生徒会の庶務の一存 (加賀直 冴池 )
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駄弁る生徒会①

 

席の位置

 

ホワイトボード

桜野

杉崎 紅葉

 

深夏 真冬

笹鳴

 

キャラ紹介

 

桜野 くりむ

見た目は子供、頭脳も子供なロリっ娘生徒会長。何事にも一生懸命。お子様なため少々考えたらずだったりするが時々妙に的を得たことを言う。

 

杉崎 鍵

優良枠にて生徒会入りしたハーレムを目指して歩み続ける変態的副会長。しかし、勉強は優秀、顔も悪くはない、とけっこうハイスペックではある。エロ……もといギャルゲ大好き男子高校生。

 

紅葉 知弦

会長とは別物の長身的なモデル体型を持った美女。しかしその内面はブラックなものとドSな心で出来ている書記。生徒会の参謀的な存在だが一度嵌るとなかなか思考の渦から抜けれなくなるときがある。

 

椎名 深夏

ボーイッシュなツインテール美少女。運動神経抜群という域を超えた超人副会長。杉崎とは同じクラスな上隣の席だがデレる様子のない正統派ツンデレ少女。

 

椎名 真冬

深夏の妹。姉とは正反対でインドア派かつ儚げな美少女。ゲームなどが大好きな半廃人会計。腐女子の気もあり、そこらへんの面では杉崎や笹鳴に恐れられている。

 

笹鳴 涼

杉崎と同じく優良枠で入った2年生。入る気がなかったがテスト後交通事故で入院し、優良枠の存在を教えられなかったというか教えてくれる人がいなかった哀れなソロ充庶務。少々ひねくれた性格をしている。目つきが悪く、前髪が長いため根暗と言われやすいが一応顔は整っている。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「世の中がつまらないんじゃないの。貴方がつまらない人間になったのよ!」

 

俺の正面に座る見事なロリボディをした我らが生徒会長桜野くりむが何処かで聞いたことがある言葉を叫んでいた。

しかし珍しくマトモなことを名言に思わずなるほどと思う。杉崎も思うことがあるのか会長の言葉に頷いていた。

人は何かに飽きながら生きている。知ってその物事につまらなさを感じて生きている。

学校生活も楽しいのは始めだけだった。

青春に対する憧れも始めだけだった。

恋に対する幸せも始めだけだった。

初めては知らないから楽しめる。だが知れば知るほどそれに対して飽きや退屈さやくだらなさを感じられる。

特に友達なんかがいる奴はそれが如実に現れている。彼らは常に新しさを求めて動く。たとえそれが同じものだとしても些細な違いがあればそれを新しいものとして捉えようとしているのだ。そうやって現実を歪めて捉え、自分たちの都合の良い方向に持っていく。そして何か不都合があれば責任を誰かに押し付ける。まるで肉食動物に襲われた草食動物の群れのようにだ。

こうして誰かに責任を押し付けた後は自分が押し付けられないように生きていく。楽しそうに笑いながら怯えて暮らしていかなくてはならないのだ。

つまり、そこから至る結論は……。

 

「じゃ、童貞もそんなにわるくないってことですか?」

「つまりぼっちは最高だということですね?」

「ぶっ!?」

 

俺と杉崎の答えに茶を吐き出す会長。

危かった。もうすぐで俺の制服にかかるとこだった。

 

「おい杉崎。貴様のくだらない発言のせいで会長がギャグ漫画張りにお茶を吹いちまったじゃねえか」

 

「俺のせいにするなよ!今のはお前のせいだろ!」

「どっちもよ!」

 

吐いたお茶を拭き終わった会長が机をバシッと叩きながら叫んだ。

 

「なんで杉崎と笹鳴はさっきの話でそんな結論を出せるのよ!」

「甘いですね会長。基本、俺の思考回路はそっち方面に直結するようにできてます!」

「いや俺は普通に今までの体験と今の言葉を真剣に検討した上で出た結論ですよ」

「なにを誇らしげに!杉崎たちはもうちょっと生徒会役員という自覚をねぇ……」

「ありますよ、自覚。この生徒会は俺のハーレムだという自覚なら充分ーー」

「ごめん。杉崎は役員としての自覚はいいから、まずはそっちの自覚を捨てることから始めようね」

 

会長は杉崎が繰り出すボケたちに真摯にツッコミを入れていた。

疲れないだろうか?俺だったら早々に投げ出している自信がある。

さて、会長のいつものツッコミを見たことだし、本でも読んでいるか。

と俺が本を取り出す中、会長は先ほどは吹き出したお茶をティッシュでせっせと拭き取っていた。そして使ったティッシュを丸め、片目をつぶりながら真剣に狙っている。しばらく狙いを定めた後、いざ投げ入れようとしたとき。

 

「会長。好きです」

「にゃわ!」

 

杉崎の突然の告白によってあらぬ方向に、ティッシュは飛んで行ってしまった。

俺はいつもの事なので気にせず本を読み進める。「俺ガイ◯」マジ最高。

 

「杉崎はどうしてそぉ軽薄に告白できるのよ」

 

いやー比企◯君マジでかっこええわー。というか、共感出来てしまうとこが多々あるんだよね。このキャラ。

 

「本気だからです」

 

雪◯下さんもクールでいいよなー。うちの書記をしている先輩を彷彿させるキャラだよな。まあ、スタイルに天と地ほどの差があるけど。

 

「嘘だ!」

 

由比◯浜さんもいい味だしているんだよな。あの優しさという強さは尋常ではない。少なくとも俺には無理だな。

 

「『ひぐ◯し』ネタは微妙に古いですよ、会長」

 

しかし、何故平◯先生は結婚できないのだろうか。こんなにもーー

 

「「少し自重しろよ(なさいよ)!その思考!」」

「おおう!」

 

あーびっくりした。何なんだいったい?

 

「その意味わかんないみたいな顔やめろ。少しはあっちの事情を考えてろよ!」

「ん?ああ、安心しろ。ちゃんと伏せ字を使うから」

「いやいやいやいや。そうゆう問題じゃないからね!」

「まっ。次から気をつけるわ」

 

そう言って本を閉じる。どうやらその態度に納得したようだ。今度からは富士見書房の本を持ってこよう。ガガ◯文庫は家で読めばいいや。

というかこいつらさりげなく俺の思考回路を読んできたんだけど。なにこれ怖い。

 

「それでなんの話をしてたんだ?」

「俺の愛がどれだけ本気なのかという話だ」

「なんだ。そんなことか。それなら軽いという結論以外ないだろう」

「おいっ!」

 

俺の出した答えに何か言おうとするが、それを会長に遮られる。

 

「そうよ!だいたい杉崎が初めてここに顔出した時の、第一声を忘れたとは言わせないわよ!」

「なんでしたっけ、えぇと、『俺に構わず先に行け!』でしたっけ?」

「初っ端からどんな展開よ生徒会!」

「違うだろ杉崎。『俺の屍をこ◯ていけ』だろ」

「だから何があったのよ生徒会!っというかそれはあの名作に対して失礼よ!」

「えぇと、『ただの人間には興味はありません。宇宙人、未来人ーーー」

「危険よ杉崎!いろんな意味で!」

「大丈夫です!原作派ですから!」

「何の保証⁉︎あと、アニメの出来は神よ!」

「おい待てお前ら。人に注意しといてそれかよ」

 

流石にばつが悪かったのかそこでこの危険なネタをやめた。人に注意して自分がやらない奴は最低だと思います。

と、ここになってようやく杉崎が正しいことを言う。

 

「『皆好きです。超好きです。みんな付き合って。絶対幸せにしてやるから』でしたよね?」

「そうよ!あの時点で、この生徒会に貴方のいいかげんさは知れ渡っているのよ!誰でもいいから付き合えなんて堂々という人間に、誰がなびくっていうの!」

「失礼な。誰でも良いわけではありません」

「そうだな。美少女じゃなくちゃいけないんだよな」

「その通りだ!」

 

まあ、その基準はわからなくもない。普通の男なら可愛い娘の方がいいもんな。まあだからといって堂々とハーレムの一員になってくれなんて言わないけどな。

しかし会長は納得していないようだった。

 

「可愛いなら誰でもいいってことじゃない!」

「一途なんです!美少女に!」

「括りが大きいわ!」

「希少種ですよ、美少女」

「そうゆう問題じゃない!複数の人間に告白していることが不誠実なのよ!」

「ええー。ふらふらしている主人公よりもよくないですか?こう『ハーレムルートを俺は行く!』みたいに宣言している方が、潔いでしょう」

「残念ながら貴方はギャルゲの主人公とはスペックが違うわ」

「じゃあなんの主人公だと言うんですか!こんなに女の子が好きなのに!」

「基本的に主人公じゃなくて悪よ!淘汰される側よ!もしくは主人公の軽い親友タイプよ!」

 

その言葉に会長がそっち関連にも詳しいことがわかった。とても役に立ちそうにない知識だ。

しかし、この話を聞き俺はある結論が浮かぶ。

 

「なるほどそうなると俺が主人公ということに……」

「ならないわよ!そしてゲームの理論を、現実に持ち込まない!」

 

俺の至った結論をバッサリと斬る会長。いや、最初にその例えを持ち出しなの会長でしょ。

と俺が少しボケを入れていると杉崎が会長が外したティッシュのゴミを拾ってゴミ箱に捨てていた。

 

「…………」

 

会長はその様子を少し複雑な顔をして見ながら着席をする。杉崎も席に座り、少し首を傾げながら問いかける。

 

「どうしました?会長」

「杉崎はたまに気が利くというか優しいわよね。……無意識に」

「ええ。そういうギャップって好感度の上昇幅大きいでしょう?」

「狙い⁉︎しまった!既に私の中の好感度はいくらか上昇していまったわ!」

「いや、それって対象に教えたら意味なくなるだろ」

「しまったあぁぁぁあああ!」

 

馬鹿なんじゃなかろうか。

しばらく自分の失策に嘆いていた杉崎だがしばらくしてすぐ持ち直した。……タフな奴だな。

 

「ま、多少は狙っているとしてもほとんど無意識ですよ。というか、昔からのクセですね。女性にモテるための。今じゃ習慣となりつつありますから」

「尋常じゃないエロパワーね」

「そうだな。他のことに使えないことが悲しくなるほどにな」

「うるせぇよ!まあハーレムルートを行くからには体力は必要不可欠になっていきますからね」

「あーなんの体力かは言わないでね」

 

そう言って耳を手で塞ぐそぶりをしている。まあ、このロリロリッとして容姿通り会長はこの手の話が苦手だ。

しかし、これって言わなくても言おうとしていることが分かっている証じゃあ……。

杉崎もそのことに気づき会長指摘すると。

 

「…………。……はぅ」

 

赤くなってしまった。その様子を恍惚の顔で眺める杉崎。正直セクハラして喜ぶおっさんにしか見えん。

まあ、俺もちゃっかりその顔をばれないように写真に収めたのだが。よし、後はこれを家で印刷して会長ファンクラブの会員どもに売りつけよう。これなら1000円はいける。

と、俺が今後のビジネスについて考えていると生徒会室の扉が開いた。

 

「だめよキー君。あんまりアカちゃんいじめちゃ」

 

そう言いながら入ってきたのは会長と同じ3年生。書記の紅葉先輩が入ってきた。

ちなみにキー君とは杉崎のことだ。彼の名前は「鍵」と書いて「けん」と読むからキー君。

で、アカちゃんとは会長のこと。くりむ→クリムゾン→真紅→アカちゃんとなった。べつに赤ちゃんのようだという意味ではないらしい。……たぶん。

ついでに言うと俺は普通にリョウ君。基本的に彼女は年上は苗字で年下は名前で呼んでいる。だからといって別にアダ名で呼ぶことに好感度は関係ないらしい。本当かどうかは知らないが。

そんな彼女は席に座ろうとした時俺にしか聞こえないだろう絶妙な声音で俺に話しかける。

 

「あとでその写真送ってちょうだいね」

「っ⁉︎」

「じゃないと……」

 

……後で絶対にこの写真を送ろう。俺の明日が消える。

俺が断固たる決意を固めていると、紅葉先輩が杉崎の前に座ると同時に杉崎は先ほどの言葉に対する反論をする。

 

「いじめてなんかいませんよぉ。ただ辱めていただけです。」

「それ余計に悪質じゃない」

「大丈夫ですよ。同意の上ですから」

 

その言葉にまた会長が「嘘だ!」とまた言っていたが杉崎はそれを無視して紅葉先輩に話しかける。

 

「しかし、今日はどうも集まりが悪いですね。俺のハーレム」

「ハーレムじゃなくて生徒会ね。いいんじゃないかしら特にこれといったことはないし」

「集まっても駄弁るか菓子食うぐらいしかしないしな」

 

紅葉先輩の意見に深く賛同する俺。実際やることないしな。

しかし、杉崎は納得していないようだった。

 

「分かってないですねぇ。基本的に好感度は、直接合わないと上昇しないんですよ。ほら、ギャルゲなんかでもよく行く場所によってヒロインが決まるでしょう?」

「当然の知識のように言われても困るけど」

「つまり!生徒会室に来ないということはイコール俺との愛を育めないということになるんですよ!」

「「だから来ないんだろ(じゃないかしら)むしろ」

 

俺と紅葉先輩が杉崎を攻撃する。

しかし、それくらいでは挫けないのがこの男だ。その言葉をポジティブに捉える。

 

「でも、知弦さんは俺との愛を育みに来てくれたんですね!」

「…………。……あ、うん、そうね」

 

否定の言葉より酷かった。完璧に上の空だった。あえて言うなら適当だった。

俺だったらもう彼女に話しかけることは断念するだろう。しかし、それでも諦めないのが杉崎鍵という男だった!

