頂きを目指すもの(改訂版)  (しゅてるんるん)
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プロローグ

読者の皆様はじめまして

また、改訂前の作品を読んでくださっていた方はお久しぶりです

そして、更新停止してしまい申し訳ありませんでした

今回は今まで読者の皆様にご指摘いただいた点や、アドバイスなどを活用して以前よりも一層面白いものにしたいと思っています

序盤は以前と似たような話になってしまうかもしれませんがご容赦ください




~北海道~

 

寛SIDE

 

今日、俺は生まれ育った北海道を旅立つ

 

理由は親の転勤って言う平凡なものだ

 

どうしても通っていた中学で卒業をしたかった俺は一人だけこっちに残って卒業式に参加した

 

中学の卒業式が終わってまだ数日しかたっていないが、引っ越し先での入試があるからゆっくりすることは出来ない

 

俺が中学時代所属していた麻雀部の中でも本当に仲の良かった数人が見送りに来ている

 

「寛!!麻雀はやめるなよ。そして、全国大会で会おう!!」

 

「全国大会で会おうって青春物の漫画か何かかよ。そもそも、俺の行く学校に麻雀部があるかも分からねえんだからあんまり期待はするなよ。…でも麻雀は絶対にやめない。なんて言ったって俺は高校麻雀界の頂きに立つ予定の男だからな」

 

全国大会云々言っているのは俺の親友で最も熱い男で名前は後藤孝だ

 

中学では麻雀部の中堅を務めていた

 

先鋒が崩れたりしたときに持ち前の熱血でチームに活を入れてくれたいわばチームの支柱だ

 

「それでこそ俺の親友だ。元気でやれよ」

 

孝と俺は握手を交わして別れた

 

「………ヒロ、達者でな」

 

無口なこいつの名前は大西祐樹

 

麻雀部で次鋒だった男だ

 

普段からかなり物静かで人と最低限のコミュニケーション以外を取ろうとしない変わり者だ

 

「ああ、お前も元気でやれよ」

 

「…餞別だ。持って行け」

 

そういって祐樹は俺に俺たちが中学時代に参加した麻雀の大会で取った楯を渡してきた

 

「ありがとな」

 

「寛君、君ならどこに行ってもうまくやれると思うよ。目標が己の毎日に息吹を与える。高い目標を持ち常に己を磨き続けろ。ってどこかの偉人が言っていた気がする。プロの麻雀打ちになるっていう君の夢を僕は心の底から応援しているよ。頑張ってね」

 

俺の目の前に立っている雰囲気イケメンの男は工藤晶

 

どこから引っ張って来たかもわからない偉人の言葉を使うのが特徴だ

 

「寛、俺は非常に寂しいぞ!!幼稚園から一緒のお前がこの北海道を去ってしまうのは半身を引き裂かれる思いだ。しかし、友の新たな門出を祝おうではないか。壮健にな親友よ!!」

 

涙で顔が見えないくらいに号泣してるのは、麻雀部の副将で俺の幼馴染の福島健人

 

しゃべり方も変だがそれ以上に孝並みの暑苦しさが特徴の一つだ

 

物心ついたころには隣にいていつも一緒だったこいつと離れるのは正直つらいものがある

 

それは互いに同じだと思う

 

それでも、俺はこいつらの前では涙を見せたくない

 

「じゃあなみんな。全国大会で会おうぜ!!」

 

俺は涙を見せないように振り返らず飛行機に向かっていった

 

…そういえば、茨城って麻雀流行ってるのか?




誤字脱字、感想等ありましたらお書きください

内容変更

寛の引っ越し先が神奈川→茨城にしました

理由はそのうちわかるかと


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第一局

ストックは全くないので序盤は以前の作品を手直ししつつ進めていこうと思います




~茨城~

 

俺が受験するのは茨城の県立土浦東高校だ

 

事前に調べたところ麻雀部は存在はしているものの、現在は部員数がゼロつまり今年

 

部員が一人も入らなかった場合は廃部になるらしい

 

まあ、俺は最初から個人で狙ってたから団体戦に出れないのはそこまでマイナスでもないんだけどな

 

環境は予想以上に悪いな

 

自分で打てる場所探しておかないと勘が鈍っちまう

 

とりあえずは目の前の受験を終わらせて受かることが一番大切なんだけど、正直レベル的にはちょうどのところを選んでいるから馬鹿みたいに勉強をする必要もなく、気が向いたら赤本と向き合って気分転換に一人で牌をいじったりしたりしている

 

そうこうしているうちに受験は終了した

 

そして今日は合格発表の日だ

 

「368か……あったあった。よし帰るか」

 

受けって当然だと思ってたし全く感動する事も無く合格発表会場を後にした

 

 

 

母の仕事は雑誌の記者で今日は取材で遅くなるらしい

 

合格したってことだけを伝えて俺は家に帰る途中に雀荘を探していた

 

一人でも打つことが出来る雀荘はなかなか見つからなかったが

 

家から600mほどのところに麻雀喫茶というものを見つけた

 

一品の料理と飲み物の注文をすれば満席になるまで打たせ続けてくれるっていうかなり良心的な店だった

 

毎日通うわけにはいかないから俺の小遣いとこれからするであろうバイトでなんとか来れるときはこようと思った

 

