ハリー・ポッターという恐ろしい世界で (リクタスセンプラ)
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プロローグ

皆さん、初めまして。勘違い要素がある物語が大好きな作者です。
至らない点が多々あると思いますが、どうかよろしくお願いします。
*三人称はこの話だけだと思います


 ハマダーン郊外に住むディヴィス家は、純血の魔法族だ。ディヴィス一族はその事を誇り、マグルやマグル生まれの魔法使いを軽蔑している。つまり、彼等は純血の魔法族に有りがちな選民主義の考えを持っていた。

 

 しかし、純血の魔法族の中でのディヴィス家の立場は低かった。

 ディヴィス家は、近年生まれて来た者達が純血であると証明する事が出来る家系図を持っていたものの、それ以前の先祖が純血であったことを証明出来る手段を持っていない。そのことは、歴史を重んじる純血の魔法族たちにとって大きな欠陥であり、ディヴィス家は純血の魔法族に軽んじられることが多かったのだ。

 ディヴィス家は純血の魔法族以外には強気になれたが、純血の魔法族には卑屈にならなければいけなかった。純血の魔法族として有名なブラック家と遠い親戚であるという自慢は、純血の魔法族には通用しないのだ。

 

 ところが、そんなディヴィス家の明るい話題が、最近社交界で度々持ち出されるようにようになった。そしてディヴィス家は、今まで声を掛けられることの無かった高貴な者たちの集まるパーティーにさえ、呼ばれるようになった。

 なぜ、そんなにもディヴィスの立場が変わったのか? その理由は、ディヴィス家の嫡男にあった。

 

 社交界では、ディヴィス家の嫡男、ダレン・ディヴィスの驚くべきストーリーを数多く耳にする事が出来る。

 例えば、四歳のときにホグワーツの一年生用の教科書を理解していたという話や、杖を使わずに呪文を使うこと出来るという話や、大人でさえ威圧させることが出来るカリスマ性を持っているという話や、将来魔法界を揺るがす魔法使いになるという話などだ。

 

 普通であればこんな眉唾物のストーリーを大人たちは信じないであろうし、話を広めたりしないだろう。自分たちの学生時代の苦労の経験からして勉学が容易でないことは分かっていたし、そんな幼い歳で魔法を理解しているなど聞いたことも無かった。話を広めるとしても親バカだと嘲笑う方向に決まっている。

 だが、このストーリーには信憑性があった。何しろ、この話題を加速させたのが、純血の魔法族のトップ層に位置するマルフォイ家だったのだから。

 マルフォイ家の発言であれば、という者は数多く存在する。彼等のような人間は、自分たちの品格を落とすような馬鹿な嘘をつかないからだ。

 

 勿論、マルフォイ家の言ったことであっても疑う者はいた。けれどその者は、実際にダレン・ディヴィスと会うことで、ダレンに関係する話がが本当であったことを確信した。そして、そのことを社交界やパーティーで話し、勢いをさらに加速させた。

 

 そうこうしている内に、ダレンに関わる話は本当である、と考える者が一定数出てきた。全てを信じた訳ではないがダレンは鬼才の持ち主なんだろう、と捉える者が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 多くの者は勘違いをしている。ダレン・ディヴィスは鬼才の持ち主ではない。彼は同じ歳の子供たちよりも多くの経験をしているだけなのだ。

 

 ダレン・ディヴィスという少年は、所謂『転生者』である。

 

 

 

 

 

 




プロットを考えていて分かったんですが、勘違いのある物語って難しいですね。


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第一話 ダレン・ディヴィスという男

次の話>>を押してくれてありがとうございます。
それでは、第一話をどうぞ。


 オカシイと気がつくのは早かった。

 交通事故に遭い、自分の頭から流れていく大量の血を眺めながら意識を失ったはずの俺が、目を覚ましたときには赤ん坊の姿になっていたのだから。これをオカシイと思わない人間はどうかしている。

 小さな手を見て、小さな足を見て、外国人の男と女を見て、その二人が自分をダレンと呼ぶのを聞いて、俺は混乱した。パニックになり、泣き叫んだ。

 状況をまともに把握出来ていなかった俺だったが、自分は転生したのだ、と心の底で分かっていた。

 それはネット小説の影響だったかもしれない。信じてはいなかったがそういう宗教があることを知っていたからかもしれない。

 とにかく、働き盛りの年齢だった自分は事故に遭って死に、それから新たな命を授かったということは認識していた。

 

