艦隊これくしょん~みらいの未来~ (エラー猫)
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プロローグ:終わりと、始まりと。

 

夢を、見ているようです。

 

それは、遠いようで近いような。

 

わたしは空を見上げようとしているんです。

 

 

・・・ここは暗いくらい海の中。沈んでいく気配に、なんとなく思い出す。

 

 

 

ああ、そうだ。わたしは任務を果たせたのかな?

 

もうわたしの船体(カラダ)はボロボロで、たとえ浮いていられたとしてももう戦う事は出来ないんだろうと思う。

 

 

―――もともと戦いは好きじゃないから、それはそれでいいんだけどね。

 

 

 

みんな退艦できたかな?角松二佐と草加少佐は出たから、大丈夫だとは思うけどね・・・

 

 

わたしには、二人の気持ちがわかった。

どっちも、国のため、人の為に戦っていたから。それはきっと、尊いことだと理解してたから。

 

それでもよかった。わたしたちにとって最悪の、『原爆を日本がアメリカで爆発させる』なんて結末にならなくて。

 

 

・・・一緒に沈んだ大和にはちょっと申し訳なかったかな。

 

 

 

それにしても、ここは暗い。

 

・・・いや、目をつむっていれば暗いもなにもないかな?

 

なんとなくわかるのだ。今、わたしは目をつむっているって感じが。

 

 

何か、包まれるような、暖かな・・・海の底を感じさせない雰囲気に、わたしはなんとなく目を開いてみようと思ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はれ?」

 

 

 

 

 

 

変な言葉が出た。

 

・・・というか、言葉が出るっていうのは、何かおかしいかな。

 

 

 

わたしは【ゆきなみ型三番艦ヘリコプター搭載型イージス護衛艦:みらい】・・・とどのつまり艦船。海上自衛隊所属のフネなのだ。

 

声がでるなんて事はありえないんだけどな・・・

 

 

 

「・・・でもここってどこかな?ってあれ?」

 

 

 

やっぱり。自分の思った事が声に出ている。

 

・・・声に出ている?

 

 

未だ完全に覚醒しきらない頭でぼーっと周りを見渡す。

 

 

・・・艦船にも魂は宿る。そう言われるだけあって、私にだって思う事はあったし、感じることはあった。

でも、いま。完全に何かが違う。

 

 

データとして頭に送られてくる回りの景色とは違う、まるで肉眼で確認したような不思議な感覚。

 

ふと周りを見渡せば、どこかの部屋のような・・・でも、私が入れるような場所って言ったら、ドックだと思うのだけれど。

 

 

下を見れば、何か視界を遮るものが・・・?

 

あれですね。女性のおもちですね。なかなか大きいものをおもちのようで・・・で、そのおもちをお持ち(洒落ではない)の方はどうやらベッドに寝かされているようで、毛布が――――

 

 

 

 

ここで、ようやく頭の回転が良くなってきた。

 

 

 

「・・・え?なんでわたし、こんなおもちを上から見下ろすような視線なんだろう?」

 

 

 

さっきも言ったけど、わたしはフネのはず。

 

声を出すはずがないし、こんな場所がいるわけがない。

 

したがって、ここにいるわたしは『フネじゃない』。

 

 

 

「え、ちょ、冷静になりましょう。クールになるんだわたし・・・船じゃないってどういうこと?」

 

 

 

今さら嘘だなんて全否定はしませんよ。タイムスリップなんて経験したんです、そのくらいは柔軟性があります。

 

 

 

混乱しながらも、鏡がある事に気がついて、わたしは『立ち上がる』。

 

―――もう、大体の見当はついてたりします。

 

 

それでも、頭の中ではいやまさか。と否定している自分がいるわけで。

 

その答えを知るためにもわたしは―――そのやたらと大きい鏡の前に姿を映し出す。

 

 

 

・・・コスプレって、こう言うのを言うんでしょうか。

 

どこか、『彼女』の服装は女性士官を思わせる海上自衛隊の服装で。ただしミニスカートである。

 

日本人を思わせるその黒い髪は、縛りもしない長いそれは陽の光を浴びて、どこか幻想的にみえる。

 

瞳はちょっと茶色いかな?とは思うけど、全体的に整った、日本人といった感じの顔。

 

自己主張が激しいと思うおもちに、くびれたおなか、安産型なスタイル抜群さん。

 

 

なぜ二―ソックスなんてはいてるのか疑問に思うその『彼女』は、『わたし』の考えるようにその手を動かして、頬に手をあてた。

 

 

 

 

 

 

もう、否定する材料がないわけですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたし、女の子になってるうううううう~~~っ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

イージス護衛艦、みらい。

 

 

 

 

――――女の子になっちゃいました。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき:

はい。というわけでやっちゃったぜ!
艦これSS・・・どうしてもアニメのあのたぎりを抑えることができなんだ。

みらいを男性にするか女性にするかですっげー悩みましたが、みらいちゃんに決定。

実は人格は、まったくフネにも艦これにもジパングにも関係ないところから引っ張ってきてます。と言っても、あまりその子に近づけすぎると残念娘になる可能性があるんで、少し残っている程度です。


服装とかは完全趣味、はい、妄想全開なのが窺えますね(




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1話:ファーストコンタクトは・・・?

艦隊これくしょん人気だけどそこまで伸びねーだろーなー→うわあああああ⁉︎なんか伸びてるうううううううう⁉︎

って感じになってる、私です。

なんとか期待に応えられるように頑張ります。


艦娘。それは人類の切り札。

 

 

人類が二度にわたって経験した世界を巻き込んだ戦争、世界大戦。

 

 

その後ソ連とアメリカにより冷戦が続き共産主義が倒れた。

民主主義の世界となり、日本もまた発展していき。

 

 

紛争や宗教のいざこざが起きても、過去の悲惨な戦争は、もう二度と起きることはないと・・・起きないでほしいと願っていた。

 

 

 

 

 

――――その願いは、簡単に撃ち壊された。

 

 

 

 

突如、ハワイ近海を筆頭に行方不明になる艦船。

 

自体を重く見た国際連合は艦隊を派遣。

 

 

・・・派遣された艦隊は全滅。

 

 

残されたものは、最後に艦隊から送られたデータ。

 

 

 

海の上を走る、異形。

まるでどこか女性を思わせるソレらは、次々と艦船を破壊していき、人々を屠っていった。

 

 

 

誰かが呟いた。「お前達はなんだ」と。

 

 

彼らは答えた。「我らは深海棲艦。我らは過去に沈みし亡霊故に」。

 

 

 

誰もが悟った。

彼らは、まさしく亡霊。

 

過去に沈められた英霊達が怨霊となって現れたのだと。

 

 

奮戦空しく、敗退を重ねる人類。

 

 

誰もがあきらめかけた時・・・『彼女たち』が現れた。

 

 

 

深海棲艦と同じく大海原を駆ける、美しき娘たち。

 

彼女たちは人類を守った。深海棲艦と戦い、傷つき、それでもなお戦い。そして勝利をおさめた。

 

 

彼女達は名を持っていた。それは奇しくも第二次世界大戦中に戦い抜いた艦船と同じ名前だった。

 

 

誰かが言った。

 

「深海棲艦が怨霊だとするのならば。闇だとするのならば。彼女達はまさしく英霊。この世によみがえった光の象徴――――『艦娘』」と。

 

 

 

 

 

そうして10年以上の時が過ぎ・・・人間と艦娘は共同で深海棲艦との戦いを続けていた。

 

艦娘は整備などが必要で人間は戦力が必要で。たがいがパートナーとなるのはもはや必然ともいえた。

 

 

ここはそんな艦娘と人間・・・艦娘をサポートし、指揮する司令官/提督が在籍する中でも、最大の規模を誇る日本の、横須賀鎮守府である。

 

 

 

「ふんふ~ん♪」

 

 

 

機嫌良く司令官の執務室を掃除する一人の少女。

茶色の髪を後ろで結いどこかの小学校を思わせるセーラー服を着た女の子・・・彼女もまた艦娘である。

 

 

 

名は『暁型駆逐艦4番艦:電』・・・この鎮守府における一番最初の艦娘であり、司令官の秘書艦でもある。

 

 

 

「おはよう、電。今日も元気だね」

 

「あ、おはようございます司令官さん。今日の書類は机の上に置いておいたのです」

 

「うん、ありがとう」

 

 

 

片付けもそこそこの時、ガチャリと扉が開いて一人の男性が部屋へとはいって来る。

彼こそ電にとっての司令官。ピシリと着こなす白い軍服に帽子。まだまだ若いにも関わらずこの辺の海域を任され、少将の位を授けられるくらいの男である。

 

 

 

「・・・そう言えば、彼女は?」

 

「え?・・・ああ、あの新しい艦娘さんですか?」

 

 

 

片付けが終わり、執務に取り掛かろうとしたとき司令官から声がかかる。

それは、昨日の遠征からの帰り道で遭遇した一人の艦娘の事だった。

 

 

艦娘は、その名の元になった艦船の装備等をモチーフにしたと思われる『艤装』を装備することにより海の上を走ることができる。

 

例えば電であれば魚雷であったり連装砲であったり。

 

 

その艦娘は、とてもめずらしい艤装をしていた。

 

 

何かのコンテナと思わしき装備と対空機銃のようなものを後ろに背負い。

左肩には小さいながらも甲板を思わせる装備がついていて、右手には単装砲らしきものが見えた。

 

左手にもまた艦首を思わせる盾(?)と、コンテナが見えたその少女は、白い司令官のような軍服を身にまとった艦娘だった。

 

 

艦娘を入手する方法は主に二つ。

一つは鎮守府ないに存在するドックで妖精さんに資材を渡し、製造してもらうこと。

 

妖精さんやドックに関することは今回は後回しにしよう。

 

 

もう一つは、海の上で保護する、ドロップと言われる方法だ。

 

 

彼女達はなぜ自分が一人でいるのか分からないで、そこに佇んでいたりする。

 

一説には深海棲艦の怨念が晴れて艦娘になるのだという話もあるが、真偽はわからない。

 

 

 

電をはじめとした鎮守府艦隊はそんな彼女をいつも通りのはぐれである艦娘と感じ話しかけようとしたのだ。

 

 

・・・だが、その艦娘はいきなり気絶。慌てて皆で鎮守府に運び、今の今まで意識を取り戻していない。

 

 

何気に美人で、電が目指す「素敵な女性」といった感じがしたので、実は気になっていたのだ。

 

 

 

「確か明石さんからの報告だとまだ目が覚めてないみたいなのです」

 

「・・・そうか。何事もなければいいが」

 

「はい、心配なのです・・・」

 

 

 

二人で少しだけ顔を俯かせる。

と、その時ぽん、と提督は手を叩いた。

 

 

「どうしたのですか?」

 

「電、丁度いいから彼女の様子を見てきてあげてくれ。起きていたら私のところへ連れて来てくれ」

 

 

 

突然司令官にそう言われてちょっとだけ驚くが、すぐに二つ返事で了承した。

電にはわかっていた。司令官は自分が彼女の事を気にしていることを。

 

だから、こうして用事と称して医務室へと赴かせようとしているのだと。

 

 

なぜこうも以心伝心か?それは多分、彼と彼女の左手薬指を見れば一目瞭然だろう。

 

 

 

一応言っておくと彼はロリコンではない。手を出していたりするかも知れないけどロリコンではない。

 

 

 

 

大事なことなので二回言いました。

 

 

 

 

 

 

ということで司令官から指令をいただいた電は医務室へと向かっていた。

起きているといいなと思いながら。

 

 

 

「・・・あれ、電じゃない。どうしたの?確か今日は秘書艦じゃないっけ?」

 

 

 

そう言って話しかけてきたのは電の姉。暁型3番艦である『雷』である。

電とは対照的で、元気あふれる少女だ。

 

ほかに電には2人姉がいるが、残念ながらこの鎮守府にはいない。

 

 

 

「あ、雷ちゃん。実はかくかくしかじか・・・」

 

「しかくいむーぶ!なるほど、あの人のお見舞いね!雷も一緒にいくわ」

 

「いいのですか?」

 

「うん、ちょうど手が空いてるし。それに雷もあの人が気になってたから」

 

 

 

というわけで道中で仲間を増やした電は雷と共に医務室に向かう。

二人の話は、今医務室に居る彼女の事でもちきりだった。

 

あの不思議な艤装もそうだが、彼女が一体どの艦種かで二人とも色々な疑問を投げかけていた。

 

 

大きさ的には重巡のような気がする。

が、甲板がついていたり、単装砲や対空機銃だけしか装備が見えなかったり。

 

実は軽巡なんじゃ!?なんて話で盛り上がる。

 

 

と、あともう一つ角を曲がれば医務室・・・と言う時に。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・うう~~~っ?!」

 

 

 

 

 

医務室から聞きなれない女性の声が聞こえた。

しかも叫び声。

 

二人で思わず顔を見合わせる。

 

 

「もしかして起きたのかしら?」

 

「でも今の、何かを叫んでたです?」

 

「・・・行ってみましょう!」

 

 

 

廊下を走るのはご法度(特に電の場合色々とぶつかったりと前科があったりする)だが、

緊急事態かも知れないということでたたたと走りだす。

 

 

 

「大丈夫ですか!」

 

「何かあったの!!」

 

 

二人で医務室の扉を開く。

 

 

見えたのは、件の艦娘。

どうやら起きたらしくベッドの上から出ていたが、何故か鏡の前で顔に手を当て、へたり込んでしまっていた。

 

 

 

 

「うそでしょ、なんでわたし女の子なわけ・・・?夢、ではないだろうし・・・あれ?あなた達は?」

 

 

 

 

どうやら、珍しい状況のようだと二人は判断した。

 

艦娘には二種類存在する。

 

一つは艦娘としての責務を知りながら出現する場合。

そしてもう一つは、なぜ自分が艦娘になったかを知らずに出現する場合だ。

 

 

どうやら彼女は後者のようだと感じた二人は、とりあえず目の前の彼女に話しかけようと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

わたしとした事が、思わず驚いて人が入ってきたことも気がつかなかったとは・・・不覚です。

 

わたしの前に現れたのは、二人の姉妹と思わしき少女。

 

どちらも可愛らしい女の子で、小学生くらいにしか見えませんね。

 

 

 

「ええと、あなた達は?どこから来たのかな?」

 

「雷よ。かみなりじゃないわ、いかづちよ。そこのところもよろしく頼むわね!」

 

「電なのです、よろしくお願いします・・・ええと」

 

 

「ああ、わたしの名前ね・・・」

 

 

 

どう、答えればいいのだろう。

 

生真面目に「イージス護衛艦です☆」みたいに言っても多分信じてもらえいないだろうなぁ、うん。

 

今の私は信じがたいですけど、女の子ですから。

 

 

 

「そうだね。『みらい』と言ってもらえれば助かるかな。よろしくね、いかづちちゃん、いなづまちゃん」

 

 

 

そう言ってわたしは二人の頭を思わずなでてしまいます。

 

まあ、二人ともまんざらでもなさそうなので問題ないでしょう、うん。

 

 

にしても不思議な名前だなぁ。

 

まるでわたしたち護衛艦や、はたまたわたしたちにとって先輩で、そして目標でもある、あの特Ⅲ型駆逐艦3番艦と4番艦、雷や電みたいな名前です。

 

 

 

・・・まあ、きっとそんな名前をつける方もいるんでしょう、うん。

 

例えばで言えば、月と書いてライトと呼ばせたりするキラキラネームなんてものもあるんですし、いなづまちゃんやいかづちちゃんなんて名前があってもおかしくはないです。

 

 

 

「それで一体ここは?」

 

「あ、ここは横須賀鎮守府の医務室になります」

 

 

「・・・横須賀ぁ?」

 

 

 

なんだ、ここって日本なんですか・・・というよりも、鎮守府?基地じゃなくて?

 

 

ううん、色々とまだ整理がつかないなぁ。

 

 

 

「とりあえず起きたので、司令官のところに連れて行きます。お話したいそうです」

 

「大丈夫?歩ける?もしもふらついたらいつでも雷に頼ってね!」

 

 

「あはは、ありがとね」

 

 

 

さて、司令官・・・と言う事はこの基地の一番お偉いさんか・・・

 

なんでわたしと話をしたいのか全く分からないけど、とりあえず失礼のないようにしなくちゃ。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき:


さて、というわけでみらいちゃんと雷電姉妹の邂逅です。

気がついたと思いますが、みらいちゃんはまだ艦娘の事についてきちんと理解してません。

なので目の前の二人がみらいちゃんにとって偉人(?)である事に全く気が付いておりません(笑


みらいがわざわざ漢字ではなくひらがななのも、「女の子の名前で、流石に漢字にするわけがないでしょう」といった勘違い故です。







あ、いまさらですが、みらいちゃんにとって特Ⅲ型駆逐艦である電と雷は目指すべき目標です。
理由は言わずもがな。雷電姉妹の経歴を思い出していただければきっとわかることかと。

そんな人たちに頭なでなでしてたんです。このあとの展開はわかりますよね(暗黒微笑



それと、この世界における艦娘と深海棲艦についてちらっと書きましたが、これは私が考えた独自の考えですのであしからず。
・・・たまたま亀の怪獣映画平成第二部作を見てたせいでちょっとそれっぽくなりましたが大丈夫です。少なくともレギオンは出ません、出しません。



PS.はい、早速やらかしました。資本じゃねえよ共産だよ私のばか。

なんで間違ったんだろ、ガチで気がつかなった私を許して欲しい…

この低学歴がと生優しく見ていただけると非常に助かります。

教えて頂いた佐武さん、ありがとうございました。





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2話:どうやら先輩方のようです

前回はマジで初歩どころか小学生レベルの凡ミスかましたのでまたそんなミスが無いか戦々恐々としつつ投下していきます。

ミス等有りましたら感想で教え頂けると助かります。

*故あってちょっと作者ネーム変えましたけどあんまり関係ないので気にしないでください。それとあとがきに告知が有ります。


電が部屋を出てから司令官である彼はいつも通りに執務をこなしていた。

 

ふと見れば、この部屋もずいぶんと賑やかになったと少しだけ顔をほころばせる。

 

 

一番最初、彼と電が来た当初は執務用の机なんてものはなく、段ボールの上で書いていたのすら懐かしい。

 

 

今では沢山の仲間を引き連れ、少将という地位にまでのぼりつめ・・・大切な伴侶と一緒に日本を守っている。

 

 

でも彼はロリコンとは認めない。ただ好きになったのが電だったと言い訳をしたりする。

 

 

 

と、盛大に話がそれた辺りに控え目に執務室のドアがノックされた。

 

 

このノックは間違えるはずがない。電だ。

 

 

 

「どうぞ、電」

 

「はい、失礼します」

 

「司令官、私もいるわよ!・・・ほら、みらいさんも」

 

「あ、はい。失礼します」

 

 

 

控え目な声と、元気な声。それと聞きなれない声。

 

どうやらどこかで雷と合流し、そして目が覚めただろう艦娘・・・みらい、という艦娘と共に訪れたようだ。

 

 

 

「電、お疲れ様。雷もありがとう・・・それで、君が新しい艦娘かな?」

 

「え、あっと・・・艦娘?」

 

「司令官さん、どうやらみらいさんは自分が人間になった理由もまだ気がついてないみたいなのです」

 

「私たちで説明しても良かったけど・・・司令官からの方が説得力があるから先に連れて来たの」

 

 

「・・・なるほど。ではまずは艦娘に関することから話すことにしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、ソファに座るように言ってくれる司令官さん。

 

とても若くてびっくりしたけど・・・それよりも階級、少将じゃない・・・

二倍びっくりだよ。

 

それにしても服装が海上自衛隊のものじゃない。あれは・・・草加少佐みたいな日本海軍の服装だよね。

ってことは、今は昭和なのかな?

 

 

 

「さて、まずみらい、といったかな?」

 

「あ、はい」

 

「最初の確認だが、君は元の艦船の記憶を持っているかな?」

 

「っ!?」

 

 

 

・・・この人、一体どこからその情報を?

って、よく考えたら私を保護したらしいし考えれば当たり前、か。

 

 

 

「はい、覚えています」

 

「そうか。簡潔的に言えば、元々艦船だった存在が轟沈、撃沈した後に人の形をとり我々の前に現れたのが、艦娘だ」

 

 

 

そう言って、司令官さんは今までの歴史を私に紐解いてくれました。

 

・・・そうか。じゃあ、わたしも艦娘、ってわけですか。ただなんで女の子なのかきになりましたけど、気にしたら負けなんだろうなと漠然と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、他にも色々と説明されようとしてるんですが、正直今全く気が気でないんです。

 

 

・・・なんでって?

 

 

 

 

「あの、司令官さん。ひとつ質問があるのですが・・・?」

 

「ん、どうしたんだい?」

 

「先ほど艦娘とは元々艦船だった存在が人の形をとって現われた存在だとおっしゃいましたよね?」

 

「ああ。そのとおりだ。そこに居る電や雷もまた艦娘だ」

 

 

 

 

ぴしり、とわたしの中の時がとまったきがしました。

 

 

 

 

「あの、みらいさんだいじょうぶなのです?」

 

「なんか顔色が悪いわよ・・・どこか具合が悪いの?」

 

 

 

可愛らしい姉妹が、私が変なことに気がついて心配してくれます。

 

けど、違うんです・・・違うんですよ・・・!具合が悪いわけじゃないんです・・・!

 

 

 

 

 

 

 

「あ、の・・・もしかして。もしかしてなのですが・・・貴女方は、もしやあの特Ⅲ型駆逐艦3番艦の雷さんと、4番艦の電さんなのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、そうよ!よくわかったわね」

 

「なのです。確か艦船の時も出会った事がなかったので初対面だと思ったのですが・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、やっぱりそうなんですね。

 

 

ここで少し前のわたしの言葉がこちらになります。

 

 

 

 

―――まるでわたしたち護衛艦や、はたまたわたしたちにとって先輩で、そして目標でもある、あの特Ⅲ型駆逐艦3番艦と4番艦、雷さんや電さんみたいな名前です。―――

 

 

 

 

ええ、ええ。そうなんです。

 

このお二方、わたしにとって大先輩にあたり、そして目標なんです。

 

 

 

そんなお二方にわたし、気安く頭をなでなでした挙句、キラキラネームだのなんだのと脳内で言いたい放題だったわけです、はい。

 

 

 

 

そんなわたしがとれる、たった一つの解決策、それは。

 

 

 

 

 

「・・・申し訳ありませんでした先輩方!あんなふざけたことしやがったこのわたしをお許しくださいぃ!!」

 

「はにゃ~!?みらいさんがいきなり土下座を~!!?」

 

「ちょ、ちょっとみらい?いきなりどうしたのよ、ふざけたことって何もしてないじゃない!?」

 

「いいえわたし調子のってましたすんません!たかだか護衛艦ごときがあの有名なお二方にたいして頭をなでる?脳内でいろいろ?これは切腹ものなんです!ちょっと身を清めに行って参りますううううぅ!」

 

「ちょっと落ちつけぇ!?」

 

 

 

 

 

 

わーわー!ギャーギャー!!

 

 

 

 

 

 

~司令官が鎮圧に乗り出しました。しばらくお待ちください~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、お騒がせしました」

 

「ようやく落ち着いたわね・・・」

 

「みらいさんが大変なことにならなくてよかったのです・・・」

 

「うん、まあ・・・なんであんなに取り乱したのか分からないけど、思い直してくれたのなら良かった」

 

 

 

うう、とても恥ずかしいところを見せてしまいました。

 

それにしても、なんで取り乱したかって?そりゃきまってますよ!

 

 

 

「あたりまえです!お二方は、わたしにとって目標といってもいい方たちなのですから!」

 

「・・・目標?」

 

「なのです?」

 

 

 

はい!と大きく返事をして、あの出来事を思い出す。

 

それは、2003年。とある観艦式の時の出来事。

 

わたしたちは第二次世界大戦のときに起きたとある出来事を知る事となります。

 

1942年3月、スバラヤ沖海戦。沈みかけていたイギリスの重巡洋艦エクセターと、駆逐艦エンカウンター。未だ乗員達が乗っており、絶体絶命の危機に現れた一筋の光。

 

それが、このお二方、雷さんと電さんになるんです!

 

 

と く に ! 今でもあの、雷さんの艦長であった工藤艦長の再現VTRは記憶に残っています。

 

 

『敵兵を救助せよ!』

 

『敵とて人間。弱っている敵を助けずしてフェアな戦いは出来ない。それが武士道である』

 

 

そして最後。士官を甲板に集めてのあの宣言!

 

 

『諸官は勇敢に戦われた。諸官は日本海軍の名誉あるゲストである』

 

 

今でもしびれる一言です!憧れです!!

 

 

 

「それまで公式的な記録は全くと言って残っていませんでした・・・工藤俊作殿は、まったく自分の事に関して記録を残していませんでしたから。

でも!その助けられた士官の一人、サー、つまり貴族の称号を持つ外交官にまでのぼりつめたサムエル・フォール卿のおかげで私たちは知ることが出来たのですっ!」

 

 

 

 

わたしたち護衛艦は、ご存じの通り海上自衛隊に所属しているわけです。

その根幹にあるのは、もちろん敵を攻める事ではありません。自国を守り、弱きものを助けることこそ、わたしたちの本懐なのですから。

 

 

 

「フォール卿は工藤艦長、そして助けてくれた雷、それに搭乗されていた乗員すべてに感謝をしておられました。それだけではありません。

時を同じくしてエセクターの乗員を救助した電さんもまたわたしにとって・・・いいえ、日本にとって誇るべき英雄なんです!」

 

 

「英雄なんて、そんな・・・」

 

「そうよ。私達は、いいえ。工藤艦長達は、ただ自分の正しいと思ったことをしただけよ」

 

「・・・いいえ。だからこそ、ですよ電さん、雷さん」

 

 

 

てれてれと照れるお二方に、諭すように声をかける。

そんなわたしの声音が変わったからか、二人がわたしを見上げてきます。

 

 

そんな二人が見やすいように、視線を合わせるように私はしゃがみました。

 

 

 

「あの戦時中。きっと見捨てることだって出来たはずです。いや、もしかしたらそれが最善だったのかもしれません。

それでも、人としての尊厳を守る。たったそれだけの事をすることがどれだけ難しいことか・・・」

 

 

敵なのだ。もしかしたら、家族が、戦友が、上司が部下が。彼らにやられたかもしれない。

その憎しみを消してでも。困っている人を、それが敵であろうとも助ける。生半可な覚悟で出来ることではありません。

 

 

 

「だから、誇ってください。電ちゃん、雷ちゃん。貴女達は、もっと誇るべきです」

 

 

それが、あの戦いで散っていった英霊達にとっても、きっと最大の供養となるはずですから。

 

 

「・・・っとまた頭も撫でちゃいました・・・ごめんなさい」

 

「ううん。いいの。みらいの気持ち、キチンと伝わったから・・・」

 

「それに・・・その、撫でられるのも、嫌いじゃないのです」

 

 

 

・・・こうしていると、まるで二人のお姉ちゃんになったような気分になります。

本当のお姉さんはガダルカナル島海域の戦いで沈んでしまった暁ちゃんなのですが・・・どうやら、艦娘として蘇り響ちゃんと一緒に元気に働いているそうです。

 

 

 

わたしにも実は姉が二人いたりするんですよね。ゆきなみ型1番艦、ゆきなみ姉さんと、2番艦あすか姉さん・・・

 

まあ、二人はタイムスリップしたわけでもないですし、きっと最後まで護衛艦としての責務を果たしたと思いますが。

 

 

 

やっぱり姉妹が元気にって言うのは、いい事だよね。

 

 

 

 

そんなわたしたちを、ちょっとだけ離れたところで司令官さんが微笑ましそうに見ているのがちょっとだけ印象的でした。

・・・気を、使ってくれたのかな。

 

 

だとしたら、やっぱりここの司令官さんはいい人なのかもしれないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき:

というわけで、みらいちゃん暴走編でした。


みらいちゃんが目標といった理由はこんな感じです。
護衛艦で、救助や救出。防衛といったものに力を注いでいる自衛艦だからこその想いってことです。

雷電姉妹を絡ませるにあたり、このお話はやってみたかったので出来て良かった。




と言う事で・・・また司令官達にみらいちゃんが護衛艦・・・イージス艦だという事を伝えられなかったよ・・・

え?みらいちゃんは護衛艦って言ってるって?あの騒ぎだと司令官も気がつかないんじゃないですかね(

次でなんとかして伝えて、な、なんだってー!?みたいにしたいですね。



*さて、ここで告知です。本来なら一番最初に言うべきだったことなのですが。

クロスオーバーですが、大分ジパング要素が薄れます。

・・・いやですね。プロットを構築してた時にジパング要素を沢山取り入れたらですね。
最終的にほぼ全ての艦娘が撃沈または轟沈。みらいも最後は・・・っていう、鬱展開になったんですよ。

熱血要素(オルタ的な意味で)は流石に勘弁してください(震え声



なのでこのSSのコンセプトは『艦娘となったみらいが、草加少佐も角松二佐も存在しない世界で、それでも彼らが目指したであろう最高の世界を目指し、深海凄艦と戦い艦娘を、そして人類を守る』となります。

なかなか『ジパング』の要素を出し切る事は難しいと言わざるを得ません。

原作のような展開を望んでいた方達にとっては恐らくコレジャナイと思われますが、どうかご理解の程をいただきたいと思います。

なのでSS紹介の文章をかえ、更にタグで『ジパング要素はフレーバー』を追加させていただきます。申し訳ありません。


PS、はい、何度目になるか判らないミスの報告です。暁ちゃんはキスカ島では無くガダルカナル島海域です。

一回調べ直さなきゃなー・・・

ダイダロスさん、ご指摘ありがとうございました。


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3話:その艦娘、21世紀の力を持つ者

リアル知り合いから「話が動かなすぎ」とヤジが飛んできたので加速します。

というわけで3話になります。ようやくみらいちゃんの身バレ回となります。
加速したにも関わらず、話の展開が遅い…気長に待って貰えると助かります。


「すみません、お騒がせしてしまって」

 

「いいやいいよ。私としても電や雷が褒められるのは嬉しい事だからね」

 

 

 

そう言って朗らかな笑みを浮かべる司令官さん。

 

でもわたしは見てしまいました。

 

電ちゃんと司令官さんのアイコンタクトでお茶を持って来るようにって感じのしぐさ、二人の左手薬指に光る指輪!