 

「しかし!こうゆうクールな女性ほど惚れたら激しいに違いない!」

「あ、それは正解。激しいわよ、私。小学校の頃、初恋の男の子に『好きです』の言葉だけを羅列した手紙を一日三百通出して、果ては精神崩壊までに追い込んだから。あまりに脆かったから冷めちゃたけどね。……貴方はどうかしら」

 

目を細めながら言う紅葉先輩。

怖っ怖いよそれ。その初恋の男の子の末路が気になってしかたがないよ。取り敢えずその男の子に合掌。

流石の杉崎もその恐怖対談に畏縮したのか黙り込んでしまう。

このまま終わりかと思ったとき、杉崎は立ち上がる。

 

「分かりました」

「え、この話を聞いた上で覚悟できたの?私の全てを受け入れるって?それ、ちょっとポイント高いわ、キー君。確かにキー君フラグが私の中で若干ーーー」

「知弦さんとは体だけの関係を目指します!心はいりません!」

「…………。……さ、次の問題は、と」

 

本当に馬鹿だなこいつ……。今自分が建てたフラグを一瞬で自分で折ったぞ。哀れというか愚かというか……。

ふと、会長の方の存在を思い出し目を向けると紅葉先輩の持ってきたお菓子に一生懸命手を伸ばしている会長がいた。

いや、何勝手に食べようとしてるんだこの人。一言断りを入れるべきだろ普通。

 

「何勝手に食べようとしてるんですか貴方は」

「うっ……」

「断りくらい入れましょうよ」

「つっ机の上に置いた時点で皆のものだもん!」

「ジャイアンですか貴方は」

 

いや妙に正論じみた言い訳を言ってくるぶんジャイアンよりも質が悪いと言えるんじゃなかろうか。

と、俺たちの会話でこちらの様子に杉崎達が気づいたようだ。

 

「会長、太りますよ」

「うぐっ!だっ大丈夫、胸と背に栄養分を回せば問題なし!」

「腹に回った時のリスクは計り知れないですけどね」

 

確かにな。それに一度太ったら戻るの大変らしいからな。

だがそんな杉崎の警告を無視して会長はお菓子を食べてしまった。あーあ。

 

「えっと次の問題は……『メタボリックシンドローム』ね、よし正解っと」

 

……本当にそんな問題があったのだろうか。内臓脂肪型肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症のうち二つ以上合併した状態を何というか。みたいな問題だろうか。保健の勉強とかでもしてたのか?

まあ何がともあれ、その紅葉先輩のセリフがクリティカルヒットした会長は崩れ落ちてしまった。後悔するなら食べなければいいのに……。

だが、あまりの落ち込みようにかわいそうになったのか杉崎が会長のそばへ寄った。

 

「会長。大丈夫ですよ、太ったら…

…」

「えっ杉崎、太って醜くなってもすきでいてくれるの?」

「仕事に生きればいい!」

「リアルアドバイス!?」

「俺、陰から応援してますから!プログで匿名で励ましのメール送りますから!」

「陰からなんだ!匿名なんだ!太ったら見捨てられるんだ!」

「だから太っちゃだめですよ。太っちゃ」

「あーうー」

 

訂正。ただの追い打ちだった。

会長は受けたダメージ(メンタル)のせいでピクリとも動かなくなっていた。

 

「頑張れ会長!俺のハーレムに残るために!」

「あっ、私太ってもいい気がしてきたかも」

 

と思っていたら鍵の一言で即復活を果たす会長だった。この態度で彼のハーレムへの道のりの険しさがよくわかる。

そんな感想を抱いた時、生徒会室のドアが開く音がした。

 




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駄弁る生徒会②

……なんだろう。毎日が忙しく感じる。(言い訳)
更新遅くなってしまいました。すいませんでした。


「うぃーす!」

「おそくなりました〜」

 

対照的な挨拶とともに入ってきたのは俺や杉崎と同じ二年生にして副会長の椎名深夏とその妹にして会計の椎名真冬がいた。

しかし毎回2人を見るたびに思うんだが本当に血の繋がった姉妹なのだろうか?

どちらも美少女なのは同じだが、姉は強靭な肉体に対し妹は病弱。姉はアウトドア派で妹はインドア派。おまけに髪の毛の色まで違う。もしもどちらかが拾われた子だと言われたら納得するくらいだ。

 

「おい、涼。今なんかすげー失礼なこと考えなてなかったか?」

「イイエ。ナニモ」

 

だからなんでここの奴らは心の声がわかるの?エスパーなの?

というかマジであなたの拳は致命傷になりかねないので引っ込めてくれませんかね?椎名さんや。

俺は全力で目を逸らしながら逃げ道を探す。敵前逃亡。俺が得意とすることの一つである。

 

「ん?椎名妹。なんか昨日の時とカバンについてるストラップが違ってないか?」

 

俺は話を逸らすために目を逸らした先にいた椎名妹を見て気づいたことを指摘する。確か昨日までのはリスだったのが今日はウサギになっている。

 

「あっ本当だ。昨日あったやつと違うね真冬ちゃん」

 

杉崎も俺の言葉で気づいたのだろう。早速椎名妹のそばにより訪ねる。というか速すぎじゃね?今お前瞬間移動並みの速さで移動してたんだけど。

 

「あっはい新作なんです」

「へえかわいいね。まあ真冬ちゃんはもっとかわいいけどね」

「えっ……」

「おい馬鹿杉崎。今そんなことしたら……」

「あたしの前で真冬を口説いてんじゃねぇ!」

「ぐぼばぁ!!」

 

椎名妹を口説いてるところを見つかった杉崎は椎名の華麗な踵落としで床に顔をめり込ませていた。

おいおい。流石にこれはやりすぎだ。仕方が無いので俺が注意しておこう。

 

「おい椎名。床の修理代がかかるからやめろ」

「ん?ああわるいな。涼」

「わかればよろしい」

「いやよくないから!心配するとこおかしいから!これ普通に致命傷だからね!?」

「黙ってろ杉崎。というか死んでくれ」

「急すぎるストレートの罵倒!えっ俺なんか怒らすようなことってしたっけ?」

「存在が俺の怒りに触れるんだよ」

「理不尽すぎる!」

 

素晴らしいまでのオーバーリアクションである。取り敢えずこれ以上相手するのはマジで疲れるのでやめよう。

 

「なあ椎名姉妹。お前ら『初めての時はあんなにおもしろかったのに』ってことなんかあるか?」

「なんだよ藪から棒に」

「いやな珍しく会長が『世の中がつまらなくなったんじゃないの!貴方がつまらない人間になったのよ!』なんて珍しくいい言葉を言ったからよ」

「地味に会長さんの声真似うまいですね笹鳴先輩」

「ちょっと笹鳴!珍しいってどういう意味よ!」

 

会長が何か叫んでいるが無視。騒がしい奴の相手は同じく騒がしい杉崎にでもやらせておけばいいのである。

しばらく2人とも「う〜ん」と考えていたが、しばらくして椎名妹がおずおずと手を上げながら答えた。

 

「まっ真冬はお化粧……コスメですかね」

「化粧?」

「はい。真冬、小学校のときはお母さんがしてるのを見て真冬もやりたいなぁと思っていたんです。それで真冬、中学のときに初めて自分のコスメを買ったときはうれしくてたまらなかったんですけど……。よくよく考えたら真冬、自分を着飾るのが好きじゃなかったみたいで。最近だと、最低限のことしかしたくないといいますか……」

 

なるほど確かにそれも『初めて』だから感じた喜びだ。それに確かに椎名妹の顔を見ても化粧をそこまでしていないのがよく分かる。まあ、そこまでする必要がないというのもあるんだろうが。

 

「なるほどね。真冬ちゃんらしいなぁ。大丈夫!真冬ちゃん元々可愛いいんだからその美貌を引き立てる分のほんの少しのメイクで充分だよ」

「あっありがとうございます」

「だからあたしの前で口説くんじゃねえよ!」

「がはあ!?」

 

感心しながら口説きにかかる杉崎だったが一瞬で椎名の見事なボディーブローを喰らいうずくまる。この男に反省の2文字はないのだろうか?

俺が心底呆れた目で杉崎を見ていると袖を引っ張られたのでそちらを向くと椎名妹が俺の袖を指先で引っ張っていた。

 

「どうした椎名妹」

「えっと……。笹鳴先輩。持ってきてくれましたか?この前頼んでおいたものなんですけど……」

 

……ああ。そういえばそんなことも頼まれていたような気がした。この前買った記憶があるので鞄の中を探ってみる。おお。あったあった。

 

「これであってたよな?黒◯のバスケの同人誌」

「はい!これですこれです!途中で作者さんがご病気のためわずか30部しか発売されなかったんです!苦節九ヶ月。ようやく手に入れる事が出来ました!ありがとうございます。笹鳴先輩!」

「おっおう。よかったな……」

 

あまりにもハイテンションになっている椎名妹に思わず引いてしまう。なんだろう……どこか発売延期されていたギャルゲを手に入れた杉崎を彷彿させるんだが。

と、そんなふうに椎名妹の隠された一面に戦慄していると杉崎がまた椎名にぶっ飛ばされていた。……この短時間でなにしてんのあいつ。

しかしぶっ飛ばされた杉崎は椎名がなにをされたのかは謎だが怒りに震える中、平然と立ち上がりそして満足そうに生徒会室を見渡した。

 

「ううん、ハーレム万歳。いつ見てもいい光景だなあ。約一名余分なのがいるのは残念だけど生徒会に頑張ってはいってよかった」

「余分なのがいて悪かったな」

「そういえばキー君って《優良枠》で生徒会に入ったんだったわね。……とてもそうは見えないのに」

「むしろ《監視対象》として扱われそうだしな」

「どういう意味だよそれ!?」

「そのままの意味だが?」

 

他にいったいなにがあるっていうんだ。

そんな俺に対して杉崎が反論を述べようとした時、会長がバンッと机を叩く。……絶対に痛がっているがそれは言わぬが花というやつだ。

 

「そもそもこの学校の生徒会役員選抜の仕方からしておかしいわよっ!人気投票からしておかしいけど、《優良枠》にしても、成績だけじゃなくてメンタル面も評価に加えるべきだわっ!」

