Tiny Dungeon PSS   (キャベツ畑)
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第1話「家族」

初めましてキャベツ畑と申しまする。エロゲとギャルゲをこよなく愛するしがない畑です。
今回は私がこよなく愛するエロゲの一つTiny Dungeonの二次創作を送らせていただきまする。
指摘、感想等お待ちしております。オリ主が若干チート気味なので一部の人物の戦闘能力が上がっています。それらが受け入れられないというお方はどうぞ気分を害される前にお戻りになられてください。
特に大丈夫だ問題ない。というお方とウルル様バンザーイというお方は先に進まれてください。

ウルル様バンザーイ!!


早朝、とある寮の一室にて誰に命令される訳でもなくユア=ルゥムは羊皮紙にペンを走らせていた。

 

 

「……四世界の構図についてか」

 

 

 

この世界は四つある。

一つ目は力を誇りとし、強さを尊敬とする魔族が住む魔界。

 

二つ目に仲間との調和を是とし、仲間意識が強い神族が住む神界。

 

 

三つ目に自由であることを尊ぶ種族である竜族が住む竜界。

 

そして最後は四世界に大きな傷後を残した滅界戦争の発端となり、喜々として参戦した犯罪者の種族として、他種族から嫌われている人族(ひとぞく)が住む人界。

 

「こんなものかな?」

 

羊皮紙に書き込んだお世辞にも上手いとは言えない文章を見直し、インクが乾くのを待ってからその羊皮紙を丸めて自らが愛用する革製のバックに押し込むと椅子から立ち上がり自室を飛び出す。

 

 

小走りで寮の廊下を駆け抜けるとそのまま出口へと一直線で向かう。

 

「朝食抜きは……キツイなぁ」

 

ぐぅと音を鳴らし空腹を催促する腹部を軽く抑えて俺は寮の扉を開いて外へと出た。

 

 

「あらあら今日は随分とゆっくりね。」

 

寮を出ると直ぐに何処か優しく、そして何処か戒める様な声音で箒で地を掃くスタイル抜群な妙齢の女性が声を掛けてくれる。

 

「お、お早うございます」

 

「はい、お早うございます。」

 

 

彼女の名はルアン=ルゥム。この寮の寮長なのである。

 

 

「それで今日はどうかしたのかしら?」

 

「じ、実は本日が提出期限だった課題を終わらせるのを忘れていまして……」

 

「今まで?」

 

「……はい、していました」

 

 

「もう、駄目じゃないの」

 

 

軽く語気を荒げたルアンさんに人差し指で俺は額を小突かれる。

 

「あたっ!?す、すいません」

 

「反省してる?」

 

「してます」

 

「ならよろしい」

 

額を抑えて痛みではなく恥ずかしさに赤面しつつも課題をしていたせいで遅刻寸前な為に足を動かしここを離脱しようとするのだが。

 

 

「だーめ」

 

彼女によって捕縛もといとてもとても熱い抱擁を受けて完全に動きが止まってしまう。

 

「髪の毛さらさらねぇ」

 

「か、母さん恥ずかしいですから!」

 

 

何とか彼女の抱擁から逃げ出そうとするわけだがいかんせんビクともしないのです。

 

 

「あらあら遠慮しちゃって。ついこの間まで一緒にお風呂に入ってたじゃない」

 

 

「最近って……もう6年前ですよ。」

 

 

この時点で殆どの皆さんお気づきだと思いますがルアン=ルゥムは俺の母です。よく年の離れた姉と間違えられるが。

 

 

「あぁもう!ユアちゃんったら可愛いんだからぁ!」

 

 

「か、母さんストップ!色々と不味いから!主に俺の理性がぁ!」

 

 

その後俺は実の母に劣情を催さない様に無心でいた。だが母さんはそれを少しも察すことなかった。そしてお年頃の少年の男心が散々弄ばれたのは言うまでもない。

 

 

 

「補助魔法。電磁加速(リニアアクセル)!」

 

母さんに散々抱きしめられ身体中をまさぐられた後、遅刻を回避する為に俺は魔法を使い脚力を上げて全速力で駆けていた。ちなみに運動をすることで性欲は昇華出来る。俺が実の母に対して劣情を抱いたかどうかはご想像にお任せする。

 

「復習でもするか」

 

全速力で駆けて性欲を昇華しているだけでは勿体無い、折角なので今日授業がある頭の中で魔法について復習をしようと思う。

 

魔法には大まかにわけて約四種類存在する。

その名の通り攻撃に使用される攻撃魔法。

 

やはりその名の通り防御に使用される防御魔法。

 

自らの武器や身体に使用して強化する強化魔法に補助魔法。

傷を癒す回復魔法。

魔族は攻撃魔法に特化してはいるが防御魔法、強化魔法、回復魔法が不得手。

 

竜族は一部の例外を除いて魔法を使えない。その変わりに気鱗(きりん)と呼ばれる闘気を身体に纏い敵からの攻撃を防いだり、攻撃に使用する事ができる。

 

神族は魔族とは反対に強化魔法や補助魔法、回復魔法を使用する事を得意としている。一部には攻撃魔法に特化した神族もいたりするけれど。因みに俺、ユア=ルゥムも神族である。

 

 

最後に人族。人族は魔法や気麟は使用する事は出来ないが儀式兵器を使用する事によって魔法を初めて使う事が可能となる。因みに儀式兵器とは魔法を使うことはできなかった人族が大気の中に解けている魔力を集め、増幅する道具として作成、使用している。

