超弩弩々級戦艦の非常識な鎮守府生活 (諷詩)
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第一章 Let's cheat!
1ここは誰?私は何処?


[attention!]

 

諷詩と申す者です。

さて、本日は何番煎じかさえ分からない艦これの二次創作物です。

第一にこれを読んであ、ムリと感じた方は頑張って読み進めてください。頑張らなくてもスクロールし続けてください。それでも耐えられなかったらお持ちのスマホやPCをフルスイングで放り投げるかブーメランのようにゴールへシュートッ!してください。

 

一に、

 

 

 

 

 

 

 

 

俺得です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この作品は作者の強烈な巨艦大砲主義と一方的な蹂躙を好む作品を作りたいという軽いノリで構成されています。

そして主人公がドンドンチート化して行きます。簡単に大陸を消せます。

だって超能力とかのマジカル成分に鉄の兵器達がフルボッコにされているんですもん。

 

読者様の時間潰しになったら本望であります。

 

また、今作の主人公は架空艦です。オリ艦です。所謂、【ぼくのかんがえたさいきょうのせんかん】ですね。

その為、戦闘描写が極めて短くなります。

コンセプトからぶっ飛んでいるので、ご注意を。理論なんか気にしないからとりあえず進みやがれという方のみお進みください。

 

あ、あと百合成分ありますのでお気を付けて下さい。

 

 

それではダラダラと語っても無駄なので、抜錨!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーアメストリア

sideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____________________『「痛い」』。

 

 

 

 

 

 

 

 

私が最初に感じた感覚だ。

目覚めると妙に古めかしい灰色に塗装された、冷たい鋼鉄の壁?が視界の半分にぼんやりとだが映っていた。

いや、この場合、倒れていたが正しいだろうか。

は?何これ?と思っていると、突如何処からか爆音が響き渡り、大気が揺れ、何処か嵌め込まれていたガラスを叩く。

 

 

ボンヤリとした視界の端でオレンジ色の光が差し込む。

何故か、視界がはっきりとしない。感覚も、鈍感になっている。

しかし、鋭い痛みが私の身体?を貫いた。

 

 

 

 

 

.........ごめん。少し誇張し過ぎた。

正確にはチクッとした程度だ。

しかし突然の痛みに飛び起きるとそこは司令室、という言葉が一番似合う場所が鮮明になった視界に入った。

 

広々という言葉は適切ではない程巨大な空間には幾つもの電子機器が満載されたテーブルらしいものや地図を映し出していると思われる未来感のあるホログラムが立ち上がり、

PCらしき機器は絶えず膨大な量のプログラムを走らせている。

それらがどんな事を処理しているのか私には分からないが、何か恐ろしいものを感じる。

 

端と言うのか分からないがこの空間の終わりには大量のガラスが嵌め込まれている。

ここは防空指揮所か何かなのだろうか。

いや、大型双眼鏡っぽいものあるし、船か?

ガラスと、それ越しに見える空を見てそう考えた。

 

 

もしそうならば、それが意味するのは、

それほどのスペースを使用して船体を管理、統括する必要があるほどにこの船舶(多分)は巨大だということだ。

 

通常、民間船舶でそんなに必要な機器は少ない。

ならば考慮すべきは軍用艦。つまり戦艦か航空母艦だろう。

しかしこの最先端すぎる設備を見ると「戦艦」というのはあまり適切ではないだろう。

機器の技術的なものを見ると現代艦艇。現代において戦艦という艦種はミサイルの登場と共に御役御免となり、過去の遺産となり果てた筈。

 

ならば航空母艦だろうか?

ーーーー何故かそれも違う気がする。

具体的な根拠は無いが、直感とも言える感覚がこの艦船が航空母艦であることを否定する。

 

このCICと艦橋を合体させたような空間はやはり直に殴り合う事を想定しているような感じを受ける。やっぱり戦艦か?

 

 

ーー戦艦というのは海上の要塞であり国の象徴的存在なのである。

従って国家が威信をかけて、財政を傾けてまでも作りたがる最先端技術の塊なのだ。

 

因みにかの有名な長門は4930万円也。

......あ、当時の価格でな?今ならなんと3505億も掛かる。

大和に至っては2兆6457億9100万円~2兆8570億9100万円に上る。

これは単価なので大和、武蔵二隻で約5兆。2017年防衛費に相当する。

 

ーーーね?財政傾くでしょ?

維持費だってかかるし、乗員の給与に弾薬代、燃料代だって掛かる。

それを計上すると国の財布に穴が開く訳だ。

それだけ期待していたという事だが。他の人より優れたものを持ちたいのは国も同じ事。

だから作れる中で最も優れた物を組み合わせ最先端のフネを作って見栄を張るのだ。

 

 

有名な話で申し訳ないが、あの有名な大和の主砲砲塔旋回装置は戦後の建築技術に役立っているし、事実を言えば戦争がなければ人間は積極的に技術を向上させない。

自らの存続が掛かるからこそ本気を出して技を磨くのだ。

 

 

つまり、この艦艇?も何処かの国では最先端の技術を惜しげもなく注ぎ込んだのだろう。私はこんな広さの()()()()で駆逐艦とか信じないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

............待て。何故私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

艦艇かもしれないという想定はほぼ確信に変わりつつあるが、戦艦だとは決めていなかった。しかし私は何の抵抗感もなく此処を艦橋だと認識し、これらの機器をソレのための機器だと認識した。

 

何だろうか。嫌な感じがする。

辺りを見回すとそれらの機械類を動かす人間は誰一人おらず、警報がただ寂しく響き渡り、赤いランプが照明となってこの空間を赤く染めていた。

 

兎に角此処はどこ?と疑問に感じたため無警戒にも窓に駆け寄ると、

 

 

 

 

 

唖然とした。

 

戦艦だということは流石に分かった。

分かったがな?何故艦首が見えないんだ?

見えるのは砲、と言っていいのか分からない巨大な四連砲という意味不明な物が3基。

砲塔はそれ自体が戦艦のような大きさを持つっぽい。無論目測だが。

 

しかし、一目見てそうだと分かるほどに巨大な砲塔だったのだ。

階段のように一番砲塔から順に高い位置に設置されており、船体の幅の実に3分の1を占めているだろう。

けれども心なしか砲身が細い気がする。ト○ポか何かかね。

いや、全幅が広すぎてそう見えるだけだろう。...そう信じたい。

 

再び船体?に衝撃が走り、空気が揺れガラスが震える。

私にもチクリと痛みが走る。

 

と同時に側面から巨大な水飛沫が上がる。

黒煙を伴った爆発と大量の海水が巻き上げられて行く光景は、私が腰を抜かすには十分だった。

頭が現実を受け入れきれず、真っ白になる。

何故ここに居るんだ?私は誰だ?そんな今更な疑問が頭の中を縦横無尽に駆け回り、思考を阻害してゆく。

 

そもそも、()()()()()何をして此処にいる?

見たところ戦艦らしいこの艦艇は明らかに私の知識にはない艦艇だ。

まず此処まで巨大な艦艇を見た事も知った事もない。

 

ツンツンと右足を突かれ、ドブのような思考から脱却する。そして下を見ると小さな人形の妖精?がいた。

.....................これってあのゲームの妖精さんじゃ無いか?

 

 

......わっつ はーぷん ?

 

 

いったい何者?立派な軍服を着こなし、身振り手振りで何かを伝えようとしているが、分からない。

混乱を無理矢理抑え、この妖精?が指し示しているガラスに視線を移す。そこにはどこか武人を彷彿とさせる巫女服の無表情系美人。

 

中央を切り開き一枚下の襦袢? を見せた緋袴に、何処かの脇巫女と違ってしっかりと縫合された白い襟詰。

袖にはストライプ柄のような袖括りの紐が通された.........どう見ても巫女服です。ありがとうございました。

 

そう。()()()だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーうん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょーーっと待てい?

 

よーーく。よぉーーく見ると、シミひとつない真っ白な深海棲艦ばりの肌を持つ細腕が袖から覗き、

袴からも細く、華奢な両足がのび、すらりとした余分の無い引き締まった身体。

そしてどこか作り物めいているほど整った顔立ちに濁り切った蒼眼。

小さな鼻に薄らと桜色に染まっている唇。鮮やかで艶のあるまるで濡羽のような見事な黒髪をストレートに腰まで伸ばしていた。

 

凄い美女..........美少女が唖然とした表情を浮かべてしまった。

む? 似合わないな。自然と表情を引き締めてしまう。自然とこの少女はそういう雰囲気を纏っているのだ。

 

水のように清らかだがそれでいて何を考えているのかわからない無機質極まりない無表情になる。

王たる風格を持っているのは何故だろうか?違和感がない。

 

 

 

しかし、鳩尾あたりに鈍い痛みを感じ、見惚れていた私は唐突に現実に引き戻される。

 

「ぐっ......」

 

何故、痛みが来る?

側面の窓を覗くと真っ赤な炎を上げながら炎上する艦橋の外部?があった。

 

「...何故、この艦は攻撃をしない?」

 

もしかして、客船とか、病院船だから武装もクソもありませんパティーンか?そうなのか?

でも主砲らしき砲塔はあったよな?なんだろ、八咫烏みたいに見せかけだけな場合なのか?だとしたら相当まずい自体なのだが。

 

これもまたあの妖精が突いてくる。今度はなんだ...?

 

''貴女がこの艦の艦娘ですっ!だから貴女が動かさないとこの船はただの的ですっ!''

 

とのことだ。

やっぱり、艦娘か....この際、突然妖精さん?の意思が分かるようになったのは追求しないでおく。私の容量はそこまで大きくない。

 

''この戦艦はアメストリア國アメストリア海軍アメストリア型戦艦一番艦、アメストリアですっ!''

 

アメストリアって何____

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

艦橋に私?の悲鳴が響き渡る。はずかしっ! でも、痛い。

 

背後から攻撃を喰らい、猛烈な痛みに襲われる。

背中は焼かれるような痛みがズキズキと染み渡り、大変痛い。

 

辛うじて後ろを見ると、後部甲板が炎上し、あの主砲?は無事だが、副砲と思われる巨砲が大破。甲板にあった四角いミサイルハッチが一部爆発。船体ごと削り取っていた。

少なくとも、武装はモノホンだと言うことは分かった。今や残骸になってるが。

側面も艦橋群が至る所から煙を上げ、火災を引き起こしている。

 

今気付いたが、どうやらこの戦艦の艤装配置は大和型に準じているらしく、大和の第三砲塔にあたる部分周辺が炎上していた。

 

 

「......ゲホッ...妖精さん、でよいか?」

''はいっ!''

「すぐに、応急、修理要員を、回してくれ。」

 

とりあえず艦これの世界なら居るはず。スロットに積んでいればの話だが。

いや、艦これの世界だとは限らんか。他の並行世界とか、異世界に艦娘として現れた可能性が否定できない。

仮に艦これ世界だとして、システムが同じである保証はどこにもない。

そもそも艦これは艦娘が艤装を纏う式の戦闘システムだったはずだ。

しかし何故か私はリアルの船体にアルペジオ方式として乗り込んでいる。

 

現状把握は急務、か...。

この船体は現在小破。火災18箇所、浸水5箇所。うち1箇所は妖精さんが対応を開始。

武装も二、三十門が爆発、故障及び大破し使えない。

 

そして浸水量も凄まじく、すでに二度傾斜している。大体4万トンだ。

妖精さんに指示を出しながら立ち上がる。まずは敵の数と規模を捕捉。

 

 

 

 

ーーー詰んだ。

 

 

 

大型戦艦が三隻に超弩級戦艦が六、正規空母が三杯に軽空母が六。

重巡は十八に軽巡、駆逐艦は合わせて百。

 

''私''は明確な「絶望」、と言うものを自覚した気分だ。

動けなくなり、不本意ながらもその場にへたり込み、両目の蒼眼から大粒の涙を流してしまう。

でも、

 

ーー死にたくないっ!!

 

「...全艦!戦闘用意っ!主砲全基起動!一式徹甲弾装填っ!」

私の一声を機に妖精さん達が一気に慌しくなり、散開。

 

スムーズにかつ素早く五基の主砲が回転し、それぞれの獲物に向けられる。

そして自動で砲身が上昇し、弾道計算の元、命中率の高い角度に上がる。

そしてガチンッという音がなり、巨大な砲弾が装填される。

 

「ーーーてぇぇぇぇぇ!」

 

 

空間が、揺れた。

 

船体全体が揺れ、砲弾が打ち出されて50mを超える炎と大量の煙を吐き出す。

爆音はかなり離れているはずの此処にもダイレクトアタックしてきており、ガタガタと衝撃波によって非固定部分が音を立て振動した。しかし不思議と私の鼓膜にはダイレクトアタックしてこず、むしろ懐かしいという不思議な感覚が湧き上がってきた。

 

可笑しい。私はこの戦艦に乗ったことも無かったはずだし、事実この砲声...と呼ぶのも過小感がある音は初めて聞いた。しかし慣れ親しんだ音にも感じる。

 

 

撃ち出された砲弾は各々の最初の獲物に着弾。

そして標的を何事も無かったかの様に粉砕し、更に奥にいる獲物を貫いていく。そして一斉に爆発。

 

「一番、二番、三番砲塔一式徹甲弾装填!前方の敵を蹴散らせ!四番、五番砲弾に通常弾装填。

追撃を許すな!てぇぇぇぇ!!」

 

またズゴォォン!!という轟音が響き、深海棲艦の反応が全てロスト。

あっけないな......

しかしまだ安心出来ない。

すぐに電探を起動し、深海棲艦を索敵し始める。

 

 

 

 

.........居ない、な?

海上に一切の艦影が無いことを確認し、座り込む。

 

「かった......」

 

そんな安心と喜びを噛み締めながら、ちょうど後ろにあった椅子にへにゃりと背を預ける。

良かった.....生きていた.....

ぎゅうと瞼を閉じ、安心から溢れだしそうになりかけている涙を耐える。

 

 

 

 

さて、私だ。あれから倒れるように気絶してしまい、意識が戻ったのは翌日の朝だった。

それからはひたすらこの戦艦、アメストリアについて妖精さんに教えて貰った。

 

だが、この戦艦のチートさの装備に唖然とした。

あの巨大な主砲は150cm四連装砲と言い、三秒毎発で発射可能。

副砲はかの有名な大和砲こと46cm三連装砲。しかも六基である。

こちらは二秒毎発で発砲可能。

 

他にも色々人外スペックの兵器群があったが、全部説明していると私の精神が死ぬのでご勘弁いただきたい。何と敵対したらこんな戦艦出来るんだよ...

 

幸い、弾薬のみ大量に備蓄されているのでしばらくは大丈夫だろう。

燃料は何故か不要。ボーキは不要。必要なのは大量の弾薬。

そんなクソ燃費な戦艦であるが、

コンセプトが________である為、仕方ないな、と思わず思ってしまった。

 

しかし、死んだ、という事は分かるが、前世について全然思い出せない。

名前も、家族構成も、住所も、趣味...失礼。これは覚えてた。

思考や知識は残っているが、記憶が無い。どうなっているんだ...?

 

 

 

 

 

この後、3日後に大量の砲撃を目視圏外から浴びせられ、大破炎上。

意識を手放したのは言うまでもない。

妖精さんが駆け寄っていたが、ごめん。すっごく痛いんだわ.......

 




や っ て し ま っ た !
諷詩です。抑えきれずに投稿です。すみません。駄文です。時間潰しになったら嬉しいです。

感想、指摘、展開の要望などはどんどん募集しています。ネ、ネタ切れではありませんよ?

この小説はかなり客を選ぶ小説です。
巨砲を積んだ巨艦が火力に物を言わせて一方的に深海棲艦をボッコボコにする(多分)小説です。
基本主人公であるアメストリアは自分の意見を変えません。
現実主義で、上層部に指示されるのを嫌います。

巫女服の名称を変更。

文章もちょいと変更。何故か最初から主人公がアメストリアを戦艦と断定して居ましたので。


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2.てーとく浜に超巨大な戦艦がっ!?!?

ーーーーーーーーーーーーーーー??提督sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕は寺塚修平。

 

横須賀鎮守府総司令官の寺塚氏を祖父に持つ。

その為か僕はウェーク島などの最前線では無く、パラオという比較的安全な島に島流しされた。

やっぱりあの老害...じゃ無くて上層部のふざけた命令をひと蹴りにしたからかなぁ...

 

兎も角、設備だけはきちんと整備された鎮守府に着任したんだ。

まぁ、所属艦娘は電のみだけどね。工廠はあるけど何分資材が圧倒的に足りなかったし、

万が一を考えて一切建造はしていないんだ。

 

「司令官さん。今日の書類はこれで最後なのです」

「ん。ありがとう。電」

「わ、わたしは当たり前の事をしただけなのですっ!」

「それでもだよ。今の所は君しか艦娘は居ないからね。頼りにしているよ」

「はわわわわ....」

何故か電が顔を赤くして慌てているね?どうしたのかな?

ともかく、この日は最後の書類に印を押し、終えたんだ。

 

 

 

 

「し、司令官さん!大変なのです!」

 

その日は珍しく天気が悪く、少し曇っていたんだ。黒々とした本格的な雨雲。

すこし降るかな、と思いつつ何時も通り書類に印を押し続けていたんだけれど、

巡回帰りの電が慌てた様子で駆け込んできたんだ。

 

「ーーー?電、お帰り。如何したのかな?」

「そ、それが物凄く大きな戦艦さんが別の島に突き刺さっているのです!!」

「.......?」

「だから、マラカル島に途轍もなく大きな戦艦さん刺さっているのです!」

「刺さってる?」

「なのです!」

つまり、座礁していると言う事かな?

電は船体、つまり実際に二次大戦中に実際に使われていた船体が118mある。

あの長門が224mくらいだから、それよりも大きいとなると大和型かな?

 

とりあえず、僕は桟橋に係留されている電に乗り、その現場に急いでもらったんだ。

ロ号艦本式缶がうねり、12ノットで電が抜錨した。

 

マラカル島方向を見ると、見た事が無い程の巨大な黒煙が上がり、雲と思っていた空は全てあの黒煙だと思ったんだ。どう見ても大和型が複数全焼しているようにしか見えないんだけど...

 

 

 

「ここ、なのです!」

「........................................ぇ?」

 

僕は唖然としてしまったよ。

島に左舷が完全に乗り上げていて、見上げても先が見えない艦首。

最も低い最上甲板も喫水線から30mはありそうで、

甲板からは下から見てもわかるくらいにごうごうと燃え盛り、

大和型の様な艦橋が少し覗いていた超巨大な戦艦。

 

大和型がちっぽけに見えたよ。多分数キロ単位じゃないかな?幅も途轍もなく広くて、

大和が二隻いても足りないくらい大きく、この電が点に見えるくらいの巨大な船体が異色の存在感を出していた。

 

15度は傾いていて、あちこちに魚雷による大きな穴が覗き、周りにも鉄塊、主砲のだと思う砲弾が突き刺さり、折れた太く巨大な砲身が突き刺さって居たりと様々な残骸が浮かんでいた。

この船?は...何?

海軍の新造艦?要塞?にしては人気が無い。うーん...

 

 

昨日の晩に座礁したんだろうけど、炎上し続けていて、妖精が頑張っているみたいだけど収まっていない。

左側に一際大きな穴が開き、複雑な装甲が剥き出しになっているし、至る所に弾痕、凹み、抉られた後、爆発した跡が生々しく残っていて、正直直視出来ないんだ。

あまりにも惨すぎて。

 

外見は多分大和型に似ていて、側面には大量のガトリング砲?

そんなの効かないのに...いや、装備として開発されたのかな?

 

はっきり言って、大破だね。一体どの所属か分からないけど、助けなきゃ。

 

「電。一応武装を起動しておいてね」

「なのです」

 

ははは...しっかりと既に主砲である12.7cm連装砲を最大仰角で艦橋に向けていたんだ。

 

僕達はあの穴から船内に侵入した。武装なんて持っていないんだし、堂々と歩く。

一応、提督は万が一に備えて拳銃を持ってるんだけど、僕は捨ててきたからね。艦娘に反抗されたなら、それまでということだし。

 

電が主砲を向けているとはいえ、豆鉄砲だろうからね。

 

 

 

 

さて、この船内だけれど、

一切火も回っておらず、正常そのものなんだ。

複雑な通路を警戒しながら進んでいくけど、妖精も一人も居ない。

 

しかも外見は二次大戦の趣きの癖に護衛艦みたいに現代感に溢れているんだよね。

そう。時代があまり合っていないんだ。

 

でもキチンと動くエレベータが三基あった。

その内の一基に乗り込み、第一艦橋と書かれた階のボタンを押すと自動で上昇してゆく。

いやーよかったよ。まさかあの高さまで階段を登るのかなと覚悟をしたからね...そもそも階段自体あるか解らなかったし。

 

 

音も無くハッチが開き、地獄が一面に広がった。

窓のガラスというガラスは全て割れ、機械だったと思う物は原型を留めていない。

少し黒煙も入り込み、視界は悪い。床は機械だった物の破片や残骸で覆われていた。

 

足を踏み入れる。

ジャリ、というガラスの擦れる音が寂しく艦橋に響き、同時に気配を感じ取る。

そちらを見やると舵をとるための機械を盾にひょっこりの顔を出し、こっちを睨みつけている妖精が一人。困ったな...

 

「君達の艦娘はいるかな?僕はパラオ鎮守府の寺塚提督だよ。こちら攻撃の意思はないし、救助しに来たんだ。出てきて欲しいかな」

 

すると、いろんな所から様々な服を着た妖精が出てくる。うわぁ、すごい数...

電も驚いている、やはりこれだけの妖精が集まっているのは類を見ないのかな?妖精は船体を実際に動かす実働部隊だけど、その数は艦娘の艦種に比例して増大してゆく。確か有名な大和型は3000匹以上の妖精が確認できたらしい。

 

「司令官さん、妖精さんによるとこの先に居るそうなのです」

「そう.....行こうか」

 

ゆっくりと歩いていく。

幾つもの瓦礫、天井板だった物が重なり、地震の後みたいなんだけど、それを利用し巧みに隠され、機械の後ろに倒れている少女。

金剛型のように巫女服何なんだけど、こう、きちんとした正統派の巫女服だったんだろう。

艦娘というのは船体とダメージがリンクしているから傷付き、至る所に火傷の痕や、出血があり、サラサラだったと思う長い黒髪が血に沈んでいて、大変痛々しい。

しかも僅かに、本当に僅かに胸を上下されているんだ。かなり危ない。

 

この船体は現在進行形で炎上しているし、最悪轟沈判定となるかもしれない。

僕はすぐに彼女に近づくと白い、礼装の上着を羽織らせ、背負いあげる。ジワリと赤い点が様々な所から浸み出している。マズイね。

ぐったりとしているけど、しっかりの温もりが伝わってくる。

あと結構な柔らかさも。僕だって健全男子だ!彼女はいないけどね。

 

「妖精さん。悪いけどこの船の維持を頼めるかな?」

 

そう言うと妖精さんは整列し、ピシッと一斉に敬礼すると、散開。

 

「電、すぐに戻るよ。この子には悪いけど医務室に寝かさなきゃ行けない。船体はこのままだね」

「はいなのですっ!」

 

僕達は急いで来た道を引き返していく。

妖精さんが既に動き回っており、あの火災は大分鎮火。

資材も自前で何処からか取り出し、応急手当しているね。...本当にこの戦艦は何なんだろうね?この子もだ。

 

見た所、日本人の面影を僅かに残した西洋人かな。

ハーフ?クォーター?どうだろうか、わからない。海軍がどこからか鹵獲して、魔改造したなんで話は聞かないから、横須賀か、呉の工廠の秘密兵器かな?今はなにも判断できる材料がないから歯痒いね。

しかも深海棲艦と見間違えてしまう程の白い肌を持っている。遠目じゃ、深海棲艦にしか見えないね。船体は深海棲艦特有の真っ黒じゃないとはいえ、一応、警戒はしておこうかな...スパイの可能性は否定できないし。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

意識が回復し、ぼんやりとだが視界が戻ってくる。

何だったんだ...一方的に巨大な砲弾を撃ち込まれ、気絶してしまった。

あれは私の主砲より大きい。断言する。チラッと見えた砲弾は、私の150cm四連装砲よりも、遥かに大きかった。艦橋に向かってくる光景はトラウマ物だったが。

 

大和も真っ青な火力で反撃し、機関が焼き付く勢いで離脱しようとしても電探ギリギリの距離(300km)から正確に撃ち込んできて見事に敗走した。

私には圧倒的に練度が足りない。

提督としての経験も無ければ、当たり前だが艦娘としての経験など無に等しい。

 

「知らない、天井......?」

 

とりまノルマ回収。

ぶっちゃけ本当に見覚えのない白い天井が目に入り、

起き上がると清潔な室内で医務室という感じだろうか?

 

服はあのボロボロの巫女服では無く、院内服、といった感じの服に着替えされられていた。

身体もズキズキと至る所が痛むが、なぜか身体がじんわりと温かい感覚がある。

 

あ......あの船体はどうなったんだ?

周りを見回しても何も無く、ベットと計器しか置かれていない。

警戒しながらドアを開けようとすると、突然ドアが開き私に激突した。いったぁ......

 

「きゃあ!?」

 

私から出る悲鳴はゴテゴテの女の子っぽい言葉に修正されている。

何故に。前世がどうだったか知らないが、この体の主の口調に直されている気がする。

それよりも、だ。おでこを抑え蹲っていると、

 

「大丈夫かい!?ごめんね..開けたら君に衝突したみたいだ」

 

見上げると優しそうな表情を浮かべるイケメンが居た。大日本帝国海軍の白い...あ、私の血がついた軍服を着たイケメンが居て、手を差し伸べてくる。取り敢えず、

 

ーーリア充爆発しろ!または私の150cm砲で爆散しろっ!!サービスで2500基のミサイルもつけてやる!

 

ふぅ。すっきりしたぜ。

兎に角言いたかった。

私と奴の視線が重なる。ふむ。戦い慣れてないな。貫禄がない。

()()で解析してしまう。兎に角見極めようそうしよう。

 

「...こちらこそすみません。勝手に動こうとしてしまいました。」

ん?後ろには...

 

YES!!ロリィィィィイーーーーータッ!!!!

 

電が居た。ここの秘書艦だろうか?

やはりリアルで見ると可愛い。ん?なんで私は知っている...?

まぁ、いいや。彼女は何処か頼り無さそうだが、それが良い。

 

私は少し無表情がデフォの戦艦アメストリアだ。

だが、今回は助かった。鼻の下がのびきっていただろう。

 

しかし私ことアメストリアの身体も170cmくらいの身長でかなりの超絶美少女に入ると自負している。これは譲らん。

 

まず、奴の手を取り、起き上がる。

 

「それで、君は何者なんだい?どこの所属かな?出来る範囲で再送するけど。」

「私はアメストリア型戦艦一番艦アメストリアです。圧倒的火力による死の蹂躙を。提督、で良いですか?」

「......あ、うん。僕は此処、パラオ鎮守府の提督、中佐だよ。あと、敬語じゃなくていいよ」

 

なんか自然と言葉が出てきた。死の蹂躙をって.....やはりコンセプトがかなり影響しているな...

それでもかなり物騒だが。

 

「む...そうか。ならば、素でいかせてもらう」

「アメストリア......?日本艦じゃ無い?」

「あぁ。実は私もよく分からない。目覚めたころには深海棲艦に攻撃されていた。」

「そっか...なら、所属は無いよね?」

「無い。私の船体は何処にある?」

「えっと、今マラカル島に座礁しているよ」

「座礁したか......すまない。無駄にそちらが動く事になってしまった。」

「いや、君は大破していたんだよ?もう少しで轟沈するかもしれ無かったんだ」

「すまない.......」

 

すまない...本当にすまない...(ジークフ○ート感

いやぁ、まさか負けるとは思ってなかったからさ...

と言うかまともに訓練もしていない(シロウト)にいきなり砲雷撃戦をしろと言うのは無理がある。

 

「どうするのかな?」

「私からは特に要求は無い。船体も大破し、砲も使い物にならない。よって資源目的で解体してもらって構わない。良い鋼材が入るだろう。無ければそこら辺の深い海で自沈する」

「そ、それは.....」

「むしろ何故だ?私の船体は巨大だ。全長4645m、全幅530mの巨体だ。ここにあってもただの的になるし、これ以上迷惑は掛けられない。」

「ーー辞めなさい!絶対に、自ら命を絶とうとするな!死んだら何にもならない。絶対に辞めるんだ。」

「り、了解した...すまない」

 

何故か、私が自沈するとの意志を示すと、断固として拒否してきた。

何かトラウマでもあるのだろうか?

 

「ごめんね。艦娘がただの物、兵器として見られるのが嫌なんだ。だから止めてね?」

「あぁ...すまない」

 

しかし、私は少し特殊だからな...本当のアメストリアではない。

だからそう言ってしまったのかもしれん。反省反省。

 

「しかし私は既に大破だ。こんな鉄屑がいても邪魔だぞ?」

「あー......それがね、既に中破レベルまで直っているみたいだよ?」

「何?」

 

何故に?tkどうやって?あの妖精さん達(公式チート)が頑張ったか?

大破炎上のなかフルスロットルで全力航行したんだぞ?大破着底か船体が真っ二つに割れても可笑しく無かったぞ?

艦橋だって最も高い位置でも海面から360mある。横転着底しても可笑しくないぞ?まぁ、横幅も530mあるから浸水しなければ横転はしないだろうけど。

 

「君には、大量の...100000位の鋼材が備蓄されていたんだ。そしたら君の妖精さん達がせっせと即席で直し始めてね。何とか動くだけなら大丈夫らしいよ?」

「.........。」

 

何 や っ て る ん で す か 妖 精 さ ん 。

 

大破(轟沈寸前)で、船体の耐久がギリギリだったのを一日以下で中破まで修理?

あの巨体だ。下手をすれば万単位で資材が吹き飛ぶだろう。主に弾薬が。

100000も鋼材を積んでいた?だからか?少し重く感じていたが...

取り敢えず実践。あの巫女服に変えてみる。あ、これはなんとなくこうすればいいと本能的に実践してみた。

...よし。全快では無いが、裾が破れ、焦げて、袴が少し短くなった程度だ。煤汚れ、ほつれてるのは気にしない。

よし。問題ない...........多分な。

 

「承知した。そちらには返し切れない恩がある。資材だけが吹き飛ぶ欠陥戦艦だが、よろしく頼む」

「うん。よろしくねアメストリア」

そう言ってニコニコと爽やかな笑みを浮かべながら手を出してくる。私はその手を取り、握手した。

こうして私、最凶の戦艦アメストリアがパラオ鎮守府に着任したのだった。尚資材足りなくて私出撃できない模様。

 

 

さてさて、時は少し経ち、二時間後。

私はやっと鎮守府の提督棟から出て、海岸を歩いている。軍用の機能性ガン振りブーツのため大丈夫だ。

 

どうやらこの世界の艦これは艦娘が身につけるタイプの艤装では無く、

ガチの船体を艦娘が妖精さんと操り、攻撃をするというアルペジオ形式で、

深海棲艦もあの気持ち悪いフォルムだが、ちゃんと真っ黒な船体に乗り攻撃してくる。このシステムが私が最初に攻撃出来なかった理由だ。

 

マラカル島の方を見るとあの巨大な艦橋の先端が見える。

あのゴツゴツとしていて、堂々たる歴戦の戦艦という雰囲気を纏った超超巨大戦艦。

取り敢えず提督からステータス書けって言われたからその紙の筆ペンを持ちながら歩いている。

私の妖精さんはいない。各々の部下をまとめ、せっせと修理しているのだろう。

ステータスだが、妖精さんにさっき恐る恐る聞き、卒倒したのでよく覚えている。

アメストリア 大和

耐久 9450 93

火力 19750 98

装甲 8950 88

雷装 2450 0

回避 270 27

対空 15250 50

搭載 280 28

対潜 2250 0

速力 高速 低速

索敵 10000 15

射程 超極長 超長

運 7800 12

↑ただし運については疑問有り。

 

と言う風になっている。分かりやすいとおもって最強(笑)の軍艦大和のステータスを隣に書いた。

なんかスラスラの達筆な文字が書けるんだよな。まるで慣れているかのように。

おそらくアメストリアの船員は達筆だったのだろう。

 

で、二、三桁くらい違うが、良いだろう。チートで何が悪い。

しかしこれ程の、装甲9450を誇るアメストリアでも大破し、逃げた。

うん...色々と異常だ。深海棲艦に私を大破させれるだけの火力を持った船舶が居るとは考えづらい。もしかしたら敵側にもアメストリア型戦艦が出現した可能性は否定できない。実際ゲームでは大和型実装と共に深海棲艦にも大和砲持ちが出てきたしな。

仮に私が実装されたことにより、システムが深海棲艦にもアメストリア型戦艦を実装したとなれば、かなりマズイことになるだろう。下手すれば明日にはユーラシア大陸が消えている。冗談じゃないぞ?ガチでだ。

 

 

そうなると、私はこれからどうすれば良いのだろうか?

 

取り敢えずはこのパラオ鎮守府所属になるんだろうが、

私の存在自体がイレギュラーで圧倒的火力を持っている。バレたら...ゾッとする。

身体を隅々まで弄り倒され、武装は研究目的で取り上げられ、機関も構造解明、量産する為回収され、

船体は資材目的で解体され、私は殺されるか慰み物になるだろう。

 

まあ、今は心配しなくていいだろう。現状を見るにあの提督は優秀だが、それ故に島流しされたのだろう。

はぁ...下らない。いっそミサイルを......あ、いかんミサイルもオーパーツだわ。

アメストリアスペックのミサイルはどれもこれも気狂いスペックなので、現代では再現不可能。十分オーパーツだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

只今、私は絶賛修理中の船体の前にいる。

やはり、私も艦娘だということを実感させられる。

身体能力が船体のスペックに合わせられており、怪力、俊足、大火力を持っており、一瞬でこれた。

パラオとマラカル島は割と離れているんだが、NINJAみたいにぴょんぴょんして辿り着くことが出来た。

高性能すぎるだろ私の体。

 

さて、私の船体だが、足場が隅々まで組まれ、傾きを完全に修正された状態で佇んでいる。

これだけでもかなりの威圧感がある。

見上げても先端が見えない大和のような鋭い艦首に側面の出っ張りをあわせて巨大で平べったい船底。

艦尾には巨大で鋭利な十枚刃の、四本のスクリュー。

 

船体の被孔や弾痕は消え、綺麗に修理されており、上部建造物も修理が始まっている。

主砲はピッカピカだし、副砲は直ってるし...

 

''艦娘さんっ!お久しぶりです!''

 

艦長の妖精がトテトテと走ってくる。心配を掛けてしまったか...

もちろん屈み、妖精さんを受け止めて、抱き上げる。

恐らく船体を維持するために頑張ってくれたんだろう。当然の対価は支払う。

優しく撫でてあげ、思い切り可愛がる。

 

''えへへ〜艦娘さんにほめられた〜''

 

うむ。かわゆす。キュートイズジャスティスとは良く言った。

 

「本当に感謝している。本当に...な。」

 

妖精さんによると何とか航行出来るのは明日かららしく、150cm四連装砲はピッカピカ。

副砲、46cm三連装砲も新たに作って補充。

30mm機関砲は526/1000を交換。既に修理完了。

20.3、14cm連装砲は二十基程、甲板下の窪んだ空間に有った砲塔が吹き飛んでいたが作り直している途中。

船体は65%が修理完了。艦橋はこっぴどくやられており、38%修理完了。

 

装甲は貼っていない。てかそこまで回らない。

まぁ、確かに2500mm装甲とかに鋼材を回している余裕は無いだろう。

大体の物理攻撃は防ぐが、同型艦の徹甲弾には勝てない。貫かれる。

 

兎に角第一艦橋に転移し、指揮を執る。やはり最大の問題は進水だろう。完全に座礁している

因みにこの船体、10,000,000tを超えているため、ズイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ズイをいくら持ってきても無駄だ。

 

「妖精さん。船体と島の間に全ての爆薬と砲弾を敷き詰めてくれないか?機関砲弾はいいから」

 

機関砲弾を爆破すると四方八方に銃撃する事になるため、こっちが危ない。

そう。島の形ごと変えてやればいいのだ。

マイクラ的な考え方だが、この150cm砲の砲弾は45t。

かの有名な80cmグスタフ砲でさえ地下20mのコンクリ製要塞を粉砕できたのだ。口径は約二倍の150cmならば、さらに巨大な威力を発揮してくれるだろう。

その証明に150cm榴弾の内34tは超高性能爆薬。兎に角突き刺してもらう。

 

そして船体と島の間にありったけの火薬が仕込まれたところで妖精さんに総員退避のお願いをして、本島まで退避。私は艦娘である為、船体の見える位置に。妖精さんが二人来てしまったが(艦長さんと砲雷長さん)いい。手榴弾のピンを抜き、思い切り艦娘スペックで投げる。

手榴弾は綺麗な放物線を描くまでもなく、高速で飛翔し、地面にのめり込み爆発。それにつられ誘爆してゆく。

おっとヤバイ。直ぐに妖精さんを回収して伏せる。

 

 

大量の爆薬が一斉に爆発し、地形を変える。

轟音が空気を激しく叩き、空が爆炎で赤く染まり、ここまで熱が溢れ出てくる。

そしてザッパーンッ!という豪快な音を立てて船体が着水。

 

こうして超ダイナミック進水をした。

 

「...ケホッ出来たな。」

 

船体を見るが、煤がついているものの、傷一つなく、浸水した感覚が無い為穴も無く、特に損傷していないが、島の半分が吹き飛び、海水に覆われ、アメストリアは衝撃で1m程浮遊し、着水。

そのせいで未だに水柱が立ち、水飛沫が太陽を反射し、キラキラと輝いていた。

まるでアメストリアの進水式(笑)を祝福しているようだった。




史実では寺塚さんは提督になっておりません。架空設定です。
ちょっとお人好しだけど頭は悪くない人です。
最初は本土の鎮守府に居たんですが、無責任高圧的無能参謀の命令にブチ切れて蹴って左遷。
このパラオ鎮守府に島流しされたんですが、電ちゃんは本土鎮守府の頃からの初期艦です。パルパルパル...



指摘があり、150cm四連装砲の砲弾を10tから45tに変更。軽すぎた...
また、スゲェ重すぎて沈むんじゃ?と聞かれたのですが、1230925平方くらいあるので大丈夫、でしょう(震え声


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3.ドックぐれーどあっぷ

どもども諷詩っす。
今回は少し時間が飛びます。一週間ほど。
あとこれ書いてるの投稿日のはるか未来なんですが、ひどいですね。
修正中です。


ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あのダイナミック進水から早一週間。

あの後提督がすっ飛んできたが、事情を説明したら提督室に問答無用で連行され、一時間みっちりと説教された。の身を案じてくれていたが、損傷なんてしていないし、反省もしていない(キリッ。

 

但し正座だったので足がいたい。

まぁ、ともかくだ。暇なんだよぉ......

たまにくる深海棲艦も副砲一発で吹き飛ぶし、私が出たら提督からお叱りを受けるし、あのまま船体は投錨したままだし、暑いし暑いし、やることがないのでござる。

 

 

「工廠長」

困った時は工廠長。これ古事記にも書いてる。

この青い作業服を着た妖精さんらしいご老人。普通妖精さんって二頭身くらいの小さくて可愛い筈なんだが、この工廠長、可愛いのへったくれも無く、歳とってるの?っていうイレギュラーな変人(妖精)だ。

人間と同じサイズだし。

 

あの後修理が面倒ということで、頭から緑色のバスクリンをかけられた。凄く染みて痛かったよ。

あのバスクリン二度と浴びん。

 

「アメストリアか......既に調査は終わっとるぞ」

「そうか。分かった。あの...そのだな」

「何じゃ?」

「私の、ドック作ってくれないか?」

「何故じゃ?あの島で足りとるじゃろ」

 

残念ながらあのままいると格好の的だし、他の艦娘に迷惑をかけてしまう為、正直邪魔だ。

機密の面でもよろしくない。

 

「お願い申し上げる」

 

膝をつき、腰を折る。手をつき、頭は顔が見えなくなるまで。

あとちゃんと床に頭をつけるのではなく1cm離して、だ。

そう、日本民族の最終奥義、DOGEZAだ。様々なスタイルがあるが、今回はスタンダードなタイプ。

スライディングDOGEZAなんかしたくないし。

 

 

兎も角、毎回あそこまで走って動かしているのだ。

かなり体力がキツイし、Lvが10を超えると長距離からの転移も出来るのだが、未だに4。まだまだだ。

 

「い、いやそこまでたのまれるとこっちが悪くなるじゃろうが...」

「頼む......」

「はぁ...了解じゃ。どういう感じにすればいいのかの?」

「む、では...」

 

二人で図面を描き起こしてゆく。

ドック(地上)に入港すると固定具(ガントリーロック)で拘束され、ドックごと排水。

そして下のゲートが開き昇降板が下降。

 

地下に巨大な空間を作り、ドック(地上)と超大型艦艇用EVで繋げて、地下に用意した埠頭?に台座ごと移動させる贅沢仕様。

某潜水艦アニメの軍港を更に発展させた。だって浪漫やん。

格納能力はこれからの戦力拡大を考慮した。

アメストリア型戦艦 4

大型艦 24

重巡 18

軽巡 12

駆逐艦 36

といった大容量になっている。

アメストリア型戦艦のドックが四つもあるのは作業スペース用だ。5×1kmのドックのため莫大な用地になる。

作業用クレーンは百を超え、何かしらの作業にもってこいだろう。

更に修理用ドックもいくつか拵えてあるが、基本は格納用のドックで整備、補給は行うし、中破までならそこで修理する。そのためそれぞれのドックの真上にはレールが張り巡らされ、吊り下げ式の強力なクレーンが配置されている。ガントリークレーンを逆さにした感じだ。

 

 

「ほぉ......これならお主の巨大な船体も隠せるの」

「うむ。私としてもこれからを想定するとこれ位は必要では無いかと思いこれ位の広さになったのだが...

 

こんなに巨大で近代化したのは現在の軍港のひどさからだ。

だってコンクリート製の埠頭が二個に桟橋が三つだけだぞ?

クレーンも老朽化している。あれ動くのか?錆だらけだし、一部腐食していたぞ?

 

 

 

 

 

 

 

私はこれを提督に報告するために提督棟に歩いて行く。

他にも駆逐、軽巡、重巡、軽空母、正規空母、戦艦寮に分かれており、私も戦艦寮を使わせてもらっている。

全て赤レンガ造りで、横須賀に名残がありそうだ。

建てられたのあっちが古そうだが、詳しくは知らん。

 

二階の角にある提督執務室と書かれたドアをノックする。

 

「アメストリアだ。入っていいか?」

「うん。いいよ」

 

ドアノブを捻り、ドアを開けるとまるで別世界だった。

冷房が効き、快適な温度に保たれており、微風となって私に当たる。

くっ....!マジないっすわ。私は炎天下の中活動しているのに。ここ赤道近いからクソ暑いんやぞ?

 

「まるで別世界だな」

「皮肉かな?」

「......。今日はドックの大型な改修をしようと思ってな」

「資材は?」

「私の備蓄を使う。ここの資材は新造艦に回す」

「分かった。後ででいいからちゃんと報告書を出してね」

「了解した」

 

外に出るとモワッとした熱気に襲われ、さらにあの快適な空間が恋しくなる。

うわぁー暑いよーやだよぉーあっづい...

 

苦し紛れにドックを見ると、海上に五つ位の四角い建造物が出来上がっていた。

どう考えても制作スピードが可笑しいが、多分あれ、ブロックなんだろう。現地で組み立てて作業の効率化を図るやつ。またはこの世界に簡易建築機ことフィラー先輩があるか。いや、妖精さんがこれに当たるのか?

 

兎も角、やっとまともな埠頭に船体を寄せれる。

残骸になった島に一人悲しく投錨しなくて済む!

やっと船体を入れれる!

雨風に直にさらされずに済む...あれ結構きつい。しかも暑かったんだからな!

すぐに全力疾走。

 

「妖精さん!機関始動!全武装解除!」

 

第一艦橋の電子機器が順番に起動して行き最新情報に更新。

妖精さんが慌ただしく動き出し、簡易点検が終了。

 

「アメストリア、抜錨!30ノットで低速航行!」

 

最大戦速は80ノット程だが、突っ込むとまた座礁するため、低速で行く。

え?30ノットって高速だって?知らんがな。

 

前後四つの錨が巻き上げられ、ゆっくりと前へ進んでいく。

スクリューが高速で回転し始め、大量の海水をかき混ぜて行き白い航跡を残してゆく。

しかしこの船、旋回が非常に遅いのである。九十度回頭するのに五分掛かる。

舵を操り、ゆっくりとドックを目指す。誘導灯を確認。

 

「20ノットに減速、方位そのまま」

 

ドックにゆっくりと入港する。箱型の巨大な建造物。

まるで自分が小さくなって、菓子箱を見上げているかのように錯覚してしまうほどの、規模の違い。うむ、ロマンである!

 

「機関停止。」

 

同時に固定具が船体をしっかりと支える。

ジリリリリという警報ベルが鳴りハッチが海面から飛び出しドックを密閉する。

雰囲気あるなぁ...照明も艦橋の備え付けだけだし、暗闇にいる感じがする。

 

遅れて強力なポンプが海水を一気に排水してゆく。

そして回転型のライトが点灯し、明滅すると下の堅く閉ざされていた地面が割れ、この船体をロックしている昇降板が下降してゆく。

 

「おぉ......すごいな...どちらも」

この地下ドックも、作った工廠長も。

巨大な空間が広がり、高い天井には等間隔でLEDの白い照明が取り付けられ、この板が入るドックの上には巨大なクレーンがある。

視界が下がるのを止め、地下のレールに沿って板が滑っていく。

 

鋼鉄のドックに到着し、板が移動を止めたのを確認してからドックに移動する。

もやいに紐を掛けなくて済むのは正直助かる。このアメストリア、喫水線30mあるからもやいに掛けても大して意味ないねん。

 

降りる際に艦長妖精さんを肩に乗せ、技術担当の妖精さんに出て良いように言っておく。

我先にと散らばっていったが。

 

クルリと180度体を回すと、ドーン。

アームに固定されて刀のような鋭い艦底色の艦首が露わになり、乾いていないのか海水が垂れている。

側面にはバルジのつもりなのか、追加された感のある台形の出っ張りがあり、下から見ると何かわからない。

あれだけでも大和超えてるからな。10隻は作れるんじゃね。資材換算したら。

 

 

 

 

「どうじゃ?アメストリア」

「すごい...予想以上だ。本当に感謝する」

「いいわい。わしも中々作り甲斐があったしの」

 

まさかここまで作れると思わなかった。完全に図面通りに再現されている。

工廠妖精が倒れているが、気にしない。完成までの時間早すぎたよね。妖精さん荒ぶりすぎ。

なんだろう、フィラー先輩の存在を真剣に考えてしまう。ここマイクラだっけ(錯乱)

 

「外に出る手段は?」

「あっちのエレベーターから地上に繋がるようにしておいたわい」

「了解した」

 

しばらく歩いて行く。

だって私の船体が入ってるの5kmのドックだから、各ドックが繋がっている部分に行くのにも一苦労なのだ。

妖精さんも分かっていたのか、埠頭には道路が二車線贅沢に引かれ、大量の軍事車両が往復している。

多分妖精さんが中にいるな。アメストリアの。

両舷直だし、私に止める権利ないからな。厳つい輸送車が大量に通り過ぎて行くのを見送りながら、ドックを散策する。

 

 

結局、妖精さんの運転してた輸送車に乗せてもらい、エレベーターまで向かった。

遠すぎるよ私のドック。

 

エレベーターに入り、地上に上がってゆく。

しっかし未来感が無い。

WWII時の塗装で、軍事用っていう感じがすごい。

確かにさ?工廠長達は兵器しか作ったことが無いのは分かるけどさ?もう少しカラーバリエーションなかったの?

 

後、一つ重大な問題がある。

アメストリアの船体の一室に武器庫という部屋がある。

そこには大量の重火器がガンラックに置かれており、二次大戦期の各国の銃火器から現代のH&K社やFN社、ベレッタ社など、ヨーロッパ銃器メーカーなどSCAR-Hに似た、しかし何か違う感じがした不思議な小銃やハンドガンっぽい形の50cm銃まで何でもあるのだ。

何故戦艦に武器庫が?と思ったが、アメストリアの船体は4645m、530mの超巨大で島もどきだ。

上陸を防げるはずがない。だからだろう。

 

まぁ、使う人がいないから10000を超える銃火器が眠っていた為、

少し使わしてもらっている。具体的には、ベルトを拝借してホルスターに45口径拳銃を吊るして袴の中に9mm拳銃を仕込ませてもらっている。用心に越したことは無いし、この身体は銃の扱いに関して慣れていたし。

 

 

「提督、アメストリアだ。」

「入って」

「ーー失礼する」

「どうしたの?」

「いや...工廠長達がついさっきドックを完成させてな。既に私の船体は入れてある。」

「知らなかったよ...君の船が凄い速度で動いていたのは見えたけど...」

 

こんな所からでも見えるのか...ステルス性最悪、か...

このパラオ鎮守府だが、空襲に備え、森の中に建物が建っている。

赤レンガだが、中々目立たない。まぁ迷彩が施されているからなんだが。

 

当然、視界も悪くなるので、私は初めの頃慌てて工廠長に対空電探や測距儀、湾岸砲に対空砲と大量に製造してもらった。

おかげでパラオ島本島は46cm砲が2km間隔で設置され、山には最新式の電探が置かれて、ミサイルも多数備えている。

おかげでこの鎮守府の資材がすっからかんになり、提督にみっちりと説教されたのは記憶に新しい。ここの提督、普段優しいけど怒ると物凄く怖いからなぁ...

電が遠征にフルで動き、やっといま溜まってきたところだ。

 

「あともう一隻軽巡が欲しいな。電のみだと私の消費資材量に追いつかない。戦闘をすると尽きる」

「そ、そうだよね。任せていいかな?」

「了解した。私のことは......」

「うん。大丈夫。今の所はバレてないから」

「それは良かった。」

 




ちょっと加筆しました。

妖精さんはチートなのです。


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4.新造艦

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は今提督、工廠長と共に建造用のドックの前にいる。

妖精さんに渡す資材の量を適当に変えたり、巡回から帰って来た電に「このドックは何なのです!?」って言われたり、建造時に提督が盛大に顔を引きつらせたりと、色々とあったが、なんとか建造まで持ち込めた。因みに渡した資材だが、

 

燃料 250

弾薬 30

鋼材 200

ボーキ 30

 

いつもお世話になるレア艦レシピだ。

主に軽巡やら最上型などから島風や香取もでるレシピだが、重巡はそこまで多く出なかったと思う...のだが...

 

「アメストリア...これ、軽巡?」

「いや、重巡だな。具体的には利根型だと思われる。」

「だよね...」

 

私の見覚えのない不気味な知識がそう判断した。

膨大な知識があり、機密と打たれても可笑しくない重大な情報まで持っていた。

 

「吾輩が利根である!吾輩が艦隊に加わる以上、もう索敵の心配はないぞ!」

 

そう。何故か重巡の利根さんが来てしまったのである。

しかも、ごめんね?私、半径10000mを全て探知できるんだわ。ごめんちょ。

 

「...僕がこのパラオ鎮守府の提督だよ。そして彼女があっちにある物凄く大きな戦艦の艦娘、アメストリアだよ。」

「アメストリアだ。よろしく頼む」

「(;゜0゜)」

 

と、なっていた。

 

とねさん が ぜっく して しまった !

 

理由は分かるが、やめて頂きたい...物凄く心にグサリとくる。

 

「あ、あれは...大和の、改造か何か...?」

 

おうふ......素が出てらっしゃる。説明してやるか....鬱だけど。

 

「いや...アメストリア型戦艦一番艦アメストリア。全長4645m、全幅530mの巨大だが、まぁ、慣れてくれ」

「わ、わかったのじゃ...」

「あはは...ここだけの秘密だからね...早速、遠征に電といってきてくれるかな?」

「了解したのじゃ...」

「提督...」

「ごめんね。お 留 守 番 ☆」

 

絶対楽しんでるっ!

私だって役に立ちたいよ!でも資材が吹き飛ぶんだもん!

しかもわざとらしくゆっくりと一字ずつ強調して言われると思わず涙目になる。

私、一切動けない......やけくそだ...もう二隻作ろっと。

 

「......提督、もう少し作ってくる」

「うん。わかった」

 

妖精さんに駆逐艦の建造レシピの量を渡す。何故か私はこの鎮守府の妖精さんには大変好かれており、私がお願いすれば、大体望む艦娘が出てくる。うん。何故だろうね?

 

結果から言おう。

雷、暁だった。このペースだと第六駆逐隊が出来るか?

また、二人もアメストリアの巨大さに絶句していた。やめてぇ...そのドン引きしたような顔はクルものがある...

 

 

「提督、あまりにも暇だ。」

「そうだねー...演習か開発でもしてきたら?」

「そうだな...消費も少ないし、やってこよう。」

 

と言うことで第一艦橋に即移動☆

妖精さんはまったり(グータラ)とくつろいでいたが、私が来ると即座に反応し、各々の役目の場所に走っていった。うん。凄く優秀で涙が出そうだよ。

 

''出撃です?(キラキラ''

「いや、残念ながら演習だ。ドック上げ!全ての砲に模擬弾を装填!総員戦闘用意!」

''そうですかー''

''ざんねんですー''

''ネガティヴです?''

''ですです''

 

ネガティヴな妖精さんを除いた妖精さんの動きが活発になり、がごんッという音が鳴り、主砲や副砲に模擬弾が装填される。ウチの砲は特殊だからな。装填には一度砲身が下がる必要がある。

 

「機関始動!」

 

主機が起動して、速やかに全体に電力が行き渡り、第一艦橋の電子機器が息を吹き返す。

電探感度良好。

対空電探良し。

自動射撃統制装置良し。

各種武装良し。

私...良し?

 

 

地面ごと上昇し、地下のドックが遠ざかり、暗い地上のドックに移動。

ジリリリリという音がなり、海水が注水されれてゆく。

 

そして警報がなり拘束具が解除され、少しへんな浮遊感に襲われる。

っと。これは慣れないな......人間だったもん。

こんな浮いた感じなんかジェットコースターぐらいでしか感じれないだろう。

 

「5ノットで前進。進路そのまま」

スクリューがゆっくりと回転し、非常にゆっくりとした速度で前進し始める。

「20ノットに加速!」

スクリューが数倍の回転速度に跳ね上がり、大量の海水をかき分け海を悠々と進んで行く。

「主砲全起動。速度35ノットのまま的に向け各自発射」

 

私の一声がかかり、血に飢えた巨砲が旋回する。第一砲塔は右20.6度。二番砲塔は左30.2度。三番砲塔は右25.8度。四番砲塔が回転しだしたのを確認し、つぎの指示を出す。

「副砲起動!各自海上の的に向け!」

六基の46cm三連砲が各々の的に向く。

「てぇー!」

 

 

 

砲口から白い煙が上がり、模擬弾が真っ直ぐ音速を軽く三倍ほど越え的に吸い込まれる。

全弾命中。目標ロスト。着弾の衝撃でとてつもない高さの水柱があがり、滝が出来上がる。

暫くは雨だな。

 

因みにミサイルは使わない。

模擬弾が無いからだ。というか弾薬の関係だ。

でも一度でいいから全て使ってみたい。ミサイルはミサイルハッチから垂直に発射するタイプ(VLS)なのだが、1×1mと余裕を持った構造で、内部によくわからないが量子変換?とかいう未来機構を仕込んで望むミサイルが装填されるようになっているようだ。

発射可能ミサイルは多種多様でハープーンやトマホーク、SM-2、SM-3という名前が一緒だが別物の対空対空ミサイルからソ連のグラニート対艦ミサイルまで撃てるらしいのだ。流石にトライデントは入りきらなかったらしいので撃てないが、専門のミサイルハッチを用意すればいけるらしい。怖いわー(小並感)。

 

「全主砲、右50度に固定。てぇー!」

軽い衝撃が走り、的に吸い込まれていく。

妖精さんによると主砲は三秒に一発。十分速いが、戦場では一分一秒が命取りになる。

改になると二秒毎発。改ニになると主砲自体代わり、大口径化と一秒毎発に。チートやっ!

はぁ...一人で会話しても面白くないな。もう帰ろ......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食時、ここには間宮さんや伊良湖さんなどの食糧艦がいない為、調理の出来る私が担当している。いつか当番制に...あわよくば間宮さんを......