「俺はこの生徒会役員選抜、最高だと思いますがね」

「俺からしたら最悪だけどな」

 

会長と杉崎のセリフに思わず返す。

ここ、碧陽学園の生徒会役員選抜はかなり変わっている。

まず、基本的に役員は人気投票で決定される。立候補を立てないのだ。

こうしたやり方だと大抵、美少女に票が集まるのだ。イケメンは男子からの支持を失うが、美少女は大抵の人間から支持される。男子はもちろんのこと女子からも集めることができる。つまりある種のミスコン状態になってしまっているのだ。

しかし、このやり方は決して悪いやり方ではない。こういった純粋な人気投票で決まった人物は人望がありカリスマ性を持った人物だからだ。ようするにトップカーストの人間である。

実際のところ生徒会の仕事は誰にでも務まる。必要なのは最低限のやる気と先ほどあげたカリスマ性だけだ。

その結果、生徒会はこのように美少女の集まりとなる。

しかし、やはり妥協点、つまるところPTAなどの外側からの印象を良くするための処置が必要となってくる。それが《優良枠》だ。各学年ごとの年度末試験のトップ成績者は、本人の希望があれば生徒会に入れるのだ。

これにより優秀な人材が生徒会に入れることができるのだが……普通、トップ成績を取るような頭のいいやつは勉強以外の行為をしようとしないわけで、ほとんどかなかったように扱われていたルールである。

だが、それを使って生徒会に入ったのがこの杉崎鍵という男と、断りの返事をしていなかった俺である。

 

「しかし、鍵もよくやるよなあ。そのパワーは尋常じゃねーぞ」

「まあ俺は《自分以外全員美少女のグループ》に入るためならなんでもやるぞ。たとえ入学成績最下位近くの成績でも、一年で一位になるくらい朝飯前です」

「お前のその力はどこから沸くんだよ……」

 

あまりにも馬鹿らしい話に思わずため息をつく、最下位から一位ってとんでもない進歩だぞ。

 

「あのぉ、杉崎先輩はわかるんですがなぜ笹鳴先輩は生徒会に入ったんですか?真冬から見てもそういったことはしないタイプだと思うんですけど……?」

「そういえばそうだな。鍵はともかくとして涼はなんで入ったんだ?」

 

俺が感心半分、呆れ半分の目で杉崎を見ていると、椎名姉妹が訪ねてきた。まあ、普段の言動と行動を見てれば当然の疑問だよな。

 

「俺も入るつもりはなかったんだ」

「ではなんで……?」

「いや実はだな。俺、年末試験の成績発表の前日に交通事故にあってな。一週間入院してたんだ。しかも、生徒会とかに興味がなかった俺は《優良枠》のことを知らなくてな。断りの返事をしてなかったら勝手に決められたんだ」

「それは不幸だったな」

「まったくだ。後で断りの連絡したけど、もう資料を作っただのなんだのと言われた挙句、最後は杉崎一人じゃ不安なんだなんて泣き付かれちまったから断れなかったんだよ」

「杉崎先輩のせいでもあったんですね……」

 

俺の不幸すぎる出来事に思わず同情する生徒会のメンバー達。いや杉崎、お前が同情する資格とかないから。原因の半分はお前にあるから。

 

「やっぱり成績いいってだけで入れちゃうのは、おかしいよ!こうした被害者もいるんだし!」

「そうですね。こうして生徒会のメンバーを俺への恋の被害者にしてしまったことは悪いとは思っていますが……」

「何を急におかしなことを言いだしてるのよ!誰も杉崎に恋なんてしてないよ!」

「ええっ!」

「なにその新鮮な驚き!自信過剰も甚だしいわね!」

「そんな!じゃああの時の出来事は何だったんですか!」

「なっなによそれ……」

「あの夜、皆夢の中で俺のことをあんなにも求めていたじゃないですか!」

「ここに犯罪者予備軍がいるわ!ストーカーの卵がいるわ!」

「警察呼びましょう」

 

思わずケータイを出して110を押していつでも通報できるようにしておく俺。こいつの発想マジで危ないんだけど。いつでも通報できるようにしておこう。

こうして俺が防犯対策に務めていると、紅葉先輩が嘆息しながら杉崎に注意を促していた。

 

「キー君、私は別に貴方のこと嫌いじゃないけど、もうちょっと誠実に立ち回ったほうが利口じゃないかしら。ハーレムを作るにしても宣言するんじゃなくて、誠実さでオトしていくのが王道だし、確実だと思うんだけど」

「確かに知弦さんの意見も一理あります。ですが、どう繕っても、これが俺ですから!この欲望に満ちた姿が、本当の俺ですからっ!自分、不器用ッスから!」

「芯からこってり腐りきってるなお前」

「取り敢えずこれ以上俺に近づかないでくれ。腐臭が移る」

 

椎名と一緒に冷たい目で見る。こんなんだから教師たちが不安がるのだろう。

 

「ふふふ……。これから生徒会メンバーは次々と俺の魔の手に落ちていくのさ」

「魔の手とか自分で言い始めちゃいましたね」

 

杉崎の言葉に椎名妹も思わず苦笑する。

 

「ま、あんまりデレないと、学園陵辱ものに早変わりするプランも……」

「清々しいまでに外道だな、てめぇ」

「取り敢えず各生徒一人に防犯ブザーを持たすようにしておくか」

 

学校内にそれも生徒会に不審者が常にいるとかシャレにならない。生徒の安全を守るのも生徒会の仕事のひとつなのだ。

 

「なーに、安心しろ深夏、涼。そうならないように、手は考えてある。実はこういう系統の物語は、全員の好感度を一緒に上げるんじゃなくて『一人一話』形式で上げてくんだよ」

「なんだよ、それ」

「ほら、ギャルゲのみならず、学園ドラマだってそうだろ?一話で生徒一人の悩みを解決して、徐々にクラスに溶け込んでいくんだ。そして最終回でクラス全員で先生に感謝しまくるというある意味ハーレムEND」

「学園ドラマの最終回をえらく汚された気分だぞ、おい」

「取り敢えず杉崎はこれまでに学園ドラマを作ってきた人たちに今すぐ謝罪をしてこい」

 

全学園ドラマの制作者たちに喧嘩を売るような発言である。

 

「そうさな……まず現時点で好意的な真冬ちゃんを皮切りに、会長、深夏、そして知弦さんと徐々に難易度が上がっていく感じに問題を解決していけば、あら不思議。気づけば皆俺のハーレムに」

「寝言は寝てから言うようにしろ杉崎」

 

あまりに酷い構想、いや妄想に頭が痛くなった。

見ろ、椎名妹なんて怯えてるじゃねえか。あれ、どう見ても不審者に襲われそうになっている被害者の目だぞ。

 

「なんで私が真冬ちゃんの次にオトしやすいのよ!納得いかないわ!」

「えっ?だって会長、もう既に俺のことを気になり始めているでしょ。たとえば俺が他の美少女と二人でいるとこ見たら嫉妬するレベルでしょう?」

「杉崎が他の美少女といたら、速やかに警察に連絡してその美少女の保護を要請するわ!」

「いえ、現行犯逮捕は一般人でも可能なのですぐに捕まえましょう」

「いやー、会長は嫉妬深いなあ」

「……あー、杉崎を一番惨いバッドENDに送りたい」

 

その時、俺はゾッとするような寒気に襲われた。まさか、これは殺気!?……どんだけ怒ってるんだよ会長。

 

「でも、俺が一番恐怖していることは最初に会長が言ってたことなんですよねー」

「どういうこと?」

「つまらない人間になる……つまり恵まれた環境にいるのに、恵まれていると感じなくなる。たとえば、今俺はこのハーレムな状況にとっても満足してるんですけど、いつか……そういつかこの状況が当たり前と感じるようになったらと……」

「あーそれはわかるかも。私の家経営者だからよくも悪くも浮き沈みが激しくてね。一度上がった生活基準ってなかなか下げられないのよねー」

「なるほど。それで会長はいまだに美少年を金ではべらす趣味をやめられないと……」

「杉崎と一緒にしないでよ!私とんだ悪女じゃない!」

「そんな、会長は純粋な存在だと思っていたのに……」

「笹鳴も笹鳴で信じないでよ!なんだかリアリティがでちゃうじゃない!」

「そして貧乏な今は蟻や蝶々の脚をむしるのを趣味にしていると……」

「それってただの根暗じゃない!」

「人は皆、その心に残酷さを秘めているいるのか……」

「なんで急にシリアスに語り出したの!?しないよ!私そんなことしないよ!?」

「そう、ですよね。会長がそんなことするわけないですよね。俺、信じてますから!」

「だからもうやめてえぇええええええ!」

 

俺と杉崎の織りなすボケの連発に全力でツッコンだ会長はとてもお疲れになっていた。……やばいな会長弄りクセになるかもしれん。気をつけなければ。

しかし、話は戻るが確かに、杉崎が言わんことはわからなくもない。人は一度上に昇るとそうそう自分から下に戻ることはできない。これが杉崎が言うところのつまらない人間というやつなのだろう。

感じていた満足は当たり前となり、新たな満足を得ようと上を目指す。しかし、いつかは限界がやってきて停滞を余儀なくされる。こうやって停滞しまった人間が全てをつまらないと感じる「つまらない人間」というやつなのだろう。

 

「真冬も、そうはなりたくないですけど……。どうすればいいのかわかりません」

 

椎名妹は困った顔をしてそう言った。まあ誰でもそうはなりたくてなっているわけではないだろう。

 

「まあ、一部の、いわゆる勝ち組って奴はどんどん上に突き進んで行くんだろうがな。ほとんどの奴は悟りを開くというか、上に行くのを諦めてそこそこの幸せでやっていくのさ」

「えーなんかつまんねえな、それ」

「そこそこの幸せね……ダメだな」

「ん?どうしたんだ杉崎?」

 

俺が椎名妹に現実を教えていると、急に杉崎が何かを呟き出した。なんだ?ついに頭がイッちまったのか?

 

「ハーレム王に俺はなる!」

「何で急にワン◯ース風に頭悪いこと宣言してんだよ。お前」

 

なんか急に立ち上がって叫びだした杉崎。他の役員たちも俺同様に呆れた目で杉崎を見ていた。

 

「妥協はするが高い位置で妥協してやる!美少女をはべらせて『美少女にも飽きてきたなあ』って言えるまで上りつめてから妥協してやる!」

「ふふっそうね。私、キー君のそういうとこ好きよ」

「まあ、目標はともかくそのスタンスはわるくねぇよな」

「そうですね。いまからうじうじ考えてるよりはいいかもしりませんね」

 

どうやら紅葉先輩と椎名姉妹達には好評なようだ。杉崎の好きな美少女ゲーム風ならここで好感度が上がった音でもしていただろう。

しかし、そんな中俺と会長は……。

 

「えーがんばるのはつかれるよー」

「右に同じく」

 

見事なほどにだらけていた。

他のメンバー達にも呆れた目を向けられる。

まあ、あれだ。所詮幸せなんて各個人が感じるものなのだから現状で幸せならそれでいいのだ。そして俺と会長は現状で幸せなのだ。つまりノープロブレムってやつだ。

そう、俺が結論づけている時、会長が実にだらけた態度でこう言った。

 

「今日の会議は終了ー。みんなお疲れー」

 

どうやら飽きてきたらしい。そう言って会長は帰る支度をしていた。

さてと、俺も帰るか。明日の朝も早いからな。

 

 

 

 

 

 

「でっ結局杉崎は今日も一人で残ってるんだ」

「だから対応に困るんだよな。あたし達と長時間駄弁るために生徒会よ雑務を全部片付けて、なにごともなかったようにするんだからな……」

「笹鳴も笹鳴で朝早くに来て杉崎の手伝いしてるみたいだし……」

「どうせあいつのことだから『自分の仕事をしているだけ』って思ってるんだろうけどな」

「まっ真冬はお二人のこと嫌いじゃないですよ?」

 