高校入学から一月たったが俺ってコミュニケーション能力が乏しかったせいかクラスでは孤立している

 

考えてみれば当たり前っちゃ当たり前かもしれないけどな

 

この学校は対して頭がいいわけでもないのに教師も生徒も進学校を気取ってるから

 

麻雀部に所属している奴と話すやつも余りいない

 

たぶん心の中で馬鹿にしてるんだろな、麻雀なんて運のゲームだろとか所詮麻雀だとか

 

そんな奴らと仲良くできる気がしないからいいんだけどな

 

バイト先は偶然にも麻雀喫茶で打ってる時に店長と意気投合して働かせてもらえることになった

 

おかげで、勘を鈍らせること無く、毎日のようにタダで麻雀を打つことが出来る

 

そのうえ、給料までもらえるなんていうことなしだ

 

しかも、余った料理を家に持って帰らせてもらっているおかげで母が仕事でいないときも飯には困らない

 

ひたすら麻雀だけに打ち込める環境に偶然なった

 

全国大会の予選まではまだ一か月ある

 

この地区の強豪について調べてみたけれど、全国区の化け物じみた奴はいなかった

 

しいて言うなら茨城東高校にいる荒川真治は茨城でも一人群を抜いていた

 

茨城からの個人全国への切符は二枚

 

おそらく荒川は俺の前に立ちはだかるだろう

 

だが、俺は絶対に負けない

 

そのために今は打ち続ける

 

ここは店だから、お客さんを飛ばしたりしないように気を付けて打ったり、気持ちよく打ってもらうために意図的に振り込んだりしないといけないから、その分難易度が上がる

 

求められるのは、純粋な麻雀の強さではなく、素人から玄人までいる打ち手の手配を読むことだ

 

おかげでかなり器用なうち回しができるようになった

 

後、麻雀部にもしっかりと部費が宛がわれていた

 

部員一人だから大した額ではないが俺が全国に行ったと仮定した時の宿泊滞在費には十分すぎる額だった

 

顧問に使い道を聞かれたとき俺が全国大会の旅費にしますと言ったら顧問は目を輝かせて応援してくれた

 

麻雀部の顧問は若い教師で熱血な男だったみたいだ

 

この進学校気取りの学校でついつい浮きがちで面倒な麻雀部を押し付けられたらしい

 

麻雀は学生時代に打っていたから、ただのゲームとは思っていないみたいでかなりやりやすい

 

俺が学校で話をするのは顧問くらいだな

 

…ホントに俺って友達居ないんだな

 

これでも北海道にいたときは結構いたんだけどな

 

主に麻雀つながりだったけど

 

 

「今日は県予選だなだな。俺はお前なら全国に行けると信じているぞ」

 

顧問に激励の言葉をもらって俺はエントリーしていた個人戦の予選会場に向かった

 

結果からいうと予選は2位で突破した

 

多分、茨城の男子のレベルは全国でもかなり低いと思う

 

点数計算がギリギリできる程度の奴もいればビリなのにオーラスをタンヤオだけで上がったりと雑魚ばかりだった

 

直撃は一度もなかったがそういう奴らの所為で荒川に少し点数で負けている

 

決勝は半荘5回の総得点で決まる

 

その中に一度くらい荒川との直接対決もあるはずだ

 

そこで叩き落とすしかないな

 

~決勝第一局~

 

俺の卓にいるのは予選25、16、5の奴らだ

 

5位の奴は一回見たが細かい役で何度も上がって点数を稼ぐタイプだ

 

ただ、一度崩れるとなかなか復帰できないタイプにも見える

 

「立直!!」

 

『予選2位の藤原選手先制立直ぃ!!』

 

さて、とりあえず景気づけに一発で行っときたいな

 

対面に座っている5位の奴から当たり牌が出た

 

よし!!

 

「ロン!!立直一発一気通貫ドラ…裏が乗って4、16000だ」

 

『倍満!!先制立直は倍満、これは痛い!!』

 

絶望的な顔してるな

 

これでたぶんこいつはもうこの半荘は立ち直らないだろ

 

結局立ち直れなかったようで結果は東4局で俺の親満直撃の飛びで終了した

 

『圧倒的!!藤原選手、この半荘を+34で終了しています』

 

今日は絶好調だな

 

この調子で一気に全国決めちまいたいところだ

 

茨城じゃ俺は満足できない

 

もっと化け物とかとやりあいたいんだけどな

 

それは全国の楽しみにしておくか

 

~決勝戦第五局~

 

『茨城大会男子個人戦もいよいよ大詰め!!この卓を囲むのは1位~4位の選手です。つまりこの局の結果次第で全国への切符をつかむものが決まります。現在1位はここまで圧倒的な強さで勝ってきた藤原選手。2位は荒川選手、3位は山中選手、4位は田中選手となっています。尚、藤原選手はほぼ全国が確定していると言っても過言ではありません。ここまでの4回の半荘で+152。2位以下と50程の差が開いています。しかしまだ勝負は分からない。最後の半荘が始まります。起家は田中選手からです』

 

ここまでは予定通りだ。後はこの半荘を上がりきるだけだ

 

