【トリップ】それでも、私は生きている (月乃夜桜)
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第1部
夢主 プロフィール ネタバレなしver


絵も描きなおしたし、挿絵入れれるほどの画力もないので

ひとまず、夢主である飛鳥の事をまとめておこうかと思いまして。

ということで、私が描いた飛鳥のイメージ画像っぽいのがあるので

自分の中のイメージを崩したくない、という方は視ないことをお勧めします。

こちらはネタバレなしです。


名前:月城飛鳥(ツキシロアスカ)

 

ヴェスペリアの世界にきてからは、和名はおかしいだろう、と思いアスカ・ツキシロと名乗る。が、ドン・ホワイトホースやユーリには本当はアスカではなく、飛鳥だということを知られている。

 

がユーリが精神状態についてや名前について知っていることは知らない。

 

 

年齢:高校生

 

 

髪型:黒髪に見える紺髪。太陽とか月とかの光を浴びたら、何となくあぁ青が混じっているんだな、と分かる程度。長さは腰下~膝上の間。髪型は、一番わかりやすく言うのであれば、騎士団時代のユーリの髪型と同じ、ですかね。

 

 

目の色:深海のような青、と書いてありましたが深海のような、ということで群青色と青色が混じった色になっています。

 

 

 

服装

白に青いラインが入っている長袖のチュニック(本編ではシャツ、と言われてましたが本当はチュニックです。飛鳥が間違えただけです)の上に、ノースリーブ(袖なし)のロングコートを着ている。これも、白いラインが入っていて、下の方に一部青い部分がある。腰の部分に銃とチャクラムを入れる鞘つきの帯のようなものをつけてます。色は青です。

 

ズボンはチュニックとコートがあって見えにくいですが、ホットパンツ丈のものをはいてます。ズボンは黒で、白のラインが入ってます。ニーハイ丈の靴下をはいてます。白で青いラインが入ってます。靴はひざ下丈の青いラインが入ったブーツ。

 

あ、あと手は分厚い黒の手袋はめてます。今は手の甲に黒い印があります。

 

性格

本来は明るく、仲間思い。今は本来の明るさはない。それでも仲間思いなところは変わらず。ただし、自己犠牲が強め。死ぬ気はないが、無茶する。割と意地っ張りで、素直じゃない。諦観してる部分はあるし、弱さを見せないように嘘つくことなんてザラにある。

 

 

過去

・実の親からは虐待やら暴言やらされていた。存在否定や妹の由美と比べることは日常茶飯事

 

・時々刃物を使って傷つけたり、根性焼きをつけたりされた。

 

・学校でもいじめられていたが、被害軽減をしたりしていたので、あまりダメージはない

 

・自分の部屋でのみ趣味にいそしんでいた。

 

 

その他

シューティングが得意でよくゲーセンに行ってた。本人がそう思ってるだけで身体能力は悪くない。むしろ良い方。

 

否定され続けたから、シューティングや趣味以外の事は自信がない。料理の腕は普通。でもデザート系は割と上手。歌とかも上手い。

 

 

トリガーとは?

ネタバレありの方をどうぞ。

 

術とか武器

 

序盤はチャクラムばっか使ってたけど、今や銃がメイン。ドンに扱かれたことを思い出してからはチャクラムでも戦えるようにはなった。けれど、やっぱり銃のほうが得意。

 

技は今のところ、バーストアーツである、パラン・アステール(銃)とアルジェント・ポース(チャクラム)の2種類。

 

秘奥義について

 

詳しく知りたい方はネタバレありの方を見てください。

 

 

武醒魔導器(ボーディブラスティア)はあるらしい。場所についてはネタバレありの方を見て下さい。

 

力について

 

 

今はエネルギー変換能力と防護壁を張るのみ。癒しの力も使えるらしいが……?

 

 

以下、飛鳥のイメージ画像ですので、見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 

 

【挿絵表示】

 




今のところはこんな感じでしょうか。

何か追加事項があれば随時更新するので、その時はお知らせします。


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夢主 プロフィール ネタバレありver

絵も描きなおしたし、挿絵入れれるほどの画力もないので

ひとまず、夢主である飛鳥の事をまとめておこうかと思いまして。

ということで、私が描いた飛鳥のイメージ画像っぽいのがあるので

自分の中のイメージを崩したくない、という方は視ないことをお勧めします。

ネタバレも含みます。

ダメな方はネタバレなしの方をどうぞ。


名前:月城飛鳥(ツキシロアスカ)

 

ヴェスペリアの世界にきてからは、和名はおかしいだろう、と思いアスカ・ツキシロと名乗る。が、ドン・ホワイトホースやユーリには本当はアスカではなく、飛鳥だということを知られている。

 

んでもって、ドンがユーリに、自分の本当の名前の呼び方を教えていることや、精神状態についても聞いていることは知らない。

 

年齢:18

 

高校生、としか本編で語られていなかったので。そういえば、明かしてなかったなぁ、と思ったので、表記。

 

 

髪型:黒髪に見える紺髪。太陽とか月とかの光を浴びたら、何となくあぁ青が混じっているんだな、と分かる程度。長さは腰下~膝上の間。髪型で、一番わかりやすく言うのであれば、騎士団時代のユーリの髪型と同じ、ですかね。

 

この髪型の名称が知りたいなと思う今日このごろ。

 

 

目の色:深海のような青、と書いてありましたが深海のような、ということで群青色と青色が混じった色になっています。

 

ゲームの世界にトリップさせるわけだし、これでいっか、と思って好きな色にしちゃいました(笑)

 

 

服装

白に青いラインが入っている長袖のチュニック(本編ではシャツ、と言われてましたが本当はチュニックです。飛鳥が間違えただけです)の上に、ノースリーブ(袖なし)のロングコートを着ている。これも、白いラインが入っていて、下の方に一部青い部分がある。腰の部分に銃とチャクラムを入れる鞘つきの帯のようなものをつけてます。色は青です。

 

ズボンはチュニックとコートがあって見えにくいですが、ホットパンツ丈のものをはいてます。ズボンは黒で、白のラインが入ってます。ニーハイ丈の靴下をはいてます。白で青いラインが入ってます。靴はひざ下丈の青いラインが入ったブーツ。

 

あ、あと手は分厚い黒の手袋はめてます。今は手の甲に黒い印があります。まだユーリ達にはバレてませんがそのうちバレると思います(笑)

 

 

性格

本来は明るく、仲間思い。今は本来の明るさはない。それでも仲間思いなところは変わらず。ただし、自己犠牲が強め。死ぬ気はないが、無茶する。割と意地っ張りで、素直じゃない。諦観してる部分はあるし、弱さを見せないように嘘つくことなんてザラにある。

 

今はいっぱいいっぱいだから、そうなのであって、本人がちゃんと色々と納得、自分を赦すことができれば本来のものに戻ると思われ。

 

 

過去

・実の親からは虐待やら暴言やらされていた。存在否定や妹の由美と比べることは日常茶飯事

 

・時々刃物を使って傷つけたり、根性焼きをつけたりされた。

 

・学校でもいじめられていたが、被害軽減をしたりしていたので、あまりダメージはない

 

・自分の部屋でのみ趣味にいそしんでいた。

 

 

その他

シューティングが得意でよくゲーセンに行ってた。本人がそう思ってるだけで身体能力は悪くない。むしろ良い方。

 

否定され続けたから、シューティングや趣味以外の事は自信がない。料理の腕は普通。でもデザート系は割と上手。歌とかも上手い。

 

 

トリガーとは?

飛鳥が錯乱する、自分の身の上を語る上で自虐するなど、本来面に出さないようにしているいわば、負の感情のこと。この状態になるためのキッカケ、のようなモノ。

 

 

術とか武器

 

序盤はチャクラムばっか使ってたけど、今や銃がメイン。ドンに扱かれたことを思い出してからはチャクラムでも戦えるようにはなった。けれど、やっぱり銃のほうが得意。

 

術に関しては今は防護壁しか張れないが、後に癒しの力も使えるようになる。今は使えるということを声の主に伝えられたのだが、忘れている。

 

 

技は今のところ、バーストアーツである、パラン・アステール(銃)とアルジェント・ポース(チャクラム)の2種類。ちなみに、パランの方は青い流星という意味(造語)で、アルジェントの方は銀の光という意味。

 

秘奥義について(発動時のセリフのみ記載)

1つ目

「外さへんで、これは!『アルバストゥルレイ』」

 

意味は青い輝き。銃のみでを使うもので、銃を乱射し、そのあとに飛び上がって散弾させる弾をうち、最後にはゼロ距離で銃を撃つ。

 

2つ目

「これで、とどめや!『ブラッシュインセイフ』」

 

意味は切り刻む銀の刃。チャクラムのみを使うもので、両手にチャクラムを持った状態で、敵に切りかかる。後に一旦距離を取り、複数のチャクラムを一気に投げ、回収しながら最後に両手で相手を切る。

 

3つ目

「もう許さへん、覚悟しぃや!『アミナスオブフィーネ』」

 

意味は命の終わり。銃とチャクラム、最後には蹴り技をつかうもので、最初にゼロ距離で銃を連射し、そのままの距離でチャクラムで斬りつける。そこから一度離れ、何個かチャクラムを投げ、力を使って遠距離からチャクラムで斬りつけ、すべて回収し、最後に相手を思い切り蹴り飛ばす。

 

 

武醒魔導器(ボーディブラスティア)は髪留めで、筒状のバレッタ。だけど、隠すために上から群青色の髪紐でぐるぐる巻きにしてある。

 

 

力について

 

力は声の主から授けられたモノで、ヴェスペリアの世界にはない、黒い魔物に対して特攻、弱点である、月属性の攻撃ができる。

 

エネルギー変換能力は極めれば、他者のエネルギーを抑え、自分の方へ取り込んだりできる。

 

現時点では、まだ体としての器が出来上がっていないせいで、エステルに力を使われると、エアルやエネルギーを一度体に取り込む、という体質上、体の許容量を超える力が流れ込んでしまう。そのため、エステルが使う治癒術はダメージになる。

 

フレンやレイヴンが使う回復技であれば、ギリギリ越えないため、本来の治癒効果を受けることができるが、何度も受けていると、許容量を超えてしまい、やはりダメージとなってしまう。

 

このことには本人は気づいていないので、ただ単に自分の能力とエステルの能力の相性が悪いせいだと考えている。

 

以下、飛鳥のイメージ画像ですので、見たくない方はブラウザバックを推奨します。

 

 

【挿絵表示】

 




今のところはこんな感じでしょうか。

何か追加事項があれば随時更新するので、その時はお知らせします。


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騎士団時代の飛鳥 ※ネタバレあります

飛鳥の騎士団時代のプロフの様なもの

ネタバレがあるので、ご注意を。

最後に飛鳥の騎士団服姿の絵(アナログ)があります。




騎士団時代

 

名前 シロノ・クリム

通称 シロ、シロちゃん

 

髪型はポニテで、左目を隠していた。この頃には既に武醒魔導器は持ってた。が、本人の身体能力的に発動して、一般兵よりは強いかな、レベルだった。オマケに本来得意なはずの銃ではなく、槍を使っていたため、余計に弱さに拍車がかかっていた。

 

そして何だかんだと嫌がらせの末に目を付けられ、弱すぎる、という事で上の人らの話に上がったところ、たまたまそこに居たナイレンが自分の隊で引き取る、と言った為ナイレン隊に異動になる。

 

異動してからは、シロちゃん、シロ等呼ばれ、人的環境は良くなる。そこで過ごしていくうちに、飛鳥の動きに目を付けたナイレンが、本当の得意な武器は槍ではないだろうことを見抜き、どの武器が得意かをこっそりと尋ね、飛鳥は銃と答える。

 

それなら、騎士団じゃあ使えないな、なんて話をしつつも、とりあえず、基礎的な体力や技術を身につける為に、しばらく騎士団で過ごす。その結果、ある程度は強くなる。その過程でユーリやフレンとも話をしたり、手合わせしたりと仲良くなる。

 

ユーリやフレンは飛鳥の事を周りと比べたり、前のところの事を持ち出したりして、嫌がらせなんてしなかった。だから、まだまだ精神的不安定な飛鳥にとって、2人の隣は心地良かった。

 

しかしある日、飛鳥の前にあの黒い魔物が出現。その黒い魔物が出た時は何とか倒せたが、あまりにもボロボロになり、かなり心配された。挙げ句、ヒスカとシャスティルにも治癒術を使った上で、かなりお説教をされた。

 

その事があり色々迷いつつも、直感で黒い魔物は自分を狙っている、と思う。さらに、ここに自分が留まっては危険だと思い、騎士団を辞める事にする。

 

そして、騎士団を辞める際にユーリからは頭をぐしゃぐしゃに撫でられた上で、今付けている青い髪紐を貰う。何でも、買い物に行った際にたまたま見つけたらしく、いつかあげようと思ってたとのこと。

 

フレンからは握手をした上で、銀枠に青い宝石がはめ込まれた、シンプルなデザインの髪留めのブローチを貰う。ユーリと同じように、買い物に出かけた際に見つけたとのこと。

 

現在、ユーリから貰った髪紐は付けているが、フレンから貰ったブローチは付けていない。付けようと思ってはいるが、決心がつかず、大事にしまっている。多分、いつか付けると思われ。

 

ユーリやフレンが騎士団時代の飛鳥の事を覚えていなかったのは飛鳥の事情ををまともに知らずにいた為、修正力が働いたせい。

 

ちなみに、この世界に来た際に、銃とお守り、武醒魔導器は持っていたが、隠していた。

 

以下、飛鳥の騎士団時代の姿↓

 

 

【挿絵表示】

 




とりあえず、騎士団時代のことを軽く。

自分が考えていたのはこんな感じです。

本編で中々描写できていないので、こういう形になりました。

描写、頑張ってみますね!


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ダングレスト時代の飛鳥 ※ネタバレあります

騎士団時代の次なので、ダングレスト時代。

で、ここが1番飛鳥ちゃんは荒れてます。

精神的不安定であり、ストレスマッハ。

でも、原因さえ無くなれば回復するくらいにはまだ正気がある。


ダングレスト時代

 

名前 アスカ・ツキシロ

通称 アスカ、アスカちゃん

 

※後に、ドンからは時折、飛鳥と呼ばれる

 

騎士団を辞め、下町を出てフラフラと彷徨った末にボロボロになりながらも、ダングレストに辿り着く。そして、偶然ドンに出会う。だが、そこで色々限界に達し、意識を失う。

 

気がつけば、ギルド『天を射る矢』の拠点の中にあるベッドに寝かされてた。その上看病してたらしいレイヴンが隣で寝ていて、とんでもなく申し訳ない気持ちになったりした。

 

目覚めてから、名乗る時に和名はおかしいが、騎士団を辞めたのもあり、シロノ・クリムと名乗るのはちょっと…思った。そして、何より、本当の名前を呼んでほしいという思いから、アスカ・ツキシロと名乗る。

 

それ以降は、錯乱状態に陥ることが多々あったものの、ドンやレイヴン、ギルドのメンバーにより、徐々に回復していく。しかし、錯乱状態の時の記憶は朧げで、何を話したかは全く覚えていなかった。だが記憶が全て戻った現在では、覚えている模様。

 

錯乱している状態だと、怯えるか、暴れるか、虚空を見つめているかのどれか。さらに何パターンかあり、割とランダム。

 

パターンはザックリ分けると以下の通り

 

1 ひたすら ごめんなさい 嫌 やめて と泣きじゃくりながら、言い続ける

 

2 自分がされた事を言いながら、次は何をする?と問いかける。ただし、時折泣いてたりする。

 

3 自分に 大丈夫 もう慣れた事 いつもの事 と言い聞かせ続ける。焦点はあっておらず、どこか虚空を見つめている

 

4 自分はアレも出来ない、コレも出来ない、じゃあ自分は要らない子なんでしょう? という旨の言葉を言い続ける。目が死んだまま笑っている

 

5 何も言わずに自傷する。大抵はナイフ等で軽く刺す程度だが、たまに傷跡が残りそうなくらいザックリと行くので要注意。

 

6 暴れる。周囲の物を壊すこともある。たまに叫んでいることもある

 

大抵この6パターン。1番多いのは3。次に多いのは1。1番少なかったのは5と6。次に少なかったのは4と2。

 

特に、2と4の状態になると割と長く続き、長いと3日くらい。飛鳥の中で現実での事とごっちゃになってる。でも、話が噛み合わないだけで相手の言っている事はある程度理解できている為、簡単な事を言いつつ、回復方向には持っていける。

 

錯乱状態の時の4の時にドンにだけだが、自分が現実世界の住人である事、本当の名前はアスカ・ツキシロではなく、月城飛鳥だと告げている。さらに、自分はこの世界に使命を持ってきた、とまで言っていた。

 

その為、ドンはアスカの本当の名前が飛鳥である事を知っていた。錯乱中に名前を飛鳥と呼ぶ事で元に戻ったりもした。呼び方的にはイントネーションが若干違うだけでほぼ一緒。

 

レイヴンは何回か聞いていたので、本編で一回だけ呼んだ。ユーリもドンから教えてもらってるので、知ってる。呼んだ事もある。

 

やっぱり、飛鳥にとってアスカという名前は本名ではない為、アスカ・ツキシロというキャラになりきろうとしている所がある。飛鳥で居ていいんだ、と思えればまた変わってくるかもしれない。

 

ちなみに、騎士団服はまだどっかにある。ダングレスト時代で着ている服もギルド『天を射る矢』の本拠地?のどこかにある。飛鳥が服かがどこにあるとか分かっているかは不明。

 

以下、ダングレスト時代の飛鳥↓

 

 

【挿絵表示】

 




と言うわけで、飛鳥ちゃんの過去の大まかな感じは掴んでいただけたかな、と思います。

まだまだ本編で描写出来ず…申し訳ないです。


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1戦目

一回書いてみたかったトリップネタ。

トリップネタに関しては初めてなので、色々と矛盾があったり無茶があるかと思いますが、それでもOKな方のみ先にお進み下さい。

なんでも許せる方、なんでもこい!

という方向け。
タグ見てダメだとか、苦手だと思った方はブラウザバックをお勧めします。


三月町という街にある、桜乃高校から帰宅する一人の少女が居た。その少女は、深い紺色のぱっと見は黒に見える腰下まである髪に、深海のように蒼い色の目をしていた。この少女の名は月城飛鳥という。

 

「早く帰って動画見たいわ〜…そーいや、ヴェスペリアのプレイ動画が途中やったやんな〜。続きが気になるし面倒いけど走って帰ろ!」

 

そう言って飛鳥は早く帰るためにいつもなら使わない川沿いの道を走って帰ることにしたらしい。が、飛鳥の視界に川が入った途端。

 

キラッ…

 

光の反射が飛鳥の視界を奪う。

 

「わっ!?」

 

咄嗟に目をつぶり、目がショボショボするのを収まるのを待った。が、その時だった。飛鳥の耳に不思議な女性とも男性ともとれぬ声が聞こえてきた。

 

「貴女は、現実を捨てる覚悟はありますか?」

 

「どういう、事?」

 

「その覚悟があるのなら、祈りなさい」

 

「祈る?何を?」

 

「では、質問を変えましょう。貴女は現実を捨てて世界を救う事を望みますか?」

 

「何処のゲームやねん。うちには無理やわ。世界を救う、なんてそんな事。確かにうちは今に飽きてるけど」

 

「では、貴女は現実を捨てて世界を救うより、現実を望みますか?」

 

「……」

 

飛鳥は悩んだ。彼女は自身が不真面目で、努力嫌いで、面倒臭がりという事を自覚している。その上、自覚していながらも、とある理由から直さなくたって誰も迷惑を(こうむ)ることもないと思っている。だから、そんな自分が世界なんぞ救えるか。そう、考えた。が、本当にそうなのか、声の主に尋ねた。

 

「ダメ元で聞くわ。うちでも世界を救うなんて事、出来るん?」

 

「〝貴女だから〟です」

 

声の主は飛鳥だから、と答えた。それを聞いた飛鳥は少し悩むが決心をした。

 

「……じゃあ、やってやろうやないか。うちでも、こんな奴でも救える世界があるなら、やってやる」

 

「交渉成立ですね。では、貴女には武器と服、お守りを授けましょう」

 

「お守り?」

 

「えぇ。肌身放さず付けておけばその者の命の危機の時、守ってくれます」

 

「そうなんや…じゃあ、貰っとく」

 

「では、行きなさい。あぁそれから――には、―して、――さい」

 

「え?どういう――」

 

飛鳥が聞き返す前に、彼女の視界は真っ黒に塗り潰され、意識も強制的に途切れたのだった。

 

・・・

 

ガサッ…

 

飛鳥は、近くの草むらで音がしたのを境に目が覚めた。そして辺りを見回して、唖然とする。声の主が言っていた通り、別世界に飛ばされたようだ。

 

「!?」

 

そして自身の服が変わっている事、その着ている服が白の長袖のシャツに袖なしの黒いロングベスト(腰にホルスター付きのベルトがある)、黒いホットパンツに白いオーバーニー、黒の膝下ブーツと言ったモノクロな格好の服であること、腰のベルトについている左右のホルスターには銃(銃自体はハンドガンのようなもの)があること、ベストの上半身の裏側には何故か鉄製のチャクラムという円型の投げて使う武器があったことなどに驚いた(ちなみに、髪は先を数十センチほど余らすようにして一つに結ばれていた)。

 

「グルルルル…」

 

「え、嘘…ウルフ?」

 

自身の格好に驚いている飛鳥の耳に獣の唸り声が届く。声がした方を見てみると、黒とグレーの毛並みを持った狼に似た獣が居た。

 

「グルル…ウォーン!」

 

「え、仲間呼ばんといてや!」

 

飛鳥を見つけるや否や、その獣は仲間を呼ぼうと声を上げた。それを聞いた飛鳥は、右のホルスターから銃を抜いて、容赦なく撃った。

 

パァンという軽い音と共にウルフがその場に倒れこむ。なんとか倒せたようだった。が、飛鳥は疑問に思う。銃を弾が装填(そうてん)されているかを確認もせずに撃ったがちゃんと弾は出た。しかし、銃身を見ても弾を装填するようなものがない。それよりも、飛鳥は気になっていた事があった。それは撃った弾が深い青色をしていたということだ。

 

「んー…もしかして、この銃は魔力を源にしてる感じ?空気中か、ありえへんかもしれへんけど、うち自身の魔力を使って生成されたもの。それが弾なんやろうなぁ…だって、そうやなかったら弾の色も、弾を装填する場所がない事も説明できへんし」

 

そう、飛鳥はゲームや漫画で〝そういうもの〟は知っている。だから、もしかしたら、と思ったのだろう。実際、その通りでもある。と、あたりを見回していた飛鳥はふと、目に留まるモノがあった。

 

「んー……あ、あれは…?って事は、ここはヴェスペリアの世界なん!?」

 

そう。飛鳥が目たものはテイルズオブヴェスぺリアというゲームに出てくる、街などを魔物から守るためのもの、結界魔道器(シルトブラスティア)だった。そこで飛鳥は確信する。自身が飛ばされた世界はゲームの世界という事を。そして自分がこの世界を救うことになるのだと。

 

「とりあえず、あそこは帝都ザーフィアス、だっけか。そこに行こうか。下町があったはずだし」

 

そうして飛鳥が歩き始めた。そしてものの数分歩いたところでとある人物に声をかけられた。

 

「よう、お前ここじゃ見かけない顔だけど、一人か?」

 

「え?」

 

飛鳥に声をかけた人物は20代前半くらいの青年で、上から下まで真っ黒な服を着ており、胸元を広めに開けていた。青年は髪の色も多少紫が混ざっているように思えるが真っ黒で目の色も真っ黒だった。そして、その青年の左手には剣の入った鞘がある。飛鳥は、その青年を知っていた。なんせ、この世界の――テイルズオブヴェスぺリアの主人公、ユーリ・ローウェルだったからだ。だが、相手は自分の事を知らない。その事を頭に置きつつ飛鳥はユーリの問いに答えた。

 

「私、その…き、記憶喪失、みたいで…気が付いたらこの草原を、歩いていたんです」

 

「記憶喪失?」

 

「は、はい。えっと、名前以外、どこで何をしていたのかも、何も、思い出せないんです…」

 

「そうか…なら名前だけでも教えてくれよな。俺はユーリ。ユーリ・ローウェルだ」

 

「は、はい。私は…アスカです」

 

「そうか。よろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

飛鳥は咄嗟に自分が記憶喪失だと言った。そして話し方も、敬語を使い、一人称も変え、声のトーンもかなり高くしたのだった。飛鳥自身の声は女子のものにしてはかなり低い部類に入る程だからだ。そして、自分がどういう立ち位置かが分からない以上、いきなり親しげにするのもよくないと思ったからである。ユーリは偏見を持たず、誰とでも普通に接するのでここまで変える必要はないと分かっていたのだが、飛鳥は変えた。

 

―うちなんかの素なんて、晒せるわけないよ。だから、猫を被るよ。大丈夫、猫を被ることは得意だから。

 

そう、飛鳥は恐れたのだ。自分の素の性格を見て、ユーリが拒絶されやしないか、と。

 

「まぁ、こんなところで突っ立ってんのもアレだし、下町に来いよ。俺が居候させてもらってる宿屋にいけば何とかしてくれるだろうからな」

 

「そ、そうなんですか…」

 

「あぁ」

 

飛鳥はユーリに連れられ、下町に向かうのだった。

 




かなりグダグダしてしまったきがするけど、きにしない!

では、また次回にて会いましょう!

10/24 修正しました。前よりは、全体的にマシになってると思います。


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2戦目

どうも~!2話目です!

グダグダな上に誤字多発な可能性ありです!

苦手な方は即ブラウザバックを。


トリップした先、ユーリと出会い、記憶喪失だということにした主人公は…?


・・・

 

あれから、飛鳥はユーリに連れられて下町へと着いた。そこで飛鳥は考えた。

 

―あぁ、本当にゲームと同じ…でも、うちがゲームに組み込まれてるのか、それともうちは部外者なのか…それに、何かに気をつけろって声の人が言ってた気がする。最後の方はよく聞こえなかったけど、きっとそう。まぁ、もし物語に私が組み込まれてたとしても、イレギュラーである事には変わりはないし、私を消そうとしてくる新たな奴が出てくる…まぁあり得ない話じゃないよね。

 

そう。飛鳥はそう言う、ファンタジーな世界観が好きで現実世界の人が漫画やゲーム、アニメの世界にトリップする、という創作ものの小説をいくつも読んだことがある。そして決まってトリップした人物はそのトリップ先の主人公やその仲間と一緒に行動し、物語を一緒にたどっていく。だが、飛鳥はそういうものを読んでいて思ったことがあるのだ。トリップした人がいる時点でその物語は原作と呼ばれるものは違うんじゃないか、と。メンバーが一人増えているのだ。当たり前といっても差支えはないだろう。そして、飛鳥は思う。自分がこの世界に来たことで自分の知っている、テイルズオブヴェスぺリアの話通りいは行かないのでは?と。

 

「大丈夫か?顔色悪ぃけど」

 

「え?あぁ、少し疲れただけなので、大丈夫です」

 

「そうか?ならいいけど」

 

ユーリは顔色が悪い飛鳥に声をかける。が、飛鳥は疲れただけだと答えた。確かに記憶喪失な上にあんな草原にただ一人でいたのなら無理もない、と思ったからかそれ以上は何も気にしなかった。と、二人が噴水のある広場まで来ると、一人の老人が声をかけてきた。

 

「ユーリじゃないか。どうした?見ない嬢ちゃんを連れてるのぅ」

 

「ハンクスじいさん。こいつは結界の外でうろうろしてたんだよ。記憶喪失なんだとさ。とりあえず危ないから連れてきた」

 

「アスカです」

 

「おぉ、わしはハンクスじゃ」

 

「よしアスカ、そろそろ行く――」

 

ユーリが行こうと声を上げた瞬間だった。ドォン!という音と共に噴水の水が柱のように高く上がった。それを見て飛鳥は叫ぶ。

 

「逃げて!!巻き込まれんで!!!」

 

が、自分はその場所から動かない。飛鳥は水を被るくらい良いか、と思っていたのだが、いきなり後ろから手が伸びてきて飛鳥を落ちてくる水がかからない場所まで避難させた。その手はまぎれもなくユーリの手だった。

 

「おい、お前が逃げなくてどーすんだよ!ったく、叫んでおいてお前が逃げねぇとか…お前は水を被りたかったのか?」

 

「いえ…そういうわけではないのですが…助けてくれてありがとうございます」

 

「ん、どういたしまして」

 

飛鳥はふと噴水を見た。すると、噴水の真ん中にあった機械のようなものの丁度ド真ん中あたりにあったモノがなくなっていた。飛鳥はこのことが後々どうなるかも知っていたがとりあえずユーリに告げる。

 

「…あれ?あの水道魔道器(アクエブラスティア)魔核(コア)がないんじゃないですか?」

 

「ん?……確かにねぇな。どうすっか…」

 

「ユーリ!水道魔道器、最近直してもらったばっかなんだよ?壊れるのっておかしくない?」

 

「そうだな。どうせ直しに来たやつが適当にやったんだろ。俺はラピードと一緒に無くなった魔核を探しに行ってくる。テッドはアスカと一緒にいてろ」

 

「わかりました。気を付けてくださいね」

 

飛鳥はユーリとラピード――いつの間にかユーリの傍に来ていた青が強めの紺色のような毛並みで尻尾が特徴的な犬――を見送る。が、何故かラピードは飛鳥の方を向いて動こうとしなかった。

 

「どうしたラピード?」

 

ユーリが声をかけても何も反応を返さない。飛鳥はラピードがユーリの指示や声には必ず反応することを知っていたので、疑問に思う。そして何故だかわからないが確信した。

 

自分はイレギュラーな存在でありながらもこのテイルズオブヴェスぺリアという物語の中に組み込まれていて、更に自分に関するイベントのようなものもある

 

という事に。

 

「ワン!!ウ~…!!ワンワンワン!!!!」

 

「わっ!」

 

「おいラピード!!何やってんだ!!」

 

「ど、どうしちゃったのラピード?」

 

ラピードは飛鳥に向かって牙を剥き出しにして睨みながら吠えた。まるで貴様なんか敵だ!自分の主人に関わるな!とでもいうような、そんな吠え方だった。飛鳥はあまり勘は鋭くない、いやむしろ鈍い方だが、そんな彼女でも察した。そして同時に

 

―うちは結局、何処に行ったって〝邪魔者〟でしかないんやな。でもうちにはこの世界を救うことができる、と。そんでもって邪魔者なら世界の修正力とかそういうのが働いてうちを消しに来るかも、と。まぁこんな小説で読んだような知識が役に立つか知らんけどまぁ、常に警戒しといたほうがええみたいやなぁ…あぁ、面倒いな。

 

と思っていた。

 

「……ラピードって言うんやね。ねぇ、ラピード、うちは君にも君のご主人様“達”にも危害は加えへん。だから、吠えるのだけはやめてくれへんか?」

 

「ウ~!!!」

 

「唸っても吠えてもいいけど、時と場所、考えてからな」

 

「ラピード、行くぞ。……ラピード?」

 

「ユーリさん、ラピードは動く気はないみたいですけど…」

 

「……んじゃ、俺だけで行ってくる。アスカ、ラピードと一緒にいててくれるか?」

 

「はい、わかりました」

 

「おう、じゃあ行ってくる!」

 

飛鳥はユーリを送り出して、いまだ睨んでいるラピードの方を向いて、苦笑する。飛鳥の隣にいるテッドは心配そうにこちらを見ていた。

 

「はは、は…うち、何のためにココに来たんやろうなぁ…?」

 

思わずそうこぼした。と、いきなりラピードが吠えた。今の吠え方は敵だ、とでもいうようなものだ。するとテッドが怯えながら言う。

 

「ねぇ、アレ見て!!結界張られてるのに魔物が入ってきたよ!!?」

 

テッドがいう方を見てみると、ドラゴンを形取った、闇のように黒く、どす黒い紅い目をした魔物が居た。その魔物は飛鳥を見ている。が、それだけだ。攻撃するそぶりも見せない。だが飛鳥の中にある警報は鳴っていた。今すぐ目の前のそいつを殺せ、と。だが、飛鳥は動く事が出来なかった。そして無意識にその魔物と目を合わせぬようにもしていた。しかし、今の飛鳥にはそんなことは気付けず、また自身が震えて動けないことも分からなかった。彼女が分かるのはただ一つ。この魔物こそが声の主が気をつけろと言っていた存在なのだという確信だけだった。




2話目終了。

さて、アスカは結界魔道器が発動しているにも関わらず町の中に入ってきた魔物を倒すことができるのでしょうか…?

ではではまた次回にて会いましょう^^


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3戦目

3戦目。

いきなりオリジナル展開です。

なのでご注意ください!!

なぜ主人公ちゃんがラピードに嫌われてるのかというのは後々明かしていくのでそれまでお待ちください。

ではでは、どうぞ!


飛鳥は迷う。テイルズシリーズには出てきていない魔物である故に、自分では対処の仕方が分からない事に。だがココで迷っていては、攻撃されるだろうことは予想がつく。飛鳥が迷っていると、ラピードがいつの間にか短剣を口にくわえて目の前の黒いドラゴン型の魔物を睨みつけていた。それを見て、飛鳥は決心する。

 

「ど、どうしよう!!アスカ…!!」

 

「ウ~…!!!ワンワンワン!!!」

 

「……ラピード。うちはさ、戦うのなんて初めてやねん。だから、足手まといになると思う。でも、町の人達守るために一緒に戦ってくれへん?」

 

「……ワン」

 

ラピードは仕方ないな、とでも言うように飛鳥を見ながら一吠え。だが、先ほどとは違い落ち着いている声であるため、飛鳥もそれが了解の意だと受け取り、右腰にあるホルスターから銃を抜いて、構える。

 

だが魔物と目があった、その瞬間。

 

飛鳥の身体に何かが突き刺さった。しかしソレは、目に見えるものでも、体を傷つけるものでもなかった。ソレは、とある感情だったのだ。ソレは、飛鳥にとっては既に整理をつけていた感情だったが、何故か身体が震えてまともに立っていられなくなるほどに影響を及ぼした。

 

だが、飛鳥は膝から力が抜けていくにも関わらず無理矢理に力を入れて、しゃがみこまないようにする。そして震えている手を見て、これまた無理矢理力で震えを止まらせた。

 

「っ…!!」

 

それでも抑えきれなかったのか、声が微かに漏れた。飛鳥に突き刺さったモノ――感情は、『恐怖と孤独感』だった。同時に無理矢理二つの感情を感じさせられた飛鳥は思う。

 

―この、感情は…最初の最初……に感じた…モノで、もう整理は…つけた…はずなのに…

 

すると、今度は苦笑して呟く。

 

「弱いなぁ…ホント、うちは弱すぎるね…」

 

と。だが、そこで気付く。こんなことをしている暇はなかったと。急いで顔を上げると、魔物はまだそこに居た。が、何故か口元に短剣を銜えたラピードが早く来い、とでも言いたげに吠えた。だが飛鳥は足が震えて、一歩踏み出すだけでもしゃがみこみそうだった。

 

「ワウ!!」

 

「ラ、ピード…ごめん…うち…今…!」

 

「アスカ?どうしたの!?顔が真っ青だよ!?」

 

自分も怖いはずなのに、テッドは飛鳥を心配する。心配された飛鳥はわずかに目を見開いたが、すぐに大丈夫、と言って改めて黒のドラゴンを形取った魔物に向き直った。

 

「テッド、私は大丈夫。だから、皆を、動けない人たちを町の奥に、避難、させてくれる?アイツは、私、とラピードで、どうにかするから」

 

「……わかった」

 

テッドを見送っていると、サイド、ラピードから催促がかかる。

 

「ワン!!!ワンワンワン!!!」

 

「………わかった、よ。アイツを倒さなきゃ、いけないもんね…」

 

その声に返事をしながら、息を深く吐き出す。すると、どうだろう、震えていた身体が少しずつ治まっていく。

 

「ごめん、ラピード、援護…頼める?」

 

「ワン!!」

 

ラピードの隣まで来た飛鳥は銃を構えて狙いを定める。

 

「技とかないけど、これで消えて…!!」

 

飛鳥はそう言って続けざまに撃つ。撃ったのは全部で3回。撃った弾は全部命中した。

でも、倒れてはくれないようで黒いドラゴン型の魔物は口を開ける。飛鳥は何か来る、と重い身構えたがそうではなかった。

 

「キエロ…」

 

「っ……」

 

黒いドラゴン型の魔物が声を発した。その声はノイズが入り、壊れた電子音みたいな音が混じった、おおよそ人間が発せるモノではない声らしきもの。それを聞いた飛鳥は突然吐き気に襲われ、その場でフラつく。幸い、そこまでひどいものでもなかったため、すぐに回復した。

 

「うっ……く、お前なん、か…邪魔なんだよ…!」

 

飛鳥が銃を魔物の額らしき場所に向けて撃ったと同時にラピードが近づいて顔あたりを斬り裂く。すると、魔物は消えた。それも始めからそこにいなかったかのように、体が霧のようになって消えた。それを見た飛鳥は腰が抜けてしまい、その場に座り込む。すると、ラピードが隣に来て座る。どうやらラピードも怖かったようで、

 

「…クゥン……」

 

と鳴いた。飛鳥は自分の知っているラピードとは違う面を見て、何とも言えない気持ちになった。

 

「?……ラピードも、怖かったの?」

 

「…ワフゥ」

 

思わずそう問いかけると、ラピードが力なく答えた。すると、飛鳥は何故か、ラピードに対して、“素顔”をさらけ出していた。

 

「そっか…ゴメンな。でも、もう大丈夫。次はもうアイツが出てきても恐怖とか孤独とかの感情に流されて足がすくむ、なんてことにはならへんから。一回体験してしまえば、対処できる」

 

飛鳥が笑いかけると、ラピードはもう普段通りになっていてわん!と一吠えした。

 

―…こっちに来て、少しだけうちにも出来そうな事がある。それは、ポーカーフェイスでどんなことも乗り切る事。悲しくても、怖くても、寂しくても、辛くても、痛くても泣かない事。猫を被って、無口でいてあまり話さない事。大丈夫、うちは慣れてる。全部、人より慣れてるから、大丈夫。

 

飛鳥はそう思って何時の間にかうつむいていた顔を上げる。すると、ラピードが唸っていた。理由が分からず、飛鳥は首を傾げた。

 

「……ウ~」

 

「?…ラピード?」

 

「ワン!!」

 

「わ!?ちょ、うちなんか悪いことしたん!?」

 

「ウ~…ワンワンワン!!!」

 

「……?」

 

いきなり吠えられて驚いた飛鳥はポーカーフェイスでいようと決めた傍から素の方の話し方になっていた。と、そこでハンクスが来て飛鳥に話しかけた。

 

「ん?アスカじゃないか。こんなところで座り込んでどうしたんじゃ?」

 

「え?あ、ハンクスさん。黒い魔物、倒せたんですけど、腰が抜けてしまって…でも、もう大丈夫です」

 

「!…お前さんがあの黒い魔物を倒したんか?」

 

「えぇ、といってもラピードのおかげですけど」

 

「そうかそうか。おーいみんな~!もう出てきても大丈夫じゃぞい!!」

 

ハンクスがそう叫ぶと、町の人たちが段々と外に出てくる。と、そこでラピードがいきなり走って行ってしまった。飛鳥はその方向を見て思う。ユーリ達かな、と。だが、そこでもう一つ気付く。

 

ユーリ達が帰ってくるのは、夜が明けてから

 

ということに。

 

「おーいたいた。って、なんでこんなところで座ってんだ?」

 

「あ、ユーリさん。と、そちらは?」

 

「私はエステリーゼっていいます」

 

「…アスカです。よろしくお願いします」

 

「あ、そうだ。水道魔道器の魔核泥棒捕まえねぇと。アスカ、お前も来るよな?」

 

「え?あ、はい」

 

と、飛鳥が返事をした時だった。ユーリの名前を叫びながら下町に降りてくる人影が3つ。その声の主を知っている飛鳥はこの後に起きる出来事を想像し、小さく声を上げるだが、下手に動けない。ここで飛鳥が動いてストーリーが変わってしまってはどうする事も出来ないのだ。

 

「ユーリ・ローウェ~~ル!よくも可愛い部下を二人も!!お縄だ、神妙にお縄につけ~!!」

 

「ま、こういう事情もあるからしばらく留守にするわ」

 

「やれやれ、いつもいつも、騒がしいやつだな。アスカもアイツの面倒をみることになるんだろうが、頑張れよ」

 

「はい!ありがとうございます」

 

いきなり声をかけられた飛鳥だが、きちんと返事をする。と、途端に人ごみにのまれた。その中でどうにか抜けようとしたところ、一人の男性が飛鳥に声をかける。

 

「嬢ちゃん、これ持っていきな!大した武器じゃないけど、これで護身用にはなるだろ?」

 

「え?いいんですか?」

 

「おう。もう使わないから」

 

「ありがとうございます」

 

男性は飛鳥に何十本かがセットになっているスローナイフをずい、と押しつける形で渡すとすぐに人ごみにまぎれて言った。どうして、飛鳥はなんとか人ごみを抜ける事が出来た。すると、ある光景を目にする。

 

「ユーリさんはとても愛されてるんですね」

 

「冗談言うなよ。厄介払いができてうれしいだけだろ?って、おい…!誰だよ!金まで入れたの!こんなの受け取れるか」

 

それは、原作通りの会話。それを見た飛鳥はほっとする。が、エステルが飛鳥に気付いて声をかけた。

 

「アスカさん。よかったです!はぐれてしまったのかと…」

 

「心配してくれてありがとうございます。あの、私の名前、呼び捨てでいいですよ」

 

「はい!じゃあ、アスカって呼びますね」

 

と、そうこうしているうちにユーリが帰ってきた。そして、飛鳥は思う。

 

―これから、どうなるんだろう…

 

と。




なんとか書き上げました。

かなり長くなった気がする…

では、また次回にて会いましょう!


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4戦目

どうも!遅くなりましたすみません…

4話目です。

丁度、主人公一行が下町から出るところですね。


では、どうぞ!


飛鳥達は街を出ようと出発しかけた。すると、近くまで追ってきていた、先ほどユーリの名前をフルネームで叫んでいた男性―ルブランの足をタイミングを計ったように引っ掛けてラピードが登場。だが、すぐさま飛鳥に向き直り、唸る。

 

「ウ~~~!!」

 

「おいラピード。いい加減にしろ」

 

「犬?」

 

「……」

 

飛鳥は何も言わずにただラピードの目を見ていた。すると、なんとなくだがラピードが

 

自分がこの世界においてイレギュラーな存在であり、変な魔物を一緒に連れてきた張本人である

 

と見抜いているように思えたのである。理由はわからない。

 

―うちは完璧にラピードに嫌われている。けど、その理由だってうちがイレギュラーだから。変な魔物を連れてきた、というのを抜きにしても、多分わかってるんだ。動物は鋭いって言うしね…

 

飛鳥はいつの間にかうつむいていた。その様子にユーリは声をかける。

 

「って、アスカ?どうした?」

 

「あ、ごめんなさい。今行きます」

 

「大丈夫です?顔色が…」

 

「大丈夫ですよ」

 

あまり顔色がよろしくない飛鳥を心配するが、エステリーゼ(エステル)もユーリも軽く流されてしまう。

 

「んじゃ行くか。改めてよろしくな。エステル、アスカ」

 

「はい……え?あれ?……エス……テル?エステル、エステル……こちらこそ、よろしくお願いします、ユーリ!」

 

「よろしくお願いします」

 

飛鳥は声のトーンを高くし、敬語のままでそう答えると、外を見た。

 

・・・

 

外に出たユーリ達はなるべく魔物を避けて進んでいた。だが、避けきれないのも当然あるわけで。

 

「うおっ!?」

 

「え?」

 

「「!」」

 

飛鳥はユーリの真後ろにいた魔物を見つけて、咄嗟に銃をホルスターから抜き、撃っていた。パァン!と、軽い音が鳴り、少し遅れて地面に魔物が倒れる音がする。ユーリの後ろに居た魔物は無事に倒せたようだ。

 

「ふぅ~…助かったぜ、アスカ」

 

「……怪我、なくてよかったです」

 

「すごいです!一瞬で仕留めてしまうなんて!」

 

「まぐれだから、その…期待、しないでください」

 

飛鳥はすごい、と言われても実感がわかなかった。何故だかわからない。だが、今ので確信する。現実世界では出来なかった、咄嗟に正確な行動をとるという事が出来るようになっていた。ユーリ達の後について歩いていた飛鳥はふと、会話を耳にする。

 

「ユーリ、こちらの犬は……」

 

「ああ、オレの相棒のラピードだ」

 

「ワン!」

 

「あ、こちらこそよろしくお願いします」

 

「こちらこそって、ラピードが何言ったか、わかったのか?」

 

「いえ、全然……」

 

「ま、そりゃそうだよな」

 

その会話を聞いて飛鳥はほっとする。ゲーム内であるキャラ同士のちょっとした会話である、スキットの内容は変わっていないようだった。

 

「あの、アスカはどうしてユーリといるんですか?」

 

「私、記憶喪失だから…ここら辺でさまよってる所をユーリに、助けてもらったんです」

 

「へぇ~!ユーリは優しいんですね!」

 

「別に、俺は何もしてねぇよ。危ない目にあってたってわけじゃねぇし」

 

「…それでも、私を下町まで送ってくれましたし」

 

「ま、そりゃそうだがな。あのまま死なれても後味悪いだけだし」

 

「ふふふ、やっぱりユーリは優しいです」

 

いきなりエステルに話しかけられて戸惑ったが、意外と普通に話せたらしい。そして、思う。

 

―いきなりうちを加えたスキットが登場かよ…でもまぁ、これがあるってことは交流を深めろ、ってこと…?わからない…まだ、分からないことだらけだよ…

 

自分が何故この世界に飛ばされたのか、何故、あの声の主は自分を選んだのか。声の主は飛鳥だから、と言っていたが明確な理由が分からない。まだまだあげれば切りがないが、かなりの疑問があることは確かだった。




というわけで、4話目でした。

次もまた不定期ですが、待ってくださる人は待っていてくださるとうれしいです!!

ではでは、また次回にて会いましょう!


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5戦目

どうも遅くなりました。

待っていてくださった方はには感謝です!!


場面は、冒険王に泊まる所です。

では、どうぞ!


あれから、飛鳥達は何度か戦闘を繰り返し、少し開けたところに到着。飛鳥は今自分が使っている武器がエアルを使うもので、かつ自分の身体に一度取り込んでから弾に変換しているという事が分かってからは、狙いを定めてから撃つことの方が多かった。空気中のエアルを取りこんで、弾に変換するのなら弾数は無限なのだが…弾に変換するときに飛鳥自身の気力らしきモノを消費するため、限界があるのだ。

 

「ずいぶんと帝都から離れたな」

 

「ええ…ここまで逃げてくれば、大丈夫でしょうか」

 

「さぁな。無駄に連中しつこいからな」

 

「ワン!」

 

「ん………?」

 

「……」

 

ラピードは何かを見つけたように吠える。それに反応するようにユーリ達は先に進んでいく。飛鳥は無意識にそれについていく。

 

―確か、ここら辺で戦闘があるはず…

 

考え事をしていた飛鳥はユーリ達に声を掛けられて、いつの間にかうつむいていた顔を上げる。

 

「…い……カ!」

 

「ワン!!」

 

「ぅえ!?な、何!?」

 

「一旦休むぞ」

 

「大丈夫ですか?何か難しい顔をしてましたが…」

 

「大丈夫です。少し、考えごとをしていまして…」

 

ラピードに吠えられて素が出た飛鳥。だが、ユーリ達は特に何も気付いていないようだ。飛鳥もこれには少し安心する。飛鳥達は冒険王という宿屋に泊ることになった。飛鳥はベッドに横になると、疲れていたのだろう、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。

 

・・・

 

―あれ?ここ、は……どこや?

 

飛鳥は、気がつくと360度一面真っ黒な空間に放り出されていた。ただ、足はちゃんと地面らしき場所に付いているため、自分が立っていることは分かった。

 

―…あたり一面が暗闇…あ~…ゲームとか小説の中で悪夢を見る時によくある奴や。でも、夢見てるってわかってるんは…確か、明晰夢とか言うやつだっけ?

 

辺りを見回しながらそんな事を思っていると、全方向から、声が聞こえてきた。それは、飛鳥にとって聞いたことがある声で、同時に聞きたくもない声だった。

 

―クスクスクス…

 

―ねぇ、月城さんって――ってホント?

 

―え~!?嘘嘘!!ありえないって!だって月城だよ?

 

―それもそうだよね~!

 

―こんなこともできないのか。屑め

 

―屑はしょせん屑だな!

 

―どうして由美は出来るのにあんたは出来ないのよ!この出来損ない!!!!

 

最初はクラスメイト達。後半は両親。だが、飛鳥は鼻で笑って流した。

 

―そういや、そんなこともいわれてたっけ。しかも最後のは結構最近言われたことあるね…ふふふ、笑えてくるわ。別に、出来もしないことをする必要なんであらへんやろ?

なんでしやなあかんの?それに、クラスメイト達はどうせ自分達の鬱憤とかストレスとかを発散させたいだけやろ?うちを使って。なら、別に聞き流せばええ。聞く必要もないやろ。聞いてるだけ気分が悪くなるだけやしな。ああいう類のものって。

 

―さてさて、うちにこんなもん見せるおバカさんは誰やろうな。精神攻撃でもしたいん?なら、もっとエグイの見せてみぃや。この程度、もう聞き飽きてんだよ。悪口って大体誰が言っても同じことしか言わへんやろ。なぁ?うちを普通の奴だと思ってんなら、それはやめといた方がええで?うちは、大抵の悪口は聞きあきた、そんな奴だからさ!

 

クスクスと笑いながら、さも気になっていないようにふるまう。実際、飛鳥にとってはこの類の悪口は〝この程度〟で済んでしまうのだ。だから、飛鳥は言う。思い切り皮肉をこめて。

 

『ねぇ、うちにこれ見せてる“誰か”さん、うちをもっと苦しませたいならもっとエグイの見せたり、身体的苦痛を与えなきゃ効かへんで?残念ながら現実世界でうちは両親に時々暴力ふられてたし、学校じゃクラスメイト達から悪口陰口、あることないことの噂とか流されてね?面白いことに全校生徒が知ってるくらいにはひっどい噂も流れてるし、悪い意味で超有名だから』

 

言い終えてからも、余裕のある笑みを崩さない。すると、飛鳥が言った事に反応するかのように声が聞こえ始めた。

 

―ねぇ、月城が…手違い子だったって、ホント?

 

聞こえたその言葉に目を見開く飛鳥。

 

『!!!』

 

―手違い子っていうのは、確か…

 

―親が望んでない出産で生まれた子って奴だろ?

 

―そうそう。

 

その会話を聞いた飛鳥はうつむいて、それから狂ったように笑い出した。

 

『ふふ、ふ。あはははっははは!!!いいねぇ、その手違い子って言うの。せやな、うちはそれやな。で?それがどうしたってーの?そんなの、親から耳にタコ出来るくらい聞かされてきたっての「お前は間違えて生んでしまった」だの「誰からも必要とされない出来損ない」ってな』

 

言い終えてから、飛鳥は、心の中で呟く。それも、うつむきながら。

 

―今更そんなの。そんなの……そんなの…悲しいとか、思うはず、ないから。だから、さ?うちを――

 

その先を言おうと口を開いた。だが、そこで飛鳥の意識は沈んでいくのだった。

 

・・・

 

「―きろ!!アスカ!」

 

「…!?」

 

「ワゥ!!」

 

突然聞こえた声に飛鳥の意識は浮上する。だが、身体を起こそうとしたところでラピードに左の二の腕を噛まれた。そこまで強くはなかったが、それでも飛び起きるには十分すぎるほどの強さだった。

 

「いっ…!!!」

 

「あ、おい何してんだラピード!」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

飛び起きた飛鳥は噛まれた二の腕を噛まれていない方の手でさすりながら、ユーリ達に大丈夫だと告げる。

 

「だ、大丈夫です。甘噛み、より少し強い程度でしたから…」

 

「魘されてたけど、大丈夫か?」

 

「顔色が良くないですけど…」

 

「夢の内容、覚えてないのでわかりませんが、大丈夫ですよ」

 

「そうか。なら行くか」

 

エステルは飛鳥の顔色が悪かったので大丈夫か、と気遣うがまたもや大丈夫と流されてしまった。心配そうに飛鳥を見るが、彼女は表情があまり変わらないらしい。そのため、本当に大丈夫なのか、演技で隠しているのさえ、エステルにはわからなかった。

 

一方飛鳥は、ぼうっと空を見つつユーリ達について行くのだった。

 




5話目、終了です。

主人公の悪夢は誰が見せてるんでしょうね?
それから、あのドラゴン型の黒いモンスターも。

ではでは、また次回にて会いましょう。


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6戦目

どうも遅くなりました。

待っていてくださった方には感謝です!!

冒険王から出発した所です。


あれから、飛鳥達はまた歩き出した。すると、エステルがユーリに話しかける。

 

「ユーリは魔術を使わないのです?」

 

「使わないんじゃなくて使えねえの。オレ、そっちの才能はないらしくてね」

 

「でも、魔道器(ブラスティア)さえあれば、魔術の理論を学ぶことで誰でも使えるようになるはずですよ?」

 

「……」

 

「だから、その魔術の理論を学ぶ才能ってのが、オレにはなかったって話だよ」

 

「それってつまり、ユーリは勉強が嫌いなんですね」

 

「そうとも言うな」

 

「ク~ン」

 

飛鳥はこの会話を聞いて、原作通りだとわかると、少しほっとする。自分の発言一つで物語がどう転ぶ変わらない状況だとわかっているため、自分の方に何か話を振られるか、話さなければならない状況にならない限り飛鳥はほぼ何も言わない。

 

「アスカは魔術使えるんです?」

 

「え?……どう、でしょう…昔、使えてたのかも、覚えてませんから…」

 

「でも、お前は魔道器も持ってねぇよな?」

 

「あぁ、確かに持ってないですね……だったら、昔は使えてたとしても、今は使えませんね」

 

「そうですね。アスカは武器で攻撃するのが一番に見えますし」

 

「武器というか…私はコレで援護するくらいしか、できませんよ…?」

 

「援護でもいいじゃねぇか」

 

「ですね!」

 

エステルに話しかけられ、考えるような、思い出すようなしぐさをしつつ、覚えていないという。そのまま話は自然に終わったのdえ、飛鳥は一息つく。そこでふと顔をあげてみると、砦が見えてきた。

 

「お、見えてきたな」

 

「はい!」

 

ユーリが先頭を歩き、見えてきた砦へと足を進めた。

 

・・・

 

中に入ってみると、騎士団の人達がたくさんいた。これでは、騎士団に見つかるのも時間の問題ではないか、と思いつつも成り行きを見守る。

 

「ユーリを追ってきた騎士でしょうか?」

 

「どうかな。ま、あんま目立たないようにな」

 

「うん」

 

飛鳥は、この会話で、このデイドン砦で起こることを思い出した。飛鳥自身、あまりヴェスペリアのことについては大まかなあらすじは知っているが、細かなところは知っている所もあるがほとんど覚えていない。何せ、現実世界で動画を見ていただけなのだ。それも、特に覚えようと思ってみたのではなく、なんとなく話が面白いからどんなのだったか見直そう、そんな気持ちで見ていたため、あまり記憶に残っていないのである。

 

「あれ?」

 

考え事をして歩いていると、ユーリ達と離れてしまったらしい。だが、目立つ格好をしている2人組なので、案外すぐに見つかった。

 

「ま、待ってください…」

 

「おーいたいた」

 

「はぐれちゃダメですよ!」

 

「すみません…ぼーっとしてたら…って何処に上ろうとしてるんです!?」

 

「ちと様子見だ」

 

「え…」

 

ユーリはいかにも関係者以外立ち入り禁止だろう所に、足を踏み入れる。そしてそのまま砦の見晴らしがいい場所に上る。すると、銀髪の長い髪を持った人が立っていた。飛鳥はこの人物を見ただけで、デューク・バンタレイだとわかった。理由はこの人物は、ヴェスペリアのラスボスだからである。現段階ではユーリ達はそんなことはみじんも知らないだろうが。

 

「…おい。お前、何をしに来た」

 

「!」

 

「ん?アスカ?」

 

「私は……記憶を、私の記憶を…探してるだけ、です」

 

「……そうか」

 

飛鳥の答えに、一応は納得をしたのか、短くそう答えてそれ以上は何も言わなかった。ただ、このやり取りで飛鳥にはまた一つ、わかったことがある。それは、デュークが飛鳥はこの世界の人間ではなく、イレギュラーな存在だということに気付いている、ということだ。

 

飛鳥は、ふと、遠目ではあるが雑貨屋を見つける。それを見て、自分の武器であるチャクラ無を使うには分厚い手袋が必要だろう、と思いユーリに買い物をするといってから、雑貨屋で手袋を買い、すぐにその場でつけてみる。すると、案外、着け心地がいいものだった。買い物が済んだので、すぐそこで待ってくれているユーリ達のもとへ戻ろうと思った途端。橋の方から鐘の音が聞こえてきた。

 

「「「!!」」」

 

橋の方を見ると、外の様子が見える。すると、遠くから砂煙が固まってこちらへとやってくるのが見えた。遠すぎてみてないだけで、姿は見えずとも足音は聞こえる。しかもその足音は複数だ。足音の主はどう考えても魔物しかいない。鐘が鳴る中で、外に出ていた住民たちは中へと走ってくる。

 

―…?足が、震えてる?あぁ、そっか。怖いんだ、うち。そりゃそっか…でも、大丈夫。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫……

 

慌ただしい中、飛鳥は目をつぶり心の中で大丈夫、と繰り返していた。そして、何度目かの大丈夫、を言い終えた時だ。飛鳥は目を開き、目の前の状況を見る。すると、魔物の中に一際大きい魔物が居るのに気付く。

 

「数も多いけど…あの大きいのは…」

 

「あれ、全部、魔物なの……」

 

「帝都を出て早々にとんでもないもんにあったな。オレ、なんか憑いてんのか?」

 

そう言ったユーリは閉まりかけている門へと走り出した。それを見て、橋の上の見張り台に居た女性が何か言いかけるがもう遅い。そう、思った時だった。

ラピードが門を閉めようとした兵士に器用に尻尾で叩いてからひと吠え。

 

門を潜ったユーリは後ろからエステル来たのを止めようとするが、その制止も聞かず、エステルはユーリの横を通り抜ける。すると、飛鳥もすぐに横を通り抜けたのが見え、ユーリは叫ぶ。

 

「おい!何する気だ!!」

 

「女の子を、お願いします」

 

「はぁ!?…わーったよ!」

 

飛鳥は魔物の軍から1体、黒いドラゴンの形をした魔物がこちらへ飛行してくるのを見つけ、チャクラムを両手に構えてすぐに狙いを定めて投げる。狙い通りにちゃんとチャクラムは飛んでいき、2回切ると飛鳥の手元に戻っていく。それを器用にキャッチしながら、まだ倒せていない黒いドラゴンと対峙する。大きさは3、4メートルと言った所でそこまで大きいわけではないが、血のように赤い目をみたアスカはまた足が震えだすのを感じた。

 

―はぁ…いい加減、慣れろ。もう2回目だろ、会うの。

 

そう言い聞かせ、再び武器を構えた時だった。後方から声が聞こえたのだ。

 

「お人形、ママのお人形~!」

 

その声に後ろを振り返ると、そう遠くない場所にピンクの人形が落ちていた。そしてユーリがこっちへと近づいてきたのを見た飛鳥は人形を拾い、ユーリへとパスする。そして、銃をホルダーから抜いて撃った。ちゃんと黒いドラゴンに当たったようだが、確認してる暇はない。銃を撃ったら全力疾走だ。

 

―くっそ、なんでこうなった!ほっとけばいいのに…!

 

自分でも何故動いたのか分からなかった。そして最後はユーリに引っ張られなんとか門が閉まる前に門の内側に入ることが出来た。

 

「ったく、お前危なっかしいな」

 

「…すみません」

 

そうやって話してると、住民達からお礼を言われる。飛鳥は何もしてないと言ってそっぽを向いていた。住民たちはなんとか魔物の襲撃を防げたので、元の場所へと散っていく。

ユーリ達も一安心して、息をついた。

 

「お前やるじゃねえか」

 

「すごいです!アスカ!」

 

「えっと…?」

 

「お前、あの黒いドラゴンの魔物に最後、銃で撃ったろ?」

 

「はい…何か、問題でも…?」

 

「いや。むしろ逆だな。アレ、眉間撃ち抜いてたからな」

 

「はい…?」

 

「やっぱりアスカは強いんですね!」

 

「あ、あの時は…無我夢中、でしたし…!そんなこと、ないですよ…」

 

今までほめられたことのない飛鳥は何とも言えない気持ちになり、そっぽを向く。だが、内心では

 

―……良かった。シューティングの腕が役に立ってるんやね…

 

と思ってホッとしていたのだった。




というわけで、6話目でした。

次はデイドン砦~になります。

不定期更新ですが、よろしくお願いします。


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7戦目

大変お久しぶりです。

一年以上放置してしまい、すみません。

まだ待っていてくださった方がいたら感謝しきれないほどです…!!



今回はデイドン砦~です。


・・・

 

ひと騒動があった後、ユーリ達は一息入れていた。さすがにあの騒ぎのあとすぐ動けなかった。すると、1人の帝国の兵士が近づいてきて言った。

 

「そこの3人、少し話を聞かせてもらいたい」

 

そしてその問いにユーリ達が答えようとした途端。

 

「だから、なぜ通さんのだ!魔物など俺様がこの拳で、ノックアウトしてやるものを!」

 

そんな怒鳴り声が聞こえてきた。聞こえてきた怒鳴り声に思わずユーリ達に近づいてきた兵士も、ユーリ達も一斉にそのほうを向く。すると、そこには体格のいい、背中に彼の等身大はあろうかと思われる大剣を背負った男と、薄い黒色のような、黒に近い灰色のようなフードを深めにかぶった細身の男、そして少し離れて腰に大きな半月状のブーメランのような武器をつけている少女がいた。主に、大剣を背負っている男とフードを深めにかぶった男が兵士に何やら話しているようだ。しかし、何やら自分たちの話が通じないと察するや否や、大剣を背負っていた男が自らの武器を手に取り、思い切り地面に叩きつけた。すると、ズドン!!という音と共にその男の周辺には地響きが起こる。そしてここで「鬱憤を晴らす!!」などと言いながら武器を向けるのだった。その様子に兵士たちは「これだから…」という様子で集まった。

 

「あの様子じゃ、門を抜けんのは無理だな」

 

「そんな……フレンが向かった花の街ハルルはこの先なのに」

 

「騎士に捕まるのも面倒だ。別の道を探そう」

 

門付近があの騒ぎのため、通れそうにないと判断したユーリ達は別の道を探すことに。

 

―…大剣振り回してるのがクリントでフードかぶってるのがティソンで…女の子がナン、だっけ?相変わらずで。よかった…

 

飛鳥はそんなことを思いながらもはぐれないようにユーリ達についていく。とりあえず砦の外に向かっていたのだが2人組の男女がユーリ達に声をかけてきた(声をかけたのは女性の方だが)。しかもいきなり

 

「ねえ、あなた。私の下で働かない?報酬は弾むわよ」

 

と仕事の誘いで。ユーリはいきなりそんなことを言われ、返事もせずにそっぽを向く。しかし、それがいけなかったらしい。男性のほうが社長(ボス)に失礼だ!と怒ったのだ。しかし、ユーリは目も合わせずに

 

「名乗りもせずに金で釣るのは失礼って言わないんだな。いや、勉強になったわ」

 

なんて言い返すものだから、エステルは不安げな様子で見守っていた。飛鳥の方はこの先を知っているため、特に表情も変えずに見ていたが。

 

「予想通り面白い子ね。私はギルド「幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)」のカウフマンよ。商売から流通までを仕切らせてもらってるわ」

 

カウフマン、と名乗る女性が所属ギルドと何をしているかを軽く言う。が、ユーリは興味なさげにつぶやく。すると、いきなり、地鳴りがし始めた。ゴゴゴ…ゴゴゴ…と定期的に繰り返し音がする。その音がする中、カウフマンは言う。

 

「私、今、困ってるのよ。この地響きの元凶のせいで」

 

「あんま想像したくねえけど、これって魔物の仕業なのか?」

 

「ええ。平原の主のね」

 

「平原の主?」

 

エステルが聞きなれない言葉に聞き返す。飛鳥は成り行きを見守ることをしているため、特に何も言わない。ただ、扉の方をじっと見ているだけだ。

 

「魔物の大群の親玉よ」

 

「あの群れの親玉って……世の中すげえのがいるな」

 

「どこか別に道から、平原を超えられませんか?先を急いでるんです」

 

エステルがそういうが、カウフマンは背を向けてもったいぶったように言う。その言葉にユーリは待つしかないか、と思ったのだが。エステルは急いでいるのに待ってなんかいられない、と言ってほかに抜け道はないかを聞きに走って行ってしまう。その様子を見てラピードが何か思うところがあったのだろう。主人であるユーリを一度見上げると、エステルのあとを追いかけて行った。カウフマンと二人きりになったユーリは彼女に問う。

 

「流通まで仕切ってるのに別の道、ほんとに知らねえの?」

 

それを聞いたカウフマンは平原の主が去ったなら、ユーリ達を雇って強行突破できたかも、という。が、ユーリ達が協力する気がないなら無理な話だともいう。その言葉に、ユーリはカウフマンは護衛がほしいと言っていると思ったらしく(実際そうだともとれる)、護衛なら騎士に頼め、という。が、カウフマンの

 

「自分で生きるって決めて帝国から飛び出してきたのに今更助けてくれはないでしょ。当然、騎士団だって、ギルドの護衛なんてしないわ」

 

という言葉を聞いて感心したらしく

 

「へえ、自分で決めたことにはちゃんと筋を通すんだな」

 

と返した。ここまでの成り行きを見守っていた飛鳥は、細かいことは忘れてしまったが、確か次はあまりよろしくない噂が流れている、クオイの森、というところに行くはずだ、と思っていた。実際、原作通りにいけばそうなるはずだからだ。だから、飛鳥は何も言わないでいた。そうしているうちに話もまとまり、原作通り、クオイの森へ行くことになる。ユーリもエステルのところへ行こうと踵を返したので、飛鳥もついていこうとした。が、何故かカウフマンに声をかけられた。

 

「ねぇ、そこのお嬢さん。さっきから私達の会話を見守りはすれど、何も言わなったわよね」

 

「えぇ…それが、どうかしましたか?」

 

「私が道を教えた時、あなたは安心したような目をしたから、気になったのよ。まるで、私が道を教えるのがわかってたみたいじゃない。まぁ、私の考えすぎだとは思うけどね」

 

「……確かに、道を教えていただけましたから、安心はしました。先を急いでるのは、本当ですから」

 

飛鳥は、いきなり声をかけられてびっくりはしなかった。が、この先も向こうから接触があるなら、どうしよう…と考えていた。別に困ることを聞かれるわけではないのだが、何故か原作より色々と鋭くなっている人が多い気がするな、と思ってしまう。そうやって考えていると、ユーリに呼ばれたので、ついていった。

 

・・・

 

砦から出て、教えてもらったクオイの森に進む道中。砦の中でのスキットも原作通りで、よかったと思っていたのだが、道中のスキットはそうはいかなかったらしい。最初はユーリとエステルが話していたので聞いていたのだが、声をかけられたのだ。

 

「アスカもそう思いますよね?」

 

「え?…まぁ、確かに生き生きとしている時はありますね」

 

「ほら!アスカもこう言ってますよ!」

 

「アスカ、お前も人を見るのが趣味なのか?」

 

「いえ…趣味では、ないです。ですが…そうですね、癖のようなものですかね」

 

ユーリの問いにそう答えた飛鳥。その顔は悲しそうでいて、少し微笑んでいるように見える、という何とも言えない顔だった。今まで飛鳥はほぼ無表情だったためにユーリとエステルは驚いた。そして、ユーリはその顔はいいものではないとわかっていたので、何か過去にあったのだろう、と察した。そうして歩き、魔物との戦闘もなくクオイの森に無事ついた一行。そこは、まだ日が高いはずなのに木々が日の光を遮っているようで薄暗かった。加えて、森というだけあって足場もあまりよくなかった。

 

「……この場所にある森って、まさかクオイの森……?」

 

「ご名答、よく知ってるな」

 

「クオイに踏み入る者、その身に呪い、ふりかかる、と本で読んだことが……」

 

「なるほど、それがお楽しみってわけか」

 

2人の会話を聞きながら、飛鳥はこんな森の中で自分はちゃんと魔物を倒せるだろうか、と不安に思っていた。確かに慣れていないと森の中での戦闘は難しいはずだ。しかし、現実世界にいた飛鳥が慣れていたとしたら、おかしな話ではあるのだが。そうして不安を抱えながらも奥に進む飛鳥だった。




ということで、かなり時間がかかりましたが、デイドん砦~クオイの森に入るまで、でした!

次回はいつかわかりませんが、次回もよろしくお願いします!


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8戦目

まだ夏休み中ですので、今のうちに更新!

ということで、8話目です!

まだまだ主人公の過去やらなんやらは全然ですがそのあたりも気長待っていてくだされば…!



今回はクオイの森~となります!


森の入り口でややあったが先に進むが、エステルが呪いについて知っていることを話してくれるのだが、聞いていて、嘘だろうと思うものばかり。飛鳥は知っているので怖くも何もなかった。戦闘が上手くいくかが心配ではあったが、実際にやってみないとわからないので、考えても無駄かと思い直し、ユーリについていく。ふと気が付くと、相変わらずラピードは睨んでいた。しかし、最初のように常に睨んでいるわけではなくなったようだ。そのことに少し安心しつつも歩いていると、突然エステルが声を上げた。どうやら、何か音がするらしい。

 

「足元がひんやりします……まさか!これが呪い!?」

 

「どんな呪いだよ」

 

「木の下に埋められた死体から、呪いの声がじわじわと這い上がりわたしたちを道連れに……」

 

「……おいおい」

 

本気で呪いがあると信じ切っているエステルに呆れるユーリ。が、すぐに何か見つけたようで興味はそちらへ移ったようだ。

 

「お前は怖くねえのか?」

 

「はい。私は、自分の目で見たものしか信じません。まぁ、一部例外もありますけどね」

 

「ふーん…」

 

会話をしながらエステルが見つけたソレに近づいてみると、ソレは壊れた魔導器(ブラスティア)だった。それもかなり大き目のものである。だが、苔が生えているところを見るとかなり昔のものだとわかる。ユーリが休憩を提案したが、エステルは大丈夫だと言って先に進もうとする。が、壊れたソレが気になったのか、近づいた。その、瞬間。眩い光があたりに広がった。一瞬だけだったが、かなり強い光だったらしい。光がおさまったことで目を開けてみると、そこには倒れているエステルと膝をつく飛鳥の姿が。

 

「おいエステル!アスカ!」

 

「だいじょう、ぶ…です……少し、()てられただけ、です…」

 

飛鳥はそう言って立ち上がるが顔色はよくない。

 

―うちは、エアルを取り込んで銃の弾にしているはずやから、こういうのには強いはず、なんだけどな…でも、体を突き抜けたのはうちの体の許容量を超えるもんやった……なんでや?エステルがいたから…?

 

考え事をしていたせいで、返事が遅れた飛鳥はユーリに心配され、慌てて大丈夫だと答える。が、顔色がよろしくないので、説得力は皆無のようだ。ちょうど休憩も挟むから、と少し開けたところで腰を下ろした。エステルが横になっている間、ラピードは彼女の枕代わりになっているようで、じっと伏せをして動かない。

 

「なぁアスカ。今まででなんか記憶が戻るようなこと、あったか?」

 

「そう、ですね…ぼんやりと…家族、でしょうか。誰かと一緒に住んでいたような…そんな記憶と、誰かまではわかりません…が、大切な人がいた、という記憶が思い出せました。フラッシュバックだったので、本当にそうなのかは…わかりかねますが…」

 

「そうか。ぼんやりとでも戻ったんだな、記憶」

 

「はい。でも私は……っ!?」

 

「おい、アスカ!?」

 

何かを思い出そうとしたせいか、頭に激痛が走る。だが、飛鳥にはないはずなのだ。この世界で過ごした記憶など。当たり前である。なぜなら、飛鳥は現実世界から飛ばされてきたのだから。なのに何故か忘れている、と脳が主張する。その証拠に、この頭痛。

 

―なん、で…!?うちは、この世界でなんか過ごしたことないんやで!?なのに…!!どうして…!!!この、記憶は…何!?まさか…世界に、イレギュラーとして来た…はずなのに…ストーリーやらイベントやらに、組み込まれている…あの主要メンバーの中に、私も…入る、だから……過去を、“無理やり作った”!?だから、その記憶が、抜け落ちてる、って設定…なんか…!!!

 

飛鳥は納得はしていないが自身の頭痛の原因を突き止めた。が、それでも頭痛が治まってくれるわけではない。ズキン、ズキン、と脈を打つかのような痛みに思わず目をつぶる。

 

「だい…じょうぶ、です……思い出そうと、したら…少し、頭痛が…しただけ、ですから」

 

まだ痛む頭を軽く抑えつつも、ユーリには大丈夫と告げる。心配をかけたくない、と無表情を貫いたが、それでも頬に伝う汗や顔色まで変えることはできない。気が付くとユーリが顔を覗き込んでいた。

 

「!?」

 

「こんなに顔色が蒼白で冷汗も出てるってのに、本当に大丈夫なのか?」

 

「別に、動けって言われりゃ動けるよ。“こんな程度”の痛みなんて日常茶飯事だったし。それにもう、慣れた」

 

「――は?」

 

思わず素の方を出した挙句、軽く俯いた飛鳥。俯いてから、しまった、と思うがもう遅い。あれだけ無表情で、無口を装っていたのに、簡単に素を出してしまった。いや、顔は無表情のままなのだろうが、口調は完璧にアウトだ。

 

「アスカ…お前……」

 

「……すみません、お見苦しいところを。いずれ、すべて記憶が戻れば…その時は、きっと、〝本当の私〟でいられると、思います。ですから、今は……今はまだ、聞かないで、くれませんか…?」

 

「わかった。今は、聞かねえ」

 

「ありがとう、ございます」

 

飛鳥は咄嗟にそう言って何とか問われることを逃れる。しかし、一回素を出してしまった以上、この先いつ素を出してしまうとも限らない。何か、対策を打たねばと思う。だが、素は記憶が戻った時になればいいものと考えるならば。ならば、咄嗟に素が出てしまっても、記憶が戻って混乱している、という風を装えば大丈夫なはずだ。大丈夫、自分の演技力を信じろ。飛鳥はそう思って、ひとまず考えるのをやめた。




ということでしたが、全然進んでません…

すみません!