その言葉に思わず苦笑する三人。わかっている。自分たちが少なからず彼らに好意を抱いていることを。

しかし、それを制しているのは他でもない杉崎と笹鳴なのだ。

一人はハーレムを主張することで、一人は孤高を主張することで。

 

「まったく、あれでハーレムやらぼっちやらを言わなければ彼女の一人くらい簡単に手に入るだろうに……」

「あれ?アカちゃんまさかキー君とリョウ君のこと……」

「なっ!?そんなわけないじゃない!?」

 

両手と首をぶんぶんとふって否定する桜野。そんな彼女を見て微笑ましく笑う三人……いや二人と恍惚の表情を浮かべる一人。

 

「……まあ、ああ言うことだけあってあの二人は生徒会の大黒柱なのかもね」

「大黒柱……?」

「ええ。その……私、いいえ私たちってどこか複雑な過去、傷跡って言えばいいかしら。そういったものを持っているでしょう。……でも、生徒会で駄弁っている間は救われている。それを作っているのは間違いなくキー君とリョウ君なのよ。……だから大黒柱」

「まったく、あれじゃ本当に学園ドラマの先生よね」

「まあ、問題を解決しようと、出張ってるんじゃなくて、安息の場所を与えてるだけだけどな」

「でっでも、真冬はすごく感謝しています」

「まあね。だから杉崎や笹鳴が困っているときは、全力であいつらの力になりましょう」

「会長さん……」

「でも、キー君と付き合ってあげないのよね。アカちゃん」

「それとこれとは話が別よ。誰が、あんな浮気性なんかと……」

 

どうやら杉崎のハーレムへの道はまだまだらしい。

そうして、道が別れるまで話した四人はそれぞれの帰路へ行く。

桜野のはそんななか今残っている一人と朝早くに来るであろう一人。そして今日までの自分たちを振り返って思う。

 

「………つまらない人間も、案外悪くないかもね」

 

私立碧陽学園生徒会。

そこでは、つまらない人間たちの楽しい日々が繰り広げられている。

 

 

 




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放送する生徒会①

やべえヒロインどうしようと思った今日この日頃。オリにするか既存キャラにしようか……。うーん悩むなあ。
それと更新遅くなってすみません。それでは本編をどうぞ。


 

「他人との触れ合いやぶつかり合いがあってこそ、人は成長していくのよ!」

 

俺の正面に座る見事なロリボディをした我らが生徒会長桜野くりむが何処かで聞いたことがある言葉を叫んでいた。

いつもだったら聞き流しているこの名言だが、今回は聞き流すわけにいかなかった。

 

「会長……」

「どうしたの?笹鳴?」

 

いつもは誰かの後から発言をする俺が一番始めに発言したからだろう。会長は不思議そうな顔をしていた。

そんな会長に俺は……憤慨して言う!

 

「ついに会長もぼっちの敵になりましたか!」

「どうしたのよ急に!?」

 

何やら会長が困惑しているようだがそんな事は関係ない。俺は今、非常に怒っているのだ!

 

「他人との触れ合いやぶつかり合い。……それができない人間もいる。そんなこともわからないんですか!」

「そんなの知らないよっ!というかそれは本人の問題でしょう!」

「結局会長もリア充の一員てわけか!ぼっちという思想を認めない寂しい人種なんですか!」

 

ああ……遂に生徒会までもリア充どもの思想へ染まってしまったのか。

俺が悲しみに包まれる中紅葉先輩がフォローに入った。

 

「まあまあアカちゃん、リョウ君。落ち着きましょう。取り敢えずリョウ君の話は置いといて、結局今日は何をやるのかしら?」

 

さりげなく俺の意見は置いていかれてしまった。まあいい、まだ論する時間はある。

 

「まったく。笹鳴のせいで遅れたじゃない。今回はこれをやるわ!」

 

そう言って会長はバンッとホワイトボードを叩いて回転させる。そこにはこう書かれていた。

 

「ラジオ放送?」

 

何度読んでもそう書いてある。書いてはあるんだが……結局何をやるんだ?

周りを見渡してみるがどうやら他のメンバーも何をやるのか理解できていないようだった。

 

「そう!これから生徒会でラジオをやろうと思うの!」

「らっラジオってあれですよね。その……音楽かけたり喋ったりするやつのことですよね」

 

椎名妹がおっかなびっくり聞く。

 

「ええっ!そうよ!」

 

その質問に対して堂々と答える会長。その答えに椎名妹は少し顔色が悪くなったような気がした。まあ、引っ込み思案な彼女にはそれはまさにキツイものだろう。

 

「あの、なんで生徒会がラジオをやるんですか?そういうのは放送部の仕事だと思うんですけど……」

 

杉崎の疑問は皆が思い浮かんだことだろう。本来、そういった放送関係のことは放送部の仕事であり、生徒会は何かの連絡事項以外には関わらない。

しかし、そういった常識が通じないのが我らが生徒会長で……。

 

「政権放送よ!」

「政権放送?」

「そう!生徒会の主な仕事がない今、私たちの存在感は薄くなっているわ!だからこそアピールのために政権放送をするのよ!」

 

などど言っているが俺は知っている。昨日、高視聴率のクイズ番組で『政権放送』をテーマにした問題が出たことを。……思いっきり影響されやがったなあのお子様会長。

まあ、わざわざ指摘するようなことでもないだろう。指摘してもそこには悲しみしか生まれない。

 

「そんなわけでラジオをやるわよ!ラジオ!」

「まあ会長さんのことだから文句言ってもやるんだろうけどよ……。なんでラジオなんだ?映像の方がいいんじゃねえの?」

「うん。私もそう思ったんだけどね。放送部に押しかけたら『いま、渡せる機材はこれしかありません』って泣かれたからラジオなの」

「かっ完璧に準備されちゃってます……」

 

取り敢えず哀れな被害者である放送部の皆さんと椎名妹に合掌。所詮平民は権力という名の暴力に逆らうことはできないのだよ。

この世の真理を垣間見た俺はその無情さに虚しさに襲われていた。

 

「ほら、最近は声優さんとかがラジオによく出てるじゃない。なら、美少女が集まって喋っていればリスナーは満足じゃない」

「思いっきりパーソリティーやリスナーを舐め切った発言ですよね」

「男子リスナーなんてそんなもんじゃない」

「全男子リスナーに謝れ!そんなんのに引っかかるのは俺くらいだ!」

「杉崎は引っかかるんだ……。あと、まあ、六人もいるんなら大丈夫。いつも通り喋っていれば問題ないでしょう」

「いつも通りって……」

「あっあと杉崎は喋らないでね発言が放送コードにへっかかりそうだから」

「もはや存在が放送コードにかかっていると思うがな」

「ひでぇ!!」

 

まあ、俺のは冗談だとして、会長が言っていることは割とマジな話だ。あいつすぐエロ発言とかセクハラなセリフとか言い出しそうだもんな。

そうこうしているうちに準備が終わったようだ。パソコンが起動していることから録音式なのだろう。なら、いざとなったら後で編集すればいい。よかったよかった。

と、一安心した後、麦茶で喉を潤しておく。まあ、やるからにはしっかりと準備しておかなくちゃな。

他のメンバーもある程度覚悟と準備を終えたようだ。それを確認した会長が始まりの合図を出す。

 

「それじゃあよーい、アクション!!」

「なんでラジオを始めるのに映画風の始め方をしたんですか」

 

 

 

 

 

 

桜「桜野くりむの!オールナイト全時空!」

杉「放送範囲デケェ!?」

笹「政権放送のタイトルじゃないだろ……」

 

 

♪ オープニングBGM ♪

 

 

桜「さあ始まりました。オールナイト全時空」

紅「夜じゃないけどね」

笹「今から徹夜なら仮眠をとらせてください」

桜「この番組は富士見書房の一社提供でお送りいたします」

夏「……どうしたんだよ富士見書房。無駄な出費も甚だしいぞ、おい……」

桜「まあ、ギャラにも放送枠にも機材にも費用がかかってないから、スポンサーにしてもらうことなんてないんだけどね」

冬「じゃあなんで提供を呼んだんですか……」

桜「いいじゃないラジオぽくて。うん!今のところとてもラジオぽいわ」

冬「……はあ。良いですけど」

桜「こら真冬ちゃん!そんな低いテンションじゃだめよ!リスナーはもっと女子の明るい会話を望んでるんだから!」

冬「そうでしょうか……」

桜「うん。男子リスナーなんてそんなもんでしょ」

杉「いやいやいやいや!何男子リスナーを見下げた態度をとってるんですか!?」

笹「そうです。そんなのは杉崎だけです」

杉「そしてお前はなんで俺を見下げた態度をとるんだ!」

桜「パーソナリティあってのリスナーでしょ?」

笹「杉崎を見下げないやつなんていないだろ?」

杉「リスナーあってのパーソナリティだ!!そしてその認識はお前だけだ笹鳴!!」

夏「鍵がまともな事言ってる!ラジオ効果すげぇ!!」

笹「杉崎の普段の変人っぷりがよくわかる反応をありがとう椎名」

桜「……そうね。私が間違っていたわ、杉崎」

杉「わかればいいんですよ。わかれば……」

桜「うん。やっぱりある程度媚びてなきゃね。うん、私、大人」

杉「だからそういう発言を堂々と…………」

桜「お便りのコーナー!!」

杉「無視!?ラジオなのに言葉のキャッチボールを拒否!?」

紅「それがアカちゃんクオリティ」

杉「なんで貴方はところどころでしか発言しないんですか!?」

紅「…………」

杉「ラジオで無言はやめましょうよ!!」

桜「それでは一通目のお便りはラジオネーム『ツナっち』さんからのお便り!」

杉「進行重視か!!会話の流れは無視ですか!!」

笹「違うぞ杉崎。会長はきっとお前だから無視してるんだ」

杉「それもひどくね!?」

桜「『生徒会の皆さんこんばっぱー!』はい、こんばっぱー!」

杉「え、なにその恥ずかしい挨拶!恒例なの?」

杉、笹以外『こんばっぱー!』

杉「男子以外の共通認識!?」

笹「まあ、知っててもこんな挨拶したくないけどな」

桜「『オールナイト全時空いつも楽しく聞かせてもらってます!』ありがとう!」

杉「嘘だ!これはまだ、第一回の放送のはずだ!」

桜「時系列なんて些細な問題よ杉崎。このラジオにおいてわね」

杉「流石全時空!!」

笹「ん?この放送、もしかして生で流れてないか?」

桜「うん、そうだよ。まあ聞いている人も少ないだろうから明日の昼でも流すけどね」

杉「道理でメールが来るはずだ!!っていうかそれならもっと発言に気をつけてください!!」

桜「はいはい、それじゃお便りの続きね。『ところでみなさんに質問なのですが、みなさんはどういった告白なら成功すると思いますか?私、今恋をしているのですが、どう告白しようか迷っています。くりねぇ、是非アドバイスをよろしくお願いします』」

