿論私は手伝うけど。その前に、私と咲夜は八百萬神を信仰の時を止めて永遠にして欲しいと頼まれた。隣にいる咲夜は相変わらお澄まし顔のまま承諾。何だか、咲夜がお兄様にすごく従順になってる気が…

手伝うとは言ったけど、八百萬神を永遠ともなると大変。これは一日では終わらないでしょう。引き受ける変わりに、私と咲夜は暫く大和に滞在したいと言うとお兄様は二つ返事で頷いたので、これで安心。暫くは妹紅と一緒にいられる。

 

「可愛い。これが可愛い気持ちの概念?」

 

「そうだぞこころ。こちらの女性はきっと可愛いと言う概念が具現化した存在なんだ。こころだけに、心の為ここは1つ拝んでおけ」

 

「おー 早速 我々が心を手に入る兆しが見える気がする」

 

妹紅は可愛い可愛いと何回も言われ、たじろぐ。お兄様はこころの頭を撫で、こころはそれを聞くと右手を握って振り上げて応答し、開手。2回礼をして次に両手を合わせ、これを左右に開いた後に、勢いよく両手を再び合わせ音をパンパンと2回鳴らしてから、また礼をして縁側に座っている妹紅を拝する。

まるで妹紅が神様みたいじゃないの。しかも二拝二拍手一拝は神社でする物よこころ。でもこの拍手、または開手の行い、神仏習合の影響でしょうね。こんなの昔は無かった。そう言えば、天皇は神道の根幹に 位置付する存在なのに確か、出家したと聞いてる。自分達が神道の根幹だと言う事を忘れてるのかしら。そもそも天皇なのに法皇っておかしいでしょ。西の人間、本朝の宗教である神道の頂点が他の宗教に影響されてるんじゃないわよ。

 

「妹紅、容姿を褒められたのに何も思わないの?」

 

「んー 言われ慣れてるし、あまり思わないわね」

 

妹紅は右手の人差指を右頬に当てながら答えるけど、1億くらい生きて来た私より言われ慣れているなんて。何て事なの。妹紅は末女で妹紅の兄達である藤原四兄弟は政治に入り、姉たちはそれぞれ天皇に嫁いだそうよ。それにさっきも言った妻問婚。つまり、摂関政治。その成立の原因が起こり始めている。最後に残ったのは妹紅だけでこの時代、女は嫁がせ天皇や、姻戚。他の家柄と関係を持つ為の政治の道具に過ぎない。例えば、政略結婚とかね。後、女性は子供を作る為の道具。確か、お兄様の妻の一人である八坂 神奈子 もお兄様、諏訪国と大和の同盟を結ぶ為に政略結婚で妻になったと聞いている。それが今の世だけじゃないでしょうけど、女性がそう扱われるのが当たり前なのは、理解できない部分もあるけど分からなくはない。これから先の歴史にもそう言った話はあるだろうし、こんなの氷山の一角に過ぎない。私の肩書き、月の姫もそう。姫と言えば聞こえはいいけど結局は政治の道具だから。

お兄様が何かとんでもない事を言いかける前に、依姫お義姉様がお兄様が着ている服の襟を掴んで無理矢理引っ張り、お面だった少女、こころはまたお面になり、被るのではなくお兄様の側頭部に張り付く。そして三人は神社に戻って、豊姫お義姉様にお願いし、日向の国に向かうんだろうけど。これから遠出のデートをするのに依姫お義姉様を放置して他の女性を口説くから、依姫お義姉様も嫉妬するに決まってる。いなくなったお兄様たちを眺めていた私は、妹紅に誰にも嫁ぐ気は無いのと聞く。でも妹紅は隣にいる私を見て自虐気味に言う。

 

「炎が出せる女なんて誰も、妻にも嬪にも貰ってくれないわ。気味悪がられるだけよ。そんな事より話を聞くに、輝夜。あの人は輝夜のお兄さんなの?」

 

「残念ながら。嘆かわしい事ですわ」

 

「何で私じゃなくて咲夜が答えるのよ。それに、私のお兄様に対してその言いぐさは酷くない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし。西に住む人間の、神道の頂点である天皇。天智天皇のその弟、大海人が出家をするとは。流石にこの俺でも予想できなかった」

 

いや、もう一人いたか。藤原の子孫、今は『西行』と呼ばれ、河内国の弘川寺にいる男が。西行には娘がいたな。娘の名は、何だったか。うろ覚えだが確か、幽々子だったか。初めてみた時はまだ子供とは言え可愛い女だった、幽々子は将来 間違いなく美人になる。依姫は嫉妬してか今も俺を地面に痕を付けて引きずっていたのでそのまま俺は喋るが、依姫はそれを聞くまで歩いていたが静止。襟を掴まれて引きずられているので俺は後ろを向いていたから依姫がどんな表情で言ったのかは、分からない。

しかし皮肉だ。これから向かう国は日向国、初代天皇である神武天皇の神武東征は塩椎神に東に良い土地があると言われ決意し始まった。神武天皇は西の果ての日向国から東に進行し、先に住んでいた原住民。先住民を征服。その土地を無理矢理勝ち取った。で、今は大和に住む天皇に至る訳だが。仏教の伝来は神武東征に似ている。これが皮肉と言わずして何という。

神武東征や神武天皇と言えば 藤原 不比等 稗田阿礼 も関わっているそうだが太安万侶が歴史書の古事記を編纂しているそうだ。中身を軽く見せてもらったのはいいが、九州の先住民である熊曾、そして大和に住んでいた先住民である国樔の事とか書かれていて、どうせ大和に都合がいいように書かれてるんだろと、蓋を開けてみたら大和朝廷に都合の悪い部分が多く執筆。珍しいな。普通、自分達に都合が悪い部分は端折ったり書かない物なのに。

だが、天智天皇に弟なんかいただろうか。それに大海人は天智天皇より大海人の方が老けている様に見えた。仮に大海人の方が先に産まれていて天智天皇の兄だったとするならば、弟である天智天皇が先に即位するのはおかしくないか。気のせいかもしれないが天智天皇と大海人に血の繋がりが無いのかもしれん。しかし、もしもの時は天智天皇の子の大友。天智天皇の落胤である不比等もいる。しかも大友はともかく不比等には妹紅がいる。天皇の血を絶やさせる訳にはいかん。下心は無い気がしなくもないが俺が妹紅を頂くのもいい、天皇の血が諏訪国にあるのはこの先都合がいいかもしれん。

 

「隊長、天皇は神の神裔ではありますが。どう足掻いても、どんなに言い繕っても。結局は、ただの人なのです。どこにでもいるような、人間。だと思います」

 

「と 言いますか。応神天皇の事を忘れていませんか? 八幡神は確か豊後国にある宇佐神宮の禰宜に憑りつき、大仏建造に協力せよ、そう託宣したと聞いていますが」

 

「いいや、違う。それは人間共が勝手に言っているだけで、神身離脱の時と同じだ。しかもそれを言ったのは出家した尼だ、つまり禰宜なのに仏教派な訳だなその女は」

 

豊後国は日向国の北、一つ上にある国だ。これは何とも都合がいい。八幡神だけではないが、八幡神は神仏習合に対し拍車をかける為、利用された。応神天皇は死後 八幡神になった訳だが、八幡神が生前は天皇だった。これが人間、豪族共にとって重要だったんだろう。その辺の人間が同じような事を言っても意味は無い。が、西の頂点に立つ天皇なら話は変わる訳だ。

その尼、禰宜の服装は、頭巾を被っていて西洋の尼僧の服装だそうだが、禰宜のくせにその女は一体何を考えている、自分が宇佐神宮の禰宜だと言う事を忘れたのかその女は。天皇が完全無欠じゃなく、瑕疵である事は俺だって理解している。神道の神も完全無欠じゃなければ俺だって完全無欠じゃない。しかし。人だとは言え、仮にも西の人間の、神道の頂にいる存在が出家とは。やはり仏教は、神仏習合は厄介で煩瑣で、煩わしい。これは本腰を入れるべきだろうか、手段を選ばず本格的に人間の敵になる本腰を。本朝の人間は外来の文化を受け入れる者が多いが、良く言えば度量がいい、悪く言えば流されやすい。本朝の人間は未知の事でも信じ込みやすく純粋ともいえるがその分馬鹿ともいえる。俺もその馬鹿の一人だ。普通、宗教が二つ以上もあったら争うのは必然。一神教なら尚更だ、最初大和で宗教戦争もあったしな。一神教であるキリスト教 イスラム教 ユダヤ教 一神教であるこの3つの宗教からそれぞれ各一人の狂信者を同じ部屋に幽閉してみろ、確実に殺し合いだ。しかし神道は多神教、仏教も多神教ともいえるかもしれんし無神論とも言えるかもしれない。本朝の人間は八百万の神の考えを持っている、だからこそ仏教が受け入れるのが早かったし、仏教を受け入れる者が多かった。そして神道はアニミズムで風習、習慣の様な物。教義も無いし仏教の釈迦の様に創唱者もいない。正直、閉鎖的で分かりにくい所が多く信教、つまり十人十色。それぞれがそれぞれの答えを持つ。

仏教は哲学が多いとは言え、ある程度は分かりやすく答えがあるし教義や世界観など、答えが基本一つだ。この違いもある。後は仏教とは身分関係なく誰にでも支えとなる。これも大きい。身分関係なく誰でもと言う所が。人間は、脆い。身分が低い物なら尚更だ。人間はいつだって何かに縋りたく拠り所を求める、自分が考えるのではなく誰かに聞いて安心したいんだろう。

人間は面倒くさい生き物だ、人の輪に入れなければ不安になる者もいれば、誰かと同じ考え、同じ価値観なら安心する生き物。しかもその同じな物、好きな食べ物や飲み物。そんなのが多ければ多いほどに。自分だけでなく、他人に自分の考えや価値観を共感、肯定してほしい考えを持つ者が多い。だから神道の信教より仏教に惹かれたのかもしれん。

人間は何でもかんでも理由を求める、理不尽な目にあった時とかは特に。鎮護国家の考えも出始めている、神道は宗教色があまり強くない、だから仏教を使い鎮護国家をしようと大和の政府は動いているそうだが、ふむ。卑弥呼を使い邪魔な衆を惑わす手もある。どうしたものか。

復古神道は出来ない、それをするにしても造化三神の神産巣日神以外はとうの昔に身を隠してしまった。俺が目指す先に、もういない神を使う訳にはいかん。嘆いている場合じゃない。俺が死ぬ最後のその時まで、後ろを振り向かず前に歩いて行くしかない。

俺は依姫に離してくれと言い、依姫はそれに従う。俺は立ち上がって依姫に背中に付いている砂などを払ってもらい、払い終えたら歩き出す。依姫を追い抜いたら首を回して背にいる依姫を見て昔の様に、都市があった時の様に言う事にしよう。

 

「行くぞ依姫。都市があった昔の様に、また俺が仕事を疎かにしない様に見張る為、俺の背に着いて来い」

 

「はい、隊長。ずっと傍にいて見ていますし、どこまでもついて行きます」

 

やはり、人間は弱い。そして、例外もいるがつまらん生き物だ。早く小町に会いたいものである。世の中、こんなものだ。いつの時代も虐げられる弱者はいる。だがおかしい事じゃない、弱者はいつの時代もいるしそんな世の中が当たり前だ。この世は平等に出来ていないのだから。俺は救世主でも、強きを挫き弱きを助けるヒーローでもない。この世から妖怪や身分の低い者の陋劣を払拭させ皆 平等はやはり無理だ、あの永琳でさえそんな事は出来ない。一部だけなら出来なくもないかもしれんがな。

いや、一つだけ手はある。皆殺しの手が。食べ物に関しては問題は無い、何故なら御食津神達がいるからだ。しかし、それでも食べ物に困っている者がいる事は少ないとは言え明白だ。百姓の親が役身折酬、金の為に人身売買で子を売る者もいる、男なら力仕事に使えるし女はセクシャリティ。遊廓に売り飛ばされ、女衒。男の性欲、その捌け口の道具になる。そして買われる前に床師に買われた女が嫌がら無い様に訓練させられたり、処女なら出来るだけまぐわいの時、行為を及ぶ際、出来るだけ痛がらない様に、処女を傷つけずする訓練だってある。他にも民家に押し入ってその住民を斬り殺し、食料や金品を盗む話もよくあるし人攫いなんてざらだ。

所詮こんなもの。それで世の中は回っているし、人間は動物じゃないとか言う者もいれば人間は動物である事を忘れがちな者が多い。しかし、理性があるとは言え本能で生きる人間も動物なんだ。五色の賤などもあるのに陋劣を払拭し皆 平等にしようなんて考えを持つ者がいたらそいつは俺にとってどれだけ危険な存在で、危殆を孕んでいるだろうか。灯台下暗しで、案外、身近にいるのかもしれん。

 

歩きながらまだ他に何かないかと頭を悩ますが、病を流行らす案だけではまだ弱い、何か他にいい案は無いかと無い頭を振り絞るが知恵熱出て苦しい。本朝にも奴隷と言える者は存在する。例えば 婢 下人 奴婢 夜都古 俘囚 他にも別の言い方があるがそんな言葉もあれば身分差別の五色の賤もある。言い方が違うだけで実質的に奴隷である事に変わりは無い。大和朝廷は奴隷階級の人間を夜都古と呼んでいるがそもそも、これは今に始まった事じゃない。昔、卑弥呼の奴が国を治めていた時、 奴婢。または生口と呼ばれる者がいて、その言葉は奴隷に近い意味があった。昔からそんな事はある、今に始まった事ではないのだ。

とりあえず西で奴隷商人から奴隷を買うか。いや、奴隷場 事買うのもいい。病が流行ったら奴隷を使って、西の各地に住む人間に神がお怒りなのだと吹き込む必要がある。金は龍神から貰った5つの龍の頸の玉が懐にある。これ、売れば国を傾ける程価値があるだろうし。渡来人が確か奴隷を売っていた筈だ。だから渡来人の奴隷商人から奴隷を買って、奴隷を各地に向かわせる。各地に向かわせる訳だからそのまま逃げるかもしれんが、まあいいか。その時は俺が回ればいい。日向国に奴隷商人がいればいいんだがな。

 

いや、案を一つ思いついた。今は神仏習合のせいで神と仏の境界が曖昧だ。神仏習合のせいで民に神と仏の区別がついて無い。仏を蕃神と言ってるし。そこで、紫に頼んで神と仏の境界を弄らせ、仏を神にし。神道の、八百万の神の一部に組み込む考えが。仏教が天竺の神を仏教に取り込み、天竺の仏教はヒンドゥー教に取り込まれた様に、仏教、または仏を神道、神道の神に取り込む案。これは神道が色んな神様がいると言う考えを持ち、多神教だから出来る事だ。

仏が怒る訳が無い、なにせ悟りを極め煩悩が無いのだから。もしもの時は、悪いな釈迦。その時はお前が開祖の宗教、取り込むぞ。神道は本朝だけの宗教だが仏教は違う。天竺から始まりそこから色んな国を渡って本朝まで来た。天竺が始まりと言っても、もう仏教はヒンドゥー教に取り込まれてしまい天竺に仏教の概念は無い。多分一時的に無いだけかもしれんが。その他にもジャイナ教とか他にもあるがそんな宗教もある。なんだ、悩むことは無かったじゃないか。紫を使う案は優先順位が高い。ただ、それをすると言う事は本朝から仏教が消えるのか、それとも仏教が神道に混ざる事を意味するのかが不明なのは難点だ。これは賭け案だな。

 

「ふむ。巫女か、依姫。巫女服着てみないか。巫女服の依姫をセクハラして辱めたい」

 

「ば、馬鹿な事を仰らないで下さい隊長!」

 

神社に着いたので神社にいる巫女を見るが。皆可愛くて素晴らしい、折角だから依姫の巫女服姿を見たかったが拒否された。ただ恥ずかしがってるだけだろうが。仕方ないので依姫の後ろに回り、依姫の髪を櫛で梳く様にリボンで押さえているポニーテールを両手の10本の指で梳く。今でも依姫は都市があった時俺が買ってプレゼントした赤色のリボンを使っている。もうあれから数億年経っているからリボンも傷んでいる、新しいの買ってやるから捨てればいいものを。依姫は急に髪を触られたのでびくつくが髪を撫でられているだけだと気付いて、されるがまま、顔は俯かせているが。依姫のポニーテールを両手で触っていたが、うなじを見たくなったのでポニテを左手で持ち上げる。俺はうなじフェチではないがうなじ、髪の生え際は見てると何だかエロイ。エロスを感じる。うなじを見ているのも悪く無い。空いている右手を使い、右手の人差指だけをうなじに当て、そのまま下に、依姫の腰まで下げる。依姫は敏感なようで体や首から痙攣するかのように動いているから感じやすいのか。もう永琳とはまぐわいはやった、だから気にする必要はない。思う存分にやろう。依姫の右尻を右手で思いっきり掴んで揉むが、驚いた依姫が振り返ったのでそのまま依姫の顔に近づけ数秒ほど口付けをする事にした。ただ触れ合うだけの口付けで数秒経ったらお互いの唇を離す。依姫の目に涙が溜まり、頬に流れる。今まで豊姫に構いすぎてて依姫をほったらかしにしすぎた。すまん、依姫。許されるとは思ってないがここは告白する事にしよう。そもそも、都市があった時俺は豊姫と依姫に愛の告白をしていない。師匠が豊姫と依姫を俺に預け、いつの間にか俺は二人に好かれていてなし崩し的に恋人に、付き合っている感じになっていた。だから好きだとも愛しているとも言った事が無かったが、豊姫は地上に残って月人を奴隷にする際、俺と永琳は琵琶湖の近くにある蓬莱山にいた豊姫の元へ向かい、豊姫は協力する代わりにキスをして愛を囁けと言われたのでした事がある。しかし依姫にキスはともかく告白を、それをしていない。してやれてないんだ。依姫も妻の一人なのに、随分寂しい思いをさせてしまったかもしれん。振り向いている依姫の目からまた涙が流れる。ポニテを持っていた左手を離し、少し乱暴に左手で頭を撫でて髪をくしゃくしゃにする。暫くは依姫と一緒だ、今までほったらかしにしてた分構いまくろう。

 

「悪かった。俺の自意識過剰かもしれんが寂しい思いをさせて本当に、すまん」

 

「本当に、そうですよ。昔からいつもいつもお姉様ばっかり。少しは私の事もちゃんと見て下さい」

 

「ああ、分かってる。依姫。数億年も待たせてしまったが。愛してる。結婚してくれ」

 

「遅いです、遅いですよ。遅すぎますよ。でも私は、都市があった時、子供の頃のあの時から、隊長に、弘さんに初めて会ったあの時から。もう、決めているんですよ」

 

依姫は後ろにいる俺に首を回し顔を俺に向けていたが、首を元に戻し前を向く。依姫が右手で顔をごしごし拭いて、体ごと振り返る。目元が赤くなっていて、依姫は左手を使い、俺の右手を手に取って手を繋ぐ。そう言えば、恋人らしい事もした事が無かった。抱き着いてプロポーズした事もあった、あれは逃げる為に言ったが1割冗談だし、あの時は上司と部下の関係だったからな。依姫は俺の右手を左手で掴んだまま歩き出した。俺は依姫に引っ張られながら歩くが依姫はさっき言った結婚しようの返答は返さなかった。俺が今まで依姫を待たせていたので、今度は俺が待たされる番と言う訳だろうか。神社にいた巫女が一部始終見ていたようで顔が真っ赤だ。あれは、処女だな。依姫が見られていた事を忘れていたようであたふたしたが、今度は逃げなかった。その際、手を繋いでいる依姫の左手に緊張のせいか恥ずかしかったからか、凄まじい握力で俺の右手を握る。永遠のお蔭でなんともないが永遠じゃなかったら俺の右手は今頃死んでいただろう。顔を真っ赤にしている巫女が頭を下げるが、ついでに巫女の胸か尻を触ったり撫でようとした、しかし依姫が繋いでいた手を離し、右手で俺の服の襟を掴み左手で背を抓る。痛くないが後が怖いのでそのまま神社の中に入るとしよう。色々真面目に考えて疲れた。

 

しかし、まだ考えはある。瀬戸内海にいる藤原純友の事だ。ちょうど俺と依姫は西の果ての日向国に向かう。ついでに伊予国に住む藤原純友に会う考えもある。はたてが言うに藤原純友は瀬戸内海にいる海賊を鎮圧しているが、鎮圧した海賊を率いて挙兵させ叛乱を企てているそうなので、西の藤原純友と東の平将門。大和朝廷を東西の挙兵で挟み撃ちにする考えも。ふむ、意外に色んな考えが出るな。歴史に残す大きな事件、全ての黒幕は俺が担うとしよう、俺は天皇が死のうが生きようがどっちでもいい、だが案がいくつか出て来て神仏習合も何とかなりそうな気がして来た。

まあいい、神社の中を歩きながら後ろに控えている依姫の腰に左手を回して抱き寄せ首筋に甘噛みをして、依姫は急で驚いて目を見開くが俺に身を任せて来る。甘噛みをやめると依姫の首筋に俺の歯形が付いているので、周りに依姫が俺の女だと自己主張が激しい。俺、独占欲はあんまりなかった筈なんだがな。まあ。依姫の処女は俺のだが。そのまま依姫に舌を出せと言い、戸惑いながらも依姫は舌を出す。はしたないからか恥ずかしがっているが俺は気にせず依姫の舌を口の中に入れて、依姫の舌を口に含み甘噛みしながら顔を近づけ口吸いをする。口吸いしながら依姫の舌を歯で甘噛みをしていたら、依姫は気持ち良かったのか腰の力が抜けて姿勢が崩れる。そして俺にもたれ掛って来たので危ないと思い依姫と触れ合ってた唇と甘噛みしていた依姫の舌を離す。依姫の息が荒い、脳のキャパシティが超えた様だ。息を荒げながら俺を見上げるが熱でもひいたのか顔が赤い、身体が疼いたのだろうか。

 

「が、がっつかないで下さい弘さん」

 

「いいではないか、夫婦なんだから。今なら二人きりだし久しぶりにいちゃつこう。これからハネムーンをしに行くんだからな」

 

俺の側頭部に面霊気。お面としてもう一人いるが、気にしないでいよう。

 

「所で話は変わるが。確か、ギリシャ神話のゼウスは実娘を、メソポタミア神話のエンキは実娘と孫娘に手を出してたよな」

 

「いちゃつくと言ったのに、何故他の大陸の神の名を出すんですか。うろ覚えですがそう、だった気がします。ま、まさか弘さん」

 

依姫。お前も知ってるだろ、大和でやった神議るの最中いたんだ、実体化していた神の中に東北の神である地祇の おしら が。懐かしい、おしらと言えば東北にある陸奥国と平将門がいる常陸国には昔、こんな話があった。ごく普通の農家に1人の娘がいたが、その娘は本当にただの人間で、神の末裔でもなんでも無かった。そして、ただの人間である農家の娘は、神でも妖怪でもなんでもないごく普通の飼い馬にその娘は嫁ぎ、馬と人間が夫婦になった話が。その後、農家の娘はおしらと呼ばれる神になった訳だが。依姫。世の中は、広いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー! 今日は天気がいいわね」

 

今は八ヶ岳の麓にいて体を伸ばして空を見る。雲一つなく太陽が燦々と輝いてるけど今日はよく寝た、鬼ころしのお酒も美味しくて酔いながら気持ちよく寝られたし。ヤマメも晴れやかな表情でよく寝られた様ね。諏訪国に来るまでは野宿、しかも固い地面や木にもたれ掛って寝ていたから久しぶりにお布団で寝て気持ち良かったわ。諏訪国ってお金は無いけど食料はあるいい国、藍が作った朝御飯も久しぶりにお腹一杯食べられて鬼女も悪路王達も満足してた。だけど藍の顔色が少し悪くあまり著しく無かった気がするけど。でも素晴らしい、生きて行く上では食べ物は必要不可欠だから。両手で自分の両頬を軽く数回叩いて気合を入れて隣にいるヤマメと、ヤマメが片手に持つ桶に入っているキスメに向かって彼に頼まれた仕事を始めましょう。猫のお燐はまたどこかに行ってしまった。今回は空を飛んでいたのである程度の方角は読めたのが幸いか、あの方角は西、間違いないわね。お燐は気紛れで飄々として、掴み所が無く困ったものよ。確か西は今、怨霊。死霊の七人ミサキがいたはずだから、七人ミサキの怨霊を支配下に置き、操って困らせなきゃいいけど。

 

「じゃあヤマメにキスメ。行きましょう」

 

「そうさね」

 

キスメも桶の中で片手を上げて返事をする。悪路王達は先に八ヶ岳に入っているから残りは私とヤマメとキスメだけ、固まらずに 散り散りになって八ヶ岳に住む妖怪を従わせにする事になった。八ヶ岳って大きいし広いし皆 集まって八ヶ岳に住む妖怪を従わせるのも面倒だからと、そう決め、森の奥に進んで木深く蓊鬱している薄暗い森を歩く。

草木や森、樹海が邪魔してか太陽の光が届いてなく、足元などがよく見えない程明るくない。そこでキスメの能力、鬼火を落とす能力を使い、辺りを灯してもらおうとキスメに頼んで私達の周りに鬼火を出してもらう。鬼火が出ると辺りが明るくなりこれで足元を気にせずに歩ける様になった。

桶に入っているキスメの頭を撫でながらお礼を言い、キスメの鬼火を灯しながら奥に進むと3尺足らずの小坊主が急に現れ、ヤマメとキスメとで近づき坊主を見下ろしているとその坊主は背が伸び始めて7,8尺から1丈の大男になる。私は大男になった小坊主を見上げて思い出すけどこれの名は確か、入道坊主。入道坊主が声をかけて来たけど、私達は死なず何も起こらない。死なない私達鬼を見て大男の入道坊主は狼狽えている。入道坊主の対処法は何だっけ。

ヤマメに聞くと、見ていたぞ、と言えば言いそうなのでそう言ってみたら消えた。入道坊主は消えたらどこから出たのか、煙が辺りにもくもくと出始めて前が見えない。誰か煙を焚いてるのかしら。煙が晴れて行くと一人の女性が地面に片膝付いて悔しそうにしている。彼女には獣耳と一本の巨大な尻尾がある、見た感じあれは狸の尻尾ね。どうやら入道坊主の正体は彼が欲しがってた神使の一匹の内の狸、化け狸、袋下げと言われる狸だった。

 

「いきなり神使の一匹ね、これは僥倖。ヤマメ。これって彼に喜んで貰えるわよね?」

 

「べた惚れだねぇパルスィ」

 

昨日の宴会で天魔に言われて、今日私は諏訪国の上空で朝日が出るのを待っていていた。理由は私が腰に差している三本の内の宝剣の一つ、顕明連を朝日に当てろとの事で。だから私は朝日が出るのを眠たさを押し殺していたけどやっとでたので顕明連を朝日に当てると三千世界が見え、そして悟った、自分の役割、天命を。そして、今までの出来事が全てではないけど殆どが偶然じゃ無い事も。天狗と河童が住んでる八ヶ岳に住む妖怪を私達、鬼女と悪路王達で知性が無く本能で生きるのは殺して、理性があるのは生かして置いている。あの人にそう言われたから私は従うけど、悪路王達はあの人に仕えてる訳じゃ無いから苛々してるけどね。悪路王達は萃香、勇儀、華扇に従ってるから。でも、生かした妖怪は屈従させてるから私達鬼の事を快く思わないでしょうけど、そうじゃなくても鬼って嫌われ者だし。

 

「くっ、馬鹿な! 即死させる事が出来ないとは鬼は面妖な妖術でも持っておるのか!? ぬかった。八ヶ岳に住む狸の長の儂が相手が鬼とは言え殺す事も、ましてや驚かす事も出来ずに敗れるとは・・・! だが、第二 第三の儂が必ずや」

 

雌の貒である狸の尻尾を生やしている女性が顔を俯かせながら片膝を地面に付いて言いながら握りこぶしをして悔しそうにしている、斬って殺す訳には行かない。彼に本能で動かず理性があって実力がある妖怪は生かし、諏訪の国に引き入れるように言われているから斬れない。それに、今の彼女が言った八ヶ岳に住む狸の長と、そう言った。これは好都合、そして彼女が八ヶ岳に住む狸の長なら八ヶ岳に住む妖怪の事を聞けると思って片膝付いてぶつぶつ言ってる彼女に近づいたら、目線を合わせる為に腰を屈めて声をかける。

 

「自分の世界に入ってる所悪いけど、この八ヶ岳に住む妖怪の事色々教えてくれない?」

 

彼女は私に声を掛けられて事に気付いて顔を上げる。彼女の頭には緑色の木の葉を乗せているけど狸らしさを出す為なのか。彼女の手を掴んで強引に立たせ、八ヶ岳に住む妖怪の事を聞いた。

八ヶ岳に住む妖怪は野守虫 笑般若 薬缶吊る 道塞ぎ、別名だと塗壁 付紐小僧 大蜘蛛 牛蒡種 芭蕉精 袋担ぎ、また名を隠し神 熊が妖怪化した鬼熊 雨女 赤子、

後は山彦に2姉妹の覚。最後に手長足長。手長足長は妖怪じゃなくてただの巨人で夫婦、その名の通り手長は手が長く、足長は足が長い巨人。二人には子供がいるらしいわね、ろくろ首、またの名を飛頭蛮の子供が。彼が言うに本当はこの妖怪たちを私達鬼に従わせるのではなく、彼の娘である 蓬莱山 諏訪子 に従わせる為に動いている。諏訪子は仮にも皇女なのに諏訪子だけに従う駒がいないからだ。

彼が八ヶ岳の妖怪を従わせなかったのは例えば、そうね。 『うわん』、『ひょうすべ』 、『輪入道』、他にもいるけど相対したら即死させられる妖怪がいるかもしれないから迂闊に手を出せなかったらしい、実際私は八ヶ岳にいて正体は狸だったけど目の前にいる入道坊主だって声を掛けられたら即死させられる妖怪だからね。だけど彼の妹のお蔭でその心配はなくなったけど、彼にはやる事が沢山あるそうなので、私達鬼がやってる訳。その私達鬼も今は死ねないけど。

 

「うえー 八ヶ岳の住む妖怪の一部がそれだけいるなんて、しかも一部よ一部? これじゃあ、さっさと終わらせる事も出来ないじゃない!」

 

「わ、私に当たるのはやめておくれよパルスィ」

 

「この程度で驚かれては困るのう。この辺りは諏訪国側の八ヶ岳じゃが。反対側、甲斐国側の方にある八ヶ岳にはマヨヒガがあり、猫又や化け猫などが住んでおる猫の里もあるのじゃぞ」

 

隣にいるヤマメの両肩に両手を置いて揺さぶると、ヤマメは酔った様に気持ち悪そうな顔をしたので揺さぶるのはやめて謝罪。ヤマメの片手、桶の中にいるキスメもヤマメを揺らした振動で目を回している。

八ヶ岳は諏訪国と甲斐国の境目にある。私達が今いるのは諏訪国側の八ヶ岳で、反対側にある甲斐国には猫の里があるなんて。ついでに聞いたら狸である彼女は佐渡に住む狸の長だったけどもっと狸を支配しようと佐渡から船を使って越後に渡って、狸を牛耳り、今度は越後の南にある諏訪国に住む狸を支配しに来たそうだ、要は本朝に住む狸の長になる為に越後より南の諏訪国、そのまた南の遠江国の狸を従えたら後は本朝の北東にある陸奥国まで行って、最後は陸奥国の北にある北州、蝦夷ヶ千島にいる渡党。アイヌの所にまで行く気だったらしい。

アイヌってあそこに住む神、じゃなくてカムイ、または神威は口喧しく煩いと有名なのに度胸あるわ、中々の野心家ね。

大和朝廷に従ってないのは本朝の東に住む平将門と興世王、蝦夷の軍事指導者 大墓公阿弖利爲 長いから阿弖流爲と呼ぶ。と、もう一人の指導者 盤具公母礼 そしてその北、北海道、北方領土に住むアイヌとカムイ。後は琉球神話の神と琉球國、琉球王国くらいかな。狸が言うには本朝の南西、西は駄目なんだって、芝右衛門狸と太三郎狸がいるから東と北しかなかったそうよ。人型になっている狸は私がいる別の方向を向いてかんらかんら。さっきまで悔しがってたのに演技と思う程の心移り。それと目が悪いのかしら、顔を向けている方、そっちに私達いないのに。

 

「で、話を聞くに。この後は儂の様に八ヶ岳に住む妖怪を力づくで従わせるのじゃろう?」

 

「人聞きが悪いわね。無理矢理従わせる気は無い、けど従わないなら諏訪国から出て行ってもらうけどね」

 

「話してる所悪いけど邪魔するわよー!」

 

周りにある草木や大樹が突風に揺れる音を鳴らしながら、空から翼を羽搏かせて姫海棠が錐揉みしながら地面に下りて来たけど、服のあちこちに木の葉や木の枝が絡まってるから相当急いでいたのね。天狗は空を飛べるから八ヶ岳を登る苦労は無い、私も神通力で空を飛べるけど。この八ヶ岳って高すぎなのよね、駿河国にある富士山より高いんだもの。だからこそ天狗は八ヶ岳に住んでるんでしょう、出来るだけ外敵が来ない様にね。だけど姫海棠の言葉を聞いて私は有無を言わさず強襲され、精神的衝撃を受けそのまま打ちひしがれ、近くにある大樹にもたれ掛る。

 

「速報よ速報! なんと、あの男の妻の一人が妊娠しているそうよ。それで先日に続いてまた今日も宴会を、どうしたのパルスィ」

 

「ちょっと、ゴメン。待って。暫く私、立ち直れない」

 

そう言えば、今でも富士山には天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命と富士山の女神である木花咲耶姫は今でも富士山にいると彼に聞いた。昔、第7代孝霊天皇の時代に木花咲耶姫は良人である天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命と夫婦喧嘩。それで富士山は噴火して、それから何度も富士山は噴火している。それに困った第11代垂仁天皇はこれを憂い噴火の原因である神を鎮め奉る為に浅間神社を富士山の麓に建て、姫神の協力の元の水徳で噴火は鎮火。天邇岐志と木花咲耶姫。噴火に関係なかった岩長姫と浅間大神、計4人を敬慕の念に信仰して噴火が収まった。天邇岐志と木花咲耶姫は反省したけど巻き添えにされた岩長姫と浅間大神はいい迷惑よね。

 

 

 

風になびく 富士の煙の 空にきえて 行方も知らぬ 我が思ひかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本には三種の神器と呼ばれる物が3つ存在する。一つ 八尺瓊勾玉 一つ 八咫鏡 この二つは天岩戸の時に出る物だが、最後の天叢雲剣、草薙剣 これは須佐之男が八岐大蛇を斬り刻んだ時に八岐大蛇の尾から出てきた剣だ。

しかしこの中の一つ、神器の事件。天智天皇、その時代に盗難事件の話がある。

神社の庭が広いので竹2本以上を地面深くに突き刺し、竹の上辺に縄が括ってあり、それぞれ並んだ2本以上の並んだ竹には縄が高やかな所で縛られ、横に吊るされている。平行に土に突き刺さっている竹に繋がっている横に吊るされた縄に洗濯物を被せる様に置いて干す為だ。竹で出来た物干し竿を使い藍は洗濯物を干し始め、その光景を視界に入れながら永琳は目の前に立っているが 射命丸 文 と 犬走 椛 二人に永琳はある頼み事をしている。永琳は姫海棠 はたて に一つ報告を受けた。諏訪国にある守屋山に物部守屋がいるとの事、物部守屋の性別は女だ。大和で起きた宗教戦争から命からがら逃げて来たそうで。物部の生き残りは、もう一人いた様だ。

 

「分かりました、その沙門を探せばいいんですね」

 

「ええ。椛に文、悪いけどお願いね」

 

「お任せ下さい! もう私達は弘天さんと永琳さんの神使ですからねー」

 

射命丸 文 はどこで習ったのか軍人の様にビシッ!と敬礼して、犬走 椛は永琳を見ながら頷き、二人は話が終わったら空を飛んで椛の能力を使いながら新羅から来た僧、沙門を探しに行く。

永琳は諏訪国に戻る前に天照に一つ頼まれ事をされたのはいいが、どうも三種の神器の一つである天叢雲剣。草薙剣盗難事件が起きた様だ。盗んだ犯人は沙門だそうで、その沙門は天叢雲剣を持って本国である新羅に逃げようと出港するかもしれないとの事。そこで新羅に逃げられる前に、諏訪国と盟友である天狗の力を借りたいと天照は永琳に頼み。文と椛が永琳に捜索を頼まれた訳だ。三種の神器の一つである天叢雲剣と言えば、現人神である天皇の持つ武力の象徴だ。それを盗まれると言う事は天皇、ひいては朝廷に武力が無くなる事を示す、盗まれた挙句逃げられたらこんなの醜態もいい所だ。盗まれてる時点で現人神である天皇や、大和朝廷の面子を潰されていると言うのに。

普段は動かない天照も子孫の為に今回は動き、八咫烏を使って沙門を捜索中。永琳と諏訪子に神奈子の三人は諏訪国に戻って来た。

役目を終えた永琳は疲れを癒すために永琳、諏訪子に神奈子と一緒に神社の縁側並んで座り、それぞれには湯呑に入った熱い緑茶と煎餅を持って食べながら洗濯物を干そうとしている藍を見る。あまり働くなと永琳は昔に言われていたとはいえ、念の為に今回は動いておいたのはいいが。余計な事をしてしまったかと溜息を出してしまって藍に気付かれこちらを向く。藍は感情が薄いので表情からは感情が読み取りにくいが、藍の瞳から憂懼の気持ちが窺える。

 

「永琳様、お疲れの様子ですが肩でもお揉みしましょうか」

 

「気にしなくていいのよ藍。貴方は働き過ぎなんだから、寧ろもう少し私を頼ってもいいと思うのだけど」

 

藍は首を横に数回振りながら断り洗濯物を干す為に桶に入った洗濯物を取り出す。藍の隣にいるてゐは背が低いので手が縄に届かない。だからてゐは桶に入っている洗濯物を広げてから藍に渡す役目だ。そんな藍を見て永琳は苦笑。諏訪子と神奈子は湯呑に入った緑茶を飲んで煎餅をバリボリ音を鳴らして食べているが、藍は働きすぎている、諏訪国の相談役もしていれば元々、神社の 掃除 洗濯 料理 などは永琳がしていた。

しかし藍が弘天に拾われ、永琳に命を助けてもらってから藍は弘天と永琳に仕える事になり、神社の巫女になった。料理については藍の担当はお昼だけでそれ以外の朝と夜は永琳が料理担当だが。永琳がいない時などは三食とも藍が作る事になる。

料理を作られるのは今の所、永琳に藍にレティくらいしかいない。永琳はともかくレティに関しては冷たい料理しか出ないので夏以外では食べられた物ではない。今は春とは言え、まだ風も冷たく肌寒い。皆、藍を手伝おうとしても藍はそれを拒否。藍は弘天と永琳、二人を支える事、それを生き甲斐としている。だから藍を手伝いたくても皆は手伝えない。手伝うと言う事は藍の生き甲斐を奪う事になるのだから。永琳は神社の縁側に座りながら藍に淹れてもらった湯呑の中から湯気が立っている熱い緑茶を口に含み、喉を鳴らしながら永琳は大和の出来事を想起。

 

 

 

弘天と依姫が昼になったので大和から日向国に向かった後、永琳は豊姫に頼んで諏訪国に戻る前に弘天が言った病を流行らす一計、まだ物足りない、生温いと考えた永琳は駄目押し、念の為にもう一手打っておくべきだと思案。ヤマメに頼んで西の人間に病を流行らす事にした訳だが、もう少し何か欲しいと永琳は思考を重ねて思いついた。諏訪国だけではなく他の国もだが食料に困った生活をしているのは鮮少。

何故なら稲田の女神である奇稲田姫や神大市比売の息子、穀霊神の大歳神もいれば食物を司る神、御食津神達である 豊受比売 宇迦之御魂 若宇迦売 そして大宜都比売 保食神 この大宜都比売は本来、須佐之男に殺されている神だが殺されていない、生きている。そして月読に殺された保食神は一度死んだ、しかし神産巣日神に命じられ遣わされた 枳佐加比売命に蛤貝比売、そして物部氏の祖神、饒速日命がかつて天照大神が持っていた十種神宝によって蘇生している。火之迦具土と天稚彦もだ。

十種神宝は饒速日命が天照大神から授かった物だが今は持って無い、饒速日命は神裔にソレを授けた。その神裔は物部氏、その生き残りの現人神が持っている。この御食津神だけではないが神を使って西の民を食糧不足に陥らせ、朝廷に対し民に蜂起を起こさせようと考えた永琳は二姉妹で秋の神、その妹である穣子を呼び出す事にして動く。

 

「穣子。確か貴方、豊穣の神だったわよね」

 

私は朝 目覚めて春の女神である佐保姫といつもの様に口喧嘩をしていた、だけど口喧嘩をしている最中に知恵の神である八意永琳が割り込み、佐保姫に今は口喧嘩を押さえて私を貸してくれないかと言い佐保姫はそれに承諾。私は八意永琳に大事な話があると言われ神社から外に出て私は太陽を眺めながら立っている。もう昼のようだ。近くにいる八意永琳も太陽を眺めているが一体何を考えてるのか全く読めない。この女、あいつの前だと人間の様に表情、感情豊かだがあいつがいなくなるとまるで別人。隣にいる八意永琳は太陽を眺めながらとんでもない事を言い出す。

 

「西に住む人間の、今年の作物を不作にしなさい」

 

開いた口が塞がらなかった。私は確かに秋の神で豊穣の神、だから人間の秋の作物を豊穣にさせたり不作にする事は出来る。例えば稲、今の時期。人間は稲の田植えをしている時期だ。そして秋の季節に稲刈りをする。しかしそれをすると言う事は人間が食べ物に困ると言う事。いくら八意永琳に言われても本来なら頷く事は出来ない、私は人間の敵じゃないんだから。けど、私はあいつと八意永琳には逆らえない。かつて大和が諏訪国を支配しようと使者である八坂 神奈子を送った、が、あいつと八意永琳は一瀉千里に動き大和から諏訪国に使者を送って一日も経たずにどうやってかは知らないが、大和に来て三貴神、大和を乗っ取った。いや、乗っ取らせる為に三貴神は動いたともいえる。乗っ取る時に神々がその場にいた。私の姉、そして私もその場にいたんだ。私は大和が諏訪国に乗っ取られてる事を知っている内の1人で天岩戸の関係者でもある、私の姉もその1人。だからこそ逆らえない、あいつと八意永琳には。私、そして私の姉も西の神だから。しかも太陽神はあいつに御頸珠、御倉棚神を渡した。それが一体何を意味するか私や他の神も知らない訳が無いし、八意永琳も意味を分かっているのは間違いない、受け取った本人は気付いて無かったけど。

 

「な、何言ってるのよ! そんな事したらどうなるか知恵の神であるあんたじゃなくても」

 

「悪いけど、拒否権は無いの。何も考えず言われた通りに動いてくれたら私は貴方に何もしない」

 

八意永琳は右腕を弓の弦に入れて右肩に弓を乗せ、その弓の藤頭の部分にハンカチが巻いてあって、そのハンカチを八意永琳は左手で触りながら話す。

私は神だけど戦いは得意ではない。私では八意永琳には敵わないし、抵抗しても無駄だろう。この女、私じゃなく須佐之男の妻である奇稲田姫、神大市比売とその息子 大歳神、そして娘の倉稲魂。天照の世話役である御食津神の1人、豊受比売にまで言うそうだ。徹底している、一体何を考えているのだろうか。人間の作物を不作にすると言う事は西の人間が餓死する恐れがある、人間が減ると私と姉が困る。が、それは昨日までの話。はっきり言って私達にもう人間は必要じゃない。永遠に、独立した個体的存在になるからだ。

あいつと八意永琳が人間にとっていい神。とんでもない、考える事がぶっ飛びすぎ。たまに二人の事頭がおかしいと、まともじゃないと思う時がある。今回だってそうだ、八意永琳はあいつの言う事しか聞かないしあいつの為だけにしか動かないし考えない。あいつが人間を皆殺しにしろと言ったら間違いなくそうするだろう。だからこんな事を言うのは今回もあいつが関わっている筈。仁心や仁恕などの感情は持ち合わせていないのだろうか、頭がいかれてる意味では、本当に、似た者夫婦。そんなんだからあんた達二人は、

 

「この、邪神夫婦」

 

従う余地しかないと、そう理解した私は背を向け、憎々しげに捨て台詞を吐いて早歩きで神社に戻る。その時、風が勢いよく吹き、風に乗ってか知恵の神が嬉しそうに言う声が聞こえた気がした。罵倒されたのに嬉しそうに言うとは思わなかったわ。

 

「私にとってその言葉、最高の賛辞よ」

 

その後、大和にいた八意永琳は諏訪子と神奈子を連れて諏訪国に戻る為に豊姫の元へ向かった。

 

 

 

縁側に座っていた永琳は大和の出来事を思い出し物思いにふけっていたが、藍が手に持っていた洗濯物を右手で掴んでいたが地面に落としてしまう所が視界に入り意識を戻す。徒然は駄目ねと永琳は藍を見る。藍がてゐに渡された洗濯物を地面に落としてしまったせいで、藍の隣にいるてゐが地面に落ちた洗濯物を拾い桶に入れながら、何やってんのさ。と藍に苦言を呈し、藍はてゐにすまんと謝罪しながらもう一度洗濯しなおさなくては溜息を出した藍は、落とした洗濯物が最後だったので、もう桶には洗濯物が入って無いから汚れた最後の洗濯物を桶に入れ、後で洗おうと思った藍は一先ず干している洗濯物のしわを両手を使いながら伸ばし始める。てゐが落とした洗濯物を洗濯しに行こうとしたが藍は自分でやると引き留めたので、てゐは返事をしながら頷いて、縁側に座っている三人の元に行き、煎餅を貰ってお礼を言いながら齧り、藍の元へと戻る。てゐはもう一枚煎餅を藍に渡す為に貰っていて藍の隣に来たてゐは、煎餅を藍に差し出そうとするが藍の様子を見てやめた。今の光景、洗濯物を藍が落とす所を視界にいれていた永琳は珍しいわねと思う、体調でも悪いのかと思い聞こうとしたが、藍の事だから何かあったとしても言う訳が無いと思い言うのはやめ、前から気になっていた事が確信に変わったので聞く。

 

「藍、貴方。身籠もってるわね」

 

「何だ、おめでたか。弘天の子を孕んだのか。おめでとう、藍」

 

てゐは永琳の言葉を聞くと体をびくりと震えるが、これでは藍がどれだけ隠しても永琳で無かろうと手に取る様に分かる。神奈子は素直に祝福したがそれを聞いた諏訪子は口に含んでいた緑茶を吹き出して吹き出した緑茶で虹が見えた。諏訪子は咳き込むが、永琳と神奈子の間に座る諏訪子は、諏訪子の両脇に座る永琳と神奈子に背中を撫でると、諏訪子は二人にお礼を言いながら永琳から差し出されたハンカチで口元を拭く。永琳は冬の季節から藍を見てずっと疑問に思っていた。昔と今では何かが決定的に違うと、そう感じたからだ。例えば歩き方がおかしい様な気がすると前に思った、そして会った当時藍は少女で子供だったのに今では体型も大人の女性に成長し、出る所は出て、色気を放つ。そんないい女になっている。しかもその色気が人妻が放つ様な、そんな色気。永琳は藍に遠まわしで聞かず直球で聞こうと思い孕んでいるか問うた。遠まわしに聞いても藍が分かるかどうか微妙だったから、だから直球で聞く、藍が孕んでいるかどうか聞かれたら、洗濯物を干す為に神社の庭にいた藍の動きが止まった。藍は縁側に座っている永琳に背を向けていて永琳は藍が今どんな顔をしているか分からない。藍はいつもより小さな声で永琳に問う。

 

「てゐに、聞いたのですか」

 

「いいえ聞いてない。強いて言うなら実体験をして、藍を見た勘よ」

 

藍は、一緒に洗濯物を干していた隣にいるてゐを睨むが、てゐは い、言ってない言ってないと両手の掌を藍に向けながら首と連動する様に振るので、違うのかと藍はてゐを睨むにはやめる。永琳はもう生娘でも、おぼこでもない。今でも股が痛く、縁側に座っているのも正直辛い。痛いなら寝ころんだ方がまだ痛みがましになるのだが、しかし永琳はその痛みが嬉しいから今でも股の痛みを感じる為に縁側で座っている。数億年かけてやっと抱かれたから。そして永琳は抱かれてやっと理解する、冬の季節に藍は抱き枕として弘天の部屋に呼ばれていた。その数日後、藍の歩き方が少しおかしいと感じた、何故歩き方がおかしかったのか。自分が一番目じゃなくて非常に腹立たしいが先に藍だった様だ。とは言え、永琳は抱かれる以外の事、口吸いや手淫、口淫などは弘天と昔から普通にしていたのでイーブンと言え、無いか。藍は、申し訳ありません。小声で永琳と神奈子に謝罪、永琳と神奈子はなぜ謝罪したのか一瞬理解できなかったが理解したら永琳は右手でおでこを押さえ、神奈子は右目を瞑りながら気にする必要が無いだろうと言いながら2人は呆れた。諏訪子は話について行けてなく、藍に淹れてもらった傍にある急須を掴み、急須を傾けて湯呑に緑茶を入れる。少し温くなった緑茶を飲みつつ音を豪快に出しながら煎餅を食べ、呑み込む。

 

「嬉しいけどさ、信じ難いよ、私に腹違いの弟か妹が生まれるかもしれないなんて。父さん手を出し過ぎ」

 

「いや、一国の王なのにむしろ今まで手を出さなさ過ぎだ。大和の皇帝である天皇などは、女を囲いまくっている。良かったじゃない、これで末っ子じゃ無くなる。しかもお姉さんぶれる」

 

「お姉さんぶるかはともかく、まあ嬉しいけどさ。でも意外だね、神奈子は女を囲う事には寛容なんだ」

 

「大和でもそうだったし王とは、子を残すのも仕事だ。その辺り、私の様な考えが一般的だと思うが」

 

諏訪子と神奈子はあまり深く考えず話しているが実際はとんでもない話になる。帝国である諏訪国の皇帝、また女皇は弘天と諏訪子しかいなかった。弘天はともかく諏訪子は弘天と永琳の信仰が混ざって生まれた、そしてその信仰は諏訪国の民によって齎されたのが諏訪子。だからこそ諏訪国の王女足りえた。そこにもう一人追加される、諏訪子と言う女王ともう一人女王が増えるか、もしくは大祝の者が産まれるかもしれないのだ。国の、諏訪国の大騒動な話だ。永琳は一番聞きたい事があるので未だに背を向けている藍を問い詰める。

 

「そんな事気にしなくてもいいの。でもね、これは聞きたいわ、藍。抱かれて孕んだのか抱かれないで孕んだのか。どっちなの」

 

「あ、の。その。抱かれ、ました」

 

「じゃあ出された回数もついでに教えなさい」

 

「う。えっと、滾られていたご様子で、私も無我夢中だったのでよく覚えていませんが、中で子胤、性を放たれたのは。片手の指だけでは足り無い事は明瞭です」

 

藍は永琳にも仕えているので嘘は言えずただ正直に言うしかない。背を向けていた藍は無表情で片手を見ながら答えるが、普段なら淡々と答えているのに今回はちぐはぐで拘泥で切々な言い方だ。その時、藍の隣にいたてゐは、両目を閉じている藍の両頬が思わず頬に紅を差している様に見えたが、藍はその時の事を思い出して珍しく照れてるのかもしれない。女として自覚が出て来たのだろうか、なら荒療治だったとは言え、やっと藍は女としての人生を歩み始めた事になる。表には出さないがてゐが腹の中では暫くからかうネタが出来たとにやけている。藍が正直に答えてくれたので、永琳は笑顔の表情を顔に張り付けたまま頬を引き攣らせているが何も言わなくなった。しかし、藍は神奈子に祝福され、永琳に気にしなくてもいいと言われて心が安らいだ。孕んだのは藍が初めて、だから地上に残った時の順番だが、1番目と2番目に妻になった二人を差し置いて3番目の自分が最初に孕むのは罪悪感しかなかった。2番目に妻になった神奈子はおめでとう そう言ってさっき祝福したが、神奈子については今までが今までで正直あまり懸念は無かった。が、1番目の妻になった永琳はそう言ってくれるか不安でしかなく、主に貰った子種、それが形になった子供をおろす事も出来なかったからので藍はほっとする。おろせなんて誰も言わない事は藍も分かっているが主の子供を孕んでしまい藍は憂虞の感情しかなかったのだ。だが、どこか心の片隅に喜悦の気持ちがある事は否めない。藍は感情は薄く分かりにくいが、分かりにくく感情が薄いだけでちゃんと感情はあるから。永琳は自分のお腹を撫でながら、少し気が早いかしら そう思いつつ藍に子供の名を決めているのか聞く事に。

 

「それで、子供の名を決めているの?」

 

「はい。名はもう決めています」

 

藍は永琳と会話しながら右手で少し膨らんで来たお腹を撫でていたが、子供の名を永琳に言おうと藍の背にある神社の縁側に座っている永琳に振り返る。今まで藍は感情が薄く、笑った事が無い。お揚げをあげた時、8本ある狐の尻尾の振り具合のお蔭で喜んでいると分かるが、表情は無表情で変わらないしそれ以外では滅多に感情を表に出さない女だ。藍の主である弘天や永琳でさえ笑った所を見た事が無い。だが、この時 永琳は。藍が振り返った時に一瞬とはいえ藍が表情を崩した所を見た、気がする。

 

「真名は願掛けの為に言えませんが、名は童子丸にしようかと」

 

藍が言うに、子供の真名は稲に関わる語彙だそうだが永琳は深く聞かずただ、そう。と 温くなった渋茶を飲んで一息つく。おかしな話だ、藍は元妖怪とは言え今は神なのに願掛けをするのだから。産まれてくる子は間違いなく現人神になるだろう。辺り一面に霧が立ち込めて来たが、萃香が話を終えたタイミングを見計らい出て来た様だ。永琳はこの立ちこむ霧を見て萃香も藍が孕んでいたことを知っていたのだろうと考える、タイミングが良すぎるし。永琳は煎餅を口の中に入れて歯で砕き、口の中で咀嚼音を響かせながら呑み込む。萃香は霧のままだが欣喜雀躍、喜びの声で藍を祝福し始め、喜んでいるのは子供が出来たからでもあるが、しかしもう一つ理由がある。鬼女や悪路王達が加わったのであの萃香が危惧しているのだ。

 

「おめでとう藍! いやー 目出度いよ、早速 諏訪国の民に知らせて来るね!!」

 

辺り一面に霧が立ち込めていたが、萃香がそう言うと霧が薄くなっていき最後には霧が視界に映らなくなった。藍が止めようとしたが時既に遅し、今頃霧になったままで民に言いふらしている最中だろう。めでたい事ではあるし萃香もめでたいと思っているが萃香にはもう一つ本音がある。それは宴会を開いて鬼ころしを鱈腹飲む事だ。先日宴会をしたばかりなのに次の日にまた宴会を始めようと動いている。鬼ころしは有限で弘天か永琳が作らなければ鬼ころしは無い。無限に鬼ころしがある訳では無いので、飲み過ぎたら鬼ころしを作っている永琳に注意されるが、宴会なら鬼ころしをどれだけ飲もうと問題は無いから注意されることも無い。萃香から藍が妊娠したと聞いた鴉天狗の一人、弘天の神使の一人になった姫海棠はたてが、これは天狗と八ヶ岳に行っている鬼の皆に知らせなくてはと考え空を飛んで八ヶ岳に向かった。永琳が空になった湯呑を右手で持ったまま太ももに置き、藍を見て微笑む。

 

「あの人の妻の誰が最初に孕もうと、あの人の妻が妊娠するのは諏訪国にとって朗報でしかない。今日くらいは私達に宴会の準備をさせなさい。もう1人の体じゃないんだから」

 

「そうだよ藍。藍も私の母さんの一人なんだから。ほら、神社に入ってゆっくりしなよ」

 

「藍。洗濯物は私に任せなさい。こんな時くらい休めばいい」

 

「そうそう。私達に任せておけばいいんだよ」

 

ちゃんとお腹の子の事を考えてあげてねと永琳は立ち上がり宴会の準備をする為に動き出す。宴会のついでにヤマメには例の件を頼める、諏訪子は藍の右手を掴んで仕事をさせない様に見張る為、急がずゆっくり歩いて神社に連れ込み、神奈子は藍が途中までしていた洗濯物をしようと替わり、桶に入っている洗濯物がさっき藍が落として汚れていたのでもう一度洗濯する為にてゐと共に井戸まで向かった。この時藍は諏訪子に引っ張られながら神社に連れ込まれる時、分かりづらいが、確かに笑っていた。永琳は皆を呼び出す為に紫にお願いしようと神社玄関の前に立ち、右手で指を鳴らす、すると隣にはスキマが開いて中から紫と白蓮が出てくるが、どうやら二人で遊んでいた様だ。スキマの中から紫は大きな傘を持っていて、それに見覚えがあった永琳は懐かしそうに傘を見て懐旧に浸る。この傘は確か雨が降っていた大和で弘天が女将に貰い、永琳とてゐとで傘の中に入って諏訪国に戻った時の傘だ。

 

「あら紫 その傘、あの人に貰ったの?」

 

「うん。私の名、紫と同じ色だから。お父さんに貰っちゃった」

 

紫は傘の手元を両手で持ちながら、右手を使いくるくる 傘を回転させて笑顔で答える。永琳は神社の玄関にいた紫に話しかけるが、紫が持っていたのが茄子色の傘でかつて弘天が大和で拾って来た傘だ。はっきり言ってその傘は紫色でただ大きいだけの傘。人によっては不気味に見えるし、お洒落でもなければ可愛さなんて微塵もない。しかし紫は気に入ったようだ。自分と同じ名の色をした傘で、妖怪である紫には不気味な傘が合うかなと考えたのかもしれない。永琳は紫を呼び出した用件を言って皆を呼ぶように頼むと紫は、任せてお母さん とスキマに入って皆に伝えに行った。紫はスキマに入って行ったので残った白蓮はきょろきょろしていて落ち着きが無い。そこで永琳に聞いた方が早いと思ったのか白蓮はトコトコ歩き、永琳の独特な服装である赤と青色のスカートを右手で握り締める。

 

「比売神様ー 氏神様はどこー」

 

「あの人は、当分帰らないのよ。ごめんね、白蓮」

 

永琳は腰を屈め白蓮と目線を合わせながら答えるが。右手で白蓮を撫でながら微笑むが傍から見たらまるで親子、下手をすれば姉妹に見える。

 

「氏神様いないの? 私 寂しい」

 

「私も寂しいわ白蓮。そうだ。寂しい者同士今日は宴会が終わったら一緒に寝ましょうか」

 

「やった。その時はご本読んでー あ、それとね私に妹が出来たの!」

 

「あら。それはおめでたいわね。今日宴会をするから藍と聖、2人一緒にお祝い宴会をしなきゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             気霽れて風は新柳の髪を梳り

 

 

 

ここは、どこだ。ああ。ここは富士山か、久しく見る。私の生前に著した富士山記が頭に浮かぶ。なぜ私が山頂にいるか分からんが、一度死んだ私がこうして富士山の山頂から本朝をお目にかかる事が出来るとは。気紛れらしいがあの仙狸には感謝せねばならん。生き返るきっかけを与えてくれたのだから。蘇生させたのは仙狸じゃなく鬼だったが。しかし、世の中何が起こるか分からぬ。山頂にいる故、風が強く、着ている服も靡くがいい景色だ、一度死んだせいか山頂でも呼吸が苦しくない。いや、呼吸など死んだ時からもうしていないか。富士山、霊山を御神体にしているのは浅間大神様、そして木花咲耶姫様に岩長姫様だったかな。次に行くのは、そうだな。富士山の山頂から見えているあの山、富士山と対をなす山、八ヶ岳を著して富士山記ならぬ八ヶ岳記を著してみようか。勿論顔は隠すが山城国に戻り、大和にある平城京。その南面の正門、朱雀門にいる鬼、天邪鬼を見るため久方ぶりに会いに行くのもいい。また双六で負かしてやるのも一興。しかし、折角富士山の山頂にいるのだから浅間大神様に会いに行こう。

 

 

                                      

         三千世界は眼の前に盡きぬ 十二因縁は心の裏に空し




サブタイトルが『徳』の34話で藍が抱き枕として弘天の部屋に行く話、ついでに言うならその話で四霊の 麒麟・霊亀・応龍・鳳凰 後は四神の青竜、朱雀、白虎、玄武を出した回です。まあ。抱き枕の話、あれは既成事実を作らせる前準備の為に必要で書きました。その話でやったのかは言わないけど。だからまぐわった話は書いておりません。え、まぐわう話を書けと仰いますか。こやつめ、ハハハ。本当は別に濡れ事を書いてもいいんですけどね。どうでもいいかもしれませんが弘天と永琳はまぐわって無いと今まで書いてきましたがまぐわい以外は書いてないだけで普通に犯ってます。永琳にフェラとかパイズリとか素股とか、勿論合意の上ですけど。だとするとどの話から二人は犯ってたんでしょうね。まさかその話も書けとか言わないですよね。しかし、今回書いた話はあれですね。昔の農家などは収入、または食べ物が少ないと子供を売るなんて歴史的に見てよくある話です。卑弥呼の時代はともかくとして昔の女性は立場も弱かったので親と性欲とお金の被害者とも言えるかもしれんね。人攫いや家に押し入られて金品を盗まれる話も歴史的に見てよくある話ですし。

藍は伝説上の狐の名前と言われている葛の葉の話を藍に混ぜているのでこうなったんだ、だから、藍も最初の内から必要だった。紫と幽香も今回の話とは別に必要だった、が。紫と幽香の話を書くべきかどうか、そこが問題だ。童子丸・・・一体何 安倍晴明 なんだ・・・。有名ですが長野県には安倍晴明の墓と言われる物があります、晴明には晴明神社もあり、長野県には小野神社もありますし。歴史的に見て人間だった者が死後、人神として扱われるのはよくあります、例えばこの作品で出た小野篁や平将門とか有名な祟り神の菅原道真とか。

それと。鹿御前が持っていた顕明連は朝日に当てると三千世界が見え、それを見た鈴鹿御前は天命を悟り若くして亡くなる話がありますので今回パルスィは天命、寿命の事では無い事を悟ってもらいました。今までの出来事って全部じゃないけど偶然j しつこいけど『稲に関わる語彙』を絶対検索してはいけません。誰の事か分かるから検索しちゃいけないんだ、絶対だかんな! 検索してしまい誰か分かり楽しみが減って後悔してからじゃ既に遅いんですよ!! まあエタルけど。

今回のパルスィの地の文で出した妖怪一覧の殆どは諏訪国(長野県)の妖怪でして、入道坊主なども長野県の妖怪で、長野県では入道はタヌキやムジナが正体と言われているそうですのでこうなりました。山彦も長野県の妖怪だそうですのでこうなりましたし、雷獣を出したのも雷獣が長野県の妖怪だと言われていたからです。後、足長手長は中国では妖怪で手長足長は九州では妖怪だそうですが他ではただの仙人とか巨人と言われているそうです、ここの手長足長が妖怪かどうかは悩んでいますので妖怪かどうかは書いていません。しかも諏訪大明神の家来で仕えているとの話があるんですが、ここでの諏訪大明神は弘天になっていますので手長足長を出しました。それと手長足長は手が長く足が長くこの二人が夫婦だと言われている、ならその子共は首が長くできる事にしようと考えここでの子供はろくろ首になってます。覚に関しては長野県の妖怪ではありません、長野県の隣にある岐阜県の妖怪なんですが、ここでは東方の設定の一つにある妖怪の山に覚もかつては住んでいたと言う設定を使っているのでこんな感じに。マヨヒガ、または猫の里も以下同文です。朱雀門についてですが長谷雄草紙と言うのがあり、羅生門の鬼と似た話で朱雀門に鬼が住んでいる話があります。そこで双六勝負があるのでそれを使いました。本当は子鬼などの天邪鬼ではなく鬼が出てくる話なんですが天邪鬼も鬼の一種なので使う事に。覚に山彦に天邪鬼に猫の里に住む猫に狸にろくろ首、または飛頭蛮・・・一体、何者なんだ・・・・ 長野県、ひいては八ヶ岳の妖怪をやっと出せました、特に覚。この覚の能力が特に欲しかった。今まで八ヶ岳などの妖怪に手を出せなかったのは入道坊主などがいるせいでした。何せ、入道坊主から声を掛けられたら死んでしまいますし。だからこそ神を永遠にする為と、入道坊主の様な妖怪を相手にするには輝夜がどうしても必要でした。他にも『うわん』とか『輪入道』とか『ひょうすべ』とか そりゃあ弘天だけじゃなくて、いくら鬼でも永遠にしなきゃ死にますからね。だいぶ出しましたが旧作はともかくとして一番最後に出てくる東方キャラは一体誰になるのでしょうね。

物部守屋についてですが。長野県にあり、八ヶ岳の近くにある守屋山には守屋神社があります。で、物部守屋が蘇我氏との神仏戦争に敗れ守屋山まで落ち延びて、守屋山に祭られたそうですのでこうなりました。関係ないんですが地方によって天邪鬼は山彦と同一視されてるそうですね。後 保食神と火之迦具土と天稚彦。3人の神が生き返っていると地の文で書きましたがこれは大国主の再生神話を使っていて、稚日女尊や猿田彦も本来は死んでいますが二人の話で死んだのはオリキャラなのでここでは生きています。


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布都姫

真夜中、白龍の背に乗りながら月を背に置き、ブロッケン山の上空で魔女たちを観察。見た感じそれぞれ好きに飲み食いをして騒いでいる、まるでお祭りの様。饗宴に勤しんでいて楽しそうね。山の中にいるから月があるとは言え薄暗い、でも魔女たちは火を焚いているんだけど。

何て言うんだっけ、えっと。キャンプファイアー? をしているから火のお蔭で周りは明るいし魔女たちが何をしているけど。木で出来た椅子に座り、本を読んでいたり、色んな料理をテーブルに置き魔女たちが飲み食いしているかがよく見え分かる。だからこそ上空から見つける事が容易かった訳だけど。魔女狩りがあるのにこんな目立つ事していいのかしら。ブロッケン山は人間が登るには険しいから目立つ事をしても来れないと考えているのかも。魔女は空を飛べるから登る苦労は無いからね。私とエリスも空を飛べるし、今はブロッケン山の上空で白龍の背に乗っているけど。私の役目は魔女を本朝に引き込む事、だからまずは会って話をしなくちゃいけないので、白龍の背から飛び降りる。

エリスも私に続いて飛び降りたけど、私は空を飛べるし、エリスは蝙蝠の翼があるから地面に激突する事は無い。地上にエリスと降り立つと、白龍も勢いよく降りて来た。なんで降りてくるのよ。魔女たちが白龍に驚き、逃げようと動き出すけど私は、止まれと大声を出して白龍を静止させる。止まった白龍を叱り、逃げようとした魔女たちに向かい合う。見たら魔女たちは度肝を抜かれているけど、まずは、名乗ろうかしら。

 

「初めまして、私の名は地子、肩にいるのはエリスで背にいる大きな龍は白龍。突然なんだけど、この場にいる魔女の皆、天竺から本朝に引越しに行かない?」

 

魔女たちはパチクリさせて、私が言った内容を数分かけて呑み込む。白龍の事が頭いっぱいで私が言った台詞が呑み込めない様子ね。そりゃあ饗宴に勤しんでいた時に空から龍が降って来るんだもの。魔女じゃなくても驚くに決まってる。

魔女の代表者か、三人の魔女が前に出て来て私と向かい合う。一人は子供で黄色か金色か区別がつかないけどそんな髪色でサイドテール。頭にナイトキャップの様な物を被り、服装は真紅を基調。背には一対の枝に七色の結晶がぶら下がった、翼と呼んでいいのか微妙な所だけどそんな翼がある。

一人は少女で赤と白を基調としたエプロンドレスみたいなのを着ていて、右肩に眠たそうな顔をした白猫がぶら下がり、少女の頭に赤色のカチューシャを付け、そのカチューシャには大きな赤色のリボンが結ばれている。

最後の一人もまだ子供だけど最初の子よりは成長してるかな。髪色は金髪でまるで人形の様な容姿。ロングスカートの青のワンピースみたいなのを着て、肩にはケープみたいなのを羽織り、頭にはヘアバンド。周りには同じ容姿の人形を浮かばせているけど、容姿を見ているとまるであの童話に出てくる女性を彷彿。その童話に出てくる女性に似た容姿の魔女は右手の掌を鎖骨辺りに当て名乗り返す。

 

「私の名は アリス・マーガトロイド アリスと呼んで。 地子と言ったわね、私達魔女を本朝に連れて行ってどうする気なの」

 

「貴方達、魔女狩りのせいで人目を憚って暮らしているでしょ? だから引っ越すのよ、魔女狩りや魔女の概念が無い本朝にね」

 

私の説明を聞いてアリスは右手の人差指を唇に当て沈思黙考。

 

「確かに、本朝は魔女がいないから魔女狩りが無いと聞いてるわね。でも、それは魔女がいないから魔女狩りしてないと思うのよ」

 

「むー それについては大丈夫。引っ越す場所が一国の王の所だから。その人はね、妖怪を皆殺しにせず国に、国と王に仕えさせている変人だから大丈夫」

 

妖怪を仕えさせている事を聞いてアリスと名乗る魔女は右手で口を隠して目を見開いて喫驚。次にアリスは腕を組みながら右手で小指から親指に流れる様に左腕に当てながら考え込む。私の背にいるのは白龍、白龍は天帝に仕えていると有名で、その白龍を従えている私は地上人、人間じゃ無い事は理解している筈。私、ある意味では神とも言えるからね。だから魔女を騙して殺されるかもしれないという考えは出てこないと思うけど正直、不安ね。

私が言った本朝と言う言葉に、髪色が黄色か金髪の子供は魔女なのか魔法使いか知らないけど目を輝かせながら身を乗り出す。まだ子供だから異国に行く事が出来ないのかもしれないわね。気持ちは分かる、私も天界に縛られて生活して生きていたから。そういう意味では親近感を抱く。

 

「本朝!? あそこの納豆お姉様が好きなんだよね~ あ。私の名は フランドール・スカーレット フランって呼んでね」

 

「フランね。でも意外、納豆が好きな魔女がいるなんて、本朝じゃない異国の人ってあの匂いに耐えられない人結構いるのに」

 

「寧ろその匂いが好きで気にならないらしいよ、それと、地子。肩に蝙蝠を従えているなんて貴方も吸血鬼なの?」

 

私が吸血鬼な訳ないから首を振って否定。どうも、フランは魔法少女だけど吸血鬼でもあるみたい。今は魔法を制御する為に魔女と交流している様ね。ついでに言うならアリスはまだ人間で魔法使い、または魔女としては半人前だそうよ。私の右肩に蝙蝠になって乗っているエリスに目でコンタクト、理解したエリスは魔方陣を展開して小悪魔を魔界から呼び出す。

呼び出された小悪魔は一体どういう状況なのか呑み込めず、何度も魔女達を見たり私達を見たりと落ち着きが無いけど。魔女は猫やインプなどを遣う、要は眷属みたいなものだから遣いという名の奴隷をプレゼントしましょう。私、魔女を本朝に連れて行かないと多分、天界に連れ戻されちゃうでしょうから。

 

「じゃあ奴隷として小悪魔をあげる。しかも魔界に住む悪魔よ悪魔、家事も出来るし、何をやらせてもそつなく熟す万能女だから使い勝手は悪く無いと思うわよ」

 

「奴隷? それは嬉しいわ~ あの子、喘息持ちで病弱だから身の回りの事を悪魔さんにやって欲しいわね~」

 

「エレン。あの子は今いないわよ、人間に捕らえられたんだから」

 

小悪魔は売られていることに気付いてショックを受け、私の背にいる白龍の元に走り出し、魔界に繋がる魔方陣を出して中に入り逃げた。逃げても魔方陣でまた呼び出すから無駄だけどね。アリスと言う魔女、魔法使いはエレンと言う魔女が間違った事を言ったので訂正。エレンはそうだったと両手を叩いて音を響かせる。魔女が人間に捕まるなんて、魔女狩りにあったのかどうか聞くとそうではないらしく、奴隷商人に捕らえられたみたい。

魔女たちも彼方此方探し回ったそうだけど天竺では見つからず、魔女を捕らえた奴隷商人を見つけ、居所を吐かせてどこにいるのか聞くともう天竺にはおらず、他の大陸に連れて行かれたらしいわ。今は魔女狩りのせいで魔女たちは人間に見つかると、人間は魔女達だけ殺戮の限りを行う、だから魔女達は人目を忍んで本領発揮できず奴隷になった魔女を探したから、天竺から他の大陸に連れ去られて行く事を察知出来なかったのかも。

 

「察するに仲間の魔女が奴隷商人に捕まったって事でいいのよね?」

 

「そうよ。その子は人間に捕まって、今は奴隷市場に流れてるでしょうね。魔女は魔女狩りしている人間以外には価値が高いから」

 

アリスは顔に影が差し、憂いの表情。魔女狩りのせいで魔女は数が減ってきている。だから希少価値が高く、値が張るみたい。いつの時代も希少価値を欲しがるものは結構いるからね。何せ、この世から無くなってしまうかもしれない物が、もしもこの世界から無くなってしまったら、世界に一つだけの物を。自分だけがそれを持っていると言う優越感に浸る事が出来るから。例えば本朝には魔女と言う概念が無い、だから本朝からも価値が高いかもしれない。奴隷市場に流されても、魔女なら特定しやすいし何か新しい情報が更新されていないかアリスに問う。

 

「何か手がかりは無いの? ここにその魔女がいるかもしれないって手がかり」

 

「そう、ね。奴隷商人の話を聞くに新羅、または本朝。仏教と共に他の国へ渡った可能性が高いわね」

 

「じゃあ丁度いいじゃない。本朝は魔女狩りが起きていない、だから思う存分探せる。本朝が気に入れば住めばいいし、気に入らなかったら他の大陸まで飛んでいけばいいじゃない」

 

態々危険な国に留まるより、色んな国を回って安住の地を求めればいいんだから。自分達が生まれた国だから愛着があるんだろうけどね。アリスは悩んで悩んだ末、頷いた。本朝を気にいってくれなきゃ私が困るけど、こればっかりは魔女たち本人の問題。本朝に行くことを承諾した魔女たちの代表者達は、これから白龍には魔女たちを本朝まで送り届かせる、そして白竜ならあの人と知り合いだから二つ返事で頷く筈。

あの人確か、女を侍らすって言ってたから、魔女たちが住むのは小躍りして喜ぶことはあっても嫌がる事は無いでしょう。もし駄目でも天界がある、最悪天界に住んで貰えばいい。天界にも悪魔はいるからね、私の肩に蝙蝠になってるエリスの様に。魔女たちも空を飛べるけど、白龍が飛ぶ速さほどではないので魔女たちを背に乗せ任す事となったけど。私とエリスは行かない。まだやる事がある。

フランは吸血鬼だけども、魔法使いでもあるから魔女狩りの対象みたい、と言うか魔力があれば人間から見たらそれはもう魔女の様ね。だからフランの姉も吸血鬼で魔女だそうなので紅魔館という館まで行って連れて行く事になった。フランは口実が出来て喜んでいる、天竺以外の国から出る機会が出来たから。

ともあれ、今日でブロッケン山、天竺で行う饗宴は終わり。だから魔女達は思い残す事が無いようするみたいで、更に騒がしくなり、魔女たちが魔法を空に向けて撃つと、空に飛んでいった魔法が爆散し、空からは雪の様にカラフルでキラキラと輝く魔法の結晶の様な物が散らばりながら緩やかに落ちてくる。とっても綺麗、今まで天界にしかいなかったから物珍しく見たいたけど、私とエリスも一緒に飲み食いをしましょうとエレンが誘ってくれて、私とエリスと白竜を交えた最後の晩餐。裏切り者はいないけどね。

 

私は木で出来た椅子に座らせてもらい辺りに視線を巡らす、魔女達は魔法で火炎を出して食べ物を焼いたり、水やお酒を出しワインをグラスに淹れ飲んだりと結構快適そう。それに魔女の使いであるインプや黒猫が魔女達の為に食べ物をお皿に乗せて魔女達の元へ渡しに行ったりと動いて忙しそうね。

だけど、確か魔女は文字だけで見たら女だけだと勘違いするけど、女だけでの意味は無く男の魔女もいた筈。でも見た限り女性しかいない、これはあの人も間違いなくガッツポーズでしょう。私は天界の美味しくない料理しか食べた事しかないから目の前に並ぶ料理の数々には胸が躍る思い。メドゥワダやお菓子のコルカッタイ。見た目はあれだけど食べてみたらカリ―とか美味しく、今の私は幸せの絶頂で恍惚な表情だと思う。ただ多すぎて食べきれなかったから、エリスや人間の姿に変えた白龍が後は食べたけど。隣にエレンが微笑みながら座り、私にある事を頼まれたから、内容について詳しく聞くとこの場にいない魔女がいるみたいで、この饗宴にはいないみたい。だからその子も連れて行ってあげて欲しいとの事、その魔女の名を聞く。

 

「有名だから知ってるかもしれないけれど、ライン川にあるローレライ、その岩山に住む魔女。名はミスティア・ローレライよ~」

 

あー 天竺を回っている観光の最中に出会ってるわね。ミスティア・ローレライに。ライン川に航行中、歌声が聞こえて来たのはいいけどそれを聞いた人間、舟の操縦者は様子がおかしくなり、急に笑い出してまるで狂ってしまった様子になり、これは観光している場合ではないと私とエリスは空を飛んで観光の邪魔をした者、岩山に佇んでいたミスティア・ローレライと対面。だけどミスティア・ローレライの体がパッと消えてしまい探したけど見つからなかったから、諦めてそのまま天竺を観光してた訳だけど。その事をエレンに言うと胸元から何かを取り出し、右手の掌に乗せて私に差し出す。

 

「これがあれば、ミスティア・ローレライも出てくる。悪いけど、お願いね~」

 

私は気にしないでと受け取り了承。ローレライって妖精でもあるらしいわね、他にも天竺に妖精のロッゲンメーメ、メアヴァイパーもいる。そうこうしている内に饗宴は終わり、魔女たちは白龍の背にいる。さっきから気になっていた奴隷になった魔女の名を聞こうとアリス聞く。アリスは私がその魔女の名を聞くと右手で左腕を掴んで、答えた。

 

「名は、パチュリー。パチュリー・ノーレッジ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キシシシシ いやー 同じ種族と会えるなんて嬉しいよ」

 

「そうだねぇ。絡新婦もいたらいいんだけどね」

 

まだ一部だけだけど、ある程度の妖怪は従えた。

熊が妖怪化した鬼熊は力勝負に勝てば従うと言われたので負かしてやったけど。熊が鬼に力で叶う訳が無いでしょうに。今ヤマメと話しているのは大蜘蛛。彼女は長髪で、一本の髪の毛を木に付け垂らすようにしていてぶら下がっているので、逆さになりながら喋ってる訳だけど、髪の毛一本で大蜘蛛の体重を支えるなんて、流石 大蜘蛛ね。ただ木にぶら下がっているから頭に血が上らないかが心配。

彼女は最初渋っていたんだけど、ヤマメが土蜘蛛だと判明するところっと仲間に。まあ、そっちの方が私は楽でいい。はたては藍が懐妊した事を天狗たちに報告する為、頂上に住む天狗の元へと飛んで行っていない。

 

「じゃあ私は蜘蛛の巣でも彼方此方に仕掛けてこの辺りの妖怪を捕まえて来るから、気を付けてよヤマメ。最近、蜘蛛の妖怪は減って行く一方だからさ」

 

「ん。気を付けるとするさね。大蜘蛛、罠の方は任せるよ」

 

気を付けるも何も、ヤマメも永遠のお蔭で死なないんだけど。それを知らない大蜘蛛は木にぶら下がりながら手を振って他の場所へと回った。ヤマメもにこやかに手を振り返す。いい仲間に出会えた事については素直に嬉しい。

ただね、問題なのが、出会った妖怪たちが女しかいないの! 鬼熊も女だったし大蜘蛛も女それ以外も女しかいなかった。男らけも嫌だけど、女だらけになったら彼が私に振り向いてくれなくなる、かもしれないから悲しい。彼の命令だから従うとは言え、彼の周りに女性が増えるのは気が進まない。これじゃあ私を愛してくれないかもしれないんだもん。

私とヤマメとキスメ、そして新たに加わった女の狸、名は 二ッ岩 マミゾウ 彼女には八ヶ岳を案内してもらっている、狸の長と聞いているからある程度八ヶ岳の地理を知っているだろうし、私達より詳しいだろうからね。

 

「次は山彦、名は 幽谷 響子 じゃ」

 

「山彦ねぇ」

 

ヤマメが妖怪である山彦の名を聞いて、山彦の種族名を呟く。山彦は確か山や谷の斜面に向かって音を発し、それに遅れて反響させる妖怪。ヤマメは閃いた表情になり、私にいい考えがあると言いながら私に策を伝授。

策の内容を聞くと、単純な事で、山彦の習性を利用するみたい。策の内容を聞いて納得、確かにそこを上手く使えばいけるわね。

でも山彦は弱く、基本的に隠れて生活しているそうでマミゾウが山彦を探して見つけるにしても時間が掛かるみたい。でも大声を八ヶ岳に向けて出せば、山彦の習性故にそれを返してしまうそうなので、私は八ヶ岳に、遠くまで響き渡る様に両手の掌を唇の端に宛てがい、大声を出して山彦を罠に嵌める。私が大声で八ヶ岳に響き渡る様に言うと、山彦は習性故に私が言った台詞を続けて言ってしまう。

ちなみに今から言う比売大神とは 八意 永琳 の事よ。

 

「諏訪国の神の諏訪大明神と比売大神と諏訪子に仕えて欲しいのー!」

 

「諏訪国の神の諏訪大明神と比売大神と諏訪子に仕えて欲しいのー!」

 

「いいよー!」

 

「いいよー! ・・・・・・あれ?」

 

ちょろい。これでまた一人諏訪国に加える事が成功したわね。自分が何を言ったか気付いた山彦は、叫び声が八ヶ岳に響き渡った。ねえ山彦。知ってる? 鬼って嘘が大嫌いなのよ。まさか、今 口に出した事を撤回。無かった事にするなんて、考えてないわよね? そんな事をすればどうなるか、彼が言い出した事だけど、私達鬼女と悪路王が率いる男の鬼の人数は100を超えてる。そしてその100を超える鬼の頭領、私達の周りに漂う霧になっている百鬼夜行の頭領である萃香が。あんたに、山彦に襲い掛かるわよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ない危ない。もう出港して海に渡っていたなんて。もう少し遅れていたら新羅まで逃げられていました」

 

「間に合って良かった。流石、鴉天狗1の最速。失敗してたら始末書じゃ済まなかったでしょうけど」

 

椛に褒められて、にやけながら右手で自分の頭を撫でていたら、始末書の単語を聞いてげんなり。本当に危なかった。本朝にいれば私達天狗は自由にとは言えませんが、ある程度 融通は利くので飛び回れるとは言え。新羅は異国。私達 本朝の天狗が許可なく入ると色々煩いですからね。

椛の能力で見つけたのはいいですが、私達がいた所と距離がかなりあり、そのお目当ての人物は海上に浮かぶ船にいたので、鴉天狗である私の方が早いので、先に行こうと沙門がいる方角と、特徴を椛に聞いて海上まで飛んで行き、発見。

まずは能力で暴風を起こして、沙門を海に突き落とすか、船を沈没させようとしましたがそれではお目当ての物が海の底に沈んでしまうので、仕方なく鉄拳制裁、いいえ。実力行使です。海上の上空から眺め、僧形で袈裟を着た一人の人間を見つけたので、先程 空から船に降り立ち僧形を背後から忍び寄り、僧形の頸に腕を巻き付け締め落とし、気絶させたのはいいですけど。強引にしてしまい苦しませてしまいました。慣れない事はするものではありませんね。

かくして目的の物は手に入ったのですが、まだする事はあります。天魔様より椛と指示を受けているので次は琵琶湖にいる人物に会いに行かなくてはなりません。ですけど、この天叢雲剣。これは天皇の武力の象徴だそうですが、弘天さんが、もしも。仮に天皇の血を引く女性を妃にしたら色々と使えますよねこれ。ですが、何か。今回の騒動何か気になります。

 

「あっさりしすぎで、何だかきな臭いわね」

 

「きな臭いって、どういう事」

 

「何か、匂うのよ。何と言うか、そう。まるで誘導、掌で踊らされいる様な、作為的な陰謀が渦巻いている匂い」

 

今回は椛の能力でのお蔭で新羅に行かれる前に阻止 出来ましたが、そもそも盗まれると言う事自体おかしいのです。三種の神器は天皇の証。ですので、当たり前ですが厳重に保管されている筈です。しかし盗まれた。まだ盗んだ犯人が、大和朝廷の関係者である豪族なら分かりますが、盗んだ犯人が沙門という事実。その事実を疑うべきでしょうけど、先入観に囚われているのかもしれませんね。

例えば先程気絶させた僧形で袈裟を着た沙門は容姿から見たら仏教の関係者としか見えませんが、本当は本朝の人間が僧形の振りをしてあえてそう見せているのでしょうか。ですが一体、何の為にそんな面倒な事をするのでしょう。三種の神器の一つである天叢雲剣だけに限った話ではありませんが、今の天皇である天智天皇や過去の天皇ですら三種の神器を実見した事が無いと聞いています。ですがこうして私が手に持って椛と見ている訳ですが。もしや盗めと指示を出し沙門に盗ませたのは、大和の神、もしくは朝廷自身。

なーんて、ありませんよねそんな事。とりあえず天魔様に受けた最後の指示、琵琶湖にいる三人を諏訪国に引き込む為動きますかね。まずは椛と琵琶湖まで行かなくてはいけません。

 

「まあいいわ。それより椛、やる事は終えたから琵琶湖に行きましょうか」

 

「そうね。迎えに行かなくてはいけないし、天魔様から受けた最後の命だからね」

 

しかし、弘天さんはとんでもない事を考えますね。今まで神と人間の関係は人間は神を信仰し、神は人間の信仰によって生き、信仰する人間には恩恵を授けてきましたが。その均衡は、終わりかもしれないです。神と妖怪の関係は変わらないでしょうが、妖怪側からしたらとんでもなく迷惑な話です。何せ、八百万の神は永遠になってしまいました、つまり、この世から永遠に消す事も殺す事も出来なくなるんですから。まあ、私や椛にはたては弘天さんの神使ですし、天魔様、他の天狗たちも弘天さんと盟約同士で、弘天さんは河童とも盟約を結んでいます。だから私達には関係のない話なんですが、この事実が公になればこれからの神と人間はどんな関係になるのでしょう。そこが気になります。

 

 

「それはそれは。波乱万丈な人生を送っているのね神子」

 

「退屈だけはしませんがね」

 

「私は生まれた時から琵琶湖にずっといる。だから他の地域も見て見たいけど、足が無いこの下半身じゃあね」

 

わかさぎ姫は自分の下半身を恨めしそう見ているが、琵琶湖の川辺で人魚であるわかさぎ姫に大和での出来事、今までの出来事をわかさぎ姫に喋っている。深緑色の和装を着て、髪色は青。髪型は髪を螺旋状に巻いた髪型で、耳の位置にはヒレのような耳があり、わかさぎ姫は人魚なので、下半身は魚で魚の部分の色は薄い青色。わかさぎ姫という人魚は昔、私がまだ大和にいた頃この地、近江国を訪れた時に琵琶湖でわかさぎ姫と出会った。その時に名を聞いたので存じているが、名の通りに捉えるなら魚である若鷺の姫と言う事なのだろうか。

しかし、心配だ。人魚は本朝だと希少。摂津国で1人の人魚が漁師に捕らえられたと聞いているし、アイヌが住む北海道にアイヌソッキと言う人魚もいると聞いたが。若狭国に住むある娘が、人魚の肉を食べ、何年経っても老いない娘になってしまい出家し、八百比丘尼と言う女性の尼の話を大和にいた頃耳に入っている。ここで問題なのが、人魚の肉を食べると不老長寿、または不老不死になれると言われている事。

これは不味い、本朝の人間は100以上生きられる者が多いとは言え、それでも長く生きたいと思う者が多い。不老長寿、または不老不死になればもう死ぬ心配は無くなると考える大愚がいるだろう、わかさぎ姫の身に何かあっては困る。私達は友人なのだから。

後方から殺気を感じ、迫り来る刃から最小限の動きで躱すとその人物は舌打ち。近くにいた屠自古はまた始まったと呆れ返り、川辺に近づきわかさぎ姫と会話に興じ、舌打ちした人物は大事な宝剣の切っ先を私に向けている。

 

「避けるでない」

 

「そうはいかんな布都。まだ死ぬ訳にはいかんのだ。そもそも、大事な剣を二刀流。 八握剣 と 布都御魂 を私如きに使ってはならん」

 

「何を言う、この物部に関する二つの剣だからこそ我の、延いては物部氏 切望の一つが成されるのであろう!」

 

布都はしつこく斬りかかって来るが私は躱しながら喋る。十種神宝を祖神である饒速日神様から授かっている十種神宝は首に掛けて、結ばずに、左右から同じ長さで前に垂らすスカーフ様な物を身に着ける様な物。これは霊験で死人を蘇生させたり霊魂を増大させたりも出来る優れもの。腰には二本の剣、八握剣と霊剣である布都御魂を差している。

でも、豪華な物ばかりでまるで布都が身に着けているのは妃が身に着けるような物だらけ。しかしそれは好都合。何せ一国の王に嫁ぐのだから身なりは大事ですよね。

何かの気配を感じ取り、顔を空に向けると。視界に入ったのは光速で地上に降りようとする天狗が目に入り、警戒して見ていたがもしや、あの天狗たちは。天魔の手の者だろうか。警戒だけは解かず、そのまま目線を逸らさず見ていたら二人の女性の天狗が地上に降り立ち、黒髪の女性が右手を使い、おでこに右手を当て遠くを見る様 翳すようにしながら一笑。白髪の女性は堅物。生真面目なのか真面目に自分の名と、隣にいる鴉天狗の名を名乗る。

 

「あやややや これはこれは、聖徳太子であらせられる蘇我入鹿さんではありませんか。

今は 豊聡耳 神子 さんでしたね」

 

「初めまして、天魔様よりお話は予予伺っております。私の名は 犬走 椛 隣にいるのは 射命丸 文 と言います。我々は元ですが、天魔様の配下です」

 

天魔の名を聞いて、理解。何故この二人が琵琶湖に来たのか。敵ではない事は確信が持てた。射命丸と言う名の鴉天狗は偶然を装っていたが、間違いなく偶然では無く。意図的に接触したのだろう。

空を飛んでいた天狗の二人が地上に降りて、私に接触したが、黒髪は 射命丸 文 という名で、見るに天魔に似て鴉の翼があるから鴉天狗、鴉天狗の方が持っている物は剣に見えるが、その剣は不思議な魅力があり、どこか神秘的だ。

もう1人は 犬走 椛 長髪な白髪である所を見て白狼天狗と言った所か。それと背には剣と盾を背負っている。その白狼天狗の右手には布を被せた何かを持ってはいるが。しかし、天魔。天魔の部下である天狗たちは本来の天狗と呼ぶべきか悩み所。本朝の意味では天狗は仏教の敵、そこは間違ってはいない。しかし天狗であって天狗ではない者達とも言えるかもしれん。

『太平記』に『沙石集』と言う物がある、これには天照様と第六天魔王、二人が密約、契約する話があるが、これは実話だ。

 

天魔は、魔縁。だが、魔縁とは魔界の者を指す。その魔界を創ったのは一体誰であったか。更に言うなら魔界の関係者は天魔だけではない、本朝には魔界人も存在するのだから。近くにいた布都は、天狗を斬ろうと腰に差している 布都御魂 の切っ先を天狗に向け、構えて天狗を斬ろうとするが阻止。殺されては困る、しかも天魔。天狗たち一同が、諏訪国。ひいては諏訪大明神と盟約相手だ。もしこの天狗たちを殺せば諏訪大明神、諏訪国に住む神と妖怪、そして人間までもが動くだろう。それは困るのだ。

 

「待ちなさい。その天狗達を殺してはならん」

 

「何故じゃ。この者達は容姿を見るに天狗であろう!? ならば斬り捨てなくてどうする!」

 

「駄目だ。天狗は仏教に仇成す存在、我らの目的の為に必要不可欠。だから殺すのはならん」

 

布都はもがいているが、殺してはならない理由を説明すると理解した布都は大人しくなるが、念の為 私が羽交い絞めにして押さえ、斬りかから無い様にしている。先程、琵琶湖に住む金龍と言われる伊豆能売様が帰って来られた。

帰って来られたのはいいが伊豆能売様は物部布都はいるかどうか聞かれたので、伊豆能売様を布都に会わせたら伊豆能売様は右手に持っていた一枚の紙切れを布都に手渡したのだが。

何でも、婚姻届書と言う物らしい。婚姻届、届や書の意味は全く理解できないが一体どこに届けると言うのだろうか。届や書はともかく婚姻からするに夫婦になったと言う事だろう。いつの間にか布都は、物部の祖神である饒速日神様と天火明命様によって勝手に婚姻させられたようで、その相手が諏訪大明神との事。

だから諏訪大明神を敵に回すのは不味い。それを説明したら布都はぐうの音も出ず更に大人しくなる。婚姻については布都は万歳しながら笑顔で喜んでいた、何せ祖神である饒速日神様と天火明命様が神裔の為に動いてくれたのだ。神は基本動く事はせず、神裔の為に動くなんてそんな事、滅多に無いから。

しかも相手は諏訪大明神、現人神である布都の夫として不釣合いでは無いだろう、寧ろ渡りに船。

諏訪大明神は女好きで妖怪さえも妻にする事で有名だ、しかも全員が正妻 等と言う変わった神。だから子を成す事も案外簡単に行くかもしれない。良い事だ、これで物部は再興できるだろう。

犬走は敵意が無い事を示す為に背中に背負っていた剣と紅葉が描かれた盾を地面に置く。でも、右手にある布を被せている物は地面に置く事は無かった。

 

「私達が何故、死んでいる筈の蘇我入鹿様に 御目に掛かる為この場に来たのは、重々ご理解して頂けていると思います」

 

「……」

 

分かっている。天魔が目の前にいる天狗二人を寄越したのだろう、私達を引き込む為に。あの天魔の事だ、私達が死んでいなく、生きている事は知っているのは、この状況から見て間違いない。

だが懸念が一つある、天魔、天狗たちが住んでいる山、八ヶ岳は諏訪国にそそり立つ山。私は昔と違い大和から離れているので、今もそうなのかは知らないが、諏訪国と大和は同盟を結んでいる。私は死んだと伝わっているが念の為に容姿は神通力で変えてはいる、私だけに限らず布都や屠自古も念の為に容姿は変えておるので、知人に会っても我らを見抜けはしない。

それでも、やはり不安なのだ。待て、そう言えば先程 伊豆能売様は物部の祖神である饒速日神様と天火明命様から婚姻届を受け取り、布都に渡してくれと頼まれ、諏訪大明神と布都の婚姻を物部の祖神 お二方が勝手に結んでいると伺っている。祖神であるお二方は布都が生き残っている事を知っている筈なのに、諏訪大明神と布都の二人、婚姻を勝手に結ばせた。態々 同盟相手の、それも王にだ。もしや、本当は同盟など結んでおらぬと言う事だろうか。だから安全だと確信を持てる場所に生き残りの子孫を同盟相手に送る算段なのか、殺されるかもしれない可能性も孕んでいると言うのに、そこに布都を送る。普通に考えて危険な所に送るより、最も安全な所に考えるのが一般的だ。神でもそこは例外では無い筈だが。

まさか、同盟は表向きで、実は諏訪国が大和を? そうなら納得できる部分が多く存在する。天皇は代を重ね西の果てから大和まで征服してきた、そこに諏訪国だけは征服せず政略結婚で同盟を結び、それ以来 諏訪国と大和は仲が良く恒常的な関係だった。

しかもだ、大和朝廷は諏訪国より東に住む朝敵の蝦夷、そして平将門を討つ為、東に征討している。私はこの時、諏訪国も征服する物とばかり考えていたがそんな事は無く素通り。実に不思議だったとしか言いようがない。今思えば。諏訪国が大和を裏で牛耳っているからと考えるのが自然かもしれん。

紀古佐美の率いる官軍が阿弖流為の率いる蝦夷軍に大敗、次に東に向かったのは以前は征夷副将軍であったが、今は征夷大将軍坂上田村麻呂、武士の藤原秀郷にもう一人の武士、武家である魂魄妖忌の3名が兵を率いて向かって合戦。しかし小競り合いばかりで決め手に欠け、決着はまだついていない。

物思いに耽っていたが、犬走は右手にある布を被せている物を、布都によく見える様に右手を布都に向けて見せつける。これは布都に関係する物なのだろうか。

 

「布都様。貴方にも伝えたい事が1つ。貴方の姉上である物部守屋様、今は物部の名を捨て

『守矢』と名乗っておりますが存命しております。これは守矢様に預かった物なのです」

 

「姉上が、姉上が生きておるのか!?」

 

言葉では伝わりにくいが、発音からするに名を変えたみたいだな。守屋ではなく守矢か。確か、旧約聖書でモリヤと言うのがあった。布都が問い質そうと詰め寄ろうとするが、犬走は左手の掌を向けて布都を止める。

犬走は、その証拠にと、布を被せ縄で括っていた剣の様な形をした物を手に掛け、縄を解き、布を剥ぎ取り視界に入ったのは布都が持っている 布都御魂 ともう一つの剣である 布都御魂剣 が露に。

これは、確かに守屋が持っていたもので、行方知らずになっていた剣。守屋は死体が見つからなかったが。守屋は生きていた様だ。東に逃げる際、どうやら 布都御魂剣 を持って行ったのか。まさか生きておったとはな。

椛が右手に持っていた剣を布都に手渡し、布都は 布都御魂剣 を両手の掌を上に向けながら大事そうに受け取り、そうか、そうか! と布都は欣悦。姉が生きている事が嬉しいのかうわごとのように何度も呟く。良かった、守屋の死体が見つからず死んだとばかり思っていたけど生きていた様だ。神仏戦争で肉親が皆死んで、布都は天涯孤独の身になるとばかり思っていたけどそうならなくて胸をなでおろす。

とは言え、それでも私に対する憎しみは完全には消えないだろうが。仕方ない。犬走 は今は盟主様はおりませんがと前置きしてからと続け、それを聞いた布都は首を傾げるが、隣にいる射命丸が答える。

 

「天魔様、そして我々天狗は、神子さん、蘇我屠自古さんのお二人は諏訪国の傘下に入って頂きたいのです。盟主様は女好きな方、即答で承諾しますからそこは安心してください」

 

「我は。我はどうするのだ」

 

「布都さんはですね。伊豆能売様からある程度の話は聞いているかと思いますが、どの道、布都さんは諏訪国に住むのは確定なのですよ。何せ、弘天さんと婚姻を結んでいるのですから」

 

そう言えばそうかと布都は両手を叩いて納得。弘天とは誰だと思ったが諏訪大明神か。どうやらこの二人の天狗、諏訪大明神の神使になったそうだが。

確かにその通り、伊豆能売様から婚姻については聞かされている。私の目的は布都を嫁がせ、物部の血を絶やさない為だ。そして参謀として布都が嫁いだその国で働くつもりだった。そこだけは布都と利害が一致している。だから布都も斬りかかって来ても本気で殺そうとはしていない。精々腕か足を斬り落とそうとしているだけだ。屠自古はただ私達三人がずっと一緒にいればそれでいいとの考えで共にいるだけだが。

前々から天魔、そしてパルスィには会いたいと思っていた所だ。天魔は諏訪国、ひいては諏訪大明神と盟約同士、そしてパルスィは諏訪大明神に仕えている。ならばここは乗ってみるか、鬼が出るか蛇が出るか。いや、蛇はともかく鬼は確実に出るであろうな。パルスィが諏訪国にいるのだから。

 

「話は分かった。だが、条件がある。まず一つ聞きたいのだが、諏訪国に諏訪湖がある。しかし他に、天狗が住む八ヶ岳には綺麗な川や河などが存在しているのか」

 

「あります。八ヶ岳には河童が住む玄武の沢、そして九天の滝が」

 

犬走は頷いて肯定。河童は確か、住むにしても綺麗な水や河でなければ駄目な妖怪だった筈。ならば問題は無いか、私は天狗たちに待ってくれと言い川辺にいるわかさぎ姫と屠自古の元へ歩く。

二人で話していた所に、謝罪しながら話しかけ。片膝を地面に付けてわかさぎ姫と向き合う。このままではわかさぎ姫が人間に殺されるのは間違いないと見ていいだろう。だから安全な国に移住するしかない。幸い私には青竜がいる、だから青竜に乗せて行けばあっという間に諏訪国に着く。

そして、幸か不幸か諏訪大明神は神使を多く集めていると聞いている。ならば人魚であるわかさぎ姫は丁度いい。何せ、神使の中には人魚も含まれているからだ。八重山列島、琉球王国で人魚が神使だと言う話を聞いた事があるのだ。わかさぎ姫を琵琶湖に置いて行くのは忍びない。

もしかしたら人間に殺され、食われてしまう可能性がある以上、勝手な話だが一緒に連れて行きたい。それを避けるには屈強な国に移住させ、身の保証を確約させなければならん。元々、布都が嫁いだ国に私は参謀として働くつもりだった。私は女だ。ならばそこを女好きな諏訪大明神に交渉材料として使えばいい。自分の容姿、見て呉れはそう悪く無いと自負している。後は諏訪大明神が、私を気に入ってくれればいいが。腰を下ろし、わかさぎ姫の右手を両手で包んで安住の地に行かないか誘う。少なくとも、琵琶湖にいるよりは安全な筈。

 

「わかさぎ姫、私達と共に諏訪国に住む気は無いか」

 

 

 

 

もう夕焼け、もうすぐで日が落ち、真夜中になる。白蓮は永琳と手を繋いで神社の中に入り、台所まで来たのはいいが、台所にはルーミアと幽香がいた。宴会料理を作ろうとしたのはいいが二人は料理をした事が無いので苦戦を強いられている様で。料理器具一式揃ってあるとは言え使い方を知らない、今まで藍に任せきりだったからだ。

永琳は白蓮に手を繋いだまま二人の元へ行き、宴会料理は私が作るから隣の部屋にある食卓で待ってなさい といい二人は頷いて赴く。白蓮も永琳の邪魔しちゃ駄目だと二人と一緒に隣の部屋に付いて行くが、先客がいたらしく影狼が頭に三角頭巾を被り、割烹着を着ている。どうやらいつも掃除している藍は仕事をさせられないので影狼がしているようだ、他にナズーリンや星もだが神社の掃除をしていて、その途中影狼はお腹が空いたから鮭を食べているそうで。三人を見ながら鮭を咥えている。

気を取り直したのか右手を上げ挨拶をして影狼は鮭を食べる事に専念し、白蓮と幽香は並んで座り、ルーミアは影狼がいる向かい側に座る。白蓮は隣にいる幽香のスカートを右手で掴んで軽く揺すり。それに気づいた幽香は、左隣にいる白蓮に顔を向け、左手で白蓮の頭を撫でながら微笑む。

 

「どうしたの白蓮」

 

「私 八ヶ岳に行って見たい」

 

幽香は白蓮に八ヶ岳を見たいと言われ、表情には出さないが困惑している。八ヶ岳には妖怪しか住んでいなく、妖怪の山の様な場所、そこにおいそれと人間である白蓮を連れて行けばもしも何かあった時では既に遅い。

連れて行くにしてもまだ子供である白蓮には時期尚早だ。何か、身を守る術があればいい話なのだが美鈴から武術を学ばせるのは少し早い。

例えば遠距離戦法の魔法、または妖術などを教えられる者がいればいいが、そう言えばヤマメが妖術を使えたはずだと考えた幽香は、宴会に来るであろうヤマメには白蓮に妖術指南させようと考え、幽香は連れて行かせる事が出来ない事を白蓮を撫でながら謝る。

 

「ごめんね白蓮。連れて行かせたいけど、ダメ。せめて身を守れるようになってからにしなさい」

 

「そうね。何かあってからじゃ遅いもの」

 

一応。この場、諏訪国には霧になっている萃香がいるとは言え、最悪の事態は想定しておくべきだ。白蓮が残念がるが、こればかりは幽香もルーミアも簡単には頷けない。どれだけ実力があろうと、何が起こるか分からないのだから。

白蓮は切り替え、気になっていた事をルーミアに聞く。何故ルーミアは氏神様と妻にならないのかについてだ。その事を聞かれたルーミアは、白蓮に直球で聞かれ気恥ずかしさと困った表情が混ざった顔で、右手の肘を食台に置き、右手の掌で顎を押さえながら目を細め、優しい眼差しで白蓮を見ながら答える。

 

「それはね、私とあいつは悪友に近い関係の様なものだからよ。夫婦の仲に、お互い。今の所だけどなる気が起きないのよ」

 

「んー? ルーミア様は氏神様の事は嫌いじゃないんだよねー?」

 

「出会いは最悪に近かったけど、好きよ。普段からあいつも、私からもお互いの事を好きだ好きだって言ってるからね。でも、付かず離れずの関係が1人くらいいてもいいと思うの」

 

真面目に答えたのはいいが、何だか気恥ずかしいと思ったルーミアは、この場から逃げる為 近くの山で宴会の為に、猪か鹿でも狩って帰ると言いながらルーミアは早足で逃げこの場を後にする。

しかしそれを聞いた烹着姿の影狼が立ち上がり私も行く行く絶対行く と言いながら強引にルーミアの背について行った。幽香は、まだ時間はかかるだろうけどいい傾向だと思い、さっきのルーミアが答えた事について白蓮は理解できなかった。

好きあっているなら夫婦になるのだと親の聖に教えられている、しかしルーミアは好きだと言っても今の所夫婦になる気が起きないと言った。良く分からない。打てば響く様に、好き同士なら夫婦になり子を作るものだと白蓮は聖に教えられ、大人になったら弘天様に嫁ぎ、妻になりなさいと洗脳されている。どれだけ考えても分からないので、手を繋いで歩いている幽香に白蓮は聞き、聞かれた幽香は微笑。

 

「好きだけど、あまり夫婦に拘って無いだけか、もしくは踏み込む勇気が無いのか。前者なら寄り添うだけの関係が男と女。夫婦の全てではないと、考えてるのかもしれないわね」

 

白蓮は更に理解できなくなる。白蓮にはまだ早い話かと幽香はこの話を続けず、他の話題を出す。藍は妊娠している、だから暫く仕事をさせる訳にはいかない。そうなると藍が今までやっていた掃除に料理に洗濯の神社の家事全般。そして、諏訪国の民の相談役も誰かがしなくてはいけない。

相談役は流石に永琳がする。こればかりは他の者にさせるのは荷が重いからだ。だから残った家事全般をすればいい話、諏訪子は面倒だと嫌がるかもしれないが皆で藍の穴を埋めなくてはいけない。

神社の掃除は先程いた影狼、そしてナズーリンや星がやっているが料理を作れるのはレティはともかく永琳しかいない。いい機会だと思った紫と幽香は弘天に作った手料理を食べて欲しく、以前から料理をしたがっていたが台所の番人である藍が、私がするのでお二人は遊んでいてください。と阻止され二人は断念していたがついに覚えられる日が来た。紫と幽香の母親である永琳が3人に教えるので、美味しくない料理を出される間違いが起こる事は無い筈だ。

 

「それより、藍は暫く休ませるらしいから。この際 私や紫は料理を覚えようと思ってるんだけど、花嫁修業として白蓮もしてみないかしら」

 

「するー! 氏神様に私が作った手料理を食べさせてみたい」

 

「いいわね。私もいずれお父様に嫁ぐけど、白蓮も私と同じように嫁ぐかもしれないから、どっちがお父様に喜んでもらえるか勝負ね。負けないわよ白蓮」

 

「うん!」

 

白蓮は元気よく幽香に呼応。幽香と白蓮が話し込んでいたら永琳が二人に宴会に使う物を神社の前に出して欲しいと頼まれた。蔵にあるお酒などを運び、どうやらまた神社の前で宴会をする様だ。二人は傾いて承諾。

幽香は鬼に勝るとも劣らない力があるので運ぶのは構わないのだが、白蓮はまだ子供で非力。弘天に嫁ぐかもしれないのにかすり傷1つでも付けたら大変なので、幽香は私に任せておきなさいと立ち上がり蔵に向かう。残された白蓮は一旦神社の外に出ようと歩き出し、神社の玄関で履物を履いて玄関の戸を開けるとそこは色んな種族がいてカオス。

空には大きな白竜と魔女。そして鳥居の下には鴉天狗の射命丸文と白狼天狗の椛が諏訪国を神子達に案内している。白蓮は目を輝かせながら両手を胸の前で握り拳。

 

「おー! 凄い大きな白の龍だー! かっこいい!」

 

「流石にこの状況、お父さんが絡んでないとは思えないわね」

 

「あ、紫様。お帰りなさーい!」

 

この状況を面白がっている白蓮の隣にはスキマが出て中から傘を持った紫が出て、紫は、ただいま白蓮 と頭を撫でる。どうやら皆に宴会の事は伝え終え戻って来てこの状況が呑み込めず茫然として空を眺めているが。一体この状況は何だろうか。

文と椛はまだ分かる、二人が神子達を連れて来たのだろう、しかし空にいる白龍と魔女達は一体何なのだろう。

考えても仕方ないと紫は右手に傘を持ちながら両手を広げ、歓迎する事にした。悩んでも分からないなら、今ある事実をただ受け入れてしまえばいいのだ。

 

「ようこそ諏訪国へ。ここは、神も妖怪も人間も住める安住の地。桃源郷であり理想郷であり幻想郷。私達は皆さんを歓迎します」




八重山列島、沖縄県には人魚伝説がありまして。その伝説では漁師が人魚を捕らえますが、人魚は海の神の使いだから逃がして欲しいと懇願。漁師が人魚を逃がすとお礼に洪水が起こる日を教えてくれて漁師は助かったとの話があるのでこう書きました。本当は人魚じゃなくて人魚のモデルと言われるジュゴンだそうですが・・・・・まあいっか!

ローレライについてですが、ローレライが妖精とも言われてもいますが魔女とも言われているのでこうなりました。それとドイツの穀物を守る妖精ロッゲンメーメ、水の妖精メアヴァイパー、後者はマーメイドの別称だそうですが、ともかくドイツに妖精がいる様なのでこうなってます。とは言え、水の妖精や穀物の妖精として出しませんがね。

2話で完結だったのに50話まで来てしまったよ。早く戦国時代書きたい。あ、戦国時代は歴史の人物が女だらけになります。と言うか女しか出しません多分。武田信玄とか女になるのは確定です。桑原城の戦いとかで長野県の土地に攻め入りますからね。まあ、戦国時代と言っても皆さんお気づきかもしれませんが、戦国時代が忠実通りに行かないので時系列や歴史が無茶苦茶になると思います。


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一輪の花

キャラ設定はあっても絵が無い公式東方キャラが二名ほど出ます。高千穂神社については後書きを見た方がいいかもしれない。

書いてて思ったんですが、9割が地の文しかありません。何てこったい。見直していないので、この話はいつも以上に日本語がおかしい所が多いと思います。本当にぱーぷー

歴史などの独自解釈がかなり強め。だからそれを見て絶対に信じて鵜呑みにしてはいけません。書いてある事が全部嘘と思いながら見た方がいいです。まあ独自解釈とオリジナル展開がタグにあるから問題は





「そう言う訳で、伊予国にいる藤原純友を使い大和朝廷に対し嫌がらせをする事にした」

 

「嫌がらせって。隊長、酷い人ですね」

 

「いいんだよ。朝廷は俺のだ。それに遅かれ早かれ、朝廷ではなく。これからは武士や武家の時代、武家社会が来るかもしれん」

 

諏訪国にいるヤマメや紅葉、鬼神のパルスィなどの鬼女と、悪路王の鬼の数が100を超えているので、諏訪国に百鬼夜行が出来あがっている。その百鬼夜行の頭目は萃香だが。その百鬼夜行の中には、三大妖怪の1人、大嶽丸がいて、諏訪国で悪路王と一緒に八ヶ岳にいる。乃至、日本三大悪人の一人である平将門は東で健在、なら天智天皇の孫で、もう一人の三大悪人である道鏡を使う手もいい。何せ、宇佐神宮に行くかもしれんのだからな。それと日向国の南西、薩南諸島にある活火山の鬼界カルデラ。この活火山の鬼界カルデラを依姫には浅間大神を能力で使役させ、鬼界カルデラを噴火させるのに使ってもいい。大和朝廷は朝敵である東の平将門と蝦夷にしか今の所 目を向けてない。そこで、不意打ち紛いに西で藤原純友を使い叛乱を起こす。叛乱の内容は、まず西で疫病が起こり流行ると、藤原純友は神仏習合をしたせいで神々が憤怒し、疫病が起こり、民に疫病が流行ったのだと言わせ、神仏習合が納得できないから叛乱を起こしたので仏像の廃棄、神仏習合を神仏分離にせよと大和朝廷に求ませる、または作物が不作で叛乱とかにもさせる。藤原純友が成功するか失敗するかについてはどちらでもいい。仮に失敗しても船を使い、本朝から異国に逃がす手筈を整えてやればいいし、当分の食料も俺が用意する。朝廷に捕まっても俺が逃がしてやればいいし、処刑されそうなら助けてやればいい。大和の神も大和朝廷も俺の傀儡。成功したら大和朝廷は追い込まれるしどちらでも俺は得しか無い。重要なのは朝廷に仕えていた者が叛乱を起こす事が重要だからでもあるし、藤原純友は豪族、じゃなくて貴族である藤原の子孫で尚更だからだ。藤原純友は養子だと聞いたような気もするが、まあいいだろう。天皇や大和朝廷に仕えている者が叛乱する事に、これは意味がある。

 

ただ一つ問題がある。東の平将門はただの人間では無い筈、月人の事を知ってたし。だから殺されるのは非情に不味い。面倒だが、平将門の妻である桔梗、桔梗伝説を使い、平将門をそれで殺すのではなく生かすしかない。今でこそ朝廷は西のトップ足り得ているが、天皇や大和朝廷は俺の傀儡な様に、武家が天皇や朝廷を操り人形にする動きが目立ち始めるかもしれん。そうなれば、俺が朝廷を支配していてもあまり意味は無い。今度はそれも俺の支配下に置こう。将軍や幕府とか。確か、武将の平貞盛は東に行かず替わりに武家、武士の魂魄妖忌が武士の藤原秀郷と共に征夷大将軍 坂上田村麻呂について行き、東に遠征している。活躍すれば武士、武家がスポットライトを浴びる日が来るだろうな。天智天皇は大和で中央集権しているが、今は天皇親政、もう少し経てば摂関政治になるかもしれん。だが、武家政権になったらいろいろ大変だ。武家政権で問題なのが天皇、上皇と並ぶ武家権力。武家権力なぞ認めるべきだろうか。天皇は現人神で神裔だからこそ人間の頂点に立つ事が出来るが、武家権力は人間が頂点。しかしな、人間が人間の頂点に立っても意味が。

まあ、天皇が神道の頂点と言っても、そもそも神道の神には最高神などの序列は存在していない。天地開闢の造化三神に対しても言える事、だから神道の神々はそれぞれ気兼ねなく話す事が出来る。二姉妹の竜田姫、妹の穣子が三貴神の天照に対しフランクに話しかけられていたのもそれでだ。ただ人間が勝手に神道の神の最高神は、造化三神でとうの昔に身を隠した天之御中主だったり、造化三神の1人で今の所身を隠していない高御産巣日とか言われ、他にも三貴神の長女である天照だったり出雲の大国主と言っているが。

 

で、日向の国に来て1週間。日向国にある高千穂神社の祭神は三毛入野と高千穂皇神。高千穂皇神とは日向三代と称される皇祖神とその配偶神の事で 天津彦火瓊瓊杵と木花開耶姫、彦火火出見と豊玉姫命、彦波瀲武鸕鷀草葺不合と玉依姫命 の総称の事だ。しかし天津彦火瓊瓊杵と木花開耶姫は富士山にいる、そして豊玉姫命と玉依姫命は、豊姫と依姫の名と似ているが、全くの別人で、分かりやすく言うなら豊姫と依姫は、豊玉姫命と玉依姫命に天照と瓊瓊杵。天皇の親戚みたいなものだ。厳密には違う気もするのだが、この辺はややこしいので割愛。他にも筑後国には甕依姫なんて巫女もいる。忘れていたが祭神の高千穂皇神ともう一人の祭神である、初代 神武天皇、その兄である三毛入野に頼んで神社に入らせてもらい、高千穂神社に存在している要石で抑えられている大鯰を何とかしようとしたが、大鯰を押さえている要石は砕くか持ち上げてどかすかしないともう一度要石で大鯰を押さえる事が出来ない事が判明したので、依姫に頼んで能力を用い天手力男を依姫の能力で依姫の身に天手力男を宿らせ使役し、依姫が大きな要石を持ち上げどかしてもらった。次に依姫にはなゐの神を呼び出してもう一度大鯰を抑える事になったんだが、大鯰は今まで要石で抑え付けられ倦怠気味で もう許して欲しい と懇願。仕方ないので龍神を呼び出して、大鯰を天界に連れて行く事に。根本的な解決では無い気がするが、後は天界の神に天人や仙人、天帝やデーヴァ、元は波斯国にいて、神綺が創った地獄やサリエルが創った天界に今はいるが、ゾロアスター教のダエーワ。ゼウスにヘーラー。仏教伝来時に来た、ヒンドゥー教の女神、インド神話のサラスヴァティーに鬼子母神や他のインド神話の神、他にもいるが後は任せよう。仏教伝来時に来たサラスヴァティーも神道に取り込む。確かサラスヴァティーは琵琶に似た弦楽器を持っていた。俺の手で神道に取り込んだら琵琶を持たせる。そう、『琵琶』を。鬼女の紅葉は『お琴』を持っているが。神道に取り込んだ名はそうだな、 弁才天

 

神綺とサリエルは異国の神を 魔界 地獄 天界 冥界に避難させている。異国の神でも、神が死んだら目的が破綻するし。死なない神もいるが一応連れて行っている。拒否する神は勿論連れて行かないが。ちなみに大鯰は俺の神使に無理矢理した、念の為に。そうだ、さっき言った天皇の初代、神武天皇は存命している。というか殆どの過去の天皇は存命している。一部暗殺されているが。更に言うなら豊玉姫命は海神である大綿津見の娘だが、彦火火出見の奴が豊玉姫命に見るなと言われていたのに豊玉姫命が出産している所を好奇心が疼いて目撃してしまった。豊玉姫命は海神の娘で、正体はアリゲーターだったかサメだったか八尋和邇だったか覚えてない。八尋の尋は長さの単位の事だが、ともかく。正体を夫の彦火火出見に見られ、恥ずかしがった豊玉姫命は産んだ子供を残して海に帰ってしまいこの場、高千穂神社には玉依姫命はいても豊玉姫命はいない、海に帰り別居中みたいのものだ。とは言え、造化の三神の 天之御中主神 と 高御産巣日神 の様に身を隠している訳じゃない。ちゃんといる、海の中にだが。玉依姫命は依姫に似て美人で巫女服を着ているんだが既婚者で番い者だし興味は無い。話を戻すが、豊玉姫命は海に帰ったのはいいが産んだ子が心配で教育係として妹の玉依姫命を送った。のはいいが豊玉姫命が産んだ子である彦波瀲武鸕鷀草葺不合は事もあろうに教育係で実母の妹、つまり叔母である玉依姫命に惚れてしまい、そのまま夫婦になった。で、五瀬と稲飯と御毛沼と若御毛沼の順で玉依姫命は産み、末っ子、つまり若御毛沼として産まれたのが初代天皇の神武天皇。

 

しかし今も昔も、天皇家はよく近親婚をしてるしあの藤原不比等も近親婚してるからな、問題は無い。特に、天智天皇時代はそうだ。それに皇室の系図を見たら近親婚だらけだろうし。近親婚の主な目的は、権力者同士の結び付きを強固にする為や純血を保つ為に、摂関政治の為だろうが。元々、蘇我氏一族が娘などを天皇に嫁がせ、近親婚を累積させたりと多かった。つまり外戚と言う事だ。古今東西、異国、諸外国でも外戚はよくある。あ、伊予国にいる藤原純友と言えば昔いたな。古事記にも書かれているが。確か、第19代天皇の允恭天皇の時代に同母妹で、木梨軽皇子が妹の軽大娘皇女と情を通じ、それが発覚。そして伊予国に流刑された木梨軽皇子が。全く。同じ人間でたかが兄と妹の関係なんだし、近親相姦くらい許してやればいい物を。だが、同じ母から生まれた兄妹でもだ、この時代は俺が子供の頃の月人がそうだった様に。同じ場所に住み、同じ時間を生きて、同じ食事をしている訳では無いから欲情できるんだろうが。例えば1人の男が今まで妹も姉もいないと言われて育ち、20年程1人っ子で生きて来て、親から実はお前には実の妹、または実の姉がいるなんて言われたら、その姉や妹に対し身内としての実感が湧く訳が無い。今までその実妹や実姉と、一緒の家に住んでいた訳でも、顔を合わせた訳でも、会話をした事も無ければ、お互い育っていく時間を共にして来た訳でも無いからだ。だから欲情できる。先人共から脳に植え付けられた常識や理性が邪魔するだろうがな。そんな事情が無くても欲情できる人間は確実にいるが。有名なので異国の フリッツル事件

これは父親が娘を地下に監禁したり、娘を強姦したり。そして娘に子供を何人も産ませたりする話だったかな。これでも結構端折ってる。しかしこの程度、アメージングじゃない。

 

異類婚姻譚の黒姫伝説やおしら、おしらのあれはただの馬とただの人間が夫婦になる話。まあそんな話、神話、ギリシャ神話でもそんな話はあるし、現実でも雄の兎や雄の犬などが鶏や人間の雌に発情、または人間が犬など、人間が他に発情するなんて事もよくある。違う種族にでも雄が発情するのは、子を残そうとする本能が強い訳で。雌の兎も暫く交尾をしなければ本当に想像妊娠する程、子を産もうとする雌の本能が強い。当然、想像妊娠なので子は産まれないが。雌の兎と言えば、神使のてゐに豊姫と依姫の愛玩動物で玉兎の鈴仙もいる上に、白兎神、宮白兎大明神の小兎姫が俺にはいる。いつかセクハラしよう。特に鈴仙。俺はかつて月人を奴隷にしたが。月人は俺が月人を奴隷にする前から月に住んでいた妖怪の玉兎。要はレイセン、鈴仙などを奴隷にしていた。

 

つまりだ!! 月人を奴隷にしている俺は、間接的に玉兎の鈴仙は俺の奴隷になる。だから鈴仙に命令やセクハラし放題。奴隷と言う事は物扱いで人権は勿論無い、俺が奴隷にした月人や月の民 同様、玉兎の鈴仙に人権は無い。月人が玉兎に対する扱いはローマ帝国の様な感じ。古代ローマ帝国と言っても月人とローマ帝国の奴隷に対する扱いは天と地ほどの差があるが、それは置いて置く。だから嫌がっても鈴仙は俺のどんな要求にも、どんな変態プレイにも従わなければならない! これは鈴仙が確実に嫌がるからそんな事をするんだが。豊姫と依姫には鈴仙をくれと頼む、玉兎はつまり兎なので、てゐと同じくいつか鈴仙も俺の神使にして、嫌がる鈴仙に変態紛いの事をしよう。最初なのでまずは軽めのジャブ。嫌がる鈴仙を強姦紛いに押さえ、両手両足を縄で縛る。そして亀甲縛りにして諏訪国のその辺に放置。後は、鈴仙は兎だが、パブロフの犬の様に調教する。条件反射で鈴仙の口内から涎が止まらなく、口から溢れ出てしまう程に。時間をかけてだが、俺に時間はいくらでもあるし。鈴仙を縛り紫に頼んでスキマや蔵にでも閉じ込め、世界から隔離し、ずっと一人にさせて、まず常識と尊厳を無くしていかせる。それさえ無くせば後は簡単だ。スキマの中って目玉がぎょろぎょろしてるから不気味だろうし、鈴仙を閉じ込めるのに丁度いい。蔵に閉じ込めるので厠なども行かせなくし、人としての。しかしこんな事をすれば鈴仙は廃人になる可能性が否めない、困った。

あー そういえば、兎って構いすぎるとストレスで体調を崩す面倒な生き物だった。兎は寂しいから死ぬ動物じゃなく、それは嘘で迷信。現実にいる野生の兎は群れで生活してなく、実際野生の兎は孤独の単体で生きてるし。群れるのは繁殖の時だった筈。それは野兎の話で、群れを作るのは穴ウサギだったと思う。なら構いすぎるのはやめた方がいいのか。しかし鈴仙は玉兎で妖怪だしそれは当て嵌まるのかどうか、悩ましい。

 

脱線した。直喩、ではなく比喩だが、浮世絵で言うなら、人間と犬が犯ってるのもあれば、江戸時代の葛飾北斎。蛸と海女がある、うろ覚えだが漫画で言うなら、科学の力で生き返る事が出来た男が1人いた。その男は、生き返った際に人を見ても、人に見えず、有機質が無機質に、無機質が有機質に見える様になる。そしてその男は無機物で機械のロボットが人間の美女に見えるようになり、男はセクサロイドでも何でもない機械のロボットに恋をして、恋仲になる話がある。あれにも確か、永遠の命に目がくらんだ人間がいた。人魚の肉の様に。かなり省略したが、漫画とは言え、周りが何を言おうと、本人たちが幸せそうならそれでいいと思っても、そうは問屋がおろさぬ。

 

衣通姫伝説、妹の軽大娘皇女は伊予国に流刑された兄、木梨軽皇子に会いに行ったが、自害せず今も伊予国に二人ともいる。美談じゃないか。本当に、絵に描いた様な美談だ。衣通姫伝説は。創られた物語だから当然だが。あの頃、同母兄妹婚姻が禁忌では無かったので、実際の木梨軽皇子は別の事で流刑された。今は同母兄妹婚姻は禁忌、しかし同母兄妹婚姻の禁忌は表向き禁忌で、実際 無い様なもの。例えばこれも古事記に書かれているが、第20代天皇である安康天皇は、長田大娘皇女を皇后にしていた、この長田大娘皇女は安康天皇と同じ同母姉、つまり実姉と実弟とで近親相姦した事になり、しかもその実姉を安康天皇は皇后にしていた。それに今の天皇の天智天皇が同母妹、つまり実妹の間人皇女を皇后にしてはいないが、近親相姦はしてる。穿ち過ぎでは無く、事実なんだなこれが。日本書紀は都合のいい事しか書かれていなく、この事が執筆されていない。それを創作した時は禁忌だったからだ。他は、日本書紀に出家したと書かれているが、本来 即位する筈だった古人大兄皇子も出家はしていないし、蜂子皇子は羽黒権現を感得したとも言われているが、ちがう。ちなみに権現とは本地垂迹の事で、仏や菩薩が仮の姿をとって現れる事だ。しかしそんな事実は蜂子皇子に無い。

 

戻すが、古記事は都合の悪い事が他にも多く書かれている。大和朝廷に都合のいい事ばかり書かれている日本書紀はともかくとして。何せ、古記事は天皇を否定してるし。他の理由もあるがだからこそ、古記事は大和朝廷により隠蔽され、代わりに大和朝廷だけに都合のいい事ばかり書かれている新たな歴史書、日本書紀が出来た。しかもこの日本書紀はあの藤原不比等が創作した物。まあ古記事は俺が諏訪国に残しているから、大和朝廷が古記事を隠蔽しようと取り越し苦労の無駄な話で、しかも大和朝廷の隠蔽 努力空しくも、古記事は後に出てくる、明確に覚えてないが、確かどこかの寺から古記事は出て来たんだっけかな。記憶が鮮明では無いのでこれは自信が無い。

 

昔は同母兄妹婚姻は禁忌じゃなかった。しかし今の時代、表向きは同母兄妹婚姻を禁忌としているが結局は表向きで、基本的に近親相姦が基本。だから普通に犯っているが、これは情報操作の為だろうな、表向きは禁忌としているからだ、本朝の人間は純粋で疑う事をせずすぐにそれを信じ込むから、駄目と言われたらしない。上の者に言われたら尚更。禁忌にしてもする奴はするが、ともかくその為にだろう。異国で有名なのが、古代エジプトの王が純血を守る為 実の妹や娘、実の母とも近親相姦して孕ませ、子を産んでいるし、近親婚が多い。これは神として崇められる王だからこそしていい話、庶民には関係ない話なんだが。俺も王だが、仮に神でも王じゃなくてもそんな事気にせず輝夜をいずれ抱いていただろうから関係ない。輝夜だけに限らず鬼の 萃香 勇儀 華扇 パルスィ ヤマメ 紅葉にも手を出して、そうだな、鬼女が妊娠して、産まれた子の名は纏めて魏石鬼、または八面大王とか名付けるのもいい。しかし、その名を付けるにしても今言った鬼女は6人しかいないので後二人不足。この名は8人の鬼じゃなければ駄目だ、1人コンガラがいるが、どこにいるか不明だしそもそもコンガラは今の所 妻じゃない。他に鬼っていただろうか、あ。大和にある平城京、朱雀門に住む天邪鬼の鬼人正邪がいた。

 

待て、コンガラと言えば仏教で矜羯羅、矜羯羅童子がいた筈。あのコンガラと同じ名、いやいや偶然だろう。偶然に決まってる。maybe どの道、仏教に関係するのは全て神道に取り込む、だから矜羯羅童子も例外ではない。大和撫子のコンガラも諏訪国に引き込みたいが、まずは会わねば話にならん。一体コンガラはどこにいるのだろうか。

それと似た様な物がもう一つ。コンガラではなくシンガラと読むが、僧伽羅国もある。

 

何か、気のせいだろうが。天智天皇時代は色々多いな、弘川寺に法隆寺の焼失に実妹との近親相姦に藤原不比等の落胤に草薙剣盗難事件。ぱっと思いつく限りでもこれだけある。そう言えばまだあった、天智天皇の奴 確か弟の大海人の妃である額田王を寵愛していた。もしや大海人が出家したのは、あのぱーぷー。天智天皇のせいだったのかもしれん。そして天智天皇は蘇我入鹿を暗殺した事件、乙巳の変の首謀者。だが俺が知ってる限り天智天皇は入鹿と仲が良かったので乙巳の変の首謀者ではない。孝徳天皇は中臣 鎌足に催促され、いや。今は藤原鎌足か、藤原鎌足は青竜に喰われて死んだが。ともかくこの二人が乙巳の変の首謀者だ。しかし天智天皇。思い返せば問題だらけ、あいつ、まさか。天皇であると同時に疫病神だったのか。つまり俺と同じ悪神、な訳ないか。

 

今の所、天界はともかく地上で大鯰の事の懸念が無くなった。それで奴隷について、奴隷関係の情報を1週間程前から集めた。奴隷商人の事に関する情報を依姫と共に情報収集して、それで奴隷商人の関係者を見つけ、奴隷場があると言う事が分かったので、奴隷商人の利用者である関係者に接触して金を少量くれてやり、奴隷商人を紹介して貰う事に成功。後は目の前にいる奴隷商人に奴隷市場まで連れて行って貰うだけの所まで漕ぎ着けた。目の前にいる奴隷商人はがいて、胡散臭そうな笑みを浮かべているが。この奴隷商人、中々日本語が達者で上手い。しかし最近、面倒くさがりな俺が働きすぎている。疲れを癒す為に、そうだな、東に戻る際、伊予国の道後温泉と出雲国の玉造温泉、そして摂津国にある有馬温泉に依姫と混浴する為 寄ろう。本音は依姫と混浴もあるが、有馬温泉に寄るのは摂津国の隣、山城国にいる小町と小野篁そのまま会う事。後は山城国にいる物部の祖神 饒速日 から天の磐舟を貰う事だが。これがあれば空、飛べるし。確か有馬温泉で、大国主と少彦名が金烏を見たんだっけか。うろ覚えだが。そしてそのまま摂津国と山城国の隣にある河内国の弘川寺にいる西行に会う。藤原不比等と妹紅は天皇の血について言わずもがな。だが西行は藤原の子孫、まだ新皇と自称してない平将門と西行は、薄くなっているだろうが天皇の血を持っている。西行と平将門の娘、春姫と幽々子も同様だ。大和の隣にある河内国の弘川寺に西行はいるが、西行の娘 幽々子は大和にいて、藤原不比等と妹紅が住む屋敷にいる。後たまに武家である魂魄家にも幽々子はいる。幽々子はまだ幼い子供なんだが。そうだ、いい考えが浮上。紫と幽香、それにぬえを幽々子に会わせて友達になってもらおう。その時は白蓮も一緒に連れて行くか。今頃、幽々子は大和にいる妹紅と輝夜と咲夜とで仲良く一緒に遊んでいる筈。もう友達になっているだろうが、それでも友達は多い方がいい。実の父が自分を置いて出家したんだ、寂しい気持ちはある筈。まだ幼いのに、幽々子はそれを上手く隠しているがバレバレだ。諏訪国に戻ったら早速、紫と幽香と白蓮を連れ出し、大和に向かう。諏訪子は連れて行くにしても面倒くさがりそうだし、ぬえはたまに他国に行く事があるので、諏訪国で会えないかもしれん。魂魄家は大和朝廷と藤原家に仕えている武家。元は大和にいた西行は出家した、出家とは家庭、身内などとの関係を切り、世俗を離れ、戒を受けて僧になる事の意味な訳だが、つまり娘の幽々子を置いて家を出た事になる。西行は出家の際に衣の裾に取りついて泣く子、まだ幼い幽々子を縁から蹴落として、娘も、家も捨て一句。

 

惜しむとて 惜しまれぬべき此の世かな 身を捨ててこそ 身をも助けめ

 

こう詠んだ。西行は薄くなってるとは言え、藤原不比等 平将門 同様、天皇の血をその身に受け継いでいると言うのに出家するとは、傷嘆。西行がいる弘川寺と言えば、弘法大師が中興した寺だ。最澄はまだいい、だが真言宗の開祖 弘法大師、あいつは本当に、余計な事をした。前に言った通り天竺には仏教が無くなっている。そこでもう一度、天竺の仏教を再興しようと天竺では秘密仏教が始まった。これは、ヒンドゥー教の要素を仏教に取り込んだのが秘密仏教なんだが。結局は天竺の仏教を再興できず、余計にヒンドゥー教を隆盛させてしまい、天竺の仏教は再興できず、そのまま天竺の仏教は衰退してしまう。次に秘密仏教は、天竺ではなくなったが完全には滅びず、そのまま異国の唐土に伝わってしまい、今度は唐土にいた弘法大師が本朝に戻り、真言密教を本朝に齎したりした。弘川寺もそうだが、本当に、本当に余計な事をしてくれたものだな。弘法大師、空海。佐伯 眞魚は。父さんや俺と同じ弘があるが、『弘』としての文字の意味は、広く大きい、スケールや度量が大きいなど、他にもあるがそんな意味もある。

しかし西行共々殺すか、ああ。それがいい。思考としては短絡的だが、この考えが最も確実。弘法も筆の誤りとはよく言ったものだ。日蓮、特に弘法大師は面倒にも本朝を色々引っ掻き回した。それに西行は

 

花よりは命をぞなお惜しむべき待ちつくべしと思ひやはせし

 

願わくは 花のしたにて春死なむ その如月の望月のころ

 

この二つも詠んだ。 花よりは の句は早く逝きたいと思っている様だし、願わくは の方にある望月は釈迦が、ゴータマ・シッダールダが入滅し、空海が入定した日な訳だが。ともかく弘川寺には隅屋桜があり、今は春なので弘川寺にある隅屋桜は満開。今年は無理だ、ならば来年の春の望月にこの俺が西行を殺し、弘川寺にある隅屋桜の桃色を、真っ赤に染めてやろう。情状酌量の余地は皆無。別に、俺は人間を殺す事が初めてではない、だから西行を殺す事に関しては何とも思わん。ついでに西行には黄泉にいる伊邪那岐と伊邪那美によろしく伝えてもらうか。許してくれなくてもいいが、ごめんな幽々子。お前の父親、俺の手で殺すかもしれん。弘川寺もだが、寺とは坊主どもが修業する場所。河内国の弘川寺にいる西行も修業している最中。本来坊主も寺も、墓を管理したり葬式に使う物でも、死者を弔う為の物でもないし、葬式や法事や檀家や戒名などは本来仏教には存在しない上に、本物の仏教である尼僧は剃髪でも有髪でも頭巾など被らない。尼などが頭巾を被っていたのは、確か平安時代辺りらしいが。しかし江戸時代くらいに大衆管理など死んだ人間の供養する物として政治利用された。宗教とは教えを広め、布教する事が主な目的。仏教で言うなら、開祖の釈迦の教えを広め布教する事になる訳だが。神道は宗教ではある、だが神道は本朝だけの宗教なので布教はそもそもしない、本朝以外に広める必要はないのだ。と言うか神道は教義も無ければ、仏教の釈迦の様に創唱者もいない上に教えも何もないから、神道を広め布教するも何も無い。神道は原始宗教、自然崇拝やシャーマニズムと言える。しかし仏教は違う。仏教は時代が進むと布教を忘れ、民衆救済も忘れた哀れな宗教 仏教と言いたいが、更に滑稽で哀れなのが、仏教の開祖である釈迦はそもそも葬式はするなと言っているのに、僧侶などの仏教の関係者が葬式に関わっている所が哀れだ。仏になって涅槃の境地にいるから、もう人間の様な感情は持ち合わせていないだろうが、ゴータマ・シッダールダ。お前は、どう思ってるんだろうか。

 

江戸時代以降、葬式仏教。檀家制度の話だが、まあ、勘違いしやすいが、葬式仏教は仏教ではなく仏教もどきだ。やはり、宗教は結局政治の道具にすぎんし、政教分離は出来ん。いつの時代も宗教と政治は常、共にあり、分離する事は無い。かつて聖徳太子の蘇我入鹿が大和には五色の賤などがあったので、そんな弱者である大和などの民の為、他にも理由はあるが仕方なく仏教を政治利用した様に。聖徳太子が壱萬圓札に抜擢されたのも政治な上、神道も政治と言うより天皇の道具だ。釈迦が葬式などはするなと言った事を僧侶ども、仏教の関係者の何割が知っているんだろうか。釈迦牟尼仏は、ゴータマ・シッダールダは。そんな下らない事の、生業や金儲けや葬式仏教の為に、天竺で仏教の教えを広め、布教した訳では無いと言うのに。寺にいる坊主どもの懐が潤い、坊主や僧侶が貧乏で質素な暮らしでは無く、裕福な暮らしをするなんて、釈迦の思惑から完全に逸脱している。寺とは生業の為にあるのではなく、佛陀の教えを探求し、解脱する為としての修業の場。他には坊主どもが民の為の民間救済や、釈迦の、仏教の教えを民に布教する為の場として寺は建てられ、存在している。だから寺や坊主などが葬式などに関わる事 事態おかしいし、それで坊主が生業している事 事態おかしい。葬式は死んだ者の為では無く、生きている者の為にするものだが、仏教は釈迦が葬式はするなと言ってるし元々仏教にそんな概念は存在しない。例えば、天竺から始まった仏教は色んな国を渡り布教した。色んな国を渡りそれにつれて仏教は本質を変えて行く事になり。他にも天竺の閼伽などを人間が仏教に取り入れたりしたから時代につれてそうなった訳だが。神道の考えは、死んだ人間は霊、または神になる考えで、死んだ後も現世、または黄泉に行ってもこの世に留まり続けるから、死んだ者を供養する必要なんてない。見えないだけですぐ傍にいるからだ、たまに見える時もあるが。とは言え、天津神の1人で、一度殺された天稚彦がいる。天稚彦の妻で、大国主の娘 下照姫は殺された天稚彦の死を嘆き、むせび泣くのではなく慟哭した。下照姫は激しく泣いて、その泣き声が高天原にまで届き、高天原にいた天稚彦の父 天国津玉は、葬儀の為に喪屋を建て殯をした話もある。死んだとは言え天稚彦は蘇生し、今は高天原でぴんぴんしているが。他に神道は御霊信仰の考えもあるから 霊、または神を鎮める為、時には供養する必要もある。有名なので 菅原道真 か、あいつはまだ大和で生きているから関係ないな。原始宗教と言えば、昔からよく言うが神や仏を蔑んだり、疎んだりしたら罰が当たるとよく言う、しかし神や仏はそもそも人間に罰を与える存在ではない。特に真理に目覚め、悟りを極め、煩悩が無い釈迦などの仏は。例えば大和にある蘇我氏の氏寺 飛鳥寺には本尊である釈迦如来像の仏像がある。この涅槃顔の釈迦如来像の仏像に落書きしおうが仏像に土足で乗ろうが壊そうが、仏である釈迦如来は涅槃のままで絶対に怒る事は無い、それは断言できる。煩悩の犬は追えども去らず とも言うが、仏になった釈迦にはそんな煩悩、感情はもう無いからだ。怒るのは飛鳥寺、寺にいる坊主。いや、坊主、僧侶どもが釈迦の教えをちゃんと理解しているなら、仏像に何しようが僧侶共が怒る事は無い。僧侶や坊主が怒る時点でそいつらは寺での修業不足が露呈している。何の為に坊主などが寺で修行してるか、憤怒したその時点でそいつらは正しく理解してない。仏が怒るなんて考えは原始宗教や自然崇拝に御霊信仰の影響で、仏を神格化した考えだ。仏の釈迦、ゴータマ・シッダールダは、元は天竺にあるネパール地方の王子で人間の存在だった筈で、仏教で言う因果応報も、仏が与えるのではなく自然が与えるもので、悪い事をすれば悪い事をした分後々自分に返って来るから、悪い事をしてはいけないと言うこじつけ、理由付けな訳で。要は便宜的な方便。仏が人間に罰を下すから、悪い事をしてはいけないと言う事という理由ではない。厳密言うと違う気もするが、分かりやすく言うなら悪循環か。

 

人間だれもが理不尽な目にあうと、その理不尽な目にあった事についての原因や理由を求める面倒な生き物だからな。原因の理由が嘘だろうが本当だろうが、そんな事はどうでもいい、ただ原因が分からないより、嘘でも本当でも原因が分かれば安心出来る。だからその者に原因を聞かせ、理由を分からせて安堵させていると言う事が重要。高天原、ザナドゥ、南洋幻想、隠れ里、別称だと隠れ世、異界、常世、常世の国、ニライカナイ、根の国、黄泉、須弥山、最後に俺と同じ名字の蓬莱はまだ月の民や月人が地上にいた頃からある。高天原に関しては本朝の各地にあり、一つだけの場所として存在していない。月人や月の民が住む月の事だったり、天上の事でもあるし、平将門がいる常陸国にもあるし、俺がいる日向国の事でもあれば、日向国の隣に実在する阿蘇カルデラの事でもある。月人や月の民が月に行ったその後、天界はともかく、天国はサリエルが創った訳は無いが、神綺が創った地獄もそうだ。元は魔界も地獄も天界も冥界も神や悪魔の避難所として二人は創造したんだが、人間はそう捉えなかった様だ。地獄や天国は死を受け入れやすくする為の虚妄。これも便宜的だが方便の内の一つ。いや、実際天国はあるし地獄は神綺が創ってはいるが。要は、人間を納得させる為の理由付けだ。昔の本朝には、黄泉などはあっても地獄や天国の考えは無かった。それに死んだ後の事なんか分かる訳が無い、帰って来た人間なんかいないんだから。小野篁に鎌倉時代の仏師で一度死んだが、閻魔によって蘇生され、地獄から帰って来た 運慶 の様な一部例外がいるが。地獄の事について 運慶 は神綺によって詳しくは言及する事は出来ないようにされてる。ともかく。理不尽な目に遭うのは悪い事をしたからとか、死んだ後は天国や地獄に行くので、地獄に行かず、天国に行きたいなら悪い事はしてはいけない。と言う教えで方便で戒めな訳だな。昔から言う、嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれるも戒めとして同様だ。それで仏教に仏が人間に罰を下す観念は無いが、神道の神に関してはその通りかもしれん。それは神道の御霊信仰、原始宗教に自然崇拝の名残だろうな。作物が不作に災害や天災、疫病が広まったり。疫病神に夜刀神に祟り神とか。

 

「奴隷商人、生娘はいるだろうな」

 

「いますが、少し男もおります。しかし全員子供で、女も若い上に生娘しかおりません」

 

「じゃあ早く連れて行ってくれ。あ、隣にいる妻も連れて行っていいか」

 

「構いませんが、珍しいですね。夫婦で人の形をした物を見に来るなんて」

 

奴隷商人に夫婦と言われて隣にいる依姫は、目の前にいる奴隷商人に見られない様に、俺の左腕に顔を埋める。依姫はずっと俺に寄り添う感じで隣にいるから夫婦と思われて当然か。依姫は奴隷商人がさっき言った生娘に反応した俺を見て、俺と目線を合わせず俯き向きながら顔を赤くし、左手に絡ませている。依姫の両手の爪が俺の左腕に食い込んでいるが。この時代、奴隷を売る人間も買う人間も普通にいる。そして奴隷だから人ではなく物、いや。物以下の扱いで奴隷は当然、人権なんて持っていない。だから奴隷を買ったらその奴隷を好きに出来る。素晴らしい時代だな、人間を買えるんだから。金さえあれば飛ぶ鳥も落ちる。まあ、全てではないがある程度の事なら金、または物と物の物々交換出来る時代だし。案内してもらうので奴隷商人には先頭を歩いてもらい、隣にいる依姫が俺の腕に頭を預け、依姫の両腕を俺の左腕に絡ませつつ寄り添いながら俺と歩く。依姫は歩きながら俺の左腕に頭を預けながら質問するが、ついでにそのまま俺は左手で依姫の尻を撫でず、思いっきり左手で依姫の右尻を掴んで揉んでいて、依姫の右尻は揉む事に形を変える。依姫は往来でしかも俺達の前を歩く奴隷商人がいるので、恥ずかしいが離れたくないのか羞恥心に耐えている。依姫はどれだけ辱めを受けようと、セクハラをされようと。構って貰う事が嬉しいみたいなので、恥ずかしいから理不尽に暴力を振るう女じゃない。これからは構いまくるし、俺は依姫に辱めやセクハラをしまくる事に決めたのだ。やはり、女性は暴力を振るわないのがいい。神奈子は暴力と言うより俺を殺害する為だったし。とは言え、夫のゼウスには手を出さない変わりに、ゼウスの魔の手にかかった被害者や浮気相手でも嫉妬し、容赦ないヘラの様な女神も困るが。ゼウスに凌辱された被害者にまではやりすぎ。しかしヘラ、ヘーラーがあんな性格になったのは古代ギリシアの詩人、ホメーロスのせいとも言えるだろうが。元はあんな性格ではなかった。ともかく早く諏訪国に帰って神使にした女や、仕えさせた者にセクハラしたい物だ。父さんと母さんに勝手に決められた許婚の夢子とはまだだが、俺は神綺とサリエルとは大和でもうまぐわっている。その時に小野篁の正体を聞かされた。つまりあの女、小野篁は俺と初めて出会った時 以前から無関係ではないと言う事。小野篁は本朝にいる魔界人の1人と神綺に聞いた。他にも本朝にいる魔界人は後、『2~3人』いる。今の所はその人数だ。今の所は。魔界人と言っても人間である事に変わりはないが、あの出会いも神綺と須佐之男によって仕組まれていた様だ。だからあの小野篁と小町が住んでいた屋敷にある井戸は、地獄や冥界に繋がっていたんだな。

 

小町に早く会いたい。確か今の時代の貴族ってさ、妻にする為には露顕の儀とかしなければいかん。しかしその過程を飛ばす。東はともかく本朝の西では夜這いが盛んな訳だが、今は通い婚でもある。過程は忘れたが、結果的には男が女の閨に入り、女は閨に入った男を受け入れられれば夫婦になるとかなんとか、確かそんなんだった。ならば俺も小町の閨に忍び込み、むりや、ではなくちゃんと小町にOKを貰って、夫婦の契りを結ぶ。そうなるとだ、血は繋がっていないが、小町の親である小野篁は名目上俺の義母になる。あれ、何かの神話で実母と実の息子が夫婦になる話があったような気が。小野篁は実母では無く義母になるので問題は、あるが。実妹や実娘に手を出そうとしている近親相姦上等の俺にはない。人間が作った決まりや法に神であり大魔王の俺が従う義理がある訳ないし。

 

しかし、神であり大魔王の俺が、 第六 天魔王 と並ぶ大魔王、セクハラ大魔王であるこの俺が、折角ナズーリン 影狼 星 文 はたて 椛 鬼神のパルスィに鬼のヤマメとか紅葉とか仕えさせたのにセクハラしてない。美鈴も仕えさせて妻にしたのに、あの綺麗な生足の脚線美に触ったり擦ったり、美鈴のスリットからはみ出ているすべすべの太ももから足の付け根まで撫でるなどのセクハラ出来てない。特に天狗の 文 はたて 椛 それと美鈴は早い段階からお互いの事を知ってたのに。美鈴にはセクハラ発言はしたが。鴉天狗の文とはたて、または狼の影狼に椛は同じ種族なので、前者も後者も3Pでしたい。特に後者は獣の様に。ああ、諏訪国は俺の女を侍らせる為の国なのに、こんなにも近くて遠いぜ。輝夜は確実に抱くので、セクハラする以前の問題。輝夜は俺の実妹だろうが近親相姦上等。実娘の諏訪子は、今の所はセクハラだけで済ます。だが諏訪子は子供の頃の永琳に似てませてるし。セクハラしても効かなそうだ。

諏訪は国のまほろば たたなづく青垣 山隠れる 諏訪し うるわし

 

紫に幽香はあの時、俺と永琳の娘に、養女にした時は中学生くらいの子供だったが、今はくびれも出来て、出る所が出て、絞まるとこは絞まってのナイスバディに成長している。早く諏訪国に帰り、二人にもセクハラしたい。幽香の手を掴んで痛いくらい引っ張り、次に幽香を壁際に追い込み、幽香の体を壁際に無理矢理向かせ壁に両手を付かせ尻を突き出させる。次に幽香の後ろから両手で幽香の両胸を揉みつつ逃げられない様に、幽香の背に俺の体を預ける様 圧し掛かりをしながら幽香と口吸い。こんな事しても、この程度のセクハラでは幽香は動じないだろうし、他には押し倒しても幽香は動じず、そのまま素直に喜んで受け入れるだろうから、逃げられない様にしても意味が無い。最初から幽香はセクハラをされても受け入れる準備万端で、何をしても喜ぶし逃げる気が無い。紫は違う。紫はセクハラしたら間違いなくスキマを使って逃げるので、紫の両手の手首を俺の左手で纏めて掴んで、逃げられない様に乱暴で強引に壁際にやり、口付けしながら俺の右手を使い紫の体を触り、セクハラする。後は、普段通りに紫と会話している時に、いきなり紫を押し倒して紫の狼狽える様を眺めてから、服を一枚一枚脱がして犯す。それも興趣で感興で淫楽だ。しかし一回しただけじゃあ紫に幽香は孕まないだろうし、何度も何度もしなくてはいかん。まるで強姦。うむ。早く手を出したい。生娘の紫、または幽香は最初、快楽で恍惚になるのではなく、股の苦痛で顔を歪めるだろうが。紫や幽香だけでなく他の者にも何度もだ。

 

こんな事を考えるとは。俺、溜まってるんだな。性欲を禁じ得ないなら、暫く、当分出せないくらい程 枯れるまで、依姫を組み伏せて舌を絡ませながら服を無理矢理脱がせ、座位の体位で犯そう。月人は子供が出来難いので、一度だけではなく、俺が藍を抱いて何度も中で出したように、依姫には何度も中で出さなくてはいけない。中で出す事に体位を変えるので、処女の依姫の体や依姫自身などが持てばいいが。先に依姫を犯すので豊姫が煩いかもしれん、まあいい。そう言えば藍との体位は正常位で、お互いの体を絡ませてお互いの両手を絡めせてお互いの舌を絡ませての三コンボだったな。

今は日向国にいるので、紫と幽香、鬼女に天狗に神使にした者達全員を美味しく食べるのはもう少し後。ルーミアは美人で好みだが、まだ悪友の関係を続ける。その内、手を出すだろうが。キスメや白蓮は、幼すぎるのでまだ手は出さないし、成長するまでの間セクハラは無し。そもそもキスメが成長するかどうか不明だが。白蓮はまだ幼い子供、しかし、何だか白蓮が成人女性にまで成長したら、見た目が、未亡人の風采や容貌。風貌を白蓮は醸し出す様な気がする。最高じゃん。それもエロくていい。白蓮が巨乳になったら後ろから揉みしだこう。白蓮を押し倒して無理矢理唇を奪いながら、両手でデカい胸を揉みしだくのもいい。てゐやナズーリンのセクハラはギリギリセーフ。いやある意味アウト。しかし今の時代だとセーフ。萃香も本来アウトだが、まあいい。萃香などの鬼女には俺の子を産んで貰おう。異国で 5歳の ただの 人間 の少女が妊娠して出産したなんて話もあるくらいだし。あー 早くセクハラしたい。

 

暫く日向国に留まるので、まずは、依姫を犯す。月人は子供が出来難いが、もし産まれたら。産んだ子には俺の師匠と依姫直伝の剣術でも学ばせる。そうなると刀や剣が必要だ。天照から何か貰う。そうだな、まず日本神話に出てくる天羽々斬は刃が欠けているので使い物にならん。天羽羽矢は永琳が持っているが、今でも都市があった時に俺が買った原始的な弓と矢を持ち歩いているので、歩靱と天羽羽矢は神社の裏にある蔵に眠っていて結局使わずじまい。勿体無いものだ。天羽羽矢を使えば神力を用いると、光の矢が生成出来て、そのまま光の矢を放つ事が出来るのに。しかも光の矢を妖怪が喰らったら、妖怪は成すすべなく一瞬で消滅するので、妖怪からしたら天羽羽矢を持った相手とは会いたくない武器の一つ。もう一つの片割れである天鹿児弓も元は永琳が持っていたが、今は別の女が持っていて、パルスィは三振りの宝剣で魔剣でもある 大通連に小通連と顕明連を持っている。仕方ない、大和からソハヤノツルギか膝丸か髭切でも頂く、それか、新たに剣を作ればいい。製鉄で鍛冶の神である天目一箇ともう一人の鍛冶の神である天津麻羅に頼んで、二振りか三振りの刀、または剣を作ってもらうとしようか。そして最後に今、俺は依姫と日向国にいる。その日向国と、その日向国の隣にある大隅国の境には、霊峰の高千穂峰がある。この場所、高千穂峰は、天智天皇など、一部暗殺されたが隠居した過去 天皇の祖神で天照の孫 瓊瓊杵。 瓊瓊杵が天孫降臨した場所は他にもあるが、この場所もそうで、その1つが高千穂峰。そして高千穂峰の山頂に伊弉諾と伊弉冉がかつて持っていた物、玉で飾られた矛の天逆鉾がある、これは高千穂峰の山頂で今も突き立てられながら刺さっていた筈だ。この天逆鉾もついでに頂く。他にもやる事が多い。

 

依姫に豊姫と龍神、輝夜に衣玖が住んでいた竜宮城。豊姫のペットでそこにいた霊亀の玄爺に今 青娥は乗って、俺が頼んだわけではないが今は天竺にいる筈。元々青娥は、月の民や月人の手により幽閉されていたが、俺が月に行き、月人などを奴隷にした際、いや。まあそんな事はどうでもいい。ついでに青娥にはそのまま異国の唐土で何か持って本朝に来て貰おう。八卦炉とか。唐土には元、天界にいたユウゲンマガンがいる、元 天界にいたくるみに魅魔は天竺。エリスは天子と共に天竺で共にいると聞いている。エリスの奴は神綺とサリエルに頼まれ、天子の監視役の為に一緒にいるだけだが。くるみに魅魔が天竺にいるのは別件。魅魔は神仏習合の元凶である天竺の人間に復讐する為、今頃は殺戮してる。別件があるのに、多分天竺にいるのはそれが本命だろう。あいつ、神仏習合の元凶に復讐するとかなんとか言ってた様な気が。しかもあいつは、人間の世界は自分の物とか本気で思ってるし。いくら人間を殺しても問題は無いと考えてそうだ。俺よりあいつの方が亜神で邪神と言えるかもしれん。そう言えば、天竺にいる華陽夫人の結末は、耆婆という人物が華陽夫人を魔界の妖怪と見破られ逃げたんだったな。だがそんな事は確実に起きない。まあ魅魔の奴は、魔界の妖怪でも悪魔でもないが、しかし華陽夫人は魔界を創った神綺の関係者。華陽夫人は偶然 天竺にいる訳では無く、理由は神仏習合のせいで、これも意図的にだ。だから華陽夫人は天竺の人間を殺しまくっている。華陽夫人を初めて見た時は美人だったなー 昔から知ってて顔なじみのエリスに魅魔にユウゲンマガンやくるみは言うまでもない。他にもいるが4人の事を思い出したら久しぶりにエリスや魅魔、ユウゲンマガンにくるみの両胸を俺の両手で揉みしだいてセクハラしたくなった。そんな事をしたら俺は確実に殺されるが、今の俺は死なない。しかし華陽夫人の本名は何だったか、もう少しで思い出せそうだが。駄目だ、思い出せん。

これだけでもあれなのに、錚々たるメンバーが他にも天竺にいる。天竺にいる天子は苦労しそうだ。魅魔が関係するなら他人事ではないとは言え、頑張れと他人事の様に、無責任な事は言わんが。天子、過労で倒れるなよ。くるみはまだまし。だが俺達の中でも、特に魅魔は強烈な女だし。

 

実妹の輝夜のお蔭で、俺の人生の終着点に近道が出来て、辿りつくのが早くなったが。まだだ、まだ駄目だ。だからこそ、俺は急がなくてはいけない。俺は今も昔も、蓬莱山家に産まれ、まだ子供だった俺が、神綺や永琳やサリエル。悪魔の女達であるあいつらなど、他にもいるが初めて出会い、公園で友達になった時から。産まれた時に持った夢や、三つ子の魂百まで。

昔から、数億生きても俺は何もかも 終天で、恒久で、無限で、不易で。常。

俺の名は弘天。弘の意味はさっき言ったが、天は天地 万物の支配者に物事の最初や無限の空間の意味がある。

 

「弘さんは。き、生娘が好きなんですか」

 

「好みの女なら生娘じゃなくても構わんが。どちらでも好きとは言え、生娘の方が好きだし依姫は日向国で確実に抱くぞ」

 

依姫の脳の容量を超えたのか壊れたラジカセのみたいに何度も、だ、だ、抱く抱く抱く抱く私を抱く。と繰り返す、奴隷か。気にいったのがいれば全員買うか、幸いにも龍神から貰った龍の頸の玉を持っている。もしもの時、諏訪国の金が肝心な時に底を付いたら、諏訪国の為に売って金にしようとしていた。どうでもいいが龍の頸の玉は赤、青、黄、白、黒の5つな訳だが、これ 赤竜 青竜 黄竜 白竜 黒竜の五竜を、五竜の内の一人で黒龍である龍神は意識してんのかね。麒麟山にいる麒麟、名は白沢にあの時聞いたが確か 冴月麟 で、麒麟の冴月麟は黄竜でもある。じゃあ五竜の内、最後に残ったのは赤竜だけか。四神の残りは白虎。虎か、そう言えば、星は虎であって虎では無い妖怪だったな。これは使える、白虎は使える。

 

奴隷商人の後に続いて歩いていると狭い道に入り、辺りが暗くなった。上を見たら布かなんかで上から見えない様に隠している様だ。奥に進むと1人の人間が寝ころんでいる。服装はボロボロで汚く、頭ももう何年も洗ってない感じ。依姫はその人間を見て身の毛がよだったのか、声を漏らし両目を瞑り、俺の左腕に依姫の両腕の絡ませているが、絡める力が強まる。奴隷商人がその寝ころんでいる男に何か言ったが、多分合言葉だろう。合言葉らしき言葉を聞いたら、寝ころんでいた男が立ち上がりカギを奴隷商人に渡す。警戒は怠って無い様子、奴隷ともなると面倒で煩いのがたまにいるから仕方ないが。その奥に進むと、洞窟を発見。それで洞窟を奥まで進むが結構な距離を歩く。蝙蝠などがいる薄暗い洞窟を奥まで進むと光が差してきた。どうやらやっと外に出られるようでそのまま洞窟を抜けると、そこは辺りが森で樹海。それと一つ民家が森に囲まれながら建ってあり、奴隷商人がそのまま民家の中に入るので、俺と依姫も続く。中に入ると家具などもあり生活感漂う民家だ。誰か住んでそうな雰囲気だが、雰囲気だけで人の気配が無く誰もいない。カモフラージュの為だろうか。壁には不恰好にベニヤ板がありそこだけよく目立つ。奴隷商人がベニヤ板に近づいたのでベニヤ板の奥に奴隷がいるのだろうかと見ていたが、腰を屈めてベニヤ板の床に右手を使い三三七拍子で軽く叩く。叩き終え、数秒程したら床の一部が開いて床から1人の女性が出てくる。どうやら奴隷商人の仲間なようだ。開いた床を見たら地下へと続く階段が露に。奴隷商人に、付いて来てください。と言われたのでの俺と依姫は後に続いて奥に歩く。地下なので薄暗かったが、奴隷商人が持ってる蝋燭のお蔭で明るくなりそのまま奥まで進む。明るくなった地下を歩いているが、どうやら、この地下1本道の様で、その1本道の最奥まで着いたら、両脇に鉄格子があるんだが、鉄格子の中を見ると当たり前だが男と女に分かれている、右手側が女、左手側が男の奴隷で大人は1人もいない。どちらも子供しかいない様だ。しかし見るに、やはり女が圧倒的に多いな。その中でもまだ子供だが将来性抜群の子供を腰を屈めて見る。その子供は他の奴隷たちと同じように両手の手首、そして首を鎖で繋がれ、やる気を感じ無いと言うか、放心状態で虚ろな表情で何処を見ているか分からない目で俺を見ている。心を潰されたか、もしくはいかれたのだろうか。なら早い所この場にいる全員の奴隷を買って出してやり、鱈腹美味い物を喰わせるか。少女たちを将来ナイスバディにさせる為、まずは胃に優しいお粥から。急いで食べて奴隷たちの胃が破裂したら困る。

 

ならば龍神を使うべき時かもしれん。甘えている依姫には悪いが、先に外に出て龍神、または衣玖に食べ物を用意してもらい、奴隷たちに食べさせよう。この奴隷たち、そして依姫に衣玖と龍神。暫くは日向国で一緒だ。この奴隷たちに一度、身寄りがいるかどうか聞いて、身寄りがいなければ、紫や幽香を俺と永琳の娘にした様に、俺と依姫の子にしてもいい。もしかしたら100人越えの大家族になる。あ、衣玖も来るなら衣玖にセクハラしてみよう。一体どんな反応をするのか楽しみだ。依姫と豊姫は都市があった時から俺はセクハラしてる、依姫はセクハラすると逃げる時もあったが、構って欲しい時は、逃げずに辱めを受けてもそれに耐え、我慢していた。豊姫は俺のセクハラを喜んで受け入れていたが。そもそも俺は月に行った時に豊姫と依姫を抱いてはいないが、抱く以外の事はその時にしている。月人を奴隷にする為月に行き、二日後に会議があると依姫はそう言った。あの二日間の時に豊姫と依姫とはまぐわい以外をしている。この場にいるもう一人のこころはな。こころは知識はあるみたいだが、心が無いので、セクハラやセクハラ発言しても無反応だろうし、どうしたものか。

依姫は不満顔だったが渋々頷き、俺の左腕に絡ませていた両腕を依姫は離して名残惜しそうに、依姫は一足先に地下から出て外に向かい、龍神と衣玖、そして龍神が住んでいた洋風の城 事地上に持って来て貰う。あの洋風の城には玉座があった筈。その玉座に俺が座って、どこぞの王の様に尊大で偉そうに足を組んで踏ん反り返るか。天界と言えば、白沢が言ってた事だが、サリエルが創った天界には白沢がいると言っていた。白沢は今も天界にいるとは言え本来、異国の唐土に住む瑞獣なんだが。しかし他にいたな、その白沢とよく混同される生き物で、同じ瑞獣の、『獏』が。後 他に天照の所に神使として二羽いる八咫烏であり鳳凰、豊姫のペット、名は玄爺の霊亀、九尾の狐、本朝にある山の一つ、麒麟山に住む黄龍で麒麟でもある瑞獣達とか。それと白沢には娘の慧音と夫婦になって欲しいと前に言われた。慧音と夫婦になる事について俺は承諾したが。その慧音にはいつ会えるだろうか。案外

俺は腰を屈め、子供と目線を合わせ名を聞くと、その女の子はまともに食事も与えられていないのか痩せこけていて、声もかすれた声で返答。飢饉してないのが幸いか。苦しくなる程、お腹一杯食わせてやる。

 

「俺の名は弘天と言うんだが、君は何て名だ。良かったら教えて欲しい」

 

「・・・・・レイラ・プリズムリバー」

 

レイラ・プリズムリバーか。この少女、まだ子供だがいいな。レイラと話していたら俺の側頭部にいるお面のこころが動いた、こころには心が無いが、レイラに何か感じる物があったんだろうか。レイラとこころはある意味似た者同士かもしれん。こころは心を持っていないが、こころの感情を操る能力を使い、この少女、レイラの心を修復する為にこころの能力を使ってみよう。ならば奴隷たちを買った後でレイラには、お面のこころを渡して置く。他にいいのがいるかと思い、奴隷の少女たちを見渡すがもう2人いいのがいた。片方は咳を出している。風邪か、または喘息持ちなのだろうか。奥の方にいるので話しかける事も出来ない。そして気になるのがもう一人、まだ幼く見た目から推測するに6、7歳くらいか。だがこの陸美と両手が鎖に繋がれた少女、俺をさっきからじっと見ている。この子も将来有望そうだ、近くにいた奴隷商人に、まず先に咳を出しているそのお目当ての女を、右手の人差指で指してまだ売っているかどうかを聞く。後で買うから置いといてくれと言う客がいるかもしれないと思ったからだ。聞いてみると奴隷商人は、咳を出している少女は魔女だそうで、魔女を折角捕らえたのに値が張りすぎて全く売れないと嘆く。どうやら捕らえるのに苦労した様だな。あの少女、喘息持ちなのかは知らないが、病弱そうで、あの喘息持ち少女、魔女なのか。いいな、とてもいい。咳を出している少女、ここから見ても結構可愛いし。何かの病気でも、永琳に頼んで治してやればいい上に、不治の病なら月に連れて行って、俺の奴隷である月の民や月人を使い、少女の病を治してもいい。もし喘息程度なら月に連れて行くまでも無いが。あの少女が魔女なら、白蓮と友達になってもらい、白蓮に魔法を伝授して欲しいな。そして気になっていたもう一人の少女、その少女は面倒くさそうな顔をして、変なのが来たと言った表情で、俺を見ている。その子について奴隷商人に聞くと、能力持ちなようで空を飛べるんだと。能力持ちは貴重なので奴隷として売っているそうだが、凄いな。天の羽衣や、咲夜が月から地上に来る際に使った、月の羽衣無しで飛ぶなんて。しかも人間なのに。それと奴隷商人から話を聞くに、レイラ・プリズムリバーは魔力持ち。レイラはまだ魔女の卵の様な物らしく、それでも魔法で騒霊を出す事が出来るみたいで、だが実体や自我を持っていなくて最初は幻聴や幻影だったが、今は会話ができる所まで来ていて、しかもそれはレイラ、少女が使える大魔法。凄いがつまり、この場にいる奴隷の少女たちの中には魔女が二人いる事になる、レイラは魔女と言うより魔法使いだろうが。ちなみにその騒霊は 3人 だけでなく、もう1人いて、計 4人 の騒霊がいるそうだ。うむ、大体見定めたし後は買うだけだ。俺は後ろにいる奴隷商人に話しかけながら右手を懐に入れ、立ち上がる。だが この少女達が将来いい女になったら俺の女にしたいし、先行投資の為、今の内に唾を付けておこう。特に、魔女の二人には。もう一人の女の子も今は like だが、いつか love になるかもしれん。

 

「そうかそうか。ならば奴隷商人、ここの奴隷市場と奴隷全部、俺に買い取らせてくれんか」

 

「面白い事を言いますね。失礼ですが、この奴隷市場を買い取る事を出来るとは、とてもとても」

 

奴隷商人は、俺が冗談を言ったと思った様で軽く笑う。今 俺は地下にいるが、地上には森に囲まれた民家がある。見た感じ使ってなかったし、ここをついでに買い、暫く拠点にする為、懐に入れてあった龍の頸の玉の一つを右手で取って奴隷商人に差し出す。ただ奴隷の数が100人は超えているので、龍神に頼んで、龍神が住んでいた天界にあるバカでかい洋風の城。それ事地上に持って来て貰おう。それがあれば奴隷の皆が住める。何とも好都合、あの洋風のお城を建てた人物、神綺には感謝だな。幸い、この辺りは山奥で森の奥にあるみたいだし、人目につかないだろう多分。しかしこの上にある民家の周りは森に囲まれている、仕方ないから周りの木や草木などを切り倒す必要がある。龍神に頼んで天界にある龍神が住んでいる洋風の城ごと持って地上に来てもらうんだし。まあ、問題が起きても天照から貰った俺の首にかけてるのを使えばいい。そもそも俺は西の人間と神を風靡している様なものだ。妖怪はまだだが。奴隷商人は龍の頸の玉を見て、駭魄。一目で価値が分かったようだ。龍の頸の玉は国を傾け、一生遊んで暮らせる程の価値がある事に。奴隷商人が両手で龍の頸の玉を受け取ると、呆気にとられているが、この奴隷市場。他にもないか後で奴隷商人に聞いておこう。蛇の道は蛇だ。龍の頸の玉を奴隷商人に渡すのは一つだけで。残りの4つは奴隷たちを各地に向かわせる時に軍資金として奴隷にやる、役目を終えたら奴隷たちは自由になりその金で死ぬまで遊べるだろうし。どっちにとってもWin-Winなので奴隷に不満は無い筈、表向きは奴隷扱いだが、俺の頼み事は奴隷を使い西の各地に神々がお怒りだと吹き込む事、だから俺の元から離れる事が出来るので奴隷じゃなくなる、つまり物扱いでは無くちゃんとした人扱いになり、人権が手に入る。ただ大和に住むとなると五色の賤があるので、それでは本末転倒。だからどこかの山奥に集落でも作る様に言うが。それに100人超えるか超えないかの人数ならどれだけ金を使っても無くならん。死ぬまで安泰だ。5つの龍の頸の玉、色は赤、青、黄、白、黒の5つあるが、奴隷商人に1つ渡した色は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和の北西、1つ左上には摂津国がある、大和でした神議るの最中、天照が積雲乱が妖怪化したと弘天に言ったが、それは入道雲の事。現在、摂津国の天気は暴風で、暴雨。雨が荒々しく降り注ぎ、雷がけたたましく、轟音で鳴っているが、まるで嵐や暴風雨。だが女性は気にせず、彼女は袈裟を着て、紺色の頭巾を頭に被り、紺色の頭巾の下からは空色や水色の髪色が頭巾から出ていて、彼女の顔の左右から出ている前髪がセンター分けなのが伺える。センター分けの前髪の長さは、彼女の鎖骨辺りまでだ。こんな天気ではあまり意味が無いが、その紺色の頭巾の上からは、雨を防ぐ為に笠を被り、1人で夜道を歩いていた。その女性は昔、若狭国に住んでいたが、ある出来事で不老不死になり、どれだけ時間が過ぎようと老いず、永遠に若さを保つ人間になってしまった。本当なら彼女は、どこかの漁師の息子と夫婦になり、子を産み、子が成長するにつれて老いて行き、最後には皺まみれの媼になり、生涯を終える筈だった。だが彼女の親は漁師で、元々住んでいた若狭国には海が傍にある。そこで親の漁師が人魚を捕らえ捌いたのはいいが、その漁師は人魚の肉を食べると不老不死になると聞かされる。不老不死になってしまうと聞かされた漁師はそれを恐れ、人魚の肉を食べるのをやめたが、漁師の娘の彼女はそんな事 露知らず。人魚の肉を食べてしまい、彼女は不老不死になってしまう。不老不死になってしまったせいで周りの者、身内や友達などが、自分を置いて先に死んでいくのに対し、自分だけは年を取らず、若々しい容姿で皺も出来なく。いつまでも媼になる事が出来なかった。彼女はそれに嫌気が差し、全て捨てる為出家を決意し、彼女は若狭国から出て西の各地で行脚に出る事に。行脚とはある目的で諸地方を巡り歩く事の意味がある、彼女の目的は人間の敵と言われる妖怪と仲良くなって、ずっと一緒にいられる友達を増やす事。不老不死の彼女はもう人間と仲良くしたくないと考えている。仲良くなって友達になっても不老不死である彼女は、最後に置いて行かれる事が目に見えているからだ。そこで、人間がいれば永遠の存在である妖怪と友達になろうと動いている。神とも友達になろうとする考えた、しかし不老不死とは言え彼女は人間。輝夜の能力で永遠となった。本質は同じだが、妖怪と対極の存在。永遠の存在の神と友達になろうなんて、人間である彼女は烏滸がましく、畏れ多いと考えているのでする気は無い。神の方から友達になろうと言われたら話は別で、その時の彼女は狂喜乱舞する程大喜びするが。

摂津国のある夜道を彼女は歩いているが。その夜道には積乱雲が妖怪になった者がいるそうで、その妖怪が出る時の天気は大荒れになるとの事。今も彼女が歩いている夜道も雨が降り雷が鳴り響いている。それを耳に挟んだ彼女は画策。自分は不老不死になってしまった、だから人間の友達などは作りたくない。彼女を置いて、先立たれて行くのが分かっているのに、伴侶など以ての外。しかし寿命が無くなった不老不死の彼女、そんな彼女と一緒にいられる永遠の存在である男の伴侶なら、話は変わる。だが、まずは人間ではない存在、永遠の時を生きる妖怪と友達になろうと、彼女は考えてこの場にいる。本当は怖くて仕方ない、妖怪は人間を喰う上に人間の敵だから。だがこれ以上、1人は寂しく、もう耐えられないから嫌だ、それに自分は不老不死になっている、だから死ぬ心配は無い、とは言え、やはり怖いものは怖い。不老不死でも、彼女は本当の意味で永遠の存在ではないので、痛みを感じない訳じゃ無いからだ。

彼女は酷い天気の中、夜道を歩いているが。何か物音がした、彼女は物音がした方向に目を向けると、現れたのは平均より高めな身長の袈裟を着た僧侶。見越入道の見越は隔てている物の上を越して見る事で、入道とは西行の様に坊主頭の者の事。捻りも何もなく、その名の通りの妖怪。だからこそ彼女は、この者が見越入道と一目で 出たわね と見抜く。最初彼女は、目の前に現れた袈裟を着た僧侶を見ていた。見ていたと言っても足だけだが。次に顔を見ようと彼女は顔を上げる。すると袈裟を着た僧侶は大きくなり、彼女もそれにつれて僧侶の顔を見ようとしても、僧侶もそれにつれてどんどん大きくなっていく。本来なら、彼女は見越入道をそのまま見続けてはいけない。見続けていたら死んでしまうからだ。だが、彼女は今や不老不死。だから死ぬ事は無いし、見越入道に 見越入道、見越したぞ そう言う必要はない。見越入道は彼女に見られていて、今もだんだん大きくなっていく。しかし見越入道は表情に出してはいないが、喫驚。もう彼女がもうこれ以首が上がらない程、約3メートル程、いや。それ以上にまで大きくなったのに、彼女が死なないせいで窮している。この状況でも暴風で、暴雨で繁吹きながら、雷雲が響き彌漫。大荒れな天気の原因は目の前にいる見越入道で入道雲が原因。過酷な光景だが、そんな過酷な光景だからこそ、蓮の花や、可憐な一輪の花などが咲く様に、彼女は3メートル以上大きくなった入道雲を暴風で暴雨の中で、雨や風に打たれながらも、入道雲を見上げたまま微笑み、手を差し出し円滑に、妖怪である彼と友達になる為 まずはその第一歩として。自分の名を名乗る事に。

 

「私の名は、一輪。貴方のお名前、教えてくれないかしら」

 

見越入道の名を聞く、聞かれた本人、入道雲で見越入道は僧侶の姿で眉を顰めるが。自分を目の前にして毅然とした態度を崩さず、しかも死ぬ事が無かった彼女に、一輪に対して機微に触れ、感銘を受けた見越入道は名を教える事にした。見上げる程高く袈裟を着た僧侶から、見越入道は本当の姿、雲で出来た入道雲に戻る。入道雲であり見越入道は人間の様に声は出せない、そこで雲の様な物で出来た体を使い、雲の体を一部だけ用い、人間と同じ手を作り出して彼女の手と握手。次に握手したまま雲の体を文字に変形させて、彼女に見せる。彼女は見越入道の体が変形した文字を見ると

      

       その名は、積乱雲が山の様に、巨大な雲としての意味である

 

                   雲

                   山

 

  その後、彼女は人間に入道使いと呼ばれ、見越入道で、積乱雲が妖怪化した入道雲。彼の名は雲山。彼女の傍には雲が常に傍に居る意味で一輪は

                

                雲居一輪と名乗る。




皆さんは要石と言えば茨城県の鹿島神社や千葉県の香取神宮が思い浮かぶと思うのですが、日向国、宮崎県には高千穂神社があります。鹿島神宮に伝わる要石は同神宮の社殿造営に際して、当神社より贈られたものと伝えているそうです。つまり、鹿島神宮に伝わる要石は、元は高千穂神社に要石があったのではないかという私の独自解釈な訳です。ついでに言うなら高千穂神社には鎮石があります。元々、鹿島神宮にある要石に大鯰が抑えられているなんて、要石が鹿島神宮にあったことによる後代の見付だそうですけど、弘天を日向国に行かせる理由作りの為、高千穂神社と大鯰の話を使いました。東に弘天をまだ行かせる訳には行かないから仕方ない。そして豊姫と依姫は豊玉姫命と玉依姫命とは名が似ているだけの別人。本当はもっと複雑な話なんですが割愛。厳密に言うと違う気もしますが、一言で言うなら親戚同士と思ってくださればいいと思います。

地の文で書きましたが、豊姫と依姫は弘天とのまぐわい以外をもうしてます。その話は29話のサブタイトル「掌握」の事でして、犯ったのは永琳と同様でフェラとかです。何の為に弘天を月に行かせた後、そのまま月人を奴隷にせずに、依姫に二日後に会議があると弘天は言われ、弘天が二日後に月人を奴隷にするかと私が書いたのは、全てその為です。

前書きで書いたのはレイラ・プリズムリバーと魂魄妖忌の事です。ついに出せた。この二人はちゃんとした公式キャラ。そしてレイラ・プリズムリバーですが、稗田阿求は、騒霊は少女が使える大魔法の一つとも言われている。と書いていた筈。マジックアイテムを使っているとは言え、騒霊は少女が使える大魔法の一つと書かれているなら、レイラを魔女、または大魔法使い扱いにしようと考えこうなりました。だから魔女は日向国に二人います。
これ結構大事ですが、レイラと話している騒霊はあの三姉妹だけではなく、もう1人いて計4人です。その4人目は、旧作キャラで騒霊(ポルターガイスト)のカナ・アナベラルの事です。
地の文で書いていますがここでは、平貞盛ではなく替わりに魂魄妖忌が平将門を討つべく、東に向かっています。オリジナル展開だからね、仕方ないったら仕方ない。歴史愛好家さん本当にすいません。

問題は妖夢。彼女をどうするか悩んでいます。何せ、彼女は銀髪です。そして二振りとは言え剣を持っています。楼観剣は妖怪が造ったそうですが、その程度、天津神の製鉄で鍛冶の神 天目一箇に作らせれば造作もありません。依姫はここでは薄紫色に近い銀髪にしてますし、剣を持っています、でも妖夢を武家にして藤原家に仕えている魂魄家の娘か孫にして幽々子に仕えさせたい。どっちの話も書きたいし、実に悩ましい。一体どっちを選ぶべきなんだ。

鬼女の数を増やした一つの理由は魏石鬼、八面大王。八面鬼士大王が理由の一つで、長野県(諏訪国)にいたとされる伝説上の人物です。この人、8人の首領を戴く盗賊集団とか鬼の名だとか悪路王並に色々言われています。しかも、この人も犬神丸に大嶽丸や悪路王と同じで、坂上田村麻呂に討伐されたと言われています。まあ魏石鬼の話、坂上田村麻呂は、武家社会に進出したことを象徴する人物の一人と言われる藤原利仁と混同され、この話は忠実では無く、おとぎ話のようなものだそうですがそれを言ったら他の話も

病弱で喘息の魔女に、人間の存在で主に空を飛ぶ能力。一体何者で、誰の事なんだ・・・・・・しかも仏教における「空」にも関係するなんて。益々難解だ・・・・流石の皆さんも何者か分からないでしょう。何故なら彼女であって彼女ではないからです。私は旧作も


小野篁については結構有名なのでご存知だと思いますが、鎌倉時代の仏師で一度死にましたが、地獄の閻魔によって蘇生され、地獄から帰って来た 運慶 のお話は神奈川県にある円応寺の笑い閻魔の事ですね。他に地獄に関係するのは、平将門などもいますが、平将門は地獄だけではなく冥界伝説もありますので、冥界にも関係してます。その地獄と冥界は、一体、誰が創ったんだ・・・・・・平将門だけの事ではありませんが、平将門はオリキャラでは

当初のプロットの一つに弘天を弘法大師の役目にする考えがありました、兵庫県神戸市の須磨寺前、須磨智慧の道には、弘天さんと言われる五角形の輪の智慧の輪くぐりがあります。これは弘法大師の 弘 と天神である菅原道真の 天 から弘天さんと名付けられた物で、私が弘天を弘天と名付けた理由は他にもあるのですが、その為の理由の一つとして弘天は弘天と私は名付けていました。勿論、弘天は福岡県にある弘天神社の意味もあります。阿曇氏の意味も含めてです。だからこそ私は依姫を。
他にも弘天として名付けた意味もあります、ですけど弘法大師の事についてはこの先やる事が多いしやめました。気が向いたら別の話として、弘天を弘法大師として書く気は、無いです。

雲山は見越入道と、高入道は摂津国(大阪)の妖怪でして。だから雲山には高入道の話を混ぜてますのでこうなり、積乱雲については入道雲の事で、当然、積乱雲の雲山は凄く大きいです。そしてここでの一輪は、前話の地の文で書いた、人魚の肉を食べて不老不死になってしまう八百比丘尼。ですが不老不死と言っても永遠の存在では無いかもしれないような、でも永遠の存在な曖昧の存在になるかもしれません。八百比丘尼の話ってスサノオ並に色々面倒です、いろんな話がありますからね。人魚の肉を食べた八百比丘尼は、不老不死とか言われたり不老長寿とか言われたり、餓死して死んだとか、洞窟に入ってそのまま出てこなかったとか、八百比丘尼は色んな話が多すぎる。鬼界カルデラは縄文時代に噴火したと言われる活火山です。天岩戸の話に太陽が隠れたと書かれていますが、その話はこの鬼界カルデラが原因ではないか。とも言われています。

ここが一番重要、今まで私は東方キャラに対しセクハラ だけ で抑えてきました、ですがこれから弘天には実妹だろうが実娘だろうが、今まで妻にした東方キャラ、神使にした東方キャラにまで手を出させるのは確実。それで藍の様に懐妊する可能性が高い上に、今回の話の地の文で書いていますが1人や2人程度じゃ収まらない可能性大。あの萃香にも手を出すかもしれないですし、鬼女達には前鬼に後鬼、その子である五鬼。藤原千方の四鬼に両面宿儺や八瀬童子。八面鬼士大王を産ませたとしても、当然オリキャラなので出番は皆無に等しいのですが、妻にしたなら折角なので鬼女たちや、鬼女たち以外も妊娠させ産ませたいと私は考えてます。有名な妖怪の雪女なども妊娠して子を産んでいますから、妖怪の鬼や天狗に河童。妖怪では無い魔女など、それ以外の妖怪がコンセプション。受胎や妊娠してもおかしくない筈。元々、白狼天狗の椛は長野県の妖怪、鬼女の紅葉にする予定でしたので、鬼女たち同様、椛も妊娠する可能性が高い。レティや文にはたても・・・・・何故なら前鬼は後に天狗になったと言われていますし、長野県にある飯綱山には天狗の飯綱三郎が・・・しかも飯綱三郎、飯縄権現は鴉天狗、または烏天狗の姿で表されています。序でに言うなら、ここの椛の髪の長さは、ショートヘアの短髪ではなく、ロングヘアーでストレートの長髪です。文の髪の長さはミディアムヘアーかセミロング。まあ、雪女の話。あれは人間と妖怪である雪女の話で、神と妖怪の話ではありませんがそこはご都合主義。今さらですがそう言うのが嫌な人は見ない方がいいかもしれません。諧謔や戯言で言っているのではなく私は本気で言ってます。東方キャラを諏訪国に仕えさせたり、神使や妻にしてそれで終わりじゃないんだなこれが。
終わり以前にそもそもまだ始まってすらいません。土台か、土台のそのまた土台か。だから急いでいるんですが。

もうさ、皆メインヒロインでいいと思うんだ。ですが、それってつまり。
皆さんの好きな東方キャラが色んな意味で汚されます。最初から汚してたと言われたら何とも言えませんが。


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書いてはいないんですが永琳は月にある月の都に時々顔を出してます。

見直し皆無、とりあえず早く戦国時代書きたい。前回書き忘れましたが今は初夏になってます。

東方紺珠伝 のキャラ今回で全部出す事に成功。殆どは名や匂わす感じで。



「妹紅~ 咲夜~ お腹空いた」

 

「ちょっと待ってよ。もう少しだから」

 

今は妹紅と藤原不比等が住む屋敷にいる。もう夕餉、このくらいの時間は幽々子が来る時があるけど来ないみたい。今日は武家の魂魄家で過ごしてるのかも。

魚の焼ける匂いがして来て視線を妹紅と咲夜に向けると、魚を焼くのは妹紅の能力で焼いてるみたいね。他に竈に薪を入れて妹紅の炎で燃やしたその熱で釜の中にあるお米を炊いていて、私の目の前には囲炉裏があり、囲炉裏には灰がばら撒かれ、中央には燃えてる炭火と炭火の上には囲炉裏鍋が吊るされて置いてある。囲炉裏鍋の中にある味噌汁はもう温めてあるから、私の元まで漂って来ていい匂い。正直、今の時代だと妹紅が使える炎を操るのは便利にしか見えない。調理する時困らないし。竈と言えば神道でその名の通り かまど神 がいる。異国だとローマ神話の ウェスタ ギリシア神話の ヘスティアー ヒヌカン 琉球王国の琉球神道 ヒヌカン が竈の神としている。そうこうしてる内に料理は出来たみたいで炊けたお米に漬物に味噌汁、焼いた魚は鰯でお皿に丸ごと一匹の鰯、お皿の隅には大根おろしを乗せてある。それぞれお箸を手に取り食べ始めると妹紅が不穏な事を言い出す。

 

「実は最近。多くの民に、天智天皇や私の兄達が本格的に原因不明の病に伏せてるの」

 

最初は咳程度だったんだけどなー と妹紅は首を傾げ、妹紅の話を聞いて私と咲夜のお箸を動かす手が静止。民はともかく藤原四兄弟や天智天皇は予想外、これは永琳お義姉様とヤマメが遂に動いたと捉えていいのかと思い私は向かい合わせの咲夜を見ると、咲夜は頷き返す。じゃあ次の作物も進んでいる筈。当初の予定では天皇や藤原四兄弟には感染する事は無い筈だけど何かの手違い、いやそれはあり得ない。あの永琳お義姉様が初歩的なミスをする訳ない。じゃあ何か考えがあるのか、もしくは私が忘れてるだけかと思って咲夜を見てコンタクト。咲夜はそれを返すとやっぱり私が忘れてる訳じゃ無い。お兄様、何か考えがあるなら最後までちゃんと伝えていただきたいです。お兄様の策略か分からないけど、もしもお兄様が関わってるなら天智天皇や藤原四兄弟が病に伏せてると言っても死ぬ事は確実にない。これは人間に認識させる為にしてる事で死んでもらっては困るとお兄様が前に仰ってたから。ただ気がかりが一つ。今は初夏で天智天皇が病に伏せ始めたのは春の終わり頃。それを知ってか天智天皇の弟で出家した 大海人 が春の終わり頃から暗躍してるみたい。これは、もしかしなくても戦が起こるかもね。然も、大海人が仕掛けようとしてる相手が琵琶湖と蓬莱山がある近江国にある近江宮。この場所に天智天皇の息子 大友 は住んでる。天狗から聞いた情報だから間違いないとみていい。でもおかしいのよね。大海人 は出家して大和にある吉野へ下った。この事に関しては別にいい、私は天皇の事は興味がないし。

 

でもね、出家すると言う事は世俗の生活や身内との関係、家や身分も捨て、僧となって仏道を修行する事を意味する。この世俗は世の慣わしを捨てる事でもあるし、身内に血。血縁関係を捨てる事は天皇の自分を捨てる事、だから即位する気は無い事を示す。もしかしなくても 大海人 は即位を諦めた訳じゃ無くて出家したのは未練が無い事を周りにアピールする為の隠れ蓑なのかもね。 大海人 は 大友 に叛乱を企て対抗しようと、数はまだ鮮少だけど地方の豪族を味方につけて今を以てしても徐々に人数を増やしている。何故、豪族が天智天皇の息子 大友皇子 じゃなくて大海人に味方するかについて。大友の母親は天智天皇の采女。采女とは、朝廷に仕え主に天皇の食膳の奉仕をした下級の女官の事。つまり采女も。采女が産んだ子、大友も。身分が低すぎるからの意味で、豪族たちは天智天皇の弟、大海人側に付いてるみたい。大海人が本当に天智天皇の弟だという前提で豪族たちは大海人側に付いてる。本当に大海人が天智天皇の弟だといいけどね。豪族が選んだその判断と選択がミステイク。誤りや謬錯じゃなければいいけど、妹紅がいるからそんな事どうでもいいわね。

 

そして天智天皇が病で亡くなる、もしくは天智天皇が隠居したら反旗を企ててるなんて中々執念深くてあくどい。周囲を欺き、油断している大友皇子に勝つ為そこまでの時間をかけてまで余程、天皇になりたい様子。これは過去の天皇が決めた事だけど、隠居したら例え身内がどうなろうと絶対に政治に関わらず一切、知恵も手を貸すのはダメで隠居した過去の天皇は各地の神社で過ごし、大和の行く末を見守ってる。一部暗殺されても殆どの過去 天皇は生きてるからね。一部暗殺されたのは黄泉にいるけどたまに本朝や異国に来て自由に観光してる。暗殺されて死んでるのにお気楽。咲夜が念の為にと考えたのか箸を置いて妹紅に顔を向ける。

 

「妹紅。私と握手して頂戴」

 

「え。急にどうしたの咲夜」

 

私が咲夜の変わりに いいからいいから と言い、咲夜は立ち上がり、妹紅の傍まで寄ると優しく妹紅の右手を取ってそのまま握手。私は気にせず食べる事に専念して妹紅は何が何だか分からないと咲夜に私にと顔を向けて咲夜は妹紅の頭を撫でて微笑んで元の位置に戻り、箸を片手で取って料理を食べる事に戻る。妹紅は私が器に入った味噌汁を呑んでる時に 今の何 と私と咲夜に顔を何度も向けながら聞いて来た。味噌汁を飲み干し器を置いて顔を妹紅に向けてウインクしながら答える。その時視界の端に移る咲夜は、鳥肌が立ったのか悍ましそうに私を見てたけど。仕える主に対して何て失礼な私の従者。

 

「咲夜は妹紅に魔法を掛けたの。魔法をね」

 

妹紅は意味が分からないと言った表情になり、これ以上聞いてもはぐらかされるだけだと悟ったのか黙々とお箸を使い、料理を口に運び食事を続ける。私がその魔法を使うのはやめた方がいいと考えた。お兄様の様に即答できないだろうから。その後は、お風呂に入ったりして閨で川の字になって妹紅は寝たけど私は寝る訳には行かない。布団を押し上げ起き上がり、立ち上がって狸寝入りしてる咲夜を小声で行くわよと言うと咲夜は隣にいる妹紅が起きない様に立ち上がり、風邪を引かない様にとしっかりと妹紅に布団を掛けさせてから私の背に続く。そのままふすまを開け縁側に出て、沓脱ぎ石の上に履物が私と咲夜の二人分を置いてあるからそれを履いて、そのまま空を飛ぶ。私はお兄様が衣玖から貰った羽衣を使ってるけど、咲夜は月の羽衣で空を飛んでる。綺麗な月の光を浴びて眺めながら目的地まで飛ぶ。目的地は平城京にある朱雀門、そこにちょっと用がある。ある人物がそこで待ってるから。私と咲夜がいた大和にある妹紅が住んでた屋敷から大和にある平城京まで余り距離は無く、ものの数分で到着。視界には朱雀門が写り、緩やかに地上に降り立ち懐かしい人物を発見。私は 状況を報告しなさい と朱雀門に佇んでいた人物に問いかける。

 

「失敗」

 

首を横に振り簡潔に一言で結論を告げて終わり。目の前にいる女性は銀髪のボブカットで赤い瞳。右だけに生えた翼、この翼を使いサグメも空を飛べる。黒い紋様が入った白のジャケットを着て、下は紫のシャツとスカート。スカートの裾やジャケットの紋模様は、矢印のカットになって首元には蝶ネクタイを締め、背には永琳お義姉様が昔持っていた天羽羽矢と、天羽羽矢の片割れ、天鹿児弓をサグメは背に担いでる。ただ昔からの癖で今でも手で口を隠す。目の前にいる女性は永琳お義姉様と同じく月の賢者の一人。名は 『稀神サグメ』 永琳お義姉様を尊敬して、地上に都市があった時からだそうで、今も滅びず月にあり、もはや宗教の域に達する 永琳教 に入信してる信者の一人。最初はただのファンクラブの様な物だったそうだけど。凄いカリスマ、流石 永琳お義姉様。サグメは口を手で隠しながら月にいる『玉兎の清蘭や鈴瑚』も姫様に会いたがってますわよ そう言及。でも月に戻る気は更々ない。だから 嫌 と即答で返す。返答を聞くと サグメはわざとらしく両方の手のひらを上に向け、両肩を軽く上げる。次にまた手で口を隠しながらうふふと笑う。こう返すのが分かってた様で残念そうには微塵も感じない。今更あそこに戻ってもつまらない。聳え立つこの朱雀門には鬼人正邪が住んでる。種族は天邪鬼で 鬼人正邪 は基本的に大和の民などの人間に対して悪戯しかしない。でも殺されず今まで住めていたのは、天邪鬼の原型で原像と言われる天探女の サグメ が関係して、まあそんな事はどうでもいいわね。

ともかくこの天邪鬼、引き込むのが天邪鬼特有の性格もあり、難産して苦労してる。長い時間の説得の末、双六勝負で勝ったら仲間になってやってもいいと 鬼人正邪 は言ったみたい。天邪鬼が妥協するなんて余程サグメがしつこかったのね。もしかしたら能力で流れをそう変えたのかもしれないけど。

 

「双六勝負で敗者。私の能力、姫様と咲夜様。朱雀門」

 

サグメは人差指で自分を指しながら答える。途切れ途切れな言葉を聞いて、言葉を脳で繋ぎ合わせる。朱雀門にいて双六勝負と言うと鬼人正邪がよくするとお兄様に聞いた事がある。双六で負けたと把握。サグメなら鬼人正邪を無理矢理従わす事も出来る、でも律儀に相手の勝負に乗って終いには負けたみたい。サグメの能力は 口に出すと事態を逆転させる能力 正反対な事が起こる訳じゃ無いけど流れを変える事は出来る。物事が上手く言ってる時、つまり流れが自分に向いてる時は口を隠してあまり喋らず、物事が上手く行かない時はサグメの能力、口に出すと事態を逆転させる能力 を使いうっとおしいぐらい饒舌。でも口を手で隠して喋ってる今はサグメにいい流れに向いてると読んでいい。サグメは無口に見えてもそれは能力のせいで本当はお喋りが大好き。サグメの言葉を理解すると脳裏に蘇ったのは、神議るがあった春に妹紅と初めて会ったあの真夜中。妹紅、咲夜、私とでお手玉をした時、咲夜は時を止めていかさまをした。そして私には須臾がある。ま、まさかこの女。いやまさかね。でもそんな事でこんな真夜中に眠い私達を呼び出すなんて、隣にいる咲夜に顔を向けてサグメに死刑宣告。

 

「咲夜、眠いから帰りましょうか。」

 

「そうですね」

 

咲夜と一緒に飛んで朱雀門に背を向けて帰る。すると背からは私達を止めようと大声があたりに響く。サグメは月の民、つまりお兄様の奴隷でお兄様の妻はサグメが尊敬する永琳お義姉様。間違いなく怒らないし呆れないし失望はしないと断言できるけど、サグメに言っても分からないでしょうね。恋は盲目 状態だから。まさか帰ると思ってなかったのか今まで出来るだけお喋りなサグメがいつもと比べて出来るだけ少なめに喋ってたけど、事の重大さに気付いて早口で長々と流暢に捲し立てながら喋る。

 

「そんな!? 正邪を引き込まなければ私が怒られますわよ! 私、あの方の奴隷なのにこの体たらくだと最悪 八意様にまで、あ。お二人ともお待ちを。私に仁心をー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「依姫。今日もするから体力は残して置け」

 

「私を求めて貰えるのは嬉しいですけど、恥ずかしいので子供たちがいる時にその話はしないで下さい」

 

俺は玉座に座り、玉座の隣にいる依姫は左手で俺の頬を軽く引っ張る。依姫とは同じ部屋で寝ているので呼ばなくてもそのまま、まぐわう行為を及ぶ事が出来から今言わなくてもいい事なんだが、これを言うと依姫が頬を染めながらも笑顔になるのでたまに言う。今は春から季節は移ろい、初夏。玉座の間にある玉座に座りながら、俺は燥いで遊んでいる子供たちの様子を右手の掌で自分の顎を支え、偉そうな態度で足を組みながら眺めている。この奴隷の子供たちに身寄りがあるのかどうか聞いたが、みんな首を横に振った。一部の子は親がいるそうだが、誰一人として戻る事を拒んだ。そこで、俺と依姫の子にする事にしたんだが、数人の少女はそれを拒否。家族になるのはいいけど、娘の関係は嫌なんだとさ。男の子は畑を耕すやり方を学ばねばならんのだが、考えるより体を動かす稽古の方が好きなようだ。だからチャンバラごっこ、女の子は裁縫や食べ物の調理などを衣玖や人型になった龍神に教えてもらいながら真面目に覚えている最中。玉座に座る俺の隣にいた依姫はそんな光景を母性に満ちた顔で眺めて綺麗だ。買った以上はこの子たちの面倒は最後まで見るが、やはりみんな自由がいいだろう。いつまでも一緒は嫌だと思う。足を組み直そうとしたが俺の膝でレイラは座っているので出来ない。レイラの側頭部にはお面のこころがいる。基本人型で過ごしてもらっているが、右手で合図の指を鳴らすと人型になる様に言ってある。そろそろ時間が来たのか依姫は二回手を合わせて鳴らし、子供たちを連れて外へ向かう俺の膝に座っていたレイラが降り返り俺を見て後ろ髪を引かれる様な表情で言う。今生の別れでもないのに。

 

「じゃあ、私行くね」

 

「気を付けてな」

 

レイラは飛び降りて、駆け足で依姫の元へと向かう。それを眺めていたが隠れてる子が玉座の後ろに1人いる。しかしこの城少し暑い。間違いなく夏が近づいている、と言う事はそろそろ天智天皇と藤原四兄弟が死ぬ頃だ。これは俺が原因でもあるが、渡来人が病原菌を持ち込んだのもある。次は、大海人か。出家したんだ、今更、即位しようとする動きを見せた以上

 

「靈夢、いるのは分かってるぞ」

 

「あ、ばれてた?」

 

玉座の後ろに隠れていた少女は俺が座る玉座の前まで来て両目を瞑り舌を出し、目尻を下げながら笑う。表情は笑顔だがその笑みは、ニヒル。虚無で実体性を欠いている。まだ若いのにこんな表情をするとはな。この子の名は 博麗 靈夢 この少女、靈夢は非常に面倒くさがりでよく依姫の稽古をサボり、依姫は稽古とは言え容赦ないので靈夢は良く逃げるのが最近の日常。その分依姫と稽古した時の報復は恐ろしいが懲りずにまたサボっている様だ。一体誰に似たんだ。俺か。何か甘いものを食べたくなったのでバルコニーに行こうと立ち上がり、靈夢も誘う。バルコニーにはあの子もいるだろうし丁度いい。靈夢は両手を俺に向けて言う。

 

「肩車してよ」

 

「仕方ない、先行投資の為だ」

 

