生まれ変わったら可愛い悪魔の妹に!? (ももんがぴょん)
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第一話 嫌な日常から非日常へ
「今日の授業でやった六道とか漫画で出てきそうで面白いよね!」
「僕には六道輪廻を司る力を宿した右目がある!!」
「どうせお前は餓鬼道しか使えねえよ」
教室の中の男子は先ほどの授業で学んだ内容について話題は持ちきりだった。騒ぎながら妄想を語り散らす男子に対して女子は相変わらず手元のケータイに夢中だ。
俺は椅子に座りそんな教室の光景を一通り見渡してからため息をついて雪が降っている窓の外に視線を向けた。
「……阿呆らしい」
こいつらは何が楽しくて騒いだりしているんだ。群れることでしか自分の存在価値を見出せないような下等生物の分際で……
「おい××!!」
「な、何?」
突然茶髪の男子が俺の名前を呼んだので身体がビクッとした。その男子の取り巻きがニヤニヤしているところ見ると今日もあれをやらなければいけないようだ。
「十分だけ待って……」
机にかけてあるスクールバッグとは別のリュックサックを持って男子トイレに向う。俺は鏡の前に立って中性的でオレンジ色の瞳で金髪のショートカットをした自分の顔を見つめる。
「なんで俺ばかりこんな目に遭わなきゃいけないんだ」
この日何度目かわからないため息をつきながらリュックサックの中から女子用の制服を取り出す。周りの目を気にしないでそれに着替えてから次に軽く化粧をする。
用意が終わった俺は少し小走りで教室に戻る。ドアを開けて中に入るとクラスメイトの視線を集めた。恥ずかしさで顔を赤くして俯いていると先ほどの男子達が俺の周りに集まった。
「これで……いい?」
「本当お前って普段喋らない癖にこんな変な特技持ってるから意味わかんないよな」
「結構可愛いし……一発ヤらせてくれない?」
「や、やだ!!」
「ははは!!やっぱお前の反応って女々しくて面白ぇ!それでも男かよ!」
「もっと言葉のキャッチボールしようぜ?案外俺たち仲良くなれると思うぜ」
「いじられキャラを確立させちまってるし今更無理だろ」
何時もなら彼らが好き勝手言うのも耐えられたけど何故か今日だけはそれがとても悔しくて、俺は彼らを押し退けてから自分のスクールバッグを持って逃げるように教室から飛び出した。
「なんだよ下等生物の癖に……俺が何も言わないのを言い事に!!」
「物に八つ当たりしたらいけないってお父さんに習わなかった?」
人通りがあまり無い自分の家に帰る道で近くにあった赤いコーンを蹴っ飛ばして怒鳴ると後ろから声をかけられた。慌てて振り返ると長い緑色の髪の毛の先を指にくるくる巻いている同じ学校の女子がいた。
「女の子なのにそんな事してると嫌われるよ」
「……俺は男だよ」
「嘘!?そこらの女の子より可愛いのに!?」
その女子は俺が蹴ったコーンを元の場所に戻してから俺の姿をマジマジ見始めた。
「確かによくよく見ると身体が男の子っぽいかも」
「……学校終わって無いのになんでこんなところにいるの」
「あははは……学校行くより家の掃除している方が楽しくて……って貴方もなんでこんなところにいるの?カバンを見た感じ同じ学校よね?」
「……別に良いでしょ」
「私は教えたんだから教えてよ!」
俺は走って自分の家に向かうが、女子も走って追いかけてくる。女だからと油断していたけれど、思ってた以上に足が早い。気が付けば急な坂道で息が上がった彼女に首根っこを掴まれて俺は動けないでいた。
「はぁはぁ……不公平……でしょ……」
「……あんな場所に居たくなかったから」
「え?」
「周りの人間が……嫌だった……から」
「だから学校を抜け出してきたわけね」
俺が首を縦に振ると彼女は首根っこを掴んでいた手を離してから俺の前に立ってにっこり笑った。
「私も周りと馴染めない口なの。学校に行っても面白くないしイジメられるだけ……だから毎日こうやって学校にワザと遅刻したりしているの」
「……少し似てるね俺たち」
「ふふっ!それならお友達にならない?私の名前は早苗!貴方は?」
「俺の名前は……」
自分の名前を口にしようとした瞬間に少し離れたところから誰かが必死に何かを叫んでいる声が聞こえた。それが気になってその声がする方に首を曲げると、俺の身体は宙を舞った。
地面に叩きつけられた俺は何が起こったのか分からないまま意識が遠のいていく。すぐ横にいた早苗の悲鳴が聞こえた瞬間に俺の意識はプッツリ切れた。
「……きて……えおき……。ねえ起きて頂戴」
どれくらいが経ったかは分からないけれど、意識が薄っすら戻ってきたと思うと誰かが身体を摩りながら何かを言う声が聞こえる。余りの眩しさに一度目を瞑ってしまったけれど、俺はゆっくりと瞼を開けた。
そこには早苗ではなくて頭に大きい赤いリボンを結んだ金髪で天使の翼を背中に生やした裸の少女がにっこりと笑っていた。
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第二話 俺……私の名前は
「いきなり倒れたりしたから私驚いちゃったんだよ?大丈夫?」
俺を起こした裸の少女は一度ホッと息をついてからペラペラと喋り始めた。しかし如何にも知り合いみたいに話しているけれど俺はこの少女が誰か分からない。
「……誰?」
「嘘……こんなにも妹想いなお姉ちゃんの私の事を忘れちゃったの?酷い!いくらなんでもそんな冗談は優しい私でも許さないわ!」
「俺は……」
男だってと身体を起こして何時ものように続けようとしたけれど、何故か裸の自分の身体が目に入った瞬間に声が出なくなる。
なんと胸が男のそれでは無くなっていた。慌てて自分の股間を触ってみるとあれも無い。
「何してるの?欲求不満?」
「無い……なんで……なんで無いの」
「貴女は私と一緒にこの空間に産まれた時から女の子だったでしょ?もしかして寝ぼけてる?」
もしもーしと彼女が俺の耳元で言うと、ふと気を失う前の記憶が蘇る。早苗に自分の名前を告げようとした瞬間に……
「いや……」
「どうしたの?」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
そうだ俺は何かに轢かれて死んだんだ。ならここは何?この少女は誰?まさか死者の魂を天に連れて行く天使?