荒川はやっぱりこの地区では一人飛び抜けているようだ

 

団体戦でも全国を決めていたし、チーム全体のレベルも悪くはない

 

ただ、個人の優勝は譲れないな

 

最小の失点で最大の得点をたたき出させてもらう

 

この半荘を最後までやるつもりは無いからな

 

東一局は荒川のタンヤオドラ2のツモで上がられた

 

この半荘の結果がどうなろうとたぶん俺と荒川が全国に行くことはほぼ確定だな

 

~南三局~

 

俺の親番だここまで俺が一回満貫を山中に直撃させて後はツモ和了りだけだ

 

点数は

 

俺…40000

荒川…36000

山中…13000

田中…14000

 

つまりこの局で俺が18000を荒川以外に直撃させればこの大会は終了する

 

 

 

8巡目に下家の山中が俺の当たり牌を出した

 

これで俺の優勝だな

 

「ロン!!タンヤオトイトイドラ3、18000だ」

 

『完全決着!!茨城県男子個人戦は圧倒的な強さで藤原選手の優勝、2位は荒川選手

 

です。』

 

試合が終了するとすぐに荒川真治が俺のところまで歩いてきた

 

「茨城に君のような打ち手が居たなんてな。全国ではお互い頑張ろう」

 

「荒川さんとはまた打ちたいですね。俺の名前は藤原寛って言います。今後ともよろ

 

しくお願いします」

 

俺は荒川と握手をした

 

「よしてくれよ。勝者は君だ。俺は麻雀に年齢は関係ないと思ってるから敬語はやめ

 

てくれ。俺は荒川真治だ。気軽に真治とでも呼んでくれ。俺も寛って呼ぶからさ。」

 

「分かった。全国でまた会おうぜ真治。」

 

「ああ。寛も負けるなよ。」

 

全国で再び戦う約束をして俺たちは控室に戻っていった

 

「やったな藤原!!おめでとう」

 

控室に戻ると顧問が心からの賛辞を贈ってくれた

 

昔なら今ここに戻ってきたのは大将戦の後で迎えてくれたのはチームメイトだったん

 

だけどな

 

個人戦もいいけどいつかはもう一回行きたいな団体で全国に…

 

 

~一か月後~

 

「本当に引率で行かなくてもいいのか?」

 

全国大会の直前になって顧問が心配し始めた

 

「東京ですよ?今時中学生でもひとりで行けますよ。電車ですぐじゃないすか」

 

「学校側としてはだな、何か問題があった時に一人で行かせたというのはまずいんだ

 

よ」

 

確かにそれは一理ある

 

事故にでも巻き込まれたとしたら責任問題だからな

 

「じゃあ取り合えず俺は抽せん日までに現地に向かうんで、先生は試合開始日に合わ

せてこっちにくる。俺は少し先に一人で旅行に向かって、そのまま現地で先生と合流

したってことにすれば全く問題はないでしょ?」

 

「よくそこまで頭が回るな。…まあそれでいいなら許可しよう。ホテル等は予算の範

囲内で決まったら連絡してくれ。」

 

「わかりました」

 

母さんに頼んでホテルはできるだけ会場に近い場所を取ってもらった

 

万が一寝坊したとしても問題ない

 

…まあ個人戦は全部午後からになってるから遅刻はありえないけどな

 

出発は明後日になっている

 

 

 

俺が全国大会に出ることを知ってる学校の人間は、校長と顧問とあと少しの教師くら

 

いだろう

 

校長も昔は雀荘でガンガン打ってたタイプらしく、応援してくれた

 

 

すでに決まっている北海道代表の全国大会の出場者にはあいつらの名前は無かった

 

予想通りっちゃ予想通りだけどな

 

流石に一年目でそんな約束が達成されるとは微塵も思っていない

 

俺はともかく個人の力量であいつらが全国にくるのは難しいからな

 

ただ…来年、再来年は全くわからない

 

俺は奴らを待ち続ける

 

全国大会の会場で




感想お待ちしています

プロローグの変更に伴い、細部を変更させていただきました



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第二局

メッサー様、王の財宝様、-persona-様、yudeneko様
感想ありがとうございました!!

皆様の感想を励みにして頑張っていこうと思います


 

「母さん、俺が泊まるホテルって結局どこになったんだ?」

 

出発前日にしていまだに聞いてなかったことを思い出して母さんに確認を取った

 

「あれ?言ってなかったかしら?○○○ホテルよ」

 

「誰がネズミだらけの夢の国のホテルを取ってくれって頼んだんだよ!!」

 

夢の国で麻雀大会が開催されるわけがないだろ

 

「冗談よ冗談、ホテルは東京シティホテルのシングルを取ったわよ。確か…白糸台だったかな。そういう名前の高校…女子のチームだけど使うみたいだから問題起こさないようにね」

 

「自分の息子が信用できないのか?」

 

麻雀の大会に言ってるのに女の相手してる暇なんかねえ

 

…でも俺って学校に友達居ないし、せめて関東圏の麻雀友達でも作っとかないと、相当寂しい青春を送る羽目になりそうだな

 

「とりあえず、明日東京に行ってくる。全国大会が終わるまで帰ってこないつもりだから。飯は要らない」

 

