もしもるう子があきらっきーのくすぐり奴隷だったら (-Y-)
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1.そのくすぐりは無情

 

 薄暗い廃校の教室、るう子はまったく身動きできないように縄で拘束されていた。

 床に倒され、腕はバンザイの状態でそれぞれ柱に括りつけられていた。

 

「るうるう、あたしとバトル……しよ?」

 

 そんなるう子を見下ろすように、晶は立っていた。

 口をにやりと歪ませ、圧倒的上位者の笑みを浮かべていた。

 

「駄目だよるう子……バトルは絶対駄目!」

 

 るう子と同じように動けないように拘束された一衣が、晶の言葉を遮るように言った。

 

「うっせぇんだよモブ子! 大体よぉ、お前があたしに捕まらなきゃるう子だってこんな目にあわなかったんだぞ?」

 

 そう、るう子は捕まった一衣の身代わりとして、この拘束を受け入れた。一衣の解放と約束に。ただし晶はそれを守らなかったが。

 

「大丈夫だよ、一衣。どんな酷いことされてもるうはバトルなんかしないから……」

 

 拘束されてまま、るう子は晶を見て言った。

 

「へぇ、どんなことをされても?」

 

 強がるるう子を見下しながら、晶が言った。

 しかし晶の予想と違い、るう子の目は堅く決心のこもった目だった。身体の自由を奪われてもなお弱みを見せないるう子は、どこか普通の少女と思考回路が違っているようだった。

 

「るうはしない」

 

「痛い目にあっても?」

 

「絶対に」

 

 るう子の目は据わっていた。晶は直感的に感じた。暴力ではこの少女を屈服させることはできないと。

 ならばどうするか――少し思考を廻らせたあと、晶はるう子の身体に馬乗りになった。拘束され動けないるう子は晶を退かすことはできない。

 

「るうるうは健気だよねー。こんなもっさいモブ子のためにさー。今から酷い目にあうんだから」

 

「友達の、ためだから」

 

「ふん、今にその友達を恨むようになる。こうやってされたら――っね!」

 

 晶はそう言うと、いきなりるう子のがら空きになっていたわき腹に両手をもぐりこませた。

 

「な、なにっ――く、くひひひひひひっ!!!??」

 

 突如感じたくすぐったさにるう子はパニックになりながら声を漏らす。意味が分からなかった。

 逆恨みでナイフまで持ち出したこともある晶なら、ここは暴力を働くはず。るう子は自分がくすぐられていることに気づくのに数秒を要した。

 晶の手がわき腹を上下に往復する。それだけでるう子は強制的に息を吐き出され、お腹から笑いを強制された。

 

「あっは! るうるうってば敏感~。くすぐられなれてない感じ~?」

 

「あっはははははははぁ!!!?? くすぐられっ、ことなんかぁぁ、あははははっははははっ!!!!??」 

 

 当然のことだった。るう子にはウィクロスに触れるまでこれといって親しい友人はいなかった。

 普通の年頃の少女なら他人にくすぐられてことの一度や二度あるだろう。しかしるう子はまったく他人と触れ合う機会がなかった。

 最近になってようやく遊月に遊びでくすぐられたことはあるが、るう子の身体は大そうくすぐりに弱い身体に成長していた。

 

 晶は両手合わせて10本の指を不規則に動かし、るう子のわき腹をくすぐりあげる。

 その度にるう子は絶叫しながらお腹を震わせ、身体を右に左に身もだえさせながらくすぐりを受けさせられた。

 

 わき腹を揉み解すような動きから、指先でつつーっと撫でられるような方法で触られると、るう子の反応もまた変わる。

 右のわき腹を撫でられれば身体を左によじり、左のわき腹を撫でられれば身体を右によじらざるを得なくなる。何度も何度もそれが繰り返された。

 

「きひひひひひぃぃ!!!? やめ、やめてぇぇぇっ、く、ふぅ……ふ、ひひっ……くぅぅぅふふふふぅ!!!??」

 

「るうるうがバトルしてくれるまでやめなーい。ほーら、ツンツンってしてあげる。ツーンツンっ!」

 

「やめっ、くひっ!? ひっんっ、んんっ、ふふっ、くくくっ!!?」

 