 

「……あの後ろ姿は」

 

 

頭の中で授業の復習をしながら補助魔法で加速して疾走していると見覚えのある女子生徒を見かけて帯電していた魔力を霧散させ土を撒き散らしながらも足を止める。

 

 

「うわっ!?って何だお兄ちゃんか」

 

俺の前に今いるのは銀髪に若干の赤髪が混じった小柄な少女。名をアミア=ルゥム。

ファミリーネームでお気づきの方も多いと思うが俺の妹だ。

 

「お早うアミア。今日もとってもキュートだね!」

 

「にゃはは、お兄ちゃんこそイケメン!」

 

挨拶替わりに……まぁ挨拶もしているんだけど胸を弄る。

くすぐったそうに身を捩るアミアだがその表情はとてつもなく緩んでいるので良しとしよう。あ、やべぇムラムラしてきた。

 

「心地よい感触よ」

 

「ん、シスコンお兄ちゃんが毎日揉んでくれるから形から感度までバッチリだよ!」

 

「そうか!それは良かった!!だが俺がシスコンならお前はブラコンだろう」

 

「ちっちっち、甘いよお兄ちゃん。私のお兄ちゃんへの想いは家族間の愛を超えてブラザーコンプレックスを超えて今は純粋な恋愛感情へと至ったのだよ!」

 

舌を鳴らし人差し指を左右に揺らすと現在が登校時間にしては意外と遅い為に人がいないから良いものの何を恥ずかしい事を言って下さるのでしょうかこの妹は。

 

「え、何この子気持ち悪い」

 

「き、気持ち悪いって酷いなぁ。そんなお兄ちゃんは……こうだっ!!」

 

アミアは手をワキワキと寧ろムネムネと動かしたかと思うとスピード重視の戦闘に特化した俺も捉えられない程のスピードで後ろに回りこんで俺の上着の中に手を入れ込んでくるという変態的な行動に及びやがりましたよ。

 

「おお!やっぱりいい腹筋だねぇお兄ちゃん。筋肉が付きすぎずかと言って全然無いわけでもない。これが良いんだよねぇ。」

 

 

「だれかーここに変態がいますー!!」

 

「よいではないかーよいではないかー。」

 

身の危険を感じ叫び身体を捩り逃げ出そうとするがアミアもこちらを逃がすまいと俺の身体にしがみついて離れる様子が全く見えない。

分かりやすく言えばこのままでは遅刻確定になってしまうと言う事だ。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。あそこの草むらで……やらないか?」

 

息を荒げ草むらを指差すアミア。

もはやその瞳には理性など垣間見える事はなくただ兄を映しているだけなのだろう。

 

 

「ア、アミア!俺は妹や気が置ける異性へのセクハラが趣味だがさすがに一線を越えるつもりはないからな!」

 

「だ、大丈夫!痛いのは最初だけだから!寧ろ痛いのは私だから!」

 

 

最早会話が成立していなかった。

 

「やーめろ―!!」

 

「やーめなーい!」

 

じたばたともがいて逃げようとしてはみるのだがアミアは小柄な身体から信じられない程の力で俺を草むらへと引っ張って行く。

 

 

そしてユア=ルゥムは妹であるアミア=ルゥムと禁断の関係へと踏み込……んだりはしなかった。

 

 

 

「アミちゃん……何してるの?」

 

 

そう、銀色の悪鬼がそこにはいた。

 

「しまっ……お姉ちゃ!?」

 

悪鬼を視認した直後もしくは視認する前に俺にへばり付いていたアミアは腹パンされた後地面に叩きつけられる。

 

「……なんと容赦のない」

 

 

「……ふぅ」

 

 

いきなりではあるが神族は髪の毛における銀の比率がそのまま魔力に繋がる。銀髪が一切ない場合は魔法が使えない。

逆に100%の銀髪を持つものは「完全銀髪(グラン・ルナ)」と呼ばれている。

そして我が妹アミア・ルゥムを投げ捨てて軽く息をついているのはもう一人の妹である。

そしてノートは数百年ぶりに産まれたグラン・ルナなのである。

 

「に、ににににに兄さん!アミちゃんに何か変な事されませんでした!?」

 

「い、いや大丈夫だからとりあえず落ち着いて」

 

「ボクは大丈夫ですよ。でもちょっと待っててくださいね。今、アミちゃんにお仕置きしますから」

 

そう言うとノートはアミアに追撃をかけようと歩き出す。だが俺はそれをよしとしない。家族が争ったって何も生まれない。だから俺はノート胸を揉みしだく。

 

「に、ににににに兄さん!!駄目、ここじゃあ人が来ちゃいます!」

 

「そんなことはどうでも良い!!それよりノートよ、また胸が成長しているではないか」 

 

「だ、だって兄さんが毎日揉むから。あふっ!?駄目です兄さん、そんなとこ抓らないで!」

 

地面に伏して微動だにしないアミアの純白のショーツを目の端に捉えつつ俺はノートの胸をいじり続ける。

 

「今日は……遅刻か」

 

 

溜め息を吐き空を見上げるとそこにはトリニティの清々しいまでの青い空のみが存在した。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の使用魔法

 

・補助魔法 磁気加速(リニアアクセル)

 

雷、正確には磁気を用いた加速魔法。

本来は攻撃魔法であった雷の反動を補助魔法と偽って使用している。

ぶっちゃけると反動が凄まじく大変危険である。

しかしそれを日常で平気に使っているユアは何者なるや?