優勝するなら決勝戦が終わるまで帰ってこれないからな

 

「よく言った。それでこそあたしの息子よ。本当にご飯は用意しないから負けて帰ってきたら知らないわよ」

 

この母親は絶対に一度言ったことは変えないから本当に帰ってきても飯ないんだろな…

 

まあ予定より早く帰ってくる気も更々ねえけどな

 

「ホテルでの飯はバイキングなのか?」

 

「ルームサービスもあるみたいだけど、そこまで部費回らないでしょ?バイキングなら宿泊してる人はただで食べれるからそっちにしときなさい。」

 

ルームサービスなんて頼む気は全くない

 

面倒だし、なにより割高だからな

 

バイキングで適当に食べていけばいいか

 

「じゃあ俺はそろそろ明日に備えて寝るわ。おやすみ」

 

「寝坊するんじゃないわよ~」

 

俺は自分の部屋に行ってすぐに眠りに就いた

 

~翌日~

 

俺は午前中に電車で東京に向かい荷物はホテルの部屋にチェックインの時間に着くように手配してもらって私服で東京を散策している

 

普段はバイトとかで忙しいからこっちまで足を運んだことがなかった

 

「それにしてもデカいな。」

 

周りに見えるビルはすべて高層ビルでかなりデカい

 

「ホテルに3時で今は1時半か、とりあえず、会場の下見でもしてくるか」

 

全国大会予選の抽選日は明日だからまだ会場は準備はされていないはずだが興味はあるから見に行くことにした

 

確か…総合体育館を使ってやるんだっけ?

 

「へぇ~。茨城のボロ体育館とはえらい違いだな。」

 

全国大会にもなると卓とか牌も高級なのが使われてそうだな

 

別に高級品にこだわる訳じゃないけどやっぱ普段使えないような高価なものも使ってみたい

 

「あれ?君は…茨城代表の藤原君だよね?」

 

会場を外から眺めていると、後ろから声を掛けられた

 

「はい。そうですけど?」

 

俺の顔を知っているってことは大会の関係者なんだろうけど…

 

…この声、どこかで聞いたことあるな

 

「自己紹介してなかったね、私は小鍛治健夜。一応プロの麻雀選手です」

 

俺に声をかけてくれたのは、俺の憧れの選手、小鍛治プロだった

 

「こ、小鍛治プロ!!…どうして俺の名前を?」

 

今は地元のチームに所属しているから、ランキングこそ低くなっているものの、かつてはトッププロとして活躍していた彼女が、ただの高校生にすぎない俺の事を知っているのは不思議でならない

 

「私、この前の茨城県大会見てたからね。地元だし」

 

「ありがとうございます!!」

 

「会場の下見に来たんだよね?なら、中に入ってみる?」

 

「良いんですか?」

 

関係者以外立ち入り禁止とかじゃないんだろうか?

 

「全国の予選を勝ち上がってきたんだから大丈夫じゃない?」

 

「じゃあ、入らせてもらいます」

 

小鍛治プロについて体育館の中に入っていくと、テレビ中継で小鍛治プロと一緒に出てるアナウンサーのこーこちゃんが立っていた

 

「あ、すこやん!!どこいってたの?ってか、その子誰?」

 

テレビで見てるまんまのテンションなんだな

 

「この子は、藤原寛くん。茨城県の個人で優勝した子だよ。さっき外で会ったの」

 

「なるほど。じゃあとりあえず、これ渡しとくね」

 

そういって渡されたのは名刺だった

 

「私は福与恒子、気軽にこーこちゃんって呼んでね」

 

「こ、こーこちゃん」

 

テレビとかで見てる時は普通にいえるけど、本人目の前にするとさすがに緊張するな

 

「緊張してる?まぁ仲良くしようよ、寛くん」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「とりあえず、この中軽く案内しようかと思ってるんだけど、こーこちゃんはどうする?」

 

「私は一旦局に戻って仕事してくるから、またあとでね~」

 

そういうとこーこちゃんは会場を出て行った

 

「じゃあ、案内するからついてきてね」

 

それからしばらく、対局室や観戦室、特別に解説席なんかも案内してもらったけど、どこも顔パスで入れていた

 

トッププロってすごいな

 

「そういえば、藤原君はプロになるつもりなの?」

 

「はい。高校か大学かを卒業したらプロになろうと思っています」

 

「そうだよね。あ、あともう一つ聞いていい?」

 

「一つと言わずいくらでもどうぞ」

 

小鍛治プロと一対一で話せることなんてこれから先、無いかも知れないからな

 

誰に言っても羨ましがられると思う

 

……自慢する友達は居ないけどな

 

「藤原君ってプロから麻雀教えて貰った?」

 

「いえ。生まれが北海道で、そういう教室とかはなかったんで。自分で覚えました」

 

俺の麻雀は麻雀のゲームをしながら覚えた完全に我流の打ち方だ

 

「やっぱり。君の打ち筋って結構危なっかしいところがあったりするんだよね。プロになるつもりなら気を付けた方が良いよ」

 

「……じゃあ小鍛治プロ、俺を鍛えてくれませんか?」

 

俺にはプロの知り合いなんていない

 

このチャンスを逃せばプロに教えてもらえるような機会はもうないかもしれない

 