 

 

・・・え、両者同意の上ですか?どういう反応を取ればいいのかわかりかねます。

 

 

 

―――実はケッコンカッコカリという艦娘の更なる強化が出来るアイテムである事と、マジで司令官さん、手を出してたという事実を知り本当にどうすればいいのか分からなくなるのはもう少し後の話です。

 

 

 

 

 

「コホン・・・それで本題に入ろう・・・みらい。私たちに力を貸してくれないだろうか」

 

「力、ですか」

 

「ああ」

 

 

 

 

そう言って彼は席を立ち、窓へと歩み寄りました。

 

 

 

「今この国・・・いや、世界は深海棲艦によって未だ恐怖に陥れられている」

 

「制海を抑えられているから・・・ですね?」

 

「ああ。安心して航海ができず、交流すらできず・・・彼らは航空機すら使う。制海だけでなく制空も抑えられた地域すらある」

 

 

 

そう言われてわたしは更に今、とても危機的状況にあるという事に気が付きました。

 

 

「・・・通常兵器は通じない、と言う事ですか?」

 

「いや。確かに通じる・・・だが彼らもまた人型、そうでなくてもかなりの小型・・・にもかかわらず実際の艦船と同等の防御力、火力を有している」

 

 

そういうことか。

確かに戦闘機、いや護衛艦をはじめとした艦船だったとして、何百と迫りくる人型に対して、また小さな攻撃機に対して攻撃を当てれるかと問われれば難しいを通り越して不可能と言っても過言ではないですね。

 

 

 

「特に日本は海に囲まれた土地なのです」

 

「今でこそ私たちがいるから大丈夫だけど、昔は本当にきつかったって話を街のおばあちゃんから聞いたわ」

 

 

 

横からお話に加わってくる電ちゃんと雷ちゃん。

 

・・・確かに、日本から制海を取られてしまえば、あっという間に干からびてしまうでしょう。

 

 

 

「・・・わたし、あんまり戦いとかって好きじゃないんですけどね」

 

「・・・理解はする。けれども、どうだろうか・・・我々と共に・・・日本の為に戦ってもらえないだろうか?」

 

 

 

 

 

そう言われて、わたしは目をつむる。

 

思い出すのはあの二人。思い描いた『未来』が同じはずなのに違う道を行ってしまった私の大切な上官。

 

 

 

そして、今。その二人が思い描いた最上の未来が。

 

きっと、あの世界とは違うこの世界の日本だけれども。

 

危機にある?どうして?

 

 

 

―――ふざけるな。

 

 

 

わたしの中に、怒りが生まれた瞬間でした。

 

あの戦い。タイムスリップなんてSF映画さながらの出来事に巻き込まれて、色々とやってきて。最後には沈んで。

 

わたしは見てきた。誰もがただ、『明日』を望んで戦って、『未来』を見れずに散っていったあの戦いを。

 

戦った。わたしも、草加少佐も、角松二佐も。乗員全員が戦ったんだ。たとえそれが・・・私が沈むことになったとしても。

 

そこからどうなったかは、わたしにはわからなくても。

 

 

確かにつながったはずの明日を・・・亡霊が、ただのお化けさんがぶち壊す?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そんな事が、許されるわけがない」

 

「え・・・みらい?」

「みらいさん・・・?」

 

 

電は見てしまいました。

みらいさんのその表情を。

 

ぐっと握りしめた、その暖かな手のひらを。

 

 

そして―――さっきまで、電や雷ちゃんを優しく撫でてくれた、優しいお姉さんとは違う・・・

 

 

 

 

「わたし、そこまで戦績あるわけじゃないんで強くはないです。けど―――想いで、願いで誰かに負けるつもりはありません」

 

 

 

その顔に。その瞳に宿った、激情を。

 

 

 

「人間には・・・いいえ。生きとし生けるものには血が流れてる。あたりまえのことです。

―――でも、その血に、流れ出てしまった血に白も、黄も関係ない・・・すべてが赤色だ・・・私の艦長だった方の言葉です」

 

 

 

それは、どういう意味なのかはちょっと電にはわかりませんでした。

司令官さんにはわかったようですが・・・?

 

 

 

「みんな平等に生きる権利があるんです・・・それなのに、みんなの『明日』を・・・たかだか亡霊が『未来』を妨げる?―――いいでしょう」

 

 

 

そう言って、彼女は・・・みらいさんは、電たちのする敬礼とはちょっとだけ違う――後で聞いたら、海上自衛隊の敬礼だそうです――最敬礼で司令官へと向き直った。

 

 

 

「神様の企てか、悪魔の意思か・・・それはわかりません。わかりたくもありません。けれどここに誓います。

『ゆきなみ型3番艦ヘリコプター搭載型イージス護衛艦:みらい』・・・貴方方の築く『未来』の先駆けとなるのならば。喜んで貴艦隊に推参致しましょう!!」

 

 

 

そう言った彼女の表情は、どこまでも澄んでいて闘志をたぎらせていて・・・

 

でも、とっても綺麗だったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ピシリ、ときれいに最敬礼まで済んだのです。

横でなんだか目を輝かせてる姉妹も、まあ、いいんです・・・

 

でも、あの、司令官さん?すっごい驚いた表情でこちらを見てるんでしょうかね?

 

 

 

 

「あ、ああ・・・ありがとう。感謝する・・・と、ところで、もう一度・・・君の艦種を聞いても良かったかな?」

 

 

 

 

・・・?あれ、どっか間違っちゃったかな?

 

 

「コホン。では改めまして。わたしはゆきなみ型3番艦ヘリコプター搭載型イージス護衛艦:みらいでs『それだぁっ!!』ひゃわぁっ!?」

 

 

 

 

び、びっくりしたぁ・・・いきなり司令官さん、声を荒げるんですもん。

すぐにすまない、って謝ってくれたあたりやっぱりいい人ですけど。

 

・・・でも、どうしたんですかね本当に。

 

 

 

「・・・最終確認をさせてくれ。君は護衛艦・・・『海上自衛隊』所属のイージス艦・・・と言う事でいいんだね?」

 

「ふぇ?ええ・・・ってあれ?ここって昭和じゃないんですか?てっきり司令官の服装が海軍の物だったので昭和かと思ってたんですが」

 

「・・・?なぜ君がそこまで冷静なのかは分からないが・・・今、この日本の年号は平成だよ・・・そうか、イージス艦か・・・これまで確認されたことがないぞ・・・どういう事だ・・・?」

 

 

 

・・・え?今って平成?いやあ、まあそんな深海棲艦なんてモノが存在する世界ですからわたしの元の世界とは違うとは思ってましたけど・・・

 

って、ちょっと待って下さい。

 

 

 

「え?え?イージス艦が確認されてないってどういうことです?なぜ平成なのに海軍が存在するんです?!」

 

「落ちついてくれ、みらい・・・そうだな。お互いの齟齬をなくすために事情を説明しよう。いいな?」

 

「・・・はい」

 

 

 

そう言われて聞いた真実は、なかなかに驚きでした。

 

どうやらこの世界、過去の戦いでイージス艦のほとんどが撃沈されてしまってるらしいんですよね。

しかもその後、艦娘が登場したことによってイージス艦を造るより艦娘に頼った方が効率がいいってことになり、今では片手で足りるほどしか存在してないとか。

 

 

・・・いや、聞けばわかるんですけどね。そっか・・・ほとんど私の仲間っていないのか。

 

 

で、さらに。現状確認された艦娘は私をのぞいて全てが第二次世界大戦で活躍した艦隊の船であるということです。

だからこそ、海上自衛隊を解散し、昔の日本海軍を復活させたのだそうで・・・よくアメリカさんとかが黙ってましたね、それ。

 

 

 

 

「・・・だから、正直君のようなフネが・・・いいや。イージス艦が今登場したのがなぜなのかが気になってしまってな・・・済まない、大きな声で驚かせてしまった」

 

「いいえ気にしてないです・・・そっか、第二次世界大戦・・・ねぇ」

 

 

 

思い当たることがびしびしあります。

 

・・・というより、ソレしかないでしょう。

 

 

 

「もしもこれ以降もイージス艦が出るのなら、この国だけでなく世界が有利に傾くぞ・・・!これは朗報だ・・・!」

 

「あー・・・すみません、司令官さん――――たぶん、後にも先にも、イージス艦はわたしだけだと思います」

 

「「「・・・え?」」」

 

 

 

うーん、これ言ってもいいんでしょうか・・・てか、信じてもらえるかなぁ?

 

 

 

 

「ど、どういう事だみらい。なぜそうだと言い切れるんだ?」

 

「そうですね・・・わたしが、もしも『第二次世界大戦を経験したイージス艦』だって言ったら・・・どうします?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だ・・・?」

 

 

全面的に司令官に同意。

 

だって、イージス艦よ?雷たちだって知ってる、戦後の日本を守っていた艦艇達だもの。

 

すっごい強くて、どうにかして艦娘化できないかって議論が起きたって言うくらい・・・って司令官が言ってた。

 

 

でも、どうしてもできなかったって。

 

 

理由はわかんないけど・・・それよりも、みらいがあの戦いに参加したってどういうこと?

 

 

 

「わたしが就航したのは、平成14年。そこからしばらくは平凡に護衛艦やってたんですけどね・・・あの日。私達は不思議な現象に出会いました」

 

 

「不思議な現象・・・なのです?」

 

 

雷や司令官の疑問を思わず電が口に出した。

 

 

 

「そう。あの時、私達は突然暗くなった空に・・・オーロラを見たんです」

 

「オーロラ・・・って、あの空にキラキラってなるカーテンみたいなの?」

 

 

それって凄いじゃない!普通すっごい寒い北極とかじゃないと見れないって聞いたよ?

 

 

 

「ええ。そのオーロラです。でも、アレは、ただのオーロラじゃなかった・・・まるでわたしのすべてが閉じられたように感じた・・・

今でも分からない。いきなり、何も見えなくなって・・・何も聞こえなくなって・・・!」

 

 

「お、落ちつけ・・・大丈夫か?」

 

 

突然ぎゅっと肩を抱き寄せたみらい・・・きっと何か怖い事を思い出したんだろう。

思わず司令官がなだめたおかげで何とかなったみたいだけど・・・ちょっとだけみらいがうらやましく思っちゃった。

 

 

 

「・・・ありがとうございます、続けますね。計器は狂いっぱなしだし、嵐は起きるし・・・最後には落雷ですよ?本当に洒落にならなかったです―――でも」

 

 

 

そう言って、みらいは少しだけ顔を外へと向けた。

 

・・・なんか、みらいって美人だから凄い絵になるのよね。

 

 

 

「洒落になってなかったのはそのあとです。皆さん、タイムスリップって言葉、ご存じですか?」

 

「「たいむすりっぷ?」」

 

「未来から過去へと飛んだり過去から未来へと飛んだりする、SF・・・空想科学の話だよな・・・って、まさか!?」

 

 

雷と電はわかんなかったけど、司令官は分かったみたい。さっすが司令官!

 

・・・でも、今のお話・・・もしかして。

 

 

 

 

「はい。わたしとともにいた僚艦はどっか消えて途方にくれていた時、目の前に・・・そう、本当に突然艦隊が現れたんです。

わたしなんて小さなフネにしか見えないほどの大きな船影・・・その名前は、戦艦大和。そして、一緒に現れたのは大日本帝国海軍連合艦隊。

・・・わたし達は、気が付きました。今、わたし達がどこにいるのか。戦争が終わり、平穏を享受している平成から、どこへ来たのか―――――――

 

そこは、1942年、6月4日・・・太平洋上。ミッドウェー海戦直前という、最悪のタイミングでした」

 

 

 

ごくり、誰かが息をのんだ音が聞こえた気がした。

ミッドウェー・・・日本の多くの艦が沈んだ決戦の地。

 

そんな所にみらいってば飛んじゃったの?!

 

 

 

「だ、だが待ってくれ!公式記録には、そんなものはどこにも残っていない!」

 

「そりゃそうでしょう・・・またちょっとSFチックなお話になりますけど、並行世界って言葉は知ってます?」

 

「あ、それは知ってる。確か、似たような世界がたくさんあるって話でしょ?」

 

 

 

よく知ってるね、ってみらいになでられちゃった。

 

 

 

「そのとおり。並行世界論は、ちょっとした分岐で生まれるという話です。

例えば、今日の朝に何を食べたか。例えば、いつもと違う道を通るとか。例えば―――そう。第二次世界大戦に、イージス艦が現れる、とか」

 

「つまり・・・つまりだ。君は君自身が第二次世界大戦に飛んだ事によって、それまでの世界とは全く違う並行世界へと・・・その世界が変わった、と?」

 

 

「わたしがタイムスリップするくらいなんです。そのくらいの事があっても不思議じゃないことかと・・・

それに、わたしたちが元いた世界にも勿論そんなお話ありませんでしたし。ついでに言えば、わたしたちがいた世界には深海棲艦も艦娘もいませんでした」

 

 

「むう。信じがたい、が・・・前例がない以上ありえない話ではない、か・・・」

 

「はい。そして今司令官さんは『第二次世界大戦で活躍した艦船』とおっしゃいました。で、あれば一応私が現れた理由は説明がつくんですよ」

 

「並行世界とはいえ第二次世界大戦で戦ったから、か。なるほど、わかった・・・コレは後で元帥まで話を通さなくてはいけないかもな・・・」

 

 

 

最後に司令官ったら何かを呟いたけど、聞き逃しちゃった。

 

けど、それよりも今はみらいに聞きたい事があったんだ。

 

 

 

「ねえねえ、みらい!ミッドウェーに行ったってことは、ほかの艦船と一緒に戦ったってことよね!」

 

「・・・ええ」

 

「それじゃあ、やっぱり大和さんって強かったの!?」

 

 

 

そう。やっぱり日本の艦船としてはあの弩級戦艦の大和さんはきになるよねっ!

今も艦娘になっているらしいけど、元帥直属とかで、あったこと全然ないもん。せめて話くらいは聞いてもいいよね!

 

けど、それを聞いた時・・・何故か、みらいの顔には笑顔は浮かんでいなかった。

 

 

 

 

「ええ。大和は、強かった―――わたしが刺し違えてでも止めなきゃいけないくらいには・・・」

 

「・・・えっ?」

 

 

 

最後のところは、やっぱり聞こえなかった。

 

でも・・・なんだか、聞いちゃいけないことを、今呟いたような気がした。

 

 

 

「ねぇ、みら・・・?」

 

 

 

そのことを聞こうと思ってもう一度みらいの名前を呼ぼうとしたとき。

 

 

ばたぁん!と威勢良く執務室の扉が開いたんだ。

 

 

 

 

 

 




あとがき:


む、無駄に長くなった・・・

でも、どうしてもみらいちゃんの経歴を書くにはこうするしかなかったんですよね。

中には「それでもお前海上自衛隊かよww」とか思われる方いらっしゃるかも知れませんが、割とジパングにおけるみらいはこんな感じです。


いや、部下が暴走したせいでアスロック発射したりしますし(
気になる方はアスロック米倉で検索すると幸せになれます。

一応補足しておくと、なんだかんたで米倉もかっこいいとは思ってますよ?

あと、みらいちゃんは『未来』、という言葉に過剰に反応します。

これは自衛艦であると同時にタイムスリップをして、一時は海軍に編入されたりと色々あったせいだという設定。


そのへんの事については、そのうち全部まとめて設定集ってことで出そうかと思ってたりします。




あと実はこの話で艤装装備まで行くつもりだったのは秘密(



もっと纏める力が欲しいなぁ・・・


PS,またミスですはい。大和さんはミッドウェーで沈んでません。坊ノ岬沖でした。ジパングだとマリアナ諸島沖です。HOSキッズさん、ありがとうございました。


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4話:みらいの艤装

とりあえず今書き上げた分は投下してしまいますね。


今さらですけど、武装とかそのあたりの事で突っ込まないでね?
私、にわかなので・・・それなりにwikiったりして調べてますけどやっぱり実際に見たりしたわけではないので、全部イメージで書いてます。

なので、まあ不思議なことがあったら「これもすべて妖精さんのせいなんだ」ってことでお願いします。

(実は艦これもまだやれてないのは秘密


「しっつれいしまーっす!ってあれ、電ちゃんに雷ちゃん・・・あと・・・ああ!あの新人さんじゃないですか!目が覚めたんですねー」

 

 

「は、はぁ・・・失礼ですけど、そちらは?」

 

 

元気よくはいって来たのは、ピンク色の髪の女性でした。

見ればセーラー服以外にも、どこか船のパーツを思わせる装備がついてます・・・後、ギリギリなスカートですけどこの人も艦娘なのかな?

 

 

「あ、明石!どうしたの?」

 

「明石さん、ノックくらいはしてほしいのです」

 

「あはは、ごめんごめん。ちょっと急いでたんで・・・とと、失礼しました工作艦、『明石』です!修理が必要になったら言ってね!」

 

「これはご丁寧にどうも・・・あ、わたし護衛イージス艦のみらいです。これからよろしくお願いしますね」

 

「ななななんとイージス艦ですか!?ほえー始めてみました。これからはハイテクな時代ですねっ!?是非ともかいz」

 

「落ちつけ明石」

 

「あてっ。もう提督~。たたかなくてもいいじゃないですか~」

 

 

な、なんかテンション高めな艦娘さんですね・・・でも、工作艦かぁ。そんな船まで艦娘化するとはすさまじいです。

 

 

「それで明石。ノックもせずに客がいる時に入ってくるとはなんの用事だ?」

 

「っとと!ついつい目の前にハイテク艦がいるんで目がくらんじゃいました・・・って、そうか。みらいさんが起きてるなら、丁度いいですね。実はみらいさんの艤装に関してで・・・」

 

 

ぎそう・・・ああ、艤装ですか。

ついさっき説明された中にありましたね。

 

確か、それがいわば艦娘にとって最も船な部分だとか。

 

で、それをつけないと海に浮けないんでしたっけ?

 

 

 

「そう言えばここにみらいを搬送した時にドックに預けたままだったな・・・おいまさか、勝手に改造したりしてないだろうな?!」

 

「だ、大丈夫ですって。ただ少し整備にかこつけてかいzゴホン、かいたゴホンゴホン!」

 

「本音ダダ漏れじゃない・・・」

 

「なのです・・・」

 

「ちょ、その艤装がどんなものかは知りませんけど、かなり繊細な物でしょうから、出来れば触らないでほしいんですけど」

 

 

 

精密機器いっぱいですからね。いくら工作艦だからって、わたしの許可くらいは欲しかったです。

 

 

 

「あー、実はまだ手がつけられてないんですよ・・・」

 

「?・・・お前ならいの一番にバラしそうなものだが」

 

「あははー、提督からの信頼がない・・・まあ、それは置いておいて。みらいさん、着いて来てもらっていいですか?ちょっと私だけじゃ手に余ってて」

 

「・・・?」

 

 

 

一体どうしたんでしょうかね?

 

 

 

 

 

と、言うわけで工廠兼ドックへと向かっている最中です。

 

なんでも司令官さんはまだお仕事があるとかないとかで執務室に電ちゃんと一緒に残りました。

 

雷ちゃんはまだ時間があるそうで、私たちについてくるようですが。

 

 

 

と、そんな中たまに不思議な生物に合う事に気が付きます。

身長は私の腰くらいしかない三頭身の小さな生物・・・見た目、人間みたいですけど、コレなんでしょう。

 

 

 

 

「っとぉ。そう言えばみらいさんは『妖精さん』を見るのは初めてでしたっけ?」

 

「よ、妖精さん?」

 

 

 

どうやらこの小さいのは妖精さんというそうです。

 

元から、私たちみたいなのがいたのもあってSFっぽかったんですが、急にファンタジーっぽくなっちゃいましたね?

 

 

妖精さんの一人は、わたし達の話に出てきたってことがわかったからか、キリッとした表情にピシッと敬礼を返してくれたんですが。

 

小さいからかすっごいなごみます。一人持ち帰ってもいいかな?

 

 

 

「彼らは私たちや人間をサポートしてくれる心強い味方です。私たち艦娘の艤装の手入れなんかも、彼らがいれば数倍早く終わるんですから!」

 

 

他にも武器を開発したり、土地を開発したり。戦闘機を操縦したり艦娘の艤装に入って(!?)照準の補佐をしてくれたりとかするみたいです。

なかなかに多芸ですね。

 

 

 

「・・・で。みらいさんにお願いしたいのはほかでもない・・・あの子たちの説得をお願いしたいんです」

 

 

 

そう言ってたどり着いた工廠。

開いた扉から見える一番奥にそれはありました。

 

一目でわかる、わたしの艤装だ分かる装備が。

 

ハープーン等のミサイルを発射可能なVLS。コンピューター制御の高性能な対空機銃、ファランクス。

イタリア製の、速射可能な単装砲。どこか艦首を思わせる盾のようなものには、識別番号『182』の文字。その裏側にもVLSが存在していた。

 

 

 

 

 

その、手前。

 

どうやらこの工廠を担当していると思われる妖精さん達が誰かと言い争っています。

鉢巻とか巻いた、いかにも職人!といった妖精さんの、その、奥・・・

 

 

 

「いやぁ~、点検しようとしたらあの子たちが邪魔して手をつけられな・・・みらいさん?」

 

 

 

明石さんの声は、もうわたしの耳に届いていませんでした。

 

そこにいたのは、確かに妖精さんでした。

でも。わたしにはわかります。

 

・・・灰色のヘルメットと救命胴衣みたいな服を着た、妖精さん。

海上自衛隊の方が着ていたような、あの黒い服。

 

 

わたしが近づいてきたことがわかったからか、工廠の妖精さんは道を開けてくれました。

 

そうしてたどり着いた先にいた、その妖精さんたちは。

 

わたしを見た瞬間、すぐさま敬礼をしたのです。

 

 

 

 

「・・・そっか。ありがとう。守って、くれたんだね?」

 

 

 

わたしの問いかけに、自慢げにこくりとうなずいた。

 

彼らはただ、私が来るまで守っていてくれたんだ。

 

わたしの、みらいの。イージス艦という、『未来』の力が、どれだけの影響を持つのかを知ってくれているから。

 

それが、少しだけ嬉しく思えた・・・けど。

 

 

 

ちらりと見た妖精さん達は、どこかわたしに搭乗していた自衛官達に似ていました。

けど・・・一人、足りない。理由は、わかっているのだけれど。

 

 

 

「皆さん、感謝します―――傾注!」

 

 

 

私の言葉にザッと『わたしの』妖精さんが姿勢をただします。

 

 

 

「この世界には、私たちのような存在の他にも、人々を脅かす深海棲艦なる存在がいます。

彼らは人々を襲い、我々が守ってきた『未来』を壊そうとしています」

 

 

 

皆が、私の言葉に耳を傾けている。

中には、その内容に憤りを感じているのか、顔を真っ赤にしている妖精さんまで居ます。

 

 

その事に、少しだけ笑みがこぼれます。

例え、そこに乗っていたのが、本来の搭乗員でなく、妖精さんだったとしても・・・『自衛官としての矜持』を忘れないで、いてくれたのだから。

 

 

 

「わたしにはそれが許せない。みんなが守ってきたこの海を!空を!大地を!!たかだか亡霊ごときが食い荒らそうとしてるのを、見捨てておけません!

力無き者達が、虐げられていることが許せません!!!

だから、わたしはここの艦隊に入り彼らを撃退することを誓いました・・・どうか皆さん。私に、力を貸して下さい!」

 

 

 

そこに、言葉はなかった。そこに言葉は必要なかった。

 

ただ、わたしの妖精さん達は最敬礼を以て答えてくれた。それだけで十分でした。

 

 

 

「ありがとうございます。直れ・・・と、言うわけで、ここの妖精さんとは仲良く!彼らは、私たちと志を同じくする同志なんですから」

 

 

 

そう言うと、どこか仕方ないなぁ・・・っといった感じでわたしの妖精さん達はここの妖精さん達の元にとたとたと歩いて行きました。

 

・・・何を話しているのかはあんまり理解できませんが、どうやら和解しようとしてるみたいです。良かった。

 

 

 

「と、明石さん!多分これで大丈夫だと思いますよってどうしたんですか?」

 

 

 

ちょっとあとから考えると恥ずかしい演説に、顔が熱くなるのを感じながら今まで頭の片隅に置いてた明石さん達に目を向けると、なんでか下を向いてプルプルと震えてた。

なんで?と聞こうと思ったら・・・ばひゅん!って音がして明石さんが消えたと思ったら、目がキラキラした状態で手を握られてました・・・なんで!?

 

 

「すっごいです!今の演説、カッコ良かったです!痺れましたぁ!!」

 

「え、あ、あはは・・・ありがとうでも出来れば忘れてほしいかなって」

 

「もう感動しちゃいました!この工作艦明石!たとえ戦闘で劣ることがあろうとも貴女の事をほかの事で全面的にサポートしちゃいます!!」

 

 

 

話を聞いてくれやしない。

出来れば忘れてほしいのにぃ・・・

 

 

 

「あはは、みらいって結構激情家なのね。」

 

「雷ちゃん、出来れば忘れてほしいかなって」

 

「あはは・・・でも・・・うん。雷は悪くないかなっておもうわ!」

 

 

そう言って胸を張ってくれる雷ちゃん。

それが少しだけ嬉しかった・・・でも、やっぱり忘れてほしいですはい。

 

 

 

 

と、ひと悶着あったりもしましたが、ようやくわたしの艤装を同期させる作業にまでこぎつけました。

どうやらわたしの妖精さん達が細かな点検はすでに済ませていてくれたようで、特に修理、補給も必要なく動かせるようです。

 

あとできちんとお礼を言わないと。

 

 

で、今私はドックと言われる場所の水が張ってる場所で待機しています。

 

とっても不思議な場所・・・なんだか、幻想的です。

 

 

 

「さて・・・本来はまた違う出撃方法なんですけど、今回みらいさんは初めてになりますから私が補佐しますね!」

 

 

そう言ってさっきの重たそうな艤装を軽々と持ち上げる明石さん・・・いやよく見たら少し汗が見えます。

・・・重いんですね。

 

 

「っ」

 

「あ、大丈夫ですか?何か変なところあります?」

 

「大丈夫です。ちょっとちくってしただけなので」

 

 

ずしり、と感じる重みはどこかしっくりと来ました。

 

 

と、それと同時に私の立っている場所が変形、そこの下に格納されていたであろう艤装の一部が私の足に装着されていきます。

 

・・・SFなんだかファンタジーなんだか、よくわかんないです。

 

 

そして、装着されると同時に前に押し出されるような感覚。少しバランスを崩しながらも、なんとか進水を終えます。

 

 

・・・水の上だって言うのに沈まず、まるで陸に立っているように自然体でいることが不思議。でも、そう。『帰ってきた』・・・そう思えるんです。

 

明石さんがしきりに大丈夫かと聞いてくるのに大丈夫だと答える片隅で、すべてのチェックを終わらせる。

 

 

単装砲・・・OK。

VLS・・・OK。

対空機銃・・・OK。

対潜装備・・・OK。

機関・・・準備完了。

対電子戦装備・・・OK。

 

飛行甲板・・・磨き抜かれたようにぴっかぴか。

わたしにつまれた航空機であるヘリ・・・海鳥とSH-60Jも準備万端。

 

 

 

「診断終了・・・完璧です。いつでも行けます」

 

「そうですか・・・提督にはもう許可をとっていますから、試験航海してみますか?」

 

「いいんですか!?」

 

 

思わずテンションが上がってしまう。

まるでおもちゃを貰った子供のようでしたが、今わたしには自分を抑えることができそうにないです。

 

だって、今このドックの外から感じる潮の香に。波の音に滾っちゃってるんですから。

 

 

「・・・ふふふ、今凄くいい顔してますよ。勿論オールオッケーです!妖精さん、ドックの扉開けて!」

 

 

 

ゆったりと開かれていく扉に、まだかまだかと気だけが逸ります。

外から漏れた、暖かい日差しに思わず目を閉じますが・・・今は、それすらも嬉しい。

 

 

 

完全に開かれた扉・・・もう、私を遮るものはありません。

 

明石さんと雷ちゃんの「いってらっしゃい」の言葉に軽くうなずいて、最初は微速前進。

 

完全に湾内に出ます。

 

 

 

「ああ・・・そう。これです」

 

 

 

完全に海の上に居る。今、わたしが元々艦船だったと思いだせる瞬間。

 

わたしは、やっぱり海が好きなんだって理解した瞬間です。

 

風でなびく髪を手で押さえる。うん、とても気持ちがいい。

 

 

と、艤装の中からぴょこっとわたしの妖精さんが顔を出します。

 

・・・どうやってはいっているのかは企業秘密だそうです。

 

 

彼が言うには、一応沖までは出ていいと言うことなので・・・ちょっとだけはしゃいじゃいましょう。

 

 

 

「機関全速!久々に何も考えないで突っ走りますよ!」

 

 

 

わたしの声に反応した妖精さん達から了解の意が返ってきたとき、既にわたしの機関がうなり声を上げています。

 

これでもわたし、イージス艦ですからそれなりに早いんですよ?最高速度30ノットって言われてたんですけど、実は35ノットまで出せちゃいます。

 

 

徐々に早くなる速度の中、わたしはどうしても笑みを隠せませんでした。

 

 

 

 

 

 




模擬戦までたどり着けなかった無力な私を許してほしい・・・(

いや、実はこのお話でこう・・・ね、もう少し先に続けたかったんだけど割と長くなったので区切りました。

もっと分かりやすい内容に出来ればいいのですが・・・申し訳ありません。


あと、わかりやすい複線的な感じでみらいの戦争時の戦いとかに関してはボカしてあります。

決して書き忘れとか、そういうのではないので・・・って分かりやすい複線だから誰もそんなの気にしないか。



ドック内に関しては艦これアニメ1話のアレを思い出してもらえれば。
うちの人たちは基本優しいです。初心者にはきちんとサポートしてあげますよ。



PS、恒例のミス報告です。ヘリはDH−60ではなく、SH−60Jでした。

佐藤さん報告ありがとうございました。


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5話:みらいの実力と・・・

これで書き溜め的なものは全部・・・でもやっぱり展開が遅いのは許してください。なんでもはしませんけど。




「うみなりがこえをーふんふふんふーふー♪」

 

 

思わず歌がこぼれてしまうほど今の私は上機嫌でした。

 

今は横須賀の鎮守府沖、数キロといったところでしょうか。

 

任務の関係とか、あのタイムスリップとかで自由に走りまわることなんてできやしなかった護衛艦時代。

 

今、私はかなり艦娘を満喫してると断言できます。

 

 

なによりも、こうやって風を直に感じれるのがいいです。

 

 

何もない海原を、颯爽と切り裂くように駆け抜ける。

 

それが、とても気持ちいいんです。

 

 

そう言えば、一応わたしって人間態ですから、こんなに早く走ったら水しぶきで大変なことになるなぁ、なんて思ってたらそこは流石は艦娘。

 

なんと艤装をつけてる間は汚れないトンでも状態でした。

 

でも、攻撃を受けると服が破けるそうです。なんだか世界の悪意を感じます。

 

 

 

「・・・ま、いいか。こんぱすだけーを(ピピピ)・・・ん?」

 

 

 

ちょっとだけ考えて、でもやっぱり風が気持ちいのでまた歌を歌い始めたあたりに、通信が届きました。

 

どうやら司令官さんらしいです。丁度いいので、速度を緩めることにしました。

 

あんまり全速前進も機関によくないですからね。

 

 

 

「こちらDDH182・・・と、みらいです。どうしましたか?」

 

《やあ。どうやら満足してくれたようだね?》

 

「あはは・・・ついはしゃいじゃいました」

 

 

 

それは良かったと応える司令官さんは、コホンと一つ咳払いしました。

 

 

 

《では、ついでだ。今のうちに一つ指令をこなしてしまおう》

 

「指令・・・ですか?」

 

《ああ。先ほど元帥閣下と連絡が取れてな。指令内容は『みらいの力量を測れ!』だそうだ》

 

「それはまた直球な・・・了解しました。具体的には何をすれば?」

 

 

 

聞けば、ここは演習区域だそうで、ちょうどここから近い場所からスタートして、目標物を撃破、ゴールを目指すものだそうです。

 

 

ちなみに攻撃機もちょこっとだけ出るらしいです。ま、そのあたりは全く問題ないです。

 

 

 

《ちなみにこの攻撃機は演習機でな。妖精さんの素敵仕様のおかげで演習でしか使えないかわりに撃破しても堕ちない仕様になっている。

おかげでうちの航空隊のエースを乗っけることが出来たんだ。今回はうちの空母、『加賀』からの12機3個小隊が出撃することになっている》

 

 

・・・それ、なんとかして実践配備したら戦い終わるんじゃないですかね。

まあ、そんな事は置いておいて。

 

 

「わぁ・・・あの一航戦の加賀さんですか。なかなかに手が抜け無さそうな相手ですね」

 

 

《ふふ、ずいぶんな自信だな。うちの加賀の航空部隊は錬度が高いぞ》

 

 

 

・・・それこそかかってきてください!です。

 

 

 

「おまかせあれ!イージス艦の極意、見せてあげますよ」

 

《そうか、楽しみにしておこう。今そちらに大淀が判定員として向かっている。ちょっとだけ待ってくれ》

 

 

 

大淀さん・・・確か連合艦隊の旗艦になった艦でしたか。

あの時は大和に目が行ってましたけど、軽巡にしては大きな船でしたね。

 

・・・と、あれかな?