次はエステルが目覚めたところ~となります。


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9戦目

前回でやっとこさ主人公のヴェスペリアでの設定、が少し出てきたかと。

描写がへたくそなので、年にカットしてたり、漢字変換してたりと色々ありますが、大目に見てくださるとうれしいです。

今回はエステルが目覚めたところ~となります。


・・・

 

しばらくして、エステルが体を起こす。まだ少しぼうっとするようだが、それ以外は特にどこが悪いというのはなさそうだ。

 

「大丈夫か?」

 

「うっ……少し頭が……。でも、平気です。わたし、いったい…」

 

「突然倒れたんだよ。何か身に覚えはないか?」

 

「もしかしたら、エアルに酔ったのかも知れません」

 

「エアルって魔導器(ブラスティア)動かす燃料みたいなもんだろ?目に見えないけど大気中に紛れてるってやつ」

 

「はい、そのエアルです。濃いエアルは人体に悪い影響を与える、と前に本で読みました」

 

飛鳥は2人の会話を聞きながらここも大丈夫だ、と思う。やはり自分が会話に加わらないのであれば、基本的に原作通りに進むらしい。それがわかったので少しだけ安心する飛鳥。しかし、それでも、自分が加わることで本来なかった出来事がある、というのをわかっているだけに飛鳥は警戒をしていた。もし、その出来事が原因で誰かに危険が及ぶのであれば全力でそれを阻止せねばならないからだ。かといって途中で自分が死ぬことは許されないだろうこともわかっている。ここに飛ばされた理由が「この世界を救うこと」だからである。さらにここに飛ばした声の主曰く「飛鳥だから」とも言っていたことから、自分は何が何でも最後まで生き残らなければならない。いったんそういうことを考えだしてしまうと、周りの声が聞こえなくなるほど考え込んでしまう飛鳥。だから、いきなりユーリに声をかけられ、返事をした。が。

 

「これ、エステルと一緒に食ってみろ」

 

と差し出されたものを受け取り、指示通りエステルと同時に一口かじる。考え事をしていなければソレに気付いたのだろうが、もう遅い。かじった途端、木の実独特の苦さが口いっぱいに広がる。これは流石に無表情でいることはできなかった。苦すぎて素が出てしまった。エステルはやはり貴族だけあって飛鳥のようにリアクションは大きくはなかった。

 

「っ~~!にっが!!」「……うっ」

 

「はははっ、これで腹ごしらえはやっぱ無理か」

 

未だ苦さのために震えている飛鳥と、無理をして食べようとするエステルを見たユーリは簡単なものなら作れる、と言って作ってくれた。その手際の良さに飛鳥はすごい、と思ったのだが。まず、そういうものが作れるならあんなものを食べさせないでほしい、と未だ口に残る苦さにため息をついた。

 

・・・

 

料理をするたえに起こした火の傍に腰を下ろしてもう少し休憩をしていた3人と1匹。飛鳥は相変わらず2人の会話を聞きながらぼーっと火を見つめる。だが、ふと、エステルの言葉が耳に入る。

 

「うらやましいな……わたしには、そういう人、誰もいないから」

 

「いても口うるさいだけだぞ」

 

「……いる方が、いいよ。私も、そんな幼馴染みなんて、もうおらへんから…」

 

「え?」「アスカ…?」

 

会話を聞いてるだけのはずが、思わず口に出していた。そして、現実の記憶がフラッシュバックしたせいで、俯く。

 

「喧嘩したって、何やっても勝てなくたって。それでも、傍にいてくれる人が、自分を気にかけてくれる人がいるだけで……随分と、違うもんやで」

 

「アスカ、記憶が戻ったんです?」

 

エステルにそう聞かれて、ハッとする。本当ならここで全部この気持ちを吐き出してしまいたい。そう思うがそんなことしたら、この先がどうなるかわからない。だけど。ほんの少しだけなら。

 

「……うん。ほんの、少し…な。でも、この記憶は忘れていたかった…!こんな記憶がなんで今…!こんなの…―――やんか…!」

 

一度あふれた想いは、中々止まらない。なぜ、今この記憶が。今はそれしか考えられない。その記憶は、飛鳥にとって1、2を争うほどのトラウマの記憶。ユーリ達は今まで無表情で無口で、どこか距離を取っていた飛鳥がこれほど、と言っても比較対象がないが取り乱している姿を見て驚いた。そしてユーリは飛鳥には何か抱えている闇があると確信したのだった。

 

「アスカ!落ち着いてください…!」

 

「………っ」

 

「大丈夫か?」

 

「………すみません、もう大丈夫です」

 

「その様子だと、随分堪える記憶だったんだな」

 

「えぇ。本当っっっに今、自分を殴りたい気分です…!!」

 

いつもの調子に戻った飛鳥だが、無表情のはずが何故か声に感情が出ているようだ。自分に腹が立っているようで、握りこぶしを作っている。とりあえず、ひと段落した所でユーリがサンドイッチを作ってくれたのでそれを口に運ぶ。そうしていると、エステルが声をかけてきた。

 

「アスカは料理できるです?」

 

「私ですか?そうですね…作れますが…味は最悪らしいので、料理には全っっっっく自信がないですね」

 

「そんなに不味いのかよ…」

 

「えぇ、残念ながら」

 

そういった飛鳥だが、不味い、と言われたことが不満というように聞こえる。特に、残念ながら、と言ったとき一瞬だがいかにも不満です、という顔をした気がするのだ。ユーリとエステルはその顔をばっちり見ていたので、ユーリは飛鳥が味音痴なのか、と思ったがエステルは首をかしげただけだった。

 




ぜんっぜん進んでなくてすみません…

次こそはカロル先生が仲間になるところまでかけたらいいなぁ…と思います。

次回は休憩が終わって~になります。


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10戦目

10話目になりました!

こんな亀更新でも二桁いきました(笑)

今回は休憩が終わって~となります。


・・・

 

休憩を終えて先に進むユーリ達。だが、少し先に進んだところでラピードが右手にある茂みに向かって唸りだした。そしてそのすぐあとに

 

「エッグベアめ、か、覚悟!」

 

という、震えた声と共に小さな男の子が飛び出してきた。飛び出してすぐ攻撃―おそらく奇襲だと思われる―をしようとしたが、身の丈よりも大きい武器に振り回されてしまい、その場でグルグルと回転してしまう。飛鳥はこの光景を見て、武器に振り回されるってこういうことか、と思ってしまうのだった。しかし、すぐ止まると思われていた回転も、勢いが付き、遠心力も相まって中々止まらなかった。それを見かねたユーリは剣を構え、狙いを定めたかと思うと、少年の持っていた武器に一撃を当てた。少年ははでにすっ転んだが、なんとか止まったようだ。そこで様子を見に近づいてきたラピードを見て短く悲鳴をあげ、そのまま命乞いをし始めた。よっぽどラピードが怖かったらしい。

 

「忙しいガキだな」

 

ユーリがそう呟く中、エステルは大丈夫だと言いながら近づく。少年の口から魔物、という言葉が聞き取れる。そうやら、ラピードを魔物と勘違いしていたようだ。しばらくして、ひと段落したところで、少年は自身の名を名乗った。

 

「ボクはカロル・カペル!魔物を狩って世界を渡り歩く、ギルド『魔狩りの剣』の一員さ!」

 

「オレはユーリ。それにエステルとアスカ、ラピードだ」

 

少年―カロルが名乗ったのでユーリが自分たちの名前を名乗るが、そのまま踵を返して立ち去ってしまう。これにはさすがのアスカもどうしようかと思っていたが、エステルが謝り、お辞儀をしたので、アスカも合わせて軽くお辞儀をして踵を返した。一方、少年の方はというと、一瞬ぽかん、とした後ユーリ達を追いかけ、森に入りに来たんだったら…と言うのだが、自分たちはハルルに行くためにここまで抜けてきたんだと言った。すると、驚いた。どうも、この少年もクオイの森に本当に呪いがあると思っていたらしい。だが、ユーリ達が森を抜けてきたと知るや否や、質問をしてきた。

 

「あ、なら、エッグベア見なかった?」

 

「ユーリ、知ってます?」

 

「さあ、見てねえと思うぞ」

 

「そっか……なら、ボクも街の戻ろうかな……あんまり待たせると、絶対に起こるし、うん、よし!二人だけじゃ心配だから魔狩りの剣のエースであるボクが街まで一緒に行ってあげるよ!」

 

何やら一人でぶつぶつとつぶやいた後、自分も街に戻ると決め、ユーリ達に自分は魔道器(ブラスティア)を持っているし!と自慢げに言う。だが、エステルもユーリも魔道器を持っており、持っていないのはアスカだけだった。それを見たカロルはこれでどうだ!と、魔物の図鑑を取り出した。ただし、途中から白紙だったが。そうして色々とあったがハルルまでカロルが一緒に行くことになった。しばらく話しながら(と言っても飛鳥はほぼ聞いているだけだったが)森を抜けた。

 

・・・

 

ユーリ達が森を去ったあ後。壊れている魔道器が魔核(コア)もないのに光を放ち始めた。そこへ剣を片手に持ったデュークが現れ、何やら術のようなモノを発動した。

 

 

・・・

 

森を抜けた一行は街を目指して歩く。戦闘もあったが、特に問題なく敵を倒して街に無事到着。しかし、街にある大きな桜の樹は花は色がくすんでしまっており、結界もない様子だった。カロル曰く、満開の時期になると結界が一時的に弱まるという。そこを魔物に襲われたらしく、魔物は倒したが徐々に枯れ始めているらしい。そこまで話すとカロルの目の前を女の子が走り抜ける。その女の子を見た途端、カロルは用事があるといって走って行ってしまった。ユーリはあきれ気味にその様子を見つつエステルにフレンを探すのかと、確認した。はずだったのだが、街の中にいる怪我人達をみて走って行ってしまうのだった。飛鳥は、とりあえずはユーリと行動するのが一番だと思っているので、何も言わずにユーリの傍にいるのだが。

 

ジジ……ジジジ…

 

「っ!?」

 

座り込んでいる怪我人をみていると、いきなり飛鳥の耳にそんなノイズ音が走る。そしてすぐに灰色の何かと今の景色が重なった。その灰色の何かはすぐにわかった。座り込んでいる男女の大人に、そのすぐそばに駆け寄って膝をつく、幼い飛鳥だろう子供。そのこともは必死に「お父さん!お母さん!」と言っている。が、飛鳥にそんな記憶はない。おそらく“この世界”での飛鳥の両親との記憶なのだろう。その上、ない記憶を無理やり作られ、それを「知る」ということで「思い出す」ということになっているために、飛鳥はひどい頭痛がしていた。先ほど、森でフラッシュバックした時よりもひどいものだ。しかし、吐き気がするほどのものではなかったため、得意のポーカーフェイスで無表情を貫く。

 

「アスカ、見覚えのあるもんとかねえか?」

 

「……いえ、ないですね」

 

そんな会話をしながらエステルのもとへ行くと、フレンらしき人の話が出ていたので訪ねてみると、ここにいたらしいことがわかる。が、もうこの街にはおらず、結界を治すために東へ向かったという。だが、ここで待っていれば会えるとわかりエステルも少し安心したようだ。そこでユーリがハルルの樹を見に行こう、と提案したので皆で見に行くことになった。




今回はハルルの樹を見に行くところまで、です。

次回はハルルの樹を見に行くイベント~となります。


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11戦目

遅くなってしまい申し訳ないです…!

今回はハルルの樹を見に行くところ~となります。




・・・

 

ハルルの樹を見に行ったユーリ達はその樹の大きさに圧倒される。飛鳥もさすがにここまで大きな樹は見たことがなく、思わず声が出た。無理もない。何故なら、飛鳥の住んでいた現実世界にもあるには、あるが飛鳥が済んでいた近辺にはなかったからである。普通の大きさの木であれば、そんなに驚きはしなかったのだろうが。と、そんな風に飛鳥が樹を眺めていると、ユーリの言葉が耳に入る。

 

「なあ、どうせ治すんなら、結界の方にしないか?」

 

「え?」

 

飛鳥は、エステルが怪我人を治すということに対して、そう言ったのだろうと思って何も言わず、成り行きを見ていた。その間、何故かラピードがこちらを睨んでいたが、ここでどうこう言ったところで何も変わらないだろうことはなんとなく察していたのでできるだけ目を合わせないように、樹を眺めているのだった。すると、そこへうつむいたカロルがやってくる。元気がないカロルに、エステルが声をかける。一緒に樹を治すのを手伝ってほしい、と。すぐ近くにいた老人も、原因を調べてくれているといった。しかし、なんだ、とそんなことは知ってるとでも言いたげな返事を返すカロル。どうやら樹が枯れてしまった原因を知っているようだった。

 

「理由なら知ってるよ。そのためにボクは森でエッグベアを……」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「土をよく見て。変色してるでしょ?」

 

カロルの言う通り、足元の土を見てみる。確かに、よく見てみると土が変色していた。彼が言うには、街を襲った魔物の血を土が吸い、その血を吸った土が樹にとって毒になっているのだと話す。原因を話してくれたカロルにエステルは物知りだと言い、カロルも

 

「……ボクにかかればこんくらいどうってことないよ」

 

と言うのだが、その顔は暗いまま。飛鳥はこの先の展開もある程度は把握しているし、今のカロルがどのような状況かというのも、一応ではあるが知っている。が、正確なところまでは覚えていないところも多数あるため、断言はできない。おそらく彼が所属しているというギルドが関係していると思われるが。

ユーリが樹の原因になっている毒を取り除く方法はないか、とカロルに尋ねる。カロルはある、とは言うが誰も信じてはくれないと言ってまた俯く。そんな彼にユーリは近づいて目線を合わせて問う。ユーリの目を見たカロルは、自信な下げではあったが答えてくれた。それは、パナシーアボトルという道具で、それがあれば治せるとのこと。それがわかればと、ユーリ達はよろず屋に行き、パナシーアボトルを買いたいというが、ちょうど切らしていてないのだそう。材料があれば合成できると聞き、その材料を聞く。ユーリはまた材料がそろえば来るとだけ言って、近くにいたカロルをクオイの森に行くと誘い、クオイの森へと足を運ぶのだった。

 

・・・

 

クオイの森に再び足を踏み入れ、進むユーリ達。途中で何度か戦闘があったが問題は何もなく、進んでいく。そこで、カロルが質問を投げかける。

 

「ねえ、疑問に思ってたんだけど、ふたり……ラピードもなんだけどなんで魔導器(ブラスティア)持ってるの?普通、武醒魔導器(ボーディブラスティア)なんて貴重品持ってないはずなんだけどな」

 

「カロルも持ってんじゃん」

 

「ボクはギルドの所属してるし、手に入れる機会はあるんだよ。魔導器発掘が専門のギルド、遺構の門(ルーインズゲート)のおかげで出物も増えたしね」

 

「へえ、遺跡から魔導器を掘り出してるギルドまであんのか」

 

「うん、そうでもしなきゃ帝国が牛耳る魔導器を個人で入手しようなんて無理だよ」

 

その話を聞き、飛鳥は引っかかりを覚える。そう、遺構の門にだ。そしてすぐその原因がわかり、納得する。

 

―あぁ、そっか。あれなんだっけ。まぁ、ずいぶん先だし、忘れてそーやなぁ…まぁでもそのほうがいろいろと余計なこと言わなくて済むし…

 

ぼうっとしながら最後尾を歩いていると、急に声をかけられた。

 

「ね、アスカも持ってるの?」

 

「え?私ですか?持ってませんよ」

 

「えぇ!?持ってないの!?」

 

カロルに驚かれ、首をかしげる飛鳥。特におかしいことは言ってないはずだ。なら、何故彼はこんなにも驚いているのだろうか。

 

「ん?そんなに驚くことか?さっき自分で言ってたじゃねえか。武醒魔導器は貴重品だって」

 

「だって、アスカ動きがすごかったじゃん!あれが武醒魔導器なしの動きとは思えないよ!それに、技名とか言ってたでしょ?それで発動してたし…」

 

「……私、技なんてありませんよ?身体能力も悪いほうですし…」

 

飛鳥は思わぬところで突っ込まれ、内心慌てる。が、それを表に出すことなどしない。それに、掛け声的な意味で「当たれ!」「はっ!」などの声を出す事はあるが、ユーリの「蒼破刃」やエステルの「ファーストエイド」のといった技を繰り出したり、術の詠唱をしたりということはしていない。何故なら、飛鳥はいまだにユーリやエステルの持つ、術や技を習得していないからだ。

動きに関しては、ようやく前後にステップができるようになったかもしれないという程度で、本当にできているかは怪しい。ガードは武器があるためか、一応できるようだがそれでもしないほうが多い。加えて言うなら、飛鳥は武器が銃とチャクラムだ。どちらも遠距離で戦うための武器のため、前線に出て戦うこともめったにしない。チャクラムを使っているときは近距離戦もできなくはないが、今の所はしたことがない。

となれば。何がおかしいのだろう?飛鳥は頭をひねる。どうしてもカロルの言う、おかしい、というその「動き」がわからない。

 

「嘘ぉ!?じゃあ戦いなれてるの?」

 

「…どう、でしょうか……生憎と記憶がないので…わかりませんね…」

 

「そ、そうなの!?」

 

「ええ。なので、慣れているのかすら…わからないんです」

 

「そっか…早く記憶が戻るといいね!」

 

「はい」

 

飛鳥も、カロルに言われて自分の衣服を軽く探ってみたが、特に何もない。ユーリやエステルのような腕輪もラピードのようなリングのようなものを身に着けているわけでも、カロルのような埋め込まれているものを持ち歩いているわけでもない。となれば、自分は持っていないと判断すべきだろう。カバンやチョーカーといったものに埋め込めるものであるため、持っているということもあり得るかもしれない。だとすれば。

 

―うちの持ってるもんだったら、銃のホルスター?それとも腰のベルト?でも特に何の変哲もないやんな…宝石とかついてないし…ベストとかも何もないしなぁ…

 

もしも、持っているのならば。ならば、まだ技や術を覚えてるレベルに達していないだけなのかもしれない。残念ながら自分が今ゲームで言えば何レベルになっているかというのは全くわからないが、まだ序盤という事もあって、9か10あたりだと思いたい。普通にレベル上げもせずに進んだのであれば、もっと低いのかもしれないがゲームではないのでこの戦闘回数がレベル上げをしている部類に入るのかそうではないかすらわからない。

 

―んー…まぁ、どうせうちは術なんて使わんやろーし、技は…まぁあってほしいけどなくても皆がどうにかしてくれる……いや、一騎打ちイベを組み込まれたら死ぬ!!決定打がないと相手にやられるし!

 

もんもんと考え事をしつつ、再び森を進んでいく飛鳥だった。

 




というわけで、今回はあまり進んでいませんが、ハルルの樹を見に行くところ~クオイの森へエッグベアを探しに行くというところまででした。

次回は引き続きクオイの森~となります。

夢主のレベルは今で10くらいです。


※ネタバレしておくと、一応夢主は武醒魔導器は持ってます。どれだとかどこだとかまでは明かしませんが(笑)


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12戦目

そのうち夢主の立ち絵とか描けたら、どこかに挿絵としてUPするかもしれません。
が、私はアナログ+色鉛筆なので、お粗末な出来だと思います。

まぁ、期待せず待っていてください(笑)


今回はクオイの森~となります。


・・・

 

しばらく森の中を進み、材料の一つであるニアの実は拾うことができた。あとはエッグベアの爪だけである。だが、普通に探すだけでは見つからないそうで、エッグベアの変わった嗅覚を利用するらしい。そのためにニアの実をつぶしてにおいをあたりに巻くようにしたのだが…

 

「――!!?」

 

「くっさ!!!」

 

そう、ニアの実のにおいはそれはもう強烈なにおいだった。嗅覚が人間より発達している犬であるラピードは倒れる。それもそうだろう、飛鳥たち人間でさえ鼻がもげそうな程なのだ。だが、においを気にしてられないらしい。カロルがいつ出てきてもいいように気を付けてと言ったからである。今すぐに出てこないにしろ、確かにそれは大事なことだと飛鳥は思いつつ、歩き出すユーリ達についていくのだった。

 

・・・

 

しばらく森の中を歩き、森での戦闘も慣れてきたころ。お目当てのエッグベアと遭遇した。早速戦闘に入る。ユーリがメインで切り込み隊長、エステルが術で回復or攻撃の援護、カロルがサブでユーリの援護、飛鳥が遠距離から援護といった形で立ち回る。

 

―待って…!!ゲームでも見てて人間より頭2つ3つ分でかいってわかってたけど!!そんでもでかくて怖い…!!

 

飛鳥は内心、とても穏やかではなかった。前線で戦っているわけではないものの、それでもエッグベアの大きさは遠目でも大きいとわかるほどのなのだ戦闘に慣れているものならいざ知らず、慣れていないのだ、飛鳥は。おびえて、驚いてが当たり前だ。それでもその感情を表に出さないところはさすがと言えるだろう。

 

「うわああ!?」

 

「っ!!」

 

カロルがガードし損ない、攻撃をモロに受けそうになる。しかし、寸でのところで飛鳥のチャクラムが飛んできてそれを防ぐ。すると飛鳥の攻撃を受けたエッグベアに隙ができ、ユーリがとどめを刺した。そのあと、無事にエッグベアの爪を回収し、帰路に着いた時だった。

 

「ユーリ・ローウェル!森に入ったのはわかっている!素直にお縄につけぃ!」

 

聞きなれた(聞きたくない)声が聞こえた。そう、この声の主はシュヴァーン隊のルブランだ。どうやら結界の外までユーリを追ってきたらしい。ボッコスにアデコールまであるところを考えるとどうやら3人で来たらしい。が、声が震えているわ、しどろもどろになっているわ…というところ見るとクオイの森の噂におびえているようだった。

 

―呪いの森…ねぇ…まぁゲームではよくある話やな…

 

なんて飛鳥が考えていると、ユーリは逃げ道を木々で塞ぐ。後の人たちが困るといったエステルに、ここは誰も来ないといった。呪いの森だからだと、付け加えて。確かにと思ったのかそのあとは誰からも反論はなかった。

 

・・・

 

森を出て、ハルルに戻りパナシーアボトルを完成させる。できたパナシーアボトルを早速ハルルの樹の根元で使う。パナシーアボトルが土に作用したのだろう。光があたりを照らす。が、光が収まっても何の変化もなかった。そのことにカロルは肩を落とす。量が足りなかったのか、方法が違ったのかはわからない。だが、パナシーアボトルが効果がなかったかと言われればそうではないと、飛鳥は思う。でなければ、あのような光が現れるはずがない。エステルも量が足りないと思ったのだろう。もう一度と言うが肝心のルルリエの花びらがもうないとのこと。

 

誰もが、もうだめだと、そう思った途端。エステルが、樹に近づき、手を組み、祈った。

 

「お願い…咲いて!」

 

すると、エステルを中心に光の粒が現れ、そのあとすぐにまばゆい光がこの町の結界魔導器(シルトブラスティア)へと一直線に上がっていき、視界はホワイトアウトした。

 

ズキン…

 

突然、飛鳥は胸が痛んだ。理由は何となく、わかった。自分の扱う銃は、弾に変換するため、空気中のエアルを取り込むのだ。だから、エアルに敏感であるため、今この場はきっとエアルが濃いのだろうと、判断する。それから、これは飛鳥本人も知らないことだが、空気中にエアルやそれ以外のエネルギーが漂っていれば、それを取り込んで弾に変換することは可能なのだ。そういうわけで、飛鳥は今、エステルが何らかの力を使った余波を受けているのだ。

 

―あぁ…エステルの…ちから、か…!うぅ…クラクラする、けど…倒れるわけには、いかない…!

 

光が収まってなお、クラクラする飛鳥。エステルがその場に座り込む。息が切れているため、やはり何らかの力を使ったのだと思われる。飛鳥はその力が何なのかは、一応見当がついていたが、それが自分に影響を及ぼしているとまでは思わなかったようだ。

 

「っ……」

 

その場に、密かにしゃがみ込む。エステルに注目が集まっている今なら、誰にも気づかれないだろうと思ったためである。気づいたのはラピードだけだった。が、ラピードもこちらをチラリと見ただけであとはスルーしてくれた。飛鳥はホッとしながら回復を待った。が、回復しきる前にユーリに見つかってしまった。

 

「ん?おい、アスカ!?大丈夫か?」

 

「はい……ホッとしたら…腰が……」

 

「腰が抜けたのか?立てるか?」

 

息をするように嘘をつく。今の自分の顔色が悪い事はわかっているため、顔を見られないようにしつつ、差し出された手を取る。すると、ユーリは飛鳥が手をつかんだかと思うと引っ張り上げてくれた。

 

「うおっと…お前……いや、なんでもない」

 

引っ張り上げた後、驚いた顔をしていたので、おそらく予想以上に飛鳥が重かったのだろう。それは飛鳥にも何となくわかった。だが、ユーリも口を閉ざしたので特に何もいわなかった。きっと、チャクラムのせいで体重に何キロかプラスされているのだろう。と、そこでラピードが遠くにいる、どう見てもよろしくない集団がいるのに気づく。ユーリはそれを見ていったん離れることにした。確かにあれはザキの率いる集団であることには間違いない。そうして、街を出た一行。フレンが向かったというアスピオという所へむかうことになった。カロルも一緒についていくことになり、旅の仲間が一人ふえたのだった。




というわけで、今回はクオイの森~ハルルを出てまでです。

次回はアスピオに向けて~になります。

次回もよろしくお願いします。


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13戦目

実習やらなんやらで遅くなりましたが、更新です!


次はアスピオ~になります。


挿絵のところに、一応オリ主のイメ画のようなものをあげましたので、見たい方はどうぞ!


・・・

 

ハルルを出たユーリ達は、アスピオに着き、早速中に入っていた。

 

「ここがアスピオみたいですね……」

 

「薄暗くてジメジメして……おまけに肌寒いところだね」

 

「街が洞窟の中にあるせいですね」

 

「太陽見れねぇと心までねじくれんのかね、魔核(コア)盗むとか」

 

そんな話をしながら門の前までくると、門番に通行許可証の提示を求められる。

 

「許可証……ですか……?」

 

「ここは帝国直属の施設だ。一般人を簡単に入れるわけにはいかない」

 

「そんなの持ってんの?」

 

どうにも通してくれなさそうな雰囲気なので、ユーリが前に出て、知り合いがいるから中に通してほしいと頼むが、それならば知り合いからの許可証があるはずだ、と言われてしまう。しかし、少しのやり取りのあと、知り合いの名前を聞かれたユーリは

 

「モルディオ」

 

と答えたので、門番が目に見えて動揺し始めた。が、やはりだめらしい。ついでに、とエステルがフレンが来ていないか、と尋ねるが些細な事でも機密事項らしく、教えられないとのことだった。だが。

 

「フレンがここに来た目的も?」

 

という問いに対し門番は

 

「もちろんです」

 

と答えたのだ。

 

「……ということは、フレンはここに来たんですね!」

 

「し、知らん!フレンなんて騎士は……」

 

どうやら門番はエステルの策に引っかかったらしい。そのことから、やはりフレンはここ、アスピオにきていたらしい。いったん引き返し、すぐそばの岩陰で作戦会議をするユーリ達。そして、他の出入り口がないか探すことになった。

 

そして、入り口を探していると、扉を見つけた。が、やはり都合よく開いてはいないらしく、鍵が閉まっていた。そのため、ユーリとエステルはどうしようか、と話しあっていた。が、そのすきにというべきか、カロルが扉の前に立ち、ごそごそと何かをし始めたのだ。飛鳥は何をしているのかを知っているのであえて何もいわずに放置していたが。

 

そうして開けられた扉に入ろうとするユーリをエステルが止めるのだが。結局は一緒に街の中へ入っていくのだった。そして、いろいろと聞きこみをしながら先へ進んでいく。が、中々フレンの情報もモルディオの情報も出てこず、先へ先へ進むが、ついにモルディオの家を見つけ、「絶対、入るな。モルディオ」という張り紙がしてあるにも関わらず、鍵開けをカロルに任せ、中に入るのだった(その間、飛鳥は見守るのみで何も言わなかった)。

 

中に入ってみると、これまたすごいことになっていた。本があちらこちらにあふれ、本棚にもぎっしりと本が入れてあった。色々と探索しているが、目的のものは見つかりそうにない。そうこうしていると、部屋の中心に小柄な人影が現れた。その人影は、すぐさま火の魔術をカロルに向けて放つ。飛鳥はエステルの近くにいたため、大丈夫ではあったが。その間に人影――少女の後ろに回り込んだユーリ。

 

「こんだけやれりゃあ、帝都で会った時も逃げる必要なかったのにな」

 

「はあ?逃げるって何よ。なんで、あたしが、逃げなきゃなんないの?」

 

「そりゃ、帝都の下町から魔導器(ブラスティア)魔核(コア)を盗んだからだ」

 

「いきなり、何?あたしがドロボウってこと?あんた、常識って言葉知ってる?」

 

「まあ、人並みには」

 

「勝手に家に上がり込んで、人をドロボウ扱いした挙句、剣突きつけるのが人並みの常識!?」

 

なんて、やり取りをしているが、やはり飛鳥は見ているだけだ。ただ、ユーリの行動には難ありだな、なんて思いながら。そこで、エステルがここまできた事情を説明する。そしてユーリが魔核ドロボウの特徴を説明する。が、少女は自分の名前、リタ・モルディオと名乗っただけで他には興味なさげだった。

 

ユーリに実際はどうなのだ、と聞かれたが一人でに考えだし、一行についてきて、と促すのだった。しかし、理由も聞いていないのについていけるわけがなく。

 

「はあ?おまえ、意味がわかんねえって。まだ、話が……」

 

「いいから来て。シャイコス遺跡に、盗賊団が現れたって話、せっかく思い出したんだから」

 

「盗賊団?それ、本当かよ」

 

「協力要請に来た騎士から聞いた話よ。間違いないでしょ」

 

少女はそう言い残して、奥へ姿を消す。その間、ユーリ達は話し合う。

 

「なぁ、アスカ。お前はどう思う?」

 

「え?……そう、ですね……信憑性は高いと思いますよ。なので、今は彼女についていくべきかと…」

 

飛鳥がそういったことで、とりあえずはリタについていくことになったユーリたち。と、そこで着替えたのか、マントを脱いだだけなのか、格好の変わったリタが現れ、行こう言ってきた。そのため、ユーリ達はとりあえず東にあるというシャイコス遺跡を目指すのだった。




というわけで、リタをパーティーに加え、シャイコス遺跡へ!

次回はシャイコス遺跡~になります。


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14戦目

色々と忙しいけれど、投稿!(笑)


今回はシャイコス遺跡~になります。


※オリジナルの魔物との戦闘描写ありです。苦手な方はご注意ください。


・・・

 

リタの案内でシャイコス遺跡へと足を踏み入れたユーリ達。しかし、先に来ているはずの騎士団の姿は見えない。しかし、石造りの地面の中にある、土の地面に数多くの足跡がついていた。カロル曰く、まだ足跡は新しいらしい。それがわかると、リタはこっちだ、と案内をしてくれる。だが。

 

「モルディオさんは暗がりに連れ込んで、オレらを始末する気だな」

 

なんて、ユーリが言い出す。完全にリタが魔核(コア)泥棒だと思っているようだ。こればかりは、リタもハッキリと否定していないため、仕方のないことだともいえる。

 

「……始末、ね。その方があたし好みだったかも」

 

「不気味な笑みで同調しないでよ」

 

仲が良いかは別として、そのまま周辺を見て回るが、騎士団の姿はおろか、盗賊団の姿さえも見かけない。ユーリ達のそばには大きな石像があるだけで、人影もない。すると、そこでリタが最近になって地下への入り口が発見された、と言い出した。まだ一部の魔導士にしか知らされていない、という事も。

 

それを踏まえ、周辺を探っていると、大きな像のそばの地面に何かを引きずった跡があるのを発見する。ということは、この石像は動くという事だ。それがわかると、カロルが石像を押し始める。しかし、全くと言っていいほど動かなかった。やはり、子ども1人の力では大きな石像を動かすことは難しいようだ。見かねたユーリが一緒に押すと、ゆっくりながらもズズズ…と動き始めた。

 

端まで石像を押すと、少し大きめな階段が現れた。早速ユーリ達は地下へ続く階段を下りていく。飛鳥も、最後尾につき、階段を下りていく。しかし、階段を降り切った途端。一瞬だが、ゾクリ、と寒気がした。

 

―あぁ、知ってる。今の感じは。……シャイコス遺跡かぁ……確か、でかいゴーレムと戦うんだっけ?てことは……あぁ、とっても嫌な予感しかしやんのやけど…

 

飛鳥は、ため息をつきつつ、先へと進むユーリ達を追いかけた。そしてやはりというべきか、魔物が多くいた。だがパーティーメンバーが増えたこともあってそこまでは苦戦せずに進むことができた。しかし、しばらく進んだところでぽっかりと穴が開き、六向こう側へ渡れなかった。だが近くに移動できるようにする仕掛けがあり、その仕掛けを動かすためのものをリタは持っていた。

 

その仕掛けを動かすもの――ソーサラーリングをユーリに手渡し、使い方を説明する。そして、仕掛けを作動させた途端。腕の部分が細長い棒になったようなゴーレムが出てきた。リタ曰く、侵入者退治用のものだという。それを避けつつ先に進むと、後ろから魔物に襲われ、陣形を乱されてしまった。そして、その最中、飛鳥はハッキリと見た。いつぞやで見た、あの黒いドラゴンのような魔物を。普通の魔物に紛れ、こちらにやってきているのがわかる。

 

―あ~……ここで来るんか。ホント、いつ来るかわかんないな~

 

そして、飛鳥はユーリ達が戦う中、今度はハッキリとその黒い魔物を見る。これで3度目だ。さすがに慣れたらしい飛鳥は、その黒い魔物に向かってチャクラムを投げ、攻撃する。しかし、思った以上にダメージが通ってなかった。

 

「っ、え……!」

 

そこで飛鳥は、この黒い魔物に対してはチャクラムのような武器ではマトモなダメージが入らない、という事を理解する。そうと分かれば武器を銃に変える。あまり銃を使いたくはなかったが、この黒い魔物がいるのなら話は別だ。この黒い魔物がユーリ達に危害を加えないとも限らない。今のところは飛鳥のみを狙っているようだが、この先どうなるかはわからない。そうしてどうにか魔物を倒した飛鳥。そこで、リタに声をかけられた。

 

「へぇ、あんた魔導器(ブラスティア)なしであんな動きできんのね」

 

「え?」

 

「あんた、どうみても弱そうなのに……意外ね」

 

「そうですね、もしかしたら昔は魔導器を持っていて、戦っていたのかもしれません」

 

「かもって、あんた……」

 

「私、記憶喪失なんで、今のところの自分の名前以外はほぼ記憶がないんです」

 

「!」

 

「あ、ユーリ達が呼んでます。行きましょう」

 

飛鳥は早めに話を切り上げ、速足で離れる。どうやら、リタも鋭くなっているうちの1人らしい。この時のリタは、他人に対して興味を持つことはあまりなかったはずだ。それなのに自分に対して話しかけてくる、ということは“そういうこと”なのだろう。

 

・・・

 

何度か戦闘をこなし、少し開けたところに出た。すると、そこにはユーリたちの3倍はあろうかという程大きなゴーレムがたたずんでいた。飛鳥は、ここでまたもや嫌な予感がして、リタの近くにさりげなく立つことにした。

 

リタが調べていると、そのゴーレムには魔核がなかった。だが、そこでフードをかぶり、顔を見えなくした人影が見えた。声からして男だ。その男はリタ達を見つけると、自分はアスピオの研究員で、魔導士だと告げ、ここは立ち入り禁止だという。しかし。

 

「はあ?あんた救いようのないバカね。あたしはあんたを知らないけど、あんたがアスピオの人間なら、あたしを知らないわけがないでしょ」

 

そうリタが言い放つ。すると、男はゴーレムに魔核をはめ込んだのだろうか。ゴーレムを動かしたのだ。そして、動き出したゴーレムは一番近くにいたリタと飛鳥に向かって、腕を振るう。

 

「リタ!!アスカ!!」

 

ユーリが叫ぶが、間に合わない。そう、ユーリ達が思った瞬間。

 

リタが突き飛ばされた。

 

しかし、そのおかげでリタは衝撃は残ったものの比較的軽傷で済んだ(原作通り)。一方、リタを突き飛ばしたであろう、飛鳥はというと。リタと同じように吹っ飛ばされ、瓦礫に左肩を強打していた。これには思わず呻く飛鳥。

 

「っ……!!」

 

幸いにも、ひびが入っただとか、脱臼しただとかはない。思った以上に衝撃が強かったにも拘わらず、どうやら軽傷のようで飛鳥は首をひねる。

 

―いってぇ…!!ひっさびさだったから、ちょーっと身体が忘れとったかな。いや、痛すぎて声が出んかってんな。て、ゆーか!とっさにリタ突き飛ばしたけど、突き飛ばしてなかったら、原作通りじゃ、なかった……マジで勘弁してよ……!!

 

そう、そこが一番の問題なのだ。今回は事前に知っていたからこそ、回避できたが、このようなことがこの先起こるのだとしたら。

 

 

「アスカ!今怪我を「い、いいよ!!肩打ったみたいだけど、何の問題もないから!!」え?」

 

突然話しかけられ、治癒術を使われそうになる飛鳥は思わず素の口調になり、おまけに早口だった。そしてユーリ達の傍へいき、銃をかまえ、戦闘に参加する。

 

―うわあああ!!マジなんなんこのでかさ!!!マジふざけんなああああああ!!!!

 

しかし、どうやらゴーレムの大きさを前にあらぶっているようである。しかし、表に出していないので誰一人として飛鳥があらぶっているなどど気づくはずもない。ましてや、今は戦闘中だ。

 

「こ、こんなでかいんはマジで勘弁~~~!!!」

 

と、思われたがそうではないらしい。あからさまに口調が素に戻っている。しかし、それでもしっかりと銃で前に出て戦うユーリとカロルのフォローをしているあたり、戦闘に慣れてきた証拠だ。おそらく、口調が素に戻っていることには気づいていないだろうが。

 

戦闘自体は、そこまで苦戦はしなかった。何度かユーリやカロルが危なかったが、その度に飛鳥が銃で的確に攻撃するため、大事には至らなかった。しかし、終盤、飛鳥はTP切れを起こし、

 

「はぁ、はぁ……!!TP切れた!?まじかっ!!!」

 

なんて言いながらチャクラム片手にゴーレムに接近戦を仕掛けていた。しかし、やはり強打した左肩は庇っているようで、時々バックステップをした際に呻いたりしていた。

 

そうしてゴーレムを活動停止させたユーリ達は逃げた男を追いかけていく。飛鳥も遅れぬように走っていくのだった。




今回で遺跡でのことは終わらせたかったんですが…

すみません、終わりませんでした。

次回は逃げた男を追う所~となります。


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15戦目

もうすぐ実習で更新がしばらくできそうにないので、実習前に更新をば!


今回は逃げた男を追う所~となります。


・・・

 

巨大なゴーレムを停止させた後、逃げた男を追ったユーリ達はすぐに追いついた。どうにもその逃げた男は魔物に襲われ、足止めを食っていたようである。その魔物をすぐに片づけたところで、リタが詰め寄る。そして色々と質問した(問い詰めた、が正しい)ところ、「デデッキ」という名前の人物が下町の水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)を盗んだ犯人らしい。そして、そのデデッキというヤツは報酬である金をもらいに「トリム港」にいるのではないか、ということ、そしてフレンがこの遺跡に来ていたという情報を得る。

 

そのあとはやはたらと喚き散らすので、リタがベルト(巻物?)のような武器で殴って気絶させてしまった。だが、自分で運ぶ気もさらさらないらしく、あとで街の警備にでも頼んで拾ってもらうのだそうだ。そして、用も済んだということでアスピオに戻るユーリ達だった。

 

 

 

 

そして、アスピオにつくと、リタが尋ねた。フレンとはどんな騎士なのか、と。それに答えたのは

 

「ユーリのお友達です」

 

ユーリではなく、エステルだ。どこか顔が嬉しそうだったのは気のせいだろう。すると、そこでさらにリタが突っ込んで聞いた。リタもその話題に上るフレンという騎士が気になったらしい。

 

「で、なんでそいつがこの街にいんの?」

 

「ハルルの結界魔導器(シルトブラスティア)を治せる魔導士を探して……」

 

「ああ……あの青臭いのね……あたしのとこにも来たわ」

 

そこでようやくリタはフレンという騎士がどんな人物かを思い出したようだ。どうやら面識はあったらしい。そして、色々と話した結果リタの研究所にユーリ達が先に戻って待機するということになり、通行証ももらうことができた。そのおかげで無事に街の中に入れたユーリ達は言われた通りリタの研究所で待つことにしたのだが。

 

なんと、ユーリは他人の部屋だというのに寝転がっているのだ。ラピードもそこらへんに伏せをしている。いや、まだ犬であるラピードが伏せをして待つのはわかる。だが、ユーリはどうなのだ。そう思った飛鳥は思わず

 

「ユーリ、他人の部屋で寝転がるのはどうかと思いますよ?」

 

と言ってしまった。自分からは用がない限り話しかけないように、と思っていたのに。

 

「いいじゃねぇか」

 

だがユーリは気にしていないようだ。それよりも、さきほどから落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たりするエステルのほうが気になるようで、リタを待たずに出ていくか?と提案までしていた。しかし、律儀なエステルはリタに挨拶をしてから、という。その意見に特に反論はなかったのか、そのままリタが帰ってくるまで待つこととなった。

 

・・・

 

そして、リタが帰ってきてから、軽く挨拶(ユーリは約束通り、軽い物ではあったが謝罪もした)をし、街を出ていこうとした。しかし、入り口でリタがいた。理由を聞くと、少し考えたがハルルの結界魔導器(シルトブラスティア)が壊れたままなら、そのままにしておけない、とのことでついてくることになった。

 

そして、いざハルルの街へついてみると。そう、結界魔導器は完全に治っていたのだ。これにはさすがのリタも驚いたらしい。すると、リタは結界魔導器のあるほうへ走って行ってしまった。追いかけようとするユーリ達にここの長が声をかけてきた。どうにも入れ違いになってしまったらしく、フレンから手紙を預かってるとのことだった。受け取って中身を見てみると、それは手配書だった。しかも、ご丁寧に飛鳥の分まである(手配書の似顔絵は全くと言っていいほど似ていない)。

 

「ちょっと悪さが過ぎたかな」

 

「私も、ユーリと同じ罪状のようです……冤罪な気もするんですけど、まぁ手配されてしまったものは仕方ないですね」

 

「アスカ!?やってないのであればきちんというべきですよ!?」

 

「いえ、エステルと一緒にいるのは事実ですから。ユーリと一緒にエステルを誘拐した、と書かれても仕方ないです。あ、エステルが悪い、とか思ってませんからね?このご時世、どうにもやっていない、という証拠がなければ冤罪であろうと罪になりますから」

 

ずいぶんと悟った言い方に、ユーリは違和感を覚えた。記憶喪失だと言っていたはずなのに、この、まるで知っているかのような言い方はなんだ。ここまで、記憶が戻ったそぶりもない。それならば、飛鳥は嘘をついているのだろうか?しかし、嘘をついているのであれば、何の目的で。

 

わからない。ただ一つ、わかるのは飛鳥が確実に何か抱えている、という事だ。クオイの森でのことも考えると、そう考えるのは容易だ。そこまで考えてからユーリはふと飛鳥を見た。すると、飛鳥は遠くを眺め、ぼんやりとしていた。あまり顔色がよくないところを見ると、もしかしたら記憶に関係することかもしれない。

 

「飛鳥?大丈夫か?」

 

「え?あぁ、いえ。どこか、既視感があって……過去に私は、ハルルに来たことがあったのかな、と思いまして」

 

「なるほどな。その様子だと、あまり記憶は戻ってないようだな」

 

「えぇ。でも、別に大丈夫ですよ。記憶がないからと言って不便だったの、最初だけですし。今は戦闘にもほんの少しずつですが、慣れてきましたから……最悪、記憶が戻らなくたって、大丈夫だと思いますよ」

 

そこまで言ってから、飛鳥は頭に鋭い痛みが走り、思わず頭に手をやる。意外と重たい痛みだ。

 

「!大丈夫です!?」

 

「っ……えぇ、だいじょう、ぶ……です……」

 

大丈夫、という飛鳥だが顔色は蒼白だ。どこをどうみても大丈夫ではない。しかし、そこでカロルは気づいた。飛鳥が一点を凝視していることに。

 

「?」

 

その方向に視線を向けてみるも、何もない。もしかして、飛鳥には何か別のものが見えているのだろうか。

 

「……さん……さ……そだ」

 

小さく呟かれた言葉は、ほとんど聞き取れなかった。だが、声が震えている。もしかして、記憶がフラッシュバックでもしているのだろうか?

 

「んなわけ、あるかよ……っざっけんな……!!」

 

いきなり、どこか、忌々しげに呟く飛鳥は、先ほどとは大違いだ。声は低く、一瞬男か、と勘違いするほどで、雰囲気もどこか怒気を含んでいるようにも感じ取れる。しかし、そこで一度目をつぶり、再度開けた時にはそんな雰囲気が嘘のよう。ハルルに来た時と同じ雰囲気に戻っていた。

 

「……大丈夫か?」

 

「――えぇ。すみません、お見苦しいところを」

 

「大丈夫です?まだ、顔色が……」

 

「大丈夫です。こんなの、気にしなくていいですよ。フラッシュバックがでると、いつもこうですから、そのたびに反応していては、身が持ちませんよ?もうしばらく、一緒に旅をするんですから」

 

そう言って飛鳥はほんの少しだけ、微笑んだ。それを見たエステルは、なんだかホッとしたのか、それ以降は何も言ってこなくなった。




ということで、次回はいつかわかりませんが、お待ちいただけると嬉しいです…!!

次回はユーリがリタに話しかけるところ~となります。


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16戦目

どうもお久しぶりです

今回はリタにユーリが話しかけるところ~になります。

ノール港まで行けるかな…


・・・

 

リタの様子を見てくる、と言って結界魔導器(シルトブラスティア)を見ているリタのもとへ来たユーリ。ハルルの結界魔導器(シルトブラスティア)を見ていたリタは驚いていた。そこへ、ユーリが話しかける。

 

「……なによ、これ。こんなのありえない……満開の季節でもないのに花がこんなに咲いて……。結界もずっと安定してる……ほんとに、エステリーゼがやったの?」

 

「なんで、エステルなんだよ」

 

「アスピオを出る前にカロルが口滑らせたでしょ。あんたがはぐらかしたけど」

 

「ばれてりゃ世話ないな」

 

「こんな真似されちゃあたしら魔導士は形無しよ」

 

「商売敵はさっさと消すんだな。そのためについてきてんだろ?」

 

「そんなわけないでしょ!?あたしには解かなきゃならない公式が……!」

 

と、そんな調子で怒っていたリタだが、ふと、1人でユーリが来たからには用件があるのだろうと思ったのか、落ち着きを取り戻し、ユーリに聞いた。

 

「あぁ、今ので半分すんだ」

 

と言ったので用件を聞き、エステルたちのところへ戻ってみると。なんと、ルブラン達がエステルたちを囲んでいたのだ。さらに、ルブランは飛鳥のことも手配書で見て知っているらしく、おとなしくしろ、と言っていた。それに対し飛鳥は

 

「こんな所で捕まってなんていられないから!」

 

と言ってチャクラムで応戦していたのだ。しかしルブランもユーリを見つけると、そのままユーリの方へ向き直り、捕まえようとする。エステルがユーリは悪くない、というもののわかってもらえず、結局戦闘になるのだった。

 

執拗に飛鳥のことを狙ってきたボッコスとアデコールだったが、飛鳥はどうにかやりすごし、チャクラムを飛ばす。

 

―う~~!!マジで勘弁してくれへんかな!?

 

どうにかユーリがオーバーリミッツを使って2人を倒してくれたものの、飛鳥は体力的にしんどかった。しかし、一息つく間もなく、前に見た暗殺集団が居たので、ルブラン達に任せ、ノール港に行くためにエフミドの丘に向かうユーリ達だった。

 

 

 

 

 

無事エフミドの丘についたユーリ達だが、何やら騒がしい。近づいてみると、何かの機会が壊れていた。リタがさらに近づいてみてみる。その間にカロルは周辺の人々に話を聞いたらしく、その話によると「竜使い」が現れたそうだ。その話を聞いて飛鳥はその人物がだれかすぐにピンときた。

 

―あぁ、ジュディスとバウルね……。あぁ、ジュディスは鋭そうやなぁ……あぁ、なんてはぐらかそう……

 

なんて考え事をしているうちに、ぐい、とユーリに引っ張られ、そのままされるがままに走る飛鳥。全員が合流したところで改めて声をかけられ、飛鳥はようやく気付いたようだ。

 

「大丈夫か?」

 

「!?……あ、う、うん。だい、丈夫……」

 

「それが大丈夫な返事?あんた、ここにきてからぼーっとしてるけど、本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

リタにまで言われ、あせる飛鳥。何故か、元居た世界での記憶がフラッシュバックする。

 

―きゃはは!!だーいじょーぶぅ??―

 

―大丈夫だろ!だって、なぁ?―

 

ため息がでそうなのを飲み込み、大丈夫だと告げる。

 

「ごめん、大丈夫。少し、疲れただけ、だから」

 

飛鳥はそこまで言って、敬語が外れてることに気づいた。しくじった。敬語にしておかないと、まずい。そう思ったが、先に進むうちにエステルから

 

「アスカ、やっと警戒を解いてくれたんですね!」

 

とキラキラした目をしながら言われてしまったのだ。心底安心していて、それでいて、嬉しそうな、そんな目を見てしまえば、敬語を付けられるはずがない。観念した飛鳥はエステルに

 

「え、いや……警戒してたわけじゃ、ないよ。けど、いきなり敬語外すのは、まずいかと思って……」

 

「どうしてです?アスカはもう友達ではありませんか!」

 

再び、キラキラした目。どうにも耐えられなくなって、飛鳥はありがとう、とだけ言って黙るのだった。

 

―あぁ、エステルといると、調子狂うなぁ……友達って、こんな簡単になれるものだっけ?

 

疑問を抱えつつ進んでいくと。どうにも狼が巨大化した魔物とその子どもと戦闘になった。苦戦に苦戦を重ね、あと少しで倒せる、と思った瞬間。あの黒いドラゴンを模した魔物が飛び込んできた。

 

「!!」

 

「何よ、あの黒い魔物は!!」

 

「こんな魔物、本でも見たことないです!!」

 

「こんな時に……!!」

 

ユーリ達は驚く。こんな魔物が居たのか、と。同時にやばい、と。こちらは苦戦し、この黒い魔物を倒すだけの余裕はない。知っている魔物だったらまだしも、このような真っ黒な魔物はお目にかかったことがない。そう、ユーリ達が思っていると。

 

「ユーリたちはあの魔物を頼んだ!あの黒い魔物は、うちに、任せて」

 

「任せてって…あんた、あの魔物を知ってるわけ!?」

 

「ううん、知らない。だけど――」

 

言葉を切った飛鳥は銃を抜くと、黒い魔物の眉間を狙って撃った。すると、どうやら眉間をきれいに撃ちぬいたらしく、黒い魔物は声を上げてその場から霧のように消えてしまった。倒せたことにホッとし、樹を抜いた飛鳥。が、それがいけなかった。大きな狼のような魔物が、飛鳥へと襲い掛かる。

 

「――っ!!」

 

「アスカ!!」

 

咄嗟に飛鳥は銃で頭を狙って、引き金を引いた。バン!という音がして、魔物が倒れる。どうやら、またもや眉間を撃ちぬいたらしい。だが、流石の飛鳥も限界の用で、その場に座り込んでしまった。

 

「はぁ、はぁ……!!」

 

「アスカ!!大丈夫です!?」

 

「うん、大丈夫……驚いて、腰が抜けただけだから……」

 

「あんた、あの黒い魔物の事、知ってんでしょ」

 

「知らないよ。あいつらの事なんて。遭遇したこが何回かあるだけや」

 

飛鳥の言葉でひとまずは納得したのだろう。リタはそれ以上追及はしてこなかった。

 

―こいつらは、きっとこの世界の修正力そのもの、なんだろうな……イレギュラーである、うちを排除するために現れた存在。もしくは、うちがこの世界を救うとかいうのは気に入らんってことで、うちの存在を消すための存在……どちらにせよ、あの黒いのはうちしか狙わないみただし、ユーリ達に何も危害が加わらないのなら、それでいいや。

 

飛鳥は、あの黒い魔物が自分を消すために行動しているのだと理解はしていても弱点があるのか、ないのか、あのドラゴンを模した形の魔物以外は、でてこないのかなど、疑問に思う所はたくさんあった。

 

だから飛鳥はリタに対し、知らない、と言った。嘘だ。本当は、自分の消すためにだけに出てくる魔物だ、と答えられた。しかし、ただでさえ、面倒を抱えているのだ。これ以上面倒を増やすわけにはいかない。そう思って、飛鳥はふと顔を上げる。すると、そこには、海が広がっていた。

 

「わぁ…海か。久々見たな……」

 

きれいで、思わずつぶやく。そして、ここで例の頭痛。顔をしかめ、とりあえず収まるのを待つ。見えた映像は親子三人でここの景色を見に来た、というもの。両親の顔は見えないため、生きてるのかすらわからない。仮に生きていたとしても会いたいとは思わないが。

 

しばらくして、ユーリ達は休憩をはさみ、なんとかノール港に足を踏み入れることができたのだった。しかし、そこはザアザアと雨が降り注ぎ、活気のある場所ではなかった――。

 

 




というわけで、なんとかノール港へと着きました!

長かった(笑)

これでまだ第1部も終わってないんですよねぇ…(遠い目


さて、次はあの夫妻と出会う所~になります。


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17戦目

更新できるときにしておく!(笑)

実習終わりでまだ提出課題とかあるけど気にしない←

今回はノール港の夫妻にあるところ~になります。

オリジナル展開も含みますので、ご注意ください。


・・・

 

とりあえずはノール港についたユーリ達。だが、その港は活気のある場所ではなく、雨がザアザアと降り、ゲリラ豪雨のような、とまではいかずとも土砂降りと言っても過言ではないほどだ。そんな中、ユーリたちは夫妻と会う(と言ってもユーリがわざと足を引っかけたから、関わらざるを得なかっただけだが)。エステルが治癒術で夫の怪我を治したところで、ユーリはふと、視界の端に怪しげな連中―それもおそらくハルルで見た連中と同じ―を捉え、そっと後を追う。

 

それを見ていた飛鳥は、シャイコス遺跡でのようなこと(飛鳥がゴーレムが起動した際、リタを突き飛ばさなければ、リタは原作以上の怪我を負っていた)があるのだとしたら、今のこの機会以外、考えられない。そう思い、ユーリと同じようにエステルたちに気づかれぬようユーリが入っていった路地裏の入り口付近へと移動する。

 

そして、ユーリが黒衣の連中と戦闘し、フレンが駆けつけ、そこから2人の息ピッタリな連携に見ていた(見惚れていた、の間違い)飛鳥。

 

「ふぅ……マジで焦ったぜ……」

 

「さて……」

 

2人の会話を見ていても今のところ変わりはない。安心していると。フレンの言葉が少し違っていた。

 

「事情があったとしても罪は罪だ。それに、このアスカという少女も君と同じように罪を犯したとある。君は――」

 

そう、フレンのセリフにある“アスカという少女”。これは紛れもなく飛鳥の事だ。飛鳥はこの後のセリフに耳を傾けていた。が、そこでフレンの後ろに先ほどの黒衣の連中が現れる。飛鳥は急いでチャクラムを投げ、その黒衣の連中の攻撃を防ぐ。

 

キィン!!ガキン!!

 

固い金属音が鳴り、なんとかフレンに攻撃が当たることは防ぐ。

 

「!」

 

「アスカ!?」

 

「そんな事より、後ろや後ろ!!」

 

飛鳥は、どうにか2人に声をかけ、チャクラムをしまって銃を取り出す。さすがにこの連中ともなればチャクラムよりは銃で足を狙ったほうがいい。間違っても殺しはしてはいけない。いや、きっともう元の世界には戻れないだろうし、罪を犯したところで学業に問題はないはずだが。

 

そんなこんなでどうにか敵を退けた3人。戦闘が終わり、落ち着いたところで、フレンは飛鳥に問いかける。

 

「君が、アスカかい?」

 

「うん。あってる。貴方がフレン・シーフォさんだよね。まぁ、貴方にとって私は罪人、裁くべき人なんだろうけど。どうせ、冤罪だなんだと言ったところで手配書にはああ記されてるわけだしね」

 

「……!」

 

「アスカ、お前……」

 

「ごめんね。敬語外したらどうも、おしゃべりが過ぎるみたい。少し、黙るね」

 

飛鳥はそういって黙る。

 

―あぁ、だーめだこりゃ。敬語外した途端、ちょっとずつ素が出とる……でも、大丈夫。まだ、大丈夫。だって、、ホンマの口調やないから。まぁ、少し距離を詰めた、という事で良しとしとこう…

 

「アスカ、君は……下町に住んでいたり、するかい?」

 

いきなり、顔をまじまじ見られたかと思うとそんな質問をされた飛鳥。

 

「なわけあるか!フレン、誰かと見間違えてんで、それ。絶対。断言する」

 

「そうか……君に、どこかで会ったような気がしたんだが……」

 

フレンのその、言葉を聞いた瞬間、飛鳥の頭にまた、激痛が走った。ズキン、と脈打つような、それでいてキリキリと締め付けられるような、そんな痛み。そして、見えた映像では、何故か自分が騎士団の団員たちと会話をしている場面。そして、ユーリ達と、一緒にナイレン隊長と共に笑っている、姿。これにはさすがの飛鳥も、頭を押さえ、顔を歪め、声を上げた。

 

「うっ……!!」

 

「アスカ!?」

 

「大丈夫かい!?」

 

「はぁ、はぁ……だい、丈夫。少し、昔の事、思い、出しただけ、だから……」

 

「!記憶、戻ったのか!」

 

「記憶……?」

 

「あぁ、言ってなかったけど、アスカは記憶喪失で、下町を出たすぐ近くのところでさまよってたんだ。アスカ、何を思い出したんだ?」

 

「……どうやら、フレンさんの、記憶が正しいみたい。……私、昔、騎士団にいた、らしいから……」

 

「「!!」」

 

飛鳥は、その記憶を見て、納得したのだ。いきなり現実世界から飛ばされてきた割には、恐怖を抑え込めたし、戦闘を重ねていく毎に、慣れてきた、という感覚がしていたし、何より、動けていたことに。この世界で自分は騎士団に在籍していたらしい。というのもすべて“創られたモノ”ではあるが、この世界に来た時にその戦闘経験とやらは忘れているだけで、しています、という状態だったらしい。

 

もしかしたら、あの声の主が戦闘があることを知っていたがためにそのようなことをしてくれたのかもしれないが。なんにせよ、これで一つ、謎が解けた。嬉しいが、頭痛が収まってくれないので、頭から手はどけられないが。

 

「今ので、記憶が戻ったのか。……騎士団にいたなら、オレもアスカと面識があったとしてもおかしくはねぇな。フレンが見覚えあるって言ってるしな」

 

「そうみたいだね。君のように、女性で騎士団に入るというのは珍しいから、もっと記憶に残っててもおかしくはないんだけど……というより、話したことがあるなら、忘れたりするはずがないんだけどな……」

 

「アスカ、大丈夫か?」

 

「……今回ばかりはあまり大丈夫とは言い難いかな……まだ、頭痛いから」

 

「そうか。なら合流して宿屋で休むとするか。アスカ、歩けそうか?」

 

「大丈夫。歩けないほどじゃないから」

 

そういうわけでリタとカロルと合流しにきたユーリと飛鳥だが、どうにも建込中とのことで、アスカをリタ達のところに預け、ユーリは2人のいう事もあり、街を見て回ることにした。

 

・・・

 

「ねぇアスカ。顔色悪いけど大丈夫?」

 

「あはは……ちょっと、きつい、かな……雨のせいか、記憶戻ったらすぐに治まるはずの頭痛がね、まだしてるから……」

 

「えぇ!大丈夫なの!?」

 

「記憶、戻ったのね。よかったじゃない」

 

「戻ったといっても、まだほんの一部だから、何とも言えないよ」

 

そういって苦笑する飛鳥は、内心ため息をついていた。先ほどよりは治まったものの、地味に頭が痛い。これでは考え事もできない。

 

―んー、今頃は……あぁ、ユーリがパティと会ってる頃かな?

 

ぼーっとしながら、そんなことを思う飛鳥だった。もうしばらく、ここで待機することになりそうである。




というわけで、どうにかひとつイベント終わりました!

夢主ちゃんが現実世界からきて戦闘経験ないのに、どうして戦闘回数もそんなこなしてないのに動ける?となったため、騎士団に入団していたことがある、という記憶を体に覚えさせた状態で、記憶にはない、ということにしました(めっさ無理やり)

次はユーリが単独行動するところ~となります。


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18戦目


今回はユーリの単独行動~です。途中で少し流血表現ありです。苦手な方はご注意をば。



25戦目くらいで第1部終わったらいいなぁ・・・(願望)




・・・

 

ユーリは、宿屋の前にいるリタとカロルに飛鳥を預け、1人で街を見回っていた。途中で自分と飛鳥の手配書を見つけ、似てない似顔絵にあきれたりもした。そして、大きな橋を渡っている最中のことだ。紺色の海賊帽に同じ色のコートを着た金髪でおさげの少女(飛鳥よりも随分と幼い)が屋敷のほうへ向かっていた。が、門番に放り出され、危うく地面に激突しそうになっていたので、ユーリは受け止めた。

 

「おっと、っと……子ども1人にずいぶん乱暴な扱いだな」

 

「なんだ、おまえは。そのガキの親父か何かか?」

 

「オレがこんな大きな子どもの親に見えるって?嘘だろ」

 

「再チャレンジなのじゃ」

 

そう言って入って門の向こう側に行こうとする海賊帽をかぶった少女。しかし、目の前に剣を突き付けられ、止まる。だが何やら地面に投げつけたかと思うといきなり黄色の煙があたり一面に広がった。その煙に乗じて逃げようとする海賊帽をかぶった少女の手を取るユーリ。

 

「美少女の手を掴むには、それなりの覚悟が必要なのじゃ」

 

「どんな覚悟か教えてもらおうじゃねえか」

 

「残念なのじゃ。今はその時ではない」

 

海賊帽をかぶった少女が何かをしたのか、煙が一層強くなり、晴れたころにはいなくなっていた。おかしい。確かに腕をつかんでいたはずなのに、ユーリの手にあるのは先ほどの少女の人形だ。顔がへのへのもへじになっている、いわゆる身代わり人形という物だった。

 

「ったく……やってくれるぜ」

 

とりあえず、色々とあったし、そろそろエステルとフレンの話をも終わっているだろうと思うのもあり、宿屋に戻ってきた。何も連絡がないらしいが大丈夫だろうと、中に入る。その際にちらりと飛鳥の方を見たが、相変わらず飛鳥の顔色は悪いままだ。さすがの本人も参っているのか、頭に手を当てたままだった。

 

飛鳥はやっと頭痛が治まってくれたものの、どこか頭が重かった。今にでも寝たい。そう思うが、ここは我慢だ。大丈夫、“いつもの”だと思えばなんてことない。そう言い聞かせ、最後尾についていくのだった。

 

「用事は済んだか?」

 

飛鳥はぼーっとしながら話を聞いていた。さすがにここまでで、ほっと一息ついた場面というのあまりにも少ないため、心身ともに疲れ切っていた。いや、普段の状態ならいい。だが、例の頭痛のせいで聞かなければならない話も、聞けない。

 

「それはいいけど、アスカにも処罰を受けさせんのか?それ、オレだけにできない?」

 

「!ユ、ユーリ!?うちは罪人や!庇う必要なんてなんもない!」

 

「だけど、お前は――」

 

少し言い合っていると、フレンと同じ騎士の鎧の女性とリタが着ていたことのある白い魔導士用(?)のローブ姿の男性というより、少年と言える人が入ってきた。その時、アスカは嫌な予感がして、そっと移動した。もしかして。そう思って、ユーリよりもやや前に出る。するとどうだ。紹介されたソディア(騎士の鎧を着ている女性)とウィチル(ローブの少年)が何やら反応した。そして。

 

「こいつら……!賞金首のっ!!」

 

ソディアが、剣を抜き、フレンが止める間もなく剣を振り下ろしたのだ。

 

ザンッ!

 

斬れる音がして、同時に何かが飛び散る音もした。そして、それを気にせず、今度は斬り上げをしようとするソディア。対して、飛鳥は彼女の剣を“握った”。当然、そんなことをすれば、手のひらが斬れるはずだ。しかし、それでも飛鳥は剣を握ったまま放さない。

 

「「「!!」」」

 

「帝国の騎士ともあろう(モン)が、無抵抗の人傷つけんの?うちらが、賞金首っていう理由だけで?」

 

そう、静かに言った飛鳥の右腕からは、血が伝っている。剣を握っている手の平からは血は出ていない。どうやら、手袋があるため握るだけでは斬れないようだだった。

 

「!そ、れは……っ!」

 

「ソディア、落ち着いてくれ……!彼らは私の友人だ。事情も確認した。確かに軽い罪は犯したが、手配書を出されたのは濡れ衣だ。後日、帝都に連れ帰り、私が申し開きをする。その上で、受けるべき罰は受けてもらう」

 

「アスカ!傷を見せてください!治しますから!」

 

「いやええよ。“こんな傷”。“慣れてるし”、別にどうってことあらへん。後で適当に止血しとくし」

 

そういった飛鳥にユーリ達はどこか違和感を感じる。ソレが何なのかはわからない。だが、エステルはほんの少しだが、見えてしまった。飛鳥の腕にたくさんの、細い線があることに。そして、アスカの光のない、濁った眼も。だが、それ以降は目を伏せられてしまい、わからなかった。

 

「アスカ……」

 

「………失礼しました。ウィチル、報告を」

 

飛鳥は、ふぅ、と息をつくとどこから出したのか、包帯を器用に巻いていた。それが終わると、グー、パー、と手のひらを動かし、動作確認をしていた。

 

―やれやれ……マジで嫌な予感的中……勘弁してよね……本当なら治癒術で治してもらいたいんだけどなぁ……エステルのあのチカラを使われると……うちの躰がどう反応するかが問題やんね……べリウスみたいになんのかな?

 

なんて考え事をしている飛鳥にユーリは近づき、

 

「痛むか?」

 

と声をかけた。いつもの調子で大丈夫だと、返事が返っててくるかと思いきや、違った。

 

「そりゃ刃物で斬られたわけだし。痛むのは当たり前やろ。まぁでも、手は動くし神経とかに傷はついてないみたいだから大丈夫。とっさに腕で庇ったから神経に何かあったらどうしようかとも思ったけど、あのソディアって騎士は元から威嚇の意味で剣を抜いたんやろ。頭に血が上ってカッとなって、思わず切り伏せようとしたみたいやけど」

 

なんて、ぼそぼそと返事が返ってきた。その上、そう言っている時の飛鳥の目は、光がなく、濁っていた。さらに、どこか遠くを見ているようにも見えた。これを見たユーリは、記憶が関係しているのか?と疑問に思ったが、それよりも顔色が悪かったため、これ以上突っ込んで聞くのはまずいと思い、後日また聞くことにした。






というわけで夢主ちゃん、だんだんと素が出てしまってます←仕様です

一応フラグのようなものは立てておいたので、いつか回収できたら……と思いますw

次回は宿屋を出たところ~になります。


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19戦目

結構間が空いてしまいましたが、投稿できそうなので!

今回はラゴウのお屋敷に突入~になります。





そのうち夢主ちゃんの技とか術とか秘奥義とか考えなきゃ……(遠い目

PSPソフトのTOWシリーズのように誰かの秘奥義を真似するのは面白くないので!




・・・

 

宿屋で休んだユーリ達はひとまず、そのラゴウの屋敷に行ってみることにした。だが、案の定、門前払いをされる。しかし、その門番は正式な門番ではなく、傭兵とのことだった。つまり、どこかのギルドの連中である。しかし、これ以上騒げば大事になってしまう。そのため、いったんは引き返すユーリ達。

 

「献上品を持っていくか」

 

ユーリのその一言で、リブガロを探すことに。確かに、中に入れる方法があるとすればそれだけである。そのため街の人々に聞いて回っていると、宿屋の前の十字路のあたりで、フレンたちと出くわした。

 

「相変わらず、じっとしてるのは苦手みたいだな」

 

その後も少しやり取りをした後、ユーリは先に行ってしまう。残ったエステルと、何となく残った飛鳥はフレンから、ユーリがどういった性格なのかを、聞くこととなった。

 

「ユーリは、守るべき物のためならとても真っ直ぐなんですよ。そのために自分が傷つくことを厭わない。それがうらやましくもありそのための無茶が不安でもあるんですがね」

 

「ユーリは、ユーリの正義がある。譲れないモノが、ある。そんで、自分が何を守りたいのか、わかってるんだ。じゃなきゃ、あんな風に動けない」

 

「アスカ……?」

 

「うちも、うらやましいんだ、あんなに真っ直ぐと動けるユーリが。うちにはずっと、自由なんて“なかった”からさ」

 

そう呟いた飛鳥。その時の飛鳥は、悲しそうに、笑っていながら、どこか懐かしむような、そんな表情をしていて、目は、どこか虚ろで。ドコを、見ているのだろうか。フレンとエステルには、飛鳥が見ているモノがとても遠い世界を見ているように見えた。そして、どこかに消えてしまいそうな程、弱くて儚い存在に見えたのだ。

 

そんな光景を見てしまったからか、2人はしばらく何も言えなかった。特にエステルは、最初期の、敬語を使っていたころの飛鳥を知っているが故に、今の飛鳥は何かが違う、と感じていた。フレンはフレンで、騎士団にいたという、飛鳥にやはり自分の、あの既視感は間違ってなかったのだと、確信するものの、やはり飛鳥と話した記憶がなく、戸惑うばかりだった。

 

「君は、どこかに囚われていたのかい?」

 

かろうじて、飛鳥の言葉の中にあった、自由がなかったという言葉を拾ったフレン。

 

「え?うん、そうやな。あそこは、例えるなら。牢獄と、同じようなモンかな。どこに行ったって、同じなんだ。どこにいても、何をしても、決して出ることなんて、叶わない、地獄と言っても差し支えのない場所。そこでずっと過ごしてきたんだ。だから自由なんてなかった。『外』にでられた今でも、まだ怖いよ。時々、夢に見るくらいには、な」

 

「アスカ?記憶、戻ったです?」

 

「………生まれてから、騎士団に入るまで、の記憶かな」

 

「アスカ?大丈夫かい!顔色が……」

 

「残念ながら、酷い頭痛がするね。雨は――好きだけど、嫌いだ」

 

そこまで言うと、飛鳥は2人が止めるのも聞かず、そのままユーリ達を追いかけていってしまった。

 

「アスカは、どうして記憶を失ってしまったんでしょう……」

 

エステルはそのことだけが疑問で、フレンも同じだった。

 

・・・

 

あれから、街の外に出てリブガロを探していると、割とすぐに見つかった。襲ってくるリブガロに対し、何故か殺気立っていた方々(エステル、ユーリ、リタ)により、すぐさまリブガロを気絶状態にしたのだった。気絶したリブガロに近づいたユーリはツノをポキッと折ると、そのまま踵を返した。殺さないのか、とリタに聞かれても、ツノが手に入ったという理由でそれをしないようだ。

 

街に戻ると、エステルに怪我を治してもらった夫妻がいた。夫の方は剣を片手に、どこかへ行こうとしている。しかし、そこをユーリは止め、手に入れたツノを投げ渡したのだ。そして、そのまますぐに立ち去ろうとするので、エステルたちはそれに続いた。

 

―ここにきて、連続で記憶を見せられてる……何かありそうな予感もする。っつーか、マジで痛すぎ。そろそろぶっ倒れる……歩くのしんどい。

 

半分苛立ち、半分気力でどうにか立っている飛鳥はそのまま宿屋に入る一行についていく。そこで、再びフレンとユーリの話し合い。それをぼーっと聞く飛鳥。そうしているうちに、再びラゴウの屋敷に行くことになったようだ。

 

「アスカ、大丈夫か?」

 

「これが大丈夫に見える?ま、でもうちも、ラゴウさんとやらには一発入れたいところだからね。多少の無理はするさ」

 

「辛くなったら言ってくださいね!」

 

「あー、うん、本気でやばくなったら、ね」

 

これは本音である。ラゴウには本気で蹴りを入れたい。とはいえ、飛鳥には蹴りを入れられるほどの技術はないため、現状ではユーリ達に任せるしかないのであるが。どうにか門番を突破できないかと考えていると。

 

「残念、外壁に囲まれてて、あそこを通らにゃ入れんのよね」

 

男の声がした。




というわけで、次回はあの人が登場です!

次回はラゴウの屋敷に侵入~となります。


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20戦目

どうも、皆さん!ついに20話ですよ!

ちょこちょこ省略したりしてますが、なかなかうまいこと行かないです(笑)

あ、今回は皆大好きのあの方がでますよ!