まだ靈夢は子供だが、将来美人になりそうなので先行措置。俺は腰を下ろして靈夢に背を向ける。少し間を開けて靈夢は俺の体をよじ登り、両足を俺の両肩の上から出したのでそのまま立ち上がる。靈夢が落ちそうになったので俺の両手で靈夢の太ももを押さえ落ちない様に固定。そのまま行こうとして玉座の間から出ようと扉を右手で開けたらいい笑顔で仁王立ちした依姫がいた。笑顔だが、まるで怒髪天になった蔵王権現の迫力。依姫は暴力は振るわないが。済まない靈夢。お前とバルコニーに行ってお菓子を食べながらぐーたらする約束、叶えられなかったぜ。お前を依姫にドナドナ。売る事に関しては無条件で許せ。

 

 

 

 

「旦那様、紅茶をお持ちしましたので入ってもよろしいでしょうか」

 

椅子に座り向かい合わせに座る少女が分厚い書物を読んでいる所をぼーっと眺めて過ごしていたら、数回ノックをしてから入っていいかどうかを聞かれたので、構わないと返答したら 失礼します と言いながら衣玖は龍神が持って来た洋風の城にあるバルコニーに入る。視界を読んでいた書物からノックがしたドアに向けると手にはティーカップとティーポットを乗せたシルバートレイを衣玖が持っていて、衣玖は開いた片手の手の裏でドアを押さえながら入り、そのまま俺が座っている椅子の前にある白色のテーブルにトレイを置いて、トレイに乗せていたコップに紅茶を注ぎ、ポッドをトレイに戻したが戻す際の音が無かったが熟練された動きだった。訓練でもされてるのだろうか。俺はコップと茶托に手を伸ばして掴み、紅茶を飲む。何の紅茶か知らないが結構おいしい。まるでイギリスの クリームティー か アフタヌーン・ティー みたいだな。アフタヌーン・ティーと違い、ただ寛いでいるだけでこの場に礼儀作法などは無いが。衣玖はこの場にいて、俺と向かい合わせにいるもう一人の分の紅茶も入れて茶托とカップを少女の前に置く。この向かい合わせにいる少女、本が好きなようでこの城にあった書斎から持って来た分厚い書物を読んでいた少女も、この時は読むのをやめて分厚い書物をテーブルに置き、パチュリーは衣玖にお礼を言いながら美麗に紅茶を飲んでカップを茶托に戻しながらそのまま俺に顔を向けて質問。それと衣玖が後ろでずっと立って控えているので無理矢理だが命令形に衣玖に言って隣に座らせている。ただ衣玖は俺の隣にいて、俺と衣玖の向かい合わせに座っている少女には机の下で何してるか見えてないのをいい事に右手で衣玖の太ももを撫でている。衣玖はそれに戸惑っているが抵抗はしない。

 

「お兄さん。ちょっと聞きたい事があるの」

 

「どうしたパチュリー」

 

俺に声を掛けて来た子の名は パチュリー・ノーレッジ 買ったばかりの最初はボロボロの布一枚を着ていた様な服装だったが、他の子たちと同じく今は龍神から服を貰ってその服装は全体的にゆったりとした服装。こうして見ると年相応な子供だ。パチュリーに限らず他の子たちも奴隷商人から買って真っ先に考えたのが、まずは皆の髪も体などの身なりを綺麗にしようと考え俺は 男の子供だけの 担当だったが依姫や衣玖、人間化した龍神に女の子たちを風呂に入れて貰った。クソ! 俺も女の方に混ざりたかったぜ。ちなみに風呂に入れる際分かったが、1人半妖の男の子がいた。

パチュリーの髪色は紫色。それでレイラと同じく魔法使いで魔女。レイラは大魔法使いだそうだが。魔法と言えばエジプトでは魔法の神 イムホテプ や魔術の神格化 ヘカ 捏造と言われてるがスラヴ神話の生物で魔法の神 ツィルニトラ 元はギリシア神話の神じゃないがギリシア神話の女神で魔術と冥府の女神 ヘカテー 異教信仰だがローマ神話の女神 ディアーナ とかもいる。今挙げた神たちは自分達の特性に合った世界、魔界に地獄に天界に冥界にそれぞれ住んでいるが。魔術の女神ヘカテーと言えば、本朝にも魔法様と呼ばれ、備前国には魔法神社があるが祀ってるのは魔女などでは無く化け狸として名高い伝説上のタヌキで魔法様 キュウモウ狸 を祀る神社が魔法神社。キュウモウ狸は異国から来た狸で牛馬の守護神でもある。異国から来た話では無いが似た様な話で古事記の因幡の白兎がある。因幡の白兎は古事記に書かれてるが日本書紀には無い。

 

あ、思い出した。備前国と言えば歩き巫女でコンガラ巫女と呼ばれるのがいた、前に聞いた事があるから間違いない。そしてコンガラは巫女服は着ていなかったが、巫女服と同じ紅白の服装を着ていた。まさか、鬼なのに神を信奉する巫女をしてるのか。もしそうなら何て好都合。歩き巫女は決められた神だけでは無く、色んな神を信奉する巫女だからだ。

 

目の前にある白い机の上には三段トレイがあって、上段、中段、下段にはケーキやスコーンやタルトなどの菓子が乗っている。パチュリーの前には純白な皿の上にスコーンがあり、そのまま手に取って隣にあるジャムに軽く付けて口に入れ、数回噛んでから紅茶を口に含んで飲む。優雅な光景に見えて、このバルコニーから聞こえる指導の声が聞こえている。この声は依姫で今は奴隷たちの子に稽古中だ。本当はバルコニーでは無く庭でお菓子を食べて稽古を眺めながら寛ぐつもりだったが、子供たちが食べたそうにしてしまい稽古に身が入らないと依姫に叱られた。このバルコニー結構な高さにあって大凡、ビル10階くらいか。もし落ちたら一溜りもない。俺は無敵だから空から落ちようが宇宙にいようが確実に無傷。立って視界を遮っている手すりや壁から顔を覗かせると辺り一面の風景が目に入る。風景と言っても周りは山ばかり。そのまま顔を下に向けると外にいる依姫は忙しそうで生き生きしてる。依姫は月の守備隊隊長だったか。何だかやる気に満ち溢れていて晴れやか。しかし奴隷の子たちは大変だろうが。これも身を守る為の一環、この先俺と依姫の庇護下の元で生きる訳が無いし、そう簡単に殺されては困るから仕方ない。パチュリーは病弱で喘息持ちなので無理な運動はさせられないから俺とこの場にいる。レイラは別の事を学んでいて、依姫が言うに筋がいい子がいると聞いた。その子は 靈夢 だ。面倒臭がりな性格みたいだが不幸にも依姫に目を付けられてしまい、特に靈夢はみっちりとしごかれている。

 

「本朝に住む人間は他の大陸の人間と違って、100以上も生きられると聞いたけど、それはどうしてなの?」

 

パチュリーはクールぶっているが、知識の虫なせいか本当は聞きたくて仕方がないと言った感情が表情には出てないが内心そう見えている。その問いに対する答えは、人間の寿命の神である伊邪那美が関わっているがそれだけでは無い。まだ他にもある、その内の一つに『変若水』が関わっている。実はこの『変若水』月人や月の民にも結構関係がある物。そして、かつてこの地球に都市があって、その都市に月の民や月人が住んでいた頃に、穢れの問題をどうにかしようと会議で月人や月の民達へ月に行こうと言いだした張本人、月夜見にも関係している。他にも関係する物はあるがこの辺は追々。

 

とりあえずパチュリーには伊邪那美が人間に寿命を余り減らさなかったと言う。伊邪那美だけが全ての原因元ではないがこれも嘘じゃないし問題ない。パチュリーはそれを聞くとまだ納得がいかないと言った顔になるが、嘘では無い事は理解しているせいか深く聞けないようだ。イギリスのことわざに 好奇心は猫を殺す があるんだぞパチュリー。生きるには9つの命以上を持っていなくては。 イギリスと言えば有名なのでアーサー王、アルビオン、ドライグ、ロビン・フッドとかいる。後 アヴァロン。アヴァロンはサリエルが冥界に結合させてあるが、他に神話、ケルト神話があるがそれはイギリス神話なのか微妙な所。イギリス、いや違うな。イギリスは正式国名じゃない。正式国名はグレートブリテン及びアイルランド連合王国。まあそれはいいとして、グレートブリテン及びアイルランド連合王国には神話がある様で無く曖昧。困ったものだ。何せ、グレートブリテン及びアイルランド連合王国には神がいないんだ。グレートブリテン及びアイルランド連合王国の オーガ レッドキャップ バグベア は地獄に、天界には人間と同じ容姿で小神族の エルフ 伝承のハッグは地獄の三界に結合させたケルト神話の妖精の国 ティル・ナ・ノーグ に住んでる。ブラウニーやグレムリンもだ。

他に、ギリシア神話の女神ヘカテーに関わってる妖精 ブラックドッグ や バーゲスト も三界やティル・ナ・ノーグにいる。仕方ない、アーサー王やロビン・フッドを神にするか悩むな。アルビオン、ドライグ、ア・ドライグ・ゴッホはどうするか。

言い忘れたが光の三妖精たち、『サニーミルク』『ルナチャイルド』『スターサファイア』も三界にあって三通りの島々 ティル・ナ・ノーグ に住んでいる。

俺は眠くなったので立ち上がり近くに置いてあるソファーに近づいて衣玖に手招き。

 

「衣玖、このソファーの隅に座ってくれるか」

 

「はい。旦那様」

 

衣玖は素直に従いソファーの隅に腰を掛けたので、俺はそのままソファーに寝転がり衣玖の膝枕を堪能。ああ、いい匂いがする。衣玖は微笑しながら俺の頭を撫で始めて俺は和む。衣玖といると気が緩んで、ダメ男の俺が益々ダメになりそうだ。衣玖と過ごして分かったのが、一緒にいると、衣玖は一緒にいる男をダメにする魔性の女。後、天然。実体験してる俺が言うんだから間違いない。多分、衣玖 本人にその自覚は無いだろうが。パチュリーは俺と衣玖の事を気にせずまた読書を再開。これが今の日常。俺は寝ぼけた頭でこの先の模擬実験を頭に浮かべるとしよう。

日向の国の一つ上にある豊後国と隣にある肥後国がある。この肥後国と豊後国の境には阿蘇山が存在する。それともう一つ。日向国の左下にある薩摩国。この薩摩国には姶良カルデラがある。この姶良カルデラと阿蘇山は VEI7 で。つまり火山爆発指数や火山そのものの大きさではなく火山の爆発規模の大きさを示す区分。VEI8が最大規模と言われてるからこの姶良カルデラと阿蘇山、最後に鬼界カルデラも VEI7 に指標されてるのでだいぶ危険な火山。ちなみに富士山は VEI5

 

阿蘇山には阿蘇神社が肥後国にあって、阿蘇神社の祭神の健磐龍がいる。この 阿蘇大明神 と言われる健磐龍は神武天皇の孫で俺が神使にした大鯰に結構関係ある人物。阿蘇山は元々水が溜まっていた広大なカルデラ湖で、大鯰はカルデラ湖に住む主だった。だがこの大鯰、非常に迷惑な事に震度が高い地震を本朝にしつこく齎し、それに我慢の限界が来た 阿蘇大明神 はカルデラ湖に住む大鯰の元へ行き斬り付けて弱った大鯰をなゐの神に頼んで大鯰を高千穂神社の要石で抑えこんだ過去がある。それともう一つ、俺と依姫は一度 高千穂神社 に行ったが、神武天皇の兄で祭神の三毛入野には昔アララギの里に居を構えてからの 鬼八伝説 がある。アララギの里とは高千穂神社の近くにある場所で、肝心の鬼八だが実は殺されてない。ただ神道の神たちが鬼八を地獄に連れて行って働かせてる。地獄だけの事ではないが人手不足だから有能な人材は生かして使うべきだ。三顧之礼や草廬三顧、じゃないな無理矢理だし。握髪吐哺か。そうそう。鬼と天狗の持ち物とされる『隠れ蓑』と『打ち出の小槌』の二つを鬼八がかつて持っていて、この隠れ蓑は姿を隠す事が出来て男の夢、透明人間になれる。俺は堂々と風呂場に入り覗かず直接裸体を見るから関係ないが、これさえあれば風呂場でばれる事無く覗ける。打ち出の小槌は有名なので『一寸法師』か。これは大きくしたり小さくしたり出来て金銀財宝も出せ、他にも色んな事が出来るので、龍の頸の珠を奴隷たちに全部渡して無くなってもこれがあれば資金に困らん。この二つを快くくれた三毛入野には感謝だ。打ち出の小槌は星の財宝が集まる能力のお蔭かもしれんな。大鯰がいた高千穂神社に寄った際に、祭神の三毛入野だけじゃなく 彦火火出見 からも霊力を込められた玉の『鹽盈珠』と『鹽乾珠』を貰ってる。この二つがあれば海や潮汐を操る事が出来る。元々これは海に住む海神の『綿津見』が持ってた物でもあるから、これがあれば海や潮汐を操るなんて造作もない。要は、俺が海の支配権を得た事を意味する。だがこれは依姫に一つ持たせた。もう片方は豊姫に渡すようにと依姫に言ってもう一つも渡してある。俺の妻 豊姫と依姫の苗字は綿月だ。だからこれは俺より、海神 綿津見 や綿津見の娘、豊玉姫命と玉依姫命の親戚である 綿月豊姫 に 綿月依姫 達の手に、持つ事が相応しい。

パチュリーは本を読むことに集中していたが、何かを思い出したのか視線を本から俺へと移す。

 

「別に夫婦なんだからしないでとは言わないけどね、依姫お母様と夜にする行為で、もう少し喘ぎ声を抑えてと、依姫お母様に言ってくれたら助かるわ」

 

それだけ言うとパチュリーはまた視線を本に移す。俺は声を出してないし依姫の声が漏れてたのか、気を付けねば。パチュリーは少女なのに狼狽えてないが耳年増なのかもしれん。もし耳年増なら、きっと本で蓄えた知識しかないんだろうな。依姫、子供達にはばれない様に必死に工作していたが、それは無駄な足掻きだったようだぞ。俺と依姫のまぐわいが子供達に対し、無自覚ながらも白日の下に晒してるとパチュリーが発言したからな。

 

ともかく阿蘇山を噴火させる。これは確実にだ。幸いにも今の阿蘇山は火口が赤熱していても噴火があまり発生しない上に溶岩流を流出させる活動は少なく、精々土砂噴出か赤熱現象くらいで噴石は出来るだけ起こさせない。ただ田畑荒廃や農作物の被害を起こし人間に認識させる為にするだけだ。何の為に人間は阿蘇神社を建てたか、噴火したらさぞ大変だろう。富士山にある浅間神社にも言える事だが富士山を噴火させる予定はない。序でに言うと諏訪国にも富士山の次に高い 御嶽山 や 浅間大神 が住んでた浅間山がある。この二つも活火山。神道の神 浅間大神の浅間、あさま は火山を示す古語で、地震の神 なゐの神の なゐ の意味は古語で地震の意味。

 

だがその前に阿蘇カルデラの中心部に阿蘇山が聳え立っている。この阿蘇カルデラ内にある『地獄温泉』に今から行くのだ! 地獄の名があるから地獄の創造神を頭にちらつくが気にしない。しかもこの地獄温泉はにごり湯で屋根つき混浴露天風呂がある。不幸にも更衣室は男女別だが、肝心の温泉は豊富なミネラル成分を含んでおり美肌効果があるといわれているので女性の依姫と衣玖に丁度いい。依姫を拉致して早く行こうと立ち上がり、衣玖も連れて行こうと思い勇往邁進、強引に右肩を衣玖の腰に当て、左手をひざ裏に当ててお姫様抱っこでバルコニーから勢いよく地上に飛び降りる。大丈夫大丈夫絶対痛くないと自分に暗示しつつ地面に着地。着地する際 かなりの衝撃音が響いたが永遠ってスゲー ビル10階くらいから飛び降りた筈なのに足とかが何ともない。お姫様抱っこしてる衣玖を見ると呆気にとられていて流石に驚いた様だ。そのまま気にせず早歩きで依姫の元へ向かおうと顔を上げたら一部始終を見ていた依姫が口を開けて俺を見ていたのでいつものノリで誘う。それを聞いた子供たちは声には出さないが内心嬉しいのか表情に出ている、子供たちの世話は悪いが龍神に頼もう。あいつ子供好きで家事万能だから大丈夫だろう。食料も御食津神達に頼めばすぐに手に入る。龍神は水神だから水などの飲み物はもっと簡単に手に入る。それにこの城、無駄にデカくて遊び場が無駄にたくさんあるし。娯楽には困らない上に食べ物もあるし飲み物もある。正に子供たちの楽園。

そうだ。ナズーリンの能力で諏訪国の温泉を掘り当てる為にダウジングロッドを使いながら探してもらおう。探し当てたら鬼達を使い掘り当てて温泉が地中から出て来たら浸かる事が出来る。入りたい時に入れるし温泉は諏訪国に欲しい。

 

「依姫、今日の稽古は中止だ。早速で悪いが衣玖と共に地獄温泉へ混浴しに行くから依姫も一緒に来い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縁側に座り、目の前にはスキマが開いてあるからスキマ覗いて白蓮の調子を伺う。幽香の提案で諏訪国に来訪した魔女や魔法使いたちから白蓮は魔法を学ぶ事になり、今は指導を受けていて近くにはてゐが見学している。白蓮に魔法を教えているのはエレンという名の魔法使いから魔法を伝授。エレンが言うに白蓮はまだ教わって数日ほど経っただけなのに呑み込みが早い事と魔法の才能がある事が重なり、真綿が水を吸うようにどんどん魔法や知識を吸収していると聞いた。今では念力の様な魔法まで覚えてしまいまるで一を知って十を知る。念力の様な魔法で動かせるのは現時点で小物だけみたいだけれどそれでも凄い。時間が経てば大きな者も飛ばしたり動かせるようになるみたいだし。白蓮の努力もあると思うけどてゐの能力が関係しているのかしら。魔法だけじゃなくヤマメから妖術も学んでいるけど人間の白蓮が魔法や妖術を極めたら凄そうね。縁側に座りながら右手に持ってる私と同じ名、紫色の傘が私の意思とは無関係に動いて、傘から出てる大きくて長い舌が私の視界に入る。可愛い声で驚かそうとするけどもう私は驚かないわよ。それと私の隣には幽香がいる。今は傘だけど小傘は髪色が水色で右目が水色、左目が赤。

上は白の長そでシャツで水色のベストを着用。下は水色のミニスカート、両足は素足で下駄を履いている。それと小傘の着てる水色のベストは胸元には上から順に一と×がある。

一とメ、つまり一つ目。

 

「うらめしや~」

 

「小傘。可愛いだけで全く怖くないわよ」

 

「そんな~ 紫お姉ちゃんも最初は悲鳴あげてたのに~ 諏訪国の民は私に驚いてくれてるのに~ ああ、驚いて貰えない妖怪に価値なんて」

 

小傘。悲観的な所 残念だけど、昔から諏訪国ではぬえがよく皆を驚かしてたお蔭で民の皆は心と精神が屈強。物事に対してあまり驚く事は無く、基本小傘に対しては驚く振りをしてるだけなのよ。たまに良心の呵責に耐え切れず、小傘が見て無い所で民は罪悪感に蝕まれながら、両手で頭を抱えて苦悩している。驚かせる事に成功したら小傘はその場で燥ぐから余計に辛いわね。ぬえは能力で多様に民を驚かしてたけど、小傘は単純で正々堂々と驚かす姿勢。それだと何度もされる内、民は流石に慣れてしまう。まあ。民は小傘に全く驚いて無い訳じゃ無いけど。私のスキマと小傘の人間を驚かす能力は相性がとてもいい。私のスキマを使って、小傘は神出鬼没に、誰にも予測できない場所に傘と顔を出して驚かしてるから、民達もたまに本気で叫び声を上げて驚いてる。心の臓に悪そうだけど。でも、それは言わぬが花。驚いた民から小傘は民の心を食べてる。小傘は心を食べる妖怪の種類みたいね。私の右手に持っている大きくて紫色の傘、この子の名は 多々良 小傘 小傘は付喪神で、付喪神は本来、道具そのものの姿である事が普通、こころも基本お面になって誰かの側頭部にくっ付いて普段は過ごしてる。今はお父さんと一緒にいるけど。付喪神でも人間の姿になる事は出来る。狐の藍や狸のマミゾウが人に化けられる様に、道具の付喪神も人に化ける事が出来る。元々 神霊が宿ってて傘だった小傘は妖力が微弱で道具から人型に化ける事が出来ず、それに気付いた私はお父さんから傘だった小傘を貰い、幽香にも頼んで私と幽香の妖力を注ぎ妖怪化させる事に成功。本当は年月が経てば妖怪化してたんだけど、私の名と同じ色で放って置けなくて幽香を巻き込んで動く事に。努力の甲斐があり、小傘はこうして私や幽香と喋る事が出来るし、民やお父さんの妻や神使に話しかける事も出来る。妖怪化して傘から人型になった時は、私と幽香に抱き着いて顔を上げ、満面の笑みで ありがとう と私達に連呼。そこまで感謝されるとは思わず、私は照れ臭かった。そして私の左手に持っているこの1つの人形。もう一つは幽香が持ってる。私が持ってる人形は金髪で、幽香の持ってる人形は緑髪。

 

これはかつて、お父さんが河童と交渉をして、無事に交渉を終えた時に河童の にとり と みとり から二つの人形を受け取った。お父さんは永琳お母さんと調べた結果、この2つの人形にも神霊が宿ってて、その正体が判明してたんだけど時間が経てば人間と同じ姿になると、お父さんは2つの人形を、可愛いからと玄関に飾ってた。こころも昔、神霊が宿った喜怒哀楽のお面が蔵から出てお父さんが壁に飾ってたし。人形はあれから時間は経ってるけどもう少しかかる、片方は私と幽香の妖力を注げばいいんだけど傘だった小傘の時の様に、急いで妖怪化しようとする意志を感じられないから手を出さない。私の反応に小傘は笠のままで、隣にいる幽香を大きな舌で驚かそうとする。

 

「幽香お姉ちゃん。うらめしや~」

 

「怖いわね。今日は1人で寝られなさそう」

 

隣にいる幽香は傘の小傘に顔を向けて、親が子供を慈しみ、可愛いものでも見るかの様な慈愛の表情で言う。そんな表情で言っても絶対に小傘から信じられないわよ幽香。だけど私の予想を裏切り、小傘は笠から人型になり、やったー! と嬉しそうに言いながら幽香に抱き着く。可愛くてしょうがないのか幽香は小傘を受け入れて、幽香からも抱き着く。幽香は将来、永琳お母さんみたいな親馬鹿になりそう。幽香がお腹を痛めて小傘を産んだ訳じゃ無いのに、あんな表情されるとそう思う。永琳お母さんも実の子じゃなく、血が繋がらなくて妖怪の私達をあんなにも愛して可愛がってくれたから。当時の私と幽香は戸惑ったけど、今ではいい思い出。小傘の名は私と幽香が考えて名付けてる。小傘は傘の姿に戻る時は、傘に一つ目と大きな口と、その口から大きな舌を出してる。そこで悩んだ私と幽香は、小傘はから傘お化けで一つ目。一つ目から連想した妖怪、一つ目入道 比較的無害な『一つ目小僧』 箕借り婆 に のうま 最古の鬼の記述とされる一つ目人食いの鬼の『阿用郷の鬼』最後に『一本だたら』が頭に浮かぶ。一つ目入道、一つ目小僧、箕借り婆、のうま を少女の名に使うのは論外。残った『阿用郷の鬼』小傘は鬼じゃないしこれも無し。残りの『一本だたら』しか選択出来なくなる、その名は可愛くないと思うけど残り物には福があると言う事で、一本だたらの名、だたらを訛音で訛らせて多々良。それともう一つ、小傘の傘になってる時は大きい傘だから大傘。だけど見た目通りの大傘は可愛く無いから却下。それで小傘を一度眺めると少女で女の子だから小傘の名。私が小傘の名を言い、幽香は多々良の名を言った。悩んだ末にどっちもいい名と結論に達してどちらの名も使う事に。それで名が 多々良 小傘 小傘の名付け親は私と幽香で、小傘の生みの親も私と幽香になる。こころの時は頭が真っ白になったけど、今回はいい名が思いついて幽香や私が言うのはあれでも中々悪く無い名だと思う。

喜んでいた小傘は幽香に抱き着きながら溜息を漏らして悲しそうに呟く。一瞬見えた目には、涙に潤んだ否目。私はお父さんから傘の小傘を貰ったけど、傘の小傘は所有者が私と幽香と、お父さん。元々、小傘はお父さんが拾って来た傘だから。

 

「ぐすん。早く、気味が悪くて不気味だと言われた私を拾ってくれたお兄さんに。道具の私の所持者の主人にお礼を言いたい」

 

「今は乖離でも、全てが終わったら帰って来るわよ。諏訪国はお父様の帰る国で故郷なんだから」

 

そして、永遠で死ぬ事は万に一つ無い。ただ、無敵で死なないとは言え弱点があるんだけどそれは小傘には口にしない。永琳お母さんが言うに お父さんを誰かに殺されるくらいなら私が殺すわ って恐ろしいこと言ってた。永琳お母さんはどれだけお父さんを愛してるのか未知数。きっと愛する心は計り知れなくて無限大なのね。幽香は小傘を抱きしめたまま小傘をあやす。小傘は、私と幽香が人型化させた時に恩を感じて何度もお礼を口にした。でも、昔に小傘を拾ってくれて小傘の所有者である肝心の人に感謝の言葉を言えていない。本当は私のスキマで連れて行ってもいいんだけど、お父さんがどこにいるか分からないし、永琳お母さんから聞いたら忙しなく動いてると聞いたから私は極力、邪魔をしたくない。まさか混浴したい目的で温泉に行こうなんてしてるとは思えないし。どうしようかしらと悩んでたら神社の庭に天狗のはたてと椛が突風を噴かせながら庭に降り立ち、はたては両手を腰に当てて小傘をそのまま誘う。それともう1人、人間だけど魔女のアリスも一緒。魔女は空を飛べるそうで、以前アリスは奴隷商人に捕まった魔女を探してると天狗に捜索依頼をしていた筈。文は別の仕事でこの場にいないみたい。ただ気になるのは魔縁の 天魔 と アリス が異常に仲が良くて、気のせいかまるで旧友と再会したような感じに見えた気がする。初対面じゃないのかしら。

 

「じゃあ小傘、あいつにお礼を言いたいだけなら私達と一緒に行くわよ。日向国で パチュリー に レイラ と言う魔女が、小傘の所有者のあいつと一緒みたいだからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にいる女の周りには人間の死体が地べたの彼方此方にあり、血の池が出来ている。人間を殺した際に返り血を浴び、白と青を基調とした服がもう血で染まる所が無い程に服も真っ赤。私は持っていた綺麗な布を彼女に放り投げ彼女はそれを受け取るとお礼を言いながらまずは布で両手と右手に持っていた血で真っ赤になってしまった2つのチャクラムを拭う。このチャクラムはヒンドゥー教と天竺、インド神話の神である ヴィシュヌ から貰った物。私も片手にはトリシューラを持ってる。このトリシューラはヒンドゥー教の神でインド神話の神 シヴァ から貰った物。序でに言うならバラモン教、ヒンドゥー教の神である インドラ からはヴァジュラを貰い私が持っていて、このヴァジュラは雷を操る事が出来て結構便利、重宝してる。ただ天竺の神が持っていた神器で天竺の人間を殺すなんて、皮肉。

 

「くるみ。そろそろ天子とエリスに会いに行かないかい。会ったら次は華陽夫人の華陽」

 

「まだ顔に返り血が付いてるよ魅魔ちゃん」

 

あれから数億年も言ってるけどいい加減ちゃん付けはやめておくれと言いながら、魅魔ちゃんは布で両手とチャクラムに顔を拭き終えてとびっきりの笑顔な顔を私に向ける、だけど私はちゃん付けをやめない。次に魅魔ちゃんの頬にまだ返り血が付いていたので指摘。指摘された魅魔ちゃんはもう一度しっかりと顔を布で拭こうとしたけど布は血まみだったので、魅魔ちゃんに近づいてもう一枚綺麗な布を使い私が魅魔ちゃんの頬に付いた返り血を綺麗な布で拭うと魅魔ちゃんは擽ったそうにしながらも顔を布で拭かれるのは拒まない。魅魔ちゃんは違うけど私が天竺に来た理由は、私の種族が吸血鬼。そして吸血鬼の始祖。だから天竺には私と同じ吸血鬼がいると耳にして吸血鬼を引き込む為。当初はそうだったけど、それは天子ちゃんがしてくれるみたいだから私がする必要は無くなったの。魔女達の件も天子ちゃんがしてくれたからそれもしなくてもいい。魔女達を本朝に引き込むなんてアリスちゃんが考えた事だけどね。だから他の事に目を向けなくちゃいけないんだけど、魅魔ちゃんはそう考えてないみたい。この先やる事が山積みで遊んでいる暇は正直あんまりない。でも夢月ちゃんと幻月ちゃんはエリスちゃんが呼び出せる、エリスちゃんが魔方陣で二人を呼び出す事が出来るから聞いておこうかな。夢幻世界がどれだけ創れたかについて。前に夢月ちゃんと幻月ちゃんから聞いた時は夢幻世界を創ってる最中に『獏』の『ドレミー・スイート』という名の女性が現れ、夢幻世界を創る手伝いをしてくれていると夢月ちゃんと幻月ちゃんは以前言ってた。天界にいて暇だった事と獏だった事と ドレミー・スイートちゃん は能力。夢を喰い、夢を創る能力が重なり、それを使って夢幻世界を創る手伝いが出来たみたい。元々 ドレミー・スイートちゃん は異国の唐土にいたけど白沢ちゃんと一緒に天界に行っていた。今は天界にはいなくて夢幻世界に漂って過ごしてる。魔界に地獄は神綺ちゃん、天界に冥界はサリエルちゃんが創造神。夢幻世界は夢月ちゃんと幻月ちゃん 獏 のドレミー・スイートちゃん が夢幻世界の全部を創造した訳じゃ無いけど、この三人が実質的な夢幻世界の創造神。でもその夢幻世界を治める人物がいない。誰が夢幻世界を治めるのかな。

 

思い返せば神綺ちゃんもサリエルちゃんも弘天、天君の関係者で夢月ちゃんと幻月ちゃんもそう。なら夢幻世界を治めるのは天君の関係者の方がいいのかもね。永琳ちゃんと天君の娘 諏訪子ちゃんは諏訪国の皇女だから駄目、もう二人の娘。名は紫ちゃんと幽香ちゃん、だったかな。この二人が適任かもしれない。二人は妖怪だと聞いているから尚更いい、神綺ちゃんととサリエルちゃんも創造神とは言え創造しただけで支配者じゃない。それは造化三神の 天之御中主神 高御産巣日神 神産巣日神 にも言えるし、伊邪那岐と伊邪那美 事実上の創造神二名にも言える事。それに夢幻世界は神が治めない方がいいと思う。あそこは特別な世界だから。

魅魔ちゃんの頬に付いていた返り血を拭い終わり、魅魔ちゃんは真っ赤になった服から血がぽたぽた地面に垂れながら空を飛んで早く天子ちゃん達に会いに行こうと催促。仕方ないから背中の翼を羽搏かせ私も後に続く。飛行していたら、平行に飛んでいた魅魔ちゃんは肩をすくめて隣にいる私を見る。

 

「しかしねくるみ。天竺に住む人間を殺戮や鏖殺するのは私としては願ったり叶ったりだけど、本来ならエリスの方が適任だと思わない?」

 

「そうだね。あの子はギリシア神話 女神エリスをベースに創られたから」

 

ギリシア神話の女神エリスは不和と争いの女神。それと邪神で悪神と言われてる。だから闘争本能が一番激しいのは私達の中でエリスちゃんが断トツ。他に小惑星と準惑星のエリスとしての意味も含めてベースに創られてる。魅魔ちゃんは人間に対する憎悪の感情が強烈。さっきの人間たちにもかなーりえげつない事してたし。私や魅魔ちゃん、エリスちゃんにユウゲンマガンちゃんは天君の奴隷じゃない。でも月人や月の民に玉兎は天君の奴隷。つまり間接的に天君の妻である神綺ちゃんとサリエルちゃんに従ってて玉兎も含めて色々二人に手を貸してる。月の民や月人の賢者で天津神 天稚彦 の死の原因を作り天邪鬼の原像で原型の天探女。名は 『稀神サグメ』 サグメちゃんはもう一人の 月の頭脳で月の賢者 永琳ちゃんを尊敬して神話の頃から永琳ちゃんの事を八意様って呼んでるの。サグメちゃんも天君の『奴隷』だけどね。サリエルちゃんは冥界にギリシア神話でゼウスの娘 ペルセポネーとその夫ハーデース 北欧神話のヘル メソポタミア神話 エンリルとその配偶者ニンリル メソポタミア神話だけどバビロニア神話の エレシュキガル と天界にいる ネルガル シュメール神話 クル エジプト神話 オシリス アヌビス セケル ハワイ神話 カナロア ローマ神話の神 ケレース プロセルピナ などを冥界に連れて行ってる。他にギリシア神話のエーリュシオンや古代エジプト神話のアアルに北欧神話のヴァルハラを天国に結合させたりとサリエルちゃんは大忙し。神綺ちゃんは地獄が人手不足なので天竺に住む人間で最初の死者が閻魔になり神になった者に、天竺の神 冥界を司る双生児の神で地獄の神 倶生神 と 懸衣翁に奪衣婆 ゾロアスター教の悪魔で7大魔王、ダエーワだけじゃ足らず永遠になった神道の神を使い、鬼や煙々羅などの妖怪を地獄に連れ去り働かせてる。ただ地獄にある三界は神綺ちゃんだけじゃなくて地獄の女神

名は『ヘカーティア・ラピスラズリ』

元は冥界に連れて来た神だったけど神綺ちゃんが冥界から地獄に呼んで三界を統治して貰ってると聞いてる。地獄の妖精 『クラウンピース』はヘカーティアの部下。ケルト神話の妖精の国『ティル・ナ・ノーグ』が神綺ちゃんの手で地獄の三界に結合されていて ティル・ナ・ノーグ に クラウンピース は住んでるの。このティル・ナ・ノーグは常若の国と言われ、妖精たちの好みの棲み家で、三通りの島々と言われていて生き物の住む島、勝利者たちの島、そして水底の島と言われて、三界にそれぞれ三通りの島々が存在して妖精が三通りの好みの住処に住んでる。あ、死神は異国の存在と言われてるけど地獄にもいるの。本朝の死神は伊邪那美。伊邪那美が死神かどうかは異なると考える人もいるけど。他にはケルト神話の生物でティル・ナ・ノーグに住む妖精の死を予言する存在、首無し デュラハン アイルランド神話で死を予告する妖精 バンシー もティル・ナ・ノーグに住んでる。神じゃなく天使で言う死神なら大天使 サリエル このサリエルは月人のサリエルちゃんとは全くの無関係じゃないけど別人。名前で言うならサリエルちゃんが月人など月の関係者なのはある意味正しい。サリエルは月の支配者と言われて死神とも言われてるから。実際に月を支配してるのは天君だけど。

そんな事を考えていた束の間、突然魅魔ちゃんが右手の指を鳴らし魔方陣を展開してリンゴを二つ出す。一つは私に渡して来たから朧げに受け取りながら魅魔ちゃんは片手に持ってるもう一つのリンゴを齧って食べ始め、呑み込むと片手にあるリンゴを見ながら喋る。

 

「いやー 便利なもんだね。これを使えばどこにいても水や食べ物に困らないし。永琳には頭が上がらないよ」

 

「うん。そういう意味では天君と永琳ちゃんに豊姫ちゃんと依姫ちゃんのお蔭と言える、かな。多分」

 

魅魔ちゃんにお礼を言いながら私もリンゴを食べながら思考。この魔方陣から出たリンゴはそれは月に住む月人や月の民から送られて魔方陣からの転移。これは物質を電子化にして、送り出した先で電子化した物を物質に再構成、再構築し媒介する役割がこの魔方陣。要するに魔界にいる夢月ちゃんと幻月ちゃんの二人を呼び出すと、呼ばれた二人が魔方陣を通って来る時に物質を構成する情報を最小限まで分解してそれを送信し、送られた先で再構成、再構築する術式。

 

月人や月の民に玉兎は極端な位に地上人を見下したりする傾向があって、かつて住んでいた地球は月に住む民にとって今や監獄としてしか見てなく、毛嫌いしていて特に後から生まれた人間とは反りが合わない。地上の神や妖怪などに対しても無慈悲。昔までそうだった。極端な考えでプライドも高く傲慢。天君が月に住む者達全員奴隷にした際に月で止まっていた時間が動き出した。考えは変わりつつあってもこの考えが払拭された訳じゃ無くて柔軟じゃない頑固者。あの事件もあるし皆あの頃から穢れについてそう教わって来たからそう簡単に変われと言われても出来ないのは分かるの。大昔に月人や月の民は穢れに頭を抱え苦悩。だから月の神の月夜見ちゃんは皆を穢れのない月へ行こうと提案、それが会議で可決されて今に至る。

 

でも今や穢れは解決済み、それは月夜見や『変若水』とかも関係してる。みんな怖いんだろうね。死ぬ事が。他に、月にいたけど今や地上に行った穢れを払う女神『菊理媛命』や 直毘神 が月人や月の民に貢献。直毘神は神直毘神と大直毘神に琵琶湖に住む金龍と言われる伊豆能売の事で、特に『菊理媛命』

彼女には苦労させてしまい、本当に良くやってくれた。穢れを嫌って月に住む月人や月の民は彼女だけじゃないけど頭が上がらない。かつての都市を発展させ貢献した永琳ちゃんと肩を並べる程の偉業を成し遂げたから。身を隠してないし死んだ訳じゃない。でも彼女は壊れてしまった。その時に月に住む者は彼女を殺せる訳も無く。穢れについては完璧じゃ無いとは言えある程度解決してるから、殺して穢れが出ても不備は無い。

でもね、無理。出来る訳が無い。だから注連縄を使い、結界で隔てられた月の都に入れないようにさせて放置の苦渋の選択。ずっとずっとずっとずっと、ただただ彼女は地球を延々と眺めて。

 

神奈子ちゃんもあの時、彼女と同じ症状に陥り記憶が消えた。彼女に比べて症状は酷くない。さっき言った通りまだ穢れについては不完全で完璧じゃなかったの。もしも永琳ちゃんがあの時、地上に残らず月にいたら解決できた事かもしれない、でもそれは考えちゃ駄目。それを言ったら月に行かず天君と地上に残り、幸せそうに地上で過ごして生きていた永琳ちゃんを否定しちゃう。それは絶対ダメなの。大昔、都市があった時に十分働いて貢献してる、これ以上求めても酷だし、永琳ちゃんの時間を奪っちゃいけない。

 

ともあれ過去にこれがあったから月の民や月人は恐れてる、同じ過ちが起こりうるかもしれないと考えて。今では穢れについて問題無い。あの時、天君や永琳ちゃんが生きてると分かった時、皆それはもう歓喜。地上にいるとは言え王子にかつての都市に住んでいた賢者の一人が生きてた。それで天君や永琳ちゃんは月に必要だと考え、月の都に連れ戻そうとして結局は失敗。まさかの先手必勝、天君と永琳ちゃん二人が、地上から来て天君と永琳ちゃんの奴隷になる羽目に。豊姫ちゃんと依姫ちゃんの奴隷でもある。それを好都合と考える古株が結構いた。だって王の息子の天君が月人や月の民の王になるなんて元サヤ。本来の形に戻る事と同義なんだもん。新株はそれを知らなくて怯えてる。でも、地上に残るとは聞いてたけどまさか、永琳ちゃんが核に堪える地下シェルターを何年も掛けて造ってたなんて私は考えもしなくて、永琳ちゃんは天君の肯定者で尽くす女とは言えこれが一番驚いた。

 

豊姫ちゃんと依姫ちゃんの愛玩動物で玉兎の鈴仙ちゃんもそう。でも基本的に玉兎の殆どは陽気な性格でノリが軽くて地上を見下す鈴仙ちゃんの様な玉兎はあんまりいない。鈴仙ちゃんと顔なじみの玉兎部隊に配属されてる『清蘭』や玉兎部隊の情報管理者『鈴瑚』は地上を見下す鈴仙と違い能天気な性格。その分鈴仙ちゃんと違って残酷とも言える。清蘭ちゃんと鈴瑚ちゃんの二人は当然玉兎だから天君の『奴隷』玉兎と言えば玉兎固有の能力として、玉兎同士ならばどんな距離でも瞬時に会話できる。そこに目を付けた月人や月の民、永琳ちゃんやサグメちゃんなどの賢者たちは持ちうる限りの頭脳と技術を用い玉兎と似た様な事が出来る装置を開発する事に成功。電波とかは使わず念力の様な感じで遠くにいる人物でも関係なく脳に直接会話する感じ。簡単に言えば仏教で言う『六神通』の内の二つ『天耳通』と『他心通』を混ぜた物、かな。多分。『天耳通』は普通聞こえる事のない遠くの音を聞いたりする超人的な耳の事で、『他心通』は他人の心を知る力。何だか非現実的で科学を否定するような話だけど永琳ちゃんの頭脳と月の賢者のサグメちゃんや月にいる八百万の神の手もあり、誘導尋問で相手の赤裸々の過去とかを知る事は出来ないしプライバシーの侵害が起こる事は無い。この念話は天君が咲夜ちゃんを妻にして天君が 寅丸星 ちゃんに初めて会った時に龍神ちゃんが咲夜ちゃんと念話をしてた筈。

それでエリスちゃんから送られるその念話を聞くに今は紅魔館という屋敷に向かってるそうなので隣にいる魅魔ちゃんを見るとウインクを私に返す。魅魔ちゃんも理解してるみたい。あ。この魔方陣は豊姫ちゃんの能力、海と山を繋ぐ能力を応用して作り上げた、って聞いた。まだ改良の余地はあるけどある程度は魔方陣から出す事が出来る。龍神ちゃんの手助けもありこの魔方陣は展開すると魔界に地獄に天界に冥界にも繋がっていて、これを使えば月人が住む月に一瞬で戻る事が出来る技術、凄いよね。科学で魔法みたいなことを開発するんだもん。まだ行ける所は限定的で何でも魔方陣から出す事が出来る訳じゃ無いから万能じゃないけど、必要最低限の事は出来る。ただエリスちゃんのはちょっと特別仕様で魔界から小悪魔ちゃんや夢月ちゃんと幻月ちゃん、他も呼び出す事が出来る。ただ呼び出す事が出来ると言っても意思がある者は強制的に呼び出せず、たまに拒否される場合がある。その時は結構傷付くとエリスちゃんがお酒を飲みながら愚痴を漏らして嘆いてた。エリスちゃん、普段は気が強いけどお酒が入ると泣き上戸なんだよね。最近天君に会ってないから寂しさが積もってるのかも。ああ見えて甘えん坊だから。エリスちゃん本人に聞いても そんな事無い! って絶対認めない。天子ちゃんといるエリスちゃんや唐土にいるユウゲンマガンちゃんが創られてどれだけの時間が経ったのかな、天君がまだ子供の頃だったからもう覚えてないや。

 

飛行の最中に濃い霧の空間にそのまま飛び込むと霧に阻まれて視界が悪くなる。私も吸血鬼だけど太陽に弱くない、だけど本来の吸血鬼は太陽を苦手としてる、だからこんな霧に包まれた所に吸血鬼は住んでる。霧のせいで前が見えないので速度を落とし徐行してそのまま進む。進む最中魅魔ちゃんはそろそろだよと顎で示して言うと、大きな館が何とか目視。龍神ちゃんと衣玖ちゃんが住んで天界にあった大きな洋風のお城程の大きさじゃないけど、趣があって立派な館。幻想的な雰囲気も滲み出てる。薄らと見える館は赤色を基調とした装飾で光をあまり入れない為か窓が少なく不気味。換気が出来無さそう。館に入る門はあるけど開門してる。私と魅魔ちゃんは空飛べるから門が開いて無くても問題ない。

 

「あれ。二人ともこんな所で何してるのよ。って魅魔 血まみれじゃない!」

 

「天子遅いよ」

 

魅魔と館を眺めていたら、後ろから天子ちゃんと吸血鬼の少女が到着。天子の肩には蝙蝠になってるえりすちゃんがいる。魅魔ちゃんは振り返りながら喋ると、天子ちゃんは魅魔ちゃんに近づいて身を案じ、近づいて返り血だって事に気が付いて安心したのか溜息を一つ。天子ちゃんはフランを交えて魅魔ちゃんと話してるけど、天子ちゃんの肩にいたエリスちゃんが私の前に飛んで来て、視線を会わせてコンタクト。ん、そっか。夢幻世界はあらかた作り終えたみたい。私は頷くとエリスちゃんは天子ちゃんの肩に向かい、そのまま監視の仕事を再開。私は屋敷を見ると、屋敷から吸血鬼の一人がこちらに歩いて来る。そして門の手前まで来たら一度止まり、そのまま片足を後方内側に引き低姿勢をとり、私に敬意を表す。これは古くから女性がするカーテシーという名の挨拶の一種。

 

「御機嫌よう、吸血鬼の始祖くるみ。私の名は、レミリア・スカーレット。吸血鬼の始祖にお会いできて光栄です」

 

「そんなに畏まらなくていい」

 

「そうですか。始祖よ、この後何かご予定でもあるのかしら。なければ紅魔館で一緒にお茶会でもどう?」

 

 

両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げるカーテシーをやめ、口調を崩して私を見る。折角のお誘いだけど、仕事が残ってるから首を横に振り断る。それを見てレミリアちゃんは少し残念そうな顔をして、頷いた。レミリアちゃんは青みがかった銀髪で私と同じ真紅の瞳で私より小さいけど背には悪魔羽が生えている。今回は仕事があるから無理だけど、終えたらお茶会をしようと考えて、封筒を渡す。中にはある国へお誘いする入場券の様なチケットが一枚の紙が入ってる。元々これをレミリアちゃんに渡すのが仕事の一つだったの。天子ちゃんがいるから渡さなくてもいいかなと思ったけど結局渡す事に。次は華陽夫人の華陽ちゃんに会いに行く。

 

いずれ、本朝にある諏訪国でお茶会をしましょう。




妖精関連で地獄の三界とケルト神話の妖精の国 ティル・ナ・ノーグ を結合と書きましたが、地獄の者と妖精は棲み分けがちゃんとされてます。他にも地獄は結合させてますがね。あの三人の妖精、光の三妖精たちは三通りの島々 ティル・ナ・ノーグ に 地獄の三界 に 三妖精。三つとも三繋がりでこうなりました。
名だけとは言え東方紺珠伝のキャラやサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアを出せて一安心。

『変若水』は私のオリジナルでは無く、これは月の不死信仰に関わる霊薬の一つと言われる物ですね。月の神、月読に関係がある物で、月読が持っていたとされると言われてる物です。これがあれば不老不死、または若返るとも言われてます。
『鹽盈珠』と『鹽乾珠』隠れ蓑もですね。基本的に私が出す物は元ネタがあります。

夢幻世界を治める一つの理由としてあの時二人を出して弘天の娘にしました、幽香については旧作設定も混ぜてます、現実世界と夢幻世界の境界に建っている夢幻館の主としての意味も。まあこれは、複数の内の理由の一つで幽香と紫、二人を娘にしたのはそれだけではありませんがね。幽香はともかく紫は長野県の妖怪に隠し神がいるので、あの時紫を娘にしなければその奥の手を使ってました。幽香はどうしても娘にする必要があったのと奥の手が無い理由で娘になるのは確定でしたが。

二つの人形については本当に長かった。しかしやっと出せた。小傘もかなり時間が掛かった。小傘は24話のサブタイトル「鰯の頭」で2つの人形は31話の「技術」で出してます。本当に長かった。片方の人形は誰なのかは流石にばれてますよね、31話で答え書いてるし。この二つの人形は紫と幽香の髪色と同じで丁度良くて、こうなりました。それとひょうすべの話がこの作品に都合が良かった事もあります。

ただ、小傘に関してなんですが一つ目繋りと多々良、鑪(たたら)繋がりで製鉄と鍛冶の神 天目一箇と天津麻羅を混ぜるかもしれません。そうなると小傘は妖怪で製鉄と鍛冶を司る妖怪になりますが、これは茨歌仙に出てくる小傘の話を参考にしてます。
これ結構重要ですが阿用郷の鬼の話も小傘には混ぜてるかもしれません。それはこの鬼が一つ目だからです。この阿用郷の鬼は一つ目の鬼と言われ、鬼自体に名称はなく、日本に現存する文献で確認できる最古の鬼の記述とされるそうです。ちなみにこれは確定ですが、比較的無害と言われる『一つ目小僧』比較的無害という所は一つ目繋がりで小傘に混ぜてます。

今回出した一つ目の妖怪一覧、『阿用郷の鬼』は島根県の妖怪、「一つ目入道」は和歌山県と広島県の妖怪、「箕借り婆」は神奈川県の妖怪。「のうま」は島根県の妖怪。『一本ダタラ』は和歌山県と奈良県の妖怪。
後は鬼太郎の『バックベアード』ですかね。あれも一つ目なので。『一つ目小僧』は各地に似た様な話が多くどこの県の妖怪かは面倒なので書きません。

備前国、備中国(岡山県)には実際歩き巫女でコンガラ巫女と呼ばれる巫女がいます。コンガラは矜羯羅童子か歩き巫女か。どっちでしょう。この中にないかもしれませんがね。

靈夢は旧作キャラですのでこれは霊夢の打ち間違いではありません。それと陰陽玉を手に入れる目星は付いてます。その為に私は歴史上の人物の彼を原作キャラに

大鯰を出した理由の一つは阿蘇山の伝説があったからですね。阿蘇山は日向国にありませんが近かったので使いました。ちなみに地獄温泉は実在します。この時代にはありませんが地獄と言う名がちょうどいいので出しました。ですがこの先色んな温泉に寄るので今回の地獄温泉は書くかどうか分かりません。それと長野県に地獄谷温泉があります。


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塵塚怪王


悩んだ、今回本当に悩んだ。

今回出てくる歴史の話は無茶苦茶にしてますので絶対に信じてはいけません。


「悪く無い。こころ、貴方は薙刀が合ってると私は思うわよ」

 

「そうかな? そうかも」

 

剣を持った依姫と人型に成って薙刀を両手に持ったこころからは、金属特有な擦れた際に発する音甲高い異音を周囲に響かせる。正直このSE、効果音は好きじゃない。この城、武器庫があって無駄に色んな種類の武具があるんだが、子供達だけではなくこころも鍛えようという話になり今はこころの手に馴染む武器を探す為、一つ一つ試し、試し終えてこころに合わなければ取り替えての繰り返しをしつつ依姫とこころは刃を交えて訓練してる。

 

「そんなに龍神や城が珍しいのか霖之助」

 

「うん。こんな建物見た事が無いし龍神なら尚更だよ。僕は見た事が無い物に好奇心が疼くんだ。蒐集癖があるのかもしれない」

 

「う~ん ここまで興味津々に体を触られると流石に照れるね~」

 

「せめてメスの人間形態になって照れろ。その姿で照れられても恐怖心だけが煽られるだけだぞ」

 

俺が肩車して、龍神の鱗に触ったり周りに目移りしている少年。名は 森近 霖之助 この霖之助は半妖で、草薙剣に主と認められてその力を使いこなしたいと思っている様だ。しかし、あれは諏訪国にあるし主と認められ、使いこなすには血が必要。龍神は本来の姿に戻って人間形態ではなく龍の容姿なので、長い体にある龍神の黒色の片鱗を霖之助は触っていてそれに龍神は照れてるが、龍の姿なので照れられても怖い。照れるにしろ雌の人間の容姿になって照れて欲しい物だ。

 

しかし草薙剣か、草薙剣の話で有名なのはヤマトタケルノミコトと天武天皇。事の顛末、天武天皇は草薙剣の呪いを受けたと日本書紀にある。これはつまり草薙剣は天武天皇が天皇の血を持っていなかったと見抜いたから、天武天皇を呪ったと言える。大海人が本当に天皇の血を持っているかどうかは文が調べていた。ただやり方が少々荒っぽく、草薙剣を使って調べているがこの方法が最も確実だから仕方ない。草薙剣は血を見分ける事が出来るからな。

 

今は呑気に子供達と遊んだりしているが、俺は平将門が朝廷に捕らえられる前に早く東に行かなければならない。そもそも、平将門は天皇の血をその身に宿しているので寿命、つまり時間で死ぬ事はまず無い。それは藤原不比等に妹紅、西行や幽々子。平将門の娘、春姫もだ。だからこそ、西行は死に急いでいる。ただ、首を斬り落とされたら死ぬし出血多量でも死ぬし病でも死ぬ。しかし100年生きるか、それとも永遠の時を生きるかを考えたら気が狂う。普通の人間はそう考えるだろう、普通の人間はな。何せ本来起きるはずの、ニニギが岩長姫を妻に娶らない話、バナナ型神話が起きていないんだ、だから天皇には寿命は無い。が、寿命以外では死ぬ。今や平将門は蝦夷と神国を本朝の東方に作り上げ、大和朝廷に朝敵としてみなされてしまったので、放置していたらいずれ朝敵として殺されて最後には晒し首。 獄門 の結末を迎えてしまうだろう。それだけは避けるべきだ。

 

それで、永琳が言うにヤマメとパルスィがメスの貒を神使にしたそうだ。名は 二ッ岩マミゾウ で能力が化けさせる能力。これは平将門の妻 桔梗、桔梗伝説で上手く使える。例えば永遠の存在である俺が平将門に成り済ませばいい。平将門に成り済ました俺が朝廷に捕まった後は脱獄してマミゾウに能力を解いてもらい、平将門の容姿をマミゾウの能力で変える。藤原純友も歴史では討たれた、または捕らえられて獄中で没したと言われてるが真実は定かではなく、それは捏造なんて言われてるし。藤原純友の実際は海の彼方に消えたとも言われる話があるくらいだ。念には念を入れる為、一応 上方修正の保険は打って置く。隙を生じぬ二段構えで行こう。日本の三大怨霊である平将門、崇徳上皇、菅原道真の平将門を今でも恐れてるのが大勢いる。まあ平将門を殺させはしないがな。そうすると三大怨霊が一つ空白になる。空白には早良親王が入るのかもしれない。弘天の天である菅原道真は、どうしようか。

 

「そうか。霖之助、秋になればお前達とはお別れだ。お前に戦いの才能は無い。が、口は中々達者。その口を上手く活かし、西の人間共に色々吹き込んどいてくれ」

 

「分かってる。でも僕が草薙の剣に、主と認められたいと思ってる事を知ってるのに戦いの才能が無いって酷いな」

 

「違うぞ霖之助。草薙の剣は強い者を主と認める訳じゃ無い、意志の強さでも心の強さでもない。あれは血で主と認めるんだ」

 

霖之助を肩車して話していたら衣玖がいつの間にか隣にいた。そのまま衣玖は頭を下げて来客が来たと告げる。城門で待たせているそうなので、肩車していた霖之助を下ろして後は龍神に任せ、衣玖に来客の事について詳しく聞くと、来たのは天狗の二名だそうだ、間違いなく椛とはたてだろう。何しに来たのかはもう分かっている。毎日、諏訪国にいる永琳が念話で俺の頭の中に話しかけてくるからだ。

 

「来客と話し終えたら、後で撞球室で何か勝負をしようか霖之助」

 

「そうだね、その時は負けないよ。応接間にいるから待ってる」

 

「あ、パチュリーとレイラはどこにいるか知らないか。姿が見えんのだ」

 

「パチュリーはいつも通り書斎か図書室。レイラはガーデンか地下で例の騒霊達と話してるんじゃないかな」

 

いつも通り、ならいいや。レイラはこころのお蔭で良く笑うようになり、順風満帆に生きている。レイラがあの 六の宮の姫君 みたいな事にならなくて本当によかった。そう言えば六の宮の姫君には朱雀門が出て来たな。 しかし騒霊、霊か。霊を妻にしてみるのもありだな。まだ霊を妻にした前例はないし。だが体に触れる事は出来るのだろうか。触れる事が出来ないならセクハラが出来ない。俺は色んな種族を妻にしたり神使にしたり仕えさせてきた、仏に仕える在家者は難しいが、出家した女、比丘尼などはまだ妻にしてない。本来、仏に仕える者、つまり仏教の修行をしている者は煩悩や執着を断つためのもの、僧侶などは原則としてこれはしてはいけないと法のような、戒律、八斎戒、十戒。などなど出家した者、比丘と比丘尼が遵守する具足戒、波羅提木叉もあれば他にもあるが色々決まりがある。だが、これがちゃんと機能していたのか否かどうかと言うと、機能していない時代もある。例えば女犯。女犯とは大まかに言えば戒律により女性との性行為を絶たねばならない仏教の出家者が、戒律を破り女性と性的関係を持つ事だ。これを破れば犯罪者扱いなんだが、しかしこの女犯、ちゃんと取り締まられていたかと聞かれたらそうじゃない。鎌倉時代や室町時代は取り締まりが緩く、仏教の修業をしている者が公然と妻帯もして民と変わらない生活を送る僧侶は結構多かった。まあこれは比丘尼ではなく比丘、つまり男の出家者の話だが、結局の所 何が言いたいかと言うと。仏に仕える女を妻にしても問題は無いと言う事だ。とは言え、肉を食べてはいけない、酒を飲んではいけない、嘘は付いてはいけない、生き物を殺してはいけない。などを守れてる奴がいるとはとてもじゃないが思えん。特に生き物を殺してはいけない、これは特にだ。人間に限らず生物は何かを殺して生きているのが当たり前、稲だって生きてるんだし。

 

もしくはだ、日本書紀の大海人、つまり天武天皇は元 僧侶だが、還俗して在俗者、俗人に戻った。即位の前に俗人に戻っているので法皇ではなく天皇になっている。在家、また出家した者達は戒律を堅持しなくてはならないが、自分の意思で僧侶を捨てる事を選べば俗人に戻る事が出来る。だから出家者の尼などを仏教から引き抜くのもいい。

 

 

「盟主様、お久しぶりです」

 

「早速だけど、あんた 私達が来た理由は分かってるのよね?」

 

俺の後ろに衣玖がいる。後ほどアリスを案内させる為だ。向かい合いにいる椛が頭を下げ、はたてがいつもの調子で俺に話しかけて来たが、何故か椛は紫にあげた紫色の傘を閉じた状態で右手に持っている。まあいい。魔女のパチュリーとレイラを諏訪国に連れて行くからはたてと椛をそっちに寄越すと、永琳から聞いている。だから俺は頷いて肯定。椛とはたての後ろに隠れている少女を見るが、背にいる少女が顔をひょっこり顔を出して俺と目が合うとまた二人の背に隠れる。仕方ないので気にせずそのままはたてと椛を見る。アリス、顔を隠してどうする。数秒アリスの顔は見れたが、相変わらずあまりの可憐さと美しさにミケランジェロや美の女神 ウェヌスやアプロディーテーも嫉妬に狂う程。まずはアリスをパチュリーとレイラに会わせる為に衣玖に案内を任せる。

 

「理解している。まずアリス、久しぶりの再会だがまずは。俺の後ろに控えているお姉さんに城内を案内してもらいつつパチュリーとレイラに会いに行って来い」

 

「ではアリス様、パチュリー様とレイラ様の元にご案内しますのでついて来てください」

 

「う、うん。分かったわ」

 

衣玖が先行して城内へと向かう、アリスは衣玖と俺を交互に見ながら戸惑い、後ろ髪を引かれながらも先に行った衣玖を早歩きで追いかける。これでアリスと衣玖がこの場にいなくなった。では、まずは天智天皇について椛に聞いて置こう。

 

「で、椛。天智天皇はどうなった。死んだか」

 

「はい。天智天皇は崩御しました」

 

そう、か。崩御したか。そうかそうか。

 

ふははははははははは!!!! そうか天智天皇が死んだか! 両手でお腹を押さえても笑いすぎてお腹が痛い。

 

ああ。久々に 阿頼耶識 が疼く。間接的で直接手を下した訳じゃないが天皇を久々に殺した。それは厳然たる事実で 真如 だ。もう何人目だろうか、覚えてないな。天智天皇が死んで、大和にその死体が残ってると言う事はその体にまだ天皇の血が体内に残っている事を意味する。天智天皇の体内は病原菌持ちだとは言え、霖之助は半妖、なので半妖の霖之助に天智天皇の死体を喰わせるか、そうすれば草薙の剣に主と認められるかもしれん。本人は嫌がりそうだがな。妖怪は病に陥ると言った事が基本的に無い。だから天智天皇の体内にいる病原菌を血と共に体内に入れても問題は無い。と、思う。半妖だからもう半分は人間だし。天智天皇の死体が腐敗しない様に咲夜には天智天皇の死体の時を止めてもらおう。

まあ天智天皇はこれで消えた、今頃 霊か神になっている頃。と、言う事はだ。次の天皇は一体誰が即位するのかと言う事になる。弟とされる大海人の情報をはたてにそのまま聞く。

 

「大海人の結果は」

 

「黒。大海人は天皇の血を持っていなかったわ」

 

はたては両腕を組んだままで首を横に振る。分かった。ならもう迷う事は無い。

天皇は天照、またはニニギの血を持っていなければならない。この決まりは神話の頃から無窮だ。

 

天照が瓊瓊杵に下した 天壌無窮の神勅 天皇の血を持っていない者が天皇になるのは面倒でしかない。俺がしなくても結局天武系から天智系に戻るがな。

 

三種の神器の一つで三種の神器の中では天皇の持つ武力の象徴、しかし天叢雲剣、剣は剣でも意思を持っている剣。そして草薙剣盗難事件が起き、本来ならその後、一時的に宮中で保管される。そして大海人、つまり天武天皇の時代、さっきも言ったが天武天皇が病に倒れる話がある。これ、天武天皇の病が神剣の祟りと見なされるんだが、結果的に言えば天叢雲剣の呪いに蝕まれ、天武天皇が病に倒れる話だ。つまりこれは草薙剣、天叢雲剣は天武天皇を天皇と認めなかったので天武天皇を呪った事だと取れる。そして はたて が言うに 文 が天叢雲剣を用い、呪われた大海人、つまり大海人は天皇の血を持って無い事が判明したので生きていても面倒な種、しかも芽が出て育ちつつある。ならばもう育たない様 根元まで刈ればいい。

何故文が天叢雲剣を使えるかと言うと、単純に文が俺の神使だからだ。答えになって無いと思うかもしれないが、ちゃんと答えになっている。

 

「はたてに椛、二人には隠れ蓑をやるから後日、身を隠して大和にある吉野にいる大海人を暗殺し、大友を次の天皇に即位させろ」

 

隠形鬼ならぬ隠形天狗だな。本来 壬申の乱に敗れる大友皇子は自害する。しかし大友皇子は生かし、弘天の名が入っている大友、即位した 弘文天皇 には俺の都合よく動いて貰おう。今 俺が発言した事の意味は天武系が消える事を意味する。つまり天武天皇系、第40代天皇から第48代天皇は邪魔なので消えてもらう。そうなると日本三大悪人である道鏡は使えん。他の手はあるが天智天皇の系統である第49代天皇 光仁天皇 もしくは第50代天皇 桓武天皇 このどちらかを弘文天皇の次に即位させる、桓武天皇を即位させるなら山城国へ遷都し、山城国に平安京が出来て何とも好都合、これで時間稼ぎが出来る。時間稼ぎするもう二つは、三大悪女の一人を使う。あの三大悪女、藤原薬子の事でもあり薬子の変の事だ。それをすると言う事は朝廷が山城国に平安京と大和の平城京、二所の朝廷が二分割。要は平城京と平安京が同時に存在し、二朝の対立は決定的になる。これで時間が稼げるがもう一つ。伊予国にいる藤原純友も使い、平将門と蝦夷に対する戦力を西にも分散させ蝦夷と平将門の持ちこたえる時間を稼ぐ必要がある。後で大和にいる輝夜と咲夜に連絡しておかねばならん。さっさと天皇の代もいい加減 先に行かせる必要がある。

 

そろそろ俺たちが、俺の娘に妻に仕えさせた鬼に神使なども含め、全て関わらせる時期だ。今まで人間の事に関する事に出来るだけ首を突っ込む事はしなかったがもういいだろう。そもそもだ、俺の目的は人間に神や妖怪が実在していると、この先産まれる人間たちを認識させる為に動いている。と言う事は、人間の政治や戦争などにも無駄に関わって行かなくてはいけない。人間共に神と妖怪が人間より劣っていると見られてはこの先困る。だからと言って平等や対等も駄目だ。人間共には神と妖怪には畏敬の念を抱かせる必要がどうしてもある。その上で、将来的には魔女などを使い、人間には科学だけではなく魔法を教えさせて行く。小学、中学、高校などの授業で魔法の授業などが追加される訳だな。

だからこそ、人減共には畏敬の念を抱かせる為には徹底的に人間を痛めつけなくてはいけない。その為に人間を昔から無駄に増やす事に費やしてきたんでな、数万人ほど死んでも問題ない。俺は諏訪国に住んでる者の味方であって人間の味方では無い。人間に限った話ではないがオスとメスがいて、諏訪国以外のそいつらに食い物と飲み物と住処を与えていたら後は勝手に増える。それまで待てばいい。まるで家畜、畜生。家畜や畜生ならちゃんと躾けなくてはいかん。恐怖政治はする気は無い、まあ全て支配するんだし同じだな。

死体の処理が面倒だが トロイア戦争 でも起こすか。しかしある意味、もうトロイア戦争は起きてる。なら終わらせるにはトロイアの木馬か。他に パンドーラー や アトランティス がある。確か人類に災いを齎す為にゼウスの命令で神々に作られた最初の女性の人間がパンドーラー パンドラの箱で有名な女だ。あの女が開けるなと言われた甕を開けたせいで疫病やギリシア神話の エリス が出て来た。まるで竜宮城に行き玉手箱を貰った浦島太郎。しかし思うに、パンドーラーは神々に作られた観測者だな。今パンドーラーは冥界にいるが。それでアトランティスと呼ばれる王国はゼウスの怒りに触れて海中に沈められた、だったな。

 

今の発言を聞いた椛は両目を瞑り黙っている。椛の隣にいるはたても黙っていたが、右手を閉じてポーチの様な物の中からブラシを取り出し爪を磨き、ブラシをポーチに戻してマニキュアの様なのを取り出してから、まずは片目を瞑りながら左手を使って右手の爪にマニキュアを塗り始め、そのまま はたて はマニキュアを塗った右手の爪に片目を瞑りながら息を吹きかけつつ話しかける。

命が尊い、平等、差別。そんな考えは人間特有の考え、神や妖怪にそんな考えは無い。

そもそも神とは古来から人間の味方ではないしな。

 

「皇子があんたに殺されるのって何十人目よ。あ、でも大海人は天皇の血は持ってないし関係ないか。一応言うけど、今ならその発言を聞かなかった事にしてあげるから撤回できるわよ」

 

「余計な心配は無用だ。はたてに椛、必要なら文や俺の妻に神使も使い、もう一度言うが大海人を殺せ」

 

「承りました。それが盟主様のご命令とあれば私は従います」

 

椛は俺に近づいて来て、そのまま跪く。椛は上目遣いのまま片手を胸に、もう一方の手を相手に差し出して来たので俺はその手を掴み握手すると椛は微笑んだ。はたてはマイペースに左手にもマニキュアを塗り始めている。これで天武天皇の系統、延いては第40代天皇から第48代天皇までは事実上 日本書紀などの歴史書から消える。天智天皇と藤原四兄弟は俺が殺したようなものだが、藤原不比等と妹紅が生きていれば、後はどうとでもなるとは言え念には念をだ。別に天武天皇の系統はいなくてもいいんだ、天武天皇の系統がした功績は他の天皇にさせればいい話。天武天皇の系統がしなくちゃいけ無い訳じゃ無い。

 

例えば聖徳太子。旧壱萬圓札や10人が同時に喋っても聞き取れるなど、今でこそ聖徳太子は有名だが、この聖徳太子。古事記にはいるが実際はいない。

古事記の場合 厩戸豊聡耳命 と一回書かれてるだけで事績なんて何一つ書かれていないし聖徳太子の文字すらないからだ。だが、日本書紀には聖徳太子が多く書かれている。そもそも古事記にはいなくて日本書紀に無駄にいる人物ってのはおかしい。都合の悪い人物なら日本書紀にあんなにも多く執筆する訳が無い、かと言って都合がいい人物なら古事記に書かれている筈だし普通に考えてこんな食い違いはありえない。だが日本書紀にいて古事記にいない人物である聖徳太子。日本書紀に聖徳太子の莫大な偉業が多く執筆され、虚構説がある聖徳太子は似ている、そう。まるで第2代 綏靖天皇 から第9代 開化天皇 の 欠史八代 に古事記の一大英雄譚で、架空の人物として扱われることが多く、女装したヤマトタケルノミコトの様に。聖徳太子は実在していない存在で、日本書紀を創作した藤原不比等が虚構の聖徳太子なる者を創作した人物。とか言われてる。他に聖徳太子がして来たとされる過去の偉業は、誰かの偉業を自分の、つまり藤原不比等が創作、虚構した人物の聖徳太子にそれを当て嵌めた、とかも言われてる、だからこそ聖徳太子は虚構説があり、実在しない人物とか。他に聖徳太子の十七条憲法が有名だが、正確に言うなら聖徳太子が制定した ものと されてきた十七条憲法だ。それと小野妹子が遣隋使と言われるが、大唐に派遣したとは書かれている。しかし遣隋使なんて事実は捏造の歴史書である日本書紀ですら小野妹子にはない。それは皇国史観のせい。

 

話が逸れた。要は、誰かがした何か、その何かの事実があったとして、その事実を別の事や他の誰かに当て嵌めてしまえばいい。古ければ古い時代ほど歴史は捏造や情報操作出来るんだ。それは盗作ともいうが。未来の人間が過去の時代に行ける訳が無く、結局過去の考察、推測でしかないし、それが事実だと判明出来る訳が無い。説はあくまでも説。

 

頭に冷たい何かが落ちて来たので、見上げるともう一粒の滴が顔に当たる。どうやら雨が降って来た様だ。

 

「雨か。椛にはたて、後日 大海人を暗殺してくれ。今日は城に泊まって行け、饗応の準備は出来てるし幸い空き部屋が無駄に多いんでな。暗殺前に風邪を引かれたら困る」

 

「はいはい。じゃあ中に入らせてもらうわよ、それにしても無駄に大きいわねこの洋風のお城。私としてはヴィクトリア朝時代の貴族の屋敷の方が好きだけど」

 

「では盟主様。また後程」

 

はたてが言っているのは ヴィクトリアン・ハウス の事か、あれも城と言えると思うが。二人は忌憚せずそれに傾いて返答し、椛が片手に持っていた傘を俺に渡す。傘を俺が受け取ると、椛は軽く笑ってごゆっくりと言いながらはたてと城に入って行く。何だと思い左手にある傘から俺の神力と紫と幽香の妖力を感じた。どういう事だと須臾程の時で考えたが、まずは傘を開いて雨をやり過ごし、俺も城の中に入ってから考えようと歩き出すと持っている傘から声が聞こえ、目の前には大きな舌が視界に映る。これはもしや、から傘おばけか。とは言え少し、いやかなり早い。そうなるにはまだ時が必要だったはずだが、この傘から紫と幽香の妖力を感じると言う事は二人が何かしたのか。前に紫は急に名と同じこの傘を欲しいと言ってきたので、その時は深く考えずに渡したが、ふむ。俺が傘に注いでおいた神力と、紫と幽香の妖力が複雑に混じり合い、神と妖怪の境界線にいる こころ 同様、不明瞭で不安定な存在になっている。これは こころ 同様、この傘を神と呼ぶべきか妖怪と呼ぶべきかは、正直分からん。俺の神力と紫と幽香の妖力が混じりあった存在がこの傘だと思うと感慨深い。言い方を変えれば、この傘は俺と紫と幽香の実の子になるからだ。あの二つの人形にも俺の神力を注いである、それは諏訪国の神を増やす為にしていた。妖怪は増えたが諏訪国に神は少ないんでな。諏訪国の人間が死ねば神になるとは言え、そっち方面の神は諏訪国の人間が死ねば幽霊になるか神なるかの半々だが、ともかく神になる者は確実に出るので、二つの人形に神力を注いだのは道具関係の神が欲しいからそうした。

 

「やっと見つけた。私の所有者の一人さん」

 

「よく分からんがとうとう見つけられたか」

 

左手に持っていた傘が話しかけて来た。俺の目の前には大きな舌を出してる様で視界に入る。多分から傘お化けか。名乗ろうとして苗字を口にしたら、えへへと言いながらもう知ってると言われた。出鼻を挫かれたが、この子の名を知らないので聞くと名は 多々良 小傘 多々良 と 小傘の名を名付けたのは紫と幽香が名付けた様だが。いい名前じゃないか。この傘の形や色から察するに、かつて大和で女将に貰った傘か。あれは捨てられてたのか忘れてたのか真意は不明だが。一体誰があそこに置いていたのだろう。どうでもいいか。それで小傘に色々聞かされた、小傘は捨てられたのか忘れられたのかは不明だそうだが、小傘自身は捨てられたと思っている様で。あの時、傘の時は不気味がられるか、その辺に転がっている小石の様な扱いを人間から受けて、放置され寂寥だったと。だから拾われた時は凄く嬉しく、紫と幽香に妖力を注いでもらい人型に成れた時は感無量だったそうだ。それで諏訪国から西の果てにある日向国まで来て、お礼を言う為だけに傘になってはたてと椛に連れて来て貰ったと言われ。目的は理解した、来年の春頃に西行を殺して諏訪国へ帰るつもりだったが、永琳はその事について皆に喋っていない様子。俺は左手に持っている傘状態の小傘を少し上げて、俺の顔を傘の内側から外側へ顔を軽く出す。雨が降っているので曇ってはいるが明るい。まだ太陽は完全に沈んでない様だ。

 

「雨も降っていて、もう 逢魔時 だってのに。辺りはまだ明るいな」

 

「うん? もう夏だからね」

 

そう言うと、小傘は傘から人型に成り俺に抱き着いて来る。しかし小傘が傘から人型になったので、俺と小傘は雨の集中砲火を受けてしまい、急いで城の中に入ろうと左手を小傘の膝裏に、右手を小傘の腰に回し、そのまま抱きあげて城門から城の城内に入る。雨の難から逃れる事は出来たが体がずぶ濡れだ、後で風呂にでも入ろう。小傘も結構濡れてしまったが、当の本人は俺に抱き着いたままさっきから何度もお礼の言葉を何度も繰り返して言っている。だが、だんだんと小傘の声が涙声。俺は体中大雨に晒され、どこもかしこも濡れてしまっているので、涙で服が濡れても泣いているかどうかわからない。だからその場に座り、胡坐をかいたまま小傘を撫で、小傘が落ち着くのを待った。城内で雨音が聞こえる中、雨音と共に小傘の声が耳に入る。涙をながしてるからか胸辺りが、温かい。付喪神と言われる存在でも、涙の温かさはやはり同じなんだな。小傘が顔を上げたので、小傘の顔がくっきり。雲中白鶴で風光明媚。俺は親馬鹿ではないが、小傘を見てそう思った。紫は雲中白鶴で沈魚落雁、幽香は氷肌玉骨で天香国色で綽約多姿、諏訪子は幼窕淑女で閉月羞花と思ってるが俺は親馬鹿じゃない。なにせそれは事実だからだ。白蓮は春風駘蕩で泥中之蓮、藍はどうみても傾城傾国で笑わないし一笑一金。藍と言えば永琳が言うに、藍が妊娠してるそうだがまさかあの時、藍が寝てる時に、結果的に起きたが無理矢理したのが命中するとは思わんかった。溜まってたいた原因があるが流石に中で出し過ぎた。しかし子が出来るのはいい事だ、とは言え。子供からしたらいい迷惑かもしれん、子を作るのは親の自己満足だからだ。産まれた子、産まれた子の皆が皆、産んだ事を親に感謝する訳が無く、その辺を分かってない親が多いし、子を作り、結果的に産むなら子に殺意を抱かれる事と同義、そう考えて子を作って産んだ方がいい。産むなら子に恨まれ殺されるる覚悟をしなくてはな。それが子孫を残す本能、動物の生きる意味だとしても。どんなに綺麗事を並べても子を産むのは結局 自己満足、産んだ子に産んだ事、育てた事について感謝されると、感謝されるべきだと自惚れてはいけない。

 

「ありがとう。ありがとう。こんな私を、不気味だと言われて捨てられた私を拾ってくれて、道具としてまた使ってくれて、私の所有者さん。本当にありがとう」

 

そう言われ、俺は改めて認識。やはり妖怪と言われても神と妖怪は性質的も本質的にも同じ。一部例外がいるが本来、多くの妖怪は自然神で人格神でもある。例えば神だけでなく、妖怪が神社で祀られるのが結構いる。有名なので、『ひょうすべ』 一目連 『河童』 鉄鼠 『鵺』『高入道』鬼女で女神の 『橋姫』 鬼の 『酒呑童子』 三吉鬼 狐の『葛の葉』狸もいるが魔法神社で祀られている魔法様など、化狸は西での例が多すぎるし、妖狐と天狗も例が多すぎる。ともかく妖怪が神社で祀られている所もあれば、大和でした神議るをした大和のあの場にいなかったが、妖怪とは、八百万の神の一種でもある。それは妖怪が自然神だからで、神と妖怪が同一視される例もあるくらいだ。神と妖怪。全てとは言わんが俺達は、人間から見たら別で、呼ばれ方も違うが性質的も本質的にも同じ存在。だから、妖怪を殺す事は神を殺す事に等しい。

 

いつの時代も、人間は夢を見る。人間という、か弱い種族が、強大な敵や悪を倒す話がいつの時代も人間は好きだ。正義や悪なんて考えは人間特有の物だが、酒呑童子、土蜘蛛、鵺、九尾の狐、蝦夷ではないかと言われる鬼八伝説。第7代 孝霊天皇皇子 吉備津彦 に殺され鬼神 温羅 殺されないので言うと 宗旦狐、団三郎狸、一寸法師に出てくる鬼も殺されないが、それでも悪として出て来て痛い目に遭う。今上げた例はあくまでも例。鬼八も温羅も含め、どれも殺されず生きている。物語に出てくる多くの妖怪は人間に殺される妖怪ばかりで、どれもが悪として殺される勧善懲悪、言い方を変えれば王道か。

夢を見る事が好きな種族、人間らしいと言えばらしいが。とは言えそれは、時代が時代だったからとも言える。朝廷の政治や豪族や貴族の人間共がクソだった時もある。そしていつの時代も割を食うのはいつも弱者の民や奴隷。だからそんな弱者は生きる希望や夢が必要、その為の物語として、いつの時代も殺される。出雲族、熊襲、国樔、山窩、隼人、蝦夷もそう。大和にいる天孫族や歴史の犠牲者だな、もし水神や御食津神がいなければ、今頃民は飢えに苦しみ、喉を水で潤す事も出来なかっただろう。本来の歴史なら間違いなくそうなっていた。言い方を変えれば政治、朝廷がクソだったせいでもある。

 

しかし兜と神便鬼毒酒を神に貰った源頼光の手によって酒呑童子が、スサノオは足名椎と手名椎の夫婦に娘のクシナダヒメを助けて欲しいと頼まれ、土着神で祟り神の八岐大蛇などのは酔って弱った所を殺されている。英雄扱いの小碓命、ヤマトタケルノミコトも女装して取石鹿文や熊曾建の寝所に忍び込んで殺した、その際ヤマトタケルの名を貰ったり、他にヤマトタケルノミコトは出雲の 出雲建 に抜けない剣を渡し、出雲建を欺いて殺している。つまりだ、手段はどうでもいい。例えば、日常で人を殺したら犯罪者だが、戦争の最中に出来るだけ敵、その死体が多ければ多い程 殺したら英雄扱いだからな。要は勝てばいいという話で、正々堂々と戦って勝つ話は日本の伝説では案外少ない。それに、酒呑童子も八岐大蛇は神が関わってる話だし、長谷雄草紙は北野天神が、大百足は八幡神が関わってる話でもあるが。

 

酒呑童子はまだ生きてるし殺された祟り神の八岐大蛇は蘇生してる。気になったが、足名椎と手名椎って足長手足と手長足長に名が似てるな。まあ、古事記などは各地にある地方の伝説を集めて纏めた歴史書だから当たり前か。イザナギ イザナミ 住吉や出雲、そして諏訪の神話をぶっ壊し、出雲の大国主 住吉三神 諏訪の神 を大和朝廷の都合がいいよう古事記や日本書紀に編纂されたりな。元々 出雲、住吉、諏訪の神話は全く別の話で繋がりは無い。日本神話は各地の伝説、それぞれの地域にある神話や伝説の話をごちゃ混ぜにするから日本神話はあんなにもカオスになっている。やったもん勝ちだ。

 

大和朝廷の三種の神器もそう、あれは元々、出雲の大国主が持っていた 生大刀、生弓矢、天の詔琴。この三つ。刀、矢、琴の三つを大和朝廷風にアレンジしてパクったのだ。古事記などでその三つはスサノオが最初から持っている事になっているがな。そして大国主がスサノオの娘、スセリビメと逃避行する際にスサノオが大国主にくれてやった事になっている。古事記か、古事記で一番に隠蔽したかったのは 皇極天皇 かもしれんな。

 

八岐大蛇、鬼八伝説、八百万の神、八百萬神、八束水臣津野、八百比丘尼、八咫烏、八坂刀売、八大竜王、八乙女、八雷神、八房伝説、八幡神、八瀬童子、八面大王、八面鬼士大王、八意思兼神、八大地獄、八将神、八咫鏡、八尺瓊勾玉、八大夜叉大将、八部鬼衆、八部衆、八卦炉、八示現、八仙、八雲、八ヶ岳、八握剣、八百屋。確か鬼八伝説は肉体を8つにバラバラにされたのにバラバラにされた8つの体が結合する動きを見せ、蘇生しようとした話だった筈。うろ覚えだが。

限界まで思いつく限りでこれだけあれば 八意 永琳 八坂 神奈子 の苗字にも八がある。

どれもこれも八 八 八 八。昔の人間にとって八とはどんな意味があったんだろうな。諸説あるがどれもこれも憶測で推測で信じるに値しない。

そう言えば、8を横にすると∞になる。いや 8 は 8 でも八じゃないか。まあいいや。

 

ギリシャ神話にも言える事だが日本神話、神道の神はアニミズムで汎神論。お米一粒一粒やその辺に転がっている小石にも神が宿っている考えを持ち、万物、自然を神格化した神が多い。祖先崇拝は神道じゃないが、神道の御霊信仰があるせいか人間でさえ神扱いだ。藤原鎌足、坂上田村麻呂、太安万侶、聖徳太子、秦河勝、蘇我入鹿、安倍晴明、稗田阿礼、菅原道真、藤原秀郷、小野篁、平将門、有名どころでこれだけいるがこれはあくまでも一部。そして自然とは天変地異、昔から人間の敵が多く、味方になる時が少ない。本朝に齎した自然災害の例をあげたらきりがないし。暴風、豪雨、雷雲、台風、地震、津波、噴火、豪雪、雪崩、勝ち負けの問題ではないが人間程度じゃこれらの自然に負ける事はあっても勝てない。いくら頭が良くても、運動が出来ても、銃や兵器や核を持っていても所詮 自然に勝てないその程度の存在。人間のキャパシティでは自然相手にもたない。人間が人間を躾て調教していけないなら、神ならいいだろう。祟り神もそう、あれも御霊信仰、人間に祟り神の祟りを怯えさせて、人間を躾、調教していると言える。人身御供とかもそうだ、あれも神が人間を躾けてると言え無くも無い。同じ祟り神の八岐大蛇もそう。祟り神に限った話ではないが、祟り神は人間に恩恵を授けても、人間と慣れ合う事は無い存在。似た様な事を俺はする、しかし俺がする事は人間に神道の神々がお怒りだと西の人間に吹き込む為と人間に認識させる為、だからそれを終えたらまた元通り、な筈だ。多分。

 

いつからだろう、神が人間の味方で、妖怪が人間の敵だと脳に植え付けられたのは。

古事記や日本書紀に出てくる悪樓や八咫烏や八岐大蛇が妖怪扱いされる時もあるが、あれは妖怪じゃない。本朝での土蜘蛛も鬼も元は大和朝廷に従わない人間を異端視した名称だった。

いつからだろう、元は本質的にも性質的にも同じ存在である神と妖怪、その区別がついたのは。神はどう考えても人間の敵だと言うのに。西洋から日本に入って来た宗教 キリスト教などの、神と悪魔の考えを人間は神と妖怪に当て嵌めたのだろうか。

そう言えばかつて、ある人間がこう言った。

 

なぜ何もないのではなく、何かがあるのか と。

 

そうそう、神道と言えばよく時折 勘違いされるが除夜の鐘は仏教、初詣は神道だ。この二つは同じじゃなく別物。何故かその区別をつけずに除夜の鐘と初詣を同時に行う者が多い。それは昔からして来た仕来りだから細かい事はどうでもいいのかもしれんが。クリスマスはキリストだな。前にも言ったが、こうして考えると日本は外来の文化の影響が受けやすい人間で、面白ければ本朝の文化に混ぜてあまり細かい事は気にしない人間ともいえる。今の時代に多く存在する陰陽道、陰陽師とか。あれも元々は古代の唐土で生まれた道教や儒教の様なものだった筈で、陰陽道は古代の唐土で生まれた自然哲学思想、陰陽五行説を起源として日本で独自の発展を遂げた呪術や占術の技術体系になったものになっているので、本朝の陰陽道は古代の唐土のと比べると、オリジナルと化してもはや別物。

 

「小傘。俺に恩を感じてるなら、一つ頼みがある」

 

「うん! 任せて。道具は命令してくれる人や使う人がいて、初めて意味があるんだよ。だから何でも言って!」

 

「そうか。小傘はいい子だな。実はもう1人付喪神、小傘と同じ神と妖怪の境界線にいる 秦 こころ がレイラの側頭部に面霊気としているんだが」

 

人間の容姿になっている小傘が顔を上げ、小傘の目から綺麗な頬に水が垂れているが見なかった事にして頭を優しく撫でる。子供とはいい物だ。純真無垢な時に少しずつ汚して行くのが特にいい。しかしいい子なのは同時に心配でもあるが、まあいい。小傘にはこころと二人、付喪神同士でして貰わなければならない。俺にはこれが出来ない。俺は諏訪国の神で天狗と河童とは盟約を結び、鬼女の萃香、勇儀、華扇、ヤマメ、パルスィ、紅葉を従えたが、まだ従えてないのがある。それは付喪神たちだ。付喪神を俺が従えるかどうかについて、今まで悩んで考えていた。もし諏訪国に付喪神がいなければ俺がやるつもりだったが、俺にはこころと小傘がいる。二人には重役を頼もう。依姫に教わってだが、こころは大体の武器、特に薙刀を上手く扱えるので結構強い。しかし小傘は見た感じ、強そうには見えない。最弱で脆弱で貧弱が付喪神の王になる、しかも小傘の能力は驚かす能力だけだそうで、それは何とも燃えて面白そう。

 

そう、小傘には全ての付喪神、または九十九神を。 文車妖妃 鈴彦姫 経凛々 白容裔 飯笥 瓢箪小僧 小袖の手 鞍野郎 雲外鏡 囲碁の精 貝児 山颪 木魚達磨 硯の魂 五徳猫 幣六 袋狢 払子守 瓶長 三味長老 などを。

特に 雲外鏡 文車妖妃 硯の魂 この三つの付喪神は特に欲しい。

そして鬼女 紅葉 が持っている お琴 の付喪神 琴古主 にインド神話の女神サラスヴァティー、いや。弁才天に持たせる琵琶、又は平安時代から見られた、琵琶を街中で弾く盲目の僧 琵琶法師 が持つ琵琶の付喪神である 琵琶牧々 それら付喪神、全てを総べる王

諏訪国にいる付喪神で、最も脆弱で貧弱で最弱な付喪神の王に。今までは妖怪を増やす事に専念した、鬼女たちには八ヶ岳に住む妖怪を従えて貰っている最中。ならば次は神だ。小傘は紫と幽香の日傘として使われてるそうなので、紫と幽香には小傘とこころにもしもの事が無いよう見ていてもらう為、後で永琳と話しておこう。

 

俺は全て、天地万物も神も妖怪も悪魔も妖精も精霊も人間も

 

生きとし生けるもの全てを総べる統治者であり支配者だ。

 

日本三大妖怪である 鬼、天狗、河童。この三つを盟約、あるいは仕えさせたり神使にした。つまり、言わばこの日本三大妖怪が諏訪国に揃っている事になり、日本三大妖怪の鬼、天狗、河童が諏訪国の 中枢 と言える。しかし、それ以外の妖怪がこの先どうしても必要。そろそろ河童も動いて貰う時だ。

どうでもいいが人間って三大○○が好きだな。三大悪人、三大悪女、三大怨霊、三大妖怪。世界三大宗教など、挙げればキリがない。

何故か日本の三大悪妖怪、酒呑童子、玉藻前、崇徳天皇。種族で言うと鬼、狐、最後に天狗、または人間になる訳だ。しかしこの中に人間が混じってるがいくらなんでも人間の天皇を妖怪扱いは酷過ぎるだろ。ある意味、概ね正しいが。

 

 

「こころを参謀、は出来ないので。お供としてこころをやる。だから小傘には、諏訪国の塵塚怪王として付喪神たちを直轄して欲しいんだ」

 

ドイツの哲学者ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルが言った。

 

             世界精神が馬に乗って通る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「春ですよー って言おうとしたらいつの間にか春が終わってました」

 

「今や初夏だな」

 

「なら春がもう一度来るまで待ってる!」

 

夏真っ盛りだと言うに我が娘ながら気が早い。もう少し構ってやりたいがそのまま背を向け、歩き出す。やる事が山積み、しかし、そのやる事を片付けてはならん。これは時間を稼ぐ為、均衡状態を最優先させるべきだ。勝つ事も、ましてや敗北などしてもさせてはいかん。私はその為、神綺様の命により神国を。

 

「まだ秋と冬が残っておる。しかし、私と蝦夷が協力体制でも相手は中々手強い。流石、魂魄妖忌。この現状、あの方はどう動くのか、後で神綺様と天魔に聞いておかねばな」

 

「そう言えば天魔さんは諏訪国にある八ヶ岳の頂上に住んでるんだよね。諏訪国かー お姉ちゃん、諏訪国で元気にしてるかなー」

 

「む。あやつは鬼女だが蜘蛛の妖怪でもある。喰わず女房みたいになっておるかもな」

 

「お姉ちゃん鬼女でも蜘蛛の妖怪でもあるけどその話、雪女みたいにいきなり夫婦になっても結末が大違い。喰わず女房の話は最後喰われかけるよ父様!」

 

「あのお方は永遠で死なん。蓋し大丈夫であろう」

 

その永遠は一時的だそうだが。しかし神綺様の魔界人とサリエル様の半人半霊が敵対関係になるとはな。後で魂魄妖忌の動向を式神の白虎に探らせておくべきか。魂魄妖忌はあの中で特に厄介だ。蝦夷の阿弖利爲に磐具公母礼。二人も疲労している、このままでは少し不味い。何か打つ手は無いか。せめて集中砲火されているこの現状、相手の戦力を分散させる打開策が欲しい所だ。

背から娘の制止の声が耳に入るが足音がしない。もしやと思い立ち止まり、振り返ると予想通り。妖精特有の羽根を背から出して飛翔しながら私の傍へと来る。

 

「待って、置いてかないで父様ー!」

 

「馬鹿者。こんな所で羽を出すでない、誰かに知られてしまうだろう。せめて何か羽織りなさい」

 

「怒らないで父様! 春姫反省してるからー! ごめんなさーい!」

 

「怒っておらん」

 

「そうなの? 父様、いつも顔がムッとしてるから怒ってると勘違いしちゃうよ」

 

そうだろうか、普段は無表情で過ごしている筈なのだが。まあよい。上野国を占領し、藤原尚範を追放し終え、その後、本来私はかんなぎ、つまり巫女。その者が 自分は八幡大菩薩の使いである と言いながら、神の使いとして将門に天皇の位を授けると応神天皇は言い。私は蔭位を授かる資格を得て、新皇を自称するが、興味は無い。

八幡大菩薩というのは神仏習合の結果だろう。そうなると神は仏の弟子とみなされる意味。しかしそれを認める訳には行かん。抑々、諏訪国、又は諏訪国より東は神国なので仏教は無い。仏教が無いのではどのみち新皇を自称できんがな。ただ、神仏習合ではなく。神道の為に私は蝦夷と共に身を粉にしてやるのだ。

 

「父様ー また兵が女性に生き恥を受けさせてるよー」

 

今は合戦の最中、春姫に言われ見ると、涙を流している美女は裸体に引ん剝かれ、兵から生き恥を受けている。この光景は見慣れているので別段おかしくはない。よくある事だ。それ目的で兵になった者もかなりいる。しかし、今は合戦の最中。辱めを受けさせるにしても合戦を終えてからでも遅くは無い。理性が本能に負けたか、腰を打ち付けていた兵の動きが断続的になり、そのまま一息つく。中で果て終えた様だ、女性の目から色彩が消えている。ふむ、まずはこの痴れ者は殺すか。

 

「私の命に従わない兵はいらん。殺してしまおう。春姫、日本刀を渡しなさい」

 

「駄目だよ父様。兵も蝦夷も数がだいぶ減って来てる。これ以上減らすのは得策じゃないし、それにね。あんなのでも肉壁に使えるんだから」

 

「ならばあいつは逃げられんように最前線に配置しよう、頼んだぞ春姫」

 

「はーい!」

 

邪魔な兵を蹴り飛ばし、動かなくなった女性に私は着ていた狩衣を脱ぎ、女性の裸体を隠す為に狩衣で体全体を被せる。こんな世の中だ、せめて、娘だけは春姫の姉と共に諏訪国で平和に暮らして欲しい。あの方は春姫が住む事を認めてくれるだろうか、親である私の目から見ても春姫は美人だと思うのだが。いかんせん、これは親である私の主観に基づいた認識だ。この血生臭い場所から娘を離すにはどうしたものか。そしてこの血生臭い場所で嬉々としている娘もどうしたものか。育て方を間違えのかもしれん。女の方である小野篁に預けておけばよかったと後悔先に絶たず。上空から生命反応を感知し、敵襲かと思ったが早とちりをしてしまい徒労。

 

「どもどもー お久しぶりです魔界人さん」

 

「デンジャー! デンジャー!」

 

「射命丸 文 殿ではないか、何が危険だこのバカ娘」

 

「娘に対して冷たい上に酷い!」

 

「相変わらず親子仲は良好なようで何よりですね。実はお二人に朗報でして、急いで常陸国に来ました次第です。実は大和の」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決して疚しい気持ち等はあるが、高千穂峰の山頂に突き立てられている天逆鉾を諏訪国に持って行って欲しいのが一点、もう一点は一筆認めたこの手紙を椛とはたての二人には東の諏訪国に戻る最中ついでに、伊予国にいる藤原純友に渡してもらう為にだな、こうして椛とはたてが泊まる部屋の前に来ている訳だ。そうこうしてドアノブに手をかけて開けようとドアノブを回すが、施錠されていた。 Damn it!

まあ予想していた事なので問題ない、隣にいる衣玖に予定通り奥の手を使う。衣玖にはまだ手を出さない。てか出せない。あの龍神めが、衣玖に手を出そうとしたら悉く邪魔するからだ。まったく辟易だ。

 

「衣玖、例のブツを」

 

「かしこまりました旦那様、これをどうぞ、マスターキーです。ですが、本当にいいのでしょうか」

 

「是非に及ばず」

 

隣にいた衣玖から何故いるのかと疑問を抱かずマスターキーを受け取り、そのまま鍵穴に差し込んで鍵を開け、そのまま中に入ると椛はベッドに座り、はたてはテラスの傍にいる。開けているのか風が入り込み、カーテンが風に当てられ揺られているが。そんな事はどうでもいいと俺は気にせずいつも通りに行こう。

 

「明日 大和の吉野に行き、大海人を暗殺する前に今すぐ犯らせろ。今この時。ここが椛とはたてのターニングポイントだ」

 

「盟主様が私の肉体を求めている意味でしたら、私としましては構いませんが」

 

「私も別にいいわよ」

 

「いや待て、その返しはどう考えてもおかしい... せめてもう少し狼狽や嫌がる反応とかをだな」

 

あんたは諏訪国の王で氏神、女の私達を女好きなあんたの神使として仕えさせた天魔様の思惑の一つは、仏教を諏訪国より東、本朝の東に来させない契約をあんたにさせる為でもあるけど、私達 天狗にあんたの血を入れさせる為だからね。あんたに仕えた時点でこうなる事は予想通り、だからこそ私や、椛も文も覚悟はとうに出来てるのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、一体何のつもり。私の地獄に無断で侵入しただけでなくカンダタに蜘蛛の糸を垂らすなんて。答えろ ゴータマ・シッダールダ」

 

釈迦に聞いてもだんまりで反応すらない。ふん。黙秘か、相変わらず気に喰わない。この両目を閉じ悟った様な顔も坐禅も何もかもが気に入らない。答えない釈迦を睨んでいたら釈迦は消えた。六神通の神足通を使ったようね。あー やだやだ、気が滅入る。仕事に戻ろうとしたら一匹の ラウム でもある地獄鴉が私の元へ来る。

 

「神綺様! 地獄のダエーワと天界のデーヴァがまた戦争勃発したよ! 早く逃げよう! もしくはいつもみたいに止めて!」

 

「やる気出ない。魔界人を増やしたり、パーターラやタルタロスも地獄と冥界に結合しなくちゃいけないしでこう見えて私 忙しいのよ。デウスとヤハ、ヤハウェに仲裁でも頼んどいて」

 

八大地獄はやっと造り終えた。次はそうね、カローンには地獄の三途の川に、冥界の河ステュクスなどの支流を渡し守をしてもらう、ナベリウス、ケルベロスとマルコシアスにボティス。ゴエティアの悪魔たちを半殺しにして躾けなくちゃいけないし、ウィルオウィスプにアラストル、牛頭と馬頭にもやって貰う事がある。それと魔界人もかなり増える。

小栗判官やドン・ファンはもう少し後でだけど、藤原良相、慶心坊尼、妙達、武帝、衛元嵩、魔界人にし終えた。藤原良相は地獄じゃなくて冥界の方の話だから半人半霊だ。地獄にいるピクラスは相変わらず不幸をまき散らしてるし、サタンも地獄の妖怪や獄卒を従え地獄の長になったりして大変、ではないわね。慌ただしいのはいつもの事だし。あ、気晴らしに地獄花の種を植えて手塩に掛けて咲かそうかな。

 

「良く分かんないけど仲裁して貰えばそれで戦争が止まるの?」

 

「無理。元々 デーヴァ に ダエーワ は同じ存在だったのにねー どうしてこうなるのかしら。本来の形からズレるって仏教や毘沙門天みたい。あれ、元々はインド神話の財宝神クベーラだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これを服用すれば一日は下半身が脚になるから、陸を好きなだけ歩いて好きな場所に行って楽しみなさい。そうそう、脚に変わる際に激痛が走る事は無いから安心してね」

 

「あ、ありがとうございます。ですが、本当に貰ってもよろしいのでしょうか」

 

「気にしないで。その代り貴方はあの人の神使になって欲しいの、その対価として出歩きたい時は影狼か天狗達か萃香に言いなさい。薬のストックはあるから遠慮せずいつでもいいわよ」

 

逢魔時、人魚のわかさぎ姫と永琳は諏訪湖にいた。目に見えないが霧になっている萃香と八ヶ岳に住む天狗達に、わかさぎ姫に危険が及ばない様、永琳は見守っておいて欲しいと頼んでいる。影狼についてはよく八ヶ岳に散策する事が多く、その序でにわかさぎ姫の事を頼まれている。わかさぎ姫の事を 蘇我 入鹿 である 豊聡耳 神子 には神使としてわかさぎ姫を諏訪国に住まわせて欲しいと諏訪子、永琳に頼んだ。諏訪子は弘天が諏訪国にいない場合は諏訪国の王で、永琳は比売大神だからだ。勿論ただでとは言わず神子は女である事を取引材料に使ってだが。諏訪子と永琳はそんな取引材料を使わなくても頷いていただろうが二人はこの話を承諾。その後 神子は半神、半分神だが半分人間でもあるので神子の役割は諏訪国の政治を任せる事に話は落ち着いた。 蘇我 屠自古 は神子の補佐、物部 布都にも諏訪国の政治をしてもらうが本命は別にあり、それはあくまでもおまけだ。今、永琳とわかさぎ姫は諏訪湖にいる。諏訪湖は八ヶ岳から緩やかに流れてくる上流の河、河童が住む玄武の沢と九天の滝に繋がっていて人魚であるわかさぎ姫は泳いで行き来できるので、諏訪湖にわかさぎ姫、そしてにとりなどの河童がいる。わかさぎ姫や河童が諏訪湖にいるのは百鬼夜行が八ヶ岳の妖怪を従えている中頃。だから巻き込まれない様に諏訪湖へ避難している訳だ。河童は人間を嫌っているがわかさぎ姫に関しては喜んで受け入れた。河童と人魚、どちらも人間に苦労させられている妖怪だからだ。

 

「人魚のあんたも苦労したんだね~ 我ら河童一同は人魚のあんたを歓迎するよ、まずは親交を深める為に胡瓜を進呈しようと思うんだ」

 

「新鮮そうでとっても美味しそう、ありがとうございます。河城さん?」

 

「そんな他人行儀な。河城じゃなくてにとりでいいよ。でも何で疑問形なの」

 

河童と人魚の交流が始まった最中、永琳の隣でそれを見つめる影狼。しかし影狼の視線の先は水の中に隠れているわかさぎ姫の下半身。わかさぎ姫の下半身は魚で、魚の鮭が好きな影狼は口から涎が垂れている。

 

「女神さま。あれ、鮭が擬人化したの? 美味しそう。食べていいよね、食べていいよね!?」

 

「駄目に決まってるでしょ影狼、星。悪いけど影狼を見といてくれるかしら」

 

「はぁ。やれる範囲ですがやっておきますよ」

 

星は面倒事を頼まれたと思い溜息。永琳は念の為 影狼に向け言葉を紡ぐ。わかさぎ姫に何かしたら萃香が、または鮭を二度と食べさせないと言い、それを聞いた涙目の影狼に脅してから、永琳はスキマを通って諏訪国に戻る。永琳が戻った先は諏訪国にある一軒のだんご屋の屋台。屋台の前には赤い布を被せた床机に紫と幽香が団子を食べながら優雅に寛いでいる。紫と幽香の間には白蓮が一緒に団子を食べているが、だんご屋の前を通る民は永琳達を見ると挨拶してから談話。諏訪子様だけでなく、私達が死ぬ前に弘天様と永琳様の子を見せて下さいね。と言われ永琳は はにかむ。花より団子の子供たちは紫と幽香から団子を貰って食べている。紫と幽香は子供たちの頭を撫で、自分達にもこんな頃があったと懐かしむ。永琳が子供たちの親と他愛ない話を終え、そのまま親御と子供たちが永琳達に頭を下げ、紫と幽香にお礼を言いながら家に戻った。白蓮はお団子を食べる事に夢中だったが、流石に10本以上食べたせいか団子が刺さっていた串を舌でぺろぺろ舐めて皿に戻す。紫は白蓮の頬に付いた団子のタレに気付き、指で白蓮の頬に付いたタレを拭い、そのまま口に舐め取ろうとしたが、幽香に腕を掴まれ静止させてもう片方にある布で紫の指に付いたタレを拭く。紫は別にいいじゃないと思ったが、幽香ははしたないと思ったのか駄目な様だ。指でだが、タレを拭いてくれた紫に白蓮は笑顔でお礼を言うが、それを見た紫と幽香はアルファ波が出ていそうな白蓮に癒され、白蓮を抱きしめたり撫でたりして和む。どうでも良くないがまだ子供の白蓮の胸が驚異的な速さで育ちつつあり、このまま行けばどうなってしまうのか。セクハラされるのは確実だろう。

 

永琳は後にしようと思っていたが、今渡す事に決めて右手に突如現れた物を娘である二人に差し出す。永琳が開発し、媒介の役目である魔方陣の転移装置は、アメリカの ジャンプルーム を更に改良し、いつでもどこでも使える様に、携帯化しコンパクトにした感じだ。他に素粒子物理学における粒子反粒子振動が、媒介の役割を果たす魔方陣に関わってるがその説明は省かせてもらう。

 

「紫に幽香。これを貴方達に託すわ」

 

まず紫が受け取ったのはなんの変哲もないただの一本の矢とあの天羽羽矢の弓。矢の見た目はただの矢だがこれはあのインドラの矢だ。次に幽香に渡したのは破壊神 シヴァ が持っていたトリシューラだ。永琳はもう一つ持っているがそれはチャクラム、これは諏訪子に渡そうと思い永琳は片手に持っている。チャクラムはともかく。インドラの矢、そしてトリシューラ。どちらも破壊に擢んでている。パスパタも用意しているが必要なら出すだろう。

この二つがあれば注連縄を使い、結界で隔てられた 月宮殿 または 月の都 の結界を打ち破る事が出来る程の威力を持っているので必要だった。月の都は月の裏側にあり結界に隔て、都は隠されて月の関係者以外には見えない様にされているが。

 

「私とあの人の娘、紫と幽香。貴方達があそこに住む玉兎以外、その全ての生物を」

 

そう言いながら逢魔時を過ぎ、真夜中の青空に輝く満月の衛星を指す。かつて月に住み、輝夜の能力で永遠になった天津神は月に住まなくなり、地球、本朝に降り立っている。この先、神も妖怪も対等じゃなきゃ駄目だ。その為に妖怪が月に住む者達に一度だけでも勝たなければならない。だからこそあの人は妖怪を集める事に専念していた。

もう、ずっと前から考えていた事。

 

そして私は笑顔を娘たちに向け、娘達にいつも通り、とんでもない面倒事を娘達に託す。

 

「殲滅して根絶して撲滅して鏖殺して来て欲しいの」

 

「お母様、どれも同じ意味よ」

 

「それもそうね。じゃあ出来るだけ惨たらしくお願いね、遠慮は無沙汰」

 

「その使い方おかしいよねお母さん」

 

幽香と紫は指摘するけど私は聞かなかった事にしよう。月に住む者達が平和ボケしている今が好機。弘の親と私の親。みんな死んでも、蘇生させたらいい話。サグメはいいとして問題は、豊姫と依姫。あの人が頓に神話の道具を集めているのは妖怪が月人と月の民に少しでも勝てる確率を上げる為。どんな手段だろうと使う、古来からある昔話の様に。

 

「貴方達は琉球王国から北海道までの妖怪を全て従え、妖怪の王として顕現するのよ」

 

「流石にいきなりすぎて話が呑み込めないよお母さん。あれ? お母さーん?」

 

「聞いてないわね。だけど全ての妖怪を従えるのは面白そうだと思わない紫? 退屈してたし丁度いいと思うの」

 

「私としては諏訪国で日々穏やかに過ごしたいんだけど。夏だし暑いし、正直 何もしたくない。後で水浴びして西瓜を食べたいわね」

 

「呼んだかい」

 

「呼んでないわよ萃香」

 

西の妖怪を率いる魔王は二人いる、妖怪の眷属たちを引き連れる頭領の1人は山本五郎左衛門。もう1人は神野悪五郎。この二人に西の妖怪の殆どが集まり、眷属になっている。両者には派閥があり、どちらかが勝てば妖怪の魔王として君臨する。つまり、この二人を倒し、従える事が出来れば西の妖怪の殆どが諏訪国に手に入る。舞台は整った、永遠の百鬼夜行も無事に作り終え、天狗に河童もいる。戦力としては先ず先ず、いや。十分すぎるだろう。後は、諏訪国に来るよう仕向けるだけだ。その仕事、はたてと椛が日向の国から諏訪国に帰る途中にある備後国に寄り、山本五郎左衛門は椛が、神野悪五郎にはたてが諏訪国へ来るよう挑発し、焚きつける様にと言ってある。簡単な事だ、要は先に諏訪国を落とした方が魔王になり、負けた方は勝った方に従うといった内容。魔王の座を賭けながらいつまでも争っていい加減、魔王を決めて欲しい所。

 

大旱の雲霓を望むがごとし。あぁ、楽しみ。全てを従えた娘たちの晴れ舞台、早くこの目で月に住む玉兎以外の者が私達の娘に ジェノサイド され、凱旋の日が待ち遠しい。急転直下に動き、月に住む者が死屍累累。その情景、ビジョンが脳に浮かぶだけで昂ぶりが抑えきれなくなる。そう思わないかしら。ねぇ、浮気者だけど寵愛して止まない恣意的なあなた。男は船、女は港。そんな言葉があるけど、娘たちが傍にいてもやっぱり、あの人の温もりが欲しい、会えないのが物佗しい。だからあの人と会話だけでもと考え、私は行きたくもない月に行き、月の技術を。

 

アルファでオメガ。世界が終末を迎えたとして、かつての、昔の様にまた創ればいい、月に住む玉兎以外の者がみんな死んでもまた蘇生させたらいい、土地、大地が死ねば諏訪子の能力を使えばいい。カルキにカリ・ユガ、フィンブルの冬や最後の審判。今もこうして、刻々と近づいている。いつか判決は下るだろう。

 

判決によって、その時はまた、また 世界は回帰する。思い出すとはいえ、再びあの人と初めまして。それも悪く無い。何度でも、あの初めてを味わえるなら。

時が砌でも、繰り返される度、あの人への初恋を何度でも迎えられる。あの時、公園にいた私を引っ張って行く日を、また、あの日が永遠に訪れる。

 

だけど今は時期早尚、遅効性の毒の様に、時間をかけて月の生物を窮して蝕んで、窮地に追い込もう。私達の奴隷にしたと言ってもそれは元 月人の私達がした事。それでは駄目だ、月人が月人を奴隷にしてもあまり意味は無い。あれは放置しているとこの先邪魔だ。過去の負の遺産、そうだ。負の遺産を誰かが断ち切らなければならない。どんな手段を用いても。誰かが。

 

後で私も月面の南部に位置するクレーター ティコ と、月の海 賢者の海 や 月の湖 死の湖 忘却の湖 にも行かなくてはならない。それに調査部隊の中で情報管理、名は鈴瑚、だったかしら。ジャミング、ハッキングしてウイルスを撒いておけばいい。だけど今は母として娘たちと一緒に過ごしましょう。ただトリシューラの扱いは簡単でもインドラの矢は制御が難しい。後で紫にちゃんと使い方を教えておかなくちゃね。

 

       

 

      いつか月人と月の民に玉兎。そして妖怪の戦争を始める為に。




実際に妖怪が神社で祀られてる所は多く存在します。有名なので鵺や酒呑童子や葛の葉とか。つまりそれは、妖怪も八百万の神の一部と捉える事も出来る、と私は考えてます。
そもそも妖怪の定義は人によってばらばらで纏まりが無いんですよね。
だからと言う訳ではありませんが、葛の葉の話を混ぜた藍を妖狐から神にしたのもそれが理由の一つです。

ちょっと紛らわしいんですけどこころは面霊気と書いていますが、こころと小傘は神と妖怪の境界線にいるので神でも妖怪でもあり、どちらでもない存在にしてます。
それといつかの前書きで書きましたがこころと小傘は除いて、ここでの付喪神は神扱いで九十九神は妖怪扱いです。ですが、人間からは九十九神も付喪神も同じ存在と見られて妖怪扱いされていると言う事にしてます。ざっくり言えばこの作品での扱いは恨みを持っているのが九十九神で持ってないのが付喪神です。

それと塵塚怪王というのはゴミの付喪神の王と言われる妖怪の事ですね。小傘、もしくはこころもですが二人には諏訪国の塵塚怪王になってもらう為に早めに出していました。

月にあるクレーターの ティコ と月の海 賢者の海 や 月の湖 死の湖 忘却の湖
は実際にあります。アメリカのジャンプルームもね。転移装置の役割を担う魔方陣についてはそれが元ネタ。

釈迦が地獄にいるカンダタに蜘蛛の糸を吊るす話は有名な芥川龍之介の奴です。皆さんも地獄に一本の蜘蛛の糸を吊るす話は多分 聞いた事があると思います。
ついでに言うと六の宮の姫君も芥川龍之介の話。

小栗判官、ドン・ファン、藤原良相、慶心坊尼、妙達、武帝、衛元嵩、これらは地獄、または冥界に関係する話を持っている人たちですね。

このまま行くと月面戦争勃発。紫と幽香を娘にしたのはこれが本命。妖怪の王にして月との戦争をしたかったんです、月の負の遺産がこの先邪魔なんですよ。書くかどうか未だに悩んでいますので書くか分かりません。


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回帰

「一部を除くが。諏訪国で産まれた皆を蘇生して欲しいと言われてな、案内を頼むぞ」

 

「えっと、望月 千代女、巴御前、板額御前、熊坂長範、中原兼遠、海野幸親などを蘇生するんですよね」

 

「うむ。この先で必要な人材だそうだ。特にくノ一の 望月千代女、諏訪国の女性武将 巴御前 は必要な様だな。どちらも女というのが気になるが。尹良親王は放置でよいだろう」

 

「それと前から思っていたのだが。神社の鳥居近くにある女性の銅像、何の為に建てられたのだ」

 

「あれは諏訪国に神を増やす為に弘天様が造られたのです。地獄の閻魔の様に、諏訪国の法の番人にするそうですよ」

 

美鈴と布都は研究施設にいる。その研究施設は蔵の地下にある所だ。神社の裏には蔵があるが、その蔵の地下は永琳が月の都から持って来た研究施設がある、ここでたまに永琳は河童達と光学迷彩や永久機関、人造人間などなど色々開発している。そしてその施設の中には 殯 があり、遺体を納めて葬るための容器である木棺の中には 霊柩 されている。本来なら木棺の中にいる遺体を土葬か火葬するのだが、あえてそれをせず遺体を木棺に入れたまま残している。真っ白な施設の廊下を歩き、美鈴と布都は目的地である霊安室の前まで来て、そのまま中に入る。二人が霊安室の中に入ると中はかなり広く、天井、壁、床などが白一色。霊安室の中には棺を載せる台の上に木棺があり、木棺の数は10は越えている。この木棺の中に諏訪国の民の遺体が眠っているが、今からその遺体を叩き起こす為に美鈴と布都は来ている。

 

だが邪魔になるだろうと思い、美鈴は布都に後は任せ、部屋から出て扉を閉めて扉の前で終わるのを待つ事にする。霊安室に残された布都は早速、木棺の中にいる死者を蘇生させようと、布都は死者蘇生の言霊と言われる布瑠の言を口に。布都が瑞宝を振り動かしながら室内に鳴り響く音を響かせ、十種神宝の名を唱えながら禍々しい気配がする呪力を発揮する。布都が十種神宝の名を唱え、暫くすると木棺ががたがた動き始めた。どうやら死者だった者が蘇生した様だ。

 

しかし、まだ動かずじまいな残りの木棺が3つある。布都はかなりの精神力を使うこの行為により、額に汗が溜まり、流れている。布都は右手を閉じ手の甲で汗の珠を拭いながら疲れたので一息吐いて呟く。

 

「さて、この先で肝心な人物 諏訪氏 と 甲賀三郎 と 木曾次郎 も蘇生させよう。それにしても、 木曾次郎はともかくお前たちが死ぬとは、聞いた時は驚いたぞ」

 

特に、嘗ての大王、天皇と同じ寿命を持たない存在。現人神で神裔である物部氏の我、神裔である氏人で神氏の諏訪氏、諏訪神党。貴様ら、原因不明で死んだ事になっているが、実際は死んだのではなく、殺されたのであろうな。祖神様、饒速日命は、まるで過去も未来も、全てを知っている様子であった。だからこそ、天皇、いや。嘗て大王家に対し反勢力だった物部氏を天皇に恭順させ、あの時は滅亡していなかった物部氏の中で、理由も言わず我に十種神宝を授け、我としては渡りに船であった諏訪大明神と我の婚姻を勝手に取り決め。天皇、並びに大和を支配している諏訪国へ姉上を逃がした。まるで、全てが絵に描かれた様な出来事ばかり。全て、祖神様たちの掌の上なのでしょうか。

 

しかし卑弥呼め、最近は大和にめっきり姿を見せておらんかったが。あやつも一枚噛んでおると見た。

 

 

 

 

 

 

 

霊安室の前にいる美鈴は扉の前で終わるのを待っているが、歩く音が聞こえたのでそちらに目をやるとツーサイドアップの髪を揺らしながら、他の河童数名と何かを作る為なのか両手一杯に抱えて河童達と歩いている。それを見た美鈴は、布都はまだ時間が掛かるだろうと美鈴は思い、にとりに近づいて自分も手伝うと言う。にとりや他の河童は美鈴に言われ、皆、美鈴にお礼を言いながら美鈴に機材を持って貰う事にする。華奢な体をしている河童達からは想像できないほどの重量だったので美鈴は軽く驚いたが、普段鍛えているのでそのまま何事も無かったように、にとりの隣を歩く。にとりから預かった機材を美鈴は見て、一体何を作るかにとりに聞く。

 

「これで何を作る気なんですか。また傍迷惑な物を作る気じゃないでしょうね」

 

「酷いなー 今回は作らないよ。作るのは兵器だよ兵器」

 

「今回は、ですか。それに兵器って、どう考えても迷惑以外の何物でもないんですけど…」

 

にとりは鼻を鳴らしながら言うと、美鈴は視線を両手に持っている機材を見て、それが急に重く感じた。今まで河童は潜在していたが、それは色々作る物があったせい。しかしある程度作る必要があった物を作り終えたので顕在化している。今回は作ると言っても、振動剣、殺人光線、プラズマ砲、ブラックホール砲、潜宙艦などを作るだけだ。必要な物は永琳が月の都から取り寄せ、原理や仕組みは回帰した世界で日本神話 久延毘古 ギリシア神話 アテーナー エジプト神話 トート メソポタミア神話 エア ローマ神話 ミネルウァ アルメニア神話 ナン 北欧神話 片目を差し出し、ミーミルの泉を呑んだ オーディン 最後に永琳。回帰前の話だが各国の知恵の神が集まり、記憶が戻っている永琳などの神はこの程度の物、何度も作っているので、永琳が河童達に教えて行けば何の苦も無く作れる。必要な物は月の都から取り寄せればいい話だが、人間にとって、かなり由々しき事態だ。にとりを見ながら恐ろしくなった美鈴だが、にとりの耳に何かあるので気になって見ていたら、にとりがその視線に気付いたのか説明する。

 

「あ。耳に嵌めてるのはね、我ら河童一同が造り上げた物、名称は インカム らしいよ。諏訪国だけなら使えて、どこにいても会話出来るんだ」

 

「はー 頭がよくない私には原理など理解できませんが、科学の進歩は凄まじいですね。と言うよりも、それを知っていた永琳様が凄いです」

 

「だね、知恵の神なだけある。でもこれを使うには電力などが必要不可欠。だけど幸か不幸か  華扇 が神社に落ちて来て拾った 雷獣 がいるからね、楽が出来て助かったよ」

 

それに、インカムに充電して置いた電力などは永遠にしてしまえば無くなる事は無い。ある意味、永久機関だ。にとりは思考しながら歩いていたら目的地に到着したので、また色々造らなくてはいけない。河童一同が美鈴にお礼を言うと、いえいえと言いながら美鈴は来た道を戻ろうとしたが、にとりは完成品のインカムを渡して置こうと思い美鈴を引き留め、出来たばかりのインカムを美鈴に渡す。受け取った美鈴は使い方が分からなかったが、耳に嵌めておけばいいと言われたので、言われた通り耳に嵌め、お礼を言いながら掌を振って部屋を出る。来た道を戻り、曲がり角を曲がると霊安室の前が見えると、疲労した様子の布都が立ちながら壁にもたれ掛っていたので、美鈴は早歩きで歩き、布都の元へ向かいながら安否を確認。

 

「大丈夫ですか。凄い汗ですけど」

 

「むぅ。蘇生させるのは案外楽なのだが、この蘇生を行うと、かなりの精神力を持って行かれる」

 

「そういう大事な事は先に言ってください。知っていれば永琳様をお呼びしていましたのに」

 

疲労が激しい布都を見て、美鈴は布都をおんぶして蔵の地下から出ようとしたが、その前に布都は大きな壺を両手に持っていて、その壺を美鈴に見せた。

 

「何ですか、これは」

 

「見ての通り人間の遺骨だ。壺の中には大量の遺骨しかない、遺骨しかないが。骨と言えばあれがおったであろう」

 

「成程。日本の妖怪 がしゃどくろ、または 餓者髑髏 ですね」

 

「そうだ、しかしこの大量にある遺骨。どうも怨念の類では無く、別の何かを感じるがな。まるで呪いの真逆、祝福だ」

 

「それは当然ですね、諏訪国の民は狂信者ですから。怨念を抱く民はいませんよ」

 

壺の中にある遺骨を一つ抜き取り、肋骨部分の骨を片手で持ちながら布都は推測し、美鈴が補足する。布都の考えは、諏訪国に住む者の中で唯一 妖術が使える ヤマメ に壺の中に大量にある遺骨を使い、巨大な がしゃどくろ を生み出そうと画策し、壺の中には遺骨が大量にある。こんな事をすれば祟りを貰うかもしれないが、諏訪国の民は表面上は普通に見える、だが蓋を開ければ皆が皆 狂信者 しかいない。

仮に 諏訪大明神 か 比売大神 または 洩矢神 である 諏訪子 が民に死ねと、ただ一言。そう命ずれば喜んで自害する者達しかいない。そして、手を貸せと言われたら喜んで支えるだろう。

 

相馬の古内裏 という浮世絵。平将門の娘である春姫の姉とされる伝説上の妖術使い。

名は 五月姫 が がしゃどくろと結び付けられる場合もあるが。

平将門の長女 五月姫 と がしゃどくろ 両者には実際、直接の関係がない話である。

 

何故 布都が壺と、壺の中に大量の骨があったのか把握した美鈴は布都を神社で休ませようとおんぶしたその際に、扉が開いていた霊安室の室内が美鈴の目に入る。台の上に置かれている木棺が開かれ、それぞれの木棺から起き上がり、能天気にもまるでよく寝たとばかりに、片手で目を擦りながら欠伸をしていた。

 

「本当に、蘇生してる。何とも、懐かしい。本当に、懐かしい顔ぶれじゃないですか。両目を開けて、あんなに血色がいいなんて。幽香様、特に紫様が大喜びします。私も」

 

「当然ではないか。我が蘇生如きで失敗したら祖神様に会わす顔が無いわ。なんだ、泣いておるのか」

 

「仕方ないんです。これは、嬉し泣きですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたがやりすぎたせいで腰と股が痛いじゃない。しかもあんなに出して、ちゃんと責任取りなさいよね」

 

「あんなにも多く出されたなら、子が確実に出来そうでとてもいい事です。私達が滞りなく懐妊したら、産まれる前には帰って来て下さいね盟主様」

 

「まあ抱いたので責任は取るが、抱いたのに二人とも淡泊すぎだろ。はたても椛も性行為は初めてだったのに。それで、アリスは連れて帰らんのか」

 

「帰り道は覚えてるだろうし、仮にも空を飛べる魔女の一人だからね。私達が傍にいなくても問題は無いでしょ。じゃあ私達、仕事あるから帰るわね。諏訪国で待ってるから」

 

「では盟主様、お早いお帰りをお待ちしております」

 

そう言い、はたては右手で腰を擦りながら左手の人差指で俺に差し、椛は頭を下げて慈愛の表情で自分のお腹を撫でつつ、傘になった小傘を連れ、飛び去り諏訪国へと帰ってしまった。淡泊すぎる。

 

長椅子の端に腰を下ろし、アリスは俺の反対側に座っている。時空転移装置の魔方陣を使い、月の都から右手に飲み物などを転移させアリスに差し出す。ついでに左手に、平安時代にいた作者 紫式部 が手掛けた 源氏物語 を出す。紫式部に直接借りて見てみたが中々面白い。世に出回る前に出来上がった直後のを紫式部から借りているが、これは素晴らしい物だ。神話がそうである様に、今の人間たちの様に未来の人間はもっと性におおらかになって子供を作るべきだな。まあ子供を作っても実際、金はかかるし子を産んで育てるのも大変で多くの時間を取られるし、他には娯楽が多くあるせいでその考えは薄れつつあるが。結局の所、今が大事で後の事なんかどうでもいいんだろう。自由国家は悪い事じゃないが大変だな。

 

「ほれ、月の都から転移させたジュースだ。あ、プリンもあるから食え」

 

「貰うけどその前にパパ。私がこの場にいる理由は分かってるならまず、私に聞く事があると思うの」

 

「それも、そうだな。では聞こう。こいつは誰だ」

 

魔方陣から俺の反対側に長椅子に座るアリスの目の前に転移させ、それが視界に入ると、者であり、物。その頭にはカチューシャを付け、髪色は緑でメイド服を着ている。今は機能停止させているので喋る事は無いし立っているだけで動く事は無い。

 

かつて永琳が輝夜の能力を使い、 マクスウェルの悪魔 も吃驚の 永久機関 と共に造り上げた アンドロイド 正確に言うとセクサロイドか。まだこの世界で誰も知る由もない者であり物。知っているとすれば永琳か、回帰する前の記憶を所持しているあいつらだけだ。

 

記憶を戻す手段の一つにパルスィが持つ 顕明連 がある。 顕明連 を朝日に当てて 三千世界 に身を任せると、後は 三千世界 が導いてくれる。そしてパルスィは天魔にそうする様促され、もう全てを思い出してるだろう。パルスィにそうするよう誘導し、促した天魔も回帰前と回帰前以前の記憶がある。アリスはその手段を使って無い筈だが、予想外に悩む事も無く即答で返す。

 

「技術的特異点、2045年問題の元凶アンドロイド、人造人間。通称 る~こと」

 

これは、正直驚いた。本当にアリスは世界が回帰する前の記憶を所持している様だ。もしや今までの世界で出家しなかった西行が今回出家したのもそれが原因か、パチュリーやレイラも。いやそんな訳ない、あの記憶がある訳無い。それに記憶が戻るにしても法則性が無茶苦茶だ。まあいい、あの時は永琳が造り上げたアンドロイドの人工知能を搭載したる~ことをベースにアンドロイドを大量生産化させ、時間をかけてほぼ全ての国に送らせたな。全てのアンドロイドは顔や体型などの容姿をる~ことは別にしていたが。あれは実にいい余興だった。ロボット三大原則、人間への安全性、命令への服従、自己防衛。この三つを永琳が全てのアンドロイドのAIにインプットして置いたが、全てのアンドロイドは自己防衛以外を破った、いや。そうなる様に仕組んで破らせた。デウス・エクス・マキナ、とも言える。身の回りを世話するアンドロイドでは無く、あの時は人間虐殺兵器の誕生だった。どこもかしこもニュースになり人間は地獄絵図で阿鼻叫喚、昨日まで人間に忠実な物だった人工知能を搭載したアンドロイドが突如変貌、体中血まみれで、死体の山と血の海に立ち尽くし次の獲物を探すアンドロイド。普通に考えて、危険が無いかを念入りに調べる、実際アンドロイドを人間にはくまなく調べられた。まあ当たり前だが。が、当時の人間では見抜けなかった、全ての技術と頭脳が月人、永琳に追いついていなかったんだ。何でそんな事をしたか、人間を 胸突き八丁剣が峰 の状況に追い込みたかった、という意味もある。それに、時空転移装置を永琳が造り上げてた上にあの時も神が実在していたしな。神が問題ないと言えばそれで安心する人間が結構いた。一神教の宗教は特にだ。あれは面倒な者が多いが、こういう時 面倒な信者は使いやすい。

 

一言で言ってしまえば、イメージとして人類に災いを齎したギリシア神話の パンドーラー だな。災いを齎したのは人間では無くアンドロイドで神が原因だったが。

 

法律とは、言わば先人達が残した智慧の結晶。だが、それに従わなければならないのは当然、人間の先人の様に法を作り出した人間だけだ。神が人間の決めた法に従う理由が無い事は自明の理。神が人間を殺し、人間がアリを踏み殺したとして罪に問われる訳が無い、問われたとして一体その罪を誰が裁く、人間如きが神を裁くと言うのか、人間が人間を裁く事すら烏滸がましいと言うのに。もしそうなら大笑いして斬り伏せてやる。

 

嘗て。いや、仮に、仮にだ。仲が悪い二つの国があったとして、険悪の二つの国が手を組むには第三勢力が現れればいい。それも永遠の敵である第三勢力。そして地球、または世界に意思があり、もしも 世界精神 があったとしよう。古来から人間の敵は自然や妖怪だったり、鬼や土蜘蛛と呼ばれる人間だった。なら、地球の敵は、一体誰だろうな。

 

「また、る~ことを使うの。それとも別の事」

 

「さあな。次、回帰する前は鎌倉時代だったか、その時代にはユーラシア大陸を上回る程の空に浮かぶ大陸が、何の道具と誰の能力を用い創られ、そこに住んでいたのは誰だ」

 

「高千穂峰の山頂に突き立てられていた日本神話の 天逆鉾 と 諏訪子 の能力を使って創らせ、そこに住んでいたのは一度妖怪に皆殺しにされた月人や月の民」

 

「これで最後だ。前回と呼ぶのは正しくないが、なぜ前回の世界が回帰した」

 

「パパが、目の前にいる人が殺された、から」

 

素晴らしい、全て正解だ。両手で拍手しているので音が辺りに響く中、アリスは俺を見るのをやめてオレンジジュースをコップに入れてから飲み始めている。諏訪子はまだ回帰前の記憶が戻っていない筈だが、もしかしたらアリス同様、戻ってるかもしれんな。

 

 

俺が 蓬莱山家に産まれた 時は赤ん坊だった、その時の俺は一般常識や自我はあったが記憶は無かった。原因は俺が殺されて世界が不完全な形で回帰したせいだ。そのせいで回帰した世界にバグが発生した。が、永琳は除いて神綺やサリエルは俺と違う。神綺とサリエルに他数名は俺と違い最初から回帰前の記憶を所持していたそうだが。通りで子供の頃から神綺達が俺や永琳に フレンドリー だった訳だ。吸血鬼の始祖くるみもそうだと聞いてる、それと吸血鬼の始祖は天使サリエル同様、月に結びつく者でもある。嘗てまだ地球に都市があった頃、神綺が言った

 

『私がひろの夢を叶える手伝いをするから、創って見せるから、それまで待っててね』

 

神綺が一方的にしたあの約束も神綺から言って来た事だが、元は俺が神綺やサリエルに言った、らしい。記憶がまだ完全に復元されていない俺に、神綺やサリエルに言った実感は、あまり無いが。神と妖怪をこの先産まれる人間たちに空想上の存在と思わせたくないと考え、俺達に約束させたのは魅魔だ。肝心の魅魔は天竺の人間を殺しまくり、ユウゲンマガンは唐土の人間を殺しまくっている。魔界人で唐土にいる武帝や衛元嵩は、ユウゲンマガンに苦労してそうだな。そして、日本は神綺とサリエルだ。俺は天皇の血を管理の役目。いや、そもそも人間を殺しまくっているのは、回帰前で俺が人間に殺されたから、ではないな。絶対に違う。回帰前は実妹 輝夜の能力は解いていた、だから俺は脳天に一発の銃弾を喰らえば即死するほど人間と同じ雑魚中の雑魚だったので、案外あっさり死んだ。お蔭で今回の世界では色々面倒が起きているんだが。

 

 

回帰前と言えば、日本を支配していたのは神道の神だった、ただし北海道のアイヌはカムイが、 沖縄では琉球神道の神が、アメリカはマヤ神話の神。アメリカにはマヤ神話以外の神話もいて、それらに支配されていたが。ただ、支配していたと言っても、正直な所、どこかの神が何か面倒事を思いついたらそれを実行して、それに人間は無理矢理 巻き込まれると言った感じだったので、支配と言っても恐怖政治では無かった。そうだな、言わば俺達の立ち位置は イルミナティ に近い。いやはや懐かしい。俺と永琳は今回の世界で数億生きているが、実際は億や兆では足らない程生きている計算になる。何せ、グラハム数くらい回帰しているんだからな。源氏物語を片手で掴んで読んでいたら、アリスが小声で言う。

 

「…神は、サイコロを振らないんだよね」

 

「振る必要が無いから当然」

 

科学の発展は全て人間達がしてきた事ではない。歴史的に見て科学の発展の影には宗教があった。そして宗教とは有り体に言えば神がいるからこそ成り立ち、宗教とは、古来から科学の発展を促してきた。時に科学の発展を妨げたのもまた宗教。特にキリストはそうだ、どちらにも当て嵌まるから。嗚呼、いとをかし。

 

いやいや、仏教は、仏教はまだいいんだ。もう仏教は零落の宗教だし呑み込んで消すからな。が、キリスト教は本当に必要だろうか。あれは一神教、極端な言い方だが神の命は絶対。ザビエルが日本に来ない様にヤハウェ、あれ、エホバだったか。まあいいや、とりあえずザビエル、というかキリスト教が日本に来させない様に言っておいた方がいいだろうか。正直必要じゃないし無くてもいいのだ。妄信的なのは操りやすいから助かるがな。誂え向きに従う気は無いし、完膚無き迄に消し去るべきだろうか悩み所。

 

宗教とは 政治の道具、紛争や戦争の火種、金儲け、救済、拠り所、文化、死を説明するシステム。アリスを含めた魔女が異国で起き、被害に遭った魔女狩りが起きたのも宗教が絡んでる。宗教は人によって胡散臭いと考え、色々な解釈や考えがある。まあ、宗教と一括りに言っても、色んな宗教があるし、宗教の定義がそもそも決まってないからだ。歴史的に見て日本人は神仏習合の様に宗教を利用する実利主義だったしな。その反面、ちゃんと畏敬の念を抱いていた時もあるが。しかし殆どは興味が無く、理解できないのか、知ろうとする気が無いだけなのかは知らないが日本人はどうでもいいのだろう。別に知らなくても生きて生けると思うのもいるだろう。

 

日本国憲法第20条。宗教の自由が約束された日本人は、無宗教ばかりだからな。

 

この世の全てが ラプラスの悪魔 や インテリジェント・デザイン説 や 決定論 で出来ている、と、までは言わん。しかしある程度決められている方がいいだろう。例えば日本は少子化だ何だと言われているが、日本は人工知能を搭載したセクサロイドがいたせいか、ますます子供が出来ず少子化問題は加速し、日本に住む若い人間の数はだいぶ減っていた前例がある。まあそれが狙いだったが、2045年問題で日本はかなりカオスだった。日本国憲法第9条、銃刀法違反などがある平和な国だから余計にな。平和なのは悪い事ではないが。しかし、あの前例を見て思うに日本人は自由恋愛に向かない。昔の様に縛られ決められている方がいい、とまでは言わんが。それと、回帰であってループじゃ無い。回帰とループは似てるようで全く意味合いが違う。

 

ある哲学者が言ったな。

 

歴史が私にどんな関係があろう。 私の世界こそが、最初にして唯一の世界なのだ。

 

そしてもう一つ、事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。と。

 

この言葉は科学や歴史にも言える事だ。科学は結局の所、自然の力を借りて生まれた産物に過ぎないし、解釈を事実と勘違いしてるのがたまにいるが、科学は自然物を使って初めて成り立つ物。無から有へと生み出していない上に、科学は人間の解釈で出来ている物であって、科学は事実ではなく人間の解釈の積み重ねであり、偶発的の集合体でしかない。それに歴史なんて人間が過去の出来事を考察しただけの物を鵜呑みにして信じていかん、そもそも、その歴史書の日本書紀自体全て、と言わないが捏造されている物なんだ。古事記だって捏造されている部分はある。

小野妹子だって本当は遣隋使じゃないし、十七条憲法だって日本書紀にはあるが

古事記 には 十七条憲法 が無い上に聖徳太子はいないんだ。

 

『尽く書を信ずれば則ち書無きに如かず』だ。

 

古事記や日本書紀を編纂する様命じたのは天武天皇、大海人だそうだがそれも本当かどうか分からん。疑ってばかりいたら見える物も見えないかもしれんがな。る~ことを魔方陣から月にあるクレーター ティコ にある研究施設へと転移させ、欠伸をしながら立ち上がり、アリスに近づいてサラサラの金髪頭を撫でる。もう黎明なのか空が明るくなってきた。眠いし部屋に戻って昼寝しよう。もう少し時間が経てば西の妖怪が諏訪国に押し寄せてくるが、永遠の百鬼夜行がいれば 鎧袖一触 だろう。その為の一つとして、戦力を増やしたんだからな。道徳、モラル。そんな物は俺には関係ない。

 

生きるために食べよ、食べるために生きるな、それとも食べるために生きよ、生きるために食べるな、なのか。今回の人間は無神論なのか有神論、見えざるピンクのユニコーン なのか。どちらを選ぶのだろう。

 

ゼウスが勝手に女好きにされたり、ヘーラーがあんな性格では無かったように。神って、昔から人間の被害者だ。今起きてる神仏習合もそうだが、もう覚えてないくらい昔、昔と言うのは正しくは無いだろうが、試行錯誤を繰り返す回帰前以上の、グラハム数まで遡ったあの世界で起きた出来事。あの時にエリスとユウゲンマガンを創造したのはいいが、日本神話に限らず全ての神が消えたあの世界で起きた出来事の一つにあった人身御供。今は神が当たり前にいるが、あの時は神がいなかったのに起きた人身御供。人身御供ってのは食い扶持を減らす為、神の名を使った方便だったんだ。嘘も方便と言うが、こんな奴ら、生かしても邪魔だと思わんか、アリス。嗚呼、下らない、本当に下らない生き物。

 

「アリス。パチュリーとレイラを連れて行ったら諏訪国の事は頼んだぞ。あ、久しぶりに一緒に寝るか」

 

「絶対に い、や!」

 

「まあ無理矢理 連れ込むが」

 

「ちょっと、回帰前とは言えまだ幼気な実娘に手を出すなんて鬼畜すぎよ! 誰か助けて! 回帰前、妻達に子を100以上も産ませたパパに凌辱されながら犯されるー!」

 

嫌がるアリスを無理矢理担ぎ、そのまま自室へ直行。うむうむ。これが普通の反応。娘と言っても回帰前の話だが。本来の目的、国を作って女を侍らす目的は叶いつつあるがまだまだ。確か、インド神話の シヴァ と同一視される出雲の 大国主 は複数の妻がいたが、子供の数は180柱以上いたな。

 

全く 椛 と はたて はなぜ即答で俺に抱かれる事を快諾し、あんな変態プレイに対しても嫌がらず受け入れ応えたのだろうか。腹いせに鈴仙の両手両足を縛って永琳が直轄している月のクレーター ティコ にある研究施設に無理矢理監禁し、目隠しさせ舌を噛んで死なせない様にする事と、パブロフの犬の様に調教する為の意味を含めて鈴仙の口にボールギャグを口内にやり、貞操帯を履かせつつ強力な媚薬を飲ませ、媚薬の効果が表れて来た鈴仙を眺めているだけで一切手を出さず、そのまま一週間くらい放置しつつ視姦しよう。鈴仙、レイセンのあの性格は月に住む者の影響だろう、まずは鈴仙が今までに培ってきた尊厳と常識を無くすために強力な媚薬を毎日飲ませて監禁して視姦しながら放置。マインドコントロールと言うより、まあ人格のリセットだな。ついでに鈴仙の記憶を戻そう。そうだ、鈴仙の両手両足を縛るならご飯を一人で食べられないだろうし、俺が食わすしかないな。下の世話もして鈴仙を回帰前の様に壊そう。昔の様にな。

 

 

 

グラハム数まで遡ったあの世界、全ては。あの未来に続く為だけの、戦いだったんだ。

 

らしい。永琳がそう言ってた。俺は殺されたせいか、俺の記憶はノイズだらけでまだ完全に復元されていない。それと大それた事を言っているが、鶏が先か、卵が先か。それだけの違いだった世界の話。

 

日本も昔の様に外国と同じく神話を教科書に乗せればいいのだ。特にエロ話だけを載せたらいい。少子化と言われる今なら尚更。日本神話は卑猥かもしれんが案外少ないしまだ常識範囲内。ギリシャ神話程じゃない。それに、エロと子孫繁栄はどの神話において切っても切れぬ物だからな。ギリシア神話のゼウスがクロノスを、オイディプースも実父を殺したり。他にオイディプースは実母を娶って、実母と交わり子を作った様に、旧約聖書の登場人物 ロト も実娘と近親相姦し子を産ました様に、イカレタ話が神話じゃなかったら神話じゃないしな。それにこの程度ならいくらでもある話だし誤差の範囲。

 

ゼウスとまでは流石に言わないが。人は、人間は神話の様にもっと性欲に忠実になるべきだ。 嗚呼。主よ、人の望みの喜びよ。ふん、バッハは嫌いじゃないがまるでキリスト教。

 

 

この先起きる鎌倉幕府時代なんぞ、ただの前座にすぎん。早く鎌倉を滅ぼし。北条時行 を諏訪国へと迎い入れるが、どうせ 観応の擾乱 後に処刑されるので殺す。

しかし、仮にもあの北条氏だしな。馬鹿な事をしない様に研究施設へと幽閉させ 脳味噌を弄り回し 諏訪国でのんびり過ごして貰い、天皇家の様に生かしておいた方が後々都合がいいだろうか。うーむ、正直悩む。まあそれはいいとして、第96代天皇 後醍醐天皇 には建武の新政をさせる。早く南北朝時代 に行きたいものだ。

本来、鎌倉時代には例の 元寇 がある。鎌倉時代中期に起きた日本侵攻のあれだな。

1度目を 文永の役 2度目を 弘安の役  蒙古襲来 とも言うんだったか。

 

で、肝心なのが俺は 弘天 であり 諏訪大明神 だ。そして、諏訪大明神には蒙古襲来で深い関係がある。しかも、2回目の 弘安の役 でだ。

確か日本が神国と意識したのは、弘安の役で元の侵攻を阻止。これにより日本は神国との意識が生まれた、だったな。 

 

 

 

 

 

 

出雲、大和朝廷、 鎌倉時代 に 承久の乱 が起きて朝廷に勝つ東の武士共。北海道にいるアイヌとて例外ではない。琉球王国にいる奴らもだ。

大昔の様に、痛い目に会ってもらわねばな。

 

しかし。その前に重大な事がある。三種の神器の一つ 草薙剣 は文と椛の働きにより諏訪国にある。で、ここで問題なのは 壇ノ浦の戦い だ。

この話で厄介なのは、第81代天皇 安徳天皇 第82代天皇 後鳥羽天皇 

 

つまりだ、一言で言えばこの話は 天皇 が同時に2人の天皇が擁立されることになった話。安徳天皇はかなり薄いだろうが、どちらも天皇の血を持っているのは間違いない。俺が昔から 大海人 みたいに邪魔な奴は消しながら、アマテラス、ニニギの血が、神裔にちゃんと受け継ぐよう調整してきたんだ。だからどちらかを 大海人 の様に殺す事は出来ない。だがな、それだけならまだしも、この話を更にややこしくしているのは三種の神器が関わっている。安徳天皇が源義仲の入京に伴い、三種の神器とともに都落ちし、壇ノ浦の戦いで平氏と源氏が激突。結果、平氏軍は敗北する。

 

だが、だがな。蘇我氏の血を持つ 蘇我屠自古 物部氏の血を持つ物部守屋 物部布都

これらを諏訪国に取り込んだように現在の本朝、いや、もう日本か。日本の東方にいて、尚且つ天皇の血を持つ 平将門 は生かすので平家は滅亡はしない。蝦夷も北海道に逃がすので血が途絶える事は無い。北海道にいるアイヌとアイヌの神、カムイには予め話は通しているから問題は無い。

 

それで三種の神器の一つ 八尺瓊勾玉 もう一つの 草薙剣 を身につけた安徳天皇の祖母 平時子 と共に入水。つまるところ、海に身を投げ入れ自殺する。ここで問題なのがまだ8歳だった安徳天皇と、三種の神器の一つ 草薙剣 が平時子と共に消えてしまう。八尺瓊勾玉や八咫鏡は幸いにも見つかったそうだがそれはいいのだ。八咫鏡は天津神のイシコリドメが造った物だし、日像鏡、日矛鏡も日本にはある。八尺瓊勾玉も天津神の玉祖命が造りだした物。何かあっても、もう一度造らせたらいい。だが、草薙剣だけは天津神が造った訳では無いので何かあっては困っていた所だ。今、草薙剣は諏訪国に本物があるから問題は無いので一安心。

 

大和にある草薙剣はレプリカ。本物の草薙剣は諏訪国にあるからいいとしてだ。八尺瓊勾玉をこの時に頂くべきかどうか。どうしたもんかな。平将門は魔界人なので助けるが、安徳天皇は8歳の子といえ、悩ましい。

 

仕方ない、現在、大和にいる天皇である 大友皇子、弘文天皇。大海人の壬申の乱の敗戦後、弘文天皇は妃、子女を伴って密かに東国へ逃れ、落ち延びたという伝説がある。安徳天皇にも似た様な伝説があるしそれを使うかね。

 

ならば。後鳥羽天皇側だと思われるのは、非常に、非常に癪だが。安徳天皇は俺が殺した事にしよう。諏訪国にいる天照に殺されたとされた 蘇我入鹿 の様に。




グラハム数は流石にインフレーションしすぎか。実際はビッグフット数くらいかもしれない。

望月 千代女、巴御前、板額御前、熊坂長範、中原兼遠、海野幸親、諏訪氏、甲賀三郎、木曾次郎。これらは諏訪国に関係している人物です。特に甲賀三郎は諏訪大明神と言われる事もある人物ですね。
他には諏訪大明神の元々の姿が龍神であるという伝説は古くから言われています。

銅像については32話サブタイトル「妻」で書いてますね。そしてる~ことは旧作キャラです。

どうでもいいかもしれませんが、弘天を弘天と名付け、諏訪大明神にした意味は、弘安の役が理由の一つでした。

もう次の話で秋にします。それで子供達との別れ話は書きません。飛ばし過ぎだと思うかもしれませんが、予想以上に展開が遅いので急遽早めます。急がなければ。


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かなり展開を早めました


「あ、弘さんどこに行ってたんですか。探しましたよ」

 

「散歩だ散歩。じゃあ行くか」

 

もう秋。日向国から今は真夜中の四国地方にいる。子供たちも春から秋まで鍛えたので余程の妖怪じゃ無ければ死ぬ事は無いだろう。それに霖之助はともかく靈夢がいるからな。アリスとパチュリーとレイラは諏訪国に行ったので子供達の中にはいない。それで、依姫と共に例の七人ミサキを何とかする為にやって来たのはいいが、全く見つからない。海や川などの水辺に現れるとされると聞いているので、今は海辺にいるのだがそれらしいのも無い。月の光でおおよそ周りが見えるが、依姫が能力でカグツチを使役し剣を燃やして松明替わりにしていて結構明るい。波が揺れる音を聞きながら悩んでいたが、とりあえず海に航海しようと思い、魔方陣から自動操縦の船舶を転移させたのはいいがあまりにも大きすぎたので驚いた。しかしそのまま乗り込んで海原を出港。船舶の上で真夜中の海原を眺めていたが、依姫が傍に寄り添い夜食のお結びを包んだ袋を差し出す。ちょうど小腹が空いてたので食おうとしたら舌から猫の鳴き声がしたので視線をやると、俺の足元に一匹の黒猫が見上げていた。

 

「もしかしなくてもお前、お燐だな。何やってんだこんな所で。パルスィが心配してるだろうに」

 

「何言ってんのさ、あたいは心配で来たんじゃないか。この辺りは海坊主や海難法師が出るからね。それより、どうやってこんな大きい船を出したのさ」

 

「この猫喋ってますが、よく考えたら別におかしくは無いですね。尾が二つに裂けてますから」

 

お燐が俺の肩に乗って来たが、パルスィが言ってたのを思い出すと確か猫又じゃなくて仙狸という妖怪だったな。それでお燐が言うにこの辺は 海難法師 や海坊主 が出るそうだが、海難法師って言えば、ひょうすべやうわんみたいに見たら死ぬ系の妖怪だったか。水難事故で死亡した者の霊とされ、盥にのって沖からやって来て、その姿を見たものは同様の死に様を晒すとかなんとか。だが海坊主に関しては問題は無いのだ。傍にいた依姫に 鹽盈珠 と 鹽乾珠 を使うように頼むと、依姫が両手に持っていた 鹽盈珠 と 鹽乾珠 が光を発し、数百メートル先の海で巨大な渦が起こり出す。そして巨大な渦の中から黒い何かが出て来て、水飛沫が降り注ぐ中声を発する。

 

「鹽盈珠、鹽乾珠か。我を呼ぶのは誰ぞ」

 

「俺だ。ダイダラボッチ。久しぶりだな」

 

船舶がダイダラボッチの目の前まで来て、ダイダラボッチは大きな両手を使い船舶を止める。船舶より大きな体と身長を持つダイダラボッチは俺達を片目が失明している目は閉じ、もう片方の失明してない方の目で見下ろしているが、俺と依姫の顔を数分見て、今まで忘れていたかのように名を思い出したのか俺と依姫の名を呼ぶ。

 

「お前達、蓬莱山と綿月の娘か」

 

「そうだ、久しいな」

 

「お久しぶりです」

 

「おぉ。海神の綿月家には色々世話になっている。だが何故 四国地方、しかも淡路島近くに来ている。何か手伝える事はあるか」

 

それならと思い、海関係で七人ミサキ、海難法師、船幽霊、海御前、栄螺鬼、化け鯨、海座頭、磯女、海女房、赤えい、水虎、濡女、磯撫で。などを聞いてみたが、海の妖怪や幽霊は山本五郎左衛門や神野悪五郎に従っているとの事で海にはいないそうだ。悪樓は元気に海を泳いでいるらしい。まあ ダイダラボッチ は妖怪じゃないし 悪樓 は妖怪じゃなくて邪神だしな。しかし、七人ミサキ、海難法師、船幽霊。これらの幽霊は山本五郎左衛門や神野悪五郎の元にはいなく他の誰かが従えたらしい。誰の事だと聞いたら俺の肩に乗っている黒猫だそうだ。

ちなみに幽霊と妖怪は別物だと思うかもしれないが、実は幽霊と妖怪は基本的に一緒。幽霊と妖怪が区別され始めたのは、確か江戸時代だったかな。

 

「そうか、急に呼んで悪かった。また海底で寝ていてくれ」

 

「うむ」

 

ダイダラボッチは両手で掴んで止めていた船舶を離して、海中へと沈んでいった。海底と言っても海底には竜宮城みたいな所が各地にあり、ここもその場所の一つなのだ。今は淡路島らへんなので、このまま四国地方から近畿地方へ突っ切る為に進路を近畿地方の紀伊国へと変更させて上陸し下船しよう。それまで時間があるので船上で依姫が握ったお結びを食べて肩に乗っているお燐に質問する。

 

「お燐、七人ミサキなどの幽霊はどこへやった」

 

「諏訪国の地下に広がる、広大な洞窟空間の世界。あそこって血の池地獄があるけどさ。ある幽霊をそこに連れて行ったら凄い喜んでたよ」

 

成程、幽霊たちは地獄に連れて行かれたのか。つまり海に出る幽霊は諏訪国と諏訪国の地底にある地獄にいる訳で、俺たちが海に来ても出会う事は無いんだな。通りで何の気配もしない訳だ。昔、神綺は地獄を作ったが、諏訪国の地中深くにも地獄を造り上げている。地獄と一括りに行っても色んな地獄があるのでその一部が諏訪国の地中深くにあるというだけだ。地底に地獄や都があるとは言え一応、行ける方法がある。神奈子と永琳の指導の元で河童達が妖怪の山である八ヶ岳の麓に建設された施設があり、そこで河童達は地底に行ける様にエレベーターを建設している。その甲斐あって地下深くの地獄にまで繋がっているので行こうと思えばいつでも行ける訳だ。序でにナズーリンの能力を使い、ぬるま湯の温泉が施設の近くにあれば、最下層の地下施設にある核融合炉でボイラーが出来る。お結びを食べてる最中、水筒に入っている味噌汁をコップに入れて依姫は俺に渡す。依姫は能力でカグツチを使役したのか、味噌汁は湯気が立っていて温まっている。船舶のスピードはかなり落としているが真夜中なので冷たい風を体に受けながら、温かい味噌汁を飲むのは冷えた体が温まって心地いい。

 

「ああ、愛してるぞ依姫」

 

「わ、私も愛してます」

 

「仲がいいんだねぇ。あたいがいるのに凄いディープな口吸い」

 

唾液と味噌汁を依姫に口吸いする際に流し込んでやったが、依姫は嫌がらずそのまま唾液と味噌汁を喉を鳴らして飲み込んだ。まあやる事はやっているのでこの程度は日常茶飯事だ。とりあえず、食事を終えたので

 

「お燐も何か食うか、何が好きなんだある程度の食べ物ならすぐに出せるぞ」

 

「食べないけど死体」

 

「死体か、手ごろな人間を殺せばいいが今は海の上だし流石に死体は出せんな。魚か肉で我慢しろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな」

 

真っ暗な地下室で俺は椅子に座りながら話しかける、目の前にいる人物の視界は塞がれ、両手両足を縛られている。俺の声に反応して喋ろうとするが、視界は塞がれボールを口に噛ませ、ベルトで固定するボールギャグを入れているので喋る事は出来ず、言葉を発する事が出来ない事実を否応にもただ受け入れるしかなかった。俺は食事をさせようとギャグボールを外すが、口内に入れてたのでボールギャグは唾液塗れ。ボールギャグは穴が開いているので目の前にいる人物の口元から顎にまで垂れ、まるで漏らしたと思うくらい床に落ちた唾液が広がっている。ずっと口を開きっぱなしで顎が疲れたのか息が荒い。まずは飲み物を飲ませた方がいいかと思い、目の前にいる人物の顔を右手で上げ、左手に持っているペットボトルに入った水を口に突っ込み、そのまま無理矢理飲ます。急だったので驚いたのか顔を逸らして逃げようとしたが、俺が右手で動かない様に顎を抑えているので逃げる事は出来ずにそのまま辛そうな声を出しながら水を喉を鳴らしつつ飲んでいる。十分飲ませたかと思いペットボトルを口内から抜き取ると、水を少し吐き出しながら目の前にいる人物は咳き込む。こんなにも苦しそうなのに、目の前にいる人物の顔は紅潮しているが、次に食事にしようと右手にある一本の野菜スティックを食べさせようと左手で目の前にいる人物の顎を掴んで、野菜スティックを唇に当てる。目の前にいる人物は鼻を鳴らして匂いを嗅ぎ、次に口から舌を軽く出して野菜スティックを舐める。そして恐る恐る野菜スティックを口内に入れ、ポリポリと噛んで音を響かせつつ飲み込むの繰り返し。それを眺めていたら背からノック音がした。

 

「久しぶり。会いたかったわよ」

 

「俺も会いたかったが、今は手が離せん」

 

「またその子で遊んでるの? 余程お気に入りなのね」

 

「奴隷にしたのはいいが、今まで何もしなかったからな。それに回帰前から奴隷の中で気に入ってるんだ。清蘭と鈴瑚も連れて来るべきだったか」

 

永琳が椅子に座っている俺の背に抱き着き、胸を背に思いっきり当てつつ目の前にいる人物を見ながら俺の耳元で囁く。目の前にいる人物はその言葉を聞いて、言葉を口には出来ないがそれは駄目だと、清蘭と鈴瑚も連れて来るのはやめてと、両手両足を縛られているのでもがく事しか出来ずに、声にならない叫びを発している感じがした。まだ目の前にいる人物の記憶は戻していないが、永琳が軽く洗脳している。そうだな、理性が薄れていて本能だけを強く残しているので、もう本能だけで生きる動物かもな。右手に持っていた野菜スティックを最後まで齧り、飲み込んだようだが俺の右手の人差指をちろちろ舐め始め、そのままぬぷりと口内に入り込む。目の前にいる人物は指だと気付いているのか噛む事はせず、ただゆっくりと嬲るように指を口内で舐め、俺の指を唾液塗れにして人差指にマーキングでもするかのように匂いを付けている。顎を掴んでいた左手を離して目の前にいる人物の側頭部を撫でるが、目の前にいる人物はそれに甘える様に、自分の匂いを擦りつける様に、顔が左手にすり寄って来る。あっけないが可愛いものだ、最初はあんなにも俺を警戒して嫌ってたのに。親指、人差指、中指を目の前にいる人物の口内からゆっくりと引き抜くとぬめぬめしていて、真っ暗な地下室なのにうっすらとだがてらてら光っている。舐めようかと思ったが永琳が抱き着きながらタオルを渡してきたのでそのまま拭き取り、目の前にいる人物の口回りを拭きながら、ついでにボールギャグもしっかりと拭いて、またボールギャグを目の前にいる人物にボールを口に噛ませ、ベルトで固定する。

 

「で、どんな感じだ永琳」

 

「全て順調。パチュリーの喘息も治すから今の所、問題は無いわね。ただ諏訪氏、甲賀三郎が原因不明で死んだのは気になるけど」

 

「言っとくが俺じゃないぞ」

 

「そんなの言わなくても分かってるわよ、メリットが無さすぎるからね」

 

「望月 千代女、巴御前。木曾次郎が蘇生したなら気にせず行こう。なら依姫の所に帰るか。じゃあな鈴仙また来る。る~こと、俺がいない間レイセンの事は頼んだぞ」

 

「畏まりましたマスター」

 

今まで静かに佇んで隣にいて、AIを搭載したアンドロイドでセクサロイドは、まるで人間の様な声で受け答える。椅子に座りながら鈴仙の頭を撫でて立ち上がり、鈴仙は視界を布で塞がれ、両手両足を縛られている鈴仙はボールギャグが邪魔しているので返事は返せなかったが、そのままる~こと と鈴仙を放置して二人の姿が忽然と消えた。

残されたる~ことは両膝を床に付け、右手の親指と人差指で掴んでいる二錠のカプセル剤を鈴仙の唇に当ててそのまま押し込む。

 

「いいですか鈴仙様。これは媚薬です。あの永琳様が作られた媚薬です。だからまともじゃ無くなっても仕方ないのです。恥も尊厳も常識も狂わされても仕方ない事なんです。だから全てを曝け出しても仕方ない事なんです」

 

視界は布で覆われ、両手両足を縛られて身動きが取れない鈴仙は耳だけは何もされていない。耳だけが今の状況を知る事が出来る。だが、それでしか世界を認識できないのだ。鈴仙はされるがまま受け入れ、そのまま水が入ったコップを唇に当てられ、鈴仙の口内に水が浸入するが、鈴仙は喉を鳴らして媚薬を飲み込んだ。

 

鈴仙が飲み込んだのは、ただのビタミン剤と栄養剤だ。



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真澄の鏡

焼きおにぎり食べたい


「神めがッ... 我らの邪魔をするでない!」

 

「ええい。金魚の糞の有象無象は邪魔だ死ね」

 

目障りな妖怪を切り捨て、そのまま何事も無かったように歩き出す。船舶に乗って近畿地方の紀伊国へと上陸して下船したのはいいが、余波のせいか頻発に妖怪と出会っている。で、人間の振りをしながらこの辺に住んでいる漁師などの民を助けた。山本五郎左衛門や神野悪五郎などが備後国から諏訪国へと動き出しているそうだが、海路では無く陸路を進んでいるので、その途中に大和や山城国など色んな国を通る事になる。だが神道の神が動き始めて殺されることはまずない。昔から少々の事を妖怪がしたとしても妖怪は基本的に殺さないようにしているが、見逃せないほど度が過ぎた事をした際に限り殺している。それはそれぞれの国にある神社に鎮座している神道の神もだ。それぞれの国にいる神道の神などが妖怪を捉えて地獄に連れて行くか、もしくは殺しているので、あんまり問題は無いのだ。理性があるのは基本的に生かすが、本能だけで動く妖怪は殺している。

依姫が助けた漁師から話を聞いているので、俺はお礼として酒を貰って飲んでいる。

 

「最近。京、平安京にいる躰仁皇子を病の身にした妖怪がいるそうですよ」

 

「そ、そうか」

 

「はい。なんでも見る人によって姿を変える妖怪だそうで、虎、蛇、猿。他にもありますが、このように一定の姿をしていないようです」

 

天皇には近江朝廷から山城国の平安京へと移ってもらった。だから京にいる。躰仁皇子が病か、しかも一定の姿をしていない。山城国には小野篁がいる。それで小野篁は妖怪のスペシャリストで何でも屋でもあるが、実際の小野篁はスペシャリストだが、妖怪を退治していない。実際は地獄の人手不足が問題で、退治したと見せかけ妖怪を無理矢理地獄に連れて行き、神綺などに従わせてこき使わさせる為にそんな事をしているそうだ。だからあいつも殺される事は無いだろうが、心配だな。あ、輝夜と咲夜、妹紅や幽々子などは天皇同様、京にいる。

 

 

そのまま紀伊国の北に進んで、山を登っては下ってを繰り返しをしてやっとこさ。

大和にある平城京の西に位置する 竜田山 の麓へと到着した。

今は秋なので 竜田山 は山一面、紅葉で彩っている。地面に落ちている紅葉や木の枝を踏みつけながら先に進んで行くと、目の前には姉妹の竜田姫が現れたので、そのまま姉の静葉とハイタッチ。妹の穣子にもしようと右手を挙げたが、足を踏まれた。ちなみに穣子は裸足だ。仕方ないので何事も無かったように挨拶。

 

「元気か秋姉妹」

 

「帰れ」

 

「そうつれない事を言うなよ穣子。とりあえず芋くれ、焼き芋にするから」

 

「帰れって言ってるでしょ! お姉ちゃんもご丁寧に籠一杯のお芋をそいつにあげなくていいから」

 

「で、でもお芋欲しいって言ってるし...」

 

静葉は妹の穣子に注意されながらも、籠一杯のお芋を俺に渡す。所々土塗れなので、取れたばかりなのだろうか。籠を受け取り、そのまま芋を一つ取り、隣にいる依姫には水神の 弥都波能売神 を使役してもらい、土汚れを水で洗い流す。洗い終えたので別の籠を

静葉から貰い、そこに洗い終えた芋を入れる。この際全部のお芋を洗おうと考え、他の芋を一つ一つ洗っていたら、穣子が依姫に苦言を呈す。

 

「依姫、よくこんなのと夫婦になって結婚したわね。大変でしょ?」

 

「もう慣れましたよ」

 

俺がすぐ傍にいるのに穣子は依姫に言うが、依姫は笑って返した。いや依姫よ、それはそれで酷くないか。全部の芋を洗い終えたので、お芋のお礼を渡そうと静葉と穣子を読んで、懐からお礼の品を右手の掌に乗せて渡す。

 

「芋をくれた礼に、二人にはこれを進呈しよう」

 

「綺麗...」

 

「ワイロね!? そうやって私達を手籠めにする気でしょうけどそうはいかないわよ!」

 

二つのペンダントを 静葉 と 穣子 に渡した。静葉はガーネットが嵌めこまれたペンダントに見惚れ、穣子は嫌がったが無理矢理だ。ガーネットの象徴は 豊穣 多産 とかだったので永遠の神になった秋姉妹にはぴったりだろう。ガーネットは火とも関連づけられ、ガーネットはザクロの象徴でもあり、ギリシャ神話で ザクロ は 永遠 の意味もある。

左手に6発の弾を込めた二挺のM29リボルバーと、もう2発の弾を左手に出して二人に差し出す。本当はグロック17かベレッタp-36マグナムかマスケット銃にしたかったんだがやめた。

 

「この弾はドイツの民話伝承に伝わる魔弾の フライクーゲル だ。念の為に渡して置く、余程の時に使え。リボルバーに弾は込めてあるから撃てばいいだけだ。後はフライクーゲルが勝手にしてくれる」

 

「そんな物騒な物いらない!」

 

「叙情的に言わず受け取れ、護身用としてはかなり使えるぞ。グルカナイフもある、いや護身用だからスペツナズナイフの方が... いいか、スペツナズナイフはこのレバーを押すとだな」

 

「いらないって言って… 待った。なら今がその時ね。さっさと寄越しなさい。あんたにその弾丸、撃ってやるわよ」

 

「やめておけ、弾の無駄だ。それで俺を殺せない事は知っているだろう。それに、お前達が 忽然と客の消えるブティック の様になっては困る。いいから黙って受け取れ」

 

7発中の内6発は射手の望む所に命中する。そうだな、一発一発の弾に意思がありつつ追尾機能がある感じと考えればいい。執拗に相手を追いかけ、必ず相手に命中する百発百中な魔法の弾丸。魔弾の フライクーゲル 弾はそれぞれ7発と少ないが、一発でも撃てば相手を殺すまで追い続ける魔弾だぞ、銃を扱った事が無い者でも一度引き金を引けば相手を確実に殺せる代物だ。ただし、リスクがある。問題は7発めだ、この最後の7発目を撃つとあれなのが玉に瑕だが、永遠の存在だから問題ないだろう。しかし銃を撃つ際に反動が起きるが、静葉 と 穣子 は輝夜のお蔭で俺と同じ永遠の存在になっている。つまり物理法則などは適用されないのだ。周りは紅葉が風に乗って舞っていて、視界に入っているのは焚火の火が風に揺られている。芋を焼き芋にする為に枯れ葉を集め、依姫に頼んで火の神である 甕速日神 を呼び出してもらい、枯れ葉に火を付けてもらった。枯れ葉で火が燃え始め、徐々に大きくなっていくのを見ながら二姉妹の神の神である竜田姫に問う。

 

「静葉に穣子。ここは、夾雑物が多いな」

 

「そうかな? 私は美味しい物を食べたり、いいお天気の時はお昼寝したりして満足してるよ」

 

「そう、ね。でも、夾雑物がどんなに多くても、私もこの世界が好きよ」

 

変わらない、お前達も変わらないな。右手を仰向けにして、魔方陣を展開する。すると右手の手の掌には一つの葉が右手に乗っているが、これはパルスィが持つ 顕明連 と同様 回帰前の記憶を戻す為の一つ。

インド神話に出てくる聖仙の アガスティヤ が残した アガスティアの葉 だ。これが、これが必要だった。だからこそ天竺にいる 魅魔 と くるみ は、これを探す為に天竺に行っていた。そして、天竺にいた アリス が記憶が戻っていたのも、この アガスティアの葉 が原因かもしれん。他に記憶を戻す為の方法は アカシックレコード がある。

 

生きる上で必要なのは、食べる事、飲む事、最後に寝る事だ。これは、動物である以上必要な行為であり、体の機能を動かす為に必要な行い。後は子を残す為の性欲か。しかしそれだけで満足しないのが出て来た、そう、だな。今から言うのは飽く迄、あくまでも例え話であり比喩表現だ。分かりやすく言うと知識の実、または知恵の実だ。知恵の実を食べた事で、アダムとイヴは裸でいる、この事実に恥ずかしさを覚えた。例えば、犬や猫は常に裸だ、毛は纏っているが衣類を纏っていない。裸でいる事に恥ずかしさなんて猫や犬には感じないだろう。だが人間は違う、人間だけ裸でいる事を恥ずかしいと感じる生き物。つまりだ、人間はこの時に最初から持っていた本能だけでなく、意思と自我を持ち始める事になった。だから神はアダムとイヴの二人をエデンから追い出したのだ。しかし人間がアダムとイブの子孫と言う事を言いたいのではない、実際は子孫でもないし。

 

俺が言いたいのは観測者効果だ。誰か1人、1人でもいいからそれを観測、認識、理解。確定すると全体に影響を与えるのが観測者効果。本能はともかく一部を除いて、人間が自我や意思を持ち始めたのは神が原因ではないのだよ。まあ、これはあくまでも例え話であり比喩表現。実際は別の事でそれは起きているので、アダムとイヴが原因ではないし 

ミトコンドリア・イヴ が原因じゃない。ぬう、話の単純化は大事な事を見落とす事になるな。

 

「ほんと、昔にあんたと知り合ったのは忸怩たる思いよ」

 

「穣子ちゃんそんなこと言ったら駄目だよ。私は知り会えて、嬉しいよ~」

 

「そうか、穣子は辛辣だが静葉は優しいな。

               Why is there something rather than nothing?」

 

「ふん。あんた相変わらずその言葉好きね。木を見て森を見ず、この言葉をあんたに送るわ」

 

「中々どうして、言い得て妙だ」

 

記憶、戻ってないくせに。人間は、昔から自然の奴隷であり、自然は人間の軛だ。だからこそ、日本に住む人間は自然を神格化し、神として崇め祀った。それは人間が自然現象に対して無知だったからだ。だから自然を神として接して来た。だがな、言い方を変えれば自然現象を全て神のせいにして来たと言えるんだよ。人間は昔から変わらない、人間は昔から何か不都合が起きると誰かのせいにして押し付けて来た。疫病が流行ると疫病神が、天然痘が流行ると疱瘡神が原因だと言い始めたりな。人間が消えたら神隠し、富士山が噴火したら コノハノサクヤ に 浅間大神 地震が起きるとその原因は なゐの神 もしくは 龍か大鯰 と言った感じに挙げればキリがない。俺は未来を知っているから言える事だが、確かに人間の科学や医療は進歩しただろう。昔に比べて色々便利になり、確かに生きやすくなった。平均寿命も昔に比べて伸びたし、昔に比べて医療も進歩して治せなくて難病だった 結核 も治せるようになった。日本以外の国へと行き、世界は広いと思っただろう。でもな、どれだけ科学が進歩しても。変わって無いのがある。

それは 人の心のベクトル だ。今も、何かの出来事を誰かのせいにしている。つまり、人間の医療、科学などが進歩しても、人間の本質が進歩していない。何も変わって無いんだよ。ずっと、同じ所をぐるぐる回っているだけ。前進もしなければ後退もしていない。そしてもう一つ、ある人間は知ら無い事に恐怖する。だからこそ人間は貪欲に知恵を付け、その恐怖の原因を突き止めて来た。そんな人間でも、未だに知ってない事がある。それは、死だ。死ぬ事が判らないんじゃない、死んだ後、どうなってしまうのかという事だ。だから人間は死に対し怯える、死んだらどうなるかが、生きている人間には誰にも分かってないからだ。いくら科学が進歩してもこれだけは死ななければ判明しない。

 

今は当たり前の様に神が実在するが、本来の神は形が無い存在、そんな相手なら人間にとって絶好の捌け口だったから、病、地震、噴火。自然現象を神のせいにした。勿論、それは人間が自然に対する無知が招いた事。無知は罪と言うが、無知は罪ではない、無知は幸福だ。知らない事は幸せなのだ。何かを知り、知識を蓄えるのは悪い事ではない反面、いい事であるとは限らない。法に無知な人間を利用して金を儲ける人間もいるがね、まあそういう意味ではやはり知識は必要だろう。昔は、天動説が信じられていた。空は神が住んでいると考えられていた。それは、人間が何も知らなかったからだろう。そしてその時の常識がそうであった。その時代の人間が持つ常識がそうだったんだ。本当に空を飛べるなんて大半は考えてなかっただろうし、地球が天動説では無かったとは思わなかっただろう。

 

話を戻そう、時間が経つにつれて医療、科学は発展し、完全とまでは言わないがある程度、人間は自然の舵を取る事が出来始め。その自然現象の原因を人間達が解明、理解すると、自然現象とは、人間が食べる事や水を飲む事や寝る事。台風、地震、疫病。これらの自然現象はそんな当たり前の事なのだと理解し始めて人間達は神などいないと言い始めた。それは神を見た事が無いから、というのもいる。それを言ったら歴史の人物はどうなんだと思うが。まあ、こんな連中だ。人間はそんな生き物だ。何かの出来事を誰かのせいにして、心の平穏を保つ生き物で、臭い物に蓋をする。

 

そして大事な部分、水と食料が神の手により必要最低限だが、補われていると言うのが肝心だ。勿論、今も人間たちは作物を育てたり、家畜を殺して生きている。それは諏訪国の民も同様だ。だが、水と食料。これら全てを人間の手でしていないと言う事は、人間はペットの様に飼われている事を意味する。前に、これに気付いていた人間は、武力や兵器で神を殺そうとした事も回帰前以前の世界で起きた。人間は自分達の可能性を信じ、人間だけで地に足を付けて歩いて行けるはずだと考え、そう信じて戦争が勃発。結果は言うまでも無いが、人間は負けたがね。そもそも、自然に勝とうとする考えがおかしいのだ。人間同士なら相手を殺せばそれで終わりだろう。喧嘩なら相手の戦意を無くせば勝ちだろう。なら、相手が水だったらどうだ、火は、風は、雷は、病は、地震は、隕石は。これらにどうやって勝つ発想が出来るのか。地球にいる限り、人間が動物である限りどう足掻いても無理だ。人間、つまり動物が老化するのは活性酸素のせいでもあるし。

 

人間にとって、イデアとは何だろうか。天に順う者は存し天に逆らう者は亡ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故か若返りましたが、この巴御前。永琳様の命により、粉骨砕身働きます」

 

「お前さんは相変わらず堅い。子供の頃はじゃじゃ馬だったのに悲しいね」

 

「勇儀様。私はとうの昔に元服をしています。いい加減子供扱いはやめていただきたい」

 

「それは一度でも私に勝ってから言い。来なよ、この杯に入っている鬼ころしを一滴でも零したらお前さんの勝ちだ。その薙刀は飾りじゃないだろう?」

 

勇儀と巴御前が庭で遊んでいる。衝撃のせいかウメが風に揺られて空に散り、立ちながらウメの木に体重を預け、それを見ていた紫と鬼ころしを飲んでいる華扇と萃香が二人を見ていたが、巴御前が心配になった紫は萃香の肩を人差指でトントン叩く。

 

「萃香。あれ、放っておいていいの?」

 

「昔から子供達としてるじゃない、あんなのじゃれ合いだよじゃれ合い。中々粘っていた金太郎の奴が源頼光とかいう気に入らない奴に仕えて諏訪国にいないしさ」

 

何だかんだ言って皆が生き返ったのは勇儀も嬉しいのだ。萃香の言葉を肩に雷獣を乗せた華扇もそれに同調しながら頷く。紫は恍けないで。そう思いながら両手で萃香と華扇の片頬を引っ張りながら続ける。今は、西の妖怪が諏訪国に攻め寄せてるので美鈴とルーミア。八ヶ岳で従わせた妖怪に萃香、勇儀、華扇、ヤマメ、パルスィを除いた百鬼夜行が応戦している。

 

「そうだけど、そうじゃなくてね。西の妖怪が諏訪国に押し寄せて来てるじゃない」

 

「諏訪国の守りは美鈴の御株、その御株を奪ったら駄目だ。それに美鈴だけじゃなくて他の鬼達にも任せてる。安心しな、危なくなったら華扇や勇儀が出る上に私の能力使うから。それより何かつまみ作ってよ」

 

「それに紫様と幽香様は諏訪国に住む妖怪の纏め役、言わば私達の大将なのです。だからどっしり構えていてください。とりあえず私もお腹が空きました。紫様に何か作って欲しいと私は所望します」

 

「それが大将という肩書の纏め役に対し貴方達の中にある私の扱いなのかしら」

 

「そんなこたあないよ。でも、私達鬼と対等の力を持つあの幽香まで出てるからね、幽香も私達の大将なのに最前線に出て応戦してどうすんのさと言いたいよ。まあ幽香の気持ちも分かるけど」

 

紫は萃香に巴御前と命を懸けた遊びをしている勇儀を見ながら聞いたが、鬼ころしを飲みながらいつもの事だと言いながら、紫や幽香が永琳から料理学んだと聞いてる萃香と華扇は鬼ころしに合うつまみを紫に要求。これに紫は渋々応え、台所に作り置きして置いたつまみをスキマ経由で取り出し、隣にいる萃香と華扇に差し出す。抑々。美鈴やルーミア、百鬼夜行が永遠になった時点で西の妖怪に勝ち目はないのだ。立て続けに連戦しても疲れる事は無いし、何より死ぬ事が確実にない。これは大きい。ただでさえ強力な妖怪の鬼が、疲労しない上に死なないのだ。これには西の妖怪も堪ったものではない。

 

 

 

 

「甲賀流忍者筆頭、くノ一 望月千代女 見参。お懐かしい。諏訪子様と神奈子様はお変わり無いようですが、紫様と幽香様は大きくなられましたね」

 

「同じく甲賀忍者、甲賀三郎も恥ずかしながら帰って参りました」

 

「あー うん。久しぶり。早速だが、母さん。比売大神から二人に特命だ」

 

「甲賀三郎は高坂甚内と共に筑後国にいる 果心居士 そして 甕依姫 を捕らえ、諏訪国に引き込め。ああ、手段は問わないと母さんから言伝を預かっている」

 

「望月千代女、お前は日本各地に草として忍ばせた歩き巫女がいるだろう。それでだ、備前国にお前が歩き巫女として忍ばせた女達を使い、ある人物を探して欲しい。あのコンガラだ」

 

望月千代女、甲賀三郎の両名は諏訪子が預かっていた永琳からの言伝を最後まで聞いてから頷き、霧の様に姿を消した。二人には光学迷彩を持たせている。そして諏訪子が 望月千代女 に言った草とはスパイ、つまりくノ一の事だ。昔、一度だけだが コンガラ は諏訪国にいた。その時 望月千代女 はまだ存命していたのでコンガラの顔や容姿、種族は鬼女という事も承知している。

 

諏訪子の言伝は終わり、次に 神奈子 が懐から一枚の紙切れを取り出して前に出し、残りの者に見せながら言う。

 

「平安京にいる 弘文天皇 から直々の勅諭だ。名馬に兵に一騎当千の武将。最後に水や食料などを大和と平安京へ届けろ、序でに諏訪国の東にいる 征夷大将軍 の所にもだ。朝廷同様、援軍要請が来ているのでな」

 

現在、大和に限らず西一帯では病が流行り、蔓延している。そして今は秋だ。秋の作物も殆どが何故か育たずまるで 養和の飢饉 の様になり、九州中央部にある 阿蘇山 は噴火した上に、四国地方の伊予国にいる 藤原純友 が海賊を率いて朝廷に叛乱。更に東では平将門や蝦夷が神国を造り上げ逆族として見られ、合戦が起きている。しかも、何故か 平将門 が 捲土重来 の動きを見せているそうで。もうこれだけの事が一遍に起きてしまい、流石に朝廷だけの手では手が追いつかないので、実際は朝廷や天皇の支配者だが、大和、平安京の朝廷と同盟関係である諏訪国の力を天皇は求めた。これに諏訪国は受諾し、必要な物資を大和へ譲渡する為に源義仲、通称 木曾次郎 と呼ばれる武将に今井兼平、樋口兼光、根井行親、楯親忠の義仲四天王と呼ばれる者達に任せる事となった。戦国時代ほどではないが今は 群雄割拠 そして諏訪国は 富国強兵 だ。それに加えて、諏訪国には鬼などの妖怪がいる。よく民は勇儀達と命懸けの手合せしたりと実力と実戦経験は並々ならぬものがあるからだ。それぞれの役目を聞き終え、さっそく取り掛かろうと動き出し始めたその時。

けたたましい足音が耳に入り、その人物であろう張本人は走って乱れた息をふすまの前で整え、そのまま静かにふすまを開けて、中に入る。足音の原因はてゐが原因だった様だ。

中にいた皆は黙りつつ、てゐを見ながら、てゐは神妙な顔つきで、皆に報告する。

 

「ついに産まれたよ。祭神様と藍の子が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、山城国に行って輝夜たちに会いに行ったり、山城国にいるあいつを諏訪国に引き込む。その時するが分からんがいずれ輝夜に手を出す気でいる、輝夜は実妹だが、本来は母、姉、妹、娘。これら、つまり身内に対する性的感情は抱く事が無いとされていて、確かそれを ウェスターマーク効果 と言うんだったな。特に母に対する ウェスターマーク効果 は大きいらしい。しかしこれはあくまでも仮説の話だ。信じるに値しない。誰かが言ったとしてもあっさり信じてはいかん。そもそも近親相姦を異様に排斥されているのは、一種の情報操作であり、洗脳ともいえる。

 

焚火を消して、奥にある芋を取り出す。取り出した芋は湯気も出ていてかなりの熱さだが、俺は永遠の存在なので熱さは感じない。そのまま芋を口に入れ、噛んで飲み込む。肩に乗っているお燐にも芋をやったがまだ熱いので、冷めるのを待ってから食べるそうだ。ついでにそのまま二人を勧誘しておくことにした。

 

「じゃあ帰るが。その前に、諏訪国には八ヶ岳があるがあそこに咲く紅葉が綺麗でな。秋になると紅葉狩りをよくするんだ、もし、ここに住める状況では無くなったら来るといい」

 

「そんな状況になる訳ないしなったとしても行く訳ないでしょ」

 

「またね~ あ、これさっき作っておいた鬼饅頭。お芋一杯取れたから沢山作ったの、作りすぎちゃったし良かったら途中で食べて」

 

「静葉はいい子だなあ。サンキュー」

 

静葉から中に鬼饅頭と綺麗な布が入った籠を受け取り、二人に見送られながら京に向かう。下山している最中、ふと思った。夏に西の妖怪が諏訪国を落とそうと東に向かっている、止まる事は無い。その影響でこの辺りの妖怪も活性化して暴れている。

 

時間の矢 は既に放たれている。今回は、いつ終わるだろう。この世界でも黙示録のラッパ吹き 天使の喇叭 は起きるのだろうか。人間は 自然主義的誤謬 をどう捉え、選択するのだろう。一度立ち止まり、依姫に頼むとしよう。

 

「依姫、一つ頼みがある」

 

「任せて下さい」

 

「内容はまだ言ってないんだが」

 

「私が、弘さんの頼みを断る訳がありませんよ。お姉様もそうです」

 

「ふむ、では言うが。ある人物に3つの質問をして来てほしい。もし一つでも間違えたら」

 

俺の足元に拷問道具であり、処刑道具を出す。依姫には浅間大神を使役して 阿蘇山 を噴火させ、伊予国にいる 藤原純友 には朝廷に反旗を翻するよう動いて貰った。一応諏訪国と大和は同盟を結んでいるので、朝廷から援軍要請を受けた諏訪国は諏訪国の兵と武将と馬を大和に送りつけたりはしている。そして今は秋だ。西の作物は育たない様にした上に、西では厄病が蔓延している。これがどれだけ異常か、自然とは昔から人間に災いを齎し、また自然は人間に恵みを与えて来た。つまり 禍を転じて福と為す。今まで、ぬるま湯につかって来た人間は昔に逆戻りしている事に耐えきれるだろうか。人間が神に対して畏敬の念を抱かせるには必要な行為、まあ人間が家畜や畜生を躾ける様に昔から神も人間を躾て調教している。今まで当たり前だったことがこれから先も当たり前なのだと考えられるのは困るのだよ。

 

「この、ファラリスの雄牛を使ってそいつを処刑してくれ」

 

「ファラリスの雄牛、ですか。懐かしいですね、昔はこの中に入れられた人間がよく炙られたものです...」

 

 

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ある国に祟り神が鎮座しておった。その祟り神は、祟り神故に氏子達からは畏敬の念を抱かれ。時に氏子達へと恩恵を与え、時に、祟り神として氏子達を祟り、そのまま祟り殺した時もあった。全ては役目、ただ筋書き通りに動く塊として。そんな時、祟り神が鎮座していた国に二人の神、1人の男性と2人の女性が祟り神に会いたいと氏子達から知らせを受けたが、特に断る理由も無く、ほんの気紛れで祟り神は二人に会う事にした。会って話をしてみたら、その者らは西一帯を治める国から来た使者で、祟り神が鎮座している国と同盟を結びたいと言った内容だ。男の方はパッとしないが、女の方は赤と青の服装でかなりインパクトがある。もう一人の女も 注連縄 を背負っていて印象深い。注連縄の象徴の一つは蛇だ、脱皮を繰り返す蛇は

ウロボロスの様に 永劫回帰 や 不老不死  永遠 の象徴でもある。

 

「ああ。同盟、対等な関係であれば私に是非は無い」

 

「それは上々。序でと言っては何ですが、真澄の鏡を一度見せて頂きたいのと。私達はこのまま東に行きたいので通行許可を貰えるでしょうか」

 

「東の神にも同盟を結びに行くのか。まあいい、どちらも許可しよう。監視はさせてもらうがな」

 

それは助かりますと、仮にも西を治める国の使者だと言うのにこいつは頭を下げた、馬鹿かこいつは。大国が小国に頭を下げてどうする、自分の国が堕ちる事になるぞ。

男の使者は、勾玉が付いていて首にかけるような連珠の首飾りを頸に掛けている。

珠と珠が 由羅迦志 で 母由良邇 

男は話を終えたのか、そのまま喋らず私をじっと見ていたので睨み返すとバツが悪そうな表情をする。

 

「気分を害されたのなら申し訳ない。実は私の隣に座っている赤と青の服装をした女性は妻の一人でして。昔、私と妻の娘がいたのです。それで、私達の娘が、貴方とあまりにも似すぎておりまして」

 

「気にしていない。失礼を承知で聞かせてもらうが、昔いたという事は、その娘は亡くなったのか」

 

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「いいえ、生きております。ですが、死んだも同然です。私達の事は覚えてないでしょうから」

 

「そうか。失礼な事を聞いた」

 

「とんでもない。元は私の落ち度ですので。所で、諏訪湖は綺麗ですな。湖の底には何があるのでしょう、世界には何があるのでしょう。分からない、見えない部分。と言うのは神秘に満ちています」

 

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「民達は貴方に畏敬の念を抱いてはいますが、それは当然の事。祟り神とはそうあるべきだ、でなければ祟り神ではない、祟り神とは呼べない」

 

「諏訪国はいい国。諏訪国の北と南に住む民の仲は相変わらず悪いようですがね。変な事を言わせてもらいますが。貴方は、祟り神をやめたいですか。それともやめたくないですか」

 

まるで昔から知っている言い方が気になったので聞こうとしたが、その先は見る事も出来ずに

 

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目を覚ます。またか。布団から起き上がり、深呼吸をして深い息を吐く。最近、この夢に悩まされて安眠できない。しかも、いつもここで夢から覚める。その先を見た事が無い、だがあの夢は酷く懐かしい気がする様で、しない。こんな場面は今までの記憶にないし、何故かこの夢に出てくる父さんと母さん、神奈子までもが私と他人行儀だった。右手でおでこを押さえ数回頭を横に振る。しかも同盟を結んだのでその証として神奈子が人質? 意味が判らない。

 

「一体何なのさ」

 

『私の名は 蓬莱山 諏訪子 お前は誰だ』

 

私は私だ。そうだ、お前は 蓬莱山 諏訪子 私じゃない。それはお前の名に 蓬莱山 がある事や髪色が 銀 である事から見て取れる。私は嘗ての疲れたお前だ。

 

既にお前は祟り神じゃないんだ。だから神の一人でも、1人の女として自由に生きろ。

永琳も、似た様な事を言ってただろう。

 

あの世界はまだ回帰が一桁の世界で起きた事だ。あいつは、記憶が欠けている。あいつの記憶が復元するのはまだまだかかるぞ。あの時、私に言った言葉が記憶に無いんだ。

 

...おや。

 

 

 

 

 

 

 

 

また 夢幻世界 に入ったか。都合がいい、悪いが一方的に話すぞ。

これはそうだな。分かりやすく言うと 量子テレポーテーション 状態と思えばいい。

 

早速だが回帰前は人間があいつを殺した、しかしあれは人間だったのだろうか。本当にイレギュラーだった、何故そんな事が起きたのかが未だに分からない。しかし私は違うと踏んでいる。可能性があるとすれば地球だ。地球の奴が我らの邪魔をしたのだ。

 

1回目、私やあいつが本当に初対面だった最初の世界でもあいつは死に、しかもあいつは回帰前同様に蘇生できなくてな。それでお前の母 永琳。回帰前の永琳は最初の世界みたいにまた壊れたよ。だから自分の記憶を消去、そして永琳は 超越者 になった。

記憶を自分の手で消したのは永琳だけではないがな。

 

ドイツの哲学者 フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ の思想 永劫回帰 に近い、かもしれない。だが違う。あれはそんな生易しいものじゃない。もっとえげつないものだ。昔の永琳はあいつにべったりではなく、今の永琳ほど依存していなかった。もっと自立していたんだ。それほどまでにあいつの事が好きだったんだな。

神綺も、サリエルも... 皆、まともに見えるが昔に比べてイカレテしまったよ。

回帰が苦痛なのではない、回帰のせいで心が壊れた訳じゃ無いんだ。

回帰は人間には耐えられないだろう、そう。人間にはまず無理。

 

お前も必要だが。まず第一に、永琳はあいつがいなきゃダメなんだ。だから永琳はあいつの肯定者。永琳があいつとの娘を産んだ時は本当に幸せそうだったよ。

産んだ時代。あれは、昭和時代か平成時代だったか。早い時は鎌倉時代の時もあった。

娘の名は、名は確か 夢美 だったか。そうだな永琳。夢は美しい。私もそう思う。

見たく無い事は誰だって見たくはない、だから夢なのだ。自分の都合のいい世界を夢は創れるから。でもこの世界は夢じゃない。この世界が夢だったらどれだけよかったか。

いや、しかしだ。抑々の元凶は永琳だろう。もしも世界を終わらせたいなら永琳を止めるしかない。あいつは月の王子だが、それに付き合ってるに過ぎないのだから。

 

 

ドイツの哲学者 ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル がナポレオンを見て 

世界精神 と言ったが。他に ナポレオン がピラミッドの中で 未来を見た そんな話がある。もし神の身でありながら 先見の明 を持つ立場になったら、お前はどうする。アガスティアの葉 や アカシックレコード に記録されてる通りの流れに身を任せるのか、逆らうのか。それとも第三の選択を選ぶのか。

 

嘗て戦国時代に一人いたよ。人の身で 先見の明 を持つ女が。アガスティアの葉、もしくはアカシックレコードを使ったのかは知らないが、その女は世界に逆らう事を選び

日本の西一帯を平らげて統一。東一帯は別の人物が統一した。天下二分の計とは言えない。何せその女は人間でありながらただの人間では無く、あいつの関係者でもあった。

本来なら、本能寺で消えた存在だったのに。

 

 

私はお前だ、だが別の私だ。私はあいつに一つ頼まれ事をされている。暇があればという条件だったが。頼まれ事とは即ち、穢れについてだ。

私はな 穢れ についてはあいつに初めて聞いた言葉だ。穢れ という言葉が初めてだったんじゃない穢れと言う言葉は人間も使っていたから。穢れの内容が初めて聞いたんだ。お前は、信仰の塊で出来ているが月人かもしれん。だが私は地上で生まれた祟り神、天津神でも月人でもない。

私はあいつに穢れについて聞かされた時、正直言って驚いたよ。穢れ穢れって言うのは地上じゃ人間だけだったから。

ここで気になったのは、月人や天津神達がこの世界もそうなのかは知らないが

冥王代 や 始生代 または カンブリア紀 に元は地球、つまり地上にいたという点だ。

 

 

 

穢れとは何だ? 確かに 日本の宗教 神道 には 穢れ の観念はある。

だがそれは死体から生まれる産物だ。妖怪は関係ない。身も蓋も無い言い方をするなら、死体の 腐臭 や 腐敗 を 穢れ と呼んでいたのだろう。人間の腐敗は同じ人間が見たら悍ましく

腐臭は酷いなんて言える所の匂いでは無い。だから人間は死ぬと言う当たり前の自然の摂理の死を

特別視始めた。これは人間特有だ。

それに死体を放置していたら病の元である病原菌が蔓延する。つまり疫病神のせいにされ。更に言うなら、昔の人間は自然現象に対して無知だった、無知すぎた。

自然現象を含めた全ての出来事を神や妖怪や幽霊や動物、他にも様々な者のせいにして誰かのせいにして来た。神道の 穢れ もこれに当て嵌る。

 

日本神話のイザナギが、死んで黄泉にいるイザナミを迎えに行き、黄泉にいるイザナミは酷い身体であった。これは腐敗だ。次にイザナギが黄泉から逃げ禊をしている。禊とは、身に罪や穢れのある者が川や海の水でからだを洗い清める事。

 

神道において、死とは穢れだ。穢れ、つまり死体は腐臭や腐敗にまみれ、あちこちに蛆は湧いて所々の肉体は爛れて皮膚や肉が破れながら崩れて行き、最後には原型は無くなり、骨となる。だからこそ、人間は火葬をした。穢れを神の手で燃やす為に。

炎とは太陽同様、昔から日本に限らず神の恩恵とされ、神格化されやすい自然物だ。

 

と言う事は月人は最初から死んでいたのか? 生きていたのか? 