 

 

 

「お待たせしました。軽巡、大淀です。よろしくお願いします」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「どうですか?艦娘の状態にはなれましたか?もしもまだでしたら少し慣らしの時間をとりますが」

 

「大丈夫です!これでも、緊急時に備えて訓練とかは護衛艦時代に飽きるくらいやってますから!」

 

 

 

そう言うとふふ、と素敵に笑う大淀さん。

 

今思うと、艦娘って美人さんかかわい子ちゃんしかいないですね。

 

大淀さんも、メガネが似合う知的美人、って感じですし。

・・・それなりにおもちがありますね。

 

でもスカートは明石さんみたいな感じなんですね。寒くないんでしょうか。

 

 

 

まあ、その辺気にしても無駄なんでしょう。

 

私自身、コスプレとしか思えないような服装にミニスカニーソなんですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それでは任務を開始します。よろしいですね?」

 

「はい!」

 

 

 

みらいの元気な声に、ひとつ頷いて大淀は声をあげる。

 

 

 

「それでは、開始します!」

 

「護衛艦みらい、行きます!」

 

 

 

演習、開始。

 

今回の演習は海の上に存在している的に攻撃を当てつつゴールを目指すシンプルなものだ。

 

が、途中からはあの加賀から発艦した攻撃機、九九式艦爆を相手にしなくてはならない。

 

最初は流石に分が悪いのでは、と大淀も思ったが・・・

 

 

 

――彼女が本当にイージス艦であれば、加賀の方が苦戦するだろうね――

 

 

 

という言葉を司令官は発していた。

 

加賀は「頭にきました」とちょっと拗ねていたが。

 

 

最初は止まった瞬間からの機関起動。通常ならばそれなりな時間を要するのだが・・・

 

 

 

「・・・早い」

 

 

 

流石は未来の艦か、たったの30秒程度で機関が動きだしている。

スピードも、あの大きさの艦種にしては早い方に入る。

 

 

 

(そう言えば、イージス艦の武装って確認していなかったですね・・・ここから確認できるのは対空機銃と単装砲・・・あのコンテナは雷撃用でしょうか?)

 

 

 

最初大淀はその装備の少なさから軽巡などと同じなのかと思いもした。

 

・・・これからその考えはひっくり返されることになる。

 

 

一方、演習を始めたみらいは、少し思い悩んでいた。

 

 

 

「・・・これ、スタンダードミサイルとか撃ったらだめですよね」

 

 

 

そう。自身の最大武装である、スタンダードミサイルをはじめとしたミサイル兵装の使用だ。

 

まあ、命中させる事は容易いが、二つばかり問題があった。

 

(・・・補給できるか怪しいし、補給出来たとして値段凄そうなんだよな~・・・)

 

 

それは現在確認されている艦娘が第二次世界大戦中の艦しかいないということに尽きた。

 

 

みらいもタイムスリップした時に味わった苦痛。

ミサイルなんて技術の塊、しかも護衛艦に積めるだけ小型化したものなんて、あの当時の技術力で造れるわけがないのだ。

 

あの時も苦労したっけ、とちょっと思い出した。

 

更に言えば、妖精さんマジックで作れたとしてお値段どのくらい?となるのだ。

 

現実のミサイルのお値段はバカみたいに高い。

0が何個つくかなんて考えたくもない。

 

これは演習。使うまでもないだろう。

そう考えると、使用できる武装は限られてくる。

 

 

「単装砲と対空機銃・・・まあ、なんとかなるか」

 

 

ミサイルや魚雷以外となればおのずと使えるのはその二つしかなくなる。

 

―――が、みらいには不安はなかった。

 

 

「さて・・・CIC妖精さん、頼みますよ!」

 

 

艤装から、小さく「おー!」と聞こえたような気がして小さく笑う。

 

・・・目の前には、モニターのようなものが現れた。

 

 

どうやらCIC、つまり戦闘指揮所は正常に機能しているようだ。

 

 

現れたモニターには、この海域の今の状況、そして写し出された攻撃目標とゴールが示されていた。

 

 

 

「このままいけば南から順につぶしていけばいいかな?いくよ、妖精さん!」

 

 

 

 

目標と使う装備。決めたみらいは機関の出力を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「敵の順次撃破目標を立てるのが早い!しかも迷いない・・・護衛艦ってみんなこんな感じなのかしら?」

 

 

その戸惑いのなさにむしろ大淀が驚きを隠せない。

この演習を行った艦娘は数知れず、だからこそ動きに乱れのないみらいに驚く。

 

中にはしっちゃかめっちゃかに動き回った挙句、的を残したままとか、途中で寝てしまったりとか、間違って的とごっつんこしてしまったりとかいろいろしでかす艦娘は、実は多いのである。

 

 

 

そう言う意味では、間違いなくみらいは優秀な部類に入る。

 

 

そうして、攻撃範囲に入ったのか、その武装に見える装備の中では一番使い勝手のよさそうな単装砲が動きを見せ・・・

 

 

 

「えっ。初射交叉!?しかも遠近・・・って3発目で命中?!」

 

 

 

おそらく、演習でここまで正確無比な攻撃をした艦はほかに存在しない。

 

初射で交叉させる艦娘は多々いる。が、そこから狙った的を瞬時に狙い撃てるのか、と言われれば疑問が残るだろう。

 

 

大淀にはわからないが、みらいはイージス艦・・・ハイテクの塊なのだ。

レーダーをはじめとした、たくさんの精密機器を使い、波の状況、風の状況。的との距離すべてを瞬時に把握しそれを攻撃に運用することができる。

 

この程度は朝飯前なのだ。

 

 

むしろみらいは満足していなかった。

 

 

「・・・んーやっぱり的が小さいですねー。出来れば初弾命中させちゃって護衛艦って凄い!って見せたかったんですけど・・・」

 

 

 

動かない的を狙っているのだ。自分のスペックすべてを限界まで発揮させればその程度は出来るのだという自信と技術者達の努力の結晶を信じているからこその言葉だ。

 

伊達に自分は技術の国と呼ばれた未来の日本の艦艇ではないのだ。

技術自体がアメリカから貰ったものでも、本物に劣るわけがない。

 

 

 

その後も的を次々と撃破していくみらい。

 

さらに大淀はこのとき気づいた。

 

単装砲の攻撃速度がやたらと速いという事に。

 

この単装砲はイタリア製の127mm単装砲。第二次世界大戦時から使われてきた砲弾と同じ大きさだ。

 

が、もちろんそこは60年の未来格差。

 

この単装砲の恐ろしいところは、その速射性能にこそある。

 

一回に装填出来る弾の数は、実に45発。

 

そして。排熱の関係もあるが分間で44発発射できるすぐれものだ。大体3秒で2発撃てる計算・・・今でこそ世界平均程度だろうが、60年前の装備しか知らない大淀からしたら、この単装砲だけでドン引き装備である。

 

わからない人はこう考えて欲しい。「主砲で弾幕っておかしくね?」と。

 

 

 

 

そうして加賀が登場することによって、さらにみらいの・・・『未来』の力をまざまざと見せつけられることになる。

 

 

「おくれました。全機爆装、既に発艦しています」

 

「加賀さん。航空妖精達の様子は?」

 

「元気いっぱいです。みんないい子達ですから・・・」

 

 

大淀の元へと近づいてきた青を基調とした道着が映える女性・・・それが加賀だ。

いつも通りのクールさに、思わず驚きの連続で動揺していた大淀は一度息を吐く。

 

 

「どうやらかなりの速度で消化しつつあるようですね」

 

「はい。機関停止状態からの即時行動、順次目標の見定め方、単装砲の速射性能・・・どれをとっても見たことがありません。流石は未来の日本における主力です」

 

「・・・それでも、私の子達が止めます」

 

 

 

どこかむっとした加賀の表情にちょっとだけ笑みがこぼれる。

 

やっぱり先ほどの司令官とのやりとりが気に入らないようだ・・・結局のところ、彼女もほめてもらいたいだけなのかも知れない。

 

 

 

「と、そろそろ接敵ですか」

 

「はい。いーじすだかなんだか知りませんが、鎧袖いっしょ・・・?!」

 

 

 

おそらくここで働き始めてから初めて見ただろう、加賀の驚愕の表情。

一体何があったのか、そう思う大淀だったが・・・

 

 

「っ接敵数秒で4機撃破・・・?そんなのありえない、全機一旦体制を立て直して・・・またやられたの!?」

 

 

 

普段からは想像も出来ない、まさしく驚愕といった加賀の表情に、大淀はみらいが開始前に言っていたことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「護衛艦の真髄、見せてあげましょう!」

 

 

加賀と大淀が驚愕に包まれている中、まさしくみらいは無双状態だった。

 

あたりまえだ。もともとイージス艦とは、ミサイルを使うことが前提であるが対潜だろうが対艦だろうが。まして対空だろうが対地だろうがすべてに対応することができるのだ。

 

特に対空は未来の艦艇だけあってかなりの強化がなされている。

 

 

例え相手が、第二次世界大戦で活躍した日本屈指の航空部隊、一航戦の部隊であろうとも一歩たりとも引かない。

 

 

正確無比なコンピューター制御におけるCIWSの攻撃と単装砲による迎撃はあっという間に7機を撃破してみせた。

 

 

 

だが、それよりも加賀の錬度にみらいは冷や汗を垂らす。

 

 

 

「・・・えー。たった数十秒しか攻撃してないのにこっちの間合いを見極めますか・・・この距離で単装砲当てれるほどやわな相手じゃないですし厄介です・・・」

 

 

 

そう。加賀の航空機が攻撃態勢に入り。そこをみらいが攻撃した時間はわずか数十秒。

 

もしもそのまま動揺してくれて間合い内にいてくれたのならそのまま全機撃破まで持って行けただろう。

 

が。相手はそうではなかった。

 

4機撃破された瞬間すぐさま退避、間に合わなかった3機は撃破出来たが、それ以外は単装砲で狙ってかわす事が出来るだろうギリギリのところでこちらに攻撃するタイミングを見計らっている。

 

 

例え残り5機全機が同時に攻撃しに来ても処理し切る自身が、先ほどまではあった。

 

 

しかし。

 

 

 

「栄光の一航戦・・・流石大日本帝国最強と名の高かった航空部隊。こりゃちょっとでも油断すればきっついですねー」

 

 

 

相手はコンピューターという正確無比な攻撃をすり抜けてくる、そう言いきれるだけの自信があった。

それだけの強敵であると、みらいは認めた。

 

 

 

それと同時にようやく加賀もいつもの調子を取り戻していた。

 

 

 

「加賀さん、大丈夫ですか?」

 

「ええ。ご心配おかけしました」

 

 

 

そう言って前を見つめ直す加賀もまた、ようやく慢心を切り捨てた。

たったの数十秒。たったの数十秒なのだ。

 

いままで敵に近付いて、自分の攻撃機がこんなにも早く落とされたのは今回が初めてだ。

 

 

相手がこちらに気づいていたのはまあ、まだ分かる。

 

が、あそこまで早くこちらの位置を割り出しすぐさま攻撃を当てるなんて芸当、考えてもいなかった。

 

 

 

と、このとき加賀は、出撃する前に言われた司令官の言葉を思い出した。

 

 

 

――加賀。きっとこの演習は君にとっていい経験となる・・・一度、『未来』を見てくるといい――

 

 

 

あの時は意味が分からなかったし、もっと自分もほめてほしいと拗ねていたのであまり考えてはいなかったが。

 

今ようやく分かった。きっと司令官はこう言いたかったのだ。「ありえないと決めつけるな」と。

 

 

そうだ。いつだって、人は人の予想を超えてくる。

それが自分たちから60年も先の未来を生きている存在であるのならば、それは当り前のはずだった。

 

 

ふっと、笑みがこぼれる。

 

大淀ですら驚いた、加賀の笑み。どれだけこの人笑わないんだろうと思ってただけにかなり驚愕のご様子。

 

 

そんな事にも気がつかず、加賀はポツリとつぶやいた。

 

 

 

 

「・・・認めましょう。みらい、貴女の実力・・・そして『未来』の力」

 

 

 

だから、全力で立ち向かおう。

今から自分は一航戦という、ひとつの頂点ではない。ただ、強大な力を持った『未来』に対する挑戦者だ。

 

 

最善では敵わない。ならば最良を手繰り寄せろ。

相手は平穏な世界の住人だ。此方は戦いを幾度も繰り返した戦人だ。

 

ならば。たとえ技術で劣っていようとも―――

 

 

 

「・・・経験で、補って見せましょう!」

 

 

 

 

 

 

「っと、これであと2つ!」

 

 

あれから加賀さんの攻撃機は時折フェイントかけてくるだけで、やっぱり攻撃範囲外に待機してます。

 

・・・なんだかんだで今、指示を下すのはわたしですし、レーダー見たり攻撃したりする最終的なところはやっぱりわたしなので精神的に疲れます。

 

この辺は流石第二次世界大戦を戦っていたフネだなぁ、と関心します・・・多分、私が精神的に油断する隙を狙ってるんでしょうねぇ。

 

 

ま、それでもCIWSはそう簡単に抜かせませんけどね。

 

 

 

と、最後に見えた的。

 

面倒なことに2個がほぼ等間隔にあるわけです。

 

ねらえないことはないですが・・・

 

 

経験なんかじゃない。わたしの直観。

 

多分。加賀さんがしかけてくるのなら――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・来た」

 

 

最後の的。そこは2個も的が等間隔にあり、ねらいやすい目標だ。

 

 

が、それは狙われていないときに限る。

2個ある、と言う事は勿論2個を狙わなくてはならないのだ。

 

人間は2個以上を同時にする場合、どうしても隙が生まれる・・・もしも加賀がしかけるとしたならば。

 

 

 

 

「「ここしかない」」

 

 

 

加賀と、みらいの言葉が重なった。

 

 

 

「全機、攻撃開始して―――撃ち負けないで」

 

 

 

みらいの単装砲が、1個目の的を狙った瞬間。まるで爪を研いでいた鷹が獲物を狩るように動き出す。

 

珍しく挑戦者という立場故に、加賀は思わず熱くなっていることに気が付いた。

 

 

「さすがに気分が高揚します」

 

 

思わず呟いたその言葉と共に笑みを深める。

 

高い壁。それを乗り越えられずに何が一航戦か。

 

乗り越える。絶対に。

 

 

 

 

「っ、本当に面倒なタイミング・・・!CIWS、AAWオート!」

 

 

それと同時にみらいもまた動き出す。

 

正確無比な未来の武装。作りだしたその思いは、攻めることにあらず。全ては守る為に。

 

故に、守り切る。絶対に。

 

 

 

みらいにとって一番の恐怖は、艦爆に装備されている爆弾だ。

それさえ回避してしまえばあとは取るに足らない。

 

―――その、はずだった。

 

 

 

「なんで避けれるのよ~!?」

 

 

思わず愚痴がでる。

あたりまえだ。コンピューターは人間以上に正確で、無慈悲だ。

だというのに、弾幕の雨もものともせずこちらに迫りくるその様はまさしく肉食獣。

 

そこに重い爆弾を背負っているのかと――――

 

 

そこで、気がついた。

 

 

 

「あの子たち、爆装してない!?」

 

 

 

そう。今CIWSが狙っているのは爆装を外した攻撃機だ。

一体何を。そう思った瞬間に、気がついた。

 

 

今目に見えているのは4機・・・後1機は?

 

 

「CIC!後1機は!?・・・そんな、直上っ!?」

 

 

気がつかなかった。目の前の敵に必死で、真上に最大最強の一手を持ってきているという事に。

 

 

 

「・・・みんなの決死の一撃、手向けとしてください」

 

 

 

5機のうち4機を囮にするという、一航戦として、そして母艦として屈辱の一手。

それでも。これしかないと決めた。これでなくては勝てないと思った。

 

全機ともに必死に働いてくれた。後は―――運。

 

 

 

見上げるみらい。

 

既に撃ち落とすには時間がなさすぎる。

 

 

そして―――機体からその一撃は切り離された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・やった?」

 

 

 

大きく上がった水しぶき。

どうやら切り離された爆弾は、キチンと起動したようだ。

 

 

手ごたえはあった・・・が、どうなったかは見えなかった。

 

 

 

 

 

 

徐々に静まりつつある水しぶき。

 

その中から一つの砲撃の音を聞いた。

 

 

 

そして、最後の残っていた標的を撃破されて、加賀は静かに目をつむった。

 

 

 

「ぺっぺ・・・うぇ、思いっきり水飲んじゃった・・・でも!なんとか回避成功ですよー!」

 

 

 

少し服が焼けたような跡こそあれ、みらいは無事だった。

 

決死の攻撃も、あと一歩届かなかったという事だ。

 

 

 

 

「今回は私の負けね、みらい・・・でも、今度は負けない」

 

 

 

意気揚々とゴールへと駆けるみらいに、聞こえなくてもポツリと呟いた。

 

 

最初こそ駄々をこねてしまったが・・・今、加賀は司令官に感謝していた。

 

 

新たなる好敵手との出会いに。

 

 

 

 

こうして、演習はみらいのS判定で終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき:


Q、加賀さん強すぎね?

A、一航戦=全員メビウス1と聞いたらこうなりました。



正直、加賀さんの爆撃機を強くし過ぎた気がしてならない、どうも。私です。

本来こんな事は起こり得ないものでしょうね。実際300~400キロしか出ないレシプロ機で、音速出せる戦闘機すら撃ち落とせるイージス艦の攻撃を避けれるわけないんですけどね。

そこはアレです。演出と、一航戦補正と、みらいの錬度の低さのせいと言うことで。

ちなみにみらいは、というかイージス艦は紙装甲なんで、多分爆撃一発で中破か大破まで行くでしょうね。



ただ皆さん知っての通り、イージス艦の主兵装はあくまでミサイルです。

使ってたら一航戦の加賀さんの艦載機でも瞬殺です。
原作でも20機を1分で撃墜してましたし。
きっとそのことを知ったら加賀さんもドン引きしてくれるでしょう。


あと、うちの艦娘達は割と好戦的です。
と言うよりも熱血系です。艦これのアニメがちょっと3話がアレだったんで、そっちとは違う展開の方がいいかなぁと。

まあ、アニメの方はこれからですこれから。13話のうちまだ半分も入ってないんですから。

(さーて、あと何隻沈むのかな・・・


出来れば某ひぐらし的なノリの2クール目に入って大団円か、提督がTEITOKUでもうお前ひとりでいいんじゃないかなしてくれるといいんですが。


まあ、今の展開を見るかぎりないでしょうね・・・




PS、またまたミスの報告です。
単装砲、イギリスではなくてイタリアでした。何をどうしたらこんなミスになるんでしょうね(白目


アフターバーナーさん、HOSキッズさん、かがみXさん、ありがとうございました。

PS2、はい、また発覚しました。

単装砲、前のままだと分間80発とかバカな事になってました。

また小学生レベルかよ・・・ROM(仮)さん、報告ありがとうございました。


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設定:みらいの設定

ついでにキリもいいのでこれも一緒に投下します。脳内妄想ダダ漏れなんで注意!


うp主「てなわけで始まりました、唐突な設定集の時間でございますー」

 

みらい「ふぁっ!?ここどこですかー!?」

 

うp主「あー、みらいちゃんこんちゃ。まあ閑話的な、設定的なお話で夢みたいなものなので気にしないでね!」

 

みらい「あー夢なんですか・・・貴方のその黒子衣装(バスケじゃないです、普通に黒いアレです)はなんです?」

 

うp主「気にしないで、仕様だから」

 

みらい「仕様ですか、仕方ないね」

 

うp主「と言うわけでさっそく言ってみましょう。まずはみらいのステータスからですね」

 

みらい「え、いきなり私の個人情報ですか?!」

 

 

 

 

 

ゆきなみ型3番艦 イージス護衛艦 みらい

 

艦種:イージス護衛艦

 

 

図鑑説明:ゆきなみ型3番艦、護衛艦のみらいです。

どうしてこんな世界に来たのか、わからないけど・・・神様の企てでも、悪魔の意思でも必ず艦隊を守りぬきます!

 

 

火力:45

雷装:70

対空:95

回避:120

耐久:20

運 :50

 

 

 

 

うp主「まあ、テンプレートなステータスはこんな感じですね」

 

みらい「流石イージス艦。回避盾余裕なステータスですね」

うp主「まあイージス艦自体が当たる前にどうにかするって感じだしね」

 

みらい「当たる前に迎撃すればおk、ってかんじだよね・・・というかもう回避が100突破してるじゃないですか。速度どのくらいになるんですかねぇ?」

 

うp主「速度だけじゃないとは思うけど、結構出るんじゃないかな?てか元々30ノットしか出せない、とか言ってたのに35ノット普通に出してるからね。だったらきっと40ノットも出せるくらいになるんじゃね?」

 

みらい「そうやって設定をいじめないであげてよぉ!でもやっぱり耐久低いままですね」

 

うp主「うん。駆逐艦か軽巡並だね!」

 

みらい「え、これってストーリーにも影響してます?」

 

うp主「もちろんさ☆てか、実は小ネタで「みらいって病弱?」とかやりたかったけど、流石にそれだと元人格をもとにした子のお姉ちゃんにしなきゃいけない気がしたからやめた」

 

みらい「ちょ、おま・・・一撃大破とか怖すぎですよ」

 

うp主「まあまあ。その代り装備がバカみたいに強いから」

 

みらい「えっ」

 

 

 

 

みらいが初期から装備している武装

 

 

・12.7cm単装砲(未来型)

 

みらいが持って来る初期装備で、平均的に使える装備。

この単装砲で攻撃した場合確率で連続攻撃する。

最大3回。狙いはランダム。取り外し可能。

 

 

 

・対空機銃(CIWS)

 

同じくみらいが持って来る初期装備。

これ一つで組み合わせないと発動しない対空カットインが発動する。

ただし、固定武装なので取り外し不可。

 

 

・VLS

 

相手の防御力如何では普通に防がれる可能性もあるが、普通に高火力。

 

この装備もまた対空カットインが発動し、さらに開幕雷撃、通常攻撃まで発動する優れ物。

固定武装で取り外し不可。

 

 

・ティルトウィング式偵察機 海鳥

 

みらいが持って来る初期装備。

偵察機なのに偵察、制空取り、艦攻撃が可能な優れ物。

しかもそんじょそこらの攻撃機よりも攻撃力が高いため下手すると滅茶滅茶に強い。

 

取り外し可能で、飛行甲板さえあればどんな艦種でもつめる。

 

 

 

うp主「うん。割と壊れだね。さらに5スロ目が最初から解放されてるから、ダメコンも積めるよ!」

 

みらい「なんですかこれ。いや、多分艦これにしてみたらこんな感じの能力になりそうですけど」

 

うp主「本当はVLSをもっと強力にしようとしたんだけどね?よく考えたらミサイルって過去の分厚い装甲の戦艦相手だと貫通しないって話を思い出して」

 

みらい「いや、開幕雷撃と対空カットインあるだけマシじゃないですか?つまりこれって、

対空が出来て、雷撃が出来て、さらに海鳥で偵察と空からの攻撃が出来て、さらに通常攻撃ができるってことですよね?」

 

うp主「うん。最強ではなく最優。どんな局面でもこいつを入れときゃいいんじゃね?という感じの艦娘だね」

 

みらい「でも紙装甲?」

 

うp主「うん」

 

みらい「旗艦にしてもらえればそれなりに強そうですね」

 

うp主「自分の事なのに割とドライね君」

 

みらい「いやぁ。なんというか実感わかないんで・・・」

 

うp主「まあいいや。次、君の性格・・・というか人格ね」

 

みらい「確か某クロチャーを元にしたんでしたっけ?」

 

うp主「いや、まあそうなんだけどさ・・・一応伏せてんだから名前を言わないでね?」

 

 

 

・みらいの人格について。

 

もう分かっている方も多いだろうが、このみらいちゃんの人格にはとある人物の性格を用いている。うん、クロチャーなんだ。

最初にプロット決めた時点で「黒髪ロング、海軍士官コスプレ、おもちが大きい、ミニスカニーソ」と決めた時点でもうイメージが固定されてしまったんだ。許してほしい。

 

ただ、全部クロチャーにしてしまうと、おもちを求めて鎮守府をさまよう残念娘になってしまうのでちょこっとだけ残して、あとはオリジナルな感じにした。

 

元々熱血方面にしようとしてたしね。

 

が、敬語だったりおまかせあれだったりおっぱいをおもちと言ったり、あと服装とかその辺に設定的に残ってる。

 

肝心の性格だが、普段は頼りになるお姉さん。

これはイージス艦だからで、まあ色々な機械を使ってるし、手先が器用で元から救助等の仕事が多かったからという意味合い。

 

現代の女子というイメージをつけたかったので割とフランク。話しかけやすい理想の女子・・・ってこれもう完全にうp主の趣味です本当にありがとうございます。

 

 

護衛艦なので基本的には争いは苦手・・・が、タイムスリップした事により、時には戦わなければいけないという事も自覚している。

 

というか、過去で色々とありすぎたのと、自分に乗艦していた角松二佐や草加少佐の事を気に入っていたので、彼らが築くはずだった『未来』が壊されようとする事が何よりも許せない。

 

みらいが『未来』について過剰に反応するのはそのため。別に自分の名前だからではない。

 

 

 

 

 

うp主「盛り込み過ぎですね」

 

みらい「ですね・・・ってことは、結局どういう子なんです?私って」

 

うp主「簡単に表すなら護衛艦らしくないって事。ただ、人間として『良い人』で、悪いことに対して怒れる優しい人なんだよ」

 

みらい「今の時代、怒れない人も多いですからねぇ」

 

うp主「あと、服装とか髪型はプロローグらへんで言った感じになります・・・私は絵が描けないんで、その辺イメージでお願いします」

 

みらい「確か海上自衛隊の白い正装とミニスカニーソでしたっけ?」

 

うp主「うん。今思いついたけど、萌え袖追加で。んでもって髪が黒で長髪だから、もう完全に私の脳内ではクロチャーがコスプレしてる感じで確定してしまってるんですよね」

 

みらい「自分でももう言ってるじゃないですか」

 

うp主「勿論後付け感はあるけどきちんとした理由は有ります。まず護衛艦=戦いは好きではないが、弱いものを助ける勇気がある。能力は途轍もなく強く、一定の力がある。思いやる優しさがあっていざというときは覚悟を決める決意もある。となんか重なっちゃったんだ」

 

みらい「美化し過ぎじゃないですかね?」

 

うp主「まあ、自分の好きなキャラだからね。で、装備をつけた感じになると右肩:対空機銃、左肩:VLS、右手:単装砲、左手:艦首盾内蔵VLSな感じ。それで左肩には航空甲板がついてるよ」

 

みらい「フルアーマーみらいですか?」

 

うp主「ごてごて全部載せはロマンだと思います」

 

みらい「そこもまた趣味ですか、そうですか」

 

 

 

うp主「さて、ここまで長々と書いてきたけど。うん、なかなかジパング要素を入れる事に難航しています」

 

みらい「いきなりメタな発言ですね・・・」

 

うp主「いやね、元々ジパング事態があの戦争にかかわった未来の人間と、過去の人間の人間模様というか、そこからどういう風に動いていくか、って言う感じのお話じゃないですか?」

 

みらい「そうですね・・・角松二佐も草加少佐も、色々なことを考えておいででしたし」

 

うp主「なので、正直『艦娘でジパング要素だそうぜ!』となったとき、正直なところ海鳥とみらいのセリフで匂わせる程度しか出来ないんですよ・・・」

 

みらい「これだからトーシローは、と生暖かく見守ってもらうしかないですね」

 

うp主「最初は司令官を角松さんの生まれ変わりにしようかなと思ったけど電ちゃんとケッコンカッコカリさせる事を決めた時点で止めました」

 

みらい「よかった。本当によかった。もしも角松二佐がロリコンだったら私崩れ落ちるとこですよ?」

 

うp主「まあ、ところどころでジパングを思わせるセリフをみらいちゃんには言ってもらうつもりなので、にやっとしてもらえればうれしいです」

 

みらい「言ってもらうって、なんだか意味深に聞こえますね」

 

うp主「そこまで深読みしなくてもよろしい・・・さて」

 

みらい「はい。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました」

 

二人「では、本編でまた!」

 

 

 

 




一回こんな感じでやってみたかった。私です。

はい、申し訳ない。普通に紹介するだけだと味気ないなぁという事でラジオ形式というかそんな感じでやってみました。

これでいくらかでもみらいのイメージがつかみやすくなってくれると嬉しいです。

ちなみにみらいちゃんの艤装を考えた時、一番最初に思いついたのが\イージスです/で多大な影響を与えたかもしれないのは秘密。


PS、あはは・・・あれは彗星かな・・・いや、彗星はもっと・・・ぱあーって(ry

はい、ミスです。まさかここでもミスしてるとは思わなんだ・・・
事態→自体でした。気がつかなかったよ。

教えて頂いたHOSキッズさん、佐武さん。ありがとうございます。



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6話:改めまして、よろしくお願いします!

少しだけ加賀さんは出番多めです。いわば初期ライバルポジに据えてますので。

贔屓だと思いますが御容赦下さい。


なんとか演習はS判定を貰う事が出来ました・・・

 

加賀さんは、なんだか少し嬉しそうに「次は負けません」って宣言してきました。

 

正直大先輩にそこまで言われちゃあこう答えるしかないですよね?「次も負けません」ってね。

 

 

加賀さんとは仲良くなれそうです。

 

 

あと、大淀さんからはしきりに褒められちゃいました。

わたしは自分に出来ることを最大限にやっただけなんですけどね。

 

 

 

―――ただ、最後の一撃は本当に危なかったです。

 

 

もしも、あと一瞬でも気がつくのが遅れていれば、わたしは大破でした。

 

しかも。回避だって実際のところは直撃しそうなところを自分が人間だという事を利用して体をひねって、大きくその場を跳んで回避したにすぎないです。

 

わたしがフネだったのなら、確実にこれは負けです。

・・・ワスプとの戦いを思い出したせいで泣きそうになったのは秘密です。

 

結果がすべてだけど、今回の勝ちはただ運が良かっただけ。勝ちを拾わせて貰っただけです。

 

 

もっともっと、強くならなくちゃ。

 

 

 

本当は、護衛艦だから強さなんて必要はないんですけどね。

 

わたし達に求められていたのは、あくまで抑止と防衛でしたから・・・

まあ、これからはそうも言っていられないんですが。

 

 

と、大淀さんと加賀さんと一緒に鎮守府まで帰ってきました。

道中加賀さんが航空妖精さんと反省会をしていましたが、むしろしなければいけないのはわたしですよ?