・・・

 

声をかけてきた男性は、黒髪を無造作に結び、紫の服に身を包んだ目立つ格好をしていた。

飛鳥はその男性を見てすぐにわかった。

 

―あぁ、レイヴン!わぁ……これまた鋭そうな人が来たねぇ……ジュディスは絶対鋭い。パティもだよねぇ……あぁ、鈍感とか普通に気づかないのってエステルとカロルとユーリだけ!?ラピードは絶対気づいてるだろうし……

 

絶賛頭の中で発狂中の飛鳥。いけないと思って顔をあげてみると。レイヴンの顔がドアップ。さすがの飛鳥も驚き、声を上げる。

 

「わっ!?」

 

「お嬢ちゃん、―――?」

 

「!!?」

 

飛鳥は、耳を疑いたくなった。確かに、ここはゲームの中で、自分はこのゲームの中の主要人物の1人として、ストーリーに絡んでいる。それは、もう間違いようのない事実。そうでなければ、騎士団に入っていたとしても、ナイレンや騎士団時代のユーリとフレンとも、会話をしていた、という記憶なんて創る必要がないからだ。そして。ゲームの主人公メンバーの一員としているからこそ、何がおきてもおかしくはない。ないが、これはあまりにも、おかしいではないか。

 

「あれ?アスカ、知り合いだったのか?」

 

「―――」

 

再び、飛鳥の頭の中に映像が流れ込む。それは、おそらく、ダングレストの酒場だろう場所で、レイヴンやドン・ホワイトホースと共に、酒を飲み交わしている、自分。おかしい。なんで、どうして。自分は、どこまで、彼らに関わったという事になっているというのか。この世界の自分は、生まれて、ハルルで過ごして(?)、騎士団に入って、やめて、今度はギルドに入っていたとでもいうのか。

 

「―い、――!!」

 

なんで。どうして、自分のようなちっぽけな人間が、こんな大きな繋がりを持っている。飛鳥の頭は、もうキャパオーバーだ。力が抜けて、その場に座り込む。

 

「お、おい!?」

 

「……違う、うちは……!!」

 

「アスカ!!」

 

「ちょっと、あんた!しっかりしなさいよ!」

 

「―――……うん、ごめん」

 

飛鳥は、そう言って立ち上がる。深呼吸をして、呼吸を整える。大丈夫、自分の特技を思い出せ。そうだ、冷静を装え。何食わぬ顔で、普通だと嘘をつけ。ポーカーフェイスで、騙せ。自分は大丈夫なんだと。そうだ、自分さえも、騙して、大丈夫なんだ、と。できるだろう?だって、自分はここに来る前は同じことをしてたんだから。

 

「アスカ、大丈夫です?」

 

「あんまし大丈夫じゃないけど、ここまできて引き返せないでしょ。だって、門番はリタが気絶させちゃったわけだし。起きて騒ぎが大きくなるほうが、ダメっしょ」

 

「無理すんなよ」

 

「あー…うん、善処する」

 

ユーリは飛鳥にまた、違和感を感じる。本当に、目の前の飛鳥は、自分が出会った頃の飛鳥と同一人物か。記憶が戻ることは喜ばしいことだ。だが、その度に飛鳥が、別人になっていくような気がして、もやもやする。それに、この町に来てから連続で記憶が戻っているようだし、ここには何かあると考えていいのかもしれない。

 

それぞれが考えながらもラゴウの屋敷に侵入。すると、中は地下遺跡のように暗く、生物の骨が転がっている。魔物もいるようだ。そんな中、子どもの声を聞き取る。もしかしたら、あの夫妻の子どもかもしれない。声を頼りに進んでいくと、広く開けた場所で橋の方にうずくまる少年を見つけた。保護もかねて一緒に連れていくことに。

 

―ん~……ここまでは、原作通り、なのかな?あんま覚えてないからわかんないや

 

飛鳥があいかわらずぼーっとしながら最後尾を歩いていると。鉄格子の向こう側にる男性に向かってエステルが叫んだ。

 

「ラゴウ!それでもあなたは帝国に仕える人間ですか!」

 

「むむっ……あなたは……まさか?」

 

ラゴウがそう言った途端。ユーリは剣を抜いて斬撃を飛ばし、ラゴウごと檻を破壊した。ラゴウはそれに驚き、ユーリ達を捕えろと言いながらそのまま逃げていく。ユーリたちも先へと進み、再び開けたところへ出た。すると、そこには海賊帽をかぶった少女の姿が。どうにもユーリの知り合いらしく、名前をパティと言った。

 

―あぁ、ここだったっけ……まぁ、流石にパティとは何のつながりもないみたい。そのほうが助かる。やっと頭痛が治まってきたとこだし

 

飛鳥が最後尾を歩いていると、パティが声をかけてきた。

 

「ん?おぬし、顔色が優れないようじゃが大丈夫なのか?」

 

「え?あぁうん、大丈夫だよ。戦闘はユーリ達が率先してやってくれてるから」

 

そんなことを話していると、屋敷の中のような廊下を抜け、再び開けた場所に出てきた。しかし、その瞬間。雇われたであろう傭兵が襲い掛かってきたのだ。ユーリ達にかかれば問題なく撃破できる相手だったが。その後、少し進むと。

 

巨大な装置が置いてある部屋へとたどり着く。どうにもこれは例の魔導器(ブラスティア)らしい。リタが調べてみると、どうにも複数の魔導器(ブラスティア)をツギハギにして天候に干渉できる術式を作ったようだった。そうして、証拠を取った後に騎士団が入れるように、と有事を起こそうと暴れだすユーリ達。

 

「うわぁっ!いきなり何するんだよっ!」

 

「こんくらいしてやんないと、騎士団が来にくいでしょっ!」

 

そう言って火の魔術を連発するリタ。しかし、そこで傭兵を連れたラゴウが戻ってきてしまう。そして、エステルの事を殺さずに捕らえろと言っていることから、どうにもエステルの身分に気づいているらしい。そんな中、カロルが傭兵達を見て呟く。

 

「まさか、こいつらって、紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)?」

 

しかし、そこまで強くなかったのか、ユーリ達に倒されていた。そこで引こうとするユーリだが、リタが粘る。そのせいで、フレンたちと対面してしまった。だが。

 

ガッシャーン!!

 

そんな音と共に窓を突き破って、何かが入ってきた。それは、竜のような魔物に乗った、槍を携えた者だった。白い鎧に身を包んでいるため、男か女かもわからない。魔導器(ブラスティア)を壊し、リタやウィチルの攻撃を避け、炎を吐いて再び窓から飛び去って行った。フレンたちは炎の壁に阻まれ、進むことができない。その騒ぎに乗じて逃げようとするラゴウを見つけたユーリは、あとを追いかける。

 

なんとか外に出ると、あれだけ土砂降りだった雨は止み、外は晴れていた。ユーリはパティと少年に別れを告げ、走って追いかける。だが、船はすでに出航していた。だが、まだ飛び乗れば乗れる。そんな状態だった。

 

「嘘やん!!待って、マジで待って~~~!!!!」

 

とかなんとか言いながらも無事に飛び乗ることができた飛鳥とユーリ達。だが、飛鳥は驚いていた。自分がこんなに飛べることに。ここに来る前は、運動が嫌いで、苦手だったのだ。そんな自分がこんなに飛べるはずがない。だから、もう1つの、考えたくなかった可能性について考えてしまった。

 

―……本当に、うちは、トリップしたん?もしかして。うちは、意識だけこっちにきて、本当に存在している、この体の持ち主の意識を、塗りつぶしたんじゃ…?そのせいで、記憶が飛んだんじゃないん…?

 

だが、声の主は言っていた。現実を捨てる覚悟はあるか、と。なら、きっと体も自分のだろうと、そう飛鳥は考えた。そして、ふと顔をあげると、敵の攻撃が迫っていた。咄嗟に相手の武器を蹴り上げる。あぁ、やっぱり。こんな事、自分であれば絶対にできない。

 

「っ……!!」

 

「アスカ!」

 

「やるじゃねえか」

 

「だ~、もう!」

 

―考え事は後!とりあえずここで変な奴が出てくるはずで、確か、ボスだった!!気を抜いてたら死ぬ!!

 

ひとまず戦闘を終え、鍵がかかっている場所を開けようと、カロルが近づくと、大男に吹っ飛ばされた。カロルを吹っ飛ばした大男は隻眼で、左腕も武器になっていて、どこかのお話しに出て来る、船長のよう。しかし、いつの間に後ろに回り込んだのか、ユーリはすぐにその男に武器を向ける。だが、その大男はユーリに向けて、ノコギリの形をしたような大剣(だと思われるが、この男は片手で持っている)を振りぬく。だが、ユーリも武器ではじき、そのできた一瞬の隙に跳躍し、エステルたちのところへと着地する。

 

「バルボス、さっさとこいつらを始末しなさい!」

 

ラゴウが後ろでそういうが、バルボスと呼ばれた大男は

 

「金の分は働いた」

 

と言い、騎士にも追いつかれては面倒だという理由で逃げを選択する。ラゴウはザギという者に後を任せ、バルボスと共に逃げ去ってしまった。すると、ピンクのような赤のような髪に、横髪が金色という奇抜な髪色と髪型をした、両手に刃をもった、男性―ザギが現れた。現れて早々ユーリを狙うが、ユーリはなんとか避ける。だが、ザギはそのまま突っ込んでいき、船の一部を破壊。

 

―うわぁ……ザギ戦かぁ……

 

飛鳥はチャクラムではなく、銃を構えてため息をついた。




というわけで長くなりましたがい一旦ここで切ります。

次はザギ戦~となります。


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21戦目

いやぁ、早いですねぇ……もうすぐ年明けですよ…(遠い目)

今回はザギ戦~となります。

アスカの技、どうしようかなぁ…w


・・・

 

ザギ戦に突入したユーリ達。幸い、ザギはユーリが目的だったらしく、執拗にユーリを狙っているのみだった。そのため飛鳥が狙われることはほぼなく、銃でひたすらザギの足を狙い、機動力の低下を試みる。だが、そんな飛鳥にザギが迫る。

 

「さっきからちょこまかと逃げ回りながら、オレの足を狙いやがって!!」

 

「げっ…」

 

端に追い詰められた飛鳥は、銃を弾き飛ばされてしまう。だが、そこで飛鳥も負けじとチャクラムを出し、手に持ったままザギを殴り(斬りつけ)、しまいには蹴り上げたのだ。すると、そこにユーリが追撃。いつの間にか飛鳥と立ち位置が逆になっていたザギはそのまま海に落っこちたのだ。その後、驚異の速さで船の上に上がってきたが。

 

―はぁ、死ぬかと思った……つーかここに来てからかな!?咄嗟に足が出るようになったんだけど!!!いやまぁいいんだけどさ!!!でもこれ、割とビビるんだかんね~!!?

 

内心で再び発狂している飛鳥は、それでもチャクラムに持ち替えながら銃を拾う。所々で火の手が挙がっているため、早くしなければまずい。そうしてなんとかザギを撃退することに成功したユーリ達。

 

「ぐぅあああっ……!!痛ぇ」

 

「勝負あったな」

 

「……オ、オレが退いた……ふ、ふふふアハハハハっ!!貴様、強いな!強い、強い!覚えた覚えたぞユーリ、ユーリっ!!お前を殺すぞユーリ!!切り刻んでやる、幾重にも!動くな、じっとしてろよ……!アハハハハハ」

 

そこまで言ってザギは船の爆発に巻き込まれ海に落ちた。飛鳥はザギとはこのあと何度か戦うことを知っているため、絶対このくらいじゃ死なないという事はわかっているし、何よりも敵であるザギを心配することもしない。流石にそこまでお人よしではないのだ、自分も。

 

―ザギ戦が終わった後は……船が沈むんだっけ

 

飛鳥は、気づかれないようにカロルが開けようとしていた扉の前に行く。すると、何故か頑丈に閉まっていたため、銃を使って扉を壊したのだ。扉を開け、捕まっている人(まだ少年とも呼べるがエステルとそう変わらないだろう)の縄を下町を出る時にもらったナイフで切る。

 

「こんなところで気ぃ失ったら、死ぬで!もうちょっとやから頑張って!!」

 

「っ、あな、たは……」

 

「うちのことは後で不敬罪でもなんでも罰すればええ。せやから、今はちょっと頑張って。火事になっとるから煙あんま吸わんようにね。よっと」

 

「あ、ありがとう、ございます…」

 

「おいアスカ!?」

 

「捕まってた人や。おそらく、エステルと同じように偉い身分の方だと思う。ユーリ、うちじゃ運べない。任せていい?」

 

「あ、あぁ」

 

ユーリは、飛鳥から気絶している小柄な男性(少年?)を託される。しかし、そのすぐ後に船が沈む。水中で飛鳥は、見えた。ひっかかり、危ないユーリと、少年の姿を。飛鳥はすぐに銃でユーリ達をひっかけている木片を撃ち抜く。

 

そうしてなんとか水面に上がることに成功。リタやエステル、カロルも無事のようだ。飛鳥は、泳ぎが得意でなかったのだが、どうやらこちらに来てからはそうでもないらしい。

 

「……っぷは!あ~~しょっぱいっ!!ひっさびさだけど、ホントしょっぱいっ!!!」

 

「アスカ、お前、ほんとにアスカか?」

 

「!………そやで。今は、『月城飛鳥』じゃない。アスカ・ツキシロだ。ホントはね、もっと大人しくしとこうとか思ったけど、ダメだ。だから、普通にいくよ。クス、おかしいなぁ、ポーカーフェイスだって、特技の1つだったはずなのに……いつの間にひっぺがれたんだろうねぇ……」

 

「アスカ……?」

 

そういって悲しそうに、どこか申し訳なさそうに笑う飛鳥に、ユーリには、彼女が何を言っているのかがわからなかった。ハッキリわかるのは、飛鳥が、最初のようにどこか無理してるような話し方や、行動をしないということだけだ。どうしてそんな風に悲し気に、申し訳なさげに笑うのかまでは、わからない。

 

・・・

 

あの後、フレン率いる騎士団の船に助けられたユーリ達はひとまず港(おそらくトリム港だと思われる)でおろしてもらい、宿屋で詳しい話をすることになった。しかし、そこにいたのはラゴウだった。そして、ヨーデルという男性もだ。フレンたち騎士団もいる。そんな中でラゴウは会ったのは初めてだとか言い出す。

 

これには飛鳥もキレかけたが、飛鳥より前にユーリ達がキレたようで、特にリタが

 

「ウソ言うな!魔物のエサにされた人たちを、あたしはこの目で見たのよ!」

 

というのだが。

 

「さぁ、フレン殿、貴公はこのならず者と評議会の私とどちらを信じるのです?」

 

そこで何も言えないフレン。その態度を見たラゴウはそのまま部屋を出ていった。そのあと、ヨーデルが次期皇帝候補だということを伝えられる。だが、エステルとフレンにはヨーデルが捕まった理由はわかっているらしい。しかし、一般市民であるユーリには教えられず、黙ってしまう。

 

「ま、好きにすればいいさ。目の前で困ってる連中をほっとく帝国のごたごたに興味はねぇ」

 

そういって、そのまま行こうとするユーリにフレンが声をかける。

 

「ユーリ……そうやって帝国に背を向けて何か変わったか?人々が安定した生活を送るには帝国の定めた正しい法が必要だ」

 

「けど、その法が、今はラゴウを許してんだろ」

 

「だから、それを変えるために、僕たちは騎士になった。下から吠えているだけでは何も変えられないから。手柄を立て、信頼を勝ち取り、帝国を内部から是正する。そうだったろ、ユーリ」

 

「……だから出世のために、ガキが魔物のエサにされんのを黙って見てろってか?下町の連中が厳しい取り立てにあってんのを見過ごすのかよ!それができねぇからオレは騎士団をやめたんだ」

 

「知ってるよ。けど、やめて何か変わったか?」

 

「………」

 

「騎士団に入る前と何か変わったのか?」

 

フレンがそこまで言うと、ユーリは何も言わないままフレンたちに背を向け、その場から去ってしまった。

 

―だよねぇ……まぁ、うちは行くとこないし、ひとまずユーリについていくかな。

 

 

「少年、アスカ」

 

「ん」

 

「え……ボ、ボク……!?」

 

「ユーリに彼女を頼むと伝えておいてくれ」

 

「は、はい……!」

 

「りょーかい」

 

「あ、それとアスカ」

 

「ん?」

 

飛鳥は、フレンに呼び止められて立ち止まる。なんだ、この時点でフレンから何か言われるようなことはしていないはずだ。

 

「君は、本当に騎士団に、いたのかい?」

 

「あぁ、そのこと?そやね、全部の記憶が戻ったわけやないからなんもわかんないけど、でもうちは騎士団をやめてる。きっと、ほんの一時期だけだったんだよ、うちがいたのは。だから、2,3度、挨拶をした程度とかじゃないかな。やから、フレンが覚えてなくて当然。それにやめてよかったのかもね。うちは、やっぱりどこにいても……邪魔者でしか、ないみたいやし。うちは―――〝咎人〟やから」

 

「え?」

 

「アスカ、それはどういう意味です!?」

 

「そのうち、わかるよ。だから、忘れないで。うちが、〝咎人〟だってこと。後で絶対、その意味が分かるから」

 

飛鳥はそれだけを言い残し、そのまま走って追いかけていった。それを追うようにエステルも追いかけていく。残ったフレンはというと。

 

「アスカが、咎人――?」

 

飛鳥の背を見て、そう呟いた。

 

 




ということで、ザギ戦~ユーリとフレンの衝突まででした。

アスカが何故自分をそう称したのかは、ネタバレになるので書きませんが、おそらく頭の良い皆さんは、すぐにわかると思います(笑)

では次はユーリの単独行動~となります。


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22戦目

さて、今回はユーリの段毒行動~です。


アスカの技やら秘奥義やら……かぶらないようにするのは大変ですねぇ…


皆と別れたユーリはひとまず魔核(コア)の手がかりを探すついでに街を見て歩くことにした。すると、いつぞやの屋敷の前であった、レイヴンの姿を見つけ声をかける。相手はとてつもなく嫌そうにしていたが。そのため、ユーリが言ってやると。

 

「挨拶よりも先にすること?うーん……」

 

どうにもとぼけるようだ。しぐさ一つ一つが実に胡散臭い。

 

「ま、騙した方より騙された方が忘れずにいるって言うもんな」

 

「俺って誤解されやすいんだよね」

 

「無意識で人に迷惑かける病気は医者に行って治してもらってこい」

 

なんて言い合っていると、

 

「さっき物騒なギルドの一団が西北に移動するのも見かけたしね。騎士団はああいうのほっとけないでしょ」

 

なんて気になることを零したレイヴン。物騒と聞いて浮かぶのはあのラゴウの屋敷で一戦を構えた、あのギルドしか今のところ思いつかない。

 

「……物騒か、それって紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)か?」

 

「さぁ?どうかな」

 

「そもそも、おっさんあの屋敷へ何しにいったんだ?」

 

「ま、ちょっとしたお仕事。聖核(アパティア)って奴を探してたのよ。で、あんたと一緒にいる、あの嬢ちゃん。どうよ?」

 

割とさらっと答えてくれた。聖核(アパティア)というレイヴン曰く魔核(コア)のすごい版、らしいのを探していたのだそう。だが、そのようなものは聞いたことがない。ついでに、おそらく飛鳥だろうことも聞いてくる。

 

「アスカの事か?別にどうもしねえよ。記憶喪失らしいからな。自分探しの旅ってところだろうよ」

 

「あぁ、やっぱしそんな感じなのね。あの時の反応見れば嫌でもそうなんじゃないかって思ってたんだけどね」

 

「なんだ、知ってんのか?」

 

「まぁね。お嬢ちゃんに伝えてくれる?『近くに来ることがあったらまた顔を出せ。待ってる』ってね。前に会った時はあんな感じだったし、何よりお嬢ちゃん怪我多かったからね。心配だわ」

 

「……わかった。伝えとく」

 

そんな風に話してると、カロルたちが追い付いてきた。特にリタは魔術を放たんばかりの勢いだ。急いでレイヴンは逃げ、ユーリはカロルたちが追い付くまで待っていた。そして、怪しいギルドが北西に向かったこと、それを追いかけることを伝えた。そしてユーリは飛鳥に

 

「あのおっさんからの伝言だ。『近くに来ることがあったらまた顔を出せ。待ってる』だとよ」

 

「え、―――っ!!」

 

それを聞いた瞬間。飛鳥は再び激しい頭痛に襲われる。立っていられない程で、思わずその場に座り込んでしまう。

 

「おい、アスカ!?ったくあのおっさん、次あったら問い詰めてやる」

 

「っ、う……!!あ、ぐ……!!!」

 

「アスカ!!」

 

痛みのせいで気を失ったのか、倒れてしまった。

 

「「「!?」」」

 

ひとまずユーリが運ぼうとして飛鳥を持ち上げる。

 

「さき、に……すす、んで……!すこ、し休んだ、ら……大丈夫、だから……」

 

目も虚ろで焦点が合っていない飛鳥。だが、意識がないわけではないらしく、ユーリに途切れ途切れにそう頼んだ。

 

「自分の状態を見てから言うんだな」

 

「っ、大丈夫だよ……こんな、の。だから、先に進んで。ほんとに少し休んだら平気、だから……」

 

ユーリは驚く。先ほどは途切れ途切れで、息も絶え絶え、と言う程だったのに。次の瞬間には、もうある程度回復しているではないか。いや、顔色を見る限りそうではないらしい。だが、今の一瞬のうちに何があったのか、目が虚ろなことは変わらない。だが、焦点はあっている。おかしい。

 

「……マジで無理になったら言えよ」

 

「はは、ありがと」

 

そういって目をつぶる飛鳥。だが、完全に意識を飛ばしたわけではないようだ。ともかく先に進んでと言われたので、ユーリは飛鳥をおんぶにしながら、歩く。

 

「アスカ、記憶が……」

 

「でしょうね。でも、あのおっさんからの伝言でこうなったんでしょ。やっぱり次会った時ぶっ飛ばす!」

 

仲間のそんな声を聴きながら飛鳥は思い出していた。頭の中に流れ込んでくる映像は、初めて自分がダングレストに来たばかりの記憶、そこでレイヴンと会った記憶。

そして、そこでしばらく過ごし、戦い方や身体の使い方を学ぶ自分。

最後に、見送られながら、どこかに旅立つ自分。そして、どこかの森――おそらくクオイの森で魔物にボコボコにされ、ぶっ飛ばされた挙句、木に強く頭をぶつけしばらく気を失ったこと、目覚めた自分が何も覚えていないことを知る。おそらく巨大な魔物だったため、ギガントと呼ばれる部類だろうか。しかし、その魔物は飛鳥の見たことのある、黒いヤツで。

 

そして当てもなくさまよい続けてユーリと会った、ということらしい。あぁ、なんだ。自分はそんな経験をしているのか。だからこんなに戦えるし、あの魔物も、倒せるんだ。そして、自分が武醒魔導器(ボーディブラスティア)を持っていることを知る。もしかしたら、自分はトリップしたのはもっと過去で。騎士団に入る前あたりには来ていたのだろう、この世界に。

 

幼少の記憶は創られたものだろうが、きっと騎士団に入ってからの記憶は間違いなく、自分が体験した話なのだろう。だから、幼少の時の記憶と違ってしっくりくるのだ。あぁ、なんだ記憶喪失っていうのは本当だったのか。間違って、なかった。

 

すると、何故だろう。飛鳥は、自分の身体がどこか軽く、力が湧いてくるような気がした。もしかして武醒魔導器(ボーディブラスティア)を使えるようになったのだろうか。まぁ、なんにせよ、謎は解けた。もう、大丈夫。まだ細部は思い出せていないし、自分が本当にここの世界に来た時のことは覚えていないが、それでも今は良しとしよう。

 

・・・

 

飛鳥が倒れてから、しばらく歩いていたユーリ達は、人のいない、地震で滅んだという街、カルボクラムに到着していた。

 

「こりゃ完璧に廃墟だな。アスカ、大丈夫か?」

 

「――うん、ありがと。もう、へーき」

 

声音からしてもう大丈夫だろう。そう判断したユーリは飛鳥を下した。どこか吹っ切れたように見える飛鳥。そして、仲間から心配される飛鳥は笑顔で、照れくさそうにしている。あぁもう大丈夫だ。すると。

 

「そこで止まれ!当地区は我ら『魔狩(マガ)りの(ツルギ)』により現在、完全封鎖中にある」

 

その声の主にカロルは思い当たる人がいるようだ。

 

「これは無力な部外者に被害を及ぼさないための措置だ」

 

カロルは声の主の少女に声をかけるが冷たくあしらわれ、さらには

 

「少しはぐれた?よくそんなウソが言える!逃げ出したくせに!」

 

なんて言われてしまう。

 

「逃げ出してなんていないよ!」

 

「まだ言い訳するの?」

 

「言い訳じゃない!ちゃんとエッグベアを倒したんだよ!」

 

「それもウソね」

 

「ほ、ほんとだよ!」

 

「せっかく魔狩(マガ)りの(ツルギ)に誘ってあげたのに……今度は絶対逃げないって言ったのはどこの誰よ!昔からいっつもそう!すぐ逃げ出して、どこのギルドも追い出されて……」

 

「わああああっ!わあああああっ!」

 

「……ふん!もう、あんたクビよ!」

 

「ま、まってよ!」

 

魔狩(マガ)りの(ツルギ)より警告する!速やかに当地区より立ち去れ!従わぬ場合、我々はあなた方の命を保証しない」

 

それだけ言い残し、立ち去る少女。カロルは、ナン、とその少女の名を呼んだが、聞こえていなかったようだ。

 

―あぁ、ここか……いやぁホント面倒な……あんなやつと戦わなきゃなんないの……?

 

飛鳥は、先のことを考え、ため息をつくのだった。




ということで、ナンさん登場!

さて、次はカルボクラム探索~になります。


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23戦目

さて今回はあのバトルまで行けるのでしょうか……

カルボクラム探索~になります。


・・・

 

ひとまず目的の紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)もいないようなので、探索をするユーリ一行。そこで、何かの魔導器(ブラスティア)を見つける。リタに見てもらうと、少し変わっているらしいが転送魔導器(キネスブラスティア)の一種らしい。しかし、魔核(コア)はあるため、取り外しで使うタイプではないとのこと。探索の途中でその魔導器(ブラスティア)を起動させるものがあればということで探索の続きに戻るのだった。

 

―やれやれ、マジで雨とか……ホント、好きだけど、嫌いだ。あと、疲れた。早く休みたい……

 

なんて飛鳥は思うもののここには魔物もいる。気が抜けないのも事実だ。しばらく探索していると、足元に大きな石板がある行き止まりにたどり着いた。どうもこの石板には何かあるようだ。しかし鍵穴も何もなくどうしようかと思っていると、ユーリが軽く蹴る。すると、すんなりと開き、首をかしげるカロルだった。

 

中に入ってみると転送魔導器(キネスブラスティア)の起動スイッチのようなものがあり、起動させてみるとそれであたりのようだった。しかし、エアルが足りず動かない。するとユーリがソーサラーリングで何とかならないか、と言って打ち込んだ。すると、エアルが充填されたようで動き始めたのだ。

 

軌道を確認したところで、先ほどの転送魔導器(キネスブラスティア)があった場所に行ってみると、動いている。さっそく使って何やら調べていると謎のメモ。そしてさらに魔狩(マガ)りの(ツルギ)と思われる集団も発見。どうやら巨大な魔物との戦闘のようだが、リーダーと思しき人物が一発で倒してしまう。

 

それを見たユーリは何かを使ったのはわかったが、何を、というのはわからなかった。しかし、カロルは知っているらしく「フェイタルストライク」という技だと教えてくれた。

 

―あぁ、結局あいつらのせいで、ああなるんだもんねぇ……頭痛いわ、マジで

 

飛鳥はどこか遠くを見つつ、息をついた。このところため息ばかりついているように思えて、なおさら気が重くなった。ともかく、先へ進むというユーリ達に、相変わらず最後尾についていく飛鳥だった。

 

そしてその後の戦闘でユーリが見事フェイタルストライクを決める。

 

「オレのやつ、見ているうちにみんなもできるようになるんじゃないか?」

 

「ムリ、ムリだって!あれは熟練した剣の……」

 

「そうそう!呑み込み早いユーリと違うの、うちは!」

 

「知ってるよ。でもカロル、アスカ。おまえらの腕も自分が思ってるほど悲観したもんじゃないぜ?」

 

「「え…?」」

 

「エステルもな」

 

「わたしも……?」

 

ということでなんとか戦闘を終えたユーリたちは再び探索に戻り、また謎のメモを見つける。もう1枚あり、3枚になった。そうして探索しているうりにエステルは夢中になって自分が本で読んだ知識と同じものを目に見て回っている。

 

そして引き続き探索している時だった。ふいに、ユーリはエステルに声をかける。

 

「聞きそびれてたんだが……」

 

「わたし、ですか?」

 

「どうして、トリム港で帝都に引き返さなかったんだ?」

 

「どうしてって……」

 

「そっか、エステルはフレンに狙われてるって伝えたかったんだもんね」

 

「あぁ、あの時点で、お前の旅は終わったはずだろ?」

 

―……フェイタルストライク、ねぇ……まぁうちは銃なはずだし……チャクラムの方、か。銃はまだ使えるもんねぇ……

 

色々と考えながらついていっていたせいか、飛鳥はふいに自分の身体に異変を感じる。見回すと、エステルたちもそれなりに影響があるようだ。

 

「な、なんだろう、さっきから気持ち悪い」

 

「鈍感なあんたでも感じるの?」

 

「鈍感は余計!……っていうか、リタも?」

 

「こりゃ、なんかあんな」

 

「はぁ……マジで勘弁ね」

 

「大丈夫か?」

 

「あはは、これが大丈夫に見えるんなら、ユーリは一回医者に目ぇ見てもらえっ」

 

「そんだけ喋れんなら大丈夫だな」

 

「まぁ、ね。まだなんとかなるよ。これくらいなら、あん時のほうが、もっと辛い」

 

そういって深呼吸し、再びすっと立つ飛鳥。そして扉を開ける装置にパスワードを入力し、扉の中に入ってみると。そこには大きな空間で、さらに言えば何かの魔導器(ブラスティア)が作動しているようだ。巨大な魔物もいる。一層濃くなるエアルに飛鳥以外のメンバーはフラフラだ。否、飛鳥も例外なくフラフラではあるのだが、飛鳥の使う銃は、空気中にあるエアルやエネルギーを体内に取り込んで銃の弾にしているため、逆に言えば今は球切れしない、絶好のチャンスなのだ。ただし、変換するのに体力を使うため、上限はなくとも飛鳥自身の体力との勝負になるが。

 

「病人は休んどけ。ここに医者はいねーぞ」

 

「え……?で、でも……」

 

―あぁ、これか……うわぁめんどそうな……

 

飛鳥は銃を握りつつ、様子を見る。大丈夫、このくらいなら、と自分に言い聞かせて。すると、魔狩(マガ)りの(ツルギ)と対峙する。しかし、あちらはこちらと違って、エアルは濃くはないようだ。そこであの竜使いが現れ、魔導器(ブラスティア)を壊していく。そして、魔狩(マガ)りの(ツルギ)は結界の中にいた魔物と竜使いと交戦する。しかし、結界に閉じ込められていたほうの魔物が暴れたことにより、ユーリ達の場所は破壊される。

 

そして、結界に閉じ込められていた魔物とご対面。

 

「ユーリ、助太刀するよ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「まーね」

 

そうして戦う2人。だが途中でエステルやリタ、ラピードども合流してなんとか撃破する。とはいっても殺したわけではないのだが。巨大な魔物は、エステルを見ると、そのまま去っていく。どうやら危機は脱したようだが、天井が崩れそうになる。竜使いもいなくなったことから、長居は無用とのことで、カロルを探しながら外へ出た一行。すると。

 

「なにかあれば、すぐにそう!いつも、いつもひとりで逃げ出して!」

 

「ち、違うよ!」

 

「何が違うの!?」

 

そんな風に言い合っている声が聞こえる。行ってみると、カロルの姿が。どうやら無事だったようだ。ひとまず全員が合流したため、休める場所に行くようだ。皆が行く中、カロルは立ち止まっている。

 

「……ボクだって」

 

「逃げるのは、悪くないよ、カロル」

 

「え?」

 

「うちだって、見て?こ~んなに足震えてんの。よくこれで味方に攻撃当てなかったなって心配するレベルだよ」

 

「あ……」

 

「大丈夫。誰だって怖いことの1つや2つある。うちだって、そうや。ほんとは逃げたくて、逃げたくてたまらなかった。けど、足が動かないんじゃ、逃げらんないでしょ」

 

「……」

 

「だから、無理やりにでも立たせて、戦った。ただ、それだけや。でもね、カロル。うちみたいになったらあかんで。絶対」

 

「え?どうして!?アスカは、戦ったんでしょ?」

 

「戦ったよ。だけどね、うちみたいに感情を押し込めることを、覚えたらあかん。それにまだ、カロルは年齢だけで言えば子どもだ。だから、そんな年齢のうちから恐怖を抑え込むだとか、自分の感情を抑え込むことをしてたら、本当に痛いとき。本当に、つらいとき。本当に、泣きたいとき。そんなときに、何もできなくなっちゃう」

 

そういった飛鳥は、どこか悲しそうで。カロルには、それが自分への後悔に見えた。そこで何か言おうとしたが、ユーリに呼ばれたため、それはしなかった。

 

そして、ユーリ達が街の外に行こうとすると。そこにいたのは騎士団だった。




というわけで、次はあの皆さん知ってる紫?頭の騎士さんとのご対面ですねぇ……

あの人、生理的に受け付けません……w

次回はキュモールとご対面~になります。


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24戦目

さてさて、飛鳥さんも覚醒の第1段階的なものがようやくできたころで、記憶も大体すっきりしたようです。

今回はキュモールとのご対面~になります。

あぁ、あの騎士さんどうにかなりませんかねぇ

先を知っているのでどうとも言えませんが。


・・・

 

ユーリ達の目の前に現れたのは、キュモールと呼ばれる騎士だ。そして、エステルが誘拐されたのだと言い出す。エステルが否定するが無理やり連れて行こうとした。しかし。

 

「ユーリ・ローウェルとその一味を罪人として捕縛せよ!」

 

そこでルブラン達、シュヴァーン隊が駆けつける。そこでひと悶着あったが、どうにかなったようで、キュモール達は去っていく。ユーリ達は大人しく捕まることを選んだようで、飛鳥も特に抵抗はしなかった。そして、シュヴァーン隊長と呼ばれる人物がいるのをわかってか、飛鳥は見上げ、そしてどうせわからないだろう。そう思い口パクではあるが

 

【レイヴン それとも、ダミュロンって呼べばいい?】

 

と伝える。否、伝えるのではなく、見せる。ただ、その時に飛鳥はニヤリとした、意地悪い笑顔を浮かべたので、伝わってるのかもしれないが。

 

 

 

 

 

そして、連行され宿屋で今、罪状確認をされている。もちろん、皆一緒にである。ユーリの罪状を確認しているだけで途方もなさげだ。今聞いているだけでも、もう18個目である。ルブランが次の罪状を読み上げようとすると、アレクセイが入ってきた。どうにもエステルとヨーデルの両名によりユーリの罪はすべて赦免されたとのこと、それからエステルが帝都に戻るとのことで、ユーリにはヨーデルを助け、エステルを護衛したことで、おそらくだがお金を報酬として渡される。だが、それをユーリは要らない、とつっぱねた。

 

そして、エステルに会ってほしいと頼まれたのち、解放されたが、エステルが抜けるとあって、パーティ内の雰囲気はどこか暗く、重い。これでいいのかと問うリタにユーリは選ぶのはオレじゃない、と答えた。

 

「確かにね。いくらうちらが一緒にいたくても、エステルは立場ってモンがあるし、そこはしゃーない」

 

「あんた……」

 

「んじゃま、少し街を見て回る?」

 

「そうだな」

 

そいうことでそれぞれが好きに過ごすことになった。飛鳥は一人でぶらつきながら、ぼーっとしていた。まだ下町の魔核(コア)を取り戻していない以上、第1部さえ終わっていない状況だ。先は長い。

 

―あぁ、疲れた。いずれ、うちも皆と一緒に……ほんまに一緒になんて、いけるの?うちなんかが?

 

不安に駆られ、ついつい悪い方へと考えを巡らせる。そんなことをしたって、現状が変わるわけでもない。ましてや、自分に課せられたこの世界を救う、という使命が果たされるわけでもないのだ。でも。それでも。

 

―だって、うちやで?何もできない、出来損ない。なのに、うちだから、世界を救える?意味わからん!!だって、うち抜きで皆で世界救ってるやんか……!!!

 

気が付けば、涙が頬を伝っていた。もうとっくの昔にキャパオーバーしてたのだ。でも、泣く暇なんてなかった。ただ、それだけのことで。どうしたらいいのか、わからない。どうして自分なんだ。自分より優しくて、自分より頭の良い人なら、いくらでもいただろう。

 

なのに、どうして。なんで自分を選んだ。確かにここにきて、あの忌々しい場所から逃げ出すことはできた。どうせ、あそこに居たって何も変わらないだろう。そういう意味では感謝している。だけど、自分にはシューティングの腕とポーカーフェイスしか、特技のないヤツだ。

 

こんなファンタジーの世界に飛ばされたからと言って何か特殊能力に目覚めたわけでもない。強いて言えば、空気中のエネルギーを銃の弾に変換できることくらいか。これを極めればもしかしたら、エステルのあのチカラを抑えることができるだとか、そういう事ができるかもしれない。

 

だけど。だけど、でも、そんな大層なこと、できない。今の自分じゃできはしないんだ。わかってる。そんなことできるようになるには、努力が必要なんだって。でも、努力したって、実らなかったら意味がない。ねぇ、そうでしょう?いくら頑張っても、認められなければそれは、ただの無駄。実らない努力はない、なんてこと、ないんだよ。

 

 

ねぇ、どうしてうちを選んだの。

 

 

飛鳥は、ひとしきり泣いてから、宿屋に向かうことにした。泣いてるところは見られたくはない。きっと、優しい皆は慰めてくれるだろうから。だけど、今はダメだ。折れてしまいそうだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちは、どうすればいいの?一人じゃ、何にもできないうちは―――!




今回はちょっと短めですね。

飛鳥の思い爆発です。飛鳥はいい子。少し、素直じゃないだけなんです。



次回は宿屋で合流~になります。


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25戦目

また日にちが空いてしまいましたが、続きです!

今回は宿屋で合流~になります。

今回は飛鳥の事を掘り下げているので、少ししか進展してません…!


最近寒いですねぇ…で、朝が辛い…!!

皆様も、風邪にはお気を付けください!


・・・

 

飛鳥が宿屋に向かうと、カロルが居た。カロルは飛鳥に気づくと、声をかける。

 

「あ、アスカ!もう、いいの?」

 

「ん、うん」

 

「……ねぇ、アスカ」

 

「うん?」

 

「カルボクラムで、逃げるのは悪くないって言ったよね?」

 

「うん、言った。だって、うちらは、人間やもん。よっぽど恐怖を抑え込むような訓練してるだとか、怖い体験を嫌という程してきたか……そんなヤツじゃなきゃ、そう簡単に恐怖なんてなくならない」

 

カロルの問いかけにそう答えた飛鳥は、どこか遠くを見ていた。あぁ、この目は、いつか見た、あの目だ。遠いところにある何かを見る目。一体、どこを見ているのだろうか。それに、どうしてそのようなことがいえるのだろう。まだ、カロルには「アスカ」の事がわからない。

 

「……」

 

「それに、うちから見たら、カロルだってとっても強い子なんやで?」

 

「…………え?」

 

予想外の言葉に、カロルは長い沈黙の後に聞き返す。

 

「だって、うちは戦うのは苦手やもん。うちよりも、年下なのに物知りで、手先も器用でさ。おまけにその歳でそんな武器を使える。うちにはできひんことや」

 

「そ、そんなことないよ!ボクは、ギルドにいたことあるからだし…手先が器用なのも、やってたからだよ?武器はアスカだって、銃とワッカの武器使ってるじゃん」

 

「うちは、不器用やで。武器だって後衛向きのやつだしね。カロルやユーリみたいに前衛でなんて、無理。できっこない」

 

自分を卑下する飛鳥。カロルは飛鳥があきらめているように見えて、でも、どこか迷っているようにも見えた。だが、そこでリタが現れた。

 

「あら、あんたたち、先に来てたの」

 

「あ、リタ。そうなんだ」

 

「もういいの?」

 

「ええ」

 

すると、間もなくユーリとラピードが揃い、全員が宿屋に集合した。今日のところは疲れているだろうとのことで、エステルに会うのは明日になった。確かに色々とありすぎて、疲れている。部屋に行き、眠りについた。

 

 

・・・

 

 

気が付くと、飛鳥は暗闇に立っていた。それがわかった途端、飛鳥はため息をついた。

 

(あぁ、“いつもの”か……)

 

そう、飛鳥はこの夢が、夢であると知っているのだ。明晰夢、という夢が夢である、と自覚している状態になっている。その上、この夢を見るときに限って、そうなのだ。そして、その頻度はこの世界にきてから多少なりとも上がっている。

 

(……うちは、何すりゃええん。まぁでも。せっかくココに来たんなら)

 

飛鳥は銃をいつもの場所から取り出し、撃つ。どうせ、何もない空間に放り出され、さらには明晰夢なのだ。何もしないだけでは暇である。残念ながら、頬をつねっても痛みを感じても目覚めない。時間経過でしか目覚めないのだ。

 

だが。いつもなら、何もないはずのその真っ黒な空間。そこに、声が響いた。

 

―あなたは、自分の力をもっと使いこなすべきです。さぁ、コントロールを覚えなさい

 

(は……え?)

 

―あなたも、わかっているでしょう。原作とは、少しずつ違うことを

 

(……まぁ、そりゃね)

 

―ならば、もうすぐあの子があのチカラを使う……その時にあなたも影響を受けるでしょう。そして、あの子の力だけでは、うまくいかないでしょう。わかって、いるでしょう?

 

(え、……まじかよ)

 

―あなたも、使えるのですよ、癒しの力を。手遅れになる前に、修正を……

 

(なら、なんでうちを選んだ!!!うちより、うまくやる奴なんで腐るほどいたやろ!!!)

 

飛鳥は、叫ぶ。まだまだ、飛鳥はキャパオーバーしたままなのだ。そして、確信していた。この声の主が、自分をこの世界に飛ばした本人だということは。そして、薄々の正体にも。

 

―でも、あなたを救いたかった。あなたは、だれよりも、優しくて、強いから。あなたは、あのような環境下に置かれても、何一つ歪まず、堕ちず、自分を捨てなかった。

 

(抵抗したって無駄やん。あんなの。でも、無抵抗は、負けた気がして、嫌やったから…せやから、うちはできる範囲で、抵抗してただけや)

 

―だからです。普通の人であれば、抵抗すらやめていたでしょう。自殺していたでしょう。道を踏み外したでしょう。周りを恨み、自分を捨ててしまったでしょう。何より、堕ちていたはずです。

 

(………)

 

―でも、あなたは、自分を守った。大丈夫です。あなたは、もう、救われて良いのです。少しくらい、弱音を吐いたって構わないのですよ。いい加減、自分を赦してあげなさい。

 

その声は、優しかった。まるで、母親が、駄々をこねる幼子に言い聞かせるかのように。だからだろうか。飛鳥は、

 

(うち、は……イラナイコなんやろ!!?その誕生を、誰からも望まれてなかった!!!!そんなら、うちって何!!?ねぇ、教えてよ!!!わからへんよ!!!うちにできることなんて、知らんもん!!!)

 

感情を爆発させた。きっと、一度取れてしまった蓋は、そう簡単には閉められないのだろう。今までずっと固く固く蓋を閉め続け、押し込めてきた感情は、そう簡単に修まりなどしてくれない。

 

―大丈夫です。あなたは、必要な存在です。何度でも言いましょう。あなたほど、この世界を救える人はいません。それに、あなたの力は、念じれば使えます。お守りに念じなさい。あなたには、周囲に漂うエネルギーを別エネルギーに変換する力と、その子のチカラを抑える力があります。

 

(………)

 

何も言えなかった。自分がそんな力を持っていることにも驚きだが、何よりエステルのあのチカラを抑える術を自分が持っていたという事に。

 

―あなたはとても強く、優しい子。あなたは月城飛鳥。自分が受けたことがあるからこそ、人のイタミをわかってあげられる子。さあ、いきなさい。あなたを縛るものは何一つないのだから――

 

その声と共に飛鳥の意識は薄れていく。そして、声の主は飛鳥が消えてしまってから呟いた。

 

―飛鳥、あなたならきっと…救ってくれる。そして、ごめんなさい。きっと、優しいあなたには、荷が重いお願いをしていることも……さぁ、シャドウたち、覚悟なさい。飛鳥はもう、お前たち負の感情の塊には負けませんよ。これから、幾度となく立ちはだかろうと、飛鳥はきっとお前たちに負けたりはしないでしょう。

 

・・・

 

 

飛鳥は、飛び起きた。だが、覚えている。ハッキリと、夢であった出来事を。ペンダントを取り出しておく。

 

「……やれやれ、面倒なこって……」

 

苦笑したが、飛鳥の目は穏やかなものだった。

 

 

そして、準備が整い、宿屋を出ようとしたときだ。妙な音が聞こえた。聞くと、どうにもここの結界魔導器(シルトブラスティア)の調子がおかしいらしい。それを聞いたリタが駆け出すが、ユーリの制止により、立ち止まる。ここには騎士団長もいるのだ。大丈夫、と諭す。

 

しかし、ユーリも気になったのだろう。結界魔導器(シルトブラスティア)を見に行く。すると、すかさずリタが調べにかかった。そこへエステルがやってくる。どうにも騎士団の方が修理の手配をしてようだ。

 

フレンにそのことを伝えに行くユーリ達。しかし、かなり大きな振動に襲われ、急いで結界魔導器(シルトブラスティア)の方へ行ってみると、結界魔導器(シルトブラスティア)は、赤くなり、可視化するほどにエアルがあふれていた。駆けつけようとするリタを引き留めたユーリだが、暴走の余波で2人は吹っ飛ばされてしまい、いち早く起き上がったリタは結界魔導器(シルトブラスティア)に駆け寄る。

 

そこで、飛鳥は悟った。あぁ、自分の役目だ、と。リタのすぐ近くに駆け寄り、深呼吸をする。そして。エステルも治癒術を使うようだ。

 

「あんた、何してんのよ!!?」

 

「リタは手を休めなんな!!――せーのっ!!!」

 

飛鳥は、自分の手を突き出し、エアルを吸い込み、そして念じた。

 

―この、力でユーリら含めた周囲の人に、シールド!!!

 

すると、爆発する、ちょうどその瞬間に、一瞬だけ。うすい青い膜がはられ、どうにか爆発で死ぬ、という未来は防げたようだ。だが、いきなり無茶して力を使ったからだろう。飛鳥はその場に膝をついた。ごっそりと何かが持っていかれる感覚がしたからだ。同時に、両手の甲に、焼き付く痛み。手袋も破けてしまっているが、そこで、自分の手の甲にあらぬモノを見つける。

 

―あぁぁぁ、もうっ……!!!間に合って良かった、けど……ひっさびさに体中いてぇ……あと、これ何……!?あ~~、力覚醒しましたよっていう、証か……

 

今は黒の紋様でわけのわからない線だ。そして、とても痛む。いや、痛むのは手だけではないが。シールドを貼ったとはいえ、爆心地にいたのだ。ボロボロである。そこで、ユーリとフレンが駆けつける。

 

「ほら、飛鳥、いくぞ!」

 

「あはは、大丈夫やで。エステル運んだって。うちは、これくらいなら、歩けるよ」

 

「何言ってんだ!全身にヤケドがあるじゃねぇか!それに擦り傷も!!」

 

「はいはい、歩けるからまだ平気。歩けないエステルのほうが重症」

 

飛鳥はそれだけ言い、そのままスタスタとフレンの後をついていく。が、やはり、怪我の事もあり、歩みはのんびりだ。

 

―マジでいてぇぇぇ……!!!んとに、久々だぁ……ユーリ、ごめんね、でも。間違っても、うちとそんな距離つめるようなこと、すんな。うちが勘違いする。んでもって、マジで体中ボロボロって言っても、これより酷いのはたくさんあったからな。まぁ、こんな話するのは、きっと、ずっと後だろうし……あぁ、はやく寝たい

 

色々と考えていたら、リタを寝かせた後に出てきたフレンにより即座にお姫様抱っこでベッドに運ばれたのは、此処だけの秘密である。





飛鳥覚醒回でした!

とはいえ、あまり飛鳥をチートにするわけにはいきませんので、この覚醒したチカラには、それなりにデメリットをつけますので、ご安心を。

本音を言えば、オリ主無双!をしたいのですが、自重します(笑)

次回はリタが寝かされているところ~になります。


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26戦目


今回はリタが寝かされているところ~になります。


中々進みません…(泣)


・・・

 

宿屋の空き部屋なのだろうか、ベッドに寝かされたリタに、治癒術をかけ続けるエステル。飛鳥も同じ部屋に寝かされたが、リタと違って意識はあるためエステルに無茶するな、と言っていた。聞く耳持たずだったが。様子を見に来たユーリに止められてようやく術の発動を止める。ユーリは(自分の事は棚に上げておいてだが)、エステルとリタ、飛鳥の3人ともという意味で無茶ばかりしやって、と言った。だが、エステルはリタと飛鳥のことを言っているのだと思ったらしい。

 

「ひとごとにすんな。エステルも同罪だ」

 

「……ごめんなさい」

 

「でも、ホント死人が出なくてよかった」

 

「あの……あれは、なんだったんです?」

 

「ん、あぁあれ?あれは、うちの、空気中のエネルギー変換能力を応用させて、衝撃を肩代わりしてくれるような防壁を張ったの」

 

「どういうことだ?」

 

「まぁ初めてだったし、かなり使い方ミスったみたいで、一瞬しか張れなかったけどね」

 

「いや、アスカがそれを張ったからこれくらいで済んだんだろ」

 

「たはは、そりゃそうだ。んとに、うちはこれくらいの怪我するのは慣れてるしかまわないけど、エステルとかリタは違うでしょーに」

 

なんて、自分はいい、という飛鳥にユーリは聞いた。最初に会った時とは全くの別人ともいえる変化だったから。そして、気になることもあったから。

 

「アスカ、お前は、記憶が戻った、のか?」

 

「せやね。大体は戻ったよ」

 

「そうか……」

 

「あんだけ敬語使ってたのに、って顔やね。あんときは、名前しかわからなかったし、自分がなんであんなところにいたのかも、何もわからなかったからね」

 

「……」

 

「記憶が大体戻ったからかな。こっちのが話しやすいし、何より前より体が動くようにはなったかな」

 

なんてスラスラと話す飛鳥は、どこか懐かしげで、やはり最初に会った時とは別人だな、と思う。しかし、最初よりは今のほうがしっくりくるものの、まだ違和感があった。どうしてだろう。

 

すると、飛鳥が自分の身体を見ながらポツリとつぶやいた。

 

「……久々、やなぁ……んとに、あの頃が懐かしい……」

 

その時の飛鳥の目は伏せられていたために見えなかったが、代わりに彼女の両腕に残る傷跡や火傷痕が見えた。

 

「!」

 

「ユーリ、どうしたです?」

 

エステルがユーリに問いかけるが、事が事だけに答えられない。どうしたものか、と思っていると、飛鳥が口を開いた。

 

「あ~……見ちゃったか」

 

「何をです?」

 

「エステルには、縁遠いモノだよ」

 

「わたしには?」

 

「そ。エステルは見ないほうがええっていうか、ユーリもやな。コレは、見せてええモンちゃうからな」

 

ユーリは何も言えなかった。ただ、その飛鳥の言葉、否、言葉遣いがとても印象に残ったと同時に、大人びて見えた。これまでも、ちょくちょく自分より年上なのでは?と思うような場面をみたことはある。

 

「大丈夫、もう“あっち”には“帰れないし帰らない”。仮に全部終わって帰れたとしても、うちは“帰らない”。絶対に」

 

そう言った飛鳥は、遠いどこかを見ている。ここではない、どこかを見ていた。一体、どこを見ているというのだ。

 

「……お前もゆっくり休めよ。あとエステル、お前も休め」

 

おそらく、聞いてもはぐらかされるだろう。そう考え、ユーリはエステルと後退しようとするも、エステルが譲らないので、仕方なく部屋を後にし、カロルの様子を見に行く。すると、部屋出てすぐの廊下の角を曲がった先に座り込んでいるカロルを発見。どうにも落ち込んでいるようだ。

 

「どうしようもないやつだって、ユーリは思ってるよね。最初に会ったときもカルボクラムでのことも……今日のことだって……」

 

「今日のはさすがにびびったよな。さすがの騎士団長様もあれにはお手上げだったぜ。大の大人にもできないことがたくさんあんだ」

 

「ユーリにも?」

 

カロルのその問いに頷くユーリ。すると、カロルは立ち上がる。どうやら、立ち直ったらしい。

 

「そうだね。世の中、簡単じゃないよ」

 

「そういうことだ」

 

「……あのさ、ユーリ」

 

「ん?」

 

「ボクと……ギルド作んない?」

 

「ギルドか……。そういや、その選択もあったな。考えとくよ」

 

「え!?」

 

ユーリからの返事を聞いたカロルは驚く。おそらく、ダメもとで聞いたのだろう。

 

「なに、驚いてんだよ」

 

「厄介事はごめんだ、とか言うと思ってたから」

 

そうして、なんだかんだと話し、また明日様子を見ることになった。が、ユーリはそのまま引き返し、様子を見ることにしたようだ。

 

すると、扉の前まで来ると何やら話し声が聞こえる。どうやら、リタと飛鳥が話しているようだ。だが、リタの怒鳴り声が聞こえたところで、まずいと思って中に入った――。

 

 

・・・

 

 

少し時は戻って、ユーリが出ていったあと。休めと言われた飛鳥はエステルに一言断って横になって寝ていた。さすがに記憶が戻ったという事もあり、かなり疲れていたのだ。そして、横になって数秒で眠りに落ちた飛鳥。

 

だが、そう簡単には寝かせてくれないらしい。驚くことに桜が舞い、巨大な桜の木がある、幻想的な空間にいたのだ。

 

(!?)

 

―あなたに、少しでも休んでほしくてあなたが一番きれいだと思った花を咲かせてみました。あのような黒い空間では、気が滅入るでしょう?

 

どこか茶目っ気がある声の主。だが、それができるなら最初からしてほしかった。

 

(最初からしてよ、もう……)

 

―すみません……

 

(じゃあ1曲歌って、帰る)

 

―えぇ。私の判断でここへ連れてきますので、次はいつかはわかりませんが――

 

 

 

 

そうして、ふと目が覚めると、リタのベッドに突っ伏してるエステルと目覚めたリタの姿が目に入る。

 

「あ、起きたの。ねぇ、あんた。あの時、何したの?」

 

「ん、あれはうちの周囲のエネルギーを銃の弾に変換するっていう力の応用。成功したためしがなかったから、成功してよかった」

 

「はぁ!?何よそれ、あんたそんな力ある状態でエアルが濃いところにいったわけ!?バカじゃないの!?普通よりずっとエアルの悪影響をうけるしとてもじゃないけど、動けなくなるわよ!!?なんで、そんな無茶したのよ!!」

 

「リタだって無茶したでしょーが。お互い様。うちが防壁張ってなかったら、リタ死んでたしまずあの暴発はもっと酷かったはずだかんね?」

 

「なっ……!?」

 

「別にうちが傷つくだとか最悪手足吹っ飛ぶとかしてもいいよ。でも、リタはダメね。リタだけじゃない。ユーリ達全員ね」

 

「はぁ!?意味わかんない!そんな自己犠牲、やめなさいよね!!」

 

「残念、そう簡単にはかわりませ~ん。長年、あんなコトされてりゃ嫌でもそーなるって」

 

そういった飛鳥はなんでもない、とでも言いたげな顔で、そんなことを言う。いったい何がそうさせるというのか。

 

「お、目が覚めたのか。で、何を怒ってんだ?」

 

ユーリは部屋に入ってすぐ声をかけた。相変わらず飛鳥は自分を大事にしないようだ。

 

「ん、たはは、うちがいらんことゆーたの。てか、エステル起きないのね。こんだけ言い合ってたら起きるだろうに……」

 

リタはその言葉でエステルを見た。エステルは幸せそうな顔をして、眠っている。それを見て落ち着いたのか、リタはユーリに問いかけた。

 

「あのさ、エステリーゼってあたしをどう思ってると思う?って、何て顔してんのよ」

 

「自分がどう見られてるかなんて気にしてないと思ってた」

 

「も、もういい。あっち行って」

 

「術式なんぞより、こいつは難しくないぜ」

 

そこで、エステルが目覚める。そしてすぐさま治癒術をかけた。

 

「もう、大丈夫よ。あと、魔導器(ブラスティア)使うフリ、もうやめていいよ」

 

「な、何のことです?」

 

魔導器(ブラスティア)なくても治癒術使えるなんてすげえよな」

 

「ど、どうしてそれを……」

 

エステルは、目に見えておびえたような顔をした。やはり、通常は魔導器(ブラスティア)の力を借りて使うモノなだけに、それなしで使える、ということがどれだけ異常なことか、わかっていたのだ。だからこそ、隠していた。

 

そこで、飛鳥は嫌な予感がして、ベランダに向かう。すると、あの竜使いが現れたのだ。竜使いは、乗っている竜に炎を吐かせる。ユーリもすぐに駆け付けるが、飛鳥にはわかっていた。

 

―原作通りじゃないって、マジ勘弁してほしいんやけど!!!

 

「だぁぁ、もう!こちとら病み上がりやっちゅうの!!」

 

飛鳥は、怒りながらも再び自分と、ユーリ、エステルとリタに防壁を張る。それを見た竜使いは去っていく。今度はうまくいったらしい。

 

「っ……」

 

「おっと」

 

ふらついて倒れそうになる飛鳥をユーリが支える。

 

「アスカ!!」

 

エステルは駆け寄って飛鳥に治癒術をかけた。その途端。飛鳥は、胸に痛みを感じる。きっと、ここで咳き込めば、赤いモノを散らすことになるのだろう。それならば、無理にでも飲み込むしかない。あぁ、口の中が血の味でまずいことこの上ない。

 

―あぁ…やっぱ予想通りね……能力のせいで、治癒術効かねぇわ、むしろダメージ倍増ってやつ……!!

 

「っっ、ぐ……」

 

「え……?」

 

「おい、アスカ!?」

 

「わかった?エステル、あんたのその力は、うちには、マイナス効果なんよ」

 

「そんな、どうして……!!?」

 

「ごめん、それは言えない。今はまだ、言えない。んー、そうね。なんでかっていうのは言えないけど、原因だけなら言える。うちの、能力のせい。だから、エステルは悪くないよ。あと、ユーリはうちに深くかかわったらダメだかんね?」

 

「何わけわかんねえこと言ってやがる!」

 

「今はわかんなくて、いいよ。いずれわかる」

 

そこで、カロルが入ってくる。そのため、ひとまずは休むことになった。

 

―あの、黒いドラゴンが、うちだけを狙うならええけど、たぶん後になったらうちの近くにいる=邪魔者って考えて攻撃してくる。きっと。あぁ、もう、線引きするのが面倒や

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

できることなら、まだ明かしたくなかったなぁ……エステルの力が、逆効果な事。

 

 

ねぇ、うちは、本当に大丈夫かなぁ…?

 

 

でも、黙ってやられんのはヤだから。精一杯あがくよ。




ということで、ユーリ達のように何か技術を習得できるわけではないですが、飛鳥のみが使えるエネルギー変換能力の応用による技を習得。

知らず知らずに素に戻ったりしてますが、やろうと思えば線引きをできる子なので、今はそれだけユーリ達に心を許している、という状況です。

次はダングレストに向かうところ~になります。


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27戦目

というわけでだいぶ来た気がしますが、まだまだ第1部は終わりそうにないですw


今回はダングレストに向かう所~になります。


・・・

 

翌日、飛鳥たちはギルドの事や、紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)の手がかりを求めてダングレストに行くことになり、帝都に戻るエステルをフレンのところまで送りに行ったのだが。当の本人はおらず、かわりにアレクセイ樹団長が居た。フレンは別件ですでに旅立ったとのこと。そして、アレクセイ騎士団長は、リタに魔導器(ブラスティア)が暴走したことについて調査をしてほしい、と頼む。調査のためにケーブ・モック大森林という場所にもいけとのこと。

 

だが、リタはエステルが帝都に戻るのであれば自分も一緒に戻りたいと言い出し、さらにはエステルが一緒に行区などと言い出した。これにはアレクセイも困ったが結局はエステルに言いくるめられ(それでいいのかと問いたくなる)、ユーリを護衛に頼むことで許可を出す。

 

ユーリも舌打ちしながらもとりあえずダングレストに行った後でケーブ・モック大森林に向かうということで手を打ったのだった。その展開に飛鳥は原作通りでホッとする反面、先が思いやられるなぁ、と思ったのだった。

 

・・・

 

 

そして、ダングレストについたユーリ達。ひとまずは紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)は5大ギルドであるため、そのギルドをまとめるユニオンに聞くこととなった。バルボスに手をだすとまずいかどうかは天を射る矢(アルトスク)のボス、ドン・ホワイトホースに聞かなければわからないらしい。

 

―あぁ、困ったな。ドンに何言われんだろ……はぁ~~~、レイヴンに拾われた時の記憶もまだ戻ってないし……うちのここにきてから体験したホンマの「初めて」ってやつの記憶はどーなってんねん……

 

痛む気がする頭をかかえ、飛鳥はユーリ達についていく。すると、ユニオンへ移動する際に少し立ち止まっているど、ガラの悪い連中に声をかけられた。どうにも、カロルをバカにしにきたらしい。暴言とカロルの傷を抉るようなことばかりいっている連中に対し、本当の事で何も言い返せないカロル。

 

「カロルの友達か?相手は選んだほうがいいぜ?」

 

「な、なんだと!」

 

「あなた方の品位を疑います」

 

「ふざけやがって!」

 

「あんた、言うわね。ま、でも同感」

 

「言わせておけば……」

 

「子どもに対して大人げないね」

 

「はっ!テメェはアスカじゃねぇか。なんだ、逃げたんじゃねぇのかよ?」

 

「今更なんの用だ?ドンに世話になったくせに逃げだした恩知らずさんよお!」

 

今度は飛鳥へ飛び火する。しかし、飛鳥は連中に対し

 

「言いたいことはそれだけ?鬱憤晴らしは済んだ?」

 

なんてことないように言い返す。

 

「あぁ?」

 

「うちの事を悪く言うなら好きにしたらええよ。実際、魔物の大群に腰抜かしてドンに助けてもっらったのに、碌な恩返しせずに旅立ったしね。でもね、カロルの事、悪く言うのはやめろ。頑張ってるヤツをけなすのはええ加減にしとけ」

 

「アスカのくせしてよく言うぜ!!ただの腰抜けが!」

 

飛鳥は、いつもの3割増しで声が低かった。それだけ、頑張っているカロルへの批判が聞き捨てならなかったのだろう。原作より、ひどい言われようである。

 

「そうやで?うちはただの腰抜け。弱虫。恩知らず。加えて、うちはただの一般市民やで?手ほどきうけたところであんたらみたいな技術もなけりゃ、力もない」

 

「アスカ……」

 

「――次、うち以外の誰かをけなしてみぃ。流石に、黙ってられんぞ」

 

「はっ!やってみろよ!カロルのお友達なんだろ?なら、弱虫だな」

 

そう、連中が言った瞬間。

 

バァン!!

 

連中のわずかな隙間を、深い青色――群青色の弾が一瞬で抜けていく。

 

「「!?」」

 

「今度は、腕か?あぁ、逃げられないよう、足を撃ち抜いたほうがええか?こう見えて、うちはシューティングは得意やから、外さへんで?」

 

「て、てめぇ!!」

 

連中がつかみかかろうとした瞬間。警鐘がなり、魔物が攻めてきたことを知らせる。そして、ダングレストを覆う、結界魔導器(シルトブラスティア)が消えてしまった。そして地響きがするほどの魔物がきているため、ユーリ達は急いで魔物を倒しにかかる。

 

・・・

 

それぞれが倒しにかかるが、飛鳥はチャクラムを使っていた。しかし、間に合わないと悟り、銃にシフトチェンジ。そして、的確に魔物の眉間や弱点を撃ち抜いていく。それも片手に銃ではなく、両手に持ってだ。

 

「っざっけんな!!」

 

文句を言いつつ(口が悪い)、魔物を倒していく。だが、キリがない。段々と手が回らなくなり、まずい。そうなった時だった。1人の大柄な白髪の男性が大剣片手に魔物を切り倒す。

 

「さあ、クソ野郎ども、いくらでもこい。この老いぼれが胸を貸してやる」

 

そう、その大柄な男性はドン・ホワイトホースだった。




今回少し短めです。

次回はドンとフレンが言い合う場面~になります。


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28戦目

少し間が空きましたが、投稿です!

今回はドンとフレンの会話シーン~になります。

ゲームと課題をしていたらつい時間がたってしまいました申し訳ございません!!

ユーリが、なぜ飛鳥に違和感を覚えているのか。

それは、原作通りではないということが半分。あとの半分は……ネタバレに関わるので、本編で明かしていきますw




・・・

 

ドン・ホワイトホースは手に持った大剣で魔物たちを次々に屠る。そんな中、フレンたち騎士団が続いていく。だが、ドンは

 

「騎士の坊主は、そこで止まれぇ!騎士に助けられたとあっては、俺らの面子がたたねえんだ、すっこんでろ!」

 

と怒鳴る。魔物が大量に攻めてきている今、そのようなことを言っている場合ではない。そう反論するも、ドンの帝国の助け(力)は借りない、という意思は固いようだ。その騒ぎの中、ユーリ達は結界魔導器(シルトブラスティア)を直すために走るのだった。そして、結界魔導器(シルトブラスティア)の制御装置がある場所にたどり着く。そこで飛鳥はリタと共に階段を駆け上がった。

 

―原作通りじゃないんはもう知ってる。だって、あの声が言ったんだ。それ以前にうちがココ――テルカ・リュミレースにいる時点でそう。

 

そして、案の定邪魔が入り、飛鳥はリタを庇う。だが、飛鳥はユーリ達とは違い、必ず咄嗟に武器を取り出せるだとかはできないわけで。

 

 

ザシュッ…!

 

 

案の定、腕に怪我を負った。

 

「いってぇ…!」

 

思わず素が出る飛鳥。しかし、飛鳥は痛いとは言うものの、特に怯む様子はない。その証拠に武器――銃を取り出し、構えているのだ。ユーリたちもそれを見て続く。

 

 

 

そうして、襲ってきた黒いローブ(?)、フードをかぶった男たちは倒され、階段下で伸びていた。

 

―あぁ、こいつらどっかで見たことあると思ったら、リヴァイアサンの爪の奴らか。ってことは……あ~~、あいつか。オッケー理解した。あいつがうちら止めるために、か……

 

「――い、アスカ!」

 

「……ん、ごめん。考え事してた」

 

「あの、腕の傷、せめて手当てだけでもさせてください!」

 

「あー……いいのに。“このくらい”」

 

「このくらいって……かなり深く切られているんですよ!?」

 

「別にこんな程度、どうってことないでしょ?」

 

そういって、飛鳥はいつの間に用意したのか、包帯を取り出し、器用に巻き始めた。その光景に、やはり違和感を感じるユーリ。飛鳥の年齢はおそらく自分よりは下のはず。いや、騎士団に所属していたというのなら、手当ての仕方くらいは教わっているはずだ。そう考えると違和感など、どこにもないはずだ。しかし、何故か違和感を感じる。

 

「ん?どうしたん。そんな熱心にじ~っと見られると地味に恥ずかしいんやけど」

 

「悪ぃ。――“いつも”そうしてんのか?」

 

「せやな。大体怪我したところで、いつも“一人”やったし。割と慣れてるよ、自分で手当てするんは」

 

「お前……」

 

ユーリの問いに事も無げに返した飛鳥は、大人びて見えると同時に独りに見えた。そして、同時に胸の奥が、ざわつく。腕を手当てする時に見えたあの無数の傷痕。何度見ても慣れるものでもないが、やはり飛鳥は過去に大怪我を負ったのだろう。だが、自分とそう変わらない歳のヤツが?考えても、きっと答えはでない。

 

「――そんな気にしやんでええ。ただ、よくあるお話の一つ。ごくごくありふれた話の一つ。やから、そんな風に考え込まんでええよ。それに、うちはもう、コレには自分で決着つけてるしな」

 

「アスカ?」

 

「お前、“どっち”が本当のお前だ……?」

 

「ん?さぁ、どっちでしょー?ってユーリはもう、わかっとるやろ」

 

さらっと答える飛鳥。微妙にいつもと口調が違う。よく聞けば、声も低いだろうか。そして、こちらのほうが、大人びて見える。何よりしっくりくる。ならば、言うまでもないか。

 

「お前……不思議ちゃん?」

 

「ぶっ!……それ酷くない!?」

 

なんてやりとりをしていると、フレンが騎士を引き連れてきた。どうやら、結界魔導器(シルトブラスティア)の様子を見に来たらしい。が、そこはリタがなんとか直した。それを見届けたフレンは外にいる魔物を討伐しに行く。ユーリ達はユニオンにバルボスのことを聞きに行くのだった。

 

 

・・・

 

 

ユニオンに来たユーリ達だが、ドンは魔物の巣を一網打尽にするということで出ているそうだ。他に手がかりもないため、リタのケーブ・モック大森林への調査に行くことになった。そして、それを家の屋根の上から見る影が一人。

 

「ケーブ・モック大森林とは、偶然ってあるもんだねえ」

 

その影は、レイヴンだった。

 

・・・

 

ユーリ達が、ケーブ・モック大森林に入ると、そこは異常成長した樹や植物がそこかしこにあった。進もうとすると、何かいる。そうなり、構えたユーリ達だったが、現れたのはレイヴンだった。どうにも前の事があるために、歓迎はされていない。とはいえ戦力に変わりはないのでそのまま進んでいくのだった。

 

「よっ!お嬢ちゃん。どう?記憶は戻った?」

 

「ん?うん、粗方はね。初めて会った時の事とかは思い出せてないままやけどね」

 

「そう。じゃあ、もう〝居場所〟は、見つかった――?」

 

「!!」

 

その言葉に、飛鳥は頭痛がしたが、ポーカーフェイスで乗り切る。大丈夫、意識を失ったり、立っていられないほどのものではない。思い出したのも、錯乱状態になった自分が、レイヴンやドンの前で、訳の分からないであろう言葉を口走った、という記憶だ。

 

「アスカ?」

 

「さぁ、わかんない。まだ、探し中ってとこかなぁ……ねぇレイヴン」

 

「なーにさ?」

 

頭にハテナを浮かべるレイヴンに、飛鳥は口パクで言葉を紡ぐ。

 

『あなたの正体が、シュヴァーンであり、ダミュロンであるのを、知ってるよ』

 

「!!」

 

『どこで知ったかは、教えないけど。でも、知ってる人がいるってことを、覚えておいてね?』

 

「……お嬢ちゃん……何者!?」

 

「え?教えてほしい?」

 

「お、それならオレも教えてほしいね」

 

すると、飛鳥の雰囲気が変わる。どこか、悟ったような、諦めたような、そんな今までのどれとも違う、雰囲気。

 

「せやなぁ、今言えるんは、うちは咎人(トガビト)だってこと、そんでソレのせいで、皆の敵になるってことかなぁ。クスクスクス……あぁ、心配いらんで。もう、とっくの昔にうちは“壊れてる”から」

 

「は?お前、何言ってんの?頭うった?」

 

「………」

 

ユーリは茶化す。だが、レイヴンは違った。飛鳥の言った咎人(トガビト)、壊れている、という言葉に聞き覚えがあるようだ。そこまで言うと飛鳥の雰囲気はいつもの大人しいようでいて、たまにいたずらっ子のような、そんな雰囲気に戻る。

 

―お嬢ちゃん、あの時から“変わってない”ねぇ……咎人(トガビト)ってあの年代の子が知ってるような言葉じゃないんだけど……どこで知ったんだろう。というか、壊れてる……こっちもこっちで、無意識っぽいから困ったねぇ……で、終いにはおっさんの事知ってる……う~ん、その記憶は忘れててほしかったかなぁ……

 

そんなことを考えながらも歩いていくレイヴン。途中で芸をやらされたり、カロルの虫嫌い(おそらくトラウマ)が発覚したり、エアルがあふれている可能性があったりとかなり色々な事が起こった。

 

そうして、少し開けた場所まで来ると、パティが巨大な虫に運ばれているところを発見。無事救出。事情を聴けば、ギルド天地の(アナグラ)に、ここケーブ・モック大森林にアイフリードの宝があると教えてもらい、探しに来たらしい。ともあれ、魔物を一人で銃片手に倒すほどの実力はあるらしく、ユーリ達とは別れてその場を去っていった。

 

そして、かなり奥深くまで足を延ばしたところで、ヘリオードで見たのと同じ、エアルがあふれている場所を発見。

 

そこでサソリ型のモンスターと戦闘。飛鳥は相変わらず後衛で援護――と思われたが、違ったようだ。銃を使い、戦っていたのだが途中詠唱中のリタが狙われた時だった。間に割って入ったのだ。チャクラムで攻撃を受け止め、反撃をする。

 

「だああ、もう!うちは近距離得意ちゃうってーの!!」

 

「とかなんとか言ってるけど、嬢ちゃん、いい動きしてんじゃないの」

 

「そりゃどーも!っと、だ~~~!!だから、うちばっかくんな!!!」

 

飛鳥は、危ないとなれば、防護壁を張った。随分と使い方に慣れてきたらしい。その様子にレイヴンも目を見開くほど驚きはしたもののそのあとに笑った。

 

「アスカ、そればっか使ってぶっ倒れんなよ!!今は助けに行けねえからな!!」

 

「わかってる!!」

 

そうしてみんなで倒した(フルボッコと言っても過言ではない)が、その疲労はかなりのものだ。しかし、一体倒したからと言って安心できなかった。同じ魔物に囲まれてしまったのだ。だが、そこでデュークが現れ、魔物を一掃。質問を重ねていくと、このエアルが溢れている場所はエアルクレーネという場所でエアルが溢れだす源泉なのだそう。

 

―あぁ、デインノモス、だっけ?持ってるのか……んでもって、ラスボス……あぁ、ラスボスだからか。納得。だからうちが〝外〟から来た、部外者だって知ってる。イレギュラーな存在だって、知ってるんや。あぁ、面倒やわ……

 

飛鳥は、一人、ため息を零した。




というわけで、デュークさんご登場。

次はドンに会いに行く~になります。


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29戦目

さて、きましたよ!!