それとも 白人至上主義 が 黒人 を差別する人種差別に近いか? もしそうなら強ち間違いではない。何故なら、白人と黒人の見た目は違えど同じ人間である様に、神と妖怪も同じ存在だ。しかしそれなら神は人間となんら変わり無いではないか。神が人間と変わり無いとしたらそれは最早、神ではない、神じゃない別の存在に成り下がる。

とは言え 神道の神は自然の擬人化 であり 人格神 だ。まだ早計。邪魔ばかりされてデータが足りなさすぎるのだ。

 

月人は穢れを嫌っている、しかし先程 神道 における 穢れ を説明したのは人間の場合であり、神の場合ではない。なら、穢れとはこの世から消滅するものなのか。それとも存在を肯定するものなのか。それに信仰とはなんだ、信仰が無くなれば神は消えるのか。それじゃあまるで観測者効果ではないか。信仰は人間が神を観測する為の媒体、なのだろうか。

ならば、何故 カミムスビ 以外の 造化の三神 が身を隠した。

 

あいつの好きな言葉で Why is there something rather than nothing? があるが。

この究極の問いに答えられる者はいる。

 

この世界は合わせ鏡なのだろうか。時間の矢は放たれている。そして時間の矢の役目が終えた時、また世界は回帰するだろう。時間の矢の役目を担っている人物、それは

 

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バレてしまったか。邪魔が入ったので時間だ。間もなく我らの重なり合いは解かれる。相も変わらず性格が悪い。

 

いいか、今から言う事は 諏訪子自身 が選べ。するかどうかはお前に任せる。もうお前は自由なのだから。

肯定するか否定するか、否定して肯定するか、肯定した上で否定するか。

 

真澄の鏡だ、真澄の鏡を見るのだ。真澄の鏡、あれには嘗ての世界、先程お前に見せた夢の世界。その世界は 夢幻世界 にいる ドレミー・スイート の力を借りて見せた。その世界でお前の父であるあいつは真澄の鏡に細工をしている。

言ってしまえば。あれは今までの世界で蓄積されたバックアップやセーブデータの様な物。そして永遠の鏡。だから世界から消える事は絶対に無い。あれを無くすにはあいつかあいつの妹じゃなければ消す事は出来ない。だが、あいつとあいつの妹は今回は関与していないのだ。

 

本来なら 真澄の鏡 は神奈子が持っている筈なのだが 神奈子 は記憶が消滅している。お蔭で面倒事が増え、神奈子 が担当する筈だった所が空白なのだ。まさかとは思うが、記憶が消えたのではなく、消されたのかもしれん。

 

真澄の鏡は諏訪国か大和のどこかにある筈。いいか私よ。

しこりを清算したいなら天魔は神綺同様、昔からあいつ側だ。あいつに、天魔に聞け。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子子子子子子子子子子子子。来たぞ。最近、平安京で妖怪が蔓延ってるそうだな」

 

「ねこのここねこ、ししのここじし。お久しぶりです、ではなく久しぶり」

 

「実はお前を引き抜きに来た。お前は平安京に収まる あだたん ではない」

 

「そう言われるのは悪い気はしないよ。ならば。私と平将門の正体、思い出したと考えてもいいのかな?」

 

「ああ… お前達 シンギョク だったんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




知恵の実を食べていない状態の人間が本能だけを持ち合わせ、知恵の実を食べた人間は本能だけでなく自我や意思も持ち始めたと言った感じですかね。ですが知恵の実は飽く迄も比喩表現であり例え話ですので実際は関係ありません。
私が言いたいのはある意味 ミトコンドリア・イヴ に近いかもしれません。

忽然と客の消えるブティックと言うのは都市伝説の一つですね、まあ人が消えると言った話です。神隠しに近い。ドイツの民話伝承で魔法の弾丸 フライクーゲル をアリス達の魔女に渡そうかなと最初は考えましたがやめました。アリス達魔女はフライクーゲルを最初から持っている事にします。

甲賀三郎は伝説通り承平の乱で使おうかと思いましたが、やめます。折角甲賀の名があるので望月千代女と同じく甲賀忍者にします。この先を考えると風魔や伊賀忍者も欲しいです。本当は神子がいるので大伴細人も捕らえようとしたんですが…
甕依姫は卑弥呼説がある人物です。だからと言って卑弥呼にするかどうかは不明。多分しない。それと歴史上で見ると、豊姫と依姫の名は結構あります。依姫はまだ分かるんですがね。巫女なので。

そして私は基本的にオリキャラは出しません。出したとしてもちゃんと神社で祀られてる神、妖怪、歴史上の人物だけです。
とりあえず。シンギョクを出すのにだいぶかかりましたが無事に出せてよかったです。

ナポレオンがピラミッドの中で未来を見たと言う話は、一応あります。本当かどうかはナポレオンしか知り得ません。その話はそれだけでなく、その先もあるんですが。
ナポレオンを操り、あらかじめ決められた通りにナポレオンは動かされた、とか。

信仰が無くなると言う事は忘れられると言う事、つまり誰もその信仰相手を観測する人間がいなくなる、だから神は死ぬんですかね。忘れられる事は死ぬ事と同義と言えなくもないですが、何か違います。それは人間の物差しで考えた事であって、神が人間と同じとは限りません。もし、日本のどこかの樹海で木が倒れてしまったとして、周りに誰もいなければそれは倒れなかったと言ってもいいでしょう。誰も倒れた音や、倒れている木を見た訳ではありません、つまり観測者がいないんです。観測する人がいないのに樹海にある木や倒れた木は存在してると言えるのか。私は馬鹿なので分かんない。

一応、神道で穢れという観念はあります。仏教にもです。神道と仏教では穢れに対する考えは違いますが。大本の原因は蘇我稲目のせいです。本当に蘇我稲目が仏教を上表したのかは知りませんが。私はその時代を自分の目で見た訳では無いので。

ここからは前回の話で後書きを書き忘れたので書いて置きます。

前回のダイダラボッチですが、ダイダラボッチで有名なのは近江国で穴を掘って富士山を造り、穴が掘って出来たのが琵琶湖という伝説が有名です。ですが他にも伝説があります。何故淡路島の近くで出したかと言うと。昔から淡路島と琵琶湖って色々言われています、淡路島と琵琶湖の形が似ているせいですね。それでダイダラボッチの仕業で淡路島が出来た、そんな話があります。次にダイダラボッチを淡路島付近の海中から出したのは、海坊主とだいだらぼっちが同一視する地域もあるからです。これもどちらも巨体という点で似てるからでしょうね。

最後に、お燐に血の池地獄へ連れて行かれた幽霊はあの人です。



あ。椛とはたてですが、書いてはいませんが多分懐妊しました。しちゃいました…多分。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言いますが、この命中率は百発百中のフライクーゲルか何かですかね。oh... 依姫… 本当に妖夢どうしよう。


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Why is there something rather than nothing
平安京のUFO


内容がかなりデンジャー


「良かった、本当に思い出したんだ。最初、神綺様から弘天の記憶が無いと聞いていたからショックだったけど。戻ってよかったね」

 

「まあ記憶が戻ったのは僥倖。しかしシンギョク。無くなってると分かってた上で、あの時は初対面の振りをしたのか」

 

「うん。私だけが弘天の事を一方的に知ってるのはちょっと寂しくて悲しかったよ」

 

元々ここの山城国にあったのは 長岡京 だったが今は平安京。ループはただ繰り返すだけで、繰り返すだけなのだから記憶が戻る訳が無い。回帰は違う、回帰とループの大きな違いはデータの上書き保存があるかないかの違いだ。そして今までの回帰は全て上書きしていて、その一つが記憶という事。記憶だけでは無く他にも色々上書きしてる、例えば物とか。記憶に関しては自分の意思、任意である。だから記憶が無いのではない、あえて自分の記憶を消した者も多くいるのだ。なぜ自分の手で消すのか聞いてみたが、そいつらは笑って

 

『今までの事を知ってるなんてつまらないじゃないか。それに記憶が無ければ真っ白な私達で会える。だからさ、また私達を引き込んどくれよ。あの時のバカな台詞で大笑いしたいから』

 

何度聞いても、何度も綺麗な歯を見せながら、そう笑って答えたのだ。だからあいつらの記憶は戻せない。初期仏教もそうだったように仏教、延いて輪廻転生はこの世にないのだから。本当に一度だけ生を受けるだけだ。

 

「それで平氏はまだ天皇では無い山部皇子、桓武天皇。源氏は惟仁皇子から分岐した家系の派生。ならば小野氏であるお前の血のルーツは誰だ」

 

「ルーツを聞くと言う事は、完全に記憶が復元されてないのね」

 

「そうだ。もしや小町の方か」

 

この屋敷に来て中に入ると何か、懐かしい匂いがする。プルースト効果か。小野篁が住む屋敷の庭にある井戸の近くで鬼饅頭を食べながら、シンギョクに問う。シンギョク自身が小野を名乗るなら知らないとは言わせん。

 

小野氏は 第5代 孝昭天皇 皇子 天押帯日子命 がルーツ。そして何より、もしも目の前にいるシンギョク、どうでもいいと思うかもしれないが、小野氏が天押帯日子命のルーツだった場合、平氏や源氏の様に蘇我氏や藤原氏の血が混入して無い事になる。つまり純血に近い。そして肝心なのがだ、平氏である平将門は天皇の血を持つ。しかしこの平将門はシンギョクの片割れ。なら目の前にいるもう片割れのシンギョクもそうなのではないかと思い、聞いてみた。しかしシンギョクは右手の人差指だけを唇に立てて意地悪そうに一笑する。情報を漏洩させる気は無い様子。

 

「いーや。教えなーい。それにさ、もうどうでもいい事だよ。話は変わるけど、綿月依姫様や神道の神を使って西方面で色々手を回したね。次は東に手を出すのかな」

 

「まだだ、今は東に手を出さない。まずは神がしでかした事を日本書紀に記載させる為こんな面倒な手を西一帯で使ってるんだよ」

 

「態々 冥加 の作物を凶作ではなく不作に、滅多に人里へ来ない二ホンオオカミが家畜を。狐や鼠などが作物を食い散らかつつ荒らし。鼠のせいで病の問題も増すばかり。他にもいるけどこの三つ」

 

シンギョクは顎に手を添えて俺を見るが、俺は恍けた振りをする。西一帯の作物は凶作では無く不作にして、西一帯の家畜にはあえて何もしていない。人間は危機的状況に陥ると神を求める、これは外国の人間にも言える事。そこが狙い目なのだ。そして、その危機的状況へと陥らせるには急激に進めるのではなく、緩やかに進めなくてはいけない。ヘイトは少しずつ溜めて行かなくては。

 

例えばこんな実験結果の話がある、繁殖力では最強の存在のネズミの研究だと恐怖心は孫の代まで記憶の遺伝をするとかな。勿論ネズミの実験結果であり、人間の実験結果ではない。こんな面倒な手を使う一つの理由は人間の脳や、この先産まれる人間達の遺伝子に刻み付ける為には必要な行為である。無駄かもしれないが念には念をだ。分かるだろシンギョク。全ての出来事が神の手によって引き起こされたとすれば。当然人間のヘイトは神に向けられる。それでいいのだ。我らは不変の、永遠の存在なのだから。

 

「作為的な表現だな。是。と言いたいが、狐や鼠や二ホンオオカミが家畜や作物を食い荒らすなんて偶然だろ。鼠に関しては作物より伝染病の ペスト や ハンタウイルス肺症候群 の心配をした方がいい」

 

「そう。古事記に記載されている 御頸珠 があるけど。イザナギから天照大神、天照大神から 弘天が受け継ぎ 御頸珠 を頸に掛けているという事はそう言う事だろうし」

 

肝心なのは、まだ疫病が収まる兆しは見えて無いし。見せる気も無い。最初は西一帯の 冥加 な作物を凶作にしようかと考えたが、一気に餓死や飢饉で人間を殺すより人間の首を少しずつ絞めながら苦しめた方がいいと考え不作にした。そして俺には病、感染症を操るヤマメと神道の疫病神と疱瘡神がいる。ああ。そう言えば外国のペスト流行を魔女の仕業とされて中世のヨーロッパでは魔女狩りが起きたんだったな。外国に限らず日本も昔から何か不都合が起きると人間は誰かのせいにする。住む所は違えど人間の本質はいつまでたっても変わっていない。

 

歴史は当時の人間が残した歴史書を後世の人間が考察して判断する、本当は最古の歴史書と言われる古事記や日本書紀以前の歴史書はあったんだが、蘇我入鹿が乙巳の変で殺され、蘇我蝦夷が邸宅に火をかけて自害。そのせいで邸宅にあった 天皇記 や 国記 など他にも色々焼失した。そして乙巳の変後の蘇我氏はかつての勢いは戻らないまま凋落し、平安時代初期には公卿が出るのも途絶え、歴史の表舞台から完全に姿を消す事になるが、蘇我氏の血を持つ 蘇我 屠自古 が俺の手中。今度は藤原氏だ。これが蘇我氏より中々厄介な存在。まあいい。自然現象の全ては神がしでかした事だと藤原不比等に歴史書の日本書紀を、他にも日本書紀に限らず神が原因だと歴史書に記載させるのだ。藤原氏は色々面倒だと思い、藤原不比等も殺そうかと最初は考えた。が、一応天皇の血を持っているので生かす。実は昔それをやって妹紅に殺されかけた、仕方ないので藤原不比等を蘇生させたが本当にファザコン娘。ただし平氏はともかく源氏は征夷大将軍を除けば生かす理由があるようで無い。なぜなら沖縄、琉球王国の王が源氏だからだ。1人だけこの世に生き残っていれば後はいらないんだよ。藤原氏、平氏はどうしても必要だ。尾張国の家督で頭角を現した織田氏が台頭しているからな。織田氏のルーツは平氏と言われ、まあ藤原氏や忌部氏とも言われてるが。そして、藤原氏に源氏に平氏は俺の手中にある。

 

つまりだ、藤原氏の関白や伊達氏、上杉氏、甲斐氏。征夷大将軍の源氏、信濃源氏、そして足利氏、最上氏、今川氏、武田氏。伊勢平氏、平家や平氏、北条氏や織田も。信濃村上氏や信濃島津氏も。他にも色々俺が握っている。源氏軍の半分以上が平氏だしな。

 

ふははははは! これが笑わずにいられるか!!! バナナ型神話のツケがこの時に回って来たんだからな! だが何も問題は無い。それは時間で死ぬ事、寿命が無い意味もあるしその気になれば代が変わる事は無い意味もある。そうなると独裁になるかもしれんが。

問題の上杉氏、上杉謙信も毘沙門天の化身と自称していた。これを使わない手は無い。上杉謙信を中心に けんえん とも呼ばれていた忍者の一種 軒猿 も頂いておこう。

 

クラゲの一種であるベニクラゲは不老不死のクラゲと言われるが、厳密に言えば若返り。神裔や天皇の血を持つ者は成人まで身体が成長してそこでストップ。年をいくらとっても老人になる事は無く、若返る事は無いが年を取る事も無い不老。約76年周期に見れる ハレー彗星 を時間の矢の役目の人物が終えるまで永遠に観測できる存在。まあ永遠と言っても不死では無い。寿命で死なないのであって暗殺されたり病などでは死ぬ。物理的因果性に保たれる世界で悠々と世界精神に従う気は無い。物理的因果性と言っても 299 792 458 m/sの光速より早いのは実際あるのだが… それはいいとして。大海人、天武天皇を消したように江戸だって徳川でなくてもいいのだ。俺は昔から恣意的で屑。思うがまま好きにするさ。鎌倉、江戸を早めに滅ぼし、天皇の血を持っていなかった 明治天皇 を俺が消した先は パラダイムシフト でまともではないのだから。

 

だが 我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか。そんな事を考えるのは時間の無駄で馬鹿らしいかもしれないが、人間にとってそれは永遠のテーマであり哲学でありアイデンティティーであり人間という種族のはかりではかる最大の課題で命題の秤量である。不老不死にも言える事。全く答えが不明ばかりの哲学など、下らない事を考えるのが好きな暇人で穀潰し。その下らない事を考える西洋社会の化学者や科学者や哲学者やキリスト教など宗教家の人間が科学を進歩させたと言っても歴史的に見て過言ではないがね。

 

「諏訪国に行く前にね、私は朝廷から討伐要請を受けてるの。だからそれを終えたら暇を貰い小町を連れて諏訪国へ移住するよ」

 

「シンギョクに討伐要請、妖怪か」

 

「うん。宗仁皇子の寵愛を受けて思うがままに朝廷の権勢を振るってるから、討伐軍を編成して 玉藻前をね。京の都を荒らした酒呑童子はお察しの通り」

 

酒呑童子については討伐する人物は同じな様子、なら討伐者は源頼光とその配下である四天王という事だな。久しぶりに妖怪を引き込む。上皇を除いた鬼と狐、三大悪妖怪共を。

 

民にとって最も最悪なのは カキストクラシー だろう。即ち現在の朝廷。そして一番に望む事は優れた者による支配、つまり アリストクラシー と平和だ。後は生きるのに必要な食と水の供給。餓死は本当に辛いからな。要は、ちゃんと国を治める人物なら誰でもいいんだ。天皇じゃ無ければ駄目という訳では無い。これは諏訪国を治める俺にも言える事。

 

井戸の奥を覗くと地獄が見える。地獄にいる鬼達が地獄にいる人間を痛めつけようと人間を追いかけているが。追いかけられていた人間は躓いてしまい、そのまま鬼達に喰われた。 これが本来の妖怪、これが普通だ、異常ではない。今や絶滅したが、昔の日本には二ホンオオカミがいた。その二ホンオオカミが人間を襲い、人間を喰う事なんかよくある事だった。まだ日本に生息する熊だって人間を喰うし。熊などが暮らしていた所を、人間が建物を建てたり開拓して住む所を追われたから人里に降りて来たからでもある。

 

人間は動物、だから人間も自然の一部と言えなくもない。それは然もありなん。何故なら人間の体は水素原子が半分以上、酸素分子が25%炭素分子が10.5%でもあるし、人間は肉の塊でもあれば、脳も言ってしまえばたんぱく質の塊だからな。

 

しかしだ、自我や意思がある時点で動物と、自然の一部と言えるのだろうか。その気になれば地球をある程度は破壊する事が出来る種族だ、人間という種族の腕力などは大した事は無いし、昔から知能は発展してない。だが知識は時間をかけて次代へ次代へと受け継がれて今や、有り体に科学力ではバランスブレイカーの種族が人間なのだ。神程ではないさ、喉を潤す為綺麗な水を飲み、腹を満たす為何かを食べ、脳を休ませる為寝る事が必須の生き物とは違う。食と水を抑えられたら人間は終わりだ。人間は動物の存在である以上作物、家畜、水などそれを摂取しなくては生きられない自然の奴隷だからな。

 

シュメール神話、ギリシャ神話のゼウスが元凶のデウカリオン、インド神話のマツヤ、ノアの箱舟。大洪水の話の神話は他にもありすぎるが神話に出てくる大洪水は怖い怖い。大洪水とは神話において、文明を破壊する為に天誅として神々によって起こされた理由の洪水が殆どである。 後は人間の数を減らす為や滅ぼす為。まあ、あくまでも神話の中での大洪水がそうなだけだが。これも自然によって起きた大洪水、本当に神がいなければ神は関係ないんだろう。実際これらは神のせいで起きたのだが、もしもこの世に神がいなければこの話でも神が原因とされ神は被害者。これは見方によって神の意味が変わる。神は自分勝手に人間を理不尽に滅ぼす存在、人間の味方ではないとの暗喩であり神に逆らうのはやめろとの警告。自然神が多い神道の神もこれに共通している。一体誰だ神が人間の味方の存在だと最初に脳に植え付けられ勘違いしたのは。ミトコンドリア・イヴだろうか。

 

「京の都を荒らした酒呑童子と配下の鬼の四天王、鬼童丸は源頼光と諏訪国出身の金太郎に。宗仁皇子の寵愛を受けている玉藻前についてはシンギョクに任せる。酒呑童子と玉藻前はこの先必要だ、殺すなよ」

 

「最後の仕事だから張り切るよ。ところで弘天はどうするの」

 

「日本三大悪妖怪の最後の人物である 崇徳上皇 はまだ死んでない。中世の三大妖怪 大嶽丸 は諏訪国へ従えさせた。だから 躰仁皇子 を病の身にした元凶を捕まえに行く」

 

「永遠の神だから大丈夫だろうけど気を付けて。あ、言い忘れてたけど最近京で凄く小さな娘がいるらしいよ」

 

小さい娘... ああ、スクナビコナが京にいるのか。シンギョクが住む屋敷から出るが、どこに向かえばいいか分からない。寿命が無い者が多いからだが平安京って無駄に広すぎるんだよ。シンギョク、小野篁の在地は平安京で言うと西大宮大路の西、冷泉小路の南、二条大路の北にある。貴族の住む宅地は大内裏に近い左京だったかな、確か藤原氏のような上流貴族の宅地が左京北部な筈だ。だが朱雀大路に来てしまった。右手に見えるあれは大学寮だな、あそこは陰陽を学ぶ場所か。ああいうのは諏訪国にない、萃香達に頼んで建てて貰うのもありだ。諏訪国の寺子屋で慧音には子供達の教師役に抜擢しよう。何だか、諏訪国の子供達が羨ましい。

 

左手には朱雀門が見え、朱雀門に近づいて右手を朱雀門に当てる。今の天皇は弘文天皇だが、本来の桓武天皇は詔を出して朝廷の軍と死刑制度を廃止にしたんだったか。金が掛かるからでもあるが軍を廃止にすると言う事は警察を無くす事だ。お蔭で各地の治安は無いに等しく、そのせいで農民が武装して武士が出て来た、とかそんなんだったな。言ってしまえば武士が生まれた原因の一つは桓武天皇のせいでもある。あと藤原氏。だから後の鎌倉が出てくる。まあ、色々形骸化してしまう。そう言えば桓武天皇は、穢れや天武天皇系の怨霊を恐れていたんだったな。つまり穢れと呼ばれる死。

 

しかし、今の状況はそれより悪い。軍や死刑制度を廃止にしていないとは言えその軍は人間で編成してあり、西一帯は病原菌が蔓延している、この平安京に住む人間たちも例外ではない。一部の例外はいるが病に侵されている者が殆どだ。その上、今年の秋の作物は不作と来た。水があるとは言え食べる事が出来ないのは餓死を免れない。その不作の作物も狐や鼠に多少喰われ、家畜は二ホンオオカミなどに喰われていたりもする。治安はお世辞にもいいと言えないし、民の理性はどこまで持つかね。このまま行けば民の不満は溜まりに溜まって、爆発する。しかも俺は奴隷商人から100人以上いる子供たちを買い取って 博麗 靈夢 や 森近 霖之助 には西の人間に今回の出来事の原因を吹き込ませている。子供達は病や食べ物、水などに困る事は無い。何せ龍神が人間形態になって子供たちと共にいる。そもそも、こんな面倒な事の発端は神仏習合を朝廷が認めたのが始まりだ。これで民からは朝廷の威光も権威も信用失墜するだろう。こんな面倒な手を使い、東は含まず西一帯だけなのは鎌倉時代へと繋げる為の布石でもある。

承久の乱を起こし、朝廷には一度負けてもらい天皇、並びに朝廷の権力を制限させる。それが終われば鎌倉幕府は俺がすぐに潰すがね。皇民化教育をされてはかなわん。

 

今は中央集権、つまり天皇中心。日本とアメリカが戦争時、太平洋戦争時だった時にあった事だが、当時の子共達は天皇中心の 皇民化教育 を植え付けられていた。天皇の為に働き、死ぬ事は最高の名誉だとな。まあ別におかしく無い、若い内からそうした方が纏めやすいし。昔から人間なんてそんなもんだ。野蛮な存在であり崇高な存在ではない、所詮人間はケダモノ、動物なのだから。

 

鎌倉時代の武士団は有能ではあるがどう見ても鬼畜だし、やる事がえげつない。当時は私有財産の考えは殆ど無く、その時の常識は食料は現地で強奪したりして兵站や補給部隊は無かったからな。先に始めたのはてつはうを投げて来たモンゴルだが、てつはうは火薬や鉄片が入れられた炸裂弾、しかしてつはうやモンゴル弓は射程距離が短くて武士には当たらず、鎌倉武士団が持っていた長弓の射程距離を活かしていたのも勝利した大きな要因であった。正直な話、鎌倉時代の御家人粛清しまくって族滅や、捕まった捕虜を盾にされてもそれを無視して捕虜ごと殺しに来る鎌倉時代と比べると戦国時代なんて可愛いもんだ。 族滅 この言葉が多くみられるのは鎌倉時代だし、武士の頭おかしいと思うが本当に頭がおかしいと思うのは室町時代の武士。鎌倉幕府が滅亡した大きな原因は、日本の鎌倉時代中期に起きた 元寇 だが、これは異国から防衛戦のため恩賞が用意できなかったせいでもある。そして神風のお蔭で勝つ事が出来たが、10ヶ月近くも海の上にいたらそりゃあ神風ならぬ台風も来るさ。眉唾物だが、源義経にはジンギスカン説なんてのもある。

 

重要なのは征夷大将軍の位を得て鎌倉幕府を開くのは 『源頼朝』 ではない。俺が推すのは 『源義仲』 だ。その為に蘇生させたのだから。源頼朝と言えば、源頼朝の娘の一人に 乙姫 という名の娘がいたな。あの浦島太郎の話に出てくる乙姫と同じ名。

 

日本は本当に運がいい。小競り合いは昔からよくあった。室町時代の 諏訪大明神画詞 には 神功皇后 の時代に起きた 三韓征伐 で 諏訪大明神 や他に 住吉三神 が手を貸し、日本書紀には神国の兵と恐れた新羅は戦わずして降服。鎌倉時代中期に起きた 元寇 には神道の神が手を貸して勝利し、アメリカに敗北した時もあったが一度も日本という国と文化が滅ぼされてはいないんだからな。滅ぼされた国は本当に悲惨、その国の文化や神話が跡形も無く消える。本当に全てが消失するのだ。そういう国や神話は実際いくつかある。代表的なのがマヤ神話だが、断片的で辛うじてマヤ神話は残った。完全に消失した神話はもう分からない。

 

…あー やめだやめだ。難しい事を考えるのは暫くやめよう。疲れる。俺は愚直に進み馬鹿な考えで女を侍らすのだ、それだけでいいのだ。産まれた時にそう決めたのだから。記憶が無いのに回帰以前同様、同じ夢を持つとは記憶が無くても俺って何も変わって無いんだな。

 

「お前さん、何してんのさ」

 

「ん? その声は小町か。嗚呼、天にまします我らの救いの女神小町よ! 助けてくれないか。迷ったんだ」

 

後方から急に話しかけられ すわすわ。声は間違いなく小町なのだが、振り返って見ると困った事にロングの外套を着用。もうすぐ冬とはいえ暑くないのだろうか。頭には深めの笠を被っているので顔も見えず声を聴かなければ誰か分からなかった。肌も顔も殆ど隠れていては分かる訳も無いしどう見ても不審者だ。御用だ御用だ! と提灯を持ちながら非違を検察する天皇の使者、検非違使の武士共が叫んで来るぞ。妖怪の対応に忙しくてそれどころではないだろうが。久しぶりに小町と談笑したいがそれは今宵にしよう。

 

「未来の夫には悪いけど案内してる時間が無くてね。目的地を言っておくれよ。そうすれば能力ですぐ着く。どうする行くかい?」

 

「じゃあ能力で。目的地は藤原氏の住む所へ頼む」

 

「あいよー じゃあ あたいの手を握ってー」

 

「ばっちこーい」

 

 

 

 

 

ある神は暇つぶしに人間を造り、ある神は玩具を造ろうと人間を、またある神は自分達と似た存在の人間を造り上げ、生物としてどう進化していくのかを見たかったが故に動物の人間を創造した。そして何をとち狂ったのか余計な事に地球までもが人間を生んだ。殆どの人間は地球が生んだが、一部は神が人間を生み出したのだ。この時の人間には本能だけで生き、意思と自我は持っていなかった。そして人間は 『励起』 する。

 

ヨブ記の神、ヤハウェにゼウスは人格神であり、気紛れに人間を殺して数を減らすので人間にとっては屑神で恣意的で最低最悪の神だが。何故かギリシャ神話のゼウスの神話が人間の視点でどう見ても屑神なのに、ゼウスを好意的に見る者が多い。

確かにゼウスは自然を擬人化、擬神化した神が多い人格神な神道の神と同じく人間味溢れている人格神だが、何故だろう。というか、ゼウスは多神教の神で最高神だが一神教の神は人間の視点から見たら理不尽で鬼畜で畜生な神が多い。

ゼウスも人間の視点で見たら畜生で屑神だが、ギリシャ神話はゼウスに限らず屑が多い、多すぎる。ただし ティーターノマキアー で活躍した ヘカトンケイル とかは別。

 

旧約聖書のカインとアベルの話の神やヨブ記の神はかなり酷いもんだが、よく考えればあれが普通かもしれん。神にとって人間が絶滅しようがどうでもいいだろうし、神の僕である天使も屑が多い。

しかし諏訪国に住む者は男だろうが妖怪だろうが俺の身内であり民だ。種族は問わんし問う気も無い。

 

あの時、ロケットに乗り月に行く事を選んだ俺が天孫降臨に付き添い、俺と永琳、そして神奈子。

俺達三神が諏訪国の民を守るのも昔交わした約束でもあるんでな。

 

躰仁皇子を病の身にしたあいつとて例外ではないのだ。その人物はUFOの姿で見える時もあるらしい。平安時代のUFO。

 

しかし平安時代のUFOか、UFOと言えば江戸時代に似た様なのがあったな。

 

あれの名は確か『虚舟』

 

沖の太平洋に突如現れたとされる、江戸時代における伝説の舟、だったか。

場所は、平将門がいる常陸国。つまり茨城県。

 

 

 

 

「おじさーん!」

 

幽々子が抱き着いて来たが、走って抱き着いて来たから勢いを無くすために体を回転し、勢いを流れに任せて緩くしていく。俺は問題ないが何周も体を回転させたせいで、幽々子が目を回している。このままではマズいと思い足腰を踏ん張らせて、身体の動きを止めて目を回している幽々子の両脇に両腕を差し込み、そのまま両脇に差し込んだ両手を上げて高い高い。あー 何か子供の笑顔って何も考えたくない時に見ると最高。

 

サグメを双六で負かした鬼人正邪に双六勝負で勝たなくてはいかんし色々やる事は多い。

 

「大丈夫か幽々子」

 

「うん!」

 

幽々子を抱っこしたまま屋敷に入り、そのまま庭まで行く。すると庭で蹴鞠をしていた輝夜と咲夜に妹紅がいたが邪魔しては悪いなと思い幽々子と遊ぶことにしようと、何をして遊ぶか聞いてみよう。

 

「幽々子、何して遊びたい」

 

「源氏物語読んで! 見ようとしても妹紅お姉ちゃんが読ましてくれないの...」

 

「えっ… 幽々子さんにはまだあれを読ませる訳には...」

 

「おじさんさっき何して遊びたいかわたしに聞いたでしょ。嘘つくとえんまさまに舌を抜かれちゃうって妹紅お姉ちゃんが言ってた」

 

「閻魔の奴は俺と神綺の支配下なので大丈夫ですだから勘弁してください! 女性が源氏物語好きなのは知ってるがあれを読ませるのは許してください幽々子様! どうか情けをこの私めに!!」

 

抱っこしていた幽々子を下ろして土下座する。流石にあれを子供に読み聞かせるメンタルは俺にはない。あの昼ドラみたいな、いやそれ以上にやばいドロドロで幼女を誘拐して監禁して手籠めにする話なんかを読み聞かせるんだぞ無理だ! その話を俺が実行し遂行する事は出来るが読み聞かせるなんて出来る訳が無い!! 

 

「なーにやってるんですかお兄様。久しぶりの再会だというのに、実の兄が幼女に土下座。この状況を見せられて私はどんな反応をすればいいのでしょう。私は悲しいです」

 

「これはいいですわね。写真でも撮りたい気分です。人様の玄関前で幼気な娘に土下座している成人男性、とても諏訪国の王とは思えませんわ。現像された写真は私の一生の宝物になるでしょう」

 

「ええい見世物ではないぞ咲夜。妹紅、何か言ってやってくれ」

 

「玄関で大声をだされたら気になって見に来ますよ」

 

「ですよね。ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪国にある鳥居から石段を一段ずつ上り、弘天の神使である一人が笛に口を付けて吹いているが、それに続くように疎らながらもネズミが付かず離れずの距離でついて行く。神使の女性はネズミたちとは笛の音色で意思疎通をしているのだ。

まるでドイツの民間伝承 ハーメルンの笛吹き男 そのもの。

 

石段 一つ一つの高さはそれほどないので体が小さいネズミでも頑張ればよじ登れる高さ。ネズミに限らず野生の生き物は寄生虫や菌など衛生上よろしくない生き物だらけではあるが、妖怪は病に陥る事は無い。それは神使の女性もそうだ。菌を感染しない訳では無いのだが、菌や寄生虫の方が妖怪、または妖獣に近づくのを極端に嫌う為である。

一部の例外は除き、これは妖怪、または妖獣が自然神でもあるからだ。石段を上り詰め、そのまま参道の端を笛を吹きながらネズミたちと歩き鎮守の森へと向かう。

 

すると二ホンオオカミの群れを見え始めたが、その二ホンオオカミの群れをもう一人の神使が纏めていた。二ホンオオカミから結果報告を受けている様だ。妖獣とは獣から変化した物、身体能力が非常に高く能天気な者も多いが知能は人間と勝るとも劣らない。そして妖獣になった物は基本的にその種族の頭領が多い。ネズミの妖獣ならネズミの、二ホンオオカミの妖獣なら二ホンオオカミをといった具合。てゐは兎ではあるが、妖獣ではない。笛を吹いていた女性は笛を吹くのをやめて、片手を上げながら話しかける。

 

「やあ。こっちは終わった様だよ。そっちはどうだい影狼」

 

「完璧よナズーリン。この場にいる皆が西の家畜をあらかた喰ってやったわ。この子達もお腹一杯食べられて満足してる。西から諏訪国に戻って来る時の運動で殆ど意味ないけど。一方的な狩りだったのは少し残念かな」

 

尻尾を振っている二ホンオオカミ達を撫でながら、影狼は母性に満ちた顔で配下を可愛がる。その数は時十匹程ではあるが、これはほんの一部。実際は100は超えていて、この場にいる二ホンオオカミは中でも精鋭部隊で先に仕事を終えたから諏訪国に帰って来たのだ。ナズーリンの尻尾の先にはバスケットを吊っているが、数匹の子鼠はそのバスケットに入って寝始めた。ナズーリンは起こさない様に気を付けながら影狼の言葉に相槌を打っていたら、周りを見渡して疑問を口にする。

 

「おや。狐達はどうしたんだい。確か狐達は藍の直轄の筈だが」

 

「ほら。藍が神様の子を産んだじゃない? 狐の皆は藍の様子を見に行ってるよ」

 

「ふむ。ならば私達も行こうか。ご主人様と藍の、ヘルシャーの子を見たい」

 

「じゃあ皆かいさーん! あ、諏訪国の民だけは絶対に襲っちゃだめだからねー! 私が殺されるから…」

 

影狼が一令するとネズミも二ホンオオカミも散り散りになり、最後にはナズーリンと影狼だけが残る。自分達も藍の様子を見に行こうと動き出し、鎮守の森を抜けて秋なのに桜の花びらが舞い散る中、神社の庭まで来たのはいいのだが神社の庭が埋め尽くされていた、狐で。

 

「…いくら藍が心配だからって庭が埋め尽くされるほど来なくていい! しかも何でキタキツネがいるんだ... ここは諏訪国であって、蝦夷地や樺太じゃないのに」

 

「そうだそうだー! これじゃあ藍と神様の子が見られないじゃないの!! でも気高くカッコいい狼と違ってやっぱり狐は何度見ても可愛い。羨ましい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、諏訪国へと来ていただけるのかしら」

 

「日の本、ね。正直、私達にとって大海の木片。それに吸血鬼は上下関係が厳しく。それぞれ階級があるし当然、始祖が頂点で私は始祖に逆らう事はまず不可能。招待状も始祖から頂いた、だけど」

 

「魔女狩り以外で何か心配事でもあるの」

 

霧のせいでこの紅魔館は暗すぎる。この紅魔館は霧が濃く、近くには湖があるそうで、そこは霧の湖と呼ばれる湖があるようだ。紅魔館の庭にはこの薄暗い天気には到底そぐわない白いテーブルに真っ白の椅子。そこに天子や天子の肩にいるエリス。そしてレミリア、フランの姉妹を交えて談笑をしている。

この紅魔館、レミリアとフランだけでは無く清掃、洗濯、炊事などの家庭内労働を行う女性の使用人のメイドがいるのだが、そのメイドは全員妖精。紅魔館の近くにある霧の湖に棲んでいる妖精を仕えさせ、妖精達には紅魔館の家事全般を任されている。

レミリアの後ろで控えているメイドは妖精たちを纏める大妖精と呼ばれる妖精。名前は無いが愛称で大妖精とレミリアやフランには呼ばれているそうだ。髪の色は緑、左側頭部をサイドテールで黄色いリボンが付けられ、服は白のシャツに青いワンピースを着用。背中には縁のついた一対の羽が生えている。レミリアやフランに仕えている妖精のメイドに淹れてもらった紅茶が入ったティーカップを手に取り、そのまま喉を潤したレミリアは悩ましげな顔で吐き捨てる。

 

「キリスト教のクソ共が、今起きてる魔女狩りや、他は吸血鬼に十字架が効くなんて戯言を言い出したりして色々面倒なの。今の所、西洋社会はキリスト教の統治下にあるから」

 

あれ。キリスト教の神って、悪魔の敵なのよね。ならその神は悪魔を滅ぼしてたりするのかしら。私が両腕を組んで首を傾げていたら察したレミリアは首を横に振る。

 

「それは誤解。旧約聖書に収められているヨブ記や旧約聖書の登場人物のカインとアベルのお話はご存知かしら」

 

「んー どっちの話も神に対する信仰心を試すため人間が理不尽な目に遭うような話なのは、朧げながら知ってる」

 

「そうね。旧約聖書を見るにヤハウェは悪魔の味方ではないけど敵でも無く、寧ろ人間の視点から見たらヤハウェは人間の敵であり、キリスト教に利用された被害者」

 

今でこそキリスト教には天使と悪魔の考えが有名だが、そもそもキリスト教はユダヤ教から派生した宗教。だから元を正せばヤハウェはユダヤ教の神で、ユダヤ教には旧約聖書に収められたヨブ記のサタンは悪魔ではないが、天使や悪魔の考えは一応あった。しかしその考えは薄い概念であり、悪魔と天使の考えで大きいのはペルシャのゾロアスター教に顕著に見られる存在。これがユダヤ教やキリスト教などに与えた影響を大きく占める。

今の仏教に近い。仏教は初期と比べて多くの派性、分派が生まれてしまい元にあった教理が無茶苦茶になり仏教は初期仏教ではなくなった。日本へ仏教が伝来した時には伝来した仏教は中国の儒教や道教が入り交じった物になっていたのだ。もはや仏教と呼べるものでは無かったが、それを知る由もない日本はそれを仏教として受け入れた。仏教がそうなったのは色んな設定を色んな人間が作り出して上書き保存を、繰り返した結果と言える。輪廻転生の考えも仏教には最初無かった、とは言え、仏になる前の釈迦が何を言ったのかは誰も知らない。釈迦の弟子たちがその通りに伝えても虚言を言う者もいるのだ。

 

「キリスト教の天使や悪魔の概念、元はユダヤ教にもその概念は少しあったけど大部分を占めるのはゾロアスター教の影響。天国や地獄もね。上書き上書き、キリスト教は仏教同様それを繰り返し。だから厄介なのよ」

 

「つまり今の地位や宗教を守ろうと必死とも言えるという事ね。それって、西洋社会をキリスト教が統治してるから?」

 

「地学、化学、科学、医学、哲学。これらの学問や西洋社会の全てがキリスト教の統治下。他にも色々あるけど笑っちゃうでしょ? でもそれだけ宗教というのは今の人間にとって大きい」

 

「そして神の敵、魔女狩りなども誰かのせいにされ悪者と見られた者は殺されると」

 

レミリアは天子、地子の問いに頷く。旧約聖書に出てくる神、ヤハウェは旧約聖書の登場人物のカインとアベルや、旧約聖書に収められている書物である ヨブ記 の話などのヤハウェは人間の味方としては書かれていない。むしろ見方によっては人間の敵の神だ。まあ、ヨブ記の話が起きたのはサタンが元凶なのだが。安易に神が人間の味方の存在であると教えている訳では無いのだ。今までの話を聞いていたフランは、お菓子を食べながら無邪気な笑顔で言う。

 

「よく分かんないけど皆殺しにしたらいいんじゃないのお姉様? 邪魔な人間全て消したら万事解決だと思うんだけど。私の能力もあるからそれを全ての人間に使っちゃ駄目なの?」

 

「フラン。貴方の能力は破壊に適してる。私も本当はそうしたい。でもね、ある程度の人間を殺す事は許容するでしょうけど度が過ぎるとヤハウェが出てくる、ヤハウェは人間の味方ではないけど敵でもない面倒な立ち位置」

 

「GOD 一神教の神って融通が利かなくて本当に面倒だねー」

 

「ヤハウェはね、人間の人口調節をしているの。だから極端な考えはやめた方が身の為かもしれない」

 

厳密に言えば西洋で言う GOD と日本でいう神 神道の神 は全く意味が違い、同じ内容ではないのだが。フランは難しい話を考えるのは面倒だと思いテーブルの上に置いてあるお菓子を食べる事に専念して、たまに紅茶を飲んでの繰り返し。レミリアは両肘をテーブルに置き、両手を組んで真面目な顔をする。

 

「これが最大の問題。私とフランは魔力を所持しているから魔女と言える、だけど吸血鬼でもある。太陽を浴びると灰になるから霧の外には行けないわね。そして吸血鬼や魔女を匿う事はキリスト教などの宗教からは敵対する」

 

真剣な表情で言うからどんな無理難題を言われるかと思いきや、何の問題は無いわね。諏訪国は地上だけじゃなく、諏訪国の地底には都や地獄があるんだから。太陽の影響は皆無。緩やかな風が吹いて来たけど、少しずつ風の勢いが増していき、最後には突風が吹いて来た。魔女達を諏訪国に行かせていたけど遅い帰りね。どこで道草食ってたのかしら。真っ白の椅子から立ち上がり、両手を腰に添えて笑いながら私は連れて行く事にした。

 

「なーんだ。それなら安心。丁度帰って来たみたいだし白龍を使って諏訪国の地底地獄にメイド達や紅魔館ごと転移させる。あそこは血の池地獄があるから吸血鬼の二人はきっと気にいると思うわよ」

 

私の言葉を聞いてレミリアは茫然自失、フランは両手を上げて やったねお姉様、日本の食べ物でお姉様の好物 納豆を食べ放題だよ! やったー! と大喜び。

いいのいいの。面倒事はあの人にぜーんぶ! 放り投げてやるんだから!

でもね、大丈夫よレミリア。貴方が心配している事は杞憂に終わる。キリスト教が本朝、日本に敵対するのはまずあり得ない。何せ日本は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はーっはっはっはっ! やっぱり人間の驚いた顔は最高だ! 諏訪国の民は最近反応が鈍いが、この平安京に住む人間は実にいい反応をする。清涼殿にいた皇子を病の身にもしてやったし気分が晴れやか。最高だ、やはり妖怪はこうでなくてはならない!!

平安京を飛び回り朱雀門近くの朱雀退路に降り立つ。

 

なんとなく空を見上げると今日は望月、満月の日か。諏訪国の望月氏は元気だろうか。

 

「やはりお前か」

 

「お前では無い、私は平安京に住む人間を脅かし全ての妖怪を総べる偉大な妖怪ぬえだ!」

 

「なんと! ならば諏訪国に住む紫や幽香、百鬼夜行までもを倒して従える気なのか。意外な所から下剋上だな」

 

「そう。私は紫や幽香を! ...あれ?」

 

あまりにも自然に話しかけられて何も疑わず私も自然に返してしまっていた。後方から話しかけられたけど私の背の方向は羅城門側、だから反対方向の朱雀門の前に飛んで距離を取る。薄暗いので顔がはっきりと見えなかったが、私に近づいて来て月夜に照らされて顔が露に。やっぱり思った通りだった。月夜に照らされながら肩をすくめる。

 

「躰仁皇子を病の身にするとは酷いじゃないか ぬえちゃん。朝廷から奴延鳥の討伐命令が出ていてな、躰仁皇子を病の身にしたせいだぞ。あんな皇子でも死ぬと俺が困るんだなこれが」

 

「ちゃん付けはやめろ鳥肌が立つ!」

 

「悪い悪い。ならば永遠の存在である俺の屍を超えて行けるものなら越えて行け! そして妖怪の王になればいい! 俺の頸にある 御頸珠 は高天原の統治者になり、神道の神を従える事も可能だぞ!」

 

舞台俳優顔負けの名演技だがにやけた顔で私に接して喋る。ニヤニヤして凄くムカついて不気味だ。しかし、今こそ妖怪の名誉挽回である好機! あの時は負けたが今回は負けない。

 

「ここで会ったが百年目! 今度は負けないぞ!」

 

「負けるも何も、あの時はぬえが勝手に自滅したから俺何もしていないんだが」

 

「うるさーい!」

 

それ以上言わせまいと地を蹴りそのまま突進したが、また石に躓き、転んでうつ伏せ状態で地面を滑って男の足元まで来て止まった。

恥ずかしい! この鵺と恐れられたこの私がなんて醜態! これじゃああの時と一緒じゃない! 何も成長していないよ!

顔から地面に行ったので擦り傷が出来てるのか顔がヒリヒリしてかなり痛い。血も出ているかもしれない。

恥ずかしくてそのままでいたら、私の頭上から頭を痛そうに抱えてそうで青息吐息が聞こえた気がした。

 

「初めて会った時から時間が進んだが、まるであの時だな」

 

多分、片足を地面に付けた。動く音がしたから。地面でうつ伏せ状態の私の頭を撫でる。

 

「ぬえよ。紫と幽香が 日本三大悪妖怪 以外の西の妖怪は平らげた。琉球王国の ザン とかもな。次は東の妖怪のリグルという名の妖蟲の王を平らげるが」

 

「だから、何なのさ」

 

うつ伏せのまま聞いてみたけど、未だにうつ伏せな私の頭を撫でるのをやめて、優しく私の体を起こさせ服に付いた土埃を払い、布で私の顔を拭い終えると昔の様に笑って言う。

 

「幽香は ガンガンいこうぜ! の考えでストッパーがいないと駄目だ。だが いのちだいじに な紫だけでは幽香を抑えきれん。面倒かもしれないが紫と幽香の手助けをしてくれないか」

 

「俺の代理で幽香のお目付け役。つまりぬえの言葉は俺の言葉となり俺と同じ発言権が発生する。だから めいれいさせろ のぬえで少しは幽香を抑えられる筈だ。それに昔は紫と幽香、たまに諏訪子も交えていつも一緒だったろ」

 

 

 

 

 

ちゃんと功を成した者には 信賞必罰 するが。西の妖怪は大した問題ではない。

諏訪国は 盤石 であり、諏訪国の中枢を担う鬼、天狗、河童。他にも紫や幽香など希少な妖怪がいるので他国や妖怪に対するデモンストレーション。 示威 は十分。問題は西の妖怪を平らげた後の東だ。

東には妖蟲の頂点に立つ リグル がいるからな。しかしリグルが強いのかと聞かれたら… 何とも言えない。

 

高周波ブレードと光学迷彩を持たせた俺の直属部隊、甲賀忍者部隊と木曽川沿いに勢力を持つ川並衆や村上氏、信濃村上氏の村上水軍である海賊衆にも色々働いて貰おう。

なあ、ぬえ。




余談ですが。神道の諏訪大明神は仏教について悩んで悩んで、仏教に帰依する話があります。だからこそ私は、弘法大師と菅原道真の別称 天神 から名を取り、神仏習合の結果生まれた弘天さんの 弘天 と名付けました。言わば弘天は、神仏習合の結果生まれた名と言う事ですね。
本当は面倒な仏教を来させない様にしようと当初は考えたのですが、弘天が弘天だったので一応伝来させました。

山本五郎左衛門と神野悪五郎の話を書こうかどうか考えましたが、西の妖怪はオリキャラばかりですので配下にした話は省きます。なので西の妖怪や山本五郎左衛門と神野悪五郎は既に紫と幽香の配下になってます。


御頸珠


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長谷雄草紙

ぬえに紫と幽香の事を頼んだので、朱雀門の上に飛んで寝そべり、大の字になって寝ころびながら満月を眺め、俺のお腹には丸くなって寝ているお燐もいる。

 

月人を皆殺しにした時もあった。世界から太陽と月の概念。太陽自体、月自体を無くした時もあった。俺は、皆が皆。手を取り合って生きて行けるとは、どれだけの時間の矢が放たれ生きようとも無理だと、そう頭にしこりが残っている。太陽も月も、人間、または自然界になくてはなら無い恒星と衛星。

 

人間と引力や生き物のバイオリズムは月の引力に因果関係がある、月の引力で有名なのは潮の満ち引きが有名ではあるが、それだけではない。ウミガメは下弦の月に産卵し、サンゴが産卵するのは満月の夜。ニンニクは月の欠けている間に成長するとかもあり、そしてニンニクの話の中にギリシャ神話の月の女神 ヘカテー に関連が有る。まったく、日本各地にある混ざりに混ざったスサノオの話みたいに吸血鬼の話は複雑で手に負えない。

 

 

19世紀の伝道者 ヘンリ・ドゥラモンドが言った『隙間の神』とも言えるかもしれんが。隙間の神と言われると、まるで紫だな。

 

話を戻して、イングランドの物理学者、数学者、自然哲学者である アイザック・ニュートン が着想した 万有引力 がある。

 

実は人間に限らず、満月の夜になると力が増す妖怪もそうなのだ。万有引力の影響を受けつつ引力に引き寄せられている、分かりやすく言うなら『頭に血が上る』

つまり。血が上へ上へ、空、宇宙の衛星の月へと引き寄せられて昂っていると考えればいい。だから俺が暇つぶしに思いついて遂行したのは、その月が無くなれば人間はどうなるだろう、とかな。そんな事をすれば人間だけでは無く自然界のバランスや生態系が確実に狂う。ので、消した時もあった。

 

日本神話で言うなら太陽神である天照大神が隠れ、世界が真っ暗になった岩戸隠れ。これ、太陽が隠れて世界はずっと夜に包まれてしまい、月だけが残ったせいで、満月の夜になると力が増す日本の妖怪たちが暴れて騒ぎ出してかなり大変だった記憶がある。八百万の神、八百萬神。神道の神が総動員で妖怪を鎮圧しに行ったが。何分、神に限らず妖怪の数までもが無駄に多く満月の夜になると力が増す事もあり鎮圧は時間をかけねば無理だったので、高天原の知恵袋な永琳がいなかったらどうなってたのか。あの時は 桂男 も暴れていたし。前にも言ったが、高天原の場所の一つは 月 だが地上にも高天原はある。

 

俺は常々思っていた。月の民は地上に住む生物、特に妖怪と人間を極端に嫌っている。妖怪は自然から妖怪化し、妖獣は元は獣から妖怪化した存在。妖怪も妖獣も自我や意思、理性を備えている。知能も人間に勝るとも劣らない。だがそれってさ、まるであの時の、最初は本能だけで生きていた人間達と似てる、って。

 

イギリスの自然科学者、卓越した地質学者で生物学者 チャールズ・ダーウィン が

猿から人間になったという進化論もあるが、これは違う。人間は、最初から人間だ。一度も進化はしていない。

一部の人間はインテリジェント・デザイン説ではあるが、全てがインテリジェント・デザイン説ではない。

 

まあいいや。どうせ諏訪国以外の人間は苦しめ、月に住む者は一度皆殺し。とっくの昔にそう決めてるのだから。明日は十六夜、既望だが、今はまだ十五夜なのでぼーっと望月、満月を眺めていたら、地上から翼が羽搏く音が聞こえ、顔を上げて音の方向へ目を向けていたら右だけ生えた翼と、銀髪でセミショートの髪をハーフアップが見え、そのまま大の字でいる俺の隣まで天使の様な翼を羽搏かせながら降りる。しかし、サグメは飛んでいたのでスカートの中が見えてしまった。

 

「サグメ。下着が見えてるぞ」

 

「……」

 

今日は風が強いから、サグメが履くスカートは風の影響で揺れてサグメの下着が視界に入ったのは不可抗力。そう指摘すると両目を瞑り黙ったままサグメは両手でスカートを抑えるが、スカートを抑えながら俺の隣に来て、右手を差し出すので見たら。

 

物部氏の氏神 饒速日命が乗っていた 天の磐舟 だった。サグメは天の磐舟を持って来てくれた様で、俺が天の磐舟を受け取ると隣に座り出した。お互い何も喋らないまま満月を眺めていたのだが、サグメを見たら頭を下げた。大の字で寝そべっていた俺は上半身を起こして、右手を隣にいるサグメに差し出そうとしたが、両手でサグメの両頬を引っ張る。

 

「気にしなくていい。天の磐舟を持って来てくれたんだし言う事は無い。お前が尊敬して崇拝する八意様の永琳もそう言う」

 

「……」

 

「余計な迷惑を被らせてしまい、すまない」

 

サグメは気にしてないと言いたいのか頸を横に数回振る。本来、朱雀門に住む鬼人正邪を引き込むのはサグメの役目であった。とは言えサグメが双六勝負に負けたのは気にしていない。天の磐舟は掌に収まるほどのサイズでちんまりしているが、俺には 打ち出の小槌 があるので、天の磐舟を大きくする事が出来る。なぜ天の磐舟がこれ程小さいかと言うと、回帰の影響だ。

 

そして肝心なのがこの天の磐舟を永琳と河童に頼んで改造する。

 

 

天の磐舟から『聖輦船』にな。平将門がいる常陸国、茨城県の江戸時代で見られた伝説の船である 虚舟 の正体は 聖輦船 と言う訳だ。

 

 

「能力のせいで全く喋らないな。本当はお喋りな女なのに」

 

「…」

 

両手でサグメの両頬を軽く引っ張ったり頬を揉みしだいていたが一切喋らない。サグメはされるがままである。暫くサグメの頬で遊んでいたら、サグメは自分の片手の掌をまず俺に向けてから、次に掌を向けた片手の人差指を自分に差し、やっとサグメが一言。

 

「奴隷」

 

奴隷奴隷… 頭の中で反芻する。いい響きだ、玉兎の鈴仙も奴隷だから人権は無いので好き放題に出来ている。あ、サグメって天津神で月の民だから玉兎を含め月の都に住む者は俺と永琳などの 奴隷だったな。それでされるがままなのか。

 

それに、月は高天原である。そして肝心なのは古事記に記載されている『御頸珠』を俺が頸に巻き、かけている。古事記に置いて御頸珠はイザナギが天照に高天原を治めよと委任させアマテラスに授けた物が御頸珠である。

 

つまり御頸珠とは『高天原を統治する者の証』なのだ。王が宝石やら何やら、煌びやかなもので着飾る人物が多い。それは自分が王だと他の者に一目で知らしめるためでもある。

なので俺は高天原の統治者になるんだなこれが。即ち高天原の場所の一つである月も含めて。まあ元々、俺は月の王子らしいがね。

サグメの頬で遊ぶのはやめて、目をサグメが背負う弓を見つめて右手をサグメに差し出す。

 

「急な話で悪いが。サグメの背に背負っている『天鹿児弓』を貸してくれないか」

 

「……」

 

サグメは黙ったまま、俺の申し出に頷いて天鹿児弓を渡してきたのでそのまま右手で受け取って借りた。この天鹿児弓は日本神話に出てくる物、元々永琳が持っていた天鹿児弓をサグメが受け継ぎ、天鹿児弓の片割れで紫が永琳から受け継いだ 天羽羽矢 などは神と妖怪限定で神力と妖力さえあれば矢は必要ない。

 

俺のお腹の上で寝ていたお燐を謝りながら優しく揺すって起こす。のそのそと起きたお燐は俺の肩に乗ったので俺は立ち上がり、右手で天鹿児弓を持ちながら構え、神力を天鹿児弓に注ぎ込んでいくと弓の弦に光の矢が生成され、俺はそのまま宛てがっている光の矢を月のクレーターティコに標準を合わせて、左手で射出。

 

矢とは反発力を利用して放つ物だが、この神力で生成した光の矢、反発力は皆無で力は込めていないのに弓の弦から放たれた光の矢、月光の矢はソニックブームを巻き起こしながら音速の壁を越え、光速な 等加速度直線運動 で月へと向かって行く。

あれだ 慣性の法則 とも言う。放たれた矢の後光がオーロラみたいでとても幻想的である。最後にもう一発射出するが、これは東に向けて。計二発を放ち終えた、これでいい。一発目に放ったが、月のクレータにあるティコへ届くかね、まあ届くだろう。きっと。弓である天鹿児弓をサグメに返して借りたお礼を言う。

 

「もう十分だ。ありがとよ。序でと言っては何だが、渡したい物というか、預かっていた物を返しておく」

 

お礼の言葉を聞いて頷いたが、サグメは俺が何を言っているのか理解できず不思議がる。そりゃあそうだ、サグメは覚えてないんだから。殆どの者はいらないといって回帰したが、ごく一部の者は時期が来たら戻してほしいと頼まれている。まあ、時限爆弾みたいな感じ。サグメの右腕を左手で掴み、右手の人差指をサグメの唇に当てて行う。

 

「サグメ。回帰前で交わした約束通り、お前の記憶。今まで蓄積された記憶のデータを戻してやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるお寺に一人の女性が来訪。修業するため寺にいた坊主は用件を女性に伺うと、女性は腰に差した剣の柄を左手で掴みながら抜き、剣の切っ先を坊主に向けて首元へ切っ先を当てる。剣の切っ先が当たった首元が軽く切れたのか血が溜まり、そのまま一筋の血が流れる。女性は空いた右手の人差指、中指、薬指を立てながら話す。

 

「急で申し訳ないのですが、貴方に聞きたい事が3つあります。一つでも答えを間違えば死んでもらいますのでご容赦のほど」

 

剣の切っ先を坊主の首元に向けている女性は、その剣で頸と胴体を切り離して殺す気は無い。頸と胴体を切り離したとしても即死はしないとはいえ、苦しむ事は無いのは間違いない。なので、延々と死ぬまで苦しませる為にファラリスの雄牛に坊主を入れ、炎に炙られながら苦しみながら死んでもらう。

 

実は女性の目の前にいる坊主の前に一人、坊主の男が既にファラリスの雄牛に入れられた後はカグツチの炎に炙られ、ファラリスの雄牛に入れられた坊主は叫び声を上げて悶え苦しみながら殺されている。女性の目の前にいる坊主が、女性の質問を一つでも間違えたら最後、ファラリスの雄牛に入れられている坊主と同じ末路を辿る事になるだろう。

 

しかし剣の切っ先を首元に当てられて血は流れているのに、それを聞いた弘川寺にいる坊主は怯えるどころか、頷いた。坊主は煩悩や執着を絶ちながら無常でいなくてはいけない、その為の一つとして坊主は寺で修業するのだ。性欲や欲望、極端な話で言うなら生存本能によって生きようとする本能までも無くす必要がある。恐怖や痛覚さえも、必要ではない。坊主が涅槃の境地に立つ為にはそれらの欲求は、坊主が涅槃の境地に立つための不純物であり夾雑物であり不要なのだ。

女性は中国の道教や儒教が入り交じり初期仏教ではなくなった仏教も、ファッションか何か、崇高な宗教と勘違いしている仏教に関係する坊主などに対していい感情は持ち合わせていないが、それを成し遂げている坊主を少し感心した女性は話を続ける。

 

「では質問する。佐藤 義清、いいえ。今は西行でしたか」

 

女性は坊主に質問したが、坊主は女性からの質問に全て答え、全問正解。本来ならば坊主が知る筈はない未来の出来事を3つ、女性は西行に聞いた。だが全問正解。

袈裟を着用している男は頭を下げ

 

「拙僧は、藤原氏。天皇の血を持つ神裔 故、長生きはしましたが、生きるのに疲れました。拙僧の神祖、その親戚に言うのは忍びないのですが、綿月様。どうか拙僧を」

 

その先を察した依姫は、西行の声に被せる様に少し大きな声で言う。僧の癖にこの世の柵をまだ捨てきれていない様だ。涅槃の境地に立つ為には死にたいと思う気持ちさえも、全てを捨てなければならないと言うのに。

 

「それは出来ない。私は貴方に3つの質問をする為に弘川寺へ来た。ですがその質問を全問正解。もう私の役目は終えたのです。ファラリスの雄牛に入れる理由も、斬る理由も無い」

 

「…そうですか。では、あの方に言伝をお頼み申したい。拙僧は、全て戻っていると。そして拙僧を殺してくだされと」

 

依姫は、それを聞いて剣の切っ先を西行の首元に当てるのをやめて、鞘に納めながら、ファラリスの雄牛を転移。

 

「いいでしょう。ですが幽々子はどうする気です」

 

「幽々子は拙僧の娘。大王、天皇の血を持つ神裔であり、寿命で死ぬ事はまず無く、矍鑠になる事も無い。そして何より幽々子は女です。あの方は大昔から大層な女好きであらせられる」

 

女好きと言われ依姫は頭が痛そうに抱えて数回横に振るが、気を取り戻して西行は続ける。

 

「申し訳ないですが。幽々子は拙僧の祖先、藤原不比等にあの方へ嫁がせるようお任せしています。拙僧は何度も何度も。気が遠くなる程の時間でこの世に関わるのも、生きるのにも疲れたのです」

 

「だから世俗を離れる為に出家したと。言いたいのですね」

 

「是。こうすればあの方が間違いなく殺してくれると考えました。予想は外れ、綿月様が来られましたが。見抜かれたのやも、しれません」

 

西行は知っている。死んだ後は神か幽霊になるかであり、死んだとしてもこの世からの束縛が無くなるのではないと。

 

 

       かつて早く逝きたいと思い。西行は弘川寺で詠んだのだ。

 

 

     『花よりは命をぞなお惜しむべき 待ちつくべしと思ひやはせし』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、サグメ。冥王代以来か。あれ、ジュラ紀だったか。まあ、先カンブリア時代 以来だ。久しぶりだな」

 

文化や文明は平安時代に近いが現在は 旧石器時代 か 縄文時代 である。

 

目をぱちくりしていたサグメを見ていたら、もう一度両手でサグメの両頬を軽く掴んで揉んで揉んでの繰り返し、飽きたら次はサグメの胸を両手で揉みながら話す。だがサグメが嫌がる気配はない。記憶に戸惑いを覚えているのもあるが、記憶が戻ったからこその無抵抗と嫌がる素振りが無いのだ。

 

「早速本題に移ろう、嫌だったらいいんだが、輝夜と咲夜は平安京に留まるらしい。だから二人の傍にいてやってくれ」

 

咲夜に頼んで天智天皇の死体の時を止めてもらっていたが、俺が天智天皇の死体は回収している。だがしかし、まだ輝夜と咲夜の役目は終わっていないのだ。

 

100以上の回帰前、藤原不比等を俺が殺したせいで輝夜と妹紅の両名、昔はお互いと殺し合いをしていたんだが今や親友になっているのは変な気分である。サグメの胸を両手で揉んでいたら脳裏に玉兎が思い浮かぶ。さっき思い出したが玉兎も月の民も俺の奴隷なのは間違いないだろうが、サグメの背に回って後ろからサグメの胸を揉みながら確認の為に一度聞いておこう。後ろに回ったら何か、メス特有のいい匂いが凄い。

 

「ところでさ、サグメって全ての玉兎と同じく俺の奴隷で間違いないよな」

 

「……」

 

サグメは記憶に関して戸惑いながらも頷く。そうかそうか、俺の記憶違いじゃないんだな。 なら人権は無い。奴隷なのだから。鈴仙を薬漬けにはしてないが、鈴仙は薬漬けにされてると思い込んでいる。自分が自分じゃなくなっているのは永琳の薬のせいだとな。実際はただの栄養剤とかを与えているだけだ。

 

「じゃあ、まずはそうだな。よし決めた。記憶も戻した事だし、とりあえず回帰前でたまにしてたサグメのワカメざべぇ」

 

「…それ以上言えばある事ない事、八意様に告げ口する」

 

「な、ない事まで言われるのは困る。あれでも結構煩いところあるんだぞ。あ、これオフレコでお願いします…」

 

言い切る前にサグメは頸を動かして背にいる俺に冷徹な顔をしながら右手で俺の口を押えられた。仕方ないのでもう言わないとの意思表示の為、両手の掌をサグメに向けながら両手を上げるとサグメは右手を俺の口から離す。俺のキャラではないが今度は咳払いをして真面目な顔をしながらサグメに話す事に。

 

永琳、神綺、サリエル、依姫、咲夜、サグメ。月人は、金髪もだが銀髪が多いな。

 

「記憶が戻ったなら理解してるだろ。俺は玉兎以外の月人を確実に皆殺しにする。月にいた全ての天津神は地上に降り立ち、前回の世界で交わした約束通り記憶を戻した」

 

多分、豊姫は全力で俺の妨害をするだろう。記憶を戻していないんだ、当たり前と言われたら当たり前である。だがな、この先、神と妖怪は対等でなくてはいけない。これは絶対にだ。なので対等である証として月人を一度、鏖殺する。目には目を歯には歯を、刃物には刃物を銃には銃を、核には核を核ミサイルには核ミサイルを、神には、妖怪を。

対等になって初めて、お互いが席に腰を下ろして話し合う事が出来るのだよ。

実を言うと、依姫は大した脅威ではない。何故なら、依姫の能力は八百万の神がいてこそ脅威なのである。だが肝心な八百万の神が機能しなかったら依姫の戦闘能力はがた落ち。

がた落ちで能力を無くしてそれでもまだ脅威なのだから俺の元部下ながら末恐ろしい。

 

問題は豊姫。豊姫の能力は実に厄介。インドラの矢とトリシューラを使って結界を破壊し、どれだけの大群で月の都を急襲しても一瞬で地球に強制送還されるのだ。

 

まあ負ける事は無い。俺の永遠と頸にかけている『御頸珠』があるのだから。記憶は欠落しているが俺が生きてる時点で、俺が回帰した時点で、全てやり遂げ終わってる。

 

「それでサグメ。どうする。俺の邪魔をしても構わんが何の為に記憶のデータだけを上書きした。本来なら記憶だけでは無く他にも上書きできると言うのに」

 

サグメはフォーマット状態だったが、上書きした今は違う。俺は平将門の命を拾う為、関東地方へ行かねばならんし輝夜や咲夜と一緒にはいられないのだ。俺としてはサグメには輝夜と咲夜の傍にいて欲しいのが本音である。

 

「…私、は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱雀門の楼上に降りて、そのまま中に入ると。誰もいなかったが、物陰から、ぬっと現れる。黒髪に白と赤のメッシュされ、頭には小さな二本の角を持つ。服はワンピースのようなもので、腰には上下逆さになったリボン。

この朱雀門に来た時点で双六勝負をしに来たのだと、相手も理解している。

 

「双六勝負を申し込みに来た」

 

「……ほう。双六勝負で百戦錬磨の私をお前が倒すと言うのか」

 

「馬鹿め! 双六勝負で勝った事も負けた事も無いこの俺を侮るでないわ!」

 

「…それって一度もした事が無いだけだろこのバカ!」

 

 

 

それで双六勝負したのはいいんだが。

 

負けました。はい。わなわな震えている正邪は立ち上がって人差指を俺に差す。

 

「ふざけるな! お前、双六の仕方やルールを知らんだろう!? 最初は冗談だと思っていたがあまりにも弱すぎる!」

 

正邪の怒鳴り声を聞きながら頭を右手で掻く。目の前に置かれた双六盤、白コマ黒コマ、振り筒、サイコロ2個を見ながら思うが、おかしいな、ここは勝つ流れだと思ったらまさか瞬殺されるとは思わなかった。

だが目的は果たしたぜ。天邪鬼である 鬼人正邪 は嘘をつくのが上手いからな、取り繕った状態を崩すためにはこうするしかなかった。

 

ルール。これは、日本語では無く、横文字で異国の言葉である。だからこそ、俺はこういうのだ。

 

 

「元気か瓜子姫」

 

鬼とは昔話において最初から鬼では無く、元は人間だった。という展開が多い。

例を挙げるならば、紅葉伝説、鬼婆、鉄輪、鬼女、藤原千方の四鬼、橋姫、青頭巾、鬼童丸、

温羅、酒呑童子、茨木童子、阿倍仲麻呂。

鬼が元は人間だった話を挙げればキリがない。そもそも鬼とは、頭に角が生えていたら鬼と言う訳では無いのだ。あ。そういえば 一寸法師 も妖怪や鬼扱いされる時があったな。そして、うりこひめとあまのじゃくの昔話。あれは自作自演であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事が昨晩あってさ」

 

「そうですか。サグメの豊満な胸を揉んだのですねお兄様」

 

そこなのかと思い、隣にいる輝夜を見ると輝夜は鬼饅頭を食べながら相槌を打ち、咲夜は編み物を編んでいる。俺の両脇に輝夜と咲夜がいるが、今は幽々子と双六勝負で対峙していた。しかし

 

「って、また負けたぞ幽々子強すぎ!」

 

「おじさんよわすぎ」

 

幽々子は笑うが隣にいた咲夜は鼻で笑うのが聞こえたので俺は突っ伏す。何て事だ… ああ咲夜よ笑うがいいさ、幽々子と双六勝負していたが子供相手に本気出すのはどうかと思い手を抜いてみたらこの様よ。まだ幼いと言えどなめて掛かるのは駄目だなと学びました、まる。

飽きたのか、幽々子は突っ伏していた俺の傍に近寄り、両手で俺の体を揺する。何だと思って起き上がると、後ろから抱き着いて来た。抱き着いて来た幽々子に気を付けながら隣で編み物を編んでいた咲夜を見る。

 

「咲夜、編み物を編んでどうした」

 

「ダーリンにあげるのよ。この先、する事が多いみたいだから。永遠の存在だから寒くは無いでしょうけど、気休め程度にね」

 

「やりぃ」

 

咲夜が編んでいるのは手編みの手袋の様だ。静葉から貰った鬼饅頭。凄い美味しいんだが、いかんせん。鬼饅頭の数はかなりある。輝夜は美味しい美味しいと食べていたので、一口サイズの鬼饅頭を取り、そのまま輝夜の唇に当てる。

 

「よし輝夜、口開けろ」

 

「い、いいです。一人で食べられますから」

 

恥ずかしいのか遠慮していた輝夜の唇に鬼饅頭を多少強めに押し当てていたら、観念して鬼饅頭を口を開け、口内へと入れて咀嚼。輝夜が鬼饅頭を食べ終えたらまた餌でもやるかのように次の鬼饅頭を与え、喉が渇いたと目線で訴えて来たら熱い緑茶が入った湯呑を片手で掴み、唇に当て口内に少しずつ流して飲ます。

 

「おじさん! 輝夜お姉ちゃんばっかりずるい!」

 

「いくら妹だからって甘やかしすぎですわね」

 

徒然だったのか背に抱き着く幽々子と、手編みの手袋を編みながら横目で咲夜に注意される。仕方ないじゃないか。血が繋がった身内なのだから。それに、今回の俺は月に行かなかった。そのせいで輝夜に色々迷惑をかけたのは間違いないんだ。咲夜も月人なら分かるだろ、いや。分かって言ってるのか。俺と永琳はあの核で死んだと思われ、姫だけが月にいたのだから。輝夜は政治の道具として傀儡にされたのだ。本当に悪かった。いつまでも監禁されているような生活で、豊姫が連れ出してくれなかったらどうなっていたか。俺の妹、輝夜には本当に迷惑をかけ過ぎた。謝っても謝り足りない。だからこそ自由に生きて欲しい。

 

そうこうして輝夜を甘やかしていたら襖を開けて藤原不比等が俺を呼んだ、俺がいる屋敷は藤原氏である藤原不比等の屋敷なので不比等がいるのは当然である。

 

内密の話があるそうで、肩に乗っていたお燐にも遠慮してもらい。不比等に奥の間へと案内され、屏風がある部屋で対峙しながら重々しく口を開いて一言。

 

「稗田氏の稗田阿礼が亡くなりました」

 

…はい? 哀悼の意を表す前に Wait Wait Wait! 稗田阿礼は稗田氏。稗田氏とは古代より朝廷の祭祀に携わってきた氏族の一つ 猿女君 の末裔である。

だがちょっと待って欲しい。猿女君は天津神の アメノウズメ を始祖としている。実際その通りなのだが、大事なのは稗田氏は神裔という意味になり、神裔は天皇と同じく寿命で死ぬ事は無い。寿命以外の死因としての満足に食べられず餓死か、もしくは今の時代では常套手段な水源の井戸に腐肉を投げ込み、つまり BC兵器 で死んだのかと聞いてみたら違うらしく、原因は不明と言われた。第一に、俺は病に関してだが基本的に人間だけにしているので殺す理由が無い天皇や皇子、神裔を病で殺すメリットは皆無。人間はどうもいいが、神裔などは寧ろ死なれると困るんだ。なので理由が無い限り殺す事は無く、元凶の俺は関わっていない。だからこそ、目の前にいる藤原不比等は生きている。

 

「それで、稗田阿礼の子が残されているみたいなのですが」

 

「ふ、読めたぜ不比等。俺にその話を持って来たのは、残された子が女だな」

 

「俗な話。今は夫や父親が死んだ未亡人や娘、残された女が悲惨なのはご存知だと思います。現在、家畜も作物も憫然。病も急速に流行っており。神からの罰は甘んじて受けますが私は幼い子にまで…」

 

「手助けしようにも出来ないのは知っている。貴族の藤原氏なお前でさえ生活が苦しいのだ、妹紅や幽々子、魂魄家だけでは無く輝夜や咲夜もいるし面倒をかけて悪いな。OKOK その子は俺が貰う」

 

序でに言っておこうと。食と病の問題を取り除きたいかと聞いたら、不比等は俺の言葉を聞いて嬉々として同意する。現在の征夷大将軍は坂上田村麻呂。しかし坂上田村麻呂は東の蝦夷と平将門の朝敵を討伐する為に征夷大将軍として東にいる。なので東の蝦夷と平将門を何とかするまでは源義仲が征夷大将軍になる事は出来ない。この征夷大将軍は1人だけしか許されないのだ。鎌倉幕府を造り上げたとしての前提で言うと、朝廷に鎌倉幕府を造る許可も承諾も得る気は無い。こっちが勝手に鎌倉幕府は造り上げる、朝廷の許可を得たとしてもそれは鎌倉幕府を造り上げた後だから事後承諾になるだろう。民が病になるというのは朝廷からしても貴族からしても困る事態である。農民などの民が田を耕しているんだからな。勝手に食べ物が湧き出てくるわけじゃない。

 

鎌倉幕府を造り上げる上で最も厄介なのは北条氏である。しかしこの北条氏、ルーツが桓武平氏高望流の平直方を始祖とされたり、伊勢平氏の祖・平維衡の子孫だったりと、本当に桓武平氏の流れであるのかどうか分からん。まあいい、ともかく鎌倉幕府や征夷大将軍が北条氏の傀儡になる事を避けるため、征夷大将軍に任官した源義仲が死なないように気を付ける必要がある。

何せ、鎌倉時代は『族滅』の言葉が多くみられる時代だからな。対抗勢力は徹底的に粛清される。比企氏、和田氏、梶原氏。とか他にも色々族滅されてるし、この時代は戦が頻繁にあったから鎌倉武士団はかなり強い。西の貴族共では勝ち目は皆無だ。後は足利氏だな、室町時代へと繋げる為には生きていてもらわねば困る。それに足利氏は源氏だし。藤原氏のもいるが。

 

 

鎌倉時代は親兄弟でも殺し合っていたと言うのに、いつから人間は死に対して過保護になった。刷り込みだろうか。ただし、それは東の話で西の平安京に住む貴族たちはそれを聞いてドン引きしていたが。

 

 

いいや違うな、東はともかく西の祖先を敬う考えだが、これは中国の宗教である儒教の影響が大きいか。祖先を敬うなんて考えは大昔になかったし。日本もその影響は少なからず受けている、沖縄、琉球王国は仏教の影響は少ないがその変わり儒教の影響が特に強い。

 

 

「朝廷と天皇に、冥加の作物と現在起きている民達の病を何とかしたくば、坂上田村麻呂の次は 源義仲を征東大将軍ではなく征夷大将軍に任官、将軍宣下しろと伝えろ。そうすれば病や作物を戻そう」

 

本当は神仏習合の件も言っておこうかと思ったが、とりあえず今は東に神仏習合の影響を与えるなと不比等に言っておいた。そして俺は諏訪大明神、諏訪国の神だ。ならば俺が今言った事は神託になる。神託とは神の意を伺う事。また、その時伝えられた言葉であり、本当は巫女などに伝えるか巫女の人格を乗っ取ってトランス状態にして言うと神託になるのだがな。そしてこれは、同一人物の第46代・第48代 称徳天皇 と 孝謙天皇 のバカ女か日本三大悪人の一人である道鏡のせいで起きたのかは知らないが、宇佐神宮の神託の虚言で起きた『宇佐八幡宮神託事件』

 

日本三大悪人の一人である平将門か興世王がそうしたのかは知らないが八幡神を利用して

『新皇』を自称したように。この二つも神託が絡んでいるし、朝廷が源義仲を征夷大将軍に将軍宣下する為の理由作りでもある。

何事も建前は必要なのだよ。そして俺は諏訪国を治める神なのだから。源氏の源義仲と北条氏の北条政子が結ばれれば源氏と平氏の血が混ざる。嗚呼、まったく、素晴らしい。神託は俺では無い、アマテラスに任せる事にする。一応、諏訪の神が神託したと言うより天孫族の神が神託したと言う方が貴族も天皇も納得しやすいだろう。

 

九条兼実が 王者の沙汰に至りては人臣の最にあらず。と言うが俺は神なのでどうでもいい。それ以前に九条兼実は藤原氏である。しかも藤原不比等は妹紅が原因でまだ生きているのだから。

 

これだけの事が起きているのに天皇は一度も滅んでいない。それだけ、天皇は特別なのだ。鎌倉に敗れ、落ちぶれて惨めになろうともな。家系や血はそれだけ重要なんだ。

本当にちゃんとした大王の血が歴代天皇に受け継がれているかどうかは分からんかもしれんが、監視者の俺などがいるから間違いなく天皇の血を受け継いでいるので問題は無い。

 

「そうそう。不比等よ、日本書紀を編纂する前に一人、日本書紀の編纂を関わらせたい 慧音 という名の女性がいてな。その女にも日本書紀の編纂を任せる事にしたから後よろしく」

 

「お待ち下さい諏訪大明神!」

 

「嫌だ絶対に待たない」

 

奥の間から出てそのまま玄関に向かう。この世には聖人はいるのかと聞かれたら、微妙だ。いるにはいる、数は少ないが。

…ジャンヌ・ダルクが聖人と言われる、んな訳ない。その時代には城や砦に使う大砲があったのだが、あの女はその大砲を人に向けて撃ったのだぞ。

 

 

 

 

話はかなり変わるが、かつて月人が住んでいた都市に使ったり広島の長崎 原爆など。

今や核兵器は驚異的な兵器ではあるが。この核兵器が出来た要因の一つは

 

この世の法則はすべて決まっている、それを我々はまだ知らないだけ。という意味で

量子力学の不確定性原理に反論した言葉の 神はサイコロを振らない  と言った

 

ドイツの理論物理学者 アルベルト・アインシュタイン が導き出し唱えた『E=mc^2』

特殊相対性理論の方程式、関係式が一つ。この方程式で核兵器が出来た原因の一つだ。

質量とエネルギーは等価であるとな。

 

 

よくアインシュタインは天才と謳われるが、違う違う。実際は何も凄くは無い。ただ、何も知らなかった人間がこの世界に元々あった法則性や方程式などを時間をかけて見出したに過ぎないのだから。それに、法則性や方程式も人間の解釈で出来ている。一部はゆっくり燃えるだけの火薬もあるが、火薬に火をつけたら爆発する。そんなごく単純な事。

1つは解決済みだが残り6つの、アメリカのクレイ数学研究所によって2000年に発表された100万ドルの懸賞金がかけられている ミレニアム懸賞問題 もいつかは解決するさ。時間が、あればな。

まあ、ビッグバン説を持ちだすならば、ビッグバンが起きてからこの世の法則は決まったとも言われているがね。

 

 

 

また、神も万能ではない。生贄や人身御供は過去の日本でもあった、神は人間に代償を求める。

もしも神が万能なら、そんな事はしない。と思う者もいるだろう。

 

神は救いの存在と人間の脳にインプリンティング、刷り込まれているからな。

 

 

違う、そうじゃない。

 

 

人間に対し代償を求めない神は、人間にとって最高に便利な存在と言う事だ。そりゃあそうだ、何の代償も払わず自分の頼みを聞いてくれる存在なら都合がいい便利な存在と言えるだろう。

 

 

だが、それは万能とは言わない。自分にとって都合のいい存在なだけだ。万能の意味を履き違えてはいけない。

 

 

俺がさっき藤原不比等に言った征夷大将軍の話もそれに近い。病や冥加の作物を戻す代わりに代償を払えと。

 

日本の民話。異類婚姻譚の話である 鶴の恩返し、雪女、葛の葉、蛇女房、食わず女房。

今挙げた例は女性が、または妻になった女性が消える話ばかりである。

 

これさ、異類婚姻譚の話って見方を変えて見ると 女が神に嫁ぐ または 人身御供 なのだよ。昔話はそれを 隠喩 した話が多いのだ。

 

長野県の『黒姫伝説』は黒姫と言う名の人間の女性が黒龍、つまり神に嫁ぐ、または『人身御供』の意味では顕著だな。まあ、龍は妖怪扱いされる時もあるがね。もちろんただの物語を深読みする方がどうかしているかもしれない。だが日本だけに限らず昔から残る話とは右往左往、紆余曲折を繰り返して今の時代に残っている。

 

しかし、昔話に限った話ではないが昔から言われ続ける話は意図的に改変や編纂されている。

よくいるだろ、子供には見せられない内容だから子供向けに改変しよう、というのが。

 

昔話は納得できないとか、理不尽だとか、残酷だとか。そんな話が多いのに今やそれもソフトにされている。昔話の『うりこひめとあまのじゃく』はその典型と言っても過言ではない。一種の情報操作である。

 

要は、誰かがした何か、その何かの事実があったとして、その事実を別の事や他の誰かに当て嵌め、暗喩として出来たのが昔話と言う訳だ。

 

つまり、自然現象を神のせいにした日本神話に限らず、異国にも数多くある神話と似ているんだ。

 

「ねえ。いい加減、出雲の大国主の封印を解いてもいいでしょ?」

 

「それを言う為にわざわざ常世から平安京に来たのかスクナビコナよ。気持ちは」

 

「今は少名 針妙丸!」

 

「ああ。今は少名 針妙丸と名乗っていたか。しかしな。気持ちは分かるが大国主の封印を解くのは、ダメなんだなこれが」

 

腰を下ろして少名針妙丸を掌に載せる。うーむ、相変わらず一寸法師の様に小さいなスクナビコナは。スクナビコナは大国主と一緒に国造りをした神である。大国主と一緒に国造りを終えた後は常世にいたんだがな。

 

 

 

ソビエト連邦の軍人、宇宙へ赴いた最初の人類 ユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン。

宇宙飛行士で最初に宇宙へ行った人物である。

 

日本では、地球は青かったで有名なユーリイ・ガガーリン。だがしかし、この『地球は青かった』は正確な引用ではない。

 

 

そこで ユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン は見た、見てしまったのだ。地球を内側からでは無く、外側から地球を観測してしまった。

 

観測したが故に、観測者効果は発現してしまう。

 

 

 

 

アメリカ合衆国のアポロ計画のアポロ11号。歴史上初めて人類を月面に到達させた宇宙飛行であるが、アポロ月着陸船。彼らは月へと行ったのか行ってないのか。

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪国にある 木曽川

 

その木曽川には水流によって花崗岩が侵食されてできた自然地形である 寝覚の床 と言われる名勝がある。この寝覚の床には、あの浦島太郎が竜宮城から帰ってきた後の伝説が残っていたりするのだが。そこで二人の少女がごつごつした岩の上に座っている片方の少女が楽器を一つ片手に持っている。二人の背には諏訪国の民の遺骨をヤマメの妖術で形作り、巨大な がしゃどくろ が二人にもしもの事が無いか心配で傍にいる。ただし、このがしゃどくろ。一体だけでは無く別で小型ながしゃどくろが一体いる。がしゃどくろは妖怪ではあるが、元は諏訪国の民達だ。こころは特別な立ち位置にいて、小傘は弘天の神力と紫と幽香の妖力が混ざって生まれた存在、言わば弘天、紫、幽香。3人の実子になるのだ。

 

「おかしいな~ 紅葉さんから貰ったこのお琴、十分な妖気を感じるのに妖怪化しないなんて」

 

「前から思ってたけど、物から妖怪化ってどうしたらいいの」

 

「えー 面霊気のこころがそれを言うの~? あ、から傘お化けの私にも言える事かな。私もどうやってこの姿を具現化したのか覚えてないや」

 

こころが片手に持つお琴は、鬼女の紅葉から借りた。小傘は弘天に諏訪国の 塵塚怪王 になって欲しいと言われ、諏訪国に戻った際、さっそく小傘とお共、レイラの側頭部にお面として過ごしていたお供のこころは行動に移り八ヶ岳に住むある程度の妖怪を従えつつある鬼達、鬼女の紅葉に会いに行きお琴を借りたのだ。

鬼、鬼女達は八ヶ岳に住む 二姉妹の覚 猫の里に住む猫 手長足長 その娘のろくろ首、または飛頭蛮 これらをまだ従えてはいない。

 

「ふふん。教えて進ぜよう。そのお琴を妖怪化させるには二つの手順を行わなければならんぞ。その為に、まず一つが打ち出の小槌、もう一つは琵琶が必要なのじゃ」

 

「おぉ、一体いつからいたの」

 

こころは急に現れた人物、二ッ岩マミゾウに問うが、頭にはタヌキの耳、腰辺りから大きな尻尾は生えているが、それ以外は殆ど人間の容姿。髪は長髪で服装は本格的な和装である。ただ少し肌寒いのか白の市松模様柄のマフラーを首に巻いている。

 

「儂は 二ッ岩大明神 と祀られる猯ぞ。化かすのも驚かすのも。気配を消し、ふと現れるのもお手の物」

 

「でもタヌキの化ける能力はキツネより劣ってるし実際の狸ってまぬけで滑稽なのが多いよね」

 

「そんな事を言う口はこの口かこの口じゃな!? 悪い事を言うこの口は儂が成敗してくれるぞい!」

 

「いひゃいいひゃいよー! 助けてこころー!」

 

小傘の毒舌を聞いたマミゾウは頬を引き攣らせながらもとてもいい笑顔で小傘の片頬を引っ張る。涙目の小傘はこころに救援を要請したがこころは木曽川の川が流れている所をじっと見つめていた。こころが背に背負う薙刀をマミゾウに使う気は無い様だ。煙管をぷかぷか吹き、吐いた煙を小傘とこころの方へ行かない様に吐きながら嘆く。

 

「諏訪大明神の実娘ながら酷い事を申すのう。ほれほれ。思い立ったが吉日。そのお琴を妖怪化させる為の打ち出の小槌は諏訪大明神が持っておる。ならば最後の琵琶を手に入れるが吉じゃろう」

 

パンパンと。両手を叩きながら行動を移すよう激励。小傘とこころはその激励に絆され、小傘はがしゃどくろの右肩、こころは左肩に乗る。そして小傘は落ちない様に左手でがしゃどくろの骨を手すりの様に掴む。次に右手の人差指を前に突き出し、がしゃどくろに号令。

 

だがおかしい。何故マミゾウは弘天は打ち出の小槌を持っている事を知っているのか。

 

「がしゃどくろ発進!」

 

がしゃーん がしゃーん と歩き出す光景はさながら巨大ロボット。本来、がしゃどくろには足が無いのだが。このがしゃどくろには足がある。それも諏訪国の民で出来た骨だ。そのままがしゃどくろが一歩一歩歩く事に地響きが辺りに響く。走る事も可能なのだが、走った際の地響きがかなり煩いので余程の時以外はしたらダメと諏訪子、そして紫と幽香に禁止されている。小傘とこころ、がしゃどくろが遠くへと行くのを眺め、煙管から吸い、煙を吐いて青息吐息。

 

「もう何度目か。こうしてあやつの娘達にお節介にも助言をし、見送るのわ」

 

「疲れましたか」

 

いつの間にか がしゃどくろ の肩に座っていたレティがマミゾウに問う。これがもう一体の方のがしゃどくろ。小傘とこころが乗って行ったのよりは小さめ。このがしゃどくろは幽霊の様に地面から浮遊していて、動く事は出来るのだが足は無い。幽霊の様に浮遊しているので足音は無く、がしゃどくろの気配も皆無。流石の二ッ岩大明神も接近されようと中々気付かない。がしゃどくろは骨の右手をレティの前へと差し出し、レティはお礼を言いながら右手の骨に降りて、そのまま右手は地面に下ろされてレティも続いて地面に降りる。マミゾウはその光景を眺めながら鮮少に思い出していた。

 

「かもしれんの。おぬしはどう思う、レティ」

 

「私はあの人の治める国と、あの人のお傍にいるだけで満足。他に何かを望む気はありません。それに私達以外にも最初から記憶を所持しつつ初対面の振りをしている人はいる」

 

相も変わらずあやつに尽くすのが好きで健気な女と思いながら、永琳や河童などが造らなければ確実にないであろう煙管をぷかぷか吹いている。だがこの煙管、永琳や河童が造った訳では無い。最初からマミゾウは煙管を所持していた。そしてマミゾウは煙管を持たない方の手で懐から丸眼鏡を取り出してかけると視界がクリアになる。これも永琳と河童が造っていた訳では無い。最初から持っていたのだ。生まれた時から丸眼鏡も煙管を、ずっと。困っているマミゾウを見ながら、レティは右手で口元を隠しながら軽く笑う。

 

「…そうじゃろうな。困った困った」

 

「ふふ。化かすのがお上手な狸が化かされてたら化け狸の名が泣くわね」

 

「まったくじゃ」

 

レティはがしゃどくろの右手に、マミゾウはがしゃどくろの左手に乗って小傘とこころを追いかけようと動き出す。がしゃどくろはふわふわと浮遊しながら二人を追いかけるが、がしゃどくろの左手に乗るマミゾウは煙管をぷかぷか吹きながら物思いにふけていた。

 

 

 

 

 

ある時、人情に厚く、金貸しをする妖怪がおり。人間を襲う事は無いが化かして人間を驚かす一匹の狸がいた。その話を聞いたある男はその狸が住む山へと繰り出して散策していたら、それをみた狸はこの男も化かして脅かそうと考え、若い女に化けて男が進む先を予想し、待ち伏せていた。そして、狸が待ち伏せる場所までやってきた男が若い女を見つけたが、その女はとても具合が悪そうだったのだ。心配した男は頸に掛けた首飾りを鳴らしながら女に怪我は無いかと聞く。聞かれた女の足は鋭い物で斬られたかのような傷跡がある。だがこれはそう見せているだけで実際は怪我をしていない。とりあえずここは危ないと言った男は、どこから取り出したのかとても頑丈そうでしなやかな縄を取り出し、何故か若い女を簀巻きにする。いい医者がいるから連れて行くと男は言うが、わざわざ簀巻きにする必要はないだろう。しかも狸がそろそろ正体を男に明かして化かし驚かそうと思った矢先にこれだ。簀巻きにされた若い女は危険を感じどうにかして逃げようと

 

タヌキは

 

「斬られた足が痛いので一度下ろしてくれませんか」

 

と言ったが男は即答で

 

「駄目だ」

 

そう返す。

 

若い女に化けた狸は縄を使い簀巻きにされている。物でも扱うかの様に背負われ、男の右手には支える為の一本の縄が握られているのだ。まさか即答で返されるとは思わなかったタヌキは悩んで悩んで思いついたのが苦肉の策であった。その苦肉の策とは。

 

「尿意を催してきました。その辺の木陰でさせてほしいのですが」

 

もちろんタヌキの嘘である。だが男はそれを聞いて無駄に大げさに驚いて返す。

 

「なんと! それは大変だな」

 

歩きながら女の言葉を聞きつつも信じた。タヌキは内心ほっとする。これで逃げられると。もう化かす化かさないの話では無くなっているのだが、狸の予想を大きく裏切ってしまう。

 

「ならばそのまましてしまえばいい。美人な女のなら見たい、俺は気にせんので大丈夫だ」

 

一体何がいいのか皆目見当がつかない。そっちはよくても化けた女が気にするに決まってるのだ。しかし男は立ち止まり、いい事を教えよう。そう言いながら背に担ぐ女を頸を動かしてみる。

 

「こんな山奥に若い女がいるわけないだろ」

 

 

その後はもう人間は化かさないから許して欲しいと女に化けながら平謝りするタヌキを、男は神使として勧誘したのだ。二ッ岩大明神と祀られ、人々に厚く信仰されるタヌキと諏訪大明神と呼ばれる男、あれが初めての出会いだった。

 

 

 

嗚呼、懐かしいぞい。あの日が昨日の様に思えるのう、あんさん。




今回出て来たマミゾウは鈴奈庵の容姿です。あれに狸の耳と尻尾が生えたバージョン。

ご存知かもしれませんが実際に長野県には木曽川があり、寝覚の床と言われる名勝があります。この寝覚の床には浦島太郎の伝説がありますね。

マミゾウの話の元ネタは、日本三名狸に数えられている団三郎狸のお話が元ネタ。


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懐妊

次の話で弘天を諏訪国に帰します。


「お雑煮を食べて飲むと体が温まるし美味いな。本気で妹紅を妻に欲しいくらいだ」

 

「そう言って下さるのは嬉しいですが、私の一存では決められません。父にお伝えください」

 

「あいつ親馬鹿なんだよなー 妹紅を娶れたらいいんだが」

 

コノハナノサクヤみたいな事を妹紅が言うのを聞きながら餅を噛んでお雑煮を飲み、白い息を吐いてしみじみ。片手に持つ赤色な雑煮椀の中には餅入りのお雑煮が入っている。これは妹紅が作った物で、本来なら御付きの人がするのに自主的にしているそうだ。今の時代、女性は屋敷に籠るのが常識で娯楽があんまりないのでしてるんだと。この場には輝夜、咲夜、妹紅がいるが幽々子はお昼寝中。

 

「愈々輝夜、咲夜。そしてお燐。三人は最澄が開いた天台宗の総本山、比叡山延暦寺の天台座主、並びに本願寺にいる浄土真宗の僧兵。女、酒。放蕩に現を抜かす悪僧を全て殺せ」

 

放逐ではなく鏖殺だから全て攻め滅ぼす。まあ浄土真宗は火宅僧、数ある仏教派生の宗旨では僧に肉食妻帯はOKで無戒なんだが、女や酒に溺れる放蕩は駄目だ。それに僧兵が跋扈や闊歩されては面倒で顰蹙で塵芥。僧兵が不退転だったらいいが、無理だろうな。

 

「か弱い女性にそんな事をさせるのはふざけていますわね。どれだけの人数がいると思ってるの」

 

「永遠、須臾、時を止める。その上、咲夜と輝夜は人間じゃなく月人だぞ。それに怨霊や死体を 自在に操るお燐もいるし死体を操り他の人間を殺して死体を操っての無限増殖だ」

 

仏教や僧を形骸化させ蔑ろにした者は死をもって贖罪させよう。座布団の上で丸くなって寝ているお燐は反応しない。編み物を編んで咲夜はそう言うが、輝夜はお雑煮を静かに食べていてだんまり。輝夜って美人で華奢な身体だから人畜無害や大人しそうに見えるが違う。

今はともかく、昔は妹紅と殺しあってたくらいだし。お燐は幽霊、怨霊、死体との会話できる。1人の僧兵を殺してお燐に操らせ、その死体を操りながら別の僧兵を殺させる。まるでゾンビ映画の様にお燐の能力は伝染していくようだ。剣で斬っても死体でお燐に操られているし、脳天撃ち抜こうにもてつはうも銃も無いしな。脳天を撃ち抜いても脳では無くお燐が死体を操っているから意味ないし。一旦お雑煮を食べるのをやめ箱膳に置き、頸にかけていた御頸珠を渡そうと俺の隣でお雑煮の餅を黙々と食べていた輝夜を見る。

 

「輝夜。神道の神、天津神、地祇。特に隠居生活しているスサノオを使って僧兵を皆殺しにしてくれ。まあ輝夜が頼めば神道の神も天津神も言う事を聞くが、念の為に御頸珠を渡す」

 

「スサノオ達を使うまでもないと思いますけどね」

 

両手を輝夜の頸に回し、御頸珠の繋ぎ部分を結んで輝夜の頸にかける。これでいい。

 

比叡山の僧兵は第72代天皇 白河法皇が この世のままならぬものは山法師 と言わせた者達である。坊主どもは煩悩を絶ち殺生など厳禁だと言うのに僧兵とは、笑える。そして比叡山で有名なのが足利義教、細川政元、織田信長の比叡山焼き討ち。しかし織田信長の比叡山焼き討ちなどは近年の発掘調査により、織田信長は比叡山焼き討ちをしていない可能性が浮上して疑問視されている。織田信長は英雄と言われることもある人物だが、あれはただのゴマすり野郎だ。織田信長が英雄なんてイメージは創作の影響だな。

仏教はキリスト教程ではないが面倒。特にキリスト教は叩けば叩く程いくらでも埃は出る。例を挙げるならキリスト教徒がアメリカ先住民に何をしたか、懊悩を無くさねばならん仏教の坊主共も過去に何をしたと思う。妹紅もこの場にいるので、片手を上げて俺に聞いた。

 

「あの。どちらの寺も仏が治める治外法権の地です。特に延暦寺は朝廷や天皇ですら制御出来ないほど軍事力もありますし、僧兵を殺せば仏敵と見られ、民衆から反感を買う恐れが」

 

「それは人間、朝廷、天皇の話だ。俺、輝夜、咲夜、お燐が人間の道徳、常識、秩序に従う理由は無い。それに僧は仏が人間を救済する存在とか伴天連みたいな事を宣っているが違うから。あいつは人間を救済する存在じゃない」

 

今はまだ神仏習合されている、なので神は仏であり、仏は神という考えがあるから普通はそう思うだろう。しかし神と仏は別の存在。輝夜と咲夜の二神が僧を殺すのは神と仏が別の存在だと分からせる事が理由の一つ。だが俺達は神と妖怪で相手は僧兵と言っても人間だ、神と妖怪が決めたルールなら分かるが人間が決めたルールなどに神と妖怪が従う理由も価値も無い。今は病も流行っていて坊主どもでも罹患の者は多くいるし飢饉問題は解決していない。酒も人が作ってるから残りは女くらいだ、まあ病持ちの女なんて抱こうとは思わんだろうが。お燐は僧兵を殺す事は全面的に手を尽くすと言われている。死体を好きにしていいと言っているからだ、何か起きても全て俺のせいにすればいい。

 

「では仏とは。釈迦如来とは何なのでしょう」

 

「天竺にあるネパール地方の王子だったが、妻も子も捨て出家したせいで釈迦族は滅ぼされカースト制を否定した、ただのおっさんだよ。序でに言うがヤマトタケルが誰に殺されたか、妹紅は知ってるか」

 

口に出すと神か怨霊に祟られるのではないかと畏れたのか、妹紅は右腕の袖で口を隠して小声で言う。そうだ、普通は大それと言えないんだ。口に出すのも憚られるのが神であり、神を怒らせたら、罰、呪い、祟り、冥加の作物、天災、病。これらを神から与えられると信じられていたのだから。平将門がいる常陸国の神 夜刀神 はその典型だ。そもそも神社とは神が鎮座する為の場所で、神が怒らない様に畏敬の念を抱きながら祀り、人間が神に対する信仰の度合いによって神は人間に恩恵を授け、人間はその恩恵を授かろうと言う場所だ。作物とかな。嵐が来たり作物が不作、または凶作なら神がお怒りだと考えられ、神を崇め祀って神の怒りを鎮めていた。自分達は悪く無い神が悪いんだ、神なんかクソくらえだと当時の人間は考えなかった。ただ自分たちが神を怒らせる事をしたんだと考えたんだ。当時は食と水関連は死活問題だったからな。そこで 人身御供 が発生する。生贄を用意する代わりに嵐などの天災、または作物が育つよう神様お願いしますと 

溺れる者は藁をも掴む 藁にすがる思いで神様のご機嫌取りをな。若い女の場合もあれば、赤ん坊やまだ年も間もない女、子供を生贄に捧げたりした時もあった。これでも神は味方と言い張る人間はいるのかどうか。楽園に行きたいなら知恵の実を食べる前の人間に戻るしかない。

別に、神 以外でもいい。何かを崇め敬う心は大事だし必要。それがなければ人間は傲岸不遜になる。

 

「…神様でした」

 

「そう言う事だ。神も仏も元から人間を救済する為の存在じゃない、他にヤマトタケルの妃、弟橘媛も海神によって殺されてるしな」

 

これが事実だとして。神裔だからこその天皇は特にだが、人間は神に逆らう事は出来ん。自然を神に握られているからでもあるが、日本の人間は神を殺そうとか、その発想は生まれない。それが当たり前だと考えているからだ。設定が穴だらけな古事記、日本書紀の設定はまあ古事記に比べてちゃんとしているが。ヤマトタケルは神に邪魔されたりして殺されている。そして、涅槃の境地に立つ釈迦はこの世の真理に最も近い存在。言ってしまえば今の釈迦は、ヤハウェが追い出したが、 エデンの園にいたアダムとイヴが知識の実を食べる前に戻っているのだよ。

近江国に園城寺や藤原不比等ゆかりの寺院である大和の興福寺、他に大和の東大寺があるが これらは存在していなく 諏訪国にある諏訪大社は、一応建ててはいるが僧兵はいない。諏訪国、諏訪国より東、東北は神国なのでお寺も僧兵も皆無である。仏教と一括りに言ってもかなりの派生があるんだが、その中に鎌倉時代初期の日本の僧 法然が開祖した浄土宗がある。キリスト教が日本で広まらなかった理由は浄土宗が原因の一つ。仏教は基本的に悟る事、涅槃の境地に立つ為が理由ではあるが、浄土宗の思想は仏教の考えでは無くまるでキリスト教だ。盗賊だろうが悪人だろうが鬼だろうが南無阿弥陀仏さえ言えば極楽浄土へご案内だし。似た様な物で鎌倉時代初期の僧である 親鸞 開祖の浄土真宗とかもあるが、宗名が似た別物だ。お雑煮を食べ終えたのでお椀を置き、美味しかったので妹紅にお礼を言っておこう。

 

「雑煮美味しかったぞ妹紅。俺に嫁げ」

 

「お粗末様でした。私が嫁ぐ為には父の許可を得て下さい」

 

流れで行けると思ったが駄目だった。内心舌打ちして不比等の顔を思い浮かぶ、幽々子は俺が勝手に貰って行くがどうしたもんやら。この先、まともではないからな。

…神や妖怪、天使や悪魔が実在している時点でまともではないな。天竺、唐土、日本。この三国は妖怪と仏教で繋がっている。仏教という宗教によってでもあり、日本の妖怪は中国起源であるが、その中国の妖怪もインド起源ばかりである。

 

「それでお兄様はどうするのですか?」

 

「白蓮と年が近い幽々子を会わせたいし幽々子と明日諏訪国に帰る。で、全ての妖怪引き連れて平将門と蝦夷に会いに行くよ。諏訪国の妖怪を率いて行くしきっと壮観で見ものだぞ」

 

「そんな事をすれば諏訪国は空き巣になるのでは」

 

「その為の民と餓者髑髏。昔から師範の美鈴が武術を教え、実際はただの手合せだが、民は萃香達とお互い殺し合ってきたし大丈夫だ。あ、今の内に輝夜は俺の永遠を解いてくれ」

 

「ですが永遠の魔法が無くなるのですから何かあれば死にますよ、それは忘れないで下さいねお兄様。まだお兄様の妻になる時に交わした私との約束を果たしてないのですから」

 

約束は守る、俺が生きていればな。急に体が肌寒くなって来た、もう俺には永遠の魔法は無くなった様だ。お雑煮を食べ終えたので輝夜の頭を撫でながらこの先のプランを考えているが、どうするか寝ころびながら考える。そうだな、よし決めた。

 

「とりあえず輝夜の寝室に行くか」

 

「え、何故」

 

「天界に行った時に言っただろう、いつか輝夜には俺の子を産んで貰うと。今がその時、だから輝夜を抱く為に行くのだ」

 

咲夜も混ざるかどうか聞いてみた。稗田阿礼の子を貰ったのはいいが、まだ赤ん坊だったのだ。なので咲夜が稗田阿礼の子を面倒を見てくれている事と、手袋の編み物があるのでと編みながら断られた。子の年齢はまだ2歳、もう1人で立つ事も出来る。少し大人し過ぎるのが気がかり。妹紅は夫婦ではないので誘えないし、今は輝夜だけだ。輝夜の手を掴んで引っ張って襖を開けて縁側に出て輝夜の寝室に行く。どうも輝夜と咲夜と妹紅は同じ寝室で寝ているそうだ。

 

「するにしてもまだ日は高いです。それに藍は出産しましたが、今度は 椛 と はたて が懐妊していると耳にしています。なんですか、お兄様は景行天皇を越えようとしているのですか」

 

「強ち間違いではない、だが俺は愛している女しか手を出さんぞ。空のお天道様も輝いている絶好の日。俺は暗い所より明るい所で輝夜の顔を見ながらしたいのでちょうどいい」

 

「嫌と言っても連れて行かれるのでしょう。女好きなのは構いません、ですが。お願いですから 武烈天皇の様にはならないで下さいねお兄様」

 

「武烈天皇。ああ、第25代天皇で、妊婦の腹を割いて胎児を見たり。馬の交尾を女達に見せて、

濡れた女を殺した武烈天皇か。分かってて言ってるんだろうがあれは創作だからな」

 

天津神のサグメはどうするか答えなかったし、鬼人正邪はスクナビコナに鬼退治ならぬ鬼捕縛を任せた。地上に降り立ったサグメなどの天津神は除いて。未だに月の都に住む月人、月の民を皆殺しにしなくてはいかん。だから一旦帰ろう。輝夜と縁側を歩いていたら空から庭に依姫が降りて来る、無事に帰って来たようだ。

 

「お帰り依姫。どうだった。西行は生かしたか、殺したか」

 

「いえ。全ての回答は正解でしたので西行をファラリスの雄牛で炙り焼きはしていません。ですが、別の坊主は炙り殺しました」

 

「そうか。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、って訳じゃ無いんだがな。妹紅がお雑煮を一杯作ってるし、食べるか依姫」

 

「いいですね。空を飛んでいたので少し肌寒く、お腹も空いていましたので頂きたいです」

 

お雑煮を食べるかどうか聞き、微笑しながら頷いて微笑む依姫を見ていると何と言うか、既視感を覚える。依姫をじっと見つめて、体の隅々まで見るが依姫のお腹を見ていると何か、少し膨れ上がっているような気がする。

 

「ところで依姫さんや。さっきから気になっていたんだが、依姫のお腹。少し膨らんでないか」

 

最初は見間違いかと思ったが、お腹だけ的確に見間違えるのはありえない。もし太るなら足とか腕もその影響は受けるはずである。俺の質問に依姫は顔を赤らめ左手を頬に当て、右手でお腹を撫でながら流暢に話す。

 

「やはり分かりますか。遂に私達の愛の結晶が形となりました」

 

「形って何が」

 

「私と弘さんの子を、授かったのですよ」

 

「苦節数億、やっと依姫お義姉様が垂涎の的でしたお兄様の子を授かる事が出来たのですね。おめでとうございます」

 

依姫は輝夜に感謝の言葉を口にするが、俺は言葉にできない声を挙げながら、隣にいた輝夜に抱きつく。体の震えが止まらない。輝夜はそれに気づいたのか輝夜の方からも片手を俺の腰に回して抱きしめ、もう片方で俺の頭を撫でる。

 

「だ、大丈夫ですかお兄様。体が震えていますよ」

 

「子が出来たのは非常に喜ばしい。喜ばしいんだが。俺にはもう永遠の魔法が無いのだ。こんな事が知られたら永琳、特に。と、豊姫に何を要求されるか分かった物では…」

 

「もう知られてますよ弘さん」

 

「なんだと情報をリークしているのは誰だ!?」

 

素足のまま庭にいる依姫に近づいて問い詰めたら、依姫は右手の人差指を上に差したのでそれにつられて見ると、上空には鴉の翼を羽搏かせていた鴉天狗の 射命丸 文 を発見。スカートなので文の下着を見ていたら、俺が文に気付いた事に気付いたのか、文はやばいバレたと表情を変え、天狗一の速さで東にある諏訪国の方角へと飛んで行った。はたてと椛が妊娠したので文にしわ寄せが来ているのではないかと思っていたが、そんな心配はする必要は無かったようだ。永琳の命令で俺の監視をしていたのだろうか、とりあえず

 

「…あの女天狗、泣こうが喚こうが辱めて絶対に凌辱的に犯す」

 

「先カンブリア時代の地球に都市があった時、八意様に何度注意されても変わらない弘さんなので止めはしませんが、私が目の前にいる時にそう言う事を仰るのはやめて欲しいです」

 

「すいません」

 

頭を下げて謝る。頭を下げたので依姫のお腹が目に入り、改めて孕んだのかと再認識。幸せ最高潮に満ち溢れた表情な依姫のお腹を右手で撫でてみようかと思ったが、まずは依姫の許可を得よう。

 

「依姫、お腹。撫でていいか」

 

「いいですよ」

 

依姫の許可を得たので右手で撫でて思うが、生命の神秘である。縁側にいた輝夜も撫でたいと思ったのか、置き石に置いてある履物を履いて俺の隣に来て一緒に撫でながら話す。

 

「不思議ですね。お腹が膨れていくなんて」

 

「どうする依姫。俺は明日平安京を発つ。子を産むとしても平安京で子を産むか、諏訪国で子を産むか、もしくは月の都に戻るか。どこに行くとしても送るぞ」

 

子ってのは意外とそう簡単に出来ないのに出来るとは、未曽有だ。依姫は目線を空へ見て、右手の人差指を右頬に当てながら数十秒、今も依姫のお腹を撫でていた俺に目線を下げ、考えた末で出てきた言葉がパチュリーとレイラだった。

 

「パチュリーとレイラはアリスと共に諏訪国へ移住し、天竺から来た100は超える魔女達と住んでいるのでしたよね? 久しぶりに会いたいですし諏訪国に行き、産む事にします」

 

「そうか。もう一人だけの体じゃないし、明日は歩いて行くより天の磐舟を使って空から諏訪国に行こうか。何かあってからでは遅い」

 

きんちゃく袋に入れていた天の磐舟と打ち出の小槌を取り出し、天の磐舟を地面に置いて打ち出の小槌を何度も振ると天の磐舟はどんどん巨大化。三人は乗れるほどの大きさになってので、庭に天の磐舟を置いたまま依姫にお雑煮を食べて貰う為、依姫のお腹に気を付け、俺はまず裸足だったので庭から足置き石へ行き、玄関に行って履物を履いて輝夜と共に案内。心配し過ぎだと依姫に笑われた。まあ依姫を案内して妹紅が作ったお雑煮を美味しそうに食べている光景を見てからその後輝夜を襲ったがね。

西行の言伝を依姫に聞かされたが、殺すのはやめる事に。西行が記憶で苦しんでいるなら記憶を消せばいいと判断。幽々子に嫌われるのはいやだし軟化。これで溜飲が下がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中。諏訪国に帰る前に、一度シンギョクに会おうと考え藤原氏の屋敷から出て真夜中の平安京を歩く。暗いしごちゃごちゃして迷うし平安京って無駄に広すぎる。クソ、やはり天皇だけ寿命が無い存在にして、神裔は人間と変わらない寿命にするべきだったか。それでも100以上は生きるのだが。えー シンギョクの在地は平安京で言うと西大宮大路の西、冷泉小路の南、二条大路の北だからうろ覚えで歩いていくと見覚えがある塀を発見。そのまま中に入り屋敷の庭まで来ると誰かが縁側に座りながら月見酒をしながら月見団子を食べていた。

 

「月見か、昨日は望月だったから今日は既望の様だな」

 

「んー? あ、お前さんかい。待ってたよ」

 

おいでおいでと、小町の隣の縁側を手で叩いて誘う。俺もご相伴に預かろうかと小町の隣に座ると、月見団子を掴んで差し出してきたのでそのまま口にいれて噛む。中々美味い。諏訪国出身の金太郎の役目は、平安京に住む貴族の姫君を誘拐したり、誘拐した姫君を生きたまま喰ったりしていた大江山に住む鬼の酒呑童子と配下の四天王を頼んでいたが、金太郎は正々堂々の相撲勝負で全員の鬼達に勝ったらしく、酒呑童子やその配下達は金太郎をいたく気に入った様で金太郎の配下になっている。金太郎が酒呑童子達に勝つとは、萃香、勇儀、華扇達と共に鍛錬と言う名の命を懸けた殺し合いをした賜物だな。だがシンギョクについてはまだ聞かされてないのでこうして来たのだが。

 

「シンギョクはどこにいる。シンギョクはまだ仕事か。もしくは玉藻御前を捕らえ損ねたのか」

 

「今さっきシンギョクはあそこの井戸から地獄に行って、地獄の閻魔の補佐をしてるよ。玉藻御前は下野国の那須野へ逃げちまったみたいだね」

 

それと神綺が最近酸っぱい物を食べたがっていると小町はシンギョクから聞いたらしい。えー いやウサギのメスがする想像妊娠みたいなもんだ気のせいだろ。確かにあの時、永琳と一緒に神綺にも手を出したがまさか。下野国と言えば平将門がいる常陸国の隣国ではないか。なんと好都合、やるじゃないかシンギョク。これで紫と幽香が諏訪国の全勢力を動かす為、リグル以外で東に行く理由が一つ増えた。挙兵ならぬ挙妖をしよう。玉藻前は中国が起源と言われるが、実際はインドが起源だ。中国には妖怪は多くいるが殆どの中国の妖怪はインドが起源だし、仙人で道教の神と言われる孫悟空とかはインド神話のハヌマーンが起源であり、他にゾロアスター教 悪魔ダエーワ などの考えはインド神話の影響を受けている。

 

「それで、お前さんは何しに来たんだい。玉藻御前の話を聞きに来たのが本命じゃないだろう?」

 

「実は小町の夜這いに来たんだ。想定外に小町はまだ起きていたが」

 

「求められる程の美しさを兼ね備えたあたいは自分が怖いよ。縁切寺にでも駆け込んでやろうか」

 

「やめろ。まだ夫婦に成りたてだと言うのに離婚は早すぎる」

 

月見団子をもう一つ貰い、口に放り込んで呑み込み小町に酒を注いでもらって酒を煽る。聞く事はもう聞いたしお暇しよう。縁側に座っていたが立ち上がり、シンギョクに忠告しておくよう言伝を小町に頼む。

 

「夜明けに諏訪国へ帰るが後から来る小町はともかく、シンギョクは諏訪国にルーミアがいるから気を付けるよう言っておいてくれ」

 

「あいよ、伝えておく。なあお前さん。子孫繁栄というと誰が喜ぶのかね」

 

「唐突だな」

 

「ふと思っただけだよ。特に深い意味は無いから」

 

あははーと顔を真っ赤にしてかんらかんら。これ、間違いなく酔ってる。小町の斟酌を汲み取り、答える。

 

「1つは国だな。国としては税を治める人間や田を耕す行為、働く事に何の疑問を抱かない人間、奴隷の家畜が多いに越した事は無い。後は学が無ければ尚いい、扱いやすいからな」

 

「そう」

 

返答を聞いた小町は小声で返し、また酒を煽る。酒を煽り終えると空いた片手を振って上機嫌に別れを告げた。

 

「諏訪国に帰る道中気を付けるんだよー。初夜を迎えずに夫が死んで未亡人の仲間入りは御免だからね」

 

「だな。永遠が無くなった今の俺を殺す事は人間でも出来るし。あ。今 初夜を迎えようか小町」

 

「…あれ。もしかしなくてもあたい墓穴掘った?」

 

俺も片手をひらひらさせながら屋敷を出ようとしたが、初夜に反応して立ち止まって振り返り、小町に近づいて俺の両手を小町の両肩に置いて逃げられない様にして、お互いの目を合わせて宣言。

 

「小町に惚れた。だからお前を抱かせろ。そして俺の子を産んでくれ小町」

 

「お、男らしい告白じゃないか」

 

夜明けには平安京を出て諏訪国に帰るが、依姫だけでなく幽々子も連れて行こうか。年も近い白蓮といい友達になるやもしれん。ならば、自分の母に似ているからと幼女を誘拐して監禁して手籠めにした源氏物語のマザコン男を俺が演じてみよう。




依姫は妊娠しました。現時点で確定懐妊しているのは椛、はたて、依姫です。

永琳は勿論の事、神綺やサリエルは数話前で弘天は手を出していると書いてます。懐妊したかどうかは今は分かりません。今は。


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諏訪国の魔法の森

今回魔法の森が出てきます。魔法の森は場所としてですが、長野県小谷村にあるブナの森に囲まれた鎌池辺りか長野県茅野市豊平にあるため池の御射鹿池な感じです。魔法の森に池は必要ですので。
魔法の森のイメージは長野県の御柱の森か鹿児島県の白谷雲水峡ですかね。まあイメージとしてですけど。
とりあえずその辺を魔女たちが術式や原生林な森に魔法を掛けたり魔法の植物をあちこちに栽培して、瘴気やら迷路状やら結界やら異次元空間やら色々しているので人間も妖怪も迂闊に入れば迷って瘴気とかで死ぬんじゃないかな。多分。


「お久しぶりお兄さん」

 

「ああ。最近はどうだパチュリー。レイラやアリス、魔女達と平穏に過ごせているか」

 

「ええ。神も妖怪も民も、みんな私達魔女が吃驚するほど良くしてくれてる。喘息も完治したから快適ね。エレンも魔女狩りに怯えず、平穏に魔法の研究で勤しんでるから」

 

魔女達が住んでいる館、ヴィクトリアン・ハウスみたいな建物の傍で木製の椅子に腰を掛け、お菓子と紅茶を飲みながらパチュリーと談笑しているが、ここは森のど真ん中で森に囲まれている。この場所は魔女達が原生林に魔法を用いて元は原生林だった場所を異空間に繋げ、神や妖怪は除いて人間が迂闊には入り込めない様になっている。

まあマヨイガの森みたいな感じで、名はそのまんまで魔法の森だ。それと紅茶やお菓子が無くなった時に新しいのを用意する為、魔界にいるはずの小悪魔がパチュリーの傍にいる。どうも、エリスの命で小悪魔はパチュリーに仕えているらしい。一応小悪魔と呼んでるが、小悪魔は愛称であって本名じゃない。パチュリーは相変わらず本を読みながら会話するが、一旦読むのをやめて俺を見る。

 

「それでどうしたの。東に行くと聞いていた筈だけど」

 

「実は、依姫が妊娠してな。お腹に子を宿した状態で働かせる訳には行かんし、依姫が余計な事をしないかどうかの監視を頼みたい」

 

「妊娠は御目出度い事だけど、監視…? 余計なことって具体的に言えばどんな事」

 

「お節介焼きだから、放って置けば勝手に掃除やら料理やらする女だ。せめて子を産むまでは安静にしなくてはいかんしその為の監視を頼む」

 

数秒程お互い沈黙。パチュリーは俺の隣に目線を一度向けたが、最後は頷いて承諾した。安心して右手を使い俺の隣にいた依姫の肩を掴んで抱き寄せた。依姫の顔を見たら不服顔で、椅子に座っている依姫の上にレイラが乗ってケーキやお菓子を食べている。

 

「弘さん。私は自分の体調管理が出来ない女ではありません。それ以前に、この場に私がいるのにパチュリーに監視を頼むなんてどういうつもりですか」

 

「隠し事されるよりはいいかなと思って依姫とも同席して話をするんじゃないか。なあレイラ」

 

「うん!」

 

満面の笑みでレイラは俺に顔を向けたので、右手で依姫を抱き寄せたまま左手でレイラの頭を撫でる。隠してたら隠してたで俺が依姫に怒られるんだ。ならば最初から打ち明けておいた方がいい。パチュリーには最後に、萃香達へ頼んで諏訪国の寺子屋建てるから諏訪国の子供達に魔法のご教授願いたいので、暇があれば頼むと魔女の皆に、特に エレン へ伝えて欲しいと頼んでおいた。

まだ不服顔の依姫と口吸いし、数秒程したらやめ、依姫の頭を撫でながら椅子から立ち上がって、帰り際にパチュリーの背に控えていた小悪魔を見てアイコンタクト。すると小悪魔は頷いた。俺は背を向けて魔法の森から抜けようとし、レイラと手を繋いで去る。この魔法の森、魔女の誰かに案内されないと迷うんだ。

 

「しかしこの魔法の森、不気味で怖いんだけど」

 

「もうー なさけないなー」

 

笑いながらレイラに言われるが、不気味で薄暗いし、お化けが出そうで本当に怖い。レイラと手を繋いでいたから少し手を握る力を強めたら、痛いよとレイラに言われたので繊細にレイラの手を握りながら奥に進む。結構歩くのかと思いきや、辺りが明るくなり太陽の日差しが所々に差し込んで来た。数分で魔法の森から抜け出せるようだ。魔法の森から抜け出せたのでレイラは帰ろうとしたが引き留めて一緒に神社に向かう事に。白蓮と幽々子達に会わせる為だ。魔法の森から神社の近くにある鎮守の森まで歩き終え、そのまま歩くと森を抜けて神社の庭に出る。縁側で二人の少女が森を抜けた俺に気付いて駆け寄って俺の元へと駆け足。

 

「氏神様ー! 寂しかったよ会いたかったよー!」

 

「ぐはぁ!」

 

諏訪子直伝のロケット頭突きをお腹に食らい、倒れなかったが咳き込んだ。もう永遠が俺にはない。永遠を無くした理由は平将門に会いに行く時、マミゾウの能力を使う際に邪魔だったからだ。お腹で顔をすりすりしている白蓮を撫でながら白蓮にもう幽々子と友達になったのか聞いてみた。摂津国の弘川寺にいた西行は記憶を既に消している。

 

「び、白蓮と幽々子はもう友達になったのか」

 

「私達友達になってもう仲良しなんだ! ねー?」

 

「ねー?」

 

白蓮と幽々子は顔を向かい合わせて首を傾げながら同調。レイラの事を紹介しようとしたらもう知っていたらしい。パチュリーやアリスも顔を合わせて友達になっている様だ。レイラと白蓮は幽々子に魔法を教えてあげると幽々子を連れて神社の庭で魔法の勉強会をし始めた。神社のふすまを誰かが開けて、中から出て来たのは藍だった。

 

「子が産まれたそうだな藍」

 

「はい。主と私に、珠のような可愛い娘が産まれました」

 

縁側に座り俺の隣にいる藍が1人の赤ん坊を抱っこしてあやしている。横目で藍を見ると藍のその顔は母親のそれ、俺も抱っこしてみたが結構重かった。目の前の庭には平安京から連れて来た幽々子と白蓮、奴隷商人から買い取った魔女のレイラの声が耳に入る。一緒に遊んでいる様だ。あ、それともう1人いる。白蓮の背に隠れているんだが、その子は白蓮の妹。前、白蓮には妹が産まれたそうだが俺がいなかったので聖は永琳に名付け親を頼んだらしく、名付け親として頼まれた永琳が名付けたその子の名は 命蓮 と永琳は名付けた。諏訪国には100を超える魔女がいるが人里から少し離れた所にある原生林で、魔法を使って原生林を魔法の森なる場所へと変貌させて命の危険にはもう怯えずに生きられるので魔女達、エレン、パチュリー、レイラ、アリスは気ままにそこへ住処を建てて住んでいる。一度魔法の森に俺は行ったが迷ってしまい、魔女の誰かが案内してくれないと迷うのだ。もしくは魔女達に頼んで魔法の森へ認証させるとかの手段もある。しかも魔法の森に魔女達が化け物茸やマンドレイクを植え魔法を糧として魔法の植物を栽培している。どうも魔法の森のあちこちにあるマンドレイクという植物と化け物茸の胞子が原因で魔法の森は迷うようだ。

 

「主。私はこの子の真名を考え、いずれその真名を教えるつもりですが。主の許可なく勝手に真名を考えてもよかったでしょうか」

 

「産まれた子が男の子ならまだしも女の子だし、男の俺が考えるより女の藍が考えた名がいいと俺は思うから気にするな」

 

藍は抱っこして右手で寝ている赤ん坊の背を優しくぽんぽん叩いてあやしながら俺に聞いた。白蓮とレイラが幽々子に魔法の使い方を教えている光景を眺めながら気にするなと首を振る。

諏訪国の政治を任せている 豊聡耳 神子 物部 布都 蘇我 屠自古 の評判を軽く聞いてみたら、民達から不満は出て無いそうだ。よかったよかった。流石、大和朝廷の政治に携わっていた者達だ。

 

「子を産んだばかりで悪いんだが狐で稲荷大明神の藍に頼みがあるんだ。嫌なら拒否しても構わない」

 

「私は主や永琳様に仕える巫女であり神使なのですからお気になさらず。寧ろ私にもっと言いつけて仕事を与え、命令してください」

 

藍の言葉に感謝しながら藍にはこの後下野国へ赴き、玉藻御前という女性と話し合い懐柔してほしいと藍に言ったら、分かりましたと一瞬も悩まずに即答で返される。ここまで従順なのはやはり心配である。昔から俺の命が優先で自分の事は二の次なのはありがたいし嬉しいが、俺みたいに自分の事を一番に考え生きて欲しい物だ。

藍の台詞を聞いてまずは両手を数回叩いて呼び出す。目の前に目をぎょろぎょろ動かすスキマが開き、中からは紫と幽香が顔を出し、最初に幽香がスキマから降りて俺に近づいて右手の掌を俺の右頬に当てた。

 

「お父様。やっと帰って来たのね。帰って来て私達を呼び出してくれるのをずっと待ってたわ」

 

「それよりお父さん大丈夫? 顔が辛そうに見えるんだけど」

 

紫も幽香に遅れて俺に近づき、縁側に座っている俺の隣に座って俺の顔を覗き込む。白蓮に諏訪子直伝のロケット頭突きを喰らっただけだと言ったら、苦笑いしながらご愁傷様と俺を慰める。感傷に浸りたいところではあるが、そのまま本題に移る。永琳はいない。今は月のクレータのティコにある研究所だ。月を無くすためにな。

 

「今からどれだけの妖怪を動かせる」

 

「すぐに動かすなら300から500くらい、かな。パルスィやヤマメの百鬼夜行にはまだ八ヶ岳に住む妖怪を全て平らげてないから動かせないよお父さん。八ヶ岳は本当に広くて高いね」

 

「私、萃香、勇儀、華扇が一緒に行くなら苦戦は強いられる事はなさそうね。私達4人だけでも十分な戦力になるから」

 

「なになに、久しぶりに戦えるの? 絶対私達行くから、来るなと言われても絶対行くから! だいだらぼっちみたいに大きい手洗鬼と競うのも楽しいけどね」

 

今は紫や幽香、萃香達の配下だが。西の妖怪だった 手洗鬼 とは鬼の名があるが鬼では無く、だいだらぼっちと同一視されることもある四国地方の妖怪であり巨人だ。四国地方の妖怪 犬鳳凰 も配下にしてる。霧のまま喋る萃香が行く行くとしつこいが、元よりその気だったので連れて行く。それを聞いた萃香は霧のまま喜びの声を挙げて勇儀と華扇に伝えてくるとこの場にいた萃香の霧と気配が消えた。

 

「じゃあ萃香達も連れて行くか、ならば紫に幽香。関東、下野国にいる百々目鬼、玉藻御前、リグルを引き込む為に全ての妖怪を引き連れて下野国に向かってくれ」

 

「分かったわお父様。東の妖怪を全て叩き潰せばいいのね、じゃあ行くわよ紫」

 

「いや叩き潰したらダメでしょ幽香。その前にぬえも呼ばなきゃね。幽香のお目付け役だから」

 

幽香はぬえのお目付け役と聞くと立ち止まって振り返り、暴走しないからぬえをお目付け役にしなくても大丈夫と、幽香は目で訴えかけるが俺は口笛を吹いて気付かない振りをする。

リグルは下野国にある戦場ヶ原、玉藻御前は下野国にある那須野、百々目鬼は下野国にある明神山、二荒山神社の近くにいる。他にしずか餅や化灯籠、ムジナに化けて真夜中 不気味な歌を歌いながら徘徊する小豆研ぎ婆。あ、雷獣も下野国、栃木県の妖怪だった筈だ。紫と幽香には雷獣をもう一匹捕獲して貰おう。いや、それは紫と幽香より華扇と華扇が飼ってる雷獣の方が適任やもしれん。後で頼んでおこう。紫と幽香は了承して妖怪達を挙妖しにスキマへと入っていく。俺も腰を上げ、藍を見る。

 

「子はどうする藍。そのまま置いとく訳には行くまい」

 

「大丈夫です。てゐに頼んでおきますから」

 

「氏神様… また遠くに行っちゃうの?」

 

いつの間にか白蓮が傍にいて、俺を見上げながら聞かれた。白蓮の服装は西洋風で、白黒のゴスロリ風ドレスに黒いブーツを履いている。どうも魔女のエレン、アリス、パチュリーが考え、魔法で造り出したらしい。

 

「平将門の件が終われば、暫くは諏訪国に留まる。だからそれまで待っていてくれ」

 

「うん…」

 

「ごめんな、黒姫」

 

片膝を地面に付け、俯く白蓮を抱きしめる。白蓮も抱きしめ返す。片手で白蓮の背を撫でて数分。いつまでもこのままではいられないので、名残惜しいが白蓮の背中を片手でぽんぽん叩いて離してもらった。別に、僧や仏教を嫌っている訳では無い。ただちゃんと、女や酒に溺れず、僧の役目を果たして欲しいだけなんだ。

 

 

準備を終えたので諏訪国を発とうとしたらお腹が大きくなってきている依姫に不安げな顔で見送られる。あれほど安静にしておけと言っているのに見送りに来た様だ。俺は平将門、シンギョクの命を拾うべく関東へ、紫と幽香も妖怪を引き連れて関東に行く。

今の永琳は色々忙しいし、諏訪子も椛とはたてに取っておくよう頼んでおいた高千穂峰の山頂に突き立てられていた日本神話の 天逆鉾 を使ってユーラシア大陸を上回る程の空に浮かぶ大陸を創造してもらわねばならんのだ。

 

「弘さん。やはり私も一緒に行った方がいいのでは」

 

「駄目に決まってるだろ。いいかパチュリーにレイラ。依姫は絶対に何かする事はないかと聞くのは目に見えている。二人の役目はお腹の子を労わる様に依姫を安静にさせるのだ」

 

「任せてちょうだいお兄さん」

 

「分かったー!」

 

魔法の森からパチュリーとレイラも来て見送られながら出立。竜頭蛇尾にならないように祈り、平将門がいる常陸国、茨城県にある利根川は 禰々子 という河童の女親分でメスの河童が神として祀られていたりする。東の妖怪 縊鬼 とかも欲しい。空で輝く太陽を見つめ、簠簋内伝を思い出しながら隣にいたマミゾウに問う。

 

「では早速、シンギョクの容姿を覚えているかマミゾウ」

 

「第一声がそれとは酷い男じゃ。シンギョクの容姿はちゃんと覚えておるわい」

 

マミゾウは木の葉を一枚俺の頭に乗せると煙が俺の体を包み始め、顔や着ている服や髪型がシンギョクと同じになる。マミゾウは手鏡を取り出して俺に鏡部分を向け、自分の顔を見るとなんとそこには美男子が。瓜二つだ、これで平将門の妻である桔梗、桔梗伝説の話を使える。人間の目では俺が平将門になっているのを見抜く事は出来まい。この優男な素顔で紫と幽香を見る。

 

「どうよ紫と幽香、美男子だぞ」

 

「好みじゃない」

 

「気に入らない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の神に痩せこけた城頭巾を頭に被る坊主や咳をする女が平伏して命乞いをする者が寺の前で大勢。この場の僧や女は飢饉や病に苦しんでいる者が多い。大剣を肩に担いで1人だけ立つ男は笑いながら平伏している者達に言う。

 

「いやいや。今や神仏習合されてる俺って 牛頭天王 だろ? その俺が直々にお前達を殺してやるんだ、寧ろ僧なら感謝してくれよ。死ねば涅槃もクソもないぜ」

 

また一人、一人と、僧兵や坊主や女の頸を刎ね、スサノオは返り血を浴びまくり身体の所々が赤一色で染まり、辺りは死屍累累。すると死屍累累だった死体が立ち上がり、うめき声を挙げながら辺りを徘徊し始め、そのまま延暦寺や森に入っていく。少し時間が経つと延暦寺の中から僧の叫び声が聞こえてくるが、今頃ゾンビと化した者達に目や腕や足、耳や鼻に舌。両手や両足の親指、人差指、中指、薬指、小指を噛み千切られながら喰い殺されている頃だ。それを気にせず目につく範囲で生きている人間はいなくなったので、これで十分かとスサノオは大剣を肩に担ぎながら隣で僧兵や女が殺される光景を見ていた肩から死体を操っている黒猫のお燐を乗せていた輝夜に確認する。

 

「蝦夷、平氏、源義仲、奥州藤原氏も神国側だがよ。既に建てられた寺は燃やさずに残し、ちゃんと修行してる坊主は殺さなくてもいいんだよな」

 

「そうね。お兄様も放蕩だけを鏖殺しろと仰っていたから。お寺を焼失させる理由も、僧兵は皆殺しだけどちゃんと修行している僧を殺す理由はないもの」

 

なにも日本の西側に住む全ての僧を殺し、仏教に関係する寺などは全て取り壊して仏教を滅ぼそうとは考えてはいない。ただ天竺の宗教である ヒンドゥー教 は仏教の開祖である仏陀、釈迦如来をヴィシュヌのアヴァターラ、化身として仏教をヒンドゥー教へ取り込んだように、いずれは日本の仏教を神道に取り込むからである。とは言え、それはちゃんと修行をしている僧の場合に限る。人を殺す僧兵や、女や酒や金に現を抜かしていた坊主たちが、ちゃんと慎ましやかな生活を送りながら修行していた者が比叡山延暦寺に1人でもいたらその僧は殺さないといった話。悪僧、僧兵は別だ。僧兵が自分の身を自分で守る考えは大事ではあるが、僧が兵になるなど仏教の考えから逸脱している。これでは仏教とも仏に仕える僧とも言えない。

咲夜が森の中から出て来る。全ての僧が死んだかどうかを確認していた。数人ほど森へ逃げたのだが、咲夜が追いかけて止めを刺す為だ。咲夜の頬に数滴の返り血が付いている事に気付いた輝夜は、ハンカチを取り出して返り血を拭い。咲夜は輝夜にお礼を言いながら現状報告。

 

「逃げた僧と僧兵を仕留め終えましたわ。これで延暦寺の僧も僧兵も全滅ですわね」

 

「まあ。十六夜 咲夜が仕留め損ねても天津神達が比叡山を包囲しているから無駄な足掻きだけどよ」

 

「延暦寺の僧兵へ陣中見舞いにと、 先に袋に入った小豆を届けた方が良かったかしら」

 

咲夜はフルネームで呼ぶなとスサノオに言うが、輝夜の言葉を聞いて袋の鼠かとスサノオは腕を組んで高笑い。僧が逃げた時点でアウト。僧が神や仏に許しを請う時点でアウト。僧が死にたくない生きたいと、殺される恐怖を感じた時点でアウト。まだ修行をしている未熟者とは言え、感情に突き動かされる僧は生かす理由は無い。もちろん僧も人間だ、死にたくないと生存本能が訴えかける。だが僧が何の為に修業をするかと言われたら煩悩を捨て、悟る為である。煩悩の犬は追えども去らずとも言うが、煩悩を捨てる事は感情も思考も捨てなければいけない。それらは釈迦の様に涅槃の境地へ向かう為には邪魔なのだ。スサノオは大剣にこびりついた血を手ぬぐいで拭いながら、延暦寺は終わったので次はどうするかを輝夜に聞く。

 

「んで。次はどこに向かえばいいんだよ」

 

「僧兵がいる所は全部当たろうと思うの。次は摂津国にある石山本願寺。その次は高野山真言宗。西に向かいながら修業を疎かにしている僧、人を殺す僧兵には消えてもらいましょう」

 

「では山城国の近畿地方から九州までを天津神 総動員で当たりましょうか。戦力を一つの国に集中するより分散した方が終わるのが早いですから」

 

「え、まさかあたいも行くの?」

 

輝夜の肩に乗っていたお燐の言葉に輝夜は顔をお燐に向けて頷いたので、お燐は早く帰りたいと嘆き、咲夜は輝夜の従者なので従う。弘天は延暦寺や本願寺の女や酒に現を抜かす僧や僧兵を皆殺しにしてくれと輝夜と咲夜にお燐は頼まれているが。序でなので近畿地方から九州にいる僧兵を消した方がいいと考え行動に移す。延暦寺の中にある僧や僧兵の死体は一か所に集めて火葬や エンバーミング せず放置しておくことに決めた、死体は放って置けばいずれ腐敗して遺体から感染症が蔓延するのだが、これは今も病が流行っている病原菌を増幅させるためだ。

そして死体を放置する上で重要なのは、充分な供養を受けていない死体が化けた 陰摩羅鬼 を生み出す為であり、この陰摩羅鬼は山城国の妖怪でもある。

 

「あら、スクナビコナじゃない」

 

「少名 針妙丸だってば」

 

森の奥から来訪したのはスクナビコナ、もとい 少名 針妙丸 薄紫色のショートヘアーにお椀の蓋を頭に被り、服は赤色の和服で、裸足。 針妙丸は辺りを見渡して息を漏らす。

 

「天津神のサグメがいると思って来たけど、いないのね。折角、瓜子姫と天邪鬼のお話で自作自演をした人物をお縄にちょうだいしたのに」

 

スクナビコナは打ち出の小槌で人間と同じ大きさになっている。スクナビコナは縄で括られて簀巻きにされている人物を地面へ放り投げ、簀巻きにされた人物が地面に叩きつけられる痛かったのか声を漏らしたが、頭には小さい角が二本生えている。朱雀門に住んでいた天邪鬼の鬼人正邪は怒鳴り声を上げる。

 

「縄を解け、私は決められたレールを進むのはゴメンだ! 今の人間達が何も考えず神を崇める様に従って堪るか!」

 

「昔から何かに従うのを嫌い、逆らうのが大好きだったわね。でも天邪鬼は脆弱な妖怪、打ち出の小槌も無いのにそれで天津神や国津神にどう対抗するの。貴方一人で何が出来るの」

 

「人間は、何かに縋らなくては生きられないですわ。食も水も満足に供給されている訳ではないのよ」

 

スクナビコナはそれに首を横に振り、咲夜は今の人間たちの生き方は何も間違ってないと返す。天邪鬼の鬼人正邪には諏訪国に住む 

伊吹萃香、星熊勇儀、茨木華扇、ヤマメ、パルスィ、紅葉、コンガラ、鬼人正邪。

この8人の鬼女たちに与えられた魏石鬼、または八面大王の再結成には必要不可欠。だから五体満足で生かして捕らえ、現在簀巻きにされて地面に横たわっている。正邪は芋虫の様な動きをしながらまた怒鳴った。

 

「お前達、頭おかしいだろ? 決められた通りに進んで何が楽しい。バカみたいな年月を生きて同じ事を繰り返して。そんなの生きていると言えるのか。何度 時間の矢を放つつもりだ!」

 

正邪は頸を動かして先程から黙って静観していた咲夜を見るが、咲夜は正邪に向けていた視線を横に逸らした。スサノオは咲夜に替わって正邪に言う。

 

「おいおい勘違いすんな、時間の矢じゃなく時間のブーメランだ。それによ、全ては同じに進んでねえし並行世界は存在してねえ」

 

人間とは もしも 仮に if maybe 可能性 という言葉が好きだ、下らない。神を見た事が無いと言ってる人間共の様に、観測できない時点でそれは存在しているとは言えないのだ。

確かに物理的因果性に基づき保たれているなら、世界は無数に重なり合っている。しかし、世界は重なり合っているが、世界は一つだけしか存在しない。

 

「御託はいい! 妖怪は数多くいるが、その中にいる私の様な弱者も強者な妖怪も神の操り人形じゃない!」

 

スサノオは笑って言うが、正邪はただ怒鳴るだけ。この先、天邪鬼の鬼人正邪は必要。双六勝負をした弘天は勝つ事が目的では無く、鬼人正邪を見極める必要があったから双六勝負の勝負を申し込んだ。昔から天邪鬼とは嘘を吐き、本当の事は言わないのが天邪鬼だったから。もしあの双六勝負に弘天が勝っていても仲間になる事は無かったのは目に見えていたのもある、そこで鬼人正邪が嫌がりそうな負けを選んでその場から去った。だからスクナビコナは鬼人正邪を捕らえ、簀巻きにしてサグメに引き渡そうとしたのだ。輝夜は縄で簀巻きにされている正邪を見下ろし、右手を正邪の頭に置いた。

 

「正邪。貴方の言いたい事は分からないでもないけど、お兄様には貴方が必要なのよ。それに逆らうのなら私達ではなく脳、世界、精神、力への意志に逆らいなさい。ねえ、咲夜」

 

「人間は自分達が脳を支配していると勘違いしていますが、実際の人間は脳に支配されています。常に人間は束縛され、法に、秩序に、国に、記憶に、政治に。挙げればキリがありませんわね」

 

「それで正邪はどうしよう。サグメに引き渡しに来たけど無駄足でしたし。正邪、私達も輝夜と咲夜について行きましょうか。重いからスサノオ、お願いします」

 

「なんで結論がそうなるの!? 姫、私の縄解いて!」

 

「嫌」




白蓮は長野県のお話にある黒姫伝説の黒姫の立ち位置。


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宇宙樹

2話で終わる筈が果たしてここまで来たか。腹立たしいまでに拙劣である。
だがもっとも望ましい形に進んで来ているのは、とても愉快だ。
我が未来改竄素敵計画は、この作品が未完の放置を以てついに完遂されることとなる。
いよいよもってエタるがよい。そしてさようなら。


ただのネタ。


いつもは三つ編みな髪をストレートヘアーにし、赤と青の服装を着て、その上に白衣を被せながら履いている革靴でコツコツと小気味いい足音を白い廊下で鳴らしつつ、永琳の長髪が揺れながら優雅に歩いている。永琳の背にはる~ことも一緒だ。ここは表の月。もっと言えば月の表側にあるクレーターティコのど真ん中にあるラボラトリー。

物理的な意味ではないのだが。月人や月の民が住む月の都、もしくは月宮殿は隠されて月の関係者以外には見えないようにされ、月の裏側にある。そして永琳やる~ことがいるラボラトリーは月の表側、月のクレーターティコにあるのだが、月の都の様に注連縄を用い、月のクレーターティコを丸ごと結界で隔てられ、月人や月の民も含み、誰にも観測できないようにされている。

 

嘗て自然に対し無知だった古代の人間は、時間の矢が進むにつれ自然を制御できるようになり、

森羅万象に宿る神は、人にその座を明け渡した。

 

「いいえ違うわ。人間は自然を制御できる様になったと勘違いをしているだけ。森羅万象に宿る神は、まだその座を人に明け渡してはいない」

 

永琳は頭に浮かんだ言葉を否定する。人間は一時期、一度知ってしまえば急加速で科学と医学の進歩は進んだ。地学、化学、天文学、生物学、認知科学。何もかもだ。幸か不幸か宗教が存在していたので、急加速で進歩していた科学は遅れる。あの速度を見る限り寧ろ遅れてよかったとも言えるかもしれない。それでも医学や科学の進歩は並々ならぬ速度だった。

特に自然に関する科学。古来より人間の敵は人間ではあったが、その中でも特に自然。自然災害で人が死ぬなんてよくある事だった。時間の矢は遠くに放たれ、不治の病と言われた結核も治せる様になる。

 

「私達の敵は妖怪ではなく、地球か、またはハレー彗星かもね。だからこそまだ地上に都市があった当時。月人の大人は子供の頃の弘天、私、神綺、サリエル、魅魔に…」

 

だが科学や医学が急激に進歩しようと、それでもまだ駄目だった。人間は生物だ、動物だ。ベニクラゲという例外もあるが。生物とは、産まれた時点で根源的に死と時間を内包する存在。人間、動物が老化するのは活性酸素のせいでもある。どれだけ科学の進歩が著しくても、死と時間から逃れる事は出来なかった。時間があるから寿命が尽き、寿命があるから時間に流され、寿命以外でも死因は数えきれないほどあるのだ。そして人間は恐怖を感じる。

人間は 分からない 事自体が恐怖や畏敬の対象になる。恐怖や畏敬と言っても、恐怖と畏敬は似ているようで全く意味が違う。だからこそ人間は、自然災害や天変地異などは何故発生するかを考え突き止めて来た。月の引力に太陽や星の動き、風や雲の流れ、大地や海の様相。病の原因に作物の不作。地震に津波や噴火。それらを知る事によって恐怖の原因を知る事で、恐怖を取り除いて来た。しかし寿命、死についての恐怖を取り除けなく、逃げられなかった。分からないんだ。寿命や死んだ後の事は、死んでからしか分からないから。

 

「人間の視野は単眼が鼻側60度、耳側100度。両眼視野は120度、周辺視野を含めば180から200度に広がる。前方は観測出来ても合わせ鏡などを使わなければ後方の観測は不可能」

 

「つまり時間の矢と同じく人間は前しか観測が出来ない。だけどこれは人間の場合。人間が見る 世界が神や妖怪も同じとは限らない。生理学におけるクリプトビオシスのように」

 

ある人間達は死から逃れたいが為に色々考えた。寿命はダメでも脳さえ機能し、無事なら死ぬ事がないのではないかと脳を機械に移植や、寿命問題が解決しているかもしれない未来へ行く為にコールドスリープ。寿命をなくそうと仙人か、自分の死後死体を尸解して肉体を消滅させる方法、尸解仙の考えもあった。竹取物語、赫奕姫に出てくる富士山の火口で燃やせと天皇に命じられた岩笠や、不老不死の霊薬もその一つだ。

 

「神綺とサリエルは創造を。豊姫と依姫は剣と盾。神奈子は死と再生の永劫を。輝夜は瞬間の永遠と縷縷たる須臾を。咲夜と夢子は揺蕩う時間の矢を」

 

「魅魔とくるみは人間を。ユウゲンマガンとエリスは争いと不和を。夢月と幻月は夢幻館と夢幻 世界を。青娥は不死と回帰を。サグメは…」

 

しかしどれも夢物語で理想で夢で妄想で幻想。不可能だった。寿命から逃れるには、時間の呪縛から解放されることだ。だからこそ過去の人間は不老不死を求めた。沖縄で有名なのがジュゴンという生き物。沖縄には 人魚神社 があり、ジュゴンは妖怪としても扱われ、妖怪の場合はザンと呼ばれている。

このジュゴン。昔は不老不死の薬、または不老長寿として献上され、食されていた。当時の人間も死にたくはなく、長生きをしたかったのだ。

 

「シュヴァルツシルト半径の内側に落ちているとしても、弘天を殺した人物が分かっていながら殺せないなんて。円環時間現象、月の頭脳も形無しよね」

 

シュヴァルツシルト半径とはドイツの天文学者 カール・シュヴァルツシルト によって発見された時空領域の半径。永琳の背に付いて行きながら控えていたる~ことは何も言わない。さっきの言葉も、今の言葉も。誰に言うでもなくただの独り言。永琳はる~ことを連れながら自動ドアの前に立ち、開いた自動ドアからラボラトリーを出る。永琳は辺りを見渡し、月のクレーターにあるティコの見つけた。弘天がサグメから天鹿児弓を借りて放った光の矢で月光の矢。その矢には一枚の葉っぱがくっ付いている。これはアガスティアの葉。光で構成された矢は霊的な雰囲気を漂わせている。永琳はティコに刺さっていた月光の矢を抜き取り、弘天の神力と神気を光の矢として構成され蓄積されていた矢を永琳は取り込んだ。光の矢を永琳は体内に吸収させると、永琳の息が荒くなり恍惚の表情に。

 

「あぁ…! 弘が、弘天が私の中に入って来る…!」

 

弘天の神力と神気で構成されていた光の矢を吸い取った永琳は嬌声を出しながら、両手で自分の体を抱きしめながら身体がビクンビクンと断続的になり、腰が抜け、足の力も抜けてそのままティコへ尻もちを付く。

 

「私の全てを支配しようと弘天の神気が身体中に張り巡らせて、全身が火傷しそうよ。愛してる。私の全てを捧げていい程に、愛してるわ。弘天...」

 

永琳は余談に浸っているが、その隣には地面に植え付けられながらも芽が出始めて成長している。これは世界樹、宇宙樹と言われているザクセン人のイルミンスール、北欧神話のユグドラシル、中国神話の扶桑に似た物。

 

日本神話には朝日に当たれば四国地方の淡路島に及び、夕日の影で九州地方の阿蘇山を隠すほどの巨大樹と言われていた物がある。ただその巨大樹、日本神話に出てくるが名はない。その巨大樹は昔、切り倒されているがこれはその巨大樹の芽。

では一体何を養分としてその芽は成長しているのか。それは 月 だ。月自体に根を張り養分、糧としてこの芽は大きくなり、成長している。それ即ち、このまま放置していれば月は月としての概念を吸いつくされ、最後には月の消滅を意味する。まるで太陽神の天照が天岩戸へ引き籠り、世界から太陽が消えた岩戸隠れの様に。

そして日本の妖怪であり玉兎と同じく月の妖怪の 桂男 というのがいる。名は呉剛と言い、月にある月宮殿という大宮殿で桂男は月にある巨大な桂の木を伐っているという伝説がある。

 

「…」

 

その光景をる~ことは黙りながら、尻もちをついて色っぽい声を出しつつ貪り、善がりながら身体を痙攣の如くびくびく身悶え、息が荒い永琳を見つめていた。る~ことはアンドロイドでありセクサロイド。だが人間と同じく考える事も出来るし感情はある。創られた生命ではあるが、ゴーレムやホムンクルスなどの類では無い。永琳の隣で根付いていたのがもう芽として出ている。息が荒かった永琳は落ち着いて来たのか平静を取り戻していき、立ち上がり顔をる~ことに向けた顔を見たら、凄くつやつやしている。さっきまで真顔だったのに幸せそうな顔。永琳はそんな幸せな表情で片手に持っているアガスティアの葉をる~ことに差し出す。

 

「る~こと。これをレイセンに当てなさい。当てる部位はどこでもいいから」

 

「畏まりました」

 

る~ことにアガスティアの葉を渡し終えた永琳は満足感、円満に満ち溢れ慊焉とせぬ面持ちに、鼻歌を歌いルンルン気分でスキップしながらる~ことを置き去りにし、先に自動ドアの前に立ちラボラトリーへ入る。欲求不満の永琳は会えない寂しさからフラストレーションが溜まっていたが、弘天の神力を吸い取り満足した様子。会いたいなら会いに行けばいい話だが、永琳の仕事は終わっていないので会いに行けないのだ。る~ことは右手に持つアガスティアの葉を数秒程見つめ、アガスティアの葉を落ちない様に優しく握りながら永琳の後に続いた。る~ことは歩きながら鈴仙の事を想起していた。鈴仙は玉兎であり諏訪国にいるキクリと同じく月の妖怪だ。妖怪なので月の民や月人の様に皆殺しはしない。玉兎の中でもこの鈴仙は優秀で、能力は思った以上に厄介。一度、月人や月の民を皆殺しに月へ向かった際に苦戦をした事がある。原因は豊姫ではなく、鈴仙の能力が原因。それで悩みの種は先に刈って置こうと鈴仙は地下に幽閉されている。

る~ことは永久機関のセクサロイドなので寿命はなく、死に対して恐怖の感情は抱かない。恐怖を抱かないのではなく分からない、理解できないが正しい。そう、これは昔と同じだ。自然に対して無知だったが故に恐怖を感じた人間たちと、無知だったが故に恐怖の対象だった自然を畏敬の念を抱きながら神として崇め祀った事と、同じ。人間はどれだけの時間の矢を進めようとも、死んだ後については絶対理解できない。

このラボラトリーに似つかわしくない古びた扉を両手で開け、下に続く薄暗い階段を壁に右手を当てながら一段一段降りる。永琳は雰囲気の為こんな風に作り上げたそうだが、階段を下り終えまた歩行を始める。奥に到達し、る~ことは錆び付いた扉を開けると耳をつんざくような音が響く。油を指した方がいいかもしれないとる~ことは思いながら、目隠しされ、両手両足を縛られている鈴仙の元へ向かう。

 

「そうでした。鈴仙様のお食事を持って行かなくてはいけません。今頃、お腹を空かせている筈です」

 

方向転換し、台所に向かってシルバートレイに乗せて運ぶ。台所から出たる~ことは地下牢の最奥にある牢まで歩き終え、そのまま扉を開ける。地下牢に鈴仙は閉じ込められていたが、その牢は壁に吊るされている手錠。だが鈴仙は妖怪なので本来なら手錠を力づくで粉砕して牢から出る事は出来るのだが、出来ない。る~ことはシルバートレイを近くの台に置き、鈴仙の口に噛ませている唾液塗れな猿轡の一種、ボールギャグを外す為、ベルトを外してからアガスティアの葉を鈴仙に当てて鈴仙にハンカチを手に握らせる。鈴仙の口元や、地面は何度掃除しても唾液塗れになるが、る~ことは掃除が好きなので寧ろ喜んでいる。アガスティアの葉を当て終えたのでる~ことはまたシルバートレイを取り、鈴仙はる~ことから渡されたハンカチで口元を拭きながら顔を上げてる~ことを見た。

 

「ワッツ暴動やロサンゼルス暴動でも起こす気」

 

「あれより規模は大きいですが似たり寄ったりでしょう」

 

シルバートレイにある両側の取っ手を両手で掴みながら低めの台を鈴仙の目の前に置き、シルバートレイを台に乗せた。シルバートレイに乗せている食器からは湯気が出ている。る~ことはスプーンを使って掬い取り、両手両足を縛られ目隠しされている鈴仙の唇に当てて差し出す。献立はる~ことが作ったシチューだ。鈴仙は大分閉じ込められているが、妖怪なので筋肉などは衰えたりはしない。

一向に口を開けない鈴仙を見てる~ことは傾げたが、鈴仙は手錠を壊していいかどうかをる~ことへ聞いた。大丈夫ですと返答したので壁に固定され、ぶら下がっていた手錠をいとも簡単に引き抜き、目隠しを取ってそのままスプーンを手に取り、鈴仙は逃げる気がないのでシチューを食べ始めた。少々乱暴に引き抜いたので土埃がたったが、鈴仙は気にせずに食べ始める。それを見ていたる~ことは唐突に話す。

 

「鈴仙様が地上に住む者に対して抱く感情は何故湧き上がるか理解していますか」

 

「……そんなの、どうでもいいわよ」

 

「寝ている時にふと天井を見上げると。天井にある木目模様が人の顔に見える時があり、一度そういう風に見えるとそれ以降は顔以外に見えなくなる時があります」

 

「お師匠様に聞いた事があるわ。確か人間にはパレイドリアと言われてる。天井の木目が顔に見えるそれ、人によっては恐怖を感じるらしいけど。はいお終い、その話題終了ー」

 

日本のみならず外国にも神が実在しているが、各国にある神話が過去で実際に起きた。それがたかが数百万、数千万、数億年 経っただけで神が人間に一切の干渉をしなくなるのは考えられない。かつて神がいた座に人間が腰を下ろし座った、それも違う。半神ならともかくただの人間を神が認め、この世界から消えたりはしない。

神話に出てくる神は大概、無駄に人間へ干渉している。多くの神話にある神々に創造された最初の人間の男女や、大洪水。旧約聖書の出エジプト記にあるアロンの杖やギリシャ神話パンドーラーの疫病などがいい例だ。

人間には常識というものが固定概念として組み込まれている。その一つに人間は白人しかいないという固定概念があった。その昔、黒人を初めて見つけた白人の彼らは何と言ったのか。彼らは黒人を人と見なさなかったのだ。そして中世、魔女狩りが起きた原因の一つは。旧約聖書の二番目の書 出エジプト記 に記載されていた 呪いを使う女を生かすな という女の部分をウィッチ、 魔女に訳されたのが原因の一つ。それ以前に人種差別が起こる原因は何だと考えるかだが。

 

「それは恐怖です。人種差別と言っても、差別は自然界でもありますから人間だけに限った話ではありません。人間というのは自分達と違う者を異端者とみなしてきました」

 

「このセクサロイド、私はどうでもいいって言ってるのに。掃除ロボなんだから箒片手に掃除でもしてなさいよ。あの人かお師匠様ならともかく人間に恐怖を感じる訳がないわ」

 

る~ことは鈴仙を無視し。言語、動作、常識、見た目、思想。一つ一つ言いながら、開いていた右手にある五本の指を、る~ことは言葉を口から出して一つ一つ閉じて行く。弘天の場合は女好きと三つ子の魂百までが功を成してあまり効果は無かった。時間の矢は進むにつれ、人類の科学は進歩し。古来の人間達とは程遠い程に自然の脅威は薄れ、神は人間の味方、人間を救済する存在と。人間達に共通認識が生まれしまった。実に遺憾。自分が見ている物は、他の人間と同じとは限らない。神の姿もそうだ。人に見える時もあれば夢見に現れるか霊体、あるいは巫女の人格を乗っ取り顕現する時もある。

 

「恐怖と畏敬は紙一重。地上にまだ都市があった頃、まだ幼い当時の子供達は大人に思想を植え付けられました。妖怪は敵であり黒人であると。宗教を嫌う人のように」

 

「…オウム真理教や坊主は葬式で金をふんだくるせいか宗教に対していい感情はないわ。あの国は宗教を嫌って無宗教なのに無意識で宗教の影響は受けてるけど」

 

「はい。それは日本の伝統や文化、民俗行事を顧みればよく分かります。宗教は文化とも言えますし、日本の文化と刷り込まれ当たり前になり殆どの人間は気付いていません」

 

子供の内に恐怖を植え付ける民俗行事、東北地方の なまはげ はいい例。人間を襲って喰い殺し、畏れられていた鬼も神々の使いとして暴れて酒を飲んで帰るなまはげは鬼の形骸化。

釈迦が僧に葬式は関わるなと言ったのに現代では坊主が関わっている。それは江戸時代の江戸幕府が定めた檀家制度が大きい転機なのだが、始まりは平安時代。平安時代、貴族の葬儀は僧侶が関わっていた。僧侶が葬儀に関わるのは中国の宗教、道教と儒教に由来する先祖供養が仏教に入り交じったからである。だが、これは平安時代の貴族だけだ。仏教が民に広まったのは鎌倉時代に始まる。仏教はインドから始まりそのまま中国へ伝播、そこで中国の宗教、道教と儒教が中国に伝播された仏教に混じってしまった。日本へ仏教が伝来したのは飛鳥時代。

物部尾輿と中臣鎌子は八百萬神を祀っている理由で断固反対したが、天皇は蘇我氏の蘇我稲目に 仏像を授けて試しに礼拝することを許可する。

しかしその後、疫病が流行り、多くの民は死んだ。今と同じだ。疫病が流行り近畿地方から九州地方までの民が苦しみ死んでいるように。その上、飢饉問題は解決していない。宗教と一言で言っても宗教の定義は未だに定まっていないが。

る~ことは右手い持っているアガスティアの葉を見つめ、薄暗い地下に閉じ込められている鈴仙へよく見えるように差し出す。アガスティアの葉の色は、薄い色の褐色だ。

 

「自分が見ている色が褐色だとして、それを褐色だと証明するにはもう一人がその色を見て褐色と認識し褐色だと。声に出して初めて共通認識が生まれます。それが錯覚であろうと」

 

「GOD dyaus daēva ilāh ēl 木目模様が人の顔に見えるように。神や妖怪の本来の意味を失い、未来の人間が認識する神と妖怪の意味はパレイドリア、独り歩きだと言いたいの」

 

「そうであり、そうではありません。ですが地獄や天国に極楽浄土。天界や魔界、前世と来世に 輪廻転生。神と仏に妖怪、天使と悪魔に魔女、精霊に妖精。魂、怨霊、道教と儒教の先祖供養」

 

る~ことはアガスティアの葉をもう一度見てから、そのまま仕舞う。

 

「マニ教 拝火教、ゾロアスター教の善悪二元論に英霊と成仏。他にもありますが信じる信じないは一先ず置いて。宗教の考えに影響されてる時点で日本人が無宗教と一概に言えないでしょう」

 

「無意識に脳へ刷り込まれ、人間は刷り込まれている事に気付いていないだけ、か。滑稽で皮肉ね。無意識もまるであの子の能力」

 

言葉だけが独り歩きをしている 地球は青かった 名だけが独り歩きをしている 聖徳太子 

ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉 神は死んだ も独り歩きをして本来の意味が失われている。

今でこそ神は死んだという言葉、無神論の人間によく使われる言葉だが。本来は直喩としての意味ではない。あくまでも譬喩表現であり、本当に神が死んだと言う意味で言った訳じゃないのだ。そもそも哲学者の言葉を言葉通りに受け取ってはいけない。

 

「量子テレポーテーション、トンネル効果、神はサイコロを振らない、シュレーディンガーの猫

ミトコンドリア・イヴまで本来の意味から独り歩きをしています。神と妖怪も然り」

 

「拡大解釈。人間が考えた皮肉や思想実験、定義付けしたものなんてどうでもいいわよ。

オメガポイントも所詮は詭弁で人間の錯覚でしかない。大体ね」

 

オメガポイントは現在も存命している数理物理学者 フランク・ジェニングス・ティプラー三世 が唱え名付けた言葉。

アガスティアの葉は色の話だったが、ウマやネコなどの哺乳類に起きる フレーメン反応 というのがある。これは臭いに反応して唇を引きあげる生理現象であり、人間の視点から見ると猫や馬が笑っている、もしくは顔をしかめていると見られる時もある。フレーメン反応は人間には起こらないのだが、人間には感情がある。人間にもあるのだから猫や馬にもあるだろうといった固定概念や基準に基づく考えでもあり、パレイドリア。目の錯覚とも言える。

だが猫や馬と会話が出来るならともかくとして、それが出来ないと言うのに何故人間は猫や馬が感情を持っていると思い込むのか。ウマやネコにも感情はあると証明するにはまず馬や猫と言葉を交わし、意思疎通をしなくてはならない。

鈴仙は会話しながらシチューを食べていたが、鼻を鳴らす。

 

「土蜘蛛、鬼、天狗、河童、言語、常識、服装、慣習、文化、生活、政治、国、思想。それらと同じように、神と妖怪の本来の意味も、人間も。時代と共に変わるわ」

 

「勿論。平安時代の清涼殿落雷事件。元は怨霊だった 菅原道真 も天神や学問の神になり。

坊主、僧。弘法大師も敬う程の存在ではなく、元を正せばただの乞食です」

 

人間は誰かと会話をする際、声を使って会話する。だが声なんて言ってしまえば唯のリズムや空気の振動でしかない。そして、その空気の振動を言葉として意味を持たせたのは人間。

文字もそうだ。文字なんて人間以外から見たら意味不明で落書きにしか見えない。文字を言葉と、言語として意味を持たせたのは人間だ。

 

「そう言えば。大阪の通天閣にある幸運の神 ビリケン も元はアメリカでしたね。本来のビリケンは神ではありませんでしたが」

 

日本は何でもかんでも取り込み神格化してしまう。良く言えば度量がいい、悪く言えば流されやすい。だが日本は八百萬神の考えを持っている。今でこそ悪い存在として人間の脳に刷り込まれているが、元は妖精、精霊だったゴブリンを悪魔にした一神教であるキリスト教徒の様な民間伝承排斥をする考えはない。

西洋ではいい印象を持たれない移ろう花の代名詞として知られる日本原産 紫陽花の花言葉 家族団欒 平和 仲良し などでいい印象。他にその内の一つ、紫陽花の花言葉の一つに移ろいがあるのだが。

年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず。釈迦の教えを探求し、真理を模索する本来の僧は 乞食なのだ。昔は僧に対し坊主と呼ぶのは尊称であり、今のように蔑称で坊主とは言われていなかった。

そして平安時代。仏教の考えが浸透していた当時の民は、末法の世が到来するという不安、戦乱も重なり、終末の後の救済を求める人心を反映して、仏教派性の浄土教が浸透していた事もあった。

 

「しかし。それならば玉兎は月人、月の民の奴隷です。それは玉兎の鈴仙様が一番理解している筈。古代ローマ帝国や黒人。奴隷がどんな扱いを受けたかを」

 

「言われなくてもちゃんと分かってるわよ。そうじゃなきゃ抜け出さずに大人しくしてる訳ないじゃない。だから嫌なのよ、あんたと話したら長々話すから」

 

奴隷なのだから痛めつけたり、ウォーターボーディングをしたり、薬でイカレさせようと思えば出来るのだ。鈴仙は呆れながらスプーンでシチューを掬い取り口に運び咀嚼。たまにコップに入った冷たい水を鈴仙は飲み、無くなったら新しい水を注ぐる~ことは、食器を下げる為に鈴仙が食べ終わるのを待つ。る~ことは直立しながら傍に佇んでいるので、見られている鈴仙は食べにくそうにしている。

爾来。宗教はこの世の在り方、寿命、天変地異、死を説明する為、我ら人間が死んだ後はどこに行くのか。それらの不思議な事を説明する慰め、自慰行為的な概念であった。それがいつしか金儲け、紛争、救済へと変わってしまうが、宗教はともかく。宗教を布教する 宗教化 は神ではなく人間が行っているので当然の帰結と言えば当然とも言える。別に宗教に限った話ではない。何事もその時代のニーズに合わせ、変貌していくのだ。

 

「ねぇ」

 

「何でしょう。鈴仙様」

 

口端にシチューが付いてるが、それに気付いていない鈴仙は片手で持っていたスプーンを離し、あと数口で食べ終えそうなシチューを一旦食べるのをやめて、鈴仙は小声でる~ことへ聞いてみる事にした。

 

「態々。私を幽閉する為、私が逃げようと思えば逃げられるこんな旧時代的 地下牢へ閉じ込めて、あの人やお師匠様に何の意味があるのか教えてよ」

 

「永琳様からお聞きした事はないのですか」

 

平将門の件が終わり。鎌倉、建武の新政、室町、南北朝、戦国、安土桃山、江戸、幕末、天皇の血を持っていなかった明治天皇を殺害し、大正、昭和、平成。このまま行けばそうなる。鈴仙はそんな無意味な事をする理由を知りたかった。鈴仙がお師匠様と慕う永琳に何度聞いても、永琳は鈴仙に何も言わない。

 

神が人間を滅ぼす、それは違う。人間から生殺与奪の全権を奪い取り神が人間を管理する、それも違う。人間が神と妖怪と仲良く平和に生きる世界、それは絶対にあり得ない。

最後のはまるで科学者 ニコラ・テスラ が電磁波を使ってエネルギーをどこにもない所から取り出そうと追い求め、生涯を捧げ、費やした夢物語ではないか。今もどこかの国は人間同士で争っている。同じ種族の人間同士がだ。これは人間に限った話ではない、自然界の動物にもあるように。多くの神話でも争いはよくあり、日本神話でも神と神同士が争う話はあるのでざらだ。平和な神話の方が鮮少。

 

「ウロボロス。円環時間現象でいつ聞いてもお師匠様が答えてくれる事はなかった。だけど、アカシックレコードの一部を使ってるんでしょ。なら知ってる筈」

 

「ヘルメスの杖、アロンの杖、二重螺旋。そうですね、アカシックレコードのお蔭で知っています。しかし意味、…意味?」

 

る~ことは謝罪しつつも片手で口元を隠しながらクスクス笑う。る~ことは創られた存在だが、神や人間とほぼ変わらない存在だ。だが人工知能や脳は無い。脳の変わりに アカシックレコード が組み込まれている。る~ことが笑う事を出来るのはアカシックレコードの一部を使われているからであって、感情のシミュレートが組み込まれている訳ではない。脳がない以上中枢神経、神経パルス、電気信号、シナプス、ドーパミン、ニューロンもなく、鈴仙の目をる~ことが覗き込んでも、狂気に堕ちる事はない。

つまり現在も存命している哲学者 ジョン・ロジャーズ・サール が論文の中で発表した思考実験の 中国語の部屋 や 強いAIと弱いAI には該当しない。昔、る~ことが創り出された理由は、当時住んでいた所が大きすぎたので、美人、もしくは可愛いお掃除ロボットが欲しいと誰かが言い出したのが始まり。家事全般は得意なお掃除ロボだが、戦闘用には創られていないので鈴仙と戦えばあっさり負ける。しかしそんな事をすれば鈴仙は廃人にされるだけだ。それが分かっているから鈴仙は抵抗しない。

 

「これは異な事を。鈴仙様は妖怪ですが人間みたいな事を仰います。強いて言うならば、永琳様にとって、マスターや娘達と永劫にいる以外の意味がある訳ないじゃないですか」

 

「…あ、もちろん鈴仙様も含みます」

 

「なにその序でに入れてる感じ。いくら私でも泣くわよ」

 

永琳はともかく弘天はただ愚直に女を侍らしたいだけである。時間とは、嫌な事は時間が過ぎるのが遅く、楽しい事は時間が過ぎるのが早い。つまり相対性理論だ、幸せなのは悪い事じゃない。

幸せな記憶は記憶として残り、思い出の過去として遡れる。幸福を感じる世界の主体は永遠が一瞬であり、一瞬は、須臾は永遠。それを具象化したのが、今。

 

「じゃあ… じゃあ月の都に住む玉兎以外の者すべてを殺す意味はなに。お師匠様に何度聞いても答えてくれなかった。だけど。なにも全員を殺す必要は」

 

「あります。神と妖怪が対等になる為には必要な争いです。それは数ある理由の一つでしかありませんが」

 

「神なら人間を皆殺しにすればいいのに...」

 

鈴仙が食べ終えたので食器を片付け、シルバートレイに乗せながらる~ことは話す。神とは、

恣意性を持ち、人間の弊害であり、濫りに生きてこそ。天津神、国津神、八百萬神はもう人間からの信仰を必要としていない。

神より劣る人間如きの顔色を窺う必要も馴れ合う必要もないのだ。月人や月の民以外を見下している鈴仙も、人間へ無条件で従わないだろう。そんな状況になったら反吐が出ると嘲笑するのは間違いない。鈴仙が幽閉されている理由は、鈴仙が月の都の防衛と監視を兼ねる月の使者がまず一点、鈴仙が豊姫と依姫の愛玩ペットだった事が一点、後は物の波長を操る能力が厄介だからだ。月の都を襲撃する際に鈴仙の能力は非常に厄介なので、今もこうして幽閉している。多くの神は天界、 冥界、魔界、地獄、地上に存在するが、ただ神が地球に留まる以上幾つかの法則に従わなければならない。

 

「地上に都市があった頃はマスターの妃は少なく、妖怪と争っていましたが。忙しくても永琳様は幸せそうでした。マスターと豊姫様は仕事を怠けてそれを依姫様が咎めるあの頃が」

 

「…私の飼い主、上司はどうなるの」

 

「お教えしても構いませんが、その前に一言 申しておきます。私の見解で述べますがそれでも差し支えありませんか」

 

鈴仙は頷いて早く言えと目線でる~ことを急かす。鈴仙は戻ったが、中途半端に戻っている。全てが戻っている訳じゃないし、戻った部分だけを消す事が可能。

 

人間はロゴス、言葉に縛られている。人間は言葉がなければ意思疎通は出来ない。だが今、る~こと、鈴仙が本当に言語を使って会話をし、意思疎通をしているのか。今では当たり前に人間は電話で会話をするが、電話で会話をしている人物は本当に本物なのか。本物だとしていたとしてそれをどう証明するのか。

電話で話す場合、声は電気信号に変換される。次に電話回線を通して相手の所へ届き再び声を再変換され始めて聞こえるようになる。つまり最低2回のプロセスが必要。

これがケータイになると、まず音声を電気信号に変換し、電波に乗せて近くの基地局へ飛ばす。そして普通の電話回線を通って交換局、次に電話相手がいる一番近い基地局へ向かい、電波として相手のケータイに送っている。ケータイの場合は結構複雑になる。

 

「綿月豊姫様、綿月依姫様。お二人の優先順位は今更 言うまでもない。ですが月に住む者を一度始末する際、特に豊姫様は抵抗するでしょうが死にません」

 

「そっか、さっきより安心した。だけどあの人も、お師匠様も。自分の親を殺す事に対して何の 感情も抱かないのね」

 

「抱く訳がないでしょう。マスターや永琳様は感情を持つ 人格神 ですが、人間ではありません。神です。道教と儒教の考えもありません」

 

宗教学の用語に人格神という言葉があり、この三文字は色んな意味を持つ。人間と同じ人格を兼ね備える神、人間と関わり交わりを結ぶ神、人間性を持つ超越的存在、人間と同じように意志、感情をもち、行動すると考えられている神。人間の形をもっているだけでなく固有の知性と意志をそなえ、独立した個体的存在としての神という意味など様々。日本神話の神にも人格神という言葉は該当する。

 

「お二人の記憶を戻しているのかは存じませんが。豊姫様、依姫様は感情を上書きしています。

ある女性がある男性を見て恋に落ちたのはそれが原因ですね。 所謂、一目惚れ」

 

「感情か… 諏訪国は歪んでいる。平等とか平和とか皆が仲良くとか。そんな事はどうでもよくて、ただ女性を集めているだけの国だし。あの人、産めよ増やせよ政策でも目指してるの?」

 

「平等や平和なんてマスターが生まれてこの方、一時でも行動した事実は一切ありませんよ。大体、諏訪国はマスターが女性を侍らす為の国。それ以外の理由なんて特にないです」

 

傍に佇んでいたる~ことは急に鈴仙へ近づき、顔を近づけた。

 

「それ以前に。穢れを畏れて月の都で過ごす月の民や、月の民の奴隷に成り下がった玉兎が言える言葉じゃないですね。月の都の方が狂って歪んでいます」

 

弘天は月人である。他に永琳、神綺、サリエル、豊姫、依姫、神奈子、輝夜、咲夜、夢子、くるみ、魅魔、夢月、幻月、青娥、サグメ。他にもいるのだが、これらが月人、月の民と言う事は外部の存在ではなく内部の存在になる。この内部の存在から全員を妻に娶ったとしても、それは内部から妻を娶る事になる訳だ。

しかし異類婚姻譚の話は外部からの嫁入り話ばかり。内部から嫁を娶るのではなく、外部。つまり異分子を受け入れる話が多い。外部から異分子を受け入れるという事は、考え、言語、ルール、常識が違う存在を受け入れる事を意味する。

今でこそ日本人の多くは標準語を話せるが、元々はそうではない。少し前まで各地域に住む人間はその土地特有の方言や各民族語ばかりだったのだ。そして、方言札というのがある。これは第二次世界大戦前の日本、標準語を普及させる手段で当時の子供達に行使した物。皇民化教育の強制的な政策により、多くの人間は標準語を話せている。これは異類婚姻譚と似ている。

 

だが異分子を受け入れる事は、外部のルールを内部のルールに持ち込むと言う事だ。弘天達がまだ子供の頃、月人が培ってきたルールを異分子に変えられる事こそが、地上に都市があった頃の大人は恐れ、妖怪は敵だと。当時の子供達に教育を施した。月人を多く娶るのは別に問題はない、寧ろ大人達は大いに推奨した。だが当時の大人は妖怪だけは妻に娶る事を認める訳にはいかなかった。大人達は妖怪の血を月人に混入させたくなかったのだ。そこで弘天が大人達にとって史上最悪の夢を持ってしまう。

女を侍らすと子供から謳っていた頃の弘天に対しては、当時の大人は、月人ならいくらでも侍らすのはいいが、妖怪だけはダメだと。弘天に何度も言い聞かせたが効果は薄かった。美人や可愛ければOKと。弘天の夢が女を侍らすなどというとんでもない夢だったからである。即ち人型の妖怪も対象に含まれるという事。もしも妖怪に人型がいなければ大人達の杞憂で済んだはずだ。だが当時の大人が予想した通り、大人達にとって最悪な結末になってしまった。弘天の妻は月人も多くいるが、それと同じく弘天の妻は妖怪ばかり。

 

「格差や争いがあるのは当たり前です。格差や争いは多くの神話や自然界にもありますし、世界とは平等ではなく、人間の誰もが想像する楽園も甘いものではありません」

 

「ふん、分かってる。アダムとイヴがいたエデンの園も人間から見たら歪んだ楽園だった。それでも私は、これからも月の民以外、地球に生息する生物や人間を見下すわよ」

 

「構いません。天界でマスターが鈴仙様に仰っておられた筈です。別にそれは気にしないと。ただそれは口や顔に出さずに上手く隠し、内心で人間を見下してください」

 

「…流石アカシックレコード。気味が悪いくらいお見通し」

 

 

 

鈴仙様はそっぽ向き、眠たそうに欠伸を一つ。私が言うまでもなく自主的に目隠しをして、壁にぶら下がっていた手錠を嵌め、また手足、最後に首輪を掛ける。鈴仙様はただマスターと永琳様に従い、受け入れるだけ。ボールギャグは私がベルトで固定した。それを見届け終え、その場を去る。シルバートレイに乗せている食器を洗浄するため、地下牢に設置されている台所へ向かう。

平成時代。あの時代は神も妖怪も随分落ちぶれました。昔は食、水、疫病、作物、洪水、水害、天災。それで沢山死に。一時期、人間という種族が滅びかけた時代も実際にありました。それは外国でもです。昔は神祇信仰。畏敬の念を持って自然を神として崇め祀り、恩恵を授かる為に生贄などで自然神のご機嫌を取った。清涼殿落雷事件やマヤ神話はいい例。死活問題を乗り越える為、生きる為に当時の考えであり、常識であり、必要な儀式でした。食と水に不自由しない人間にはこの考えは理解できないでしょうね。マスターが西一帯に天災を起こすのは鎌倉幕府創立や、まだ生きている人間に恐怖を植え付け、忘れさせない為。人間を神や妖怪に畏敬を抱かせるには必要。

日本では地震が頻繁に起きています。古来の人間はその地震を起こすのは日本列島の下に、あるいは日本列島を取り囲む龍。もしくは大鯰が地下に棲み、身体を揺すり引き起こしたものと考えられていましたし、 テレゴニー や 天動説 などが昔は信じられていた時代もありましたが、それもなくなり。昔の人間は空を飛べ、宇宙に行けるとは当時の人間達には信じられず、翼は生えなかったですが鉄の塊で実現されました。

 

「人間が神の失敗作なのか神が人間の失敗作なのか。どちらでしょう。信仰の為とは言え人間如きと仲良くして馴れ合う神も、神に対する人間の畏敬の念も随分と零落しました」

 

神が人間と仲良く馴れ合うのは、畏敬の存在としてはかなり程遠いですね。ですが 神 という名称は既に古臭い名称かもしれません。これからは神ではなく、神に代わる別の名称を考え、新たにした方がいいでしょうか。しかし…

 

「神が人間の味方というのは、クズの代名詞で名高いギリシャ神話 最高神 ゼウス 不動の称号。 クズ、人間に災いを齎し、好みの女性を如何なる手段を用い強姦するレイプ神」

 

邪神や悪神という言葉がありますが、大まかな意味は人間に災いを齎す神。では何故ゼウスは人間にあれだけの事をしておいて、悪神や邪神と言われる事がないのか不思議です。ゼウスは女性関係の印象が強いからですかね。

 

「それが消え、あのゼウスが仁徳になる事と同義。あり得ませんね。仁徳なゼウスなど、もはや ゼウスではありません。そう考えると実に笑えます」

 

たまに、ある人間が神秘体験した話があります。一度死にましたが生き返り死後の世界を見た臨死体験や、人間の目の前に神様が現れお告げ、神が傷ついた場所と同じ部位から血を流したりといった話の宗教的体験。

それを ヌミノーゼ と言います。そういった話は絶食や瞑想などでドーパミンの過剰分泌を促し、それによって起きる現象。身も蓋も無い言い方をすれば一種の幻覚。もしくはただの虚言が大半。自分が見た物が他の者も同じとは限らない場合もありますが、先程のアガスティアの葉の色の共通認識ですね。立ち止まり、右手でシルバートレイを支え、左手を額に当てる。

 

「今回と、今までの回帰で一度も使う機会はありませんでしたが。我々はアカシックレコードを使わなくても人間の脳へ介入できる」

 

月が消えようと大した問題ではない。疑似的な月の偽物でも置けばいい話。本物か偽物かはどうでもいいんです。ただ地球に生息する人間や生物に偽物の、疑似的な月を、月だと認識させる。

新たな月を創り出すなら神綺様とサリエル様にお願いしなくてはいけませんね。あとは数多の神話に登場する月の神を招集する準備もしておかなければ。黙ってフェイクの月を創るとなると色々面倒ですから、まずはツクヨミ様から話しましょう。

 

「嘗てアメリカで発見された極秘文章 SILENT WEAPONS FOR QUIET WARS 沈黙の兵器。

インテリジェント・デザイン、 observer の人間は、特に」

 

人間は視覚と脳の仕組みなどがまだ完全に解明できていない。

長野県の 黒姫伝説を見て黒姫と黒龍が織りなす愛の民話と捉えるのか、黒姫を神に捧げる生贄と捉えるのか。

 

「私はただのセクサロイド、生きるか死ぬかなんてどうでもいい。私はマスターのために動き、

与えられた役目を果たすだけ」

 

鈴仙様は全て戻さず一部だけを戻しましたが。おいたわしや。菊理媛神、神奈子様は覚えておられない。お二人の記憶を戻そうと思えばすぐにでも戻せますが、アカシックレコードを顧みるに諏訪国にいるお二人は幸せそうでした。今のキクリ様は無知ゆえ疑う事を知らずマスターから間違った性知識を植え付けられ、神奈子様はマスターに冷たく当たっていても、あの方は昔から素直じゃないだけです。永琳様は、お二人を戻すかどうかは私に一任すると仰られました。

神奈子様とキクリ姫様。お二人の、自分達の役目を忘れているとはいえ戻した方がいいのか、忘れたままでいいのか。私はただのセクサロイド。誰かに仕え、幸せな日々を送って生けるようにサポートをする存在。幸せに生きているお方に水を差すなんてあってはならない。ならば、私が選ぶ答えは決まっている筈。なのに、今もこうして悩んでしまっている。感情とは合理性に欠け、時に邪魔になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔、あるウイルスがドイツで発見された。コンピュータウイルスの一種で カスケード というものだ。これは画面上の文字が滝のように下へと崩れ落ち画面底部に積み重なる。あれは正に文字が下に流れて行くのは時間の矢であり、積み重なった文字は時間だ。時間や時間の矢は下に流れると言っても位置的な下という意味ではなく、宇宙空間と同じで概念的に方向を想定したに過ぎない。

 

「ようシンギョク。時間がないからとっとと行け」

 

スキマを通って平将門の後ろに出現し、有無を言わさず回り込んでシンギョクを蹴り飛ばしてスキマに放り込み、隣にいた妖精の姫君も放り込もうとしたら両手で自分の両頬を押さえながら驚愕。

 

「で、殿中でござるー! って父様が二人!? 最近の私、いい子にしてたから神様からのご褒美かな?」

 

「殿中って刀抜いてないから。早く春姫もシンギョクに続け」

 

「ちょっと待って父様をどこへやったのそもそも貴方っていきなり何するの! やめて入れないでー! この中目玉がぎょろぎょろして視姦されてるよー!」

 

「ええい。時間がないと言うに暴れるな春姫」

 

このままでは質問攻めを受けるのは間違いないので、春姫の腰に手を回しながら持ち上げてスキマに放り込むが、春姫が大声を挙げたせいで様子を見に兵が1人来てしまった。声を聴いたので何かあったかどうか聞かれたが、何も起きてないと返すと帰った。今の俺は平将門で、隣には幻術で作り出した春姫がいる。これは諏訪子と神奈子が、高周波ブレードと光学迷彩を持たせている甲賀忍者部隊の望月千代女と甲賀三郎に引き込むよう頼んでおいた人物 幻術師 果心居士 が幻術で作り出した賜物。果心居士は鼠に姿を変えて俺の肩に乗っている。

 

「征夷大将軍、並びに魂魄妖忌、藤原秀郷、源義仲と義仲四天王へ降伏する。幻術師 果心居士、後は頼んだ」

 

「平将門の死体を幻術で創り出せばよいのですな?」

 

「そうだな。降伏してから始めてくれ。桔梗伝説が合図に 夜刀神 も動く。蝦夷の血を絶やす訳にはいかんし」

 

俺はマミゾウの能力で平将門に化けているが、それはただの上方修正、保険に過ぎない。

兵の一人を殺害し、その死体を幻術を使う際に利用させて貰おう。甕依姫もこの場にいるが問題は春姫の死体だな、死体の女が都合よくその辺に転がっていたらいいんだが。キョンシーとか。朝廷が最も望む事はこの争いを治める為、平将門の頸を欲している。今回の騒動の原因である平将門が殺された後は、ある事無い事を民に言い触らし、平将門の悪評を広めればいい話。それをするにはまず平将門の頸を貰う必要がある。そう、頸さえあればいい。似ていればいいんだ。それが本物か偽物かはどうでもいい。ただ平将門を殺した事実が必要なのだ。欧州藤原氏は神国側だが、今回は与さずに関わっていない。

 

「次は鎌倉幕府を創設し承久の乱。そして朝廷に勝利し西一帯の仏教を神道に取り込み全てを飲み込む。輝夜、咲夜、お燐、天神地祇が僧兵と放蕩を鏖殺するのはその下準備に過ぎない」

 

我が未来改竄素敵計画は平将門、蝦夷、神綺を以ってついに完遂されることとなる。いよいよもって死ぬがよい。そして、さようなら。と言っても俺は降伏する側だが。

 

まあデウス・エクス・マーキナーであってデウス・エクス・マーキナーではない。

魔界人のシンギョクを今回助けたが、それは魔界人だからであり、俺はヒーローや救世主じゃない。ただ女を侍らせたいだけの男。

しかし日本の神って人間にあまり接触しないと思われがちだが。歴史を振り返ってみると日本の神は結構、人間達へ接触しているんだなこれが。

 

神話なのだから当然、神話に神は無数に存在する。その中でも宇宙にある星、月、太陽を神格化した神は多くの神話にいるんだが。では地球を神格化した神は

 

 

 

 

 

「初めましてシンギョクさん。私は弘天の娘、名は紫と言います。魔界人の貴方に死なれると困るので、荒っぽいやり方で私の父と駆け付けた次第です。申し訳ありません」

 

「いいえ、お気になさらず。あの方に振り回されるのはいつもの事なので」

 

実際は初めましてではないのだが。あの方にスキマの中へ放り込まれたので私の態勢は崩れていたので、立ち上がりながら片手で太ももを叩きながら埃を落として話す。立ち上がった私の隣には目を回してる春姫もいるが、これはあの方にスキマへ放り投げ込まれたからではなく、スキマの中にある目玉に驚いて気絶したのだろう。私は魔界人。今回の騒動は神綺様に頼まれたからしたまで。神国を造り上げたのは、人間達の脳に杭を打ち付ける為にした事。

 

「貴方のお蔭で神仏分離は早く進みそうです」

 

「そう言って下さるなら私も神綺様の命に従った甲斐がありました」

 

「ええ、本当に。それで父が言うに、諏訪国にある地獄谷温泉にでも浸って次女と、長女の娘達と骨休みしたらどうだ。そう言伝を承っています」

 

それはいいかもしれない。ここ最近、戦続きだったのだ。しかし紫殿は何度見てもどこか、八意様に似ている。八意様が所持していた天羽羽矢を紫殿が背負っているからではなく、雰囲気がだ。だが、紫殿が持っているあのインドラの矢は何度見ても心臓に悪い。

紫殿の隣にスキマが展開されているのだが、そのスキマから鴉天狗の 射命丸 文 殿 が身を乗り出してきた。そのスキマは別の所に繋がっているようだ。上半身をスキマから乗り出している射命丸殿は、一目見るだけでも服装が汚れていて、酷くボロボロ。私に気付いた射命丸殿は一度頭を下げ、お久しぶりですと軽く挨拶。私も返答すると今度は紫殿に顔を向ける。

 

 

 

 

 

「紫さーん。偵察してきましたよ…」

 

「お帰りなさい。それでどうだったの」

 

「そ、それが…」

 

スキマから身を乗り出している文は両手の人差指の先を合わせ、目の集点が定まらず一筋の汗が流れた。スキマの中とはいえ秋なのに汗が流れるほど暑いのかしら。今はスキマの中にいるけど、現在地は常陸国。常陸国には征夷大将軍など平安京からの兵が大勢いる。それで私達が下野国に行って全戦力を用いて妖蟲を従わせるにしても、常陸国は下野国の隣国だから事を始めれば征夷大将軍に被害が及ぶかもしれないしお父さんはマミゾウの能力で平将門さんに化けてる。まずは征夷大将軍などが平安京に帰るのを待った方がいいかなと。この先の計画を立てていたら、文の言葉を聞いて頭が痛くなる。

 

「そのー 幽香さんを下野国に待機させていたじゃないですか。それで味方や下野国にある、戦場ヶ原にいた妖蟲達が…」

 

文から詳細を聞いたら、幽香がまた一人で突っ走ってしまって戦場ヶ原にいた無数の妖蟲を壊滅させている真っ最中との事。しかも今日は私じゃなく、幽香の日傘になっている小傘を閉じて傘の先端から極太光線を撃ちまくっているので、敵だけではなく味方にも被害が及びながら、かつて赤城山の神と日光山の神が争った戦場ヶ原が焼け野原になりつつあると。小傘は傘のまま恐怖で泣いていても幽香に気付かれず、小傘が助けを求めた萃香達は止めずに面白がって萃香と勇儀も幽香に続いてしまい、華扇は雷獣と笑いながらその光景をつまみにして、西の妖怪を風靡し、諏訪国から引き連れて来た妖怪たちと鬼ころしを飲んでいるらしい。

 

「お目付け役のぬえは!?」

 

「寝てます。今はお昼ですので眠かったのでしょうね。ぬえさんは夜行性ですから」

 

「な、なんてこと… 呑気に話し込んでる場合じゃない。ごめんなさいシンギョクさん後で迎えに来ますから、行くわよ文!」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

射命丸殿が身を乗り出していたスキマへと紫殿は入って行く。スキマの中で置き去りにされてしまった。ぎょろぎょろ動く目玉が気になるが、このまま待たせてもらおう。私の役目は一旦終えた。気絶していた春姫が体を起こし、立ち上がっている私を見上げる。

 

「ん~? あれ。父様、おはよう~」

 

「おはよう。春姫、突然だが。諏訪国にいる五月姫へ会いに行こうか」

 

「本当!? お姉ちゃんに会える日がやっと来たんだね。嬉しいな~ だけど父様、神国はもういいの? 折角造り上げたのに」

 

「私と蝦夷が消えようとも、平氏の荘園支配はまだ終わっていない。後は東の武士団、魂魄妖忌、源義仲、欧州藤原氏、鎌倉幕府創設に尽力した千葉氏、北条氏に任せるさ」

 

春姫の頭を撫でながら話す。これでいい。布石は十分に打ち終えた。残された行進が止まる事はない。後は鎌倉から承久の乱を起こし、勝利すればいいだけだ。勝てば東だけでなく西に鎌倉の手が伸びる。それに春姫とあの方の子を、孫を見るまでは死ねん。名は春姫で娘は春姫だけではないが、一人娘と春の日は暮れそうで暮れぬ。という訳でもない。春姫の頭を撫でていたら、いつも以上の笑顔になる春姫は、懐かしい事を言い出す。

 

「日本三大怨霊や神田大明神には成れなくなっちゃったけど。首と胴が繋がって良かったね、父様。京で首を晒されたり、首が関東に飛び去る事がないもん」

 

「ああ。そうだな…」

 

アマテラスがニニギに下した 天壌無窮の神勅 がある。これはニニギの子孫が日本を治めろという意味だ。そして私は平氏。平氏と源氏は薄いが天皇の血があるということは。鎌倉幕府が創立されようと 天壌無窮の神勅 は潰えていない。

鎌倉幕府を創立するのは天皇の血を持つ源氏、源義仲なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人の少女が山城国にある平安京へやって来た。平安京に入るには羅生門を通るのだが、少女は巨大な羅生門を見て目を輝かせて暫く眺めていた。だが平安京に来た理由を思い出し、気を取り戻して頭を数回横に振る。羅生門を通り平安京に入る途中、1人の男とすれ違ったが呼び止められた。

 

「少女、悪いがちょっと待ってくれないか」

 

「な、何だ」

 

非違を検察する天皇の使者、検非違使に呼び止められたのだろうかと、心配な気持ちに蝕まれながらも少女はぎこちなく返答して振り返った。少女を呼び止めた男は右手を顎に添えて少女を見つめた。すると思い出したのか右手を握って左手にポンと、一度置く。

 

「やはり。君は妖怪のようだな」

 

男にそう言われ少女は身じろぐ。少女は親に、平安京に入っても殺される心配はない。そう言われていたのだが。怖くなった少女は逃げようと一歩一歩後ずさり、首を動かして後方を確認する。この平安京、結構複雑で迷路状になっている。逃げるにはうってつけだ。少女は逃げるルートを考えていたら、男は慌てて両手を上げた。

 

「待った。いや、申し訳ない。先程の無礼はご容赦の程を。別に取って喰おうという訳ではなく、聞いていた妖気と容姿に貴方が一致したので声を掛けた旨です」

 

「なら何故妖怪と言った」

 

「失礼、順序が逆でした。自分、諏訪国出身で名は金太郎と申します。お諏訪さまの妃を藤原氏の所へ案内しろと仰せつかっているのですが。失礼ながら、貴方の名は慧音ですか」

 

バツが悪そうにする男に慧音は驚いた。親が勝手に決めたとはいえ、自分が諏訪大明神に嫁入りが決まっている事を目の前にいる初対面の男が知っていたのだ。少女と金太郎は羅生門近くの坊城小路で東寺の近くにいる。慧音の反応に確信を持った金太郎は、目の前にいる少女が慧音だという前提で話し始める。

 

「案内を仰せつかっているのですが。この山城国はまだ無名の妖怪が蔓延っており、熊坂長範と共に鎮圧するため自分は向かわなければなりません。そこで別の方へ案内を」

 

「案内役はあたいだよ」

 

少女の背から女性の声が聞こえ、咄嗟に慧音は振り返る。声の人物は頭に深めの笠を被り、ロングの外套を着用。金太郎に片手をひらひらさせながら少女に近づいて少女の手を握り、金太郎は慧音と案内役に頭を下げてその場を去った。まだ慧音は子供なので身長は低く、女性の声を出す人物を慧音は見上げている。いきなり手を握られたのに不思議と安心感を覚えたからだ。慧音の視線に気づいていない案内役は慧音に聞いてみる。

 

「日本書紀の編纂に来たんだっけ?」

 

「初対面なのに、私を知っているのですか」

 

「まあね。名は慧音。白沢の一人娘で、秋の日と娘の子はくれぬようでくれる。そのことわざ通り親に嫁入り相手を決められた。どうだい、当たってるだろう」

 

慧音は凄い凄いと連呼。慧音は親に無数の知識を教えられたが、全てお見通しにされているのは教えられた知識を以てしても分からなかったからだ。案内役の人は親に自分の事を聞いたのだろうかと考えてもう一度、慧音は案内役を見上げた。外套を着用して笠を頭に被っているので怪しさ満点なのだが、全て言い当てられて慧音は感心してしまった。手を繋いでいる人物は声から察するに女性だと分かっていたので、慧音は案内役の名を聞いた。慧音と手を繋いでいない左手の人差指以外を閉じ、自分を指しながら名乗る。

 

「あたいは小町。じゃあ左京北部へ向かうよ」

 

慧音は小町の名を忘れないように頭の中で反芻していたら、小町に連れられて一歩だけ歩き出すと周りの景色が一変した。さっきまで薄暗く、狭い通路にいたのにいつの間にか屋敷の塀の前に立っていた。慧音はどういう事かと考えたが、小町に中へ入らないのか聞かれ、後で考えようと一旦考えるのをやめ屋敷に入る。屋敷へ勝手に入っていいのかどうか慧音は内心不安だったが、手を繋いで一緒に歩いていた小町は全く気にせずに玄関の戸を開けて中に入って行ったので、もしかしたら顔見知りなのか小町を見上げた。慧音の視線に気づいた小町は綺麗な歯を出して一笑し、藤原不比等と妹紅がいる奥の間へ到着。慧音は襖を開けて中に入り、小町は奥の間にいる妹紅へ声をかける。

 

「お待ちどうさん。慧音を連れて来たよ妹紅」

 

「ありがとうございます。お待ちしておりました」

 

慧音が来るのは藤原不比等と妹紅は弘天に聞かされ知っていたのでまずは座って話そうと促し、慧音は傾いて対面しながら座る。この奥の間には小町や稗田阿礼の子も同席だ。稗田阿礼の子は妹紅に抱かれながら寝ているが、少しの沈黙の後、慧音は一度おじぎをして本題に入る。

 

「初めまして、私の名は 上白沢 慧音 です。母と、私の良人である弘天、諏訪大明神に言われ。30巻以上の歴史書、日本書紀を編纂するため天界から平安京に来ました」




小町は成人していますが慧音はまだ子供です。慧音の能力は日本書紀に使ったとしても拡大解釈して使う事はないと思います。多分。

青娥ですが、ここでは中国神話の月の女神 嫦娥 です。そして桂男と関わりが深く、中国神話の月の女神 嫦娥 は月の象徴であるヒキガエル。蛙、カエル、帰る、つまり回帰。不死は仙人、仙女。
神奈子が背負う円形状の注連縄の象徴は蛇。しかし神奈子は海神に近いのでヘビではありませんが、根源的にはケーリュケイオン、ウロボロスですけど神奈子は弘天と同じく龍に近いです。それで神奈子は死と再生の永劫。あと諏訪子も回帰の意味を含んでます。

今回の前半、日本神話に出てくる巨大樹、妖怪の桂男のお話が混ざっています。その日本神話に出てくる巨大樹、または世界樹は。月の表から月の裏側にまで根を張り、月の生命力を吸い取って成長しつつ。月だけではなく月の民も巨大樹の芽に吸い取られて糧にされ、月の民は養分にされている事に気付いていません。それと、玉兎は妖怪ですので皆殺し対象には含まれてないです。

それとインドに住むゾロアスター教の信者はパールスィーと実際に呼ばれているのですが。45話のサブタイトル 第六天魔王波旬 の後書きで書きましたが鈴鹿御前(立烏帽子)は天竺にいた第六天魔王の娘説があります。
パルスィを天竺にいた第六天魔王の娘である鈴鹿御前にしたのはそれが理由の一つでした。

幽香は傘になっている小傘を使い、栃木県の戦場ヶ原でマスタースパークを連射しています。本当は幽香に持たせているパスパタやトリシューラを使おうかと思いましたが流石にやめました。そんな事したら地球から日本が消えてしまう!


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À la recherche du temps perdu
風祝


北条時行をどうしたもんか。とりあえず建武の新政や南北朝時代。元弘の乱
道鏡は名だけで。平将門を出し終え、日本三大悪人の最後の一人である源氏の足利高氏
あと室町幕府の三代将軍 足利義満の扱いについては今回の地の文と凄く長いけど後書きで

それ以前に今の天皇は弘文天皇です。暫くは弘文天皇のままで進めるので、そもそもの事の発端者である後醍醐天皇ではない以上、建武の新政や南北朝時代、元弘の乱は起きません。日本三大悪人最後の一人足利高氏の細かい事は後書きに書いときます

だから別の事を前書きで

布都は物部のままで神長官にするかもしれませんが、ここでの物部守屋は守矢氏の神長官です。
守矢、守屋は物部氏なのでニギハヤヒの神裔であって洩矢神の神裔ではありません。
序でに書きますが、弘天は諏訪国に住むある女性に手を出してます。手を出したといっても永琳、藍、はたて、椛のように明確な描写はありません。ただ手を出したキャラは東方キャラかオリキャラなのか、一人の女性なのか複数の女性なのか、神なのか妖怪なのか人間なのかは言及を控えます。
それで産まれた子達が諏訪氏と諏訪神党達と風祝。つまり諏訪氏と諏訪神党、風祝は弘天の氏子、神氏になります。裏設定みたいな感じ。風祝は藍が産みましたが諏訪氏と諏訪神党達を産んでいませんし、風祝を産んだ藍は巫女であっても風祝ではないです。
弘天が藍、はたて、椛に手を出したのは確実ですが、はたてと椛、藍も諏訪氏、諏訪神党とは無関係。


ある外国人は言った

 

『日本人はイッちゃってるよ あいつら未来に生きてんな』

 

未来はともかく、イッちゃってる部分に関しては全く以てその通りである。日本神話の国産み、イザナギとイザナミの性行為で大八島が産まれたんだから。

神話ってのは多く存在するせいか所々似ている部分が結構ある。しかし兄妹の性行為で国を産むなんて神話は。沖縄、琉球神話のアマミキヨでも、北海道、アイヌ神話のカムイでも、外国の神話でもないぞ。特に琉球神話は日本神話と似ている部分が多いというのにそんな神話がない

まあ数が少なかった古来の人間にとって子孫繁栄の性行為はとても大事な行為だっただろう。

生物の目的は主に生きる事、後は子孫を残す事にあるのだから

 

「お帰りなさい弘様」

 

「ああ、華扇か。ただいま。なんだこの状況は」

 

俺は複数ある平将門の妻 桔梗伝説 を使い、平将門の件を終え、スキマを通って戦場ヶ原に来たのはいいが、辺りにいる多くの人型や、巨大な妖蟲達が地面に突っ伏して気絶してる。

妖怪達は基本的に自由奔放に生きている。ある人間も、束縛よりも自由を求める。だが人間として産まれ、生きている以上、法に、ロゴスに、慣習に、脳に、胃に、体に、道徳に、価値観に、文化に束縛され支配される。ならば今挙げたものを無くせば自由になれるかと思ったら大間違いだ。

世界に自由も、ましてや、入り口に出口、内側も外側もないんだからな。産まれた以上、無理だ。では死ねば全て解放されると思うのも大間違い。

 

「一言で言えば幽香ですね」

 

華扇は茨模様をあしらった一升枡に入っている鬼ころしを立ちながら飲みつつ言う。その一言で把握した。実に分かりやすい。スキマの隣にいた華扇に顔を向けたら華扇の顔がほんのり赤かった。鬼ころしを飲むと鬼は酔うように永琳と作ったから当然だ。

幽香が極太光線を連射したせいか、戦場ヶ原は所々焼け焦げ、地面は抉れ、一部はだいだらぼっちや小型隕石が落ちたような跡が出来ている。まあ実際にだいだらぼっちが落ちたら確実に地震が起きるし、小型とは言え、隕石が衝突したらもっと酷い。

隕石と言えば、一つ思い出した。大昔、レミリアの紅魔館に隕石が堕ちて来たが、フランの能力で隕石を破壊した出来事。

 

「それでリグルらしい少女を捕らえて縄で縛っているんですけど。気絶していて、今は幽香がリグルを監視しているので問題はないと思います」

 

把握した。リグルは幽香と一緒にいるようだ。妖蟲達は弱くはないんだが、元は蟲だったからか知能は低い。そこで妖蟲達を配下にして扱うには、リグルとリグルの能力がどうしても必要だったので、どうしてもリグルは欲しかった。

なにせ、人間を一番殺している生き物はあの 蚊 だから。正確に言えば蚊が媒介する病気のせいで死ぬのが正しいな。

 

「分かった。ありがとな華扇、迷惑かける」

 

「いいえ。萃香と勇儀は好き勝手に動きますが、これでも私達は弘様に仕えている身ですから」

 

そうだった。萃香、勇儀、華扇って仕えてるんだったな。永琳と同じ正妻にしてたから忘れてた。最初はいつも萃香達だったか。妖怪を本格的に妻に娶るため動き、鬼ころしを作り妖怪を諏訪国に仕えさせた始まり。

右手を挙げると華扇はそれに察し、華扇も右手に持っていた升を左手に持ち替えてから、右手を使ってハイタッチ。いい音が響いた。華扇の右手とハイタッチか。

包帯に包まれていない華扇の綺麗な右手から右肩までを見つめていたら、華扇は右腕に視線を向けて照れ始めた。

 

1+1が2になるとは限らない、1+1=2になるのはあくまで数学や認知学の範囲だ。人間が定義付け決めた言葉だ、数だ、個だ、量だ、値だ、基数だ、番号だ。

月人の大人達は子供だった俺達に教育を施した事は、善だったとか、悪だったとか、悪い事だったとか、良い事だったとか。そんな事はどうでもいいんだ。言葉なんてのは意思疎通する為、ただの媒介や比喩表現に過ぎん。神が言葉に囚われるのは駄目だ、神が単語の定義に縛られるのも駄目だ、人間が見えない言葉の意味を見続けて見出そうとするのも駄目だ。

 

「わ、私の右腕がどうかしましたか?」

 

「いや。大した理由じゃない」

 

華扇の左手に持っていた升を奪い取り、鬼ころしを喉に流しこむ。最近飲んでなかったから懐かしい味だ。あの時は萃香、勇儀、華扇を諏訪国へ引き込むために飲み比べした。

勝手に鬼ころしを飲んだ際、華扇がなさけない声を出したがどうやらこれが最後だったらしい。仕方ないので魔方陣から諏訪国にある鬼ころしを樽ごと転移させて華扇に渡し、幽香の所に行こうとしたらいきなり誰かに左肩から右肩へと腕を回される。鬼ころし臭い。

 

「今は秋だから春以来だね、久しぶりじゃないか弘。私に会えなくて寂しかったかい」

 

「まあ寂しかったな」

 

「いいねいいね、正直者は好きだ。私も会えなくて寂しかったよ。萃香と華扇もね」

 

勇儀は杯にある鬼ころしを飲んで、赤顔で言った。華扇はそれを見て微笑んでいる。俺の肩に回していた右腕に力が入り、ぐいっと勇儀の顔に近づけられお互いの目が重なり合う。鬼ころしを飲んでるからか、勇儀が赤顔なのはなんかエロい。

 

鎌倉時代で神仏分離をするが。本来なら国家神道、天皇を日本の象徴、精神的中核天皇国家神道化にするため明治時代に大教宣布を発して神仏分離され、寺を破壊する廃仏毀釈が起きる。

それは江戸時代の国学者たちによって提唱された復古神道や、江戸時代の本居宣長や賀茂真淵

特に 平田篤胤 の影響も大きいだろうが、その思想は平安時代や鎌倉時代から既に形成されていた。平安時代の延喜・天暦の治 と鎌倉時代中期に起きた 弘安の役 の 神風 がそうだ。

延喜・天暦の治は明治維新や明治以降の皇国史観に影響を与え、そして弘安の役でモンゴル人に

勝利したからこそ、日本は神国との意識が人間たちに生まれ。

それで鎌倉時代末期の伊勢の神宮 伊勢神道 が 弘安の役 の影響で出てくるし

江戸時代末期には神道系の幕末三大新宗教 天理教  黒住教 金光教 が生まれる。

この三つは江戸時代末期に出来た新宗教なので、宗教としてはまだ新しい。

 

要は、明治時代の神仏分離よりも、昔からその思想の土台が既に形成されていた訳だ。

即ち、神仏分離の思想が明治時代でいきなり出て来た訳ではない。鎌倉時代から神仏分離は始まっていた。神仏習合は伊勢の神宮、伊勢神道が色々困るだろうよ。

もう関係ない話だが本来の鎌倉時代中期には 反本地垂迹説 が出てくる。

次に神道の一流派、室町時代の 吉田兼倶 が唯一神道を唱えた。

他に 伯家神道 や江戸時代の 吉川神道 先代旧事本紀大成経を基盤とする 物部神道 とか

室町時代の天真正伝香取神道流もある。

 

長々と話したが。明治時代、明治政府の最大の汚点で失策とは、昔はエロ、性行為に寛容だった 日本人にした政策、一夫一妻制や

ローマ法、ユダヤ教、キリスト教みたいに西洋社会の純潔思想を導入した事であり、余計な思想を植え付けた事である。しかも西洋宗教の思想を。だが明治政府に全ての責任がある訳ではない。

 

ふはははは!! 実に滑稽じゃないか。宗教嫌いの日本人が西洋宗教の思想、純潔思想の影響を 潜在的で無意識に受けてるんだからな!

処女、純潔の象徴である真っ白のウェディングドレスなんかは正にそれだ!