杉「くりねぇって呼ばれてるんだ!こんなロリのくせに!」

桜「そうねぇ……。これはなかなか難しい問題ね。でも、恋愛経験豊富な私から言わせてみたら……」

杉「男と手を繋いだこともないくせに……」

笹「寧ろ最もそういったことから離れた人だよなこの人は……」

桜「普通に告白すればいいと思う」

杉「なんかすげぇ適当なアドバイスをされた!?」

桜「知弦はどう思う?」

紅「そうね……好きにすればいいんじゃないかしら。私には関係ないし」

杉「パーソナリティがリスナーに冷てぇ!!」

桜「真冬ちゃんは?」

冬「えっ、ええっと………………わかりません」

杉「わかりません発言キターーーーーーーー!!」

桜「深夏は?」

夏「当たって砕けろ!以上!」

杉「もっとリスナーの心を労ってあげようよ!」

桜「笹鳴は?」

笹「失恋だって立派な恋だと思うぞ」

杉「リスナーが振られること前提のアドバイスをするんじゃねえよ!」

桜「それじゃあ次のお便り」

杉「えっ!?今の答えで終わり?何も解決してないのに?」

桜「むっ、それじゃあ杉崎も何か案出してよ」

杉「……ふっ、安心しろこのラジオを聞いているであろうツナっちさん。俺はどんな告白だろうと断らないから!」

笹「……次のお便りに行きましょう会長」

桜「そうね。そうしましょ」

杉「まさかの完全スルー!?」

笹「当たり前だろ」

桜「それじゃあ気を取り直して次のお便り!『妹は預かった。返して欲しくば指定の場所に…………』ってこれ間違いメールじゃない。ちょっとスタッフー、しっかりしてよね」

杉「スルーしていいの!?今の内容そんな簡単にスルーしていいの!?」

笹「スタッフって誰なんだよ。……もしかして放送部?……可哀想に」

桜「次のお便りはラジオネーム『ヘルプミー』さんからのお便り。『生徒会の皆さん、こんばっぱー!』はい、こんばっぱー」

杉、笹以外『こんばっぱー!』

杉「だからなんでこれだけ皆ノルの!?いつの間に打ち合わせしたの!?」

笹「ハブか……。ふっ、これもぼっちの宿命ってやつか」

杉「お前も何を急に悲しいことを呟いてんだよ!!」

桜「『くりねぇ。どうしよう。私、早急にお金が必要で……。というのも妹が誘拐されちゃて……。両親も金策を練っているんだけど中々集まらなくて。どうしたらいいかな?」

杉「ディープなお悩みきたああぁぁああああ!?っていうかこれ絶対さっきのメールと関係ありますよね!!」

笹「というかこのメールの差出人はこんなとこで油を売ってないでとっとと警察にいけよ」

桜「ううんどうしよ……。うん決めたわ!ラジオネーム『ヘルプミー』さんには富士見書房から『まとまったお金』をお送りします」

杉「用意しちゃうんですか!?しかも勝手にスポンサーから引き出す形で!!」

笹「この人スポンサーの使い方間違えすぎだろ」

桜「全ては富士見書房次第ね」

杉「なんであんたはそんなに偉そうなんですか!?」

桜「さて、それではここで一曲。先月リリースされた私のニューシングル《妹はもう帰ってこない》です。それではどうぞ」

杉「空気読めよおおぉぉおおおぉおおおお!!」

 

 

♪ 妹はもう帰ってこないFULL再生 ♪

 

 

桜『さて、聴いていただきましたのは、絶賛発売中のニューシングル《妹はもう帰ってこない》でした。デビューシングルの《弟は白骨化していた》も合わせてよろしくね!」

杉「あんたの過去に何があったんだ!」

桜「じゃあここで恒例のコーナー!《椎名姉妹の、姉妹でユリユリ♪》」

杉「そっそれはちょっと聴いてみたいかも」

笹「さて、携帯の録音スイッチをオンにするか……」

冬「先輩方!?そこはちゃんとツッコンでください!!」

夏「そうだ!聞いてないぞ、こんなの!!」

桜「このコーナーはリスナーから送られてきた恥ずかしい百合っぽい脚本を椎名姉妹が演じるという人気のコーナーです」

杉「人気なんだこのコーナー。俺が言うのもなんだが大丈夫かこの学校?」

笹「まあ、お前が通っている時点で大丈夫とは言い難いだろうな」

杉「うん、もうお前のその辛辣さにも慣れてきたわ」

桜「私個人としてはやりたくないんだけどね……、。ほら、ご機嫌取りよ、ご機嫌取り。これなら男子リスナーなんて簡単に満足するだろうから」

杉「だから本番中にそういった発言は控えて下さい!!」

桜「ほら、これが台本ね。」

冬「うぅ……。ほっ本当にやるんですか?」

夏「うわっ!なんだよこれ!こんなの読んでられるか!!」

桜「こら深夏!逃げないで!これを乗り越えてこそ真の副会長よ!」

杉「副会長の資格と全く関係ないでしょう、これ……」

笹「寧ろ乗り越えちゃダメな部類だと思うんだが……」

夏「……やるしかないようだな」

杉「なに納得してんの!?」

冬「真冬も、覚悟を決めました!」

笹「何がきっかけで、そんな覚悟を決めれるんだよ……」

紅「ふ……それでこそ椎名姉妹よ」

杉「貴方はどうして思い出したかのように変な場所で、発言するんですか!?」

桜「それじゃあ、よーいアクション!」

笹「だからなんで映画風なんですか……」

 

 

♪ 耽美なBGM ♪

 

 

夏『真冬っ!私……もう!』

冬『あっ、んんっ……お姉ちゃん』

夏『真冬……かわいいよ、真冬』

冬『あっ!おねぇ……ちゃん。んっああ!』

 

 

杉「待て待て待て待て!個人的にはドキドキワクワクだけど、これは校内放送でやっていいレベルを超えている!!」

笹「というか風紀委員に怒られるだろ、これ……」

桜「うっうん。これはなんかやりすぎたわね……」

冬「ええええええ!これだけやらせておいて!?」

夏「ひでえ!そういう反応をされると、私たち本格的にいたたまれねぇじゃねぇか!!」

紅「椎名姉妹の絡みは放送コードに引っかかるわね。……そういうのはプライベートだけにしてもらえるかしら」

夏「勘違いされるようなこと言うなよ!プライベートでこんなことをするわけねぇだろ!」

冬「そっそうです!リスナーの皆さんっ、信じないでくださいねっ!」

紅「ええそうね、そういうことにしとておくべきだったわね。ごめんなさいね二人ともそういった配慮が欠けていたわ」

椎名姉妹『もうやめてえぇええええええ!!』

桜「じゃっじゃあ、次のコーナーにいってみよう!」

笹「このラジオ、予想以上に被害者が多いですよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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放送する生徒会②

旅行先にて執筆完了。


 

桜「それじゃ、次のコーナー!《杉崎鍵の、殴るなら俺を殴れ!》」

杉「なんですかこのコーナー!?」

桜「このコーナーは思わず人を殴りたくなってしまうほどカッとなってしまったときはとりあえず杉崎を殴っておこうというコーナーです」

杉「俺の人権は!?……ていうか笹鳴は何してるんだ?」

笹「いや、早速このコーナーにお便りをだそうと思ってな」

杉「させねぇよ!?」

桜「生徒のいざこざを解決するのも生徒会の仕事、というわけで今日も揉め事がありましたら2年B組の杉崎までご連絡をーーー」

杉「するなああぁぁああああああああ!!」

桜「仕方ないわね。今回は笹鳴以外は希望者もいないようだしこのコーナーは飛ばすわ」

杉「助かった……」

笹「……チッ」

杉「お前本当に最低だな!!」

桜「次のコーナーは《笹鳴涼の、語る会》!」

笹「はっ?」

桜「このコーナーは普段捻くれた考えをする笹鳴がリスナーが送ってくれたテーマに沿って語ってもらうものです!」

笹「……つまり、俺がお題に対して思うことを語ればいいってことですか?」

桜「うん、まあ簡単に言うとそうだね」

杉「俺のコーナーより全然マシですね」

桜「そんなわけで今回のお題はラジオネーム『スギサキ☆キラー』さんからのお便りです」

杉「なんて嫌なラジオネームだ!!」

桜「というわけで今回のお題は《ハーレム》です」

杉「もう既に嫌な予感しかしないんですがっ!!」

笹「ハーレムね。……あれってつまり優柔不断の究極系の一つだろ。」

杉「ぐはっ!!」

笹「結局さ、全員好きとか言って誤魔化してるんだよ。全員を平等に好き?はっ!んな奴いないって。人間好き嫌いとかあってその上、人間って奴は千差万別なんだぜ。金◯みすゞ先生も言ってるじゃないか、みんなちがってみんないいって、つまりこれは同じ奴なんてのはどこにもいなくて、何処かしら違うところがあるってことだろ。そんな違う奴らを全員平等に愛する?順番なんかつけない?無理無理。何処かしらで絶対差別とか優先順位をつくってるって、だけどヘタレな奴はそれを人に言えないからハーレムエンドなんてものに頼るんだよ。全員を幸せにしたいとかそんな偽善めいた言葉で自分を誤魔化してな。だから結局俺が言いたいことは単純だ。ハーレムは幻想であり現実逃避のためのものであるってことだ。以上で俺のハーレムに関しての考察は終わろうと思う。リスナーの皆は聴いてくれてありがとう」

杉「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

桜「うん、ありがとう笹鳴!なんか杉崎が膝を抱えてブツブツ言ってるけど気にしなくていいわ!」

冬「……なんだか真冬。いま、初めて杉崎先輩が可哀想になりました」

夏「ひっ人って受け入れられない現実に直面するとこうなるんだな……」

紅「リョウ君って絶対に私と同じドSよね……」

桜「じゃあ、次のコーナーに行ってみよう!」

杉「はあ、もういいや。切り替えよう……」

桜「《桜野くりむの、ファンレター》!」

杉「明らかに差別とかしてますよねえ!なんなんですかっ今までのコーナーとのこの格差!!」

桜「それでは、ラジオネーム『アイラブチェリー』さんからのお便り。こほん。『桜野くりむ様。貴女の可愛らしい姿を見るたびに僕の心はドキドキとときめいてーーー』」

杉「ファンレターって言うよりラブレターじゃないですか!誰だ俺の女に手を出したやつは!ぶっとばしてーーーぶへっ!!」

桜「なっなななにを急に口走ってるのよ、杉崎は!!」

杉「だって俺の彼女に手を出す奴がいるから……」

桜「私は杉崎の彼女じゃないよ!」

杉「カッとなってやりました。反省はしてません!」

桜「なんでそんなにふてぶてしいの!?」

杉「うぅ……。でっでもこのコーナーは勘弁してください。俺が嫉妬で狂っちゃいそうなので」

桜「うっ…………」

夏「どうでもいいけどイチャついてないでとっとと進めろよ」

笹「そうだな、あんまり続くと俺が憎しみの余り狂っちゃいそうです。……このバカップル共が」

桜「イチャついてなんていないわよ!みっ深夏も笹鳴も変なこと言わないで!もっもう、調子狂うわね。こほん。……じゃ、次のコーナー……」

冬「あっなんだかんだで杉崎先輩の要望通り、コーナーをやめてくれるんですね」

桜「う……。とっとにかく次っ《学園、五・七・五》!」

杉「……なんか急に定番のコーナーですね?」

桜「うん。ネタ切れだからね」

杉「言っちゃうんだ!?」

笹「ネタ切れを自分からいうとかラジオの常識を打ち破る行為だな」

桜「このコーナーは学校にまつわることをリスナーが面白おかしく五・七・五にしていくものです」

杉「なんか逆に不安になるほどのありきたりなコーナーですね」

笹「どっかから苦情が来てもおかしくないな」

桜「それじゃあいきましょう。始めはこれよ!」

 

『燃えちまえ メラメラ燃えろ 杉崎家』

 

桜「すっ素晴らしい句ですね。情景が目に浮かぶようです」

杉「…………」

桜「えっとどうしたの杉崎?私が言うのもなんだけど、ツッコミを入れないの?」

杉「いえ、ちょっとリアルに身の危険を感じてテンションが上がらないと言いますか…………」

桜「あー……」

夏「まあ、笑えるレベルを越してたのよな今のは……」

冬「真冬も若干ひいてしまいました」

紅「まあ、基本的にキー君ってそういう立場よね。ただでさえ美少女だらけの生徒会に入っているのにその上ハーレムなんて言っているのだから」

笹「自業自得もいいとこだな」

杉「うぅ……。ええい!構うもんか!ここは俺のハーレムだ!喧嘩ならいつでも買ってやる!だからっ!」

桜「だから?」

 

杉「家に火つけるのは勘弁してください。お願い致します」

 