 両サイドから交互に、人差し指でツンツンと突かれるとるう子は何度もぴくんっぴくんと身体を跳ねさせる。

 

「でもやっぱりこれが一番かなー?」

 

 そう言うと晶は10本の指でわき腹をごりごりを激しくくすぐり始める。

 

「ぎゅ、くふふふふふふふぅ!!?!? くすぐったいくすぐったいくすぐったいぃぃぃぃひひひひひひひひっっっ!!!?? あはははっははっはははぁぁぁぁっ!!!?? けほっ、げほっ!! いひひひっひっひひひ、くふ、ふふふっ、苦しいぃぃぃぃいひひひひっっ!!!!??」

 

 頭を左右に何度も振り、唯一動く足はバタバタと暴れさせるも虚しく床を叩くだけ。晶を引き離すことが全く出来ない。

 絶叫させ続けられ、過呼吸になり咳き込むも晶はくすぐりをやめる素振りすら見せない。

 

「わかったっ、あっははははははははぁ!?!? バトル、バトルするからあっはははははっははっははっっ!!! ぐずぐりやめでへぇぇひゃひゃひゃっ、はははははははっっ!!??」

 

 苦しさから逃れるため、とうとう心が折れてしまったるう子。

 しかし晶はバトルするという言葉を聞いても、くすぐりをやめなかった。

 

「にゃ、にゃんでぇぇぇへひゃははははははっっ!!!? バトルっ、するってぇ、あぎぃっ、ひひひひひひひ!!!!?? 言ったぁあっはははははは!!? 言ったのにぃぃぃっっ!!!」

 

 るう子は泣き叫びながら何度も「バトルする」というがいっこうにくすぐりは終わらない。

 このまま死んでしまうかもしれない――るう子が命の危機すら感じ始めた時、ようやく晶が口を開いた。

 

 

「すぐにバトルするって言ってくれなかったからぁ……あと5分はくすぐり地獄だよ?」

 

 

「そ、そんなぁぁぁあっはははははははははっっ!!!?? 死ぬっ死んじゃうからぁぁぁぁああははははははははは!!!! くすぐらないでぇぇぇぇっっ、ぎゅ、くふふふふふひぃっ、あっはっはっはっはははははははぁっっ!!!???」

 

 

 どれだけ暴れようとも、絶叫しようとも、大笑いしようとも。苦しくて死ぬような思いをしてもるう子は解放されなかった。

 死刑宣告にも等しい5分間、くすぐりが大の苦手であるるう子はくすぐられ続けるのだった――。



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2.その命令は理不尽

「じゃあ、"もっとくすぐってください"っていったらやめてあげよっかなー?」

 

「いひひひひひひぎぃ、ひっひっひひひぃ!!!?? いやっ、いやぁぁあっははっははっはははははああああ!!!??」

 

 無防備なわき腹をがっしりと掴まれもみほぐすようにくすぐられ、るう子は身悶えながら絶叫する。

 全く予想のつかない晶のくすぐりに、ただ大笑いすることしかできなかった。

 

「ほらほら~、はやく言わないとくすぐり死んじゃうよ~?」

 

 そう言うと晶はるう子の両腋を人差し指、中指、薬指の三本指でぐりぐりと刺激を与える。

 

「あっひひひひひひひいいぃぃぃ!!!?? かああっははははははっっ!!!? やめてええぇっっへへへひゃあっははっはははあ!!!??」

 

 罠だということは分かっている。晶の言うとおりに言えばくすぐられ、言わなくてもくすぐられる。

 それでもるう子は従うほかなかった。くすぐり地獄に5分も耐えるなんて出来るはずがない。

 

「も、もっとぉぉ、あっぎひひひひひひぃぃっ!!?? くしゅっ、くしゅぎゅってくひゃはははっはあっはっはあああああ!!!!?」

 

 強制的に引き起こされる笑いによってるう子はまともに言葉を発することができない。

 ただ肺の中にある空気を吐き出し、お腹を痙攣させ大笑いするくすぐり奴隷に成り果てていた。

 

「え~なんて~? ちゃんと言ってくれなきゃ、あきらっきーわかんないよぉ」

 