その白色、ウェディングドレスのイメージが日本人の脳に刷り込まれている事が重要。笑える。

特に自分は宗教の影響を受けてないと思ってる奴が、宗教の影響を受けているのは本当に笑える。知らないのではなく、それに気付いてないというのが大事な話だ。

 

多くの日本人は白色を見たら善や正義、純潔が思い浮かぶだろう。白色とはゾロアスター教にとって光と善を象徴する神聖な色である。

だが神同様、その白色のイメージはいつ脳に刷り込まれ、植え付けられた。そのイメージが宗教の影響じゃないと言い切れるのか。

イスラム教では浮気、不倫した女をむち打ちや石投げの刑、最悪 処刑 したりする。これも純潔思想。イスラム教と言っても、イスラム教もキリスト教と同様、ユダヤ教から派生した宗教だが。

 

大体、人間という動物の性欲はかなり強く、しかも年中発情してる動物であり、年中発情出来る動物だ。

確かに古代の日本では原則的、あくまでも原則的にだが一夫一妻ではあった。とは言え豪族や貴族、天皇も多く娶ってた者が多くいたがな。ただし純潔思想はなかった。

それは 天智天皇 と 中臣 鎌足 がいい例だ。純潔思想が日本人に生まれたのはごく最近。

しかしなんて最悪な明治時代だ、俺は神だから関係ないが一夫一妻制ではなく一夫多妻制にしろ。

神仏分離よりそんな政策を導入した政府は滅びてしまえ! こんな事を人間が言ったら不敬罪にされてもおかしくないな。

 

「それでさ。弘に話があるんだ」

 

「うむ。任せた」

 

「ああ、任されたよ」

 

「あのですね弘様。ちゃんと話を聞いてから承諾してほしいです! 勇儀もちゃんと説明しなさい!」

 

即答で勇儀にGOサイン出したら華扇に怒られてしまった。何故だ。勇儀は仕方ないといった表情で、腕を俺の肩に回したまま説明する。

 

「実は萃香と揉めててね。内容はどちらが明神山、二荒山神社付近にいる百々目鬼と勝負するかって事なんだけどさ」

 

「また飲み比べ勝負すればいいだろ」

 

「でもね弘。肝心の鬼ころしがないんだ。力比べしようにも辺りは妖蟲達が気絶してるし」

 

辺りに霧が立ち込め、霧から萃香の声が聞こえた。萃香は鬼ころしが無いから出来ないといって未だに肩を組んで隣にいた勇儀もそれに同意する。飲み比べに負けた方は利根川の河童、禰々子を引き込みに行くようだ。ならばと魔方陣を展開して蔵にある鬼ころしを酒樽を転移させ、辺り一面に酒樽が出現される。酒樽が出て来たので不思議そうな顔をした勇儀は一瞬だけ考えたが、どうでもいいやと結論に到り、萃香も霧から人型に成って勇儀と一緒に酒樽を開け始め、酒飲み勝負が始まった。萃香達と一緒に来ていた西の妖怪も飲み比べ勝負を観戦しようと集まり、みんなどんちゃん騒ぎになる。まるでいつもの宴会だ。

華扇はその酒飲み勝負を懐かしそうに眺めていたが、俺は萃香と勇儀は潰れるだろうから華扇に頼んでおく事に決める。

 

「どうせ萃香と勇儀は鬼ころしで酔い潰れるだろう。悪いが華扇と雷獣、もしもの時は百々目鬼と禰々子を引き込む役目を頼む」

 

「はい、弘様。任せて下さい。その時は私と雷獣が絶対に百々目鬼、禰々子を引き込みます」

 

華扇は右手の拳を握りしめ、綺麗な歯を見せながら笑って応え、華扇の肩に乗っていた雷獣もそれに続くように鳴き声を出す。後は華扇と雷獣に任せようと幽香の所へ向かう事に。華扇とすれ違う最中に華扇の尻を撫でて何度か揉んでから幽香の元へ向かった。華扇の抗議の声が聞こえたが無視する。

 

宗教は文化でもあるが、道徳でもある。悪か正義か、良いか悪いかなんて時代で変わるし、それは神ではなく人間が決めた定義だが。ある人間が悪い存在として人間に見られ、多くの人間に悪と 認知された者が殺されるのは有り体に言えば勧善懲悪。イスラム教の思想だな。イスラム教はキリスト教と同じでユダヤ教から派生した宗教だ。

悪人正機は浄土真宗の思想。これも宗教の考え。日本人は宗教を嫌ってる癖に宗教の考えや道徳に影響されてるんだから、皮肉で滑稽で笑うしかない。

古代の人間だった人物を悪者として、妖怪の鬼や土蜘蛛に仕立て上げ、当時の政府である大和朝廷はいったい何を隠したかったんだろうか。大体の予想はつく。まあそれは予想で憶測で推測に過ぎない。

 

てか、人間の道徳は長い時間をかけ、宗教で培ってきたと言っても歴史的に見て過言ではない。

否定するならば神や地獄と天国の考えやイメージはいつ刷り込まれた。

地獄が悪い事をした人間が行く所、天国はいい事をした人間が行く所と、いつ、どこで、誰から脳に植え付けられ刷り込まれた。祖父か、祖母か、親か、兄弟か、姉妹か、他人か、先人の人間が作った物語の創作物か、誰に教わるでもなく物心ついた頃からか、最初から知っていたのか。どれかだとしても殆どの日本人は明確に覚えていないだろう。

それと同じなんだ。異国の宗教ゾロアスター教から始まって、仏教徒がその思想に影響されたから日本へその考えが伝播や伝来されたんだ。神や黄泉などの考えは日本にあったが天国と地獄の考えは日本が起源じゃない。

 

神道仏教、ゾロアスター教、マニ教、ヒンドゥー教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、オルペウス教などは昨日今日で出来た宗教ではないからな。ヒンドゥー教とともに現存する世界最古の体系的宗教、経典宗教のゾロアスター教だって1000年以上続いている。歴史があると言えば聞こえはいいが、聞こえがいいだけだ。

ゾロアスター教では、親、子、兄弟姉妹との近親婚を フヴァエトヴァダタ と呼びそれを最大の善徳としてる。つまり純血ばかりという事だな。今の日本では考えられんかもしれんが、実際古代の日本では蘇我氏が娘を天皇に嫁がせ、近親婚を累積させ天皇に蘇我氏の血を多く混入させて蘇我氏は外戚をしていた。まあそれを防ぐためゾロアスター教は外部の血を入れない為に近親婚のフヴァエトヴァダタをしていた、そう捉える事も出来る。宗教とは時にそういうものでもある。しかし蘇我氏の正体って、なんだろうな。

 

日本ではいただきます、ごちそうさまって言う。いただきますとごちそうさまは英語にはない言葉だ。他に食べ物で遊ぶなっていう者もいれば、茶道の面倒なマナーや、まだ使える物を捨てる時に勿体無いと考え、もったいないお化けが出ると。

神道の汎神論、アニミズムの考えを子供達に教え、脳に刷り込ませた人間もいる。

 

だがそれって、十分に立派な宗教行為だ。殆どの人間は無意識か、それに気づいていないか

分かってはいるが都合の悪い事は目を逸らしているだけか

人間の道徳を子供に教えているのであって宗教行為じゃないと言うのもいるが、詭弁だ。

都合の悪い事から便利な言葉を使い、笠に着ながら否定しているだけだ。

物は言いよう、嘘も方便か。ふははははは!! 笑える。

 

まるで神道の考えに近い食べ物で遊ぶなっていう人間の道徳は特にそうだ。昔の日本は食と水に飢えて大勢死に。死活問題が多かったからな。旱魃も日本ではよくあった事だ。平安時代の養和の飢饉、鎌倉時代の寛喜の飢饉だってあったし。俺が元凶で今の日本は飢饉問題を解決できていない。まあ今の征夷大将軍は坂上田村麻呂だが、その次の征夷大将軍を源義仲にし終えたらその飢饉問題は終わり、近畿地方から九州地方に住む民はお腹一杯とまではいかないが、腹を空かす事はない。

そんな事があれば、そりゃあ自然を神格化するのも無理はないし、自然の恩恵を心の底から感謝した事も無理はない。だがこの思想、宗教の神道に基づく思想であるという事は、食べ物で遊ぶなと言う時点で立派な宗教行為だ。

宗教は文化であると同時に、人間の道徳でもある。

 

日本に住む人間は言ってる事とやってる事、無宗教で宗教を否定している筈なのに矛盾している。

だが分からなくはない、オウム真理教があったからな。いいイメージを宗教に持てない事はそれなりに分かる。

だが宗教に良いイメージを持たれても俺達からすれば迷惑極まりない、宗教に良いイメージを持たれたら、また神の意味を人間共の都合のいい方に解釈されるのが目に見えてるからである。

ただ宗教全てを見る目が同じ奴ばかりで、肝心の区別がついていない。神と仏のように区別は必要だ。

 

「お帰り、お父様」

 

「ただいま。だが少しやり過ぎじゃないか、一応 小傘は俺達の血や神気と妖気が混ざって生まれた実娘だぞ幽香。大丈夫か小傘」

 

「な、なんとか…」

 

さっきまで小傘は人型ではなく傘だったが、傘状態の小傘を持っている幽香が俺に気付いて近寄って来ると、傘になっていた小傘は人型に成って前から俺に抱き着いて来る。小傘を抱きしめ返したら体が震えて怯えていた。余程怖かったんだな。そこで俺は目の前にいる幽香に、両手で幽香の頬を粘土でもこねるように揉んでいく。幽香の両頬をこねくり回してしながら幽香と視線を交わして思った。全くエロい体しやがってと、そう目線で訴えたら。私の体はお父様の物だから、お父様の好きにしていいのよと。幽香は目線でそう返してきたような気がした。きっと気のせいだ。

 

「お父様、気のせいじゃないわよ」

 

「なんと。では早速」

 

幽香を娘にした頃より比べて育った大きな胸を両手で揉もうとしたら、後ろから誰かが俺の服の襟首をぐいっと引っ張ったせいで変な声が出た。俺の襟首を引っ張るなんて低身長の小傘が出来る訳がないので、誰が邪魔したと後ろを見たらジッパーのように開いているスキマから右手が飛び出し、スキマの奥からは 生気のない表情の紫がこちらを見ている。ホラー映画かよ、普通に怖い。しかもよく見たら活気がない紫の瞳からは光沢が消え、焦点が合っていないので、美人な女ってのが恐怖を煽られて余計に怖い。俺は背にあるスキマへ顔を向けていたが、幽香の方から舌打ちが聞こえた気がしたけどきっと気のせいだ。気のせいに決まってる

 

我々はホログラムでもなく、幻覚でもなく、iPhone、Android上で動作する拡張現実ソフトウェアのセカイカメラに近い。いや、世界各地で報告されているファフロツキーズ現象だな。ファフロツキーズ現象とはその場にあるはずのないものが空から降ってくる現象を指す。2009年に日本各地で起きたオタマジャクシ騒動があったがこれがファフロツキーズ現象。ごく最近だ。形はあくまで人間と同じ姿だが、もう一度組み立てたら別の容姿に、人間ではなく化け物に見えるかもしれん。まあ単語の定義に拘ってはいけない。これは事象の単純化した話だ。そのかわり重要な本質を見落とすが。

人間は、いつも自分達の都合がいい方に解釈する面倒な動物だ。お蔭で俺達はいい迷惑である。

幽香の頬をこねくり回すのをやめたら幽香が人型の小傘を見て詫びる。

 

「ごめんなさい小傘。でも私、じっとするのがあまり好きじゃないの」

 

「大丈夫だよ。幽香お姉ちゃんの根はやさしい事を、私は知ってるから」

 

「ちょっと待って小傘。根はってどういうことかしら。私は人畜無害であり、性格や人格は慈悲深い女神のようにこの世の愛と優しさで出来ているのよ」

 

「う、うん。そうだよね...」

 

幽香は真顔で、本気でそう言った。それを聞いて小傘は肯定しか出来なかった。幽香の隣からスキマが展開され、中から紫が出て来てスキマの穴に座って話し始めようとしたが、その前に紫は沈黙のまま、目を細めて幽香を見ている。きっと紫は幽香の今の発言を聞いて内心絶句しているのだろう。

 

「…」

 

神と妖怪は同じ存在な訳だが。妖怪の鬼が人間を攫って喰う、河童は人間を河に引きずり込み溺れ死にさせる、天狗は怪奇現象。こうしてみると人間に害を成した妖怪は人間に退治され、英雄譚として語り継がれる訳だ。天狗の場合は、坊主の凄さを表現するため仏教の敵とされている。そんな妖怪を退治した坊主は、どうだ、僧は凄いだろう。そう民に知らしめる為。それを凄いと思った民は仏教徒になる時もあるし坊主を敬う時もある。まあ、僧に対して民にいい印象を与え味方につける訳だ。それが本当か嘘かは、正直どうでもいいんだよ。日本は汎神論、アニミズムの考えだからな、日本人は深く考えずとりあえずこの人は凄いんだ! 凄いから敬おう! とする考えだし。それは日本だけでなく外国でもあるが、キリストとかみると分かりやすいだろう。しかし実際の坊主に法力なんてある訳も無く、無力でハゲたおっさんだ。法力を扱うには、まず悟らなくてはいけない。ただ天狗に限った話ではないのだが、時代によって天狗は仏教徒の味方として語り継がれることがあった。そもそも天狗の歴史を顧みると、鬼より弱いというのは本来あり得ないんだが。寧ろ鬼より

 

月の民は一度皆殺しにして蘇生する。そもそも月の民を皆殺しにするのは神と妖怪を対等にするためだ。本来なら妖怪が策を練っても月の民に敵う訳がない、それだけの差がある。人間の科学力なら負ける事はないと思うかもしれないが、月の民はそれ以上の科学力がある。たかが動物の人間なら勝つとか負けるとか以前の問題で、月の民と人間ならばまず勝負にすらならない。正直、俺はいても役立たずだが、だからこそ永琳や輝夜、日本神話に出てくる宇宙樹、幽香に持たせたパスパタやトリシューラ、紫に持たせたインドラの矢がなければ勝利は掴めない。豊姫と依姫の問題はあるが、豊姫には変化を拒絶する輝夜の永遠で、依姫には輝夜の頸に掛けた御頸珠を使ってやっとな所。ただ永琳を敵に回すとまず勝てない、確実に敗北する。

 

この重苦しい沈黙を打ち破る為、俺は宥めようと口を開こうとしたが、その前に紫に苦言を呈され、それに幽香も反応する。小傘は俺に抱き着いたまま沈黙に徹しているが、小傘の危機的本能が今は関わらず、抱き着いたまま石になれと叫んでいるのだろう。

 

「お父さんは幽香には甘い。甘すぎ。たまには幽香を注意するべきだと思うのよ私は」

 

「何言ってるの。お父様は紫や諏訪子、白蓮に甘いわよ」

 

幽香は右手を右頬に当てながら、横目で紫を見て紫をからかう。

既視感。紫は、似ている。永琳ではなく豊姫にだ。どちらかと言えば幽香の方が永琳に似てる。

あの時、紫と初めて会って娘にした紫を長年見て来たが。紫の容姿、能力、思考さえも。

無意識で否応にも豊姫と重なる。

 

「紫、嫉妬は可愛い程度で押さえなさい。束縛な嫉妬はダメ。でも、お父様にそっちの趣味があるならお母様に教わって私もそっちの勉強しなきゃいけないわね」

 

俺や永琳にそんな趣味はない。ただし肯定者の永琳は何しても、どんな事でも承諾して喜ぶから、永琳はサディストではなくマゾヒズム寄りである。内心で否定したら紫はほんのり赤くなった顔で幽香の名を叫ぶ。

 

「幽香!」

 

「キャー。助けてお父様、意地悪な紫が華奢でか弱い私を虐めるのよ」

 

幽香の隣にいた紫に背を向け、紫に見えないように口角を上げて棒読みで喋る。紫は気付いてないが口角を上げた顔が俺に向けられているので幽香がどんな表情かは分かってしまう。前は小傘が俺に抱き着いていたから空いている俺の背に紫から隠れ、背中から俺のお腹に両手を回して抱き着きながら俺に助けを求めるが、幽香の言葉を聞き流せなかった紫は右手の人差指を背中に抱き着いている幽香を指す。

 

「戦場ヶ原の妖蟲達が死屍累累でこの地獄絵図な光景を造り出した張本人の幽香が儚げな訳ないじゃない! 寧ろ私がいつも虐められてるのに…」

 

「紫。人聞きの悪い事を言わないで。お父様や小傘に誤解されるわ」

 

「誤解も何もこのやり取りが事実でしょ!」

 

死屍累累と言っても妖蟲の全ては気絶しているのが現状だ。しかしそれだけこの光景は惨たらしく見える。極太光線を撃ちすぎたな。紫を見ると、紫や幽香を娘にしたあの頃よりも。綺麗に、美人になった。

 

月の民は上から目線で妖怪を人間を、見下している。違うな。正確に言えば、地球に生息する全ての生物を見下している。いや、見下す感じの生易しいものではない。

我が身内ながら、なんと素晴らしい思想だろうか。基本的に人間となれ合う気がないというのは、人間を人間として見ていないのは、実に神らしいじゃないか。

神が人間の味方、救済の存在と。都合のいい事しか観ない人間共に勘違いされるより余程いい。

ユウゲンマガンと魅魔も確実にそう言うだろう。

 

天神地祇ではなく、あのクソ共でもなく。月人として産まれて。本当に、よかった。

俺はそんな思想を持つ月人や月の民が、大好きで仕方がない。

愛してると言ってもいい。愛しているからこそ。あいつら以外の月人を、月の民を皆殺しにする。

 

「いいじゃないか目的は果たしたんだし」

 

「それは、そうだけど。せめて征夷大将軍が通り過ぎるのを待てばよかったのに」

 

「まあ目的は果たしたから諏訪国へ帰ろう。おい、意識はあるかリグル」

 

腰を下ろし、地面に横たわって気絶しているリグルの頬を片手でぺチぺチ叩くが反応はない。とりあえず連れて行こうとリグルの体を持ち上げて右肩に乗せ、スキマを通って諏訪国に戻ろう。

左手で小傘と手を繋いでスキマに入り、目玉がぎょろぎょろしているスキマの中を歩き、幽香や紫もついて来た、紫は俺の右手側に駆け寄って俺の顔を覗くように見ながら聞いてくる。

 

神が宗教より先に生まれたのか、それとも神より宗教が先に生まれたのか、という話がある。これについては、そもそも宗教とは神がいてこそ成り立つ。だから先に生まれたのは神だ。例を挙げるならアマテラスやニニギが大王、天皇より後に産まれていたらおかしいだろう。

 

では、人間の道徳が宗教より先に生まれたのか、それとも宗教が人間の道徳よりも先に生まれたのか。

忘れられては困るが、多くの人間たちは人間の道徳というものを長い時間をかけて培って来た。

だがその道徳も、元は宗教からの派生に過ぎない。宗教は文化でもあれば 道徳 とも言えるからだ。それは日本や外国の歴史を顧みたらよく分かる。

最近のなら純潔思想や明治天皇の教育ニ関スル勅語とかもそれだ。

 

次に、嘗てヘブライの預言者はこう言った。

太初に言あり、言は神と偕にあり、言は神なりき。この言は太初に神とともに在り、萬の物これに由りて成り、成りたる物に一つとして之によらで成りたるはなし。

つまりヘブライの預言者の言葉を引用するなら、言葉とは人間にとって軛で、鎖で、咎で、神という事だ。

 

そしてこんな思考実験の話がある。1人の人間が光よりも速く走り、そのまま壁に激突した時

光より速いその人間は壁に激突する自分自身を 激突する前に 見てしまうのではないかという思考実験。

神が先か宗教が先なのか、ヘブライの預言者や、今話した思考実験で何が言いたいのかと聞かれたら。神に宗教、ヘブライの預言書や思考実験は

 

簡潔に言えば 原因より先に結果が現れてはいけない という因果的矛盾の事であり、つまりこの世界は因果的に閉じられている。当然、神ではなく人間の事だ。全く、神より宗教が先に生まれてるなら、これほど矛盾している事があるだろうか。大体そのロゴス自体があやふやだというのに。

先ほども言ったが、ある人間は、束縛よりも自由を求める。ならばその因果を、軛を無くせば自由になれるかと思ったら大間違いだ。この世界に自由も、ましてや入り口や出口もないんだからな。産まれた以上、無理だ。では死ねば全て解放されると思うのも大間違い。

そもそも、何事にも入り口や出口、内側や外側があるなんて考え自体が、人間特有の思想であり

概念であり、固定観念だ。

 

「お父さん、蝦夷地の妖怪はどうするの」

 

「あー…」

 

スキマの中で立ち止まって考える。面倒だがアイヌやカムイと話した方がいいだろう。

琉球神話にアイヌ神話は日本神話や神道と似た思想だが、どちらも日本神話じゃなくて

琉球神話やアイヌ神話だし困ったもんだ。

 

妖怪についてはアイヌ神話の神である アイヌラックル と話すのが吉か。

しかし今は江戸時代じゃないから蝦夷地に行くのも正直迷う。蝦夷地に行くにしても江戸時代からがいいんじゃないかな。月自体を一度無くすから、月神を招集せねばならん。

あ、琉球神話の アマミキヨ にもだな。めんどくせ。中国神話の月の女神 青娥 も呼ばねばならん。だがまずは手始めに

 

「沖縄、琉球神話の月神 マチヌシュラウヤサメー、松乃美神

北海道、アイヌ神話の月神である クンネチュプ を招集せねばならんし、気が重い」

 

右手で手を繋いで隣にいた小傘の頭を左手でわしわしと荒っぽく動かし、髪を乱すが、小傘は必死に両手で頭を防ごうとする。だがそれを巧みに躱してまた髪を乱すと小傘は涙目になり、上目遣いで俺を見る。

 

「髪が寝癖みたいになるからやめてよ~!」

 

なんだこの美少女!? 流石俺と紫と幽香の血が混ざった実娘なだけある。

まあ琉球王国の王、舜天は天皇の血を持つ源氏の 源為朝 だから、まだ気が楽だ。

 

よく勘違いされるが 無神論 と 無宗教 は同じ意味ではなく 宗教 と 宗教家 は別だ。 

平等 や 対等 も同じ意味じゃない。似ているだけだ。

宗教家 と 霊能者 や 預言者 に 占い師 も同じものと思うかもしれないが、同じではない。 

畏れ と 恐れ のように違う。厳密に言えば違うかもしれないが、まあ巫女と霊能者は同じだろう。ただし占い師は宗教でも宗教家でもない、占いというのは基本的に学問だからだ。多くの人間はこれらを胡散臭いものと、同じものだと考えるから、いや、単語の定義に拘る時点で既にあれだな。

 

アダムとイヴがいた エデンの園 という場所。この場所をキリスト教徒たちは地上の楽園と考えているがユダヤ教徒にはそのような考えはない。

キリスト教はユダヤ教からの派生だ、キリスト教徒が勝手にエデンの園を楽園と勘違いしただけに過ぎない。正確に言えば違うな、勘違いしたのは多くの民衆か。その勘違いで多くの人間の脳にエデンの園はパラダイスと刷り込まれている。

だからそれは勘違いだ。楽園は楽しくて幸せな場所ではなく、苦も無く辛い事がない場所という意味で楽園と言われるのではないし、人間の誰もが想像する楽園とは楽園ではない。

キリスト教徒にとってエデンの園とはGODが、ヤハウェがいるからエデンの園を地上の楽園と考えているんだ。遊んで暮らせるとか、天国に近い場所として楽園と言っているのではなく、これは 楽園 という2文字を、日本人は自分の都合がいいように解釈したに過ぎない。

つまり神が人間の味方、救済する存在と。人間が自分達の都合がいい方に解釈し、勘違いした事と似ている。流石に全てではないが、それでも神が人間を救済するという考えはキリスト教が原因の一つを担ってるだろう。あと神仏習合。キリスト教と仏教は世界三大宗教だ。神からしたら全く以て迷惑な話だ、やはり神仏習合とキリスト教はいらない。

 

そして昭和天皇時代の太平洋戦争時、ある妖怪が歪んだ楽園を築いた。その楽園は、妖怪と神が当たり前のようにいた場所だ。楽園と言えば表面上の聞こえはよくても、人間も住んではいたが人間に対する扱いは酷く、妖精はその人間より格下の扱いだった。平等ではなかったし、楽園と言っても皆が仲良く過ごす場所ではなくて、妖怪と神にとっての楽園だった。まあその楽園の妖精達はお気楽な性格が多かったからあまり問題にならなかったが、人間の視点から見たらそこは歪んでいた訳だ。だがその人間たちはそれが当たり前だと考えていたから不満の感情を人間が持つ事はなかった。つまり人間にとっては楽園というより、外側から見たら楽園でも、内側から見たら唯の牢獄で、隣の芝生は青く見える。

 

それで太平洋戦争時。即ち日本とアメリカが戦争していた昭和天皇時代。

藍が産んだ実娘の早苗は俺の血が入ってるから産まれた時から天皇と同じ現人神だったし

俺達は信仰を必要としていなかったから普通に長野県で過ごしていた。戦争の最中であろうとそれは人間同士の争いであり、神や妖怪は自由気ままに過ごして遊んで。

人間が造り出した武器も兵器も自然の力を利用した物なので俺達には効かなかったからのもあるが、俺達は人間の味方じゃないからどちらが勝つか負けるかはどうでもよかったのもある。

当時の俺は永琳に頼んで多くのセクサロイドを造り出し、日本社会に人間として紛れ込ませようと、各地を転々としながらも長野県に住んでいたんだが。それは無駄になったので日本各地にいた全てのセクサロイドは回収し、俺、永琳、諏訪子、幽香、神奈子、藍、早苗はその妖怪に誘われて暇つぶしでその楽園に移り住んだ。のはいいが、その楽園は崩壊した。原因は単純明快なので分かっている。原因は人間だ。まるで古来の本朝みたいだった。

 

「仕方ない。蝦夷地の妖怪についてはカムイとアイヌに俺が話しておくから。紫と幽香は、藍に萃香達とリグルの配下の妖蟲たちを諏訪国へ連れ帰ってくれ」

 

「分かった。じゃあ皆の所に戻って諏訪国に連れて帰るね」

 

「その前に、小傘はどうしたいかしら。私と紫と行くか、お父様と共に諏訪国に帰る?」

 

紫は萃香達を迎えに行くことを承諾したが、一緒にスキマの中で立ち止まっていた幽香が小傘に聞いた。小傘は悩んだが、紫と幽香に視線を向ける。やはり母親の所にいたいようだ。

ちょっと前に、日本である都市伝説が広まった。鏡を見て何かを唱えると悪魔が出て来たり

過去や未来が見えたり、無限の枚数の鏡が映る。そんな合わせ鏡の都市伝説。

俗説だが、ナポレオンがピラミッドで未来の幻を見たという話と似ている。ナポレオンが未来の幻を見た原因の一つは彗星が原因。彗星と言えば、例えばハレー彗星は 回帰 して、地球に接近する短周期彗星だ。回帰という事は、つまり上書き。

 

「んー。私もお姉ちゃんたちについて行ってもいい?」

 

「うむ。気を付けろよ小傘」

 

俺と手を繋いでいた小傘は俺を見上げながら聞いてきたが、頷いたら人間形態から傘になったので、傘を幽香に手渡した。傘状態の小傘を差しながら、紫と一緒に幽香は別のスキマを通って萃香達を迎えに行った。なんか、疲れたな。だがまだ終わっていない。

次はザビエル、キリスト教。それまではのんびりできたらいいんだが。

 

本来は明治時代だったが神仏分離の準備は終えたし、後は鎌倉殿に任せて俺はだらだら過ごそう。鎌倉幕府は俺が潰すが、その前に月の民を見殺しにしなくてはいけない。鎌倉幕府をどう潰そうか悩むな。やっぱりここはシンプルに、津波で全て飲み込むのが早いか。

ならば豊姫と依姫が持っている鹽盈珠、鹽乾珠を使って海を操ればいい。ウォーターボーディング、溺れ死は本当にきついし。

 

スキマ内で欠伸をしてしまい眠たくなる。目玉が不気味だが、一度腰を下ろして寝転がろうとしたらスキマ内から声を掛けられ、声を掛けた人物を見る。

 

「終わりましたか」

 

「ああ、築土大明神。終わったよ。しかし丁度良かった。平将門、お前はもう世間から死んだ者扱いだ。そこでこれからは 平氏 ではなく 仁科氏 を名乗れ」

 

たまに、昔の人間は野蛮で頭が悪い、もしくは知能が低いと思っている人間がいるが実際は違う。

寧ろ古代の人間の方が知能は高かった。それは 白村江の戦い で敗北した後の 天智天皇 や 

古代ギリシャ人 と 古代エジプト人 を見るとよく分かる。本当に凄い。

 

「仁科氏、ですか。ならば私は信濃平氏、 諏訪平氏 になりますな」

 

「そうだ。お前の名を呼ぶ時、平将門ではマズい。だがシンギョクではあっちのシンギョクとで紛らわしいし。あ、果心居士と甕依姫をお前にやる、好きに使え」

 

甕依姫は妊娠してる綿月依姫と名が似てるので紛らわしいが、同じ巫女という部分を除けば別人である。妊娠してる依姫の場合は海神であり、巫女を神格化した巫女神みたいな存在だ。

 

「では室町幕府の三代将軍 足利義満 そしてキリスト教。明治天皇、大戦後の進駐軍のGHQ

連合国軍最高司令官総司令部。昭和天皇、8月15日の玉音放送も同じ扱いですか」

 

女好きの天智天皇は白村江の戦いで敗北した後の国防、先進的な海防策が凄まじく

古代ギリシャ人の アルキメデス は科学を進歩させ、古代エジプト人の凄い所は色々あるが

その中でも特に時計、時間の正確さだな。

アルキメデスで思い出したが、諏訪国にいる魔女の エレン が飼っている猫の名が確かアルキメデスだ。

あ、昭和時代。日本の大塚食品ではアルキメデスをもじって名付けられ、アルキメンデスっていうカップ麺が発売されたが、美味しくなかった。不味くもなかったが。

 

時計や時間と言えば天智天皇が時計の漏刻を作った。日本で初めて時計を作ったのは天智天皇だ。

他に東アジア特有の戸籍についてだが、これは奈良時代の日本当時、先進国だった中国から日本に中国起源の戸籍を取り込んだのだが、まあ先進国だった中国の戸籍を参考にして日本で戸籍を作ったのも天智天皇。

 

「是。悪いがいつも通り鎌倉幕府を潰した後 北条時行を諏訪国へ引き取り、諏訪氏の諏訪頼重に引き渡すかどうか、育てるかどうかはお前に一任する」

 

北条氏は平氏ではあるが、その平氏は平将門が諏訪国に存命してるから北条氏は別にいなくてもいいのだ。

 

「…正直、私は北条時行が好きではないのですが。彼奴のせいで弘天様の氏子

諏訪頼重、諏訪時継親子は死にました。他に北条時行は神に仕える巫女へ」

 

「そんな事したら殺すに決まってるだろ。嘗てあいつと約束を交わした、諏訪氏や全ての巫女は神である俺のだ。手も、ましてや死なせて堪るか」

 

シンギョクと対面し、スキマ内で目を閉じこの先を思案。まずは鎌倉幕府を潰し 北条時行 

を諏訪国へ連れて引き取り、北条氏の滅亡を防ぐ。次に室町幕府の三代将軍 足利義満 だ。

義満は自分の子を天皇にして足利家を天皇家にのし上げようとしていたという俗説がある。

ので、足利義満は死んでもらう。いや、まあ確かに足利は源氏なので天皇の血を持つが

天皇になれるかと聞かれたら、無理だ。これは天皇の血が薄まっている平将門にも該当する。

理由は現天皇より、天皇の血を持つ源氏の足利の血が薄まっているからだ。

 

ただ現天皇より血が純血に近く、濃い場合は当然天皇になれる。例えば小野篁や小町がそれに該当する。ただし、シンギョクの片割れ小野篁や小町は女だ。女の天皇というのは非常に面倒な事にしかならないので結局は天皇には出来ない。それは過去の女帝天皇がいい例である。

 

それで新田義貞、第96代天皇 後醍醐天皇 の 建武の新政 南北朝時代 元弘の乱だ。

しかし幕府側の御家人である原氏の 足利氏 を鎌倉ではなく朝廷側につかせ、俺は室町幕府を創立する為 足利尊氏 側につくので、後醍醐天皇と新田義貞には余計な事をする前に消えてもらう。この場合は足利氏を朝廷側につかせるというより、足利氏を使って朝廷や天皇が余計な事をしないよう監視してもらうが正しいか。そもそも今の天皇は弘文天皇なのであんまり関係ない話だが。

 

フランシスコ・カブラル、フランシスコ・ザビエルはいらないが。ガスパル・ヴィレラ、ジョバンニ・ニコラオ、ジョアン・ロドリゲス、ルイス・デ・アルメイダ、ルイス・フロイス、グネッキ・ソルディ・オルガンティノ、これらをどうするか。日本は昔から閉鎖的だが、辺境な日本を植民地にしたいだけのキリスト教も、仏教と同じで色々派生がある。

 

「分かりました。所でルーミアはどうです。まだ私達を恨んでおりますか、もしくはまた忘れたフリをしておるのですか」

 

「昔から隠すのが上手かったから、ルーミアはフリなのかが判断できん。だがそれ以外は相変わらずだ。月でお前達と出会って早々封印されたんだし」

 

科学の歴史は古い。その科学は古代ギリシャ人が発展させた、まあ古代ギリシャ人だけじゃなくて他にもいるが。しかし古代ギリシャ人は科学よりも哲学だ。

哲学に関しては古代ギリシャ人の哲学者達であるアリストテレス、クセノパネス、エピクロス、ヘラクレイトス、ソクラテス、プラトンなど挙げればキリがないが。古代ギリシャ人の哲学者達によって既に哲学は完成されていると言える。後世のは陳腐なのが多い。

 

例えばギリシャ神話、古代ギリシャ人、日本神話と神道のように。あくまでも似た考えだが、神道に似た思想を持った

ドイツの神学者、哲学者 アルベルト・シュヴァイツァー の 生命への畏敬 という思想、哲学がある。

だが、その考えは古代日本人や古代ギリシャ人が既に持っていた。その哲学が生まれたのは遅すぎる。大体、世界平和にも貢献したアルベルト・シュヴァイツァーの共存を目指す考え方は夢物語であり、それ以前に共存を謳っていたアルベルト・シュヴァイツァーは人種差別をしてたし。

 

しかもアルベルト・シュヴァイツァーは核についてアメリカ合衆国のケネディ大統領へ手紙を出してた。

デウス・エクス・マキナ。あのケネディ、ケネディ大統領暗殺事件は未だに陰謀論の話題がよく出る。実に下らない。

 

「ルーミアはインドの月の妖怪。インドの月の説話。月の関係者でしたから。ですが事の発端は

神綺様とサリエル様にルーミアを封印しろとの命、魔界人の私達が逆らえる訳がありません」

 

「まあ、そのお蔭でお腹を空かしたまま諏訪国に来たから。諏訪国で女を侍らす俺としては願ったり叶ったりだし別にいいが」

 

正確に言えばルーミアが諏訪国に来たと言うより、無意識に諏訪国へ来させられたが正しいだろう。ルーミアが諏訪国へ向かうよう封印術に施されていた。

 

この先で問題は、戦国時代のポルトガル商人が日本人を奴隷として海外に売っていた事だ。別に日本人が海外に売られようと知った事ではないが、こいつら我らを舐めてやがる。キリスト教徒は一神教、つまりヤハウェ以外の神は認めない連中だ。ある意味仏教も一神教と言えるが、そもそも釈迦は神ではなく仏である。やはりキリスト教徒は徹底的に殺した方がいい。邪魔だ。ヤハウェが煩いが、日本でキリスト教徒が殺されようとあいつは口を出す事はない。

 

キリスト教は他宗教を弾圧や排斥する事が知られている。

しかし、よく誤解されるがヤハウェ、または旧約聖書には他宗教を排斥、異教徒の大量虐殺や

奴隷。これらをしろなんてどこにも書かれていないしヤハウェも言ってない。これはキリスト教徒が勝手にした事だ。大体だな、キリストはユダヤ人だぞ。

 

そして戦国時代で肝心なのが、キリスト教徒に洗脳されたキリシタン大名によって多数の神社や寺が焼かれ、神道徒や仏教徒達が迫害を受けた事が大問題だ。嘆かわしい。別に俺は仏教徒を嫌っている訳ではない。僧兵や放蕩はともかく、真面目に修行している坊主はどちらかと言えば俺は坊主を守る立場にある。釈迦の奴に頼まれているからだ。なので仏教徒は神の保護対象、ちゃんと坊主が修行さえしていたらそこらの民より坊主の安全を神によって保障される。

だからこそ、特に九州地方は定期的に痛めつける。キリスト教徒もだ。

平将門、仁科の隣にいた春姫、リリーは妖精特有の綺麗な羽根を羽搏かせながら俺達の周りを飛び、俺の目の前で止まってから両手を腰にやり、眉を顰め肩をすくめた。

 

「難しい話はおーしまい! いつも通りなら美味しいもの食べたり温泉に浸かったり人間を殺戮したりって事でいいじゃない!」

 

「一言で言えばそうだが、リリーが言うと複雑な気持ちになる。なあ仁科」

 

「そうですな」

 

「えー」

 

多くの人間は勘違いしてるが、古事記や日本書紀の日本神話には人間からの信仰がないと

神が消滅、自然と一体化。または死ぬなんて 微塵も書かれていない 

 

そもそも日本神話において人間が生まれたのは神世七代のイザナギとイザナミの後だ。

仮に、神が人間の信仰を必要とするならば、日本神話の神 造化の三神 や 神世七代 

イザナギ、イザナミが人間より後に生まれた事になる。しかし、それは色々矛盾が起きるし

大国主の出雲神話さえも色々矛盾が生じる。

 

だが日本神話の神に寿命はないが死という概念はあり、死んだ後は世界から消滅はせずにイザナミみたいに黄泉に行く。たまに死んでない者が黄泉、根の国に行く場合もある、イザナギやスサノオ、一度死んだが蘇生してからの大国主がそうだ。ただし、日本神話の神は死んだとしても蘇生できない訳じゃない。

それは大国主の再生神話や、物部布都が持つ死者蘇生の言霊の十種神宝、布瑠の言がいい例だ。

そして多くの神話においてヘビとは二重螺旋、不老不死や永遠を象徴している場合が多い。

 

イザナミを殺したのはカグツチだ、カグツチを殺したのはイザナギだ

保食神を殺したのはツクヨミだ

稚日女とオオゲツヒメとヤマタノオロチを殺したのはスサノオだ

アメノワカヒコを殺したのはタカミムスビと天探女、稀神サグメだ

大国主を殺したのは八十神だ、サルタヒコを殺したのは比良夫貝だ。

自然神が多い日本神話の神が死者を蘇生できるのは別に不自然ではない。

大体、日本神話限らず神話に出てくる神は死者を蘇生出来るのが大勢いる。

 

「とりあえず諏訪国へ帰るぞ」

 

魔方陣を展開してスキマ内から俺と平将門に春姫、俺が肩に担いでいるリグルも含めて諏訪国へと転移。リグルは俺達と同じ諏訪国に転移させるが、同じ転移場所ではなく、ある場所に転移させる。

 

例えば神話に登場し、死者を蘇生できる神に人物、または道具を挙げるなら

 

日本神話のキサガイヒメとウムギヒメ、フィンランド神話のレンミンカイネンの母

アボリジニの神話のユルルングル、ウガリット神話のアナト、ハワイ神話のヒイアカ

ギリシャ神話のアスクレーピオスにポリュイードス、インド神話のルルやアルジュナ

正確に言えばゲルマン神話だが北欧神話のヘル、中国神話の反魂香。他にもいるが全部挙げればキリがない。

 

今挙げたのでこれだけあるというのに、死んだ人物を蘇生できなければ人間となんら変わらん。それ以前にその程度の事が出来なければ神と認めない人間は多いだろう。

言ってしまえば、神とは自然の摂理に反している存在なのだ。

自然神が多い日本神話がそれはおかしいと、矛盾していると思うかもしれないが別に矛盾していない。寧ろ自然神だからこそ死者の蘇生が出来る。

 

「嗚呼、やっと終わった…」

 

体を伸ばして一息。お天道様が眩しい。なんか色々と疲れました、まる。転移した場所は石段を上り終えたら真上にある鳥居の真下。春姫はスキマ内から出られたので飛び回っているが、シンギョクは鳥居の近くにある銅像を眺めていた。

 

「四季映姫殿の銅像を見るのは久しいですな。そろそろですか」

 

「あー 映姫はもう少しで終わるだろうが、それを早める為に映姫に俺の神気を分け与えておこう」

 

銅像に近づき、右手を銅像に手を当て、俺の神力と神気を分け与える。

映姫の銅像は裁判官みたいに椅子に座り、机に 鬼籍 を置いて、右手に笏を持ち、映姫の左手には手鏡の 浄玻璃鏡 がある。色々閻魔と似ているが、閻魔をイメージして銅像を造ったから似てて当然だ。

 

これもよく誤解されてるが、冥界や地獄に閻魔がいる考えは本来 仏教にはない

ただインドの説話が仏教に取り入られ混ざっただけ。あとキリスト教の 最後の審判 は有名だがその 最後の審判 も元はゾロアスター教の思想だ。

キリスト教と仏教は上書き上書きする宗教。そういう意味ではキリスト教と仏教は色々似ている所が多い。神道の場合は上書きというよりも、神道の一部としてその考えを取り込み結合する感じだ。

まあユダヤ教はゾロアスター教の後から出来てるし、先に出来ていたゾロアスター教の影響を受けているのは当然ではある。

 

銅像に神力と神気を注いでいたら、後ろから足に誰かがぶつかって来た。後ろを振り向いたら幽々子と涙目の白蓮が上目遣いで俺を見ている。涙目の白蓮を見てると罪悪感に蝕まれそう。

 

「氏神様帰りが遅い、寂しかった…」

 

「おじさん帰って来るのが遅いよー」

 

「げ。や、やあ白蓮に幽々子ちゃん。本日はお日柄もよく...」

 

まだ子供なので背が低い白蓮と幽々子は俺の服を引っ張るが、これは俺を逃がさない為だろう。白蓮には一緒にいたいと言われ、幽々子は遊んでとせがまれる。しかし映姫の銅像に神気を注ぐ事や、シンギョクとリリーを地獄谷温泉に案内せねばならんのだ。後で二人のしたい事を全てしてやると言ったら、二つ返事で了承された。何とか窮地は逃れた。白蓮と幽々子は鳥居の両脇から神社に咲いている桜の木に近づくと、桜の枝が動き出して白蓮と幽々子を乗せたりして遊んでいる。

 

この桜たち、元は幽香の能力で成長させて咲かせた木だが。永琳が言うに、どうも幽香の能力と妖気に影響や触発されてか意思を持ったようだ。この桜たちが意思を持ったのなら何か名を付けた方がいいかもしれん。桜の木の枝と戯れる白蓮と幽々子を見て考える。

弘川寺にいた西行は、記憶を消しはしたが結局殺していない。そして西行は桜好きだった。そうだな

 

この桜たちは西行と幽々子。室町時代の世阿弥作の能楽に因んで 西行妖 と呼ぶ事にしよう。

 

「確か、あの子達がそうでしたか」

 

「然り」

 

シンギョクは白蓮と幽々子を見ながらそう訊ね、俺は肯定する。仕切り直してもう一度映姫に神力と神気を注ぎ込む。

 

日本神話をしっかりと読めば分かるが、日本神話も人間の視点で見たらクズで野蛮で自分勝手な神が多い。

更に質が悪いのはゼウスとヤハウェのように自分がクズだと自覚してない事にある。素晴らしい。

 

イザナギとイザナミ、スサノオが元凶だが岩戸隠れしたアマテラスも、ツクヨミを歓迎する為にした行為を見て保食神を殺したツクヨミも、スサノオはその類話が多すぎるのであえて言及はしないが。特に岩戸隠れ、アマテラスはただ隠れただけと思うかもしれないが、あれのせいで日本が無茶苦茶になったんだ。

出雲神話の大国主や、富士山と八ヶ岳の背比べの木花咲耶姫も人間の視点で神話を見る限り自分勝手なクズ。

 

だがそれこそが神。神とはそうでなくてはいけない。自然、自然災害、天変地異とはそうだ

人間の都合なんぞ知った事ではない。クズだと自覚する必要はない。

疫病や地震、水害に台風や落雷、祟りや呪い、富士山を噴火する時、一々噴火していいかどうか

人間の許可をとる方がおかしいのだ。我々は天変地異故に、一貫性なぞ持ってはならない。人間と同等の、対等の存在なんて、人間の味方や救済するなんて事は、一瞬でも絶対にあってはならん。

それにだ。日本神話のみならず、外国の神話てくる神ってのは、無駄に下らない理由で動く神が多い。

 

大体、自然神が多い日本神話の神が人間にとって良い神、な訳がない。確かに元を正せば自然は人に死を齎す存在だったが、同時に自然は人に恵みを与える存在だった事が一点

後は神が人間を救う存在として認知され始めたのは神仏習合が大きい。神と仏は同じ存在だと民に知れ渡ってしまったからだ。

神仏習合や中央集権の朝廷、大王、天皇に利用されただけであり、実利主義。大王、天皇にとって都合がいい神話であり、都合がいい神なだけである。

 

映姫の銅像に神力と神気を十分に送り終えたのでもういいだろう。

 

「こんなもんか。さて、シンギョクと春姫は地獄谷温泉に浸かって療養してろ。地獄谷温泉の場所を覚えてないならナズーリン、星、影狼に案内させるぞ」

 

「有難いですが。その前に、私達は五月姫に会いに行く事にします」

 

「分かった。ならば八ヶ岳にいる天魔と百鬼夜行に一報入れておく。ただし八ヶ岳の妖怪をまだ統一できてないんでな、気を付けろよ。特にリリー」

 

「大丈夫! 妖精だから私は死なないし!」

 

振り返り、二人にそう告げ、神使である星と影狼を呼ぼうとしたら。シンギョクとリリーは地獄谷温泉に浸かる前に、ヤマメに会い行くようで八ヶ岳へ向かった。死なないから大丈夫と踏ん反り返って言うリリーは妖精だから雑魚だ、だが妖精は雑魚でもその代りに死なない。

 

「冬に造り、あれから春と夏が過ぎ、今や秋。映姫の銅像を俺が造ってから四季の季節が経つ」

 

鎌倉時代中期に起きた 元寇 モンゴル人からの侵攻を日本は完全に退けた。

この時、神道の神は人間の為に手を貸したと思われがちだが誤解だ。あれは人間を守る為ではなく、文化や神道を守るためにした事。弘安の役、神風を人間が自分達に都合がいいよう解釈したにすぎない。

あの時、元寇で手を貸さず、モンゴルに日本を支配されると神道がモンゴル人に潰されるのは目に見えていたからである。

 

俺達が出なければ ケルト神話 や マヤ神話 と同じ道に行き着く所だった。

 

それは日本がアメリカに敗北した戦後の当時、ドッグレース場を建設しようと

アメリカが、GHQ司令 ダグラス・マッカーサー が靖国神社を焼き払おうとした事から分かるだろう。アメリカは結局、靖国神社を焼かなかったが。

 

天皇家の紋章はシュメール神話 最高神 アン のマークと似ているそうだが

いや、そもそも不思議なんだ。日本はアメリカに敗北したというのに待遇が良すぎる。

歴史的に見て敗戦国の末路は相場が決まっているというのに。

それは第一次世界大戦の敗戦国の末路がいい例だ。第一次世界大戦での日本とアメリカは色々得したが。

 

「鎌倉時代中期に起きた元寇。モンゴル帝国の都からの日本侵攻。そしてモンゴル帝国の夏都だった上都のザナドゥ、後にザナドゥは楽園の名となる」

 

ここは理想郷でも桃源郷でもないが、傍から見たら楽園か。隣の芝生は青く見える。

 

「他は天界に存在している欲界の六欲天 第三天魔王 夜摩天 裁判官は公平な立場と秩序の象徴である法の番人、そしてエジプト神話の女神 マアト ギリシャ神話 正義の女神 ディケー」

 

後はザナドゥ計画。鳥居、鎮守の森の近くにある映姫の銅像を見つめてから諏訪神社に向かい、諏訪神社の屋根に上り、腰を下ろしてから落ち着く。最近色々あった、ぼけーっと出来なかったから瞼を閉じて過ごすこのなんでもない時間が癒される。

 

「穢れか。もう俺達には関係ない話。数多の神話 最高神の神々に創造された地球風情が余計な事しやがって反抗期かよ。だからツクヨミは月人と月の民は月に行っちまった。なあ、キクリ…」

 

「なんだ」

 

横から声が聞こえて飛び起き、目を見開いて見たら、俺の隣に両手を足首に回し三角座りで屋根に座っていた人物は、側頭部から羽根状の物があり、Yシャツにネクタイをし、その上からブレザーを着ており、下はOLが履いてそうなタイトスカートを履いて、足は黒のタイツを履いてるキクリだった。

 

「うわ。お、お前いつからいた!?」

 

「弘天があの銅像に神気を送っていた時からいたぞ」

 

キクリは三角座りしてるので顔を枕みたいに膝へ置いて、横顔を俺に向けながら言う。そうキクリに言われても俺は全く気付かなかった。

 

現在も存命しているアメリカの哲学者 トマス・ネーゲル が発表した論文に 

 コウモリであるとはどのようなことか という哲学がある。空飛ぶキツネと言われるオオコウモリの場合は主に視覚に頼っているのだが、ココウモリは視覚がオオコウモリと比べて視覚が発達していない。その変わりココウモリは超音波で周囲の状況を把握している。そこでトマス・ネーゲルは思うのだ。コウモリはその超音波を観ているのか、感じているのか、それとも無意識的なものなのか、誰かにコントロールされているのか、はたまたそのどれでもないのかと。人間以外の存在は、世界をどう観ているのか、感じているのかと。一言で言えばコウモリの意識はどうなっているかという事だ。

勿論、何故コウモリが選ばれたのかはちゃんとした理由がある。ネズミが実験動物にされている理由と同じ事。

 

人体実験は人権団体など、道徳的な面や問題もあり禁止されている。そこで、実験動物にされやすいネズミがいる。では何故ネズミが実験動物としてよく使われるのか。それはコウモリも実験動物にされやすいネズミも人間に近い存在だからだ。人間に近いネズミを実験動物に使ってるからこそ、科学と医学は進歩したし、他にも色々担っている。実験や研究をしなければ科学と医学に進歩と発展はなかった。

そしてネズミとは繁殖力では最強の存在というのが有名だ。つまりネズミ算式。

言ってしまえば無駄に数が増えるから、研究や動物実験をする際、人間に近い存在のネズミは最適なのだ。無駄に多く産むから使い潰しが出来るし、ネズミを養育してもコストはそこまでない経済面での利点もある。

 

「神出鬼没なのは紫だけで十分だぞキクリ」

 

「そうは言われても意識してやっている訳ではない」

 

人間の話ならば、人間は世界を見る際にまず瞼を開き、媒介の眼を使って世界を脳で処理し、認識してから観る。だが目の前の景色を眼では観ていない、実際は眼ではなく脳が視神経情報を処理して世界を観ているからだ。視覚にとって脳はとても繋がりが深い部位である。観測、視覚で捉え認識した世界を脳が、視神経情報の処理をしているからだ。脳が視神経情報を処理しているからこそ、人間は世界を観ている事が出来るのだ。これが眼がない、あるいは脳がなく世界を認識出来ない人間だと世界を観る事が出来ない。世界を観る上で眼、認識、視覚情報、視神経情報を処理する脳は絶対に必要だからである。

ドイツの哲学者、神学者である ルドルフ・オットー が定義した ヌミノーゼ がいい例。

 

当たり前だが、人間は地球や世界の法則を変える事は出来ないので、世界や地球に干渉なんて出来ない。

例えば人間が月を見て消えろと念じても月が消える事はない、それは何故か。簡単だ、人間が内側にいるからだ。まあ先程も言ったが実際は外側も内側もないし、言葉なんてのは意思疎通する為、ただの媒介や比喩表現に過ぎん。神が言葉に囚われるのは駄目だ、神が単語の定義に縛られるのも駄目だ、人間が見えない言葉の意味を見続けて見出そうとするのも駄目だ。

 

隣にいたキクリに手を伸ばし、キクリの肩へ回して一つ提案する。

 

「なあキクリ。もう一度、月に行く気はないか」

 

「また、月に行かねばならないのか」

 

「行くというより、着いて来て欲しいんだ。ルーミアもな。全て、終わらせるから。

キクリとルーミアにはそれを見届けて欲しいんだ」

 

そこでこんな話がある。産まれた頃から眼が不自由な人間に一度世界を観せようと、ある機械を使ってその世界の光景、ヴィジョンを脳に送ろうといった話があった。だが眼がない、もしくは不自由な人間に世界を観せようとある機械を使って、視覚データを電気信号として脳に送り、疑似的な世界を観せたとしても世界を観た事にはなるだろうか。

答えは、ならない。それはあくまでも疑似的なデータの世界。実際にその人間の眼で世界を観ている訳じゃない。脳であり眼じゃないんだ。眼は媒介の役割なだけ。

 

視覚にとって脳はとても繋がりが深い部位だ。そしてファフロツキーズ現象、ヌミノーゼ、パレイドリア。ある機械を使って地球、世界の光景、ヴィジョンを脳に。疑似的なデータを脳に送ろうといった実験。

 

そこにいる筈も、ある筈もない。我々の姿も

 

「まあ今すぐって訳じゃなく、もう少し後の話だ。それに強制じゃない。大体、俺はキクリと交わした約束をまだしてやれてないからな。だが考えておいてくれ」

 

俺は立ち上がって隣で三角座りしているキクリを見ながら言う。キクリは膝に顔を置くのをやめて俺を見上げるが、何も言わずに頷き、足首に回していた両手を膝の上に置いた。両手で何かを支える風にキクリが置いていたら、両手の上に綺麗な水色の球体が生成され、形成されていく。

久しぶりに懐かしい物を見た。キクリが生成し形成した水色の球体は、簡単に言えば鏡に近い。ただし鏡と言ってもガラス細工ではなく、キクリの妖気で出来ている。本来はキクリの神気で形成されていた物なのだが。そしてさっきも言った

 

日本である都市伝説が広まった。鏡を見て何かを唱えると悪魔が出て来たり、過去や未来が見えたり、無限の枚数の鏡が映る。そんな合わせ鏡の都市伝説。

神社の屋根から飛び降り、玄関を開けて中に入る。玄関から廊下を歩いていたら懐かしくなる。床や壁を見て、神社の中の匂いを吸うとプルースト効果、フラッシュバックが起きて、何かを思い出しそうになる。

 

「なんだか凄い久しぶりに帰った気がするな」

 

仏の教えには人も妖怪も救われるだとか、皆は平等だとか。そんな意味不明な事を言いだす坊主がたまにいるが、んな訳ないだろ。下らん、実に不愉快だ。

それを釈迦が声に出して言ったのか。言ったとして釈迦から直接聞いたのか

それとも釈迦が言った所を目撃したのか、もしくは釈迦の頭の中を覗いて、思考を読んで知ったのか。たかが人間風情の分際でそんな事を出来る訳ない。

 

釈迦は天竺で死んで仏になったんだ。日本で産まれて死んだわけじゃないし、釈迦が天竺から日本に来て死んだわけじゃない。天竺で死んだんだ。それでどうやって釈迦の教えを知ったといったら、人に聞いた。つまり伝来だ。

釈迦に会った事もないクセになにが仏の教えだ、なにが仏の救いだ。

なにがこの教えは正しいだど腐れクソ坊主が。伴天連やカトリック教会、キリスト教や十字軍

日蓮宗みたいな事を言うな。釈迦は坊主や民の救済理由にされる便利な道具じゃない。

鎌倉時代の仏教の僧 日蓮宗の宗祖 日蓮 も余計な事をしすぎている。

 

「関東大震災、阪神淡路大震災、東日本大震災で人間は自然に無力だという事を忘れたのか、あれだけ死んだというのに。忘れたなら思い出させるまでだ」

 

異常気象だなんだと言われているが、あれは異常気象なんかじゃない。ただ昔に戻ってるだけだ。

 

神同様、釈迦の教えも随分と僧に都合のいいよう曲解や解釈され、独り歩きしたものだ。

まるでキリストの奴とキリスト教じゃないか、人間如きが、宗教家の人間風情が忌々しい。だから神道に取り込むんだ。もっと、早くにしておけばよかった。

 

口を慎め、身の程を弁えろ、人間如きが自惚れるな、自然の力を借りなければ何もできない無力な存在が、先人たちが残した借り物の知識だけ蓄えた有象無象の分際で、たかが人間という事を人間自身が忘れてどうする。嘆かわしい。

 

「って神奈子じゃないか」

 

「やっと帰って来たな、今までで一番遅い帰りよ」

 

廊下の曲がり角を曲がったら、腕を組んで立ち尽くしていた神奈子がいた。そのまま近づいて久しぶりのハグをしようと両手を広げたら、拒否される。

 

「やめて」

 

「やめてって俺達夫婦だろ」

 

神奈子は心底嫌そうな顔で止めたが、そんな顔されたらもっとしたくなるじゃないか。神奈子は仕方ないと言った顔で、腕を組むのをやめてから俺に右手を差し出す。

 

「抱きしめられるのは嫌だけど、握手ならいいわよ」

 

「そりゃどうも、嬉しくて泣けてくるよ」

 

神奈子が右手を差し出してきたから、俺も右手を差し出して握手をする。神奈子の右手と握手してるから、俺の右手を使いにぎにぎと神奈子の右手の柔らかい感触を楽しむ。が、飽きた。飽きたので抱きしめようと思い、神奈子の右手を思いっきり引っ張るが何故か神奈子は驚かず、傾れ込んで来たからそのまま抱きしめる。神奈子を抱きしめながらやわこい感触を楽しんでたら、神奈子は抱きしめられたままなのに、何も言わず無反応。数十秒ほど経つと俯いていた神奈子は顔を上げる。

 

「誰が抱きしめていいと言った」

 

そう言いながら神奈子は俺の右足を思いっきり踏んで来た。激痛が足に走り、抱きしめていた神奈子を離す。右手の人差指を神奈子に向ける。

 

「お前本気で踏みやがったな神奈子! スゲー痛いぞ!」

 

「無断で私を抱きしめるからだ。そんな事より、早くあの子の所へ向かって傍にいてやりなさい。お前と藍の娘、風祝だろう」

 

さっきまで神奈子は不機嫌な表情だったが、今では何故か笑顔になっていた。神奈子は歩き出して、俺とすれ違いながらあの子の元へ向かえと言い、俺の背中を平手で思いっきり叩いてから行った。叩かれたので背中がヒリヒリするが、分かってるさ。激痛の右足に耐えながら歩き出し、居間にいるてゐの元へ向かう。

 

デウス・エクス・マキナ、機械仕掛けの神は言い回しを変えれば夢オチや爆破オチがそれに該当する。つまり神から夢、爆破へと言い回しが変わっただけ。

しかしだ。厳密に言えば違うが イスラム教 の思想である 勧善懲悪 があり、民に悪さを働く悪い奴を正義の味方が倒してめでたしめでたし、という話は日本でも多く存在する。

だがそれは単に過程と結果が変わっただけであり、デウス・エクス・マキナと同じだ。

ただ 神 ではなく 正義の味方 や 悪者 になっただけで

もっと正確に言うなら 神 から 正義の味方 や 悪者 へと 言い回しが変わっただけ ではないか。あれは都合の悪い人間だった人物を鬼や土蜘蛛などの化け物に変えて、自分達はその化け物を倒し統治権の正当化や威光を、大和朝廷が世に知らしめる為でもあったろうから。それが本当か嘘かなんてどうでもいい、悪者に全部の責任を押し付けてめでたしめでたし。こいつが悪い、こいつのせいだと。この結末のどこがデウス・エクス・マキナじゃないと言えるんだ。

 

言い回しをもう一度変えよう。今度は悪者ではなく人間の心になった場合。誰かを差別したり、蔑んだり、見下したりするのはそいつの心が歪んでるからか、臆病だからとか、無知だからだとか。理由なんていくらでも作れるから簡単だ。

この話は人間の心だから人間の問題で神は関わっていないが、これも 神 から 人間の心 へと言い回しが変わっただけだ。

結末が神から別の言い回しになった時点で、これらをデウス・エクス・マキナじゃないと人間は言い切れるのだろうか。

 

居間に到着し、襖を開けて中に入る。中には諏訪子、てゐ、そして藍が産んだ子をてゐがあやしていた。諏訪子は俺に顔を向け、てゐは俺に気づいてはいるが今は赤ん坊の世話に集中している。

 

「お帰り父さん」

 

「ああ、ただいま。諏訪子」

 

居間の中に入り襖を閉める。赤ん坊は布の上に横たわり、てゐは赤ん坊を見つめながら撫でて、撫でられている赤ん坊は、はしゃいでいる。諏訪子の隣に座って、赤ん坊を見つめていたらてゐは俺を見た。

 

「ほら。祭神様と藍の子だよ。父親ならちゃんと一緒にいなきゃね。祭神様と藍の神気と血を持つ実娘なんだから寂しい思いをさせたら駄目」

 

「う、うむ」

 

てゐから割れ物を扱うように渡され、抱っこして、赤ん坊の顔を見つめ、右手で支えながら開いた左手で赤ん坊の小さな掌を掴む。当たり前だが小さいし、脆い。

 

「早苗。大王、天皇と同じく神裔、現人神として、諏訪の神に仕える風祝として産まれてしまったばかりに、この先お前には苦労を掛けてしまうだろう。許せ、早苗…」

 

「ん? この子って早苗って言うの?」

 

「そうだ。早苗が大人になったらその真名を伝える。今はいいが物心ついてからその名で呼ぶのは駄目だぞ」

 

諏訪子は首を傾げて聞くが、今はまだ物心ついてないから真名を呼んでも問題は無い。

梶の葉の家紋を用いている諏訪大明神に仕える諏訪氏の氏子

物部布都の姉、物部守屋は諏訪大明神に仕える守矢氏の神長官

最後に諏訪の神へ仕える風祝はある決まりが存在する。神長官や大祝は諏訪国、諏訪の地から出てはいけないという決まりだ。これを破れば罰が下される。

神道は基本的に戒律などはないが、決まりや仕来りが全くない訳ではない。ちゃんとした決まりが決められている所もある。その一つが諏訪国から出てはいけない事や

諏訪大社では蛙を諏訪子に生贄として捧げる神事なんかもあるのだ。

 

俺の言葉を聞くと、胡坐をかいてちゃぶ台に両腕を置いてるてゐは呆れ顔。

 

「そこは謝罪の言葉じゃなくてさ、産まれて来てくれた事に感謝の言葉を口にしなよ」

 

「分かるだろてゐ。どれだけ生きようともそれは言えないし、これだけは慣れない」

 

日本の八百万の神、八百萬神、怨霊の考え、思想を否定する事は、日本の伝統と文化を否定する事であり。今まで続け、培ってきた日本の歴史を否定する事と同義である。一体何様のつもりなのか、自分が伝統や文化を否定できるほどの人間、もしくは神にでもなったと勘違いしてるのか。

 

生贄が時代遅れなのか、諏訪大社の蛙を神に生贄として捧げる神事は時代遅れだろうか。そんな訳がない。たかが人間の分際で宗教を、伝統や文化や道徳を否定出来る資格はない。それを否定していいのは知恵の実を食べる前の人間か、我々だけだ。

それが時代遅れと、宗教行為と言うなら、日本の行事であるお盆や墓参りもそうだ。死んだ人間は墓になんて考え、思想自体。宗教行為そのものではないか。祭りごとだって七夕だって宗教だ。日本では人間の死後骨などが墓に入れられる。

墓を造るのが人間の道徳というならば、墓は昔からしてきた伝統や文化であり、それは立派な宗教行為。

墓の存在自体が古来から受け継がれてきた伝統や文化、有り体に言えば古来から続いて来た墓の存在自体が時代遅れという事になり。つまり日本の伝統や文化を否定する奴は自分を墓に入れなくていい、自分の墓を造らなくていい、土葬、火葬しなくていい、葬儀を執り行わなくてもいいと言っている事と同義だ。死んだら死体も即座にその辺へ捨てて放置するか、ぞんざいに、ゴミのように扱って捨ててくれと言っているようなものだ。今まで続けて来た伝統と文化を否定する事はそういう事になる。

 

「私が祭神様の神使になって。あれから諏訪国も随分大きくなって。神、妖怪、悪魔、魔女

妖精、人も増えたなぁ」

 

 

 

 

 

寝転がっていた俺を誰かが両手で揺すり、起こされた。瞼を開けたら目の前にくるみの顔が映り、俺が起きた事に気づいたら片手で俺の右頬をぺチぺチ叩く。起き上がって見渡すと、俺はベッドで寝ていた様だ。うげ、魅魔もいる。

 

「おはよう天君」

 

「あー... なんで諏訪国にお前達がいる」

 

「寝ぼけてるのかい? ここは夢幻世界にある夢幻館よ」

 

じゃあここは夢幻館の室内で、室内にあるベッドで俺は寝ているのか。

夢幻世界と言っても、夢幻故になんにもない。ただ狭間、境界に夢幻館があるだけで何にもないとは言え、こんなとこと言えば幻月に怒られるが。現実世界と夢幻世界の境界に夢幻館は建っている。

夢月と幻月、もしくは夢幻世界で漂っているドレミー・スイートもいるかと見渡したが、いないようだ。

 

「夢月と幻月、ドレミー・スイートがいないぞ」

 

「3人は他の事で手一杯でいないわよ」

 

俺が寝ているベッドの隣で立っていた魅魔は、翻して近くに置いてあった椅子に腰を掛け、足を組んでそう言うが。うーん、魅魔の体型は相変わらずのわがままボディ。スカートからはみ出てる足もすらっとして綺麗だ。

 

神道は宗教ではあるが、仏教を開祖した釈迦のような人物がいないので、神道は千差万別。つまり神道の考えは、この教え通りに従い守りなさいと。そんな教えが決まってる訳じゃないし、仏教のように戒律などもない。なんでもありだ、だからこそ神道はなんでも取り込み、その取り込んだ宗教の文化を日本文化として今まで混ぜて来た。漢字や政治や法もそう。物部と蘇我の件もあったが、一神教のように他の宗教を否定しないんだ、なんと柔軟な考えだろうか。

当時の人間はさぞ辛かったろう。戦で疲弊し、台風や水害で作物は駄目になって、旱魃でも水で喉を潤せず飢饉で苦しみ、疫病が頻繁に起こっても医学がないので、ただ自然に身を任せて苦しみながら治癒するのを待っていた人間が、民達が心理的な救いを求めたのは、元凶である俺が、今まで見ていた俺自身が一番知っている。風邪や熱も昔は重い病気だった。だからこそ、ある僧はそうしたんだろう。民間救済の為になりふり構ってられないんだと。勿論それだけではなく、朝廷や幕府に取り入る為、権力闘争の権力者としての意味もあるだろうが。弘天の俺自身が、何事も変わっていくのは一番分かってる。

 

「私達の仕事は一旦終えたのよ。労いの言葉があってもいいんじゃないかしら」

 

「もう気が遠くなるほど言ってきたんだ。勘弁してくれ魅魔」

 

「なんか眠たそうだね天君。疲れてるの?」

 

「あのなくるみ。神仏習合、平将門が終わっても戦国の伴天連、キリスト教やアメリカがまだ残ってんだ」

 

だがある意味、神道の思想は宗教の究極的な形と言える。最初から否定せずに肯定して、自分達に都合のいい部分だけを受け入れるクソ共なんだから。

クリスマスを都合のいい所だけ取り込んだ日本はそうだ。曲解され、取り込まれた側としたら堪った物ではない。

とは言えあのキリスト教だし、別に良心の呵責に悩まされはしない。因果応報だろう。

そもそもクリスマスの起源はキリスト教ではない。しかし宗教が身近にありすぎて日本人はどれだけ傲慢な事をしてるか理解していない。クリスマスの起源の元がキリスト教ではないとは言え、

本来ならキリスト教徒に殺されても文句は言えん程の事をしている。

 

これはデウス・エクス・マキナ。神を人間の都合のいいように利用する奴や、宗教で金儲けする奴もいるが、それらはオウム真理教とやってる事が同じだ。

ただテロ行為や人殺しをしてないかの違いだけ、宗教嫌いの、オウム真理教嫌いの日本人は

オウム真理教としてた事となんら変わりがない。

 

緑色のロングヘアーで、青のベスト、青のスカート、青いマントを羽織って全体的に青色の装飾がされた服装の魅魔は、ベッドの近くにある洋風の椅子に座りながら足を組み

左手に持っていた三日月を象ったステッキみたいなのを俺に向ける。魅魔が生足をまた組んだが、ロングスカートなのでスカートの奥が見えない。 Damn it!

 

「なに? まさかあの下らない第二次世界大戦、太平洋戦争、ミッドウェー海戦に介入する気?

やめときなやめときな。日本は敗戦国の末路が相応しいよ」

 

「介入はしないが。ただ一時期の日本は多神教ではなくキリスト教のように一神教になった時代があっただろ」

 

椅子に座っている魅魔の隣に立ち、翼を羽搏かせながらくるみが首を傾げる。

 

「あれ。本来神仏分離をしたのは明治時代だったけど、一神教って神仏分離した今が正にそれじゃないの天君?」

 

「だからこそ天皇の血を持つ平氏を神綺が、俺は源氏を使った。大体、天皇中心国家のそもそもの始まりは、江戸時代の平田篤胤によって復古神道が確立されたのが切っ掛けでもある」

 

日本は輸入に頼っている部分がかなり大きい。その輸入を神が補っていて、急に人間を補うのをやめたらそれは悪なのか、善なのか。それを善や悪だと。人間は傲慢にも言えるのか。

 

ああ下らない。水槽の脳も胡蝶の夢も可能性という言葉も並行世界という概念も全部気に入らない。今挙げたのは人間には便利過ぎるんだ。便利過ぎる言葉、思想、概念。それらは言ってしまえば、神に等しい。

デウス・エクス・マキナ、便利な言葉、ロゴス、概念で笠に着る。とても便利で、使いやすく、しかも殆どに人間に理解されやすい故の詭弁であり、機械仕掛けの神だ。

便利なロゴスは人間をダメにする。分かりやすく、しかも端的な2文字、3文字の罵倒の言葉や

可能性と並行世界は特にだ。平等という言葉の拡大解釈、可能性という言葉の思想、並行世界という概念。それがどれだけの事か、自分が何を言っているのか人間は理解していない。

神という名称は誰にでも分かりやすい意味を持つ概念であり、存在であり、ロゴス、言葉。

この神という、おぼろげながらも、誰にでも理解しやすく、分かりやすいというのが

都合のいい方に捉えられてしまい、拡大解釈、錯覚、曲解、誤解、勘違いを生む原因に繋がる。

ミトコンドリア・イヴやシュレーディンガーの猫がいい例だ

 

「後は大戦後の日本を統治していた進駐軍のGHQ、連合国軍最高司令官総司令部。

8月15日 昭和天皇の玉音放送だ」

 

ベッドの端に行き、端から両足を下ろしてそう言ったら、くるみはどうでもいい感じで相槌を打ちながら、ベッドに座っている俺の右隣に来て座り始め、隣にいる俺に倒れて体重を預け、右肩に頭を乗せ、くるみは両腕を使って俺の右腕を抱きしめながら寄り添って来る。

 

「ふーん。でも私達からすれば痛くも痒くもないからその程度は問題ないの。その頃だとニニギの血は多くの日本人に受け継がれてるから天皇がいなくても別にいいもん」

 

問題は、天皇制の存置と昭和天皇の戦争責任問題。後は終戦の日、天皇制を廃止するか否か。

 

「文字通り天壌無窮の神託。天皇は現人神、神裔とはいえ。西洋の様な一神教のGODとは考え方からして違うからねぇ。一神教の思想が当たり前な西洋社会のアメリカは誤解してるわよ」

 

魅魔は椅子に座りながらこちらを見て、三日月のステッキを片手で器用に扱い、掌でくるくる回転させている。

 

西洋社会のキリスト教とは多くの学問を統治しているが、音楽も美術も例外ではない。

音楽や芸術については日本も例外ではなく、まあこれに関しては東アジアの日本よりも西洋社会の方が目立つが。外国は音楽や芸術さえ、宗教の。特にキリスト教の影響を受けている。神道仏教、道教儒教、ゾロアスター教やヒンドゥー教、ユダヤ教もキリスト教も、出来てからたかが10年や100年では足りない。

例えばゼウスも似た様な事をした男色、衆道もそうだ。当時は先進国だった中国から衆道を日本に持ち込んだのは空海、弘法大師が開祖な訳だが。それが今では衆道が嫌悪感を持たれ軽蔑される。つまり衆道という文化を否定する事は平安時代から江戸時代まで続いた衆道を、日本の歴史を否定する事と同じだ

 

「まぁ小難しい事は××、永琳に任せるわよ。永琳は弘天の頭だからね。私とくるみ、ユウゲンマガンにエリスは人間を殺し回るだけ。それに、人間界は私の物だ」

 

椅子に座り、腕を組んで足を組みながら魅魔は言ったが、昔から魅魔は人間界が自分の物と思い込んでいる。まあ、魅魔が人間界の支配権を持っているのは周知の事実だ。

 

「それは助かる、お前たちが抜けたり敵に回ると時間が掛かるからな。しかしお前達、どうするんだ」

 

「どうするって、あのね天君。回りくどくて伝わりにくい言い方はしないでほしいの」

 

「月人や月の民を皆殺しにする事だ。月人、月の民の魅魔とくるみ、今回はどうするんだ」

 

魅魔と隣に座っていたくるみは、お互いの顔を向き合わせてからベッドの端に座る俺をもう一度見た。

 

俺と永琳は一心同体だが。八意××、永琳は頭がいい。

蓬莱山××の俺より色んな事を知ってるしある程度の物を造る事も出来る。だが月の頭脳と呼ばれようと、造る事は出来ても、神綺とサリエルみたいに創る事は出来ない。

月の頭脳と呼ばれているが、万能でも、完全無欠でもないのだ。

俺は永琳を愛してる。しかし人間が感じる愛情と同じに見えるかもしれないが違う

 

ゼウスは色んな女性と関係を持った。その中でも有名なのがゼウスの実姉ヘーラーだが、そのへーラーは最初の妻じゃない。

ゼウスの最初の妻は 知恵 の女神メーティス。メーティスには諸説あるが、メーティスはゼウスに呑み込まれ、ゼウスとメーティスの子であるアテーナーが生まれた話が有名だろう。ゼウスは全能ではあったが、全知ではなかった。しかし知恵の女神メーティスを呑み込み、取り込んだ事で、ゼウスは全知全能になった。

そう思い返せば永琳は、夫側に味方に付いた事と、知恵を夫に貸したという部分でメーティスと似ている。

 

魅魔は足を組むのをやめて立ち上がり、背中から悪魔みたいな翼を出しながら歩き出し、右手の手の甲を俺に差し出すと、俺の隣にいたくるみも右手の手の甲を差し出して、魅魔の手の甲の上に重ねた。

 

「エリスは天子の監視役だから除外するけど。ユウゲンマガン、夢月と幻月。私達も結構好きに動いてるけどさ、嘗て交わした約束の為に動いてる」

 

「まだ子供だった私達が、あの時に皆で交わした約束が私達にとって全て。だからいつも通り。それに日本神話の巨大樹のやり方なら月人と月の民を植物状態に出来るから平和的なの」

 

俺も左手を差し出し、くるみが差し出した手の甲の上に右手を置いて重ねて頷く

 

「もう死ぬんじゃないよ。あんな永琳を、妹や娘、娶った者達を二度と見たくない」

 

魅魔は瞼を閉じながらそう口にする。嘗て永琳は、月に行こうと俺に提案した

俺は二回死んだが、どちらも地球にいた時に殺されている。それ以外は月に住んでいた。

地球にいたら俺がまた死ぬかもしれなかったから、月に連れて行こうと嘗ての永琳は俺に提案したのだ。回帰する度、永琳は何度も

 

だから俺は

 

À la recherche du temps perdu(失われた時を求めて)




映姫を高身長で美乳のスレンダー体系にするべきか、低身長のちんちくりんにするべきか悩む。原作通り高身長にすべきか悩ましい。
映姫は閻魔であり、エジプト神話の女神 マアト とギリシャ神話 正義の女神 ディケー の人間を監視している役割に近いです。ギリシャ神話 アストライアー も役割として含むかも

ここの西行妖は複数あり、尚且つ、意思と妖力を持っていますが人畜無害です。
神社にあった桜たちが春以外でも咲いていたのは幽香の能力と妖力に触発されたのも大きいですが、理由はそれだけではありません。
神社の裏にあるウメについては、能力で成長させて咲かせたのは幽香です。
しかし春以外で咲くウメに関して幽香は無関係。意識的にではなく無意識ですがそれは弘天、かも
あ、ここの幽香は旧作寄りなので幽香の髪型はショートヘアーではなく紫と同じでロングヘアーです。幽香の性格や口調は旧作寄りではありませんが


鎌倉時代の北条時行を諏訪国へ引き込んだり、室町幕府の三代将軍 足利義満 がいる室町時代はともかく。それ以前に今の天皇は後醍醐天皇ではなく弘文天皇で暫くはこのまま固定です。
だから建武の新政は起こりませんし、鎌倉幕府滅亡の元弘の乱も起きません。
なので鎌倉幕府を滅亡させるのは弘天になり、足利高氏を鎌倉幕府から朝廷側についた原因も、朝廷が余計な事しないように監視しろという弘天の指示になります。仮に後醍醐天皇を出したとして、後醍醐天皇が捕虜となった時点で消すか、南朝を創始しようと逃走する前に消すか、逃げたとしても比叡山延暦寺の僧兵は皆殺しにしてるので軍事力は皆無ですから役には立ちません。比叡山延暦寺で弘天に殺されるのがオチになるでしょう。
つまり鎌倉が朝廷に勝利した承久の乱の後、足利高氏。戦争には強い足利尊氏は山城国、京都に行き室町幕府を創立し、抑止力として持ち前の軍事力で朝廷と天皇が不穏な動きを見せないようにするお目付け役であり、監視役という感じです。光明天皇を擁立する事はありません。幕府が二つ存在する事になりますが承久の乱の後の話だし鎌倉幕府は弘天が潰すので問題ありません。戦国時代は伴天連関係で書きますがね。

もう少しで平氏の織田か。織田氏は弘天と平氏の春姫かその実姉である五月姫の神裔として子を産ませます。

そもそも日本神話の天壌無窮の神勅に従えば、ニニギの血を持つ者が必要不可欠。結局はニニギの血があればいいんですから、それについては藤原氏に平氏や源氏がいますし別に延喜・天暦の治でなくてもいい訳です。大体、延喜・天暦の治って言っても実際はね…。
まあもしもの時は存命している平将門、今は諏訪、信濃平氏の仁科氏を名乗らせているので問題はないです。

日本三大悪人を全て出した理由は色々ありますが、やはり明治時代、明治天皇、国家神道、皇民化教育、皇国史観が大きいです。他の理由だと、日本三大悪人の平将門についての一つで
平将門は雷神、火雷神の菅原道真の生まれ変わりと言われています。生まれ変わりについては昔からよく言われていますね。
他に東京都千代田区九段にある築土神社、この築土神社は平将門、菅原道真を配祀しています。なのでここの平将門は神田大明神と言うよりも、築土大明神か。他にも沢山元ネタや理由はあります

弘天の名前の由来について今までの後書きで書いてきましたが、まだ元ネタがあります。
菅原道真の別称の天神とは、天帝や天空神や天津神だったりと色んな意味があり。
弘天の天はある程度それを含んでいて、福岡県にある弘天神社、志賀海神社は海神を奉斎しており、海神の安曇磯良、安曇氏も弘天に混ぜてます。しかも志賀海神社は主祭神の3柱が綿津見三神でその内の1柱が玉依姫命。豊姫より先に依姫が妊娠したのもそれが理由。

ここからは特に大事な話ですが、八坂神奈子を綿月豊姫と綿月依姫の実妹にしたのにはちゃんと理由があります。建御名方神の妃神の八坂刀売神が、海神である綿津見の娘という伝承があったからです。つまり私のオリジナルではなく、元ネタはちゃんとありました。

だからここでは海神の綿月豊姫、綿月依姫、八坂神奈子の3人と天神の蓬莱山弘天は
海神であり、水神であり、志賀島大明神であり、龗神(龍神)であり、貴船大明神になり、
龗神と言う事は、この4人は龍に近い存在なります。
弘天を含んだ4人は志賀海神社の意味も含んでいて、福岡県の志賀海神社は古代氏族の安曇氏ゆかりの地であり、次に長野県安曇野市にある穂高神社に弘天神社同様、繋がる訳です。

即ち弘天は天を司る天神ではありますが、それと同時に海も司る海神という事になります。この場合の海を司るに関しては海神の綿月豊姫、綿月依姫、八坂神奈子を妻にし、海の支配権を得たという事ですね。ただし神奈子は能力的に天神に近いので神奈子も天神に近いかも。
昔から龍とは、天と海を司りますから。
ここまで書いても弘天の元ネタがまだあります。それら全てを書ける日が来るのだろうか
そもそも私は弘天が計二回死んでいると数話前に書きました、そして一話目に戻る訳ですが。
菅原道真の天神、空海の弘法大師は死後の名です。二人とも死んでからその名が贈られています。計二回。

五竜の黒龍を龍神にしたのもちゃんとした理由があります。長野県の黒姫伝説もありますが、昔から黒龍は龍神様という伝承がある上に、福井県にある九頭竜川は昔は黒龍川と呼ばれていました。そして黒龍大明神信仰が生まれており、長野県にある戸隠神社の九頭龍大神を信仰されています。まあ五竜の黒竜と神道の高龗大神(黒龍大神)は同一視されていますから。
正確に書くならば、五竜の龍は龍ではなく竜ですがね。
こんな感じで元ネタがまだまだ色々積み重なっておりますはい。

ただ意識して書いた訳ではないのですが、今思えば1話から見直すと弘天と永琳はギリシャ神話のゼウスと、知恵の神メーティスの関係に似てます。
ゼウスは天空神で雷を武器とし、菅原道真は天神で雷神と言われてますし。
メーティスは永琳と同じ知恵の神な上に、ゼウスの最初の妻はメーティスで、メーティスはゼウス側であり、ゼウスに呑み込まれたゼウスの最初の妻メーティスは
言葉通りゼウスと一心同体の妻でした。メーティスに関しては諸説ありますけどね。

どうでもいいかもしれませんが回帰と言っても正確に言えば永劫回帰ではありません。
永琳がした事と永劫回帰を比べると最高の肯定や回帰という部分だけが少し似てはいます。ですが、厳密に言えば似ているだけで全く別物。
永劫回帰はあくまで事象の単純化。説明する為の便宜的な意味付けであり、比喩表現の方便に過ぎません。
簡単に言えば永劫回帰よりもっとえげつないやり方で弘天の肯定者である永琳は最高の肯定と回帰をした訳です。

実は月関係のプロットは最初の頃と比べて大幅に変えています。月の民の話は本来なら人種差別のような話ではありませんでした。その内の一つに妖怪と人間は地球が神を殺す為に生み出したとか、穢れは地球が月人達を殺す為の呪いに近い概念だったとか。他に神と妖怪、月の民の地上に対する話は4パターン程考えていましたが、月とアメリカ繋がりでロサンゼルス暴動という事になりました。
奴隷と言っても、例えば有名な話、南アメリカで奴隷が家畜や物としてですが、奴隷を大事にされていた時代もちゃんとありました。そして南北戦争、リンカーン大統領の奴隷解放宣言。南北戦争はもっと複雑な話ですがね。しかしどれだけ大事にされようと、奴隷は所詮奴隷ですから、所有者の所有物です。例え南アメリカのように期間限定の奴隷でも、勿論、北アメリカと南アメリカの奴隷境遇が天と地の差があっても、どんなに綺麗な言葉を並べても奴隷である事に変わりない。
まあ公式設定、月の民の奴隷の玉兎の扱いは、見た感じ征服戦争前の古代ローマ帝国や南アメリカ寄りか。家畜や物扱いの玉兎が月の民に大事にされてるようには見えませんけど


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οικουμένη

今回ギリシャ神話のピュグマリオンの話が出るのですが、念の為に説明しておきます。
かなりややこしいんですが、ここでは地球が生んだ人間と神が創った人間は同じではありません。
具体的に言えばミトコンドリア・イヴ、またはそれ以外のミトコンドリア・イヴの人間は地球が生んだ人間の始祖であり、それ以外、例えば神話に出てくる神が人間を創造した場合の人間は同じではありません。

要はミトコンドリア・イヴと神話に出てくる人間、またはインテリジェント・デザインの人間は
見た目は同じに見えても実際は全くの別物で、別々の存在です。
天皇、蘇我氏、物部氏、稗田氏、藤原氏、小野氏、平氏、源氏、諏訪氏は寿命の概念が存在しないように、ミトコンドリア・イヴから続く人間と、神の子孫である神裔の違いの一つは、寿命がいい例です
神と神、神と妖怪、神と魔女、神と妖精、神と神裔、神裔と神裔から産まれた子は寿命がないです
ただしミトコンドリア・イヴの子孫と神裔から産まれた子は、寿命があります。まあ少し長生きにはなりますが、半人半霊や半妖ほどではありません。

ここからは今回の地の文で軽く書いてますが一応前書きでも書いておこうと思います

弘天は日本神話の神の一柱であり、天津神でもあるんですが、正確に言えば違います。
全部説明するとかなり長くなるので割愛するならば
ギリシャ神話とローマ神話の関係に近いです

ローマ神話がギリシャ神話の影響を受け、ギリシャ神話がエジプト神話から影響を受けている様に
日本神話がギリシャ神話で、ローマ神話が弘天や永琳などの月人な感じ
日本神話と弘天の関係のイメージとしては、そんなところです

これも地の文でも書いてますが、レイセンにはキルギス族神話に出てくるウサギの話を混ぜてあり
レイセン、鈴仙を含めた全ての玉兎にはインドと中国にあるウサギの神話も、勿論混ざってます。


パルス・プロ・トト

まずは、ドイツの哲学者 カール・ヤスパース が唱えた【枢軸時代】

イギリス、イングランドの哲学者、神学者 フランシス・ベーコン が指摘した【イドラ】

オーストリア、イギリスの哲学者 ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン の【言語の限界】

現在も存命しているアメリカ神秘思想家 ケン・ウィルバー の【意識のスペクトラム】

 

最後にドイツの詩人、小説家の言葉を引用しよう

 

『私も昔は時間の値打ちを尊重しすぎた。それで百歳になろうと思った』

 

『だが、永遠の中には時間は存在しないんだよ。永遠は瞬間に過ぎない』

 

『一つの冗談に充分なだけの長さだ』

 

要は俺の実妹、輝夜

 

時間とは、哲学でも創作物でもよく使われる事象だ。しかし、時間とはそんなに万能ではない。

時間を時間として見てるのは人間だけだ。時間という、あんな不確定なものが万能とは思えない。時間が全て解決する。という考えもあるが、それは違う。正確に言えば

エントロピーの法則が全てを平均化するのだ。この場合は乱雑さではない、平均化である。

時間の矢、光陰矢の如し。

 

これは咲夜と夢子だ

咲夜のデフレーションワールドも万能ではない

 

 

 

枢軸時代のインド、イラン、中国、パレスチナ、ギリシャにローマなどの先人達。一部を除いてこれら殆どはアジアで発生した。

紀元前800年頃から紀元前200年、アクシアの枢軸時代。本当の意味で、人間が人間として生まれたのは、枢軸時代にロゴス、ヌースが形成された時だ

 

枢軸時代の先人達が築き上げたものは、殆どがオリジナリティーのヌーメノンばかり。

なにせ枢軸時代から平成時代まで続いてるものばかりだからだ。

現代の哲学、世界観は、神話時代の人間、または枢軸時代のアクシアな先人達が生み出し完成している、と言っても過言ではない。

 

勿論10は超える古代文明にも言葉や文字はあったし、それ以前の優れたシュメール人もいた。

紀元前2600年のギルガメシュ叙事詩など、インド哲学では紀元前1000年頃の ヴェーダ もあるし、それ以外の古代文明にも言葉や文字などはあった、が。

最初は、太初に言葉が生まれた時だ。数百年前、いや。紀元前7年頃から人類は言語の限界が生じている。

ユダヤ教、旧約聖書のアブラハム。耶蘇教(キリスト教)、新約聖書の東方の三博士、ベツレヘムの星。

カール・ヤスパースの哲学用語で言うならば、限界状況。

とはいえ、これは神話に出てくる人間の話。神話に出てくる人間と、ただの人間は別々の存在だ。

 

 

「父さん、蘇我入鹿の神子から話があるってさ。後で本殿に来てよ」

 

「本殿だな。分かった、後で向かう」

 

両手で抱いていた赤ん坊の早苗をてゐに渡し、てゐは早苗を受け取ると、布団の上に優しく置き、てゐが早苗をあやしているのを、諏訪子はちゃぶ台に方肘を置いて、ただぼーっと見ていると、おもむろに空いた片手で服の中へ突っ込んで取り出したのは犬笛みたいな笛だった。

誰が作ったのだろう。にとりなどの河童だろうか

諏訪子はその笛を口に含んで吹くと、廊下から足音がどたどたと聞こえ、俺達がいる居間の前で足音が止まり、すぱーん! と襖を開けたのは、影狼だった。

…なんだ、どこぞのキバヤシみたいに、人類は滅亡する! とでも言うのか

 

影狼は俺に気付くと腰から生えてる尻尾がぶんぶん振っている。

多分、喜怒哀楽の喜の感情を露にしてるんだろうが、こいつ、笛を吹いたら飛んで来たぞ…

 

「呼んだー? あ、神様お帰りー。じゃあいただきまーす」

 

影狼が俺を喰おうと跳びかかって来たが、組み伏せてヒールホールドを掛けながら返す

 

「なにがじゃあだ。出合い頭に飛びかかるクセ何とかしろ」

 

「いたたたたたたたた! イタいよ神様! 私の愛情表現を痛みで返さないでー!」

 

ヒールホールド掛けたら右手で地面をバンバン叩いて影狼は降参したので、離すとじゃれ合いは終わった。

諏訪子にとっては見慣れた光景なので、動じずにそのまま影狼に言い渡す。

 

「父さん帰って来たし、入鹿たち呼んできて」

 

「分かった。じゃあさっそく行って来るねー」

 

影狼は諏訪子からの要件を聞くと、襖を閉めてまた足音が響いて遠のいて行った。

 

……あいつ、狼のクセに笛を吹いて来るとは、まるで調教された犬じゃないか

狼としての誇りはないのか。

 

「影狼って、いつの間に調教されたんだ」

 

「この笛を使って鮭で餌付けしてたらね、影狼が覚えてくれたよ。あ、父さんも欲しいなら私のあげるよ」

 

「…そうか。なら、貰っておくか」

 

「んー じゃあ、はい」

 

諏訪子は首に掛けていた笛の紐を解き、俺に手渡す。俺も頸に掛ける為に紐を首に回して、落ちない様にしっかりと紐を縛る。

紐を縛って笛を掴んで見ると、さっき諏訪子が吹いた笛だから、なんか、諏訪子が口付けた所が唾液のせいか、少しだけてらてらと光っている。

これは、いいのだろうか。やっちゃってもいいのだろうか。俺が口につけて吹いちゃっても

 

いや、諏訪子は俺と永琳の実娘なんだけどさ。

 

「なに、なんかその笛おかしい?」

 

「いやなに。まず先に間接口吸いか、もしくは直接、諏訪子との口吸いが先か迷ってしまってな」

 

「…バカな事言ってないで、早く出てって」

 

「なにを言う俺は本気だ。俺が嘘を言った事あるか。ないだろ」

 

「いっぱいあるね」

 

諏訪子の俺を見る目は、とても冷めた目だった。…あれ、そんなバカな。

辯解しようとしても思い当たらないので、なにを弁解したらいいのか分からず口を閉じてしまう。仕方ないからてゐに弁護をお願いしようと見たら、てゐは俺に背を向け、早苗を見たまま首を振る。

 

なんてことだ…無罪を主張する者がいなければ、俺は有罪判決になるじゃないか。

ネミネム・カプティヴァビムスに保護されているといえ、ここはせめて、暫定協定を結ぶべきだ。

 

「神の一柱として、こんな盟神探湯、俺は認めない。こうなったら、自分で自分を弁護してやる。裁判官の映姫を呼べ! ディベート、湯起請で白黒はっきりつけよう」

 

「いーから早く行ってよ!」

 

「なんだ諏訪子、顔赤いぞ。照れてるのか。おいおい今更照れるような間柄じゃないだろ。あんなに激しくお互いを求めて、まぐわった仲じゃないか」

 

「照れてないし私達はただの親子でしょ、それに、まだまぐわってないのに誤解を生む言い方はやめてよね!」

 

俺を居間から追い出す為に立ち上がった諏訪子は、両手で俺の背中をぐいぐい押して今から放り出された。

 

とりあえず、神子達が来るのはまだかかるだろう。

藍に会いに行く為、台所に向かい、到着

 

「らーん。腹減ったー」

 

「分かりました。では、軽いものでも作りますね」

 

「あ、そういえば玉藻前を引き込めたのか」

 

「はい。すんなりと」

 

 

さっきの話が脱線したので、話を戻そう。

 

 

かつてヘブライの預言者は『太初に言あり』と言った。

 

続いてカラビ・ヤウ多様体というのがある。

 

そして永琳は、因果律、因縁果、引き寄せの法則で集合意識の【エイブラハム】さえも掌握したのだ

 

 

有名な神話で説明するならば

 

エジプト神話の知恵を司る神 トート は言葉で世界を形作った。つまり、何も無かった世界に、トートの言葉で世界に意味を与えたという事だ

ユダヤ、ヘブライ神話の神で主の ヤハウェ もトートと似たように、言葉を紡いでいくと宇宙、地球全体が組み立てられていった。旧約聖書、では、そう書かれている

 

つまりトートにヤハウェは【カラビ・ヤウ多様体】を通じて世界に意味を与え、世界を構築した。

 

というイメージが一番近く、トート達がした事を捉えやすいだろう。

もちろんこれは比喩表現のイメージなので、実際は違う。

 

そしてこの神話の場合。言葉と言っても人間のように声を使った、という訳じゃない。

 

だが、かつて永琳のした事の一つは、エジプト神話でいうならばトートの立ち位置だろうな。

エジプト神話トートも、永琳と同じく知恵の神だから

 

新約聖書もだが、旧約聖書、ヘブライ神話は昔から気に入らん。どれも似たような話が他の神話ですでにある。それはメソポタミア神話やウガリット神話が有名だろう。どちらも読み物としては面白いが、あくまでも読み物としてだ。

ユダヤ教はゾロアスター教の後に出来た宗教。そして、旧約聖書には出エジプト記がある。

即ちエジプト神話トートがした事を拝借し、彼らはヤハウェとして記したのだ。要は元ネタがある。

もちろん旧約聖書、ヘブライ神話の歴史は古い。だがエジプト神話はもっと古い歴史だ

更に言えば、エジプト神話はギリシャ神話よりも古い歴史がある

 

『周知の事実だろうが。我々パンテオン、八百萬神も役割があるとはいえ、巨視系の事象に無力ではない。もちろん微視系の事象も無力ではない。ただし人間は別だ』

 

あまりにも話の脈絡がなく、内容が無茶苦茶で有名な【ポポル・ヴフ】のマヤ神話では 

 テペウ と グクマッツ と フラカン はマヤ神話の創造神であり、この三神が最初に創造した人類は、泥で創ったせいか喋る事も出来ないし、言葉や魂を持ってなかったので、失敗作の人類は滅ぼされた。

2回目に創造された人類は木から創造された。この人間は言葉を喋る事は出来たが、肝心の魂が無かった。

 

つまり人間にとって言葉とは、魂が無ければ何の意味も無かった訳だ。2回目の人類にも魂が無いせいか、神を称えたり、神を敬う事をしない出来損ないだったので、また人類は滅ぼされた。

が、イシュムカネーとイシュピヤコックの二神はトウモロコシからまた新たに3回目の人類を創造して、最初は魂が無かった人類に魂が生まれ、人間の言葉に意味が生まれた。

これはギリシャ神話の黄金時代から白銀時代、青銅時代へと続く神話と似たような話であり、似たような時代だ。ギリシャ神話の場合は人間に魂や言葉はあったがな。

 

はははははは! 

程度の違いはあっても マヤ神話 や ホピ族 の予言はまるで 枢軸時代 じゃないか

 

このマヤ神話と似たようなことを、アメリカ合衆国の先住民族であり、マヤ文明の末裔と言われるホピ族の予言はこうだ

 

『人類は過去で3回創造主に滅ぼされている。現在の人間の歴史は4回目』だと

 

創造主が過去に三度も人類を滅ぼした理由については、一応あるのだが。詳しい事は省く。

それで創造主、と言ってしまうと勘違いされるかもしれないが、ここでいう創造神、創造主は

ユダヤ教やキリスト教でいう主、ヤハウェの事ではない。

 

この話はマヤ神話や、マヤ文明の末裔ホピ族だけではなく、アステカ神話にも実際にあり

アステカ神話の場合の人類は4回滅ぼされている。アステカ神話があった前提ならば

5回目に創造された人類が彼女達、ミトコンドリア・イヴがいた時代の人間、だそうだ。

 

他の神話だと

北欧神話、ゲルマン神話の神々に創造された最初の人間の男女である アスクとエムブラ に

アース神族 ヴェー は言葉、言語を二人に授けた

メソポタミア神話の知恵の神である エンキ はエリドゥの主に知恵を授け、もともと一つだった言葉を変え、人間に争いを起こさせた

 

俺が言いたいのは、つまり【マリーの部屋】や

イギリスの神経学者 オリヴァー・サックス 著書の 火星の人類学者 で引用すると

『色は言葉による記憶でしかなかった』に近い

 

『知っての通り平成時代の人間は、微視系の事象についてなんとか、なんとか対処できる。だが、いくら科学を進歩させようと、人間は巨視系の事象には無力なんだよ。現状は、だが』

 

続いて俺の弘天、八意××の永琳という名は、自分ではなく親に名付けられた名だ

名というのは世界に存在する為の証であり、軛であり、呪いであり、悪魔と契約するより質が悪い一方的な契約でしかない。つまり『ヒュレー』 

だから永琳の××、俺の××は言葉や文字にとして観えないし、表現できないし、人間には××がなんなのか理解できない。

この名というものこそが、我々神々や、外国の神々、パンテオンが地球にいる為に、地球自身から課せられた軛の1つだ

 

『例えばミクロの系では起こった事でも、マクロの系でそれが当て嵌まるのかどうか、である。その逆も然り。つまり蓋然性だ』

 

 

この話をする前に。まずは平成時代の日本で使われている

【寛容】は元々【耐え忍ぶ】の意味に近かった事を踏まえてもらいたい

 

多神教優位論、という話がある

 

よく、多神教は他宗教に寛容。と思う者に

 

それはありえない。寧ろ多神教の方が寛容じゃない。と言う者がいる

 

正直、これは俺でも、神道や日本神話を知ってるからこそ否定できない部分が、あるにはある。

 

が、キリスト教徒に異端視され、迫害されても、キリスト教や他の宗教とも習合して生き残り

奴隷解放で自由になった【ブードゥー教】【カンドンブレ】【ウンバンダ】【サンテリア】などの宗教もあるんだ。

神仏集合した神道も似たようにシンクレティズム。要は折衷案、妥協。そして余計な思想が生まれたせいである

 

他と比べ、自分達は違う、自分達は優れていると優越感に浸り、強辯で自己を正当化し、自尊心を保つ。つまり遼東之豕

 

それを悪い事だとは言わない。そもそもこれは多神教だろうと、一神教だろうと。変わらない部分が、あるにはある。

ただ、元々、そんな思想は人間になかったのに、時代によってこのような思想が生まれたからこそ、そうなっただけだ。

 

有名なので、神道が他宗教に許容ならば物部氏と蘇我氏の争い、それ以降の神社と寺の争いも起きていない。とかが多いだろう

そもそも仏教の開祖である釈迦は、当時は蕃神と言われて、今で言う仏と見られてなかった。

要は仏陀、釈迦は今でこそ仏と言われているが、当時は他国から来た神の蕃神。そう見られていた訳だ。もちろん神仏戦争が起きたのは、当時の政治的な意味合いも、あるにはあるだろう

 

例えば古代メソポタミアのメソポタミア神話は多神教であり、古代メソポタミアには色々な多民族がいたが、彼らは他宗教の神でも 許容 だった。寛容ではない、許容だ。

まあ一応補足すると。神関係の争いが、全く、一度もなかった訳ではないのだが。争いが起きるのは当たり前である。争いの理由が、神に変わっただけに過ぎない

 

つまり古代メソポタミアは単一民族国家ではなく、多民族国家だった。多民族、という事は、自分達とは違う宗教や神があったのにだ。

この時代にはキリスト教は無かったし、神道と似て、当時はシンクレティズムだったんだ。

 

そして、多民族国家だった古代メソポタミアのメソポタミア神話は

日本神話や日本でいう 八百万の神 や 八百萬神 に負けず劣らず神々の名が 2000以上 もある

実際に、メソポタミア神話では、神の名が本当に 2000以上 あるんだ。

 

そもそも今ならば宗教と言えるが、彼らにとってそれは当たり前であり、宗教とは見てなかっただろう。宗教を宗教と観るようになったのは 西暦 からだし

いや。むしろ宗教を宗教と観るヤツらの方が本来おかしいんだ。

当たり前のことを、生贄や人身御供などを宗教だ異常だという目で見る奴らは特に

 

メソポタミア神話とその宗教は、人間の道徳面でかなり優れている。

哲学に関しては古代ギリシャ人が完成させている、が。

人間の道徳面では、メソポタミア神話と古代メソポタミア文明が完成させている。と言っても過言ではないかもしれん。

 

実際にあったのかどうかはひとまずおいて、こうして歴史を見ると中世の人間、現代の人間は

古代の人間より劣っている。唯一は科学や医学くらいだろう。

と言っても、その科学と医学も古代の先人たちが築き上げた物だ。所詮、先人達が残した借り物の後追いでしかない。

 

正に、nani gigantum umeris insidentes 巨人の肩の上。という言葉そのものだ

 

神を信じていた者達は優れていて、神を信じていない者達が劣ってるとは、実に皮肉だな

 

『巨視系の事象、微視系の事象、マクロの世界とミクロの世界も、同じではないのだ。

それについては時間の矢がいい例だろう』

 

メソポタミア神話、エジプト神話、ギリシャ神話、マヤ神話、ハワイの神話、ホピ神話、中国神話、アステカ神話などが有名だろうが、これらの神話では人間が滅ぼされる話が実際にある。

神々が人間を痛めつけ、人間を溺れさせ、人間を疫病で滅ぼす話が、これらの神話で本当に、実際にあるんだ。

しかしこれらの神話では人間を滅ぼそうと動いても他の神に止められてやめるか、滅ぼしても二人の男女が生き残ってしまうか、また新たな人間を創り直して創造する。が、基本的な結末である。

 

なにが言いたいかと聞かれたら、他国の神話をしっかり読んでみると

一部を除いて殆どの神々は。神を敬わない人間、神を信仰しない人間が大嫌いだし、ゼウスのように神を敬わず、堕落してしまった人間は全て殺して滅ぼすべきだと考えるのは神々とって当たり前、という話。人間にとっては下らない理由、または神って器が小さいと思うかも知れない

しかし神々にとってはそれが当たり前であり、重要な事だ。動物の人間が、お腹を空かせば食べたり、眠くなったら寝たりすることと同じくらい、神々にとって当たり前のことなんだ。

 

これを知って

神は人間を滅ぼしたり苦しめたりする存在だから、神を信じないし信仰しないし敬わない。

などとバカげた理屈を言う人間はおかしい。

 

というか一部を除いて殆どの神話の場合、神々が人間を創造して生みだしてるし、殺されても実際は文句が言えない。

神話において、神と人間は対等の関係ではないのだから。寧ろ喜んで神に殺されるべきだ。

即ち。全人類を滅ぼそうと思えば簡単なんだよ。いくら人間の科学が進歩しようと無理だし

だいたい科学と言っても、科学は自然がある前提の上で、初めて成り立つものだ。

その科学が成り立つ自然や法則などの前提を崩してしまえば、科学なんて所詮ゴミだゴミ

いや、何の役にも立たないからゴミより価値がない

 

そもそも神話に出てくる人間や半神ならいざ知らず、ただの人間が神に勝つなんて

デウス・エクス・マキナ。機械仕掛けの神そのものじゃないか。ただの人間が神に勝つ…

なんともバカげた考えで、自惚れで、身の程を弁えない烏滸がましい連中なのだろう。

竜の髭を蟻が狙う、だ。勝てる訳が無いのに

 

神話に出てくる神々に対し、人間は科学で勝てると思ってる奴は、しっかり神話を見ず、流し読みでまともに神話を読んでない奴らだけだ。

 

なにせ殆どの神話の神は不老不死ばかりな上に、神話を読めばわかるが世界、地球を滅ぼそうと思えば何度も滅ぼせた連中なのだぞ。神話に出てくる武具だって、どれも強力すぎる代物ばかりだ。

それは有名なのでゼウスの雷霆や、紫と幽香に持たせたインド神話のインドラの矢、トリシューラやパスパタがいい例だろう。他にもたくさんある。

 

ただし日本神話の武具は、破壊力がない。三種の神器などがそうだ。その代り、日本神話の武具は呪い方面ではかなり強力。

実際、古代日本人が特に恐れていたのは呪いや祟りなんだ。この呪いや祟りは疫病なども該当する。

それは平将門の怨霊や、殺した相手から呪いに蝕まれるのを恐れた大和朝廷が、死んだ相手を鎮め、弔うために建てた隼人塚とかが有名だろう。

 

 

 

本殿に向かう為、まずは神社から出ようと玄関に向かっていたら、目の前から女の声が聞こえ、誰もいなかったはずの廊下で霧が晴れていくかのように女は現れた。

 

「産土様。コンガラ様を発見しました」

 

跪いているのは、光学迷彩を使用していた俺直属の甲賀忍者部隊筆頭、望月千代女だ。

諏訪子が千代女にコンガラを探すよう命じた、と早苗をあやしていたとき諏訪子自身から聞いている。

 

「場所は」

 

「出雲大社です」

 

「よりにもよって出雲か…」

 

彼女は昔から方今音痴な所もあったが、出雲阿国じゃあるまいしなぜ今回は出雲なのだろう。

蝦夷地にいたり琉球王国にいたりと、昔から彼女だけは読めない…

 

出雲と言えば、スサノオから譲り受け、今は俺の神使になっているが、元々ナズーリンは大国主の神使だ。

大国主の神使になったのは気まぐれと言っていたが、この話を聞いたらナズーリンはどう思うだろう。

 

「序でだ。『出雲国造』に大国主の現状、大国主に使った注連縄の状態はどうなっている」

 

「現在の出雲国造は分裂しておらず、大国主様は封印されたままです。大国主様を封印するために使った注連縄も、今は特に異常はないと、出雲氏が仰っていました」

 

なるほど。さすが出雲氏の注連縄と言いたいが、彼女はどうするべきか。後ほど念話で輝夜に頼んでおくか。今頃、近畿地方から九州地方までの僧兵を皆殺しにしているだろうし

僧兵がいる鰐淵寺もそうだが。出雲大社とて、例外ではない

 

「鎌倉は」

 

「鎌倉につきましては、征夷大将軍となった源義仲様は無事、鎌倉幕府を設立し終え義仲四天王、巴御前様。諏訪盛澄様も義仲様を支えております」

 

「そうか。ならば承久の乱と北条時行だな。あ、南部重清はもう産まれてるのか」

 

「いえ。まだ産まれておりません」

 

目の前にいる望月千代女は、一度死んだ

 

諏訪氏の金刺盛澄、望月千代女、甲賀三郎、源義仲、巴御前、熊坂長範、中原兼遠、海野幸親

全員、一度死んだ。死んだだけだったので、蘇生は布都に頼んだから簡単だった。

が、何故死んだのか。その原因は不明。永琳は薄々気付いているだろうが、俺はそれをまだ聞いていない。

 

肝心なのは、この者達が寿命で死んだわけではない。という事だ

 

ふはははは…はーっはっはっはっ!!

……本来、源氏、諏訪氏、望月氏、中原氏、海野氏には、寿命がないのにな

 

古代中国の儒学者 季路 は儒家の始祖である 孔子 に死について聞くと、孔子はこう答えた

『未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん』

 

とはいえ、一度死んだという事は、気持ちよく寝ている所を叩き起こしたようなもの

俺も寝ている所に叩き起こされたら、いい気分には、ならないだろう。だから謝罪した。

 

「寝ている所を叩き起こして悪かった」

 

「いいえ。私達は産土様の為に生きているのです。死のうと生き返ろうと、それは変わりません」

 

「そうか。ならば、萃香達に頼んで望月氏の城を建ててやろう。城名は望月城でいいか」

 

甲賀忍者部隊には、にとりたちが作り上げた光学迷彩などを与え、色々動いて貰っている。

信賞必罰。与えられた役目を務め上げた者には、それなりの褒美を与えなければならない。

 

「…不遜を承知で申し上げます。我ら望月は、御身の名の一部を頂きたいと存じます。

……よろしいでしょうか?」

 

望月千代女は今まで跪き、顔を上げずに俯いて俺と会話していたが、聞くために顔を上げ、不安げな表情で聞いてくる。断る理由なんて元からないので頷く。

頷いたのを確認した望月千代女は、ほっとした面持で俺を見上げたまま城の名を言った

 

「城名は『天神城』」

 

 

 

 

 

この世界は因果的に閉じられている。それは因縁果とて同じ事だ

 

 

アイルランドの哲学者 ジョージ・バークリー は言った

 

『存在することは知覚されることである』

 

知覚、と言っても、これは触れる事が出来たり、人間の視界に映るなどという視覚的な、物理的な意味ではない

語弊を招くかもしれないがクオリア、感覚の事ではなく、知覚とは、体験や影響の事だ。

知覚と感覚、アイステーシスとクオリアは似ているが、同じではない。

さっき言った俺と永琳の名がいい例だ。まあ俺はドクサ、知覚されなければ存在しない、とまでは言わない

 

先程も言った名だが、我々には本来、名はないんだ。俺の弘天や永琳の名は源氏名みたいなものであり、都がまだ地上に、地球にあったとき親から名付けられた名だ。

したがって、永琳や弘天、永琳の××や俺の××は名であって名ではなく、だからと言って

××が本名という訳ではない。つまり俺と永琳はアーカーシャである。ようは何者でもない

 

即ちこれは、神様や仏様、宗教の思想を信じてるのか、信じてないのか、の話ではない。

宗教の道徳、思想の影響を受けているのか、いないのか、である。これはとても大きな違いだ

 

 

15世紀から16世紀のスコットランドでは【ソニー・ビーン】というのがいた

人を殺して人肉を喰っていた人物だ。ソニー・ビーンには妻がいて、その妻は多くの子を産んだ。

産まれた子供達は成長すると、子供達同士で近親相姦を繰り返し、また多くの子が産まれた

 

近親相姦すると奇形児の子供があーだこーだという者はいるが、若い女性はともかく

近親相姦して産まれてくる子が奇形児になる確率は、高齢の女性が赤ん坊を産む場合と同じくらいなんだ。

一世代や二世代くらいならばあまり問題ない。

近親相姦で問題なのが、4世代5世代、更にどんどん続けていくと、産まれてくる子が奇形児、障害持ちになる確率が上がる、という話だ。

 

それで有名なのは ハプスブルク家 だろう。

幸いなるオーストリアよ。この言葉も、今や皮肉だ

 

つまり、近親相姦で奇形児や障害持ちの子が産まれてくるからやめろ。と言う者がいるならば

奇形児や障害持ち子が産まれてくる確率が同じくらいの高齢出産も、本来やめさせるべきなのだ

それに。平成の日本では、近親相姦そのものを取り締まる法律は現状制定されていない。

そもそも近親相姦しなくても、そういった子供が産まれる場合もあるんだ。

 

結論として、日本は近親相姦を法で禁止にしてないんだなこれが。まあ当然、近親相姦と言っても無理矢理はダメだし、未成年に手を出したら捕まる。

が、日本では文化的にタブーでも、兄妹、姉弟などが成人して性行為をしても捕まる事はない。

当たり前だな。元々、日本は性におおらかだったんだから。

 

嘗て白人に支配されていた黒人が、黒人の血を絶やさないため実母と性行為した時代も、あった。

要は、家族だろうが、身内だろうが、血が繋がっていようが、発情は出来るんだよ

 

メソポタミア神話のエンキは実娘、その娘と関係を持って産まれた孫娘、その孫娘とも関係を持って産まれた、曽孫娘にも手を出して孕ませてる。更にその孫娘の娘にも手を出しているんだ。

娘、孫娘、孫娘の娘に、エンキは手を出して孕まして、産ませているんだ。

ギリシャ神話ゼウスも実娘に手を出しているが、こうして見るとあのレイプ神でも、エンキよりはマシだと思ってしまう程である。

 

ただ有名だろうが、人間以外の動物で近親相姦する動物は、自然界でかなりいる。

というより見境がない、が正確な言い方だろうか。

人間は理性があるとか、本能的に避けるものだ。などを何とかかんとか言う者もいるが

それは人間という動物を定義付け、人間以外の動物をケダモノと見下しているだけだ。

 

つまり神を信じたり、どこぞの宗教に入信する=信者という訳ではないし

神はいないと否定したり、どこの宗教に属さない=無宗教という訳ではない。

だがまあ、それは無神論ではあるだろう。

 

神を信じるとか信じないとか、信仰するとかしないとかはどうでもいい。どうでもいいんだ。

肝心なのは、宗教の影響を無意識に受けている事だ。信じる信じないの話ではないし、今はそれが重要じゃない。人間が潜在的に宗教の影響を受けている時点で、既にこの話は終わってる。

 

何故なら、宗教とは神がいて成り立ち、そして人間の道徳、論理、価値観などは長い時間をかけて宗教で培ってきたんだからな。もちろん宗教で全てを培ってきたとは言わない。

本当の意味での無宗教とは、本能のままに生きる動物の事である。

 

古代ギリシャの【テレゴニー】がいい例だ。テレゴニーの話があるギリシャ神話があったから

古代ギリシャ人にはテレゴニーの考えがあった。神話の影響を受けたからテレゴニーがあったんだ

 

日本も例外ではない。ただそれが当たり前になって、気付いていないだけなんだ

 

古代ギリシア人の哲学者達も例外ではない。まず神話があり、次に古代ギリシアにはオルペウス教という宗教が生まれた。正確に言えば生まれたというより、そこにもうあったが正しいか。

まず神話、次に宗教、その次はヒマにロゴス、そしてテロスが生まれた訳だ。10は超える古代文明にも言葉や文字などはあったがな。

古代ギリシア人は全て奴隷にやらせてたから殆ど暇人だった。だから、あそこまでの哲学と科学、芸術や音楽が生まれたんだろう。だがその哲学も、ギリシャ神話やオルペウス教などをベースとして古代ギリシア人にロゴス、ディベートでディアロゴス、テクネーが生まれた。

 

医学に関しては古代ギリシャよりも、古代エジプトの方が優れている

アーキテクチャに関しては、古代ギリシャより古代ローマの方が優れてる

 

ギリシャにはデルフォイの神殿、アポロンの神殿というのがある。ここにはピューティアー、要は日本でいう巫女がその神殿にいて、その巫女、シビュラから神の神託が聞ける。

デルフォイの神殿で聞ける神託は絶対であり、古代ギリシャ人はそれを信じていた。

つまりだ、これは表現の違いなだけで、日本で言う神社、神や巫女と似た場所であり、似た関係だった訳だ。

これに関しては古代ギリシャの哲学者 ソクラテス の友人 カエレポン がデルポイ

デルフォイの神殿で、ソクラテスより賢い人間はいるか。という問いに対し、デルフォイの神殿にいた巫女が神託で、ソクラテスより知恵あるものはいない。と言ったのがいい例だろう。

まあ。これに関しては日本やギリシャ以外でも神託や神勅は結構ある

 

古代ギリシャの哲学が再評価されたのは中世からだ、そもそもそんな事になったのは

古代ローマ帝国にいた当時のキリスト教徒と、ヒュパティアという女性哲学者が原因の一つなわけだが

 

嗚呼…私はディオゲネスになりたい……

 

 

 

 

 

 

神社の本殿の中にいる俺は、胡坐をかき、右肘を胡坐をかいている右膝に置いて、右手で自分の右顎を押さえながら欠伸をしていた。

本殿内で対面しているのは正座して顔を伏せている豊聡耳神子、物部布都、蘇我屠自古だ。布都と屠自古は神子より後ろの両脇に控え、神子は二人より前に出て対面。

俺が帰ってきたら神子達から話したい事があるらしいと諏訪子に聞かされ、大和朝廷の政治に携わっていた神子達が、諏訪国にいる経緯を聞くために神子達を呼んで俺はこの場にいる。

 

「比売大神の八意様、苗裔神の諏訪子様、既に二柱へお伝えしているのですが。経緯はそう言う訳でして、私達は世間から死んだ事になっております」

 

神子が言うこの比売大神、苗裔神という名。永琳は俺の妻なので比売大神、諏訪子は俺と永琳の娘なので 苗裔神 と呼ばれている。諏訪子の場合は御子神ともいうが。

 

「天津神と国津神に聞かされてるから大凡は把握している。分かった、3人が諏訪国で過ごすなら好きにしろ」

 

本当は最初から知ってたから天津神と国津神から実際に聞かされてない。神子達はこの話を永琳と諏訪子には前に話しているが、その時は俺が不在だった。だから諏訪国に帰って来た俺にもう一度その話をしようと3人は来て、改めて話している。

 

「はい。ただわかさぎ姫については厚かましい事かと存じますが、何卒。わかさぎ姫に危険が及ばない様に保護をお願いします」

 

「わかさぎ姫って人魚だったお蔭で神使に出来たし、俺の神使にした以上はちゃんと保護して守るから安心しろ。萃香、天狗達、影狼もいるしな」

 

神子は正座したまま感謝の言葉を口にしながら頭を下げるが、この三人は元々大和朝廷の政治に携わっていた者達だ。

神子、布都、屠自古が諏訪国に住む許可と、諏訪国にある諏訪湖でわかさぎ姫を萃香、天狗達、影狼が守る代わりに3人には諏訪国の政治を任せる事になっている。

俺は政治なんて面倒だからしたくないし、俺より有能な者が政治をするべきだからだ。まあ支配権や決定権は俺にあるんだが、面倒なので全部この三人に丸投げして任せる。

日本神話や天皇関係以外で働きたくないし

 

「ありがとうございます。これで肩の荷が下りました」

 

神子は安堵した表情になったのも束の間、神子の脇に控えていた布都が伏せていた顔を上げ、なんというか、キラキラした目で俺を見ながら唐突に口を開く。

 

「感謝しますぞ諏訪大明神。話は変わりますが、諏訪大明神は好色家と聞いておりまする。我ら 三人を夜伽に命じる時、閨に呼ぶ際はいつでもお申し付けくだされ。身を清めて向かいまする」

 

俺を見てはにかみながら言う布都を見てある言葉が想起された

イギリスの劇作家、クリストファー・マーロウの言葉に

『最初の一目、機会で恋を感じないなら恋というものはないだろう』という言葉だ。

しかし、俺はこの言葉に異を唱えたい。目を瞑って顎を支えていた右手を頭において言う。

 

「…あー 物部よ」

 

「物部とは他人行儀な、布都とお呼びくだされ。我らは婚姻を結んだ夫婦ではありませんか」

 

異を唱える前に婚姻を結んだことを布都に言われて思い出し、喉に出かかった言葉を無理矢理飲み込む。

物部氏はニギハヤヒの神裔だ。つまり天皇と同じく寿命で死ぬ事はない。

婚姻と言ってもニギハヤヒがした事なんだが、物部氏である布都は自分の氏神に逆らう事は出来ないし、逆らう気がそもそも無い。

布都とニギハヤヒ、神子の狙いは物部氏をまた再興する事である。だからまずは子供を産まねば話にならない、という事で、ニギハヤヒが俺と布都の婚姻を結ばせた、らしい。

 

「死んでいた筈の我が姉上を諏訪大明神に仕える神長官として匿っていただけたのです。受けた恩を返さねば物部の名に傷が付きまする」

 

正座しながら感謝の意を表す為に深々と頭を下げる布都を見ながら内心で否定する。

違う、物部守屋は必要だったから諏訪国へ匿ったに過ぎない。必要だったから匿ったのに恩を感じられても困るのだ。

俺が何を言っても無駄だと悟り、ニコニコして話を聞いていた神子と、どうでもいいといった表情で聞いていた屠自古へ助けを求める

 

「神子に屠自古も何とか言ってやってくれ」

 

「姉妹のパルスィが煩いですが、お望みとあらば私は構いません。そもそも私は洩矢神と比売神にわかさぎ姫を保護して下さるなら、私自身を差し出しますと言いました」

 

「私は神子に従います」

 

…コペルニクス的転回が起きるかと期待して頼みの綱を使ったが駄目だった。

右手で頭を掻きながら思うが、昔からこの三人に対してはどうも苦手意識がある。

嫌いではない、どう接したら良いかが分からないのが正直なところか。

だから神子、布都、屠自古が閨へ呼ばれて抱かれても構わないと言われても、俺としては反応に困る部分が内心では大きく占めていた。

そんなこと言ってうだうだ建前を並び立てても、神子、布都、屠自古の三人は美人だから閨に来るなと言えないので文句の付け様が無いし、俺としては三人とも閨に呼んで結局抱くから、我慢しろと言われても禁じ得ない上に、抱いても構わないと言われて内心では狂喜乱舞しているのは然もありなん。

ただこの時代では別に普通の事だが、布都は少し幼すぎる。いや諏訪子や萃香にも手は出すけど、布都はもう少し後だな。

 

話を変えようと右手の掌で膝をパンと叩き、三人に大事な事を伝える事にした。それを聞いた神子が布都と屠自古の代わりに聞いて来る。

 

「そ、それよりもだな! もう少ししたら一時期だけ源氏名として名を変えようと思ってるんだ。その時はその名で呼んでくれ」

 

「御身の名を変える…どのような名でしょう、承りたいです」

 

俺は天神であり、海神であり、雷神である。まあ俺は他にもあるのだが

諏訪国には天、海、地の三柱が揃っている。

地神は苗裔神の諏訪子、海神は神奈子と依姫、そして天神は俺なので

 

「天海」

 

名を伝えると、承りましたと言いながら三人は平伏する。

神子達の話や俺の話は終わったので、神子達はいつも通り諏訪国の政治をする為、失礼しますと言いながら三人は本殿から出て俺一人になる。

胡坐をかきつつ背を伸ばすが、かったるい。こんなの俺の性に合わない。

 

立ち上がって本殿から出て、鳥居から神社へ続くように咲き、意思と妖力を持ってる西行妖と遊んでいる白蓮と幽々子の元へと向かう。

 

 

どこぞの宗教家が嘗てこう言った

 

アウトピストス。私達人類はアダムとイヴの子孫…

つまり人類皆兄弟! 白人は兄で黒人は弟である!

 

などと意味不明な供述をしており。

 

これを言い出してからおかしくなったんだ、アダムとイヴは全人類の始祖ではない。

旧約聖書に基づけばアダムとイヴはユダヤ人、ヘブライ人だけの始祖だと言うのに。

ミトコンドリア・イヴの誤解はこれが大きいだろう。

イヴという名のせいで誤解や勘違いが広まったミトコンドリア・イヴみたいに

どいつもこいつも、その言葉や文字のイメージだけで語る奴が多い。

 

西洋宗教がよく謳う、神の前では皆平等。がある

全ての人間に平等なんて旧約聖書のどこにも書かれてないのにな

強いて言うならば。ユダヤ、ヘブライ人だけに平等なのがヤハウェだろう。

 

次にアポリアとアナムネーシス、フィロソフィアだ

 

元始はパンテオン、次にプシュケー、インドではプラーナだったか。そして正教会の永遠の記憶

吾らは日本神話であり、××神話の存在である。

××神話といっても、要するに日本神話と××神話は、ギリシャ神話とローマ神話みたいな関係だ。

ただしこの××神話はまだ終わってない

 

俺が死んで、永琳は最高の肯定と回帰をした。それを神綺とサリエルから聞いたら、昔こんな事を永琳が言ってたらしい。

 

『人は常に初恋に戻る。人間の誰かが言ったこの言葉、私は好きよ。だけどね神綺、サリエル。

いつだったか、別の人間はこうも言ったわ』

 

『愛してその人を得ることは最上である。愛してその人を失うことはその次によい。こんな言葉があるけど』

 

『私は失うなんてイヤ。エジプト神話のオシリスがセトに殺され、妹で妻でもあるイシスがオシリスの死体を集めて蘇生させたように。私達は神様だからワガママなの。神奈子、青娥。お願い』

 

××。永琳は神綺とサリエル、神奈子と青娥に頼んで最高の肯定と回帰をした

俺はこの事象を人間に説明できない。説明しようにも意思疎通する為の媒介である言語の限界が生じているからだ。

何故かは知らないが、永琳が手を尽くしても死んだ俺は蘇生できなかったらしい。

 

だが。永琳がした事を強引に説明するならば、なんと言えばよいのか……

しっくりくるので言えば古代ギリシャの哲学者 プロティノス の【一者】か【ト・ヘン】に近いだろう

 

 

 

本殿を出て境内へ。境内にある西行妖の元へと到着すると、地面には桜の花弁が埋め尽くされて一面白色やピンク色。

 

掃除が大変だと思いながら近くの西行妖に近づき右手を当てる。右手を当てるとその西行妖の枝が動き出して数秒経つと、俺の両隣に枝に乗っていた白蓮と幽々子を連れて来てくれた。

白蓮は数本の枝に腰掛に座るようにして足を下ろし、幽々子はベッドで寛ぐかのように数十本の枝の上で仰向けで寝ていた。西行妖め、至れり尽くせりじゃないか…

 

幽々子はハンモックみたいになってる枝の束に支えられながら、風に煽られつつ快適そうにし、さっきの銅像、映姫の話をする。

 

「あの銅像スゴイ綺麗だよねー。本当に動き出すの?」

 

「動くぞ。幽々子はギリシャ神話の神裔、ピュグマリオンは知ってるか」

 

映姫、と言えば、閻魔や閻羅王は有名なのになぜ倶生神が有名じゃないのだろう。納得できん

十王よりも倶生神の方が重要な役割だろうに、浄玻璃鏡にそのイメージが食われてしまって悲しいものだ。

 

他に地獄へ関係あるのは菅原道真、醍醐天皇、源公忠、平頼綱、インド神話のガヤとアルジュナ、インドにあるボロブドゥール遺跡、ヤズィディ教のマラク・ターウース、スペインのデイデ山、

ギリシャ神話やゼウスと関わりが深いゾロアスター教のアラストル

ゾロアスター教のアストー・ウィーザートゥ

テュルク系民族の神話ケサル王伝、日本の妖怪である憂婦女鳥、地獄に生えているイスラム教の

樹木ザックーム、イスラム教のイブリース、イスラム教の堕天使ハールートとマールート

ケルト神話のアラウン、リトアニア神話のピクラス、ドゥアト。天狗や鬼もそうだがこれらのように地獄へ関係するのは結構ある

 

知ってるのだけでも挙げると、思った以上に地獄に関係するのがあった。いくらなんでも多すぎるんじゃないだろうか…

地獄や天国の考えはゾロアスター教だが、餓鬼などの考えは元々ヒンドゥー教だし

 

あと中国の詩人である李賀もそうだった。

彼が死んだ後、冥界に天帝が建てた白玉楼へ李賀は行ったんだったな。

冥界関係でいつも思うのはエジプト神話は冥界関係の神が多すぎることだ…

 

しかし閻魔と言えばやはり大威徳明王、 ヤマーンタカ。 ヤマーンタカはヤマ、閻羅王を殺すものと言われてるし、ヤマーンタカは菅原道真とも関わりが深い。

 

菅原道真が地獄に関係してるのは、こんな話があるからだ。

 

菅原道真は死後に太政威徳天神へとなったが、現世で急死して浄土と地獄を巡り巡っていた

平安時代の僧である 日蔵 という僧と共に地獄で苦しむ醍醐天皇を見たら日蔵が生き返った、という話がある。

つまり菅原道真も平将門と同じく地獄の関係者である。

 

……どういう訳かこの醍醐天皇、菅原道真、源公忠、日蔵という僧も含め、この時代は地獄に行く話が特に多い。

 

「んーん。まったく知らない」

 

「そうか。 ピグマリオン効果 という言葉があってな、そのピュグマリオンからきている言葉なんだが」

 

幽々子は知らないと首を振るが、俺のしていることはぶっちゃけギリシャ神話ピュグマリオンのリスペクト、またはオマージュだ。

……パ、パクリではない。断じて違う。これはリスペクトやオマージュだ。

パクリ、リスペクト、オマージュの意味まったく別の意味である。これの区別がついてない者は結構多い

 

「ピュグマリオンは彫刻家で、天皇や幽々子と同じく神の子孫、神の血を受け継ぐ神裔でな。才能豊かなんだが、ある事情で現実の女性が嫌いになるんだ」

 

「ふーん。おじさんと真逆の人なんだね」

 

否定できないので言葉に詰まったが、幽々子が言った事を咳払いして流し、そのまま続ける

 

「彼は自分が彫刻家というのを活かし、理想の女性を彫刻で作り上げ、大理石で出来たその彫刻を心から愛した」

 

「ピュグマリオンは人間の女性と同じ彫刻、大理石を人間として扱ったんだ。大理石で出来てる彫刻だから動かないし、食事もしないし、言葉を交わせなくてもだ」

 

これは一種のヌミノーゼ。信じる、なんとも楽な行為だ。ただ信じるだけで願いが叶うならなんと楽な事か。別に彫刻が人間になると信じ続けるのを否定する気は無い。しかしながら、信じていれば願いが成就するなんていうのはおかしな話である

オチとして機械仕掛けの神があるが、これが正にそうだ

 

ただの人間が信じるだけで神が人間の願いを叶えるというのでは ピグマリオン効果 は出ない。

なにかそれ以外の、願いを聞き届け叶えてくれる存在が出てきてもおかしくない要素が必要なのだ。

例えば、天皇と同じく神の血を受け継ぐ神裔という要素があれば、ピグマリオン効果は出る。

 

「愛してやまない彫刻が人間になるようピュグマリオンが毎日願い続けると、愛と美と性の女神アプロディーテーがその願いを叶え彫刻が人間になり、彫刻をガラテイアと名付けてお終い」

 

本当はそれで終わりじゃないのだが、説明としてはもう十分だろう。

 

「その神話から、誰かが期待する事により、相手もその期待に応える事からピュグマリオンの名にちなんでピグマリオン効果という心理学用語が出来たんだ」

 

人間の願いを女神が聞き入れたという話で語弊を招くかもしれないが、ただの物に命を吹き込むなんてのはそこら辺にいる人間には出来ないし、その願いをそこら辺にいる人間がしても叶わない。

何故ならこのピュグマリオンは神話に出てくる人間で、しかもピュグマリオンは神の血を持つ神の子孫、神裔だからである。

 

分かりやすく一言で説明するなら、ピュグマリオンは日本でいう天皇と同じ存在な訳だ。

ピュグマリオンも神の子孫だから間違ってはいないだろう

 

ピュグマリオンは神話に出てくる人間、しかし厳密に言えば人間でもあり、神裔でもある、というのが正しい。

神話に出てくる人間なので、ただの人間ではないのだ。だからこそ、ギリシャ神話のアプロディーテーはその願いを聞き入れて叶えている。神の血を受け継ぐ子孫だからだ。

ただの人間の願いを女神が聞き入れ叶えるという話ではないので、勘違いしてはいけない。

神裔なら話は別だが

 

話が長かったかと隣にいた幽々子を見たが、俺を見上げて見ている幽々子は呆れ顔だった。

 

「……なんか、男の人の妄想が具現化した話だね」

 

…まあ古代ギリシャ人やギリシャ神話に出てくる人間は、想像力豊かでナルシストが多かったし。幽々子の感想も間違ってない。

 

「神話に出てくる人間や枢軸時代の人間も知能は高かったが、その部分だけ変わってない事が分かるな。おいで白蓮」

 

「うん…」

 

長話したせいか束になった枝に座ったまま眠たそうにしていた白蓮に両手を使って地面に下ろす。

 

無知は罪ではないが、アイデア、という言葉がある。アイデアと言うと綺麗に聞こえるが、結局の所アイデアというのは無知と無自覚から生まれた産物だ。

閃き、アイデアとは以前から使われていたのかを知らないか、またはつまらないので誰にも使われてないかのどちらか。

結局のところ、未来の人間がしている事は、シュメール人や枢軸時代、先人達の後追いでしかないのだ。

自分が考えたアイデアだ、と綺麗な言葉を捲し立て上げようと本当の意味でオリジナリティーに溢れていない。

 

科学の知識を創作物に使ってる時点でも言える。先人たちが築き上げた産物、定義を用いる時点で

その創作物は科学のリスペクトであり、オマージュであり、二次創作だ。

 

本当の意味で、オリジナリティーとは、言語の限界をなくす事にある。

 

当然これは

地獄、天国、極楽浄土。天界、魔界、前世、来世、輪廻転生。神、仏、妖怪。天使、悪魔、魔女。精霊、妖精。魂、怨霊、英霊、成仏、僧が葬儀に関わるきっかけになった道教と儒教の先祖供養

 

宗教の思想を創作物に取り入れた時点で先人達の後追いで真似事で借り物

そして宗教の思想に影響されている創作物の全てに言える事だ。

例え宗教ではなく科学を使っても同じ事が言える

 

宗教、科学、医学。音楽も美術も先人達が築き上げた。その築き上げた概念を使ってる時点で

派生、二次創作。もはやオリジナリティーではない。

オリジナリティーとは。言語の限界を無くす事なのだ。

 

ある場所へ向かう為に石段を下りようと、石段まで歩きながら映姫の銅像を横目で見て思い出す。

あれは、日本がアメリカに降伏した後の、戦後だったか。

 

「…是非曲直庁、裁判官。そういえば、極東国際軍事裁判。東京裁判があったな」

 

石段に到着し、一つ一つ石段を下りながら思った

日本で一番偉いのは誰かと聞かれたら

 

「天皇じゃなくて大統領だよなぁ。まあ不敬罪の恐怖政治はもう勘弁だが」

 

石段を下り終え、そのまま歩いて民の様子でも見ようと向かうが、誰かが右袖をくいくい引っ張ったのでそちらに顔を向けると、俺の隣にぴったりと付いて来ていた白蓮がとびっきりの笑顔で俺を見上げながらお願いする。

 

「氏神様、頭撫でて」

 

「おう」

 

右隣にいた白蓮の髪が乱れないよう丁寧に、優しく右手で頭を撫でる。白蓮の髪はストレートなのだが、さっきから白蓮の頭を撫ですぎて白蓮の髪がくせ毛や寝癖みたいに少しぼさぼさっとしている。後で髪を梳いてやらねば。

映姫の銅像に俺の神気と神力を送り込んだ時、譲歩して後でして欲しいこと全部してやるといったからだ。さっきから白蓮にあれしてこれしてと言われ俺はそれを聞いているのだが、白蓮の頭を撫でるのはこれで何度目なのか忘れた。

白蓮と立ち止まって白蓮の頭を撫でていたら、左隣にいた幽々子が喋る。

 

「どこ行くの」

 

「萃香達が建てた寺子屋に行く序でに逍遥だな」

 

久しぶりに民の様子を見るため鎮座していた神社から降りて来たが、一緒に来た幽々子は世間話している民や、甘菓子食べたり酒を飲んで騒いでる民、秋なので実った冥加の作物を収穫する民や、名馬を世話して忙しなく動いている民を見ながら聞く。作物を見た感じ今年の秋は豊作のようだ。まあその作物は冥加、つまり信仰心によって神から受ける加護だから、豊作なのは当然なのだが。諏訪国の民って狂信者しかいないし。

 

俺は寺子屋に行く為、白蓮と幽々子を連れて逍遥していた。

幽々子は俺の左手側から一緒に歩き、白蓮は俺の右隣を付かず離れずに付いて来てる。

 

「氏神様」

 

「うむ」

 

こんな民達が行き交う往来のど真ん中で、右手側にいる白蓮は恥ずかしげもなく俺を見上げなら言うと、俺は腰を下ろして両手を白蓮の腰に回して抱きしめる。序でに白蓮の頬と俺の頬を合わせて頬擦り。まだ子供だから頬はもち肌だ。

髪も腰まで伸びてるので白蓮の髪に右手を突っ込み櫛のように梳かすとメス特有のいい匂い。もしかしたら俺は神だけに髪フェチなのかもしれない。

まだ子供だから身長は低いが、目線を白蓮の胸にやったらかなりの速度で成長してきている。その視線に気づいた白蓮は何故か少し嬉しそう

 

「ふむ。中々育って来てるじゃないか。将来有望だな白蓮」

 

「本当? 私も比売神様みたいに出るとこ出てる体型になれる?」

 

「永琳みたいな体型か…白蓮なら永琳を越えるかもしれんぞ。とりあえず揉んでみよう」

 

白蓮は視線を自分の胸にやり、両手で自分の胸を触って将来の体型に期待する声を出す。

一度どんなサイズと思い右手を白蓮の胸に当てて揉む事にした。

 

「氏神様くすぐったい~」

 

白蓮は俺に胸を揉まれても全く恥ずかしがっていない。

なんか凄い笑顔で、しかもキャーキャー言いつつ白蓮は嬉しそうに両手を俺の体から頭に回し

俺の頭を抱きしめてきたので自然と俺の顔は白蓮の胸へと吸い寄せられるが、驚いた。胸の大きさと成長速度に

 

「ば、バカなぁ…! まだ子供なのになんだこの成長速度は……!?」

 

俺の掌でなんとか収まる大きさとは…着やせするタイプなのだろうか。まだ子供なのに。

あの永琳でもこの年頃の時は胸なんて皆無だったぞ。当時の永琳の胸は壁だったよ壁

 

このまま行けばどうなるのだろう、ばいんばいんまで行くのだろうか。

何て事だ、最高じゃないか! まだ子供なのに末恐ろしい。

 

しかも幽々子、命連と白蓮さえも。俺達みたいに老化しないんだ! 

嗚呼、世界が輝いて見える…生きるとは、なんて素晴らしいんだろう。ありがとう神様……

 

って神様オレじゃん!

 

左手で白蓮を抱きしめ、右手で白蓮の胸を揉んで会話していたら、隣にいた幽々子が俺の背中を掌でぽんぽん叩いたので首を回すと左手の人差し指で指しながら聞いてくる。

 

「ねーねー あそこに凄い大きなウメの木があるよ」

 

「ああ、幽香が成長させて咲かせた巨木だな」

 

その巨木は、諏訪湖近くの盆地にある。今は秋でも未だに咲き乱れ、風に揺られて花弁が散っては咲いての繰り返し。

円環時間現象の、死と再生の神である神奈子がしているんだろう。神奈子は意識的にしてないだろうが…

 

ウメの巨木と幽々子を見ながら思い出した。あれは、春が終わらなかった時だったか。

その時にどこぞのスキマ妖怪、賢者が言った。力とは、智恵であると。

この考えは古代インド哲学や、古代中国哲学ではない。古代ギリシアの哲学者寄りの考えであり

イングランド、イギリスの哲学者 フランシス・ベーコン の格言である、知識は力なり。だ

 

「そっかー。おじさんはウメが好きなの?」

 

「まあウメも綺麗だし、大好きだ」

 

「私はウメも氏神様も好き。氏神様のことを考えてるとね、どきどきするの!」

 

「…そうか。俺も白蓮のこと好きだぞ」

 

両手を白蓮の両脇にやり高い高い。満面の笑みで言う白蓮を見て、あれはいつだったか…もう覚えていない。

まあ永琳はこんな事を言っていた

 

『弘は、人間がいう恋ってなにか知ってる?』

 

『…いや知らない。じゃあ白蓮と幽々子を愛でに行くから俺はこれで失礼をば…』

 

この話は長くなりそうだから逃げようとした俺に、永琳は諏訪子と紫と幽香を呼び、剰え神使の影狼と文とはたてと椛に命じて俺を取り押さえ聞かされた。

 

永琳が言った事をかなり簡潔に纏めると

 

人間が言う【恋】というものは、体内にあるニューロペプチドが受容体と結合するのが発端。

それで生じるフェニルエチルアミンという化学物質が恋をした時の胸の高鳴り、つまり恋をした時に起きるドキドキが作られ、そのドキドキが心臓の動きの促進して感受性を高め、免疫システムが強化されて身体は健康になる。とかなんとか

 

『昔から人間が恋をすると心も体も綺麗になるって言われるのはそういった理由ね。まあ…これは余談で人間の話』

 

『だから白蓮と幽々子は今よりもっと美人になるわ。絶対に。…よかったわねぇ貴方? 幽々子、特に白蓮は胸も将来有望よ。この浮気者…』

 

『…××、永琳。とりあえず俺を睨むのをやめて縄解いてくれないか』

 

永琳は最後に余談を付け加え、俺は居間の床で簀巻きにされたままこの話は終わった。

夜になっても居間で簀巻きにされたままで放置され、居間に入って来た俺を見て正邪は指を差してお腹を抱えて大笑いされたので後で報復してやろうと誓い、縄は神社に帰って来た美鈴と慧音が解いてくれたので二人にお礼を言ってから大笑いした正邪も同じ目に遭わせようと、正邪を押し倒し、力づくで縄を使い簀巻きにしてから西行妖に吊るしてそのまま数日放置して泣かせてやった。

 

 

 

かなり昔の話だが、逃げた俺を縄で縛って無理矢理聞かせられ、その時には居間にいた永琳の膝枕でお昼寝していた幼い白蓮と幽々子を、永琳は慈しむ瞳で寝ている二人を見ながら、羨ましそうに言ってた。

俺からすれば永琳に膝枕されてた白蓮と幽々子の方が羨ましかった。あの頃は、既に永琳と夫婦だったが依存されてなかったからなー

 

それに人間は人間でも、白蓮と天皇の血を持つ幽々子は半神に近いんだが

 

白蓮を下ろして歩き出し、また会話を再開する

 

「唐突だがあのゴミ… もとい幽々子と白蓮は出雲神話の大国主って知ってるか」

 

「それなら知ってる。有名だもんね」

 

「大国主はスサノオやニニギって神様と同類のクズ野郎だって比売神様、永琳様から聞いた事あるよ!」

 

うーん…幽々子はともかく、永琳から聞かされて知った白蓮の言った事は、神話時代の始まりから見てきた者としては何一つ間違ってないと思い、俺は昔の誼みとして反論しようにもできず、二人と会話しながらも、口を閉ざしてしまった。

我が正妻ながら、恐ろしい女だ。永琳の教え方が問題とはいえ、子供にそんな覚えられ方をされるとは。なんとも哀れな奴である…

 

どうでもいいかもしれないが、実は大国主って第六天魔王と同一視されてるんだ。

あと第六天魔王はミシャグジ神とも同一視されてる。

 

幽々子と白蓮にそう言おうとしたが、興味がないかと思って言うのはやめた。

 

 

 

 

 

白蓮と幽々子を連れ、萃香達に造るよう頼んでおいた寺子屋に到着。

目の前に聳え立つ寺子屋、まるでカントリー・ハウスやタウン・ハウス…というより

中世ヨーロッパのマナー・ハウスの広さと大きさだろうか。

寺子屋が聳え立つその隣には、イギリスのヘイ・オン・ワイみたいな建物もある。

 

この寺子屋で、天子の奴隷扱いの白龍が、ブロッケン山から連れて来た魔女達に頼んで魔法を諏訪国の子供達に習わせる、つもりなのだが。

しかし、うーむ。バカでかい寺子屋を見上げて神社を思い出す。

 

白蓮と幽々子を連れて寺子屋の中に入ると、我慢できなかったのか幽々子と白蓮は探索してくると言い奥に行ってしまった。

 

「素晴らしい出来栄えだな。萃香達にはまた鬼ころしを大量に進呈しよう」

 

鬼とはいえ、あれだけ飲んでウェルニッケ脳症にならないのが不思議だ。妖怪だからだろうか

 

軽く歩き回ったが、かなり広いしこれは寺子屋以外の目的で使えるかもしれん。

咲夜の空間能力のお蔭で神社内部も広くはなってるとはいえ、この寺子屋、でかいし別荘にしたいと思うほどである

 

「この広さ、ディベートとしても使えるな。萃香達に寺子屋を建てといてくれと頼んでよかった」

 

よし決めた。この寺子屋は領主館のマナー・ハウス兼、別荘兼の寺子屋として使わせて貰おう。

寺子屋に入ってまだ軽くとはいえ歩いて見たが、無駄にデカいし広いし、問題はない筈。寺子屋の隅々まで見て回ろうとしたら、それこそ日が暮れる程の広さだ。

 

問題は、その領主館で誰に諏訪国の荘園支配を任せるか、だが。これは諏訪国の政治を任せている神子、布都、屠自古の三人に、この寺子屋を領主館として進呈し、使ってもらおう。

政治とかめんどうだし俺は絶対にしたくないので、神子達へ丸投げにする。

元々、その面倒な事は諏訪氏や藍に全て任せていたんだが、早苗を産んだばかりだし、今まで働き詰めだったから、藍には少し療養してもらう。

 

もしや既にあいつが広間で居座ってるのではないかと思い、歩いていたら広間を見つけ、中に入ると案の定。マミゾウが広間で煙管吹かしながら酒を飲んでいた。

マミゾウは俺に気付くと、上機嫌で片手を挙げる。

 

入って分かったが、広間には文机が並べられていて、しかも壁には黒板がある。一体、誰が運んだのだろう。

 

「おお、弘天殿。いつも通り儂はここに居座るぞい」

 

「また寺子屋に住み着くのか。…この寺子屋は神子達、魔女達、慧音が使うんだ。程々にしてくれよマミゾウ」

 

「大丈夫、大丈夫じゃて。基本的に儂は酒飲んでるだけじゃ。…白蓮や命連も、いずれこの寺子屋を使う日が来るじゃろうし」

 

……ギリシャ神話には【バウキス】に【ピレーモーン】という名の人間の老夫婦がいる

バウキスとピレーモーンの老夫婦は人間だ。ギリシャ神話のパンテオン、神ではない。

この老夫婦が出てくる話には、ゼウスとヘルメースが出てくるのだが。これを白蓮と命連が見たら、どう思うのだろう。

 

「俺は、二人を尼にさせる気はない」

 

「分かっとるよ」

 

マミゾウは酒を飲みつつ、白蓮と命連の名を出すと遠い目になる。尼にさせる気はないが。白蓮と命連は、今回どうするのか。

まあ白蓮と命連が尼になったとしても俺の妻にするがな! これは白蓮と命連が産まれた時から、既に決まっている事だ。

 

萃香達に頼んで諏訪国に寺子屋を建てたが、江戸時代には民間教育施設の寺子屋が存在した。

学ぶには金は要るが、金を取らずに無償で子供に学ばせる寺子屋もあった。

金が要る場合もあるとは言え、農民の子が勉学を学べたんだよ。

 

今では当たり前になってるが。庶民の、農民の子が! 勉学を、勉学や道徳を学べた時代なんだ!

農民の子が読み書き出来て、そろばんの使い方を習って理解し、扱えたんだぞ。

古代の庶民を顧みると、これがどれだけ凄いスゴイ事か…

 

つまりここからだ。自分達とは違う 言葉 を手に入れた時からだ。その寺子屋で世界地図を見て日本という国は より大きな世界の一部でしかなく 自分達は坐井観天だった事を知った。

狭まった価値観は崩れ、世界に対する認識を改めた。本来なかった余計な思想が、平等、自由という言葉が拡大解釈されて行った事と同じだ

 

「ところで、肝心のリグルはどこにおる」

 

「あいつの能力ってかなり面倒だろ。だから閉じ込めて脅迫…もとい仲間になってもらえないか鬼と一対一で交渉中だ」

 

地球内だと、どこから蟲が湧いて来るか分からん。

だから、リグルは蟲がいない魔界へと招待している。

 

「相も変わらず、鬼がリグルと交渉しておるのか」

 

マミゾウは呆れ返りながら、煙管を吸う。

 

この寺子屋は魔法、歴史などの勉学を学ぶ場所になる。

魔法は魔女達、歴史は慧音だな。後は、慧音が帰って来たら、昔と同じ光景がまた見られる。

今はまだ子供とはいえ、慧音が大人になって諏訪国の子供達に勉学を学ばせる教師姿、早く見たいものである。

子供のままの慧音が、諏訪国の子供達に一生懸命教える姿も、それはそれで、そそられる

 

「まあ、平将門のように困った事があったら儂を頼るがよい。昔の好で聞いてやらん事もない」

 

「じゃあ仲良くしろと言わないが、もう少しキツネに対する感情を抑え」

 

「いくらあんさんの頼みでもそれは無理じゃ。儂にも出来る事と出来ん事がある」

 

顔を背け、食い気味に拒否された。昔から言ってるせいか、これを言うとこいつは不機嫌になる。

キツネの話題を出してしまったばかりに、マミゾウは誰かの話を始めてしまう。

 

「永琳殿は、好きとか、愛しておるとか、依存しておるとか。すでにそんな次元の話ではない。

もうその域を通り越しておる。あせんしょん、じゃ」

 

これはマズい。マミゾウのスイッチが入ってしまった。

一刻も早く離陸しなければ、底なし沼へ嵌るかのように俺は一日中付き合わされてしまう…!

 

「じゃが。主、主、主と。彼奴は昔からそうじゃった。お前さんの妻の中で一番依存しておるのにそれに気づいてない振りをする。誰よりもお前さんの傍にいたいクセにのう。昔から気に入らん」

 

永琳やマミゾウはともかく、藍は記憶も感情も回帰してない。

藍はもう一度初めから、弱っていた所を俺が拾って、栄養失調から永琳に助けられて、仕えようと思った一連の出来事を、俺の妻になって早苗を産む喜びの永遠を、永琳と輝夜に望んだ。

覚えていなくてもまた会えると、藍は確信していたのだ。そこに回帰が必要とは、考えなかった。

 

この世界が因果的に閉じられている事を、藍が知っていたからである。

しかもその因果、特にエイブラハムと【因縁果】は、永琳が掌握し、操っている事も、藍は知っている。

 

この話を終わらせるべく、俺はマミゾウの背に立ち、両手をマミゾウの両肩に置いてマッサージをしてやる。

 

「うむうむ。お前の言う通りだな」

 

「そうじゃろうそうじゃろう。じゃから弘天殿と永琳殿が藍を引っ張っていってやるのじゃぞ。

藍は、あんさんと永琳殿の命ならば、喜んで従う」

 

「…ああ」

 

肩を揉みつつ、数十分ほどマミゾウの話に付き合っていたら、近くにあった文机に突っ伏して、やっと寝た。

 

「萃香達と酒飲み勝負した時以来の強敵だった。やはりマミゾウがいる時に藍や狐の話はタブーだな…」

 

少し肌寒いから、魔方陣を展開して毛布をマミゾウに掛けて広間を出た。

 

神子達もこの寺子屋を使うが、神子達にとってこの寺子屋は日本でいう

【宮内省】または【宮内庁】と同じ場所。そう考えてくれたらいい。

……あれ。ということは、ここは日本でいう【禁衛府】になるのだろうか。

弘文天皇は山城国の平安京にいるんだがな。

 

ここは寺子屋なので学び舎になる。

そして、かつて誰かが言った言葉を引用しよう

 

『この発狂したメガホンは、一見この世で最も愚劣、無用、禁制なことをやり、どこかで演奏された音楽を無選択に愚劣に粗野に、しかもみじめにゆがめて、ふさわしからぬよその場所にたたきこんでいるが』

 

『しかもこの音楽の根本精神を破壊することができず、この音楽によってみずからの技術の無力さ、から騒ぎの精神的空虚さを暴露するばかりだ』

 

『よく聞きたまえ、君にはその必要があるんだ。さあ、耳を開いて』

 

『そうだ。どうだ、ラジオによって暴力を加えられたヘンデルが聞こえるだけじゃない。ヘンデルは、こんな鼻持ちならぬ現れ方をしても、やはり神々しいのだ』

 

『―――そればかりでない、ねえ君、同時にあらゆる生命のすぐれた比喩が聞こえ、見えるのだ。ラジオに耳を傾けると、理念と現象、永遠と時間、神性と人間性、それらのあいだの原始的な戦いが聞こえ、見える』

 

『君のようなたちの人間には、ラジオや人生に批評を加える資格はまったくない』

 

『むしろまずよく聞くことを学びたまえ! 真剣にとるに値することを真剣にとることを学びたまえ! ほかのことは笑いたまえ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、帰ってらしたんですね。皆さん寂しがってましたよ」

 

「うむ。星と美鈴はそれだけの量、どこに運んでるんだ」

 

「広間に教材運びです。魔法や歴史を学ぶにしても、床几や教卓、紙に墨は必要と思いまして」

 

星は俺に会釈し、美鈴は軽々と片手で持ち運びながら、運ぶ場所を説明する。

なんて力だ。それぞれ片手で床几や教卓を同時に持ち運ぶとは、美鈴は凄いんだな。

星も持っているが、美鈴とは正反対に紙や筆などを小さな倭櫃に詰め、両手で持っている。

 

「じゃあ、すぐにサボり魔のてゐを呼んでやらせよう」

 

「いえいえ大丈夫です。力には自信がありますし、私が好きでしているだけですから」

 

霧になっている萃香を呼んで、てゐを連れて来て貰おうとしたが美鈴に止められた。

美鈴に道場の事を聞いたら今日はなくて、ヒマだったらしい。本当に好きでしているようだ。

 

「ならいいが。ところで白蓮を見てないか。はぐれてしまったんだ」

 

「白蓮様ですか。私は見てないですね」

 

流石に荷物を持ったまま立ち話も辛いだろうと思い、広間まで美鈴と星の間で歩きながら聞いてみたが、美鈴は見てないようだ。行き詰ってしまったな。

 

星は寅丸星という名だ。偶然だと思うが戦国時代には幼名で 寅王丸 という名の諏訪氏がいる。

寅王丸は当時の諏訪氏当主である諏訪頼重と、武田信玄の妹、禰々の嫡子だ。

 

ダメもとで美鈴の隣にいる星にも白蓮を見たか聞いてみよう。

 

「星はどうだ」

 

「先程、大客室でルーミアさんと遊んでいるのを見ました」

 

よかった、白蓮を見た様だ。大客室か。場所はどこだったか。まあ歩いてればその内見つかるだろう。

そんなに遠くなかったから広間に到着し、マミゾウはまだ寝ていた。

美鈴は大荷物を出来るだけ音を立てない様に床几を下ろし、下ろされた床几は軽いので星が運んで並べる。

美鈴も星の後に続いて片手で持っていた教卓をよく見える所に置き、後は大量の紙、墨、筆を倭櫃から取り出して終わった。

さっき広間に入った時、文机が並べられていたが、美鈴たちが運んで並べた様だな。

 

しかし、うーん。美鈴が歩いたりするとスリットからは太ももが見え、美鈴が腰を屈めたりすると尻を凝視してしまう。

…許せ美鈴。仕方ない、仕方ないんだ。男のサガなのだ。

そもそも美鈴は娶ったから俺の妻なので、イヤだと言われる事はないと思うのだ。

 

…だが、何故だ!?

なぜ星はスカートなのにズボン履いてんだ! 

これじゃあスカートを捲っても意味ないからつまらないし、ズボン履かれたら生足を拝めないしで俺が色々と困るじゃないか! 

まあでも、まぐわいをする時、着衣でするのも結構好きだが

 

星は薄々勘付いているだろうが、鈍感な美鈴は俺の視姦に気付いてないようで、仕事を終えたら、座って壁に寄り掛かり、美鈴と星を眺めていた俺に近づいてくる。

 

「一先ず必要最低限の物は運び終えました。明日にでも魔女達から魔法は習えると思います」

 

「そうか。二人共ありがとう」

 

「諏訪国と弘様に仕えている身です。お気になさらないで下さい」

 

「私は一応、神使ですから。仕事をしないと食いっぱぐれるかもしれないので」

 

美鈴はともかく星はご飯目的だったようだ。なにかしないと酒嚢飯袋にされると思ったのだろうか。

まあ、永琳から教わった藍の料理、美味しいから分かる。

…まだ。イン・メディアス・レスとはいえ、やっと、ここまで来たな

 

「私の顔になにか付いてますか?」

 

「いや。美鈴を見てると落ち着くんだよ」

 

美鈴は妻にして結構経ってるが、昔から美鈴を見ていると落ち着くようでどうも落ち着かない。

いつもなら美鈴の綺麗な脚線美を擦ったり撫でまわしたいとか、美乳を揉みたいとか、美尻を揉みたいとか、ディープな口吸いしたいとか、押し倒してまぐわいたいとかを常日頃から考えるのにそれがなくなる。落ち着くんだがそんな俺に落ち着かない。

いや本音を言えば美鈴の脚線美に関しては今もしたいんだけどさ。

俺と同じ龍だし、美鈴とは波長が合うのだろうか。

 

「綺麗だ美鈴。お前を娶って良かった。愛してる」

 

「ひ、弘様はいつも急ですね。ですが弘様と出会えて、夫婦になって、私も嬉しいです…」

 

立ち上がり、俺は右手を動かして美鈴の腰に回しつつ、空いた左手で美鈴の右手と軽く合わせ、ゆっくりと、俺の左手で優しく美鈴の右手を開いて指同士を絡める。

体を寄り添い、お互いの片手の指同士を絡めて見詰め合い、二人だけの世界に入った。

 

マミゾウは文机に突っ伏して寝てるし、星は寝ているマミゾウを見つつ湯呑に入った熱い茶を飲んで一息ついていた。いつの間に湯呑へ茶を淹れたのだろう。

 

が、美鈴と愛し合っていたら、ルーミアが両手で落ちない様に白蓮と幽々子を抱きしめて広間に入って来た。ので、美鈴の腰に回していた右手を出来るだけ挙げる

 

「おールーミア」

 

「ちょっと、私に白蓮達の世話を任せてなに睦み合ってるの。星も止めなさいよ。この二人、誰かが止めないといつまでも見詰め合ってるんだから」

 

「私は、幸せそうなお二人を見てるとなんだかホッとするので、止められないです。だから止めようとも思えないですね」

 

向かい側にいるマミゾウが寝ているのを見ながら、星は湯呑に入った茶を飲んで落ち着いてる。

だが、ルーミアが来たのはちょうどいい。

 

美鈴に視線を向け、意図を汲み取った美鈴は寄せ合っていた体を離れる。

俺の、俺の美鈴が、俺の女神が離れてしまった…

 

「もうすぐ戦争だ。キクリと一緒にお前も付いて来い」

 

ルーミアは天魔、パルスィ達のように元々はインドにいた者達だ。

天魔は最初から憶えているし、パルスィは顕明連を朝日に当てて回帰しているので思い出した。

しかし、ルーミアが憶えてるのか、それとも憶えてないのかはこの際どうでもいい。

ルーミアは戦力として連れて行くわけではない。キクリと一緒に来てほしい。ただそれだけ

月人、月の関係者としてはルーミアを、どうしても連れて行きたいという気持ちが、俺にはある。

 

「…あのね。諏訪国にシンギョクの片割れがいるのよ。私は、私を封印したシンギョクを殺したいの。というか殺さなくちゃいけないのよ。そんな暇はないわ。大体、行くってどこに行くのよ」

 

白蓮と幽々子を下ろしながらルーミアは話を聞いていたが。俺の意味不明な誘いに、ルーミアは事態が飲み込めず、いつも通りただただ絶句。

だが数秒程集中して、断片ながらもなんとか理解し、呑み込めたルーミアは無理無理と片手を横に数回振り、拒否。

 

だが、来てもらわねば困る。自分勝手と言われようともだ。

どこに行くのか聞かれたので、今も光り輝いている衛星を、右手の人差指を空に指す。

 

「どこって、懐かしの月だよ」

 

左手を差し出し、ルーミアの元へ向かい、お互いの左手に絡ませて握手する。

 

「だから来いルーミア。シンギョク、仁科を殺すのはそれからでも遅くはないだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時は来たり」

 

今夜は三日月のようだ。

月の光が綺麗だが、そもそも月の光って太陽の光が反射して光ってるんだよな。

じゃあ太陽が苦手な妖怪や、悪魔の吸血鬼が、月の光で力が増すっておかしくないか。

 

などと下らない考えを考えながら龍神の名を呼ぶ

 

「黒龍」

 

「はいは~い」

 

黒龍の名を呼ぶと諏訪国へと即座に登場。黒龍は巨体ゆえに天を覆い隠しているが、魔方陣を展開して黒龍の頭へ転移し、地上を見下ろす。

しかし龍神の頭に乗っているのは物足りないので、魔方陣を展開して玉座を出す。

出した玉座に座ると、なんか偉くなった感じになれて気分がいい。

 

上空で月を眺めていたら、何かが急接近して、反動も無く龍神の顔の前に一瞬で止まった。

誰かと思えば山伏を着ている文だ。

 

「あやややや。どちらに行かれるのですか弘さん」

 

「月」

 

龍神を呼び出して何をするのかというと、今から月に行くのだ。

俺と同じく上空にいる文は、月に行くといったらなんとも言えない表情になる。俺達、神と妖怪にとって、時間はあるようでないようなものだからこその片鱗だ

 

「はー もうそんな時期まで来ましたか。光陰矢の如しですねぇ」

 

「まあ依姫が産んだ後の話だ。産むといえば、椛とはたての具合はどうだ」

 

依姫の事ばかり気にしていたが、俺は椛とはたてに手を出し、孕ませているのだ。今までも問題は無かったとはいえ、やはり心配だ。

それを文に聞いたら、背中に生えてる翼を羽搏かせながら、苦笑いを浮かべて答える。

 

「椛は食欲が以前より増し、はたてはつわりで嘆いていましたが、概ね良好ですね。弘さんの血が天狗に入った事で、天魔様は大喜びしてますよ。当人達より一番喜んでるのは天魔様ですね」

 

「問題が起きてないならいい。しかし、次はお前だぞ」

 

「あはは…。お手柔らかにお願いします。回帰したおかげで、私の体はまた生娘ですから」

 

次が自分だと分かってる文は、色んな感情が渦巻いた表情で頷いた。文とする時は、山伏を着て欲しいな。する時に言って文には山伏へと着替えてもらおう。

文にも手を出すが、萃香達に手を出さねば。文に萃香たちの鬼女には、俺の子を産んでもらわねばこの先、困るのだ。

 

もう少し文と話に耽ていたいが、そろそろ行かないとマズいな。遅れたら神綺達に何を言われるか分かったものではない。

 

「じゃあ月に行って来る。文、留守は頼んだぞ」

 

「はい。弘さんに何かあったら椛とはたて、もちろん私も泣いてしまいますので、お気をつけて」

 

だがその前に、一つやっておく事がある。

龍神に顔を動かしてもらい、鳥居の近くに造って置いた四季映姫の目の前まで来た。

この距離なら手を伸ばせば余裕で触れる。

 

「さあ四季映姫。今こそ我が前に顕現せよ」

 

両手を映姫の両頬に当てて、俺の神気と神力を注ぎ込むと、青同色だった映姫の銅像は、岩のように硬かった頬もだんだんと粘土のように柔らかくなってきた。

暫く注いでいたら、映姫の肌も褐色から肌色になり、着ていた服も色が着色され、彩が増す。

うーん。まるで自分が画家になった気分だ。悪くない。

 

そろそろいいかと思い、注ぐのはやめると映姫は閉じていた瞼を開く。

映姫の両頬を両手で揉んで堪能しつつ、話す。

 

「久しぶりの顕世はどうだ」

 

「…修身斉家治国平天下、尺を枉げて尋を直くす」

 

折角開いた瞼を再度閉じ、返答。まあ映姫なら恋の山には孔子の倒れにはならないだろう。

裁判長をイメージして造ったので、テーブルと椅子も映姫と一緒に造っている。

だから映姫は椅子に座って話してる。俺は龍神の頭、しかも偉そうに玉座に座ってるが。

 

「まあ形式上、俺は映姫の父親だろ」

 

「えぇ。残念ながら」

 

「ほら、呼んでみんしゃい。あ、父さん、お父さん、お父様、パパはダメだぞ。被るから」

 

「…目覚めた早々、なんたる嫌がらせですか。父上」

 

映姫の両頬から両手を離し、お互い向かい合い。対面する形になる。久しぶりに会えたから、テンション上がってるかもしれん。

なにせ映姫は、回帰した状態で、今までの出来事を永遠に忘れない事を望んだ女だから。

つまり映姫は、俺や永琳と同じ。全部覚えている者が多いのは、結構嬉しいもんだ。

 

「常住不断の生生世世。この俗世は依然としてイデア論、色即是空のようですね」

 

「うむ。まあ真面目な話、お前は諏訪国にとって今、そしてこの先も必要なんだよ」

 

「だからいつも通り諏訪子を支え、神子達の政治の助言や手助け、及び、人間が愚かな事をしないかの監視。昭和21年から昭和23年の東京裁判、極東国際軍事裁判は頼んだぞ、映姫」

 

映姫は諏訪子、神子、布都、屠自古を支える裏方、縁の下の力持ちになるだろう。

椅子に座ったまま両肘をテーブルに乗せ、両手を合わせて指を組み、神妙な表情で映姫は頷いた。

 

「ジパング安寧秩序の為。諏訪大明神の社稷の臣、諏訪国の公平無私としてこの四季映姫。与えられた職務を承り、実事求是を全うします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くくく」

 

「ふはははは」

 

「はーっはっはっはっ!!」

 

「来た、見た、勝った!」

 

「まだ勝ってないですわ」

 

俺の言葉を青娥に否定され、出鼻をくじかれる。

 

「確実に無量大数は優に越えてる議題は、月の民の鏖殺。早速、私達の身内である月の民、月人を鏖殺する計画。この場にいる皆で、月の民をどうやって殺しましょう会議で企てましょう!」

 

「神綺、嬉々として言う事じゃないでしょう。それに最初は開戦事由について話し合った方が…」

 

「そもそもビッグフット数くらい回帰してるから実際は無量大数じゃ足りないわよねぇ」

 

神綺は両手でデスクをバンバン叩いて話していたが、サリエルが注意し、永琳が回帰の回数を数え、神綺に教えて訂正していた。

永琳、そこは重要じゃないだろう。

 

月のクレーターティコのど真ん中に聳え立つラボラトリー

その内部にある通信指令室兼、作戦司令部で、俺達はぐだぐだ会議をしていた。

 

ただ、なぜかこのラボラトリーの外観は竜宮造りになっている。

 

「ともあれ、月の民と月の都は滅ぶべきであると考える次第である。なあ神綺」

 

「そうよね。月の都滅ぶべし。Si vis pacem, para bellum ねぇ夢子」

 

「はい、神綺様」

 

俺の言葉に続いて神綺は同調し、神綺は傍で控えていた夢子に聞くと、とてもいい笑顔で肯定。

夢子は俺の許婚だが、咲夜と違って神綺の手伝いをしている。

 

夢子に視線を向けると、夢子は視線に気づいて俺に微笑み返したので、俺も笑い返す。

暫く見詰め合ってたら、対面しているユウゲンマガンから睨まれた。

仕方ないので議題を続けよう

 

上から気配がしたので顔を上げると、枕を抱きしめながら天井付近に漂うドレミー・スイートがいた。

俺が気付いた事に気付いたドレミー・スイートは片手を上げて挨拶したので、俺も挨拶を返す。

 

「やー」

 

「や、やー。…いたのかドレミー」

 

「私の事は気にしないでねー」

 

気にするなと言われたので、気にしないでおこう。

 

神綺が言う皆殺しについては、既に決まっているのだ。だからこれは、月の関係者達が

ただ駄弁るだけの集まり。しかし、こうして集まるのはいつ以来だろう。

 

「弘君。神綺が真似するので古代ローマの言葉は使わないで下さい…」

 

「そもそも私達、月人で月の民だよ天君。自決したいの?」

 

「バカな、自決だと。ああ確かに俺はバカさ。だがなくるみ」

 

「この俺が、古代ローマの詩人ホラティウスの詩、今というこの時を、全力で楽しめ。を座右の銘とし、至上と、モットーとしているこの俺が、一体全体誰なのか忘れたのか」

 

「うん。天君は若干バカだよね。分かってて言ってるの」

 

サリエルは俺を諫め、くるみは真面目に返すが、くるみの言葉が聞き逃せなかったので反論すると、揶揄われていた様だ。

くるみ、憐れんだ目で俺を見るのはやめろ

 

ここにいるのは嘗ての約束をして、尚且つ、覚えている者達だけだ。

豊姫、依姫、神奈子、輝夜、咲夜、サグメ、キクリ、天魔はいない。

輝夜と咲夜は近畿地方から九州地方の僧兵を殺していて、サグメは行方知れずだし

 

記憶が欠落してるから来られないが。本来なら、ここにキクリもいたんだ。

天魔もここにいるべき存在だが、今回は欠席している。

エリスは天子の監視役なので、ここには来られない。

 

「いいか、俺はすっぱいぶどう理論が大嫌いだ! 世界に存在する数多の美女達を侍らせるまで、死んでたまるか! Dona nobis pacem! Dona nobis pacem!」

 

まだ俺達は イン・メディアス・レス の最中にいるのだ。

俺の目標を高らかに宣言したら、幻月と夢月が揚げ足をとる。

 

「いや二回も死んでるじゃない。第一、私達はその平和を壊す方よ」

 

「そうだそうだー。永琳を悲しませたクズ野郎ー」

 

「ふふん。俺にとってクズは最高の褒め言葉なんだなこれが」

 

俺にとって美人、可愛い女を娶るのは生きて行く上で必要不可欠だ。

なんだっけ、確か似た様なので、これを ブランケット症候群 って言うんだったか。

そんな俺に、夢月と幻月は引いた

 

「うわー引くわー」

 

「ないわー」

 

ただ永琳に関しては好き放題言われても言い返せない。俺が永琳を残して死ぬなど

 

これはアメリカにとっての屈辱の日である9月11日、パールハーバーの屈辱と同等だ…!

 

夢月と幻月はる~ことに淹れてもらった紅茶を飲みつつ、る~ことが作った洋菓子

ヘラティーナやエスプミージャなどを食べていた。

甘いものは好きだし、美味しいのは知ってるが、あれを見てるだけで胸焼けする。

 

る~ことはセクサロイドだが、シングルタスク仕様だ。マルチタスクにしておけばよかったか。

しかし人間に近い存在として造り上げたから、やはりシングルタスクのままでいいや。

 

ユウゲンマガンが夢月と幻月の間に座っているが、基本的に無口なので基本的に何かを黙々と食べてるだけだ。

魅魔は一息吐いて、周りを見渡す。

 

「この場にいる永琳、神綺、サリエル、くるみ、青娥、夢月、幻月、ユウゲンマガン、る~こと、夢子、ドレミー・スイート、私。これだけ美人揃いなのにまだ求めるとはねぇ」

 

「おい魅魔! 自画自賛はやめヘぶッ!?」

 

「んー? ヘブの法則がなんだってー?」

 

「言ってねえよ!」

 

魅魔が煎餅を俺の顔に投げて喋るのを遮られるが、この煎餅、食べてみたら結構美味しい。

 

このままではいつもの様に議題のレールから脱線してしまうと思ったのか、青娥は軽く咳払いをして、月の民をどうやって殺しましょう会議を続行する。

 

「賽は投げられたとはいえ、月の都の被害を出来るだけ減らす事を考えた方がいいのではないでしょうか」

 

「あ、魅魔その煎餅くれよ。結構美味かった」

 

「はい」

 

「パスパタやトリシューラ、インドラの矢を使うと月の都だけでなく、月自体まで消えてしまいます…って私の話を聞いて下さい」

 

魅魔の目の前に菓子器が置かれていたので、菓子器に入っている煎餅を貰って齧ってたら青娥に怒られた。ボリボリと音を鳴らして煎餅を食べていたら一つ思いつく。

【Web Bot】にエイブラハム、アカシックレコード、沈黙の兵器は俺達の手中にあるのだ。

 

「なら吸血鬼の始祖であるくるみが全ての眷属を率いてだな」

 

「それ天君がする事と変わらないの」

 

「最凶最悪と名高い幻月が」

 

「イヤよ疲れるじゃない」

 

「じゃ、じゃあ沈黙の兵器でも使うか。永琳、る~こと。任せた」

 

「あれはダメよ。沈黙の兵器はアメリカだけに使うと皆で決めた事でしょう。東京裁判とかでね」

 

「…」

 

煎餅を食べながら隣にいる永琳に顔を向けて聞いたが、まだ使えないと首を振る

次に夢月、幻月、ユウゲンマガンに甲斐甲斐しくご奉仕していたる~ことを見たが

永琳がダメだと言ったのでる~ことも首を振る。

沈黙の兵器の話題を出したせいか、セクサロイドなのにる~ことはおかしなことを言い始めた。

 

「沈黙の兵器ですか。このままでは私達、機械に支配されてしまいますね」

 

……

 

 

(それはひょっとしてギャグで言ってるのか…!?)

 

俺が脳内でツッコんでしまった。る~ことの冗談はいつも分かりにくい。

まあその冗談は、現実味を帯びているが。

 

一旦、月の民をどうやって殺しましょう会議を止め、数十分ほど休憩をとることになった。

あいかわらずぐだぐだである。

 

「正しく勝った、私が勝った」

 

レイセンが入れられている地下牢までやって来たのはいいが、なんか、腰を下ろして壁に体重を預けて両足を延ばし、両手は壁にぶら下がっている手錠に嵌められて身動きは取れないと一目でわかる上に、スゲーぐったりしてる。

ここは明るく、尚且つ爽やかに、月の裏切り者の女に話しかけよう

 

「ようレイセン。調子はどうだ」

 

旧時代的な地下牢に来てレイセンに話しかけても反応がない。

あ、まずは猿轡のボールギャグを外さねば会話が出来ないじゃないかと思い出し、牢の中に入ってレイセンに近づき、両手をレイセンの後頭部に回してボールギャグのベルトを外し、序でに目隠しを外してやると憎々しげに、吐き捨てるかのようにレイセンは言った。

 

「…最高ね、オー・ヘンリーの気分よ」

 

「いやー オー・ヘンリーと比べるとかなり酷い待遇と思うが。まあそれは僥倖だ」

 

きっとレイセンなりの皮肉だろうと考え、立ちながら腕を組んで鉄格子に背を預け続ける

サグメから借りた天鹿児弓で放った月光の矢に付けておいたアガスティアの葉を使い

レイセンの記憶は回帰している。回帰したからストックホルム症候群は起きてない

 

「いいかレイセン。神は除いて『責める権利を持つ者はこの世に存在しない』さ。だがな」

 

「お前、アメリカのアポロ計画の時、真っ先に地球へ逃げただろ。玉兎達やお前程度の存在では、月人の上層部も気にしてなかったが、敵前逃亡なんて軍規違反だし完全に裏切り行為だぞ」

 

レイセンは一瞬身体がビクついた。玉兎であるレイセン自身が、玉兎は月の民の奴隷という事を忘れた訳ではあるまい。レイセンの記憶はある程度回帰させているので、ちゃんとアポロ計画の事を覚えている。

このネタで昔から何度もレイセンに嫌がらせを続けているのだが、本来ならレイセンは月の民に殺されても文句は言えんのだよ。

 

「月の民は殺生を好まないとはいえ、死刑判決が下されてもおかしくないだろう」

 

「それは、世界がまだ初期頃だった時の話じゃない。いい加減忘れてよぉ…!」

 

「イヤだね。俺はこのネタでお前を揺すって、永遠に嫌がらせすると決めているのだ」

 

レイセンではなく、永琳が月から逃げたのならまた話は違っただろうが、所詮、玉兎のレイセンは豊姫と依姫の愛玩動物でしかない。とはいえ玉兎の中でも、このレイセンは優秀だった。

だから月人や月の民はレイセンにバツを与えていない。レイセンの代わりはいくらでもいるから。まあ昔の話だ。

穢れの件に関してはキクリのお蔭で解決してるので、月だろうと地球だろうと、なにをしても穢れはもう発生しない。

 

「臆病女め。あれだけ回帰してもまだ死ぬのが怖いか。まるで、お前の嫌いな人間だ」

 

「違う…。私は、あんなヤツらじゃない…」

 

「…まあ、お前の人間嫌いに関しては俺と永琳、特に魅魔の影響のせいでもあるか。お前の飼い主である豊姫と依姫は人間を好いていないが、嫌ってないからな」

 

顔を俯かせて黙り込んでいたレイセンは、弱々しくも人間と同じではないと言った。

レイセンは豊姫と依姫の愛玩動物な訳だが、月人と月の民に影響されたレイセンはともかく、豊姫と依姫は人間をそこまで嫌っていない。だからと言って好いている訳ではないが。

人間を好いても嫌ってもいない豊姫と依姫は、俺達とは生まれた世代が違うんだ。

豊姫と依姫は、俺と永琳、神綺やサリエル、魅魔とユウゲンマガン達の後だから。

 

「 エガス・モニス という神経科医がいた。そして」

 

鉄格子に背を預けていたが、レイセンの元へ向かう為に歩き出し、近づきながら話を再開する。

 

「かつてアメリカでは猿を使ったロボトミー手術があった。第35代アメリカ大統領、暗殺された

ケネディ大統領の妹ローズマリー・ケネディはロボトミー手術を受けている」

 

「次はアメリカ合衆国の小説家 ダニエル・キイス の アルジャーノンに花束を 

最後に1979年、昭和54年の日本で起きたロボトミー殺人事件があった」

 

そうだ、ロボトミー手術。永琳がいて、る~ことのアカシックレコードにエイブラハムもある。

頭を弄り回すか、脳をなくすにしてもアカシックレコード、エイブラハムを代わりに詰め込めばいい

簡単簡単。まあこの話に適応されるのは人間だけなんだが。

 

今の言葉で理解したようで、嘗ての出来事が想起されたレイセンがばっと顔を上げて絶句し、逃げられない事は分かっているからか逃げず、蹲ったまま両腕を頭をかばうようにした。

 

「ッ…やだ、いや!」

 

「うお。なんて力だ。さすが月の都で肉体労働ばかりさせられる玉兎なだけある」

 

一部を除いて殆どの玉兎は気楽に過ごしてるが

 

地下牢の壁を背に蹲っていたレイセンを見下ろしながら言い、腰を下ろし、俺の両手でレイセンの両腕を掴み、強引に俯いているレイセンの顔を見ようとしたが、レイセンは今の話を聞いたせいか必死に抵抗してくる。

レイセンの目を見ても俺は狂気に堕ちないので、問題ない。

 

手錠の鎖の擦れる音が静かな地下牢でやけに響く中、やっと鈴仙の片腕をどけると、顔が露になる。

 

「なーに泣いてんだ」

 

「…泣いてなんか、ないわよ...バカ」

 

……性格や人格を変えてみようかと、久しぶりにしようと思ったが、片腕をどけて見えたレイセンの泣き顔を見て興が冷めた。従順なのはやはりつまらん。

それ以前に玉兎全員が、俺達の奴隷だし、玉兎達を生かすも殺すも俺の気分次第だ。

 

玉兎という妖怪は日本の妖怪ではなく中国の妖怪だが、月にウサギがいるという起源はインドが有名だ。しかし、それだけではない。月にウサギがいる起源はインドではあるが

その話の前に キルギス族神話 で ウサギが誕生する神話 があるんだ。

 

創造神を目の前にしたんだから、キルギス族神話のウサギの反応はごく自然だろうが

目の前にいる臆病者のレイセンみたいに、キルギス族神話のウサギは小心者で泣き虫だった。

 

「レイセン。お前は玉兎な訳だが、キルギス族神話のウサギの話を思い出して気が変わった」

 

両手をレイセンの両腕から離すと、レイセンは自由になった右腕の袖で目尻から垂れてきている水を拭いつつ、出来るだけ平静に返答してくる。

涙は滂沱の如く流れていなかった様だ。

 

「私だけじゃなくて、鈴瑚と清蘭…他の玉兎にも本当に、なにもしないの…?」

 

「もう大昔にしてるだろ。数多の神話の神、俺や永琳達を除いた月人達とお前ら玉兎はとうの昔、支配下においたのだ」

 

もちろん永琳、神綺、サリエル達はこれに該当しないので、支配下にはない。

永琳達以外の月人と月の民、全ての玉兎が俺達の支配下にある。

 

キルギス族神話は、ウシの誕生神話があるから好きなんだ。菅原道真は牛が神使だったし、レイセンの事もやめた。

そもそも全ての玉兎は俺の奴隷なのだから、生かすも殺すも決定権は俺にあるので、今の所はいいか。今の所は

 

天皇や大王、物部氏などの神裔、諏訪国の民は除くが。俺は、人間の事が嫌いではないが好きではない。ただ、美人や可愛い女は好きだ。

だがそれは俺の好みがそうであって、人間が好きだという事にはならない。これは、とても大きな違いである。

しかし神々によって創造された人間、神話に出てくる人間、要は、インテリジェント・デザインの人間は嫌ってないし寧ろ好きなので話は別

 

肝心なのは地球によって生み出された人間。即ち

俺が好きでも嫌いでもない人間はミトコンドリア・イヴ達の事であり、そいつらが好きでも嫌いでもないという話。神々によって創造された人間は好きな部類に入る。

パンテオンによって創造された人間と、地球によって生み出された人間の違いは、とても大きい。

同じ人間でも生まれた過程と結果が違うからだ。

 

「出ろ。お前も会議に出席してもらう」

 

「…分かったわよ」

 

壁にぶら下がり、片手に嵌めこまれていた手錠を空いた片手で鈴仙は砕いて外した。

手錠などで拘束していたが、元々、人間用の手錠なので、最初から拘束具としては何の役にも立っていなかった。

逃げたら永琳に廃人にされるし、逃げる気が起きないだろう

 

ある人間は100までしか生きられず、ある人間は500以上生きられると言ったら、もはや同じ人間ではないだろう。見た目が似てるだけで別の存在になる。

そもそもだ。仮に、ある人間が200以上生きて、しかも老化しない。

そんな奴が、自分はこれでも人間です。と言ったら、そいつは人間ではない。人間の振りをしている化け物だ

 

100以上生きてる時点で人間じゃないし、老化しない時点で動物である人間の定義に当て嵌まらないし、人間が神みたいな事をしでかした時点で、人間という定義からはみ出てる時点で。

もはやそいつは人間ではない。見た目だけが人間と同じ唯の化け物だ。それでも自分は人間と言い張るなら、そいつは俺達みたいにイカレてる

本来の人間に出来ない事をしてる時点で、もう人間じゃないんだよ。

まあ、神話に出てくる人間なら話は別だが

 

古代ギリシャの哲学者 ヘラクレイトス は言った

 

『同じ川に二度入ることはできない』

 

続いてドイツの小説家 ヘルマン・ヘッセ は言った

 

『私たちは朗らかに場所を次から次へと通り抜けるべきである。そんな場所にも故郷のように執着してはならない』

 

俺達は幾度も回帰してきたが、あの時は良かったなどと、一度も思った事はない。

それは俺だけではなく永琳達もだ。

 

 

 

 

「さあ、イヤだが今度は真面目に会議を再開しよう。今の俺はロームルスかノートン1世だ」

 

「私はハンムラビだと思うけど。なに、また ジョハリの窓 でもするの?」

 

「俺達ジョハリの窓やりすぎてお互いの事が筒抜だろ神綺」

 

通信指令室兼、作戦司令部に戻って面倒な会議を続行。

鈴仙もこの場に連れて来て、俺と永琳の背に立って控えている。この場にいる月人の面々を見ると真っ青になり、さっきから鈴仙の膝が笑って、小心翼翼。

 

ただ。真面目に会議と言っても、俺が作戦を考えるなんて

昭和19年の インパール作戦 の悲劇を繰り返すようなものだぞ…

役立たずで無能の俺より、やはりここは、頭のいい永琳に頼みたいのだが、基本的に永琳はなにも言わない。俺が決めた事に従うだけだ。

 

「デウス・ウルト、ジハードなどという立派なものではないが、なんかいい案ないか」

 

「確認なんだけど、今回は豊姫と依姫は敵なのよね?」

 

「うむ。こちら側に下る事は、決してない。豊姫と依姫の性格上、まず無理だ」

 

「しかも今回はここに神奈子とキクリがいないもんねー」

 

幻月は今回、豊姫と依姫は味方では無い事を俺に確認し、俺は肯定すると、神奈子の名が出る。

本来、神奈子は必要だったのだが、この際、仕方ない。

 

「知ってるだろうが依姫は妊娠している。月の都と月の民を滅ぼすのは依姫が子を産んでからだということを、重々承知してほしい」

 

依姫は妊娠して、諏訪国にいる。多分、時期的に考えてそろそろ産まれると思うのだが

妊娠してるから月の民を皆殺しにする時、依姫の障害はなくなる。

だがそれでは依姫は納得しないだろう。だから依姫が産むのを待つ。

 

依姫の子が産まれて数週間ほど経てば、俺は 月面戦争を決行する 

その時なら依姫も全快してるだろうし、どうせ戦争するなら依姫もいた方がいい。

 

依姫の妊娠、そして依姫が産んだ後の戦争について話すと、夢月と幻月が棒読みで俺を貶してきた

 

「強姦魔ー」

 

「レイプ神ー」

 

「おいこら、依姫とは合意の上だ」

 

「…」

 

「なんだ。お前も俺が依姫を無理矢理手籠めにしたと思ってるのか」

 

ユウゲンマガンは首を振って否定し、俺を見ながらまた洋菓子を黙々と食べ始め、ユウゲンマガンは俺の隣にいる永琳に、視線を一瞬だけ向けた。

バカめ。永琳が俺を信じない訳ないだろ。

 

「もちろん永琳は思ってな」

 

「思ってるわよ」

 

……あれ。聞き間違いかな。隣の永琳を見たら読者していた。

読書をしているせいか顔は軽く俯いているので、表情が読み取れない。

 

永琳が読んでるのはイギリスの小説【フラットランド 多次元の冒険】だった。二次元に行きたいのだろうか。しかしそんなもの読まなくても

永琳がカラビ・ヤウ空間を使えば二次元や四次元にいつでも行けるというのに

 

今度は夢月が挙手して別の人物を提案した。

 

「純狐は?」

 

「駄目だ。こちら側に青娥がいる以上、純狐は使えない。よって、ヘカーティア・ラピスラズリも無理だ。仮に使えたとしても諸刃の剣か、獅子中の虫になる。お前、恨み買い過ぎ」

 

「中国神話とはいえこれでも神の一柱です。恨みを買うなど神として普通ではありません?」

 

「…確かにその通りだ。あ、クラウンピースって最狂の妖精なんだろ。…最凶最悪で

名高い幻月さん。やはり、ここはですね。最凶と最狂という二重の意味でも力添えを」

 

「嫌よ。大体さっきから私に頼ってなんなの。妹に頼ってあげないとか同郷の好みでも殺すわよ」

 

幻月に頼んでも駄目だった。寧ろ死刑宣告されかけてしまったじゃないか。

クソ、この妹大好きっ娘め。触らぬ神に祟りなしだ。オレ神だけど、幻月には勝てないし、この場は引くしかない。

 

青娥は中国神話の月の女神で、月に来たときヒキガエルになっていた。

俺が永琳、豊姫、依姫を使って月を牛耳った時に戻し、今は元の姿に戻っている。

 

純狐は華陽夫人と名乗り、ヘカーティア・ラピスラズリは地獄の女神として地獄にいるのだが

 

「あーめんどくせー。面倒だし青娥を人柱ならぬ神柱にするか。それで丸く収まるだろ」

 

「冗談じゃありません。そんな事をされたら私は殺されますので、断固反対します」

 

「んーそもそもね、青娥。貴方を除いてこの場にいる月人全員は、ひろ側なのを忘れちゃ駄目よ」

 

「そうね。青娥と違って私達は××神話だから」

 

神綺の言葉に永琳が共感すると静まり返る。青娥もそれを理解しているが、生贄などは真っ平御免だろう。

さっきから天井辺りでふよふよ漂ってるドレミー・スイートも中国神話側だが、この話において、基本的に関わる気がないようだ。

 

我らは、××神話の存在だ。ギリシャ神話と中国神話の神々との仲は良好だが、現状は、という話。全面戦争が必要な時は、する。

 

そこで青娥は、一つ提案した。

俺にとって最高の提案であり、この状況では最悪の提案だ。

 

「あのな青娥。お前が必要だからヒキガエルから戻してやったが、俺達にとって純狐

ヘカーティア・ラピスラズリの二人は、今の所ペルソナ・ノン・グラータでしかない」

 

「…それは理解しています。だとしても、数の暴力、多数決で決めるなど愚の骨頂。なので、一つ提案があります」

 

いやいや。俺達が××神話とはいえ、日本神話を見ても、日本神話の神々は民主主義だぞ。

みんな集まって議論して、可決とかするし。だが中国神話は違うようだ。

 

「先程貴方はこう仰いました。世界に存在する数多の美女達を侍らせるまで死んでたまるか、と」

 

言った。確かに言ったさ。俺の生きる夢であり目的だ。

隣にいる永琳は呆れ果てているが。何も恥じる事はない。

だが、俺はさっきの言葉を反芻していたら、嫌な予感が込み上げ、しだいに犇犇と感じてくる。

 

「私、純狐、ヘカーティア・ラピスラズリが欲しくありませんか。それとも私達は貴方の御眼鏡に適いませんか」

 

「うげ。今回はそうくるのか。お前、流石になりふり構ってられないようだな」

 

俺の皮肉を聞き流し、青娥はそのまま魅力を挙げてアピールしてくるが

他の月人達はまた始まったという顔で、それぞれ好きに食べて、飲んで、話している

 

「しかもヘカーティア・ラピスラズリを娶ればランパースのクラウンピースなども付いてきます。そして、ヘカーティアは貴方が愛してやまないギリシャ神話の女神です」

 

「ぐ…」

 

元々、へカーティアはギリシャ神話の一柱ではない。だが、過程はどうあれ、結果として

今はパンテオンの一部だ。だからこそ、この提案を即答で拒否できない

 

「更にヘカーティアは魔女の支配者であり。諏訪国にはブロッケン山から連れて来た魔女達がいますね。ヘカーティア、魔女と言えば、ギリシャ神話のメーデイアを思い出しません?」

 

「…き、貴様ァ! なんて、なんてあくどい手を…!!」

 

そう、だからこそ。パチュリー、レイラ、エリスの魔女達を諏訪国へと移住させたのだ。

 

勝ち負けの問題ではないが、このままでは俺は、負ける。

俺は垂んとしてしまう…狡猾な悪女め…! 