 

何回でもいいますけど、まずCIWSをすり抜けれる事自体が異常なんですから。

 

 

わたしが「あれって音速戦闘機でも撃ち落とせるシロモノなんで、そのくらいで許してあげてください」って言ったらドン引きされた。

 

ひどいです。曰く「音速・・・そんな機体が空母に積めるのですか?」だそうで・・・まああの時代だと運用方法はかなり変わりましたからねー。

 

 

空中給油とか、一部の戦闘機のみですけど母艦から発艦できる戦闘機とか聞いたらどうなるんですかね。

 

もしも加賀さんにも搭載する・・・となるのであれば・・・無理ですね。甲板が木製なので焼けちゃいます。

 

何らかの処理さえすれば・・・まあ、全部たらればなんですけど。

 

 

大淀さんに聞いたところ、艦娘と同じで戦闘機もほとんどは第二次世界大戦で活躍出来た機体しか妖精さん達が作れないそうです。

ついでに言えば操縦も出来ないらしいです。ただ例外で、大戦末期に作られたり、計画だけだったりした機体は何故か作れたりするそうですが。

 

 

そうそう。わたしも一応偵察機だけど持ってる、って言ったら興味をもたれたんですよね。

今度見せてほしいとの事だったので、そのうち加賀さん達のいる空母のお部屋に行こうかと思ってます。

 

わたしの海鳥は、凄いんですから!ちょっとだけ自慢したいです。

 

 

 

 

 

で、鎮守府のドックに着いてからが大変でした。

 

わたしたちが帰ってきた事を知った明石さんと雷ちゃんが出迎えてくれたんだけど・・・わたしの服がちょっと焦げてたのを見て驚いちゃってたんだよね。

 

おかげでちょっとだけてんやわんや。どうやらちょっとだけ髪もダメージを受けてたみたいで、すぐさま入渠させられました。

 

なんでか雷ちゃんまでついてきたけど・・・けど、温泉みたいで気持ち良かったです。雷ちゃんとあらいっこしたのは楽しかったですね。

 

 

やっぱり人間になれるって素晴らしいことなんだって思います。

 

 

 

 

 

 

「といった感じでようやく報告に来れました」

 

「あはは・・・雷ちゃん・・・」

 

「まあまあ、電。雷も心配だったんだろうさ」

 

「それはわかりますが・・・みらいさん、ご迷惑じゃなかったです?」

 

「あはは。いいえ、まったくそんな事はないですよ。ありがとうね、電ちゃん」

 

 

むしろ入渠中になんで服まで治っているのかが未だに疑問です。

わたしのレーダーはごまかせないはずなんですけどね・・・

 

 

「しかし流石護衛艦。イージスの名は伊達ではないようだな、みらい」

 

「勿論ですとも・・・と言いたかったんですが今回はギリギリでした。まだまだ精進が足りない新米ですよ」

 

「こ、これだけの戦果でギリギリなんですか・・・」

 

「わたしのスペックをもっと発揮できればもっといい結果が出せたはずです。そんな事を実戦で言ってられないですから」

 

「・・・それでもだ。よく加賀の攻撃機にミサイルを使わずに勝てたものだ。私はてっきり、使うかと思っていたんだが」

 

 

 

この司令官。さてはわたしにミサイルを撃たせようと加賀さんと当てましたね?

流石この年齢で少将を任されているだけあって、謀略はお得意なようで。

 

 

 

「流石にまだ補給が出来るかもあやしいですしね。実戦以外では使わないと思います」

 

 

「そうか・・・なら丁度いい。実は大本営側から君のミサイル兵装を解析してはどうかと依頼が来てな。正直な所を言えば作れた所で君以外に使いこなせないと思うんだが・・・どうだろうか、数発弾頭を分けて貰えないか?もしかしたら妖精さんが複製出来るかも知れない。そうなれば君の補給についてもどうにかなるかもしれないしな」

 

「あー・・・ホントは補充できるかどうかも怪しいんで渡したくないですけど、無理ですよねぇ・・・わかりました。うちの妖精さんたちに言って取ってもらう事にします」

 

 

 

まあ、ちょっとくらいなら解析に回してもいいかな。もしかしたらミサイルの開発が出来て補給が出来るかもしれないし。・・・技術的には渡したくありませんが背に腹は変えられません。

 

と、ここでわたしと司令官さんの話を聞いていた電ちゃんが首をかしげます。

 

 

 

「ところで、その『みさいる』ってなんなのです?新しい魚雷ですか?」

 

 

 

・・・あー。そっか、電ちゃん達過去の艦艇にはミサイルは珍しいものに入るのか。

 

 

 

 

「まあ、わたしの場合は魚雷も含まれているかな。それ以外にも弾頭を変えることで対地、対空、対艦。そして対潜すべてをカバーできるすぐれものですよ。飛距離も中々ですし」

 

「未来にはそんなものがあるのですか。凄いのです」

 

 

現状確認したところ、アスロック、SAM、短SAM シ―スパロー。ハープーン、それと虎の子のトマホークと結構弾種がそろってましたがやはり護衛艦と言うべきか。

一番多いSAMとかそのあたりでもあんまり贅沢は出来ないかな、って程度しか数がありませんでした。

 

やっぱり使いどころは見極めないと、ですね。

 

 

 

「・・・よし、これで今日の仕事は終了だ。さて、みらい、電。行くぞ」

 

「はいなのです!」

 

「へ?え、ちょっとどこに行くんですか?」

 

「なに、着いてくればわかるさ」

 

 

そう言われてわたしは二人について行きます。

どこいくんですかね?と思っていたら、その足の向かう方向には覚えがありました。

 

 

「えっと、確かこの先って食堂ですよね。お夕飯ですか?」

 

 

そう。明石さんと一緒に工廠に行く間に教えて貰った場所の一つ、食堂へと向かっているみたいです。

何かおごってくれるんですかね?

 

 

 

「まあ、奢るといえば奢るようなものだが・・・ま、来れば分かる」

 

 

 

そう言って二人で食堂の扉を開きました。

 

 

―――妖精さんたちも使う広々とした食堂。

 

もはやレストランと言っても過言ではないその場所。窓から海が見える一等席の場所には、20人位の少女達がいた。

 

その中には雷ちゃんや加賀さんも混ざっていたのですぐさまに理解できた。

 

その場にいるのは、この鎮守府に在籍している艦娘たちなのだと。

 

そして、皆に飲み物を配っていた茶髪の巫女服を改造したような服の女性がこちらに気がついた。

 

 

「ヘーイ!テートクに電、ようやく来たネー!New faceもこっちネー!!」

 

「金剛、そんな大声でなくても分かってるぞ。さあ、電、みらい。行くぞ」

 

「はいなのです!」

 

「あーっとまだ状況が理解できてないんですけど・・・これ、どういうことです?」

 

 

良く見れば彼女たちの座っているテーブルの上には豪華なお料理の数々。もしかして、これって・・・

 

 

 

「この鎮守府では、誰かが着任するたびに、こうやって歓迎会を開くのです」

 

「つまりだ。今回は君。みらいの歓迎会というわけだ・・・サプライズになったかな?」

 

「!・・・ええ。とても、嬉しいです」

 

 

多分、今わたしの中にあるのは「喜び」という感情。

誰かに、祝ってもらう。今まで感じたこともなかったけれどこんなに嬉しいなんて・・・きっと艦娘にならなければ理解できなかったでしょう。

 

 

 

 

 

 

「さて皆揃っているようでなにより。今日は新しく来た艦娘の歓迎会だ。無礼講で構わない。さ、みらい。主賓から一つ挨拶を頼む」

 

「いきなりですね・・・」

 

 

 

電ちゃんと雷ちゃんに案内されるがままに席に座ったかと思ったら、司令官さんから挨拶を頼まれました。

いきなりでびっくりしましたよ・・・

 

 

「コホン。新しくこの鎮守府に着任しました、イージス護衛艦のみらいです。至らないところもありますが・・・未来の艦艇として、皆さんの足は引っ張らないように頑張っていきます。よろしくお願いします!」

 

 

 

ぱちぱち、と拍手が巻き起こりました。ちょっとだけ恥ずかしいですね。

 

 

 

「さて、それでは「司令官おなかが減ったっぽいー!」・・・ふふ、そうだな。長々と話をするものでもないし、さっさと始めるか。

いつも通り駆逐艦達はお酒に手をつけるなよ?皆、飲み物は持ったな?それじゃあ――――乾杯!」

 

 

 

乾杯!という声とグラスのカチンという音と共に、歓迎会は始りました。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき:

というわけで歓迎会の始まり始まり。
一応座り方としては司令官が上座、その次が戦艦&空母。重巡&軽巡。そして駆逐艦といった並びになっています。

みらいちゃんは一応元のフネの全長が170m程度ということだったので大きさ的に軽巡か重巡のあたりに座っていることになります・・・あれで駆逐艦とか絶対にいえませんて。

まあ最終的に全員がばらばらに動くので最初だけこんな感じというところでしょう。

それと、まだ明言していませんが、この世界における艦娘は『単一』の存在です。撃沈しない限りは2隻目が登場することはありません。

実はここまで建造に触れて無いのもそんな理由があります。

なので各鎮守府に在籍している艦娘達が少なくなってしまうのでこの鎮守府においては現状22隻+みらいの状況です。

全部の艦娘を一気に出すのはちょっと難しいです・・・申し訳ありません。
ただ他の鎮守府には在籍してますので、どこかで交流させたいですね。

とりあえず私が書きやすそうなゲフンゲフン、それなりに人気な艦娘&今後の展開に不可欠と思った艦娘は存在しておりますゆえ。

すでに2人は分かってしまう娘がいますが。



さて、前回の設定について説明をば。結構感想でも突っ込まれたので補足です。

Q、CIWSは取り外せるよ?

A、取り外してしまうと本家艦これの対空装備が産廃になってしまうレベルなのでこうしました。

Q、ミサイルの弾薬費は砲弾より安いんじゃ・・・

A、現代では確かにお安いです。が、艦これのフネはWW2の物で、この世界ではイージス艦のほとんどは過去で破壊され片手で足りるほどしか存在していない。アルペジオ組のハルナが一回の弾薬補給が275で、「超重力砲は無くても持ってくる初期装備でオールラウンドに戦え、未来装備の為本来なら補給出来ない所を妖精さんマジックでなんとかする」という事で大和並みかなと考えました。

Q、テンプレ弱すぎね?

A、書いてませんでしたが、アレはレベル1と仮定してます。多分改修して行けば対空と対潜の鬼になり、他の艦艇相手でも圧倒してくれるでしょう。


Q、ミサイルの命中率はどうなんの?

A、基本ゲームと同じで結構外れる事になりそうですが、多分妖精さんが作った物で質が落ちてるとかそんな感じでお願いします。レベルが低い間は、それでもトマホーク菊池妖精さんやアスロック米倉妖精さんがどうにかしてくれるでしょう(

Q、でも単装砲取れるのはおかしくね?

A、はい、まったく持ってその通りです。実際なら基盤とか色々な理由で取れても他のフネにはつけられないでしょう。そこはもう、妖精さんがどうにかしてくれるという感じで補完お願いします(震え声

じゃあなんでこんな感じにしたの?と思われるかと思いますが・・・

感想の方では海軍が改修出来たからとか書きましたが。

ガチで、黒歴史で書くつもりは無かったんですが、書き直す前のプロットから多大な影響を受けてます。

はい、2話のあとがきで言ってた鬱多めのほうです。

それだと、みらいちゃんは最終決戦で世界の歪みによって世界から消えてしまうって感じにしてたんですよ。

で、その後。深海棲艦がそれでも現れ人類を襲い。絶対絶命となった時もう一人の主人公が決戦前に壊れて預けられていたのを修復した単装砲と、たまたまみらいから発艦していたから残っていた海鳥を引き連れて颯爽と現れるというもの。

海鳥はその主人公を庇って砲弾へ突っ込んで爆発、単装砲も無理な使い方の所為で壊れ勝利はするもののみらいの痕跡は全て無くなってしまう。けれども主人公だけは覚えていて、後世に語り継いでいく・・・ってラストです。

(なんで鬱かっていうと語り継げたとは言ってないのがミソです)


で、じつを言えばこれが秋月ちゃんの対空装備を産廃にしたく無い理由でして。
はい、お判りになったかと思いますが、その主人公が秋月ちゃんだったんです。

CIWSを取り外さないのも、秋月ちゃんやみらいちゃん以外には対空装備は付けたくないのが理由でして。三式弾とか元からあるのは除きますけど。
同じく秋月ちゃんが装備してしまうとみらいちゃん並の対空の鬼になりそうで怖いです(

まー前のプロットで秋月ちゃんの最後は救われなかったお詫びでこっちでも出す予定です。

完全なまでに私事です。ツッコミ所満載でしょうけれど御容赦下さい。


SSなんだしハメ外してもいいじゃんと思いますが、すいません。性分ですので。




かなり長くなりましたが、最後に・・・あの設定はあくまで脳内で艦これなら〜で考えた妄想なんで、実際に実装されたらどうなるかはわからないです。そんな感じの緩い感じで作ったので設定ガバガバです。

その事をご理解していただきたいと思います。





PS、はい、恒例のミス報告です。まさかの弾種説明でみらいの代名詞の1つ、ハープーンを忘れてました。

サジタリウスェ・・・

教えていただきました平賀弥さん、ありがとうございます。


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7話:みらいの歓迎会!その1

一応流れ的には 日常フェイズ→戦闘フェイズの流れでストーリー組んでます。

戦闘はよ、と言う方はお待ち下さい。ギャルゲ思考ですけど、この世界割と簡単にGAMEOVERになる可能性を秘めているので好感度上げ()が必須と考えてますので。

それと本当はこんな所でする事じゃ無いんですけど敵の群が来た時に付ける名称ってあるんですかね?

「あ号群」みたいな。ちょっとこの先の戦闘でそれっぽいのを考えたいなと思ったんですけど見つからないんですよね。このままあ号群みたいな感じでいいんだろうか。目標群α、β呼びは時代が違う気がしますし。

あ、本編始めます。




歓迎会が始まってからすぐ。まず重巡洋艦のお二人と仲良くなっちゃいました。

 

 

「みらいっていったっけ?私、最上型3番艦の鈴谷。よっろしくねー♪」

 

「鈴谷。もっとお淑やかにできないんですの・・・?それよりもごきげんよう。わたくしは最上型4番艦の熊野ですわ。よろしくお願い致します」

 

「よろしくね!二人とも仲がいいんですね」

 

「うん!大の親友だから!あ、今度三人でお菓子パーティしようよ。この鎮守府重巡がすくなくってさー」

 

「そうですわね。その時はわたしもお茶をご用意させていただきますわ」

 

 

 

鈴谷はとてもなじみやすかったですねぇ。テンションが平成の女子って感じなので、割と合わせやすいです。

熊野もどこかお淑やか、淑女といった感じの女の子で、可愛らしいですね。

 

・・・でもおなじ最上型でもおもちは違うんですね。

 

 

しばらく話した後、次は戦艦と空母の方へと向かいました。

 

・・・あそこだけなんだかご飯の量がおかしいんですけど、気のせいですかね?

 

 

 

「ん。みらい、楽しんでるかしら」

 

「加賀さん。こんばんは。ええ、もちろんです・・・加賀さんも楽しんでいるようで・・・」

 

 

もっきゅもっきゅ、なんて聞こえそうな感じでご飯を食べてる加賀さん。

けどスピードはまるで録画した映像を早送りしているように見えます。

 

少しだけ表情が緩んで、こう・・・ぱああって感じでキラキラして「流石に気分が高揚します」って言ってるから、エンジョイしてるんでしょう、うん。

 

と、一人頷いていたら加賀さんにご飯を盛っていた少女?がこっちに気が付きました。

確かここら辺にいるのは空母か戦艦だって言ってましたけど、この子は?

 

 

「あ、貴女が新しい艦娘ですね。私、祥鳳型軽空母、瑞鳳です。よろしくね!」

 

「よろしくお願いしますね、瑞鳳ちゃ・・・瑞鳳さん」

 

 

一瞬だけ動揺してしまいましたけど挨拶をきっちりします。

・・・まさか軽空母だとは。一瞬駆逐艦かとなんでもないです。

 

 

「?どうしたの?」

 

「ああ、いいえ!なんでもないですよ!よろしくお願いしますね?」

 

「はい、よろしくね?そうだみらいさん、こっちの卵焼き食べる?上手くできたと思うんだけど」

 

「はいいただきま・・・え、これ瑞鳳さん作ったんですか?」

 

見てみれば、まるでプロの方が作ったんじゃないかと思うまでに綺麗に纏まった卵焼きが。

色も鮮やかな黄色で色々な料理がならんでますけれども別次元です。

 

勧められるがままに口に運べば、卵本来の味とほんのりと甘さが、そしてふわりと出汁の香りが口の中に広がります。

 

「すっごい美味しいです!瑞鳳さんってお料理お上手なんですね!」

 

 

艦娘になったからかどうなのかは判りませんが、お料理が得意なのが羨ましいです。

なんというか女の子っぽいですし。

 

 

「あはは〜。一部じゃ女の子として勝てないけどね・・・!」

 

 

あれ、どうしたんだろう。なんかジト目になった後に沈んじゃいました。

 

おもちを見たと思ったらすぐでした。どうしたんだろう。

 

とそんな状況をみていた和服美人さんがふふふ、と笑ってこっちを見てました。

妖艶、そんな感じに見えますねぇ。

 

 

「ええと、そちらは?あ、わたしは」

 

「ええ、存じてます。みらいさんですね。私は航空母艦、鳳翔と申します。よろしくね?」

 

「鳳翔さん・・・たしか日本に残っている正式な発表で、世界で初めての航空母艦でしたね。こうしてお話できるなんて感激です」

 

「あら・・・よく知っていますね。ふふ、そう言ってくれるなら嬉しいです」

 

 

なんというか、包容力を感じる方です。

新妻、なんて言い方が似合うかも。

 

 

あ、瑞鳳さんは私が鳳翔さんと話し始めたからか加賀さんの所に戻りました。なんだか一升瓶片手にいじけてるけど・・・

 

 

「瑞鳳ちゃんなら大丈夫。たまにああなっちゃうの。でも私達ではどうにも出来ないからそっとして、ね?」

 

「そうなんですか?」

 

 

「うふふ、貴女ももっと人を知ればきっとわかるわ・・・にしても、ありがとうみらいさん。加賀が久しぶりに生き生きとしていたから・・・」

 

「加賀さんがですか?」

 

「ええ。どうしても日本各地の鎮守府に戦力を送らなければならないとなったとき、同じ一航戦であった赤城。二航戦の飛竜と蒼龍、五航戦の翔鶴と瑞鶴は別の場所に配属しなければならなかったんです。だからこの鎮守府では彼女が全力を出せる相手はいなかったの」

 

「鳳翔さんや戦艦の方たちではだめだったんですか?」

 

 

元一航戦ですよね?という意味を込めて言うと、頬に手を当てて困ってしまった。

 

 

「たしかに私の子達も錬度で負ける気はないけれど、それでもやはり軽空母と正規空母では規模が違うの。それに、その・・・戦艦のみんなだと・・・弾薬とか燃料が、ね?」

 

 

 

 

ああ、納得です。戦艦は強い代わりに補給がかなり大変だという話ですからね。

 

わたし?これでも最新鋭のイージス艦ですよ?

 

今回はミサイルも使わなかったですし、かなり低かったらしいです。

 

なんでもちょっと軽巡洋艦に足した分くらい、だそうで。これもまた大淀さんが驚いてましたね。

 

・・・ミサイルが補給できるかわからないけど、出来るようになったとしたら・・・どの位かかるかなんて考えたく無いです。

 

 

「私から言えた義理ではないのだけれど・・・時々でいいから、加賀と訓練をしてもらえない?・・・あの子のあんな興奮した姿、久しぶりに見たから」

 

「あはは、優しいんですね、鳳翔さん・・・勿論、おまかせあれ!わたしにとっても航空機との戦いはタメになりますから!」

 

 

 

しかもそれが一航戦の相手だというのなら、私にしても望むところです。

 

こうして時々、加賀さんとの訓練が行われることになります・・・けどたまに司令官さんが(加賀さんの)燃料と弾薬費で頭を抱えることになるのは、ちょっとだけ後の話です。

 

 

どうやらこの鎮守府には航空戦力はお3方しかいないらしく、次は戦艦の方たちがいる場所へと行きます。

 

と、すぐにさっき司令官さんに声をかけていた片言の人がわたしに気がついたらしくぶんぶんと手を振ってくれます。

それに気がついたのか、慌てて隣に控え目にいた同じような女性がぺこりと頭を下げました。

 

 

「oh!New feceのご登場ネー!確かみらいでしたカ、Future、いい言葉デース!」

 

「もう、金剛お姉さま。みらいさんが困ってますよ」

 

「あ、あはは・・・って、こんごう・・・?」

 

 

 

ってこっちじゃないか。こんごうじゃなくて金剛さんか。

と言う事は、思い当たる方は一人しかいないですね。

 

 

「金剛型一番艦、地獄の金剛・・・」

 

「ワタシの事を知ってるデスか?win fameになったものネ!でももっとcuteな通り名の方がいいデス!今のワタシはそう!バーニングラブの金剛デース!!」

 

「あはは・・・元気いっぱいですね、貴女のお姉さん」

 

「はい、でも榛名は大丈夫です・・・って、よく榛名がわかりましたね?」

 

 

おんなじ金剛型ってわかりましたけど艦名まではわかんなかったです。

でも今榛名って言いましたよね?金剛型3番艦の榛名さん。

 

確か史実においては金剛型で一番最後まで戦い抜いた、歴戦の勇士。

お姉さんと妹を先に喪う・・・どういった心境だったんでしょうね・・・こうして艦娘として蘇れたんですから、今度もまた姉妹仲良くやっているのでしょう。

 

 

榛名さんにはとりあえず「似てましたから」と言っておきました。

ちょっと照れてましたね・・・

 

金剛さんとは挨拶ではなく英国式というか、外国式なハグで挨拶だったんですけど、何故か榛名さんがきょとんとしてました。どうしたんですかね?

 

 

 

「榛名びっくりです。大体の人はお姉さまがそんな感じで挨拶すると驚いちゃうんですけど」

 

「そうですか?んー、確かに外国とかの人じゃないと驚いちゃいますかね。でもわたしは海外派遣の任務がたくさんありましたからそんなに気にしないですね。未来の日本はいろんな国との交易がありましたから」

 

「それはGrovalネ!良い事デース!」

 

「でも・・・米国とも仲良くしてたんですよね・・・榛名、ちょっと複雑です」

 

 

ありゃ、これはちょっと地雷だったかな。

例え今、この世界でも私の世界と同じで仲良くしていたとしても。結局彼女たちを攻撃したのも、榛名さんの姉妹を撃沈したのもアメリカを始めとした敵国なのです。

そう簡単には立ち直れないんでしょうね。

 

 

 

と思ってたんですけど、金剛さん自身はあっけらかんとしてました。

 

 

「こ、金剛さんはなんとも思わないんですか?」

 

「ん?Yes!」

 

 

ちょうど飲んでいた飲み物を置いて、にこやかに笑います。

 

 

「Sportsと同じデス、終わったらそこまで!ワタシには、今ココがありマース!pastがどうとかは気にしないデス!!」

 

 

榛名もいるしネー!と抱きついた金剛さんに、榛名さんもにこやかになります。姉妹仲がいいようで何よりです。

聞いたところによると、比叡さんと霧島さんはまた別の鎮守府で元気にやっているみたい。

ただどっちもやっぱり姉妹仲が良いらしく、金剛さんや榛名さんに会いたがっているようです。

 

・・・いいなぁ。ここまで仲がいいとやけちゃいます。私、もう姉さんたちとは会えないから。

 

と、そんなときふと料理がこんもりと乗せられた皿を持った女性がこちらへと寄ってきました。

 

 

「金剛、どうせなら私も混ぜてほしいな」

 

「仲間外れにしてしまいましたネー!長門も混ざるネー!」

 

「・・・!長門。連合艦隊旗艦だった長門さんですか」

 

「ああ。そのとおり、長門型戦艦ネームシップの長門だ。この艦隊でも大体は旗艦を務めている。よろしく頼む」

 

 

まさかこの鎮守府に地獄の金剛と蛇の長門がそろっているとは、すごいですね。

流石最大規模の横須賀鎮守府といったところですかね。

 

これで山城さんがいたならまさしく音に聞いた戦艦勢揃いになりますね。流石に居ないらしいですけれど。

 

 

「どうだ、この艦隊には慣れたか?」

 

「ええ。まだあったことのない人にはこれから挨拶をしようかと思っていますが、みんないい人達ばかりで居心地がいいです」

 

「ふっ、そうか。何か困ったことがあるなら私に言うといい。そうでなくても金剛や、司令官に近い位置であるなら電もいる。頼りにしてくれて構わない」

 

「そうデス。何かあったらスグにfollowするネー!」

 

「ありがとうございます」

 

 

金剛さんとはまた違ったすっぱりとした性格というか、流石連合艦隊旗艦といった感じの方でした。

 

・・・ただ、あの服装寒くないんですかね。

 

それとどうやら、戦艦の方達はおもちも大きいようです。またかしこくなりました。

 

 

もうちょっとしたら、次は軽巡洋艦と駆逐艦の方に言ってみようかな。

 

 

 




あとがき:

うちの長門さんはながもんではありません。ですので駆逐艦を溺愛したりはしません。
普通に駆逐艦達からは好かれてそうですが、鼻血を流したりはしません。



あとあれです。金剛さん書きやすすぎです。
すらっと出てきます、ネタが。


それとこの鎮守府が重巡が少ない理由は、長門さんがいるからです。
長門と金剛、それに加賀もいるし戦力的には重巡はそこまで割かなくてもいいかなという考え方です。
資材がマッハですね。

どうしても単一の存在だと分けなきゃいけないですしね、戦力。


あとみらいちゃん、口には出さずに心の中で密かにおもちの批評をしてますが、まあそれは元になった人に比べたらマシということで。
クロチャーだったらみた瞬間叫びますからね。

正直露骨なキャラ付けな気がするんでそのうち言わなくなるかも知れません。
おまかせあれは便利なんで使いますけど(

といった感じで、お次は軽巡と駆逐艦のお話。
この二つはそれなりに居るのでキャラをすべて動かせるか心配です。


PS、嘘だろ・・・日刊ランキングに載ってる、だと・・・

えっ、えっ、ちょっとお待ちくだ、え。

え、1位(12日22時現在)?嘘でしょ?・・・幻覚じゃないんだけど(白目

いや、なんかマジすんません。自分みたいな初心者が載るとは思わずガチでビビってます(震え声

やはり艦これとジパングが愛されているという事でしょう。

設定はガバガバで誤字も多く結構突っ込まれて来ましたが、こうしてランキング入り出来たのはみなさまのおかげです。

今後もジパングを、そして艦隊これくしょんをどれだけ表せるか判りませんが出来る限りの努力をして行きたいと思います。よろしくお願いします。


PS2、はい、恒例の誤字報告のお時間です。
金剛さん、英語ミスってました。pestじゃないですpastです。

ごめんね金剛さん。

草掛論さん報告ありがとうございました。

あと鬼は山城さんですね。金剛さんは地獄です。
昨日のランキング入りで動揺してたみたいです。


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8話:みらいの歓迎会!その2

何時の間にかUAも1万を超え。偶にですけど日刊ランキングにもちらほらと見えてとても嬉しいです。

正直ここまで行くとは思ってませんでした。ありがとうございます。

その後なんか上げるかな・・・


と、いうわけで。金剛さんや長門さんと別れて、今度は反対側へと行くことにしました。

 

・・・それなりに話してたんですけど、長門さんって結構食べるんですね。それであのプロポーションなんだから凄いです。

 

わたしは結構小食だから、ちょっと胸やけしそうになっちゃいました。

それに気がついてすぐに気を使ってくれた榛名さんに感謝です。

 

 

で、ちょうど軽巡洋艦のところに来たんですど・・・

 

 

「そのお魚は私のクマー!」

 

「タマのニャー!」

 

「姉さん達、お願いだから取り合いっこしないでくれ・・・」

 

 

なんですかこれ。なんだかアホ毛が凄い子と猫っぽい子がお魚をとり合いしてます。

・・・クマとタマ?ああ、クマ型、じゃなかった球磨型軽巡洋艦の1番艦、球磨さんと2番艦の多摩さんですか。

 

これまた金剛さん並のインパクトある二人ですね。

で、その後ろの方はその妹さんですか・・・誰ですか「木曽ー!どっちの味方クマ!」「勿論タマの味方にゃ!」「いや、その・・・」

 

木曽さんですか。なんで眼帯してるのかは疑問ですが・・・困ってるみたいなので助けてあげますか。

 

 

 

「はい、そこまで」

 

「にゃ?」

「クマ?」

 

「アンタは確か・・・みらいだったか?」

 

「はい。新しく来ました護衛艦のみらいです。と、それよりもお食事中にあんまりはしゃぐのはダメですよ?ほら、お箸をどけて・・・半分こ。仲良くね?」

 

 

ちょっとおせっかいかもしれませんが、お魚を半分に分けてあげました。

 

 

「むう・・・今回はみらいに免じて許してやるクマ!」

 

「ふん、そっちこそ、みらいに感謝するニャ!」

 

「ああもう姉さん・・・すまない。迷惑をかけたな」

 

「気にしてないので大丈夫ですよ。球磨さんも多摩さんも楽しい方たちですね」

 

「毎回やられると困るけどな・・・でも、それが姉さん達らしくてなかなか止められないんだ」

 

「木曽さんも大変ですね・・・もしもまた困ったことがあったら呼んでくださいね?」

 

「ははっ・・・ああ。みらいも何かあったら頼ってくれ」

 

 

そう言って木曽さんはまたお姉さんたちの仲裁に向かいました。

・・・まあ、喧嘩するほど仲がいいってことでしょう。

 

 

 

さて、次はだれに話しかけようかな・・・と思い、駆逐艦達の方が楽しそうだな~と思っていた時。

ちらりと視界の隅に誰かが見えました。誰だろう?

 

 

「・・・でこれがこっちで・・・うーん。やっぱりこのミサイルの基盤意味がわかんない・・・なんでこんなので空を飛ぶの?」

 

 

・・・お食事処でこの人何やってるんですか。

 

見てみれば、お食事もそっちのけで私がさっき明石さんに手渡したミサイルの分解された図だろう物を見て唸ってました。

 

 

「あ、あの・・・ご飯食べないんですか?」

 

「え?ああうん。それよりもこっちの方が気になるからー・・・って貴女みらいさん!?うわ初めてみた!」

 

 

いや、そりゃ初めてみたでしょうけども。

何でですかね。目をきらきらさせてます。明石さんの時と同じような感じです。

 

 

「私夕張!事実上兵装実験軽巡だったから、新しい装備に目がないの!」

 

「そ、そうですか・・・でも休めるときは休まないと後が大変ですよ?せっかくのおいしいご飯も覚めちゃいます」

 

「あう、そう言われると・・・ってああ!お蕎麦が伸びちゃう!ありがとうみらいさん!お蕎麦大好物だから、のばしちゃうのはもったいないですよね!」

 

「だからって食べながら見るのはお行儀悪いですよ?」

 

「むぐっ!?・・・ま、まさか見破られるとは」

 

「気になるのは分かりますけど・・・そうですね、楽しみは後に取っておく、ってしておけばいいんじゃないですか?待った分だけ楽しみも増すでしょう?」

 

 

そう言ってみたら、ようやくその資料から手を放してくれた。

 

忘れてましたけど大淀さんと明石さんもきちんといますよ?

