宇宙戦艦YAM@TO完結編(ディンギル・アクエリアス戦役) (Brahma)
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第1話 銀河系の異変

6500万年前の地球....
キュウウウウウウウウウ...
ユカタン半島付近に高速で小惑星が落下していく。
地上に激突すると閃光...
グオオオオオオオオオーーーーーンンン
激しい爆煙...
すさまじい爆音が響きわたった。
そして地球の気候は激変し、爆煙が成層圏を覆い、黒雲に覆われた。
そしてイリジウムが地表にふりそそぐ。
それから地球に襲いかかったのは小惑星の主星である水惑星からの巨大な水柱だった。
水柱は、地球の引力によって引っ張られ地球に怒涛のごとくふりそそぐ。
落雷、激しい水の激流が地球の地表を覆って荒れ狂う。
恐竜たちは濁流に飲み込まれ阿鼻叫喚の叫びをあげて渦にのみこまれた。
すべてを飲み込むとなぎのように静まり、水惑星が離れ去るとなにもなかったように雲がはれ、日光がさした。

そして1万5千年前、地球は、偉大なる族長カインの子孫族長レメク、豪奢な極彩色の衣装をまとう妻アダ、そして竪琴と笛を奏でる才に恵まれたその子ユバル、揺れる美しいアクセサリーをまとう妻チラ、チラの子で鍛冶屋で軍事技術者のトバルカインの一族によって支配され、中心部には黒々としたコウモリのような翼をもち細面だが頭に角を生やし、あぐらをかいて長大な斧を持ついかめしい神像が祭られた神殿を中心に壮麗な都市が築かれ、繁栄を誇っていた。しかし、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計り、堕落し不法に満ちていた。

「(神は)地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。」(創世記6:6)
「神は地をご覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なるものはこの地で堕落の道を歩んでいた。」(創世記6:12)
「見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊を持つ、すべての肉なるものを天の下から滅ぼす。」(創世記6:17)

そして、再び水惑星は地球を襲った。1万年前のことだった。40日40夜雨は降り注いだが、当時地球、すなわちテアマトに住んでいた者の一部は救われて、3000光年先の星ディンギルに保護された。それは世界各地に洪水伝説として伝わっている。やがて地球から救われた原テアマト人は、自分たちを救った原ディンギル人を滅ぼしてディンギルを支配することになる。

それから1万2200年後、銀河系に前代未聞の異変が起こっていた。



銀河系の異変は次元断層によって異次元からの赤色銀河と水惑星が出現したことによって引き起こされた。いきなり銀河系にのめりこむようにして現れた赤色銀河の星々は銀河系の星々と衝突を繰りかえす。交差角度があったため、オリオン腕は直接の被害は免れたが小規模な異変は起こっていた。火球、隕石、隕鉄の数がかってないほど地球にふりそそぎ、オーロラが極地方でないのに見られ、流星雨が頻繁にみられるようになった。

そして、この異変に対し、地球連邦政府は...

キイィィ...

「お呼びでしょうか。」

長官室に、頭に赤い一対のリボン、黒い「閣下服」に赤いチェックのスカートをはいた若い女性が姿を見せる。

「ああ...春香、じゃなくて天海中将、よくきたわ。」

春香はうなづく。着ているものがピンクのカーディガンとか白いジージャンに青スカートのような普段着で街中であったならどこにでもいそうなただのかわいい女の子でしかないが、数々の武勲と功績により若くして将官にのぼりつめていた歴戦の優秀な指揮官なのである。

「この度の異変のことはよくわかってるわね。状況視察のため、いて座核恒星系方面へ出動して。」

「ヴァ..じゃなかった、はい、天海春香、ご命令をお受けし、ただちにヤマトで出動します。」

こうして状況視察のため、宇宙戦艦ヤマトが銀河系いて座方向、核恒星系に派遣された。

 

「右15°反転。面舵いっぱい。」

「雪歩。ガルマン・ガミラス本星は?」

「11時の方向、3.5光年に位置するはずですぅ。」

返事をしつつ、雪歩は機器ににむかい必死に呼びかける。

「ガルマン・ガミラス本星、ベオバレラス受信局、聞こえますか?ベオバレラス受信局?こちらオリオン腕地球連邦所属宇宙戦艦ヤマト。応答願いますぅ。」

「応答はないようね。」

「...。」

「今なら隕石群の流れはおだやかになっている。小ワープなら可能よ。」

「では、千早ちゃん、小ワープ用意。」

「了解。」

ヤマトの姿は宇宙空間から消えた。

「機関、船体ともに異常なし。」

「ガルマン・ガミラス本星まで10宇宙キロ。」

第一艦橋から見えるのは隕石の落下によって破壊され、見るも無残に荒れ果てた都市だった。

デスラー総統府が中央部から折れ曲がって傾いている。

「デスラー総統の命運はつきていたのかしらね。」

律子がぼそっとつぶやく。

 

「春香。」

「?」

「恒星が衝突しようとしているわ。非常に危険よ。」

律子が警告を春香に伝える。

「うん。わかった。」

「なるほど。赤色銀河のバルジと銀河系のバルジがもろにぶつかり合っているから異常に星の密度が大きいのね。普通だったらありえない現象が起きている。」

「4光年四方に恒星が10個~20個あたりまえにあるわね。爆発してもおかしくない年老いた星も珍しくない。」

「千早ちゃん。爆発の勢いが激しい。このままだと飲み込まれちゃう。」

「春香。ワープ計算ができないのよ。どこにワープするかわからない。」

「だけど千早ちゃん。ここにいても助からないよ。とにかくワープしよう。」

千早はうなずくと

「無差別ワープ。」

と宣する。

 

「ワープ終了。」

「波動エンジン異常なし。」

「どうやら助かったみたいですぅ。」

雪歩が皆に話しかけるように話す。

「みたいね。」

律子がつぶやくように返事をする。クルーは安堵の表情で、ふうっ...と呼気を吐き、額を腕でなでる。

「現在位置、太陽系から銀河系中心方向に3000光年。」

「!!」

「前方、10宇宙キロに惑星。直径地球の0.97倍。」

「探査衛星を飛ばして。」

「了解。」

 

1時間後...

「探査衛星から観測結果受信しました。」

「!!」

そこには打ち寄せる津波のような激しい激流が惑星表面をおおっている様子が映し出された。続いて激流に都市が飲み込まれる画像も映しだされる。

「す、すごい洪水ですぅ。」

「地球じゃ考えられないスケールね。」

「千早ちゃん。前方の惑星に降下しよう。」

「春香。あの洪水のなかに降下するのは非常に危険よ。」

「コスモハウンド、発進準...。」

左舷が開き、コスモハウンドが発進しようとするが激流に飲み込まれる。

「!!」

「春香。無理よ。これじゃあ二重遭難になってしまう。」

「春香。ヤマトを発進させるわ。」

「千早ちゃん。」

「船の制御は限界だわ。艦の内部に浸水してしまう。内部をさらすことになるからある意味宇宙気流を通過するよりも危険だわ。」

「...。」

「ヤマト地球へ向けて発進。」

 

「こちら全天球レーダー室。」

「回遊惑星らしきものを確認。」

「データ分析をお願いします。」

「了解。」

 

「解析結果デマシタ。回遊惑星ラシキモノハ地球ノ直径ノ二倍弱。表面ハ多量ノ水デ覆ワレテイル巨大ナ水惑星デス。軌道計算ニヨルト例ノ洪水ニナッタ惑星付近ヲ2日前ニ通過。異常接近シタタメ、惑星ノ引力デオヨソ600兆トンノ水ガ惑星ニフリソソギ洪水ニナッタモヨウ。光速ノ二分ノ一デ太陽系方面ヘ移動中。」

「恐ろしい星ですぅ。」

「雪歩。至急防衛軍司令部へ打電して。」

「了解。」

 

「この水惑星が地球に異常接近した場合、地球は水没を免れませんが6000年後のことですので地球の文明が進んで何らかの対策がとられると推測されますので心配はないと考えます。」

「春香に伝えて。任務お疲れ様。直ちに帰還せよと。」

「了解。」

 

防衛軍司令部から受信するとヤマトはただちにワープし、帰還した。そのヤマトに対し数宇宙キロからひややかに視線を注ぐ者がいたが、クルーには思いもよらなかった。

 

地球から銀河系中心方向3000光年の宇宙空間には壮大な都市要塞が浮かんでいた。

都市要塞の下部はごつごつした岩盤になっており、上面は道路が走り、一種の巨大な空母のように見える。

「アンティパス・ド・ザールよ。わが母星の最後はみとどけたか。」

「コ・ヤース大神官大総統。われらが母星ディンギルは、特殊な組成に大量な水が浸透した結果大爆発を起こして消失した模様。母や弟もおそらく...。」

「やむをえんだろう。この世は強い者が栄えるためにのみある。弱い老人や女子供など滅びて同然。」

「諸君。われわれはあのアクエリアスによって宇宙の放浪者たる運命を課せられた。しかもこの都市要塞ウルクのエネルギーには限界がある。速やかに移住先をみつけなければならない。」

「諸君。見たまえ。」

画面に太陽系が映し出される。太陽は画面上アプスと表示されている。太陽に近い順からムンム(水星)、ラハム(金星)、テアマト(地球)、テアマトの衛星キング(月)、ラーム(火星)、キシャル(木星)、アンシャル(土星)、アヌ(天王星)、エア(海王星)、ガガ(不明。土星の衛星のように見えるからタイタンかまたはエリス、セドナ、クワオワーなどカイパーベルト天体のいずれかか?)が描かれていた。

「これは、銀河系外周方向、3000光年先にあるスペクトルG型のアプス星(太陽)系だ。三番目にテアマト(地球)がある。われわれは、そのテアマトに移住するのだ。」

画面に地球が大写しになる。

「テアマト....なんと美しい星だ。」

ディンギルの男たちはため息をいて、口をついて出た言葉がそうであった。

「だがテアマトにも戦う力はあるだろう。われわれは、異次元からの赤色銀河の衝突によってアクエリアスの軌道が変わったこの状況を生かすことにする。次元空間質量移送光線でアクエリアスをワープさせ、テアマトを水没させ、テアマト人どもを絶滅させる、そして水が引いた後に移住する。それまでテアマト人をテアマトに封じ込めなければならない。」

「アンティパス・ド・ザールよ。」

「はつ。」

「お前にアプス星系制圧艦隊司令長官を命ずる。テアマト人どもを宇宙へ避難させてはならぬ。」

「御意。」

 

「我がウルクの岩盤が生む曲線反重力波を次元空間質量移送光線、いわゆるワープ光線に変換増幅し、アクエリアスに共鳴振動を起こさせて一気にワープさせます。」

「ただし、あれだけの質量をもった星ですから一回のワープは150光年が限度です。ワープさせた後は、エネルギー充填に23時間、照射に1時間かかりますからテアマトまで20日かかる計算になります。」

「うむ。テアマト人を封じ込め、20日後にはテアマトを必ず水没させるのだ。早速一回目のワープに取り掛かれ。」

「御意。」

 