 




4月7日修正。


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第二話「トリニティ」

投稿遅くなってすいません。そろそろウルル様も近づいてきましたよ。


三階級槍のクラスに所属するユア・ルゥムとその妹であるノート・ルゥムは今衆人観衆の面前で恥辱の限りを味わっていた。

 

 

「君達は神族の顔でもあるんだ気を付けなさい。」

 

ごめんなさい言い過ぎました。本当はクラスの皆の前で担任の教師に遅刻した事を怒られているだけです。

 

「「すいませんませんでした」」

 

ノート共々頭を下げて反省の意を示す。

「……素直で宜しい」

 

そして頭を上げた際に視界に入るのは教壇に四つん這いで立つ白い犬。もとい担任のポール・チネチッタ先生。滅界戦争の生き残りの一人で噛みつき屋(ニッパー)として恐れられた神族で変身魔法という独自に新たなる魔法を造りだした凄い人なのである。

だが戦争末期に犬の姿から戻れなくなってしまったそうだ。

 

「おう、大将。今日も妹達といちゃついて遅刻とは良い御身分だな?」

 

先生に再度一礼して教室でも後方に位置する自らの席に着くと一人の魔族の青年に肩を叩かれる。

 

「そうは言うがな、兄としては妹の発育を確認しておく義務があるわけで」

 

「そりゃあご苦労なこった」

 

シロウ・ゲオルギウス。俺の所謂悪友と言うやつで態度も言動もふざけた奴だが根は……たぶん良いと思う。

 

 

「ううっ、パンツ取りに行くの大変だったんですよ」

 

 

顔を赤らめ瞳に涙を貯めたノートは俺の右側つまりシロウとは反対側に腰をかける。

 

「いやいや、まさか青空の下でぜ……」

 

「きゃああああああああああああ!!言わないで下さい!」

 

「そこ、私語は慎みなさい!」

 

「ううっ、理不尽です」

 

言わずともノートは本日ニ度目のお怒りを受けました。

 

 

 

「迷宮試験が間近に迫って来ました。パーティー選出は例年通りに皆さんの自主性にお任せします。ですが強引な勧誘は控えて下さい」

 

 

迷宮試験とはこの学園の地下に存在するその名の通りの地下迷宮で行われる実技試験。パーティーでの攻略が必須とされておりパーティーを組む段階から既に試験は始まっているとも言える。

 

「どの様なパーティーを組むかによって試験での順位も変わってくるでしょう。ですが皆さんなら良い成績を出せると期待しています。ではこれにてホームルームを終わります」

 

ホームルームが終了し、ポール先生が教室から退出する姿を見送る。

 

「じゃあ大将今回もよろしく頼むわ」

 

先生が退出したのを見計らってかどうかは不明だがこちらにすり寄り不適な笑みを浮かべ肩を組んでくるシロウ。

 

「あ、でしたらボクもお願いしますね兄さん」

 

そしてその反対側からすり寄ってきたノートは俺の手を取り何かを訴えるかの様なつぶらな瞳でこちらを見つめる。

 

 

「あぁ、分かった分かった。だから早く離れろ。周りから変な目で見られてるだろうが」

 

 

二人を振りほどき軽く皺になった制服を整える。

 

「んじゃまぁ俺はふけるから試験の時はせいぜい甘い汁を吸わせてくれよな双月さん達」

 

 

目的を達成した為か授業が間も無く始まるというのに教室から出ていくシロウ。

 

「あ、駄目ですよシロウ君授業はちゃんと受けないと……行っちゃいました」

 

「まぁあいつがホームルームに居たってだけでも珍しいからな」

 

シロウ・ゲオルギウスは実技、学業共に良い成績を誇っているが実は一度留年している。理由は先程の言動から読み取れる様に授業に全くでない。

 

 

「大丈夫でしょうかシロウ君。また留年とかになりでもしたら」

 

「あいつならそれ位上手くやるさ」

 

ノートの心配そうな声に軽く返事をすると自らの男にしては長すぎる髪を手櫛ですく。

 

「あ、手櫛は駄目ですよ兄さん。髪が痛んじゃいますから」

 

そんな行動を見かねたのか制服のポケットから櫛を取り出し俺の髪を透いてくれる。

 

「兄さんは神族の第一王子で天然自然の完全銀髪なんですから身嗜みには気をつけて下さいね。」

 

「ならお前も兄の抜けた髪の毛をこっそり懐に仕舞うのは完全銀髪としてどうなんだ?」

 

 

「はぅ!?ち、ちちちちち違います!これは決して後で匂いを嗅いだり束にして眺めたりなんてしていませんから!!」

 

 

この日ノート・ルゥムが実兄に対して良からぬ劣情を抱いている噂がトリニティ全体に広がるまで時間はかからなかったとか。

 

 

 

 

 

 

場所は変わってトリニティ学園長室。 そこには現在、学園長の魔王妃トリア・セインと1人の少女が対面していた。

 

「それで状況はどうなのかしら?」

 

二黒髪の少女が口を開きゆったりと椅子に腰かける学園長に若干きつめな口調で問いかける。

 

「あぁ予定通り迷宮試験ではお前が彼と同じパーティーに入れる様に手筈は整えてあるさ。」

 

そんな黒髪の少女に対して怒りを感じるわけでもなく学園長は一枚の書類を少女に手渡す。

 