「教えてあげてもいいんだけどね。ただ、これから全国大会だし、それが終わってからでもいい?」

 

「全然かまいません!!」

 

憧れの小鍛治プロに教えてもらえるなら一週間や二週間は待つうちにすら入らない

 

「じゃあ全国大会が終わったら、ここに連絡してくれる?」

 

そういって渡されたのは小鍛治プロの連絡先が書かれた紙だった

 

「ありがとうございます!!小鍛治プロ、いや師匠!!」

 

「師匠!?そんな大それたものじゃないよ!?っていうか恥ずかしいからその呼び方はやめて!!」

 

師匠がだめなら…

 

「じゃあすこやん?」

 

「軽っ!?私年上だよ!?せめて小鍛治さんとか、健夜さんとかにしない?」

 

「じゃあ健夜さんって呼ばせてもらいます」

 

「うん。じゃあ私は寛君って呼ばせてもらうからね」

 

「これからよろしくお願いします。健夜さん」

 

「とりあえず、目先に迫ってる全国大会頑張ってね。同郷として応援してるから。じゃあね」

 

そういうと健夜さんは再び体育館の奥の方に歩いて行った

 

それを見送りながら俺は深々と頭を下げて今日のお礼をした

 

「今日はどうもありがとうございました!!」

 

 

 

「さて、そろそろホテルの方に行くとするか」

 

俺はホテルに向かって歩き始めた

 

 

 




改訂前にはほとんど出てこなかったすこやんとこーこちゃんを出してみました

後、寛の居る県を神奈川から茨城に変えております

今作はすこやんにも活躍してもらいたいと思っています


感想、誤字・脱字等の指摘がございましたら感想にお願いします


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第三局

全開の投稿からすこし時間が空いてしまいましたがこれからもがんばっていきます




 

Other side

 

寛が宿泊する予定のホテルは、試合会場から歩いて数分の位置にあるため、毎年どこかの学校が宿泊している

 

もちろん、記者や高校麻雀の熱狂的なファンなども泊まることはよくある

 

今年は東東京代表の名門白糸台高校が団体で宿泊している為、大所帯の学校は泊ることが出来ない為、例年ほどの混雑はしていないようだ

 

とはいっても、出場しない選手たちも普通に連れてきている為、それなりには混雑している

 

寛が現在、ホテルにチェックインできずにロビーで受付を待っているのもそういう理由だったりする

 

「それにしても、金持ちの学校は違うな。選手以外の部員まで連れて来るとはな。ウチ(土浦東)は顧問すら連れてきていないのにな」

 

大所帯が入っていくのを眺めながら寛はあらかじめ買っていた炭酸飲料でのどを潤していた

 

数分ほどすると全員の移動が完了したのか、ホテルのロビーは静けさを取り戻した

 

「さて、俺もそろそろチェックインするか」

 

チェックインはすぐに終わり、寛は部屋のカギを渡された

 

「お、369か。受験番号と同じだった気がするな」

 

部屋に到着した寛は荷物を置いて一息ついたときにあることに気が付いた

 

「……そういえば、暇つぶしの道具何も持ってきてないな」

 

一人だから出来ることは限られると思い、トランプなどを置いてきた事を寛は今になって後悔していた

 

大会は抽選会と表彰式の全てを合わせると約一週間ほどの期間がある

 

にも関わらず、遊び道具どころか、本すらも持ってきていない寛は空き時間は寝る以外の選択肢が無くなってしまった

 

「しゃあねえ、下にあった売店で適当に本でも買ってくるか」

 

寛は部屋を出て、ホテルの一階へと向かっていった

 

寛side

 

ホテルの一階の売店は土産を買えるようにか色々なものが売っている

 

中にはこんなもの買う奴は流石に居ないだろなんて物も売っている

 

「……何だこの怪しい栄養ドリンクは。色が体に良くないぞ」

 

原色の液体が入っている栄養ドリンクらしき便のラベルは文字を読むことが出来ない

 

「……こんなの買う人間がいるのか?」

 

店においてある以上は買う人間がいるんだとは思うけど、買う人間は何を考えてるのかわからない

 

「………すみません」

 

通路をふさいでいたみたいで、後ろから声を掛けられた

 

「あ、悪い悪い」

 

後ろから歩いてきた白糸台の制服に身を包んだ少女に道を譲ると、その子はさっきまで俺が見ていた怪しいドリンクを手に取るとレジの方まで歩いて行った

 

「……まじかよ」

 

世の中には居るもんなんだな

 

あんな怪しげなドリンクを買う子が

 

しかも女子高生って…

 

「……買うもん買ったしに一旦部屋に戻るか」

 

部屋で飯の時間までゆっくりするとしよう

 

 

部屋に向かって歩いているとさっき売店にいた変な栄養ドリンクの少女が俺の少し前を歩いていた

 

同じ方向に部屋があるのか、しばらく後ろを歩いていると彼女のポケットから財布が落ちたが、彼女は一向に気づかない

 

「そこの白糸台の子、財布落としたぞ」

 

一応声を掛けはしたものの、白糸台の生徒が多すぎるせいか、彼女は全く気付かない

 