ドンに会いに行くということで、あの一騎打ちです。



・・・

 

あの後、ケーブ・モック大森林からダングレストに戻るために移動していたユーリ達。すると、途中でドンに出会ったのだった。どうにも話し込んでいると、ドンはレイヴンを見つけ、声をかけた。知り合いらしい。ユーリが名乗り、話がある、と言ったところでドンは飛鳥のことを見つけたのだった。

 

「っと、おい。そこにいんのはアスカじゃねえか」

 

「!……あー、うん。久しぶり、って言ったらいいかな?」

 

「え、アスカってドンと知り合いだったの!?え、ってことはアスカは天を射る矢(アルトスク)の一員!?」

 

「んなわけないっしょ。うちみたいなんが居れるわけあらへん。訳ありで、ぶっ倒れてたとこ助けてもらって、しばらくの間面倒見てもらったんよ。まぁ、碌な恩返しせずに旅立って、気がつきゃ、記憶喪失、だなんて笑えねぇけどな」

 

「で、記憶は戻ったのか?」

 

「まーね。全部じゃないけど大体はね」

 

「そうか。元気そうでなによりだ。……居場所は見つかったみてえだな」

 

「はぁ――、揃いも揃ってそれかい。見つかった、かどうかはまだわかんねぇよ?だって、うちは咎人(トガビト)なんやから」

 

「!……てめえ、まだそんなこと言ってやがるのか。アレはてめえのせいでもなんでもねえだろうが」

 

「あぁ、何度でも言うよ。事実なんやから。アレは、うちのせいや」

 

アスカが珍しく、喧嘩腰なこと、口調が乱れてることに気づいたユーリは、2人とレイヴンが割と仲が良かったのでは、と推測した。そして、ドンには飛鳥が度々口にしてる、咎が何か、話しているようだ、とも。

 

「ったく頑固な小娘だ。で、若ぇの、ちょいと面貸せや」

 

レイヴン曰く、腕っ節が強そうなのを見つけると、試したくなるそうだ。そして、あぁ、と思い出したかのように

 

「あぁ、あとアスカ。てめぇもな」

 

と告げるドン。

 

「は……ちょお待ち!うちも!?えぇちょっと、勘弁したってよ!!?」

 

「――強くなったろ。〝飛鳥〟。見せてみろ、この老いぼれにな」

 

「――っ!!」

 

ドンにそういわれた飛鳥は、目を見開く。あぁ、なんで。どうしてソレを知ってるの。おかしい。確かに、名乗ったはずだ。アスカ・ツキシロ、と。決して月城飛鳥、とは名乗ってないはず。なのに、なんで、知ってるの?ねえ、過去に話したとでも、言うの?

 

飛鳥は、硬直しその場に座り込んだ。自然と胸元へと手を当てる。

 

―うち、は……全部、話して、しもたん?そこの記憶は、ないからわからん。けど、あぁ、そっか。ドンは。それでか。んでもって、この、疼き、は何……!?

 

「アスカ!?」

 

「だいじょうぶ。あたまいたい、とかじゃ、ない、から……」

 

どこ虚ろで、片言な飛鳥。だが、次の瞬間。覚醒した。

 

「アスカ?」

 

「大丈夫。ドン直々にご指名のようなんで、ちょっとボコられてくる」

 

その瞳には、光が見えた。それを見たのは、ドンしかいない。だが、悟った者がいる。レイヴンだ。

 

―あー……嬢ちゃん、覚醒したのね。やっぱあのドンの言葉は特別だわ。名前を呼んだだけなのに。まぁ、嬢ちゃんが背負ったモノ考えりゃ、覚醒でもしなきゃやってらんないわな。嬢ちゃんは、本当に一般人だってのに……あとなんでかおっさんの事知ってるしなぁ……ドンは嬢ちゃんのせいじゃないって言ってるけど、あの眼は……

 

・・・

 

 

ユーリとドンの一騎打ち(ユーリが一方的にボコられた)が終わり、次は飛鳥の番になった。あまり飛鳥は乗り気ではないようだが。

 

「マジでやんなきゃダメ?」

 

「てめえらの話聞かなくていいならやめてもいいぞ」

 

「それ卑怯!!絶対やんなきゃなんないやん!!」

 

ドンにそう言われ、ドンへかかっていく。その動きは下手をすればユーリよりも動けていると言っていいだろうものだった。それを見て、ユーリやカロル、エステルらは驚いた。あのユーリでさえ、防戦一方だったのだ。それなのに飛鳥は、ドンの攻撃を避け、攻撃をしていた。

 

「あいつ、オレよりやるんじゃねえの?」

 

「すごい……」

 

「まぁ、ドンにああやって扱かれてたからねえ、嬢ちゃん」

 

「そうなの!?」

 

「そうよ、毎回ボロボロにされちゃってまぁ、手当てすんの大変だったんだから」

 

戦いを見守るが、アスカは何度も吹っ飛ばされていた。しかし、それでも立ち上がる。その姿にドンは満足しているのか、嬉しそうに言った。

 

「アスカ!てめえやりゃあ出来るんじゃねえか!!」

 

「はぁ、はぁ……!!やんなきゃアンタに扱かれんでしょーが!!アレはもうヤダかんね!!?」

 

息が上がりつつも、攻撃をする飛鳥。すべて防がれているものの、今までずっと銃を使っている。チャクラムは使わないのだろうか。

 

「どうした!」

 

「~~~!!!うちは、銃のが得意だって、言ってんでしょー!!!」

 

そういいながら飛鳥がチャクラムにチェンジし、ドンへ接近戦を挑む。本来の飛鳥なら、こんなことはしないだろう。だが、ソレをさせるだけの何かが、ドンにはあるらしい。だが、接近戦は不慣れらしく、先ほどよりも随分と吹っ飛ばされていた。だが、ドンの剣を避けた時だ。同時に足を出していたらしい。

 

「っ!!」

 

「は、足癖の悪いヤツだな!」

 

「おかげ様でね!」

 

どうやら、回避しながら攻撃するという方法はドンから教わったらしい。そのあとも、しばらく打ち合いが続く。それを見てユーリは悟った。あぁ、自分の時で半分くらいかそれ以下の力しか出していないのだと。そして、今飛鳥の相手をしている時は、自分の時よりもさらに加減していることに気づく。だが、それも終わった。飛鳥が今までよりも盛大に吹っ飛ばされ、樹にぶつかったからだ。受け身を取れておらず、そのままぐったりとしていた。

 

「「「アスカ!!」」」

 

「おおっと、ちょいとやりすぎたか」

 

「やりすぎた、じゃないわよ、爺さん。あれ、気ぃ失ってんじゃないの?」

 

「かもな」

 

「かもって……」

 

ユーリとエステルが慌てて飛鳥に近づき、ユーリが飛鳥に触れようとした瞬間。

 

 

パァン!!

 

 

銃声が、鳴り響いた。だが、ソレはユーリには当たっておらず、後ろの黒い魔物にあたったようだ。黒い魔物が耳障りな声を上げ、消滅していく。

 

「……は!?」

 

「――っ、はぁ、はぁ、はぁ……もう、こちとら、体力、ないんやから、勘弁、してーな……」

 

それだけ言うと、地面に倒れこんだ。

 

「ひゅー、やるねえ。嬢ちゃん」

 

「アスカ!!」

 

「気ぃ失っただけだ」

 

「……わたしの治癒術、アスカには、ダメなんですよね……」

 

しゅん、と落ち込んだ様子のエステル。やはり、怪我をしている人がいて、それを治す術を持っているが故に、それが使えないとなると、優しい彼女は耐えられないらしい。ユーリは飛鳥を背負う。そして、ドンがダングレストに戻ったら話を聞く、と約束をしてくれたので、ひとまず戻ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 




というわけで、飛鳥ちゃんにも一騎打ちをしてもらいましたw

まあユーリが勝てませんから、飛鳥のときはかなり手加減してもらいましたw

あと、ドンやレイヴンとの関係は、また本編で明かすので、もうしばらくお待ちを。

次回はダングレスト~になります。


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30戦目

いやぁ、もう気が付いたら30話ですよ、30話!

飛鳥の覚醒した場面描きたい……けどそんなかっこよく描けるはずもなく……w

カットインとかも描きたいし秘奥義発動うんぬんとかも……!!


あぁ、やりたいことばかり増えてく~!

今回はダングレストに戻ったとこ~になります。


・・・

 

あれから、ダングレストに戻ったユーリは、まず最初に気絶したままの飛鳥を宿屋に、と思った。だが、飛鳥は目覚め、大丈夫だと告げる。ボロボロな様子は全く大丈夫に見えなかったが、本人曰く寝ていた(気絶していた)ため、大丈夫だと言い張って譲らない。そのため、仕方なくユーリは皆をつれ、ドンのいるユニオンを訪ねるのだった。

 

 

「よぉ、てめぇら、帰ってきたか」

 

 

ユニオンに入ってすぐドンの声がかかる。しかし、先客がいた。フレンである。どうにも、込み入った話をしているらしい。だが、ドンは約束通りユーリの話を聞く。だが、話を聞いたフレンも

 

「そっちも、バルボス絡みか」

 

とこぼしたことで、フレンの話していたこともバルボスについてだったようだ。そして話が進み、帝国とギルドが手を組み、事態を収束させるために動くことが決まった。しかし、フレンが預かったヨーデルからの密書は内容が違っており、

 

『ドン・ホワイトホースの首を差し出せば、、バルボスの件に関し、ユニオンを不問とする』

 

と書いてあったのだ。そのため、フレンは連行された。そして、帝国との全面戦争が開始されることになってしまった。さすがにこうなっては、自分たちの用件について何も言えない。ひとまず広場まで戻ってくると、ユーリが財布をドンのところで落とした、と言って取りに行った。

 

―あぁ、フレンの様子見に行くんやな

 

ぼーっとしていた飛鳥は、カロルに手を引かれ、移動することとなったが、そのまま考え事を続けていた。

 

・・・

 

一方、嘘をつきフレンの様子を見に言ったユーリはというと。フレンはユーリに背を向けている。だが、軽口を言い合うところから、そこまで参っているようではなかった。参っていない、と言えば嘘になるだろうが。

 

「あれは赤眼どもの仕業だ。ユーリと別れた後でまた襲われたんだ」

 

「らしくねえ、ミスしてんな。部下が原因か?」

 

「それも含めて僕のミスだ」

 

「そうかい。けど、赤眼どもってことは裏にいんのはラゴウだな」

 

「ん?どうしてそれを?」

 

「港の街でな、ラゴウが赤眼どもと一緒だった暗殺者に命令出すの見てんだよ」

 

そんな調子で話し合う2人。どうにも敵の目的はギルドと帝国の武力衝突らしかった。

 

「そこまでわかってんなら、さっさと本物の書状を奪い返してこいよ」

 

そういってユーリは武器で牢屋のカギをこじ開けた。

 

「その忌まわしいカギをユーリがあけてくれるのをずっと待っていたんだ」

 

「………」

 

「君はそこにいてくれ」

 

「オレ、身代わりかよ。おまえ、オレを見捨てる気まんまんだろ」

 

「そうだな、もし戻ってこなかったその時は……僕の代わりに死んでくれ」

 

「ああ……」

 

・・・

 

しばらくして、ユーリのいる牢屋へ、ドンが入ってきた。

 

「友の代わりに牢に入る、か。そいつはどんな酔狂だ、小僧」

 

「わざわざ見張りをなくした大間抜けなじじいに言われたくないね」

 

「ふんっ、騎士の坊主に秘密の頼みがあったんだよ」

 

「フレンに?」

 

「こんな茶番を仕掛ける連中だ。その辺で高みの見物としゃれ込んでるんだろうよ」

 

「茶番だってわかってんならギルドを煽んなよ」

 

「やる気見せねえと、黒幕が見物にこねえだろうが。それに、こうでもしなきゃ、血の気の多いうちの連中が黙っちゃいねえよ。まあ、そういうわけだ。騎士の坊主が戻らなけりゃあ、当然、てめえの命をもらう」

 

「わかってるよ」

 

ユーリの返事を聞いて、立ち去ろうとするドンに、ユーリは質問を投げかけた。

 

「なあ、あんたはなんでギルドを作ったんだ?」

 

「帝国の作ったルールじゃあ、俺の大事なもんが、守れねえって思ったからだ」

 

「帝国にいた方が、守りやすいもんもあったろ。下町でさえ結界に守られていた。魔物は絶対に入ってこねえ」

 

「だから、その他の気に入らねえことをてめえは我慢してんのかよ」

 

「……それは」

 

「帝国の作ったルールが気に入らねえなら、選択肢はふたつだ。あの騎士の坊主のように、変えてやろうと意気込むか、もしくは帝国を飛び出して、てめぇのルールをてめぇで作り上げるか、だ」

 

「はっきりしてんのな」

 

「そうそう。うちの大事な人質を逃した責任は取れよ」

 

「身代わり以外に、まだなんかやれっての?」

 

「茶番を仕切ってる黒幕が街に紛れてるはずだ。あの騎士の坊主に探させるつもりだったんだがな」

 

「それ、オレに探せって?」

 

「責任の取り方はてめぇに任せる。連れの娘っ子だってケガ人相手に、駆けずり回ってんんだ。てめぇだけのんびりっていうのは性に合わねえだろう。あぁ、そうそう。アスカの奴は大丈夫か?」

 

「アスカ?あぁ、元気そうだぜ」

 

「錯乱とかしてねえか?」

 

「錯乱?んなことはしてねえよ。まぁ、記憶が戻った時に多少パニックにはなってたけどな」

 

「そうか……」

 

「あいつが錯乱って、よっぽどだな」

 

「ここに来た時、あいつは精神を病んでいないのが不思議なほど、参ってやがった」

 

「!?」

 

ユーリは驚く。あの飛鳥が錯乱していた?精神を病んでないのが不思議なほど、参っていた?そんなのは初耳だ。飛鳥は自分と会った時は大人しくて、無表情で、自分に自信がなかった。だが、錯乱するような精神的不安定さはなかった。落ち着いていた。

 

「特に夜はほぼ毎晩、魘されて飛び起きてたな。酷いと泣きじゃくって、錯乱して、ひたすら謝ったり、てめぇに大丈夫、まだやれる、と言い聞かせたり、そりゃあもう、酷い有様だったぜ」

 

「今とは全く違うな」

 

「あぁ、今のあいつは怖い程落ち着いてやがる」

 

「……なぁ。アスカの言ってた咎人(トガビト)ってなんなんだ?度々口にしてっけど、聞いても話してくれねえんだ」

 

「……それはな、最近見る、黒い魔物がいるだろ?」

 

「あぁ、あの全身真っ黒で赤眼のやつらか」

 

「そうだ。そいつらは、自分がここにいるせいでいるんだ、自分が引き連れてきたんだとかぬかしやがってな」

 

「!」

 

飛鳥なら言いかねない、と今なら思う。自分で咎人(トガビト)と言っているあたり、そうだろう。

 

「魔物の新種なんて珍しくもねえ。確かにアスカが来たとたんに見かけることが増えたが、そんなのはただの偶然だ」

 

「で、自分が引き連れてきた、と思ってるから咎人(トガビト)だって言ってんのか」

 

「そういうこった。だから、たまにでいい。様子がおかしい、ってなった時でもいい。ちゃんと名前で呼んでやれ」

 

「名前?」

 

「そうだ。あいつの、名前を“ちゃんと”呼んでやれ」

 

「ちゃんと?」

 

「………〝飛鳥〟だ。間違っても、アスカじゃねえ。引き戻してやれ。引っ張ってやれ」

 

「…………」

 

ドンのその言葉に何も言えないユーリ。少しばかり、言い方が違うだけだ。だが、その微かな違いが、飛鳥にとっては大事なのだろう。そう理解したユーリは

 

「あぁ、わかった」

 

と返した。それをきいたドンは今度こそ去っていった。




というわけで、ユーリとドンの会話でした!

次回は牢屋から出たところ~になります。


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31戦目


今回は牢屋を出たところ~になります。

飛鳥の技、どうしようかな……


・・・

 

ドンとの会話を終え、広場へと戻ってきたユーリは、そこでドンが全面戦争へとの準備を進めているところだった。いくら演技とはいえ、本気でやる気があるように見せなければいけない、といったところだろう。

 

それを傍目にユーリはエステルたちと合流したところ、エステルたちが紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)を見つけたとのこと。今はリタとラピードが後を追っているようで、後を急ぐ。すると、確かに連中が集まっていた。

 

だが、下手に仕掛けるわけにも行かず、どうしようかと迷っているとそこへレイヴンが現れ、酒場で自分の話を聞かないか、と誘ってきた。もちろん、ユーリ達は前科があるレイヴンにそうやすやすといい返事をするわけではない。だが。

 

「レイヴンは、やる時はやる人やで」

 

という、飛鳥の言葉にユーリが話を聞きにいくことを決めたようだ。天を射る矢(アルトスク)の酒場へと案内される。途中で

 

「嬢ちゃん、ありがとね」

 

「ん、別にお礼言われることなんてしてへんで。ただうちは事実を言っただけや」

 

「……」

 

「クス……見たことあるし、知ってるからね。レイヴンの事は。お世話になったし」

 

「そりゃあ、どうも」

 

なんてやり取りがあったりした。それを聞いたユーリは

 

―アスカは、随分とおっさんに懐いてんな。口調が違う。まぁ、荒れてた頃にある程度落ち着くまで居てくれた、となりゃそりゃ懐くか。……ま、様子見だな

 

なんて考えていた。やはり、ドンから言われたことが気になっているらしい。

 

・・・

 

酒場についたユーリ達はすぐ右にある部屋へと案内される。そこは、酒場、というには似つかわしくない部屋だった。わかりやすく言えば、お偉いさんがいそうな部屋、である。高そうなソファーが2つあり、テーブルもある。壁や周りの装飾も高そうなものばかりだ。

 

「なんだ、ここは」

 

「ドンが偉い客迎えて、お酒飲みながら秘密のお話するところよ」

 

「ここでおとなしく飲んでろってか?」

 

「おたくのお友達が本物の書状を持って戻ってくれば、とりあえず事は丸く収まるのよね」

 

「悪ぃけど、フレンひとりにいい格好させとくわけにゃいかないんでね」

 

「わたしたち、この騒ぎの犯人を突き止めなければいけないんです!もしバルボスが……」

 

そう言って今にも飛び出しそうなエステル。だがレイヴンは部屋の奥のほうへ行く。何だと思って近づくと、街が帝国に占拠されたときに潜伏し、反撃のチャンスをうかがっていたという地下水道の入り口がレイヴンの目の前にある扉らしい。中に入ってみると、真っ暗で何も見えなかった。火の魔術が使えるリタにお願いするにも、光照魔導器(ルクスブラスティア)のように、エアルが供給され続けないと無理らしい。

 

すると、ラピードがどこからか、魔導器(ブラスティア)を持ってきたようだ。痛んではいるが、まだ使えるとこのことで使ってみると、明るくなった。どうも、これは光照魔導器(ルクスブラスティア)の一種らしい。所々にある充填機でエアルを充填しながら進むと、進行方向ではないが魔物がいた。だが、こちらから仕掛けていないし、大丈夫だろう。そういっていたのだが、光照魔導器(ルクスブラスティア)の明かりが弱まったことで襲い掛かってきた。数も多くなかったために、すぐに倒したが。

 

エステルによると、長らく暗い場所にいると光を刺激として嫌うらしいので、光照魔導器(ルクスブラスティア)が消えないようにいくことになった。もとより、光照魔導器(ルクスブラスティア)がなければ真っ暗で何も見えなくなるので、充填は必須である。しばらく進んでいると、途中で文字の刻まれた壁を見つけた。それを見たユーリは読もうとして断念。だが、代わりにエステルがそれを読み上げる。

 

「……かつて我らの父祖は民を護る勤めを忘れし国を捨て、自ら真の自由の護り手となった。これ即ちギルドの起こりである。しかし今や圧制者の鉄の鎖は再び我らの首に届くに至った。我らが父祖の誓いを忘れ、利を巡り互いの争いに明け暮れたからである。ゆえに我らは今一度ギルドの本義に立ち戻り持てる力をひとつにせん。我らの剣は自由のため。我らの盾は友のため。我らの命は皆のため。ここに古き誓いを新たにす」

 

これはユニオン誓約というものらしく、ドンがユニオンを結成したときに作られたユニオンの標語のようなものだ、とカロルが説明してくれた。文字の書かれた下の方にアイフリードという名前があった。今は噂の憎き者、大悪党として扱われている海賊だが、ドン曰く盟友だったそうで、頭が回るわ食えないわで、ドンでさえ相手をするのには苦労した、とレイヴンが教えてくれる。なんだかんだ、物知りなレイヴンである。

 

―アイフリードか……

 

会ってみたいな、と思う飛鳥だった。こういう話には、真実は違い、実はいい人でした、というオチがついたりすることもあるからだ。

 

・・・

 

どうにかこうにか地下水道を抜け、とある酒場に出たユーリ達。そこはバルボスが根城にしていた東の酒場とのこと。どこかにバルボスがいるのでは、と探索を開始。

 

・・・

 

とこかの部屋で、ラゴウとバルボスが会話をしていた。ただし、雰囲気はよくなく、どうにもラゴウの中の認識とバルボスの中の互いの認識が違ったようだ。ほどなくして話し合いが終わる、その時だった。ユーリ達が駆けつける。

 

「悪党が揃って特等席を独占か?いいご身分だな」

 

「その、とっておきの舞台を邪魔するバカはどこのどいつだ?ほう、船で会った小僧どもか」

 

「この一連の騒動はあなた方の仕業だったんですね」

 

「それがどうした。所詮貴様らにワシを捕らえることはできまい」

 

「はあ、どういう理屈よ」

 

「悪人ってのは負けることを考えてねえってことだな」

 

「なら、ユーリもやっぱり悪人だ」

 

「おう、極悪人だ」

 

「やれやれ、造反確定か。面倒な事してくれちゃって」

 

これだけの人数に囲まれていながらもバルボスは意に介していないようだ。逆にユーリ達を暗殺者たちで囲み、勝った気でいるようだ。

 

バルボスとラゴウは、それぞれが自分たちが頂点に立つため(ラゴウは自分たち評議会が帝国を支配する、バルボスはドンを消し、自分たち紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)がユニオン支配する)ことを目的としていたようで、そのうえで互いがそれを達成できるように協力関係を結んでいた、というのが真相らしい。

 

この戦いは終わらず、止められず。さらにユーリ達の命もここで終わりだと言い張ったバルボス。と、そこへ何か駆けてくる音が聞こえてくる。それを聞いたユーリは言った。

 

「ったく、遅刻だぜ」

 

そう、フレンが白馬――ではなく、馬に似た魔物だろう生物に乗って登場したのだ。手には、きちんと本物の書状を持っていた。どうやら間に合った(ユーリ曰く遅刻だが)らしい。

 

「止まれーっ!双方刃を引け!引かないか!!私は騎士団のフレン・シーフォだ。ヨーデル殿下の記した書状をここに預かり参上した!帝国に伝えられた書状も逆臣の手によるものである!即刻、軍を退け!」

 

そこへドンがフレンへと近づく。

 

「戻ってこねえかと思ったぜ」

 

「あいつを見捨てるつもりは、はなからありませんので」

 

それを見ていたバルボスはお怒りだった。それもそうだろう、もう引き返せないところまで進み、あとは高みの見物、といったところだったのがそれが水泡に帰したのだ。そこでエステルはフレンを狙おうと銃を構えているヤツを発見。ユーリへ言うと、銃を構えているヤツの手にスパナが当たる。エステルの言葉を聞いてすぐさまカロルが投げたようだ。

 

しかし、バルボスも負けておらず、銃を拾いすぐさま撃ってきたのだ。各々が回避したところでリタが銃にエアルを充填する隙を狙えば、と言ったが充填の方が早かった。そこで、飛鳥が前に躍り出た。

 

「っ―――!!」

 

一瞬でユーリ達全員を包むシールドが張られ、バルボスの撃った銃ははじかれた。もう一度撃とうとするバルボスに、今度は竜の魔物が邪魔をしてきた。そのせいで、地面に転がるバルボス。しかし、バルボスはすぐに持ち直し、かなり大きなチェーンソーのような剣を使い、空を飛んで逃げてしまった。

 

しかし、逃げられたからと言ってここで逃すわけにもいかず、竜の魔物を操る者にユーリはすぐさま頼む。すると、相手は承諾してくれたのかユーリを魔物の背に乗せてくれた。そして、重量オーバーということもあって皆を置いて一人、竜の魔物を操る者と一緒にバルボスが建てたという、塔へ向かうのだった。

 

・・・

 

塔の周りを覆う竜巻を消すために竜の魔物が火を吐いた。するとそこにあったのは魔導器(ブラスティア)だった。天候を操る類の物らしい。そして、着地できそうな場所まで降下してもらったユーリは、竜の魔物から飛び降りた。そこで、バルボスと対峙するが、下っ端に囲まれ、応戦するユーリ。倒してから改めてバルボスと対峙するがバルボスの持つチェーンソー型の剣で自分の剣を弾き飛ばされてしまった。

 

「あらら……便利な剣持ってんな」

 

流石に武器を弾かれ、丸腰の状態では抵抗できず、牢屋だろう場所につかまってしまった。だが、他にも捕まっている人はいるようで、中はそれなりに広さがあった。




ということで、またユーリが単族行動ですよ…

ユーリ単独行動多くありません!?

という事で次回もユーリside~になります。


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32戦目

ホント趣味に没頭できるこの時間、もっと増やしてw

課題やらなきゃだけど、面倒でやりたくない←


今回はユーリside~になります。


・・・

 

牢だろう場所に入れられ、早々に何かしら問題を起こすユーリ。だが武器を持っておらず、斬られる覚悟をしたが、寸でのところで庇われた。そう、竜の魔物を操っていた、全身を白い鎧に包んだ者だった。しかし、ユーリを庇ったことで兜が割れ、少し隙間ができてしまった。そこから、わずかに瞳が見える。

 

騒動が収まると、その鎧を着た者は兜を脱いだ。鎧を着ていたのは、青い髪に、ナギークという人間にはない器官を持ち、耳もとがっている、クリティア族の女性だった。流石のユーリもまさか女性だなんて思っていなかったらしく、驚いて言葉が出なかったようだが、この女性は先ほど自分を庇って斬られたのだ。いくら兜があったとはいえ、その兜にもひびが入り少し欠けている。大丈夫だろうか。

 

「ケガしてないか?」

 

そう聞くと、クリティア族の女性は頷いた。確かに見る限り、怪我をした様子はない。 

 

「いえ……バウルを助けてくれたでしょ」

 

「バウル?」

 

「ええ、私の友達」

 

しばらく出られそうにないので、ユーリはクリティア族の女性に、色々と質問をした。それから、ここはもうしばらく手を組もう、という事になった。そして、なんとユーリがクリティア族の女性をいきなり殴り飛ばした。これに驚きはしたものの、ユーリの手がわかったクリティア族の女性はユーリに殴り返した。

 

これを少し続けながら、それらしいセリフを言い合う。当然、騒ぎに気付いた見張りが何事だと中に入ってくるが、その瞬間、中にいた全員で出口へまっしぐら。すると、無事に出られたのだ。そこで、もう一発、クリティア族の女性からビンタをもらったユーリ。さすがに強く殴りすぎたらしい。

 

だが、それでお相子という事になり、名前を名乗った。クリティア族の女性はジュディスというらしい。だがユーリは長いと思ったのか、ジュディスのことをジュディと呼ぶことにした。相変わらず、名前を省略して呼ぶ癖は治っていないようだ。

 

とにもかくにも、これで自由になったがだからと言ってそのまま仲間のもとへ帰るわけにもいかず、ユーリはジュディスの目的――魔導器(ブラスティア)を壊す事に付き合うことにした。

 

・・・

 

そしてしばらく進み、武器もひとまず取り戻し(ジュディスのはなかったらしい)、先に進みなんとか外に出てみると。レイヴンが弓ではなく剣で薙ぎ払い、リタと飛鳥が魔術を使って(飛鳥は銃)空中の魔物を打ち落としているところだった。

 

合流し、ジュディスとも自己紹介を終え、今かラだという時だった。上から敵が降ってきてたのだ。そこで飛鳥はわかってたかのように、カロルとリタを突き飛ばし、防護壁を自分に張る。そのおかげで誰一人怪我はせず、降ってきた敵は駆けつけたフレンによって倒されたのだった。駆けつけたフレンを加え、改めてバルボスを倒しに行くことになった。

 

「アスカ、記憶はどうだい?」

 

「あぁ、フレンには言ってなかったっけ。粗方戻ったよ」

 

「そうか。全部ではないんだね?」

 

「うん。でも、大丈夫。大分身体も慣れたし、武器の扱いもすこーし上手くなった」

 

「そうか。でも、先ほどの戦闘をみた限りでは、上手いと思うけどな。魔術も使っていただろう?」

 

「そうかな?うち、戦い方はたぶん独学だと思うよ?チャクラムはともかく、銃の方とかは特に」

 

「そうなのかい?」

 

「うん。でもって、あれは魔術じゃない。魔法陣とか出てなかったでしょ」

 

「………!」

 

「気づくの遅い」

 

飛鳥はそう言ってクスクスと笑った。言われてみれば確かに、飛鳥があの防護壁を張った時、リタのような魔法陣は出ていなかった。では、あの術はなんだというのだ。彼女には何も秀でた力はなかった。前に会った時は銃やチャクラムは使っていたがそんな力は使っていなかった。

 

「ま、アレは簡単に言うとうちのエネルギー変換能力の応用ってこと」

 

「???」

 

「アスカ、伝わってないわよ」

 

「ありゃ。えーと……」

 

飛鳥はフレンに自分の銃が周囲のエアルやエネルギーを弾に変換して使っているということ、そのエネルギー変換能力を応用し、弾ではなく防護壁を展開しているのだと説明する。すると、大いに驚かれた。

 

「そんな驚くことなん?」

 

「普通はそんなことできないわよ」

 

「あー……なるほどそういう事ね」

 

・・・

 

そうしてかなり長いこと歩きまわり、ついに最奥までたどり着いたユーリ達。入ってみると複雑な作りだった。だが、なんとか仕掛けを解き、最上階へたどり着く。すると、そこにはバルボスがいた。手に持ったチェーンソー型の剣にはまっている魔核(コア)はやはりユーリが探し求めていた水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)らしい。

 

その手に持った剣を使い、ギルドの頂点に立つだけでなく、世界をも手中に収めようとしているバルボス。もちろん、そんなが許せるわけもない。だが、バルボスは剣を使い、攻撃してきた。事前に控えていた飛鳥は力を使おうとした。だが、フレンにひょい、と引っ張られ、防護壁をはることはかなわなかった。だが、皆は持ち前の運動神経で躱したようだ。

 

「大丈夫か、みんな!!」

 

「……えっと???」

 

反撃する魔も与えないバルボスの剣に圧倒されていたユーリ達。だが、そこへデュークが現れ、バルボスの剣を破壊してくれた。そのおかげでどうにか反撃ができそうである。

 

「……賢しい知恵と魔導器(ブラスティア)で得る力などまがい物にすぎん……か。所詮、最後に頼れるのは、己の力のみだったな。さあ、おまえら剣をとれ!」

 

どこから出したのか、代わりの大剣を取り出し、構えた(とはいうものの、片手で軽々持ち上げていることから、かなりの力があると思われる)バルボス。

 

「あちゃ~、力に酔ってた分、さっきまでの方が扱いやすかったのに」

 

「開き直ったバカほど扱いにくいものはないわね」

 

「ホワイトホースに並ぶ(つわもの)、剛嵐のバルボスと呼ばれたこのワシの力と……ワシが作り上げた『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』の力。とくと味わうがよい!」

 

バルボスは下っ端と共に襲い掛かってきた。下っ端を早々に片づけたのだが、バルボス本人が言うだけあって割とタフだった。その上何故か飛鳥を執拗に狙うのだった。そのため飛鳥は回避に徹していた。

 

「この小娘がぁああ!!ちょこまかと!!」

 

「はっ、誰がてめぇなんかにやられるかっつーの!」

 

「ア、アスカ…!?」

 

「彼女、避けるのが上手いわね」

―それから、あちこちにある傷痕……あの年ごろのコが付けるには多すぎるわね

 

「アスカか、あれ」

 

そう、バルボスに狙われているせいだろうが、口調が荒れに荒れているのだ。おまけに声も低く、男だとしても違和感がないほどだ。元から地声が低いのだろうか。そんなこんなで避け続けるもバルボスに追い詰められた飛鳥。すると。

 

「だああ、もう!!ざっけんなっ!!うちばっか狙いやがって!!」

 

流石にキレたらしい飛鳥。その飛鳥の身体にはオーラがまとわれている。ということは、今、飛鳥はオーバーリミッツ状態だという事だ。

 

「なにぃ?こんな小娘がだと!!」

 

「悪かったな、小娘で!!――食らえ、‘パラン・アステール’!!」

 

飛鳥は撃った群青色の弾をバルボスの頭上で散弾させる、といった技を繰り出した。どうやら技を習得したことに驚いているようだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……今の、うちがやった感じ?」

 

「あぁ、助かった!」

 

この後、何度かその技で援護し、無事に勝つことができた。しかし、狙われていたことには変わりないので、かなり消耗したが。




ということで、バルボス戦でした!

次はバルボス戦後~となります。


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33戦目

あと少しで、1部終わり、かな!

長いっすw

バルボス戦後~になります。


・・・

 

ユーリ達に敗れ、ふらつくバルボス。だが、それでも倒れないところを見る限り、相当タフである。

 

「ぐっ……ハハハっ、な、なるほど、その様だ」

 

「ではおとなしく……」

 

「こ、これ以上、無様をさらすつもりはない……ユーリ、とか言ったな?おまえは若い頃のドン・ホワイトホースに似ている……そっくりだ」

 

「オレがあんなじいさんになるってか?ぞっとしない話だな」

 

「ああ、貴様はいずれ世界に大きな敵を作る。あのドンのように……そして、世界に食い潰される。悔やみ、嘆き、絶望した貴様がやってくるのを先に地獄で待つとしよう」

 

バルボスはそう言い残し、自ら奈落へと落ちていった。

 

・・・

 

 

塔から無事に出ることができたし、水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)を取り戻すこともできた。だがここで気づく。いつの間にかレイヴンが消えていることに。フレンも部下に仕事を押し付けたままだということで一足先に帰ることになった。エステルを一緒に、と思ったようだがエステルのユーリらと一緒に居たい、という願いに折れ、ユーリに託していった。

 

フレンと寄り道しないでダングレストにエステルを送り届ける、という約束だったため、まっすぐダングレストに戻ってみると。ちょうどラゴウが捕まっているところだった。フレンの姿は見られない。しかし、すぐに姿を現し、まだごねるラゴウに、ドン・ホワイトホースとヨーデルで友好協定を結ぶための話合いをしている、という事を伝える。その一部始終を見ていたユーリ達も、ひとまずは宿屋で休むことにした。

 

だが。宿屋で休んでいたがいきなりカロルが走って起こしに来たのだ。どうしたのかを聞いてみると、捕まったはずのラゴウが、評議会の立場を利用し、罪を軽くしたとのことだった。そのため、今の地位より少し低くなる程度で済まされるという。それを聞いたユーリは駐屯所にいるであろうフレンを訪ねた。飛鳥も、こっそりと後をつけた。この後起こることを、知っているがゆえに。

 

「ノックぐらいしたらどうだい?」

 

「来るの、わかってたろ」

 

「おまえ、その格好」

 

「本日付けで隊長に就任した」

 

「フレン隊の誕生か。また差をつけられたな」

 

「そう思うなら、騎士団に戻ってくればいい。ユーリなら……」

 

「オレの話はいいんだよ。隊長就任、おめでとさん」

 

「ありがとう。……僕を祝うために来たわけじゃないだろう?」

 

「ああ」

 

フレンはすぐさまピンときた。

 

「ラゴウの件だな。ノール港の私物化、バルボスと結託しての反逆行為。加えて街の人々からの掠奪、気に入らないという理由だけで部下にさえ、手をかけた。殺した人々は魔物のエサか、商品にして、死体を欲しがる人々に売り飛ばして金にした」

 

「外道め……」

 

「これだけのことをしておいて、罪に問われないなんて……!思っていた以上だった……評議会の権力は……!隊長に昇進して、少しは目標に近づいたつもりだった。だが、ラゴウひとり裁けないのが僕の現実だ」

 

「……終わったわけじゃないだろ?それを変えるために、もっと上に行くんだろ」

 

「そうだ。だが、その間にも多くの人が苦しめられる。理不尽に……それを思うと……」

 

「短気起こして、ラゴウ殴ったりすんなよ?出世が水の泡だ」

 

「…………」

 

「おまえはラゴウより上に行け。そして……」

 

「ああ、万人が等しく扱われる法秩序を築いて見せる。必ず」

 

「それでいい。オレも……オレのやり方でやるさ」

 

「ユーリ?」

 

ここで、ユーリの雰囲気が変わる。それに気づいたフレンは問いかける。

 

「法で裁けない悪党……おまえならどう裁く?」

 

「まだ僕にはわからない……」

 

ユーリはその答えを聞きつつも、その場から立ち去る。大きな橋まで来ると、そこにはラゴウが何やら話していた。そこへ攻撃を仕掛けるユーリ。

 

「あ、あなたは……私に手を出すつもりですか!?私は評議会の人間ですよ!あなたなど簡単に潰せるのです。無事では、す、すみませんよ」

 

「法や評議会がおまえを許してもオレはお前を許さねえ」

 

「ひぃ、く、来るな!」

 

そういって逃げようとするラゴウの背中を剣で斬りつけたユーリ。

 

「ぐっ……あと少しで、宙の戒典(デインノモス)をぉ……がふっ」

 

ラゴウはそのまま橋の下に落ちていった。それを見届けた飛鳥はユーリより一足先に帰る。どうやら何か起こるかもしれない、と思って見に来たのだが杞憂だったようだ。ユーリがや宿屋の前まで来ると、ラピードが伏せをして待っていた。

 

「……ラピード」

 

・・・

 

翌日。帝都に戻るエステルを見送りに来ていた。ラゴウの件は自分から何とかいうと言っていたエステルだが、昨夜から行方不明だと告げられる。するとすぐ後にリタはエアルクレーネの調査をし、それが終わったら帝都にも顔を出すとのこと。あとはすぐさま、走り去っていってしまったが。

 

「アスカも、遊びに来てください!もっと、お話ししたいです!」

 

「……ふふ。そう言ってくれるのは、うれしいな」

 

「はい!待ってますね」

 

「カロルは、これからどうするです?」

 

「ボクは、ギルドを、ユーリとアスカと一緒に作りたいな……」

 

「!?」

 

その言葉を聞き、飛鳥は驚いた。ユーリはわかる。ギルドを作らないか、とユーリを誘っていたから。だが、自分はそんな名前が挙がるようなことはしていないはずだ。それなのになぜ。そう思いつつもこの後、確か。

 

―確か、エステルが襲われるんじゃ、なかったっけ……?

 

そう、考えながらエステルが乗った馬車を、追いかけ、空を見上げた瞬間。火の玉が見えた。

 

「っ、ざっけんな!」

 

そういいながら、飛鳥は防護壁を展開する。だが、それでも衝撃を殺しきることはできず、フレンを含めた全員が怪我をする。当然、飛鳥も防護壁を張るために前に出たため、怪我を負ってしまう。

 

「アスカ!?」

 

「はぁ、はぁ……怪我大丈夫?うちは、別に動けるから大丈夫だけど」

 

なんていいつつ振り返った飛鳥。フレンは怪我をし、剣を杖代わりに地面に突き立て、膝をついていた。だが、それを確認した後、すぐにエステルの元へと急いだ。原作通りではないこと、さらに言えばおそらくだが自分も世界の調和を乱したものとして、目の前にいる巨大な鳥型の魔物に狙われる可能性がある。そこへユーリがカロルとともにかけてきた。フレンはユーリにエステルの事を頼む。頼まれたユーリは走っていく。かけてきた飛鳥に驚きはしたものの、エステルは鳥型の魔物が自分を見ていることから自分が狙われているのだと悟る。

 

「忌マワシキ、世界ノ毒ハ消ス」

 

「人の言葉を……!あ、あなたは……!」

 

「世界ノ調和ヲ、崩シ者モ、共ニ消ス」

 

鳥型の魔物はもう一度攻撃を仕掛ける。だが、それを飛鳥は防ぐ。その様を駆けつけたアレクセイはハッキリと見た。見たところ飛鳥には武醒魔導器(ボーディブラスティア)の類は見当たらない。なのに、防護壁を自分やフレンを含むこの橋の近くにいた全員を護る防壁を張った。どういうことだ。

 

「ああ、やっぱそうかぁ……(ボソ フェロー……始祖の隷長(エンテレケイア)には、わかられてる、か……」

 

「アスカ…?」

 

エステルが問いかけるも、膝を着く飛鳥。さすがに2連続で広範囲に防護壁を張ったのがまずかったらしい。口の端から、赤い血が、零れ落ちる。それを見られぬように、乱暴に拭うと、立ち上がりながらも鳥潟の魔物の方を向いた。だが、そこに姿はなく、何らかの攻撃を受けて、それを回避しているようだ。するとどうにかエステルのもとまで来たユーリは問いかけた。

 

「オレはこのまま街を出て、旅を続ける」

 

「え?」

 

「帝都に戻るってんなら、フレンのとこまで走れ。選ぶのはエステルだ」

 

「わたしは……わたしは旅を続けたいです!」

 

「そうこなくっちゃな」

 

その途端。攻撃の一つが橋を直撃。その場から逃げ出すと、途中でジュディスがたっているのが目に入る。

 

「危ないことしないで!」

 

「お前がそれ言うな」

 

エステルが来たあとすぐにユーリもジュディスのもとへ来た。だが、彼女曰く心配はいらないそうだ。だが、エステルが強引にジュディスの手を引き、走っていった。すると、そこで魔物が去ったことでひとまずは危機を脱する。

 

「待つんだユーリ!それにエステリーゼ様も」

 

そこに現れたのは、フレンだった。だが、橋が壊れていてユーリ達のもとに行くことはできない。

 

「ごめんなさい、フレン。わたし、やっぱり帝都には戻れません。まだ学ばなければならないことがたくさんあります」

 

「それは帝都にお戻りになった上でも……」

 

「帝都には、ノール港で苦しむ人々の声は届きませんでした。自分から歩み寄らなければ何も得られない……それをこの旅で知りました。だから!だから旅を続けます!」

 

「エステリーゼ様……」

 

そこで、ユーリは水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)をフレンに投げ渡す。

 

「フレン、その魔核(コア)、下町に届けといてくれ!」

 

「ユーリ!」

 

「帝都にはしばらく戻れねえ。オレ、ギルド始めるわ。ハンクスじいさんや下町の皆によろしくな」

 

「ユーリ……!」

 

「……ギルド。それが、君の言っていた君のやり方か」

 

「ああ、腹は決めた」

 

「……それはかまわないが、エステリーゼ様は……」

 

「頼んだぜ」

 

「ユーリ……!」

 

そこまで言うと、フレンに背を向け、カロルの前に立つユーリ。

 

「言うのが逆になっちまったけどよろしくな、カロル」

 

「うん!」

 

それから、急いで街を出たユーリ達だった――。




はい、長かったですが、ここでやっと第1部、終了です!

というわけで、次回から第2部に入ります。

次回は街を出た直後~になります。


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第2部
34戦目


ということで、ようやく第2部のはじまりですよ!

今回は街を出た後~になります。


今回は胸糞案件ですので、苦手な方はご注意ください


・・・

 

ダングレストを出発したものの、出発前に色々あったため、少し休憩。そんなところだった。だが、もう少し本格的な休憩は先だという事になり、ヘリオードという所までになった。しかし、それでもクタクタなカロルはもう少し休憩する回数を増やそう、と提案していた。そんなこんなで進んでいくと、どこからだったか、雨が降り出した。そして追っても来ない、というわけで一旦休憩に入ることにした。休んでいると、雨もやみ晴れてきた。

 

「一休みしたらギルドの事も色々ちゃんと決めようね」

 

「一休みしたいのはカロル先生だけどな」

 

「ギルドを作って、何をするの?あなたたち」

 

「何を、か……」

 

「ボクはギルド大きくしたいな。それでドンの後を継いでダングレストを守るんだ。それが街を守り続けるドンへの恩返しになると思うんだ」

 

「立派な夢ですね」

 

「オレはまぁ、首領(ボス)についていくぜ」

 

「え?ボ、首領(ボス)?ボクが……?」

 

「ああ、お前が言い出しっぺなんだから」

 

「そ、そうだよね。じゃあ、何からしよっか!」

 

「とりあえず、落ち着け」

 

「うん!」

 

どうやら、自分がギルドの首領(ボス)になったのがうれしくてはしゃいでいるようだ。声も若干高い。落ち着け、と言われても雰囲気からしてお花が飛んでいるあたり、無理な話かもしれない。

 

「ふふっ……なんだかギルドって楽しそうね」

 

「ジュディスもギルドに入ってはどうです?」

 

「あら、いいのかしら。ご一緒させてもらっても」

 

「ギルドは掟を守ることが一番大事なんだ。その掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだ。だから掟に誓いを立てずには加入はできないんだよ」

 

ギルドの事となると、真剣になるカロル。やはり、ギルドを作りたい、と言っていただけあって詳しいようだ。

 

「カロルのギルドの掟は何なんです?」

 

「えっと……」

 

「お互いに助け合う、ギルドの事を考えて行動する、人として正しいことをする

それに背けばお仕置きだな」

 

「え?」

 

「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのために。義を持ってことを成せ、不義には罰を、ですね」

 

「掟に反しない限りは、個々の意思は尊重する」

 

「ユーリ……それ……」

 

「だろ?首領(ボス)

 

「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのため……う、うん!それがボクたちの掟!」

 

「今からは私の掟でもある、ということね」

 

「そんな簡単に決めていいのか?」

 

「ええ、気に入ったわ。ひとりはギルドのため……いいわね」

 

「じゃあ……」

 

「掟を守る誓いを立てるわ。私と……あなたたちのために」

 

「あんたの相棒はどうすんだ?」

 

「心配してくれてありがとう。でも、平気よ、彼なら」

 

「相棒って……?」

 

ジュディスの相棒について何も知らないカロルは首をかしげる。否、ジュディスの相棒の事を知っているのはユーリとジュディスを除いて、飛鳥だけであるため、カロルだけがしらない、というわけではない。

 

「前に一緒に旅をしていた友達よ」

 

「へえ、そんな人がいたんだね。じゃあ、今日からボクらがジュディスの相棒だね」

 

「よろしくお願いね」

 

「よろしく!」

 

「ワン!」

 

「わたしは……」

 

「ま、とりあえず今日はもう休むか」

 

「そうだね。クタクタなの忘れてた」

 

ということでひと段落つき、休むことになった。それぞれが就寝までに自由に過ごしている。飛鳥も一人でいたのだが。ジュディスの声をかけられ、話すことになった。

 

「あなた、さっき一言もしゃべってなかったけれど、どうするの?」

 

「え?んー、そうやね。うち、記憶喪失やったからさ。粗方戻ったけど、まだ全部じゃないから、まだ戻っていない記憶を探すためと、あとカロルからギルド作る~~ってなった時に名前上げられたからね。それに、このギルドなら、入っても、いいかなって」

 

「そう。………あなた、狙われていたわね?」

 

「あちゃ~……見られてた?でも、なんとなくわかってた」

 

「……どうして?」

 

「フェローは、実力行使するでしょ」

 

「!……あなた、知っているの?」

 

「かなり訳ありでね、一方的に知ってる。もちろん、貴女のことも」

 

「まあ。それは怖いわね」

 

そういわれるが、本当に怖がってなどいないように見える。どうにもジュディスは苦手である。否、飛鳥からすればここにいる全員、あまり得意な相手ではない。何故なら、自分の周りに、このような優しい人たちはいなかったから。まだ、完全に信じられていないのだ。

 

「あなた、何者?」

 

「それ聞いちゃう!?ん~~、的確な言葉が見つからん。けど、そやね、――何もできない、出来損ない、ってやつかな」

 

「それは笑えない冗談ね」

 

「たはは、事実や。でもまぁ、そうね。強いて言うなら。魔術も使えないし、フェローが言う、世界の毒となる力とかもない。だけど、周囲のエネルギーを弾とかに変換する、変換能力を持ってる咎人(トガビト)、というべき存在かな」

 

「………あなたは、何かしたの?」

 

「してへん。何も、してへんよ。あぁでも、フェローを知ってるならきっと隠しても無駄やんね」

 

「…………」

 

「世界の調和を崩し者……フェローはうちのことをそう言った。それは、うちがここにいることで、きたことで、全身が黒く、目だけが赤い魔物を呼んでしもたから。この世界に」

 

「!」

 

「まだ、皆には秘密やで。あと、変にうちを庇おうとしやんとってな。あいつらに邪魔者認定されんの、うちだけでじゅーぶんやから」

 

飛鳥の話を聞いてジュディスは違和感を感じた。自分とさして変わらない年齢の子が、何故そのようなものを背負っているのか。闇を抱えているのは何となくわかる。だが、それを表に出さない。それに加え、体にある傷痕。戦闘中に見えたものだったが、この年齢で痕が残るほどの大怪我であれば、戦争に巻き込まれたか、事故にあったかだろうか。

 

「ジュディスも、はよ寝ぇや」

 

「ふふ、あなたもね」

 

飛鳥は離れ、少し夜空を眺めた。そこへ、ユーリが来る。

 

「よう。寝ないのか?」

 

「ん、うん。うちがいたとこじゃ、こんなきれいな夜空なんて見れる場所は少なかったからね」

 

「そうか。………お前、なんか記憶戻ってから無茶増えたな。あと無理してるだろ」

 

「そーね。正直、死にたいほど、疲れてるし今すぐこの場から消えたいね」

 

「!おま、それっ!」

 

「――けど、まだや。やんなきゃならない事がある。それを果たさないまま、ソレはできひん」

 

「やんなきゃならない事?」

 

「そう。あぁ大丈夫、もう傷つくのは慣れてる。あの白い目も、暴言も、暴力だって。全部、全部、もう慣れた。せやから、この先、何があっても大丈夫」

 

「…………」

 

ユーリは何も言えなかった。ドンから聞いて、危うい精神状態だろう、とは思っていたがここまでとは思わなかったのだ。一体、飛鳥に何があったというのだ。何が彼女をここまで追いつめているというのだ。

 

「なんでそこまでって顔してんね」

 

「っ……そりゃ、な」

 

「クス。大丈夫だって。前も言ったでしょ。よくあるお話、ありふれた話だって。フツーに実の親から暴言暴力、刃物で傷つけられる。あぁ、あと存在否定。よく『お前は間違えて生んだんだ』だの『どうしてこんなこともできないんだ、屑』とかね」

 

「!!」

 

「ね?よくある話でしょ?」

 

なんてことない、といった風に自分の過去を語る飛鳥。そこでユーリは自分の違和感に気づく。そうだ、随分と達観して諦観しているな、とは思っていたのだ。こんな過去を背負っているからだ。でなければ、あんなにあっさり死にたいだなんていわない。

 

「……前に見た、傷痕って」

 

「うん。お察しの通り。だから今更傷つくとかないわけ。そりゃ痛みはある。残念ながらあんだけアレコレされた割には、痛覚神経生きてるから。でも、慣れたから大丈夫。別に、大げさに痛がれってんならそうするし、逆に痛がる素振り見せんなってんなら、それなりに涼しい顔してられんで」

 

「んなことしなくていい。痛かったらちゃんと痛いって言え」

 

そうユーリが言うと、飛鳥は目を見開いた。そしてすぐ後に

 

「――その言葉、もっと早く聞きたかったっ……!そしたらきっと、“壊れずに済んだ”かもしれないのに……」

 

と、泣きそうな笑顔で言った。

 

「え?」

 

「ごめんね、うちは、もう手遅れや」

 

「は、ちょっと待て。意味わかんねえぞ。どういう事か説明しろっての」

 

「クス……そやね、どういうことか、当てたらね」

 

「いや、だからわかんねえから聞いてんだろうが」

 

「だから、うちはもう“手遅れなほど、壊れてる”。何がどう壊れているから、どうなっているのか。当ててみて。そしたら、たぶん、素直になれる」

 

「………わけわかんねえけど、お前はその壊れてるせいで素直になれないんだよな?」

 

「うん。大丈夫、もうこれ以上壊れへんから、ゆっくり考えて」

 

「ほっといて大丈夫なのかよ」

 

「〝トリガー〟さえ引かなかったら、別にへーきよ」

 

飛鳥は、それきり何も言わなかった。どうしていきなりこんな話をしたのかはわからない。だが飛鳥は度々様子がおかしいことはあった。雰囲気が変わることだってあった。だが、それは過去の記憶が戻ってパニックになっているものだからだ、と思っていた。だが、どうにも話を聞いている限り違うようだ。

 

 

 

―これで、嫌ってくれたら楽なんやけどなぁ……でも、壊れてんのも、慣れてんのも、ホント。素直になれへんのも、ホンマ。もう、うちはきっと戻れへん。もう色々と限界。

 

 

―ねぇ。うちを選ぶなら。辛かった時の記憶なんて、別のモノにすり替えて、消してほしかった……!!だったら、こんなにも辛くなかった……!!素直に、ユーリ達と旅を楽しめた……!!例え、使命があったとしても……!!

 

 

 

飛鳥は、わかっていた。吐き出さなければ、自分が自分でいられなくなることに。勢いに任せて何を言うかわからない。だから、ユーリには悪いと思いつつ話したのだ。これでユーリが自分を嫌ってくれればそれはそれで万々歳だから。自分のことなど、そこまで気にかけなくていいのだから。

 

・・・

 

翌日。それぞれが起きたところでこれからどうするのかを話し合った。結果、エステルは自分を狙ったフェローという鳥型の魔物を探したいらしく、それについていくことになった。

 

「あ、アスカ!」

 

「ん?」

 

「アスカは、どうするの?」

 

「?……あぁ、そっか。言ってなかったもんね。うちも、皆に誓いを立てる。うちのできる範囲で全力で事を成すよ」

 

「!」

 

「せっかく、カロルが言ってくれたんやもん。それに、このままやとうち、行くとこあらへんし」

 

ということでギルドの初仕事はこんな感じで決まったのだが。

 

「よーし!じゃあ勇気凛々胸いっぱい団出発!」

 

「ちょっ、それなんです?」

 

「え、ギルド名だよ」

 

「それじゃだめです!名乗り挙げるときに、ずばっと言いやすくないと!」

 

「そ、そうなの?じゃあ……」

 

凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)なんてどうです?夜空にあって、最も強い光を放つ星……」

 

「一番の星か、格好いいね!」

 

凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)……ね。気に入った、それにしようぜ」

 

凛々の明星(りりのあかぼし)……か。うちにはまぶしすぎる気もするけど……でも、カッコいいな」

 

「大決定!じゃあ早速トリム港まで行って船を調達しよう!デズエール大陸まで船旅だ!」

 

ということで、出発するユーリ達であった。




飛鳥のことで寄り道したら、かなーり長くなってしまいました…!

申し訳ないです……

飛鳥がユーリに話したのは嫌われるため(面倒なヤツだと思ってくれれば)、精神的にもう無理だ、となったからですが。

実は、これ、もう一つありますw簡単な事ですが、わかってもらえたら、うれしかったりします。

ヒントとして、精神的に無理になったから話したということは……?です。

では次回はヘリオード~になります。


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35戦目

一番上にネタバレありとなしの飛鳥のプロフを手描き、アナログのイメージ画像もどき付きをあげました。

気になる方はどうぞ。


今回はヘリオード~になります。


・・・

 

トリム港に行くということでその途中、ヘリオードに来たユーリ達。だが、街は静かだ。前のような賑わいはなかった。

 

「なんだか……以前より閑散としてません?」

 

「ああ。なんか人が少なくなった気がするな」

 

「そう言えば、あれかなぁ……」

 

「あら、どうしたの?」

 

「ダングレストで聞いたんだけど、街の建設の仕事がキツくて逃げ出す人が増えてるんだって。本当か嘘かしらないけどさ」

 

「ふーん……そんなことが……」

 

ひとまず、落ち着くためにも、宿屋に行くことになった。割と疲れていたのもあり、その日はもう宿屋で休むことになった。だが、夜中に物音で目が覚めたユーリは外に出ていく。当然、飛鳥もこっそりと後をつける。念のため、エステルとカロルたちには防護壁をはってから。

 

隠れながら、ぼうっと話を聞く飛鳥。物音に敏感というのも困りものである。会話は特に変わったことはないようだ。

 

―よし、変わりないしひとまず戻るか……

 

 

そう思い、戻ろうとした時だった。

 

「オマエ、ケス」

 

「!!!」

 

咄嗟にユーリ達が話しているところまで飛びのいてしまった。

 

「「!?」」

 

だが、飛鳥が居たところには地面が少しばかり抉れていた。

 

「アスカ!?どうし――」

 

た、とは言えなかった。飛鳥が銃ではなく、チャクラム両手に、あの黒い、赤眼の魔物と戦っていたから。近距離と遠距離を上手く使って立ち回る飛鳥は、何も言わない。だが、目は経験を積んだ、戦士のよう。

 

「アスカ!助太刀するぜ!」

 

ユーリがそういって黒い魔物―2メートルほどの竜型―に攻撃する。しかし、はじかれてしまった。

 

「なに!?」

 

「下がって」

 

飛鳥が言いながら投げたチャクラムは見事的に命中し、飛鳥のもとへ返ってくる。チャクラムが命中した黒い魔物は消えていく。どうやら倒せたようだ。だが、飛鳥はその場に座り込む。息も荒い。

 

「大丈夫か?」

 

「はぁ、はぁ……ん、大丈夫……持ってきてたの、チャクラムの方だったから、ちょっと、ね」

 

「あの魔物、貴女を狙っていたようだけど」

 

「うん、あの黒い魔物はうちの事を狙ってる。で、今ハッキリした。うち以外はあいつに攻撃が通らへん」

 

「「!」」

 

そういった飛鳥の顔は見えなかった。だが、その背中はどこか諦観が含まれたもので。

 

「まったく、困ったもんや」

 

「アスカ?」

 

「大丈夫、あいつらを一発で消せばいい話。だから、心配せんでええよ」

 

振り向いてそういいながら、微笑む飛鳥。声をかけようとしたが、先に戻ってる、と言ってそのままその場から離脱されてしまった。

 

・・・

 

次の日、部屋で作戦会議をする。と言っても街の様子見と前に暴走した魔導器(ブラスティア)を見に行くことから始めることになった。というより、何も知らないため、情報収集である。

 

街に出て魔導器(ブラスティア)を見に行くと。以前、助けた子どもと母親に出会った。だが父親の姿がない。話を聞いてみると、3日前から行方不明だという。貴族になるために頑張っていた、という話を聞くが、エステル曰くそれはおかしいらしい。貴族という位は帝国に対する功績をあげ、皇帝陛下の信頼を得ることができた者にのみ与えられるものだそうだ。

 

「で、ですが、キュモール様は約束してくださいました!貴族として迎えると!」

 

その名前に、一行は嫌な思い出がよみがえる。そして、現執行官代行だという、知りたくもない情報を手に入れた。という事で、ギルドで捜索依頼を承り、人探しをすることになった。

 

―やれやれ……あのバカに蹴りの一つでも入れてやりたいね……

 

飛鳥は、顔には出さなかったが内心ではため息をついていた。ついでに、制裁を加えることもだ。

 

何はともあれ、人探しを開始したユーリ達。だが、部外者が立ち入り禁止の場所があり、明らかにそこが怪しい。側にたち、門番をしている騎士に聞いてみると、この先は労働者キャンプがあるらしい。だが、危険だとのこと。

 

そこで色仕掛けで突破することになったのだが。

 

「それなら、アスカやってみるか?」

 

「あ”?なんで?意味わかんねぇ」

 

「そこまで怒ることねえだろ」

 

「こんな色気もへったくれもねぇ奴選ぶユーリがおかしい」

 

と、かなり反対したため、結局はジュディスが行くことになったのだが。服を作ってもらう際、何故かエステルのも作られており、さらにそのエステルの服の色違いで飛鳥の分の服も作られていた(エステルの服の赤?の部分が飛鳥のは青)ため、エステルに引っ張られ、一緒に着る羽目になった。

 

「…………」

 

「お前、色気ないんじゃなかったのか?」

 

「こっちが聞きてぇよ……」

 

そういって飛鳥はため息をついた。だが、本人がいう程にあってない、なんてことはなかった。むしろ、似合っているな、とユーリは思う。だが、口が悪いのと低いので男装すれば今なら男だと偽れるかもしれない。

 

―なんでこんなことすんだよ……マジでふざけんじゃねぇぞ……!!

 

・・・

 

 

そして何とかなったのだが。早々に飛鳥は元の服に着替えていた。そして、騎士の格好をして、おいたほうが良い、ということで騎士の格好をすることになった。当然、ユーリがするものだと思っていたのだが。

 

「アスカ、お前に任せた」

 

「……バレてもしらんからな」

 

そういって騎士の格好をした飛鳥。するとすぐに別の騎士がやってきて、詰め所で暴れている魔導士がいるから止めてほしいとのことだった。

 

「あぁ、悪い。すぐ行く」

 

飛鳥がそういうと、伝えに来た騎士はすぐさま走り去っていった。

 

「ってわけだ。行ってくる」

 

飛鳥もそれだけ言い残すと走り去っていった。

 

「え、気づかないの……?」

 

「らしいな」

 

・・・

 

 

飛鳥が詰め所に行くと、そこにはリタが居た。相当暴れているようで、何人もの騎士が倒れていた。全員倒してしまい、走りだそうとするリタに向かって、発砲する飛鳥。ユーリほどの力もないため、流石に羽交い絞めにはできないと思ったらしい。

 

「何よ、アンタ!!あたしの邪魔をす……え?アスカ?」

 

「よかった。気づいてくれなきゃバトんなきゃいけなかったわ」

 

と、そこでユーリ達が駆けつけた。それからはどうにかリタを落ち着かせ、飛鳥も服を着替え、今は詰め所の前に集まっていた。

 

事情を聴いてみると、どうやらここの魔導器(ブラスティア)の様子を見ておこうと思って立ち寄ってみれば、夜中にこっそり労働者キャンプに魔導器(ブラスティア)を運び込んでいたらしい。それを見たリタはいてもたってもいられず、首を突っ込んだところ、捕まった、ということだった。

 

リタ曰く、そこで見たのは騎士に脅され、無理やり働かされている街の人々だったらしい。そして、リタが見た魔導器(ブラスティア)というのは兵装魔導器(ホブローブラスティア)だったらしい。確実に戦うための準備をしている、ということだった。

 

「アスカ、似合ってましたよ!」

 

「………」

 

「そうね。似合っていたわ、アスカ」

 

「やっぱ、うちって声低いのかね……」

 

なんて思う飛鳥だった。




という事で、リタとも無事に合流!

次は広場へ向かう所~です。


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36戦目

今回は皆大嫌い、あの人が出ます。


広場に向かう所~です。


・・・

 

魔導器(ブラスティア)のある広場に戻ろうとすると。誰かがいるようで、一行はその誰かに見つからないように、身を隠した。すると、その誰かだろう声が聞こえる。

 

「おお、マイロード。コゴール砂漠にゴーしなくて本当にダイジョウブですか?」

 

「ふん、アレクセイの命令に耳を貸す必要はないね。僕はこの金と武器を使ってすべてを手に入れるのだから」

 

「そのときがきたら、ミーが率いる凶海(リヴァイアサン)の爪の仕事、褒めてほしいですよ」

 

「ああ、わかっているよ、イエガー」

 

「ミーが売ったウェポン使って、ユニオンにアタックね!」

 

「ふん、ユニオンなんて僕の眼中にないな」

 

「ドンを侮ってはノンノン、彼はワンダホーでナイスガイ。それをリメンバーですヨ~」

 

「おや、ドンを尊敬しているような口ぶりだね」

 

「尊敬はしていマース。バット、凶海(リヴァイアサン)の爪の仕事は別デスヨ」

 

「ふふっ……僕はそんな君のそういうところが好きさ。でも、心配ない、僕は騎士団長になる男だよ?ユニオン監視しろってアレクセイもバカだよね。そのくせ、友好協定だって?」

 

「イエー!オフコース!」

 

「僕ならユニオンなんてさっさと潰しちゃうよ。君たちから買った武器で!僕がつまづくはずないんだ。ユニオンなんかで!」

 

どうやら2人は下に降りて行ったようだ。それを見ていたユーリ達は広場へと出てくる。だが、イエガーの方はユーリ達に気づいていたらしい。その上で見過ごし、笑っていた。そしてそのまま労働者キャンプの方へいったらしい。だが、気づかれていたからと言って、行かない理由にはならない。

 

ユーリ達は労働者キャンプへ向かう。すると、おりてすぐ、騎士が倒れて動けないだろう男性を働かせようとしているところだった。話しかけてもやめる気がなかったので、実力行使でぶっ飛ばした。

 

先へ進むと先ほど、イエガーと呼ばれた男が赤眼の連中に指示を出しているところだった。それを見て、カロルがその指示を出していた男がボスなのでは、と言い出し、ユーリ達もそうだろうと同意した。

 

そしてさらに進むとキュモールが労働者に乱暴をしているところだった。それを見て、ユーリはキュモールの頭に石を当てる。しかも、ちょうど額のあたりだ。

 

「ユーリ・ローウェル!アスカ・ツキシロ!どうしてここに!?」

 

「うへぇ……てめぇに名前なんか呼ばれたくねぇな……」

 

キュモールに名前を呼ばれた飛鳥は心底嫌だったようで、口が悪くなって声も低くなっていた。どうやら、指名手配書の一件で飛鳥もユーリと一緒に危険人物扱いをされているようだ。キュモールはエステルの姿に驚くもののすぐさまイエガーを呼び出し、仕掛けてきた。

 

そして、イエガーとその手下を退けようと奮闘するも、やはりというべきか、飛鳥は狙われていた。おそらく、原作通りではない事と、キュモールからユーリの事と一緒に伝わっているのだろう。

 

「oh、外しましたか」

 

「当たったら、痛いじゃすまへんやろ」

 

「アスカ、大丈夫か!?」

 

「なんとか、な!」

 

自分が狙われていることがわかった飛鳥は目立つように立ち回り、注意を引いた。そう、つまり、囮である。そしてそれが上手くいったため、なんとか退けることができた。だが。イエガーはゴーシュ、ドロワットと名前を呼んだ。すると、2人の女の子が上から降ってきた。どこぞに隠れでもしていたのだろう。

 

2人はその場で煙幕を使い、視界を奪い、逃げ去った。だが、ここで逃がすわけにはいかない。だが、ギルドとしての依頼は行方不明である、ティグルという男性を探すことだ。そうこうしていると、フレンが駆けつける。そこで、あとの事はフレンに任せ、逃げたイエガー達を追う。

 

・・・

 

だが、見当たらない。ともなれば、もう現時点で追うことはできないはずだ。旅の目的も、フェローを探すということだったはずだ。そのことをほっぽりだしてまでキュモール達を追おうとするエステルにジュディスが咎める。確かにそうだ。だがそこでレイヴンが現れる。どうも、ここに来た理由としては自分たちが元気すぎるから、らしいが。

 

ひとまず、ここには何もないため、トリム港に行くことになった。その途中で偏食であることをレイヴンは咎められていたが、それは飛鳥にも飛んできたのだった。

 

「あ、ほら!アスカちゃんも残してるし!」

 

「あぅ……!」

 

「それ、嫌いなんです?」

 

「どうも味が……」

 

「僕だって我慢して食べてるのに!!」

 

「……(もぐもぐ」

 

「あ、ほらレイヴン、アスカちゃんと食べてるよ!やっぱレイヴンも食べなきゃ!」

 

流石に年下に言われてしまえば食べるしかない飛鳥だった。そして、いろいろあったがトリム港に着いたユーリ達はレイヴンがごねるため、宿屋に向かった。

 

―グミ、な……アップルとグレープは好きだし、オレンジもまだ食べれるけど、ピーチとかパインとかそこらへん、苦手なんだよなぁ……

 

飛鳥はグミのスキットを聞いて独り苦い顔をしたのだった。




というわけで、キリがいいので短めですw

次は宿屋~になります。


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37戦目

少し間が空きましたが投稿です!

今回は宿屋~になります。


・・・

 

ひとまず、宿屋で休み、レイヴンの話を聞いたユーリ達。どうにも、次期皇帝候補であるエステルがぶらぶらと歩きまわっているのは、現状としてはあまり放っておける状態ではないらしい。確かに、今帝国とユニオンは互いに腹の中を探り合っている真っ最中。そんなときに帝国のしかも次期皇帝候補がうろうろしていては、ユニオンも気になるだろう。帝国側としても同じことが言えるだろうが。

 

そして、レイヴンも監視だけが仕事ではないらしく、ノードポリカにいる、首領(ドーチェ)に手紙を私に行かなければならないらしい。それもあって、しばらくはユーリ達凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)に同行するとのこと。そこまで話がまとまると、リタは一足先に休むと言ってその場から出ていく。そこでユーリ達も休むことになった。

 

だが。ユーリは、ベッドの上い座って、中々寝ようとしないカロルに声をかけた。訳を聞いてみれば、自分が首領(ドン)であることに不安になっていたようだ。だが最初からそのようにふるまえるなんてことはそうそうない、とユーリは話した。確かにそうだろう。そして、今度はリタのもとへ行くユーリ。なんだかんだと気になるらしい。

 

そして、話し終えるとそのまま、外へ行き、ラピードを会話をする。話が終われば、今度は街の方へと歩き出す。すると、そこでジュディスと会う。軽く話し、またぶらぶらと歩いていると、レイヴンを見つけた。割と前科があってなかなかに信用がない彼だが、それでもノードポリカまでは一緒に旅する仲間である。

 

「……アスカちゃん、何か無茶してない?」

 

「あいつが?」

 

「あの子、すーぐ1人で抱え込むからね。ダングレストにいた時もそうだったのよ」

 

「まぁ確かに、アスカを狙ってる黒い魔物がいるってんで、そのことで気を張ってるかもな」

 

「あぁ、やっぱりあの黒い魔物ってアスカちゃん狙ってるのね」

 

「あぁ。オマケにオレたちの攻撃が効かないときた」

 

「!………それは」

 

「一発で、あいつらを倒せばいいとか言ってたけどな」

 

「こっちの攻撃が効かないんじゃ、そうするしかないわよねぇ……」

 

なんて会話をしつつ、ひとまずは様子見ということで話はついた。そして宿屋に戻ろうとすると、エステルとアスカを見つける。どうやら2人で話をしているらしい。会話に耳を傾けてみると。

 

「――アスカは、どうしてそんなに割り切れるです?」

 

「んー……そうやな、そうするしか、選択肢がなかったから、かな」

 

「そうするしか……?」

 

「そう。選択肢なんて、あってないようなもんよ。せやから、うちはもう、〝そういうもんや〟って思うことにしてん」

 

「………辛く、なかったです?」

 

「そりゃ、つらくないって言ったら、ウソになる。けど、だからと言ってそこで諦めちゃうと、待っているのは精神崩壊か、死。なら、どこにももう、逃げられないでしょ?」

 

「………っ!」

 

「クス、オヒメサマには、少し酷な話やったかな?」

 

「もう……!ずるいです、アスカは!」

 

「ふふ、ごめんごめん。じゃあ、うちはそろそろ戻るね」

 

「はい、おやすみなさい」

 

「ん、おやすみ」

 

どうやら話は終わったらしい。ユーリはそれを見かねてエステルに話に行く。そして話が終わると、アスカのもとへ行く。すると、寝ていると思われた彼女は起きていた。しかも、ベッドの上に横にならず、いわゆる体育座りというやつをしていた。どこかを見つめているであろう飛鳥は、どこかに消えてしまいそうで。

 

「〝飛鳥〟!」

 

「ん、ユーリ?」

 

「お前、どうしたんだよ」

 

「?」

 

首をかしげる飛鳥。どうにも自分が今何をしていたか自覚がないらしい。あの状態のまま放っておけない。そう思うユーリ。なぜだかはわからない。だが、あのままではどこかに飛鳥が消えてしまいそうだと思ったのだ。だから飛鳥の名前を“呼んだ”。ドンから言われた、引き戻してやれっていう、あの言葉。もしかしたら、このことかもしれない。

 

「お前、いつもそんな風にしてんのか?」

 

「あー……まぁ、そうね。横になって寝るとさ、どうにも寝つき悪くて。〝こっち〟にいてるから大丈夫かなーって何度か試したり、治す目的でそうしてるんだけど、どうにもダメらしくて」

 

あはは、と軽く笑う飛鳥。やはりどこか無理しているように感じる。あの時言っていた、『疲れた』、『死にたい』という言葉は、嘘ではなさそうだ。そういった時の目も、濁っていた。光がなく、すべてに諦めた顔だった。だが、そんな状態の飛鳥を死なせないのが、〝使命〟とやらなわけだ。その使命についてはどうにも飛鳥は話す気はないようだが、死のうとしてる人間を止めるだけのものらしい、というのはユーリにもわかっていた。

 

―重症なことには変わりねえな……

 

・・・

 

次の日。船を探しに街を歩いていると。ヨーデルに会った。どうも、ユニオンと協定を結ぶために動いているが、中々うまくいかないらしい。次期皇帝候補ではあるものの、宙の戒典(デインノモス)がなければ皇帝にはなれないというのもあり、難航中らしい。ヨーデルと別れると、今度はカウフマンがいた。それを見てカロルが彼女に船を出してもらえればいいのでは?と提案する。

 

そして色々あったが魚人の群れから幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)を護衛するならという条件で成功すれば船――フィエルティア号という名の船ももらえるらしいとのことで依頼を引き受けたのだった。




ということで、今回はここまで!