 

「あぁ、迷宮試験が早く来ないものかしら」

 

黒髪の少女は書類にさっと目を通す。そしてそれの役目が終わると学園長に突き返す。

 

「しかしお前もまどろっこしい事を。」

 

「駄目よ。あの子といきなり出会いでもしたら私は我を忘れて襲いかかるに決まっているもの。」

 

どこか悲しそうな表情で黒髪の少女は語る。

 

「……誰か来ます。」

 

学園長室に接近する何者かの気配に気付きようやくもう一人の赤髪の少女が口を開く。

 

 

「そう言えばそろそろ約束の時間だったな。とりあえず二人ともこの机の下に隠れているといい。面白い物が見れるぞ。」

 

「「……?」」

 

 

二人が学園長の言葉の意味を理解する前に扉がノックされた。

 

 

「トリア様、ウルル様と愉快な仲間達が到着しましたよー。」

 

「神族の第一王子を愉快な仲間扱いですか……。」

 

「ごめんなさい兄様。」

 

「なら未来の旦那様という事で……。」

 

「ウルルもそっちの方が……。」

 

扉の外から聴こえてきた話し声が耳に入ってきた刹那、二人の少女は学園長が指で差していた机の下に電磁加速を行なったユアもビックリな速度で隠れていた。

 

 

 

 

キャラ紹介

 

ポール・チネチッタ

 

 

トリニティ三階級槍のクラス担任の神族。変身魔法という新たな魔法を開発させた第一人者。

だが滅界戦争での闘いにて変身魔法の多用による原因不明の副作用で犬の姿から戻れなくなっている。

上記で説明した通り滅界戦争の生き残りで噛みつき屋(ニッパー)として恐れられている。頭脳明晰温厚篤実、時に厳しく時に優しい教師の鏡とも呼べる人格者。生徒からの厚い信頼を得ている。

トリニティ抱きたい男ランキング第1位。

 

 

 

シロウ・ゲオルギウス

 

トリニティ三階級槍クラスの魔族の生徒。

素行不良で一度留年してはいるがその実力はトップクラスで実は魔王の血族。

「デジャヴるんだよ」を口癖にし、日常に退屈しており、常に新しい刺激や感覚を求める無鉄砲な性格。

実は友達想いないい漢。




現在BLACKandWHITEを再プレイ中。ウルル様の可愛さに発狂中。


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第Ⅲ話「ウルル様と愉快な仲間たち」

長らくお待たせした結果がこれです。すいません。そしてウルル様バンザーイ!!


放課後俺ことユア・ルゥムは学園長に呼び出されていた。

 

「まさかノートとアミアと三人でお風呂に入ったことがバレたか。」

 

ノートの未だに成長を続ける果実に驚愕し、アミアの青色の果実に何故だか目頭を熱くしたものだ。

 

「避妊だけはちゃんとしておくようになユアにゃん。」

 

此方をにゃんこ呼ばわりするのは学園長室こと魔族のNo.1魔王妃トリア・セイン。

 

「兄様とお風呂……良いなぁ。」

 

「ふっ、お任せくださいウルル様既にユア様の入浴時間は調べがついております。これでウルル様が出遅れることはありません。」

 

人のプライバシーを軽く無視している二人。小柄で金髪の少女はウルル・カジュタ。竜族王家の金竜最後の生き残りであり竜王女。

 

そしてそれに付き従うのは俺が知っている中でも最強の銀竜の従者ことオペラ・ハウス。

どうやら彼女たち竜族コンビも学園長に呼び出された様である。

 

「それでわざわざこんな話しをするために呼び出したわけではないんでしょう学園長?」

 

「まぁ、勿体ぶる必要もありませぬな。ユアにゃん、それに竜姫殿。近々行われる迷宮試験、共に迷宮を進むパーティーメンバーの選抜ははかどっておられるかと思いましてな。」

 

「ウルルは既に一階級の竜族の子とアミアちゃんと一緒に進む約束をしていますよ。」

 

そういえばウルルは妹のアミアと結構仲が良かったことを思い出す。よく訓練と言ってクレーターを製造しては俺がそれを復元させたのは一回や二回ではない。

 

『そうですか。じゃあユアにゃんはどうなんだ。』

 

「俺に対してとウルルに対しての言動に酷い差を感じるんですけれど。」

 

「まぁユアにゃんだからな。」

 

「兄様ですから。」

 

「ユア様ですからね。」

 

こいつら俺を舐めているな。だがここは大人な俺が華麗にスルーして話しを進めるとしよう。

 

「一応ノートと魔族の馬鹿と潜る事になってはいますが。」

 

「そうかではやはりユアにゃんに任せるとしよう。」

 

俺の言葉を聞いた学園長はまるでサラダに掛けるドレッシングを選ぶかの如く軽さで何かを任せて来やがりました。

 

「嫌な予感がするんですけど一応聞きます。一体何を任せるんですか?」

 

「なに簡単な事だ。ユアにゃんのハーレムもといパーティーに二人程世話をしてもらいたい。」

 

「それは少々勝手が悪いんじゃないんでしょうか?」

 

確かにウルルの言うとおり勝手の知れたメンバーにいきなり未知の人選なんて正直勘弁してもらいたい。

 

「ただでさえノートとあの馬鹿の手綱握るだけでも面倒なんです。これ以上厄介事を増やさないでくださいよ。」

 