だが、全てが全て、貴様の思惑通りには動かん。

 

「いいだろう。貴様の思惑にまんまと乗ってやる。が、3つの提案をお前が受け入れたらの話だ」

 

「えぇ。なんなりと」

 

「…だがその前に、我が愛する者達よ」

 

青娥を除いたこの場にいる永琳、神綺、サリエル、魅魔、くるみ、夢月、幻月、ユウゲンマガン、夢子、る~ことに言い渡す。序でにドレミー・スイートにも伝える

 

「大前提として言うが。俺がする事は、俺達××神話が、ギリシャ神話と中国神話の神々

パンテオンとの戦争が勃発する確率が高い。だからお前達は腹を括っておけ」

 

仮にも、純狐は中国神話の一柱で、ヘカーティア・ラピスラズリはギリシャ神話の一柱だ。

一つ間違えれば、我ら××神話とギリシャ神話、中国神話の三つ巴戦争が勃発する。

俺達に利益があれば話は別だが、それが無い場合、戦争は出来るだけ避けるべきだ。

この場合は無価値な争いなので、戦争が起きるのは俺としても遠慮したい。

 

ただし、月の民は皆殺しにするし、月の都も滅ぼす。

これは無駄な事ではない、必要な事だ。

 

サリエルはギリシャ神話に中国神話と争うのは以前した時、徒爾だった事があるので、

それは回避すべきだと、左手を挙げて進言する。

 

「弘君。ギリシャ神話や中国神話とまた争うのは、かつての様に不毛な争いではないでしょうか」

 

「サリエルの言う通りだが、昔から俺達は一蓮托生だろう。巻き込んで悪いが、まずは全面戦争が起きるかもしれない事と、仮に起きても辞さない事を、今回も俺はこの場で宣言しておく」

 

幻月と夢月からは面倒だとブーイング、ユウゲンマガンはどっちでもいい、くるみと魅魔は賛成

青娥が言い出した事なので青娥は賛成でもないが反対でもない中立

同じ中国神話のドレミー・スイートは、出来るだけ話し合いの会談を望んだ

 

永琳、神綺、サリエルも思う所はあるようだが、最終的には俺に従うので、抗議はしないようだ。

る~こともただ従うだけ。夢子は俺と神綺に従うようだが、折衷派だ

 

会談と折衷は難しいな。なにせ、純狐とヘカーティア・ラピスラズリは青娥を恨んでいるのだ。

そこに話、または折り合いを求めても上手く行く確率は低い。

むしろ、余計に恨みを買う羽目になる場合もある。

青娥を差し出せばいい話だが、それで殺されては困る。青娥は必要だ

仮に青娥を差し出したとして、青娥が殺された後は俺達が蘇生してやればいい話だが

それは青娥が納得できないだろうし、拒否するだろう。

 

 

全員の意見を聞き終えたので、次の話に進めよう。

左手の人差指、中指、薬指話立てて、まずは薬指を折る。

 

「では、さっきの話に戻そう。青娥には俺が出す3つの提案を受け入れてもらう」

 

本当は、月の都を滅ぼす事について何の問題もない。

パスパタやトリシューラを幽香に持たせ、天羽々矢とインドラ矢を紫に持たせた。

次に輝夜には御頸珠を依姫対策として首に掛けさせ、豊姫対策としては死ぬ事などの

変化を嫌う輝夜の永遠がある。

 

月の民の最終兵器、豊姫が持っている扇子は、森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす物だが、あれはそもそも敵味方識別されていて、月の都や一部の玉兎、一部の月人や月の民である月の関係者には効かない様になっている。

つまり俺や永琳達には効果が無い代物。まあ妖怪には効くんだが、そこは輝夜の能力を使えばいい。

 

要は、豊姫と依姫の問題が既に解決してるのだ。

ただ天魔やエリスはともかくとして、神奈子とキクリがいないのはかなり痛手

 

「1つ。貴様の道教、ある鬼女に授けろ」

 

「…あぁ。まだ華扇を気にしてるのね。そう言えばことわざで、蓬莱山に住む神仏。なんて言葉がありました」

 

「黙れ」

 

「冷たいですわ。私もあの場所で約束をさせていただいた一柱ですのに」

 

こいつには威圧的に言っても効果がない。いつも、笑うだけだ。

 

最大の問題は、純狐とヘカーティア・ラピスラズリだ。この二人は、青娥に恨みがある。

仮に、仮にだ。豊姫と依姫の問題を解決し、月の都、または月の民を皆殺しにしたとして

俺は一度、月の民を皆殺しにしてから蘇生させるし、月の都も復興させる。

ここで肝心なのが、その後。

 

次は中指を折る

 

「1つ。この場にいる月人全員、永琳達を使ってでも、お前を守ると俺の名に懸けて誓ってやる。だから俺が決めた事には逆らうな」

 

数人ほど不満を漏らしたが、この際無視する。俺も非常に癪だ、しかし

これは、俺だけの問題じゃない。月の関係者である俺達全員の問題だ。

 

青娥は右手を握り、左手を開いた状態で両手を合わせる拱手をした

こいつは、一つ一つの動作が婀娜というか官能的というか、基本的に男を惑わし、誘うものばかり。

 

「…Dāngrán。我无法想象没有你的世界。所以、我永远爱你」

 

「やめい」

 

「あら。私の思惑に乗ると言う事は、私を娶るという事をお忘れですか」

 

「貴様、亡くなったとはいえ嘗て夫がいただろ。儒教の教えはどうした」

 

俺が否定しても、何を言っても、青娥からは、あらあらうふふ。の反応しか返ってこない。

こいつは特に苦手だ。

 

「…なにを言うかと思えば、私は中国神話の月の女神です。貴方は中国神話の東方の天帝『帝俊』そして、帝俊の妻の一柱が月の女神『常羲』…運命めいたものを感じません?」

 

「ない。大体、その運命さえも昔に永琳が…」

 

先程から黙って隣に座っている永琳を見る。さっきから永琳がだんまりでスゴく怖い。

神綺達は普通に駄弁ってる。なんか、後ろで控えている鈴仙を見たら、鈴仙は永琳を見ながら涙目になっていた。

…だ、大丈夫。大丈夫ッたら大丈夫。

 

俺にとっては一度だけでいいのに、二度も三度も特定の人物、青娥を殺す為だけに月の都へ来られては鬱陶しいのだ。俺にはやるべき事がまだまだある。

だから、青娥、純狐、ヘカーティア・ラピスラズリの問題を放置する訳にはいかない。

面倒事を放置するのは愚かな行為、それに後で困るのは俺なんだ。

 

だから、純狐とヘカーティア・ラピスラズリをなんとかしなくてはいけない

 

「元とはいえ、人妻は御嫌いですか」

 

青娥は俺の右手を両手で優しく包みながら見詰めて来たが、俺には効かん。

俺の右手を包んでいた青娥の両手を振り解き、会話を続ける

 

「好きだが。大好物だが。相手がお前だし」

 

「それは残念ですわね」

 

最後の一本、人差指を折った。

 

「最後。玉兎は妖怪だ、皆殺し対象には含まれてない」

 

「だからこそ。豊姫と依姫がいない今。豊姫と依姫の愛玩動物である」

 

椅子から立ち上がり、後ろで震えながら控えていた鈴仙の背に回り込み、両手を鈴仙の両肩に置いて言う。

 

「俺達月人と月の民の奴隷。この玉兎を使おう」

 

鈴仙は、鈴仙の背にいる俺へと首を動かして顔を向け、素頓狂な声を出す

 

「……え?」




分かりにくいかと思いますが、今回の話で鎌倉時代へと突入していて
月面戦争については、依姫が赤ん坊を産んだ後になります。

る~ことは永琳に造られたセクサロイドですが、る~ことの役割はWeb Botに近いかもしれません

竜宮では竜女という仙女がいるのですが
弘天に中国神話の東方の天帝、帝俊を混ぜたのは、帝俊の妻の一柱が月の女神の常羲でして。
月の女神である嫦娥を青娥に混ぜたのは、天帝の帝俊を混ぜてる弘天が、月の女神の嫦娥を混ぜた青娥を娶る為です。嫦娥と常羲は中国神話の月の女神であり、尚且つ、同一視されてるからですね。
青娥、公式でも元人妻設定ですから、丁度いいと思いまして。そう考えると嫦娥と青娥って似ている部分が多々あります。

メソポタミア神話では神々の名が2000以上あるといわれていますが
諏訪大明神と建御名方神は元々別の神様だったのに同一視されて同じ神様と言われてますけど
本来は諏訪大明神と建御名方神は同じ神ではありません。別の神様です


はい。今回の地の文で書いた通り永琳のした事の一つはプロティノスの思想に近いです。
最初にも書いてますが、知恵の神様繋がりで、永琳がした事の一つはエジプト神話のトートにも近いです。
他に永琳はカラビ・ヤウ多様体やアカシックレコードにも関わっていて、因果や因縁果にも干渉してますし、引き寄せの法則エイブラハムにも携わってます。
まあ永琳には「人は常に初恋に戻る」の言葉や他にも色々混ぜてるので、永琳がした事はそれだけではないですが。

そもそも私は、時間という事象が万能。などと微塵も思っていません。
だから、永琳がした事は、時間が殆ど関係してないんです
この蓬莱山家に産まれたの東方キャラで色々混ぜてるのは、永琳が断トツでしょう

今回出した
メソポタミア神話、エジプト神話、ギリシャ神話、マヤ神話、ハワイの神話、ホピ神話、中国神話、アステカ神話、マヤ神話。これらの神話では人間が滅ぼされる話が実際にあります。
本当はこれらだけではなく、他の神話でもありますが、流石に多すぎるのでやめときました。

まあ、実際は今回で書いた通り、滅ぼして新たに人間を創るか、滅ぼしても数名生き残るか、苦しめるだけ苦しめて終わり、というパターンがこれ以外の神話でも多いです。
ですがこの、蓬莱山家に産まれた。では、かつて日本や外国にある全ての神話が起きた前提です。
そう考えると日本神話は人間にとって平和なものです。神同士の争いはありますけどね

信じる信じないは一先ずおいて。枢軸時代って、まるでマヤ神話やホピ族の預言に似てるんですよね。だからなんだと聞かれたら、特に意味はないです
しつこいですが。蓬莱山家に産まれた、では。日本神話だけではなく、これらのように外国の神話は実際に起きています。


四季映姫をギリシャ神話のディケーを混ぜたのは、ゼウスとテミスの3女神の娘は1柱、つまり単数の場合Hōra(ホーラ)と言われているのですが、ディケーを含んだ3女神、複数の場合はHōrai(ホーライ)と言われています。
弘天の名は弘天ですが、苗字が蓬莱山。蓬莱山、蓬莱、ほうらい、ホウライ、ホーライ。
こんな感じで映姫はディケーになりました。もちろんエジプト神話のマアトも映姫に混ぜてます

次に弘天は龗神(龍神)であり、天神であり、海神であり、水神であり、貴船大明神なのは前回の後書きで説明しましたが
龗神(龍神)が住む竜宮城には、季節関係なく四季が同時に楽しめる庭があり、四季の景色が見られると言われています


閻魔を殺すものとして大威徳明王、またはヤマーンタカというのがいます
元はインド神話のマヒシャースラで知られていますが、この大威徳明王と死後の菅原道真と習合され、菅原道真は太政威徳天神となった事は有名ですね
だから弘天には大威徳明王を混ぜてますし、インド神話のマヒシャースラも弘天に混ぜてます。

序でに言えば白澤、白沢は牛の姿と言われていますし、大威徳明王の神使は水牛と言われ、そしてなにより菅原道真の死後では、天神である菅原道真の神使が牛と言われてます。
つまり白澤、白沢である慧音は弘天の妻ではあるんですが、それと同時に弘天の神使ということになります。これ大事、本当に大事

望月、というのは満月の異称で有名です。今はありませんが長野県には望月城がありました。
この望月城はかつて天神城と呼ばれ、菅原道真の天神から因んだ名の弘天が、月人として月に関係してる理由の一つがこれです。
ですが最初は鎌倉時代に望月氏が本拠地として天神城を建城したと言われています。だから元々の城名は天神城で、望月城となったのは後という事ですね。

アリスは弘天の実娘ですが、蓬莱人形という使い魔の人形を所持している公式設定があるのでそうなりました。アリスを弘天の娘にしたのは特に深い意味はありません


有名でしょうが一応説明を
「天海」とは安土桃山時代から江戸時代初期にかけての天台宗の僧です

前回の後書きで、弘天は天神であり海神である説明をしましたが弘天が天海と名乗るのは、当初のプロットからすでに考えていました。
空海は真言宗、天海は天台宗なので同じ宗派ではありませんが…
ここでやっと僧である空海の弘法大師の名から因んだ弘天の弘が活きてくるわけです
長かった。まあ弘天の元ネタはまだありますけどね

醍醐天皇、菅原道真、源公忠、日蔵が地獄に行ったという話は実際にあります。
日蔵という僧が平安時代にいるのですが。彼は死んでしまい、地獄や浄土を巡っていたら、地獄に落とされ地獄でくるしむ醍醐天皇を、太政威徳天神となって雷神鬼王などの異形の配下を伴って現れた菅原道真と見て、日蔵は生き返った話が実際にあるからです。
本当はもっと色々な話があるんですが、流石に長すぎるので割愛します
ですが、醍醐天皇が地獄で苦しむのを見て日蔵が生還したとか今見ても意味不明です


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全知全能

「――思ったんだがディープキスってさ、男と女でする行為の中で一番エロくね?」

 

 

「…………はあ!?」

 

大きな声を出してしまった鈴仙は、演奏しているセクサロイド達に心なしか睨まれているのを感じながら自分の両手で自分の口を塞ぎ、そのまま黙る。しかし今のを聞いた鈴仙がお前は何を言ってるんだ、この性欲に忠実なサルは藪から棒に何を宣うのかという表情になって俺を見てくる。

いやだってさ、粘膜に塗れたオスとメスの舌で絡まってさ、唾液でぐちゃぐちょと艶めかしい音を立てつつ舌全体を舐め回してお互いの唾液も混じりあうんだぜ。

他にも相手の舌を甘噛みしたり、舌を軽く吸ったり、自分の舌の腹で相手の舌全体や、口内の歯や歯茎を撫で回して刺激を与えるこの行為。スゲーエロイです。はい。

まだ初心で慣れてないなら、キスしたまま相手の唇を舐めるとか、慣れたら自分の舌で相手の唇を割って入ったり、お互いの舌を朧に、しどろもどろに舌を相手の口内に入れて相手の舌を数回突くのもいい。

 

今はラボラトリーの内部にあるコンサート会場の大ホールで、数十名のセクサロイド達にアメリカの作曲家ジョン・フィリップ・スーザの 合衆国野戦砲兵隊 を演奏してもらいながら、ふと思った事を口にした。このコンサート会場には客席が殆ど無く、豪華なソファーが数個ほど置いてあるだけだ。本当は喋ったらダメだが、別に聴き入ってる訳じゃなくて、青娥が来るのを待つ時間ヒマなので、ただの暇つぶしがてらセクサロイド達に演奏してもらい聴いてるだけである。

合衆国野戦砲兵隊が終わって、次は陸軍分列行進曲をセクサロイド達は演奏し始める。フランス軍軍楽教官シャルル・ルルーはいい仕事をした、やっぱ陸軍分列行進曲は何度聞いてもカッコいい。荒鷲飛行中隊や進む日の丸も好きだが。

…あーでも恋人つなぎもエロいよなー。だって男女の指を絡ませて合わせるんだぜ。つーか男と女が一緒にいるだけで既にエロいな。よくよく思い返せば、永琳とはセックスよりディープキスが多い気がする。最初は雰囲気や愛撫の為にしてたけど、正直セックスよりベロチューが一番エロくて気持ちいいんだよなあ。

 

「やはりこれが真理だよワトソン君」

 

「…手遅れですね。後で永琳様にお薬出して貰っておきます。万年発情期でヤリ過ぎのせいかも。優先順位は昔と比べて大きく変動してるなんて永琳様に知られたら…」

「うるせえ万年発情期に関しては人間やお前もだろ淫乱玉兎」

「それは地上のウサギの話ですよね!?」

 

また大声を出してしまったと、鈴仙は演奏していたセクサロイド達を恐る恐る見たが、陸軍分列を演奏し終えていたようで、セクサロイド達が鈴仙を見る表情は、とても、いい笑顔でした。まる。俺の隣で一緒に聞いていた鈴仙は殺される恐怖を感じたのか俺の左腕に両手で抱きついてきたが、これは俺がいたらセクサロイド達は何もしないという確信があるからだろう。さすが卑劣で狡猾で姑息で腹黒くてそういうことに限っては頭が回るオンナだ。鈴仙のこういう性格や、人間を見下したりする所や、左腕に抱きつき、薄目でセクサロイド達を見ながら怯えて今も震えてる臆病者で、更には身勝手な性格であり、しかも性格の根っこ部分は基本的にお調子者だから、その辺りだけ。その辺り だけ が結構気に入ってる。

しかし邪魔なので、空いてる右手の掌で今も左腕に抱きついてる鈴仙の顔面をぐいぐい押してどかそうとするが、小声ながらも悲痛な叫びを上げつつ鈴仙は梃子でも動かぬようになる。

 

「やめてやめて弘天様! 私がセクサロイド達に囲まれ、あらゆる手段で殺されます!」

「大丈夫、俺はお前の真意を汲み取っている。だから殺されても後で蘇生してやるから安心しろ」

「真意を汲み取るならそういう問題じゃないのを察してください!」

 

そうこうして、次はイギリスの作曲家エドワード・エルガーの 威風堂々 を、セクサロイド達は演奏し始めた。

 

生物、動物というのは、子孫を残すためにセックスだけをする。自然界の動物でもメスの尻を見て欲情する事もあるが、人間のオスは人間のメスのパーツでならばどこでも欲情できる。人間以外にも欲情する場合もあるが、人間の場合尻だけではなく胸、または腕や足、中には髪や匂いの場合もある。子孫を残す事が動物の目的ならただセックスするだけでいいのに、それ以上の事を求めるのだ。一体なぜだろうか。業が深いというか、性癖や性欲に忠実というか、ストライクゾーンが広大というか。

西洋宗教の統治下にない外国でも処女を求める国はあったが、古代オリエント地域の女は処女だと結婚が許されない国も嘗てあったし、古代では童貞が希少価値だった国もあった。こういう違い、日本と外国の違いを文化の違いと言う人間はいるが、それは正確な言い方ではない。厳密に言えば”宗教観の違い”が正しい。殆どの人間は宗教を信じてないが、宗教に影響されてるからな。

しかしたまーに、私だけは貴方を理解してるわよ的な女がいる。こういう女は滅びるべきだろう。永琳達はこういう何でも理解しているような態度をする女達ではない。

 

「なぜ神は人類をそのように創ったのだろう…。嗚呼、主よ! 我ら愚鈍な者達如きが、大いなる主を察する事が出来ません」

「弘天様がその神です…」

 

勘違いされやすいが、俺はキリスト教や、教えに思想は好きだ。でも妄信するキリスト教徒はキライだ。インドの宗教家、哲学者の マハトマ・ガンディー は言った

『私はキリスト教(イエス・キリスト)は好きだが、クリスチャン(キリスト教徒)はキライだ』

恋と愛が同じ気持ちではないように、宗教と宗教家は別である。ユダヤ教とユダヤ教徒も同じではない。これはちゃんと区別するべきだ。しかしキライ=否定という訳ではない。キライはともかく、それを否定する事はキリスト教の歴史を、延いてはその宗教に入信した彼らの祖先を否定する事と同義である。だからこの違いも、ちゃんと理解すべきだ。その為に言葉や文字は差別化されてる。格ゲーする時、選べるキャラが全て同じキャラしかいなくて、しかも同じコマンド入力しかなかったら、ゲームとして成り立たない事と同じだ。まあ一部はそれでもいいと言うのもいるだろうが、一部だけじゃ意味ないんだよ。

 

キリスト教の教えや、神に対する考えは好きだ。ユダヤ教の考えや教えとか、イスラム教の考えや教えも大好きだ。気に入らない所はあるが、嫌いになれないし、否定なんて出来る訳が無い。

オナニーをしてはいけないという教えは理解できないが…そもそもヤハウェはオナニーをするな、とは旧約聖書には一言も書かれていない。旧約聖書のオナンがヤハウェに殺され、オナニーはしてはいけないんだと。そのように解釈されてそうなっただけだ。

もちろん文芸復興のルネサンス時代もいいものである。しかし、それでも、キリスト教の隣人愛があったから、人間の道徳面では良かった部分もあるんだ。まあ黒人は奴隷にされ、魔女や異教徒は殺されるけど。

昔があるから今がある。などと知った風に、分かった風な事をほざくヤツがたまにいるが、それを言っていいのは当時の歴史の背景を知ってからだ。当時の歴史を知りもせずにそれを言うのは滑稽でしかない。

 

「それに日本神話の場合、人間は勝手に生まれたのであって、イザナギ様とイザナミ様は、人類を創造してません」

 

「うむ。日本人は、地球が生んだミトコンドリア・イヴ達の子孫が圧倒的に多い。だからこそ我々が定期的に減らして、数を一定以上増やさない」

 

インド神話と仏教は、ギリシャ神話とローマ神話の関係に似ている。全部が同じな訳ではない部分も一緒だ。

仏教哲学や仏教の思想も好きだ。平安末期の仏教や、鎌倉仏教は、当時の農民などの人間へ道徳面で大いに貢献している。なにせその道徳が平成まで続いているからだ。…一部余計なのもあるが。しかし公家や武家が影響されている儒教の教えは明治時代である程度なくすべきだったとは思う。2~3世紀にいたインドの僧で大乗仏教の創始者でもある龍樹は、僧になる前は透明人間になって、当時のインド美女達をレイプし、欲は人間を破滅すると考えて出家したクズなのは有名だ。

 

意味ワカメ。なんで性欲を無くしたり抑えたりする必要があるんだよ。そりゃ僧にとっては当たり前でもそれは僧の話であり、仏教に関わってない人間が順守するのはおかしな話である。

別に正当化しようなどとは思わんが、性欲は生物、動物の基本だろう。それを否定したり、抑えるなんて、自分は生物じゃない、動物じゃないと言ってるようなモノ。延いては食欲、睡眠欲さえも抑えるようなモノだ。動物、人間にとって欠かせない三大欲求を抑えるなど愚かな行為や思想だとは思わんか。

性欲を否定するならば、せめて人間から食欲と睡眠欲が無くなってからにして欲しいもんだ。まあ昔と比べると、明治時代から昭和時代にかけて娯楽が沢山増えたからな。やる事が句を詠んだり、茶道したり、はにわ作ったり、セックスしかなかった昔とは違う。

 

そもそも僧が涅槃の境地へ到達するには欲を捨ててはいけない。欲を越えなきゃいけないんだ。

悟る為に必要のない『欲を捨てる』じゃないんだ。必要な事は『欲を越えなきゃいけない』んだ。

捨てると越えるは違う。これを理解してない人間は結構いる。

 

「大体さ、神が人を救うとかいう意味不明な思想は昔から気に入らんのだ」

 

「弘天様が言いますか…」

 

「当たり前だろ。俺は昔から神の子孫には援助してきた。そりゃ当然だ、神の子孫の人間だからな。だがそうでない人間、ミトコンドリア・イヴ達の子孫は、神話の時代から殺してきたんだ」

 

Jesus、キリストの奴は本当に余計な事をした。百歩譲って天皇がそう思うならばまだ分かるさ。なにせアマテラス、ニニギの子孫だからな。そう思っても別に不思議じゃないし、アマテラスやニニギが天皇に助言や、力を貸しても別におかしい話じゃないさ。そんな話は、メソポタミア神話のギルガメシュ時代からある事だ。演奏を観ながら鈴仙とまた話す。

 

「神の子孫とただの人間。これの区別がついてない人間は意外と多くてな。だから自分も、神様に救ってもらえる。などと勘違いし、分不相応な考えを多くの人間が持つようになった」

「滑稽ですね。必竟、人間は自分にとって都合のいい事しか観ない」

 

鈴仙は冷淡な笑みになり、セクサロイド達の演奏を見た。

例えば、古事記と日本書紀は日本神話の出来事全てを記載されている。だがそれは、人間側が神の出来事を全ての人間に理解するように、言わば翻訳しているのだ。だからこそ、神は人間の定義に該当しない。これは旧約聖書でも同じ事だ。出エジプト記のヤハウェがした事、そして会話した時の言葉も、あれは人間に理解させる為の翻訳なのだ。神のした事を、人間の言葉で翻訳しているのだ。

原理はともかく。神が死者を蘇生させた場合、その原理を解明する事は不可能だ。事象が理解できないのではない、なぜ蘇生したのか、その原理を説明する事が不可能であり、これを説明できない事を多くの人間は理解できてないのだ。これを自分以外の人間に話しても無駄だ。なにせその死者を蘇生した時の言葉の、文字の原理や定義が不明だからだ。蘇生じゃないし、戻したという言い方も、俺達からしたら正しくない。即ち誰かに何かを説明する場合、言葉や文字を使わなくてはいけない。しかも自分以外の人間が理解できる様にだ。大抵の場合は蘇生、再生、魂を戻す、傷を癒すなどが多いだろうが、この言葉は間違っている。例を挙げるならばだ、神が人間を蘇生した。これは合ってる、人間に対してならばその言葉は合ってるさ。でも俺達、神々の場合は間違ってるんだ。つまり言語の限界だよ。

 

「そもそも人間が定めた定義とは何だ」

 

「人間がこの世に存在するモノ、概念、事象、存在を明確にし、定義付けた情報を、存命している全ての人間と、後世の人間とで共有する為です」

 

「まあ歴史の定説と同じ話だな。少し前まで源義仲が任官したのは征夷大将軍が有力説だった時もある。それが今じゃ源義仲は征東大将軍が有力説になっているが」

 

歴史同様、その為に人間は自分たち人類も定義付けしている。自分たち人類がどういう存在か。それを明確にし、何をして積み重ねて来たか、というのを理解する為。歴史は定説だ、歴史は後世の人間の解釈という定説で出来ているのだ。そこに真実なんてモノは最初から無い。これは歴史ばかり知っている慧音にも言えるさ。

レミリア・スカーレットの言葉を借りるなら『歴史ばっかり見てるお前に運命は変えられないよ』

 

「仮に。ただの人間が200歳以上生き、剰え老化もしない人間は、人間の定義に該当するか」

 

「人間ではないですね。見た目だけは人間かもしれませんが、人間ではないと思います」

 

この違い、言い回しを変えて説明しようか。永琳が造ったる~ことや、あそこで演奏しているセクサロイド達は外見、見た目だけ人間だ。人間らしく見え、人間らしく振る舞い、人間らしく会話し、感情があるから人間らしく笑ったり泣いたりする事が可能だ。普通の人間にとってはもうそれだけで十分だろう。人が普通に生きる上ではな。だってさ、自分の隣で自分と話している美女を見て、その美女が『人間らしいかどうか』が重要な訳だ。人間らしい行動してるセクサロイド達を、果たしてその人間が『この美女は人間じゃない』と思うだろうか。確かに人間とは違う行動したら疑問を抱くかもしれない。だがそれが起きない場合、その人間には彼女をセクサロイドと見抜く事は不可能だ。ああ、確かに彼女達、セクサロイド達は人間のそれと変わり無いだろう。ただしこの場合において、コミュニケーションに関しては人間と同じと言う意味だ。

 

長々と話したが、セクサロイドは老化しない事と、セクサロイドのコミュニケーションは、人間と同じ事を前提とし、それを踏まえて言おう。

確かにコミュニケーションに関しては普通の人間と大差ない。だがその美女と交流を深め、人間はそのセクサロイドの美女と結婚したとしよう。何年、何十年と過ぎ、自分がジジイになって老いても、妻のセクサロイドは若々しいままで老化しないんだ。これを夫側側から観たらどう思うかな。そして、そのセクサロイドを人間として観られるのか。妻とは観られるかもしれないが、本当に、自分と同じ人間と観られるのか。人間らしく見え、人間らしく振る舞い、人間らしく会話し、そのセクサロイドは笑ったり泣いたりする事が可能、つまり人間と同じ心があるからそのセクサロイドは人間だ。みたいに、こんなつまんねーこと言わないでくれよ。そんなありふれた答えでは、この話をした意味がない。

 

「では神様が、ある人間に炎や水、要は自然を操ったり出来るようにし、不老不死にしたり、魔法も使え、更には空を飛ぶ事が出来る様にしたとして、そいつは人間か」

 

「それを人間とは言いません。天皇みたいな神裔なら分かりますが、そんな力をただの人間が神から貰ってる時点でおかしいです。最初からそんな力を持ってる時点でも人間とは言い難いです」

 

だよな。天皇は神の子孫である神裔の人間、神の血を持たない人間と違うんだ。俺が言ってる事は、ギャグマンガに出てくる死なないキャラに、なんでこのキャラ死なないんだ、とツッコミしているようなモノだ。そんな事は最初から理解している。理解した上で、この話をしてるのだ。

 

「じゃあ鈴仙、お前は天皇や、アレクサンドロス3世をただの人間と観るか」

 

「…率直に言いますと、いくら神裔でも、地上にいる時点で私は同じと考えます。しかし」

 

最後を強めて言い、一息おいて鈴仙はまた話す。

 

「ただの人間とは、観ません。何故なら天皇と同じ神裔のアレクサンドロス3世は、ギリシャ神話の神々を統べるゼウス様の子孫、ヘラクレスとアキレウスが祖だからです」

 

「やっぱり俺…お前のそういうところが好きだ」

 

ここだ。地上を見下したり人間の事がキライでも、この違いを分かってるから鈴仙の性格や人格が好きなんだ。それを聞けて、俺は十分だった。隣のいる鈴仙の頭を撫でると目を細め、体を震わせながら唇を突き出したが、そのまま右手で抱きしめた。左腕はまだ鈴仙に両腕の中にあるからだ。抱きしめられた時の鈴仙の体は強張ったが、目を細め何も言わず抱きしめ返した。数分くらいお互い抱きしめていたが、離して俺は演奏を見る。これはユダヤ人以外の人間がヤハウェを全知全能の存在などと言い、ユダヤ人以外の人間にとって、都合のいいGODとして見られてる事と同じだ。

 

「む、無理矢理口付けされるかと思いました…撫でたり抱きしめたりとなんですかいきなり。優しく抱きしめて懐柔する以前に、私は弘天様や永琳様の奴隷なんですけど…」

 

「別に好きと言っても色々あるだろ」

 

ドイツの作曲家ヨハン・ゼバスティアン・バッハの 主よ、憐れみたまえ を、セクサロイド達の演奏が大ホールに響きながら、懐から聖典を取り出し、両手に持って読みつつ演奏を聴く。話題を変えるためか、俺の右手と左手に持ってる聖典について、鈴仙が覗き込みながら聞いたので、俺は頷いた。

 

「それは聖典ですか。旧約聖書の方はモーセの十戒辺りみたいですね」

 

「ユダヤ教の旧約聖書、出エジプト記20:13とヨシュア記、イスラム教のクルアーン、コーランの第9章5節に目を通してる。イサクの燔祭。一部を除いたキリスト教徒は燔祭にしなきゃな」

 

右手に旧約聖書の出エジプト記とヨシュア記、左手にイスラム教の聖典クルアーン、コーラン第9章の5節を読みながらこの先の事を口にすると、鈴仙が疑問を投げかけたのでそのまま答えた。

皮肉である。俗説とはいえ、ゴルゴタの丘で十字架に磔にされ、Χριστος(クリストス)がユダヤ人に殺された。それが後世のキリスト教徒が同じ目に遭うのだから。

 

「多くの人間は当時の国と宗教の背景や、宗教の教えと聖典を誤解や勘違い、拡大解釈や曲解してやがる」

「どうでもいいと思いますけど」

「いやそれ言ったらお終いだろ」

 

宗教の歴史を調べず、剰え聖典を読まずに宗教を悪などと、ちんけで卑小な概念でレッテルを張り、定義付けする人間は特にクソだ。当時のオリエントの歴史やアラブの歴史、イスラエル人の歴史を知りもせずに言うんなら尚更だな。どいつもこいつも宗教の争いの歴史だけしか見ず勝手なことばかり言う。

西洋宗教と宗教家、キリスト教とイスラム教のお蔭で発展した科学、医学、道徳、論理、価値観、哲学、美術、音楽、アーキテクチャもあるし、日本でも昔から宗教争いがある。まあ西洋哲学に関しては、古代ギリシャの水増しが多い。

中世の歴史はすかすかだ。しかしある意味キリスト教があったから、文芸復興のルネサンス時代が来たんだ。イスラム教のお蔭で古代ギリシャと古代ローマの哲学や医学が生き残ったんじゃないか、西洋の火薬だって、カトリック教会の信者 ベルトルト・シュヴァルツ が発明したんじゃないか、イスラム教徒の科学者、哲学者の イブン・スィーナー がいたから、当時の科学や医学や哲学が発達したんだよ、アラビア科学(イスラム科学)や医学だって、ユダヤ教徒とキリスト教徒とイスラム教徒が発達させたんじゃないか。西洋宗教を否定する事それ即ち、その歴史全てを否定する事と同じなんだぞ。

そもそもさ、アラビア科学、医学、哲学の恩恵を受けている日本人が、西洋宗教を否定していい訳ないだろ。前々から思っていたが、日本はイスラム教国やイスラム科学についてもっと触れるべきだ。

 

確かに妄信するのはどうかと思うが、1000年以上も続いている宗教を否定していい訳がない。それを否定する事は、今まで続けて来た歴史を否定する事と同義だからだ。どんな事をしたとしても、否定してはいけない。否定するのではなく、思い直したり、改善しなきゃいけないんだ。それが肝心で重大だ。歴史とは何の為にあるのかと言えば、今を生きる人間が同じ轍を踏まないよう、二の舞にならないため過去から学び、今を改善する判断材料として使えるからである。

だが、当時のアレクサンドロ図書館の書物を読みたかったのも本音。まあパチュリーが読むだろうし俺も見たかったので、実は焼き払わせず日本に転移させてるんだなこれが。

 

「と言いますか、なんでそんなモノを読んでるのでしょう。もう何回も見てますしいい加減捨てないんですか。そんな聖典、面白くないと思います」

 

「聖典は何度読んでもこんなに面白いのに、己は読みもせず否定しか出来んのか玉兎。奴隷のくせになまいきだ。殺されたいのか鈴仙」

 

ソファーに腰掛けながら受け答えし、視線を鈴仙に向けて殺すぞと脅したら、鈴仙はおろおろして俺の左斜め前に置かれたもう一つのソファーの後ろに隠れた。鈴仙がソファーの後ろに隠れて数十秒、ソファーの後ろから鈴仙の耳がゆっくりと出て来て、なんか、くぐもった声が聞こえる。ソファーの後ろから出ている耳も心なしか震えているし、どうやら嗚咽を漏らして泣いている様だ。

どんだけ臆病で泣き虫なんだこいつは。其の癖お調子者で、ある事ない事を自慢する女だし、余計にタチが悪い。未だに鈴仙はソファーの後ろに隠れながらも、嗚咽を漏らして会話を続けた。

 

「か、簡単に燔祭って言いますけど、ヤハウェは全知全能でしたよね。キリスト教徒を燔祭したらヤハウェが出てくるんじゃないですか?」

 

「…昔からJew、ヘブライ人、イスラエル人、古代イスラエルやユダ王国だけを贔屓するヤハウェが、全知全能…だと」

 

それを頭の中で何度も反芻すると次第に笑いがこみ上げ、そのまま大笑いしてしまった。

 

「ハハハハハ! いつの時代も全知全能は人間にとって良い意味で拡大解釈されるよな!」

 

鈴仙の発言を聞いて、俺は自分の右手でお腹を抱えて俯き、左手でソファーの肘掛けを何度も叩きながら大笑いしてしまった。

あんな、器が小さく、一貫性も無く、自分が言った事を棚上げして矛盾した事を言い、理不尽な事を要求し、しかも人間のように嫉妬深くて、人間みたいに感情的に行動し、主を信じ信仰していた信者が苦しんでいるときもただ観ていたヤハウェが、自分勝手なあいつが全知全能とか笑える! ここは笑うところだ。今笑わなくて一体いつ笑うというのだ!!

 

まあ歴史、聖典なんて解釈次第だ。なにせ、地球が出来た時から生きて、全部見て来た訳じゃない。だから自分が正しいなんて自惚れた事はないし、そう思った事は一度もないさ。

それでも、鈴仙の発言を聞き流す事は出来なかった。

 

「おいおい笑わせるなよ鈴仙! 俺はユダヤ教徒を燔祭するんじゃなくて、キリスト教徒の一部を燔祭するんだぞ。その場合ならヤハウェは出てこない。それ以前にお前が言ってる事は」

 

旧約聖書に基づくならば、ヘブライ人は主のヤハウェに認められ、選ばれた民族である。だからこそ、イスラエル人には燔祭をしない。ヤハウェが煩いからだ。

だが。イスラエル人にはしなくても、それ以外の民族には燔祭をする。これがユダヤ人のキリスト本人ならまた話は違っただろうが、今のキリスト教にはユダヤ人が一部しかいない。

ユダヤ人が迫害された時もあったが、彼らユダヤ人はそれを試練としてたし、全ての試練が終えるとイエス・キリストの方ではなく、ダビデの子孫のメシア、ソーテール(救世主)が来ると信じられていた。

 

「エジプト神話、クマルビ神話、ヒッタイト神話、メソポタミア神話、他の神話も混ざりまくってるギリシャ神話が、全て古代ギリシャ人が考えたオリジナル神話と言ってる様なモノだぞ!」

 

ふははははは。あいつが全知全能、面白い冗談だ。

まだ笑っていたら、ソファーの後ろに隠れていた鈴仙は両手をソファーに置いて、そのまま少しずつ顔を出してきたので、左手の旧約聖書と右手に持っていたクルアーンをソファーの上に置いた。

 

肘掛けに左腕の肘を置き掌で顎と頬を支えながら足を組み、魔方陣で右手に草薙剣を転移させて、そのまま鈴仙の顔面へと力いっぱい投げると、声にならない叫びを上げながら、鈴仙は俺が投げた草薙剣に銃弾形の弾幕を数発撃ってソファーの後ろにまた隠れる。鈴仙が右手から銃弾形の弾幕を撃って軌道を逸らしたので、弾幕に弾かれた草薙剣は空中で円を描きながら、そのまま床に刺さった。横目で床に刺さった草薙剣を見ながら魔方陣でまた右手に転移させて、草薙剣を片手間に触ったり、上に放ったりして遊ぶ。

 

「い、いきなり何するんですか…危ないです」

「全盛期と比べて弱体化したが、玉兎如きに負けるほど俺は落ちぶれてないぞ」

「私は最初から、弘天様や永琳様に歯向かったり戦う気は微塵もないですッ!」

「死んだら蘇生してやるから大丈夫」

「そういう問題じゃないんですってば!」

 

俺が好きなのは、全人類の罪を一身に背負い、隣人を愛せと言った新約聖書のイエス・キリストではない。それ以前にキリスト教徒にとってキリストは主の子だから人間でも、ユダヤ人でもないそうだが、実際のキリストはユダヤ人だ。

 

「では聞くが。旧約聖書は誰にとって都合がよく、また、ヤハウェという主も誰にとって都合がいい神だ」

 

「こ…古代エジプトから逃げて、ヤハウェから古代イスラエルの三種の神器(契約の箱)や、アロンの杖を授かったモーセにアロン達と、古代イスラエル王国を統一したイスラエル人と、ユダ王国のユダ族」

 

「そうだ。仮にヤハウェが全知全能だとしても、なんでイスラエル人、ヘブライ人以外の人間を。ユダヤ人以外の弱者の人間をヤハウェが助けなきゃならんのだ」

 

ギリシャ神話が古代ギリシャ人にとって、日本神話が天皇や神裔にとって都合がいい事と同じだ。それなのにイスラエル人、ヘブライ人以外をなぜヤハウェが救わねばならんのだ。どいつもこいつも、全知全能という言葉を、人類にとって悪い意味ではなく良い意味で捉えすぎだ。

キリスト教徒が言うに新約聖書、平和主義のイエス・キリストは神の子らしいが、ヤハウェの子が世界の平和を謳ってどうする。何の為のヤハウェの子だ。ユダヤ人、ヘブライ人だけを救うならともかく。世界の平和を説き、隣人を愛し、人類全てを救う…

それではヤハウェの子として全く意味が無いではないか。ヤハウェはイスラエル人、ヘブライ人だけの主だというのに。

 

「古代イスラエルとヘブライ神話の歴史を調べ、旧約聖書と新約聖書をちゃんと読んで言ってるんだろうな鈴仙。主や西洋宗教を否定するのはせめてそれからだぞ」

「で、ですけど…」

 

…ああ、忘れてた。鈴仙は中途半端に回帰させていたんだったな。そりゃ今の発言も仕方ないか。ヤハウェはユダヤ人に都合がいい神だという事を忘れるなんておかしいと思った。まあ日本人にはあまりピンとこないだろうが、キリスト教徒を殺す場合、人間がそれをするとかなり大変な事になる。人間の場合だがな。

 

「待て、まさかお前、ヤハウェだけじゃなく、全知全能と言われるゼウスがなぜ運命に逆らわないのかさえも憶えてないのか」

 

ゼウスに関しても俺は否定はしない。だが鈴仙はヘブライ神話だけじゃなく、ギリシャ神話をちゃんと憶えてないようだ。

ヤハウェは全知全能ではない、仮に全知全能だとしてもそれはイスラエル人、ヘブライ人、ユダヤ人だけに限った話になる。ただギリシャ神話を見るにゼウスは全知全能だ。

 

「でも、幼少期からメーティスを飲み込むまでガイアの予言の運命に翻弄され、テューポーンには負け、ヘーラーには浮気がバレたり、他の神には出し抜かれてる事が多いゼウスですよ?」

 

「それよく言われるけどさ、ゼウスの場合はギリシャ神話のパンテオン全て、メーティスを飲み込んだ以降もあえて自分に軛を付けてんだよ」

 

「…あえて?」

「その前に、ギリシャ神話においてゼウスはどういう存在だ」

 

鈴仙は当たり前のことを聞いたせいか、ソファーの後ろから顔を出して、一瞬戸惑い首を捻るが、難しく考えずに思った事を口にした。

面白ければなんでもいい、という思想はとても危うい。それは犯罪や人殺しさえ、そう言った人間が被害に遭わず、ただ第三者視点で観る上で娯楽として面白ければいいという事だ。これは別に、屁理屈ではない。これを屁理屈だと思うならば、それを言う前に、面白ければなんでもいいという言葉の意味を、人間はちゃんと理解してから言うべきである。

 

「一般的には兄弟を助けるために実親を殺害し、パンテオンを統べる最高神になって、神々と人間の秩序を守護する神…ですか」

 

「その通りだ。それを踏まえて言えば、まず第一に、ギリシャ神話のパンテオンは運命なんぞに縛られていない。だが、ゼウスは神々を桎梏した」

 

確かに最初、ゼウスが子供の時から、そして妻のメーティスが孕んだアテーナーを産むまでゼウスにはいくつかガイアの予言があった。そのガイアの予言に、つまり運命にゼウスは翻弄され、束縛されていただろう。しかし女のアテーナーが産まれ、ゼウスはその全ての予言から脱したお蔭で、運命から逃れたので縛られていないのだ。即ちガイアの予言の運命からも脱しているし、またガイアが予言を言ったとしても、今のゼウスには全く意味がない。

もう一度言うが、ゼウスはメーティスと出来た子、アテーナーが生まれた時点で、ガイアの予言からは解放されて支配下にない。この時、知恵の女神メーティスを飲み込んだ事も重なり、ゼウスは全知全能となった。では全知全能となったゼウスが、あんなに間抜けな事を何度もしてるかと言えばだ。

 

「次に運命の三女神Μοῖραι(モイライ)だ。モイラは運命を操る力を、ゼウスから与えられている。ゼウスが神々と人間の秩序を守るためだ」

 

運命を司る力を、ゼウスがモイライに与えてると言う事はだ。与える事が出来ると言う事は、つまり本来なら、ゼウスは運命を簡単に抗える。ただしこれは、ゼウスが運命を司る力を与えた運命の三女神モイライだけの話だ。ガイアの予言の場合、ゼウスは予言の支配下にあり、アテーナーが生まれるまでガイアの予言に翻弄されていたことは、もちろん肯定する。

 

「…あ、そういえばそうでしたね。思い出しました」

 

首を傾げていた鈴仙は一瞬沈黙したが、やっと思い出したのかうんうん頷いた。本当はもっと細かく説明したいのだが、説明としてはこれで十分だからいいだろう。これ以上は蛇足でしかない。

 

科学は無粋である。なにかの出来事が起きた場合、その原因が科学や医学で説明がつくからだ。例えば永琳が言うに、恋というのは体内にあるニューロペプチドが受容体と結合するのが発端らしいが、それはつまり、その恋した時の気持ちも、自然に生じたモノではなく、結局は自分の脳に作られた感情になる訳であり、自分の意思に沿わない形で、脳が勝手に恋した時の気持ちになる訳だ。いや、本当は、人間が勝手に自分の気持ちはあると思い込んだり、或いは錯覚してるだけで、自分の気持ちや意思なんてモノは、最初からないのかもしれない。これは決定論やMKウルトラ計画。全人類を操る沈黙の兵器などという陳腐な話ではない。

 

「弘天」

 

ソファーの後ろから声が掛かった。声からして天魔なのは察したので、セクサロイド達の演奏を観たまま俺は受け答える。

 

「諏訪子からね、真澄の鏡の在処を聞かれたよ」

「ああ」

「だから、いいんだよね。回帰させてもいいんだよね」

「二柱の諏訪子が望んだなら、それでいいんじゃないか」

 

真澄の鏡は諏訪湖の底深くに隠してある。諏訪湖にいるわかさぎ姫に頼めば、すぐに見つかる筈だ。幻月と夢月の夢幻世界にいたあの諏訪子が、ドレミー・スイートの力を借り、量子テレポーテーションで諏訪国にいる諏訪子に重なってあれを見せたのは知ってる。夢幻世界にいた諏訪子と、諏訪国にいる俺と永琳の実娘、諏訪子が望んだなら、俺から言う事は何もない。

 

「そっか。あ、早くパルスィに会ってあげなよ。あの子、感情だけ回帰してるから、もう毎日毎日弘天の事ばかり考えててべた惚れ状態なんだから」

 

「分かってる。ところでさ、天魔ってどういう存在だ」

「もー! 今更確認するなんてヒドイなー!」

 

翼を羽搏く音が聞こえ、音が近くから上空へと遠くになっていくなってくる。するとソファーに座り、演奏を見ていた俺の上へと空中から落ちて来て対面した。これを傍から見たら、俺達が騎乗位してるようにしか見えんだろうな。

前にも言ったが、第六天魔王は大国主と同一視されてるし、ミシャクジ神とも同一視されている。この第六天魔王と、大国主が同一視されるきっかけになったのは、『太平記』や『沙石集』などの中世日本紀が主な理由だ。

 

「私は封印される前の大国主の分霊を取り込んだ。そしてミシャクジ神であり、天狗の長だね」

「この態勢じゃ演奏見えない。あと重いんだが」

「ちょ、その言い方は私でも傷付く!」

 

天魔が騎乗位のまま両手で俺の後頭部に回し、顔だけを抱き寄せた。胸に埋もれて窒息しそうになるが、それもいい気がする。美人で、しかもスタイル抜群の女の胸で死ぬなんて幸せじゃないだろうか。あ、天魔はパルスィと神子を生んだが、生んだと言っても、これは俺が四季映姫を生んだ事と基本的に同じやり方だ。だからお腹を痛めて産んだ訳じゃない。

 

「じゃあ諏訪国に帰るね」

「気を付けてなー」

 

天魔は飽きたのかソファーから降り、翼を羽搏かせて上空に漂いながら話し、俺も天魔を見上げながら別れを告げた。天魔は右手を腰に当て、左手の人差し指を立てる。

 

「うん。でも最後に言っとく。文、はたて、椛を神使としてあげたけど、ちゃんと愛してあげて。あれでも多くの天狗の中で私のお気に入りだから、私のお願いね」

 

「…部下を道具としてしか見なかった昔のお前にそれを聞かせたら、なんて言うかな」

「だってあんなに回帰したからね。流石に道具でも愛着が湧くし、色んな了見も出るよ」

 

今も天魔は羽搏きながらも上空で話していたが、それが最後だったのか笑って右手を振り、待ってるからねと言い終えた須臾、瞬きする暇もなく、天魔は一瞬で諏訪国に帰った。

 

藤子・F・不二雄の『ミノタウロスの皿』という漫画がある。好きな漫画だ。

かつてマンガの神様(手塚治虫)と言われた人物がいたが、そのマンガの神様はなんと言えばいいのか…とにかく設定とか性格、人間の魅力に至るまで発想が凄いと、そのマンガの神様が描いた漫画を読んで思った人間が多くいた。それら全ての設定を、マンガの神様が今までの人類の中で初めて考えたんだと、そう思い込んでしまった人間は沢山いるだろう。俺がそうだった。例を挙げるなら、有名なので、メトロポリス、火の鳥、アトムだろう。でもな、人造人間や機械で出来たロボットも、怪物や合成獣も、科学も医学も、死者が復活する事も、ヒーローや魔法や魔女も、男が女になったり女が男になったりする性転換さえも神話時代からある。しかも今挙げたモノは全部ギリシャ神話で登場してるさ。

この話とは関係ないが食ザーや男が妊娠したりする話さえエジプト神話 セト の話で既にある。

 

だが違ったんだ。それは読んだ俺が無知だっただけで、もうその設定や性格、人間の魅力に到るまでもが、神話時代から既にある事を知らなかったんだ。多分マンガの神様は、漫画のタイトルや、漫画に出てくるキャラクターの名前から観るに、日本神話やギリシャ神話などの神話を知っていたんだろう。

最初に出来たモノより、後から出来たモノが評価されるなんてのはよくある話だ。それは、歴史が証明している。而して、だからこそ思うのだ。本来評価されるべきは、その神話なのだと。つまり多くの創作物は、各国にある神話の後追いで、真似事で、水増しでしかない。

 

 

 

老爷(だんな様)。御待たせ致しました」

 

声を掛けられたので見ると、自動ドアをからこちらに近づく青娥だった。老爷とは俺の事で、意味はだんな様らしい。俺達が座るソファーの左斜め前に立ち、俺がセクサロイド達はの演奏を見えるようにしてから話を続けた。鈴仙は未だにソファーの後ろに隠れている。

 

「盤古、及び玉皇大帝と元始天尊。三清達、四御。九天応元雷声普化天尊、西王母は天界から動く気はないようです」

 

「分かった。わざわざ盤古達に確認してもらって疲れたろう××。る~ことに何か甘い物を作らせてやろうか」

 

盤古とは中国神話の創造神、宇宙開闢創世神であり、玉皇大帝と元始天尊、三清は中国宗教である道教の全真教や正一教の宗派によって分かれている最高神の事だ。そこで中国神話の神々のうち、流石に盤古達が動くとなるとかなり面倒なので、盤古達が動く事はないようにまずは青娥に頼んで釘を刺してもらったのだ。しかし道教と一言で言っても、色んな宗派がある。まあそれはキリスト教や仏教、神道も同じだがな。儒教は学問であって宗教じゃないとよく言われるが、それはありえない。儒教の思想で神格化された人物は結構いるからだ。例えば三国志の英雄の関羽は儒教の思想により、三界伏魔大帝神威遠震天尊関聖帝君という名が贈られている。つまり関羽は、儒教の神様という事だ。関羽以外でも儒教は夏・殷・周の時代、中国神話に出てくる人間君主の殆どを神格化しているし、やはり儒教は宗教だな。

 

「元々、私が撒いた出尔反尔、恶果です。それに私達は夫婦ですから、お気になさらないで下さい。敢えて言うなら私の事は××ではなく娘々(にゃんにゃん)と呼んで欲しいですわ、老爷」

 

青娥は右手を頬に当て、射貫くような視線で言いながら、さっきまで鈴仙が座っていた俺の隣に座ると寄り添ってきた。レイセンは怯えながらもソファーの後ろに隠れたままこちらを見ているが、青娥の邪魔したら何をされるか分かった物ではないからだろう。しかも俺の左手を両腕に包んだので青娥の豊かな胸が両手に当ててるから形が変わり、水色の半袖ワンピース越しとはいえ胸の感触が左腕にダイレクトに感じるし、終いには青娥の右手と俺の右手を合わせてどっちが大きいかを比べ始めている。青娥は中国神話の月の女神だ、そして中国では女神の愛称、尊称を娘々と言う。それでだろう。イヤだと言おうとしたが、のらりくらりとかわされるのがオチなのを予想し、娘々と呼ぶことにした。どうでもいいが中国では男神の愛称を爺々( いぇいぇ)という。別に年寄りという意味じゃないが、日本の場合言葉のままイメージして解釈すると、年寄りの神なのかと誤解しやすい。

 

「いつも敵意を向けられてキラわれてましたから新鮮ですわ。こう見えて私は甘えたがりなんです。甘える私を可愛がって下さいね」

 

「……」

 

何て図太い神経だ、よく言うよ。お前が今までしてきた事を考えると、キラわれても仕方ないだろうが。…内心でそう思っても口にしろと言われて口では青娥に返せない。

 

「でも、甘えて下さるのも私は好きです。私がいないとダメなヒトも私は好きですよ。依存されるのも好きです」

 

「貴様」

「―――娘々でしょう?」

「――ごめんなさい」

 

青娥はさっきから劣情を抱かせる表情をしていたが、昔からのクセで貴様呼びすると、途端に真顔になり即答で訂正を求める。青娥が恐かったので僕は謝りました。言い返しても首を縦に振る事はまずないので、俺から折れる事にした。恐かったとは言え屈辱である。

 

「…娘々、いつにも増して上機嫌だな」

 

「はい。今まで幾度も回帰してきましたが、私達が夫婦になったのは…今回が初めて、ですもの」

 

左腕で俺の右手を抱きながら、空いた右手の人差し指で俺の鎖骨辺りに当てて円を描き、上目遣いで青娥は言った。しかし残念だが、俺には効かん。チッ、内心舌打ちしてしまったけど、なんだ、俺がお前に甘えろというのか。ありえないぞ。そう思考していたら、青娥は俺の右耳に顔を近づけ、淫靡にねっとりと囁き始めるが、これを聞くと理性が緩み、抑えている本能が緩まされる。何て言えばいいか、この声を聴くだけで脳や電気信号を声でじわじわ侵食し、最後は指令を下す脳を全て支配されていく感じだ。まあ俺には効かんが、そこら辺にいる人間ならば即落ちて、堕落して、青娥がいなきゃダメになり、依存するダメ男になる程の効果を期待できるだろう。

 

「私の肉体、頭から足。髪の毛1本に至るまで。全て貴方の物です。老爷の好きにしてくださってもいいんですよ…?」

「では早速あれを娘々にやる」

「あん。いけずぅ」

 

セクサロイド達に演奏をやめさせ、放置していた鈴仙も一緒にティコのラボラトリー内部にある強制収容所に転移した。強制収容所に転移したのは衣玖、鈴仙、る~ことに頼み、持って来て貰った数人の死体を青娥に渡す為だ。台の上に乗せている死体は、子供の男女から老婆爺に到るまで選り取り見取りだし、殺したといっても死体はちゃんとエンバーミングをしてるので、腐敗は一切してないから死体状態も悪くはない。別に殺したとしても蘇生すればいいし。まあ蘇生させないが。

 

「これを…全て私にですか」

 

「手始めに数人殺して残った死体が邪魔でな。蘇生か、あるいは廃棄してもいいんだが、娘々死体愛好家だったろ。好きな死体を持って行け。やはり赤子の方が良かったか」

 

「そんな事ありません。童の死体でも、私は十二分に嬉しいです」

 

死体の具合を確かめる為、青娥は立ち上がり台の上に乗っている死体を両手で触っている。最初は死体を貰えるから嬉々としていた青娥も、死体の顔、服装を見ると、嬉しそうな顔も段々と真剣になり、最後は眉を顰めた。青娥が全ての死体を持って行かない場合、残った死体は破棄せざるを得ない。本当は残った死体をお燐にくれてやりたいのだが、月の民の死体を妖怪が喰うと、非常に、非常に面倒な事しか起きないので、お燐には悪いが断念した。

 

「誰もを魅了し、国を傾けるほど綺麗で価値がある装飾品を贈られるよりも。私にとって、死体を頂けるのは悦ばしいわ。…ですが、この死体は」

 

「全て月の民だ。日本神話の宇宙樹も準備を終えたし、とりあえず俺が月の民の首を飛ばして数人殺し、他数名は宇宙樹が生命力を吸い取って死んだ者達」

 

要は頸が繋がってもう骨や皮になってる死体が宇宙樹がした方で、頸の繋がってない方は俺が殺した月の民。

日本神話の宇宙樹も順調に月の民、月自体の概念を吸い尽くしている。このまま行けば紫と幽香に持たせたインド神話の道具は使わずに済む、などという事にはならない。そもそも日本神話の宇宙樹を使ったのは、豊姫と依姫以外の邪魔な月の民を弱体化、或いは月の民全てを植物状態にして動けないようにしたりする為だ。宇宙樹が月自体を吸い尽くすのはおまけでしかない。

 

「芳香はまだ見つからんのか」

 

「そうねぇ。いつもの場所に死体が無かったから、私じゃない誰かが蘇生させたみたい。どこに行ったのかしらあの子は」

 

全ての死体状態を時間をかけて丁寧に見ながら芳香の事を青娥と話すが、進展はないらしい。誰が死んでいた芳香を蘇生させたかと聞かれたら、ヤマメなのだが。それは黙っておこう。中国神話の八仙の事も聞いてみたが、普段と変わりないようだ。

何かを思い出した青娥は死体を見るのをやめ、両手を叩いた。年寄りかな? 俺たち神と違って娘々は仙女だ。仙女と神は厳密に言えば違う。まあ永琳と輝夜の能力で作った蓬莱の薬を飲んでるから青娥は年取らない上に死ぬ事がない。しかし美人で肉体も瑞瑞しいが実際のねんれ――

 

「ぶべら!?」

 

え、気付いたら何かにぶたれた。青娥と俺の間には台を挟んであるし、反対側にいる青娥の距離では両手は届かない。片手でヒリヒリする頬を押さえながらも、青娥はニコニコして、何食わぬ顔で話を続ける。

 

「そうそう、昔からいつか聞こうと思ってたの。大国主の封印をなぜ解かないのかしら」

 

「あー 娘々、中国神話側だから知らないのか」

 

青娥は微笑したが、唐突に大国主の事を聞かれた。青娥は中国神話の女神だから、なんで大国主を注連縄で封印したのかは知らないのだろう。そういや娘々を娶ったの今回が初めてなの思い出した。あんなに回帰したというのに青娥を娶ろうと、一度も考えた事がない気がする。美人なのは分かってるんだが、如何せんそう思わなかった。

さっきから青娥は目を瞑り、もじもじしながら頬に赤みがさしていたがそれも消え、急に動きは止まってまた死体状態を見る。妖怪の山にいる古明地さとりじゃあるまいし、考えてる事がバレてれてないと思うんだ。大丈夫さ、大丈夫…

 

「ティムールは知ってるか」

「ティムールと言うと…ティムール朝の開祖、人間の英雄の方? 確か、大元時代や室町時代辺りの時期に産まれていましたわね」

「うむ。大国主の封印を解かないのはつまりそういう事だ」

 

ティムールとは1336年4月8日から1405年2月18日にいた人物である。ティムールが亡くなった後は死体を柩に入れられたのだが、そのティムールの柩にはこう刻まれていた。

『私が死の眠りから起きた時、世界は恐怖に見舞われるだろう』

そして、大国主は今も出雲大社で封印されている。つまり今の大国主は、ティムールの柩と同じなんだよ。しかも、大国主は第六天魔王と同一視されてるんだ。

 

大国主の神話は古事記では多くあるが、日本書紀では大国主の神話をかなり削られているし、あの因幡の白兎だって古事記にはあっても日本書紀では削られて無くなっている。

そもそも日本神話の国譲りはおかしな話だ。大国主と少名針妙丸(スクナビコナ)が出雲国、つまり国造りしたが、アマテラスたちの天津神がその出雲国を全て寄越せと言った。他人が造った国をいきなり寄越せと言ったり、日本全てはアマテラス、またはニニギの子孫が治めると言ったヤツらが、天津神だぞ。しかも大国主はそれを聞いて、自分の息子たちが納得したら差し上げますと言った。そして大国主は出雲大社を建てて欲しいと天津神達に申請して、それが承諾された訳だ。

ただしよく大国主は国津神側と勘違いされるが、古事記や日本書紀に基づくならば大国主は天津神であるスサノオの子孫である。元々スサノオは高天原にいた天津神だ。スサノオがバカな事をしたから、高天原より落とされ下界、つまり日本に来たので国津神という破目になったが、元を正せばスサノオは天津神側なのだ。だから正確に言えば大国主は国津神ではなく、本来の大国主は天津神である。もっと正確に言えばスサノオは天津神だが、その妻のクシナダヒメは国津神だし、大国主は天津神と国津神の血が混じったハーフになる。まあ天津神と国津神の違いなんて、神が高天原にいるか日本にいるかの違いだ。血とか、見た目とか、人間からの信仰とかはあんまり関係ない。古事記と日本書紀を見る限り、という話になるが。

 

「しかし。娘々のあれ、なんだっけ。あの死んだ赤子を使う禁術」

「おそらく、养小鬼の事かと」

 

「それだ。あの思想、オレは好きだな。童乩とかも好きだ。童乩の思想はギリシャの巫女(ピューティアー)とか日本の巫女と似てるし、青娥の術が多才な所は結構気に入ってるし好きだな」

 

どういう禁術かと言うと、墓に埋葬されている子供の遺骨を掘り出したり、流産して死んだ胎児、人の手で殺された子や、事故で死んだ子供の死体を使い、子供や胎児の死体や遺骨で霊を使役するんだったか。禁術だが、全く素晴らしいな。本当はしたらダメらしいんだが、青娥は道教の仙人として、仙術や禁術を他人に見せびらかす事が趣味、らしい。それでまだ世界が初期頃、暇つぶしに見せてもらった事がある。結構面白かったし、興味深かった。青娥を初めて感心し、見直した時があれ一回。

 

ヤンシャオグイ、养小鬼の事と青娥の事を褒めたが、それを聞いた青娥は死体を触る動きを止め、顔を上げて目をぱちくりさせた。そしてリピートを求める。

 

「すいませんよく聞き取れませんでした。もう一度言ってくださらない?」

「いやだからさ、青娥のそういう所は結構好きだし。ああいう思想オレ大好きなんだよ。禁術とはいえ死んだ赤子でも使うのは如何にも宗教って感じだろ」

 

「……ありがとうございます」

 

一瞬、青娥の左手に録音機みたいな物が見えた気がしたが、多分気のせいだろう。

古代ギリシャの数学者、発明家 ヘーローン はスゴイ。 アイオロスの球 という蒸気機関を、発明したからだ。というか古代ギリシャは数学者に天才が多すぎる。古代中国も言葉や文字があったし、凄かったなあ。その分、頭おかしいのも多かったが。古代日本も、先進国だった古代中国の影響をかなり受けてるし、バカには出来ない。しかし平成のギリシャ同様、今や見る影もないのは悲しいモノだ。まあ古代ギリシャ人と平成時代のギリシャ人はルーツが違うがな。うろ覚えだが、確か平成時代のギリシャ人ルーツはエトルリア系で、古代ギリシャ人ルーツとは違うし何の関係もない。古代ギリシャ人の哲学者や数学者は凄かったが、殆ど頭が固いのは欠点だ。

 

前々から懸念がある。今は輝夜と咲夜、天神地祇が僧兵を皆殺しにしているが、人魚の肉を食べて不老不死になった雲居一輪と、一緒にいる雲山も引き込みたいのだが、一体どこにいるのだろう。輝夜と咲夜、針妙丸と正邪がいるから大丈夫だとは思うが、一輪って尼だし、殺されそうで不安だ。一輪が死んだら白蓮が悲しむだろう。そんなの俺は観たくない。どっかで山籠もりでもしてるなら殺される心配はないとは思うが…

 

「雲居一輪が気になりますか」

 

俺は考え事をしていたが、口に出してないので何も言ってない。しかし青娥は俺の思考を読み取ったように、一輪の名を出した。

 

「……やはりお前を娶ったのは軽率だった。前言撤回を請いたい」

「却下ですわ」

 

そうこうして、死体を全て視た青娥はなんと全ての死体を所望したので、内心驚きながらも承諾した。全ての死体は諏訪国に持って行く事にする。神社の裏にある蔵の地下には、永琳の研究施設があるから、そこに死体全てを魔方陣で転移させた。だからここにいる理由はもうない。

 

「用も済んだし、諏訪国に帰るか」

「ええ」

 

全ての死体を見終えた青娥を見てそう告げる。もう少し何か言うかと思ったが、案外すんなりと、青娥は素直に聞いた。青娥を諏訪国に連れて行くのは、華扇に道教を授けて仙人にする為だ。さっきからずっと黙っていた鈴仙は、それを聞くとこの場から逃げる様に早歩きで歩き出そうとするが、俺が鈴仙の肩を掴んで、鈴仙が逃げる事を許さなかった。

 

「じゃあ私は来るべき決戦に向け、このラボラトリーで英気を養いながら待機ということで…」

「――は?」

 

「…え?」

 

なにバカな事を宣うのかこの奴隷は。鈴仙が嫌がる素振りを観る前に、右手で鈴仙が着ている制服の襟首を掴んで引っ張り、地面に引き摺りながら歩く。あーやること山積みだし気が重い。

 

「何言ってんだお前。鈴仙も諏訪国に来るんだよ。依姫に会いたいだろ。行くぞ龍神」

「は~い」

 

「ちょ、襟首掴んで引き摺らないでお尻が地面に擦れて痛いッ!! やだやだ依姫様にオシオキされるから行きたくなーい! いやああああああああああ!」

 

龍神を呼ぶと一瞬で現れるが、流石に龍形態だとここは狭いので人型形態で龍神は現れた。まだ喚く鈴仙を聞き流しながら、空いた片手で手招きして青娥を傍に来させる。鬱陶しいぐらい密着してきたが、気にせず諏訪国に転移しようとすると、龍神が進言した。

 

「あ、弘ちゃん~」

「なんだ」

 

「そろそろ依姫ちゃん、産むよ~」




前話でも書きましたが、実際に第六天魔王は大国主と同一視されてますし、第六天魔王はミシャクジ神とも同一視されてます。だからミシャクジ様を諏訪国の神様として、私は出しませんでした。天魔がいるからです。あ、大国主が第六天魔王と同一視されるのは『太平記』とかが理由です。まあ実際は太平記だけじゃなくて『沙石集』とか他にもありますけどね。
大国主が注連縄で出雲大社に封印されてるのは、東方原作にあるので、ちゃんと公式設定です。
まあその原作設定を使ったのは大国主が第六天魔王と同一視されていたからですね。

ここの青娥は東方原作の嫦娥と同じで、永琳のあらゆる薬を作る能力と、輝夜の永遠を使って作り上げた蓬莱の薬を飲んでいます。だから嫦娥を混ぜている青娥は不老不死です。ただし不老不死は不老不死でも、ここの不老不死に関しては原作の東方と同じではありません。簡単に言えば、ここの不老不死はかすり傷一つつきません。斬り付けても無駄ですし、火山口に突き落としても着ている服は溶けますが、肉体や髪、目や耳、鼻や口にマグマが入ろうと、なんともないです。宇宙に放り出しても意味がありません。結論としては、常に無敵状態になった訳ですね。まあ蓬莱の薬を作った永琳ならその無敵状態を解く事が可能です。
原作設定に基づくならば、それをすると追放や罰を受けますが、ここでは弘天や永琳、豊姫と依姫が月の民と月の都を牛耳ってるので、それは起きません。穢れに関しては旧作キャラのキクリが解決してますし、これも問題ありません。

それに原作設定を一旦置くならば、日本神話や中国神話において不老不死になる事を禁じてませんし、それ以前に穢れの考えが日本神話と原作とではだいぶ違いますからね。
そもそも嫦娥は、不老不死になったからヒキガエルにされたんじゃなくて、夫の羿を裏切って月に逃げたから、西王母が報いとして嫦娥をヒキガエルにした神話です。まあ嫦娥がヒキガエルにされたのは諸説ありますが、これが一番有名だと思います。
もちろん原作設定も色々使いますが、基本的に蓬莱山家に産まれたでは、神に関する話におきまして、原作設定ではなく、各国の神話設定が大前提としてベースにしてます。まあ基本的にと言う話ですが。

人造人間や機械で出来たロボット、怪物や合成獣、科学も医学、死者が復活する事も、ヒーローや魔法や魔女や吸血鬼、男が女になったり女が男になったりする性転換の話はギリシャ神話で既にあります。紀元前当時の時代的に考えて、古代ギリシャ人はアイデアや発想が凄いですね…
どんな国や、どんな部族の神話においても、語り継がれている神話とは大抵イカレテいる事を説明する為、見たくもないでしょうがこれを書きます。
今回ちょっと書いた食ザーや男が妊娠するのはエジプト神話 セト の神話で実際にあります。
まあセトは説によって男だったり女の場合もありますが。しかも男と女を兼ね備えた両性具有ではないかという説もあったりと、エジプト神話のアトゥムも両性具有ですから。古代エジプト人は、想像力がユニークだなと、当時は思いました。
ですがエジプト神話は時代によって神話の内容がだいぶ変わるので、この話は多くある中の神話では諸説が多い神話です。

ちょっと、今回の弘天がした説明では分かりにくいかなと思い、説明しておきます。

例えばマッチがありますよね、あれは摩擦で発火させる物です。摩擦で発火する原理としてはもっと細かい事を私も理解してますが、今は省略します。
とりあえず一言で言えばマッチは摩擦で発火します。それで発火する原因の説明はできますし、皆さんも把握していると思います。これは、言葉や文字、原理を理解しているからこそ、説明が出来ます。細かい原理を知らなくて、詳しく説明してないのになんとなく把握できるのも、ある程度の知識があり「火」「摩擦」「発火」の定義や言葉を理解しているからです。
ですが、その発火と言う言葉や文字も、摩擦という言葉も、そもそも人間が理解する為に定義付けた言葉です。人間だけが分かる様、理解しやすくしたりしたり、説明する時の為に、便宜的な方便の言葉で定義付けたんです。

そこで話を変えますが。出雲神話の大国主の再生神話の場合、大国主が八十神に殺されて亡くなり、大国主の母親である刺国若比売が神産巣日之神に蘇生を助命し神産巣日之神は蚶貝姫と蛤貝姫を遣わして、死んだ大国主を蘇生します。
ここで天照や諏訪子などの天神地祇、弘天や永琳など神話に出てくる神側としては、なんで死んだ大国主が生き返ったりしたのかは理解してますし、その原理を説明できます。神にとっては死者を蘇生させることは別におかしい話じゃないし、その原理や事象を、語弊を招くかもしれませんが、言葉で理解してます。この場合、言葉と言っても人間のそれとは違います。
簡単に言えば、人間側から見た場合それは「蘇生」になりますが、神側としたらそれは違う訳です。まあ当たり前ですけどね、日本神話の神々が日本語使う訳ないですから。要はこれが翻訳なんですよ。神がした事を人間が理解しやすいように無理矢理説明している状態。
しかし人間側からしたらその事象を完璧に説明できないんです。いや、無理に説明しようと思えば、比喩として説明できるでしょうし、こじつけて説明も可能でしょう。ですがそれは齟齬の説明です。正確な説明ではありません。神と人間には認識のずれが生じている訳です。
その事象、つまり蘇生行為に当て嵌まる適切な定義や言葉がないんですよ。だから強引にその事象について当て嵌めた言葉が蘇生、または再生という日本語の言葉になる訳です。
有体に言えば言語の限界。正確に説明できませんから。

…すいません。自分から説明しておいて意味不明になりました。正直、これだけ説明しても自分が納得できた説明じゃないです。申し訳ない。頭の中では纏まってるんですが、頭の中にある事を、文字や言葉として上手く表現できないんです。私の不徳の致すところです。本をもっと読み、色んな活字を見て学ばなきゃ駄目ですね。これが漫画なら尚更説明は難しかったでしょうが…
もう一言で纏めるとですね。神がした全ての事象を、人間は定義付けられた言葉でそれら全てを、敢行な解釈をして人間の言葉や文字に翻訳している。と考えて下さればいいかと思います…はい…


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νυκτερινὸς σύλλογος
Ἑκάτη, Καλλιστώ


これは、奴隷の鈴仙を使うと提案し、それが受理された後の事だ。グダグダ会議を終え、通信指令室兼、作戦司令部にある大きなディスプレイに映る月の都、その内部で日本神話の宇宙樹に吸い尽くされたり、植物状態に成っていく様子を、みんなで料理食べたり、お菓子食べたりして観てる。

上層部の動きをる~ことや、玉兎固有の能力である玉兎同士ならばどんな距離でも、リアルタイムの会話が可能。だから玉兎の鈴仙を使って、情報管理の閑職をしている鈴瑚という玉兎と会話してもらい、月の都と月の民の様子や、月の上層部について逐一報告を受けながら好き勝手に駄弁って、魅魔に話しかけた。

 

「――なあ魅魔」

「んー。なによ」

 

話しかけられた魅魔は口に入ってた料理を噛んで呑み込み、手を止めた。る~ことが作った料理を食いながら、この場にいる魅魔に俺が話かけたのは、純狐という中国神話の女神について、純狐という存在がどういう存在だったかを思い出したからだ。そこで、なんで魅魔に話しかけたかと言えば、一言で言うと彼女、純狐が、魅魔や俺と似てるのだ。

 

「厳密に言えば違うが。純狐は俺と魅魔、日本でいう平将門や菅原道真に酷似してる。かと言って俺、魅魔、純狐は怨霊の類ではない。だが、純狐は俺達に近い存在だ」

 

「そうね。まあ似てるだけで私達と同じではないけど」

 

魅魔と話していたら、横からくるみが私にいい考えがある。と、いい案が浮かんだばかりな表情で、椅子に座ったまま背中から生えてる翼が無駄に動かしながら言うが、それは妙案と思った。

まあ純狐を娶るけど、儒教の教えの一つには、貞婦不見両夫という教えがある。これは貞節、つまり一度結婚して夫婦になった場合、夫が亡くなって未亡人になっても、未亡人になった女性は、亡き夫に操を立てて再び夫を持ってはいけないという教えだ。だが純狐は中国神話の女神だし、問題ないだろう。そもそも俺、神だから、儒教の教えなんぞに従う理由は無い。しかし純狐が中国神話の女神と言っても、生まれが方が特殊なので、厳密に言えば違うんだなこれが。

 

「でもねでもねー。純狐って夫に実の子供を殺されたから、夫と夫の関係者を恨んでるって青娥から聞いたの。じゃあその子供を蘇生させたら丸く収まると思うの」

 

「あ、その手段があるのを失念してたな。その辺はサリエル、任せた。後で、セクサロイド達にも手伝わせる」

「判りました」

 

魂や人格は冥界から連れ戻せばいいし、神話に出てくる道具、死者を蘇生する為の道具は、物部氏の物部布都が既に持っている。よく死者を蘇生するには遺体や遺骨などが必要と言われるが、そんな事はない。少し時間は掛かるが、そんなモノなくても死者の蘇生は出来る。まあ簡単に言えば、肉体を無から有に創るみたいな感じだ。肉体という器さえあれば、後はこっちのもんだ。

 

「だが、もしも。仮に戦う状況下になった時を想定するならばだ。ゼウスみたいにさ、俺も自分に枷や軛を付けてたが、純狐やへカーティアが出てくる場合、流石にそうも言ってられんよな」

 

それを言ったら、魅魔や好き勝手に駄弁っていた神綺達の手が止まり、みんなの視線が俺に向けられる。絶句したり、幻月と夢月は吃驚して気管に入ったのか二人同時にむせたり、くるみは持っていた箸やコップを落とし、床に落ちたコップは割れ、今の割れた音で、動きや思考が止まっていた女神たちはやっと事態を飲み込み、魅魔は戸惑いつつもまた喋り出す。

 

「大国主の封印はダメだけど、弘天のならいいんじゃない? それに純狐はともかくへカーティアはもう恨んでないでしょう。そもそも彼女は、元々ギリシャ神話の女神じゃないからねぇ」

 

「じゃあ、お前達はどう思う。純狐の子供を蘇生するか、俺の枷や軛を解くか。二つの案が出たけど、反対意見やプロテストの建議はあるか」

 

…この会議室にいる青娥(嫦娥)に軽く視線を向けると、青娥は視線に気づいて、俺に秋波を送ってきた。蓬莱山に住む神仏ということわざがある、蓬莱山の名がある俺に該当するのが華扇、青娥なのだ。純狐が、嫦娥(青娥)みたいにただの中国神話の女神なら、俺が知ってる中国神話、その全ての知識をフル活用して対処したり、運が良ければ倒して服従させたり、青娥に関する記憶だけを消して、消した記憶を別の記憶にすり替える事もして、何とかする事も出来た。だが、まさか、俺と魅魔に似た様なモノが出てくるとは思わなかった。これでは俺の中国神話の知識が使えない。青娥が言うに今の純狐は仙霊に近くて、更には純狐の能力が純化する能力らしい。この会議室にいる玉兎の鈴仙や、中国神話の月の女神、青娥から聞いた情報の中、想定しうる中で最悪の報告だ! まあ、想定した上で、起こりうる中での最悪の事態だったから、まだやりようはある。

 

「…なんでそうなるの。別に槐安の夢じゃないわ、両方とも可決にすればいいでしょう」

 

「俺一人なら桎梏を無くすが、一人じゃないからな。それに、純狐の実子を蘇生して、その実子を純狐に会わせても無駄かもしれん。だからこれは、否応にも戦わざるを得なくなったらの話だ」

 

天井で漂っているドレミー・スイートが、困惑気味で珍しく苦言を呈したので、俺も顔を上げてドレミーに言う。まだ他の者達に言いたい事はないかと聞こうとしたが、その続きは神綺が椅子から立ち上がり、テーブルに勢いよく両手を置くと、静まり返っていたこの場でけたたましい轟音が響いたので、遮られて喋る事が出来なかった。音が鳴り止むと、俯いていた神綺は顔を上げ、それに続いてサリエルが言う。

 

「これは嬉し涙よ…! 大旱の雲霓を望むがごとし…縷々たる回帰をし、やっと、この時が来た…私達にとって垂涎の的だった、ひろの枷や軛…桎梏を無くせるこの日を…絶えず待ち望んでた...」

 

「本来、永琳に頼んで、弘君が死なないようにも出来ました。ですが弘君は、それはイヤだ。と、かつて言い、私達はそれ以上言えませんでしたが…」

 

今まで回帰した分の溜まっていた水が溢れ、今の言葉で支えていたダムが決壊されてか、神綺は目の端から止まることなく、滂沱の如く流れ、サリエルはハンカチを取り出して泣いていた神綺の涙を拭い、糸目で苦笑して話す。本当は神綺の近くで控えていた夢子がしそうだったけど、メイドとして、そこはサリエルを察し、何もしなかったのかもしれない。

隣にいた永琳が俺の袖を掴んで引っ張られたから、顔を永琳に向けると、遅いと。そう訴えかけているように視線が鋭かった。だが、声色はとても穏やかで、聞いてたら安心して眠くなりそうだ。

 

「遅い、遅すぎるわ。弘が2回も死ぬ前に、私はその言葉を聞きたかった…」

 

内心怒ってるのか、永琳は顔をしかめている。射るような視線だけで永琳がなにを言いたいのか判ってたのに、我慢できなかったのか口にしたようだ。くるみは落としたコップの破片を右手で拾い、拾った破片を左手の上に置いて集めている。吸血鬼の始祖であるくるみは、ガラスの破片では掠り傷一つ付かない事知ってても、る~ことがそんな事は自分が代わりにしますと言ったが、片膝付けたまま今も破片を拾っているくるみが、る~ことに掌を向けて制した。くるみがどんな表情してるかは、俯いたりテーブルが邪魔してるのが重なり、観えない。

 

「刎頸の交わりをした、曽ての私達は決めたの。どんなに徒爾で末梢的な、眇眇たる事でも、出来るだけみんなで行動して、考えて、天君と一緒にいようね……。そう、決めたの」

 

「イヤだったけど。殺され、回帰しても記憶が欠落したままで、更には自分に枷を付けたままだった王を、支えようってね」

 

「私や夢月は面倒だったけど一蓮托生だから仕方ないわ。あーやだやだ」

 

くるみや夢月はともかく、幻月はスゴイ嫌そうな表情で肩をすくめ、溜息を吐いて首を数回横に振った。しかし、魅魔が腕を組んでニヤニヤしながら幻月の昔の事を指摘すると、幻月が怒り、夢月はそれに便乗した。ただ、幻月と夢月の間に座るユウゲンマガンは、今も料理を黙々と食べている。

 

「よく言うわよ。弘天が初めて殺された時、幻月と夢月が一番発狂してたじゃない」

「それは言わないでって言ったでしょこの悪霊!」

「そうだそうだー! このサキュバスー!」

「サキュバスはともかく誰が悪霊よ! 私をそんなありふれた存在と一緒にしないでほしいわね!」

 

魅魔と幻月を筆頭に、派閥が分かれて弾幕が展開される。しかも幻月が極太レーザーを放ったり、魅魔も負けじとボムで相殺させたりして、この会議室の天井は崩れ、壁は破壊され、床に穴が開いたりして、まるでビデオ動画を早送り再生していくみたいに、会議室はどんどん廃墟と化してきている。まあ、こんな大惨事はいつもの事なので、俺達は気にせず話を続け、隣にいた永琳が、テーブルの上に置いている俺の右手に、左手を置いて、重ねてから言い、サリエルと神綺も永琳に続いて言った。

 

「全盛期には回帰しない弘に言っても、既に已んぬる哉と慮り、私達は述懐、吐露しなかった」

 

「だからこそ、××神話の私達は、自分に桎梏を付け、世界に瞞着していた弘君に具申します」

 

「ひろが、自分から枷や軛を無くす。そう述べる事を翹望していた私達に、異議はないわ!」

 

 

 

 

 

まだ会議をしていた時の事を思い出しながら、俺は境内で同じ場所をぐるぐる歩いていた。考え事をしないと不安だったんだ。

龍神が言った通りになった。諏訪国に帰ってきたのはいいが、うろうろと忙しなく周りを歩いて落ち着こうとしていた。諏訪国に帰って来た時、既に依姫が陣痛の痛みを訴え出していて、その場にいたパチュリー、レイラ、エレンなどの魔女達が、倒れた依姫を急いで神社に搬送したのだ。今は蔵の地下の研究施設にいる永琳が、付きっきりで依姫を看ている。永琳の補佐や助手として、てゐや鈴仙も永琳と一緒だ。

 

「弘さんが動き回っても、依姫が早く産む訳じゃないんです。だから落ち着いて下さい」

「そう、だな。しかしな豊姫、そうは言ってもやっぱり」

 

なので俺は傍から見たら鬱陶しいぐらい動き回ってるんだが、一向に落ち着かなかった。依姫が赤ん坊を産むのは昔から何度も観て来たし、藍が早苗を産んだ同様、今まで問題は無かった。例えば平成時代では赤ん坊を産んで、妊婦が死ぬ確率は昔と比べると低くなったが、あくまで低くなっただけだ。全く、一人も死んで無い訳じゃない。それに昔は赤ん坊を産む出産が命懸けの行為だった。赤ん坊を産んで、出産して死んだ女性は、歴史的に観ればごまんといるんだ。

本来は、永琳がいる。だから痛みを無くして産む事も出来るが、痛みを無くして出産など何の為に孕んだのか判らない。と言われて依姫に拒否されたし、永琳も依姫と同じ気持ちだったのか、それをする気はなかったようだ。

 

「…私や八意様より先に孕んだのは気に入りませんが、いずれ私や八意様も産むんです。ですから、狼狽えないで下さい。私と八意様が出産する時、赤ん坊より弘さんの事が心配になります」

 

今は西行妖が咲き乱れる境内で、依姫が出産を終えるまでの間、悠長に豊姫と一緒に待っていた。依姫が出産するから身内を呼ばねば、と思い。龍神に頼んで姉の豊姫を呼んで来てもらったのだ。目の前にいる豊姫は座って西行妖に背を預けて藍に淹れてもらった緑茶を飲んで、現在の季節は秋なのに、咲き乱れる西行妖の、散りゆく桜を観ながら安らぎ、俺とは違い落ち着いてる。

 

「弘さん」

 

穏和で、柔らかい声で俺を落ち着かせるように名を呼び、今もうろうろしていた俺は止まり、豊姫の方を見ると、能力を使用したのか、いつの間にか俺の身近に立っていた。豊姫は両腕を動かし、俺の両頬に両手を当てて、お互いの視線がぶつかり、豊姫は黙ったまま俺の瞳の奥を覗き込むように、なにかを探るように、ただじっと、注視している。だが、成果は得られなかったのか、俺の瞳の注視をやめて、豊姫の方から触れ合うだけの口吸いをされた。キスだけで終わると思ったんだが、豊姫は俺より背が低いので踵を上げ、つま先立ちをし、背伸びをしながらも、自分のおでこを俺のおでこに当て、両目を瞑る。

 

「私と依姫は、弘さんのモノなんです。私は、弘さんを愛しています。それは、依姫も同じです。だから、躊躇ったりしないで下さい。私達が好きなヒトは、いつも自分勝手なヒトですから」

 

そう言い、笑顔になった豊姫は、とても美しかった。なんというか、さっきまで話していた豊姫と違い、その時だけ蠱惑的だったんだ。豊姫はおでこを当てるのをやめ、俺の両頬から両手を離し、能力を使って一瞬に西行妖の下にワープし、また腰を下ろして西行妖に背を預け、どこから持って来たのか、豊姫の右手には白いお皿に乗っている三色団子やいちご大福があり、その皿を太ももの上に乗せ、まずは三色団子の棒を掴み、そのまま団子を口に含んで頬張りつつ、左手に持っている湯呑には、湯気が出てるほど熱い緑茶を飲み始めた。豊姫の能力便利だなー。

こんな呑気に、俺は豊姫と一緒にいるが。依姫が赤ん坊を産み、月に帰った時点で、豊姫と依姫とは、お互い敵になる。多分、豊姫と依姫が月の都に帰って、月の民の惨状を見た時、始まるだろう。だからこれが最後。こうやって普通に会話して、普通に一緒にいて、普通に、心配するのは。豊姫と依姫を殺す気はないが、俺は生半可な気持ちで、月の民を皆殺しにする訳じゃないんだ。

 

豊姫のお蔭で落ち着いた俺は、ご相伴に預かろうと思い、西行妖に背を預けながら三色団子を食べている豊姫の隣に座り、豊姫から三色団子を一本貰う。俺が三色団子を口に入れて食べ始めると、視点が定まってるようで、定まっていない豊姫を隣で見ていた俺は、ノスタルジックに浸っているのかと思い、右手で豊姫の右肩を掴み、湯呑に入っている緑茶が零れないように、手繰り寄せた。

 

「懐かしいですね…。憶えていますか弘さん、仕事を抜けて団子屋で過ごした、あの一時を」

 

「確かあの時は、豊姫と依姫を補佐役として師匠が推してきたな。依姫が俺の監視役だった最初の頃は上手く撒けてたんだが、途中で依姫がコツを覚えたのせいか、殆どサボれなかった」

 

「ありましたね。依姫も最初は流されて一緒に仕事を怠けてましたが、途中からは真面目な妹になってしまい、私も仕事を抜けたり出来なくて、怠けられませんでした…」

 

豊姫は片手で口元を隠し、クスクス笑った。思い出話をして豊姫と過去の思い出話で感傷に浸って、あの時は楽しかったと思う気持ちはある。しかしあの時が一番良かったなどとは思わない。俺は、過去の思い出を大事に残すが、過去に縋る気はない。あの時はあの時だ。あの時が一番良かったなどと思ってしまったら、それは今を否定する事と何ら変わらない。どんなに綺麗な思い出でも、それはあの時だけだ。戻りたいなんて、思いたくないし、そう思ってしまったら、今までした事が、全て白紙になる気がする。

 

豊姫とぼけーっとし、序でに豊姫の胸を、豊姫が着ている服の中に入れた右手で直に揉みながら、左手にある三色団子を食べていると、ここから観える神社の裏の蔵の木製扉が開かれてたが、蔵の中から出て来たのは、鈴仙だ。西行妖に背を預け、お互いが寄り添い合っている俺達を観た鈴仙は、登山者が山に叫ぶ時のように、口元に両手を添え、俺と豊姫を呼びかける。

 

「弘天様ー! 豊姫様ー! 依姫様は無事に出産を終えて、元気な赤子が産まれましたー!」

 

鈴仙の言葉を聞くに、依姫は峠は超えたようだ。難産ではなく、安産でよかった。

 

「…では行きましょうか弘さん。依姫と、依姫が産んだ赤ん坊の顔を見に」

 

大声が轟いた鈴仙の報告の声が聞こえ、豊姫は右手で持っている白いお皿に乗っている三色団子といちご大福、湯呑を持ったまま立ち上がり、空いた左手でお尻や太ももを払いながら、早歩きで先行して神社の裏にある蔵に向かった。なんだ。やっぱり、豊姫も心配だったんじゃないか。隠すのが相変わらず巧妙だが、詰めが甘いぞ。

 

「豊姫…いや、この場合は乙姫...龜比賣か。丹後風土記や日本書紀に記載されている、かの有名な浦島太郎。日本書紀には蓬莱山と記載され、古事記の場合は、椎根津彦という神に似ている」

 

先行した豊姫が歩く事に、胡坐をかいて西行妖に背を預けている俺とは、距離があいていく。豊姫の背はどんどん小さくなって行き、蔵の扉を左手で、豊姫は開けた。

日本において、竜宮城は海中にあるのが有名だが、中国の場合は島か大陸、または山に竜宮城があると言われ、楼堂は玲瓏だそうだ。日本書紀によれば、浦島太郎がいた元々の時代は、豊受比売をアマテラスの元へ連れて行き、アマテラスと共に豊受比売を祀った第21代天皇 雄略天皇 の時代らしいが。

 

「…日本神話と中国神話。竜宮城と富士山の異名の蓬莱山。龍神と乙姫。道教、仙人、不老不死。そして龜比賣は密接に混じり合い、切っても切れない関係にある。それを切り離すのは無理だ」

 

蓬莱山の俺、乙姫である豊姫。そして水魚の交わりな関係的に言うと、本来真っ先に妊娠すべきなのは、豊姫だったろうが。

豊姫が蔵の中に入って行き、見えなくなるのを確認してから、右手の親指と中指で指パッチンすると、俺の隣にスキマが開き、スキマの中にいる紫と幽香が出て来ず、スキマ内にいたまま話す。スキマ内からはけたたましく、痛いくらいの妖気が漏洩している。人間がこの妖気を浴びたら即死するのではないかというほどギラギラだ。嗚呼…素晴らしい…やっと、この時が来たのだ……。

 

「琉球王国から蝦夷地の妖怪を全て集め。且つ諏訪国にいて、尚且つ戦える妖怪を全て集めたわ。――いつでも出られるよ、お父さん」

 

「では紫と幽香。全ての妖怪を引き連れ、最初は月の都を刺激し、玉兎には手を出さず、月の都にいる月の民から妖怪に攻撃したヤツだけ、あらかた抹殺しろ。幽香、今回は好きに動いていいぞ」

 

「あら残念。私、柵があった方が楽しいのに」

 

スキマ内にルーミアとキクリ、ぬえもいるかどうか紫に聞いたが、ちゃんといるようだ。ぬえはともかく、ルーミアとキクリには戦わせないし、月の民を殺させない。ただ、妖怪たちと一緒に来てもらい、懐かしの月の都を観てもらうだけだ。幽々子も連れて行こうとしたが…やめた。

 

「とはいえ、蘇生が面倒になるから月の民を喰うのは御法度だ。これを破った妖怪は始末しろ」

 

肉体が無くなっても、蘇生できない訳じゃない。ただその場合、蘇生する時に時間が掛かる。それ以上の事はあんまり問題は無いんだが、問題は妖怪が月の民の死体を喰う事が問題なのだ。だから建前として、蘇生の事を話した。傘になっている小傘をくるくる回転させながら、幽香はスキマの中から出て来て上半身を出し、面倒事を自ら買って出る。

 

「お父様。それは私に任せてちょうだい。紫にそれは不向きでしょうし」

「じゃあ幽香に任せる。だが、小傘を連れて行って大丈夫なのか」

「大丈夫! 私には幽香お姉ちゃんがいるからね!」

「もちろんよ。私が小傘を守るわ。お父様と、紫と、私の血がある、実娘ですもの」

 

小傘は傘のままで大丈夫と豪語し、幽香はそれに頷いて傘になっている小傘を愛おしそうに撫でた。不安要素はあるが、傘を常に差している幽香がいるから、大丈夫だろう。まあ紫には向いてない事だったので、幽香に任命した。今回の戦争、作戦が基本的にない。もう本能の赴くまま、好きに暴れてもらう。その方が、妖怪らしくていいだろ。何故ならこの妖怪たちは輝夜の能力で死なないからだ。更には日本神話の宇宙樹を使って、月の都とある程度の月の民は植物状態にある。とはいえ全ての月の民が植物状態な訳ではないんだが、今頃、月の上層部は慌ててるんじゃないかな。だからこそ、今回ばかりは何も指令を下さない。そこは、せっかく頭脳担当の紫がいるので、紫に万事を任せている。船頭多くして船山に上ることになっては、本末転倒だからな。

 

「遅れて俺も行くが、後は頼んだ」

「うん。待ってるね、お父さん」

「だけどお父様が来る頃には、もう終わってるわよ」

 

「それはそれで困るな。…あ、待った待った。行く前にこころを渡してくれ」

「こころ? ちょっと待ってね……。あったよ! 面霊気が!」

「よし、でかした!!」

 

スキマの中にいる紫が何をしてるのかは判らないが、紫に言われて少し待つと、スキマの中から白い手袋を着用されている紫の右手が出て来て、福の神の能面になっている面霊気のこころを受け取った。確かこころは、嬉しいときが福の神の能面になるんだったか。

 

「はいお父さん」

「確かに受け取った。では頼んだぞ」

「ふふん、任せてよ。やっぱり何事も、膳部揃うて箸を取れよね」

 

紫の右手はスキマから出ているが、それ以外はスキマの中にいるから観えない。しかし、おそらく紫は胸を張って答えた。

それを最後に、開いていたスキマは、上半身だけ出ていた幽香がスキマに入ると閉じられ、妖気も消えた。スキマで月にはいかせない。永琳が創り上げた魔方陣で月に行ってもらう事になっている。ただ月と言っても月の都の内部、しかもど真ん中にだ。まあ輝夜の能力で死なない様にしてるから、スキマの中にいた妖怪たちは、不死身みたいなもんだし。

 

「ようこころ」

「うむー。久しぶりに合間見えて、我々は嬉しいぞー」

「そうか。なら暫く一緒にいよう」

 

福の神の能面状態になっているこころを側頭部に貼り付けて、先に行った豊姫の後を追った。

ある人間の女性が神々に認められ、神々の手でその女性を不老不死する話が、神話の中には例外としてある。その内容は、人間の女性を、神の配偶者として娶られ、不老不死を与えられた元人間の女性、あるいはその女性を神にして、神々の序列に加え入れる、という神話だ。まあ、その神話の真逆もあって、女神が人間になる場合もあったりする。人間が神になって神々の序列に加え入れるといっても、その人間のした功績や、女性の場合は容姿が神に見惚れられて、神の手により、その人間を神にしたという神話だ。当たり前だが、誰でもいいと言う訳ではない。ただこういう神話、不老不死や人間を神にする神話、実はギリシャ神話だけではなく、かなり少ないが、他の神話でも、あるにはある。

 

そして、たまに、こんな意味不明な事を言い出す者がいる。

不老不死の人間、あるいは妖怪が、動物の人間と違い不老で長命、しかも妖怪は動物の人間と比べてはるかに強いから、または、妖怪という存在は、永い命と引き換えに成長する事を放棄しているから、セックスをしなかったり、子を残す事を重視しない、と。

それはおかしいのだ。仮に不老不死や妖怪が長命や強いという理由で、子を残す事を重視しないというならば、不老、または不死。不老不死の神がいる神話なんてざらだし、その不老不死の神々がセックスで子供を作る話は結構ある。そもそも寿命という概念がない日本神話の男女神がセックスして、あれだけ子を産んでいるのはおかしいではないか。出雲神話の大国主も180柱以上の子がいるというのに。とはいえ、日本神話の神、またそれ以外の神話でもある事だが、セックス以外で子を生みだす場合もある。それはイザナミが死んだ時と、俺が四季映姫を生み出した事と、やり方は似たようなモノだ。それに、妖怪にだって、ちゃんとした性別があるのはかなりいる。それは鬼、雪女、狐とかが有名だろう。妖怪は霊、精神寄りな存在だから、という話でもこれは変わらない。日本神話の神が人格神とはいえ、日本神話と神道の思想は汎神論やアニミズムの考えだからだ。

 

強い弱いの話ならば、あまりにも強すぎて、世界や地球が何個あっても足らないギリシャ神話や、インド神話の神々は、どうなるんだって話になる。ギリシャ神話の神々やインド神話の神々でも、セックスして子供を作ってるんだぞ。まあ、セックス以外で子を産んでる話は、ギリシャ神話と、インド神話にも多くあるんだが。元からそうだったわけではないが、ギリシャ神話のパンテオンは不老不死なんだ。まあ、これはバナナ型神話の話だな。つまりあのレイプ神のゼウスも、ということだ。そもそもゼウスは不老不死になってるのに、レイプを繰り返してるんだ。ギリシャ神話に出てくる不老不死の女神さえ、色んな男とセックスして子を生んでいる。不老不死でも、肉体的に、精神的に成長しなくても、男だろうが女だろうが、ヤリまくりだというのに。

 

 

神社の裏にある蔵の地下、その研究施設にある大部屋の前に到着した。この大部屋で依姫は赤ん坊を産んだ。この部屋の中には永琳と依姫、豊姫と鈴仙。てゐもいるはずだ。

俺が入ろうとしたら、鈴仙とてゐが大部屋の中から出て来た。てゐはニヤニヤしながら俺に近づき、てゐは右手を閉じて、背が低いから俺の太ももにぐりぐり当ててくる。

 

「祭神様、あんなに綺麗な女性、いつの間に口説き落としたのさ」

「長い時間…ずっと一緒だったから、あんまり憶えてないな」

「そうなの? あの金髪の女神様も祭神様の妻ってお師匠様から聞いてるけど、姉妹らしいね」

「美人女神姉妹だろう。いやー豊姫と依姫を娶れて俺は幸せもんだ」

 

てゐと会話していたら、さっきから俺の顔を観て暗い顔の鈴仙は、青菜に塩のまま目を伏せ、頭を下げて言った。

 

「…弘天様、私は外の空気を吸ってきます」

 

この先に起こる事を、鈴仙は回帰したから思い出してる。だから気を揉んでいるのだろう。てゐも、またねと言いながら、鈴仙の後に続いて、蔵の地下の研究施設から出て行った。

 

自動ドアなので、ドアの前に立つと勝手にドアは勝手に開く。だが、慌てず騒がず慎重に、しかし確実をモットーに、早歩きで入った。部屋の中にはベッドが一つあり、ベッドの上に座ったまま、依姫は産んだ赤ん坊を割れ物でも扱うかのように、両手で大事に支えて、持っている。俺が入っていたことに気付いていた依姫は、俺に視線を向けて微笑んだ。

 

既視感…デジャヴュだ、この薬品臭い匂いも、真っ白な部屋も、殆ど同じだ。あの時は、俺が赤ん坊だった。そこで父さんが急いで母さんの元へ来て、走っていたのか息切れもしていた。あの時、赤ん坊だった俺は、自我を持っていたが、今の俺は父さんと同じ視点で、同じ立場にいる。なんか、変な感じだ。しかも今回が初めての体験じゃないのに、ジャメビュすら感じる。いくら回帰しても、これだけは、やはり慣れない。

依姫はいつもの服、シャツのようなモノの上に、右肩側だけ肩紐があり、赤いサロペットスカートの服装じゃない。今の依姫は、病院着を着ていた。お腹もぺたんとへこんでいる。

いやー確か赤ん坊を産んだ後のお腹って、実は暫く膨らんだままだと聞いた事あるけど、もしかしたら永琳が処置を施したんだろうか。まるで妊娠する前の依姫に戻っていた。豊姫は簡素な椅子に座り、永琳は白衣を着たまま少し離れたところに立って、豊姫と依姫、綿月姉妹の邪魔をしないようにしている。俺は永琳に瞥見をしてから依姫の傍に行って、赤ん坊を産んだ依姫には、第一声をなんて言えばいいのか悩み、豊姫に聞いた。

 

「まずはお疲れ様と言うべき、なのか」

「それも間違ってはいませんが。ありがとうでもいいんですよ、弘さん」

「そ、そうか。依姫、ありがとう」

「はい」

 

依姫が産んだ赤ん坊は、藍が産んだ早苗と、腹違いの姉妹になる。生まれた赤ん坊と早苗の二人が仲良くしてくれたらいいんだが。

今の依姫は髪を赤色のリボンで結ばれておらず、いつものポニーテールではなく、髪は下ろされている。ベッドの端に座って、足を下ろしている依姫を観てると、依姫は破顔一笑した。俺は左手を依姫の頬に優しく当てる。

 

「愛してるぞ、依姫」

「はい。私もです。弘さん」

「依姫だけじゃなくて私にも言ってください」

 

すっと出て来た言葉を依姫に言ったら、簡素な椅子に座っている豊姫が、立ち上がっている俺を見上げ、上目遣いで同じ事を言って欲しいと懇願してきた。

 

「…うん。愛してるぞ、豊姫」

「なんでちょっと投げやりなんですか! 依姫だけ弘さんの子を孕んだり、弘さんから愛してると言われたりズルいです!」

 

「そうですね。隊長…弘さんは数億年前に私達を娶ったんですから、ちゃんとお姉様も愛してあげて下さい」

 

当然豊姫も依姫も愛すが、娶ると言ってもあの時は、師匠が豊姫と依姫が子供の頃に唾を付けとけと、しつこいセールスマンみたいに、俺に嫁ぐ兼、俺の補佐役にとぐいぐい推してきたからなあ。まあ豊姫と依姫を娶るのは師匠公認だったが。

 

嗚呼…平和だ。誰が見ても、この場にいるモノたちは幸せの絶頂で、幸福に満ち溢れていると観るだろう。依姫が抱いてる赤ん坊の手を、豊姫は人差し指と親指で掴み、軽く上下に振って、小さな握手をしている。豊姫と依姫は赤ん坊を慈しみながら、豊姫は依姫に、赤ん坊の名を聞いた。俺は、豊姫と依姫を観て表情を綻ばせていた永琳を観ると、永琳も俺を観る。

さっきからこの研究施設で、誰かが走っているのか、かすかな足音が聞こえている。重要な部屋ではちゃんと防音されるが、この大部屋、防音性があまりない。だからもう時間だ、夢から覚めなくてはいけない。

 

「それで依姫、この子の名は考えてあるの?」

「はい、お姉様。名は――」

 

依姫が放とうとしたその先の言を、豊姫と依姫の愛玩動物に遮られ、聞く事は出来なかった。

――かつて、第一次世界大戦敗北後のドイツ国内では、ユダヤ人に対し、こんな陰謀論があった。ドイツの騎士や、ドイツ兵を、ユダヤ人が背後から刺そうとする陰謀論で、比喩。背後の一突き。『匕首伝説』

 

 

「――豊姫様、依姫様! 出産直後で申し訳ないですが、情報管理の鈴瑚から焦眉の急です!」

「火急…?」

 

さっきから騒がしく、神社の裏にある蔵の地下を走り回る音は聞こえていたが、やはり鈴仙だったようだ。依姫が産んだ大部屋に来た鈴仙は急いでいたのか、自動ドアが開くと、勢いよく大部屋の中に入り、片膝をついて俯きながら、報告してきた。

 

「はい! 月の都に、妖怪の大群が月の都中央部に突如として現れました! 原因は不明!」

「…ッ現状は?」

 

「月の都の中央部にいた月の民は全滅! 妖怪の手によって月の都の中央部は殆ど壊滅! そして妖怪を一人も殺せないと、先程から色んな玉兎の会話が、私に聞こえてきます…」

 

依姫は驚きながらも、抱いている赤ん坊を気遣いつつ、現状を把握するため、鈴仙に詳しい現状の報告を求めたが、それを聞いて更に困惑した。依姫が朝に夕べを謀らず、なんて事にならなかったから安堵したが、片膝付けて俯く鈴仙は、なんでそうなったのか。その理由を知っている。知ってて知らないフリをしているだけだ。

 

「ですが…不可解な事も報告を受けています。どんな理由があるのかは現在不明ですが、妖怪達は玉兎に一切手出ししてないそうです」

 

「玉兎には手を出していない…? 妖怪だからか…それとも玉兎を殺すとなにか不都合が起こり得るのか…」

 

これには多くの疑問点がある。まず月の都は注連縄で結界で隔てられ、妖怪は中に入れない。月の民なら門番に入れてもらえばいい話だが、そもそも月の都の外に出歩こうと考える月の民はかなり少ない。それ以外で入る手段としては、まずは結界を解くか、あるいは壊さなきゃダメだ。だが、解くにしても時間が掛かる。だから結界の解除されてる最中に気付く月の賢者もいるだろう。結界を解くという事は、注連縄が弱まるという事だからだ。次に結界を壊すにしても同じ事だ。注連縄で隔てられてる月の都の結界が壊されたら、月の民だけではなく、流石に玉兎でも気づく。

なのに、妖怪は月の都の中心部で突如出現した。流石に今現在得ている情報では、これは理解できない。

 

「更に不気味な報告を、鈴瑚から受けています…」

 

「……言いなさい」

 

依姫は目を瞑り、左腕と左手で赤ん坊を支えながら、右手で頭を押さえ、聞きたく無さそうに聞くが、鈴仙の報告を聞いて、更に不機嫌な表情になる。豊姫は月の都の最新兵器である扇子を開いてあり、扇子に邪魔されて顎から鼻まで隠れ、表情が観えない。だが眼は観え、その瞼を細めつつ、険しい目つきで鈴仙を見ている。

 

「玉兎が妖怪に片手バルカンで発砲しても、超小型プランク爆弾で爆破しても、一向して、無視を徹底してます。しかし月の民がそれをすると、真っ先に殺しにかかるとの報告です…」

 

「ますます意図が読めない。月の都に住む全ての民を殺すのが目的じゃないのか…。殺す価値がないのか、同じ妖怪だから殺さないのか…。判断材料としての情報が少なすぎる」

 

そして月の都は無駄に広いし、無駄に大きい。沖縄から北海道を合わせても足りないだろう。だからいくら妖怪の大群でも、月の都を埋め尽くせない。蓬莱弱水の隔りだ。それに本来なら月の民とはいえ、少しは科学で妖怪に抵抗できる筈だ。本来ならな。なにせ輝夜の能力で俺が月の都に送った、紫と幽香の妖怪たちは”死”という概念自体が無くなっている。しかも輝夜の能力で傷が一つもつかない。

 

「――依姫、かつての仏陀はこう言ったわ」

 

依姫が未だに思考している中、永琳が両手を叩いて自分に注目させ、矢継ぎ早で正鵠を射るように、依姫に諭す。永琳は、胡簶に入れた矢を使う弓使いだ。この喩えを永琳がするのは、皮肉でしかない。

 

「毒矢に刺さったとして、毒矢を撃ったのは誰なのか、どんな身分のものが撃ったのか、どんな弓を使って撃ったのかを考えるより、まずはその毒矢を抜き医者を探すべきという、毒矢の喩えを」

 

それを聞いた豊姫は、一瞬体を揺らしたが、依姫は自分が何者か、自分の仕事は、役目がなんなのかを思い出し、まずは色々考えるより、月の都に刺さった毒矢を抜くため、月の都で跋扈や闊歩している妖怪について対処しようと考えて、豊姫に頼んだ。解決する医者を探すのは、妖怪という、毒矢を抜いた後にしたようだ。

 

「…確かに仏陀と八意様の言う通りですね、あれこれ悩んでも仕方ないです。まずは月の都に行き妖怪を撃退して鎮圧しなくてはいけません。お姉様、能力でお願いします」

 

「青天の霹靂、霜を履みて堅氷至る、浅き川も深く渡れ。ええ。分かったわ。弘さんと八意様は、どうされますか」

 

依姫の頼みを聞いて、豊姫は扇子を閉じた。依姫は豊姫の能力で月の都に行こうとしたが、その前に俺と永琳も一緒に行くのかどうかを、豊姫は聞いてくる。扇子を閉じて観えた豊姫の表情は、なんとも言い難い。怒りや悲しみ、だが微かに喜びの表情も伺える。しかし色んな感情が混ざって、感情がはっきりせず、複雑といった表情だった。

まだ、まだ紫と幽香に持たせた天羽々矢、インドラの矢、トリシューラ、パスパタを使う時ではない。あいつらが、純狐とへカーティア・ラピスラズリが来る気配を感じてから使う。

 

「ああ。俺も行く。永琳も行くか」

「そうね。カグヤとサクヤも呼んでおきましょうか」

 

輝夜と咲夜を呼ぶのは、龍神に頼んでおこう。

まずは××(永琳)と輝夜と咲夜を連れて月の都に行き、月の都の中央部にある実家に顔を出そうと思った。産んだばかりの依姫は、疲労している。しかしそんな事も言ってられないのか、俺がここにいるのに依姫は着ていた病院着を脱ぎ始め、いつもの服に着替え始めた。いつもなら恥ずかしがってるだろうが、そんな事に気を遣う余裕がないらしい。うーむ、何度も抱いたが、依姫の裸体は何度見てもいい。依姫は後ろ髪を引かれていたが、藍は早苗の面倒を観てるし、産んだ赤ん坊はてゐに預ける事にした。

 

「能面被らせてくれ」

「わーい。任せろー。我こそは秦こころ。感情を司る者」

「こころ、お面被るだけで前口上を言う必要があるのか」

「ないッ!」

 

俺の側頭部に貼り付けていたこころが、俺の顔にドッキングした。能面は狐だ、これでいい。

神を観た事がないから、神が存在するとは思えないし、信じない。と言う者は結構いる。

いいや、そうじゃない、そうじゃないだろう。それを言うなら、自分の心や、気持ちは、眼に観えるのか。自分の記憶や、感情も、眼に観えているモノなのか。

違うだろ、自分の気持ちや心や記憶なんて物理的なモノじゃないし、眼に観えたり視界に映るモノじゃない。心も、気持ちも、感情も、記憶も、感じるモノだ。そこに理由なんて求めても意味ないし、それを証明する事が不可能だし、そもそも証明なんてする必要はない。だから神様とは、本来は眼に観える存在ではない。体験や影響の知覚さえできれば、感じる事が出来たらそれでいいのだ。なんでもかんでも眼に映ると思い込み、形がある事に囚われたら、なんの為に人間が心を持っているか不明になるだろう。確かに気持ちや心は、文字としては観られる。だがそれだけだ。文字として紙に書けば観られるだけで、自分の心が観えてる訳じゃない。それ以上はないんだ。

 

言い回しを変えよう。合わせ鏡を使わずに、反射するモノを一切使わずに、自分の背中を、自分の眼球だけで捉え、自分の背中や腰を観られるのか。自分の後方の事ではない、自分の背中や腰を、反射するモノを使わず自分の眼で、自分の眼球だけで、自分の背中や腰を観れるのかという話だ。

 

「そう思わないか、こころ」

「うーん…よく判んない! けど、どんな時でもどっしりと構えて太々しく笑っててよ。スマイルスマイル!」

 

 

「――お待たせして申し訳ありません。着替え終わったのですぐに行けます」

 

こころと話し込んでいたら、依姫はいつの間にか着替え終えていた。だが最後に依姫は、まだ地上に都市があった時に俺がプレゼントした、リボンとベルトを両手に持ち、バックル部分に剣の紋章があしらってあるベルトを腰に回し、リボンで髪を括り、ポニーテールにし終えたので、そのまま月の都へと、豊姫の能力でワープする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芥川龍之介は言った。

『我々に武器を執らしめるものは、いつも敵に対する恐怖である。しかもしばしば実在しない架空の敵に対する恐怖である。』

例えば神話において、神が人間に殺される、といった話は多くある。それは、メソポタミア神話のギルガメシュが有名だろう。だがギルガメシュは神の血を持つ半神みたいな存在だし、人間と言えるのかどうかは疑問だ。そもそもこれは神話に出てくる人間や、伝説の話に出てくる人間でよくある話だ。更にはそういった神や怪物を倒した人間には、大抵その怪物を倒せたなにかしらの理由がある。さっき言ったギルガメシュみたいに神の血を持つ半神の人間、とかがそうだ。天皇や大王、日本で有名なヤマトタケルも神の子孫、つまりギルガメシュと同じ英雄的な存在だ。日本神話においてヤマトタケルは『悪樓』という神様を殺していて、第2代天皇の 綏靖天皇 は人を喰う、つまり食人を趣味としていた。まあ天皇の場合は実際に存在ししているが、これはあくまでも、神話や伝説においての話。では、その架空の敵が実際にいたら、人間はどうするのか。

 

××(永琳)

「ん」

 

月の都に来て、目的地に到着した。辺りを見渡すと、柱や窓、扉、照明など、その他諸々は細かな意匠が中華風ばかりで、千軒あれば共過ぎだ。豊姫と依姫は妖怪の対処に向かっている。どうしても実家に行きたいと言い、豊姫と依姫から別行動させてもらった。玄関前で右手を隣にいた永琳の腰に回して抱き寄せ、密着したまま、永琳の側頭部に俺の側頭部を軽く当てる。永琳は黙ったままで、黙って受け入れ、文句は言わなかった。

 

「前々から思ってたが、月の民の穢れという思想。あれ日本神話というよりも平安末期と鎌倉仏教の思想。元々はインドが起源の思想だが、欣求浄土、特に厭離穢土が似てるよな」

 

「……そうね。欣求浄土はともかく。正確に言えば、神道と仏教の穢れの思想が混じり合ってる。だけど、穢れの思想は日本神話寄りではなく、インド哲学や仏教思想寄りなのは間違いないわ」

 

一緒に連れて来た妹の輝夜は俺と永琳の背にいる。もう何度もした事とはいえ、顔色が優れてなかったし、無駄だとは思っていても声を掛けた。序でに連れて来ている咲夜に視線を向けると、なにが言いたいのか判っているのか、視線を交えたら咲夜は目を閉じる。

 

「平気か、カグヤ」

「慣れて、ますから」

「そうか。サクヤ、傍にいてやってくれ」

「言われるまでもないですわ」

 

実家に帰って来たのはいいが、玄関を開けて奥に進み、広間に入ると中は荒れて、血しぶきで壁や天井、床は汚れ、陰々滅々で寂寞だ。血の状態から見るに、今さっきやられたみたいだな。軽く見渡すと、散乱している家具の物陰に、ぬえがいた。だが俺に視線を向けるだけで、とくに会話は無いが、ぬえの能力の影響か、一瞬だけ、ぬえの体全体がノイズみたいになり、次はペースト状や、スライム状みたいになったぬえは、泰然たる態度で潜んでいた。色々な姿になったぬえは、いつもの少女になり、少し暗いからよく観えないが、ぬえが着ている黒地のワンピースが所々赤い。父さんと母さんに手をかける際に、返り血を浴びているようだ。まあ元々俺が実家に差し向けた妖怪がぬえだし、俺と輝夜の実家にぬえがいるのは、別におかしくないんだ。

 

「終わったのか」

「うん。これが両親で間違いないわよね」

「ああ、他人の空似ではないな」

「ならいいや。みんな同じ顔に観えるから困ってたのよ、でも合っててよかった。じゃあ渡すわ」

 

ぬえは立ち上がり、ぬえの両肩に乗せた二人を俺に観せて、渡してきた。俺は、ボロボロになった身内を受け取り、渡し終えたぬえは、片手に三又のトライデントみたいな槍を持ちながら、広間から出て行った。おそらく他の月の民を殺しに行ったんだろう。俺は受け取った身内を優しく床に置いたけど、もう今にも死にそうだ。

 

「父さん、母さん、久しぶり。思うところあって月の都、高天原に帰省したよ」

「……」

 

「虫の息だな。カグヤ」

 

「はい」

 

輝夜を呼んで一緒にいた咲夜と共に、広間に入らせる。輝夜はまず母さんに触れ、綺麗だった髪が邪魔して顔が見えなかったので、髪をどけて母さんの様子を輝夜は観るが、暫く黙って母さんを観ても反応がない。母さんは胸を一突きにされてるようだが…流石に死んでるのかもしれん。もう少し早く来るべきだったか。別に両親を恨んでる訳でも、ゼウスみたいに親を殺して王権を奪おうなんて考えてる訳じゃないさ。するべきだったかと聞かれたら、絶対にするべきだったとは言えない。だがこれも、無駄なことじゃないんだ。

 

「蘇生できるとはいえ。判っていたことです。こうなる、ことは」

 

「私と…母さんの可愛いカグヤも…いるのか…」

「ここにいます。お父様」

 

輝夜は父さんの元に行き、両手で父さんの右手を握る。観た感じ、母さんは綺麗に殺されてるが、父さんは腹部を鋭利な刃物で刺され、体内から無理矢理引き裂かれてるみたいになっている。臓器が飛び出て酷いありさまだ。それでも生きてるんだから、大した精神力だな。

侵略は侵略だ、殺しは殺しだ。そこに正当化や大義や理由、正義や悪、正しいとか間違ってるなんてある訳ないし、そう考えるのは人間だけだ。そんな概念、人間が定義付けただけで、元々、この世界に、地球にある筈がないんだ。人間にあるのは、産まれて死ぬ、ただそれだけ。

父さんは咳き込み、血反吐を吐きながらも、××(永琳)と咲夜に輝夜を頼んで、永琳と咲夜は返答しながら頷き返す。臓器飛び出てるのによく持った。しかしもう時間がない。本当は母さんとも話したかったが、仕方ない。

 

「…八意殿。重畳も言ってきたが...貴方の知恵で…メーティスのようにバカ息子とカグヤを頼む」

「もちろんです。お義父様」

 

「従者の十六夜……元々お前は、夢子と一緒に息子に仕える予定だった…。息子が地上に残ったので、おじゃんとなったが……生きていたのだ。なればこそ…私の娘のカグヤと同じ主と観よ......」

「はい。××様が、私が仕えるもう一人の主と観る事を、ここに誓います」

 

父さんの言いたい事は、今ので全部言い終えたはずだ。終わらせよう。

 

「カグヤ、そこにいたらお義父様を、楽にできないわよ」

 

今も父さんの手を両手で包んでいたカグヤを、××(永琳)はカグヤの両肩に両手を置いて、どいてもらう。

 

「…………じゃあね、父さん。全部終わったら、父さんも母さんも蘇生するよ。だから、それまで待っててほしい」

 

父さんが切腹する訳じゃないが、腰に差した草薙剣を抜き、介錯の準備をし終え、そのまま御首を切り落とし、返り血を服に浴びる。神でも、血は流れてるさ。だが、体内の臓器が飛び出てたので、沢山血も流れていたから、そこまで返り血を浴びなかった。しかし、能面のこころを顔に被っていたので、返り血を浴びた際、能面のこころには数滴ほど付着してしまう。だから返り血を拭こうと思い能面を外す。外した能面は、狐から猿に変わっていた。確か、猿の能面の時のこころは、困っている時だったか。能面に返り血が付着したのは、わざとじゃ無かったが、ここはこころに謝っておこう。

 

「悪いこころ。能面、血で汚れたな」

「いいよ。気にしてない」

「××様、こころ様にこれを」

「おー。ありがとうー」

 

普段から持参しているのか、咲夜は綺麗なハンカチを俺に渡し、咲夜にお礼を言い、綺麗なハンカチで、能面状態のこころに付着した返り血を拭いとる。よし、綺麗になった。血を拭き終えたら、こころは猿の能面から火男の能面になり、ハンカチを渡してくれた咲夜にお礼を言った。こころが火男の能面になった時は、陽気な時だ。

 

 

 

 

 

 

今も月の都に侵入した妖怪たちが、月の民を殺している最中、血で少し汚れた服を着替えようと思い、実家に置いていた服に着替えて、用は終えた俺達は、実家から出た。周りを見るがどこもかしこも死体死体死体死体死体。屍山血河だ。別に罪悪感なんてないし、自分がした事に後悔や忸怩、慙愧の思いなんぞはないが、凄惨だ。幽香はともかく、紫にとっては雪辱だったとはいえ、月の民からしたら、これはだめかもわからんね。まるで俎上の魚だな、俺も月人だけどさ。

 

龜比賣(豊姫)……」

 

「弘さん。今の私は豊姫です。地上が地球の穢れで榛穢になる前に、私は龜比賣の名を捨てました」

 

××(永琳)と輝夜と咲夜を連れ、ここから離れようと思ったけど、出来なかった。豊姫と依姫がこの場に来て、豊姫に話しかけられたからだ。ただ、今この時も、月の民は妖怪に殺されている。それなのに、豊姫は、最新兵器の扇子で顔半分を隠しているが、落ち着いていた。反対に依姫は何故かそわそわしてる。

 

「月の都に来てから依姫の能力が全く機能せず、私の能力も妖怪に効果がありません」

 

それを言い終えると、豊姫は目を細め、探るような視線で俺と隣にいる輝夜を射貫き、続けざまに、寸鉄人を刺すように言った。後悔をしてない俺は、ことわざ通り死んだ子の年を数えたりはしないさ。

 

「カグヤに問います。原因はカグヤの能力と、カグヤが頸に掛けている、古事記の御頸珠ですか」

「はい。その通りです、豊姫お義姉様」

 

巫女というのは、基本的に神社の祭神に嫁いで仕え、その祭神の神託を、民に伝える事が主な役割だ。巫女が処女でなければならないのは、神に仕え、その身を捧げる際、清らかでなくてはいけないという、神に嫁ぐ巫女に対する神道の思想がある。

よく忘れられているが、そもそも巫女というのは、仕えている祭神に嫁いでいる存在なんだ。まあこれは、嫁ぐ相手が神様だから、巫女は処女じゃなければならない、という思想だ。つまり巫女がそれを破る事は、神を穢した涜神的な行為になったりする。後は、時間をかけて神をその身に降ろす依代、言わば自分の肉体や人格を仕える神に乗っ取らせて、トランス状態になるのが巫女だ。

 

しかし巫女神である依姫の場合、巫女と似た依代、トランス状態になる事が出来るが、普通の巫女と違い、即座に神を降ろして自分の体に宿し、使役する。ここで問題なのがだ、普通の巫女みたいに、降ろした神に人格や肉体を乗っ取られない事と、依姫の強みは、普通の巫女が行う面倒な手順をすっ飛ばし、一瞬で神を降ろして使役したり、デメリットが無い事だ。だがその強力な能力も、神を降ろす事が出来なければ意味がない。そして、輝夜の頸に掛けている古事記の 御頸珠 は、神降ろし、使役する事を封じている。なぜならば、古事記においての御頸珠は、高天原を支配するモノとしての証なのだ。現在の天津神は全て地上に移住しているが、つまり月の都の高天原にいた神、その全てを支配しているのは輝夜になり、優先順位は、輝夜の方が上になっている。依姫は神を使役出来るが、あくまでも力を借りるという使役だけであって、使役できる神々全てを、依姫は支配している訳じゃないのだ。更に厄介なのが、依姫は能力を使えなくても、依姫自身の能力がとても優れているので、依姫の能力を封じてもかなり強いし、今回連れて来た妖怪に、輝夜の能力を使ってなければ、太刀打ちできなかっただろう。我が妻ながら、なんとハイスペックな事か。依姫に咲夜の能力で時を止めてもあんまり意味ない。だから輝夜がいなければ、まだその時ではないのに、永琳を使わざるを得なかったろう。

 

「では、弘さん。妖怪が月の民を蛮行し、私達の周りは屍山血河です。こんな事を企てたのは…」

「俺だ」

 

それ以前に、全ての妖怪は輝夜の能力で、一時的に永遠の存在になってるし、よほどのことがない限り、殺される事はない。だから依姫の能力を解除しても、意味ないんだ。

次に豊姫の能力は、簡単に言えば相手が嫌がっても、無理矢理好きな場所にワープ、転送させる事が出来る。しかしこれも依姫と同じだ。豊姫が全ての妖怪を強制送還出来ようとも、輝夜の能力で永遠の存在になっている妖怪たちには無力。永遠は、変化を嫌うのだ。要は打つ手がなく、お手上げになったから、豊姫の能力を使って、依姫と一緒に俺と輝夜の実家に来たんだろう。豊姫と依姫には手を出さないよう、妖怪たちには言ってあるから襲われることもないだろうし。

 

妖怪らしく、圧倒的な力で有無を言わせず、相手の意思を捻じ伏せ、血祭り、屠り、蹂躙する! 神や妖怪らしく、今まで築き上げた下らん価値観を全て壊し、殺戮の限りを尽くし、略奪し、捻じ伏せ、月の民が苦しみ、泣き叫ぼうが、死んでも蘇生させるし問題ない。痛いのは一瞬だけだ。なにも俺は、麻薬みたいに殺す事が快感を感じる訳じゃないし、どこぞの雷帝みたいに串刺しや永遠に続く痛みを与える拷問なんてしない。目的は出来るだけ即死、ただ一度殺すだけだ、そして蘇生する。重要なのは、月の民が妖怪に負けたという事実がほしいのだ。その二つだけさ。だからこそ月の民の前例墨守、中には古色蒼然もあるが、腐敗した思想や価値観はリセットすればいい! 

ロシア皇帝イヴァン4世みたいにな!

 

俺と豊姫の会話を聞いて、依姫は苦悶の表情をしていた。憶えてないから、俺と豊姫がなにを言ってるのかを、理解できないんだろう。

 

「主旨がつかめない…。お姉様、なぜそれを知ってるんですか。私はこんな話聞いてません!」

「落ち着きなさい依姫。貴方は弘さんの赤ん坊を産んで間もないのよ」

 

「依姫。産んだ直後で困憊してる時に、悪かったな。だがな、俺の行動理念は基本的に女関係か、あるいは神話関係しかない」

「それは月の都が地上にあった時から知っています!」

 

たまに命は尊いとか、争いを起こさせず皆と仲良くするべきとか聞くけどさ、無理に決まってる。宗教観(価値観)が違う時点で争いは既に起きてる。頭がお花畑じゃねえんだ! 理想を追求するのは結構だが、それは現実を見据えた上で言ってもらおうか。現実を視ずに語る理想なんぞ理想ではない! 酸いも甘いも噛み分ける事が出来なければ、机上の空論や妄想にすぎん。

 

「弘さんを殺した場合、この事態は収まるんでしょうか」

「もちろん。俺が殺された瞬間、全ての妖怪は地球に強制送還される。死んだ月の民はサリエルの手で全員蘇生されるし、月の都も神綺が創り直す手筈となっている」

 

「な…なにを…。お姉様、あまりの事態に気でも触れましたか? 隊長は…弘さんは私達の良人ですよ!? 弘さんもお姉様の発言を受け入れてどうするんですか!」

 

依姫が問い詰めても、俺と豊姫は答えず、豊姫は俺に向けている視線を今も動かさない。俺達が反応を返さなかったので、依姫には、歯痒い表情をさせてしまった。だが、今は豊姫の問いに答えるのが最優先だ。

この世界は、原因より先に結果はでない。つまり因縁果に、因果的に閉じられている。これ即ち、合縁奇縁ということだ。しかしながら、これを運命と言いたい訳ではないし、そもそもこれは運命とは言わない。運命と因縁果はとても似ているが、厳密に言えば違う。ただ、何事も、どんな起源にも、生じた原因と、生じた原因という前提の元で結果が生まれ、理として絶対になっている訳だ。まあ、これは人間だけに限った話であり、俺や永琳、豊姫と依姫などの神には全く関係ない話なのだが。

 

「豊姫。死ぬ前、入滅する前に最後の説法として釈迦はこう言った。自灯明・法灯明と」

 

「…自灯明法灯明、自帰依法帰依。随処に主となる…。そこも、変わって無いんですね」

 

豊姫も知っていた様だ。ああ、釈迦はスゴイな。ユダヤ人のキリストみたいに、尾ひれが付いてる場合が多いとはいえ、あの哲学や思想は、あの古代ギリシャ人といずれ菖蒲か杜若だな。だから、釈迦が開祖した、仏教の教え、哲学、思想が好きなのだ。まあ女、酒、金、権力、放蕩に現を抜かすモノはキライだ。浄土真宗とかは火宅僧だがな。

 

「ターニングポイントだ、だから選択肢は必要だろう。与えられた選択肢とはいえ、月を守るのか、月を捨てるのか。それを、自分で選べ」

 

俺を殺すなんて簡単だ、俺の首を切り落とせばそれで死ぬ。刃物さえあればすぐに済む。そう難しい話じゃないさ。まあ俺が豊姫の立場だったら、月の使者のリーダーなんて地位、即座にかなぐり捨てて豊姫と逃げてるだろうな。俺が豊姫の立場、だったらの話、立処皆真という訳だ。

 

「…月の民に尸位素餐と謗られ、罵られようとも。月の都は、月の民は殺生を好みません。それに…無抵抗の相手を、弘さんを、斬り捨てるなんて、私には......」

 

「いいや、豊姫が月の使者のリーダーなら俺を殺すくらい簡単に出来る筈だ。月の使者なら、どっちを取ればいいかなんて明白だろう。それにキクリ(菊理媛)のお蔭で穢れも無い、なにを迷う事がある」

 

こんな事を企てたとはいえ、俺は月の民が嫌いな訳じゃない。寧ろ、愛しているからこそ、こんな事をしたのだ。だから俺は、蓬莱山という名を捨てた訳でも、月を捨てた訳でも、月人である事を捨てた訳ではない。月の民や月の民である事を捨てた訳ではない。だが、月に縛られるのは懲り懲りだ。もういいだろう。××神話の豊姫と依姫が、月の使者なんて役目をするのは。豊姫と依姫は、好きに生きていいんだ。

 

「依姫も、回帰させてください。今が――その時です」

 

……豊姫は首謀者の俺を即座に殺せると、期待していたんだが、やはり豊姫には荷が重かったようだ。月の最新兵器の扇子を開き、顔半分を隠していた豊姫の眼からは、俺を殺せないという、胸が張り裂けんばかりの、断腸の思いを伺えたので、俺は豊姫に殺されるのを待っていたが、やめる事にした。豊姫に殺されるのも悪く無かったし、厭悪や蛇蝎されるかと思ったが、痛惜だ。

 

「ああ」

 

俺は姥の能面状態のこころを被っていたが、外して歩きだし、依姫に近づいていく。依姫の表情は、ただ困惑や、疑問しかない。だが回帰すれば、俺が何でこんなことしたのか、その全てが腑に落ちるだろう。生きるために食べよ、食べるために生きるな。豊姫と依姫は、月のために生きるのか、それとも自分のために生きるのか。それがイヤだったから、俺は地上に残ったんだ。

手が届く範囲まで来て、まずは何も言わず、二人とも俺より背が低いので腰を軽く屈折し、右手で依姫を抱きしめ、依姫の隣にいた豊姫も左手で抱きしめた。

 

「依姫」

「隊…長」

 

「ごめんな。あの時、俺と永琳だけ地上に残って月に行かせたよな。面倒事を豊姫と依姫とサグメに押し付けたままだったし、永琳もいないから大変だったろう」

 

「……依姫に、月に行って生まれた弘さんの妹カグヤに従者のサクヤがいました。それにレイセンやサグメもいましたから。寂しくても、忙しくても、カグヤ達のお蔭で、悪く無かったです」

 

そう言った豊姫は、涙声で、歔欷きだった。二人の顔は観えない。二人を同時に抱きしめているので、俺の両肩の上に、豊姫と依姫の顔があるからだ。右手で依姫の後頭部に掌を当てて、薄紫色に近い銀髪の髪を撫で、左手の指で豊姫のさらさらな金髪を梳かす。豊姫と依姫は、元々二人がまだ子供だつた頃に、俺が稽古をつけた。師と弟子なんて立派な関係じゃなかったが、豊姫と依姫は、青は藍より出でて藍より青しだ。

 

「月の使者なんて地位、本来なら俺と永琳がする筈だったのにな。お前達が子供の頃に、俺が師匠に頼まれ、成人するまで稽古付けてたから、後釜としてそうなったんだろうが。苦労をかける」

 

「私、が…月の、使者になったのは…月の都を、守る月の使者が、重荷になった、事はないんです。その大役を、仰せつかった時も…殊勝な考えじゃ、なかったんです…」

 

依姫は嗚咽を漏らしているが、多分泣いて言ってる。俺達には死という概念はあっても、寿命が無い。そもそも俺達は不老だからこれ以上は老けないので、若々しいままの姿でいられる。それに、俺を除いて死んだとしても蘇生できるし、蓬莱の薬さえ飲めば不老不死になる事も出来る。だからこそ、落落として晨星の相望むが如しになる事はないし、ずっと一緒にいられるんだ。

 

「月の使者、なら、許可があれば、堂々と地上に行けるからです…。隊長と八意様が、まだ生きているかもしれないと、そう考えただけなんです。月の民を守るなんて、大層な考えじゃない…!」

 

「いいんだ。もういいんだ依姫。ずっと一緒にいてやれなくて悪かった。産んだばかりなんだし、休め。師匠…依姫と豊姫の親父さんも、ちゃんと蘇生するから、また会える」

 

もう限界だったのか、豊姫と依姫はありったけの力で俺に抱きつき、思いっきり慟哭して泣いた。豊姫と依姫は華奢な体なのに、どこからこんな力が出てるのかと思うほどで、あまりの力に、俺の体からはみしみしと音を立てられる。軋んでキツイが、今までほったらかしにして、二人に迷惑をかけた分の代償と思い、ここは、黙って耐えた。

 

 

暫くして、豊姫と依姫はまだ嗚咽を漏らしているが、もう泣き終えた様だ。体中軋んで殺されそうになったが、因果応報だ。しかし、今しておこうと思い、サグメと同じように、蓄積された記憶のデータを上書きするため、人差し指を依姫の唇に当てて回帰しようとしたが、ここは抱きしめながら口付けで回帰させることにした。触れ合うだけの口付けをし終えたら、繋がっていたお互いの唇を離す。

 

「……」

「やあ依姫。主旨がつかめただろ」

「…そうですね」

 

抱きしめるのをやめ、豊姫と依姫から一歩離れたら、離れた即座に、大泣きしたから赤く潤んだ目になっている依姫が、ずいっと近づき、依姫は左手を思いっきり振りかぶった瞬間、俺の首が横に曲がって、頬に痛みが生じていた。多分今の俺の頬には、綺麗な紅葉の形をした跡が残っているだろう。

 

「うわらば!? 痛いじゃないか依姫!」

「数億年も私達をほったらかしにした酬いです。私とお姉様を娶ったなら、弘さんの付き人として傍に置いて下さい。私は、六の宮の姫君みたいな結末、絶対にイヤです。反省してください!」

 

「依姫の言う通りです。今回ばかりは、弘さんを庇い立てしてあげませんからね~」

 

依姫を回帰させたのはいいが、いきなりの平手打ち。まあ怒らせるような事をしたから当然なんだけどさ。まだ機嫌を悪くしている依姫は、泣いた後の顔を観られたくなかったのか、腕を組みつつ俺に背を向けている。依姫と同じで泣いたから目が赤くなっているが、反対に豊姫は落ち着いていて、のんびりした様子で、月の最新兵器の扇子を開いて、俺を扇いでくれた。……月の最新兵器の扇子で俺を扇ぐという事は、豊姫の表情は笑顔だけど、本当は怒ってるのかもしれない。

しかし、右手で頭を押さえたまま、鈴瑚やる~ことのセクサロイド達から情報のやり取りをしつつ、今まで見守ってくれていた永琳の言葉で、現実に引き戻される。

 

「弘。鈴瑚とる~ことからの報告よ、へカーティアと純狐が来たわ」

「漁夫の利で来たな、まるでロシアじゃないか…。××(永琳)、俺はギリシャ神話の女神を抑えるから、鈴仙を純狐に宛ててくれ」

「判ったわ。いってらっしゃい。気を付けてね」

 

豊姫と依姫も付いて来ようとしたが、こんな事態になったのは俺が原因だ。だから自分がした事のけじめだけは、自分でしこりを清算しておかねばならない。なので豊姫と依姫には、輝夜の護衛を頼んだ。ただし、妖怪が先に手を出してきた場合その妖怪は殺すよう伝えた。まあ、咲夜と永琳がいるからよほどの妖怪じゃない場合、妖怪の方が返り討ちにあうだろうし、そもそも今回の首謀者が俺なので、絶対に妖怪に襲われることはないが、一応輝夜が心配だし、豊姫と依姫に任せる。

 

…日本神話も! 中国神話も! ギリシャ神話も! 今も昔も、それぞれの神話に出てくる神達が、神話ではお互い殺し合ってきた! ただし神話において、大抵の場合は圧倒的な力で、一方的な殺害の、一撃必殺ばかりだ! そこに時間や手間なんて殆どかけていない。だから俺も、それに倣おうじゃないか。なあ、純狐、へカーティア・ラピスラズリ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名は純狐。月の民に仇なす仙霊である。月と月の都は無くなったみたいですね……。しかし感じる、嫦娥はまだ死んでいない」

 

「サグメ様の命でここに居る運命は逆転し始めて…ないのよねーこれが。あの時のように勝てるのかな。でも弘天様やお師匠様が大丈夫って言ったしなあ」

 

「不倶戴天の敵、嫦娥(青娥)よ。見ているか? お前が出てくるまで、こいつをいたぶり続けよう!」

 

 

 

終わってしまえば朝顔の花一時だったが、ドレミー・スイートは夢幻世界にいる。今回の事態が起こる事を知っていたサグメは、ドレミー・スイートの力を借りてないし、第四槐安通路もない。まあ、サグメはどこかで観てるんだろうが。 雨が降ろうと槍が降ろうと、どんな手段を講じてでも、かつての月の都を守った月の賢者だったしな。純化した妖精、穢れ塗れの、生命の象徴である妖精族に手こずっていたが。

 

「どう観ても話が噛み合ってないな、あれ。キクリとルーミアも傍観してるだけみたいだし」

 

純狐の相手してるし、大変そうだなー鈴仙。まあ、神綺がもう一度月と月の都を創り上げ、サリエルが月の民や純狐の子供の蘇生を終わらせるまでの間、時間を稼いでもらわなきゃな。紫と幽香に持たせた、日本神話の天羽々矢、インド神話のインドラの矢、トリシューラ、パスパタの神具を使って、月と月の都を消滅させたが。流石、インド神話の武具。破壊力と神々のクズさ加減に関しては、ギリシャ神話に勝るとも劣らない。インド神話にも、全人類を滅ぼす話があるからなあ。

しかし、豊姫と依姫は、またダメだった。一度だけ、たった一度だけ俺を殺せた時があるんだが、それ以降は、一度も俺を殺せていない。あの時は、まだ世界が初期頃だったが、俺を殺したから、豊姫と依姫は、ずっと後悔してるのかもしれん。

 

「やっぱり豊姫と依姫は未熟か。首謀者の俺と××(永琳)、カグヤとレイセンを殺せないなら、月の使者のリーダとしてはダメだな」

 

「いいのー? あの月の使者、綿月のお姫様達は、貴方の妻なんでしょう。ちょっと自分勝手じゃない?」

 

「創業は易く守成は難し。お前はそれをギリシャ神話最高神ゼウスに、面と向かって言えるのか」

「言えないわね、実際。あそこで純狐と勝負してる玉兎は、確か貴方のお気に入り玉兎よね?」

 

宇宙空間で漂う中、宇宙空間なのにどこからともなく声が聞こえ、その人物は鈴仙が純狐に殺されるかもしれないという意味で、俺に問うた。

俺に道徳、論理を求めるべきではないし、求められても困る。それに俺は、豊姫と依姫に選択肢を与えたのだ。本来、俺や永琳を殺せるように、輝夜の能力は使っていない上に、無防備のままでいた。平将門を助けるため、輝夜の能力を解き、マミゾウの能力で、平将門に化けた時からずっと、輝夜の能力は俺に使っていない。だから死ぬ事は出来た。別に、殺されてもよかったのだ。俺が死んだ場合、全ての妖怪は地球に戻すよう妖怪たちが使った魔方陣に細工してるし、もう月の都に来られない様にもしていた。月の民が殺されていても蘇生すればいいし、月の都が酷い有様の場合、神綺にまた月の都を創り直すよう言ってある。だから豊姫と依姫が俺や永琳を殺そうと思えば出来たし、俺を殺した方が月にとって、月の使者である豊姫と依姫には、都合がいい事ばかりだったんだ。月と月の都に根を張っていた日本神話の宇宙樹さえ、俺を殺せば活動は止まってたんだ。

 

「いいんだよ。この戦争は××神話の豊姫と依姫が、月の使者の役目という枷を無くす為でもあるし、純狐を一方的に倒すより、均衡の勝負が出来る鈴仙を使って時間を稼いだ方がいい」

 

鈴仙が純狐に殺されても、蘇生すればいい。鈴仙が殺されるのかを心配するより、今は時間を稼ぐことが先決だ。

例え俺が殺されてもそれで良かった。豊姫と依姫は俺が愛している女だ、殺されても恨む訳が無い。それに豊姫と依姫に殺されるなら、それはそれで本望だ。俺が死んだら、私以外に殺されるな、と言いそうな神奈子が煩いだろうが。殺されたって、嫌われたって、恨まれたって、夫婦じゃ無くなっても、どれだけ回帰しても、俺が一方的に、豊姫と依姫を愛すさ。俺が殺された場合、俺は寧ろ称えただろう。何故ならば、月の使者は、月の都を守らねばならん。それが例え、身内や夫が相手だろうとな。俺が殺された場合は、豊姫と依姫は月の使者としての使命を、立派に果たしたんだ。それは驕ったりせず、誇っていいモノだ。豊姫や、依姫もなんとなくは理解していた筈だ。しかし、豊姫と依姫は、俺を殺せなかった。だから豊姫と依姫が俺と永琳を殺せなかった時点で、二人とも月の使者である事を、捨てたのだ。俺を殺すか、俺を殺さないか、その一択しかない。その二択を同時に取る事は、無理だ。

 

「ただしへカーティア・ラピスラズリ、テメーはダメだ。お前と純狐のせいで俺の計画が狂った」

 

月と月の都は消滅した。神綺とサリエルに新たな月を創造してもらえばいいとして、本来ならこれで終わりだった。後は諏訪国に帰ったらよかったんだが。次の問題が、今俺に話しかけていたヤツだ。すると宇宙空間の、この場所が歪んだり裂けたりして、おいでなすった。

 

「なんでこころ被ってるの」

「気分だ」

 

さっきから気になっていたのか、へカーティアは出会って早々、こころについて聞かれた。聞かれたこころ本人は、狐から大飛出の能面になって、へカーティアの服装について言及する。

 

「なんだあのダサい服装は、女神の感性はおかしいよ。どう思う弘天さん。ダサいよね?」

 

「こころちゃん、あれでもギリシャ神話においてはゼウスに一目置かれている高位の女神なので、暴言と取られかねない発言は連帯責任で俺が殺されるからやめなさい」

 

そいつは赤髪のロングヘアー、白い文字で Welcome Hell と描かれたオフショルダーの黒いTシャツを着ている。下はミニスカートで濃い色の三色カラー、裾部分に黒いフリルと小さなレースがある。靴なんて履いて無く、生足状態だが、そんな事はどうでもいい!!

右手を閉じて、人差し指だけをその相手に向ける。

 

「首置いてけ!!! なあ、魔女や妖精の総締めだ!!! ギリシャ神話のヘカテー(エジプト神話のヘケト)だろう!? なあヘカテー(ヘケト)だろおまえ!」

 

「んもう違ーうわよー。私はへカーティア・ラピスラズリ…ってギャーッ! 殺されるーッ!! 妖怪 首おいてけ だーッ!」

 

「誰が妖怪か! 俺もお前も神だろう! この変なTシャツヤロー!!」

「はい私の暴言を吐いたから殺す。貴方を殺しても地獄に堕ちないけど、死んで悔しがれ!」

 

まずはいきなりへカーティアの首に一太刀浴びせて斬り付けると、全くの無傷。こんな刀では掠り傷一つ付けられないのは分かっていたが、俺は次から次へと刀で腕や足や顔に斬り付けても、へカーティアの腕に防がれて攻防の繰り返し。傍から見たら俺の一方的な殺し合いだろうが、俺達からしたらただの戯れで、ここまでおいでー 待て待てー みたいに、よくあるキャッキャウフフを、俺たち神も真似してるだけだ。それに刀と言ってもこれは地上で打って貰ったモノだ。へカーティアという神相手に一太刀浴びせても、こんな刀では鈍らで、ティッシュでへカーティアを斬り付けてるも同然。ティッシュ一枚で人を斬る事は出来ないだろ、それと同じ事だ。

また一太刀斬り付け、へカーティアがそれを防ぎ、俺だけ刀だが鍔迫り合いのまま話を続ける。

 

「久しぶりだな。ギリシャ神話 ガランティス の、お前の侍女は元気か」

「まずはお久しぶり。ガランティスは元気だね。神綺やサリエル、映姫は元気?」

 

「ああ、いつも通り地獄と魔界と諏訪国の総括女神様たちだよ。とりあえずニュンペー達が純化しても無駄だぞ。そもそも天神地祇に純狐の能力は、本来効かんのだ」

 

「知ってる。でも、純狐って殺す時は一途だし止まらないよ。そう! 誰かが止めなきゃね!! もしくは憎しみを別の感情で無くすとか。このこのー憎いね」

 

下らない世間話をしつつ、俺は斬り付けるのをやめて後退し、一旦距離を取る。へカーティアは片手を挙げ、宇宙空間でこの言い方はおかしいが、へカーティアの影や背後の裂けて歪んだ空間から、純化した地獄の妖精たちが、ぬるりと湧き、呼び出された妖精が。一人…と言うべきか、一匹と言うべきか、とりあえず1人の妖精がへカーティアの元へと来た。あれは確か…ギリシャ神話のへカーティアの僕、ランパス達の頭、クラウンピースだな。呼び出された全ての妖精は生命力の塊と化している。要は穢れそのモノ。他にも吸血鬼のモルモーとか、妖精のレーテー、ブラックドッグ、バーゲスト、ワイルドハント、サテュロス、セイレーン、クローリス、メンテー、などなど。…へカーティアのヤツいくらなんでも多く呼びすぎだろふざけんな! へカーティアは気にせず話し続け、妖精ランパスのクラウンピースはへカーティアの隣に来て、左手に持ってる松明みたいなモノを振り回して狂喜乱舞している。

 

「きゃはははは! なんか月と月の都が無くなってて面白い事が起こっているわご主人様ー!」

 

「あれだけ回帰したからもう恨んでないけど、純狐に頼まれたら断れなくってさー」

「ギリシャ神話の女神が中国神話の女神と仲良くなってどうする…」

「私は元々ギリシャ神話の女神じゃなくて、別の神話の女神だったからね。まあ過程はどうあれ、今はギリシャ神話。……そもそも、私のルーツはエジプト神話でもないけど」

 

クラウンピースをほったらかしにしてへカーティアと会話してると、松明を振り回していたクラウンピースの動きが止まって、俺とご主人様のへカーティアを交互に見る。しかし理解できなかったのか思考放棄し、クラウンピースは訝しそうな顔で、俺を見る。

 

「んー? いまいち状況が判んないけど、ご主人様と楽しく話してるよね。でもあたい、あんたを見た事ないし、だけどご主人様がこんな表情するの初めて見た。あんたご主人様の敵? 味方?」

「敵だ、味方ではない」

 

「じゃあ月の民だな!! 妖精達よ、もっとスピードあげていこうよ! It's lunatic time!! 狂気の世界へようこそ!」

 

恐れを抱かずクラウンピースだけが突進してきたから念話で神綺とサリエル、吸血鬼の始祖くるみの名を呼び、地獄や魔界にいる悪魔や妖怪、冥界にいる化け化け、くるみの眷属を全て呼び出させ、魔方陣で転移してもらう。すると俺の背後と周りは、悪魔や妖怪だらけで壮観になり、一気に兵が揃った。戦力としては十分。純化して強化されてるとは言え、ランパスなどの妖精相手としては十分すぎる。それを見たへカーティアは、宇宙空間なのに口笛を吹いて感慨する。

 

「枯れ木も山の賑わい。前哨戦とはいえ、相も変わらず風靡で壮観ね」

「俺の力ではない。一部を除いて、神綺、サリエル、くるみのお蔭だ」

 

「懐かしい。貴方の立ち振る舞い、まるで原初神だった弘天の全盛期。最高神の時みたいよ」

 

「そんなモノは有名無実だ。それにもう1柱の原初神、天之御中主神はオレに面倒事を全て押し付けてから、どこかに行ったがな」

 

今もなお、俺の元へ突っ込んでくるクラウンピースは妖精だ。本当の意味で死ぬ事はない。更に、クラウンピースが波にのっているのは、自分が友人様の純狐に純化され、穢れ塗れだから月の民を圧倒出来ると聞かされてるからだろう。とりあえずクラウンピースは攻撃せずに突進してきただけだったので、悪魔や妖怪、化け化けやくるみの眷属たちには手を出させず、左手で俺の元まで来たクラウンピースの首根っこ掴んで動きを封じる。

 

「純化してても俺が対処できる程度なら、大した事ないな。俺を殺すなら純化より、もっとえげつない手で来なきゃダメじゃないか」

 

「ええい放せー! …待てよ。…今のあたい純化してるから穢れそのものだし…やっぱりそのまま触れー! そして穢れで死んで地獄に堕ちて地獄の女神のご主人様の手で苦しめー!」

 

「どっちだよ。そもそも月の民は死んでも地獄にはいかないぞ」

 

なんとも、鄙劣なことか。ああ…確かに月の民は生死を拒絶したさ。でも、俺からすれば、純化した妖精の方が…。

別に俺は、弱者を淘汰して、実力主義を主張したい訳じゃない。かといって、みんな平等に出来る訳が無いと思ってるから、平等主義ではないし、争いを無くそうなんて考える平和主義でもなければ、全人類のみんなが争わず静謐に、仲良くできるなんてアマイ考えも持ち合わせていない。例え平和になっても、それは数十年か数百年だ。だが、それを平和とは言わない、ただの一時しのぎに過ぎない。平和が永遠に続くことは絶対にないんだ。それに平和を語り、謳う前に、まずは平和の定義について話し合う方が先だ。

しかしながら、正邪の野望は看過できない。まあ基本的に放置して無理矢理傀儡にするが、正邪の才能は逃げ足と口だけだ。それ以外は取るに足らないザコ。下手をしたら、妖精より弱いだろう。…まあ、今も片手で首根っこ掴まれてるクラウンピースは、純狐の能力で純化して強化されてるし、俺はともかくあの正邪ではまず歯が立たない。

 

「純化した妖精のエネルギーは鬼神を越えるって言われたのにー!」

「鬼神か…純化して神の力を授かろうと、所詮は妖精。妖精如きが、鬼神を超えるのはありえないな」

 

量子学は大好きだが。そもそも、弱者に希望を持たせる可能性という甘言、俺は昔から大キライだ。そんな言葉は、世界から無くなればいい。俺から言わせれば、可能性という甘言で、弱者に夢や希望を持たせる方が酷だ。だから弱者は弱者らしく、地面に這い蹲っていればいい。札戮や略奪が悪だとよく言われるが、実に下らない。自分達にとって都合が悪いモノや、人間の道徳から外れた行為に対し、悪などというちんけな概念で定義付けしか出来んのか。その言い分では、まるでかつての、古代ローマ帝国にいた一部のキリスト教徒と変わらないじゃないか。

それに、その行為が人間として間違っていても、それは神や妖怪には関係ないし、それ以前に札戮や略奪は自然界ならよくある事だ。だから札戮や略奪は、世間から観てそれが人間として間違っていたとしても、動物としてなら何も間違っていない。これはジュラ紀や、太古に生命が生まれた時から、既にある事だ。

 

ニュンペー(妖精)のクラウンピースを観てたら、ギリシャ神話のある話を思い出し、今もなお俺に首根っこ掴まれたまま、暴れているクラウンピースに危機感を持たせるため、そのまま話した。

 

「……クラウンピースに吉報の、一ついい事を思い出した。知っているかクラウンピース」

「な、なにを」

 

Νύμφη(ニュンペー)とはヘカテーの部下でもあるが、月の女神Ἄρτεμις(アルテミス)の従者でもあり、そもそもニュンペー(妖精)とはΚαλλιστώ(カリストー)とも言う。この妖精のカリストーはゼウスに見初められ、カリストーの警戒心を解くためにゼウスは女神アルテミスの姿になり、カリストーと月の女神アルテミスの姿になったゼウスとセックスした話だ。その後は純潔を重んじる妖精のカリストーはゼウスの子を妊娠してることが月の女神アルテミス、またはゼウスの姉ヘーラーに発覚し、妖精のカリストーが熊にされたり、殺されたりする神話。殺された後は星座のおおぐま座になってる。まあこの話は諸説多いんだが、これが一番有名だろう。

この話をニュンペーであるクラウンピースに話したが、長話で理解できなかったようで首根っこ掴まれたまま、クラウンピースは首を傾げた。

 

「…話が長い、要点だけ言ってよ。あたいはニュンペーだけど、その神話に何の関係があるの?」

 

「そうか、判らないのか。カリストーのお前と、天空神で雷神の俺とは大有りなんだが」

 

クラウンピースと話し込んでいたら、俺のフォローか、クラウンピースに危機感を持たせる為かは判らないが、へカーティア・ラピスラズリは自分の部下クラウンピースに分かりやすく説明した。

 

「要はクラウンピースとセックスし、処女という名の純潔を散らせ、カリストーがゼウスのせいで酷い目に遭ったように、クラウンピースも同じ目に遭わせるぞ、って弘天は言いたいのよ」

 

それを聞いたクラウンピースはやっと理解したのか、暴れるのをやめて顔をばっと上げ、俺に首根っこ掴まれたまま俺の顔を観ると、次にご主人様のへカーティア・ラピスラズリに顔を向けて問い質す。

 

「ウソでしょご主人様!? そんなことされたらあたいご主人様の従者じゃなくなる!」

「うーん、それ以前の問題だと思うけど。妖精も妊娠できるからね」

 

さっきまで元気ハツラツだったクラウンピースが、なぜか借りてきた猫みたいに大人しくなり、目の焦点が合ってなく、一貫性や落ち着いた様子がなくなり、顔を上げると不安げな表情で俺を見て聞く。

クラウンピースは俺が月の民と見なしてさっき突っ込んで来たが、そもそも純化して、穢れ塗れのクラウンピースを首根っこ掴んで触ってても、俺が死なない事に疑問を持ったようだ。後は、俺に純潔を散らされるかもしれない不安もあるのだろう。

 

「…あのー貴方様はどうして純化してるあたいに触れるんでしょうか? 友人様の能力を使って、ニュンペーの私が純化したら、月の民は手も足も出せないと友人様から聞いたんですけど…」

 

「いや、実はな。それ純狐の嘘…っていうか勘違いなんだ。日本神話も中国神話もギリシャ神話の神々も、本当は純化なんてしても効かないんだよ」

 

「効かない!? しかも友人様の勘違い!? ご主人様ー! 本当なのー!?」

「本当よー。正確に言えば勘違いじゃなくて曲解だろうけどー」

 

ガーンと、クラウンピースは漫画の吹き出しが出そうなくらい、衝撃を受けた顔になる。俺は今もクラウンピースの首根っこを右手で掴み、クラウンピースの顔を俺の顔に近寄らせた。じろじろと見たが、クラウンピースが片手に持っている松明を見て思い出したので、へカーティアに聞く。

 

「おいへカーティア。このクラウンピースが持ってる松明、ギガントマキアーの時にさ、ギリシャ神話の クリュティオス を殴り殺した時の松明をあげたのか」

「懐かしいねー。光を浴びた者が狂うのも変わって無いよー」

 

「てか、天使と悪魔、天国と地獄の思想はゾロアスター教が起源だったよな。別の宗教では、悪魔の容姿、ギリシャ神話の パーン をモデルにしてたけど、へカーティアが地獄にいるのは」

「それを説明するとかーなーりーのー時間が必要」

 

争いはなにも生まない。そうほざくヤツがたまにいる、なーに言ってんだ、今じゃ当たり前に使えてるが、インターネットは元々戦争が起きて生まれた産物だろう! 争いを否定する事は、今まで築き上げたそれらを否定する事と同じだ! 自分が戦争によって生まれた産物の恩恵にあやかっているのに戦争を否定するだと。フハハハハ! 滑稽じゃないか!! アラビア科学、医学、哲学の恩恵を受けている日本人が宗教を、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教を否定するみたいにな! 空き樽は音が高い、だが清濁併せ呑めばいいのだ。

 

「さて、話し合いは終わりだ。鈴仙の邪魔をされても困るし、俺が相手しよう。テメーを殺して、純狐も殺す。俺が勝ったら嫦娥を諦めてもらい、能力でいる後二人のへカーティアと純狐も娶る」

 

魔女と妖精は諏訪国にいる。だからこそ、こいつは、へカーティア・ラピスラズリだけは、なんとしても引き込んで娶らねばならない。なにせ、へカーティアが治める一部の地獄には、地獄の妖精として、光の三妖精のサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアが、へカーティアが治める一部の地獄に結合されているティル・ナ・ノーグにいるからだ。だからへカーティア・ラピスラズリを娶れば、光の三妖精のサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアが一緒に引き込める。

 

「雀百まで踊り忘れず。弘天は、ほんと香囲粉陣が好きよね。能力の恩恵でいる、私を含めた私自身の三人はともかく、友人の純狐を殺されるのは困る」

 

殺す発言と娶る発言を聞いて困った表情をしたへカーティアは、人差し指と親指を顎に当てて、少し悩んでいた。純狐は生まれ方が少々特殊なので、蘇生する場合は困難を極めるだろうが、まあへカーティアの場合ならまだ楽だ。殺してもすぐに蘇生できる。

 

「…でも神綺やサリエルと身内になるのも悪く無いし、出合い頭にレイプしない分、ゼウスよりはマシか…いいわ。私が勝ったら嫦娥を渡してもらうわよん」

 

「なんでゼウスなんだよ。お前の場合はアポロンと関係を持ち、ヘルメースとセックスして娘が」

「おっとそれ以上はいけない。何度も言ってるけど私は元々ギリシャ神話の女神じゃないのよ!」

 

いきなり俺の隣に来たへカーティアは俺の右腕にアームロックを掛け始めた。不意を突かれてアームロックを受けてしまったので、それを防げなかったが、なぜかへカーティアに謝罪を要求された。俺が謝辞したらアームロックを解き、さっきまでいた定位置にへカーティアは戻る。なぜかへカーティアは、左手で今も捕まえているクラウンピースを、序でに連れ戻さなかった。

 

「イテーだろなにしやがる!」

「だって、暗黙のルールをしれっと破り、禁句を言おうとするから…虚言はやめてねん」

 

「…原理主義じゃあるまいし、お前がそんな事を気にしてどうする。そもそも、神話好きの俺が、神話の内容で虚言を宣う訳が無いだろ」

 

いや、この場合、原理主義は語弊があるか。ギリシャ神話の女神の多くは、基本的にヤリまくりだ。色んな男と関係を持っている女神はたくさんいるし、ギリシャ神話の女神に、処女とか純潔とか、モラルを求める以前の問題、という話になるだろう。だが、ギリシャ神話には、処女神という女神も、それなりに、いるにはいる。まあ、ヘカテーに関する資料は、かなり少ないからな。

 

ギリシャ神話のἙκάτη(ヘカテー)と言えば、処女神なのは有名だ。処女神とはギリシャ神話だけではなくて、エジプト神話にもいるのだが、処女神はあのゼウスでさえ犯す事は出来ないし、そもそもしてはいけない。ギリシャ神話ではヘカテー以外にも処女神は結構いるんだが。それでもヘカテーが処女神と聞くと、俺は首をかしげざるを得なかった。

 

「いやそんな筈がねえ。確かにヘカテーは決まった夫、配偶神がいない。だがヘカテーがセックスしてるギリシャ神話もあるし、そういう説があるのを俺は知ってる。しかし…まさか......」

 

ヘカテーが処女……。おかしい、それは実におかしいな。俺が多く読んだギリシャ神話の中には、確かにゼウスからは手を出されていない。しかしヘカテーはゼウス以外と普通にセックスして娘を産んでいた。それはアポロンやヘルメスが有名だろう。まあ、ヘカテーがセックスした神話は一部なので、資料は少ないのだが…。だから俺は最初から、へカーティアは処女じゃない事を前提に、娶ろうとしていたんだ。なのに予想してなかった事態に脳が処理できず、へカーティアが答えないのは理解してても、とりあえず本人に聞くことにした。この俺がギリシャ神話に限って、神話に出てくる女神がセックスしてるかどうか。

俺があれだけ調べ上げたギリシャ神話の歴史と多くの資料、ヘカテーの歴史と資料を、忘れる訳が無い。

 

「......へカーティア。お前―――処女なのか」

 

「なんで欣喜せずに落胆してるのよ…。さあね。私を娶って膜があるか確かめたらいいよん」

 

へカーティアは肩をすくめて答えず、自分を娶って確かめろと挑発した。そう言われて黙ってられなかったので、戦う前に右腕を回して脱臼してないか確認する。痛みを感じるが、あまり問題は無いようだ。その後も色々話をし、色々思い出して懐かしかったが、もう話し合いは、いいだろう。では始めよう。

 

「クソッ! へカーティア相手だと長引けば俺が不利だし、短期決戦で終わらせるぞ」

「んもう、もっと万古不易に続けましょうよ。せっかちさんは嫌われちゃうわよー。うりうり~」

 

俺の隣に一瞬で転移して来たへカーティアが、笑顔のまま左手の人差し指で俺の頬を突いて来た。鬱陶しいので振り払うと、また元いた場所に転移して戻る。

へカーティアの能力は、三つの身体を持つ能力だ。だから、へカーティアは本気を出す為か、空間がまた裂けると、金髪と青髪の髪色、二人のへカーティアが来て、へカーティアが三人になった。悪くない。俺は今も首根っこを掴んでいたクラウンピースを、疾風怒濤の如くへカーティアに放り投げると、投げられたクラウンピースは絶叫したがへカーティアがキャッチした。クラウンピースは純化しても、俺に効果が無い事を理解しているせいか、3人の内、真ん中にいるへカーティアの足の後ろに隠れながら、松明を持ってない空いた片手で白旗を振ってる。戦意が無くなったみたいだ。

龍神と衣玖の名を呼ぶと、俺の両脇にそれぞれ現れたので、黒髪で長髪の姿、スゲー美人な人間形態のまま現れた黒龍、龍神の腰を右手で、左手で衣玖の腰に回して抱き寄せる。

 

「衣玖、龍神。ギリシャ神話の女神、へカーティア・ラピスラズリを三人とも殺すから手伝え」

「はい。旦那様の仰せのままに」

「も~。弘ちゃんの思し召しとはいえ龍使いが荒いよ~」

「へカーティアが相手だし、隔靴掻痒になると困るんでな」

 

純狐相手には、穏便に済むような話し合いを求めても無理だ。折衷案もない。呉越同舟もダメだ、利害の一致を模索しても、青娥が××神話側にいる以上平行線だから、講和も出来ない上に、相手が納得する理由を述べるのも無理だ。今はサリエルが純狐の子供を蘇生させてるが、その蘇生した子供を宇宙空間に連れて来て、純狐に見せて話し合いを求めても、純狐は納得しないかもしれない。そうなると、現時点で残った手は、有無を言わさずへカーティアと純狐を蹂躙し、双方を力で従え、無理矢理にでも納得させるしかない! 

 

俺の枷と軛も全部無くして龍神の腰に回していた右手を挙げ、へカーティアも片手を挙げる。

夥しい程の悪魔も、妖怪も、化け化けも、眷属も、妖精も、準備はとうに終えているのだ。後は、陣触れの合図だけすればいい。

 

「俺は月の使者の代理、××である! この先何度も月に仇成す事は間違いねえテメーを殺す!」

 

古代ギリシャの哲学者 ヘラクレイトス は言った。

『戦いは万物の父であり、万物の王である』

お互いに譲れないモノがあったり、お互いが納得できない場合、争いは必然だ。

これは神話時代からなにも変わッてねえし! 変わる必要はないッ! 

 

「さあ、トリニテリアンであり、月と死の女神であり、魔女と妖精の支配者へカーティアよッ! ××神話の日本神話と中国神話とギリシャ神話の三つ巴を始めようではないかッ!!」

 

「私はギリシャ神話の女神じゃないけどねッ!」

 

そのまま俺達は腕を振り下ろし、幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギリシャ神話にはニュンペーという妖精がいます。ニュンペーとはギリシャ神話の女神ヘカテーの従者の妖精なんですが、このニュンペーとはカリストーとも言われ、簡単に言えばこのカリストーはギリシャ神話の月の女神アルテミスの従者であり、アルテミスの分身ともいえる妖精です。
このカリストーの美しさにゼウスが恋をし、ゼウスはアルテミスに化けるとカリストーに近づき、セックスして妊娠させます。ですがカリストーが処女、純潔を無くしたせいで熊にされたり殺されたり星座になったりします。まあセックスせずに、つまりゼウスは男性器を使わずに、アルテミスという女神の状態でカリストーを妊娠させたという説もありますけどね。
そして弘天はゼウス同様、天空神であり、雷神でもあります。あと女好き。他にも弘天には、色々と混ぜてるんですが。
だからここでのクラウンピースは、ギリシャ神話の妖精カリストーを混ぜています。
ここで肝心なのが、例え妖精でも、セックスすると妊娠出来る、というのが重要です。

純狐とへカーティア・ラピスラズリが原作に登場したのでプロットを練り直し、かなりの軌道修正しました、だから今回の話は私が考えていたプロットと比べると、大幅に変更されてます。

純狐の話は次話に回します。月の兵器、片手バルカンとか超小型プランク爆弾は原作から拝借しました。



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Κήρ

三柱女神のへカーティア、吸血鬼、妖精を撥乱反正し終えたが、白駒の隙を過ぐるが若し。今回、俺が琉球王国と蝦夷地の妖怪を従えた娘達の幽香、妖怪の賢者の紫に頼み、日本神話とインド神話の道具で月、月の民、月の都を滅ぼしたのは、へカーティアはともかく、純狐にとって好機だったろう。でも実際は、花は折りたし梢は高しだ。そう都合よくはいかず、月に叢雲花に風でしかなかった。居安思危してるから、今回の出来事を何度回帰しても、早牛も淀遅牛も淀なんだ。月と月の都が滅ぼされ、例えそれが罠だと判っていても、純狐からしたら、来ざるを得なかっただろうが。

だがへカーティア達に一方的な殺戮をしたので、詞藻で言うと、さながら日中戦争時の日本軍が、中国へ重慶爆撃した時みたいだ。アメリカに広島と長崎へ原子爆弾投下された日本も、中国に同じコトをしてるので、アメリカを責めたりはできん。まあへカーティアは、ギリシャ神話の女神だが。

 

「うわーん! ご主人様ー! 私達を残して死なないでよー!」

「生きてたら返事しろへカーティア。傷は浅いぞ、しっかりしろ!」

 

「あんたのせいだろー! あんな雷撃を出すから世界や全宇宙が鎔解、焼き尽くされて一度滅んじゃったよ! あたいは妖精だから死ななかったけど、あんた頭おかしいんじゃないの!?」

 

「地球にはその飛び火を受けさせてないし、滅んだ宇宙を元の状態に回帰したから別にいいだろ。それにいたぶる趣味はないから、雷霆万鈞の方がへカーティアを楽にしてやれると思ったんだよ」

 

地獄の女神の従者である、ニュンペーのクラウンピースは、三柱女神の内、赤髪のへカーティアの死体を両手で揺すりながら、頽れてわんわんと泣き込んでいる。俺も宇宙空間で漂う赤い髪色のへカーティアの頬をぺチぺチ叩いても無反応。へんじがないただのしかばねのようだ。一応、彼女の肉体が灰燼に帰すことがないように力加減を調節したんだが、やりすぎたか。へカーティアが着ている服もボロボロだし、宇宙空間なのに、雷撃のせいか所々焦げ、彼女の肉体を品騭して観たら、体の一部のパーツ、足先や手の指とかが欠けていて、五体満足では無くなっている。だがこれも、千古不易だ。

でもへカーティアが俺に負けたという事は、この時点で俺はへカーティアを娶った事になる訳だ。神子達や映姫みたいな阿衡の佐はもっと欲しいから、後で欠けた体の一部を戻し、蘇生してやらなければ。地獄の女神に呼び出された妖精の大群も、纏めて雷撃で一斉に殺したが、妖精は死んでも死なないし放っておく。ただ妖精以外も呼び出してたから、そいつらも一緒に蘇生しなくてはいけない。さっき放った、雷撃の威力について言及しながらも、今も泣いて、諠鬧している地獄の妖精の肩へ片手を置き、泣き止ませるため、蘇生について話した。

 

「あの雷霆、旧約聖書の町・ソドムとゴモラが滅ぼされた時なんて目じゃない威力よ……」

「後で蘇生するから安心しろクラウンピース。ダビデの星、約束の地は間近だ」

「蘇生してくれるの? なーんだ、もう二度とご主人様に会えないと思った。これで一安心!」

 

へカーティアの体に抱きついて泣き込んでいたが、後ほど三柱女神を蘇生させる旨をクラウンピースに言を伝えると、即座に泣き止んで胸をなでおろした。変わり身が早いな。でも妖精は基本的にお気楽な性格が多いし、結構な事だ。

龍神と衣玖は、俺が念話で神綺、サリエル、くるみに頼んで呼んだ悪魔、妖怪、化け化け、眷属をそれぞれ元いた場所に転移させている。このままへカーティアを蘇生させてブリーフィングルームに連れて行こうと思ったが、そもそもへカーティアがなんの女神かを思い出した。蘇生は純狐を殺した後にしよう。魔方陣を展開してギリシャ神話に出てくる椅子を出し、宇宙空間なのに今も焦げていて、煙を発している三柱女神、へカーティア三人の死体をそれに座らせる。しかしカリストーのクラウンピースがその椅子を観ると、俺に疑問を呈した。

 

「それ…もしかしてギリシャ神話の冥府と地底のΤέως()ΑΙΔΗΣ(ハーデース)様が持ってた、忘却の椅子?」

「ニュンペーなら知ってるか。まあへカーティアは死んでるし、これに座らせても意味ないが」

 

ギリシャ神話、冥府や地下の神である ハーデース ギリシャ神話の忘却の椅子。冥府と、地底の女神、へカーティアの扱いとしては、悪く無いだろう。よくハーデースは冥界の神と言われるが、それは間違いだ。元々ハーデースは地底の神だった。ただ、後世のキリスト教徒が、ハーデースを冥界の神にしたんだ。ディズニー映画のヘラクレスのハデスは悪役にされてるけど、ギリシャ神話に出てくるハーデースは悪役じゃない。これはよく混同されるので、勘違いされやすいが、

ギリシャ神話の地底のΤέως()ΑΙΔΗΣ(ハーデース)と、新約聖書のἍιδης(ハデス)、イスラム教のالحديث(ハディース)

旧約聖書・創世記のשאול(陰府)、旧約聖書・ヨシュア記のγεεννα(ゲエンナ)は、本来同じ意味ではない。

そして、ギリシャ神話において、ハーデース、ペルセポネー、ヘカテーは冥府、地獄の神ではなく、そんなコトになったのは、主に新約聖書が原因だろう。

つまり、へカーティアが地獄の女神の場合、キリスト教の思想が、彼女に混入されているワケだ。

 

しかし地獄か。地獄と霊烏路空…お空(地獄カラス)は、ゾロアスター教起源の地獄思想と、ゾロアスター教が行う葬儀、死んだモノの死体を、死者の肉をカラスに喰わせるという鳥葬繋がりで、とても結びつきが強いモノだ。地獄にいる地獄カラスのお空は、かつて地獄と魔界を創り上げた××神話の1柱、地獄と魔界の総括女神、神綺のペットだが。

今もせっせと、悪魔たちを魔界や冥界にあるそれぞれの区域へと魔方陣で戻していた衣玖を呼び、一瞬で目の前に来た。

 

「いいかクラウンピース。このパッツンパッツンの羽衣を着ている、衣玖お姉さんに従ってくれ」

「んー判った。ご主人様が生き返らなきゃ困るからね、敗者は黙って貴方様に従うよ」

 

仕方ないと。無我の境地にいたクラウンピースは、へカーティアは蘇生するとはいえ、自分が仕える主人を殺されたのに、簡単に頷いて納得した。きっとこれは、付和雷同ではないだろう。案外、お気楽な妖精の方が、世の中の事を判っているのかもしれない。

月の都にいた全ての玉兎は、1匹も殺さず生かしているが、ただ月と月の都を創り直すまでの間、魔界、冥界、天界、地獄などへ送り、一時的な処置を施している。だから月と月の都を創り終えたら、また月の都に住ませる事となっている。ジョージ・ワシントンかな。どうでもいいけど、昔はウサギを数える際、1羽、2羽って数えていた。それで江戸時代は獣類の肉を食することは禁じられていて、獣類の肉と言っても、四本足ある獣の話だった。だから鳥みたいな二本足はそれに含まれてなかったんだが、ウサギは4本足だけど、昔から庶民はウサギを1羽と数えるから、獣じゃなくて鳥だし別に食べてもいいだろ!! という屁理屈を庶民が宣う時代があった。

 

「お待ち下さい旦那様、その措辞では私が太ってると誤解を招きかねません」

「ごめん。つまり衣玖はスゲーエロい体をしてる美人お姉さんだと、婉曲的に言いたかったんだ」

 

俺の従者でもある衣玖へ直線的に伝えたが、その衣玖は率直な物言いに両目を瞑り、右手を自分の胸に当て、自分の意思を述べ颺言し、自分が()に仕えるリュウグウノツカイというのを旗幟した。神綺が統轄している悪魔とかを衣玖に魔界へ戻してもらってたが、××神話にも天使はいて、その天使達をサリエルが統御している。当たり前だが、天使の性格は神話通り最悪だ。特に人間に対しては容赦ない。いや違うな、神話に出てくる天使の性格が、世に出ている創作物の影響で、多くの人間が勘違いしているだけか。新約聖書・ヨハネの黙示録にある天使の喇叭は、キリスト教以外に入信している異教徒の人間とか、人間としては観てないし。そもそも天使が人間の味方とか、天使が正義の味方とか、天使という存在は特に、意味不明な勘違いをされすぎだ。原因は、天使という言葉でイメージしてるのも、誤解が生じている1つの理由だろうけど、残念だがあいつらの人格、性格、天使の性格、人格は、残忍酷薄で、無慈悲で、神の敵、あるいは弱者を蹂躙する畜生しかいないんだ。だとしても、天使ガブリエル、天使ミカエルが出てくる場合、ユダヤ人だけは殺さないだろうし、ヨハネの黙示録・第14章のヤハウェが、地球に生息する全ての生物、姦淫したモノなど、神の戒めを守らないモノを全て殺し、キリストはそのさばきを、真実で正しいと言ってる。

大体、新約聖書と一口に言うが、マタイによる福音書、マルコによる福音書、ルカによる福音書、ヨハネによる福音書などに出てくる、キリスト、ヤハウェの性格は、それぞれの書でだいぶ違う。マタイによる福音書、マルコによる福音書、ルカによる福音書のキリストの性格は、まだ似ているが。

 

「…私を美人と仰って下さるのは幸甚の至りですが、リュウグウノツカイである私の存在意義は、龗神様であらせられる旦那様と龍神様、豊姫様の従者であり、私のカラダは御三方のモノです」

 

「要約すると、龗神である俺は衣玖の肉体を好きにしていいと」

「はい。私が旦那様のお気に召され、望まれるなら、喜んで私の全てを捧げます」

「…衣玖はどれだけ回帰しても、()に仕える事へ直向きだなあ」

 

地獄の女神を3人とも殺したし、これでやる事も終えた。俺が呼び出した悪魔たちを戻すのは衣玖や龍神に任せ、ついでにクラウンピースについても、純狐を殺して、へカーティアを蘇生するまでの間、衣玖や龍神に任せることにしたが、後はあいつだ。釜中の魚の純狐を殺しに行こう。

 

 

 

この場から鈴仙の元へ転移しようとしたが、その前に月があった場所へと、俺は魔方陣で来た。

 

「月は…ゼウスが真の姿を現したせいで死んだ、ギリシャ神話の神裔セメレー思い出すが……」

 

月を消滅させたから、今では観る影もないけど、跡形もなくなった月を観て、しみじみと思った。しかし宇宙空間に1柱でいると、旧約聖書・創世記や、フランスの小説『月世界旅行』とか、後はイギリスの小説『ロビンソン・クルーソー』を思い出す。いや、能面としてこころが俺の顔に張り付いてるし、宇宙、月、太陽、地球を創ったのはヤハウェだけじゃないが。

 

「旧約聖書・創世記だと、はじめに神は天と地とを創造して、地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊(・・・)が水のおもてをおおっていた――だったか。神霊って、誰のコトだろうな」

 

「一神教なら、それはユビキタス、つまりヤハウェじゃないの?」

「それがな、違うんだよこころ。ユダヤ教って、一神教とは言い難い側面もあるんだ」

「例えば、旧約聖書のエロヒムに、出エジプト記の金の子牛、唯一神教、拝一神教の違いとか?」

「それもある。ユダヤ教が受けた拝火教(ゾロアスター教)からの影響は、尨大だ。そもそもユダヤ教は一神教じゃなかったし、一神教という言葉が拡大解釈され、勘違いしているモノが多いだけだ」

 

”唯一神教”と”拝一神教”の違いを、大抵の人間は理解できてない上に、”一神教”という言葉だけでイメージし、先入観で語ったりするモノは多い。とはいえ、言葉の意味、誤用、誤読っていうのは、時代と共に変遷していくし、その変わった言葉が浸透してしまった場合は、もはや間違いでは無くなり、いくら甄別しても、その変わってしまった意味の方が、世間では正しくなっていく。これは止められない。でも、それは当然のコトだ。鬼、天狗、河童の意味が変わっていったように、元々の言葉は一所懸命だったのに、今では一生懸命になったり、固定観念が固定概念になったり、平成時代でよく使われる寛容という言葉も、明治時代と比べて意味が変わってるし、”原理主義”の意味を、ちゃんと理解せずに使うヤツも結構いるが、原理主義という言葉は、元々キリスト教徒に、宗教家に使う言葉だったし。まあ昔からあるコトだ、今に始まったコトじゃない。

能面のこころを外して、能面の表面を俺の顔に向けるが、どこにも傷一つない、見とれるほど綺麗な能面だ。しばし見詰め合うが、こころは唐突に能面から人型へと成り、周りに10は超える数の、色んな能面を漂わせながら、両手の人差し指で口を広げ、目の前にいるこころは人間形態になっても、あいかわらずの無表情でされた質問に、ここは伝説の呪文であるポマードを唱えて返した。

 

「ねえねえ弘天さん。アタシ、キレイ?」

「口裂け女かな? こころが綺麗なのは言うまでもないが、あえて言うなら可愛いな。ポマード」

「カワイイなんて照れるー。だけどそんな呪文効かぬわー!」

「こやつめ、ハハハ。こころをもっと可愛くするため、髪を結ってやろう」

「うわー。やめろー」

 

無表情で言うこころは、イヤだという言葉とは裏腹に、俺に背を向けて髪を結うのを任せた。髪型は、何にしよう。うーむ…今回全く姿を見せなかった、お嬢様結びのサグメと同じ髪型にしようか。

この宇宙には日本神話・中国神話・ギリシャ神話の神がいるが、一口に神話と言っても色々ある。神話と言ってきたが、最低でも、紀元前5000年の古代から15世紀までの期間に伝えられた神話、いや、ここは妥協して、紀元前の古代から16世紀、あるいは18世紀までに区切りをつけよう。よって、その範囲に語り継がれてきた神話しか神話として認める訳にはいかない。 この理由を説明すると、正確な世界地図が出来た以降の神話は、神話として認めるべきではないのであり、世界を知らなかった紀元前にいたモノ達が語り継いできた神話と、世界を知ってからの神話とは、もはや別モノなのだ。これは天と地ほどの差がある。だから、少なくとも、正確な世界地図が出来た以降の神話は、神話として認めない。ただしこれはある程度の水準、科学の恩恵を受けているモノたち限定。そうじゃない民族、例えばアボリジニ族とかがそれに該当する。まあアボリジニ族の神話は最近できた神話じゃないけど。他に、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の神話設定は意外とよくできているが、あれもダメなのだ。すなわち科学の恩恵を受けてなく、世界地図なんて知らない、つまり”ヒッピー”みたいな民族に限った神話は、20世紀に出来た神話だろうと、30世紀に出来た神話だろうと、それは例外、という話。

 

「しかし宇宙か。民間人を乗せた月面ツアー、衛星トリフネ、蓮子とメリーなど、先は長い」

「なんの話?」

「…もしや、憶えてないのかこころ。昔の話だ。神下駄主義、仏下駄主義ってワケじゃないが」

 

人間形態になっているこころは、髪を結うのをされるがまま、俺に背を向けながらも、右手の人差し指を自分の側頭部にとんとん当てて、枚を銜み、思い出そうとしている。

…仏陀、釈迦は、前世では儒童梵士という人間だったらしい。それで、前世では燃燈仏という仏と出会い、その仏から、釈迦の前世の儒童梵士の未来では仏になる予言、つまり授記した話がある。でもこの話は、そういう話じゃないんだ。

辺りを見渡しても、それらしいモノはない。まあ、月と月の都を消滅させたから、自明の理だが。それに、それが起きるのは、平成時代よりもっと先の、未来で起きる出来事。今は鎌倉時代だし、まだ時間がかかる。

 

「衛星トリフネ...月面ツアー...そんなこともあったような、なかったような…。むむむ」

「なにがむむむだ」

 

平成時代よりも未来に起きた出来事である、民間人を乗せた月面ツアーのニュースに思いを馳せた宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの未来人、宇宙に浮かぶ幻想郷、緑の閉鎖楽園の鳥船遺跡や、ラグランジュポイント、宇宙ステーション人工衛星トリフネが出来るのは平成より未来の事だし、まだこの広大無辺な宇宙空間には見当たらないが、日本神話の天鳥船は地上にいるとはいえ、先は長いな。この世界には、この渺渺たる宇宙には”流出説”とか、他にも色々鮮少に混じってるけど、自殺を強要する古代ギリシアの哲学者プラトンもどうかと思う。

 

「よし。無事、お嬢様結びに出来たぞ。いやー、塵塚怪王のこころはどんな髪型でも可愛いな」

「ありがとうー。嬉しい」

「まったく、サグメはどこにいるのやら。…………あれ、なんか...忘れてないか」

「んー。多分、玉兎のコトじゃないかな?」

 

こころの返答に、なんのコトかを思い出した。しまった。今まで、こころの髪を三つ編みにして、お嬢様結びにし終えたけど、髪を結うのに夢中で、鈴仙と純狐のコトが抜け落ちていた。うーん…純狐を殺さねばらならんとはいえ、メンドイ。鈴仙と青娥が殺されるのは阻止するが、それは純狐という仙霊を放置していると、俺の奴隷と妻が殺されそうになるからであって、俺は他人の為ではなく、自分の為に生きている。摩頂放踵はイヤだ。こころの髪をずっと結っていたい。まあ…鈴仙が死ぬ結末になるコトは、絶対にナイが。

 

「マズいな、遊びすぎた。早く行かねば…能面になってくれ」

「往くぞー」

「神と人の差が力の差だけならば、 神の存在など不要だ(フヨウラ)!」

 

長話しすぎたし、人型から能面になったこころをまた顔に貼り付け、さっさと鈴仙、純狐へと向かおう。へカーティアは殺し、クラウンピースを支配下に置いた。

嫦娥を殺す事に渇欲し、純狐だけ残存した現在状況は。1926年の日本で起きた良栄丸遭難事故。『3月6日。魚一匹もとれず。食料はひとつのこらず底をついた。恐ろしい飢えと死神がじょじょにやってきた――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暴戻支那ヲ膺懲ス。まるで日中戦争時のスローガン、暴支膺懲かな」

 

さながら旧約聖書のヤコブの梯子のように、宇宙空間を裂きつつ歪め、後光を射しながら神々しく、迅雷風烈に鈴仙の隣へ来たのはいいが、ちょうど終わった後のようだ。鈴仙が純狐に勝ったらしい。隣にいる俺に気付いた鈴仙は、半信半疑で俺を見たが、確信を得るためか俺の状態を聞いて来たので、答えた。今回、月の都と月の民を滅ぼしたのは、もちろん豊姫と依姫の為でもあるが、それだけではなく、重要人物の純狐とへカーティアをおびき寄せるための魚懸甘餌だった。しかも魚網鴻離だったし運がいい。もう、俺がこの場に来た時点で八方塞がり、純狐の結末は決まった。オレ天帝だけど、彼女は文人じゃないから、白玉楼中の人となるワケじゃないが。

 

「弘天様、仙霊にはなにを言っても水掛け論です。…あれ、また元の木阿弥になったんですか」

「相手がへカーティアならともかく、純狐相手なら枷や軛を付けたままで十分だろう」

「ですが人間相手ならともかく、仙霊が相手だと、私ではヤコブみたいにはいきませんよ」

「いや、よくやってくれた。十分すぎる」

 

鈴仙の労をねぎらうが、別に鈴仙が純狐を倒したり、殺す必要はない。鈴仙を純狐に宛てて、拮抗するのが目的だったし、それでいいんだ。純狐の実子をサリエルが蘇生するタメの、時間稼ぎだったから。

鈴仙と殺し合っていた、白砂青松のような美しいその女神は、ウェーブのかかった金髪で、袍服に近い真っ黒でロングスカートの服装、頭に被ってるのは大拉翅…だろうか、にしては形が少し違うが。

急に出てきたから、彼女は駭魄してから目を細め、骄傲な態度で、歯に衣着せぬ物言いで最初は喋ったが、即座に態度をあらためて否定し、表敬を示すためなのか、謝罪された。どういうわけか、俺とは半面の識の間柄でもないのに知られていたが、友人のへカーティアが喋ったのかもしれん。

 

「お前は蓬莱……否。嘗ては原初神・最高神などの天帝の一柱……でしたね。失礼しました」

「どうも。へカーティアはともかく、純狐女士の場合は初めまして、でいいのかは判らんが」

 

古代ローマ人には、その古代ローマ人独自の神話があった。しかし彼らはギリシアの影響を受けてしまい、古代ローマ人は、自分達の神話を捨てたのは有名だ。そう、我ら××神話と同じように(・・・・・・・・・・・・)元々あった神話を(・・・・・・・・)、古代ローマ人は、捨てたのだ(・・・・・)。いや…この場合は、鞍替え、あるいは創り直した、が正確かもしれない。まだ世界が初期頃だった××神話の神々も、とある理由で、昔、世界が初期頃だった時にその神話を捨てた。俺が殺されたというのもあるが、理由はそれだけではない。

次に、新約聖書・ヨハネの黙示録21章6節で、主はこう言われた。

『事はすでに成った。わたしは(ヤハウェ)アルパ(Α)でありオメガ(Ω)である。初めであり()終りである()。かわいている者には、いのちの水の泉から価なしに飲ませよう。』

 

「毕竟、天帝が御出でになるのは分が悪いです。私も戦力を増やしましょう。さあ出ておいで! 地獄の女神、ヘカーティアよ」

「遺憾だが、地獄の女神は来ないぞ玄妻」

 

純狐を観ながら答えてみたが、純狐の表情を観るに、憶えてないのかもしれん。今、純狐はへカーティアの名を呼んでも出てくる気配が無く、変わらず純狐は孤立無援。なぜ来ないのかと首をひねっていたが、宇宙空間を歪め、俺の周りに出てきた椅子に座っていた地獄の女神に気付いたようで、しかめっ面になった。まさかあの短時間で、地獄の女神がこうなってる事を予想してなかっただろう。純狐は友人の反応を確かめるべく、もう一度だけへカーティアの名を呼んでみたのはいいが、忘却の椅子に座っている三人のへカーティア・ラピスラズリは、質素な椅子に座ったままで、ずっと俯いて一切の反応を返さない。反応しないのはすでに死んでるからだが、三相一体の女神がこの体たらく。傍から観てると……なんかいたたまれない。

 

これ以上は億劫だと察した純狐は、水火を辞せずの気持ちで、喉から手が出るほど恨んでいる女神について聞かれた。百年河清を俟つはイヤだろう、しかしそれは、水中に火を求むだ。相変わらず純狐は嫦娥に関しては、旧調重弾で旧態依然だが、嘗ての夫の関係者を殺す事だけに精励恪勤するのではなく、虚室生白でいたら楽になれるだろうに、彼女にとってそれが生きがいになってるのかもしれない。

 

「月、月の都は消滅しましたが、讨厌姮娥(青娥)はどこにいるのか。月の民の(貴方)、天帝である爺々ならば、ご存知ではないですか」

「あー...知ってるんだけどさ。その…実は、軽率な事をして、あの嫦娥を娶ってしまったんだ」

 

その発言をした時、この場にいない咲夜が何かした訳でもないのに、時が止まって小康した。鷹揚だった純狐は唖然としていたが、俺の言を理解できずに、中国語と日本語も交じりながら素が出てしまう。今回の月の都侵略、残念ながら純狐にとっては、寸進尺退でしかなかった。なにせ今回、初めて青娥を娶ったのだ。つまりは俺も無関係ではなく、青娥と夫婦になった以上、蚊帳の外ではなくなってしまった。それを青娥は見越して、俺に嫁ぐことを決めたのだろう。その方が確実に守られると考えた上での季布の一諾で、打算的な行動であり、窮猿奔林なわけだ。まあ俺以外に月の都を滅ぼされたりされると色々面倒だし、特に青娥が殺されると困るから、今までも純狐へ掣肘をして来たんだが、他人の時と夫婦の時とは、守る時の対応が違うに決まってる。明敏な青娥の悪辣と狡猾の健在ぶりは、神話時代から感銘を受けてるし、そこが気に入ってて好きだ。

 

「…………吃惊! 夫妇!? 不管怎样、あの海千山千の女(青娥)を娶るなんて不经意!!」

「うん…うん......。不管什么である香囲粉陣のためとはいえ、反論できないな」

「天啊! 千里之堤,溃于一蚁之穴…天啊......」

「中国神話の女神がそれを言うのか…」

 

大体、ギリシャ神話においてのヘカテーは冥界や地底の女神であって、地獄の女神じゃねえんだ。忘却の椅子に座って、沈黙しているへカーティア・ラピスラズリの能力でいる三人の内、全く動く気配を見せない赤い髪のへカーティアの右腕を片手で掴み、上げたり下げたりして遊んでいたら、純狐が俺を睨み、切歯扼腕の態度で、小声ながらも、俺と鈴仙にはっきりと聞こえる怒声を出したから、それをいなしつつ淡々と返した。

古代日本人の日本神話、古代中国人の中国神話、古代ギリシャ人のギリシャ神話が、他の民族の神を自分達の神話に結合させたように、千軍万馬の××神話もそこは同じだ。当然ながら、力が全てという実力主義ではない。でも紀元前から語り継がれている神話とは、敗軍の将は兵を語らずで、牽強付会なんだ。

 

「昨日の襤褸今日の錦...嫦娥と夫婦…糟糕。ですが昵懇の仲に、気安く触らないでほしい」

「おいおい純狐、へカーティア・ラピスラズリは俺に負けたんだ。神話において敗者がどうなるのかは、お前が一番知っているハズ」

 

汲流知源を斟酌したようで、驚天動地した純狐は、頭から水を掛けられたような、にわかには信じ難い表情になった。聡明な彼女は、挙一明三で即座に理解したようだ。狂爛を既倒に廻らすことも出来ないだろうし、この状況では窮余一策は思いつかないだろう。冬来たりなば春遠からじになることはない。嫦娥を殺そうという毅然たる態度は好きだが、秋の鹿は笛に寄るに気を付けた方がいいんじゃないかな。

そもそも中国神話も、中国に伝わる神話だけではなくて、他国の神話も、中国神話に混ざりあって出来ている。それは色んな神話が混ざってるギリシャ神話同様、色んな神話が混ざってる中国神話も、例外じゃねえんだ。実際女神だったモノは人間にされたり、女神だったモノは怪物にされたり、神話から消されたりと、零落する場合が多い。紀元前の古代から続く神話において、女神はその傾向が特に強いんだよ。旧約聖書と新約聖書には、新しい酒は新しい皮袋に盛れとあるしな。

 

「…今日の一針明日の十針。まさか、いえそんな…でも爺々ですから…。もしや彼女さえも……」

「是的。对已经发生的事情再采取预防措施,太晚了无济于事」

「哎哟…! 過則勿憚改...対不起……不好意思、へカーティア…!」

 

純狐は前途が暗澹になったのか、蒼惶な挙措進退になり、周章狼狽して九腸寸断の表情になった。どうでもいいけど、外国では謝罪したら非を認めた事になるので賠償モノなんだったな。

俺が勘違いさせるようなことをしてるのが原因とはいえ、純狐から勘違いされてるかもしれない。へカーティアを殺したけど後で蘇生するんだ。なにせ娶ったんだからな。だがそれを知らない純狐は、へカーティアの死体の扱いを観て挑発するためや、純狐を刺激するために死体を見せていると誤解を受けてそうだ。まあでも、過程はどうあれ、結果としてへカーティアは大敗を喫した。だから純狐になんと言われようとも、へカーティアは××神話に降ったことになり、地獄の女神は俺のモノに違いない。

今も自責の念に駆られ、事態が切迫して殺気立っている純狐のため、ここは話題を変えて、気を紛らわせようと思い、不意に話しかけてみたら、純狐の顔は、疑問の色でにじませていた。なんでそんな事を突然言い出したのか、そして俺が何を言いたいのかが、真意を汲めないのだろう。

新約聖書・マルコによる福音書10章6節~9節で、キリストは言った。

『天地創造の初めから、”神は人を男と女とに造られた。それゆえに、人はその父母を離れ、ふたりの者は一体となるべきである。”彼らはもはや、ふたりではなく一体である。だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない。』

 

「唯の人間はミトコンドリア・イヴ達と、ピテカントロプス・エレクトス、ネアンデルタール人、クロマニョン人は、做爱(セックス)をして子を産み、親は死ぬ事を、生生流転としてきた」

 

「まあ…そうですね」

 

全ての始まりとは、シュメール神話、バビロニア神話、アッシリア神話、アッカド神話など、平成時代で判明している一番古い神話は、それら全てを合わせた、総称メソポタミア神話だった。まあイラン神話、ペルシャ神話もあるが、それから各地に枝分かれしていったのだ。

彼女たち、ミトコンドリア・イブたちのように。

 

「オレは産めよ増やせよ政策(旧約聖書・創世記)ではなく、反出生主義だが、神の子孫の人間、神裔は例外だ」

等一下(待って)。爺々は香囲粉陣がお好きな方、ソレは...矛盾してません…?」

 

「してない。ミトコンドリア・イヴ達や、ピテカントロプス・エレクトス、ネアンデルタール人、クロマニョン人みたいに地球が生んだ人間と、天皇みたいな神の子孫、神裔の人間は別モノだ」

 

ピテカントロプス・エレクトス、ネアンデルタール人、クロマニョン人は地球が生んだ、猿人だ。ミトコンドリア・イヴも地球が生んだ人間であり、神々が創り出した人間ではない。寿命がいい例だ。それに食料は御食津神がいるし、水も水神で補って余りある。だから神裔が増えようと、問題ない。そもそもアマテラスやニニギの血を引く神裔が、1人だけ生き残っていればいいのだから、後は死のうが殺そうがどうでもいい。千羊の皮は一狐の腋に如かずさ。教条主義というわけではないが、古事記と日本書紀の日本神話にある、天壌無窮の神勅の神権政治だけは厳守し、遵守せねばならん。

 

「例えばさ、月という衛星が好きだ、って思うモノがいたとしても、それは月の民の事が好きだ、って事にはならんし、神と妖怪が人間の道徳、倫理を語ってたら滑稽で失笑ものだ。それと同じ」

 

「啊。旨は判りますが……」

 

平成時代にある人間の道徳というモノは、当たり前だが、古代の紀元前から、最初からあったモノじゃない。長い時間をかけて、平成時代の道徳へ育み、培ってきたんだ。

更には、その道徳、倫理の多くは、古代オリエント、古代イスラエルのユダヤ教、西洋宗教であるキリスト教の影響はもちろんのコト、アジアのイスラム教までに至るまで、日本の歴史的を観ると、それらの宗教から派生され、日本、日本人へと影響を与えた道徳、倫理もある。日本人は、それらの宗教からその倫理、道徳を培ってきたんだ。もちろん神道と仏教の影響を受けた倫理、道徳も、日本と日本人の文化、宗教観として根付き、刷り込まれて、当然、昔から数多くある。それを切り離すのはムリだ。

 

それを踏まえて言おう。例えば神の俺と永琳、または妖怪である紫と幽香が。

人間を奴隷にするなんてやめて、どんな人間だろうとも、尊厳と権利は、弱者も強者も平等にし、みんな奴隷にされず、全人類は仲良く、平和に、自由に生きたらいい。

 

なーんて言ったら、苦笑か、あるいはお腹を抱えるほど笑える。神や妖怪なのに、いったい何言ってんだと。神話好きで、各国の神話を読んで知ってたら、尚更そう思う。

旧約聖書・出エジプト記のヤハウェも、杖をモーセとアロンに授けて使わせ、ファラオに十の災いを起こさせたとはいえ、奴隷の考えを否定してないし、やめさせようとはしなかったんだ。

元々、古代の思想は、席捲した国の民族を奴隷に使うなんて、日本でも当たり前だった。もちろん国によって、奴隷の扱いの差はあった。古代ギリシャと古代ローマの、奴隷に対する扱いの差がいい例だろう。

しかし、世界人権宣言を境に、尊厳と権利とについて平等である。という流れになっただけだ。

一部の古代哲学者が奴隷制をやめるべきだと謳ってたモノはいたが、つまり、奴隷にするなという思想は、古代では無かったんだよ。世界にその思想が広まったのは、ごく最近だ。その思想が広まるコトになったのは、ある意味、古代ギリシアの哲学者たちと、新約聖書のお蔭とも言える。そもそも黒人を奴隷にするコトになった原因の一つは、新約聖書のせいでもあるが。

 

「だが人間の道徳・倫理といっても、殆どの道徳・倫理は元々宗教から生まれた派生にすぎん」

「それは紀元前の歴史が証明してますね。価値観、道徳、倫理、論理なども宗教からの派性です」

「科学者は無宗教・無神論と勘違いするモノは意外と多いが、キリスト教徒の科学者も結構いる」

 

さっきから口を挟まず、黙って観ていた玉兎を呼ぶと、いきなり呼ばれるとは思わなかったのか、面を喰らいながらも傍に来た。隣にいる玉兎の腰に手を回して密着し、鈴仙はこんな雰囲気の場面で、一体どういう反応を返せばいいのかと、え、え、と声を漏らしながら純狐と、目前にある俺の顔を一つ置きに観ながら対応に困っているが、お構いなしで続けた。

 

「全く、神は人間の信仰が無ければ存在できないなどと、誰がこんな虚言を広め、法螺吹きしたんだ。日本神話、中国神話、ギリシャ神話も、信仰なんてモノがなかろうと神々は存在できるのに」

 

信仰は儚き人間の為にってのもあるが、笑わせないでくれ。早苗は神裔じゃないか。

別に啓蒙したいわけでも、原理主義でもないが、神は人間の信仰が必要なんていう出鱈目な虚誕、古事記と日本書紀には、全然、掻暮、これっぽっちも、一切合切の記述がないのだ。トートロジーだが。

例えば、以前から念頭に置いてたけど。純狐は、天津神を見くびりすぎだ。月の民を疎んじるのは結構だが、あの程度の穢れで致命的になるなんて、古事記と日本書紀の天津神に、誤解や勘違いが生じるかもしれない。

他には、廃仏毀釈が起きた明治時代、僧が肉を食べたり、僧が妻帯するのを許されたのは浄土真宗だけだったが、当時の明治政府は、僧に僧侶肉食妻帯蓄髪等差許ノ事と布告して、浄土真宗以外の宗派などが、それをしても許されてしまい、江戸時代からの葬式仏教に、拍車がかかった。とはいえ、浄土真宗も本来ならばしてはいけないんだが。まったくもって、明治政府は本当に余計な事をした、つまりはそれと一緒だ。とりあえず、ドイツのヘルマン・ヘッセの小説『シッダールタ』が不朽の名作なのは間違いない。

 

「…放屁不看风色、無慙無愧。その曲解と虚言を鵜呑みにし、神とはそういう存在なのかと、そう盲信する人間も度し難い問題点。各国の神話の神々からすれば、いい迷惑で、顰蹙モノですね」

 

半神、あるいは神に造られた人間が、神になる神話の例を挙げるなら、ローマ神話のロームルス。ギリシャ神話のアイオロス、グラウコス、アスクレーピオス、プシューケー。北欧神話のマーニとソール兄弟。ユダヤ教の天使メタトロン、サンダルフォンの双子の兄弟とかもいる。厳密に言えば天使は神ではないが、神に近い存在だからな。インド神話のサティーはちょっと違うかもしれないが…似たようなモノだ。中国神話の黄帝、古代中国の哲学者・老子とかも神格化されて神みたいになってるしなあ。

やはり日本神話とギリシャ神話、そして日本神話と中国神話は、設定がとても酷似している。これらの神話は、内容が酷似してるのではなく、設定が酷似してるというのが重要だ。まあ内容も似てるんだけどさ。ギリシャ神話に限ってならその割合は多いが、神の子孫の人間が、神になってるんだよ!! 日本でいうアマテラスの血を引く天皇みたいに、ゼウスの血を引くヘラクレスも死んだ後は神になってるし。でも日本神話と神道って、原初神や創造神はいても、基本的に最高神がいないんだ。確か、アマテラスが最高神みたいな扱いになったのは、鎌倉時代から明治時代にかけて、じわじわとだし。それでもアマテラスは、古代日本から高位の神ではあったんだが。一例を挙げると、第41第女帝・持統天皇とかを観たら判りやすいか。おそらく彼女、持統天皇は、アマテラスになりたかったんだろう。

 

「ギリシャ神話のアイオロス、グラウコス、アスクレーピオス、プシューケー、オルペウスなどの神裔・半神は、存命時、あるいは死後。ゼウスなどの神々により、神々の列に加わっているが」

 

あ、ディオニューソスも元は神裔・半神だったが、後に神へとなってるな。

…本当はまだまだいるけど。とりあえずギリシャ神話の神裔・半神で一博引旁証したが、ギリシャ神話だけではなく、他の神話の半神が神になった原因と、神になった理由の例を挙げようモノなら、一日では語り尽くせない。今回はギリシャ神話の場合で挙げてみたが、今挙げたギリシャ神話に出てくる人物は、もちろん全て神の子孫だ。ただの人間が神になった神話じゃない。でも、人間が神になった神話って、かなーり少ないが、他の神話でもあるにはある。それは中国神話にも実際にあるんだ。まあ神と仙人は、同じ存在ではないが。

 

「ゼウスは、神裔・半神のタンタロス、ガニュメーデース、エンデュミオーンも不老不死にした」

「つまり、原因があって結果が生まれている。ギリシャ神話の例を挙げると殊の外いますね」

 

「まあギリシャ神話も然ること乍ら、こういう神話は、ギリシャ神話以外でもある。ただ他の神話の場合、大抵は1人か2人くらいしかいない。殊更ギリシャ神話が特殊なだけだ」

 

天皇は当然として、聖徳太子、厩戸皇子、菅原道真、平将門、物部布都、蘇我屠自古、藤原妹紅、幽々子、白蓮、命蓮なども、神裔だ。

よくゼウスはクズだと言われるが、実はギリシャ神話を観て蓋を開けると、意外とお節介で、しかも男相手だろうがスゲー優しいんだよ。月の女神・セレーネーに、神裔・半神のエンデュミオーンを不老不死にしてほしいと請われて、ゼウスがそれを聞き入れ、叶えてやったりもしてる。まあ、ギリシャ神話の半神は殆どゼウス子孫しか出ないし、そもそもゼウスが優しいのは神裔・半神だけだが。ゼウスは神裔・半神のセメレーと約束して間抜けなコトをしたり、ゼウスは実娘や孫娘にも手を出してる。

てかさ、ゼウスって数多の美女をレイプした事で知られてるけど、正直そういうレイプする神話、ギリシャ神話ではゼウス以外でも多くあるし、実はインド神話の神々も、あまり知られてないだけで、美女をレイプする神話がかなりあるんだよ。関係ないが、釈迦が存命してた時の古代インド人は自ら進んで苦行するドMが多く、これは俺が言うのもあれだが、カースト制のインド人は、もっと人間を大事にした方がいいと思う。

 

「だがこれは神裔・半神が神、不老不死になる話で、ただの人間が神になる話じゃない。中国神話において人間を創ったのは一般的に女媧だが、これらの人間は、純狐とは前提が違う」

 

「ギリシャ神話の神裔・半神カイニスは元女性でしたが男性になり、テイレシアースは元男性でしたが、神々の力で女性になったり、また男性に戻ったりしてます」

 

「よく知ってるな、ギリシャ神話のシプロイテスも男から女になっている。まあそれでも、神々が神裔・半神を性転換する話だし、ギリシャ神話以外でも性転換する神話はあるがソコも同じだ」

 

そもそもこういう話は、全て神々が関わっている前提で、全て起きているのだ。ギリシャ神話の海の女神・テティスはイヤがったが、神裔・半神のペーレウスと夫婦になり、あの有名なアキレウスを産んでいる。この話は、トロイア戦争が勃発する原因になった話でもある。

インド神話のモーニヒー、シカンディン。北欧神話のロキ。宇治拾遺物語の清徳聖。イソップ寓話集のハイエナ。中国の聊斎志異、捜神記とかや、昔から性転換の話は結構あるし、浄土真宗開祖・親鸞が夢で、あの聖徳太子から、色欲に負けそうになったときには私が女体化して受け止めるとかの話もある。擬人化、食人、異類婚姻譚、獣姦、同性愛、両性具有がある神話はもちろんのこと、そんな話は現実でもあるし、神話以外でもそう珍しくない。ロキも妊娠してるし。…ただし神話の場合は、神話に出てくる神か、神裔・半神に限った話。あらあら私は きんどーちゃん。そして、信じられないかもしれないが、食人がある神話って、実はそう珍しくないんだ。子供を食べる食人の話は、ギリシャ神話のタンタロス、日本の昔話の『うりこひめとあまのじゃく』とか、ドイツのグリム童話・『杜松の木』を思い出す。あと良栄丸遭難事故。

 

「祐善…。しかし仙霊か。そういや、幽霊と做爱(セックス)する話、牡丹燈籠や六朝記とかにもあったな。幽霊と做爱する話って日本にも昔から一応あるけど、中国の方が多い気がする」

 

「……あの、コレは真面目な話なんでしょうか?」

 

「ああ。ヒエロス・ガモスだ。神話や神々において、交媾をして子を産むのが、どれだけ重要かは知ってるだろ。へカーティアも玄妻も、神話の説によっては子供を産んでる元令閨じゃないか」

 

古代メソポタミアにいた巫女が行う性儀式があり、それは神聖なモノだった、つまり神聖娼婦だ。メソポタミア神話、シュメール神話の半神ギルガメシュは、友である半神エンキドゥへと、娼婦を派遣して性交渉を行わせている。大昔は宗教的な意味でも、セックスという行為そのものが神聖だったし、日本でも金精神とかの性神を生器崇拝してる。ただし、誰でもいいと乱交したワケではなく、大昔からちゃんと決まった相手とセックスをしていた。誰でもいいというワケじゃない。令閨といっても純狐はその夫を殺して、説によってヘカテーは娘を産んでいても、決まった配偶神がいないが。

ただ古代ギリシャにはδαίμων(ダイモーン)Κήρ(ケール)という考えがあった、でもこの二つも基本的に、神裔の人間や、神の子孫である半神に当て嵌まる言葉だ。ただし、Κήρはギリシャ神話の女神でもあり、その言葉は死神、または悪霊という意味もある。Κήρという言葉を広義に解釈するならば、純狐はそれに近い…かもしれんが、それに該当するかどうかについての、断言ができない。

でも純狐が悪霊だとすると、新約聖書・ルカによる福音書では、キリストが悪霊を追い出す話があるし、相性が悪そうだ。マルコによる福音書の場合は、確か御霊と悪霊を、キリストは追い出してたな。

 

「不老不死については、黄山で不老不死の霊薬を飲み、仙人になった黄帝。始皇帝・徐福。道教にある錬丹術などで中国の方が有名だ。だが純狐は、不老不死や嫦娥みたいな仙女とも言い難い」

 

「かつて黄帝が夢で観た、無為自然で治まる理想の国、華胥の国もありますね」

「キリスト、釈迦、サン・ジェルマン伯爵みたいに、黄帝も尾ひれをつけた話が多いけどな」

 

ギリシャ神話のネクタル、ゾロアスター教のハオマ、ヴェーダ神話のソーマ、後は、インド神話のアムリタなどもある。一言で言えば、これら全ては飲料で、飲むと不老、または不死のどちらかにだけなる事が出来る。まあ不老不死にもなれるんだが、でもこれは、基本的に神話の神々が飲んでるモノだ。それぞれの神話においては、神々が飲んでいいとされている飲み物であって、人間が飲んでいいとされていない。

ただし、ギリシャ神話の神裔・半神タンタロスは、神酒ネクタルや、神々の食べ物アムブロシアーを食べるコトを許されている。それとギリシャ神話の神裔・半神のプシューケーは不老不死になれる神酒のネクタールを飲み、神々の列へと加わっているが、それは彼女が神の血を引く神裔・半神だからであって、尚且つ彼女は試練を乗り越えたからこそ、神酒のネクタールを飲むことが許されている。ただの人間だったならば、神になったり、ネクタールを飲む結末には、絶対にならなかっただろう。それ以前に、ギリシャ神話に出てくる神裔・半神は、ほとんどゼウスの血を引く子孫だし。

 

「換言すると......私は日本でいう菅原道真・平将門に近いと」

 

「いや…それも語弊がある。そもそも菅原道真と平将門は、天津神の血を引いているから神裔だ。崇徳天皇、厩戸皇子もそうだ。当然それは正史(神話)通りに進み、歴史の史実が一致してる前提だが」

 

と言うのも、今挙げたギリシャ神話に出てくる人間全ては、全員、神の子孫だからだ。純狐の場合とは、少し違う。日本でいう平将門と菅原道真も、死後は怨霊から神様になったが、そもそもこの二人に共通してるのは、双方とも天津神の血を引く、神の子孫なんだ。でも純狐は神裔ではない。新約聖書・マタイによる福音書と、マルコによる福音書のキリストは、生き返ってるけど。

平氏、源氏、藤原氏が天皇の血があると証明するには、その証拠を提示しなくてはいけない。そこで、平氏、源氏、藤原氏が天皇の血を引いている、という証明人の代わりとして、俺達がいる。だから平氏、源氏、藤原氏は天皇の血を引いていると断言できるのだ。そうなるように、調節、統制して来たんだから。

 

勘違いされては困るが、人間が神になる神話の人物を、博引旁証したのは、インド神話、ギリシャ神話、北欧神話やヘブライ神話の場合、神々が創った人間や、神の子孫だからこそ、人間が神になった、あるいは神々の手で人間を神にした神話だ。つまり、それら全ての神話は、神々がいるという前提で、神々が関わっている前提の元で、神々によって、人間が神になるという、その結果が生まれているというわけだ。そして、この世界は因縁果に、因果的に閉じられている。死んでから神になったモノは、ローマ神話のロームルス、ギリシャ神話のヘラクレスなどでいるにはいるが、この二人は半神、つまり神の子孫だしな。とはいえ、純狐は神というか……仙霊だから、彼女を神という存在と呼ぶべきなのかは議論が必要だ。青娥も仙女であって、神ではない。仙人と神は別モノだ。

ただの人間が、神の子孫でもなんでもない、ミトコンドリア・イヴの子孫や、ピテカントロプス・エレクトス、ネアンデルタール人、クロマニョン人などの猿人が、神になった神話じゃないんだ。インド神話のサティーは、シヴァの最初の妻だが、彼女は死んだり生き返ったりして、輪廻転生を繰り返し、人間になったり、女神になったりしてるし、ギリシャ神話の神裔・ポリュデウケース、カストール兄弟がいる。この話は諸説あるが、一説にカストールはただの人間で、人間だった彼は死んでしまい、神裔・ポリュデウケースの願いを聞き入れた神々は、ただに人間のカストールを神にはしてるが、それは神裔・ポリュデウケースが神々に請うたから、とも言えるしな…。