身体が憶えてるのかつくることができるが。

 

だから任せている。

軽めの遠征から帰ってきた電、暁、雷、利根の四人に夕食を渡してゆく。

因みにガチの和食だ。

 

「どうだ?」

「...美味しいのです!」

「美味しいわ!」

「これは見事な和食じゃの!気に入ったぞ!」

 

中々に高評価だった。それなら制作者としてうれしい。

かわいいし。かわいいし!(大事なry

 

私の分と提督の分を盛り、お盆で一気に運んで行く。

今日はあれだけ暇だ云々言っていたが、秘書艦だ。というか大体私が秘書艦だ。

今までは電がずっと全ての業務をしていたらしいが、私の身体は色々とハイスペックなので、ずっと代行している。

 

「提督、アメストリアだ。夕食をお持ちした」

「入って」

「失礼する」

 

中に入ると執務机の上はうず高く積まれた書類の山が敷き詰められ、相変わらず多い仕事量だなと思う。秘書艦の机に一旦移動させ、夕食を置く。

 

「いつもありがとうね」

「よい。今日は私も建造と演習しかしていないからな。むしろ書類の処理をしなかった。すまない」

 

そう言って秘書艦の椅子に腰掛け、黙々と夕食を食べてゆく。

うん。もの凄ごく美味しい。

ご飯はまた見事にふっくらと炊きあがっており、味噌汁は白味噌仕立てで美味しい。明日は赤味噌にしてみようか

 

「ねぇ、アメストリア」

「何だ?」

「君、改造ってどれ位?」

「一応40Lvで改になるらしい。改ニは不明だ」

 

今は13。まだまだだ。この鎮守府もまだ無理出来ないし、資材的に無理出来ない。

 

「ふーん.......でもこのまま君の存在を隠し続けるのは人類の戦力的にちょっとね......」

「なら、大本営にでも連絡したらどうだ?」

「そういう手もあるよね」

「何なら私と引き換えに資材を優遇してもらっても...」

「それはダメだよ。アメストリア」

「...?」

「ここにもたまに救難信号が来る。その時は資材なんか気にしないでいいからね」

当たり前だ。資材が減るのが嫌なので助けません→轟沈しました、など絶対に嫌だ。

「......承知した」



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5.初陣ヒャッハーッ!(隼鷹感

こちらは差し替え話になります。
四話まではまぁ大丈夫だろうと放置してありますが、この話から新規に組み直した設定に基づく差し替えに徐々に入れ替わってゆく予定です。

以前の話と違う点は、現状私が書ける範囲で頑張った三人称文章です。
物書き初めて早四年。多分初めて三人称書きました。以前の話での三人称は一人称を改造した奴なのでノーカンでオナシャス。

あとアメストリアが大変残念な阿呆になってますが、仕様です。仕様です(威圧。

文句のある方はその場で三回回ってワンっ!してください。


差し替え

ーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

私は焦っていた。それもかつて無いほどに。

急かす気持ちを必死に抑え、船体を可能な限り早く進める。無理をしては船体が損傷してしまう為、機関最大、70ノットで航行を続ける。

こうなったのには無論理由がある。時系列は少しさかのぼり、今から数分前。

 

特にやる事もなく露天艦橋にて人工の天井を眺めていたところ、妖精さんが妙に焦った様子で駆けてきた。

訳を聞くと緊急電が駆け込んできたらしい。

すぐに確認すると、

 

ーー 我 トラック泊地第三鎮守府所属 遠洋派遣艦隊 旗艦 大鳳。現在 有力ナル 敵艦隊 コレト 交戦中。 至急 救援 サレタシ。 至急 救援 サレタシ ーー

 

この内容が一本のみ送られ、その後は音沙汰なし。

これはマズイと電探の索敵半径を広げて確認してみると、此処から450kmの所の洋上で戦闘が確認できた。

そこで私は提督に直ぐに連絡を入れ緊急出撃したわけだ。

これが事の顛末。

しかしまだ到着していないのだが、敵のおおよそは確認することができた。

友軍の反応を示す機動艦隊が一つに、それを囲むように八方向全てに水上打撃艦隊。そして少し離れたところに空母機動艦隊が三つ。

 

完全にワンサイドゲームであり、このままでは友軍が確実に全滅してしまう。

どうやら深海棲艦は元ネタよろしく友軍艦隊で遊んでいるらしく、まだ六つの反応は消えていない。しかし深海棲艦がいつ飽きるかなど私は予測できないししたくも無いのでまずは消し飛ばすことにする。

私の初陣。その餌食になってもらうとしよう。

 

 

 

 

ーーーーーーーー三人称ーーーーーーーー

一方、パラオ鎮守府に緊急電を送った友軍艦隊は、壊滅の危機にさらされていた。

船体の整備不足や慢性的な〔弾薬〕不足、赤疲労のままの連続出撃が祟り、敵艦隊とのエンカウントと同時に大鳳が中破。

しかし大鳳は装甲空母である。中破でも甲板が無事であれば艦載機は発艦できる。(着艦できるとは言っていない。)

直ぐに零戦21型を基軸に発艦した艦載機は万全な状態の深海棲艦艦載機に悉くを叩き落とされ、制空権は現在奮闘中のまな...龍驤の虎の子であったネームドの艦載機によってギリギリの拮抗を保っていた。

海上ではワザと少しだけずらされた、それでも威力のある砲撃を避けようと高雄姉妹が決死の操舵を行い、同時に反撃を繰り出していた。

 

また一機、奮戦していた零戦が落とされ、火だるまになって落下して行く。

それとは逆方向、海上から空へと大鳳や龍驤、高雄型の持てる限りの対空砲が火を噴き、逆さの赤い雨を降らせていた。といっても弾幕は散発的なもので、既に破損、使い物にならなくなっている対空砲が殆どで、ハズレ装備の7.7mm機銃や、12.7mm単装機銃が対空射撃に参加している始末。12.7cm高角連装砲は殆どが破壊、整備不良による動作不能で対空砲撃不可能。

唯一摩耶の一基だけが懸命に放ち続けていた。

 

「ーーっ!クソが!最後の高角連装砲がやられた!」

 

その最後の対空砲も今爆撃機によって破壊。使用不能なガラクタと化した。

これでもう残るは機銃のみ。

既に大破ないし中破している船体にこれ以上の負担をかけるのは困難。回避運動すら厳しくなってくる。事実、高雄は既に浸水が始まり、鳥海は傾斜し始めている。

 

轟々と盛んに炎が燃え盛り黒々とした煙が登って行く。

ここは地獄か修羅場か。艦娘達の心に絶望が広がり始める。

 

怨敵たる深海棲艦は八個艦隊で包囲網を形成しており、どこを見ても深海棲艦がいる状況。

余裕を持って傷付いた自分達を包囲し、ジワジワと網を狭めていた。

 

 

 

この、かなり不幸かつ闇の深い艦隊はトラック泊地第三鎮守府の第五艦隊。

遠洋派遣艦隊とは聞こえを良くした唯の呼び名。

実際は提督に反抗的な態度をとった艦娘を集めて片道切符で送り出す、所謂捨て艦であった。

いや、ただ()()するだけなのだからそれよりもタチが悪い。

タンカーの護衛任務を一切の休憩なしに連続で繰り返し、極度の疲労状態に陥っていたところを深海棲艦から奇襲を受けたのだ。

 

不審船にも見え得た護衛対象は既に海の藻屑とかしており、置き土産と言わんばかりに海を火の海にして行った。

補給は行われず、初手からこちらは〔弾薬〕が赤。燃料もまっすぐ帰れるだけの分しかなく、回避運動など馬鹿みたいに燃料を食う動きは出来ない状態。

当然なす術なく護衛対象はを失い、また自らも同じ道を歩まんとしている。

それがどうしようもなく悔しく、屈辱的であった。

 

「大鳳!ホンマに緊急電飛ばしたんやろな!?もううちらは捨てられとるんやで!」

「えぇ、そのはずだけど...その」

「ーー皆まで言わんでいい!うちもわかっとるわ!」

 

言うまでも無いが、彼女らの鎮守府はブラックである。

大本営も介入してはいたが、送り込んだ憲兵隊は腐敗し、かつ家柄が無駄に良かったこともあり下手に手が出せず、更にそれが悪化を呼び、悲惨な状況になっていた。

駆逐艦は基本弾除け。

軽巡や重巡は使える奴を除き肉の盾。

軽空母は遠征に積極的に駆り出され、主力たる戦艦や正規空母ですら練度は高いものの、最低限...すら満たしていない「餌」を与えられて()()されていた。

 

「いえ、ちょっと待って。電探に感あり。...なんですって!?」

「どうしたんや大鳳?」

「大鳳!こっちはもう持たないぜ!もう沈んじまう!」

「一隻...一隻だけこっちに来ているわ!」

「なっ!」

 

雑音が多く混じる無線機がしん、と静かになり、外からの爆音が嫌に響く。

 

思わぬ援軍。さぞ使える()()だろうと誰しもが思った。思ってしまったのだ。

 

 

しかし実際はどうだろうか。だったの一隻。一隻である。もしその一隻が戦艦であって、大和型であったとしても、この数を相手にするのは少々部が悪い。初期仕様なら最悪だ。

空母であった場合。艦載機を囮にするのなら可能性は無きにしも非ず。

しかし空母自身に火力はなく、側面の砲架にある10cm高角連装砲が精々。

 

どっちにしろ、手遅れである。無駄である。捨て艦としか思えない狂気の所業に、一同が黙り込む。ここに居る全員、ある程度修羅場は乗り越えてきた。

前世の暗く悲しい経験もある。しかし、一隻で突っ込むというのは聞いたことが無い。

一隻が奮戦した、と言うのは綾波然り神通然り、多々ある。

しかし単艦で救援など前代未聞。非常識極まりない。

 

ーーーしかし、それは通常艦の場合だ。

アメストリアに、そんな理屈は通用しなかった。

 

何処からか、おどおどしい雷鳴が轟いてきた。

深海棲艦の至近距離からの砲撃の音など比べ物にならないほどの轟音。

衝撃波で船体がガタガタと揺れる。揺れたと同時に、深海棲艦の艦隊の奥の方で、大爆発が起こった。

実は何処かで巨大な水柱が発生していたのだが、雷鳴に意識を取られていた艦娘らはそれを確認することはできなかった。

 

「な、なんだぁ!?」

「な、何が...」

「何なの...?」

 

続けて、爆発が起き、遅れて雷鳴が聞こえてくる。衝撃波が襲いかかり、再び船体が揺れる。

また、上空を忌々しく飛行していたヘルキャットを始めとした敵機が、次の瞬間には消失。爆炎をあげて爆散していた。

 

これには龍驤、大鳳の思考が停止。

普通、航空機が撃墜されると黒煙を上げながら落下して行くものだ。ジェット機ならば空中で爆散する可能性もあるが、残念ながら大鳳らが運用しているのは70年前のレシプロ機。

当然その知識しかない空母艦娘にとって、敵機のやられ方には度肝を抜かれたのだ。

 

『ーーーーーら、ーラー鎮守ーーく、ーースーアーーーー』

 

無線機が突如、別の音声を拾い上げた。

落ち着いた、女性の声だった。ノイズが酷いのか、ひどく雑音にまみれていたが、不思議と脳に入ってくる、不思議な声色をしている。

 

大鳳は思考を再開。

同時に疑念を持った。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

賠償艦であれ、鹵獲であれ和名がつけられるのである。

しかし無線の相手はどうだっただろうか?確かに「ス」「ア」と横文字のイントネーションで発していた。そもそも和名ならば短く四文字ほどで収まるはずである。しかし無線の相手は明らかに四文字以上。海外艦である可能性もあるが、海外艦が日本語で話しかけてくる訳がない。

海外で海外艦といえば敵艦しかいなかった大鳳にとって当然の判断といえる。

ここに足柄を始めとする海外での経験がある艦娘ならば、また違うことを考えたのかもしれないが、大鳳にとって無線の相手は警戒に値する者だった。

他の艦娘達は極度の疲労から思考能力が低下しているのか、何の疑問も抱いていない様子。

しかし大鳳は航空母艦である。直接戦闘はしないが故に、比較的余裕があった。

だからこそこうやって思考が回せたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーだが、それが仇となった。

余裕があったからこそのミス。普段の大鳳ならば絶対に起こさないような失態。

周囲警戒を緩めて思考に割いていたのだ。これが意味することは、敵の攻撃に対応が遅れるという事。致命的な、一打であった。

 

ドーントレスが魚雷を投下した。

97式艦攻のようなスペックを誇れない雷撃機だが、数が問題だった。

放たれたのは4本。6機それぞれ別方向から襲来していたのだが、考え込む大鳳をよそに、警戒を怠らなかった妖精さんはいち早く確認。

対空砲で迎撃を開始。25粍三連装機銃の幾つかを代償に二機は撃墜。

かつ甲板したの船体側面に張り巡らされた単装機銃群が一斉に魚雷に射撃を開始。

 

ここで大鳳も気付き、慌てて舵を切った。

否、()()()()()()()()()()()()艦首を向けた先には、既に待機していた戦艦を基軸とした水上打撃部隊。

大鳳は察した。ああ、ここで終わるのか、と。

 

 

 

だが、これでは終わらない。

妖精さんが決死の掃射をしてなんとか魚雷を破壊せんと奮戦するも、二次大戦の機銃の命中精度だ。まぐれ当たりがない限りそうそう命中しない。

しかし、ここにはアメストリアが居るのだ。

それを見逃すはずもなく、ヒュルヒュルと空気を切り裂く音が聞こえ、遅れて砲弾が着弾。

衝撃信管だったのか、海面に着水した時点で起爆。

榴弾だったようで辺り一面に爆炎と衝撃波を撒き散らし、魚雷を巻き込んで海面を荒らしまわった。お陰で右舷側二本の魚雷は自爆。

 

だがまだ左舷側の魚雷が残っている。

幾ら大鳳が装甲空母とは言え、当たりどころによっては史実よろしく一発で爆沈する可能性だって十二分にある。大鳳は魚雷を視認すると思わず顔面蒼白になり、へたり込む。

脳裏にハッキリと刻まれた爆沈の記憶。魚雷が直接的原因ではなかったとは言え、格納庫に燃料が充満し、大爆発を起こした事には違いない。

 

駄菓子菓子、ここでも救世主は現れる。

音を置いていった速すぎる砲弾が通過。ソニックブームは海面を豪快に斬り裂き、一時的な津波を発生させた。その津波に突っ込んだ魚雷は信管を作動させ、爆発。

水柱が上がる。

津波は船体にも押し寄せており、ギギギと嫌な音をそこら中から響かせながら大鳳はゆっくりと旋回していった。

 

一般通過(物理)をした徹甲弾はそのまま前方にいた絶望の塊を抉り飛ばし、二、三隻を貫通して大爆発。気化爆弾が爆発したかのような大爆発を起こして深海棲艦を次々と沈めていった。

そと絶大な威力を誇る砲撃を前に、大鳳は目を見張った。

 

『こちらは、パラオ鎮守府所属、アメストリアである。救難に来たぞ』

 

ーーその一言にどれだけ救われたか。

救援など来ないと思っていた。もはや横文字などどうでもよかった。

パラオ鎮守府。つまり大日本帝国海軍所属の艦艇であると確定したのだ。

友軍の救援。しかも圧倒的な火力を誇る艦艇だ。これ以上心強い援軍はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

アメストリアだ。

空母らしき大型艦船にゴミが雷撃を仕掛けたのは焦ったが、何とか殺ってやったぜ。

 

あと徹甲弾撃ったらそのまま敵艦隊に刺さって全滅させた件について。

威力おかしくないですかね妖精さん。

 

''おかしくないです?''

''クレイジーです?''

''火力はジャスティスです?''

 

どうやらそうでもないらしい。

火力が素晴らしいのは全面的に同意するが、ちょっと威力高すぎんか?

衝撃波だけで船潰せるよこれ。

 

「まぁ、良い。次発照準合わせ」

''あいあい!''

''砲塔くるくる〜!''

''砲弾そーてんです?''

「...ってぇーっ!!」

 

再び巨砲が吼える。

圧倒的な熱量を噴き荒らしながら強引に砲弾を押し出し、排煙を行う。

砲身からは冷却用の水が撒かれそれがすぐに蒸発してしまっている為水蒸気が激しく立ち登り、同じく煙突からも砲塔内に溜まった硝煙や水蒸気が排出され、白い煙が立ち上る。

 

水平線の彼方、僅かに曲線を描く境界に赤々とした爆炎が水に広がる墨汁のように溶けて行き、電探の反応から敵が減る。

今回は一個艦隊丸ごと平らげれたらしい。反応が丸々消失した。

距離はここから120kmと言ったところか。ならばそろそろ減速しなければ掻き分けた波で艦娘達が転覆してしまう。最低15kmは離れていないと津波に襲われるからな。

 

「両舷減速。各主砲塔は残敵の掃討。副砲は辺りを警戒し、怪しい物は藻屑にしろ。」

''りょーげんはんそー!''

''さーちあんどですとろい!さーちあんどですとろい!''

 

妖精さんが狂気爛漫するのを横目に、電探の精度を上げて行く。

残骸一つ、というのも出来ないことはないが、しても無駄なので、今回は精度をPTボートを探知できる位に調整した。

途端、膨大な情報が搔き集められる。電探が送受信を繰り返す波動によって探知されるのは大体が深海棲艦の残骸。といっても艦首であったり艦尾だけだったりとむごたらしい残骸ばかりだが。

出力方法を変更、リモコンのボタンを押す感覚だ。意識を切り替えると艦橋に設置された立体ホログラムが立ち上がり、近海の様子を詳細に反映してくれる。

残骸の密集地を反映からデリートし、現在水上で活躍している艦娘を探索。

 

ーーいた。

大鳳はすぐに見つかった。そりゃでかいし。何よりも一隻だけ航路を外れていたからすぐにわかる。あとは五隻重巡洋艦サイズ。......ん?一隻妙な反応が返ってくる。

妙に全高が高い...あとまなiゲフンゲフン、全通甲板。あぁ、RJか。

 

空へ意識を向ける。

飛び回っている機体は...あぁ、驚くことにいますわ。

よく生き残っていたものだ。探索精度を上げて、機種を判定。

 

ーー成る程。零戦21型(熟練)のようだ。

といっても編隊の姿はなく、煙を上げる一機のみ。

敵機判定が下りかけたので慌てて対空砲の撃墜目標から外し、更に大和砲までも反応したのでそっちも対応。めんどくさいなおい。

零戦は...おぉ!大鳳に何とか着艦したようだ。

しかし機体は限界だったのか、着艦の衝撃で降着装置が粉砕。油が噴き出した。

 

更にその衝撃で主翼も逝ったようでスライドしながらなんとか着艦。お陰で大鳳の飛行甲板が死にかけているがまぁよくやったとしか言いようがない。

飛行甲板への着艦さえ高等技術なのだ。

 

少し考えればわかることだ。空港や飛行場は陸上にあるから幅は広く、長い。多少ずれても幅があるから問題はない。

しかし空母はそうはいかない。飛行甲板の幅は20mにも満たない。さらに全長は長くて200mちょい。そんな紙飛行機を二階から飛ばしてバスケットゴールに入れろ並の鬼畜要求なのだ。

だから海軍の、空母所属の飛行隊というのは軍隊でもトップクラスの練度を誇るのだ。

着艦の技術即ち操縦の繊細さなり。こればっかりは感覚だし、落ちるときは落ちる。

だから空母には駆逐艦が付いていたのだ。

 

空母に随伴する駆逐艦の最大の役割はトンボ釣りだ。

トンボ釣りというのは着艦に失敗した航空機が海面に落下した際、飛行士を回収することだ。棒で回収している様からトンボ釣りと言うらしい。

飛行機は量産できるが、レシプロ機で戦える人間を育成するには莫大な資金と10年という長い月日が必要となる。単純な価値の問題だ。

 

といってもかの零戦でも3000時間飛んだらポイ捨てしていたそうだ。

なんでも強度が限界になり、発動機も使い物にならなくなるのだとか。

そこ、3000時間も飛ぶ前に墜とされただろとか言わない。

 

兎も角、着艦というのは割と高等技術なのだ。

それを損傷機体でやり遂げるとは、ウチの機体をあげたら化けそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

「こちらはパラオ鎮守府所属、アメストリアだ。大鳳でよろしいか」

「はい。トラック泊地第三鎮守府所属、航空母艦大鳳です」 「

 

私は脇巫女...失礼。大鳳と向き合っていた。といっても身長差で私が見下ろす形になっているが。

大鳳の後ろには記憶によると高雄型姉妹にまな板が整列している。

しかしその姿は痛々しく、所々に治療痕が見える。クソッ、もう少し早く届けばもっと被害を軽減できたかもしれないのに...!

 

「この度は救助ばかりか修理までしてもらって、感謝の念にたえません。このご恩は絶対に忘れません。」

「いや、礼は提督にでも言ってくれ。私は艦娘の救済を目的に動いているにすぎない。」

 

そう。

大鳳らを救助したは良いものの、艦娘やの被害は甚大で、浸水や傾斜している艦までいたのだ。おのれ深海棲艦。絶対許早苗。大切な娘を傷物にしおって。艦娘の傷は治りづらいんだぞ?

船体には既に私の妖精さんを派遣している。現在は投錨したアメストリアに接舷させて応急修理の真っ最中。

龍驤は甲板に穴を開けられ、高雄は横っ腹に砲弾を二発。愛宕は煙突を喪失。また後方構造物やマストが崩壊し主砲が使用不能。摩耶は他の艦娘同様対空砲が全滅。主砲も根元から抉られているものがあったり砲身が折れて破損しているものが多々ある。そして一番酷いのが鳥海。

横っ腹に魚雷を食らったらしく、2mの大きな破口を確認。浸水がひどく、機関が海水でやられて自力航行不能。

大鳳に関しては対空砲がやられた位だ。流石は装甲空母。強度が違いますよ。

 

てかさ、大鳳を抱きしめたい(唐突)。

現在態々私の船体に乗り込んでお礼までしてくれる礼儀正しい艦娘なのだが、可愛い。

とにかく可愛い。

ショートボブの茶髪にどっかの人型決戦兵器の操縦者がつけてたみたいな、無線機みたいなパーツを付けたカチューシャ。そして一番の特徴たる大きく露出した脇。これは多分格納庫への嫌味だろいが、笑えないぞ。胴体は甲冑のような黒い装甲板に覆われ、もう少しつければ武者になりそうな感じ。

何よりも小柄で、電...ほどとはいかないが中学生くらいの背丈は、空母にしては珍しく、可愛い。可愛い(迫真)。

 

高性能なまいぼでぃーは無表情を維持してくれているが、この機能がなかったらさぞ残念なことになり、アメストリアが残念美人になってしまう。あんなのは雪女だけで十分だ。メニアーック!

 

 

 

 

「さて、貴官らはどうするのだ?」

「...どう、とは?」

 

不思議そうな表情で大鳳が首をかしげる。あぁもうそれも可愛い。

抱きしめたい。

 

「これからの事だ。先程データベースに問い合わせたが、第三鎮守府に大鳳がいたという記録は存在しなかった。」

「そんなっ!」

 

そりゃ信じられないわな。

第三鎮守府の提督とやらは相当な無能だと思われる。

「装甲空母 大鳳」この戦略的価値がどれ程重要なものか。わかっていないのだろう。

翔鶴、ズイ₍₍ (ง ˘ω˘ )ว ⁾⁾ズイ、大鳳の三隻運用はとても安定していると聞く。

何は我がパラオにもお迎えしたいと思っていたのだ。

そこに丁度やってきた()()()()()()大鳳。もうこれはね、獲るしかないじゃない!(マミり感)

 

 

何より、目が気に入った。生きることを諦めていない、活力に満ちた瞳。

そもそもそんな子じゃないと私が来るまで持ちこたえるはずがない。パラオ鎮守府は戦力が足りないのだし、丁度良い。

 

「そこで、だ。私達は貴官らを受け入れる用意がある。」

「.....。」

「なぁアメはん、それは本当なんか?ウチら、もう裏切られるのは嫌やねん」

「そうね。豚提督...あら失礼。提督にはほとほと愛想が尽きましたし...」

「そぉーねぇー、ちょっと辛かったものねぇ」

「捨て艦は、もう勘弁です」

「そうだそうだ!アタシらはモノじゃねぇんだ。アンタなら分かるだろうけどな」

「無論だ。私とて艦娘の一人。私達がモノだと思ったことはない。現在パラオ鎮守府には暁、雷、電、利根しか居ない。戦力として貴官らは有力であり、大鳳という空母が居るならば私としても助かる。」

 

「そう、ですか。ならば、まずはパラオ鎮守府に案内をお願いできるかしら?」

「承知した。貴官らも宜しいだろうか」

「勿論や。大鳳はんがそう言うんや」

「えぇ、私には異論はないわ。ねぇ愛宕?」

「えぇ〜。勿論よぉ〜」

「私も異論ありません。」

「アタシもだ」

「なればよし。手続きはこちらで済ませておく。」

''艦娘さん艦娘さん、しゅーりおわたです?''

''おわこんです?''

''動けるです?''

「そうか。では進路をパラオ鎮守府に向ける。両舷半速。波を立てるなよ。貴官らも自らの船体に戻るといい。私の後に続けば辿り着くだろう。」

「そうさせてもらうわ。」

 

 

艦娘達が各々の船体へと戻り、炉に火を入れる。

と言っても既に機関は動いており、後はその動力をシャフトに伝えるだけだ。

船が唸り声をあげ、海を切り裂き白波を立ててゆく。

特徴的な煙突からはモクモクと黒い煙を吐き出し、荒波を進んで行く。

 

もっとも荒波の犯人は私なのだが。

仕方ないじゃん、動くだけで莫大は質量、つまり排水量の水を避けているんだから波が立たないわけがない。実際、大鳳は兎も角、龍驤や高雄らはかなり揺れており、嵐の中を進む様な状態。幾ら応急修理があるとはいえ、まずいのではないか...?

 

『この波は何とかならないかしら!?』

『こんな波、久しぶりねぇー』

『コレはきつくねぇか?波が強すぎるぜ...』

『ちょっと、キツイです...!あ、浸水がまた...!』

「も、申し訳ない。針路は指示するので、私の前を航行してもらえぬか...」

 

 

 

 

結局、私の前を進んでもらってパラオまで行きましたとさ。

高さ500mの巨大な長方形に驚いていたが、まぁ是非もないよヨネ!

 

 

 

さてさて、此処からはお楽しみタイム。船体の改装だ。

幸か不幸か船体は痛々しいほどに損傷しているので、思い切って大改装をする。

「というわけで、工廠長。どうする」

「どうするといわれてものぉ。どうせお主の技術を使うのじゃろ?」

「無論だ。このままではお話にならない」

「ふぅーむ...ならばあれじゃ。作り直せば良いじゃろう」

「まぁ、そうなるな」

 

まぁ、そうなるな。(瑞雲感

ぶっちゃけ、現在の設計はそれ自体で完成しれているのでいじりようがないのだ。

ならばやることは一つ。脱ぎ脱ぎだ。

基礎を除く全ての部品を取り払い一から船体を構成し直すのだ。

ほぼ新造と考えてもらって構わない。しかしこうでもしないと設備が入らず、ペラッペラの装甲になってしまう。駆逐艦などは本当に板一枚だったという。そんな悲惨な状態にはしたくない。

 

「あぁ、そうだ。あの零戦パイロットはどうなった?」

「あの妖精なら動けるようになったらすぐに零を欲しがっての。暇してた工廠妖精が紫電改ニを作って与えたらすぐに乗りこなしての。いまは噴進機の習熟訓練をさせておるわ」

「そうか...」

 

なんですかそのバケモン。

紫電改ニはご存知の通り局地戦闘機を艦載機に改造した機体だ。

ゲームでは烈風に次ぐ制空値を誇る強力な機体だ。私はあの涙型のキャノピーが気に入ってる。局地戦闘機なので、機動性は言うまでもなく高く、性能は高い。

 

それを今まで21型に乗ってたパイロットが乗りこなして、現在はジェット機に習熟訓練中?

それ何処のハル○マン?

 

でも、凄まじい戦力が加わった事には違いがない。

戦力アップには違いないのだし、敵側になったわけでもない。良しとしよう。

 

「ほれ、アメストリア。設計図じゃ。こんなもんでいいじゃろ」

「...失礼。......ふむ。龍驤があまり変わっていないな。」

「あれを変えるのは無理じゃ。」

 

だそうですまな板さん。

まぁ確かに重巡クラスの船体に全通甲板乗っけて空母運用って自体が既におかしいんだしな。

龍驤は他の軽空母と違い全高がアホみたいに高い。そのくせ船体は狭く小さいのでとてもアンバランスな形状になってしまっていたのだが、今回再設計では格納庫を全廃。

全てアメストリア産の量子変換器を使用して機体の収納を行う事に。その分空いたスペースは潰して全高を低くし、かつ船体を拡張して装甲を分厚くする。そして生まれた余裕にミサイルハッチと対空砲を張り巡らせるわけだ。

なんだか優先順位が微妙に違う気がするが、これもまた良いだろう。

 

同じく正規空母である大鳳なんかはもう原型をとどめていない。

まず船体を丸裸にすると基礎を継ぎ足して延長。その長さ実に1300m。

そしてバルスバウを採用した拡張型船体の上に二段の格納庫を収納して余りある余裕は全て装甲に回した。

その結果対500cm装甲とかになったけどイイヨネ!(現在時刻2:00。察してクレメンス

 

搭載量は格納庫に量子変換器がたんまりあるおかげで驚異の2000機オーバー。

頭おかしい。ちょっとした動く基地だ。

アメストリアの艦載機が強力な理由の最大の理由は弾倉に量子変換器又は時間逆行術式を組み込んでいる事だ。

要は無限バンダナだ。ミサイルの搭載量は数千、数万発単位。

機銃に至っては弾倉を時間逆行術式で補っているので、無限。

 

それに整備面、補給面でも利点がある。

量子変換器というのは立方体の形状をしており、それを取り替えるだけで簡単に補給出来るように全ての兵器が設計されている。まぁそれだけでは終わらないのがアメストリアクオリティだがな。無論術式が使用できなくなった場合を想定して尾栓を付けたり、自動装填装置を増設したりとかなり厳重な対策がとられているのだ。

 

ともかく、ミサイルを使い切ったらマガジンをリロードするように量子変換器を交換すれば満タンになる。

これがどれだけ戦術的に価値があるか想像に難しくはない。

 

 

さて、高雄姉妹の場合、元ネタの対空特化をモデルに我々の技術でアレンジしてみた。

例の如く船体を丸裸にしてから基礎を延長。

船体を大型化させてから三重に装甲を張り巡らし、対空砲をマシマシに。主砲は沿岸砲として検討していた60口径35.6cm 三連装砲を使用。アメストリアの主砲は砲身冷却の関係で25粍三連装機銃みたいに順番に撃つので、最低限三連装砲の場合が多い。

連装砲は比較的重要度の低い副砲か、大口径主砲の場合が多い。

今回は[48口径12.7cm高角連装砲]8基を使用。外見の変化は武装のみに留め、電探も大型、中型の高性能電探を積ませてもらった。ゲーム的には32号、14号電探だろう。

対水上、対空電探を予備を含め二つずつ積んである。

元の姿をそのまま大型化したような外観になったが、その方がいいだろう。

外観変わりすぎて飛燕状態になって欲しくないしな。

但し重量は11万トンになった模様。大和より重いじゃねぇか。

 

というわけで改装した六隻が地下の大型ドックにて並んでいる訳だが...やっと軍港らしくなったな。今までだだっ広い地下に私と駆逐艦と重巡が一隻ずつしか居なかったからな。末期でもあるまいし、空母二杯に重巡四隻は有難い。

この世界に改装に必要な設計図とか集めるのがめんどい勲章とかのシステムはリアル基準なのか無いようだし、要は自分たちのも思いつき次第でゲームシステム外の事ををいろいろやれる訳だ。口径長伸ばして射程の延長も可能だし、そもそも砲弾はスロットに入らないしな。艦娘が任意に変更可能だし。

 

重巡四隻、空母二杯は[建造記録]として偽装する事になった。

レベルに関しては誤魔化しようが無いが、遠征だけだったからそう大して上がってもいないので誤差だ。これから3-2-1するけどな。ちょうど良い海域見つけたんだよ。

ともあれ、改装が完了したのだから進水しなければならない。このドックは注水ができないので、態々地上の発進口から出発。

艦娘達もいつもと違う勝手に相当四苦八苦していたようだが、一時間もすれば慣れてきたのかだいぶぎこちなさがなくなってきた。優秀かよ。

大鳳は例の妖精さん搭乗員(熟練)の率いる新生大鳳航空隊を乗せて現在は艦隊演習中。

 

まな板はまだレシプロ機を使用している。

というのも小さすぎて噴進機が全幅を大きくオーバーするのだ。

大型機を載せれず、管制機や対地攻撃機が搭載不可。辛うじて戦闘機は載せれたが、これも危うく、着艦困難。

これはマズイと工廠長と本人と話し合った結果、制空担当ではなく、対地攻撃担当に専念する事になった。現代の護衛艦と同じタイプ。つまりヘリ空母だ。

アメストリアにも回転翼機は当然存在し、輸送と攻撃に分かれる。

輸送ヘリにはCH-31、CH-4が存在し、CH-4は全長45mの化け物回転翼機だ。戦車も輸送可能。攻撃ヘリにはAH-39、AH-60、AH-182の3種がある。

これらを配備し、ついでにせめてもの戦闘機として烈風と紫電改ニを新たに開発して載せた。

これも割と危ないのだが、カタパルトでなんとかした。

 

ん?大改造で大型化しないのかって?

うん、無理ミ☆。なんかね、龍驤の発展系を想像することができなかったんや。

龍驤を大型化したとして、その後どう使うのか。私には使い道を想像できない。

なのでアメストリアにはヘリ母艦が無かったから丁度いた龍驤をそうした。

正直適当感があるが、仕方ない。龍驤小さすぎて基礎増設できんのや。細いから。

大鳳とかならそこそこ大きいし構造がしっかりしているから簡単に魔改造出来るのだが、龍驤という重巡船体には無理だった。

因みに同じ重巡船体の高雄型は403mまで大型化しました。(オイ

でもね、逆に言うとこれでも空母には足りんのよ。400mでは全幅が47.4m位。亜軍最大の輸送機の全幅が108m。後は察してくれ。

こいつを運用しなければイケるのだが、それでは爆撃機がいなくなってしまうのだ。

ままならんね。一応FB-99とか言う戦闘爆撃機が居るんだが、そっちは500kg爆弾のみ搭載可能なのだ。対地攻撃には向かない。というかFB-99は対艦用らしいし。

 

兎も角、拡張性が低く、ちょっと魔改造が無理だったため龍驤にはちょっとだけ大型化してヘリ空母としての役割に特化させた。今後噴進戦闘機が垂直離陸可能な物になったらそっちも積んで航空母艦として運用することができるだろう。

一先ずは戦力として数えたいのでヘリ空母として進水させる。

 

 

大鳳の方は大きいし格納庫も広いから量子変換器を満載して戦闘機や爆撃機、輸送機からヘリを一通り搭載。形状に変化は無いが、途轍もなく巨大化した。

全長は1360.7m。ブッシュドバイぐらいの頭おかしい艦船になった。

いや頭おかしい艦船筆頭(全長4650m)か。言うのも説得力は無いが...というかここまで巨大化したのは九割九分九厘私の所為だ。私に合わせて船体は巨大化した。

 

何故か?それは凌波性の問題だ。元の高々300mぐらいの船体では私の巻き起す津波に耐え切れず飲み込まれてしまう。

 

まぁ大型化のお陰で余剰スペースが大量に出たから全部装甲に回したら対500cm装甲になったんだがな。これなら私の主砲も軽々と防げる。まず沈まんだろ。

お陰で重量が347005tとクッソ重くなったが致し方無い。

その為通常の推力では前進することが不可能となり、推進方法にターボファンとスクリューの混成推進を採用。無理矢理動かしている。

対空砲には[70口径10cm高角連装砲]16基を使用。後は45mm対空機関連装砲を1400基にミサイルハッチを2200セルを詰め込んだ。

 

飛行甲板に関しては昇降機が20。無論対500cm装甲で形状は現代型。

艦橋も側面に出っ張りとして作り直し、割と広い空間がある。

スナイプされるから台形とかトーチカの形状だがな。対100cm装甲を三重に張ってある。

後はマストや電探やらを艦橋群の出っ張りとかに設置して、最早必要なくなったが取り敢えず張っておくことになっているワイヤーを張り巡らす。

 

これで完成。改装が完了した船体が地下の巨大な昇降板...といっても前後左右に動く昇降板だがそれを運ばれて待機列に並べられてゆく。

迅速な展開ができるように細かく区切られた区画やレールが複雑に絡み合い、其処に床にあるライトや投光器、空調関係の機器などがひしめき合い、軍事施設の雑猥した感じになっている。よいぞよいぞー。




えっとですね、今回、今作における最大の変更を行いました。
割と悩み、これで良かったのかと悩みましたが、これでいきたいと思います。

変更内容ですが、船体の大型化です。
これもつい最近艦艇のスペック纏めた原本を編纂中に決意したことでして、
アメストリア型戦艦あんなにでかいのに他の艦小さすぎない?って話です。当初は改造で留めようとしていたっぽいんですが、他の鎮守府に居る同じ艦娘との差別化と武装強化と武装強化と武装強化の為に改変させていただきました。勝手な行いを謝罪したします。

でもさ、艦娘だけちっこい船体のってアメストリアがそれを良しとするはずが無いなと。
アレ。艦娘馬鹿ですしお寿司?

ともあれ、船体のスペックが入れ替わって行きます。まぁ時間はかかります。
首を長ーーーーーーくしてお待ちください。

どうしても以前の魔改装船体がいいという方はメッセージでもなんでも送ってください。
相談します。
あ、呼称ですが、改定前のスペックを「魔改装」と呼び、これから入れ替えてゆくスペックは「アメストリアスペック」となります。


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7.大変な三姉妹

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

高雄型四姉妹と大鳳、龍驤がパラオ鎮守府に所属してから一週間が経つ。

あの後も、ぶっ通しでは無いが、稼働させた結果、

 

鋼材112463

燃料114956

弾薬113934

ボーキサイト100254

 

高速修復材2146

高速建造材1964

開発資材587

改造資材6980

 

となった。うん。スゲェ.......色々とおかしいが突っ込まないでくれ。

そしてたった今こうなった。

 

鋼材4463

燃料114956

弾薬109934

ボーキサイト94254

 

高速修復材2146

高速建造材1964

開発資材157

改造資材6980

 

だ。何故万単位で減っているかって?

そりゃ、これを見ればわかるだろう。

 

 

■建造用二番ドック■

2450時間

 

■建造用三番ドック■

2450時間

 

 

となっている。

現在アメストリアが入るサイズ、つまり5kmにも及ぶ運河のような灰色のドックが稼働していた。

天井から吊るされた巨大な電光掲示板はドックの残り時間と進捗状況を知らせるパーセントが表示されていた。今はまだ建造が始まったばかりだから足場が組み始められたり莫大な資材が運び込まれたりしているだけだから0%だが。建造の準備は加算されないらしい。辛辣だな中々。

しかし102日かかる為、作業自体はゆっくりだ。

 

すぐに全力疾走で提督室に走り、報告すると提督も固まった。

急いで戻ったが、やはり2449時間55分。

 

そこで高速建造材を使用し、バーナーで炙ったら摩訶不思議な事にアメストリアと瓜二つの艦影が二つ。

バーナーは1000個使用したが。

 

 

 

 

 

 

もうお分かりだろう。アメストリアの姉妹艦である。

つ・ま・り 私の妹でも間接的であり、率直に言うとヤバイ。

私、妹との付き合い方なんか知らないし、どう接すればいいのか分からない。

そういう知識は無い。多分前世では妹なんかいなかったんだろう。

 

「て、提督...」

「うん。君の妹だよね。しかも二隻。ごっそり資材が消えたと思ったらこうなってたんだねぇ...」

「う、うむ」

「後で''一人''で提督室に来てね?」

「はぃ...」

 

はぁ...また説教か...しかし今回は完全に私が悪い。寝ぼけてデイリー建造に大量の資材を投下してしまった。

結果、妹が二隻。うわぁ...。

 

足場が撤去され、ドックの板が重低音を響かせて稼働。

私の右隣のドックに二番艦が、左隣に三番艦が。

 

こうしてみると物凄い迫力がある。だって4645mの巨体が三隻だよ?色々と、うん。あ艦これ。

 

「...妖精さん。アメストリア型戦艦って何番艦までいるのだ?」

''???番艦ですっ!''

 

ーーーん?よく聞こえなかったぞ?

まぁ、沢山いたんだろう。というかアメストリア型戦艦が沢山居ると思う。

 

どうやら説明を受けていて感じたのがこの戦艦は単艦での行動をあまり想定していないということだ。

立ちふさがる全ての壁を粉砕する最恐の矛をもち、強固な、核弾頭ICBMを食らっても何か?と言えるクラスの装甲をもつ戦艦もどきではあるが、水雷攻撃が一切出来ない。なぜなら魚雷を積んでいないから。

ビス子じゃないんだから私は魚雷を積んでいない。まぁアメストリアにはミサイルがあったから必然的に魚雷が廃止された結果なんだが...

 

まぁつまり、複数の艦船との艦隊行動を前提とした運用である。

しかしこの戦艦が『前世』で暴れていたのは広大な広さをもつ海洋星である。

 

空軍所属の航空輸送艦に乗せられて突入し、空中から突入。

艦隊と共に暴れまわると、いう方式が取られていた。

だから個々の防空能力は高く、火力は思う存分強化された。これでも初期型であるが。

 

 

 

 

「ぉ..........ちゃ............ん.................」

 

ん?なんか凄い速度で走ってくる人影が...まずいぞ...よく見ると私と同じ巫女服に黒髪、蒼眼、少し幼さの残る童顔、といったところか。

そして後ろに服装は同じだが、黒髪は長く、吊り目の美人がゆっくりと歩いていた。

 

どこからどう見てもアメストリアの妹です本当にありがとうございました。

ちょっ......

 

「おねぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇちゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃん!!!!!!」

「きゃふんっ!?」

 

思い切り抱きつかれ、慣性の法則により凄い威力で押し倒される。

おそらく、人間だったらミンチになるレベルの。ぐぅ...絵面的にはいいのだが、

本人としてはすごく辛い。ちょっ首締まる...

しかも私以上と思われるモノを押し付けてくる。キツイねん...

 

「ちょっ...!ギブッ!」

「わわわっごめんなさいお姉ちゃん!」

「何をやってるんだ...姉さん、只今アメストリア型戦艦二番艦 リバンデヒ、アメストリア型戦艦三番艦 カイクル、着任した」

「承知した。カイクル、で良いか?」

「うむ。」

 

キャラ被ってますとは言えないよなぁ...

って、ええぃ!!いい加減しつこいわっ!

 

「リバンデヒ、今すぐ私から離れろ」

「はいはーい!」

「はぁ...二人共付いて来い。提督に報告する。」

 

あわよくば道ずれに...

 

 

さて、それはさて置き、報告したが、提督の機嫌は直らなかった。まぁ、当然である。

 

「はぁ...で、三隻になったんだよね?」

「そういうことだ」

「はぁ......リバンデヒ、カイクルで良いかな?」

「はい!」「あぁ」

「先に戦艦寮に戻っていてくれるかな僕はアメストリアと少し話しをするから」

 

 

 

キングクリムゾンッ!

 

 

 

で、三時間耐久説教をされた私だが現在また抱きつかれている。

次女のリバンデヒにだ。このド シスコンめ。

 

三女のカイクルは私から隠しておいたはずの裏のホルスターから9mm拳銃を取ると鼻歌まじりに解体し、整備している。

銃好きなんですねわかります。

尚容赦無く袴はまさぐられた模様。

ちょっとフリーダムすぎやしませんかねユー達。

 

君達私の精神的な心労に対しての配慮は無いのかな?かな?......あ、無い?お姉さん悲しいな...はぁ...虚しくなってくる。自分で自分を慰めるとか...私どこまで病んでるんだ...

 

「姉さん、9mm拳銃は整備しておいた。」

「う、うむ...」

 

ぐぅ...!カイクルから9mm拳銃を取ろうと腕を伸ばすがすごくガッチリとホールドされているために一切ピクリとも動かない。しかもしっかりと胸は抑えているという、変態ぶり。...でも内臓圧迫はやめてくれぇ!

 

「リバンデヒ、離せ...」

「わかった〜」

「ケホッケホッ...どうして分かった?」

「少し膨らんでいる。バレバレだ」

「そうか...」

 

カイクルさんにはバレバレだったようだ。あれー?可笑しいなー?提督にも艦娘にもばれていないんだけどなー?

 

「あと何故軍刀だ?」

「クセだ。前の艦長の。しかもこれはとある名家の打った大太刀でそこら辺の刀とか一味違う。」

「いつ使うのだ?」

「どうだろうな?」

「......まぁ、止めはせん」

「...感謝する」

 

カイクルが軍刀を抜き、布で軽く磨き始めた頃にドアが突然開く。何だ?

 

「ア、アメストリアさんっ!アメストリアさんが三人にっ!!.....あれ、なのです?」

 

電が突入してきた。しかし私達三姉妹をみて固まった。

 

「お姉ちゃ〜ん。この子誰〜?」

「特型駆逐艦 電 だ。第六駆逐隊に所属している。ついでに言えば、高雄型四姉妹、大鳳、龍驤がいる」

「ヘェー、かわいい〜♪」

「...はわわっ!?アメストリアさん!この人達はっ?」

「あぁ...私の妹だ。二番艦、リバンデヒに三番艦、カイクルだ。」

「わ、わぁ...アメストリアさんが三隻分...」

 

まぁ、戦力としては間違いなくオーバーキルだろう。150cm四連装砲60門だ。大陸が消えるのではないだろうか?

しかも妹達の説明によると生産能力は無いらしく、それぞれが旗艦を務めていたらしいから一緒に、というのは少ないらしい。

まぁ、早いことには変わりないし、武装も特に変わってないから問題ないだろう。

 

 

 

 

ー夕食ー

 

結局抱きつかれたり色々とあったが、割愛。

全ての艦娘...15隻しかいないが、が集まりちゃんと座っている。

 

「みんな電から聞いたと思うけど、今日、アメストリア型が三隻になったんだ。みんな仲良くね」

「私がアメストリア型戦艦二番艦リバンデヒよ!よろしくねっ!」

「私がアメストリア型戦艦三番艦カイクルだ。よろしく頼む」

 

『...え、えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?』

 

うるせぇ....耳がぁ....まぁ、驚くのは否定し無いから止め無いけど...思わず耳を塞ぐ。

あ、利根撃沈してる。今度胃薬を送っておこう。

 

閑話休題

 

さて、今夜の夕食はデザートがある。

アイスとえば間宮アイスだが、うちにはないので艦内を探してみると、

ミリタリーレーション多数、時間凍結された生鮮野菜、肉、以上。と言う素敵仕様だった。

いや、なんでよ?妹達には和菓子があった。くぅ〜〜〜ッ!!!一切甘味が無かったのにっ!

耐えてたのにっ!恨むぞっ!!食べ物の恨みは深いんだからな!

 

まぁ、それはさておき..さておき、どんちゃん騒ぎの歓迎会が終わり、汗を流す為に風呂にいる。

毎日風呂に入るのが習慣という風呂大好き民族のアメストリア人の血のせいか、毎日入渠している。

別に損傷しているわけではないが。

なんというか、癒されるのだ。精神的な疲れが回復できる。

こう、気持ち良い。

 

だらしないと自覚しつつも縁に体を預け、水中で女の子座りをしていると、

 

 

ガラッ! タッタッタッタッタッタッ!!

 

 

「お姉ちゃん!」

 

うわぁーまた来たよクレイジーサイコレズ。ドアを開け放ち、堂々たる姿勢でそのバランスのとれた裸体を晒してくる。やめてくれ...

別に嫌じゃないけど、少しスキンシップが過激だ。ベッタベタなのだ。

そして後ろからタオルで身体を隠しながらカイクルが来た。明らかに後者の方が正解だろう。

しかしカイクルも劣らず引き締まっており、体型が良い。

世の中の女子の敵ではないか?

 

「姉さん、隣失礼する」

「...あぁ」

 

カイクルが隣に入ってくる。リバンデヒはというと湯船で身体をめいいっぱい伸ばし、惜しげもなく身体を晒している。この子私のこと以外には注意というか考えが回らないのか?なんだ?アホの子か?

それに比べてカイクルは...うん。完璧だよな。

 

「リバンデヒ、カイクル」

「何〜?」「何だ?」

「私達はここの所属だが、本来は?」

「アメストリア軍アメストリア海軍第一主力艦隊、だろうな」

「そうだ」

「でも何で私達はこんな世界に来ちゃったのかしらねえ〜...まぁ、海をまた滑れるから良いけど!」

「......()()()()()()()()にな」

「あぁ。アレはキツかった。姉さんだけでもと庇ったが、あのあと自沈したな?」

「...すまない。艦長が自決したんだ。船の長と運命を共にするのが艦の役目だ」

 

ある時、合計286隻の第一~七艦隊、つまりアメストリアという軍の主力が壊滅した。海軍の、だが。

しかし、そんな事はどうでもいい。戻るから。

問題はそれがたった一両の戦車に全て滅ぼされたという点だ。

次々と成す術なく沈んで行き、気づけばたった三隻。

 

アメストリア型戦艦一番艦アメストリア

アメストリア型戦艦二番艦リバンデヒ

アメストリア型戦艦三番艦カイクル

 

たったこれだけだったらしい。

 

直庵機もゼロ。

加えてリバンデヒは大破炎上し、カイクルは主砲が二基吹き飛び一基は稼働せず。

私ことアメストリアは主砲全ロスト。電気系統がやられたのか全て動かなかった。

レーダーが潰され、正確な射撃が不可能になったし、下手に撃つと高温になった砲塔内が誘爆し沈む危険性があった。

 

そしてリバンデヒはアメストリアを庇い真っ二つに割れ轟沈。

 

カイクルは生き残っている二基を動かし反撃。しかし奮戦虚しく轟沈。

 

アメストリアは決死の思いで何とか超大型艦艇輸送艦に到着し、着岸。

 

しかし兵士がいなくなった夜、密かに艦長が甲板で自決。

 

既に自我を持っていたアメストリアは術式を切って自沈を決断。

それが私になったという訳だ。厳密には本人ではないが、言える勇気を私は持ち合わせていない。残念ながらな。

 

「お前達は提督に忠誠を誓っているか?」

「いや。残念ながら姉さんだ」

「私も〜」

「ふふふふ...ありがとう」

「私達は姉さんの盾であり矛だ。当たり前だ。」

 

その心意気が私には眩しく、心苦しかった。




追記 2017 3/7
ドックの描写を変更。
太文字を試験導入。


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8.魔☆改☆造☆

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

またまた一週間。

リバンデヒがベットに入り込んできたり、カイクルが意外にお姉さんっ子だったりして添い寝してやったりと姉として大分苦労することもあったが、大分慣れてきた頃、私のLvがついに40に到達した。

 

 

ーーーいよっしぁぁぁぁぁあぁあ!

地道に固定砲台で46cm三連装砲をぶっ放したり、対空は一門のみ使いボッコボコにしたりしてコツコツと経験値を貯めてきた。

 

「提督、私の改修を要求する。」

「...わかった、けどこれまたすごい資材消費量だね...」

「そういうものだろう。私自体超巨大だ。」

 

さて、改修だが、私はその間の意識を失う。

機関が完全停止し、全てのエネルギーが停止するからだ。

そして改修の内容だが、鋼材800000を消費し、大幅なステータスの底上げ、主砲の性能の向上などがある。

 

「アメストリア、こっちは準備完了じゃ」

「了解した。リバンデヒ、カイクル、私が改修の間の警戒を頼む。」

「了解〜」「了解した」

「では工廠長、改修を開始してくれ」

「了解じゃ」

そう言って私は意識を手放す。何故か改修時間が24時間となっていたが気にしない。最近妖精さんがハイスペック化してるけど気にしない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーカイクルsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私はカイクルと言う。アメストリア型戦艦三番艦を拝命し、姉さん達と共に戦ってきた。

リバンデヒを蹴り飛ばし、姉さんを抱きかかえる。

あ奴に姉さんを渡すと何が起こるか分からないからな。

 

姉さんの船体だが、足場が組まれて行き、天井に付けられている可動式のクレーンが10台集まり、

第一砲塔をゆっくりと持ち上げていた。

20000tは超えているからな。かなり重いだろう。まぁ、全体からして大して重くないが。

 

今回姉さんが受ける改修だが、第一次全艦隊大規模改修計画時に私達が受けた改修だ。

全体的に強化され、武装が強力かつ速射が出来るように。

初めて絶対干渉結界と呼ばれる謂わばバリア発生装置も搭載される。

 

まぁ、一日中改修を眺めるわけにもいかないから姉さんを背負い私の船体に転移。

船室の一つに寝かせておく。さてと姉さんをふふふふふふ...

 

おっと危ないな。理性が吹き飛ぶところだった。

姉さんは堅いからな。こういう時しか弄れない。

 

いつも仏頂面している割には寝ている時は結構無防備だ。

あどけない表情を浮かべながら気持ちよく眠っておる。

私もベットに腰掛け、膝枕をする。

 

私の膝にサラサラとした長い黒髪があたり、こそばゆいが、それも良い。

規則的に上下する双丘は私と劣らず勝らず。

安心したような、それでいて芸術品の様に整った顔立ちは典型的はアメストリアの民の特徴を残している。

本星の気候故か彫りが深く、ハッキリとした顔立ちが特徴であるアメストリア人 は日本人とは確かに異なるだろう。

ハリのある頰をつん、と突くと弾力ある皮膚が押し返してくる。

モチモチとはしていないものの艶やかな肌は化粧をしていない所謂すっぴん?状態だというのがうらやましい。

私達もすっぴんではあるのだが姉さんは別格だからな!

 

 

ふふふふふふ...可愛い...

私の憧れ、敬服する人物。それが姉さんだ。

圧倒的な火力を持ち、巧みに操り敵を翻弄してゆく。

しかし慢心は決してせず、船体を操っていた。稀代の名将を乗せ、全軍の総司令官も乗せたことのある名誉のある戦艦だ。

 

その輝かしい功績には永遠にかなわない。作戦中に貢献することはあってもそれは戦績であって功績では無い。しかも顔の作り物めいている程整っており、同性すら惑わすときた。

私達の知らない地球についてもよく知っているし、艦長の地球好きだったのが影響しているのだろう。

 

「.......ぅん............」

 

ーーー姉さんは私の理性を吹き飛ばそうとしているのかっ!?

.........添い寝くらいなら、良いよな?

ゆっくりと動き、姉さんの隣に潜り込む。そして抱きつく。

はぁ〜〜〜///姉さんの柔らかい匂いだ...

 

余談だが、このあと姉さんが意識を取り戻し、起きた時に大変パニクっていたことを記そう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一日経ったのか、意識が戻ってくる。

眠気と朝特有のけだるさに襲われる。視界もだんだんと...

 

ーーうぇぇぇぇぇぇ!?!?

 

起きようとしたらカイクルが抱きついていた。顔が目の前にあったのだ。

というかここカイクルの船室だろ...もしかして私、お持ち帰りされた?

でも一切荒らされた形跡はないし、乱れていない。

よかった、のか?

 

「......カイクル、起きろ。私の改造が終わったらしい。」

「...ん、本当らしいな」

「あぁ」

 

「で、何故私はお前の船室にいる?」

「...リバンデヒから守った」

「よし許す。ありがとう」

 

うん。本当に感謝だよ...私は意識も失い、一切の抵抗ができない。

リバンデヒに渡されると色々とアウトな展開になる為、嫌だ。今までも度々夜這いにあったり、

睡眠薬を盛られたりと被害を受けている。思い出したらゾワッって来た...

 

「...さて、私の要目を確認するか」

 

 

アメストリア型戦艦一番艦アメストリア

耐久 24500

火力 25750

装甲 19450

雷装 9850

回避 360

対空 17450

搭載 3600

対潜 11560

索敵 20000

射程 超超極長

運 7500

速力 超高速

 

装備

150cm四連装砲改 五基

46cm三連装砲改 六基

35.6cm連装砲改 二十基

20.3cm連装砲改 三百基

14cm連装砲改 二百五十基

30mm機関連装砲改 千基(二千門)

ミサイル2500基 対空、対地、対潜、対艦、対航空艦

大型噴進弾発射器 二十基

 

全天レーダー

113号電探

パッシブソナー

アクティブソナー

絶対防衛結界

F-105 五機

CH-4 二機

CH-31 二機

 

船体

全長 4650m

全幅 530m

総排水量 118,838,900t

 

イメージ

 

 

【挿絵表示】

 

 

荒いですがご勘弁。

 

 

-武装改修内容-

150糎四連装砲

重量 26250t

最大角 30度

射程 111km

口径150糎

口径長32

砲弾150cm×550cm

砲弾 通常弾

三式弾

一式徹甲弾

一式徹甲弾

拡散式結界弾

榴弾式結界弾

ウンターガング弾

装填機構 特殊複合駐退復座機

 

砲身のみで1000tある。計4000t。

 

火力+5000

 

と。

えぇ..(困惑)

色々とおかしいよね?装甲、核効かないんじゃないかな。

多分深海棲艦なんか敵では無いだろう。

全武装に改ってついてるし、主砲毎発だし。パワーバランス崩れてるよね?ね?

あかん。これはあ艦これ。

ごめん。少しクラって来た。

 

「大丈夫か姉さん!?」

「大丈夫...大丈夫だ.......ははは...こりゃチートって言えないな.......」

「大丈夫だ。まだこれは最下層クラスの武装だ。宇宙戦艦の比では無い。」

 

カイクルさん...それ慰めになってません...

 

「フゥ...よし。取り敢えず船体を見に行くぞ」

船体のほうは後ろにカタパルトの格納庫がついたぐらいしか特に変化はなし。

まぁ、30mm機関連装砲が増えた気がしないこともないが、気にしない。私が倒れる。

今更だが、150cmとなると爆風が半端ないのでは?と思ったが、だから30mm機関砲って砲身以外装甲で覆われてるの?

あと、重すぎて海底に引っかからないか?海底ごと500m程削りましたかそうですか。

技術力パネェ...

 

「おねえぇぇぇぇぇぇぇちゃやゃん!!!」

「きゃあ!?」

 

私では反応できない速度でリバンデヒが抱きついてきた。なんかデジャヴ...

きっかりと手足をホールドされ、身動きができない。私の胸あたりに顔をうずめるている。やめロォ...このシスコンがっ!

 

「クンカクンカクンカクンカ!!お姉ちゃんの匂い!」

「いい加減離れろリバンデヒ...」

「嫌だもん!昨日手足縛って襲え...じゃなくて一緒に寝れなかったっ!」

「知るか。私の場合命の危険に瀕する。」

 

ねえ、このシスコン言ったよね?私、監禁される危険性あったの?

ほんとカイクルには感謝だ...

 

「はぁ..リバンデヒ...いい加減姉さんから離れろ...」

「.......はーい...」

 

はぁ...姉妹ってこんなんだったか...?だとしたら世紀末だろう...

 

 

で、改修が終了したことを報告するために提督室へ向かっているのだが、

 

「リバンデヒ、離れろ。いい加減武力行使をしそうだ」

「......ムゥ」

「提督の前ではやめろ」

「分かってるよぅ...」

 

そう。ベッタベタにくっついてくるのだ。

シスコンが...

 

「提督、アメストリアだ。改修が終わったから報告に来た」

「入って」

 

中に入ると相変わらず書類による山に埋もれた提督がいた。何故あんなに有るんだ?

嫌がらせのレベルが上がってきた気がするが...

 

「提督、私の改修は終了し、アメストリア改となった。よろしく頼む」

「うん。よろしくね。アメストリア」

 

またさりげなく笑みをむけられるも、私のアイアンハートは揺るがない。

そもそも男に興味わかないしな。一切。あぁ、かと言ってリバンデヒのように堕ちたわけじゃないぞ。

 

「それでその書類は?」

 

取り敢えず話題をずらす。

 

「あぁ...近いうちに合同演習があってね。重巡、駆逐を出すつもりだよ」

「そうか.......また私達は留守番なんだな...」

 

最近この鎮守府に貢献できなくて気持ちが沈むんだ...一切出撃はないし、撃ち漏らした深海棲艦を46cm三連装砲でボコるだけだし、巡回もできない。

存在自体隠す。

もう嫌になってくるし、腕が鈍る。

 

「ごめんねこんな人間同士の醜い見栄の張り合いに巻き込んでしまって」

「いや、それはいいが。私達は忠誠を誓っている。命令には従う」

 

カイクルがそういうが、それ、()()、とは言っていないし、実際私にのみ指示を仰ぐつもりか?

やめてくれよ?巻き込まれるから。

 

「一応、出撃用意はしておく」

「うん。よろしくね」



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9.と言う事で合同演習。(御披露目)

ーーーーーーーーーーーーー寺塚sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

久しぶりだね。提督こと寺塚だよ。

今日はトラック泊地の提督達と合同演習なんだ。

といってもそれは表向きでただの権力、戦力誇示なんだけどね。

 

「電」

「はいなのです」

「君を今回の演習連合艦隊の旗艦に任命する。頑張ってね」

「が、頑張るのです!」

 

何だかんだで電が一番Lv高いんだよね。

アメストリア達は一番艦を除き10台だし、(一番艦50Lv)第六駆逐隊は遠征の効果もあってか30〜40

重巡、大鳳はまだ入ったばかりだし、僕の嫌いなタイプの提督にあまり育てられなかったのか20台。電が75。うん。流石僕が着任してからずっと支えてくれただけあるね。

 

 

さて、話題は変わる。

『提督、アメストリアさん達は行かない訳?』

『姉さんよく考えて』

「まぁ、ね。あの子達は二次大戦中の戦艦じゃ無いし、今は存在自体隠匿しないといけないからね」

 

今は電の船内。電を中心とし輪陣形に二個艦隊を配置して航行。

十二隻しかいないけど充分だね。

駆逐艦は対潜、対空に長けるし、重巡は対艦、対空、対潜も行ける。

大鳳は立派な装甲空母だからね。索敵は捗っているよ。ちょっと搭載量は少ないけど開発で紫電改二と流星改、烈風はアメストリアが出したからスロットに装備してもらっている。

 

でも、アメストリア達には悪いことしちゃったかな...

あの子達には一切遠征、出撃はさせてない。精々鎮守府付近に深海棲艦が奇襲をかけてきた時くらいだろうから、戦闘は皆無。

あの仏頂面を崩した随分と落ち込んだ表情は少しつらいね。

 

でも、そろそろ御披露目しようかなとは考えてる。まず一隻。

 

「アメストリア、聞こえているかな?」

『よく聞こえている』

「アメストリアのみ出撃せよ。人目を避け、隠密航行を厳としてね」

『...良いのか?』

「うん。まずは一隻出して反応を確かめる。」

『了解した。ドック上げー!機関始動!』

「あ、合図があるまで120km圏外で待機。リバンデヒ、カイクルは出撃待機」

『了解した。』

 

ちゃっかり艦橋にいるのもあの子らしいけど...