 晶はわざとらしくそう言うと、くすぐりの手をやめることなくるう子のわき腹をいじめつくす。

 るう子が何度言葉を発しようとしても、ちょっとくすぐりの手を激しくするだけでその言葉は決壊し意味をなさないものとなる。

 その度に晶はとぼけて、何度もるう子にくすぐり地獄を味あわせていた。

 

「く、くすぐってっへへっへへへっっ、ひゃああっはっはっはっはあああああ!!!?? もっとくすぐっっ……ぅ、ふふふふふふふぅぅぐっくくくひゃははっはっはっはああああ!!!?」

 

「あきらっきー早口じゃあ分かんないなあ。も~っとゆっくり言ってみて?」

 

 晶はそう言うとくすぐりの手を少しだけ弱める。

 

「ぜぇ、ぜぇっ……も、もっとぉ……くっ、くふふっ……くすぐ……って……くだっ」

 

 ようやく言える。

 るう子がそう安堵した時だった。

 

 晶はるう子の両脇腹にそれぞれ五本ずつ指を立て、がしがしと乱暴にくすぐり始めた。

 

「――だっっ!!!?? くぁっ、ひゃひゃひゃひゃあああああっはっはっはっはああああああ!!!?? にゃんでぇっひゃっひゃあああはははははははは!!!??」

 

 首を激しくふり、足を狂ったようにばたつかせながらるう子は笑う。

 

「はーい、もいっかいやりなおーし。るうるうならできるよねえ?」

 

 晶はくすりと笑い、またくすぐりの手をゆるめる。

 

「げっほ、げほっ……!! うぅ……う……もっと……くすぐってくださいぃぃ……」

 

 くすぐりいじめつくされ、本気で泣きながらるう子は言った。

 それほどまでにるう子にとってこの責めは辛かったのだ。嗚咽を漏らしながらるう子はくすぐりから逃れるため何度も命令された言葉を繰り返した。

 

「……ふーん、まあ、るうるうの熱意は伝わったかな」

 

 晶はそんなるう子を見るとぱっと手を離しくすぐりをやめた。

 

「ふぇ……じゃ、じゃあ……もうっ……」

 

 わずかに見えた希望。もうくすぐられないで済む。るう子は安心感でふっと一瞬、力を抜いた。その時だった。

 

「じゃあお望みどおりくすぐってあげるね! るうるうっ」

 

 晶はそう言うと、るう子のわき腹にまた指を突きたてごりごり、ぐりぐりと乱暴なくすぐりを始めた。

 

「にゃあっはっはっはっはっはああああああ!!!?!? なんでぇっへっへっへへっひゃはあああははははははああ!!!?? 言われたとおりにしたっはっはっはああああ!!!??」

 

 るう子はまた馬鹿笑いを強制させられ、叫ぶように笑った。

 晶の理不尽な行為に、るう子は本気で今すぐに死んでしまいたいと思いはじめていた。るう子にとってくすぐり責めはそれほどまでに苦しい責めなのだ。

 

「なんのことー? あきらはぁ、るうるうが"くすぐってください"っていうから仕方なくやってるんだよー? やめてほしかったらちゃんと"あの言葉"を言わないとねー?」

 

 合計十本の指がるう子の無防備な身体をまさぐった。

 ランダムにぐりぐりと動くそれらはるう子にとってまさに凶器。頭がおかしくなってしまいそうなくすぐったさに、るう子はもうまともな思考ができなくなっていた。

 

「もっとくすぐってくださいぃぃっひひひひひひゃははははははっはっはあ!!!?? くすぐってくださいくすぐってくださいくすぐってくださいっっ!!! げほっ、げほっげほっ!!!? はっはっはっはっはっはっはあははははあああ!!!??」

 

 もう言葉の意味すらわからずに、ただひたすら晶に命じられた言葉を繰り返するう子。

 笑いすぎで、もはやお腹が見たこともないくらい痙攣し、呼吸困難になるほど絶叫する。

 それでも許してもらえないるう子は、何度も気が狂いそうになったが、そう簡単に狂うことなどできない。意識を失うことすらも。

 

「あっひゃあああひゃはははははっはっはっはっはっはっっ!!?? 許してっ、もう許してェッへっへひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃはははははは!!!!??」

 