「第一次岩盤エネルギー抽出率100%。エネルギー変換増幅装置作動。」

「エネルギー増幅率70%....80%....100%」

「次元空間質量転移機への転送完了。」

「ワープ光線照射。」

一対の次元空間質量移送機から光線が照射される。

アクエリアスが見かけ上橙色に変化していく。そしてやがて宇宙空間から消失した。

「アクエリアス、質量移送完了。ウルクワープ準備。」

「ワープ。」

やがて都市要塞ウルクも宇宙空間から姿を消した。




次元断層によって異次元から出現した水惑星で地球を水没させようと画策する者どもが蠢動をはじめる。

春香が命令を受ける場面追加(2/22,17:38)


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第2話 土星空域会戦

なぞの水惑星がワープを繰り返し接近してくることは、やがて地球側も気づくこととなる。


「セドナ基地からの情報によりますと、先般発見された水惑星が24時間ごとに150光年のワープを繰り返している模様です。」

「地球に接近するのは6000年後じゃなかったのか。」

「なぜ星がワープしたりするんだ。」

 

「あと16日で地球はどうなるの?」

「水惑星の質量と地球の引力から計算しますと数百兆トンの水が降り注ぐことになります。地球の海面は、一兆二千億トンの水で海面は10m上昇しますから数百兆トンの水が降り注ぐと陸地はすべて水没することになります。」

「すぐに対策を講じなければならないわね。連邦政府に伝えて。」

「はっ。」

 

「全人類を一時的に太陽系内の植民星やコロニーに避難させなければならないわね。

防衛軍所属の全艦艇、民間の宇宙船も借用して避難船団を大至急組織して。」

「はっ。」

 

そのころディンギルの大艦隊は、冥王星空域まで進出していた。

アンティパス・ド・ザールが旗艦の艦橋で仁王立ちしていた。

「水雷母艦発進。アンシャル(土星)上空で待機せよ。」

「われわれもアンシャル上空までワープする。機動部隊は、爆撃機でアー・プチ(冥王星)にあるテアマト人どもの基地をたたけ。」

「御意。」

「第一次攻撃隊、発進。」

ディンギルの艦載機群が冥王星基地を襲った。

激しい空爆により冥王星基地の施設が次々に破壊される。

高射砲で応戦するがようやく十数機撃墜するのがやっとであった。数千機に及ぶディンギル攻撃機隊になすすべもなく破壊され、炎上する。

「冥王星基地、通信途絶。」

「なぞの大艦隊が侵入してきた模様。」

スクリーンに映し出される。

「すごい数ね。地球防衛艦隊出撃用意して。」

「海王星トリトン基地、ネレイド基地通信途絶。」

「天王星チタニア基地、オベロン基地、敵攻撃隊出現。なおも交戦中。」

「土星空域に向かっている避難船団には護衛艦がついていない。

直ちに全地球艦隊を発進させる。わたし自ら指揮を執るわ。」

「はつ。」

一同の顔が明るくなる。

しかし、舞の内心は、天才がそうであるようにこの敵には何かあるという事の重大さと深刻さを直感していたのである。

一方当人以外は、ガミラス、白色彗星、そして自動惑星ゴルバ、暗黒星団帝国のプレアデス級の大艦隊を葬り去った無敵の名将、日高舞が自ら指揮を執るのである。この艦隊戦で地球の無事は守られると誰もが信じて疑わなかった。

 

「もうすぐ土星空域だ。」

「すごい数の避難船団だな。」

避難船団の艦橋では艦長はじめ総舵手、通信手がのんきに話をして船の外をながめていた。

 

「全艦、土星空域にワープ。」

舞が命じると

「了解。土星空域にワープせよ。」

と副官が復唱し、全艦艇に伝えられ、地球防衛艦隊は地球近傍空域から姿を消した。

 

避難船団の船員が未知の艦隊を発見したのはそのときだった。

「レーダーに反応。5000ほどの物体、500宇宙キロ先の空域にワープアウト。」

「なんだ?あの宇宙船は?」

「船種確認。ガミラス、白色彗星、暗黒星団帝国、ボラー、いずれものでもありません。」

 

アンティパス・ド・ザールは旗艦の艦橋で仁王立ちになりながらほくそえんでいた。

「主砲、斉射。一隻残らず撃沈しろ。」

数千条もの橙色の光条がいっせいに放たれ、避難船団を襲う。

避難船団の艦船は貫かれ、次々に爆発を起こして四散する。

 

「ワープ完了。」

「!!」

地球防衛艦隊がワープアウトした宇宙空間で見たものは、避難船団が、閃光と爆発煙となって、打ち上げ花火のようにあちらこちらに現れては消えている姿だった。

「避難船団が攻撃を受けている模様。」

 

「避難船団が攻撃を受けている。敵がどんなわなを張っているか分からない。赤羽根中将、1500隻を率いて後方で待機し波動砲発射準備。敵艦隊の動きを見逃さないで。」

「了解。」

実は舞は、敵が波動砲斉射を小ワープで逃れて接近攻撃をしかけてくる場合の出撃宙点の分布を計算させ、波動砲の斉射を逃れても包囲殲滅可能な巧緻極める艦隊配置を行なっていたのである。しかも赤羽根分艦隊の波動砲を自分の分艦隊の空間磁力メッキの反射によって敵を誘爆させることまで狙った必勝の布陣のはずだった。

 

「長官、敵艦隊まで700宇宙キロです。」

「全艦、拡散波動砲発射準備。波動砲発射後、小ワープで避けられて砲撃される可能性があるから空間磁力メッキ展開準備して。」

「拡散波動砲、発射準備完了。」

「10,9,8,....3,2,1,発射!」

拡散波動砲が斉射される。

 

「敵、艦首砲エネルギー充填確認。」

アンティパス・ド・ザールはほくそえんで指示する。

「発射反応確認後、小ワープし、水雷艇からハイパー放射ミサイルを発射しろ。」

「御意。」

「発射反応確認。」

アンティパス・ド・ザールが指を鳴らしディンギル艦隊は姿を消す。

「!!」

「敵艦隊。消失。小ワープした模様。」

舞が指を鳴らし、地球艦隊はいっせいに空間磁力メッキを展開する。

 

「敵艦隊出現。至近です。」

ここまでは舞の計算どおりであったが、その後の敵の攻撃が予想の範囲を超えていた。

「魚雷様兵器発射されます。」

ディンギル水雷艇から後にハイパー放射ミサイルとして知られ、恐れられた兵器がはじめて地球艦隊へ向けて発射された。

 

ハイパー放射ミサイルは次々に地球艦隊の艦艇に接触する。光学兵器ならすべて反射する空間磁力メッキだが、実弾にはまったく役に立たない。ハイパー放射ミサイルは一種の熱線を放射しながら船体を溶かして食い込み、放射能ガスを撒き散らしながら爆発し、船体を引き裂いてつぎつぎに火球に変えていく。

「!!」

「エンタープライズ被弾!」

「ワスプ被弾!」

「アリゾナ被弾!」

「シャルンホルスト通信途絶!」

「ジェリコー被弾!」

「グナイゼナウ被弾!」

「テネシー轟沈!」

「トリッテンハイム被弾!」

被害報告が続き、ハイパー放射ミサイルがおびただしい数の艦艇の船体に食い込んでいく様子が船窓から見える。次の瞬間には爆煙を上げて次々に四散していくのだった。

「フッド撃沈!」

「エンタープライズ撃沈!」

「インヴィジブル被弾!」

「レパルス撃沈!」

「ワスプ撃沈!」

「アリゾナ撃沈!」

「トロンプ被弾!」

「本艦へ!直撃来ます!」

舞の乗る旗艦アンドロメダにも食い込んで爆発する。

爆煙とともに放射能ガスが艦内に広がる。アンドロメダ艦内で爆発音が続く。

舞も激しい振動で床に投げ出される。

「長官!。」

「うう...。」

「大丈夫ですか。」

「何をしているの。敵を包囲して攻撃。主砲斉射。敵が至近にいるのはチャンスなのよ。」

「はっ。」

「長官。アンドロメダは持ちません。他艦へ指揮座をお移しください。」

「旗艦をヤマトに移します。」

「はっ。」

舞は救命艇に乗り込む。

アンドロメダは大破してしばらくはかろうじて浮かんでいたが、やがて爆発して四散した。

 

そのとき、赤羽根中将は、ワープアウトしてくるディンギル艦隊を見逃さなかった。

「拡散波動砲発射。」

ワープアウトしてくるディンギル艦隊の半数は光の奔流につつまれて爆発四散する。ディンギル艦隊はハイパー放射ミサイルを発射して地球艦隊の艦艇を次々に沈めていくが9割を失いつつも必死に応戦する舞の部隊と半数を失いつつも攻撃を続ける赤羽根の部隊に挟撃される。

包囲網がディンギル艦隊を包んでいく。ハイパー放射ミサイルで優勢に戦いを進めていたはずのディンギル艦隊はいつのまにか包囲されて集中砲火を浴びていた。舞の築いた包囲陣がじわじわと威力を発揮してきたのである。

両艦隊の画面には、半円状からリング状に包囲しようとする地球艦隊と包囲からのがれようとするディンギル艦隊の艦列が図形のように表示されていた。

 

「ここまでだな。このままではこちらも全滅する。戦略的後退だ。」

「御意。」

包囲の隙間からディンギル艦隊は逃げ出そうとする。

「敵が船列を整えないうちに攻撃。旗艦を狙って。」

そう命じるも舞は第一艦橋の床面にどうと倒れて、口から血を吐いてしまう。

「長官。」

助け起こされて、笑顔で副官に答える。

「かなり強い放射線を食らったようね。体がだるくていうことをきかない。あとの指揮は赤羽根中将にまかせます。」

 

地球艦隊のおびただしい光条は、後退しようとするディンギル艦隊を引き裂くように攻撃、アンティパス・ド・ザールの旗艦も被弾する。

轟音とともに艦内に爆煙がたちこめる。

「くつ。とにかく逃げるのだ。」

アンティパス・ド・ザールは艦隊を再編しようとして果たせず、8割の戦力を喪って無秩序に逃げていく。

「赤羽根司令追撃しますか?」

「あの放射性物質放出ミサイルは危険だ。一隻たりとも残すわけには行かない。全艦拡散波動砲エネルギー充填。」

赤羽根が命じ、エネルギー充填が完了し、秒読みガ終わると、光と熱の奔流が残った2割の艦艇を追いかけて、呑み込み、引き裂いていく。

「ぎゃあああああ....。」

ディンギル艦隊は一隻残らず引き裂かれ、爆発光と煙をはいて四散した。

そして、光も煙もなくなった宇宙空間に、金属の残骸となって浮遊しているのみだった。しかし、地球連邦艦隊も損傷率7割という記録的な被害をだしていた。

 

「どうやら勝ったようね。」

舞は第一艦橋の艦長席で満足そうにつぶやくと今度はつっぷしてしまった。

「長官!長官!おい担架だ。」

舞は医務室に運び込まれた。

 