他の鎮守府も己の力を誇示したがっているからね。

ならこちらも相応の対応はさせてもらわないと。まぁ、くだらない人間の対抗心だよ。アメストリアは下らないって切り捨てるけどね。

 

 

 

 

 

トラック泊地近海に到着し、周りを見ると巨大な戦艦や巡洋艦が所狭しと浮いている。

うわ...大和もいるよ...でもアメストリア型戦艦と比べると14分の1くらいだからあまり大きいとは感じないね...僕もアメストリアを基準として考え始めているな...ははは...

取り敢えず各鎮守府の提督が集まる会議に出席する。

十数人の提督が既に居て、皆一様に真面目そうな人ばかりだね。経験も豊富だろうし、ぜひ話を聞きたいな。一人だけ提督を貴族か何かと間違えている豚があるけど電の視界に入らないように立ち回る。あれは艦娘をただの兵器と見ているようだけど、艦娘達はあくまで協力してくれているだけだからね?いざとなれば反旗を翻す諸刃の剣なんだよ?

「利根。臨時の旗艦とする。少し待っていてね」

「了解じゃ...すごいの...じゃがアメストリアを見るとどうも迫力に欠けるの...」

「うん。百隻を超えているけどアメストリアを見るとね...」

 

「さて、これより第142回トラック泊地合同演習会議を始める」

そう切り出したのはトラック泊地で一番長く着任している近江大佐。この人がトラック泊地を最初に開拓し、ここまで作り上げた最大の功労者で、経験は豊富で新入りをいつも気にかけてくれるかなり優秀な方だね。貫禄がある。

そして各々自己紹介を済ませて行く。中佐、少佐、大尉、少佐...

大佐は近江大佐のみだね。

 

「私がこのトラック泊地で一番の戦果を挙げる大崎様だ!よく覚えておけ!特にそこの小屋提督!」

 

まずは自分を様付けしてる時点でダメだよね。大本営にお父さんが居て、血筋がいいからといっていばり散らして言い訳じゃないし、家の名を穢す事になるけど。馬鹿だね。

 

ほら、秘書艦の大和も大分嫌そうにしているし、他の提督も少し顔を顰めている。

 

「...では会議を始めよう。今回有志諸君によって132隻の艦娘達が集まっている。よって66隻ずつに分け、紅白戦や艦隊行動、射撃訓練をしようと思うのだが、どうかね?」

「少し待て!まずはあの新入りの実力を図ろうと思うのだがなぁ?」

 

毎回イラっとくるなぁ...アメストリア呼んどいて正解だね。少し挑発に乗ろうか。

 

「分かりました。では試しにお手合わせでもどうです?なんなら1対132でもよろしいですが」

アメストリアならこれくらい楽勝だろう。

 

「何だと!?こっちには大和、武蔵、長門、陸奥がいるんだぞ?おたくは駆逐に重巡、欠陥空母しかいないじゃあないかぁ?」

「大丈夫ですよ。我が鎮守府には今まで必死に隠匿してきた最終兵器がいますから」

 

そう言ってニコリとすると周りの提督達がザワザワとし始めた。信じていないのだろう。

 

「本当...いや、正気かね寺塚君」

「えぇ。本当ですとも。おそらくあの子を相手するには全世界が手を組み、核を一斉発射してもビクともしない艦ですから」

「それは...大和かね?」

「いえ、見てのお楽しみということで。電、全艦に通達。凱旋の道を艦開けて」

「り、了解なのです!」

 

一気にどよめく。まぁ、百隻を超える艦娘をと相手取る艦娘なんて聞いたことがないからね。

しかし僕は確信している。あの子は世界最強だ。この世にはいてはならないほどに強い。

 

「では近江大佐、桟橋の方へ移動を。」

「う、うむ」

「アメストリア、聞こえているかな?」

『こちらアメストリア。よく聞こえている。そして全て把握した』

「なら、機関始動。」

『了解。機関始動!電力伝達確認。電探感度よし。姿勢制御装置良し。オールグリーン』

「全武装の砲弾を演習弾に換装」

『換装。』

「戦闘用意のまま最大戦速!」

『よーそろー!最大戦速!』

「おい、どこだ?お前の最終兵器って言う奴は?」

「近江大佐。電の直線上の全ての艦娘を撤退させてください。幅は15000m以上。でないと高潮に呑まれます」

「......了解した。皆の者。撤退させてくれ」

「さて、貴官殿のご自慢の艦隊は?」

「き、貴様...!大和!第一艦隊をここにもってこい!」

「......了解、しました」

 

大和は...高練度っぽいけど疲労が激しくまともに戦えるとは思わないな。

 

「さて、舞台は整った。寺塚君、どうするのかね?」

「電。引け。引き裂かれる」

「分かりましたのです!」

 

 

あのご自慢の艦隊は大和、武蔵、長門、陸奥、加賀、赤城だったよ。オールスターだね。練度も7、80位なんだろうね。第二艦隊と思うのは金剛、霧島、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴。

こちらも高練度。でも手も足も出ない。

 

電が駆逐艦では出るはずのない速力で離脱してゆく。

以前、アメストリアを調査させてもらった時、燃料を消費しないエンジンを見つけて、妖精が作れると言ったから全艦に搭載して、速力が倍以上になったんだ。

もっともあの子はサブエンジンとして使っているようだけどね。主機は...ウンター何とかエンジン。ごめんドイツ語で言われたから分かんないや。

 

「レーダーに感あり!ありえない速度でこちらに向かってきています!大きさは計測不能!」

レーダー要員が走って報告に来た。まぁ、アメストリアだろうね。

 

「速度は?」

「それが....その、90ノットです」

「それは航空機か、ミサイルかね?」

「いえ、間違いなく船舶です!」

「では、君の艦娘かね寺塚君?」

「はい。アメストリア型戦艦一番艦アメストリア。彼女の名です」

 

ドゴォォォォォォォォォオン...........

 

「...あ、赤城、加賀、飛龍、蒼龍、翔鶴、瑞鶴大破!」

「何っ!?」

まぁ、150cm四連装砲だからね。前方の三基十二門を使ったんだろうけど。

 

水平線の向こうから巨体が見えてくる。

船を簡単に引き裂く鋭利な艦首に天にそびえる大和型の艦橋群、そして前方に搭載された150cm四連装砲三基。

豪快に大量の海水を巻き上げながら90ノットという信じられない速度で向かってくる。

なんか海水で両舷に山ができてるけど気にしない。

 

アメストリアって前方から見ると三角形なんだよね。(日本武尊みたいな船体)

だから余計に海水を巻き上げている。

 

『こちらアメストリア。あと20秒で到達する。』

「了解。速度下げ」

『速度50ノットに下げ!』

 

驚きのあまり全ての音が消える。砲撃もされず、何も起きない。信じられないんだろうね。

そしてアメストリアは悠々と接近すると全ての主砲を起動し、毎発で演習弾を放ってゆく。

加賀とかの航空隊がまだ残っているけどアメストリアの艦橋群にびっしりと設置された30mm機関連装砲の空が見えなくなるほどの濃密な弾幕により全機が一秒以内に墜落。

確かアメストリア曰く30mmは対噴進機用と言っていたからレシプロ機なんか屁でもないんだろう。

ーーーん?でもミサイルは使ってないし、結界?も使ってないみたいだね。

 

「何なのだ...あの戦艦は大きすぎるぞ...」

 

あ、座礁する危険性無いかな?

アメストリア途轍もなく重いから底が深い海でしか航行出来ないはずだけど。

ーーあ、座礁した。けど岩ごと粉砕し何もなかったかのように航行し桟橋に着く頃には5ノットに減速。

 

100mの高さを誇る艦首の一部が接岸し、左側と後方の錨が投錨される。

そして艦首甲板から巫女服のアメストリアが飛び降りてきて軽やかな足取りで着地。

 

「アメストリア、只今到着した。」

「ん。お疲れ様。近江大佐。こちらの艦娘がこの戦艦アメストリアの艦娘です」

「......規格外過ぎてなんとも言えないな...こ、この船の大きさは?」

「全長4650m、全幅520mです大佐殿」

「よ、四千...これは一隻だけかね?」

「...お答え兼ねます」

「.......まぁ何んせよ素晴らしい戦力ではないかね。」

「はい。彼女に協力の意思があれば」

 

さて、御披露目の効果は上々だね。隻数も誤魔化したし。

提督達も目を見張っている。技術に関しての関心が高いようだ。ここは優秀はですが多いな........一部を除き。

 

「(提督、あの豚がいないが?)」

「(うん?...そうだね)」

 

そういえばあの豚がいない。

演習だから一切艦娘達は轟沈していないけど、船体は凹んでいる。機関室に当たる部分。第一艦橋、主砲と。完全に狙っているよね。アメストリアって主砲の正確性には眼を見張るものがあったけど...

大和でさえ水偵を飛ばさないと当てれないのに?ても以前目標の座標、ミリ単位の瞬間調整、それを可能とする瞬間演算装置があるって言ってたし...

 

「そういえば大崎中佐は何方に?」

「分からないな...おそらくまだ大和の船内だと思うが...」

「キサマァァァァァァア!ガキの分際でぇ!」

 

アメストリアが素早くホルスターから銃を抜き取るが、手で制する。

 

「アメストリア、ダメだ」

「何故?」

「とにかく抑えて。」

「...承知した」

 

不服そうだけどアメストリアは拳銃をホルスターに収めてくれた。

 

「僕はしっかりと申し上げたはずです。最終兵器と。」

 

酷いものだったよ。直々の指揮を執るとああなるんだろうね。憐れだ。艦娘が。

 

「今に見ていろ!必ず潰してやる!!」

 

大股で歩いて行ってしまった。

大和は随分と疲れておりこちらに助けてと言わんばかりの目線を向けてくるし、悲しい表情には何処か怖れも混ざっていた。顔は青白くなっていたけど、それよりもさらに目立つ、右の頬が赤くなっているのが強く印象に残ってしまった。

 




アメストリア御披露目回。
愉快ですね。アメストリア型戦艦一番艦アメストリアの世間への公表、それによる反応、上層部の反応が分かりやすすぎて愉快です。
アメストリアは邪魔と判断すると国であろうと皇族であろうと容赦無くBGM-9をぶっ放します。罪悪感?
4900年かん生きた''彼女''のメンタルはそんな事じゃ揺るぎません。選民主義ですね。
地味に書くのを楽しみにしていた回でした。


姿勢制御装置について。
姿勢制御装置とは、主砲である150cm四連装砲や副砲の46cm三連装砲を一斉射するとアメストリアであっても転覆しますので、自動的に舵を切ったり、バラスト注水したりしてバランス調整するための制御装置です。
これのおかげでアメストリア達は安心して暴れれます。


大崎中佐(豚)
今作品のイライラ要素。多分今後こう言うキャラは出てこないと思う。
掴み所のないキャラなら沢山。アメストリア欲しがるキャラも沢山。
鬼畜米帝とかall不良品の国とか。


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10.何故に?

今日で3.11から四年ですね。
犠牲者の方々に哀悼の意を表するとともにどうか幸あらんことを。


ーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最近久々に海を走れて()共々スッキリしているアメストリアだ。

いやーあれはスッキリした。

 

ABC兵器とか対航空艦ミサイルとか使わなかったが、あの豚の真っ赤な顔は面白かった。

テラワロスだわwwwぷっ!思い出したら笑えてくるwww愉悦っ!

 

しかし艦娘達に演習弾とはいえ撃つのは少し戸惑った。

味方に撃つなどもってのほかだ。FFを一々全部書き換えて撃ったらまた戻す作業は中々に面倒だったぞ。うん。

あの怯えたような表情と助けを乞う目線は忘れられない。近々救出作戦でも立てるか。

 

 

で、あの後だが、私を仮想敵(どうかと思う。不憫だ。)とし、順調に合同演習は進んだ。

他の提督には全員に挨拶しておいた。真面目そうで何よりだ。

 

中でも近江大佐は凄い。貫禄があり、歴戦の強者だ。是非にと関係を持っておいた。

()の知識が言っている。あの人の話は為になると。素晴らしい人だったよ。

 

 

で、だ。私は華々しくデビューした訳だが、この超巨大戦艦の出現の報は瞬く間に拡散し、軍令部がてんやわんやだ。

大本営から本当なのか?と確認の通信が来た。私は提督の後ろでずっと立っていたが、叱られず、大本営にすぐに出頭せよと。

提督はあの豚について告発したが、揉み消された。実家に。消してやるっ!

提督はブチ切れていた。私に八つ当たりはしてこなかったが、現に足が震えている。身体がかなり怖がっている。私というと口から魂が抜けそうです...

あの豚は権力に物を言わせ私達に責任を全てなすりつけ、あまつさえ私を深海棲艦のスパイだとまで喚きだした。黙れクズが。

「て、提督...」

「何だ?」

ブチ切れてらっしゃる。空気が重く、殺気が恐ろしい程漏れている。口調も乱暴な口調に変わり、別人のようだ。大変ドスの効いた声で私は拷問されているような感覚に陥る。

現に私は涙を必死に堪えているし、身体の震えを止められず、さっきから冷や汗が止まらない。なんでこういう時優秀なまいぼでーは仏頂面スタイルをしてくれないんですかね。

 

「だ、大本営に殴り込みを行う事を推奨する」

「よし。出頭は明日だ。アメストリア」

「ヒィ!」

「リバンデヒ、カイクルにも通達しろ。明日、日の出と共に出撃する!」

「はぃ!」

 

何時もの説教が可愛く見える程の殺気を当てられ身体が竦む。立っているのもやっとだ。ヒェェェェ...物凄く怖いんです...全速で走って離脱する。これ以上は私が発狂するっ!

 

ーーーーーーーーーーーーーリバンデヒsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

はいはーーーいっ!!!みんなのエンジェル、リバンデヒだよ〜〜〜!

今私はすっごく困惑しています!

凄く怯えた表情で何時もは私から抱きつこうとしたら容赦無くアイアンクローとか回し蹴りとかしてくるのに自ら抱き着いてきたの!やったぁ!ついにお姉ちゃんデレ期!?

 

ーーじゃなくてどうしたの!?

 

さっきから顔を青くして怖いしか言わないし、私、凄く困惑してるんだ。

でも、これは只事じゃ無いよね。だから、キャラ捨てるね?

 

「お姉ちゃん!?」

「こわかった....すごく...こわかった.....」

 

お姉ちゃんは小刻みに震えていて、すごく怖がっている。朝まではいつも通りだったけど、どうしたのだろうか?

 

「あ、カイクルッ!すぐに来なさい!緊急事態よ!」

「どうしたっ!?おい、姉さんに何があったのだ!?」

「よく分からないの。提督に呼び出されてからずっとこの調子よ」

「そうか...リバンデヒ、キャラやめたのか?」

「えぇ。流石に4900年も続けるとは思わなかったけれども。まぁ、楽しかったし」

 

そう、これが本当の私。今までウザキャラで通していたけど飽きちゃったし、お姉ちゃんが初めて怯えたからね。ここまで明確に恐怖し、怯え続けているのは私も初めてなの。

 

「カイクル、まずお姉ちゃんを船室に運ぶわよ」

「了解した。姉さん、すまないっ!」

 

カイクルが怯えているお姉ちゃんに近付き、腹パン。手刀も食らわしているけど。

そしてカイクルがお姉ちゃんを背負う。

 

「む?...改修のせいか?」

 

今体重を気にしている場合じゃ無いでしょう...確かに10000t近くは増えたけども...

 

 

 

 

「お姉ちゃん!?」

「凄く、怖かったの...」

「何が!?」

「て......と、く...」

 

と抱き着かれたときに言われたから、原因は確実に提督ね。

でも泣き出すとは思わなかったわ。あの提督、侮れないわ...

船室に寝かせ、カイクルと対峙する。

 

「カイクル」

「何だ?」

「私達の武器庫を解放。戦闘準備。機関は今日起動させ続けるわ。いつでも出撃出来るように」

「了解。リバンデヒは?」

「私はベガルM115-AXにデザートイーグルで良いわ」

「わかった。取ってこよう。」

 

そう言ってカイクルは転移。私は提督に指示を聞きに行こうかしら...でもあのお姉ちゃんがここまで怯えているのに私如きが耐えれるわけがない。

 

「お姉ちゃん...」

今も私の巫女服の裾をしっかりと握っている。嬉しいけど、いまはそれどころじゃないわ...お姉ちゃんの頭を膝に乗せ、ゆっくりと撫でてゆく。髪は凄くサラサラしていて、いいなぁ....

 

「持って来たぞ」

「ありがと。マガジンはボックスね。流石。」

お姉ちゃんをベットに戻してから立ち上がりベガルM115-AXを受け取り、ボックスマガジンを付けて弾帯に巻かれた12.7mmAX弾を給弾口に入れコッキングレバーを引く。そして肩にかけデザートイーグルを受け取りフルオートにレバーを上げ、拡張マガジンを装填し、コッキング。

カイクルは打撃銃と言われたベガルM154を持ち、肩からベクターを下げ、M92Fを吊るしている。

 

 

 

「提督、少し良いかしら?」

「......リバンデヒ?どうした?」

「少し話があって」

「分かった。入れ」

 

ドアノブを持とうとするが、戸惑ってしまう。

このドア越しでも分かる濃密な殺気。これは少し危ないわ...お姉ちゃんが発狂したのも無理は無いわね。

 

「失礼する」

 

カイクルが先に入ってしまったわすぐに入ったけどカイクルが寄りかかってきたからすぐに受け止めたわ。

 

「すまない...クラっとした」

 

凄い重圧に押しつぶされそうになる。これは...予想以上よ...

 

「どうした?リバンデヒにカイクル?」

 

口調も変わってるわ。ブチ切れてるのかしら?

 

「えぇ。明日、どうすればいいのかをね」

「明日、僕は大本営に出頭するがタダではいかない。君達三隻全て投入する。そして許可を取り付け豚を処分する。一族野党諸共だ」

「トラック泊地には憲兵隊がいた筈だが?」

「腐った」

 

あ.....もう無理だわ...これはもう止められないわね。

 

「提督、何時もの調子に戻りなさい」

「こっちかな?」

「はぁ...」

 

凄い疲れたわ...いくら何でも強すぎよ...

 

「ごめんね。少し嫌なことがあったから。気分、悪くないかい?」

「私達は大丈夫だけれど、お姉ちゃんは完全にダメになったわ」

「やっぱりかぁ...あの時は特にキレてたからね...恐らく伝えてないだろうから伝えるね。明日出撃する。目的地は横須賀鎮守府、大本営。弾薬は満載に」

「「ハッ!」」

「あとリバンデヒキャラ変わった?」

「えぇ。流石に4900年もするとは思わなかったけれどね」

「4900...?」

「えぇ。私達が建造されたのはアメストリア年号0年。創立の日よ。その後現代...4900年間使われ続けていたわ」

「へぇ...凄い御老艦...」

「まぁな。その割には最新技術が率先して使われたがな」

「じゃあ...辛いこと聞くけどどうして君達三隻は轟沈したのかな?」

「私達はアメストリア海軍第一艦隊に所属していたわ。因みにお姉ちゃんが旗艦よ。他にも大和改や赤城、重装空母加賀や武蔵改などたくさんの軍艦で構成されていたわ。

 

その中で私達が一番長く艦をやってたから自我を持っていたの。

そして何度も出撃したわ。この艦隊の目的は星ごと消し去る事。文化、文明、人民関係なく全てを無に還すことが目的よ。

 

そしてたった一度だけアメストリア史に残る大事件が起きたの。ある一両の戦車が暴走。

四つの星と私達第一艦隊、非番、非戦闘員7000人強の犠牲でようやく止まったわ」

「7000人...?」

「えぇ。その戦車はアメストリア軍が窮地に立たされ、全ての支援を受けれない中永久に戦闘活動が出来る最終防衛兵器だったの。攻める為の兵器である私達が守る為の兵器に勝てる筈もなくどんどん轟沈していったわ。でも私達三隻は大破ながらも生き残った。

しかし私はすでに炎上。カイクルは主砲が三基大破。お姉ちゃんも主砲全ロストにレーダーが潰されたわ。そして砲撃を喰らい私は庇って真っ二つになって沈んだわ。」

「そして私は姉さんを逃がすために盾となり反撃したが轟沈した。姉さんだが、艦長が自決し、共に自沈したそうだ。」

「な、何だか物凄くスケールが大きいね...」

「えぇ。すごいのよ私達のお姉ちゃんは」

「後で謝らなきゃなぁ...」

「では私達は既に出撃準備はしてある。海上にて待機させて頂く。」

「うん。明日だけど良いの?」

「あぁ慣れてるからな」

「あとお姉ちゃんは簡単に許してくれないわよ。だから押し倒しちゃいなさい。お姉ちゃん初心だから良いわよ?」

「え?それってどうい----

素早く私の第一艦橋に戻る。ふふふ...♪今日の夜は楽しみね☆




ねぇねぇ。150cm四連装砲って化け物だったね。
どうも諷詩です。今更ですが、150cm四連装砲が怖くなっています。
150口径って何やねん...大体32口径長...
あ、口径は砲弾の直径の事を指します。という事にします。
砲身がねぇ...


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11.MINAGOROSHI☆

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

はいはいアメストリアですよ。やっと意識が戻ったよ...怖かった。うん。以上。

 

さて、昨日はお楽しみだったかって?な訳ないだろバーカ。

起きたら提督がいて反射的に怯えて部屋の隅に行ったが、それくらいだぞ?

何もされてないぞ?

今チッって舌打ちした奴、150cm四連装砲の九一式徹甲弾をプレゼント☆家、マンションが倒壊するでしょう☆

 

さて、茶番はここまでにするが、今結構感動している。

アメストリア型三隻が朝日をバックに映っている。凄く綺麗だ。パラオのため霧などは無いが、海面が太陽の光を反射しキラキラと輝く。大和型をそのまま拡大したような巨艦が三隻肩を並べ、太陽を背にしており神々しく輝いているようである。富士山の御来光をありがたるのもなんだか理解できるような気がするなこれを見ると。うん。

今日の予定だが、

 

1.朝、日の出とともに出撃!

 

2.フルスロットルで航行!

 

3.横須賀ダイナミックお邪魔します!

 

4.大将ォ!さっさと許可くれぇ!!

 

5.横須賀ダイナミックお邪魔しました!

 

6.昼帰港。

 

これを五時間でやれと。

許可は時間かかりそうだしなぁ...

 

「アメストリア、リバンデヒ、カイクル出撃せよ!」

「アメストリア抜錨!機関始動!」

「リバンデヒ、抜錨!」

「カイクル、抜錨する。いざ推して参る」

 

70ノットという頭可笑しい速度で走ってゆく。海水を大量に掻き分け、艦首から盛大に海水が舞い上がっている。結構綺麗だ。

 

「右舷に敵!重巡だ!」

「カイクル、46cm三連装砲てぇー!」

カイクルの艦橋側面甲板の46cm三連装砲が回転し、巨大な砲弾を撃ち出す。

そして重巡の黒い船体が三つに割れ、沈没。

ん?潜水艦か。

 

「前方敵潜水艦!距離9700!一番、二番砲塔起動!九一式徹甲弾装填!てぇ〜〜っ!」

 

衝撃が走り八本の砲身が装填機構ごと下がり、次の砲弾が装填され、元の位置に戻る。

砲弾は砲身から撃ち出され綺麗な直線を描くと海面を割りながら突き進み敵潜水艦に突き刺さり大爆発。

大量の気泡を上げ水柱が上がる。

 

まぁ無視して突っ切るのだが。

というように深海棲艦は瞬殺してゆく。

 

 

 

 

ある程度進み、島が見えたところで

一度減速し、提督のいる艦長室に歩いて行く。

 

「提督」

「入って」

「失礼する」

 

この妙に見慣れた感じの木製の扉を開け、執務室となっている部屋に入る。

 

「あと15分程で到着する。現在は父島近海にて隠密航行中だ。」

「早いね...窓から見てたけど瞬殺だよね」

「あぁ妹たちが優秀だからな。連携が取りやすい。」

「今日は出来るだけ騒がないとね。」

「あぁ...忘れていた。提督を私の武器庫に案内する。」

「え?」

 

「えぇ?」

なんか武器庫に案内したらドン引きされたんだが。不服であるっ!

何故に?M2とかM20とかの少し重火器が有るけど武器庫じゃん。私も知らない銃も有るけど、知らない。使えるから良い。

 

「これは...?」

「私に乗り込まれた時の自衛用だ。」

「じゃあ君が持ってた銃も?」

「あぁ。ここのだが?」

「リバンデヒやカイクルが持ってたのも?」

「それぞれ自前の武器庫があるからな。せめて自衛用の拳銃くらいは持っててくれ。私とて守れない」

「守らないでは無く?」

「艦長を守らない艦が何処にいる」

「ははは、冗談だよ」

 

そう言うと提督はアサルトライフルを取る.....訳もなく、ダムダム弾のマガジンを幾つかとり、

本体のG26アドヴァンスに一つを入れコッキング。中々提督もエゲツないな...

私とて撃たれたくない。痛っいもん。

私も追加しておこうか。USPを戻し、M93Rを二丁ホルスターに下げ、予備の拡張マガジンを六つ後ろのポーチに入れる。G18も戻しFN5-7にして置く。よし完璧。何故93RとFN5-7にしたかというとカイクルとの銃談議でカイクルが珍しく地球製銃火器で称賛していたからだ。あの銃火器バカの言う事なんだから間違いは無いだろう。

 

「こちらアメストリア。リバンデヒ、カイクル聞こえているな?」

『聞こえているわ』『聞こえている』

「30ノットにて航行。弾種は任せる。全武装起動。目標は防衛施設、海防艦、邪魔してくるやつだ。何しても構わん。ただし艦娘は殺すなよ」

『『了解』』

「では私も戻る。提督は出る用意をしておいてくれ」

 

 

 

横須賀鎮守府。

今尚現存する大日本帝国海軍の総本山であり、東京湾の玄関口でもある。深海棲艦が現れた当時、つまりまだ海軍が海上自衛隊だった頃は米帝の基地になっていた場所だが居座っていた米帝海軍が壊滅した後は帝国海軍が此処を奪還した。深海棲艦との戦闘でも初期の頃に戦場になったからかかなりの死者が出たようで、私にもその怨霊が感じ取れてしまう。

現在は大日本帝国海軍の中枢基地として大規模な開発を受け、大和型も入る屋根付きドックが複数あったりと設備はかなり充実しているといえる。

 

大本営、という海軍の司令部も隣接しているため、警備、防衛システムは世界最強レベルだろう。

24時間体制でレーダー員が張り付き、敵船にはミサイルや艦娘の攻撃が即時に来る。

普通の鎮守府ならばまず正規の方法以外では侵入できないだろう。

 

しかしそれは普通の鎮守府の場合だ。パラオ鎮守府...とくにアメストリア型戦艦は異常だ。

それは自覚している。

 

栄えある大日本帝国海軍工廠でも51cm試作連装砲までしかたどり着かなかった。

しかし私は150cm四連装砲という異常な主砲を持っている。

船体も4650×520mというちょっとした島の大きさも持つ。それがパラオには三隻いる。

一隻でさえも横須賀鎮守府は防げないだろう。それが三隻、同時にフルパワーで襲ってきたらどうなるだろうか?

 

「全艦絶対干渉結界を起動。」

 

見えない膜に覆われ、一切の物理攻撃が効かなくなる。

そして対空に備え30mm機関連装砲の砲身があらかじめ回転を始める。

 

「全艦、我に続け!侵入する!」

 

侵入したと同時に警報が鳴り響き、防衛用兵器が起動される。

同時にアメストリア以外三隻のレーダーが横須賀鎮守府の防衛システムの兵器を全て確認。座標をロック。

「グラニート、1から285まで、発射!」

 

側面に飛び出した台形型にも見える船体部分の夥しいハッチが順番に開いて行き、間髪入れずに6980kgの鋼鉄の矢が飛んで行き、防衛システムの兵器群をピンポイントで破壊してゆく。

 

そしてレーダーが戦闘機部隊を捕らえたのが先か、一斉に機関連装砲が火を噴き、カーテンにも見える超濃密は紙飛行機でさえ入れない弾幕が張られてゆく。

そして蚊のように落ちてゆく。

 

私はそれに目もくれず主砲を回転させ、横鎮のドックの機能を停止させる。

二十門の巨砲が業火を吐き出し、鉄の塊が回転しながら目標にあたり、粉砕する。

 

『お姉ちゃん!前方に海防艦!回避して!』

「知らん。」

 

少し揺れ、何かが避ける音がする。私の艦首か海防艦か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー海防艦は真っ二つに引き裂かれ、底に沈んでゆく。

切断では無く引き裂いたのだ。リバンデヒが唖然としていたが気にしない。

 

46cm三連装砲や30cm、20cm連装砲が忙しなく砲弾を撃ち出し、まるで的を撃つシューテングゲームのように目標である兵器やレーダーを破壊。

艦娘は機関を20.3cmや30cm連装砲で破壊して航行不能にする。

「三番砲塔に結界式散乱弾装填!四番、五番砲塔に通常弾!てぇー!」

そして自動的に私が指示をせずとも前方甲板や後方、側面の甲板からシースパローが放たれ、装填され、放たれる。一気に2500発以上のシースパローが飛び立つのは中々の壮観だ。

30mm機関連装砲の殆どが沈黙し、今では両手で数えられる数しか稼動していない。

落とすべき目標がもう残っていないからだ。

 

「全艦戦闘停止!」

 

私の一声でピタリと三隻の武装が停止し、元の位置に戻ってゆく。

 

「主砲、榴弾式結界弾装填。大本営に向け。機関停止」

『『機関停止。第一警戒』』

「了解。提督、道が出来たぞ」

 

あたり一面から炎が上がり、重油が漏れ出し引火。海までもが火の海になっているが、大本営までの一本道のみ何もない。これを狙っていたが。

そして10ノットに減速し、

 

「結界停止」

『『...停止』』

 

若干間があったが、何の意味があるか分からないからだろう。それで良い。

迅速な動きが出来ないから、という理由だが、言わなくても良いだろう。

 

「では行ってくる。二人共、護りは任せた」

 

艦首をコンクリートの桟橋に突き刺し、無理やり停止。

同時に錨を全て投錨。これ位しないと流される危険性があるからだ。巻き込まれてリバンデヒやカイクルが航行不能になったら目も当てられない。

タラップを降ろし、堂々と提督が降りてゆく。私も後ろから先程の武装のまま付いてゆく。

少し保険を掛けておこうか。

私の意思で格納庫から機体を引っ張り出し、昇降版が上昇。本来はカタパルトなど必要ない垂直離着陸機搭載の戦闘機をセット。一応黒い鉄の鳥ことCH-31も発艦態勢に移行。

ローターが回れるように。

 

大本営だがレンガ造りのどデカイビルだった。

無論警備兵が止めてくるが、撃ってきた場合のみ発砲している。

しかし不思議と誰もいないのだ。あるのは死体だけ。

あぁ、増えた。

 

しかしエントランスのど真ん中に堂々たる姿勢で立っている立派な軍服を着込み、ジャラジャラと大量の勲章を付けた人間が居た。

肩には大将を表す線が入っており、間違いなくボス格の人間だろう。

私はすぐにレーダーを張ったが、人間はこの階は大将のみ。

元帥とかの老害はもっと上の階。どうする?戦闘機飛ばすか?

 

「パラオ鎮守府提督、寺塚修平です。この度は少々ばかし抗議をしに馳せ参じました」

「そうか。私は一介の大将に過ぎないただの人間だ。名など気にしなくていい。

随分と強引な挨拶だな?」

 

うん。この大将ニキ警戒してるな。分からなくもないが、話し合いが出来ない。憲兵隊も少ないし、それは良いんだが、私は邪魔か?

「いえいえ、この子達はまだまだ本気を出しておりません」

 

...いや提督さん。結構私達、本気で殺っていたのですが?

150cm四連装砲、46cm三連装砲、30cm連装砲、20.3cm連装砲、30mm機関連装砲、2500基のミサイル。フルファイアしたぞ?ガチの。

 

「ほぅ?」

「この子達が本気を出したら今頃地球、人類の文明は消え去っています。」

 

残念ながらそれは今の()じゃあ無理なんだな...武力が足りない。

改ニくらいならよゆーで潰すけど。内容?教えるわけが無いじゃないかHAHAHA!

 

すみません調子乗りました。ごめんなさい。いずれ改ニになるから待って...

 

「ほう?そんな手段があるとは?」

「えぇ。秘匿していますが、いいでしょう。ABC兵器は勿論、この子の艦載機によるケムトレイル、ウンターガンクー弾、核、沢山あります。これ以上は」

 

いや、ありませんから。これ以上。

確かにケムトレイルとか脅威の他なんでもないが...食料から汚染って戦争中大打撃だよなぁ...

ん?侵入...?憲兵隊か?制圧しなければ。機関室を抑えられている。ヤバイ。

 

「...提督、少し失礼する。侵入者が居たようだ」

「うん?」

 

 

ー艦内ー

転移する。第一艦橋は誰もいない......ごめん今突入してきた。すぐに二丁のM93Rを構える。

なんか心臓あたりが掴まれたような感覚があるが、気にしてられない。妖精さんだろ?

「.......何者だ?ここは私の船内だ。部外者の立ち入りは許可できない」

「...貴様がアメストリアとかいう化け物か?」

おや、化け物とは心外な。私とて望んでここに居ない。

「そうだが?」

「貴様を連行する」

「断る」

足元に3発ぶち込む。あぁ...床が...

しかし私に向けて幾つか銃弾が発射され、ギリギリで避ける。アブねぇ...

すぐに機器の陰に隠れ、インカムをつまむ。

「リバンデヒ!カイクル!聞こえるか!」

『どうしたの...って銃声?』

『どうした?』

「憲兵隊と思われる部隊と交戦中。速やかに海域を離脱しろ。今すぐにだ!」

『で、でも...お姉ちゃんが...』

「気にしなくていい!すぐに離れろ!』

そう言って私はインカムを捨てる。

そして愛銃二丁のツマミを上にあげ、フルオートで銃弾を浴びせてゆく。そしてマガジンを抜き、すぐにリロード。再び発砲しながら敵に突っ込む。肩に掠ったが、気にしない。

そしてすぐに廊下を走る。機関室に急がなければ!転移すると一瞬攻撃が出来ないからその間に撃たれる。

「仕方無い!起爆しろ!」

 

 

 

 

 

 

 

え?

起爆........?

そう思った途端、胸の奥に激痛が走り、まるで心臓を握り潰されたような痛みに襲われる。

ウゲェ...えげつない...機関室を爆破しやがった。主機は生きているが、副機の幾つかが爆発。

エネルギー伝達に乱れが生じる。

思わず銃を二丁とも落とし、大量の血液を吐血する。

艦娘とて、受肉を受けている以上、身体を持ち、内臓を持ち、血液が流れている。

だから撃たれれば出血するし、殴られれば吐血する。

しかも船体のダメージとリンクしている。

戦艦の心臓部である機関室が爆破された。つまり艦娘の心臓が攻撃に晒されたのだ。

従って倒れこみ道着の裾を思い切り掴みうずくまる。

妖精さんが動いてくれているのか、修理は開始されているが、艦娘まで修理されないので、このままだ。

さっきの憲兵隊に追いつかれ、拘束される。ちょっとキツくない...?食い込んでいるんだけど..

手首を別のワイヤーで縛られ、無理やり立たされる。そのせいで更に吐血するが、憲兵隊が気に入らなかったらしく、蹴り飛ばされた。痛い...

気力を振り絞りカタパルトからF-105を発艦させ、ブラックホークのローターが回転を開始。十秒で浮上する。このブラックホーク。機動性が狂っているのだ。ローターを中心に機体が回転し、宙返り、横回転、急降下、75度上昇など、アクロバティックな飛行をしてくれる。

すぐに高度を上げ、後部甲板にいた憲兵隊にM345多銃身回転式機関砲が45mm弾を大量に吐き出し、元人間に変えてゆく。掃除...私がするんだけどな...妖精さん荒ぶりすぎ...

そんな間にも私は立たされ、連行される。ちょ...こんなんでも一応艦娘何だからちゃんとした扱いを...

歩かされると第四会議室という場所に連れて行かれ、突き飛ばされる。

そこは窓が壁の一面を全て占め、開放感のある会議室で、交渉していたと思われる提督がいた。

私を見て唖然としているが...あ、私大量に吐血していたな。失礼。

「...クックックッ...君の部下は随分と暴れるようだ」

「アメストリア.......?残念ながらその原因はあなた方上層部です。はやくまともな憲兵隊を送るか僕達に制裁の許可を」

ダメだ。提督は焦っている。おもにギッチギチに鋼鉄のワイヤーで縛られ、大量の血液を付けた衰弱した私が原因だろう。ちょっと罪悪感が...

「一部艦娘を保護しましたが、あのトラック泊地第四鎮守府はクロです。わざわざこの子を出してまで確認しました」

「ハッハッハッ!!やはり君は面白い!良いだろう。好きにしたまえ。憲兵隊を送るも良し。

君が直々に乗り込んで射殺するも良し、乗っ取っても構わん。が、君の部下の艦娘の処分は別だ」

「......ゴホッ...残念だが大将殿。私達は捕まらないようだ」

機関始動!最大まで引き上げる。そしてワイヤーを引きちぎり提督まで走り、伏せさせる。

同時に下に待機させていた主翼を90度反時計回りに回転させてホバリングしていたF-105を上昇させ、機関砲で掃射し、ガラスを叩き割る。そしてすぐに離脱させ、ブラックホークを寄せる。

私は提督の手を掴み飛び乗る。ふふふ...土壇場だったが、間に合った。

私はあのままだと色んな意味で死ぬだろう。

船体は解体され、欲しい武装は貴族様が勝手に抜き取り、使い方分からず己の無能さを否定し、欠陥品という烙印を押し、私は......どうなるのだろうな?モルモットかもしれないが、ならないから大丈夫だ。それをした時がこの世界の終焉だ。

 

さて船体のスクリューが最大で逆回転し、素早く後進してゆく。

煙幕が大量に張られ、艦内の憲兵隊はお帰り願った。黄泉の国に。

ホバリングしたF-105が適当に機銃で撹乱し、私達を乗せたブラックホークは甲板に着陸。

素早く格納され、F-105を回収し、すぐにトンズラする。

 

ー格納庫内ー

「大丈夫...なの?アメストリア?」

「む?大丈夫だぞ?」

実は無理ですハイ。出血がヤバイです。

提督にはすぐに艦長室に戻ってもらい、第一艦橋に転移。

椅子に座り込み、力を抜く。背もたれにもたれ掛かり、最後の仕事をする。

「リバンデヒ、カイクル、出航だ。母港に帰港する」

『了解したわ。大丈夫?』

「大して問題は無い。』

いいえあります。現に意識が朦朧としています。

妖精さんに指揮権を一時的に譲渡し、私は意識を手放す。

 

 

 

 

あ、この後だが、心配したリバンデヒが転移してきて椅子にもたれ掛かり意識を失っている私を見つけたらしく、医務室に運ばれ、機関室が修理された。

横須賀だが、世界最強(笑)の防衛システムが全滅し、当分は艦娘の警備のもと復興。

大将は気に入ったらしいが。出来ればまたお呼ばれはされたくないなぁ...




(;゜0゜)UAが9000を超えている...ナン...ダト...
あの時間つぶしにと投稿させていただいていますが...他作者様の作品に移るための踏み台になっているなら本望ですが...えぇ?


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12.アメストリアの日常(笑)

今日、小説情報を見ていたら、


UA10408


.............................。(;゜0゜)What!?
一万を超えていた!?ありがとうございます!

出来れば評価の方もして頂けるとありがたいです。ずっと灰色のままなので...( ̄^ ̄)ゞ



ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、私だ。アメストリアだ。

あの後一ヶ月程物資が届かないという事態になったが、生産したから別に大して影響は無かった。

私の名は良い意味も悪い意味も含めて広まり、鎮守府も同様に広まった。

 

詰まる所賛否両論だった。艦娘からの評価はよかったが。

まぁ、お咎めなしだったから良し。代わりにアメストリア型戦艦が三隻居ることがばれたし、大規模な作戦には必ず召集されるだろう。

 

さてつまらないまとめはさっさと終わらせ、今日はオフだ。

は?何時もだろって?

まぁ、否定はしないが、今日はちゃんとした非番だ。

 

本当の休日だ。何時もスクランブル待機だったからな。

しかし、だ。パラオ鎮守府には重大な問題がある。

市街地はある。しかし廃墟。

巨大な島の中でも、私達の三つの超巨大なビルことドック(地上)があり、鎮守府があるくらいで、何も無い。ドック(地上)は物凄く目立っているが。

アメストリア型を入れるサイズだ。奥行き5000m全幅700m全高500mの巨大な直方体が三つ聳え、隣に申し訳ない程度に幾つかビルが建っている。

 

少し登った所に各艦種の寮があり、木漏れ日の漏れる並木道を通り、対空砲のある門を通ると立派なレンガ造りの鎮守府、提督棟がある。

島回るか...暇だもん。

 

散歩してゆく。

うーん...ここの改造計画でも出すか?

地下も開拓し、第二ドックと潜水艦ドックに......娯楽施設?間宮さんを迎えたいところだが。

あ、第六駆逐隊だ。単縦陣で航行しているのも中々絵になる。

パラオの穏やかな海面を切り裂き航行する四隻の駆逐艦。排煙こそしていないものの限りなく原形に留めた艦影はやはり綺麗な三角を描きとても美しい。小ぶりな船体にこじんまりとした艦橋。煙突とは足場で連結された秘密基地のような構造はやはり憧れを持ってしまう。

と言うのも私ことアメストリア型戦艦の前部塔楼は大和型を拡大改造した物のためスリムな形状をしており、出っ張りといえば電探や環境測定機器類等を設置する為の台座やテラス、そしてツノみたいに生えてる二本の枝。あの枝には照明と降水量計測器、大気中の水分を計測する機材が設置されていたと記憶している。

大和型塔楼は後部にテラスっぽい出っ張りがあるんだが火力厨の妖精さんが放っておくはずがななく、45mm対空機関連装砲の段々畑になっている。しかしその内側はデットスペースになっておりそこを何かに活用できないか妖精さんと協議中だ。今の所は射撃場になりつつある...というか使ってる。

 

 

 

 

 

 

更に歩いて行く。

森を抜け、私が以前偶然見つけた綺麗な海岸。

ゴミが流れつかず、サラサラとした肌触りのいい白い砂が広がっている。

並みの届かない所に座り込む。俗に言う女の子座りだが、私の体は柔らかいので楽々だ。

袴に砂が付着するのが難点だが、叩けば落ちる。私達の袴は不思議素材だからな。防刃性能あるみたいだし。

 

「...ここに居たの」

「あぁ...リバンデヒ、如何した?」

「此処、綺麗ね...」

「まぁな。私が偶然見つけた。俗に言う秘密の場所だ。リバンデヒ、」

「何?」

「リバンデヒは4900年も偽りの性格を貫いていたが、何故だ?」

「知らないわ...お姉ちゃんがあんなに怯えて、キャラを思わず止めていたわね。あ、でもお姉ちゃんへの愛は変わらないわよ?」

「そ、そうか...」

 

それは勘弁願いたいが...過激なんだよなぁ...リバンデヒは。

 

「あら、夜這いかけましょうか?」

「それは本人に聞く物では無いだろう...お断りだ。私が寝れない」

「なら、今は良いわよね?」

 

何故そうなる...しかし飛び込んで来たので正座に座り直し膝に乗せる。

 

「〜♪」

 

ご満悦な様だ。背筋を曲げ、猫のように丸まっているリバンデヒを髪を撫でる。肩に届くか届かないかという長さの少しウェーブのかかった髪だ。

 

「リバンデヒ」

「何〜?」

「アメストリア型に他の船舶は格納出来ないのか?」

「出来るわよ〜?戦艦くらいなら電探とマストを収納して入れれるわ。」

「そうか...」

 

つまりアメストリア型戦艦というのは戦艦であり空母であり、補給艦であり、食糧艦であり、工作船であり揚陸艦であると。なんかチート...うん。なにこれ?

 

「チートよね〜」

「言うな。分かっている」

 

リバンデヒには心を読む技能があるのか?さっきから怪しい笑みを浮かべているし...凄い胡散臭い。

 

「お姉ちゃ〜ん?」

「何...ひゃうっ!?」

「ムッフフフフ....」

「やめっ!...ろっ!....ひゃん!?」

「ムフフフフフ...お姉ちゃん、敏感だからねぇ...♪」

 

こう、なんか不思議な感じだ。

身体中に電気が流れるかんじのぉ!?

結構強く揉まれる。やめろっ!お前の方が大きいだろうがっ!

鷲掴みやめろ!こちらとして非常に困る。反応が。

 

「はぁ...はぁ......リバン、デヒ...もう止めてくれ...」

「ふふふ...相変わらずお姉ちゃんは反応が良いわ...カイクルなんて思い切り蹴り飛ばしてくるのよ?妹なのに」

 

いや、誰だって嫌だろう...カイクル...激しいな。容赦無い。流石だ。しかし流血沙汰になる前に止めないとな...夜這いかけられるの嫌だし。

 

「ケホッ...もう止めろ...私は別の場所へ行く」

「はいはい。もう私はやらないわよ。さてさてカイクルはどこかな〜♪」

 

なんかひっかかるが、気にしない。カイクルは信頼しているし、スキンシップもリバンデヒのように過激では無い為大丈夫だろう。多分。

乱れてしまった巫女服を直しながら歩いて行く。

 

島の裏側。緩やかな丘が続き、海岸は岩が聳えており到底大型艦は入れない。

潜水艦も無理だろう。

まぁ、何も使う予定はないので良いや。ドックの全体像が見え始める。

...やはり平和は良い。

 

 

 

 

 

 

食堂にて昼食を取っているとカイクルが来た。

うん。多くない?

ほら、今日の当番撃沈してるじゃん...

 

「カイクル、少し食い過ぎだ」

「姉さんもだ。」

「私は改だからだ。これ位食わんと動けん。」

「燃料は必要無いが?」

「.......腹が減っては戦はできぬ」

「そうか...?弾薬の方が大変では無いのか?」

「まぁ...一万超えるとは思わなかったがな...」

 

そう。あの横須賀鎮守府ダイナミックお邪魔しますで弾薬を12494消費するという新記録を達成。

私が暫く工場になるのが決定したのは記憶に新しい。

思わずため息が出る。

 

「大変だな姉さんも。」

「あぁ...それはもう、な。」

 

暫くというか今日もだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて昼食を食べ終わり、現在は工廠にいる。

本日のメイン、開発だ。

私が開発したらどうなるのかな?と疑問に思い行動に移った訳だ。リバンデヒは何か止めたがったが、手刀食らわせて沈めた。

 

「妖精さん。ガンガン張り切っていこうか」

''ヒャッハーッ!開発です!''

 

妖精さんに適当に資材を渡す。具体的には250/30/200/30だな。電探徹甲弾色々でるレシピだ。

 

''何が要望です?''

 

何が必要なのか...?

 

「現在の普通の艦娘が装備出来る武装を開発してくれ」

''了解しましたー!!''

 

トテトテと走って行き、渡した資材を幾つか物々しい機械に入れるとレバーを私が引く。

するとゴウンゴウンと稼働し、何かを作り出した。

工廠妖精さんが慌ただしく動き始め、機械から火花が散る。内部で作業しているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッ!

失礼した。思考が停止した。

妖精さんが作り、お披露目です!という言葉と共に布が取られ、兵器が姿を現わす。

何が出てきたか?

 

荷電粒子砲

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

主砲、副砲

火力 +98

雷装

爆装

対空 +2

対潜

索敵

命中 +5

回避

射程 長

搭載可能艦

重巡 戦艦 軽空母 正規空母 水上機母艦 航空戦艦

 

 

 

と。はぁ...?(困惑)

荷電粒子砲って前世でも実現されなかった架空の兵器だよね?

駄菓子菓子妖精さんは作ってしまった。

アメストリアの副砲みたいだが、砲身はコイルガンみたいなのが二本。砲塔は10cm連装高角砲のように台形っぽく、角ばっている。

やけにぶっといケーブルが多いなと思ったら電力伝達か...イオンとかを飛ばすのか?

まぁ、普通の艦娘に載せれるという注文はこなしている。

さあ気を取り直して次だ!

 

 

 

30cm連装電磁力砲

☆☆☆☆☆☆☆☆

主砲 副砲

火力+99

雷装

爆装

対空 +62

対潜

索敵

命中 +12

回避

射程 長

搭載可能艦 重巡 戦艦 軽空母 正規空母 水上機母艦 航空戦艦

 

 

 

 

 

 

おいおいおいおいおいおい!?

アイエェェェエ!?ナンデ!?ナンデレールガン!?

何故何故何故!?架空兵器は荷電粒子砲で十分だ!

もう...なんで私がすると装備がぶっ飛ぶ?主砲クラスだけど空母に載ってるじゃん。

外見は大和砲よろしくで、砲身が三つに割れていた。大きさは...連装砲くらい?なんのとは言わない。想像に任せる。

さあてレバーを引こうか。真面目なの出てこい...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

砲弾 爆弾 ミサイル

火力+1000

雷装

爆装+1500

対空+700

対潜+200

索敵

命中

回避

射程 --

搭載可能艦

駆逐艦 軽巡 重巡 戦艦 軽空母 正規空母 水上機母艦 航空戦艦 潜水艦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Whaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaat!?!?!?!?

Why YOUSEI people ???

何故核!?何故核が出てくる!?

最終兵器だろ!

砲弾に積めるサイズまで小さくなってるぞオイ!?

 

「妖精さん。何故だ?」

''えへへ〜...ちょっと魔が...''

「はぁ...shit!提督になんて報告すれば良いんだ...」

あ、意外と()、ロイヤル英語発音良いわ。

じゃ無くて報告どうしよ...荷電粒子砲に30cmレールガンに核。

どうすれば良いんだ.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーおまけ(補足)ー

荷電粒子砲

40口径長

重量40t

最大角45度

砲身15m

砲塔450cm×325cm

イオンとかを加速させて飛ばす架空兵器。

妖精さんが張り切りすぎて作ってしまった。一門一門に粒子エンジンが積まれており、電力問題はのーふろぐれむ。チート。以上。

 

30cm連装電磁力砲

50口径長

重量105t

最大角65度

砲身15m

砲塔5.6m×2.2m

アメストリア専用と化した化け物。

一応他の艦娘も積めるが、現段階では無理。

アメストリアはこれを30cm連装砲と入れ替えたようです。

妖精さんヒャッハー!

 

口径---

重量 砲弾450kg 爆弾350kg ミサイル250kg

砲身---

砲塔---

砲弾、各艦娘による。

爆弾、艦載機 FB-99に換装可能。加賀さん!赤城さん!出番です!

ミサイル、普通の対地ミサイルに積める。

一番の問題。

本来は抑止力として使う戦略兵器。

妖精さんに魔が差し、作ってしまった。なおアメストリアは封印するつもりらしい。

 

 




その場しのぎの回...日常とか要らねーよ血を!硝煙を!という方はすみません。
一度精神病院に行くことをお勧めします。

今回は感想にて要望のあったレールガン、荷電粒子砲、核
という三つの兵器を出しましたが...核、ねぇ...予想していたので、アメストリアにはBGM-9が積まれていますが...使うかなぁ...


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13.一航戦が漂着しました!......え?

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アメストリアだ。ん?知ってるって?知らんがな。

さて、今日は何故か私と同じ場所に艦艇が座礁していたらしく、

「リバンデヒ、カイクル、すぐに周囲を巡航。大鳳、龍驤」

「「了解」」「何かしら?」「何や?」

「すぐに艦載機を飛ばしてくれ。機種は指定しない。」

「分かった。」「了解や」

 

私も行こうか。ドッグを上げ、海上に進む。

一応提督にも連絡を入れておいた。指示はこちら待ち。

提督...転移出来るようになってくれ...いや、無理か。でも一々歩くの面倒...

 

「リバンデヒ、どうだ?」

『赤城だと思うわ。一切の抵抗は今の所確認できず。というか人影が見当たらないわ。』

「了解した。私のみで突入する。カイクル、援護を。」

『了解した。』

「気をつけてね?」

「あぁ。」

カイクルがstandby...standby...状態になったのを確認し...何処に居るのかは分からない。

何故なら艦橋群は塔楼の他にも予備の中央演算処理装置などを置いておくスペースや各種観測機器を設置する数多の出っ張りがあり、遠くから見ればまとまって見えるものの、複雑な鉄骨の塊であるからにしてカイクルという一人を見つけるのは極めて難しい。砂漠の中からコンタクトレンズを探すーーという例えは実に的確だ。

 

赤城に私が発生させた波が当たるといけないので内火艇を下ろして赤城に乗り移る。

そしてタラップを駆け上がってその勢いで対空砲陣地に手を掛けて曲芸よろしく全通甲板によじ登った。

すぐにM93Rを取り出し、安全確認。

 

 

ーーこりゃひどい。

20以上のボロボロになった艦載機の残骸。穴だらけになった飛行甲板。

ひしゃげた船体、昇降版は途中で止まり、炎上。

艦橋は..航空母艦の艦橋は船体に比べ非常に小型であるため幸いに至近弾でズタズタになっている程度だ。

 

『姉さん、生命反応一だ、艦娘は生きている!』

「了解した。突入する」

 

M93Rを十字にクロスさせ、構える。

そして第一艦橋と思われる場所に突入。

正面、左右、天井、床の順に素早く敵影、トラップ等が無いかを確認し、艦娘の姿を探す。

 

「ひっ......!」

「お、落ち着いてくれ...」

 

突入すると、中はまだマシなレベルで現存していた。250kg航空爆弾の破片や赤城の構造物の破片か、艦橋内は並木の木漏れ日のような光がいくつも差している兵器としては異常事態。

海図らしきものは散乱し、調度品は尽く破損していた。

 

私が突入した途端、赤城がすぐに隠れた。

当然だ。たった一人で敵航空機や恐らく居たであろう艦艇の攻撃を被弾しながらも掻い潜り、やっとこさ逃げ延びたかと思えば島のような戦艦に囲まれ、挙句突入されたのである。誰だって怯える。

 

「私はパラオ鎮守府のアメストリアだ。安心して欲しい。保護しに来ただけだ」

「.......」

 

M93Rをホルスターに戻し、手を上げながら近付いて行く。

「信じて欲しい。私は保護をしに来ただけだ。「カイクル、援護止め。撤収してくれ」」

 

「.......本当に、信じて、良いですか?」

「あぁ。私が責任を持って保護する」

 

やっとゆっくりだが、赤城さんが立ち上がってくれた。

立ち上がってくれたことで見えた。赤城は大分やつれており、疲労の色が濃い。

そして私を見た途端、糸が切れたように倒れ込んだので滑り込んで抱き止める。

 

そして脇と足に腕を通して抱き上げる。

女の子が女の子をお姫様だっこするという特定の紳士諸君には大変美味しいシチュエーション。

良いだろう?

 

 

艦橋から出て、アメストリアの船体に飛び移る。

 

「リバンデヒ、赤城を曳航してくれ。大型艦ドックに入れる。地下の修理ドック1番だ」

「了解よ。でも坐礁しているし大破判定ね。曳行は厳しいわ」

 

...赤城位ならうちの妖精さんが直ぐに直すだろう。

曳行が無理となると手段が限られる。どこぞの三流国家のように非効率的な引き上げ方法は取りたく無いので、工廠妖精さんを派遣して現地で簡易修理。その後に馬力の高い艦娘に引っ張ってもらうしかないか。

取り敢えずは先に赤城を医務室に運び込み、妖精さんに預ける。

 

そして第一艦橋に転移する。

 

「提督、報告する。パラオ鎮守府に坐礁していたのは赤城と判明。大破判定だが、工廠妖精さんを派遣して簡易修理後暇してる艦娘に頼んで曳行。その後は工廠にて本格的な修理をする予定だ、」

『そう...艦娘は?』

「疲労が濃く、脱水状態でもあった為現在医務室で処置中だ。」

 

大破の傷もあるしな。

 

 

さて...どこの所属か不明の保護した赤城だが、医務室に寝かせ、栄養剤を点滴で入れる始末だ。

まぁ、大体分かっている。

あの人間に対する恐怖から見て、トラック泊地のあの豚の艦娘だろう。

 

少し失礼だったが、一度弓道着を脱がせ、入渠させた。

勿論アメストリアの船内にあるとこだ。以前高雄らが入渠した艦内浴室だ。

()()()()()()()()()()()()からだ。お陰で身体には大量の包帯が巻かれており、幾つもの傷があった。

入渠さえろくに出来なかったのだろう。大破してもあのバスクリンをぶっかけられたのだろう。

 

「妖精さん。赤城の修理に粒子エンジンを搭載してくれ。あと、あの重金庫の設計図を解禁。

まだ使わないが、改修をする際に使え」

''了解ですっ!''

妖精さんは走ってドックに行った。.......改ニになりましたとか止めてね?

 

赤城の弓道着は洗うとして、院内服に着替えさせた。うん。すごい身体でした。以上。

私は廊下へ出、ドアの横に立ち休めの体勢で立ち続ける。

 

さてさて二時間経ったのだが、

一向に起きない。疲れた...やる事ないし、アメストリアの船内だし、既に鎮守府には到着しているし。

 

「カイクル」

『何だ?』

「少し交代してくれ」

『...了解した』

 

一種の罰ゲームである。何の変化もなくてもずっと一定の体勢を取り続けるのは斥候の得意分野だが、残念ながら私は海のモノノフ。じっとするのは性に合わない。

 

 

 

 

 

 

『.....!......ん!.........姉さん!』

「何だ.....ふぅ...」

『赤城殿が意識を取り戻した様だ。足止めはしておく。提督を...』

「いや、私が連れて行く。」

『了解した』

 

すぐに巫女装束を整え、私室から出て走る。

 

「姉さん、赤城殿にはこちらから説明はしておいた。やはりあの豚だ」

「そうか...赤城、で良かったか?」

「はい......」

「まず貴官の弓道着は現在修理している。なので申し訳ないが、私達の巫女服を貸す。そして貴官は必ず我々が守ると誓おう。これだけは安心して欲しい」

「ありがとうございます...」

 

巫女服に着替えてもらい...対して変わらんな。精々が袴の長さが長くなった程度で、特に変化はない。

巫女服だから意匠があまり変わらないのは分かるが、艦娘の場合不思議巫女服が横行している中、正統派の巫女服要員は少ないのだ。FUSOとか山城はまんまだが、他の艦娘は裾が独立していたり水兵服と融合していたりと実にカオスだ。空母艦娘で正統派巫女服なのは赤城、加賀ぐらいではなかろうか。後はよく分からない不思議制服だったり商船迷彩があったりと凄い進化を遂げている。

ズイ₍₍ (ง ˘ω˘ )ว ⁾⁾ズイの姉は変化ないがな。

 

 

「何故銃を持っているのですか?」

「一応護身用にな。私達姉妹は自衛...憲兵のような役割も持っている」

「へぇ...そうなんですか...」

 

この鎮守府、驚く事に憲兵隊が居ないのである。

調べてみたらここだけ。確かに赴任当初は電しか居なかったから憲兵隊の必要性がなかったのだろうが、今は結構いるのだし、監視の意味で犬を入れてくるかと予想したのだが、意外な事に来なかった。

一機二式大艇が来て居たが、()()()()()で他鎮守府近海に緊急着水したしな。

あぁ不思議だなー(棒)

 

 

「あぁ。大本営との少し殺りあったからな...ここだ。一応私は後ろについておく。ここの提督は当たりだ。安心して話して欲しい」

「分かりました」

「カイクル、もう大丈夫だ。念のためにリバンデヒとドックにて待機」

「了解」

 

カイクルが転移するのを見届け、執務室の扉をノックする。

 

「提督、赤城をお連れした。」

「入って。」

 

扉を開けると、執務机に積み重なったこんもりとした白い山。

また増えたのではなかろうか。なんとも程度の低い軍人共だ。男の嫉妬とかキモいから一刻も早く黄泉にお帰りいただきたいのだが。

 

「さて、君はあのb......失礼。大崎司令官の所属だった...確か合同演習の時に居たね」

「びぃ...?はい。あの時はよく覚えています。」

「良かった...生きていたね...」

「はい?」

「いやね、今回君のいた鎮守府に襲...摘発を行う事を大本営から許可して貰ってね」

 

それが殴り込みでだがな...痛かった。

今でも思い出すと痛くなる。古傷が痛むっていうやつだ。

 

人間というのは思い込みで痣や火傷、死んだりするが、あれは脳の誤信号だ。地味に脅威だが、艦娘にもある。船体とダメージを共有していることもあってか、ズキズキと刺すような痛みや、破損箇所によっては腕や足が動かなくなる時もある。修理が雑だったりすると痛みは引かないし、完治しても痛みが消えなかったりする。

 

「大将殿から''好きにしろ''って言われているんだ。君はどうしたいかな?別に返してもいいし、ここに迎えても良いんだけど」

 

露骨に勧誘したぞ...しかし改修を既にやっているなら返すにも返せない状態にならないだろうか?