「お前なんかに……連れて行かれてたまるか!」
俺は目の前の少女を殴り飛ばした。こいつに連れて行かれると自分の存在が無くなってしまうと考えただけでとても怖くなったから。
「……え?」
先ほど殴った事で少し落ち着いてみると違和感を感じた。確かに思いっきり殴ったけれど、なんで少女はこの小屋のような空間の壁にめり込んでいるのだろう?
落ち着いてみればみるほど自分の身体に今まで無かった力を感じる様な気がする。
「むーげーつー?」
これならやれるとガッツポーズをしているとめり込んだ壁からあの天使が青筋を立てた状態で現れた。
「ちょっとおいたが過ぎるんじゃないかしら?」
「今の俺ならやれる!!」
調子に乗った俺は彼女に向かって走り、拳を振りかぶった。
「はい幻月お姉ちゃんに自分の自己紹介をしてみようか」
数分後、ボコボコにされて全身青痣だらけの俺は土下座をさせられている上に、彼女に頭を踏まれていた。
「俺は……」
「わ、た、し、でしょ?」
「わ、私は幻月お姉様に忠誠を誓う……」
「誓わなくてよろしい」
「お、お姉様に歯向かわない良い子な妹の夢月です……」
「それでよろしい」
何か気に入らなければ足に力を込めていく幻月お姉様は天使なんかじゃない。絶対に天使の姿をした悪魔だ。
「糞っ……」
「何よ文句があるの?」
「痛い痛い痛い痛いごめんなさいごめんなさい!」
とうとう床がミシミシ言い始めたので必死に謝ると気が済んだのかお姉様は一息ついた後に踏むのをやめて、しゃがんでから俺……私の顔を優しく手であげた。
「ごめんなさい。ちょっとカッとしちゃったの」
ちょっとカッとしただけでここまでやるのかと心の中でツッコムとお姉様はあははと苦笑いをしていた。
「それにしても……本当に私の事とか分からないの?」
「……うん」
「まるで人が変わっちゃったみたいね……まあそれでも夢月は夢月だし、私は今まで通り接するだけよ」
「……ありがとう」
土下座をしていた私は普通に座ると寒気を感じてくしゃみをしてしまった。よくよく考えてみたらずっと裸だから身体が冷える。
「お姉様。服は無いの……?」
「ふく?何それ?」
「今まで寒い時……どうしてたの?」
「身体を動かせば温まるでしょ?」
脳筋かと一瞬思うと何かを察したのかお姉様は頬を膨らませた。
「今失礼な事考えたでしょ?」
「そんな事……ない」
「じゃあ脳筋って何?」
「脳みそが筋肉でできてるって意味」
「ふーん……さっぱり分からないわ」
俺……私は何故かこんな非日常を受け入れつつあった。今までコンプレックスだった男なのに女っぽい感じも何故か女性になってしまったからもう無い。もしも今までみたいなイジメてくる奴がいて面白くも無い生活を変えられるなら、いっそこの悪魔の妹、「夢月」として生きていくのも良いかも。
「なんか今の夢月ってちょっかいを出すと反応が面白いかも……」
訂正。今お姉様がふと呟いた言葉でお……私はイジメられるのだけは逃れられないかもしれない。
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第三話 叩き起こされると「私」がいた
「じゃんけんぽん」
「あっち向いて……ほい」
「甘いね私。あっち向いてほい」
「私の手はお見通し……あっち向いて……」
今、この私……夢幻は目の前にいる夢月とあっち向いてほいをやっている。お姉様は少し離れたところから寝転がってこの奇妙な光景を眺めていた。
これの始まりは三十分ほど前に遡る……
「起きて夢月。ちょっと聞きたいことがあるの」
「まだ眠い……」
「起きなさい!!」
「うひゃあ!?」
「全く寝坊助なんだから……それでこれは何?」
私より先に起きた幻月は突然私を叩き起こした。なんだなんだと重い瞼を開けて幻月が指差しているところをみると、そこには正座をしている私がいた。
「お姉様……何これ?」
「それは私のセリフよ。私が寝ている間に何やってるのよ」
「私……知らない……」
私とお姉様が困惑している中、もう一人の私は無表情でこちらにヒラヒラと手を振っている。自分であるはずなのに何故かそれを見ているととても腹が立つ。
私がジロジロ見ていると、それはいきなり立ち上がってその場でクルクル回り始めた。
「ねえ夢月。こいつ絶対やばいよ」
「私も……怖い」
「壊す?」
お姉様とヒソヒソと話していると、お姉様は右手を突き出した。その手には何か力が集まっているのかバチバチと火花が散ってた。
「……待ってお姉様。私……これを色々調べたい」
「夢月がそう言うなら私はここで見てるわよ」
右手から火花が消えるとお姉様はその場にゴロンと寝転んだ。お姉様が何をしようとしていたかも気になるけれど、それよりもクルクル回っているこいつはよくよく考えてみたら生まれ変わる前の私と顔の感じが変わっていない事の方が気になった。
「お姉様。私とこれって瓜二つ……?」
「この私でも違いが見当たらないほどそっくりよ」