基本鎮守府の中のお仕事を手伝ってるとか言うだけあって、二人とも仲がよさそうです。

 

夕張さんもようやくお蕎麦をすすり始めたのでようやく駆逐艦の方へと赴きます。

 

 

 

どうしてですかね。眼帯が軽巡洋艦ではやってるんでしょうか?

木曽さんの普通の眼帯とはまた違う・・・アレですね。某鋼鉄の歯車の4部作、おじいちゃんになっちゃった主人公が付けてたような眼帯をつけた女性が仕切ってました。

 

 

「おうちびっこども。きちんと噛んで食べろよ・・・って夕立、肉ばっか食うな!島風!デザートは最後に残しとけ!電も秘書艦なんだから茄子を残すなああああっ!」

 

 

言葉使いは悪いですけど、その言葉の端々にはみんなを気遣っている雰囲気が現れています。

その近くでは同じ軽巡洋艦だろう少女が「あらあら~♪」とどこか楽しそうです。

 

それにしても。あの二人のおもちは一体どういうことですか!

 

今までの傾向を考えるにフネの大きさから大、中、小と別れているのではないのですか!?

 

って今思い出したら空母でも小さい人はいましたね・・・誰とは言いません誰とは。

 

そう考えると、逆に小さいフネだった人達も大きい人がいるってことですね。おもちが。

 

 

コホン。それよりも電ちゃん、茄子嫌いなんで「な゛す゛は゛き゛ら゛い゛な゛の゛て゛す゛!」す、か・・・涙目になるほどですか。

お味噌汁に田楽、定番のマーボー茄子とか天ぷらにしたり、油でさっと揚げてポン酢をかけてもおいしいのに・・・あの食感が苦手な人はいますよね。電ちゃんもそんな感じかな。

 

 

 

と、一人頷いていたら雷ちゃんに気がつかれました。

ぱああ、って表情を輝かせて手を振ってくれます、かわいいですね。

 

それで皆さんこっちに気がついたみたいなのであちらに行きましょうか。

 

 

「あ?見ねぇ顔だな・・・ああ、新入りのみらいだったか」

 

「はい。イージス護衛艦のみらいです。よろしくね」

 

「そんな他人行儀じゃなくてもいいぞ。と挨拶がまだだったな。俺は天龍型1番艦天龍だ・・・ふふ、怖いか?」

 

「怖くはないです、じゃない。怖くはないかな。けどカッコいいよ?」

 

「そ、そうか!カッコいいか・・・えへへ」

 

 

あら、どちらかと言えば可愛いですねこの人。

頭の上の・・・あれなんですかね?なんか機械のウサギ耳みたいなのがぴこぴこ言ってます。

 

これは天龍さんじゃないですね。天龍「ちゃん」です。たぶんそう呼べば怒るので、裏でこっそり呼びましょう、うん。

 

それにしても天龍型、ですか・・・確か第二次世界大戦に参加した巡洋艦の中では最も古い型でしたか。

ソロモン海戦で、確か探照灯を破壊されて・・・ああ、だから隻眼ですか。

 

 

今さらですけど私、未来のフネなので第二次世界大戦で活躍した艦船のデータはほぼそろってますよ?

 

 

 

「あらあら、天龍ちゃんがうれしそうでよかったわ」

 

「っ!?い、いつの間に・・・?」

 

「ついさっきよ~?私、天龍型2番艦の龍田よ。天龍ちゃんが迷惑かけてないかなぁ?」

 

「あはは、迷惑なんてそんな・・・可愛らしいお姉さんですね」

 

 

そうなのよ~♪といきなり現れた龍田さん。

・・・私、近づいた事に気が付けなかったんですけど。

 

なんというか、不思議な方です。

 

 

「でも、ありがとうね~みらいさん。天龍ちゃん、この頃誰にも怖がられないからちょっと落ち込んでたの」

 

「ありゃりゃ、そうでしたか・・・天龍ちゃん、カッコいいけどどっちかって言ったら可愛らしいですもんね?」

 

「そうでしょ~?私のお気に入りなの♪」

 

 

どういう意味で『お気に入り』なのか、少し疑問でしたけど・・・なんだか、突っ込んだら戻ってこれなくなりそうなので追及はやめておきました。

 

と、龍田さんが天龍ちゃんに突撃しに行ったので、次に向いましょう。

 

 

 

 

駆逐艦のみんなは、基本的に仲がいいみたいです。

皆でわいわいと、でもお行儀よく食べてました。喧嘩もなく、みんなで分け合って食べてるあたり仲がいいね。

 

はいってもいいのかな?と思いましたけど、すぐに電ちゃんと雷ちゃんの間に座らさせられちゃいました。

 

 

 

「はい、みらい!ジュースだけど我慢してね?こっちのお料理食べる?」

 

「あ、ありがとう雷ちゃん。でも私、結構小食だからちょこちょこ食べてるんで、大丈夫だよ?」

 

「あう~、みらいさ゛ん゛~」

 

「あはは、電ちゃん。残してもいいですけど・・・素敵な女性にはなれませんよ~?」

 

 

そう言うとうっと止まってしまいました。

茄子を睨みつけちゃって・・・可愛らしいですね。雷ちゃんはがんばれー!って応援してます。

 

と、その間に挨拶をすませちゃいましょうか。なんだかとても気になっているのか、ぴょこっと跳ねた髪の毛がぴょこぴょこ動いてる子がいるし・・・

 

あれ、どうやって動かしてるんだろう。

 

 

「と。紹介が遅れちゃったね。わたし、護衛艦のみらい。みんなよろしくね?」

 

「よろしくっぽい!私白露型駆逐艦の夕立っぽい!ねえねえ、みらいさんは加賀さんに勝ったっぽい?」

 

「ぽ、ぽい?」

 

「ああ、それ夕立の口癖なの。ほら、ソロモンで戦果をあげたのはいいんだけど・・・情報が錯綜して最終的な結果は暫定でしか分からなかったから」

 

「ああ、それで「ぽい」ですか」

 

「うん、夕立は頑張ったっぽい!」

 

 

ほめてほめて~!と寄ってくる様はどこか子犬を彷彿させます。

 

けど・・・この子が「あの」夕立ですか・・・もしも分からない方がいらっしゃるのならば、駆逐艦なのに戦艦並、またはそれ以上の戦果を上げた子とお考え下さい。

 

とりあえず頭をなでてあげるとほわーっと表情を和らげる様からはどうも想像できないですけど。

 

 

「ああ、それと加賀さんにはきちんと勝ったよ?ほぼ互角だったけど・・・次も負けない」

 

「・・・!うふふ、みらいさんの闘志、素敵っぽい!次は私も混ぜて!―――素敵なパーティ、一緒に楽しみましょ?」

 

 

 

 

あ、これあのソロモンの悪夢だ。

 

今一瞬、ぞくってしました。この子駆逐艦?って感じの殺気に似た何かを感じちゃいました。

 

 

 

 

「で、そう言えば貴方は?多分白露型だと思うけど」

 

 

そう、さっき夕立ちゃんの口癖について教えてくれたツインテールの女の子に話しかけます。

 

 

「白露型駆逐艦3番艦、村雨よ?駆逐艦群全員が雨の名前なんて、素敵でしょ?」

 

「ええ。貴女のそのお名前、とっても素敵だと思うな」

 

「えへへ、褒められちゃった」

 

 

なんだか白露型は犬っぽい子が多い気がしますねぇ。

 

 

「そう言えば、実は夕立は改二なのよ?」

 

「かい、に?なんですか、それ?」

 

「わたしたちがもっとも~っと強くなるための改造っぽい!」

 

「夕立ったら、見た目まで変わっちゃって・・・」

 

 

と変わる前の姿が映った写真を見せて貰いましたが・・・え、なんですかこれ。

姿どころか瞳の色とか、おもちとかいろいろ変わっちゃってますね。

 

 

 

にしても改二ですか・・・聞いたところ、この改二もまだ実験段階らしく、一部の艦艇しかなれないらしいですね。

 

まあ、艦娘が単一である以上、おいそれと実験なんてできやしないでしょうし、そうでなくても心あるヒトの形をした私たちを弄りまわすって、結構鬼畜なことですしね。

 

 

そうそう。今まで言及してませんでしたけど、艦娘は単一の存在・・・つまり一人しか存在しないらしいです。

 

そして、それ以外では艤装らしきもの・・・が出てくる事はあるらしいですが、それを着けれるのは艦娘だけ。『近代化改修』という、艤装の強化に使われるのがもっぱらだとか。

 

 

 

 

 

 

と、それよりもさらに奥で談笑している4人にも目を向けましょうか。

 

 

・・・これまた凄い恰好の子がいますねぇ。

 

なんですアレ。痴女扱いされてもおかしくないですよ?あとあの周りにいる、なんか砲台みたいなクリーチャ―、なんだろう。

 

一人はちょっとクールめ、目つきが怖い気がしますが・・・あれですかね、三白眼?

ただ、雰囲気で怒っていない事は理解できます。

 

もう一人はどこか小動物・・・ビーバーみたいな雰囲気です。

笑ったときに見える歯がとってもチャーミーですね。

 

で、最後の一人。ちょっと控え目に見えますけれど、黒い髪の・・・ポニーテールかな?

可愛らしい、というよりはちょっときれいな感じかな?おもち・・・夕立ちゃんみたいに大きな駆逐艦もいるものですねぇ。

 

あ、あとあれです。やっぱりなんか砲台みたいなクリーチャ―がついてます。

 

 

「ここ、お邪魔してもいいかな?」

 

「・・・?みらいさんでしたか。どうぞ・・・不知火は陽炎型駆逐艦の不知火です。以後お見知りおきを」

 

「わたしは陽炎型駆逐艦の雪風ですっ!」

 

「あなたがみらいね!私、島風!ねえねえ、みらいって早いの?」

 

「島風ちゃん・・・っと、ああ!私は防空駆逐艦、秋月。防空はお任せください!」

 

 

またまた濃いメンツですねぇ。

 

特に島風は最高時速が40ノットと、私以上の速度をだせますし、雪風といえばあの雪風。

奇跡なんて呼ばれるほどの豪運を持ったフネです。この鎮守府、やっぱり凄い戦力偏ってません?

 

 

「みんなよろしくね?」

 

「はい・・・ところでみらいさん。貴女が加賀さんに打ち勝ったというお話は本当ですか?」

 

 

うずうず、そんな感じのみんなの気配に苦笑いになってしまいます。

やっぱり加賀さんはみんなのあこがれなんですね。

 

 

「はい。とは言っても、ほとんど僅差・・・いいえ、ほんの一瞬気がつくのが遅れていたら私は大破でした。未来のフネだと過信していた結果です」

 

「それでもあの加賀さんの攻撃機から勝利をとれるなんてすごいです!」

 

「そうだよ!あのこ達とーっても早いんだもん!私でも避けれないのにみらいってすごーい!」

 

 

今度一緒に追いかけっこしよーよ!と元気よく近寄って来る島風ちゃんに勿論と答えてあげつつ、ちらりと見る。

秋月ちゃん、何かを話したいみたいなんだけど・・・?

 

 

「あ、あの!」

 

 

ん、勇気を振り絞ったのかな?

 

 

「どうしたのかな、秋月ちゃん?」

 

「えと、あの・・・しっ、師匠と呼ばせて貰ってもいいですか?!」

 

「・・・へっ?」

 

 

 

し、師匠ですか?これまた変化球が来ましたね。

 

本人はいきなりすぎたのか、「いや、ちが、その・・・あわわ」と目をぐるぐるとさせちゃってますね。

 

と、見かねたのか不知火ちゃんがふう、と息を吐きました。

 

 

「秋月は貴女のぼうきゅう・・・コホン、防空能力に憧れたようです」

 

「えと、はい!私は防空駆逐艦なんですけど、あんなに綺麗に迎撃なんてできないから・・・だからっ!みらいさんに習えばもっともっと、艦隊を守ることができるかなって!」

 

 

・・・!守るため、か。

 

 

「それは嬉しいな。けれど、私の迎撃能力は未来の力があってこそ。戦争から60年という時間と、国と国を越えた技術の結晶。それを全部身につけるとなると・・・きついよ?」

 

「っ・・・それでも、私は防空駆逐艦として・・・いいえ!この鎮守府に所属する一人の艦娘として強くなりたいんです!!」

 

「その言葉、聞きたかった。司令官さんにはわたしからお話を通しておくね・・・言っておくけど、わたし『守る』ってことで妥協はしないよ?たとえ貴女が、わたしのような装備が無かったとしても、ね」

 

「の、望む所です!」

 

 

そこさえ妥協をしちゃったら、最後に残った護衛艦としての意地と誇りさえ無くしちゃうからね。

 

・・・今わたしに求められているものが敵を倒すための力だったとしても、それだけはなくしちゃいけないって思うから。

 

 

 

こうしてたまに、わたしとほかの艦娘たちの特別授業がたまに開かれることになります。

・・・まあ、秋月ちゃんだけじゃなく、いろんな子たちまで集まって、賑やかになっちゃいますけど、それもまた別のお話です。

 

 

 

「・・・そう言えば不知火ちゃん、さっきちょっとか」

 

「噛んでないです」

 

「・・・噛んで」

 

「ないです」

 

 

むう、いじっぱりですね。

ならばあれでいってみましょう!

 

 

「不知火ちゃん、なまむぎなまごめなまたまごっはい!」

 

「っ!?な、なみゃむぎなみゃぎょめなみゃてゃみゃごっ(ガリィッ)!?」

 

 

 

あっ・・・思いっきり舌噛んじゃいましたね・・・滑舌悪いなら引っかかるかなぁとは思いましたが・・・

 

 

「ご、ごめん!大丈夫!?」

 

「あう・・・だ、だいじょうぶれす・・・不知火に落ち度はありません」

 

 

きりっと取り繕ってますけどつくろえてないあたりが可愛らしいですね。

思わず撫でちゃいました。あと島風ちゃん、わかってても「落ち度しかないじゃん」って言わないであげて、ね?

 

 

「ん・・・これはいいですね・・・」

 

「あー、不知火ちゃんだけずるいですっ!みらいさん、わたしも撫でてください!」

 

「むー、二人だけなんて不公平!私も撫でてってば!」

 

「あ、あの・・・出来れば私も・・・ってちょ、10cm砲ちゃんどこいくのー?!」

 

 

 

とっても賑やかです。

けど、嫌な賑やかじゃない・・・とても安らかな賑やかさです。

 

こんな賑やかさがなくならないように。私もこの艦隊を守ろう。

それがきっと、この国を、世界を守ることにもつながると思うから。

 

 

 

 

 

 




あとがき:


はい。完全に描きやすいか自分の趣味でキャラを選びました。私です。

それでもこの程度しかキャラ動かせてない上に、ほぼ似たようなお話で終わっちゃったあたり、やっぱ文章をかける人たちってすげーなと思います。

特に秋月ちゃん。正直防空駆逐艦だからと前プロットのお詫びという事で絡ませたけど、最近出たばかりでイメージが足りない。
これじゃお詫びにならない・・・もっと精進せねば。


島風ちゃんもどう動かすかすげー悩みます。


で。みらいちゃんがちょっと言ってましたが、この鎮守府に微妙に戦力過多だと思う方が多いと思います。

そのとおりです。ちょこっとだけ戦力を偏らせています。理由は勿論あり、ひとつはこの鎮守府が中央である横須賀であること。
もう一つありますが、それはまた別のお話で。

ホントは(史実的に)有名所揃えるつもりだったのは秘密(



にしても・・・各鎮守府の艦娘配置がまた難しい・・・

中には戦艦とか空母居ない場所がざらに出てくるなあ・・・

こうやって考えると、戦時中はよく守れていたなと感心してしまいます。

なんとか姉妹艦が一緒になるような構成(陽炎型とか多い子は除く)にしたいですねー。
てか、伊勢・日向と山城・扶桑が別でいるのが想像出来ない・・・特に山城さんはべったり過ぎて「離したら呪ってやるー!」位言ってくれそうで困る・・・

まあ、呉の鎮守府とか割と最初らへんからあったサーバらへんに置くことになると思います。


PS、はいでは何時も通りの修正のお時間ですね。
ええと、天龍さんは第一次ソロモン海戦ではやられず、探照灯が壊れただけだそうです。

毎回ながら史実がガバガバだなぁ・・・


マナイタ2さん報告ありがとうございます。


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UA10000突破&日刊ランキング1位(2月12日夜)記念

というわけで作ってしまいました。
ここまで来れたのも皆さんのおかげです。ありがとうございます。

※今回の、お話は本編とは関係ありません。


EX話:みらいの1ヶ月・1週目

 

 

ストーリー:『マリアナ諸島沖』に突如南方棲戦姫が現れた。それに呼応するかのように深海棲艦が海域に集まりつつあった。

 

大本営は通称『アルペジオ異変』以来の特殊作戦発令期間『イベント期間』を発布。

各司令官/提督達に攻略を指示する事になった・・・

 

そしてとある鎮守府に、一隻の護衛艦が配属される・・・

 

 

 

「護衛イージス艦。みらいです。神の意志か悪魔の意志か。どちらであっても艦隊をお守りします!」

 

「護衛艦ねえ・・・」

 

今日配属されたばかりの新しい艦娘。

目の前でピシリと海上自衛隊式の敬礼をした少女に目配せしたあとに手元にある資料へと視線を落とす。

 

 

・・・曰く弾幕を張れる単装速射砲。

 

・・・曰く自動迎撃システムを搭載した、分間4500発の対空機銃。

 

・・・曰く戦艦娘の射程が子供のオモチャとさえ感じてしまえるほどの超射程を誇るミサイル兵装。

 

・・・曰く日本でもまだ実装していない、ティルトウィング式を採用した偵察機。

 

 

見ればみるほど、今の艦娘から大きく技術の差がある兵装。

 

彼女こそ異なる歴史から来た未来の艦娘。弾薬費に目を瞑ればこれ程使いやすい艦娘はいないだろう。

 

 

だが。彼女から感じる雰囲気は決して海上自衛隊の雰囲気ではない。

どちらかと言えば他の艦娘と同じ歴戦を思わせる『凄み』のようなものを放っていた。

 

 

「流石、あのミッドウェーなんかを潜り抜けた未来艦だな」

 

「・・・」

 

「・・・悪い、思い出させたか?」

 

思わず呟いた言葉にみらいが俯いてしまった事を感じて提督は、すぐ様謝罪した。

 

彼女が、戦いを嫌いと、している事は大本営から聞いていたからだ。

 

提督自身も、護衛艦だけに仕方ないと身構えていたゆえの行動だった。

 

 

「・・・いいえ、大丈夫です!いや〜まさかあんな体験するなんて〜」

 

「・・・無理はするなよ」

 

「・・・ありがとうございます。けど、戦えます。角松二佐や草加少佐が守った『未来』今度は私が守らないと・・・」

 

 

明らかに無理をしているように見えた。

だが、みらいがこの事に触れるな、という雰囲気を出してしまっている。

 

ここは話を、変えるべきかと切り替える。

 

 

「さて。それじゃあ次は仕事の話だ」

 

「了解です。私がやるべき事は新しくマリアナ諸島沖に現れた敵を、迎撃する事ですね?」

 

「 ああ。敵は強いが、君の力ならば突破も可能だろう」

 

「おまかせあれ!艦隊の防空はおまかせ下さい!」

 

 

ふんす!と力こぶ(つくれてない)を作ったみらいに、提督は苦笑いを浮かべながらも先程までの危うい雰囲気は無くなっていることにほっとする。

 

たとえ戦う事が使命であるといっても彼女達だって人と同じで感情を。そして意志を持っている。

彼女達の補佐もまた提督の仕事だ。

 

 

「さて、艦隊を編成しようと思うが・・・何かあるか?」

 

 

そう提督が聞いて・・・そして後悔した。

 

 

「ではーーー大和を同じ艦隊に入れないで貰ってもいいですか?」

 

「え・・・?」

 

 

はっきりとした拒絶。その表情は無表情に変わっていた。

 

 

「何故・・・かは、聞いてもいいか?」

 

「答えたくありません・・・でも。今、大和と会いたくありません。少しだけ時間を下さい」

 

「・・・分かったその様に手配しよう」

 

「ありがとうございます・・・でもっ!多分そのうち大丈夫になるんで気にしないで下さい!仕事もきっちりとこなして見せます!」

 

「・・・ああ、期待しているよ。私は少し艦隊編成を考える。案内は霧島に頼んでいるから、先に鎮守府を回ってくるといい」

 

 

ありがとうございます!と笑顔で出て行ったのを見て・・・提督は苦虫を潰したように顔を顰めた。

 

 

「編成をかえなきゃな」

 

 

机の中から取り出した書類。其処には艦隊の編成が書かれていて・・・大和とみらいの名前が書かれていた。

 

みらいの対空、対潜能力と大和の火力。そこに機動力に優れたフネや火力が高いフネを投入した打撃部隊。

弾薬費が嵩むがこれ以上ない編成だと自負していた。

 

だが・・・みらいはそれを望んでいない。

出来るだけ艦娘の意志は組みたい。今回は別にしようと決めた。

 

・・・多分資材のせいでは無い。

 

 

「しかし・・・重症だな」

 

 

今一度編成を考えながらポツリと呟く。

大本営から聞いてだけに、大和との確執は予想の範囲内だった。

 

「歴史の改変、ジパング構想・・・・・・そして、原爆か」

 

 

執務の時も外さない帽子を目深く被り逡巡する。

 

みらいが辿った苦難の道のり。それを考えれば強くは言えない。が、ふと思ってしまったのだ。

 

 

 

「なあ、みらい・・・・・・・・・お前は、『未来』に進めているのか?」

 

 

 

提督の呟きは、空へと消えていった。

 

 

 

 

 

「案内を頼まれていた戦艦、霧島です・・・草加少佐がお世話になりました」

 

「いいえ・・・むしろ、ごめんなさい。私達があの人に未来情報を与えなければ・・・」

 

「そんなこと言わないで下さい。確かに歴史は変わりました。でも!助かった命があるんです、救われた未来があるんです!貴女は誇って下さい・・・それが、あの世界を知る者の使命です」

 

「ふふっ、ありがとうございます、霧島さん。少し元気でました」

 

 

その言葉に霧島も笑顔になる。

そうして二人で鎮守府内を歩き回る。食堂に港。資材置き場にと色々と周り。休憩の為に中庭へと来た。

 

 

 

 

 

其処には立派な桜の木が植えてあった。樹齢数十年だろうか、今はまだ葉しか無いが春はきっと見事な花が咲くだろう。

 

その木を見つめるように一人の少女が立っていた。

 

 

 

「あ、大和さん!」

 

「ッ⁉︎」

 

 

みらいが思わず息を飲んでしまったその言葉。

霧島の声に反応したその少女・・・大和はこちらを見て。

 

ぱあぁと花が咲いたように表情を輝かせる。

 

 

「みらい、貴女もこの艦隊に入ったのですね。嬉しいです!」

 

「大和・・・貴女は恨んでいないの?」

 

「・・・恨んでなんか居ません。あの人達の想いは、きっと尊いもの・・・でも、あんなものを日本が使うなんて考えたくもありません。だから・・・感謝を、伝えたかった。ずっと・・・」

 

 

そう言った大和にーーーみらいは、何処か苦しそうな表情へと変わった。

 

 

「でも、私は・・・すみません、霧島さん。ちょっとドック行きます。少し頭を冷やしたいから」

 

「あ、え、みらいさん?」

 

「みらい・・・?」

 

 

突然歩き出したみらい。二人とも頭の処理が追いつかずに思わず聞き返す。

 

 

「ごめん、大和・・・許してくれてありがとう。でもーーーわたしは、まだ貴女を許せそうにない」

 

「あ、まって・・・!」

 

 

大和は思わず手を伸ばしたが・・・みらいには届かず。

何も掴めなかったその手を下ろして・・・少しだけ悲しそうに俯いた。

 

 

 

 

 

「あ〜あ、ホント自分がバカみたい・・・なにやってんのかな、わたし」

 

 

誰一人いないドック。みらいは壁に寄りかかってコツリと頭をぶつける。

 

ーーー頭では理解している。大和は何も悪くない。

むしろ、最初に歴史を変えたのは自分。ジパング構想を、歴史の改変を止めたのは自分。

 

そこに悔いは無いが。それでも思ってしまう。

 

・・・どうしてあそこで大和は奪われたのか。どうして原爆なんて積まれたのか。どうして・・・自分が戦わなければいけなかったのか。みらいの乗員が犠牲にならなければならなかったのか。

 

誇りもあった。意地もあった。護らなければいけない矜持があった。

 

 

それでも心は理解をしてくれない。『未来』を知っているからこそ。

『IF』を考えてしまう。そこに答えは無いと言うのに・・・

 

 

こんなにも悩むのなら。こんなにも悲しい気持ちになるのなら・・・

 

「艦娘になんてなりたくなかった。艦娘って・・・人間って、辛いんだな・・・」

 

 

呟きは虚しく宙を舞う。未だみらいは大和を許す事が出来そうもなかった。

 

 

 

 

※続くかもしれない

 

 

 





はい、というわけで番外編。

「もしもみらいが、本編よりも艦これに近い形で鎮守府に着任したら」

という妄想ダダ漏れた結果です。
何故か本編よりも先に大和さんが出てきてしまいました。どうしてこうなった・・・
本編を楽しみにされてた方はもうちょっとお待ち下さい。


こっちのみらいちゃんは少しネガティヴ寄りです。

中々みらいちゃんと大和さんが仲直り出来ない中、時間だけが過ぎて行って・・・というかんじ。

こっちの方もストーリー的に面白そうですけど、長編でやると私がダークサイド堕ちる可能性大なシリアス風味なんで、本編は少し違います。

ふと霧島さんは沈めれそうだなとか考えたって事からお察し下さい(


こっちの方はまた気が向くか何かの記念があった時にでもふと上げるかも知れません。
ただあくまで番外編という事をご了承下さい。

最初は角松さんがみらいちゃんのお父さんで、ジパングに登場した人達が学校の先生とかご近所さんとかで、そこに艦娘達が通うっていう艦これ学園にしようか悩みましたが(


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9話:カッコ良さとは

今回はとある艦娘のお話。
題材でわかるかな?


あれから数日。新しい布団の寝心地にもようやくなれた今日この頃。

 

正式な配属が決まったとのことで、ようやくわたしも晴れてこの鎮守府に配属となりました。

 

・・・模擬戦したり歓迎会した?まあ、先に済ませたということで。

 

わたし自身がイージス艦という現在確認されている艦娘の中でも異彩を放っている存在なのでこのまま最大規模の大きさである、横須賀で様子を、見るとか。

 

 

まあ、わたしとしては電ちゃんや雷ちゃん、鈴谷がいるから気持ちは楽なのでいいですけれど。

 

 

あ、もう鈴谷とは敬称無しで話しあう仲です。

鈴谷っておちゃらけているように見えて回りが見えてるし、実は頭もいいし、話して面白いしおもちもちで割と凄いよね。

 

 

「・・・あれ、司令官さん。どうしたんですかそんなに慌てて」

 

 

朝食を取り終えて今日の予定を確認しようと歩いていたら慌ただしく動いている司令官さんを見つけました。

 

 

「ああ、みらいか!鈴谷見かけなかったか?!」

 

「鈴谷・・・?見てな・・・あれ、そう言えば今日は非番で外に出るって言ってたような・・・?」

 

 

そうだ、思い出しました。2日前に申請してましたっけ?

 

わたし、今場所が空いてるから重巡用のお部屋にお邪魔してるんです。他の場所に比べて空いてる場所は多いですから。で、確か熊野さんとお茶してた時に、何かを書いていたような・・・?

 

 

「そうそう。確か新しく出来た喫茶店がイケてるとか何とか言って、朝に楽しそうにおしゃれしてましたね」

 

「え゛・・・アイツまたダブルブッキングか・・・!」

 

 

へ?ダブルブッキング?

 

話を聞いてみれば今日は遠征の日で、とある油田や弾薬を生産している場所を回って資材を集める日だったようで。

 

鈴谷にも召集がかかっていたようです。

 

 

「ありゃー・・・鈴谷忘れてたんですかね?」

 

「多分な・・・私も気がつかん間に申請を通していたから強くは言えんが・・・アイツコレで6度目だぞ!?何枚始末書を書く気だ!憲兵!憲兵はどこかー!」

 

 

・・・どうやら常習犯のようですね。鈴谷ぁ・・・それは擁護出来ないよ。さっきの鈴谷の評価、少し改めた方がいいかも・・・

 

 

「でも大変ですね」

 

「ああ。この鎮守府ですらなんとかローテーションを組んで回しているんだ・・・一隻でも外れたら遠征に出せないぞ・・・」

 

 

他の艦娘を召集するしかないか・・・とがつくりと肩をおとした司令官さんがかわいそうです。

 

・・・そうだ。

 

 

「あの。司令官さん、その役目・・・私がやってもいいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

というわけで。

 

 

「今回はわたしが一緒に行く事になりました。よろしくね?」

 

「かー。アイツまーたやらかしたのか・・・」

 

そうつぶやいて頭をガシガシと掻くのは遠征艦隊を任されている天龍さん。

 

この話を聞くにやっぱり何回かやってるんだね、鈴谷。

 

 

「ま、いいや。みらいも巡洋艦クラスだしな・・・頼りにさせて貰うぜ」

 

「あはは・・・おまかせあれ!頑張りますよ」

 

 

 

これでもそれなりに馬力は有りますし、なんとかなるでしょう。

 

今回の遠征はわたし、天龍さん、球磨さん。雷ちゃんと不知火ちゃんと雪風ちゃんです。

 

 

 

「くまー。みらい、そんな装備持って重くないクマ?1、2日戻らないから結構きついクマよ?」

 

「あはは〜、このうち取り外せる装備って少ししか無いんですよ」

 

 

というより外すと装甲の中身が、見えたちゃいます。そこらへんはイージス艦というか、護衛艦の宿命なんで諦めるしかないんですけどね。

 

・・・そう言えばどうやって資材集めるんですかね?

 

 

 

「ん、そう言えばみらいってこれが初めての遠征だっけ・・・ちょっと待ってて!確か予備が・・・あった、はいこれ!ドラム缶(輸送用)!」

 

 

 

そう言って雷ちゃんから手渡されたものは、本当にドラム缶を縄で縛っただけの装備でした。

 

 

 

「はは、驚いたか?冗談抜きでコレで輸送するんだぜ?未来のフネなお前にはキツイ、かも・・・な・・・?」

 

「わああぁ・・・・・・!(ぱああぁ!」←めっちゃ目が輝いてる

 

 

 

凄いです!昔の人ってこんな装備で運んでたんですね!

 

※違います。あくまで簡易的な輸送用があのドラム缶なだけです。

 

 

「やる気充分ですね、みらいさん!」

 

「・・・雪風。多分みらいさんのアレは違うと思います」

 

なんか雪風ちゃんと不知火ちゃんが話してけど、よく聞こえない・・・あれ、これってこうでいいのかな。

 

 

「ま、まさかそこまで喜ぶとはな・・・未来ってのは理解しがたいぜ・・・」

 

「へ?何か言いました?」←スロット無視して3個位装備している

 

「なんでもねーよ。とりあえずみらいお前は初めてなんだから今回は1つにしておけ・・・装備すればするほど嵩張って、艤装の燃料も使う。馬力はだけで考えてもダメだぜ?」

 

「そうクマ。何事も省エネクマ。その代わりみらいには周囲の警戒をお願いするクマ!」

 

むう・・・こういった任務に関しては皆さんの方が正しいでしょうから素直に従っておきましょう。

 

しかし、自分で使う燃料まで考えてるんですね。まだまだ護衛艦時代の癖が治ってないみたいです。

未来なら簡単に燃料は手に入りましたから。

 

・・・まあ、運用法は考えないとでしたけど。予算、少ないから・・・世知辛い世の中でした。

 

と、そんなわたしの事は置いておいて。

 

定刻通りに鎮守府を出港して遠征へと向かいます。

 

なんというか、みんなでお買い物みたいでちょっとだけワクワクしちゃいますね!