「まぁまぁユア様、お話だけでもお伺いしてはいかがですか?」

 

こちらの心情を察してくれたのかオペラさんが合いの手を差し入れる。ありがたいのだがその表情は愉快な物を見つけたとばかりに歪んでいた。

 

「それで誰を入れればいいんですか?優秀な人材……なわけないか。」

 

「いや、優秀だ。二階級でも私が目を付ける程にな。名前は白鷺姫に白川紅。二階級の人族だ。」

 

白川紅その名前に聞き覚えはなかったが白鷺姫そちらの名前には聞き覚えがあった。そして彼が話に絡んだ事で学園長の魂胆を理解することが嫌々ながら出来てしまった。

 

「何も俺を恋のキューピッドにしなくてもいいじゃないですか。」

 

「そう言ってくれるな。あれは不器用な娘なんだよ。」

 

「兄様、誰の話ですか?」

 

「ん?あぁ、ウルルと同じ位可愛い黒のお姫様の話だよ。」

 

不思議そうに首を傾げ耳をピクピクと動かすウルルの頭を軽く撫でて、そう答える。

 

「すまないが頼んだぞユアにゃん。」

 

「了解しましたよ学園長。……だそうなのでお互いに頑張ろうや親友。」

 

前者は不適な笑みを浮かべる学園長に。後者を机の中で必死に身を隠す親友へと向けるとウルルとオペラさんを置いて学園長室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

「まぁ、さすがに気付くとは思いましたが……。」

 

神族の第一王子が去り、それを追って竜王女と従者が出て行き静まり返った室内。

 

それを机の下から現れた燃える炎の様な真紅の髪の少女が崩す。

 

「ぐふっぐふふふふ。さっきまであの子がここにいたのよね。何か良い匂いがするわ。」

 

赤髪の少女に続く様に現れたのは感情一つ垣間見せない彼女とは対照的に表情をとろけさせた黒髪の少女。

 

「全くどこでどう道を間違えたらなるものだろうな。」

 

黒髪の少女を呆れた表情で、けれどもどことなく嬉しそうな表情でトリア・セインは見つめる。

 

「……借りは返しますよユア・ルゥム。」

 

そんな二人を一瞥した後赤髪の少女はそんな呟きを残し学園長室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飲まずにはいられない!」

 

学園長室から離脱後俺ことユア・ルゥムは下町の露天でジュースを買って、まるで八つ当たりでもするかの如く一気に飲みほそうとして……。

 

「えほっ!コホッ!」

 

咽せていた。

 

「くそっ、どいつもこいつも友達がいのない。」

 

あの後手持ち無沙汰になった俺はウルルを誘って遊びに行こうと考えてはみたが当の本人は用事があるからと俺を軽く振ってぎこちない笑みを浮かべて去って行った。

 

「こうなればやけ食いしかないだろうが!」

 

この辺りに存在する出店の食い物を食らいつくす勢いで叫び決意した俺は阿修羅すらも超越した特別な存在だとあったことすらない祖父も認めてくれるはすだ。

 

「さて、何から嫌らしく食らいつくしてやろうか。」

 

「でもあんまり食べすぎると太っちゃうよ。」

 

財布の紐を緩め悲しみに暮れた心を癒やそうとした俺に天空から舞い降りた天使の様な可憐な少女が声を掛ける。

 

「まさか貴様見ているな!?」

 

「残念シャルでした。こんにちはパパ。」

 

神族の少女シャル・ルトル。以前怪我をしていた彼女の治療をして以来凄く懐かれてしまい現在に至る。

 

「とりあえずパパ一緒に来て。」

 

シャルは此方の都合など関係ないと手を引きどこかへと誘導しようとする。

 

「とりあえずじゃないから。どこに連れて行くつもりだ。パパは今から食い倒れ王子になるから放っておいてくれないか。」

 

「もぅ!そんなことよりいちだいじなの!」

 

「なんだ親戚のおじさんが時間でもとめたか?」

 

「ううん。男の子二人がシャルをめぐって決闘してるの。」

 

この時の俺はまだ知らなかった。正確には子供の喧嘩程度の騒動だろうとたかをくくっていたのだが……。

 

「下郎Aか。貴様には関係ない。どけ。」

 

「まあ、関係ないんだけど個人的な意思で断らせてもらう。」

 

一人の人族を取り囲む多数の魔族。どうやら事態は俺が思ったより重かったようだ。

 

「それじゃあパパお願い。」

 

「パパ事態についていけない。」

 

ついてこそいけなかったが一つだけ分かる事があった。

 

(あの人族まさか白鷺姫か!?だとするならばこの状況はかなり不味いな。)

 

シャルに連れてこられてから感じてはいたが確実にこの近くに彼女の気配と凄まじい濃度の殺気が伺えた。

 

「仕方ない。流石に同族殺しをさせるのは不味いか。」

 

「がんばってねパパ。」

 

可愛らしい娘の声を背に受けて俺は騒ぎの渦中へと飛び込んだ。

 

 

 

 

そんな中彼等の状況を見つめる一つの影があった。

 

「どういうことよ!娘がいるなんて……私聞いてないわよ!どうして式に友人代表で呼んでくれなかったのよ。スピーチとか考えてたのに。」

 

その影はしばらく場違いな台詞を連呼していた。

 

 

 

 

 

「加勢するぞ少年!」

 

 

「き、貴様は!?」

 

「ユア・ルゥム。人呼んで阿修羅さえ凌駕する神族だ!!」

 