地球連邦議会は蜂をつついたような大騒ぎになった。

「日高舞元帥は、土星空域の会戦で敵艦隊に攻撃され、反撃して撃退したものの、旗艦アンドロメダは、放射能ガスをまきちらすハイパー放射能ミサイルに被弾し、撃沈しました。日高長官本人は、高濃度放射能ガスを浴びたため、治療のため入院いたしました。」

「後任はどうするのだ。」

「武田、日高と現役の軍人が続いたから文民がよいだろう。」

「では、こういう事態に軍事がわかる人材がいるのか。」

「高木大統領のご意見は?」

「地球連邦防衛軍任職規程では、防衛軍司令長官は、中将以上の現役の軍人またはそれ相当の見識を有すると認められる文民、若しくは佐官以上で退官し連邦議会に文民として議席を有するなど前二者と同等の見識を有すると認められる者、とある。

わたしは、連邦議会議員である水瀬伊織君を推したいと思う。彼女はnamugoプロで仲間たちと切磋琢磨し、元ヤマト乗組員で軍事にも明るい。彼女は現在は文民で軍事に明るいのだから、そういった人材は彼女をおいてほかにいないだろう。」

「異議なし。」

連邦議会では満場一致で伊織が選ばれた。

「こうなったらしょうがないわねえ。引き受けてあげるわ。」

隣の議員が苦笑して伊織の肩をたたく。

「水瀬伊織、地球防衛軍司令長官を謹んで拝命します。」

伊織が一礼し、拍手が起こる。

「就任式はどうする?。」

「ふだんどおりでいいわ。」

「そうか、せいぜい仲間うちでゴージャスセレブプリンで祝ってくれたまえ。」

「しゃちょ...じゃない、大統領なんでその話を...」

議場は爆笑の渦につつまれた。

 

いおりんのXXサイコーという声が議会であったのかはつまびらかではないがどにかく伊織が次代の防衛軍司令長官に選ばれて就任した。

 

「伊織。防衛軍司令長官就任おめでとう。」

「う~ん。事態が事態だからね。素直に喜べないわ。日高舞に代われるのはこの伊織ちゃんしかいないって認められたってことはうれしいけど....春香。」

「ん?」

 




舞に変わって防衛軍司令長官になった伊織の最初の仕事は...

タキオンPさんの動画に基づき記述を一部修正、その他加筆(2/22,18:17)

P経験のある連邦議会議員のこそこそ話
「『佐官以上で退官し連邦議会に文民として議席を有するなど前二者と同等の見識を有すると認められる者』だって?なんかとってつけたような規定だな。」
「いや、防衛軍司令部の役人にもPがいるってうわさだぞ。なにやらいおりんが連邦
議会に当選したときにあわてて条文を直したとか。」
「だから『いおりん規定』とか呼ばれるのかw。」
「まあ、たしかに彼女の公約には防衛軍の整備もあったけど主は貧困、格差対策だったはずだが...。」
「まあ、議員のなかには、大財閥の令嬢のくせに貧困、格差対策なんて主張しているのはうざいと思う者は多いからな。自分の会社はどうか問われちゃうから。」
「この機会は、ちょうどよかったというわけか。」
「議員を失職させられるし、この状態ではだれも文句言えないからな。ただ、地位と待遇は悪くないが、責任が大きくなるな。それから、また議員になりたいなら選挙の洗礼をあびざるを得ないが。」
「それはそうとしていおりんの親友が訓練学校にいるって話だぞ。」
「あと舞さんの娘もな。」


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第3話 ヤマト出撃!冥王星空域会戦前編

伊織の初仕事は、春香率いる艦隊にアクエリアスのワープ阻止とディンギル討伐を、命じることだった。


「あなたに例の水惑星のワープ阻止となぞの敵、通信内容から自称ディンギルというらしいけど、そのディンギル討伐を命じるわ。討伐艦隊を率いて出撃して。」

「天海春香、微力をつくします。」

 

「あ~ちっとも動かないよ。」

「明日出撃だというのに。」

「!!」

「春香。」「はるるん。」

「修理はすすんでる?」

「まあ、あちこち損傷はあるけど、ハイパー放射ミサイルをもろにくらったわけじゃないから...。」真の答えに聞きなれない兵器の名称が含まれていたため、春香は近くにいた律子のほうを向いてしまう。

「ハイパー放射ミサイル?」

「ああ、あらゆる装甲版を特殊な熱線で溶解し、爆発とともに宇宙放射線を巻き散らす特殊仕様の恐るべき兵器よ。実弾だから空間磁力メッキは全く役に立たなかった。地球防衛艦隊は7割沈んだわ。」

「大損害だったと聞いていたけど7割...。」

ピピ...

正常に機能していることを画面が示す。

「あ、まこちん、直ったよ。これでみんなとヤマトでひと暴れできるね。」

「うん。そうだね。一安心だ。」

 

「で、律子さん、そのハイパー放射ミサイルはどうすれば...。」

「いま対策を検討中よ。」

「舞さんは?」

「地球の医療技術はすすんでいるから、体内除染と対放射能透析の治療でかなり回復しているわ。しかし、完全な治療は無理ね。後遺症はどうしても残るから...。」

「そうですか...。」

「まあ、春香は明日の出撃にそなえて心の準備をしてもらえばいいから。」

「はい。」

 

「天海春香君だね。」

「武田司令。」

「もう、司令じゃないよ。予備役大将といえば聞こえがいいが、一介の庶民さ。ただ、日高舞君がああなってしまったから、またひっぱりだされるかもしれないが。」

武田は、すずやかな笑顔で春香に話しかける。

「?どうした?不安なのか。」

「はい。これからすべてを貫く矛を持つ敵と戦わなければなりません。」

「じつは赤羽根君と会うことになっている。」

「えつ...。」

「いきつけの店に行こう。」

 

そこはそこそこ上品なかんじの洋風居酒屋であったが、なぜか立派なステージがあった。

「赤羽根君、天海君をしゃんとさせてくれないか。」

「春香。」

「はい、プロ...じゃなくて、赤羽根提督。」

春香は顔をあからめる。

「春香、ガミラス、白色彗星、暗黒星団帝国、ボラーと戦い勝ってきたな。」

「はい。」

「特に暗黒星団帝国のゴルバとボラーの機動要塞は、波動砲が効かない恐ろしい敵だった。敵が砲撃するわずかなチャンスを狙うしかない、命がけの戦いだった。だが皆の心をひとつにして宇宙最強とも言ってもいい敵をたおすことができた。」

「はい。」

「今度の戦いも確かに苦しい。ハイパー放射ミサイルの対策もできていない。だが戦いようはあるはずだ。敵は、ゴルバやデザリアム、ボラーの機動要塞のようにとりたてて堅牢というわけではない。ハイパー放射ミサイルをなんとかすれば勝機はあるはずだ。」

「はい。」

「だから春香の仕事は、指揮をすることと...」

赤羽根は武田と顔を見合わせて微笑む。

「「空気をつくる」ことだ。」

「そう。「空気をつくる」んだ。これは春香しかできない。舞さんがいない今君しかできないことなんだ。自信をもて。春香はあの恐るべき敵を幾度となく倒して中将にまでなったんだぞ。」

「赤羽根提督、亡くなった斉藤さん、大西さんをはじめとする皆さんなしではできませんでした。」

「そうだ、春香一人じゃない。みんなあの苦しい戦いを覚えているだろう。大丈夫だ。」

「天海君。君は現役時代の舞君や土方君と同じ地位まで上り詰めた。町へでたら君はどこにでもいるただのかわいい女の子にしか見えないかもしれない。しかし、いったん命令を受けて防衛軍の艦艇に乗り組めば、歴戦の指揮官である中将なんだ。これは防衛軍司令部の君に対する客観的な評価であることをわすれないでほしい。」

「今度の航海ではささやかだが駆逐艦を数隻つけることになっている。」

「そうだ、天海君。歌ってくれないか。そうだな「強い女」、「乙女よ大志をいだけ」を」

「それから「I want」も。」

「えええ、恥ずかしいです。」

「えっと、ここにいる女の子が歌いま~す。」

「ええっつ////。」

赤羽根が勝手に決めてしまい、マスターがほほえむと曲を送信してしまう。

「あわわつつ。」

ステージに向かう春香はころびそうになる。

店は笑い声につつまれる。

曲がかけられる。

「わ・た・し芯の~強い女~どんな壁ものりこえてくぅ~」

「ねーえほんとに」合いの手がはいる。

春香は、「強い女」と「乙女よ大志を抱け」を熱唱した。

「これ着なきゃはじまらないだろ。」と渡されたのが黒い「閣下服」だ。

【推奨BGM:I want】

「ま・る・で荒れるはと~のようにィ~」

・・・

「いっしんされていくの~ 」

長い間奏がはじまり、ステージの後ろに赤いストール状のものが三つ現れる。

まんなかが白抜きされ、アイマスの天使マークが映し出される。

そして床から講壇のようなものが現れる。

皆「ヴァイ」「ヴァイ」と相槌を打つ。

「むねにたぎる黒い…」

・・・

「おしえるわ~」

すると雪歩が現れ、律子、真、千早、あずさ、亜美、真美、伊織まで現れる…

(みんな…)

「い・ま このれんあいかんじょうの…」

・・・

歌い終えるとドコマデ ドコマデ ドコマデ…とエコーが響いていた。

---

万雷の拍手。口笛ともつかないヒューヒューなどさまざまな歓声で満たされる。

半分やけっぱちだったが、春香は三曲歌ってすがすがしい顔になる。

「どうだ?「女王様にも負けない気分」になれたか。」

春香は苦笑する。

「なんかがんばれそうな気がしてきました。」

「それでいい。作戦を十分考えたらそれを予定通り遂行するだけだ。気に病んでも仕方ない。弱小プロ野球チームをなんども優勝させた監督が言っていたな。最後は「冷静な計算のうえに立った捨て身の精神」と。」

「はい。」

「じゃあ明日はいよいよ出撃だ。「空気をつくる」んだぞ。」

赤羽根は繰りかえす。武田は微笑むだけだった。

 

あくる朝、乗組員がそろったことを確認し、出撃準備をアナウンスする。

「ただいまより、ヤマトは出撃準備に入ります。総員部署についてください。」

「如月副長、北野航海副長、航海班を配置につけてください。」「はい。」

「菊池機関長、波動エンジンの充填回路開いてください。」「はい。」

「秋月技師長、艦内機構の最終チェックお願いします。」「はい。」

「萩原通信班長、全通信回路オープンお願いします。」「は、はい。」

「土門砲術長、射撃管制システム最終チェックお願いします。」「はい。」

「機関室、配置完了。」

「全天球レーダー室配置完了。」

「中央大コンピューター室配置完了。」

「艦内機構、損傷復旧率90%、出航には差し支えありません。」

「波動エンジン異常なし。補助エンジン動力接続スイッチオン。シリンダーへの閉鎖弁オープン、エネルギー充填95%」

「イカリあげて!」

「イカリ上げます」

「微速前進0.5」

「微速前進0.5」

「出航水路に入る。」

「補助エンジン、接続点火。」

「ヤマト発進。」

出航水路から出たヤマトの前方と真上には青空が広がっていた。

「ヤマト発進!。」

春香が力強く宣すると千早がレバーを引き、水音を立てながら上昇し始める。

「みんなよく聞いて。今回の目的は敵艦隊を撃破し、ディンギルがアクエリアスと呼んでいる例の水惑星に到達してそのワープを止めることです。アクエリアスは現在1050光年の位置にあってあと7日で地球に到達します。」