 

とは言っても任務ですから、きっちりとお仕事しなければ。

わたしもCIC妖精さんに頼んでレーダーの監視強化をしてもらいます。

 

と、少したってから。天龍さんが手に何かを持っている事に気がつきました。

・・・地図、では無いですね。

 

 

「天龍さん、それって何ですか?」

 

「ん、みらいか・・・ってそうか。遠征も今日が初めてだもんな。こいつは『羅針盤』と羅針盤妖精。俺たち最大の友であり最大の敵でもある」

 

 

て、敵?どういう事ですかね?

 

 

「基本海は深海棲艦の住処で、どこにでも現れる。遠征出撃関係無しにな。特に、アイツら海底を動いているからかいきなり現れる事があるんだよ。そういう時にコイツだ。何がどうなるのかはさっぱりだが察知して教えてくれる。だから最大の友」

 

「でもその子たちって気分屋なの。自分が行きたい方しか行かないからそればっかりに頼るとなんでかルートを外れて鎮守府に逆戻り・・・なんてこともありえちゃうんだ」

 

 

天龍さんとその話を聞いていた雷ちゃんが隣に来て教えてくれます。

 

なるほど、だから最大の敵でもあるんですね・・・っていうかわたしが知っている羅針盤と違うんですけれど。

羅針盤って回すものでしたっけ?さっきから楽しそうに針をぐーるぐる回してるんですけど・・・世界が違うと文化も違うんですね。

 

※違います。羅針盤は回すものではありません。

 

 

「でも敵ならわたしも分かりますよ?」

 

「あん?」

 

「これでもイージス艦ですから。ここから一番近いのは3時方向、12マイルかな?流石に深海までは分からないけれど」

 

 

さっきの羅針盤で思わず忘れかけましたが。さっきからちらほらと深海棲艦らしきモノがレーダーに映るんですよね。最初らクジラかイルカかなと思ったんですけど・・・にしては動きが速いですし。

 

 

「マジかよおい・・・!みらい、そいつらはこっちに気がついてるか?」

 

「待って下さい・・・いいえ、こちらとは真逆に向かってますね。哨戒機飛ばします?」

 

「・・・いや、このまま進む。無駄な事はしたくない。定刻通りに着かないと先方が怒る。それにそんなとこを1隻でうろついてるなら雑魚のはぐれだ。潰したって得策じゃあない」

 

 

なるほど・・・無駄弾は使わないと。まあ遠征ですしね。わたしも武装の半分以上はまだ補給出来ないですし、助かりました。

 

 

「でも、正直驚いちゃいました、」

 

「何がだ?」

 

「天龍さんですよ。いつもの感じだと突っ込んでいくかなーって思ったから・・・」

 

 

ごめんなさいと苦笑いで謝ります。まだまだわたしの人を見る目も甘いですね。

 

けれど。天龍さんはどこか苦虫を潰したような表情をしたのです。

 

 

「・・・みらいの言う通りさ。昔の俺なら後先考えねぇで突っ込んだろうな」

 

「天龍さん?」

 

「昔の話だ。バカをやった。自分の身も弁えないでポカをした・・・そしたら泣かれた、怒られた」

 

 

カッコワリィよな、と頬をポリポリと掻きながら天龍さんがバツの悪そうな表情になります。

 

 

「でも。それに気がつけたなら大丈夫です・・・気がつけない時もあるはずだから」

 

「だといいんだけどなぁ・・・今でもさ、もっと活躍したい〜なんて子供な考えが浮かぶんだ・・・俺さ、恥ずかしいけど結構お前が羨ましいんだぜ?

なんだよ、60年以上先の技術って。来たと思えば加賀さんと戦って勝っちまうし。あげくに今だって俺らが気がつけなかった敵にいち早く気がついた。

自分が地味で、すげー悔しいんだーーーほんと、カッコワリィよ俺」

 

 

愚痴になったと笑った天龍さんを見て・・・

 

 

「天龍さんは、地味って言葉嫌いですか?」

 

 

思わず聞かずには入られませんでした。

 

 

「どうだろうな・・・いや、嫌いだな。俺だってお前みたいに強くなりてぇよ・・・羨ましいよ・・・」

 

 

それはフネとして古い故の慟哭に聞こえました。

 

でも・・・・・・

 

 

 

 

「そうですか?わたし、天龍さんが羨ましいです」

 

 

わたしの言葉に天龍さんが目を見開きます。

けれど。天龍さんは気がついてないみたいですし、言わなきゃいけない。

 

 

「だってそうじゃないですか。司令官さんから旗艦を任される。これって結構すごい事ですよ?」

 

「・・・それは、俺が燃費いいだけで」

 

「それだけで任命する人じゃあないのは、天龍さんの方が知ってる筈です・・・それに天龍さん、出港する前にわたしに言いましたよね?『そんなに沢山持つと燃料がかかる〜』って。

わたし、浮かれててうっかり忘れてました。天龍さんはそんなわたしの事まで見てましたよね?周りが見えている証拠です」

 

「・・・・・・それは、俺が何回も遠征しているからで」

 

「他にもわたしの歓迎会の時だってよく駆逐艦の子達に注意してましたよね?みんなの事まで考えている。これってやろうとしても中々出来ないんですよ?」

 

「・・・・・・・・・それは・・・」

 

「普通、怒られれば反論する子もいる。注意されたら反発してしまう子だっているはずです。でも、あの鎮守府で、貴女から怒られて反論する子も。貴女から注意されて反発する子もいません・・・みんなから慕われている証拠ですよ」

 

 

勿論、わたしも含めて。そういう意味を含めて諭すように語りかけます。

みんなから慕われていて、司令官さんから信頼されていて、周りも見えて、悪い事は注意が出来る。

 

天龍さんには、他にはない『優しさ』があるんです。

それが、わたしにはとても羨ましいんです。

 

 

「だから、自分を格好悪いなんて言わないで下さいよ、天龍さん。わたしから見た貴女は、とっても格好いいんですから!」

 

 

強さだけではきっと格好いいなんて言えない。そこに心が、意志がなければ・・・力は、ただの暴力に変わってしまう事もあるのですから。

 

 

 

「・・・そこまで言われると、照れるな」

 

「全部わたしの本音です、だから自信持って下さい。ところでさっき『地味』って言葉は嫌いだって言いましたけど・・・実はわたしはそこまで嫌いじゃあないんです」

 

 

「は?・・・いや、普通言われたら嫌じゃねぇか?」

 

「・・・『地味』って、どうやって書きますか?」

 

「そりゃお前・・・地面の「地」に味覚の「味」、だろ?俺でも分かるぞ」

 

 

そう。文字通りに『地面の味』と書くんです。けれど・・・

 

 

「こういう風にも思えませんか?地面の味を知ってしまうほど。地面に這いつくばったって」

 

「・・・!」

 

「なんで何回も這いつくばったか?決まってますーーー何度倒れても立ち上がって。どれだけ蔑まれても笑い飛ばして。どんな困難にも立ち向かってまた崩れても・・・何度だって歩き出す。そういう意味の『地味』なら、すごい格好いいと思いませんか?」

 

 

誰からも見られない『地味』なところで『努力』するからこそ。

そうしてまた歩き出せる。わたしはそう思うんですよ。

 

勿論、地味の語源は違います。けれど・・・

 

 

「・・・なるほどな、言葉も考えようってか?」

 

「はい。どうせ考えるならポジティブに、ですよ!」

 

 

意味なんてものは最後は使う人が決める事。だったら少しでも前向きな意味にとらえたいですからね!

 

 

「でもよ、ちょっと無理矢理過ぎねぇか〜?」

 

「う・・・い、いいんですよ思うだけならタダなんですから!」

 

「はは、そうだな。考えるならだけなら・・・か」

 

 

何かを考える天龍さん。でも。その表情にさっきまでの陰りはありませんでした。

 

 

「ま、ありがとよみらい・・・少しだけ、スッキリした」

 

 

 

 

 

 

・・・そのあとは特に代わり映えのない普通の航海。約束通りの時間について。一日を明かして鎮守府に戻りました。

 

わたしは初めての遠征で疲れましたけれど・・・もしもあのまま沢山持って行ったら今頃大変だったでしょうね。でも、それもきっとこの鎮守府では些細な事で。きっといつも通りの出来事なんでしょう。

 

 

ーーーただ。あの日から一つだけ変わりました。

 

 

 

 

 

「あ゛〜みらいぃ・・・これ、難しすぎね?」

 

「この位はまだ初歩だよ天龍・・・わたしの時代なら出来ないとやられちゃうよ?」

 

「はっはっは!天龍ったら私にも及ばないようだねぇ?」

 

「・・・鈴谷。もしもツッコミ待ちなら言ってあげますわ。それを五十歩百歩と言うのですよ?」

 

いつもわたしたちがお勉強会を開く重巡用のお部屋。偶にくる秋月ちゃんや、同室の鈴谷と熊野以外にもお勉強会に参加する人が増えたんです。

 

そう、天龍です。

あれからすぐに「そんな他人行儀じゃなくていい」と言われたので今では互いに呼び捨てです。

 

最初は鈴谷が驚いてたっけ。

 

天龍はそこまで勉強が好きじゃ無いって有名だから・・・と。

 

 

でも。今目の前にいる天龍からそんな事は感じません。

頭を抱えながらも、少しづつ前に進もうと頑張ってます。

聞いた話だと、最近は元から持ってた剣を使う近接戦を主軸にした戦闘を考えて戦艦の人たちと模擬戦までしていると言うんですから驚きです。

 

 

ーーーでも、そんな天龍をみてみんなが言うんです。「私も頑張らないと!」って。

 

 

 

「地味なのは今も嫌いだ・・・でも。だからって地味な努力しないのはやめだ。んなのカッコワリィからな。お前の言う『地味』、少しだけ目指してみるわ」

 

 

・・・それが、あの遠征からしばらくして。天龍が頑張り始めたあたりにわたしに語ってくれた言葉でした。

 

 

・・・・・・きっと、貴女のその『努力』は直ぐには身を結ばないかも知れません。

けれど。貴女を見守ってくれている人はいます。

 

ちらりと勉強中の部屋のドアが開きます。

・・・龍田さんですね。この後よく天龍の様子を見に行きますけれど・・・直ぐに満足そうに去っていきます。

 

どっちが姉なのか偶に分からなくなりますが・・・コホン。

 

 

でも。貴女の努力はいつかきっと花を咲かせるはずです。

 

だって。貴女はわたしが尊敬するに値する、最高に格好いい艦娘だと思うから。

 

 

 

 




『海色』と『吹雪』のCD買いました。どちらもやはりいい曲ですね、これ書きながら聞いてますけどテンションが上がりまくります。



そんな事は置いておいて。ちょっと話が無理矢理過ぎたかなと思う第9話。

天龍ちゃんメインのお話でした。

この地味〜のお話は昔中学の恩師に言われた言葉です。


「お前達は『地味』になれ!」・・・あの時は何言ってんだこのオッサンとか思いましたが。
その後の説明で胸が熱くなり。今になり努力の意味に気がつきました。

なんかよく天龍ちゃんが弱い事を気にしているみたいな話をみかけ、=で地味な(弱いから目立てない)事にコンプレックスを持っていると考えたらこの話を入れてました。

まあ、その恩師は本来の地味の意味から大きく離れたインパクト大なお方でしたが(

ただ、恩師よ。やはり語源は違うでは無いですか。あの時自信満々で言ってましたよね?
調べて「違うじゃねーか!」と一人でツッコミ入れてました。

まあこういう考え方もある程度に思って下さいな。


と言った感じで、うちの天龍ちゃんはフフ怖天龍ちゃんの路線から大きく外れカッコイイ天龍さん路線で行きます。ちょっと天龍ちゃんが熱血入りそうですがご了承下さい。


あと羅針盤は完全に妄想です。
ただそんななんで逸れるんだ、と考えたらなんかこんな感じになりまして・・・

でもほら、こんな考え方なら愛着が・・・無いなそれは、うん。






おまけ:


???「ぬきあ〜し、さしあ〜し・・・うん、憲兵さんも提督もいない、よね?」

司令官「誰がいないって?」

鈴谷「げぇ!?提督!?」

司令官「まったく・・・ようやく帰ってきたな鈴谷ぁ・・・!」

鈴谷「え、えーと・・・ごめ〜んね♪」

司令官「憲兵さん、宜しくお願いします」

憲兵=サン「ドーモ、鈴谷=サン。憲兵デス」

憲兵2「と言うわけで少し話を聞こうか?」

鈴谷「アイエエエェ!?」

司令官「?・・・鈴谷、その袋なんだ?」

鈴谷「え、っと、あの・・・その・・・・・・」

司令官「これ、有名なとこの・・・どうしたんだこんなに。高かったろう?」

鈴谷「・・・今日、遠征の日だって後で思い出して・・・迷惑かけたなって・・・・・・せめて、謝らなきゃって」

司令官「・・・すみません憲兵さん。今回は見逃して貰っていいですか?」

憲兵2「まあ、司令官が言うのなら」

憲兵=サン「・・・(すっ」

鈴谷「え、司令官・・・?って、あたっ!」

司令官「今回はこれで済ます・・・私も間違ったしな。だが、次は無いからな?後でみんなに謝りに行け。私も一緒に行ってやるから」

鈴谷「ありがとう!さっすが司令官っていだっ!?」

司令官「調子に乗るなまったく・・・憲兵さん達もありがとうございました」


アンマリナグルナー!

テカゲンハシテルゾ


憲兵2「・・・良かったのですか?」

憲兵=サン「我々は何も見ていない。イイネ?」

憲兵2「アッハイ」


憲兵2「でも・・・」

憲兵=サン「ああ」


ザッ!


オレラ1「鈴谷たんはぁはぁ・・・」←街中で見かけた美少女を追いかけてきた

オレラ2「鈴谷たんペロペロ・・・」←街中で見かけた美少女を追いかけてきた

オレラ?「\イージスです/」←街中に侵入してたら同業がいたので追いかけてきた

ベネッ◯「野郎オブクラッシャー!」←元大佐に筋肉論破されたので鎮守府にテロりにきた


憲兵2「変態どもに」

憲兵=サン「慈悲はない。ドーモ、変態=サン。憲兵デスーーーハイクを詠め、カイシャクしてやる」


※変態どもはすみやかに爆発四散。ストーリーも何も考えずに書いた、反省はしている。

流石に鈴谷が残念な子になるので救済話。


PS、恒例のミス報告です。何時になったら無くなるやら(

世知づらいではなく世知辛い、つまりせちがらい、が正解です。
まーた小学生レベルの間違いで頭が痛くなります・・・

この底学歴が!と生優しく見てください(

七日 八月さん、報告ありがとうございました。

PS2、まだありました。一文字足りないところがありました。

NNNさん、報告ありがとうございました。


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10話:戦いの前の・・・

と言うわけでもういっちょ日常回。

そろそろ戦闘パートに移りたいですねー。


しかし日常回における鈴熊の使い良さ・・・みらいちゃんが平成生まれなのもあって簡単に馴染めそうな雰囲気故に仕方ないといい訳しつつ本編始めます。


わたしがこの鎮守府を訪れてからはや数週間。すっかりと馴染んだ重巡のお部屋。

 

朝は大体重巡二人とお勉強の時間です。

 

 

「うあー・・・これわかんないー」

 

「ちょっと見せて?・・・ああ、これね。途中まではいいんだけど、この後ね・・・」

 

「・・・みらい?私も助けてもらうので言いづらいのですが、ちょっとばかり鈴谷を助けすぎでは?鈴谷が成長出来ませんわ」

 

「まー細かいこと言わない熊野。みらいに聞くとスーッと入ってくるからさ、私でもわかるんだよ?これでも前より弾道計算とか早く出来るようになったもんね!」

 

 

勉強会といっても、わたし達艦娘にとっての勉強は航路とか弾道計算。燃料消費の効率化なんかのフネに関する事です。

当たり前といえば当たり前ですけど。

 

 

「わたしも苦ではないから気にしないで。それによく言うでしょ?ほかの人に教えれば自分の理解も深まるって」

 

「そうは言いますが・・・よく貴女のその問題を解きながら出来ますわね・・・」

 

「そこまでみらいの問題って、難しいの?」

 

「・・・見てみればわかりますわ」

 

 

うっそだー、と笑いながら鈴谷がずいっとわたしの問題を覗き込んできて・・・ピシリと固まってしまいました。

 

 

「え、なにこれ」

 

「なにって・・・戦場となる戦域の情報統合、その後接敵した後からの戦闘に至る経緯。で、そこから攻撃に使用する武装の選択、それから・・・」

 

「ちょ、ちょっとすと〜っぷ!えと、なに?つまりみらいは、わたしに教えながらずっと戦闘のシュミレートみたいな事してたってこと?」

 

「そういう事ですわ。ちなみに回答としては・・・大正解に、見えますわね」

 

 

 

なんだ、熊野も理解出来るんじゃないですか。

これ、少し難しいだけですよ?簡単に言えば、与えられた情報からいつも戦闘でやってる事をやればいいだけですから。むしろ変わらない戦況の上で詰将棋してるようなものだから楽でいいです。

 

 

・・・わたし達艦娘の艤装は、わたし達だけでも動かせるのですが妖精さんの補佐があるからこそ最大限のスペックを引き出せます。

 

・・・なんだけれど。妖精さんにもリーダなんかが存在して・・・いわば『艦長妖精さん』と『副艦長妖精さん』がいるんですけれど・・・わたしには副艦長妖精さんがいません。

 

 

理由は、わかりません・・・金剛さんに聞いてみたんですけれど前例が無いって。

 

 

ただ・・・なんとなく思うんです。

 

副艦長・・・つまり、わたしの尊敬する1人・・・『角松洋介』二佐。その記憶を持つ妖精さんがいないということは。

 

あの戦いの最中で歴史が改変されたバタフライ効果で・・・その影響で『未来』の居場所を失った人がいないのなら・・・

 

それが少なからず影響しているんじゃないかって。

 

真偽はわかりませんが、流石にトップに近い妖精さんがいないせいで、大分わたしの負担は大きくなっています。他の妖精さんに乗って貰おうにもわたしの艤装は操作できないでしょう。

 

・・・そうでなくても乗せるつもりはさらさらないですけど。

 

というわけで現在猛勉強中です。まだまだですけどね。

 

 

「あのですね、みらい。それ、私や鈴谷を含めて艦娘でこの短時間で解ける方はごく僅かしかいません。私はみらいの回答を見ただけで解けはしませんわ」

 

「・・・え、そうかな?確かに難しいとは思うけど、解けない程じゃないと思うけどなぁ・・・」

 

「いやいや!?敵の思考パターンとか回避予測、この数十分でどれだけ立ててるのさ!?しかも私に教えながら・・・ねえ。実はみらいって天才?」

 

「まさか。これだって全部やらないと気が済まないからやっただけだし・・・」

 

 

そういえばなんでここまで書いたかな?・・・いつもCIC妖精さんと訓練してるからかな?

 

 

「でも、やっぱり簡単かな。この世界の交戦規定、穴だらけってレベルじゃないよね?護衛艦時代なんてもっとおにちくだよ?」

 

「そこまで穴だらけかなぁ〜?」

 

「いや・・・細かい規定は省いても、『途中で寝るな』『轟沈しないように大破撤退を心掛けろ』『ごっつんこはするな』『仲間を見捨てず敵に情けをかけるな』・・・って、むしろこれ規定以前の問題だし・・・子供でもわかるよ、これ」

 

「そうなんですけど・・・中にはその子供でもわかる事が出来ない人も、いるんですのよ・・・?」

 

「あはは〜ごっつんこはうちのお家芸だもんね、特に姉さん達・・・」

 

 

あれ?なんか鈴谷と熊野の目からハイライトが・・・

あー、また地雷踏んだかな・・・そういえば最上型のお姉さん達って、よくぶつかってたっけ・・・?あ、もしかしなくてもわたしのせいだ。

 

 

「え、えーと・・・あ、そろそろお昼ですね!うん、お腹も減ったし食堂行こうよ食堂!」

 

「にげたねみらい」

 

「逃げましたね・・・」

 

 

気にしない。2人のジト目なんて気にしないっ!

 

まあ、実際お勉強もひと段落つきましたし、お昼なのも本当だからタイミングはまちがってないんですけどね。

 

 

 

 

 

と言うわけで3人で食堂へと来ました。

 

今日は金曜日という事もあってみんな大好きカレーの日です!

うーん、この匂いが食欲そそります。でも、流石に人気なメニューな為か中々席が空いてないですね。

 

結構大きな食堂なんですけどね。用務員さんや妖精さん、中には憲兵さんらしい人までいてお昼ラッシュ!という感じですね。

 

 

「・・・と、あそこが空いてますね」

 

「あー、長門さんの隣って緊張するしね・・・え、あそこ行くの?」

 

「まあ、このままではせっかくのごはんが冷めてしまいますが・・・」

 

 

緊張・・・するかなぁ?連合艦隊旗艦だもんね、長門さん。

 

わたしは・・・フネの時に大和と出会ってるからそこまで緊張しないんだよね。

 

「長門さん、お隣にお邪魔してもいいですか?」

 

「んむっ・・・ああ、みらいか。もちろんだ」

 

軽く声をかけてからわたし、熊野、鈴谷の順で隣に座っていきます・・・鈴谷、そこまで苦手?

 

 

「って長門さん、なんだか嬉しそうですね?」

 

「ん、ああ、いや・・・実のところを言えば金剛や空母連中以外は私に気を使うからか隣に座らなくてな。静かに食べれるのはいいが、偶には私だって話もしたいさ。そういう意味では、助かったよみらい」

 

「えへへ、どういたしましてっ!」

 

「あれ・・・長門さんがいつもと違う」

 

「・・・鈴谷、それ結構酷いですわよ?長門さんも艦娘ですのよ?まあ、訓練は厳しいですが」

 

「はは、私だって休憩中くらいは羽を伸ばしたいさ・・・とはいえ鈴谷。あまりはしたなく食べるなよ?」

 

 

といった感じて、長門さんと楽しくお昼を食べる事に。

 

割と酷いですけど、長門さんってファッションとか雰囲気のいい喫茶店とか知ってて驚きました。

なんでも金剛さんや、偶に休日に妹さんと回るそうで。鈴谷がすっごい食いついてたんで、情報に間違いは無さそうですね・・・あれ、もしかしてこの思考も割と酷い?

 

い、いや、弁明させて貰えば普段の長門さんの服装がダメなんですよ!と心の中で言い訳しつつ。

 

 

「・・・あ、そういえば長門さん?一度聞こうとしてたんですけど、この鎮守府って結構戦力多いですよね?何か理由があるんですか?」

 

「そう言うのは本来提督に聞くべきなんだが・・・まあ、いいか。この鎮守府が日本では最大規模という話は聞いたな?」

 

「はい、最初に明石さんに案内された時にちらっと」

 

「しかも妖精さんに聞いたら最新設備なんだって!いや〜、おかげで艤装の調整とか楽で助かるよ」

 

「他の鎮守府の方々には、申し訳ないですけど、やはり使いやすいですものね」

 

 

そうだ、と長門さんが頷きます。

 

 

「で、そんな場所だ。その周辺の海域は最初期に解放する事が出来たそうだ。だが、かと言ってそこから戦力を分散しては問題があった時に対処が出来なくなる。ここは日本の中心と言ってもいい立地だしな。防衛の観点からも戦力は多い方がいい・・・そういう話になったそうだ。実は大淀と明石が常駐しているのもそう言った関係だ」

 

「勿論ただ戦力を温存するだけではありませんわ。有事の際は他の鎮守府に援軍という形で私達も出向することになってますの」

 

「最近はパラオだったっけ?めちゃくちゃ暑くて汗で服がベタついて大変だったなー・・・そう言えば、あの時だっけ?みらいが鎮守府近くで見つかったの」

 

 

へー、そんなお話があるんですね・・・というか、わたしって鎮守府近くで見つかったんだ・・・て、そうか。気絶したから運んで貰ったんですよね?近くなきゃ大変な事になってたかも知れませんね。

 

 

 

「と、少し話は変わるがみらい。正式発表はまだだが・・・近いうちに出撃があるかも知れん。準備だけはしておいてくれ」

 

「それ、言ってもいいんですか?」

 

「なに、大丈夫だろう。提督も直ぐに私達に伝えると言っていたからな。それと・・・そうだな。久々の楽しい昼時を満喫出来た礼代わりだと思ってくれ」

 

 

そう言うと長門さんはいつの間にか食べ終えてた皿をトレイに乗せて席を立ちました。

 

よく見ればそろそろお昼も終わりの時間でした。

結構時間がたったなぁ・・・

 

 

そう言えば、いつだったか空母の皆さんにわたしの艦載機を見せる約束してたっけ。

わたしは今日、フリーだしお邪魔してみようかな。

 

 

 

 

 

 

と言うことで鈴谷たちと別れて空母のお部屋にやってきました。

 

 

「失礼します。加賀さん居ますか?」

 

「・・・みらいですか?少しお待ち下さい」

 

少ししてから扉の開く音。ちらりと見えたその姿にいつもの胸当てはナシ・・・どうやら加賀さんもオフのようですね。

 

・・・前から思ってましたけど、加賀さんっておもちもちですよね、普段は胸当てで隠れてるけど・・・わたしの目はごまかせませんよ!

 

 

「・・・あの、どうかしました?」

 

「あ、いや!気にしないで!ってそれよりも。前に言ってたわたしの艦載機を見せに来たんですよ」

 

「・・・!そうでしたか。どうぞ入ってください」

 

 

加賀さんに案内されてお部屋の中に。

なんだかんだで加賀さんとは演習して付き合いが長くなったので、いつもはあまり表情を動かさなくても大分わかるようになりました。

今はなんだか目を輝かせてるような感じですね。そんなに見たかったんですかね?

 

 

 

中に入ると、ちょうどこの鎮守府に所属している空母の皆さんが揃ってました。

鳳翔さんはなにか編み物をしてます。とても似合ってますね〜。瑞鳳さんは・・・妖精さんの乗る戦闘機を掃除しながらうっとりしてました。

 

 

 

「それでみらい。貴女の艦載機とはどういったものなの?」

 

「あはは・・・加賀さんがっつき過ぎですよ?」

 

「・・・貴女が演習で使わないのがいけないのよ。例のしーすぱろーも使わないし」

 

 

とは、言われましても。

 

 

「確かに海鳥は優秀ですけれど、戦闘はメインでは無いですし。シースパローとかのミサイル兵装は前から言ってるじゃあないですか。弾頭に限りがあるって。妖精さんが開発してくれてるみたいだけど、まだ研究段階らしいし・・・早く補給出来るようにならないかな〜。正直加賀さんの航空部隊相手に単装砲とCIWSだけでは手に負えないです」

 

「それでも私の子達はぽんぽん落としていくよね・・・」

 

 

と、加賀さんと話している間に瑞鳳さんも加わります。

 

・・・この前演習で瑞鳳さんの2個中隊撃退したのまだ引きずってるのかな?

 

 

 

「いや、それが普通なんですよ?加賀さんの部隊がおかしいだけで・・・なんで分間4500発の対空機銃をすり抜けれるんですか?」

 

「鍛えてますから」

 

 

・・・鍛えてどうにかなるものなのかなぁ?

 

 

この頃は単装砲で狙っても発射管制がオートのままだと爆弾抱えたまま避けられちゃうようになりましたし・・・

 

「単調すぎて逆に避けやすい」・・・ってなにかおかしくないですか?

それでもなんとか今まで勝ち越せてますけど、一航戦怖すぎです。

 

 

「それで、貴女の艦載機は?」

 

「と、話が逸れちゃいましたね・・・これです」

 

 

あの後工廠へ行って取ってきたわたしの艦載機、海鳥を皆さんの見やすいところにおきます。

 

本当はヘリも持ってこようと思ってたんですけど、整備中なので置いてきました。

 

どうやら鳳翔さんも気になったのか二人に混じって見てますね。

 

「へぇ・・・みらいの航空甲板にしては大きいね、この子」

 

「はい。これでは加速をつける前に墜落してしまいそうです」

 

「でも、武装はかなりのものですね・・・機銃と、これはみさいる?艦載機に付けれるものもあるんですね・・・この子は偵察機ですよね?」

 

「はい。けれど最悪の場合は威力偵察出来ますし、見ての通り武装はしっかりしてますから対地、滞空、対艦なんでもござれ、ですよ」

 

 

皆さんまじまじと見て・・・目が輝いてます。

 

未来の艦載機が珍しいんでしょうね。瑞鳳さんなんて手に持って色々いじっちゃってますね。

 

と、そんな時。海鳥の羽がぐいん!と上を向いてしまいました。

 

当然驚く瑞鳳さん。目をぐるぐるさせて壊しちゃった!?と慌てて・・・ああ、加賀さんと鳳翔さんの顔が怖いです。

 

「だ、大丈夫ですよ。この子は壊れてなんていないですから」

 

「で、でもぉ・・・主翼が上を向いたら壊れちゃう・・・」

 

 

「あはは、普通ではそうです・・・でも、この子は違います。実は説明し忘れてましたけどこの子は元から主翼が可動するんです」

 

 

と、海鳥を持ってくる時について来て貰った妖精さんに主翼を動かしてもらいます。

 

当然空母の皆さんは驚いてますね。

 

 

「・・・これは、どういう事です?」

 

「今説明しますよ、加賀さん。この子はティルトウィング・・・その名の通り主翼を傾ける事が出来るんです。

さっきわたしの航空甲板が小さいって言ってましたよね?そうです。普通に艦載機を飛ばすのであれば、まったく足りてません。けれども・・・この子は主翼を上に向けることでそれを解決しました」

 

「・・・!なるほど、前に進む力を上に・・・それならこの子でも発艦出来る、そういうことですね?」

 

「流石鳳翔さん。わたしみたいな護衛艦はヘリコプターかこの子を搭載します」

 

 

ちなみにこの海鳥は時速450キロまでは出せたりします。

多分、敵の艦載機と鉢合わせても逃げれるんじゃないですかね?

 

 

「・・・ですが、主翼の強度が問題ですね?」

 

「その辺りは60年後の技術がなんとか。むしろ問題は主翼が動く分操縦し辛い事・・・でも、それを克服したこの子はわたしを守ってくれる心強い味方でした」

 

 

本当に・・・佐竹さんには感謝してもしきれません・・・あの人が庇ってくれなければあそこで沈んでいてもおかしく無かったから・・・

 

 

でも、今度はやめて欲しいです。自分の身を犠牲にしてなんて、残された人の気持ちを考えて欲しいです。

 

 

わたしの感情を読み取ったのか、妖精さんがバツが悪そうな表情をして頰をぽりぽり掻いてました。

・・・今度は、一緒に生き残ろうね?