 

 時間を置いて、しっかりと状況を受け入れたた俺は転生したことを喜んだ。

 前世の父と母と別れたことは悲しかったし、先に死んだことは申し訳なかったが、知識と記憶を引き継いだ状態で赤ん坊からやり直せることは非情に魅力的だった。それに過去の自分が日本人であったこともあり、外国人としての人生に興味がわいた。イージーモードで生きていけると思った。

 しかし、今俺が生きている世界が前世の世界と大きく異なる世界だと知ると、その考えは変わった。

 まさか『ハリー・ポッター』の世界で生きているとは思っていなかった。それもヴォルデモートが赤ん坊に倒されたばかりの時期に。

 イージーモードなんてとんでもない。俺の人生はヘルモードだった。転生の喜びは絶望に変わった。自分がハリーと同い年だと知ると尚更。

 

 

 『ハリー・ポッター』の原作は何度も読んだし、映画は台詞を所々覚える程見た。俺はそれ程、『ハリー・ポッター』が好きだ。

 それでも自分が『ハリー・ポッター』の世界に入ったことは全く嬉しくない。なぜなら、死で満ちあふれている世界だからだ。

 ハリーの周りだけでもあんなにも多くの人が死んでいるのだ。原作には詳しく書かれていなかったが、多くの人がヴォルデモートたちに殺されているのだろう。そんな世界、恐くて仕方が無い。

 転生したからと言って死が恐くなくなる訳ではない。むしろ、次に死んだとき自分はどうなってしまうのかを考えてしまい、前世よりも死を恐ろしく思っている。

 

 

 俺は四歳にして、死なないためにはどうすれば良いのか考えるようになった。

 最初に考えたのは、原作組と関わらないようにすることだ。彼らと関わるだけでどれほど危険度が増していくことか分からない。

 原作組と関わらないようにするために肝心なことは、グリフィンドールとスリザリンに入らないことだ。それだけでリスクが大幅に減る。

 自分が心優しき者ではないことは分かっているから、ハッフルパフに入れるとは思えない。俺は若干スリザリン気質だと思う。

 そこで俺は、レイブンクローを狙うことにした。あそこは勉学の才能を持つ者だけではなく、努力で知恵を得た者も選んでくれる。

 

 俺は四歳から魔法の勉強し始めた。

 両親が教育熱心なこともあり、大量の本や魔法薬の材料を用意してくれた。本来なら駄目なことらしいのだが、杖を貸してくれることもあった。

 家族の支援と、大人の理性と子供のスポンジのような記憶力を利用して、俺は瞬く間に魔法の知識を身につけ始めた。

 家族は俺を天才だと思い、褒め称えた。そして俺のことを周囲に自慢し始めた。過剰すぎる程に。

 

 

 八歳の時に、俺は一人だけでマルフォイ家に招待された。恐らく俺が天才児という噂が流れていることが気に入らなかったのだろう。教育熱心のうえに親バカのルシウスのことだからあり得る。

 関わると碌なことにならないことが分かっているルシウスに目をつけられたくなかった俺は、自分は天才ではないと何度も説明した。

 それでもルシウスが薄ら寒い笑みを消さなかったので、ドラコのことを何度も褒めた。画面越しでなく、目の前に座りながらルシウスと話したことで、雰囲気に圧倒されてしまい、ドラコのことを上手く褒められたか不安であったが、ルシウスは胡散臭い笑みを引っ込めたのだからきっと上手く行ったのだろう。

 そのあと夕食をマルフォイ一家と共にし、何事も無く家に帰らせてもらった。

 

 

 マルフォイ家の家に行ってから数ヶ月経った頃、俺が天才であるという話しが勢い良く広まり始めた。

 両親は喜んでいたが、俺は辛くてたまらなかった。家に訪れる人は俺を変な目で見るし、他所の家のパーティーに何度も招待されるようになったからだ。見せ物になるのは嬉しくない。それに日本人だった過去を引き摺っている影響でパーティーには苦手意識がある。