「さっき売店で怪しいドリンク買ってたお前だよお前!!」

 

俺がさっきよりも少し大きな声で呼ぶと、小走りで俺のところまで来た

 

照side

 

菫に頼まれて売店に来たものの、言われた栄養ドリンクは手に取ることを躊躇させるような怪しい色をしていた

 

「…これ飲んで大丈夫なのかしら?」

 

売ってるんだし、飲んでも大丈夫なんだろう

 

頼まれたもののほかに、いくらか自分の好きなお菓子を買って部屋に向っていると、後ろから白糸台の生徒を呼ぶ声が聞こえた

 

誰かが財布を落としたみたいね

 

私は、自分には関係ないと思い完全に無視して部屋に歩いて行った

 

「さっき売店で怪しいドリンク買ってたお前だよお前!!」

 

さっきよりも大きな声で呼んでいる内容を聞いて私は慌てて後ろにを振り向いた

 

後ろを振り返ると、サングラスにアロハシャツといういかにも怪しげな服装をした男の人が私の財布を片手に私の事を呼んでいた

 

怪しいとは思ったけれど、財布を拾ってくれている以上逃げるわけにもいかないし、私は男の人に近づいた

 

「財布拾ってくれてありがとうございます」

 

「おう。もう落とすなよ」

 

結構優しい人みたいでよかった

 

「あと、一つ聞いていいか?」

 

「?なんでしょうか?」

 

「その栄養ドリンク?って飲めるのか?」

 

「私は友達に頼まれただけなんでちょっとわからないですけど…まずそうですよね」

 

「だよな。色とか絶対体に良いものが入ってると思えないし。聞きたかったのはそれだけ。わざわざありがとな」

 

「こちらこそ、財布を拾っていただいてありがとうございました」

 

私はもう一度軽く頭を下げると自分の部屋に向かって歩き出した

 

 

寛side

 

「さて、そろそろ飯でも食べるとするか」

 

財布を渡した後、部屋で適当に時間をつぶしていると夕飯の時間になった

 

このホテルの料理はうまいって評判だからな

 

 

「予約してた藤原です。」

 

このバイキングはホテルに泊まっている人間ならただで食べれる

 

そのせいか、泊っている人間のほぼ全員がここに食べにくるから、時間制でさらに予約制だ

 

部屋の電話からここにあらかじめ予約しておかないと入れない

 

まぁ、面倒ならルームサービスって手もあるがそれはすこし割高だ

 

好きなものを好きなだけ食べれるバイキングがあるんだから行くに決まってるだろ

 

食べ物を見てもどれもうまそうだしとりあえずサラダ辺りからいってみるか

 

~90分後~

 

「あ~うまかった。」

 

ステーキやラーメン、ピザなどの高カロリーな食べ物を食べまくった

 

しかもデザートも結構食べたからで腹がいっぱいになった

 

高級なホテルだけあって食い物はどれもかなりうまかった

 

「部屋帰ってシャワー浴びて寝るか」

 

明日の抽選は出来るだけ面白い奴らと当たりたいものだな

 

部屋に戻ってシャワーを浴びた俺はベッドに入ってすぐに寝た

 

 






読んでくださってありがとうございます!!




誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらお書きください


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第四局

まずは謝罪を

改訂版などと銘打って連載を始めたのにもかかわらず、エタってしまい、楽しみにしてくださっている方々に大変ご迷惑をおかけしました。

今後もエタらない保証はしかねますが、精一杯頑張って簡潔を目指していこうと思います。

至らない部分が多い上に更新も不安定ではありますが、今後も応援の程お願いします。




うだる様な猛暑日が続き、セミたちが鳴く8月中旬のある日。

 

全国大会を終えた寛は大会前にした健夜との約束を果たしてもらうためにメモに記された雀荘を目指す。

 

場所は彼女の地元であり、寛が現在住んでいる土浦市街であったため比較的かんたんに移動はできているが、気温が気温であるため既にひろしの額は汗にまみれている。

 

「…暑さがやばいな。辿り着く前に熱中症で倒れそうだ。」

 

手持ちの水分がキレていることに気づいた寛は迷うことなく視界に入ったコンビニへと足を運ぶ。

 

「あれ、寛くん?」

 

店内に入り飲み物を選んでいると。唐突に声をかけられた。

 

「あ、こーこさんお久しぶりです。」

 

寛に声をかけたのは健夜と共に全国大会の解説を行っていたアナウンサーのこーこだった。

 

最初はちゃん付けで呼ぶように行っていたこーこだが、紆余曲折あり、さん付けに落ち着いた。

 

「今日だっけ?すこやんのところに行く日って。」

 

「はい。ただ、水分補給と休憩を兼ねてコンビニに入ったとこです。」

 

「なるほどね。あ、じゃあ乗ってく?私もすこやんの所にちょっと渡すものあったし。」

 

「お願いします。」

 

渡りに船、地獄に仏と言わんばかりの申し出に寛は迷うことなく飛びついた。

 

「シートベルトしめてね。」

 

「はい。」

 

コンビニ前に止めてあった車に乗り込み目的地を目指す。

 

「あ、折角だから一つ聞いても良い?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

「じゃあさ、全国大会で優勝した藤原寛選手今の気持ちをどうぞ。」

 