この時の俺の気持ちは敵に心を奪われた後にブシドーに目覚めた素敵な軍人さんだった。

 

「グ、グラン・ルナだと!?」

 

主犯格と思わしき眼鏡を掛けた少年が俺の姿に戸惑いを隠せずに悲鳴に近い叫びを上げる。

 

「白鷺姫助太刀するぞ!」

 

「あ、ありがとう?」

 

「おじいちゃんが言っていた。男にはやってはならないことが2つある。食べ物を粗末にすることと女の子を泣かせるこ「ひ、ひあぁぁあ!?」って最後まで言わせろやこらぁ!」

 

よく状況が分かっていない白鷺に俺は右手の人差し指を天に向けて掲げかっこ良く決めてみようとするが眼鏡の少年の取り巻き達が突然悲鳴を上げてそれを邪魔する。

 

「殺される。俺達、グラン・ルナ・ブラザー・コンプレックスに殺される。」

 

「い、嫌よ!何で私が殺されなきゃならないのよ!」

 

「ノート・ルゥムが来て俺達殺されるんだ。」

 

しばらく聞いていると悲鳴を上げて錯乱し始めている取り巻きの皆さんはユア・ルゥムに手を出す=ノート・ルゥムに殺されると仰っていられる様です。

 

「いや、ちょっと家の妹どんだけだよ!っていうか俺は手を出されてませんから!出されたのは白鷺姫だから!!いや、まあ状況がよく理解できてないのは認めるけど……。」

 

「ひぃ、イヤァ!!」

 

「じょ、冗談じゃねぇ!」

 

俺が取り巻きの少女に声を掛けるが少女は悲鳴を上げて背を向けて逃げ出す。そしてそれを皮切りに眼鏡の魔族少年と白鷺姫以外はこの場から散って行く。

 

「くっ、下郎A今日のところは見逃してやろう。この慈愛のラーロン様に感謝するがいい。」

 

そして魔族少年すらこちらに一瞥することもなく逃げる様にして去って行く。

 

「ねぇ!グラン・ルナ・ブラザー・コンプレックスってちょっとかっこ良いじゃなくて!お願いだから話しを聞いて!家の妹どういう話しになってんだよ!?」

 

もう誰も俺の問いに答えてはくれない。ただ……。

 

「大丈夫なのか?」

 

「大丈夫パパは何時もこんな感じだから。」

 

俺の背中には自称娘と白鷺姫の生暖かい視線だけが突き刺さっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルル・カジュタ

 

原作との違い

 

姫ではなくユア・ルゥムに助けられており兄として慕っている。

 

後ウルル様バンザーイ!!

 

 

 

オペラ・ハウス

 

原作との違い

 

オペラさんは最高です!

 

オペラさんまじパネェです。

 

 

シャル・ルトル

 

原作との違い

 

親の背中を見過ぎた。むしろ親を間違えた。

 

将来が心配。

 

最高にシャルってやつさ!!

 

 

白鷺姫

 

原作との違い

 

イケメンで強いのね。嫌いじゃないわ!!

 

大魔法ヴェル=セイン×10




下町……露店でいいのか?


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第四話「竜魔の紅刃」

同棲と同居の違いってなんでしょうか?エロゲとギャルゲみたいなものでしょうか?


世の中には現実(リアル)が充実した通称リア充と呼ばれる奇っ怪な存在が確認されている。そしてトリニティ在住のリア充さんはこんなところにもいたようだ。

 

「姫!全くお前は何時も無茶を!心配するこちらの身にもなってみろ!」

 

長い黒髪を背中で束ねノートにも匹敵するであろうスタイルを持つ人族の少女は白鷺姫の無謀な行動に対して心配から来る怒りをぶつけている。

 

「ごめん紅、だけど……」

 

その怒りに対して白鷺姫も無謀を自覚して引け目を感じているのであろう強気にはなれないでいる。

 

 

「いや分かっている。お前の性格は……いやお前のことは、な」

 

 

「紅……ありがとう」

 

 

「あぁ、姫」

 

紅と呼ばれた少女は先ほどの怒りをどこにやったのか一転して熱い眼差しを白鷺姫へと向ける。そして白鷺姫も同様にそんな視線を紅へと向ける。

 

「「……」」

 

今二人の視線は交錯し自然と二人の美少年と美少女の身体は近づき……。

 

 

 

side非リア充

 

「ねぇパパ!あの二人チューしちゃうの!?」

 

どこからか白鷺姫の危機を聞きつけた美少女が悲しみ、怒りときて何故か人目をはばからずイチャイチャし始めた。

 

「パパってば!あの二人発進して合体するの?」

 

シャルの言っていることの半分も理解出来ない。いや本当は分かってはいるのだが認めたくはなかったのだが。もう黒翼さんとか頭から完全に抜け落ちていまさた。

 

「……?パパ、何で泣いてるの?」

 

「リア充じゃないからな」

 

悲しみからかはたまた怒りからか俺の目からはひたすらしょっぱい何かが流れ落ちる。

 

「シャルが大きくなったらパパと結婚してあげるね。だから泣かないで、ね?」

 

「ありがとうシャル、だがそれでは俺が別の意味で変態になってしまうのだが」

 

そう、シスコンとは別のレッテルを貼られてしまう。

 

「大丈夫だよ、この世界ならシャルは負けないから」

 

「なんだそれは?」

 