 

「旧約聖書・創世記。火の鳥未来編(ガイア仮説)。ハビタブルゾーン。なあ仙霊。能力、霊力って何だろうな」

「人間原理の話ですか」

「オレ、その人間原理っていう言葉が大ッキライだから違う。眠り姫問題も好きじゃないし」

 

純狐は、女神ではある。しかし中国神話に出てくる神々は、その一部を除いた大半が、俺達と同じ神という存在ではないからな。なにせ中国神話に出てくる人間は、半神ではなく、ただの人間ばかりだからだ。まあ黄帝は色々な話が混ざってるから、ただの人間とは言い難いし、中国神話の黄帝は、蚩尤という神と戦って勝ってる。そもそも中国神話の黄帝って、神祖みたいな存在だし。結局何が言いたいかと聞かれたら、要約すると、純狐は神と人間の境界線の場合、元々は人間で、今は神寄りなのだが、厳密に言えば神ではない。撞着語法みたいなのは理解してるが、困った事に純狐は、実際に、槃根錯節な存在なんだ。

 

「そもそも霊力自体、意味不明だ。人間の定義で言えば霊力なんて人間は持っていない。まあ巫女は神の妻だし、巫女と半神と神裔はまだ判る。しかし霊力がある人間は、人間だといえないだろ」

 

「全ての原因に理由を求めるのは無粋、もしくは野暮と言うのでは?」

 

「まあ…そうだが。これは神の子孫と、ただの人間の区別をつける上で、絶対に必要な話なんだ。知っての通り、各国の神話全てが、神話時代にこの世界で実際に起きたから、避けて通れない」

 

これは、アマテラス、ニニギ、ホオリ、ウガヤフキアエズの血を引く、神の子孫・神武天皇など、アメノホヒの神裔・出雲氏、ニギハヤヒの神裔・物部氏、諏訪大明神の神裔・諏訪氏にも言える。以前にも言ったけど、俺が言ってるコトは、ギャグマンガに出てくる死なないキャラに、なんでこのキャラ死なないんだ、とツッコミしているようなモノだ。そんなコトは最初から理解している。理解した上で、この話をしてるのだ。

 

イヴが死んだのかどうかについては書かれてないが、旧約聖書のアダムは、300年以上生きてる。アダムは死にはしたが、300年以上生き、ヤハウェによって生み出された彼が、つまるところは、果たしてアダムとは、ピテカントロプス・エレクトス、ネアンデルタール人、クロマニョン人などの猿人、あるいは人間という動物なのか、人間という定義に該当するのだろうかという疑問点だ。まあアダムだけではなく、旧約聖書・創世記に出てくる人間の殆どは、どれも300年以上も生きているが。セツ、メトシェラ、エノク、ノアとかも長命だ。

しかし旧約聖書・創世記でよく疑問を持たれることが多い、創世記・1章26節にある原文では。

神はまた言われた。『われわれ(・・・・)のかたちに、われわれ(・・・・)にかたどって人を造り――――』

と、こう書かれている。この神が仮にヤハウェだとしても、われわれって表現は唯一神としておかしいのではないか、そう思われることがよくある。だが別段おかしくない。小ヤハウェと言われる天使のメタトロンがいるけど、そもそも旧約聖書にはメタトロンは出てこない。天使ガブリエル、天使ミカエルは旧約聖書に出てるが、メタトロンは偽典にしか出てこないのだ。大体、ユダヤ教はゾロアスター教の後に出来た宗教。天使という概念はゾロアスター教が起源だし、ゾロアスター教の影響を受けまくってる。キリスト教の場合は、古代ローマ帝国時代から、一部のキリスト教徒が曲解と食言を重ねてきたが、旧約聖書のエロヒムから連想し、三位一体とかいうモノでその場をしのいでいるキリスト教の教派もある。ユニテリアン主義には認められず否定されてるが。

 

「神と妖怪なら、まだ判るさ。人間じゃないからな。能力を持っていても不思議じゃない。神裔の場合でも同義だ。でもさ、ただの人間が能力なんてモノを持ってる時点で、人間と言えるのか」

 

幻想郷にいるモノなら別におかしくはない。なにせ妄想世界だからだ。ありえない事が起きたとして、何とも思わん。ある人間が魔法を使え、人間が空を飛び、人間が時を止めようと、幻想なら、妄想世界なら、全ての疑問は解決する。でもそれは、妄想世界に限った話だ。それに幻想、といえば綺麗に飾られた言葉で聞こえはいいが、幻想という言葉の意味は、妄想と何ら変わり無い。

…今は宇宙空間にいるが、我々がいるのは地球、地上にある日本であり、今の時代は鎌倉時代だ。いくら昔の鎌倉時代とはいえ、ただの人間が魔法を使い、空を飛んだり、時を止めたり、奇跡を起こしたら、流石に疑問は浮上する。とはいえ、天皇、出雲氏、物部氏、諏訪氏みたいな神の子孫なら、その疑問は全て解決される。寿命を含んだ二重の意味で、もはや別モノだからだ。

ただ幻想郷という単語、確か明治・大正・昭和時代に出版された小説で、その言葉を使った創作物があったんだが…思い出せない。でも幻想郷という単語を使った創作物が、おぼろげな記憶だが、明治・大正・昭和のどれかの時代…多分、昭和時代に世へ出た創作物であったハズ。

 

「……今の私は仙霊です」

 

「それは理解してる。だがお前の純化する能力、後天性のモノだろ。まだ仙霊じゃなかった時の、夏・殷・周時代にいた玄妻は、そんな能力持ってなかったしな。よほど嫦娥が瞋恚と観える」

 

純狐、これは古代中国の夏・殷・周の時代、紀元前2070年頃から紀元前1600年頃、まだ仙霊になる前の、お前のことだよ。日本神話でいう神と、中国神話でいう仙人は、同じ存在ではないのだ。俺なら、人間が能力なんてモノを持ってる時点で、人間とは言わないし、言えない。

 

古代ギリシャの哲学者・アリストテレスは言った。

『我々の性格は、我々の行動の結果なり。』

しかしながら、記憶がある無しで、その人間の人格や性格を、本当に形成しているのかについては、昔から議論や検証はされているが、平成時代の科学と医学では今の所、証明や解明はされていない。つまり人間は、人間という人格、性格は本当に、10人中10人は産まれて来た時から物心が付いて、成人するまでの記憶というモノを積み重ねても、人格、性格というモノを形成しているのか現時点、平成時代の科学と医学では未解決なのだ。

人間の体は水素原子が半分以上、酸素分子が25%炭素分子が10.5%で出来ている。本当はもっと細かいが、割愛しておく。そして人間は肉の塊でもあれば、脳もそのままならタンパク質の塊でしかなく、例えばCPU(電子回路)がそのままなら石であることと同じにすぎん。一言で説明するなら、CPUとは、OS(オペレーティングシステム)という、プロセスたるシステムがあるからこそ、CPUは機能する。これは一種の、ゲームに出てくるようなNPC(ノンプレイヤーキャラクター)や、人間の脳と同じ話だ。人間の感情だって突き詰めてしまえば、ただの化学反応にすぎん。約まるところ、生じた原因と、生じた原因という前提の元で、結果が生まれているという話。

アルジャーノンに花束を…とは少し違うな。あの小説は脳手術のロボトミー手術、つまり知能についての小説だった。知能を題材にしたモノであって、記憶を題材にしたモノじゃない。

 

「アメリカに敗北した当時の日本は、沖縄は1972年まで統治が続いたが、1945年から1952年の計7年間GHQの占領下にあり、1950年7月11日に小倉黒人米兵集団脱走事件が福岡県で起きた」

 

日本がアメリカに敗北しようが、神道指令されようが、それはまだいいさ。だが日本神話も実際に起きたので、1946年1月1日、GHQの詔書によって、天皇が神であることを否定されるのだけは、どうしても困るんだよ。

 

「……初めて聞く単語ばかりですが。内容から揣摩憶測すると、まるで古代中国の政権を担うモノが、前の政権の歴史を焼き払う一連の流れを、幾重にもしてきました。それに酷似してますね…」

 

「ああ。でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない。要は、当時の日本は情報の箝口令(GHQ)を敷かれていたのが重要だ。古代中国も有力者に都合がいいよう歴史書を作り直してきた」

 

例えば、記憶が欠落している、どこぞの誰かが産まれて、××神話の内容が漏洩しないよう箝口令を敷かれたり、あるいは、どこぞの誰かが殺されて、2回も死んでしまい、その歴史(神話)を創り直すみたいに。

それは日本神話にも言えるが。つまり言わんとするところ、この世界の、アカシックレコードにある、総ての、記憶の集合体、それらの情報規制だ。もちろんこれは、回帰したモノは、全部憶えている。でも正直、忘れていたとか、思い出したという趣意は、正確な表現じゃない。そうだな……つまりこれは、精神医学の用語・仮説にある、抑圧された記憶や、回復記憶のイメージに近いか。

 

純狐の待遇について考えていたら、豊姫の能力でか魔方陣でかは判らんが、豊姫と依姫が俺の両脇にいつの間にか転移して来て、依姫が俺に疑問を投げかける。でもその前に、鈴仙は豊姫と依姫に一瞥され、一瞬睨まれたような気がした。気のせいかと思ったけど、自分の飼い主の殺気を感じ、怯懦の性格ゆえか、俺が一方的に左手を鈴仙の腰へ回していたが、鈴仙の方から抱きつかれ、小さな悲鳴を上げて、私はなにも悪く無いのに、と声を漏らして戦々恐々している鈴仙の頭を撫でてやったが、御三家である綿月家から産まれた、美人女神姉妹な海神お姫様たちの、依姫は面白くないという表情で染まり、特に豊姫のいい気はしないといった表情を伺うに、俺の勘違いじゃなかったようだ。許せ鈴仙。

もう月、月の都もない。月が出来た最も有力説のジャイアント・インパクト説とは違い、今は神綺とサリエルが月と月の都を創り直しているので、横目で観ると、まだ中途半端とはいえ、新しい月が形作られ、まだ小さいせいか、消滅した元の月より色褪せているが、太陽の光に当てられて、あの地球に住む地上の生物達へ届くように、淡い光を放ちながらも、皓月千里の月は、着々と創られつつある。

…しかし、××神話の高位の女神である、神綺とサリエルの手で月が仕上がる過程を観ていると、神話時代を思い出す。まあ輝夜と咲夜は地上に戻ってるし、そもそも今回の首謀者は俺と永琳だ。月と月の都、月の民を滅ぼし終え、全ての妖怪は魔方陣で地上に転移させてるから、輝夜の傍には永琳がいるから守る必要もないので、二人はここに来たんだろう。と、さっきまで思っていたが、よほどの理由がない限り、普段から輝夜の傍を離れない、完全で瀟洒な従者の咲夜も地上に戻ったと思ってたのに、豊姫と依姫に付き添ってこの場にいた。この場にいるのは、それ相応の理由があるのだろう。

 

「珍しいな、サクヤも来たのか」

「はい、××様。私の記憶通りなら純狐と相対するときに、私の能力が必要でしょう。カグヤ様と八意様は共に地球に戻りましたので、ご安心ください」

 

 

「そ、そんな……。その子は、私の孩子は、間違いなく、神話時代に殺されたハズ…」

 

そう言った咲夜は、子供を抱っこしていて、その子供の顔が観えたのか、純狐は酷いくらい動揺している。窃斧の疑いをかけられると思ったが、自分の実子を見間違えたりはしないようだ。彼女が杯中の蛇影をしる女神で良かった。だがあの子供は間違いなく、純狐の子…だろう。蘇生を頼んでおいたサリエルは、しっかりと仕事を終えた様だ。サリエルに頼んで蘇生したとはいえ、あの子供を創った、という訳ではないのだ。元に戻した、が正確な説明かもしれない。だからあの子の肉体全てが、元のパーツのままであり、別のパーツで代用してないからだ。つまり、咲夜が抱っこしているあの子供は、テセウスの船に該当しないし、臓器移植によくある拒絶反応も起きない。

幇助に来た依姫は、閂差しの長刀の柄を、右手で掴んで鯉口を切り、そのまま柄を握った右手に少し力を入れつつ後方に引くと、鞘から刀身が抜かれ、抜刀した刀身の切っ先を純狐に向け、右腕にある金色のブレスレットを揺らしながら、嫦娥を殺したがっている仙霊について、どういう処分をするのか、そしてその後の待遇について聞かれたけど、もう決めてる。純狐は子供を殺されても、俺達みたいに蘇生は出来ない。これはハデスなら出来るがへカーティアでは無理だ。出来るのは、例えば全てを創った、神話に出てくる創造神、または死を司る力を持った、神綺やサリエルみたいな神だけだ。まあ2柱とも高位の女神だし。中国のことわざには、医得病医不得命というのもあるが、それを覆せる。

 

「それで隊長、月と月の民に仇なすあの仙霊を如何します。また嫦娥様が狙われては困りますし、後顧の憂いを絶つため、命じて下されば私が切り捨てますが。……それとも、また娶るんですか」

 

「仕方ないわ依姫。弘さんだから」

「お姉様、隊長だからという理由で腑に落ちるのもどうかと思います」

「いいじゃない。私、依姫、八意様が希う弘さんの子を授かったのよ。嫉妬も程々にしないと」

「……弘さんの子を授かれた私は確かに幸せ者ですが、別に私は......嫉妬なんてしてません」

 

出産を終えたばかりの妻は目を細め、もの言いたげな目で一瞥してきた。俗説だが、フランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネットは、近親相姦の冤罪で処刑が決まった際に、恐怖のあまり1日で白髪になったらしい。今の心境は、まさにそんな感じだ。しかし、美人、あるいは可愛い女を侍らせるという俺の夢に弁解の余地はないので、いい訳せずに肯定した。心心相印なのだよ…。奥州藤原氏は滅んでないから、鎌倉時代の安藤氏、室町時代の武田信広はいないけど、室町時代のコシャマインの戦いで松前藩を形成させたり、江戸時代のシャクシャインの戦いもあるし、やる事は多い。蝦夷地(北海道)の立ち位置は琉球王国(沖縄)と違って、少し特殊だ。それにマルコ・ポーロの東方見聞録が原因の一つで、西洋人がアジアに来るからなあ。天竺にいる魔女のミスティア・ローレライと、天子の件もあるし、ケーキを食べてる場合じゃない。

 

「そうだな…嫦娥を本当に、心の底から殺したいと恨んでいるなら、今から俺が繰り出す雷霆万鈞を防いでもらおうか。雷撃を受けて死なないなら、電光影裏斬春風というワケだしな」

「先程から你们(貴方達)は一体何の話をしているのです! それにどうして私の子が―――」

 

さっきから仙霊へ一方的に言ってる事は、当の本人の純狐からすれば、何が言いたいのか意味不明だろう。しかし、信じられないかもしれないが、今まで話した事は、全て繋がっている。支離滅裂の話ではないんだ。それでも、破鏡再び照らさずだった自分の実子が目の前にいたら、泰然自若を貫き通そうとしても、落ち着いてなんていられないだろう、闇夜の灯火だから。別にやましいコトはないので青天白日だけど、まだそれに、答えてやる事は出来ないんだ。

 

「お前の子に関しては、一切答えないぞ。だが俺の雷撃を防いだら全て教えよう。しかもその時は嫦娥を引き渡す。ただし防げなかったら嫦娥、へカーティアと同じく、××神話に降ってもらう」

 

もちろん今の言葉は然諾を重んず。そっちの方が画竜点睛だ。純狐を殺しても、中国神話の神々が出張る事の無いよう、中国神話の月の女神である青娥に頼んで釘を打ってあるから、殺しても問題は無い。地獄の女神もそれは同じだ。元々、へカーティア・ラピスラズリは、ギリシャ神話の女神じゃないからな。だから純狐を網呑舟の魚を漏らすコトのないよう、気を付けるだけ。

古代中国の儒学者 閔子騫 みたいに、絶対に逃がさないよう疾風迅雷に動いて、××神話に登用せねば。暖簾に腕押しだな。

 

「豊姫、ギリシャ神話の記憶を神格化した女神(・・・・・・・・・・) ムネーモシュネー を知ってるか」

「はい。彼女のお蔭で、地獄の女神の記憶は回帰しました」

「うむ、へカーティアの記憶が回帰してるのは、ムネーモシュネーのお蔭だ」

「ギリシャ神話には、ローマ神話、スキタイ神話、イラン神話(ペルシャ神話)。他の神話も混成されてますね」

「一つの神話に多様の神話が綯い交ぜしてるのは、中国神話と日本神話にも言えることだがな」

 

出来るだけ、今も愕然としている純狐に聞こえるように話しているが、つまり、××神話にとってその記憶を神格化した女神、ムネーモシュネーに該当するのが、知恵の女神である、永琳だ。でもまあ、それに該当する女神は永琳だけではなく、実はもう一柱…いや、もう二柱いるんだが。

ギリシャ神話の ムネーモシュネー は記憶を神格化した女神だ。ムネーモシュネーは、ゼウスとセックスして、多くの子を生んでいるのだが、ゼウスは天空神で雷神。そして天空神で雷神の俺。判るか純狐、”記憶”だ。ギリシャ神話には、”記憶を神格化した女神”がいるんだよ。へカーティアは、その記憶を神格化した、ギリシャ神話の女神である、ムネーモシュネーのお蔭で、全てを…。今まで回帰した出来事の全貌を、憶えていたんだ。 言い換えれば、へカーティアの記憶、回帰に関しては、オレ、永琳、青娥は、一切関与してない事になる。

 

「勝手に話を進めないでください。私は、先程の提案を飲んだわけではありません。それ以前に、私を××神話に引き込めば、中国神話の神々が黙っては――」

 

「残念だが、嫦娥に橋渡しを頼んで、中国神話の神々との交渉はすでに済んでる。中国神話の神々はな、お前がどうなろうと、純狐が俺に娶られようと、知ったこっちゃないとさ」

 

さっきから暫定的に、純狐を中国神話の女神といってるが、これはあくまでも便宜的や方便でしかない。つまり純狐は、中国神話の女神であって女神じゃなくて、かといって俺や永琳みたいな神という存在とは、近いながらも程遠い。要するに彼女は仙霊であり、神というより仙人寄りで、死後の平将門や菅原道真みたいな怨霊に近い存在。神と仙女は、俺と青娥は、同じ存在ではない。ただし、ギリシャ神話の女神、へカーティアは俺や永琳と同じ存在だ。

そもそも中国神話って、他の神話と比べると、神という存在や思想はかなり薄い。だから中国神話においては、仙人や君主などの人間や、元人間ばっかり出てくるんだ。

 

「夾雑物が多いこの私を、厭わしいと思わず娶ろうとするなんて。莫逆の友に聞いた通り、天帝は酔狂なお方ですね……。では彼女はどうします。へカーティアはギリシャ神話の女神です」

 

「彼女は元々ギリシャ神話のΤέως()ではない。他の神話がギリシャ神話に結合され、混ざっただけだ。これはギリシャ神話だけではなく、色んな神話が混ざってる中国神話と日本神話にも言える」

 

これはギリシャ神話以外でもよくある話なのだが、こういう話は大きく分けて2つのパターンがある。1つは古代ギリシャ人が席捲した国や民族の神をギリシャ神話へ結合した、もう1つは他の国の神が、古代ギリシャ人が他国に行って帰って来た時、または他国の民族の人間に伝来され、伝播されたその神などを、ギリシャ神話に混ぜた場合の二つだ。これはインド神話が中国神話に取り入られたり、インド神話の神々が仏教に取り入られたり、インド神話のアスラが中国に伝わって、中国とか日本で鬼という霊や妖怪になった事と、似たようなモノだ。釈迦は前世で儒童梵士という人間だったが、燃燈仏という仏と出会って儒童梵士は仏になると予言したという話があるけど、仏陀、釈迦を中国神話に取り入れて、中国神話においての釈迦が、燃灯道人とかにもなってるし。

 

今も忘却の椅子に座ってる、三人のへカーティアを横目で観ながら受け答えをしたが、もう手詰まりなのを判ってるせいか諦観し、もう笑うしかないといった感じで、三段笑いをしてから、こんなコトになった元凶である月の女神の名を、純狐は怒声で、全身全霊で叫声した。瘋癲か萎縮すると思っていたんだが、鬱憤が溜まっていたのもあり、それが起爆剤になったんだろう。逃げるコトもムリだ。仮に逃げられる状況下にあり、次の機会に再起を図ろうとしても、へカーティアが雷撃で殺され、三人のへカーティアは忘却の椅子に座って捕縛されている。友人を見捨てるコトも出来ないだろうし、この場には豊姫、依姫、咲夜がいる。停頓している純狐だけでは、鴛鴦の契りの妻たちに拮抗はムリだし、分水嶺ではなく、進退窮まり、純狐は五里霧中に立たされている。

 

「おのれッ! 謀ッたな嫦娥ァァァァァ!! あの狡知破鞋婊子ッ!」

 

おーこわ。かつての中国神話、神話時代の彼女は冷静で寡黙で、もっと利己的で、打算的で、一緒にいたらなにを考えてるか判らない、腹積もりが読めなく煙に包まれそうな、でも情にほだされやすい、見目麗しい女性だったんだが。まるで麦秀の嘆だ。でもそこがあばたもえくぼ。

 

「サクヤ。呪いたい相手に、心の中で念仏を唱えるような事をする日本のあれ、なんだっけ」

「恨んでる相手を思い浮かべ、目を縛る、鼻を縛る、耳を縛る、口を縛る、胸を縛る、手を縛る、脚を縛る、いつも××に不幸があるように。これを心の中で3回繰り返す、という内容でしたわ」

「らしいぞ純狐。って聞いてないか」

 

まあ水清ければ魚棲まずもどうかと思うが、まるで綺麗な水に真っ黒な墨汁を垂らす、いや垂らすなんて生易しくないか。墨汁が入った容器のふたを取って、そのまま綺麗な水へとぶち込んだみたいに、あんなにも憎悪の感情が怒濤の勢いで押し寄せてるし、多分、俺の言葉は聞こえてないだろうが、気にせず進行しよう。

 

「第59代天皇・宇多天皇時代、菅原 道真公は、当時・唐の情勢を知ってか、自分が行くのを面倒だと考えたのかは判らないが。建議の際、遣唐使の廃止を英断した」

 

「次にイラン神話とペルシャ神話、ゾロアスター神話のシェヘラザードとシャフリヤールか、まあ立ち位置は逆だが。後はギリシャ神話・セメレー、最後にグリム童話・忠臣ヨハネス――に近い」

 

純狐の眼を観ながら喋り、雷霆を魔方陣で右手に転移させると、宇宙空間なのに辺りから突然稲妻が降り注ぎ、雷騰雲奔だ。今も辺りに雷や稲妻が走っているので、霹靂一声や雷電霹靂が響いている。とりあえずかなり煩いのが白璧の微瑕だ。ただ雷霆がどんな形状か問われても、名状し難い。この世のモノとは思えない形状、物質だからだ。辺りに雷撃と稲妻が降り注いだので、俺が一方的にとはいえ、未だに鈴仙の腰へ手を回して密着していたが、生命の危機を感じたのか混迷の、恐怖に打ちひしがれた声を出し、俺の片足に両腕で縋りついて、嘆願を述べる。

 

「待って、落ち着いて下さい弘天様! 私さっきの雷霆の余波で死にかけたんですよ!」

「貴方が落ち着きなさい、仮にも貴方は私達の愛玩動物でしょう。お姉様、ここは能力で避難を」

「そうね…。弘さんの晴れ姿、もう一度観たかったけど…」

 

まるで護呪や、お経を読むみたいにずっと誦し、今も俺に請っている鈴仙を依姫は引っ剥がして、豊姫の能力を使い、三人とも安全地帯へテレポートした。巻き添えを避けるために豊姫の能力で消えたが、魔界や冥界、天界や地獄なら影響を受けないので、そのどれかに転移したんだろう。

しかし咲夜はこの場に残っている。俺は隣にいる咲夜を一瞥してから、また純狐を観た。

 

「俺と魅魔に似た中国神話の女神、純狐よ。仙霊の戯奴(お前)は、妖精みたいに本当の意味で死ぬ事はないだろう。だから急転直下に、旭日昇天の勢いで御覧じろ。この雷撃は須臾でも観られないのだ」

 

右手にある雷霆は今もバチバチビリビリと、それでいて腹中雷鳴みたいにゴロゴロと音が鳴っている。使わない時は基本的に大人しいが、使った時は全宇宙を滅ぼしかねない雷轟電撃の雷光というか、全宇宙を巻き込む天変地異が起きて、爪痕を残すのだ。どうだ明るくなったろう、流石にこれは、光るほど鳴らぬというワケではなく、リハクの目をもってしても見抜けない。

この世界には、平行宇宙や並行世界、パラレルワールドとか多世界解釈、コペンハーゲン解釈などやシェルドレイクの仮説は無いけど、仮に多次元宇宙論があった場合、正直、力加減を間違えたら、この雷撃を出した時の余波、または影響を与えただけで、ほとんの宇宙が呆気なく滅ぶくらい威力が半端ないし、右手にある雷霆が怖いです。せめてあの地球が消滅する事の無いように、さじ加減を気を付けなければいけない。

 

桑原桑原(くわばらくわばら)。思えば、各国の神話の雷神って高位の神が多いよな。なんでだろう」

「××様」

 

右手側にいた咲夜は、抱っこしていた赤ん坊を差し出すように渡した。空いた左手で胴を持ち上げ、そのままよく観えるように左手を挙げて示すと、嫦娥への、憎悪の渦に巻き込まれていた純狐は反応したが、まだ自我や意識はあるようだ。彼女にとって実子が生き返ったのは、旱天の慈雨だったろうから。

サリエルに頼んで純狐の子を蘇生させたが、まずは目の前にいる仙霊を殺して××神話に降させ、冷静になったのを確認してから、彼女と講和する事にしよう。子供を蘇生させ、元の魂や人格をいれたが、今はすやすや寝ている。この子供は、よほどのコトをしても起きる事はまずない。何故ならば、今この子供は、元々あった魂と人格を、元の肉体から分離してしまったので、一度分離してしまった魂と人格を、今は肉体に慣らしてなじませている最中だからだ。

 

「××神話の大天使(アークエンジェル)・サリエルへ命令し、お前の実子を蘇生させたが。この子が雷撃で死ぬ前に受け取って見せろ」

 

「な、なんてことをッ!」

 

挙げていた左腕を振りかぶり、そのまま仙霊に投げた。咄嗟の行動だったからか、純狐は呆気にとられた表情ながらも、我が子を救うべく、宇宙空間を移動してるが、子供にどんどん近づくと同時に、俺、咲夜との距離も狭まる。

……餓鬼の目に水見えず。這えば立て立てば歩めの親心 わが身につもる老いを忘れて。とはよく言ったものだ。

 

右手にある雷霆を高々に上げると、雷霆は反応して光を帯びていくが、宇宙空間の時が止まった。これは咲夜の能力のお蔭で、ちょうど、仙霊の時も止まってるが、子供を両手で抱きしめ、安堵の表情をした時に純狐は止まってる。幸せの絶頂で死ぬのも、華だろう。あんな憎悪に囚われたまま殺すより、こっちの方がいい。この手段ならば、彼女の憎悪が、地盤沈下になるハズと考えた上での行動で、晴好雨奇の気持ちみたいな、自然な笑顔をした時に止めて、純狐を殺したかったんだ。あの蘇生した子供も巻き込まれるが、肉体に細工を施してるので死なない。まあ、蘇生した子供を純狐に観てもらう事が本来の目的だったし、死んでもまたあの子を蘇生すればいい話。

 

「シェヘラザード姫。憎悪に満ちた表情も粋ですが、帰するところ、彼女は笑顔も美人ですわね」

「ああ……美人はどんな表情でも辨天だ。だから俺達だけは純狐の、あの吸い込まれそうな表情を忘れずに、ずっと覚えていよう」

 

昔、永琳にしたエゴを思い出した。だからこそ、憎悪が瀲灩した時に殺すより、神話時代から続いた憎悪の時間よりも、今この時のまま、憎悪しかなかった過去の神話時代を、一瞬とはいえ、この幸せな時間を、あざやかな絵具の色彩で塗りつぶして(回帰して)、抹消しよう。塗りつぶすから、臭い物に蓋をするわけじゃないのだ。強いて言えば、病膏肓に入っている、夾雑物を取り除くに近い。

そもそも純狐は、夫や嫦娥、自分の実子以外の昔の事は、あんまり覚えていない。仙霊になったきっかけで、殆どの記憶が欠落し、闕乏している。まあ簡単に言えば、彼女は憎悪が膠着されてる、言わば憎しみの塊だ。つまり雪中松柏で、怨みという感情、その集合体で出来ている。それは記憶も、その集合体で埋め尽くされているというコト。

 

「玄妻女士は、夏・殷・周時代に子供を殺されてから、その殺したモノに復讐するため、子を殺した男の妻になってそいつを殺したが、その後は、嗔恚だけで仙霊という存在を保っていたからな」

 

抜本塞源するため、その怨みの感情を、綺麗な絵の具の色彩で上書きするから、憎悪で出来ている純狐は、仙霊という存在を保っていられるのかが懸念だ。まあ肺肝を摧いて悩んでみたけど、どっちにしろ、彼女は殺さねばならん。瀬を踏んで淵を知ってるし、純狐にとっては、考えうるかぎりの中で、この手段が一番のセラピーだし、陰きわまりて陽生ずで、フェムトファイバーだ。

怨みなんて忘れたこの瞬間を須臾、時間というフィルムに収め、変化を嫌う永遠へとするために。後は心のケアとして、アンチエイリアスをするだけだ。

 

「抜苦与楽ではないが、清風明月へといざなうため。羿、嫦娥に抱える怨みごと、霧消して往ね」

 

旧約聖書・創世記 第1章3節~4節

『神は”光あれ”と言われた。すると光があった。神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回書いた通り、ギリシャ神話では神々によって神裔・半神だけが男から女、女から男へ性転換する神話があります。そして戦国時代では、神々の手により、殆どが女性になります。その時代でも軽く書きますけど、そんな奥深くまで掘り下げません。その話の内容も、せいぜい壺掘りくらいです。だから、今のうちに説明しようと思います。
天皇などは別ですが、戦国時代の神裔を女性にする最大の理由は、戦国時代の神裔、例えば平氏や源氏、藤原氏などに子供を作らせないためであり、戦国時代以降の神裔はもう出ません。したがって、同一血統の中で正しく継承が行われず、譜第じゃなくなります。
ただ弘天が手を出す場合は別ですが、蘇我氏、稗田氏、出雲氏、諏訪氏、物部氏なども同義です。
戦国時代以降の平氏、源氏、藤原氏は、ミトコンドリア・イヴの子孫ばかりを養子にとり、家督を譲るので、その子孫たちが後の江戸時代から平成時代まで子供を産んで行く事になります。でも、古い時代の人間に権力などを握らせるというわけでもないです。
つまり天皇の血、天津神の血は、戦国時代までの歴史通り、間違いなく受け継いでる、というのが、江戸時代から平成時代へ進めるにあたり、前提として必要でした。ですが女帝天皇、女性天皇だけはかなり面倒な事になるので、天皇はずっと男のままです。

他には、いくら天壌無窮の神勅が日本神話にあろうと、その神裔が増えすぎても、結局は1人、あるいは藤原氏、平氏、源氏のモノが10人ほど生きていたら、それで十分です。そもそも鎌倉幕府を強引に造らせる正当化の理由の為でもありました。なにせ天皇の血を引くモノは老化せず、しかも寿命が無いので、跡継ぎの子供を作る必要が本来ありません。当然ながら、1人が死ねば、穴埋めとして子供を産む必要はあります。
それに、寿命がない第1代神武天皇がここでは存命していて、第2代天皇から第10代天皇もそれは同じです。そもそもの始まりである神武天皇が、ここでは存命しているのです。
もちろん数を増やすという意味では子供を産むべきでしょうが、もう戦国時代辺りだと十分すぎます。かといって、邪魔だから殺すというわけでもありません。ちゃんと存命させたまま、平成まで進む事になります。でも権力などは握らせません。肝心なのは、平成時代になろうとも、戦国時代で女性になった神裔は、ちゃんと日本にいて、尚且つ存命している事が重要。絶対に生きてもらう必要があります。

後は、戦国時代以降に出てくる人間が、自分は神裔だとか、自分は天皇の血を引いてるから親族なんだぞ。と、言わせない為でもあります。
神話時代から始まり、紀元前に産まれた神武天皇から、戦国時代までの神裔でも、天津神の血はかなり薄まってるのに、平成時代の人間とかなら、もうね…さすがに、いてもいなくても一緒です。天皇の血が一滴でもあればいいとかいう話じゃないですし。


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一燈照隅・萬燈遍照

新約聖書・ヨハネの黙示録 第22章13節

わたしは(ヤハウェ)アルパであり、オメガである。最初の者であり、最後の者である。初めであり、終りである。』

 

「正勝吾勝勝速日」

 

神綺とサリエルに頼み、また創造してもらった、月の都の謁見の間にある、神韻縹渺のような、それでいて金殿玉楼な、空席のフリズスキャールヴへ腰を掛け、流れる動作で両足と両腕を組んだ。尊大横柄な態度で一度殺した女神2柱を観ると、玉座の両脇には、神綺やサリエル、××神話の高位の女神が侍られている。咲夜は輝夜を追って地球に戻った。

豊姫と依姫は、魔界、地獄、天界、冥界に転移させていた玉兎たちを束ね、創り直した月と月の都へと連れて行き、殺してまた蘇生させた月の民へ引き渡している。月の都の組織と上層部を洗い、また1から全てを再構築し、元月の使者・海神の豊姫と依姫が一旦纏めあげ、玉兎を含めて統括するためでもある。月の民が死んだままだと困るからだ。ソレを終えたら後は蘇生した月の民に任せて、依姫は子供を育てるのに専念するコトになっている。豊姫は、いろんな国を旅行して、いろんな物を食べて、観光するらしい。二柱共、もう月の使者じゃないから好きにしても問題はない。オレ、永琳、豊姫、依姫が月の支配者であればいいから、月の民にもあれこれ命令はしない。好きにしてもらう。鈴仙は元々、豊姫と依姫が飼っていた愛玩動物なので、飼い主に返した。簡単に返された本人は不満そうだったが、飼い主二柱が妻だし、鈴仙が欲しくなれば妻たちへ言えばいいし。

側頭部に付けていた能面のこころを右手で掴み、今度は顔に装着した。まずは前口上を話そう。

 

「二柱の気分はどうだ」

 

この場にいる、ギリシャ神話、中国神話の有能な二柱の女神が、和光同塵するコトのないように、××神話へ引き込んだけど、その前に一度殺しているので、現状の気分はどうか聞くコトにした。引き込んだと言っても、必要な時以外は好きにしてもらうので、犬馬之労みたいにさせる気はないし、八紘為宇のような、世界を一つの家にするとかいう、第二次世界大戦中の日本が、中国、東南アジアへの侵略を正当化するための、スローガンみたいなコトじゃない。

 

古代ギリシアの哲学者・クセノファネスは言った。

『すべては一であり、一は神である』

オレが求めてるのはメソポタミア神話、ギリシャ神話、インド神話みたいな、一燈照隅萬燈照国だよ。かと言って、百万一心をしたいワケでもないのだが。

 

「私は特にないわね」

「老少不定。私も、死んだ子供が戻ってくれました。だから...十分です。これ以上は望みません」

「…あれほど瞋恚していた嫦娥は――」

「もはやどうでもいい」

 

双方を一方的に殺したんだし、もう少し反応が欲しいところではあるけど、地獄の女神と仙霊は、マイペースだった。恬淡寡欲であるへカーティアは、右手で口元を隠しながら欠伸をして、一緒にいるクラウンピースを呼んでなにかを頼み、純狐は一陽来復の表情で、子供を両腕で支えながら抱っこし、我が子を慈しみながらあやしているが、なんというか行雲流水で、花顔柳腰な母の顔になり、殺す前と比べて落ち着いている。あの様子を観るに、百折不撓ではなかったようだ。いやそうなったのは回帰させたからなんだけども。

純狐を一度殺して、まだ子供が殺されず、純狐が憎悪の塊になる前の感情を、彼女に回帰(上書き)させたのはいいが、オレの予想以上に青娥(嫦娥)への態度が変わってしまった。

しかし、嫦娥なんてどうでもいいと言う、悠々自適な仙霊の立ち振る舞いを見て、これを、よかった、とは言えない。

 

「ねーねー。ひろは、やっぱり地獄の女神と仙霊を、××神話に混ぜるの?」

「色んな民族の神話が混ざってるメソポタミア神話みたいに、神話って、本来そういうモノだろ」

「そうだけど~。まるで第二次世界大戦中の日本のスローガン、八紘一宇(・・・・)みたいよ」

「八紘一宇というより、和洋折衷、もしくは和魂洋才だと思うが」

 

右隣にいた地獄・魔界の総括であり、××神話の高位の女神である神綺が、両膝を床につき、悪魔みたいな翼を動かし、オレの膝に両腕を置いて、撓垂れ掛かりながら話しかけたので、右手で神綺の頭を撫でつつ、愛でながら返答すると、脇にいたサリエルが、××神話へ混ぜることに同調した。サリエルの表情から伺うに、へカーティアと純狐を××神話に混ぜるコトへの不満はないようだ。

 

「神綺、いいではありませんか。神が増えるのは喜ばしいコトです」

「サリエルはひろの命令には忠実すぎ。少しは不満を抱いた方がいいわよ」

「旧約聖書・エノク書に記載されている熾天使(セラフィム)שריאל(サリエル)なので。主に従うのが役割です」

「…エノク書は偽典だし、正典には天使ガブリエル、天使ミカエルしか出てこないわよ」

「聖典・タナハでもそうなってます」

 

どうでもいいかもしれないが、一部のキリスト教派では、エノク書が正典扱いになっている教派もある。

偽典や、ヘブライ神話などに出てくる天使で、俗説が無駄に多い事で有名なサリエルは、大天使説と、熾天使説がある。脇に侍らせているサリエルには、この二つの説が混入されているのだ。てかキリスト教の教派、無駄に多すぎなんだよ。あれ全部、解説を交えながら捌ける人がいたら、オレはその人を、間違いなく尊敬するね。

しかし、天使は禁欲的な感じなモノと思われがちだが、偽典に出てくる天使って、基本的に人間とセックスしまくってるんだよなあ。まあ天使って存在、元々は人間って場合が多いからな。元から天使のヤツもいるけど。

 

「純狐、〝解釈の余地がある〟ってどういうコトだと思う」

「格物窮理......一般的には…色々な想像が出来る、というコトでしょうか?」

 

抱っこしてる子供に夢中で、純狐へと声をかけると、自分の世界に入っていた彼女は、ハッとして意識を呼び戻し、今の問いを反芻して思考を重ね、ここは一般論で答えたが、キレイな答えだった。それではダメだ。

 

「いいや違う。解釈の余地があるってコトは、言わば妄想(・・)でしかない」

 

あくまでも便宜的な方便ではあるが、仏教には、象の上に世界がある、っていう考えがあるのは、有名だ。でも釈迦はさ、そんなコト一言も言ってない。釈迦が言ってないコトを言うってコトは、もう別モノだ。つまり、元々あった設定に無いコトをするってコトは、虚言や妄想と同じだ。その時点で曲解ですらない。釈迦が言ってないのだから、曲解のしようがないのだ。だから、教えを守るってのは、大事なんだ。

 

「……あえて綺麗に言いましたが、天帝はハッキリ言いますね...」

 

「絶対に自分の都合にいい方へ解釈するモノが出るから、明確に言うべきだ。キレイな言い方はするべきじゃない」

 

だからこそ、神話、あるいは歴史に無いコトをするってコトは、妄想なんだよ。それに、幻想郷、という言葉はダメだ、幻想郷という綺麗な言葉でいい方へと解釈して思い込み、先入観で勘違いするモノは必ずいる。妄想郷に変えるべきだ。そして定義は必要だ。曖昧にするのは解釈の余地があるって言うけど、それ妄想だろ。綺麗な言い方をしないでくれ。

釈迦が言ってないコトを、仏教の教えだ、って言うのは滑稽でしかないよな。釈迦が言ってないコトを言うってコトは、曲解ですらない。それは虚言で妄想だ。それと同じさ。面白ければ、結果が良ければ全てよしって考え、邯鄲の枕はキライだ。

人間が神に無礼なコトをしても許されるとか、当時の価値観と神をなめてるだろ。今が鎌倉時代とはいえ、いいや鎌倉時代だろうが平安時代だろうが、当時の価値観から考えると、普通、殺されても文句は言えんぞ。神がただの人間に、血も、才能も、容姿も、なんの取り柄もない平凡な人間に、なんの長所もなく、短所しかない欠点だらけの人間に、その辺にいそうな人間に優しくするとか、笑わせるなよ。神が他の人を助けて死んだ人間を褒めたり、その死んだ人間の人生をやり直させる、とかを神が言い出すのは、ホントに頭が痛い。ソレはただのお為ごかしじゃないか。そんなコトを言い出す、妄想で出来たソイツ()は、もはや神ではない。

 

「妖怪の父と言われた、あの水木しげるは、妖怪の歴史(伝承)をちゃんと調べて漫画を描いてたのにな。ソレと鬼太郎は人間(正義)の味方と勘違いしてるモノが多い。元々、鬼太郎は妖怪でもなかったし」

 

色んな妖怪漫画を手掛けた、かの水木しげるは、自分が実際に体験したコト、妖怪の伝承、歴史、古い文献や絵巻を調べていた。一反木綿とかをあの姿へ形にしたのは水木しげるだけど、ちゃんと調べた上で、妖怪が実在するモノとして、漫画を描いていた。妖怪を実在するモノとして描いてたのであって、自分の妄想として、自分のオリジナルとして、妖怪漫画を描いてなかったんだ。今、平成時代の妖怪があるのは、水木しげるのお蔭だ。鬼太郎は、元々正義の味方じゃなかったがな。

とりあえず、水木しげるの漫画『悪魔くん』の鳥乙女ナスカは、今観てもカワイイ。

 

「オレの目的の1つは一燈照隅万燈照国だが、へカーティアと純狐には動いてもらう時が来る」

 

純狐に解釈について話していたら、仙霊の隣にいた地獄の女神が、会話に混ざって来た。

 

「ソレってまだ先の話じゃない?」

「そうだな。へカーティアと純狐は、それまで好きにしていい」

 

彼女と会話してると、ギリシャ神話を思い出す。

オレはギリシャ神話で言うと、ΖΕΥΣ(ゼウス)の立ち位置なのだが、実際は、二代や、二回殺されたという意味でも、ギリシャ神話のΟυρανός(ウーラノス)Κρόνος,(クロノス)にも近い。豊姫と依姫は、ギリシャ神話の海を司る、海神のἈμφιτρίτη(アムピトリーテー)Τηθύς(テーテュース)で、神綺とサリエルは、ギリシャ神話のΑΙΔΗΣ(ハーデース)Θάνατος(タナトス)の役割に近く、咲夜はギリシャ神話の時の神Χρόνος(クロノス)、夢子はギリシャ神話の時刻の神Καιρός(カイロス)だ。

ユウゲンマガン、夢月、幻月、魅魔などの女神にも、それぞれの与えられた役割がちゃんとある。稀神サグメは、日本神話通りの、ドレミー・スイートは中国神話通りの役割、なのだが、ドレミーの立ち位置的に言えば、ドレミーはギリシャ神話の夢の神Ὄνειρος,(オネイロス)と、眠りの神Ὕπνος(ヒュプノス)でもある。でも、永琳の役割は、知恵・記憶の女神だけではなく、かなり多い。

肝心の実妹、輝夜の役目は、αἰών(アイオーン)だ。

 

「私たちは幾度も回帰したけど、ゼウスの命で、ギリシャ神話のイクシーオーン、シーシュポス、タンタロス、プロメーテウス達が、永遠に苦しみ続ける話がある。あれ、ループ物よね」

 

「原点だ。神話の設定を作り、そしてソレを語り継いできた紀元前の人間は、やはり優秀だろう。後から出来たモノは、ソレの派性か、あるいは真似事で、水増しで、後追いでしかない」

 

世に出ている創作物では、男装女装、BDSM、逆レイプ、食糞、飲尿、貞操帯、色々あるけど、これらが神話で既にあるってどういうことだよ。紀元前の人間は未来に生きてんな。しかも今挙げた一部は、古事記と日本書紀の日本神話にもあるし。

 

「ナポレオンがピラミッドで未来を見た話があるけど。あれも、ね…」

「ああ。アポローンの力で未来を観る事が出来た、ギリシャ神話のカッサンドラーとそっくりだ」

 

元ギリシャ神話の女神を観て思うが、昔、天才と謳われた古代ギリシア人の哲学者、数学者たちの家系を調べて(・・・・・)判ったコトがある。アマテラスの神裔・天皇みたいに、大抵の古代ギリシア人は(・・・・・・・・)ゼウスの血を引く(・・・・・・・・)譜第の神裔(・・・・・)、だというコトを。もちろん、ゼウスだけではなく、ゼウス以外の神々の血を引く、古代ギリシア人もいた。全部、自称だがな。

古代ギリシア人を調べてみたら、古代ギリシアの哲学者ピュータゴラース・哲学者プラトーンも、天皇と同じ、神裔だったんだ。天皇にとって都合がいい、日本神話と同じように、ギリシア神話もまた、古代ギリシア人にとって、都合がいい神話だった。

例えば、そうだな。古代ギリシア人の祖とされるギリシア神話の神裔・Ἕλλην(ヘレーン)がいたり、他には、古代ギリシャを構成した集団の一つとされるアイオリス人は、ギリシャ神話のΑἴολος(アイオロス)が祖とされていた。とはいえ、こういう話は紀元前の古代にいた色んな民族ではよくある話で、古代ローマ人にも、似たような話がある。ここまで言えば、日本神話とギリシャ神話がスゴイ酷似してる、とオレが言ったのも、腑に落ちるだろう。

神裔の天皇・藤原氏・稗田氏・平氏・源氏・菅原氏・出雲氏・物部氏・蘇我氏・小野氏・諏訪氏、みたいにな。

オレが古代ギリシア人を認めているのは、そういう理由も含んでいる。それに、古代ギリシア人の哲学者・数学者たちが神の子孫なら、彼らが天才だったのも納得だ。全員が神の子孫だったワケではないがな。ギリシャ神話のプロメーテウスが、人類を創造した話もあるから。

 

「ゼウスは白銀時代と青銅時代の人類を計2回(・・・)滅ぼしてる。でも古代ギリシア人は皆、神の子よ」

「ああ。機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)でも、ソレは古代ギリシア人だからこそ、納得できるんだ」

「古事記と日本書紀にある日本神話の場合、古代日本人は勝手に生まれたのよね?」

「そうだ。天皇は神裔だが、古代日本人は勝手に生まれた。イザナギとイザナミは関与してない」

 

今の鎌倉時代は、ギリシャ神話でいう黄金時代、あるいは英雄時代……に近いだろうな。

…仮に、仮にだ。自分の祖先を調べて、50代前の祖先が判明するなら、ソレはかなりスゴイんだ。なにせ、平成時代にある戸籍は(・・・・・・・・・・)明治時代から出来たモノだ(・・・・・・・・・・・・)。つまりだな、ほとんどの人間には、明治時代以前よりも前の祖先は、判らない場合が多いんだよ。まあ祖先が判っても、大抵の人間は百姓だろうさ。とはいえ、祖先が判っても、実際に血統が繋がってるか判らんがな。そういう意味でも、皇室の系図を観て、祖先が判っている天皇は特別だ。血が何千年も続いてるってのは、厳密に言えば外交ではないけど、皇室外交をする場合、信用されやすいんだよ。DNA鑑定をしたなら、もっと信憑性は増すがね。

そこで、日本神話と××神話の神々、すなわち天津神は、高天原である月の都から日本へと滞在しつつ、天皇・藤原氏・稗田氏・平氏・源氏・菅原氏・出雲氏・物部氏・蘇我氏・小野氏・諏訪氏は神裔だ、という証明人と、DNA鑑定の代わりとして、高天原()にいた俺たち天津神が、現在は地上に降り立っている。もちろん国津神・八百萬神(八百万の神)においても、この話を含めて例外ではない。つまりは綱紀粛正みたいな存在としている。

実際に、天皇のDNA鑑定をされると、宮内庁が困るだろうし、絶対に出来ないだろうからこその、適切な処置だ。

 

「第16代アメリカ合衆国大統領 エイブラハム・リンカーン、ゲティスバーグ演説の記憶。nani gigantum umeris insidentes(巨人の肩の上に立つ)...そしてγνῶθι σεαυτόν(汝自身を知れ)

 

旧約聖書・コヘレトの言葉(伝道の書) 第1章9節~11節

『先にあったことは、また後にもある、先になされた事は、また後にもなされる。日の下には新しいものはない。"見よ、これは新しいものだ"と言われるものがあるか、それはわれわれの前にあった世々に、すでにあったものである。前の者のことは覚えられることがない、また、きたるべき後の者のことも、後に起る者はこれを覚えることがない。』

 

「〝アイデア(着想・想像力)〟と言えば、キレイで、大抵の人間にとって聞こえはいいが、結局のところアイデアとは、無知と無自覚から生まれた産物(・・・・・・・・・・・・・・)でしかないのだから」

 

アイデア(・・・・)、という言葉はダメだな。アイデアというのは無知と無自覚から生まれたモノでしかない。そしてアイデアという綺麗すぎる言葉で、勘違いや曲解を生む原因に繋がる。

他に例を挙げるなら、幻想郷という単語もダメだ、勘違いするモノが確実に出る。妄想郷に変える方が、まだそれを防げるだろう。

 

…地獄の女神と仙霊は××神話に降った、つまり、へカーティアと純狐は、月の民となっている。へカーティアとループ物の原点を話をし終え、月、月の民で連想したのか、オレを視界に入れながらも、彼女はある小説の名を出し、続けて喋る。

 

「月といえば、私、『本当の話』と、『イカロメニッポス』っていうSF小説が好きなのよ」

「確か…史上最初のSF小説で、2世紀にいた著作家 サモサタのルキアノス の作品だったな」

「そうそう」

 

スゴイよな。だって2世紀で、人間が月に行くSF小説が、すでに出来てるから。

『本当の話』の方の小説は、ゼウスのお蔭で不老不死になったエンデュミオーンが、月の王として出てくる内容…だっけか。古代ギリシア・古代ローマの人間は才能豊かで凄かったなあ。ああいう人間だけが生き残ればいいのに。滅んだけど。

まあSF物において、月に高度文明を持つモノがいるなんて設定、とっくの昔に使い古されてるよ。月に人がいるなんて設定なども、19世紀や20世紀に出来上がった設定ではない。それらの設定は、2世紀からすでにある設定だ。

 

SFの父と言われる ハーバート・ジョージ・ウェルズ と ジュール・ヴェルヌ がいるけど、これが19世紀とかなら別にスゴくない、なぜならば、2世紀に生きていた人間よりも、宇宙の知識があるからだ。平成時代の日本人が、マッチを使って発火しても、別にスゴイ、とは思わないだろ。マッチを使うと発火するのは、平成時代の人間だと、至極当然の常識なんだから。

nani gigantum umeris insidentes(巨人の肩の上に立つ)とは、温故知新とはよく言ったモノだ。この言葉で言うなら、古代ギリシア・古代ローマ人が、巨人になるだろう。古代ギリシア・古代ローマ以外の国の民族にも、優れた民族はいたがな。シュメール人とか。古代メソポタミアの"ウル・ナンム法典"や、古代バビロニアのハンムラビ法典などがある。これはスゴイ事だ。なにせ、古代メソポタミア文明に、道徳や、奴隷の扱い、またはこういうコトをしてはいけない、という明確な法律と、刑罰があったんだから。しかも、古代の紀元前1750年頃に、法律があったんだ。法律で国を維持するためとはいえ、これはスゴイ事だ。当たり前だが、古代メソポタミアにも奴隷はいた。今では滅んだけど。

 

「ローマ帝国第23代皇帝・ヘリオガバルスみたいなのはいたがな」

「ヘリオガバルスは皇帝としては無能でも、変態キャラとして観たら最高の逸材よん」

 

オレの言にへカーティアはうんうん頷いて同調し、実に神様らしいことを言い出す。別に成果主義ではないけどさ、ああいう人間こそが、本来、天才と呼ばれる人間たちだろう。誰もが認める結果を出し、その結果が、後の中世、ルネサンス、後世の基盤となっているから。日本の歴史を調べたら判るが、これは日本も例外じゃない。現時点、平成時代になってもなお、彼ら、古代ギリシア人の影響は、アラビア・西洋だけではなく、日本においても膨大だ。

なにせ、平成時代の人間より、古代ギリシアの知的水準が高かったからな。間違いなく、平成時代の人間より、古代ギリシア人の方が、知的水準は上だ。断言できるほど、彼らは天才だった。もちろん、席巻した時の奴隷がいたから、ヒマだった。というのも大きいだろうが。

とにかく、確実に言えるコトは、平成時代の人間の倫理があるのも、彼ら古代ギリシアの哲学者たちの偉業だ。もちろん神道仏教、新約聖書、儒教から派生している道徳・倫理などもある。

 

「やっぱり弱者で無能な人間は、身の程を弁え、弱者は弱者らしく地面に這い蹲り、有能なモノの奴隷として、歯車として生きたらいいわ」

 

「同感だ。神話に出てくる神裔・半神の王、英雄(ヒーロー)が、弱者、または無能では話にならん」

 

その辺は、古代メソポタミアと、古代ギリシアの人間が、ちゃんと身の程を弁えて、理解してた。自分たちは、神より劣る存在だとな。古代ギリシアの格言には、γνῶθι σεαυτόν(汝自身を知れ)という言葉もあるし。

へカーティアへ返答しつつ、よしよしと、オレも両腕を神綺の背に回し、抱きしめ返して甘やかすが、数分くらい経ってやっと満足した神綺は、サリエルの反対側に侍り、満足げな神綺を観るコトが出来たので、もう十分だろうと思い、紫と幽香も諏訪国へ帰ってるし、オレも諏訪国に帰ろうとしたら、回帰して全てを知ってるクセに、へカーティアに待ったを掛けられ、この先どうするのか聞かれる。…山紫水明の境地にいる純狐は、蘇生させた子供に夢中で、話に入ってくる気が無いようだ。

ギリシャ神話と中国神話の女神を××神話に降したが、あれこれ命じて何かさせようという気はない。ただ、欲しかったから、彼女たちを降して、娶っただけ。唇歯輔車の関係だ。

強いて言えば、二柱とも、神綺とサリエルが創った魔界、地獄、冥界、天界で好きに過ごしてもらう気でいる。××神話に降したからと言って、特に仕事はないのだ。今は、だが。

必要になる時は、おそらく、明治時代から昭和時代。そして平成時代より後になるだろう。

現在の鎌倉時代では、まだ、始まってすらいないのだから。

 

「それで、××神話の至上神(最高神)は、私達を××神話に引き込んで、最終的にはどうするの?」

「…へカーティア。Μνημοσύνη(ムネーモシュネー)Μνήμη(ムネーメー)によって、記憶が回帰してるならば、判ってるだろ」

 

最初はいい加減にして、あとから真面目にするのが、オレのスタイルであり、モットー。

とはいえ、正直に言うと、オレがしてるコトは、古代ギリシア人たちと、ほぼ同じコトなんだが。

美女をレイプしまくったゼウスは、本来、最高神ではあったが、女好きではなかった。

古代ギリシアの詩人・ホメーロスが産まれるよりも前の、あのヘーラーも、あんな性格ではなかった。…ゼウスの姉、ギリシア神話ヘーラーは、元々あのような性格ではなかったんだ。あんな性格になったのは、ホメーロスの影響が、大きい。

 

「第96代天皇・後醍醐天皇時代、後醍醐天皇に仕えた楠木正成は、〝七生報国〟と言った」

 

たまに"神話は宗教ではない"と言うモノはいるが、それはありえん。少なくとも、紀元前の歴史を調べて、顧みるに、間違いなく、古代の人間たちにおいて、神話=宗教だった。もちろんこれは、紀元前の人間たちを調べた上で言ってる。だからこそ、この話は、古代ギリシアにも言えるんだ。それすなわち、あの古代ギリシアの哲学者たちにも該当する。古代メソポタミア、古代エジプト、古代中国の夏・殷・周の三代時代もそうだ。とはいえ、夏・殷・周の時代にも神の存在や思想は、一応あるけど、古代中国から平成時代の中国までの歴史を観るに、神の存在や思想はかなり薄い。そういう意味では、神の存在を扱わなかった仏教の開祖・釈迦と同じく、紀元前の古代中国にいた儒教の始祖・孔子も神を扱わなかったし、スゴイかもな。まあでも、これは古代中国から、色んな民族が何度も何度も、侵略と反映を繰り返してるのも、原因の一つとしてはあるかもしれない。

 

「お前達を××神話に降して、娶ったように、オレの目的は女を侍らすコトが一つではあるが」

 

日本神話とギリシア神話は、見比べてみると、ほとんど同じだ。もちろん内容が違う部分もあるし、神話の設定が全く違う部分も多くある。肝心なのは、神話時代・英雄時代のあと、天皇みたいな神の子孫がどうしているか、について、やってるコトがほぼ同じなんだ。古代ギリシアの場合は、負けたがな。古代ローマや、オスマン帝国が無ければ、古代ギリシアはどうなっていたのだろう。

江戸時代末期・幕末の朱子学者 斎藤拙堂 が、和洋折衷を唱える前は停滞していた、江戸時代の日本みたいに、なっていたかもしれんな。

 

「日本を、日本神話と内容、設定が酷似するギリシア神話のような結末にするコトでもあるのだ」

「あれ、それだと滅ぶんじゃ……」

「だ、大丈夫。メイビー。決して、脱亜入欧ではない」

 

紀元前の古代中国では火薬、紙、羅針盤、あとは活字印刷する技術があったのは有名だけど、当時の古代中国が先進国で、古代中国人が優秀だったのも納得だ。しかしながら、古代中国から何度も侵略と、侵略した民族を反映し、反映した民族と混血されてる。だから、紀元前の古代ギリシア人と、平成時代のギリシア人が、同じではないように、古代中国人と、平成時代の中国人は、完全に一致するかどうかという意味で、同じ民族ではない。

そう、かつて、紀元前の古代ギリシア・ヘレニズム諸国は、最終的に古代ローマに征服されたが、宗教、哲学、科学、医学、音楽、芸術、神話に到るまでの文化に関しては、逆に征服したように。

ギリシア神話の信仰が無くなっても、キリスト教徒や、後の中世、ルネサンス時代、平成時代までずっと語り継がれてきたように。

多岐亡羊ではなく、結末はすでに決まっている。

 

「二柱へ伝えるべきコトは特にないし、地獄と仙界に帰っていいぞ」

「ん。なら地獄に帰るわ。クラウンピース」

「あ、待ってくださいご主人様ー!」

 

フランクな返事をしたへカーティアは、地獄に帰るために次元を裂きつつ、自分の部下の名を呼び、クラウンピースは置いて行かれないよう主人の元へ向かうと、地獄の女神は隣にいた友人である純狐の右肩に、右手をそっと置き、仙霊は視界を子供から友人へと向けて、今も大事そうに抱っこしている子供を観て、地獄の女神は感慨深く呟いた。

 

「子供、よかったわね」

「ええ。本当に。よかった……」

 

二柱はお互いの顔を観て笑った。地獄の女神と仙霊がこの場でした会話はこれだけだった。

一言だけ莫逆の友と言葉を交わすと、昵懇の仲ゆえか、それだけで十分お互いへと伝わったようで、じゃあねと、オレに片手を振って、地獄の妖精を連れて地獄に帰った。

しかし、裂かれた次元は依然として残っている。純狐がまだいるから、だろう。

彼女も後に続くため、立ち上がった。しかし、裂け目から仙界へと帰る前に、フリズスキャールヴに座るオレと距離はあるが、子供を抱っこしたまま向かい合い、両目を瞑り、心の底から、感謝の気持ちを言葉に乗せ、一言一言に重みを増しながら、口にした。

 

「色々…添了麻煩。私の孩子について、深く...真的非常感谢。天帝のご厚意には報います」

「オレ、へカーティアと純狐を殺しただけでなにもしてないけど」

「いいえ。天帝が命じなければ、隣に佇む熾天使は、絶対に動きませんから」

「……なるほど。では、感謝してるならお前のカラダを――」

「はい。天帝のお好きにしてください。爺々の子なら、私は産みたいです」

 

まずは実子を蘇生させた恩を返して貰うため、仙霊のカラダを要求しようとしたら、出鼻をくじかれた。なんてことだ…イヤがる純狐にムリヤリ体を要求し、手玉に取る計画がパーだ。

ですが、と前置きをして、続けざまに純狐は喋る。

 

「青娥より後はイヤですから、先に私からでお願いします」

「待て、さっき嫦娥のコトはもうどうでもいいって……」

「それとこれとは話が別です。それでは失礼します」

 

彼女は立ち上がり、実子を抱っこしたまま一笑し、踵を返して次元の裂け目に入り、仙界へと帰った。純狐が入り終えると、次第に裂け目は閉じていき、最後は閉じて元の空間に戻る。

 

やっぱり青娥のコトまだ根に持ってるじゃないか! まさか后羿にもまだ怨みが残ってるのだろうか...面従腹背はゴメンだぞ。一度だけとはいえ、回帰させたというのに、どれだけ根深く怨みを募らせるんだ。せめて怨みではなく、愛とか、恋とか、そっち方面を募らせてほしいです、はい。

まあいいや、月の民と月の民を滅ぼし、月も消滅させた。そしてまた月を創り、月の都を創り直し、月の民もあらかた蘇生をし終えた。後は、両脇にいる女神に帰ると伝えよう。

……なんか最近、マジメなコトばかりで疲れたな。

 

「オレの役目は終えたし、諏訪国に帰るよ」

「え~。もう行くのー?」

「またグダグダ会議で小田原評定になっても困る。神綺、リグルのコトは任せた」

「うん…」

「月の民を蘇生し、月の都、月を創り直したが、忙しいのに色々とさせてすまん。ありがとう」

 

「私がひろの夢を叶える手伝いをするから、創って見せるから、それまで待っててね。まだ月の都が地上にあった時に……そう、約束、したからね」

 

まだ、リグルを使う時ではない。

オレの足元にいる神綺と、脇に侍らせていたサリエルに、へカーティアと純狐については任せる、そう目配せすると、サリエルは目を瞑って了承したが、足元にいた神綺は、寂しい寂しいと、抱き着き、オレの耳元で囁いてくる。最近、××神話のオレと神綺の実娘である、アリスにも逢えてないらしいので、寂寥感を募らせ、苛まれているのだろう。

 

「弘君。諏訪国へ帰る前に、不死について永琳とご一考ください」

「……そうだな」

 

「アテーナー様が生まれて、ゼウス様はガイアの運命から解放されました――」

 

左隣にいたサリエルは、右手でオレの左手を掴み、不死の話を進言して、考えるように言われた。即答は出来なかったけど、フリズスキャールヴに座っていたが、腰を上げ、すぐに諏訪国へと帰るコトが出来るよう、足元に魔方陣を展開し、なんとか返事を返す。

 

「――二回殺された弘君も……既に死の運命から......」

 

オレは今まで繰り返してきたが、その中で二回死んでいる。

さっきも言ったけど、オレはΖΕΥΣ(ゼウス)の立ち位置なのだが、実際は二代や、二回殺されたという意味でも、ギリシャ神話のΟυρανός(ウーラノス)Κρόνος,(クロノス)にも近いのだ。

ガイアの予言の支配下から逃れたゼウスは、ギリシャ神話において最高神になったが、元最高神で、殺され、あるいは封印された祖父、父へと続き、ゼウスは三代目の最高神だから。

 

「大丈夫だ。もう会者定離になるコトはない。死ぬ気はないし、殺される気もない」

「そう、ですか。大本営発表は......もうイヤですよ」

 

右手と左手を繋いでいたが、左手を動かして、繋がっている天使の右手と恋人繋ぎをしてから、しっかりと握り返して不死について肯定した。

不安だった表情から、胸をなで下ろしたサリエルは愁眉を開き、気が抜けて緊張の糸が切れたのか、両目の端から一筋の水滴となって流れ、頬へ伝わる。

 

「よかった、よかった。永琳も報われます…」

「お、おい、こんなコトで泣くなよ」

「…それだけ、嬉しいのですよ。昔、不死について進言しても、"イヤ"だの一点張りでしたから」

 

体を動かして泣いている天使と対面し、空いた右手の親指の腹で流れていた水滴を拭う。昔のコトを持ち出されると、言葉に詰まって何も言えなくなる。

 

今のオレは、平成時代、そして平成時代よりも未来に進んでも、もう死の運命に従うコトはない。しかし、今まで回帰しても、永琳やサリエルから不死について進言されたが、オレはソレを断り、なあなあと繰り返してきた。不安な表情をしながらも、永琳共々、ずっと不死になってくれるように願っていたサリエルは、絶対にオレが死ぬコトはない、という確実性に欠ける保障ゆえか、今まで抱えてきた、胸をえぐられる思いもあり、不死になってもらい、浮かばれたいという気持ちも、あるにはあるのだろう。

 

「いい雰囲気のところ悪いけどちょっと待って。今の言葉、ウソじゃないよね!?」

 

××神話の熾天使を泣かしてしまい、どうしたモノかと悩んでいたが、そんな空気を、悪魔である神綺がぶち壊してくれた、のがいいが、オレの胸ぐらを掴み、今もサリエルと恋人繋ぎをしながらも、ぶんぶん前後に振られてシェイクされる。

心なしか、繋いでいた天使の片手に、オレを逃がさないように力がこもった、気がした。

 

「ホントホント、ウソじゃない」

「じゃあこれ! これ飲んで!!」

「うげ」

 

脳をシェイクされた事と、ソレのせいで酔って気持ち悪くなった事と、観たくもない薬を出されてのトリプルパンチで、イヤだという声をあからさまに出してしまった。一体なにを渡されるかと思いきや、魔方陣で神綺の右手へと転移させ、オレへと渡したのは、青娥が飲んで不老不死になった、あの蓬莱の薬、だったのだ。

サリエルと恋人繋ぎをしている左手は使えないので、空いている右手でソレを受け取った、けど、これは、飲みたくない。

 

「結局、不死になるなら蓬莱の薬でもいいよね? はやくはやく。あ、飲むまで逃げないでね」

「か、顔が怖いよ神綺ちゃん。折角の美人が台無しだ。不死についてはこれ以外の方法が…」

「イヤ! 私達を安心させてほしいから、この場で弘が飲むのをしかと見るまで行かせないわ!」

 

胸ぐらを掴むのはやめて、オレを逃がさないためにまた抱き着かれた。

これ以上ここにいる場合、蓬莱の薬を飲まねばならんだろう。でもそれはマズい。今も手を繋いでいるサリエルと、抱き着いている神綺から撤退しようと判断し、先程から展開していた魔方陣を使い、諏訪国へと帰還せざるをえない。

 

「神綺、鎌倉時代で飲むワケには、不死になるワケにはいかんのだよ」

「あ、まっ――」

 

転移を止めようとした神綺から振り切るため、そのまま魔方陣で諏訪国へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレが月の民、へカーティアと純狐に対処してる間、地上でどれだけ進んだかの現状を聞くため、久しぶりに魔方陣で妖怪の山(八ヶ岳)の頂上付近へと転移した。あの時は麓から頂上まで歩いて来たけど、永琳が造った魔方陣は便利だ。

 

「人間の感情は脳で生まれた化学反応でしかなく、恋という気持ちも脳にあるニューロペプチドが受容体と結合するのが原因の発端。人間・動物が老化するのは、活性酸素が原因の一つでもある」

 

エステル書残篇 第2(12)章4節

『而して王此等の事を記憶にとどめんがため記錄を作り、モルデカイも亦之を記しぬ。』

旧約聖書・出エジプト記 第17章14節

(ヤハウェ)はモーセに言われた、"これを書物にしるして記念とし、それをヨシュアの耳に入れなさい。わたしは(ヤハウェ)天が下からアマレクの記憶を完全に消し去るであろう。"』

 

Ἀργοναύται(アルゴナウタイ)とは、ギリシャ神話のヒーロー(英雄)達の総称だが、都合のいいコトしか観ないどこぞのクソ共は、神話に出てくる半神(神裔)鸞翔鳳集(英雄)を、人間と同じ存在と観て勘違いが広まった」

 

神話で重要な話とは、神裔・半神・英雄時代も含まれる。

これは日本神話や、ギリシャ神話、インド神話、中国神話の黄帝、旧約聖書のノア・アブラハム・ヤコブ、新約聖書のイエス・キリスト、イスラーム教のムハンマド・イブン=アブドゥッラーフだろうが、同じだ。ギリシャ神話の場合だと、その人数はとても多いから、判らなくはないんだが。

神話においてなによりも大事なのは、神話時代から紡ぐ"血"だ。英雄(ヒーロー)と呼ばれるに相応しいのは、まさにそれだ。弱きものを守る、女を守る、救世主などもあるが、笑わせないでくれ。それは英雄ではなく、自分に、弱者にとって都合のいい存在なだけだろうが。綺麗な言い方をするな、そんな言い方をするから、無知な弱者は、自分の都合に良いへと考え、勘違いするんだ。

 

なにが神は人を救うために存在するだ。そんなあやふやで、曖昧な言い方をするな。もっと具体的に述べて説明しろ。

ユダヤ人はヤハウェの子供みたいなモノじゃないか、古代ギリシア人も、ほとんどはゼウスの子孫じゃねえか、日本神話も、天津神と国津神の神裔に都合がいい神話じゃねえか。

日本神話・ギリシア神話の場合、なんのタメに、誰のタメにあるのか、ソコをちゃんと理解してんだろうな。

 

「そしてどういうワケか、大抵の人間は英雄という言葉を聞くと、人格者と思い込むヤツが多い」

 

よくいるんだよ、英雄()だからって、性格や人格は聖人だと勘違いする、自分に都合のいい方へ考える無知な人間。英雄と言われる人物がいたとして、性格・人格が人格者、とは限らんだろ。

マンガの神様(手塚治虫)は神様と言われたが、これは比喩表現だし、マンガの神様と言っても性格が人格者とは限らんよな。人から聞いたとか、マンガの神様と会った事がないなら尚更だよ。

つまりこれは、英雄(ヒーロー)である、あのクズ野郎のヘーラクレースを聖人と言ったり、人間と同じ存在と言っているようなモノなのだぞ。これがどれだけおかしく、矛盾しているのかすら判らんのか。いやそれ以前に、あの人格、性格が畜生で有名なヘーラクレースの性格がまともとか言うヤツ、あるいは思ってるヤツは、本当にギリシャ神話を読んだのか。

…まさかとは思うが、ディズニー映画のヘラクレスを判断材料にしてないだろうな。ギリシャ神話のハーデースは悪役じゃないんだぞ!! むしろヘーラクレースより、ハーデースの性格、人格の方が、まだ、まともだというのに。

お蔭で神、神裔、半神はいい迷惑だ。そんなコトをするから弱者に、神、神裔・半神の英雄がどういう存在かを勘違いされるんだ。

 

キリスト教における三位一体で、神の子であり、神でもある、イエス・キリストの扱いはこうだ。

新約聖書・マタイによる福音書 第27章11節

『さて、イエスは総督の前に立たれた。すると総督はイエスに尋ねて言った、"あなたがユダヤ人の王であるか。"イエスは"そのとおりである"と言われた。』

マタイによる福音書 27章54節

『百卒長、および彼と一緒にイエスの番をしていた人々は、地震や、いろいろのできごとを見て非常に恐れ、"まことに、この人は(ヤハウェ)の子であった"と言った。』

新約聖書・マルコによる福音書 第3章11節

『また、けがれた霊どもはイエスを見るごとに、みまえにひれ伏し、叫んで、"あなたこそ(ヤハウェ)の子です"と言った。』

新約聖書・ルカによる福音書 第22章70節

『彼らは言った、"では、あなたは(ヤハウェ)の子なのか。"イエスは言われた、"あなたがたの言うとおりである。"』

新約聖書・ヨハネの黙示録 第19章7節

『ユダヤ人たちは彼に答えた、"わたしたちには律法があります。その律法によれば、(イエス・キリスト)は自分を(ヤハウェ)の子としたのだから、死罪に当る者です。"』

ヨハネの黙示録 第19章17節

『イエスはみずから十字架を背負って、されこうべ(ゴルゴタの丘)という場所に出て行かれた。』

 

キリストがユダヤ人に殺されたので有名な話は、ヨハネの黙示録にある。

例えば、ヨハネの黙示録の第19章7節であるように、坊主が守らなければならない規律の、戒律がある。今で言う法律と同じだ。これを僧などが破ったら、罰を与えられる。でもそれは、人が人へ罰を与えるのであって、仏が罰を与える訳じゃない。

実際はユダヤの王ではないが、新約聖書において、ユダヤの王、神、ヤハウェとマリアの子とされている、イエス・キリストと勘違いしてんじゃねえのか。

 

「これは、不老不死の仙人と、寿命があるただの人間、祭神に仕える処女の巫女と、娼婦で生計を立てる歩き巫女が、同じ存在と言ってるようなモノ。これではダメだ、肝心の区別が出来てない」

 

日本神話は天皇と神裔だけに都合がいい、ギリシャ神話は古代ギリシア人だけに都合がいい。これは中国神話も同じだ。中国神話に出てくる黄帝の子孫、または、道教に都合がいい神話だ。誰にでも都合がいい神話ではない、ただの人間にとって、都合がいいモノではないんだ。なんのために、言葉や文字を差別化してると思ってるんだ、区別するためじゃないか。

巫女の文字でよく混同され、一括りにし、今でもしばしば誤解を生んでいるが、祭神に嫁いで仕えて、神の身の回り、例えば食事の用意など、または、巫女舞の雅楽で神を楽しませ、あるいは神の性行相手をする処女の巫女と、娼婦で生計を立てる歩き巫女とは、そもそも別モノなのだ。これの区別がついていない人間は、無駄に多い。これは半神・天皇とただの人間が、同じ存在と言っているようなコトで同義なのに、何故気づかないんだ。

 

「科学と宗教は同じではない、と言うモノがたまにいる。だが実際は言い回しが変わっただけだ」

 

前に、"普通でないことと嫌悪感は、その種の性的行為が不法であることを意味しない。"そう聞いた時は、その通りだと思った。

 

「近親相姦がダメだと謳うモノって、教えを守る原理主義の宗教家と、狂信者と何が違うんだよ。法も、思想も、倫理も、論理も、価値観さえも。科学で判明したコトを守る。でもそれって」

 

天狗達に整備された山道を進む事に、山だから斜面なので次第高となっていくが、少し肌寒い。聳え立つ妖怪の山の整備された山道を登っていると、両脇にある森林はまだ紅葉のようだ。もう少ししたら冬なので、これも見納めだ。鬼女の紅葉は元気だろうか。

山紫水明の妖怪の山は、四季の季節によって桜梅桃李になるので、ソレを眺めるコトが出来るから結構嬉しい。

 

そうこうして、かつてのムダにデカい門へと到着。やっとここまで来たが、頂上までまだ歩かねばならん。ソコで門番をしていた天魔の部下である天狗は、オレの顔を観ると頭を下げて門を開けた。顔パスです。あの時は、コンガラも一緒だったな。 

門を抜けると、視界には頂上へと続く階段が映る。ひーこらしながらクソ長い階段を上って行くと、砂礫帯に到達し、塔みたいな建物が観えて懐かしい気持ちがにじむ。どうでもいいが、ここ、コマクサが辺りに咲いていた。そういえばコマクサって、蓮と似てるよなあ。まあコマクサより蓮の方が咲いたらキレイだけど。

 

「紀元前から続く宗教となにが違う。なにも違わない、同じだろ。科学の教えを守る、科学教だ。人間の本能で、食人、殺人、同性愛、獣姦、両性具有、近親相姦は嫌悪する(避ける)だと。笑わせんな」

 

知ってるか、見た目は愛らしいあのラッコのオス、アザラシの赤ちゃんを力づくで強姦したりと、強姦したせいで死んでしまったアザラシの子でも、ラッコは何日間も交尾しようとするんだよ。つまり死体とセックスしようとする"死姦"だ。まあラッコと人間とでは色々違うが。

人間の感情は化学反応、(C8H11N)という気持ちもニューロペプチド(フェニルエチルアミン)と受容体の結合が発端。人間・動物が老化するのは、活性酸素が原因の一つ。でもソレは、科学で判ったコトでしかない。

科学で判ったコトが正しいと言う人間がいたら、ソイツは立派な科学教の信徒だ。ソレを自覚してないモノはムダに多い。

科学が真実(正しい)で出来ている、と思うのは傲慢だな。そもそも科学とは、人間の仮説と解釈(主観)の塊だよ。歴史同様、真実(正しい)で出来たモノではない。真実(真理)という言葉はそんな安っぽいモノではない。そんなコトしたら言葉の価値が下がる。だから軽々しく真実、とは言わない方がいい。

 

「やっと着いた」

 

遂に妖怪の山の頂上へと到着したが、風がスゴイし寒い。

なんで魔方陣を使わず歩いて来たのか。その理由は、道中でにとりたちの女河童たちや、河童が山に移ったメスの山童を観られるかもしれないと思ったから、ここまで歩いて来た。基本的に、河童たちへと接触してるのは永琳と神奈子くらいで、オレは最近、にとりと逢ったり会話をしてないから、偶然に出会うコトを期待してたけど、無駄足だったよ。落胆だ。やはり逢うにはアポを取らなきゃいけないな。こんなコトなら魔方陣で一気に塔の内部まで行けばよかったと思う。今更遅いけど。緊褌一番だった月関係を終えたから、当分は空いてるので、ヒマな時にわかさぎ姫のところへ赴き会ってみよう。

 

「お帰りー」

「シヴァ神・大国主・ミシャグジ神か…」

「分霊を取り込んだといっても、私は魔縁だけどね」

 

疲れたので一息つき、内心でひとりごちたら、空から地上へとオレの目の前に急降下した。余波の風圧で涼んでいると、翼を羽搏かせながら、予定通り天魔が現状を報告する。

が、天魔の隣には鬼神もいた。鬼神の彼女も喋ろうとしたが、天魔の手で遮られてしまい、喋りたくても喋る事が出来ないというもどかしさにじわじわと蝕まれ、そわそわと落ち着きがなく、ちらり、とオレを観て視線がぶつかってしまい、そっぽ向いた。なのにまた横目で観てはやめて観てはやめての繰り返し。天魔もソレに気付いてるが、実娘で遊んでいるのか無視してる。

月、へカーティア、純狐についてやっと終わった。しかし元とはいえ、至高神が動くってどうなんだろう。

 

「弘天が月の民を殺戮し、地獄の女神と仙霊を引き込んでる最中、承久の乱は終わったよ」

「…アマレク人とエブス人もビックリだな」

「それで天津神と国津神たちからね、僧兵をあらかた殺し終えたって報告も受けてる」

「ならば足利氏に命じて、室町に進めるか」

「室町なら、コシャマインの戦いもあるね」

 

承久の乱は終えたなら、後で鎌倉へ向かうか。六波羅探題はオレが潰さねばならんし、忘れないようにしよう。鎌倉幕府を潰すと言っても、源義仲を殺すって意味じゃないし、北条氏を皆殺しにするワケでもないんだが。

 

徳川家康って人物は有名だろう。しかし、徳川氏が源氏の末裔っていうのは、かなり疑わしいのも有名だろうと思う。徳川家康なんぞ、所詮、クソ乞食坊主が祖先の成り上がりで、もっと正確に言えば、先祖を捏造したモノだ。

百姓から成り上がり、平氏を自称し、徳川家康同様、先祖を捏造した豊臣秀吉もダメだ。なにせ、治承・寿永の乱は起きてない。実際に起きたのは、平将門の乱と、承平天慶の乱だ。よって、あの平家の落人(・・・・・)はいない。しかも奥州合戦(・・・・)さえ起きていない。これはとても重要なコトなのだ。

日本神話が実際に起きた以上、血縁関係と、血の濃さと、譜第と、家を守るコトは、かなり大事になる。今までも、血を偽証したモノは、全て殺してるから。天網恢恢疎にして漏らさずだ。

でだ。オレは平氏の平将門(仁科氏)に、まだ幼少の北条時行を、諏訪国へ連れて来るかどうかの判断は任せる。と言って、平将門へと一任した。平氏の北条氏は、鎌倉の実権を掌握し、執権政治していたのも有名だろう。あと得宗専制。まあ鎌倉幕府を開いたのは源頼朝じゃなくて、征夷大将軍に任官した源義仲だし、そもそも義仲は源氏だから、寿命で死ぬコトはないんだけど。

だからオレは、徳川家康に、江戸幕府を開かせる気はない。

 

ひとまずは、源氏の足利高氏に次の指示を出そうと思い、その任は文にでも頼もうと考えてたら、何かを思い出したように、天魔は声を上げる。

 

「それとね、産まれたよ」

「え、なにが」

「弘天とはたて、弘天と椛の子供に決まってるじゃない」

「……そ、そうか」

 

ついに産まれた、ようだ。喜びより、複雑な感情が攪拌された気分でしかない。隣にいる鬼神も知っていたようで、驚いた表情にはならなかった。

でもなんか、今は鬼神だけど、昔、彼女がまだ橋姫だった時の記憶が脳裏へこびりついてるので、その名残ゆえか、妬ましいああ妬ましい、と心の中で連呼していそうなのだから、怖い。なんと言うか、コレを上手く表現できないが、かつては橋姫だった時の片鱗を、垣間見た気がします。

天魔は出産が終えたコトを知らせたが、その生まれた子供をどうするかについて、かつて交わした約束を確認した。

 

「はたてと椛が産んだ子、私たち天狗が育ててもいいんだよね?」

「まあ、昔からそういう約束だし」

「そう。良かったわ。元とはいえ、至高神(最高神)の血を引く子だもの」

 

天魔は、文、はたて、椛を、オレに神使、そして妻として譲ったが、天魔にとって主な目的とは、政略結婚の意味もあり、天狗に××神話の血を入れて血縁関係となって天狗たちの安泰や、神の血と天狗の血を引く、強くて美しいハーフの天狗が欲しかったコトなどが、理由として挙げられる。とはいえ、世界がまだ初期頃だった時から、天魔も××神話に引き込んでいるのだが。

天魔は片手をオレの肩に置き、今まで見た中でも最高と言えるほど、とびっきりの笑顔で、とんでもないコトを口にした。

 

「早く文とパルスィと神子を孕ませてね」

「笑顔でそんなコトを言われると、かなり怖いぞ…」 

「やったね弘天ちゃん! 家族が増えるよ!!」

「やめろォ!」

 

子供が産まれたのは、天魔にとっては灌漑だろう。反出生主義、塞翁が馬、五蘊盛苦か…。

天魔の隣にいる彼女の名も出たが、本人はまんざらでもない表情で、熱い眼差しをオレに向ける。しかし、大体のコトを聞き終えたので、別れの挨拶を交わしながら、神社に戻ろうと背を向けた。…いくらオレがゼウス(インドラ)みたいに雷神の破壊神だろうと、勇気ある撤退も時には必要なんだよ!! だからここは逃げよう。

しかしオレの囁かな願いは天には届かず、オレの肩に置いて天魔の片手で止められ、待ったをかけられる。なんだと思い顔を天魔に向けるが、まだ聞きたいコトがあるらしい。

天魔は導入へと入る前に、最後最後、と前に付け加えて、日本神話、および万世一系について聞かれた。

 

「第50代天皇・山部皇子(桓武天皇)の母親はどうするの」

「…オレは純血に拘泥しているワケではないし、そもそも神武天皇は存命している。捨て置け」

「なら伏見宮貞成親王も」

「どうでもいい。それに暫くは、現天皇である弘文天皇のままだからな。元弘の乱も起きない」

「ん。オッケー。なら勘合貿易はいいとして、足利義満は文に暗殺させようか」

「そうしよう」

 

女系天皇・女性天皇はダメだ。女系の説明はいわずもがな。女性天皇については、確かに過去でもいた。しかし、いたと言っても、男系の女性天皇が即位した女帝だし、そもそも、女性天皇という存在は、昔から皇統を継承する資格を持った男子がいない、あるいは、いても幼少であった場合の繋ぎとして、だからな。そう、あくまでも繋ぎとして、女性天皇は即位しただけにすぎない。まあでも、女性天皇は、農耕に力を入れる時なら別に即位してもいいんだけど。

どうでもよさそうな表情の天魔は頷き、この場を後にする。結局のところ、万世一系さえしてくれていたらそれでいい。神の血を受け継ぐ、というのが、この世界において何よりも重要で、肝心なのだから。

 

天魔の隣にいる彼女を置いて、さっき妖怪の山を下山して逃げようと、神社へと帰ろうとしたせいか、鬼神に睨まれている、気がする。まるで、さっきからオレの背に刃物で、ずぶりと、遅効性の毒のように、体内へ刃先をじわじわ侵入させ、心臓に向かって奥へ奥へと刺され続けているかのような、二つの肺を鷲掴みにされて握り潰されかけてるような、そんな威圧感を背から浴びていて、半端ないのだ。かつての神奈子と諏訪子の関係を思い出すが、蛇に睨まれた蛙の気分だった。オレはここで死ぬのだろうか。

ここはゼウスのように、運命を受け入れるときだと判断して、白旗を挙げて投降せざるを得ない。そうです。あのコが僕の畏敬する天使様なのです。

 

「お久しぶりです。イラン神話・ペルシア神話・ゾロアスター神話の女神よ。記憶が戻って何より」

 

とりあえずこの妖怪の山の頂上で、まずは片膝を付けて挨拶をしようと僕は思いました。

目の前にいる女神は、腰に三振りの刀があり、そのうちの一つは顕明連という代物。その一振りを朝日にあてれば、三千大千世界を見通すことが出来るのだが、お蔭で彼女の記憶は回帰している。月のクレーターティコにあるラボラトリーへ来た天魔に、そう仕向けたと聞いた。

インド神話の シカンディン は、前世の記憶を思い出す、という話がある。まあ、ソレと似たようなコトだ。我ながら言い得て妙だと思う。

 

「遅いわよ」

「申しワケないパルスィ。色々と面倒なコトが、立て続けに起こりまして」

 

両腕を組んで眉を顰め、不気味だ、というその表情を観なくても理解できた。この言葉遣いはやめた方がいいのかもしれん。

目の前にいるパルスィは、イラン神話・ペルシャ神話・ゾロアスター神話の女神だが、それと同時に鬼神でもある。そして、彼女の名はパルスィと言うが、インドではParsi(パールスィー)がペルシャからインドに来たゾロアスター教の信者という意味があり、パルスィとは、波斯人(ペルシア人)の意味もある。

波斯国――ペルシアと言えば、やはり平安時代中期に成立した長編物語『うつほ物語』を思い出すな。

 

「天使はゾロアスター教起源だったな……」

「天使?」

 

天使に反応したパルスィは聞き返したが、オレが答えなかったので訝しみながらも聞き流した。

彼女はスカートだから、ズボンとかを履いていないので、剥きだされた生足なのだが、こんな妖怪の山の中だというのに、スカートや生足が汚れるのを厭わず、片膝を付けているオレに合わせてか、地面に両膝を付けたまま話し始めた。オレは今も顔を俯かせている。

 

「会いたかったわ...顕明連で記憶を回帰したから、尚更よ…」

「らしいな。隣にいる天魔に聞いた」

 

微塵も悪びれる様子を出さず、俯いていた顔を上げながらも返答した。なんということでしょう、いつの間にか僕の目の前に美女の顔が――

 

「好き」

 

 

「ちょっと何言ってるか分かんないです」

 

咄嗟にそう返し、また地面へと顔を伏せた。

………あれ、なんで告白されてんの。確かパルスィ、ヤマメ、キスメを諏訪国に引き込んだ時に、オレが娶った......よな。まさかオレの妄想だったのか…。いやいやそんな、そんなコトないだろ。だって、だってさ、そもそも今回で初めて娶った青娥とは違い、パルスィを娶ったのは今回が初めてじゃない。まだ世界が初期頃だった時から娶っていたんだ。なので記憶が回帰してるなら、そのコトを覚えているハズ......なのだが。

事態を整理する為に思考を重ねたが、結局、判らない。だから顔は地面に向けたまま、オレの勘違いかどうか、鬼神のパルスィに問い質す事にした。

 

「オレ…すでにパルスィを娶った気でいたんだけど、もしかしなくても、オレの勘違いか」

「ううん。違うのよ。そうじゃなくて」

 

目を伏せて、右手で金髪のショートボブの髪をかきあげつつも、そう言い終えたパルスィは、唇を軽く押し付けた。

まさかパルスィがそんな行動をとるとは思わず、内心ではビックリして、一瞬なにが起きたのかが理解できなかったけど、接吻してるコトだけは理解できる。

パルスィは髪をかきあげつつ、ただ唇を押し付けるだけで、それ以上のコトはしなかったが、満足したのか唇を離していき、オレの目とパルスィの目が交差した。

 

「また、アナタに惚れ直したの。だから、もう一度言うわ」

 

 

「アナタの事が――好きです」

 

「そ、そうですか」

 

 

気圧されて、思わず敬語になってしまった。

パルスィ一世一代の大勝負である告白を聞いた、けども、彼女は返事なんてどうでもよくて、ただ自分の気持ちを伝えたかったらしい。言いたい事が言えて、満足げな表情だ。

他に伝えたいコトはないようで、しずしずと歩き、オレの隣に来た。どうやら一緒にいたいらしい。一部始終を観ていた天魔に、どうするべきだ、そうアイコンタクトし、意思疎通を交わすが、なんとアイツは口角を上げてほくそ笑んでいた。しかもアイコンタクトの返答が、娘のコトを頼むと返されて、オレから逃げるように翼を羽搏かせながら仕事に戻ってしまい、オレとパルスィが残ってしまった。

 

「……い、行こうか」

「そうね」

 

このオレに打つ手はないので、パルスィを連れて下山する。わざわざ歩いて下山しなくても、オレには魔方陣があるしソレでパルスィを連れて帰ろうとしたら、パルスィがスゴイ嫌そうな顔になったのでやめました。

だが、日本神話の富士山と八ヶ岳の背くらべが起きてないし、この妖怪の山(八ヶ岳)って富士山より高いんだよ。そんな山を下山するのは、一日かけても出来るのだろうか。

パルスィは体を伸ばして、燦々と輝く太陽を右手で翳しながら、雲一つない天気を観て安堵する。

 

「今日は晴れてよかったわねー」

「だが眩しいのは勘弁してほしいな。ソレに山の天気は変わりやすいから油断はできないぞ」

「雨もイヤじゃないわね。でも曇ってると洗濯物を干せないからキライって藍がよく言ってるわ」

「日日是好日の方がいいのか。藍は家政婦と巫女の鑑、内助の功だな…」

「尽くされてて、愛されてていいじゃない」

「でも、嫉妬(飛行機)だけは勘弁な」

 

最近は雨が降っていなかったので地面がぬかるんでいない。斜面ばかりで崖も少ないし転落・滑落の危険もないだろう。遭難しても魔方陣で帰ったらいいし。

今日は快晴だが、山の天気は変わりやすいし早く降りなくてはいけない。まだ頂上付近にいるので突風は凄くて少し寒いしで、正直いうと、デートをしている雰囲気ではないのに、一緒にいる妻の鬼神は楽しそうな笑顔にして、自分の幸せを周りに振りまいていた。

……もしや、パルスィは体を動かすのが好きなのだろうか。今までも彼女を娶って来たけど、ソレには気付いたコトがなかったな。今度、散歩に誘い連れて行こうか。

最近パルスィと逢えてなかったので、一番心配していたコトについて、まずは聞いてみた。

 

「他の妻とはどうだ」

「お互い折り合いつけてるけどいつも通り。一触即発な関係じゃないから、安心しなさい」

「そうか。ソコを特に懸念してたが、安心した。パルスィの場合だと…余計にな...」

「いくら私が元橋姫でも、ずっと妬んだままでいないわよッ!」

「嫉妬の妖怪なだけあって、あの時はホントに怖かった。てかその記憶しかない」

「もっと甘々な時もあったでしょう」

「そうだったかなあ……」

 

上機嫌なパルスィと色々会話をするが、他の妻を妬まず、懇意に接しているようだ。

まだ砂礫帯にいるけど、辺り一面にコマクサが咲き乱れている。並行して一緒に歩いていたパルスィは、急に立ち止まり、ソレ(コマクサ)をただじっと観ていた。

コマクサ、という花は、幽香とは真逆の花みたいだと感じる花だ。コマクサは花の部分が地面に向かって垂れてるし、なんと言うか、まるで太陽を追いかけて咲く向日葵と対極だ。でも、孤高の花という部分でなら幽香と似てる。幽香も基本的に1人でいるコトが好きらしいから、孤高の存在で、孤高の女王とも言える。

一緒に歩いていた鬼神は、コマクサを観ると隣にいるオレを観て、またコマクサを観た。なにか感じる部分があったのだろうか。そう言えば、駒草(コマクサ)の花言葉って、なんだったかな。

 

「ねえ。私と手、繋いでくれる?」

「構わないが…」

 

今まで立ち止まっていたパルスィは、片手をすっと差し出した。自然に右手を差し出してきたので、オレも握り返すが、なんというか、言いたい事を言い終えたら、自分の気持ちを、態度や行動に出して、積極的になってる気がする。こう、オレからではなく、相手からぐいぐいこられるのは、反応に困る。

手を繋いだ彼女は感触を確かめるため、または繋いだ実感を得るためか、力を強めたり弱めたりと繰り返している。

 

「初心に帰るのも悪くないわね」

「そーですね」

「なによその棒読み。もっと嬉しいって気持ちを言葉に乗せてくれないと、昔の私に戻るわよ」

「橋姫に戻るなら…戻る前に言ってくれると助かる。ホント頼むから。おれにも心の準備が…」

「…………昔の私、そんなに怖かった?」

「うん」

 

ショックを受けたのか、繋いでいた手の力が弱まり、歩く速度が落ちた気がする。

 

実際の桃太郎は桃から生まれたワケではないが、間違いなく桃から生まれた話の方が有

名だろう。だから今回はそれをベースに説明する。無粋な事は百も承知だ。

しかし、冷静に考えて。普通に考えて、桃から子供が産まれるワケがない。普通に考えて、人間が鬼に勝てるワケがない。いや、もちろん天皇みたいな神の子孫、藤原氏、平氏、源氏みたいな人間の場合なら、鬼を倒せたというのは納得できる。なにせ祖先が神で、藤原氏・平氏・源氏は神裔だからな。

メソポタミア神話・ギリシャ神話の英雄(ヒーロー)たちを顧みると、別におかしい話じゃない。だってさ、藤原氏・平氏・源氏は、ただの人間じゃないからだ。

つまり、これは桃太郎にも言える。なぜならば、桃太郎は人から産まれたワケじゃないからだ。だからこそ、鬼を倒したという結末も、鬼の宝を奪ったコトも、全て納得できる。むしろ、桃太郎が聖人扱いされてる子供向けの昔話の方が、本来おかしいのだ。

…まあ、桃太郎の正体は天皇の子、皇子というのも有名だ。だからその説を前提として言うなら、桃太郎は神裔・天皇と同じ存在というコトになるので、桃太郎はただの人間ではなく、神の子孫になる。これを前提とするならば、尚更、桃太郎が鬼を倒したという話も、納得できるというモノだ。

 

側頭部にある能面のこころを触りつつ下山してたら、娘の声が聞こえた。

 

「お父さーん」

 

何も無かった空間からスキマが生じ、どんよりとした雰囲気を放ちながらも、中から紫がにゅっと上半身を出してきた。オレと視線が合うと和やかな表情を向け、そのまま優雅に地面へとスキマから片足を下ろす。右手に小傘を持っているが、今日は幽香ではなく紫が持つ日らしい。

紫に遅れて幽香も来たが、放たれた矢のような速さで紫より先に地面に降り、右手はパルスィと手を繋いでいるのを一瞬で理解した娘は、空いたオレの左手を自分の両手で優しく包み込み、お互いの目と目を合わせ、上目遣いにして言った。

 

「来ちゃった」

「幽香...どこでそんな言葉と行動を……」

「この行動をして言えばお父様が喜ぶ。天魔さんからそう聞いたわ。お父様、嬉しい?」

 

普段は素面で、オレと手を繋いだり、抱き着いて来ても照れるコトは滅多にしない幽香が、今回は珍しく照れているのか、きめ細やかでいつもは白い頬と首筋が、ほんのりと紅色に染められていた。

 

「キライじゃない」

「そう。ちょっと恥ずかしかったけど、お父様が喜んでくれたなら何よりね。また助言を貰うわ」

 

即答で返答したけどあの女ッ! いつもいつも余計なことばかりしやがってホントありがとうッ!

しかし、天魔が元凶と判った途端、横目でパルスィを見ると、はらわたが煮えくりかえる思いなのか、オレの右手が彼女の左手でギリギリ圧迫されて、オレの右手はもうダメかもしれない。このままでイタイイタイ病になる!

 

紫は幽香に続いてスキマから地面に降り立つと、はしたないと態度に醸し出しながらも、急がなくてもいいのに、娘はとてとてと小走りでオレの傍に来た。月の民と月の都を、インド神話の道具を使って潰してもらったから、なにか労いの言葉を言った方がいいのかと思ったけど、ここはいつも通りに接しよう。

幽香は両手で包んでいたオレの左手を名残惜しそうに離し、隣にいる紫が右手に持っている小傘は、一旦、傘から人型へと成り、紫と幽香が月を滅ぼし終えたコトを伝えた。

 

「全部終わったよ!」

「みたいだな。小傘もよくやってくれた」

「ほとんどはぬえ、紫お姉ちゃん、幽香お姉ちゃんの功績だけどね」

「いや。ああいう時は、小傘が幽香の傍にいて抑えてくれたらいい」

「ソレ、私じゃなくて紫お姉ちゃんでも荷が重すぎるよ……」

 

ルーミアとキクリはただ連れて行っただけで、月の民を殺したり、月の都を滅ぼした紫と幽香に力を貸していない。ただじっと、その光景を観てもらっただけだ。観てもらう必要があった。

小傘の髪を空いた左手でわしわしと撫でるが、髪が寝癖みたいになるのはイヤみたいで、人型から傘へと成り、紫の右手にまた戻った。

…よく目を凝らして観ると、隣にいる紫の左手には、二つの人形が手の中にあった。あれはかつて、にとりに貰った2つの人形――メディスン・メランコリーと鍵山雛だ。

四季映姫はオレが生みだし終え、紫が持つ、からかさお化けの小傘も生まれて、オレの側頭部には面霊気のこころが今もいる。ならば彼女たちも、そろそろだろう。ここまで長かったな。

 

「着々と付喪神が増えつつあるね、弘天さん」

「そうだねこころちゃん」

 

あの二つの人形を観て、同じ所感が生じたようで、オレも同意した。

メディスンと雛を除けば、残りは九十九八橋、九十九弁々、最後に堀川雷鼓の三人か。

紫は照れてる幽香を横目で見ながら流しつつ、実娘の小傘を右手でくるくる回しながらこの場に来た理由を述べた。

 

「白蓮がね、ずっと寂しそうにしてたから連れて来たの」

「そう、か。寂しそうにか」

「厳密に言えば、寂しい、とは違うと思うけどね」

 

紫はおおよその予想はついているのだろうが、それ以上は語らなかった。

白蓮を連れて来た、と聞いて周りを見渡して観るけど、パルスィ、幽香、紫、小傘、あとはオレの側頭部に能面として付けている秦こころくらいで、白蓮の気配も影もなかった。ホントにいるのだろうか。

 

妖怪の山は危ないから連れて来るべきではない、と紫には言わなかった。紫はオレより賢い。この場に白蓮を連れて来るというコトは、すでに紫と幽香は妖怪の山にいる妖怪を全て従え終えたのだろう。それに白蓮ってまだ子供とはいえ、パチュリー達の魔女から魔法を学んでるから使えるし、しかもある程度、美鈴から中国武術や護身術を教わっている。この子は僧侶ではないけど、まさにガンガン行く僧侶。まあ何かあってもオレがフォローすればいい。

 

そういえば、紫と幽香がスキマから出て来たのに消える気配がない。そのまま訝しんで注視していると、目玉と闇しかないスキマの中から顔が出て来た。

長い間、途方もない時間の中、ずっと探していたモノがやっと見つかったという声色を出して。

 

「氏神様ー!」

ナジル人(・・・・)かな? 氏神様ですよー」

 

オレを見つけるや否や、スキマから飛んで地面に着地をし、そのまま助走を付けて駆けながらも、勢いよく地面を蹴り、いつも通りオレの腹部へ頭から突撃した。その衝撃で、オレの胃から色々なモノが込み上げてきたので、右手で自分の口を押える。

昔の諏訪子といい、白蓮といい、オレのお腹になんの怨みがあるのだ…。

 

「お父さん、もうお昼だから藍に頼んで昼餉の用意でもしてもらう?」

「…だな。紫、悪いが藍に伝えてくれるか」

「任せてよ。ほら、行くわよ幽香」

「あぁ、攫われる。私がスキマ妖怪の神隠しにあっても、お父様をずっと思っているわ――」

 

自分たちはいない方がいいと判断したのか、昼餉を作って貰う事を藍に伝えに行くという口実で、ずっと開いていたスキマに入りながら、片手で幽香の右腕を掴んでスキマ内に引き摺り込もうとしてる。

幽香は紫に摑まれていない左手を伸ばし、オレに掌を向け、今生の別れでもするかのように、体がスキマにじわじわ呑まれて行きながらも、女優顔負けの演技を披露し始めるが、ソレに反応した紫は幽香に詰め寄った。

 

「……幽香。前から思ってたけど、私で遊ぶのやめない?」

「大切な家族で遊ぶなんて…そんな酷いコト、私がするワケないじゃない。泣くわよ」

「どの口が言うのかしら。一度、胸に手を当ててよく思い出しなさい。それとも浄玻璃鏡の方が」

「大きいわね」

「自分の胸に手を当てなさいって話にどうして私の胸に手を当てるの!? ちょ、揉まないで! いくら幽香とはいえ私の胸も体も髪から爪の先に到るまで触っていいのはお父さんだけで――」

 

静かに帰るつもりだったろうに、いつも通り幽香のペースに流されてしまい、紫は自分の爆弾発言に気付かないほど、ポンコツと化していた。聞いてはいけないコトも聞こえてしまった。なんとか幽香をスキマに入れ、神社に向かったようだ。

なにあれ、漫才かな? 紫の気遣いか、白蓮がすぐに帰るコトが出来るよう、スキマは消えずに、ただオーラを放つだけで、ソコに残っている。

 

それと同時に、オレの胃にダイレクトアタックした張本人は、顔をばっと上げ、清浄な表情でオレを観ている。このダイレクトアタックの行動は、白蓮の嫌がらせゆえの行動、ではないだろう。

ただ、自分の気持ちを言葉で上手く表現出来ないから、行動で表現しか出来なくて、逢えない寂しさを蓄えられたゆえに、逢えた時の反動が凄まじく、こうして喜びの表現を伝えようとしているのかもしれない。オレの胃に痛みを伴う愛情表現で。

 

「おかえりなさい!」

「た、ただいま……」

 

もう関係ない話だが、昔、空海――弘法大師が開祖した真言宗の宗派だった命蓮と、その姉がいた。

その姉は、"神も仏も、妖怪との違いはない"と、仏に仕えながらも、平等主義を謳った、僧侶だ。人間についてなら、まだいい。それだけなら気にしなかった。でも、神と妖怪について口に出すのは、見逃せない。重要なのは、ここに神と妖怪が含まれているという点だ。人によっては、彼女を雲中白鶴な女性、だと思うのも多いだろう。何事も変わっていくコトは、オレが一番知っている。だから、仏に仕えるモノが、そんなバカげたコトを謳うのも、仕方ない、と思う部分もなくはない。

そしてその姉は、早苗に『貴方は妖怪の味方なの?』と聞かれ、こうも言った。

『味方………と言えば味方ですが、人間の味方でもあります。私が目指すのは人間と妖怪の平等な世界。神様の貴方には判らないかも知れないですが、虐げられてきた妖怪の復権を望んでいるのです。』

 

仏教の開祖・釈迦が、あるいは真言宗の開祖・空海が、神と妖怪について、そう言及したならば、別によかったんだ。なんの問題もない。仏教を開祖した釈迦の教えを守るのは、そりゃ僧侶として当然だ。2000年以上続く教えを、否定なんかできるワケがない。オレは神だから、気に入らないモノは、全て否定するけど。

神も仏も妖怪との違いはない。ソレを言った時、命連の姉が僧侶じゃなかったらば、なおさら問題なかった。

だがな。いくら調べても、妻と子を捨てて出家した釈迦は、神と妖怪について一切言及してないんだよ。地獄や天国みたいに、死後の世界についても、釈迦は否定や肯定はしなかった。しかし今の仏教では死後の世界、つまり浄土や地獄についてよく扱われてる。だが、紀元前の古代インド時代的に、インド神話・神という思想や存在はあったから、神はまだ判る。だが存命していた時の釈迦が、妖怪という存在を知ってたのか甚だ疑問だ。

釈迦と空海が一言も言及してないってコトは、解釈・曲解のしようがない。なにせ、言及してないってコトは、解釈の余地が皆無だし、もはやソイツは、仏に仕える僧侶、とは言えなくなる。

 

仮に釈迦が平等主義を謳ったとしてもだ、それは間違いなく当時のカースト制や、古代インド人、つまり人間に対する話だろう。そこに神と妖怪は入ってない。区別を付けろ、拡大解釈はやめろ。大体、神と妖怪について言及してないのだから、拡大解釈も曲解もしようがない。

ソレは妄想ではなく、ただの〝妄言〟だ。

世界が初期頃で、永琳(慧音)歴史(××神話)を再構築し、創り直したこの歴史(世界)へ反映した時は、そう思ってた。

 

「白蓮はそんなに逢いたかったのか」

「うん。紫様と幽香様が幽々子と一緒に遊んでくれてるけど、氏神様の傍にいると落ち着くの」

「……そこまで好かれるようなコトしたかなー」

 

いや、判ってる。そもそも教義や、経典の時系列が無茶苦茶になっていた仏教が、古代中国へと伝わったのも、紀元前268年~紀元前232年にいた अशोकः(アショーカ王) が、古代インド亜大陸の統一し、民を統治するため、仏教を統治に利用したコトが発端でもあるのは、知ってるさ。

日本の仏教も、中国宗教である道教や儒教の文化が、かなり混ざってるからな。何事も、そのままで残るコトの方が少ないってのは、理解してる。

平成時代の日本の神道だって、道教や儒教、仏教の影響をかなり受けて、すでに別モノなんだよ。今は鎌倉時代だが、鎌倉時代の神道も、古代日本の神道と比べて、もはや別モノと化している。

平成時代には色んな工場が建てられているのもあり、雨が汚いと言われてる。でも、工場が乱立する前の時代では、一番綺麗な水は雨って言われてた。

 

「一仕事終えたから、暫くは一緒にいられる。だからソレまでは一緒にいよう」

「やったー!」

「こやつめ、ハハハ。愛いやつよ」

 

判ってる。判ってるさ。だからと言って...納得できるワケがないだろ!

日本神話も、中国神話も、ギリシャ神話も、すでに完成しているのだ。完成しているモノに余計なモノを加える必要は、あるのだろうか。

解釈の余地がある。なんて綺麗な言い方はダメだ、解釈の余地があるって言うのは、還元すると、自分が考えた妄想ってコトだからな。それを自覚せず、理解してない人間は多い。

可愛いは正義なんて言葉、大ッキライだよ。自己を正当化する正義なんてモノ、この世界に、地球にあるワケないのだから。

はしゃぐ白蓮を観て、世界が初期頃だった時、悩んで悩んで、熟慮断行した結論を、口にした。

 

「白蓮はカワイイからいいや。それに天皇と同様、神裔だし」

「私、カワイイの?」

「当然じゃないか。まさに泥中之蓮という言葉を、白蓮は名で体を表している」

 

カワイイという言葉に反応した白蓮は、いまいちカワイイの意味を理解してなさそうだったので、強く肯定した。オレの反応を見て褒められている、と理解した白蓮は、抱きついてオレの背に両手を回し、胸に顔を埋めながら、甘えてくる。

まるで、そう、白蓮は春風駘蕩と、泥中之蓮という言葉を体現した存在と言えるだろう。間違いない。あと衣錦還郷。まあ白蓮は神裔だから、ただの人間ではないし、それ以前に、白蓮を僧侶にする気は微塵もないのだから。

しかし。

 

「イスラームの預言者محمد(ムハンマド)は、9歳の少女と結婚したのは有名だが…その気持ち。判ったよ...」

 

そんなコトを呟くと、何故か藍に頼んで昼餉を作ってもらうため、神社に戻ってるハズの娘二人の声が、観えないサイズでスキマを出しているのか、どこからともなく声が聞こえた。

 

「お父さん、まだ手を出しちゃダメよ」

「しない、ハズだ」

「お父様、手を出すにしても私や紫、パルスィが先なのを忘れないで」

「しれっと言うが、何気に自分が一番目なのか……」

 

以前にも言ったが、平成時代の科学と医学では、赤ん坊から成人するまでの記憶で、人間の性格・人格を形成しているかについては、平成時代の科学と医学では未解決、となっている。もちろんこれは人間だけの話だ。オレみたいな神を除く。

んで、この世界は因果的に、因縁果に閉じられている。つまりは原因があって結果がある。これを唱えたのは、まだ存命していた時の釈迦で有名だろうから、聞いたコトはあると思う。だがそれだけじゃなくて、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの四原因説(・・・・・・・・・・・・)も、この世界の基盤としてるんだ。

所謂、縁起・因果論だ。では、オレと楽しそうに会話をし、はしゃいでいる少女、神裔・白蓮は、〝一体何が原因で、今の人格・性格を形成しているのか。〟

 

「白蓮よ。ギリシャ神話(ローマ神話)には神裔・Ψυχή,(プシューケー)という女性がいてだな」

「うん?」

 

知らない女性の名を聞いて、今も抱き着いている白蓮はオレを見上げ、笑顔のまま首を傾げるが、続けて話す。

 

産まれてから現在までのオレが出会い、この場にいる白蓮を含めて今まで話した相手は、

神、妖怪、悪魔、天使、魔女、妖精、半妖、半神(神裔)仙人()などの神話・伝説に出てくる相手だけだ。しかも今挙げたモノ全てにオレが敵意を向けないのは、神話や伝説に出てくるモノ達だからであり、最終的にそのモノたちをオレ、あるいは娘の諏訪子、紫、幽香、小傘、こころの支配下に置き、もしくはオレの妻として娶ったからこそ、生かしているにすぎん。みんなが笑っていける世界を創るとか、種族を超えてみんなと仲良くする世界を創るとか、平等な世界を創るとか、格差をなくすとか、世界を一つにするとか、そんな寒気がする目的で一切動いていない。

仮に、この先進むとき弊害になり、邪魔な存在になりそうならば、娶ろうとせず即座に殺してた。

 

そしてまだ神話時代だったころ、ネアンデルタール人、クロマニョン人、ジャワ原人、北京原人、デニソワ人、馬鹿洞人、ムンゴマンなどの、色んな猿人を各国の神話に出てくる神々が殺してきたワケだが。あと魅魔とくるみが今もどこかで、ミトコンドリア・イヴの人間を殺している最中だろう。

現在の鎌倉時代に、ミトコンドリア・イヴの子孫は日本各地に生き残っている、が。しかしソレは、明治時代から昭和時代にかけて、ミトコンドリア・イヴの子孫が必要だったからこそ、オレは見逃して生かしているに過ぎない。本当は今すぐにでも滅ぼしたいのだ。生かす価値がなければ、このオレがミトコンドリア・イヴとY染色体アダム系統を滅ぼさず、ただ呑気に日々を過ごすワケがない。爪弾きにしないワケがない。

つまりこれの意味するところは、オレは一度たりとも、ミトコンドリア・イヴの血を引く人間とは出会って会話をしていない、というコトになる。

 

「彼女は試練を乗り越えて、原初神のエロース(クピードー)という神様の妻になるコトをゼウスが認め、神々の列に加わったんだ」

 

「へー。スゴイ人なんだね」

「そう……だな。神裔・半神が神様の妻になって神の仲間入りっていう神話、実はかなり希少だ」

 

この子は、打てば響く、叩けば鳴る、当たれば砕く子だ。でも、なんでいきなりこんな話をしたのか、これがどれだけ大事な話なのかを、多分、子供の白蓮は理解していないだろうが、とりあえず神様の配偶者として認められたスゴイ女性、というのは理解したらしく、感服したような声で同調した。

エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ。

旧約聖書・士師記 第10章10節

『そこでイスラエルの人々は主に呼ばわって言った、"わたしたちはわたしたちの(ヤハウェ)を捨ててバアルに仕え、あなたに罪を犯しました。"』

士師記 第16章17節

(サムソン)はついにその心をことごとく打ち明けて女に言った、"わたしの頭にはかみそりを当てたことがありません。わたしは生れた時から神にささげられた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)ナジルびと(・・・・・)だからです。もし髪をそり落されたなら(・・・・・・・・・・)わたしの力は去って弱くなり(・・・・・・・・・・・・・)、ほかの人のようになるでしょう。"』

 

ソレ(プシューケー)と同時に、オレが娶る白蓮は、旧約聖書・士師記の人物שמשון(サムソン)בָּרָק‎(バラク)の役割でもある」

「さむそんとばらく?」

「ああ。白蓮は旧約聖書に出てくるナジル人(・・・・)の役目だ。命蓮にも、役目はあるが」

 

唐突に、ヒトらしきモノの名を聞き返す少女は、今もオレに抱き着いたまま、はてな顔で聞き返された。しかし、旧約聖書・士師記の人物שמשון(サムソン)については、あえて、濁してなにも返答しない。

もう腰まで伸びてきた白蓮の髪を右手で掴み、髪を結おうかと悩みつつ弄るが、士師記の人物שמשון(サムソン)と言えば、ヤハウェと髪に纏わる話があるのだよ。ナジル人……。

 

まだ、恋とか、愛とか、人間とではなく神と夫婦になるとかについてどういうモノなのかは、あんまり判ってないだろうけど、空いた左手で、まだ子供とはいえ、このまま成人まで成長し、将来は磨かなくても間違いなく光るコトを約束された、美貌と知性を兼ね備える逸材であろう、オレの妻である少女の右頬へと触れた。

 

「白蓮は、皆と、ずっと一緒にいたいか」

「みんなと……」

「永琳や諏訪子、紫や幽香とか、鬼、天狗、河童、諏訪国にいる全員とだ」

 

抱き着いていた白蓮は、半歩離れ、事の重大さを理解してないような表情でうんうん唸り、考えても判らないコトを考えるのは無駄だと悟り、考えるのをやめて答えた。

ハッキリ言って、こんな大事なコトを、まだ子供相手にするのもどうかなとは思う。さっきの話に出てきたプシューケーも、子供では無かったから。

 

「夫婦とか、神様とか、よくわかんない。でも――」

 

ソコで言い淀み、一拍置いて言う白蓮は、なぜか自分でも判ってないような表情と態度で、何かを訴えるための、悲痛な叫びだった。

前々から思っていたが、白蓮は昔と比べて抱き着いたり、べたべたしたり、甘えたりするコトなどが、今までの世界で何度も何度も回帰して、段々とその回数が地味にとはいえ、増えた気がしていた。

本来ならおかしくなった振り子のように、この世界は永遠と同じ速度で、永遠と同じ間隔で振られているハズ、なのだ。感情も記憶もリセットされている。回帰したら消えたモノが復元されるので話は別だが。

……白蓮には、人格と感情が残ってる、のだろうか。

 

「――私は、オトナになっても、氏神様と一緒にずっといたい。いたいよ。置いていかないで…」

 

左手をこの子の後頭部にやり、そのままぐいっと寄せた。また左手を動かし、次は腰に回して、苦しく、または痛がるかもしれないが、安心させるために、気持ち程度に力を強めて抱きしめた。

よく、フォーマット(初期化)してデータは消えると勘違いされてるが、フォーマットしてもデータは消えない。消滅したように見えるだけで、消滅したデータは確かにソコに残っている。本当の意味での 〝消滅〟 とは、復元できないコトだ。

そして消えずに残った大事なデータ(記憶・感情)は、る~こと、永琳、あと数柱の女神たちが預かり、それ以外はアカシックレコードにある。今まで回帰と言ってきたが、そのデータを持ち主へと復元・上書きしているにすぎないのだ。本当の意味で忘れたワケでも、消えたワケでもない。だから白蓮は、その影響でこうなってるのかもしれん。

 

空海(弘法大師)菅原道真(天満大自在天神)は一度だけ死んだ。だからもう置いていかない」

「ウソじゃない…?」

「既に二回殺され、死ぬ運命から逸れてるんだ。オレが白蓮にウソを言ったコトないだろ」

「何度もあったよ」

「………」

 

腰を下ろして白蓮を抱いていたので、今も手を繋いでいた隣のパルスィを見上げると、彼女は察して手を離してくれた。この話を脱線させるため、この子の両脇に両手を差し込んで高く上げ、不安な感情を忘れさせようと、自分の両手を白蓮の太ももへとやり、支えて落ちないようにして肩車をした。

この子はまだ子供とはいえ、とても聡明だから、効果があるか判らないが、ここは大抵の人間なら絶対に判らなくて、しかも意味のない質問をして気を紛らわせよう。頭が良くないオレが出した、精一杯な苦肉の策だ。

 

「『アルファがベータをカッパらったらイプシロンした。なぜだろう』これ、判るか」

「……わかんない」

「考えても意味はないんだよ。なら考えなくていい。大丈夫だ、オレはもう白蓮を置いてかない」

「うん……分かった」

 

何の根拠もないせいか、白蓮はまだ解せない様子で、渋々頷いた。この子は神裔の女だ。だからこそ娶るし、生かしている。

 

他山の石、いい言葉だ。そしてことわざには、読書百遍義自ずから見る、というのがある。

ただの人間・または妖怪相手に、打算がなく、ただ友好的に接する神なんぞがいたならば、オレはソイツを絶対に生かす気はない。即座に斬り捨て、ブタの餌にする。

オレは色んな神話を読み、観てきたが、そんな神、いる価値も、生きる価値もない。厭悪や蛇蝎され、淘汰されるべきだ。

情状酌量の余地なし。無残に捻じ伏せて、蹂躙されて、惨たらしく、屠られ、黙って早々に死ね。あるいは自尽しろ。

 

今の念話を、ずっと白蓮とのやり取りに介入せず、黙って静かに見守っていた妻に送り終え、顔を向けた。

 

Ἔργα καὶ Ἡμέραι(仕事と日).銜冤はゴメンだ、そう思わないかパルスィ」

「……宜なるかな。否定はしないけど、私に同意を求めないでよ」

 

「大体さ、思い上がった人間が神を蔑むと、神から罰を受け殺されるなんて、神話ではざらだよ。なのに神を貶した人間を、神の命に従わない人間を神が許すとか、妄想と我田引水も甚だしい」

 

神という存在は、偉そうじゃなくて実際に偉いのだ。なのに、そんな神を冒涜する人間と、礼儀がなってない人間と仲良くする神は、神と呼べない。敬語で話さない人間を、崩した態度で神に接する人間を、なぜ神が許す。なぜ神がソレをされて平然としている。礼節や立場というモノを知らんのか。普通、神から罰を与えられるか、殺されるぞ。今が鎌倉時代なら尚のコトだ。

現人神の天皇だって、アマテラスに対してそんな無礼なコトを絶対にしない。絶対にありえない。ソレをするコトは、自分が現人神の天皇だというコトを否定し、自分と祖先の、全ての始まりである神武天皇が、神裔なのを否定しているコトと同義である。

 

だからそんな、ダレカの無知で、我田引水で生まれた、妄想が反映された"神"という存在に対して、ハッキリと言おう。

"ソレ"は無知と無自覚と、古事記や日本書紀の日本神話を、語り継いできた各国の神話を読書百遍せずに、寡聞なダレカの主観で生まれ、"神"という言葉を先入観で自分勝手に拡大解釈し、ダレカの自己満足と自尊心の塊という妄想で投影された、虚空の〝神〟だ。

第38代天皇・天智天皇を、眷属(神使)として天魔に貰った天狗のはたてと椛に命じて、暗殺させたとはいえ、オレはこれでも、天皇を、宸襟を安んじてるんだ。

 

「まぁ…ソレが不敬な考えなのは間違いないわ。時代が時代なら、処刑されても文句は言えない」

「ああ。相手のコトを、古事記や日本書紀の始終までを観ずに、神の存在を語ってたら、滑稽だ」

 

……いや、どうせ殺すにしても、あっさり殺すのは実にもったいない。どうせするならば、

ギリシャ神話のイクシーオーン、シーシュポス、タンタロス、プロメーテウスの話では、永遠に続く痛みと、苦しみと、もどかしさと、虚無感に苛まれる話があるし、それと同じコトをソイツにする方がいいな。実際にソレをされても文句は言えない。

 

ここは地球だ。並行世界なんて、エヴェレットの多世界解釈なんて都合のいいモノはない。どうあがいても、ここは地球にある日本なのだ。

量子力学は好きだが、可能性とか、あったかもしれない、とかよく聞くがそれ妄想だろ。そういう誰にでも使えて便利すぎる部分や、ただの妄想なのに、キレイな言い方をするところはキライだ。

胡蝶の夢も、水槽の脳も、並行世界も、量子力学も、神となにが違うんだよ。結局は、神から別の言い回しへと変わっただけじゃないか。キレイな言い方をするな。

 

「ソレをする人間がいたら、天皇はソイツを不敬罪で死刑にする。当たり前だ、オレだって殺す」

「確か昭和時代の天皇が崩御する間際、社会が停滞して自粛ムードだった程の影響力だからね」

「今が鎌倉時代とはいえ、いや…鎌倉時代だからこそ、斬首・獄門をされてもおかしくない」

「当然よ。宮内庁が怒るわ。天皇()とそこらにいる人間が同じなんて、流石に不敬ね」

 

大抵の神話の場合、神々がその土地の民族を創造する話が多い。神々が人間を創造する話は琉球神話(沖縄神話)アイヌ神話(北海道神話)にもある。確かにその話なら、神が創った民族の人間を助けても不思議ではない。百歩……いや千歩譲ってソレはまだ判る。そういう話は一応あるからな。

旧約聖書に登場する主・ヤハウェはそうさ。ただし、ヤハウェが助けるのは特定の民族限定だよ。即ちイスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人だけだ。

よく忘れられてるが、旧約聖書のヤハウェと、新約聖書のヤハウェは、人類を2回も滅ぼしてる。あのヤハウェでさえ、人類を計2回も滅ぼしてるんだよ。ここまで言っても判らないなら、神は人に優しくするとか、神は妖怪や人を助けるとか、神は平等に接するとか、神は差別しないとか、そんなコトをほざくなら、あまりの驕慢に、自分たちに都合のいいコトしか観ないヤツに、ただ呆れるしかない。日本神話・旧約聖書・新約聖書・ギリシャ神話・中国神話でも差別はあるのにさ。

別に無知を非難したいワケでは、無知は罪と言いたいワケではない。ただ……

 

「日本の歴史・古事記と日本書紀にある日本神話を観ずに、()という存在を語る人間は、クズだ。そんな人間、スサノオ、ゼウス、ヤハウェをクズだと言う資格はない。神を語る資格もない」

 

ギリシャ神話・中国神話・旧約聖書にも、神が人間を創った話はある。しかしながら、

古事記と日本書紀にある日本神話の場合(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)イザナギとイザナミは(・・・・・・・・・・)人間を創ったワケではない(・・・・・・・・・・・・)。 古事記と日本書紀の日本神話に基づくならば(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)人間は(・・・)古代日本人は勝手に生まれていた(・・・・・・・・・・・・・・・)

神話を知ってるなら、読んでるなら判る。これがどういうコトなのか、今の説明で十分だ。

 

「神という存在はどういう存在か、歴史を調べず、ましてや神話を読まずに知ろうともせず、ただ自分自身の中だけで自己完結をし、自分の妄想で出来た"神"という理想を神に押し付けてるんだ」

 

旧約聖書・士師記 第2章11節

『イスラエルの人々は主の前に悪を行い、もろもろのバアルに仕え、かつてエジプトの地から彼らを導き出された先祖たちの神、(ヤハウェ)を捨てて、ほかの神々すなわち周囲にある国民の神々に従い、それにひざまずいて、主の怒りをひき起した。』

 

「クソが。自分は押し付けるだけ押し付け、叶うように願うだけで、都合のいい時だけ神頼みか。口だけか。ならその人間は、オレとゼウスよりクズだ。神と仏は便利な道具ではない」

 

神がその辺にいるただの人間を殺して、謝罪するワケがない。願いを聞くワケがない。意味不明だ。たかがその辺にいる人間を殺したくらいで、神が力を貸すワケがないだろ。ある人間がある人物を死にそうなところから助けて、神がソレを褒めたり称賛するワケないだろ。

神も仏も、色んな人間を救うためにいるワケじゃねえのに、都合よすぎなんだよ。

神は分け隔てなく、全ての人間へ平等に優しくするだと。フハハハハッ! 笑わせんなッ!! 

 

アマテラス(スサノオ)が天皇を助けるのは判る。だが、ソレ以外を助けた場合、もうアマテラスではない。アマテラス(ツキヨミ)という名を借り、寡聞な誰かの主観が投影され、無知と無自覚から生まれた、妄想だ」

 

抜苦与楽、仏の顔も三度まで。って言葉があるけど、あれを聞くと、本当に頭が痛い。

釈迦も、ヒトを救うために仏になったワケじゃねえのに、なにが仏は人を救うだボケ。なにが仏像を拝めだカス。んなこと釈迦は一言も言ってねえだろうが。虚言癖と妄想・妄言も大概にしろよ。釈迦をイエス・キリストみたいに神格化するなよ。釈迦はそういう存在じゃねえだろうが。釈迦は死んだ後は自分を神格化しろとか、人を救うため仏になるとか、そんなコト一言も言ってねえし、ましてや涅槃の境地へいる釈迦に、感情なんてあるワケない。

『極端なのはダメ』、『行き過ぎなのはダメ』、『どちらにも囚われない、偏らない立場の中道に』と、釈迦は言ったがな。

 

「神が人を救う、なんて自分に都合のいい方へと解釈し、妄想を垂れ流すのは大概にしろ。神話を1から10まで読まず、神がどういう存在かを妄想する前に、日本神話と各国の神話を読むべきだ」

 

仏教は釈迦だけいたらいいのに、なんでインド神話の神がいるんだよ。

なんだよ菩薩って、なんだよ明王って、なんだよ天部って。そんな存在、概念は、紀元前、釈迦が存命した時の仏教にはなかったんだぞ。あったのは、釈迦が産まれるよりも前の古代インドにあった輪廻転生くらいだろう。

余計な設定を付け加えるなよ! お地蔵さん(四季映姫)だって本来の仏教とは何の関係もないじゃないか! なーにが仏像を壊したり、仏をバカにしたり、冒涜や、貶したりすると罰が当たるだ。その思想は、仏教にはない。だいたい仏は人間に罰を与える存在じゃないし、釈迦はそんなコト言ってない。あえて言うなら、その思想は、神話に出てくる神々や、原始宗教、または御霊信仰の名残だ。それ以前に、涅槃の境地へ到達した釈迦に、感情なんてあるワケないだろ。

 

「ソレをしないのは神に失礼だろ。1000年以上語り継がれてきた神話に失礼だろ。人間にはさ、出来るだけ周囲へ迷惑をかけない最低限の礼儀、というモノがあるんだろ。ならソレを守れよ」

 

たかだか数十年残ったモノと、色んな時代と共にしても残った数千年のモノがあった場合、どっちがスゴイか、どれだけの重みがあるかを知らんのか。

英雄(ヒーロー)が人間の味方とか、弱者の人間を救うとか、意味不明だ。いや、特定の民族だけを助けるというなら、まだ判るよ。ギリシャ神話の英雄ならば、古代ギリシア人だけを、ヘブライ神話の場合ならば、ヤハウェが認めたユダヤ人・ヘブライ人・イスラエル人だけを救う、とかなら判る。理解できる。なんとか納得出来る。

だが……妄想する前に、真贋を見分ける目を養ったらいい。

 

「血も、頭も、才能も、容姿も、出生もない、何の取り柄もない人間に神が力を貸すワケがない。ましてや、借り物の力しかないモノを、神や妖怪が一視同仁(愛したり)するワケがないだろ。自惚れるな」

 

まるで五蘊盛苦だよ。

新約聖書・マタイによる福音書 第27章46節

『イエスは大声で叫んで、"ηλι ηλι(主よ、主よ、)λεμα σαβαχθανι(どうしてわたしをお見捨てになったんですか)"と言われた。』

旧約聖書・詩篇 第22篇1節

『なにゆえ遠く離れてわたしを助けず、わたしの嘆きの言葉を聞かれないのですか。』

 

「白色人種だろうが、黒色人種だろうが、黄色人種だろうが、赤色人種だろうが、褐色人種だろうが知るかよ。神の子孫じゃない人間、神に創られていない猿人は死ね、すぐ死ね、さっさと死ね」

 

旧約聖書・詩篇 第22篇4節

われらの先祖たち(イスラエル人・ユダヤ人・ヘブライ人)あなたに(ヤハウェ)信頼しました。彼らが信頼したので、あなたは(ヤハウェ)彼らを助けられました。』

旧約聖書・士師記 第10章11節~12節

(ヤハウェ)はイスラエルの人々に言われた。 "わたしはかつてエジプトびと、アモリびと、アンモンびと、ペリシテびとからあなたがたを救い出したではないか。またシドンびと、アマレクびとおよびマオンびとがあなたがたをしえたげた時、わたしに呼ばわったので、あなたがたを彼らの手から救い出した。"』

士師記 第10章13節

『"しかしあなたがた(イスラエル人)わたし(ヤハウェ)を捨てて、ほかの神々(バアル・アシラ・アシタロテ)に仕えた。それゆえ、わたしはかさねてあなたがたを救わないであろう。"』

 

「小人閑居して不善を為す。言い得て妙だ。神話を読まずに神を語るのは罪ではないのか。ソレは1000年以上語り継がれてきた神と神話、延いては語り継いできた先人達も蔑ろにしてるだろ」

 

例えば、あの有名な金太郎には、金太郎の死後、日本に神社を建てられ、神様になったコトは有名だ。そもそも金太郎の生まれ方が特殊で、雷神の子供、という話もある。つまりは、雷神の子供という前提だと、金太郎は、天皇と同じ神裔というコトになるのだ。こういう伝説と化している人物には、生まれ方が特殊とか、他のモノより優れた才能、または女性が一目見ただけで惚れる顔などが結構あるけど、それは言い換えると、選ばれた存在扱い、になっているというコトだ。

例えば神話や、伝説に出てくる英雄(ヒーロー)とは、神の子孫とか、顔が色んな女性に好かれる美男とか、才能豊かとか、みんなを引っ張る存在とか、そういう話が多い。要はそういうコトだ。

 

「なぜ神や妖怪が人間に対して偉そうにせず、友好的になるんだ。頭が痛い。本当に頭が痛いぞ。神と人間は違う。なのに、なんで人間の倫理と価値観を神と妖怪に語らせるのだ。虫唾が走る」

 

つまるところ、その辺にいる人間とは、顔も、生まれも、才能も、出生も、ただの人間とは違う、というコトが、全面的に圧されているワケだ。もちろんこれは、説得力を持たせるためや、これを聞いた人間が納得できる、という理由もある。だってさ、普通の人間が、一人で大岩を持ち上げたり、鬼や熊と相撲して勝ったという話を聞いても、納得できないだろ。普通に考えて、ただの人間にそんなコト出来るワケが無いんだから。

すなわち、原因があって、結果が生まれている。オレだったら、ただの人間にそんなコトが出来た場合、納得はできないだろう。説得力が無いし、納得出来る理由がないからだ。

 

「旧約聖書・新約聖書を読まずにヤハウェを使うなよ。ギリシャ神話を読んでないのにゼウスたちを使うなよ。日本神話を齧っただけで神を、天神地祇・八百萬神(八百万の神)を使うなよ。不労所得をするな」

 

だからこそ、天皇は特別なんだよ。普通の人間とは違うんだから。天皇と同じで、桃太郎の出生が人から産まれたワケじゃない人間で、ただの人間じゃないからだ。

そもそも、神話時代、紀元前から平成時代までどれだけの時間が流れ、血が薄まってると思ってるんだ。

神話時代から飛鳥時代でも天津神の血はかなり薄まってるのに、神話時代から戦国時代までとか、どれだけ譲歩したと思ってる。

 

「日本神話とギリシャ神話の神々が平和を謳ったり、ただの人間を神が愛し、力を貸したりする――ソレは何とも鳥肌が立つな。寒気がするな。気持ち悪いな。誰かの妄想が投影された神よ」

 

それを踏まえるならば、中国神話の黄帝は、言わば日本でいう桃太郎に近い。これは桃太郎の役割とか、立ち位置の話ではなくて、生まれ方が特殊という意味だ。黄帝の生まれについては諸説あるけど、中国神話の場合の黄帝は、人間から、つまり出産でこの世に生を受け、産まれたワケではない。桃太郎と同じで、1人で勝手に生まれている。だから黄帝は、神話でしたコトを含めてもだ、人間とは言い難い。桃太郎は爺さんと婆さんが若返り、セックスして産まれたという話もあるけど。

大体だな、

 

「――ちょっと。白蓮がいるんだから、のべつ幕無しも抑えなさい」

 

隣にいたパルスィが両手を叩き、破裂音が一度響いた。

 

冷や汗が出ていたようで、おでこから頬へ流れるのを感じ、破裂音のした方へ首を動かしすと、今も目が点になっているオレを一瞥しつつ、色気のかけらもない手ぬぐいを取り出し、軽く拭ってくれた。

 

「……すまない」

「それは言わない約束でしょう。いいのよ。慣れてるから」

 

それはそれで…問題は無いのだろうか。しかし危なかった。呑まれかけていた意識を急ピッチで引き戻せてよかった。これではオレも純狐のコトを言えないじゃないか。

しどろもどろにならないかを気を付けて、今も肩車している白蓮を不安にさせてしまったのは間違いない。謝っておこう。

 

「怖い思いをさせたらごめんな白蓮」

「んーん。大丈夫」

「面倒なコトは考えないでいいわ。それより、美味しいものでも食べていた方が有意義よ」

「藍のご飯食べたら、魔法の森に行って魔女達からなにか甘い物でもくすね…食べに行くか」

 

冷や汗を拭い終え、何事もなかったように明るく話しかけてくれたが、今も肩車している白蓮の太ももに置いて、落ちないように支えなければいけないので、手を握れなくて残念そうにして、彼女は気遣いながら、寄り添ってきた。

……ごめんパルスィ。そう言ってくれるのは嬉しいが、面倒なコトを考えない、ワケにはいかないんだ。

 

「氏神様、私の妹も連れて行ってもいい?」

「いいよ。幽々子も連れて行こう」

 

提案を快諾し、肩車してた白蓮を下ろすと、まだソコに残っているスキマへと一目散に入って行った。オレとパルスィも一緒に行こうとしたが、待っててと言われて待つコトにしてこの場に残っている。

 

中世にいたイスラムの哲学者 イブン・ルシュド は、全知全能のGODが本当に全知全能なのか、という全能の逆説を取り組んだことで知られている。

紀元前にいた古代ギリシア人の古代哲学者から中世哲学者たちでは、"神"、あるいは"GOD"とはどういうモノか。それを真面目に議論し、論理を組み立てていたのは有名だ。しかしそれは、神という存在があいまいで、視界に映らず、キリスト教徒やイスラム教徒の場合、GODが聖書にしか出てこなくて、漠然としたモノだったからこそ、でもある。

だが、各国の神話は実際に起きた。だから ゲーデルの不完全性定理 の話なんてしない。

ましてや、イン・シャー・アッラー、デウス・ウルト、アッラーフ・アクバル(アッラーフは偉大なり)の話も、する必要はない。

 

神話が起きた以上、確かにアイツらは、ちゃんとソコに存在する。

"アッラーフ・アクバル"って言葉がある。日本人には理解できないだろうが、この言葉を気軽に口にしようモノなら、宗教家に怒られるか、最悪、訴えられてもおかしくない。

神なんかいない! と宗教の根本を否定しても同じコトが言えるさ。神を信じ、感謝し、信仰するってのは、そんな単純な話じゃないんだ。彼らが積み重ねてきた信仰、祈り、行い、感謝、人生を否定するコトと同義だからだ。彼らが積み重ねてきた道徳・倫理を否定するコトにもなる。

ハッキリ言って、そんな言葉を気安く口にしようモノなら、殺されても文句は言えん。これを知って、宗教家が怖いって思うヤツこそ、オレは怖い。なにせ、そう思うってコトは、相手の気持ちを考えず、自分の価値観で、自分中心の考えで判断して、怖いと思ってるコトになるからだ。ソレは無自覚に、1000年以上続く宗教の信仰を貶している。形はどうあれ、1000年以上続いてるってのは、かなりスゴイんだ。バカに出来る事じゃない。天皇だって、血が1000年以上続いてるだろ、それと同じだ。万世一系が本当に続いてるなら、っていう前提だが。DNA鑑定はしないだろうけどな。

 

何かの話声が聞こえ始めてきた。間違いなくオレとパルスィではないので、スキマを観ると、中から出てきた白蓮は、何かを両手で掴み、ソレを川の流れに逆らうよう懸命に引きずっていた。

なんだと思ったら命連だった。やっとこさ妹を連れて来たのを実感したのも束の間、逃げるのをやめたのか姉の背に隠れた。

 

「ダメよ命蓮。氏神様にちゃんと目を合わせてご挨拶しなきゃ」

 

白蓮の背に隠れている妹――命蓮は、隠れないように押し出そうとされるが、それに負けじと抵抗し、姉と妹の激しい攻防が繰り広げられている。ソコには譲れないモノが、負けられない戦いが、確かにお互いにあった。

この子が、あの平安時代末期の絵巻物『信貴山縁起人』に出てくる主人公。いや、ヒロインと言うべきか。でも最近はヒロインを主人公とも言うしな……これは悩みどころだ。

確か彼、ではなく彼女は、第60代天皇・醍醐天皇時代にいた人物だ。人見知りなのだろうか。

まだ月滅ぼす前に、インド神話のヴィシュヌから貰ったチャクラムを諏訪子に渡した、って永琳に聞いたけど、転輪聖王の説によっては諏訪子とソレが被ってんだよなあ。

 

いつの間にか姉の根気に負けたらしく、ビクビクしながら一歩、一歩と、オレに十分に近づくと、立ち止まって名を名乗った。

 

「――氏は諏訪、名は命蓮、です……」

「命蓮、もっと大きな声を出すのよ」

「む、ムリだよぉ」

「私と同じようにしたらいいだけだから」

 

「御前でそんな無礼なことをしてるのがおかしいよ...いくら氏神様に嫁ぐといっても限度がある。大君様(白蓮)はただ遠慮がないだけ。それは氏神様に失礼だし、なにより神の妻としての自覚が――」

 

そのまま些細なことがきっかけで、お互いの考えをぶつけていく口論へと発展していった。

白蓮は姉としての立場ゆえ、妹の力になろうとして頑張ってるのは判るが、ソレが空回りしてる。最初はビクビクしていただけだった命連は、ありがたい説法をする白蓮と会話していく事に、そのおどおどした態度や動きは消え、顔を凛と引き締め、話し方に流暢が出始め、論理をすらすらと綴らせる。

うーん……姉妹ってこういうモノなのだろうか。オレって妹はいても姉がいないからな。しかし今の時代で姉のコトは、お姉ちゃんとかお姉様とかで呼ばないのかね。今は鎌倉時代だが、平安時代は弟であろうが妹であろうが、 おとうと、と表したらしいけども。

 

……あれ、オレに姉っていなかったっけか。今のオレ、記憶が段々と戻って来てはいるが、未だにボロボロだしな。これはもうだめかもわからんね。オレの実姉がいたような気もするが。

ヘーラーみたいな姉はイヤだなあ......。

 

「パルスィって神子と姉妹だったよな、あれが普通なのか」

「私達の場合、冷戦になるわ」

 

遠い目をして語った彼女は、どこか涅槃の境地にいそうな表情だった。

隙アリと言いたげに、また右手でオレの右手と繋ぎ、今度はもっとお互いの手を絡めようとゆっくり動かしているが、好きにさせておこう。

まだ口論を続けていた姉妹の背を両手で軽く当てて、ムリヤリ中断させる。白蓮は渋々だが、まだ言いたいコトがありそうな命連の顔を覗き込み、驚かせて気を分散させた。

 

「魔法の森にいる魔女達から甘い物を物色しに行くから一緒に行こう」

「は、はい……」

「あ、その前に藍のご飯を軽く食べさせてくれ」

 

歩いて下山するつもりだったが、予定が詰まってるのでここは早く帰ろうと思い、視線でパルスィに謝りながらも、魔方陣を展開して神社へと向かおう。

 

旧約聖書・コヘレトの言葉(伝道の書) 第3章15節

『今あるものは、すでにあったものである。後にあるものも、すでにあったものである。』

創作物において大事なモノは色々あり、過程、魅せ方、キャラ、プロット、納得などが大きく分けて挙げられる。しかしながら、物語、ひいては創作物において何よりも必要なのは、設定(・・)だ。

設定があるからこそ、キャラを動かしたり、物語を進めたり、納得出来たり、日常を過ごしたり、恋愛したりするコトが出来る。例えばだな、漫画に出てくるキャラをお金持ちキャラ設定にしたら、プロットを練ったり、キャラも動かしやすくなるし、話の幅も広がる。これはギャグマンガにも言えるコトさ。

真っ白な紙切れ一枚渡されて、それを神話(物語)と、ギャグマンガとは言わないだろ。物語を作るには、誰かが活字で、あるいは絵を描かなきゃいけないのだ。つまり、設定(・・)という意味を、その紙切れに一枚に与えるコトで、生まれる。

だからこそ、最初に設定を考えた人物は、偉大なのだ。例えソレが神話だろうともな。つまるところ、それ以外は水増しで、後追いで、真似事にすぎないのだから。

そもそも神、人間、妖怪、霊、悪魔、天使、妖精、エルフは、先人が生みだしたモノでしかない。

 

「こんな日々は、いつまで続けられるだろうか」

「もう死ぬコトはないんでしょ? なら世界が滅んで回帰するまで続くわ」

「……重いな、パルスィ」

「初志貫徹。何度も。何度も。アナタと逢うために回帰した女の1柱よ。当然じゃない」

 

そんな軽口を言い合い、藍のご飯を食べるために白蓮、命蓮、パルスィと魔方陣で神社へ戻る。

 

 

 

率直に言って、箕子の憂いが出来る八意 永琳が妖怪と仲良くしてるように観えるならば、ソレはおかしい。これは××(永琳)だけではなく、オレにも言える。

豊姫と依姫がまだ産まれる前、オレたちがまだ子供だったころに妖怪の話をよく聞かされた。まあ全部ウソだったんだけど、月人に寿命が生じるのは妖怪が穢れをまき散らしてるのが原因だとか、妖怪は月人の敵だとか、浄土へするには妖怪を殺すしかないとか、そんな感じで印象操作されたりプロパガンダされたりと、妖怪関係でいい話を聞いたコトがなかった。

要するに子供の頃のオレたちは、虚偽記憶を植え付けられていたのだ。

月の民を妖怪たちに殺させたのも、ましてや、月の負の遺産って、実はソレが理由ではないんだ。あえて言うなら、外面的な理由として旗を掲げ、旗幟鮮明しただけに過ぎない。オレと永琳の真意は別にある。

一応言うと、妖怪に対するその考えを永琳から払拭していない。永琳は月に行かずオレと一緒に残ってくれたけど、その考えをオレが払拭したワケでも、改めさせたワケでもない。大体オレ自身でさえその考えを捨ててない。ただオレの場合、女好きだったからそう観えなかっただけだ。故に、オレは妖怪と仲良くしないのではなく、ただ美人か可愛い女を侍らせたいだけ。

ダレカに植え付けられた倫理・価値観というモノは、実に厄介だ。付け焼き刃ではなく、幾星霜に培ったモノであれば尚更そうだ。しかもソレを永琳に植え付けたのは原初神だったオレではない。かと言って"無関係だ"、とも言えない。

…全てウソだったみたいだけど、まだ子供のころにそう聞かされ、オレはソレを信じていた。あの月の頭脳と言われた永琳がソレを見抜いていたのかどうかは……判らない。まだ子供だった時に、あの公園で永琳と出会って、"オレの女になれ"とかバカなことを言ったワケだが、あの時点ではまだ少女だった永琳は、今までの世界の記憶を回帰していたのかについて教えてもらったコトがない。

 

いやそれ以前に、あの公園で会った時点で永琳の記憶が回帰してるなら、オレにアッパーカットを食らわせ、近づくなという態度や、悉くイヤそうな顔で会話をして鰾膠無い返事をされ、あんなに反抗したり、第一に、"オレの女になれ"って言った時点でOKを貰ってるハズなのは、間違いないと思う。端的に言えば、あそこまで嫌われてないハズなんだ。もちろん記憶か感情が回帰してる前提だが。感情が戻ってるなら、尚のコト笑顔でOKを貰ってるハズだ。

最初から知ってたのか、知ってて知らないフリをしたのか、単純に知らなかったのか。そもそもいつから記憶を回帰させていたのかを教えてもらったコトがない。教えない理由は、また世界が消滅して回帰した時に、どの時点で上書きしてるのかを知られるのは面白くない、と言われている。でも、多分ソレは本音じゃなてく、きっと建前だろう。オレの場合は記憶が欠落しててボロボロだったから、元原初神だったとか元至高神だったとかは憶えてなかったので、永琳はオレの場合とは違う。

 

ここまでで、永琳と初めて出会った時のコトを長々と想起した。記憶がなかったオレは、ただ単純に、ただ愚直に、ただ永琳が美人になりそうだから欲しかっただけである。記憶がないのもあったが、そんな大層な理由ではなかった。女を侍らしたかっただけだ。豊姫と依姫の場合は、師匠がくれてやるとか言っても、都が地上にあった時は手は出さなかった。

悲しいかな、オレの行動理念は神話と女しかない。でもコレは、オレの場合だ。

豊姫と依姫ならオレよりいっぱいあるハズだ。だからもう一度言う。

 

永琳が妖怪と仲良くしてるのは、仲良くしてるように観えるならソレはおかしい。

なにせ永琳は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











鬼神にしているここのパルスィは、イラン神話・ペルシャ神話・ゾロアスター神話を混ぜてます。

紀元前や西暦の中国って、色んな民族が侵略と反映を、幾重にも交互に繰り返してますが、
古代ギリシアや古代ローマみたいに、混血、あるいは古い血が途絶えてる場合が多いです。
古代ギリシア人と、平成時代のギリシア人が、血を含めた意味でも同じ民族ではなくて、全く別の民族なように、古代中国人と、平成時代の中国人は、血を含めて同じではないです。つまり混血ばかりで純血がいない、という話ですね。これはアイヌにも言えます。

今回の地の文に日本の戸籍について弘天は説明しています。
そして神話時代にいたアダムにイヴと、平成時代の人間は同じではないでしょう。
なにせ旧約聖書・創世記に出てくる人間は、アダムを含んで、基本的に300年以上も生きてます。
だからもう一度言いますが、『混血』ばかりで、『純血』が、いないんです。
日本人でも、ギリシャ人でも、中国人でも、アイヌでも、神話時代から平成時代までの長い時間が流れ、平成時代にいる人間は、それまでで色んな民族と交配し、混血ばかりで、『純血』がいないんです。
弘天が日本の戸籍を含めて指摘している一つはソコです。

日本神話のヤマトタケルや、ギリシア神話のヘーラクレースは神裔であり、双方は神話時代に出てくる英雄です。やはり親、または祖先が神、というのは大事です。神話の場合なら説得力がありますからね。有名な安倍晴明も出生が特殊ですから。安倍晴明はスゴイ才能があるとか、能力持ちと言われても、その辺にいる平凡な人間がそうなるよりまだ納得できます。
例えば鬼の酒呑童子は、源氏の源頼光に殺されてます。この話の場合、源頼光は神の力を借りている話もありますけど、源頼光は源氏ですので、神が手を貸してもおかしくはないですし、源頼光が酒呑童子を殺しても納得できます。
それは神裔・半神のギルガメシュや、ヘーラクレースの話で、神が手を貸したのもありますから。源氏については、今まで説明してきたので、分かってくださるかと。
今までの説明が分かりにくい説明でしたら、不徳の致すところです。

冷静に考えて言うなら、ただの人間が、丸腰のまま鬼に勝てるのかと聞かれたなら、よほどの人じゃない限り、ムリです。
ですがこの人間に、例えば、雷神の子と言われる事で有名な金太郎みたいに、神の子孫という話を付け加えたら話は変わります。鬼を倒しても、さっきよりは納得できて、説得力がありますから。神裔・半神が能力や霊力を持ってても、ただの人間よりは、納得できると思います。
これは出生が特殊な桃太郎や、一寸法師にも言えます。桃太郎や一寸法師にも、鬼を倒せた理由・原因が、ちゃんとあるんですよ。神裔の天皇みたいに、桃太郎と一寸法師の生まれ方が特殊なので。すなわちミトコンドリア・イヴでも、猿人でもないワケですね。
しかし、ただの人間が能力を持ってて、しかも霊力があって、丸腰で鬼に勝ったという結末なら、納得は難しいです。ましてやその辺にいるただの人間が、神に助けられたり、力を貸して貰ったりするのは納得できないでしょう。
お金がないのにお金持ちみたいなことをしてたらおかしいですよね、それと同じだと思います。

それ以前に、例えばギリシャ神話のゼウス、また旧約聖書と新約聖書のヤハウェは人類を滅ぼしていますが、数万、数千万、数億人を殺したとしても、それぞれの神話を観る限り、神様が謝罪するのはまずないです。というかありえません。
これはインド神話、中国神話、メソポタミア神話、エジプト神話、マヤ神話でも同じ内容がありますが、そこは同じです。神と人間は対等ではないですから。
なぜ神が人間如きに謝罪するのでしょう。なぜ偉い神様が人間如きにフランクな態度になるのでしょう。なぜ神様が人間如きに優しくするのでしょう。相手が平成時代の人間なら尚更です。
神話の神が人間を殺してしまって迷惑をかけたから、あるいは誰かの代わりに死んだ、または誰かを助けて死んだそのモノ達の願いを聞き入れる、なんて事も絶対にないです。
神話に出てくる神様なら、それが当然です。神は弱者の、その辺にいる人間の便利な道具ではないですから。







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衆惡之必察焉・衆好之必察焉

古代中国の哲学者、儒家の始祖・孔子は言った。

『道に聴きて塗に説くは、徳をこれ棄つるなり。』

 

「古之學者爲己、今之學者爲人。其言之不怍、則其爲之也難」

 

神社の裏にある蔵、その地下にあるブリーフィングルームで、上質な椅子に座り、向かい合わせに座って読書している最初の妻を一瞥した。この部屋には、にとりたち河童が造った天井照明があるお蔭で明るいのだが、外に出たら真夜中だ。まだ眠気もないし、後で、星空を眺めにいく予定だ。その序でに、やっと付喪神になったメディスンがいる無名の丘の鈴蘭畑へ赴く気でいる。

視線に気づいたのか、一旦、読むの中断して、微笑んできたが、両脇にある肘掛けに両腕を置き、体重を椅子に預けて身を任せ、天井を見上げると、彼女はまた、活字を読む作業に移行しつつも、苦言を呈した。

 

「ソレを全て観ても、明治時代から昭和時代の結果は変わらないのに」

「そうだが、御浚は大事だ。現天皇が弘文天皇とはいえ、一応『神皇正統記』も読まねば」

「南北朝時代。吉野朝廷の、歴とした正統性もなにもあったモノじゃないわね」

「イザナギとアマテラスの血を引く天皇、天津神の神裔。延いては血の濃さ、純血の方(弘文天皇)が優先だ」

 

古代ギリシアの歴史の父・Ἡρόδοτος(ヘロドトス)曰く。

『何を考えているにせよ、最後まで見ることだ。殆どの場合、神は人間に幸福をちらりと見せた後、奈落に突き落とすものだ。』

オレも永琳と同様、この部屋で『古事記』、『日本書紀』、『出雲国風土記』、『皇室典範』、『ポツダム宣言』、『神皇正統記』、『出雲国造神賀詞』などに目を通しているせいで、静寂だ。この先で必要になる知識とはいえ、正直、かなりの量です。はい。一日かけても、今挙げた全てを読むコトは出来ないよ。載籍浩瀚だから、急いで読むと重要な記載を絶対に見落とすので、時間をかけて通覧しなくてはいけない。おさらいとして、あとで『諏方大明神画詞』も拝見しなくては。

なにせ、行動が伴わない限り(・・・・・・・・・)全ての言論は空虚なのだから(・・・・・・・・・・・・・)

日本の神裔は戦国時代で終わるので、日本で生き残ってるミトコンドリア・イヴとY染色体アダムは、明治時代から昭和時代の捨て駒として使う予定だが、明治の邏卒と五箇条の御誓文どうしようか。

テーブルの上に置いて、題簽されている『日本書紀』を右手で手繰り寄せ、左手でぺらぺら捲る。コレは『古事記』とは違い、日本の歴史の〝正史〟とされている。日本書紀以外の書物で、正史とされている書物は他にもあるが、そう。コレは、ダレカにとって都合がいい〝正史〟なんだよ。

 

「地球は球体、と判ってた古代ギリシア人は天才だった。古代中国人も天才が多かったワケだが、頭おかしいのもいた。しかし、平成時代の人間が、過去の人物にあれこれ言うのは滑稽だよ」

 

「平成時代にある倫理と価値観を、紀元前の人間に言ってたら、失笑ものだからね」

「それで、人間は語るコトを人間から学び、神々から沈黙を学んだ」

 

1944年に起きたインパール作戦で部隊を指揮した 牟田口廉也 は、失敗に終わった。

そして、"責任を取る為に自決するべきだろうか。"というコトを 藤原岩市 に相談すると、彼はこう言った。

『昔から死ぬ死ぬといった人に死んだためしがありません。司令官から私は切腹するからと相談を持ちかけられたら、幕僚としての責任上、 一応形式的にも止めないわけには参りません、司令官としての責任を、真実感じておられるなら、黙って腹を切って下さい。誰も邪魔したり止めたり致しません。心置きなく腹を切って下さい。今回の作戦はそれだけの価値があります。』

 

「〝創作物〟と言えば聴こえはいいが、結局のところ創作物とは、お人形遊びの延長線である」

「ダレもが判りきってるコトなのに、ヒドイ言いようね。諷刺もほどほどにしなくちゃダメよ」

「自己欺瞞ほど楽なものはない。都合の良い所だけ真実だと信じていられるのだから」

 

江戸時代の日本は、文化に関しては栄えた。でも科学に関しては、文化ほど進展はしなかった。

日本なんてさ、古代中国や西洋の文化をパクリまくって、先進国気取ってるだけでしかないのだ。古代ギリシア人と古代中国人より劣る民族だよ。"その文化を日本独自に"、と言うのがたまにいるけど、笑わせるなよ。最初にその文化を築いた人間が、どれだけ偉大だと思ってる。

平成時代の日本人は、紀元前の先人達より、何一つ優れてはいない。所詮、平成時代の人間とは、温故知新でしかないのだ。踪跡の俚諺だって先人達が生みだしたモノだ。

 

「平成時代の日本にさ、〝財閥〟を名乗ってる企業があったら、どう思う」

連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、一体なにをしていたのか...気になるわね」

 

平成時代の人間で、よく『最近の世の中は……』と言うモノもいるが、その言葉も古代エジプトの『イプエルの訓戒』にある。若者批判ではなく、世の中批判である。

次に、紀元前356年から紀元前323年の古代ギリシアにいた、Ἀλέξανδρος Γ'(アレクサンドロス3世)は、東方遠征して、ギリシア文明とオリエント文明を融合させた、東西融合――ヘレニズム文化というモノを齎したのは有名だが、その当時の人間は、 独自の文化が崩れ去るコトを嘆き、瞬く間に変化していく世の中について、『世界は老いた……』と評していたのも有名だ。

この話をした意味は、所謂〝原理主義〟または〝古参〟というモノが、紀元前からいたというコトである。つまり人間は、 紀元前からなにも変わってないんだよ。

しかしながら、紀元前と平成時代の人間では、祖国や自国の文化に対する価値観が、同じではなく、全く異なるように、大きく隔てられているコトも、念頭に置かねばならない。ソレは自明の理だろうけど。

 

「そもそも、お人形遊びに使う設定(人形)ってのは、自分が作った人形(設定)ではない。所詮は借り物なのだ。ならば、その借り物の人形(設定)を大事に扱い、設定(人形)に尊重と敬意の念を抱くのは、至極当然の話だろ」

 

そう、どんなにキレイに言い繕おうと、どんなにキレイな言葉でお茶を濁そうと、どんなにその話が面白かろうと、日本神話の神々、あるいは"神"という存在を出した時点で、結局は先人達が生みだしたモノの借り物でしかない。科学や医学だろうとも、歴史や地図や古人類学だろうと、妖怪や日本神話の穢れだろうと、神やGODだろうと聖書の悪魔や天使だろうと、魔法や錬金術だろうと、魔女や妖精だろうと、現人神や霊だろうと、仙人や道教だろうと、価値観や倫理と論理だろうと、怪物や英雄だろうと、半神や人間だろうと、吸血鬼や人魚だろうと、鬼や天狗や河童だろうとも。後世の人間が、その設定を使った時点で、もう同じコトさ。先人たちが築き上げたモノの派性であり、真似事であり、水増しであり、後追いであり、ソレらの二次創作でしかない。平成時代の人間が生みだしたモノの殆どは、何一つ、オリジナルのモノでは、ないのだ。

自分が生み出した設定、などと言うヤツは、無知と、自尊心と、自惚れの塊さ。よって、諒恕する余地なんてあるワケない。

 

「こんな話、当たり前の事なのに、いちいち言わねばならんほどとは嘆かわしい。そんなヤツら、教えを守るユダヤ教徒(キリスト教徒)やイスラム教徒をバカにする資格はなく、クソ民族と言わざるを得ない」

 

よく、ギリシャ神話のパンテオン(神々)は死なない、というモノがいるけど、実際は死ぬ神が結構いる。ギリシャ神話のΑλκυονεύς(アルキュオネウス)とか、Σάτυρος,(サテュロス)とか、他にも結構いるよ。あんまり知られてないだけでな。他には、パウサニアスの『ギリシア記』に出てくる海神・Τρίτων(トリトーン)は、酒を飲んで酔っ払い、眠った時に、斧でトリトーンが殺された話もある。

ソレは巨人・半人半獣だろとか言われそうだけど、死ぬモノはいるんだよ。

 

「……いや、違うな。それ以前に、〝面白ければいい〟という考えのニンゲンは、総じてクソだ」

 

結局のところ、先人が生み出したモノからの後追い、真似事、水増しだ。言わば、先人達から設定を借りて、お人形遊びをしているにすぎない。所詮、平成時代にいる人間とは、先人達からソレ(設定)を借りて、おままごとをしているモノでしかないのだ。平成時代の人間達は、先人達のような設定を生み出さず、ただ借りてる立場でしかない、というコトを自覚した方がいい。

先人達が積み重ねた1000年以上のモノを、全て自分が考えた、みたいにほざくヤツは、非難されない方がおかしいのだよ。面白ければいいって思想、キライだ。

 

言っておくがな、自分が築き上げた設定・モノではないのに、"面白ければいい"なんて、ふざけたコトはぬかすなよ。ソレを言っていいのは、語り継いできた先人達だけだ。

大体、表現・言論の自由。ってのはあるがな、その意味を拡大解釈し、履き違えるのは、本当に、目も当てられない。自由だからって、どんなコトをしても許されるワケねえし、好き勝手していい理由にはなんねえよな。

 

「トゲがあるわね」

「郷原は徳の賊なり。とりあえずソイツらは、ナポリを見てから死ぬべきだな」

 

原始仏典の一つ、経典・ダンマパダ――『法句経』において、古代インドの哲学者・釈迦は言った。

『もしも、"彼は、私を面罵し、殺そうとし、打ち勝った。私からものを強奪した。"という想念をもつ人がいたならば、その人は決して怨みという苦しみが止むことはない。真にこの世において怨みに報いるために怨みをもってこれをしたならばすなわち怨みのやむことはない。怨みを捨ててこそ怨みはやむ。これはすなわち永遠の真理である。』

釈迦の言う通り、感情に左右されるなんて、ダメなのは判ってる。それでも、ダレにだって、譲れないモノが、コレだけは、という妥協できない部分だってあるんだ。オレの場合は、ソレが神話だっただけでな。

極端な言い方をすれば、知り合いでもなんでもない、会ったコトがない人間から、いきなりにも、"死んでくれ"と言われたら、ダレだって拒否するだろう。でも、死にたがってるモノにソレを言うなら、この話は無意味だが。

眼光紙背に徹しろ。とは微塵も思ってないし、唯々諾々もどうかとは思う。

 

「古代中国の儒家の始祖・孔子は、『子絶四、毋意、毋必、毋固、毋我』と言われてるが」

 

儒教は、一部問題があるとはいえ、教えの殆どは、まっとうなモノばかりだ。

そして、古代ギリシアの哲学者・Πρωταγόρας(プロタゴラス)曰く。

『人間は万物の尺度である。』

確かにその通りだ。紀元前の人間は偉大だよ。その言葉を否定する気は、微塵もない。でもさ…

明治時代では既に完成されている各国の神話を放縦して、日本神話・ギリシャ神話・中国神話に、余計な設定やモノで糅然をするのだけは、理解できない。納得できない。出来るワケがないだろ。

ソレは、明治時代で完成してるのに、余計なモノと設定を添加して、改竄や歪曲するな! 

子供と思われても、闊達しろと言われても、コレだけはムリなんだよ。旧約聖書・ギリシャ神話・日本神話を全部読んでいようと、ソレは先人達や、神話に出てくる神々への冒涜としか取れない。

既に完成されている神話に、余計なモノと設定を付け加えて妄想を垂れ流してんじゃねえよッ!

 

「例えば、日本神話(日本列島)主人公(支配者)は、どう観ても天皇・皇室(天津神)だ。天皇の存在が前提として揺るぎない」

 

もちろん、天孫族(天皇)が九州地方から東北地方までの支配者、と言っても、これは琉球王国(沖縄)蝦夷地(北海道)を除いた話だ。ただし、琉球國の場合は、天皇の血を引く源氏の源為朝がいるので、厳密に言えば、蝦夷地だけを除く、と言った方が正確だろう。

古代エジプトのファラオも、神の子孫として国を統治していたのは有名だ。天皇みたいな現人神として君臨してな。とはいえ、天皇の場合、権力を実際に掌握していたのは、300年もないよ。

 

「だが、その主人公が出ない場合、果たしてソレを日本神話だと言えるのか。もはや別モノだろ」

「……あのね弘。私、晦渋もアレだけど、安易に敷衍するのもどうかと思うの」

「禅問答。庭先にある柏の木の話をすると、殆どの人間には理解できないから仕方ない」

 

大体さ、日本神話の神々は、Rex regnat et non gubernat(君臨せずとも統治せず)、とかほざくヤツたまにいるけども、なーに妄言をぬかしてんだって話だよ。日本は昔から神権政治だろ。

神武天皇は、神であり、半神に近い存在なのを忘れてるヤツが多いよ。それに、平氏と源氏が一体ダレの血を引いているか、"知らない"とは言わせんぞ。

そもそも、日本の歴史上、藤原氏、平氏、源氏を称した人間が、過去にどれだけいるのか知っててほざいてるんだろうな。なめるなよ。コレはな、一人、十人、百人の域っていう話じゃねえんだ。ソレ以外でも、皇室(天皇)の子孫を称した氏族は沢山いるし、鮮少とはいえ、国津神の子孫を称した氏族がいるコトも、自覚した方がいいぞ。

藤原氏(天津神・アマノコヤネ)出雲氏(天津神・アメノホヒ)物部氏(天津神・ニギハヤヒ)も、日本の正史通りに進んでいる前提ならば、天津神の血を引く、現人神の神裔みたいなモノじゃねえか。『日本書紀』には出てこないタケミナカタだって、天津神・スサノオの血を引く、大国主の子孫なワケだし、諏訪氏も天津神の血を引いている。ただし、日本神話に出てくるタケミナカタと、長野県で語り継がれてきたタケミナカタの伝承は、同じではないというコトも、あらかじめ顧慮しなくてはいけない。

フハハハハ。ちゃんちゃらおかしいよ。無知は罪ではないが、不知不識は怖い。

 

「......七生報國・尊皇討奸。まるで三島事件の、三島由紀夫が彷彿するわ」

「日本神話が実際に起き、不老の天皇は神なのだ。二・二六事件が起きるのも道理にかなうさ」

「二・二六事件は、日蓮宗で累が及ぶから、色々と面倒ね」

 

永琳は呆れた口ぶりで話すが、言いたいコトについては、オレも同じ見解だ。でもコレは、大事なコトだ。おざなりに、蔑ろにしてはいけない。1000年以上も語り継がれてきたモノなら、尚更だ。例えソレが、視界に映らない存在でも、軽佻浮薄に扱っていいモノではない。

たまに勘違いしてる奴がいるけどさ、仏教においての考えだと、ある人間が死んで、輪廻転生をした場合、次に生まれ変わったとしても、人間になれるのは、望み薄と言っていい。仮に生まれ変わるコトが出来たとしても、次の生は虫とかだろう。

無知は罪ではない。だが、齧った程度で、知ったか振りするのはやめろ。ソレは、ダレカが気安く使っていいモノでは、都合がいい存在では、便利なオモチャではないのだから。

 

「しかしな。神話には宇宙と月と太陽を創った神が記されている。で、地球、あとこの日本とか、異国の大地、それから各国の民族などに動物とか、基本的にその民族の神様が創ったりと様々だ」

 

「でも、それは神話の話。そしてココは日本であり、天皇はプミポン国王とは違うのよ」

 

ギリシャ神話は古代ギリシア人が前提としている。故に、古代ギリシア人が出ないギリシャ神話など、もはやギリシャ神話ではない。旧約聖書はイスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人を前提としている。故に、イスラエル人が出ない旧約聖書など、旧約聖書ではないのだ。

『皇室典範』と『ポツダム宣言』を総覧し、1945年9月2日に大日本帝国と連合国間で交わされた『日本の降伏文章』を横目で観ながら、この先についてあぐねかいていると、向かいから、紙を捲る音だけが響いた。

 

「大抵のコトに言えるけど。どんなコトであれ、拗らせたモノの末路は、醜いわね」

「うむ。でもな、ダレカの妄想で出来たナニかが、ソレら全てを創った場合、クソッたれだ」

 

オレには、オレには無理だ。そんな恥知らずな真似、出来るワケがない。自分が全てを創ったなんて、言えるワケがない。色んな民族が語り継いできた文化の象徴である神話を、否定なんか出来るワケがない。出来るワケないだろ。オレはクズだが、そこまで腐ってないぞ。

よく勘違いされてるんだが、オレは(・・・)女好きなのであって(・・・・・・・・・)妖怪好きではないんだよ(・・・・・・・・・・・)

あの弘法大師はな、『信じて修行すれば誰でも必ず仏になることが出来る。』と言ったが、それは違う。仏になったと自分を騙して、思い込んでるだけだ。自慰行為となんら変わらないんだよ。

 

昔、『メアリー・スー』というキャラもいたが、ダレカの妄想と願望を投影したキャラってのは、"気持ち悪い"と思われて、揶揄されても、ソレは当然の話だ。

何度も言うように、日本神話・ギリシャ神話・インド神話・中国神話・旧約聖書・新約聖書はさ、既に完成されているモノだよ。なのに、ソレらの神話は、クトゥルフ神話とはなにもかもが違う、というコトを、理解してないヤツが多すぎる。なぜ、ギリシャ神話がギリシャ神話と言われるか、なぜ、日本神話が日本神話と言われているのかを、ちゃんと理解してるんだろうな。

あの天津神・国津神・八百萬神(八百万の神)が、妖怪を差別せず、妖怪と仲良くしたり、"神と妖怪は同じ"なんてほざいたら、気味が悪い。まったくもって、悍ましい。

〝ソレ〟はダレカの無知と無自覚が投影され、ダレカの願望と妄想の塊で出来た〝神〟だ。

不愉快極まりない。平然と妄想を垂れ流してるけど、本当に、吐き気がするくらい気持ち悪い。

 

「なにせソレは、各国の歴史と神話を蔑ろにしてるし、ソレは各国の歴史と神話を冒瀆してる」

「その見解は、拡大解釈・曲解じゃないの?」

 

「違う。なぜならソレをするコトは、正史とされる色んな民族の歴史・各国の神話を蔑ろにして、顕示欲(自尊心)の塊の自分勝手なダレカが、妄想(願望)を垂れ流し、ソレらを全否定してるコトと同義だからだ」

 

ソレを理解してないヤツラが、自覚してないヤツラがムダに多すぎる。

そもそも神話っていうモノは、歴史と同じだ。自分たちがどこからきて、自分たちがどうやって生まれ、自分たちが誰の血を引いて、自分たちが住むこの土地は一体ダレが創り上げたのか。それを説明するために、"神"という存在を使い、自分達、つまり民族の歴史を説明したモノが、神話だ。そういう神話の場合が多い。というか、殆どの神話がそれしかない、と言っても過言ではないよ。いや、説明と言うより、証明と言った方が適切かもしれん。

 

「仮にオレがソレをやってたら、とんだクソ野郎だ。そして、そのダレカにも言える」

「弘のコトは好きだけど、婉曲的な表現はキライよ。つまり弘は、自慰行為と颺言したいワケね」

「…せっかく詞藻で曖昧模糊にしたのに身も蓋もない。後でオナニーと言うつもりだったが」

 

コレを言い換えると、つまりこういうコトだ。

"面白ければ、ダレカの願望と妄想が投影されて出来たナニかで、2000年以上のモノを、全て否定してもいい。"

"面白ければ、先人達が築き上げたモノを、ダレカの妄想と願望が投影されたナニかで、ソレら全てを掠め取り、投影されたナニかの偉業にしてもいい。"

横紙破りだな。口幅ったい。呆れを通り越して吹き出す。自分が作った設定、存在、モノではないというのに、恥というモノがないのか。膾に叩きたいワケじゃないが、対岸の火事じゃないんだ。結局は借り物なのだから、融通無碍は、疎略はダメなんだよ。

 

「それにね、そんなコトを言い出したら、あの旧約聖書はどうするの」

「旧約聖書は2000年以上語り継がれてきたモノだ。平成時代で生まれたモノとは重みが違う」

 

ヘブライ神話は先人達が2000年以上語り継いできた神話だ。平成時代にいるダレカの妄想が投影されたナニかと一緒にされるなんて、ヘブライ神話・ユダヤ教・イスラエル人に失礼というモノ。いや、ヘブライ神話を侮辱しているコトと同義である。

例えソレが、ダレカの都合がいいように、改竄されまくったモノでもな。

新約聖書・ヨハネによる福音書 第6章30節~31節

『彼らはイエスに言った、"わたしたちが見てあなたを信じるために、どんなしるしを行って下さいますか。どんなことをして下さいますか。わたしたちの先祖(イスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人)荒野でマナを食べました(旧約聖書・出エジプト記)。それは『天よりのパンを彼らに与えて食べさせた』と書いてあるとおりです。"』

旧約聖書・出エジプト記 第16章4節

『そのとき(ヤハウェ)はモーセに言われた、"見よ、わたしはあなたがたのために、天からパン(マナ)を降らせよう。民は出て日々の分を日ごとに集めなければならない。こうして彼らがわたしの律法に従うかどうかを試みよう。"』

 

「有体に言うとだ。日本神話の神々を出すなら、天皇・皇室にも手を出せよクソ共が。って話さ。古代ギリシア人(古代イスラエル人)が出ないギリシア神話(旧約聖書)など、もはやギリシア神話(ヘブライ神話)ではないのだから」

 

"皆がやってるから自分もした、だから自分だけじゃなく他の人間にもソレを言うべき。"とかほざくヤツがいるけど、ソレは絶対に言ったらダメだ、ソレは一番言ってはいけないコトだ。

いくら面白いとは言え、なにしても許されるなんて考えはふざけてる。なんでもありと思われてるギャグマンガでも、やってはいけないコトだってちゃんとあるんだよ。

例えば、イスラーム教の開祖・預言者محمد(ムハンマド)を、ギャグマンガに登場させ、殺してみたらいいよ。そしてソレを、الشيعة(シーア派)でもوالجماعة(スンニ派)でもいいから、イスラーム信徒に見せたらいいのだ。きっと、みんな笑って許してくれるよ。

日本神話だろうが、中国神話だろうが、ギリシャ神話だろうが、ヘブライ神話だろうが、ソレらは、もう明治時代で完成しているのだ。故に、その完成されたモノを、平成時代の人間が、余計な設定を付け加えていいハズがない。

しかし永琳はソレに同意せず、興味がないと言った声色で、ぴしゃりと撥ね付ける。

 

「私はそんなコト、どうでもいいのだけど」

「お待ちを××(永琳)さん。その常套句を出すとこの話が終わるので、ココは厳に慎みをですね……」

「あの弘法大師(空海)には、空白の七年間があり、妖怪退治した話があったりと、伝説が多い僧よ」

「単に空海が神格化され、尾ひれが付いてる話が多いだけだ。芋が石に、迦陵頻伽や弘法水もな」

「四国地方・阿波国(徳島県)にあり、弘法大師が開基したとされてる、『金磯弁財天(弁才天)』。弁才天(弁財天)と言えば、琵琶(・・)琵琶と言えば(・・・・・・)九十九弁々(・・・・・)。そしてあそこ(金磯弁財天)には、蓬莱山が(・・・・)――」

 

永琳の話を聞いていたが、その先を言わせないために、懐から一冊の書物を取り出す。

コレは平安時代に編纂された古代氏族名鑑、『新撰姓氏録』だ。

中を改めてもらおうにも距離があるので、妻に渡すため、ソレをテーブルに置き、そのまま滑らせて贈りつけ、気を利かせてくれた彼女は、ソレを黙って受け取る。すると、一拍おいて紙の音が耳に入ってきた。

天津神・天皇・神裔の血は戦国時代で終わるのを妻も知ってるし、記憶と知恵の女神だから、忘れてるワケがないのは知ってるが、一応。

 

「『新撰姓氏録』。天神様と言われる菅原道真の氏は菅原氏で、天津神・アメノホヒが祖神ね」

 

「そう。ココが日本の正史通りで、歴史の史実が一致するなら、今の日本(鎌倉時代)とは、天津神と国津神の血を引く人間が殆ど、だというコトを、忘れてはならん」

 

正史通り、というコトは、血縁も、祖先も、改竄し、仮冒したダレカにとって都合がいい歴史通りに進んでいる、というコトだ。ならば、そのダレカに全て都合がいいまま、日本を動かしたらいい。そう、貴族も武家も、殆どの日本人が、全て、アレの血を引いている、歴史通りに。

実際は神裔ではない蝦夷の父と、物部氏と同じ天津神・ニギハヤヒの神裔・阿刀氏の血を引くとされている玉依御前から産まれ、ニニギの天孫降臨に随伴した天津神・アメノオシヒ神裔・大伴氏の後裔ともされた、あの"空海"もだ。

ああ。血に関してだけは、ダレカの都合が良いようにするさ。戦国時代まではな。

 

ニニギ(天孫降臨)に随伴した、天津神の子孫である天孫族達は、日本各地にいる。この話は、国津神の血を引く神裔も例外じゃない。日本は神国(・・・・・)と言われるのも、言い得て妙よ」

 

「八木氏・大神氏・阿曇氏の氏族とは、国津神の後裔だが……天津神の血を引く氏族は、多すぎて例を挙げる気が失せるほどだ」

 

「アメノヒボコ。渡来系氏族なら、波多氏、秦氏、坂上氏、東漢氏、大内氏。有名なのを挙げたら、キリがないわね」

 

古代ギリシアも、古代ローマに征服されなければ、日本と同じだったが……残念だ。

相対する永琳は、新撰姓氏録を観るのをやめて、また小説を読んでいたが、意識をこちらに向けるためか、ゆっくりと両眼を閉じると、片目の瞼を開き、ウインクしたまま、視線を滑らかな動きでオレへと向けた。

真言宗の開祖・空海――弘法大師は言った。

『迷いの世界に狂える人は、その狂っていることを知らない。真実を見抜けない生きとし生けるものは、自分が何も見えていない者であることがわからない。わたしたちは生まれ生まれ生まれ生まれて、生のはじめがわからない。死に死に死に死んで、死のおわりをしらない。』

つまり、空海の言葉を曲解するなら、戒律を守らないクソ生臭坊主を鏖殺しろというコトですね、はい。僧兵と生臭坊主達は、天津神と国津神に頼んで根絶やしにしてもらったので、残った僧は、真面目に修行して、戒律を護持する和尚しか残ってないのが現状だよ。本来は明治時代だったが、鎌倉時代で神仏分離は為終えてるので、仏教に関わるコトはないだろう。多分。

 

「でも、弘の話を聞いて、懐かしい話を思い出した」

 

オレが見たコトない小説を読んでいた永琳は、ソレをテーブルに置き、どこから取り出したのか、ヘシオドスの『神統記』と『仕事と日』。ホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』。オウィディウスの『変身物語』。パウサニアスの『ギリシア記』など、今挙げたモノ以外にも次々と出し始め、古代ギリシアの有名どころをテーブルに並べると、ソレで埋め尽くされてしまった。

多すぎて山積みになっているせいで、反対側に座っている永琳の顔が見えない。だが、その宝の山でめぼしいモノを見つけたらしく、永琳はその一つを左手で掴み、積まれていた作品を少しだけ残して、それ以外は魔方陣で片づけた。

 

「ある事件が起きて、その事件が起きた因子を調べる。でもその犯人が、実は、自分だった話」

「ギリシャ神話の神裔・Οἰδίπους(オイディプース)か」

 

犯人は当然ぼくでもなければ真理でもなく......