「大気圏脱出、主翼格納。波動エンジン大気圏外出力へ移行。自動操縦にきりかえます。」

千早がアナウンスすると、春香はうなずき、

「みんな、集まって。」

「たとえ艦の運命が、わたしたちがどうなろうとも地球到達をくいとめなければいけない。

みんなの奮闘を期待します。」

「みんな手をかさねて。」

一同は手を重ねる。

「ヤマトクルー、ファイト!」

「おおーつ。」

 

「月軌道より接近する艦影あり。」

「か、艦隊より通信がはいっていますぅ。地球連邦所属艦隊ですぅ。」

「地球連邦所属月艦隊司令の水谷です。これよりヤマトの出撃に同行いたします。」

「雪風、涼風、冬月…。合計9隻ですぅ。ヤマトと一緒に戦ってくださるそうですぅ。」

「うれしいことね。」

律子が春香の肩をつかむ。

「律子さん…。」

春香がむくと、律子はほほえんだ。

「!!」

「敵偵察衛星発見!」

「砲撃!」

ショックカノンがディンギル偵察衛星を一撃でほふって四散した。

「あまり地球近傍で長居しないほうがよさそうね。」

律子が話しかけると春香がうなずく

「現在、ハウメア、マケマケ、冥王星、エリス、セドナ基地ともに敵影なしとのことですぅ。」

「これより、全艦、冥王星空域までワープします。ワープ後気をゆるめないよう、第一種戦闘配備で。」

「「「了解。」」」

画面上の光点が横倒しの振り子のように上下に動いているが、5本の空間曲線が交わる交点に重なる。

「ワープ!」

千早が宣すると10隻は地球近傍空域より姿を消した。

 

「アンティパスは死んだか。」

「そのようです。」

「わが息子ながら情けないことだ。」

「兄はいささか性急なところがありましたから。」

「….では、アブシャロムよ。お前が行ってくるか….アプス星(太陽)系へ?」

「おまかせください。敵を倒してまいりましょう。」

「ひとつだけ言っておく。敵をあなどるでないぞ。」

「はつ。」

 

「出撃準備整ったか。」

「はつ。」

「テアマト(地球)艦隊の様子はどうだ?」

「キング(月)基地からの駆逐艦隊9隻と合流したあとは行方がつかめておりません。外惑星軌道を通過中か、一気にどこかへワープするものと思われます。」

「敵の情報網は、アー・プチ(冥王星)軌道上の空域まで張りめぐらされている。どこであってもわれわれを発見したらすぐにやってくるだろう。しかし、われわれの反応はアプス星系のエア(海王星)周辺までの空域まで確認されないことも敵は知っているだろうから、おそらくアー・プチ(冥王星)空域まで警戒しつつも一挙にワープしてくるにちがいない。それを発見し、先手をとって迎え撃つのだ。」

「御意。」

「アブシャロム様、敵艦隊発見しました。11時の方向、現在三万宇宙キロ。」

「予想通りですな。」

「面白い。兄の仇め。このアプス星(太陽)系からでられるものなら出てみればいい。

それっぽっちの艦隊ではとても不可能だろうがな。」

アブシャロムはほくそえんだ。

「水雷戦隊発進。機動部隊も発進準備だ。」

「御意。」

 

「敵艦隊発見。距離一万宇宙キロ。一万宇宙キロ先に敵艦隊発見。」

「全員戦闘配備。コスモファルコン隊発進してください。」

 

「ただいまより攻撃にはいります。」

「山本さん、加藤さん、ハイパー放射ミサイルを発射させないでください。その前にたたいてください。」

「了解。」

 

山本、加藤はちかづいてくる水雷艇を次々に火球と爆煙の塊に変えていく。

音はしないものの、爆発の衝撃波で機体がゆれる。

水雷艇をまもろうとする敵艦載機群も現れるが、コスモファルコン隊の技量にはかなわず、

つぎつぎに火球と爆発煙の塊に変わっていく。

 

しかし、爆発しながらも一隻の水雷艇がハイパー放射ミサイルを発射した。

「!!」

「しまった!浜風が...。」

ハイパー放射ミサイルは駆逐艦に接触すると熱線を発して、船体が赤くやけただれたようになり、ついには食い破るようにして船体の奥深くまで食い込んでいく。

そしてその数秒後にはついに船体を引き裂き、巨大な火球と爆煙を噴き出して、船体を四散させる。

 

コスモファルコン隊員たちは唇をかみしめて敬礼するしかなかった。

「くそ...なんて数だ。」

ヤマトのコスモファルコン隊や駆逐艦に搭載されたわずかな艦載機では対応できない敵機や水雷艇の数である。

「!!防御網を突破された。」

加藤、山本の背中に冷や汗が走る。

「敵を追え!」

水雷艇からハイパー放射ミサイルが次々と発射される。

「撃て!」

地球艦隊からは主砲と両舷のパルスレーザーが斉射される。

爆発を繰りかえして敵艦載機や水雷艇が撃墜はされるが数が多く対処しきれない。

ヤマトでは春香が土門に命じる。

「主砲、サーモバリックモードに!」

「了解!モード変更!発射!」

ヤマト主砲の光条が敵艦載機と水雷艇をつつみこみ、噴射口からあというまに百数十機を引き裂き、百数十個の爆煙と飛び散る金属片に変える。

 

「うぬ。あの戦艦を狙え!」

水雷艇と敵艦載機がヤマトヘ向かおうとする。

ハイパー放射ミサイルが発射される。

「!!ヤマトがやられる!!」

「ヤマトを守れ!」

駆逐艦はヤマトの盾となってハイパー放射ミサイル群の前に立ちはだかる。

次々にハイパー放射ミサイルが船体に食い込み、食い込んだ部分が赤く焼けただれて、つぎつぎと船体が引き裂かれ、巨大な火球と爆煙を噴き出して、四散していく。

「磯風撃沈」

「みんな...ヤマトを守って...。」

千早が唇をかみしめる。

「雪歩。」

「千早さん。」二人は顔を見合わせる。

「春香。交代時間だわ。」千早は春香に対してほほえむ。

「北野君たのむわよ。」

「はい。」

「考えたことがあるの。雪歩とアナライザーを連れてちょっと行ってくる。」

「危険...だと言っても行くよね。」

「ええ。」千早はほほえんでみせる。

千早と雪歩を乗せたコスモファルコンは飛び立っていく。

そうこうするうちに敵の攻撃がやんで撤退していく。

「!!」

「どうしたんだろう。」

「とにかく今のうちに生存者の救助にかかってください。」

 

「コスモファルコン帰還せよ。」春香は命じて律子に話しかける。

「律子さん、なにか敵にダメージを与えたんでしょうか...。」

「さあ、わからないわ。圧倒的に有利だったはずなのに。」

「救助の時間をあたえてくれてるのかな...。」

「...。」律子は顔をしかめ、無言であった。




地球艦隊の防衛線を突破し優位に戦ってたはずのディンギル艦載機は帰還していく。その意図は何なのか...


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第4話 冥王星空域会戦後編 ディンギル創世伝説

いったん引き返したディンギルの艦載機。しかしその意図はさらに酷薄なものだった。

一方、ヤマトを飛び出した千早と雪歩の意図は....


アブシャロムはほくそえみ、指をならす。攻撃の合図である。

「上方から敵機!」

機銃が斉射され、宇宙服を着ていた丸裸同然の生存者を次々につらぬき、宇宙空間に血のしずくが散乱する。

「ひどい。ひどすぎる。」

春香はおもわず叫んでしまう。

「また撤退していくわね。」

律子がつぶやく。

 

【推奨BGM:Inferno(歌詞付き)】

そのころ千早と雪歩はヤマトの近くにステルス衛星を一基おいて、撤退していく敵機をたくみにお死角からおいかけていた。後部座席にはアナライザーがいる。

 

「土門君。主砲を最大射程で準備して。」

「??どうしてですか。」

「千早と雪歩のひらめきに賭けるの。」春香がなにやらほのめかす。

「?はい。」

「復唱!」

「はい、主砲最大射程に設定します。」

春香と律子はほほえんでうなずき、土門もなにか考えがあるんだろうと思い最大射程にセットする。

 

「ミサイルランチャーをワープさせてヤマトを攻撃しろ!」

アブシャロムは命じて旗艦からワープミサイルを送り込む。

ヤマト近くのステルス衛星は、そのワープミサイルをとらえ、エコーから発射地点を計算する。

ヤマトにワープミサイルが襲いかかる。

「右35°反転。面舵いっぱい。」

 

「千早さん。最初のステルス衛星から暗号がとどいていますぅ。」

「アナライザー解析して。」

「ハイ。」

「敵ハワープミサイルデヤマトヲ攻撃シタ模様。敵旗艦ノ推定位置ガワカリマシタ。」

「いくわよ。」

 

「左20°転針!」

ヤマトはミサイルランチャーを避けようとする。

北野が船体を旋回させる。

 

「敵の前衛艦隊が向かっているわね。いそがなくては。アナライザー、敵の旗艦らしき反応は??」

「マダアリマセン。」

「...。」

「もうすぐのはずだけど....。」

 

「全艦燃料補給急げ。水雷母艦の補給完了しだいヤマトにとどめをさす。」

 

「敵艦載機接近。」

「第一副砲、サーモバリックモード、発射!」

「パルスレーザー、両舷ミサイル、煙突ミサイル発射!」

「パルスレーザー右舷3番、7番砲塔損傷!」

「左舷1番、9番砲塔損傷!」

「煙突ミサイル発射管2番損傷!」

「数が多すぎる...。」

 

「アナライザー、敵旗艦の反応は??」

「マダデス。モット出力ヲアゲナイト...。」

「そういうわけにはいかないわ。」

 

「艦長、まだ発射しないんですか。このままではやられてしまいます。」

「まって。」

「艦首魚雷発射管、4番、6番損傷!」

「艦長!」

春香は目を見開き、唇をかみしめる。

 

「水雷母艦、燃料補給完了!」

「よし、発進準備だ。」

「ふふふ。ヤマトよ。終わりだ。」

 

ピピピ...