次は船の上~になります。


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38戦目

気が付いたらもうすぐ40話ですよ……


ついこの間は20話だ、30話だって言ってた気がするのに……はやいですねぇ……


今回は船の上~になります。


・・・

 

依頼を受けて、船で移動するユーリ達。だが、やはりリタの言った通り、現実は甘くないらしい。魚人の群れが襲ってきた。すぐに倒すが、そのうちの1体からパティが出てきた。どうやら、飲まれていたらしい。だが、すぐ近くで船の操縦をしていたトクナガが襲われ、怪我を負ってしまった。船の操縦はパティがする、ということでなんとかなったのだが。

 

幽霊船だろう船とぶつかり、船の原動力である駆動魔導器(セロスブラスティア)が動かなくなってしまった。仕方がないので、船の探索に行く組と船を護る組に分かれたのだった。もちろん、飛鳥は探索に行く組である。

 

「アスカ、こ、怖くないです!?」

 

「別に?まぁこの幽霊船が、うちらに何かしてほしいとか、そういうのでしょ。お決まりやね」

 

「肝が据わってるわね、貴女」

 

「そう?大体、壊れてもないのに動かないとなると、向こうさんの力で止められてるってことでしょ。なら、向こうさんの要求に応えられるなら応えて、無理なら無理で、向こうさんのことなんとかしてやるのが一番早い」

 

「………見てきたような言い方ね」

 

「まぁね。似たような体験はしたことあるからね」

 

なんて会話をしつつ、船の探索に向かった。

 

・・・

 

結局色々探索していると、船にいたメンバーと合流する。色々探索していると、白骨死体をみつける。傍に会った日記を読んでみると、澄明の刻晶(キュアノシエル)という魔物を退ける効果のあるものをヨームゲンという街に届けるためにこの船を動かしていたらしいが、日記からこれは1000年前の事だとわかる。そして、ジュディスが白骨死体の抱えていた赤い小箱を取ると。鏡の中から骸骨の騎士のような魔物が出てきた。

 

「まー、お決まりだぁね」

 

「なんでアンタそんなに冷静なのよ!!?」

 

「だって、怖い怖いって言って怖がってたら向こうさんの思うつぼだし」

 

そういいながら、銃を構える飛鳥。それに続きユーリ達も武器を構えた。そして、飛鳥はすぐさま骸骨の騎士の足を狙う。注意を引きながら、器用に避ける飛鳥。だが、それでも相手はかなりの強敵。避けきれず傷を負う飛鳥。だが、それでも軽症だ。怪我してもひるまず、すぐに距離を取りながら撃つ。

 

しかし、思った以上に強く、体力的にしんどくなってきた飛鳥は、チャクラムに持ち替えた。あまり慣れていないと言ってはいたが、それなりに動けるようで、

 

「せーのっ!‘アルジェント・ポース’!!」

 

技を使って援護をしていた。そうしてようやく倒すことができた。と言えば語弊がある。あの骸骨の戦士はある程度戦うと、そのまま、また鏡の中へ消えていったのだ。ひとまずその骸骨の戦士とは決着はつけなくてもいいため、帰ろう。そうなったのだが、帰り道は途中で仕切りが落ちてきたため使えない。

 

すると、船から煙が上がった。どうやらエンジンが治ったらしい。そして、ダメ元で外に通じる扉を見てみると。なんと、扉が開いていた。そこから外に出て、今度こそノードポリカに向かうのだった。

 

・・・

 

ノードポリカが見えてきたところで、カロルとエステルが教えてくれた。ノードポリカは別名、闘技場都市というらしい。昔は奴隷などを闘技場で戦わせる事が貴族の間で流行っていたようだが、今は戦士の殿堂(パレストラーレ)というギルドが闘技場の運営権を持ち、市民の娯楽の場としているとのこと。

 

ひとまず街の中へ入ってみると。花火が上がっていることもあり、にぎわっているようだ。そこでパティが再びパーティを抜けたが、きっと彼女とならまたどこかで会えるだろう。

 

―闘技場、かぁ……テイルズシリーズ恒例やねぇ……

 

飛鳥は闘技場を見上げながら、そんなことを思う。少し街を見て回ったがべリウスに挨拶に行こう、という事になり闘技場の中に入る。階段を上り、左の方に行くと。赤髪(?)の男性に

 

「この先は、我が主、べリウスの私室だ。立ち入りは控えてもらおう」

 

と言われた。

 

「そのべリウスさんに会いに来たんです」

 

「なんだって?おまえたちは誰だ?」

 

「ギルド、凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)だよ」

 

「……聞かない名前だな。主との約束はあるか?」

 

どうやら、べリウスは約束をした者としか会わないようだ。レイヴンがドンの使者だと知ると、男性―ナッツと名乗った―は自分が代理だから、自分が用件を承るという。だが、ドンからはべリウスに直接渡せ、と仰せつかっていると伝えると、新月の晩になら、とのことで出直すことになった。

 

闘技場を出ると、パティが買い物をしていた。だが、どうにもよろしくない雰囲気だ。話を少し聞いてみれば

 

「アイフリードみたいな服を着てその孫だって名乗る娘がいるって……」

 

「…………!」

 

「……やっぱり……えぇと……全部で450ガルドになります」

 

「…………」

 

「あ、あの……もううちにはあまり、来ないでいただけますか、ね……」

 

「それは……うちがアイフリードの孫だからかの?」

 

「あ、えと……そのですね。うちは別にいいんですよ、でもね、ほらお客さんとかが……」

 

「え?いや……わたし?いや、ちょっと待ってくださいよ、わたしゃ、何もそんなこと……」

 

「ちょっと、言ったじゃないですか、ギルドの義に反した奴の孫が来たら店のイメージダウンだって」

 

「そりゃ、だって人々を守るっていうギルドの本分破って、多くの民間人を殺戮した人物の孫だし……」

 

「そ、それは……」

 

どうにも、パティの事を悪く言っているようだ。子ども相手に酷いものである。いや、子どもでなければいいというものではないが。

 

「……くだらねぇ話してるじゃねぇか」

 

「うちも、混ぜてくれへん?」

 

「な、何だよ……」

 

「こんな子どもに何の責任があるってんだ。こいつが直接、何か悪いことをしたか?」

 

「それね。すーぐ噂だけでその人の本質を、人柄を見ない人多いよねぇ」

 

「……まあ、ユーリ、アスカ、そう、カリカリするな。いつものことなのじゃ」

 

その場はその一言で終わり、パティはそのままかけていってしまった。自分たちも宿屋に向かい、休むことにした。

 

だが、その夜。エステルは1人、宿屋の外にいた。すると、あとからユーリがやってきた。どうやら、彼は人の気配に敏感らしい。

 

「城に帰りたくなったか?」

 

「いえ……ちょっと落ち着こうと思って。フェローに言われた言葉が耳から離れないんです」

 

「ああ、なんか言ってたな」

 

「忌まわしき、世界の毒は消す……」

 

「世界の毒ね……確かにそんな連中が世の中にはいるけどな。少なくとも、オレにはおまえが毒には見えねえがな」

 

「それって、励ましてくれてるんです?」

 

「思ったこと、言っただけだって」

 

「ふふ、ちょっと元気出ました。あ……ユーリ、ほら、あれ」

 

エステルが何かに気づき、空を見上げる。ユーリも空を見上げてみる。すると、数々の星の中でひときわ強く、大きく光っている星があるのを見つける。

 

「あれが、ブレイブヴェスペリア……凛々の明星(りりのあかぼし)です」

 

「夜空で最も強い光を放つ星……か」

 

「あの星には古い伝承があるんです」

 

そういって、エステルは語りだした。

 

「その昔、世界を滅亡に追い込む災厄が起こりました。人々は災厄に立ち向かい、多くの命が失われました。皆が倒れ、力尽きたとき、ある兄妹が現れました。その兄妹は、力を合わせ、災厄と戦い、世界を救いました。妹は満月の子と呼ばれ、戦いのあとも、大地に残りました。兄は凛々の明星(りりのあかぼし)と呼ばれ、空から世界を見守ることにしました。おしまい」

 

「恐れ多い名前を、ギルドにつけちまったな」

 

「あの輝きに負けないくらい立派なギルドにしてくださいね」

 

「ああ……今度、カロルにも聞かせてやらないとな。名前負けして格好悪くならないように。オレ帰るわ。おまえもリタ辺りが心配する前に帰ってこいよ」

 

そういってユーリはエステルに背を向け、宿屋へと一足先に帰るのだった。

 

・・・

 

闘技場に再び行ってみると、デュークがいた。ナッツに断られているところを見ると、べリウスに会いに来たらしい。どんな用事かユーリが聞くも何も教えてくれず、そのまま去っていった。ひとまず、闘技場を出てみると。何やらもめていた。

 

間一髪でユーリとジュディスが止めに入り、さらに飛鳥が止める。

 

「だぁぁ、もう!」

 

ひとまずは収まった。すると、おずおずと遺跡の門(ルーインズゲート)首領(ボス)であるラーギィが声をかけてきた。どうにも自分たちを見込んで頼みたいことがあるらしい。だが、此処では話せないとのことで、闘技場に向かうユーリ達。

 

そこで、ラーギィから依頼されたのはこの戦士の殿堂(パレストラーレ)を乗っ取りをたくらむ連中を倒してほしい、とのことだった。その話を聞く中、一行(飛鳥以外)は始祖の隷長(エンテレケイア)という単語について興味を持つ。聞けば、この街と遺跡の門(ルーインズゲート)の渡りをつけてくれた者らしい。そして、そののっとろうとしている奴は闘技場のチャンピョンであり、後ろには凶海(リヴァイアサン)の爪がいるらしい。そこで思い出す。キュモールと連中が繋がっていたことに。ともなれば、止めなければいけないし、何より勝てばギルドの名前が上がるだろうとのことで引き受けることになった。

 

参加するのは、消去法でユーリとなり、ユーリは受付でエントリーを済ません、闘技場内部へと進んだ。

 

・・・

 

順調に勝ち進むユーリ。そして、ついにチャンピョンとの闘いになる。だが、現れたのはフレンだった。どうにも嵌められたらしい。だが今更辞退などできるはずもなく、打ち合う二人。

 

「危ないじゃないか」

 

「観客に八百長試合を見せるわけにはいかねえだろ?」

 

「少しは手加減をしてほしいな」

 

「よく言うぜ。簡単に受け止めやがって」

 

「手短に事情を聞こうか?」

 

「騎士団の任務だ。それ以上は言えない」

 

「闘技場で勝ち抜く任務っていったいなんのことだよ。しかも隊長自ら……」

 

「言えないんだ」

 

「隊長になって張り切んのもいいがあんまひとりで無茶すんなよ」

 

「張り切っているのは君だ。そんな楽しそうな姿を見るのは久しぶりだよ。君こそ、そろそろエステリーゼ様を返してくれないか」

 

「悪ぃけど、それはオレじゃなくて、本人に交渉してくれよ」

 

「エステリーゼ様は僕の言うことに耳を貸してくださらない」

 

「あのお姫様はオレのいうこともなかなか聞いてくれないぜ」

 

「そろそろ茶番はやめないか」

 

「どうやって?ここでやめたら大ブーイングだぜ」

 

そういって中々決着がつかない2人。そんな2人のもとに現れたのは――。




中々キリが良いところがなくてw

次回は乱入者あり~になります。


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39戦目

遅くなりましたが、続きです!

とはいえ、最初の闘技場でのイベント、からの乱入者と言えば、ね?

皆さんならお判りでしょう!w


・・・

 

そう、乱入してきたのはいつぞやで戦った、ザギである。右腕に持つ武器を魔導器(ブラスティア)に変えてまで、ユーリ達に再戦を臨みに来たのだ。正直それどころではないのだが、このまま放っておくわけにもいかない。そして、流石にユーリだけに彼の相手をさせるわけにもいかない。

 

「こいつほんと、勘弁なんだけど」

 

「お、奇遇だな。オレもそう思ってたとこだ!」

 

そんな会話をしつつ、ザギを倒しにかかる飛鳥。しかし、まだ対人戦に慣れているわけでもないので、遠距離から援護――のはずだったのだが。

 

「死ねぇ!!!」

 

「アホぬかせ!!だ~れがはい!とか返事すんだよ、こんの戦闘狂が――!!!」

 

どうしてこうなった。ユーリも狙っているのだが。なぜか飛鳥も狙ってくるのである。原作なら執拗なまでにユーリを狙うのだが(いや、そこは変わってはいない。ともなれば)、そう、ターゲットに飛鳥も入っている、という事である。

 

「だあああ、もう!!!うちは、お前の求めてるような奴じゃねえっての!!マジでざっけんな!!!」

 

キレている飛鳥はとんでもなく口が悪い。最近多いような気もするが、気のせいだろう。飛鳥は、ザギに狙われている間は銃ではなく、チャクラムを使っていた。やはり、近距離になってしまえば銃で戦うのは難しいらしい。

 

そうして、なんとか倒すことができた、のだが。ザギが膝をつく。どうやら魔導器(ブラスティア)の調子がおかしいらしい。そして暴走し、暴発。その影響で見世物のために捕まえてあった魔物の檻だろう結界魔導器(シルトブラスティア)が壊れたらしい。

 

ジュディスはザギの魔導器(ブラスティア)を壊そうとしたが、エステルと飛鳥が吹っ飛ばされたのを見て、先に魔物の清掃に向かう。吹っ飛ばされた飛鳥は、肩をやられたのか、右腕のみで銃を撃っていた。

 

・・・

 

その後、魔物を討伐していると、リタの魔術が暴発。周りに被害は出なかったものの、危うく魔物以外も巻き込むところだった。そんな中、どさくさに紛れてラーギィがエステルの持っていた赤い小箱を取っていった。ラピードとジュディスがすぐさま後を追った。ユーリ達も、戦いがひと段落すると、追いかけた。

 

途中でジュディスと合流。まだラピードが追っているらしいが街の外に逃げられたとのこと。急いでラピードの後を追う。そして無事にラピードとも合流。ラーギィが向かったであろう場所へ向かうことになった。

 

「アスカ、最近怒ってばかりな気が……」

 

「!………ごめん、控える。昔から、キレると口悪くなるんよ」

 

「昔から?」

 

「そう。あ~、たぶんこんだけ口悪いのもあんのクソ親父どものせいだな」

 

「いけません!アスカ、女の子でしょう?そのような言葉使いはダメですよ!」

 

「うううう………女の子女の子してんのは、苦手や~~~」

 

と、こんな風な会話もあったのだが、無事到着。カロル曰く、カドスの喉笛という洞窟らしい。ここにはプテロプスというかなり危険な魔物が住んでいるだとか。しかし、だからと言ってここで引き返すわけにはいかない。

 

少し進むと、ラピードが先行し、隠れていたラーギィを捕まえた。だが、追い詰められたラーギィは凶海(リヴァイアサン)の爪を仕掛けてきた。撃破したが、ラーギィには逃げられてしまった。追いかけて進んでいくとパティに会った。

 

話を聞いていると、どうやら麗しの星(マリスステラ)というアイフリードのお宝を探してるとのこと。そして、記憶喪失だという事も聞いた。

 

「アスカの記憶は戻ったのか?」

 

「………」

 

「アスカ?」

 

「え?あ、ごめん。聞いてなかった」

 

「大丈夫か?やっぱ肩がいてえのか?」

 

「いや、まぁ、痛くないわけじゃないけど大丈夫」

 

「ふむ、アスカ。記憶は戻ったのかの?」

 

「あらかた、ね。まだ、“一番最初所に来た時の記憶”はあらへんけど、たぶん思い出しちゃまずいんだろうねぇ……思い出そうとはしてんのやけどね。体が拒否ってるっぽくて、頭痛ぇんだわ」

 

そう言いながら頬をかく飛鳥。

 

「そうなのか!」

 

「まーね。そっちの記憶も、早く戻るといいね」

 

「なのじゃ」

 

そんな会話をしつつ、パティを加え、先に進む。しかし、可視化し、赤く変化したエアルによりラーギィとの距離を開けてしまった。濃いエアルのせいで飛鳥は体中――特に心臓部分が痛い。

 

「っ……」

 

だが、倒れるわけにはいかない。大丈夫、まだ。そう言い聞かせていると、魔物が現れ、エアルを吸い込み、その場を去っていった。その途端、動けるようにはなる。しかし、かなりの疲労感。飛鳥はその場でたたらを踏む。流石に平然としてられるほど、この高密度のエアルに触れる程の場数は踏んでいない。

 

―くっそ……めっちゃ心臓痛てぇ……マジふざけんな……!

 

皆が追いかけ始めるので、飛鳥も遅れずにかけていく。内心ではめちゃくちゃあらぶっていたが。そして、ついにラーギィを追い詰め、ラピードが赤い小箱を取り返す。そこでラーギィが立ち止まった。

 

「あー、その喋り方。やっぱイエガーやね」

 

「え?」

 

「やっぱ?」

 

飛鳥は、つい、口を滑らせた。だが、すぐにラーギィを正体を現したことでうやむやになり、その上プテロプス襲来、と言った事態に。どうにか倒し、先へ進むと砂漠の入り口にたどり着いた。コゴール砂漠の入り口らしい。ジュディス曰く、砂漠には3つの区域に分かれているとのこと。だが、途中に水場を近場に栄えている街があるらしく、話はそこで、という事になった。




原作、まだ秘奥義習得しないんですかねぇ……

はよはよ……!!

次回は砂漠~になります。


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40戦目

研修しんどすぎるんじゃー

今回は砂漠の街~です。


・・・

 

話に出てきた砂漠の中にある街というのは、洞窟を抜けて割とすぐのところにあった。慣れない砂漠で思った以上に短い距離でも疲れたりはしたが、魔物に襲われることなくたどり着けた。その街の名は、マンタイクというらしい。

 

街の中は静かだったが、流石砂漠。街の中に入ったところで暑さは変わらない。そして驚いたことにここにも帝国の騎士が居たことだった。ジュディス曰く、少なくとも前に来た時はいなかったとのこと。

 

ひとまず自由行動になり、日が落ちるあたりで宿屋で待ち合わせることに。飛鳥には考える時間というものは要らないなぁ、なんて思いつつも日陰で過ごす。

 

―ここら辺、全く記憶ないからどうなるのかさっぱりだ……でも、だからと言って気ぃなんて抜いてらんないし……

 

なんてぼうっとしていると。レイヴンがやってきた。どうやらレイヴンも涼みに来たらしい。

 

「よっ、元気?嬢ちゃん」

 

「ん、レイヴン?見ての通り、ダレてるから元気、じゃあないかな」

 

「あら、ダメじゃないの」

 

「うちは元から動くのはそんなに得意じゃないっていうか、嫌いなんですぅ~」

 

なんて他愛もない話をしていたのだが。

 

「で、嬢ちゃん。イエガーの事、知ってったっぽいし、何より記憶も粗方ってことは全部じゃないってことでしょ?」

 

「――……なーんでそう、鋭いのかなぁ……でもま、そんなもんか。そうね、うちはある程度色々知ってる。けど、言えない。何があっても絶対」

 

いきなり、真剣に話出した。多分、こっちが本題なんだろうな、と思いつつ、これはある程度言わなきゃダメな奴だな、とも思った。

 

「!」

 

「最初の記憶がないのも、今は好都合。あったらきっと、うちは今もう死んでるよ。だから、まだ身体が思い出すこと拒否ってる」

 

「嬢ちゃん……?」

 

レイヴンは、何故かゾクゾクした。うすら寒いとでもいえばいいのか。そして、恐怖。初めて、レイヴンは飛鳥の事を怖いと思った。飛鳥本人はその様子だと覚えていないようだが、初めて会った時は、もっと諦めた顔で、生気もなく目に光もない。ただ、言われたことを淡々とこなすだけの感情がない人形。時折感情が戻ったかと思えば発狂するか錯乱する。

 

そんな状況だったが、飛鳥の事を怖いとは思わなかった。頭がおかしい人間を怖いと思わなかったのだ、レイヴンは。しかし、今の飛鳥の事は怖いと思った。この差はなんだ。今のほうが精神的にも落ち着いているし、戦い方だって上達した。もう生気がないなんてこともなかった。

 

なのに、何故。どうして、こうも怖いと思うのか。

 

「うちは死にたい。それは、前も今も変わらない。だけどね、死ねない。まだ、使命があるから。あぁあと。どんなにうちに問い詰めても知ってることは話さないから。誰にも話さない」

 

「その情報の中にドンが不利益を被る事があるかどうかも?」

 

「あぁ、もちろん話せない。力づくで聞き出そうとか、思わないでね?あと、拷問とかも。もう“耐え方”ってのを知ってるから無駄」

 

「嬢ちゃん、本当に嬢ちゃん?」

 

「クス、おかしなこと聞くなぁ……うちはうちやで?まぁ、とっくの昔に“壊れて、狂ってる”。もう、世界に希望とかそういうのもないし。あ、あとね。うちはさっきも言ったけどいろいろと知ってる。だから、一方的に皆の事知ってる。言いふらすとかそんなのあらへんけどな。面倒やし」

 

「!!」

 

その言葉に、レイヴンはわかってしまった。そうか。自分と似ているのだ、と。世界に絶望し、生きる意味が見いだせない。あぁでも。知っていることが何のか、聞き出さねば。

 

「だから、レイヴンが本当はシュヴァーン・オルトレインであり、ダミュロン・アトマイスでもあるってことも知ってる」

 

「!?」

 

驚きの連続で、言葉が紡げないレイヴン。そこまで言っておいて、知っておいて、誰にも言わないらしい。しかし、どこでそんな情報を仕入れてきたのか。

 

「嬢ちゃん、本当に……何者……!?」

 

「さぁ?うちはただの、狂って壊れた、何もできない出来損ないや」

 

その言葉だけが、レイヴンの深いところに突き刺さった。

 

・・・

 

そして、宿屋に集まった皆。いきなりエステルから報酬として換金できる物をもらったが、飛鳥がため息とともに言ったのだ。

 

「自分で決めてたし、フェローに会いに行きたい。でももうわがままにみんなを振り回せない。そう思うのはいいけど、だったらさ。どうしても会いに行きたいなら、頼めばいいじゃんか。改めて」

 

「え?」

 

予想外の言葉に聞き返すエステル。

 

「自分が何故世界の毒なのか。それを知っているであろうフェローに会いに行きたいから、ついてきてくださいって頼めばいい。寄りかかった船でもあるのに、ここでさよなら、とかこっちの目覚めが悪いっての」

 

「で、でも……」

 

「じゃ、うちの個人的な依頼にしようかな。カロル、フェローに会いたいのはうちもだから、同じ目的のエステルも一緒に連れて行ってもいい?」

 

「え、ア、アスカ!?」

 

「うちも、フェローに世界の調和を崩し者って言われてんの。何のことだかサッパリだっつーの。いきなり現れてそんなこと言われて、狙われて。ふざけんなって話よ」

 

嘘ではない。フェローに会いたいというのは。だが、おそらく世界の調和を崩し者というのは、あの黒い魔物をこの世界に呼び寄せたか、召喚してしまったから。新種の魔物を、それもユーリ達では攻撃が通らない魔物。そんな奴を1体ならまだしも、複数現れる原因を作ったのだ。

 

だから、そういわれるのも、仕方のないことではある。だけど、腹が立つ。言われっぱなしで、おまけにその黒い魔物を知っているのなら、ユーリ達でも攻撃が通るようにはならないのか、とか。聞きたいことはある。

 

「優しいですね、アスカは。……ありがとうございます」

 

「や、優しくない。目的が一致してるならわざわざ離れていくことないって言いたかっただけ!んとにも~」

 

―まぁ、まず。エステル1人でなんて行かせたらフェローに会ったとしても殺されるっての。この時点でのフェローは人間嫌いだし、攻撃的だし。

 

先の事を考えつつ、飛鳥はもう1度、ため息をついた。




という事で今回もちょっと短め!

ついにおっさんに問い詰められた飛鳥さん。

ま、そこは譲れない気持ちとユーリ達にはまだ話せない、という確信から飛鳥の粘り勝ち。

飛鳥自身、状況が変わって、先を話さなければいけない状況下になれば話す気ではいます。

が、それまでは絶対に口を割りません。

次回は砂漠の中央部~になります。


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41戦目

仕事しんどすぎぃ……

今回は砂漠中央部~になります。

イベントシーン以外の探索場面は飛ばしますw

入れるとただでさえグダってるのにさらにグダるので。

というわけで、ご了承ください!

ではどうぞ!


・・・

 

あれから準備を整え、ゆっくり宿屋で休息をとり、いざ出発しようとすると。子どもと騎士が何やらもめていた。どうやら子どもたちは親を探しに行くために現在街に出ている「外出禁止令」を破って外に出たらしい。そこでエステルが割って入り、何とか場を丸く収めた。そして、子どもたちに頼まれたのもあり、フェローを探すのも兼ねて子どもたちの親を探すことにしたのだった。

 

そしてついに砂漠に足を踏み入れたユーリ達。そこは想像以上の暑さで、飛鳥も経験なんてしたことがない(そもそも、現実で砂漠が身近にあるなんてほぼないはずである)ため、早くもヘロヘロになっていたが、そこは流石、ポーカーフェイスで乗り切る。一方、レイヴンは暑さには強いようで、先ほどから何回かバク宙を繰り返している。

 

―くっそ暑い……てか、どうするかな……マジ頭回んない……

 

ぼーっとしながら進んでいくと。変に動く何かを見つけた。それはモゾモゾ動くと、いきなりユーリの足を掴む。そして、顔も出した。その何か、はなんと、パティだった。宝探しをしていたらしいが、なぜ砂に埋まってしまっていたのか。なにはともあれ、再びパティを仲間に加え、一緒に行くことになった。

 

そして。しばらく探索を続けていると倒れている夫婦だろう2人がいた。エステルが術を使うと意識が戻ったようで、起き上がる。その後、街であった子どもたちの両親という事が判明し、一緒についてきてもらうことになった。

 

・・・

 

しばらく進むと、声が聞こえる。だが、それはフェローのものではない何か別のモノの声だった。ユーリ達が構えると、空中に何か時空のひずみ、とでも言えばいいのか、そのような何かが現れ、中からエイのような形のコアをゲルのような何か包んだモンスターが出てきた。飛鳥はそのモンスターを見た途端、察する。あぁ、ここだ。と。原作であれ、子のモンスターとの戦闘後、ユーリ達は皆、意識を失って倒れてしまうのだ。

 

原作通りではないことを考えると、意識を失った後何かある可能性がある、というか高いだろう。となれば、飛鳥は意識を失うわけにはいかない。そう思い戦いに挑む。そうなれば、体力消耗の激しい銃を使うのはあまりよくない。だが、チャクラムを使うとなれば動き回ることになる。

 

―……でも、攻撃力の高さ的には銃だ。しゃーない、怠いのはSP消費してるからだし、銃にしよう

 

飛鳥はそう考え、銃を構えた。そして、戦闘開始。どうやらこのモンスターは飛鳥を狙ってくるようだ。しかし、何となくそのような予感をしていたため、ギリギリのところで避ける。擦り傷などなんだ。そのような様子でひたすら迎撃する。

 

そして。辛くも勝利したユーリ達。だが、もう体力を使い果たした後で動けやしない。飛鳥も、動けと言われて動けるほど、体力は残っていなかった。だが、皆のように今すぐ意識を失いそうなほどまでは消耗をしなかった。

 

そう、悪いと思いつつほんの少しだけ、手を抜いたのだ。このモンスターは本来なら飛鳥がおらずとも倒せる相手だから。だから、ほんの少しだけ手を抜かせてもらった。それでもかなりキツイことには変わりはない。

 

そうこうしているうちに皆がバタバタと倒れていく。飛鳥も膝をつく。だが。意地でも倒れまいと深呼吸をし、無理やり呼吸を整える。そして、やはりというべきか、黒い竜型の魔物が現れる。それを飛鳥は銃で狙い撃つ。もう、一発たりとも無駄撃ちをしてるほどの余裕はないのだ。

 

黒い魔物を倒し終えると、フェローだろう魔物が飛んできた。タイミングからして、飛鳥が黒い魔物と戦っているのを見ていたのだろう。そして、飛鳥を見つけるなり問いかける。

 

「貴様ハ、何故抗ウ?」

 

「っ、はは……使命が、あるんよ。なけりゃ、とっくの昔に死んで、るっての……」

 

「使命ダト?」

 

「そ。うちが、世界を。この、世界を救う。そういう、使命。うちみたいな奴でも、世界が、救えるって、いうんなら……そう思って、引き受けた」

 

「………世界ノ調和ヲ崩シ者。先ニ、消ス!!」

 

「あ~……やっぱこうなるのね……」

 

飛鳥は、フェローが攻撃を仕掛けるより早く防護壁を展開し、攻撃を防ぐ。しかし、体力を消耗している今の状態では、かなりまずい。

 

「っぐ……!!」

 

もう一度フェローが攻撃を仕掛ける。だが、一瞬。防護壁の展開が遅れ、飛鳥はモロではないがフェローの攻撃を受け、吹っ飛んだ。流石にもう、立ち上がれない。所詮はただの小娘でしかないのだ。いくら戦闘訓練や実戦経験を積んだとしても。それでも、元は運動が大の苦手で、嫌いな引きこもりであることには変わりない。

 

「げほっごほっ……!!た、はは……やっ、ぱ………世界、に……異物だと、認識されて、る……から、ダメだった……のかなぁ………やっぱり、うちはどこに、いても………居場所なんて……ない、んやな………」

 

飛鳥は薄れゆく意識の中、本音を零し、諦めたように、困ったように、微笑んだ。どうせ聞いているのはフェローだけだろう。それならば別に構わない。ユーリ達に聞かれないのなら。それでいい。彼らに聞かれでもしたら、きっと問い詰められてしまう。いや、例えそうなったとしても決して話すだなんてことは、しないが。でも完璧な嘘だと見抜かれてしまうだろう。

 

だから。話さなくてはいけなくなったのなら。嘘の中に話しても大丈夫な事を混ぜ込んで話す。だって、全部話してもどうせ何も変わらないのだから。今の自分は〝月城飛鳥〟ではない。〝アスカ・ツキシロ〟だ。そして、何より初めてここに来た時の記憶がないから。だから、今の自分が本当の自分であるかどうかさえ分からない。

 

―あぁ……もう、諦めちゃって、いいかな―――?




ということで、派手に飛鳥には吹っ飛んでもらいました(笑)

まぁ精神的に病んでいるといっても過言ではないので、何かしら無理だと悟れるような出来事があれば、ネガティブになります。

ま、それがいわゆるアレ(ネタバレありのプロフィールのある項目にかいてあります)ということになるわけです。

次回は目覚めるところ~になります。


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42戦目

更新が遅くなりました。

仕事がしんどいっす……

今回は街で目覚める所~になります。


まだまだ長い道のりですがお付き合いいただければと思います。


・・・

 

気が付くと、飛鳥は黒い空間にいた。声の主が来るまでの、あの黒い空間だ。そして気づいた。これは、ただの夢じゃない。夢だとわかっていても、条件を満たさなければ目覚めることのできない空間だと。

 

(あぁ、またか。今度は、何?)

 

飛鳥は、呟いた。すると、飛鳥の目の前に、もう1人の飛鳥が現れる。この飛鳥は、何者だろうか。いや、今現れたという事は今回の目覚める条件にきっと関わっているのだろう。

 

(もう1人のうち……アスカ・ツキシロ?)

 

―そうだよ。もう1人のアンタ。もうそろそろ、思い出してもいいんじゃない?

 

(………初めての、記憶?)

 

―そう!いつまでたっても思い出そうとしないから。だから、思い出させてあげる!

 

(頼んでないんやけど)

 

―クスクス……その強気、記憶が戻った後でも、続くかなぁ?

 

なんて、もう1人の飛鳥は嗤う。そして言い終えると同時に、頭が割れそうな程の激痛が走る。これまでの痛みとは比べ物にならない。痛い。痛い痛い痛い痛い!!!!

 

(ぃっ……!!)

 

飛鳥は、その場に崩れ落ちた。流石に意識を保っていられるほどの痛みではなかった。自分の目の前に倒れている飛鳥を見て、もう1人の飛鳥は、傍に座って、語り掛けるように話し出した。

 

―あんたは、気づくかな。うちも、あんたの一部だってこと。ねぇ、あんたは強くなったんでしょ?ならさ、こんな所でリタイアなんて、しないんでしょ?だって、あんたは諦めは悪いんだから。それに、知ってるんでしょ。ユーリ達が、あんたのことを受け入れるなんて。ねぇ?必死に戦ってる姿は皆知ってるんだから。先を話すことはもちろんできないやろ。でも、自分の気持ちを吐露するくらい、赦せよ。

 

苦痛に歪む、倒れている飛鳥を撫でる。そして、空なんてこの空間にはないのに、上を見上げた。

 

・・・

 

ユーリは、ふと、意識が戻って目覚める。すると、そこは宿屋らしき部屋の中で、自分たちはベッドに寝かされていた。体を起こしてみるとまだ若干重いが、動く分には問題ないだろう。外に出てみると、既に目覚めていたパティ、エステル、ジュディスが居た。彼女らも大丈夫のようだ。気を失う前に見た魔物の事を聞いてみたが、誰も見ていないようだった。そして、恐らく。

 

あの、聞こえた声は飛鳥だろう。「世界に異物と認識されている自分には、どこにいても、居場所がない」と、そう言っていた。どうして、そのようなことを言ったのかまではわからない。だが、確実に飛鳥は、何かを抱えているし、その何かを話してはくれない。それに飛鳥は。

 

色々と状況を整理する必要があるようだ。ユーリがココがどこかを訪ねるとレイヴンが調べに行っているとのことで、ほどなくして帰ってきた。そして、ラピードも一緒だ。ラピードはユーリを見つけるなり飛びついてじゃれついてきた。

 

レイヴンの話によるとココがヨームゲンらしい。どうやら1000年たった今でも存在していたらしい。とにかく、澄明の刻晶(キュアノシエル)を届ける街で間違いはないようなので、箱を見せて聞き込みを行う。ユーリは飛鳥がまだ起きないことに気にはなったが、まだ寝かせておこうという事になり、先に澄明の刻晶(キュアノシエル)について調べていると。ユイファンという女性がロンチーという恋人が持っていた箱だという。そして、その箱のカギも持っていた。

 

開けてみると、灰色のしずく型をした結晶が出てきた。割と大きく、エステルの手よりも随分と大きい。どうやらこの結晶が賢人(さかびと)様が言う、結界を作る材料だという。その賢人(さかびと)様はクリティア族の者らしい。話を聞きがてら澄明の刻晶(キュアノシエル)を届けることになった。

 

・・・

 

澄明の刻晶(キュアノシエル)を届ける前に飛鳥の様子を見に行こうという事で宿屋に戻ったユーリ達。すると、飛鳥は起きていた。だが。様子がおかしい。目は伏せられ、起きた状態から、微動だにしない。そこでユーリは思い出した。飛鳥は横になって寝ると、寝付けない、という事に。

 

「お、アスカ!目ぇ覚めたのか。大丈夫か?」

 

ひとまず、声をかけてみる。すると、飛鳥はユーリ達の方を見た。だが、その目に光はなかった。もしかして、まだ、夢うつつなのだろうか。

 

「アスカ!大丈夫です?まだ、顔色が良くないです……もう少し、休みますか?」

 

エステルの言葉に少し、反応した。そして、すぐ俯いた。だが、次に顔を上げた時、飛鳥は目に光が戻っていた。

 

「ん、ううん。大丈夫。まだ、戻るわけないって高をくくってた、“一番最初”の記憶が戻って、少し混乱してた。でもね、大丈夫。今ならもう“受け入れられる”から」

 

そう言った飛鳥の顔はどこか、寂しそうで。どこか、独りで。

 

「全部、思い出したよ。うちはやっぱり“何もできない出来損ない”だって再認識した。どんなに鍛えたって、経験を積んだって、ダメなんだって。だって、元がダメなんだもん。運動嫌いで、勉強嫌いの引きこもり。だから、そんな奴がどんなに鍛えようが、経験を積もうが、ダメだって。ユーリ達とは、違うから」

 

「おい、何言って――「だから」――?」

 

「もう、いいんだ。うちは。だから、だからこそ、全力で使命を果たすよ。もう傷つくのは慣れてる。うちが傷つくだけで済むならそれでいい。大丈夫、『守る』から。“ここ(テルカ・リュミレース)”じゃ、うちは〝アスカ・ツキシロ〟だから。だから、“あっち(現実世界)”の〝うち(月城飛鳥)〟は要らない。それに、きっともう、“あっち(現実世界)”には帰れないし、仮に帰れたとしても、〝うち(アスカ・ツキシロ)〟は、帰らないから」

 

途中でユーリの言葉を遮ってまで言った飛鳥は、今までとどこか違った。言われた言葉もよくわからないことだらけだ。でも、飛鳥が、記憶をすべて取り戻し、何かを決めたことはわかる。

 

「あんた、何言ってんのよ。意味わかんない」

 

「まだ、話せないけどさ。いずれ、話せると思うから。だから、その時に、わかるよ、今うちが言った言葉の意味。ま、そしたらきっと皆、怒ると思うけどね。――クス、こんなわけわかんない話してごめんね。もう、大丈夫やから、行こ!」

 

そう言った飛鳥は、どこか、大人で。どこか、儚げで。でも、芯は強く、強くある。受け入れられるということは、昔の自分を、という意味だろうか。

 

「無茶すんなよ。お前、ただでさえ、最近無茶しっぱなしなんだからな。あぁ、あと!」

 

急にビシッと指差しをされ、驚く飛鳥。もしかして、ユーリのほっとけない病のスイッチが完璧に入っちゃったか、なんて。

 

「お前に、居場所はちゃんとあるって思い知らせてやるからな!それでも、自分に居場所がないだとかなんだと抜かすんなら、作ってやるから覚悟しとけよ!!」

 

「それ、は――」

 

あぁ、やっぱ敵わないなぁ、なんて。

 

 

その時、飛鳥はへにゃっと笑って言った。

 

「楽しみに、してる」

 

と。

 

・・・

 

その後、飛鳥にも事情を話し、全員で揃って賢人(さかびと)様の家に向かった。そしていざ家の中に入ってみると。家の中にいたのはデュークだった。だが、此処にいるという事は賢人(さかびと)というのは彼の事だろう。ユーリはデュークに澄明の刻晶(キュアノシエル)を渡した。

 

そこで、リタが問いかける。どうやって魔核(コア)でないものを使って魔導器(ブラスティア)を作るのだ、と。そして。この澄明の刻晶(キュアノシエル)聖核(アパティア)というエアルの塊で魔核(コア)のように術式が組まれていないだけだという。

 

その言葉を聞き、飛鳥はピンときた。どうりで見たことがある形で大きさだなぁ、と思ったはずである。聖核(アパティア)だったのだ。そのことを思い出したところで、デュークとばっちり目が合った。やめてほしい。

 

デュークは、聖核(アパティア)を自身の剣でエアルに還してしまった。自分にも、必要がないモノだと。どうにも、賢人(さかびと)はとうに死んでいるとのこと。だが、だからと言って壊すことはない、とユーリは言うが、ここは悠久の平穏が約束された土地なのだそう。

 

そして。フェローの名を出すと、デュークは知っているようで、エステルが自分はフェローに忌まわしき毒だと言われたのだ、と。すると、デュークは教えてくれた。

 

「この世界には始祖の隷長(エンテレケイア)が忌み嫌う力の使い手がいる」

 

「それが、わたし……?」

 

「その力の使い手を満月の子という」

 

「……満月の子って伝承の……もしかして……始祖の隷長(エンテレケイア)っていうのはフェローのこと、ですか……?」

 

「その通りだ」

 

「どうして始祖の隷長(エンテレケイア)はわたしを……満月の子を嫌うのです?始祖の隷長(エンテレケイア)が忌み嫌う満月の子の力って何のことですか?」

 

「真意は始祖の隷長(エンテレケイア)本人の心の内。始祖の隷長(エンテレケイア)に直接聞くしか、それを知る方法はない」

 

ということはやはりフェローに直接会って聞かなくてはいけないようだ。しかし、デュークはフェローに会っても消されるだけだからやめろ、という。だがそれだけでやめれない。

 

「……アスカと言ったか。貴様の目的は達したのか」

 

「まぁね。フェロー曰く、世界の調和を崩し者らしいけどね。まぁ、あの黒い魔物この世界に呼んだんだからそういわれてもおかしくはないわな」

 

「「「!」」」

 

「ほう」

 

「だってうちは、“ここ(テルカ・リュミレース)”の住人じゃない。“あっち(現実世界)”の住人やもん。こればっかりは、覆らない」

 

「………己が咎をわかっているのか」

 

「当たり前でしょ。放っておいたら世界を滅ぼしかねない魔物をこの世界に呼んでるんだ。うちいがいの攻撃が効くなら話はまた別だけどね。残念なことに、うち以外の攻撃が効かないときた。でも、うちは他の人と変わらないはずや。まぁエネルギー変換能力があるけど、それを除けばただの小娘や」

 

なんて言った飛鳥はやれやれ、と言ったような感じだ。どうして自分が原因だと言えるのか。それに、ここの住人だとかあっちの住人だとか、何を指しているのかがさっぱりだ。

 

「咎って……アスカちゃんが?なんだってんのよ」

 

「だから言ってるでしょ。使命を果たすべく、ここ(テルカ・リュミレース)に来たのはいいけど、世界の修正力だかなんだか知らないけど、うちを消すためだけにあの黒い魔物がここ(テルカ・リュミレース)に召喚されてるってこと。うち以外、狙わないならまだいい。攻撃が効くならまだいい。でも、違うやろ。狙いはうちであっても、うちの近くにいれば、アイツらは襲ってくるし、うちの攻撃以外、効かないし」

 

「だから、なんだっていうのよ」

 

「これだけ言ってもわかんない?あの黒い魔物は、うちを消すためだけに世界の修正力とやらが、送り込んだ奴ってこと。つまりね、うちが居なくなればあの黒い魔物も消えるってこと。まぁ、使命を果たさなきゃなんないから、消されるわけにはいかないんだけど」

 

さらりとそんなことを言う飛鳥はどこか落ち着いていて。自らを咎人を称する理由は判明した。だが、それでも飛鳥は何一つ悪いことはしていないではないか。ただ、いるだけではないか。

 

「貴様……」

 

「あぁ、そうさ。うちは、生きてるだけで罪人だ。生きてるだけで、罪だ。だからうちは咎人だ」

 

そんなバカな。なんだっていうのだ。ただ飛鳥は必死に生きてきただけじゃないか。なのに、生きているだけで罪だ?ふざけるにもほどがあるだろう。何故。どうして。

 

「クスクス、あぁーあ。まだ言う気なんてなかったのになぁ……まぁ、そういうわけで」

 

「その使命って何なのよ」

 

「言わないよ。誰が言うかよ。大丈夫、すぐに果たせるもんちゃうし」

 

飛鳥は、どこかおかしい。でも、これが本来の彼女なのだろう。すべての記憶が戻ったのだから。だが、どこか違和感。それに、どうして、今ここでこの話をしたのだろう。デュークが居たからではないだろうし。

 

「大丈夫、その時がきたらわかる。――ね?」

 

飛鳥は、言い聞かせるように言う。デュークも、何も言わないところを見ると、飛鳥のいう咎はそれで間違いなさそうだ。しかし、飛鳥は何を背負っているというのだ。まだ教えてはくれないだろう。

 

飛鳥はこんな風に話したとしても、核心は話さない。いつきいても、はぐらかされる。いつも、いつも。抱えているくせに、何も話そうとしない。

 

―さぁ、どうする?ま、決まってるけどね。未来を知ってることは話さない。これだけは何があったとしても。だって、未来が変わっちゃったら大変だし。

 

飛鳥は、もう一度考える。自分の立ち位置を。どうするのが最善か。




というわけで、少し暴露しちゃいました(笑)

まぁ、飛鳥さんも随分精神的にきちゃってますので仕方ないね!

一番最初の記憶諸々全部戻りましたよ、ええ。

もう1人の飛鳥さんは、フツーに自分の心のそこで考えてた色々が形になったってだけのもの。

まぁ精神世界とも呼べる夢の世界でなら会えるかな的な存在。決して二重人格ではない。


次回はユーリとレイヴンがお話する所~になります。


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43戦目

このまま明日が来なければいいのに……


今回はレイヴンとユーリが話をしているところ~です。





・・・

 

レイヴンは街の衷心より少し離れた場所にいた。そこへ、ユーリがやってくる。ユーリは先にノードポリカに行ってもいい、という事を伝えに来たようだ。自分たちの都合のせいで新月を過ぎてしまい、手紙を渡せなくなったらいけないだろう、と。

 

だが、レイヴンはまだ新月まで時間があるから大丈夫だと告げる。さらに、1人でさばくと洞窟を抜けるのも嫌だ、途中で殺されて手紙が届かないと、凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)の信頼にも関わるのではないか、と。その言葉にユーリはその時は骨と書状をきちんと拾う、と返していたが。

 

 

そんなこんなでひとまずは仲間のもとを回るユーリだった。そのころ、飛鳥はというと。レイヴンにつかまっていた。木陰で休もうかと思って来てみれば、レイヴンが居たのだ。

 

「よぉ、アスカちゃん」

 

「ん、あ、レイヴン」

 

「――記憶、戻ったのよね?」

 

「うん。戻ったよ、全部ね」

 

「大丈夫?」

 

「あの頃の自分が、ダメになってたなって事はわかる。でも、今は大丈夫。もう、あんなことには、ならないよ。まぁ、〝トリガー〟を引いちゃったら、ダメかもしれないけど」

 

「……〝トリガー〟?」

 

「うちは、一般人以下の出来損ないだから。まだ、本当の意味で過去を受け入れて前には進めない。本当はもう、器には入りきらない。だけど、入りきらないのに放っておいたらまたアレになっちゃうから、器を広げると同時に、入りきらない部分は、まとめて別の器に入れておいとくの。いつか、本当の器に入れられるように」

 

飛鳥の言葉に何も言えない。自分を、偽っている、ということだろうか。記憶がすべて戻ったというなら、ダングレストでの日々も思い出したはずだ。だけど、それを思い出しても、前のように錯乱しない。自分に暗示をかけているのだろうか?

 

「大丈夫、もううちは、“帰れない”。二度と、ね。だから、“この世界(テルカ・リュミレース)”で生きるしかない」

 

「帰れない?」

 

「うん。自分が生まれた場所ってこと。うちが、本当に生まれ育った場所。そこには、もう二度と帰れないんだ。でも、いいの。だって、あそこに居てても、暴力と悪口と存在否定。居場所なんてなかったから。どうせ、妹もいる。それならあの人達には十分でしょ。うちよりも、ずっとずっと優秀で聞き分けの良い子がいるんだから。うちを散々、要らない子って言ってたんだ。居なくなって清々してるよ」

 

「!!」

 

本気で、もういいと思っているのだろう。でなければ、微笑みながら、話す内容ではない。生みの親に存在否定をされていた。どういう経緯でダングレストに来たのかはわからないが、元の場所にいてても、そんな扱いをうけるなら。

 

「アスカちゃん君は――「大丈夫」」

 

「だって、あの人達はもういないから。何もされないし言われない。だったらそれでいいんだ。どっちみち、どこにいても、うちの居場所なんてない。だけど、いいんだ、それで。それに、使命を果たすまでだろうしね、この世界にいてるのなんて。それが終わったら、あとは消えるだけ。あぁ、その時はうちの記憶は全部消してほしいなぁ。うちなんて、本当は居ない奴だし」

 

「アスカちゃん!!」

 

レイヴンは、飛鳥の両肩を持って揺さぶった。飛鳥が、本気でどこかに行ってしまいそうだったから。本気で、消えてしまいそうだったから。飛鳥は、本気で自分の存在がどうでもいいらしい。使命を、果たさなければいけないらしいが、それが終われば。

 

あぁ、本当に。何を背負っているというのか。優しい子なのに。何を背負って、抱えているのだ。核心はわからないし、聞いても答えてくれない。こうやって、無意識に限界だ、助けてくれってサインをだしているのに。

 

「………大丈夫、壊れないよ。だって、とっくに壊れてるんだもん。これ以上、壊れないよ。治せもしないだろうけどね。クス、わかってるでしょ。うちが、これだけ面倒な奴だって。だから気にしなくていいんだよ。とっくに“堕ちてる”から」

 

なんて、微笑む飛鳥。こういう時、彼女の名前を“呼んで”いたのが、ドンだった。ドンは何て言ってたか。あぁ、そうだ。

 

「ねぇ、“飛鳥”ちゃん」

 

「!!」

 

飛鳥は、目を見開いた。おかしい。どうして、レイヴンまで知ってるの?うちは、月城飛鳥、って言っていないのに。アスカ・ツキシロって名乗ったのに。あぁ。そういえば、ユーリも、知っていたような気がする。どうしてだ。この世界じゃアスカ・ツキシロでいなくてはならないのだ。月城飛鳥、ではダメなんだ。

 

レイヴンは不思議そうに自身を見つめる飛鳥に、あぁ、と納得した。アスカ、ではないのだと。本当は飛鳥という名前なのだ、と。理由があってアスカと名乗っている。だからこそ、飛鳥という本当の名前に引っ張られるのだ。

 

1人納得したレイヴンはきょとんとしている飛鳥の頭をポンポンと撫でた。その際に、体をビクッと震わせたのは、無視した。

 

・・・

 

次の日、全員が街の入り口に集まった。これからどうするのか、という事だった。全員の目的を聞く中、ユーリは飛鳥に聞いた。記憶が戻った今、何がしたいのか。

 

「お前は?」

 

「ん、うち?……せやな、うちは皆についていくよ。やらなきゃいけない事はあるけどやりたい事はないし」

 

「お前の言う使命とやらは?」

 

「それは皆と一緒に行動することが一番の近道だから別に1人でもいいとは思うけど。色々方法はあるし。でも、その………皆がいいなら一緒に行動させてもらいたいな、なんて……」

 

「素直じゃねえな。言えばいいだろ。一緒に行きたきゃ行きたいって」

 

「!……いつか、ね」

 

なんていう飛鳥はどこか嬉しそうで。ともかく、全員の意見をまとめると、ノードポリカに行く、でいいようだ。というわけで、そのためにもマンタイクに戻ることになった。

 

・・・

 

道中特に何もなく戻ってきたユーリ達は、戻ってくるなりキュモールが住民に理不尽を働いているところに出くわす。そのため、理不尽事態をやめさせれない(表立って騎士団に楯突くと、いろいろと面倒)ため、カロルに協力してもらい、その場を後にした。

 

そして、その日の夜。皆で話し合う。その中で、飛鳥は。

 

「……まぁ、大方エステルの魔導器(ブラスティア)を使わずに術発動できる力の事やろうな。エステルがフェローに言われた、忌まわしき毒って意味を考えるなら、始祖の隷長(エンテレケイア)の忌み嫌う力を持っているから。で、それに当てはまるものって言ったらそれやろうし」

 

「!」

 

「それでも、始祖の隷長(エンテレケイア)に会って話を聞くほうがいいやろ。うちもうちで聞きたいことはあるっちゃあるし」

 

「聞きたいこと?」

 

「あんの黒い魔物どもに、皆の攻撃が通るようになる方法ないかってね。フェローは黒い魔物の事知ってたっぽいし。それなら始祖の隷長(エンテレケイア)に聞いたら、わかるかなーってね」

 

「なるほど」

 

なんて話をし、就寝する。飛鳥はおぼろげながらも、思い出したことがあるため、就寝したフリ、をしていたが。そして、ユーリが抜け出すのを見届けてから、飛鳥も後をつけるように、出ていく。

 

そして、ユーリとキュモールの会話を近くの木の陰に隠れて見、何もないことを確認する。そして、その後のフレンとユーリの会話も。

 

(あぁ、何もない。よかった)

 

安心して見届ける。そして、ユーリが戻るのを見届けたフレンは。

 

「……もういいよ。出てきたらどうだい?」

 

「!」

 

どうやら今回はフレンにバレていたらしい。バレているのなら仕方ない。そう思って姿を見せる飛鳥。

 

「うちに何か用?隊長さん」

 

「……変わったね、前会った時よりも」

 

「!……それは多分ね、思い出したからだよ。全部」

 

「!」

 

フレンは驚いた。前会った時よりも、ずっと落ち着いた雰囲気で。何より目つきが変わった。どこか、光のない目だったのが、今はどうだ。覚悟を決めた目だ。

 

「騎士団にいたのは事実。でも、違う部署にいて。でも、理由は知らないけどナイレン隊長と一緒に少しだけ話して。そのあとすぐに、やめたんだ、騎士団。うちは、騎士になれるような、そんな資格ないから。あとは精神的に病んでたのが原因かな」

 

「!!………君、は……チャクラムを使う前は……槍使い、だったかい?」

 

「!……うん」

 

「そうか。髪型も違ったし、言葉使いも違っていたからわからなかった。そうか。君はシロノだったか」

 

「………うん」

 

そうだ。騎士団にいたころ、何故か偽名だった。確か、シロノ・クリム。そんな名前だったはずだ。きっと、自分の名前で呼ばれたくなかったのだろう。だってそうだ。今よりずっと病んでることには変わりない。だけど、今なら。一応コントロールが効く。だから、何とかなってる。だけど、あの頃は違う。まだ、コントロールも何もできなかった。

 

「変わったね」

 

「まーね。色々、覚悟決めた。うちはアスカ・ツキシロ。今はギルド凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)の一員や。改めて、よろしく」

 

「あぁ、よろしく」

 

改めて、フレンと話した飛鳥も、そのまま、皆のところへと戻った。その後、解放された街はお祭り状態だった。そんな中。ユーリはフレンのもとへと向かった。

 

・・・

 

「立ってないで座ったらどうだ」

 

その言葉で、ユーリは、フレンと背中合わせで座る。

 

「話があんだろ」

 

「……なぜキュモールを殺した。人が人を裁くことなど許されない。法によって裁かれるべきなんだ!」

 

「なら法はキュモールを裁けたっていうのか!?ラゴウを裁けなかった法が?冗談言うな」

 

「ユーリ、君は……」

 

ユーリは、フレンの前へ立つ。

 

「いつだって、法は権力を握るやつの味方じゃねえか」

 

「だからと言って、個人の感覚で善悪を決め人が人を裁いていいはずがない!法が間違っているなら、まずは法を正すことが大切だ。そのために、僕は、今も騎士団にいるんだぞ!」

 

「あいつらが今死んで救われたやつがいるのも事実だ。おまえは助かった命に、いつか法を正すから、今は我慢して死ねって言うのか!」

 

「そうは言わない!」

 

フレンは、ユーリの後ろに立つ。自然と、向かい合わせになる2人。

 

「いるんだよ、世の中には。死ぬまで人を傷つける悪党が。そんな悪党に弱い連中は一方的に虐げられるだけだ。下町の連中がそうだったろ」

 

「それでもユーリのやり方は間違っている。そうやって、君の価値観だけで、悪人すべてを裁くつもりか。それはもう罪人(つみびと)の行いだ」

 

「わかってるさ。わかった上で、選んだ。人殺しは罪だ」

 

「わかっていながら、君は手を汚す道を選ぶのか」

 

「選ぶんじゃねえ。もう選んだんだよ」

 

「それが、君のやり方か」

 

「腹を決めた、と言ったよな」

 

「ああ。でも、その意味を正しく理解できていなかったみたいだ……騎士として、君の罪を見過ごすことはできない」

 

そこで、フレンが剣を握り、力を籠める。その時だった。

 

「隊長、こちらでしたか」

 

ソディアがフレンをみつけ、声をかけてきた。どうやら話があるらしい。

 

「どうした?」

 

「ノードポリカの封鎖、完了しました。それと、魔狩(マガ)りの(ツルギ)がどうやら動いているようです。急ぎ、ノードポリカへ」

 

「………」

 

「隊長?」

 

「わかった」

 

「はい」

 

そこでソディアは去っていく。それを見届け、フレンは後ろを振り返る。だがそこにはユーリの姿はなかった。

 

「ユーリ、君のことは誰よりも知っている。あえて罪人(つみびと)の道を選ぶというのなら……」

 

・・・

 

フレンの傍を離れたユーリはまだ湖の傍にいた。そこでエステルとラピードに遭遇する。どうやら、フレンとのやり取りを聞いていたらしかった。そして、そんなエステルに怖いなら、フレンと帰れ、という。だが。

 

「……帰りません」

 

「おまえ」

 

「……ユーリのやったことは法を犯しています。でもわたし、わからないんです。ユーリのやったことで救われた人も確かにいるのだから……」

 

「いつか、お前にも刃を向けるかもしれないぜ」

 

「ユーリは意味もなくそんなことをする人じゃない。もし、ユーリがわたしに刃を向けるなら、きっとわたしが悪いんです」

 

真っ直ぐ、ユーリをみて言うエステル。本気でそう思っているようだ。

 

「………。フレンと帰るなら、今しかねえぞ。急いでるみたいだったし」

 

「わたしはユーリと旅を続けます。続けたいんです。ユーリと旅をしているとわたしも見つかる気がするんです。わたしの、選ぶ道が……だから……」

 

エステルはそこで言葉を切って、握手を求めるエステル。これからもよろしくって意味だそうだ。その手を、ユーリは少し悩みつつも

 

「……ありがとな」

 

そう言って差し出された手を取った。

 

・・・

 

その後、宿屋で一晩過ごし、改めてノードポリカに行くことになった。しかし、騎士団が何やら動いているという事で、慎重に、という事も頭に入れてだ。そして、まずはカドスの喉笛に向かうユーリ達。しかし、途中で市場の幸福(ギルド・ド・マルシェ)の人に会ったが、どうもその人も通れなかったらしい。通常は免状を持っていれば自由に国内を行き来できる、というにも関わらずだ。

 

ノードポリカへ続く道はすべて封鎖されているようだ。しかし、ここで引き返すわけにもいかず、ひとまずそのカドスの喉笛へ行ってみることになった。

 

(あぁ、もうすぐ、か……)

 

アスカは、先の事を考えていた。確か、ノードポリカでべリウスは……。そこまで考えてから何が起きるかはわからないが、高確率で原作と変わってしまっているだろうことは予測できた。もしかしたら、ここから先もすでにそうかもしれない。そう、カドスの喉笛の入り口を見て思う飛鳥だった。




色々暴露しちゃってますが、飛鳥的には持ち直しているような感じです。

多分また覚醒すると思われる。

次はカドスの喉笛~になります。


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44戦目

いえーい!続けて投稿!

カドスの喉笛~になります。


・・・

 

カドスの喉笛に来たユーリ達。しかし、騎士団だけでなく、飼いならされた魔物もいる。ユーリはその光景に、どこかフレン隊らしくない、と感じていた。確かにそうかもしれない。アスカもそう感じた。

 

そしてどうするか考えていると。レイヴンが機転を利かせ、魔物をつないでいる拘束具を狙って壊す。驚いた魔物は暴れ始めた。その隙に強行突破するユーリ達。だが、少し遅れて走っていたレイヴンとパティに魔物が襲い掛かる。そこをアスカは

 

「っ!!」

 

パティを片手に抱え、レイヴンに対し、防護壁を張った。その瞬間、防護壁に何か当たる音。そこでパティが煙幕を出す。それに乗じて、その場を離脱する。

 

「アスカ……助かったのじゃ」

 

「アスカちゃん、ナイス!」

 

「怪我無くて良かった」

 

そこで、思う。どうしてか、体が動いたこと。そして、記憶が戻る前よりも、ずっとずっと体が軽いこと。何故だかわからないだけど、動けるならそれでいい。

 

ひとまず追ってはこないらしい。時間はあまりないが、エアルクレーネの調査もあるとのことで移動するユーリ達。しかしエアルクレーネは落ち着いている。あそこで何故、大量のエアルが噴出したのか。

 

聖核(アパティア)があったから、でしょーに。まぁ、口出すとこじゃあないわな。それより――)

 

アスカは、ラピードとほぼ同時に追っ手の陰に気づいた。そのため、皆に移動を促した。そして、どうにか追っ手を巻きつつ、入り口付近まで戻ってくると。ルブラン達が迫ってきた。後ろも挟まれた。だが、レイヴンの一声でルブラン達は全員気を付けをして立ち尽くす。その間を通り、事なきを得た。

 

そして、ノードポリカに無事についたユーリ達は中に入ってみる。だが、中はあまり変わらない。むしろ、前に来た時よりも静かだった。今夜が新月という事もあり、ひとまずは町中を見て回ることになった。

 

・・・

 

夜になり、行動を開始する。しかし、扉の前にいるナッツにレイヴン以外は止められる。信用できない、という点で。だがそこで中から女性のような声がし、中に入れてもらえるようになった。

 

そして、中に入ってみると。そこは真っ暗だ。しかし、すぐに明るくなり、現れたのは、キツネに似た大型の魔物だった。しかし、ジュディスは彼女がそうだと告げる。

 

「いかにも。わらわがノードポリカの首領(ドゥーチェ)戦士の殿堂(パレストラーレ)を束ねるべリウスじゃ」

 

「あなたも人の言葉を話せるのですね」

 

「先刻そなたらは、フェローに会うておろう。なれば、言の葉を操るわらわとてさほど珍しくもあるまいて」

 

「あんた、始祖の隷長(エンテレケイア)だな?」

 

「左様じゃ」

 

ユーリの問いにも気を悪くした様子もなく答える。

 

「じゃ、じゃあ、この街を作った古い一族ってのは……」

 

べリウスは自分だと告げる。そして、人魔戦争に参加したことも、それが始祖の隷長(エンテレケイア)としての務めだったからだという事も。黒幕はないという事も。話してくれた。そして人魔戦争のころからドンと付き合いがあるという事も。

 

そして、フェローとの仲立ちをしてほしい、書状に書いてあったと皆に伝えつつ、無下にもできないという事で一応承諾してくれた。そして、エステルと飛鳥を見て言った。

 

「のう、満月の子よ。そして、異界の子よ」

 

「わかるの?エステルが満月の子だって……」

 

「!」

 

「我ら始祖の隷長(エンテレケイア)は満月の子を感じることが出来るのじゃ」

 

「エステリーゼといいます。満月の子とはいったい何なのですか?わたし、フェローに忌まわしき毒と言われました。あれはどういう意味なんですか?」

 

「ふむ。それを知ったところでそなたの運命が変わるかはわからぬが……」

 

「べリウス、その事なのだけど……」

 

「ジュディス……?」

 

「ふむ。何かあるというのか?」

 

「フェローは……」

 

「やっぱ、わかるんやな、始祖の隷長(エンテレケイア)は」

 

「アスカ……?」

 

「なら、知ってるのかな。あの魔物――世界の修正力とやらに攻撃が通る方法」

 

「ないわけではない。だが、そなた――……そうか。そなたは光の者か。あの者らとは正反対の。なるほど」

 

「えっと……?」

 

「そなたの力を付加するのじゃ。そなたは使命を与えられし者。そなたの力さえあれば、奴らにも攻撃が通るじゃろうて」

 

「………そっか。ありがとう、試してみる」

 

飛鳥は微笑んだ。だが、その微笑みはどこか悲しそうで。また一つ、覚悟を決めたようだった。そこで、何かが倒れる音がする。そしてそのすぐ後に魔狩(マガ)りの(ツルギ)の連中が入ってきた。

 

どうやら、始祖の隷長(エンテレケイア)を魔物を操る悪の根源だと思っているようだった。止める間もなく、べリウスに襲い掛かる魔狩(マガ)りの(ツルギ)の連中。

 

べリウスから、ナッツの加勢に行くように頼まれ、闘技場方面へ向かう。そして、ナンを見つける。やめるようにカロルが言うが、どうにもこれはユニオン直々のお願いらしい。ひとまず狙われているナッツを助け、エステルが治癒術で怪我を治す。

 

そこで、上からべリウスとクリント、ティソンが落ちてきた。ボロボロなわりに、立ち上がるだけの力はまだあるらしい。しかし、べリウスも酷い怪我だ。しかし、そこでクリントが襲い掛かるが、飛鳥が足止めし、ティソンはジュディスが足止めをする。

 

その間にエステルはべリウスにかけより、怪我を治そうとする。

 

「ならぬ、そなたの力は……」

 

「ダメ!!!エステル!!!!」

 

「ダメ!」

 

べリウスと飛鳥、ジュディスが止める。しかし、術が発動しなくとも、魔法陣が出た時点で既にダメらしい。あたりが光り、べリウスが苦しみだす。そして、飛鳥にも異変が起こる。あの心臓の痛みだ。自分に術は使われていないのに。どうして。

 

「ぐぅっ……!!」

 

「アスカ!?」

 

「大丈夫、や……!!」

 

心臓を抑えた。だがそれもすぐにやめ、銃を構えた。肩が上下するほど、息が荒い。しかし、それでも飛鳥はべリウスと戦うべく、武器を構えた。

 

(痛い。でも、この痛みは、あの頃の痛みに比べたら、ずっとずっとマシだ……!!)

 

そしてべリウスとの戦闘が始まる。抑えられぬとあって、自分を殺せと言っている。その通りにしたくない。したくはないが、いかんせん、力が違いすぎる。そして攻撃するたびにそれでいい、とかなんとか言っているあたり何とも言えない気持ちになる。

 

「っ……!!」

 

飛鳥も、銃だけでない。チャクラムも足技も、使っていた。そして、仲間が危なくなれば、防護壁を使う。前よりも使いこなせている。だけど、それでも足りない。まだ、エステルの力を抑えるには。

 

すると、そこでユーリとエステルが吹っ飛ばされ、治癒術を発動できない。そんなときに追い打ちだ。防護壁を張ると同時、飛鳥も“治癒術を発動した”。

 

「「!?」」

 

「ぐっ……もう、2人して、吹っ飛ばされる、とか、やめてよね……」

 

なんて言う飛鳥は立っているのもやっとな状態で。それでも、諦めず、前を向いている。ユーリとエステルも、不思議に思いつつも立ち上がり戦った。そして、ついに倒すことができた。できてしまった。

 

座り込むエステルにべリウスは気に病むな、と言う。そしてナッツにも、ユーリ達を恨むな、と。

 

「異界の子よ、世界を、頼んだぞ」

 

「ははっ……わかってるよ、だってそれがうちの使命やもん」

 

力なく笑った飛鳥は、その場に座り込む。さすがに限界だった。そして、べリウスは息を引き取ると同時に、聖核(アパティア)に姿を変えた。

 

―わらわの魂蒼穹の水玉(キュアノシエル)をわが友、ドン・ホワイトホースに

 

そう言い残し、完全に声は消えてしまった。そこで、クリントが起き上がり、蒼穹の水玉(キュアノシエル)をよこせという。そして、そのすぐ後に騎士団も来る。だが、飛鳥は立てずにいた。

 

立たなくちゃいけないのに。体が、動かない。そこで咳き込むと、吐血。そりゃそうだ。あんだけ技使って、おまけに治癒術。そりゃ無理だ。でも、ここで捕まるわけにも、行かない。そう思って、無理やり立つが、すぐに座り込みそうになる。そこを、ジュディスが助けてくれる。

 

「肩を貸すわ」

 

「……ありがと」

 

小さな声でそういい、なんとか闘技場を出た。しかし、そこでも騎士がいる。どうやら完全に制圧されているようだ。それでも海に逃げることに。ここで止まれないのだ。ソディアとウィチルも追ってくる。だが、それをかわし、先に進んだ。

 

しかし、その先にいたのはフレンだ。フレンは、聖核(アパティア)を渡せという。そして、武器を握る。だが。

 

「おまえ、なにやってんだよ。街を武力制圧って冗談が過ぎるぜ。任務だかなんだか知らねえけど、全部力で抑えつけやがって」

 

「隊長、指示を!」

 

「それを変えるために、おまえは騎士団にいんだろうが。こんなこと、オレに言わせるな。おまえならわかってんだろ」

 

「…………」

 

「なんとか言えよ。これじゃ俺らの嫌いな帝国そのものじゃねえか。ラゴウやキュモールにでもなるつもりか!」

 

「なら、僕も消すか?ラゴウやキュモールのように君は僕を消すというのか?」

 

「え……それって……?」

 

「おまえが悪党になるならな」

 

「ユーリ……?」

 

「そいつとの喧嘩なら別の場所でやってくんない?急いでるんでしょ!?」

 

「……ち」

 

ユーリ達は、急ぎ船へと乗り込み、包囲網を突破する。しかし、途中で悲鳴が聞こえ、その後に爆発音が聞こえる。駆けつけると、そこには槍を持ったジュディスとエステルの傍に座り込む飛鳥。そして、爆発音の原因であろう、壊れた魔導器(ブラスティア)

 

(痛い……ほんっと敏感だよね、この体……)

 

飛鳥は何も言わず、その場で見ている。この先を知っているからこそ、何も言わない。下手に何か言って、未来が変わるのは困る。自分は、わかる範囲で、原作に戻すだけだ。

 

・・・

 

そしてなんとかリタが魔導器(ブラスティア)の調整をしてくれたことにより、船が動くようになった。そのため、ひとまずダングレストに行くことになった。そして、ダングレストについたユーリ達。

 

レイヴンはハリーをドンのところへ連れていき、パティは記憶探しに、カロルもレイヴンについてった。そのためユーリ、エステル、リタ、飛鳥は先に宿屋で休むことになった。

 

宿屋で休み、戻ってきたレイヴンの話を聞く。どうやら、ドンが1人で凶海(リヴァイアサン)の爪の根城、背徳の館に向かってのではないか、という事だった。そしていざそこに向かおう、という時だった。外でざわめきが起こっていた。

 

様子を見に行くと、人だかりができている。話を聞けば、どうやら戦士の殿堂(パレストラーレ)の連中が近くまで来ているから、ドンがいない今自分たちで守るぞ、という事だった。気が荒い連中である。

 

だが、本当にそうなってしまえばギルド同士の衝突になってしまう。つまり、戦争だ。そうなればただでは済まないだろう。ユーリ達はカロルに一緒に行くかを聞いた。だがカロルは残って話を聞くと言った。

 

自分たちだけで行くことになったが、途中でパティと合流。パティも一緒に行くようだ。ユーリ達は改めて背徳の館を目指すことになった。




長い!!

本当に長い!!!

とりあえず、飛鳥さんに治癒術使わせましたw

でもたぶんそんなズバズバ使えません。一応武醒魔導器を使えるとはいえ、飛鳥自身そこまでまだ普通の術使うのに慣れてませんw

ので、まだまだ防護壁と銃主体の先頭スタイルですね。

次回は背徳の館についた所~になります。


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45戦目

皆さま、あけましておめでとうございます。

久々に更新でございます。

今回は悪徳の館~になります。


・・・

 

レイヴンに案内してもらい、悪徳の館に着いたユーリ達。だが、入り口には見張りだろう兵がたくさんいる。正面突破は難しそうだ。だが、入り口でゴーシュとドロワットが揉め、最終的に警備を何人か連れて行った。話の中でジュディスが魔狩(マガ)りの(ツルギ)に狙われているという事も知ることが出来た。しかし、今は二手に分かれられない上、早く何とかせねばならない状況である。

 

揉めた末、警備の数が減った。それならば、今がチャンスだろう。ちょうど、ユーリ達も気づかれるが、ラピードがすぐに反応し、奇襲を受けることはなかった。こちらから仕掛ける。

 

人数が減ったからか、難なく倒すことが出来た。しかし、戦っていたにもかかわらず、増援もなく、気づかれた様子もない。中に入ってみると、まさにエドガーとドンが対峙しているところだった。

 

当然、止めに行こうとする。しかし、そこでゴーシュとドロワットを含めた海凶(リヴァイアサン)(ツメ)が行く手を阻む。手は出さない、という話だったが、先に仕掛けたのはドンの方らしい。

 

―ここで、ドンが死にかけるか、死ぬか、やな。ドンは街まで連れて帰らなきゃ。できることなら、救いたい。恩人だから。立ち直るきっかけを、作ってくれた人の一人だったから。でも、そうすると、原作改変。ただでさえ、うちがいることでそうなっているのに。これ以上、原作を壊すなんて、できへん!

 

飛鳥は、考える。皆なら、きっと、いや、自分の助けなど要らないはずだ。だって、本来なら、自分はいない。その状態で、どうにか出来たのだから。大丈夫、自分は上を気にしながら後ろの方にいるだけだ。

 

最初は手下だけだったため、手こずることもなく撃破。だが、その間に2人には逃げられ、ドンとイエガーも奥に行ってしまった。後を追う。道中、飛鳥はずっと銃を握りしめていた。

 

「おい、アスカ。そんな怖い顔してどうした?」

 

「……え?」

 

「すっげぇ睨んでたぞ。てか、お前そんな顔できんだな」

 

ユーリに言われ、一度深呼吸をする飛鳥。どうやら、気持ちを抑えきれていなかったらしい。

 

「うちだって、怒ったり不機嫌になったりするよ」

 

なんていいつつ、この先を知っているが故に何も出来ない、叫びたいこのどうしようもない気持ちに、蓋をして、無理やり押さえつける。大丈夫、できる。だって、何度も同じようにしてきただろう?ポーカーフェイスで乗り切っただろう?