普段のチャラけた雰囲気とは違い、アナウンサー然とした雰囲気で寛に問いかける。

 

先日行われた全国大会個人戦は寛の優勝という形で幕を下ろした。予選から圧倒的な強さを見せつけた寛を始めとした上位選手の大半が一年生であったことは全国の高校生麻雀ファン及び関係者を大いに盛り上がらせた。

 

しかしながら、女子の個人戦も一年生が優勝したことに加え、元々注目の薄い男子選手はコアな麻雀誌からの取材を除けばほとんど一言程度のコメントで終わらされており、本当の意味での寛の気持ちなどを聞く機会は今まで無かった。

 

「気持ちですか?…まあ楽しかったですよ。麻雀の打ち方一つとっても全く違う奴らと戦って、しかも勝てたのは嬉しいです。でも、まだまだだと思いました。来年も再来年も勝ち続けるには…運が悪かったなんて言わせないためにはもっと強くならないとって思っています。」

 

「え~っと確か前チャンピオンの本郷くんだっけ?」

 

「まあ正確に言うとそのチームメイトなんですけどね。」

 

夏の大会、準決勝で前チャンピオンを寛が負かした後、チームメイトの一人が本郷に運が悪かったという声をかけたのが多くの観客及び選手の耳に入ってしまい、そのことを寛は気にしていたのだ。

 

「なるほどね。じゃあすこやんの所で強くならないとだね。っと着いたよ。私は駐車場に車停めてくるから先に入っておけば?」

 

「ありがとうございました。」

 

寛は言われたとおり車を下りて指定された場所に入る。

 

「いらっしゃいませ!あ、藤原寛くんだね。健夜ちゃんから話は聞いてるよ。奥の部屋で待っててくれる?」

 

店内に入るや否や奥の部屋へと案内される。

 

半個室形式の雀荘でブースの用になっておりお互いの顔が見えないように配慮されているようだ。

 

「おまたせ。ちょっとお客さんに挨拶してたら遅くなっちゃった。ごめんね。」

 

寛が待つこと数分、健夜が後ろにこーこを伴って現れる。

 

「いやホント待ちましたよ。」

 

「そこは嘘でもいま来た所って言うとこじゃないの!?」

 

「いやぁすこやんには私も早く行ったほうが良いって言ったんだけどね?すこやんが…」

 

「私のせいみたいに言ってるけど、こーこちゃんが8割くらい原因だからね!」

 

「あの…早く始めませんか?」

 

「この流れで!?」

 

ある程度健夜をいじった所でこーこと寛は満足したのか席に着く。

 

「いやぁなんか寛くんとは気が合うね。」

 

「そうですね。」

 

「私としてはこーこちゃんが増えたみたいで複雑だけどね…とりあえず始めよっか。まずは全国大会優勝おめでとう。」

 

先程までのいじられていた健夜とは違い、今寛たちの目の前に座っているのは国内無敗の記録を作り上げた正真正銘グランドマスターの小鍛治健夜だった。

 

「ありがとうございます。」

 

「でも、やっぱり荒削りなところは目立ったし、まずは全国大会の振り返りから始めよっか。牌譜はこーこちゃんに持ってきてもらっているから。」

 

「はい!すこやん先生お持ちしました。」

 

「…うん。これで全部だね。地方大会のぶんは私が用意してるから地方大会の初戦から見ていこっか。」

 

その後日が沈むまで寛の麻雀の検討は続いた。

 

「うん。時間的にもこのあたりが限界かな。次は来週の日曜日で良い?」

 

「はい大丈夫です。」

 

「じゃあそこで。あ、それからさ寛くんの学校って麻雀部一人でしょ?やっぱり実践あるのみだし、このお店にきて色んな人と打つのがいいんじゃないかな?一応プロ級の人も常連さんの中にはいるし。」

 

「いいんですか?」

 

「ちょうど人数埋めで普段打っていた人がしばらく来れないみたいだからバイトみたいなものかな。お給料はあんまり出ないけどね。」

 

練習場所を探さないといけないと思っていた寛にとってこの提案は利益しか無いものだった。

 

雀荘で練習をするとなると資金的な面でどうしても苦しい部分が出てくる。そして、練習試合を申し込むといっても個人戦の練習を受けてくれるような学校はほとんどない上に、県外への遠征となると部費が無いため結局費用が嵩んでしまう。

 

そのため、麻雀の試合をする場所を提供してもらえる上に給料までもらえるとなると首を縦に振る以外の選択肢は寛には存在しなかった。

 

「麻雀だけしてお金までもらえるなら幾らでもやります。ありがとうございます。健夜さん。」

 

「じゃあ私から店長には言っておくから明日からでいい?」

 

「はい!」

 

こうして寛は健夜に師事を仰ぎ、麻雀の上達を目指すと同時に練習場所兼バイト場所を発見したのであった。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

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第五局

今回は少し早めの投稿になりました。

今後も移動時間などを使ってこのくらいのペースで書いていければなと思っています。

今後ともよろしくお願いします。


寛side

 

八月も終わりに近づいて来たある日、俺は東京駅に来ている。

 