 

 どうしてこうなったのかを聞いてみれば、ルシウスが俺を天才だと広めているらしい。訳が分からない。俺が何度も天才じゃないと説明したというのに。

 恐らくだが、俺がドラコをあまりに褒めたせいで気を良くし過ぎたのだ。ドラコからめんどくさい手紙が届くようになったし、取り巻きにでもするつもりなのかもしれない。

 

 原作組に関わらないように努力したが、かえって関わるようになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ダレン、準備は出来たの!?」

 

 下の階から母の声が聞こえる。俺はその声を聞いて、とんでもなく憂鬱になった。

 

 十一歳になり、ホグワーツから入学を奨める手紙が届く。ホグワーツに入学を希望し、教科書と必要な教材をダイアゴン横丁に買いにいく。ここまでは良かった。だけどマルフォイ家と一緒にダイアゴン横丁に行くってのは可笑しいだろ!? ドラコとそこまで仲がいい訳じゃないし、不自然すぎる! やっぱりルシウスに目をつけられてるんだろうか……。

 

「ダレン、早くしなさい!」

「分かりました! 今行きます!」

 

 ハリーと顔を会わないようにしなきゃ。はぁ、憂鬱だ……。

 

 

 下の階の部屋に行くと、余所行き用の洒落た服を着た両親が待っていた。

 

「遅かったな。何かあったか?」

 

 父は自分の服を弄りながら答えた。

 父がダイアゴン横丁に行く理由は、息子の買い物に付き合うためではなく、ルシウスとの仲を良くするためなのだろう。大人気ないが、少し寂しく感じた。

 

「いえ、少し準備にもたついていただけです」

「そうか。すぐに出発するがいいか?」

「はい」

 

 父は俺の返事にうなずくと、部屋に設置された暖炉に近づいた。そして暖炉の横に付いている鉢から煙突飛行粉(フルーパウダー)を一握り掴むと、炎の中に放り込んだ。

 父は勢い良く燃え上がる緑色の炎の中に入り込むと、小さな声で行き先を告げた。

 

「ダイアゴン横丁」

 

 父の姿が一瞬揺らぎ、そして消えた。

 

「さぁ、あなたの番よ」

 

 俺は煙突飛行が苦手だ。家にある暖炉は高級品で酔いにくいそうなのだが、それでも気分が悪くなる。いつも思うのだが、回転しない方法は無いのだろうか。

 

 心の中で文句を言いながら、鉢から煙突飛行粉(フルーパウダー)を一握り掴み、炎の中に放り込む。そして膨れ上がった暖かい炎の中に入った。

 

 俺は煙突飛行が苦手だ。けど嫌いじゃない。

 なぜって、カッコいいからに決まってるだろ。

 

「”ダイアゴン横丁”!」

 

 俺は鋭い声で言った。




今回はダレンのヘタレ要素と厨二病要素を書いてみました。
さて、この要素はどのような影響をもたらすのでしょうか?お楽しみに


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第二話  ダイアゴン横丁で 前編

お気に入り登録と感想ありがとうございます。物凄く嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

この話は、どうしてこうなった\(^o^)/と思いながら読んで頂けると嬉しいです。


 ダイアゴン横丁から少し離れたところにある待ち合わせの店に行くと、既にマルフォイ家が待っていた。

 予想外すぎた。このような状況を作らないために、待ち合わせ時間の三十分前に来たというのに、マルフォイ家はそれよりも早く来ていたのだ。

 父と母は吃りながらマルフォイ家に何度も謝罪した。マルフォイ家は桁違いの権力を持っているのだから、両親が怯えるのは仕方が無いことだ。俺なんて体をガチガチにして時間が過ぎるのを待つしか出来無かった。

 

 

 

 「ダレン、久しぶりだな。大体一年ぶりか?」

 

 両親と挨拶を終えたルシウスが、ドラコと話していた俺に声を掛けた。

 

「お久しぶりです、ルシウスさん。そうですね、そのぐらいになりますかね」

「随分と会っていなかった気がするぞ」

 

 ルシウスが笑いながら俺の肩を叩いた。

 ーーむしろ会い過ぎだよ。八ヶ月前に会ったばかりだよ。

 