 

自分にそう言い聞かせ、なんてことないように振る舞う。そして、最奥にたどり着くと相変わらずイエガーとドンが対峙しており、ゴーシュとドロワットがユーリ達の行く手を阻む。

 

だが、夜が明けたことで、一度双方武器を収める。そして、ドンは街の連中が喧嘩を始めないよう、戻るとのこと。きちんと、“代償”も用意している、と。そこまで言うと、イエガーもゴーシュとドロワットと共に逃げていく。

 

「おまえらは何だ。雁首そろえてこんなところまで来ちまいやがって。ん?そこのチビッこいの」

 

「チビッこいのではないのじゃ。パティなのじゃ」

 

「すまねぇな、パティか。ちょっと面ぁコッチに見せてみろ……こりゃあ、驚いたな……」

 

「……?」

 

「てめぇ……アイフリードにそっくりだ……まさに生き写しだぜ……」

 

ドンのその言葉にエステルが、パティが言っていたアイフリードの孫、という話が本当だったと呟く。それを拾い、ドンは少しばかり納得がいったような反応を見せる。

 

「ある理由があって、うちはアイフリードの足跡追っているのじゃ。友達だったドンなら何か知ってると思って訪ねてきたのじゃ」

 

「ふん、友達なんてそんな大層なもんじゃねぇ。自由気ままな奴だ、俺はあいつがどこで何をしてたのか、そして今どうしてるのか、そこまでしらねぇさ」

 

「そうか……前に……どこかで会ってなかったかの……?」

 

「ん……?俺と、か?さあな」

 

そこで、ユーリはべリウスが死後に変化した聖核(アパティア)を渡す。ドンはそれを受け取ると、聖核(アパティア)に向かって、怒ったように語り掛けた。リタはドンに聖核(アパティア)が何かを訪ねようとしたが、邪魔が入る。ドンはユーリに邪魔者を任せると言った。そして。

 

「“飛鳥”!強くなったな。今のお前なら、もう“大丈夫”だ」

 

そういって少し乱暴ではあるものの、飛鳥の頭をワシャワシャと撫でた。

 

「―――、うん、ありがとう」

 

飛鳥は、言いかけた言葉を飲み込み、笑って見送った。

 

目前の敵の数から逃げよう、と言ったユーリにレイヴンは武器を構え、いつになく真剣に言った。

 

「悪い。時間稼いでやってくれ」

 

その言葉にすぐに反応したのは飛鳥だった。誰よりも早く、敵の足元に弾を打ち込んでいた。

 

「アスカ……!?」

 

「――……アスカちゃん……頼むわ」

 

「しゃーねぇな」

 

レイヴンが本気な事がわかるや否や、ユーリも武器を抜いた。そして、時間をそこまでかけずに倒した。ユーリはそこで、飛鳥に少し違和感を覚えた。どこか、苛立っているような。だが、それでいて、とても冷静だ。最近、飛鳥は明るくなり、よく話すようになったのだが。

 

だが、本人に聞いたところできっと答えてはくれないだろう。少しずつ話してくれているが、それでも隠し事が多い彼女の事だ、きっとその時がきたら、とかなんとか言って頑なに話そうとしないはずだ。

 

考え込むユーリは、そこではた、と気づく。逃げなくては。そこまで長い時間ではなかったのが幸いだ。3階の窓から飛び降りることになったが、エステルを横抱きにし、自分も窓から飛び降りる。

 

 

後に、3階から飛び降りてよく無事でいられたわ、自分と、飛鳥が語るのだった。

 

・・・

 

いそいでダングレストに戻ると、カロルが走ってきた。どうやら、ドンが戻ってきたが何やら様子がおかしい、と。だが、それを聞いてレイヴンはやっぱり、と言った。飛鳥は俯いて、拳を握り締めた。

 

そして、レイヴンからドンは初めから死ぬつもりだったことを知らされる。どうやら。レイヴンはこのことに一足早く気づいていたようだ。そして、その理由も、ハリーが偽情報を掴まされ、結果命を落とすことになったべリウス。つまり、首領の命を取ってしまったからだという。それならば、同じ対価を払うしか、けじめをつける方法はない、という事だった。

 

・・・

 

広場には、ドンがいた。カロルが駆け寄ると、首領だろ、しっかりやれ、と言われた。一人じゃ何もできない、というカロルに仲間に助けてもらえ。仲間を守れ。と。そうすれば、応えてくれる、と。

 

飛鳥は、見たくなくて、でもわかっているからこそ、目をそらせなかった。そんな飛鳥にドンが言葉をかける。

 

「飛鳥、てめぇは自分が思っている以上に強い。だから、もっと自信持て!お前がどんな使命を持っていようが、てめぇにしか出来ねぇから任されたんだろうが」

 

「ははっ……もう、簡単にそんなこと言ってくれるんやから。勘弁してよね、うちは一般人よりも少し強いだけのただの小娘だっつの」

 

そういって笑った飛鳥。そして、最後に今まで、ありがとうございましたと言って、後ろに下がった。

 

そして、いよいよドンが切腹しようとする。ドンが、誰か、介錯頼むと言ったことで、ユーリが名乗りを上げる。そして、少し話をした後、ソレは果たされた。

 

・・・

 

あれからしばらくたち、街は落ち着いてきたようだった。ともかく、自分たちのギルドをどうにかしようと、ユーリはカロルの元へと向かう。すると、そこには飛鳥が居た。少し近寄り、気付かれないように話を聞いてみると。

 

「大丈夫、仲間を守れっていうのは、難しいことやない。自分が出来ることを、精一杯やってれば、いつの間にかできてる。うちだって、そうだ」

 

「アスカは、強いね」

 

「強くないよ、ただ、慣れてるだけや。でも、うちみたいになったらダメ。うちみたいになったら、本心を吐き出せなくなる。泣きたいときに、涙一つでないこともあった」

 

「アスカが?」

 

「そやで。うちは、強くない。ただの強がりだ。………カロル。絶対独りだと思わんで。それに、カロルならその絶望を乗り越えられる。今は、まだ気持ちの整理が付けられなくて、溢れてるだけや。頭では理解できてる。でも、気持ちがついていかへん。ただ、それだけの話やから。今は、たくさん悩んで、落ち込んで、泣けばいい。溜め込むほうが、体にも気持ち的にも悪いしね」

 

「アスカは?アスカも、そんな事があったの?」

 

「慣れないうちは、そうやった。なんで、うちなんだって。何も、悪いことはしてへんのに、どうして?って悩んで、泣きじゃくってた。うちは、ただの面倒臭がり屋で、努力嫌いで、強がりなだけの泣き虫だ」

 

飛鳥の話から察するに、飛鳥は過去にカロルのように落ち込んだりしたのだろう。だが、立ち直った。だが、何があったかまではわからないが、その何かのせいで今は自分の感情に素直になれない、といったところだろうか。

 

少しすると、話が終わったのか、飛鳥はカロルの頭をドンがしていたように、ワシャワシャと撫でて、宿の方へ帰っていった。それを見届けてから、ユーリはカロルに話しかけた。

 

カロルは、何とかしようとしたが、怖くて動けなかった、という。ユーリ達が自分で決めて、動いている中、自分は何もできなかった、と。自分には首領なんて無理だったんだ、と言うカロル。だが、ユーリは、座り込むカロルを立たせて言う。

 

「おまえにとってギルドは、凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)はそんなもんなのか?おまえの夢だったんだろうが」

 

「一流のギルドを作りたかった!そしてドンの役に立ちたかった!認められたかったよ!ドンはボクの憧れだったんだ……でも、もうドンはいないんだ……」

 

「だからやめんのか?ドンは何を守って死んでいった?それがわからないおまえじゃないだろ」

 

「なんでも出来るユーリにはボクの気持ちなんてわかりっこない!ボクはユーリみたいに強くないんだ!ユーリやドンみたいにはなれないんだ!もう……」

 

「カロル!」

 

そこで、珍しくユーリが声を荒げた。

 

「ドンがおまえに伝えたことは何だった?ドンが見せた覚悟も忘れちまったのか?」

 

「……」

 

「オレはギルドとしてけじめをつけるためにジュディを探してテムザ山に行く」

 

「え……」

 

「おまえがやめても凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)はおわらねぇ。もうおまえだけのギルドじゃないんだ」

 

それだけを言い残して、ユーリもまた、その場から去っていく。一人残されたカロルは、泣いたのだった。

 

・・・

 

宿屋の外でエステルを見つけたユーリ。少し話していると、イエガーとゴーシュ、ドロワットの姿が。どうやら今日はギルドとしてではなく、個人としてきたようで、どこからか花束を出した。どうやら、ドンに花を供えに来たようだ。敵対する気がないなら、とユーリとエステルはアスカとリタが待つ、入り口へと、向かった。

 

そして、全員がそろった(カロル以外)ところで、テムザ山を目指し、船に乗り込んでいた時だった。カロルが、船に飛び乗ってきた。

 

「ドンの伝えたかったこと、ちゃんとわかってないかもしれないけど……凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)はボクの、ボクたちのギルドだから……一緒に行きたいんだ!ここで逃げたら……仲間を放っておいたらもう戻れない気がする……だから!ボクも行く!一緒に連れてって!」

 

「カロル先生が首領なんだ、一緒に行くのは当たり前だろ」

 

「ユーリ、ありがとう。でも……もう首領って言わないで」

 

「ん?」

 

「ボクは……まだ首領って言われるような事何もしてない……ユーリにちゃんと首領って認めてもらえるまで首領って呼ばれて恥ずかしくなくなるまでボクは首領じゃなくて同じ凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)の一員として頑張る!」

 

カロルの決意も聞き、改めてテムザ山に向けて出発!という事になったが、そこでレイヴンが現れる。どうやら、レイヴンも事情があるにも関わらず、ユーリ達と一緒に行く方を選んだようだ。

 

一行は、こうして出発したのだった。




ながい!!

区切りがどこも微妙!!!

という事で次回はテムザ山~になります。


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46戦目

わーい、インフルになった~!

という事で、更新しますw

のどの痛みと、咳とタンが出るから病院行ったら、インフルAだってよ!

熱もその時微熱だったからびっくりだよね!

まぁ、そんなわけでインフルの癖して動けるので投稿しようかと思いますw

今回はテムザ山~になります。

前回、向かう所、と書いてましたが、間違いです。すみません(前回のあとがき部分は修正済です)


・・・

 

ジュディスを探すため、テムザ山に来たユーリ達。山に入ってすぐ、たくさんの人の足跡を見つける。魔狩(マガ)りの(ツルギ)か、とカロルは言うが、ユーリは騎士団かも、と言う。聖核(アパティア)をフレンが探していたので、可能性はあるだろうとのこと。確かにそれならば、ありそうだ。

 

ともかく探索をしていくユーリ達。街があるであろう場所にたどり着くも、どうにも街はない。レイヴンが言うには、10年前は確かにあったとのこと。そこで、バウルの声が聞こえる。その声を聴き、何かあったのでは、というレイヴン。

 

確かに、その線は捨てきれない。急いで向かう途中、大きな爆発があったのでは?と思う程のぼっこりと地面がへこんでいる場所を見つける。どうやら、その爆発を起こした魔物は退治されたとのことだが、そもそもがこの場所が人魔戦争の戦場だった、とのこと。ただ、その事は帝国の情報操作により、公にはされていないらしい。

 

「あぁ、じゃあここで彼が……」

 

思わず、跡地を見てそう呟いた飛鳥の言葉を拾ったのはレイヴンだ。

 

「アスカちゃん?何か知ってるの?」

 

「え?何も知らないよ。まぁ、仮に知ってたとしても、話さないけどね」

 

「またまた~、イジワルなんだからぁ」

 

内心、茶化してくれたレイヴンに感謝しつつ、先に進むのだった。飛鳥はなぜ、自分があそこで呟いたのかはわからなかった。だが、無意識に口から出たと言ってもいい。となれば、もしかしたら、自分で引いた線を通り越してるかもしれない。

 

昔の自分であれば、こんなヘマはしないはずだ。そう、思い、この先で起こる出来事で変わりそうなことを予測する。ジュディスは確か、バウルが大きくなるために、こもっていいるから、それが終わるまで守っていたはずだ。

 

となれば、ジュディスが倒れるか、バウルに何か起こるか、だろう。それは困る。あぁ、あの黒い魔物の襲撃も考えておいたほうがいいだろう。今のところドラゴン型の奴しか出てきていないが、この先どうなるとも限らない。

 

 

 

 

 

進んでいく中、ふと、ユーリは思い出したかのように言う。

 

「ジュディが前に言ってた。『バウルが戦争から救ってくれた』ってな……それって人魔戦争の事だったのかなって」

 

「じゃあもしかしてあの女って人魔戦争の時にバカドラと一緒に帝国と戦ったのかな」

 

「ジュディ姐が人間の敵だったら、うちはちょっと切ないのじゃ」

 

「どうなんだ?レイヴン?人魔戦争に参加してたんだろ?」

 

「へ?なんで?」

 

「色々詳しいのは当事者だからだろ」

 

「そうなの?でも、生き残った人、ほとんどいないんでしょ?」

 

「ああ、さすがの俺様も、死ぬかと思ったね」

 

観念したように、そう言ったレイヴン。飛鳥は、レイヴンに関して知っているため、死にかけた、ではなく、一度死んで、今は魔導器で生きているという事を知っている。だが、こんなところで話す事ではないし、何より、こういうことは本人の口から語られるべきだ。そう思い、飛鳥は話に耳を傾ける。

 

―あぁ、防護壁もすぐできるようにしなきゃ

 

なんて、ぼーっと考える飛鳥に声がかかる。

 

「ねぇ、アスカ。あんた大丈夫?顔色悪いわよ」

 

「え?」

 

「アスカ、大丈夫です?」

 

「大丈夫だよ。少し、考え事してただけだし」

 

そう言ったが、あまり説得力はないようだ。どうやら、ここまでで、割と無茶や無理をしてきたからか、また無理をしてるのではないか、と疑われているようである。

 

「本当?」

 

「ホントだよ。何か不調を感じたらすぐに言うから」

 

そこまで言うと、どうやら納得してくれたようで、絶対に無理はしないで、と念を押された。どうやら、顔に出ていたらしい。あぁ、線引きをしっかりしなくては。だって、自分は未来を知る者。容易にそのことを話してはいけないのだから。

 

しばらく歩き、クリティア族の街にたどり着いたユーリ達。だが、廃墟同然で、人が住んでいる気配はしない。と、そこでラピードが唸り始める。そのあとすぐに魔狩(マガ)りの(ツルギ)のメンバーが吹っ飛ばされてきた。メンバーが吹っ飛んできた方向を見ると、そこにはジュディスの姿が。

 

ジュディスは、ユーリ達の姿を見せると、驚いた顔をする。だが、まだ戦う姿勢を見せる魔狩(マガ)りの(ツルギ)のメンバーに、ユーリが言う。

 

「おまえら!うちのモンに手ぇ出すんじゃねぇよ。掟に反しているならケジメはオレらでつける。引っ込んでな!」

 

だが、それでも戦う気のメンバーに、今度はリタ、レイヴン、パティ、アスカがそれぞれ戦闘態勢だ。それを見たユーリの一言で、メンバーは去っていく。

 

「ジュディス……」

 

「追ってきたのね。私を」

 

「ああ。ギルドのケジメをつけるためにな」

 

「ジュディス、全部話して欲しいんだよ」

 

「何故魔導器(ブラスティア)を壊したのか。聖核(アパティア)のこと。始祖の隷長(エンテレケイア)のこと。フェローとの関係。知ってること全部ね」

 

「事と次第によっちゃジュディでも許すわけにはいかない」

 

「不義には罰を……だったかしらね。………そうね。それがいいことなのか正直分からないけれど。あなたたちはもうここまで来てしまったのだから。来て」

 

ジュディスは案内するために、先行する。その場に残ったユーリとカロル。そして、アスカ。

 

「ユーリ……ジュディスでも許さないって……」

 

「……ドンの覚悟を見てまだまだ甘かったことを思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも、始祖の隷長(エンテレケイア)でも、友でも」

 

「フレンやフェローでもってこと?」

 

「……ああ。それがオレの選んだ道だ」

 

「随分と重っ苦しく考えてんね」

 

「オレの選んだ道だって言っただろ」

 

「独りで抱え込みすぎて、うちみたいになんなよ」

 

「え?アスカみたいに……?」

 

「そう。でもまぁ、ユーリにはちゃんと向き合ってくれる人がいる。引っ張り上げてくれる人がいる。それでも。もし足りないなら、その時はうちが無理やりにでも押してあげる」

 

「オレに?」

 

「うん。ほら、行くよ」

 

飛鳥はそこまで言うと、先に行ってしまった。ユーリには、今の飛鳥の言葉が、わからなかった。どうして、そんなことを言うのか。ただ、イジワルで言ったのではない。ふざけて言ったわけでもない。それだけはわかる。いつかわかるのか、そう思い、ユーリとカロルも先に進むのだった。

 

しばらく進み、少し開けたところに出る。すると、そこでジュディスは立ち止まった。そして、ユーリ達に問いかける。

 

「ここが……人魔戦争の戦場だったことはもう知ってる?」

 

「ああ。おっさんに聞いた」

 

「人魔戦争……あの戦争の発端はある魔導器(ブラスティア)だったの」

 

「なんですって」

 

「その魔導器(ブラスティア)は発掘されたものじゃなく、テムザの街で新しく開発された新しい技術で作られたもの。ヘルメス式魔導器(ブラスティア)

 

説明されたが、先を知っている飛鳥を除き、それを知っているものは誰もいなかった。

 

「ヘルメス式魔導器(ブラスティア)は従来のものよりもエアルを活動に変換して魔導器(ブラスティア)技術の革新になる……はずだった」

 

「何か問題があったんだな」

 

「ヘルメス式の術式を施された魔導器(ブラスティア)はエアルを大量に消費するの。消費されたエアルを補うために各地のエアルクレーネは活動を強め、異常にエアルを放出し始めた」

 

「そんなの人間どころか全ての生物が生きていけなくなるわ!」

 

「ケーブ・モックやカドスの喉笛で見たアレか。そりゃやばいわな」

 

「人よりも先にヘルメス式魔導器(ブラスティア)の危険性に気づいた始祖の隷長(エンテレケイア)は、ヘルメス式魔導器(ブラスティア)を破壊し始めた」

 

「それがやがて大きな戦いになり人魔戦争へ発展した……」

 

「じゃあ始祖の隷長(エンテレケイア)は世界のために人と戦ったの!?」

 

「どうして始祖の隷長(エンテレケイア)は人に伝えなかったんです!?その魔導器(ブラスティア)は危険だって!」

 

「互いに有無を言わずに滅ぼしゃいいってもんよ。元々相容れない者同士そこまでする義理は無かった。そんなとこかねぇ」

 

「あるいは何か他に理由があったかもしれんの。でも……この話がジュディ姐に何の関係があるのじゃ?」

 

確かに、ここまで話しておいて、ジュディスに関係することは何一つ出てきていない。パティの疑問は最もだろう。

 

「テムザの街が戦争で滅んで、ヘルメス式魔導器(ブラスティア)の技術は失われたはずだった……」

 

「まさか!そのヘルメス式がまだ稼働してる!?」

 

「そう。ラゴウの館、エフミドの丘、ガスファロスト。そして……」

 

「フィエルティア号の駆動魔導器(セロスブラスティア)か……」

 

「なら!言えば良かったじゃない!どうして話さなかったのよ!一人で世界を救ってるつもり?バカじゃないの!?」

 

リタが、そういった。だが、ジュディスは何も答えない。少しの沈黙が流れた時だった。すぐ近くの岩と岩の間から、光があふれる。

 

「バウル!」

 

その光に向かって、ジュディスが言った瞬間。どこからともなく、ティソンがジュディスを襲う。すぐ後にナンもやってきて、バランスを崩したジュディスに追撃をする。だが、飛鳥が、防護壁を張ったことで、それは防がれる。

 

「「「!?」」」

 

突然の防護壁に、驚くジュディス、ティソン、ナン。だが、すぐに体勢を立て直し、ジュディスと対峙する。やはり、バウルを狙っているようだ。

 

「手下どもから聞かなかったか?うちのモンに手ぇ出すなっつったろ?」

 

「つーか、そんな事うちがさせへんけどね」

 

「い、いくらナンでもギルドの仲間を傷つけるのは許さない!」

 

「まだ話の途中なのよ!邪魔すんな!」

 

「まったく、無粋な連中なのじゃ」

 

「アツいのは専門外なんだがなぁ」

 

「あなたたち……」

 

その後も話し合いはするものの、やはり分かり合えないようだ。2人もしびれを切らし、戦闘態勢に入る。それを見て、飛鳥も銃を構えるのだった。




バウル変化まで書きたかった!

でもそれまでが長いので、次回で!

次回はティソン&ナン戦~です。


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47戦目

もう少し進んだら秘奥義くるかなぁ……

もうすぐ50話ですよ!!

今回はティソン&ナン戦~になります。


・・・

 

戦闘開始から、飛鳥は2人の足止めに徹していた。足元を狙って、撃つ。それを繰り返していたが、ティソンに近づかれ、吹っ飛ばされる。すぐに立ち上がることはできなかったが、深く入ったわけではないので、どうにか立ち上がる。

 

「アスカ!!大丈夫か!?」

 

「げほっ、ごほっ……なんとか、ね!」

 

銃を使っていたが、途中。ナンとティソンの連携により、銃を吹っ飛ばされてしまう。そこを狙われるが、チャクラムで防ぐ。

 

「っち!」

 

「勘弁してよね~、うち、接近戦苦手なんだってば~」

 

なんて言いつつ、飛鳥は先ほどとは違う立ち回りをする。チャクラムがブーメランのように投げたら戻ってくる、というのを利用し、2人の気を引いていた。そう、囮である。飛鳥は、自分がまだ倒せるほどの力はないとわかっているからこそ、ユーリやジュディスといった、戦えるメンバーが戦いやすいように、立ち回ったのだ。

 

「おいアスカ!無茶すんな!」

 

「これぐらい、無茶でも何でもない!!」

 

そういって、時には接近戦をする。だが、苦手だと言っていた割には、あまりダメージを食らっていないように見えた。すると、ユーリとジュディスが追い詰められる。だが、すぐに飛鳥が防護壁を張ったので、致命傷にはならなかった。

 

「てめぇのそれ、うぜぇ!!」

 

ティソンから狙われる。彼の素早い攻撃に、押される飛鳥。だが、一度だけ隙をついて、ティソンに蹴りを叩き込んだ。だが、やはりまだ戦闘経験の浅いただの小娘であることには変わりなく、結局飛鳥がティソンに対し、まともに攻撃を入れれたのはあの、蹴りのみだった。

 

その後、どうにか2人を倒すことが出来た。が、飛鳥はまだ警戒を解いておらず、皆がバウルに注目する中、入り口付近でずっと気を張っていた。だが、いつまでたっても飛鳥の心配することにはならなかった。

 

気が付くと、バウルは成長を終えていた。そして、ジュディスはエステルに問う。フェローに会うか、と。その問いにエステルは、会うと答えた。だが、ここでもうすぐ魔狩(マガ)りの(ツルギ)の増援が来そうとのこと。しかし、逃げ道は1つしかない。

 

だが、バウルがフィエルティア号まで運んでくれるとのことだった。それに甘え、ユーリ達はバウルに乗せてもらった。そして、バウルに船を運んでもらうことになった。バウルに船を運んでもらっていると、ジュディスが突然倒れてしまった。

 

「ジュディ!」

 

どうやら、疲れていたようだ。

 

―あぁ、よかった。ジュディスに、ティソンの攻撃だけじゃなく、ナンの攻撃が加わる程度ですんだ。防護壁張るのも、追いついた。あぁ、でも。いつでも張れるわけじゃない。だから、銃でも、チャクラムでも、咄嗟に庇えるように、しなきゃなぁ……

 

ユーリ達が話している間、飛鳥はぼーっとしており、話は聞いていないようだった。そして、解散後も、適当な場所で腰を下ろしていた。

 

―んー、どうしたらいいんやろ……っでも、やっぱり、しんどいのも疲れるのもやだしなぁ……

 

なんて考えているうちに、飛鳥は眠ってしまったようだ。そこに、ユーリが現れる。みんなとアレコレ話し、飛鳥の姿がないことに気づき、探しに来た。だが、見つけてみれば飛鳥は座り込んで寝息を立てていた。

 

「おいおい、こんな所で寝ると風邪ひくぞ」

 

そう言って、飛鳥を運ぼうとして近づくユーリ。そんなユーリに、声が聞こえた。

 

「……して?………は、嫌………ない!!……」

 

どうやら、飛鳥が言っているようだ。魘されているようで、顔色はあまりよくはない。

 

「………お前の事、ちゃんと話してもらうからな」

 

ユーリはそう言って、飛鳥を運ぶのだった。

 

・・・

 

次の日。自然と集まったユーリ達。ジュディスの話によれば、エアルを調節してくれているのが始祖の隷長(エンテレケイア)だが、その調整力を上回るエアルの量があるのだそう。そして、ジュディスは自身の目的を話す。

 

だが、最初に話してくれればこんなややこしいことにはならなかった、とユーリ達は言うが、ジュディスはユーリ達では、無理な事がある、と。そして、エアルの乱れがあるところにヘルメス式魔導器(ブラスティア)はある。だがから向かったのに、そこでは魔導器(ブラスティア)ではなく、人間がいた。

 

バウルがエステルに対し、エアルの乱れを感じたことを調べるうち、フェローに出会ったのだそう。そして、エステルが何者なのかも知っている、と。そしてジュディスはフェローに約束を持ち掛け、もしもエステルが消さなければ存在だった場合、自分がエステルを殺す、と。

 

その話に、リタはジュディスにとびかかろうとした。だが、寸でのところで踏みとどまる。そして、フェローに会いに行く、という事に話がまとまったかに見えた。だが。

 

「じゃあ、次はアスカ。お前の話な」

 

「ん、いいよ。話せる範囲でいいなら」

 

「べリウスに会った時、お前は異界の子って言われてただろ」

 

「!……うん。言われたよ」

 

「フェローには、世界の調和を崩し者って言われてたんでしたね」

 

「加えてお前の使命。どういうことだ?」

 

「ん~、そこを聞いてくるかぁ……困ったなぁ、どう言えばいいかな。そうだね、じゃあまず、異界の子って意味がどういうことか話そうか。あぁ、先に言っておくけど、信じろとは言わんから。てか、信じなくていいよ、うちなんかの話。だから、今から話す話は、そんなことあるんだ、程度に聞いといて」

 

そういって、飛鳥は、異界の子というのは、自分がこことは、別の世界から来たからだと告げる。そして、世界の調和を崩し者というのは、本来はこの世界に居るはずのない、自分がいる=異物ということで、この世界そのものの修正力というものが働き、自分を消そうとして、あの黒い魔物を放っている、という事だった。

 

それを聞いたユーリ達は、誰一人として笑ったりしなかった。真剣に、受け止めた。その様子に驚いた。てっきり、嘘だ、と言われると思い込んでいたからだ。

 

「じゃあ、アスカは何か理由があってここに来たんです?」

 

「うん。んで、それが使命ってやつ。でも、この使命ってやつがなんともまぁ、面倒でね。世界の危機を救えってよ。アバウトすぎだし、現実味がなさすぎて、びっくりだよね」

 

「「「!?」」」

 

「まぁ、そん時になったらわかるだろうしってことで今はほったらかしてるよ」

 

「じゃあ、お前が帰れないって言ってたのって」

 

「そう。うちの故郷ってやつは別の世界。一方通行だから仕方ないね。もし、帰れるなら、飛ばされるときに言われてるはずだしね」

 

「さみしくないの?お父さんやお母さんに会えないってことでしょ?」

 

カロルが、そう言った瞬間。飛鳥の目から光が消える。

 

「会いたくなんてねぇよ、あんな屑ども」

 

「ア、アスカ……!?」

 

「あんな屑ども、家族だなんて言いたくねぇし、血が繋がってるのも忌々しい」

 

豹変と言っても過言じゃない程、先ほどとは変わった飛鳥。何があったのだろう。何がそこまで、彼女を変えてしまったのだろう。だが、ユーリは思い当たる節があった。なんてことない、という風に話していたが、前に聞いたことがあったからだ。

 

だから、きっと。飛鳥は、本当は割り切れていなかった。だが、割り切れているように見せかけないといけない状態になっていた。だから、ふとした時に、こうなってしまうのだろう。

 

「――……あぁ、ごめん。つい、あの屑共の話となるとね。おかしいな、割り切ったはずなんだけど。………うちの両親は自分の子供に暴力を振るう、最低の奴だ。だから、もし、元の世界に帰れるとしても、うちは、帰らない」

 

「そっか」

 

「あ、あの。アスカの力は……」

 

「あぁ、えっとね。うちの力は周囲のエネルギーを一度自分の身体に取り込んでから弾とか防護壁に変換する力。多分、エステルの力がマイナスに働くのは、うちの身体のエネルギーの許容量って奴が低いからだと思う。100しか入らないのに、エステルの回復の力が200だったら?」

 

「あ……」

 

「100しか入らないのに、200も貰ったら多すぎるよね?だから、その入りきらない分がダメージになっちゃうって事」

 

「厄介ね」

 

「仕方ないっしょ、こればっかりは」

 

飛鳥は、こんなところで話すつもりはなかった。だが、もう隠すことが難しい、限界だと思い、話した。だが、それでも。自分が未来を知っている事や、自分の力が極めればエステルの力を抑えられる事は話していない。

 

未来を知っているとして。だから何だというのだ。本来の原作の通りに事が進むようにするだけなのだ。それにもし、話して未来が変わってしまったら?原作の通りに事が進まなかったら?

 

それこそ、世界を救えるか怪しくなってしまう。それは困る。自分はあの場所で、力を使わなければならないのだ。そして、本来なら死なない人が、原作が変わったせいで死ぬかもしれない。それを防ぐ。それが自分の使命。そう、改めて心に決める飛鳥だった。

 

・・・

 

バウルに運んでもらい、フェローのいる場所まで来たユーリ達。しかし、フェローの姿が見えなかったため、いないと思われた、その時。上空からフェローがやってきた。

 

「忌まわしき毒に世界の調和を崩し者!遂に我が下に来たか!」

 

「……お出ましか。現れるなり毒とか崩し者呼ばわりとはな。ご挨拶だな、フェロー!」

 

「何故我に会いに来た?我にとっておまえたちを消すことは造作もないこと、わかっておろう」

 

「ちっ、あんたもこれで語るタイプか?」

 

そういって、武器を構えるユーリ。だが、それに待ったをかけたのはエステルだった。

 

「お願いです、フェロー、話をさせてください」

 

「死を恐れぬのか、小さき者よ。そなたの死なる我を?」

 

「怖いです。でも自分が何者なのか知らないまま死ぬのはもっと怖いです。べリウスはあなたに会って運命を確かめろって言いました。わたしは自分の運命が知りたいんです。わたしが始祖の隷長(エンテレケイア)にとって危険だというのはわかりました。でもあなたは世界の毒だと……わたしの力は何?満月の子とはなんなんです?本当にわたしが生きていることが許されないのなら……死んだっていい。でも!せめてどうして死ななければならないのか……教えてください!お願いです!」

 

エステルの真剣な態度に、今すぐどうこうしよう、という気はなくなったようだ。殺気を弱め、少しばかり落ち着いてくれたようだ。

 

「かつてはここもエアルクレーネの恵みを受けた豊かな土地であった」

 

「ここにエアルクレーネがあったのね」

 

「でも、それが何故こんなことに?」

 

「エアルの暴走とその後の枯渇がもたらした結果だ。何故エアルが暴走したか……それこそ満月の子が世界の毒たる所以よ」

 

「え……」

 

「満月の子の力はどの魔導器(ブラスティア)にも増してエアルクレーネを刺激する」

 

「どういう事だ?」

 

「………魔導器(ブラスティア)は術式によってエアルを活動力に変えるもの。なら、その魔導器(ブラスティア)を使わずに治癒術が使えるエステルはエアルを力に変える術式をその身に持っているって事……ジュディスが狙ってるのは特殊な術式の魔導器(ブラスティア)……つまり……エステルはその身にもつ特殊な術式でエアルを大量に消費する……そしてエアルクレーネは活動を強め、エアルが大量に放出される……あたしの仮説……間違ってて欲しかった……」

 

どうやら、リタはある程度、エステルの力について仮説を立てていたようだった。そして、それが間違っていないことも、証明された。

 

「わたしは……」

 

「その者の言う通りだ。満月の子は力を使うたびに魔導器(ブラスティア)などとは比べ物にならぬ程エアルを消費し、世界のエアルを乱す。世界にとって毒以外の何物でもない」

 

「だから消すってか?そりゃ随分気が短いな。え?フェローよ」

 

「これは世界全体の問題なのだ。そしてその者はその原因。座視するわけにはいかぬ」

 

「オレたちの不始末ならオレたちがやる」

 

「そうなのじゃ。勝手に押し付けはゴメンなのじゃ」

 

「おまえたちは事の重大さが理解できていないのだ」

 

「じゃあ聞くが、エステルが死んだからって何もかも解決するのかよ?」

 

「少なくともひとつは問題を取り除くことが出来る」

 

「フェロー、ヘリオードで私は手を止め、ダングレストではあなたを止めたわ。最初は魔導器(ブラスティア)のはずが人間だったから。次は私自身がわからなくなったから。この子があなたの言うような危険な存在だと思えなかったからよ」

 

「そうだ。ゆえに我はそなたに免じて見極めの時間を与えた。その結果、我は同胞べリウスを失うこととなった。もう十分だ。その力は滅びを招く」

 

「ふーん、よくわかんないけど、力を使うのがまずいなら、使わなきゃいいだけじゃないの?」

 

「その娘が力を使わないという保証はない」

 

「……そうね。この子は目の前のことを見過ごせない子。きっとまた誰かのために使うでしょうね。だけど、その心がある限り害あるものとは言い切れないはず。彼女は魔導器(ブラスティア)とは違う。あなたにもそれがわかると思うけど?」

 

ジュディスは、フェローに自分が見て感じたことを含めて伝える。だが、フェローの声は厳しいままだ。

 

「……心で世界は救えぬ」

 

「おいフェロー、おまえが世界のためにあれこれ考えているのはよく分かった。けどな、なんでその世界にエステルが含まれてない?」

 

「より大きなものを守るためには、切り捨てることも必要なのだ」

 

「クソ食らえだな。その何を切り捨てるかを決められるほど、おまえは偉いのかよ?」

 

「我らはおまえたちの想像も及ばぬほどの長きに渡り、忍耐と心労を重ねてきたのだ。わずかな時間でしか世界を捉えることのできぬ身で何を言うか!!」

 

「フェロー、聞いて」

 

ユーリとフェローの会話に割って入ったのは、ジュディスだった。確かに、このまま話していても平行線だろう。

 

「要するにエアルの暴走を抑える方法があればいいのでしょう?まだそれを探すための時間くらいあるはずよ。それにもし……エステルの力の影響が本当の限界にきたら……約束通り私が殺すわ。それなら文句ないでしょう?」

 

「ちょちょっと、ジュディス、本気で言ってるの!?」

 

「あら、そうならないように凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)がなんとかするでしょ?」

 

「え!?あ、そうか……うん、そうだ、そうだね!」

 

「一本取られたな。そういう訳だ。エステルのことも、世界のヤバさもそれがオレたち人間のせいだってならオレたち自身がケジメをつける。それで駄目なら、丸焼きでもなんでも好きにしたらいい」

 

「……そなた変わったな。かつてのそなたなら……」

 

「さあどうなのかしら?でもそう言われて悪い気はしないわね」

 

「……よかろう。………世界の調和を崩し者」

 

「確かに、うちがいることであの魔物は、無限に出てくるやろうね。でも、うちはまだ試せてないけど、あの魔物にうち以外の皆の攻撃が通る方法を、べリウスから教えてもらった。あと、うちは一応、この世界を救うって使命を果たすために、ここにいる。だから、使命を果たしたその後。それでもまだうちが、この世界にとって不都合なら。そん時はうちを殺せばいい」

 

「アスカ!?」

 

「残念なことに、うちはエステルと違って邪魔にならないような、そんな選択肢がない。方法がないの。別の世界からやってきた、余所者。だから、使命を果たすまでは仕方ないかもしれない。でも、使命を果たして、用済みになったのなら、消せばいい」

 

「どうして!?」

 

「それに関しては、まぁ理由はあるけど、それはまだ話せない。まだ、“その時”じゃないから」

 

「………いいだろう。だが忘れるな、時は尽きつつあるということを!」

 

「待って!術式がエアルの暴走の原因っていうなら、昔にも同じように暴走したことがあるはずでしょ。魔導器(ブラスティア)は古代文明で生み出された技術なんだから」

 

「罪を受け継ぐ者たちがいる。そやつらを探せばよい。彼の者どもなら過去に何があったのか伝えているであろう」

 

そこまで言うと、フェローは飛び去ってしまった。とりあえず、船に戻って話し合うユーリ達だった。




というわけで、長かったですが、フェローに会うところまでおわりました!

次回は船での話し合い~になります。


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48戦目

まだ第2部なんですよね!先が長いw

中盤……まだ折り返し地点ではないのでしょうかね?

今回は船での話し合い~になります。


・・・

 

船で話し合いをした結果、隠されたクリティア族の街であり、魔導器(ブラスティア)発祥の地であるミョルゾになら、手がかりがあるのでは、という事になった。そして、そのミョルゾから来たというクリティア族がいるというアスピオに向かうことになった。

 

 

そしてアスピオについて、今日はひとまず休もうか、となった時だった。カロルが話があると言い出した。どうやら、ここでジュディスの事についてだった。

 

「ボク、ずっと考えてた。ギルドとしてどうするべきなんだろうって。で、思ったんだ。やっぱりギルドとしてやっていくためにも決めなきゃいけないって」

 

「どうするか決めたんだな」

 

「言ったよね。ギルドは掟を守ることが一番大事。掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りだって」

 

「ええ」

 

「だから……みんなで罰を受けよう」

 

「え?」

 

「ボク、ジュディスが一人で世界のために頑張ってるなんて知らなかった。知らなかったからって手伝ってあげなかったのは事実でしょ?だからボクも罰を受けなきゃ。ユーリ」

 

「オレ?」

 

急に名前を呼ばれたユーリは心底驚いて声を上げた。まさか呼ばれるとは思っていなかったようだ。

 

「ユーリも自分の道だからって秘密にしていたことがあった。それって仲間のためにならないでしょ」

 

「ま、まぁな……」

 

「アスカ」

 

「ん」

 

「アスカも、たくさん秘密にしてたことがあったよね」

 

「まぁね。別にみんなが知っている必要ないかなって、思ったから話さなかった。変に気を使われるのも、嫌だから話さなかった」

 

「だよね」

 

「ものすごいこじつけ」

 

「……掟は大事だよ。でも正しいことをしてるのに掟に反してるからって罰を与えるべきなのか……ホント言うとまだわかんない……なら、みんなで罰を受けて全部やり直そうって思ったんだ。これじゃ、ダメ?」

 

「オレ、また秘密で何かするかもしれないぜ?」

 

「信頼してもらえなくてそうなっちゃうんならしょうがないよ。それはボクが悪いんだ」

 

「またギルドの必要としてる魔導器(ブラスティア)を破壊するかもしれないわよ?ギルドのためにって掟に反するわ」

 

「でもそれは世界のためだもん。それに掟を守るためにギルドがあるワケじゃないもん。許容範囲じゃないかな」

 

「また秘密抱えて、話さないかもよ?心配とか迷惑とかかけたくないからって」

 

「一人で抱えるよりみんなで考えたほうがいいって思ってもらえるように頑張るよ」

 

「それって掟の意味あるの?」

 

そう、リタが言った途端。レイヴンが声をあげて笑い出した。そんなギルドは聞いたことがない。でも、面白い、と。パティも型にとらわれることがなくていい、と言っていた。

 

「カロル。おまえすごいな。オレは自分はどうするかって考えてたが仲間としてどうしていくかって考えられてなかったかもしれない。オレには思いもつかないけじめのつけ方だ」

 

「ボ、ボクはただみんなと旅を続けたいだけなんだ。みんなの道を凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)の道と同じにしたいだけだよ」

 

「そっか。そうだな。ジュディ、そういうことらしいぜ」

 

「おかしな人たちね、あななたちホントに……。でも……そういうの、嫌いじゃないわ」

 

「じゃあ改めて凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)、出発だね!」

 

どうやら、無事に話しがまとまったようで何よりである。飛鳥も飛鳥で、原作と大きく変わったところがないとわかると、少し胸をなでおろした。

 

「なーんかご都合。ギルドってそんなもん?」

 

「ま、ドンのギルドとはひと味違うねぇ」

 

「でもなんか素敵です」

 

凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)いいの」

 

「パティも入る?」

 

「今はまだダメなのじゃ」

 

「そっか、パティは記憶を取り戻さなきゃなんないんだよね」

 

「で、罰はどうなるのよ?」

 

「あ!そっか。えっと……」

 

カロルが悩んでいると、リタが答えた。それを聞き、飛鳥は思う。後にこの罰が鉄拳制裁とかになるんだな、と。飛鳥は知らない。後々、自分も同じように制裁されることを。

 

「休まずに人探しってとこかな。あたしたちはウチで待ってる」

 

「ちょっと!勝手に決めないで……」

 

「何よ、文句ある?」

 

「はっはっはっ。ねぇよ」

 

「ええ」

 

「ん」

 

「了解~」

 

という事で、ギルドメンバーである、カロル、ユーリ、ジュディス、飛鳥の4人は人探しをすることとになった。そして、しばらく探し回っていると、1人のクリティア族を見つける。名をトートと言うらしい。そして、話し合いの末、ミョルゾへの生き方を教わった。

 

皆のところに戻り、エゴソーの森という場所に手がかりがあることを伝えた。だが、ひとまずはカロルが休みたいとこのことなので、一休みをしてから行くこととなった。すると、パティがその一休みをしている間、お宝の手がかりがないか、探してくるとの事。

 

・・・

 

休憩が終わり、パティの元へ行くと。どうやら目的の本は置いてなかったようだ。そのため、もう少しユーリ達と一緒に旅をしながらアイフリードの事を探すとのこと。すると、パティの話を聞いていたのか、一人の男性が声をかけてくる。

 

そして、罵詈雑言の嵐。だが、パティは一言も言葉を発しなかった。言い返したとしても、きっとまた何かいわれる。それが、わかっていたのだろう。飛鳥も、わかっていた。飛鳥も、同じような経験を此処にくるまでにしていたから。

 

だが、そこでエステルが反論する。しかし、男は何も思っていないようだ。そして、ユーリ達を新しく入った海精(セイレーン)(キバ)のメンバーだと思ったようだ。

 

「ボ、ボクらは凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)だっ!」

 

カロルはそういった。だが、男から何をするギルドだ、と聞かれ答えられないカロル。そこでユーリが助け舟を出す。それでもまだユーリ達に絡む男。飛鳥は、何か言おうと口を開く。だが、言う前にリタが言いたいことを言ってくれた。

 

そして、男はリタがいるとわかった瞬間、黙った。ユーリ達が立ち去ろうとすると、何か言いかけた。だが、ジュディスの笑顔でまだ何か、と問うたことで男は今度こそ去っていく。

 

しかし。カロルはさっきの男が今の事を言いふらすだろうと心配しているようだ。しかし、そんなのは気にしなくていいとユーリが言う。言いたいヤツには言わせておけばいい、とジュディスが言う。

 

「気にするだけ無駄や。ああいうのはこっちの反応を楽しんでるか、ただの憂さ晴らしか、たまたま絡む要素見つけて絡んできただけ、とかね。碌でもない理由で関わってくる奴らばっかだからね」

 

飛鳥がそういうと、何かを言おうとして、パティが口を開く。だが、飛鳥は言わせたくなかった。だから。

 

「うち……」

 

「ユーリ、ヒピオニア大陸のどこだっけ?」

 

と、ユーリに話を振った。

 

「赤い花が咲き誇る岸辺、だったか」

 

「あ、うん」

 

「じゃあ、行くか」

 

ユーリも、すぐさま話を繋いでくれた。落ち込むパティに飛鳥はこっそりと頭をなでた。その行為にびっくりしたのか、パティはハッと顔を上げた。そして、これもまた、皆には聞こえないように言った。

 

「パティ、うちはパティがいないと寂しい。もっと、パティと話をしたい。ダメ、かな?」

 

「!……ダメではないのじゃ!」

 

「ふふ、よかった。じゃあ、いこっか」

 

パティの目に、少しだが光が戻ったのを見て、飛鳥はこれくらいは、いいよね、と自分に言い聞かせるように、心の中で言った。

 

・・・

 

トートという青年に教えてもらった場所に到着したユーリ達。周辺を探索していると、ジュディスが、岩の中が空洞になっていることを見抜いた。すると、リタが魔術で入り口を作る。

 

すると、少し様子のおかしいパティ。だが、暗闇が怖かったと告げる。怖かったら待つか、とユーリが言うがパティは一緒に行くと告げ、一緒に行く。

 

中に入ってみると、とても広い洞窟になっていた。探索するうち、沢山の石並ぶ場所を見つける。真ん中には、誰かの名前が刻まれている。パティはそっと近づく。ここには石に刻んである通り、ブラックホープ号事件の被害者のお墓のようだ。すると、パティが突然、力を失ったようにその場に座り込んだ。

 

「パティ……!」

 

「でも……うち…………まさか、こんな……」

 

「パティ……」

 

「いくらなんでも、無理ないわ。この歳で、この現実を受け止めろって方が無茶だ」

 

「……」

 

沈黙が流れる中、ジュディスがカギを探すと言う。いまだ放心状態のパティを連れまわすわけにはいかないでしょう、とのこと。確かに一理ある。だが、魔物の気配がしない。

 

「なら、うちはパティと一緒にいるね」

 

「じゃあラピード、アスカと一緒にパティ頼んだぜ」

 

という事で飛鳥はパティと共に残ったのだった。そしてユーリ達が言った後。すぐくらいだろうか。あの黒い魔物が現れたのだ。

 

「はぁぁぁ……なんとなく、そんな予感してた。――“我が力は光に属するものなり。闇に対抗する力。我が力、宿れ”!!付加・月(エンチャント・メーヌリス)!!」

 

飛鳥は、言い終えてからハッとする。今、自分は無意識に何か発動させた。わかっている。べリウスから言われてから、考えてはいたのだ。だが、ようしたらいいか、わからなかった。

 

「大丈夫、もう発動はできる!ラピード、攻撃、今なら通るから手伝ってもらってもいい?ちょいと、数多いわ」

 

「……ワフ」

 

飛鳥は、ラピードに声をかけつつ銃を構えた。すると、ラピードも戦闘態勢に入った。飛鳥は、息を吐くと、黒い魔物に向けて早打ちをする。一発も外すことなく、すべて的中させ、葬り去った。だが。真後ろに突然現れた敵には、反応できなかった。

 

攻撃を食らい、反対側に吹っ飛ばされ、背中を強打する飛鳥。息が出来ず、一瞬だが息も止まる。すぐに咳き込み、立ち上がろうとするも、力が入らなかった。

 

「ごめ……パティ、たの、ん、だ……げほっ……っぐ………!」

 

飛鳥の言葉を理解したのか、ラピードはパティを守るように前に出た。そして、飛鳥は立てないながらも銃を構え、敵の頭を狙い、倒すことに成功する。だが、追い打ちをかけるように、飛鳥の右に、またもや黒い魔物が現れる。

 

「!!うっそ、やろ……」

 

背中を強打した飛鳥はまだ立てない。もう一度吹っ飛ばされる。だが、無理やりにでも身体をおこす。すると、目の前に敵。さすがに防護壁を張ろうにも間に合わない。右肩を噛まれる。だが、チャンスだ。

 

そう思った飛鳥は、左の銃で魔物の顎を撃ち抜いた。すると、運良く魔物は消えてくれた。だが、もう動けない。

 

―あぁ、痛い。でも、“こんな程度”、別に転げまわるほどじゃあないな……首切られたとか、頭傷いったとかじゃないし……それに大丈夫やろ、ユーリ達が戻ってくれば。

 

飛鳥はぼんやりとしながら、遠くを見る。あぁ、ラピードがこっちに来る。いいのに。飛鳥は、立てるようになるまで回復すると、パティのもとまで歩いていく。変わらず、パティは座り込んだままだ。しかし、外相は見当たらない。

 

パティの横に座り、飛鳥はユーリ達の帰りを待つのだった。珍しく、心配そうにこちらを見る、ラピード。どうやら、素を出し始めた自分を少しは認めてくれたようだ。きっと、最初に攻撃的だったのは、絶対そうだ。

 

自分を、偽りすぎていたから。だから、あんなにも攻撃的だったのだ。自分をさらけ出さないヤツ。そんな怪しいヤツを自分が主人と認めた人の近くになんて。そう、思っていたのだろう。

 

―はは……こんな体たらくで、ホントに世界なんて、救えるんかなぁ……あの声の主は言ってた。うちだからって……

 

考える飛鳥。だが、そのうちに気を失い、倒れてしまった。

 

・・・

 

ユーリ達が扉を見つけ、パティ達の元へ戻ろうか。そんな時だ。どこかで、ドォンという音が聞こえた。何かが爆発でもしたのだろうか?いや、そんな爆発物はここには見当たらなかった。嫌な予感がして、パティ達の元へ戻る道を急ぐと。途中でラピードが走ってきた。

 

「!?ラピード?どうした!?」

 

「ワフ!」

 

ラピードはひと吠えすると、ついてこいと言わんばかりに来た道を戻っていく。

 

「何かあったわね、こりゃ」

 

「うん、急ごう!!」

 

そうして戻ってみると。変わらず座り込むパティと、倒れている飛鳥。パティは特に変わらないように見える。だが、飛鳥はボロボロだった。その上、右肩から血が出ている。

 

「「「!!」」」

 

「アスカ!!」

 

エステルが駆け寄るが、ぴたりと止まる。そうだ、飛鳥には自分の力は過剰すぎるのだ。飛鳥に余計なダメージを与えてしまう。すると、ユーリが飛鳥を助け起こし、声をかける。すると、飛鳥はうっすらを目を開ける。だが。

 

「ははっ……今度は、何するんや……っ、いってて……包丁で抉った、次は……なんや、足でも抉るか……?」

 

目に光はなく、どこを見ているのか。まだぼんやりとしているようだ。

 

「アスカ、しっかりしろ!」

 

「は?これ以上、どうしっかりしろって?ゆーてくれやな、わからんで?うちは屑なんやろ?」

 

「ちょっと、何言ってんのよ!!」

 

揺さぶっても、声をかけても飛鳥は、戻らない。一体、自分たちが離れている間に何があったというのだ。意識はハッキリしている。だが、どこかおかしい。会話が噛み合っていない気がする。

 

「あちゃー……」

 

その様子を見て、レイヴンが参ったように声を上げた。

 

「おっさん、なんか知ってんのか?」

 

「あぁ、その状態になっちゃったアスカちゃんは、しばらく戻らないわよ。どうも、何かのはずみで過去の記憶と今がごっちゃになってんの。ダングレストに居た時でも滅多にならなかったんだけど……」

 

「そんな!何とかならないんです!?」

 

「おい、アスカ!!………“飛鳥”!!!」

 

ユーリが飛鳥の名前を“呼んだ”。すると。

 

「?………ユーリ?あぁ、うん。でも、ううん、違う。そんなわけ、ない」

 

ユーリの事は認識した。だが。やはり、どこかぼんやりしていた。

 

「うぅ、痛い……でも、いつも通り。そうだ、大丈夫。まだ、大丈夫。動くから。大丈夫、だって、コレをされたならあとは、抉られるだけ……大丈夫、何度もされてる。いい加減、慣れろ……大丈夫、うちは、まだ、大丈夫。ははっ、だって、殺されてない。だって、生きてる。生きてるんだもん。いつまで続くのかなぁ?きっと、大人になっても、ここ、違う、“あそこ”にいる限り、かなぁ……」

 

「もういい、もういい!アスカ!!」

 

ブツブツと大丈夫だという飛鳥。だが、急に。

 

「いつに、なったら。助けがくるかなぁ…………ん、あれ?皆???」

 

何の前触れもなく、飛鳥は元に戻った。目に光が宿る。

 

「アスカか?」

 

「ん?あー、うん、そう。あっちゃ~……〝トリガー〟、引いてしもたわ。ごめんな、変な事言っとったやろ」

 

「アスカ?戻ったの?」

 

「うん、ごめんね。いやー、あの黒いヤツにガブッってされたからやな。あんの屑どもの記憶がな。もう、大丈夫やで」

 

のそのそと起き上がる飛鳥は、確かに自分たちの知っている飛鳥だ。痛い、といいつつ自分の治癒術で傷を塞いでるあたり、本当に戻ったようだ。

 

「黒いヤツが襲ってきたの?」

 

「そーそ。急に現れるもんだから、困ったもんよ。あぁ、安心して。全部ヤッといたから」

 

そういった飛鳥はもう大丈夫のようだ。若干、違和感を覚えるところがあるが、きっと気のせいだ。そう、思ってミョルゾへの扉の鍵が見つかった事を話す。パティもどうにか大丈夫になったらしい。

 

という事で、船に戻る。すると、パティが話があるとのことだった。聞いてみると、ここらあたりで皆と、別れたい、とのことだった。だが、皆からの言葉を受け、考え直すことにしたパティ。

 

 

 

移動中、パティは黄昏ている飛鳥を見つけ、声をかけた。

 

「アスカ」

 

「ん?」

 

「……アスカは、記憶が戻って、何か感じたかの?」

 

「せやなぁ、うちはここでの記憶は全部嘘だかんなぁ……まぁでも、何か埋まったような気はしたな。思い出したことで、できることも増えたり、気持ちの整理がつかなかった事に整理が付けられたり。まぁ、より一層自分が情けない、足手まといって実感はしたかな」

 

「そんな事ないのじゃ!アスカは、そんな足手まといなんかじゃ!」

 

そんな風に言われ、飛鳥は戸惑いながらもパティを抱きしめた。きっと、パティはいろいろと不安定なのだろうから。記憶が戻って、混乱しているはずだ。だから。

 

「ア、アスカ……!?」

 

「ありがとね。あと、本気で辛くなったら、うちのとこにきたらいい。まだ、感情を表にだせるうちに、出しときな。うちみたいに、素直に出せなくなったら、辛いじゃすまへんで」

 

「アスカ?」

 

「大丈夫、サイファーは(アイフリード)を、守ってくれたんやから。それに、絶対見つかる。探し物」

 

「え?アスカは知っているのか!?アイフリードやサイファーの事!!?」

 

「ふふ、秘密。まだ、“その時”やあらへん。あおれまでお預け」

 

思わず、そういった飛鳥は得意の言葉で、遠ざける。大丈夫、まだ抱えてられるから。

 

 

 

 

―大丈夫。うちは、まだ、大丈夫。まだ、話さないよ

 

 

 




今回ちょっと飛鳥さんの〝トリガー〟を引かせちゃいました。

やっぱり夢主はボロボロにしたい。けど、ちゃんと救います。

秘奥義イベント、どうしようかなぁ……


次回はエゴソーの森~になります。


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49戦目

また前の投稿から間空いてしまいましたが、続きです!

今回はエゴソーの森~になります。

主人公ちゃんの秘奥義イベ、どうしましょうね……

候補は何個かあるのですが…


・・・

 

ミョルゾへ行くために、エゴソーの森に向かったユーリ達。だが、何をどうすれば良いのやら。ここから見える、魔導器(ブラスティア)を破壊すれば良いのだろうか?ともかく進んでいると。帝国の騎士たちが居た。そして、ユーリ達を見つけるなり、作戦行動中だと告げる。

 

その騎士たちの格好を見て、レイヴンが親衛隊、帝国直属のエリート部隊だと教えてくれた。ユーリはやや挑発的に、この森に魔導器(ブラスティア)を持ち込んで何をする気か、と問う。

 

だが、当然というべきか、ユーリの問いには答えず、さらには法令により一般人の立ち入りは制限されていると言ってきた。ここには来るな、すぐに立ち去れ、ということだろうか。その割には、武器はユーリ達に向けられていた。

 

ユーリがそれを指摘した途端、一斉に襲い掛かってきた。これには飛鳥も怒りを通り越して、呆れていた。

 

「やれやれ……まぁ見られたくないから、なんだろうけど殺そうとするって……」

 

とりあえず、応戦したところであの森に入ったところから見えていた巨大な魔導器(ブラスティア)が動き出す。そして弾を打ち出した。寸でのところで庇いに入ったのはエステル。弾を受けたエステルはその場に座り込んでしまう。

 

だが飛んできた弾は2つ。もう1発は飛鳥が当たる前に吸収したのだった。これには全員が驚いた。そして、エステルの力がここにきて感情と反応して無意識に発動するようになってきているのも、わかってしまった。

 

「え、アスカ!?」

 

「っ……ぐ、きっつ……っと、せぇ、の!!」

 

すぐさま3発目が放たれるも、飛鳥は防護壁で防ぐ。そこで、飛鳥は前よりもエネルギーの許容量が増えていることに気づく。前ならば、きっとあれは許容オーバーして、何かしらダメージを負っていたはずである。

 

ともかくあの魔導器(ブラスティア)をなんとかしようという方針になり、進むユーリ達。その中、エステルが力を使わないよう、リタが守ると言い出した。

 

「確かに。リタなら安心やね。大丈夫、いざってなったらうちが防護壁張るし。何なら、あの弾吸収できるしね」

 

「吸収するのはいいけど、そんなことしてアンタの身体は大丈夫なわけ?」

 

「んー、まぁきつかったけど、別にできなくはないよ。大丈夫、後に備えて、許容量は上げとかなきゃだし、大丈夫大丈夫」

 

「それで倒れたりすんなよ?」

 

「さぁ?そこは知らん。まぁ、血反吐吐くかもだけど、大丈夫っしょ」

 

「なんで、またそんな無茶な」

 

「え?だって、そういうもんでしょ?何さ、努力もなしに、はいできました!ってなるの?ちがうでしょーよ」

 

そう言った飛鳥に、やはりどこか違和感を覚えるユーリやレイヴン。前はこんなだったか。何か嫌な予感がする。だが、どうにもできない。ともかく今は進むのだった。

 

そうして、なんとか進んでいくと、魔導器(ブラスティア)の前には当然ながら騎士が居た。もちろん戦闘である。が、難なく倒し、どうにかしようとする。が、暗号がかかっており、停止ができないらしい。

 

そんな中、ジュディスが気配を感じたのか、上に槍を放つ。すると、魔導器(ブラスティア)の技師だろう者が落っこちてきた。その技師が魔導器(ブラスティア)の停止をしていると、違う方面から弾が飛んできた。

 

咄嗟に飛び出したユーリは巻き込まれ、吹っ飛ばされる。その直後、間髪入れず飛鳥も飛び出し、飛んできた弾を吸収する。

 

「っ―――!!」

 

何となく、口の中に血の味がする気がする。大丈夫、このくらいの無茶、どうってことない。そう言い聞かせ、もう一発飛んできた弾も、吸収するのだった。だが、流石に弾2発分を吸収するのは無理があったようだ。

 

口の端から、血が零れ落ちる。だがそれでも飛鳥は何とかその状態を保つ。許容上限を上げるために。

 

「アスカまで!!」

 

「いいのいいの。今後のために、必要な事だから。きっと、“あの時”、止めないといけなくなるから……」

 

「え?」

 

「大丈夫、今はまだ、“修正”、できてるから」

 

ポツリとつぶやいた飛鳥。エステルはその飛鳥に、何かとてつもない大きなものを背負っているのではないか、と感じる。だが、確信ではない以上、何も言わなかった。そして、進んでいく中、もう一発、放たれる。

 

全員が岩陰に隠れたことで、大丈夫だったが、今度はレイヴンが辛そうだった。その様子を見て、飛鳥は一か八か、やってみることにする。

 

「レイヴン、ちょっと失礼」

 

「え?お嬢ちゃん、何を――!?」

 

飛鳥は、レイヴンに近づき、そっと腕をつかむ。そして力を使う。すると、ふっとエネルギーが自分に流れ込んでくるのがわかる。これで、おそらくレイヴンは大丈夫なはずだ。自分もバレないように、力を使ったりしているため、何とか吸収、排出を繰り返している。

 

「アスカ?あんた何したの?」

 

「ん?レイヴンがエアルの影響受けているっぽかったから、周囲のエアル吸収したの。上手くいったみたい」

 

「最近、新技みたくバカスカその力使ってるけど、無茶はダメだからね?あんたすぐに無茶するんだから」

 

「んー、ちょっとその約束はできへんけど、頑張るね」

 

「もー!!あんたねぇ!」

 

「あいたっ!?」

 

リタからチョップをくらい、された場所を抑える飛鳥。だが、こんな風に心配されていることを思うと、自然とくすぐったい気持ちになり、無意識に微笑んでいた。まだ、その笑みは悲し気だったが、果たして、それを見たのは誰だったか。

 

・・・

 

もう1台の魔導器(ブラスティア)を目指し、進むが挟み撃ちにされてしまう。だが、どうにか切り抜けたユーリ達。飛鳥はその戦闘で、確かな手ごたえを感じていた。取り込んだ力を、武器に付加する、という技をやってのけたのである。

 

だが、それはチャクラムのみでの話。だが、これで気づかれずユーリ達の武器にも付加が出来るのではないか?と思う。まぁそれも奥の手だ。普段から使うわけにはいかない。飛鳥は、ふと気づいてパティに声をかける。

 

「大丈夫、パティはちゃんとこの世界の住人なんやから」

 

「!」

 

「うちみたく、余所者じゃあない。だから、安心したらええ」

 

飛鳥はそう、小さな声で伝えると先に向かう。パティはその姿にどこか大人びている、と感じたのだった。

 

そして。もう1台の魔導器(ブラスティア)の方へ向かい、騎士団相手に戦闘開始。そして、ひと段落すると、カロルたちが騎士団がこないか見張っている、と。そこに飛鳥も加わった。そして、見張っていると、カロルが話しかけてきた。

 

「ねぇ、アスカ」

 

「ん?」

 

「アスカは、とっても強いよね」

 

「ん!?いきない、どないしたし」

 

「だって、僕はこれまで、ずっと逃げてきた。でも、アスカは違ったんでしょ?」

 

「あぁ、そういう。いや、逃げ道なんてなかった。だから、逃げられなかっただけや。あの頃は――月城飛鳥(ツキシロアスカ)。いまより、もっと、弱くて。ただ、自分の世界に逃げ込むことだけを考えてた」

 

「逃げ道が、なかった?」

 

「そう。どこに行ったって、逃げ道なんてどこにも。ただ、唯一自分の部屋だけ。でも、その場所に長く居られるわけじゃあないから。だからだよ。逃げられないのなら、どうにかして、ダメージを減らそうって。生憎と、死ぬか、発狂するかのどっちかしかなかった。だから、それは嫌だったからね」

 

なんて、なんてことのないように語る。いや、懐かしむように語る。彼女にとって、その出来事はもう、過去の事なのだろうか?

 

「元の世界でうちは必要とされてなかった。存在自体がね。でも、ここでは必要だよ、って言ってくれる人がいた。だから、それでいいの。そりゃ苦しいのも、しんどいのも、辛いのも、嫌だ。でも、せっかく、唯一のこの世界に居てもいい、条件。それが果たせなかったら嫌だから。だから、多少は頑張ろうかなって」

 

「貴女にとって、ソレはもう過去の事、と割り切れているのかしら?」

 

「正直、まだ半分くらい。でも、ココ(凛々の明星)に、うちを本気で心配してくれてる人がいるって、わかったから。わかっちゃったから。だから、いいの。それだけで、ここにいてもいいよって言ってもらったような、そんな気がしたんだ。都合のいい解釈だとは思うけど」

 

「あら、それでいいんじゃないから?貴女は、すごく大きなものを背負っているのでしょう?」

 

「アスカ、どうしたら強くなれるかの?」

 

「えー、それをうちに聞くか!うち、がむしゃらだったからよく覚えてへん。けど。

 

どうしたら、痛くないかな?

 

どうしたら、苦しくないかな?

 

どうしたら、辛くないかな?

 

どうしたら、楽になれるのかな?

 

どうしたら。ずっと、ずっと、どうしたらいいか、考えてた。だから、うちから、言えることは、これをしていたら、落ち着けるってこととか、一回凹んでもいい。転んだっていい。だだ、次、無理やりにでも、前向きに、ポジティブに考えること、かな?」

 

飛鳥は、話していてわかった。人に話すことで、割と楽になれるのだと。話を聞いた人たちには悪いとは思うが、ほんの少しでもいいから余裕が欲しかった。心に。きっと、もうこちらに来た時点で。キャパオーバーだったのはわかっていた。

 

だけど、それでもソレを知らぬふりをして、蓋をした。でも、それでも抑えきれなくなって。誤魔化し切れなくなって。だから、ほんの少し。全部を語るときっと余計なものまで話してしまうから。だから、ほんの少しだけを話した。

 

「やっぱりアスカは強いのじゃ」

 

「そうなっただけだよ。うちはただの怖がりで、泣き虫で、弱虫。出来損ない。だから、うちみたいに、ならんといて。それだけは、お願いやな」

 

少し、泣きそうになりながら言った飛鳥。でも、どこか少し、吹っ切れたような感じだった。そして、話をしていると、親衛隊が戻ってきたのだった。

 

・・・

 

そして、リタが術式にかけられた封印を解くまでなんとか持ちこたえる、と。リタも、なんとかする、という事で連戦に次ぐ連戦。

 

「アスカ、なんか吹っ切れたか?」

 

「んー?せやな、うちみたいな余所者を、本気で心配してくれてる人が、うちの話をバカにしないで聞いてくれる人が、そんなゲームや漫画の中でしかいないような人たちがいるって、やっとわかったからかな!」

 

飛鳥は、銃ではなく、チャクラムで応戦していた。今までなら銃だったのに。だが、その顔はユーリが言ったように、吹っ切れたような、憑き物が落ちたような、そんな顔で。なんとなく、しっくりくるような感覚だった。

 

もしかしたら、何も偽らない、本来の飛鳥の姿なのかもしれない。ユーリはそう思ったし、レイヴンは確信していた。飛鳥が、すべてを受け入れて、前に進もうとしていることを。

 

自分が“こう”だからかもしれない。だからこそ、わかったのかもしれない。彼女の変化。ほんの少しでも、ここに、この世界に居ても良い、と思えたのなら。自分を赦せたのかもしれない。

 

「やるじゃねえか、アスカ!でもお前、近接は苦手って言ってなかったか?」

 

「まぁね。銃のが絶対安定して後ろに居られるからね。でも、このままじゃ、ダメな気がしたから、近接の方も練習しとこうかなって」

 

「なるほどな」

 

そうして、どうにか連戦を潜り抜けたユーリ達。すると、鈴の音が聞こえ、空中に大きな術式が現れる。ジュディス曰く、その現れた術式がミョルゾへの入り口だという。という事で、ユーリ達はついにミョルゾへと向かうのだった。




やたら戦闘が長くてどうしようかとw

とりあえず、飛鳥さんに色々と話させて、スッキリさせましたw

次回はミョルゾ~になります。


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50戦目

前の投稿から大分空いてしまいましたが、続きです!

今回はミョルゾ〜になります。

ではどうぞ!


・・・

 

無事にミョルゾへとたどり着いたユーリ達。すると、複数のクリティア族が現れる。歓迎されていないのかと思ったが、そうではないようだ。話を聞く限り、外から人が来るという事が珍しいようだ。あれやこれやと質問をしてきて、答える間がない。ジュディスが長老に会いたいと言ったところでやっと開放された。

 

長老を探して、街を探索していると。大量の魔導器(ブラスティア)が捨てられていた。どれもこれも魔核(コア)がなく、コンテナのみらしい。ジュディスによると、ここの民は魔導器(ブラスティア)を捨てたのだそう。どうして、と問いかける声に答えたのは、ジュディスではなかった。

 

「それがワシらの選んだ生き方だからじゃよ」

 

「お久しぶりね、長老さま」

 

そう、問いかけに答えたのは自分たちが探していた長老本人であった。そうして、話をしてみると。どうやら、魔導器(ブラスティア)聖核(アパティア)を砕いたものらしい。聖核(アパティア)は力が強すぎたのだと。それでなくても、貴重な石。それ故に砕く事で数を増やしたのだとの事。

 

そこまで話を聞いて、ユーリは自分たちの目的を伝える。すると、長老はあっさりと許可を出し、日課の散歩の途中だから勝手に家に入って待ってろという。そういうことでユーリ達は長老の家に向かうことにした。

 

―今のところは、まだ何もない、か…このまま原作通りに進めばいいのに……

 

飛鳥は、ぼーっとしながら待つ。先の戦いでの疲れもあるのだろう。そうこうして、思い思いに過ごしていると長老が帰ってくる。一行に奥のまっさらの壁面に向かうよう伝える。そして、ジュディスにナギーグを使いながら伝える文を言えという。

 

ジュディスが実際にしてみると、まっさらだった壁面に絵が浮かび上がる。絵を見る限りあまり良さげには見えない。ジュディスがナギーグを使い、壁面に書かれた文を読み上げる。それを聴きながら、飛鳥はあぁ、と納得する。

 

―これが、星喰み…ラスボス。うちが、何とかしなきゃなんないヤツ。

 

飛鳥は、終始無言だった。ただただ、見ていただけである。特に自分に聞かれていなかったからと言うのが大きい。飛鳥が我に返ったのは、エステルが走り出してからだった。

 

―あぁ、そっか。壁面の通りだとエステルは、満月の子は世界のために死ねって言われて死なないとだもんね。そりゃ、いても立っても居られない…いや、この場に居たくない、よね…

 

長老に宿屋の場所を聞き、ひとまず体を休めるユーリ達。壁面の内容を話せば話すほど、満月の子は世界のために死んだ、あるいは殺されたという話が濃厚になってくる。そして、何より魔導器(ブラスティア)自体が全て、エアルを乱す原因になっていると、そう解釈出来る内容でもあった。しかし、今の人の生活に魔導器(ブラスティア)が欠かせないのも事実。

 

だが。リタのいう、リゾマータの公式というものに辿り着き、確立出来れば話は違ってくるらしい。エステルが生きていけるのも難しくないらしい。そこまで話をしたところでレイヴンが席を外す。難しい話ばかりでついていけないから、散歩に行くのだと。そしてそのすぐあと。大きな音がした。何事かと思って外に出てみると。

 

外に捨てられていた、転送用の魔導器(ブラスティア)が動いていた。そして、レイヴンとエステル、2人が居なくなる。そこで飛鳥はピンとくる。あぁ、そうだと。考え込む飛鳥に不意に声が掛かる。

 

「っと、アスカ!ずっと黙ってるけどどうしたのよ!2人が居なくなったってのに何も言わないなんて、あんたらしくないじゃない」

 

「――え、あ、ごめん」

 

「責めてるわけじゃないわよ。大丈夫かって聞いてるの」

 

「大丈夫だよ、うん。何でも、ないから…」

 

どこか、上の空の飛鳥。ただ、飛鳥は知っていたけれど、信じたくなかったのだ。レイヴンが裏切り、そしてエステルを攫った事。レイヴンがシュヴァーンであり、帝国に仕える騎士だと知っていた。知っていたけれど証拠がなかったから、言えなかった。

 

もっといえば、原作通りに事が進まないのが怖かった。自分が対処できる範囲でズレるなら何とかする。でも、仲間の関係が崩れたり、やるべき事が成されなかったりするのは困る。だから、飛鳥は何も知らぬ存ぜぬで通した。仲間に自分の事情を話した。だけど、先のことまで、終わりまである程度どうなるか知っているけれど、その事は伏せて話した。

 

「あんま無理すんなよ?」

 

「ん。ありがとう。大丈夫、まだ何とか出来るから」

 

そういった飛鳥は、どこか遠くに居て。怖くなって、カロルは飛鳥を呼んだ。無意識なのだろうが、見ている側は怖いものがある。

 

「飛鳥!どこにも、行かないよね?」

 

「―――!うん、大丈夫、行かないよ。だって行く場所がないもの」

 

そう言って笑った飛鳥に、カロルは一先ずは安心するのだった。

 

・・・

 

エアルの動きを感知してもらい、ユーリ達はコゴール砂漠にある街、ヨームゲンに来ていた。しかし、そこは廃墟でしかも何百年経っている、という痛み方だった。だが、そこでデュークがいるのを発見。そして、カドスの喉笛にいた、魔物も。追おうとしたところで、アレクセイが現れる。話からして裏で糸を引いていたのは、彼だったようだ。そして、フレンが現れる。なぜ謀反を、と。そう問いかけるが、謀反ではなく真の支配者の歩む道だ、と。そういい残し、去っていく。

 

その道をゴーシュとドロワットが阻み、一行は残される。バスティオン神殿にエステルはいるようで、場所もわかった。だが、ユーリはフレンと話があるようで皆と離れる。残された皆はひとまず待つことにした。その時に、リタは飛鳥に問い詰めた。

 

「アスカ。あんた、何を思い詰めてんのよ」

 

「……この先」

 

「?」

 

「この先、一緒に着いていける気がしない。皆が、強いから」

 

「何言ってんのよ。あんたのその防壁には沢山助けられた。戦えない訳じゃないでしょ!」

 

「だってうちは、ただの引きこもりだ!なにも、出来やしない!何にも、出来やしないんだよ…!」

 

不安が溢れて、抑えられなかった。未来を知っているという重圧が、飛鳥を推し潰そうとする。未来を知っているからどうなるかもわかる。なのに、不安で仕方がない。

 

「貴女は何を悩んでいるの?私達は仲間よ。力になれる事はなるわ」

 

「……不安で仕方ないの。うちが本当に世界を救う鍵になるのか。言われたことだけど、信じられなくて、何をしたらいいか分からなくて」

 

「大丈夫よ。貴女は強いわ。だって貴女は立ち向かえるもの。何をしなくては行けないかは一緒に探せば良いでしょう?」

 

ジュディスに言われて、ひとまずはその不安は置いておくことにした。きっと、答えが出ないから。だから、きっとその時になればわかると。そうこうしているとユーリとフレンの話が終わり、フレンが一緒に来るという事で話はまとまったのだった。一行は改めてバクティオン神殿に向かうのだった。

 

 




ということで区切りをつけました。

次回はバクティオン神殿〜になります。

ついにあの場面か〜!内容どうしようかなー


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51戦目

取り敢えず先に進みましょ

今回はバクティオン神殿〜になります

ちょっとソディアさんと主人公の一騎打ち的なものがありますので、ご注意を。


・・・

 

バウルに船を運んでもらい、バクティオン神殿へと向かうユーリ達。しかし、帝国のヘラクレスという兵器がある以上空からは難しい。降りてから入ることにした。

 

そして。神殿に入ってすぐアレクセイとエステルを見つける。ただし、エステルは不思議な青っぽい球体に閉じ込められていた。しかも、アレクセイの手には聖核(アパティア)がある。そして、その聖核(アパティア)を使い、強制的にエステルの力を引き出そうとしているのだろう事は、見て取れた。

 

そして、アレクセイはエステルの力を使ってユーリ達を吹き飛ばした。しかし、飛鳥は咄嗟にチカラを使って1人防いだ。その事にアレクセイは驚いた。ユーリ達の中で1番弱そうに見えた小娘が1人で立っていたから。

 

「なに?」

 

「――そういう、事ね。大丈夫だよ、もう“わかった”。まだ、使いこなせそうにはないけど。でも、“使い方”ってのは、わかったよ」

 

飛鳥は、今の攻防で自身の中で何となくだが、チカラの使い方がわかったのだ。どう使えばエステルのチカラを、抑える事に繋がるのか。まだ、きっかけを掴んだに過ぎない。しかし、飛鳥の中では大きな一歩だ。だからだろう。飛鳥は、消耗が激しくその場に倒れてしまう。

 

そして、次に目覚めた時には騎士団のソディアとウィチルがいた。どうやらヨーデル殿下の計らいで助けに来てくれたらしい。だが、フレンがユーリたちと共に行くことに、ソディアはお怒りだ。否、怒りもあるが、嫉妬というか。ともかく、負の感情が多かった。

 

「それに、アスカ。お前もだ!聞いているぞ!!昔、槍使いとして騎士団にいたこと!」

 

突然、その負の感情の矛先が自分に向いて、驚いた飛鳥。しかし、別に嫌な気分ではなかった。ソディアの気持ちを受け止められるかはわからない。だが、自分に矛先が向いたという事は、何かしらイベントというか。関わりがあるということだろう。原作ではユーリだけに矛先が向いていたのに、今は自分にもその矛先が向いている。ならば、何かあると踏むのは当たり前だろう。

 

「だったら、どうする?うちが、貴女の相手にでもなれば、気が済むの?」

 

「貴様っ!!!」

 

ソディアは、ウィチルが止めるのも聞かず、剣を抜いた。そして、その剣先は飛鳥に向けられている。飛鳥は、不思議と怖いと思わなかった。だからだろう。スッと前に出て、銃を構えた。

 

「いいよ、うちが相手になるかは分からへんけど。それでも、剣を抜いたって事は、そういう事やんね」

 

「貴様なんてすぐに倒してやる!!」

 

「……」

 

飛鳥は、ソディアの剣を持つ手を狙い撃ちする。それは、見事命中する。衝撃でソディアの持つ剣が吹っ飛ばされる。どうやら、武器を持つ手に攻撃をされると思ってなかったらしく、驚いている。

 

「アスカ!」

 

「勝負あり、やね。確かに、うちは、昔騎士団にいたよ。シロノ・クリムという名前で槍使いをしてた。けど、槍はうちの得意な武器じゃなかった。それに、騎士団にいてても、うちはきっと守りきれなかった。あのまま、得意でない武器でアイツらから、皆を守りきるなんて、出来るほどうちは、強くなかった」

 

「なら、どうして騎士団に入ったんだ!」

 

「戦いの術を学びたかったから。わかってたんだ。この世界(テルカリュミレース)で生きていく為には、少なからず戦いとは無関係では、居られないから。だって、うちは世界を救うっていう使命を課せられちゃったんだよ?否が応でも、戦わなきゃならんでしょ?世界を危機に陥れようとする輩と」

 

飛鳥の半ば諦めのような言葉。ソディア以外に、飛鳥の顔は見えていない。だがそれを聞いてか、ソディアは、剣を収める。そして、ユーリに一言告げてから立ち去る。

 

「アスカ、大丈夫か?」

 

「ん?何が?」

 

飛鳥は、特に気にしていないようだった。あれだけの感情を向けられておきながら、何一つ気にしていない。過去の経験がそうさせるのだろうか。

 

「あぁ、ソディアさんの事?別に気にしないよ。だって、あの人は一途で、素直じゃなくて。まぁ、かなり激しいけど。騎士団の隊長のフレンに憧れてて、でそれ以外のフレンの姿を見たくないって感じかなぁ。行き過ぎた正義感ってのも持ってそうだよね」

 

思い当たったように納得した飛鳥は。つらつらと言葉を重ねる。どこか見たような言い方だ。しかし、ソディアの言葉から騎士団時代には飛鳥とは接点がなかったはずだが。

 

「言い方的に勝手にそうやってうちが考えてるだけだから、別に正解って訳じゃないからね!?」

 

ユーリ達の視線に気付いて慌てて言った飛鳥だが、ユーリ達は、飛鳥の言い分は思い当たる事があるらしく、納得している者もいた。そこでひとまずは話は終わり、いよいよ神殿内部に足を踏み入れる。エステルを探しに行かねばならない。

 

内部を探索していくと、やはり内部にも魔物は生息しているようで戦闘になる。飛鳥も随分と戦い慣れたようで、銃主体の戦い方だった。しかし、全くチャクラムを使わないという訳ではないらしく、時折チャクラムを使っていた。ただ、ユーリは前よりもずっと、飛鳥の銃の腕が上達している事に気づく。

 

「アスカ、前よりも上手くなったな。練習でもしてたのか?」

 

「え?そう、かな?まぁ、元からシューティングは得意だったからね。それに、練習してなかったら腕なんて落ちる一方だし。それは、困るし。数少ないうちの得意だって思える事なんだし」

 

どこか遠くを見つめて言う飛鳥は、どこか拗ねているようにも、諦めているようにもみえた。だがそれは一瞬で、すぐに違う表情になった。ソディアとの一騎打ちの時もだったが、確実に腕は上がっている。なのにまだ、飛鳥は弱いだとか、引きこもりだとか言っているようだ。そんな事、ないのに。

 

そうして、進むうちに厳重に封鎖されている扉を見つける。扉の前には親衛隊がいる。だが、騎士団長ではないフレンの命令では退かせることはできない。結局、倒すことになった。もちろん、そんなに苦労せずに倒すことができた。

 

だが、どうにも扉の封鎖が解除できない。アレクセイはエステルの、満月の子のチカラを使って無理やりこじ開けて通ったようだが、自分達はどうすべきか。そうしていると、デュークが現れた。

 

「おまえたちか……あの娘、満月の子はどうした?」

 

デュークに事情を説明するとどうやら、エアルクレーネが乱れる原因、エステルを殺そうとする。その事にユーリ達は構える。そりゃそうだ。エステルを何とかしたくてここまできたのに。殺すと言われて、引き下がれるはずもない。

 

だが、宙の戒典(デインノモス)を投げ渡され、デュークは去っていく。始祖の隷長(エンテレケイア)の重荷を知れ、と。てっきり戦闘になるのだと思っていたが故に拍子抜けした。が、デュークが去る前に神殿自体が大きく揺れた。急ぐにこしたことはないだろう。ユーリ達はひとまず先に進むのだった。




という訳で、次回は……。

まぁ、次回はアレですね。

シュヴァーンとごたいめーんってヤツですね!