「ハッケン。」

巨大な四角柱状の、数キロはゆうにありそうな、あたかも要塞のような物体が見える。

「あれね。雪歩!」

「うん。敵旗艦発見。座標N9393、E7272,ヤマト主砲の最大射程距離内。42000宇宙キロ。

ハイパー放射ミサイル搭載母艦発進寸前。時間がありません。」

 

「主砲、発射準備、上下角2°」

「目標、座標N9393、E7272、照準よし!」

「発射!」

土門が叫ぶと、一番砲塔及び二番砲塔のショックカノンが最大射程で発射され、42000宇宙キロの空間を彗星のように輝きながら6条の光条が走っていく。そしてそれは繰り返し斉射される。

「!!」

ショックカノンは、ディンギルの旗艦を貫き、また周辺の艦艇をもつらぬく。

貫かれた部分から引火し、閃光を発して、大爆発を起こし、周辺の艦艇をもまきこみ火球はおおきくなって誘爆を繰り返す。そして、すさまじい爆煙を噴出して、おびただしい艦艇が引き裂かれていく。

「やった…。やっぱりヤマトはすごい船ね…みんなもすごいわ。」

「千早さん…。」

 

「アブシャロム様。おはやく脱出を。」

「くそ。もう一歩というところで…。」

旗艦からまんじゅうか、かぼちゃのような形状の小型艇が脱出する。

 

一方、ヤマト周辺の艦載機やようやく現れた水雷艇数隻は、本隊がやられたために帰還する場所がなくなり、動揺して隊列がみだれはじめた。

「いまだ、第二主砲、第一副砲、サーモバリックモード!」

「発射!」

その次の瞬間、ディンギル艦載機と水雷艇数隻は、おびただしい数の火球と爆煙と金属片に変わっていた。

 

「勝った…。」

第一艦橋の面々は放心状態だった。苦しい戦いだった。

宇宙空間からけむりがじょじょに薄れていき、静寂がおとづれる。

 

「春香ちゃん、冬月より通信ですぅ。」

「天海中将。」

「水谷准将。」

「これより駆逐艦隊は生存者とともに月基地へ帰投いたします。」

「航海の無事を祈ります。」

春香は敬礼して、同じく窓から見える敬礼する水谷をみつめていた。

 

そのころウルクの中央神殿には、壮年から実年と思われる年齢の男が立ち、そのまえにた若い男がいた。神殿の「至聖所」ともいうべき最奥の部屋には、黒々としたコウモリのような翼をもち細面だが頭に角を生やし、あぐらをかいて長大な斧を持ついかめしい神像が祭られている。

壮年から実年と思われる男が若い男に話しかける。

「なぜわしがここへお前をつれてきたかわかるか。」

「いえ…。」

「わがディンギル王家ザール・クロイ家に伝わる秘儀を伝えるためだ。」

「ははっ。」

「われらがめざすテアマトは、かってわが先祖が暮らした星、わが先祖のものなのだ。」

「!!」

壮年から実年と思われる男、コ・ヤース大神官大総統は、片ひざをつき、頭をたれている次男アブシャロム・ド・ザールに王家に伝わるという秘儀を語り始めた。

「われわれの祖先は、偉大なる族長カインの子孫であり、地球に最初の文明を築いた人類だった。族長レメクのときに全盛をほこり、逆らうものには七の七十倍の罰を下すというほどの勢いをほこった。しかし、あるとき40日40夜の激しい豪雨と水流におそわれたのだ。すなわちあのアクエリアスが地球に接近してきたのだ。そしてさしもの大文明もこの未曾有の天変地異を防ぐことができず根こそぎ水没していこうとしていた。

そのとき、宇宙人の円盤があらわれ、一人でも救おうと降りてきた。そして救われたものはディンギルに住むこととなった。われわれの先祖は賢く強かった。ディンギル内部の政争を勝ち抜いていったのだ。これは当然のことだ。力こそ正義、強い者が正義だからだ。

こうして選ばれた者が神によって祝福され、ついにはディンギルを征服し、偉大な王国を築いた。これがわがザール・クロイ家の起源である。」

「今またディンギルは水没し、われわれはかっての先祖のように住むべき星を失った。しかし、テアマトこそわが先祖のものだ。力によって、テアマトを制圧し、取り戻すのだ。」

「祖先のためにもこの作戦は成功させねばならぬ。われわれこそ、地球の正統なる支配者なのだから。」

「もう一度機会を与える。ヤマトは、次のアクエリアスのワープアウト地点に必ず出現する。そのときこそヤマトを撃沈するのだ。」

「はっ!」

「次の大総統にふさわしい者には、神々もあらゆる加護を惜しまぬであろう。」

「はっ!次こそは偉大なるご尊父様、大神官大総統のご期待にお答えすべく、一身をなげうつ所存です。」

「うむ。期待しているぞ。全艦隊を率いて出撃せよ。」

 

 

「アクエリアスは、17回目のワープを終え、現在地球から450光年の位置にいるわ。あと3回のワープを終えると地球から140億キロの位置に現れ、24時間後に地球の近傍を通過する。」

「そうなったら、地球は水没してしまうわね…。」

「20回目のワープをする前にアクエリアスへ行き、ワープを絶対阻止しよう。みんな!。」

「そう言うと思って、18回目のワープアウト地点は計算済みよ。」

「ワープはいつでも可能よ。春香。」

「うん。」

「みんな...。」

第一艦橋のクルーは手を合わせる。非番の亜美と真美もいる。

「ヤマトクルー、ファイト!」

「おおーつ!」

手を振り上げる。

 

「千早ちゃん、ワープ準備。」

「了解。」

数分後、ヤマトはそれまでいた宇宙空間から姿を消した。

 

「アクエリアス18回目のワープまで、あと2分30秒!」

「アクエリアスにまもなく共鳴振動臨界点!もうすぐワープします。」

「アクエリアス、ワープ。」

「ウルクワープ準備!」

都市要塞ウルクも宇宙空間から姿を消した。

 

「ワープ終了。総員戦闘配置!」

「コスモレーダーに反応なし!」

「全天球レーダーに敵影認めず。」

「左右パルスレーザー砲塔、左右両舷ミサイル発射準備よし!」

「煙突ミサイル発射準備完了。」

 

「!!」

「なにか巨大なものがワープアウトしてきます。」

「質量極めて大.....70億兆トン...惑星規模です。」

「全速後退!時空震にまきこまれるぞ!」

 

三つの交差した環がめぐる水色の惑星が現れる。

「アクエリアス....。」

「戦闘配置のまま、アクエリアスに接近。探査衛星、コスモファルコン発進!」

「大気圧1010ヘクトパスカル、成分、窒素76%、酸素21%、メタン1%、アルゴン1%,二酸化炭素0.03%.....大気中に有害物質認められません。」

「地球によく似てるな。」土門がつぶやく。

「浮遊岩塊が散在。最大規模のものでも37000平方キロ弱、九州程度です。大部分の岩塊は1200平方キロから600平方キロ弱、つまり沖縄本島から、佐渡、淡路島程度です。」

「海の成分は地球の海水とほぼ同じです。」

 

「アクエリアスに降下しよう。」

「了解。降下開始します。」

数分して、青い球だったアクエリアスが船体の下面いっぱいに画面上に映し出される。

「アクエリアスの海面まで1000キロ、900、800....。」

「着水します。」

水音がする。

「着水に成功。」

 

「静かな場所ね。」

 

「浮遊岩塊に建造物を多数確認。生命、エネルギー反応ともになし。過去の文明の廃墟と思われます。」

 

「ワープシステムなんて見当たらないわね。」

 

「こちらコスモファルコン隊!こちらコスモファルコン隊!海上に巨大な構築物を発見。エネルギー反応大!エネルギー吸収プラントと思われます。」

「!!」

「どうしたの??」

「1500キロ先に飛行物体多数確認!こ、これは!!」

「て、敵です。地球や冥王星空域で遭遇したものと同型機です!」

「迎撃します。」

コスモファルコンと敵編隊が戦闘を開始し、味方機も敵機も閃光を噴出したかと思うと、数秒後には多数の爆煙に姿を変えていく。敵機の数が多くなかなか勝負がつかないように見えた。

 

「!!」

「今度はどうしたの??」

「水惑星の後方、巨大な物体がワープアウトしてきます。質量は....15兆トン」

「そんな大きなものが...。」

それは下部は岩塊、上部は空母のように平坦であるがよく見ると建物が林立して都市となっている物体であった。

「あ..あれが...敵の本拠地...。」

「ワープシステムはあそこにあるのかもしれないわね...。」

「春香。対ハイパー放射ミサイル防御装置完成したわ。」

「律子さん、ありがとう。」

「敵機が攻撃してきます。」

 

「サブエンジン点火!」

「出力全開、上昇角60°」

「ヤマト浮上。煙突ミサイル、パルスレーザー砲発射。タイミング任せます。」

「了解。」

 

「ヤマトめ。逃がさんぞ。」

「フルパワー噴射。」

「ねんのために総員宇宙服着用。」

「対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲用意。」

「了解。」

艦首の船底部が開き、ビーム砲が姿をあらわす。

「4時の方向300宇宙キロ、5時半の方向400宇宙キロ、6時半の方向400宇宙キロ、8時の方向500宇宙キロに向けてビーム砲発射!」

ヤマトへ向かってくるハイパー放射ミサイルは対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲のビームの網目に捕らえられてこなごなに粉砕し、煙を吐いて飛散する。

「すごいな。」

「律子さん...。」

「まだ油断ならないわ。」

 

「ふふ...。」

「ワープビームを艦載機と水雷艇に照射せよ。ワープしてヤマトの頭上から攻撃するのだ。」

アブシャロムの旗艦からワープ光線が照射され、艦載機と水雷艇が姿を消した。

「!!」

「2時の方向から敵艦載機50、水雷20出現!」

「11時の方向からも敵艦載機45、水雷18出現!」

「12時半の方向に艦載機45、水雷艇25出現!」

「これはデスラー戦法?」

「ワープ光線を照射するのを艦載機と水雷艇に変えたんでしょう。

それに気がつくというのもたいしたもんだけど。主砲をサーモバリックモードへ!」

「モード変更。2時仰角25°、12時半仰角30°、煙突ミサイル用意!」

「主砲及び煙突ミサイル発射!」

艦載機と水雷艇は噴射口から誘爆して無数の閃光と爆煙を噴出して四散する。また煙突ミサイルに貫かれて爆発四散するが、残った機体がヤマトを攻撃しようと試みる。

「右舷72装甲板被弾!」

「左舷93装甲板被弾!」

「右舷38装甲板被弾!」

「左舷76装甲板被弾!」

「右舷65装甲板被弾!」

「右舷87装甲板被弾!」

「死傷者多数!」

「このままでは...。」

 

 




最初の殺人者として伝えられる(創世記4章)カインの子孫であるディンギル人は、まさしく「身勝手さばかりが発達した民族」、力こそ正義という極端な優生思想の持ち主だった。

ヤマトはアクエリアスを阻止するため、ワープアウト地点で待ち構えたが、さっそくディンギルの集中砲火を受ける。

重複部分があったので改稿しました(3/4,1:01)。


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第5話 都市要塞ウルク攻防戦

敵の猛攻ではやばやピンチのヤマトがとった「懐かしい」秘策とは...