「息子はこの日が待ち遠しかったようだ。寂しがっていたよ」

「父上!」

「本当のことだろう?」

 

 ドラコが不機嫌な顔で呻いた。

 

 手紙をやたらと送ってくるくらいなのだから、本当にドラコは俺と会うのを楽しみにしていたのだろう。友人というよりも取り巻きとして認識していると思うが。話をしにくいクラッブとゴイルと年がら年中一緒にいるようだし、会話がスムーズにいく俺を求めるのは自然の原理なのかもしれない。

 

「俺もドラコと会うのを楽しみにしていましたよ」

 

 嬉しそうに笑うドラコを横目で見ながら、俺がドラコを喜ばせているのも問題なのかもしれないと思った。ドラコの背後の存在を気にしてしまうから仕方が無いことなのだけど。

 

「……嬉しい言葉だ。ーーダレン、君はドラコと一緒に制服を仕立てに行って欲しいのだが構わないだろうか? 我々は教科書や教材を買いに行こうと思っていてね」

 

 ルシウスは離れた場所で話している大人たちをチラリと見ながら言った。

 

「勿論、良いですよ」

 

 子供がいない方が教科書や教材を購入する時に効率がいいと判断したのだろう。原作でもドラコが服の採寸をしているときにルシウスとナルシッサが買い物をしていることが書かれていたし。

 大人たちがいないのであれば、洋装店に行く時間をずらしハリーと遭遇しなくてすむかもしれない。これは嬉しい提案だ。

 

「ありがとう。制服を仕立て終わったらここに戻って来てくれ。その後杖を買いに行こう」

「わかりました」

 

 俺の返事を聞いたルシウスは満足げに頷くと、両親たちの方に歩いて行った。

 ルシウスが離れるのを確認した俺は、ドラコに尋ねた。

 

「すぐに洋装店に行くんじゃなくて、色々な店を廻ってから行かないか?」

「えっ、先に行くんじゃないのか?」

 

 俺の提案にドラコは戸惑っていた。十一歳という幼い歳なら好奇心を優先すると思っていたのだが、予想外にもドラコはしっかりとしているようだ。

 

「時間はたっぷりあるから大丈夫さ」

「そうだな……。店を廻ってから行こう」

 

 ドラコは若干悩んでいたが、結局は俺の提案を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「やっぱり一年生がホグワーツに箒を持ち込んじゃいけないってのは、理由が分からないね」

 

 ドラコがショーウィンドウに飾られたニンバス2000を見つめながら呻いた。

 

 ーー確かに理由が分からないよな。

 ショーウィンドウに鼻を押し付けて騒いでいる子供を見ながら思った。

 危険なスポーツであるクィディッチを一年生にはさせたくないからなのか、マグル出身の子供と魔法界出身の子供の差を少しでも小さくしようとしているからなのか。禁止する理由が何かしらあるのだろうが、それがハッキリされていない以上子供が不満を抱くのは当然だ。ドラコのように自分に才能があると思っている子は特に。

 

「ダレンは箒が欲しいとは思わないのかい?」

「欲しいけど、今欲しいとは思わないな。」

「どうして?」

「そりゃ、俺に選手としての才能が無いからだよ」

 

 高所恐怖症という訳ではないのだが、上空で一本一本性格がある箒に跨がっていると、どうしても自分の命を箒に握られていると考えてしまい、冷や汗をかいてしまう。その気持ちは跨がっている箒に伝わってしまうので、上手く飛んでくれなくなってしまう。才能が無いうえに、箒をトップスピードにすることができない俺は選手として致命的だ。見る分には好きなんだけど。

 そもそもクィディッチはハリーの活躍場所であると同時に、様々なストーリが関わる場所だから入り込みたくない。

 それに一年生から自分の箒を持ち込んだら注目を集めてしまう。これはもう遅いかもしれないが……。

 

「そうなのか……ダレンは何でも出来ると思っていたから、クィディッチの才能もあると思っていたよ」

「完璧な人なんていないさ」

 

 俺には勉強の分野でアドバンテージがあるが、それ以外は普通だ。むしろマイナスの可能性がある。

 