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52戦目

お久しぶりです!

もうすぐ今年度終わりますねぇ……新年度とかやだなー

今回は扉の先に進んだ所〜になります。


・・・

 

さきに進んだ所で、アレクセイと謎の球体に閉じ込められたエステルを見つけるユーリ達。アレクセイはまだ何か企んでいるのか、聖核(アパティア)を手に持ち、ユーリ達を見ている。

 

「エステルを救えるのが、お前だけ?ふざけるな。そんなこと、絶対あらへんから!!」

 

「アスカ…!」

 

アレクセイは、こちらが何を言っても聞き入れない様子で、聖核(アパティア)を掲げる。すると、すぐ側にある台座だろう場所に横たわる始祖の隷長(エンテレケイア)が、反応を示す。同時に、エステルも反応する。どちらも苦しそうだ。そして、始祖の隷長(エンテレケイア)は、聖核(アパティア)になってしまう。そして、その聖核(アパティア)を、アレクセイは小ぶりだと、そう吐き捨てるように言った。

 

「貴様……」

 

「そうだ、せっかく来たのだ。諸君も洗礼を受けるがいい。姫が手ずから刺激したエアルのな」

 

アレクセイが聖核(アパティア)を掲げると、球体ごとエステルが移動し、赤い光を放つ。

その途端に、飛鳥はチカラを使った。だが、習得したばかりの力故に、上手いこと使えずに、自分以外にユーリ、フレンの2人しか、エアルを取り込むことは出来なかった。だが。そのおかげか、ユーリは宙の戒典(デインノモス)を使って周辺に漂う、濃いエアルを消す。

 

アレクセイは、ユーリが宙の戒典(デインノモス)を持っている事に驚くが、ユーリの話を聞いて不要だと言う。そして、エステルが聖核(アパティア)だと言い放つ。飛鳥はそれを聞いて、あぁ、と納得してしまった。自分がエステルの力の影響を受けるのも、エステルがエアルを自在に操るからだと。

そして、エステルは皆と一緒に居たいけれど、自身の力で傷付けてしまうから、どうしたら良いか分からないと告げる。皆は、そんな事ない、と言うようにエステルの名前を呼ぶ。

 

「四の五の言うな!来い!エステル!わかんねぇ事は皆で考えりゃいいんだ!」

 

ユーリの言葉を皮切りに、皆で駆け寄ろうとした途端。嫌な予感がした。飛鳥は皆の前に滑り込むようにして立って、チカラを使った。すると、バチン、と音がする。

 

「え……?」

 

「貴様……!」

 

「アスカ!?」

 

「う、くぅ……ほんっと、きっついんだから。でも、こうやって、消すことは、出来るよ」

 

飛鳥は心臓の痛みを感じながらも、そう答えた。アレクセイは、飛鳥の力の事を知らないが、それでも自分がする事には邪魔だと考えた。だからだろう。アレクセイはユーリ共々、消すために自分の部下を置いて先に行ってしまう。ただ、部下はというと。姿を現したのはシュヴァーンだった。驚く仲間達。だが、飛鳥は驚きすらしなかった。

 

知っていたから。知っていたから、驚かなかった。だけど、知っているだけで、シュヴァーンはとても強い。現実世界の動画で見ただけで、実際に戦った訳では無い。だが、それでも見ているだけでも相当な強さだということは分かっている。

 

「帝国騎士団隊長首席シュヴァーン・オルトレイン、……参る」

 

だから、飛鳥は銃を抜いた。そして、後方で支援に徹した。だが、シュヴァーンは、飛鳥を見逃してはくれなかった。今までの旅で飛鳥の技が、かなりユーリ達の危機を救っていた事を知っていたのだ。だからこそ、潰しにかかった。

 

「アスカ!!」

 

「いくらでも、攻撃すれば?」

 

「アスカ何言ってんだ!?」

 

「うちは、“知ってる”から。やりたいなら、やればいい」

 

「……厄介だな」

 

そう、飛鳥は自身がエアルを取り込んだ上でレイヴンに触ると、レイヴンに悪影響を及ぼす事を知っていた。レイヴンが、人魔戦争の後にされた事を知っていたからだ。だから、飛鳥は銃でシュヴァーンの剣を持つ手を狙った。剣は流石に飛ばせなかったが、一瞬よろめいた。その隙にユーリが奥義を決める。

 

だが流石、隊長を務めるだけあるといった所だろうか。中々決着がつかない。そんな中、ユーリがアスカを庇い、怪我を負った。その途端。飛鳥は自分の中の何かがプツン、と切れるのを感じた。そして一瞬の隙を突いて、飛鳥は奥義を発動させた。

 

「外さへんで、これは!――アルバストゥルレイ!」

 

銃を乱射し、飛び上がって散弾を撃ち、すぐにゼロ距離で銃を打つ。そして、すぐさま防護壁を貼って反撃を防いだ。倒せないと知っていたから。きっと、反撃されるだろうって、思ったから。

 

「!」

 

「っ、ぐ……!うちは、“知ってる”。だけど、貴方に、適うほど、強くなんて、あらへんから……!」

 

必死で、戦った。戦いなんて知らない。ただの、御伽噺。そんな世界からやってきたのだ。出来る事は、全力で。

 

「ただの小娘が必死だな」

 

「そりゃ、ね。うちは、知ってる。だって、全部知ってんだもん」

 

「知っている?何をごちゃごちゃと……!」

 

シュヴァーンは、飛鳥の言っている意味が分からなかった。そうだろう。知っているとは言っても、何を知っているのかは言っていないのだから。だが、どこか、ゾクリと寒気がした。どうして、と。なんで、と。だが、流石は隊長首席。すぐに切り替え、攻撃を仕掛けている。

 

2人が問答している間にフレンがユーリに、治癒術を使う。そして、その後戦って、何とか膝をつかせる。しかし、その後すぐにユーリに斬りかかり、斬り合う2人。そして、ユーリの一撃がシュヴァーンの心臓を切り裂いた、はずだった。

 

シュヴァーンの胸には魔道器(ブラスティア)が、輝いていた。それを見た皆は飛鳥を覗き、驚いていた。飛鳥は、シュヴァーンの胸にある魔道器(ブラスティア)が何なのか、知っていた。だから、呟いてしまった。

 

「……心臓魔道器(カディスブラスティア)。やっぱり、そうだよね」

 

「アスカ……?」

 

アスカの声を拾ったのはパティだ。だが、聞き取れなかったのか聞き返していた。その問いに、飛鳥は答えられなかった。そうして問答していると、神殿が揺れ出した。シュヴァーン曰く、アレクセイが生き埋めにするつもりでやったと、そう語る。

どんどん崩れていくのに、その場を動く気がなく、最初から生きてここを出る選択肢がないと、そう分かった途端だ。ユーリは怒鳴った。

 

「最後までしゃんと生きやがれ!」

 

「……ホント、容赦ねえあんちゃんだねえ」

 

「ふざけんな!置いてかないでよ……!」

 

「嬢ちゃん?」

 

「貴方とドンが居たから……!だから、立ち直れた!頑張ろうって、思えた……!まだ、恩を返せてない!!」

 

「どうして、そこまで俺を慕う?こんな死人に」

 

「バカ…!うちは、レイヴンが死ぬなんて許さないから!!シュヴァーンだ?帝国騎士団隊長だ?だから、何だって言うん!!何度でも言うよ!うちは、“貴方”に、ドンに、救ってもらったんだ……!」

 

そんな風に問答していると、神殿の天上が崩れる。カロルを庇って、シュヴァーンが瓦礫を受け止める。今のうちに行け、とそう言うシュヴァーンに従うユーリ達。

 

だが、飛鳥は最後まで動かなかった。カロルが行った後で、飛鳥はずっと持っていたお守りを、シュヴァーンのが動けないのを良いことに、腕に絡めてから、

 

「嬢ちゃん何を……!?」

 

「生きて、帰ってきてね」

 

そう言い残して、飛鳥もユーリ達の後を追い掛けていくのだった。

 

―知ってるから。貴方がちゃんと、戻って来てくれること。だから、待ってるね、レイヴン。

 

 




というわけでシュヴァーンと戦いました。

飛鳥ちゃんは、ドンとレイヴンには1番荒れてた頃の自分を受け止めて貰ったっていう恩があるし、何より全部知ってるから、慕うと思われ。

次回はバクティオン神殿から出た所〜になります。


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53戦目

続けて投稿!

奥義は1つ目を土壇場で習得!

今回はバクティオン神殿から出た所〜です。


 

・・・

 

バクティオン神殿から出ると、そこにはヘラクレスも居なかった。やはり、レイヴンが言っていた通り帝都に向かったのだろう。

 

すると、そこにアデコール、ボッコスと共にルブランが現れる。そして一行にシュヴァーン隊長を見なかったか、と告げた。

 

ポツリポツリとこうだった、ああだった、と語るユーリ達。そんな中、ジュディスが神殿の奥に居る、と告げる。神殿が揺れたことにより、ルブラン達もどうなっているかが、予想着いたらしく、フレンに詰め寄る。

 

「どういう事なんです。フレン殿、答えて下さい、フレン殿!!」

 

「彼は、本当の騎士でした」

 

フレンはそう答えるので、精一杯だった。

 

「貴方達なら、きっと、救える。だから、救けてあげて、隊長を」

 

飛鳥はルブラン達にそう言った。自分が言わなくとも、原作通りであれば、救われるはずなのだが、どう変わるかが分からない。だから、レイヴンにもお守りを渡してきた。こう言えばきっと、大丈夫だろうと思って。だから飛鳥は、ユーリ達よりも絶望はしていなかった。

そして、アレクセイを止めるために急いで帝都に向かう為に、バウルに運んでもらうのだった。

 

・・・

 

そして、バウルに運んでもらい、ヘラクレスに追いついたが、帝国騎士団の船が真正面から挑もうとしているのを見て、上からしか突撃出来ないのでは?とそういう話になる。だが、カロルは怖いのか乗り気ではないようだ。しかし、それしか方法はないようで、バウルに上から行ってもらい、弾幕で攻撃されたが、弾幕の薄い左側から突っ込んでもらった。

 

だが、飛鳥はその衝撃から受身を取れずにいたので、気絶してしまったようだ。一行が何とか立ち上がる中、飛鳥は倒れたままだった。

 

「皆無事かって……アスカ?」

 

「気絶してるわね。着地の時に受身を取れなかったみたいよ」

 

「怪我は他にないみたいなのじゃ」

 

「アスカ、おい、起きろ!」

 

そうこうしてると、ルブラン達が登場した。まさか追っかけてくるとは思ってなかったらしく、ユーリ達は臨戦態勢をとる。ついでに、飛鳥を叩き起こそうとする。だが、なかなか起きないでいた。そんな時に、レイヴンが現れた。そう、生き埋めになったはずだったレイヴンが、ちゃんとここに居る事に驚いた。

 

だが、自身のした事が事だけに、ここで殺されるなら文句はない、と言わんばかりにユーリにドンの形見である脇差くらいの長さの刀を投げ渡す。やれ、と言っているがその漢字変換が殺れ、な事に一行はどうすれば良いのかわからない。

 

「俺はもう死んだ身なんよ」

 

「その死んじまったヤツがなんでここに来たんだ?レイヴン。あんた、ケジメをつけにきたんだろ。じゃあ、凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)の掟に従ってケジメをつけさせてもらうぜ」

 

そう言って、ユーリはレイヴンに近付くも、もらった刀を持ったまま、殴ったのだった。

 

「って〜」

 

「あんたの命、凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)がもらった。生きるも死ぬもオレたち次第。こんなとこでどうだ?カロル先生」

 

「えへへ。さすがユーリ。ばっちりだよ」

 

ユーリは刀を投げ捨ててカロルに聞く。OKをもらったユーリは少し進み、そこで待つ。次にカロルが飛び上がってレイヴンの頭を殴った。

 

「あだ!」

 

「とりあえずこれが罰ね」

 

そう言ってユーリの元へ向かう。次にジュディスが膝を着いたレイヴンに手を差し伸べたが、立ち上がらせた途端、顔面にグーパンチを食らわす。

 

「ぶへっ」

 

そして、何も言わず、先へ進む。次はリタだ。リタは、思い切りグーで腹パンだ。既に3発もパンチを貰ってヘロヘロなレイヴンにはリタの腹パンでよろけて壁にぶつかる。

 

「せっかくだからあたしもぶっとくわ」

 

と何やら笑顔だ。そして、次にパティが壁に寄りかかってるレイヴンにタックルだ。しかも位置的にお尻だろう。地味に痛いやつである。

 

「うちもやっとくのじゃ。アスカ姐!」

 

珍しく、パティの声が怒っていたように思う。飛鳥はついさっき目が覚めて、とりあえずは待機していた。鉄拳制裁に加わる気はなかったが、名前を呼ばれたので、とりあえずは参加する。

 

「あいてて……うん」

 

「アスカちゃん……」

 

「おかえり。でも、無茶しすぎ!帰ってこないと思ったんやからね!バーカ!」

 

「いひゃーーい!!!あふかひゃーん!?」

 

「バカバカバカ!!!心配したんだからねー!!!」

 

殴る、タックルは気が引けた飛鳥はレイヴンの頬を思い切り引っ張るにとどめた。だが、加減なんてしていないので、きっと真っ赤になってる事だろう。引っ張ってグリグリと引っ張った所を指で更に抓ったから。ちゃんと、こうやって、帰ってくるとは知っていたけれど、やはり原作と違ってくる所があるが故に心配だったのだ。

その後、レイヴンの情報により制御室に向かうのだった。

 

・・・

 

「なんか、アスカちゃんのが1番痛かった気がするんだけど」

 

「そりゃ、おっさんの事慕ってたんだし怒るだろ」

 

「まさかそんなに慕われてるとは思わなかったんだけど」

 

「慕うに決まってんでしょ!荒れてた頃の自分を受け止めてくれて、立ち直るきっかけをくれたんだよ?慕わない方がおかしいから!」

 

飛鳥はそう言って離れる。レイヴンに渡したままのお守りも回収するかどうかで迷っていたけれど、そのままにしておいた。役に立ったかどうかさえ分からない。だが、それでも帰ってきた。それでいい。

 

―とりあえず、これで良かった。大丈夫、大丈夫。

 

そうやって進むうち、動力室にたどり着いた。すごく厳重に警備されているのが遠くからでもわかる。諦めて制御室を探しに行くのだった。

 

「……アスカ、ちょっといいかい?」

 

「?」

 

「コレ、君がレイヴンさんに託したと聞いた」

 

「あ、それ」

 

「お守りだと言って、無理やり託されたって。でも、そのお陰で助かったって言っていた。だからこそ、聞きたくてね」

 

「これは、うちの防護壁を貼る力を込めただけの物。普段はただの石だよ」

 

「君のその力を?」

 

「そう。嫌な予感がした。だから、役に立つか分からないけど、渡した。ただ、それだけ。大丈夫、うちは咎人。だから、自分の為になんて使ったりしないよ」

 

「いや、そういう事を言いたかったんじゃないよ。ただ君が、記憶が戻ったって聞いてから随分無茶をするようになったな、って思って。だから、お守りを返すついでに話をしておこうって思っただけだよ」

 

「ユーリと同じこと言ってる。でも、そうしなきゃうちの使命を果たすことなんて、できっこない。この力を使いこなさなきゃなんないんだもん。『あの時』に備えて」

 

途中でそんな話をして、飛鳥はクスリと笑った。だって、あまりにもユーリと同じだったから。フレンもフレンだ。そんなこんなで、制御室前にたどり着いたが、そこに居たのは、ザギだった。いい加減、しつこい奴である。

 

「また、狙われるの……?」

 

飛鳥の予想は的中した。やはり、ユーリと飛鳥を狙ってきていた。飛鳥も最後に追い詰められて秘奥義を使った。が、その後に銃をぶっ飛ばされてしまう。

 

「あっ…!」

 

「ははははっ!!死ねぇ!!」

 

死ぬ訳には行かない、と咄嗟に庇って出した腕を斬られる。次いで、足も斬られてしまい、飛鳥はよろける。痛い。けれど、あの頭痛や、胸の痛みに比べれば痛くなかった。

 

「アスカ!!」

 

「いってぇ……!!もー!ほんっとに腹立つやっちゃなコイツは!」

 

飛鳥は、チャクラムに切り替え、ザギの足を狙うようにした。だが、怪我をしたせいで中々狙いが定まらない。しかし、それでも隙を作る事は成功し、なんとかザギをぶっ飛ばす事ができた。

 

そして、制御盤を操作し、止めることができた。だが、そこで飛鳥は嫌な予感がして、ザギがぶっ飛ばされた所を見ていた。すると、紫のレーザーが飛んできたのだ。1発は防いだが、2発目は止められなかった。全員が被弾し、満身創痍となる。

 

「っ、ぅぐ……!」

 

「おいおい、マジかよ」

 

だが、そこでゴーシュとドロワットが現れ、ザギを蹴り飛ばし、イエガーがトドメと言わんばかりに銃で追撃。もう一度ぶっ飛ばす事に成功したのだった。




というわけで、神殿を出た所〜でした。

次回はザギを倒した後から〜になります。


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54戦目

とりあえず一気に投稿!

ザギ戦後〜になります。


・・・

 

あの後、ゴーシュとドロワットの治癒術により何とか動けるようになったユーリ達。飛鳥もギリギリ治癒効果を受けたられたようで、体が軽い。だが、アレクセイはザーフィアスで良からぬことをしようとしている、エステルを使って、とそう言い残し、イエガー達は姿を消した。

 

「制御壊れてるとか!」

 

何とかしようにも、壊れていて何も出来ない。動力室に向かうと、ソディアが1人で動力室の警備と戦っていた。なんとか助けに入ると、ソディアはかなりユーリらに対し敵意むき出しだった。だが、エステルを救うのが最優先とし、なんとか衝突は免れた。フレンは隊の指揮を執る為に一時離脱。

 

そして、動力室に入るもエアルが暴走し、今にも主砲をぶっ放しそうになっていた。ユーリの持つ宙の戒典(デインノモス)で何とか暴走を沈めたが、それでも主砲が放たれるのを防ぐことは出来なかった。

 

だが、フレンの指揮により、船をぶつけてヘラクレス自体をずらし、主砲の起動をずらす事が出来た。しかし、喜んでもられない。帝都に向かうため、ユーリ達はバウルに運んでもらった。

 

そこで、エアルの乱れを辿り、エステルとアレクセイを見つけた。何とかバウルに運んでもらい、近付く。相変わらず球体に閉じ込められたエステルはアレクセイにより、助けようとして飛び出したユーリを弾く。そこを、飛鳥がすかさず防護壁を貼って、ユーリを船の甲板に叩き付ける形で何とか船の外に飛ばされるのを防いだ。

 

「ってぇ……!」

 

「ごめんユーリ」

 

原作ではユーリは吹き飛ばされるが、船に付いているロープを掴んで何とか無事だが、今は分からない。原作通りに進む所もあるが、そうでないところがある。だから、飛鳥は助かるかもしれないけど助かるかも確証がなかったから、無理やり助けたのだった。

だが、助けたのもつかの間、すぐさまアレクセイにより、ユーリ達はバウルごと吹き飛ばされてしまった。

 

・・・

 

「ん…………生きてる…………!っ!!ってぇ……。……みんな生きてるか?」

 

「私はなんとか」

 

「クゥー…ン」

 

「生きてるっちゃ生きてるけど、無事かと言われると微妙よ。何本か骨いっちゃったっぽいわ」

 

「船もメチャクチャじゃ……許すまじ、アレクセイ…………いてて………」

 

「ユーリ……痛いよ……」

 

「エステルのあれ……宙の戒典(デインノモス)と似てた……多分、幾つも聖核(アパティア)集めて同じことやろうと……」

 

「無理して喋んな」

 

全員の安否を確認する中、飛鳥の声だけが聞こえなかった。ユーリが見渡すと、後ろに倒れたままの飛鳥がいた。息があるか確認すると、生きてはいた。

 

「“飛鳥”!!生きてるか!」

 

「っ、げほっ……ごほっ……っ、ぅ……ぐ……うん、何とか、生き、てるよ……」

 

ユーリが名前を呼ぶと、飛鳥はモゾモゾと体を動かし、起き上がろうとした。しかし、咳き込み吐血しており、動きもぎこちない。起き上がるのは厳しそうだった。

 

「お、おい!!無茶すんな!」

 

「大丈夫、だよ……これ(吐血)は、力使った、反動、やから……ごめん、ね。衝撃、殺しきるの、無理だった。3割くらいしか、減らせて、なかった……」

 

そう言って、ごめんと謝る飛鳥は、満身創痍で。しかし、目をつぶって深呼吸した後には、起き上がっていた。無理するなと言われたのに、起き上がる飛鳥は本当に痛みを感じているのか、と疑いたくなるようだ。

 

「ここはカプワノールの近くのようね。ノール港に行きましょう」

 

「それがいいね」

 

・・・

 

ユーリ達はなんとかノール港にたどり着き、医者を探していると。ティグルが現れた。医者を知らないか、と問うユーリに知っていると告げ、宿屋まで手配してもらった。

 

「助かったよ。ヘリオードから戻ってきてたんだな」

 

「はい。あの時はお世話になりました。あら、貴女もこの方達と一緒に?」

 

「のじゃ」

 

なんて話をしつつ、ひとまず休むことになったのだった。ただ、ユーリは一行の中でも割と動けるようで、情報収集に出掛けるのだった。

 

「ねぇ、アスカ」

 

「うん?」

 

「アンタ、あん時ユーリを甲板に叩きつけたわね」

 

「う……ごめん。ユーリが船から外れてるって思って……」

 

「ううん、それで良かったと思ってるわ。アンタがしてくれなきゃ、もしかしたらユーリは落ちてたかもしれないもの」

 

「そう、かな……」

 

「アスカちゃんも休みなよ?血を吐くほど、怪我酷いんだから」

 

「だから、吐血は力の反動だってば。怪我じゃないよ。流石にこのくらいの怪我するの、久々過ぎてすぐには動けなかったけど。慣れたらどうって事ないよ」

 

口ではそうやって痛いだの何だの言っているが、あまり痛そうにしてないところを見ると、堪えてないらしい。やはり、昔の経験からして、そういう事には慣れてしまっているらしい。

 

「アスカちゃん、流石ね。でも、痛かったらちゃんと素直に言った方がいい」

 

「そりゃ痛いよ。けど、大丈夫。動く分には少し動きは鈍るだろうけど、それ以外は大丈夫。あ、そうだ」

 

飛鳥はふと思いついて、カロルにお守りをカバンに忍ばした。確か、この先にカロルが危なくなる所がある筈だと、信じて。

 

そうこう話をしてるとユーリが戻ってきた。どうやらヘラクレスの主砲でエフミドの丘あたりに穴が空いていて、通れないとの事。ティグルからゾフェル氷刃海の話を聞いて、そこに向かうのだった。

 

・・・

 

寒い中進んでいくが、その途中でバイトジョーという魔物が見える。パティ曰く、その魔物は背中がトゲトゲでかなり頑丈な魔物らしい。それ聞いて、アスカは思い出した。ここは、カロルのあの名シーンだと言うことを。だからこそ、どう変わるのかが怖かった。

遅れないようにしながら、飛鳥も着いていく。行く先々でバイトジョーに邪魔されつつ、進むと。

 

エアルクレーネのある場所にたどり着いた。ただ、このエアルクレーネは活性化はしてなかった。ただし、バイトジョーが出てきて、水中から飛び出し咆哮を上げた。すると、不活性だったはずのエアルクレーネが活性化し始めたのだった。

 

ユーリにぶっ飛ばされたカロルは逃げろと言われても逃げなかった。そして武器を掲げ、威嚇した。だからこそ、バイトジョーは先にカロルを何とかしようと標的を変えたのだった。

 

カロルは巨大な相手に臆せず立ち向かう。普段なら仲間たちと共に戦ってるはずの魔物。それを一人でやるのだ。それでも、カロルは逃げずに戦い、何とか近づいて

殴るも、ぶっ飛ばされる。

 

「ち、ちょっと油断したかな」

 

だが、立ち上がって、バイトジョーに立ち向かう。ダメージを与えつつ、何とか距離をとる。

 

「み、みんなを守るんだ。逃げるもんか……!」

 

だが、武器を弾き飛ばされてしまう。逃げろと何度言われても逃げなかった。

 

「大丈夫なんだよ。だって、みんながいるもん」

 

「カロル………おまえ……」

 

「ボクの後ろにはみんながいるから。ボクがどんだけやられても、ボクに負けはないんだ」

 

カロルは満身創痍だ。しかし、諦めず、そして剣を見つけた。それも大剣でカロルの身の丈よりも随分と大きいだろう。そんなものだ。だが、それを手に取ったと同時にバイトジョーにより、空へ巻き上げられてしまう。だが、大剣でエアルクレーネを活性化させてる角を傷つけ、活性を止める。

 

だが、地面に落ちたカロルを狙うバイトジョー。ユーリ達も走るが、間に合わず、カロルもダメージの蓄積から動けなかった。だが。

 

「あ、動、け……ない……」

 

その牙がカロルを襲おうとした途端。カロルを防護壁が守る。その事にユーリ達は飛鳥を見る。だが、飛鳥は心臓を押さえていて、とても術を発動させている状態ではなかった。ならば、今の防護壁は……。

 

「え……これ、アスカの?」

 

「よかった、お守り渡しておいて」

 

「え?お守り!?いつ!?」

 

「ナイスだアスカ!」

 

「宿屋で寝てる時。こっそり、カバンに、入れといた」

 

言われてカバンを探るカロル。確かに飛鳥が持っているお守りが出てきた。ほんのり光っているところを見ると、発動したと見ていいらしい。

 

「ねぇ、もう少し持っててもいい?後で返すから」

 

「うん、ええよ」

 

そうして、ユーリ達は改めてバイトジョーに戦いを挑むのだった。




というわけで、ザギ戦〜でした。

次はバイトジョー戦〜になります。


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55戦目

第2部ももう少しで終わりかな?

バイトジョー戦〜になります。


・・・

 

バイトジョーに皆で立ち向かう。微妙に浮いているせいでユーリやカロルの攻撃が中々当たりにくい。飛鳥も銃メインで戦うようだ。だが、やはり怪我が響くのか、よく吹き飛ばされていた。

 

しかし、皆でよくもカロルを!という思いでバイトジョーをフルボッコにする。飛鳥はズキズキと痛む体に何とか鞭打って攻撃するも途中で力尽きてしまい、意識を飛ばしてしまった。

 

「おい、アスカ!?」

 

「頭を強く打ったようね」

 

だが、ものの数秒で立ち上がり、痛いだのなんだの言いつつも援護していた。

 

―やばい。頭打ったせいか、クラクラする。標準も、合わない……!

 

内心、慌てていたがそれでも表には出さず、しっかり標準を合わせていた。経験がそうさせるのだろう。そうして何とか倒したまでは良かった。だが気が緩んだカロルが気絶してしまったようで、飛鳥と違って起きないらしい。何とかここを早く抜けるために、ユーリ達は急ぐのだった。

 

・・・

 

出口でようやくカロルが目を覚ましたようで、回復したようだった。途中から狸寝入りしていた事をジュディスに見抜かれていたが許されているようで、仲も険悪にはならずにすんだ。帝都の状況を知るには、ハルルが良いだろう。そういう事になり、ハルルに向かうのだった。

 

そうして、ハルルに到着するも、カロルが熱でダウン。宿屋で一悶着あったものの、何とか泊まることができた。ひとまずカロルが回復するまで情報収集をすることに。

 

とりあえず、国のお偉いさんがいるとの事で向かうと、そこにはヨーデルがいた。帝都がどうなっているのかを聞いてみると。

 

「帝都は……ザーフィアスはもう人の住めない街と化しました」

 

「街の結界魔道器(シルトブラスティア)が光を発して……地震と落雷が街を襲った……」

 

「ですが本当の恐怖はその後でした。結界魔道器(シルトブラスティア)の根元から光る靄のようなものが現れて全域に広がったんです。触れた植物が巨大化して、水は毒の沼のように……地獄のような光景でした」

 

「エアルの暴走だわ……」

 

変貌した帝都から命からがら逃げ出してきたというヨーデル達。だが、下町の連中は置いてきたらしい。それを聞いたユーリはかなりお怒りのようで、話を聞いた途端、宿屋に戻ると、そう言った。

それから、宿屋に戻って話すも手詰まり。ユーリはそんな中、そのと空気を吸うと言って出ていった。すると。

 

「ねぇ、アスカ。これ、ありがとう」

 

「ん」

 

カロルから手渡されたお守りを受け取り、飛鳥はお守りを大事そうに抱えた。そして自分の首からかけた。

 

・・・

 

夜も遅いということもあり、ユーリが帰ってくる前に皆は先に就寝した。しかし、朝起きてみると、ユーリは見当たらなかった。散歩と言っていたが。

 

「多分、ユーリ1人で行ったと思う」

 

「やっぱり?アスカもそう思う?」

 

「だよね!絶対1人で行っちゃったよね!」

 

「青年、1人で行っちゃったのかねぇ」

 

口々にそう言いつつ、出発しようとした時だった。ラピードが、1匹で現れた。どうやら、当たっていたらしい。ラピードに導かれるままに進むと、クオイの森で寝ているユーリを発見。

 

「……ユーリのバカーーーっ!!!」

 

「おわっ!?なっ?え、あ?カロル!?」

 

「バカ!アホ!」

 

「ちょ、まて、おい!」

 

「トーヘンボク!スットコドッコイ!!」

 

「スットコって……待てって!」

 

すかさず、カロルが手持ちの大剣で殴り掛かる。ワタワタする所を、リタが魔術を使う。

 

「言い訳はあとで聞いたげる」

 

「へ!?」

 

「一回、死んどけ!!」

 

「ごわ!!」

 

リタの魔術で吹っ飛んだユーリはパティ、ジュディス、レイヴン、飛鳥の待つ所へ。生存確認した所で、ジュディスは拳を握る。ついで、起き上がったユーリに飛鳥は思い切り銃で殴った。ついでに転んだユーリのベルトにお守りを結んでつけた。きっと、紐は頑丈な物にしておいたからちょっとやそっとじゃ、切れないはずだ。それから、沢山力を込めて置いといたからきっと、大丈夫。

 

「いって!!?」

 

「バカバカバカ!!!置いてくな!!ほんっとに、何かあったらどうすんのさ!!」

 

「ア、アスカ!?落ち着けって……!」

 

そのようなことをすると思ってなかった飛鳥からの攻撃にかなり驚いているユーリ。そして、その時の顔が泣きそうになっていたから尚、驚いていた。

 

「悪かった、悪かったから、その、落ち着け、な?」

 

「…………」

 

無言でユーリを見る飛鳥は、途中で目を逸らした。流石に怒っているらしい。が、その後に皆からも一人で行くなと言われ、皆で帝都に行く事にした。

 

デイドン砦に向かうも空っぽで、引き返しているところに、フレンがいた。だが忙しそうに指示を出しているところを見ると、忙しそうだ。だが、ユーリを見つけるとすぐに駆け寄り、2人で少し話をしたいと言った。ユーリは直ぐに、OKを出したらしく、少し離れたところで話をし始めた。

 

「オレは腹をくくった。その上で望みを拾いに行くんだ。お前はどうする?」

 

「ずっと考えていた。法とはなにか、罪とはなにか。良いものと悪いものの境はどこにあるのかと。さんざん考えて、出てきたのははっきりした線引きはできない、という分かりきった答えだけだ。法が必要だという思いは今でも変わらない。それでも君を悪だと呼ぶ気にはなれない。だからせめてこれ以上、繰り返さずにすむような世の中を作りたいと思った。……それなのに、今またこんなことになるなんて」

 

「なら一緒に行くか?どうせ帝都はエアルだらけで騎士団は入ることができねえはずだ。オレらとなら、全員は無理でも多少はなんとかなるかもしれねえぜ」

 

そう言われ、考え込むフレン。そこで、戦闘機械の軍団がくるとの知らせ。2人は現場に戻る。すると、フレンはユーリに託すことにした。託されたユーリは仲間と共に帝都に向かうのだった。




というわけで、もうすぐ第3部ですかね!

次回は帝都〜になります。


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56戦目

奥義のカットイン描きたいけど難しいー!!

今回は帝都〜になります。

ちょっと夢主の事で寄り道しすぎてほぼ進んでません……ごめんなさい!!


・・・

 

フレンと別れてから、帝都を目指していたユーリ達。いざ帝都に入ってみると。ヨーデル殿下の言っていた通り、植物は巨大化し、水も毒々しい色になってしまっている。

 

「オレから離れるなよ。特におっさんとアスカ」

 

「ん?どうしてうち?」

 

「お前、自分の力の事忘れてねえよな?」

 

「あー……」

 

確かにユーリの言う通りであった。自分は、力の関係上エアルの影響を人よりも多く受ける。だが、わざと今のうちに慣れても良いのでは?と思わない訳ではなかった。なぜなら、飛鳥は不安で仕方がなかったからだ。

自身の力に関して。確かに、旅を通して飛鳥自身も強くなった。

 

それは、力の使い方もそうだ。エステルの力を自身の取り込んだエネルギーにより相殺したり、自身に取り込む形で抑え込むことが出来るようになった。遠隔操作もできるようになった。防護壁だって、何度か貼ってもバテなくなった。広範囲に貼ることもできるようになった。1回の攻撃で破られなくなった。咄嗟に思い描いたように貼れるようにもなってきた。

取り込んだエネルギーを武器に付与する事によって、飛鳥以外のメンバーでもあの世界の修正力とやらにも攻撃を通す事が可能になった。

 

だが。それでも。それでも、肝心のエステルの力を抑える、相殺する力を発揮出来なければ、ダメなのだ。飛鳥の役目は原作ではリタがどうにかしてエステルの力を抑えたのを、代わりにか手伝いとしてやらねばならないはずだ。きっと、リタがやってくれるだろうが、予想外な事が起きるに違いない。

 

そして、きっと。ユーリが一刀両断する、アイツ。アレの時にきっとなにかが起きるはずだ。世界の危機はエステルの力の制御と、星喰(ほしは)みの排除に掛かっているのだから。それは、知ってた。これからの事を知ってる。だけど。だけど。知っていても、きちんと動けるのだろうか。どうしたら良いのだろうか。不安が重くのしかかり、押し潰されそうになる。

 

「アスカ姐、大丈夫かの?」

 

「………」

 

「アスカ?」

 

名前を呼ばれても反応を示さない飛鳥は、ぼーっとしているようだが目に光がなかった。おかしいと思ったユーリが強めに名前を呼ぶ。

 

「おい、アスカ!」

 

「ねぇ、どうしよう。うち……!ぅ……ぁ……!!」

 

しかし、飛鳥は目に光を宿さないまま、ポロポロと涙を流し始めた。どうしよう、と言いながら。今の今まで泣いた姿を見たことがないが故に、驚く一行。

 

「何をどうするわけ?そんでもって、落ち着きなさいよ!泣いたって分からないでしょーが」

 

「いきなりどうしたの!?」

 

「どうしよう、うち……こわい。こわいよ。どうしよう、失敗したら。ねぇ、どうしたらいい?」

 

同じ言葉を繰り返す飛鳥を見て、レイヴンがそっと頭を撫でた。何かを悟ったのだろう。荒れていた飛鳥を見ていた事がある彼だからこそ、何か感じる所があるのだろう。ユーリもドンから聞いた話を思い出し、錯乱状態とやらになってしまっているのだろうか。と思考を巡らせた。

 

「っ…!!」

 

「大丈夫、アスカちゃん。失敗したって、俺達がいるでしょ?何をそんなに怯える必要があるのよ?」

 

「だって。だって、だって!!うちは、何にも出来ない」

 

「“飛鳥”。ちったぁ落ち着きやがれ」

 

「そうよ、“飛鳥”ちゃん。ほら、深呼吸して」

 

言われるがまま、深呼吸をすると。1度目をつぶる飛鳥。そして。

 

「―――。ごめん、復活。“トリガー”引いたわ」

 

「お、戻った?おかえり。どうしたのよ?珍しいじゃない」

 

「あー、うん。この先の事を考えて、不安になりすぎてプッツンした。ごめん。ダメだなー、大丈夫な筈なのに。ほんっとにこのポンコツ」

 

頭を抱える飛鳥は元に戻ったようだ。どうやら、目をつぶって深呼吸すると、気持ちを切り替えるよう、自身に暗示でもかけているようだ。戻った飛鳥はやはり、いつも通りの飛鳥だ。目に光も宿っている。

 

「ねぇ、アスカの事話してくれない…?そんなになるまで抱えてるの、しんどいでしょ?」

 

「確かに、しんどいよ。今すぐにでも、死んで逃げてしまいたいくらい。だけどね、それは出来ないから。それをしちゃうとさ、使命が果たせなくなっちゃう。こんなポンコツ野郎でも、救えるって言われたから、頑張るよ」

 

「アスカ……ダメだよ!頑張るんじゃなくって、休憩するの!訳わかんなくったっていい!ちゃんと気持ち吐き出してよ!!アスカ言ってたでしょ!!本気で辛い時、悲しい時、吐きだせって!」

 

カロルに言われてきょとんとする飛鳥。すると、飛鳥の中のどこかで、パキン、と音がした。どこかで、暖かい何かに包まれた感覚がした。きっと、自分が言って欲しかった言葉を言ってもらったからだろう。

 

「…………じゃあ、ちょっとだけ」

 

「全部!」

 

さんざん悩んで、少しだけと言った飛鳥にカロルは全部だと、そう告げる。ついでに「これは首領(ドン)からの命令だからね!」と言われてしまえば、飛鳥は逆らうことが出来なかった。

 

「っ、〜〜〜……絶対聞き流してね。今からうちが言うのは、ただの独り言だから。 ……どうして、うちを選んだの?どうして、うちみたいなヤツを選んだの?ねぇ、どうして?どうして、うちみたいな出来損ないを選んだの?なんで?うちみたいなのを、救おうとしたの?うちは、なんにも出来ない、引きこもりなんだ。何にもできないクズなんだ。 なのに、どうしてそんな事ないって言えるの?ねぇ、どうして?うちには、そんな事出来っこないのに、どうして出来るって言うの?」

 

次第に、飛鳥の頬を伝う涙。だが、それを拭おうとはしなかった。ひたすらにどうして、繰り返す飛鳥。自分が何も出来ない奴だと認識しているが故に、周りがどうして自分が何か出来る奴だと、強いと言うのかが理解出来いようだ。

 

「ずっと、そんな思いを抱えていたのね、貴女」

 

「だって、急に世界を救えなんて言われて!!うちの世界には、魔法も剣術もなかった!!こんな魔物なんていなかった!そんな世界に飛ばされて!!何をどうしろって言うんさ!!?」

 

「アンタはしっかりやってるじゃない!無茶しがちだけど、アンタの力で救われたことは何度でもあるわ!!もっと自信を持ちなさい!このあたしが言ってあげてんのよ!?」

 

「…………」

 

「アスカちゃん、何を抱えてるの?」

 

「言えない…!言えないよ…!!だって、言っちゃったら、変わるかもしれない……!怖い…!」

 

レイヴンが抱えてるモノが何かを問うと「言えない」と言う。

 

「“飛鳥”、何をそんなに怯えてんのかわかんねえけど、話してみろ」

 

「……ある事を、知ってる。だけど、その通りに行くかどうかは、わかんなくて。あの通りに行くかどうかは、うち次第。だから、とても怖い」

 

「あの通りにならなかったらどうなるんだ?」

 

「きっと、世界が滅ぶ」

 

「「「!」」」

 

半ばユーリに誘導尋問されるように、自身が未来を知っている事、結末通りにしないといけないと、世界が滅ぶであろう事をギリギリ、はっきり言わないようにしながら言う飛鳥。

 

「……使命がなんかのか知らないって言ってたよな?」

 

「知ってるよ。どんな使命か。きっと、アレを何とかして、それから“その時”に力を使えばいいの。ただ、それだけ」

 

「それだけなのに怖いのか?」

 

「怖いよ。ううん、大丈夫。どうせ、うちは―――」

 

飛鳥は涙を拭って、大丈夫だと告げた。そして、こっそりと呟く。

 

「この世界から、消える筈だもん」

 

その呟きは誰にも聞き取れなかった。ただ、ラピードには、しっかりと聞こえており、「ワン!」と抗議の声を貰った。それを聞き取った飛鳥は悲しそうに笑って、そして、「秘密だよ」と告げた。

 

 

そしてユーリ達は、異界と化した帝都を進み、何とか城への出入口わ見つけ、中に入る事に成功したのだった。

 

 




というわけで、トリガーを引いちゃった飛鳥ちゃんでした。

次は城の中〜になります。


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57戦目

凄いですねぇ……気がつけばもうすぐ60話!

今回は城に入った所〜になります。


・・・

 

城に入り、進んでいくと、城内にはエアルがなかった。リタ曰く、エステルの力を使って、エアルを無くしているのでは?との事。それから、もっと奥へ進むと人の気配がする扉の前に到着。

 

ひとまずすぐ動けるよう一行が壁にそって並んだ時だった。叫び声と共に3人に人影が飛び出し、目の前の壁に激突した。その人影はルブラン達の3人組だった。

驚いていると、ユーリの耳に知り合いの声が響いた。

 

「ユーリ!?ユーリか?」

 

そう、ハンクスだった。どうやら、下町の彼らを城まで誘導したのはルブラン隊のようで、レイヴンを見つけると畏まり、揃って「命令違反の罰は受ける」との事。ただ、今の自分はレイヴンはシュヴァーンではない事を伝える。ただ、労いの言葉をかけたのだった。

 

そして、アレクセイが何処にいるのか尋ねてみると。どうやら、御剣(みつるぎ)階梯(さぎはし)という所にいるらしいが、どうにも偉い人しか入れない仕掛けがあるとの事。

 

ひとまず何とか出来ると踏んで先に進むユーリ達は、謁見の間にたどり着く。そこには、クロームというクリティア族の女性が現れた。どうやら、アレクセイの秘書だったらしい。一行に対し、色々と遠回しに言ったが、結局の所、アレクセイを止めてほしい、という願いを言いに来たようで、伝え終えるとその場を去って行った。

 

とりあえず、城の中を探してみると、仕掛けを解くヒントらしきものがあった。あれやこれや……と話しながらなんとか時間がかかったものの、仕掛けは解くことか出来た。開かれた扉の先に進むと。とても長い急斜面な坂が続いた。

 

その先に、アレクセイとエステルがいた。問答するも、平行線。それに、エステルを返せと言ったら簡単に解放したのである。何かあると踏むのが道理。そして、やはり、エステルになにかしていたらしい。エステルは、アレクセイに操られていた。ユーリに切りかかるエステルの目に光はなかった。

 

ユーリ達は戦う。操られているとは言え、仲間だ。傷付けるのは気が引ける。だが、向こうはそんな事はお構い無しでこちらに剣を向けてくる。だからこそ、飛鳥は自身の力で防いだ。

 

「アスカ!?」

 

「大丈夫、エステルはちゃんと戻れるよ」

 

「アスカ……?」

 

そうやって戦うも、向こうの力は無尽蔵なのか、少しよろめかせる事は出来ても膝を付かせる事が出来ず、ユーリ達も、体力の限界がやってくる。そんな諦めの悪い様子を見たアレクセイは、更にエステルに何かを施す。

 

すると、光が放たれ遠く彼方へ光が一直線。そして、大きな遺跡が現れる。だが、それは壁画にあった魔導器(ブラスティア)であるとアレクセイが明かす。どうやら、ザウデ不落宮という名前らしい。

 

その名前を聞いた途端、飛鳥はズンと胸に重いものがのしかかる感覚がした。同時に、ユーリのベルトにキチンとお守りが付いていることを再確認し、ホッと胸を撫で下ろす。

 

そうした所でアレクセイは自身が呼び起こしたザウデ不落宮に姿を消した。後を追おうとするも、操られたエステルが攻撃をしてくるので、応戦する他何も無かった。アレクセイがエステルの力を連発するせいで、宙の戒典(デインノモス)を持つユーリとエステルの力を消すか相殺出来る飛鳥以外は膝をついていた。

 

「っち!しっかりしろエステル!」

 

「エステル、大丈夫。大丈夫だから、帰ってきて!誰も、傷付いたなんて思ってないから」

 

「ダメ……傷つける前に……殺して……」

 

「やだ。誰が殺してなんかやるか」

 

そんな問答をしながらも撃ち合いを繰り返す。ユーリに攻撃がいっているので、飛鳥はユーリが危なくなったら援護をする程度だ。しかし、それでも飛鳥にも容赦なく斬りかかってくるエステル。そんな彼女に対し、飛鳥は、銃を使うのはやめていた。全てチャクラムで応戦していたのである。

 

「おいアスカ!何で銃にしねぇんだ!」

 

「今のうちは銃だと殺しちゃうかもしんない。だから、チャクラムでええの」

 

「それは、どういう、事だ!?」

 

ユーリはエステルの攻撃を受け止めながら飛鳥に問う。何故、と。銃の方が得意な上にもっと動けるはずだ。それなのに、チャクラムにこだわるのは何故だ。

 

「そのままの意味。怖いんだ。うちは、殺したくないから。だから、チャクラムでいいの。大丈夫、死なないよ」

 

そう言っていたが、しばらく撃ち合った後、飛鳥はエステルにぶっ飛ばされてしまい、受身を取ったものの、今のエステルがその隙を見逃してくれるはずもなく。剣が振り下ろされる、その瞬間。ユーリが寸での所でエステルの剣を弾いた。

 

「アスカ、大丈夫か?」

 

「ごめんね、ありがとう。大丈夫」

 

飛鳥は、立ち上がろうとして、足に力が入らない事に気が付いた。立とうとして、出来ずにその場で滑って地面に倒れる。

 

「アスカちゃん!?」

 

「ちょっと、大丈夫、なの!?」

 

「あ、れ……力が、入らへん、や……」

 

「アスカ、休んどけ!あとは、オレがやる」

 

「……わかった」

 

飛鳥は大人しく膝を着いて息を整える。そして、座った状態で、ユーリに本当に危ない時にのみ、防護壁で援護をした。そうしていると、やっとの所でエステルの剣をユーリが弾き飛ばした。

 

「お前は道具のまま死ぬつもりか!!帰ってこい、エステル!!!」

 

ユーリがここぞと言わんばかりに声を出す。すると、その声はエステルに届いたようで、段々と彼女の目に光が宿る。そして。

 

「わたしはまだ、人として生きていたい!!」

 

その声と共に辺りに力が溢れ、そして視界はホワイトアウトした。気が付くと、エステルが戻っていた。しかし、すぐにシステムが暴走し、エステルは再び球に囚われる。今度は赤色だ。

 

リタがすぐに何とかしようとするも、聖核(アパティア)の代わりがないので、どうしようもなかった。ただ、ユーリの持つ宙の戎典(デインノモス)を使えばどうか、という提案に、それを使って何とかやってみるとの事。

 

そうして、エステルの周りに集まったユーリ達はリタが術式を操作し終えるのを待つ。操作が終わると皆の足元に白い魔法陣のようなモノが現れる。そして、ユーリの剣を使い、システムの暴走は収まった。が、すぐにまた暴走をしはじめてしまう。

 

「うそ……」

 

「大丈夫」

 

「アスカ?」

 

「エステル!気をしっかり持って!!絶対、大丈夫だって思え!!」

 

「で、でも!!」

 

戸惑うエステルに飛鳥は根気よく大丈夫だと告げる。

 

「大丈夫!!うちが何とかするから!!」

 

「え……!?」

 

「大丈夫。うちの力は、この時の為にもあるんだ……!!!」

 

飛鳥はそう言ってエステルに手をかざし、力を使う。だが、上手くいかず、1度は弾かれ吹き飛ぶ飛鳥。しかし、すぐに立ち上がり、エステルに再び手をかざし、もう一度、力の抑制を試みる。

 

「大丈夫。――“我が力は月の力なり!それ即ち、万力に対し絶対を誇る力である!我が身に宿る力よ、我が声に応えろ!!”クーペオブフォルス!!」

 

飛鳥が呪文を唱えると、青い光がエステルを包む赤い球体を破壊する。すると破壊したそばから、飛鳥へと力が流れ込んだ。それは、エステルには余剰な力で、きっとこのまま空中に散らしておくのも悪影響だろう。それが瞬時に理解出来たからこそ、飛鳥は自分で吸い取った。

しかし、かなりの量を吸ったが為にズンと重くなる身体に、よろめく飛鳥。更には、膝を着いてしまった。

 

「アスカ!!」

 

「っ、う……ごふっ!!」

 

「「「!」」」

 

「げほっごほっ……!!」

 

飛鳥は立ち上がろうとせず、そのまま吐血する。あまりの負荷に身体が耐えられなかったらしい。だが、それでも少しして落ち着いた飛鳥は、乱暴に口を拭く。肩で息をしているのに、無理やり息を整える。

 

「アスカ!大丈夫か!?」

 

「だい、じょーぶ。成功、してるから……」

 

飛鳥は落ち着いたのもあって立ち上がろうとしたが、そのまま倒れた。顔色も悪い。大技を使ったのだから、当たり前だ。すぐにリタが駆け寄る。どうやら気絶しているだけとの事が分かり、改めてエステルが帰ってきた事を喜ぶのだった。




お仕事やだよぅ……元気な時に有給で休みたいよぅ……

次回は決戦前夜〜になります。


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58戦目

そろそろ飛鳥ちゃんの第2奥義も習得させないとだなー……

決戦前夜〜になります。

また飛鳥ちゃんのことを掘り下げてます。


・・・

 

エステルが無事に帰ってきてから、ユーリ達は城で休ませて貰うことになった。それぞれが好きに過ごす中、ユーリは仲間の様子を見に行くことにした。

それぞれが決戦に備えてやるべき事をしていた。誰も、絶望的になどなっていない事に安心したユーリは最後に飛鳥の元に向かった。部屋に入ると、飛鳥は起きていた。

 

「よぅ、アスカ。大丈夫か?」

 

「うん、まだちょっと身体が重いけど大丈夫だよ」

 

「……頑張ったな」

 

「――!」

 

「お前が頑張ってくれなかったら、落ち着けなかったからな」

 

ユーリにそう言われて、目を見開く飛鳥。それから、すぐに目を閉じて頷いた。

 

「うん、頑張ったよ。とっても疲れた。でも、よかった。これであとは半分だ」

 

「半分?」

 

「使命の半分。エステルの力の抑制か制御。それから、もう1つ」

 

「アバウトな使命じゃなかったのか?」

 

ユーリがそう言うと、しまったという顔をした飛鳥。だが。ポツリポツリと話し始めた。

 

「そうだよ。使命自体は『世界の危機を救え』だよ。変わらない」

 

「ならなんで」

 

「知ってるんだ。ぜーんぶ。だからだよ」

 

「知ってる?」

 

「そう。知ってるの。大丈夫、上手くやるから。エステルの力の事も何とかなったし、この力もなんとか使えるだろうし」

 

「無茶すんなよ。お前にとってその力は、負担がでかいんだろ」

 

「んー、多分。もっと、力を使いこなしてたらね、へーきだったと思うんだ。けど、うちはポンコツだからね。使いこなすのも時間かかった。アレだって土壇場で、やらなきゃ死ぬって思ってやっと出来たんだから」

 

そう言って飛鳥は視線をふ、とそらす。ユーリは否定しようとして飛鳥の手の甲にあるモノに目がいった。黒の印だ。輪っかを交差させて中央に丸がある、印。前までこんなものあったのだろうか?

 

いや、最初はなかったはずだ。そう思ったユーリは飛鳥に問い掛けた。もしかしたら、はぐらかされるかもしれないが、一か八かだ。

 

「おいアスカ、その手のはなんだ?」

 

「え?……あ。これ、リタを魔導器(ブラスティア)の爆発から助けた時に急に出てきたんだよ。まぁ、大方力が覚醒しましたよーみたいな印でしょ。別に痛みもないし、何の問題も無いから……アレ?なんか色々増えてる。前は輪っか一つだけだったのに」

 

「そうなのか?」

 

「……覚醒したから、かな。大丈夫、力が強くなりましたよーって証みたいなもんだよ。最初より力を使いこなしてたきたから、多分ね」

 

「そうか」

 

しばらくそうやって話しているうち、ユーリはふと思いついたことを言ってみた。前に言っていたことだから、忘れてるかもしれないが。

 

「“飛鳥”、お前自分の気持ちを表に出すのが、素直に出来ねえんだろ。過去の事があって、他人を頼ること、信じることが怖くて、偽った。それが染み付いて、今でも素直に言えない、違うか?」

 

「っ!!」

 

飛鳥は、ユーリに言われた事が正解で、何か言おうとしたのに、言えなかった。そして、ユーリの言葉により、ずっと、奥底で蓋を閉めていた感情が溢れ出した。それは、涙となって外へ出てしまう。ずっと、ずっと誰かに聞いて欲しくて、でもこんな気持ちは他人を不快にさせると分かっているが故に言えなかった気持ち。

 

「うん、そう、だよ……ずっと、誰かに助けて欲しかった。助けてくれる人が現れて欲しかった。うちは、何の悪いこともしてないのに、悪者扱いされて、ずっとずっと辛かった。うちは、何もしてないのに」

 

「………」

 

向こう(現実世界)には、居場所なんてなかった。だけど、こっち(テルカ・リュミレース)にきても、それは同じだった…!!だって、うちが来たからあの黒い魔物が来た。異物だと、お前は本来居ない奴だから、消えろって。ねぇ、うちはやっぱり死んだ方がいいの?生きているだけで罪を重ねるなら。咎人なら。居ない方が、いいのかな?」

 

「お前は、ギルドに必要だ。これまでに何度もお前に助けて貰ったしな。特にアレクセイにぶっ飛ばされた時なんて船から落ちるかと思った。けど、お前が助けてくれただろ?」

 

「うん…!でも、でも……!!」

 

ここに居ていいよ、と。そう言われても飛鳥は泣き止むことはなく、ポロポロと涙を流し続ける。まだ、納得出来ていないらしい。

 

「“飛鳥”、お前は“飛鳥”でいいんだよ。無理に『アスカ・ツキシロ』になろうとしなくったっていいんだ。お前は、『月城飛鳥』なんだろ?」

 

「うん、だけどいいんだ。ありがとう。うちは『アスカ・ツキシロ』。ギルド凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)の一員だから。もう、戻れない世界の自分は要らない。ずっと、この世界で生きていくんだ。だから、もう大丈夫!」

 

アスカがそう言って笑った途端。アスカの手にある紋様が、変わった。スッと黒い輪っかが浮かび上がって、3重に輪っかが重なって、中心にある球が八面体のような、アスカの持っていたお守り(今はユーリの服のベルトに括りつけてある)と、同じような形に変化した。

 

驚く飛鳥だが、どこか納得したらしく、もう大丈夫だと言ってからもう寝るといってベッドに潜り込んだ。ユーリはそれを見届けてから、部屋を出ようとドアノブに手をかける。すると。

 

「この先何があっても、大丈夫だよ。何とかなるから」

 

そう聞こえた。ただ、それはユーリに対して言ったのか、自身に言い聞かせるために言ったのかまではわか、なかった。

 

・・・

 

そうして、一夜があけ、全員が揃った所で出発しかける。すると、そこへヨーデルとフレンが現れた。見送りかと思えば違ったらしい。

 

「こちらのフレンを連れて行って下さい」

 

どうやら、フレンをユーリ達と共に行動させるために来たらしい。隊の指示があるからと断るフレン。何か言われても「はい」とは言えないフレンにヨーデルは。

 

「帝権を代行する者としてヨーデル・アルギロス・ヒュラッセインが命じます。帝国騎士フレン・シーフォ。ギルド凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)と力を合わせてアレクセイを止めなさい」

 

「……はい!」

 

ということで、フレンをパーティに加えて再出発となった。バウルも復活。だが、そこで少し寄り道をすることに。なんでも、少し気になる事があるだとかで一行はダングレストに向かう。するとレイヴンが少し待っていろと言って、行ってしまった。

 

戻ってきたレイヴンは、アスカに何かを手渡した。それは、服だった。それはダングレストでアスカが一時期着ていた服で破れたとかで修繕に出していたものだった。

 

「これ……」

 

「修繕終わってたの、忘れてたのよ」

 

「あれ、このカーディガン黒じゃなかったっけ?」

 

「腰に青色の紐使ってるから、青の方が統一感あっていいって修繕してくれた人が言ってて、作り替えてくれたのよ」

 

「ふふ、そっか。青、か…」

 

「ダメだった?」

 

「んーん。大丈夫。青は、好きな色だから寧ろ嬉しい」

 

その日、アスカは実際に着てみて、動いていた。ただ、それは皆が寝静まってからのお話。1人で訓練をしていると、フレンが現れた。どうやら、彼も訓練をしに来たらしい。

 

「アスカも訓練を?あ、その服……」

 

「うん。懐かしくなって、着てみた。こっちでも動く分には問題ないしね」

 

「そうか。似合ってるよ」

 

「そう?なら良かった。んー、フレン。手合わせ、してくれる?」

 

「え?手合わせ?」

 

「うん。こっち(チャクラム)の方、もっと強くしたいんだ」

 

そんなこんなでアスカとフレンは手合わせをするのだった。そうして手合わせをする中、アスカは奥義を完成させる。それをみたフレンは驚きつつも凄いと褒めていた。褒められたアスカはどこか、嬉しそうにしていた。

 

―よし、大丈夫。これで、確実に強くなってる。あとは、力を使いこなすだけ。星喰(ほしは)みに対抗する力。なんとか、しなくっちゃ……




というわけで、飛鳥は、現実世界の自分を捨てて、アスカになる事をきめました。

それから、服回収。奥義習得。

次回はザウデ不落宮〜になります。


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59戦目

更新ー!

今回はザウデ不落宮〜です。

イエガー戦まではかなりすっ飛ばすので、ご了承ください。


・・・

 

アレクセイを止めるためにザウデ不落宮に入ったユーリ達。色々な仕掛けを解いていき、辿り着いた場所には、イエガーがいた。

 

戦うしかなくて、戦った。イエガーから、アスカは狙われて、避ける事に徹していた。だが、それでもこれまでの経験が、そうさせるのだろう。アスカも、銃で反撃。だが、イエガーの方が、ずっとずっと腕は上で。アスカは吹っ飛ばされた衝撃で、銃を手放してしまう。

 

だが、それでも防護壁を貼って、攻撃を防いでチャクラムにチェンジして、応戦する。ユーリ達の支援もあって、何とか持ち直す。

 

「oh…前会った時より、随分とストロング、ですネ!何がユーをストロングしたんデス?」

 

「話を聞いてもらって、そんで、整理する時間を貰った!だからだよ!」

 

本当の意味で吹っ切れたアスカは、動きが軽やかだった。ユーリに、“飛鳥”でいいと言われた。ただ、それだけだ。でも、アスカにとって、現実世界の自分で居ていいと言われたことがとても救いになったのだ。

飛鳥は、アスカになると決めて、前へ進む決意をした。だからだ。ただ、それだけだ。しかし、そのそれだけ、がどれほどアスカに力を与えたのか。それは、本人しかわからない。

 

「アスカ、やっぱ強くなったよな!」

 

「そーね、アスカちゃん、強くなったわ。イエガー相手に引かないんだから」

 

ユーリとレイヴンがそんな話をしているのも聞いていなかった。だが、アスカは不思議と体が動いて、怪我を最小限に留めることが出来た。追い詰められたりしたが、そのピンチで奥義を発動させ、仲間に攻撃する隙を作った。

 

そうして、イエガーに勝利し、彼は地面に倒れた。だが、彼の胸には、見たことがあるモノが、光った。それも、ごく最近見たモノだ。そう、それはレイヴンにも同じ物を持っている、心臓魔導器(カディスブラスティア)だ。ただ、ユーリ達との戦闘で力を使い果たしたのか、少し話をした末、命を落としたのだった。

 

・・・

 

なんとも言えない気持ちのまま、先に進んでいくと、アレクセイが余裕の表情で待ち構えていた。

 

問答するも、平行線な事にお互いが己の獲物に手を掛けた。そして、アレクセイの聖剣の衝撃波で全員が地に伏してしまう。が、すぐさま起き上がると。アレクセイのいる場所が浮上しているではないか。追い付けなくなる前に、全員が飛び上がって追いかけたのだった。

 

足場が浮上する中、アレクセイと対峙する。皆でかかるも、聖剣と言われるだけあって、奥義を撃たれてしまえば、回避が難しい。が、アスカは、アレクセイの奥義発動に合わせて防護壁を貼った。それでも衝撃は殺しきれず、アスカ自身は追撃をくらい、そこから連続で攻撃を喰らってしまい、膝を着く。

 

「アスカ!!」

 

「この小娘の術は些か面倒だからな」

 

「〜〜〜っ、!」

 

全身が痛くて、声が出ない。だけど、この程度なら。まだ切り傷も浅いし、全身にあるとはいえ、動けない痛みではない。グミを口に放り込んでから、アスカは立ち上がる。

 

「ほう、まだ立つというのか、この中で1番の役立たずが」

 

「そーね、役立たずだよ、うちは。だけどね、こんな役立たずでも、使命ってもんが、あんのよ!!だから、必死で食らいつく。食らいついてやる!何が何でも、こんな所で死ぬなんて、絶対ないから…!」

 

アレクセイから、力の事があるからだろう。かなり狙われたが何とか防いで、交わして、致命傷を避けて、フォローに徹した。自分が奥義を撃つのは、他の仲間がアレクセイに攻撃をする隙を作るため。

 

断じて自分がトドメをさそうだなんて、そんな事、考えちゃいない。だって、届かないんだ。どれほど、強くなっても、元が低い自分では、きっと、何百年単位で鍛錬を積まないと、届かない。

 

分かっているからこそ、自分はフォローに徹する。サポートに、徹する。大丈夫、自分抜きで1度は倒しているんだ。自身が居なくたって、大丈夫。そう、思いつつもアスカは原作と変わっていたら、どうしよう。そう思っていた。

 

そんな中、何とかアレクセイに膝をつかせる。だが、アレクセイは器用と言うべきか、戦闘中もずっと解析を行っていたらしく、立ち上がりながらも、解析が終わった魔導器(ブラスティア)を発動させてしまった。

それ以上、何かをされる前に、邪魔をしようとするユーリにアレクセイは聖剣から、光を放つ。ユーリに向けられた光から、ユーリを庇ったのはフレンだ。

 

ユーリを庇って、吹っ飛ばされたフレンに防護壁を貼ったのは、アスカだ。アスカが動かなければ、フレンは落ちてしまっていただろう。それ程の勢いだった。だが、フレンが落ちてない事に安堵し、アスカもその場にへたりこんでしまった。すぐに立ち上がったものの、足が震えていた。

 

そして、アレクセイが発動させた魔導器(ブラスティア)がもたらしたのは、星喰(ほしは)みだった。違うもの想像していたアレクセイは、その姿を見て狂って、笑った。長年、追い求めてきたモノが実は、世界を滅ぼす物でした、となればそうかもしれない。そして、ユーリは、狂うアレクセイを見て、トドメと言わんばかりに彼を切りつけた。よろめいたアレクセイは、ちょうど巨大な魔導器(ブラスティア)の真下へと動く。

 

そのタイミングで魔導器(ブラスティア)は支える力を失ったかのように、そのまま落下する。ユーリは、巻き込まれまいと、その場から離脱。他のメンバーも離脱した。だが、そこでユーリに駆け寄る足音。フレンかと思って振り返ったユーリは、腹に衝撃が走ったと共に、その勢いでザウデ不落宮から落下した――。




というわけであのシーンでしたね!

次はユーリ視点〜ですかね!



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第3部
60戦目


というわけで、ついに第3章まで来ちゃいました。

案外早かった気もするなぁ、なんて思いつつ。

今回はユーリ視点〜です。


・・・

 

不意に、意識が浮上する。目を開けてみれば、見慣れた天井。身体を起こしてみれば、刺された腹は痛むものの、何とかなりそうだった。

そこで、部屋に入ってきた者がいた。デュークだ。どうして。もしかして。

 

「お前が助けてくれたのか?」

 

「この剣を海に無くすのは惜しかったのでな」

 

ユーリの問いに、答えになっていないような返答。だが、宙の戒典(デインノモス)を失いたくないから、ついでにユーリを助けた、と言っているとすれば。事のついでだったとしても、彼はユーリの命の恩人ということになる。

 

「なぁ、ザウデ不落宮は、満月の子の命を使って動いていたのか?」

 

星喰(ほしは)みは人間が原因。彼らは、先導者だった。償い……のつもりだったのだろう」

 

デュークの話によれぱ、その後、生き残った満月の子と始祖の隷長(エンテレケイア)が国のあり方を話し合って出来たのが、帝国の祖だという。

それから、デュークも、星喰(ほしは)みを止めるべく動いていた事も判明する。

そして、話を終えると。デュークは窓から下町を見ていたか、思い出したかのように、振り向いた。

 

「そうだ、コレはあの娘の物だろう」

 

「?」

 

デュークが投げ渡したのは、正八面体に似た、そう、ペンデュラム型とでもいうのか、お守りだと言っていたペンダントだった。

 

「あぁ、確かにこれはアスカのだ」

 

「この剣を回収する為にお前が落ちた場所に行けば、薄い青色の球体がお前を守っていた。そして、お前の場所を示すかのようにその石が光っていた。いくつか、周りに瓦礫があったが、球体が弾いたようだ」

 

「いつの間にオレに付けたんだ?まぁいいや。お陰で助かった。アスカには助けられてばっかりだな」

 

「あの娘は、世界に呼ばれたイレギュラー。それをわかって尚、世界を救おうと動く。何故だ?」

 

「さぁな。オレ達だってアイツの全部は知らねえ。ただ、アイツは元の世界を離れて、二度とその世界に戻れなくても良いと思う程の仕打ちを受けてきたって事と」

 

「……」

 

「後は、使命だって言って、この世界を救おうとしてるって事くらいか。オレ達と一緒にいるのが、世界を救うのに1番の近道だとか何とか言ってはいたけどな」

 

「そうか。そして、その能力……」

 

デュークは納得したらしく、そのままユーリの呼び掛けにも応じず、部屋を出ていった。追いかけようにも、ユーリもまだ傷が治りきってない為、無理をすれば痛む。

 

ひとまず、自分が倒れてからどうなっているのか。仲間たちはどうか。気になることは沢山ある。そのため、痛む体を押して、部屋を出ていくのだった。

 

すると、そこで聞き覚えのある声がする。エステルとラピードだった。エステルはユーリに抱き着いた。しばらくして、何とか落ち着いて、話をする。

 

どうやら仲間達はそれぞれ、やるべき事をしているようだった。それを聞いて安心するユーリ。エステルが傷を治したものの、休めと言われたので素直に休むことにしたユーリだった。

 

・・・

 

翌朝、広場に行くと、ハンクス達が居た。再会を喜んでいると、ルブランたちが来て、どうやらユーリだけが手配書を出されたようだ。

 

ただ、騎士団に戻ればそれもポイだ、と話をする。が、ユーリは少し考えもしたが、すぐに逃げ出した。坂を一気に駆け上がった事で息切れをしていたが。そこで上から声がする。見てみれば。

 

「ユーリー!!!」

 

「コラ、ちょっと、パティ!!」

 

ユーリの近くに降りてきたのは、パティとアスカだった。2人ともスッと降りてきた。そして、パティはユーリに抱き着いた。アスカは、ホッとした顔をして笑った。そこに、一筋の涙が頬を伝う。

 

それを見ていたのは、エステルだった。エステルは、そっとアスカを抱きしめた。そして、トントン、と背中を叩く。赤子をあやすかのように。

 

「アスカ姐、大丈夫かの?」

 

「よかっ、た……!生きてるって、()()()()……けど、力が発動したかもわかんないし……!良かった、ほんっとに……」

 

心底安心したアスカは、フッ、とその場に座り込んだ。力が抜けてしまったらしい。

 

「アスカ!?」

 

「だい、じょーぶ。安心したら、ちから、抜けちゃった」

 

もう、アスカは泣いていなかった。そこでジュディスが現れる。心配していたと言うが、どうもそんなようには見えない。ただ、ユーリは生きていると確信していたような、そんな態度だった。

そんなこんなで、わちゃわちゃしていたが、バウルに運んでもらい、リタが居る、アスピオに向かうのだった。




ということでした!