 汗をびっしょりかきながら、るう子は何度も顔を振った。身体はとっくに笑い疲れているはずなのに、お腹の底から笑いがあふれてくる。

 

「しょうがない……これ以上やったらるうるうの頭がくるくるぱーになっちゃうかもだし。ね、じゃあ賭けをしようよ?」

 

 そう言うと晶は一旦くすぐりをやめてずい、とるう子の顔に自身の顔を寄せる。

 

「はぁっ……はぁっ……!! ……ふぅ……か、賭け……って?」

 

 ようやく休憩をとることができたるう子は痙攣するお腹を気遣いながらゆっくりと息を吸い、呼吸を整える。

 苦しさから散々涙を流したのか、目元が真っ赤になっていた。

 

「これからるうるうとあきらっきーは、ウィクロスでバトルするの。るうるうが一回でも勝ったら解放してあげる。でも負けたら――」

 

「……負け、たら?」

 

「ふふふ……お~し~お~き~」

 

 そう言って晶はこちょこちょと両手でくすぐるマネをする。ただそれだけでるう子は反射的に笑いそうになり、わき腹やお腹に妙な力が入ってしまう。

 

「や、やだっ……! くすぐりだけは嫌ッ!! もう嫌ぁ……」

 

 まだくすぐられてもいないのに、るう子はパニックになって叫ぶ。よほどくすぐりがトラウマになったのだろう。

 

「大丈夫だよ、るうるう。勝てばいいんだから。ちなみに……もしバトルしてくれない場合は、一日中くすぐり地獄だよ? ――こんな風にっ!!」

 

 晶はそう言いながら、るう子のわき腹を両手で掴む。

 

「あーっはっはっはははははははぁぁぁ!!?? やるっ!! バトルするッ!!! するからやめてぇぇぇぇええ!!!」

 

 るう子は半狂乱になりながら頭を激しく振り足をじたばたと暴れさせる。

 

「まだわき腹を掴んだだけなのにこの反応……ふふふっ、お仕置きが楽しみだね。るうるう?」と晶が言った。

 

 そしてそのままるう子から離れるように立ち上がり、ウィクロスのカードを取り出した。

 

「じゃあいくよ、るうるう? オーップンっ!」

 

 勝たなくては、次こそ死んでしまうかもしれない――。

 るう子は恐怖と焦りの中、バトルフィールドに身を投じた――。

 

 




まだまだあきらっきーのくすぐり拷問は終わりません。
次はとうとう足裏くすぐりに突入します。


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3.その戦いは非道

 薄暗く不気味な雰囲気なバトルフィールド。いつもは不安感を煽るこの場所が、るう子には安心感を与えていた。

 ここならば強制的な笑いという拷問から、少しの間でも逃れることができる――るう子はそう考えていた。

 とはいえ、バトルに勝たなければまた"あの地獄"が……そう思うとるう子は思わず身震いした。

 

「じゃああきらっきーの先行だね。やっちゃいなミルルンッ」

 

「頑張るーんっ♪」

 

 元気よくバトルを開始する晶とミルルン。こうしている間は二人は相性の良いセレクターとルリグに見える。

 

「エナチャージ、んでグロウ! シグニを置いてターンエンド!」

 

 無難にプレイングを終え、ターンはるう子に回ってくる。

 

「じゃあ、いくね……エナチャージ、イオナをグロウ!」

 

 るう子も自身のルリグ……イオナをグロウさせる。レベルが低い状態ではあまりすることもないので早々にアタックしてターンを回したいところだが、るう子はいつも以上に慎重になっていた。

 なぜなら今回は負ければ地獄の体験が待っている。バトルの重みが違うのだ。ただそれがたかが"くすぐり"というところに、るう子は計り知れない悔しさを感じていた。

 なんで自分の身体は勝手に笑ってしまうんだろう。なんであんなに苦しいんだろう――そんなことをぼんやりと考えていた、その時だった。

 

「――くっ!? ひっひひひひひあははははっはっはっはっあぁぁぁ!!??」

 

 突如身体に猛烈なくすぐったさを感じたるう子は思わず自分の身体を守るため、自身を抱きしめるような格好になる。

 が、それでもくすぐったさは消えなかった。まるで見えない手にわき腹を蹂躙されているような感触だった。

 