「……そうだよな。ーーなぁ、そろそろ洋装店に行かないか?」

「えっ、もう行くのか?」

「もうって、結構な時間が経ったぞ。それに父上に早めに終わらせておくように言われていてね。僕は制服だけじゃないから終わるのが遅いんだ」

「そうだよな。じゃあ、行こうか」

 

 暇な時間を潰すという名目のもと、色々な店に入って商品を物色したおかげで、かなりの時間が経った。ハリーは既に制服を作ったと思うし、顔を合わせることはないと思う。

 ドラコを嫌いになる出会いであるけれど、それは後々十分に知ることになるのだから無くなっても大丈夫だろう。身内以外の連中からすれば、ドラコはめんどくさくて煩わしい存在なのは確かなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 僕は顔の知らない少年のことが嫌いだった。天才だという噂が流れているダレン・ディヴィスが嫌いだった。マルフォイ家よりもレベルの低いディヴィス家の子供が注目を集めているのが気に入らなかった。 

 

 父上がダレンのことを家に招待すると聞いたとき、僕は耳を疑った。噂はあり得ない内容のモノばかりで、嘘に決まっているのに。

 ダレンが家にやって来る日、僕は二階の窓から門をずっと見張っていた。噂の人物がどんな顔をしているのか見てやろうと思って。

 驚くべきことにダレンは一人で家を訪ねてきた。馬車の従者はいたが、親同伴ではなかった。この段階で僕は、ダレンが只者ではないことに気がついていた。

 

 ダレンとの初めての顔合わせは、本当に僅かな時間だけだった。客間で母上と挨拶しただけで、その後すぐに父上に追い出された。

 父上と相対するダレンはまるで大人のようだった。息子の僕でさえ父上に臆するのに、ダレンは堂々とソファーに座っていた。

 僕はダレンとの差がどんどん広がっていくことに気がついた。そして、あり得ない噂話が本当であることにも気がついていた。

 

 ダレンは父上と一、二時間ほど話した後、夕食を食べて帰って行った。夕食の間、何度も話しかけようとしたが、臆してしまい、どうしても話しかけることができなかった。

 家の格では僕が圧倒的に上だ。だけど他の要素では圧倒的にダレンが上だ。嫉妬とは違う黒い感情がドロドロと溢れ出てくるのを感じた。

 

 だけどダレンは、一瞬でその感情を消してくれた。勝手に比べ、勝手に負け、勝手に沈んだ僕を救ってくれたのだ。

 

 ダレンが帰った後、父上が教えてくれた。ダレンは僕を褒め称えてくれたそうだ。

 僅かな時間しか会っていないのに、ダレンは僕の長所を見つけ出したのだ。父上が言うには的確だそうだ。ダレンは僕をしっかりと認識していてくれた。

 

 父上は遠い目をしながら言った。彼はカリスマだ、と。

 確かにその通りだと思う。一瞬で僕を惹き付けたダレンは確かにカリスマ性を持っている。

 

 それから僕はダレンに手紙を送るようになった。どうしてもダレンと仲良くなりたかったのだ。

 ダレンはどんな手紙でも返事をしてくれた。どうでもいいと僕自身が思う手紙でもしっかりと返事を返してくれた。それがとても嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 父上の計らいで、ダイアゴン横丁にディヴィス家と一緒に行くことになった。父上は親の方に何か用があるようだが、それはどうでもよかった。ダレンとホグワーツに行く準備ができることが何よりも重要だ。

 ちょっとした悪戯を父上が提案した。集合時間よりもかなり早い時間に集合場所に行き、ディヴィス一家の反応を見るらしい。面白い悪戯だ。普通であればマルフォイ家よりも遅く来た場合、程度は変わるが一言詫びを入れる。

 

 

 やはりダレンは普通ではなかった。遅れたことを両親が謝っている隣で静かに父上を見つめている。

 恐らく父上がわざと早く来たのに気がついているのだろう。礼儀正しいダレンが何も言わないのが何よりの証拠だ。

 

 

 

 「ダレンは何所の寮に行くか決めているかい?」

 

 僕は不安を隠しながら尋ねた。ダレンがスリザリン以外の言葉を言うのを恐れていた。

 

「レイブンクローに行きたいな」

 