別にす途中で沈めろって言ったら提督を沈めるし。

 

「.......少し考えさせて下さい」

「まぁ、すぐにとは言わないからゆっくり考えてね。」

「提督、正規空母寮に案内しておく。『カイクル、待機止め。戻ってくれ』」

 

と言うことで赤城を正規空母寮に案内しているのだが、凄く考えている。

変な方向に曲がらなければいいが...あ、其処は柱だ...

 

 

 

 

「赤城、ここだ。時間はいくらでも、とは言わないが、あるから十分考えてくれ。」

「分かりました......あの...」

「何だ?」

「アメストリアさんは、どうしてここに?」

「さんはつけなくていいぞ。私は目覚めた途端から深海棲艦の攻撃を受けていてな。大破してここに座礁して、赤城と同じ位置だったな...そしてここの提督に保護されて居候させて貰っているのさ」

「......私も安心して暮らせますか?」

「あぁ。断言する。私の船体にある技術を流して要望があれば改修するし、戦いたくないならそれで良い。此処の提督は優しいからな今までの暴力や理不尽な仕打ちは無いし、劣悪な関係も無い。」

「そ.......う...です.....よ、ね...」

「あぁ。もう大丈夫だ。絶対に安全だし、綺麗で優しい所だ」

 

こういう時の言葉足らずにイライラするなぁ...ここまで、精神までボロボロの赤城に対してこんな事しか掛けることができ無い。赤城を抱き寄せる。そろそろ限界だろう。ゆっくりと休ませねば。

 

「どうだったのだ?姉さん?」

「まぁ、大丈夫だろう。ここに入るだろう。私に依存しなければ良いが...」

「む......それは問題だな」

 

何故に...?

 

「私が姉さんを独占できない」

 

スパーン!と乾いた音が響いたのは言うまでもない。

 



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14.侵攻開始!

短い......


 

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて現在は食堂に一同が介している。

第六駆逐隊に重巡の高雄型四姉妹に大鳳、龍驤、そして私達アメストリア三姉妹。

そして前には提督と赤城。

 

「えーと今日はみんなにお知らせです。ぶた...トラック泊地の大崎司令官から保護した赤城だよ。仲良くね。じゃあいただきます!」

「「「いただきます!」」」

 

提督の一声で一斉に朝食が始まる。

何時もは艦隊によって起きる時間や出撃が異なるが、今回のような新入りや報告の際は全員が集まる。まぁ、二十隻以下の鎮守府だからこそできる。

 

 

カット!!

 

 

そして朝食後。私達三姉妹と赤城が提督室に呼ばれた。

結局赤城はこのパラオ鎮守府に所属する事が決定したが、大本営に報告なんかしていないし、修理も実は終わっていない。改修に手間取っているのだ。

 

「提督、要件は?」

「うん。そろそろ潰しにかかろうかなって。」

「了解した。リバンデヒ、カイクル、出撃用意」

「了解」

「ふふふ...久しぶりに暴れれそうね...」

「赤城はここで待機していてくれ。提督、核は使わないが最近実装した30cm連装電磁力砲の使用テストを兼ねる。アメストリア、出撃する」

「うん。気をつけてね。手段は問わない。あ、大和達第一艦隊は連れてきて。第二は良いや」

「...了解した」

 

何故か帰りは荷物が増えるが良いだろう。六隻ぐらい余裕だ。

制圧戦だが、ヒャッハーしたいが、残念ながら他の提督もいるため、速やかに、大胆にだ。慌てず騒いで盛大に、だ。

 

「ドック上げ!機関始動!」

 

足場が上昇しドック(地上)に到達し注水。

1000mに及ぶ巨大なハッチが下降し、仕切りが無くなり海と繋がり拘束具が解除。

5ノットにて微速前進してゆく。三隻の超巨大戦艦が出撃。中々絵面は良いだろう。

 

「リバンデヒ、カイクル応答せよ」

「こちらからリバンデヒ〜聞こえているわよ」

「カイクル、聞こえている」

「全武装起動。特に30cm連装電磁力砲の動力伝達、電探連動などのチェックを怠るな」

 

私もだ。30cm連装電磁力砲だが、大量の電力を消費し鋼鉄の塊を音速で飛ばすので、主機、副機で賄えないこともないのだが、色々と面倒なため、一門一門に粒子エンジンを積み、それぞれでエネルギーを確保している。しかも粒子エンジンは高性能なため、5秒に一発は撃てる。毎分十二発だ。試しに旋回、砲身の上下、試射を行う。的が跡形もなく粉砕し、海面までをも割ったのは言うまでもない。

 

「目標確認」

「「目標...トラック泊地第三鎮守府」」

「両舷全速75ノット、二人共上陸制圧戦の用意を。」

「「了解」」

 

ふぅ...やはりインカムの長時間使用と並行思考は疲れる。

軽く伸びてから武器庫へ転移。

マガジンポーチを追加し、ベガルM145とUMPを取りそのマガジンを幾つか入れる。

ベガルはドラムマガジンに対応しているため、勿論そちらを装填した。

 

「妖精さん、あの中型艦は完成したか?」

''出来ています!先程最終点検を完了しました!''

「良くやった。ありがとう」

 

しゃがみこみ妖精さんをナデナデする。

可愛い......

っと話題がずれたか。あの中型艦の言うのはアメストリア船内に格納してある極秘の内火艇(?)だ。全長218m、全幅21mの中規模の戦闘艦で粒子エンジンと水流式ジェットポンプエンジンを四基搭載し、軽く100ノットは出す。静音性に長け、イージス艦やステルス艦のような外観で凹凸が殆ど無い。武装は41cm格納式連装砲三基にミサイル224セル。一切のレーダーに映らず、光学迷彩のプロトタイプを載せている。

 

 

 

「リバンデヒ、カイクル回頭90度。機関停止」

「「......了解?」」

 

よく分かっていないようだが、五分かけて三隻が単縦陣を維持し回頭。

 

「全門鎮守府に向け。座標ロック。寮は狙うな。あとアメストリアの格納庫に来てくれ」

「「どういう事?(だ?」」

「まぁ、待て。私の船体に上陸用の艦艇を入れてある。私とカイクルで目標の艦娘を救助し、離脱。同時にリバンデヒはこの三隻全ての砲を持って砲撃開始。その後に堂々と船体をぶんどる」

「ふふふ...じゃあ二隻の指揮権を貸してくれる?」

「あぁ」「構わない」

「では、作戦開始。」

 

カイクルと共に格納庫を歩いて行く。あ、ちなみに武装はベガルのみだった。カイクルさん、舐めてません?あ、サブがデザートイーグル二丁ですかそうですか...

「カイクル、銃にサイレンサーをつけろ」

「......50口径はロマン...」

「DEはいいから。分からんこともないが、今回は静かに殺らないといけない。」

「......了解した」

まぁ使ってくれても構わんがな。アメストリアの船体の右舷にあるハッチが開き、海面に滑り台のように下がる。そしてこの高速戦闘艦...隼でいっか。隼がレールに沿って落ちて行き着水。すぐにエンジンを起動させ光学迷彩を起動し航行。

私は全ての武装をコッキングし、ベガルを片手に操舵してゆく。

 

目標の鎮守府だが、特に艦娘は出ておらず、傍受した無線によると第一艦隊は非番。

腐りきった憲兵がなんかの小銃片手に巡回している。テキトーだなぁ...某暗殺の蛇さん来たらどうするんだよ...

結局、ベガルで狙撃する。その20mmレールには暗視スコープが設置してあるからな。

アメストリア三隻だが、ん?榴弾式結界弾を装填...150cm四連装砲は最大角、副砲の46cm三連装砲には一式徹甲弾。リバンデヒェ......

 



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15.れっつふほーしんにゅー

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて絶賛侵入中のアメストリアだ。

先程海岸に50ノットで隼を突入させフェンスを突き破り(笑)をカイクルがDEで射殺。

そしてベガルM145を構えながら侵攻している。目的地は寮。救出目標は大和、武蔵、長門、陸奥、加賀。重いのばっかだ...

戦艦寮は遠い為正規空母寮に侵入。

憲兵(笑)がいたが容赦無く射殺。思わずフルオートに肉塊にしてしまったが良いだろう。今までどう言う事をしてきたか亡骸で償え。艦娘を奴隷として扱うのは同じ艦娘、世界最強と自負する私が許さない。

加賀は...あ、ここだ。一見独房のようにも見えた寮だが、まさしく監獄だった。

ドアには外付けの鍵が二つ付いており、脱走出来ないようになっている。

銃弾は軽く装甲板を突き破る程の貫通力と威力を持つレベルの銃弾なため、危険。

仕方なくベガルの銃底で思い切り殴りつける。ベガルの耐久力自体半端ないので(戦車に踏まれてもOKらしい)余裕だ。

「......誰?」

思い切り警戒されました。まる。

確かに隼思い切り突き刺したよ?派手に音を立てたよ?銃声も立てたよ?

M145は下げた。

「私だ。パラオ鎮守府所属のアメストリアだ。」

「同じくカイクルだ」

「あの演習の時の.......何故此処に?」

「救出目標だからだ。間もなく''まともな''憲兵隊による摘発と一斉砲撃が始まる。その前に救出目標を回収に来ただけだ」

「そう。私をどうするつもり?」

「船体を含めパラオ鎮守府にて保護する。赤城が待ってるぞ」

「赤城さんが...?」

「あぁ。カイクル、加賀を先に連れて行ってくれ」

「了解した」

 

こちらアメストリア、現在戦艦寮に潜入中...途中5人程をKILL...じゃなくて何故かな?まず何となくだが気が合いそうな武蔵の部屋に入ったら何故か取り押さえられたんだよ。

私って下手なのか...?

「何故パラオの者が此処にいる?先程の銃声も貴様らか?」

「ぐっ......救助だ。もう直ぐで憲兵隊の摘発に入る。その前にパラオ鎮守府に一部の艦娘を保護する事になったんだ...」

ちょっとキツくありません?あがががが関節が...

「......」

「既に赤城、加賀を保護している。」

「...あの加賀が信じたんだ。私も信じよう」

「感謝する...ケホッ...『カイクル、武蔵、長門、陸奥を連れて行け。私は大和を保護する』」

『了解した。今長門の陸奥を保護している。そちらへ向かう』

「了解。」

「では私はカイクルとやらに合流しておこう」

「重ね重ね感謝する」

ドアを開け出ようとした途端、

 

タタタタダダダタダダダダダダッ!!

 

おいおいいきなり撃ってきたぞ...ちょっとアメストリアさんイライラしているんですよねぇ...

M145を構え、フルオートで一方的に殺してゆく。まるで慣れているかのように身体が勝手に動く。''彼女''だ。相当キレてる。

慣れた手つきでドラムマガジンを捨て、通常のマガジンを装填。フルオートで肉塊を生産してゆく。

そしてインカムを掴み、

「リバンデヒ、殺れ!」

『りょ〜か〜い♪うちーかたーはじめー!』

遅れて巨大な爆音が鳴り響く。ドックを、工廠を、提督棟を。一秒毎に150cmの砲弾が命中し地を大きく抉り取る。

その間に私は突入する。大和と書かれた部屋の鍵を...開いている?

「なっ.......」

大和は.......................寝ている?が、ぐったりとしておりシーツは乱れ襦袢ははだけている。

うん。何があったかよく分かる。少し臭いし。すごくイライラする。もう少しで理性が働かなくなる。

「大和、起きているか...?」

「.......」

意識無し...か。わぁお 胸大きいじゃなくてすぐに襦袢を直し背負う。HAHAHA!これ位余裕じゃ!

でもあの柔らかい物が...

「こちらアメストリア。大和を確保した。カイクル出航用意。船体を回収する。リバンデヒ、提督棟に全砲門を合わせ!てぇー!」

『『了解』』

馬力に物を言わせて走る。途中ゴミがいたがフルオートで肉塊に変えてゆく。同時にアメストリアのトマホーク2500基が一斉発射。隼の41cm格納式連装砲も起動。大量の砲弾をバルカン砲の如く放つ。

そしてカイクルに援護してもらいながら隼に飛び乗り機関を回し海岸から離脱してゆく。

隼は瞬時に70ノットを超える速度で浜辺を離脱した。

熱気が凄いが気にしてられない。主砲の50mを超える爆炎の下で格納しなければならない。

船体からレールがせり出し、隼を乗り上げさせ、クレーン5台で格納。装甲板が元に戻りロック。漏水していないか確認する。

「リバンデヒ!砲撃中止!繰り返す!砲撃中止!」

『えー...』

何故か拒否されたぜ!まぁ、良いが。どうって事ないし、大騒ぎになっているし。丁度良い。

私は大和を背負ったまま他の艦娘がいる隼の船室に入る。ここなら安全だし、万が一アメストリアが攻撃を受けても素早く離脱できるからだ。

「大和!」

「姉さん!」

長門、武蔵が駆け寄ってくる。あなた方も襦袢でしょうに...

取り敢えず預け、全員に聞こえない位置に避難する。

『姉さん、無事か?』

知らぬ間に己の船体に戻っていたカイクルから通信が来た。いら、何時戻った...?

「あぁ。カイクル、大和が犯されていた。」

『.........消すか?』

「...リバンデヒ、殺れ!仕上げだ!」

『はいは〜い♪まってました〜!』

 

ドゴォォォォォォォォオンッッッッッ!!!!!×60×120

 

船体が揺れ、砲身の加熱、発射機構のスプリングの摩擦など御構い無しに砲弾が撃ち出されて行く。艦娘だが、格納庫の大きさに驚いていた。いやいやこんなとこはまだまだ凄くないぞ?

主砲を見てから驚け。まぁ、気分は良い。()の。

「リバンデヒ、砲撃中止。曳航に入る」

『了解したわ。んー!スッキリした!』

リバンデヒ、トリガーハッピーだったか...?

兎に角、艦娘達を案内した。第一艦橋に来たがった艦娘もいたが、第一級の機密もあるため断り、隼の船室の一つを貸した。医療妖精を呼んでおき、処置と入渠の用意はしてある。

「こんな巨大な船体がこんな速度を...?」

いや、残念ながら事実です。しかし旋回に難がある...だ、か、ら、ちょっとした対策をした。

 

第一艦橋に転移し、妖精さんに指示を飛ばす。

「艦首右舷錨降ろせー!機関最大!舵左舷いっぱ〜い!タンク注水!バランスを取れ!姿勢制御装置起動!」

船体が物凄い速度で前進し、錨に引っ張られ、コンパスのように海上を滑る。遠心力が働くが、それ如きで戦闘を中断されたら最凶の戦艦の名が廃る。根性で耐えた。

十枚刃のスクリューが五つ。超高速で周り大量の海水をかき混ぜ、180度回頭したのだ。

あり得ない光景が広がった事だろう。

ドックに留まっている船体を確認。曳航する為にワイヤーを大量に撃ち込み、引っ張る。副機も回し、高速で離脱して行く。リバンデヒ、カイクルの二隻が私の船体に引っ張られている五つの船体を守るように接近し、三角形型の布陣が出来上がる。

勿論レーダーの感度を最大まで上げ、アクティブソナーも打って行く。

「妖精さん、工作妖精を集めて船室にいる艦娘の服を作っておいてくれないか?」

''了解しました!''

 

さて私は妖精さんに航行を任せ、隼の医務室に居る。

大和が寝かされているからだ。未だに意識を取り戻さず、ベットに横たわったままだ。

格納式の椅子を出して腰掛ける。

大和、か...大日本帝国海軍がほこる世界最大最強の秘匿兵器。全長263mを誇り、その大和砲こと46cm三連装砲の圧倒的な火力を持っていた。確か知識にあった、大和ミュージアムのいう記念館があり、砲弾や模型が展示されている筈だ。あれ......私は行ったのか...憶えていないな...知識しかないから分からん。

「........ぅ................ここ、は......?」

「大丈夫か?」

「......アメストリア、さん?」

「そうだ。ここはアメストリアの医務室だ。保護した」

「そう、ですか...妹達は...」

「大丈夫だ。第一艦隊は全て保護した。」

「...あの、私は......提督に..「言わなくて良い。何があったかは察している。一部のみしか知らない。」ありがとうございます...」

「いや、良い。まずは休んでくれ」

「ごめんなさい。大丈夫です」

「そうか。『リバンデヒ、対潜は?』」

『何も無いわ。何も。船舶一つも居ないわ』

つまり安全か...11:50。丁度憲兵隊が突入したか。

お、妖精さんが大和の服を持ってやって来た。仕事早いなオイ...

「大和、服だ。あと武蔵や長門達に船室にいるから行きたいなら勝手にしてくれ」

「私達はどうなるのですか?」

「望めば他の鎮守府に回すが、基本パラオ鎮守府に。駆逐艦達は他の鎮守府に回している。」

「そうですか...」

第一艦橋に転移する。大丈夫だろう。



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16.アメストリア、轟沈ス

 

ーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「妖精さん、第一主砲に九一式徹甲弾装填。アクティブソナー発信」

アメストリアからソナーが打たれ、様々な情報が流れ込んで来る...

 

み・つ・け・た☆

 

「てぇー!」

 

ドゴォォン!

轟音が鳴り響き砲弾を発射。

砲弾は回転しながら海面を叩き割り、海中を進み深海棲艦の真っ黒な潜水艦が三枚下ろしになる。

そして大量の気泡と重油が海面に上がり、遅れて爆発する。

「敵潜水艦轟沈確認」

一つ、可笑しい点に気付いただろうか?

私は''砲弾''で潜水艦という海中にいる砲弾が届かない筈の深海棲艦を撃沈した。

九一式徹甲弾自体、少し海中を進み、船底をブチ抜くのにも使えたらしいが、今回は潜水艦。

深度が違う筈なのだ。

しかし私ことアメストリアはそんな常識は通じない。

砲弾の重量は45t。内30tは火薬だが、徹甲弾は45t中25tが鋼鉄で出来ており、打撃力に強い砲弾なのだ。それに加えて主砲の150cm四連装砲というキチガイ染みた主砲から放たれたのだ。

しかも元ネタの九一式徹甲弾とは違い、螺旋状に彫られており、刃も付いている最早徹甲弾では無い。ただ水中弾としては効果抜群だ。

『姉さん...私の獲物だったんだが...?』

「別にカイクルのとは決まっていないだろう。ほら、西南南西に一艦隊だ」

『ふっ...主砲一番起動!最大仰角!てぇー!」

カイクルの主砲があり得ない速度で旋回し、間髪入れずに一帯が明るくなり、巨大な爆炎を上げる。反応は...消滅。流石は()の妹。

「アメストリア、で良かったか?」

声を掛けられ、後ろへ向くと武蔵がいた。休んで無かったのか...あと、知識に誤りが無ければ武蔵は細縁眼鏡を掛けていたはずなのだが、無い。いや、違和感があったから良いけどさ。

無いならないでまた新鮮だ。

しかし寝ていなかったか...大分疲れている筈だが...?(主に私が。)

「武蔵か...如何した?現在は第一級戦闘態勢だ。しかも貴官は客人だ。休んでくれ」

「いや...私達...特に姉を助けて貰ってありがとうございます...」

なんか武蔵の敬語って違和感MAX...しかし私では無いぞ?礼なら提督に言ってくれ。

「礼なら提督に言ってくれ」

実行、立案こそ私だが、決断したのは提督だ。

一番私を心配してくれる。じゃないとどこの所属、艦名さえも分からない不審船の艦娘を助け無いだろう。本当にお人好しだな...

「そうか。ならそちらにも言わせて貰おう。しかし...貴様は誰だ?私とて結構後の方に建造された身だが、アメストリアなどと言う戦艦の計画や建造は聞いたことが無い」

説明しても信じてくれ無いだろう。実は地球の船じゃありませんなんて言ったら。

「あぁ...私もよく分からない。突然現れた。神様のいたずらていう物だろう」

「.......幾つか質問、良いか?」

「幾らでも」

「あの主砲は何センチだ?」

「アレは150cm四連装砲。砲塔620×340、砲身600m一秒毎発。五基だから計二十門だ」

「......それが60門?」

「姉妹合わせたらな」

「そうか...この艦のステータス、情報を」

「機密事項だ。パラオ鎮守府所属の艦娘以外に教える気はない。」

「そうか。考えておこう」

''西南東距離15000kmに二隻です!''

「分かった。リバンデヒ、撃滅しろ」

『分かったわ。一番、二番砲塔起動!仰角合わせて!一式徹甲弾装填。てぇー!」

''西南東から超高速の飛来物!噴進弾です!''

何...?ミサイルなんて持っているはずがない...何故ミサイルが来る?

私達は撃ってない。他の右翼の連中でも無い。レーダーに反応が無い。

「リバンデヒ、回避しろ!」

『きゃあ!?お姉ちゃん...ごめんなさい...私、中破だわ...』

「了解した。カイクル、単縦陣だ!全武装起動!非常戦闘態勢!」

あのアメストリア型戦艦の装甲を持ってしても中破に追い込まれたのだ。厄介な敵だ...

「『ハープーン、一番から千番ハッチ開け!座標入力!発射!』」

私とカイクルの計2000発のハープーンが襲いかかる。これは流石に耐えられないだろう。

しかし慢心はいけない。

「主砲全門起動!最大仰角!」

''超高速で接近する飛行物体を多数確認!数...120です!''

次は音速攻撃機か?アメストリアのデータベースには沢山あるが、この世界には無い。

深海棲艦によって人類の戦闘機は落とされているからだ。

「三式弾装填!てぇー!」

五基の主砲から二十発の三式弾が撃ち出され、次の瞬間にはまたさらに二十発の三式が撃ち込まれる。そして四十発の三式弾は音速攻撃機の前で爆発し、大量の鉄片を降らせる。

次は気化爆弾の砲弾とか出しても良いかもしれない。ジェット戦闘機には有効だろう。

''全機消滅!ミサイル着弾!''

しかしレーダーから二つの反応は消えない。クソッ...最悪の想定が出てくる。

「全主砲斉射し続けろ!副砲も使え!グラニート、フルファイア!」

激しく閃光や爆音、硝煙の香りにグラニートの煙が上がる。三隻から鉄の暴風なんて比じゃない量の攻撃を加えてゆく。

''上空に飛来物!高高度爆撃機です!落下物確認!''

「全30mm機関連装砲を使って何としても落とせ!」

大量の銃弾が空を覆い尽くし、小さな影に殺到してゆく。そして大きな爆発が上空でした。

しかし30mm機関連装砲の砲身が過熱状態になり、冷却開始。

これで私が使えるのは150cm四連装砲、46cm三連装砲、30cm連装電磁力砲、20cm連装砲だけだ。しかし150cm四連装砲は消費弾薬が激しく、装弾機構が熱くなっているため、しばらく使えない。まあ、5分位だが。

そして46cm三連装砲は問題なし。30cm連装電磁力砲は...連射不可能。20cm連装砲は問題なし。

''側面から飛来物!1000を超えています!''

 

...

 

 

 

..........

 

 

 

...................

 

 

 

私、死んだか?

「使える砲に三式弾を装填!撃ちまくれ、ミサイルハッチ全て開け、SM-3発射!」

至近防衛迎撃ミサイルまで出した。そして、

「BGM-9一番から九番座標入力!二隻に打ち込め!」

初めて弾道ミサイルを使用した。これで全ての火砲が両側面から来るミサイル群につきっきり。

何か忘れてないか...?

''ッ!?上空に三つ爆弾!来ます!''

あ...詰んだ...30mm機関連装砲はあと一分。150cm四連装砲はあと四分。使えない。

多少のダメージは覚悟...!

「総員対ショック態勢!何かに掴まれ!」

二人の妖精さん、リーダー格の妖精さんを抱き締め、守るように丸くなる。

 

一発は前方の第二砲塔に命中。大破。

 

二発目は後方のカタパルトに命中。一基沈黙。離着艦不能。

 

三発目は艦橋群のど真ん中に命中。第一艦橋、自動射撃統制装置、中央演算処理装置、対空電探、全天レーダーが全壊。

 

又自動射撃統制装置が全壊したおかげで火砲が一斉に沈黙。

落としきれなかったミサイルが三番砲塔下自動装填機構に命中。弾薬庫に引火に大穴が開いた。

毎分100tのペースで浸水を確認。全隔壁を下ろす。

そしてダメージコントロール。姿勢制御装置も使い何とか航行し続ける。最悪隼だけでもリバンデヒに預けて行ってもらうしか...

『姉さん!無事か!?』

「ゲホッゲホッ...私は大丈夫だ。カイクルは?」

『私にも大量の戦闘機にミサイルが来て少なからず損害を受けた。小破だ。不覚...』

「私とて1000t級を三発食らっているがこの通り大丈夫だぞ?アメストリア型戦艦は簡単に沈まん」

と大口を叩いたが、結構ヤバイ。吐血した血を拭い、立ち上がる。第一艦橋はいつかのように大破。指揮機能を完全に消失。

第二、第三砲塔が大破。浸水もしている。ミサイルハッチが150程ダメになった。

30mm機関連装砲が...45基喪失。

しかし機関は無事。まだまだ動ける。

「リバンデヒ、艦娘を送る。収容してくれ」

『......了解』

隼を自動発艦させ、リバンデヒに退避。主砲を起動し直し、一番、四番、五番砲塔が再び砲弾をブチ込む。第二艦橋を起動。ズキズキと痛む右足を引き摺りながら移動してゆく。

この時は戦闘に頭が一杯で転移なんか考えて無かった。

''大丈夫ですか...?''

心配そうに妖精さんが見てくる。癒される...が、痛い...

''敵離れていきます...至近弾25発!''

「何もするな。どうせ対空砲も効かながぁっ!」

巨大な砲弾が艦橋群、煙突部分、113号電探、側面の船体を装甲ごと抉り取る。

25発全弾被弾。船体に三ヶ所の致命的な亀裂を確認。浸水。仰角5度か......

「損傷は...?」

''第二艦橋に二発、30mm機関連装砲に十発、船体側面に十発ピンポイント、後方機関室に三発...です。轟沈の可能性があります!甲板において大火災が発生!''

轟沈に近い大破か...最初を思い出すな...あの時もコテンパンにされたな...

機関室主機三基出力低下、副機十数基沈黙。

ははは...ついに私は沈むか.......今までも大破はあったけど悪運だけは強いからなぁ......

痛みに耐え切れず、諦めて意識を手放す。

カイクルから何か来ていたがごめん...最後に何も言えなかった...

「ごめん.......」



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17.大改装ダァ!歯ァ食いしばれェ!

ーーーーーーーーーーーカイクルsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私はカイクルだ。久し振りだな。

と、そんな事より大惨事だ。

単縦陣で高速航行中だが

私は小破。リバンデヒも艦橋に一発ミサイルをくらい中破。姉さんは1000t爆弾三発に対艦ミサイル千百二十発、大口径砲弾25発を食らい、一番、二番、三基砲塔大破。艦橋群が破壊、カタパルト一基沈黙、30mm機関連装砲が殆ど壊滅。大量の浸水に仰角5度。後部甲板から沈没を開始している。

「姉さん!大丈夫かっ!応答してくれ!姉さん!」

また沈んでほしくないぞ私はっ!

『ごめん........』

普段のよく通る透き通った声とは違い、か細く絞り出したかのような小さい声で今にも消えそうな儚さをはらんでいる。そしてその声を最後にインカムの通信が途絶。

しかしまだ沈んでいない!

「妖精さん!しばらく頼む!」

''了解しました!''

私は直ぐに姉さんの船体に転移。しかし出迎えたのは大量の瓦礫と硝煙の香りを伴ったドス黒い煙だった。第一艦橋が文字通り吹き飛んでいるのだ。天井からはコードが無数に垂れ下がり、火花を散らしている。

地獄絵図が広がっていた。直ぐに生命反応をスキャンするが反応無し。良かった...死んでいない...

まさかと、思って来たが、生きているだろう。そう楽観的に考える。

「姉さん!居たら返事をしてくれ!」

........一切の反応が無い。何故だ?

廊下には生々しく引き摺られた血の跡がこびりついている。嫌な予感しかしないんだが...

自然の足取りも重くなり、ゆっくりとした歩きになる。

む.......?あれはアメストリアの妖精さん...?如何したんだ?

なぜか物凄く焦っており、私を急かす。

まさか...姉さんか!

直ぐに走り出す。壁には生々しく血が飛び散っており、二本の血による線が床には広がり、

血の池には真っ赤に染まった姉さんが倒れていた。

直ぐに駆け寄ると息をしておらず、心肺停止。

しかも見た範囲では腕、足に大量の切り傷があり、血が滲み出しており、妖精さんによると内臓も幾つかやられ、右足が骨折。死んでいた。

「リバンデヒッ!姉さんが心肺停止だ!直ぐに船体を引き揚げる!牽引用ワイヤーを兎に角アメストリアに射出しろ!」

『.......了解』

この船体が完全の沈没した時が姉さんが本当に死んでしまう時だ。

直ぐに私の船体の医療室に転移し、姉さんを寝かせる。そして人工呼吸を施してゆく。

「一、二、三...んっ.......一、二、三...んっ...妖精さん!応急修理要員を全てアメストリアに回せ!何が何でもアメストリアの機関を生き返らせろ!」

引き続き人工呼吸してゆくが、良くならない。

くそッ......船体は...未だに浸水を続けている。

しかし妖精さんが頑張っているのか炎の勢いが若干弱まり、機関室から激しい火花が散る。

アメストリア型戦艦に積まれているウンターガングエンジンは無限稼働機関だが、整備が難しく、修理はほぼ不可能と言われている曲者だ。パーツ一つ一つ知り尽くしている私でも緊張する。

しかしそれは人間に限った場合だ。妖精さん、特に修理に特化した妖精さんなら別。

エンジンに宿る妖精さんが協力すれば尚更。

 

アメストリアから唸り声が上がり、機関が再び火を灯す。

そして船体の隅々にまで電力が伝達されて行き、アメストリアが息を吹き返してゆく。

生き残っている照明が付き、無理をしているかのように強制的に排水されて行き、再び海面を滑る。

しかしそれは出撃時に比べると幾つか水位が下がっているようにも感じる。

そして姉さんの方にも変化が。

「ゴホッゴホッ...!」

激しく吐血し始め、心臓が再び動き出す。

しかし意識までは戻らず、昏睡状態だ。でも生きていた...良かった...また姉さんを失いたくないんだ...

 

何とか鎮守府までは航行することが出来た。

鎮守府近海にて待機していた第六駆逐隊、高雄型重巡洋艦四隻に大和殿達の船体を預け、アメストリアを第一ドックに入れ緊急修理。私達は沖合にて自己修理中だ。大分驚いていた。まぁ、分からなくもない。世界最強の戦艦が大破したのだ。船体はひしゃげ、一番、二番、三番砲塔が破裂したように装甲板が捲れ上がり、砲身は折れている。艦橋群は辛うじて原型をとどめ、今なを煙を吐き続けている。甲板は全焼。板は張り直さなければならない。カタパルトも一基破損し、機関は二機沈黙。スクリューは一番、三番が脱落し、損失。舵が一つ割れ、動けない状態だ。

妖精さんに任せているがな。なぜかと言うと姉さんを鎮守府の医務室に運び込み、看病しているのが私だからだ。面会謝絶にしておき、私は姉さんの痛々しい身体に包帯を巻いてゆく。

切り傷には消毒し、ガーゼを当ててから包帯を巻いている。お陰で姉さんの巫女服から見える腕や足は全て包帯で覆われ、頭も包帯を巻いている。どこの重症患者だ...

恐らく松葉杖が必要になると思う。一応、板を当て、骨折に関しての応急処置はしてあるが、あとは自己修復力に任せるしかない。

そして船体だが、先程妖精さんの報告を受けたが、正直解体処分するべきレベルのダメージを負っていたようだ。あと少し自力で航行していたら船体が真っ二つに割れて轟沈していたらしい。

船体は激しく痛み、作り直したほうが早いらしい。なら、あの設計図を解禁しようじゃないか。

リバンデヒにも意見を問うたが、同意してくれた。流石私の姉。

妖精さんによってアメストリアの重金庫の一番奥にある厳重に保管された分厚い設計図の山。

その題名は、

 

[アメストリア型戦艦第二次改修計画書]

 

だ。そう、つまり改二だ。作り直したほうが早いなら作り直そうじゃ無いか。更により強力に。

性能はこれまでのとは比べ物にならない。火力だけなら航空戦闘艦の戦艦クラスに匹敵する。

主砲はこれまでの三倍以上、副砲は主砲であった150cm四連装砲。

船体は要塞の如く硬くなり、そっとやちょっとで傷は負わない。CICが実装され、中央演算処理装置が改修され、スーパーコンピューターに変わる。最新鋭の。そして対空砲の30mm機関連装砲は殆どが壊滅した為45mm対空機関連装砲に変えた。ミサイルは4500基に増加させ、艦載機も増量した。

今までも十分すぎるほどチートであったが、本来のアメストリア型戦艦一番艦アメストリアでは無かった。真のアメストリアは改ニからだ。しかし妖精さんは波動砲?とかいう砲を作ろうとしていたのだが、消費エネルギーや砲塔の大きさを考えると転覆するため、すぐに辞めさせた。お前たちは何と戦おうとしているのだ...

「........ぅ...ゲホッ...カ、イク...ル...?」

「そうだ。姉さん...良かった...生き、てた...な......」

視界が歪んで行く。あぁ...初めて泣いてしまったな...でも、本当に心配してしまったんだっ!

「すまない........心配を掛けてしまったか...」

「あぁ...グスッ......そ、うだぞ...死んで...しまったか、とっ!...っ.......」

抱きつく。本当に、本当に良かった。()()私達のように沈んで欲しくないのだっ!

 

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アメストリアこと私だ。

大破して気絶したんだが、妹達の努力によって何とかなったみたいで現在カイクル抱き着かれている。泣かせてしまったな...知識によると泣いたのは初めてらしい。

後で何でも聞いてあげようか。リバンデヒは...却下だな。色々と初めてを奪われ兼ねない。

にしても痛い。ズキズキと突き刺すような痛みがあるが、身体は不思議と暖かく、修理されていると思われる。

「カイクル...私の船体は如何なった?沈んだ、か?」

 

「いや...グスッ........大丈夫だ。現在最優先でかい...修理中だ。」

「そうか、あの、起き上がれないから手を貸してくれないか?」

「...あぁ。分かった」

そう、カタパルトがやられているせいで、右足が折れているのだ。処置がされているのは先程目に入ったが、カタパルトが修理されない限り自己回復は無い。

カイクルに肩を貸して貰い、何とか立ち上がる。少しフラッとしたが、カイクルに支えてもらい、倒れるのは何とか回避。腕は全て包帯に包まれ、所々赤く染まっており、巫女服も真っ赤に染まっている。私の事だが、何とも痛々しい。ん?頭にも巻いてある...うわぁ...

「提督は?」

「提督室にて応対中だ」

「なら乱入するぞ」

「了解した」

報告を兼ねて乱入しようじゃないか!

HAHAHA!....はぁ...まぁ、ここに大和達が来るのかも気になる。

今の所火力は余分な程あるが、表向きの普段動く主力艦隊がいて欲しいし、無論チート化して欲しい。目指せ鎮守府全体チート化!だ。

 

ドアを軽く叩き、左手でドアノブを捻る。

右足を引き摺りながら入室する。

「提督、只今帰還した」

「.......あ、うん。おかえり......大丈夫?」

「大丈夫では無い。それよりも大和達、入るのか?」

「........貴女に信頼されているのだから大丈夫でしょう。大和以下五隻、パラオ鎮守府に所属します!」

「了解した、提督」

「?」

「申し訳無いっ!」

『え?』

全員から何言ってんのコイツっていう目線を向けられるが、気にせず頭を下げる。

()にもだ。私の不注意...結界を張らなかったせいで、アメストリアは大破し、リバンデヒは中破、カイクルは小破し、修理に大量の資材が溶かされている。

「私の所為で10万は鋼材が消えただろう...?」

「えっと、いや?君だけでは20万行くか行かないか...」

........おおっと?以前聞いた情報と違うぞ?

「私はまた改修に...か?」

「うん」

「はぁ..........リバンデヒ、私の重金庫にある設計図を使ったか?」

「何のことかしらね?」

でなければ20万という大破からの修理消費量の二倍の量が溶けないだろう...

しかし、あの改修を使ったのか...開発大変だっただろうなぁ.......主砲、レア度が☆十五個くらいあったし。

だってさ?

 

 

 

80口径500cm四連装砲

 

 

 

 

なんてな?

はーい分かってます!分かってます!色々と可笑しいことは分かってます!

私も妖精さんに連れて行かれて計画書を読んだ時は何も言えなかった。

500口径って何やねん...おかしいやろ...

「まぁ...いい。どうせあの改修には一週間はかかるだろう。ゆっくりと休ませて貰う」

「うん。ゆっくりね。大和達はカイクルについていってね。リバンデヒ、少し残ってくれるかな?」

「分かったわ」

 

ということでリバンデヒを残して全員解放。カイクルが大和達にアメストリアの機密情報を説明している間に入渠させて貰う。じみに「いい加減さっさと入渠してこい」とカイクルに言われた時は少しおちこんだ。

取り敢えず巫女服を変えてみたが、変わらず初期の巫女服だ。改ニの巫女服って何か変わるのだろうか?

脱衣所にて綺麗にした巫女服を脱いで行く。今までは三姉妹で入っていたのだが、今は一人。

道着を脱ぎ、袴、襦袢、サラシの順で脱いで行く。

そして申し訳無い程度にタオルで隠し、浴槽に入る。

少ししみたけど。

不思議と激痛は走らず、むしろ癒えてゆく。

なにこの謎技術。

はぁ〜〜〜癒されるぅ...この()の身体になってからより好きになった気がする。

気持ちいんだもん。

「はぁ......ひゃん!?」

何者かに突然胸を揉まれる。というか犯人一人しか思いつかない。

「ふふふふふ...やっぱり反応いいわぁ...」

リバンデヒだ。ナンデ!?何でいるの?提督に呼ばれてたでしょ!?

なんかデジャヴが.......しかも慣れた手つきだ。変な感覚にぃ!?

「やめっろっ!リバンデヒッ!ひゃん!?」

「うふふふ...敏感だからねぇ〜♪」

「やめぇ!?ケホッ.......リバンデヒ、やめてくれ...もうやらないって言ってただろう...」

「何のことかしらね〜?」

「ケホッ...まぁ、良い。それよりもどうしてリバンデヒは提督に?」

「別にどうってことないわよ。我がアメストリア軍の技術を大本営が要求してきたからどうするかどうかっていう話よ」

「断固拒否する」

「当たり前よ。最新技術が詰まっているのよ?機密中の機密を洩らす訳無いじゃない」

「要求されたら自決する...しかし、行ったほうが良かったのか?」

「いいえ?大丈夫よ。技術漏洩は出来ない。それよりもお姉ちゃんを轟沈ギリキリまで追い込んだ深海棲艦だけれど100000mに捉えたわ。けど二隻だったわ。」

「私達の同じ存在、か......」

アメストリア型戦艦、つまり私達だが、艦娘側のみにきたわけじゃないだろう。

だからいても可笑しくない。けど妹であることには変わりない。

「そうよ。あの黒い戦闘機はF-105。紋章からして重装空母加賀ね」

「苦戦は.......するかもしれないな」

「いえ、お姉ちゃんなら大丈夫でしょう?アメストリア型戦艦一番艦アメストリアは改ニから真価を発揮するのよ?」

「まぁ...無理とは言えないが...」

あのステータスを見せられるとね...今までの改修は慣らしの為だったて言われても納得せざるお得ないレベルで変わる。今まででも充分チートなんだけどなぁ...

「まぁ、会ったらな?」

会敵したら潰す。残酷だが、それが戦争だ。()の記憶を見ていると嫌でも分かり、日本がどれだけ平和でのんびりとしていたか分かった。

「えぇ。今度こそ叩き潰すわ」

「あぁ...リバンデヒやカイクルも改ニになったのか?」

「時期を見てだけれどそのつもりよ。高速建造材を使うつもりだけれど」

ん?改修に高速建造材って使えたっけ?それはゲームの知識か...ここは現実。武装も改造できるし、ゲームの制約は受けない。

レーダーに映ったのは4650×540の艦影と488.5×120.6の艦影。

正直大量のミサイルをぶち込んで(BGMも)殺るしかない現代版艦隊決戦か...

接近戦やろうぜっ!というなら受けるつもりだが...どうかなぁ.......

 



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18.アメストリアの性能一覧

今回は本編は進みません。
性能一覧です。

激しいチートに注意。


正式名 アメストリア型戦艦一番艦アメストリア改ニ

 

 

簡単な説明

アメストリア國建国から約4900年現役であり続け、アメストリアでは超大物艦。

ネームバリューは絶大。長門をイメージしてもらえると良い。

アメストリア海軍第一艦隊旗艦であり続けたが、あの事件を最後に第一艦隊は全滅。

艦長の自決を機に自沈。この世界に生を受ける。

 

 

■ガチすてーたす■

総排水量 19565000t

全長 4650m

全幅 530m

全高420m

 

 

◆装備◆

主砲 500cm四連装砲 五基 二十門

副砲 150cm四連装砲 六基 二十四門

副砲 46cm三連装砲 二十基 六十門

副砲 30cm連装電磁力砲 百二十基 二百四十門

副砲 20cm連装砲 二百基 四百門

対空砲 45mm対空機関連装砲 三千五百基 七千門

ミサイルハッチ 四千五百基

BGM-9(大型特殊弾頭) 十五基

 

五五六式 大型絶対干渉結界発生装置

一一二式 三次元立体全天レーダー

九九七式 全海域対応型万能ソナー後期Vlll型

四七式 姿勢制御装置lll型

二〇式 中央演算処理装置 後期XVlll型

一一三号 対空電探 後期Vll型

(内火艇)用特大型格納庫

艦載機用中型格納庫

隼 一隻

F-105 六機

F-75 九機

CH-4 三機

 

 

◆艦これ版すてーたす◆

耐久 45230 93 ←大和

火力 87500 96

雷装 15450 88

回避 38 00

対空 35000 27

搭載 14500 50

対潜 14560 0

索敵 30000 15

射程 超極長 長

運 6 12

速力 超高速 低速

 

 

■艦娘に関しての概要■

本作の主人公。

前世に関して趣味、知識のみ引き継ぎ、家族関係から自身の性別、年齢まで一切を憶えていない。

何が原因かは全く不明だが、この世界へとやって来た。

主人公であるアメストリアの艦娘は精神体が魂魄から剥離しかけ、その隙間を埋める修正力で今作の主人公が接着剤兼緩衝材としてぶち込まれた。

その結果、船体の操作方法が不明であるため序盤では開幕大破という大敗北を喫した。(あの時の深海棲艦はアメストリア第二改装ver)

その後パラオ鎮守府へと漂流し、座礁した所を電が発見し提督に引き取られた。

それ以降居候だがアメストリアが居れるようになり、秘書艦として活躍していった。

そしてアメストリア型戦艦二番艦リバンデヒ、アメストリア型戦艦三番艦カイクルを色々あって建造して、現在に至る。

主人公はあくまで経験や本能に従って動いていたが、最近決意を新たにして自分の意思で動き始めた。

それまでに何回も深海棲艦にボコられているのは気にし無い。

最近は海外艦であるドミートリーを迎え、まぁまぁな関係を築いている。

 

 

■今作の船体■

本作品ではまず突然海上に主人公と共に出現した。

しかし操作方法も分からずにほっぽり出されてため大破し、事あるごとに破損してきた。

一度はトラック諸島第三鎮守府にて艦娘の救出時に本当に轟沈寸前まで追い詰められたので、好かれているアメストリアは妖精さんのガチの改装によって装甲がゼロ距離からの600口径砲に耐える特殊装甲に全て張り替えられ、主砲も500cm四連装砲に換装された。

絶対干渉結界という一切の物理攻撃を受け付けない結界も導入され、現在まともに殴り合って勝つことが出来る艦艇は存在しない。地球では。

また、元の船体ではブロック一つ一つ、配線全てに時間逆行術式が刻まれていたが今作ではそれが全て効力を失っている。

 

 

 

 

最後に、

 

妖精さんの技術力は ス バ ラ シ イ ! !

 

 

 

 

 

△兵装スペック△

◆500cm四連装砲◆

重量 97434t

最大角 45度

射程 548km

口径 500cm

口径長 80

砲弾 500×700(cm

 

・弾種

通常弾

三式弾

一式徹甲弾

九一式徹甲弾

榴弾式結界弾

拡散型結界弾

粒子弾

気化弾

ウンターガング弾

 

装填機構 ブローバック式。(拳銃の巨大版をイメージしてもらえればありがたい)

一秒毎発の速度で連射可能。

史上最悪の巨砲。撃ってはいけない。しかし撃たねばならない。

今作品ではよく使われる。砲弾は一発で戦艦を抉り轟沈に追い込む。弾種によっては大変な事になる。

 

一基あたり火力+2500

 

◆150cm四連装砲◆

重量 26250t

最大角 65度

射程 235km

口径 150cm

口径長 50

砲弾 150×550(cm

弾種

通常弾

三式弾

一式徹甲弾

九一式徹甲弾

拡散型結界弾

榴弾式結界弾

粒子弾

気化弾

ウンターガング弾

 

 

装填機構 ブローバック式 (拳銃(ry)

最大角が65度に上がり、炸薬の高性能化により射程も増加。

命中精度の高精度化、射程の長距離化の為、砲身を少し延長。

アメストリア改ニ改修の際に開発された150cm粒子弾、気化弾を新たに搭載。

 

◆46cm三連装砲◆

重量 2450t

最大角 50度

射程 350km

口径 46cm

口径長 55

砲弾 46×250(cm

弾種

通常弾

三式弾

一式徹甲弾

九一式徹甲弾

榴弾式結界弾

拡散型結界弾

粒子弾

気化弾

ウンターガング弾

 

装填機構 ブローバック式

かの有名な大和砲だが、アメストリア型では副砲の一つ。連射力がある為両用砲として活用可能。

 

◆30cm連装電磁力砲◆

重量 1480t

最大角 60度

射程 47km

口径 30cm

口径長 45

砲弾 30×150(cm

弾種

通常弾

粒子弾

 

装填機構 ブローバック式

電磁力炸薬複合式(鋼鉄より)

船体側面の窪んだ部分に20cm連装砲と共に配置されている副砲の一つ。

 

 

 

◆20cm連装砲◆

重量 1685t

最大角 60度

射程 63.7km

口径 20.3cm

口径長 50

砲弾 20.3×89.7(cm

弾種

通常弾

粒子弾

三式弾

 

装填機構 ブローバック式

 

 

20cm連装砲と名を打っているが正確には20.3cm口径である。

30cm連装電磁力砲、同様窪んだ部分に配備されている。射程が短いのは長距離射程の担当をしているのは46cm三連装砲であり、30cm連装電磁力砲、20cm連装砲はあくまでも両用砲。対地攻撃を視野に入れた近接防衛用の砲としての意味を持っている。

 

 

◆45mm対空機関連装砲◆

重量 1.5t

最大角 90度

射程 9800m

口径 45mm

口径長 120

砲弾 45×470(mm

弾種

通常弾(硬芯徹甲弾)

 

装填機構

ガトリング式(CIWSやゴールキーパーなどの機関砲に準ずる)

アメストリア型戦艦唯一の対空砲。

この45mm対空機関連装砲は艦種問わず海軍で採用された汎用性の極めて高い傑作対空砲。

毎秒数百発の連射力に高い命中精度、対空砲としては長い射程など優秀な面が多く、規模も2m×2mと小型で大量配備が可能。一部陸軍や軍用機にも使用されている。因みに弾格は陸海空全軍で統一されている。

しかしこれを設置するには大量の薬莢を処理するシステムが必要となり、何処にでも置けるというわけではない。

 

 

 

□船体

外見は大和型に似ており、大きくした感じ。

艦橋群、主砲の外見も大和型に準ずる。

全体的に黒に近い濃いダークグレイで染められ、かなり渋い朱色(艦艇色以上の濃度)で船底は塗られている。

 

主砲である500cm四連装砲は前方に階段状に三基、後方にニ基配置され、副砲の150cm四連装砲は主砲の後方左右と艦橋群側面に一基ずつ配置。

30cm連装電磁力砲や20cm連装砲は甲板の下に船体が窪んでいる所に設置されている。そのため、旋回角度が180°制限されている。

45mm対空機関連装砲は艦橋を中心として左右対称に配置されており、ハリネズミ。

船体全域に満遍なく設置されているが、大体は艦橋群に密集している。

使用頻度が高い為何時もその六砲身は黒く煤汚れている。

 

ミサイルハッチは側面の出っ張った船体に二千基ずつ、前方甲板に二百五十基、後方甲板に、二百五十基配置されている。

又、砲として認知されていない重機関銃などの対空砲も様々な所に設置されて、非常に高密度の対空砲火が展開可能。霧みたいな弾幕が張れるため蝿も進入不可。

 

 

妖精さん達がヒャッハー!!した為、無駄に高性能で快適な居住空間を有し、CICを実装し、電子戦にも対応。中央演算処理装置(改)により、位置演算などを始めとした処理がスムーズになり、ペンタゴンやホワイトハウスは片手間に掌握できるほどの圧倒的な処理能力を持つ。

 

又、内部に万能型生産装置を有し、鋼材、弾薬を生産しながらでも50〜70ノットが出せるように。また光学迷彩、水中潜行機能を有する。

 

機関は主機ウンターガングエンジン14基(予備も含め)

副機に粒子エンジン百二十基。

発電量 計測不能。中国の全電力を賄えるかもしれない。

馬力 無限大。

スクリューは10枚刃で、エンジンから回したエネルギーを直接当てて回転させているためイージス艦のように急加速が可能。ただ元々7.6kmの船体のため対して回避はできないし、そもそも想定されていない。

 

また「機関最大」とは船体が保つ範囲でのことを指す。

同じように「巡航」は通常の艦隊行動を取る際に出す速度。

「限界突破」は「機関最大」というリミッターを解除した船体の耐久性を考慮しない正真正銘の限界突破。これはとある方法により船体をもたせたまま動かすことができる。

艦首は駆逐艦のように鋭く、突撃を想定して作られている為軽く戦艦でも引き裂く。

又、船体全体に特殊装甲を追加。大体の攻撃は効かない。

魚雷は最低200000本命中させなければ穴が開かない。

 

 

 

□艦娘について

腰まで艶のある黒髪を下ろしており、改ニから鉢巻のような白いリボンを巻いている。

神々が作りし神々しいほどの完璧な造形の顔を持ち、中々に良いモノを持っている。(何処がとは言わない)

巫女服はちゃんとした改造されていない正統派の巫女服だが、袴であり帯の部分にはベルトも巻き付けて五式自動拳銃を下げるためにホルスターを装着可能。

見るものは同性であろうと誰であろうと見惚れ、魅了する。サキュバス...?(NOT淫乱)

 

性格は冷静で滅多に激情せず、感情をあまり表に出さない。

現実主義者で仲間思い(艦娘至上主義)。そして艦娘に対して誇りも持っており、艦娘をモノ、奴隷として扱う人間には500cm四連装砲の雨を降らせるなどキレると怖い人。

 

またそのコンセプト、

『単艦で空軍からの攻撃の一切を受け入れずただ一方的に文明を焼き払うことが最低条件』

の通り、火力に物を言わせて殺る。その人が人間を完全に信じれなくなった時が地球の終わり。

他人に対して好意の差が激しく、妹に対してはとことん甘い。

 

そして最大の特徴である転生者だが、自我、知識だけが憑依し、記憶は全く無い。そのため、前世で誰だったか、何をしていたかは一切覚えていない。

しかし「アメストリア」の影響か口調は男っぽいが、中身は割とピンク色かつあほである。

そして提督には深い恩義を感じているが艦娘の方が大事で艦娘を甘やかすのに集中しており不憫。

 

 

 

 

ーアメストリア型戦艦二番艦リバンデヒー

アメストリア型戦艦の二番艦であり、現在は改ニ(予定)であるため、装備などは一緒。

リバンデヒはアメストリア海軍第一艦隊緊急旗艦として指定されており、旗艦に万が一のことがあった場合指揮権がリバンデヒに移る。

最期はアメストリアを庇い轟沈。この世界に建造で生を受ける。

 

ー装備

割愛

 

ーガチすてーたす

割愛

 

ー艦これすてーたす

割愛

 

ー船体

外見は全く同じ。

しかし塗装は少し薄い灰色である。まぁ、十分濃い灰色であることには変わりがない。

またこちらも妖精さんヒャッハー!!したが、生産装置は積んでいない。

しかし光学迷彩、水中潜行機能は装備している。

常にアメストリアの国旗、気品のあるワインレッドの下地に黒いシルエットで三八式歩兵銃が交錯し、銃弾、錨、特型の戦闘機が描かれ、上に鳥居が描かれているを掲げている。

 

ー艦娘について

初期はかなりイラっとくるキャラ(束さん)で通していたが、姉のかつてない怯え様からキャラをかなぐり捨て、現在の落ち着いた口調である。とは言っても姉第一である事は変わりなく、おちょくって楽しんでいる節もあるが基本的にはアメストリアを大切にしている。

外見として。

ウェーブのかかった黒髪を肩まで下ろし、優しそうな蒼眼を持ち、劣らずの美貌を持っている。

大人としての気品を持ち合わせたお姉さんキャラだが、

 

 

重度のシスコンである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重度のシスコンである。

 

 

これが全て崩壊させているとおもう。

 

性格だが、落ち着いており、信頼のできるお姉さんという感じ。

何時も微笑みを貼り付けているが、本当に笑っているかは不明。

しかもそれは艦娘の前のみでトラック泊地の件以降人間の前では無表情になる。

事実凄みのある笑みを習得している為、龍田の超上位互換と考えればいい。

 

PS

同じく4900年生きているので、正真正銘のB-ピチューン!!!

 

 

 

ーアメストリア型戦艦三番艦カイクルー

アメストリア型戦艦の三番艦である。竣工日、進水日、登録日共に一緒の為正確には妹ではないのだが、命名順に一番、二番、三番と妹が決定された。

因みに第一艦隊では一番の武勲をあげていた武闘派の戦艦。

 

ー装備

割愛

 

ーガチすてーたす

割愛

 

ー艦これすてーたす

割愛

 

ー船体

リバンデヒと同じく濃さの灰色に渋い朱色の船底で特に変化無し。

しかしこちらも妖精さんがヒャッハー!!したため、

居住性が上昇。

光学迷彩、水中潜行機能を有し、光学迷彩をよく使っている。

 

ー艦娘について

外見としてアメストリアと同じくらいの背に太腿あたりまで黒髪を伸ばしている。

またつり目の蒼眼で凛々しいという感じを受ける顔立ち。

大太刀を常に腰に下げており、アメストリアの裏のホルスターを見抜くなど、結構暗殺者として向いている。

武器大好き。

性格として古臭く、冷静で義理固い。礼儀を重んじ、借りは返す感じ。

姉のアメストリアに憧れ続け、男口調を真似る。しかしこっちの方が若干堅苦しい印象。

相手を殿をつけて呼ぶことが多く、提督のみ殿をつけない。

三人共々信頼を寄せている。

また、アメストリアを侮辱されるとブチ切れ、どこにいてもウンターガング弾頭のミサイルをブチ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーおまけー

この世界において艦娘は本物の船体を操る「アルペジオ方式」で、妖精さんに指示を出すことによって船体を運用している。本来なら艦娘一人でも動かすことはできるのだが、妖精さんのサポートがいると何かと楽なので協力関係になっている。また船体のダメージと艦娘の負傷内容が連動しており、小破、中破、大破での負傷のレベルが分かれている。

 

浸水=流血

内部被弾・爆発=血管破裂

カタパルトやスクリュー=足骨折

機関(缶)=心臓

バルジ=肺

(但しアメストリア型戦艦は主機が爆破されると地球がその文字の如く大惨事。)

 

 

 

 

 

 

□パラオ鎮守府所属艦娘一覧□

 

◎駆逐艦

 

◎軽巡

所属なし。

 

◎重巡

利根

高雄

愛宕

摩耶

鳥海

 

◎軽空母

龍驤

 

◎正規空母

赤城

加賀

大鳳

 

◎戦艦

アメストリア

リバンデヒ

カイクル

大和

武蔵

長門

陸奥

 




口径長を延長しました。15は流石に短いね。75mしかないね。85だと425mもあるからね。というかそれくらいないと撃てないよね。ブルーノとかカールたんじゃないんだから。

説明文を大幅に追加。

2015 9/30 備考を大幅に改変。設定が薄すぎると感じたため。

2015/10/16 500cm砲弾の威力ですが、25500000J(ジュール)となりました。ナニコレ。
25500000個のリンゴを1mから一点に落とした時のエネルギーと同等らしいです。んー?
よく分からなーい( ゚∀゚ )ハァーハッハッ!!


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19.アメストリア改ニ...うわぁ...

お知らせです。
ストックが切れた為、1日だったり2日だったりと更新ペースが乱れます。


ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれから三日...くらいだったと思う。

いやな?あれから書類の処理で徹夜したから日にち感覚が鈍ってるんだよ。

()のスペックを使っても終わらないって...

 

そして本日やっと終了した大和達の臨時改修(修理)とアメストリア改ニ。

大和達はエンジンを粒子エンジンに積み替え、船体の強化、46cm三連装砲をアメストリア製のデタラメな連射速度の主砲に積み替えた。

説明に手間取ったがな。

 

そして私の船体だが、見た途端倒れかけた。

見るからに主砲が太くなってるんだよ...誰でも驚くだろ...事前に説明は受けたし、図面も見たが、

実際に見るとやはりデカイ。いや、アメストリア全体を見るとまだまだなんだが、近くで500cm四連装砲を見ると煙突を横倒しにした様な太さなのだ。オプティマス砲と名付けたが、粗方間違えていない。しかし旋回の動きは良い。

 

しかもあの爆弾やミサイルを落とし損ねた対空砲は45mm対空機関連装砲に変わり、明らかに八本の回転式砲身が太くなっている。ボフォース40mm機関砲を超えた...

ミサイルハッチも側面の張り出した船体に増えてるし...艦橋にSPYレーダーみたいなレーダー?がついてるし...マストが高くなり、対空電探が大きくなった気がする。

妖精さん.......張り切りすぎかな...

 

「抜錨!機関始動!」

火花を散らし巨大な鎖が巻き上げられ鋭い形をした錨が船体に戻り、機関が唸る。

電力が隅々まで行き渡り、第一艦橋の電子機器に明かりが灯ってゆき、

画面に大量の数字が表示されては消える。

 

一連の点検が終了し、その存在を誇るように二十本の異常と言える砲身が上を向く。

マストには大きな赤に黒いサンパチが交わされた国旗が掲げられてゆく。

「ドック上げ!」

地面が上昇し、視界が広がってゆく。そして少し揺れたかと思うと警鐘が鳴り、海水が注水。

ハッチが下降し、海底に吸い込まれ、拘束具が解除。

 

「微速前進!主砲、模擬弾装填!」

四つの巨大なドリルのようなスクリューが回転し、船体を前進させる。

そしてガチンッという音と共に弾頭が青い主砲弾が意図的にバックした装填機構に押し上げられ、密閉。二本の安全ロックも掛かる。

「てぇー!」

私の一声で点火し、35tに及ぶ炸薬が爆発し、全長の700cmの砲弾を押し上げ、砲身を滑る。

そして150mを超える煙と炎を吐き出し、的を粉砕する。

うん。すごく動きやすい。妖精さんを撫でまくる。

''模擬戦闘機射出確認です!''