「(きたっ……きてくれたぁ……!)」

 

 そんな中、一人嬉しそうな表情を浮かべるのは晶だった。

 一見なにもない場所でるう子が笑いだした……その理由を知るのは、この場では晶一人だった。

 

「るうるう~? くすぐったいの~? それはね、今、現実世界のるうるうの身体を、ウリスがくすぐってるんだよ~?」

 

「ウっ、ウリスがあぁぁぁぁ!!?? あっははははっははあああ!!!?」

 

 思わず地面に突っ伏し、転げまわるるう子。いくら暴れようとも身体は強制的に笑わされていた。

 

「ウリスは外からこっちを見てるの。るうるうのプレイがちょっと遅いな~って思ったらくすぐるんだって~!」

 

「そ、そんにゃあっぁぁぁははははははははは!!?!? 聞いてないぃぃひっひひひひひひひひぃ!!?」

 

 じたばたと暴れるるう子。本来ならば実体があるであろうくすぐる手に反抗するようにもだえるが、そこに手はない。

 るう子をくすぐるのはあくまでも現実世界のウリスの手なのだ。

 

「るう子! 早くプレイしなさい! 逃れるにはそれしかないわ!」

 

 咄嗟にフォローを入れるイオナ。その言葉に従うようにるう子はなんとか立ち上がり、早口でプレイングする。

 

「が、凱旋とサーバント配置! くひっひひひひひ!!!? 効果!! 凱旋の効果で黒いシグニをサーチ!! あっははははあはひゃあははっは!?!? なんでもいい! なんでもいいから早くぅうっひひひひぃぃひゃあはははははは!!!?? タ、ターンエンド! ターンエンドッ!!」

 

 シグニ効果で適当なカードを掴むるう子。しかもアタックせずにこのターンを終えてしまう。

 それほどまでにるう子にとってくすぐりという行為は苦しいのだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「あっれ~? アタックしないのぉ? じゃああきらっきーのターンだね」

 

 そう言ってプレイを開始する晶。それと同時にるう子はくすぐり地獄から一時的に解放される。

 この晶のターンがるう子にとって唯一の休憩時間だった。

 

 晶は安定したプレイングをして、このターンはるう子のライフクロスを2枚割ることに成功した。

 早速ライフに差が空いてしまったるう子はなんとかして遅れを取り戻さなければならなかった。

 

「るうのターン! エナチャージしてグロウ! シグニを配置してバトル!」

 

 プレイに遅延が見られればまたくすぐられてしまう。そのことを意識して早回し気味にプレイを行うるう子。しかし――。

 

「んー……ちょっと待ってねぇ。あきらっきーアーツ使うか考えるねぇ」

 

「えっ……う、うん……」

 

 こんな序盤で使用するアーツなんてあっただろうか……不思議そうに首を傾げるるう子。

 それにさっきはアタックしなかったから晶にエナはない。どういうつもりなのだろうか。そう考えていた矢先――。

 

「ふひゃあ!? あぎっひっひっひひひひひひひひいいぃぃ!!!? にゃんでぇ、にゃんでいまくすぐっぐぎひひひひひひひゃああははははははは!!!??」

 

 またも突然強烈なくすぐったさに襲われたるう子は叫ぶように笑いながら暴れまわる。

 

「あれー? またくすぐったいのお? あ、そっかー……だって今は"るうるうのターン"だったもんねぇ?」

 

「あはははははっはははははあぁぁぁ!!!?? ずるいっずるいいぃぃぃっひひひひひひひはははははっ!!!? アーツなんて、アーツなんてないくせににぃぃぃぐぎゅふひゃひゃひゃひゃあああ!!!??」

 

 泣きながら講義するるう子。呼吸困難に陥り、みるみる内に体力が無くなって暴れる身体に力が入らない。

 

「えー? それって口プレイってやつぅ? あきらっきー疑われて悲しいなぁ、グスングスン。でも今回はアーツ使わなくていいかなあ。アタックフェイズに入っていいよぉ」

 

「全員でアタック! アタックしてターンエンド! ターンエンドッ!!」

 