 不安が的中した。頭脳明晰なダレンならレイブンクローを選ぶかもしれないと思っていた。

 

「確かにダレンならレイブンクローも良いかもしれないけど、スリザリンが一番いいんじゃないか?」

 

 大丈夫だ、ダレンはスリザリンに必ず入ると父上が言っていた。心配ないさ。……大丈夫。

 

「スリザリンも良い寮なのは分かるんだけどさ」

「でも、君の両親もスリザリン出身だろ?」

「まぁな」

 

 スリザリンが一番では無いのは本当に残念だが、望みは十分に叶う可能性がある。

 そこに父上がやってきて、今日の予定を説明し始めた。その途中でダレンが、僕と会うのが楽しみだったと言ってくれた。喜びでいっぱいになった。

 

 

 会話していて分かったのだが、ダレンは完璧ではない。

 ダレンは子供らしいところがある。まさかダレンが先に店を廻ろうと提案してくるとは思わなかった。てっきり、先に制服を作ってから店を廻ろうと言うのだと思っていたから。

 それにダレンは意外にも箒での飛行が得意ではないらしいく、クィディッチの選手を目指していないらしい。

 

 ダレンが完璧でないと知ったときの衝撃は大きかった。

 ショックだったのではない。嬉しかったのだ。

 僕が支えることが出来る部分があることに気がつけたのだからーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




注意ですが、ドラコは畏怖の念を拗らせてヤンデレみたくなっただけですよ。

ルシウス視点は大分先まで書かないので、謎は残ると思いますが、きっちり回収するつもりです。

キャラ崩壊タグはつけた方がいいのかな?


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第三話 ダイアゴン横丁で 後編

 マダムマルキンの洋装店からドラコが出てくるのを確認した俺は、心と身体が喜びに包まれるのを感じた。

 俺が服を仕立てている間、ハリーは洋装店にやって来なかった。そして原作の修正力というモノがあると聞いたことがあった俺は、ドラコの仕立てが終わるまで洋装店の外で待っていたのだが、その間もハリーはやって来なかった。時間稼ぎは上手く行ったのだ。

 ハリーが来た場合どういった会話になるのか分からないが、ハリーにドラコと同じような人間だと思われる可能性がなくなったということだ。顔を合わせるだけで俺の立場が大きく変わるとは思わないが、用心するにこしたことは無い。

 

「ごめん、待たせた。ーー父上たちのところに戻ろうと思うが、いいかな?」

 

 ドラコの問いかけを聞いた俺は魔法製の腕時計を見た。

 

「そうだな。そろそろ戻った方が良いかもしれない」

「じゃあ、行こうか」

 

 ドラコが歩きながら俺に話しかけてくる。

 

「杖を買った後に動物を買いに行こうよ」

「あぁ、いいよ」

 

 動物か……。魔法界には賢い動物が多いんだよな。愛玩としてだけでなく、生活の役に立つことがある。気に入った動物がいれば買うのもいいかもしれない。

 

「僕はふくろうが欲しいな。遠くまで手紙を送れるような強い奴。いや……スピードが出る奴でも良いかもしれない」

 

 確か原作でドラコは大きいふくろうを飼っていたな。カッコいいからみたいな理由で選んだと思っていたが、機能性を重視していたのか。

ドラコは子供っぽいという印象があったが修正した方が良いかもしれない。

 

「ダレンはどんな動物がいいんだい?」

「そうだな。んー、忠誠心が高いのを選びたいかな」

 

 きっと魔法界の動物の躾は難しい。色々な役割を与えることになることを考えると、生半可な躾だと駄目だと思うし。

そういうことを考えると最初から忠誠心が高くてやりやすい方が嬉しい。

 

「……忠誠心か。確かに大切だね……」

 

 ドラコに引かれたようだ。

役に立つと言ってもあくまでペットになのだから、忠誠を求めるのは見当違いなのかもしれない。

 

「まぁ、実際に見てみなきゃ分からないけどな」

「確かにそうだね」

 

 俺たちは店の商品や買い物客の様子を眺めながら、ルシウスたちの元へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 「随分と時間がかかったな」

 

 店に戻って来た俺たちにルシウスが声を掛けた。

 