桜「杉崎がラジオなのに泣きながら土下座したところで次のお便りに行こう!」

笹「ちょっと待ってください。そういえばこの素晴らしい五・七・五は誰が考えたんですか?」

桜「えっと、ラジオネーム『スギサキ☆キラー』さんからだって!」

杉「お前かああぁぁああああ!!」

笹「こいつとは話が合いそうだ、今度《廃杉崎連盟》に誘ってみよう」

杉「なんだその不吉な組織は!?」

笹「うん?杉崎が嫌いな奴による杉崎が嫌いな奴のための杉崎が嫌いな奴が集まった組織だが?」

杉「そんな組織潰れてしまええぇええええええ!!」

桜「じゃっ次いってみよう!ラジオネーム『トラトラ』さんからの五・七・五です」

笹「なにそのギリギリのラジオネーム」

 

『友達に なってください 笹鳴君』

 

杉「……なんか、聞いてて恥ずかしくなる五・七・五ですね」

桜「うん。なんか告白じみたものを感じるわよね」

冬「なんか、この場に笹鳴先輩以外がいちゃいけない気がしてきました」

夏「ああ。完璧に場違い感があるよな……」

紅「それで?リョウ君はなんて返事するつもりなの?」

笹「…………」

 

『すいません 友達などは いりません』

 

杉「五・七・五で返してきた!?」

夏「ていうか断るのかよ」

笹「まあ、友達などといった曖昧な関係は信じてないからな。取り敢えず俺と仲良くなりたいなら廃杉崎連盟の仲間になってくれ」

杉「その大変危険そうな組織へ誘うんじゃない!!」

笹「まあ、話しかけたければ話しかけてくれ。別に他人との会話を拒否してるわけじゃないからな」

桜「じゃあ次の一句。ラジオネーム『YUKAI』さんからの五・七・五です」

 

『金が無い 勢いあまって 人さらい』

 

杉「犯人こいつだああぁぁあああああ!!」

桜「えっ?なにが?どうゆうこと?」

杉「いや、さっきこ誘拐事件の……なんか他に書いてないんですか!?」

桜「えっと、『二万円も要求してやったぜ!』とは書いてあるわ」

杉「やっす!?うちの生徒の妹、安すぎませんか!?ていうかなんで両親は用意できないんだよ!!」

桜「そんなの私も知らないわよ。それに、この世には裕福ではない家庭も存在するんだよ杉崎……」

杉「そっそれはそうですけど……。なんかこの事件割と浅い気がしてきました」

桜「そんなの始めっから皆知ってるわよ」

笹「まあ、こんなふざけたラジオを聴いているくらいだからな」

杉「この事件、収録中っていうか放送中に決着つきそうですね」

桜「では、最後の五・七・五ラジオネーム『プレハブ小屋より愛をこめて』さんからです」

 

『真面目にさ 仕事をしろよ 生徒会』

 

杉「一般生徒からの素直な反応きちゃたああぁぁあああああ!!」

桜「まったく、失礼しちゃわね」

杉「いえ、正直同意見です」

笹「俺もです」

紅「私も」

夏「あたしもだ」

冬「真冬もです」

桜「なによ!やらなくてはいけないことはやってるじゃない!」

杉「やらなくていいこともやってますがね……」

笹「寧ろそっちの方が多いしな」

桜「不愉快だわ!このコーナー終了!」

杉「そういう態度がいけないんだと思います!」

桜「それじゃあ終わりも近づいてきたしフリートークでもしよっか」

杉「今までも十分フリーだったと思いますけど……」

笹「これ以上なんて正直ついていける気がしないぞ」

冬「ん?会長さん、メールがきてるみたいです」

桜「なになに?」

冬「ええと、ですね。『妹が誘拐された件ですが解決しました!』とのことです。よかったですね!」

杉「おおっ解決したか。良かった良かった」

紅「……チッ」

杉「めっちゃ聞こえてますよ、その舌打ち」

紅「何のことかしら?」

杉「録音AND生放送されているのによくそんなに堂々としていられますね」

紅「それで?やけにあっさりと解決しちゃったけどその犯人って結局どうなったのかしら?」

冬「えっと、よくはわからないんですけど、最終的には誘拐されていた妹さん自体が犯人を打ち倒したみたいです。……犯人はいま、意識不明の重体です」

杉「二万円欲しかっただけのはんにいぃぃいいいいいん!!」

冬「基本的に妹さんも遊んでもらっていただけのようです。でも、このラジオを誘拐されていることに気づいて犯人をボッコボコに……」

杉「俺たちのせいかっ!!」

笹「というかその妹強すぎだろ、深夏二世を名乗れるんじゃねぇの?」

夏「結局なんでその犯人は二万円が欲しかったんだ……」

冬「えと、ですね……メールによると意識を失う前に犯人が『この子の姉に貸したお金を返してもらいたかっただけなのに……』と呟いていたそうです」

杉「いたたまれねぇぇええええ!!ていうか諸悪の根源は姉か!このラジオのリスナーか!」

冬「そのリスナーさんの最後の言葉は『悪は滅びるのよ!あっはっはっは!』と書いてあります」

杉「このラジオのリスナーはろくでもねぇな!」

笹「……このラジオの被害者の中に『YUKAI』さんも入ってたんだな」

冬「まっまあ、一応これで一件落着ってことで……」

杉「……俺、この放送が終わったら犯人のとこにお見舞いに行くわ。助かってくれ……」

笹「見舞い品の果物を用意しよう。そうしよう」

桜「こ、こほん。ええと、いろいろあったけどそろそろこのラジオも終わりの時間がきたようです」

杉「やっとか……。短い番組時間のくせにやたらとディープな内容だった」

笹「下手したら放送中止になってもおかしくないことが起きたからな」

桜「最後は『今日の知弦占い』でお別れです。それでは皆さん、また来週」

 

 

♪ 神秘的なBGM ♪

 

 

紅「では、今日の知弦占いを。

当校の獅子座のあなた。近日中に『世にも奇妙な物語』ぽい事態に巻き込まれるでしょう。注意してください。サングラスに黒スーツの人物を見かけたらすぐに逃げなさい。

ラッキーカラーは《殺意の色》どす黒いか、真紅か、その辺りは各々のご想像にお任せします。

ラッキーアイテムは《核》。常に持ち歩けるとなおよし。貴方がメタルギアならそれも可能でしょう。

最後に一言アドバイス。

 

死なないで

 

以上、知弦占いでした」

 

杉「怖いですよ!これ獅子座の人間明日になるまでビクビクですよ!」

紅「ではまた来週会いましょう。……獅子座以外」

杉「獅子座ああぁぁあああああああああ!!」

笹「このラジオの被害者が順調に増えていってるな……」

 

 

♪ ED曲 弟は白骨化していた

 

 

 

 

 

 

「今日の放送は大好評だったねー!」

 

昨日の番組が放送された日の放課後。会長は実に満足した顔をしていた。紅葉先輩もそんな会長の顔を見て嬉しそうな顔をしていた。

だが、対象的に俺、杉崎、椎名姉妹は、とてもげんなりとした顔をしていた。

 

「(なあ杉崎、今日の放送なんだが好評だったように見えたか?)」

「(いや少なくとも好評とは言えなかった)」

「(クラスの奴らドン引きしてたよな)」

「(ああ……皆、途中で箸を止めたっきり、食欲なくして、そのあとは一口も食べてなかったしな)」

「(俺のクラスもそうだ。あんまりにも空気が重いし上に俺への視線が痛いから屋上に逃げたぞ)」

「(おおかた、会長のクラスは二人に気を使って愛想笑いでもしてくれたんだろ……)」

『(ああ……)』

 

杉崎の説明に俺と深夏が納得して頷いていると会長がこちらの方に顔を向けて、瞳を輝かせながら尋ねてきた。

 

「ねぇねぇ!二人のクラスはどうだった?とても好評だったでしょう!」

『(うっ……)』

 

二人はとても答えづらそうな顔をしていた。まあ、あんな目を向けられたらとても、正直に不評でしたとは言えないだろう。

さあ、どう答えるのか。

 

「えっええ……。大人気でしたよ」

「そうでしょう!」

 

なるほど、取り敢えず嘘をつくことにしたのか。しかし、そんなんではまた、つけあがってしまい、第二回の開催をしてしまうかもしれない。

杉崎もそう考えたのかさらに言葉を付け加えた。

 

「ええ……そうですね。言うならば、小学生の将来なりたい職業における《会計事務》くらい人気でしたね!」

「それは人気と言えるの!?」

 

絶対に言えないが言う必要はないだろう。取り敢えずうまく誤魔化した杉崎をGJ!と讃えておく。

あれ?なんで怒ってるんだ杉崎は。ちゃんと親指を下に向けたのにな。

 

「真冬ちゃんのクラスでも、人気だったわよね!」

「え」

 

椎名妹が一瞬固まる。どうやら彼女のクラスも好評とはいえなかったらしい。

まあ、好評といえるクラスがあったらそれは頭のネジが外れたやつしかいないクラスだろう。

椎名妹はとても歪な笑顔を会長に向けながらこう言った。

 

「はっはい。スーパーマリ◯ブラザーズでいうところの《逆さメット》くらいには人気でしたよ!」

「それ、本当に人気なの!?」

 

どうにかして彼女もうまく?かわすことができたようだ。

そう安心していると、遂に俺の方へと矛先が向いた。

 

「笹鳴のクラスはどうだった?」

 

まあ、ここまで時間があったのだ。言い訳の一つや二つは考えつける。取り敢えず、この中で一番無難なものを選んでおこう。

 

「すいません会長。俺、大抵屋上とかで一人で食べているので好評かどうかわかりませんでした」

『(こいつ逃げやがった!!)』

「そっかあ。じゃあ仕方ないね」

 

何故か俺の方へ恨みがましい視線が向けられているが関係ない。ここは逃げるのがベスト。まさに逃げるが勝ちというやつだ。

俺が自分の逃げっぷりに感心していると、会長が「そっか、そっかー」と、とても満足した顔をしてうなづいていた。あっ、ヤバイ。

 

「じゃあ第二回もしよう!」

 

そしてついに俺が、いや、俺たちが恐れていたことを言いだしてしまった。最悪の展開だ。

他の役員たちも同じ気持ちのようで全員嘆息していた。

取り敢えず会長以外の全役員にてアイコンタクト会議を始める。

 

「(どうしますか?会長、まだやる気ですよ?)」

「(以外と今回はしつこいわね。アカちゃんなら一回やれば満足すると思ったのだけれども)」

「(これ、絶対会長のクラスが下手に気遣ったからでしょう。調子に乗ってるんですよ)」

「(まあ、会長さんだしな……)」

「(真冬、もうやりたくありません)」

「(それは皆同じ気持ちだよ真冬ちゃん。誰も望んでないよ)」

「(中止にするのは難しそうだしな。取り敢えず先延ばしにして会長が忘れさせる方針でいこう)」

『(了解)』

 

作戦は決まった。その名も【全ては過去へと消える作戦】。まず、杉崎から動きだす。

 

「会長」

「ん?なぁに杉崎」

「えっとですね。こういうのはたまにやるからいいのではないでしょうか」

「どういうこと?」

「つまりですね、こう、二回目をすぐにやるのではなくある程度間をとったほうがいいのではないかと。ほら、オリンピックだって4年に一度やるから盛り上がるわけですし」

「うーん」

 

杉崎の意見に悩み始める会長。よし、ここから一気に畳み掛ける!