 場の状況など気にしていられないるう子はとにかく持ちうる全てのシグニで晶のシグニを攻撃した。結果全バニッシュに成功したが、それが良いプレイングであったかは分からない。

 むしろ悪い状況のようだ……とイオナは感じていた。

 一ターン目にアタックしなかったのだから、相手のエナはない。今回もアタックしなければグロウを遅らせることができたのだ。

 しかし今のるう子にはそんなことを考えている余裕はない。少しでもライフを割って、早く決着を付けなければならなかった。

 

 そんなプレイを強要されたせいか、ターンが続くたびにるう子は劣勢になっていった。

 そして、終盤。晶にターンが回る。

 

「ミルルンレベル4にグロウ! るうるうの手札からスペルをパクっちゃえー!」

 

「了解るーん!」

 

 ミルルンの効果。相手の手札にあるスペルを奪い、そのまま使用するスペル。今回指定されたスペルは……。

 

「アークオーラ……ふふっ、いいカード持ってたじゃない。るうるう?」

 

 奪われたのは強力なフィニッシュカード、アークオーラ。奇しくもそれは以前晶とるう子が戦った時にるう子がトドメに使ったカードである。

 

「あの時の屈辱……晴らしてあげる! ミルルン、アークオーラ!!」

 

「るーんっ!」

 

 ミルルンの怒涛の攻撃。くすぐりによってプレイングを乱されたるう子にはもうライフが残されていなかった。

 

「イ、イオナっ……きゃああぁぁぁぁぁ!!?」

 

 ――そして、るう子は敗北した。

 バトルフィールドが崩れ、意識が元の世界へと戻っていった――。



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4.その足裏は激弱

「ん……っ……」

 

 るう子が目を覚ます。虚ろな意識の中、身体を起こそうとして違和感に気づく。

 

「……えっ、な……なにっ、これ」

 

 るう子は困惑した。自分の状況を把握するのにかなりの時間を要した。

 なにやらマッサージチェアのような大きな背もたれのある椅子に座らされており、腕はバンザイの状態で背もたれから突き出た輪っかに拘束されていた。

 足は靴と靴下を脱がされ、裸足にされており腰より高い位置にあった。なにやら穴の空いた器具に足を入れられており、身動きができなかった。

 更にというべきか、足の指は一本ずつそれぞれ固いゴムのような材質のヒモがくくりつけられており、足を拘束する器具に向けて固定されていた。

 つまり、るう子の足指は強制的に反らされたまま固定されていて、まったく動かすことができなかった。それにより足の裏はぴんと張り、皺一つない真っ白な足裏が上に向けられていた。

 

「おはよう、るうるう」

 

 聞こえた声に、るう子はびくりと身体を反応させる。

 晶の声だった。意識が覚醒してくると、ようやく自分のおかれた状況を把握することができた。

 そう、るう子は自分の解放を賭けて晶とバトルをした。そして卑劣な手段によりバトルに集中できず、るう子は負けたのだった。

 

「は、離して……。こんなの、おかしいよ……」

 

 るう子は身じろぎするが、身体はほどんど動かすことができない。腕を動かせば若干余裕のある拘束具がカチャカチャと音を立てるが、足にいたっては文字通り指一つ動かせない状態だった。

 

「離せませーん。だってるうるう、私に勝ててないじゃん」

 

「そ、そんな……あれは、だってバトル中にくすぐるから」

 

「言い訳するの? そんな悪い子には……」

 

 こちょこちょこちょ~……っと晶が言いながら指を動かすジェスチャーをしてみせた。

 

「ふっ、くくくく……い、いやっ……もうくすぐるのはっ……ふくく……」

 

 まだくすぐられてもいないのに、"こちょこちょ"という言葉と晶の動く指を見るだけで、笑いがこみ上げてきてしまうるう子。よっぽどくすぐられたのがトラウマなのだろう。

 

「あっれー? まだなにもしてないよお? もしかして期待してるのかなー?」

 

 にやにやと笑いながら晶がるう子に近づく。――そして。

 

「く・す・ぐ・り……♪」

 

「ふにゃあ!? あっははははははははははッ!!!?? いやあっははははははあああああああ!!!??」

 

 耳元でささやかれながら、首元を指でこちょこちょとくすぐられるとるう子は声をあげて笑った。

 