 

 

 

長門さんがわたしに出撃があるかも・・・といったということは。

多分近いんでしょう、戦いが・・・もう、すぐそこまで来ている。

 

・・・わたしの鑑娘になって初めての実戦・・・みんなを守る為に全力を尽くさなきゃ。

 

その時は・・・この子とVLS・・・使わなけばいけなくなるんでしょうね。

 

 

もしもそうなるのなら、手加減は一切しないつもりです。

後悔だけは、もうしたくないから。

 

 

 




と言う事でそろそろ戦闘パートに入りたい、私です。

出番少ない子を出していきましたがまだまだ居ますね・・・
たった20数隻しか居ないのにこんだけしか動かせてないんですからキャラを沢山管理して動かしてる他の人ってすげーなと思います。

金剛姉妹はイベント待ち、龍田さんも天龍さん絡みでイベントあり・・・

あとはぜかましちゃんと球磨型姉妹・・・雪風とぬいぬいももう少し出番増やしたいなぁ・・・

あ、あと感想で「あの名(迷)言って誰か言うの?」と有りましたが、無事決まりました。
っていうか、言ってくれそうなのが一人・・・

今回海鳥の説明を入れたのはアレが架空の機体だから知らない方もいるかなぁと。
しかし書けば書くほどアレですよね、オスプレイ・・・

ただオスプレイはティルトローターなるプロペラ部分のみ(?)の可動で、海鳥とはやっぱり違うみたいですが。

あと、今更なんですけどみらいに積まれてるヘリってシーホークではないっぽいですね(wiki見た感じそう思ったんですけど、合ってますかね?)

なんでもSH−60ではなくSH−60「J」だそうで・・・

てっきり日本製の意味かと勘違いしてましたが、説明みたら困惑しました。
どうやらシーパンサーなる機体らしいです。


なのでこの小説ではシーパンサーになります。4話あたりだったかな、少しだけ話題に出てたのも変えてます、ご了承下さい。

・・・ただこのシーパンサーもwiki見たらすげーってなりました。

改めて『みらい』って過剰戦力だよなぁと感じました(


PS、恒例の誤字報告です。出なくとも、ではなく、でなくともでした。

NNNさん報告ありがとうございました。


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11話:出撃前の作戦説明

空母のお部屋にお邪魔してから2日後。

 

長門さんからのお話の通りに司令官さんから呼び出しがありました。

 

 

集められたのはわたし、長門さん、加賀さん。そして夕張と木曽、秋月ちゃんです。

 

いつもの様に執務用の机に司令官がいて、隣には電ちゃんが控えています。

 

 

 

「皆、よく聞いてくれ。つい先日に大本営から発表があった」

 

 

司令官さんが言うには、敵の大規模進軍が確認されたという事。これを「あ号群」と仮称し、大本営は撃滅作戦を発令したそうです。そして赤城さん、加賀さん、蒼龍さん、飛龍さんを召集して航空機動部隊を再編すること。

 

わたし達は、その直衛として参加するとのことでした。

 

無論、空母4隻を守るのであれば数が足りません。

なので他の鎮守府から7隻が加わり、最終的には16隻の連合艦隊となります。

 

 

 

「凄いです!日本を代表する航空機動部隊がまた結成されるなんて・・・」

 

「ああ。しばらくは防衛の為に各地に分散していたからな・・・その航空部隊が一同に集う。コイツは凄い事になった・・・!」

 

 

夕張がその事実に目を輝かせ、木曽は腕を組んで頷いてます。

 

 

 

「赤城さんも・・・流石に気分が高揚します」

 

「ああ。久しぶりに一航戦が揃うんだ。みらいとの演習で鍛えられた君の部隊、存分に、見せつけてやるといい」

 

「勿論です」

 

 

加賀さんもやる気充分ですね。

 

・・・正直に言えば、今の加賀さんに勝てる相手っているんですかね?わたしの攻撃避けれる部隊を率いてるんですけど・・・

 

 

「あ、あの・・・わ、私もこんな大規模作戦に参加するのですか?」

 

「秋月、君の頑張りはみらいからも聞いている。今回の戦い、君は防空の要となる。戦果を期待するよ」

 

「・・・!はい、お任せください!」

 

「夕張、木曽。お前達も対潜と対空で活躍して貰うぞ?それと木曽、例のアレは手配できた。後で受領してくれ」

 

「任せろ司令官・・・しかし、やっと来たか。改二装備・・・使いこなしてみせるさ」

 

え・・・木曽、いつの間に改二に?ドックにマントやらなにやらが搬入されてたけど・・・アレの事かな?

 

それよりも夕張の様子がおかしいです。下を向いてプルプル震えて・・・どうしたんですかね?

 

 

「ふ・・・ふふ、ふははは・・・!ようやくですか提督!あれです、そんなに私の力が見たいんですか・・・って感じです!そんなに見たいのなら見せてあげましょう!みらいさんの単装砲を元に少しだけども改良できた12.7cm単装砲の威力ってやつを!!」

 

「・・・え゛わたしの武装解析できたんですか!?」

 

「解析と言っても部品とか速射に必要な構造だけですけどね?流石にハードまでは無理です・・・ですがっ!速射は可能です!全体的に大型化して重量が多くなったうえ、弾薬補給は手動なんで時間かかりますけれど」

 

 

・・・いや、それって十分すごくないですか?

 

つまり皆さんの単装砲を速射可能にしたって事ですよね?

 

え、出来たんですかそれ・・・え、妖精さんが一晩でやってくれた?

 

わたし、妖精さん舐めてたかもしれない。

 

 

 

「そ、そうか。昨日から夕張の機嫌が良かったのはそういう事か・・・うん、その威力存分に見せつけてやれ」

 

「はいっ!」

 

 

嬉しそうにうなずく夕張・・・まるで新しいおもちゃを貰った子供みたいです。

 

・・・皆さんが気合いを入れる中。わたしは何故か気が気ではありませんでした。

何か得体のしれないものが這い回るような・・・こう、ちりちりと、何かを感じるんです。

 

 

どうやら長門さんも何かを感じたのか、わたしに目配せをしていました。

 

 

「よし。それでは明日、明朝0630を以って出撃する。以降は長門に全指揮を委任する・・・すまん長門、頼んだ」

 

「ああ。任せてくれ、必ず勝利を掴んで見せよう」

 

「心強いな。それではこれにて解散とする。各自点検等を怠らぬように!・・・ああ、長門とみらいは残ってくれ、詳しく概要を説明したい」

 

 

?・・・わたしも?なんでですかね?

 

全員で敬礼したあと、わたしと長門さんを除いた4人が先に部屋を出て。

残ったのは司令官と電ちゃん、そしてわたし達だけとなりました。

 

 

「・・・それで提督?なぜ私とみらいを残したか、聞かせて貰おう・・・何と無く、解るがな」

 

「そう、だな・・・先にみらい、さっきの話を聞いて、どこか気になったところはあるか?」

 

 

気になったところ・・・?

 

 

「いいえ、特には・・・いえ、何だか不思議な感じはしました。思い過ごしかな、と思ったんですけど・・・?」

 

「思い過ごしであればよかったんだがな・・・加賀、赤城、蒼龍、そして飛龍・・・それに加えて、戦闘が予測される海域のこの位置・・・何か気がついたか?」

 

「あ・・・」

 

 

そ、うだ。4人、この場所・・・得体のしれない何かが、何か・・・分かりました。

 

 

「そんな・・・まさか、ここって皆さんが沈んだ・・・!?」

 

 

言葉が思いつきませんでした。

前にも言った通り、わたしは皆さんの経歴を知ってます。これでも未来のフネですから。

 

だと、言うのに。気がついて当然だったのに。今、司令官さんから聞くまで『頭の底から消えていた』。

 

まるで、無理矢理に忘れさせられていたみたいに・・・気持ち悪い。しばらくして、わたしは震えている事に気がつきました・・・恐怖にも似たナニカを感じたから・・・

 

 

「なるほどな・・・今回の出撃、やはり加賀達は引かれたか」

 

「ひ、引かれた・・・なんです、それ」

 

わたしの様子を見ていた長門さんがポツリと呟きました。

なんのことだろう・・・?

 

 

「みらい、これは提督と旗艦。そして秘書艦にしか伝えられていない事だが。敵が進軍した時にそのポイントで沈んだ艦娘が引き寄せられることがある・・・」

 

「でも、電達は・・・ううん、艦娘はそれを察知する事はほとんど出来ないのです。まるで何かに呼ばれるように・・・」

 

 

長門さんのあとに電ちゃんが続きます・・・だから、引かれたか、ですか・・・

 

わたしですら気付いたショックでこんなになるんですから、もしもこれが当人達なら・・・って

 

 

「か、加賀さんに知らせないと!」

 

「やめておけ。恐らく無駄だろう。以前にも似たような例は報告されている。その時はその引かれた艦娘を鎮守府待機にしていたらしいが・・・監視の目すらすり抜けて、いつの間にかその海域にいたそうだ」

 

「そして今、加賀に伝えたとしても彼女は一歩も引かないだろう。それどころか重荷になるかもしれない・・・下手に教えない方がいつもの実力を出せる筈だと私は思う。そして・・・これが一番重要でな。これを突破しない限り同じ事が起きる可能性がある・・・だからこそ大本営は危険性があるがこの作戦を発令したんだ」

 

 

司令官さんと長門さんの言葉に思わず頭を抱えます。

監視してもいつの間にか・・・ってそんなホラーが・・・いや、ファンタジーがあるんだからあっても不思議じゃないですね。

 

 

「なるほど・・・ようやく読めました。わたしをここへ残した理由。そして編成に加えた理由・・・対空をわたしに任せると捉えてもいいですか?」

 

「ああ。艦娘が引き寄せられた場合、相手の動きも類似する場合が多い。今回は空母・・・一航戦と二航戦というなら空からの攻撃が主となるだろう。君は秋月と共に艦隊を守る楯となってほしい・・・出来るな?」

 

「あはは、『楯』ですか。また意地の悪い質問を投げかけますね?」

 

「・・・?長門さん、今の意味ってどういうことなのです?」

 

「さ、さあ・・・流石にそこまでは」

 

 

わたしと司令官さんの言葉の意味が分からなかったのか、二人とも頭の上に?が浮かんでますね・・・

 

 

「ふふっ、わたしたち護衛艦のイージスシステムは、高性能な武器システムのことを指します。けれど」

 

「『イージス』は、とある神話から取られた言葉でな?とある神から、その娘に送られた邪悪を阻む楯・・・それが、イージス」

 

 

何人の邪悪を通さず、全ての災厄を跳ね返す、万民を守る最強無敵の『楯』となれと名を付けられたのです。

 

 

「だから、「楯となれ」なんて言われて、出来ないなんて言えないでしょう?」

 

 

 

そうだ。イージス艦にとって護衛は主要任務。そうでなくても、わたしは海上自衛隊の想いを受け継いだ、あの人達の想いを引き継いだ護衛艦です!出来ないなんて言わない、言わせません!

 

 

「おまかせあれ!護衛艦みらい、この任務必ずや成功させましょう!」

 

「ふ、心強いな」

 

「ああ、君がいれば空は大丈夫だろう」

 

「わたしだけでなく、秋月ちゃんもいますしね。加賀さんだっておかしいくらい強くなってます・・・歴史の波に引かれるっていうなら、ぶっ飛ばしてあげますよ!」

 

「その意気なのです!」

 

 

ふつふつと闘志を滾らせます。

 

誰も沈ませないと心に誓いましょう。

 

・・・元々歴史を変えるのはわたしの専売特許ですからね!

 

 

 

 




はい。と言うわけで戦闘パートに入るといったな?

あれは嘘・・・ごめんなさい石投げないでっ!?


コホン。今回は作戦説明です、次回で出撃になります。

やっぱり戦闘ってココロオドル・・・間違えた、心躍ります。
ようやくミサイルさんが使えそうでウズウズしてます。


あと、メロンちゃんに例のセリフを言って貰いました。この鎮守府で誰が似合うかなーと思ったらすげーしっくり来たので。

今後も解説役米倉の代わりとかしてもらうつもりです、ごめんねメロンちゃん。

あと単装砲を解析出来るかは知りません←
てか何も考えないで書いてたらメロンちゃんがやらかしました。

ただ、ヒントを与えれば「カ◯コン製ヘリ並の精度」です、結末は分かりますね(


あ、海域/歴史に引かれる〜はフレーバーです。
こっちの方が重さが変わるかなと。また適当設定です、深くは突っ込まないで(震え声


ただ艦これの海域は実際の海域なわけですし、こういうのもあり得るかなぁと。

一応MI作戦の焼き増し的な立ち位置になるかと思います。
アレは海域を取るために攻めに行き、こっちは守る為の出撃ですが。

まーた変な事やり始めたなと生暖かく見てくださいな。



PS、誤字報告のお時間です←

はい。今回バカみたいに多かったです。全部書いてると長くなるんで個数だけ。
なんと、7個。いつもはもう少し確認する時間があるのですが、リアルが忙しくてですね(言い訳

はい、なんかホントごめんなさい。もっとミスを減らしていかないとなぁ・・・

千枚通しさん報告ありがとうございました。


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12話:あ号群撃滅作戦、その1

新たなる作戦が発令されました!

作戦名は【あ号群撃滅作戦】戦闘海域は北太平洋MI海域となります。

すでに赤城、蒼龍、飛龍は先遣艦隊と共に先行しています。

みなさんは当鎮守府在籍、正規空母「加賀」を、護衛。先遣艦隊と合流しあ号群を撃滅してください!

今回の戦闘は非常に厳しいものと推測されます。しかし、みなさんの実力を全て発揮すれば決して遅れることなどあり得ないと断言します。

全員の無事の帰還を祈っています。

さあ・・・暁の水平線に勝利を刻め!

難易度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



※一回こういうの作ってみたかった。と言うわけで本編です



翌朝。0630を以ってみらいを含めた6隻はMI海域で合流し空母船団の護衛任務に就くために、一糸乱れず抜錨した。

 

朝も早いと言うのに残っていた全艦娘。そして全妖精と司令官が見送りをしてくれた事に。

思わずみらいは笑顔となってしまう。

 

 

「どうしたみらい?」

 

「いいえ・・・ただ、見送りがあるのは嬉しいなって、思ったんです。わたし、過去に跳んでからそう言うの無かったから」

 

 

みらいはまだ自分の事をあまり話さないために、長門はその話に首をひねった。

 

・・・みらいが日本海軍と共に行動したのはほんの一時期、それ以外は単独行動だったのだ。

 

実はこうして艦隊を組んで行動出来る事を嬉しいと思っている事は、誰も知らない。

 

 

「夕張さん、単装砲の調子はどうです?」

 

「好調好調絶好調!出る寸前まで微調整してたしね、大丈夫!」

 

 

秋月の問いに答えた夕張の目には隈が出来ていた。秋月は気づいていないが、一緒にいた木曽は溜息をついている。

 

 

「夕張、それはいいが大丈夫か?今までの武装とだいぶ勝手が違うだろうに」

 

「ぐぬっ・・・き、木曽、痛いところを・・・まあ、使いこなせるとは言えないよ」

 

元々の夕張の武装は14cm単装砲。事実上の武装試験艦だったから使えないわけではないし、それ以前に自分のものより経口が小さな装備だ。実戦で使うのが初めてではあるが大丈夫だろう。

 

 

ただ。単装砲としてはただ速射出来るシロモノで重量が増えた為に砲塔の回転に時間がかかるなど問題点はある。

 

そうでなくても夕張にはみらいのようなイージスシステムはない。だから夕張は使いこなせるとは言えなかった。そこに助け舟を出したのはみらいだ。

 

「確かに使いこなせるかは別だけど、それでも分間で数十発撃てるのは伊達じゃないよ、木曽」

 

 

戦艦級はともかく、今回は空の敵が多いとみらいは知っている。

対空機銃と違い、単装砲ならば例え当てられなくても爆風に巻き込める分、弾幕を張れるだけでも敵には大きなプレッシャーとなるだろう。

 

 

「だから夕張、わたしと秋月ちゃんに任せないで頑張ってね?」

 

「う・・・も、もちろんですよ!」

 

「は、頼もしいな・・・そっちは任せるから対潜は任せろ」

 

 

そう言って木曽は新調された魚雷発射管を優しく撫でた。

改二になったのはつい昨日。まだまだ馴染んでいないものの木曽もまた闘志を滾らせる。

 

 

「頼りにしてるよ、木曽。まあわたしも対潜は出来るから危なくなったら直ぐに言ってね?」

 

「へえ、みらいも対潜出来たんだな?それじゃもしも出てきたらオレと勝負するか?」

 

(木曽、みらいさんの魚雷はお利口さんレベルじゃないよ)

 

 

夕張が心の中でポツリと呟いた時、何故かみらいの艤装から一人の妖精さんが出てきて一言。

 

 

「ソンナニ ボクタチノ チカラガ ミタイノカ・・・」

 

 

どうやら出番を間違えたようだ。直ぐに他の妖精さんにたんこぶを付けられてご退場。

みらいは溜息を吐いて、それが面白かったからか夕張と木曽は少しだけ笑い声を上げる。

 

 

と・・・

 

 

「おい、お前たち。まだ海域についていないとはいえ作戦行動中だ。私語は慎めよ?」

 

「「「了解・・・」」」

 

 

完全に旗艦モードとなった長門から注意の声が飛ぶ。

 

よく見れば加賀もジト目だ。流石に話しすぎたかなと自粛する。

 

 

そう。既に敵が近くにいても不思議ではない。注意するにこした事は無いだろう。

 

 

(・・・まあ、わたしのレーダーから逃れられるとは思わないけど)

 

 

過信するつもりはさらさらないが。同時に自分の索敵能力は伊達では無いと自信がある。

 

海上より上ならば、みらいは450キロ離れていたとしても見つける事が出来る。

相手が電子端末を欺瞞する装備でも持っていないのならば、まずみらいの『目』からは逃げられない。

 

 

 

 

会話の無くなった艦隊。ふとみらいは秋月の様子が気になってちらりと見やる。

 

 

「秋月ちゃん、大丈夫?」

 

「っ・・・み、みらいさん。はい、大丈夫です」

 

 

・・・緊張しているのが目に見えた。聞けば秋月は艦娘になってからこんな大規模作戦に参加するのは初めてになるそうだ。まだ幼い見た目の通り、精神的にはまだ子供に近い。怯えているのだと感じたみらいは安心させる為に笑顔を浮かべた。

 

 

「大丈夫だよ、秋月ちゃん。貴女の仲間はとても強いんだから」

 

「分かってる、つもりなんですけど・・・でも!この中の誰かが・・・もしかしたらって考えたら・・・怖くて・・・」

 

 

「・・・そうさせない為にわたし達がいるんだ。未来は、何時だって変える事が出来る筈だから・・・」

 

 

それは、みらいの経験から来ていた。

みらいは、確かに未来を変えたフネなのだから。

 

 

 

「そう、ですね・・・うん、頑張りますっ!」

 

 

どうやら秋月もまた覚悟を決めたようで。先程までの不安そうな雰囲気が消えていた。

 

 

「・・・どうやら秋月もどうにかなったようですね、長門」

 

「お前から話しかけてくるとは、珍しいな加賀・・・ああ。大規模作戦で緊張していたようだったから、良かった」

 

 

その様子をうかがっていた長門と加賀もまた少しだけ会話を交わしていた。

 

二人とも歴戦の艦娘、艦隊の雰囲気を察するのはすぐだったろう。どうにかして励ませないかと思っていたが。二人では逆に秋月が萎縮してしまいかねなかった。

 

だからこそ手が出せなかったのだが・・・どうやらみらいが上手くやったらしい。

 

 

「本当に情けなくなる。仲間一人から不安を取り除けないで何が旗艦かとな・・・」

 

「えてして旗艦とはそういうものよ。貴女に求められているのは沈まず決して折れずに私達の柱となる事なのだから」

 

「・・・ふふ、ありがとうよ加賀。しかしお前にしてはやけに饒舌だな?」

 

「あら、私がそんなに話すのが不思議?・・・まあ、私も奥底では滾っているのだと思うわ・・・それに。今度は沈まない、沈ませないと誓ったから」

 

「っ!お前・・・」

 

 

長門は気がついた。加賀には教えていなかったが彼女が『引かれている』事に気がついていると。

それでもなお、闘志をにじませている事を。

 

 

「大丈夫よ、長門。今の私はみらい以外に負けるつもりは無いわ・・・勿論、赤城さんにもね?」

 

「・・・ははは!お前がそんな冗談を言うんだ、緊張は無いらしい。そこまで言うんだーーー沈んだら許さんからな」

 

長門も加賀も、小さな笑みを浮かべるだけ・・・だが、それだけで二人にはよかった。

 

こうして横須賀鎮守府の艦隊は特に緊張も、慢心も無くMI海域へと直行する。

 

・・・不気味な程に敵の反応が無い。が既に赤城の連絡機が到着し、彼女達が先に到着していると報告があった。

 

「・・・よし、最後に確認するぞ。最初は単縦陣で先遣艦隊と合流。そのあとは輪形陣に変更して空母を死守する」

 

 

出撃前に司令官から下された命令から長門が作戦を考えて伝えていく。

と言っても今回の目的は『引かれた』艦娘の死守が大前提。

 

輪形陣を基本とし、対空迎撃能力の高い秋月とみらいを主力に固めていく・・・

 

 

 

 

ーーーその時だった。

 

 

 

「・・・っ!?嘘っ、すみません長門さん!ちょっと艦載機飛ばします!」

 

「どうしたみらい?」

 

「いきなり現れた・・・?反応は無かったのにっ・・・こっちにまっすぐ向かってる?シーパンサー、飛んで!」

 

慌ただしく動き始めたみらいに、長門は小さく舌打ちした。

どうやら敵も仕掛けてきたらしい。みらいが気がつけなかったのは、いつも通りに深海から現れたせいだろうと冷静になる。

 

むしろいつもなら発見する迄に少し時間がかかっていた。

流石未来の艦艇・・・と思わず頷いているなか。みらいが左腕を水平に上げる。並行となった左肩に装備された航空甲板には一機のヘリコプターが現れる。

 

SH–60J、みらいが加賀達には見せなかった方の機体だ。

 

この機体の主な役割は対潜哨戒、捜索救難・・・そして護衛艦の『目』となる事。

 

護衛艦とのデータリンクによりまさしく空飛ぶレーダーサイトとなり。

その強力な索敵能力故に付けられた二つ名はみらいが言った『シーパンサー(大空を駆る豹)』。

 

すぐ様水平にとびたったヘリは直ぐに詳細な情報を示し出す。

 

 

「やっぱり・・・敵艦隊発見、数は4!距離17マイル、近い!速度は20ノット・・・え、空にてんてん?・・・なるほど、もう艦載機が出てるのか。数は・・・大隊規模、多いなぁ・・・」

 

 

「空母を抱えた艦隊!?なぜこんなところで・・・!」

 

 

あと少しで先遣艦隊と合流するという矢先。まるで図ったような・・・いや、謀られたのだろうと長門は悔しそうに顔をゆがめた。

 

 

「足止め・・・まさか、すでに先遣艦隊は接敵しているのか!?」

 

 

長門が思い描いた最悪の状況。それは先遣艦隊が既に敵の攻撃を受けているかも知れないという事。

よくよく考えればここまで敵が居なかったのももしかしたらこの為だったのかもしれない。

 

そして。もしも長門が感じた通りに足止めだとしたら。

 

 

「長門さんヤバイです!多分先遣艦隊が押されてます!・・・なんで反応無かったかなもう!」

 

「やはり・・・」

 

 

状況は最悪と言えた。みらいのレーダーのおかげで、当たって欲しくない予測は現実に起きていると知ってしまった。

ここでこちらに向かう艦隊を倒せば思う壺、足止めされて先遣艦隊は大打撃を受けるだろう。

そして逆に直行すれば挟み撃ち・・・取れる方法は、限られてくる。

 

 

 

が・・・

 

 

 

(その役割を私に命じろと言うのか・・・!)

 

 

ーーー囮。よぎった言葉はそれだった。誰か一隻、または二隻で後ろからくる艦隊を止めてもらって、先に先遣艦隊を救出し。戻って合流して、倒す。

 

振り切れない以上仕方のない方法かもしれない。だが、それは理想論だ。

 

最悪、誰か沈められる可能性すらある。

 

 

(ダメだ・・・そんな取捨選択、認められるか!なにか、なにか手は・・・)

 

 

最良の方法を模索する。しかしそんな手は無くて。これしか無いと弱気になってくる事を自覚してしまう。

いっそ自分が残れば、そうは思うが・・・旗艦が抜けては指揮系統に乱れが出てしまう。

 

結局、囮とするのならばだれを贄とするかを決めなければならず。

 

 

(私はどうしたら・・・提督・・・)

 

 

この場にはいない、最も信頼できる人にすがりたくもなった。

が、この場には勿論居ないし連絡は取れない。全ての判断は長門に任されているのだからーーー

 

 

 

 

 

 

「長門さん、先に行ってください」

 

 

 

 

 

 

その声が長門の思考を切り裂いた。

 

声をあげたのは・・・みらいだ。

 

その言葉の意味する事は、彼女が引き受けるという事に他ならない。

 

「わかっていってるのか!?自分で言ったろう、相手は4隻、しかも航空母艦つきで既に艦載機が出ている!それだけじゃない、お前は防空の要だ。そう簡単に切り捨てれなど・・・」

 

「でも現状それしかないでしょう?それに、これは敵を見つけられなかったわたしのミスです。対空は秋月ちゃんと夕張に任せる事になるけど・・・やらせてください」

 

 

 

 

 

 

(みらいさんなら、出来るかも・・・)

 

 

長門とみらいの会話を聞いていた夕張は、ポツリと心の中でつぶやく。

 

夕張はフネの時代の名残からか新しい装備に目がない。

それが護衛艦の、イージス艦の武装だというなら尚のこと。たとえ自分で使えなくともと解析して速射出来るようにした時は興奮したものだ。

 

そしてそれ以外にもなにか活かせないかとみらいの情報を少しづつ集め、イージス艦とは何かを知るために古い資料まで引っ張り出して何度も読んだ。

 

単純に演習を繰り返し知っている加賀を除けばスペック的な意味ではみらいを、イージス艦を一番知っていると豪語出来る。

 

だからこそ、思う。今まで加賀との演習で大立ち回りをして。危ないところこそあれども未だ被弾らしい被弾のないみらいを見れば。

 

 

(VLSを使うつもり?・・・確かイージスシステムで狙える最大数が128だから・・・本気でやったら、影すら残らないかも・・・)

 

 

今まで使わないと言っていたミサイル兵装。実戦だからその封印を解くと考えれば・・・飛距離、速度、誘導性能・・・全てを加味すれば深海棲艦では避けることは叶わないだろう。

 

だが、勿論長門はその事を知らない。いや、知っていたとして自分の目で見るまでは信じられないだろう。

夕張自身も実は誇張表現があるのでは?と思うほどなのだから。

 

長門に、言うべきか否か。それを考えて、見やる・・・

 

 

(っ・・・悩んでいるの?あの長門さんが・・・!)

 

 

悩んでいる事を容易に感じれる程に長門が動揺していると感じた。

 

 

(今まで幾多の戦いを勝利に導いて来たあの長門さんが・・・)

 

 

思わず喉がなる。それ程までに状況は予断を許さないのだろう。

ある意味合いでは長門にとっての助け舟。しかし結果は死地にむかえというに等しい。

 

 

『出来るかもしれない』という可能性だけでは決して測れない。長門が悩むのも無理はなかった。

 

 

そんな長門を見て埒があかないとみらいは加賀に向き直る。

 

 

「加賀さん、敵の艦載機とかってデータでしか知らないんですけど、加賀さんの部隊より強い奴らっています?」

 

「舐めないでみらい。私の子達はあんな奴等、足元にも及ばせない」

 

 

 

その言葉にみらいはうん、と一つ頷いて。

 

 

 

 

 

 

「なら、大丈夫そうかな」

 

 

 

 

 

 

おそらく、加賀を除いた全員が唖然としただろう。

 

緊張感はなく過信の雰囲気もなく。ただ事実を呟いたといったみらいに反対していた長門ですら面食らう。

 

 

「お前・・・自分で何言ってるか理解してるか?」

 

 

頭を抱えた木曽か思わずつぶやく。

それに対してみらいはただ一言だけ放った。

 

 

「わたし、フネの頃に一隻だけで40機の戦闘機と空母一隻相手取って、勝ったことあるよ?」

 

 

単装砲壊されちゃったけどね、とただ淡々と喋るみらいに、誰かが息をのむ音が聞こえた気がした。

 

 

みらいは語らなかったが、その内の実に半分が。『1分程度』で撃墜したと聞いてしまえば。

単装砲を壊されたのがいわば護衛艦としての宿命で、平穏な時代から来た故の油断で・・・もしも、それが無ければ。完封勝利を手に入れていたと聞いてしまえば多分秋月らへんは気絶出来るだろう。

 

そのあまりにも次元の違う話に頭が追いつかないから。

 

 

「・・・はぁ。止めても無駄か。一応聞いておくーーーやれるか?」

 

 

とうとう長門が折れた。これ以上は時間が無駄になるだけだ。

それに、ここまで自信満々に言うのだ。任せてみてもいいだろう。

 

 

「おまかせあれ!加賀さんではありませんが・・・鎧袖一触に終わらせます」

 

「そこまで言うのね。だったら小破にでもなったら罰ゲームでも受けて貰おうかしら?」

 

「うわ、加賀さんが冗談言うの初めて見た」

 

加賀からの冗談に思わずここまで無言だった夕張がポツリとこぼし、加賀からのジト目にすぐ言い訳を伝える。少しだけ雰囲気が緩んだのは気のせいでは無いだろう。

 

 

「とはいえ多勢に無勢だ、みらいが無茶しても駄目だしな・・・木曽、行けるか?」

 

「ハッ、余裕だぜ長門さん。ちょっとばかしこの装備のお披露目には派手な舞台だか・・・まあ、危なくなったらみらいと逃げる位は出来るさ」

 

「二人とも酷いなぁ・・・大丈夫だよ」

 

 

そう言ってみらいは反転し、木曽も続いて敵を迎え撃つ姿勢を整える。

 

 

 

「・・・敵が人間じゃないのなら。亡霊だというのならーーーー全身全霊、全力全開でぶっ飛ばせるから」

 

「・・・雷がみらいが激情家って言った理由、初めて分かったぜ・・・」

 

 

既に長門達は先に進んだ。もう、後戻りは出来ない。

 

みらいと、木曽。2隻と敵艦4隻の攻防が始まる。




あとがき:


ぎゃあ〜!戦闘まで持ってけなかった!?