「!!」

そのとき、上空の敵にみだれがみられる。

ひとりでに撃墜し、火球に変わり、爆煙を噴出して敵艦載機と水雷艇が四散するようにみえる。

「加藤隊、アクエリアス上空の敵戦闘機隊を撃破し、ただいま帰還しました。」

「山本隊、同じく敵部隊を撃破。ヤマトの救援に帰還しました。」

第一艦橋のクルーの顔が明るくなる。

敵部隊をたたいて帰還してきたコスモファルコン隊が帰ってきたのだ。ヤマト上空の敵機を撃墜しはじめる。

 

「アブシャロム様、ヤマトを射程圏内にとらえました。」

「よし、主砲斉射!」

 

「敵艦隊射程圏内!」

「ショックカノン、発射!」

しかし、圧倒的に数の多いデインギル艦隊に被害報告が繰り返される。

「千早ちゃん、3時の方向20宇宙キロ先に小惑星帯がある。」

「左舷パルスレーザー斉射!、左舷ミサイル発射!」

土門がとっさに横腹を狙われないよう弾幕をはる。

「面舵いっぱい、90°回頭!」

「反重力反応機発射!」

律子が命じて、いっせいに発射された無数の反重力反応機が小惑星に吸着する。

「岩盤装着!」

岩盤が装着し、ヤマトの姿をかくす。

「エンジン停止!」

 

「ヤマト、小惑星帯で反応消失!」

「なに、どこかにいるはずだ。」

「おなじような岩塊が吸着したような小惑星もどきが多数。」

「どれかがヤマトに違いない。かまわん。小惑星ごと吹き飛ばせ。」

 

「敵が砲撃してきます。」

「小惑星帯の軌道からヤマト艦首方向へ敵艦隊がくるまでどのくらい時間がかかる?」

「あと1時間ほどです。」

「それまでなんとか耐えるのよ。」

岩塊は吹き飛ばされても再び吸着し、どれがヤマトかわからないようにしている。

「律子さん、反重力反応機を改良したんですね。」

「こんなこともあろうかと、デコイがつくれるようにしたのよ。」

 

「アブシャロム様、岩塊をいくら撃ってもふたたび吸着します。きりがありません。」

「そうか。じゃあ、ハイパー放射ミサイルを放ってやれ。岩盤を貼り付けた状態ではあのビーム兵器は使えないはずだから反応せざるをえないだろう。」

「はつ。」

「ハイパー放射ミサイル発射!」

 

すると岩塊が動き出してハイパー放射ミサイルに反応したように「攻撃」してくる。

「なんだ?何が起こっているのだ??」

岩塊はハイパー放射ミサイルに「襲いかかって」圧迫し、次々に射線を狂わせ、爆発四散するものもある。堅牢なはずのハイパー放射ミサイルが岩盤の圧力に耐え切れずにつぶされて爆発しているのだ。

 

「反重力反応機をハイパー放射ミサイルが放出している特殊なエネルギーを感知して反応するよう改造したのよ。」

 

「砲撃を続けろ!」

デインギル艦隊は砲撃を続ける。

「あと5分で敵艦隊正面にきます。」

「岩盤回転!」

律子が命じると岩盤がヤマトの船体からはがれて周囲で回転し始める。

 

「ヤマト発見、11時半の方向15宇宙キロ。」

「全艦、ヤマトに集中攻撃だ。」

ディンギル艦隊のオレンジ色の数百、数千にも及ぶ光条がヤマトヘむかって横殴りの雨のようにふりそそぐ。ヤマトは岩盤回転でそれを必死に防ぐ。

 

「仰角80°ヤマト艦載機が接近!」

「何!」

ディンギル艦隊が次々に貫かれて四散し、砲撃が衰えていく。

「いまだ、波動砲発射用意。」

「波動砲への回路開け!」

「タキオン粒子出力上昇。」

「エネルギー充填100%」

「土門君、まかせたよ。」

「はい、艦長。」

「ターゲットスコープオープン電影クロスゲージ明度20!」

「エネルギー充填120%!発射準備完了。」

「発射10秒前、9,8,7,...3,2,1,発射!」

すさまじい光と熱の激流がヤマト艦首から放射され、真昼のように宇宙空間を照らし、光り輝いてディンギル艦隊を包み込み、溶かし、押し流し、打ち砕き、引き裂き、四散させる。

「ぎゃあああああ。」

デインギルの将兵たちが悲鳴を発するのを赦されるのはかれらが気化するまでのわずかの間であった。アブシャロムはやけどを負いながらも脱出艇に乗り込み奇跡的に脱出する。

「敵、脱出艇一機発見。当艦を離れ、敵都市要塞方向へ逃走していきます。」

「ほうっておいて問題ないと思う。」

「そうね。敗軍の将だから逃げたところで...。」

 

「コ・ヤース大神官大総統閣下。」

「何だ。」

「アブシャロム将軍からの通信です。」

「偉大なるご尊父、大神官大総統閣下。我が艦隊は全力でヤマトを撃滅したは...。」

コ・ヤースはしばらく通信を聞いていたが、それも数秒のことだった。

プツン...平然と通信を切る。

「ニュートリノビーム防御幕照射用意。」

「大神官大総統閣下?」

「かまわぬ。ニュートリノビーム防御幕照射!」

「ははっ。」

都市要塞に二箇所あるニュートリノビーム防御幕照射装置からピンク色の光が渦を巻くように放射されていく。

 

「あ、あれは...父上!」

アブシャロムは青ざめる。

「反転!」

しかし、アブシャロムの脱出艇は、薄赤色の光の渦においつかれ、吞み込まれて引き裂かれる。

 

「あ、あれは....。」

「律子さん??」

「ニュートリノビームだわ。あれをまともに受けたらあの敵機のように溶かされて引き裂かれてしまう。」

「千早ちゃん...。」

千早はうなづき

「反転180°!波動エンジンフルパワー。ワープ突入速度!」

 

「ふふふ...ヤマトめ。逃げても無駄だ。」

コ・ヤースは不敵な笑みを浮かべてつぶやく。

「ニュートリノビーム砲、目標ヤマト!撃て!」

ニュートリノビーム砲のうす赤い光の奔流がヤマトにおいすがってくる。

「機関室!ワープ突入速度へあげて!」

真が叫ぶが太助と亜美、真美の返事は悲鳴のようだった。

「まこちん、さっきの波動砲発射で波動エネルギーがもれてるよ><。出力あがらないよ。」

「フルパワー噴射困難です><!」

「!! 壊れてもいいから出力最大にして!ここでニュートリノビームに吞み込まれたら一巻の終わりだよ!」

「やってみます。」

「ニュートリノビーム、艦尾まで20m!間に合いません><」

「!!」

「ニュートリノビームが??ヤマトを避けている??」

「そうか!ニュートリノビームは波動エネルギーと相反する性質。磁石のN極とS極がはじきあうようにお互いをはじきあっているんだわ。」

「千早ちゃん、反転180°!波動砲口から波動エネルギーをリークしながら敵都市要塞中央部へ降ります。」

「春香!」

「艦長!」

春香の顔には、ふだんのころんで照れ笑いをする少女の面影はない。女性であるからこそのかすかなやわらかさはあるものの、りりしさと歴戦の指揮官だけがもつプロの気迫がみなぎっていた。

「復唱は?」

「反転180°!」

「波動エネルギー逆噴射!敵要塞中央部へ強硬着陸用意!」

「加藤さん、山本さん、コスモファルコン発進。波動エネルギー内を飛行して。」

「了解!」

 

「閣下!ヤマトがつっこんできます。」

「かまわん。アクエリアスのワープを急ぐのだ。」

「はつ。」

 

「敵要塞表面まであと500、400、...」

「着陸!」

ガガガガガ...キイイイイイイイイイイ...ガクガクガク

激しい振動がして第一艦橋のクルー、艦内のクルーのなかには投げ出される者もいる。

 

「閣下!ヤマトが...強行着陸しました。」

「戦闘機隊発進!たたきつぶせ!それから司令部と次元空間質量移送機にバリアをはれ!」

「次元空間質量移送光線の照射準備完了!」

「よし、照射だ」

 

「艦長!あれは?」

「ワープ光線の照射装置ね。」

代わりに律子が答える。

「あの建物がワープ光線の照射装置のコントロールセンターってわけか。」

「土門君。あの建物に砲撃を集中させて。」

「はい。」

 

「敵、艦載機隊接近。」

「加藤さん、山本さん、応戦お願いします。ヤマトに接近したものはパルスレーザーで砲撃!」

「了解。」

 

「艦長!バリアを張っているようです。」

「ショックカノンを超収束モードにして!一点に集中砲火!」

「了解!超収束モード!第一、第二主砲、第一副砲、座標N76538、R87693 に照準!発射!」

 

「ワープ光線照射急げ!出力最大だ!バリアがもたん。」

「機甲騎兵隊を出撃させろ。直接ヤマトをたたく。わたしが直接指揮する。」

 

空中戦でコスモファルコン隊は善戦しているもののなにしろ敵の本拠地で戦っている。

戦闘機が次々に現れる。コスモファルコン隊の網の目を抜けてヤマトヘやってくる。

 

「サーモバリックモード!発射!」

数百機もの戦闘機隊をほうむるが、水雷艇もあらわれて、主砲塔にむけてハイパー放射ミサイルを放つ。

「第一主砲塔大破!」

「第一副砲大破!いずれも砲撃不能!」

そのときコスモファルコン隊の一部が水雷艇を見つけて撃墜する。

 

「春香!あれを見て!なにか白い馬のようなものに乗った大軍よ。」

それはコ・ヤース大神官大総統自ら率いるロボットホースの機甲騎兵隊であった。

「ディンギルの戦士たちよ!ヤマトヘ総攻撃だ!。」

「戦闘班出撃!白兵戦だ!」

土門が指揮してコスモ手榴弾とコスモガン、機関銃、多弾頭砲が用意される。

多弾頭砲が撃たれ、数百騎のロボットホースとディンギル兵が倒されて、無数の爆煙に変わる。しかし、それは半数ほどでしかなく、コスモガンと機関銃、コスモ手榴弾で応戦する。

「アクエリアスの色が変わったわ。」

「もう時間がないね。」

「千早ちゃん、ヤマトを持ち上げよう。また水雷艇が来たら...。」

「ええ、わかったわ。」

「補助エンジン点火!圧縮空気口オープン!」

ヤマトが上昇し、ヤマトの甲板にいた騎兵のうち数騎が要塞へふるい落とされる。二十数騎の機甲騎兵が甲板の上に残ったがヤマトクルーが陰に隠れてコスモガンやコスモ手榴弾を放ち、巧みな攻撃ですべて倒す。

コスモファルコン隊がもどってきてヤマト上空をまもり、多弾頭砲とコスモ手榴弾で倒しきれないロボットホースを掃討する。

「ひきかえせ!」

コ・ヤースはわずか十数騎になった機甲騎兵に撤退を命じる。

 