ここには鏡が無いから分からなかったけれども、どうやら私は身体だけが変化しているだけなんだと言う事が分かった。それはそれで安心できるけれど、これが何かを突き止めた方が良いかも。だから私はとりあえずこれに近づいてコンタクトを取る事にした。
「……貴女は誰?」
「私は……夢月」
「夢月は私」
「じゃあ私も夢月」
私が話しかけるとそれはピタッと回るのをやめて返答をした。話し方と言い私のたまに相手から目線を外す癖まで同じところを見るとこれは私が無意識のうちに作った分身なんじゃないかと思い始めた。
「貴女も夢月なら……あっち向いてほいをやりましょ」
「私……負けない」
ふと思いついたあっち向いてほいなら私と同じ考えをしているか分かるんじゃない?と言うことで私達はあっち向いてほいを始めたのだ。
そして今に至る……本当に同じ考えをしているのか一度も勝負が決まらない。この光景に飽きてきたお姉様の貧乏ゆすりの音が少しずつ大きくなっていくからそろそろ何かを言い出すかもしれない。
「ねえ夢月。そう言えばどっちが本物だっけ?」
お姉様はニヤニヤしながらサラッととんでもない爆弾を投下した。あまりにもいきなりの事だったからじゃんけんをしていた私達は目を見開いて見つめあっていた。
「お姉様私が本物。こいつは偽物」
「違う……私が本物。これが偽物」
先手を打たれた!と心の中では絶叫をしていた。なんとかして自分が本物だと証明をしたいけれど、それをできないのが歯痒い。
何か良い案が無いかなと考えているともう一人の私はいきなり私にビンタをしてきた。
「偽物は……殺す」
「……なら殺される訳にはいかない。私が本物だもの」
そのまま私達は子供の喧嘩みたいに取っ組み合いを始めた。必死にポカポカ叩き合ってる間、お姉様がお腹を抱えて大爆笑している声がこの空間に響いていた。一瞬「あれ?どっちが本物だっけ?」とか聞こえた気がしたけれど気の所為に違いない。お姉様はしばらく唸っていると、何かを思いついたのか両手を谷間の無い胸の前で叩いたので私達はお姉様に目線を移した。
「はい注目!!どっちが本物?」
「私が本物……」
「だから私が夢月……」
「じゃあ……どっちが偽物?」
「これが偽物」
「違う。こいつが偽物」
お姉様はよく意味が分からない質問をすると納得するかのように頷いていた。そしてにっこり笑って私の前に立つと、お姉様はもう一人の私の鳩尾に蹴りを放った。
お姉様の突然の行動に驚いて声を出せないでいると、お姉様は私の頬に優しく右手を添えた。
「貴女が私の妹の夢月よ」
「どうして……そう思ったの?」
「夢月ってもう一人の自分に対して「これ」って言ってたでしょ?でももう一人の夢月は「こいつ」って言ってたから貴女が本物なんじゃないかなーって思ったの」
「……それだけ?」
「それだけ」
お姉様はニコニコしているけれど私は冷や汗をかいていた。諸悪の権化であるお姉様のこれっぽっちも反省しようともしない姿を見ているとムッとしてきたから、私はお姉様のほっぺを両手で摘まんでムニムニし始めた。
「お姉様が余計な事を言わなければ……」
「ひはい!ひはい!はやまるはらほのへをはなひへ!」
「全く……」
「私が初めて作った子を壊そうとするなんて貴女達酷いわね」
お姉様の瞳に涙が溜まっていたからやめてあげようとした瞬間に背後から謎の女性の声が響いた。殺気も感じた私はほぼ反射的に振り返ろうとすると……後ろから胸を揉まれていた。
なんか自分の書いたものに違和感がある……アドバイスなど頂けると嬉しいです
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第四話 残念系お姉さん
「ひゃあっ!」
「この揉み心地……今はまだ小さいけど数年くらいでナイスバデーになるわね……」
私は謎の女性の手だと思われるものに胸を揉みしだかれていた。あまりにもエロい手つきな上にこんな事をされたこともないからお姉様の目の前で顔を真っ赤にして自然と喘いでしまうのがとても恥ずかしい。
「誰だか知らないけど、夢月の胸は私の物なんだから早くその手を離さないと壊すよ?」
「黙りなさいまな板。私が揉む価値すら見出せないおっぱいは消えて頂戴」
謎の女性がやっと手を離してくれたけれど、私は身体に力が入らなくてへなへなとその場に崩れ落ちた。乱れた息を整える為に深呼吸をしてから顔をあげると、謎の女性とお姉様がすごい剣幕で睨み合っていた。
このいきなり胸を揉む変態はどんな面をしているのか気になった私は足元から観察してみた。
「ぼんっきゅっぼん……」
裸なのは置いといて元々男だった私でも羨ましいと思うほどスタイルが良い。髪の毛は白と言うよりも銀色に近くて、アホ毛のようなサイドテールがあり、表情はとても凛々しい。
こんなにも美しいお姉さんみたいな外見なのに私の胸を揉みしだく変態だと考えると、とても残念で自然とため息が出る。
「今ならぱっぱと姿を消してくれたら許してあげる」
「そう言うわけにはいかないのよね」
「なら私が貴女を……」
「……待ってお姉様」
身体の周りに火花を散らしているお姉様の前に立って手を突き出して「待って」と伝える。あまり納得できていなさそうだったけれども、お姉様はその場に座ってくれたので、私は振り向いて変態の顔を直視する。