ここでやってしまいたかったのに・・・楽しみにされてた方々、すみません。

また三人称でやりましたけど、また読み辛いかな?
力足りず申し訳ない。

流石に3月近くだと忙しくて内容を纏める時間が無い・・・


じ、次回こそ!戦闘回になります。やぁっとだよ長かった・・・


PS、いつも通りのミスです。木曽の『」』が一つ足りませんでした。

・・・これできちんと確認した気になってるんだぜ←

佐武さん、報告ありがとうございました。


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13話:あ号群撃滅作戦、その2

遅くなりました、戦闘回です。

お仕事が忙しくて色々とヤバイ時期ですが、なんとか上げる事が出来ました。

これからも2〜4日更新目指したいですねー


 

「見ツケタ・・・」

 

 

そう呟いた色白な少女。人間ならざる肌、人間ならざる雰囲気。杖を持ち頭には深海生物を思わせる帽子のようなものをつけている。

・・・ヲ級と総称される深海棲艦側の空母だ。

 

その金色の瞳には目の前の海は映っておらず、自身から発艦した攻撃機から見える風景が広がっていた。

 

 

そこにいたのは、足止めを任された艦隊の内の2隻。

 

どちらも巡洋艦クラスの大きさ・・・一人は見たこともないような艤装だ。

 

 

「ドンナ装備ヲ持ッテイルカ、ワカラナイ・・・」

 

 

しかしやることは変わらない。既に本隊は相手の先遣艦隊とぶつかり、そろそろ決着がつくかもしれない。

 

2隻だけの囮にしか見えないような部隊。最悪部下に任せて自分は突っ切ってしまってもいいかもしれない。

 

・・・だが、その考えはすぐに消した。

 

 

「ドチラニシテモ水底ニ・・・沈メルダケ・・・」

 

 

すっと杖を前に出す。実際に飛んでいる攻撃機には見えない。が、これが彼女の合図だった。

 

自分達の前方に広がった攻撃機群。統率された動きで雷撃の為に降下していく・・・

 

 

「巡洋艦クラス2隻ニ40機ノ爆撃隊・・・スグニ海ノ底ニ沈メテアゲル」

 

 

 

 

 

 

 

 

それが、どんな悪手かもわからずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

それと同時に木曽の方でも既に攻撃機群を捕らえていた。

その数の多さに流石に舌打ちをする。

 

 

「・・・ち、ホントに大隊規模かよ・・・どうすんだよ、みらい・・・みらい?」

 

 

いっそ逃げるか?と声をかけようとして、やめた。

 

 

「敵攻撃機確認。80度、距離7マイル。敵機数40。主砲、短SAM砲撃用意・・・敵攻撃群、右翼を目標群α。左翼側を目標群βと命名。最短で迎撃する目標選択。選択完了。目標群α、5マイルまで接近、数18・・・続いて目標群β、170度6マイル・・・数22」

 

 

 

いつものみらいと違うその雰囲気に、思わず息がつまる。

 

いつものみらいは、にこやかで、優しくて・・・まるで太陽のようだとよく皆から言われていた。

が、今はどうだ。

 

目の前に浮かんだモニター。何かを指示しているのか口早に伝え、せわしなく目線が動いている。

その目つきはまるで険しい鷹のよう。すべての情報を逃さないとばかりに鋭い。

 

その表情は無表情。まるで戦場に感情はいらないと言わんばかりに、無機質だった。

 

 

 

「おい、みら「大丈夫だよ、木曽」い・・・?」

 

 

 

ようやくすべての事を終えたのか。いつもの雰囲気に戻ったみらいが、ちらりと木曽を見た。

 

 

そこに浮かんでいたのは・・・笑み。

 

 

 

そこには、絶対の自信が浮かんでいた。

 

そして木曽はこのとき気が付けなかったが・・・みらいは感謝していた。

 

 

昔。フネだったころ。似たような戦況になったことがあった。あの時は空母のみで、こちらも自分だけだったが。

 

 

皆に話した40機と1隻の空母。淡々と話していたその心の奥底で、みらいの心は煮えたぎっていた。

 

自衛官として、最善の選択だった。そのはずだった。けれども忘れていたのは、彼らの覚悟。

 

自分がまだ壊れるだけなら、どれだけ良かったか。5名の死者と12名の負傷者。それが代償だった。

 

 

もしも相手が。また人間か、はたまた艦娘だったのなら。また手加減をしていただろう。それは護衛艦としての避けられない宿命だ。

 

 

 

———だが。このとき。この場において。相手は亡霊で、罪もない人を襲う不埒物で・・・そして。自分のリベンジマッチといってもいいような状況で・・・みらいは『容赦』の言葉を切り捨てる理由を得た。

 

護衛艦としてではなく。仲間を、艦娘を。人類を『守る』という大義名分を得た。

 

心の中では分かっている。それはいけない事だと。たとえどんな大義があっても・・・力は振るってはならないのだと。

けれど・・・

 

 

「今、この場所、この瞬間だけは」

 

 

護衛艦としての誇りを切り捨てよう。守るだけではダメだと・・・あの時、あの瞬間で学んだのだから。

 

戦わなければいけない時もあると学んだのだから。

 

既に敵はこちらの攻撃範囲内———そう。

 

 

 

「———わたしの、独壇場なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヲ級は不思議な艤装を身につけた艦娘が動いたことを見抜いた。

その手にあった単装砲が動きを見せたのだ。

 

しかし、ヲ級はそれに対してフンと一つ鼻を鳴らした。

 

 

 

「タッタ1門ノ砲デ、何ガデキル」

 

 

 

ヲ級は知らない。

 

その、『たった一門の砲』が。

 

 

 

「右対空戦闘・・・トラックナンバー2628、主砲・・・!撃ちぃー方はじめぇー!」

 

 

 

過去では考えることもできやしない、『未来』の速射単装砲だという事を。

 

 

 

ズドン、という響く音。

 

撃ち放たれた砲撃は、まるで吸い込まれるように攻撃機へと直撃。海の藻屑へと変える。

 

それは、1度ではない。2度、3度、4度!響くたびに同じように直撃。例え直撃でなくてもその寸前で爆発、その爆風に巻き込まれて攻撃機は撃破される。

 

 

「トラックナンバー2628から2631まで撃墜。新たな目標、210度」

 

 

みらいの持つ単装砲の砲身が動き、銃座もまた回転する。

みらいの号令を受けた単装砲は本当に機械なのかと思いたくなるような速さでほぼ逆側へと向き直る。

 

 

 

ズドン、と響く音。

 

マグレではない。コンピュータによる精密な射撃。イージスシステムを最大限に発揮させるからこその芸当。

 

 

横一列に並んだ攻撃機。まるで射的の的のように、撃ち落とされていく。

 

 

 

 

「雷撃隊ガ・・・!?ク・・・!」

 

 

 

驚くしかないだろう。

 

誰が思うだろうか。たった一門の砲だ。たった一門だけのはずなのだ。

 

 

誰が思うだろうか。その、たった一門の砲が。次々とこちらを撃破していくなどと。

 

 

———信じられるわけがない。信じてたまるか。

 

 

マグレに違いない、そう思い込むことで平静を保とうと、さらに待機させていた攻撃機を向かわせる。

 

 

 

 

 

 

 

一方のみらいは、平然としていた。あたりまえだ。これは彼女にとって全てが計算通りなのだから。

 

 

「・・・トラックナンバー2642、接近・・・まったく多いったらありゃあしない。なら———」

 

 

ここまで使わなかった、みらいの奥の手。使わず終わるのは悪手だろう。

 

『切り札』とは、切ることができてこその切り札なのだから。

 

 

 

「後部VLS、シ—スパロー発射はじめ・・・SALVO!」

 

 

 

みらいの左肩。コンテナ状のVLSから上がる噴射煙・・・

 

後にそれを見た木曽は語った。「まるであれは・・・意思を持ってるみたいだった。そう、まるで・・・海を翔けるツバメのような・・・」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!」

 

 

今度こそ、ヲ級は言葉を失った。

 

なんだ今のは。なんなんだこの相手は。

 

何がただの巡洋艦クラスだ。何がたった一門の砲だ。

 

相手はもっとバケモノだ。それこそ『姫』と言われても信じるだろう。何かを隠しているだろうと思った。だが、あんなものだと誰が思うか。

 

 

まるで、自らの意思を持ってこちらを害そうと狙う肉食獣のような機動。爆発し、一撃で攻撃機を粉砕した、白い魔弾。

 

 

「何ダ・・・何ガ起キテイル・・・?!」

 

 

いまだヲ級は、混乱を極めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況を、木曽は最初から今まで、瞬きすらせずに見ていた。

 

そうして、理解した。

 

 

「・・・死だ。死が起きている」

 

 

 

放つたびにソレは命中する。放つたびにソレは敵を撃ち落とす。

 

まるで、ソレは死神の鎌。決して逃れ得ぬ死への片道切符。

 

 

「はは・・・本当にオレ、いらねぇじゃねぇか」

 

 

あの時、みらいが皆に言い放った一言。

 

事実だった。ここまで圧倒的な戦闘、もはや戦闘とは言えない。

 

独り相撲、子供と大人の喧嘩、象とアリの戦い・・・幾多の言葉が浮かんで消えていく。

 

そうして、理解した。

 

 

 

「・・・これが、21世紀の戦闘・・・!」

 

 

 

気がつけば、空を覆っていた敵の攻撃機は大部分が海の藻屑と変わり果てていた・・・

 

 

 

「敵機32機撃破確認・・・8割迎撃完了。これ以上は弾頭がもったいないし、近づいてきたら単装砲で撃ちおとそ、うん」

 

 

 

いつもと、何も変わらない。そんなみらいに思わず苦笑いになる。

 

・・・彼女にとって、ここまでは予定調和というわけだ。

 

 

 

「で、どうすんだみらい。攻撃機はどうにかなりそうだがまだ敵艦が残ってるぞ」

 

 

 

確かに足の速い敵機はほとんど残っておらず、たとえこちらを無視してあちらに行っても、まず対処できるだろう。

 

そして戦場に長い事いたため木曽は見抜いていた。この攻撃機を発艦した敵は、動揺していると。

故に、ここで出来れば空母を沈めてしまいたい・・・が。

 

その為にはそれを守っている3隻のフネを突破しなければならない。

 

この規模の攻撃隊だ。おそらく軽空母ヌ級ではなく、空母ヲ級のクラスだろう。

そうなればその直援が弱いわけはないだろう。イ級がいたとしても、1隻は重巡クラスがいてもおかしくはない。

 

巡洋艦クラス2隻で相手をするには荷が重い・・・そう、普通なら。

 

 

「勿論ぶっ飛ばすよ、木曽・・・もしかしてもうおなかいっぱい?」

 

「・・・まさか!お前が全部かっさらっていったせいでこちとら飢えてんだよ・・・!」

 

 

ここまで負けることを想像できない戦いが、今まであっただろうかと木曽は笑みを深める。

 

 

「行こうぜみらい。オレがいらうかわかんねぇけどついてくぞ」

 

「あはは、もうミサイルは極力使いたくないから今度は木曽にも出番はあるよ?」

 

「け、言ってろ・・・お前の力は見せて貰った・・・次は俺の番だな」

 

 

 

 

彼女達は敵をめがけて更に速度を上げる。手早く片付けて長門達へと合流するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのころ。先遣艦隊へと急ぐ長門達。

 

秋月は置いてきたことにやはり不安を覚えたのか、しきりに後ろを向いている。

 

 

 

「・・・秋月、気持ちは分かるが今は集中しろ」

 

 

 

それに気がついた長門が窘める。が、どうしても秋月は不安をぬぐい去れないようだ。

 

 

 

「だって・・・だって2隻で4隻と、しかも攻撃機付きですよ!いくらみらいさんだって・・・」

 

 

 

・・・そのことは、長門も感じていた。例え60年後の艦船だったとして。はたして耐えきることができるのかどうか。

 

 

 

 

「大丈夫よ、秋月、長門」

 

 

 

そこで会話に入ったのは。以外にも加賀だった。

 

 

 

「な、何をもってそんな断言ができるんですか!心配じゃないんですか!?」

 

「ええ・・・あの子は絶対の自信を持って私達に告げた。勝つ自信があったということでしょう」

 

「そ、そうだよ秋月ちゃん!みらいさんには、最強のミサイル兵装があるんだし!」

 

 

ここぞとばかりに夕張がみらいの装備が優れていることをアピールしようとする、が・・・

 

 

「最強って・・・どの程度で最強なんですか?」

 

 

「へ?いや、あの・・・最強って言うのはね・・・えーと」

 

 

秋月からの思わぬ反撃で言葉が詰まってしまう。

 

夕張が答えられないからか、秋月がまた不安になったのか、眼尻には涙まで浮かんできている。

 

 

 

 

「———サジタリウス」

 

「・・・え?」

 

 

 

ぽつりとつぶやいたのは、やはり加賀。

 

 

 

「前にみらいに聞いたらそう言われたわ。空を飛翔し、追いかけ、そして撃破する・・・射手座の意味を冠する矢」

 

 

 

ふふ、と笑った笑顔は、どこまでも透き通っていて、みらいに対する信頼であふれていた。

 

 

 

「もしも。もしもみらいが言った通りの決して外れることのない、神の矢だというのなら———それこそ、あの子が言ったとおり・・・鎧袖一触よ」

 

 

 

最もみらいと演習を重ねたからこそ。自身を持って答えることができる。

 

そう。みらいが、自分の子達よりも劣る攻撃機に倒されてたまるか。

 

 

 

 

「・・・おしゃべりは終わりだ。見えたぞ!」

 

 

 

長門が指さす方向。空には黒煙が見え、砲撃の音すら聞こえる。

・・・もうみらいの方に戻る時間はない。覚悟を決めなければならない。

 

 

(だからさっさと倒して追いついてきなさい、みらい・・・でないと主菜がなくなってしまうわ)

 

 

だから、そっと。加賀はみらいに対して無事を祈る。

きっと大丈夫だと信じるからこそ。

 

 

「長門。先に攻撃機を飛ばします———全機発艦。一航戦の力を見せつけろ」

 

 

今は、自分の戦いに集中すると決めたのだった。

 

 

 

 

 

 




あとがき:

決して外れる事のない神の矢(厨二感

はい、ノリノリで戦闘シーン考えてたらこれでいいのか不安な私です。

見てて思ったかもですが、ぶっちゃければワスプ戦が元です。

イージス艦が遠慮なくやればまあ、こうなりますよね。

え?見つけた時点でミサイル先制攻撃で終わった?

み、みらいちゃんまだ深海棲艦見てないんでここで見ておきたかったって事でお願いします(震え声









おまけ:

とある昼下がり。
加賀との演習を終えたみらいは二人で昼食へと向かっていた。

「結局今日もしーすぱろーは使わなかったわね」

「仕方ないじゃないですかー。弾数には限りがありますし、司令官さんに聞いても妖精さんの解析が終わってないから作れないですし」


どこかむくれた加賀に苦笑いで答えるみらい。この会話は幾度もしている。
みらいにとっての切り札の一つ。対空の要、シースパロー。

それをまだ一度も使ってこないことで加賀はむくれているのだ。
勿論頭ではわかっている。

・・・いまだそれを使われなくても加賀はみらいに勝ててはいない。そんな彼女が言う切り札だ。使われたら自分なんてひとたまりもない。

だが、こうも思うのだ。


「・・・興味があるのよ。貴女が切り札という最強の一手に」


勝てるか勝てないかではなく。一体彼女の切り札とは、どの位置にあるのかという興味本意の言葉だった。

そう聞いて、みらいは少しだけ考えて。


「サジタリウス、かな?」

「さじ・・・?」

聞いたことのない言葉に思わず聞き返すと加賀の前を歩いていたみらいはくるりと向き直った。


「サジタリウス。加賀さんには射手座と言った方が伝わりますかね?その意味を冠した矢・・・とある作戦で違う弾頭使ったんですけど、そんな風に命名されまして」


そう言ってまた前を向き直る。
サジタリウス・・・射手座・・・なんというか、格好良く思えた。

「敵を逃さず空を駆けて撃破する、絶対に外れる事のない神の矢・・・なぁんて、ちょっと臭いセリフです、か、ね・・・?」

加賀が立ち止まった気配を感じてみらいはもう一度振り向いて・・・思わず言葉が消えた。





「・・・いいですね」←すっげーキラキラしてる



・・・なんというか、目を輝かせていた。


「いや、あの。加賀さん?わたしこれ結構恥ずかしいんで出来れば内緒に・・・」

「なんでですか?格好いいではないですか。しかし貴女が射手座、ですか・・・では私は弓の名手である那須与一を」

「あのなんかごめんなさい?!お願いだから忘れてぇっ!?」

※加賀さんは厨二ではありません。
ただこんな昼下がりもあると楽しいかなと。

例の如く妄想ダダ漏れでお送りしました。


PS、恒例のミス報告のお時間です。
みらいの左型→みらいの左肩が正解です。

佐武さん報告ありがとうございました。


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14話:あ号標的群撃滅作戦、その3

本当に申し訳ありません。
前回の更新から音沙汰無く5か月程度…何とか戻って来れました。

いや、4月からの生活環境の激変でですね(言い訳

はい、マジすんません。正直なところまだ日常も忙しい状態ですが、ちょこちょこ更新を再開していきたいと思っています。

それと前回からだいぶ経ちましたが、みらいちゃんの艤装に変更点というか追加点をば。

いやですね、ハープーン討つためのキャニスターをどこにするか書いてませんでした(汗

なので、肩には対空機銃とコンテナがありますので、その下・・・腰部に隠れる形である感じで訂正します。

相も変わらないガバガバ設定ですがどうかよろしくお願いします。


少しだけ時間を戻して、先遣艦隊。

 

赤城、蒼龍、飛龍をはじめとしてそうそうたる面々が集っていた。

 

 

 

「・・・うん、時間どおり。上々ね?」

 

 

先遣艦隊で、加賀と同じく一航戦をはる赤城が一つ頷いた。

 

既に作戦開始時間まで後少しで、さっき合流を急いでいる加賀達に向けての連絡機を飛ばしたところだ。

 

 

「蒼龍!久しぶり!」

 

「飛龍も元気そうで何よりだよ〜!」

 

 

目の前にははしゃぐ自分の後輩(?)の姿が見える。無理もないか、と苦笑いする。

何せ、こうして一航戦、二航戦が集うのは本当に久しぶり。大規模作戦でもなければ彼女たちは日本を防衛するために各地へと配分されているのだ。

 

 

(・・・まあ、加賀さんが来たら怒られそうだけどね)

 

 

あの生真面目を地で行く彼女であれば、多分今頃ジト目を飛ばしてくれるだろうと考えて。

赤城もまた相棒とも呼べる彼女の到着を待ちわびていることを感じていた。

 

 

 

「赤城さん、どうしたの?」

 

「ああ、陸奥さん。いいえ、ただ加賀さんが待ち遠しいなと思いまして」

 

「うふふ、その気持ちわかるわ。仕事といえ、私も久々に姉さんと会えるって聞いたら嬉しかったもの」

 

 

ふふ、と笑うのは長門型2番艦の陸奥。空母達を守る護衛艦隊として加わっているのだ。

 

 

「・・・でも、油断はダメよ?あなた達は」

 

「『引かれている』、でしょう?」

 

 

 

そう。加賀も気がついていたように、赤城もまた自分が『引かれている』事に気がついていた。

蒼龍や飛龍がどうであるかは知らないが・・・もしも知らないのならばあえて言わない方が高いポテンシャルを出せるだろうと考えていた。

 

・・・やはり艦娘にとって撃沈/轟沈はあまり思い出したくない出来事だ。出来るだけプレッシャーはない方がいい。

 

 

 

「わかっているならいいわ」

 

「はい、警戒は怠って・・・!?」

 

 

 

そう、警戒は怠っていなかった。だからこそその異変にいち早く気がついたのだ。

赤城の雰囲気が変わる。

 

 

 

「・・・陸奥さん、警戒体制を」

 

「まさか敵が?」

 

「はい・・・うちの子がもう・・・っ多い!蒼龍!飛龍!!第一次攻撃隊飛ばします!」

 

「え、はいっ!」

 

「嘘、こんな近いなんて・・・!」

 

 

 

 

慌ただしく動き始める状況。

 

読めなかったわけではない。が・・・

 

 

 

「何もこんな状況で来なくていいじゃない・・・!」

 

 

 

思わず陸奥が舌打ちをする。あたりまえだ。後少しで味方と合流するという矢先だ、愚痴も言いたくなる。

 

 

(違う・・・この状況だからだ・・・!)

 

 

しかし、赤城だけはそうは思わなかった。攻撃隊を飛ばしながら思う。

味方と合流する手前。どうしても気は緩んでしまう・・・先ほどの蒼龍や飛龍のように。

 

 

それだけではない。心のどこかでは慢心していた。

敵も『引かれて』くれるはず、と。だが実際はどうだ。

 

引かれてくれるどころか更に悪化した状況へと変わってしまった。

 

 

ふと思ってしまうのは。

 

 

(・・・加賀さんなら、こうはならなかったのかな)

 

 

全てはたられば。だが、もしもこの場に彼女がいたのならば・・・

 

 

「———いいえ、そんな話は後でもいい・・・」

 

 

 

反省会はこの危機を乗り越えてから。敵の数は多い。

 

既に最初に偵察に飛ばしていた妖精はおとされた・・・接敵は近い。

 

 

 

「一航戦赤城、参ります・・・!」

 

 

 

 

日本が誇る、機動部隊の二枚看板、一航戦。その名に恥を塗らないためにも。

 

今はこの戦いにすべてをかけることを誓う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間を戻してみらい側。木曽とみらいは艦載機を飛ばした空母を迎撃するために進撃を開始した。

 

上空を見やれば、未だ数機の艦載機は飛んでいるのが見える・・・が。

 

 

「・・・来ないですねぇ」

 

 

「当たり前だろ?近づいたら落とされる、誰だって近づきたくないさ」

 

「外れるときは外れるんだけどなぁ」

 

 

 

一向に艦載機は降りてこない。それもそうだろう。実に8割の戦力が瞬く間に迎撃されたのだ。しかも、それを行ったのはたったの一隻。たかだか数機が束になったところで、シ―スパローをはじめとした兵装を解禁したみらいにはものの数ではない。

 

もちろん、みらいの言うように外れる確率だってないわけではない。が、その確率は限りなく低い。それほどまでの命中精度こそがイージス艦のウリなのだ。

 

そしてそれを知ったからこそ、木曽も上に居る機体に目も向けずに前を見て。

 

 

 

「・・・さて、敵さんのお出ましだぜ」

 

 

 

思わず緩んだ雰囲気を戻す。

 

目の前には、魚のような黒い物体が二匹、色白な、黒い武装を持ち金色の瞳の少女のようなモノが一人。そして、帽子のようなものをかぶり、杖を持った病的なまでの色白で金色の瞳の少女が見えた。

 

 

 

「おーおー・・・イ級にフラグリ級にフラグヲ級・・・よりどりみどりだな」

 

「データで見ました・・・フラグシップクラスは防御も攻撃も段違いだと」

 

「ああ、そのとおり・・・ヲ級を先に落としたいがそのためには・・・」

 

 

 

木曽がヲ級に目線を合わせた瞬間、二匹のイ級とリ級が壁のように立ちはだかる。

 

 

「アレをどうにかしないとな?」

 

「たはー・・・ただでさえわたし火力薄いのに・・・一つ聞きますけど、現状でもヲ級って艦載機を飛ばせます?」

 

「ああ」

 

「・・・あれだけ落としたのに?」

 

「アイツら艦載機は海からでも出せるんだぜ?」

 

 

 

つまり、そう言うこと。彼らには艦載量という概念はない。彼らにとっては沈んだ艦載機はすべて扱える・・・その物量こそが一番の敵なのだ。

 

 

 

「勿論あれだけ落としたんだ。すぐには出せないだろうさ」

 

 

唯一運がいいのは、みらいが情け容赦なく相手の攻撃機をほぼせん滅出来たことだろう。

 

例え相手が物量を持っていようとも、流石に一度に出せる量は限られているらしい。

 

 

 

 

 

「・・・なら、使うつもりはなかったけど先にひとあて行きますか」

 

「さっきのシ—スパローってやつか?ぶちかましてやれよ」

 

「あれとはちょっと違いますね———こっちはれっきとした対艦ミサイルですから」

 

 

 

動きを見せたみらいの艤装。

 

 

普段は隠れている腰の部分にある筒状の装備・・・

 

 

 

「弾数少ないんで使いたくないんですけど・・・そうも言ってられないですよね!目標フラグリ級、及びフラグヲ級!ハープーン発射、SALVO!」

 

 

 

 

身体を横向きとして露呈した筒状の武装。

まるで弓を構えるようなその姿勢のままに、2発の魔弾は放たれた。

 

 

 

弓なりに飛んだあと一段階目を切り離したその魔弾にヲ級を守る3隻の深海棲艦は動きを見せようとするが。

 

 

 

「悪いですけど———本家本元の『サジタリウス』は避けられないよっ!」

 

 

シ—スパローはあくまで対空兵装。

対艦ミサイルであるハープーンは一味違う・・・

 

 

砲弾のように、弓矢のように山なりに飛ぶのであれば迎撃も出来るだろう・・・が。

 

 

今飛んでいくハープーンはまさしく水平。海の上ギリギリを高速で飛来する姿は、その名の意味通りに狩人が放つ銛の如く。

 

 

しかも音速を超え迫る誘導兵器だ。第二次世界大戦しか知らない存在からして見たら、夢・・・しかも悪夢以外何物でもないだろう。

 

 

 

反応し切れないリ級と、それでもなお動こうとしたヲ級を容赦のない一撃が襲う。

 

 

 

「・・・よしっ!」

 

「よしじゃねぇよ。まーた俺の仕事とりやがって・・・何が火力薄いだよ」

 

「いやいや。狙ったとおりの場所に当てただけですよ」

 

 

 

 

 

フラグシップクラスのリ級は堅いと評判だ。それでも一撃で撃沈出来た理由。それはみらいの正確無比な目標選択によるものだ。

ピンポイントでの魚雷発射管を狙った事によって、弱点を射抜かれたリ級は撃沈したという事だ。

 

ヲ級も同じく弱点を狙ったはずなのだが・・・運がいいのか悪いのか。頭部の発着場となっている生物のようなものがヲ級を守った。

 

 

だがあれではもう発艦は出来ないだろうとは木曽の言葉。

理由は分からないが相手側も大破にまで持っていけば発艦は出来ないようだ。

 

 

 

みらいの放ったたった2撃は、覆すことが困難な最大の一手となったのだ。

 

 

 

 

 

「流石だな、みらい・・・やっぱ俺いらないんじゃないか?」

 

「まさか。ここで逃がしてもいい事はなさそうですし・・・全部ぶっ飛ばすよ、木曽!」

 

「了解!」

 

 

 

ヲ級は既に戦闘出来る状態ではない。であればと先に障害となりそうなイ級へと目標を定める・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グ・・・ア・・・」

 

 

 

たまったものではない。思わず叫びそうになるほどの激痛にヲ級は顔をしかめながらもどうやってこの状況を打破するかを考える。

自分を守るはずの盾を担うリ級はまさかの一撃落ち、自分もまた大破である。

 

なんとかして時間を稼いで今一度艦載機を・・・そう考えていた作戦も、たったの一撃ですべてが水の泡・・・

 

 

簡単な仕事のはずだった。どこで間違ったかなんてわからない。

 

 

こうなればすべてをかなぐり捨ててでも逃げきってやる・・・そうは思うが。

 

 

「オレの相手をしたいってバカはどいつだ?」

 

「木曽、援護します!」

 

 

あのバケモノと一緒にいた巡洋艦もまたかなりの猛者・・・イ級では歯が立たない。

今はなんとか逃げ回らせる事で時間を稼いでいるがそれが何時まで持つかわからない。

 

いや、あのバケモノがいるのだ。すぐにでも倒されてしまうかも知れない・・・

 

では、どうすれば逃げる事が出来るか。あの魔弾を撃たせずに、この状況から脱する方法———

 

 

ヲ級は空を見上げ・・・一人、ニヤリと歪に嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦況に動きがある事に、わたし・・・みらいはすぐに気がつきました。

当たり前です。私のレーダーはそう簡単に欺けれはしないから。

 

けど・・・それは決していい事じゃ無かった。

 

 

「特攻!?」

 

 

空に待機していた攻撃機が動きを見せて・・・でも、その動きは先程までとは全く違っていました。

 

最初はこちらに対するように。半数以上をやられてからは上から怯えるように。

 

―――けれども。その動きはどちらでも無かったんです。

 

 

こちらの戦力なんてとうに知っている筈なのに、蛮勇・・・いいえ。

文字通り『命を捨てて』かかってきたんです。

 

 

 

「・・・!た、単装砲!迎撃急いで!!CIWSもAAWオート!」

 

 

この距離ではミサイルはもう間に合いません。故に単装砲とCIWSで迎撃を開始する。

 

わたしの中に芽生える、あの時の記憶・・・。

 

それは、大事な乗員達が死に、怪我を負った、あの戦闘。

 

前に加賀さんと演習をした時に爆撃された時にも・・・ううん。それ以上に思い出した、あの出来事がまるで私を狙うかのように。

 

 

 

「あ・・・」

 

弾幕を、抜けられた。単装砲は仰角を取れずにCIWSは間に合わない。

 

 

———歴史に『引かれる』

 

わたしの頭によぎったその言葉とともに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・攻撃機は爆散した。

 

 

 

「・・・へっ?」

 

「おいおい、みらい。オレを忘れてもらっちゃ困るな?」

 

「え、あ・・・木曽?」

 

 

おう、と言う木曽の軽い声に思わず気が抜けました。

どうやらすんでのところで木曽が撃ち落としてくれたようです。

・・・今まで仲間がいる事さえ忘れるなんて、かなりテンパってたみたい。恥ずかしいなぁ。

 

 

「って駆逐艦級は?」

 

「はっ、あんな奴らに遅れをとるかってんだ」

 

 

そう言い放ち指差す場所には、イ級の残骸が残っているだけだった。

 

 

「それよりヲ級は?」

 

「へ?・・・あ、逃げられた!」

 

 

木曽に言われるまでは完全に頭から消えていた。けれども居ないヲ級に慌ててレーダーで探し出す。

 

どうやら今の瞬間に海に潜ったらしい。

 

 

「むむむ・・・!味方を置いて逃げるなんて卑怯です!」

 

 

こうなったらアスロックを発射してでもせん滅を・・・!

 

 

 

 

そう、考えたときでした。

 

 

 

「ダメッ!」

 

「あたっ!?」

 

 

 

ぽこん!と頭を何かに殴られた感覚に、思わずよろめいてしまいます。

 

一体何が、そう思って肩を見ると、わたしの妖精さんが怒った表情でそこに立っていました。

 

 

「あ、えと妖精さん?」

 

「ゴエイカン ノ キョウジ ヲ ワスレルナ!」

 

 

言われて。わたしは自分が熱くなっていたことに気がついた。

 

護衛艦の矜持。それは自衛隊の矜持でもあって。

 

 

・・・たとえ、戦う事が必要だったとしても、忘れてはいけないものでした。

 

 

 

「・・・そっか。ここでの追い打ちは、自衛艦じゃないって教えてくれたんだね」

 

 

 

敵の攻撃を感知出来なかったことから、この戦闘ははじまった。

 

・・・けれども、そんな言い訳の奥底には、わたしの暗い感情があったことは否定できないです。実際に、今までの戦闘に・・・あの時の。わたしが傷を負って戦死者を出したあの時を重ねてしまっていた。

 

でも、それはきっと違うんだ。やるべきは、ありもしない幻影を重ねて自己満足な復讐をすることじゃあ、絶対ない。

 

今、やるべきことは。

 

 

「・・・木曽。急いで本隊に合流しよう」

 

「ああ、それはいいが・・・あのヲ級はいいのか?」

 

「あれだけのダメージがそう簡単に治るとは思えないしね。それよりも今は先行した長門さんたちに追いつくことが先決だよ・・・こっちにこれだけの戦力が来たんだ。あっちだってそれなりに居るだろうしね」

 

「それには同感だ・・・そうだな、さっさと援軍に行こう」

 

 

 

木曽の言葉に頷き返して進路を変える。

迎うべきは傷ついた敵じゃない。今もなお戦っている、味方のほうです!

 

 

 

 



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