「すみません。俺が色々な店を見て廻ってしまったんです」

「ほう……。意外なこともあるものだ」

 

 ルシウスは僅かに目を大きく開きながら言った。

 

「面白いモノでもあったのか?」

 

 ルシウスは興味深そうな顔をしている。

 

「えー、どれもこれも面白かったですね…」

 

 ーーこれは困ったな。

 まさか会話を引き延ばされるとは思っていなかったから、返答を考えてもいなかった。

 

「ダレンはくだらないと思う商品でもじっくりと観察していました。こういうところが天才と言われる理由なのでしょうね」

 

 驚くべきことに、ドラコがフォローを入れてきた。

 チラリと隣を見ると、ドラコが目が合った。そこで俺はフォローの理由を察した。ドラコは俺と一緒に叱られるのが嫌なのだ。

 

「なるほど……。確かにそうかもしれない」

 

 一体何を納得したっていうんだ。

……もしかしたらルシウスみたいな偉い人になると雰囲気で納得しなきゃ行けないときがあるのか。たぶんそうだ。立場ってやつがあるのだ。

 

「このままオリバンダーのところに杖を買いに行くぞ。少し時間を押している」

 

 マルフォイ家が誰かを卑下することが多いのはそういったストレスがあるからなのか? ……流石に違うか。

 というか、なぜ俺は深読みしているんだ。

 

「わかりました」

 

 ルシウスの顔を見るのが何だか恥ずかしかった俺は、ルシウスから目を逸らしながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリバンダーの店は狭くてみすぼらしいかった。扉に剥がれかかった金色の文字で書かれている紀元前三八二年創業という文字は、伝統を感じさせると言うより古臭さを感じさせる。

 だがこの店は多くの魔法使いたちに支持されている。この店で作られた杖はどれもこれも最高の杖であり、一生使用する人も多いのだ。

 オリバンダーの店の実績と信用は代々引き継がれており、杖を買うならオリバンダーの店という言葉が定着するほどになっている。

 

 中に入るとカウンターの奥の方でベルが鳴った。六人もの人間がいるせいで、ただでさえ狭い店内がさらに窮屈に感じる。

 

 天井近くまで積み重ねられている細長い箱を見ていると、ふと疑問が湧いてきた。

 何千もの箱の中には、遥か昔に作られ、未だ使用者を待っている杖があるはずだ。オリバンダーは杖が魔法使いを選ぶと云う。未だ使用者を待つ杖とは一体どのような人を選ぶのだろうか。

 

「いらっしゃいませ」

 

 急に目の前から声が聞こえた。杖の箱に気を取られていた俺はビクッと肩を跳ね上げた。

 目の前に老人が立っていた。この人がオリバンダーであろう。

オリバンダーが濁った目で俺を見つめてくる。

 

「ふーむ、貴方はディヴィス家の息子かな。優秀だという話は聞いておる」

 

 オリバンダーにまで届いているってどんだけ広がってるんだよ。最悪だ……。

 

「おぉ、グランヴィル! ディヴィス・グランヴィルさんか! 久しぶりだね……イチイに不死鳥の羽。三十一センチ。上質でしなやか。まだ使っているかい?」

 

 オリバンダーが俺の後ろにいた父に目を移した。原作に書いてあったように売った全て杖のすべてを覚えているようだ。

 

「ええ、一切の問題なく使っていますよ」

「そうか、そうか。それは良かった。あれは良い杖じゃ」

 

 オリバンダーが嬉しそうに何度も頷いた。

 

「それにルシウスさん。貴方のはーー」

「オリバンダー。見てわかるように子供たちの杖を買いにきたのだ。売った杖のことを思い出すのはいいが、私たちが帰った後にしてもらえるかね?」

 

 ルシウスが冷たい声でオリバンダーの会話を遮った。

 

「……。貴方がそうおっしゃるなら、そうしよう」

 

 オリバンダーは押し殺したような声で言った。気まずい雰囲気が流れたが、オリバンダーがすぐに話し始めたことでそれは払拭された。

 

「では、ダレンさん。拝見しましょう」

 

 オリバンダーは銀色の目盛りの入った長い巻き尺をポケットから取り出した。

 

「杖腕はどちらかな?」

「右腕です」

「では、腕を伸ばして」

 