「さっき……初めて作った子って言った……どういう意味……?」
「夢月ちゃんはまな板と違って話が通じる子で助かるわ」
そう言ってこの変態は自然な流れで私の胸を揉もうとしたから、私はその手を叩くと「ちょっとくらい良いじゃない……」と呟いていたけれど、私からしたらたまったものじゃない。
「それで……?」
「まな板が気絶させちゃったその子は私が作った生き物なの」
「作ったって……どうやって?」
「私は生き物を作ることができる不思議な能力を持っているみたいなの。産まれてから何もないところにただ佇んでいたんだけど、ある日この空間に流れ着いちゃったわけ。それで綺麗なおっぱいを持っている貴女に興味を持ったから眠ってる貴女の身体を採寸して……」
「もう良い……聞きたくない……」
自分の胸がどうとかそんな話は流石に聞きたくない。それよりも気になったのは不思議な能力を持っている事と何もないところに産まれたといったところだ。お姉様と言いこの変態と言い夢月と言い、一体何なのだろうか?
私がどうこう考えているとお姉様がいきなり横槍を入れた。
「そこの変態さん。そろそろ貴女の自己紹介をして欲しいんだけど」
「そう言えば私の名前を教えてなかったわね。私の名前は神綺」
「知ってると思うけど私は幻月。夢月の姉よ」
「私は……夢月」
変態こと神綺は胸を張りながら偉そうに、お姉様は座りながら少し嫌そうに、私は神綺に向かってひらひら手を振りながら自己紹介をした。自己紹介が終わってから変な沈黙が続いていたけれど、神綺は何か思いついたのか指をパチンと鳴らして私にウインクをした。
「ねえ私達手を組まない?」
「いきなり何よ」
「多分なんだけど私が何もないところからこの空間に流れ着いたのは貴女達がこの空間を大きくしたからだと思うの。でも見た感じ、貴女達は生き物を作ることができない。そして私は世界を作ることができない。だから3人でこんな何もない空間を楽園に変えてみない?」
「えっと……変態にしては良い案だと思うんだけど……」
「こんな素敵な案に何か不満があるの?」
「私達……この空間を大きくしているつもり……ない」
「そんな!?じゃあ私の素敵な性が乱れるおっぱいパラダイスはどうなるの!?」
「私達を使ってそんな意味不明なもの作ろうとしてたのかこの変態!!」
神綺が涙目でお姉様の肩をしっかり掴んでシェイクし始めたので、私はため息をついてから気絶しているもう一人の私の前にしゃがみ、あまり長くない髪の毛で三つ編みを作り始めた。
「貴女も一応生きているんだね……何時までも偽物って言われるのは可哀想だから夢子って名前を貴女にあげる」
今までの私なら絶対に言わないような事を言ってるなーと自分でも思う。ただ私がイジメる側に周ってしまったのが嫌だと感じただけかもしれない。でも他人を見下すよりは他の人の為に何かやってあげる方が気持ちが良いなと心から思った。
「よしできた」
パッと夢月と夢子を見分けられるようにと思って作った即席の三つ編みはなかなか良い出来だと自分でも感心していた。あとは服をなんとかして作って夢子なりの個性を作って欲しいな。
「いい加減にしろ!このおっぱい魔神!!」
「ケチ!アホ!バカ!このまな板悪魔!!」
背後からすごい音が聞こえてくるから、私はまたため息をつきながらも少し微笑みながら二人の喧嘩を止めに入った。
……見事に二人のストレートパンチを私が食らわなければ最高の思い出になったのに。
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第五話 ちょっとした夢月の観察記録
神綺と夢子が私達と一緒に生活(と、言っても半ば強引に居座っている形だけれども)を始めてから結構経つ。
神綺に初めて胸を揉まれた時に彼女が予想した私とお姉様がこの空間を大きくしていると言うのは的確であったみたいで、その事を意識してから目が覚める度にはっきりとこの空間が広くなっているのが分かるレベルになっていた。それでもまだ小学校にあるようなプールより少し広いくらいの広さしかない。そしてこの空間には4人いて4人とも空間の端っこの一画を自分の陣地にしてしまったから少し暇になってしまった。
そこで私は記録する物が無いけれど、他の3人を観察する事にした。
まず誰を観察するか迷ったけれどとりあえず夢子を観察する事にした。この隠れる場所が無い空間で私はとにかく気づかれないようにと思いながら姿勢を低くしながら近付く。ある程度近付いた私は片膝立ちをし、両手の人差し指と親指で四角形を作ってから、その四角形の中に夢子を収めて観察を始めた。
夢子は暇そうに欠伸をしながらその場に座っていた。ボケーとしていると思ったらいきなり顔を赤めて首を横に振ってはまたボケーと上を見始めた。
もみあげのそばに三つ編みがある以外、姿が私と同じ夢子が恋する女の子みたいな動作をしていると少し背筋がゾッとする。一体誰に対して淡い恋心を抱いているんだろうと考えていると、夢子はいきなりハッとしてからキョロキョロ周りを見渡していた。