…思い出した。ギリシャの諺に、parturient(山が産気づいた) montes,nascetur ridiculus mus(お笑い種のネズミが一匹生まれた)ってのがあったな。戦国時代の日本にソレが伝わり、大山鳴動鼠一匹、という諺が出来たのは有名だ。

永琳はオイディプースの話をしながらも、書物を流し読みしながら、なにかを見つけようとしている。すると、その人探しは見つかったのか、捲っていた右手が止まり、そのページを注視したまま、彼女は、尋ね人の名を出した。

 

「ギリシャ神話の神裔・Λαοδάμεια(ラーオダメイア)を、弘は憶えてる?」

 

イヤな名を出されて、 霎時だが面を食らった。ギリシャ神話の神裔・Λαοδάμεια(ラーオダメイア).その名は、悲劇の女性の名だ。碌な目に遭っていない、神裔の女性。

永琳の声色を察するに、この話は、全く意味がない話ではないのだろう。そう感じ、返答するコトにした。

 

「インド神話のサティーと、北欧神話のグルヴェイグに似てるな。あとイザナミ」

「厳密にはラーオダメイアとは違うわ。サティーとグルヴェイグは女神で、双方は生き返ってる」

 

仕儀は、ギリシャ神話の神裔・Λαοδάμεια(ラーオダメイア)は、トロイア戦争で夫のプローテシラーオスが死んで、最初の戦死者になった。しかし彼女は、その夫が死んでも忘れるコトが出来ず、夫に似た像を作って交わったが、ソレを憐れんだギリシャ神話の神々は、夫を冥府から呼び戻した。彼女はそれを喜んだけど、また夫が冥府に戻されたて絶望し、後を追うように自殺した、だったかな。

 

「いつまでも忘れずに、愛した夫を思い続けて自殺し、後を追った哀れな女。本当に、哀れ……」

 

永琳は両目を瞑り、なんと言うべきか判らない、形容できない妙な表情で、胸に痞えて、溜まりに溜まった、名状し難いナニかをひり出して、空にしようと思ったのか、大きな溜息を吐きだすと、またオレを観た。

たまに永琳はこんな表情になる。いや、どんな表情でも永琳は美人だからこの表情もキライじゃなし、寧ろ好きだけども、同病相哀れむというモノかな。ラーオダメイアと自分を重ねてるのだろうか。この時ほど、井戸を覗くみたいに、永琳がなにを考えてるのかが、簡単に判ったらいいと思ったコトはない。でも、ウェルテル効果は困るぞ。

 

「弘も、そう思わない?」

××(永琳)、日本の百合若大臣とギリシアのオデュッセイアのような復讐に、駆られてないだろうな。オレが死なないコトは知ってるだろ。正確に言えば、死ねないだが」

 

「復讐なんて考えてない。だけど、言うのも詮無いかしら。うん、今の言葉で安心した」

「早良親王、小野篁、平将門、菅原道真、北畠の怨念の祟りは、ダブスタは勘弁してほしい」

 

永琳はパッと点燈したかのように、さっきまでの暗い表情に蓋をして、言葉にしなかった無数の想いを、心の片隅に追いやった。妻の心情を斟酌するに、オレが死ぬ運命には、今までなにもできなかったから、永琳の心が自責の念という名の無数の針が突き刺さり、まるで、痛くて痛くてたまらない針の筵のようで、それでいて後味の悪さが、胸中のわだかまりとして、心に残っているのだろう。溜飲が下がってるようには観えないし。

向かい合わせにいる妻は、探し物を見つけて満足したのか、テーブルに並べたギリシャ神話の書物を全て回収し、魔方陣でどこぞに転移させた。

 

「もう、愁嘆場はイヤよ。愛するヒトが傍にいないとダメになる女なの。だから一柱にしないで」

「大丈夫だよ。××(永琳)は心配性だな」

「夫が嘘つきだから戒めるのよ。私は弘がいないと片輪者だというコトを、絶対に忘れないでね」

 

〝葦黴のごとく萌えあがるものによりてなれる神の名は。〟これは、古事記だったかな。

手ぐすねを引き、橋頭堡はすでに築き終えているんだ。帰趨、鎌首をもたげるコトはない。

またオレが死んだとしても、小泉八雲の『蠅のはなし』では、死んだ人間が蝿に転生する話があるし、ソレも面白そうだよ。蝿だと人格なんてないだろうし、オレ神だから、転生できるのかは判らんけど。でも、インド神話の話では転生してる話が多いし、案外、夭折した後は転生できるかもしれない。

そういや、中国の『子不語』には、自分の前世と来世を知っていて、死んだその日に生まれ子へと転生する話があるし、確かインドの『カター・サリット・サーガラ』では、自分の前世を観る事が出来る皿があった。他に知ってるのは、平安時代の『今鏡』と『更級日記』、中国の『剪灯新話』には、自分の前世を教えられる話もある。後、古代ローマの『変身物語』に出てくる古代ギリシアの哲学者・ピュタゴラスも、輪廻転生について語ってたか。

 

オレが読んだモノとはいえ、パッと思い出せるだけでもこんなにあるよ。つまりだな、輪廻転生にも、積み重ねてきた、語り継がれてきたそれ相応の歴史があるんだ。当たり前みたいにその設定を使ってるヤツいるけどさ、その輪廻転生の歴史調べず、安易に転生設定使うヤツは、先人達に失礼と思わないのか。

憑依する設定だってそうだ。ソレも、1000年以上も前から先人達が語り継がれてきたモノだよ。当たり前みたいに使ってるヤツは、その設定全てに、長い歴史がある設定だってコトを、自覚し、理解した方がいい。

どんなモノであれ、ちゃんと一から十まで読んだり、調べるコトもしないのにその設定を使うとか、片腹痛い。そんなヤツラ、先人達に対する冒涜と取られて、陋劣されてもおかしくねえんだよ。不労所得はするな。

 

神と妖怪だってそうだ。相手が天皇みたいな神裔ならともかく、神と妖怪が平成時代の人間を愛したりするワケないだろ。気持ち悪いんだよ。

神と妖怪がどういう存在か、その伝承・古い文献・絵巻・歴史を調べず、ダレカのおままごとに、お人形遊びに使うな。

 

また呑まれかけた矢先、目の前にいる妻は、穏やかな口調で、子供を宥めさせるように、言った。

 

「イヤって言われても。ずっと、弘の傍にいるからね。こう見えて私、しつこい女なの」

「……ああ。今までも尽くしてくれたのは知ってる。コレでも、感謝してるんだ」

 

面と向かって言ってくれるのは嬉しいが、存外、照れる。世界がまだ初期頃だった時から言われ続けているが、聞き飽きたコトはないし、寧ろ、心地いい。

張りつめていた空気は次第に萎んでいき、知恵と記憶の女神は気持ちを切り替えるため、書物を閉じ、しばしの別れを惜しむ恋人のように、もどかしい気持ちを抑えながらも、部屋を出ようと椅子から立ちあがった。

 

"蓬莱の薬を飲んで欲しい"と、永琳は言わなかった。催促する気はないらしい。世界が初期頃から今までで、面倒なコトを頼み、色んな苦労させてしまったのに、ただオレが、自分から飲もうとするのを待つなんて、いい女だ。あの時、娶ろうとして、本当によかった。

まるで、そう、仏教の開祖・釈迦は、何年も肉体に苦痛を与える苦行をして、もう骨と皮しかないくらい痩せこけたが、スジャータという女性が、乳糜を供養してくれて、釈迦は命を救われ、悟りの境地に到達した話がある。今のオレは、まさにそんな心境だ。

 

「なんだか、似合わないコトをしたかも。諏訪子、白蓮、幽々子、早苗の寝顔でも観て来るわ」

「……多いな」

「そうそう。鈴蘭畑に行くなら、折角だしメディスンから毒を貰って来てね」

「言うコトに従ってくれたらな」

「あの子は素直じゃないけど、弘になら、文句を言いながら渡すのよ」

 

彼女は風を背中に受けて押し流されるというか、目に見えない糸に引かれている様に歩いて行き、気に掛けるような視線を流眄でこちらに向けたが、あとは振り向きもせず、裳裾を揺らしながら、娘たちの寝顔を観て癒されるため、入り口の自動ドアから廊下に出た。なぜか鈴蘭畑へ行くコトがバレてたけど、流石である。

ああいう時の永琳とは極力、オレが一緒にいようとするべきじゃない。甘えたい時は向こうから来る。無理にソレをすると、ひっつき虫みたいに、一日中くっ付いて傍にいようとするんだ。オレが押したワケでもないのに、一度スイッチが入ると、四六時中そんな感じになるから、適度に愛でなくてはいけない。オレが長年かけて築き上げた説明書にも、取り扱い注意と書かれている。諏訪子が生まれたお蔭で、昔と比べるとソレも減った気はするが。

 

「倉庫を覗いてから、鈴蘭畑へ行くか」

 

この部屋の入り口以外には、もう一つだけ扉がある。オレも重い腰を上げ、この部屋の隅に造られたアレは、部屋というより、倉庫というべきかもしれない。ソコへ赴くと、冷気を逃がさないための厳重な扉に右手を当て、こっちとあっちを完全に隔離する、まるで、閉鎖病棟のような扉に設置された、申し訳ない程度にある円形の窓ガラスを覗き込むと、観ただけで悴み、しもやけになりそうなくらいの冷気が漂う場所。有体に言えば冷凍倉庫だ。倉庫と言っても食材などを入れてる訳じゃない。ただ妻の一人が、ココで寝てるだけである。

 

「レティは……いた。まだ寝てるのか」

 

敷布団を敷いて、その上で長襦袢のまま、抱き枕に抱き着きながら寝ていた。いや雪女なのは判ってるけど、寒くないのか。

なんのためにこんなモノを造ってあるのか。ソレは、単純に雪女のレティの部屋だからだ。基本的にここでレティは寝てる。今は秋だから、この冷凍倉庫から出てくるコトはないが、もうすぐ冬の季節を迎える。そろそろ、起きるハズだ。こうして覗き見が出来るから、プライベートが全くない部屋だけど、レティは特に気にしてない。

 

このまま観てたら風邪を引きそうだ。ここは撤退し、再起を図ろうとしたら、なにかが開く音が聞こえる。ダレカが来たのかと思い、入り口の自動ドアへ目線を向けると、ポニーテールを舞わせながら、依姫がブリーフィングルームに入ってきた。月の民と鎌倉幕府について頼んでいたが、どうやら、無事に終えて、諏訪国へ帰って来たようだ。

 

「弘さん。鎌倉幕府は恙無く潰してきました」

「悪い、助かったよ。なら養生して、産んだ子を育てるコトに専念してくれ」

「判りました」

 

藍に預けていたハズの産んだ赤子を、依姫が両手で抱いているが、永琳と入れ替わりに来た妻は、入り口付近で立ち止まり報告する。月の都と月の民の事後処理、そして鎌倉幕府を潰すコトを任されていた豊姫と依姫の仕事は、コレでなくなった。後は、豊姫と依姫がしたいコトをしてもらう。コレと言って、仕事はないのだ。

ココにいるのは、オレ、依姫、あとは産まれた赤ん坊だけだが、そういえば、鎌倉幕府へ一緒に行った豊姫が見当たらない。

 

「ところで、豊姫はどうした」

「お姉様なら私に報告を押し付けて、諏訪国を観て回ると言ってましたよ」

「観て回るって……豊姫だから仕方ないな。依姫はいいのか」

「私は俗世に興味はありません。一先ずは、この子を育てます」

「そうか。なら当分は、諏訪国で好きに過ごせばいい」

 

文に頼んで一っ飛びしてもらい、源氏の足利高氏へと、既に勅諭として命を下している。室町幕府が創立されるのも時間の問題だろう。

鎌倉時代には、大地震が何度も起きて津波が発生した記録がある。そこで、海神の豊姫と依姫二柱に持たせておいた、日本神話の潮盈珠と潮乾珠を使って海を操ってもらい、鎌倉幕府を襲うような津波を意図的に起こさせ、ある程度死んでもらった。とはいえ、一部を除くとだが、津波で殺した人間は、ミトコンドリア・イヴとY染色体アダムばかりだ。

ただ、比企氏が津波で族滅したけど、比企氏が滅ぶのは歴史通りだから問題ない。神裔の梶原氏、城氏、和田氏、三浦氏とかは津波でちょろっと死んだ。でも、少ないとはいえ生き残りがいるから、ソレらの血筋と家は断絶はしていない。例の北条氏はある程度、存命している。源義仲もだ。

やっと、やっと室町時代。だが、嬉しいという感情は皆無。ソコは重要ではない。室町時代だろうが戦国時代だろうが、ソレは時間が進んでいるという証の、時計代わりに使っているにすぎないからだ。

もう少しで、この日本に、あのミトコンドリア・イヴと、Y染色体アダムの、クソッたれな人種ばかりが、鬱陶しいくらいに増える。が、殺すにしても、少なくとも平成時代までは、我慢しなくてはいけない。

 

もう遅いし、依姫にはどこで寝泊りして貰おうか。いや、別に神社で寝泊りしてくれてもいいんだが、一応聞いておこう。寝泊りするにしても、寺子屋だってあるし。

 

「住むとしたら、神社か寺子屋、どっちがいい」

「神社でお願いします」

 

依姫は最初から決めていたようで、迷うことなく返す。ただ、赤ん坊を抱いて気が抜けていたのか、それとも真夜中に帰って来たのも重なってか、少し眠たそうだ。

…神社の方がいいのか。咲夜の能力のお蔭で、神社の空間を拡張しているから、空き部屋も多い。料理は全部、巫女の藍が作るし、洗濯と家事も、藍が進んで請け負っているので、住むにしても、大した不便はない。とはいえ、寺子屋、と言っても、あそこもかなりの空き部屋がある上に、ムダに広いので、ソッチの方が快適だと思う。

というのが建前で、本音は、神社にいるオレの妻が、殆どは妖怪だから、月の民の依姫は、ソレに耐えきれるのか心配ゆえ、寺子屋の方がいいんじゃないかな、と余計な心配を勝手にしているだけだ。

記憶と感情が回帰してるのは、判ってるんだ。だが依姫も、オレと永琳ほどではないにしろ、妖怪について印象操作されたり、倫理・価値観を植え付けられている。豊姫にはソコまで浸透してないが、依姫の場合は根深い、と言っても過言ではない。

そんな心配を見透した妻は、今も抱っこし、熟睡している赤ん坊を愛おしそうに、慈しみながら観て、諭すように、オレの不安を払拭するように言ってくれた。

 

「弘さんの傍に置いて下さい。私は、あの時にそう言いましたよ。検討するまでもありません」

「……判った。一旦、地下から出ようか」

 

さっきの永琳の時もそうだったが、あっさりと、思ってるコトが妻に看破された。もしかしたら、思ってるコトが顔に出やすいのかもしれない。

依姫も眠たそうだし、なにより、赤ん坊をいつまでもココにいさせるのは忍びない。ソレに、神社に行って床に就くにしても、蔵の地下から出なきゃいけないので、依姫を連れてこの部屋から出た。

 

部屋から出ると、隧道のような廊下の両脇には、一定の間隔をおいて、無数の扉がずらーっとあり、枚挙に遑がない。その1つ1つを開けた先には、河童たちが集まり、それぞれ違うモノを作ってる、と聞いた。オレは河童のにとりと盟約を交わしたが、実際のところ河童達は、永琳と神奈子が従えてるようなモノだ。鬼と天狗はオレだが。

地下から出る為、廊下の中央を歩き続けているが、まるで、敷き詰められているような扉が否応にも視界に入るので、かなり気になるけど、ひややかな廊下を抜けて、やっと地上に出る為の手段、リノリウムの階段へと到着。

依姫は赤ん坊を抱いているので、倒れてしまった場合オレが受け止める準備をして、先に上ってもらおうとしたら、階段を上るだけで大げさだと言われ、一笑された。

ひんやりとした手すりを握って、そのまま無事に登って行くのを確認しつつ、後に続き、階段を上り終えると蔵の中へ出る。蔵と言っても大したモノは無く、定期的に藍が掃除をしてくれてるので、塵埃は全くない。

が、ここにいても仕方ないので、外へ出ると、辺りは真っ暗で、冷えた空気を吸い込み、肺へと送られる。不気味なくらい物音が聞こえないし、夜深人静が引き立つ。

 

「神社の案内は…必要ないか。空いてる部屋はいくらでもあるし、そこで寝てくれ」

「はい。おやすみなさい、弘さん。鈴蘭畑に行くのも、程々にしてくださいね」

 

子供を窘めるような言い方をして、赤ん坊を抱っこしたまま、依姫は神社へと向かった。しかし、鈴蘭畑に行くコトさえも見抜かれていたが、オレってそんなに判りやすいのだろうか。

本当ならば、オレが神社へと案内したり、どこの部屋が空いているかをするべきなんだろうけど、依姫は回帰してるから、全部憶えてる。そう、世界がまだ初期頃だった、あの時の記憶も。

同じ……いや、同じではない。オレも、永琳も、神綺も、サリエルも、豊姫も、依姫も、輝夜も、魅魔も、エリスも、幻月も、夢月も、エリーも、ユウゲンマガンも、あの時、××神話を捨てたのだ。シンギョク・コンガラ・キクリ・サグメはともかく、咲夜でさえ……

 

「…紀元前の古代ギリシア人(古代マケドニア人)と平成時代のギリシア人、紀元前の古代中国人と平成時代の中国人、紀元前の古代日本人と平成時代の日本人が、血を含めて、同じ民族なワケ、ないのだから」

 

古代ギリシア・古代中国の地に、中世、平成時代までで、どれだけ後からきた別の民族がいると思ってるんだ。平成時代にいる民族は、もう紀元前の時とは別モノで、同じ民族では、ないんだよ。

だから天神地祇たちは、天孫族の天皇(皇室)・出雲氏・平氏・源氏・土師氏・尾張氏・物部氏・藤原氏・諏訪氏・稗田氏・藤原氏・小野氏のような神裔を不老にし、寿命で死ぬコトがないよう、加味したのだから。

 

 

群青な夜空を見上げると、空を覆いつくほどの星が、日本列島を俯瞰しながらも、満遍なく輝いていた。

星、星か。確か星と言えば、インド神話では北極星の神となった ドゥルヴァ は、元々人間だったが、ヴィシュヌ神の手により、人間から神に、北極星になったんだっけか。ドゥルヴァは、天皇みたいに、ただの人間じゃないがな。

……あ、インド神話で思い出した。以前、鬼女の紅葉が持っていたお琴を(・・・・・・・・・・・)貰った(・・・)のはいいけど、あの九十九八橋は、まだ、お琴の九十九神(付喪神)へと成っていない。九十九八橋を九十九神(付喪神)にするには、琵琶が、琵琶の付喪神・九十九弁々が必要不可欠なのだ。だから、インド神話のसरस्वती(サラスヴァティー)である弁才天に琵琶を貰っておくコトを、忘れないようしなくてはいけない。

 

でも、面倒だな。神使のダレカに行かせようか。現在、オレの神使として諏訪国にいるのは、

狐の藍、兎のてゐ、河童のにとり、天狗の文・椛・はたて、鼠のナズーリン、人魚のわかさぎ姫、虎の寅丸星、二ホンオオカミの影狼、狸の二ッ岩マミゾウだ。

お燐は輝夜のところにいて、藍・はたて・椛は出産を終えたばかりなので、頼むコトは出来ない。てゐとにとりは永琳と神奈子に色々頼まれて忙しそうだし、わかさぎ姫は、永琳から人間になる薬を貰っているが、神子との取り決めにより、諏訪湖から動くコト、動かせるコトも基本的に出来ない。文には他にしてもらうコトがあるし、お空は神綺のペットだからなあ。

消去法でいくと、すぐに動けるのは、ナズーリン、星、マミゾウ、影狼だろうか。しかしながら、弁才天に礼節を欠き、心証を悪くさせると、後が面倒だから、マミゾウが……いいかもしれんな。星とナズーリンもいいが、あの化け狸は記憶を回帰し、松傘より年嵩で、礼儀と作法は心得てる上に、アイツも、一応は神様だから。

 

「しかし……あなや。てかデケー」

 

さっきから星を眺めているが、背に月を置き、月明かりに照らされながらも、天空に巨大大陸が漂っていた。

前にはたてと椛に命じて、九州地方にある高千穂峰の山頂部に突き刺さしたまま放置されていた、日本神話の天逆鉾を、実娘の諏訪子へ能力と天逆鉾を使って巨大大陸を創ってくれと頼んでいたが、ユーラシア大陸規模の大地を創ってもらい、遂に完成しました。アレもいつか使う日が来る。いや、あそこに一度皆殺しにした月の民を住ませようかなという考えは、無きにしも非ずだけど、それだけの理由で、諏訪子にアレを創ってもらったワケじゃない。

よーく目を凝らしてみると、天守閣が視界に入り、次に『輝針城』もアソコに建てられているのが観える。あの城、天空大陸の裏に建てられてるので、逆さになっているが。

ソレを見詰めつつ、能面として側頭部に張り付いているこころへと話しかけた。

 

「こころは、室町時代にいた世阿弥が作者の、能の演目の1つ『融』って知ってるか」

「月は死者の世界、とかいう能だっけ?」

「そう。霊を題材にしたモノで、月の都が出てくる。そして月とは死者の国、という能だ」

「だから月の民を殺したの?」

「中らずと雖も遠からず」

 

だから××神話の月の民を全てを殺した、ワケではないんだけど。月の民全てを、あの天空大陸に移住して貰うためには、皆殺しが必要なコトではあったから。

オレは二回死んで、魅魔も一回死んでる。今は普通に生きてるとはいえ、生き返ったワケじゃないんだが。

道行く人よ。余はペルシア帝国の建設者キュロスなり。願わくば、わが死体をおおうこの一片の土をわれに与うるを惜しむなかれ。

 

「世阿弥と言えば、鎌倉時代末期から南北朝時代の武将に、佐々木道誉ってのがいてな」

「知ってる。佐々木氏は源氏だから、神裔だね」

「うむ。オレ、アイツだけはかなり気に入ってるんだ」

 

足利高氏(尊氏)も田楽が好きだったっけか。足利義満も田楽を気に入り、よく世阿弥と観阿弥の観世一座を召してたな。肝心の足利高氏は、室町時代を創らせている最中だから、もう少し後の話。

そして足利義満と言えば、陰陽師を重用したので有名だ。古代日本には陰陽師というのが普通にいたワケだが。歴史上、才能豊かな陰陽師はいた。

確かにいたよ。いたが……忘れてもらっては困る。その陰陽師たちの殆どは、一体ダレの血を引いているのかを。

例えば、飛鳥時代・奈良時代・平安時代・鎌倉時代・室町時代・戦国時代の貴族・武家・公家とは、そもそもの始まりがダレの血縁で、ダレが祖先で、ダレの家系かを、"知らない"とは言わせんぞ。足利氏も、血の元を辿れば、アソコに行き着くんだ。

平氏の平将門も、源氏の源義仲も、織田氏も、那須氏も、島津氏も、突き詰めてしまえば、みんな同じなのだ。ウソかホントかは、どうでもいいんだよ。だからオレも、今は大人しくしてるんじゃないか。だからオレは、女のコトだけを考えて、今は忘れようとしてるんじゃねえか。

ミトコンドリア・イヴと、Y染色体アダムが、普通に生きている、こんなクソみてえな時でもな。

そして、あの阿倍氏の安倍晴明(・・・・)も、土御門家も、天皇の血を引いている(・・・・・・・・・・)コトを忘れちゃいけない。系図を観たら判るが、第8代天皇・孝元天皇の第1皇子・大彦の血を引いている、皇別氏族だというコトをな。

 

「月かぁ...鎌倉時代の『十訓抄』には、月の宮を訪れる話もあったね。あと竹取物語」

「……竹取物語はともかく、なぜ十訓抄を知ってるんだ。永琳の入れ知恵か」

 

月は昇る百尺の楼、じゃなくて月に依りて百尺の楼に上るか。

しかし、あの大きさだと目立つし、何より今も月の光の進行を遮っているので、本来なら諏訪国も影に覆われているハズだが、あの天空大陸を光学迷彩で、一部のモノ以外に観えないよう隠してる。オレもうっすらと観えるくらいだ。今は鎌倉時代だから、アレはあまり重要じゃない。今は。

ただ、戦国時代で神裔は打ち止めにするから、その神裔たちをアレに住んでもらおう、と思って、実娘の諏訪子に創らせたんだ。最初は、地上にいたままの方がいいんじゃないかなと思ったけど、やっぱりやめた。神裔と、ただの人間を判りやすくするためには、区域はあった方がいい。

 

空、星、天空大陸を眺めるのに飽きたのか、こころは扇動を促したので、ココは従うコトにした。

 

「弘天さん弘天さん。鈴蘭畑へ行こう」

「そうしようそうしよう」

 

神社から鳥居まで咲いている桜の西行妖とは違い、蔵の近くには、ウメが咲いているが、このウメもなぜか一年中咲いている。原因は不明。ウメも綺麗だし、いつでも花見が出来ていいんだけど。ココか西行妖で、勇儀、萃香、華扇、紅葉、パルスィ、ヤマメたち鬼女が、よく酒盛りしてるから。

鎮守の森を一瞥しつつ、鈴蘭畑へと向かうために、鳥居まで行こうと歩いていたら、参道の脇にでかでかと咲いている桜、西行妖が枝を伸ばし、オレの右手に絡ませてきた。ぐいぐい引っ張ってもビクともしない。幽香の妖力と能力で育った桜だからだと思うが、枝のクセにかなり頑丈だ。恐らく、この枝を刃物で斬りつけても、無意味だろう。

 

「なんだ、遊んで欲しいのか。いつも幽々子と遊んでるクセに、仕方ないヤツだな」

「仕方ないヤツだなー」

 

オレの言に、こころは真似しながらも、能面から人型に成ったが、不満を口にはしなかった。

西行妖は、肯定的な発言を聞いたせいか、次から次へと枝を伸ばし始めて、右手を雁字搦めにし、樹木へ来させようとしてるけど、殺そうとか、苦しめようとする敵意は感じない。まだ時間の余裕はあるので、西行妖の元へと歩き出し、近づくにつれて右手に絡まっていた枝を緩め、解放されていくが、樹下へ到着すると、もう右手の軛はなくなった。多分、コイツは、ダレカが傍にいて欲しかっただけかもしれん。

 

「ソコには、なにもないよ」

「判ってる。幽々子は生きてるし、この西行妖の根元に、ダレカの死体はない」

「死体と言えば…ギリシャ神話の神裔・Ἰνώ(イーノー)は、死んだ後、ΖΕΥΣ,(ゼウス)さんの手で神へとなった女性」

「……本当に、よく知っている」

 

実を言うと、あのヤハウェの手で死者を蘇らせた話は、結構ある。その例を挙げたら、キリがないくらいに。

旧約聖書・列王紀上 第17章21節~22節

『そして三度その子供の上に身を伸ばし、(ヤハウェ)に呼ばわって言った、"わが神、主よ、この子供の魂をもとに帰らせてください。"主はエリヤの声を聞きいれられたので、その子供の魂はもとに帰って、彼は生きかえった。』

旧約聖書・詩篇 第30篇3節

『主よ、あなたはわたしの魂を陰府からひきあげ、墓に下る者のうちから、わたしを生き返らせてくださいました。』

 

死者か。新約聖書には、死んだ者が生き返る話が結構あったな。イエス・キリストも、御使(天使)によると、蘇ってるらしいが。

現人神の早苗と、神の子とされるイエス・キリストは、似てるよ。双方とも、神であり、神の血を引いて、しかも奇跡起こしてる。正直、酷似しすぎだ。

新約聖書・ヨハネによる福音書 第6章12節

『人々がじゅうぶんに食べたのち、イエスは弟子たちに言われた、"少しでもむだにならないように、パンくずのあまりを集めなさい。"そこで彼らが集めると、五つの大麦のパンを食べて残ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。』

新約聖書・マルコによる福音書 第1章40節~42節

『ひとりのらい病人が、イエスのところに願いにきて、ひざまずいて言った、"みこころでしたら、きよめていただけるのですが。"イエスは深くあわれみ、手を伸ばして彼にさわり、"そうしてあげよう、きよくなれ"と言われた。すると、らい病が直ちに去って、その人はきよくなった。』

新約聖書・マタイによる福音書 第14章25節~27節

『イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。弟子たちは、イエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと言っておじ惑い、恐怖のあまり叫び声をあげた。しかし、イエスはすぐに彼らに声をかけて、"しっかりするのだ、わたしである。恐れることはない"と言われた。』

 

「神裔の女性・Σεμέλη(セメレー)も、死後は女神になってたよね」

「ソレは、ΖΕΥΣ,(ゼウス)Σεμέλη(セメレー)の息子ΔΙΟΝΥΣΟΣ(ディオニューソス)のお蔭だな」

 

こころに指摘されながらも、西行妖の根元に右手を当てて、かつての、記憶を無くしたあのコの、靄にかかるほど昔の記憶だが、朧げながらも想起される。ココは、冥界にある白玉楼ではなくて、諏訪国だが。

幽々子は、白蓮、命蓮、早苗、藤原妹紅、豊聡耳神子、物部布都、蘇我屠自古、稗田と同じ神裔。

そして、ギリシャ神話の神裔・半神Ἰνώ(イーノー)Σεμέλη(セメレー)は、死後、神になった話がある女性だ。

 

「勇儀さんから、真夜中の花見もいいモノだって聞いたけど、未だにピンとこないや」

「こころも、記憶と感情は戻ってるハズだが」

「んー。景色を楽しむっていうモノに理解できない感じ、だと思う」

 

面霊気は、人型のまま西行妖を見上げながら、首を傾げていた。言いたいコトは判るし、共感できる部分もあるが、こころの場合は、単純に、そういう琴線に触れるコトに関してだけ、鈍感なだけではないだろうか。

 

「マルコ・ポーロの『東方見聞録』と、西洋人か……天子を迎えに行った方がいいのかもしれん」

 

風が吹く中で、桜が散っていく風情を眺めながら思うが、この桜のコトを、幽々子は憶えてないのに、西行妖の傍にいようとする。多分、無意識だろう。やはり、白蓮と同じく、幽々子にも、かつての、四季映姫から、冥界に住む幽霊たちの管理を任されていた時のナニかが、残ってるのかもしれない。

腰を下ろして、能面になったこころを側頭部に付け直し、樹下に背中を預けていたら、大きな声で呼ばれ、心臓が飛び出るくらい驚き、頭を樹木にぶつけてしまった。

 

「お前さん!」

「うわッ!? ってなんだ小町か。急に出てくるとビックリするから、やめてくれると助かる」

「それどころじゃないよ!」

 

よほど急いでいたのか、息を切らしつつも鬼気迫る勢いで小町が詰め寄ってきた。諏訪国にいるというコトは、小町の能力を使い、小野篁と一緒に移住を終えたのだろうが、そんなコトを説明する暇もない様子の小町は、諏訪国に移住したせいで、かつての上司と出会ってしまった理由を尋ねる。そう言えば、小町に伝えるの、忘れてた。

 

「どうしてあの映姫様がいるのさ!? 予定では戦国時代か昭和時代のハズだったよね!」

「どこぞの女神と仙霊のせいで予定が変わったんだ。…××神話だってもう少し後だったのに」

「……女神と仙霊って、符牒かなにかかい?」

 

小町は月の都とか、へカーティアや純狐について全く知らない。だからなんのコトかを把握できなかった彼女は、今の話を追求しようとした瞬間、ダレカが謦欬をした。オレと小町は、面と向かって話をしているし、オレ達ではない。

一体ダレなのか。ソレを察知した元死神の小町は、蒼惶しながらも、自分の能力で逃げようとしたが、諏訪国に移住した以上は無駄と悟り、彼女は体を丸め、オレの隣に隠れてやり過ごそうとした。でも、肝心の体が隠れてない。だから謦欬した娘には、バレバレだった。

 

「私の父なら、実娘の頼みを、無下にはしませんよね。早くソレを渡してください」

「この前、小町と契りを結んで娶ったし、オレのだと思うんだが」

「父上のモノ()である前に、ソレは私の部下です」

「元じゃないのか……」

 

鳥居の下で、ショートカットだが、右側だけが長い緑色の髪を、風にはためかせつつ、両手に持った笏で口を隠し、閻魔として地獄の仕事に戻りたそうな表情で、映姫は怠け者の部下をとっとと連れ戻そうと言を発した。オレの隣に隠れている小町は、ソレを聞いた途端、更に両手へと力を入れて抱き着き、働きたくないという抵抗の意思を見せる。だがその時、西行妖の元へ来ようと歩いている映姫の眉が、ピクリと動いた、ように見えた。

 

「私達は生前の罪を裁く者。罪を裁く者は、常に公明正大に身を正していなければいけない」

「すみません……っていきなりソレ扱いですか!? 感動の対面なのにヒドイですよ映姫様!」

「どれだけ回帰しているのかを忘れましたか。もう貴方の顔は見飽きているのですよ」

 

クセが付いてるのか、即座に小町は映姫に向けて謝罪から始めたが、ツッコミに冷徹な表情で返されたので、どう返せばいいのかと一瞬だけ口を噤む。しかし、かつては自分の上司だった相手とはいえ、ここで呑まれたらまた仕事をさせられると危惧したのか、心が乱れてるのか、緊張してるせいなのかは判らないが、小町は言い淀みながらも反論した。

 

「あ、あたいは自由を愛する女。そして過去じゃなく、今を生きる女。鎌だって捨てました!」

「サボってないで早く行きますよ、仕事は山積みです。それとも一度、私の裁きを受けてみる?」

「流石に映姫さま直々の裁きは……霎時遠慮したいかなーって......きゃん!」

 

これ以上は埒が明かないと判断したのか、小町の首根っこを片手で掴み、そのままずるずる引っ張って行く。小町から視線で救難信号を送られてきたが、オレが映姫に言ってもムダだ。あの子は、融通が利かない頭でっかちちゃんだ。ここは運が悪かったと思って諦める他ないんだ。オレが映姫に、斡旋を出来るならしたいが、娶った妻を甘やかしたいところではあるが、これは仕方ないコトなんだ。

小町を引き摺りながらも、閻魔はオレが余計なコトをしないように釘を刺してきたが、不服顔の妻は譲歩してもらえないか提案する。でも即答で拒否された。

 

「コレは甘やかせば甘やかすほど怠けます。いくら小町を娶ったとはいえ、程々にして」

「映姫様、これが原因で倦怠期になり、あたいが縁切寺へと駆け込んだらどうするんですか」

「縁切寺と言っても、数年は寺の仕事をしなくてはいけない。ソレを貴方には出来ないでしょう」

「それは……そうですけど。お願いですからあたいら新婚夫婦の時間をください!」

 

よほど仕事をしたくないのか、映姫に引き摺られながらも駄々をこね、これだけは譲れないというモノを、小町はかつての上司に提示する。しかし、血も、涙も、胸も、寛大も、譲歩も、融通さがまるでない、仕事一筋の閻魔は、冷徹のまま返し、何の意味もなさなかった。

 

「ダメよ。地獄も人手不足なのだから」

「昔と違って今のあたいは死神じゃないのにー!」

 

死神というか、あれでも彼女は小野氏だから、天皇の血を引いているので神裔なんだけど。能力と言えば、小町は三途の川の距離を操作できたっけかな。便利なモノだ。

なにか言いたいコトを思い出したらしく、小さな声を漏らした実娘の映姫は、足元に永琳が創った魔方陣を展開しつつも、立ち止まって一顧した。

 

「父上。私は東京裁判を迎えようと、『こわれがめ』のような結末ですよ」

イワレビコ(神武天皇)天孫族(神裔)だが、日本書紀(日本神話)ニギハヤヒ(物部氏の祖神)に殺された長髄彦は、神裔ではない」

 

前にも言ったが、古事記と日本書紀に基づくなら(・・・・・・・・・・・・・・)古代日本人は勝手に生まれていた(・・・・・・・・・・・・・・・)

とはいえ、殺された長髄彦は(・・・・・・・・)国津神の血を引く神裔(・・・・・・・・・・)三輪氏と言われてる(・・・・・・・・・)。つまり、長髄彦はミトコンドリア・イヴと(・・・・・・・・・・・・・・)Y染色体アダムの子孫ではない(・・・・・・・・・・・・)、というコトだ。

彼は神裔、といっても、ソレを前提とするならばの話だが。実際、古事記と日本書紀には、三輪氏と書かれてないしなあ。

 

間接的にとはいえ、オレは第38代天皇・天智天皇と、第40代天皇・天武天皇を殺した。

しかし。ソレについてアマテラスが黙認しているのは、この日本に存命している純血のイワレビコ(神武天皇)が、存命しているからである。カレに死なれると困るので、オレが寿命で死なないよう、不老にしたからこそ、アイツはなにも言ってこない。古事記と日本書紀のカレは、本来ならば、とうの昔に死んでいる。

仮に、オレがカレを殺していたら、アマテラスを敵に回していただろう。

それだけ、天皇・大王・皇室という、イザナギ、その娘のアマテラスの血を引く、純血の神の子は、日本神話にとって、重要人物なんだ。

古事記と日本書紀のイワレビコ(神武天皇)は、天下、つまり日本を平定して治めるために、八百萬神(八百万の神)の説得を自ら行い、納得させたりしている。古事記と日本書紀に出てくるアマテラスも、カレには甘々で、神武天皇のために動き、力を貸している記述もある。〝天壌無窮の神勅〟の意味も、あるだろうがな。

正直、日本神話においてのアマテラスは、親バカで、過保護と言っても過言ではないほどだろう。そしてイワレビコ(神武天皇)、延いては大王・皇室は、半神・神裔だ。古事記のカレは、熊野の山の神を切り倒しているが、ソレはカレが、半神・神裔だからこそ、納得できるんだ。

だが、日本人らしいと言えばらしいけど、古事記は読みやすいとはいえ、その設定は、いい加減な部分が多い。設定に関しては日本書紀の方がしっかりしてるが、その代りに、色々とくどい部分も多くある。

 

「故に、東京裁判の判決は、皆殺しでいい。神裔は、戦国時代で打ち止めなのだから」

「……」

 

娘はなにも言わず、小町を連れ、魔方陣で地獄に帰った。映姫は沈黙で返したが、反論がないというコトは、ソレで納得しているのだろう。

 

先程の『こわれがめ』とは、ドイツの劇作家、小説家・ハインリヒ・フォン・クライストの戯曲である。

その内容を簡潔に説明すると、あるモノを壊した犯人は、自分が犯人というコトが判っているのに、ソレを秘めたまま裁判を行う、という話。

つまり、結果が判りきってるコトなのに、裁判を行う、言わば茶番劇。

だが、東京裁判で死刑判決だろうとも、どうでもいい。なにせ、神裔は戦国時代で終わるのだよ。それに、神武天皇は存命しているのだから。本当なら、神裔は平安時代で終えるつもりだったがな。

 

「なんのために、ミトコンドリア・イヴと、Y染色体アダムを生かしてると思ってるんだ」

 

嗚呼、面倒だ。とっととあの猿人共を皆殺しにしたい。だがソレをすると、この先、困る。

日本はアメリカに負けた。だが、負けるにしても、最善を尽くした負け方というモノはある。ソコで、神裔を戦国時代で終わらせ、江戸時代からはミトコンドリア・イヴの血を引く人間に泥を被ってもらい、苦汁を嘗めてもらう。

アメリカ合衆国の哲学者・ラルフ・ワルド・エマーソンは言った。

『すべての歴史は主観的になる。言い換えれば、正しくは歴史は存在しない。あるのはただ伝記だけだ。』

人間の視点で観た時点でソレは真実ではない。いや、真実なんてモノは、最初からないだろうさ。実際、正しいか正しくないかなんて、そんなコトはどうでもいいんだよ。重要なコトじゃない。

だが、それでも、先人達が生みだしたモノを調べないヤツは……

 

「高邁の精神、という訳でもない。しかし、どんなモノであれ、一朝一夕にできたモノではない。結局は、借り物で、受け売りで、後追いで、真似事で、水増し。やはり先人達は、偉大だ」

 

懐から中国の清代の短編小説『聊斎志異』を取り出し、7巻に出てくるモノを観る。

霍桓という男が、ある女性に一目惚れして結婚。いろんな問題はあったが、男の子と女の子をもうけ、その夫婦は仙人になり、煙のように消えていた。という小説。あらましとしてはこんな内容だが、夫婦仲が良くて結構なコトである。

この話では、どんなに硬いモノでも、ソレを抵抗なく穴を開けるコトが出来る鑿があったり、木の枝を二頭の馬にしたりというのもあるが、道士・仙人はなんでもアリだな。

だが、もう関係ない話だ。アイツは聊斎志異に出てくるヒロインではない。中国神話の嫦娥なのだから。

 

「美しい籠やヘラを持って、この丘で菜をお摘みのお嬢さん、君はどこの家のお嬢さんなのか教えてくれないか。諏訪国の全てを私が治めているのだ。私こそ教えよう、家柄も名も」

 

ふと神社に目線を向けると、木製で出来た、引き戸の玄関の扉の中央に、ぽっかりと大きな穴が開いていた。するとその穴から、仙女が通り抜けてきたが、オレと視線が交差すると、微笑んで、YEAH、と言いながら右手を上げ、こちらに来ようとする。噂をすれば影が差すとは言いますが、こっちへ来なくてもいいだろうに。

その女性は、壁抜けの仙人で無理非道な仙人・青娥である。鬼の華扇はまだ仙人へ到達してないと彼女に聞いてるから、諏訪国にいる仙人は、まだ一人しかいない。

そして、中国神話に出てくる嫦娥の話とは、竹取物語――かぐや姫の原型になったという説もあったりするが、どうでもいいか。

 

「今、失礼なコトを考えませんでしたか」

「とんでもない。見目麗しい女性を観て言葉を失い、見惚れていたんだよ」

「あら、お上手ですわね」

 

もちろん今の褒め発言は、内心で舌打ちしながら答えたウソである。いや、彼女の外見とカラダに関しては、文句の付けようがないので、ソコだけは、本当だけれども。

蠱惑的な彼女は、目を伏せ、毛先を右手の人差し指にクルクルと巻きつけながらも、満更でもない表情になった。外見は大人の女性のような感じだが、たまに童心的になる。しかしアレは、素直に褒められて照れてるのだろか。彼女も長年生きてるのに、そんな生娘みたいな女性とは思えないのだが。

青娥の能力は、髪に挿している簪で、壁を切り抜いて穴を開け、その穴を通って向こう側に通れているのは理解しているが、コレについて知らなかったら軽くホラーだな。しかしながら、迷路状のダンジョンでゴールを目指す時には便利。扉に開けた穴については、時間が経てば塞がる仕組みらしいので、穴を開けても咎めるつもりはない。どうでもいいけど、硬ければ硬いほど楽らしいが、柔らかいものに簪を使って穴を開けるのは難しいと聞いている。

彼女は、月を観ようと空を見上げるが、頬がひくついた。空に漂う浮遊大陸が視界に入ったから、だと思う。だが気を取り直して、何事もなかったように振る舞いながらも、オレの傍に来たが、そこまで親しくないハズなのに、まるで、程孔傾蓋のように話し始める。

 

「今日も、月が綺麗です」

「死んでもいい、なんて言わんぞ。そもそも己は、扉を使うという発想がないのか」

「癖のようなモノです。扉を使わずに移動するコトが多いので」

 

仙霊、純狐を××神話に降して娶った。完全に、とは言い難いが、彼女の怨みも泡のように頭から消えている。オレの支配下に入っている純狐は、感情で動くコトはない、ハズだ。

そんなコトは露知らず、老獪の仙女は、元人妻なのに、感佩しているのも重なってか、まるで生娘みたいに羞じらい、自分の両手を合わせて、目線はオレに向けつつ、心臓が波のような動悸をうっているように、落ち着きがない。

しかし青娥は、遂に意を決したのか、両親指をくるくる回しながらも、たどたどしく尋ねた。

仙霊から助けたコトについては、感謝の言葉じゃなく、オレに抱かれるという行動で示すらしい。

 

老爷(旦那様)。はしたない女、と思わないでいただけたら幸甚ですが。後ほど、私と閨を共に――」

「平氏の春姫とする予定です」

 

春姫――妖精のリリーには、どうしてもオレの子を産んでもらわねばならん。故に、即答したら、青娥は笑顔のまま石膏細工のように固まり、直後、ヒビが入るような音が響いた。即座に拒否されて、自分から頼んだ手前もあるのか、今も彼女は、黙然なお地蔵さんみたいに、ただソコで静止している。お地蔵さんなら、苦悩の人々を助けるというお役目があるハズ。ならば尊重の気持ちを持ちながら、このまま置いて行こう。

昔の人は言いました、触らぬ神に祟りなしです。先人達の知恵に尊敬と感謝の念を抱きつつ、この場を去ろうと背を向けたら、娶った妻に呼び止められたので、また踵を翻す。

笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点である。

 

「で、では、明日どうでしょう。釈迦に説法かもしれませんが、一夜の過ちも悪くないかと」

「…日本書紀の雄略天皇はな、童女君とセックスし、その日に孕んで子が生まれた話がある」

「ええ。雄略天皇は、童女君を7回もお召しになっていますわ。私達もそれに倣うべきです」

「そういう意味で言ったワケじゃない」

 

見目麗しい青娥(嫦娥)は、この世界がまだ初期頃だった時、永琳みたいに娶って、何度も何度も夫婦になったワケじゃない。今回初めて娶った女だ。なのに、早く手を出せという態度を醸し出し、オレには効果がないのに秋波を送ったりしてる。ギリシャ神話の女神・Ἀστερία(アステリアー)は、ゼウスのレイプから逃げ切った女神だが、普通は、そんな感じでイヤがるハズ、だと思うんだけど、別にそんなコトはなかったよ。はい。寧ろ、強引にされるのもキライじゃない、とこの前ほざいてた。

コイツは、気に入った相手ならば、誰にでもついて行くし、力の強い相手へ純粋に惚れ込み助言したりの節がある。前々から思ってたが、悪癖だ。自分の目的が成就されたら、周りなんてどうでもいい、という姿勢はスキだが。〝惚れ込む〟と言っても、恋とか愛とかの話じゃない……と思う。

 

「中国の『列仙伝』に登場する女几は、仙人から房中術の書物を用い、性交による若返りをしています。梨の礫も困るので、1発だけなら誤射です」

 

「でも娘々、蓬莱の薬を飲んでるから死なないし、老化もしないだろ。それにしわ――」

「いくら老爷と雖も、その先は命にかかわるパンチを繰り出しますわよ」

「やめてくださいしんでしまいます」

 

急に彼女は笑顔になり、命にかかわるパンチをせず、まずは右手の親指と人差し指を動かし、オレの頬を少しつまんでねじり、命にかかわる攻撃に打って出た。

蓬莱の薬を飲んでいる青娥は、不老不死だ。故に、死ぬコトはない。無敵状態と言っても、コレは過言ではないだろう。よしんばオレの雷霆を青娥に投げても死なないほど、と言えば、無敵状態の意味も判るハズだ。というか、中国神話もギリシャ神話に負けず劣らず、不老不死ばっかり出てくるしなあ。中国神話に出てくるモノは、死ぬモノもいる。ただ、中国神話の場合は、不老不死の神というより、不老不死の仙人という方が、正確だろうけど。

 

「…ここまで頑なとは、慮外。手弱女な私の見て呉れは悪くないと思いますが、あたらですわ」

「自分で手弱女と言うのはどうかと思いますよボクは」

「ここ最近は、どうしたら振り向いて下さるかを考え、枕を涙で濡らし、輾転反側する日々です」

「涙じゃなくて涎だろ」

 

そういえば、手弱女、という言葉を聞くと、確か、日本書紀だったかな。ソレにあることわざの、〝天の神庫も樹梯のまにまに〟という言葉が想起する。

朱に交われば赤くなるとは言うが、肝胆相照らすのはやぶさかではない。青娥の性格と人格はともかく、見た目は10人中10人が美人というほどだろう。ソレは間違いない。別に隔意があるワケじゃないんだ。青娥とは気軽に話せるから落ち着くし、苦と思ったコトはない。

しかし、法華宗の宗祖・日蓮は言った。

『天月を見ずして但池月を見ることなかれ。』

そして、盛唐時代の中国の詩人・李白は、水に映る月影をとらえようとして溺死した伝説がある。四元素説を唱えた古代ギリシアの哲学者・エンペドクレスも、エトナ山の火口に飛び込んで死んだ話があるのだが、オレはそんな死に方、絶対に願い下げである。隘路なワケじゃないが、青娥へと手を出そうにも、未だ払暁はまだ観えないのだ。

 

「取らぬ狸の皮算用じゃないんです。灌漑してるんですから、契ってくださってもいいんですよ」

「褥を共にするのはいつか来るだろ。蚊帳して寝なきゃなあ」

「……朝三暮四では埒が開きません。どんな陳情をすれば同衾していただけるのでしょうか」

 

彼女は恥を忍んで聞いて来た。もっと遠回しな表現をされると思っていたので、表情には出さないが、少し驚いた。

秋の田のかりほの庵の苫をあらみ 我が衣手は露にぬれつつ。仄聞だが、コレは、天智天皇だったかな。

セックスするにしても、コイツを犯したいような、そうでもないような、という板挟みの気持ちにいる。いや、別に閨を共にするにしても、ソレをしなくちゃいけない話ではないのだが。例えば、朝まで喋ってお互いのコトを知るとか、布団の中で寄り添って就寝するとか、他にも夫婦の営みは、あるにはあるのだが……。

しかし、あのティコにあったラボラトリーで、青娥は、地獄の女神・へカーティアと、仙霊の純狐から守ってもらう代わりに、自分を差し出しオレに嫁いで来たし、恐らく彼女は、女好きのオレというのもあって、すぐに手を出してくると踏んでいたが、予想を裏切り、いつになっても手を出さないので、焦燥感に駆られて、自分から言いだしてきたのかもしれん。

いや、よく考えなくても、そんなヤワな神経はしてないか。きっと裏があるハズだ。絶対そうだ、そうに決まってる。この娶った妻は、あの中国神話の女神・嫦娥なのだから。

 

「ちょっと両手を、料理する時みたいな猫の手にしてくれないか」

「こうですか?」

「そうそう。でだな、こう言ってくれ」

 

今からしてもらうコトを観て、聞いて、犯したいと思ったら、明日か明後日にでもセックスしよう。とボクは思ったんです。

青娥へ近づき、耳打ちして、こう言って欲しい、という旨を伝えて三歩離れる。内容を聞かされた彼女は、態度に出さず、上手く隠してるが、内心では戸惑っている、かもしれない。

こんなふざけたコト、いくらオレの頼みでも絶対に言わないだろう。と考えていたのに、頬に紅がうっすらと彩りながらも、目を瞑り、両手を握って、青娥は大きな声で言った。

 

「娘々!」

 

 

 

静寂で支配されたが、次に西行妖の、一陣の風で生じた葉擦れの音が、この場を支配した。

彼女はうっすらと片目を開け、無言のまま俯いているオレの反応を観る。オレは真顔で返した。

いや、オレがそう言えと申したのが原因とはいえ、イラッとした。一応は妻である彼女から離れる前に、苛立ちを込めて地面に唾を吐き、その場を後にする。

小池一夫の漫画みたいに、エレクチオンはしなかったよ。

 

「待ってください」

「待ちませぬ」

 

鳥居を目標地点に走って逃げるのも大げさと思い、彼女を腫物でも扱うように、早歩きで去ろうとしたが、娶った仙女の左手で、オレの右腕を掴まれてしまう。ボクはコレでも××神話の天津神なので、宗教の勧誘なら間に合ってますよ。

ココは振り向かず、今も後方にいる妻へと交渉に入るが、この場から早く離れたい衝動に駆られたとはいえ、本来の目的であった無名の丘に行くコトを伝えると、ちょうど彼女もヒマだったらしく、医鬱排悶もかねて、オレの隣に立ち、一緒に歩いて目的地に向かいつつ、会話を続けた。

おかしいな、青娥は華扇に道教の全てを授け、仙人に仕立てあげてる最中のハズで、ヒマなどないと思うんだが、どうしてこうなった。

しかし、彼女はなにをとち狂ったのか、今のやり取りをオレの趣味と取られ、そういうのが好きなのかと勘違いされた。

 

「そういうのがお好きなのかしら? ソレならそうと言って下されば、私は同衾で受け入れて…」

「違います」

 

オレの反応と行動を観たハズなのに、どうしてその結論に達するのか、ボクには理解できませんでした。きっと、古代ギリシア・古代中国・古代インドの哲学者達が考えても、判らないだろう。

コイツ、オレがどんなに罵倒をしても、どんなに冷たい態度で接しても、どんなにあしらっても、めげないしょげない泣いちゃだめ、の三拍子みたいに、なかなかどうして挫けない。松柏之操だ。そのクセ、どうでもいいコトではムダに傷付いたり、落ち込む時がある。訳わかめ。まるで彼女は、頑是無いが大人になったみたいだ。オレと青娥は、神話時代で止まってるから、当たり前と言えば当たり前の話だが。

この手だけは使いたくなかったが、今回のコトを理由に、華扇が仙人になるための修行で手を抜かれても困るし、また正面から向き合って話そう。もう鞭はやめて、飴だけでいいような気がしてきた。いくら美人でも、煮ても焼いても食えないのは、扱いに困る。

 

「妄言多謝。じゃあこうしよう。華扇を立派な仙人にしてくれたら、オレの閨に招聘する」

「蜚鳥尽きて良弓蔵せられ、狡兎死して走狗煮らる。という諺を思い出しましたわ」

「折角の美人にそんなことするワケないだろ、もったいない」

「...一驚を喫しました。いくら本当のコトとはいえ、素直に言われると、少し照れます」

「おい」

 

ダレが観ても、青娥は美人だ、と答えるだろう。性格・人格にやや問題があるとはいえ、献身的だし、カラダも出るとこ出てる。なんの欠点もない女性、なのだが……こう、セックスしたいとか、オレのモノにしたい、という欲求が湧きあがらない。コレを上手く言えないが、なんか、三歩離れて観ていたいだけで、それ以上はいいかなって感じ。強いて言うなら、鬼の霍乱になった気分……だな。

もう一点、懸念がある。彼女は仙人なワケだが、道教には养小鬼(ヤンシャオグイ)というのがある。前に説明した流産した胎児、殺した赤子、あとは埋葬された遺骨を使って霊を使役する道術だ。

 

「私と老爷の子なら、ソレは絶対にしません。自分で産んだ子は、死ぬまで愛します。永遠に」

「すました顔で心情を汲み取るのはやめろ」

 

んで、ギリシャ神話の神裔・Πρόκνη(プロクネー)Φιλομήλα(ピロメーラー)姉妹は、強姦されて産んだ子の幼児イテュロスを殺して料理し、強姦したΤηρεύς, (テレウス)に食べさせる話があってさ。神話ではよくある〝食人〟の話だ。ソレで、青娥を観てると、その神話が頭でちらつくんだよ。そんな問題が重なって、手を出しにくいという感じですね、はい。ソレを陋習、と言う気はないけど。

しかし彼女は、蓬莱の薬を飲んでるから不老不死だ。そういえば、あの一輪も、人魚の肉を食べて不老不死だったっけ。

 

「ところでさ、江戸幕府の第3代将軍・徳川家光って尼僧を側室にしてたよな」

「正確に言うと、尼僧は還俗して側室になってます。家光は元々女嫌いだった話で有名ですね」

「そうだよなそうだよな!」

 

青娥は、オレの代わりに徳川家光と側室になった尼僧について敷衍に説明してくれた。

いきなりの話題転換だったから、お前は一体何を言ってるんだという顔で青娥から観られたけど、尼僧のワードから連想したのか、この話に関する人物の名を出す。

旧約聖書・レビ記 第11章45節

『"わたし(ヤハウェ)あなたがた(イスラエル人)の神となるため、あなたがたをエジプトの国から導き上った(ヤハウェ)である。わたしは聖なる者(・・・・)であるから、あなたがたは聖なる者とならなければならない。"』

レビ記 第20章26節

『"あなたがたはわたしに対して聖なる者(・・・・)でなければならない。主なるわたしは聖なる者で(・・・・・・・・・・・・)あなたがた(イスラエル人)わたしの(ヤハウェ)ものにしようと、他の民から区別したからである(・・・・・・・・・・・・・・)。"』

 

「まさか......雲居一輪ですか」

「そうだ。アレにも天津神の、天皇の血を引いている。ならば問題はない」

「アレが大人しく従うとは思えませんが……」

「白蓮がいるじゃないか。だから、アイツはオレに従うだろう。てか、従わざるを得ないんだよ」

 

しかも人魚の肉を食べて不老不死ときた。最高だ、本当に最高だよ。オレが娶るに不足はないな。白蓮を餌にしたら一輪は従わざるを得ない。魚懸甘餌だ。そして一輪を引き込めるというコトは、序でに雲山も付いて来る。魚網鴻離だよ。笑いが止まらん。オレの目的は徐々に叶いつつあります。

お燐のお蔭でもあるが、元は四国妖怪の七人ミサキだった舟幽霊の村紗水蜜だって、今は地獄にある血の池地獄にいるとはいえ、白蓮の名を出したから従ってるワケだし。だが白蓮がいなくても、お燐の能力で村紗水蜜を無理矢理従えるコトは出来るけど。幽霊の正体見たり枯れ尾花だったよ。

旧約聖書・申命記 第14章2節で、古代イスラエルの民族指導者מֹשֶׁה‎(モーセ)は言った。

あなた(イスラエル人)あなたの神(ヤハウェ)、主の聖なる民(・・・・)だからである。(ヤハウェ)は地のおもてのすべての民のうちからあなたを選んで(イスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人)、自分の宝の民とされた。』

 

「ですが、憶えているのでしょうか。()白蓮のコトは忘れてるかもしれませんわよ」

「忘れてても、全部預かってる」

 

オレは右手の人差し指で、自分の頭をこつこつ叩いて全員の記憶と感情を預かってるコトを示すと、青娥は合点がいった表情になったが、即座に不満顔へとなって一度頷いた。

そう。ココは地球だよ。並行世界なんて願望・理想・妄想という名の、都合のいい言い訳で出来たモノでは、面倒だからという理由で逃げた世界では、創られた世界ではない。

新約聖書・テサロニケ人への第一の手紙 第3章11節~13節

『どうか、わたしたちの父なる神ご自身と、わたしたちの主イエスとが、あなたがたのところへ行く道を、わたしたちに開いて下さるように。どうか、主が、あなたがた相互の愛とすべての人に対する愛とを、わたしたちがあなたがたを愛する愛と同じように、増し加えて豊かにして下さるように。そして、どうか、わたしたちの主イエスが、そのすべての聖なる者(・・・・)と共にこられる時、神のみまえに、あなたがたの心を強め、清く、責められるところのない者にして下さるように。』

 

「女性を囲いたいのは知ってますが、妻の前で他の女の話に熱が入るのは、聊か気に入りません」

「え、ダレがダレの妻なんだい」

「老爷に嫁いだ私です」

「そうだったかなあ……もしそうなら仮面夫婦か、離婚を前提としたお付き合いを――」

「そんなコトをしたら、謝罪と賠償を要求します」

「ソレは中国じゃなくて朝鮮だろ」

 

朝鮮と言えば、20世紀に作られ偽書とされる『桓檀古記』の朝鮮神話には、神とされている桓雄と、熊から人間の女になって産まれた神裔・檀君がいたが、あそこの場合、確か人間はすでにいたという内容だったかな。中国神話に出てくる釈迦みたいに、朝鮮神話にも釈迦が出たりしてたな。ソレで神武天皇の兄・稲飯命が、新羅王の祖という話もあったっけ。

だがオレが神話と認めるのは、紀元前から16世紀、あるいは18世紀までに語り継がれてきた神話だけであり、ソコから先に出来た神話は、神話として絶対に認めるワケにはいかない。

 

そして、この日本の歴史も、国が認めた正史通りに進んでいる。つまり歴史通り、正史通り、一部を除いた九州地方から東北地方に住む日本人は、神裔・天皇の血を引いている。

でも、平成時代の日本人は、混血しかいないコトを、忘れてもらっちゃあ困る。

古代ギリシア人と、平成時代のギリシア人が同じではないように、平成時代の日本人に、純血はいねえんだ。天津神の血・天皇の血が一滴だけあればいい、なんて都合のいい願望・妄想は垂れ流すなよ。百歩譲って、平成時代にいるモノがソレを言っていいのは、出雲氏・諏訪氏・氏姓、名字がない天皇のようなモノ達だけだ。

新約聖書・ユダの手紙 第1章14節~15節

『アダムから七代目にあたるエノクも彼らについて預言して言った、"見よ、(ヤハウェ)は無数の聖徒たちを率いてこられた。それは、すべての者にさばきを行うためであり、また、不信心な者が、信仰を無視して犯したすべての不信心なしわざと、さらに、不信心な罪人が主にそむいて語ったすべての暴言とを責めるためである。"』

 

「勿論、女を侍らすのもあるが。昔、あの時いた(命蓮寺)モノを全て集めて欲しい、と白蓮に頼まれてさ」

「容喙は承知ですが、それ以上の意味はない、と」

「ああ」

「ですがあの子は、קַדִּישׁ(聖なるモノ)...旧約聖書の大士師と聞き及んでいます」

 

諏訪国の支配者は、実娘の諏訪子である。オレは諏訪国の支配権を持ってるだけで、殆どは諏訪子に丸投げしているのが現状だ。

しかし、オレの血を引く諏訪氏の白蓮は、旧約聖書・士師記に登場する大士師・サムソンである。旧約聖書において、大士師、という意味は治める者の意味があり、他の民族からイスラエル人を、つまり、その土地に住む民族を救う英雄、という意味もある。

それで、戦国時代には川中島の戦いで、諏訪国を支配下に置こうとする、武田信玄がいるのだが、どうでもいいか。

白蓮と言えば、『今昔物語集』と、『古本説話集』に登場する信貴山の命蓮は、修行するために、信貴山で庵を結び、鉢を人里に飛ばして食を貰い、瓶を川に飛ばして水を汲んでたな。その天稟はスゴイけど、ここまでいくと、もう仏教と言えないだろ。てかソレって、神通力というより、もはや魔法と変わらない、ような気がしなくもない。

 

旧約聖書・民数記 第6章1節~4節

(ヤハウェ)はまたモーセに言われた、"イスラエルの人々に言いなさい、男または女が、特に誓いを立て、ナジルびととなる誓願をして、身を主に聖別する時は、ぶどう酒と濃い酒を断ち、ぶどう酒の酢となったもの、濃い酒の酢となったものを飲まず、また、ぶどうの汁を飲まず、また生でも干したものでも、ぶどうを食べてはならない。ナジルびとである間は、すべて、ぶどうの木からできるものは、種も皮も食べてはならない。"』

 

「役割としては、命蓮も似たようなモノだ。白蓮にはパチュリー達に頼んで魔法を憶えさせたし」

「そうですか。彼女に大士師(英雄)の役目は、荷が重そうですけど」

「大したコトじゃない。神裔・源氏の武田氏との戦で勝てばいいだけだ」

「簡単に言いますわね」

「実際すぐに終わる。諏訪勝頼の存在があるとはいえ、武田氏は目障りでしかない」

 

白蓮についてはその通りだが。オレ、白蓮のコト話したかな。青娥を娶ったのは今回が初めてだから、説明した記憶がないのは気になるが、オレの記憶は未だにボロボロだし、当然と言えば当然か。

大坂夏の陣で、神裔・真田氏の真田信繁が徳川家康を殺してくれたらいいけど、そうもいかない。だが豊臣秀吉と徳川家康は絶対にダメだ。双方とも先祖を捏造してる上に、血の濃さ的にアウト。

ソレを言ったら神裔の忌部氏・平氏・藤原氏とされる織田氏は、実際は平氏でも分家の分家だが、織田氏にはオレの血を入れるから、正直あんまり問題はないんだ。でも、ハゲネズミ(豊臣秀吉)脱糞野郎(徳川家康)が天下統一して静謐するよりはいい。

…肝心なのは、諏訪国にいる神裔・源氏の三好氏と、キリスト教徒・キリスト教を布教する、あのザビエルだなー。

 

旧約聖書・民数記 第6章5節~7節

『また、ナジルびとたる誓願を立てている間は、すべて、かみそりを頭に当ててはならない。身を(ヤハウェ)に聖別した日数の満ちるまで、彼は聖なるものであるから、髪の毛をのばしておかなければならない。身を主に聖別している間は、すべて死体に近づいてはならない。父母、兄弟、姉妹が死んだ時でも、そのために身を汚してはならない。神に聖別したしるしが、頭にあるからである。"』

民数記 第6章8節

『"彼はナジルびとである間は、すべて(ヤハウェ)聖なる者である(・・・・・・・)。"』

 

「それに白蓮は、ナジル人。そしてあの子は、今も髪を伸ばしている」

「つまり、かつての誓願は終わってないと」

「でなければ、あの子を、聖を象徴するナジル人(・・・・・・・・・・)、とオレは呼ばん」

 

彼女は興味が失せたのか、この話の続きをしなかった。

民数記 第6章22節~26節

(ヤハウェ)はまたモーセに言われた、"アロンとその子たちに言いなさい、あなたがたはイスラエルの人々を祝福してこのように言わなければならない。願わくは主があなたを祝福し、あなたを守られるように。願わくは主がみ顔をもってあなたを照し、あなたを恵まれるように。願わくは主がみ顔をあなたに向け、あなたに平安を賜わるように。"』

民数記 第6章27節

『"こうして彼らがイスラエルの人々のために、わたしの名(ヤハウェ)を唱えるならば、わたしは彼らを祝福するであろう。"』

 

…でも、よくよく思い返せば、今までいろんな女を娶ってきたけど、レイプした記憶がないッ! 

今の言葉を声に出した言ったワケではないのに、一応とはいえ、妻である彼女は、とっても柔らかそうな、ピンク色の唇を、一度舌なめずりし、まるで真珠のような爪先であり、白く透き通った細い右手の人差し指で、その唇を、すっと、軽くなぞった。

なんというか、このオレが思わず、キスされるためにできた唇と錯覚してしまうほどだった。

だが、今の動作は彼女にとって素なのか、意図してやったモノではないような表情のまま、どんな男でも夢中になりそうなカラダで、その欲望を受け止める意思を示した。

 

「し、仕方ありません。ならば老爷の肉慾を私にぶつけてもらい、全て発散させて――」

「いや、五胡十六国みたいなカオス時代に、手を出す気はない」

「……ご無理なさらなくても、私は拒みはしませんが」

「我慢なんて殊勝なモノ、オレにあるワケないだろ」

 

情欲という一時の感情に流され、青娥とセックスしても、実際はなんの問題もないよ。

だが、鎌倉時代の曾我兄弟の仇討ち、江戸時代の赤穂事件と鍵屋の辻の決闘も、復讐という感情で動いた結末が、アレ。

そして彼女は、あの嫦娥だ。オレはもう死ぬコトが無いとはいえ、中国神話の時に陰謀詭計した女ゆえ、抱くにしても油断はできない。綢繆未雨しておかねば。

オレも人のコトは言えないんだけど、ハッキリ言うと、この妻は、自己中心的な性格だ。あと自分の力を魅せたいという、顕示欲が強い。まだ世界が初期頃だった時、中国から日本に渡来して、豊聡耳神子(厩戸皇子)に取り入り、当時の日本に仏教を広めた。まったくもって、いい趣味をしている。

コイツだ。この世界での彼女は無関係だが……日本に仏教が広まるコトになった元凶が、青娥だ。

 

「今日も皎月千里で綺麗だなー」

「そうですね。上手く表現できませんが、ココを眺めていると、酷く懐かしいです」

 

無名の丘は妖怪の山の反対側にあり、川沿いの村や山里の酒屋の旗が、風にたなびいている人里を超えた先にあるのだが、下らないコトを話していたら、いつの間にか到着していた。ココは広々とした平野のあちらこちらで鴬がないて、白い花の鈴蘭畑が新緑に映えている。

この畑は、幽香の能力で作り上げたモノだが、遼遠でも、この光景を観に来られてよかった。時間があれば、後でわかさぎ姫へと会いに行くため、諏訪湖にも顔を出した方がいいかもしれん。

空気の流れが生じ、冷たい風が体全体へとぶつかる。もう冬だな。今はまだ秋だが、秋といえばあの言葉を思い出す。

 

「秋風のなかあなたと共にいる。それは百年にも千年の歳月にも値するものだ」

 

一度立ち止まり、隣にいる青娥を観ると、彼女もこちらを見た。この風景を観ていたら、パッと出て来た言葉をつい口にしてしまった。

さっき、釈迦が乳糜で悟った話をしたけど、仏陀の弟子で、苦行を共に行っていたモノ達がいる。ソレは五比丘、婆敷、摩訶摩男、婆提梨迦、阿説示、5人の弟子達だ。彼らは、供養された乳糜を口にした釈迦を観て、ムリガダーヴァ(鹿野苑)の苦行林へと去った。

乳糜について、釈迦……ゴータマ・シッダールタは、言い訳をしなかったそうです。はい。

 

「……ソレは一休宗純でしたか。聞き取れなかったので、もう一度、復唱してください」

「一休宗純って判るなら、ちゃんと聞いてるじゃないか」

 

彼女はソレを聞き、呆けていたが、ソレを無視して先に進む。歩く速度を上げたのか、後方から地を蹴る音が先程よりも大きくなっている。するとオレの右腕を両腕で抱きしめ、寄り添って来た。妻を一瞥すると、笑顔のまま、さっきの言葉をもう一度聞きたいと言われたが、鬱陶しいので振り払おうと、右腕を振り回す。が、ますます放そうとせず、まるで、動けば動くほど絡まってしまい、羈縻されていくような蜘蛛の巣に引っかかった気分。娶ったのはミスだった。

だが、コイツもしや、構われるのが好きなのかもしれん。

 

「来たわね。だけど、スーさん(鈴蘭)は私が守る!」

「毒を貰いに来ただけだ」

 

鈴蘭畑にある鈴蘭を踏まないように気を付け、奥に進んでいたら、スーさん、つまり鈴蘭を守ろうとしたのか、小さな人形が傍らにいるメディスンは、蝶結びされた頭にある赤色のリボンが揺れ、同じ色のスカートを翻しながら、闇討ちをかけるみたいに、突然、辺りにある鈴蘭から飛び出してきた。しかしソレは誤解なので、敵意はないコトと、決してスーさんを許可なく摘みに来たわけではないコトを説明すると、付喪神である少女は、落ち着いた。聳懼していのだろうか。

落ち着いたが、なぜか辺りの空気はピリピリして、雰囲気がはりつめ、緊迫感が漂っている。

 

「なんか機嫌悪そうだが…なにかあったのか」

「さっき貴方の娘が来て、私に長々と人形解放はムリだとかいう説教して帰ったのよ!」

「あー......すまん」

「閻魔を娘に持つというのも、大変ですわね」

 

今も隣で、オレの右腕を両腕で包み込むように抱いている青娥は、同情したような声色で話すが、そうか。通りで映姫がいたワケだ。多分、貴方は少し視野が狭すぎる、みたいな感じで聞かされたんだろうけど、娘の説教を聞く方としては溜まったモノではないだろう。でも、いかんせん、あの子は元来、ああいう性分なんだ。

永琳に頼まれていたので、魔方陣で10個以上の瓶を出す。その中に毒を入れてもらうため、少女に渡そうとするが、メディスンは人形の付喪神ゆえ、背はかなり低いから、腰を下ろすと、一つ一つぶんどられる。

映姫のコトを忘れさせようと思い、話題を変えるため、声色を変えて、真摯に話す。ソレを汲んでくれた人形は、不気味そうにしながらも、全ての瓶に毒を入れつつオレの話に耳を傾けている。少女の記憶も戻しているが、この決意表明をするやり取りは、昔からのお約束だ。

隣にいる青娥は、興味がなさそうにして、鈴蘭畑を眺めている。口を出す気はないようだが、時々、右手でオレの髪を触ったり、弄ったり、耳に息を吹きかけたり、頭を撫でたりしてヒマをつぶしている。

 

旧約聖書・出エジプト記 第12章12節

『その夜わたし(ヤハウェ)はエジプトの国を巡って、エジプトの国におる人と獣との、すべてのういご(初子)を打ち、またエジプトのすべての神々(エジプト神話)に審判を行うであろう。わたし(ヤハウェ)は主である。』

出エジプト記 第12章29節

『夜中になって主はエジプトの国の、すべてのういご、すなわち位に座するパロのういごから、地下のひとやにおる捕虜のういごにいたるまで、また、すべての家畜のういごを撃たれた。』

出エジプト記 第12章30節

『それでパロ(ファラオ)とその家来およびエジプトびとはみな夜のうちに起きあがり、エジプトに大いなる叫びがあった。死人のない家がなかったからである。』

 

「真面目な話をしようか」

「……なに?」

「確認したいのだが、ニンゲンはキライか」

「キライに決まってる。大ッ嫌いよ。雛はともかく、にとりも同じことを言う!」

 

心の底から、感情をぶちまける人形の少女を観て、安堵した。ニンゲンなんぞと馴れ合おうとするのは、オレも気に入らんのでな。

オレの場合、ニンゲンがキライと言っても、天津神の血を引く、天皇・蘇我氏・物部氏・諏訪氏・出雲氏・小野氏・稗田氏みたいな、神の子孫は除く。だからメディスンみたいに、全てのニンゲンがキライなワケではない。

だが、側頭部に能面として付けているこころと、紫と幽香の日傘として使われてる小傘は、実際のところ、人間に対してそこまで敵意を抱いてはいない。オレがニンゲンを殺せと命じたら、従うといった感じだ。

琵琶の付喪神・九十九弁々はまだとはいえ、お琴の付喪神・九十九八橋はこころと小傘が持ってるし、彼女達もソレに賛同するだろうが、和太鼓の付喪神・堀川雷鼓は、微妙だな。アイツ軽いし。

 

「まだ先の話だが、人間が爆発的に増える時が来る。その時は、ニンゲンを好きにしていい」

「具体的には、善光寺地震、関東大震災辺り?」

「ソレと日本の人口が一気に増えた、昭和時代の産めよ、殖やせよ政策(旧約聖書・創世記)・ベビーブーム辺りだ」

「……その時まで待て、と言われてもね。平成時代のニンゲンはどうするの?」

「紀元前の人間よりもはるかに劣る平成時代のニンゲンに、生かす価値があるワケないだろ」

 

旧約聖書・列王紀下 第19章10節~11節

『ユダの王ヒゼキヤにこう言いなさい、"あなたは、エルサレムはアッスリヤ(アッシリア)の王の手に陥ることはない、と言うあなたの信頼する神に欺かれてはならない。あなたはアッスリヤの王たちがもろもろの国々にした事、彼らを全く滅ぼした事を聞いている。どうしてあなたが救われることができようか。"』

列王紀下 第19章12節

『"わたしの父たちはゴザン、ハラン、レゼフ、およびテラサルにいたエデンの人々を滅ぼしたが、その国々の神々は彼らを救ったか。"』

 

列王紀下 第19章14節~15節

『ヒゼキヤは使者の手から手紙を受け取ってそれを読み、主の宮にのぼっていって、(ヤハウェ)の前にそれをひろげ、そしてヒゼキヤは主の前に祈って言った、"ケルビムの上に座しておられるイスラエルの神、(ヤハウェ)よ、地のすべての国のうちで、ただあなただけが神でいらせられます。あなた(ヤハウェ)は天と地を造られました。"』

列王紀下 第19章16節~18節

『"(ヤハウェ)よ、耳を傾けて聞いてください。主よ、目を開いてごらんください。セナケリブが生ける神をそしるために書き送った言葉をお聞きください。主よ、まことにアッスリヤ(アッシリア)の王たちはもろもろの民とその国々を滅ぼし、またその神々を火に投げ入れました。それらは神ではなく、人の手の作ったもので、木や石だから滅ぼされたのです。"』

列王紀下 第19章19節

『"われわれ(イスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人)の神、(ヤハウェ)よ、どうぞ、今われわれ(ユダ族)彼の手(アッシリア)から救い出してください。そうすれば地の国々は皆、主であるあなただけが神でいらせられることを知るようになるでしょう。"』

 

列王紀下 第19章34節

わたし(ヤハウェ)は自分のため、またわたしのしもべダビデのためにこの町を守って、これを救うであろう』

列王紀下 第19章35節

『その夜、主の使が出て、アッスリヤの陣営で十八万五千人を撃ち殺した。人々が朝早く起きて見ると、彼らは皆、死体となっていた。』

 

「安心した。ニンゲンを殺すな、なんて言われたら発狂する」

「……オレが大人しくしてるのも、正史(歴史)通りに進んでいるせいだ」

 

旧約聖書・サムエル記下 24章1節

『主は再びイスラエルに向かって怒りを発し、ダビデを感動して彼らに逆らわせ、"行ってイスラエルとユダとを数えよ"と言われた。』

旧約聖書・歴代志上 第21章6節

『しかしヨアブは(ヤハウェ)の命令を快しとしなかったので、レビとベニヤミンとはその中に数えなかった。この事が神の目に悪かったので、(ヤハウェ)はイスラエルを撃たれた。』

サムエル記下 24章10節

『しかしダビデは民を数えた後、心に責められた。そこでダビデは(ヤハウェ)に言った、"わたしはこれをおこなって大きな罪を犯しました。しかし主よ、今どうぞしもべの罪を取り去ってください。わたしはひじょうに愚かなことをいたしました。"』

歴代志上 第21章11節~第21章12節

『ガデはダビデのもとに来て言った、(ヤハウェ)はこう仰せられます、"あなたは選びなさい。すなわち三年のききんか、あるいは三月の間、あなたのあだの前に敗れて、敵のつるぎに追いつかれるか、あるいは三日の間、主のつるぎすなわち疫病がこの国にあって、主の使がイスラエルの全領域にわたって滅ぼすことをするか。いま、わたしがどういう答をわたしをつかわしたものになすべきか決めなさい。"』

サムエル記下 第24章14節

『ダビデはガデに言った、"わたしはひじょうに悩んでいますが、(ヤハウェ)のあわれみは大きいゆえ、われわれを主の手に陥らせてください。わたしを人の手には陥らせないでください。"』

 

サムエル記下 24章15節

『そこで(ヤハウェ)は朝から定めの時まで疫病をイスラエルに下された。ダンからベエルシバまでに民の死んだ者は七万人あった。』

サムエル記下 第24章16節

『"天の使(天使)が手をエルサレムに伸べてこれを滅ぼそうとしたが、(ヤハウェ)はこの害悪を悔い、(イスラエル人)を滅ぼしている天の使(天使)に言われた、"もはや、じゅうぶんである。今あなたの手をとどめるがよい"。その時、主の使(天使)はエブスびとアラウナの打ち場のかたわらにいた。』

旧約聖書・サムエル記下 第24章17節 歴代志上 第21章17節

『ダビデは(イスラエル人)を撃っている天の使(天使)を見た時、(ヤハウェ)に言った、"民を数えよと命じたのはわたしではありませんか。罪を犯し、悪い事をしたのはわたしです。しかしこれらの羊は何をしましたか。わが神、主よ、どうぞあなたの手をわたしと、わたしの父の家にむけてください。しかし災をあなた(ヤハウェ)(イスラエル人)に下さないでください。"』

 

「しかしだな、その神裔の、天皇の、天津神の血を引いているという正史も、戦国時代で終わる」

 

儒教は、豎儒は好きではないが、だからと言ってキライなワケではない。

古代中国の儒学者・孟子は言った。

『人皆有不忍人之心。今人乍見孺子將入於井、皆有怵惕惻隱之心。無惻隱之心、非人也。惻隱之心、仁之端也。』

この意味を簡単に訳すと、"子供が危険な目に遭いそうなら可哀想と思う気持ちがある、しかしそう思う感情、つまり憐れみの心がない者は、人ではない。"という言葉だ。

なかなかどうして、豎儒はいいコトを言う。いや……豎儒だからだな。

孟子の言葉を引用したように、ならば、先人達が生みだした、例えば"神"という存在に、自分勝手なダレカが余計な設定を付け加えたり、神の性格を改変したり、神を蔑ろにするヤツってのはさ、宗教家や、神を信仰してるモノ達に対する申し訳ないと思う気持ちが、尊重する気持がないヤツも、ヒトじゃないよな。そんなコトするニンゲンは、どう考えてもクソッたれなニンゲンだろう。非難されて、糾明されて然る可きだ。寧ろ、何故ソレをされないと思い込み、自分に都合のいい方へ考えるのか、理解できない。

 

「即ち、地球が生んだミトコンドリア・イヴと、Y染色体アダムしかいなくなる」

 

平成時代の人間は、当たり前みたいに使ってるが、"付喪神"や"仙人"だって、先人達が生みだしたモノだ。どんなにキレイな言葉で飾って言おうと、自分が作り上げた設定では、概念では、存在ではない。どう考えても、ソイツが考えたオリジナルではない。

ならばこそ、先人が生みだしたモノに敬意と尊重する気持ちを持つのは、当然ではないのだろうか。

旧約聖書・レビ記 第24章16節~22節で、主はモーセに言われた。

あなた(モーセ)はまたイスラエルの人々に言いなさい、"だれでも、その神をのろう者は、その罪を負わなければならない。(ヤハウェ)の名を汚す者は必ず殺されるであろう。全会衆は必ず彼を石で撃たなければならない。他国の者でも、この国に生れた者でも、主の名を汚すときは殺されなければならない。だれでも、人を撃ち殺した者は、必ず殺されなければならない。獣を撃ち殺した者は、獣をもってその獣を償わなければならない。もし人が隣人に傷を負わせるなら、その人は自分がしたように自分にされなければならない。すなわち、骨折には骨折、目には目、歯には歯をもって、人に傷を負わせたように、自分にもされなければならない。獣を撃ち殺した者はそれを償い、人を撃ち殺した者は殺されなければならない。他国の者にも、この国に生れた者にも、あなたがたは同一のおきてを用いなければならない。わたしはあなたがたの神、(ヤハウェ)だからである。"』

 

「……判った。気に入らないけど、ソレまで我慢する」

「そうか。その時になったら、オレも邪魔はしない。自由に動いてくれてもいい」

 

人形の付喪神は、渋々ながらも頷き、この話は終わった。コレを説明するのは、何度目だろうか。ちょうどメディスンが全ての瓶に毒を入れ終えたらしく、零れないように蓋をして、渡してきた。オレはソレを受け取るが、どれも毒々しく、禍々しい色合いで、素人のオレが一目見ただけでも、毒と理解できるほど。ソレを魔方陣で永琳の元へと送り、お礼を言う。

 

「助かるよメディスン」

「スーさんを刈られたら困るから、仕方なくよ」

 

人形はそっぽ向き、踵を返して、また鈴蘭畑にへと入っていった。メディスンは人形ゆえに、この鈴蘭畑に行かれると、少女がどこにいるのか判らなくなる。焼き払ったら丸裸にはなるが、ソレをするとオレが殺されるのでしない。

だが、昭和時代か……紫と幽香に命じ、日本の妖怪を全て集めさせ、且つ従えさせた。土台はある程度終えているのだ。今のオレがやるべきコトと言ったら、天津神・国津神の血と、天皇の血を、戦国時代まで血を受け継がせ、その時代から平成時代まで、神裔を生かしていくコトだ。

 

お互いの腕を組みつつも、今まで隣で黙っていてくれた彼女がヒマそうだったので、オレの左手を妻の頬に当てた。そのまま顎まで下ろし、クイっと持ち上げて、顔を無理やり自分の方へと向ける。

いきなりだったので、妻は瞠目したが、準備出来てますとばかりに目を閉じ、唇を差し出してきた。でもソコでやめた。諏訪湖にいかなくてはいけない。

左手を顎から離したコトと、キスしてこないコトで焦らされたのか、閉じていた両目を開けると、現状を把握して、恨めし気な目で見られた。

 

「糠喜びさせて擯斥するのはどうかと思いますわ」

「本当は今すぐにでも口付けをしてお前を抱きたいが、一度したら止められないんでな」

「そう思っていただけてるなら嬉しいですけど……ホントに私を抱きたいと思ってますか?」

「はい。いじらしくて、レイプしたいと思うほど」

「ならいいですわ。口付けも、抱かれるのにも、光明が差してきました」

 

落胆顔だった青娥は、女として観られていると判った途端、上機嫌になってさっきの表情も消え失せた。本来ならば、彼女は彼女なりの感謝の気持ちはあるんだろうけども、オレが娶ったコトや、女好きなのもあり、抱かれるコトを選んだんだろう。てかそっちのほうが嬉しいです。

オレのモノにしたいというのはウソである。でもクーリングオフしたいけど出来ない。しかしながら、性格・人格に聊か問題があるとはいえ、カラダに関しては文句の付けようがないのも事実で、レイプしたいのもホントだ。

 

「じゃあ、オレは諏訪湖に行くよ」

「もう少しだけお傍にいたいですけど……判りました」

「娘々は、早く華扇を仙人にしてくれ」

「もちろん、あの時の約束は守ります。ソレと、華扇についてですが......」

 

華扇の話題を出した途端、さっきまで 和気藹々の雰囲気だった青娥は、××神話に引き込んだ際に交わしたコトの確認を、肯定しながらも、そのまま言葉を紡いでいくが、段々と声色が変わって、言葉を途切らせた。

この場の雲行きが変わり、ただ鈴蘭畑が風に靡く音が耳に入る。ソレを聞き流しながら、途中で口を閉じていた彼女は、重々しくも、言葉を繋いでいく。

 

「嘗てのアレは、ヒトと妖怪の平和を謳う側でした。老爷は、ソレでも構わないのでしょうか」

「……」

 

…華扇はインド神話に出てくるऋषि(リシ)でも、室町時代にいた金春禅鳳の作品・一角仙人でもないよ。ましてや、かつての青娥が憧れた、八仙の女仙・何仙姑でもない。鬼女なのだ。

故に、無言で返し、肯定した。

江戸時代の朱子学の儒学者、哲学者・新井白石は言った。

『神は人なり。』

言いたいコトについて、判らなくはない。神話に出てくる神々とは、殆どは人間みたいに感情的に動くからさ。

だがな。例え、神という存在が、人間みたいな存在だとしても、人間の価値観と倫理を語るのだけは、絶対にしちゃいけない。

もちろん、旧約聖書に書かれているヤハウェが、イスラエル人に神の教えを説き、ソレを守りなさい。って言うのは、別におかしくない。なにせ、ソレは聖書にちゃんと書かれているからだ。

従って、古事記と日本書紀に書かれているなら、日本神話の神々だって、人間の倫理と価値観を語ったとしても、大した問題ではない。なにせ書かれているから。

つまり、聖書に書かれてないコトをヤハウェに言わせたり、ギリシャ神話にないコトをゼウス達に言わせたり、古事記と日本書紀に書かれてないコトを日本神話の神々に言わせるのは、

虚言で(・・・)妄想(・・)妄言なんだよ(・・・・・・)。コレは、拡大解釈や、曲解したコトでも、同義だ。

 

それでいいなら。と、それ以上、彼女は何も言わず、息災を願って見送る。

 

「老爷も道中は気をつけてください」

「流石に諏訪国で死ぬコトはない」

 

彼女は、先程の問いと、夫婦の時間を楽しむのにまだ腹八分目とでも言いたげだが、青娥とこの場で乖離した。諏訪湖へと向かおう。

さっきから、というか神社の裏にある蔵から出た時点で、オレの周りには、霧になった萃香がいるし、なにかあっても逃げる。死ぬコトはない、ハズ。

諏訪湖へと向かう道中、鬼について思い出すが、鬼にも長い歴史はあるワケだ。

 

「歴史か……」

 

原始仏典の一つ、経典・ダンマパダにおいて、古代インドの哲学者・釈迦は言った。

『およそものごとは、意思をその基本とし、意思をその主とし、意思によってそれが創り出される。からだから影がついて離れないように、もしも清らかな心で話し、行えば楽しみはその意思をもつ人についてくる。』

辻説法も聞いていいと思うほど、釈迦の説法は、平成時代の人間に通用するくらい、教訓になる。仏教にとって、金科玉条は大事なコトだ。だが剃髪染衣の生臭坊主はくたばれ。

釈迦は偉大だよ。でも、こうして色々な書物・法・教えを読んで思うが、結局は読んだとしても、それは読んだモノの(・・・・・・)主観と(・・・)解釈という名の妄想でしかない(・・・・・・・・・・・・・・)。コレを軽々しく〝真実(正しい)〟などと、とてもじゃないが、言えないよ。

徳川家康の側近で、江戸や四神相応に関わり、その正体は明智光秀説がある天海だって、ソレはあくまでも説であり、それ以上ではないんだ。山王一実神道は好かんがな。

オレだって、自分が正しいなんて思ったコトは一度もないし、そう自惚れたコトもない。

だけれども……

 

「じゃあ観るなとか、納得しろとか、コレはこういうモノなんだよと言われても、ムリだ」

 

日本の歴史と神様の歴史、または神話を読まずに神を語ったり、神を使うヤツは総じてクソだが、平成時代まで残った神話とは、基本的に後付け、と言いたいのは判る。例えばギリシャ神話だってローマ神話の話が混ざってるからな。というか、コレは殆どの神話に言えることだよ。だからさ、ソレは否定しないし認めるさ。否定できるワケがない。

ギリシャ神話だって、キリスト教徒によって後付けされた部分もある。ソレは旧約聖書だろうが、新約聖書だろうが、インド神話、中国神話、古事記と日本書紀にだって、後付けは言えるコトさ。

例を挙げようモノなら、枚挙に遑がないよ。

だが。だからこそ、コレを言う。

 

「〝昔と今は違うんだよ〟」

 

勘違いしているモノはムダに多いが、神話に後付けが許されたのは昔の人間だけだよ。なのにさ、明治時代で完成されてる神話に対し、インターネットなんてモノがある平成時代の人間が、余計な設定を盛り込むのはアリ、なんていうのは、決して、平成時代の人間が言っていいコトではない。ソレを言っていいのは昔の人間だけだ。

大体ソレは、昔の話なワケだが、平成時代と紀元前が同じ、なんてほざくヤツは、言ねえだろう。紀元前と平成時代ではなにもかもが違うというのに、〝同じ〟なんて、おかしなコトを言うワケないよな。

 

「白鵬の反則エルボーでも喰らえ」

 

ソコで黙り、雑草と湿った土を踏む音が止む。遂に目的地の諏訪湖へと来たからだ。

真夜中だが、月明かりのお蔭で、周りや、足元までよく観える。湖に映る月が反映され、瀲灩しているが、どっかの小説みたいに、あそこへ入って月に行けたら面白そう。

しかし、流石は諏訪国一の淡水の湖、唯々でかい。

ただ、さっきからダレカの歌声が聴こえる。彼女だろうかと思い、辺りを見渡すが、どこにも見当たらない。とても澄みきった歌声が、聴こえるだけだ。一瞬でも気を抜くと、その歌声へと夢中になり、なんだか誘惑されそうになる。

わかさぎ姫に会う場所を最初から決めている。近くに沿岸と遠浅があるけど、人工の遠浅砂地だ。前もって会う場所を指定した、と永琳から聞いている。一応、オレも海神なのだが、諏訪湖を潜って人魚のわかさぎ姫を探すのは、出来なくもないけど、しない。

一向に出てくる気配がないが、寝てるのかな。雷霆……を投げると大変なコトになるし、神としては地味なやり方だが、ココは念話を送ろう。序でに発炎筒を使うか。

お、歌声が止んだ。でも、わかさぎ姫って記憶が戻ってるのか戻ってないのかを、オレは知らないや。

よし、ここは英語のエロい単語を念話で送りまくってみよう。意味を知らなきゃただの雑音だが、意味を知ってたらセクハラと取られるけど、大丈夫だろ。多分。

 

「あなたは、私を退治しに来たのですか?」

「しません。そんなコトしたら、オレが神子に殺されるじゃないか」

 

念話でバカなコトを送りつけていると、水面から静かに、一切の波紋を起こさず顔だけが出て来た、のはいいけど、まず第一声が、不安そうにしてから疑問を投げかけてきた。

殺されるかもしれない、という恐怖を、彼女は感じているのかもしれないと思ったが、声色から伺うに、どうやらそうでもないらしい。

 

「……恥ずかしながら、送られてきた単語を、私は聞き及んだコトがありません。どういう意味でしょうか」

 

「ゴメンゴメン。ソレは特に意味はないんだ」

「そうでしたか」

 

さっきのでかなり警戒されているのかと思いきや、彼女は水辺から遠浅へ来ると、波に体を揺られながら、鱗に覆われた下半身だけを、そのまま横たわらせた。警戒心薄すぎではないだろうか。

上は着物を着ているが、諏訪湖に入っていたので、当たり前だが、びちょびちょだ。彼女の青色の髪から、水滴が流れて、地面へとぽたぽた落ちていき、火照った顔も合わさって、なんかエロい。着物も濡れてるし、これが、水も滴るいい女と言うやつか。下半身は魚、と言っていいのかは微妙だけど、その部分にはなにも着てない、丸出しなワケだが、これは、裸を見せているコトと同義ではないのだろうか。人魚の価値観は判らんな。

 

「で、諏訪湖の住み心地はどうだい。問題があれば改善するが」

「そんな……ココは静かに過ごせますし、それでいて、暖衣飽食で困りません。まるで天佑神助。感謝こそすれ、不満なんて……」

 

「それは良かった」

 

おっとりしている彼女は、本当に感謝しているコトを、深厚で真摯な心から、胸の内に秘めていた気持ちを明かす。

もしかしなくても、彼女はかなりいい子なのではないだろうか。これは、ちょっと、いや、かなり心配だ。神子がオレに嫁いだ、というのもあるんだろうけど、彼女、博愛主義なのかもしれん。

昔、あの鬼人正邪が、弱者が支配する野望で、少名針妙丸を誑かした時では、打ち出の小槌の魔力の影響で、わかさぎ姫も暴走はしていたが、今はその影響ないお蔭で、彼女は鷹揚して、かつての片鱗を感じない。

 

「諏訪大明神のご寛恕に、心から感謝を」

「礼なら、神子に言ってくれ」

「はい。そう伝えました。ですが、貴方と同じコトを言われましたよ」

 

彼女は口角を上げ、両目を閉じ、祈りのポーズをしながら、感謝の意を示された。

神使として人魚はどうしても欲しかったから、別に感謝されるほどじゃない。神子とオレの利害が一致しただけだ。なによりオレは、雷神ではあるが、海神でもあるのだから。

あ、彼女は、永琳から人間になれる薬を貰ってるハズだ。承諾してくれたら、後で、わかさぎ姫の下半身が人魚から人間へと成っていく過程を、まじまじと見せてもらおう。

 

日本神話の神々は、古事記と日本書紀にあるように、役割や立場は決められたコトが色々ある。

だが、我々××神話は、その神話を捨てた。従って、日本神話のように決められたモノは少ない。故に、××神話の神々は、日本神話を正史通りに進ませ、天皇、物部氏、出雲氏、諏訪氏のような神裔を、不老にして、天津神と国津神の血を、戦国時代まで受け継がせていく役割を担っている。

戦国時代代からは、ミトコンドリア・イヴと、Y染色体アダムのニンゲンを養子に取らせ、今まで守って来た家督も、譜第も終わり、全て神裔ではないニンゲンへと譲らせる。だから、もう、神裔は産まれないのだ。

平成時代の人間は、"宗教ではなく科学を選び神を捨てた"と勘違いしてるモノは多いが、実際はそうじゃない。神が人間を捨てたんだ。混血しかいない、雑種しかいない、ニンゲンモドキを。

 

「少し変なコトを訪ねるが、キミは人間に対してどっちなんだい」

「どっちとは......どういうことでしょうか?」

琉球國(沖縄県)には人魚伝説があるんだが、この話は両極端でな」

 

紫と幽香は、ニンゲンを妖怪よりも下に観ている。だが、天神地祇の血を引く神裔のニンゲンに関してなら、ソコまで見下していない。出来た娘達だ。

オレは最初から、ニンゲンなんぞ見下しているよ。天皇みたいな人間は、例外なだけでな。神裔のモノは気にしないが、そうでないただのニンゲンはキライさ。

そして、ギリシア神話には、Σειρήν(セイレーン)という怪物がいて、その怪物は、平成時代では人魚と同じとされている。アレは元々、人魚ではなかったが。

 

それで、江戸時代に出来た『稲生物怪録』というモノがある。内容を掻い摘んで言うと、コレには妖怪の魔王・山本五郎左衛門が、稲生平太郎を驚かそうとしたけど、彼は全く動じず、その気丈さを称えた、という話だ。しかも、稲生平太郎は、実在した人物である。

昔、コノ稲生平太郎という人間が気になって、彼の家系を調べて判った(・・・・・・・・・)。彼は平氏・藤原氏の血を引くモノだったのだ。平氏は天皇・皇室からの輩出で、藤原氏は娘を天皇へ嫁がせて近親婚を繰り返し、天皇の血が入っている。つまりはそういうコトだ。

そもそも藤原氏は天皇の血がなくても、天津神・天児屋命が祖神で、天皇と同じ神裔だがな。

 

「人間を助ける話と、そこに住む人間全てを津波で死なせる話がある」

 

ホント、今まで長かったよ。自由にして来たように観える、かもしれないが、実際はそんなコトはなかった。もちろん、オレはセックスと女が好きだよ。ただ、女好きで娶って来たのは事実だが、ソレは他の事を考えないようにするためにしてただけだ。

長かった。ココまで来るのにも長すぎた。盈虚を何度観ただろうか。もう、ビッグフット数くらい回帰してるが、気が遠くなるほど繰り返しても、永遠なんて、まだまださ。

 

「もう一度聞くが、キミはどっちだ」

「......ソレは、大事なコトなのでしょうか」

「この先の分水嶺を左右するくらいには」

 

別に、どちらを選んでも構わないんだ。どんな回答だろうとも、諏訪国から出ていけなんて言う気はないし、神使としての資格を剥奪する気も、ましてや四六時中、監視体制を敷く気もない。

淡水に棲む人魚――わかさぎ姫については、神子に頼まれていたコトだから、今更ソレをなかったコトにもしない。だが、彼女がニンゲンに対してどう思ってるかについては、やっぱり確認しておきたいんだ。

例え、記憶が回帰してなくても、あの時の感情を復元してなくても、胸襟だった仲を、全て泡沫の如く消えてもだ。

 

「私は――」

 

人魚は、一縷の望みを言葉に乗せて、答えてくれた。

いきなりの無茶ぶりにも、真剣な表情をして答えてくれた人魚の言葉を聞いて、満足だ。

影狼と会わせてみようかな。アイツもオレの神使として諏訪国にいるが、今はわかさぎ姫と仲良くなってないので、草の根妖怪ネットワークは、まだ結成されてないハズだ。

八ヶ岳(妖怪の山)にいる古明地さとりと、古明地こいし、赤蛮奇も、紫と幽香が従えたみたいだし。

懐から、諏訪子に貰った犬笛を取り出し、そのまま口に含んで笛を鳴らすと、湖の諏訪湖や、辺りの沿岸や平原に響き渡った。コレでオレの神使である狼は、条件反射で音に反応して、すぐ来るだろう。諏訪子と永琳がアイツを調教したらしいが、まるでパブロフの犬だな。一応、アイツは狼なのに。

彼女は、なぜ笛を今吹いたのか、不思議そうにコチラ観て、首を捻ったが、オレは気にせず話し続ける。

 

「答えてくれて助かったよ」

「本当に、コレでよかったのでしょうか」

「ソレでいい。オレは好きにした。キミも好きにしろ」

 

「え......あ、今、スキって仰って……」

 

人魚は、自分の両手を両頬に当てて、顔を隠した。彼女を真っ赤にさせるような発言を、してしまっただろうか。目の保養になるのは嬉しいが、全く身に覚えがない。

まあいいや。大事なコトをちゃんと聞くコトが出来た。後は、犬笛で呼んだアイツと会わせよう。

 

最初は微音だったが、次第に地を蹴る音が聞こえ始め、ソレがだんだん大きくなっていく。音がする方へと顔を向けたが、月の光が届いてないから、よく観えないんだけど、ソイツは森林の奥から駆け抜けながらも、まるで逃がさないように、刺すような目付きでこちらを観ていた。

 

「狼男だな。間違いない」

「狼女です!」

 

すると、獲物でも襲おうとしていたソイツは、森を抜けて、ようやくオレが呼んだと判ったのか、両足に力を入れて、止まるために踏ん張ろうとしているが、地面と足が擦れているので、その摩擦と推進力の衝撃により、けたたましい音を出し、足回りに土埃が舞いながらも、オレの隣でなんとか止まった。

止まった、のはいいが、誇りだけは高いこの狼は、さっきから、人魚に穴を開けんばかりの視線で観ているが、食べ物が目の前にあって我慢できなかったのか、腹が減っているのか、狼の腹部が小さく鳴り、その音を聞いた人魚の口から、かすれた悲鳴が漏れた。

……コイツ、永琳にわかさぎ姫を食べたらダメ、と一度言われてるハズなのに、流石だな。アレに逆らうなんて、オレでも出来ないぞ。

 

「スゴク美味しそう。ねえねえ神様......アレ(人魚)、食べていい?」

「ダメです。喰おうとしたら、咲夜を呼んでナイフの錆にしてもらうぞ」

「ひえー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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物有本末、事有終始。知所先後、則近道矣

Εν αρχη ην ο λογοs,(はじめにことばがあった。)και ο λογοs ην προs τον θεον, (ことばは神と共にあり、)και θεοs ην ο λογοs(ことばは神であった)

 

「言は人となって、私たちの間に住まわれた。そして、三つで立体となり、Θεός()となる」

 

不自讃毀他戒、不自讃毀他戒。

旧約聖書・創世記 第11章06節

『言われた。"彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。"』

旧約聖書・レビ記 第19章18節

『あなたはあだを返してはならない。あなたの民の人々に恨みをいだいてはならない。あなた自身のようにあなたの隣人を愛さなければならない。わたしは(ヤハウェ)である。』

 

「心不在焉、視而不見、聽而不聞、食而不知其味。扶桑略記。アマテラスはなんて言うか……」

 

殯宮の中で、棺に入れられ横になっている人物を眺め、料簡する。殯はとうの昔に終えているが、肉体だけは依然として残っていた。

穢れた俗世と神聖な場所を隔るため、結界の役割を担う御簾の奥にいて、昔からよほどのコトがない限り顔を見せない主上――天智天皇の玉体を左手で触る。当たり前だが体温を感じられず、既に魂も抜けており、抜け殻がソコにあるだけだった。間接的にオレが天智天皇を殺したけど、死後のカレは霊となり、神となっている。

だが、ソレだけではない。薄まってるとはいえ、この神聖な器には、イザナギとアマテラス、天皇の、神の血が残っている。例え目の前にあるのがただの肉の塊でも、アンコウ並みに捨てるところがないのだよ。これで九仞の功を一簣に虧くコトにならないだろう。

玉体が腐敗して穢れが生じる前に、本来なら火葬・埋葬、もしくはコールドスリープのような装置を施すべきだろうが、咲夜の能力で時を止めている。だから腐敗が進行せず、腐敗ガスも穢れも出ていない。

 

「生きとし生ける全てのクレタ人は、神様はみんな嘘つきだからなあ」

 

真夜中に天智天皇の死体を観に来ていたが、いつの間にか雲間から太陽の上辺が地平線と重なっており、既に半分も昇り始めていた。殯宮から出ると朝日の眩しさに目がチカチカする。慣れるまで右手で庇させながら目的地に向かう。

実は地獄の女神・へカーティアを、諏訪国にいる魔女へと会わせるため、御射鹿池で彼女と待ち合わせしている。太陽が地平線から昇り終えた頃に会おうと言っていたから、すぐに向かった方がよさそうだ。

能面になっているこころを掴み、側頭部に張り付ける。

 

「臆病な自尊心と尊大な羞恥心。言いたい事も言えないこんな世の中は……」

 

日本には鬼退治、勧善懲悪をした伝説が多い。

例えば鬼を退治したとされている有名な人物を挙げると、吉備津彦、彦坐王(日子坐王)麻呂子親王(当麻皇子)、他には源頼光と渡辺綱、平維茂。パッと出てくるのだけでもこれだけいるが、鬼に纏わる他の人物を挙げようものならば、キリがないだろう。

しかし、だ。そもそも英傑とされ、主人公でもあるカレらの名を観て大凡は察せられるだろうが、全員、神の血を引く天皇の後裔、つまり神裔である。

吉備津彦は第7代天皇・孝霊天皇の第三皇子だし、彦坐王は第9代天皇・開化天皇の第三皇子だし、麻呂子親王は第31代天皇・用明天皇の第三皇子だし、平氏の平維茂や、源氏である源頼光と渡辺綱については言わずもがな。全員、神の、天皇の血を引いてる。

静岡県にある鬼岩寺によれば、あの空海――弘法大師にも、鬼に纏わる話がある。しかし……昔のコトとはいえ、なぜ中国唐代の僧・恵果なんぞに弟子入りし、密教なんていうクソみたいな仏教もどきを持ち込んだんだ。

 

「コレを良しとするか、全ての人間には可能性がある。などと大衆へ甘言をほざき、納得できずに否とするのか。それとも儒教のように、努力すれば報われる、と説くのか」

 

そう、鬼退治に出てくる主人公は、どの人物も、イザナギとアマテラス、天皇・皇室の血を引く、言わば英雄である。すなわち、ただの人間が鬼を退治した、という伝説ではない。こうして観ると皇族は第三皇子ばかりだが......どうでもいいか。

確かに日本は、特別なモノばかりが主人公の話だけではないさ。そういう話は、中国の影響が大きいがな。しかしながら、これらの話を否とするのは、日本の歴史・伝説をある程度否定するコトに繋がるだろう。だが…コレに納得するというコトは――

 

「家も、血も、知も、才能も、容姿も、何もないモノは、そんな存在になれない事の裏づけだね」

 

噂をすれば影が差す。御射鹿池へと向かう途中、雲散霧消していた霧がオレの周りで濃くなっていき、ソレが人型へと形作られていくと、なんと目の前には角が生えた少女が立っていた。

正体は萃香なんだけども。どうでもよさそうな声色で、鬼ころしを鯨飲しながら、鬼女は言う。

 

「つまり、そういう意味」

「ソレでいいじゃないか。そうじゃないヤツが鬼を退治するのは納得できんからな」

「私はどうでもいい。どこぞの源氏みたいに韜晦せず、面白いヤツならそれでいいさ」

 

オレはこんなにも曝け出し、欲望の赴くまま愚直に生きているというのに、萃香は睥睨した。

あくまでも憶測で話すなら、萃香みたいな鬼が気に入る人間は、面白くて、妄想の中だけじゃなく、ちゃんと鬼に立ち向かえるヤツだろう。内弁慶で阿諛追従、濡れ手で粟。そんなヤツは大ッ嫌い、だと思う。ただパルスィは鬼女でもあり、ペルシア神話・イラン神話・ゾロアスター教神話の女神でもある微妙な立場なのだが、勇儀や華扇、ヤマメと紅葉もそんな考えなのかもしれん。

以前、花見をしてる時に聞こうかと思ったが、酒がマズくなると怒られそうだし、聞けずじまい。実際のところ、鬼女である彼女たちの、人間に対する内情を聞いたコトがないのだ。

男の鬼である悪路王、大嶽丸と犬神丸には聞いたコトないし、今度聞いてみよう。

 

「でも、鶯王、吉備津彦、彦坐王(日子坐王)麻呂子親王(当麻皇子)の鬼退治の話、私は結構好きだよ」

「オレは坂上田村麻呂か、源頼光の話の方が好きだが」

 

源氏の名を出した途端、萃香は杯にあった酒をあおる動作がピタリと止まる。

興ざめしたらしく、飲むのをやめ、柳眉を逆立てて、徐々に振る舞いや、空気全体が変わった。

羹に懲りて膾を吹くとは言うが、なんと懐かしい感情か。まだ世界が初期頃以来のモノだ。ここ最近、神奈子がオレを殺そうとしなくなったからなあ。

 

「おい......いくら弘でも、あんな源氏の名を出すな」

「不服なのか」

「当たり前だ。勇儀と華扇はどう思ってるのか知らないけど、私が納得する日は来ないよ」

 

あの二人に、記憶はないハズだが……。

萃香は、鬼ころしを飲んでほろ酔いしてるせいか、頬を赤らめながらもオレに怒鳴りつけた。最初は源頼光に対する照れ隠しかなと思ったが、空気がピリピリして、殺気が半端ないし、これはどう観ても照れ隠しじゃない。よほど根が深いらしい。

土蜘蛛も、昔はよく殺されたものだが、それでも鬼よりは少ないか。鬼女であり土蜘蛛でもある、あのヤマメも娶ったが、彼女もどう思ってるのだろう。

萃香は低身長なので、腰を落とし、見た目は幼妻の肩に左手で置いた。

お前が言うなと思われるだろうが、ココは、萃香の夫として、忿懣な妻の機嫌を諫めるとしよう。

 

「逢佛殺佛、逢祖殺祖、逢羅漢殺羅漢、逢父母殺父母、逢親眷殺親眷、始得解脱、不與物拘、透脱自在」

 

「......弘もたまには面白いこと言う」

「そうだろ。我ながら感心すると自負している」

「皮肉に決まってるだろ!」

 

仏教の宗派・臨済宗の教えでは、"逢佛殺佛、逢祖殺祖、逢羅漢殺羅漢、逢父母殺父母、逢親眷殺親眷、始得解脱、不與物拘、透脱自在"という教えがある。仏に逢ったら仏を殺し、父母に逢ったら父母を殺せ、という言葉で有名なヤツだ。実際に親や仏を殺せという意味ではなく、どんな時でも、例え相手が親や釈迦だろうとも、感情に左右されず、執着せず、拘らず、全てを絶ち、無心でいなさい、さすれば自在になれる、というモノ。

 

「いいや。これに関しては、こればかりは、他の誰でもない、このオレが言うからいいのだ」

「精衛填海......ソレ、いい加減やめた方がいいよ」

「縦欲之病可医、而執理之病難医、事物之障可除、而義理之障難除」

 

要するに透脱されれば、解脱し、欲望・感情、煩悩の束縛から解放され、無になる。

なんとも素晴らしい思想じゃないか。相手が釈迦だろうが親だろうが、感情に左右されず、執着しないという考えは、妻と子を捨てて出家し、苦行や飢饉を体験したが、ソレでは真理に到達しないと悟り、最後は涅槃の境地に至った、あの釈迦の教えに近いだろう。

 

「オレは狂言の曲目・附子が好きなんだよ」

 

「......私は能の演目・猩猩の方が好きだよ」

 

附子と言えばトリカブト、トリカブトと言えば……ギリシア神話の女神・ヘカテー。

いつもは美味しそうに鬼ころしを飲んでる鬼女は、まるで苦い薬でも飲んでそうな表情になり、その言を最後に、雲が晴れるようにまた肉体を霧散させて消えた。しかし気配だけは、オレに纏わり付くようにあった。

機嫌を損ねてしまったか。オレは狂言派だが、萃香は能派らしい。音楽性の違いで、夫婦仲に亀裂が入ってないか心配だ。

だが萃香よ。鬼はウソがキライだ、と言うが、お前も、あの洞窟で初めて会った時から今日まで、勇儀と華扇に悟られないよう、ずっとウソをついてるじゃないか。大根役者なんてとんでもない。周りを欺く役者ぶりで、口八丁なことだ。お互い様だと言われそうそうだが。

 

「そもそもさ、なんで"鬼は嘘がキライ"って刷り込まれてるんだろうな」

 

中国後漢時代・王充が著した『論衡』の記述に、『如人死輒為鬼、則道路之上、一步一鬼也。』とある。

先程、鬼退治をした人物の名を挙げたけど、当然その話には鬼が出てくる…のだが、少なくとも、オレが知ってる鬼は、そういうモノではなかった。

 

「そりゃあ酒顛童子が原因だろ?」

「そうだな。でもソレは、酒呑童子に限った話。他の鬼でそんな話あったか」

「言われてみれば......ないね」

 

そうなのだ。源頼光を除いて、"鬼は嘘がキライ"、などという設定は、さっきの鬼退治の話に出てくる鬼達にはないんだよ(・・・・・)。死に際で鬼神に横道なきものをとか言ったけど、笑えるよな。

あの、あの鬼だぞ。どの口で言ってんだ、文献に出てくる鬼は横道ありまくりのクソクソクソクソなのにさ。そもそも日本の伝説に出てくる鬼は酒呑童子だけじゃないのに、そんなコト言ってんだぜ。一体ダレが酒呑童子の話を拡大解釈して、妄想を垂れ流してるんだろうなあ。

あー面白。ホント滑稽だな。だが、なんだか場の空気が暗くなってしまった。酔いが醒め、素面になっているだろう萃香に、話題転換して気分を変えようと、伝説上の人物ではあるが、大きな夢を抱いて死んだ男の、偉大な先人の話でもするか。

 

明時代(16世紀)、中国にいたワン・フーは、花火を取り付けた椅子に座り、宇宙へ行こうとしたんだ」

「......いいじゃない、そういう人間は大好きだよ。人間とはそうでなくてはいけない」

「そうさ。だからオレは女を侍らす夢を諦めない」

「弘はソレしかないんだね。その前に神じゃないか」

「もしも永琳から、金輪際鬼ころしを飲むな。と言われたら、どうする」

「ムリ」

「はい」

 

さっきまでブルー入っていた鬼女は、その男の話を聞いて面白いと思ったのか、霧になってるから姿は観えないけど、今にも浅酌低唱しそうなくらい声が弾んでいき、聞いただけで昂揚していると判った。だが酒の話をしたら、即答で態度を変えた。

文字でナニかを表現しようとするなんて、紀元前からされている。口伝や文字だけだった物語に絵を描いて彩るなんて、紀元前からされている。人間を使い、舞台の上で演劇して、物語を観客に魅せるなんて、紀元前からされている。

 

「ボクがマリオなら、誰かが操作してるはずなんだ」

 

マリオ()ってマリオ()自身が妄想してるワケじゃない。マリオ()を操作してるヒトが妄想してるだけで、マリオ()に責任はないんだ。

それで、マリオがお姫様を助ける存在として認知されてるように、神って、なぜか人間を救う存在として刷り込まれてるよな。時には罰、病、災害なんかも起こすけど、助けてくれる時だってあるにはあった。

でも、だけどさ、日本神話の神々において、神が力添え・助けた多くの相手は、一体ダレの血を引いていただろうか。

 

「カタカナの〝()〟と、漢字の〝(チカラ)〟は、パッと見だと同じに観えるが、意味は全く違う」

 

旧約聖書・エレミヤ書 第22章3節

(ヤハウェ)はこう言われる、公平と正義を行い、物を奪われた人を、しえたげる者の手から救い、異邦の人、孤児、寡婦を悩まし、しえたげてはならない。またこの所に、罪なき者の血を流してはならない。』

神が助けるのはその辺にいる人間か、いいや違うな。どこにでもいる平凡な人間か、いいや違う。才能がなくても努力する人間か、いいや違う。面白い人間か、いいや違う。自分の身を挺して他人を救ってお為ごかしして悦に入る人間か、いいや違う。

フハハハハハッ!! なに自分勝手でいい加減な妄想を〝神〟に押し付けてるんだクソ共がッ! そしてなにより、最後のだけは、最後のだけは絶対にあってたまるかッ!

つまりさ、勝手に"神"という存在へ期待して、いざ自分自身で理想としていた"神"を目にすると、勝手に失望して、自分が勝手に"神"へと押し付けていた理想に裏切られたと思い込むクソ猿。

人間とは、なんて身勝手で、気持ち悪いクソ共なのだろうか。

 

「冷眼観人、冷耳聴語、冷情当感、冷心思理。口で言えば簡単ではあるが、オレにはムリだろう。攻人之悪、毋太厳、要思其堪受、教人以善、毋過高、当使其可従もムリだ」

 

アメリカのSF小説家 ロバート・アンスン・ハインラインという人物がいた。

旧約聖書・レビ記 第19章15節

『さばきをするとき、不正を行ってはならない。貧しい者を片よってかばい、力ある者を曲げて助けてはならない。ただ正義をもって隣人をさばかなければならない。』

第19章16節

『民のうちを行き巡って、人の悪口を言いふらしてはならない。あなたの隣人の血にかかわる偽証をしてはならない。わたしは(ヤハウェ)である。』

レッテルを張るという言葉、まるで、メアリー・スーの意味と同じく、神・仏という存在・言葉の意味が、変わっていった時みたいに、なんと便利で、使いやすく、都合がいい言葉だ。

 

「『弘仁遺誡』と『承和遺誡』では、空海――弘法大師は、釈迦の教え、戒律を守らないモノを、釈迦と自分の弟子ではないと述べている。教えを守らないと別モノになるからだ」

 

たまに、自分がイヤなコトを他人にするな、他人に迷惑をかけるな、非難するな、などと、どこぞのクソ共が道徳家を装ったモノをよく聞く。

あのな、その倫理・思想はユダヤ教(キリスト教)の聖書、儒教の論語、ヒンドゥー教のマハーバーラタに同じ、または似たような記述があるのを知ってるのか。いいか、宗教の聖典に書かれてるんだぞ。つまりソイツらは、宗教と同じコト、宗教行為をしてるワケだ。なにせ、倫理・思想を布教してるようなもんだからな。いや、布教ではなく垂れ流しか。

おいおい、そんな思想・倫理を語るなんて宗教かよ。やっぱり日本人は宗教大好きで、気付いてないくらい宗教思想にどっぷり浸かってる、クソ民族じゃないか。当たり前みたいに、倫理を語る奴だけは、批判ではなく非難・論難しなきゃいけない。

以前オレは言った。本当の意味での無宗教とは、本能のままに生きる動物、ケダモノだと。

法も、思想も、倫理も、論理も、政治も、差別も、価値観も、信条も、批判も、ソレらが出た時点で、どれだけキレイに述べても、ソレは紀元前から続く宗教と同じであると。宗教嫌いの日本人がソレを語った時点で、日本人は宗教を非難する資格はないとな。

儒教の始祖・孔子は言った。

『孔子曰、君子有三戒、少之時、血氣未定、戒之在色、及其壯也、血氣方剛、戒之在鬪、及其老也、血氣既衰、戒之在得。』

 

「子曰、丘也幸、苟有過、人必知之。儒家の始祖・孔子は、蘧伯玉を感心したと言われているが、澹薹滅明という人物を見た目で判断して見誤り、失敗した例もある。殷鑑不遠、在夏后之世だ」

 

明治政府は、南朝の功臣の子孫探して、爵位させようとしてたのは有名だ。

人間というモノは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感に頼り過ぎてる。確かにソレがあったからこそ、紀元前から今があるんだろう。だが、ソレは裏を返すと、人間という動物は、思い込みに陥りやすくなる生き物、というコトでもある。

"お前"や"貴様"という二人称も、今でこそ罵る言葉や、相手に失礼な物言いと言われてるが、本来はそういう意味ではなく、大昔は相手に対し敬意の言葉で使うモノだった。

それで人間には、相手を尊重するという思想・倫理がある。だけど、尊重っていったいなんだ。

問題点を挙げず、しかもソレを批判せず、腫物でも扱うかのようにするのが〝尊重〟だってのか。ソレを押し付けず、詩人・金子みすゞの『私と小鳥と鈴と』みたいに、"みんなちがってみんないい"などとほざくのが〝尊重〟だってのか。

 

「旃陀羅。不自讃毀他戒。アマテラスはビッチ。と言ったら、どうなるかな」

 

ふざけるな。ソレは、触らぬ神に祟りなし精神・思想だ。単に面倒事を避けてるだけだ。関わり合いたくないだけだ。ソレは平和とは言わない。ソレは尊重とは言わない。ソレは相手を思いやる心ではない。綺麗な言い方してんじゃねえよ。

確かに万人が納得するコトはないだろう。が、自分とは異なる主張をする相手の意見をよく聞き、ソレはダメだと無理強いはせず、自分の思想だけを固執せず相手の思想も譲歩し、その相手に非難され、嫌われるコトは覚悟し、他山之石可以攻玉の気持ちで考えて行動し、問題点を批判をする。

そこで、初めて、〝尊重〟と言うのではないのか。全面的に否定するのはどうかと思うが。

要するに故好而知其恶、恶而知其美者、天下鲜矣だよ故好而知其恶、恶而知其美者、天下鲜矣。

 

「夏草や兵どもが夢の跡。四方の海みなはらからと思ふ世になど波風の立ちさわぐらん」

 

対話・議論を放棄した人間は、人に非ず。ならオレは、相手を尊重なんかしない。設定やお人形を尊重しない。創作物に敬意の気持ちを、畏敬の念を抱かない。言い方にだって気を遣うのはやめよう。なにせソレは、尊重じゃねえからな。そんな臭い物に蓋をして、都合のいい言葉にクソを塗りまくった都合のいい倫理は、倫理ではない。ソレは、倫理・道徳への冒涜だ。一切批判されず、ただ肯定されるなんて、もはや人ではない。一番タチが悪いのは、話そうとしないモノ。

その点、古代ギリシア・古代中国・古代インドは凄かった。あれだけの思想家が出て来たのだから。しかもその思想の殆どが、平成時代でも通用するモノばかりだし、偉大で天才と言わざるを得ない。

 

「中国の古典・『菜根譚』によると、善読書者、要読到手舞足蹈処、方不落筌蹄、善観物者、要観到心融神洽時、方不泥迹象とある」

 

千差万別なんてほざくのもいる。仮に、本当に考え方は人それぞれ、と思ってるなら、元となったモノを読んだり調べたりしなくても、二次創作はしてもいいというコトだ。改竄・捏造・歪曲をしても、当然ながら非難されるべきではない。オリジナルキャラを出してもいいだろう。例え神話に出てくる神様の設定を変えたりしても、酷評・論難されるべきではないだろう。原作を壊しても、無茶苦茶にしても、別にいいだろう。自重しなくていい。自己投影もアリだ。執拗に特定の人物・組織を叩きまくったり、あまつさえ惨めなやり方で殺すのも問題ないさ。例え、実在する人物でも同義である。法的な問題があろうともだ。

 

「迷惑だからやめろ、と。冒涜するな、敬意が足りない、尊重すべきだとほざくのもいる」

 

考え方は人それぞれ、好き嫌いも人それぞれ。なら、納得出来る出来ないは重要ではないし、どうでもいい。元となったモノが好きなモノ達から、納得・理解なんてされる必要すらないよ。また、あるキャラをこの内容で使う必要はないだろ、と言われようが知ったコトではない。

それに、考え方が人それぞれって、よく聞く詭弁で、ソレがどれだけ恐ろしい思想か理解してるか。常識も、礼節も、法も、良識も、そういうのが人それぞれの考えになるってコトだぞ。定義が曖昧になったり、最悪、定義が無くなるんだぞ。ソレがどれだけ危険な思想だと思う。

例えば法律がある。人間の法律というモノは、罪を犯したモノを排除するためにあるのではなく、人間の群れを纏める上で必要なコトであり、法律を作って利益を得るためでもあるんだ。ソコは、古代オリエント・古代中国・古代ギリシアから変わってない。少年法撤廃すると国際法違反にもなるしなあ。ワグナス! 評議会は我らの術を異端術法と決定したぞ!

 

「ば~~~~~~っかじゃねぇの!? 電子の海に愚痴を垂れ流し、傷の舐め合いでもしてろよ」

 

以前言っただろう。創作物というお人形遊びをする平成時代の日本人は、先人たちからの借り物を使って、自分勝手に設定を弄ってるモノが多いクソ民族だとな。しかもその大半は、元々の設定と照らし合わせて観ると、全く違うモノばかりだ。ソレは、神などが顕著に表れているであろうな。であれば、その思想に則る場合、オレはお人形遊びをしている平成時代のクソ共を非難する。

平成時代の日本人なんぞ、見一善行竊以済私聞一善言仮以覆短でしかない。

メソポタミア神話も、エジプト神話も、ギリシア神話も、信仰された時はあったが、今ではソレが無くなってしまったんだぞ。他にも信仰が無くなった神話があるとはいえ、語り継がれてきて残った神話は沢山あるんだぞ。日本神話は運が良かっただけだ。

 

「じゃあギャグなら許されるのかい。では植民地にしよう。天皇の存在を日本の歴史から消そう。津波を起こして日本人を溺死し、創作物・文化を浄化(破壊)する。ギャグだから靖国神社もアリだな」

 

なんてコトだ、ギャグは万能設定だったのか。では、幻想郷という設定も万能なのだろうか。まあ日本の仏教も釈迦が築き上げた設定を借りた仏教もどきでしかないし、廃仏毀釈はむしろ起きてよかった。イコノクラスムもヴァンダリズムもいいさ。ギャグなら寺社連続油被害事件が起きてもいいだろう。

そもそも、その創作物を読まず・調べずに二次創作するのがダメなら、創作する側だけではなく、もちろん観る側も読破して、それ相応の知識がなかった場合、二次創作を読むのはダメだろ。

仮に、その創作物・お人形の知識が皆無、もしくは齧った程度の知識で批判なんてしてみろ、どうなると思う。ソイツの無知と思い込みと知ったか振りと自己顕示欲と自己欺瞞と虚栄心などを晒すだけだぞ。怖いわー。人間怖いわー。

そんなコトになるくらいなら、元となった創作物というお人形遊びを観なくても、調べなくても、ボロ雑巾のように扱い、世間からの興味が無くなり、風化して使い物にならなくなったら、新しいオモチャをまた見つけて、お人形遊びをしてもいいんじゃないかな。

 

「ピカドン。言ってる事と行動が支離滅裂してる、モラルを疑う。ソレはこちらの台詞だ」

 

論語・先進第十一

『子貢問、師與商也孰賢乎、子曰、師也過、商也不及、曰、然則師愈與、子曰、過猶不及也。』

論語・衛靈公第十五

『子冕見、及階、子曰、階也、及席、子曰、席也、皆坐、子告之曰、某在斯、某在斯、師冕出、子張問曰、與師言之道與、子曰、然、固相師之道也。』

 

「倫理も、論理も、思想も、宗教観(価値観)も、設定(お人形)を借りてる立場の自覚がないクズ共だろ」

 

常識だ、自分がイヤなコトを他人にするな、限度がある。笑わせるなよホントお腹痛い! 

倫理のコトを知りもせずに、そんなコト語ってんじゃねえよ。その常識がどれだけ重いモノかを知ってるのか。いやはやホントに、道徳家を装ったモノはコレだから。

どんなに綺麗に言ってもさ、単純に自分がイヤなだけだろ。何故そんなコトをするのか納得・理解できないだけだろ。思想を主張し、啓蒙で扇動してるだけだよな。洗脳かな。プロパガンダかな。宗教かな。オウム真理教かな。禁教令出さなきゃ。原理主義とか啓蒙とか古いんだよ。

一番笑えるのは、考え方は人それぞれ、とかぬかすヤツが、元となったモノ・キャラを弄られて、穢された、勝手なコトをするな、迷惑だ、尊重しろ、自重しろとほざくヤツだ。

釈迦は極端なのはいけないと言ったが、いい加減に、中途半端にしろとは言ってないんだぞ。

 

「フハハハハ! 上九一色村だよ上九一色村。カルト教団だな、オウム真理教を非難できんなあ。そういえば、教祖が入った残り湯をオウム真理教の信者は高額で買ってた。残り湯(・・・)をだぞ」

 

「ソレを理解できるか、出来ないだろ。絶対にソレとは違うと言われても、オレはそう思わん」

 

『メアリー・スー』みたいなキャラはダレカのオナニーでしかないと言ったが、宗教観・倫理観の問題で、一部の宗教ではオナニーをしてはいけないという思想があるって、コレも前に言っただろ。自分の思想が、自分がナニを言っているのか、どういうモノかという自覚はあるのか。言ってるコト・思ってるコトが既に宗教なんだよ。大和民族・琉球民族・アイヌって宗教が大好きなんだなあ。愛国無罪、牽強付会、大いに結構。

日本人って本当にクソだな。ハーブか何かやつておられる?

 

「ならば法を持ちだすか。ソレを出すと二次創作は禁止しなくてはいけない」

 

まったく、思想を統一でもしないと気が済まないのか。日本人は無宗教、とよく言われてるけど、そんなコトはない。言い回しが変わっただけだ。自覚してないだけだ。そんな思想、どんなモノであれ殺すのはダメとか、○○を食べてはいけない、みたいに、まるで、宗教と同じ法・教え・戒めじゃないか。いったいどこが無宗教なのだろうか。大体、法にも長い歴史があるんだぞ。その法も借り物だってのにさ。

 

「かつては現人神とされた出雲氏も、諏訪氏(守矢氏)も、天皇も、平成時代では人間になってるんだぞ」

 

なあ、明治政府・神社本庁よ、原理主義どもよ、オレは××の手に因り、今まで回帰してきたが、記憶がボロボロでも、ソレだけは一度も忘れたコトがないし、ソレを忘れたとは言わせんぞ。

確かに先人は偉大だろう。過去・歴史を否定する気はない。ソレを否定するのは今を否定するコトと同義だからな。言霊信仰も、昔と比べて廃れたし、神職も昔と比べて随分変わってしまった。それだけじゃない、明治時代でどれだけのモノが変わったと思う。観て観ぬ振りをするのはやめて、いい加減……気付いたらどうなんだ。

 

「世襲だった津守氏(神裔)は住吉大社じゃなくなり、伊福部氏(神裔)も宇倍神社から離れた。他にも沢山いる。古代日本と平成時代の日本は同じではない。一つでも変わった時点で、同じ日本人ではないんだ」

 

まれに、仏教思想や古代ギリシア人哲学者・古代中国人哲学者が唱えた思想は、宗教ではないというモノもいる。

なーに言ってんだ。宗教だから。自分にとって都合がいいモノは哲学で、都合の悪いモノは宗教扱いか。もしそうならば、なんとも都合がいい二重規範ではないか。ある意味、尊敬してやってもいい。姦通するなとか、浮気するなとか、ソレさえも宗教じゃない、とぬかす奴もいる。宗教に決まってるだろ。なんでソレを宗教と認めない。日本人はそこまで宗教がキライか。それほどまでに、宗教を否定するのか。宗教があったから、今があるというのに。

人間が人間である限り、宗教を無くそうなんて到底無理な話だ。なにせソレを無くすというコトは、今まで築き上げた様々なモノを糧としてきた、人間という動物を無くすコトになる。

人間がどんなに宗教を否定しても、人類から宗教を無くすコトなんて出来ねえんだよ。

旧約聖書・レビ記 第20章10節

『人の妻と姦淫する者、すなわち隣人の妻と姦淫する者があれば、その姦夫、姦婦は共に必ず殺されなければならない。』

 

「明治時代から昭和時代の創作物なんて、言い回しを変えていたとはいえ、パクリだらけだった。平成時代にはパクリしかない。昔はしてた事が今はダメになった事に対し、納得できないか」

 

「なら天皇にはまた神へとなってもらおう。天皇は雄略天皇、もしくは武烈天皇に戻そう」

 

平成時代の日本を大日本帝国時代に戻そう。現代日本人が嫌がっても微発して戦争しよう。異国がうるさいけど知ったコトかよ。邪魔な異民族は力づくで従わすか殺すか天皇崇拝を強制させよう。憲法、条約なぞ無視しろ。華族も戻そう。倫理・思想・法も古代、もしくは中世に、科学・生活・知的・技術水準も、何もかも昔に戻す。水も満足に飲めず食に飢えても、娯楽が無くても知らん。ネットなんて冗談じゃない。そもそもネットさえ借り物ではないか。

平成時代の日本は、古代バビロニアや古代ペルシアの文化もパクってるのだ。人によっては、コレを屁理屈と、論点のすり替えに観えるのかな。

 

「人莫知其子之惡、莫知其苗之碩。どうだ明るくなったろう」

 

「悪い事と自覚してする罪と、ソレを知らずにする無自覚の罪。はたしてどちらが罪深いだろう。弟子からそう問われ、かつての釈迦が答えたのは……」

 

それ以前に、その思想・倫理・論理は、1000年以上前の先人達がしてきたコトだぞ。

つまり、その思想・倫理・論理は、所詮は借り物の言葉であり、2番煎じであり、オリジナリティのない猿真似だ。言葉に重みがないんだよ。当たり前みたいに、その借り物を使うヤツは、絶対に非難しなきゃいけないなあ。都合のいいコトばかり思い込んで自分を騙すのは、さぞかし楽だろう。

ならばどうする。大昔のユダヤ教・キリスト教・イスラーム教みたいに、他の思想を異端扱いして排斥・迫害・弾圧でもするか。かつての神道と仏教のように争うか。やっぱり宗教だなー。だが悪くない。どうせやるなら徹底的にすべきだ。大昔の宗教みたいに。

 

「旧石器捏造事件――ぐはぁ!」

 

一体何が起こった。そんなコトを思う暇もなく、オレの背にとてつもない衝撃を感じた須臾、世界がぐるりと変わり、いつの間にか近くの大岩にめり込んでいた。咳き込んで吐血もした。体の節々は当然として、特に背中が激痛だ。

魔方陣で右手に雷霆を出し、その末端を今回の張本人に向けた。

 

「おい、いったいなんのマネだ。戯奴(お前)……殺すぞ」

「なーにカッコつけてんの」

 

バ…バカな……みんな いったい なにと戦ってるんだ。鬼女はそんなコトを言いたげで、呆れた顔をしながらオレの体を引っぺがす。そのまま地面へと倒れそうになったけど、小石でも拾うかのように軽々と支えてくれた。さすが鬼女、見た目は子供だが、鬼だけあって力はある。

 

「目、覚めた? まーた飲まれてたよ。呑むのは鬼ころだけにしときな」

「……ああ。その通りだな。釈迦と孔子の教えを忘れるところだった。助かったよ」

「いーのいーの。私、コレでも弘の妻だからね」

 

毋因群疑而阻独見、毋任己意而廃人言、毋私小恵而傷大体、毋借公論以快私情。

『弁顕密二教論』はともかく、空海――弘法大師は『承和遺誡』と『弘仁遺誡』で、釈迦の教えを守れと述べたのだ。でも、十戒を守るコトは、オレにはできない。

調子を確かめるため、一歩一歩確かな足取りで萃香から離れて歩いてみる。足は顫動し、歩く度に体は激痛という叫びを挙げているコトを除けば、問題は無さそうだ。しかし、久しぶりにいいモノを貰った。こんなのいつ以来だろう。

能面になってるこころは無反応で、先程からだんまりだったので、見かねた鬼女は声をかけた。

 

「こころも弘を止めなよ」

「......ん? おー。いつものコトだったから忘れてたー」

「あんたも苦労してるんだねぇ......」

「もう慣れた!」

「子曰、道不同、不相爲謀。ある意味、休与小人仇讐、小人自有対頭だね」

 

世間話を興じ始めた二人を気にしつつ、辺りを見渡す。傍から観たらのほほんとした状況ではある。しかし、なんか、急に空気が変わった。場の雰囲気が張りつめて緊迫感が漂い始めたのだ。何かが、おかしい。

……まさか、と空を仰ぎ観る。そこには矢があった。空から一本だけの矢らしきモノは、放たれたモノと言うより、天から落ちてきたかのようで、ソレの矛先は、着実に萃香へと向かっていた。

――アレはマズい。右手にある雷霆の破壊力を最小限に留め、外さないように気を付けながらも、思いっきり投げる。まるで紙ヒコーキを投げたかのような、風が吹いただけで今にも落ちそうなくらい、脆弱そうな雷霆と衝突した矢は砕け散って消滅。間一髪であった。

アレの見た目は普通の、人間が造ったモノと言われても疑問を抱かないほど、どこにでもある矢。だが、違う。アレはただの矢ではない。

クソが……あの天探女、余計なことをしやがって! オレの邪魔をするというコトはどういう意味か知らんわけではあるまいに。やはり記憶を回帰させたのはやめておいた方がよかっただろうか。……オレ自身でアイツを回帰させておいて、今更か。

 

「ほら、御射鹿池へ行くんだろ」

「そうだな。よし」

 

萃香は先程の矢に気付いてなくて、なんで雷霆を投げたのか不思議そうにしつつも、オレの服を軽く払って、地獄の女神へ会いに行くよう促し、また消えた。今も体中痛いが、萃香の行動を責める気なんてない。冷静になってむしろ感謝したいくらいだ。あのままだと、またおかしくなっていた。かつて、憎悪の感情に支配されていた純狐以上に、変貌していただろう。ソレは想像に難くない。

論語・微子第十八

『微子去之、箕子爲之奴、比干諌而死、孔子曰、殷有三仁焉。』

論語にもある通り、やはり諫めてくれるモノがいるというのは大事だ。やり方に少々問題がある気もするけど、言葉だけではオレが止まらなかっただろうし、荒療治も時には必要だろう。

 

「往くぞー!」

 

軽くストレッチしてから、こころの掛け声と同時に足を動かす。

あーホントに危なかった。今日ほど萃香を娶ってよかったと思った時はない。

突然、オレの脛にナニかがぶつかった。ごめん、謝るから弁慶の泣き所は痛すぎるのでやめてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......あ、久しぶり。元気にしてたー?」

「うむ」

 

待ち合わせ場所の御射鹿池に到着すると、幻想的な池を眺め、時間を忘れていそうなくらい魅入られていた地獄の女神は、オレの足音で気付いたのか、振り返って、お互い軽い挨拶だけ済ませ、そのまま魔法の森へと向かった。

彼女の能力でいる残りの二柱も来てるかと思ったが、どうやら一柱だけらしい。

 

「ここも......本当に懐かしい。でも、アレはいくらなんでもやりすぎじゃない?」

 

諏訪国にある鬱蒼とした魔法の森を、隣にいる地獄の女神――××神話に降らせたへカーティアと、最初は歩きつつも周りを眺めながら懐しんでいたが、次第に彼女は何とも言い難い声色を出して浮島のコトを口にし、諏訪子の能力と日本神話の天逆鉾を用いて創った天空大陸を見上げながらも、足を止めず答え、魔女の館へと向かう。

 

「ギリシア神話にはデロス島や、アイオロス王の住むアイオリアとか、他にも浮き島はあるだろ」

「確かにそうだけど......」

 

そう。実はアレも、ギリシア神話が原型だったりするんだ。

何気なく彼女を一瞥すると、オレに何かを言おうと、今感じている漠然とした感情に悶々としていたが、諦めた。話題を変えるコトにしよう。

元は別の神話の女神だったが、彼女はギリシア神話の女神だ。オレは基本的に××神話と日本神話の神なワケだが、古代ギリシア人と古代日本人が同じ民族、なんてコトはありえない。しかしだ。古代ギリシア人と古代エジプト人の場合だと、どうだろう。

 

「古代エジプト人は、古代ギリシア人・聖書に出てくるカナン人とは、別の民族だと思うか」

「普通に考えたら違うわ」

「そうだ。普通に考えて、同じ民族なワケがない」

 

「でも、一部の古代エジプト人は怒りそうだが、神話で観た場合、違うとは言えないよなあ」

 

古代ギリシア人と一括りに言っても、ギリシア神話にはミケーネ人、アッティカ人、アテナイ人、エレウシス人、アルゴス人、シキュオン人、ポーキス人、エーリス人、テッサリア人、スパルタ人、テーバイ人、サラミス人などが出てくる。今挙げたのは古代ギリシアにいた民族だから、古代ギリシア人、と言っても強ち間違いではない。コレは日本神話・日本人にも言えることだ。一応は日本人として一括りにしてはいるが、全員同じ民族かと聞かれたら、違う、と言わざるを得ない。一口に日本人と言っても、色んな民族(豪族)がいるんだ。ただ、天津神・国津神の血を引き、尚且つ日本にいるという意味で、日本人と定義付け、今の所はそう呼んでいる。

しかしながら、ギリシア神話ってさ、コルキス人、フェニキア人、トラキア人や、エチオピア人が出てくるし、ギリシア神話の神の血を引く古代エジプト王とかエチオピア人なんかも普通に出てくる。

要するに、神話と言っても、自分たち以外の民族が普通に出てくるのだ。なにもギリシア神話に限った話ではなく、各国の神話でも多々ある。コレはローマ神話や、日本神話にも言えるコトさ。

古代ギリシア人が出ないギリシア神話、古代中国人が出ない中国神話、古代イスラエル人が出ない旧約聖書、天皇が出てこない日本神話など、その国・民族の神話ではなく、ダレカがその設定を借りて、お人形遊びしたただけの別モノだがな。

 

「聞いたんだけど、弘天の子って娘しか生まれてないらしいじゃない。天皇家?」

「皇室は嫡男・親王が1人産まれてるだろ。阿蘇氏もいるし」

「......こんな話が出来るなんて、平和な時代よねぇ」

 

前にも言ったが、オレは純血に拘ってはいない。もしそうだったならば、第15代天皇・応神天皇と神功皇后とアメノヒボコ、そして第26代天皇・継体天皇を消してるよ。

オレは面倒だからと、どっちもどっちも論をするヤツはキライだ。大して興味もない無関心のクセに、中庸・中道を気取る奴もキライだ。

いいか。あのゼウスとヤハウェのクズ神も、民族に罰を与えたり、時には災害、もしくは病で、古代ギリシア人(古代イスラエル人)を殺してはいたが、ソレと同時に、自分の子孫に関しては助けてた時もある。

 

だが今はどうだ。

ギリシア神話の信仰は無くなり、ギリシア人は、ローマ人に同化し、キリスト教徒へとなってしまった。ただし、一部のギリシア神話の神々は、地獄の女神・へカーティアなど、信仰が続いている神もいる。正確に言えば、ヘカテーはギリシア神話信仰ではなく、魔女信仰だが。

ユダヤ人とナザレのイエスの場合は、ヤハウェに見捨てられた民族、というのが現状だ。

そうさ。別のモノになるくらいなら、そんなモノは無くすか、忘れさせた方がいい。変わってしまい、もはや別のモノと化しているソレを残して、一体何の意味がある。何事も時代と共に変貌していくだと。笑わせるな。そうまでして、なぜ続ける必要がある。

そう。親王がいないなら、天皇・皇室なんて無くなればいいんだ。無理に続ける必要はない。神話だってそうだ。余計なコトをされるくらいなら、忘れられた方がいい。…平成時代でお地蔵さんを綺麗にしてる人をたまに観たコトがあったから、全ての日本人から信仰が無くなっているワケではないんだろうけど。

 

「それで天皇を進めないの? 天武天皇系は全て消しちゃったみたいだから、次は光仁天皇?」

今の時代(室町時代)、百王説が流行ってるんだ。だから後円融天皇、後小松天皇まで進めたくない」

「百王説なんてありえないのにね」

 

百王説があるとはいえ、第100代天皇・後小松天皇、天皇が100代で終わるコトはない。そもそもそこまで進めるべきかどうかという判断がつかない。なにせ天神地祇・天皇の血を引くモノは老化はせず、しかも寿命はないのだ。もちろん死ぬには死ぬんだが、その場合、他殺か災害が主になるだろう。死んだとしても、代わりはいくらでもいるからいいけど。彦火火出見さえ生きていたらそれでいい。

 

「仮に、ユダヤ教の律法でなにか問題が起きたとしたら、どうする」

「関わらないわよ。外野がとやかく言う必要はないんじゃない? あの聖書の神も煩いしね」

 

古代中国の儒教始祖・孔子は言った。

『子曰、不在其位、不謀其政。』

オレはファリサイ派だ。しかし、ユダヤ教の問題なら、ユダヤ教徒とヤハウェだけが関わるべきであろう。

なら、日本神話の神々も、神社本庁・社家・天皇(皇室)のようなモノだけが使っていいだろう。彼ら以外の人間が神を使うのはダメだ。創作物という名のお人形遊びに神を出しては、神を語るのは、神を登場させるのは、ダメだよな。

 

「ダレカが築いたお人形・設定を使うなら、敬意を払い、尊重すべきだと。ソレが出来ないモノは異端扱いする。そういう思想があるワケだよ。お前、どう思う」

 

「......宗教?」

「宗教だ。やはり日本人というクソ民族は無宗教ではない」

 

人間中心主義ってのもあるが、まるで儒教。いや……違うか。努力主義という宗教はキライだな。努力至上主義は儒教というより、朱子学・陽明学が大きいだろう。成果主義もキライだが。

人に迷惑をかけるなっていう倫理も宗教、浮気・姦淫するなっていう思想も宗教、人に押し付けるなって言うのも宗教、倫理的な観点から、一夫多妻は差別的でありするべきではないと言うのも、宗教だよ。差別してはいけないって言うのもな。

でもたまーに、ソレは宗教じゃないって言うのもいる。笑えるよなあ。

 

実在するモノと、歴史上の人物と、創られたお人形の違いって、なんだろう。差はないんじゃないかな。実在しようが、空想上の存在だろうが、お人形だろうが、どんなモノであれ敬意の気持ちを持ち、尊重し、畏敬の念を抱くべきだろう。

法的な問題はあるけど、創作物というお人形遊びに使う以上、ソコに違いなんて、ない。

 

「オレは反出生主義だけど、ソレも宗教だよな」

「宗教ね。というか、なんで神が反出生主義なのよ」

 

「ギリシア神話に出てくるゼウスと、ヘブライ神話に出てくるヤハウェのクズ神は、人間を滅ぼしたコトがあるとはいえ、憐みの心をちゃんと持ってたからさ」

 

旧約聖書・エレミヤ書 15章6節

(ヤハウェ)は言われる、"あなたはわたしを捨てた。そしてますます退いて行く。それゆえ、わたしは手を伸べてあなたを滅ぼした。わたしはあわれむことには飽きた。"』

一体いつからだろう。日本の神は寛容などと、神は信仰がなければ存在できないなどと、こんなふざけたコト、どこのダレが法螺を吹いているんだろうか。確かに、縁起がいいモノ、または恩恵に浴する為、御蔭をいただくため、民衆に信仰された七福神などもいるさ。だが、人間が神に無礼なコトをしても、ソレを許すような存在ではなかった。そもそも七福神は……

 

「お前は、ダレカが作った設定・お人形に、敬意を払うべきだと、配慮すべきだと思うか」

「いいえ」

「お人形がズタボロになっても、壊れても、貶めたとしても、一々気にするか」

「仮にお人形が無くなっても、新しいおもちゃを探せばいいだけよ」

「とんだ女だな、もはや人間ではないだろう。だが嫌いじゃない」

 

聖書に書かれているあのヤハウェなら、彼女と同じコトは言わないだろうけど。

古代ギリシアの哲学者・アリストテレス、古代インドの哲学者・釈迦、古代中国の哲学者・孔子は、それぞれの言い方・論理の違いはあれども、原因があって結果がある、と言った。極端なのはダメとも言った。

そして釈迦は、感情を絶て、執着してはいけないと言った。

釈迦の場合、ある結果が起きる前に、その結果が起きる原因、例えば老い、または感情などが生じる前に、原因を取り除けば、結果は無くなると考えたんだ。

平成時代の人間がコレを聞いたら、そんなの当たり前じゃないか、と思われるだろう。しかし……紀元前でこの思想へ到達したのは、結構スゴイ事なんだ。

 

ところで、さっき民族について話題に出したが、一旦、日本にいる民族をへカーティアと整理しよう。まずは前提として、地球が生んだ人間、次に神が創った人間、最後に神の血を引く人間に大きく分けて定義する。

 

「今の日本って、大きく分けて倭人、隼人、蝦夷、中国人、朝鮮人、ペルシア人がいるのよねん」

「うむ」

「そういえば、古代ローマにも古代中国人はいたわねぇ」

「シュメール人、古代エジプト人、古代ギリシア人、古代エトルリア人、古代中国人は天才だな」

 

地球が生んだ人間は、まあ大雑把に言って百姓のようなモノと考えればいい。問題は、神が創ったとされる民族だ。アイヌ神話や琉球神話には人間を創る話があるので、アイヌ民族と琉球民族は、神が創った民族になる。そして中国神話でも神が人間を創ったとされている。この人類創造神話は、ペルシア神話・イラン神話・ゾロアスター神話にもあるので、ペルシア人にも該当するだろう。朝鮮神話の場合、朝鮮人は神の血を引くとされているので、この場合は神の血を引く民族になる。

ココで面倒なのが中国だ。中国神話って、神じゃなくて仙人や人間ばかり出てくるのだが、実は神の血を引くとされている中国人も、いるにはいる。厳密に言えば、殆どは道教の神、つまり仙人の子孫とされている中国人の方が多いんだが。一応、中国には儒教の始祖・孔子の系図もあるんだけど、ソレによると、孔子の子孫を称する平成時代のモノも沢山いたりする。

大体、古代ギリシア・古代日本もそうだが、古代中国は特に、色んな民族がいすぎだ。収拾がつかん。

 

「ギリシア神話のニンフ(精霊)のクローリス、ヒュアデスは神になったよな」

「そうね」

ΠΟΣΕΙΔΩΝ(ポセイドーン)は一度、ΑΠΟΛΛΩΝ(アポローン)は二度も人間に仕えたコトがあるよな」

「......そうね。ΛαομέδωνとΑδμητος.アポロンの一回目はゼウスの罰でだけど」

 

そう、少数でも賛同者は出るだろう。共感するモノも出るだろう。無知だったモノがソレを知り、理解してくれるモノも出るだろう。啓蒙・啓発されたヤツラの中には、感情に左右されて批判するモノ、酷評するモノ、論難するモノも出るだろう。所詮、借り物でうだうだ騒いでいるだけだが。

でも、反出生主義なんてのもあるけどさ、そんな倫理があったところで、人間はセックスしてまた赤子を産む。もちろんそういう倫理をムダなモノと言うつもりはないし、別にオレは優生学ではない。とはいえ、人間という猿が滅ぶまで止まるコトはない泥仕合。だがソレでいい。

ソイツらが、本当に柳緑花紅思想を掲げているなら、ソレでいいのだ。その思想を旗印にしてるなら、本来、ソイツらがカレらを非難したり酷評するコト自体、おかしいのだからな。

ミトコンドリア・イヴの子孫を残したとしても、扱いは悲惨なモノになる。だから生かしたとて、悪いコトならまだしも、良いコトは何一つない。故に消す。

 

「ところで純狐って仙界にいるらしいが、元気にしてるか」

 

「そうねぇ......あの時、××神話の天使が子供を蘇生したじゃない? 悪いコトではないけれど、純狐が子供にべったりで。数千年ぶりにまた子供と会えたから、よほど嬉しいみたい」

 

最初は友人が幸せそうにしてるのを観られてか、心の底から嬉しそうに微笑んでいたが、少しずつ神妙な顔つきへと変わり、重々しくも口を開いた。

…………ああ、古代ギリシア・古代中国って、同性愛があったな。女性の。

 

「ただ......喜んでるばかりじゃいられなくてね。嫦娥に対する瞋恚を塗り替えちゃったでしょ? 今の彼女があるのはアレのお蔭だけど、心配よ。彼女、私たちと違って、元は人間なんだから」

 

「人間……そうだったな。今は仙霊でも、元は神に創られた側の人間だったか」

 

大事な話のようで、実は大した話じゃない世間話をしていると、森に包まれて佇み、怪しい雰囲気を醸し出す、魔女の館が観えたのだが、一瞬廃墟に観えて、もう一度瞬きすると、今度は豪邸になった。ソレは、昔観たコトがある、紅魔館のような……。

そういえば、天子がレミリアとフランを諏訪国に送ったらしいが、どこにいるのだろう。もしや、地底にある地獄にいるのか。

もう一度瞬きをすると、なんというか神秘的な、メルヘンチックな建物に変わり、煙突もあってソコから煙が出ている。幻覚でも見ているかと思うくらい、不可思議な現象だが、魔女達が視覚情報を弄りまわしているのだろう。そう思い込むほかない。

一緒にいたへカーティアを観るが、彼女は首をかしげるだけだった。この意味不明な現象は、オレだけなのかな。仮にそうだとしても、なんでオレだけに効くのかは判んないけど。

彼女にどうしたのか聞かれてこの現象を説明すると、嬉々として両手を叩き破裂音を出した。

 

「まるでグリム童話のヘンゼルとグレーテルみたい」

「ソレ碌な話じゃないぞ。泉のそばのがちょう番の女もアレだが」

「六羽の白鳥、子羊と小魚、グリム童話の魔女っておばあさんが多いわね」

「ココにいるの美女しかいない。だから六羽の白鳥みたいなコトが起きてほしい」

「どっちかというと......注文の多い料理店じゃない?」

「その話は魔女が出てこないだろ」

 

木製の扉に金属製のドアノブがあり、回して中に入ると、内装は魔法の森ほどの不気味さはない。しかしメルヘンチックな外装とはほど遠く、神さびたままだが小奇麗にされていた。近くに椅子や質素な机があって、その上にウィッチ・ボトルとガラス瓶など、様々な道具が散乱してるのもあれば、整理されて置いてある。瓶に入ってる液体は、何かの化学薬品かな。ヒマを持て余してる魔女たちなら化学・錬金術でもしててもおかしくない、のだろうか。後は水が入ったビーカーと、数式がびっしりと書かれた羊皮紙一枚。

部屋のど真ん中には壺があるのだが、まるで童話に出てくる魔女が使うような大きな壺。きっと壺の中には、どす黒い感情が練りこまれた、ナニかがあるのだろう。数は少ないが坩堝も置かれている。るつぼといえば……アーサー・ミラーかな。

 

「ハシゴだな」

「じゃなくてキャタツよね」

 

大きな壺の両脇にはハシゴ、ではなく、木製のキャタツがあった。まだ子供で背の低いアリス、パチュリー、レイラ達が使うためにあると思われる。

だがちょっと待って欲しい。ビーカーに入った水に見覚えがあり、掴んで持ち上げて観察したが、ますます既視感がこみ上げる。コレはまだ世界が初期頃だった時、一緒にいる地獄の女神に頼み、わざわざギリシアから取り寄せたモノで、本来なら日本にあるワケがない代物。しかし、コレを使ったのはあの時一回だけで、もはや使う気も、使う予定も、今後一切行う気はなかったのだ。最初はオレの見間違いと思ったが、魚の骨が喉にあるような妙な感じで、元関係者へ聞くコトにしようと、彼女に観えるよう、ビーカーを差し出す。

 

「へカーティア。聞きたいんだが、コレって、λήθη,(レーテー)の水か」

「あれ、ホントだ。懐かしいわね、あの時の私たちもコレを飲んで記憶を――」

「バカな……コレは××が管理していたハズだ」

「彼女が魔女たちに貸与したんじゃないの」

 

受け取って水を調べた彼女は、判決を下してビーカーを元の位置へと戻すが、彼女の答えは否定ではなく肯定だった。出来ればその言葉は聞きたくなかった。

他に観るモノはないかと見渡すと、テーブルの上に、さっきから気になる紙切れが一枚だけある。勝手に観るのは失礼と思いつつも、失敬して拝借した。視界に入ったのは、一面数式で埋め尽されており、一部書き殴っているモノもあるが、綺麗に記述されているモノばかりだった。コレは驚いた、古代オリエント・古代ギリシア・古代中国に引けを取らないほどである。オレには全く分からないモノだらけなのに、魔女達はコレを理解してるのか。賢すぎだろ。というか誰に教わったんだろう、独学でコレならかなりすごい。

 

「ん?」

 

通覧していたら、端っこに文章の記述があった。目を凝らして観なければ判らないほど、こじんまりとした文章。しかもギリシア語。一部は走り書きで読めなかったが、幸いにも解読できた箇所があり、読むコトにした、のだが、殆ど愚痴だった。

 

『――大衆の妄想で創られた魔女というイメージを押し付ける人間がいる。自分たちは、思想(信条)も、倫理も、価値観も、酷評(非難)も押し付けられるのが嫌で嫌で仕方がない猿であろう。にもかかわらず、嘗て、いや、未来で神がされたことと同じように、我々へソレを押し付けるのだ。この件について同胞たちと原因を追及していく内、この現象に関して、私たちは真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。』

 

「ピエール・ド・フェルマーかな?」

 

こんな内容レイラが書いたものとは思えないし、内容から推測するに、記憶が戻ってるアリスも違うだろう。小悪魔は絶対にありえない。というか、未来っていう文字がいきなり出てきてる。普通は今か昔を書くであろう部分を、わざわざ言い換えて、未来と書いているのだ。意味が判らない。

コレに関わっていそうな他にめぼしい魔女たちは、パチュリーかエレンだけである。どちらかが、あるいは二人で執筆したものだろうか。つまり一方、あるいは双方に記憶が回帰してるというコトだ。

ソレは……かなり困るな。筆跡から特定しようにも、走り書きのせいでお世辞にも綺麗とはいえず、どちらが書いたモノなのか判別出来ない。判んないなら考えるのをやめよう。

だが、ここに書かれている魔女・神という言葉を別の言葉に入れ替えると。

 

ある程度は見終えて、何気なく裏返すと、さらに驚愕するモノを観つけてしまう。

魔女たちが書き留めたのか、はたまた××のモノなのか、それは判らない。しかしながら、裏面には、ある思想が綴られていた。

 

「コレって、心理学者スタニスラフ・グロフの……」

 

彼女たちがナニを考えているのかを熟慮しても、汲み取るコトはできなかった。ぞっとしただけだ。少なくとも楽しい思想ではない。これ以上足を踏み入れると、底なし沼に嵌ってしまう気がしたので、ココは観なかったコトにしよう。朝顔の花一時。

 

「お、かまどがある」

「暖炉ね」

「…ギリシア神話の女神ともあろうモノが何を言う。もっとホンシツを観るんだ」

「どういう本質よ......」

 

呆れた彼女は、魔女を探してくると言い、奥にあった扉を開けて行ってしまった。探すの面倒だし彼女に任せよう。

 

暖炉を観つけたし、寒いので暖を取ろう。暖まるため薪を燃やす。近くにロッキングチェアがあったので、ソレを持って暖炉の前に置き、座って前後に揺らしながら温まる。

もっと汚れてそうなイメージを勝手に抱いていたが、案外そうでもなかった。煙のままの萃香から聞いたら、たまーに藍が掃除をしに来ているらしい。だが魔女たちも自主的に掃除を取り組んでいるそうだ。

あーダメだ。心地よくてこのままでは寝てしまう。

 

Mehr Licht(もっと光を)

「ソレを唱えても二度と死なないだろうに」

「永眠の意味じゃない」

 

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ……あの哲学者も、大層な女好きだったけ。なんだか他人とは思えない、親近感が湧く。

薪が燃えてパチパチという心地いい音が響き、冷めた体に染みていくようだ。煙突の煙はココから出ていたのだな。燃えカスも溜まってるかと思えばそんなコトはなく、後始末もされている。とはいえ換気をした方がいいと思う。窓はあるんだけど、寒いから動きたくない。

しかしハンモックもヤバいけど、ロッキングチェアもヤバい。人間だけではなく、神さえもダメにする悪魔の道具である。神が悪魔にやられてどうすんだって話だけど。

 

「萃香も座るか」

「遠慮しとく。......と思ったけど、座る」

 

急に気が変わったのか、消えていた萃香は実体化し、オレの股の上に座って、体重を預けてきた。一体何を考えてるのだろうか。寝てしまいそうだから代わって押し付けようとしたのに、これでは逃げられない。

 

「パルスィに観られたら、泣くか、もしくは死ぬね」

「極端すぎだろ」

「流石にココまでは来ない。来ない......(ハズ)

 

魔法の森に来てるかどうか能力で確認したらしいけど、絶対とは言えないらしい。嫉妬神なだけはあるが、パルスィは勇儀のいい加減さを少しは見習ってほしいものである。

二人でリラックスしてだらけていたら、ナニかを感じ取った萃香は、幻に包まれていたかのように、体温だけ残して、一瞬でその重みは消えた。

飽きたのかと思ったら、鍵を開けるかのような物音が聞こえた直後、突然、部屋の隅にある天井から、ナニかがシュバっと落ちて、オレの方へと来たのだ。

――マズい、なんかよく判らんがとにかく殺される! 

 

「おかえりなさーい!」

「……レイラか」

 

敵かと思ったが、よく考えなくてもココは諏訪国にある魔法の森で、しかも魔女が住む館だ。ソレに、萃香が無反応だったから物騒なコトにはならない。最近、死について色々あったから神経質になっているようだ。いや、魔女の中にオレのコトを気に喰わないと思ってるものもいると、アリスやパチュリーに聞いたコトあるから、否定できないのもあるんだけど、相手がオレを殺そうとしても、もう死なない。というか死ねない。

 

レイラが駆け寄って来たと同時に、ぱかっと空いた天井には蓋がぶら下がり、そこには折り畳み式のハシゴが備え付けられていた。この子だけではなく娘のアリスもいたようで、ハシゴを使って降りてる途中だった。

ちょ、ええ……ハシゴはアルミ製だし、恐らく、というか絶対河童のにとり達が造ったんだろうけど、こんなん魔女のイメージ壊れる。しかもただのハシゴなのに、遠目からでもどことなく躍如を感じる。ハイテク過ぎだろ。

…今気づいたけど、天井から急に人の気配が濃くなってる。それに、一部は興味津々といった視線だが、他のはまるで全身針に刺されているかのような、無数の視線を感じる。まさか……アソコに他の魔女たち全員がいるのか。魔女を探しに行ったへカーティアはなにをしてるんだ。全員天井裏にいましたなんて、入れ違いどころの話じゃないぞ。

降り終えた娘は、ハシゴを収納して天井に戻し、こちらに歩み寄りながら不機嫌そうな表情で問うた。

 

「へカーティア様が来たという事は、そういう事でいいのね」

「あ、ああ。これからはオレじゃなくて彼女に付き従うよう、全ての魔女へ伝えておいてくれ」

 

どうもこの二人だけで、パチュリーと小悪魔はいないようだ。

……あれ、地獄の女神を連れて来てるの知ってるなら、オレ達が館に入った時に降りてきたらいいのに、なんでへカーティアがいなくなってから来たんだろう。へカーティアの件をアリスに伝えた途端、視線がより一層尖った気がするし、なんでそんなに怒ってるんだ。

 

魔女とは、魔法を使うイメージが強いのは、言うまでもないだろう。

でも便利過ぎと思われがちな魔法だが、グリム童話に出てくる魔女の魔法って、実はそんなに出てこない。いや、ヨリンデとヨリンゲルみたいに魔法で人間を動物に変えたり、ある人物を石に変えたり、呪ったりする話も確かにある。あるのだが…あくまでも話を形作る為の人物・設定をキャラとして立たせるために添加しただけの場合が多い。大体、グリム童話に出てくる魔女は性格が悪いし、心もひん曲がってるし、そもそも魔女の結末は、悲惨な最期を遂げる話が多い。あとはちょい役とか、回顧として出てくる場合、特に教訓としての話も多いだろう。

要するに、あのグリム童話でさえ、魔法に頼りきりの話ばかりではない。魔女がなんの危害を被るコトのない話ばかりではない。寧ろそういう話、例えばアッシェンプッテルの魔女みたいなモノは少ないと言っていいだろう。

即ち、魔法という便利なモノを多少使うくらいならある程度許容できるが、その概念に甘え切り、おんぶにだっこするヤツは、神を便利に使うヤツくらい、クソだ。厳密に言えば、アレは魔法と言うより呪術に近い気もするが。

 

「えー。他の神様に従うなんて私やだよー」

「良禽択木という言葉がある。そして中国の故事で尾大の弊ってのがあってだな」

「どういう意味かわかんないけど、使い方間違ってる気がするよ」

 

レイラは話の意図を読み取れなかったらしく、オレの袖をくいくい引っ張って納得できずに聞いてくる。ことわざで諭そうとしたが知らないらしく効果はなかった。娘のアリスは記憶が戻っているので、事情を説明するまでもなく理解してはいるのだが、納得はしてなさそう。

なぜそこまでイヤがるのかが判んないオレを観て、この子にことわざの意味を説明しようとしたら、呆れたアリスは代わりに代弁した。

 

「......他の魔女たちは、アナタの庇護下にいるハズじゃなかったの? って言いたいのよ」

 

……どういうコトだろう。アリスが言った話を反芻しても、呑み込めない。

この場にはいないへカーティアが、元ギリシア神話の女神で、尚且つ地獄・魔女の女神であるコトは、レイラはともかく、アリスも知ってる。

へカーティアは××神話に降ってるから、オレの支配下にいる。故にオレが魔女の支配権を放棄したワケじゃないし、単純にもう一柱だけ魔女を統括する神が増えただけという話。結局のところ、魔女はオレの支配下にあるのだが、一応伝えておこうかなと思い、魔法の森へと来た。会ったコトもないヤツに、いきなり呼び出されて従えと言うのも、酷な話である。だから今までと関係は変わらないんだ。

もしかして、魔女たちは諏訪国から出て行けと言われてるように感じ、誤解されてるんだろうか。

 

「別に諏訪国から地獄に行けと言いたいワケではない。オレだけじゃなく、へカーティアにも従うよう表明しに来ただけだ」

 

ギリシア神話は、確かに古代ギリシア人からの信仰が無くなった。ソレはあのゼウスも例外じゃない。でも、一部の神々についての信仰は、古代ギリシア・古代ローマ時代から、中世、平成時代になっても無くならず、信仰され続けているギリシア神話の神々もいる。

そうだな……例えば、地底の女神・Ἑκάτη(ヘカテー)がそうだ。実際は、彼女だけではなく他にもいるけど、コレ、平成時代でも信仰されてるギリシア神話の女神って、結構スゴイ事なんだよ。そんな理由もあって、彼女に魔女たちを任せようと思ったんだ。

最初はオレの庇護下に置いたままの方がいいかなと思ったけど、どうせ魔女と妖精を支配下に置くなら、ギリシア神話のゼウスとヘカテーの立ち位置から判断して観ても、オレより彼女の方が相応しいだろう。

 

「なら今まで通りここにいてもいいの?」

「寧ろ諏訪国から美女だらけの魔女がいなくなるとオレが困るんだけど」

「そっか......よかったぁ!」

 

レイラが納得すると、魔女たちも把握してくれたのか、徐々に無数の視線に棘が無くなっていく。やっと落ち着ける。また死ぬかと思いました。アリスは表情から伺うに、まだ得心が行ったワケではないだろう。でもここは妥協し、渋々ながらも他の魔女達に伝えるコトを承諾した。魔女たちは天井で聞いてるみたいだから、伝える必要は無さそうだけど。

そもそも、オレがなんのタメに行動してるかと言えば、美人・可愛い女を諏訪国に集めて侍らせるタメなのに、せっかく、せっかく美人揃いの魔女達を支配下に置いたのに手放すなんて、オレの行動理念と性格的にありえないから。

 

「あ、神綺が寂しがってたから、アリスも気が向いたら会いに行ってやってくれ」

「イヤ!」

「……我が妻ながら哀れな」

 

つまるところ魔女だ。もう室町時代だし、そろそろキリスト教徒が日本に来るワケだが、魔女が殺されるのはどうしても阻止せねばなるまい。その理由は色々あるが、単純に美女が多い魔女を殺されるのがイヤなだけである。

アレが来たとしても、魔女達が魔法の森に引きこもっていたら殺されるコトはない、と思うけど、相手がユダヤ人のキリスト教徒の場合だと話が変わってくる。オレがユダヤ人を殺そうとした場合、あのヤハウェが出てくるのだ。これは非常にマズい。アイツが助けるのはキリスト教徒がどうこうではなく、問題はイスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人に関与しなければいいだけなのだが……関わろうとしなくても大昔に出て来やがった時がある。

 

「ねー、探したけど魔女たちいなか......っているじゃない」

「遅かったじゃないか」

 

奥の扉を開けて、やっと地獄の女神が帰ってきた。

 

「ちょうどいい、魔女たちと親睦でも深めてくれ。オレは邪魔だろうから帰る」

「また来てね!」

 

ロッキングチェアに座るオレの頬に、レイラは唇を当てて別れの挨拶を言った。前からただモノじゃないと思ったが、この子は天使かな? 天使にするようサリエルに言ってみようかな。でもアリスは何も言わなかった。なんとも冷めた親子関係である。そこまで嫌われるようなコトしたっけかな。娘を犯そうとしたくらい別に普通だし、コレが原因なワケないだろう。てかまだ犯してない、未遂である。

 

「最後にコレだけは言って帰る」

 

肘掛けに両手を置き、重い腰を上げて立ち上がり、両手を二人の魔女の肩へと置いた。

 

「――Vaya con Dios(神と共に歩みなさい)

「はーい!」

「......うん」

 

恐らく言葉の意味を理解してないであろうレイラは元気よく、実娘は少し遅れて頷いた。

じゃ、と手を挙げて入口に向かい魔女の館から出てから、魔方陣で帰る前に魔女の館の近くにある湖で釣りでもしようかなと思い、ドアノブを掴んだ。

扉を開けるために、回そうとしたその時――突如、瞬間的ではなく持続的な痛みが左腕に走った。各国の神話ではよくある、観てはいけないタブーの片鱗に触れそうな、啻ならぬ気配を察しとり、怒髪、天を衝くという言葉が脳裏に浮上しながらも、振り返る。

 

「え、なに、今の状況が全く掴めてないのに、私を置いて帰る気?」

「……あ、後は若いモノ達に任せようという、鯔背でオレの押しつけがましい老婆心がだな」

「人間基準なら私たち全然若くないんだけど」

 

彼女は、行くなと言わんばかりに、さっき以上に左腕を力いっぱい掴んだ。どれくらいの力と言われたら、きっと握られた部分は真っ白になってるくらいで、キリキリと、微音ながらも耳に入るくらいの力。逃げようにもこの状況で逃れるコトは難しい。

奥でレイラとアリスが個性ある表情になってる。せっかくいい別れの演出がそれっぽく出来かけてたのに、これでは台無しじゃないか!

 

「ちょ、とりあえず手を離せ。捥げる」

「離したら逃げるじゃない......妻の懇願を無視するなんてゼウスでもしなかったわよ」

「約束はよく破ってたと思うが……あっ。そういえば娶ってたな」

「ヒドイ! 私にあんなコトしておいて忘れるなんて!」

「作為的に語弊がある表現はやめてもらおうか。一度殺しただけだろ!」

 

物騒な話なのに、奥にいる魔女二人の表情が変わってないのが怖い。このままでは埒が明かない。魔方陣を展開しておさらばしようという結論に至る。足元に魔方陣が浮き彫りになったと同時に、後方からノックの音が聴こえた。いきなりで思考が止まった。魔女ならわざわざノックなんてせずそのまま入ってくる。だが……扉の向こうにいるダレカは、まだ外にいるのだ。魔女ではない別のダレカだ。魔法の森に来る人物なんて限られてる。魔女の館に来るモノならもっと絞られる。辺鄙なここに顔を出す可能性が最も高いのは、××なのだが……。

金属音を立て、引かれたドアから現れたのは、××ではなかった。なかったが……可能性の候補に入れてなかった、海神の妻。

 

「と、豊姫……」

「失礼します。突然の訪問、申し訳ありません」

 

かつてはオレと仕事をよくさぼり、妹に怒られていたあの綿月の長女が、月の使者だった時の貫禄を感じさせるほど、珍しく仕事モードの海神を観て目が点になった。奥にはレイラとアリスもいるし、本来ならオレがいない時に伝えればいいのに、魔女が大勢いる館で、それでも話すというコトは、聞かれてもいい話なのか、もしくはオレも聞いておかねばならないのかもしれん。

今まで回帰してきたが、オレの記憶は虫食い状態とはいえ、こんな場面に直面した記憶は、豊姫がココに来た記憶はない。豊姫とアイコンタクトしても、微笑むだけだった。あのサボリ魔の豊姫が、いつもの自分とは正反対の、毅然たる態度から伺うに、ココは茶化したり邪魔すべきではない。

元ギリシア神話の女神は、まさか自分に用があるとは思ってなかったのか、こちらに振ってきた。

 

「あれ、カレに用でもあるの? 邪魔なら消えるけど」

「いえ、へカーティア様に言伝を預かっていまして」

「伝言って、誰からよ」

「私たち××神話の女神、忘却を司るモノです」

 

口から息を漏らした地獄の女神は、返答せずに目線で催促する。話し方からするに、諏訪国で会うのか。忘却の女神は一柱だけではない。他にもいる。いるのだが……諏訪国にいて、忘却の女神といえば、一柱しかいない。こんな状況の記憶は、どれだけ掘り返しても、どれだけ振り返っても、合致する記憶がない。お前……なにを考えてるんだ、××。

昔は××神話の海神一族であったが、我らが××神話を捨てた今は、綿月家として蓬莱山家に仕える御三家になってしまい、月の使者でしかなくなった長女は、頷いて紡ぎ出した。

 

「逢魔時にアナタと話がしたい、と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだアレ」

 

ナニかが辺りを飛び回っていた。たまに樹木にぶつかっては落ち、また飛んで樹木にぶつかっては落ち、ソレを繰り返しているという面妖な光景だった。

しかし、そのナニかは一度止まり、浮かんだままオレを取り囲むかのように、空を泳ぐ。まるで、危険なコトから守ろうとする動きだった。右手を上に向けると、ソレはゆっくりと掌の上に乗ってくる。

最初は虫か鳥かと思ったが、どうやらそうではなさそうだ。暗くてよく見えなかったから、空いた左手で触る。コレ…書物か巻物かな。感触的になんか紙っぽい。もしや、白蓮か命蓮、だろうか。魔法の練習でもしてるのかと辺りを見渡すが、あの子たちの気配はない。

旧約聖書・ゼカリヤ書 第5章2節

『彼がわたしに"何を見るか"と言ったので、"飛んでいる巻物を見ます。その長さは二十キュビト、その幅は十キュビトです"と答えた。』

 

「コレ魔人経巻ではないか。魔界の質量を感じるし、神綺……あるいは××だろう。まあいいや。白蓮と命蓮の姉妹はボアネルゲス(雷の子ら)であり、命蓮の役目は、旧約聖書に出てくるעֶזְרָא‎‎(エズラ)

 

掌に乗っている巻物らしきモノが、また空中に浮かび始めた。だが歩き出したと同時にソレも付いてくる。うーん。燃やしてやろうかと思ったが、特に害は無さそうなので、気にせず進もう。

魔法の森の中央辺りに魔女の館が建てられているのだが、近くに湖があるので、釣りでもしようと、地面に落ちてた木の棒を拾う。魔女達からタコ糸を貰っておいたので、生き餌は付けずそのまま垂らして浸ける。

流石に魚もそこまで馬鹿じゃないだろうし、こんなので釣れるとは思ってない。色々あったから、何も考えずに無駄なコトをして、大事な時間を浪費したかっただけなんだ。

欠伸をしながらぼけーっとして数分。うつらうつらしている内に、最初は糸に何か触れる程度だったモノが、次第に糸が痙攣でもするかのように反応し始め、最後は、ぐわっと湖の奥へと引っ張られ、反射的にそのまま釣り上げてしまった。

 

「バカな……」

 

一匹、また一匹と、流れ作業でもしているかのように釣れていった。やめるタイミングが見つからなかったとはいえ、こんなに食いきれるか判んないけど、みんな呼んで食べたらいいか。

しかしなんだこの釣れる速度は。魚籠には大量の魚を入れたが、もう一匹も入る余地はないので、釣られた魚たちはオレの周りで跳ねている不気味な光景。鳥にくれてやろうと思っても、この魔法の森って動物は殆どいないみたいだ。あっても植物とかキノコとか森くらい。

そもそも自然界を生きぬいて来た魚のクセに警戒心が薄い。釣り餌を付けてないタコ糸だけなのに、態々自分から喰われに来るなんて、自分たちを食べるモノが全くいないせいでもあるんだろうけど、もっと危機感を持つべきだと思う。糸を湖に浸けていたとはいえ、呂尚か何か? 

呂尚と違って風流がないやり方ではあるが、遂にこのオレも、釣りの才能が開花したようだ。今なら貧民な人間を全て救ってやってもいいかもしれないと思うほどである。ただ……何匹かワカサギを釣ってしまったけど、わかさぎ姫に嫌われないかな。

 

「釣りすぎだな。神社に帰って藍に捌いて貰おうか」

 

湖から陸に上がった魚は、勢いよく何度も跳ね、魂の灯が消えるまで、躍動感があふれているさまを世界に魅せつけているのだが、あまりにもうるさいので、息の根を止めようかと音の方へ視線を向ける。

――ふと、陸に横たわる一匹の魚と眼があったような気がした。目が真っ黒で、濁っていて気味がわるいその眼は、こちらの全てを洞観し、だがソレは虚空でも観ているかのような、どこを観てるのか判断できない。そうして思案する中、魚たちはそこで跳ねるのを止めた。

釣り上げた魚の眼は、魚籠にある魚を観て、えらいっ、と褒めているようで、

こんな け゛ーむに まし゛に なっちゃって と゛うするの。そう言っているかのように観えた。

うるせえ、こんなゲームにマジになってくれてありがとうをぶつけんぞ。

オレはソレを踏みつぶした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルク書 2章1節

『それで(ヤハウェ)は、わたしたちや、イスラエルを治めていた士師たち、王たち、指導者たち、それに、イスラエルとユダの人々に対して発せられた警告を実行に移されました。』

第5章5節

『エルサレムよ、立ち上がれ、高い山に立って東の方に目を向けよ。お前の子らは、神が覚えていてくださったことを喜び、西からも東からも聖なる者の言葉によって集められる。』

 

「人間はただ電光朝露の夢幻のあひだのたのしみぞかし」

 

いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて

あさきゆめみし ゑひもせす 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ

有為の奥山 けふ越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず

 

紀元前にいたある哲学者は、神はいると言った。ある哲学者は、自然災害に神は関わってないと言った。ある哲学者は、人間の運命は神が関与していると言った。ある哲学者は、宗教は神ではなく人間が創ったモノと言った。ある哲学者は、神話に出てくる神に対し、コレは神ではない、神とはこういうモノだと論理を組み立てた。

 

「古代中国では、魂は天に、魄は地に還る思想があった」

 

西行妖が風で靡き、花びらが空へと散らばっていく。地面に落ちて風化するのもあれば、風に乗って、飛梅伝説のように、どんどん遠くに行ってしまうモノもある。

木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に勝つ。と言うが、花も、やがては枯れて土となる。永遠ではない。永遠のモノなんてこの世にはない。そう思う人間もいるだろう。

でもさ。アレを観て、時々こう思うのだ。

 

「万物は変転するが、何ひとつとして滅びはしない。ピュタゴラスの言葉」

 

Ἀμάλθεια(アマルテイア),と姉さん……どうしてるだろうか。

神社に入る前に、両手が魚臭いので、手水舎ですすいでおこう。作法を無視しているが、神様に謝っておけば許してくれる。罰を受けそうだけどオレの神社だし大丈夫。多分。ていうか、未だに魔人経巻が付かず離れず付いてきてる。離れる気がないのだろうか。

匂いを落とし終え、魚籠にある大量の魚を裁いてもらうために、萃香へ藍の居場所を聞いたら居間にいるそうだ。神社の玄関を開け、中に入り、奥へと歩いていく。

…背理法。飛んでいる矢は、はたして止まっているのだろうか、それとも動いているのだろうか。あの古代ギリシア人には、ソレを解決できなかった。

なあ××。いつまで、あの亀を追いかけたらいい。背理法は、他の人間には詭弁に聴こえるかもしれない。しかしアイツらは、いつまで縮まるコトの無い……あの亀の背を観続けていたら――

 

「体調は良好か」

「はい。永琳様のお蔭です」

 

襖を開けると、両手に本を持ちながら藍が正座して、その膝の上で早苗が座っていた。

なにを読んでいるのかと思えば、竹取物語だった。娘に読み聴かせてもまだ理解できないだろけど、読んであげると喜ぶらしい。もちろん教育のため、言葉を憶えさせるためでもあるが、一番の理由は、実娘のとコミュニケーションを取るためにしているようだ。しかしまだ子供なのに、ソレは難易度が高くないだろうか。

オレも観ようと、邪魔にならないように横から覗き込む。この話に出てくるかぐや姫もそうだが、月の話では中国宗教の道教、そして地上においては、仏教思想が濃く反映されているのが有名だ。このかぐや姫も、人によっては性格の悪い女、と思われてるだろう。そんなコトを輝夜と咲夜に言えば、怒られそうだがな。

とはいえ、コレの内容を読み、改めて思う。竹取物語の元ネタは嫦娥伝説という説もあるのだが、やっぱり竹取物語の元ネタは嫦娥伝説派ではなく、オレはカター・サリット・サーガラ派だ。

だが、どうせ読むなら、藍より、妹の輝夜、もしくは咲夜が適任だろう。あの二人が、コレを読んでる光景を想像するだけで、笑える。

 

藍は一旦読み聞かせるのを中断し、娘の早苗を一瞥してから、こちらを観た。

 

「主。この子は正一位を叙するのでしょうか」

「まだ決めてない。だが基本は風祝だ。白蓮と命蓮も……いるし」

「判りました。この子の教養はどうしましょう」

「その件に関しては、傅役(慧音)に任せようと思ってる」

 

はい。藍はたったその一言だけで、それ以上は何も言わずにまた朗読を再開した。早苗はオレ達の娘だから、自分で教えたい。そう言うかと思ったが、そうでもないらしい。

あ、そうそう。竹取物語には、原文で穢れについての記述があるんだよ。

それで月の民ってさ、どいつもこいつも口を開けば、穢れ穢れ。ホント、ばーっかじゃねえのって思う時が多々ある。以前にも言ったが、月の民の穢れ思想が仏教寄りなんだよ。神道や、日本神話の穢れ思想とは全然違う。一応、道教にも穢れ思想は、あるにはあるのだが、その思想は、神道や仏教と同じではない。他に、ヘブライ神話やギリシア神話にも穢れ思想はあったりする。でも、月の民の穢れ思想は、竹取物語に出てくる穢れ思想の派生だろうな。

 

新約聖書・ヨハネによる福音書 第10章34節

『イエスは彼らに答えられた、"あなたがた(イスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人)の律法に、『わたしは言う、あなたがたは神々である』と書いてあるではないか。"』

 

旧約聖書・詩篇 第82篇6節

『わたしは言う、"あなたがた(イスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人)は神だ、あなたがたは皆いと高き者の子だ。"』

共同訳・詩篇 第82篇6節

『わたしは言った"あなたがた(イスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人)は神々なのか皆、いと高き方の子らなのか"と。』

文語訳・詩篇 第82篇6節

『我いへらく "なんぢら(イスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人)は神なりなんぢらはみな至上者の子なりと。"』

詩篇 第82篇7節

『"しかし、あなたたちも人間として死ぬ。君侯のように、いっせいに没落する。"』

 

藍の隣に座って、まだ幼い娘を視姦する。ソレを感じ取ったのかこちらを向くと、オレの周りを飛び回る魔人経巻に驚いたみたいだが、そのまま見詰め合っていたら、はにかみ両手で顔を隠す。ちゃんと聞きなさいと藍に注意され、ばつが悪そうにしながら視線を戻し、また耳を傾け始める。邪魔をしてしまったな、悪いコトをした。

仕方ないから藍の後ろに回って、狐の尻尾を体中に包ませて温まる。ついでに後ろから胸を揉んだら、ピクリと反応して一瞬だけ朗読が止まったが、妻は何も言わずに続行した。反応がないので掛襟から右手を入れて直接何度も揉んだが、音読が多少しどろもどろになるだけだった。でも柔らかかったです。早苗はなぜか気づいてなかった。読書に夢中になっていたのかもしれん。

 

「中国の歴史書・『竹书纪年』は述べた。征于東海及三壽,得一狐九尾(夏伯杼子東征、獲狐九尾)、と」

「そのような事をなさらずとも、私は主と永琳様の物です」

 

東征といえば……アレクサンドロス大王、もしくは神武天皇かな。

読み終えたのか書物を閉じる音が耳に入る。揉むのをやめて掛襟から右手を出す。妻の耳は赤くなってるように観えた。まだ満足できていない娘は、別のを読んで欲しいとせがむ。しかし妻は、その前に一旦休むようだ。今のうちに聞いておこう。

 

Καλλιρρόη,(カリロエー)の話では、ゼウスに頼んで子供を大人にする話がある。藍はどうしたい」

 

本来こういう大事な話は、妻の藍だけではなく、実娘の早苗にも聞くべきことだろう。でも聞かない。聞く必要がないから。

 

紀元前312年から紀元前63年・セレウコス朝のマカバイ戦争。古代ギリシア人とユダヤ人。外典だが、旧約聖書・マカバイ記には、ユダヤ人とゼウス、その信仰の記述がある。

現人神の早苗は、諏訪国の民を纏める存在、救世主たり得る。そう、旧約聖書に出てくる預言者・אליהו(エリヤ)אֱלִישָׁע(エリシャ)が起こした蘇生などの奇蹟、新約聖書のイエス・キリストが起こした奇蹟も起こせるだろう。神話時代の天皇のように、諏訪国の王にもなれるだろう。あとは牝鶏之晨にならないように気を付けねばならんが。

現人神の娘。この子は天皇と同じ存在だ。そこら辺にいる人間とは、違う。神の血を受け継いだ、神であり、人間でもある神聖な存在。まだ幼い早苗ではあるのだが、藍が言うにはもう読み書きが出来るらしい。もしや……オレの娘は天才なのか。

ただ、奇蹟と言えば聞こえはいいんだけど、イエス・キリストが起こした奇蹟って、旧約聖書に出てくる預言者が起こした奇蹟とほぼ同じコトである。かつてのユダヤ教徒にとってはペテン師であり、ナザレのヨセフの妻マリアが、どこぞの男と姦淫して出来た子でしかないのだ。その救世主に、一部のユダヤ人は賛同していたけど。メシアニック・ジュダイズムというヤツである。

まだ、イエス・キリストが存命していた時の、原始キリスト教徒の多くは、ユダヤ人だったけど、アレが、ユダヤの救世主なワケがないし、アレをユダヤ人の救世主なんて認めない。

…ああ、よくヤハウェはクズだって言われてるけど、一番クズなのは古代イスラエル人なんだよ。アイツもクズだけど、古代イスラエル人も負けてないぞ。

ηλι ηλι(主よ、主よ、)λεμα σαβαχθανι(どうしてわたしをお見捨てになったんですか).ελωι ελωι λαμα σαβαχθανι.

 

「私は......主と永琳様、二柱の御心のままに」

「昔から言ってるが、もう少し自分を出してもいいんだぞ」

「申し訳ありません。ですが、コレが今の私。私は従うだけの道具でいい」

「……お前のお母さんは、どうしてこう頑固なのか」

 

子供用の巫女装束を着ている早苗の頭を撫でつつ、なぜか胸を張っている娘の前で苦言を漏らしてしまう。しかし、どうして誇らしそうにしているのだろうか。

今はこの子の真名を口にはできない。願掛けの意味もあって、大人になるまで真名を教えられないし、名を呼んであげられないのだ。

 

紀元後の66年から73年のユダヤ戦争。古代ローマとユダヤ人。

ישראלים(イスラエル人).かつてその民族は主に見捨てられた。アイツと交わした契約を何度も裏切ったから。だから、主の教えである律法を守ってんだ。お蔭で、キリスト教なんていう宗教が出来ちまった。そしてἸησοῦς ὁ Ναζαρηνός(ナザレのイエス)よ。お前も主に見捨てられた、哀れな神の子だ。まだکوروش(キュロス2世)の方が、救世主(メシア)の称号に相応しいんじゃないか。杉原千畝は……違うか。

今は室町時代だが、コシャマインの戦いが起きる。天皇の血を引いている神裔・奥州藤原氏。もちろん奥州・陸奥国には藤原氏以外の武家や社家の神裔もいる。コレは神の血を引くローマ人もそうだ。

そして蝦夷地にいるアイヌとは、ヤハウェに創られたイスラエル人・ヘブライ人・ユダヤ人のように、アイヌ神話の神々(カムイ)に創られた民族だ。面白いし懐かしい。まるで……ユダヤ戦争ではないか。とはいえ、ユダヤ人はヤハウェに見捨てられた民族だから、アイヌとは違うか。神裔は戦国時代で終わるし、もう神の子孫は生まれないけど、富岡鉄斎、松浦武四郎が産まれる時は、北海道は近い。

 

「これでこそ母なんですよ!」

「そうだな」

 

てっきり自分のコトで誇らしげにしているかと思いきや、母親のコトで自慢げにしていたようだ。だが急に声のトーンを落とし、藍に聞かれないよう話してきたが、丸聞こえだった。

 

「しかし...母の機嫌が損なったように見受けられます。ここは一つ、謝罪しておかねば、皆さん、延いては私が御飯を食べられず、可愛い愛娘が一日中お腹を空かす悲惨な状況に陥る恐れが」

 

「なんと、ソレは困るな」

 

マカバイ記・2:52~60

『アブラハムは試練を通して信仰を証しし、それが彼の義と見なされたのではなかったか。』

『ヨセフは苦難の時にも戒めを守り、エジプトの宰相となった。』

『我らの先祖ピネハスは燃えたつ熱情のゆえに、永遠の祭司職の契約を授けられた。』

『ヨシュアは命令を遂行し、イスラエルの士師となった。』

『カレブは集会で証言し、嗣業の土地を受け継いだ。』

『ダビデはその忠実ゆえに、永遠の王座を受け継いだ。』

『エリヤは燃えたつ律法への熱情のゆえに、天にまで上げられた。』

『ハナンヤ、アザルヤ、ミシャエルは信仰のゆえに炎の中から救い出された。』

『ダニエルは潔白さのゆえに獅子の口から救われた。』

 

「藍、謝る気はないから許すな」

「そんな居丈高では私の御飯がー!」

 

「いえ、最初から怒ってはいないので、許すも何もありません」

 

今日はご飯抜きになるのを心配していた娘だが、妻はいつも通りだった。

きっと、罵詈雑言を浴びせても動じないだろう。どんな言葉でも、どんなコトでも従い、受け入れてしまう。クソ、どうやったら藍の感情を曝け出せるんだ。藍に手を出した時は、あんなにも感情を曝け出していたというのに。

旧約聖書・サムエル記 第1章11節

『そして誓いを立てて言った、"万軍の(ヤハウェ)よ、まことに、はしための悩みをかえりみ、わたしを覚え、はしためを忘れずに、はしために男の子を賜わりますなら、わたしはその子を一生のあいだ主にささげ、かみそりをその頭にあてません。"』

第1章19節

『彼らは朝早く起きて、(ヤハウェ)の前に礼拝し、そして、ラマにある家に帰って行った。エルカナは妻ハンナを知り、主が彼女を顧みられたので、』

第1章20節

『彼女はみごもり、その時が巡ってきて、男の子を産み、"わたしがこの子を(ヤハウェ)に求めたからだ"といって、その名をサムエルと名づけた。』

 

「それに、私如きがそのような考えをするのは不敬。永琳様もそのように宣うでしょう」

「......いいえ、比売大神はそのようなコトを仰るお方ではないと思います!」

 

母親の言葉とはいえ、早苗は不服で、さっきの言葉遣いを遠回しに注意されているようで、居心地が悪そうになった。多分、藍は娘の発言を意識して言ったワケではないだろうけど、娘にはそう聞こえたのかもしれん。

しかしあの××が、ソレを言うだろうか。言わなさそうだが……まだ月の都が地上にあった頃も、それなりに礼節を重んじる部分もあるにはあったよ。結構さばさばしてる時もあったが、そこまで上下関係が厳しくはなかったな。もちろん当時の都にだって法もあったし、なんだコイツと思われてしまう言動もあったけど。当時の永琳の場合、そこまで気にした様子はなかったなー。

特に藍はオレと永琳を無謬化しすぎなきらいがある。あの時のオレ達は人間だったが、今の永琳は忘却(知恵)の女神だ。そもそも藍は微妙に説明しにくい立場にあり、一応巫女であるとはいえ、我らと同じ神でもある。ココまで尽くしてくれるのはありがたいが、その分報われてほしいのが本音だ。

 

旧約聖書・エレミヤ書 14章19節

あなた()はまったくユダを捨てられたのですか。あなたの心はシオンをきらわれるのですか。』

15章1節

『主はわたしに言われた、"たといモーセとサムエルとがわたしの前に立っても、わたしの心はこの民を顧みない。彼らをわたしの前から追い出し、ここを去らせよ。"』

15章5節

『"エルサレムよ、だれがあなたをあわれむであろうか。だれがあなたのために嘆くであろうか。だれがふり返って、あなたの安否を問うであろうか。"』

15章6節

『主は言われる、"あなたはわたしを捨てた。そしてますます退いて行く。それゆえ、わたしは手を伸べてあなたを滅ぼした。わたしはあわれむことには飽きた。"』

16章11節

『あなたは彼らに答えなければならない、"(ヤハウェ)は仰せられる、それはあなたがたの先祖がわたしを捨てて他の神々に従い、これに仕え、これを拝し、またわたし(ヤハウェ)を捨て、わたしの律法を守らなかったからである。"』

 

「藍。巫女をやめて好きに生きなさ――」

「いやです」

「……え」

 

命令すれば言う事を聞くだろうと、そんなふうに考えていた時期がオレにもありました。

でも、まだ喋り終えてないのに、拒絶の言葉が即答で返された。しかも普段は感情の起伏が乏しく、全く抑揚がない、あの藍が、切羽詰まった声を被せて、だ。オレは面喰ってしまい、一弾指、言葉が出なかった。だから一番気になったところを聞いた。

 

「そ、そこは従わないのか」

「いやです。例え永琳様でも、それだけは従えません」

 

表情が変わってないけど、どことなく本気で拒否してるように観えたので、しつこくしてもアレだし、この話はやめるコトにしよう。他の話題でもしようとしたが、思考が止まった。

……だがちょっと待ってほしい。そもそもオレって、なんのためにココへ会いに来たのかを思い出そうと記憶を遡る。本来、もう少し我儘を言えと伝えに来たのではない。好きに生きろと言うためではない。そう、釣った魚を捌いて貰うために居間へ来たんじゃないか。なんてコトだ、ソレが頭から抜け落ちてたなんて、もしかしなくても耄碌おじいちゃんかな? 年は取りたくないモノである。

 

「言い忘れてたんだが、さっき魚を釣ってきたんだ。時間があるときでいいから捌いてくれ」

「そうでしたか。では今からしておきます。傷んでからでは遅いですから」

「急いでないから別に後でもいい」

「ダメです。今するといったらします」

 

オレの静止も虚しく、藍は膝の上にいた早苗にどいて貰い、立ち上がってまずは玄関に置いてある魚を回収しに行った。本当は、レティの専用寝床と化してる冷凍倉庫に放り込んでおけば、魚が傷むことも腐ることもないと考えたが、匂いが移るからやめておこう。

余計なことを言わなければ、藍に読んでもらえただろうが、取り残されてしょんぼりしている早苗を観て、居た堪れなくなった。調理が終わるのはまだまだかかるだろう。

ヒマだから白蓮と命蓮、幽々子と遊ぼうかな。

 

「氏子たちと遊びに行くが、一緒に来るか」

「行きます!」

 

満点の笑みで頷いた娘は、右手をオレの左手と繋ぎ、引っ張るように玄関に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新約聖書・ヨハネによる福音書 第8章37節

わたし(イエス)は、あなたがた(ユダヤ人)がアブラハムの子孫であることを知っている。それだのに、あなたがたはわたし(イエス)を殺そうとしている。わたしの言葉が、あなたがたのうちに根をおろしていないからである。』

新約聖書・マタイによる福音書 第22章32節

『"わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である"と書いてある。神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。』

 

「この国って本当に垂拱之化よねぇ......」

 

魔女たちと交流を深めていたら、あっという間に黄昏時。地獄に帰りたいが、月のお姫様から言伝を承っている。ソレを忘れてはいけない。面倒だけど、行かなくてはいけないだろう。今の私は、ギリシア神話の女神ではなく、××神話の女神なのだから。ただ、どこで会うのかを明確には聞かされてない。あのお姫様が言うには、霎時待ってたらいい、と聞かされているから、それまで好きにしよう。

 

「......」

 

花一時人一盛り。昔、××神話がまだ輝いてたとき、雷神の妻1柱と1人、もう数柱・数人が余計なコトをして、その神話が消えた。特に忘却(知恵)の女神と白澤が関与してる。でも......この惑星は地球。地球だ。別の世界なんてものじゃなければ、一炊之夢などでは、決してない。

だけど、美人・可愛い女性だけが好きな雷神を観て、たまに想起する時がある。

ソレは、××神話の民族が......どこにいるのか、どこの民族に吸収されてるのか、という疑問。

ある民族が別の民族に吸収された、という話は、旧約聖書や古代ローマでも実際にあったように、日本も例外じゃない。

記憶を無くす前のカレなら知っていただろう。思考に釣られるように視線を動かしたら、××神話の最高神とされる男は、自身の血を引く子孫、神裔の少女と血・民族について語り合っていた。

 

「純血は大事なの?」

「もちろん」

「血筋は尊いの?」

「前提として必要だ」

「そうなんだ」

「そうなんです」

 

よく飽きないね。何度そう繰り返して思っただろうか。それほどまでにあの少女達...というより、あの民族と氏子が大事なのだろう。愛しているのだろう。手放したくないのだろう。

月の頭脳の手により、××神話が無くなって......元の形には、もう...戻らないけれど。それでも、アレだけは、あの光景だけは、まだ××神話があった世界の時から、変わってない。

 

「将来的に白蓮はこの諏訪国を治め、命蓮はその補佐。この子(早苗)には救世主(預言者)になってもらう」

「よく判んないけど氏神様と一緒にいられるなら従いまーす!」

「だからそんな口の利き方は――」

「救世主より神託する預言者の巫女(シビュラ)の方がいいと愚考します。神勅も可」

「おじさん、そんなことよりもっと甘いモノ食べたいよ」

「いや幽々子ちゃんにも役目があるんだから、食べてばかりいないで少しは聞いてくれ」

 

食傷気味な一端を垣間見て、物思いにふけていたら、急に神聖さが練り込んだ突風が吹き、我にかえる。

カレの神社にある西行妖の前で、××神話の最高神の血を引く氏子3人、白蓮、命蓮、早苗...だったかな。天皇の血を引く少女、確か幽々子という名の少女と合流して話し込んでいた。その内容は、神話やお家のお勉強だけど。この子たちって寿命がなくて南山之寿らしいから、蛍雪之功は大事よねん。

白蓮という少女はカレにべたべたし、ソレを諫める妹の命蓮。幽々子は西行妖から伸びてきている枝がハンモックになってて、そこで寛ぎながら甘いモノを食べ、現人神の早苗は、いきなり吹いて来た突風に嫌気が差したのか定かではないが、新約聖書のイエス・キリストのように、"静まれ"と一言発し、奇蹟を起こしてソレを止ませていた。蓬莱山幼稚園かな? ちょーっとユニークな子が多すぎでしょ。しかもカレの周りをうろちょろする巻物らしきモノが浮遊している。

ただ今の突風は、××神話の神奈子という海神・風神の女神が、どうにかしてカレを殺そうとしたんだろうけど。

まるでテーマパークで遊んでるかのような子供たちから質問攻めにあっていた元至高神は、一段落したのか水を向けてきた。

 

「魔女たちとは折り合いをつけられそうか」

「んー。大丈夫だと思うよ。みんな逆らわず素直だったから」

「ならばよい。後は託したぞ」

「オッケー。託されましょう」

 

お互い座ったまま、バトンを引き継がせるように、ハイタッチした。思えば、各神話を転々としてきたものだ。最初はあの神話、次はギリシア神話、その次は××神話および日本神話。ここまで色んな神話に取り込まれた神って、そうそういないんじゃないかな。

 

「それで純狐だが――」

 

私が魔女たちを譲渡されたみたいに、彼女にも何か従わせるのか。ソレを問う前に、すぐ隣で空間に亀裂が入ったが、捻じ曲がりながらソレは回転し続けると、ソコに大きな穴があいた。すると奥から、莫逆の友の純狐が子供を抱きながらも、しなやかに歩いてきた。アレはカラビヤウ空間。

カレは唖然として、裂け目が閉じると同時に、彼女は言を発する。

 

「御呼びでしょうか」

「……反応早すぎだろ」

「天帝に求められたら、すぐに応えられるようにしていますから」

「じゃあ今すぐ抱かせろ」

「はい。へカーティア、この子をお願い」

「ほいきた、私に任せなさい」

「待て、なんでそうなる。そこはもっと嫌がるところだろ!」

 

私の友人にとって最も大事な、宝物である子供が壊れないよう大切に受け取り、彼女は服に手をかける。だがカレはソレを阻止すべく、危ないから白蓮に離れてもらうと、彼女の両手を抑え、鬩ぎ合いになった。力はなぜか互角、純狐はソコまで抱かれたいのか、それとも、カレが欲望に流されそうなだけで弱体化してるのか。いずれにせよ、両者ともに動きの変化は観られない、白熱の試合である。子供を抱いてるから無理だけど、あまりのおかしさに笑い転げてしまいそうだ。

カレの氏子たちと幽々子は、この状況でもマイペースに過ごしている。将来大物になるかもねん。伐性之斧にならなければいいなぁ。杞憂であってほしい。

月で争っていた私たちが、こんなにも変わった。私とは違い、昔の記憶が消えてる純狐なら、なおさら驚いてるかもしれない。まぁ私の場合に限っては、昔からこうなるコトが決まってた部分もある。だけど、純狐というモノが××神話に加わるのは、予想外だった。

殷鑑遠からず。仕方ない。ココは妻として、友人に嘘つくのは忍びないけど、他に方法もないし、後で私が怒られたらいいだけ。カレに助け舟を出してあげよう。

 

「純狐、あそこに嫦娥がいるわよん」

「なんだと!?」

 

脱衣を即座にやめた彼女は、背から紫色の7本のオーラみたいなのを出し、親の仇......子供の仇でも見つけたかのように、辺りを探して視界に入ったモノ全てを呪いにかけそうなほどだった。カレは一度だけほっとしたが、片手をおでこに当てて頭が痛そうにしている。

この場には、日本神話・××神話、中国神話、ギリシア神話がいるが、日本神話の場合は、大王(天皇)を中心に動いている。ソレはギリシア神話に出てくる古代ギリシア人や、中国神話の古代中国人だって同じコト。

まだ××神話があった時の世界。あの雷神が最初に娶った妻、月の頭脳と称された、智慧(忘却)の女神に言われて、私達は、忘却の水を......λήθη,(レーテー)を飲むこととなった。

だけどソレは......もう終わり。

 

外典・マカバイ記

『――王は領内の全域に、すべての人々が一つの民族となるために、おのおの自分の慣習を捨てるよう、勅令を発した。そこで異邦人たちは皆、王の命令に従った。』

 

「おかしいな。回帰したなら瞋恚は無くなっているハズなのだが……」

「氏神様、大丈夫ー?」

「邪魔しちゃダメだってば」

「よく判りませんが奇蹟があればなんとかなります! 私に任せてください!」

 

カレは原因を考えることに没頭し始める。暴走してる彼女を止める気がないと言うより、寧ろ純狐があそこまで反応してしまう原因を探っていた。心配になったのか、白蓮が話しかけて命蓮がソレを苦言を呈し鬩牆。ハンモックに乗ってる幽々子はいつのまにか寝てて、早苗は奇跡を起こそうとしていたりしなかったり。濃すぎ、色んな意味で濃すぎだよ。

ただ、私が原因とはいえ、コレはマズいよね。どうやって彼女を止めよう。今までは月の都へ嫌がらせして解消させてたけど、今となってはソレが出来ない。そんなコトしたらまた殺されちゃう。

どれだけ探しても目的の人物を観つけられなかったみたいで、純狐は振り返って私に直接聞いて来た。

 

「へカーティア、嫦娥はどこですか? 早くアレを始末しなくては、天帝が危険です」

「あ、そっちね。だからそこまで過剰に反応してるんだ。とはいえ無所不用其極にも限度が......」

 

「あの女はダメ。何れ天帝を脅かすナニかの企みがあるでしょう。アレは私達とは根本的に違う。アレは神話時代からいつもそうだ、必ず裏切る。本来なら××神話に引き入れるべきではない」

 

「心配し過ぎな気もするけど、ダレカさんが軽諾寡信で嫦娥を娶ったからねー」

 

さっきの彼女を観たら、恨みで動いていると感じていただろう。でも、実際はカレのためだったらしい。うーん、ここまで気に入られるなんて、それほどまでに恩を感じてるんだねぇ。でも彼女の子供が殺されてから3000年以上は経ってるから、あれから肉親は自分だけで、私とは友人でも、やっぱり埋めきれない溝はあった。だから、ぽっかりと空いた時間を、子供と一緒にいて埋めたいんだろう。

ちらっとカレを観ると、皮肉を込めた発言に、今にも喀血しそうな表情になった。迂闊に娶ったコトについて気にしてたみたい。これ以上は酷だから、慰めるようにカレの背中を摩ってあげる。

 

「大丈夫、大丈夫よ。何か起きても、彼女が守ってくれるわよ。(多分)......」

「そこはあんまり心配してない。頼りにしてるぞ純狐」

「安心してください、あんなヤツ私が始末してみせます」

「それはそれで困る。あんなのでも退っ引きならぬ事情があってだな……」

 

ギリシア神話は古代ギリシア人が、ローマ神話には、古代ローマ(ラテン人・エトルリア人)民族を基盤としている。ソレはシュメール神話、エジプト神話、ヘブライ神話、中国神話、他の神話も、その民族を中心としているのは例外じゃない。古代イスラエル人以外の民族が登場するヘブライ神話みたいに、実際のギリシア神話とローマ神話では、古代ギリシア人・古代ローマ人以外の民族、異民族も普通に出てくるけどね。

旧約聖書・エクソダス(出エジプト記) 第3章15節

『神はまたモーセに言われた、イスラエルの人々にこう言いなさい"あなたがたの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主が、わたしをあなたがたのところへつかわされましたと。これは永遠にわたしの名、これは世々のわたしの呼び名である。"』

 

「大変お待たせしました。早速ですが、比賣大神はこの先でお待ちです」

 

カレの背中を摩っていたら、女性の声が耳に入る。目の前には縦線のようなモノが浮かび上がってて切れ目の両端はリボンで縛られており、ソレはまるで空間を閉めているかのようだったが、ファスナーを下ろされるかのように少しずつ開いていき、最後まで下ろし終えたソコには、無数の目玉がこちらを凝視していた。この中に入ればいいのだろうか、ソレは少々ハードルが高過ぎではないだろうか。

カレを一瞥しても、後は任せるとばかりに、目の前にあるモノへは一切反応せず、純狐を抑えに行った。私も神話時代に色んな経験してたとはいえ、この中に入るのは聊か気後れしてしまう。

 

ええい、おんなは度胸。思い切って上半身だけを入れると、中は不気味の一言に尽きる。とりあえず目玉しかなかった。コレに入るのは嫌だけど、忘却の女神に会わなきゃいけないし、文句は言ってられない。でも、このまま全身を入れようとしたその時、カレの驚く声が聞こえて、動きが止まってしまった。

 

「来ちゃった」

「うげ。なぜこのタイミングで来るんだ青娥!」

「面白そうだったので」

「き、貴様、まさか気が触れたか。今の状況は説明するまでもないハズだぞ」

「はい」

「お前を娶ったのもコレを防ぐためだったのはお前が一番知ってるだろ!」

「先程から眺めてましたが、爺々のお蔭で随分変わった様子。今ならしこりの解消が出来ます」

「……憑き物がついてるあれでか」

「いいえ。子供が戻り、回帰した時点で憑き物は落ちてます。彼女は爺々に首ったけなんですよ。荒々しくなっているのはソレが原因でしょう。少し......妬けますわねぇ」

 

「ハハハ......ハーハッハッハッ!! 苦節3000年、この時をどれほど待ち侘びたコトだろうか。やっと相見えた。会いたかったぞッ! 嫦娥ァァァァァ!!!」

「私は然程ではありませんが、まずはお互い××神話になった事と再会を祝しましょう」

「ふざけるなこの婊子。お前の存在はいつか天帝の邪魔になる、さっさと消えろッ!」

「爺々は清濁併せ呑むお方。潔癖すぎるのも考え物だと思います。それに、易姓革命思想は古い」

 

観なくてもどんな状況か、この後どのような光景になるのかは、容易に想像できる。

突然ダレカに引っ張られ、バランスを崩して足元がふらつきながらも、なんとか体勢を整えて、向こうの様子を確認しようと、上体をひねって後方を観るが、既にその穴は閉じられていた。残念だ、観たかったのに。

 

「なんてこと......あんなにも面白そうな出来事、他に類を見ない場面だったのにッ!」

 

カレが青娥......嫦娥を娶ったのは今回で初めてなハズ。記憶がないから間違いない。なのにその貴重なシーンを眼に焼き付けるコトが、私には出来なかった。

これ以上は無駄だと悟り、奥へ進む。しかしココには何もない、あるとすれば今も私を視姦してる無数の目玉くらいだろう。あの女神はどこにいるのか、いないなら帰った方がいいかと次元を裂こうとすると、手が止まった。いつの間にか魔方陣が足元にあったからだ。

さっきまでは無かったのに、ソレはかそけき光を放っていた。こんな薄暗い空間を、緩徐と明るくなっていき、全てを照らし浄化するような後光を燦然と差していくと、光をあらわす。ソコからナニかが出て来た。彼女だろうか、顔を観ようとしたが、いくらなんでも眩しすぎるので目視はできない。

やっぱり彼女と会いたくない、出来るならこのまま帰りたい。後で面倒になるからムリだけど。

徐々に光が弱まっていくと、その人物は露わになる。

銀髪で後ろ髪を三つ編みにし、一度見たら忘れることはない服を着てる女神は、 艶笑した。

 

「――諏訪国へようこそ。元ギリシア神話の女神さま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回で室町時代

どうでもいいかもしれませんけど、弘天の弘は弘法大師のモノですが、弘天が仏の教えを守らないモノを必要以上に嫌悪しているのは、主に『承和遺誡』と『弘仁遺誡』の影響が大きいです。
つまり空海の思想がかなり混じってます。
そうは言っても、あの空海は仏の教え以上のモノを日本に持ち込んでますけど。

儒教についても弘天の天である菅原道真が理由です。


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是故言悖而出者,亦悖而入;貨悖而入者,亦悖而出
知不知上;不知知病。夫唯病病,是以不病。聖人不病,以其病病,是以不病


老子道德經 二十章

『絕學無憂,唯之與阿,相去幾何。善之與惡,相去若何。人之所畏,不可不畏。荒兮其未央哉。衆人熙熙,如享太牢,如春登臺。我獨怕兮其未兆;如嬰兒之未孩;儽儽兮若無所歸。衆人皆有餘,而我獨若遺。我愚人之心也哉。沌沌兮,俗人昭昭,我獨若昏。俗人察察,我獨悶悶。澹兮其若海,飂兮若無止,衆人皆有以,而我獨頑似鄙。我獨異於人,而貴食母。』

 

「神農、虞、夏忽焉沒兮,我安適歸矣。于嗟徂兮,命之衰矣」

 

狂えば天才。吠えればカリスマ。死んだら神様。何もしなけりゃ生き仏。

論語・陽貨第十七

『子貢曰。君子亦有惡乎。子曰。有惡。惡称人之惡者。惡居下流而訕上者。惡勇而無禮者。惡果敢而窒者。曰。賜也亦有惡乎。惡徼以爲知者。惡不孫以爲勇者。惡訐以爲直者。』

新約聖書・使徒行伝 第17章30節

『神は、このような無知の時代を、これまでは見過ごしにされていたが、今はどこにおる人でも、みな悔い改めなければならないことを命じておられる。』

新約聖書・コロサイ人への手紙 第2章8節

『あなたがたは、むなしいだましごとの哲学で、人のとりこにされないように、気をつけなさい。それはキリストに従わず、世のもろもろの霊力に従う人間の言伝えに基くものにすぎない。』

 

「る~こと。お前に言っておきたいコトがある」

「なんでしょう」

「実は日本人ってイスラム教徒なんだよ」

 

クルアーン 第2章256節

『宗教には強制があってはならない。正に正しい道は迷誤から明らかに〝分別〟されている。それで邪神を退けてアッラーを信仰する者は、決して壊れることのない、堅固な取っ手を握った者である。アッラーは全聴にして全知であられる。』

クルアーン 第109章6節

『あなたがたには、あなたがたの宗教があり、わたしには、わたしの宗教があるのである。』

 

「宗教・聖典と同じコトをぬかすなんて、日本人って面白いなあ」

「断章取義は、舞文弄法は褒められたものではありませんよ」

「全くだ。輪廻転生、憑依、錬金術、魔法、神などの存在を使い、おんぶにだっこするヤツもな」

 

クルアーン 9章6節

『もし多神教徒の中に、あなたに保護を求める者があれば保護し、アッラーの御言葉を聞かせ、その後かれを安全な所に送れ。これはかれらが、知識のない民のためである。』

他人に押し付けるなっていう思想自体は、古代中国・古代ギリシア・古代インドにもあった。もちろん言い方や論理や思想、どういう事柄についてかなどの違いはあったが。しかしながら聖典とされるクルアーンから引用したけど、イスラーム教徒がソレを守っているかどうかなんてどうでもいいんだよ。肝心なのは、宗教と同じコトを言っているところだ。

クルアーンだけでなく、紀元前から続く宗教の聖典を読めば読むほどそう思わずにはいられないよ。どう考えても日本人は無宗教ではない。そのくせ倫理・思想・法・宗教観・論理をムダに垂れ流すクソ民族だし、まったく笑えない冗談だ。無自覚な分、質が悪い。宗教と宗教家をバカにしたり、非難したりは出来ねえな。

老子道德經 三十八章

『上德不德,是以有德;下德不失德,是以無德。上德無為而無以為;下德為之而有以為。上仁為之而無以為;上義為之而有以為。上禮為之而莫之應,則攘臂而扔之。故失道而後德,失德而後仁,失仁而後義,失義而後禮。夫禮者,忠信之薄,而亂之首。前識者,道之華,而愚之始。是以大丈夫處其厚,不居其薄;處其實,不居其華。故去彼取此。』

 

「大体、鬼の頭に角があるのは当たり前と言われているが、その設定も後世の――」

「全ての鬼はお酒が大好きですよね」

「……ソレを本気で言っているなら、傑作だな」

「そうですか。それより輪ゴムの話しましょうよ」

「話変えすぎだろ」

 

車輪の再発明じゃないが、初めて観たモノ、というのは印象に残りやすい。場合によってはソレを最初に出来たモノと勘違いする時もある。コレは無知と自惚れと見聞のなさ故に思い込むのが原因だ。とはいえ、ソレを悪いコトと言うつもりはない。元々は知ってか知らでかだったのに、いつの間にか知ってか知らずかになった。御伽話の意味も昔と変わっている。性善説と性悪説なんか元々の意味とは全く違う解釈をされている時だってある。コレを妨げるコトなど出来やしない。

ただ、例えば赤蛮奇のスペルカード・ヘルズレイみたいに、あるキャラの目からビームを出すなんて設定があるけど、その設定はもうインド神話にあり、イスラーム教、古代ギリシアでも論じられていた。その設定を使う経緯が、知ってか知らずかは置いておくとしても、真の意味でオリジナルじゃなかったのだ。どう言い繕っても、ソレは2番煎じ。また、言葉も文字も倫理も思想も価値観も、自分が生み出したものではない。

 

「ともあれ、××様へお伝えしたいことがあります」

 

さっきは気を利かしてくれて話に乗ってきてくれたが、従者はこの話が終わったと判断したらしく、わざわざ話題を逸らして聞きたくないコトから現実逃避してたのに、セクサロイドとはいえ心も人間と同じにしているハズの彼女は、一方的で機械的ながらも、事務的に突きつけて来た。

論語・憲問第十四

『子路問事君。子曰、勿欺也、而犯之。』

 

「神綺様がまた魔界を消滅しました」

「……うん。アレでも魔界の女神だから彗氾画塗だろうな」

「男見るなら7年一度、諏訪の木落し坂落しと言いますが、地獄や冥界にまで被害が及んでます」

「そうなんだ、すごいね」

 

孔子は『子曰、巍巍乎、舜禹之有天下也、而不與焉。』と言ったのだ。和羹塩梅という言葉もある。だから有能なモノに任せよう。諏訪国にいるモノは多士済済なんだから、オレがするよりはいい。実際にソレをやって乗っ取られた国もあるが。やっぱり儒学者たるもの、王道楽土を目指すべきだ。だが中通外直は出来なさそう。

セクサロイドであり××神話の従者でもある彼女、る~ことの言葉を空返事で返しつつ、家畜化した虫を鑑賞する。今はもそもそと桑の葉を食しているけど、なにを隠そうその虫とはあのカイコである。虫とは得も言われぬ存在ではあるが、コレはずっと眺めていたい生き物だ。ただじっと観ているだけなのに、なんだか世界が平和になりそうな気がする。地平天成はココにあったんだ。

……でも、おかしいよな。今の季節は冬なのに、なんで元気に動きモリモリ食べているんだろう。普通、虫って冬眠とかするモノじゃないのか。実は冬じゃない、なんて事はないだろう。昨日は雪が降ってたから間違いない。異常気象ではないし、冬以外は基本的に寝ている雪女のレティと昨日会った。

 

「池魚籠鳥。神が鄒魯遺風を守るのも大変だなあ。上善如水に生きられたらいいんだが」

「墨名儒行もほどほどになさってください」

「出来ないんだな、それが。名儒になりたいワケではないし、木石も困るけど」

 

亡八だったら好き勝手に動けて楽なんだが。仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の八徳を出来るモノがいるなら大したもんだ。しかしオレは曲り形にも××神話の神の一柱で、元とはいえ至上神(最高神)。いくら釈迦と孔子の教えでも、神である以上、絶対にしてはいけないモノもある。

乃公居馬上而得之,安事詩書。居馬上得之,寧可以馬上治之乎。

 

部屋の隅にいるメイド服を着た従者は、本来なら夢月と幻月、もしくはユウゲンマガンやくるみの生活をサポートするだけの存在で、跖狗吠尭である。その彼女がなぜここにいるのかというと、さっき言ってたけど魔界で問題が起きたらしい。しかも原因が神綺。見た感じは普段通りみたいで、まるで大噴火でも起きたかのような全体を揺るがす天変地異が起こり、何気ない動作で大地が割れ天が裂け、最後には魔界が崩壊したというか、氷が解けていくように消えたと聞かされた。

だから神綺がまた魔界を創り直しているらしいが、そもそもなんでそんなコトになったのかを聞くと、神綺が永琳のようにオレと一緒にいたいから、などとる~ことに言われて目が点になった。信じがたい話だ。あれだけ繰り返し、来来世世してきたのに、今更、寂しがるようなコトは起きないハズ。

 

「世皆無常,會必有離。愛別離苦、是故会者定離」

 

気を紛らわせるためにカイコを眺めていたら、今も無言のまま、どことなく威圧感を背に受けている。そこまで繊細な性格ではないとはいえ、気が散るじゃないか。早くしろ早くしろという言霊が、オレの脳を侵食し始めて来た。集中力がここまでないとは自分に失望した。無視し続けていたが、いるにしてもせめて傍観、もしくは空気のようなモノになって欲しいモノである。ムダと知りつつも頼んでみよう。

 

「……あのさ、無言の圧力をやめてくれないか」

「私のことはダッチワイフとでも思っていただけたら」

「ムリに決まってるだろ!」

 

顔を観る気も関わる気もなかったが、る~ことの返答に思わずツッコミして振り向くと、従者は無表情を気取っているが、どこか悽愴流涕のようなモノを感じ取った。いや……きっと気のせいだろう。しかしなんだか圧延されている気分。

新しい桑の葉を与えつつ彼女の話を聞き流していたが、アレなんだっけ。あ、ミヤイリガイだったな。そろそろリグルを使って地方病でも流行らすか。蚊も使おう。そうなると彼女に会わねばならんのだが、今は神綺に預けたまま。今は復元しているみたいだけど、もし魔界に行ったら、アイツは大丈夫大丈夫と言いながら引き止め、そのままずるずると永住させられる破目になるのは必至。待て、これはる~ことの巧妙な罠だ。人間がなーっ、バッタをなーっ、ゆるさーん。

ただ、あの世界は神綺がいるからこそ成り立っているというか、神綺そのモノが反映されていると言っていい。だからきっと、娘のアリスに会えないから寂しさが募って魔界が崩壊したんだろう。いつも面倒事は神綺か冥界にいるサリエルに放り投げているのだが、二柱とも色々堪っているのかな。

……って、もしそうならオレのせいになるじゃん! こんなコト姉さんに知られたらマズいぞ。や、やっぱり話だけでもきいておこう。

 

「御付きのメイドの夢子はなにをしている。こういう時の彼女だろ。神綺を諫めてないのか」

「魔界が消滅した時も、夢子様は普段通りに、神綺様のお世話に力を尽くしておられます」

「流石に萃香がしたコトまで要求する気はないけど、無反応も困るな……」

 

だからオレの元へ来たんだろうが、この前の青娥と純狐の件でてんやわんやだったのだ。これ以上はオレのキャパシティだともたない。だからサリエルか永琳に頼めばいいのではないかとセクサロイドに聞いてみたが、忙しいらしい。そこで、虫を眺めてヒマそうにしてたから頼んでるようだ。

子曰、天生徳於予、桓魋其如予何。そういえばオレ蓬莱の薬をまだ飲んでないから不死になってないな。てかへカーティアと純狐を××神話に降したあの時、抱き着いてきた神綺を振り切るために魔方陣でムリに帰ってきたし、そもそも前の世界でオレ殺された……んだよな。何度も思い出そうとしてみたが、往事渺茫だ。どういうワケか肝心な記憶だけが抜け落ちている。判んないなら考えるのを放棄して、カイコを観ている方が有意義だ。無求備於一人と言われるかもしれないが、永琳に任せておけば大抵のコトは何とかなる。

 

これ以上は無駄だと悟ったのか、それとも同じコトを延々と言い続けて気が滅入ったのかは不明だが、彼女はなんの脈絡もなく強引ながらも、話題を変えて来た。

 

「曾母投杼と言い、耳を疑う話でも繰り返せばソレを信じます。ソレが母であろうとも」

「そうだな。実はオレが女好きではないって何度も言えば氏子と妻たちも鵜呑みにするだろう」

「ソレはありえません。失笑、あるいは噴飯されるだけです」

 

今の発言は流石に看過できなかったらしく、即座にありえないと言われ、ウソだと看破された。そりゃあオレは女が大好きだし、コレからも娶るし、諏訪国で侍らせるけど、仮にも××神話の従者として創られたハズなのに、否定しながら鼻で笑われたよ。しかしオレがどういう女性を好きなのかを熟知している永琳がる~ことの容姿や肉体を創っているから、別段イヤな気はしないが。

哀公問社於宰我。宰我對曰、夏后氏以松、殷人以柏、周人以栗。曰、使民戰栗也。子聞之曰、成事不説、遂事不諌、既徃不咎。

 

新約聖書・ローマ人への手紙 第1章14節

『わたしには、ギリシヤ人にも未開の人にも、賢い者にも無知な者にも、果すべき責任がある。』

第1章15節

『そこで、わたしとしての切なる願いは、ローマにいるあなたがたにも、福音を宣べ伝えることなのである。』

第1章16節

『わたしは福音を恥としない。それは、ユダヤ人をはじめ、ギリシヤ人にも、すべて信じる者に、救を得させる神の力である。』

新約聖書・使徒行伝 第17章11節

『ここにいるユダヤ人はテサロニケの者たちよりも素直であって、心から教を受けいれ、果してそのとおりかどうかを知ろうとして、日々聖書を調べていた。』

第17章12節

『そういうわけで、彼らのうちの多くの者が信者になった。また、ギリシヤの貴婦人や男子で信じた者も、少なくなかった。』

 

和光同塵、大慈大悲(上求菩提下化衆生)と言いますが、瞿曇(釈尊)存命時に、吉離舍瞿曇弥という女性がいましたね」

「造言蜚語。釈迦は元々ああいうモノ、人を助けるだ救うだと言っている方がおかしいのだ」

「はい。しかし世界は循環して来ましたが、また回帰する必要はあると思いますか」

 

釈迦の話からいきなり飛躍して世界について聞いて来た。流石のオレでも唐突過ぎて面食らいかけたが、きっと意味があるんだろうと、楽観的になって深くは考えずにそのまま受け答える。

日本神話もそうだが、各国の神話って、論理の飛躍が凄く多いんだけど、オレはソレを当たり前と思っているから、すでに手遅れだ。そういうモノだと考えてないモノからすれば、思考停止と言われるかもしれないが、なぜ神話に疑問を抱くのかがオレには理解できない。もう戻れないだろう。

 

新約聖書・使徒行伝 第17章18節

『また、エピクロス派やストア派の哲学者数人も、パウロと議論を戦わせていたが、その中のある者たちが言った、"このおしゃべりは、いったい、何を言おうとしているのか。"また、ほかの者たちは、"あれは、異国の神々を伝えようとしているらしい"と言った。パウロが、イエスと復活とを、宣べ伝えていたからであった。』

第17章19節~20節

『そこで、彼らはパウロをアレオパゴスの評議所に連れて行って、"君の語っている新しい教がどんなものか、知らせてもらえまいか。 君がなんだか珍らしいことをわれわれに聞かせているので、それがなんの事なのか知りたいと思うのだ"と言った。』

第17章22節

『そこでパウロ(ユダヤ人)は、アレオパゴスの評議所のまん中に立って言った。"アテネの人(ギリシア人)たちよ、あなたがたは、あらゆる点において、すこぶる宗教心に富んでおられると、わたしは見ている。"』

第17章23節

『実は、わたしが道を通りながら、あなたがたの拝むいろいろなものを、よく見ているうちに、〝知られない神に〟と刻まれた祭壇もあるのに気がついた。そこで、あなたがたが知らずに拝んでいるものを、いま知らせてあげよう。』

 

「どうだろうか。ただ、エジプト神話・インド神話・マヤ神話(アステカ神話)オルペウス教(ピュタゴラス教団)ならまだしも、あの日本神話はそういう神話ではない」

 

古代中国の兵家・孫子は『故能而示之不能。』と言い、道家・老子は『國之利器、不可以示人。』と言ったが、今も佇んでいるであろうセクサロイドは、この話をしていったいなにを伝えたいのか判らない。多分、そこまで深い意味はないのだろう。あったとしても、老子が道教の〝道〟について説明できなかったコトと同じかな。

オレはエピクロス派やストア派ではなくキュレネ学派だが、テーブルの上に置かれている、書物の表紙を一瞥し、少し埃を被って薄汚れていたので右手で払う。このセクサロイド、何を考えているのか不明だが帰る気はないらしい。これ以上は平行線になるだけだし、そもそもオレは今というか、普段からヒマだろと言われたら実際その通りなので、ここは話に付き合うことにしよう。時間だけは無限にあるんだ。

老子道德經 三十三章

『知人者智,自知者明。勝人者有力,自勝者強。知足者富。強行者有志。不失其所者久。死而不亡者壽(・・・・・・)。』

 

「主に()われて、今もどこかで生きている猶太人(ユダヤ人)・アハシェロスは、イエス(ハ・マシアク)が帰るまで永遠に、否応なく彷徨う。それに回帰してきたが、永琳にとって須要な意味があるかどうか」

 

コーラン 第4章46節

『ユダヤ人のある者は〝啓典の〟字句の位置を変えて、「わたしたちは聞いた、だが従わない。」と言い、また「あなたがたは、聞かされないことを聞け。」またはその舌をゆがめて〝ラーイナー〟と言い、また宗教を中傷する。だがかれらがもし、「わたしたちは聞きます、そして従います。」、「謹聴せよ。」、また〝ウンズルナー〟と言うならば、かれらのために最もよく、また最も正しい。だがアッラーはかれら(ユダヤ人)が不信心なために、見はなされた。それでも僅かの者しか信仰しない。』

 

「...これは異な事を。神綺様、サリエル様、八意様の御三方にとっては意味があったのでしょう。だからこそ御身――××様がここにおります。吉離舍瞿曇弥の話とは違って」

 

セクサロイドが言ったのは比喩か婉曲なのだろうか。正直、なにを言いたいのかよく判らなくて、オレの読解力・理解力が無いだけなのかは定かではない。直截簡明に言ってくれたら助かるけど、なによりも永琳に創られたる~ことの伝えたいコトを汲み取れないなんて、おいは恥ずかしか! と思ったら、よくよく考えるとインド神話が実際に起きたワケだし、それを照らし合わせて観た場合、仏教の開祖・釈迦がただの人間ではなく神の血を引く人間、つまり神裔になる。

インドには聖仙の子孫とか普通にいるし、古代インドのカースト、ゴートラという意味で照合した場合、釈迦ってただの人間じゃなく神裔なのだ。だから神話が起き、かつ血が絶えていないなら、天皇たちと同じ神裔になるだろう。大体、人類の始祖とされ、神の血を引いているマヌがいる時点で、古代インド人は。

 

「この世界は死生有命、富貴在天だ。各国の神話が起きた以上、四海兄弟ではないが」

「知らなければ求める事はなかったでしょう。都合のいい部分だけを真実だと信じられますから」

「そりゃ、お前……」

 

小泉八雲の著作『蓬莱』の記述にはこうある。

『当時のその場所(蓬莱)チャイナ(秦王朝)の書物では、多くがこのように語る――

蓬莱では死も苦痛も無く冬も無い。花はその場所では決して萎れず、果物は決して衰えず、人がその果物を一度でも味わいさえすれば、二度と渇きや飢えを感じない。蓬莱では大した有害な知識はなく、人々の心が決して老いることは無い。心がいつまでも若い理由は、蓬莱の人々は生まれてから死ぬまで微笑んでいるからだ──神々が彼らの間に悲しみを送る時を例外とし、悲しみが去るまで顔にベールを掛ける。蓬莱の全ての民族は皆がひとつの家族の一員であるように、お互いに愛し合い信頼している。』

老子道德經 八十一章

『信言不美,美言不信。善者不辯,辯者不善。知者不博,博者不知。聖人不積,既以為人己愈有,既以與人己愈多。天之道,利而不害;聖人之道,為而不爭。』

 

「××様......蓬莱山様」

 

口を噤む。妻のダレカが、妹の輝夜を蓬莱山で呼んだコトも、呼ばれているところも観たコトはないし、オレはいつも弘天か××でしか呼ばれなかったから、ダレのコトを言っているのか須臾ほど理解が遅れた。

空海は『三教指帰(聾瞽指帰)』で儒教・道教・仏教の三教を語っていたが、そうだ。すっかり忘れていたとはいえ、オレは仙人が住むとされている蓬莱山なんだ。そして実妹の輝夜も……。

 

小泉八雲・著作『蓬莱』

『青い光景は高くなるほど深みを無くし──海と空(・・・)は輝く靄もやを通して混じりあう。その日は春、時は朝。ただ空と海(・・・)だけ──一面に広がる空色……前方では細波さざなみが銀白色の光線を捕まえて泡の糸を渦うずにする。』

『蓬莱の大気である。この大気は我々人類の時代ではなく、窒素と酸素の混合物ではない。それは全く空気では無く、想念──百万兆の百万兆倍の世代の魂がひとつの巨大な半透明の中に融合した実体──によって形成され、人々の魂の思考方法が我々のそれとは全く異なる。たとえ死すべき人の身であっても、その大気を吸い込めば、この精神の高鳴る鼓動を血液の中に取り込み、内面から感覚を変え──空間と時間の概念を再構成し(・・・・・・・・・・・・・)──それによって、かつて彼らが見たのと同じだけの物が見え、かつて彼らが感じたのと同じだけの物を感じ、かつて彼らが考えたのと同じだけの物を考えられるようになる。』

 

そういえばオレ、天界へ行った時に妹の輝夜の須臾を操る能力とか、諏訪国や宇宙で純狐と相対した時、咲夜の時間を操る能力を使ったが、時間に関する能力は効いたためしがない。普通に動けたし、なんでだろうと思ってもあんまり考えないように頭の隅へ追いやってた。でもやっぱりソレが理由なのか。それに、西行妖は妖気があるからまだ判るが、今の季節は冬なのに、神社の裏にあるウメと桜が今も咲き続けている。一年中ずっとだ。散るコトもなかったし、ましてや枯れたところを今まで観たコトがない。そして蓬莱山は地上だけではなく海底にあるモノと言われていたが、かつての浦島太郎は竜宮城に行き、その庭では四季が観られた。

うつりゆく雲に嵐の声すなり散るかまさきのかづらきの山。そもそも今って本当に冬なのか。吐いた息は白く、気温は低いし、昨日も雪が降った。でも虫は冬眠していない。本来咲き続けないモノも依然として咲き乱れている。今観たら積もった雪の上に花びらが落ちて風景を彩ってるだろう。だが本当に……今は冬なのか。

菅家文草・臘月独興

『欲尽寒光休幾処、将来暖気宿誰家、氷封水面聞無浪、雪点林頭見有花、可恨未知励学業、書斎窓下過年華。』

 

「××様はΖΕΥΣ(ゼウス)神でありיהוה(ヤハウェ)神です。しかし......御身が蓬莱である事も忘れないでください」

「潜移暗化……言われてみたらオレって蓬莱山でもあったな。最近は抜け落ちてたよ」

「不完全な記憶しかないのは御辛いでしょう。心中お察しします」

「取天下常以無事,及其有事,不足以取天下」

 

旧約聖書・サムエル記下 第12章24節

『ダビデは妻バテシバを慰め、彼女の所にはいって、彼女と共に寝たので、彼女は男の子を産んだ。ダビデはその名をソロモンと名づけた。主はこれを愛された。』

旧約聖書・列王紀上 第3章3節

『ソロモンは主を愛し、父ダビデの定めに歩んだが、ただ彼は高き所で犠牲をささげ、香をたいた。』

旧約聖書・歴代志下 第9章8節

『あなたの神、主はほむべきかな。主はあなたを喜び、あなたをその位につかせ、あなたの神、主のために王とされました。あなたの神はイスラエルを愛して、とこしえにこれを堅くするために、あなたをその王とされ、公道と正義を行われるのです。』

第20章6節

『言った、"われわれの先祖の神、主よ、あなたは天にいます神ではありませんか。異邦人のすべての国を治められるではありませんか。あなたの手には力があり、勢いがあって、あなたに逆らいうる者はありません。"』

第20章7節

『われわれの神よ、あなたはこの国の民をあなたの民イスラエルの前から追い払って、あなたの友アブラハムの子孫に、これを永遠に与えられたではありませんか。』

 

「しかしまだ記憶が戻らないって、まるでインド神話のドゥフシャンタ王の気分だよ」

「そうですね。指輪は......ありませんが」

「オレのはないが、他のモノの指輪(記憶)はあるじゃないか。なにせ××が――」

 

記憶、と言えば、神奈子の記憶はる~ことが預かっているハズ。確か永琳がそう言ってた。本来なら××が預かっているのに今回は違うらしい。その理由についてアレコレ考えても皆目見当がつかない。オレの頭では知恵熱が出てムリだった。

だから従者に妻たちの、特に神奈子について切り出そうとしたその時――光芒一閃、雪崩でも起きたかのような音が耳に入る。

何事かと思って観たが、なんの変哲も無い障子が、ただそこにあるだけだった。開けたら境内というか神社の庭があるだけだ。でも騏驥過隙とはいえどさどさと聞こえたし、音から判断するに、何かが落ちる音のハズ。音の正体を思案したが、恐らく神社の屋根に積もっていた雪が解けて地面へと落下したのだろう。従者に記憶のコトを聞こうとしたのだが、興が醒めたな。恐らくコレは外へ行けと言う天啓。

嗚呼、もう少しカイコを眺めていたかったが行くか。庭を観るためおもむろに立ち上がって障子を開けると、外は雪が一面に降り積もり白銀の世界になっていた。昨日は霏霏していたとはいえ、まだ解けてないらしい。勁雪はいい。観たくないモノを覆ってくれるから。観えないだけでちゃんとソコにはあるし、いつかは顔を見せるが。

そういえば、鬼女であるヤマメとパルスィ、紅葉たちと坂田ネムノを引き込んだのも冬だったな。レティが諏訪国へ来たのもこの季節だ。感慨深いモノがある。彼女も憶えてるのかな。

 

「よい季節ですね。先程、諏訪湖も見て来ましたが塩梅もそこそこ。御神渡りでもなされますか」

「どうせするなら諏訪子の方が適任だろう」

「ソレで神綺様の件ですが」

「判った判った。明日か明後日にアリスを説得して連れていくから」

「ありがとうございます。違えず履行してくださいね」

「あ、当たり前じゃないか」

 

ループをかちぬくぞ! ただまあ打つ手はないです。

本来は平安時代で終わる気でいたが、どの道、このままいつも通りに行くと、神裔は戦国時代で終わる。あの天皇も例外ではない。オレがソレをしなくても、明治時代の時点でもはや日本・日本人ではなくなっているのだから、どうでもいいコトさ。とっくの昔に終わってるんだ。

一念万年とは言うが、他のモノも含めて何度も何度も回帰しているのは、智慧(忘却)の女神・永琳が全ての原因ではなく、蓬莱のオレにも一因はあるとはいえ、やめる意味なんて現状で言えばないんだ。延々と世界を巡り続けて来たとはいえ、今が苦痛かと聞かれたらそうでもない。

なぜならば、オレと実妹の輝夜は、あの〝蓬莱〟なのだから。

オレ達の現状は、まさにギリシア神話のティテュオスやアトラースと言っていいだろう。しかしループ世界を抜け出したいワケでもないし、オレは二回死んだが、既に死ぬ運命から逃れているので、このまま繰り返しても特に不都合はない。ダレカを助けるコトもないし、やり直したいワケでもなければ、未だに飽きてすらいない。だからやるコトと言ったら、女を侍らすくらい……かな。とはいえオレたちはそうであっても、昔なんかのホラー映画で、運命にさらえってな! というのがあったように、他のモノがそうとは限らないけど、そこまで気にしなくてもいいだろうな。その理由は色々あり、数々の美女を娶ってきたが、忘却しているモノが大半だし、そこまで問題視する必要はない。少なくとも今は。

バケモンにはバケモンをぶつけるように、ループにはループをぶつけんだよ!