 オリバンダーは巻尺で指先、手首から肩、腰、頭の周り、と様々な場所の寸法を採った。

 

「ほう、ほう」

 

 何やら頷いたオリバンダーが棚の間の狭い道を通って箱を取りに行く。そしていくつかの箱を持って帰ってきた。

 

「鬼胡桃にドラゴンの琴線。二十五センチ。上質で頑固」

 

 オリバンダーが杖を差し出してくる。俺は杖を取り、杖を軽く振ってみた。すると小さな火花が飛び出した。しかし、オリバンダーは俺の手から杖をもぎ取った。

 

「ふむ、惜しいな。これはどうじゃ。黒檀に不死鳥の羽。二十七センチ。頑丈。どうぞ」

 

 渡された杖を握ると、妙にしっくりときた。杖を軽く上げ、勢い良く振り下ろした。すると、杖の先から青い火花がシャワーのように飛び出してきた。火花は壁や地面に当たる前に消えて行った。

 

それを見て、皆それぞれ違った反応をして感嘆の声を上げた。

 

「素晴らしい。見事だった」

 

 皆の言葉を代表するようにルシウスが言った。

 

「ありがとうございます!」

 

 自分の杖を手に入れるというのは思っていた以上に嬉しいモノらしい。いつもより声をを強くして俺は返事をした。

 

 

 「ドラコの杖は私が選んでおいたわ」

 

 オリバンダーに杖を渡し、俺とドラコが立ち替わったところでナルシッサが口を開いた。

 

「母上が?」

「ええ、貴方たちが買い物に行っている間に選んでいたの」

 

 二人の会話を聞いて母が発言した。

 

「ナルシッサさん、本当に一生懸命選んでいたわ」

「そうなんですか……」

 

 ドラコが嬉しさを噛み締めているようだった。

 

「私もダレンのを選んでみたのよ? でも杖選びって思っていた以上に難しかったの」

 

 母が俺にそっと耳打ちした。

 俺が不満に思っているように感じたのだろうか。俺は母に不満を持っているのではなく、ナルシッサの凄さに感動しているだけなのだが。杖選びというのはそれ程凄いことなのだ。

 

「素材はザクロ、芯は一角獣のたてがみ。二十センチ、弾力がある」

 

 ナルシッサがオリバンダーから杖を受け取り、それをドラコに手渡した。ドラコは杖を握ると、頭の上まで持ち上げ、鋭く振り下ろした。

すると、杖の先から温かい光が溢れ出し、薄暗かった店内を明るく照らした。

 

「ブラボー!」

 

 オリバンダーが歓声を上げた。皆が上手くいったことを喜んでいた。

 

「素晴らしい。杖選びとは難しいものじゃ。それを一本目で当てるとは……。親子の愛じゃ。実に素晴らしい」

 

 その言葉を聞いてルシウスは満更では無さそうだった。

 

杖の代金を七ガリオンずつ払ったあと、俺たちは店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 その後、俺たちはイーロップふくろう百貨店に行った。俺とドラコから言い出したのではなく、大人たちが入学祝いとして買ってくれると

言ってくれたのだ。

 俺は長い時間悩んだ末にモリフクロウを飼うことにした。最初は忠誠心や機能性で選ぶつもりだったが、結局は見た目で気に入ったからという理由で選んだ。ドラコは大きなワシミミズクを選んだ。恐らく原作と同じだと思う。

 ペットを選び終えた頃には日が沈みかけていたので、そのまま解散ということになった。

 

 帰り際に親同士の話合いで九月一日にまた会う約束をしてしまったが、今日のことを考えると別に良いかもしれない。ドラコと接していて腹が立つことも無かったし、楽しかった。それにレイブンクローに入れば交流も途絶えるだろうから問題は無い。

 それに原作を変えてハリーと会わずにすんだのだ。今更だが、原作を知っている俺はそこまで慌てる必要が無いのかもしれないな。

 

 俺はホグワーツに行くのを楽しみに感じ始めていた。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作のドラコの杖は、サンザシに一角獣のたてがみ、25センチ、ある程度弾力性がある、です。この物語とは違いますよ。

感想を頂けると嬉しいです。


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