夢子は視線に気がついたと言わんばかりの反応をしているけれど、こんな何も無いところでこんなふざけた格好で観察をしている私に気がつかないのは何故なのだろう。
しばらくしてからやっと私の存在に気がついたのかニコッと笑ってから立ち上がって私のところまで来た。
「……夢月は何してるの?」
「暇だから……観察してた……」
「何時から……私の事見てた?」
「……秘密」
そう言うと夢子は頭から湯気が出るほど顔を真っ赤にしてその場から動かなくなってしまった。この子はもう私と違った個性があるからこの先楽しみだなと思いながら夢子を放置してお姉様の元へ忍び足で近付く。
ある程度近付いたら片膝立ちでお姉様を観察し始めた。パッと見た感じ、お姉様は胡座をかきながら指を床にこすっている。定期的に指を顔の近くまで持って行って確認しているところを見ると爪を削っているのかも。
お姉様もやっぱり女の子っぽい部分があるんだと頷いて感心していると、お姉様は上手く削れないのかどんどん手の動きを早めていく。
だんだんイライラしてきているのが目に見えて分かるから私はその場から2、3歩下がると、とうとう我慢の限界がきたのかお姉様は立ち上がって自分の羽を毟り始めた。何時もなら側にいる私が八つ当たりを受けていたけれど、近くに誰もいない時はどうするのかが気になった。
「死ねこのクソ野郎!!」
そう言ってお姉様は右腕を掲げると、手の平に丸くて赤色に光る球体が現われ、お姉様はそれを神綺が陣取っている場所に向けて思いっきり投げた。
やっぱりお姉様にも不思議な力があるんだと少し羨ましく思っていると、赤色の球がすごいスピードで戻ってきてお姉様の顔にぶつかった。後ろに倒れたお姉様に近付いて顔の前で手を振ってみても反応が無いから気絶しちゃったのだろう。
伸びてるお姉様をとりあえず端に寄せてから最後の一人、神綺のところにゆっくり向かう。お姉様の突然の攻撃にすぐさま反撃できたって事は何かすごい事をしているのかなと期待していると、神綺の声が聞こえてきた。何と言っているのかわからないけれど、近づけば近付くほどそれは大きくなって行き、嫌な予感がした私は冷や汗がダラダラ流れていた。
そして私の嫌な予感は的中していた。私の目に入った神綺は……私が口で説明したくないような破廉恥な事をしていた。それを見て私は観察をするなんて目標を捨てて気が付けば怒鳴っていた。
「何やってるのこの変態!!」
「んっ……何ってナニよ」
「そんなの見たら分かる!でもいくら暇だからってなんでそんな事を堂々とやれるわけ!?」
「別に私がオナニーをしてたって良いじゃない……それよりも夢月ちゃんって無口な子だと思ってたけどちゃんと話してくれるのね」
「はうっ!?えっと……その……」
「一人でするのもマンネリなのよねぇ……ちょっと私とエクスタシー感じてみない?」
普段あまり喋らない私が怒鳴っていた事に自分でも驚いていると、その隙に神綺は私の前に立って私の肩をしっかり握っていた。
「夢月ちゃんって本当美味しそう……味見して良いかしら」
薬をやっていると思えるほど目が血走っている神綺が顔を少し近づけてくるのがとても怖い。そして私は恐怖のあまり身体が震えて動けないでいた。
「震えちゃって可愛い……大丈夫すぐに気持ち良くなるから」
「嫌……来ないで……」
私の貞操はこんな最悪な感じで奪われるのかと思えば色々と諦めがついて私は目を強く瞑ってこれからこの変態に与えられる未知の感覚を待った。けれど何時まで経ってもそれは来なかった。不思議に思って目を開けてみると、目の前には白目を剥いた神綺の顔があった。
「きゃぁぁぁ!?」
「これで……大丈夫……」
私が悲鳴をあげると神綺の後ろから夢子の声がした。どうやら夢子が私を救ってくれたみたい。
「助けてくれたの……?」
「……夢月は私に名前をくれた。これはその御返し……」
夢子は気絶している神綺を私から離して乱暴に地面に寝かせていたけれど、私にはその動作が照れ隠しをしている風に見えた。私はそんな夢子にイタズラをしたくなって後ろから抱き付いて耳元でただ「ありがとう」と伝えた。密着しているから感じる彼女の心臓の音の高鳴りを確認してから私は頭を撫でて夢子から離れた。
私が離れた瞬間に夢子はその場から消えたので驚いて周りを見渡すと何故か夢子はもう自分の陣地で体育座りをしながら両手で顔を隠していた。
私は今回の観察で様々な事が分かったような気がした。全員が不思議な力を持っていて、きっと私にもそれがあるんじゃないかって事。神綺は手を出さない方が良いレベルの変態だって事。お姉様にも一応女の子らしいところがある事。夢子はもう私とは全く違う存在になっている事。そして私の中で何か変化が起きている事。
これらの事が分かっただけでも観察した甲斐がある。だけど……
「記録するもの……欲しかった……」
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第六話 夢の中でこんにちわ