 

旧約聖書・ミカ書 第6章8節

『人よ、彼はさきによい事のなんであるかをあなたに告げられた。主のあなたに求められることは、ただ公義をおこない、いつくしみを愛し、へりくだってあなたの神と共に歩むことではないか。』

第7章18節

『だれかあなたのように不義をゆるし、その嗣業の残れる者のためにとがを見過ごされる神があろうか。神はいつくしみを喜ばれるので、その怒りをながく保たず』

第7章19節

『再びわれわれをあわれみ、われわれの不義を足で踏みつけられる。あなたはわれわれのもろもろの罪を海の深みに投げ入れ』

第7章20節

『昔からわれわれの先祖たちに誓われたように、真実をヤコブに示し、いつくしみをアブラハムに示される。』

 

「ところで××様。倒れてます、天人が」

「見なかったことにしよう」

「いけません」

 

従者なのにオレの言葉を聞き入れず、ちゃんと沓脱ぎ石に履物が置いてあるというのに、はだしのまま自然と天人で出来たオブジェへと向かった。お天道様が出て多少は暖かいとはいえ、セクサロイドなのは知ってるが、アイツ寒冷を感じたいのか。へカーティアみたいにファッションというコトだろう。いや、自分で言っておいてアレだがソレはない。

つられて行ってしまいそうになる。行くべきなのかな。でもあの服どう観ても天子だ。この状況になった経緯とか意味とかはまだ判んないが、このオレがボケてない限り、あんな印象に残りやすいモノを見間違うワケがない。ココからじゃ、彼女の腕とか足とかが雪に埋もれててよく見えないが、間違いない。流石にあんな場所で寝ているワケないが、かといって天人は丈夫だし死んではいないだろう。多分。なんでココにいるんだ。天竺にいる魔女のミスティア・ローレライを連れて来るハズだったが、まさか仕遂げたのか。

ここは鬼女に聞いてみた方が早いか。普段、諏訪国にいる鬼は酒を飲むか、飯を食うか、宴会をするか、建築をするかだ。ネムノは一人でいるコトが多く、ヤマメは妖怪の山へと引きこもってて、パルスィは天魔と神子の相手をし、華扇は青娥から仙術を学んで修行しており、たまに勇儀とかは永琳の河童やオレの天狗を顎で使う時もあるが、萃香はいつも霧になってこの国全体にいるから、今回の一部始終を観てたかもしれん。

 

「お前なにか知ってるか」

「ん? んー」

 

観えないが気配はする鬼女へ話しかける。彼女は一度聞き返してきたら、すぐに自分が聞かれてると理解したようで、霧から人型へとなったら、金田一耕助の石坂浩二ほどではないが、右手で頭を掻いて目線を逸らす。いつもはハッキリと答えるのに、今日は珍しく歯切れが悪かった。そういえばさっき雪崩みたいなけたたましい音を耳にしている。てっきり屋根の雪が落ちただけだろうと考えていたが、もしや先程の原因はこの鬼女で、あの天子に何かしたのではないか。

一刻お互い無言だったが、沈黙に耐え切れなかったらしく、萃香は観念して白状した。

論語・衛靈公第十五

『子曰、君子求諸己。小人求諸人。』

 

「......昔みたいに天界の一部を貸してくれないかねぇ、って聞いたんだよ。だけどそんな事駄目に決まってるでしょって言うから、記憶の確認もできたし、では力ずくでという流れに」

 

「お前……記憶があるなら天子はダレの娘か憶えてるよな」

「当然。白蓮たちと同じだ。それで天界へ行く時もあるから私がいなくてもしゃんとしなよ」

「自由だなあ」

 

幼妻はなにがあったかを明るみに出す。しかし罪の意識はないのかケロッとしている。悪びれもせず、鬼らしさを突き抜けているのは観ていて気持ちがよかったが、言いたいコトは全て言い終えたのかまた霧へと戻った。

論語・公冶長第五

『子貢曰、夫子之文章、可得而聞也。夫子之言性與天道、不可得而聞也。』

ああ、鬼と言えば、上記で子貢が述べたコトと似たように、どういうワケなのか、孔子は神様のような存在や霊的存在を語らなかったと言われているが、そんなコトはない。むしろそういうモノを否定せずに認めている。

八佾第三

『祭如在、祭神如神在。子曰、吾不與祭、如不祭。』

『王孫賈問曰。與其媚於奧。寧媚於竈。何謂也。子曰。不然。獲罪於天。無所禱也。』

『季氏旅於泰山。子謂冉有曰。女弗能救與。對曰。不能。子曰。嗚呼。曾謂泰山不如林放乎。』

雍也第六

『子謂仲弓曰、犂牛之子、騂且角、雖欲勿用、山川其舍諸。』

述而第七

『子疾病、子路請祷、子曰、有諸、子路對曰、有之、誄曰、祷爾于上下神祇、子曰、丘之祷之久矣。』

例えで神様を出している場合もあるし、今挙げたモノ以外でも霊魂と神様のコトを語る記述が他にもあるけど、怪力乱神を語らずという言葉が独り歩きしているだけだろう。この言葉は勇儀を想起するが、カレが怪力乱神と言ったからと解釈してるモノは論語を読まず、そのことわざだけを観て言っているだけじゃないのかな。ただ孔子の場合は、神様を使って道徳・倫理・思想・価値観などを説かなかっただけで、無宗教者でも無神論者でもないんだなそれが。ホントに困るんだよ。そういういい加減で自分勝手な妄想に、しかも全て読まずに閲読もせず、根拠がないのに妄言を垂れ流されると、鬼や魔女や神様みたいに元々の設定が変わるだろクソ野郎。なにも儒教の聖典全てを読めという気はないが、せめて論語くらいは一から十まで観てから言うべきだろう。

学而第一

『曾子曰、吾日三省吾身、爲人謀而忠乎、與朋友交言而不信乎、傳不習乎。』

ただ学而第一のように、知ったかぶるなとか、知りもせず・ちゃんと調べもせずにいい加減なコトを言うなってのは、もう紀元前から言われているコトで、コレ以外でも似た記述が論語にはあり、言い訳するなっていう記述もある。

所詮、平成時代のモノが紀元前の人間と同じコトを言った時点で二番煎じだ。どれだけ綺麗に述べても、どれだけ論理を組み立てても、その言葉・思想・倫理・論理・宗教観に重みはなく、紀元前の泰山北斗な先人が旗幟した、後追いの禹行舜趨でしかない。ソレは全て一将万骨だ。

老子道德經 十八章

『大道廢,有仁義;智慧出,有大偽;六親不和,有孝慈;國家昏亂,有忠臣。』

 

「だが許可を得たのか。天界はオレじゃなくてサリエルの管轄だし、後で嫌味を言われるぞ」

「うんにゃ、仮にも弘は天帝()だよね。天界にいる天使や神々くらい黙らせといてよ」

「胡孫入袋は煩累だが詮方ない。その代りに今度、勇儀と華扇の寝込みを襲って犯すから手伝え」

「んー......いいよ。でもそっかー、もうその時期なんだね。ヤマメと坂田ネムノはどうするの」

「愚問だな。オレは弘天だぞ。全員とセックスするに決まっている。美人であれば例外はない」

「パルスィも忘れちゃダメだよ」

「そ……そうだな」

 

論語・陽貨第十七

『孔子曰、恭寛信敏恵。恭則不侮、寛則得衆、信則人任焉、敏則有功、惠則足以使人。』

大統領のように働き、王様のように遊ぶのは御免被るが、常に国を監視している萃香が言うには、どうも天子が白龍に乗ってこの国へと来たみたいだ。というコトは魔女や吸血鬼を諏訪国へと引き込むという大役を果たし終えたのだろう。それでこの神社へと来たのはいいが、妻の鬼女に絡まれてしまったらしい。鬼ころしを飲んで酔っ払い、絡み酒になったのか、などとバカなコトを思考してすぐにやめる。よくよく考えなくても彼女は普段からこうだったし今更であった。

ただ、役目を終えたのは理解したが、辺りを見渡しても魔女のミスティア・ローレライがいない。彼女を魔法の森にいる魔女たちへと引き渡してから来たのかな。ならなにも言うコトはない。オレの目的は女を集めて侍らすコトだけなんだ。それ以上の意味はあるように観えて実際は特にない。ウソだが。

 

新約聖書・ローマ人への手紙 第9章24節

『神は、このあわれみの器として、またわたしたちをも、ユダヤ人の中からだけではなく、異邦人の中からも召されたのである。』

第9章25節~26節

『それは、ホセアの書でも言われているとおりである、"わたしは、わたしの民でない者を、わたしの民と呼び、愛されなかった者を、愛される者と呼ぶであろう。 あなたがたはわたしの民ではないと、彼らに言ったその場所で、彼らは生ける神の子らであると、呼ばれるであろう。"』

旧約聖書・ホセア書 第1章10節

『しかしイスラエルの人々の数は海の砂のように量ることも、数えることもできないほどになって、さきに彼らが"あなたがたは、わたしの民ではない"と言われたその所で、"あなたがたは生ける神の子である"と言われるようになる。』

第2章23節

わたし(ヤハウェ)はわたしのために彼を地にまき、あわれまれぬ者をあわれみ、わたしの民でない者に向かって、"あなたはわたしの民である"と言い、彼は"あなたはわたしの神である"と言う。』

 

「××様」

「なんだ」

 

萃香と話し込んでいる間、る~ことは天子の顎を上げ、彼女の目を開けて瞳孔を観て、呼吸をしているかどうかを確認し、最後は首の脈をはかったりという一連の動作をしていたらしく、ちょうど鬼女が霧になったと同時にソレを終えて天人をどうするか聞いて来た。

 

「まだ息はあります。気絶しているだけで大した怪我はありませんが、いかがいたしましょう」

「連れて行くか」

 

頼んでいたコトを果たしてくれたから、手厚くもてなしたいところではあるが、まだ目を覚まさない。太陽は出ているがソレでも気温は低いし、このまま放置するのも忍びないので、神社の中へと避難して暖を取るべく、沓脱ぎ石の上にある履物に足を入れ、彼女の元へと向かい、雪に埋もれて冷え切った天子の胴を掴み、そのまま肩に担ぐ。一応はセクサロイドであり、オレよりも力があるからる~ことは替わりに運ぼうとしたが断って、藍へ寝具を出すよう伝えに行ってもらい、従者は小走りで戻った。

 

旧約聖書・イザヤ書 第14章1節

『主はヤコブをあわれみ、イスラエルを再び選んで、これをおのれの地に置かれる。異邦人はこれに加わって、ヤコブの家に結びつらなり』

第56章6節

『また主に連なり、主に仕え、主の名を愛し、そのしもべとなり、すべて安息日を守って、これを汚さず、わが契約を堅く守る異邦人は――』

第56章7節

『わたしはこれをわが聖なる山にこさせ、わが祈の家のうちで楽しませる、彼らの燔祭と犠牲とは、わが祭壇の上に受けいれられる。わが家はすべての民の祈の家ととなえられるからである。』

旧約聖書・ヨシュア記 第22章5節

『ただ主のしもべモーセが、あなたがたに命じた戒めと、律法とを慎んで行い、あなたがたの神、主を愛し、そのすべての道に歩み、その命令を守って、主につき従い、心をつくし、精神をつくして、主に仕えなさい。』

 

「氏神様ー!」

 

声がする方へ関心を向けると、ソコには童女がいた。オレに気付いてもらうためか、淳良な白蓮が大声を出して、両手をぶんぶん振り全身を使ってアピールしながら、とびっきりの笑顔で飛び跳ねている。その光景はまるで真っ白な世界に咲いた一輪の花。あの子の表情に釣られて微笑みながら手を振り返すが、どうやら西行妖の下で、早苗、命蓮、幽々子と一緒に雪だるまを造っているようだ。ただソコには幽香もおり、太陽の光から肌を守るためか、傘になっている小傘をさしていたが、一緒に造りながらも童女たちを慈しむように観ていた。彼女はいつもどこかへふらっと行き、自分の花畑の世話をしている場面をよく観かけるが、今日はあの子たちと遊んであげているのかな。

脳内で憶測を巡らしていたら、気が付けば白蓮は間近にいて、オレの視界へと飛び込んでいた。しかも子供にしては腰の入った走りでこちらに向かっており、かなりの衝撃が推定される。無意識に身構えてダイレクトアタックへ備えると、童女は減速せずにそのまま抱き着いてきたが、いつものような衝撃はなかった。ほっとした。痛めつけられるお腹は守られたのだ。恐らく肩に担いでいる天子の存在に気づき、加減したのかもしれん。心優しい童女である。

 

新約聖書・ローマ人への手紙 第4章16節

『このようなわけで、すべては信仰によるのである。それは恵みによるのであって、すべての子孫に、すなわち、律法に立つ者だけにではなく、アブラハムの信仰に従う者にも、この約束が保証されるのである。アブラハムは、神の前で、わたしたちすべての者の父であって』

第4章17節

『"わたしは、あなたを立てて多くの国民の父とした"と書いてあるとおりである。彼はこの神、すなわち、死人を生かし、無から有を呼び出される神を信じたのである。』

旧約聖書・創世記 第17章5節

『"あなたの名は、もはやアブラムとは言われず、あなたの名はアブラハムと呼ばれるであろう。わたしはあなたを多くの国民の父とするからである。"』

 

「その子、誰?」

「白蓮と命蓮、早苗の姉妹だ。腹違いのな」

「そうなんだ」

 

あ、うっかり早苗の真名を呼んでしまった。本人に聞かれてないからノーカン……だよな。

右手は天子を支えているから使えないので、左手で頬に触れる。ふと向こうにいる童女たちを観ると――命蓮が厳しい眼差しでこちらを観ていた。怖い。機嫌を損ねるコトをしていないハズだが……もしかしてオレじゃなくて、白蓮を観ているんじゃないか、アレ。この距離では判別困難だけど、目線低い気がするし。幽々子は造るコトより西行妖との戯れに余念が無く、そもそも白蓮がココにいることに気付いていなかった。手伝っていた幽香も造り足りないと感じたのか、また雪を固めて転がし続けている。大きさは童女たちの倍以上になりそうだ。妖怪だけあって力が有り余っているのだろう、我が娘ながら末恐ろしい。しかし、一念化生でもしたかのように、あそこまでのロングヘアーが映えた良い女になるとは夢想だにしなかったが、紫と幽香をオレと永琳の娘にしたあの日は、まるで昨日のコトだったように感じる。日月逾邁だなあ。

だが早苗だけはまだ終わりではないという確固たる意志のもと、二段重ねになっている体の形をせっせと整え成る丈真ん丸にして、雪だるまの仕上げである腕と顔、帽子をみんなで取り掛かるべく、両手をメガホンがわりにして、白蓮を召集した。

 

新約聖書・コロサイ人への手紙 第3章11節

『そこには、もはやギリシヤ人とユダヤ人、割礼と無割礼、未開の人、スクテヤ人、奴隷、自由人の差別はない。キリストがすべてであり、すべてのもののうちにいますのである。』

第3章12節

『だから、あなたがたは、神に選ばれた者、聖なる、愛されている者であるから、あわれみの心、慈愛、謙そん、柔和、寛容を身に着けなさい。』

新約聖書・ガラテヤ人への手紙 第3章26節

『あなたがたはみな、キリスト・イエスにある信仰によって、神の子なのである。』

第3章28節

『もはや、ユダヤ人もギリシヤ人もなく、奴隷も自由人もなく、男も女もない。あなたがたは皆、キリスト・イエスにあって一つだからである。』

第3章29節

『もしキリストのものであるなら、あなたがたはアブラハムの子孫であり、約束による相続人なのである。』

 

「最後の要ですよー!」

「ほら、預言者が呼んでるぞ。行ってやれ」

「うん!」

 

去り際でも表情を変えず、手を振りながら童女たちの元へ向かった。画竜点睛にならず成し遂げられたらいいが。

ココに来るまでに白い地面にはオレの足跡がくっきりと残っており、足跡を辿って戻った。靴脱ぎ石に履き物を脱いで跨ぎ、縁側へ到着。そのまま居間へ入り障子を開けたまま、割れ物でも扱うように天子を床へと置く。思ったより軽くて楽だった。

まずは天子の身体を温めるため、部屋の隅に置いていた火鉢を使う。灰と炭はもう入ってるし、雷霆を使って火を付けたのはいいけど苦労した。神の武器をこんなコトに使うなんて、雷霆は泣いているかもしれん。気温が上がるまでの間、畳の上に布団を敷くべきだろうが、そういうコトは全て藍に丸投げなので、寝具はどこにあるかのかをオレは知らない。だからる~ことの帰りを待つばかりである。つくづく自分が百孔千創で酒嚢飯袋だと思うよ。恬として恥じを感じないが。

 

それまでどうしようか。まずは意識を戻すため、軽く天子の頬を片手でぺちぺち叩くと顰めっ面になる。起きなかったのでとりあえず彼女の身体を頭の先からつま先まで総覧するが、まだ子供とはいえ、将来性は高いぞ。きっと傍から見たら少女の肉体を舐めまわすように観えてしまうだろう。オレの脳が体へ信号を送ったのか、ふと天子のスカートを捲って覗いてみたが、履いてなかった。どこかで落としたか履き忘れたのか、それとも昔流行った健康法かな。

なんと非難されようと、ただ少女の女性器を観ただけだ。反論する気も、弁明する気もない。ただ最近たまってたし、肉眼で観たから無性にセックスしたくなったけど、なにも恥じるコトはない。コレは故意であって故意ではないんだ。い、いかん……体が勝手に風呂場の中に……

 

「......なにゆえ天子様の胸部を揉みしだいておられるのですか」

「え、人命救助だよ。人として当たり前だろ」

「いくつか言いたいことはありますが、まず人ではないですね」

 

天子の身体を鑑賞し、乙女の柔肌を嬲るために衣服を引ん剝き、毒牙に掛けて弄び、まだダレも観たコトも到達したこともないであろう、天人の桃源郷を全て蹂躙して制覇しようとしたら、いつの間にかる~ことは夜具を抱えて戻ってきていた。彼女は呆れた表情もせず、見慣れた光景と言わんばかりに真顔で問い返してきたから、オレはあっけらかんに答えつつ揉むのはやめない。なのに従者は全くの無反応。ただ黙々と隣で寝具を敷いている。もしかして感情に不具合が生じているんじゃないか。でも永琳がそんなミスを犯すとはとても思えない。

 

「幼而不孫弟、長而無述焉、老而不死、是爲賊。子日、鄙夫可與事君也與哉、其未得之也、患得之、既得之、患失之。苟患失之、無所不至矣」

 

天子を持ち上げて寝かせたら、る~ことがなにか言った気がしたが思いなしだろう。

しかし硬いな、硬すぎる。膨らみつつあるがまだ早熟。くびれも臀部もダメダメだ。まだ成長中だから今後に期待しよう。あれ、そもそも天人って成長するんだっけ。するよな、うん。もしもの時はゼウスであるこのオレの力で肉体を成長させる。精神がソレに追いつきはしないかもしれんが、ギャップがあってむしろいいかもしれん。まあ美人・可愛い女とセックスできるならどうでもいいや。

 

「......なんで私、ココで寝てるの」

「やっと起きたか。事情は知らんが、お前家の庭で倒れてたんだよ」

「そうなんだ......まだよく判らないけど、介抱してくれたのね」

「したのはそこの従者だ。オレは見捨てようとしたら、従者がどうしてもと言うからしぶしぶ」

「ヒドイ!」

 

仰向けに寝ていたが、目を覚ました天子は上半身だけ起き上がり、状況を飲み込むために辺りを見渡す。いつも諏訪国にいるオレがココにいるコトに加え、部屋の造形からして神社にいるのではないかという結論に至ったのか、黙り込んでしまう。あんまり憶えてない様子だし、過去を確かめる為に自分の記憶を遡っているように見て取れる。

だがる~ことは天子の体調を気を揉んでいたようで、いつもなら言われる前から察して動くのに、今回はソレをせずに彼女へ聞いた。

 

「ご無事で何よりです。なにか召し上がりますか?」

「え、あ、そうね。じゃあなにか暖かい物を」

「畏まりました」

 

天子の好みも性格も、思考・行動パターンなどの全てを知っている従者は、居間から出ていき調理場へと向かった。る~ことがダレカを甲斐甲斐しく世話を焼くなんて、まるで本当に従者みたいじゃないか。いや、そのために永琳の手で創られたんだが、オレの前ではあの姿を滅多に見せないので、造次顛沛ほど度肝を抜かれた。ただ台所って藍が誰にも、あの永琳にさえ譲らない戦場で、恐らくオレでも勝手に入って使うと怒られるくらい神聖な場所なんだ。だからアイツも使わせてもらえなさそう。断られても、魔方陣を使って月の都に行けばいいだけの話ではあるが。

 

「私、どうして気絶したのかしら」

「おいおい大丈夫か」

「頭がぐわんぐわんしてる。諏訪国へ来た時までの記憶はあるけど後は憶えてないのよ」

「憶えてないというコトは大したコトがないのだろう。捨て置け」

「でも小鬼を観た気が......」

 

そう伝えても、彼女は片手で自分のデコを押さえてうんうん唸っている。先の萃香の話を窺うに、まず感動話のような出来事ではないと断定できるため、このまま思い出されても後々面倒だからこのまま忘れていてほしい。というか諏訪国へ来た理由も忘れてそうなふしがあるんだが、大丈夫だろうか。永琳に頼んで診てもらおうかな。ただ、ムダと言う気はないが、判んないコトを考えても実りがない。体調も万全とは言えないのだ。オレは考える時が無限にあると言っても過言ではないが、天子は違う。彼女にとって時間とは尺璧非宝なのだ。

そこで気を逸らすため、隣で彼女の腰に手を回して抱き寄せ、寄り添うが、さっきから普通に会話してはいたといえ胸を揉むコトだけはやめていなかったので、まだ頭がぼーっとしてか天子は気付いてなかったみたいだが、だんだんと意識や視界も明瞭になってきたのか、自分の胸部へと視界を向けてから目をぱちくりさせ、オレを睨め付けてきた。

 

「っていつまで触ってるのよ!?」

「ぶべら!」

「輝夜に聞いた通りね......女、女、女! 神としてはずかしくないの!?」

「ないな! 神として言うなら却って誉れ高いぞ。それにオレ達は鳶飛戾天、魚躍于淵だろ」

 

ようやく自分がなにをされてるのかは理解したらしく、洗練された流れる動作で小気味好い平手打ちを頬に貰った。こんなコトしておいてアレだが、決して彼女の乳房を揉みしだきたかったワケではない。本当だ。ウソだけどウソじゃない。五箇条の御誓文みたいに天神地祇へと誓ってもいい。都合よく天子の記憶から萃香だけが抜け落ちているし、鬼女に敵意を向けられると蟠りが出来てしまう。だから諏訪国を治めるモノとして心を痛め、ココはなんとかしようと憂い、国や天子と妻たちの間で溝が出来ないようにした行動なんだ。やっぱり夫婦関係は偕老同穴になれば、他のモノだってソレに時雨之化されて自然と関雎之化へなるハズだ。殺伐とした空気もキライじゃないが。

……でもコレって、本当に偶然なのか。オレも人のコトを言えないのだが、そんな都合よく記憶が無くなるモノなのか。少し前なら偶然で済んだが、この前、魔女たちが住む館でレーテー(忘却)の水を観たのだ。杞憂かもしれん。神経の過敏かもしれん。でも今回ばかりは訝しんでしまう。

天子と言うのは、古代中国において天帝の子とされていた。そしてこの少女、今は天子という名ではあるが、まだこの世界が初期頃、無始曠劫の彼女は、天子と言う名ではなかった。

確かあの時は、そう。彼女の旧名は地子だ。

旧約聖書・詩篇 第109篇15節

『それらを常に(ヤハウェ)のみ前に置き、彼の記憶を地から断ってください。』

 

「とはいえ晴れて自由の身だ。好きに生きろ」

「......えっと、本当にいいの?」

「徙木之信だ。イヤならお前を強引に娶り辱めて凌辱してもいいんだぞ。てかやらせろよ」

「乱暴にするのはやめて! 大体、そんなコトしたらいくら貴方でも天帝に罰せられるわよ」

「……いやー。ソレは無理だと思うが」

 

胸を揉んだだけなのに今尚、警戒心がマックスになった天子は、鷹の前の雀で両手を使い胸を隠すようにしている。天人にも恥じらいの感情はあるようだ。前々から思ってたんだが、天人と仙人の違いってなんだろうな。古代インドと古代中国の文献を通覧して観たけど、正直区別がつかないぞ。精神・思想・理想などの細かい違いは確かにあるとはいえ、とてもじゃないが判別できないし、別モノとは思えない。大同小異じゃないのか。インド神話のリシと中国神話の仙人も、苦行があるかないかと、神の血を引いているか否かの違いとしか……。

ひふみ神示・第二十五巻 白銀の巻

『天人に結婚もあれば仕事もあるぞ。死も亦あるのであるぞ。死とは住む段階の違ふ場合に起る現象ぞ。死とは生きることぞ。』

極め之巻 第十八帖

『この神示は、神と竜神と天人天使と人民たちに与へてあるのぢゃ。天界での出来事は必ず地上に移りて来るのであるが、それを受け入れる、その時の地上の状態によって早くもなればおそくもなり、時によっては順序も違ふのであるぞ、人民は近目であるから色々と申すなれど、広い高い立場で永遠の目でよく見極めて下されよ。寸分の間違ひもないのであるぞ、これが間違ったら宇宙はコナミジン、神はないのであるぞ。』

ひふみ神示から引用しておいてなんだが、オレはこの日月神示が大ッ嫌いだ。

 

「まあ今日はココに泊まったらいい。いや、泊まれ。コレは神勅だ」

「さっきの話を聞いて長居するほど図太くないつもりなんですけど」

「いいからいいから。ぼたん鍋と熊鍋の宴席を設けるし食っていけ」

 

江戸時代にいた滝野瓢水の句に、手に取るなやはり野に置け蓮華草というのがあるが、諏訪国へ留まるより放肆に生きた方が天子らしい。

それで日の出くらいの話だが、影狼とルーミアがイノシシ数匹とクマ一頭を狩ってきた。血抜きはしてたみたいで、藍とてゐとレティが捌いているから、あとは調理するだけ。肉を今日中に消費させておきたいのだ。オレの妻たちや神使は大勢いるとはいえ、肉を食べるコトに強い拒絶感を示すモノが結構いる。だから総じて言えば食べるより、お酒を飲んで騒いでいるだけだ。鬼はそもそも団子より花が多くを占め、食べるのは酒をあまり飲まないルーミアとか影狼とか、オレのようなモノくらい。肉が残っても腐らせてしまう。蔵の地下にレティが使う冷凍倉庫もあるとはいえ、あの場所は寝るためにあるから。こんな季節に、しかも外でするなんてよくやるなと言われそうだが、酒をちびちび飲んでたらそこまで気にならない。ただ飲めないモノは厚着している。

天子を宴会の席へ誘ったのはいいが、目が覚めてからずっとなにか引っかかった表情の彼女は、そのままポツリと漏らした。

 

「......もう冬至近くじゃなかった?」

「そうだ」

 

旧約聖書・申命記 第27章26節

『"この律法の言葉を守り行わない者はのろわれる。"民はみなアァメンと言わなければならない。』

新約聖書・ガラテヤ人への手紙3章10節

『いったい、律法の行いによる者は、皆のろいの下にある。"律法の書に書いてあるいっさいのことを守らず、これを行わない者は、皆のろわれる"と書いてあるからである。』

第3章11節

『そこで、律法によっては、神のみまえに義とされる者はひとりもないことが、明らかである。なぜなら、"信仰による義人は生きる"からである。』

第3章12節

『律法は信仰に基いているものではない。かえって、"律法を行う者は律法によって生きる"のである。』

第3章13節

『キリストは、わたしたちのためにのろいとなって、わたしたちを律法ののろいからあがない出して下さった。聖書に、"木にかけられる者は、すべてのろわれる"と書いてある。』

第3章14節

『それは、アブラハムの受けた祝福が、イエス・キリストにあって異邦人に及ぶためであり、約束された御霊を、わたしたちが信仰によって受けるためである。』

旧約聖書・申命記 第21章23節

『翌朝までその死体を木の上に留めておいてはならない。必ずそれをその日のうちに埋めなければならない。木にかけられた者は神にのろわれた者だからである。あなたの神、主が嗣業として賜わる地を汚してはならない。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧約聖書・詩篇 第103篇3節

『主はあなたのすべての不義をゆるし、あなたのすべての病をいやし』

第103章4節

『あなたのいのちを墓からあがないいだし、いつくしみと、あわれみとをあなたにこうむらせ』

第103章5節

『あなたの生きながらえるかぎり、良き物をもってあなたを飽き足らせられる。こうしてあなたは若返って、わしのように新たになる。』

第103章6節

『主はすべてしえたげられる者のために正義と公正とを行われる。』

第103章8節

『主はあわれみに富み、めぐみふかく、怒ること遅く、いつくしみ豊かでいらせられる。』

第103章9節

『主は常に責めることをせず、また、とこしえに怒りをいだかれない。』

 

「其詩曰,南風之薰兮,可以解吾民之慍兮。南風之時兮,可以阜吾民之財兮」

 

弁才天の元へ訪問しに行っていたマミゾウが謁見を終え帰って来た。狸の頭領である彼女の部下の狸からそう伝えられ、鎮守の森へと来たのはいいが、奥へと進むごとに異臭が濃くなっていくので眉を顰めてしまう。ヒドイ匂いだな。酒と煙管の匂いもあるが、血の臭いも混ざっている。後の方はともかく、彼女がやけ酒でもしながら煙管をふかす、ワケないな。アイツに限ってソレはない。

魔法の森ほどではないが、ここもかなり広いし迷いやすい。諏訪国・他国もそうで、森が多すぎる。オレは方向・方角に関する感覚はあまりよろしくないのだ。星を観たら多少は判るかもしれないが、覚えられる気がしない。もしもの時は魔方陣もあるとはいえ、全員がコレを使えるワケではない。正直コレでは不便。だから個人的に言えばもっと道を造りたいし、拡張して整備したいところではあるが、そうなると森を切り倒さなくてはいけない。やはり河童や鬼を使ってもっと開拓すべきか。

菅家文草・水中月

『滿足寒蟾落水心、非空非有兩難尋、潛行且破雲千里、徹底終無影陸沉、圓似江波初鑄鏡、映如沙岸半披金、人皆俯察雖清淨、唯恨低頭夜漏深。』

 

「悖出悖入。脚下照顧。あー、寒い。今日は一段と冷え込むな。咲夜が編んだマフラーを持って行けばよかった」

 

新約聖書・テトスヘの手紙 第2章7節

『あなた自身を良いわざの模範として示し、人を教える場合には、清廉と謹厳とをもってし』

第2章8節

『非難のない健全な言葉を用いなさい。そうすれば、反対者も、わたしたちについてなんの悪口も言えなくなり、自ら恥じいるであろう。』

新約聖書・エペソ人への手紙 第4章29節

『悪い言葉をいっさい、あなたがたの口から出してはいけない。必要があれば、人の徳を高めるのに役立つような言葉を語って、聞いている者の益になるようにしなさい。』

新約聖書・ペテロの第一の手紙 第3章16節

『しかし、やさしく、慎み深く、明らかな良心をもって、弁明しなさい。そうすれば、あなたがたがキリストにあって営んでいる良い生活をそしる人々も、そのようにののしったことを恥じいるであろう。』

 

「犀の角のようにただ独り歩め、だったか。しかしそんなこと言われても、出来るワケがない」

 

仏典の『スッタニパータ』にある蛇の章三・犀の角ではそう書かれている。

あそこを一言で言い表すなら〝依存せず環境から精神と心を自由にしなさい〟というモノ。ソコには様々なコトが書かれているが、ソレを端的に纏めるとそういう記述だ。そんな記述があっても、今じゃ日本の仏教に見る影もないがな。

霊界の文字はこの世のものに比べて曲線が多い、と言ったのはスウェーデンの思想家だったかな。神代から滄桑之変してきたが、平成時代になっても草満囹圄になるコトは一度もなかった。でもソレは当たり前だし、桑土綢繆しても徒労に終わる。帰馬放牛は出来ないし、太平洋戦争時、日本の新聞などは天気予報の欄が消されたのだ。グリム童話だって、例えばアッシェンプッテルみたいに、元々は魔女がいない話だったモノが、後世では魔女が出てくる話になっているのもあるんだ。平成時代にある創作物の殆どは、元々の設定・物語を改変しまくっているモノばかり。別にキライなワケじゃないんだが、あの有名なディズニーはいつもそうだ。

老子道德經 五十三章

『使我介然有知,行於大道,唯施是畏。大道甚夷,而民好徑。朝甚除,田甚蕪,倉甚虛;服文綵,帶利劍,厭飲食,財貨有餘;是謂盜夸。非道也哉。』

 

「…悪木盗泉。儒教の始祖・孔子は、喉が渇いてもその水を飲まなかったが、吉離舍瞿曇弥の時、釈迦はただ諭すだけだった。だが日本で無謬化されているカレは、彼女を救うのかもしれん」

 

一切衆生悉有仏性、山川草木国土悉皆成仏のように、元々あった設定が別の設定を添加され、変わってしまうのを観てきたが、ソレは一つや二つじゃない。まだ××神話があった時から、何度も何度も別ものになっていく世界を、ずっと繰り返してきた。平成時代なんかは酷い有様だ。もはや原型すらない。古代ギリシア人も古代中国人も、完全に一致するかどうかという意味で、平成時代にいるモノと同じ、などと答えるモノはいない。そして人間ってのは公正・公平が好きなんだろ。であれば秋霜烈日にしなくてはいけない。とすると留めてないなら、同じではない。同じではないならば、同じ扱いをすべきではない。そう、平成時代の日本人もな。紀元前に鼓腹撃壌が出来たのに、今は出来ないんだから笑えるよ。

愛ゆえに神は苦しまねばならぬ。愛ゆえに神は悲しまねばならぬ。愛ゆえに……。オレはその時から愛をすてた。こんなに悲しいのなら、苦しいのなら……愛などいらぬ。一つでも変わった時点で愛などいらぬ。はむかう者には死あるのみ。

 

旧約聖書・イザヤ書 第59章15節

『真実は欠けてなく、悪を離れる者はかすめ奪われる。主はこれを見て、公平がなかったことを喜ばれなかった。』

新約聖書・マタイによる福音書 第23章23節

『偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの薬味の十分の一を宮に納めておりながら、律法の中でもっと重要な、公平とあわれみと忠実とを見のがしている。それもしなければならないが、これも見のがしてはならない。』

旧約聖書・エゼキエル書 第18章7節~8節

『だれをもしえたげず、質物を返し、決して奪わず、食物を飢えた者に与え、裸の者に衣服を着せ、利息や高利をとって貸さず、手をひいて悪を行わず、人と人との間に真実のさばきを行い』

第18章9節

『わたしの定めに歩み、わたしのおきてを忠実に守るならば、彼は正しい人である。彼は必ず生きることができると、主なる神は言われる。』

旧約聖書・ホセア書 第2章19節

『またわたしは永遠にあなたとちぎりを結ぶ。すなわち正義と、公平と、いつくしみと、あわれみとをもってちぎりを結ぶ。』

 

「しかしソレは、本当にあの釈迦なのか。抜苦与楽とは言うが、仮にそんな話があったとしても、もはや別モノじゃないか。芥川龍之介の蜘蛛の糸だって本来ならばおかしいのだ」

 

観無量寿経とかも成立時期が遅いとはいえ、なんとも言えない。

『佛告阿難。此經名觀極樂國土、無量壽佛、觀世音菩薩、大勢至菩薩。亦名淨除業障、生諸佛前。汝當受持。無令忘失。行此三昧者、現身得見、無量壽佛、及二大士。若善男子善女人、但聞佛名、二菩薩名、除無量劫、生死之罪。何況憶念。若念佛者、當知此人、是人中分陀利華。觀世音菩薩、大勢至菩薩、爲其勝友。當坐道場、生諸佛家。佛告阿難。汝好持是語。持是語者、即是持無量壽佛名。佛說此語時、尊者目犍連、阿難及韋提希等、聞佛所說、皆大歡喜。――爾時世尊、足歩虚空、還耆闍崛山。爾時阿難、廣爲大衆、說如上事。無量諸天 及龍夜叉、聞佛所說、皆大歡喜、禮佛而退。』

あの世尊(釈迦)がこれを言った……いやーどうなんだろうか。いくら龍樹が大乗仏教中観派の祖で、釈迦が説いた〝空〟の思想についての論証が優秀で、仏教をココまで広めた人物としては功績が大きすぎる偉大な人物がいるとはいえ、大乗経典はとんでもないコトをしてくれました。とはいえ、大乗仏教だけじゃなくて、上座部仏教にも言える部分はあるんだが。

天上天下唯我独尊だって釈迦が言ったとされているとはいえ、実際はそうじゃない。

でも××神話があった時、白蓮も命蓮も、どいつもこいつも釈迦と空海の教えを守ってなかった。だったらもう別モノだ。日本の僧侶ではあっても、仏教としての僧侶ではないだろ。

 

旧約聖書・歴代志下 第19章2節

『そのとき、先見者ハナニの子エヒウが出てヨシャパテを迎えて言った、"あなたは悪人を助け、主を憎む者を愛してよいのですか。それゆえ怒りが主の前から出て、あなたの上に臨みます。"』

第19章6節

『そして裁判人たちに言った、"あなたがたは自分のする事に気をつけなさい。あなたがたは人のために裁判するのではなく、主のためにするのです。あなたがたが裁判する時には、主はあなたがたと共におられます。"』

第19章7節

『"だからあなたがたは主を恐れ、慎んで行いなさい。われわれの神、主には不義がなく、人をかたより見ることなく、まいないを取ることもないからです。"』

新約聖書・コロサイ人への手紙 第3章25節

『不正を行う者は、自分の行った不正に対して報いを受けるであろう。それには差別扱いはない。』

 

「釈迦はイエスじゃない。四門出遊も実際にあったのかどうかを聞いたら、首を傾げる」

 

論語・里仁第四

『子曰、君子之於天下也、無適也。無莫也。義之與比。』

衛霊公第十五

『子曰、羣居終日、言不及義、好行小慧、難矣哉。』

『子曰、君子不以言擧人、不以人廢言。』

往生は、一定と思へば一定、不定と思へば不定なりというのはキライだ。蝉噪蛙鳴になるとアレだが、談論風発と百家争鳴は大事なコトだろう。ただ、尭鼓舜木は肝要なコトだし、論旨明快な議論だとしても、感情的にならず論理的になるコトを求められているとはいえ、課題にもよるが質を上げるタメには感情論を交えた方がいい。収拾がつかない場合になるコトもあるだろうし、揚げ足取りするヤツだけは論外だがな。

子曰、吾不如老農。おまえは何を言っているんだと思われそうだが、そもそもオレは啓蒙主義であると同時に蒙昧主義なのだ。あとキュレネ学派寄り。別に老子と似たようなコトを言う気はさらさらないが、本来なら啓蒙・啓発なんてするべきじゃない。冗談じゃないぞ。本来、知識というモノは自分を立派な人間にするタメであったり、知っておくべき立場の人物が学ぶべきであり、そうでないモノは知らなくていいし、うだうだ語らなくていいんだよ。自己修養してた方がよほどいい。

 

詩經・小旻

『旻天疾威、敷于下土。謀猶回遹、何日斯沮。謀臧不從、不臧覆用。我視謀猶、亦孔之邛。潝潝訿訿、亦孔之哀。謀之其臧、則具是違。謀之不臧、則具是依。我視謀猶、伊于胡底。我龜既厭、不我告猶。謀夫孔多、是用不集。發言盈庭、誰敢執其咎。如匪行邁謀、是用不得于道。哀哉為猶、匪先民是程、匪大猶是經、維邇言是聽、維邇言是爭。如彼築室于道謀、是用不潰于成。國雖靡止、或聖或否。民雖靡膴、或哲或謀、或肅或艾。如彼泉流、無淪胥以敗。不敢暴虎、不敢馮河。人知其一、莫知其他。戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰。』

 

「ミトコンドリア・イヴとサン人から、よくもここまで四散したモノだが、マラーノはユダヤ人と言えるのだろうか。キリスト教もサウロがいなかったら、どうなっていたのだろう」

 

人間というモノはいい加減なコトを垂れ流すクソ猿で、無責任だ。特に空想上の存在、例えば神などは特に顕著。妄想で語れるから。当然ながらそういう記述があるならば問題はない。似たような記述があればまだいい。その通りに書かれているならなおよい。だが、実際はそうじゃない。余計な設定出して、元々のモノを弄りまわす。垂名竹帛の人物が言っていないコトを平然と言わせる…ソレって法的な問題はあれど、実在する人物をお人形遊びに使うコトとなにが違う。明治時代から昭和時代の創作物にも言えるコトだが、こんなコトが許されるのか。こんなコトが平然と罷り通るのか。神様のコトなんて人間には判らない、とか言う不可知論者は、そもそも話す気がないんだから黙ってろ。語るコトを放棄するなら、不可知論者らしく無記でいてくれよ。釈迦のようにな。

 

ただ、人間っていうクソ猿は、極端なコトがキライらしい。そもそも極端ってなんだ。二元論的な意味ならば、人が嫌がるコトはするなとか、みんな敬い合い、平和に健やかでいられるのが一番とか、殺人・犯罪をなくそうとかいう潔癖な思想を持つモノもいるが、その思想は極端じゃないのか。大体ソレは古代中国人が似たようなコトを言ってはいたが、その思想は紀元前から平成時代なっても、神話や伝説を除けばソレが続いた例はない。その平和はいつまで続くのか。そもそも平和に永遠なんてあるのか、インターバルなだけじゃないのか。畢竟自分がイヤだから、理解できないから、納得できないから、都合が悪いモノだから、極端だなんだと言ってるだけじゃないのか。メソポタミアも、古代エジプトも、古代ギリシアも、古代ローマも、古代中国も、古代インドも、古代イスラエル(ユダ王国)も、メソアメリカ文明も、文化や技術、知識も莫大なモノだったし、国や民に一時の平和があった時もあるし弥栄だったが、栄枯衰退だった。

 

旧約聖書・エレミヤ書 第5章27節

『かごに鳥が満ちているように、彼らの家は不義の宝で満ちている。それゆえ、彼らは大いなる者、裕福な者となり、』

第5章28節

『肥えて、つやがあり、その悪しき行いには際限がない。彼らは公正に、みなしごの訴えをさばいて、それを助けようとはせず、また貧しい人の訴えをさばかない。』

第5章29節

『主は言われる、わたしはこのような事のために、彼らを罰しないであろうか。わたしはこのような民に、あだを返さないであろうか。』

旧約聖書・箴言 第17章26節

『正しい人を罰するのはよくない、尊い人を打つのは悪い。』

 

「牀寒枕冷到明遅、更起橙前獨詠詩、詩興変來爲感興、關身万事自然悲。勁草だろうと、行雲流水はやっぱり無理だ。截断衆流も出来ない」

 

よく区別をつけろと言うモノもいる。混同を避けるために明晰をするのは結構なコトだが、ソレを理解できるモノがどれだけいる。どれだけのモノが耳を傾けるんだ。例え傾けたとしても、大半の人間は自分にとって興味があるモノ・都合がいいモノかどうかでしかない。言うまでもないコトだが、区別ってのは大衆に理解されてなきゃ意味ないんだよ。ソレが出来ない時点で、しかも曖昧の状態なら、区別したとは言えねえな。引っ掻き回しただけだ。

法や倫理や教えを守れないモノを異常の眼で観たり感じたりするのは宗教。かと言って忠実に守ろうとするのだって宗教なんだよ。人間を殺して神の供物にするという思想だって宗教だし、人間を殺すなって言う思想も宗教だ。ソレを違うとは言わせないし、ソレを語った人間が宗教を非難したなら、オレはソイツを延々と非難し続けよう。

古代ギリシア人哲学者だろうと、古代中国人哲学者であろうと、古代インド人哲学者だろうとも、思想を語ったならソレは宗教だ。いくらあの時代の人間は天才だったとはいえ、例外はない。ソレは違うと、ソレは哲学であって宗教ではないとは絶対に言わせない。言わせてなるモノか。

ただ往生極楽のためには南無阿弥陀仏と申して、疑なく往生するぞと思ひとりて申すほかには別の子細候はず。ただし三心・四修と申すことの候ふは、みな決定して南無阿弥陀仏にて往生するぞと思ふうちに籠り候ふなり。

 

新約聖書・ヤコブの手紙 第4章11節

『兄弟たちよ。互に悪口を言い合ってはならない。兄弟の悪口を言ったり、自分の兄弟をさばいたりする者は、律法をそしり、律法をさばくやからである。もしあなたが律法をさばくなら、律法の実行者ではなくて、その審判者なのである。』

第4章12節

『しかし、立法者であり審判者であるかたは、ただひとりであって、救うことも滅ぼすこともできるのである。しかるに、隣り人をさばくあなたは、いったい、何者であるか。』

第5章9節

『兄弟たちよ。互に不平を言い合ってはならない。さばきを受けるかも知れないから。見よ、さばき主が、すでに戸口に立っておられる。』

第5章12節

『さて、わたしの兄弟たちよ。何はともあれ、誓いをしてはならない。天をさしても、地をさしても、あるいは、そのほかのどんな誓いによっても、いっさい誓ってはならない。むしろ、〝しかり〟を〝しかり〟とし、〝否〟を〝否〟としなさい。そうしないと、あなたがたは、さばきを受けることになる。』

 

「かつて命蓮寺にいたモノも、戒律・教えは守られていなかった。ソレを守る守らないで仏教徒か否かの是非を問うのはともかく、ソレは仏教と言えるのか。ソレを同じモノと言えるのか」

 

まれに、儒教は宗教ではないと言うモノもいるが、笑えない冗談はやめてくれ。

そもそも孔子は論語で祖先の霊魂や〝天〟と〝天命〟について語っていたが、その思想・概念自体がもはや宗教。アレの思想・倫理(道徳)・論理は宗教でしかない。平和を謳ったり、善政が行われて民が安楽な生活をするコトを目指すのだって宗教だし、君主(人間)はかくあるべし、と言うのもそうなんだ。孟子と荀子の思想・倫理・論理だって宗教なんだよ。処世術だって思想でしかないし、日本の儒教も宗教さ。史記に書かれてる儒教思想も宗教だし、儒教の聖典は論語だけではなく、五経とか三礼とか春秋とかある。あのユダヤ教だって創世記だけじゃないし、宗教家も聖書を読んで学び研鑽を積んでいるだろ。アレが宗教ではないと言うのであれば、イスラーム教とオウム真理教も宗教ではなく、また双方の思想も宗教ではない。自分たちにとって都合が悪いモノだから、政府と大抵のモノはオウム真理教をカルト宗教と烙印しているがな。到頭自分がイヤなだけで、なんでそんなコトをするのか納得・理解できないから、オウム真理教をそういう扱いにしているだけなんだよ。

でもソレって、原理主義の宗教家と何が違う。なにも違わない、同じじゃないか。

他人に迷惑をかけるなとか、人間(生き物)を殺してはいけないとか、騙してはいけない、ウソをついてはいけない、法を守れ、なんて垂れ流しているモノもいるけど、そんな倫理・思想・法・教え・戒め・規律(習俗)は、既に紀元前から続く宗教の聖典で同じコトを言ってるんだ。しかも自分にとって都合がいい思想は宗教じゃなくて、それ以外は宗教とかほざくんだから笑える。

いやー、以前も言ったが日本人って本当にクソだよ。ハーブか何かやつておられる?

 

論語・為政第二

『子曰、爲政以徳、譬如北辰居其所、而衆星共之。』

旧約聖書・イザヤ書 第9章7節

『そのまつりごとと平和とは、増し加わって限りなく、ダビデの位に座して、その国を治め、今より後、とこしえに公平と正義とをもってこれを立て、これを保たれる。万軍の主の熱心がこれをなされるのである。』

新約聖書・マタイによる福音書 第5章9節

『平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう。』

新約聖書・ヤコブの手紙 第3章17節

『しかし上からの知恵は、第一に清く、次に平和、寛容、温順であり、あわれみと良い実とに満ち、かたより見ず、偽りがない。』

第3章18節

『義の実は、平和を造り出す人たちによって、平和のうちにまかれるものである。』

新約聖書・ペテロの第一の手紙 第3章11節

『悪を避けて善を行い、平和を求めて、これを追え。』

 

「悪酔強酒と言っても、オレは女を侍らすのだ。断捨離という宗教もあるが、してたまるか」

 

新約聖書・マタイによる福音書 第7章1節~2節

『人をさばくな。自分がさばかれないためである。あなたがたがさばくそのさばきで、自分もさばかれ、あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量りが与えられるであろう。』

新約聖書・ルカによる福音書 第6章37節

『人をさばくな。そうすれば、自分もさばかれることがないであろう。また人を罪に定めるな。そうすれば、自分も罪に定められることがないであろう。ゆるしてやれ。そうすれば、自分もゆるされるであろう。』

新約聖書・エペソ人への手紙 第4章32節

『互に情深く、あわれみ深い者となり、神がキリストにあってあなたがたをゆるして下さったように、あなたがたも互にゆるし合いなさい。』

新約聖書・コロサイ人への手紙 第3章13節

『互に忍びあい、もし互に責むべきことがあれば、ゆるし合いなさい。主もあなたがたをゆるして下さったのだから、そのように、あなたがたもゆるし合いなさい。』

第3章14節

『これらいっさいのものの上に、愛を加えなさい。愛は、すべてを完全に結ぶ帯である。』

論語・顔淵第十二

『樊遅問仁。子曰、愛人。問知。子曰、知人。樊遅未達。子曰、擧直錯諸枉、能使枉者直。』

 

 

 

 

 

 

「やあ、お帰り。調子はどうだい」

 

辺りは累卵之危とした空気が漂う中、会いたかった人物をやっと観つけて、臆面もなく気軽に声をかける。だが神幸を終え、還幸した彼女からは、刺すような視線を投げかけられた。

諏訪国にいる全ての狸の頭領で、二ッ岩大明神という神様でもあり、団三郎狸という妖怪でもある彼女は、自分の身体と同じくらい巨大な尻尾に座り、蔚然たる態度で名に恥じない佇まい。周りには彼女の部下・化け狸たちが取り囲むようにいた。オレが面倒なコトをあまねく受け流す達人で、且つ神でなかったら圧倒されそうな貫禄ではあったが、彼女は突然にも一変させ、コロッと豹変したが、穏和とした気配をまるで淼漫かくの如き醸し出すと、ソレは見る見る浸透していった。

 

「なんだい、こんな真夜中に人間風情が......んん?」

 

彼女は額に皺を寄せた。密度が高く、蓊欝とした鎮守の森ゆえに、あまり光芒はしておらず、ぼんやりとしか観えないせいか、それとも掛けている伊達眼鏡の度があってないのかはハッキリしないが、ソレを左手で動かし調節しながら、ずいっと顔を近づけてくると識別し始める。

一息おき、オレが誰なのかを理解すると、普段の彼女に戻った。

 

「おやおや。誰かと思えば......声を荒げて失礼したなお前さん」

「そうか、手遅れだったようだ。オレをニンゲンと見間違えるほど耄碌していようとは……」

「失敬な、灰色の脳細胞を持つ儂は身体も心もぴちぴちじゃぞ」

「う、うん。今のお前もいいが、オレは人間に化けてる時の方が好きだな」

 

先程とは異なり、忽ちのうちにさばさばした彼女をよそに、コチラは反応に困って言葉に詰まると、どう返すべきかの判断がつかず、脳内会議では満場一致で苦笑いをするという議決しかなかった。そんな反応をしても、寛仁大度な二ッ岩大明神はソレを物ともせず、寒かったのか首に巻いているマフラーをより一層深く巻き、オレがココへ来たのを窺い知り頷くと、確信をもって告げる。わざわざここへ赴く理由なんて、しかも彼女が諏訪国へ帰って来た直後に媾曳するなんてすぐ導き出せる。一つしかないのだ。

 

「ほいほい。用件は察しておる」

「聞一以知十とはさすが我が神使」

「帯礪之誓した間柄。智慧(忘却)の女神と白澤が、アレをする前からずっと付き合いじゃからのう...」

「そうだな」

「ほれ、件の琵琶じゃ」

 

マミゾウは部下の狸たちを蜘蛛の子のように散らし、巨大な尻尾に手を突っ込んで取り出したるは弦楽器。ソレを両手で受け取り、そのまま垂直に構えるとしっくりくる。なんだか懐かしい気持ちが芽ばえてきた。失った記憶も戻りそうな兆候。琵琶をもう一度観ると、弁才天は気を利かしてくれたのか、新品ではなく年季を感じるモノだが、あの女神、確か憶えてるんだっけ。

 

「しかしすんなりくれるとは、弁才天様様だな」

「何度もしてきたことじゃが、やはりあの女神と語らうのは肝が冷えるぞい」

「ああ。よくやってくれた。またなにかあれば頼むよ」

 

ねぎらいの言葉をかけたら、虚飾を身にまとわず、媼のようにふぉっふぉっふぉと笑うが、心なしか疲れているように観える。コレからも苦労をかけてしまうだろうが、玩人喪徳になって愛想を尽かされないように気を付けねば。桃李不言下自成蹊が理想。

コレで琵琶と、鬼女の紅葉が持っていた琴を手中に収めた。残りは和太鼓の堀川雷鼓だが、オレが造ってみようかな。永琳なら頭がよいとは言えないオレでも判りやすく伝授してくれるだろうし、今度聞きながら造ってみよう。

 

「いずれは阿波狸合戦も起きるだろう。今回はどうするよ」

「関与するコトはない。もう、ないんじゃよ」

「子在川上曰、逝者如斯夫、不舍晝夜だなあ」

 

そう語るマミゾウは、遠い目をしながら過去の記憶に思いを馳せ、心ここに在らずだった。

かつて××神話のオレ達は、その神話を捨てた。そんな結末になった経緯は単純そうに見えて結構複雑で、どういう理由でそんなコトをせざるを得なかったなどは多々あるが、アレコレ語ったところで意味はない。あの頃と今とでは逐年変わったし、そもそも終わってるんだ。

紀元前にいた民族で、先進的な文明を築いたと思ったらいつの間にか消えた民族もいる。急に出てきて侵略したと思ったら、そのまま忽然として消え失せた民族もいた。ある民族がいきなり歴史に登場してきたと思ったら、別の民族文化の影響を受けて同化し、消えた民族たちもいた。シュメール人も、ヒッタイト人も、エリミ人も、海の民も、××神話の民族だって例に漏れない。聚散十春なのだ。

昔、レミングというネズミが集団自殺をする、と思われていたけど、今じゃそんなコト言われてない。江戸時代の浮世絵師・歌川国虎は、世界の七不思議とされてる古代ギリシアにあったロドス島の巨像を描いたけど、今じゃその巨像はない。そして儒教の始祖・孔子が少正卯という人物を誅殺している。後世の儒学者はなぜソレをしたか、どういうコトなのかを長く論争した。しただけだが。

 

「よいかお前さん。この惑星は地球じゃ」

「なんだいきなり」

「いやまあ昔、お前さんの妻1柱と1人、あと数柱の手により、その神話がなくなってしもうた」

「白衣蒼狗、もう終わったコトだ。今は一新紀元だよ」

 

儒教の始祖・孔子は言った。

『子曰、吾之於人也、誰毀誰譽。如有所譽者、其有所試矣。斯民也、三代之所以直道而行也。』

今の、室町時代の日本人と、平成時代のクソ民族である日本人は同じではないようにな。たまに同じ民族と言うモノもいるが、同じなワケないだろ。今の時代とアレは別の民族だ。そういうコトを言うから、どこぞのクソ共は勘違いするんだよ。平成時代の日本人が古代日本人と同じ民族なワケないだろ。百歩譲って同じ民族だとしても、日本神話の神々が21世紀の日本人を助けるワケないだろ。ソレは大昔の話だよ。仮に助けたとしても天皇、出雲氏みたいな社家のモノ達くらいだろう。百姓の血を引くクソ猿共が神に助けてもらえると思ったら大間違いだぞ。都合のいいコトを考える前に、いい加減現実を観るんだな。

日本の歴史は江戸時代で終わっている。明治時代からはもう別の歴史なのだから。大体、天皇の血が2000年以上続いているというが、ソレは日本の宗教・神話の話なんだぞ。日本の歴史の話じゃない。歴史と神話は同じではないんだ。仮に天皇の血が続いてたとしても、その証拠がないじゃないか。とっととDNA鑑定でもしたらどうだ。

 

「戻さんのか」

「ソレをしてなんになる。ギリシア神話も、古代ギリシア人も終わったんだ。日本もな」

「截趾適屨。終わったモノを蒸し返す事はあるまい。じゃがお前さんはそうでも他のモノは...」

 

彼女はそれ以上言わず、煙管しきりに煙を吐く。仮に××神話を戻したとしても、ソレはかつての××神話というモノに観えるかもしれないが、実際は別のなにかであって、そんなコトをした時点であの頃の××神話ではないんだ。どれだけ言葉を尽くそうとも、ソレを同じモノと言わせるワケにはいかない。

シュメール人も、エジプト人も、中国人も、ギリシア人も、ローマ人も、インド人も、ペルシア人も、フェニキア人も、朝鮮人も、日本人も、アイヌも、古往今来から変わらずにいられたモノはいない。変わるのは当然だし、ソコをどう言っても今更なのだ。だが、変わったのならば、同じではない。同じではないのであれば、同じ扱いをするべきではない。

永垂不朽である釈迦存命時の仏教と今の仏教が同じなどと、いったいどこのダレが言えようか。

論語・八佾第三

『子曰、禘自既灌而往者、吾不欲觀之矣。』

『子貢欲去告朔之餼羊。子曰、賜也、爾愛其羊。我愛其禮。』

子罕第九

『子曰、麻冕禮也。今也純儉。吾從衆。拜下禮也。今拜乎上泰也。雖違衆、吾從下。』

先進第十一

『子曰、先進於禮樂野人也、後進於禮樂君子也、如用之、則吾從先進。』

 

「長旅で疲れたろう。ちょうど今みんなで瓊筵してんだよ。空腹で眠れないならお前も来い」

「饗応を受けよう。儀狄もあるんじゃろ?」

「酒好きが多いから多岐多様だぞ」

 

来た道を戻りながら狸の頭目と昔話に花を咲かせる。

さっきマミゾウが惑星と言ったが、地球の反対側には惑星がもう一つある、という仮説が昔あった。今でこそ反地球はないとされているが、古代ではあるとされていた。太陽の向こうにもう一つの地球があったら、そこにはオレ達と同じ神々や人間が住んでいるのかもしれん。ただ、否定された仮説ではあるが、今にして思えばアレって、量子力学を抜きにしても、パラレルワールドの原型とも言えるんじゃないか。なにせもう一つの地球があるんだ。しかも当時はソレを観測することは出来なかったワケだし、やっぱりあの仮説は一種の並行世界と言える。とはいえこの世界には関係ない話だ。ココはそんなモノで出来ているワケではないんだから。

 

「やっと戻って来られた」

「壮観じゃな」

 

鎮守の森を抜けて神社へ戻ってくると、緑酒紅灯の光景がオレの視界を埋め尽くす。個人個人で楽しんでいるモノもいれば、一応今は冬で雪も積もっているが、酒盛りしつつ体を温め、参道に咲く西行妖を眺めながら呑花臥酒になっている鬼達のように、稠密で混雑となっているモノ達もいた。永琳、豊姫、依姫の姿を探すが、月の民はいないようだ。他の月の民、輝夜と咲夜は諏訪国にいなくて、今も山城国にいる。

 

「ちょいと河童たちと話をしてくるぞい」

「判った。琵琶、ありがとうな」

「構わんよ。儂はお前さんの神使じゃぞ。当然のコトをしたまでよのう」

 

温顔になり、満足げに語るマミゾウは、両眼を閉じ唇を煙管の吸口に当てて吸い出し、口腔に含んで溜まったモノを一気に吐き出すと、ソレは空へ消えていき、首に巻いているマフラーを瀝瀝の風に靡かせながら、彼女はにとりたちの元へと向かった。と言ってもココにはいない。今日は蔵の地下にいるのだろう。一部例外もいるが、河童は寸暇を惜しんで、永琳の指導の下、日夜、技術の向上に努め、志向している。

菁菁者莪、樂育材也。君子能長育人材、則天下喜樂之矣。珍しく神子もいたが、どうも白蓮と命蓮に政治・法を説いているようだ。英才教育かな? どうせなら帝王学も学ばせるべきか。そうすると慧音の帰りが待ち遠しいモノである。ただ、二人とも眠たそうだ。いつもなら就床している時間のハズだが、元々彼女は話すと長いし、語るが好きで気付いてないんだろうな。なんか活き活きとしていてやめ時を感じない。このまま放っておくと朝まで続けそうだよ。止めようとも思ったら、屠自古が現れる。彼女は神子を強引に引っ張って行くと、そのまま強制送還されたので政治講座はお開きとなった。ソレに気付いた藍が限界寸前だった二人を連れて神社へ連れていくが、片付けもあるのでまた戻ってくるだろう。あの子たちはまだ幼いから、今の諏訪国の政治は垂簾聴政なんだがな。

 

旧約聖書・エレミヤ書 第23章5節

『主は仰せられる、見よ、わたしがダビデのために一つの正しい枝を起す日がくる。彼は王となって世を治め、栄えて、公平と正義を世に行う。』

旧約聖書・エゼキエル書 第37章25節

『彼らはわがしもべヤコブに、わたしが与えた地に住む。これはあなたがたの先祖の住んだ所である。そこに彼らと、その子らと、その子孫とが永遠に住み、わがしもべダビデが、永遠に彼らの君となる。』

旧約聖書・ゼカリヤ書 第12章8節

『その日、主はエルサレムの住民を守られる。彼らの中の弱い者も、その日には、ダビデのようになる。またダビデの家は神のように、彼らに先だつ主の使のようになる。』

 

「狐と言えば…妖狐變美女社樹成樓臺、コレは中唐の詩人・白居易か。唐時代の小説・『任氏伝』は夫婦に、明代の『二刻拍案驚奇』は報恩をしていた。女爲狐媚害則深、寄言狐媚者天火有時來」

 

論語・泰伯第八

『子曰、巍巍乎。舜禹之有天下也。而不與焉。』

『舜有臣五人、而天下治。武王曰、予有亂臣十人。孔子曰、才難、不其然乎。唐虞之際、於斯爲盛。有婦人焉。九人而已。三分天下有其二、以服事殷。周之徳、其可謂至徳也已矣。』

『子曰、禹吾無間然矣。菲飮食、而致孝乎鬼神、惡衣服、而致美乎黻冕、卑宮室、而盡力乎溝洫。禹吾無間然矣。』

憲問第十四

『南宮适、問於孔子曰、羿善射、奡盪舟。倶不得其死然。禹稷躬稼而有天下、夫子不答。南宮适出。子曰、君子哉若人。尚徳哉若人。』

 

「古代中国の歴史書・『吳越春秋』によれば、綏綏白狐,九尾痝痝。我家嘉夷,來賓為王。成家成室,我造彼昌。天人之際,於茲則行とある。でも禹は死んだ。あの時代は終わったんだよ、孔子」

 

吳越春秋の記述に、古代中国・夏の創始者とされる禹は、白色の九尾の狐を見て塗山氏の娘を娶った、という話がある。オレの藍は白色と言えなくもないが、どちらかと言えば金色っぽい。

そういえば、下野国(栃木県)で封印されかけていた玉藻前を藍が助け、狐同士で話し合い、藍の僚属にならないかと持ちかけたところ、安閑ならなんでもいいと、考える素振りも見せずに保護を求めて来たらしく、そのまま諏訪国へと引き抜いたとかなんとか。でもオレは話題に出した女性を観たコトがない。いや、会おうとしたコトはあるけど、家事で手が離せないとか、閨に行きましょうとか言われ、他の話を始めて気を逸らされ、うやむやにされている。嫉妬……なワケないよな、あの藍に限って。つまるところ彼女と会ってみたいものだ、しかしどうやって妻に悟られるコトのないよう、それとなく聞きだすべきだろうか。

 

「神農、虞、夏忽焉沒兮......薤露ですね。ときに天帝、私をお呼びでしょうか」

「狐違いだよ純狐ちゃん」

 

どこからともなく仙霊の声が聞こえたが、声だけで姿は見せなかった。この前もすぐに次元を裂いて来たが、まさかずっと哨戒されてるのか。今までそんな胚胎はなかったし、様相を呈しているコトはなかったという認識。オレはもう死ぬコトはない、そもそも敵なんているワケないと揣摩臆測している。彼女の忖度は嬉しいが、取り越し苦労に終わるだろう。いや、もしかしなくても青娥が慎まず、立場を弁えないコトをしないか観ているだけのような……。

だが瓊筵を始めたのは日の入りくらいだったのに、まだ終わっていない。あの時と比べたら随分と人が減っており、落ち着いてきたが、みんな臥し所へ行ったのだろう。常日頃から仕事とかはあんまりないので、基本的にやめ時がない。いつもなら地面に寝っ転がって爆睡してるけど、この季節にソレは酷。だからコレが終わるのは、全員が床に就くまでだな。結局、最後に残るのは鬼だけなんだが。しかし置酒高会もいいが後片付けも大変だなあ。藍であれば率先して行い、顔には出さず内心では嬉々としながらするだろうが、てゐとかは面倒だと愚痴をこぼすだろう。ナズーリンは黙々とするだろうが、星はテキパキこなしそう。虎と言えば、仏教の薩埵太子を思い出すなあ。

 

「お腹すいたな。喰おう」

 

せっかくの宴会、なにか食べようか。酒はあんまり飲まないから、基本食べる専門である。オレは飲食之人だ。あとは女さえいたらいい。それ以外のコトはそこまで興味ない。でも厚酒肥肉だからどれから食べるか思案投首だな――などとマイペースでいたら思考も動きも止まる。

西行妖の下で雪だるまが完成されており、顔も腕も絵にかいたような出来栄え。だがソコは重要ではない。その場には華扇もいたが、ソコではオレの預言者が、仙女の紡ぐ甘い言葉で誘われ、誑かされようとしていた。かつて古代イスラエル人が、他の神に仕えて拝したかのように、あそこにいる仙女と現人神の実娘の会話は大凡の予想はつくので頭が痛くなる。なぜなら××神話が崖っぷちに立たされようとしていたから、阻止すべく動かざるを得ない。

 

旧約聖書・列王紀下 第17章15節

『そして彼らは主の定めを捨て、主が彼らの先祖たちと結ばれた契約を破り、また彼らに与えられた警告を軽んじ、かつむなしい偶像に従ってむなしくなり、また周囲の異邦人に従った。これは主が、彼らのようにおこなってはならないと彼らに命じられたものである。』

旧約聖書・エゼキエル書 第8章12節

『時に彼はわたしに言われた、人の子よ、イスラエルの家の長老たちが暗い所で行う事、すなわちおのおのその偶像の室で行う事を見るか。彼らは言う、"主はわれわれを見られない。主はこの地を捨てられた"と。』

第9章8節

『さて彼らが人々を打ち殺していた時、わたしひとりだけが残されたので、ひれ伏して、叫んで言った、"ああ主なる神よ、あなたがエルサレムの上に怒りを注がれるとき、イスラエルの残りの者を、ことごとく滅ぼされるのですか。"』

新約聖書・ルカによる福音書 第23章34節

『そのとき、イエスは言われた、"父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです。"人々はイエスの着物をくじ引きで分け合った。』

 

「改宗します? 貴方ならいい仙人になれますよ?」

「うーん、仙人にはなりたくないです」

「そこまでだ、残念だったな娘々。オレの預言者を改宗するのはやめてもらおうか」

「あら。爺々から話しかけてくださるなんて、私も捨てたものではありませんね。その節は助かりました」

 

いきなり彼女たちの話へ排擠したが、これっぽっちもイヤな顔せず、まるで酒食徴逐のようだった。青娥の言うその節とは仙霊である純狐のコトだろう。杯酒解怨とはいかなかったものの、ソレでも昔と比べて心の隔てる距離は、二つの星よりも近くなった、ハズ。大徳は小怨を滅ぼすだ。もっとも仙霊と違って、彼女はソコまで感情的にならずにいられるから、純狐を諫められたら解決したようなモノだったので、顔を突き合わせて話し合ったのは良いが、呉越同舟の関係にするため、落としどころを観つけるのは苦労した。

しかし青娥はまたとぼけた。柳に風とは言うが、オレが釣られるコトを理解してて早苗を誘っていたのではないか。こうやって世界に魅せつけるようにしてわざと注目を浴びるかのような行動をとってる。……いやいや、自分で言っておいてなんだが、いくらなんでも今回ばかりは流石に下衆の勘ぐりだ。仮にも彼女は妻なのだから、オレが信じてやらないでダレが信じるというんだ。そうさ。勘ぐり過ぎなだけだ。

そもそも早苗を仙人にしても、正直言ってダレも困らない。だから青娥と一緒にいる華扇は一切止めていない。止める理由がないから。困るのはオレだけだろう。永琳とかはそういうのに興味がないからなにも言わない。だがオレはそうじゃない。釣りと判ってても、誘引だと理解してても、その餌へと全力で食らいつくしかない。惹起される前に止めなくてはいけないんだ。例え本人の意思でなりたいと言っても、邪魔は出来ても応援はしてあげられないんだよ。

新約聖書・ヤコブの手紙 第4章5節

『それとも、"神は、わたしたちの内に住まわせた霊を、ねたむほどに愛しておられる"と聖書に書いてあるのは、むなしい言葉だと思うのか。』

新約聖書・ペテロの第一の手紙 第3章22節

『キリストは天に上って神の右に座し、天使たちともろもろの権威、権力を従えておられるのである。』

新約聖書・ガラテヤ人への手紙 第2章21節

『わたしは、神の恵みを無にはしない。もし、義が律法によって得られるとすれば、キリストの死はむだであったことになる。』

 

「……」

「弘様、どうかされましたか?」

 

太平記 巻第三十七

『形は人にして額に一の角ありければ、見る人是を一角仙人とぞ申ける。修行功積て、神通殊にあらたなり。或時山路に降て、松のしづく苔の露、石岩滑なりけるに、此仙人谷へ下るとて、すべりて地にぞ倒れける。仙人腹を立て、竜王があればこそ雨をも降らせ、雨があればこそ我はすべりて倒れたり。不如此竜王共を捕へて禁楼せんにはと思て、内外八海の間に、あらゆる所の大龍・小竜共を捕へて、岩の中にぞ押篭ける。――其一角仙人は仏の因位なり。其婬女は耶輙陀羅女これなり。』

 

「弘様。弘様」

「あ、悪い。なんだ」

 

肩を揺すられて我にかえる。内心では駭魄しつつ返事をすると、隣にいる華扇が、大憂そうに覗き込んでいるのに気がついた。どうもここ最近、変だ。自分のコトながら不気味としか言いようがない。オレはココまで耄碌していたというのか。

大隠は市に隠る。対面にはゆったりとしている嫦娥――青娥が腰を下ろしており、こちらが視線を向けると微笑んだ。春風駘蕩ながらもいつも通りの和其光、同其塵を地で行っている。相も変わらず奔波を避ける円転滑脱な妻だった。本来の性格からして金声玉振ではないし、諏訪国に滞留するような女じゃない。昔は雲水不住だったハズなんだが、なにか興味を引くモノでも観つけたか、もしくはココを気に入ったのかな。天変地異が起きそうだが、後者ならどれだけありがたいコトだろう。もしもの時は掣肘するが。

というかいつの間にやら早苗がいなくなっている。あの子は話を聞くのが飽きたのか、すでに天子のところにいた。オレの与り知らぬところで仲良くなったらしい。よかった、一応断ってはいたが、仙人になろうとする現人神はいなかったのか。しかし元気だなー。白蓮と命蓮は眠たそうだったのに。幽々子はとっくに寝ているんだろう、姿が見えないし。

 

新約聖書・マルコによる福音書 8章28節

『彼らは答えて言った、"バプテスマのヨハネだと、言っています。また、エリヤだと言い、また、預言者のひとりだと言っている者もあります。"』

8章29節

『そこでイエスは彼らに尋ねられた、"それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか。"ペテロが答えて言った、"あなたこそキリストです。"』

8章30節

『するとイエスは、自分のことをだれにも言ってはいけないと、彼らを戒められた。』

老子道德經 五十六章

『知者不言,言者不知。塞其兑,閉其門,挫其銳,解其分,和其光,同其塵,是謂玄同。故不可得而親,不可得而踈;不可得而利,不可得而害;不可得而貴,不可得而賤。故為天下貴。』

 

「大丈夫ですか? 気分が優れないなら横になられた方が」

「いや。鬼と龍と仙人の関係について考えてただけだ」

「どうしてまた」

「ちょっと気になってさ」

 

そもそもこの一角仙人の話はインド起源で、確かインド神話ではリシュヤ・シュリンガと言ったか。

彼女は毛ほどもそんな気持ちにはならなかっただろうが、オレはなんだか気まずく感じて、彼女を直視できずに逸らしたら、華扇の肩に乗っていた雷獣と視線が合う。下手をしたら雷獣はオレより賢い。心心相印だな。きっと空気を読んで察してくれたのだろう。地面に下りて胡坐をかいているオレの膝へとすり寄って来たので、青色で中々イカス鬣を撫でると気持ちよさそうな声を漏らした。神と妖怪という違いはあるが、雷同士相性は悪くないようだ。しかしなんて器がデカいんだろう。オレより立派ではないか。

そんな中、無言にこちらを観ているであろう鬼女を一瞥する。だがまだ気遣わしげだった。安心してもらおうと、こうして雷獣へ触れ合っているのに、彼女はあえて指摘せずに、黙っていた。なんと声をかけたらいいか判らない。だからオレには、話題を変えるしか思いつかなかった。

 

「それで仙人って羽化登仙と聞くが、そうなのか」

「いえ......そもそも仙人って空を飛べるんですか、青娥様?」

「よく知られているのは久米仙人でしょうね。元来の仙人とは違いますが、空前ではないわ」

「実りある話に恐縮ですが、ソレは仙人と言えるのでしょうか」

「仏典・『佛說觀無量壽佛經』によれば、あのブッダも空を飛びましたから」

 

仙人と同じように、あの釈迦でさえ存在・意味が変わった、青娥は華扇にそう言いたかったのだろう。

そうして、オレが火付け役になったのか、不本意ながらも仙人同士の歓言愉色に突入してしまう。彼女が言うには、日本の『吉備真備』と『雲居官蔵』もそんな話があったらしい。他にはインドにいた『法道』にもそのような話があり、仏典の『楞厳経』で似たような記述を観たコトがある、と華扇に教示した。

ココにいるとはいえ、青娥は基本的に食事をしないので、ただ集まりの中で気に入ったモノを捕まえて、浅斟低唱するかのように、交歓で語らうだけ。流暢に詠うから、金谷酒数も出来そうにない。ただ両者ともに容姿と身なりがいいし、程孔傾蓋な状景はまるで扇影衣香だった。

しかしながら仙人が空を飛んだ、という例を青娥はいくつか挙げてオレは詠嘆した。だが章句小儒と言われても、雑駁と言われようとも、弘天のオレとしては、仏典だけは認めるワケにはいかなかった。

 

新約聖書・ガラテヤ人への手紙 第3章15節

『兄弟たちよ。世のならわしを例にとって言おう。人間の遺言でさえ、いったん作成されたら、これを無効にしたり、これに付け加えたりすることは、だれにもできない。』

第3章19節

『それでは、律法はなんであるか。それは違反を促すため、あとから加えられたのであって、約束されていた子孫が来るまで存続するだけのものであり、かつ、天使たちをとおし、仲介者の手によって制定されたものにすぎない。』

 

「待て。アレは禍棗災梨だ、屠毒筆墨でしかない。オレはあんなの認めないからなッ!」

「無関心な大衆にとってアレは娯楽でしかないもの、それほど煩う事かしら。由めくのも大変ね」

「違う。大姦似忠ではなく本心だ」

「一部例外はいますが、インド神話に基づく場合、古代インド人は神裔ですよ。つまり――」

「虚静恬淡に言うな。判っている」

 

風になひくふしのけふりのそらにきえてゆくゑもしらぬわか思哉。

確かに神話においての〝血〟とは大事なモノだ。しかしソレは宗教があってこそ、初めて意味を持つんだ。だがその宗教は終わった。民族としての日本人も死んだ。日本神話の信仰は無くならなかったが、そもそも明治時代で宗教的なことは変わりまくってる。アメリカに降伏して負けたし、日本が建国したのは1952年。まだ百年も経ってないんだ。大体、日本の歴史は江戸時代で終わってるんだよ。天皇としての天皇も平成時代の時点で死んだも同然なのだぞ。

神話の民族、神に創られた民族でも、どこからともなく現れ、先進的な文明を築いたと思ったら消えた民族もいるし、急に出てきて侵略したと思ったら、そのまま忽然として消えうせた民族もいた。様々な民族の歴史を学んでつくづく思うコトだが、アイツらどこへ行ったんだろうなあ。

 

「フリと言えば......爺々は私のコトを本当に好いてますね」

「どこをどう観たらそのような解釈が出てくるのだ」

「だって、そういうフリでしょう? 加えて敵愾に近い感情を向けられるのも私だけ」

 

儒教の始祖・孔子は言った

『子日、唯女子與小人爲難養也。近之則不孫、遠之則怨。』

オレは女好きだ。ソレは周りのモノ達にとって周知の事実である。そのハズなのに、オレって、なんで青娥のコトが気に入らないんだろうか。仙姿玉質でナイスボディだし、性格・人格……はやや問題があるけど、ソコまで破綻しているワケじゃない。彼女との関係や付き合いを顧みると、欠点よりも美点の方が圧倒的に多いと断言できる。むしろ都合のいいコトばかりだし、青娥はオレとまぐわうコトを嫌がらず、却ってウェルカムときた。無視できない部分はあるにはあるが、それでも非の打ち所がないと言える。なにより、美人とセックスできるのであれば、端倪すべからざる妻であっても、なにも問題はないハズなのだ。

人心惟危,道心惟微;惟精惟一,允执厥中。子曰、君子成人之美、不成人之惡。小人反是。

 

「素は好色のみ。それ以外は、箕子と蒯通がしたように狂人のフリ」

「そんなワケ――」

「あります」

 

旧約聖書・エレミヤ書 第15章10節

『ああ、わたしはわざわいだ。わが母よ、あなたは、なぜ、わたしを産んだのか。全国の人はわたしと争い、わたしを攻める。わたしは人に貸したこともなく、人に借りたこともないのに、皆わたしをのろう。』

第20章14節

『わたしの生れた日はのろわれよ。母がわたしを産んだ日は祝福を受けるな。』

第20章15節

『わたしの父に"男の子が、生れました"と告げて、彼を大いに喜ばせた人は、のろわれよ。』

第20章16節

『その人は、主のあわれみを受けることなく、滅ぼされた町のようになれ。朝には、彼に叫びを聞かせ、昼には戦いの声を聞かせよ。』

第20章17節

『彼がわたしを胎内で殺さず、わが母をわたしの墓場となさず、その胎をいつまでも大きくしなかったからである。』

第20章18節

『なにゆえにわたしは胎内を出てきて、悩みと悲しみに会い、恥を受けて一生を過ごすのか。』

新約聖書・ローマ人への手紙 第9章20節

『ああ人よ。あなたは、神に言い逆らうとは、いったい、何者なのか。造られたものが造った者に向かって、"なぜ、わたしをこのように造ったのか"と言うことがあろうか。』

 

 

 

 

「観てきました。××神話があった時からずっと」

 

彼女はオレの両手を手に取り包み込んだ。ついさっきまで鬼達が騒いでいたのを聞こえてたが、耳から入る情報を遮断された騏驥過隙に、兆載永劫でしかなかった世界から音が消えた。ふと観ると、みんな電池が切れたように倒れている。神も、妖怪も、人間も、一人残らずだ。いや、河童とかは神社の裏にある蔵の地下にいるし、天狗は仕事が重なって今日はいないし、最初は魔女たちもいたがすでに魔法の森へと帰っている。他にも臥房へ行っているモノもいるから、いつもよりは少ないのだが。

造次顛沛に無音だったが、次第に鬼たちのいびきも聞こえて、気持ちよさそうな寝声もかすかに聞き取れる。距離はあるとはいえ、鬼の声が大きいからだろう。なにかあったワケではない、ただ寝てるだけだ。でもダメじゃないか。酔ったからといえども、神社の中でなきゃ風邪ひくぞ。観ると、隣にいた華扇も倒れ込むように熟睡している。いつ、眠ったのかを、覚えていない。彼女と話し、青娥と語らっていたが、アレからそれほど時は経っていないハズなのに。

 

「私のように生きるのは、爺々には出来ないでしょうね」

「……ソレが出来たら苦労しないんだよ」

「大変でしたね。疲れたでしょう。もう休んでも......いいんですよ」

 

そんなコト出来るワケない――滾滾と湧き上がる高揚の感情に従い彼女へ言い返そうとしたら、声が出なかった。

あれ、なんか頭が真っ白になってきた。というよりなにも考えたくない。三度の飯より女が好きなオレの夢は、諏訪国で女を集めて侍らすコトではあった。あったが、もはやどうでもよくなってきた。このまま全てを委ねてしまえばどれだけ楽になれるのだろう。××神話のコトは全部忘れて、いっそのコトこのまま羊裘垂釣に――

 

菅家文草・早春内宴 侍仁壽殿 同賦春娃無氣力 應製一首

『紈質何爲不勝衣、謾言春色滿腰圍、残粧自嬾開珠匣、寸歩還愁出粉闈、嬌眼曾波風欲亂、舞身廻雪霽猶飛、花間日暮笙歌斷、遙望微雲洞裏歸。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「噫......もう来られるとは、予想より早いですね」

 

 

突如、体全体に衝撃が走り、明滅していた意識が灼たになっていく。青娥は残念そうに呟いたが、動こうとした俯仰之間、右足に痛みがあり、ソコに目を向けると、腿に矢が刺さっていた。コレ、永琳のだ。すぐに抜くべきなのだが、その矢は雲散霧消した。神気で創られたモノだからなのだろうが、それでも足に穴は開いているんだから鮮血淋漓。叫び声をあげるほどじゃないし、歩こうと思えば歩ける程度とはいえ、どうせなら腕の方がよかった。

ただ、立ってる時ならともかくとして、わざわざ胡坐をかいてたオレの足を狙ったのも、何か意味はあるんだろうか。一応は痛覚もあるんだしせめて掠めるくらいにしてほしいモノである。というか、まさか落ちかけていたのか、呑まれかけていたのか、このオレが。

しかしこんな一齣になっても、嫦娥がいるのにあの純狐は出てこなかった。

 

「そんな相好してどうした」

「嫌い?」

「好きだ」

「私もよ」

 

オレの足を射抜いた張本人へと視線を向けるが、手水舎近くに永琳がいるだけで神奈子はいなかった。

胡坐をかいていたが、ちょっと辛くてへたり込む。すると、いつの間にかオレの両脇に綿月姉妹がいた。気配をまるで感じなかったが、豊姫の能力を使って転移したのだろう。しかしあの永琳が矢を放つなんてよほどのコト。オレにはこんな重苦しい空気になる所為が判んない。だってみんな酔いつぶれているだけじゃないか。観た感じ、誰かが殺されているワケではないんだ。だから出来るだけ普段通りに声をかけた。しかし一触即発なムードを和らげることは出来なかった。

永琳との会話を終えた直後、海神の依姫は、腰に巻いたベルトを使い、いつも佩刀して携えている長刀の鞘へと左手を当て、柄を右手で掴み、矢継ぎ早に発する。

 

「嫦娥様、斬られる心組は終えていますか」

「いいえ。それよりも、夫婦の営みに水を差すなんて無粋でしょ?」

「......アレが営み? 私達には営みではないように見受けられましたが」

「嘱目されているコトは判っていましたが......信用されてませんね」

「この惨状と、××神話においての貴方がどういう立場でいるのかを自覚してください」

 

刻薄の視線を青娥に向けているが、見るからに瞋恚している依姫は、長刀の鯉口を切ろうする寸前で、豊姫はいつも持ち歩いている扇子を使い自身へと煽ぎながら、ソレを止めようとせずにいつも通りニコニコしてた。でも月の最新兵器の扇子を使いそうな気がした。いくら咲夜の能力で神社の内部空間を拡張しているとはいえ、こんなところで暴れたら間違いなくあの家が崩壊する。鬼達がいるから普請するのは楽でも、愛着はある。それにココにいるのがオレ達だけならまだいいが、このままでは他のモノたちも巻き込んでしまう。ソレは絶対に避けるべきだ。妻達になにかあったら、まあそれぞれでなんとかしそうな気もするが、早苗達に危険が及ぶのは困窮する。

色んな女を我が物とし、一部男も引き込んだが、支配下に収めたモノを諏訪国にいさせてる訳柄は、当然ながら女を侍らすためではあるが、早苗、白蓮、命蓮、幽々子を垂堂之戒するためでもあり、この国の基盤を盤石なモノとし、鞏固にしたかったのもある。今回はアレでなんの用を成さなかったとしても、必要なコトだった。

……しかし永琳の相好は、このオレでさえ片手の指くらいしか観たコトがない。アレはいつだったか、そう、まだ××神話があった時だ。そんな彼女は神気で出来た第二矢をつがえていたが、ソレを終えると矢じりを青娥に向けて言った。

 

「困るわね。それ以上カレを宥め賺すなら......」

「あら怖い。では爺々、今回はここまでにしましょう」

 

彼女は潮時と察し、オレから離れた。するとカラダがふわふわ浮き始め、そのまま何事もなかったように空へと飛んで行く。本来、青娥は蓬莱の薬を飲んでるから死にはしない。だがその薬を創ったのは永琳と輝夜、相手が不老不死でもその対処法は何百、何千、何万とある。それに永琳の頭脳なら、蓬莱の薬の効果を無くす薬を創れるだろうし、争ってもお互いに利益はないハズだ。だからと言って、分が悪いから彼女は逃げた、とも思えない。

××神話の海神一族である綿月姉妹、その妹が紫色で長い髪のポニーテールを揺らし、右腕にある金色のブレスレット二つはぶつかりあってチャリチャリと鏘然させながら、片膝を地面につけ、崩れるように座るオレの足の虚空を観て言った。

 

「隊長。神綺様から蓬莱の薬を頂いているハズです。今すぐ飲んでください」

「断る」

 

依姫の要求を即答で突っぱねる。意表を突かれたのか彼女は腰を上げた。しばしの間、寂静になったが、釈然としないからか恐る恐る事情を聞いてきた。永琳と豊姫は語らず、彼女の言うコトに同調はしなかったが、内心ではきっと同じ気持ちなのだろう。それでもダメだ。

 

「な......なぜですか?」

「とにかくダメだ。まだアレを飲む気はない」

 

それ以上何も言えなくなったのか、唇を噛み、切歯扼腕している依姫は、長刀の鞘を掴んでいる手が震えており、納得できない気持ちがそのまま握力に変換されているのか、鞘が悲鳴を挙げているのではないかと思うくらいに軋ませている。込めすぎた指先が熱そうだ。永琳が原因とはいえ、足に穴が空いているとはいえ、こんなの唾付けとけばそのうち治るよ。それに瀕死の状態だったらまだしも、この程度では蓬莱の薬を飲むほどじゃない。

だが納得できないのか、必至に昂っていた感情を抑えていた依姫は、青娥に対して吐き捨てるように言い放つ。

 

「やはり擺脱すべきでした。今からでも遅くは――」

「ソレはダメよ」

「ですがお姉さま、私はッ!」

「彼女は弘さんに嫁ぎ××神話の一柱になった。理由はソレで十分」

 

長女に止められ、彼女は寂寥の念に襲われ出した。あの光景にかつては神奈子もいたが、往時の面影はない。悲しいかな、アイツの記憶はまだ戻ってないんだから。オレが青娥を娶ったとはいえ、忸怩たる思いなんてモノはない。きっかけはどうあれ、あの仙女が欲しかった。かつての華扇へとするため、仙術を学ばせたかった。ソレをオレには出来なかったから。だから娶り、××神話に引き込んだ。ただそれだけだ。

姉の言で説き伏せられていた依姫は、自分を押し殺そうとしたが、その前に永琳へと尋ねる。共鳴されたかったワケでも、翼賛を得たかったワケでもない。ただ聞かずにはいられないのだ。

 

「八意様は首肯しているのですか」

「ないわね。百代過客に回帰したとはいえ、ソレが出来た時は鮮少と言ってもいいでしょう」

「いて」

 

息衝きながら頭にチョップされた。痛くはないが反射的に口から音が出てしまった。忘却の女神は、特に震駭せず、神色自若に矢を放ち的確に射抜いてくるのだ。もう慣れたのかもしれん。

永琳が魔方陣を展開し、ソコから透明の瓶を取り出す。中に入っているのは、観た感じ手水舎や川にあるような、どこにでもある水のようだ。しかしこの渦中にあって、月の頭脳と呼ばれた女が水を出すワケがない。水だったとしても、無意味なモノではないだろう。

 

「それでも、××が決めたコトですよ。然らば私達は従うのです。判りましたか、依姫」

「......はい」

 

「依姫は謹厚すぎよ。子供を産んでから弥が上にも情緒纏綿となっている。姉を亀鑑としなさい」

「私淑して豊姫みたいになられても困るなあ」

「あー。弘さんヒドイですー。ココは私が増えたと思って喜んでください」

 

忿懣やるかたない依姫は、永琳に諭されてしゅんとした。そう言われるのは判っていただろうに、どうしても腑に落ちないから、かつての師匠にそう言われて強引に納得せざるを得なかったのか。豊姫と違って、そういうところは不器用な妻だった。ただ和顔施な綿月家の長女は、オレの発言は心外だったようで、待遇を抗議するため、持っていた扇子をオレの頬へぐりぐり押し付け、等閑視はやめてほしいという反抗の意思を示す。結構痛いが、おかげで場の空気は和らぎ、ソレを観ていた妹は憂色に包まれて、潺湲しそうだったが、恵比須顔になった。よかった。

それで永琳がいつもとは違う話し方になったが、アレは素だ。元々ああいう喋り方の女神で。ずっと循環してきたから、オレだけじゃなく、綿月姉妹に対しても距離が近くなり、最近は融和されて砕けた口調をしていただけ。今でこそ××とはこんな関係だが、最初はオレにも敬語だったし歪な夫婦だった。

立ち上がろうとすると、痛みが走る。我慢できなくはないので、そのまま両手を地面に置いて重々しく立ち上がる。思い出話にふけている場合ではなかったぞ。

 

「それで話しているところ悪いが、腿が痛すぎるんだ。このまま見殺しにする気か」

「ごめんなさい。あの場ではソレしかなかったの」

「まあそのおかげで目が覚めたから問題はないが。どうせ、オレは死なないんだし」

 

右手に持っていた瓶のふたを開け、仏教の空みたいになっている穴へと垂らす。一気にかけるのではなく、穴へ染みこませるようにし、動作は緩徐だった。するとだんだん痛みが引いていき、喪失していた肉が塞がれた。こんな便利なモノがあるのに出さなかったのは、蓬莱の薬を飲ませようと依姫に促すためか。

綿月姉妹は急に発言を控えている。彼女たちは静かにコチラを見守ってはいるが、会話の邪魔にならないように配慮しているようだ。

 

「いつもは弘が籠絡するのに、まさか誑し込まれると思わなかった」

「そうか。でも青娥を娶ってから終ぞ目新しいコトばかりだな。悪くない」

「弘が生きているだけで満ち足りた生活よ。昨日より今日が好き。今日よりもまだ知らない明日はもっと好きになれる。みんなでいっしょに明日に行こうね」

 

悠揚迫らぬ智慧(忘却)の女神は青娥に対し非難はせず、咎めたりもしなかった。月の頭脳は判っているハズだ、オレに何かあっても、かつてのように何もしなくていい。元々アレの性格・人格を理解して娶った。オレに何かあれば開門揖盗だ。それに、なんか変だ。確かにみんな寝てて、オレも流されかけたし、足の一部が空虚したのも永琳のしたコトではあるけど、大元の原因は嫦娥、ではない。どうしても彼女がしたコト、とは思えなかった。どう言えばいいのか……強いて言えばあからさまなんだ。仙女は否定も肯定もしなかったとはいえ、アレでは自分が犯人と言っているようなモノじゃないか。ただでさえ立場的な意味でも、××神話の一柱の意味でも、彼女は槃根錯節なのだ。そんな同床異夢の彼女がわざわざ掲焉し、脚光を浴びている。暗澹なだけで有益は一つもないよ。月夜に提灯だ。現に永琳と豊姫はともかく、依姫にいい印象を抱かれてはいないだろう。ただ一番気になるのは、純狐が出てこなかったコトだが。

 

「治るの早すぎだろ。魔法みたいだな」

「珍しいわね、正鵠を射るなんて」

「あれ、××は魔法を使えたのか」

「厳密には魔法じゃない。ただ魔女達が使う魔法も、古代の力のコピーを使用しているだけ」

「古代って……憶えてないぞ。当時そんなのなかったハズだ。あ、××神話があった時だな」

「そうよ。弘の雷霆のような、まだ人間が居なかった時代の無秩序な力。あの頃が懐かしいわ」

 

念のために足を振ると、さっきまでの痛みと穴がウソのように消えていた。なんとも万能な妻である。その空になった瓶を魔方陣で転移させるが、永琳の能力ってあらゆる薬を作る能力だっけ。日常生活ではあんまり発揮できないから、すっかり忘れてたよ。

今日は猥雑して孔席墨突だったが、ソコはいったん忘れて、まずは宴会の後片付けをしよう。じゃないと朝になっちまう。

 

新約聖書・マタイによる福音書 第22章42節

『"あなたがたはキリストをどう思うか。だれの子なのか。"彼らは"ダビデの子です"と答えた。』

第22章43節

『イエスは言われた、"それではどうして、ダビデが御霊に感じてキリストを主と呼んでいるのか。"』

新約聖書・ルカによる福音書 第20章42節

『ダビデ自身が詩篇の中で言っている、"主はわが主に仰せになった。"』

第20章43節

『"あなたの敵をあなたの足台とする時までは、わたしの右に座していなさい。" 』

新約聖書・マルコによる福音書 第12章36節

『ダビデ自身が聖霊に感じて言った、"主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい。"』

旧約聖書・詩篇 第110篇1節

『主はわが主に言われる、"わたしがあなたのもろもろの敵をあなたの足台とするまで、わたしの右に座せよ"と。』

新約聖書・マルコによる福音書 第12章37節

『"このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか。"大ぜいの群衆は、喜んでイエスに耳を傾けていた。』

 

「じゃあみんなを揺り起こすか。このままだと風邪を引くから、依姫と豊姫も手を貸してくれ」

「判りました」

「はーい。でも弘さん、私も子供を産みたいのでその後は相莚しませんか。侘寝は徒然です」

「いいな、しよう」

「......待ってください、虚言ではなく赤心ですか? 真に受けますよ、狂信しますよ!?」

「していいぞ」

「なんということでしょう。冶金踊躍も終え、遂にこの日を迎えました......やったー!」

 

旧約聖書・ミカ書 第5章2節

『しかしベツレヘム・エフラタよ、あなたはユダの氏族のうちで小さい者だが、イスラエルを治める者があなたのうちからわたしのために出る。その出るのは昔から、いにしえの日からである。』

新約聖書・ヨハネによる福音書 第7章42節

『"キリストは、ダビデの子孫から、またダビデのいたベツレヘムの村から出ると、聖書に書いてあるではないか"と言った。』

新約聖書・使徒行伝 第2章25節

『ダビデはイエスについてこう言っている、"わたしは常に目の前に主を見た。主は、わたしが動かされないため、わたしの右にいて下さるからである。"』

第2章29節

『兄弟たちよ、族長ダビデについては、わたしはあなたがたにむかって大胆に言うことができる。彼は死んで葬られ、現にその墓が今日に至るまで、わたしたちの間に残っている。』

第2章30節

『彼は預言者であって、"その子孫のひとりを王位につかせよう"と、神が堅く彼に誓われたことを認めていたので』

旧約聖書・詩篇 第132篇11節

『主はまことをもってダビデに誓われたので、それにそむくことはない。すなわち言われた、"わたしはあなたの身から出た子のひとりを、あなたの位につかせる。"』

新約聖書・使徒行伝 第2章31節

『キリストの復活をあらかじめ知って、"彼は黄泉に捨ておかれることがなく、またその肉体が朽ち果てることもない"と語ったのである。』

第2章32節

『このイエスを、神はよみがえらせた。そして、わたしたちは皆その証人なのである。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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各敬尔仪,天命不又

 

「この國は常軌を逸しています。異常だと言わざるを得ません」

 

月数めばいまだ冬なりしかすがに霞たなびく春立ちぬとか。ここ輓近は降りっぱなしだったが、今では小雪が舞うコトもなく気温も程よい。雲一つないこんな日は出歩くに限る。そこで久しぶりに降りて来たのはいいが、小腹が空いたから、鬼たちを用いてオレのために建てた団子屋で、山城国から帰還した実妹の従者、咲夜に団子を作ってもらい腹を満たすがてら束になっている紙切れを、一枚一枚丁寧に燃やす。よく燃えるモノだ。カラッとした日に燃やすのはなかなかどうして映える。

そんな時、いつの間にやら隣に座っていた彼女、諏訪國の為政家である神子の開口一番に出た言葉が、ソレだった。側頭部に付けている能面が、いつもは大人しいのに一度だけ動き、感情の起伏が激しくなっているような気もした。

定公問,君使臣,臣事君,如之何? 孔子對曰,君使臣以禮,臣事君以忠。

 

「不覊ではあるが異常ではないだろ。咲夜、もっと団子をくれ」

「はい」

「あ、今度はタレがいいな」

「判りました」

 

メイドに伝えるとすぐさま奥に引っ込む。実妹も帰ってきたが、この場に輝夜はいない。久しぶりに帰省したので、月の民へ会いに行っている。一応、咲夜も月の民であり、輝夜に仕えるメイドなんだが、いつもなら付き従うのに、ソレだけは従わなかったらしく、オレに預けたというか、咲夜が自主的にオレの元へ来た。ちょうどいいので作らせているのだ。機材はあるのだが、自分で作るのが面倒だし。

団子と咲夜の合間、先程の返答を考え込み、隔靴掻痒な様子の神子は、飲み込まずに異論を唱えた。

 

「......いいえ。諏訪さまへ仕える嚮、この國について仄聞していましたが、やはり異常です」

 

诗经・大雅

『有周不显,帝命不时。文王陟降,在帝左右。亹亹文王,令闻不已。陈锡哉周,侯文王孙子。文王孙子,本支百世。凡周之士,不显亦世。假哉天命,有商孙子。商之孙子,其丽不亿。上帝既命,侯于周服。侯服于周,天命靡常。』

馬王堆・老子乙德經

『天之所亞,孰知其故?天之道,不單而善朕,不言而善應,弗召而自來,單而善謀。天罔恢恢,疏而不失。』

 

「ココだけ、この國だけが平和です」

「平和、平和か」

 

日蓮宗などもあるが、かつては活気づいていた浄土教、浄土真宗のような仏教は緩和したから捨ておくとして、諏訪國以外の例を挙げるなら、隣国の美濃国・飛騨国などの民は悲惨で、飢饉、戦や内乱も他の国は普通に起きている。それなのに、諏訪國だけが一切ない。ソコを不思議に思っているのだろう。

诗曰,维女荆楚,居國南乡。昔有成汤,自彼氐羌,莫敢不来享,莫敢不来王,曰商是常。天命多辟,设都于禹之绩。岁事来辟,勿予祸适,稼穑匪解。天命降监,下民有严。不僭不滥,不敢怠遑。命于下國,封建厥福。商邑翼翼,四方之极。寿考且宁,以保我后生。

 

 

「近頃は御隠れになられた天神地祇も、さてのみ顕現せず消ぬ」

「せむかたなし」

「されど膏腴の諏訪を食す諏訪さまは、いつまで御座すのか」

 

御隠れ、と言ってもアイツらが死んだという意味の方ではなく、単純に天神地祇が姿を見せなくなっているという話。落居しているから、もうそろそろ、終わるんだな。

诗曰,绥万邦,屡丰年。天命匪解。保有厥士。于以四方,克定厥家。於昭于天,皇以间之とはある。だが平和なんて、諏訪國だけで十分だろう。オレは上帝(天帝)ではあるが、仮に日本全てを平和へしようと動くなら、ソレをするにあたって、まずそのための受命がない。代わりにあるとしたら、血だろうか。齊景公曰:『既不能令,又不受命,是絕物也。』涕出而女於吳。今也小國師大國而恥受命焉,是猶弟子而恥受命於先師也。

この世は公平か公平ではないのか、というのはどうでもいいコトだが、あえて言うならば、ココは盜跖のようなモノが生きる世界なのかもな。詩經に、君子萬年、保其家室。君子萬年、保其家邦、とはあっても、どれだけ立派でも、どれだけ才があっても、顔回のようなモノでさえ夭折するのだ。子見南子,子路不說。夫子矢之曰,予所否者,天厭之! 天厭之! 顏淵死。子曰,噫! 天喪予! 天喪予!

それに神話の要である血さえ、戦国時代で終わるが。ただその話とは違うけど、オレも女を侍らせているが、全員、美女しかいないし、女に関しては公平とは言えないよ。ソレに納得いかないモノは、下記の詩經みたいなコトを言うモノが多い。

公平だなんだと謳っても、みんな、自分にとって都合がいい公平・公正・平等が欲しいだけなんだよ。

诗云,或燕燕居息,或尽瘁事國。或息偃在床,或不已于行。或不知叫号,或惨惨劬劳。或栖迟偃仰,或王事鞅掌。或湛乐饮酒,或惨惨畏咎。或出入风议,或靡事不为。

 

「ここはな、オレだけの為にあると言ってもいい。だからこの時代にあるワケがない物さえある」

「この時代......とはなんのコトでしょうか」

「話すと長いから、神々のあれこれを使っているというコトにしておいてくれ」

 

なんかそれっぽいコト言っているが、なんてことはない。ただ月の都の技術や知識を、そのまま諏訪國へと持ち込んでいるだけである。記憶さえあればこういうコトはすんなりと済む話なんだが、こういう時は不便だ。とはいえ、タケノコみたいにポコポコと記憶を戻せないジレンマ。流石に、憶えていないモノへ、実はSF小説みたいにあの月には都があって、そこには今では考えられないほどの技術があるとか、一部の神々はまだそこに住んでいるとか、説明しても意味不明だろう。

だがおかしいな。顕明連を使ったパルスィは思い出したのに神子は戻っていないらしい。憶えていないのか。フリではないのか。

 

「神勅賜る。つまり御隠れにならないのですね」

「オレが天神地祇みたいに隠れるコトは、ないよ」

「よかったです。忌憚なく言わせていただくと、ソレが一番の気がかりでした」

 

要領を得ないといった受け答えだが、息を延ぶ神子は、深くは聞かずに渋々ながら納得した。どうも天魔からオレが消えるのかどうかを尋ねると、間を置かずにアレが隠れるなんてありえない、と言われたらしく、最初はソレで納得していたようだが、次第に危ぶんだようで、言葉質はしておきたかったようだ。

朕知之矣,朕得之矣。而不能以告若矣。

 

「この大陸にいる老幼男女が、白蓮のような子が笑っていられる國もあれば......」

「そんなモノはない。一部だけならともかく、全てと言うなら神代か、伝説だけだ」

「......伝説、ですか」

 

中国神話の聖王達は黄帝を除けばもういない。生きているモノもいるが、アイツらはほとんど草葉の陰にいる、終わったのだ。

見上げると、天空にはまざまざと浮かぶ大陸がある。アレを観るコトが出来るのは回帰したモノだけで、神子には観えていないが、アレは神代のモノから設定だけパクったモノだ。しかしあそこは、そんなコトのためにあるのではない。そんな理由で諏訪子の能力で創ったワケではない。それに伝説と言っても、この世が平和で健やかに生きられるという伝説はあっても、平和であり全ての民が学問を修める場所がある伝説なんてモノは流石にない。例え伝説でも限界があるのだ。

白蓮とか命蓮にも勉学へ励ませてはいるが、ソレも最低限。コレを聞いて、バカ親と観るモノや、乳母日傘と思うモノもいるかもしれない。だが学問というのは、そういうコトのためにあるのではない。知識というのは、そういうコトのためにあるのではない。子供を陶冶するため、溢れそうなほど一杯一杯に詰め込めばいい、というモノではないのだよ。

道家・老子は『埏埴以為器,當其無,有器之用。』と言ったが、器というのはなにかを入れるためにあるワケではない。仮に器へ水を入れたところで、器は所詮、器でしかないのだ。どれだけ高価な物や澄んだ水を入れても、埴を埏ねて作られた器が変わることはない。ソレを満たせばいいと考えるモノもいるが、それでは意味がない。大体、水を入れるにしても、透き通った水だけを入れたら後々億劫になる。

子非其人也。夫卜梁倚有聖人之才,而無聖人之道,我有聖人之道,而無聖人之才,吾欲以教之,庶幾其果為聖人乎! 不然,以聖人之道告聖人之才,亦易矣。

孝經・感應

『子曰:「昔者明王事父孝,故事天明;事母孝,故事地察;長幼順,故上下治。天地明察,神明彰矣。故雖天子,必有尊也,言有父也;必有先也,言有兄也。宗廟致敬,不忘親也;修身慎行,恐辱先也。宗廟致敬,鬼神著矣。孝悌之至,通於神明,光於四海,無所不通。《詩》云:"自西自東,自南自北,無思不服。"」』

 

 

 

 

「然るにても、なぜ諏訪さまは紙を燃やしているのですか」

「そう、ただの紙だ。燃やすのに大した理由はない。ただ文字が書かれた紙を燃やしているだけ」

 

紙だが……コレが教育勅語、だったらどうなるんだろうな。今燃やしているのは教育勅語ではないが、旁旁興味がないモノからしたら、文字が書かれただけの紙だよ。コレにかかれているコトも、クソの役にも立たないモノばかり。なにせコレはオレが直筆したモノだ。特に使い道もないからこうしている。

今オレが燃やしているのは教育勅語なのか、そもそも今は室町時代ではないのか、なんていうのはどうでもいいコトだが、先人達からの借り物を、自分勝手に弄り回しているモノしかない21世紀の創作物っていうのは、こういう行為となにが違うんだろうな。ただ、例えばギリシア神話は信仰が無くなったから好きに扱っていいとか、面白ければいい、とか言うヤツはクソだよ。特に信仰に関して言えば、オレの言いたいコトは、そういう話ではない。いやはやホントに、そうやって都合のいい方へ解釈し、曲解・歪曲して舞文弄法するヤツは即刻、全員死んでほしいモノだ。例え娯楽という名のお人形遊びでも、ソレを本気で口にしたなら笑えない。軍記物語である太平記を歴史書、と言うくらい笑えない。だからオウム真理教をカルト宗教扱いするんだろう。

ただし、設定を使うなら愛だの、敬意だの、リスペクトだのと謳うクソみたいなヤツもたまーにいるが、コレを言うヤツは自覚がない德と倫理(道徳)の偸だ。なぜなら平成時代の創作物は、パクリしかないのだ。オリジナルなんてモノはない。だからこそオレは、平成時代の日本人とかいうクソ民族どもを非難している。

魔女のような空想上の存在も、魔法のような概念も、憑依や輪廻転生のような宗教観(死生観)も、興味がないモノ共からすれば、お人形遊びに使う、都合のいいオモチャでしかない、アレは娯楽なんだから。などとぬかすクソ共もいるだろう。確かにそうだ。ただ物語を作るためだけに、使われて、こねくり回し、妄想を投影されるだけの、便利なお人形。だがソレは、自分が空想上の存在を、物語に使う道具以上に観ていないからだ。だからそんなコトが言える。大体ソレはな、パクリしかない平成時代のクソ共が我が物顔で言っていいコトではない。

桀溺曰,滔滔者天下皆是也,而誰以易之? 且而與其從辟人之士也,豈若從辟世之士哉? 丈人曰,四體不勤,五穀不分。孰為夫子?

 

「ソレは経典、政治書の類でしょうか?」

「ただの紙だよ」

「紙......しかしながら、ソレを諏訪さまがしてもよいのですか」

「今のオレは豎儒やיהוה(ヤハウェ)‎ではないのだ。それに興味がないモノにとってはただの紙でしかない」

 

オレが執筆した紙なんぞ欲しがるヤツは狂信者くらいだろう。

ところで、たかだかルールや倫理(道徳)や規律を守らないモノがいて発狂したり、たかだか他人に迷惑をかけられたくらいで発狂したり、たかだか人が殺されたくらいで発狂しているヤツって、うだうだ言っているけど結局は自分がイヤなだけで、納得・理解ができないだけなんだよ。じゃあ、今オレがしているコレと、自分で生み出さず、先人から借りただけの設定を創作物で好き勝手にしているヤツらって、コレとなにが違うんだろうな。

しかもさ、未だに儒教の始祖・孔子は無神論者だったとか、無宗教だったとか、不可知論者だった、とか言うヤツらがいるんだよ。コレは孔子家語・辯物にも似た記述のある話なんだが、儒教の聖典ではないとはいえ、古代中国の歴史書・『國語』で孔子は神について語っているというのに。一体ダレだろうな、こんな無責任なコトを吹聴しているヤツは。一体ダレだろうな、オウム真理教の思想はカルト宗教扱いしているというのに、儒教思想と仏教思想は宗教ではないとほざくクソ共は。一体ダレだろうな、自分にとって都合がいい思想は宗教ではないとぬかすヤツは。そしてその無責任な発言と、創作物という名のお人形遊びに使っているだけの、先人達からの借り物でしかない、神話に出てくる空想上の存在など、歴史上の人物を登場させ、自分勝手に喋らせて、自分勝手な妄想を押し付けて、その設定を弄りまわしているクソ共は、実在する人物を使うコトと、いったいなにが違うんだろな。

國語・魯語下 孔子家語・辯物

仲尼(孔子)曰:「丘聞之:昔禹致群神于會稽之山,防風氏後至,禹殺而戮之,其骨節專車。此為大矣。」客曰:「敢問誰守為神?」仲尼曰:「山川之靈,足以紀綱天下者,其守為神;社稷之守者,為公侯。皆屬于王者。」』

列子・說符

『宋人有好行仁義者,三世不懈。家无故黑牛生白犢,以問孔子。孔子曰:「此吉祥也,以薦上帝。」』

禮記(礼记)・禮運

『言偃復問曰:「如此乎禮之急也?」孔子曰:「夫禮,先王以承天之道,以治人之情。故失之者死,得之者生。《詩》曰:"相鼠有體,人而無禮;人而無禮,胡不遄死?"是故夫禮,必本於天,殽於地,列於鬼神,達於喪祭、射御、冠昏、朝聘。故聖人以禮示之,故天下國家可得而正也。」』

诗经・相鼠

『相鼠有皮,人而无仪;人而无仪,不死何为?相鼠有齿,人而无止;人而无止,不死何俟?相鼠有体,人而无礼;人而无礼,胡不遄死?』

 

 

 

 

 

 

「かつては大和国に携わったモノとして、この國と関わり、政や民を観て常々思うのですが」

 

束になっていた紙はあっという間になくなり、気付けば残り数枚。これは、どうしてくれようか。掉尾を飾るため、焼き芋でもしようかな。燃えやすくするため、一旦くしゃくしゃにして仕舞いながら傾聴する。神子の記憶が戻る兆候ではないかと、そう思ったからだ。

子曰,莫我知也夫! 子貢曰,何為其莫知子也? 子曰,不怨天,不尤人。下學而上達。知我者,其天乎!

 

「唐土の文献で似たような話を拝見したことがあります」

 

诗曰,式是百辟,缵戎祖考,王躬是保。出纳王命,王之喉舌。赋政于外,四方爰发。

オレは諏訪國の政・祭事などの彼是を神子、布都、屠自古へと丸投げしている。ただこの三人だけでココの舵を取っているワケではない。自分がしたくないのもあるが、オレよりも才と能力があるし、民衆のコトを考え心を痛めてくれるだろう、という安易な気持ちで信認し、任せている。腹蔵なく言えば、オレとしては弑するコトもなく、苛政猛於虎也にならなければなんでもいいのだ。だからあとは好きにしてくれと伝えて放任して、この國の王ではあるが懶惰の生活を送り、娑婆塞ぎとしてココにいる。なにより今まで一度も落ち度や疎漏があったコトもないし、丸く収まってるならソレでいい。

孝經・三才

『曾子曰:「甚哉,孝之大也!」子曰:「夫孝,天之經也,地之義也,民之行也。天地之經,而民是則之。則天之明,因地之利,以順天下。是以其教不肅而成,其政不嚴而治。先王見教之可以化民也,是故先之以博愛,而民莫遺其親,陳之德義,而民興行。先之以敬讓,而民不爭;導之以禮樂,而民和睦;示之以好惡,而民知禁。《詩》云:"赫赫師尹,民具爾瞻。"」』

 

 

だが、なんの文献で思いを馳せているのか、縷言せずに神子は、ぽつりともらす

 

「まるで唐土の篤志な聖人が理想とした政情のような......」

「言われてみれば似ているな」

「諏訪國は法も政も必要としていません。あったとしても微々たるモノ」

 

列子・黄帝

『又二十有八年,天下大治,幾若華胥氏之國,而帝登假,百姓號之,二百餘年不輟。』

理想とした政治、というのは孔子か老子なのかな。だがアレはあくまでも理想の話だ。ソレを目指したモノもいたが、叶うコトはなかった。黄帝が観た華胥之夢、そして孔子が理想とした古代中国三代王朝は、どちらも神話・伝説の話であり、コレは宗教の話だ。この世界では起きたが、実際にあった話じゃないし、あの聖王たちが実際にいたという証拠も、あの政治を敷いたという証拠もない。神武天皇も実際にいたという証拠がないようにな。つまり歴史の話ではないのだよ。確かに考古学的に言えばその三代王朝はあったかもしれないが、あの聖王たちがいたという証拠ではない。

なのに、どこぞのクソ共は2000年以上の歴史がある、とかぬかしやがる。それを言ったら中国神話を観る限り、中国は4000年以上の歴史があるだろうが。だからさ、日本なんてゴミだよゴミ。拠り所にしているその〝血〟も、2000年以上続いている証拠はないよ。大体だな、日本の歴史は江戸時代で終わっているし、民族としての日本人は死んだのだ。今じゃそんな考えはなんの価値もねえからな。まったくこういう無責任なヤツが引っ掻き回すから目に余るのだよ。

コレを捏造と言わずしてなんと言うのだろうか。初代天皇から第10代までの天皇がいたという証拠もなく、あまつさえ古墳時代から飛鳥時代への歴史は皆無に等しい。だから――創作物など一因としてはあるだろうが――日本では三国時代が盛んに研究され、他の時代より有名なんじゃないか。要するに都合のいいところだけしか観ていないんだ。昔いたよ、どこぞの小説家や漫画家が似たようなコトをして混乱させたヤツが。だからこそ、言うのだ。仮にオレを操っているモノがいたとしたら、ソイツにも責任はあるし、ソレを負わねばならないコトだ。創作物だから、と言い訳したり、開き直っていいコトではない。コレが許されているのがそもそもおかしいというのに。

論語・八佾

『子曰:夏禮,吾能言之,杞不足徵也;殷禮,吾能言之,宋不足徵也。文獻不足故也,足則吾能徵之矣。』

神游而已。其國无師長,自然而已。其民无嗜慾,自然而已。不知樂生,不知惡死,故无夭殤;不知親己,不知踈物,故无愛憎;不知背逆,不知向順,故无利害;都无所愛惜,都无所畏忌。入水不溺,入火不熱。斫撻无傷痛,指擿无痟癢。乘空如履實,寢虛若處床。雲霧不硋其視,雷霆不亂其聽,美惡不滑其心,山谷不躓其步,神行而已。

 

 

 

 

「諏訪の民にも私たちを受け入れてもらえました」

「そうだ。だから祭事・産業・経済も、民も含めて任せた。好きにしたらいい」

「ですが私は必要なのか、そう思わずにはいられません。それにこの國は......」

「時間があるなら文化人にでもなればいいと思うが」

「文化......」

「別に生涯を民へ捧げなくてもいい。だがオレには捧げろ」

 

昔者堯薦舜於天而天受之,暴之於民而民受之,故曰:天不言,以行與事示之而已矣。

神子は鬱積を披瀝した。責任の重みとか、自分がその立場でいてもいいのか、そういうコトで精神が憔悴しているワケではなく、ココで手腕を発揮しても、清水の舞台から飛び降りるような実感がないコトに憂悶しているのだな。大抵は前者のような話が出そうだけど、コレも彼女の器と、叡智と、驥足と、才幹と、真率ゆえか。この國を自由にできる地位にいるのだから、普通こういうのは伴食宰相になるモノではないのか。

自覚はないのだろうが、彼女のおかげでかなり助かっている。王を頼ろうとはせず、自分達の手で切り盛りしてくれるコトは、オレの中にある思想的に言えば、ソレはとても喜ばしいコトなのだ。普通は、王の立場にいるモノがそんなコトでどうするのかと観られるが、コレでいいんだ。本来、あの理想の政治が出来るワケがない。しかし今の諏訪國では実現している。ソレで、十分だ。

子謂子賤,君子哉若人! 魯無君子者,斯焉取斯? 子張問政。子曰:居之無倦,行之以忠。 季康子問政於孔子。孔子對曰:政者,正也。子帥以正,孰敢不正? 

先生曰:籲,子來前! 夫大木爲杗,細木爲桷,欂櫨、侏儒,椳、闑、扂、楔,各得其宜,施以成室者,匠氏之工也。玉札、丹砂,赤箭、青芝,牛溲、馬勃,敗鼓之皮,俱收並蓄,待用無遺者,醫師之良也。登明選公,雜進巧拙,紆餘爲妍,卓犖爲傑,校短量長,惟器是適者,宰相之方也。

 

 

彼女が宰相肚里能撑船だったのは僥倖だった。しかし平和な場所ではソレも考え物なのかもしれん。だからその思惑を払拭しようと、両手を彼女の肩に置いて顔をずいっと近づける。

 

「諏訪國が平和だからこそ、お前のようなモノが無くてはならない存在だ」

「そのように仰っていただけるのは大慶です」

「だが難しく意嚮する必要はない。オレも口を挟みはせん」

「輔助としての布都や屠自古はいても、こう、手応えを感じないのがもどかしい。ままならない。幸い難渋ではありませんから、政も現状維持しつつ、多様の水準を上げるくらいでしょうか」

 

覿面し、瞳を見つめ返しながら神子が述べたコトを、脳で反芻しながら団子を食う作業に戻る。

門前市を成すというワケではなく、かと言って賓客亦已散,門前雀羅張になっているコトもないから、それで十分すぎるが、維持か。社家について言うなら平安時代で変わったモノはいるんだよ。鎌倉時代だか室町時代だかで武家に燃やされた神社もあったし、戦国時代では社家が断絶しているモノもいるのだ。一度終わったモノを戻したようだが、ソレは同じではない。それに今は室町時代だが、今の日本にはイラン人とかインド人とかベトナム人とかもいるし、そろそろユダヤ人とかスペイン人とかポルトガル人も来る。ソレと同じように、神話や伝説を除けば、真の意味で維持をするというのは、出来るワケがないのだ。

ココで気になるのは、ルイス・デ・アルメイダはユダヤ人であるのか否か、である。ソレをיהוהに問うたコトもあったが教えてくれなかった。

とりあえずオレの旨意を為政家に伝えてみたけど、こういうコトは向いていない。オレは女を侍らせたらそれでいいが、彼女はそうではないだろうし、諏訪國に娯楽でも増やそうかな。

子擊磬於衛。有荷蕢而過孔氏之門者,曰,有心哉! 擊磬乎! 既而曰,鄙哉! 硜硜乎! 莫己知也,斯己而已矣。深則厲,淺則揭。子曰,果哉! 末之難矣。诗云,匏有苦叶,济有深涉。深则厉,浅则揭。有瀰济盈,有鷕雉鸣。济盈不濡轨,雉鸣求其牡。雍雍鸣雁,旭日始旦。士如归妻,迨冰未泮。招招舟子,人涉卬否。人涉卬否,卬须我友。

 

 

 

「まあ時間はあるんだし三色団子でも食べなよ。ほれ」

 

最後の一本を皿ごと渡す。そこまで単純な女ではないだろうが、滋味で甘いモノでも喫すれば沈んだ気力も多少は向上するだろう。

たかが一つ、されど一つ、口に運ぶと、佳味だったのか瞠目しながら甘味へ夢中になっている神子をしり目に、太陽へ視線を向ける。猶々焜を放っていた。日差しが眩しい。消えては現れ消えては現れの頻々するだけ。だが××神話のように終わったコトもなければ、アレが変わったコトはない。

子曰,予欲無言。子貢曰,子如不言,則小子何述焉? 子曰,天何言哉? 四時行焉,百物生焉,天何言哉?

 

「ん?」

 

寸陰、太陽が濁って観えた。太陽を司る神はアマテラスだけではないが、アイツに何かあった吉凶、ではないな。そんなコトがあれば、天神地祇や月の民、あるいは天狗が飛んで来てオレに知らせるよ。だから些事だ些事。豊姫と通暁セックスした疲れからか、意識とピントがずれて誤認したのだろう。全く疲れていないし、もっとセックスしたくてたまらないが、あの太陽をそう観えた原因に身に覚えがあるとすれば、オレが疲れているからとしか考えられない。聖人不凝滯於物,而能與世推移。

世俗之議曰:賢人可遇,不遇,亦自其咎也:生不希世准主,觀鑒治內,調能定說,審詞際會。能進有補贍主,何不遇之有? 今則不然,作無益之能,納無補之說,以夏進鑪,以冬奏扇,為所不欲得之事,獻所不欲聞之語,其不遇禍,幸矣,何福祐之有乎?

 

 

 

 

「お待たせしました」

「おー待ってたぞ。早う早う」

「どうぞ」

「ありがとう。咲夜も食うか」

「......はしたないですが一本いただきます」

 

ちょうど作り終えた咲夜が戻って来ると、大きめな皿の上には両手の指では足りないほど乗せられていた。品はないけど、数を多めにするのを優先してもらっているからこのような見た目になっている。繁文縟礼とか、そういうのを求められる場所でもないし、なによりオレが食えたらそれでいいのだ。花も大事だが、団子も大事だ。タレがふんだんに塗られているピラミッド型になっている串団子を一つ取りながら、目線を隣にいる為政者へと移行する。

神子は中々、皿を受け取ろうとしなかったので押し付けるような形になったが、さっきまで黯澹して牙を抜かれていた彼女はどこへ行ったのか、食べ終わった後の彼女は、まるで別の人格が乗っ取ったように見違え、どんよりと覆っていた空気も弛緩し、極端なくらいに煌めかすと、愁眉を開く。すると整然とした態度を涵養させ、醸し出しながら舒懐した。忙しい女だ。

 

「これは甘し。つい蓮葉にもうぼるほどとは」

「御粗末様」

「とんでもない。流石は諏訪さまの侍従、私は醜態を晒してお恥ずかしい限りです」

 

咲夜が祗候しているのはオレじゃなくて輝夜だが、わざわざ斧鉞はせず、手振りでタレの団子を好きに食えと意思表示をすると、まるで拍子木を打つ音が聞こえるように斟酌した神子は、甘味へ手を伸ばす前に、打って変わって竦動した。

この女が諏訪國の宰相とはなあ。宰相はいても翼賛するための中国でいう皇帝・天子は、いないが。オレの実娘である方の天子もいないし、輔弼もあってないようなモノだ。どこかで気随気儘にしているあの娘は、白蓮や早苗と役割は似ているが、厳密に言えば違う。だがもし天子があのまま諏訪國にいたなら、この諏訪國という國は古代中国の、中国神話の時代へ回帰していただろう。ソレも面白そうだ。天子がいると受命できるんだよ。オレ上帝(天帝)だし。まあ天子は女だから、儒教的に言えば、支障が生じるけどな。

 

子曰:回也其庶乎,屢空。賜不受命,而貨殖焉,億則屢中。

尚书(尚書)・牧誓

『王曰:「古人有言曰:"牝雞無晨;牝雞之晨,惟家之索。"今商王受惟婦言是用,昏棄厥肆祀弗答,昏棄厥遺王父母弟不迪,乃惟四方之多罪逋逃,是崇是長,是信是使,是以為大夫卿士。俾暴虐于百姓,以奸宄于商邑。』

禮記(礼记)・王制

『天子將出征,類乎上帝,宜乎社,造乎禰,禡於所征之地。受命於祖,受成於學。出征,執有罪;反,釋奠于學,以訊馘告。』

禮記(礼记)・月令

『是月也,日窮於次,月窮於紀,星回於天。數將幾終,歲且更始。專而農民,毋有所使。天子乃與公、卿、大夫,共飭國典,論時令,以待來歲之宜。乃命太史次諸侯之列,賦之犧牲,以共皇天、上帝、社稷之饗。乃命同姓之邦,共寢廟之芻豢。命宰歷卿大夫至于庶民土田之數,而賦犧牲,以共山林名川之祀。凡在天下九州之民者,無不咸獻其力,以共皇天、上帝、社稷、寢廟、山林、名川之祀。』

 

 

 

 

 

 

「先の話も須要。而して憚り乍らややましきことがあり」

「まだあるのか」

 

記憶がない彼女からすれば、メイド服を着ている咲夜は、面妖な格好をしているとしか観えないのもあるのだろうが、ただ傍にいるだけの従者になぜか気圧されつつも、それほどゆゆし内容を出す行動に躊躇っており、歯切れが悪い。だが落ち着くために軽く息吹をすると、儚い風がそより、喉を一度鳴らした神子は、その眼の奥にある嘱望を隠さずに口にした。

诗云,之子于征,劬劳于野。爰及矜人,哀此鳏寡。之子于垣,百堵皆作。虽则劬劳,其究安宅。维此哲人,谓我劬劳。维彼愚人,谓我宣骄。

 

「私のようなモノが老いるコトはありません。しかし、不死ではない」

 

団子を食いながら神子の話に耳を傾けていたが、なんと不死のコトだった。なんだ、そんなコトなら大したコトではない。いやー、神妙な感じだったから、オレはてっきり……。記憶やこの世界についてとか、どうしてあまたの女性を娶っているのか、みたいに、聞かれるとオレが困る内容でなかったよ。

でも神裔とか神子のようなモノには寿命がないんだ。不老不死を求めた秦のアレは、ソレでも是としそうだが、彼女からすればそうではないらしい。紀元前はまだしも、平成時代においては病も減った。いいコトか悪いコトなのかは知らんが、お金さえあれば長生きできるようになった。だが今のところ、寿命だけは、老いだけはどうしようもない。時間には、年には抗えないのだ。

そう。ギリシア神話のように、信仰が無くなった神話・神々もいる。しかし、今まで繰り返してきたが、中興しようとしたモノはいなかった。嗷嗷したところでなんになるというのか。さまあし。信仰が無くなろうが、オレ達はヘーゲルが言うような、媒介で存在しているワケではないのだ。

 

荀子

『兼服天下之心:高上尊貴,不以驕人;聰明聖知,不以窮人;齊給速通,不爭先人;剛毅勇敢,不以傷人;不知則問,不能則學,雖能必讓,然後為德。遇君則脩臣下之義,遇鄉則脩長幼之義,遇長則脩子弟之義,遇友則脩禮節辭讓之義,遇賤而少者,則脩告導寬容之義。無不愛也,無不敬也,無與人爭也,恢然如天地之苞萬物。如是,則賢者貴之,不肖者親之;如是,而不服者,則可謂訞怪狡猾之人矣,雖則子弟之中,刑及之而宜。《詩》云:「匪上帝不時,殷不用舊;雖無老成人,尚有典刑;曾是莫聽,大命以傾。」此之謂也。』

春秋繁露・郊祀

『周宣王時,天下旱,歲惡甚,王憂之。其《詩》曰:「倬彼雲漢,昭回於天。王曰鳴呼!何辜今之人?天降喪亂,饑饉薦臻。靡神不舉,靡愛斯牲,圭璧既卒,寧莫我聽。旱既太甚,蘊隆蟲蟲。不殄祀,自郊徂宮。上下奠瘞,靡神不宗。後稷不克,上帝不臨。耗射下土,寧丁我躬。」宣王自以為不能乎後稷,不中乎上帝,故有此災。有此災,愈恐懼而謹事天。』

 

 

 

 

 

 

「私達の天命は天神地祇が典掌し、天帝が桎梏させている......天魔はそう言います」

「そう、だな。否定はしないよ。あの天皇も例外ではない」

「附言しておくならば、我々のようなモノは、上帝に秉彝されているとも聞知しました」

「……アイツの頭には緘黙や守秘義務という言葉がないのか」

 

緘口令を敷かなかったオレもオレだが、いくらなんでも漏洩し過ぎだった。思い出したならともかく、そうでないモノに喋り過ぎではないだろうか。もしかしてこの行動は、記憶を戻すために天魔なりの布石、とは思えないなあ。

今の神子がどういう思想なのかは、どの宗教を基軸とし、信仰しているのかを知らない。昔は道教を信仰していた記憶もあるが、今は仏教徒なのか、儒教徒なのか、法家なのか、道教なのか、全て信仰しているのか、都合のいいように使っているのかは判らないが、そんな彼女の口から出た言葉が天命ときた。

天命か……ソレを換言するなら運命と言うべき言葉だ。その天命としての意味で言うならば、運命だけではなく他の意味もあるが、一先ずは運命としておく。そして天命という概念は、儒教において無視できないモノだ。それで、オレは今まで儒教の思想を語ってきた。ソレを全て守れているかどうかは置いといて、儒教徒と言っても過言ではない。なのだが、儒教徒だけではなく、実は墨家でもあるんだ。てかそうじゃなかったら、神やら妖怪やら神裔やらを娶ったが、その全てを正妻扱いなんてしていなかった。ソレは儒教的に言うなら様々な問題があるのだ。ソレを知っているモノから言囂しに言われるのは想像に難くない。

儒家・孟子は『天下有道,小德役大德,小賢役大賢;天下無道,小役大,弱役強。斯二者天也。順天者存,逆天者亡。』と言い、道家・老子は『天地不仁,以萬物為芻狗。天道無親,常與善人。』と言ったよ。詩經によれば『命之不易,无遏尔躬。宣昭义问,有虞殷自天。上天之载,无声无臭。仪刑文王,萬邦作孚。』とある。だがオレの場合、天・天道・天命・運命とか、そういうのは儒教思想寄りではあるが、道教思想や墨家思想も混ざっていると言うべきだろうか。ただ天・上帝(天帝)という思想は、儒教と墨家をミックスした感じ。大雑把に言えば、オレの天と上帝(天帝)というモノに対しての思想は、孔子と孟子と墨子を搗き交ぜたモノに近い。

ただし孟子は『使之主祭而百神享之,是天受之;使之主事而事治,百姓安之,是民受之也。天與之,人與之,故曰:天子不能以天下與人。舜相堯二十有八載,非人之所能為也,天也。』と述べ、天の意思は民の意思と示唆する思想であった。孟子は尚書・泰誓中の『同心同德。雖有周親,不如仁人。天視自我民視,天聽自我民聽。百姓有過,在予一人,今朕必往。我武維揚,侵于之疆,取彼凶殘。我伐用張,于湯有光。勖哉夫子!罔或無畏,寧執非敵。百姓懍懍,若崩厥角。嗚呼!乃一德一心,立定厥功,惟克永世。』から引用したが、この孟子の思想に関しては反映されてはいない。少なくともこのオレには。

 

孝經・聖治

『曾子曰:「敢問聖人之德,無以加於孝乎?」子曰:「天地之性,人為貴。人之行,莫大於孝。孝莫大於嚴父。嚴父莫大於配天,則周公其人也。昔者,周公郊祀後稷以配天,宗祀文王於明堂,以配上帝。是以四海之內,各以其職來祭。夫聖人之德,又何以加於孝乎?故親生之膝下,以養父母日嚴。聖人因嚴以教敬,因親以教愛。聖人之教,不肅而成,其政不嚴而治,其所因者本也。父子之道,天性也,君臣之義也。父母生之,續莫大焉。君親臨之,厚莫重焉。故不愛其親而愛他人者,謂之悖德;不敬其親而敬他人者,謂之悖禮。以順則逆,民無則焉。不在於善,而皆在於凶德,雖得之,君子不貴也。君子則不然,言思可道,行思可樂,德義可尊,作事可法,容止可觀,進退可度,以臨其民。是以其民畏而愛之,則而象之。故能成其德教,而行其政令。《詩》云:"淑人君子,其儀不忒。"」』

墨子・天志上

『天子為政於三公、諸侯、士、庶人,天下之士君子固明知,天之為政於天子,天下百姓未得之明知也。故昔三代聖王禹湯文武,欲以天之為政於天子,明說天下之百姓,故莫不犓牛羊,豢犬彘,潔為粢盛酒醴,以祭祀上帝鬼神,而求祈福於天。我未嘗聞天下之所求祈福於天子者也,我所以知天之為政於天子者也。天之為政於天子,天下百姓未得之明知也。故天子者,天下之窮貴也,天下之窮富也,故於富且貴者,當天意而不可不順,順天意者,兼相愛,交相利,必得賞。反天意者,別相惡,交相賊,必得罰。然則是誰順天意而得賞者?誰反天意而得罰者?』

 

 

 

 

 

 

「史記によれば、『天高聽卑』と。そして諏訪さまは、仙女を娶られました」

「ほほう」

 

诗云、世之不显,厥犹翼翼,思皇多士,生此王國。王國克生,维周之桢,济济多士,文王以宁。

オレは上帝(天帝)だ、と彼女に告げたコトや示唆したコトはない。更に言えば、ソレを知っているモノは多くない。だが、長口舌な神子の誰何しない言い回しは、オレが上帝(天帝)であると知っているような、促しながらも確証を得ている物言いだった。まだ彼女は思い出していないから、コレも天魔が原因だろう。こんな秘中の秘、それ以外では、納得できない。

つまるところ神子の言いぶりから洞察するに、嫦娥との誘い水をしろというコトらしい。詩經には『维此文王,小心翼翼。昭事上帝,聿怀多福。厥德不回,以受方國。天监在下,有命既集。文王初载,天作之合。』とある。彼女は文王ではないが、神子も娶ってはいる。屠自古と布都もそうだ。ただこの三人と極力会わなかったのは、一部を除いて諏訪國の政治を殆ど押し付けているから、ちょっと、いやかなり微妙な立場であり、基本的には関わらないようにしていたのもある。もちろん、彼女らを鼎之輕重未可問也するワケではないが、老子の思想的に言うなら、諏訪國の王であるオレが下手に目立つのはかなりマズい。政において、オレは役立たずのままでいないといけないんだ。

子畏於匡。曰,文王既沒,文不在茲乎,天之將喪斯文也,後死者不得與於斯文也;天之未喪斯文也,匡人其如予何。

 

「娘々ー」

「はーい」

 

呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。ちょうど飛行していたらしく、名を呼ばれてふわり、と一枚の花びらが落ちるように仙女は降臨した。すると、淅淅とはせず、まるで全てを包み込む母のように、優しく、心地よい、それでいてどこか懐かしい、頬を撫でるようなそよ風が起き、思わず欠伸が出る。なんか……全てを委ねたくなるような気持ちになった。これはいかんと思考をクリアにし、いつもなら窈窕淑女ではないと即答できるのに、そう錯覚しそうになった意識を元凶へ向けると、オレの視界を躰で埋め尽くした仙女は、なぜか上機嫌。彼女は抱え込むように持っていたが、液体が入ったモノやら、黄金に輝くモノが目に飛び込む。うお、まぶし。目だ、耳だ、鼻。右手で遮りながら、慣れるまで薄目にしながらまた観る。なんか最近、青娥と会う機会が多く、彼女は便利屋になり始めている気がする今日この頃。

儀封人請見。曰,君子之至於斯也,吾未嘗不得見也。從者見之。出曰,二三子,何患於喪乎? 天下之無道也久矣,天將以夫子為木鐸。大宰問於子貢曰,夫子聖者與? 何其多能也? 子貢曰,固天縱之將聖,又多能也。

 

「話は聞かせてもらいました。そしてコレは仙人になるタメのモノです」

「早いな」

「どれにすべきか悩みましたが、今回は『抱朴子』にしました」

「……神話が起きたのは理解しているが、本当にソレを飲めば空を飛べるのか」

「ええ。葛洪の理論上では寒丹を飲めば飛翔できますが、今すぐ仙人になりたいなら伏丹をオススメしますわ」

 

今日の献立を伝えるような気軽さで、何事もなかったように振る舞う青娥は神子へと話を振った。しかし、いくら神子が天魔の娘とはいえ、いきなり仙女が現れただけでも目が点になるというのに、不死についての話をしていたら矢庭にも仙人へなればいいと言われ、とんとん拍子に事態がまとまるさまが急展開すぎて腑抜けた面相をしている神子をよそに、青娥が持っていた神丹を右手で掴む。

イエス・キリストと聖徳太子――厩戸皇子は、共通点が多い、というのは有名だが、新約聖書ではイエス・キリストが湖の上を歩いた、という話がある。それで思い出したんだが、確か晋王朝にいた道教研究家・葛洪の『抱朴子』によれば、この神丹を足の裏に塗ると、水上を歩行できるんだっけか。理論上、の話だが。

抱朴子

『第一之丹名曰丹華。當先作玄黃,用雄黃水、礬石水、戎鹽、鹵鹽、礜石、牡蠣、赤石脂、滑石、胡粉各數十斤,以為六一泥,火之三十六日成,服七之日仙。又以玄膏丸此丹,置猛火上,須臾成黃金。又以二百四十銖合水銀百斤火之,亦成黃金。金成者藥成也。金不成,更封藥而火之,日數如前,無不成也。』

『第二之丹名曰神丹,亦曰神符。服之百日仙也。行度水火,以此丹塗足下,步行水上。服之三刀圭,三屍九蟲皆即消壞,百病皆愈也。』

『第八之丹名伏丹。服之即日仙也。以此丹如棗核許持之,百鬼避之。以丹書門戶上,萬邪衆精不敢前,又辟盜賊虎狼也。』

『第九之丹名寒丹。服一刀圭,百日仙也。仙童仙女來侍,飛行輕舉,不用羽翼。』

 

 

 

 

「神子ちゃんはどれがいいよ。飲めば不死にはなれるぞ」

「不死にはなりますが、一様ではありません。玉石混淆ですよ」

 

丹の数は多く、色々あるが眩しすぎる。というのも、青娥が持つ丹は黄金色ばかりで、太陽の光のせいか反射が激しく、自分を観ろという自己主張が大きすぎるのだ。そのおかげか、後光が射すかのような青娥は、普段よりも神々しく、麗唱仍添錦上花になり、中身はアレだが久しぶりに神聖な存在に観えて、道教の女神へと成った気もするが……ないな。彼女に聞いてみたら、それぞれ異なるらしく、飲むモノによって不死や仙人になるまでの期間や効果の違いはあるらしい。

不死か……幽々子もそうだが、白蓮や命蓮、早苗も老いはしないし、寿命はない。だが不死ではない。オレがそうだったように、死ぬ時はあっけなく死ぬ。かと言って、諸般の事情もあって仙人にするワケにはいかない。特に白蓮、命蓮、早苗はダメだ。いや、あの子たち以外は別にいいんだ。だから神子が仙人になっても特に不都合はない。あ、ついでに布都と屠自古とかにも飲ませようかな。材料を聞く限り飲むと寿命はゴリゴリ減りそうだが、彼女たちも寿命なんてあってないようなモノだから、大丈夫だろう。地球が生んだニンゲンは、寿命があるし不死でもないので、飲めば短命になるのは間違いない。

 

「娘々のコトだから物部氏と蘇我氏の分も……あるんだろうなそりゃ」

「抜かりはありません」

 

数が多いから抱え持っていた丹を片手で持ち、懐から普通に取り出せばいいモノを、わざわざもう一方を胸元に突っ込んで出した。

 

「コレは『黄帝九鼎神丹经诀』の神丹です。神子さん、こちらへ」

「......え、はいッ!」

 

思考回路に異常があったようだが、名を呼ばれて意識を警醒された神子へ神丹を持たせるため、青娥は傍に招く。

しかし仙女はこれみよがしに取り出したのはいいが、観た瞬間、目を閉じた。紫色とか火色とか、五色とかもあるが、これも黄金色ばかりじゃないか! この神丹、黄金というか黄色や黄土色のも寥寥だが、やはり黄金というのは、今も昔も人の心をつかんで離さない神秘の色というか、魔性の色なんだな。しみじみと感じずにはいられない。

抱朴子の丹を抱えているのもあって、地味に重いと感じてきた青娥は冷や汗を流しているが、袋に包んだり地面に置いたりはせず、物理的な意味で不幸を分かち合うため、自分の胸は異空間へ繋がっているのだと言わんばかりに、次々とオレ達に渡してくる。神丹と言えば聞こえはいいが、『抱朴子』もそうで、『黄帝九鼎神丹经诀』でも水銀も加えるんだったな。それ以外にもヤバいモノはあるが、こんなの飲むから秦王朝のアレも早死にするのだ。

神丹をとどまることなく渡されていたが、次第に勢いは落ち、もはや弾切れとなった。このまま持ったままでいるのは辛いので、緋毛繊に向かいその上に神丹を雑に扱いながらも置く。ついでに青娥と神子が抱えていた神丹も運ぶ。なんでオレ……こんなコトしてんだろ。仕事を終えたオレは緋毛繊にまた座り、元凶と天魔の娘を眺める。

 

「本当に渡してもいいのかしら」

「オレがいいと言ったらいいんだ」

「嗚呼、惨憺な八意様。棄絕蓬室居,塌然摧肺肝」

「……なんか歎声して艱苦っぽく言っているが、お前の声上擦っているぞ」

「僻耳でしょ」

 

神子は青娥から仙人や道教の教えを触れる程度に受けていると、元は人間だった身として思うところがある咲夜は、天魔の娘へ神丹を授けてよいものか疑問を抱いたようで、ずっと黙っていたのに、珍しく言葉を崩して彼女たちに聞こえないよう小声で言った。とはいえ、神子の場合はただの人間ではないけど。今でこそ××神話の一柱であり、月の民ではあるが、まだ××神話があった頃、このメイドはただの人間だったのだ。神子と咲夜とではソコが違う。ソレが気になって、続けて問う。

 

「人間だった頃を思い出すコトってあるのか」

「特に想起しないわね」

「ならいいんだが。ただ吸血鬼の元へ戻ってもいいんだぞ、引き止めはしない」

「いいのよ。あの時間は、あの私は、もういないのだから」

 

とうの昔に気持ちの整理がついているのか、過去を懐かしむコトはなく、感情を微塵も込めずに、鉄仮面のまま淡々と述べた。レミリアとフランは憶えていないだろうから、またメイドとして仕えてもあの時間へ帰るコトは出来ないが、またやり直すくらいなら出来る。やり直したところで、また世界が回帰してリセットされるので、徒労だろうけど。あの吸血鬼姉妹は紅魔館ごと地獄へ移住しており、会おうと思えばすぐに会える。咲夜も月の民だし。

神子へ一通りの説明を終えたのか、青娥は話を戻す。

 

「私は面白ければなんでもいいので、爺々には従いますが」

「面白くなくても従え」

 

青娥の思想はとんでもない発言だったので、咲夜との会話を中断してツッコミしてしまった。このような考えはオレが最も嫌悪すべきモノ。それに彼女を娶る時に逆らうなと釘を刺した記憶はある。しかしこの状況や今までを追懐してみても、あんまり意味はなかった時の方が多い気がする。このオレが言うのもなんだが、図太い女である。ある意味、娶ったモノの中で一番の大物かもしれん。伊達に神話時代から長く生きてはいない。

南伯子葵問乎女偊曰:子之年長矣,而色若孺子,何也? 曰:吾聞道矣。

 

「あの尼、残滓である一輪は、また妖怪に佛教を広めているようです」

 

その瑣事は旬報させている天狗達から奏聞されていた。天魔に神使として貰った文、はたて、椛は日本全て、百般の情報を探らせて彙報し逐一報告させている。だがその中でも廉としていたのは、往時の白蓮を慕っていたモノのコトについて軸足を置いていた。瀬踏みはしておきたかったのだ。

はたてと椛は子供を産んだが、復帰している。たまに会いに行っているらしく、約束通り産んだ子は天魔と天狗族総員へ嘱託し、育てていたが、もう結構大きくなったと耳朶に触れた。でも会う気はない。

 

「白蓮と命蓮はもういないというのに。遜色だが、やはり回帰してもそこは変わらないのだな」

「一抹として鬼胎すべき、汨羅の鬼は地獄にいますか」

「……村紗水蜜のコトか。アレは血の池地獄に住み着いているそうだ」

「なら無毒ですね。彼女と会うコトはないでしょう」

 

釈迦の教えを弄りまわした仏教は数あれど、妖怪に布教したり、救ったり、人間と同じ扱いをしろ、なんて釈迦が説いた仏典はない。だからオレは、尼としての一輪はキライだが、ソレを除けば彼女の容姿は好みだからスキだ。しかし妖怪に仏教を広めていても、かつての白蓮のように同じコトをしているのかは不明だがな。同じだったら殺さなきゃいけない。まだ××神話があった世界で、白蓮の信仰も、信条も、思想も、その全てを焚書坑儒した時のように。下らん、随喜など冗談ではない。オレは弘天であり、仏教徒であって仏教徒ではないのだ。衒気すべきではない。だが、アレが法筵するならば拉げるべきだ。

このように、一輪を排斥するためにダムナティオ・メモリアエしろと思う時もあれば、そんなコトはどうでもいいから早く娶ってセックスしよう、という性欲しかない思想で埋め尽くされる時もある。とにもかくにも、この件に関しては空海とΖΕΥΣ(ゼウス)の主張が大きいのだ。もはや宿痾と言ってもいい。オレがまだ弘天である以上、コレを我関せずにいるコトはムリだろうな。どちらを簡択するにしても、一輪と会わねばならんのだが、ソレが出来ないからずっと逡巡になり、傍観して忽せにするしかないのだ。

論語

『子曰:周監於二代,郁郁乎文哉,吾從周。』

『顏淵問為邦。子曰:行夏之時,乘殷之輅,服周之冕,樂則韶舞。放鄭聲,遠佞人。鄭聲淫,佞人殆。』

『大師摯適齊,亞飯干適楚,三飯繚適蔡,四飯缺適秦。鼓方叔入於河,播鼗武入於漢,少師陽、擊磬襄,入於海。』

 

 

 

 

「板挟みですね」

「教えを捻じ曲げているモノがいたら、あの空海は、なんと言うのか知りたいモノだ」

 

紀元前から、昔から言われているコトを平成時代のクソ共が言ったところで、その言葉には重みがない。そして平成時代の創作物にオリジナルなんてモノはない、パクリしかないのだ。オリジナルと思っているなら、ソレは無知と自惚れでしかない。しつこかろうが、コレだけは、何度でも屡報し吐露する。明治時代から昭和時代の創作物もそうだが、江戸時代の創作物だってパクリしかない。特に江戸時代の創作物でオリジナルがあると自惚れているなら、オレは抱腹絶倒するだろう。平成時代の日本は政教分離している、などとバカげたコトを言い出すくらい笑える。政教分離なんぞ出来ていないというのに。

先に述べたように、平成時代でオリジナルというモノは存在していないのだが、オレが嫌悪すべきモノの一つとして、コレに関しては憎悪していると言っても過言ではないほどのモノがいる。

それは、道徳を語り、謳うヤツだ。ただ道徳を謳うヤツに嫌悪しているのではない。聖書に従う、宗教家のようなモノが謳うのは、まだいい。アレは神や預言者、キリストや使徒の言葉に従っているだけだ。ソコから教訓を得るモノもあるだろうが、ソレを全て自分が考えた、と言うモノはいない。

そうではなく、自分は無宗教だと言ったり、自分は無宗教だと思い込んでいるヤツが、紀元前から言われているその思想・価値観(宗教観)道徳(倫理)を、さも自分が考えたようにほざき、ソレは宗教ではないと主張するヤツを、オレは嫌悪している。

こういうヤツは、盗人だ、賊でしかないッ! 自分にとって都合がいいところだけを抜粋・引用しているだけだッ! 礼節と倫理(道徳)、マナーやルールのような形式は、社会や人間関係を円滑にするためにあるとぬかすヤツもいるだろうが、論点はソコではない! そしてなにより、道徳と倫理は、形式のためにあるワケではないのだ。

創作物を、お人形遊びをしている日本人というクソ民族はな、この偸共と同じコトをしているのだよ。だからオレは非難するのだ。よく使われているだろ、神様というオモチャも借り物でしかないのに、ダレカの都合よくな。ソレと同じなんだよ。ソレを違うとは言わせない。魔法や思想だって、ルールや倫理だってそうさ。

 

菅家文草・山家晚秋

『千萬人家一世間 適逢得意不言還 幾臨瑟瑟寒聲水 又對蕭蕭暮景山 山下卜鄰當路霞 野中信馬破程花 將軍莫道遊心主 博士來為養性家 養性有餘空偃蹇 我情多恨相知晚 雲泥不計地高卑 風月只期天久遠 數局圍碁招坐穩 三分淺酌飲忘憂 若教天下知爻意 真實逍遙獨此秋』

抱朴子

『金液太乙所服而仙者也,不減九丹矣,合之用古秤黃金一斤,並用玄明龍膏、太乙旬首中石、冰石、紫游女、玄水液、金化石、丹砂,封之成水,其經雲,金液入口,則其身皆金色。老子受之於元君。』

 

「抱朴子ではあの老子も元君から伝授された、とはあるが認めたくない。釈迦のように変わってしまうのは受け入れがたいモノだ。格爾眾庶,悉聽朕言。非台小子敢行稱亂;有夏多罪,天命殛之」

 

世の理に、習わしに対する嘆きや鬱勃を蚊帳の外へ追いやる。ソレを言ったところで徒事でしかない。ソレをどうにかするなんて嶮嶺だ。いや、登る登れない以前の事柄になる。

滅多に見られない多くの珍品を前に、青娥へそれぞれの効果を聞きつつ銓衡し、どれを採択すべきか丹と睨めあっていた神子は、その結論が出なかった。このままでは、日が暮れるまで尽未来際に決められないので、布都と屠自古と一緒に選ぶことに決め、話の区切りを見計らっていた彼女は、機を見るに敏と嫦娥へ謦咳に接する。

 

「嫦娥さま。拝顔の栄に浴するだけでなく、このようなモノを賜りながら恐縮ですが......」

「その名は好きではないのよ。私のコトは青娥と、そう呼んでください」

「では青娥さま。布都に屠自古という、私の同志を交えながら諮詢してもらいたく、差し支えなければ御足労願いたい」

「そうですねぇ」

 

考えるそぶりを見せながらオレを一瞥した玉響、翳りと愁思を帯びた、蕭索で露命を繋ぐ、余命わずかの華奢な女の顔のような美を滲み出し魅せると、関心を神子へ戻した時にはいつもの青娥へと一転させ、そのまま快諾した。アイツ、オレと離れる時はいつも離愁したような表情を魅せるが、どちらも本当の青娥、嫦娥なのだろうか。

莊子・徐無鬼

『子不聞夫越之流人乎?去國數日,見其所知而喜;去國旬月,見其所嘗見於國中者喜;及期年也,見似人者而喜矣。不亦去人滋久,思人滋深乎!夫逃虛空者,藜、藋柱乎鼪、鼬之逕,踉位其空,聞人足音跫然而喜矣,而況乎兄弟親戚之謦欬其側者乎!久矣夫!莫以真人之言謦欬吾君之側乎!』

 

「いいですよ。ご一緒しましょう」

「幸甚の至り。感謝に堪えません」

「いえいえ。仙人が増えるのは私としても嬉しいですから。累増するため、募り続けた甲斐もあります」

 

諏訪國にいる仙女は、華扇と青娥だけだったが、神子が仙人になるのは確定だろう。彼女の同士である神裔の屠自古と布都も神丹を飲んだら、神裔から累進して一気に5人も著増するのか。もし、早苗のようにオレの血があるモノが仙人になるのはオレが困る。だから道教が白蓮たちや民へ布教され信者が逓増し、その思想へ膾炙すると暗礁になりそうだったので、機が熟すまでは苟且に道教勢力を――勢力と言っても嫦娥だけだが――蕃息させないため是認せず抑止してきた。以前の早苗の件みたいに、アイツは淳良に従っていたワケではないが、顰蹙を出さずにそれを基本は励行し、隘路だったからこそ、仙人が増えるのは、本当に、掌中の珠を得たように、あの女狐が胸襟を開いて心の底から怡怡としているように観えた。視力は悪くないハズなのに、心なしか涙の粒が頬へ流れていると錯覚するほどに。これじゃオレが悪者ではないか。オレはネロじゃないっての。懸念があるとすれば、放逸な青娥の思い通りにつうつうするのはアレだが、玩弄されないかどうか。あの女狐の稟性と本性が沼沢だといいんだが。弄火は泥濘程度にしてほしい。

いやちょっと待たれよ。神と仙人は同じ存在ではないが、それでも神に近しい存在にはなる。前々から言っているコトだが、嫦娥――青娥を娶ったのは劫﨟を経たコトがない。娶ろうと思わなかった、思えなかった。だが、今回娶ってしまった。だから覆轍しようにもその経験がない。この殃慶に似た明暗な場面も、よくない萌芽、宋襄の仁となってしまうのではないのか。いくらオレでも、このままでは道教が倍旧するのは手に取るように分かる。

まあいいや。猖獗になったら、オレが青娥を殺せばいいだけだ。

 

「今回は私なぞのために聞こし召して、ありがとうございます」

「気にしなくていい。オレはセックスさえしてくれたらソレでいいから」

「......寡聞にして存じません。そのせっくすとは、神、あるいは異国の言葉ですか?」

「あー、つまり抱かせろと言うコトだ」

「抱かせろ......」

 

状況や言葉、加えてオレの性格・思想から推理し、判断を終えた神子は一度頷いた。呑み込みが早い。

 

「なるほど。せっくすというのはまぐわいの意なのか。勉強になりました」

 

……なんだいこの反応は。オレはセックスをするためだけに、神子を娶ったようなモノだ。天狗の文と椛が連れてきたとはいえ、屠自古や物部の氏神共に諏訪國へ寄越された布都だってそうだ。民とか政治云々は二の次でしかない。所を得たのは王侯將相寧有種乎とは言い難い。だけどこんな反応をされたら、オレが性欲しか頭にないモノみたいじゃないか。そんなコトがあってたまるか! オレほど教養を感じさせるモノはいない。

楚狂接輿歌而過孔子曰,鳳兮! 鳳兮! 何德之衰? 往者不可諫,來者猶可追。已而,已而! 今之從政者殆而! 孔子下,欲與之言。趨而辟之,不得與之言。

 

 

「昨宵は綿月の女と合歓したのでしょう? 私も欣欣としていつでも奉迎しますよ」

「……逢瀬すべきか。華扇も仙人に成ったしな。添ってから以取残杯冷炙之辱にして悪かった」

「頓着していません。フリとはいえ墨守に峻拒されても私は信じていました。天は、爺々はいつか天聴してくださると」

 

あの場にはいなかったのになぜソレを知っているのかは問わず、嫦娥がコチラに擦り寄ろうとしたから右手を向けて止めながらも、噺が脱線しそうだったので軌道修正するため神子へ向けて言う。

 

「また言え。お前は天魔の娘だ、たまになら聞いてやらんでもない」

「この恩に報ずるため、なほ為政家としての務めを果たします」

「気張らない程度にやってくれ。病で臥せてしまったらパルスィに叱られる」

 

団子を名残惜しそうに眺めていたが、一礼すると、神子は嫦娥を連れて布都達の元へと向かう。緋毛繊の上にあった大量の丹と神丹は青娥が持って行った。神丹を胸に仕舞っていたが、いったいあの胸はどこへ繋がっているのだろうか。

昔は、仏教を信仰していた白蓮と宗教争いをしていたが、変わったな。一部を除いて、何もかも変わった。この世界は、万物は変転している。魂は、新たなオレに成り、多生曠劫する。この世界が終わったら、また回帰する。だが、不思議と撓むコトや辟易したコトがない。気が遠くなるくらい繰り返してきたし、記憶もわずかながら戻っている。それなのに、なんと言うべきだろう。生まれ変わっているというのも違うような……ダメだ。上手く例えようとしたが、コレは名状しがたい。慣れないコトをするから頭が痛くなってきた。ウィットが乏しく呉下阿蒙であるオレの語彙力だと、コレを説明するコトはムリだ。

孔子家語・五帝德

『宰我曰:「請問帝顓頊。」孔子曰:「五帝用說,三王有度。汝欲一日徧聞遠古之說,躁哉予也!」宰我曰:「昔予也聞諸夫子曰:"小子毋或宿。"故敢問。」孔子曰:「顓頊,黃帝之孫,昌意之子,曰高陽。淵而有謀,䟽通以知遠,養財以任地,履時以象天,依鬼神而制義,治氣性以教眾,潔誠以祭祀,巡四海以寧民。北至幽陵,南暨交趾,西扺流沙,東極蟠木,動靜之類,小大之物,日月所照,莫不底屬。」』

 

 

 

「こころも応対すればよかったじゃないか」

「んー......ソレをしたら攪拌になってたかも......」

 

人間形態に成り、姥の能面を付けているこころは、団子の山を崩そうと手を伸ばしながらも、怏怏とした声を漏らす。いつ神子の前で人間形態になるのかと冷や冷やしたが、回帰していない神子と会って話をしても、僻事のような蟠りがあったのかな。誂えたような邂逅だったが、記憶があろうとなかろうと、アレは神子だ。変わったけど、神子という存在が終わったワケではない。曾子曰:慎終追遠,民德歸厚矣。

昔者先王,未有宮室,冬則居營窟,夏則居橧巢。未有火化,食草木之實、鳥獸之肉,飲其血,茹其毛。未有麻絲,衣其羽皮。後聖有作,然後修火之利,范金合土,以為臺榭、宮室、牖戶,以炮以燔,以亨以炙,以為醴酪;治其麻絲,以為布帛,以養生送死,以事鬼神上帝,皆從其朔。

 

 

「上同鑿枘於伏戲兮,下合矩矱於虞唐。願尊節而式高兮,志猶卑夫禹、湯」

 

墨子・法儀

『昔之聖王禹、湯、文、武,兼愛天下之百姓,率以尊天事鬼,其利人多,故天福之,使立為天子,天下諸侯皆賓事之。暴王桀、紂、幽、厲,兼惡天下之百姓,率以詬天侮鬼。其賊人多,故天禍之,使遂失其國家,身死為僇於天下。後世子孫毀之,至今不息。故為不善以得禍者,桀、紂、幽、厲是也。愛人利人以得福者,禹、湯、文、武是也。愛人利人以得福者有矣,惡人賊人以得禍者亦有矣!』

韓非子

『今儒、墨皆稱先王兼愛天下,則視民如父母。何以明其然也?曰:"司寇行刑,君為之不舉樂;聞死刑之報,君為流涕。"此所舉先王也。』

 

「仲尼のような儒教と、墨翟のような墨家は、終わった時代への理想を求めた。だがオレは違う」

 

季康子問:使民敬、忠以勸,如之何? 子曰:臨之以莊則敬,孝慈則忠,舉善而教不能,則勸。

孔子と墨子の理想が叶うコトはなかったが、古代中国の唐虞と三代、あの時代を理想とし、聖人の模範をしようとしたんだ。儒墨の思想は、その辺り顕著でさ。墨子(墨家)は禹に関しては特に卓抜していたが、学べば、倣えばまたあの時代のようになると。為政家、君主は人の上に立つべきモノとして、誰が観ても恥じない行いをすべきだと。そうすれば平和になり、民は君主を敬い、あの頃のように、また一つになるって考えたモノもいた。とはいえ、古を最もとする儒者は、よく知りもしないくせに技術者に口を出し、悪政を良しとせず、善政を敷くコトや倹約を説いているというのに、あの儒教の盛大な葬式は、期間も長いうえに、下のモノにも負担が大きく、金もかかるから、もっと質素に、節葬にしろ、と言う墨子のような墨家とよく対立してはいたが。でもコレって、そっくりそのまま同じではないが、平成時代に死刑とかの話でも似たようなコトを言っているモノもいる。だがそんなコトは、紀元前で既に似たような討論がされていたワケだよ。つまりコレがどういうコトなのかと言えば、あの頃と比べて様々なコトが進歩したのに、肝心の人間というクソ猿は、平成時代になろうと何も変わっていないというコトだ。しかもコレ、紀元前にいた儒家と墨家の話だからな。

だが、法家のモノはそう言わなかった。今の時代に聖人のマネをしても、唐虞夏殷周に笑われる。アレは当時だったからこそ、聖人とされ、偉大な人物だったのだ。そしてかの聖人は仁よりも法を優先しており、今と昔では事情も、状況も、世俗も違うのだから、昔は昔の、今は今に適うコトを、施行すべきである。民は儒者や墨家が謳う德、仁、兼愛などではなく、権勢に服すのだ、と。

『今有搆木鑽燧於夏后氏之世者,必為鯀、禹笑矣。有決瀆於殷、周之世者,必為湯、武笑矣。然則今有美堯、舜、湯、武、禹之道於當今之世者,必為新聖笑矣。是以聖人不期循古,不法常行,論世之事,因為之備。堯之王天下也,茅茨不翦,采椽不斲,糲粢之食,藜藿之羹,冬日麑裘,夏日葛衣,雖監門之服養,不虧於此矣。禹之王天下也,身執耒臿以為民先,股無胈,脛不生毛,雖臣虜之勞不苦於此矣。當舜之時,有苗不服,禹將伐之,舜曰:「不可。上德不厚而行武,非道也。」乃修教三年,執干戚舞,有苗乃服。共工之戰,鐵銛矩者及乎敵,鎧甲不堅者傷乎體,是干戚用於古不用於今也。故曰:事異則備變。夫古今異俗,新故異備,如欲以寬緩之政、治急世之民,猶無轡策而御駻馬,此不知之患也。且夫以法行刑而君為之流涕,此以效仁,非以為治也。夫垂泣不欲刑者仁也,然而不可不刑者法也,先王勝其法不聽其泣,則仁之不可以為治亦明矣。且民者固服於勢,寡能懷於義。』

 

韓愈・進學解

『觝排異端,攘斥佛老。補苴罅漏,張皇幽眇。尋墜緒之茫茫,獨旁搜而遠紹。障百川而東之,回狂瀾於既倒。先生之於儒,可謂有勞矣。沉浸醲郁,含英咀華,作爲文章,其書滿家。上規姚姒,渾渾無涯;周誥、殷《盤》,佶屈聱牙;《春秋》謹嚴,《左氏》浮誇;《易》奇而法,《詩》正而葩;下逮《莊》、《騷》,太史所錄;子云,相如,同工異曲。先生之於文,可謂閎其中而肆其外矣。少始知學,勇於敢爲;長通於方,左右具宜。先生之於爲人,可謂成矣。然而公不見信於人,私不見助於友。跋前躓後,動輒得咎。暫爲御史,遂竄南夷。三年博士,冗不見治。命與仇謀,取敗幾時。冬暖而兒號寒,年豐而妻啼飢。頭童齒豁,竟死何裨。不知慮此,而反教人爲?』

 

 

 

 

「日本と日本人は変わったのではなく、死んだのだ。この違いは、今日長安道,對面隔雲泥だよ。ギリシア人や××神話にだって言える話だ。だから内親王が黒田と結婚しようが知ったコトか」

 

あの禹は死んだ。禹は死んだが、カムヤマトイワレヒコ(神武天皇)が存命しているように、黄帝は死んではいない。仙人へとなってしまってはいるが、今も隠者になって生きている。実は中国神話の黄帝だけではなく、他の神話、例えば古代ギリシア人からギリシア神話の信仰は無くなってしまったとはいえ、神代のギリシア英雄が生きているモノもいたりするが、どうでもいいコトか。

詩經によれば、古训是式,威仪是力。天子是若,明命使赋とある。確かに各国の神話は起きたさ。だがその神話は、古は終わった。変わったのではない、終わったのだ。そうさ、孔子が理想とした時代、唐、虞、夏はもういない。湯王も文王も武王も死んだし、周公旦もいない。みんな死んだ。あの時代は終わったのだ。黄帝は生きてはいるが、あの時代と同じ統治が出来るかと言えば、ムリだ。仮にできたとしても、黄帝自身がしようとするコトはないだろう。何もかも変わったのだよ。

だと言うのに、古を至高とし、ソレを模範として倣う豎儒、儒墨はアレを蒸し返す。墨家は禹を、夏王朝を蒸し返し、儒家は三代を、周王朝を蒸し返したのだ。確かにオレは儒教徒ではある。あるが、ソコは、その思想は違う。ソレだけは、絶対に倣う気はない。

判っているだろ。文字一つとったってそうだ。漢字も漢文も、今ではどうなっている。見て見ぬ振りをするのはいい加減やめろ。奠都されたら、もう終わりなんだよ。

 

墨子・兼愛下

『子墨子曰:「吾非與之並世同時,親聞其聲,見其色也。以其所書於竹帛,鏤於金石,琢於槃盂,傳遺後世子孫者知之。」《泰誓》曰:「文王若日若月,乍照光於四方於西土。」即此言文王之兼愛天下之博大也,譬之日月,兼照天下之無有私也。即此文王兼也。雖子墨子之所謂兼者,於文王取法焉。』

『且不唯《泰誓》為然,雖《禹誓》即亦猶是也。禹曰,"濟濟有群,咸聽朕言,非惟小子,敢行稱亂,蠢茲有苗,用天之罰,若予既率爾群對諸群,以征有苗。"禹之征有苗也,非以求以重富貴、干福祿、樂耳目也,以求興天下之利,除天下之害。即此禹兼也。雖子墨子之所謂兼者,於禹求焉。』

『且不唯《禹誓》為然雖《湯說》即亦猶是也。湯曰:"惟予小子履,敢用玄牡,告於上天后曰:「今天大旱,即當朕身履,未知得罪于上下,有善不敢蔽,有罪不敢赦,簡在帝心。萬方有罪,即當朕身,朕身有罪,無及萬方。」即此言湯貴為天子,富有天下,然且不憚以身為犧牲,以祠說于上帝鬼神。"即此湯兼也。雖子墨子之所謂兼者,於湯取法焉。』

 

 

 

 

 

 

 

「来ましたね」

「え、ダレが」

「お兄様―」

 

専属のメイドとしてなせる業なのか、センサーを感じ取った咲夜が意識する方角へ顔を向けると、小走りで愛しの妹がこちらに駆け寄ってきていた。あとは姉さんがいたら蓬莱山家が揃う。しかし長女の行方は未だ掴めず。螺旋状に循環してきたが、××神話がなくなってからは姿を見せない時の方が多い。

 

「ああ、お帰り。もういいのか」

「惚気と房事を延々と聞かされそうだったので......」

「……うん。なんかごめんな」

 

惚気ならまだ依姫なのか豊姫なのかと連想しても判らないが、房事なら豊姫しか思い当たらない。いつだったか豊姫が閨に来たコトもあったけど、その時はセックスよりも睡魔の誘惑が優ったのでするコトはなかった。このオレに拒否されるとは予想だにしていなかったのか、精神的な意味や女としての意味でもよほどショックだったらしく、依姫とはしたのに自分がされないコトもあり、朝目を覚ますと部屋の隅で蹲り廃人みたいになっていたのだ。アレから昨晩まで手を出していなかったから、ここ輓近までいじけていたのもあって、その反動で堰を切ったようになるのも致し方ないのだろうか。

 

「......お兄様」

 

草臥顔だったのに、突然なにかを訝しんだ輝夜は、眸をオレと咲夜へ交互に向けるとこちらに歩み寄る。するとお互いの鼻に触れそうなほど、息づかいが聞こえる距離に来た妹は、涼やかな目で、ただじっとオレの眼を見始めた。傍から観たら男と女が闃然たる団子屋で自面尽くだけでしかないが、ただ視線を交わすだけなのに、たかだが数秒程で根を上げそうになってしまう。逃げようとしたら、妹に両手で頭を掴まれてしまった。燻ぶろうにもコレではムリだ。声には出さないが、能面のこころは畏怖しているハズだ。

存乎人者,莫良於眸子。眸子不能掩其惡。胸中正,則眸子瞭焉;胸中不正,則眸子眊焉。聽其言也,觀其眸子,人焉廋哉?

 

 

「あの、輝夜」

「少し黙ってください」

「はい」

 

元からないが兄としての威厳を保つため、どうにか舌戦という干戈を交えようとしたが、無血開城して即座に旗を下ろす。蟷螂の斧だった。姉さんを彷彿とさせる今の実妹に、オレには為す術がないのだ。

オレの瞳の奥でなにを見つめていたのか、意を得た輝夜は伏し目がちに両手を離して数歩下がる。ほんの数十秒だったが、一刻以上経っているように感じた。あー、ビックリした。実妹とはいえ、みめよいのだからやめてほしい。今すぐ閨に連れ込んで犯したくなる。

本懐を遂げ、なにかを察した実妹は股肱のメイドをまた観た。

 

「......いつものね?」

「はい。いつものです」

「いつものってなんだ。コレは判るモノには判るコトであってだな」

「私はお兄様のソレを理解できたことがないです」

「……マジか」

「マジです」

 

儒教の経書・孟子には『夫尹士惡知予哉?千里而見王,是予所欲也;不遇故去,豈予所欲哉?予不得已也。』という記述がある。

オレは酈食其とは違う。以前、青娥はオレを、箕子と蒯通がしたように狂人のフリをしているだけ、と言った。旧約聖書にも狂人のフリをしたという記述がある。だが、アイツはそう言っても、実際はそうではない。演じているワケではないのだ。晏子之御のフリでもない。オレは陽狂ではなく、ましてや瘋癲を装っているワケでもなければ、偽るコトなんて何一つしていない。

オレは神話と記述と思想に従っているだけだッ! ソレが狂人のフリというコトはない。どこぞの小人のように、識見がない自惚れの塊のような、知らないモノからすればオレを狂人扱いするのだろうが、ソレは達識も知識も素養も教養もないからだ。そのような小人は学が浅いだけなのだよ。ソレを理解できないから、オレを狂人扱いしているのだよ。無知とは怖い。対処の仕方も、ソレを上手く扱うコトも、出来ないのだから。故に一つ間違うだけで爆発する危険物にしか、観えないのだろうな。しかし蓬莱山 弘天というのは、名というのは、げに恐ろしい。こうして謬見や僻見、歪曲・曲解するのも大変だ。

上士聞道,勤而行之;中士聞道,若存若亡;下士聞道,大笑之。不笑不足以為道。故建言有之:明道若昧;進道若退;夷道若纇;上德若谷;太白若辱;廣德若不足;建德若偷;質真若渝;大方無隅;大器晚成;大音希聲;大象無形;道隱無名。夫唯道,善貸且成。

 

 

「オレの崇高な思想に共感もしないのか」

「崇高ではなく鄙賤、共感ではなく反感ならあります。よくて無関心かも」

「バカな! あれだけ光陰者百代之過客してきたというのに」

「お義姉様たちもお兄様を傾慕しているようですが、ソレだけは理解しているようには見受けられませんね」

 

oh……なんてコトだッ! 妻も従者も、オレの言に従いはしても、思想以外にしか心酔していなかったなんて、捍格していたなんてかなりショックだよ! こんな衝撃は、××神話があった時に永琳と初めて夫婦喧嘩をしたおり、一時期避けられたとき以来だぞ……。傷心を癒してもらうため、よく輝夜と姉さんに慰められたモノだ。

しかしだ。古代中国の詩人の詩って、困ったコトに教養がないと判らないモノばかりなのは有名だよ。そうでないモノもあるが、そういう詩がかなりある。儒教・道教・仏教の知識がないと判らないモノも多い。それだけ知識があるモノは多くいたというコトだ。

あの儒教が宗教ではないとぬかすヤツもいるが、儒教が宗教ではないとほざくヤツは信用に値しない。コレを言うヤツは都合のいい記述しか観ていないクソ猿か、断章取義しているクズ共だけだ。論語だけではなく、儒教の聖典全てを閲読し、儒教以外の宗教の聖典も披見しているならば、そんなふざけたコトを言えるワケがないのだよ。だから此処に於ては儒教が宗教でしかないときっぱり断言してもいい。

仏教も哲学ではない、アレは宗教だ。オウム真理教は宗教ではない、アレは哲学だ。オウム真理教なんてたかだがテロを起こして人を殺し、その他諸々をしていただけだよ。大体、あの行為自体は、日本の仏教の歴史を顧みても、オウム真理教と似たようなコトをしていたのは明白ではないか。

それ以前にだ。オウム真理教や創価学会や幸福の科学は宗教扱いにし、儒教や仏教が宗教ではないと意味不明なコトを言い出すのはおかしな話でな。明確な線引きもないというのに。よってソコにあるのは、どこぞのクソ共の基準と、どこぞのクズ共にとって都合がいいモノか、または興味があるモノかどうかというコトだ。コレは公平ではない。

 

「まあどうでもいいや。輝夜も団子を食うか」

「そうですね。いただきます」

 

場の雰囲気がガラリと変わって談笑が始まる。どこからどう観ても、仲のいい兄と妹が楽しく過ごしているようにしか観えないだろう。こころは黙々と食べていたが、まだ団子は残っている。お腹いっぱいになり満足したらしく、能面へなってオレの側頭部に貼り付いている。

それで山城国や妹紅のコトを尋ねてみたら、普段と変わらず良好な関係を築けているらしい。あとは慧音の能力で日本書紀の改竄も終えたようだ。コレで記憶がないモノ、またはあの時代にいなかった人間はソレに気付けないだろう。この世界が、記憶が、日本書紀のような文献が改竄されたと知っているのは古のモノだけだ。

しかし一つだけ聞き逃せずに再度尋ねる。

 

「慧音が来ているのか」

「本人が諏訪へ行きたいと言うから、ついでに連れてきました」

「そうか。なら後で会いに……」

 

行こう、とは言えなかった。久しぶりの吉報で熱に浮かされたが、それも訃音を聞かされたように地の底へと澱む。る~ことの飛報が脳裏を去来したからだ。仕方ないので妹にしてもらうコトにした。

 

「実はこの後、神綺の元へ向かわねばならんのだよ」

「それは、魔界が熄滅したことに関与して?」

「いや、リグルって妖怪を神綺に預けていたんだが、そろそろ必要になってさ」

 

アリスも連れて行こうとした。が、何度も説得してみたけどやはりダメだった。いくらなんでも嫌われすぎだろ。一体何をしたんだ神綺よ……。

日本で病を蔓延させるためには、八ヶ岳で引きこもっているヤマメも風土病を各地に潅流させるため使うが、リグルが持つ能力はヤマメの能力と相乗するため、魔界から諏訪國へと拘引しておきたい。だがソレをするというコトは、神綺と会わねばならんというコトだ。魔界へ赴くのは別に面倒ではなく、煩瑣な手続きがあるワケではない。入るのはすんなりと行くだろう。そう、入るのは。

 

「だから慧音に寺子屋の場所と、ソコは好きに使ってくれと伝えてくれないか」

「いいですよ」

「助かる。久々に会えたがもう逢えないかもしれん。一緒にいてやれなくてすまないな」

「永別するかのような口ぶりですね。暫くは留まるので、魔界から帰ったらすぐに逢えますよ」

「帰る、コトが出来るのだろうか……」

「......永琳お義姉さまへ口添えしてもらいましょうか」

 

明察した輝夜は得心が行った模様で、あえて穿つコトはせずに機転を利かせる。機知に富む妹である。ただ輝夜の枠外にいる神綺は、永琳が掣肘したとしても唯々諾々の女ではない。あの天馬空を行く悍馬はオレでさえ御しにくい。オレの知っている限り、それができるのは姉さんくらいかな。

あ、魔界へ足を延ばす前に、無辜の子を忘れない内に先にしておこう。

 

「念のため、こころは残るんだ」

「......え?」

 

能面のままだが、こころは頭の中を疑問符で埋め尽くされただろう。しかし歯牙にもかけず、なにもない、虚空に能面を差し出す。するとスキマが僅かに生じた。紫が取りやすいようスキマへ突っ込もうとしたその時、右手が飛び出し、ぐわし、という音の吹き出しが出そうな感じで能面を掴み、不気味な目玉しかない暗澹とした闇へ引き摺り込んだ。決してまことちゃんの方の意味ではない。こころの悲鳴が木霊したが、スキマが閉じるとそれも霧散する。ホラー映画みたいだった。もう慣れたが。

 

「じゃあ行ってくる。留守は頼んだ」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とうとう着いてしまった……」

 

魔界へ光臨したのはいいが、魔界を統べるモノとして相応しい鳳閣、ではなく、ただの一軒家だった。魔界の神がこんなところに住んでいるのか。相変わらずココは万華鏡の世界だなあ。

ノックをするため右手を扉に近づける。だがやめた。最初が肝心だ、神綺に舐められたら、場に呑まれたら終わる! よってここは無礼に、言動もいつもより大げさに、驕傲しく威圧的にした方がいい。神綺次第では××神話の主神らしく権柄尽いてくれる。

 

「って開かないではないかッ!」

 

ドアノブを掴み引いたり押したりしてもうんともすんとも言わない。せっかくの意気込みが台無しだった。

 

「ええいこしゃくな」

 

神綺と会うには中へ入るしかない。押すのも引くのもダメなら、スライド式かと思ってしてみたが、梃子でも動かぬ。上にも下にもダメだ。もう面倒だし帰ろうかな。リグルを引き取りに来たけど、咲夜とかに頼んでもいいワケだし。うん、そうしよう。すぐしよう。魔方陣で諏訪國へ帰ったらよかったのに、この時のオレは、その考えが出てこなかったのだ。

踵を返そうとした直後、あっさり帰るなと言わんばかりに扉が開いた。

……なんだ、もしかして自動ドアだったのか。運悪くセンサーの調子が悪かったのかもしれん。忘れてなければ神綺に伝えておこう。しかし自動ならドアノブなんて付けるんじゃない、紛らわしいではないか。

 

「入るぞー」

 

予定していたのとは180度違うが、そんな青雲の志を抱いていた時のオレはいない。もう死んだ。

ココは木造建築らしく、木の匂いが充満していた。しかし一軒家のくせに妙な広さを感じる。さしあたってあちこち歩いてみた感想としては、迷路だな。おかげで暫し迷った。一般的に家とは住むためにあるが、なんのために迷路状へしたのやら。

 

「おかしい。全部観て回ったハズだが」

 

この家、三階建てらしく、虱潰しに当たってみたけど魔界の神が見つからん。名を呼んでも無反応、虚しいだけだ。念話もしてみたが応答はない。地下、あるいは秘密の入り口でもあるのかと、もう一度探したが、それらしきモノはなかった。

コレは早急に帰った方がいい。つくねんと沈滞してもいつ戻ってくるかは判らないし、神綺がいないんじゃ話にならない。魔界の住人はココに神綺が、たまにサリエルも住んでいると言ってたから来たんだが、無駄足だったようだ。ただならない予感もあり、憂慮してきたのでさっさと帰ろう。

 

「こんなのさっきまでなかったような」

 

玄関まで戻ったところ、なぜか部屋の中央に瑶台の玉座があった。何度も記憶を鋤くが、やはりこの玉座を観た覚えがない。初めてココへ入った時にはこの玉座はなかった。しかし入って来た時にはなかったというコトであり、初めて観たモノというコトではない。まさか、どこかで転移したのか。そんなバカな。確かにオレは記憶力が悪いし、お世辞にも頭がいいとは言えない。だが意図的にならまだしも、そのようなモノを看過してはいない。神綺がコレを持ち帰ったと仮定するなら、どこかですれ違ったのかな。ここムダに広いし迷うからなあ。

縹眇としているが、このオレでさえどこかで服膺していたのか、網に掛かる銘記から強引に牽引すると、無意識に言葉をすべらせる。

 

「ああ、コレってあの時の……」

 

××神話が終わった余燼で、コレも滅却したモノの一つだ。記憶と照らし合わせてみるが、何一つ変わっていない。資材は同じモノなのだろう。オレが観ても同じモノだと言える。他のモノもきっとそう言う。

しかしオレ達は変わってしまった。この玉座も一見すると疑いの余地なく同一のモノと言えよう。微に入り細を穿ちだ。だが、厳密には違う。一如ではない。なぜならこの玉座は、××神話があった頃に造られたモノではないからだ。

仮にコレを神綺が創り直したとする。しかし前述のとおり、あの玉座は滅却している。だからコレはダレカが拵え、創り直した言わば模造品。なにより根源的に言うならば、××神話があったあの世界でコレを造ったのは、神綺ではないのだ。

 

「懐かしいな」

 

創り直すのはいい。あの頃のモノを再現したり佩用するのは、過去を懐かしむのもまだいい。あの時代に帰りたい、などと出る船の纜を引くのは1000歩譲って認めよう。ただ終わった××神話を戻そうとしたり、頭を擡げたり、中興するのだけはダメだ。そのような思想を持つモノがいた場合、例え妻でも、例えあの永琳でも、オレはソイツを殺さねばならん。紹隆ならまた違っただろう。しかしそうではない、変わったのではなく終わったのだ。途切れているのだ。無くなったのだ。

こればかりは妥協しない。譲歩もない。躊躇もしない。首鼠両端なんてありえない。どんな理由があろうと、どれだけ請われようと、どんな目的があろうとも、感情論だろうが伝統だろうが、ソレだけはダメだ。その行為は徒爾でしかない。妻であれば可能な限り諫止するかもしれんが、ソレを認めはしない。蠢動だろうが、再興に驀進し、ソイツに利益があるなら、猶のコト弾圧せざるを得ないだろう。閑人でいつもは穀潰しのように放縦しているが、コレだけは、オレも能力を吝嗇せずに出し惜しみは一切しない。持てる力全てを使い、徹底的に潰す。いよいよもって死ぬがよい。そしてさようなら。

 

「……帰るか」

 

自動ドアへゆっくり歩を進める。想像よりも揺蕩うコトはなかった。一縷くらいは可惜に恋々としてすがりつくかもしれんと思ったが、湧出しないというコトは、粛然とする心も、アレを終わったコトと認識しているのだな。頭の上の蠅を追うコトもなくほっとした。

今度はセンサーもちゃんと機能し、ドアが開く。儵忽反応がなかったようにも観えたが、それも儵忽。注目するほどのコトではない。後は帰るだけ。帰るだけだったんだ。

 

「あ」

「お久しぶりです。弘君」

 

出た転瞬、そんなオレの料簡は黙許も宥恕もしない、もう二度と帰さない、とにじませている××神話の大天使(アークエンジェル)・サリエルが、麾下を従えながらも莞爾して目先にいた。隣には今回の主要だった魔界の神もいる。汚いな流石大天使と魔界の女神汚い。夢子も扈従しており、彼女は神綺のメイドだからまだ判るが、なぜか拉致しようとしていたリグルも、露骨に嫌な表情のままメイド服を着ている。メイドとして使われていたなんて聞いていないんだが。

望郷の念にかられるオレを疎漏する、就中神綺は嫣然し、早く自分を抱きよせてと仄めかすように両手を広げた。

 

「待ってたよひろー!」

 

しかしオレは妻の願いを成就させるコトはせず華麗にスルー。

 

「おじゃましましたー」

「どうして抱擁せずに帰ろうとするのー!」

「たれか、蓬莱山 弘天を捕らえなさいッ!」

「なんだと!」

 

まさかのサリエルが返り忠で雷神なのに雷に打たれる。大天使が配下に命じたコトは、いつもなら神綺が言っているコトで、ソレをサリエルが宥めるというのが日常のワンシーンだったハズなのに、コレでは真逆ではないか。バカな、獅子身中の虫だったとは……気付かなんだ。

 

「サリエル貴様正気か!? 仮にも××神話の主神であるオレになんたる仕打ちだ!」

「譴責や勅勘はいかようにも。ですが、今諏訪國へ還幸されては呻吟になるかもしれません」

「どうせ神綺が原因なんだろ」

「今回は私じゃないよ!」

 

剛速球の会話のキャッチボールをしていると、サリエルの僕が陳謝しながらにじり寄ってくる。雷霆を使って逃げようとしたが、この魔界はまだ創り直されたばかりでハリボテ。そんなところであの雷霆にいくら加減の調節をしてもまた魔界は消滅するだろう。

 

「アレを、観ましたか?」

「……玉座のコトか」

 

アレ、と言われて浮揚したのはそれしかなかった。誤答ではなかったらしく、サリエルは一度頷き、肯定の意を表す。会話しながら大天使(アークエンジェル)の配下に身柄を確保され、神綺たちの御前へ連行される。ご丁寧に魔方陣を使って逃げないよう結界まで張って。コレでは主神としての威厳が……。元からないな。त्रिमूर्तिःのΖΕΥΣ(ゼウス)上帝(天帝)יהוה(ヤハウェ)‎が泣いてるぜ。

 

「神綺が創り直したんだろ。また懐かしいモノを出したな、オレなんか忘れてたよ」

 

あそこまで再現できるのは神綺くらいなモノだ。あの永琳でさえ、××神話の中で真っ先にその名を出してくるだろう。豊姫や依姫だってそうだ。相識しているモノでソコを腑に落ちないとするモノはいない。だからこそ、オレは魔界の女神へ昔の話を楽しむように問いかけた。

しかし、糺すように首を横に振る。

 

「私じゃないんだなー」

「ならサリエルか」

「いえ。私でもありません」

 

一瞬、永琳が擡頭する。永琳は智慧(忘却)の女神だ。オレの穴だらけな記憶と違って、寸分違わず憶えているだろう。だが、あの玉座を造れるのかと聞かれたら、不明瞭だ。月の都の技術は目を見張るものがある。平成時代より亢進しているのは火を見るよりも明らか。しかしその全てを駆使しても、やはり同じモノが形作られるとは考えにくい。

 

「どうしてアレがあるのかは判りません。本当に、最初から存在したように置かれていました」

「因子は不明だが、忽然とソレを認識できるようになったと言うのか」

「はい。それも最近になって」

 

神綺とサリエルは一切触れてないらしい。二柱とも、あえて薮蛇をつつくことは避けて放置していたようだ。つまり同じ場所のまま置いているというコトになる。だが玄関の、しかも部屋の中央にあってて気づかないなんてありえない。いくらオレでも、そんなところにあったら気付く。あれだけ目立つのに。いや、最初はオレも入った時に気付かなかったが。

頭の中で鉛色の雲のようなナニかがちらついた。継起するナニかを廓清するためかぶりを振る。邪魔だ。

 

「ひろ」

 

いつもはテンションが高いのに、鳴りを潜める神綺はオレの名を呼ぶ。そのしめやかな声に触発され、引き千切るような勢いで頓悟しかけた意識を手繰り寄せる。また爛れかけた。一体なんだというのだ、こんな出来事オレは知らん。寝耳に水だ。青娥を娶ってから真新しいコトばかりだが、そこまで劇的な変化を求めているワケじゃない。女を侍らせられたらそれでいいんだ。

 

「……どうした神綺」

「どうあれ、現にあの玉座はココにある」

「ああ」

「でもね......無始曠劫の××神話があった時の玉座とアレが――」

 

破邪顕正する神綺の言い回しは、アレを模造品とするモノではなく、雪に白鷺ではないかと、どこか同一のモノだと匂わせるモノだった。まだ半信半疑ではあるが、違うと断定できない部分もあるからだろう。だがそんなコト、水掛け論にしかならん。

 

「大同小異だって、ひろは今も言い切れる?」

 

ダレがアレを造ったのかはさておき、例え消滅したハズの玉座が戻って来たとしても、ソレがなんだというのか。アレがかつての玉座だろうと、それは××神話自体があってこそ、同一のモノと言える。しかしその××神話は終わっているのだ。オレ達はココにいるが、昔のオレ達はいないよ。したがって可能性や仮定の話を持ち出すこともムリだ。これには水掛け論も起きない。いくら片方が同じでも、もう片方が死んでいるのだ。あの玉座に坐していたオレでさえ、もういない。同じではない。それ以前に二回も死んでいる。

 

だからこう返す。

 

「言い切るさ」

 

 

 

 

 

 



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