健夜さんの紹介で雀荘でバイトをするようになって半月ほとが経過したが、麻雀をしているだけでお金が貰えるという俺にとって最高の環境での時間はあっという間に過ぎさっていき、気がつくと今日になっていた。

 

今日は夏休み最後の一週間を楽しんでこいっていう店長の計らいでバイトを休みにしてもらっている。

 

「うぃっす!久しぶりだな寛。」

 

「ああ夏以来だな。」

 

目の前にアロハシャツを着て立っているのは朝井修平。

 

この前の全国大会で個人四位のやつだ。

 

色々あって上位四人のやつで飯でも食べるかって話になり、今日は修平と一緒に大阪へと向かう。

 

「いやあ、この夏休みは全国大会の結果を見た女の子達からのお誘いで忙しくなると思って全部予定空けてたんだけどな。」

 

「で?結果はどうだったんだ?」

 

「一切連絡はありませんでした!」

 

「だろうな。」

 

悪いヤツじゃないし、麻雀も弱くないんだが、こういう所がだめな理由なんだろうな。

 

項垂れてる修平を置いて新幹線の改札へと向かう。

 

新幹線に乗ること約数時間。

 

新大阪駅で新幹線を下りた俺と修平はそのまま待ち合わ場所に向かう。

 

「寛大会以来やな。わざわざ東京からお疲れさん。」

 

「すまんな今回は大阪で集まることになってもて。」

 

待ち合わせ場所には既に上島康平と川井隆司が待っていた。

 

「かまへんかまへん!どうせ全国大会は東京なんやからな!」

 

「似非関西弁やめろや。なんかキモい。」

 

「そんなんやからあれなんやで。」

 

隆司が修平の頭を軽く叩き、康平がため息をつく。

 

「あれってなんや!しかもキモくない!めっちゃいい感じだろ!」

 

「あ、三箇牧の女子高生が「どこだ!?」…はぁ。修平は置いて飯食べに行くか。」

 

見え見えの嘘に引っかかりどこかへ走っていった修平を置いて康平の案内する店に向かう。

 

「居なかったじゃないか!って誰もいない!」

 

後方から聞こえてくる大声に笑いを堪えながら他人のフリをする。

 

たこ焼きを食べたあと、どこかへ行く話になっていたんだが、康平は急な部活からの呼び出しを受けて高校に向かい、修平は隆司を無理矢理メイド喫茶へと連れて行った。

 

俺は修平を蹴り飛ばしてなんとか助かったけど、あのときの修平は普段の二倍は速かったな。

 

一緒に来ていた奴らが誰もいなくなり、手持ち無沙汰になったから適当にファストフード店で時間でも潰そうかと思い、店を探していた。

 

「寛!寛だよな!?」

 

しばらく歩いていると後ろから声をかけられた。

 

大阪に誰か知り合いとかいたか?と思いながら振り返る。

 

「真治か!なんで大阪にいるんだ?」

 

服装とか荷物を見た感じ観光中ってわけでもなさそうだし、親戚の家に遊びにきて、今は買い出しの途中ってところか?

 

「俺は従兄妹の家に遊びに来てるんだ。そっちは旅行みたいだな。」

 

当たり。まあお互いの服装を見れば一目瞭然か。荷物の多い俺と、かなりの軽装具合な真治。

 

「まあな。四人で回ってたんだが、色々あって今は自由行動なんだ。適当に時間が潰せる場所を探している途中にお前にあったってわけだ。」

 

「ということは今は暇なのか?」

 

「暇といえば暇だな。」

 

クーラーの効いた店内でゆっくりと時間を潰すって目的はあるが、これはすることがなにもない故の苦渋の決断だからな。

 

他にすることがあるならそれに越したことはない。しかも、この辺りに住んでるイトコがいるなら暇つぶしができる場所にも詳しいかもし)ないしな。

 

「なら俺の従兄妹の家に来いよ。従兄妹が寛のファンなんだ。休憩もできるしちょうどいいだろ?」

 

確かに、何時間か潰すことを考えるとタダでゆっくりできるのは大きい。

 

だが、他人の家に上がり込むこんだ状況で休まるほど神経も太くないんだよな。

 

「アイスもつけろよ。」

 

「ありがとう!これで従兄妹に大きな顔ができるよ。早速行こうか。」

 

軽やかな足取りで歩く真治の後ろを着いていくこと数分、ごく普通の一軒家が目に入った。

 

「おーい!憩!帰ったぞ!」

 

憩side

 

「おーい!憩!帰ったぞ!」

 

麻雀で勝ったから真治兄に買い出しに行かせたけど、帰ってくるのに二十分はかかっとる。

 

コンビニ徒歩三分やのに、なんかしとったんやろか?

 

「真治兄遅いわ〜。ジュース温くなってまうで。」

 

「ごめんごめん。そこで知り合いとあってな。入ってくれ!」

 

真治兄の知り合いっていうことは茨城の人が遊びに来てたんやろか?

 

それにしても自分家ちゃうんやから勝手に人呼んだらあかんやろ。お母さんはなんも言わんやろうけど。

 

「お邪魔します。」

 

「憩!藤原寛を連れてきたぞ!」

 

リビングに入ってきたのは私が目標にしとる高校個人チャンピオンの藤原寛さんやった。




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