「ねえ夢月ちゃん。気がついたら寝ちゃってたみたいなんだけど寝る前の記憶があやふやなの。私が何をしてたか知らない?」
「新手のセクハラ……私に話し掛けないで……」
観察を終えてから暫く経つと、神綺は頭を摩りながら目を覚まして私に話しかけてきた。本当に分かっていないのかワザとやっているのかが分からない変態だから、よく覚えていないけれど触らぬ何かがほにゃららってことわざがあるように話し掛けないで欲しい。
「……何やってるの変態」
「やっぱり覚えてるじゃないこの変態!」
「私は夢月ちゃんの口からオナニーって単語を聞きたかっただけよ」
「なんで私がオ、オ、オ……」
「んー?夢月ちゃんはなんて言おうとしているのかしらー?」
カッとしてまた声を荒げてしまったけど、ニヤニヤしている神綺を見ていると恥ずかしくなってくる。私は口をゴニョゴニョさせてはっきり言わないくらいしかできなかった。
「……ニなんて言わなきゃいけないの」
「なんて言ったのか神綺ちゃん聞こえなーい」
「なんで私がオナニーなんて言わなきゃいけないの!!」
今まで出したことも無い程大きな声を出して私は神綺の頬を叩いた。肩で息をしながら神綺を見ると何故かニンマリしているから気持ち悪い。
「夢月ちゃんはツンデレだからこれも愛の形だって私は分かってる……むしろ気持ち良い……」
「もう出て行ってよこの変態!」
私は神綺のお腹をつま先で蹴ってから自分が陣取っているところへ戻った。自分でもなんでこんなに怒っているのかが分からない。元から下ネタは好きではなかったけど人に手を出すなんて事は今まで無かった。
そんな自分の変化に戸惑いながら私は自分の陣地で体育座りをして、そのまま眠りについた。
◇
「……あれ?」
私は目を開けると真っ暗な空間でふわふわ浮いていた。さっき眠りについたからきっと夢の中なのかなって思いながら身体を動かそうとしたけれども、身体はピクリとも動かない。
「……なんで動かないの」
「落ち着いて……前に進めって強く思って」
「……誰?何処にいるの?」
「そんな事は良いから私が言ったとおりにやって」
何処かで聞いた事があるような声の言うとおりに私は心の中で前に進めと叫んだ。すると身体はゆっくりと前に進み始めた。止まれと思えばその場に停止して下がれと思えば後ろに下がった。
「なかなか飲み込みが早いわね」
「……誰?」
声がする方に振り向くと、そこには夢子がいた。いや、私が作った三つ編みがないから夢子じゃない。
「私が誰か分からないって顔をしているわね」
「……私の偽物?」
「それは私が一番貴女に言ってやりたい言葉。そんなんじゃ無くて私は夢月よ」
「違う……私が夢月」
「違わないわよ。私も夢月で貴女も夢月よ」
この夢月と名乗る私と同じ容姿の女性の言っている意味が分からなくて首を傾げてクエスチョンマークを頭の上に出していると彼女はため息をついた。
「じゃあこう言えば分かる?私は貴女が夢月になる前の夢月なの」
「……あー!!」
やっと意味が分かった私は手をポンと叩いた。忘れていたけれど俺は夢月と言う人物になってしまっていたから夢月を名乗っていたんだった。
「それで……夢月はどうしたの?」
「貴女が結構大変な目にあっているなって思ったから助けてあげようと思っただけよ。それと何時も通りの話し方で良いのよ?」
「無理……人と話す時は……」
「コミュ障って本当面倒臭いわね」
「うるさい!!」
またやってしまったと思って口に手を当てていると、夢月は俺を見てクスクス笑っていた。
「やっぱり戻ってきているわね」
「戻る……?」
「そう。ほら、幻月お姉ちゃんってカッとしたらすぐに暴れたりしない?」
「確かにする……それが何……?」
「私と幻月お姉ちゃんは双子の姉妹。そして私も幻月お姉ちゃんみたいなところがあるのよ。まあ私の方がもう少し感情のコントロールができているけど」
「じゃあ戻ってるって……」
恐る恐る夢月の顔を見ると彼女はにっこり笑って頷いていた。それを見て俺は大きなため息をついてからその場で膝を抱えて丸くなった。
「いきなりどうしたのよ」
「俺はこのまま消えて行くんだって思ったら何か悲しくて……」
「大丈夫。私は貴女が消えないようにする為に夢の中に出てきたんだから」
「……夢月は俺を救う理由なんてないでしょ?」
「私は貴女の事を知りたいのよ。それに死ぬ程暇だったのに貴女のおかげで色々な楽しみも増えたし。これが私が貴女を助ける理由よ。文句ある?」
「嫌……ないよ……」
「じゃあ決まりね」
ウインクをした夢月は私の前に移動して両腕を広げたけれど、私はどうすればいいのか分からなくてただふわふわ丸まって浮いているだけだった。
「私を受け入れればいいのよ」
「……どうやって?」
「知らないわよ。自分で考えなさい」
やっぱりお姉様の妹なんだなって思い苦笑いをしながら膝を抱えている腕を解く。受け入れ方をよく分かっていなくて悩んでいると、以前見たアニメのワンシーンが頭の中を横切った。俺は腹を括って顔から火が出そうになりながら夢月をしっかり抱き締めてからキスをした。