そのとき山本がめざとく発見する。

「敵司令部コントロールセンターのバリアが機能していないぞ!いまだ爆撃しろ!」

コスモファルコン隊は、いっせいに敵司令部を爆撃し、ワープ光線がとまる。

「加藤隊長!山本隊長!やりましたよ。これで敵はワープ光線を照射できない。」

 

「大総統閣下!次元空間質量移送機のコントロールセンターが破壊されました。」

「ふ...。」

コ・ヤースは含み笑いのような笑みを浮かべて指をならす。

 

「!!」

「またワープ光線の照射が開始された?ということはサブコントロールセンターがあるってことね。やつらが古代地球文明の先駆者だとしたら...。」

「神殿ね。」千早がつぶやく。

春香がうなずく。l

「コスモファルコン隊!全機神殿に向かってください!」

「あと30分くらいね。土門君わたしもいくわ。」

「技師長!」

「サブコントロールセンターの位置を知るにはわたしが行ったほうがいいと思う。」

「はい。わかりました。戦闘班!技師長をまもりつつ、敵のコントロールセンターをたたくぞ。」

「おおつ。」

コスモファルコンが再び敵の神殿に向かう。

第一艦橋では春香たちがそれを見送っていた。

「土門君、すっかり戦闘班長が板についてきたわね。」

千早がつぶやく。

「だね。わたしたちも昔、ああだったのかなあ。」

「春香と伊織が戦闘班だったからにぎやかだったよ。」

「春香ちゃんはころんでおおさわぎするし、伊織ちゃんはあんな調子だから、通信機に声が入るんじゃないかってはらはらしっぱなしだったですぅ。」

「えへへ...。」

春香にいつもの照れ笑いがもどる。

「でももうあまり時間がないんだよね...。間に合えばいいけど...。」

コスモファルコンは神殿の入り口に着陸する。

戦闘班と律子は神殿に駆け込むやいなや銃撃にさらされる。

ダダダダダ...バキューン、バキューン、バキューン、ダダダダダ...

「技師長!班長!ここは任せてください。」

「わかった、おねがい。」「頼んだぞ。」

 

「こっちね。」

土門と律子は橋のような通路を渡る。

通路をわたるとインジケーターランプが無数点滅する部屋に入る。広さは10畳ほどであろうか、奥に一段小高い場所があり一脚反対向きの椅子があった。その椅子に何者かが座って画面に向かっている。

 

「あなたはディンギルの支配者でいらっしゃいますか。」

「いかにも。ディンギルの大神官大総統ディンギル・コ・ヤース・ド・ザール・クロイだ。」

「わたしは、地球の宇宙戦艦ヤマト技師長の秋月律子です。ディンギル星の水没については深く同情します。生存者が地球に移民したいのならわたしたちは受け入れる用意があります。どうか無益な戦闘はやめてアクエリアスのワープを中止してくださるよう要望します。」

「ふ...テアマトに人なしと見えるな。19回目のワープまで後1分だ。ばかな女よ。死ね!」

「技師長、あぶない。」

銃声がひびく。

「土門君!」

土門は負傷した。土門の銃はコ・ヤースに当たらず、コ・ヤースはレバーを引き椅子の下は穴となってコ・ヤースは「地下」へ消える。

「土門君!」

律子は土門を抱えて叫ぶが冷静さをとりもどす。

「技師長。都市要塞が震動しています。危険ですから脱出しましょう。」

「土門くんが....。」

「土門、しっかりしろ。」

「山本さん...。」

「ヤマトにもどるぞ。あずさ先生に診てもらおう。」

「テキーラの痛み止めは勘弁してほしいんだけど..。」

一瞬爆笑が起こるが山本と律子とファルコン隊員が土門をかついでファルコンに乗せて都市要塞から離れていく。

 

「都市要塞ウルク都市部を分離して爆破だ。スイッチオン!」

「了解。スイッチオン!」

「ヤマトめ。よく戦った。しかし、ここでウルクとともに宇宙の塵となるがよい。」

アクエリアスがワープし、ウルクの半分が切り離されるとひび割れ、爆発を繰り返す。もう半分がアクエリアスを追うように姿を消した。

 

 




敵に打撃を与えたものの、アクエリアスのワープを阻止できなかった。
ヤマトはどうしたらいいのか....


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第6話 救援者

ヤマトは波動エネルギーがもれてエンジン出力が満足にだせない。
さらに土門が負傷して...


「要塞が爆発を繰り返していますぅ。」

「これ以上ここにいるのは危険だね。千早ちゃん!ワープ準備!」

「ワープ準備に入ります。」

「??太助君、亜美、真美、もっと出力上げて!」

「だめです。波動エネルギーのリークがひどくて60%以上アップしません。」

「千早ちゃん、都市要塞の構造が誘爆でもろくなってるから姿勢制御ロケットを逆噴射させよう。そうすれば地盤を突き抜けられるよ。」

「ええ。制御ロケットスイッチオン!」

ヤマトは、無事に都市要塞からはなれていく。

150宇宙キロほどはなれたとき都市要塞の半分は巨大な爆煙につつまれて四散していくのが窓から見えた。

 

「都市要塞が爆破したわね...。」

「山本隊全機帰投!」

「加藤隊も全機帰投!」

 

「土門君」

「艦長、技師長...ヤマトヘもどってきたんですね。まるでお袋の腕にだかれているみたいだ。」

「土門君しっかりして。」

「伊織長官に伝えてください。砲撃シュミレーションのリベンジできそうもありません。すっげーくやしいです、って。」

「何言ってるのよ、がんばって...。」

 

それは、今回の航海の出発前のことだった。

伊織が防衛軍司令長官になったとき土門はお祝いをいいがてら長官室をおとづれた。

「長官への就任おめでとうございます。」

「なによ。いやみ?」

伊織は思わず髪をかき上げるしぐさをする。

「いやみなんていうわけないじゃないですか。それよりもこのたびの出撃から帰ってきたら砲撃シュミレーションで対決してくださいよ。」

土門は不敵に笑みを浮かべる。

「いいわ、こんどは叩きのめしてやる。」

「議員だの、長官だの祭り上げられて腕や感覚が衰えて返り討ちにされないでくださいよ。

生活班炊事科にしてやられたら恥ずかしいですよ。」

「にひひっ。この天才伊織ちゃんがあんたごときに負けるわけないじゃない。それよりも今度の戦いでもし砲撃レコードに恥ずかしい戦い方してた記録あったらただじゃおかないんだから。」

「練習に実戦に励みますからご心配なく。」

しばらく二人は無言になる。

「土門...無事に帰ってきてね...。」

それは二人ともガルマンガミラス本星へ向かった銀河系核恒星出発前を思い出したからだった。

「はい。微力をつくします。」

土門は敬礼して長官室を退室した。二人とも言葉をかわすのが最後になろうとはおもいもよらずに...

 

「艦長、訓練学校の校長室のとき覚えていますか?」

「あ...。」

「あのとき、自分を戦闘班にしてあげようって目が泳いでましたよ。」

「え...えへへ...。」

「うれしかったです。ありがとうございました。」

「ううん。ごめんね。頼りなくて。つらい思いさせちゃったね。」

「いえ。伊織先輩がヤマトを降りるとき推薦してくれましたから。」

 

「親父...お袋...そっちへもうすぐいくからね...。」

「土門くん...。」

土門の首から力が抜け、目が閉じられ、がくりと横を向く。

「土門君!!!」

第一艦橋では皆、手を目頭にあてて目を隠したり、人に顔がみられないようそっぽを向いたり、思い思いに顔を隠すようなしぐさをする。ときどきすすり泣きが聞こえてくる。

 

「アクエリアスはワープしてしまった。こちらもワープだけはできるようにしないとおいつけない。」

「律子さん...。」

「なんとかするわ。技術班!機関室を手伝ってなんとしても20時間以内に修理を終わらせるのよ。」

「はい。」

 

さて、数日前にさかのぼる。デスラー総統は、異次元断層発生に迅速に対処し、ベオバレラス市民をすみやかに移住させ、自らは領内の辺境視察にでかけていた。

 

「総統!東部方面軍ルント司令から緊急連絡です。」

「つないでくれ。」

スクリーンにひげをたくわえた歴戦の勇将の顔が映し出される。

「ルントか。わたしだ。そちらの様子はどうか。」

「デスラー総統...。」

ルントは片手をあげるガミラス式敬礼をして報告を続ける。

「赤色銀河が傾いていたおかげでそれほどの被害はありません。オーロラや流星雨や隕石の落下が多少激しくなった程度です。それよりも総統、異次元断層から出現した水惑星が地球へ向かっています。しかも24時間ごとに150光年づつワープをくりかえしていることが判明しました。これは自然現象とは思えません。至急地球に知らせたほうがよいかと。」

「いや、もうかれらは状況を把握している。見よ。これが地球の花だ。」

「総統?それはもしかして?。」

「うむ。彼らもこの事態に探査船団を送っているということだ。おそらくガルマンガミラス本星には、表敬の意味をこめてヤマトが派遣されたのだろう。それよりも問題はなぜ水惑星がワープするのかその原因だよ。何か手がかりはつかんでいるか?」

「実は件の水惑星が地球から天の川銀河中心部ヘ向かって3000光年の位置にある惑星の近くを通過してその惑星を水没させた時に巨大な要塞や艦隊が現れたと思われる形跡があります。ワープを繰りかえすようになったのはその後からです。」

「ふむ。そうか...地球は深刻な危機にさらされているということだな。」

「もしかして総統も?」

「君も気づいたかとおもうが、件の要塞や艦隊の主が地球を水没させて自分たちが移住しようとしている可能性が高いとみていいということだ。かってはわれわれも地球を遊星爆弾で放射能まみれにしたことだしな。あと水惑星は何回のワープで地球に到着するのか。」

「あと5回ほどです。実は地球防衛軍司令部から本星に連絡がとれないから代わりにと照会があり、彼らが土星と冥王星の空域で戦った敵の艦形とわれわれが水没した惑星付近で確認した艦形を照合したところ酷似していることが判明し、その旨を伝えたばかりです。彼らの名称はディンギルというそうです。われわれの友邦や同盟国に影響がないかつねに監視していましたが、水惑星の進路が地球へ向かっていること、太陽系が直接攻撃を受けていたことが判明したため、確実な情報として総統にお伝えした次第です。」

「あと5回か...わかった。」

デスラーは考え込む。(準備を考えるとぎりぎりで地球から150光年先の推定ワープアウト地点に間に合うな...。)

「ルント。」

「はつ。」

「今後ディンギルと思われる艦艇を確認した場合は、即刻攻撃せよ。我が友邦を攻撃しようとする輩は、我が帝国の誇りを愚弄する敵だ。戦闘体制を整えつつ、引き続き監視と警戒につとめよ。」

「はつ。」

ルントの前からデスラーの姿が消え、デスラー艦の館内ではスクリーンからルントの姿が消える。

「全艦隊、オリオン腕ゾル星(太陽)系方面へ向けて転針!」

デスラーが腕を振り上げて指を差す。

「了解。」

オペレーターの返事が艦内で返る。

青い旗艦を中心に緑色の船体色のデストリア級、ケルカピア級、クリプテラ級を従えたデスラー艦隊は太陽系方面へ向けて弧を描きながら宇宙空間のかなたへ消えていった。

 