 

次は対空テスト。

模擬の戦闘機を飛ばし、撃墜に何秒かかるかを測る。

「主砲目標に向け!座標ロック!自動追尾!45mm対空機関連装砲一門のみ起動、模擬弾装填!電探連動!撃方はじめー!」

側面に針山の如く設置された45mm対空機関連装砲のうち一基が起動し、旋回、片方の砲身が回転し、間髪入れずに模擬弾が大量に発射される。

そして一秒と満たず撃墜。ここまで五秒。ふむ...遅いな。今頃ミサイルが命中している。

なので主砲でやってみたところ三秒。こっちの方が早い。

 

さてさて性能テストは大成功に終わり、満足のいく結果を得ることができた。

ドック(地下)に船体を入れておき、補給をさせておく。

「アメストリアさん」

「...む?大和か、どうした?」

「少し、質問が...」

 

少し長くなるとのことで、移動し、分かりにくい前方甲板にいる。ここは艦首だけでも100mの高さを誇る。聞こえないだろう。

「それで、どうしたんだ?」

「この船は、どこの所属だったんですか?」

「あぁ...その事か。このアメストリア型戦艦一番艦アメストリア以下三隻はアメストリア國海軍第一艦隊に所属していた。私が旗艦だったな」

私は轟沈した経緯を話した。別に聞かれて困るものでも無い。

しかし私の奥底というか、本能というか。そんな部分がかなり沈み込むのが痛い程感じる。

()の奥底にトラウマとして深く根を下ろしている。

なす術もなく妹達が次々と沈んで行き、リバンデヒやカイクルまでもが轟沈し、艦長が自決したのだ。私とてそんなのは耐えられない。だから(異物)が居るのかもな?

「暗くなってしまったな。私は提督に報告がある故失礼する。」

と言って艦首から飛び降りる。普通ならうわぁ...っていう状態になるだろうが、私は艦娘だ。己の船体に殺されなどしない。

 

「提督、素晴らしいぞ!改ニと言うのは良いものだ!」

「あ...うん」

「あの火力は頼りになるな。早く妹達にも500cm四連装砲を載せて欲しいものだ」

「うん...」

「どうした?」

「いや、珍しいなって」

そういう提督は明らかに嘘をついていた。

声色に元気が無いから分かりやすい...まぁ、提督にも事情があるのだろう。私が主に問題を起こしているから...

「...む?」

「いつも君はそこまで興奮しないからね...」

「それは当たり前だろう。私は戦艦だ。國を護る為の軍艦だ。護る為の力が増えて兵器冥利に尽きると言うものだ」

「そう...あとね、その副砲の150cm四連装砲って大和達にも積めるのかな?」

「...既に大和達は高練度で改だが?」

何故その話をする?

もしかして主力を本格的に変えるのか?じゃあ私達はどうなる?

すごく不安になる。

「...150cm四連装砲のグレードダウン版を開発する。」

「うん。ありがとう。それに合わせて大和達を改修に回してね」

「了解した。」

つまり...改三、か?改ニは現在の改修だし、150cm四連装砲は...三連装砲にグレードダウンして...

船体も+100~200mの増加、か...

 

「妖精さん、150cm三連装砲改を14基開発してくれ」

工廠にて。このように何ソレ?っていう無理難題でもアメストリアにいる妖精さんに頼むと頼んだ開発をしてくれる。最近更に妖精さんがチート化してるけど気にしない。

カイクルに聞いたところ波動砲を載せようとしていたとか...つまり、既に出来てるんだよなぁ...?

まぁ、お蔵入りだ。

「相変わらず面白い物を作っとるの」

「...工廠長か、あぁ。提督からの指示でな。大和以下六隻の大規模改修をすることになった。」

「アレを更に改修するのかの?」

「あぁ。改三だ。主砲は150cm三連装砲。副砲は35.6cm三連装砲で良いだろう。それに伴い船体の大幅な大型化に特殊装甲も標準装備する。」

「嗚呼...わしの常識が...」

常識?いつからこのパラオ鎮守府に常識が効くようになったんだ?

主に私だが、アメストリアというイレギュラーを抱えているんだ。兵器だって30cm連装電磁力砲のような謎兵器を作ったりする。妖精さんが。

やったね!ドンドンチート化していくよ!

妖精さんに改修の図面を見せて貰ったが、赤城が二段空母になり、外見が最新の空母になった。

対空砲は45mm対空機関連装砲を採用し、30cm連装電磁力砲も搭載している。

加賀に至っては外見を留めていない。赤城同様二段空母だが、甲板の数は四つ。

三胴艦になり、中央の大きな船体は前方が戦艦になり、70口径51cm三連装砲が10基。艦橋を中心に後方は巨大な甲板が広がり、大量のジェット戦闘機を飛ばすことができる。しかもまさかの四桁全長である。赤城、加賀双方双方1000mを超える超巨大艦になってしまった。ただまぁこれも事情があり、私達アメストリア型戦艦に追従するには従来のサイズでは軽く転覆して行方不明になるからである。またアメストリア製航空機の離艦にはかなりの距離が必要な機体も居る為、かなり長大な甲板を持つ必要があるのだ。仕方ないね。

また大和らは船体を700mほど延長した。これくらいしないと私達に(略

あ、ただスペースが有り余ったのか全艦に大量のミサイルハッチも設置された。

でもさ、加賀、正規空母だよね?計画では戦艦だったけどさ...何積んでんの...

涙出てきたわ...

''しょうがないです!これがアメストリアの技術力です!''

励ましてくれる妖精さん可愛い...開発には少し時間がかかる為、寮に戻る。

 

 

''出来ました!''

妖精さんがわざわざ寮にまで知らせに来てくれた。

すぐに工廠に行く。

「これは...」

ずらりと並ぶ150cm三連装砲改。

圧巻だ。計四十五門の砲身が並んで、照明を鈍く反射している。

隣には今回の改修に必要になる45mm対空機関連装砲が山のように大量に置かれていた。

さてこの主砲だが、150cm四連装砲の反動を軽くし、出来るだけ小型化した。20m×30mらしい。

妖精さんパネェ...

『こちらアメストリアだ。かなり重要な話がある為、大和、武蔵、長門、陸奥、加賀、赤城はすぐにアメストリアの船体に来てくれ』

 

「急な呼集は珍しいですね。どうしたのですか?」

「あぁ。今回は貴官らの改修についてだ。」

「既に私達は改だが?」

「いや、改三だ。」

「改三だと!?」

「改三...どう言う事かしら?」

「うむ。基本作り直しに近い。最低でも船体は+100m。主砲は150cm三連装砲だ。詳しい内容は渡した資料にある。」

「...噴式戦闘機...甲板が鉄製ですね...」

「私の...重装空母とは?」

「加賀は実質戦艦+正規空母×4だ。」

「.........だから三胴艦なのかしら?」

「そうだ。中央船体は戦艦の形状をしており、主砲を10基載せる。そして後方には左右の船体を合わせて四本の滑走路がある。艦載機は噴式戦闘機...つまりジェット戦闘機だ。

詳しく言えばF-105にF-75、幻のF-222に、輸送機のCT-7などだ。」

「へぇ...」

「では問おう。この内容の改修に同意してくれるか?」

『やるわ(ってくれ』

即断だった。まぁ、メリットしかないからな...まぁ、いいや。

チート化は良い事だ。

「了解した。妖精さん、改修を開始してくれ」

気絶した艦娘を全員回収し、医務室に寝かせておく。

妖精さんの指揮を執る。

大和達の船体には足場が組まれて行き、どんどん解体されてゆく。

クレーンが降りてきて船体を分けてゆく。

そして基礎を中心として船体の骨組みが組み直されてゆく。一回りも、ふた回りも大きい。

加賀に至っては基礎が三つある。せして骨組みに装甲が張られて行き、分厚くなってゆく。

内部の強化も同時に行い、姿勢制御装置を設置。タンクが追加された。

そして丈夫な木製の甲板が丁寧に張られて行き、艦橋の骨組みが組まれてゆく。戦艦は天にそびえる艦橋が、空母は低く、広い艦橋に長いカタパルトが設置される。勿論甲板は鋼鉄製だ。

そして特殊装甲が張られて行き、開発しておいた主砲や副砲、45mm対空機関連装砲が設置され、私と同じ113号電探と回路が繋がれ、電子機器が導入され、ハイテク化してゆく。対空電探も優秀な85式だ。内部設備が設置され、新たな戦艦、空母として生き返る。

これまでに三日掛かるのだ。

「リバンデヒ、カイクル、大和達の改修を開始した。主力が抜ける。警戒を厳とせよ」




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20.パラオチート化

ーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

どもどもアメストリアだ。

三日経ち、無事改修に成功。艦娘が起きた。

当然ながら性能テストをしたのだが、すごく........強いです...

六隻もメイドインアメストリア(仮)になったのだ。

大和とか武蔵は何処か嬉しそうだし、長門が殴り合いがしやすいな!と言っていたし、陸奥は船体の大型化に驚いていた。加賀は大きさに慣れず、操舵が若干拙い。赤城は...F-105が気に入ったようだ。操舵も上手い。まぁ、動きやすいから...

 

これでパラオ鎮守府は燃料が一切必要なくなった。

砲の旋回動力から駆逐艦のエンジン、私達のエンジンと全部粒子エンジンに入れ替えた。

艦載機も全てだ。だから燃料の消費が激しい戦艦達が浮くのは良いが、その代わりと言うように弾薬の消費量がバカみたいに増えた。

しかし朗報で私達以下三隻に万能生産装置が搭載可能になり、生産を開始。

瞬く間に大量の弾薬のが生産され消費されるという状態が起きている。

無駄遣いは無いらしいが、というか出来ないが、いかんせん数はが多いらしい。

だから私達を除いてフルで巡回している。一応、一覧載せるな?

 

駆逐艦

暁 改

雷 改

電 改

響 改

 

重巡洋艦

利根 改ニ ←通常のです。

高雄 改ニ

愛宕 改ニ

摩耶 改ニ

鳥海 改ニ

 

軽空母

龍驤 改三

 

正規空母

赤城 改三

加賀 改三

大鳳 改三

 

戦艦

アメストリア 改ニ

リバンデヒ 改ニ

カイクル 改ニ

???? ??

大和 改三

武蔵 改三

長門 改三

陸奥 改三

 

という重火力な頭可笑しい編成だ。

戦艦七隻ってなんだよ...艦隊としてバランスがおかしすぐる...

加賀や赤城は三隻、四隻分に達するため良いとする。

本来戦艦や空母を大量の駆逐艦が囲うのだが、その駆逐艦が四隻しかいないという謎展開。

まぁ、此処の場合空母であっても一隻でなんとかしちゃう戦闘力を持ち、直掩機展開を義務化したので大丈夫だ。加賀は...本当になんとかしそうだ。

戦艦六隻艦隊で行ける。

ムフフフフフフ...

 

「提督、大和以下六隻の超大規模改修が終了した」

「うん。わかった...あのね、アメストリア」

「何だ?」

何故か提督は暗くなっていた。もしかして私達の処遇が決まったのだろうか?

解体か?大本営か?船体だけ剥ぎ取って艦娘である私達のみモルモットか?

悪いが、大和のようにはなりたくないぞ?

「えっとね...君達三隻に出頭命令が出ているんだ」

「何故?」

「海軍は毎年海軍創設日にイメージアップの為に毎年イベントを開いているんだ」

戦争中に、か?馬鹿か?確かに戦争中で大事なのは良い策略家に権力に溺れず、慢心しない将校に士気の高い兵士、質の良い殺戮兵器だが...あ、これは()の国の基本らしい。

ただ、まぁ確かにと思ってしまった。

しかしこの戦争中、兵器に対する関心は高くなるだろう。

だから国家機密にならない範囲で公開し、各国の軍事力を国民に見せつけるのが狙いだろうが...

中国や韓国あたりのスパイが気になるな...いや、韓国...朝鮮は何もしなくても滅ぶから大丈夫か。

北は中国と関係が悪化し、塞がれ、あとは海。深海棲艦がうじゃうじゃいる。取り敢えずザマアと言っておこう。何かしてきたらABCでも撃てば大人しくなるだろう。

話がずれたな。

確かに今年から確認された新種である私達アメストリア型戦艦は目玉だろう。

此処の国民(ミリオタ)は特に関心が高いだろう。ちょっと調べるか...

ネットを探ったところ、あの横須賀襲撃の時の写真が流出。未知の戦艦や最強の戦艦、搭載兵器について某大規模掲示板が活発に動いていた。

ガチの船体に美少女。人が集まるのは当然と言えるだろう。

「了解した。妹達を連れてすぐに向かおう。何時からだ?」

「一週間後だけど...良いのかい?言い方は悪いけど君達は兵器だ。見せ物じゃないし、僕も対応できないけど...」

「大丈夫だ。海軍のイメージアップには協力したいし、私個人の興味もある。あの大将にはお礼も言いたい」

「...わかった。頑張ってきてね」

「うむ。また抜錨時に来る」

お礼は大和でお願いします(真顔)

 

「リバンデヒ、カイクル、朗報だ。初陣だ。各種点検、補給を済ませ次第抜錨する。」

『了解したわ。すぐに済ませるわね』

『了解』

しかし補給には多少時間がかかる為、二時間ほどかかる。私は寝ておこうか...

 

ーおまけー

ガチすてーたすを公開しておきます。

 

大和改三

全長 965m

全幅 192.4m

排水量 15987000t

主砲 150cm三連装砲改 三基

副砲 35.6cm 三連装砲 四基

副砲 15.5cm連装砲 二基

20cm高角連装砲 十五基

45mm対空機関連装砲 四十五基

ミサイル 3500基

 

F-105 二機

 

113号電探

85号対空電探

 

 

武蔵改三

全長 965m

全幅 192.4m

総排水量 15987000t

主砲 150cm三連装砲改 三基

副砲

15.5cm三連装砲 二基

20cm高角連装砲 十五基

45mm対空機関連装砲 四十五基

ミサイル 3500基

 

F-105二機

 

113号電探

85号対空電探

 

長門改三

全長 844.9m

全幅 296.59m

排水量 9270100t

主砲 150cm三連装砲改 四基

副砲

20cm連装砲 十八基

12.7cm速射連装砲 四基

45mm対空機関連装砲 十五基

 

113号電探

85号対空電探

 

陸奥改三

全長 844.9m

全幅 296.59m

排水量 9270100t

主砲 150cm三連装砲改 四基

副砲

20cm連装砲 十八基

12.7cm速射連装砲 四基

45mm対空機関連装砲 十五基

 

113号電探

85号対空電探

 

超多段層式三胴艦戦略空母加賀型一番艦加賀

全長 1488.5m

全幅 420.6m

総排水量 12389000t

主砲 51cm三連装砲 十基

副砲

10cm高角連装砲 一基

45mm対空機関連装砲 千四百五基

ミサイル 三千六百基

 

F-105 百八十機

F-75 二十機

F-222 二機

FB-99 二十機

CT-7 十機

UH-60ブラックホーク 五機

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

赤城型二段航空母艦一番艦赤城

全長 1360.67m

全幅 215.32m

総排水量 1934000t

20cm連装砲 六基

10cm高角連装砲 百二十八基

45mm対空機関連装砲 二千五百基

ミサイル 二千四百基

 

F-105 百四十機

F-75 二十機

FB-99 二十機

CT-7 二機

CH-31 二機

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ2

 

◇F-105

F-105可変翼多目的万能型攻撃戦闘機

全幅 13.5m

全長 15.2m

全高 5.98m

主翼面積 可変式により不明。

自重 45t

最大重量 46.2t

航続距離 ∞

戦闘行動半径 2200km

 

搭載兵器

45mm機関砲 2門

ST-8汎用ミサイル 600発

ST-7中距離ミサイル 450発

主力戦闘機。外見はまんまエス○ンのASF-19。かっこいいもん。

主翼を根元から回転させ垂直に離陸、着陸出来、ホバリング可能。雪風見たいに。

*ミサイルの数はバグではありません。量子変換されウェポンタンクに仕舞ってあります。

本当にエスコン...おっと誰か来たようだ。

 

◇F‐75

F-75攻撃型ステルス可変翼万能戦闘機

全幅 23.5、21.4m

全長 27.5m

全高 4.8m

主翼面積 47.8平方

自重 34.7t

最大重量 40.25t

航続距離 ∞

戦闘行動半径 4800km

 

搭載兵器

40mm機関砲 二門

ST‐8汎用ミサイル 600発

ステルス機。外見はエス〇ンのASF-X。最高速度マッハ10。

機能はF-105と同じ。

 

F-222

次世代型可変翼攻撃型戦闘機

全幅 23.5、21.4m

全長 27.5m

全高 4.8m

主翼面積 48.8平方

自重 32t

最大重量 35t

航続距離 ∞

戦闘行動半径 不明。

 

搭載兵器

45mm機関砲 四門

ST-8汎用ミサイル 2000発

ST-7中距離ミサイル 2000発

SBM4-7 500kg級誘導爆弾 400発

頭可笑しいオーバースペック。オールラウンダー。

外見はX‐02。最高速度はマッハ15にも達する。ちょっとやりすぎた。

しかしこれ一機で軽巡一隻分必要。

 

 

 

 

 

 

 

 




大和...なのかな?大和という名の化け物が出来上がりました。

艦これのガチ船体シリーズを買ったんですが、最初からシークレット...
詳しく性能を調整するのに役立ちました。組み立て面倒だった...

艦載機のデ一タ乗せました。
↑ちょっと修正。


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第二章 大本営編
21.海軍創設式典 -準備-


おくれてしまいました。申し訳ございません
結構難産...


ーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、リバンデヒ、カイクル共に補給が終了。すぐに抜錨した。

今回はゆっくりと行こうと三人で決め、20ノットにて航行中だ。

しかし目立ちたくは無いので、光学迷彩を常時起動。たまに水中潜行機能もテストで使ってみた。

現在は70ノットで航行中。一応レーダー感度最大で深海棲艦対策はしているが、敵であっても艦娘であってもまず当てられるものは居ないのであまり意味がなかったりする。

「主砲は安全弁を全て締め、電力伝達を遮断。動かすな。第一戦闘態勢、副砲に榴弾式結界弾、粒子弾を装填しておけ。」

『ウンターガング弾はダメなの?』

ダメに決まってるでしょうが...下手をすると核よりタチの悪い砲弾だ。

丁度いい。説明すると、ウンターガングというのはドイツ語で崩壊。

ウンターガングエンジンというのは結合と崩壊を意図的に繰り返させてエネルギーを生み出すのだが、それの応用で妖精さんがもっとちっちゃくしようぜ!と張り切り、この悪魔の砲弾が出来上がった。命中すると、半径1200kmは何も無くなると言って良いだろう。疑似ブラックホールを生み出す砲弾と考えてもらって良い。量子変換ガン無視だが、妖精さんの存在自体色々と喧嘩を売っているようなものなので、この世界では今更という感じだ。

 

「こちら横須賀鎮守府、誘導に従い入港せよ」

「アメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。了解した。『光学迷彩停止。絶対干渉結界起動』」

『...了解』

すると陽に照らされた航跡のみだった景色に三つの巨島が現れる。

そんな存在を知るはずもなかった海鳥が見事に命中したが、気にしない。

光学迷彩が停止し、副砲を除く全武装がロック。電力伝達が遮断される。

そして電探、マストの照明灯が幾つか灯り、結構絵になる景色になる。一般人はいないだろう...多分。そして誘導と名ばかりに何も来ず、指示に従う。

「二番パース付近にて停泊せよ」

「了解、投錨!隼を降ろせ!」

アメストリア、リバンデヒ、カイクルから20tは下らない錨が、18の鉄塊が海面を突き破り横須賀の深い海に刺さる。ふむ...海面が軽く津波発生というところか。

でも、ドック入れない...(泣)

 

隼に転移し、主砲を起動させ、軽く点検を行う。そして隔壁を解除し、スロープ状に船体の一部が割れ、隼が滑り落ちる。

そして海水を盛大に撒き散らしながら着水し、驚愕のスピードでアメストリアから離れる。

リバンデヒに近付き、接岸。

「リバンデヒ、少し遅いぞ」

「ごめんなさいね。少し保険を掛けていたから」

「はぁ...『カイクル、今から向かう。準備しておいてくれ』」

『了解』

本当何処かのシスコンと違いカイクルは優秀だ。

舵を操り、戦艦クラスに届くアメストリアの''内火艇''を動かす。これで内火艇クラスだからなぁ...

一応内火艇だが、どう考えても戦艦か重巡洋艦だろう。

「けどお姉ちゃん。万が一を考えて一般人に見られるのは不味いんじゃないの?」

「知っている。しかし此処で光学迷彩を使うとアメストリアの周りに瓦礫が溜まることになる。後片付けが面倒だ。」

「なら潜行させたらいいじゃない」

「む.........」

それは思いつかなかった。カイクルか光学迷彩と潜行機能を両方使って奇襲したりするが、私はこの火力を持ち、堂々と正面から潰す為、光学迷彩は機密上ともかく、潜行機能は考えてなかった。

いけないな。慢心し始めている。経験が足りない...

「カイクル、聞こえたな?」

『あぁ。隔壁全閉鎖。メインタンク注水。潜行開始』

一瞬光ったかと思うと、結界がガラスが割れたかのような音を立てて崩れ去り、照明灯が消灯され、静かにかつ素早く沈んでゆく。

「......む?カイクル、何時からいた?」

「先程転移した。」

「そうか。まず、横須賀鎮守府に向かい、大本営に向かう。最低限の武装に止めろ。拳銃携帯は許可する。」

私はM93R二丁を両腰のホルスターに入れ、後ろにサバイバルナイフを差す。

リバンデヒはG18を入れ、CPWというサブマシンガンを吊るす。

カイクルは何時もの軍刀にMODEL500というM-500と言った方が分かる撃ったら脱臼するあのリボルバーだ。Smith&Wesson製で2002〜2003にしか生産されなかったある意味凄い銃だ。未だに流通はしているものの、持っている人は少ないだろう。

一丁2.2kgというM1911二丁分の重量で、火力大好きなカイクルにはもってこいのリボルバー拳銃を入れ、レミントン770をガンベルトを通し肩に下げていた。貴女は何をしたいんですか?

 

ということとで、隼から発光信号を発信し、二番ドックになんとか入港。

うん。以前のダイナミックお邪魔しますの時に海防艦15隻に艦娘は殺さなかったが、大破50隻、中破78隻、小破128隻を記録し、防衛システムは全て叩き壊したが、見事に復興を遂げ、元通りになっている。

大和や武蔵もいることを偵察機とレーダーで確認している。まぁ、パラオ鎮守府の大和(笑)には勝てないだろうが...

上陸し、あたりを首を動かさずに自然に探る。

私の艦娘レーダーでは憲兵隊を確認している。M14か...悪くない選択だが、レミントンのほうが有能だと思うのだが...

しかもサイレンサー付き。そんな豆鉄砲で艦娘が死ぬか...いやごめん死ぬわ。

そして一番の問題が此処、横須賀鎮守府の提督が直々に待ち構えていたことだ。

ウチの提督の父であるこの方、確かに歴戦の戦士の風貌を持ち、事実、有能だろう。

「アメストリア型戦艦一番艦アメストリア以下三隻、只今到着した」

「私はこの横須賀鎮守府の提督だ。貴様らの船体は?」

「要請があれば浮上する。今は海の底だ。」

いやいや、開口一番に技術要求と...流石に引くわー...絶対私達艦娘をモノと、してしか見ていない劣等民族だ。心から軽蔑してやろう。

まぁ、要求は要求なので私のみ浮上させる。

「アメストリア機関始動。浮上」

「お姉ちゃんっ!?」「姉さん?」

何してんだボケェ!!っていうキツイ目線を向けられるが無視して浮上させる。錨は下ろしたままだし、大丈夫だろう。念のため全隔壁をロックし、侵入する手段を全て塞ぐ。

艦首から海面を、突き破り、ダイナミック着水。密かに500cm四連装砲を向けておく。大本営に。

「では私達は失礼する」

本来は大本営に用があるのだ。ここには船体を預けるだけ。

隼も接岸させたまま置いて行き、歩いて大本営まで行く。横須賀鎮守府と隣接しているため、すぐに着く。

 

大本営、

数多ある鎮守府に的確(?)な指示を出し続け、報告書、命令書、その他もろもろの膨大な書類が一手に集まり、迅速に処理されて行き、魔窟とも呼ばれ、真のブラック鎮守府とは此処だとも言われている。また優秀な人材が数多く所属し、それぞれの派閥が牽制しあい、戦争状態だ。

しかしその優秀な人材を権力欲にとりつかれた保守派の老害...失礼。

未熟な若者(老人)が意味不明な指示を出し、戦力を削り続けている。これは不確定な情報だが、

現在の上層部、政府には拡大派の阿呆が流行らしく、大体大失敗する作戦は大体ど素人が関与したり過激派が無駄な意見をぶち込んだ時だ。それによって何人の艦娘が無駄に死んで行ったか......イライラするなぁ...殺っていい?うつけ者が...

()は始めて激怒した。現在の体制にブチ切れたのだ。

まず日本は軍国主義。軍事を主に置いた比較的裕福な国だ。

その最重要機密である軍事に安全に囲まれマスコミや狂信者にちやほやされたボンボンが口を突っ込むものではない。遊びでは無いのだ。そっちの卓上の戦争とは違い、すぐ目と鼻の先で戦争が起きている戦線なのだ。バランスを崩すな...

 

「よく来たな」

「只今アメストリア以下三隻到着した。それでどういう指示だ?」

「まぁ、そう急ぐな。とりあえず掛けたまえ」

あの大将の執務室に通され、応接セットの椅子に腰掛ける。

背筋を伸ばし、足を組む。本来はすごく失礼だが、私には効かないし、聞かない。

まず此処の人間自体があまり好きでないし、信じられなくなっている。お前ら汚すぎるんだよ...

少し覇気はあり、指導者としてのカリスマはあるようだ。若干圧力をかけているが、()の前では子供の抵抗より軽い。二人も一切影響を受けておらず、私の両隣に座ってくる。......おいコラリバンデヒさりげなくセクハラするな!ナチュラルに触ってくるのほんとなんなん?

お茶を出され、カイクルが毒味し、アイコンタクトで了承を得てから口をつける。

催眠薬はお断りだ。

「ふっ...やはり貴様らは良いな。普通の艦娘とは違う」

「ふん、伊達に4900年生きていないのでな。それで、指示は?」

「今回、第八十五回海軍創設式典及び観艦式、一般開放を行う」

「そこで私達を公開するのか?」

「そうだ。しかし残念ながら貴様らの停泊出来るドックなど無い。しかも一般開放する以上海上は不可能だ」

「.......ふ頭は?」

「貴様は己の大きさを自覚しているか?」

馬鹿か?と聞かれてしまった。えー確かふ頭あったんじゃん...入らないけど...

タンカーや大型船が着岸出来るが、私達は大型船というランクでは無いので、意味がない。

「すまない...」

「だから仮設のしっかりとした巨大な桟橋を設置し、貴様らはそこに入港し、海底に沈んでおけ。500mなど無いからな。位置は式典会場の後ろだ」

 

...

 

......

 

.........

 

...エェ?耐えれるの?しかも沈んでおけって艦娘にいう言葉じゃないだろう...ふむ...あそこの深度は300m程。艦橋群上部が露出するが、光学迷彩でなんとかする。

「...了解した」

「インパクトを重視し、指示が下ると三隻同時に浮上しろ。海水なんか気にしなくていい」

いやいや気にするでしょう...いくら綺麗に浮上しても大量の海水を巻き込み、周囲が一時的に霧に包まれる。私達としてはいいのだが、場所が場所だ。貴賓、客にかかる。

しかし中々面白いことを考えてくれるじゃないか...恐らく事情を知らない第三者から見たら悪巧みを思いついた悪人面で意味深な笑みを浮かべているだろう。一度鏡で見たが、結構怖い。しかし元が超絶美少女な為、同性でも落とすレベルの笑みだった。

今回の目玉である私達アメストリア型戦艦が式典時にド派手に発表、か...日本のシンボルにするつもりか?長門みたいに。まぁ、いいけどさ。()もアメストリアという超巨大国家の筆頭に君臨してきたネームシップだ。

「了解した。では失礼させて頂く。明日また来よう」

式典は明後日。航海が少し掛かったな。フル稼働で行かなかったし。

明日、潜行、光学迷彩をしたまま指定位置へ。

明後日、BBBBAAAAN!!!

だ。面白い。目立つつもりは無いが、これ位は良いだろう。ネット住民が勝手に広めてくれる。

そも私達は国も守るために存在している。そしてその守る対象はアメストリア國のみだが。

当然だが、國には国土、国民が含まれている。

今は超長期的な戦争時だ。闇が差し、意欲が下がる。すると当然国力の低下に繋がる。

そのどん底に、圧倒的な火力と鉄壁の防御力を持った戦艦が現れたらどうだろうか?

無論その方面のOTKが食いつき、マスゴミが煩く吠え、国民全体に広がる。未だにテレビが生き残っている。番組は賛否両論になるだろう。しかし歓迎する声が高まるだろう。

大いに結構。タカ派が利用しようとしてくるだろう。

宜しい。ならば戦争だ。全て殺してやる。

過激派は一人残らず殺してやる。現実をいい加減見ろ。

米帝や国土だけ広い貧困国が煩く言ってくるだろう。すでにアメリカ軍の偵察機や監視衛星は確認し、泳がせている。

「お姉ちゃん、良かったの?」

「まぁ、面白いではないか。この国に新しい風を送り込むのもまた一興だ。出席者を見たが、重鎮ばかりじゃないか。保守派の馬鹿(元帥)五人、海軍大臣、陸軍大臣、首相、皇族。暗殺対象が紛れ込んでいるが、ミサイルで許す。そして同盟という名の属国にしたがっているアメリカ軍から幾人か。大々的に動こうじゃないか」

「まぁ、人目は慣れているけども...人間の欲は凄まじいものよ?」

「ああ」

「姉さん...50口径を...」

「却下だ。すでにカイクルはM-500を持っているだろう」

「うぅ...」

あんたどんだけ大口径銃好きなの...

 

 




OTKとはオタクとことです。
OTAKUでOTKですね。
諷詩です。
今回二日間空けてしまい申し訳ありません。
リアルの方で色々と用事が殺到し、書く時間がありませんでした。


感想、評価大募集中です。書く意欲になります。


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22.式典

投稿が遅れました。
今回はアンチと残酷描写が仕事します。ご注意ください。


ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

はい、私ことアメストリアだ。

現在は海底にいる。え?轟沈したかって?

な訳ないじゃないかHKHAHA!指定された位置で待機中だよ。

第一艦橋はそこまで高い位置にある訳ではないので、海中にある。

一応無線を傍受し、式典の挨拶が延々と語られているのを椅子にて聞いている。

あの時の気絶した椅子だ。艦長用だけど。

とにかく、ひ、ま、だ!

500cm四連装砲、150cm四連装砲、46cm三連装砲をはじめとする全武装は海水侵入対策として全隔壁、弁を締めており、500cm四連装砲は人間が入るサイズのため、第一砲塔を除き砲口に蓋がされている。第一砲塔は写真撮影ように少し奥に蓋がされている。撃ったらぶち破れるが。

『......(中略)そして我が海軍が新しく発見した艦娘がおります。皆様も後ろの橋が気になっていたでしょう。その艦娘の大きさです!全長4650m、全幅530m、全高420m、アメストリア型戦艦一番艦アメストリア、リバンデヒ、カイクルです!』

そろそろか。

『アメストリア三隻、浮上せよ』

「了解。リバンデヒ、カイクル、機関始動!メインタンクブロー!派手に行け!」

大量な気泡ざ吐き出され、光学迷彩が停止。元々露出していた艦橋、電探、マストが現れ、騒然とする。ゆっくりと海面が近付き、艦首が海面を割り、次に巨砲が一番、二番、三番と海面から飛び出し、大和型に似通った艦橋が全て飛び出し、四番、五番砲塔が姿を現し、艦尾が最後に海面から這い出る。大量の海水を至る所から吐き出し、潜行のために最低角まで下げていた500cm四連装砲が上昇し、10度に保たれる。150cm四連装砲、46cm三連装砲の順に戻り、砲身を上げる。側面の窪んだ場所にある30cm連装電磁力砲と20cm連装砲が外側へと旋回し、少しだけ砲身を上げる。

45mm対空機関連装砲が一斉に向き直り、砲身を上げる。

これが寸分狂わず三隻同時に起きたのだ。

ふっふっふっ...軍上層部の信じていない(馬鹿だろ)人間が唖然としていた。

式典に参加していた一般人の視線が一斉に集まる。マスゴミのカメラもそれぞれアップで撮ったり、この三隻を無理して撮ろうとしていた。

「アメストリア国旗上げ!投錨!」

マストに巨大な国旗が掲げられる。私というか()の本能から海軍式の敬礼を国旗に捧げ、

カメラに映らないように下がる。

入ってはいけない場所に封鎖線が張られていることを確認し、妖精さんを第二艦橋に集め、避難してもらう。

「一応言っておくがカイクル、ガチ武装はするなよ?」

『.......対戦車ライフr「却下だ」.......対物ラi「却下だ」......対人r「却、下、だ、」......せめてベガルM「却下」...M3「馬鹿か?」......AA-12「拳銃だ」...了解した...グスン...」

はぁ...カイクルは何故か火力が凄まじい重火器を使う習性がある。

むしろ何故対人警戒に対戦車ライフルが必要になるか聞きたい。お前は不審者に情報も聞かずに肉塊に変えるのか?対物もそう、対人は良いが、カイクルは眉間を撃ち抜く。M145は銃弾によってはアウト。M3は馬鹿だ。14.5m重機関銃だし。AA-12は...馬鹿だな(確信)

30発のショットガンシェルを乱射できるショットガンなんか相手にしたくない。

シェル自体色々あるんだから...

「タラップ降ろせ」

『『了解』』

タンクに注水され、海面が近付き、タラップが降ろされる。流石にビル十階相当のタラップを登りたくないだろう。

 

今回の目玉である私達だが、やはり大量の見学者が押し寄せた。

やはり4650×530mの巨艦が珍しかったのだろう。堪らず私は艦橋の一番高い露天艦橋に転移した。一応室内の方には145式歩兵小銃が立てかけられ、場合によっては使うかもしれないレミントンM770にM115-AXがバイポッドを立てて置かれている。出来れば使いたくないが、最悪の想定はしている。機関室にも自律起動のM3を五基配置し、センサーも沢山付けた。

『お姉ちゃん、人が多すぎよ!こんなの進水式以来だわ!』

「知らん。私は艦橋にいる。来たければ勝手にしろ」

「お姉ちゃん、」

「何だ?」

「転移して抱きついたからってアイアンクローはやめてくれないかしら?」

「ならば抱きつくな」

「はいはい...」

何故かリバンデヒがすぐに転移してきて、後ろから抱きついてきて、胸に手を伸ばそうとしてきたのですかさずアイアンクローを極めた。

カイクルはその間に転移し、室内の艦橋にてお茶を啜っていた。無意識か、ベガルM115-AXに近い気がするのは気のせいだな。うん気のせいだ。

ん?立ち入り禁止エリアに三名侵入、か。命知らずかスパイか。

「リバンデヒ、ついて来い。M145を使え」

「えぇ。」

「カイクル、そこの........A10を使え...はぁ...封鎖を」

「了解っ!」

心なしか嬉しそうにしていたのは気のせいではない。つくづく甘いなぁ...私は。

立てかけてあったベガルM145を持ち、転移。

マガジンポーチから一つマガジンを取り出し装着。チャンバー(薬室)に弾薬を送り込み、セーフティを下げ、セミオートに変える。

静かにかぬ迅速に近づいて行き、退路をリバンデヒが塞ぐ。ここまでの作業に一切私達は喋っていないし、ジェスチャーを交えていない。視線のみだ。

「何者だ!」

すぐにアイアンサイトを合わせ、銃口を向ける。

男性三名、10代後半から20代前半。オタクだな。

「ヤベッ!バレたぞ!」

「止まれ、既に実弾を装填している」

わざとコッキングをし、未発射の弾薬が弾かれ、重い金属音が鳴る。

すると三人は観念したのか諦めた。

 

事情を聞いたが、やはりミリオタだった。

しかし立ち入り禁止エリアに侵入するのはよくないと思うのだが...

M145を下げ、背中に背負い直し、近付くと三人の内の一人に腕を突然掴まれ、何が起きたか一瞬理解が追いつかない間に関節技を極められ、膝をつく。くっ...武術持ちか...一般人を殺すのは禁止されているし、艦娘の怪力は関節を極められると使えない。力が上手く入らないように圧迫されているからだ。やはり()に頼らず動いたのが裏目に出たか...

「お姉ちゃんを離しなさい!」

しかしそのオタクも艦娘である私が関節技にかかるとは思わなかったのか、一番驚いていた。

ならやるなよ...演技の可能性を否定できないけど...

その間にもう一人が背中のM145を強奪し、マガジンを捨て、装填された弾薬を強制排出し、遠くに蹴り飛ばした。慣れてるな...オタクか?本当に?更にホルスターにあるM93Rは両方抜き取られ、片方を突きつけられる。確かにベガルM145は外見がSCAR-Hに似ているし、コッキングレバーからマガジンキャッチまで一緒だ。

「さっさとこの兵器の性能を渡せ!」

やはり、スパイか...転移して解決してもいいが、いかんせん武装が無い。戦えないし、最悪私では無く、リバンデヒが被弾する可能性がある。それは許せない。

「お断りするわ。アメストリア國4900年の技術が積み込まれているのだもの。渡すわけがないでしょう?」

「ならこの女を殺す!」

「.......」

空気が重くなる。重力が急に強くなったかのような錯覚を覚える程。

リバンデヒだ。濃厚な殺気が放たれる。

「さ、さっさと渡せ!」

両手を結束バンドか何かで拘束され、無理矢理立ち上がらせられる。

うーん...拘束するのはすきだが、されるのはあまり好みでは無いな...コソコソと裏で拉致ならば受けるのに、こいつら自ら詰みに行った。

しかし銃口を強くこめかみに当てられる。結構それ痛いんだよ?

インカムは...むしり取られ壊された。

「渡さなければお前の姉が死ぬんだぞ!さっさとその銃を置いてデータを渡せ!」

艦娘として死なないが、アメストリア製の銃器となるとなぁ...死なない自信は、無い。

リバンデヒも分かっているのか、M145を下げ、マガジンを10個全て捨て本体も装着一発も捨ててから床に放り投げる。ホルスターに入っていたG-18を投げ捨てる。

私なんかほっといて良いんだがなぁ...

そしてテロリスト共の一人に銃を突きつけられながらデータを出してゆく。

そろそろ、動くか?

 

ドガンッ!

 

爆音が鳴り響き、テロリストの一人が跡形もなく消え去る。代わりに血痕が辺り一面に飛び散り、大変だスプラッタな光景になる。あぁ...掃除するの私なんだけどなぁ....

しかしそれだけでは止まらない。二人目が対戦車かさえも怪しい強力なライフルの銃弾を受け右腕、左腕、右膝、左膝、胴体、頭の順に12.7mm銃弾を受け吹き飛ばされる。

しかしテロリストも素人では無い。私を引き摺り出し、銃をこめかみに当て後ろに下がる。

関節技が解けたので怪力を使おうとしたら皮肉にも愛銃の銃床で殴られ、視界が歪み、頭が痛い。

右の視界が赤く染まり、立っていることさえままなら無くなる。三半規管をやられたか...

カイクルはM115を投げ捨てるとホルスターからM-500を出したかと思うと既にしまっていた。

同時に轟音が響き、マグナム弾が最後のテロリストの頭を吹き飛ばす。

「カイクル、よくやっぐぅ...!?」

ようやく三半規管が復旧し、安定して立ち上がった時、最期の抵抗とばかりにトリガーを引いたままテロリストだったモノが倒れ、10発以上の特製の取り分け威力の強い銃弾を浴びる。

心臓には当たらなかったものの、右足が抉れ、立てなくなる。他にも腹に穴が開く。

スゲェ痛い。

「姉さん!?」

カイクルによって倒れこむ前に抱き留められるが、生憎力を入れる程余力が無い。

そのまま身を任せる。

辛うじて開いていた左目で確認したが、リバンデヒは右肩に被弾したものの、無事で駆け寄って来ている。カイクルは特に怪我は無し。私は...重症?

 

 

 

先程は迷惑をかけたな。

見事に復活したよ私は。正確には復旧していないし、未だにズキズキと痛むが、とりあえず応急手当てをしてもらい、頭や腹、右足に包帯が巻かれ、松葉杖をついている。

残念ながら船体を修理すると艦娘の怪我が治る訳でも無く、艦娘の怪我と船体のダメージはリンクせず、船体のダメージは艦娘とリンクするというなんとも理不尽なシステムにより、未だに治らない。

こんな事になるならばゴム弾とかにしておけばよかったと後悔はしていないと言えば嘘になるが、後悔しても何も進まないので、これからのことを考える。

銃声の方はなんとか誤魔化し、テロリスト共の死体は廃棄。

上にも報告しない。面倒だ。私の怪我は誤魔化す。包帯くらい大丈夫だろう。

 

さて、この式典には更にイベントがある。

船員の気分を味わい、少しでも海の上の戦争の雰囲気を感じてもらう為のイベント。

 

体験航海

 

だ。正直な所、やめて欲しい。

第一に私がこの状態で万が一に対応ができないのと、単純に面倒だ。

しかし悲しいかな。私の事情など知りもしない一般人と海軍は予定通り体験航海を実施。

その予定時刻になったのだ。

「.......機関始動...っ......抜錨...」

スクリューがゆっくりの回りだし、錨が巻き上げられる。

一般人を満載したアメストリア以下三隻は5ノットで航行を開始する。

「...第一戦闘態勢...っぅ...対艦、対空警戒を、厳とせよ...」

レーダーが起動し、200000mの海を監視しだす。

後方にはリバンデヒ、カイクルがいる。それだけでも安心する。

予定航路に入り意識を繋ぐことに気を遣いながら船体を操ってゆく。

ん?深海棲艦の反応...数、五?

武装は...ミサイルのみ?なら...側面の出っ張った台形にも見える船体には人が居ない。というか入れない。傾いているからだ。

「...グ、ラ...ニート...通常弾頭、装填...っ...座標入力...一番から五番、ハッチ開けぇ...」

一部気付いている人がいるが気にしない。

む...撮られているな...まぁ、良いや。

「発射!」

セルから煙が上がり、青白い炎を上げながら五本の音速を超えた神の矢が翔び立つ。

水平線の向こうに飛んで行き、座標の通りに飛んで行く。

「......目標の、ロストを...確認...」

ちょっと本格的にヤバイ。妖精さんに舵を渡し、警戒レベルを最大まで上げる。

艦橋は第一、第二以外は開放しているため、迂闊に動けない。

医務室は流石に封鎖している為、直接転移し、ベットに横たわる。

ごめん。ちょっと耐えられない...

 

「........ん!...........ちゃん!......ねぇちゃん!...............お姉ちゃん!」

「つぅ......な...に...?」

「大丈夫なの!?明らかに可笑しい出血量よ!」

「すまぬ...私の、愛銃には、毒が...仕込まれている...ケホッ...」

「はぁ!?何よそれ!?血清は何処!?」

「瓶棚の、右から十四、番目...下から、四番目...だ...」

リバンデヒに起こされ、蝕んでゆくゆっくりとした痛みに力を入れることを放棄する。

そうだった...忘れてた...あの銃弾には破裂するタイプと身体の内部で毒を撒き散らす物がランダムで入っている。毒は解毒不可能で、専門の血清以外効かない。止血防止能力もあるから血が足りなかったんだろう。血清を無理矢理飲まされ、包帯が巻かれ直す。

ふむ。毒の効果は消えたが、未だに自力で立てない。あと一週間もすれば大丈夫だろうが、式典は明日、明後日とある為、無理だ。間に合わない。

「ケホッ...ケホッ...!リバンデヒ、現在は?」

「今終わったところよ。お姉ちゃんが出てこないし第一艦橋にもいなかったからもしかしてと思って来てみたの。やっぱりダメだったじゃない。」

「すまない...肩を貸してくれ」

「えぇ。」

リバンデヒに肩を貸してもらい、なんとか立ち上がる。以前も何かあったなこの状態。

式典は一日目が終了し、三隻は停泊したままだという。

私達様に鎮守府から部屋を用意されたらしいのだが、代表者である私がいつまで経っても来ないことからリバンデヒが急行。私が見つかったと。

なんか...ごめんなさい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカイクルsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

カイクルだ。

私の姉が失礼したな。私も激しく動揺した。

やっと助けれたと思い、姉さんからも良くやったと褒められかけた時、ゴミ屑が悪足掻きで自動拳銃の中でもトップクラスの殺傷力を持つM93Rをフルオートで振り回しながら死に、姉さんが背中からモロに浴びた。撃たれた途端、貫通した銃弾が飛び散らした姉さんの血が顔につき、ようやく事態を把握した。姉さんが、撃たれた。

激しいショックと動揺が走り、糸が切れた人形の様に倒れこむ姉さんを抱き止めた。

目は虚ろで、焦点が合っていない。三半規管をやられたのだろう。

それよりも手当だ!ということですぐに応急だが、手当を施し、何とか止血した。

 

 

 

 

 

 

 

 

つもりだった。

あの時の私は動揺していて気が付かなかったのだ。

姉さんはM93Rに特殊弾を装填し、持ち歩いていたことに。

特殊弾には毒が回る銃弾がある事に。

気付いた時には既に遅し。姉さんは倒れ、血清にてなんとか止血し、回復し始めている。

良かった...

そして横須賀鎮守府に私達三人が無理なく過ごせる部屋を用意してもらったのだが、

扱いが荒くないかとつくづく思ってしまうんだ。

軟禁状態に近く、家具も殆ど置かれておらず、唯一あるベットは弱っている姉さんを寝かせ、交代で手当する。

暇だから軍刀の手入れをしている。

「リバンデヒ、盗聴マイク、隠しカメラの破壊を」

「もうやったわ」

私は二時間後に交代だ。それまでは横になる。床だがな。

 

 

翌日

前日の変わらず式典が行われ、総理が来た。一般開放の観艦式が行われ、遂に一番砲塔だが、発砲許可が下り、デモンストレーションで空砲を三隻が放った。

中々に楽しかった。

姉さんも回復して行き、違和感が残るものの、一人で歩いている。

しかしそれでも転ぶ時は転ぶ。涙目になった姉さんを見て思わず萌えてしまった。

 

翌々日

式典は午前で終了し、私達にも外出許可が下りた。

姉さんは複雑な表情を浮かべ、愛銃たるM93Rの整備をしていた。

そして出る時には服装を変えていた。白いピシリとしたドレスシャツに真っ白いロングスカート、襟にネクタイの様に蒼く細いリボンが結われ、少し大きめの白いケープを羽織り、腕や足を隠していた。

 

リバンデヒは薄い青のロングワンピースを着、カーディガンを羽織っている。

大人の雰囲気というか上品な雰囲気を纏っている。見事に擬態しているな

 

私はというと巫女服で良いだろうと思っていたのだが、二人に慌てて止められ、怒られた。

何故だ?素晴らしいほどに動きやすいだろう?

仕方なく、上の白衣に黒いロングスカートにしておいた。

軍刀も布で包み、背負う。

姉さんはM93Rを一丁のみケープの裏に隠し、バックにM145を簡単に解体した物を入れている。

リバンデヒも簡単に組み立てられる程度に解体し、リュックに入れている。

たしかお前肉弾戦大好きではなかったか?何時も暗器を持ち歩いているだろう?

 

鎮守府から出た。

大日本帝国の帝都らしい東京という都市を見て回っているのだが、やはりアメストリア第一惑星の海軍基地にいた為、あのアメストリア國の首都を見ているためか随分と遅れている。ゲートは無いし、一七式戦車や五七式重装甲輸送車改は空中道路を通っておらず、未だに地面を走っている。地面は歩行者だけだろう?普通。

しかし所々に日本人らしさが出ていることも分かる。何より人々の活気が凄い。いーじす艦?という良く分からない艦がいたりと色々と常識が通じないようだ。だってなぁ...アメストリアは上空に都市を覆うほどの宇宙戦艦がよく飛んでいるし、それが日常と化している。見ていて飽きない。一度だけアメストリア軍総司令官の立和名様に受肉させて頂き、街を歩いた時を思い出す。ふふふ...懐かしいな。

しかしさっきから視線が煩いな...確かに姉さんは絶世の美少女だが、ジロジロ見られても困るんだ。そこのお前、何故私を見る?

むぅ...4900年経っても女心と言うのは良く分からないな...

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

やぁ、絶賛視線を特に集めている私だ。

()はこういう視線に慣れているが、私は慣れていないし、少したじろぐ。

確かにな?TRPGでいうAPP(最大値18)は20位有ると思うが...

「姉さん、何故私にも視線が来る?」

この鈍感というか男っぽいというか...男心から考えても女心から考えてもお前も十分美少女なんだから自覚しろ...

 

さて買い物だが服なんかは妖精さんが作ってくれるのであまり買っても意味ないが、まぁ、そこは不躾というものだろう。

そして程々に買い物を済ませ、速やかに人目の無い場所に避難する

「どうするの?CH-4でも呼ぶ?」

「いや、それこそ駄目だ。一式は...駄目だな...徒歩で帰るぞ」

「了解。」「...軍刀」

「はぁ...まぁ、良いだろう。抜刀はするなよ?」

「無論だ」

という事で徒歩で帰る。

途中チャラい人類のゴミ屑に絡まれたりしたが、流血沙汰は3件に留めた。dust to dustってな?

 

鎮守府に戻ると片付けは終了しており、私達三隻は夕日を受けて輝いていた。

大和型の影響を多分に受けた東京タワー程の高さを持つ巨大な艦橋や護衛艦のような形の煙突などには対空陣地や手摺り、橋が多数かけられており、それらが夕陽を受けてステンドグラスのように複雑な影を作り出している。主砲は火の光で神々しく輝き、長すぎる砲身が不気味な影を海面に作る。三隻並んでいるためか、一隻分よりも城郭ぽさは増しており、何処を見ても飽きない。んー、やっぱり私達の艦はうつくしいな。間違いない

 




何故かお気に入りが-4...落ち込みますね...不評でした...

CH-4 ヘリです。詳しくは52話を。
一式 一式装甲車輌です。ただのジープです。


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23.えぇ?

ーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アメストリアだ。あれから一月の時間が経ち、鎮守府は穏やかな様相を見せている。時折砲声が響き、上空には編隊を組むF-105。私はそれをアメストリアの露天艦橋で鬱屈な気持ちで眺めていた。何故か?それは最近海軍内で実しやかに囁かれる噂の所為である。「アメストリア型戦艦と思われる不審艦が海軍を襲撃しているらしい」この噂には信憑性があまり無いが、それでも嘘であるとは思えない。というのも実際に消し飛ばされた島があるらしく、観測に行った艦載機妖精さんが撮影した写真が他の鎮守府から流れてきたんだが、確かにあの着弾痕はアメストリア型戦艦でしか為せない。うーんこの

また他にも最近の出費が莫大で、資材備蓄の遣り繰りに頭を悩ませているのが拍車をかけている。

そして最近私達は一切出撃せず工場している。何故か?

 

1.アメストリア、リバンデヒ、カイクル改二への改修

(鋼材114575×3.弾薬4600×3)

 

2.大和、武蔵、長門、陸奥、赤城、加賀の改三への改修

(鋼材30000×6.弾薬3500×6)

 

3.改修内容に慣れるための演習

(弾薬35600)

 

という私の改修から演習までですっかり鎮守府の備蓄が無くなり、てんやわんやになった。

しかしデメリットだけでは無い。

恐ろしい程の戦力、世界に宣戦布告しても勝てる力が入り、鎮守府から半径200kmは深海棲艦が居ない。

食料問題も深刻化し、私が頼み込んで間宮さんを建造した。

たしか本来は建造できない便利アイテム的な扱いだが、此処は現実。実際に間宮さんは居て、食事を作ってくれるのだ。鳳翔や伊良湖も迎えたかったが資材の関係で不可能。

 

で、本題だが、アメストリア型戦艦が艦娘を攻撃しているという件だが、

大本営より出頭命令が来たが、無論無視。五月蝿かったのでBGM-9を不発で一発ぶち込んだ。

次は核を飛ばそう。

 

という事で以前私がボコボコにされた敵と同一である可能性が高いという事で、アメストリア、リバンデヒ、カイクル、大和、武蔵、加賀の本気艦隊で出撃する事に。全員絶対干渉結界を起動し、レーダーも感度最大、F-105の直庵機も出し、万全の態勢だ。なんか凄い光景だ。

 

 

 

アメ

 

 

リバ カイ

 

 

大和 武蔵

 

 

加賀

 

 

 

という陣形で出撃。

4650mが三隻に965mが二隻1488.5mが一隻。

ありえない戦艦達が六隻。機密上あまりよろしくないが、今回は別だ。

私を大破、リバンデヒを中破、カイクルを小破に追い込んだのだ。

特に私を集中放火した理由が知りたい。あの、最初の大破も恐らくこいつだ。

『姉さん、右7000に味方艦隊六だ。ッ!?敵影二?ヤツだ!』

おっとこれはやばくないか?アメストリア型戦艦は艦娘の攻撃など効かない。同型艦くらいしかダメージを与えられない。

「全艦最大戦速!潰しに行くぞ!」

「分かったわ!」

「了解したっ!」

「此方大和!了解しました!」

「武蔵だ。了解した」

「加賀、了解よ。五航戦の子なんかと一緒にしないで」

座標を捕捉し、BGM-9を全弾発射。

4500基のグラニートも順次発射。

計16545発のミサイルが発射され、500cm四連装砲が射程に入った途端、猛烈な業火を放つ。

7mの砲弾が大量に放たれる。

 

しかし、効いているとは思っていない。

結界を張っているなら無意味。直接ぶつけないと中和してくれない。

急がなければいけない。

「妖精さん!味方の被害状況は!」

''重巡二、大破!軽巡三大破、中破!駆逐一、小破!です!''

「盾となり滑り込め!リバンデヒ、カイクル、大和は援護!武蔵は空母の方を殺れ!」

『主砲、てぇー!』『了解。てぇー!』『了解しました!』

 

やっと目視出来た。

黒い煙が上がり重巡が炎上し、軽巡は駆逐を守りながらも必死に反撃している。

 

そして滑り込む。

結界を張り直し、結界同士をぶつける。バリバリと膨大なエネルギーが衝突しあい、接している結界からは紫電が散る。

「主砲全門90度一番から五番!副砲、一番、三番、五番、六隻右90度、45mm対空機関連装砲右舷起動!」

主砲が起動し、右舷に全門が旋回し、装填。対空砲は俯角を最大まで下げてより敵の深海棲艦に当たる様にする。そして、結界が飽和し、消える。

「てぇー!」

 

7m×5mの砲弾...私は空飛ぶオプティマスと名付けた鋼鉄の塊が20発撃ち出され、私の船体が大きく傾く。そして砲弾は敵の装甲を突き破り、爆発。同時にこちらも攻撃を受ける。

甘んじて受ける。あちらも500口径砲だ。

殴られたような衝撃に襲われるが、私は立つ。

「武装全門起動!フルファイア!突撃しろ!」

黒い船体と濃い灰色の船体が直接ぶつかり火花を散らす。砲身と砲身が交差し、互いに砲弾をゼロ距離で撃ち合う。500cm四連装砲が船体を貫き、150cm四連装砲が艦橋を撃ち抜き、45mm対空機関連装砲が穴だらけにしていく。右舷側甲板下にある30cm連装電磁力砲、20cm連装砲が一斉に旋回して互い違いになる様に大量の砲弾をばら撒いてゆく。左舷のミサイルが打ち出されすぐに急降下すると深海棲艦の様々な所に突き刺さる。

 

何故か戦艦同士の殴り合いになったが私は既に数回大破している為、特殊装甲を積んでいる。

 

''ゼロ距離から600口径が命中しても傷一つ付かない''

 

がコンセプトの妖精さんの自信作。深海棲艦の攻撃は一切効かない。

深海棲艦が積んでいるはずがなく、主砲弾が大量に命中。

アメストリアの弱点、内部から爆発して行き、至る所から炎を吹く。

 

 

ーーーバギッ!

 

 

裂ける音が響き、敵であるアメストリア型戦艦の攻撃がぴたりと止み、艦尾から沈んでゆく。

私の方は第一砲塔が中破。電気系統が少しやられている。旋回不能。

他は艦橋群が幾つか応答せず。航行には支障無し。

弾薬が尽きかけている。主砲、副砲、対空砲の砲身は冷却中。

一応私は露出艦橋に出てベガルM115AXという対戦車(?)ライフル...妖精さんに聞いたが、対艦ライフルという巫山戯たライフルを構える。

 

そして艦首が海面から離れ、ゆっくりと天へ向いてゆく。

破損した部品や甲板の破片、第一砲塔の砲身などが雨の様に散り、艦首より先に没してゆく。

 

そして最期の力を振り絞ったかのように垂直に立つ。

大量の気泡を出しながらゆっくり、ゆっくりと沈んでゆく。

100m近い高さを誇る艦橋を残した後部船体が転覆し、艦尾を最後に沈んでゆく。

一応深海棲艦だろうと、昔は()と共に戦っていた妹だ。

ライフルを立てかけ、敬礼する。

「号砲用意!二番、三番、四番、五番砲塔、空砲装填、てぇー!」

轟音が鳴り響き、白い煙が吐き出される。

 

艦首が水柱を立てながら全て没する。

あれ...泣いている?私の目から少ないが一筋の涙が出ていた。やはり、感傷はあるのだろうか、と何処か他人事の様に私は分析していた。

「リバンデヒ...一応、警戒を......?」

少し海面が光り輝いたかと思うと、ぼんやりと優しい光が見える。

何これ?

「リバンデヒ...あれは、何だ?」

『分からないわ...主砲向け!方位陣形!』

私、リバンデヒ、カイクル、大和で囲い、武蔵、加賀が艦娘を守る。

四基全ての主砲を向ける。復活なんか止めてくれよ...?

 

そして海面に影が現れたかと思うと思うと勢いよく叩き割り、濃い灰色の艦首が伸びる。

艦橋が現れ、電探が現れ、マストが現れ着水する。

「え......?」

すぐに60門の500口径砲が向けられる。

座標固定。

「リバンデヒ、カイクル、主砲はそのままいつでも撃てるようにしておけ。突入する。」

『『了解』』

ベガルM145を持ち、不審艦の艦首に転移。

見た所主砲は500cm四連装砲だ。つまり、改二だ。

艦娘か深海棲艦は......いた。

第一艦橋に転移してベガルを向ける。ーーーーーーーん?居ない?

突然、後ろから手を回され口を押さえられた。首元には小ぶりだがしっかりと研がれている事が分かるナイフが添えられていた。...怖ッ!どうやって私の警戒網を潜り抜けてチェックメイトしてきたのだろうか? やだ...もしかして私の警戒網...ガバすぎ?

「あれ...?お、お姉さん!?ご、ごめんなさいっ!僕、お姉さんだとわからなくて...」

ナイフが下げられ、後ろを向くと、中性的な顔立ちに優しそうな蒼眼、長い黒髪を一房で纏め、白いリボンで纏めた美男子...失礼。記憶によると、

 

『アメストリア型戦艦四番艦ノイトハイル』

 

と。()の妹だった。

 

 

 



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24.四番艦

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あ、ありのまま起こったことを話すぜ!

なんか深海棲艦を沈めたと思ったら海面が光って私達と同じ艦影の戦艦が飛び出してきた!

何を言っているのか私もよく分からない。

けど艦橋に行ったら妹がいたぜ!

 

意 味 不 明 だ !

 

多分ドロップなどというものだと思うが、何故に四番艦が来る...空母に逃げられたし...