「んっ……これが貴女なりの受け入れ方なのね。よく分からないけど胸がドキドキするわ」
「……この後はどうすればいいの?」
「後は意識が戻るのを待ちなさい」
「分かった……」
こっちはすっごく恥ずかしかったのに夢月はなんともなさそうにしているのが悔しくてモヤモヤしていると彼女は一度咳払いをしてきてから話を始める。
「意識が戻るのまでに何個かヒントをあげる」
「ヒント?」
「貴女や幻月お姉ちゃん、神綺に夢子がいる空間はとっても不安定……まるで夢幻のように。そして私と幻月お姉ちゃんは二人で一人。さあ、貴女は私からの素敵なヒントの意味が分かる?」
ワザと遠回しに言っているから意味が分からない。かつての俺なら。
「今の俺なら何と無く分かる。この俺……私、夢月の能力は……」
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第七話 夢幻世界へようこそ
白い服を着て肩までかかる長さで癖が強い水色の髪の毛を持つ私は大きな城の一室の扉の前で背中に生えた小さな羽をパタパタさせながら座っていた。時折部屋の中から聞こえる私の母の怒鳴り声が聞こえてくるから扉に耳を当ててみるけれど、会話の内容がよく聞き取れないからため息をつく。
「あっ!やっと見つけた!」
「……何処に行ってたのユキ」
「マイの後ろを追いかけてた筈なんだけど気がついたら一人になってた!」
この全く自分が悪いとすら思っていないのか私の目の前で堂々と仁王立ちをしている金髪で黒い帽子に黒い服を身に纏った少女はユキ。周りからは私のパートナーとか思われているけれど、実際は彼女が勝手についてきているだけで私はそんな彼女が苦手だ。
「ねえマイ。ここってなんなの?」
「……知らないでついてきたの?」
「神綺も夢子も何か言ってたのは覚えているけど忘れたの!」
「この単細胞……」
「なんか言った?」
「……?私……何も言ってない」
ユキは笑顔で「気のせいか!」って言ってる姿を見て、また私はため息をつく。どうせすぐに忘れるでしょうと思いながらも私は口を開く。
「……ここは夢幻世界。私達が普段生活している魔法の世界、魔界のベースになった場所。そしてこのお城は夢幻世界を作り上げた幻月と夢月が生活している。ここまで分かる?」
「え?あーうん分かる分かる」
「それで私は母さんが幻月と夢月に会いに行くって言うから夢子とボディーガードって事でついてきたの。分かった?」
「うん。さっぱり分からない」
「つまり貴女はいらない子」
「なるほど!私はいらない子か!!」
心の中で馬鹿と言いながらデコピンをすると、背中の扉がすごい勢いで開いた。驚いて振り向くと、部屋の中から赤い衣を着た白銀の髪のぼんっきゅっぼん……私達の母、神綺が顔を真っ赤にしてとても怒った表情で出てきた。一体中で何があったのやらと部屋の中を覗いてみると、そこにはなかなか理解し難い光景が広がっていた。
「やめて夢子……今幽香が寝てる……」
「たまにしか会えないからいいでしょ?それに……私をこんな風に変えたのは夢月なんだから……」
「幽香は私が預かるから、お二人さん寝室で楽しんでらっしゃい」
「助けてよお姉様ぁ〜!」
「お姉様から許可を頂いし、いっぱい愛し合いましょ」
そこでは緑色の髪の赤ちゃんを背負った青いメイド服に白いエプロンをしたなかなかグラマーな金髪の女性が赤いメイド服を着た夢子に頬をキスされており、そばで天使の羽が生えた白いワイシャツを着た女性が苦笑いをしながら赤ちゃんを回収している場面が繰り広げられていた。夢子がグラマーな女性を寝室と思われる部屋に連れていくのをポカーンとしながら見ていると、ワイシャツの女性が私に近付いてきた。
「貴女……魔人?」
「……そうだけど……貴女は?」
「私は幻月。名前くらいは聞いた事があるんじゃないかしら?」
私は幻月の質問に首を縦に振って頷くと、彼女はいきなりニンマリとし始めた。
「……なに?」
「貴女って昔の夢月にそっくりで懐かしいなーって。せっかくだから名前を聞かせて頂戴」
「私は……」
「ユキ!私はユキ!!」
「何その子?」
「はぁ……私のイソギンチャクだから気にしないで」
私が自分の名を名乗ろうとした瞬間、ユキはいきなり私の背中からひょっこり顔を出した。すると幻月は何が面白いのか私を指差して笑い始めた。
「……次は何?」
「ふふふっ……イソギンチャク……腰巾着じゃなくてイソギンチャク……」
「あっ……わ、私はマイだから……」
「あっ!!待ってよマイ!!」
「今度は二人でゆっくりしに来なさい……って聞いてないか。なんか私と夢月に似てるけど、あのおっぱい魔神……狙って作ったのかしら」
自分が相手を馬鹿にした言葉を間違えていることを笑われた私は顔を両手で隠して先に行った母さんの元へ走って行った。母さんの元に着くと流石に落ち着いていたのか私は普段通りの表情を装って母さんの顔色を伺った。
「どうして……怒っているの……?」