長らく傍点機能があると知らず……

次回はアスピオ〜になります。


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61戦目

遅くなりました

今回はリタに会いに行く所〜です。


・・・

 

リタにユーリの生存を知らせに来たエステル達。だが、その本人は、「分かった」と大声で叫びながら家に戻っていってしまった。あまりにも早すぎて、エステルの声も届いて居なかったようだ。

 

ユーリ達がリタの家に入ると、リタはブツブツと独り言を呟いている。声を掛けると、怒った。だが、ユーリの姿を見るなり、驚いて一瞬、言葉が詰まったようだった。しかし、声をかけられた時以上に怒り、ユーリにまくし立てる。

 

だが、ユーリも今回ばかりは心配を掛けたと思っているらしく、何も言わずに素直に謝った。それを聞いて、一旦落ち着いたリタは、エステルの力の抑制が出来るようになったかもしれない、と話す。

ただ、まだ実用には至っておらず、もう少し時間が掛かるとの事。その為、ユーリ達は先にカロルを迎えに行くことになった。

 

 

その道中で

 

「あいつ、無事ならちゃんと言いに来なさいよね!」

 

「見つかって、良かったです」

 

なんて、エステルやリタが話している。何となくで聞いていたアスカは、原作通りに事がすすんでよかった。そう思っていた。やはり、ヴェスペリアの世界は、一部を除いて原作通りで何も問題がないな、と思う。そんな事を思っていたら、リタから声をかけられた。

 

「そう言えばアスカ」

 

「ん」

 

「あんた、あの大事にしてたペンダントは?」

 

「あ、ユーリに預けたままだ」

 

「返してもらいなさいよ?大事なものなんでしょ?」

 

そう言われ、確かに返してもらってないなぁ、なんて改めて思った。ユーリが無事だった事が分かって、ホッとしていたので、忘れていた。まぁ、後ででいいかなんて思っていると、早速リタがユーリに文句を言っていた。それを見て、慌てて追いかける。

 

「ちょっと、ユーリ!アスカのペンダント、ちゃんと返しなさいよね!」

 

「あ、悪ぃ。お陰で助かった。コレが無きゃ、オレ瓦礫に埋まってたっぽいわ」

 

「!……そっか、託してよかった」

 

「てか、いつの間に付けたんだ?」

 

「ユーリが、1人で行こうとしたから鉄拳制裁したでしょ?それで転んだ時。ベルトに括っておいた」

 

それを聞いたユーリやエステル達は驚いていた。

まさか、そんな事をするなんて、と。誰一人として

ユーリにいつ預けたのか分からなかったのだ。まさかそんな時に付けているとは思っていなかったらしい。

 

そのペンダントが無くなったことに気付いたリタは、

アスカが月にかざしたりして、大事にしていたのを何度か目撃していた為、どこにアスカのペンダントがあるか把握していたからだった。大事にしている物だからこそ、どこに行ったのかも聞いてくれた。恐らく、無くしたと言えば探してくれるつもりだったのだろう。彼女は、そういう人だ。

 

「どうしてオレに?」

 

「単独行動する人だし、狙われてる時だってあるし、

そろそろ危ないかもって、思ったから。けど貴方は素直に受け取らなさそうだったから、ベルトに括っといた」

 

「だそうよ、ユーリ」

 

ジュディスが笑顔で言う。その言葉にユーリは返す言葉がない。実際、アスカのペンダントが無ければ、瓦礫に埋まっていただろうし、下手すれば死んでいたはずだ。ソディアに刺されていた傷も、止血などしていなかったし、その上落下の衝撃もあった。そう考えると、本当にアスカに助けて貰っているなぁ、と思いつつ、ペンダントを返すユーリだった。

 

・・・

 

ダングレストに着くと、すぐにドンの孫てであるハリーが走り去っていくのが見える。その後、レイヴンがユニオン本部で待っていて欲しいと言うので、ユーリ達はユニオン本部で待つことに。

 

ユニオン本部に入ると中の雰囲気は前来たときより、一変していた。どこか、ピリピリしているようだ。ドンの後釜に誰も着きたくないのだそう。確かに、あのドンの偉大さを知って、自分がと手を上げるのはやりたくないと思う方が多数だろう。

 

そして、皆が言っている間にレイヴンがハリーを連れて帰ってきた。が、そこからまた言い合いが始まる。だが、そんな中、カロルが声を上げる。

 

「仲間に助けてもらえばいい。仲間を守れば応えてくれる」

 

言い合いをしていた男たちは、カロルに近付くが、後ろにいる、ユーリ達を見て引き下がる。どうやら、カロルに手を出そうとしたらどうなるか、分かったらしい。

凄んでいる気もしないではないが。

 

「ボクはひとりじゃなんにもできないけど、仲間がいてくれる。仲間が支えてくれるからなんでもできる。今だってちゃんと支えてくれてる!なんでユニオンがそれじゃダメなのさ!?」

 

「少年の言う通り、ギルドってのは互いに助け合うのが身上だったのよなあ。無理に偉大な頭を置かなくてもやりようはあるんでないの?」

 

「これからはてめぇの足で歩けとドンは言った。歩き方くらいわかんだろ?それこそガキじゃねぇんだ」

 

ユーリらにそこまで言われても、まだ食い下がる彼らに、ユーリ達はもういいと言わんばかりに出ていく。確かにこのままここにいても、何も変わらないだろう。そうして、次の手を考えようとしている時だ。ハリーが、聖核(アパティア)を持って現れ、ユーリに投げ渡した。

理由を聞けば、ここにあるより、ユーリ達の方が有効活用出来ると思ったとの事で、しかもハリーの独断だった。ユーリ達は、受け取ってゾフェル氷刃海へ向かうのだった。




とりあえずここまで!

次回はゾフェル氷刃海〜になります。


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62戦目

前回からまたかなりの時間が経ってしまいました……すみません(--;)

今回はゾフェル氷刃海〜になります


・・・

 

ゾフェル氷刃海にやってきたユーリ達。相変わらず吹雪いていて、芯から凍りそうな程の寒さだ。エアルクレーネで試したいことがあるとリタが言っていたのもあり、来てリタから説明されたものの、中々に理解が出来ないでいた。

それは、アスカも同じで、物資とエアルの中間のようなモノがマナだと言う。アスカは、そのマナから精霊が生まれると知っている。だが、知っていても実際、目の当たりにするのとでは全然違うとも、これまでの経験から分かっていた。

 

そして、エアルクレーネに着いて早々。準備をしたリタ。だが、中々思うように進まない。リタのやりたいことは分かっていても、そのやりたい事を実現するために、エステルの理解が必要だ。しかし、エステルは何度説明を聞いても、分からなかった。それは、現実世界で何度か動画を見て、説明を見ているアスカでさえ、分からないものだった。

だが、ユーリ達の手伝わせろ、という意見にリタはついに折れて、ユーリ達でも手助け出来る方法を伝えるのだった。

 

(ここも、うち抜きで達成してる。うちなんか居なくたっていーんだけどなぁ……あーでも、またイレギュラーが、発生すんのかな)

 

そんな事を考えるアスカは、それでもそれを顔には出さず、指定された位置に足を運ぶのだった。そして、魔術が発動した途端、身体の中から何かが、ごっそりと持っていかれる感覚がする。流石のアスカも(アスカ以外のメンバーもだが)、呻いた。そう何度も、こんな経験をしない為に、中々慣れないのだ。

 

リタは上手いことやったようで、エアルがちゃんと蒼穹の水玉(キュアノシエル)に流れているようだった。だが、急にエステルに異変が現れる。システムの暴走かと思ったが違うようで、勝手に蒼穹の水玉(キュアノシエル)の再構築の術式が組み上がっているようだった。

 

そして、その能力から力の影響を受けやすいアスカは、エステル以上だろう苦痛に苛まれていた。

ズキン、ズキンと脈に合わせた痛み。その原因は心臓だった。いつもそうだ。何かしら異常があって、身体が悲鳴を上げると、痛くなるのは、心臓だ。痛くて痛くてたまらない。だが、アスカはこれ以上に辛い痛みを、苦しみを知っているが故に、顔色を変えないのは流石に無理だが、表情を変えずに居れるのは、出来る。だって、痛みも、イタミも、慣れているから。

 

そうして耐えていると、ふと苦痛から開放される。同時に膝をついたアスカ。足に、力が入らない。氷の上だ。冷たい。早く、立たなくちゃ。そう思うのに、力が抜けきってしまい、中々立てないでいた。

いつもなら、そんな状態になったアスカをユーリ達の誰かしらは気付く筈だが、今は気付かなかった。なぜなら、精霊が目の前にいたから。

 

(なんか、最近はコレに弱くなったなぁ……次は、立っていられるようにしなきゃ。コレする度にこんなのじゃ、心配かけるし)

 

そう思いながら、アスカは何とか立ち上がる。すると、ユーリ達と話していたはずのウンディーネと名付けられた精霊が、アスカへと語りかける。

 

「異界の子よ、その力、モノにしたようじゃな?」

 

「え?……あー、うん。多分、やけど」

 

「じゃが、随分と無茶をする。そなたの体で生命力を使えば、どうなるか、知らないわけじゃなかろうて」

 

「まぁ、そりゃそうだけど、さ。うち1人だけが、やらないってのも嫌じゃん?」

 

「アスカ……」

 

「そうか、やはりそなたは()()()()()であるのじゃな」

 

ウンディーネの言葉を理解した者は果たして、いたのか。リタでさえ、頭を捻っていたのに、だ。だが、アスカはわかったのだろう。まだ生命力を持っていかれたダメージが回復していないだろうに、困ったように笑って見せたのだ。

 

「あー、まぁね……選ばれちゃったからには、しゃーないでしょ?だって、うちは、()()()()()居るんだから。うちからソレを取っちゃったら、何が残るってーのさ?」

 

先程とは打って変わり、自嘲気味に笑うアスカ。まだ、アスカ自身の事をあまり知らないユーリ達は、会話の意味がわからなかった。だから、何も言えなかったのだ。アスカが、使命を持ってここに来たのは、知ってる。異界から来たことも(そして、それが恐らく一方通行であろう事も)。そして、世界の修正力とやらに、狙われていることも。その、修正力とやらは、アスカの存在を異物だと認識しているから、襲ってくるのだということも。だけど、そこまで知っていても、今の会話が理解出来なかったのだ。

 

「ねぇ、アスカが選ばれちゃったから、狙われてるの?あの黒い魔物に」

 

ふと、カロルが質問をした。確かにその質問は間違えてはないのかもしれない。アスカは、その問いにイエスと、そう答えることが出来た。だが、答えたくなかった。ユーリ達は優しいから、きっとその狙われてることも、何とかしようと、そう言い出すに決まっているから。だから、アスカその質問に答えるのを躊躇っていると、ウンディーネが代わりに答えた。

 

「そうじゃな。異界の子はどうやっても、異界の子である事に変わりはない。本来なら、ここにいるはずの無い存在。故に、世界には異物だと認識されているのじゃ」

 

「そんなっ!アスカは何も悪いことしてないのに!?」

 

「前も言ったでしょ?うちは、存在してるだけで罪だって。咎人だって。もう忘れちゃったん?」

 

「忘れてなんか、ないよっ…!でも!!」

 

「カロル。うちの事は気にしないの。今は、星喰みを何とかするのが先決でしょーが」

 

「気にするよ!!」

 

カロルの怒りに、驚いたアスカ。どうしてなのだろう。なぜ、ここまで怒る事があるのか。アスカには理解ができなかった。

ユーリのように皆を導く力もなければ、リタのように魔術も使えない。エステルのように特別な力もなければ、ジュディスのように戦う力もない。パティのように、目的に向かって全力という訳でもない。

レイヴンのように、自分の力を使いこなし、使い分けている訳でもない。ラピードのように、主人だと決めた人を助け、守るほどの力もない。ましてや、カロルのように、真っ直ぐ自分の夢に向かって頑張っている訳でもないのだ。

更に言うなら、フレンのようなカリスマや自身の考えを持っている訳でもないのだ。なのに、どうしてなのだろう。

 

「どうして?わかんない。うちには、わかんないよ。だって、うちの事はどうでもいーじゃん。ほっといたって、別に何か変わる訳でもあらへんやん。それよりも星噛みを何とかする方が先でしょ?」

 

「あんたねぇ……!!」

 

「だってうちなんかの為に、そこまで怒ってくれるのも、何とかしようとしてくれるのも、全部。全部、わからへん……!」

 

「異界の子は、この世界に呼ばれたイレギュラー。じゃが、悪しきものでもない。それは、わらわも知っておるぞ」

 

ウンディーネは、そう言い残すとそのまま消える。否、正確にはエステルの中に入り、力を制御しているようだった。喜ぶ一行だが、急にザウデが崩壊し、星喰みの力が溢れるのを目にした。そして、バウルから星噛みの眷属が現れ、カプワ・ノール港を襲っているとの知らせが入り、ユーリ達は急いで向かうのだった。




というわけで、ついにザウデが崩壊しちゃいました。

次回はカプワ・ノール〜です。


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63戦目

カットインって難しいですね(゚´ω`゚)

今回はカプワ・ノール〜です。

またアスカの事で寄り道してます。

苦手な方はすっ飛ばしてください。


・・・

 

カプワ・ノールに着いて、星噛みの眷属を倒したユーリ達は、戦士の殿堂(パレストラーレ)のメンバーが眷属と戦っている場面に遭遇し、助太刀する。ナッツに部屋へ導かれ、ひと段落した所で、リタが結界魔導器(シルトブラスティア)を見ていたらしく、戻ってきたリタは出力を上げられていた所を元に戻したそうだ。どうやら、出力を上げたせいであの眷属が来たとの事だった。

 

少し話して、ユーリ達もその場を離れ、残りの3体の精霊を生み出す元である聖核(アパティア)を探すことになった。ユーリはその途中で、もし4大精霊を生み出しても、力が足らなかったら、世界中にある魔導器(ブラスティア)を使えばいい、と提案する。確かに間違えてないのかもしれない。先を知るアスカは、

 

(あぁ、結局そうしなくちゃなんなくて、オマケにデュークの力を借りなきゃなんなかったよ。でも、それでも成し遂げだんだよ、貴方は。貴方達のギルドは。原作通りであるなら、うちは本当に要らないんだよ)

 

なんて考えていた。船に乗ってから、1歩引いた所でそんな事を考えていたアスカは、既に距離を置かないといけないのに、その距離を縮めに行ってしまっている事に気付いていた。だけど、もうどうすることも出来なかった。もう、言う前には戻れない。

 

ユーリ達はアスカという名の余所者を、仲間だと思ってしまっている。アスカ自身、嬉しくもあり、同時に怖かった。

1度仲間認定されてしまえば、彼らは自分みたいな奴でさえも、命をかけて守ろうとするから。それが、怖かった。自分みたいなのに命なんてかけなくってもいい。それがアスカの考えだった。

そんな時だ。不意に、ユーリの言葉が耳に入る。

 

「聞いてくれバウル。オレたちは世界を護りたい。けど、そのために誰かを犠牲にしていいとは思ってない。一方的に始祖の隷長(エンテレケイア)から聖核(アパティア)を奪う真似はしない」

 

その言葉を聞いて、あぁ、と安心した。この後は、確か始祖の隷長(エンテレケイア)を探して、精霊化する。原作の流れと何ら変わらない。ユーリ達もバウルに運んでもらって、次の目的地へと向かっている。良かったと、思っていた矢先、黒い魔物が現れる。

 

「あ、あいつは!!」

 

「……」

 

アスカは、空中にいて相手が動いているにも関わらず、相手の頭を撃ち抜いた。

 

「ひゅー!やるな、アスカ」

 

「そんな事ないよ」

 

そう言って他にも居ないか確認をとるアスカ。どうやら、一体だけだったようだ。安心して、息を吐き出すと、ユーリが背中を軽く叩いてきた。意図が分からず、首を傾げるアスカ。

 

「そうやって、何度も確認してくれてるんだよな、いつも」

 

「!」

 

さりげなくやっていたことは、バレていたようだ。1度襲撃を凌いだからと言って、油断ならない。そう思っての行動だった。別に苦でもなかった。だからやっていただけのことで、そこまで褒められるものでもない。そう思ったアスカは、「出来る時だけね」と返した。

 

・・・

 

ほかの始祖の隷長(エンテレケイア)を探すために大陸中を巡っていたユーリ達は、偶然にもコゴール砂漠の上を通る。すると、傷だらけのまま、飛びまわるフェローが。バウルに接近してからは、そのまま降下していく。ユーリ達が追い掛けると、フェローは地に伏していた。

皆が声を掛けると、地に伏したまま話をするフェロー。

 

ユーリ達が諦めるフェローに、精霊になって欲しいと話をすると、少し考えた後、

 

「心では世界は救えぬが、世界を救いたいという心を持たねばまた救うことはかなわぬ、か……どの道遠からず果てる身……そなたらの心のままにするが良い……」

 

そう言うフェロー。言い終えたと同時に体が光り、聖核(アパティア)化をしたのだった。エステルはウンディーネの教えもあり、上手くフェローを火の精霊イフリートへと転生させる事ができた。そして、転生したイフリートは、見方が変わったこともあり、人格も180度と言うには、すまないほど変わった。それも、良い方にだ。

 

イフリートは、語るだけ語ってそのまま飛んで行ってしまったが、ウンディーネが言うには、エステルと結びついているため、エステルが呼べばいつでも傍に現れるらしい。それを聞いて安心するユーリ達だった。

 

「異界の子よ、そなたの抱える闇は、いずれ消えよう」

 

「は、ウンディーネ……!?」

 

そんな事を言われて、驚くアスカ。しかし、精霊の言うことだ。恐らくはそうなのだろう。だが、自分の抱えるこの闇は、簡単には消え去らないことも、分かっている。根強く残ってしまっているコレは、トラウマというやつだろうことも、わかってる。

 

「闇?アスカ、何したの?あ、まさか呪いとか!?」

 

「違う。……まぁ、この場の誰よりも縁遠いモノ、かな」

 

「もー!アスカはそうやっていつもはぐらかすんだから!……もしかして、ボクがまだ、頼りないから?だから「違う!」え?」

 

「違うから。カロルが頼りないとかじゃない」

 

「ホントに?」

 

「あーもー、分かった!分かったよ、話す。話すから、そんな悲しい顔せんとって」

 

アスカはそう言って先に船に向かうのだった。

 

船に戻ったアスカは甲板にいた。ユーリ達が集まって、いざは話そう、となると、素直に言えず、あーだのうーだの言っていた。が、決心したのだろう。ちゃんと話し始めた。

 

「ウンディーネの言う闇っていうのは、きっとうちの過去の事だと思う。トラウマ、って言ったらわかる?それも、わかんないかな?」

 

「過去?」

 

「そ。うちの両親はクズ野郎共でね、子どものことをタダの自分たちの欲求を満たすための道具としてしか見てなかった。殴る蹴るは当たり前だし、タバコを押し付けたり、熱湯を被せたりね。寒い時に冷水もあったかな。そして、妹と出来を比較するし、存在否定もするし、罵詈雑言なんて当たり前。そんなような事をやる親とも呼べない奴ら。それが、うちの両親な。

で、学校……えーと、同じ歳の子どもを集めて、教育する……教育機関って言えばわかるかな?そこでも、凡人以下、いや、未満かな。のうちは、虐められたんだよね。だから、その経験が、忘れたくても忘れられなくてさ。ふとした時に、フラッシュバックするんだよね」

 

そう言って、アスカは悲しげに笑った。否、懐かしげ、のと言った方が合っているのかもしれない。そんな風に笑うアスカの目は、濁っていて。とてもじゃないが、正気とは思えなかった。そして、改めてユーリは思った。アスカは、ずっと死にたいと思っていることは、間違いでは無いんだ、と。

 

「そん、な……じゃあ、アスカの身体にある傷跡って……!」

 

「うん。その名残だよ。そりゃズバズバ切られてたり、ジュウジュウ焼かれたり、熱湯に付けられりゃ傷痕残るよ。マトモな処置なんて、出来やしないからね。止血程度に包帯巻くとか、保護のために絆創膏貼るとか、炎症や熱をとるために冷やすとかそんな程度だもん。ま、もう残っちゃったモンはしゃーないから、いいんだよ。けど、やっぱり記憶ってのは覚えてんだ。忘れたと思っても、ここにあるぞって主張してくんの」

 

困っちゃうよね、なんて言うアスカに、ユーリ達は何も言えなかった。

今まで、ずっとそんな思いを抱えていただなんて。そして、それを悟らせなかったのも、凄いと思ったが、悲しくもあった。仲間なんだから、もっと頼ってほしい。そんな思いがあるのだ。

 

「でも、もういいんだ。皆が居てくれる。こんな奴を心配してくれる。それだけで、うちはまだ、ここに居てもいいんだって思える」

 

「あなたは、ずっとそんな思いを抱えていたのね」

 

「そーだよ。そんなベラベラと話す内容でもないし。あーぁ、黙ってようと思ったのになぁ……」

 

「お前、溜めすぎ。もっと吐き出せ」

 

ユーリにそう言われ、アスカは「嫌だ」と答えた。だが、その後にはこうも答えたのだ。

 

「気持ちの整理が付けられたら、聞いて欲しい」

 

と。まだアスカの中では昨日のことのように思い出せる数々の非道。だからこそ、まだまだ気持ちの整理がついていないようだった。

 

「もちろん!聞くから安心してね!」

 

「嬢ちゃん、逞しくなったわねぇ」

 

レイヴンが、少しだけホッとした目でアスカを見て言った。




今回はここまでです。

次回はエンテレケイアを探すところ〜になります。


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64戦目

自分がやらかしすぎて、仕事が憂鬱

100パー自分が悪いから何も言えないけどしんどいよね( ˙꒳˙ )

今回はエンテレケイア探し〜です。


バウルに、他の始祖の隷長(エンテレケイア)の場所を教えてもらい、ユーリ達はエレアルーミン石英林に来ていた。森という事だが、辺り一面が結晶化しており、薄紫のような色に囲まれていて、幻想的である。すると、そこでラピードが足跡を見つけた。見てみると、踏み荒らした後で、今しがたきたユーリ達のものとは別のものだった。用心しながら進む、ということでユーリ達は足を進めるのだった。

 

何度か戦闘を繰り返し、奥へ進むと、見慣れた武器が飛んでくる。慌ててユーリが弾くと、それはナンが使っていたフープのような武器だった。視線を武器が飛んできた方に向けると、ナンが居た。しかし、すぐに倒れてしまう。皆で駆け寄り、エステルが治癒術で怪我をある程度治す。

訳を聞いてみると、ナンの所属するギルド魔狩(マガ)りの(ツルギ)は、ある標的を追っていたそうだが、不意にその標的と戦闘になり、ナンはいつもの様に戦えなかったそうだ。師匠であるティソンからは「迷いがあるからだ」と言われたそうだ。

ナンは魔物が許せない、憎いという気持ちは変わらないが、それでもこんな人が普段から行かないような場所にまできて、魔物を狩ることよりすべきことがあるのではないか。と、そう考えたし、その考えを打ち明けたが、理解をしてもらえず、置いていかれたそうだった。

とりあえず、ここには置いていけないので一緒に行動することとなった。

 

そうして奥に進むと、そこは辺り一面が赤く、ティソンとクリント、そして始祖の隷長(エンテレケイア)のグシオスが居た。だが、様子がおかしく、暴れているようだった。ナンはティソンとクリントの所へ駆け寄るが、そこにグシオスの一撃が。アスカは、咄嗟に防護壁を周囲に貼り、攻撃を無効化した。幸い、ここにはエアルが溢れている。だが、それは濃いエアルを身体に一度通すという事でもあり、ハイリスクハイリターンだ。だが、それでも迷いなく動いたところで、ウンディーネとイフリートが出てきた。すると、その場にあった、赤いエアルは消え去った。

だが、無理やり濃いエアルの状況下で力を使ったアスカは、その場に膝をついて、喀血した。心臓が痛くて、喉に何かがあるようだ。

 

「アスカ!!」

 

「だ、いじょう、ぶ…ちょっと、ここのエアルが、濃かっただけ…」

 

フラフラながらも、立ち上がるアスカに、ユーリは下がっているよう伝えた。アスカは、それを素直に受け入れ、クリント達の近くに待機する。そうして、ユーリ達と、グシオスとの戦闘を見守るアスカだった。

 

グシオスを、ユーリ達が倒すと、聖核(アパティア)になる。それを見届けたクリント達に、ユーリはまだ、何かする気かと問うた。すると、やはりと言うべきか、砕かないと済まないと答えがかえってくる。

だが、ユーリ達からの言葉により手を引くようで、引き上げて行った。最後にナンが、カロルへお礼を言って、去って行く。

 

そうして、ようやく精霊化を済ませるも、元グシオスだった精霊は目を覚まさなかった。イフリート曰く、意識すら飲み込まれるほどの状態だったが故に、当分は目覚めないだろうとの事だった。ノームと名付けられた精霊は、そのまま眠りに入るようだった。

 

(なんでだろう、最近本当に体が、おかしい……)

 

アスカはそう考え、原因を探っていた。しかし、急に意識が遠のいて、その場に倒れてしまった。ドサ、という音にユーリ達が振り返ると、アスカが倒れていた。

 

「アスカ!」

 

抱き起こすも、意識はなかった。顔色も悪く、青を通り越して白いようだった。きっと、先程エアルの濃い場所で使った技のせいだろう。だが、あの時アスカが防護壁を貼ってくれなければ、全員が怪我をしていたであろう事は、わかっている。それが故に、強くは言えない。

 

「アスカに、私は何もしてあげられないんですよね…」

 

「そうだな。ほんと、助けて貰ってばっかりだな」

 

「アスカ、少しくらい寝てもらってていいよね?次の所、アスカはお留守番で」

 

「だな」

 

・・・

 

アスカは、ふと目ざめた。しかし、そこはいつかの、あの黒い空間だった。辺りを見渡しても、何も無い。そう思っていたが、ふと、後ろから声をかけられた。

 

―大丈夫ー?

 

(あれ、アスカ??なんで???)

 

―無意識に呼んだんでしょ。とりあえず、単刀直入に言うけど、あんたはもう1回覚醒しないと、エアルの濃い場所だとぶっ倒れる。だからここで覚醒していけってことよね

 

(条件は?)

 

―ちゃんと、接近戦でも銃と同じように戦えること

 

アスカは、それを聞いて、チャクラムを構えるのだった。すると、もう1人のアスカも、同じようにチャクラムを構えていた。

 

 

そうして、しばらくたった頃。何となくではあるが、アスカは動き方を掴んでいた。それがわかっていたのか、もう1人のアスカはニッコリと笑って、

 

―やるじゃん!やっぱ、あんたは出来んだよ!ほら、ちゃんとブローチも付けなよ。そろそろ()()()でしょ?

 

そう言った。アスカは、困ったように笑ったが、頷いた。そこで、意識が薄れ、目覚めた。船の天井が見え、あぁ、と自分があの森で倒れた事を思いだした。ずっとポケットへ入れっぱなしだったブローチを左の横髪に付けて、甲板へ出ると、ユーリ達が話をしていた。そして、起きたアスカに驚きつつも、大丈夫か、と声をかけてきた。

 

「うん、もう大丈夫。ごめんね、倒れるとは思ってなくて」

 

「全くですよ!」

 

そんな他愛ない話しをして、今までの話をしてもらったアスカは、原作と変わらない事を確認し、安心した。そして、ユーリの言う案にアスカは即答で着いていく、と答えたのだった。




ということで、接近戦も強化したアスカちゃんでした。

次回はノール港〜です。


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65戦目

続けて投稿!

今回はノール港〜です。

今回はあのイベントですよ!!


ノール港に入ったユーリ達は、どこか閑散としている港に、やはりどこかへ避難しているのだろうか、と話をしている。リタとエステルは買い物で離れているので、宿屋で休むことに。買い物を終えたリタ達がと共にとりあえず寝ることになった。

 

しかし、夜中にこっそりとパティが抜けていく。それをユーリを起こして(実は起きていた)、追い掛けるエステル。すると、ジュディス、リタ、レイヴン、アスカも起きていたようで、出てきた。カロルも最後に合流し、皆で様子を見に行くことに。

 

執政官の家の傍を通り船着場に行くと、パティが麗しの星(マリス・ステラ)を掲げていた。すると、麗しの星(マリス・ステラ)から光の筋が伸び、光がおさまるとそこには、アーセルム号があった。そこでパティの元へ駆け寄るユーリ達。

どうやら、自分の事に決着をつけたくて1人で出たらしいが、ユーリ達の一人で行くな、という話により、皆で行くことになった。

 

・・・

 

船に足を踏み入れたユーリ達は、上の方に前に倒した骸骨のボスが立っていた。それを見たパティは、走って行ってしまう。後を追い掛け、パティに追いつくと。

 

「サイファー、うちじゃ!わかるか……!」

 

「サイファーって……アイフリードじゃなくて?」

 

「サイファーはそのアイフリードの参謀の名前だわね、確か」

 

パティは、骸骨の魔物に向かって叫ぶが、魔物はそのままパティに攻撃を仕掛けるのだった。それを合図に、ユーリ達も戦闘態勢に入る。

やたらとパティを狙うが、アスカが防ぐ。アスカは、銃で応戦していたのだが、銃を弾き飛ばされてしまった。

 

「!」

 

「アスカ姐!」

 

魔物は、武器を失ったアスカに好機と襲いかかるも、ガキン!という音と共に魔物の体勢が崩れた。どうやらチャクラムで防いで、すぐに蹴り飛ばしたようだった。

 

「残念、まだ武器あるっての!!」

 

そこからは、アスカはチャクラムを使って戦っていた。以前よりもずっと舞うような動きになっているアスカ。チャクラムを飛ばし、受け取るのも隙がなく、接近戦が強くなっているようだった。

 

「お前、接近戦は嫌いじゃなかったか?」

 

「そーだよ、今でも嫌いだよ。銃のが楽だもん。でも、こっちでも戦えないと、さ?」

 

そう言って、アスカは攻撃をするのだった。狙われつつも、回避し、攻撃をくらっても、直ぐに持ち直していた。そうして何とか倒したと思ったが、魔物はさらに上へと行ってしまう。それを見たパティはすぐさま追いかけていく。そして、1番上で背を向けているサイファー(?)に、パティは語り掛けた。

 

「サイファー、長いこと、待たせてすまなかった。記憶を失って時間がかかったが、ようやく、辿り着いたのじゃ」

 

「アイ……フリード……」

 

くぐもった声がする。それは、魔物の方から聞こえる。そして、すぐにサイファーだろう青年が姿を現す。どうやら、自我があるようだった。だが、自我が消えればまたパティに刃を向ける、去れと言う。

 

「そういう訳には、いかないのじゃ。うちはおまえを解放しにきたのじゃ。その魔物の姿とブラックホープ号の因縁から」

 

「俺はあの事件で多くの人を手にかけ、罪を犯した……」

 

そう言うサイファーに、パティは今度は自分が助ける番だと、そう言って銃を向ける。

 

「……くっ……サイファーだけは……うちが……」

 

「つらい想いをさせて、すまぬな、アイフリード」

 

「つらいのはうちだけではない。サイファーはうちよりずっとつらい想いをしてきたのじゃ。うちらは仲間じゃ。だから、うちはおまえのつらさの分も背負うのじゃ。お前を苦しみから解放するためお前を……殺す」

 

「その決意を支えているのはそこにいる者達か?そうか……記憶もなくし、一人で頼りない想いをしていないかそれだけが気がかりだったがいい仲間に巡り会えたのだな、アイフリード。受け取れ、これを……」

 

サイファーが差し出したのは麗しの珊瑚(マリス・ゲンマ)と呼ばれるものだった。

 

「これで、安心して死にゆける。さぁ……やれ」

 

少しの間があり、銃声が響く。

 

「バイバイ」

 

パティは、そう小さく呟いた。

 

 

船着場に戻ってきたユーリ達。パティは、アーセルム号を見て呟く。

 

「……サイファー……」

 

泣きそうな声で呟くパティに、ユーリは優しく声をかける。だが、パティは泣きたくない、とそう言って自身のモットーを語るも、耐えきれず、泣いてしまった。

 

落ち着いた所で、宿屋で休む。アスカは、ラピードにペンダントを託すために、ラピードに近づいていた。最初ほどでは無いが、ラピードから警戒されているので、普段は近づかないようにしているのだ。

だが、ラピードは要件を分かっているのか、警戒心むき出し、というのはなく、アスカが事情を説明すれば、ラピードは、「ワン」と答えると、ここに括れ、と言わんばかりに武器を差し出した。

 

(きっと、まだユーリは無茶をするから。次のイベントは、確か。ラピードも一緒に行くはずだから。今回は、魔物が沢山だし、防護壁じゃなくて、月の力の付加(エンチャント)にしとこうかな)

 

 

 

話もまとまり、再出発……と言ったところで地震。慌てて外に出てみると、アスピオの方面から謎の巨大な遺跡のような何かが現れた。それを見てエステルが呟く。タルカロンの塔だと。精霊達がおしえてくへたのだそう。

と、そこへ男性が声を掛けてくる。どうにも、騎士団からの伝言でフレンについて、話がある、との事で一行は宿に戻るのだった。程なくしてソディアとウィチルが現れる。どうやら、フレンがピンチだという。

 

ヒピオニアに行くから皆はタルカロンに行く準備をしろ、というユーリに着いていくというエステル。否、エステルだけではない。皆、同行する決意が強い。ユーリは改めて皆に同行をお願いするのだった。

 

・・・

 

問題の所に着くと、魔物の群れで土煙が凄く、周りが見えなかった。とりあえずこの規模の魔物を退ける為、ユーリはリタの作った宙の戒典(デインノモス)を貸してほしいと告げる。少し考えた後、OKを出し、持ってきたリタ。せっかくだからという事で名前が明星壱号とという名前になる。

そうして、ユーリ達は下に降りてみる。土煙が凄い。だが、一瞬土煙が晴れた所にフレンを見つけ、一行は急いで駆け抜けるのだった。

 

「生きてるか?」

 

「ユーリ!どうしてここに!?」

 

なんて言いながらも、魔物を倒しにかかる。ユーリ、フレン、ラピードは魔物の群れの中心へ向かう。その間、この場の守りを皆で代わるとの事だった。

中心へ向かう最中、ラピードの武器からキラリと光る青い石を見つけ、苦笑した。どうやら、今回はラピードに託したらしい。何が起こるか分からないし、あの黒い魔物が現れれば、こちらの攻撃はアスカの力がないと通らない。だが、アスカの防護壁があれば助かる。ある程度の攻撃は塞いでくれるのは、ユーリも知っているし、何ならフレンもだ。

 

「アスカ、お前心配性だな」

 

「あれ、その石は、確か……」

 

「あぁ、アスカのだ。どうやら、今回はラピードに託したらしい」

 

アスカが、別行動をする相手に渡す石。それは、アスカにとっては大事なお守りなはずで。自分の手の中にある時は肌身離さずつけている。

だが、大事なお守りをこうやって渡す事がある。そういうと、決まってその石に、アスカの込められた力に守られているのだ。

 

(ったく、何が「何も出来ない」だ。お前はちゃんとやってるじゃねぇか)

 

なんて、改めて思うユーリだった。

 

 

 

 

一方、ユーリ達を見送ったアスカは銃を乱射する。狙うのは黒い魔物のみ。他の魔物はリタやエステル達に任せている。それを分かってか、ジュディスが、アスカを狙う魔物を倒してくれていた。

 

「あ!」

 

「安心して。あなたは、あの魔物たちに紛れてる黒い魔物を倒してくれてるでしょ?普通の魔物は任せて」

 

「ありがとう。全力で、黒い奴は倒すよ」

 

改めて、アスカは銃を握りしめるのだった。

 

 

 

ユーリとフレン、ラピードはやっと魔物の中心部へと到達。だが、そこで思いもよらぬ魔物の攻撃が。そう、あの黒い魔物の攻撃だ。しかし、そこで青い石が光り、それぞれの武器に青いオーラが一瞬纏われて、消える。

 

「これ、は……!?」

 

ユーリとフレンは驚くものの、前に1度経験しているラピードは、臆する事なく黒い魔物を攻撃する。すると、見事に攻撃が通ったのだ。それを見て、ユーリ達も攻撃をする。通ったところを見て、首を傾げるフレン。ユーリはすぐにピンときた。アスカの力だ。

 

「これ、は?どうして、この黒い魔物に攻撃が!?」

 

「アスカの力だ!効果が続くうちに中心に急ぐぞ!」

 

「!……あぁ、わかった!」

 

そうして無事に設置し、稼働させると、半円状に衝撃が走り、魔物を一掃するのだった。




とりあえずここまで!

次回は、戦後〜になります。


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66戦目

投稿出来る時にとりあえず!

今回は戦後〜です。

プロフの所のイメージ画像を、加筆修正してデジタルにしたので差し替えました。
アイビスで描いた上に、塗り方とかも勉強中なので、とりあえず、な感じです。見たい方はどうぞ!


・・・

 

何とか明星壱号を使い、魔物を一掃したが、明星壱号は壊れてしまった。どうやら筺体(コンテナ)の素材が脆かったようだ。そんなことを話していると、ウィチルとソディアが現れた。そして、あのタルカロンから謎の術式が展開され、何かの力を吸い取る術式だろう事、イキリア全土で住民が体調に異変を感じている事と、次々話が出てきた。

リタは恐らくそれは、人々の生命力を吸い取っているからだろうと言っていた。

 

そして、ユーリは自分たちが星喰(ほしは)みに対し、何をするのかを話すために、フレンにヨーデル殿下をここに呼べないか、と言う。

フレンはそれを聞いて大笑いした。急に笑い出したフレンに驚いたものの、バカにしている類いでは無いとわかった一行は、少し待っていた。フレンはひとしきり笑った後、「何とかする」と答えた。

ユニオン達にはユーリに頼む、と言われたユーリはすぐさまダングレストに向かうのだった。

 

そして、ユーリ達がハリー達に話をしに会いにいき、今の状況を説明する。反対されるかと思いきや、あっさりとOKを出し、話にはハリーが来ることに。ハリーに「行ってこい」と言った周りの人達は、話し合いでハリーが出した結論に従うとも言っていたので、とりあえずはOKだろう。

あとは、戦士の殿堂(パレストラーレ)の人達に話をするだけである。割と順調なことに、少しほっとするアスカ。

 

(あー、あと少しか。そしたら、このチカラを使って……月の力、って言っていいのかな。で、空気中に漂うエネルギーを集めてユーリの剣に送る。きっと、それでうちの使命は果たされるはず)

 

アスカが考え事をしている間に戦士の殿堂(パレストラーレ)とも話が終わっていた。そして、ビレッジに行ってフレンに結果報告をして、早速会議が行われることとなった。

説明が終わると、アレコレとそれぞれの代表が話し合う。が、ユーリは一足先にその場を後にする。それに続き、エステル達もその場を後にした。

 

そして、それぞれが一先ずやりたい事をやる、整理する、リタ待ちだったりするが、その中でユーリはフレンから呼び出しをされ、フレンの待つ街の入口に向かうのだった。

 

・・・

 

場所を変えて、街の前の広場。2人は、対峙する。そこにはいつもの雰囲気はなく、真面目な少し硬い雰囲気がある。

 

「あらたまってどうしたんだ?」

 

「君はこのままいくのか?」

 

「あん?」

 

「ここに世界の指揮をとる人達が集まってる。今こそ君の功績を称えられる時だ」

 

「またその話か」

 

「僕の功績の半分いやそれ以上が本当は君の……」

 

「いいじゃねぇか。誰がやったかなんてどうでも」

 

フレンとしては、ユーリの功績を正しく評価されて欲しいようだが、ユーリとしては結果的に助けられれば、誰がやったかなんてどうでもいい。そんな対立だった。

 

「よくないさ。なぜ自分だけ損な選択をする?どうしてつらい部分を全部背負い込もうとする?僕には背負えないからか?」

 

「……おまえはオレが背負えないもの、背負ってくれてんじゃねえか。オレが好き勝手やれてんのが誰のお陰かってことくらい、分かってるつもりだぜ」

 

「だけど……!!……駄目だ、どうも余計な言葉ばかり出てきてしまう」

 

「フッ、なら……こいつで来いよ」

 

言葉に詰まったフレンを見て、自分の剣を抜くユーリ。

 

「ユーリ……!」

 

「おまえが口でオレに勝てるわけねぇだろ。おまえがオレに勝てるのは……こいつだろ?」

 

ユーリは剣をフレンに見せて、そう言った。フレンも、剣を見て納得したようで、

 

「そうか……そうだったな。君はいつもそうだ」

 

そう言って自分の剣を抜いた。

 

・・・

 

結果はユーリの勝ちだった。だが、お互いに全力を尽くした戦いだったからか、力尽きて2人でその場に寝転んだ。

 

「剣でも……負けてしまったな」

 

「はっはっは。さまぁ見ろ」

 

「……腕を上げたな、ユーリ」

 

「……おまえもな。昔のままのおまえだったら楽勝だったはずなんだがな」

 

「……昔、剣に誓ったっけ。人々の笑顔のために戦うのだと」

 

フレンは寝転んだまま、自分の剣を抜いて、自分の前に持ってくる。

 

「ああ。例え歩む道が違っても」

 

「背負うものが違っても」

 

「賛辞を受けても、罵られても……」

 

「騎士もギルドもそれは変わらない。そうだね?」

 

ユーリも、それに倣ってか、自身の剣をフレンと同じように自分の前に持ってきた。

 

「オレたちは互いに手の届かないところがある」

 

「だから僕たちはひとりではない」

 

「「……」」

 

・・・

 

ユーリが広場に戻ると、リタが魔導器(ブラスティア)のネットワークについてどうすれば良いのか、答えを出していた。そして、そうなるとまずは集めた魔導器(ブラスティア)の力を収束させるものが必要になり、それを確実に星喰(ほしは)みに当てる必要がある。となれば、タルカロンの塔が1番だろう事が提案される。

そして、その日は最終準備日として、すぐに解散となった。

 

それぞれが、やりたい事をして過ごす中、アスカは座って空を見上げていた。すると、そこにラピードが来た。何事かと思えばス、とアスカのペンダントが着いた武器を咥えていた。どうやら、返しに来てくれたようだ。

 

「あ、ありがとう。ごめんね、うちから貰いに行けばよかったね」

 

「ワフ」

 

そうだ、と言わんばかりの答えに再度、「ごめん」と言って、ペンダントを外してから、武器を返すアスカ。返された武器を器用に直すラピードを見て、賢いなぁなんて思っていた。すると、ラピードがその場に座った。何事かと思ってラピードを見てみるも、ラピードはただその場に座っているだけだった。今なら、ユーリとフレン、2人の主人が揃っているのに、何故行かないのだろうか。

 

「……最初から気付いてたんよね、ラピードは。うちが、異世界からの余所者でイレギュラーな存在だってことに」

 

「ワフ?」

 

「賢いキミが噛み付くくらい、うちは猫被りでさ。今もクズだけど、今よりもっととんでもないクズだったんだよなぁ…だから、嫌ってて、今もきっと嫌いだよね?うちのこと」

 

「……ワン!」

 

「ん、何その怒った感じは。事実じゃないん?」

 

何故か怒っているラピードに、首を傾げるアスカ。どうしてだろう。こんな訳分からん奴が、主人達の近くに居たら、きっと警戒するし好かれるような事はしてない。となれば、嫌いの度合いは緩和されるかもしれないが、嫌いではない、とはならない筈だ。それなのに、何故怒られているのか。

 

「……ラピード、キミにだけは伝えとくな。うちは、未来の事、全部知ってるんよ。この先、何があるのかも。最終的に、ユーリ達が星喰(ほしは)みに勝つかどうかも」

 

「ワン!」

 

「もちろん、自分が何をすべきかも、ね。やから、うちは星喰(ほしは)みを倒す時にチカラを使えばいーんよ。そしたら、大丈夫。勝てる。うちはきっと、そこで使命を果たす事になるから、消えると思うけどね。うちは、イレギュラー。本来ならここには、この世界には存在しない者。ただ、この世界を救う為に呼ばれた、ただの人」

 

「ワフ……ワンワン!!」

 

どこか諦めている様子なアスカに怒るラピード。だが、アスカはラピードに向かって、

 

「今のは秘密だよ?」

 

なんて言って、人差し指を口元に当てるのだった。それを見たラピードは、「ワフ」なんて、ため息のようなものをついて、その場から離れていった。それを見届けたアスカはごろりとその場に寝転がった。空がよく見える。

 

すると、覗き込む形でレイヴンがひょっこりと顔を出した。驚いて身体を起こすアスカ。

 

「まだ起きてたのね、不良少女」

 

「レイヴンだって起きてんじゃん。不良中年でしょー」

 

「あらま、やだなー」

 

「で、寝れないの?」

 

「……アスカちゃん。明日、〝何〟をする気?」

 

「レイヴンがうちの事を何があっても止めないって約束するなら、話してもいいよ」

 

アスカは、レイヴンの目を見て告げる。これは、きっと逃げられないから。なら、勝負に出る。

 

「へぇ。約束したら、話してくれるわけ?」

 

「約束してくれたら、ね」

 

「…………。わかった。約束する。だから、話してくれる?」

 

長い沈黙の後に、そう答えたレイヴン。アスカは、意を決して話す事を決めた。それでも、やっぱり未来を知ってる事は話さない。だけど、自分が何をするのか。それくらい、話したって大丈夫だろう。そう思っての事だった。

 

「明日、もしもね?星喰(ほしは)みを倒す時にチカラが足らないとするじゃん?」

 

「確かに、有り得る話だわね」

 

「その時に全力でチカラ使って、周りにある、空気中も含めた全部のエネルギーをうちに収束して、星喰(ほしは)みを倒す為の力に変換する。もしくは、明星壱号?弐号?に、その収束したエネルギーを送る。そしたら、何とかなるかなって」

 

「……確かにアスカちゃんしか、出来ない事だわ、そりゃ」

 

「でしょ?危険だとか何だとか言って止められたら困るからさ」

 

アスカはニッと笑った。

 

(アスカちゃん、嘘はついてない。けど、なんだろう。何かが、引っ掛かる。嫌な予感がする。なんでだ)

 

レイヴンは、アスカの話を聞いてどこか嫌な予感がグルグルと渦巻くのを感じる。だが、それに対して構えておかなくては、と思うものの、いい案が思い浮かばず、暫く他愛ない話をして、解散する。アスカに背を向けた時、確かに聞いた。だが、聞き間違いなのかもしれない。

もう一度振り返るレイヴンに、アスカは気付かず、宿屋に向かっていた。

 

「大丈夫、絶対勝てるよ。だって、皆は1()()()()()()()()()()()んだもん」

 

聞こえたのは、そんな言葉。どういう意味だろうか。分からない。すぐに聞き返しても聞こえてないのか、やっぱり答えてくれなくて。それなら出来る事をしようと、レイヴンは新たに誓うのだった。

 




というわけで、やっと最終戦に近付いてきましたね!

やー、ほんっと無理です笑

次回はタルカロン〜です!


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67戦目

カットインってどうやって描くんでしょう……?

かっこいいのが描けません( ;´꒳`;)

今回はタルカロン〜です。

イベントがある所まではすっとばすので、ご了承ください。


・・・

 

タルカロンに足を踏み入れたユーリ達。術式が組み上がる中、精霊の力により、自分達には今のところ影響は無いようだ。とりあえず、今のうちにデュークのいる所まで行く事となった。

 

(画面で見てたのでもだいぶデカかったのに……実際見てみると圧倒されるなぁ……うん、怖いわ。素直に)

 

なんて考えつつもやはり、顔には出さないアスカ。だが、ユーリは何となく〝何か〟を感じ取ったようだ。アスカに声をかける。

 

「大丈夫か?」

 

「ん、うん。大丈夫。1人じゃないから。あ、そうだ。ユーリ、コレ持ってて。やっぱり、ユーリに持ってて欲しいんだ」

 

アスカはそう言って、ユーリにペンダントを差し出した。青く光るその石は、何度も危機を救ったにも関わらず、変わらず神秘的な輝きを放っていた。

ユーリは、差し出されたソレを受け取った。ここで、突っぱねるのは違うと思ったからだった。アスカは、受け取ってもらい、心底安心した顔をしていた。

 

「アスカ、それをユーリに渡すって事は、この先ユーリが危なくなるのかい?」

 

「え?どうして?」

 

「君たちから話を聞いて、君がソレを渡す相手が危なくなっている、と聞いたから」

 

「この先、か。それは分からへん。今のは勘でも何でもない。うちが、ただユーリに持ってて欲しいんだ。だから、渡したんだ。本当にもし、危なくなったとしても、守ってくれるだろうしね」

 

そういったアスカはどこか違った。吹っ切れたような感じだ。だが、レイヴンだけは、どこか嫌な予感が強まった気がしてならなかった。

 

(持っていて欲しい、か。どうしてこんなにも、嫌な予感がするのか。よく分からないな。警戒するに越したことはない、か)

 

・・・

 

何とか複雑な道をくぐり抜け、上まで上がってきたユーリ達。すると、ここにはザギが待ち構えていた。話してみても声は変わってるし、左腕は魔導器(ブラスティア)に変化してしまっている。そして、それは壊さなければ先に進めないものだとも語られ、仕方なくユーリ達はザギと戦うのだった。

 

相変わらずユーリを狙うが、度々アスカの事も狙っており、アスカは攻撃を避けるので精一杯になっていた。そして、何度かぶっ飛ばされ、あちこちに打ち身を作っている。それでも、何とか立ち上がったが、ザギの秘奥義を喰らい、流石に倒れてしまう。

 

(い、痛い……!だけなら、良かったのに!身体に、力が……入らへん……!!)

 

何とか立ち上がろうにも、何度もぶっ飛ばされたせいで、立ち上がれずにいた。そんなアスカに、エステルが咄嗟に回復の術を使った。すると、アスカはダメージを受けるのではなく、回復効果を受けることが出来たのだ。

 

「ありがとう、エステル。お陰で戦線復帰出来そう」

 

「!……良かったです!」

 

自身が成長出来たんだと実感出来たのか、戦闘中だというのに笑みを零すアスカ。そこからは何とか上手く立ち回り、前半よりは吹っ飛ばされる事は少なくなった。

 

そうして、何とかトドメであろう一撃を入れると、膝を着き、それからもっと戦いたい、と言いつつも身体が限界なことと、ユーリにさらに一撃を貰った事でよろけたが、最後の足掻きで、魔術を放った。標的はアスカだ。まさか自分に飛んでくるとは思っていなかったアスカは、モロに受けてしまい、その場に倒れてしまった。

 

「「「アスカ!」」」

 

ユーリがさらに追撃したことでそのまま、落下したザギ。それを見届けたユーリらは、急いでアスカに駆け寄る。声をかけるも、アスカは全く目覚めなかった。エステルが回復術を使うも反応無し。だが、エステルのおかげで外傷は治った筈なので目覚めるまで、先に進むということになった。

 

・・・

 

気が付くと、あの桜の咲き誇る空間にいた。久しぶりに〝ココ〟にきた。するとふわり、と女性が現れる。金髪緑目で、緑の衣装に身を包んだ女性。今までハッキリと姿が見た事がなかった。だけど、見てわかった。確信した。あぁ、このヒトは。世界の意思なんだ、と。

 

―コレが、恐らく最後になるでしょう。貴女と、会えるのも。

 

(そっか。で、何を伝えに?)

 

―貴女は、力をちゃんと覚醒させましたね。だから、きっとあの場面で力を使ったとしても、大丈夫でしょう。私が許しますから。

 

(それ、は……)

 

―ほら、もうあたしが居なくっても大丈夫だろ。

 

(は、アスカ!?)

 

どこからか、もう1人のアスカが現れ、ニカッと笑ってアスカの中に入る。その途端、アスカはどこか暖かい気持ちになった。そして、何かが、欠けていた何かが、埋まるような感覚がした。

 

―大丈夫ですよ。飛鳥。貴女は、強くなったのですから。

 

女性は微笑み、そっとアスカを抱きしめた。赤子をあやすかのように頭をポンポンと撫でた。そして、大丈夫だと告げた。アスカはそれを聞くと意識が薄れていった。

 

・・・

 

目を覚ますと、頂上付近にまで登っていた。

 

「っ……」

 

「目が覚めた?大丈夫?」

 

「「「!」」」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「うん、心配かけたみたい、やね。ごめんね。もう、大丈夫」

 

そう言って、お礼を言ってから背負って貰っていた所を降ろしてもらう。どうやら、レイヴンが背負ってくれていたようだ。

 

「本当に大丈夫か?無理そうなら言えよ?」

 

「大丈夫だよ。行こう」

 

「無理は本当にダメだからね?……嬢ちゃん、さっきまで死んだように眠ってたんだからね」

 

そう言われるも、アスカとしては身体が軽いので、大丈夫なことを告げて先に進むよう促す。大丈夫な事をわかったらしく、やっと頂上を目指すのだった。

 

そしてついに頂上へ着くと、何やら青い円柱の前でやっているデュークの姿が。

 

「デューク、オレたちは四属性の精霊を得た。精霊の力は星喰(ほしは)みに対抗できる」

 

「もう人の命を使って星喰(ほしは)みを討つ必要はありません!」

 

「あの大きさを見るがいい。たった四体ではどうにもなるまい」

 

「四体は要よ。足りない分は魔導器(ブラスティア)魔核(コア)を精霊にして補うわ」

 

「世界中の魔核(コア)だもん。すごい数になるはずだよ」

 

「ついでにおたくの嫌いな魔導器(ブラスティア)文明も今度こそ終わり。悪い話じゃないでしょ?」

 

「……人間達が大人しく魔導器(ブラスティア)を差し出すとは思えん。それとも無理矢理行うのか」

 

「無理矢理なんてしないのじゃ!」

 

「人々が進んで応じるなんて、信じられないのかしら?」

 

「一度手にしたものを手放せないのが人間だ」

 

「わかってもらえねぇか……だけど、オレたちはオレたちのやり方で星喰(ほしは)みを討つ。もう少し、待ってくれねぇか?」

 

どうやら、まだ平行線のようだ。どちらも、譲らない。だが、もう少しこちらの話を聞いてくれて、待ってくれれば。そう思っているのか、ユーリ達は話を続ける。

 

「僕たちは、人々の決意を、そして僕たち自身の決断を無にしたくないのです!」

 

「……それで世界が元に戻るというのか?」

 

「え?」

 

始祖の隷長(エンテレケイア)によりエアルが調整されあらゆる命がもっとも自然に営まれていた頃に戻るのか、と聞いている」

 

「それは……」

 

「おまえたちは、人間の都合の良いようにこの世界を……テルカ・リュミレースを作り替えているにすぎん」

 

「世界が成長の途中だとは考えられませんか?始祖の隷長(エンテレケイア)たちは精霊になることを進化だと考えています。同じようには考えられませんか?」

 

「……彼ら始祖の隷長(エンテレケイア)の選択に口をはさむことはすまい。だが、私には私の選択がある」

 

「わかってくれねぇのはそれをやろうとしているのがオレたち人間だからか?」

 

その問いには答えず、デュークはタルカロンの塔について語り始めた。そして、だからこそ人間を滅ぼすと言った。反論するも、やはり相容れぬようだ。お互いに、武器を構える。やはり、話し合いでは埒が明かないようだ。

 

(大丈夫、うちも、強くなったら。それに、1度うち抜きで倒してるんだから。だから、大丈夫)

 

アスカも、銃を構えるのだった。




という事で、最終戦は次回からです!

もうすこしで終わり、だと思います。

もう少しお付き合い下さい!


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68戦目

最終戦まで来ましたよ!

いやー、長かった!

今回は最終戦〜になります。


・・・

 

武器をかまえ、何とか戦うユーリ達。だが、膝をつかせても、まだ尚、立ち上がるデューク。そして、アスカに問い掛けた。

 

「余所者が、どうしてそこまでやる?そんなにボロボロになってまで。それに、お前はこの世界に破滅を呼んだ者。さらに言うなら、1番の足でまとい。それなのに、何故そこまでする?」

 

「おい、何ってやがる!アスカは「うちは!!」――!」

 

「うちは、確かに()()()みたいに強くなんてあらへんわ!!ユーリ達と比べるなんてもっての外!!やけど、うちはうちにしか出来へん事があるから!!やから、死ぬ気で食らいつくんや!!」

 

「それを果たすために、ここまで来たと?」

 

「せや!!1番の足でまとい?んな事、とっくの昔に分かっとるわボケ!ふざけんなよ、自分のことが分かってへんよーな奴じゃないんやからな!!」

 

「アスカちゃん……!」

 

デュークに言われ、アスカは自分の思いをぶちまけた。口が悪いのも、気にしなかった。もう、取りつくろうだけの余裕がなかったのかもしれない。既に2度もデュークに膝を付かせたにも関わらず、それでもデュークは、新たな力を得て、立ちはだかる。

 

そんな中、アスカは、やはりユーリ達のようにはなれず、ボロボロで。立つのもやっとだ。だが、それでも諦められない。だから頑張るのだ。どこまでやっても、何かを成す事をしなかった自分が。諦めていた自分が、ここまで頑張ったのだ。今更諦めるなんて出来やしないのだ。

 

「それを果たしたとして、お前はどうするのだ」

 

「んな事知るか!消えるなら消えるでかまへん。それでも、もし。もし、生きてていいなら。それなら、それで全力で頑張るだけや!」

 

そう言ってアスカは、技を放つ。だが、デューク相手に当たるはずもなく、防がれてしまう。そして、反撃を食らい、派手に吹き飛ぶアスカ。だが、それでも追撃にきたデューク。ユーリたちはアスカに駆け寄ろうとした。しかし。アスカはそこでオーバーリミッツ解放。そして。

 

「もう許さへん!!覚悟しぃや!!『アミナスオブフィーネ』!!」

 

ゼロ距離のまま、銃を乱射し、チャクラムで切りつける。そして、距離をとってすぐにチャクラムを投げる。戻ってきたチャクラムを回収しながら進み、最後に思い切り蹴り飛ばしたのだった。

 

だが、それで倒せると思っていないアスカは、すぐに防護壁を貼り、反撃を無効化する。だが、既にボロボロの状態で使ったが故に、口から血が垂れる。だが、袖で乱暴に拭う。心臓が痛い。だけど、立てなくもない。だからこそ、アスカは頑張ってあとを託した。

 

そうして、結局は全員がボロボロになりながらも何とかデュークを倒すことに成功した。地面に倒れるデューク。

 

「すまぬ……エルシフル……約束……守れそうにない……」

 

「エルシフルがどんなヤツだったかもしらねぇオレが言っても説得力ねぇけど、人魔戦争で人のために戦ったエルシフルってヤツはダチのあんたに人間を否定して生きる事なんて望んじゃいないと思うぜ」

 

「エルシフルの望み……世界を守る事……いきとしいける者、心ある者の安寧……」

 

デュークは、そのまま目を閉じた。生きてはいるようだが、かなりの力を使った後だ。消耗しているのだろう。

 

「ユーリ!急がないと!」

 

「ああ、やるぞ!」

 

「いくわよ……エステル、同調して。ジュディス、サポートお願い」

 

「「はい!/了解よ」」

 

「ユーリ、いくわよ!」

 

「ドキドキなのじゃ……」

 

「……」

 

「頼むぜ〜。大将〜」

 

「……」

 

「ああ!」

 

ユーリが剣を掲げ、世界中の魔導器(ブラスティア)が集められる。だが、力が足らない。デュークが、力を貸すもそれでも足らなかった。

 

「くそっ、あと少し、なのに……!」

 

「馬鹿な、私の力でも足りぬというのか!」

 

「――“我が身に宿るは月の力!光に寄り添う力なり!集え!!我が下に!”集う力(レウニール・マハト)!!」

 

アスカは、間髪入れずに詠唱した。そして、空気中に漂う力を収束し、ユーリの持つ剣へと送る。すると、ユーリの持つ剣が変化する。そして、ついに星喰(ほしは)みを倒すことに成功した。安心していたのだ。

 

皆が集まっていて何も異常がなかった。

 

だからこそ、アスカは1人、離れたところにいて銃を構えていた。わかっていた事だ。ここまで何もしてこないなんておかしいと思っていたから。

 

ガキン!!

 

どこからか、そんな音がする。それは、皆に対しアスカの防護壁が作動した証。ユーリを中心に、薄い青色の半円の壁が出来ている。すぐ後に銃声が聞こえ、ユーリ達に危害を加えようとした魔物は倒される。

だが、そこまでだった。アスカは膝を着いて喀血した。それも、かなり激しくだ。ヒューヒューと喉に異物がある時の音がしている。

 

「「「!?」」」

 

「ゲホッゲホッ……!ゴボッ…!!」

 

尚も、喀血するアスカの目の前には、あの黒い魔物が現れた。それは、これまでのような大きさではなく、かなりの大きさだ。星喰(ほしは)みよりは小さいが、それでも十分な大きさだ。5、6メートルはあるだろうか。

 

「死ヌガイイ」

 

ユーリ達が武器を構えていた。防護壁は、攻撃を防ぐものであって、行動を制限するものでは無い。しくじったな、なんて思ったアスカ。動けないし、別にここで死んでも構いやしない。そう思っていたのに、ユーリ達が庇う。

 

「アスカ、大丈夫です!!?」

 

「……っ、はぁ、はぁ……!カハッ……!」

 

気持ち悪さが渦巻いて、心臓が痛くて痛くてたまらない。少し息をするだけでも、すぐに血が溢れてくる。意識が段々と遠くなり、気がつけば足の方がうっすらと透けている。

 

「「「!?」」」

 

「何ヲ驚ク必要ガアル?」

 

「アスカ、なんで消えて……!!」

 

「やか、ら……言ったやん、か……うち、は……余所者だって…………出来ることなら、一緒に生きたかった、な……」

 

途切れ途切れに言ったアスカは、目を閉じた。流石に限界だった。意識を保ってられなかった。もう消えても死んでもいいや。そう思って抗うこともなく、そのまま意識を手放した。最後に呟いた言葉は、誰にも聞き取られませんように。そう、思いながら。

 

「おい、アスカ!こんな所で死ぬとか許さねぇからな!」

 

アスカに声をかけるが、彼女は答えない。完全に意識がないようだ。

その間にも、黒い魔物も攻撃を仕掛けてくる上、アスカも消えてきている。

 

「嬢ちゃん、分かっててやったわね!?」

 

「アスカ姐が居ないから、攻撃が通らんのじゃ〜!」

 

そう、アスカが居ない為にユーリ達はピンチに陥っていた。唯一ユーリはペンダントを持っているからか、何となく攻撃が通っているが、それでも相手の力の方が強く、押されている。すると、突然ペンダントが光り出す。

 

光が収まると、そこには金髪緑目の、緑の衣装に身を包んだ女性が居た。魔物の攻撃を防ぎながら、ユーリ達に、アスカに向けて話し出す。

 

「貴女の、本当の願い。叶えてみせます。私が、許しますから……ですから、貴女も、もう赦してあげてください。そして貴方は、アスカの心の闇の具現化。世界の修正力だと、飛鳥は思っていたようですが……でも、貴女は、負けなかった」

 

「アスカの心の闇の具現化?」

 

「ええ。この子は、ずっと人から虐げられて生きてきました。それでも、死ぬのは逃げた気になって嫌だ、と必死で生きて来たのです」

 

「じゃあ、アスカしか効かないのも、アスカ自身の事だから?」

 

「ええ。そうです。ですが、もう大丈夫です。まぁ、もしも闇の者に殺されていたのであれば、この世界は滅んでいたでしょうね」

 

なんて、さらっと爆弾発言をする女性。しかし、その女性がアスカに手をかざすと、消えかかっていたアスカは元通りになり、すぐに目を開ける。

 

「っ、あ、れ……?うち、は……消えたん、ちゃうの……?」

 

「いいえ、私が許します。だから、生きて下さい。貴女はまだ、人の温かさを、優しさを知らない。それを知っても尚、死にたいと願うなら仕方ありません。ですが、もう少し彼らと生きてそれを知っても良いのではありませんか?死ぬという選択をするのは、その後でも遅くはありません」

 

「生きてて、いいの……?うちなんかが?」

 

アスカは問う。ずっとずっと、聞きたくって、でも本気では聞けなかったことを。奥底にしまい込んで、気付かぬフリをしていたその問い。

 

「この中にアスカが生きる事に反対なやついるか?」

 

ユーリがその場にいた皆に問いかける。だが、誰一人として「反対だ」と声を上げるものはいなかった。

 

「わたし、アスカにはまだ、教えて欲しいことがまだまだ沢山あるんです。わたしからも、お話したい事が沢山あるんです!聞いてくれますよね?ですから、死ぬなんて、悲しいこと、言わないでください!」

 

「私もよ。あんたのその力があれば、きっともっと楽に戦えるはずよ。それ以前に、仲間でしょ。死ぬとか止めてよね!次そんな事言ったら、許さないんだから!!」

 

「そうだよ!ボクを凄いって言ってくれて、逃げても、ちゃんと帰ってくるならそれでも良いんだって教えてくれたのは、アスカだよ!今度は、ボクが言うんだ!聞いてくれるよね?」

 

「貴女には、助けて貰ったわ。たくさん、ね。貴女がこの世界で生きる上で、また誰かが敵として立ちはだかるなら、その敵は私が倒すわ。それにまだ、私も貴女と旅がしたいわ。ダメかしら?」

 

「アスカ姐は、うちが沈んだ時も気にかけてくれたのじゃ。それに、サイファーの事も、助けてくれたのじゃ。だから、今度はうちがアスカ姐を助ける番なのじゃ!」

 

「君はいつもそうやって、自分は後回しだった。短い間だったけれど、それでも君がどういう人かはわかってるつもりだよ。僕も、君がこの世界で生きる上で何かあるなら、手助けを約束する。僕も、君に救われた事もあるしね」

 

「ヒヤヒヤさせないでよね。アスカちゃん。俺には生きろって言っておいて、自分は死ぬって?そんなの許さないよ。人に生きろって言ったんなら、自分も生きなきゃダメでしょーが。おっさんも、出来る限り生きるから、アスカちゃんも、生きてよね」

 

「これまでの旅でお前には沢山助けて貰った。特にアレクセイにぶっ飛ばされた時とか、ザウデから落っこちた時とか。お前の力がなかったら、きっとオレは死んでた。オレには、オレたちにはお前が必要だ。この、凜々の明星(ブレイブヴェスペリア)に必要だ」

 

皆からの、言葉。それは、ずっとアスカの心の奥底にあったものを、溶かしてくれた。




というわけで終わらせたかったんですが終わりませんでした(--;)

次回が最終回、かなぁ?と言ったところです。


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最終戦

ついにここまできました!

長々と放置していた時期もありましたが、ちゃんと終わりまで書くことが出来ました!!

ありがとうございます。



 

仲間たちからの言葉に、アスカは泣いていた。そして、女性もそれを見届けたからか、そっと消えていった。黒い魔物はまだ残っていた。しかし、何故かもう攻撃をする事はないようだ。

 

「……生キロ。使命ヲ果タシテ尚、貴様ガ独リデアルナラバ、貴様ノ死ヲ望ム者ガイルナラバ。ソウ思ッタガ、貴様ハ生キロト望マレテイル」

 

黒い魔物が、そう言ったのだ。そして消えてしまう。後に残ったのは、小さな、手のひらサイズの黒い石。それをアスカは手に取った。すると、その石はアスカに溶けていく。自分の一部だったモノだ。どういう原理で具現化してしまっていたのかは分からない。だが、もう大丈夫だ。この、感情を受け入れても。だって、自分には仲間がいるのだから。

 

「ねぇ、うちは本当にここで、この世界で、生きてていいの?」

 

「良くなかったら、庇ったりしねえよ」

 

「……そだね。改めて、宜しくね。皆!」

 

アスカは、笑顔で言った。そうして、やっと落ち着くことが出来たのだった。

 

・・・

 

あれから、1ヶ月が過ぎた。ずっと忙しくギルドの一員として働いていた、アスカ。ふと、思い返した事があった。あの後、落ち着いてからレイヴンに問われたのだ。

 

『アスカちゃん、もしかしてだけどさ。未来ってヤツを知ってた?』

 

『『『!』』』

 

『うん。知ってたよ。全部。所々抜けてたりとかはしたけど、知ってた。大まかな流れとかは』

 

『じゃあ、誰がどうして、何をしてって全部知ってたってわけ!?』

 

『うん。知ってた。皆が星喰みに勝つのも、デュークが力を貸してくれるのも。もちろん、エステルの力の事も。アイフリードの事もね』

 

『ならなんで言わなかったんだ?』

 

『え?そりゃもちろん、言って未来が変わる事が怖かったからや。言わなくたって、所々変わってたんだよ?』

 

変わっていた、というアスカの言葉に皆はぎょっとした。思い返すも、どの辺だろうか、検討がつかない。

 

『カロルがゾフェル氷刃海で1人で戦ってくれたのも、あれ、本来なら皆が間に合ってカロルを庇ってたよ。けど、そうじゃなかったでしょ。ユーリがアレクセイにぶっ飛ばされた時も、本来なら船のロープ掴んで事なきを得たけど、あの時は船から大きく外れてたから多分、何もしなかったら落下死してた。ザウデの時もそう。きっと、落下死してたと思う。それから、レイヴンだって、ルブラン達に助けて貰った筈だけど、もしかしたら、何もしなかったら本当に生き埋めになってたんじゃないかな。あぁ、あとバウルが成長の為に篭って、ジュディスが守ってた時も、本来ならユーリがあの人らの攻撃防いでおしまいだった所、さらに追撃きたとかかな』

 

つらつらと語られる言葉に、ユーリ達は絶句する。確かに全てアスカが何だかんだと理由をつけてペンダントを持たせてくれたり、防護壁を貼ったりして防いでくれていた。そうでなければ……ゾッとする。そんな事になっていたのか、と。

 

『だから、言わなかった。言っても良かったんだけど、こればっかりは怖かったから、言えなかった。言ったせいで、未来が変わって、星喰みに勝てなくなったら、どうしようって。そう思ったら話せなかった。

あー、ギルドの掟に反する、かな。義を持って事を為せ。不義には罰を、だったよね』

 

目を逸らしながら言ったアスカ。確かにそうだ。罰なしとは行かないだろう。

 

『もちろん。ボクからいくね!』

 

カロルはそう言ってアスカに近づいて、ほっぺを引っ張った。でも、軽くだ。びよん、なんて擬音がピッタリだ。

 

『っ!』

 

そして次にユーリ。ユーリは、軽く頭を小突いた。コン、なんていい音がする。

 

『あたっ』

 

次にジュディスが、デコピンする。手加減なしな為、地味に痛い。

 

『いった!?』

 

次にリタがチョップを食らわす。結構痛い。ゴス、なんてユーリの時よりもいい音がした。

 

『いた!!』

 

次にエステル。エステルは、両頬をパチン、と軽く叩いた。

 

『――』

 

次にパティ。お腹に頭突きをかましてくれた。流石によろけるアスカ。だが思った程痛くなかった。

 

『う゛!』

 

次にフレン。フレンは、アスカの手を取って思い切りぶった。バチン!なんて音がする。手のひらが、とても痛くて、ジンジンする。だけど、フレンも篭手を外していたので、同じ痛みを貰ってるはずだ。

 

『ったぁ!』

 

最後にレイヴンだった。あまり気は進まなかったようだが、オロオロしつつも、意を決して、アスカの頭に拳骨を落とした。ゴン!なんて、今までで1番いい音がした。

 

『い゛ったぁ……!』

 

最後の最後でそんなことをしたレイヴンに、皆は驚いていたが、それでも、アスカはらしいなぁと思ったようだ。

 

『これが罰ね!……でもレイヴンがそんなことをするなんて……』

 

『……』

 

『レイヴンは、1番荒れてた頃のうちを、ずっと見守ってくれてたかららやな。きっと、()()()()()()なんやろってわかるから』

 

『『『?』』』

 

アスカはちゃんとレイヴンの意図を読み取ったようだ。首を傾げる一行に、アスカは暖かい気持ちになっていた。

 

(多分、だけど。親代わりって感じやったんよね。きっと。だから1番怒ってた。だけど、悩んで悩んで、でもコレだって思って拳骨にしたんよね。何となくそんな気がするし分かるから、大丈夫だよ)

 

 

そんな風に思い返しをしていたアスカに声がかかる。魔物討伐に行くから、来て欲しい。との事だった。

 

「わかったー!今行くね!」

 

バタバタと自分の部屋から出ていくアスカ。その背中をそっと見守っている、1人の女性が。

 

「もう、大丈夫そうですね」

 

女性は、そっと微笑み、姿を消した。

 

Fin.




ということで終わりました!

長かったし終わりがなかなかまとまらずでしたが、ようやくです。

年明けまでに終わって良かったですー!!

もしかしたら番外編とかも書くかもですが、書かないかもしれないので、期待せずに!


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その1

番外編、書いちゃいました。

入れたい事もありましたが、原作自体が結構長いんで、これ以上アスカの事を入れてたら、グダるなぁなんて思いまして……

あと、かなりオリジナル設定いれてます!

ちょこちょこ、ネタが尽きるまでは、また不定期で書こうかななんて思っております。

ちなみに、今回は第三者視点もどきから、アスカ視点になっています。

※最後に本編後のアスカの服や見た目等のイメージ画像を描いたので、貼っておきます。見たい方は合わせてどうぞ




・・・

 

そういえば、ここに来てから時間の感覚が無くなってた。誕生日は本当なら……4月……えーと、ここじゃ……なんて言うんだろう?わかんないけど、でも……多分1年は、立ってるはず。

今まで、日付なんてあまり気にしたことなんてなかったもんやけど。

というか、気にする余裕がなかった、というべきなんやけどね。

 

「……4月12日……こっちだと、4ノ月とか言うんかな?」

 

なんて、思わずボヤいた。船にある自室にいてるもんだから、他にもケーキ作ってないなー、だとか、○○歌いたいなーとかそういうことをボソボソと呟いてた。だって、うちの自室なんて用が無けりゃ人なんて来ないから、油断してた。

 

この時は、誕生日の下りを聞かれてるとは思いもよらなかった。だから、アレしたいし、コレはどうなんだろうなーとか、本当に声に出してたんだ。ほんと、バカだよなぁ、うち。

 

 

そうして、うちは、日々依頼をこなしていたんよね。特にやりたい事もなかったし。趣味に勤しむとしても、お金いるしね。だから、私は何も考えず、仕事をしてた。

そんな、ある日の事。依頼が終わった後、ユーリやレイヴン、フレンにこっちに来い、と言われて素直に着いてった。どこか、ソワソワしているけど、なんかあったかなぁ。

なんて、考えながら、案内された扉を何も警戒せずに開けた。その、瞬間。

 

パン! パン!パン!

 

なんて、3方向から音がして。それから、頭や髪には紙……あ、クラッカー!?え、でもなんで!?

 

「「「誕生日、おめでとう!!」」」

 

声を揃えて言われたその言葉。私は、やっと気付いた。今日が、こっちの世界でいう、4月12日何だって言う事に。でも、生まれて初めて、祝ってもらって、自分の感情が分からない。気付けば、ボロボロと涙を流してた。嬉しい、んだと思うんだけど。

 

「アスカ!誕生日ならもっと早くに言ってください!」

 

「え?」

 

「そうだよ!一週間しか準備時間なかったんだからね!!」

 

「え、いや、いつ聞いたし!?うち、皆には言ってへんよ!!?」

 

何時聞かれたん!?考えてると、一つだけ心当たりがあった。自室でベラベラ話してるとき、そう言えば誕生日の事を言った事があるなぁ、なんて思ってた。それ、聞かれてたなんて。

 

「お前、コレで何歳になったんだ?」

 

「19。残念ながら、まだお酒を飲める歳じゃあらへんな」

 

「「「……はぁ!?/え!?」」」

 

歳を明かしたら、何故かめちゃくちゃ驚かれた。あれ?うち、何歳だと思われてた訳??ちょっと、意味が分からない。

 

「私よりも歳下とは思わなかったわ」

 

「オレより歳下だろうなー、とは思ってたが……思ったより歳が上だったぜ」

 

唯一驚いてなかったのは、レイヴンとカロルの2人。カロルは元から年上だと思ってたからで、レイヴンは20は超えてないけど、リタより年上だろうなぁって推測してかららしい。まーでも、確かにそんなもんかも。そんなに大人びた顔では無いし、むしろ童顔系だし。

 

まぁ、色々あったけど作ってもらった料理やケーキはとっても美味しかったし、それからプレゼントだ、なんて貰ったのは髪留め。前の戦いで、壊れたままになってたのをいつの間にか、材料を集めて、イメージをエステルとかパティが、そしてその完成図を見て、なんとカロルが、

作り直してくれたとの事。

その場でつけてみる。青い紐に、先の方には青の珠?と白の飾り。とっても嬉しい。

 

「ありがとう!」

 

とってもとっても、嬉しくって。心の底から、お礼を言った。

 

 

本編終了後のアスカ↓

 

【挿絵表示】

 




というわけで、1回やってみたかったネタですw

飾りはダングレスト時代の物の、黄色の玉の部分が青になったもの、がイメージとしては、1番近いと思います。


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