まぁ、メリットの方が大きいけど。

 

「じゃあノイトハイルは私の妹でこれからもついて来るのか?」

「うん......だめ、かな?」

「いや、別にいいんだが提督にどう説明するか...」

「ねぇ、ノイトハイル」

「何かなリバンデヒ?」

「私は呼び捨て...取り敢えずついて来ることは許可するわ。武装解除して私達の最後尾について頂戴」

「分かったよー」

とまぁ、アメストリア型戦艦が四隻になったZE☆となり、救助した艦娘達はいつぞやの大佐殿の所属で適当(千単位)で資材渡して返したりと色々とあったが何とかパラオ鎮守府に到着。

先にリバンデヒ、カイクル、ノイトハイルを先ドック(地上)でドックに運び、私が最後にドックに入った。ついに超大型ドックが四つ全て埋まったな...

艦艇色はリバンデヒとカイクルが濃い灰色で、私とノイトハイルが黒に近い濃い灰色だ。こう見るとやはりなんとなく違うな。理由は、わからないが。

「さてノイトハイルついて来い。リバンデヒ、カイクル四隻の補給を頼む。」

 

「それで、ドロップで君が来たのかな?」

「はい。アメストリア型戦艦四番艦ノイトハイルです。よろしくお願いします」

そう言ってノイトハイルは優雅に礼をした。

む?慣れているな...艦長辺りに居たのかな?

「まぁ、そういう訳だ。私とて出したくて出したわけではない。」

「うん。分かってるよ。そろそろ部屋も分割したほうが良いかな?」

「あぁ。私とノイトハイル、リバンデヒとカイクルで良いだろう。」

でないとリバンデヒのイチャイチャにノイトハイルが巻き込まれる。

リバンデヒもカイクルも少しシスコンが強いんだよ...

「あと、消費資材だけど...少し使いすぎかな?」

「ぐぅ...すまない。グラニートにBGM-9も使った。主砲、副砲も限界まで斉射した」

「はぁ...改二になってから消費量が倍になってるんだから気を付けてね」

「了解した」

 

「では改めてよろしくお願いする。私はアメストリア型戦艦一番艦アメストリア、お前の姉だ」

「僕はアメストリア型戦艦四番艦ノイトハイルだよ。よろしくねお姉さん」

「あぁ」

敬礼には敬礼を。踵を鳴らし45度ぴったりの角度で敬礼する。

そして手を繋ぎ連れて行く。鎮守府についての説明、この世界に関して、場所や妖精さんも。途中強烈な殺気を感じたが、どうせリバンデヒだ。無視する。

そして食堂にて間宮さんにノイトハイルを紹介し、四姉妹で昼食を取り、

ドックにてアメストリアの国旗を四隻全てが掲げる。

全武装と確認や私の歪んだ装甲の張り直しやぶつけ合った時に剥がれた塗装を塗り直し、どうせならと全員が同じ黒に近い濃い灰色に塗装したりと。

 

そして情報の共有や戦術の再構成、陣形の変更に新弾頭である粒子弾の確認などの二時間に及ぶ会議をおえた。

「では解散」

「ねぇお姉ちゃん。ノイトハイル、大本営に報告するの?」

「......しない。どうせあちらから出頭命令が来るだろう。それに一隻くらい自由に動ける船が居た方が良いだろう?」

「そう......」

 

夜。

入渠時にノイトハイルは着痩せすることが判明し、リバンデヒの標的にノイトハイルが追加されたりとあったが今は自室。襦袢に浴衣を軽く羽織っているだけだ。

隣の部屋にはリバンデヒとカイクルが居る。

つまりここには私のノイトハイルしか居ない訳で、話題が無い...

「どうだった?此処は?」

「うん...なんというか...凄いよね...」

「まあな。此処の提督は私達艦娘を人として見てくれている。生き生きとしているだろう?」

此処は言葉にしずらいが、他の鎮守府とは決定的に雰囲気が違う。

艦娘が生き生きとしており、元気がある。人間のように。

ある程度の自由があり、無駄に広い島は基本どこいっても自由だ。案内途中も電や雷、高雄や愛宕にも会った。

「うん...あと、久しぶり、お姉さん」

「あぁ...」

私はお前の姉では無い...本当の姉は()だ........

複雑な気持ちのままノイトハイルが抱きついてきたのを受け止める。

()としては安心し、喜びたいが、私としては微妙だ。しかし()の意思には逆らう気はさらさらないので()の望む行動を取る。

私は腕を回し、優しく撫でていく。

「ずっと会いたかったんだよ...?」

「あぁ。遅れてしまってすまない」

「ずっと...ずっと...会いたかった...ん、だよ...?何か、目が覚めたら、暗くて...冷たくて...」

一応深海棲艦時の感覚を覚えているんだろう。寂しかったはずだ。私の浴衣が濡れていくが気にせずただ撫でてゆく。すると必死に声を押し殺しているが耐えられなくなり、声を出して泣き出した。

 

暫く経つとノイトハイルが泣き止み、私に抱きついてきたのに気付いたのか顔を赤くしていきなり離れてしまった。フフフ...分かるわその気持ち。

()的には嬉しかったのだが、意外とうっかりさんか?

「落ち着いたか?」

「う、うん...ごめんなさいいきなり泣いちゃって」

「いや、それは良い。それよ「お姉ちゃーん、ノイトハイルは?」...リバンデヒ」

凄いタイミングでリバンデヒが来た。そしてノイトハイルを視認した途端飛びついた。

あんたどういう反射神経してるの...

「むぐぅ!?リバンデヒ、離してぇ!?」

ちょっ...ノイトハイルが...お前一応一番大きいこと自覚しろっ!

「リバンデヒ、離れろ。ノイトハイルが窒息死する」

「.......折角の可愛い妹なのよ?」

「愛で殺すな。いい迷惑だ」

まぁ、確かに()からしてもノイトハイルは可愛い妹なのだが...美少年にも見えない中性的な顔立ちの為、私としては微妙だ。距離が取りづらい。

しかし妹なので大切だし、守る対象だ。私もシスコンか...

 

 

しかし雰囲気をぶち壊す事態が発生。

案の定大本営から呼び出しが''三隻''に来た。真偽を確かめたいのだろう。

「提督、出撃する」

「うん...(イライラ)」

ん?また提督がイラついている。

秘書艦として書類は全て把握して艦娘のスペックで全て暗記し、アメストリアの船体にも保存しているが、たしか自分達がまるで正義だということを疑わない神の名の下に的な態度で一方的な要求をしてきた何処かの○帝だが、ついに通信で「さっさと引き渡せ無能なジャップ共」とあちらさんのゴミが発言した為、厳重に隠匿された''全て''の基地にトマホークを2000発ずつにBGM-9を白い家に100発近くぶち込み、通信内容を某動画サイトに流出させた。

HAHAHA!!ザマア見ろ!

当然あちらさんもブチ切れ、同盟破棄をしてきたが、日本政府は「ん?するの?うん。オッケー。」とあっさりと承諾。あちらさんが呆然としていたのは愉悦だった。

工作員まで送り込んできたのだ。私としても堪忍袋の尾が切れた。

 

何故大日本帝国は条約を蹴ったのか?それは私がキレた時点で大体の人は察していると思うが、アメストリアに眠る技術を一部提供。火砲に関しては漏らしていないが、それでも流石技術大国日本。

それをマザーマシンとし、発展型を早くも開発。国民生活が向上し、軍事力も防衛のみだが世界トップクラスになった。それに伴いその技術は元々俺の国の物ニダ!と騒いでいた国もいたが、情報提供先がアメストリア型戦艦一番艦アメストリアと明記されており、ついでに国の実情と計画性の無い政策の数々を某動画サイトに流した。ニコニコ☆

特に日本帝国陸軍、海軍は飛躍的な進歩を遂げ、陸軍は一七式戦車(アメストリア版エイブラムス)の技術を元に44式戦車を開発。化け物に。海軍は従来の空母からジェット戦闘機を飛ばせるようになり、アウトレンジ戦略が確立。

私達の方にも接近する勢力はいたが、ことごとくベガルM115-AXの餌食になって貰った。

 

 

 



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25.所属変更

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、アメストリア型戦艦は四隻で海を滑っていた。

しかしその操り手である艦娘は本来の艦橋にはおらず、私の会議室に集まっている。

「恐らくというか私がわざわざハッキングして調べた情報だが、私達''三隻''は横須賀鎮守府に転属となる。」

「......何故なの?」

「まだ調べていないが、アメストリア型戦艦の深海棲艦が出現し、重要拠点である東京を守るために同様の存在の私達が盾として配置されるのだろう。どうせ守る対象も霞ヶ関とかいうどうでもいい場所だ」

「僕の存在が...」

「落ち込むでない。私とてイライラいているが、基本守らなくて良い。重要なのは私達が三隻と認識されている事だ。ノイトハイル」

「何〜?」

「私達三隻は指示通りに動くが、ノイトハイルには影として動いて貰いたい」

「分かったよぉー」

頼もしい限りだ。既に船体が光学迷彩によって消え、少し後ろに離脱している。

「そして近隣諸国だが、リバンデヒ、報告しろ」

「了解、私の中央演算処理装置の情報収集で分かったのだけれど、Chinaはポンコツを量産中。アジア連合は必死ね。気にしなくていいわ。ロシアはまた最近最新鋭の艦娘が開発されたらしいわ。

けれど私達の敵ではないから気にしなくていいわ。米国は...何も言わないわ。反省していないのだもの」

「後で削除しておいてくれ。カイクル、ノイトハイル、リバンデヒの言いたいことはわかるな?

私とてブチ切れる寸前なんだ」

「既に知っている。BGM-9の核発射態勢に入っている。」

「僕はウンターガング弾頭をBGM-9に載せていつでも撃てるよ」

はぁ...妹達は...確かに私もあれだけ忠告して仕返しもしたのにまだ懲りずに裏でやっていると分かった時は思わずペンを握り潰し、2500mmの特殊装甲を幾つか叩き割ったが。

私よ既に全ミサイルにウンターガングを積み発射態勢に入っている。

許せないのだ。''人間の戦争に艦娘を投入した''米国が。

 

さて、ノイトハイルは1200km離れた位置で離脱し、隠密行動を開始。

私達は無事入港。ミサイル関係と主砲以外の武装をロックし、念の為F-105を飛ばせるようにしておく。私の妹に手を出したら...戦争だ。全て叩き潰してやる。

「貴様がここに来たということは何か反論があるのかね?」

そう。何かと気があう大将の元に来た。この人間、地味にハイスペックで人事も担当している。

「いや、無い」

「ふん、どうせ貴様の事だ。ハッキングでもして知っているのだろう?」

「まぁな。私が言いたいのはそれでは無い。私達を兵器として見るな。感情があるしプライドがある。人間より遥かに長く生きた年長者なんだがな。

あと土産だ。米国が大人しくなるだろう」

そう言って米国の実験結果や研究所の位置、犠牲者、人間の戦争に艦娘を投入したという証拠、その他諸々の機密を纏めた書類とUSBを置いて行く。

 

さて颯爽と戻ったわけだが、何故か、

憲兵隊がMP-5を、リバンデヒがベガルM145を、カイクルがM115-AXと自律起動のM2を十五基展開させて膠着状態に陥っていた。

いや、なんでよ?まだ面倒事...

という事で腰のM93Rでは無く、太腿に巻きつけておいたホルスターからSOCOM Mk23を取り出し、重いトリガーを引く。マグナム級の破裂音が鳴り響き、45口径弾が地面を抉る。

遅れて重い衝撃が走り、反動が来るが私は艦娘だ。太腿のホルスターに戻す。

「何事だ」

ついでにベガルM145を瞬間転移で武器庫から取ってくる。そしてマガジンを装填しコッキング。

「いや...こいつらが私達をモノ扱いしてきてな...しかもアメストリア軍人としてのプライドを踏み躙ってくれたのでな」

「はっ!妄想が過ぎるんだよ雌豚が!お前らはさっさと独房で腰振っておけば良いんd--

 

パパパパパパパパパパパパパパパパパパンッ!

 

ドガンッ!

 

おっと無意識に引き金を引いていた。マガジン全弾をぶち込み、遅れてミンチが出来上がる。

カイクルの持つM115-AXの銃弾は12.7×99mmAS(anti-ship)弾。

内部で大爆発を起こし、人間を跡形もなく吹き飛ばす凶悪な銃弾だ。

何故私の知らないアメストリア製の銃器はゲテモノが多いんだろうか?

「カイクル、弾薬が勿体無いだろう」

「あぁ...そうだな。すまない」

別憲兵隊の一人や二人死んでも影響は無いだろう。

むしろ軍人でも無い人間如きが艦娘という戦争当時を知る本物の軍人を侮辱したのだ。

死をもって償え。()はそういう所は凄く厳しいからな。

自分勝手?艦娘至上主義?好きなだけ言え。私達艦娘はモノじゃ無いんだ。

「リバンデヒ、カイクル一応提督の挨拶に行くぞ」

憲兵隊を置いて行き、提督のいう執務室に移動する。

「今日パラオ鎮守府より着任したアメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。」

「アメストリア型戦艦二番艦リバンデヒよ。」

「アメストリア型戦艦三番艦カイクルだ。よろしく頼む」

「横須賀鎮守府提督の寺塚中将だ。早速だが、武装を下ろして付いてきたまえ」

言われた通りに全ての銃をおろし、置いて行く。身体が動きを覚えているとはいえ、咄嗟に動けないのが私である。

 

そして暫く歩き、第一尋問室と書かれた部屋に私のみ押し込まれる。

中はツルツルとした建材で覆われ、天井から二つ何かぶら下がっているが、気にしない。鎖みたいだったけど気にしない。絶対ここO★HA★NA★SHI★する所じゃん。

テーブルと椅子が二つあるだけで、なんか嫌な空気だ。怨念も強くなっている。

指示されて片方の椅子に座る。なんか手枷と足枷があるけど気にしない。

「さて、君をここに連れてきたのは他でもない。」

「分かっている。私達は誓って艦娘に攻撃をしていない。味方を撃つほど落ちぶれてはいない。ついでだがその警戒している新種の深海棲艦は既に私達で討伐済みだ」

「......よかろう。君達は一ヶ月限定だが、この鎮守府所属だ。息子の所属だからと言って手を抜くつもりはない」

「そうか。別に構わない。しかし私達は奴隷ではない事をよく注意しろ?」

「無論だ」

 

さてさて尋問室でのやり取りの後、無事解放され、軍港にて集まっているのだが、

リバンデヒやカイクルから凄く心配された。別に拷問されたわけではないんだけどなぁ...

「さて、私達はここに一ヶ月軟禁される訳だが、できる限り人脈は揃えておきたい。

もしもの時や大本営の動きなどはチェックしておきたい。四人での会議は2300だ。解散」

必要なことのみ伝え、各々の人脈を築くために散る。

出来るだけバレない土地も探さなければならない。

 

そして私は横須賀に来たら行きたい場所がある。

以前も何回か来たが、それどころではなかった為、丁度良い今日を選んだ。

それは慰霊碑だ。太平洋戦争にて横須賀では大量の死者が出た。

特攻する者、勝てないと分かっていても艦に乗る者。それに艦娘が現れる前に起きた戦闘での犠牲者も記されている。皆一様に悲壮な決意、帰ってこれないとわかって散っていった兵の声。海路が死にながらも離島の避難活動の為に文字通り命を糧にして囮を務めた艦、協力して巻き込まれた民間の船舶乗務員。

私とて艦娘だ。ここでの死者の叫びは聞こえる。

しかしあまりにも悲しすぎて、苦しくて耳を塞ぎたくなる。

しかし艦として再びこの世界に来た以上は聞かないというのは逃げになる。

まぁ、私はここに居なかったわけだが。

一応慰霊碑の前に立ち、黙祷。

日が暮れるまでずっといるつもりである。



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26.その頃のパラオ鎮守府

遅れました。
ノートの書き溜めに追いついてしまい、追い打ちをかけるかの様にスランプに陥りました。
なのでこれからも遅くなると思われます。


ーーーーーーーーーーーーー提督sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やぁ、久しぶりだね。最近提督としか書かれなくなった提督こと寺塚だよ。

今日はアメストリア達が所属変更となってから二日後。

やっぱり今までの日常と何か違う、足りないと思っちゃうんだよね...

いつもはあの大きなドックからアメストリア達が出撃するんたけど一回も動いていない。

あの轟音も、提督室から見える悠々と海面を滑る巨大な戦艦も秘書艦だけど午前中に素早く仕事を終わらせてゴロゴロしているアメストリアが居ない。あの騒がしさも無い。

何か足りないなぁ...

 

そうじゃなくてね?

大和達はアメストリア達が抜けたから代理の主力として頑張ってくれているんだ。

資材は他の鎮守府から考えてもおかしいくらいに消費されるけどね...管理の難しい燃料の補給がないだけでもまだ良しかな。

でも今まで秘書艦に主力旗艦、食堂の当番まで全て一任していたけど、アメストリアが間宮さんを建造して何とか回っているんだ。

 

しかしアメストリア達がいなくなって気付いた事があるんだ。

このパラオ鎮守府の最大の欠点、空母や戦艦を守る駆逐艦、軽巡洋艦が全くいないんだ。

第六駆逐隊と重巡は演習の主力で、他の鎮守府の艦娘を鍛えているんだ。

何かとアメストリア達が輝かしい戦績を残しているけど、ちゃんと駆逐艦や重巡洋艦の子も頑張ってくれているんだ。技術提供があって速度や火力も段違いで上がっているからね。

電はなんだかんだで一番戦歴が長いからね。確かもうすぐLv70代だったかな?

そこで、近海の護衛戦力増強の意味も込めて、アメストリアの技術を使って駆逐艦や軽巡洋艦を大量建造しようと思うんだ。

工廠はアメストリア型戦艦のドックがあるからあれを使えば十隻位同時建造出来るよね。

でも妖精さんの技術力的にも人数的にも三隻から四隻位かな...

「妖精さん、駆逐艦か軽巡洋艦を一番工廠で建造してくれないかな?三隻で良いよ」

ピシッと敬礼をしてトタトタと妖精さんが走り出す。

暫くすると一番工廠にある超大型クレーンや天井に据え付けられたクレーンが動き出し、せっせと建造を始める。アメストリアが頼んだら大体望む兵器や艦娘が出てくるんだけど妖精さんの仲が良い僕でさえ無理だからね...うらやましいなぁ...

 

そして時間は経ち、建造が終わる。

一番工廠に鎮座していたのは特型駆逐艦として有名な吹雪、初の軽巡洋艦となる天龍に龍田、矢矧。うん。艦隊はもう決定かな。それよりもやっと軽巡洋艦が来てくれたね...此処は戦艦ばかりだから...あとは...魔改造された空母とか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぶっきーsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

初めまして!私は特型駆逐艦、吹雪型一番艦吹雪と言います!

「はじめまして吹雪です。よろしくお願い致します」

どうやら私は建造されたようです。けど...空が見えません。地下、でしょうか?

そして同じく建造された人がいるみたいです。

「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」

少し怖そうな人です...制服を来て、腰に刀を持っています。なんで持っているのでしょうか?

「初めまして、龍田だよ。天龍ちゃんがご迷惑かけてないかなあ〜。」

次は姉妹艦だと思います。龍田さんです。こちらも槍も持っています...刃が赤いのは私の気のせいでしょうか?

「軽巡矢矧、着任したわ。提督、最後まで頑張っていきましょう!」

最後は矢矧さんです。凛々しい雰囲気ですね。

こちらは...大和さんに服装が似ていますね。ポニーテールですし、やはり最期まで一緒だったからでしょうか?あまり触れないほうがいいですね...

そして目の前にいる白い大日本帝国海軍の軍服をきた司令官です。

「初めまして吹雪、天龍、龍田、矢矧。僕が此処、パラオ鎮守府の提督、寺塚大佐だよ。説明をするからついてきてくれるかな?」

素直に従います。歩きながら見回しますが、すごく広いですね...地下なのでしょうか?

物凄く大きなドックも気になりますね...四つ、ありますね。工廠か何かでしょうか?

 

しかし突然ジリリリリと、いう警報が鳴ります。何が起きたんでしょうか!?思わず身構えてしまいます。

「あはは...大丈夫だよ。君達の先輩が帰ってきたようだよ。ほら、」

そう言って司令官は壁についた上に向かって伸びる大きな筒を指差します。

そこには照明が点滅して警戒を促し、ゆっくりと何かが下がって来ているようです。

誰でしょうか...?

 

ゆっくりと板が下がって来て、段々と艦影が見えてきます。あの大きな船体にあの三連砲は...

大和さんです。しかも続々と他の筒からも艦娘が降りてきます。

大和さん、武蔵さん.....それ以外が分かりません...あんな艦娘は見たことがないのですが...?

空母だということは分かるのですが、甲板が上下に二枚付いていて、見たこともない艦載機を載せています。そして隣には物凄く大きな戦艦か空母かよくわからない艦娘が居ます。

艦娘達は板ごと下がって来て、ドックに船体を入れて行きます。

あれは...赤城さんっ!?

私の憧れの先輩ですっ!しかし何故あんなヘンテコな艦に乗っているのでしょうか?

「大和以下第二主力艦隊ただいま帰投しました!あら...?新しい艦娘ですか?」

「うん。紹介するよ。この大和達が第二主力艦隊だよ。大和、武蔵、赤城、加賀で構成されているんだ。」

え.....?護衛艦が、いない?駆逐艦一隻もつけていないんですか!?

「護衛艦が...居ない...?」

「ん?あぁ...えっとね...少し複雑なんだけど、ここにいる艦娘は改三なんだ。

ある艦娘達の技術提供によってね噴式戦闘機を積んでいるんだ。しかも対空砲は機関砲がたくさんついているから深海棲艦も近付けないんだよ。けどね、それでも魚雷までは防げないんだ。

うん。今決めちゃおうかな。特型駆逐艦吹雪」

「は、はい!」

「軽巡洋艦矢矧」

「何?」

「現時刻より、第二主力艦隊に配属するよ。直衛艦として頑張ってね」

「「はい!」」

やはり矢矧さんも大和さんと再び会えて嬉しそうです。私も赤城先輩と...!

「けど提督、大和達は何か違う気がするのだけれど、気のせいかしらあ〜?」

「いや、当たりだよ龍田。その艦娘...このパラオ鎮守府第一主力艦隊のアメストリア型戦艦一番艦アメストリアが提供してくれた技術で大和と武蔵は船体を700m程大型化して、150cm三連装砲を積んでいる。赤城は二段空母になり、加賀は超重装多段式三胴艦戦略空母と言って三胴艦になり四本の甲板を持つ空母に変わったんだよ」

その あめすとりあ さん?はどういう艦娘なのでしょうか?

私が知る限りだと海軍にはいなかったはずなんですが...最近開発された艦娘なのでしょうか?

「提督、あめすとりあって誰だ?」

「ん?......ちょっと別件で横須賀鎮守府に派遣中のうちの主力だよ。

アメストリア型戦艦一番艦アメストリア

アメストリア型戦艦二番艦リバンデヒ

アメストリア型戦艦三番艦カイクル

アメストリア型戦艦四番艦ノイトハイル

の四姉妹。船体は全長4650m、全幅530m、全高420mの巨艦で、主砲は500cm四連装砲、副砲に150cm四連装砲を装備する僕も呆れる火力の艦娘だよ...」

し、司令官?全長4650mって何なんでしょうか?もしかしてあの大きなドックって...

しかも主砲が500cm四連装砲って何ですか!?そんな艦娘は聞いたことがありません...

みんな驚いているようです。

「まぁ...来月には帰ってくるよ。」

 

それから私達はこの鎮守府について説明を受けて、アメストリアさんという艦娘について、彼女がもたらした影響なども教えてもらいました。

すごい、としか言いようがありません。

生活面から兵器面まで技術を広めてくれたんです。

 

しかし怖いです。そんな強力な艦娘が沢山いるのに私なんかが必要なんでしょうか?

確かに何か変わった気がしますが、武装は貧弱で、150cm四連装砲にも及びません。

改でも防空特化艦ですし、本当に必要とされているのでしょうか?

「吹雪、君が必要になったから建造したんだ。あまり考えすぎないでね。君は実質的な主力艦隊に配属されるくらい必要とされているんだよ。誇っていいんだよ?」

「はい!」

私はこのパラオ鎮守府で頑張ります!



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27.アメストリア、倒れる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

どんよりとした曇天の空からこんちにわ。アメストリアだ。

輝かしい太陽はすっかり天岩戸してしまい、艦橋も暗い。艦内システムを精査するホログラムや気象などの環境情報が表示されたホログラムが照明代わりとなり、薄暗く照らしている。なまじ体育館みたいなサイズなんでそこまで明るくならないな。うん。ホログラムの近海マップが出てきた。ようやくそこそこ明るくなってくる。海はそこまで荒れていないようだな。まぁこれから私達が荒らすが。艦内も特に異常無し。ただ、私は朝から咳が少々あるのが気掛かりだな...今度から私の調査も入れてもらおうかね。

それはともかく出撃だ。無駄飯食いにはなりたくないからな。一応警報を鳴らしてもらっている。私が進むことによって発生する波が半端ないからだ。

「抜錨!機関始動!10ノットにて低速航行!」

大馬力のモーターによって鎖が巻き上げられ、海底に突き刺さっていた錨が海面から飛び出す。アメストリア型戦艦ともなると巨体を固定する為にそれ相応のサイズの錨が必要となるが、私達では折りたたみ機構を実装し、精々10式程度に小型化した。ん?どうやら民間用埠頭から撮影を試みているおそらく民間人が複数。三脚を立てた対空砲のような望遠レンズ。あれなら確かに私を細かく撮影する事ができるだろう。一応艦橋の防弾ガラスの透明度を落としておく。写真再現できる技術はまず重要度が低いし、出来たとして脅威にならない為好きに撮らせておこう。

まぁ確かに観艦式やらに比べ実際の戦場への出撃はまた違ったものとなる。それが撮りたいんだろう。

「主砲一式徹甲弾装填、旋回テスト」

見せてやろう。五基の砲塔がそれぞれ回転し、砲身が別々の角度を向き、元に戻る。

左右繰り返し、45mm対空機関連装砲も動作テスト。

「ゴホッ...アメストリア、出撃する」

『リバンデヒ、出撃するわ』

『カイクル、出る』

三隻の巨艦がゆっくりと進んで行き、白い航跡を残しながら進んで行く。

ちなみに護衛艦や直庵機は居ない。必要無いからだ。

後部格納庫からF-105を飛ばす。主翼が根元から回転来ることができ、垂直に離陸する。

レーダーを起動し、索敵。

 

''レーダーに感あり!距離16500です!''

「ミサイル、グラニート装填!ゴホッ...座標固定、発射!」

暫く航行してゆくと、レーダーに反応があり、取り敢えずグラニートをぶち込む。

艦首付近のハッチがドミノの逆再生の様に開いて行き、順次グラニートが放たれる。

''レーダーに反応!艦載機、120以上!''

「リバンデヒ、カイクル、結界を起動。帰投まで解除を禁ずる。45mm対空機関連装砲用意!」

明らかに音速を五倍程超える速度で接近する影が大量にある。

「500cm四連装砲、150cm四連装砲、46cm三連装砲、三式弾装填!座標固定!」

私達の船体にあるすべての火砲が動き出し、主砲、副砲は深海棲艦の艦載機の方へ。

45mm対空機関連装砲は艦載機の高度に合わせ角度を変えてゆく。30cm連装電磁力砲や20cm連装砲はこの間に攻め入る深海棲艦を警戒し、全方向に旋回する。

三隻に補う様に布陣し、艦首側の三基の主砲や右側の副砲が火を噴く。

同時に私から視認できる距離に黒い点が沢山映る。

そこに飛び込んで行く鋼鉄の塊はその艦載機の前で爆発し、柳のような花火を咲かす。

海面に艦載機だったモノが水没し、何事もなかったかのように進む。生き残った艦載機は長距離ミサイルを放ってくるが、ゲリラ豪雨より濃いレベルの45mm対空機関連装砲による弾幕でことごとく落ちてゆく。万が一生き残っていても残念ながら結界により墜落する。

ムフフ...無敵じゃね?いやダメだ慢心しかけている。それのせいで何回も大破しているんだ。

妹まで私の慢心に巻き込みたくない。

 

父島と呼ばれる島近海にて停泊する。

「こちらアメストリア。ノイトハイル、聞こえているか?」

『こちらノイトハイル。ちゃんと聞こえているよ』

私達の目の前に突如同型艦が姿をあらわす。ノイトハイルだ。

「報告は?」

「ん〜特にないね。」

いつの間にか既に私の艦橋にいる時点で既に人間辞めていると思うんだ。いや人間じゃないけどさ。

しかも珍しく抱きついてくる。む...?一週間近く離れていたからか?

「ノイトハイル...あまり甘えるなよ?」

「分かってるよ〜。でも僕だって会いたかったんだよ?」

「分かっている。リバンデヒ、カイクル、私の船体の第一会議室に集合してくれ」

 

「さて、第二回を始めよう。ノイトハイル、本当に何も無いんだな?」

「うん。あ、でも最近深海棲艦を見なくなったね」

「それを言え...」

私も闇夜に紛らせて調査したが、深海棲艦の数が明らかに減ってきている。

リバンデヒの艦載機は帰ってこなかったこともある。その艦載機が飛んでいたのはパラオ方面。

何が心にざわざわとした不安になるいやな感じが残る。

「私の予想としてはおそらく我が鎮守府に近く襲撃があると見るが、姉さんはどうだろうか?」

「その通りだ。私も懸念している。最悪の想定をすると、深海棲艦のアメストリア型がいる。そして核やウンターガングを使ってくると思われる。大和達は大分強化しているが、恐らく勝てない。

物量に負けるだろう。そこでノイトハイルは常に警戒してくれ。そして深海棲艦が現れたらすぐに夜だろうと通達しろ。すぐに出撃する。」

「分かったよ」

「私達も深海棲艦の規模によっては大規模掃討作戦を行う可能性がある。」

しかし計画を始動すると海が荒れてしまう。汚染してしまうのだ。

核による蹂躙。ウンターガングは海水ごと消すため駄目だ。水位が下がる。

「お姉ちゃん、そろそろ戻らないと怪しまれるわ」

「分かっている。ではノイトハイルは指示通りに向かってくれ。私達は帰投する」

 

 

さて無事に帰投し、ドックでは無く、近海に投錨し、隼で帰った。

父島までだが、20ノットの低速航行で移動しているため、既に夕日は水平線の彼方に沈もうとしており、夜の闇が足音を立てる。

隼を接岸し、ロープで固定する。むぅ...怨念が凄い...

「カイクル...少しキツくないか?」

「確かにな...これは...」

不覚にもフラッとしてしまった。というか熱い。視界が僅かにかすみ始め、高速思考が出来なくなる。

「ね、姉さん!?熱い...リバンデヒ、姉さんが熱だ。私が背負う。報告に行ってくれ」

「分かったわ」

カイクルに背負われる。それは分かるが、状況が理解できなくなってくる。

私はどうしたのだろうか?何が起きているのかよく分からない。

でも少し熱いなぁ...熱か?昨日慰霊碑にずっと居たからか?最近寝ていないのは事実だが、艦娘も人間か...耐えられなかったかぁ...

 

意識が戻り、ぼんやりと視界が戻ってくる。

白い天井だ。医務室か...?頭がガンガンするが、上半身のみ起き上がる。清潔感のある部屋に置かれたベットに寝ていた。そして右足に重みを感じたので見ると、カイクルが寝ていた。今気づいたが、額に冷たいタオルが置かれていた。

「カイクル......」

かなり深く寝入っているようだ。起こさないように抜け出し、汗ばんだ巫女服を脱ぐ。

熱か...怠いが、新しい巫女服を作り出し、羽織る。帯を巻き直し、

テーブルに置かれたSOCOMやM93Rをホルスターに入れる。

「お姉ちゃんは...あら、起きているじゃない。大丈夫?」

「あぁ。少し怠いが、何とか動ける。」

「そう。良かった...あんまり無理しないで頂戴。私の気が持たないわ」

「すまない。あらゆる戦略や対応策を中央演算処理装置で想定していたし、同時に要注意人物や使える人間を選抜していたら何日か徹夜してしまった。」

「はぁ...そんなの言ってくれれば私がやるのに...」

確かにリバンデヒは諜報については長けている。

沢山の戦略を熟知し、短所長所を知り尽くしている。私としては有り難いのだが、私も自身で出来るだけやっておきたいのだ。元が人間だからな。

しかしこの世界の人間は贔屓しても好かない。不快になる人間が多い。

私達をなんだと思っているんだ...兵器だが、個性を持ち、感情を持っている。

恐怖の視線や興味、怪奇の視線を外に出れば向けられ、鎮守府内では常に気を使い、注意して生きている。正直息苦しいのだ。パラオに帰りたい...

 

さてさて翌日。

朝食を食堂でとり、暗号による情報交換を取ったところで、ここの提督に呼ばれた。

「さて、貴様らを呼んだのは近々国際的な会議や式典がある。総理大臣や大臣達が乗り込む予定だ。アメストリア型戦艦一番艦アメストリア、貴様に乗られる予定だ。他の二隻は護衛したまえ。

出発は来週だ。では精々頑張りたまえ」

「...了解した」

と、いう事になった。何でだよ...帰りたいのに...あと二週間だ!と思ってたのに...

 

「ノイトハイル、聞こえているか?」

『聞こえているよ〜どうかした?』

「うむ。私達は内閣総理大臣達官僚共を載せることとなった。なので暫く増援に行くことができない。警戒を強めてくれ」

因みに行き先は台湾を通り、フィリピン、インドネシアを抜け、チヤゴス諸島を通り、ソマリア、インド洋を抜け、マダガスカル島の裏を通り、南アフリカをぐるりと周り北欧に向かう。そしてドイツにて会議がある。深海棲艦についてと物資の輸送だ。陸路でも良いのだが、中の国がある為断念。空路は撃墜されるので却下。結果、海路だが、太平洋を突き抜けるのは私達でもきついので、大回りして向かうらしい。

そこで恐ろしい防御力と攻撃力を持った私達が輸送に使われる事となった。

 

ほんとやめて...ソマリアとかあれじゃん。海賊未だにいるじゃん。深海棲艦は何故か太平洋に密集しているため、その他の海では比較的少ない。かつ、通常兵器も効くには効くので(微々たる結果)何とかやっているらしい。

当然タンカーなどが日本やドイツに向けて航行するため、世界一治安が悪くて国連軍も治安維持部隊を派兵するのを諦めたソマリアの海賊共が動く。格好の獲物だろう。

タンカー類は積荷を優先しているため、まともな武装は無い。小銃くらいならあるだろうが、生ぬるいと思っている。殺るなら徹底的に。これ常識な。

主砲ぶち込んでやんよ。今までの悪事は人間の血で払ってもらう。知識として知っていて良かった。知らずに行くと45mm対空機関連装砲であしらいそうだからだ。

さて、準備でもしておきましょうかね...主砲弾(粒子弾、榴弾式結界弾)を多めに積んでおこう。



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28.アメストリア、襲われる(意味深)

すみません遅れました!新学期が始まり、学校という生きる気力を失う場が始まってしまった為、出筆ををする時間が中々とれませんでした...

今回のサブタイトルからR-18の想像をした方、挙手!
アメストリア「主砲、ウンターガング弾装填...」


ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さてさてアメストリアだ。

あれから一週間経ち、予定通り、官僚共を載せ、出航した。

官僚共は貴賓室に押し込んでいるので大丈夫だろう。あそこ高級ホテル並みの基準だ。

乗ってきたのは内閣総理大臣、海軍大臣、陸軍大臣、大蔵大臣、護衛隊だ。

少し柄の悪い護衛隊だったが、気にしない。あとあの大将も乗っていた。

 

40ノットにて三隻で航行している。先程無事台湾近海を抜けた。

たまたまいた台湾海軍の護衛艦が見送ってくれたのは嬉しかった。台湾って良い国だね。

フィリピン近海に着くのは23:00頃を予定している。これは襲撃に対して対処しやすくするためであり、適度な速さという理由だが、90ノットで行くと、明日にはついてしまうからだ。

おかげで食料などを多めに積む羽目になった。むぅ...

「ほぅ...貴様の艦橋はこうなっていたのか...」

何故か大将が艦橋に居た。別に良いが面白くないぞ?

「無闇に機器に触らないでくれよ?そこら辺一帯は火砲についての機器だ。」

「了解した。気をつけよう。しかし最新化しているな」

「あぁ。これくらいないと私は動かない。機関上昇、45ノットに増速する。よーそろー」

''深海棲艦です?距離300000、数ニ、斥候な感じです?''

「大将殿、そこら辺の椅子に座っていてくれ。少し戦闘になる。

リバンデヒ、カイクル、結界を起動しろ。全艦第一戦闘態勢!一番から十番グラニート装填!座標固定!主砲各自警戒しろ!本隊がいる可能性がある!ソナー、全天レーダー起動!対潜、対空警戒を厳としろ!」

『お姉ちゃん、こっちに三隻よ。全部重巡』

「了解リバンデヒ。蹴散らせ。グラニート発射!」

''右舷前方と後方に深海棲艦!各五隻です!''

「全主砲起動!座標固定!一番、右46度、二番、右47.5度、三番、右49.87度、四番、左68.9度、五番、72.8度!粒子弾装填!てぇー!」

高速で巨大な砲塔が回転して行き、指示した角度にて停止。砲身が上昇してゆく。そしてガコンという合図が鳴り、爆音が鳴り響く。

''艦載機直上!高度30000!''

「45mm対空機関連装砲起動!叩き落とせ!十一番から百番、SM-2装填、発射!」

 

「貴様は何時もこう言う戦闘をしているのか?」

戦闘はあっけなく終了し、汗を拭っていると、大将が話しかけてきた。

「む?いや、今回はしつこかったな。戦略はゴミみたいだったが、全天レーダーがなければ結界に命中していただろう。どうせ関係ないが」

「そうか...貴様も大変だな...」

む?珍しいな...大将が優しいぞ?誰これ?現状を見たから自覚したのか?

「リバンデヒ、カイクル、戦闘終了。主砲のみ起動。警戒態勢を維持しろ。F-105発艦しろ」

格納庫から独特な形状を持った戦闘機が飛び立つ。

何もなければ良いが...

「大将殿、もう直ぐ日の入りだ。貴賓室に戻るぞ」

「分かっている」

ついでと案内している。地味に複雑な為、妖精さんでも偶に迷子になっている。何やってんの妖精さん...

大将に割り当てられた部屋まで案内し、艦橋に転移する事も考えたが、歩いて戻る。

警戒態勢のため、照明がなるべく落とされており、視界が悪いが、これもあまり見ないアメストリアの一面だ。それを楽しむのも良いだろう。SOCOMは艦橋に置いてきているし、船内なので、M93R一丁のみだ。予備は一つ。警戒する必要もないと思うがな。

レーダーの情報を集めていきながら歩いて行く。特に敵影は---

 

「ッ!?」

「おっと黙れよ小娘?」

クソッ...レーダーの情報に気を取られすぎて艦内の警戒を怠ってしまった。

突然後ろから手を回され、首元にナイフを突きつけられ、押さえつけられる。

手足はゴミ共に抑えられ、巫女服が乱れる。

M93Rが...取れないっ!口に手を当てられ、ゴミの手がゆっくりと胸元に伸びてゆく。

このゴミ共がっ....!

「何をしている!」

突如私に馬乗りになっていたゴミが消え去る。誰かに蹴り飛ばされたのだ。

私はその隙にM93Rを抜き、三点バーストでゴミ共を撃ち抜く。艦内な色々とあって完全防音な為、銃声は聞こえない。

「大将...殿か...」

「大丈夫か?貴様は女なのだ、自覚しろ」

「すま......ない...」

はい。完全に私の落ち度ですはい...()の貞操の危機だった。

お前らならあの後どうなるかなど分かるだろう?これだから男は信頼できない...私の落ち度もあったが、真面目にやめていただきたい。

巫女服の裾を握り締め、女の子座りで落ち込む。震えている。怖かった。

初めてかもしれない。あそこまで女として恐怖を感じたのは。

大将に礼を言い、すぐに艦橋へ転移した。

妖精さんに操舵を任せ、SOCOMとM93R、MINIMIを持ち、カイクルの艦橋に転移する。

 

「カイクル...」

「む?姉さんか。どうしたのだ?」

「襲われかけた...大将殿が助けてくれたが...怖かった...」

そう言ってカイクルに抱きつく。事実、震えている。()が。本当に怖かったんだろう。

「姉さん、それは本当か?」

「あぁ...既に殺してある。けど...やはり人間は嫌いだ...」

カイクルが私の頭を撫でる。ゆっくりと優しくだ。

それだけで大分落ち着いてくる。

「もうすぐ0000だぞ?」

「もう少しこうさせてくれ...」

今はしっかりとカイクルの温もりを感じていたい。

同じ女の温もりをだ。むさ苦しい野郎の胸なんかに抱きつく訳がない。

 

「姉さん、もう昼だぞ。そろそろ戻った方が良いぞ」

「あぁ...すまない。もう大丈夫だ。」

「気をつけてくれ。姉さんは美人なんだ。」

「そ、それは無い...」

いえいえ絶対超絶美少女です。十人中二十人が振り返る美少女です。

それのせいで今回は襲われかけた。押し倒された所まで行った為、本気で()は怖かったようだ。私も少し怯えている。暫く男には会いたくないのだが...なぁ...

 

さてさて失礼したな。完全とはいかないが復活した。

昼食は妖精さんが持ってきてくれたので、艦橋でさっさと済ませ、警戒に着く。

レーダーを最大感度に上げ、電探やソナーなどの索敵機械を総動員して警戒してゆく。

何故か?、それはもうすぐソマリア沖だからだ。

''レーダーに感あり!小型です!''

「主砲全門起動!潰せ!」

海上に粒みたいな黒いなんかが動いていた。海賊だ。潰してやろう。

船体に搭載された主砲五基全てが旋回し、粒子弾が装填される。

座標が固定され、自動追尾してゆく。

「てぇー!」

150m以上の爆炎が500cmの砲口から吐き出され、青い塗装のされた砲弾が撃ち出され、

命中。小さなボート位か、小型の漁船レベルの船が跡形もなく爆散し、着弾地点が青く輝く。

その光景はまるで海上の青白い第二の太陽が作り出されたようで、残酷だが、幻想的だった。

 

そんなこんなで、数十隻以上の海賊船を粒子弾で血祭りにあげたのち、ガダルカナル島近海に接近した。そこで妹達が第一艦橋に転移してきて、現在は三人で立っている。

「......失礼したか...?」

「大将殿か。大丈夫だ私達の航行に影響がある訳ではない。進路、マダガスカルに向け!

15ノットまで減速!」

四つの巨大な、それこそ6〜7階建て相当の巨大な舵が一斉に切り、スクリューが回転を鈍らせる。

暫くしてマダガスカル島の裏側、大陸側をゆっくりと航行し始める。

「主砲旋回!空砲装填。」

主砲が旋回し、90度で固定される。そして実弾頭が入っていない炸薬のみの煙突かと間違える程の薬莢が装填され、ロックされる。

「一同、マダガスカル島戦没者に向け敬礼!空砲、てぇー!」

海軍式でも無い、()に染み付いた動作で独特の敬礼をする。

マダガスカルの戦いでは、日本軍は甲標的を五隻送っただけであったが、内二隻が轟沈している。

島に座礁し、地元住民に接触したところ、地元住民は馬鹿だったため、イギリス軍に通報し、十五名の敵に対し、日本軍兵士は軍刀と拳銃のみで応戦し、戦死した。主に人的被害は日本軍のみに限定すればこれだけだが、当時ヴィシー政権だったフランス軍は物資が途絶し、抗戦もままならずに150名以上が戦死し、500名以上が負傷し、数ヶ月後降伏した。

 

「進路そのまま、55ノットまで増速!」

 

マダガスカルを抜け、ここからは特に無い。

気が付いたらドイツ近海まで来ていた。この時からかなりの量の艦船が海に浮かんでおり、私の起こす波に飲まれたくないからか離れててゆく。上空は生き残っていたヘリや戦闘機がとびまわっている。

かなりの注目を浴びているが、()が慣れており、表情も無表情に近い為、問題は無い。

 

この後は近海にて投錨し、隼で官僚共を輸送しなければならず、私達は船体にて待機しなければなら無い。はぁ...憂鬱だ...さっさと終わらせてくれ無いかな...帰りはガダルカナルにも寄る予定なんだし...

 



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29.国際会議

おくれましたぁぁぁぁぁぁ!短い上に遅れてしまった...すみません...次から大きく動きます。


ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アメストリアだ。

現在はキール近海にて待機中。官僚共は陸で会議中だし、特にやることが無い。地味に楽しみにしていた他国の艦娘ウォッチングも私が巨艦すぎるのかなんなのか警戒されていてうまく行っていないのが実情で大変残念極まりない。ほんっと残念だ。もう帰っていい?

まぁそんな訳にもいかず、悲しみを背負って三千里。暇で腐りそうなのだ。私がデカすぎてミニチュアみたいな他国の艦艇を見るのも飽きてきたし海外のパパラッチはなんか逞しくて情報統制に神経使うしもう疲れたよパトラッシュ...これもどれも私がデカすぎるのが悪い!(理不尽)いやさ、実際キロ単位の巨艦たる私達が来たせいでキール軍港は大混乱に陥ってたし、なんなら移動途中も入れるか怪しい海峡とか色々不便すぎる場面が多々あった。イギリス艦隊とかは捕捉したんだけど島が追いかけてくるホラー展開に逃げられてしまい、スパ子とかを見れなかった。悲しみが深いわ。自分、縮んでいっすか?

「リバンデヒ、暇すぎるんだが」

『えぇ...やることが無いわ〜しかもさっきから視線が凄いし...」

『姉さん、鍛錬などはしないのか?』

と言われてもなぁ...M145にサイレンサーつけて適当に艦首から砲塔に乗っけた的を撃つとかしか無いんだよなぁ...この船体デカイから取り敢えず射撃場になるエリアがすごく多い。

 

二時間後、私はだらけていた。妖精さんに警戒を任せ、第一艦橋の椅子に座っていた。

だって暇なんだもん。

''定期報告です!特に異常無し、点検も特に問題は無しです!''

「そうか...」

暇なのだ。兎に角暇なのだ。抜錨は明日だし、やることが本当に無い。

刀でも振るか?()が覚えているし。私は記憶としてある程度剣術を憶えている。

早速武器庫に転移し、大太刀を取る。

天代と刻まれたこの刀は切れ味が凄いらしい。(カイクル談)

 

ゆっくりと抜刀し、独特の構えをする。因みに私は身体を意識して動かしていない。

()が覚えている振りが自動で再生されているのだ。

振りぬくように腕を動かし、慣性を利用しそのまま斬り下ろす。そしてそこから掬い上げる様に振り抜き、回転する。そして十字切りの様に斬るとそのまま斬り下ろす。

日本刀自体、西洋の力に物言わせてぶった斬る訳ではなく、斬り落とすというのが正しい。

しっかりと整備をしていなければ、まともに斬ることさえ出来なくなる。

「ッ!?」

殺気を感じ、すぐに受ける。

金属がぶつかり合う甲高い音が響き、火花が散る。

「......カイクルか...」

「ーーーむぅ。やはり姉さんには勝て無いな」

「いや、偶然だ」

本当に偶然なのだ。次の動作が斬り上げるという動作だったため、すぐに対応できた。

本来なら、斬られていた。

しかし同じ馬力の戦艦同士。膠着状態に陥る。

一度力を抜き、バックステップで後退する。そして蹴り上げる。

しかしカイクルもそこで引っかかる程素人では無いので、身体を捻り、躱す。

すぐに間髪入れずに刀を横に降る。一文字の斬撃が浮かぶほどだが、刀は折れない。

ある意味凄い刀である。カイクルは一度斜めに蹴り上げるとそのままもう片方の足を同じ軌道で蹴り上げてくる。

回転蹴り(二重)だ。面倒だが、バク転で回避し、刀を構え、一気に加速する。

そして居合斬りの様に斬り上げる。片手でだ。もう片方の手は後ろへ回す。

そしてカイクルの刀とぶつけ、手放す。そして後ろに回していた手を正面に回し、首元で銀色に輝くサバイバルナイフを止める。

「...参りました」

「よろしい。カイクル、何故奇襲した?」

「殺気はわざと漏らしていた。あと姉さんならできるだろう」

あんたの中で私はどういう風に映っているんだ...私とて完璧超人では無いのだが...

 

 

「抜錨!機関始動!両舷微速、進路日本」

遂に、暇で暇で仕方が無かった会議とやらが終了したのだ。巨大な舵が切られ、十枚刄のスクリューから生み出される水流を曲げ、ゆっくりと巨体を動かして行く。湾を抜けてから、増速し、40ノットにて前進して行く。

フェロー諸島を無視し、アイルランドを通過し、アフリカをぐるりと回る。偶に深海棲艦は居るが、30cm連装電磁力砲や20cm連装砲で十分なレベルだ。

「リバンデヒ、アメストリア型戦艦の深海棲艦は居ないな?」

『ええ。今の所は。』

ココス諸島を通り、オーストラリアとティモール島の間を通過する。此処一帯戦没者が多いからすごい...ソロモン諸島近海に航行し、ガダルカナル島にて空砲と敬礼を捧げる。

ガダルカナル島の戦いは日本軍22493名が犠牲になり、主にアホな海兵隊の勘違いで多くの日本兵が殺される事となった。(日の丸の赤丸が見えなかった為、白旗に見え、偵察隊を送り、三名のみ帰還した為)また、ガダルカナルは餓島とも言われ、送り込まれた兵士は31404に対し、10652名が帰還し、死者は二万人強が餓死や病死だったことから付いた。

恐ろしい程の怨念の叫びが聞こえてくる。そりゃそうだ。私だってすごくイライラした。

なに勝手に勘違いして日本兵虐殺してんだよ。あとでさらにトマホークをぶち込んでおこう。

 

さて、航海は終え、水平線の彼方に太陽が沈む頃、横須賀鎮守府に到着する。同時にノイトハイルも近海に呼び戻している。官僚共は隼でさっさと降ろし、総点検を開始している。

あとは我らが鎮守府に深海棲艦の襲撃が来ないかどうかだ...あ、これフラグか?

 

 

 

 

オマケ

 

ベガルM115AX

 

種類 狙撃銃

製造国 アメストリア

設計・製造 ベガル工廠

年代 現代、又は超未来

 

仕様

 

種別 対艦ライフル・対戦車ライフル・対物ライフル・超遠距離狙撃銃

口径 12.7mm

銃身長 752mm(30インチ)

使用弾薬 .50AS弾

装弾数 ベルト給弾 (一帯40発・100発・500発)

作動方式 ショートリコイル

全長 2150mm

重量 37.8kg

有効射程 2000m

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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30.帰還、そして補給

30.帰還、そして補給

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アメストリアだ。

現在は横須賀鎮守府近海に投錨し、大本営からの補給船を待っている。

少しだが、弾薬を消費したからだ。まぁ身もふたもない事言うと補給など必要ないのは提督諸氏もお分かりだろう。なればこそ、何故補給を受けるのか?答えは簡単、私達が大日本帝国海軍所属であるからである。所属している艦娘に補給を行わないなど組織として失格であり、メンツが潰れる。要はパフォーマンスなのである。私達を海軍が統率しているという。

一応レーダー最大感度で索敵をしており、警戒はしている。

いつでも500cm四連装砲をブチ込める。

 

中型の補給船が近付いてくる。

補給中は武装の殆どが使えない為、私に補給が行われている間はリバンデヒ、カイクルが護衛することになっている。配置は私を中心に挟み込むように寄せられる。

補給船が汽笛を鳴らし、私は船体の隼を格納する格納庫のハッチを開く。

隼は奥に寄せている為、幾らかスペースはある。

隼を格納するときに起動するクレーンが動き出し、補給船に満載されている弾薬の入った木箱を吊り上げる。無防備だ...

「リバンデヒ、深海棲艦は?」

『特にいないわ。平和そのものよ』

結界も補給船を攻撃の意思のある異物として排除してしまう為使えない。

 

無事私の補給を終え、陣形を入れ替える。

二隻目の補給船がリバンデヒに接近する。

私はリバンデヒの右舷に盾となり着く。主砲は既に全方位対応できるように様々な方向を向いており、150cm四連装砲、46cm三連装砲をはじめとする副砲も仰角と船体の高さ上砲撃不可能なエリアを潰していく。

カイクルも含め30分はかかる為、気を抜くことができない。

しかしこういうときに限って...

''レーダーに感あり!深海棲艦数ニですっ!''

 

デスヨネー.......はぁ...

「リバンデヒ、引き続き補給を続けろ。カイクル、私の代わりに守れ。

戦闘態勢!主砲通常弾装填!第一、第二砲塔座標ロック、てぇー!」

やや重くなった船体をゆっくりと動かし、少し離れる。

そして私の船体艦首側にある二基の主砲が指定された角度へ旋回し、仰角を合わせるために素早く砲身を上げて行く。

そして間髪入れずにオプティマス砲が火を吹き、深海棲艦を抉り取る。

ドロップは...無し。

 

補給が三隻共無事に終え、補給船が帰投したのを確認する。

恒例の報告タイムだ。

「ノイトハイル、聞こえているか?」

『聞こえているよ』

「報告は?」

『んー...特に無いね。平和そのものだよ。けど、少し静かすぎるんじゃ無いかなー?』

「そうか...気をつけてくれ。監視されている可能性がある。」

『了解したよ』

恐らく私達三隻の動きは監視されているだろう。私だって敵に規格外の戦力がいたら監視し対策を立てる。このまま何も無かったらいいんだけどなぁ...無理だろうなぁ...

 

ー夜ー

水平線に太陽が沈み、夜の萱が降りてきた頃、三人で集まり夕食を取り、会議室にて集まっている。

何時出撃するか?最も早いルートは?撃滅対象の予測やそれに対する対策、被害、消費資材の想定など多岐にわたる。

「ではこういう...リバンデヒ、カイクル」

「居るわね」

「うむ。消すのか?」

当たり前だ。すぐに第一艦橋に転移する。

レーダーには...六の反応。距離245000m。重巡2、軽巡2、駆逐2だ。

すぐに消せるな。

「主砲一番、二番、三番砲塔起動。目標を三隻で分配しろ。

榴弾式結界弾装填」

CICが目標を分配し、リスクなどを一瞬にして解析する。

ガゴンッという音がなり、主砲が火を吹くたがる。

「座標固定。てぇー!」

轟音が鳴り響き、全ての敵がレーダーから消える。

「念のためレーダー最大感度...ッ!?」

身体に鋭い感覚が走る。このチクチクとした感覚は...魚雷か?

「万能ソナー打て!潜水艦が居るぞ!」

ピンガーが打たれ、海中にいる深海棲艦を捕捉する。

「ミサイルASROC装填、座標入力!251番から255番、放てー!」

側面に出っ張っている船体より五発のミサイルが発射される。

ある程度飛翔するとパラシュートが開き、ミサイルがヒラヒラと落下を始める。

海中を進む空飛ぶ魚雷だ。しかもターゲットを入力すると自動で追尾してくれる便利なミサイルだ。

やがて海に着水し、パラシュートを切り離し、海中を進んでいく。

そして深海棲艦の紙装甲を突き破り、大爆発を起こす。

「撃沈確認。リバンデヒ、其方はどうだ?」

「えぇ。こちらも大丈夫きゃぁぁあ!?」

リバンデヒの船体より爆炎が上がった。被弾、したのだ。命中したのは三脚檣だ。数多の観測機器や電探が生えた大和型の巨大版マストがぽっきりと折れ、第二塔楼に命中。さらに機器や電探、加えて多数の対空砲にのし掛かった。あー、ダメみたいですね(諦め)

「こちらリバンデヒ、マストと下にあった電探を幾つかやられたわ」

「了解した。カイクル、速やかにリバンデヒから離れろ。二人とも結界をすぐに張れ」

敵はアメストリア型だろう。あそこまで正確な砲撃は私達くらいしかでき無い。

「主砲全門起動!電探連動!座標を固定!リバンデヒとも連動させろ」

三隻による大火力で叩く。

六十門の砲口から爆炎が吐き出され、狙われた私達と同じ形を持つが全く違う敵に命中する。

オマケとばかりにグラニートを放つ。

二千発以上の音速を超える矢が白い線を描きながら突入し、深海棲艦はあっけなく撃沈する。

船体を真っ二つに割って沈んでいった。

リバンデヒが若干顔色が悪いが仕方ないだろう。リバンデヒも同じ沈み方をしたのだ。

気分を害さ無いというのが無理な話だ。

 

「リバンデヒ、修理は妖精さんに任せてすぐに休め」

「......そうさせてもらうわ...」

深海棲艦が最後まで沈みきるまで見送り、近海へ帰投する。

 

リバンデヒが抱きついてきたのは言うまでもない。



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31.急襲

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

帰投後、一日のみ休息を貰い三隻並んで近海に停泊。

リバンデヒのマストが修復される間寄り添うようにぴったりとくっついている。

私達は艦橋群の最も高い露出艦橋にてのんびりしている。

お茶を煎じて、M115は一応外に向けて立て掛けている。

「暇だな...」

最近の口癖がこれだ。だって一々動くと煩いし弾薬の消費量すごいし面倒なことしか無い。

「姉さん、また振r「却下だ」...」

妖精さんは一ヶ月に一度の総点検のためここには居らず、今頃色んな所を点検もとい遊んでいるだろう。きっちり仕事はこなしてくれるんだがなぁ...何故だ...何故あそこまでフリーで行ける...

机の上に艦長妖精さんを乗せ、右手でナデナデする。左手で頬杖をしてぼんやりと眺める。

怠けているって?あんた戦艦だろって?

いやマジで暇なんだよ...一回来てみろ...すぐに痛いほど分かるから...

妖精さんはきゃっきゃと喜んでくれる。

癒される。

 

しかし平和な一時?というのは長く続かないのがお決まりである。

私の船体より警報が鳴り響き、空気を叩く。

すぐに機関を回し、抜錨。速やかに離脱する。

「妖精さん、使用可能な兵装は?」

''点検で500cm四連装砲第二、三番砲塔、150cm四連装砲、四番、五番砲塔に20.3cm連装砲が全基停止しています!''

まともな武装は...500cm四連装砲三基に150cm四連装砲四基、46cm三連装砲二十基に30cm連装電磁力砲、45mm対空機関連装砲か...戦闘できるか...?いや、主砲は三基健在だ。大丈夫だろう。

「リバンデヒ、カイクル、絶対干渉結界を起動しろ。空からくるぞ」

『砲』として認識されていないため、装備にも表示されていないM2の連装砲も格納式だったが全て出す。艦首や艦尾にも配備されている。

恐らく対地クラスターミサイル42発を誇るFB-99が大量に来る。

投下される前に墜さなければならない。

「主砲三式弾装填!全対空砲てぇー!」

ガンガン放ってゆく。それはもう。猛烈な対空砲火が三隻より放たれ、投下体制のため弾倉を開けていたFB-99に命中。爆炎をあげながら墜落してゆく。

 

近海より離れ、安全圏に達した途端主砲を放っていく。

「三隻回頭!盾となれ!主砲90度旋回。全門放て!」

以前言った通り、90度回頭をする為には五分かかる。

使える砲を全て起動し、引き金を引く。

しかし間に合わない。

 

深海棲艦の打撃艦隊より爆撃機や主砲弾が放たれ、私達を抜ける。

後ろで爆発音が響いた。クソッ...

「妖精さん、停止した砲は?」

''...使えますっ!''