「聞いてよマイちゃん!!最近魔界に法界とか訳がわからない物ができて困っている事を愚痴りに来たのに夢子ちゃんと夢月ちゃんが……きーっ!!あのたわわなドリームおっぱいを揉みたい!!」
「そ、そうなんだ」
戦争が始まるのかちょっと不安になりながら聞いた私が馬鹿だったと後悔した。噂に聞いた事はあったけど、これがプライベートモードの時にだけ見れるおっぱい魔神か……
「マイちゃん!貴女も夢月ちゃん並みのおっぱいに育ちなさい!」
「そ、そう言えば夢子と夢月……さん?ってどんな関係なの……?」
「あの二人……私が知らないうちに子供を作るなんて……」
「子供!?」
女同士で子供って一体どうなっているんだろう……それよりも普段見ない母さんと凛とした夢子の姿を見れて今日はすごく楽しかった。
しかし私は数年後、あの時少し見た赤ちゃんにボッコボコにされるとは微塵も思いもしなかった。
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第八話 「俺」と「私」
隣に寝ている夢子より先に起きた私は青いメイド服を身に纏ってから鏡がついた化粧台の前にある椅子に腰を掛けて項垂れていた。
「……起きてるんでしょ夢月」
「おはよう夢月。昨夜はお楽しみでしたね」
顔を上げて鏡を覗き込むと、そこにはげっそりしている私じゃなくてにっこり笑っている私が写っていた。
「……夢月は俺にちゃんと教えてくれなかったけど俺って何故か一週間ほど意識が無い時期があるんだよね」
「ふーん。そうなんだ」
鏡の中にいる夢月はまるで他人事のようにニヤニヤしてるのを見て鏡を割りたくなるのを我慢して話を続ける。
「意識が戻ってから夢子は俺にべったりだし気がついたら幽香はいるし……俺が気絶している間に何かやったでしょ」
確かお姉様が赤ちゃんが欲しいみたいな事を最後に俺の意識は飛んでいる。もしかして……
「あーそれね。私が身体の主導権を奪って夢子と子供を作っただけよ」
「やっぱりあんたのせいだったんだ……」
怒りを通り越して呆れた私は握っていた拳の力を抜いてため息をついた。
「それより夢子と子供作ったって何……?レズセックスでできるものなの……?」
「あなたの記憶の中にあったエロ本の中にあったような事はしていないわよ。ほら、私達とお姉ちゃんが作った生き物って何故か成長しないでしょ?」
私達が神綺の真似をして初めて作った何時も腐った林檎を手に持ってる何年経っても全く外見が変わらない少女を思い出して俺は頷く。
「だからあなたに好意があった夢子をちょーっと誑かして彼女の血を手に入れて私達の血を混ぜて術式を組んで……」
「夢子の気持ちを弄んだの……?」
「あなただって夢子の事が好きなんでしょ?それで今の関係になったならウィンウィンじゃない」
「うぐっ……確かに人形って可哀想な運命を必死に変えようと努力している姿とか愛おしいけど……」
「さっきから独り言ばかりどうしたの?」
恥ずかしくてゴニョゴニョ言ってると、何時起きたのか夢子が後ろから抱き付いてきた。チラッと鏡を見ると私が写っているだけだから一安心していると、夢子はいきなり私の胸を揉んできた。
「ひゃあ!?」
「私を無視するなんて酷いわね」
「寝ぼけてただけだから大丈夫大丈夫……」
白いカチューシャがついている夢子の頭を優しく撫でると彼女は気持ち良さそうに微笑むから、その姿を見て和んでいると、突然部屋のドアを叩く音がした。その音にびっくりした夢子は私のコスプレ衣装が入ったクローゼットの中に入ってしまったので残念に思いながらノックがしたドアを見ると、幽香を肩車したお姉様が入ってきた。
「むっちゃんあそぼ!」
「夢月は逃げないから髪の毛引っ張るのだけはやめて」
「おはよう幽香。お姉様がハゲちゃうから髪の毛を引っ張るのだけはやめましょう」
何が楽しいのか涙目なお姉様の髪の毛を離さない幽香の脇を擽り、笑って手を離した瞬間に私が幽香を抱っこした。
「ちょっと魔界からお客さんが来たから相手して欲しいの」
「魔界からって……名前分かりますか?」
いきなりクローゼットから飛びてた夢子を見たお姉様は驚いて尻餅をついていた。そしてその光景を幽香はとても面白そうに見ていた。
「いててて……なんであんたはそんな所にいるのよ……」
「それで誰ですか?」
「無視か……随分私の地位も下がったものね」
「お姉様はこの世界の王様……それだけは変わらない……」
「さすが夢月!貴女だけが私の理解者よ!」
お姉様は幽香を抱っこしている私に抱きつこうとしたけれど、幽香がお姉様の髪の毛に手を伸ばしていたからお姉様が飛び引いて壁に背中をぶつける光景は何とも言えなかった。
「あー夢子こんなところにいた!神綺が怒ってたよ!」
「……お邪魔します」
お姉様の一人コントを見ていると、突然二人の少女が部屋に入ってきた。その二人を見て私は何処か懐かしさを感じていた。
こんばんは……すごく久しぶりの投稿です……ここがおかしいとか日本語変などあったら指摘していただけると嬉しいです
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