 

「そうですね。俺も杉崎に賛成です。何事も、すぐにやっては飽きられてしまいますし、レア感が生まれません。週刊誌なんかもある程度間があるからウケるわけですし」

「そうね。こういったイベント事はすぐにやるものではないわ。アカちゃんだって毎週アニメを楽しみに待ち望んでいるでしょう。ああいった楽しみに待つ気持ちというものが大切なのよ」

「あたしも賛成だな。あたしが愛読しているジャン◯やマガ◯ンも次はどうな展開があるのかが気になって買ってるし」

「まっ真冬も賛成です。真冬が好きなゲームも発売日を待つドキドキ感がそのゲームの価値をあげていると思います」

「…………」

 

会長が黙り込む。頼む。この案、通ってくれ。

ふと周りを見ると他の皆も祈っていた。なんか変な一体感が生まれてるな……。

 

「そうね!このラジオはクオリティ重視だもんね!」

「あれでクオリティ重視だったんですか」

「寧ろ一番軽視されていた気がするんだが……」

 

まあ、何がともあれこれで危機は去った。会長のことだしこの間にまた、新しいことに没頭してすぐ忘れるだろう。

俺、杉崎、紅葉先輩、椎名姉妹が安堵のため息を漏らしたとき、会長が‘‘ドンッ”と大きなビデオカメラを置いた。

 

『えっ?』

「じゃあ次は生徒会のPRビデオを撮りましょう!ようやく機材が手に入ったのよ!」

 

会長の言葉にだんだんと顔が青くなっていく。いや、俺だけじゃない、他の役員たちも、顔が青くなっていった。

 

「本番はここからよ!」

『いやああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁあああ!!』

 

こうして俺たちは世にも奇◯な物語的な展開に襲われるのだった。

 

 




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更生する生徒会

シリアスのところで筆が止まった上に短くなってしまいました。


 

 

「人生やり直すのに、遅すぎることはないのよ!」

 

俺の正面に座る見事なロリボディをした我らが生徒会長桜野くりむが何処かで聞いたことがある言葉を叫んでいた。

最近飽きつつあるため皆いつも通りに聞き流す中、杉崎だけは賛同の返事を返していた。

 

「そうっすね」

「貴方に言っているのよっ、杉崎!」

「ええ!?」

 

わざわざ返事を返してくれた杉崎に対していきなり人差し指を突きつけられながら言い返す会長。賛同したのに攻撃された杉崎は驚いていた。

まあ、確かに杉崎は反省すべき点が多々あるからな。

 

「確かにこいつ、早急に人生やり直す必要があるもんなー」

 

そう言って腕をぐるりと杉崎の首に巻いて締め付ける椎名。……胸が微妙に杉崎に当たっているからか杉崎は苦しみより喜びの顔を浮かべていた。流石はド変態代表である。

 

「いいわね。今のキー君もいいけど更生したキー君というのも見てみたいわ」

「ちょっ……更生って。俺は超真面目優等生ですよ。知弦さん」

 

少し微笑みを浮かべた表情で、首を締められたままの杉崎に話しかける紅葉先輩。

あっ、杉崎がタップし始めた。どうやら順調に首は締められていっているらしい。

 

「……真冬もみたいです。真面目な杉崎先輩。きっと……かっこいいと思いますよ?」

「真冬ちゃん?それだと今の俺全否定されてないか?」

 

杉崎の言葉にそっと目を逸らしながら「……ごめんなさい」と呟く椎名妹。

……だんだん杉崎の顔が土気色になってきているな。まあ、大丈夫だろう。

 

「杉崎。ここから近いところに更生施設が一つあるから行ってこい」

「俺、そんなに酷い人格をしてるかなあ!」

 

当たり前だ。少なくとも俺の中ではかなり酷いぞ。

……叫んだからか先程よりもヤバイ顔色になっている杉崎。あれ、死ぬんじゃねぇの。

そう思ったのは俺だけじゃなかったようで椎名妹があわてて止めに入っていた。

 

「おっお姉ちゃん。そろそろ放してあげようよぅ」

「ごめん、真冬。お姉ちゃん、生まれて初めて真冬のお願いを……却下する!」

「こんなところで!?」

「椎名が椎名妹の頼みを断るなんて……どんだけ嫌われてるんだよ杉崎」

 

椎名の杉崎への思い(殺意)に戦慄する俺。これだけで椎名の杉崎への好感度がどれだけ低いのかがよくわかる。

ていうかやばくないか杉崎。もう顔色が明らかに死人のそれになってきてるんだが……あっ倒れた。

 

「……おっおーい、鍵?あれ?やっちゃった?」

「やっちゃったってなに!?お姉ちゃん!?」

「そりゃあ、『殺す』と書くほうの殺っちゃっただろ。椎名妹」

「そんなことはどうでもいいよ!ていうか深夏っ!確かに人生やり直したほうがいいとは言ったけど終わらせろとは言ってないわよ!?どうするのよ……この事がバレたら大変なことに……」

 

まさかの死人ができてしまいパニックになるなか、俺と紅葉先輩は落ち着いて今後の行動を模索していた。

 

「生徒会で初の死人ね……仕方ないわ、隠しましょう5人で……手伝ってくれるリョウ君」

「まあ、こんな奴のために人生棒に振るなんて馬鹿馬鹿しいですからね。……いいですよ手伝いましょう。」

「ちょっと?あの……知弦に笹鳴?なんでそんなに活き活きとした顔をしているの?今までそんな顔、見たことないんだけど」

 

何故か会長が怯えていたが気にせず作業を続ける。

 

「それじゃあリョウ君。そこの棚にのこぎりがあるから取ってくれる」

「了解しました」

 

何故生徒会室にのこぎりがあってそれを紅葉先輩が知っているのか疑問に思ったが気にせず作業を続ける。

 

「それじゃあ私が切るからリョウ君は押さえててくれる」

「了解しました」

「されてたまりますかああああああああああ!!」

 

何故か杉崎がタイミング悪く起きてしまったが気にせず作業を続けーー

 

「いや何続けようとしてるんだよ!?」

 

ようとしたが杉崎に止められてしまった。……チッ。

どうやら不満なのは俺だけではなかったようだ。他の面々も文句を漏らす。

 

「なんだよ。生き返ったのかよ。……つまんねーの」

「俺の生死の扱い軽くないか!?」

「隠し通す自信があったのに……」

「そういう問題じゃあなくない!?」

「よかったですぅー。「まっ真冬ちゃんっ……!」お姉ちゃんが人殺しにならなくて本当によかったです」

「そっち!?」

 

椎名と紅葉先輩の言葉、プラス真冬ちゃんの上げてから落とす攻撃の追撃によりorzと膝をつけ倒れる杉崎。……しかし、orzってなんて発音すればいいんだろうか。オルズ?いや、オアズか?

などと考えこんでいるといつの間にか会長と杉崎が真剣な眼で見つめあっていた。えっなにこの状況。

 

「会長……」

「杉崎……」

「……ボクは死にません。貴方が、好きだから」

「……杉崎……」

 

さらに真剣な眼を向ける会長に対して唇を付き出し始める杉崎。だからなんなのこの状況。

しばらくそのまま時間が過ぎたあと会長が「はぁー」と長いため息をついた。

 

「どうしました?やっぱりファーストキスは二人きりがよかったですか?」

「馬鹿は死ななきゃ直らないって言うでしょ」

「はい?」

 

突然の話題転換について来れない杉崎。しかし、ここで俺は会長が何を言いたいのかがわかってしまった。

 

「会長、世の中上手く行きませんね……」

「本当にね……」

「えっと、どういうことですか会長?」

「馬鹿は死ななきゃ直らないから臨死体験したならマトモな人間になるかなって思ったのよ」

「なんだそんなことですか……。大丈夫ですよ会長!俺はマトモですから!」

「マトモな人間は絶対にそんな発言をしないよ!」

 

杉崎が全力でマトモアピールをするが会長はそれを即批判する。しかし、それに納得できなかったのかこちらに話を振る杉崎。

 

「皆っ!俺、マトモだよな!」

「「「「「……………」」」」」

 

長いながーい静寂がそこにはあった。杉崎への解答は言うまでもないだろう。だって、ねぇ……。

そしてまたもorzと落ち込む杉崎。まあ、自業自得というか普段の行いが悪いというか……。

 

「まあ、気にするな杉崎」

「笹鳴……」

 

杉崎の肩にポンッと手を置く。俺の言葉に杉崎は目に涙を浮かべ俺を見つめてくる。うんやめろ。

 

「そんなのいまさらの話だろ」

「ぐはっ」

 

俺の一言に倒れる杉崎。

そんな杉崎に気にもせずに会長は話を進める。

 

「とにかく杉崎は更生すべきだと思うのよ。仮にも生徒会副会長なんだし威厳がないと」

「威厳の欠片もない会長がそれを言いますか」

 

思わずそう漏らししてしまったが俺は悪くない。ほら周りの面々も頷いているし。

そんな周りの視線に気づいた会長だが、強引に話を進めにかかる。

 

「とっ!にっ!かっ!くっ!今日は杉崎の性格の改善をしましょう!それがいいわ!うん!」

「どっどうしたんですか急にそんなことを言いだすなんて」

 

あまりの剣幕に軽く押されながら質問する杉崎。確かに今日の会長は少々しつこい気がする。

皆も疑問に思ったのか首を傾げたりしていている。

そんな中会長は堂々と鞄からだした物を机に叩きつけた。

 

「これよ!」

 

それは碧陽学園の壁新聞だった。一見なんの変哲もない壁新聞。しかし、その内容はいつもと少し気色が違った。

 

「『速報!生徒会副会長・杉崎鍵は、昔二股をかけていた!』だぁ?」

「あらあら大変ねぇキー君。」

「ひどい記事です!杉崎先輩はそんなことする人じゃあ……。……………………ごめんなさい」

 

椎名が読み上げた記事に紅葉先輩は楽しそうに笑い、椎名妹はフォローしようとしたが途中で杉崎ならしていてもおかしくないことに気づき謝っていた。

そして俺はこう思った。だからなに?と。

そもそも、四人もの女子に俺のハーレムメンバーになれ!などと宣いている奴だ。今更こんな記事を読んだところで何も思うまい。

しかし、会長はそうは思わなかったようだ。

 

「生徒会副会長ともあろう者がこんな記事を書かれて!」

「あの新聞部、こういうの好きですからねぇ……」

 

確かに碧陽学園の新聞部はというか今新聞部部長はこういったゴシップ記事のような物が好きだ。これまでも生徒会関係のゴシップ記事を書いていて会長が愚痴をよく漏らしている。書かれているのがほとんどが会長が起こしたドジについてだから仕方がない。

まあ、問題がある分実績もしっかりと残しているから普段は少しの愚痴ですむのだが……。

 

「杉崎!まずはこの記事の内容は真実なのかどうかはっきりとしてもらうわ!」

 

今回は本気でお怒りになっていた。まあ、今回は新聞部に対してではなく、どちらかというと杉崎に対してだろう。まあ、確かにこれまでの記事よりもとんでもない内容であることは確かだしな、わからなくもない。

 

「あ、会長。嫉妬ですか?俺の昔の女が気になって「そうやって誤魔化そうとしても無駄よ。杉崎!」ませんか……」

 

杉崎がいつも通りに道化を演じる作戦を行ったが失敗していた。どうやら今回の会長は大分本気のようだ。

 

「降参したら、キー君。こうなった時ののアカちゃんは事実確認が取れるまで諦めないわよ」

「分かってますけど……」

 

『会長モード』とも言うべき状態になった会長と紅葉先輩の駄目押しにより観念したらしい杉崎はこれまでの軽い態度をやめて真剣な目で答えた。

 

「結論から言って、事実です。俺は、昔、二股かけてました」

 

杉崎の言葉に会長は、いや、俺を含めた誰もがつっかかることはなかった。いつもの様に軽いノリでの言葉なら誰かが責めていただろう。だが、杉崎の真剣な目を見て、それができる人間はここにはいなかった。

 

「……そう」

 

そう小さく呟いた会長は座り、杉崎に向き直った。

 

「……で?そのことについて杉崎は詳しい経緯を話す気はあるの?」

「すいません。今はちょっと、勘弁してください」

「……でも、事実なのよね」

「はい」

「弁明する気は?」

「ありません」

「……ん、わかった。じゃ、この件はおしまいっ!」

 

会長はそう言い背伸びをすると、いつもの様に杉崎につっかかっていた。

 

「さて、杉崎!それじゃあ早速貴方の更生をするわよ!生徒会役員がこんな記事を書かれちゃ困るんだからね!」

「……そうですね。まあ、更生というより表面を取り繕うぐらいはしましょうかね」

 