「さぁ?なんだろうね。それよりパパ助けてくれてありがとう」

 

「まぁ、それは構わないが結局何であの魔族の少年に目をつけられたんだ?」

 

「生理的に受け付けなかったから顔面にお水をぶちまけたの」

 

「それはお前が悪い」

 

むしろあの魔族少年に同情の念を禁じ得なかった。

 

 

side路地裏の少女

 

艶やかな黒髪を持つ少女はその顔に魔王の名に相応しい程の怒りの感情を貼り付けていた。

 

「白鷺姫!相変わらず気にいらない!!」

 

その声はとても低く白鷺姫に対して抑えようのない殺気を向けていた。

 

 

side赤髪の竜魔

 

息を吸えば彼と同じ窒素を酸素を吸うことが出来た。

そしてただそこにいるだけで彼の匂いを残り香を鼻でそして肌で感じる事ができた。

 

「全く我ながらどうかしていますね」

 

彼のことを想うだけで胸が締め付けられる。

できる事なら彼の身体の自由を奪い満足するまでその雪の様に白い肢体を貪り尽くしたい。そんな狂人じみた考えが脳裏をよぎるのは最早数えるのも億劫になる程だ。

 

「これではあの人のことを悪く言えないじゃないですか」

 

自嘲じみた笑いをこぼすと彼が普段身体の疲れを癒やしているであろうベッドに腰を掛けシーツを手にしておもむろに顔を埋める。

 

「くんかくんか」

 

そのまま息を吸い込むと柑橘系のまるで年頃の少女の様な甘美な芳香が鼻をつく。

 

「くんかくんか」

 

シーツで己の身を包むとまるで彼に熱い包容を受けている様なそんな感覚に陥る。

 

「くんかくんか。」

 

そして陥ったからこそ普段では犯さない様な失態を犯してしまった。

 

「……はい?」

 

「…………!?」

 

彼の匂いを堪能する余りに部屋に帰宅した彼に気づかづあまつさえその姿を晒してしまった。

 

 

 

非リア充side

 

皆さんは思春期時代に好きな異性の衣類もしくは普段から身につけている物が手の中にあったらどうしますか?俺ならまぁ、うん。嗅ぐね。

そして好きな異性に見つかって気持ち悪がられてしまうのだろう。

 

だがもしも逆に自分がそんな現場を目撃してしまったのらあなたはどうしますか?

 

どうか誰か教えて下さい。俺は切実に願います。

 

ことはシャルと別れて寮の自室に帰宅したのだがそこで異変に気づいた。自室の中に何者かの気配を感じた。我が愛すべき家族でも友でもない別の誰かの気配を。

 

(神族関連の情報を狙った侵入者か?仕方ないストレスの発散相手にでもなってもらうか)

 

一応自分も神族王家に連なっている。故に色々な方面から狙われることも少なくない。それ故にこの様なことも珍しくない。正直慣れている。慣れたくはないが。

 

そして俺は慣れているからこそ詮無きことと考えて何時でも戦闘に移れる様に気を引き締めて扉を開けた。否、開けてしまった。

 

「くんかくんかぁー♪」

 

「……はい?」

 

「……!?」

 

部屋の中には紅髪を持った小柄の少女がとろける様な笑顔でベッドのシーツの匂いを嗅いでいた。

 

彼女には見覚えがあった。否、忘れ様がない。

 

彼女の名はフォン=テルム。魔族のNo.2。もしも俺にライバルと呼ばれる存在がいるとするならば彼女のことをそう言うのだろう。

 

 

 

 

 

 

「何か言ったらどうですか?」

 

 

状況を整理しよう。今俺の前には竜魔の紅刃こと死神の二つ名で恐れられているフォン=テルムがいる。

どこで何をしている?俺の部屋のベッドの上でそのシーツの匂いを嗅いでいる。

 

「駄目だわけがわからん」

 

「そうですか。なら消し飛びなさい!!」

 

「は!?ちょっ!?おまっ」

 

ベッドにちょこんと可愛らしく女の子座りしていたフォンはどこから出したのか二振りのハーケンを取り出して魔力を乗せて斬りかかってくる。ただし油断したら首が胴体からさようならする程の速度で。

 

「ふぅ、流石にこの程度ではどうにもできませんか速さだけが取り柄の変態さん」

 

「ちょっと待て!意味もなく殺されかけたというのに変態扱いとか何なの!?泣いていいの!?」

 

「別に泣いても構いませんよ、その間に首を落としますので」

 

にこやかに微笑みフォンはゆっくりと歩み寄ってくる。ちなみに目は笑っていない。そして殺気のオマケ付き。

 

「先ほどのこと綺麗さっぱり忘れさせてあげますよ」

 

斬撃をしゃがんで避けるとバックステップで距離を取ろうと思ったのだが………自分が今どこにいたのかということを再認識させられる。

 

「流石のあなたもこの狭さでは実力を出し切れないようですね」

 

今自分の背中には壁があった。

 

ここは寮の二人部屋。現在は俺一人で使わせてもらってはいるがそこまで特質して広くはない。

 

そして俺は超スピードでの移動と攻撃を得意としている。

 

さらに俺が使う加速魔法は。純粋な攻撃魔法を無理やり変換して使っている為に使用しただけでこの部屋をとんでもない有り様にしてしまう。後は急な方向転換が出来ない為に壁に激突してしまう。

 