「全砲粒子弾装填。てぇー!」

毎秒のペースで放たれ、白に青いラインの入った砲弾が撃ち出され、深海棲艦に着弾したとたん大爆発を起こし眩い光を発する。

しかし敵は海を覆うほどの量がいる。駆逐艦や軽巡洋艦が盾となり戦艦や空母に砲撃が届かない。

「ミサイルハッチ全門開けろ!グラニート装填。座標固定、発射!」

4500基の白い矢が放たれ、その後を追うように数百発の砲弾が放たれる。

リバンデヒを真ん中とし単横陣で布陣する。最も主砲、副砲をはじめとする砲が動かせるからである。三隻とも総点検の影響は消え、やっと万全の守りが展開できる。

六十門の砲口より全長7mのちょっとしたコンテナクラスと大きさの砲弾が一分で21600発で放たれ、深海棲艦を薙ぎ払ってゆく。上空より幸運にも対空砲火を潜り抜けた戦闘機よりミサイルが放たれるが結界が防ぎ、45mm対空機関連装砲がロックし、大量の弾薬を吐き出す。

副砲も車両と同じ大きさの砲弾が飛び出し、高速回転しながら突き刺さり、大爆発を起こす。

20.3cm連装砲が主砲や副砲の設置位置の高さ故に放てない死角に砲弾を打ち込み、30cm連装電磁力砲が深海棲艦の艦橋をいくつも貫く。

 

「お姉ちゃん、増援よ...」

「了解した。主砲を除き全門停止。」

爆音が主砲独特の音量のみに減り、三隻の間を大日本帝国海軍の誇る戦艦達が通り抜ける。

私達も射線上に入らないように遠方の深海棲艦を沈める。

一応、500cm四連装砲の下の海面にいると戦艦出会っても軽くペシャンコになる為中々連射はできない。

 

恐らくもう大丈夫だろう。

私達の猛烈な砲撃により敵は元々少なく、強くてもélite級だ。

艦載機は全て対空砲が墜とした為、制空権はこちらにあり、空母はグラニートの餌食になった。

警戒を解く。はぁ...疲れt''南東に深海棲艦ですっ!数三十!''

これである。

別働隊を警戒していたが今来るか...

皆も察しているだろうが、私達が動く際、どんなに微速でも恐ろしい量の海水をかき分ける。

従って両舷に高波が発生し、駆逐艦なら五ノットで転覆する。

つまり、今私達の周りには増援で来た戦艦や空母、重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦の艦娘がいる。

動き出すと味方に被害が及ぶ。

嵌められたか...

「カイクル」

「あぁ...嵌められたな」

「両舷微速。ニノットにてすぐに離脱しろ」

グラニートも使えるが、上空には艦娘の艦載機が飛び回っている為、FF(friendlyfire)の危険性がある。下手に攻撃ができないのだ。大火力の戦艦の欠点だ。

慎重に船体を進めていく。

 

ガゴンッ!

 

少し船体に衝撃が走る。しかし何事もなかったかのように進む。いやいやいや、何が当たった!?

艦娘かっ!?やばいやばいあばばばばばばばばば...

「ひ、被害は?」

''35.6cm砲弾が一発船体に命中しましたが特殊装甲に弾かれましたっ!無傷です!''

オイ...私の心配を返せ...ただの35.6cm砲弾かよ...ちょっとツンっとした程度の感覚だったが...?

船体に張り巡らされた複雑に重ねられた装甲は500cm砲弾がゼロ距離で命中してもビクともしない。多少凹む程度だ。

35.6cm砲弾などは豆鉄砲にも値しない。

しかし私は反撃をしない。受け身しか取ることができない...歯痒い...

「安全圏に到達した途端殺る。主砲榴弾式結界弾装填。電探連動」

五基全ての主砲が左舷側に旋回し、電探より情報が送られ、仰角、旋回角が調整される。

そして、

「てぇーー!!」

船体が黒煙に包まれる。砲口より精密に調整された放物線を描き、補足した深海棲艦にまっすぐと飛んで行く。そして大爆発を起こす。

「撃滅確認...全て殺れたか...?」

「恐らく」

はぁ〜〜〜焦ったぁ...点検中に奇襲してきたかと思うと罠にはなられるし大変パニクってしまった。全く...ヒヤヒヤしたじゃないか........

 

「妖精さん、一応点検と砲弾の当たった装甲の再塗装をしておいてくれ」

そういうと妖精さんの動きが慌ただしくなり、工具を持ったをペンキやハケを持った妖精さんが行き来し、やがて遊び始める。

きゃっきゃと鬼ごっこを始めている。可愛いのだが、私は遊んでくれなんて言ってないんだけどなぁ...?

何やってんの...?よく見れば45mm対空機関連装砲や、M2の砲身に妖精さんがぶら下がったりしている。ちょっとフリーダムすぎませんかねぇ...?私が疲れるんだけどなぁ...はぁ...



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32.アメストリア、プッツンする

やっと投稿できた...すみません。また遅れてしまいました...
やったね!テストが終わった!え?宿題?ウワァァァァ.....え?再テスト...?ウワァァァァァァァァァ........
となっていました。リアルで忙しすぎてね、死にそうだよ...


 

ーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私だ。何とか妖精さんが点検を終え、5ノットにて港に戻る。

しかし...何か引っ掛かる。

何か、私達が居るからか直ぐに消せるレベルだった。私達が強すぎるというのもあるが、私達は巨大である。深海棲艦とて馬鹿ではないだろう。諜報、情報収集もしているはずだ。私達は艦娘への被害を少なくするために派手に動いている。脅威として認識されている筈だ。

なのに、送ってくる数が少ない。億、兆単位で来てもらわないと張り合いがないレベルだ。

「リバンデヒ、本当にこれだけか?」

()が警鐘を鳴らしている。何か、おかしいと。

『えぇ...深海棲艦はいないわ。あまりにも少なすぎるわよ?此処大本営よ?』

そう、此処は私達は軽く攻め落としたが恐らく世界最強クラスの防衛力を持つ大日本帝国海軍の本拠地だ。

あまりにも私達がいなかったにしても少なすぎる。強襲部隊として送らずに威力偵察だったのか...?怪しすぎる...うーん...いや、あり得んだろ...

私の中に一つの最悪の仮定が出来上がる。それは、

『姉さん!ノイトハイルから救難信号だ!此処の襲撃自体囮だ!』

いやぁ...やっぱりかぁ...やめてくれ...

胸を締め付けられる。最悪の仮定が当たってしまった。

海軍に限らず、技術力UPの根源であるパラオ鎮守府には既存の艦娘よりかなり性能の高い改修がされている。はっきり言って脅威の塊だ。

横須賀鎮守府よりも単純な戦闘力は上だ。なら、狙われるのは必然と言えよう。

「全艦機関最大!最大戦速で急行する!」

違和感の正体がこれだ。やばい。本能が告げてくる。

直ぐに行かないとやばいと。

 

船体が咆哮を上げ、海面を叩き割る。十枚刄のスクリューが恐ろしい速度で回転し、水流を人工的に作り出す。主機であるウンターガングエンジン十五機が悲鳴を上げ、90ノットという船ではあり得ない速度に加速し、前方にある物体を無差別に跳ね飛ばしていく。

急がなければ...っ.......

「ノイトハイル!聞こえているか!?」

『......き......て.........よ...ちょ......ご...』

断続的な声が聞こえてくる。どこか近くか遠くか爆発音が聞こえてくる。被弾しているのか...?

「ノイトハイル!直ぐに結界を起動しろ!あと30分で着く!」

『ーーーーーーー』

 

完全に声が聞こえなくなった。代わりに聞こえるのは酷いノイズと怒り狂ったかと思うほどの戦艦の咆哮と連続的な砲撃音、中央演算処理装置の処理に発生する音、爆発音だ。

「......500cm四連装砲、150cm四連装砲、46cm三連装砲、ウンターガング弾装填。BGM-9弾頭ウンターガング。発射っ!」

高速で航行する戦艦より45発目の弾道ミサイルが撃ち出される。

砲塔には黒い塗装のされた砲弾が装填され、ハッチが密閉される。拳銃でいうマガジンに当たる給弾レールには同様の砲弾が大量に転がる。

完全なアメストリアの本気。対惑星撃滅モードだ。

「艦載機を出せ。偵察に行かせろ」

F-105が発艦し、ミサイルに劣らない速度で飛び去っていく。

あぁ...なんかイライラするなぁ...

 

五分後、偵察に出したF-105より映像が送られてきたので直ぐに三隻でリンクを繋げる。

そこには二十隻を超える真っ黒なアメストリア型戦艦に海面を埋め尽くす夥しい量の黒い影。

パラオ鎮守府からは防衛砲塔の46cm三連装砲や妖精さんの遊びで作った500cm四連装砲や対空砲の45mm対空機関連装砲が猛烈な弾幕を張っている。

艦娘は...加賀や赤城から暗い灰色の艦載機、F-105艦載機仕様が飛び立ち、落とし落とされ、

大和達超弩級戦艦が盾となり主砲である150cm三連装砲を休みなく放ち続けていた。小型の艦娘が砲弾やミサイルクラスの速度をもつ魚雷を放っていた。大乱戦だった。

 

そして、何よりも目を引いたのは最前線から一切ピクリとも動かず、深海棲艦に対してT字陣形を崩さず投錨し五基全ての主砲を放ち続けているノイトハイルの姿だった。

しかし、何処かの深海棲艦が放った砲弾が大量に交差する双方の砲弾と混ざりながらもまっすぐと飛び続け、ノイトハイルの第一艦橋に吸い込まれた。

そして、内部から船体を引き裂いた。

 

刹那、私の中でナニかが切れた。

「.....ぁ...き、貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

副機が全て残らず起動し、第一艦橋の電子機器全てがびっしりとした怨念に近いレベルの文字の羅列を吐き出した。中央演算処理装置がフル稼働。120基以上のエネルギーが叩き込まれ、スクリューが船体が維持できる速力を無視し更に回転を強める。

艦首の装甲の耐久力上、限界は90ノット。しかし現在の速力は110ノット。

艦首が軋みを上げ、同時に様々な場所の部品が悲鳴をあげ、エラーの文字が機器に表示される。

しかしそれを全て無視する。

私は今猛烈に怒り狂っている。

ゴミ如きが私と()の妹達に手を上げやがった。全てを消してやる!

『お姉ちゃん!船体が持たないわ!今直ぐに減速しなさい!』

無視する。

500cm四連装砲や150cm四連装砲、46cm三連装砲が最大仰角まで上昇し、有効射程に入った途端全ての砲を放つつもりである。さぁ、殺戮の時間だ...

 

しかし、それよりも先に船体が限界を迎える。

ビキビキという異音が鳴り、亀裂が入る。

『姉さん!艦首が折れるぞ!「姉さんっ!」

機関のエネルギーパイプが限界を迎え、熱の放出を開始。船内の温度が上昇していく。

当然、私にもダイレクトで影響が来るわけで、急激に体温が上昇し、息が荒くなり倒れこむ。

しかし私自ら倒れこんだ訳では無い。

「憎しみに身を任せるなっ!自らの身を守れない奴が助けに行くな!足手纏いだ。私だって怒っているんだ。殺るなら冷静にな?」

カイクルに殴られ、押さえ込まれた。

その現実を認識すると急に落ち着いてくる。

私は...怒り狂っていたのか...船体が...直ぐにウンターガングエンジンを全て停止し、スクリューにエネルギーがいかないようにする。50ノットまで減速し、妖精さんに指示を出す。

「カイクル...済まない。取り乱した...」

「大丈夫だ。もうすぐで追いつく。待っていろ」

「あぁ...」

船内の高い温度の空気が船体の二つの大きな煙突から吐き出され一気に換気する。

急激な温度の変化で白い煙が上がる。本来は煙突から煙が吐き出されるはずだったんだけどなぁ...

体も冷え、冷静になっていく。よし、いつもの私。

()はまだイライラしているが、なんとかなだめる。このままだと地球ごと消しかねない。

妹達が追いつくまでの間に、妖精さんが軽く修理をしていく。船体の艦首にある罅の入った装甲を取り替え、主機を冷却。それで大量の水蒸気が発生しまた煙突から吐き出される。

パイプも交換して、万全に戻す。一応、身体にも影響があったらしく、手首に内出血があった。

 

しばらくして、二人が追いつき、80ノットで進撃を再開する。

「全艦第一戦闘態勢!全て深海棲艦は焼き払え!妖精さん有効射程...此処か。てぇー!」

三十六発の黒い砲弾が撃ち出され遠い、水平線の彼方から黒い爆煙が上がる。

 

一分後、二千百六十発に及ぶ砲弾が放たれ、船体の砲塔側面より大量の薬莢が排出され海面が大惨事になった。砲身は自動冷却に入り、水蒸気をあげる。

その間に座標を固定し、グラニートを放っていく。

 

見えたっ!

やっと電探がパラオ鎮守府を捉え、目を凝らして見る。

「.......ぁ.....ぁ...」

燃えていた。島と見間違えるほどの全長4650mの巨艦が。

艦橋群は無残に破壊され、主砲は内部から破裂し、装甲が捲れ上がり砲身は折れている。

副砲は幾つか吹き飛んでおり、45mm対空機関連装砲は大体が砲身が欠落しているか砲塔の装甲を突き破り爆発しているか、黒煙を上げている。

鎮守府には被害は無く、全てノイトハイルが受けたと思われる。

本島から砲火が放たれ深海棲艦え放物線を描く。

私は舵を切り深海棲艦のど真ん中を進路に取る。そして、船体自体を槍とし、突っ込む。

 

振動が激しくなり、引き裂く音が響く。

黒い駆逐艦を軽巡洋艦を重巡洋艦をたまに戦艦を引き裂いてゆく。

左右についた私の全火砲が火を噴き、私の進軍による波に飲まれ転覆した深海棲艦を貫き爆破する。

結界が深海棲艦を異物として認識し排出し外にいる深海棲艦と衝突し更に被害を大きくする。

主砲が奇数砲塔は右、偶数砲塔は左で放つと次は奇数砲塔は左、偶数砲塔は右で放つ。

私の妹を大破させた報いは受けてもらおうか...



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33.アメストリア、帰港ス

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー吹雪sideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お久しぶりです!吹雪です!

やっとこのパラオ鎮守府にも慣れてきました。

しかしそれに伴って色々とこの鎮守府はおかしいことが分かりました、

戦艦の主砲は大きすぎますし、速力自体速すぎますし、連射性も可笑しいです。

あの あめすとりあ さん?って本当にすごい艦娘さんなんですね..

あ、今は暁ちゃん達と一緒にいます。

 

そんな時、突然警報が鳴り響き鎮守府の防衛機構が稼動しました。

『総員直ちに出撃!全て使って!』

司令官さんの相当切羽詰まった声が聞こえます。私も嫌な予感がしますね...

直ぐに地下のドックに急ぎます。

 

ドックに着くと既に第二主力艦隊の皆さんは船体がエレベーターに運ばれている途中でした。

直ぐに私も艦橋に転移します。

「妖精さん!機関を始動してください!」

ベルが鳴り台座ごと移動していきます。緊張しますね...

エレベーターが上昇し、地上に着きます。海水が注入され、ゆっくりと全面を覆っていたハッチが下がっていきます。

そして海水が混ざり合い、進めるようになると拘束具が解除されて、船体が浮きます。

直ぐにスクリューを回して進んでいきます。

 

地上では島に設置された偽装された46cm湾岸砲台や至る所に設置された対空砲が猛烈な砲火を浴びせ、大和さん、武蔵さん、長門さん、陸奥さんの主砲が早速旋回して戦闘を開始します。

私も加勢します。船体についた12.7cm連装砲改が素早く旋回して、毎秒のペースで砲弾を放っていきます。61cm三連装酸素魚雷を使って発射します。

酸素魚雷は雷跡が見えにくいことで有名です。前世では大活躍しました!

「やった!....え?」

命中して深海棲艦から爆炎が上がると同時に突然海面からマストのような細長い棒が飛び出しました。

そして一気に大きな艦橋がせり出し、徐々にその巨大な艦影を見せつけます。

艦橋群は大和さんに似ていて、船体は島か何かと間違えるほどに巨大です。私なんか粒に見えるくらいです。上部船体には巨大な、戦艦の船体と同じ位の大きさの主砲が堂々と前方に三基、後方に二基聳えています。

これが...あめすとりあ さん?でしょうかね...?わかりません...

しかも途轍もなく大きな主砲や副砲がその巨体からは考えれない速度に旋回して、四本の砲身を動かします。そして、発射。

 

刹那、物凄い爆音と爆炎が上がり、遅れて衝撃波がこんなに離れた私にも届きます。

す、すごい...爆炎は優に150mを超えています。煙は黒々としていて、例えが悪いですが、戦艦が全焼した様な量の煙です。これで一斉射...

 

そこからは一方的でした。

たった一隻の戦艦によって戦局がひっくり返されていきます。

猛烈という言葉が甘い位の空が覆われる弾幕が張られます。

私も...!

「全門開け!てぇー!」

毎秒のペースで砲弾を放っていきます。あと、みさいる、という噴式弾も使っていきます。

深海棲艦の座標を補足すると勝手に飛んで行ってくれます。

すごい便利ですし、アウトレンジから攻撃を加えられます。赤城さんを護れますね!

 

しかし、一発の砲弾がそれぞれの砲弾が交差するなかくぐり抜け、あめすとりあ?さんの艦橋に命中。内部から大爆発を起こします。あっ!?

丁度第一艦橋の辺りに命中した様で、ぴたりと全ての火砲が停止してしまいます。

『こ、こちら第二主力艦隊旗艦の大和です!直ぐに援護をして下さい!』

大和さんから無線が入ります。そ、そうですね!直ぐに助けなきゃ!

巨大な船体にはそれからいくつもの砲弾が命中していますが、装甲が相当硬いのか大体は防がれていますが、一際大きい砲弾は命中して装甲の弱い所から爆発と黒煙が上がります。

でも妖精さんが動かしているのか生きている主砲や副砲が動き出して砲撃を再開します。

咆哮の様な轟音を上げ、弾幕が一気に濃くなります。船体はまだ沈んでいませんから艦娘さんはまだ生きていることになります!

私は船体を直ぐにあめすとりあさん?の船体に寄せて、船体に転移します。

木製の甲板は幾つか捲り上がっていて、下の装甲が露出している箇所が多々有り、酷い有様です。

私は迷いながらも艦橋に入る入り口を見つけ、中へ入ります。

「よ、妖精さん!?」

そうしたら直ぐにこの戦艦の妖精さんが駆け寄ってきて、何処かへ案内しようとしてきます。

''早く!ノイトハイルさんが死んじゃいます!''

ノイトハイル...?誰でしょうか?今は関係ありません!直ぐに妖精さんの案内に従って走ります。

 

「こ、これ...」

案内されてきたのは砲弾が命中した第一艦橋。

ほぼ内部は壊滅していて、配線が火花を散らしています。

妖精さんが必死に指をさして誘導しているのは廊下への方向。

血痕が幾つか残っています。

直ぐに駆け寄ると、純粋な巫女服を着て、白い単衣を真っ赤に染めて、脇腹辺りと押さえて小さく息をしている艦娘さんでした。

「大丈夫ですか!?」

「....ん?.....あぁ...吹雪ちゃんか.......ゲホッ...ごめんね...僕、守りきれなかったよ...」

艦娘さんは私が来たのを感じたのか、薄く綺麗な蒼眼を開けると、弱々して言葉を吐き出しました。私は直ぐに近付いてノイトハイルさん?を移動させようと頑張ります。

直ぐに医療室に運ばないと危ないですっ!

腕を脇に通して立ち上がらせます。体格差でかなりきついですが頑張ります。

「うぐっ...吹雪、ちゃん?僕はもう...」

「諦めちゃダメです!」

私の船体に移動して、とにかく椅子に座ってもらいます。

傷は...血を吸って重くなった巫女服をどけさせてもらって、傷口を見ると、斬られたような撃たれたような傷口がぱっくりと開いていて、血がとめどなく流れ続けています。

直ぐにこれも建造時に新設された救急パックを使って仮処置はしますが、ほとんど意味はないでしょう。

直ぐに私の船体を鎮守府の方へ向けます。

お願い!間に合って下さい!

 

全速力で鎮守府へと戻り、地上のドックを無視して船体ごと陸に乗り上げます。

本当ならこれはこれで大問題ですが、今はそれどころではありません。

浜に降りてノイトハイルさんを運びます。

私の水兵服にもノイトハイルさんの血がつきますが、気にしません。

今頃ですが、ノイトハイルさんって顔立ちが中性的で長い黒髪を一房にまとめています。一見男子にも見えないことはないですね...

「ふ、吹雪!?どうしたんだい!?」

司令官さんが走ってきました。よかったぁ...

「司令官さん!ノイトハイルさんが!」

「ノイトハイル!?大丈夫かい!?直ぐに医務室へ!吹雪は...大丈夫かな?」

「私は大丈夫です!でも...船体を乗り上げちゃいました...あはは...」

「えぇぇ...ただでさえこれからアメストリア達が来るのに...はぁ...まぁ、分かったよ。鎮守府の方へ戻っておいてね」

「ですが深海棲艦が!」

未だに深海棲艦は海を覆うほどいます。ノイトハイルさんという主力を失った今防げるかどうか...

しかし、眩いほどの閃光が光り、遅れて大爆発が起きます。何が!?

直ぐに海を見ると、深海棲艦のいた場所がぽっかりと海水も深海棲艦も消えていて、それが六十以上あります。何が...

「お、来たようだね。」

何がですか?と聞こうとした途端、ノイトハイルさんの爆音とは比べ物にならない位の爆音が響きます。そうです。あめすとりあさんがきたのです!しかも三隻です。司令官さんが言っていたあめすとりあさんにりばんでひさん、かいくるさんですね!大量の海水を巻き上げながら残っていた深海棲艦に突撃していきます。凄いです...圧巻ですね...相当キレているようです...怖いですね...




諷詩です。 
えーと...誠に申し訳ないです...とある事情で今月いっぱい殆ど更新できないです.......すみません...暫くお待ちください...待ってくれる人がいるか分かりませんが...


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34.安息の地にて

投稿はしないといったな!あれは嘘だ!
WiiUでちまちまと書き連ねやっと投稿。多分もうない。

今回振り返り回。説明多し。


 

私はあの後ノイトハイルを傷つけられた怒りに任せ"全ての"深海棲艦を駆逐し、ついさっきまで激戦を繰り広げてきた艦娘達の無事を確認した。良かった...誰一人として轟沈はしていない!

一応、鎮守府には物理的な損傷は無い。

万が一地上のドックが破壊されると地下に大量の海水が入り込み、生産装置を始めとした工廠などのバックアップが軒並み全滅する。しかしそれをノイトハイルは防いだのだ。

 

一応提督の安全を確認した後、私はすぐに医務室の方へ急いだ。

ノイトハイルは中破ないし大破の大怪我をしている。しかし救助され、医務室に提督が運び込んだのだ。

 

「ノイトハイルは?」

「大丈夫だ。安心して眠っている」

 

医務室の扉の前ではカイクルが既に立っていた。自身も心配だったのか、私が来ることを予測していたのだろう。

 

カイクルに聞いた所、ノイトハイルはあの第一艦橋に砲弾が命中した際に爆風で吹き飛ばされて肋骨を二本折り、更に脇腹を切り、破片によって磔にされ、何とか自力で抜いたがそれ以降の被弾により至る所に銃創や切り傷のような傷で貧血状態だと言う。

しかし思わぬ救助が入った。

私達が居ない間の更なる戦力強化として建造された艦である特型駆逐艦吹雪型一番艦吹雪。

彼女が自らノイトハイルの船体に乗り込み助け、自らの船体を陸に乗り上げてまで運んでくれたらしい。

私と()の妹を助けてくれたいわば命の恩人である。私としては感謝したいのだがどこにいるのか分からない。

と言うか吹雪と言う艦娘を詳しく知らない。芋というくらいしか...

 

「カイクル、リバンデヒは何処だ?」

「む?知らないな。...いや、確かあの駆逐艦を見てくると言ってふらりと何処かに行ってしまったな」

「そうか。」

 

恐らくリバンデヒも同じ考えに至ったのだろう。

一度己の船体へ戻る。

既に四隻とも地下ドックに格納されている。まぁ、一隻は見るも無惨な状態で船体の結界以外の頼みの綱である鎧は外され、生々しく傷跡を晒しているが。

取り敢えずM93Rを一つに減らし、代わりに天代の大太刀を差す。決っしてカイクルの奇襲に備えた訳では無い。無いったら無い。完全武装には及ばないものの、正装である。

 

武そ...正装に替え、地上へ上がるとそこは妖精さんがあっちへこっちへと島各所に点在する湾岸砲台の弾薬や換えの砲身を持って走っていた。

未だに警戒の為に海上に浮かぶのは大和とその付随艦。

()によると阿賀野型軽巡洋艦三番艦矢矧らしい。ここでも一緒らしい。今度は私が沈ませない。

 

そして浜に堂々と乗り上げ、大きく傾いている駆逐艦、吹雪を海に戻す為に武蔵がいる。

それにも動いている為、妖精さんは大渋滞が発生している。

私はこれといって支援はしない。私ならば砲身も運べるが妖精さん独自の物流ネットワークを素人の私が不用意に介入すべきではない。かえって効率が悪くなる。

邪魔をしないように離脱し、リバンデヒを探す。

 

いた。あれから森林や砲台などの様々な場所を巡ったが見つからず、桟橋に向かった所、誰かと話していた。

セーラー服を着た中学一、二年生位の美少女。恐らく吹雪だと思われる。

ゆっくりと歩いていく。別に走っても意味が無いし、四キロを越えているからだ。

しかしシスコンの前には四キロと言う距離は短いらしくリバンデヒが気付き、手を振ってきた。

うわぁ...

 

「お姉ちゃん!」

「あぁ、聞こえている」

踏み込み、一瞬で距離を詰める。

吹雪は驚いている。まぁ、そりゃそうだろう。豆粒くらいの艦娘が一瞬で近くまで来たのだ。

私だったら斬っている。

「え、えぇ!?」

「あ、お姉ちゃん。気付いていると思うけどこの子が吹雪よ。」

「うむ。一応自己招介はしておこう。私がアメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。この度は私の妹をお助け頂き誠に感謝する。」

そう言って深く頭を下げる。

本当に感謝しているのだ。本当なら何でもやりたいくらいに。

しかしそれを言おうとするとリバンデヒが殺気を飛ばしてくる為言えない。こちらにもメンツがあるからだろう。

私がそんなものに無頓着なのを知ってこその殺気だろう。負い目を感じているのか私に習ったのか同じく腰を折っている。

 

さて吹雪に無事札を言い、私が頭を下げると思わなかったのかあたふたしたりとあったが、余談だろう。

暇な為船体のチェックや弾薬補給の為に生産装置をフル稼働させたりと全ての予定を消化。

また提督の執務室へ行き、本日の秘書艦であった加賀と仕事を代わり、黙々と書類を処理していく。

()が恐ろしい程にハイスペックな為素早くかつ正確に綺麗な、案外丸っこいかわいい文字が書かれていく。

無論何時もこう言う文字を書くわけではない。筆を持ったら私達四姉妹は全員達筆な行書体を書き連ねることが出来る。

私としては体が勝手に動くので楽だが。

「ふぅ...提督、一且休息を取ったらどうだ?」

「うん...そうするよ。ありがとう」

「いや、いいんだ。正直暇であったし、量的に加賀であっても捌けないだろう」

正直、書類の嫌がらせは過激さを増している。白い山は三つ程増え、私達アメストリア型がいなければ到底処理出来ないクラスである。調子乗り上がって...いや、私達を提督が独占している事に対する嫉妬か?なら、私達は迷惑を掛けていることになる......?

それは嫌だ。提督に迷惑は掛けたくない。一応私を助けてくれた存在だからな。私、恩義は忘れない女なのだ。その為、降りかかる火の粉は例え核であろうと米であろうと全て粉砕する。艦娘達に掛ったら大変だからな。うん。

中の国?知らんな。ニダ?もう消えてんじゃね?未だに朝鮮半島を統一出来ない三流のアホ共に構っている暇はない。

というか何で私は提督を守るんだ?助けて貰ったから?

それもあるだろう。しかし、それだけじゃない気がする。ならば、何だ?

分からない。今私が抱いている気持ちが分からない。理解出来ない。

暖かい?温かい?でも、これが何であるか解らない。

アホなど気にしない方が良いのかも知れない。

気楽に生きたいし。でもそれじゃいけない気がする。何これ?

あぁもうやめだ。やめだ。考えるのを止める。

後で考えれば良いだろう。

 

太陽が水平線の彼方へ沈み、夜独特のじめっとした空気に代わり、海風に変わった頃、やっと書類処理が終わり、

提督に別れを告げ提督棟の警備を済ませ、工廠へ終了の知らせを告げ、戦艦寮に戻る。

思えば最初は私だけが寂しく暮らしていた戦艦寮も戦力強化で、あのクソッタレから救助で賑やかになった。

リバンデヒが、カイクルが、大和が、武蔵が、長門が、陸奥が、ノイトハイルが。

私が頑張ったわけではない。提督が、工廠長が、妖精さんが頑張ったのだ。

私はその支援やきっかけを作ったに過ぎない。

「アメストリアじゃないか、どうしたのだ?」

声をかけられ振りむくと風呂上がりか白い着物を着込み、何時もの電探型カチューシャを外した褐色の美女、長門がいた。

「いや、少し感傷に浸っていただけだ。」

「そうか、なら付き合ってくれないか?」

そう言って長門は片手に持つ透明な液体の入った瓶を掲げてくる。

気分転換には良いかも知れない。

快く了承し、移動する。二人とも外見こそ只の美少女だが、お互い国を守ってきた戦艦艦娘だし大丈夫だろう。

場所は寮近くに設置された50Ocm四連装砲台の巨大な上部装甲だった。

お猪口に日本酒が注がれ、私と長門が持つ。そして、

「これからの未来とこのパラオ鎮守府に乾杯」

「乾杯」

一気に飲み干す。さらさらとした舌触りのいい液体が喉を焼く。しかしそれも心地よい。

これが日本酒か...美味しいな。確か私の船体にも沢山あったはずだ。

「どうだ?初の日本酒は?中々いけるだろう?」

「あぁ...意外に美味だ。ありがとう。」

「いやいいんだ。それより、アメストリアは最初の頃からいるのだろう?」

「まぁな。最悪だったが。」

だって何も知らないまま()と放り出されて、主砲もまだ150cm四連装砲だっし、満足に戦えずに大破して漂着して、

提督に助けられた。

「大変だったな」

「あぁ。本当にな」

色々とあったなぁ...今思えばやんちゃしていたな。後悔はしていないが。

確かまた合同演習とかあったな。また参加してやるか。

 

「ではな。ありがとう。少し楽になったよ」

「それではな。いやいいさ。私達にやれることはこれくらいだからな」

「それでも感謝している。またやろう。今度は私の方が出そう。場所は艦首でいいか?」

「それはいいな」

長門と別れる。これからも酒の付き合いになりそうだ。

寮の自室に戻り、誰も居ないピシリと整えられた布団を見る。ノイトハイルは未だに意識を戻さず、医務室で眠っている。

何時もと違い、ノイトハイルののほほんとした雰囲気が無い自室は寂しい。

気づけば医務室の前に居た。私って意外と寂しがり屋か?ふふふ...

ノイトハイルの眠るベッドに腰掛け、目を閉じる。

 




次回もほのぼの回。
でも二章は終わり。次から大きく動く。

評価くれたらうれしいなー.......がめつくてすいません。


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35.巫女さんのメイド服

諷詩です。無事復活いたしましたので早速一話投稿いたしました。これからもよろしくお願いいたします。


35.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お姉ちゃん、起きたー?」

目を開けると第一にノイトハイルの優しい微笑みが飛び込んできた。

そうか。昨日はノイトハイルのベットに腰掛けて寝てしまったのだろう。

 

「んっ...ノイトハイル、大丈夫なのか?」

「ん~まだ本調子じゃないけど何とか動けるよ」

 

よかった...()と私の大切な妹だ。無事でよかった。

とりあえず立ち上がり軽く伸びをする。

今日は特にこれといった仕事もない為、のんびりとする予定だ。

といっても私達にとってののんびりといえば、

 

一に戦争

二に戦争

三に戦争

 

のため、今日はグータラの方向で行く予定である。

先にノイトハイルと替えの巫女服に着替え、医務室から出る。

 

「あらあら?お姉ちゃん、お楽しみだったかs痛っ!」

 

なんか医務室から出たらリバンデヒがいたのでとりあえず叩く。予想通りくだらないことを言っていた。

はぁ...

 

 

なんとなくドック(地上)に向かう。これは艦娘としての本能だろうか?

私達は船である。本来のいる場所は海の上。かつ戦場である。

()も最近戦場がないからイライラしているようだ。怖。

ドックは今までの反省から常時相応艦隊が停泊しており、今日は陸奥に暁、雷のようだ。

海風が吹き込み私の長い髪が舞う。

直ぐに抑えるが、これもこれで絵になっていると思う。さっきからリバンデヒの気配がすごいことになってるし。鼻血、出してないよな?

 

「む、姉さんか?」

 

後ろを振り返るとカイクルがとてつもない長さの日本刀を肩に担いでいた。

いや、なにやってんの?それ斬馬刀じゃん?なにに使うの?

 

「カイクルか、別にどうということはない。そっちは振りか?」

「うむ。最近極長の刀を振っていなかったからな。昨晩振ってみたが装甲が500mmしか切れなかった。精進せねばならないのではな、また」

「あぁ。」

 

今日も通常運転のカイクル...既に50cmの装甲板を切れる時点で色々とおかしいと思うんだけど。

それがアメストリア型戦艦クオリティ...

 

暫く入江から望む軍港を眺めているといくらかの艦影が見えた。

どうやら今日の演習艦隊が帰還したらしい。

演習といってもパラオ鎮守府内でのレベルアップでは無い。他の鎮守府との演習である。

本来ならどうやっても着かないレベルの過疎地であるが、無論全艦に粒子エンジン完備であるため軽々と航行する。

たしか今回の演習艦隊は武蔵、鳥海、龍田、矢矧、電、響であったはずだ。

直ぐに地下のドックに転移し、見ていると艦艇用超大型昇降機が起動し各々の艦艇を下ろしてきた。通常の武蔵よりも二回りほど大きな船体を持ち、150cm三連装砲を堂々と掲げる武蔵改三。

外見こそ変わっていないが某海上戦争ゲーの如く連射力を持ち、弾頭もウンターガング弾を除き私達と大差無い鳥海。

旧式となってしまっていた船体は大幅に改造され、艦橋は高雄型に似せられ、単装砲は連装砲へとグレードアップされている。最高速度は70ノットを誇る機動力と連射力を備えた死神である龍田。

大和の付随艦として最期を共にした歴戦の艦は当時よりはるかに激化した今宵の戦争について行けるように、何よりも大和と共に行けるように性能が二桁ほど上昇し、主砲は20.3cm三連装砲にグレードアップし、ミサイルも20セル程つんでいる。というか全艦ミサイルは積んでいる。

乗務員の居住スペースなどが必要ないからであるが。

最新式電探やソナーを実装し、もはや軽巡洋艦の域を超えた矢矧。

優しくも決して芯曲げない力強さをもつ駆逐艦は三連装砲へ換装し、船体を大型化。

海面を滑るのではなく、海上を滑る高速艇となり、機動力に抜群の優位性を出し、装甲も相応の防御力を持った電。

既に露に引き渡された後の外見をし、電と同じ改装を受けた駆逐艦か?と疑ってしまう艦は元気な姉妹を支える響。正直言ってここまで既存艦艇がチート化するとは予想していなかった。

 

「アメストリアか、どうしたのだ?」

「いや、なんでもない。それよりもどうだ?」

「まだまだよねぇ...他の鎮守府」

 

龍田が答える。そりゃそうだと言いたいが、龍田は他の鎮守府に技術が流れてから以降に建造された艦だったはずだ。龍田の方が上達が早いのは如何だろうか?

 

「でももうちょっと頑張れば強くなると思うのです。」

「うん。私もそう思うよ」

私がパラオ鎮守府最古参の電が言うならばそうなのだろう。

「そうなのか...大佐殿の艦隊か?」

「そうだ」

 

やはり...あそこは恐ろしく優秀だと思う。

トラック島開拓に大規模演習議長提督、数々の受賞。優秀すぎるくらいなのだ。

経験なのだろうか?()からみても類を見ない優秀な佐官という評価が出ている。

 

 

「これは...」

「あ、いけない。鼻血だわ」

 

私は現在困惑と同時に今まで味わったことのない恥ずかしさに襲われている。

へ?何故かって?

だって私がメイド服を着ていると言えば良いだろうか?

すんごく恥ずかしい........

鏡に映るクラシックなメイド服をきた絶世の美少女も顔を真っ赤に染め俯いている。

しかし誠に遺憾ながらこれを脱ぐことは出来ない...くそぅ...

 

「.......カイクル...解いて、くれ...」

「すまない。私も止めるつもりは無い。」

「うぅ.....」

 

腕を縛られているからである。

こうなった経緯を説明しよう。

 

私は暫くぶらぶらしてから食堂にて大和や高雄達と同席しながら昼食を摂り、

自らの船体にて昼寝に興じていたのだが、

気配を感じ目を開けると同時に何者かに口に布を当たられ意識を失った。まぁ、リバンデヒとカイクルだったのだが。

そして気づいたらこのありさまである。

 

 

「はぁ...」

 

どうしてこうなった...妙にコソコソと動いていたなと思ったが。

私、朝ノイトハイルと居たから気付いかなかった。じゃあ自業自得、か?

ご丁寧に薬品で眠らされてこんな服に着替えさせられた。

かつ力が入らないように腕がキツくクロスさせられ装甲に使われる鋼鉄製のワイヤーで手首を縛られている。

まぁ、幾らでも対処出来るのだが。

リバンデヒとカイクルの頭上に鋼鉄製のレンガブロックを作り出し、思い切り落とす。

 

「きゃんっ!?」

「むきゅっ!?」

 

不意をつくことが出来た。

けどカイクルがそういう声を出すとはな...ふふふ。

手首にナイフを作り出しキャッチ。直ぐにワイヤーを無理やり切り取り(熱で)

腰に手を当てる。

 

「正座しろ」

 

どこまでも冷え切った声が私から発せられる。

 

「は、はい」

「うむ...」

「お前らな...はぁ...何故私にこんなメイド服を着せた?」

「えっと...可愛いと思ったかr」

 

とりあえず叩く。こいつら...私はマネキンでは無いんだよ..

拘束しよって...あーだめだ。イライラする。

 

「お姉ちゃーん?入るよ〜」

「ふぇ?あ、ちょっ、まっ...」

 

今から5時間耐久説教コース入れようとした矢先、ドア越しにノイトハイルの声が聞こえ、思わず気の抜けた声が出てしまう。えっ...

 

「お姉ちゃ......えーと、うん。似合ってるよお姉ちゃん?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁああ!!!!!」

 

見られてしまった!見られてしまった!よりによってノイトハイルに!

ノイトハイル隠れSだから絶対いじられるっ!現にニコニコしてるし!

もう終わった私の人生!あはははははは.....

もういいや...意識を手放す。なんか最近故意に意識を遮断できるようになった。

感謝!

 




アメストリアさんご乱心。


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第三章 引っ越し編
36.戦場に備えて。


また遅れました...うぅ...


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私だ。

最近、深海棲艦の姿が一切見られなくなったという、どう考えてもこれからも何かとてつもなく大きなことが起きる前兆が発生。

大和以下第一艦隊から第三艦隊までフル動員し周囲の巡回を強化。

今は長門が旗艦の第三艦隊が巡回中のはずである。

私はというと今までの経験から地下ではなく湾内にて投錨し、四隻がパラオを囲んでいる。これでどの方向から来ても1分以内にアメストリア型戦艦が一隻以上駆けつけることができる。

しかしこれでもカツカツの運営で、ブラックの方向へ進みかけている。

演習の頻度を減らし、警戒に回しているが、それでも艦隊のローテーションがギリギリなのだ。

この鎮守府の所有艦艇数が圧倒的に少なすぎるというのもあるが。

かつ情報収集が得意な艦が居ないという点もこの鎮守府の欠点だ。

リバンデヒやノイトハイルがいるが、不用意に切り札の戦艦を動かすことはできない。

それでノイトハイルは大惨事になったのだ。

せめて潜水艦があれば...いや、作ればいいのか。

という事で。

 

「提督、アメストリアだ。失礼する」

「うん」

提督室に突撃する。

相変わらずの嫌がらせの書類量で、後で私とカイクルも応援で駆けつけないとダメだろう。

多分大本営を超えたのではないだろうか?

「今回の深海棲艦の静けさは嵐の前の何とやらだと思われる。此処、パラオ鎮守府の欠点は保有艦隊数が圧倒的に足りない事だ」

「うん。それはわかっているよ?」

確かに遠征に艦隊を割かないだけマシである。全て万能な生産装置が担っているから。

しかし生産装置で艦娘を作り出す事はできない。新しく生命を作り出す事は不可能である。というかそれは神の領域である。絶対に人が踏み入れてはいけない線だ。

「そこでパラオ鎮守府第三次大規模戦力拡充案を提案する。」

「...内容は?」

「私が妖精さんに頼み込む事が前提だ。まず戦艦は金剛型戦艦四隻。主砲は51cm三連装砲に換装する。そして青葉型、最上型の重巡洋艦は35.6cm 三連装砲に換装し火力を増強する。

又、川内型軽巡洋艦も三隻全建造する。主砲は20.3cm三連装砲に換装する予定だ。

それで、メインだが蒼龍改ニ、飛龍改ニ、雲龍、天城、葛城の正規空母を全て甲板を鋼鉄製にして翔鶴改ニ、瑞鶴改ニも同様の改造をする。」

「........分かった。直ぐに取り掛かってくれるかな?」

「了解した。後で妹とともに手伝いに来る」

「あはは...ありがとう」

「う、うむ」

という訳でまた戦力拡充である。

え?戦艦ばっかじゃねぇかって?正解だよ。私は大鑑巨砲主義だからな。しかも戦艦の欠点が気狂い技術によって改善されているため割と大丈夫なのだ。

 

「工廠長!仕事だ!今回は火力のパーティーだ!」

「うるさいの...どうしたのじゃ?」

「第三次大規模戦力拡充計画だ。

金剛型戦艦金剛、比叡、榛名、霧島。

これは主砲を51cm三連装砲に換装して側面の砲を撤去してくれ。アレは気持ち悪い。12.7cm高角連装砲を増設し45mm対空機関連装砲を実装してくれ。ミサイルもな。

青葉型重巡洋艦青葉、衣笠。

主砲は35.6cm三連装砲に換装し、45mm対空機関連装砲を積むあとはミサイルも200セル程増設してくれ。恐らくバランスが保てないだろうからバルジを設置したらいいと思う。

最上型重巡洋艦最上、三隈、鈴谷、熊野。

主砲は35.6cm 連装砲に換装して45mm対空機関連装砲とミサイルハッチを増設。バルジでバランスを保ってくれ。

川内型軽巡洋艦川内、神通、那珂。

主砲は20.3cm三連装砲に変えて対空砲も45mm対空機関連装砲を使ってくれ。魚雷はミサイルにしてそれに伴って艦内の電子装備を変えておいてくれ。

蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴は全て改ニで頼む。

甲板は鋼鉄でカタパルトを。武装は主に対空砲を増やして主砲は何を使ってもらっても構わない。全長自体大きくなるだろうが気にしなくていい。

雲龍型正規空母は甲板を特殊装甲で覆って装甲空母に改造してくれこっちもカタパルトを二基設置してGF-21も運用できるようにしてもらえるとありがたいな。」

 

正直出来るか怪しい気狂い要求だが、やっちゃうのが妖精さんクオリティだろう。

艦載機は当然だがF-105を使いまくる。

しかし鎮守府自体の滑走路(昨日建設)にも配備する航空機が必要になる。

ガンシップや超大型輸送機などの意味不明な気狂い航空機だが。

 

地下では轟音や溶接、ハンマーと叩かれる音が超大音量を奏で、二十隻以上の骨組みが組まれ、火花が至る所で散っている。工廠では工廠妖精さんがフル動員し装備を量産。主に航空機の砲を重点的に強化している。

今回も私が知らない航空機だったため紹介しよう。

 

GF-21

固定翼型重攻撃機

外見は一式陸攻のような感じ。

FB-99より少し小型化しており、対地支援特化型。

全幅 25.6m

全長 32.7m

全高 12.5m

主翼面積128.5平方メートル

自重 41.2t

最大重量2650t(量子化を含め)

搭載兵器

45mm機関対空連装砲 三基

128ミリ航空機関砲 4門88ミリ航空機関砲 16門機首75ミリ航空機関砲 4門

ST-8凡用ミサイル 3600発

ST-7中距離ミサイル 600発

SB-Mk14 420発

 

という頭可笑しいガンシップと、

 

CT-7

超大型輸送機

外見はC-7ギャラクシーに準ずる。六発式

全幅 78.43m

全長 92.5m

全高 23.5

主翼面積 2164平方メートル

自重 256.8t

最大重量 5680t(量子化を含め)

航続距離 無限

戦闘半径 16000km

搭載兵器

45mm機関砲 4門

45mm対空機関連装砲 6門

60cm砲 1門

MBTを通常で20両、量子化で2500両格納できる。

様々な気狂い兵器を各地へ配達。大体積むことができる。

正直空母に搭載可能で、離着艦可能

別名死の配達人

 

という気狂い輸送機なども開発している。上空から落とせるからだ。

爆撃機タイプもいたが、輸送面で不安があったため輸送機タイプを採用した。しかし...全長が駆逐艦に迫る大きさなんだが。何積むの?あ、私の主砲?なんか納得してしまうのは私だけか?

使用用途がキチっている。

そんなわけで、戦艦よりも航空機の方が早く建造される訳で...

大量の戦闘機が艦載機用の大型エレベータで地上の滑走路へ運ばれてゆく。

CT-7なんかは一回で一機しか運ぶことができなかった。デカすぎんだろ...

かく言う私は地上にて地下から上がってくる地面のようなハッチに並べられた夥しい戦闘機が

順次動き出し滑走路を埋め尽くしていくところを眺めている。

全ての機、いや、ガンシップと輸送機以外の航空機は垂直離陸が可能な為、等間隔に敷き詰められ、大型機はもう一本の滑走路に追いやられていた。

哀れGF-21。

しっかしすごい光景である。尾翼が畳まれたのっぺりとした黒い機体が大量に並び、一部はチェックの為主翼を回転させたり、尾翼を持ち上げ主翼を展開して逆ガル翼を広げたりしている。かっこいい。

しかし、全機フル武装なのは如何なものか?

 

「提督、計画の30%が終了し、艦載機の生産が完了。船体は軽巡や重巡は80%、戦艦は60%正規空母は65%程の進行度のようだ。明日には全艦建造完了する。」

「ふーん...やっぱり妖精さんはすごいね...」

全くもって同意である。

一体誰が二日で正規空母七隻に戦艦四隻、重巡十隻、軽巡三隻、艦載機沢山を建造する工廠があるだろうか?

しかも火力は従来の艦とは比にならないクラスであり、サイズに至っては元ネタの五倍ほどの巨艦共である。

はぁ...管理が大変だな.......また艦隊組み直さなきゃ...あ、寮も振り分けなきゃなぁ...(遠い目)

「カイクル...至急提督室に来てくれ。書類を処理する。」

『......了解した。すぐに向かう』

 

暫くすると動きやすい服装...具体的に言えば上がタンクトップに下が袴で白衣は腰に巻かれている。おい、襟詰はどうした。

しかもカイクル私より胸大きいんだから...もう少し気にしてほしい。

「......カイクル、せめて白衣のみでも羽織れ。目に毒だ」

「む?そうか?先程まで走り込みと振りをしていたのでな。少し暑かったのだ。」

そう言うカイクルは少し汗をかいているようだ。ほんのりと顔も赤く、元の凛々しい顔と相まって大変色めかしい。いや、リバンデヒみたいに欲情はしないが、率直に危ない。

カイクルに無理矢理白衣を着させ、事務処理に取り掛かる。

カイクルも行書体っぽい達筆な文字で高速に処理してゆく。

優秀なんだけどなぁ...中央演算処理装置がある為か、脳内の情報処理は一瞬で終わる。

アメストリアじゃこんな非効率な事務処理はしなかったのに。...完全にアメストリア視点だったな今。今や私自身の意識が私なのか()なのかはっきりとは言えないが、価値観を始めかなりアメストリアよりになってるんではなかろうか?いやまぁ別に問題ではないんだけども。

自我も完全に女としての自我にシフトしている。別に嫌というわけでもないからいいのだが。

「姉さん、筆は駄目なのか?まぁ、どうでもいい書類が多いが」

「駄目だ。周りが読めなくなる。そんなものは捨ててしまえ」

「了解した。後で的として使おう」

「分かった」

さりげなく物騒な会話になるのか軍艦だからだろうか?

本能的に戦争を求める。理性や好奇心などが上回り、めったに出ることはないが、一部はそれがむき出しのようだ。自分でさえ制御できないのは只の獣だ。

おっと愚痴が続いていたようだ。失礼。

 

翌日、リバンデヒの夜這いを回避したこと以外は特になく清々しい朝を迎える。

んーー...朝日を浴びながら伸びるのは中々に気持ちいのである。

作り直した巫女服が乱れていないかを確認し工廠へと足を向ける。

 

工廠では未だに溶接の火花が散り.......ん?

完全に爆発してますが、何が?

「どうしたんだ?」

''えっと...粒子式カタパルトを乗せたら爆発しました!''

そりゃそうだろう。蒸気の様に力の方向を制御できるものでは無い。

というかF-105は垂直離陸が可能な可変翼機であるはずだ。カタパルト自体必要では無い気がする。ん?GF-21を飛ばす時に必要になるのか?いや待て船体自体馬鹿でかいんだからカタパルトなんか要らないのでは???あ、ロマンですかそうですか...

また面倒な...

「取り敢えず電磁力式にしておけ。完成は?」

''了解しましたー!完成は三時間後を予定していますっ!''

「そうか。あまり無理をするなよ?」

''大丈夫ですよー。息抜きにかk...装備作ったりしてますからー!''

今かくって聞こえた気がするが気にしない。気にしたら負けだと思ってる。

逃げる様に私の艦橋へ転移する。

 

「ふぅ......」

ドック(地下)にて殆ど完成された船体を眺めながら一服する。妖精さんのサイズといい、巨艦といいどうにも距離感が掴めなくなるな...

三時間も時間を潰さねばならないのだ。

ドックでは巨大クレーンにカタパルトが吊られゆっくりと甲板に設置されていく所だった。

あれは...葛城か。隣の空母が戦略空母みたいな形だったが、どうせ蒼龍と飛龍が魔改造されたんだろう。

『姉さん、少し気になる反応があった。少し向かわせてもらう』

「了解した。気をつけろ」

あのカイクルが興味を示す反応とはなんだろうか?

少々気になるがまぁ、いいや。

 

''建造完了しました!''

「提督、建造完了した」

「分かった。艦娘は...」

妖精さんの知らせを受け、ドック(地下)へ向かった。

艤装が完了し、空母にはまだ艦載機が積まれていない。

「英国で生まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」

まず金剛型戦艦一番艦金剛。独特な巫女服を身に纏い電探型カチューシャをした

カタコトの似非日本語をしゃべるばば...古参の戦艦だ。

「金剛お姉様の妹分、比叡です。経験を積んで姉様に少しでも近づきたいです」

次は金剛型戦艦二番艦の比叡。

服装は同記でショートカットのお姉さん大好きっ子である。

料理はうまいのだが...なぁ?

「高速戦艦、榛名、着任しました。あなたが提督なのね?よろしくお願いします」

金剛型戦艦三番艦の比叡。国産初の35.6cm砲を搭載した最期まで生き残った戦艦である。

背中までのばされた黒髪で服装は同じだ。

「マイク音量大丈夫...?チェック、1、2......。よし。はじめまして、私、霧島です。」

無駄に前振りの長い眼鏡をかけたのが霧島だ。

榛名を大和撫子とすると霧島は理系だろうか。

また、戦艦VS戦艦の殴り合いをした数少ない戦艦で純国産である。

しかし今回の建造では主砲を51cm三連装砲に変えた為殴り合いは増えるだろう。期待しているし。

「ども、恐縮です、青葉ですぅ!一言お願いします!」

そして重巡洋艦青葉型一番艦青葉。

パパラッチである。以上。

「はーいっ!衣笠さんの登場よ!青葉共々よろしくね!」

そして初のカタパルト実装艦、青葉型二番艦衣笠。

服装は青葉の短パンとは違い短いスカートで史実では夜戦にて多くの活躍をしている。

また青葉と違って髪は下ろしており溌剌とした印象を持つ。青葉型は姉妹艦が二隻という事もあり、個々の火力の強化に重点を置き70口径の35.6cm三連装砲を9基も搭載する大盤振る舞いをした。

ここからはダイジェストで送るぞ?べ、別に紹介がめんどくさくなったって言うわけじゃ無いんだからねっ!

「ボクが最上さ。大丈夫、今度は衝突し無いって!ホントだよ。」

「ごきげんよう、三隈です。最上さんと御一緒になれてうれしいですわ。」

「鈴谷だよ!随分と賑やかな艦隊だね!よろしくね!」

「ごきげんよう、わたくしが重巡、熊野ですわ!」

最上型重巡洋艦。

色々と問題を起こしていた最上型であるが、代表的なのが最上と三隈の衝突事件だろう。

ほかも戦闘時はスイッチが入るのかテンションが上がる子が多いようだ。今回は戦力増強を目的に35.6cm三連装砲を8基も搭載した重武装仕様だ。

しかし壮絶な最期をとげた艦も多い。鬼畜米帝め...あとでミサイルを追加しておこう。

「川内、参上。夜戦なら任せておいて!」

「あの......軽巡洋艦、神通です。どうか、よろしくお願いします......」

「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー。よろしくぅ!」

夜戦バカに最も激しく戦った軍艦にアイドル。この型にまともな艦娘は居ないのか...?

唯一というば神通だろうか。既に服装は改ニへとなり、魔改造も相まって恐ろしい火力を発揮する。アメストリア海軍軽巡洋艦標準口径たる20.3cmを採用し、75口径長の三連装砲を5基搭載した快速艦だ。

「航空母艦、蒼龍です。空母機動艦隊を編成するなら私も是非入れてね!」

二航戦の蒼龍。え?ミッドウェー?美味しいのかそれっていう艦娘であるが、れっきとした正規空母である。元ネタと同じく全通甲板ではあるが四桁全長であるし、二本並んでいるためそうそう困りはしないだろう。多分。

「航空母艦、飛龍です。空母戦ならお任せ!どんな苦境でも戦えます!」

もとは蒼龍の二番艦の予定であったが設計コンセプトが変更され飛龍となった。

具体的には艦橋の位置が左右逆になったぐらいだが、船体が多少改善されているらしい。けどまぁ、私達が設計やり直してるから無意味だがな。服装は改ニになっていた。

尚、艦橋の位置は今回も採用され、左右で別々となっている。理由?ないよそんなん

「雲龍型航空母艦雲龍、推参しました。提督、よろしくお願いしますね」

「雲龍型航空母艦、天城と申します。提督、どうぞよろしくお願いします。天城、精進致します」

「雲龍型航空母艦、三番艦、葛城よ!え?水上防空砲台ですって?違うわよ!」

雲龍型航空母艦。比較的近代的な空母だ。

さっきカタパルトで爆発事故が起きたから葛城は妖精さんを睨んでいるが...

まぁ、しょうがないか。船体はかなりレアケースな伊号401のようなデザイン。船体に飛行甲板が張り付き、中央に艦橋と格納庫が陣取っており、そこから左右に安定翼が迫り出した潜水艦のような意匠。それもそのはずこの雲龍型は潜航が可能なのである!理由は当然ながら、ロマンのみである。アメストリアって平賀が沢山居たのか...?

「翔鶴型航空母艦一番艦、翔鶴です。一航戦、ニ航戦の先輩方に、近づけるよう瑞鶴と共に頑張ります!」

「翔鶴型航空母艦二番艦、妹の瑞鶴よ。幸運の空母ですって?そうじゃないの、一生懸命やっているだけ...よ。この変な戦闘機がある限り戦い続けるわ!」

へ、変な戦闘機とは.......随分と言うな...確かに形大丈夫?っていう戦闘機だけど...さぁ。

服装は既に改ニである。船体は蒼龍飛龍よりも大きく、姿は元ネタに準じている。二枚の全通甲板を有しており搭載能力は十分。装甲はその名の通り重装甲で対150cm特殊装甲を誇る。

「僕がこのパラオ鎮守府の提督、寺塚修平だよ。こっちは秘書艦のアメストリア。

よろしくね。」

「ご紹介に預かったアメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。

因みに日本艦だが、史実では登場していない。架空艦だ。今回貴官らを建造したのは戦力拡大の面が大きく、空母艦娘諸君はすぐに洋上へと移動し、陸にある艦載機を積み次第赤城や加賀に指導をしてもらえ。重巡洋艦、軽巡洋艦は既に高雄型姉妹が洋上20km先にて待機している。すぐにむかってくれ。既に私の所有する技術を使い貴官らは劇的な改造を施されている。

今までの知識が通用しない点が九割九分のため、しっかりと慣れてくれ。もうすぐ、血を争う戦争が起こる。」

「「「了解(っ!(よ!」」」

 

 

ということだが、私は地上へ上がり艦載機となるF-105の航空管制をしてゆく。

上空にはそれぞれのカラーリングが済んだ戦闘機が飛び立ち、戸惑いながらも地上へと上がってきた空母に着艦してゆく。遥か上空には赤の塗装と青い塗装の航空機が飛行機雲を描き、ジェット音、ミサイルと装填音、遠くから聞こえる重巡洋艦や軽巡洋艦の砲撃音が混ざり合いやっと戦場の雑猥さが出てきた。さぁ、戦場はもうすぐだ。

練度を上げてもらわねば。

 




マイクラの大型アップデートでテンションマックスになり今までの数ヶ月掛けて本気で作っていたワールドが吹き飛んで意気消沈した諷詩です。ガチで消えてました...

追記。↑なんか再起動したら復活した。


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37.え?SLBM撃てる潜水艦?いらねー...

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

絶賛頭を抱えて撃沈しているアメストリアだ。

目の前にはスポーツ水着をきた私達と同じ様に白い肌に外人の彫りの深い顔。

しかしその顔は不満気な表情を隠さずに出していた。

「はぁ...持ってきたのは核を積んだ戦争への切符か...」

「私もこれが来るとは思わなかった」

カイクルによると、レーダーに反応した反応を追って近海に行ったところ、数発の魚雷が打ち込まれ奇襲にあったらしい。しかし二次大戦中の魚雷でアメストリア型戦艦を沈めれるはずもなく、適当に主砲を海面に撃ち込み最後通告(脅迫)をしたところ、現れたのだという。

私というとドック(地上)にてカイクルを待っているとその本人のカイクルは船体が舵を切り所定の位置へ移動し、その巨体に隠れていた''一隻の黒い鯨''の船体が姿を現した。

警戒の為ベガルM115を構え警戒した。

その船体が伊型ならばよかっただろう。Uボート型ならばよかったであろう。

しかし期待を裏切られその船体はのっぺりとした凹凸の無い黒い船体が浮かび上がり比較的静かに航行していた。一頭の黒いクジラが泳いでいるようで一瞬あっけにとられたが、走ってきたカイクルに事情を説明され、現在に至った。

「......で、所属は?」

「戦略任務重原子力潜水巡洋艦一番艦のドミートリー・ドンスコイよ。」

そう。

『Тяжёлые раке́тные подво́дные крейсера́ стратеги́ческого назначе́ния прое́кта 941 «Аку́ла»』

こと戦略任務重ミサイル潜水巡洋艦の代表格であるタイフーン級一番艦ドミートリーである。

タイフーンというのは正式名では無い。アクーラと呼ばれていた。現在露西亜となってからタイフーン級と呼ばれるようになった。

この戦略潜水艦であるが核を20発発射できる、一隻で核戦争ができる潜水艦である。

冷戦時に建造され、現在は三隻のみが現役であったはずだ。

いや、それは''前の知識,,だ。現在は深海棲艦との戦いで全隻轟沈しているようだ。

しないとここには居ないであろうが。

「此処に来た目的は」

「別に。気付いたら其処に居て島が迫ってきたのよだから取り敢えず魚雷を撃ち込んだのだけれど

まるで効いていなかったわね。」

「当たり前だ。600cmの主砲弾が命中しても精々凹む程度の強固な装甲に貧弱な魚雷が効くはずも無いだろう。ドミートリー、私から提督には紹介しておく。リバンデヒかノイトハイルから説明を受けておいてくれ。」

「ろ、600cm!?Было бы ложью!?(嘘でしょう!?)