「これだけでこんな笑ってたらあ……この後のくすぐりは、死んじゃうかもよお?」

 

「ぷふっ……くっ、ぅぅぅぅ……!!?」

 

 晶はるう子の脇腹をつつーっと指でなぞりながら足元に移動する。

 ぞわぞわする感覚に、るう子は口を閉じてなんとか耐えようとする。

 

「ねえ、るうるうは脇腹がすっごく弱いよねえ? もうくすぐってほしくない? つらい?」

 

 と、突如晶はるう子に尋ねた。

 

「そ、そんなの決まってるよ……くすぐったいのは……もう、やだ……」

 

 泣きそうになりながら、るう子が言った。心からの本心だった。

 

「そっかー……腋はだめなんだあ……」

 

 晶の同情する声色。

 もしかして許してもらえるのだろうか? そう思ったるう子だったが、すぐに自分の甘さを呪うことになる。

 

「じゃあ、足裏はどうかなあ♪」

 

 そう言って晶は、人差し指の爪でるう子のかかとをカリカリと引っかいた。

 

「やぁっははははははははああああ!!!?? やめっいやああああっははっはっはははははははあああ!!!??」

 

 ガチャガチャと腕の拘束具を鳴らしながら、るう子は暴れもだえた。

 これまでにないくすぐったさだった。ただの指一本に触られるだけで、くすぐったいという神経が直接犯されているような感触だった。

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃああああああ!!!?? 足ぃぃひひひひひっひひっひひひっひああああああはははははあ!!!??」

 

「指一本追加~♪」

 

「ぐぎゅひゅふふふふふふふふふぅぅぅ!!!?? やだやだやだやだあああああっははははははあああああ!!!??」

 

 脇腹もそうとう弱かったるう子だったが、足の裏はさらに絶望的なまでに弱点だった。しかも比較的皮膚の厚いかかとですら信じられないほどのくすぐったさだった。

 

「指の付け根もこちょこちょ~♪」

 

 晶は無慈悲にも、二本の指先でるう子の足指、その付け根をカリカリと擦る。

 

「ぶっくふふふふひゅひゅひゅひゅぅぅぅうぅ!!!?? あぎぃぃぃひっひひっひっひっひっひひひひひひゃああはははははあああ!!!???」

 

 反射的に指を閉じようとするるう子。しかし頑丈な拘束がそれを許さなかった。ただでさえ弱い足の裏。それも他人に触られることなんてまずないであろう指の付け根。

 普段ならば指を閉じて防御することができるが、今のるう子はそれすら許されていなかった。

 頭がおかしくなってしまいそうなくすぐったさにるう子はひたすら笑った。どれだけお腹がくるしくなってもるう子は強制的に笑顔をつくらされるのだ。

 

「いぎっ、いぎがでぎなっっ……あぎゃっはははははああああはははははああああああぁぁぁぁあ!!!???」

 

 酸欠で顔が真っ赤になりながらも笑顔のるう子。なんで自分は笑うんだろう。こんなにも苦しいのに……そういくら考えても、無駄だった。

 晶の指が足裏を撫でるたびに、るう子は笑う。叫ぶ。大爆笑する。息がすえなくて苦しくても、ずっと笑い続けた。

 

「つーぎーは……土踏まずかなー?」

 

 くすりと笑う晶は両手の指をゆらゆらと動かし、足裏の中央……土踏まずを両手でくすぐりはじめた。

 

「ぶひゃひゃひゃひゃひゃああああああっはははっはあああ!!??? いやああ!! いやあぁぁぁぁっははははははははははあ!!!!??」

 

「あははっ、なんかるうるうの足、意味わかんないとこがぴくぴくしててかわいい~♪ ほーら、こちょこちょこちょ~」

 

「ぎゃっひゃひゃひゃひゃああああぁぁぁぁぁ!!?? やべでぇぇっ!! やべでぐだじゃああっはははははああぁぁぁぁ!!!!??」

 

 絶叫。赤ん坊が大泣きするかのような、叫ぶような笑い。

 るう子の真っ白な敏感足裏を晶の指が蹂躙するたびにるう子は半狂乱になって腹に残っている息という息を吐き出しつくす。

 顔はもう真っ赤を通りこして真っ青だった。酸素がもう頭にいきとどいていないようだった。本格的に気絶してしまうかもしれないほど、るう子の意識は消えかけていた。

 