その言葉にいつもの様に俺たちも続く。

 

「そうだな、確かに杉崎の愚行は目に余るものがあるしな」

「まっ真冬もっ、杉崎先輩はもう少し気をつけたほうがいいと思います!」

「そうだぜー、鍵。おまえ常日頃からハーレムだなんだ言ってるだろ?そりゃ、ゴシップの一つや二つ書かれてもしかたねぇよ」

「こんなところでケチをつけられちゃ、それこそつまらないわよ、キー君。ハーレム目指すならもっとガードを固くしないと」

 

もう誰も二股について触れていなかった。別に気を遣っているわけではない。その選択肢を作ろうともしていない。

これは逃げなのかもしれない。杉崎に対する甘さなのかもしれない。

でもそれがなんだ。逃げるのが悪なんて誰が言った。甘さが不出来に繋がると誰が証明した。

いつか戦わなきゃいけなくて、苦い思いをすることになるのだとしても、今じゃなくてもいい。少なくともここはそういう場所じゃない。

そのことを他の奴らも理解しているからこそ俺と同じことをした。それだけの話だ。

 

「さて、それじゃあ杉崎の更生をどうのようにしてやるか考えてこう!」

 

こうして、いつも通りの会議が始まる。

 




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恋する生徒会①

実はこの話は自分が書きたかった話の一つだったりします。
まあ、書いたおかげで仕事に取りかかれなかったけどね♪


 

「恋、だけじゃ駄目なのよ!愛に昇華してこそ、ホンモノの《恋愛》なの!」

 

俺の正面に座る見事なロリボディをした我らが生徒会長桜野くりむが何処かで聞いたことがある言葉を叫んでいた。

しかし、今日の言葉は何処かトゲがあった。というか杉崎に対してトゲがありまくっていた。

 

「ねー杉崎。恋は愛に昇華してこそホンモノの恋愛なんだよ」

「そっそうですね」

「そうだよねー」

「う……はっはい……」

「ねー」

「ぐっ……」

 

悔しそうに拳を握りしめ屈辱に身を震わす杉崎。まあ、普段好き勝手してる相手だけに言い負かされた時の屈辱か大きいのだろう。まあ、俺も会長には言い負かされたくはない。

 

「珍しいなー鍵。お前が会長さんに言い負かされるなんて」

 

ニシシと笑いながら落ち込む杉崎の肩を叩く椎名。

まあ今回は仕方ないとも言える。

 

「まあ、ハーレムなんて不誠実の塊みたいなもんだらからな」

「いや……不誠実かもしれないけど《愛》はちゃんとあるんだよ」

「じゃあなんで言い返さなかったんだ?」

「あのお子様会長にそれがわかるとは思えないんだよ」

「ああ、確かに」

「それになんだかんだ言っても正論だからなぁ。時折反論の余地がねぇんだよ」

「それは分かる。いやだよなー、正論って」

 

椎名が心底嫌そうな顔をしながら杉崎の言葉に賛成していた。どうやら椎名も正論は好きじゃないらしい。

 

「『悪いことはわかっているけど、そういう問題じゃないんだよ!』みたいのが多いだろ正論って。で、そういうのを振りかざしてふんぞり返るヤツがいるんだよ。……誰とは言わないが、誰とは」

 

そう言って杉崎は「杉崎を言い負かしてやったわ!」と満足そうに胸を張る会長を見ていた。

誰とは言わないが誰とは見てるんだな。

そんな杉崎と会長を観察していると、椎名妹も小声で会話に参加してきた。

 

「それ、真冬もわかります。真冬はゲームが好きなんですけど、よく親に『目悪くしてクリアして、それなんか意味あるの?』って。その通りなんですけど……その……」

「まあ、確かにわからなくもないな。言ってることが正しいのは分かるけど、別に誰かに迷惑をかけているわけじゃないから納得できないんだよな」

「そ、そうですそうです!」

 

俺もあったな、そんなこと。親や先生にもっとコミニケーションを取りなさいとか言われるたびに思ったからな、無理にする必要はねぇだろって。……あれ?これはなんか違うな。

 

「あー、あたしもあるな、それ。あたしは……信号つき横断歩道で車が来てないと赤のまま渡っちゃうけど……」

「わかる。確かに違反だけど、それを注意されてもなんだかなーってなるよな」

 

などど俺たちが正論あるあるをやっていると……。

 

「でも、駄目よね。ルール違反」

『うっ……』

 

と、紅葉先輩が一刀両断に切り裂いてきた。

まさに反論の余地のない正論に思わず黙り込んでしまう俺たち。

 

「ゲームは目が悪くなるから程々に」

「あぅ」

「横断歩道はちゃんと信号を確認して渡りましょう」

「うぅ」

「まあ私は暗い中でもゲームをするし、信号より自分の視力を信じるけど。ゲームでダメダメになったこの視力でねっ!」

『一番駄目じゃんっ!』

 

正論を振りかざしておきながら自分はそれを許す、一番嫌なタイプだった。まあ、紅葉先輩はそこまで視力は低くないから冗談だと思うが。

そんな風に一人勝利の余韻に浸っている会長を除く全員で話していると会長がホワイトボードに今日の議題を書いていた。

 

「《校内の風紀の乱れについて》ですか。また随分と定番な議題ですね」

「定番だからこそ私たちが真摯に取り組むべきテーマじゃない」

「う……」

 

今日の会長の発言は本当に正論かつ、杉崎に対して強かった。きっと杉崎の今日の運勢は最悪だったのだろう。星座占いから血液型占いまでビリっけつだったに違いない。ざまぁ♪

 

「お前って本当に俺のことがきらいだよなぁ!」

「あたりまえだろ」

「かつてないほどのスピードでの返答!!」

 

さて、杉なんとかという変態は置いといてだ。会長が言うように確かに風紀の乱れなどというものは生徒会の仕事に入らなくもないんだが……そこまで乱れていただろうか、この学校?

そう、首を傾げていると、同じように紅葉先輩も首を傾げながら尋ねる。

 

「この学校、そこまで風紀が乱れていたかしら?少なくとも、他校に比べたらかなりの優良校だと思うけど」

 

その通りだった。他の学校はあまりいい噂は聞かない。特に近隣校の音吹高校なんて暴走族の頭が通ってるとか、喧嘩三昧の日々を送ってるとか、碌な噂がない。もちろん、悪口なんかはすぐに拡散するし誇張や虚実が混じっているから他校に関してはなんとも言えないが、少なくともこの学校でそういった悪い噂は聞かない。

だからこそ、わざわざ議題にしてまで正すのような風紀の乱れなんてないと思う。あえてあげる点があるとしたらお菓子やらゲームやら漫画やら鞭やら拷問器具やらを持ち込んでるこの生徒会が一番乱れているような気がする。……ていうか最後のに関しては法律さえも無視している気がするんだが。

だが、そんな疑問は会長が顔を赤くしながら答えてくれた。

 

「みっ乱れているわよ!主に……その……せっ性がっ」

「性?」

「そっそうよっ。副会長のせいかもしれないけど、最近どうも……その、ナンパな光景を校内でよく見るようになったような気がするのよ」

「おいおい、生徒の悪い見本になるなよ副会長」

「待て、会長さんの言ってる副会長ってのは明らかにお前だよ」

「むしろ全生徒の中でもお前以外はいないだろ」

「でも、ナンパな光景って言いますけど、俺、そんなの見たことないですよ?」

『スルーかよっ!』

 

俺と椎名の言葉を無視して会議を進める悪い見本の副会長。後で覚えてろよ……。

 

「いいえ、最近は特によく見るようになった気がするのよっ!その……男女が……手繋いでいるところとか……」

「へ?手を繋ぐだけで性の乱れ?」

「それだけで、ですか?」

 

今回は俺も杉崎と同じ意見だった。そんなこと言ったらこの学校のカップルの殆どが風紀を乱していることになるんじゃ……。

しかし、会長は俺たちの疑問に対して断固として答えた。

 

「問題よ!二人っきりならまだしも、その、生徒がたくさんいる校内で手を繋ぐなんて……不謹慎よ!学び舎たる校舎をどう思ってるのよ!」

「はぁ……」

 

何処か納得のいかない杉崎。もちろん俺もだ。もしかしたら男性陣だけの価値観なのかもしれないと思い周りを見渡すもやはり、他のメンバーも納得したような顔をしていない。

その時、椎名が「はーい」と手をあげる。……この生徒会に挙手制なんてルールあったか?そんな疑問を持っていると会長が「はい、深夏」と指名する。そして、椎名が語る内容は衝撃的なものだった……!

 

「会長さんは知らないだろうけど、そんなことよりも大変なことをしてるのなんて、いっぱいいるぜ。放課後の校舎内を見てみなよ。ちょっと人気のない所にいけばキスは勿論、○○○○なんてしている光景、なんて結構な確率で目撃でーーー『なっ!?』

 

その話を聞いた時、俺、杉崎、会長の三人は驚きのあまり声を上げてしまう。特に俺はショックのあまり顔の血が引く感触がした。

 

「さっ笹鳴先輩!?顔色が一気に悪くなってますよ!?」

「大丈夫だ、問題ない」

「こんな時にEl○Shaddaiのネタを持ってきてる時点で大丈夫じゃないと思います」

「いや、本当に大丈夫だから安心してくれ椎名妹」

「そっそうですか?それなら安心ーーー」

「リア充どもへの怨念がこの身に溢れかえっているだけだからなっ」

「できないです〜〜!」

 

椎名妹との会話で幾らか落ち着いたがやはり、この胸に宿るリア充への憎悪が止まらない。

リア充どもめ、ただでさえ騒音被害(俺限定)を出しているのにそれに加えて校風を乱すなんて。許さん!たとえお天道様が許してもこの俺が許さん!

俺が怒りやら憎悪やら嘆きやらで肩を静かに震わす中、椎名はなんでもなさそーにこう続けた。

 

「ま、いいんじゃねーの。それで誰かの迷惑をかけてるわけじゃねーんだし、そりゃあそういう場面に出くわすとすげぇ気まずいけどさ。それこそ我慢できないほど愛し合っているってことだろ?」

「そうそう、そのうち会長だって俺に攻略されて校内でさえ俺を求めるように「「退学だ(よ)ーーーーーーー!」」

 

杉崎が何かカスみたいな発言をしていたような気がするが無視して俺と会長は叫ぶ。

いつもだったら会長の暴走とかを止める側に周る俺だが今回ばかりは会長の意見に賛成派だった。駆逐してやる。この世から1匹残らず。(震声)

 

「そ、そ、そんなことをしている人を見かけたら、今後は、全部退学!問答無用で退学!おっおかしいわよ!ここをどこだと思ってるの!」

「全くもってその通りだ。常日頃からリア充共の頭は何処か異常があると思っていたがここがどういった場所なのかも理解できてなかったとは」

「フラグを立てるための場「杉崎は黙っていて!プレステーション5がでるまで!」期間なげぇ!?」

「寧ろえむえ○っ!が完結するまで黙っててくれ」

「それ生涯喋れないだろ!?」

 

だからそう言ってるだろ。まあ、超遠回しにだけどな。

そんな中、流石に見かねたのか紅葉先輩が口を挟んできた。

 

「二人が言いたいことは分かるけど仕方ないわよ。性の乱れなんてここだけの話じゃないし、生徒会が動いて止められるものでもないわ」

「止めるんじゃないの!排除するの!」

「そうです。俺たちが行うのは廃止じゃありません。天誅です」

「そんなことしたら、キー君じゃないけど、かなりの生徒が消えちゃうわよ、この学校」

「仕方ないわよ」

「……アカちゃん。生徒の風紀を正すのも大事だけど、まず最初に生徒のことを考えるべきじゃないかしら。『生徒』の『会』の『長』なのよ」

「う……」

 

どうやら会長は紅葉先輩の言葉に屈してしまったらしい。しかし、俺は納得していない。

 

「ちょっと待ってください」

 

故に俺は紅葉先輩との論争に挑むことを決意したのだった。




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