なんとかワープアウトしたウルクでは、コ・ヤースが部下に命じていた。

冷静さを装うもののあせりを隠し切れない。

「岩盤そのものを曲線反重力波に変換せよ!」

「閣下...。」

「そうしなければアプス星系へアクエリアスを移送できん。やるのだ..。」

「了解。次元空間質量移送機へ充填、変換増幅!」

神殿と照射機のみになってあとの岩塊はじょじょに溶解していく。

あたかも焼き魚が骨だけになっていくようであった。

 

「あと3時間です。」

「ふむ。」

「後方1000宇宙キロに反応!なにかがワープアウトしてきます。

「ヤマトです。」

 

「死にぞこないめ。まだいたのか。」

「艦載機、水雷艇発進せよ。」

数千に達するであろうか、おびただしい数の艦載機と水雷艇が発進される。

「コスモファルコン発進!敵ワープ光線照射装置をねらえ!」

しかし、あまりもおびただしい数の艦載機に水雷艇のため、打ち落としきれない。

「右舷パルスレーザー3番、7番、9番砲塔損傷!」

「左舷パルスレーザー7番、8番、10番砲塔損傷!」

「第三主砲大破!第二副砲大破!」

「ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲は稼動させなくてはならない。波動砲は充填する余裕もないし、的がしぼりきれないわね...。」

「ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲被弾!作動しません!」

 

「ははははは...ヤマトよ。あと30分でワープだ。残念だったな。」

「!!」

そのとき、薄赤色の光条が闇を引き裂き、ディンギルの艦艇と艦載機、水雷艇が次々に爆発する。

「1000宇宙キロに新たな船影!ガルマンガミラス艦隊です!」

第一艦橋の雰囲気が明るくなる。

「ガルマンガミラス艦隊より通信ですぅ。パネルに切り替えますぅ。」

「アマミ...。」

「デスラー総統!」

「例の赤色銀河の件で巡視していてな。君がかってボラーから守りたいと考えていた我が国民は無事に避難させたから安心してほしい。その節は失礼したな。」

「はい。」春香は満面の笑顔で答える。

「一言礼をいいたくてな。間に合ってよかった...。」

「そうだ、人工ブラックホール発生装置搭載艦をもってきた。重力をうまく絞ってアクエリアスに照射すれば、軌道を地球からそらせるだろう。」

デスラーは好意的な含み笑いを一瞬浮かべると、再びけわしい表情になる。

「あの邪魔者はわれわれが片付ける。ヤマトははやく人工ブラックホールを発生させてアクエリアスの軌道をそらすのだ。」

「はい。ありがとうございます。」

「あ...、人工ブラックホール発生装置搭載艦から通信ですぅ。」

画面には細面、長髪のモノクルをつけたいかにも誠実さがにじみ出てくるような学者風の人物の顔が映し出される。

「天海艦長、秋月技師長」

「フラウスキー技術少佐ではないですか?おひさしぶりです。」

「地球の危機とうかがって、こんどこそ純粋に我が帝国の技術で地球をお救いしたいと総統に頼み込んできたのです。本当に間にあってよかった。さあ秋月技師長!乗り移ってください。」

「コスモハウンド二機を発進させて!ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲を搭載しているから。わたしはフラウスキー技術少佐の船に行ってくる。」

ガミラス艦載機がコスモファルコンとディンギル艦載機、水雷艇の戦いに加わり、数で優勢を誇っていたはずのディンギル軍はじわじわと追い詰められていく。

ヤマトの周辺はコスモハウンド二機がハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲でヤマトを必死に守る。たった一つだけ無事な第二主砲塔がサーモバリックモードで数百機単位の敵機を炎上させるがガルマンガミラス艦載機やコスモファルコン隊の隙間をぬって接近してくる敵機の攻撃に少しづつ被弾していく。

ディンギル艦隊もみるみる数を減らすが、水雷艇がハイパー放射ミサイルを発射し、ガミラス艦も沈んでいく。

千早が神業のような操艦技術で被弾を最小限に抑えている。これまでハイパー放射ミサイルが命中しないで済んだのが不思議なくらいだったが、ついにヤマトにもハイパー放射ミサイルが2基命中する。

「ハイパー放射ミサイル…直撃きます!」

ハイパー放射ミサイルは、船体を赤く溶解し食い込んでいく。

春香はとっさに

「総員宇宙服着用!脱出してください。」

と命じる。もはやヤマトはもたない。乗組員をなんとしても避難させなくてはならない。

「皆さん、落ち着いて聞いてください。ヤマトはついにハイパー放射ミサイルに命中してしまいました。艦内に放射能ガスがひろがって、それからやがて撃沈してしまうでしょう。皆さん、今日まで良く戦ってくれました。ありがとうございます。そしてここまでがんばってくれたヤマトに心の中でお疲れ様を言ってください。皆さんの仕事は無事に地球に帰ることです。ですから救命艇に乗り移ってください。地球防衛軍司令部には伝えてありますので、まもなく救援がくるはずです。」

 

激しい戦闘のため、波動砲を発射する余裕がなかったヤマトに比して、デスラーはいつでもハイパーデスラー砲を発射できるよう準備していた。

「ハイパーデスラー砲発射用意!目標敵要塞!」

「ハイパーデスラー砲発射準備完了!」

秒読みが終わり、

「発射!」と宣して、ガルマンガミラスの総統自らが引き金を引く。

銀河系最強の巨砲が薄赤色の激流をはきだして、ディンギルの要塞とその周囲にいた艦艇を呑み込む。それらは、溶解され、引き裂かれ、無数の煙に変わる。溶けずに残った部分は金属片となって四散した。

ハイパーデスラー砲は要塞だけでなくディンギル軍の戦意を打ち砕いた。

残った水雷艇とディンギル艦載機の半数はヤマトとガミラス艦隊に特攻してくる。残りの1/6は降伏し、1/6はいずこかへ逃げ去り、1/6は自爆した。

ディンギル艦載機の激突で、激しくヤマトの船体は揺れる。避難の指揮を執っていた春香はその震動で投げ出されるように倒れる。

「!!」

「はるるん。」

「大丈夫。みんなは?」

「全員乗り移ったよ。」

「じゃあわたしもいくね。」

 

「太助っち、じつはね...。」

亜美と真美が太助に耳打ちする。

「自動ワープ機能セットした。もちかしたらヤマトは地球の近くにワープするかも。へへへ。」

太助はあきれてしまい返す言葉がみつからなかった。

 

「7時の方向、1500宇宙キロに船影ですぅ。船種識別完了。地球防衛艦隊駆逐艦冬月ですぅ。」

「水谷准将。」

「皆さん、ご無事でよかった。早く乗り移ってください。」

 

「アクエリアスの軌道、11時方向へ転針完了。軌道上に生命もしくは有人惑星はありません。」

「いくつかの砂漠惑星の近くを通過するから運がよければ生命が発生するかもね。」

「秋月技師長。お疲れ様でした。」

「フラウスキー技術少佐、地球のためにお力添えありがとうございました。デスラー総統にもよろしくお伝えください。」

 

小型艇が人工ブラックホール発生装置搭載艦から冬月へ向かう。

律子とフラウスキーは窓に見えるお互いの姿に対して敬礼をおくっていた。

 

ヤマトは煙を各所に噴出している。

「ヤマト….。」

「ヤマトへ向かって敬礼!」

皆はいっせいに冬月からヤマトへ向かって敬礼していた。

ヤマトはひときわ大きな誘爆を起こし、煙の塊になったように見えた。

冬月の艦内はすすり泣きと嗚咽に満ちた。

 

そのときだった。

「デスラー総統の旗艦から通信です。」

冬月の通信士が春香を呼び出す。

「アマミ…君たちのヤマトを守れずにすまん。」

「いえ、もし来てくださらなかったらわたしたちはこうして無事に生きていられなかったでしょう。」

「そうか…地球は水没しないですんで本当によかったな…。」

デスラーはかって自分が地球を遊星爆弾で攻撃したことを思い出しているのだろうか…

春香も返す言葉がみつからずしばらく無言であった。しかし、会話を再開したのはデスラーのほうだった。

「アマミ、君がボラーからわがガルマンガミラスの民を守るために波動砲を使ったが、わたしも地球人類をまもるためにハイパーデスラー砲を使うことができた。それがこれほどまでに気持ちのいいことだとはな…。」

デスラーは苦笑を浮かべる。

「はい。わたしも不思議なのですが、工作船団を守れたことよりも、ガルマンガミラスの普通に暮らしている皆さんを守れたということが今でもうれしいのです。」

「うむ…。ガミラスは地球に、ヤマトに負けてよかったのかもしれん。あの日高舞と、アマミ、君が目をさまさせてくれた…。」

「いえ…とんでもないです。」

「冬月艦長、通信機を使わせていただいた。地球の無事を心から祝福する。航海の無事を祈る。」

「ガルマンガミラスの総統御自らのご好意、地球は決して忘れません。かってはあなたと戦った日高舞も現在の司令長官である元ヤマト砲術長水瀬伊織もあなたのこのご恩を決して忘れないでしょう。お二人に代わりお礼申しあげます。」

デスラーは水谷に向けて敬礼する。水谷も答礼した。

「アマミ、いつの日かまた会おう。」

デスラーは春香に敬礼すると数秒後に画面から姿を消した。

 

「さあ、皆さん地球へ向けて帰還します。ワープ準備!」

「ワープ準備!」

冬月は、150光年かなたの空間から姿を消した。

 

 




「地球まで10宇宙キロ…」
「なにか、後方にワープアウトしてきます。」
「!!」
「あれは…ヤマト…。」
それは、ずたずたになって戦闘能力も一切失われていたがまぎれもなくヤマトであった。
「エネルギー反応はありません。」
律子の顔がとたんに険しくなって機関室の双子姉妹を見つめる。
「こら!亜美、真美」
「あ~りっちゃんが怒ったw。」
「うれしいくせにw」
双子を追いかけるが、隠そうとしても笑顔がもれてしまう律子はまったく威厳がない。
冬月の艦橋は明るい笑いにつつまれた。

冬月が姿を消した宇宙空間では、そのとき額に血をしたたらせた白髪で壮年の男が乗る一機のカボチャ状の宇宙船がSUSという小国に向かって航行していた。喜びにあふれる地球に知るよしもなかった。

春香は退役し、雪歩といっしょに貨物船の船長となる。千早と律子も退役し、律子は科学局の長官までのぼりつめることになる。舞は退院し、軍務ができないということでごく普通の主婦となり、訓練学校に通う娘愛の食事づくりに励んでいた。月日がたつにつれて美人ではあるがかってのアイドル、防衛軍司令長官としての前歴は忘れ去られようとしていた...。

※伊織長官とデスラー総統のセリフ等の変更と拡充(3/9,0:35)


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