故にこの部屋では俺は実力は出せない。部屋を寮の損害を考えずに闘うことは可能だがそんなことをすれば寮の守護神もとい阿修羅を召喚してしまう。

 

「いや、もう遅いか」

 

「………何をですか?」

 

「お前は次に俺の後ろを見て『しまった』という」

 

俺は黙って自分の部屋の扉を否、扉だった物を指差す。

 

「なっ!?しまった……ハッ!?」

 

「あらあらこれはどういうことかしら?」

 

最初フォンが放った魔力を乗せた一撃は俺に当たることはなかった。だがその後ろにあった扉を原型を残すことなく破壊した。そしてそれは寮の阿修羅ことルアン=ルゥムを召喚するのには充分だったのだ。

 

「フォンとしたことが……。ユア=ルゥム相変わらずのようですね」

 

「そんな減らず口叩けるのも今だけだからな」

 

我が母のお説教はかなり怖い。

 

「少しは反省するといい」

 

此方を睨みつけるフォンを指差してそう告げて俺はゆっくりと部屋から離れていった。

 

 

 

 

どうやら世の中上手くいかないらしい。

 

「駄目でしょうユアちゃん、女の子に恥をかかせちゃ」

 

「はい、すいませんでした」

 

頭を下げていた。誰が?俺が。ユア=ルゥムが。

 

「まぁ感情に流されてしまったフォンにも責任はあります。ですのでここは怒りをお納め下さいお義母様。」

 

何故こいつが被害者みたくなっている?何故膝を地に付けている此方を見下ろす?

 

「良かったわねユアちゃん、フォンちゃんが心の広い子で」

 

「はい、恐悦至極にございます」

 

俺は一礼しつつ二人の様子を伺う。母さんがフォンに向ける目はとても暖かい母親の目。あんたらいつの間にそんなに仲良くなりやがった?

 

「素直でよろしい、でも最後にこれだけは言わせてね」

 

「はい?」

 

「男の子は常に女の子の理不尽な暴力を平気な顔で受け止める義務があるのよ」

 

「…………どういうことですか?」

 

「ユアちゃんも好きな女の子でもできればわかるわよ」

 

「はぁ」

 

母さんには悪いがその言葉の意味は今の俺にはわかりそうもない。

 

「それじゃあ私は行くけど扉はちゃんと直してね」

 

母さんの後ろ姿が見えなくなると溜め息を一つ吐き身体を起こす。

 

「ではさっそく扉の修理をお願いします」

 

「何を偉そうに……それよりお前には聞きたいことが…………」

 

「生憎ですがフォンは吹きさらしのプライベートのない場所で何かを語る程図太い根性は持ち合わせていません」

 

そう言うとフォンは再度ベッドに腰を掛けるとあの値踏み視線をこちらによこす。

 

「貴様はどこかの王女様かよ」

 

「とか言いつつも治すんですね」

 

だって母さん怖いから。

 

 

 

 

目の前には破壊前より完璧に修繕された扉。

 

「俺の復元魔法は神族一ィぃぃぃ!!」

 

「…………」

 

そして腕を組みそんな俺を冷めた目で見つめる主犯。

 

「そ、そんな目で見るなよ」

 

「全く、知りたいことがあったのではないのですか?」

 

「そうだ……お前!何でここにいる!?魔族のNo.2が神族第一王子の部屋で何をやっていた!?」

 

ちなみに先ほどのくんかくんかについてはもう言及するつもりはない。どうせまた俺が怒られるんだから。

 

「貴方の部屋と言うのは正しくありませんね、今日からフォンの部屋でもあるのですから」

 

ちょっと待て、今何か聞き捨てならない言葉があったような?

 

「どういう……」

 

「今日からフォンはこの部屋で生活します」

 

「な、ななな」

 

「貴方と同棲します」

 

「なんだってぇぇぇえ!」

 

 

 

 

 

 

拝啓天国のお父様。お元気お過ごしでしょうか?相変わらず無茶苦茶やって周りを困らせてはいませんか?

今日はご報告があります。

自分美少女と同棲することになりました。

あ、そこは嬉しいのですが相手はあの竜魔の紅刃フォン=テルムだったのです。

 

「同居人は美少女、良かったではないですか」

 

「自分で言うなよ!」

 

「事実ではありませんか」

 

あまりの事態に天国の父に助けを求めてどうやら現実逃避していたようだ。

 

「ったくそれで何が目的だ?」

 

「フォンは明日からトリニティ三階級槍のクラスに編入します」

 

「ある程度予想はついていたけど……」

 

生憎俺が聴きたいのはそういうことじゃない。

 

「理由でしょうか?」

 

「あぁ、何故魔界のNo.2とまで言われているお前がわざわざこのトリニティに俺と同じクラスに俺と同じ部屋に現れた!?」

 

それ程までに彼女の影響力は大きい。かの魔界の黒翼程ではないだろう、だがトリア=セインが魔界に不在の今それを彼女が様々な面で支えていたのは確実だ。先日の学園長との一件でもしやとは思ったが何故そんな彼女がフォン=テルムがここにいるのか?俺が聴きたいのはそういうことだ。

 

「別にそんなに難しく考える必要はありませんよ」

 

不適な笑みを浮かべるとフォンはゆっくりと此方に歩み寄り耳元で……。

 

「フォンはただ貴方が欲しいだけですから」

 

こう囁いた。

 

 

 




EX-ONEのフツウノファンタジーって面白いですよね。リブラちゃんマジ天使。


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