 でも、笑う。るう子は笑わされる。

 息を吸うことすら許さない晶の無慈悲な足裏くすぐり。るう子は唯一動く頭をなりふり構わず暴れさせ、何度も何度も後頭部を背もたれにぶつける。

 

「ひっ……――っ……!!!!?? ――…ぅ…っっっ――ぃ……!!!!」

 

 もう殆ど身体に酸素が残っていないのか、るう子の口から声がでない。それなのにお腹は痙攣し喉は声を出そうとする。

 もう身体中が汗だらけ。それでもるう子は口を大きくあけ、頬はつりあがり、万遍の笑顔。苦しいのに、笑う。

 声が聞こえなくなってくるとガチャガチャガチャ!! という腕を拘束する鎖の音とガタッガタッという椅子全体が揺れる音がより一層るう子の悲壮感を引き立てた。

 

「はーい、休憩~」

 

 満足したのか、晶は一度るう子の足裏から指を離す。

 

「げっほ!! げほっ!!! ぜぇっぜぇっ!! ふーっ、ふぅーっ……!!」

 

 ようやくくすぐり地獄から解放され、呼吸ができたるう子は生にしがみつくように一生懸命呼吸をする。

 

「はい、休憩おしまい。こちょこちょ~」

 

「ぎひゃひゃひゃひゃひゃあああぁぁぁあ!!!??? いやぁっっ、やあああぁぁぁあはっはっはっはははははあはは!!!???」

 

 五秒も満たないうちにまた地獄が始まった。いっそ死んだほうがマシに思えるほどの地獄だった。

 

「なんでも言うごどぎぐがらぁぁぁああ!!! にゃひゃひゃひゃああああああああ!!!? ぐじゅぐりいやあぁぁああははははははは!!!?」

 

 ついに降伏するるう子。もうくすぐりから逃れるためならなんだってしようと思った。

 痛いことでもいい、お金を払ってもいい。とにかくもうくすぐりだけはなんとしてでもやめてほしいるう子だったが――。

 

「なんでも聞くの?」

 

 ぱっと、晶の手が止まる。

 

「ぜぇっ、ぜぇ……!! う、うん……聞く、から……もう……」

 

 息も絶え絶え、しゃっくりをし泣きながら晶を見るるう子。

 

「じゃあ……もーっとくすぐらせてねっ♪」

 

 悪魔のような笑顔と共に、晶はバッグからヘアブラシを取り出すと、何の躊躇もなくそれをるう子の足裏へ押し当てゴシゴシと擦りはじめた――!!

 

「――がっ……――……!!!!?? あっぎぎぎぎゃっぎゃっきゃひゃひゃひゃひゃはははははあああ!!!??」

 

 今までのくすぐりが楽に思えるほどの、拷問にも等しいくすぐったさが、るう子の神経を犯し始めた。

 

「やだやだやだやだやだあああぁぁぁああっはははははひゃひゃひゃあああぁぁぁあ!!!??? へぇひぇひぇひぇええぇひゃはははははあああ!!!??」

 

 頭の血管が切れそうになるほどのくすぐったさ。

 喉からは今までに出したことのない大声が絶え間なく吐き出され続ける。るう子はもう笑いすぎで心臓のあたりに痛みが走り始めていた。

 

 それでも晶はまだまだやめない。ヘアブラシの一本一本がるう子の敏感な神経をくすぐり犯す。

 一往復……二往復……三往復……。これ以上のくすぐったさはないだろうというるう子のかすかな希望。しかしヘアブラシが一往復するたびにくすぐったさの限界は簡単に更新されていく。

 

 そんなくすぐり拷問は一時間に渡って続けられた――。

 

 

「ぎゅひゅひゅひゅひゅぅぅぅあぁははははははあああ!!!?? やべでぇへっへひぇひぇひぇひゃひゃあぁぁああ!!!??? いやあぁぁっははははははははあああ!!!??」




今回はやりたいことを消化できた感じです。

何かリクエストがあれば作品やキャラ、シチュエーションなど募集中なので感想からよろしくお願いします。


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