Факт(事実だ)残念ながらな。」

私は唖然とするドミートリーを放置し提督の下へと急ぐ。

というか()ロシア語も喋れるんだな。ドイツにつぎロシアか...

 

「アメストリアだ。失礼する」

「良いよ」

提督室は視界を覆うほどの書類がまずお出迎えする。

最近激化したか...そろそろ、動かねばなら無い、か?

「提督、カイクルが連れてきたんだが...戦略原潜のタイフーン級一番艦ドミートリーが来てしまった」

「あ、うん...また?」

「そうだ。また意味不明な現代艦だ」

「たしか...タイフーン級って戦略任務重ミサイル潜水巡洋艦だったよね...?

核が二十発は撃てると思うけど...」

「そうだ。こいつだけで核戦争ができる。かなりの危険分子だ。あとでノイトハイルと立ち入り検査する。」

「分かった。気をつけてね。アメストリア、気づいて無いだろうけど君レベル90だからね?」

なんと。まさか私が九十代とは...因みにこの世界においてケッコンカッコカリは存在するが、しなくとも三桁に突入する。ウチの電も現在112である。

しかしそれだからこそケッコンカッコカリには重い意味が出る。

実際に艦娘との恋愛に発展しケッコンカッコカリをしている提督は多いと聞く。

この提督はどうなんだろうか?

本人は知ら無いだろうがこの鎮守府は提督に対して並々ならぬ好意を寄せ、所謂提督LOVE勢が多い。あの加賀でさえ懐いているのである。

「なぁ、提督」

「ん?何かな?」

「提督は私の事、すkーーーー「提督っ!緊急の打電や!ひよっこを連れた赤城と加賀が大量の航空機に襲撃されとるようや!...ん?アメストリアはんか。お久しゅうな」

「何っ!?」

赤城、加賀の航空隊がいくらキチっていてもまだ建造から数時間しか経ってい無い艦娘を守りながらの戦闘となると、本領を発揮する事が出来ないだろう。

私は船体とのリンクを強め、すべての主砲に三式弾を装填し、旋回。演習をしているはずのエリアをレーダーを捕捉し発射。

遠くから轟音が聞こえ、巨大な砲口より砲弾が発射される。

発射された砲弾は私の高速演算によって算出されたルートを寸分狂わず飛んで行き、VT信管が作動し、強烈な爆発を起こす。内部にぎっしりと詰められたジェット燃料の詰められた焼夷弾?が炸裂し、広範囲に広がると、中の燃料を引火させ、周囲を焼き尽くす。

今更であるが、米の航空機は金属製である。しかし、1900年代の話であり、現代、アメストリアからみるとお遊びにも入らないほどのちゃっちいものである。

従って、焼夷弾が焼き尽くすわけであって、火だるまになった深海棲艦の航空機が海面に墜落してゆく。一切の慈悲なく第二射、第三射と続け鎮守府よりF-105などが飛び立ったことを確認し砲撃をやめる。そういや三式弾は最近撃っていなかった様な気がする。

大体通常弾でも抉り取って大変なことにするから使う必要ないし。対空砲優秀ですしおすし。

まぁ、ともあれ迎撃は大丈夫だろう。

「カイクル、どうだ?」

『こちらもF-105を飛ばして確認したが、大丈夫な様だ。しかし雲龍型が若干焦げているな』

「了解した。提督、迎撃は完了。少し雲龍型が焦げたそうだ」

「焦げた...?あ、うん。わかったよ。ご苦労様」

「う、うむ...」

雲龍型の子らの詳細な情報が欲しい。提督室を去る。

しかし、何故このタイミングで深海棲艦の奇襲があったのか?

それは疑問だ。威力偵察?

もしかして...

「リバンデヒかノイトハイル。応答しろ」

『んー?どうしたのー?』

「少し調べてくれ。上空を何か飛んでいないか?」

『.........んー...無いね。あ、いや待って!マッハ三でunknownが飛んでる!』

やはり...この間に迎撃能力と艦隊の規模、練度を測ってきたか...

すぐに対空警戒に移行し、ICBMを全弾発射し、撃墜しておく。

''.......ICBM、全弾撃墜されました...''

は...?あのICBMが?大陸間弾道ミサイルが?

すると護衛機がいると考えるべきか...しかも、加賀や赤城の一航戦クラスの化け物。

迎撃を諦める。

こりゃ近々ドンパチがあるな...警戒しておかなければならない。

 

ーーーーーーーーーーーーノイトハイルsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おひさ〜、ノイトハイルだよー。

なんかお姉さんから警戒をお願いされたけど無視しちゃうよー。

え?なんでって?だって妖精さん優秀だから僕が何もしなくても攻撃したり迎撃するからだよ。

楽でいいよねー。

「けど、あの子可愛かったな〜」

あの潜水艦の子。外見は僕達に近く北欧系。肌も白くて可憐な子だった。

可愛いーなー...僕達なんて背得たかのっぽでみんな落ち着いてるから...ねぇ...

お姉さんは凛々しくてカッコよくて。僕も憧れてるよ〜。

アメストリア型戦艦二番艦リバンデヒ。

リバンデヒお姉ちゃんはんー...変態さん?お姉さん大好きっ子だと思うけど多分女の子全般的に好きなんだと思うなー...あ、これ僕の偏見だね。言ったら確実に殺されるだろうけどねー。

アメストリア型戦艦三番艦カイクル。

カイクル姉さんはザ・軍人さんだと思うんだよねぇー。

義理難くてお姉さんと同じ堅い男口調。かっこいいよねー。けどお姉さんみたいに遊びを加えないからちょっと面白く無いよねー...まぁ、多分お姉さんに大分甘えてたから良いけどね。

あ、そうそうお姉さんと言えばね何時も表情に変化の無い人だけど僕部屋が同じだがら寝顔が見えるんだよね。こう、あどけなくってこう純粋って言うのかな?

清らかっていう感じがして可愛いんだよね。本人に言ったら斬馬刀振りかざしてくるだろうけど。

ともあれ、みんな可愛ーいね!

結局この結論に至ると思うんだー。僕こんなにのほほんとしてくるけど裏は...覗か無いほうが良いよー?フフフ...

「さーて...今日も多分あるよねー」

すぐにインターネットに接続して、アメストリア型戦艦と検索する。

ぐー○るさん?だと速いんだよね。あ、出た。

うーん...性能検証サイトに某巨大掲示板では装備や速力、装甲の硬さとか、主砲の威力、船体の大きさなどが議論されているね...あ、正解してる人いる...おめでとー。

あ...アメストリア型艦娘人気投票?

何それ...僕、知らないよ?

あ、なんかお姉さん達の私服姿流出してるし...カイクル姉さんは変わら無いね...

えっと...無論、お姉さんが一位。関係者としてもこれは嬉しいねー。

二位カイクル...?意外だね...あ、三位僕とリバンデヒ?え、同率?

ある意味すごいね...

 

295:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:12:49 ID:xxxxxxxx

アメストリアたんかわゆす

 

296:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:12:59 ID:xxxxxxxx

それな。俺もアメストリア推しだわ

 

297:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:13:11 ID:xxxxxxxxx

いやいやカイクルさんだろ!

 

298:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:13:25 ID:xxxxxxxxx

いや、ここはノイトハイルたんだろ?

 

299:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:13:27 ID:xxxxxxxxx

>>298それな。

 

300:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:13:31 ID:xxxxxxxxx

>>298 全面的に同意。

 

 

 

え?僕......?

 

 

 

 

462:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:32:12 ID:xxxxxxxxx

というかアメストリア型戦艦って性能何ぞ?

 

463:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:32:35 ID:xxxxxxxxx

あー聞いた話だと全長4000m超えているらしいぞ。

 

464:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:32:38 ID:xxxxxxxxx

まじかΣ(゚д゚lll)

 

465:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:32:40 ID:xxxxxxxxx

( ゚д゚)

 

466:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:32:49 ID:xxxxxxxxx

>>463ソースどこ?

 

467:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:32:52 ID:xxxxxxxxx

フッフッフッ...それは俺が海軍所属だからだー!艦娘見放題だぜー!

 

468:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:33:13 ID:xxxxxxxxx

どうする?処す?処す?

 

469:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:33:32 ID:xxxxxxxxx

ギルティ

 

470:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:33:52 ID:xxxxxxxxx

俺は提督ですが何か?(ドヤッ

 

471:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:34:22 ID:xxxxxxxxx

どうす(ry

 

 

 

なにか色々とカオスだね...でも、提督さんもいるのかー...ちょっと監視したほうが良いね......

 

 

 

 

492:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:34:38 ID:xxxxxxxxx

でも大変だぞ。金剛は突っ込んでくるし艦娘自由すぎるから実質お飾りだな。

 

493 :通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:34:49 ID:xxxxxxxxx

なぬっ!?金剛さんに抱きつかれているのかっ!?

 

494:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:34:56 ID:xxxxxxxxx

おう。人間の即死するレベルでな

 

495:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:35:14 ID:xxxxxxxxx

我々の業界ではご褒美では

 

496:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:35:32 ID:xxxxxxxxx

汚い豚は出荷よー(´・ω・`)

 

501:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:35:46 ID:xxxxxxxxx

というか今調べてきたけどアメストリア型戦艦は全長が4600m以上、全幅がバルジ?を含めて530m。全高が420m以上らしい。主砲は写真を撮って同じ縮図の一階建て一軒家を入れてみた結果すっぽりと入るサイズ。400から500cmだろうな。副砲は最近本土防衛用の要塞砲一斉更新で使われている150cm砲らしい。

 

502:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:35:53 ID:xxxxxxxxx

>>316 最早戦艦に入らないクラスの火力の模様。

 

503 :通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:36:20 ID:xxxxxxxxx

けど何回か大本営に襲撃してきてるだろ?

 

504:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:36:35 ID:xxxxxxxxx

あーあれな。俺近くに住んでるから見てたけどあの爆炎はやばかったぞ

 

505:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:36:45 ID:xxxxxxxxx

あの時、これは提督情報だが艦娘が全員中破してな、近くの鎮守府が総動員で警備した。

かくいう俺の艦隊も数回参加してる。睦月からは空襲のようだったと報告を受けている。

 

506:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:36:54 ID:xxxxxxxxx

こ れ は ひ ど い

 

507:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:37:03 ID:xxxxxxxxx

奴の通った後には草も生えない...

 

508:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:37:16 ID:xxxxxxxxx

けど大本営の艦娘に対する意識は劣悪だったろ?多分同じ艦娘として怒ったんじゃないか?

 

509:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:37:25 ID:xxxxxxxxx

多分な。恐らくそうだと思う。なんか馬鹿でかいライフル持って大本営突入していってたとも聞いた。

一面何も残っていなかったらしい。

 

510:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:37:42 ID:xxxxxxxxx

馬鹿でかいライフル?

 

511:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:37:44 ID:xxxxxxxxx

そう。俺も聞いただけだけどな。

 

 

多分、対艦ライフルのベガルM115AXだと思うな。

あれ...正直僕も引いたからね...あれは人に使っちゃダメなやつだよー(泣)だって対艦ライフルだし...

 

 

512:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:37:52 ID:xxxxxxxxx

たしかM115とか言ってたか?資料は俺の権限じゃ見れないが

 

513:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:38:06 ID:xxxxxxxxx

確か体験航海の時にカイクルさんが持ってなかったか?

 

514:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:38:13 ID:xxxxxxxxx

持ってたな

 

515:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:38:25 ID:xxxxxxxxx

あーあれな。俺聞いてみたが一切答えてくれなかったぞ。だが、あの弾帯と銃弾の大きさから12.7mmだろうな。銃のボディは多分ASとかじゃないか?

 

最近の軍オタさんって銃見ただけで大体わかるんだね...少し危ないけど関心を持ってもらえるなら本望なのかなぁ〜

 

516:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:38:32 ID:xxxxxxxxx

目測だが2m位あるだろ

 

517:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:38:35 ID:xxxxxxxxx

二メートル!?( ゚д゚)

 

518:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:38:42 ID:xxxxxxxxx

それは果たしてライフルなのか...

 

000:通りすがりの艦娘さん:20XX年XX月XX日(土)00:00:00 ID:xxxxxxxxx

あ、失礼するねー。多分ベガルM115の事を言っているのかなぁ〜?

あれは全長2150mm重量37.8kgの対艦ライフルだよー

 

519:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:38:56 ID:xxxxxxxxx

は?何者?というか2150mmって何やねん...

 

000:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)00:00:00 ID:xxxxxxxxx

僕?フフフ...秘密さんだよーっ!

 

520:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:39:16 ID:xxxxxxxxx

もしや、そのボクっ娘口調...ノイトハイルたんかっ!?

 

000:通りすがりのアメストリア艦娘さん:20XX年XX月XX日(土)00:00:00 ID:xxxxxxxxx

うわぁ...そう。僕がアメストリア型戦艦四番艦ノイトハイルだよ。大体軍事機密にならない範囲なら教えてあげるよー

 

521:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:39:22 ID:xxxxxxxxx

うぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおぉお!!!ノイトハイルたんktkr!

 

522:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:39:35 ID:xxxxxxxxx

な、なら質問良いすか?

 

000:通りすがりの艦娘さん:20XX年XX月XX日(土)06:39:42 ID:xxxxxxxxx

どぞ〜

 

 

さてさて...何がくるかなー?一応、カイクル姉さんに許可はさっき取ったから今後の軍事行動とか以外なら大体オーケーらしいからねー。

 

 

 

523:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:39:53 ID:xxxxxxxxx

アメストリア型戦艦の性能は?

 

000:通りすがりのアメストリア艦娘さん:20XX年XX月XX日(土)00:00:00 ID:xxxxxxxxx

んー...全長4650m、全幅530m、全高420m、速力通常で1〜90ノット。

限界を無視したら理論上150ノット以上。主砲は...ちょっと待ってね。アメストリアお姉さんに許可取ってくるねー

 

524:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:40:00 ID:xxxxxxxxx

最早戦艦じゃない件について(2回目)

 

525:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:40:19 ID:xxxxxxxxx

これなんていう最終兵器戦艦

 

526:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:40:25 ID:xxxxxxxxx

世界のパワーバランス崩れたんじゃないか?

 

 

 

 

えーと...あはは...そのとーりだねぇ...

「お姉さん、主砲とかのデータ出していい?」

『何を言っているんだ...?まぁ、良いが』

「んー分かったー」

 

 

 

 

000:通りすがりのアメストリア艦娘さん:20XX年XX月XX日(土)00:00:00 ID:xxxxxxxxx

許可取れたよー。主砲は80口径500cm四連装砲、五基で装填方法はブローバック式。連射速度は毎分3600発。副砲は150cm四連装砲と46cm三連装砲。これもブローバック式で、他の方は個別で聞いてねー

 

527:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:40:25 ID:xxxxxxxxx

ご、500...

 

528:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:40:26 ID:xxxxxxxxx

( ͡° ͜ʖ ͡°)何かを悟ったような顔

 

529:通りすがりの海軍提督:20XX年XX月XX日(土)06:40:35 ID:xxxxxxxxx

!!(⊃ Д)⊃≡゚ ゚俺も欲しい...

 

530:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:40:48 ID:xxxxxxxxx

えと、ミサイルは何発搭載してるの?

 

000:通りすがりの艦娘さん:20XX年XX月XX日(土)00:00:00 ID:xxxxxxxxx

ミサイルは側面船体を含めて4500基、対空砲は45mm対空機関連装砲で7000基だねー

 

531:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:40:53 ID:xxxxxxxxx

ボフォースを超えてないか?

 

532:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06: 40:57 ID:xxxxxxxxx

ん?超えてるな...しかも、ガトリング砲だろ?

 

533 :通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:41:06 ID:xxxxxxxxx

うわぁ...ミサイルってトマホークやハープーンもなんでもござれだろ...なにこの戦艦

 

000:通りすがりのアメストリア艦娘さん:20XX年XX月XX日(土)00:00:00 ID:xxxxxxxxx

う、ちょっとごめんね〜。お姉さんにばれちゃったから退散するねー!

 

534:通りすがりの海軍オタ:20XX年XX月XX日(土)06:41:13 ID:xxxxxxxxx

あざっしたー!

 

535:通りすがりの海軍軍人:20XX年XX月XX日(土)06:41:15 ID:xxxxxxxxx

ありがとうございましたー!

 

 

 

 

「さて、ノイトハイル。なにをしている?」

目の前にはいかにも私怒っていますオーラの出ているお姉さん。

ちょっと怖いよー!目が笑っていないよ!?

「えーと...交流?」

「よし。リバンデヒと交流でもしていろ」

「え!?リバンデヒお姉ちゃんは交流じゃなくて交配になるからちょっと遠慮したいな」

「無理だ。問答無用!」

このあと、僕が動かなくなったのはいうまでもないよぉ...

うぅ...腰が痛いよぉ......

 




むしゃくしてやった。反省はしていない。
2/24 ちょっと間違えてたから修正。


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38.ドミートリー PART1

 

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

薄暗い部屋、三つ程しか電灯の付いていない部屋の中にカチャカチャと言う音が響く。

複雑な形、四角い形、丸い形、明らかに人間が持つ形では無い銃がずらりと並ぶその部屋で私は全ての銃、武器を下ろし、スタンショットガンを初めとした非殺傷兵器に換装していた。

何故か?ーーードミートリーの艦内へ臨検に入るからだ。

一応、目的として機関を粒子エンジンに換装出来るかを調査し、核を搭載していないか確認するということがある。

万が一核を搭載していたとなると直ぐに回収しお蔵入りせねばならない。

最悪、艦娘を拘束する可能性もある。私は艦娘博愛主義なのでしたく無い、絶対にとりたく無い手段である。アメリカ海軍?知らんな。

 

「リバンデヒ、武装は?」

「閃光手榴弾五発とモスバーグM500の12ゲージのスタンガン30発、催涙弾三発、SOCOM Mk.23が一丁よ」

よりによってアメストリア軍が好んで使う大型自動拳銃を...私も使っているが、一般的にアメストリアでは大口径の銃が好まれる。しかし口径によって火薬の使用量は変わる。当然反動も強くなるのだが、流石はベガル社とでも言っておこうか。威力が高く、低コストで軽い大口径銃(化け物)を開発した。このSOCOMを初め、20世紀の銃は一部の愛好者によって改造され、原型は外見くらいしか止めていない。M115なんてあるものだ。挙げ句の果て兵器なんか...魔改造されている。

聞いたことあるか?宙返りやバレルロール、ヴァーティカルローリングシーザスと言ったAir Combat Manoeuring、通称ACMこと空中戦闘機動をするブラックホークとか垂直離陸する爆撃機、駆逐艦クラスの大きさの巨大輸送機。しかも60cm砲なんか航空機につけた。要するにそういうことだ。

「私はAA-12に連発式スタンガンだな。煙幕弾数発と...あとバヨネット数本は持ってきているが、実弾は止めておけ?」

「大丈夫よ。ゴム弾だから。」

「そこではない...」

まぁ、良いや。リバンデヒに何を言っても無駄だと判断した私はAA-12に黄色いシェルの入ったマガジンを装填し、コッキングする。一般的にスタンガン(シェル)は連発式ショットガンの使用は勧められていない。しかし、それは地球の話である。当然ベガルが改造しスタンガン、麻酔弾、フレシェット弾などを開発した。最後は非殺傷兵器では無いが。

 

ドック(地上)に接舷された船体をみる。

のっぺりとした黒い鯨であることは変わりないが、堂々とソ連の旗を掲げており、早急にアメストリア軍旗か旭日旗を掲げさせなければいけないだろう。要らぬ誤解を受ける。もう大本営に出頭なんか嫌だ。誰があんな面倒くさい場所に好き好んで行くものか。しかも、彼処に長時間居るのは無理だ。あちらで倒れたこともあることだし。

取り敢えず艦娘パワーを使って乗り込み、艦橋のハッチから入って行く。

 

中は最低限の電灯しか灯っておらず、赤い非常灯が人気の無い艦内を不気味に照らす。

直ぐに各々のメインウェポンを構えるとハンドサインでリバンデヒに指示を出し、私は弾薬庫へと向かう。不思議と妖精さんはおらず、恐らくウチの妖精さんが連れて行ったか隠れているかどちらかと想定する。後者の可能性が高いが。

 

狭い廊下を警戒しながら歩いて行く。先程だが、トラップが仕掛けられていた。

つまり、なにか後ろめたい事があるという事だ。

厳重な密閉型の扉を開けて行く。そして足を踏み出した瞬間、何かに掛かり思い切り倒れる。

何かに引っかかってしまったか...後ろへ首を回すと電灯に照らされてキラリと光る筋が。

ピアノ線かワイヤーだろう。赤黒い液体が滴っている。

足を見ると少しばかり浅くではあるが切れていた。おいおい私を殺す気か?毒があったらどうすんだ

狭い艦内ではAA-12は役に立たないと判断し後ろへ回すと腰に下げていたベルトにある鞘からバヨネットを一本抜き取り逆手で構える。そして警戒を強めながら歩いて行く。

神経薬関係には対抗する事ができ無いが、艦娘の体というのは随分と頑丈なのである。船体のダメージを別として。アレは痛いってもんじゃ無い。

 

「ここか。」

目の前には〔Склад боеприпасов БРПЛ〕と書かれた扉がある。

レバーを下げて、いくばくか重い、分厚い扉を開け放つ。そこには左右に棚があり、寸胴の弾頭が並べられている。本来なら、発射口から直接補給する物だが、この船は既に艦娘である。

''弾薬''としての備蓄にSLBMも含まれるのだ。

目的の一つ、弾薬を核として既に具現化し、保存してい無いか。

順に見て行く。

「はぁ...」

見つかった。いや、見つけてしまったが正しいか。

核のマークを表す紋章のある弾頭。奥の方に並べられて、一見視界に入らない場所に並べられていた。まぁ、理由は分かるが。

「カイクル...ドミートリーを、拘束しろ。核が見つかった」

最悪の場合、これを自爆させられたらこのパラオ鎮守府の地上施設は全て吹き飛ぶ。

近くは私達の高さもあって1km以上深いため問題ない。

『...了解した』

恐らく、艦娘を拘束したのは初めてだ。出来れば、取りたくなかった手段である。

やだなぁ...

「リバンデヒ、撤退する」

『.....................』

「リバンデヒ?」

『.....................』

何故かリバンデヒから返答が無い。嫌な予感がする。

AA-12へと持ち替え、リバンデヒの向かった機関室へ向かう。

途中黒色の煙幕弾を艦橋から投げ、ノイトハイルに知らせる。

事前の打ち合わせではドックのタワーの内一つからM115AXを使って狙撃待機だったから。

黒い煙幕は緊急事態発生。ノイトハイルの事だ。SCAR-Hでも持って急行するだろう。

 

「リバンデヒッ!?」

走って機関室へ向かうと、モスバーグM500は床に転がり、幾つもの黄色いシェルが床に散らばっていた。そしてその使い手は配管に寄りかかるように倒れており、右手は何処からか持ってきたであろうワイヤーで拘束されていた。頭からは少量の血が流れ、恐らく頭部への打撲攻撃だと予測できる。直ぐにAA-12を後ろへ回し、バヨネットでワイヤーを切断する。そしてリバンデヒの肩を揺さぶる。しかし一切の反応を示さない。まるで屍の様だ。ってふざけている場合では無い。

息はある。気絶しているだけだ。直ぐに頭に傷を処置し、包帯を巻く。鉢巻というかカチューシャの様に巻かれていたリボンは邪魔であったため解いた。

そしてモスバーグを回収し、辺りを警戒する。

相手は妖精さんであろう。恐らくリバンデヒは此処に入った途端に、妖精さんから何かしらの奇襲を受け、気絶。そのまま拘束され、放置された。

すると、コツコツという鉄と硬い物が接触する音が響き、扉から独特の、見慣れた形状のマズルフラッシュが視界に入る。

「リバンデヒお姉ちゃん...?」

ノイトハイルがキョトンとした顔になり、直ぐに顔を優しそうな笑みではなく引き締めた、アメストリア軍人としての顔になった。

私はその変化の方が驚いた。何時も意図を分からなくする...私も大概だが優しそうな笑みを浮かべたノイトハイルだが、のほほんとした雰囲気は何処かへとボッシュートされ、鋭い雰囲気を感じ取る。こんな表情も浮かべるのか...

「ノイトハイル、直ぐにSLBMの核弾頭の回収を頼む。私はリバンデヒを護送する。」

「...分かったよ」

するとノイトハイルは何時もの柔らかい表情へと戻り、意図的に出されたのほほんとした雰囲気が漂う。しかし分かる。目が一切笑っていない。微笑みを浮かべているが、目が笑っていない為、本来私の方が姉であるはずだが、怖い。美人の笑みは怖いと聞くが、此処までなものか?

直ぐに走り去ってしまった為私は一息溜息をつくとリバンデヒを背負い上げ外へと向かう。

 

外へ出ると磯臭い陸風や弾薬の硝煙の匂い、整備用の潤滑油と鼻をつく臭いが広がっている。

まぁ、戦場であるから当然なのだが。

カイクル、ノイトハイルに実弾による武装を命令し、私自身もリバンデヒをアメストリアの医務室に寝かせると直ぐに武器庫へと向かい非殺傷兵器を全ておろし、ベガルM115AXにDE、カランビットナイフ(大)に装備を換装し直ぐにカイクルの元へ向かう。

ノイトハイルは多分回収した核弾頭を工廠か船内に入れているだろう。

「ノイトハイル、今何処だ?」

『工廠の第三倉庫だよー。お蔵入りさせてる』

「了解した。直ぐにカイクルの元へ向かってくれ」

『はーい』

中々に厄介になってきたぞ...さて、これからどうするか...



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39.ドミートリー PART2

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

薄暗い室内。全てが鋼鉄以上の耐久力を持つ金属に覆われているせいか室内は何処かひんやりとしており埋め込み式のランプが一つ寂しく照らしていた。

そこにいるのは方や腕を後ろに回され厳重に縛られた艦娘、タイフーン級原子力潜水艦一番艦ドミートリー。

方や一目で業物だと分かる、黒い艶のある鞘には控えもながらも桜と彼岸花の金細工が施され、その緻密さからもこの鞘を作った職人の卓越した技術力が伺えるがさらにその鞘が納める刀は素人から見ても化け物だと分かる大太刀であった。そんな危険極まりない日本刀を腰に差し最近変えたのかレッグホルスターにはM-500が入ったアメストリア型戦艦三番艦カイクル。

そして一見、美青年とも取れる綺麗な中性的な美貌を持ち、長く、ツヤツヤな黒髪を白いリボンで一房に纏められ、腰には大ぶりのナイフがぶら下げられ、ホルスターにはバレルの長さが明らかに可笑しいデザートイーグルを入れ、一切何を考えているのか分からない微笑みを浮かべるアメストリア型戦艦四番艦ノイトハイル。

そしてドミートリーの前に立つのは冷めた、冷酷な目を彼女に向け、その豊満な胸を強調するかのように腕を組み、腰には一回り大きいホルスターが両腰に吊られ、M93Rが入っている。

その表情はいつもの''まだ''柔らかい無表情とは違い、完全に冷え切った、人形のような一切の感情を浮かべない顔をしたアメストリア型戦艦一番艦アメストリアこと私。

正直、内心では複雑だ。核という人類の最終兵器を備蓄とはいえ保有していた。

しかも誰の許可も無く。これはばれたら一発でOUTな非常に軍事的にも外交的にもデリケートな問題だ。私はあのゴミクズが使った大量虐殺兵器として使用国への苛立ちと合わさり、核が嫌いだ。

これには私達が核よりも破壊力を秘めた言わば同類であるための同族嫌悪かもしれないが。

まぁ、アメストリア型戦艦は核如きじゃあ沈まないが、このドミートリーが

『パラオ鎮守府所属の潜水艦として接近し、大本営なり大都市に核弾頭のSLBMを撃ち込む』

という行動を起こしたらどうだろうか?当然あの老害共は提督を処分し、私達を利用しようとしてくるだろう。

「さて、ドミートリー。貴官は核弾頭のSLBMの危険性にそれに伴う影響を考慮した上で核を所有したのか?」

「......えぇ。だってそれくらいしなきゃあんた達倒せないじゃない」

「ならば、貴官の目的は私の破壊もしくは殺害か?」

「最初はそのつもりだったけどもう諦めたわ。あんた達強すぎるもの。」

それは懸命な判断だと思う。核であろうと月の落下であろうと太陽の接近であろうと、悪意のある物は絶対干渉結界により全て弾かれる。無論、起動している間のみだが。

「なら、私達...いや提督に反逆の意思は無いんだな?」

「えぇ。断言するわ」

少し、圧力をかけて答えさせる。こはかなり重要な決断だからだ。

するとドミートリーは目を泳がせずに断言した。呼吸は少し乱れているが、それは私の威圧によるものと思う。

「よかろう。私達姉妹は歓迎しよう。カイクル、ノイトハイル、リバンデヒの所についていてくれ。私はドミートリーを案内してくる」

「了解した。」

「...分かったよ。」

む?未だにノイトハイルは警戒しているようだ。まぁ、確かに怪しいっちゃ怪しいが...

妖精さんを呼んで、ドミートリーの機関を粒子エンジンに換装し、武装関係に量子変換器を積むよう指示する。量子変換器とは私達の弾薬などは勿論赤城や加賀などの艦載機を収納するときに使うものだ。艦載機一機ずつにも積んでおり、あのミサイルの積載数の意味不明さはここから来ている。でもあれはおかしいと思う。

 

ドミートリーを連れて尋問を行っていた私の船体から出て甲板にでる。

上を見れば太く、長いマストに巨大なアメストリア国旗がはためき、ワイヤーが揺れている。

船体の巨大さに、より波の揺れは殆どなく、甲板も馬鹿みたいに広いのでここは船か?と疑ってしまう。

「あの主砲は何センチなの?」

「あれは500cm四連装砲だ。前方に三基、後方に二基積んでいる。」

「500cm.......どんだけ炸薬使ってるのよ...」

「大体...いや、忘れたな。かなり使っている。お陰で砲塔は熱くなるがな」

無論排気システムは完備されている。煙突の存在意義に関する事でもあるし。

タラップから地上へ降り、中型用の格納庫に進んで行くドミートリーの船体を見送ってゆく。

ドミートリー本人はそのシステムに驚いているようだったが。毎回言われるがやはり慣れているからかこれが普通という感覚だ。あ、潜水艦用のドック作んなきゃなぁ...

後で工廠長と話し合おう。

 

ドック(地上)から歩いて工廠、鎮守府の順へ見せてゆく。

途中、利根や高雄に愛宕や第六駆逐隊、最上姉妹と会った。もがみん、いい加減湾岸砲から降りろ。

轟音と共に、空に白い線を描きながら戦闘機が飛び去って行く。

恐らく、雲龍型の練習だと思う。蒼龍、飛龍は既に艦載機を理解し、既に使いこなしている。

さすがは二航戦である。あの急停止やホバリングのできる二次大戦とは全く違う艦載機を使いこなしている。妖精さんの練度が気になるが、やはりその統率を取る艦娘の方にも優秀さがわかるというものだ。

そんな普通の鎮守府ではまず見られないであろう光景にドミートリーは驚愕したり喜んだりとコロコロと表情を変えていた。見ていて飽きないな。かわいい。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

私はいま工廠長と対峙している。

実質的に私はこの鎮守府の統率役であるためある程度の改造、増設は事後報告でも良いとされている。今回の潜水艦という戦力の拡大に伴い、これからの拡充にも対応させる為新しく海中のドックを作る事になった。場所は以前(20話位)発見した岩礁地帯を活用するつもりである。

 

まず水深6、700mに穴を掘り侵入口を作る。そしてその先に空間を人工的に作り出しそこをドック(仮)としてクレーンの設置、ドック(地下)と繋げたり、着岸する為のドックを作ったりと色々と建設しなければならない。

「じゃが、どうやって穴を?」

「そこだが...妖精さんに頼んで発破するか私が徹甲弾で砲撃するかだが、私が撃つと島が吹き飛ぶからな...」

「そおじゃのぉ...」

そう。肝心な穴を開ける方法が決まっていないのだ。

爆雷はまず沈まない。砲撃は危険極まりなく、水深700mまで進む砲弾を私は知る訳がない。

潜水艦はドミートリーのみしか居らず、現在改修中の為出撃不能。魚雷はまず届かない。

どうするか...

しかし、私は忘れていた。私達アメストリア型戦艦には潜水機能があるのである。

海を進む為、極めて隠密性が高く、光学迷彩と併用することでレーダーにも映らない完全無敵な戦艦?が出来上がる。無敵、とは言い難いが。

しかし海中では砲撃は出来ない。一瞬とは言え砲口が開かれ砲弾が莫大な量の炸薬によって射出される。その際、どうしても隙間が発生するし、水中で炸薬が点火するかどうかさえ分からず、最悪の場合海水が砲塔内に流入し、砲自体が使えなくなる可能性がある。

設計図と睨めっこし、アイデアが浮かばなかった為に左手で作製していた鋼鉄製の疾風を手の上に乗せる。我ながらかなりのクオリティと自負する。30cm程の大きさの模型でエンジンはキ-84を完全に再現させて頂いた。あれは日本の技術の結晶と言ってもさしあたりない。というよりは、日本人らしさの出ているエンジンだと思った。パイロットの事情を弁え、整備においても考慮する。

軍事兵器としては当たり前の配慮だろうが、丁寧さが伺えるのは日本だけだと思っている。

「むぅ...やはり、ASROCを撃ち込むか...」

当然、ミサイルにも種類が存在する。対艦ミサイルであればグラニート。対地ミサイルなわばトマホーク。対潜ミサイルならASROC。そしてその種類別で〔弾薬〕の消費量は違いがある。

特にASROC。あれはかなりの弾薬を消費する。別に生産装置があるのでどうということはないが、やはり勿体無ぶるのは日本人の性か。

「じゃの...」

「......了解した。二分後に作戦を開始する。」

「分かったのじゃ。わしらは地上で待機しておるよ。」

 

という事で私は再び艦内に戻ってきている。

周囲の電子機器は普段とは違った動きを見せ、それに従うように砲塔が旋回しミサイルの邪魔にならないようにする。火器を担当するコンピュータが激しく文字を打ち込み始め、ミサイルに正確なデータを入力し始める。すると船体のミサイルハッチが続々とドミノのように開き始め、中の白いミサイルを露出させる。

「妖精さん。ASROC発射用意」

''ASROC座標入力完了...撃てます''

「ASROC、発射。」

''ASROC発射します''

煙が上がり、白く細長い矢が飛び出してゆく。それも一発の単位でなく、数十、数百の単位である。大量の噴煙を撒き散らしながら空高く飛んで行き、シャベリンの変態起動の如くクイッと先端を海面に向けるとブースターを全開にし、勢いよく突入してゆく。

あぁ、言い忘れていたが、既にASROCは原型を留めないレベルで改造がなされている。

自動追尾機能は勿論、推進機構をブースターに変え、海中での速度が150ノットを超えた。

その魔改造されたASROCが蜂の群れのように続々と飛び込んで行く。

そして海中に入ると指定された座標に向けて全速力の突撃を敢行する。

海水が強引に引き裂かれ白い航跡を残して進んで行く。

そして、爆発。200kg以上の高性能炸薬を爆破し岩に巨大な傷跡を残してゆく。

残りのASROCも我先にと突っ込んで行き、穴をどんどんと大きくしてゆく。

「第二射用意。」

''第二射用意...座標、どうしますか?''

「...少し奥にしろ。ドックに必要な大きさは第三射で開ける。」

''了解しました!''

大量の、おびただしい数のミサイルハッチが開いて行き、皆同じミサイルを見せる。

その数、1500。ミサイル総数4500基のアメストリア型戦艦だからこそできるASROCによる海底爆発工事である。強引でいるとは自覚している。良い子の皆はASROCで突貫工事しちゃダメだぞ?

''第一派、全弾命中!入り口は完成しました!''

「良し。第二射を発射。五分後に第三射も撃て」

''了解であります!''

千発のミサイルが飛び立って行き、先ほどと同じ軌道を描き、海底を目指してゆく。

何か、暇だと感じる。何故かは知らん。

『お姉ちゃんっ!?何が起きたの!?ASROC2000発ってどんな潜水艦が現れたのよ!?』

「む...違うぞ。潜水艦用ドックの建造の為穴を開けている。」

『それをミサイルでやるなんて...はぁ...もう、いいわ...』

何故か最近聞かなかったやや疲れた声でリバンデヒが引き下がる。

珍しい。疲れている。今夜辺り、襲われる危険性があると予測する。面倒だな...

''第二派、命中しました。''

「そうか。第三射を早めに撃て。」

''了解です。''

案外早く命中するものである。

因みにだが、ソナーは切っている。爆発音が激しいだろうから妖精さんが倒れるのを防止する目的だ。レーダーが代わりに起動し、何も逃さないという勢いで索敵しているが。

第三射の1500発のASROCが放たれる。これで合計3500発。これで開かなかったら4500基全て使う予定だ。

 

あの後は、予定通りに進行し、穴は大方開き、ドック(地下)との繋げる通路を作りつつ穴を目指した。潜水艦だから...生産装置は一つでいいとして...倉庫は魚雷とSLBM用...五つくらいか?

ドック(地下)との違和感をなくす為、カラーリングもあの軍事色で良い感じの雰囲気も出せるだろう。

 

 




書き方を少々変えてみました。如何だったでしょうか?自分としては時間がかかる代わりにかなり書きやすかったのですが...



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40.異変

本日二投下目。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

二週間が経ち、パラオ鎮守府は一時の平和を甘受していた。

不気味な程の静けさと共に。正直なところこれは異常だ。索敵の為に川内型を旗艦とした艦隊をいくつも派遣し深海棲艦を探した。それにもかかわらず、一隻も発見できず、全く攻撃を受けることはなかった。此方としては弾薬の消費が無く楽なのだが、戦場としての緊張感、雰囲気が無くなるのは軍隊としては致命的である為、あまり良くない事なのだが...

工廠の妖精さんも暇になり、最近は地上のハンガーに置いてあるCT-7を解体し、大惨事にしていた。あれは私も唖然とした。全ての部品一つ一つに分解され、その巨体相応の恐ろしい量の部品に分かれた。これによって昇降式のハンガーが一つ潰れるという事態が発生し、私の妖精さんとリバンデヒ、カイクル、ノイトハイルの技術妖精さんが総動員で組み立て直した。

かく言う私も巨大な装甲などを運ぶ作業を手伝った。大和や武蔵、長門や陸奥などにも手伝ってもらい、二日で完成させた。長門らは「ちょうど良い運動だった」と言ってくれていたが、大和らは慣れない作業故か撃沈していた。リバンデヒやノイトハイルが膝枕していたのは印象的だった。うらやまけしからん。私に代われよ妹共よ

 

「それで、現状をどう思う?」

「私個人...いや、アメストリア型戦艦の見解としてはかなり危険な状態だと考えている。深海棲艦は私達に個々の武力で勝てない事を学習し戦力の貯蔵に移ったと思われる。最低でも億単位の戦力がいると計算している。」

これはリバンデヒの見解だった。深海棲艦の攻撃がやんでから早数ヶ月。

日本では平和デス!っていうお前らふざけてんのかっていうムードが流れ、大本営に至っては人類勝ったんじゃね?っていう今までお前ら何してたんだと言いたくなる考えまで出している。

誠に遺憾であり、癪にさわるがどうしようもない。勝手に滅べ。

私にあるのはアメストリアに対する敬意、忠誠、艦娘達を断固守護するという決意のみだ。

「億...」

「あぁ。私達といえども、防ぎきる事は難しいだろう。」

私達はもともと防衛を目的として設計されていない。コンセプトの通り、殲滅と自らの生存だ。

何かを守りながらの戦闘はあまり得意ではない。

事実そういう経験が()もリバンデヒも無いのが実情だ。救出や防衛にはアメストリア型戦艦は巨大すぎるのだ。

護衛?知らんなっていう艦だ。私は。

今思えばあの名も知らない大将はその私達の特性を見抜き私達アメストリア型戦艦のみの護送などを回していたのかもしれない。あの大将何者...

「僕はね、アメストリア。この鎮守府の破棄も考えているんだ」

「そんな事は......そんな、事は...」

「いや、良いんだよ。此処の設備は確かに充実しているね。でもそんなのは別の場所でも作れるんだ」

確かに、そうである。しかし、私が拾われた場所であり、戦ってきた場所である。

多少なりとも、愛着があるのだ。

「......了解した。提督の指示とあらば従おう。CT-7を始めとした輸送機編隊の準備をさせておく。」

「うん。よろしくね」

そう一言で言っても容易では無い。輸送機編隊は無論輸送機のCT-7の訓練や護衛機に使用する機体の選出、パイロットの確保など一筋縄ではいかない。

護衛機は...GF-21やF-222、F-75を付けておこう。最近使ってなかったし。

特にGF-21の機銃の量には感心させられる。二十門以上の機関砲に砲も六門。素晴らしい火力だ。

しかし、あくまでも対地攻撃用機であり、空中の攻撃に対しては、ミサイルくらいしか使えない。

けど、砲に三式弾を載せたらどうだろうか?護衛機としてはこれ以上無い優秀な機体となる。

F-222は何も言うまい。速度、火力、機動力に置いて最高クラスのスペックを持つ。

瞬間加速ではマッハ15まで加速。機体は一機一機が結界に保護され万能の装甲、45mm機関砲四門にミサイル4400発である。あのどこかで見たようなデザイン(X-02)も気に入っている。

F-75はステルス機である。偵察、警戒を主な任務として戦闘はもっぱらF-105である。

どうしようか...

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

空気を叩き割らんばかりの轟音とソニックブームを残して編隊飛行をする。

先進的な形をする機体が音速、つまり340m/sの十五倍の速度で飛び去って行く。

機体には赤や青などの色が塗られ、それぞれが編隊を組み右へ旋回したり急降下したりと訓練を行っている。ついでだから、私達の艦載機も換装しておこうか?

「工廠長!F-222の特別機を作ってくれ。数は...30機位でいいだろう。」

「重量はどうするのじゃ?」

「気にしなくていい。機関砲は六門に。ミサイルは6000発に増やしてくれ。制限は設けない。思う存分改造してくれ」

「了解じゃ!」

ということで工廠にいる。

工廠では黒い塗装のされたF-222がずらりと並んでおり、一斉に改造が始まっていた。

先端が外され、新たに二門の機関砲が追加される。

エンジンのノズルが改造され、さらに俊敏な機動が可能となり、只でさえ化け物である戦闘機が空軍艦船同等の兵力を保有した。

又、量子変換器が追加され、ミサイルの装弾数が格段に上昇。

兵装庫より大量のミサイルが車両を使って運び込まれ、主翼下に吸い込まれて行く。

黒い機体には主翼の三角形の一辺に白い塗装がされてゆき、可動式の尾翼にはアメストリア海軍のマークが貼られる。うむ。良いな。重量は2t程上昇したが大した問題では無い。

早速完成した機体を見上げる。主翼は最終点検のため90度に回り、表面の結界術式とミサイルランチャー、スラスターがよく見える。

スラスター周りには[フムナ]という警告文がプリントされ、莫大なエネルギーを放出する為警告を促している。多分人間は跡形も無く消し飛ぶクラスだ。

エンジンは無論双発。ノズルが改造され、F-22のような形になった。

機関砲の銃口が左右三つずつ計六門になり、前方の火力は素晴らしいことになっている。

 

一編隊分、つまり四機が納入されるまで一時間掛かり、プログラムの更新も終了した機体が並ぶ。

取り敢えず試験飛行するべきだということになり、工廠から直接飛び立ってことになった。

本来は妖精さんが操縦するのだが、こちらに到着してい無い為、私が直接操ることになった。

空母の艦娘の場合管制を行う際声を発したり念話による指示だが、私は戦艦である。

本来なら操縦する艦娘では無い為、某人形師のようで手で操る。これでもかなり無理やりだが。

両手を適度に広げ人差し指をクイッと立てる。すると四機の機体に初めて火が灯り、甲高いエンジンを響かせる。ノズルからエネルギーが放出されて行き、風が吹き荒れる。

両手を上げるとより一層エンジン音が高くなり機体が空を飛ぶ。垂直離陸である。小型艦用の昇降機を借用して地上へ行く。この際もずっと浮いたままホバリングしている。

そして、ハッチが開いた途端、指を複雑な動きで動かし、機体を高速態勢に移行させ海面ギリギリを飛ばす。一番機を守るように後続の三機が飛んで行き、ある程度飛ぶと垂直に飛びマッハ10まで一気に加速する。リングを描くように飛び、三機が一番機を軸として回転しながら空を駆ける。

そして最高時速マッハ25に移行した後に急激な垂直降下。海面まで一気に落ち主翼、尾翼を巧みに回転させ海面にてホバリングする。三角陣形に形を変え、地上へ着陸させる。

妖精さんが待機しているからだ。

主翼が90度から0度の水平へと戻り、エンジン音が低くなって行く。

 

「どうだ?機体は?」

''素晴らしいです!''

''すごいですー!''

''びゅわわー!''

''すごいよー!''

最後はよくわからないが、機体の方は良かったのだろう。

海を見ると大鳳と龍驤、翔鶴と瑞鶴が浮かんでおり、戦闘機を回収している。見られたか?

「よし。アメストリアに格納しておいてくれ。」

妹達にも載せなければならない。まぁ、ぶっちゃけると使用する機会はほとんどないのだが...

こうして私の試験飛行と妖精さんによる試験飛行はしゅうr....

''レーダーに感あり!航空機です!''

どうやら終わらないようである。妖精さんに指示を出し先にF-222改を出させる。

船体の方とリンクし、攻撃態勢に入る。ミサイルは使えることもないのだが、万が一F-222に当たると目を当てられない事態となってしまう。出来ればF-222の方で対処出来ればいいのだが...

艦隊の方を見ると、全通式の甲板からF-105が飛び立っている。初の実戦である。まぁ、空母の中では古参の大鳳と龍驤かろいるので大丈夫であろう。

鎮守府には久しぶりの空襲警報が響き渡り、海の上にいる船体の高角砲や対空砲が上を向いてゆく。一応、念の為500cm四連装砲も向けておき、三式弾の装填準備をさせて置く。

遂に来たか...

『お姉さん、迎撃は?』

ノイトハイルから通信が来た。

「現在私の艦載機と大鳳、龍驤、翔鶴、瑞鶴が迎撃に向かっている。警戒してくれ。電子戦機が入る可能性がある。」

『...了解だよ』

事実、EA-105やE-7などの電子戦機が入る可能性が否定出来ない。奴らの目的が対応のパターンの解析だった場合最悪の事態を招く可能性がある。あちらも馬鹿正直に突っ込んでこないのだ。

私達と同等のスペックを持つ戦艦が何隻もいるように。

''敵機全機撃墜です!''

「そうか...」

安心出来ない。戦闘機は帰投を開始したので、実質攻撃出来ない空白の時間が出来る。

艦対空ミサイルはSM-2とSM-3しか積んでいない。しかもあれは近接防空システムであり、遥か上空の航空機を落とす為の物ではない。弾頭も散弾式だし。

この攻撃自体威嚇であろう。そこまで貯まったのか...妖精さんに追加で指示を出し、F-222を持って大気圏に突撃。航空機の警戒に当たらせる。私は弾道ミサイル位しか支援できない。

それも支援と呼べるかどうか分からないが。

 

「報告する。空母艦隊の編隊演習中、深海棲艦の航空機群が接近。私の艦載機と艦隊の艦載機がこれを迎撃。全機撃墜した。又、電子戦機などは確認できなかったそうだ。」

「そう、だね...遂に来たのかな」

「だと思われる。警戒が必要になってくる」

「また戦争かなぁ....?」

「私達の本来の仕事だ。任せておいてくれ。」

提督室にて報告をしていた。今回の襲撃を機に、深海棲艦による攻撃が再発するとの見方だが、何故か他の鎮守府には襲撃が無いのである。不気味さがある。

何故このパラオ鎮守府のみが狙われているのか?大体分かる。深海棲艦をかつて無いほど虐殺した私達の存在があるからだと思う。なら、私達が移動すれば済むという話でも無い。

既に私は通常の艦娘にオーバーテクノロジーの兵器の技術を与えてしまった。深海棲艦からすればパラオ鎮守府自体が脅威である。攻撃は確実だと思う。

まぁ、なにが来ようが全て粉砕するだけであるが、艦娘に鎮守府、付属施設...エクセトラエクセトラ...それすべてを守りながら戦うのは前回も言ったが残念ながら不可能である。

500cm四連装砲20基しか無く、満遍なく展開しようが防衛は不可能である。



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41.旗を掲げよ。

フラグじゃないよ?


ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

どんよりとした雲に朝日は遮られ、午前中であるにもかかわらず少し暗い洋上に私は居た。

ほんのりと潮と硝煙の香りが風に運ばれ、髪を揺らす。私は、戦場にいた。

 

天高く伸びるマストには誇り高きアメストリア軍アメストリア海軍旗が堂々と掲げられ、船体の前進する事によって発生する風に煽られゆっくりとはためいていた。

私を先頭とし、大和、金剛、比叡、蒼龍、飛龍が追従し、艦隊を組んで少しばかり急ぎ足で海を進んでいた。

遥か後方にはリバンデヒがおり、榛名や霧島などと言った戦艦や空母を引き連れて別の海域へと進んでいった。

 

「全艦、戦闘態勢。速度を45ノットに上げ」

警報が鳴り、妖精さんの動きが慌ただしくなる。

500cm四連装砲や150cm四連装砲には実弾が込められ、薬室に当たる部分が密閉される。

給弾レールには九一式徹甲弾が転がり、排気管と煙突が繋がれる。

レーダーが捜索範囲を広め、対空砲が起動する。空母の甲板にF-105が上がり、垂直に離艦して直掩機として上空に留まる。無論、フル武装である。

 

「針路 0-3-2に変更。」

''了解。0-3-2に変更します''

船体が少し傾き、舵によって人工的に変えられた水流で巨艦がゆっくりと針路を変え始める。

大和、金剛の順で追従艦も続々と続き、北へ進む。

 

 

「ってぇー!」

「主砲、撃ちます!」

「全砲門、fire!」

私の一声を機に巨砲が未だに慣れない速射砲も真っ青な連射を見せ、一発で全てを破壊する威力を持った砲弾を大量に撃ち出してゆく。同時に砲身や給弾機構、発射機構の冷却も行われ、膨大な量の水蒸気がパイプを伝って煙突から排出される。それが五基分であるためかなりの量の水蒸気が排気される。船体側面から大きな黒色の薬莢がジャラジャラと排出されてゆき海中に没してゆく。

私を始めに大和も金剛も150cm三連装砲などの主砲を撃ち続けてゆく。

 

海面が砲撃の衝撃波により激しく乱れ、津波と化しより海を荒らす。

元々、主砲はバカスカ撃つ物ではないのだが最近まともに発砲していなかったため、鬱憤晴らしを兼ねて弾薬無視でフルファイアしている。後で怒られるかも知れないが。

30000m以上先の深海棲艦は一方的に虐殺され、黒い船体を引き裂かれてゆく。

ある船体は真ん中を徹甲弾に後ろにいた艦諸共貫かれ爆沈し、ある艦は正面から全て削り取られ原型を留めないまま轟沈。またある艦は航空母艦から放たれた熟練のは言い切れないが驚愕の技術を持つ航空隊にミサイルで、機銃で沈められる。

私達の砲撃で発生する硝煙や爆煙のみで軽く積乱雲が出来るほどになった頃、砲撃を止め、電探の出力を上げて索敵範囲を強める。今回は時間との勝負である。あと30分で帰投しなければならない。

何故ここまで慌ただしいかを説明しよう。

それを語るには少々時間を遡る必要がある。

 

 

世界最強の軍事基地であるパラオ鎮守府とあれど、深夜はとても静かである。

島の存在を告げる照明灯以外は殆ど電灯も付いておらず、艦娘も一部を除き寝静まっている。

その一部というのが私であるが。

私は何時ものようにブラック企業も真っ青なサービス残業でただ何も考えずに書類を機械的に処理していた。提督には無理を言って先に休んでもらっていた。提督は人間であり、多少の攻撃ではビクともしない艦娘とは身体の強さが違うからである。というか倒れられたら私が耐えることができない。絶対に''鎮守府''へ砲撃を開始すると思う。冗談抜きで。

ともあれ、私はひたすらにつまらない、下らないとしか言いようが無い書類にサインを入れてゆき、処理済みとして纏めていた。因みに巫女服で行っていない。辛いんだもん。

襦袢に白衣を纏っただけであり、髪も纏めている。ノイトハイルを起こさないように別室にて処理していた。

 

しかし、遂に平穏に終わりが告げられた。

地面を揺らす衝撃に襲われ、何事かと窓に駆け寄った。

そこには、鎮守府の地上施設が炎上し、空襲警報がけたたましく鳴り響く。幾つもの対空砲が起動し曳光弾が光の線を空に描いていた。

 

さながら、真珠湾攻撃だった。上空を超音速で深海棲艦の艦載機が轟音と共に機銃掃射を置き土産に飛び去る。滑走路にはMk.14が投下されたのか小規模な爆発が断続的に起きており、遥か上空から爆弾が投弾された。少なくとも、空母がいる。しかし、B-97は航空母艦からの発艦は色々と不可能である。何故...?

 

その警報を聴き、流石は根は軍人とあってか全ての艦娘が起き、眠気を吹き飛ばした。

戦艦は私が統率し、航空母艦は一応古参である龍驤と大鳳が。重巡、軽巡、駆逐は高雄や矢矧や龍田が統率して実に十分で出撃態勢が整い、ドックが全て開けられた。艦種関係無く海上に上がり、元々海上にあった船体は既に反撃を開始。ミサイルハッチから多数の対艦ミサイルが放たれた。

 

それ以降断続的に深海棲艦による襲撃が続き、弾薬の消費が激しくなり、基地航空隊にも被害が出始めた。と言ってもバンカーにあったCT-7であったが。

まぁそういう事もあり艦娘が全体的にイラついていた。当然である。

せっかくの安眠の時間を邪魔された挙句、家が攻撃に晒されたのだ。

幸い湾岸砲や意味不明な程の対空砲で深海棲艦による攻撃は全て防がれ、海上からの襲撃もイライラしていた艦娘によりフルボッコにされていた。

何しろ、あのおとしめやかだと思っていた神通が不機嫌だったのだ。相当な物だろう?

 

そして、日の出と共に反抗作戦が開始。

不意を突かれる危険性もあったため、パラオ鎮守府を起点として、2000km以内全ての敵性勢力を全て塵に還す事になり、search and deathtroy となっている。

尚、全体的に殺気立っており、龍田の笑みが深くなっていた。あれはちょっと危ない。

今はノイトハイルを旗艦に暴れていると思うが。

しかし、逆を言えば出撃と補給を繰り返し、一切の休憩を挟んでいない。

幾ら戦うことが目的の軍艦であれど、連戦はかなりキツイものがあり、艦娘にも疲れが見え始めている。

 

''座標固定しました!''

「ってぇーー!」

かく言う私も若干であるが徹夜の後の為疲れが溜まり、それを砲撃でまぎわらしているのが現状だった。一番、二番砲塔が砲弾を放ち、後方の甲板からグラニートが飛び出してゆく。

「すぐに帰投する!全艦最大戦速で離脱しろ!」

これ終わったら少し休憩しよ。幸い鎮守府の隻数は増えて艦隊も五艦隊位は編成できる。

舵を切りゆっくりとであるが船体を反転させる。今尚主砲は無いが46cm三連装砲は幾つか吹いている。90度変えるだけで五分。反転で十分かかる。

それに対して、あの世界最大級の私の大好きな超弩級戦艦、大和型戦艦はアメストリアの技術により魔改造され二分程で反転することができる。うん。それって戦艦か?と思うが、機動性と火力を重視した結果こうなったのだ。仕方ない。仕方ないったら仕方ない。

''レーダーに感あり!敵機接近!数、3です!''

「45mm対空機関連装砲起動。直ぐに撃ち落とせ」

''無理です!敵機の速度がマッハ十を超えています!''

因みに、45mm対空機関連装砲の迎撃可能速度がマッハ8.5だったりする。

それだけでも十分だがそれでも迎撃出来ないのがアメストリアクオリティである。

は?ふざんなって?私が言いたいところだよ。なんたって被害と痛みを受けるのは私なんだから。結構痛いんだぞ?1000kg級爆弾とか殴られたような感じがするし500cm砲弾なんか命中したら傷口を引き裂かれ中に手を突っ込まれてぐちゃぐちゃにされる様な痛みが来る。あ、食後の方ごめん。まぁ、妖精さん特製の特殊装甲を喰い破れたらの話だが。

 

''敵機距離20000!''

「対空砲一応撃っておけ。SM-3発射」

右舷の対空砲が一斉に起動し大量の対空火を浴びせる。左舷のミサイルハッチからは黄色のカラーリングがされたミサイルが飛び出し、シャベリンの様な変態起動をして飛んで行く。

ブラックホーク(アメストリア製)の様な空中戦闘機動とはいかないものの、近接迎撃システムのミサイルのためそれなりの運動力を持っている...はず。

だったな?全弾迎撃されたんだよ。45mm砲に。ちょっと可笑しくない?最近深海棲艦の艦載機のレベルが段違いに上がってる気がするんだけど。今までは対空砲でフルボッコになるか三式弾に馬鹿正直に突っ込んで撃墜されたりとアホだったが、なんか頭良くなってる。

なにこれ。

「大和!直ぐに追従艦を連れて離脱しろ!全速力だ。私は少し足止めをする」

『り、了解です!』

恐らく、艦載機の目的は鎮守府。

幾ら兵器のスペックが素晴らしく、威力が恐ろしくても、その兵器の運用には補給、整備という前提条件が存在する。私達アメストリア型戦艦は全て自分で出来るが、大和達既存艦娘は出来ない。

弾薬が切れたら工廠まで降りて補給しなければならないし、駆逐艦などは紙装甲(特殊装甲積んでる。アメストリア型戦艦基準。)なので破損したら工廠で船体を直さなければならない。

その工廠への通路は今の所ドック(地上)、戦闘機用昇降版、エレベーターしか無い。

その中で一番大きいのはドック(地上)である。壊してしまえば、補給が止まり、私達艦娘は大打撃を受ける。当然わかっていたのでドック(地上)には装甲を張り巡らし、ミサイルは積んでいないが、対空砲は針山の様に設置している。

恐らく、エース級の戦闘機を深海棲艦は出してきた。F-222を二機にFB-99が一機。これで来ている。最新鋭機とあり迎撃が極めて難しい。大丈夫か...?

船体の反転を途中で辞め、主砲を五基全部起動。大量の三式弾を投入。副砲も使える側だけ全て起動し、三式弾を入れる。巨砲が素早く旋回し、砲身をあげる。

ここまでに30秒。そして、

「ってぇー!」

''砲''と呼ばれる装備が全てたった三機の敵機に狙いを定め発射する。

空気を叩き割った様な轟音が響き渡り、大量の弾幕が張られる。空を埋め尽くす程の弾丸が空を舞い、三式弾が炸裂し中の炸薬を爆発させる。

二つの炎の塊が出来、速度を急激に落とし海上へ堕ちてゆく。

よしっ!取り敢えず目標の二つを撃墜した。後一つだ。

第二砲塔を旋回させ大量に三式弾を打ち込んでゆく。あとはFB-99のみである。

例えFB-99がMk.14を発射したとしても対空砲による面の防御により穴だらけになり爆散する。

私も撃つべきか?一応、M115AXを持つ。念の為であるが。

太いコッキングレバーを引き初弾を装填する。

「......どうだ?」

''......撃墜しましたっ!''

''やった〜!''

''撃ち落としたよー!''

との事。どうやら意味なかった様である。

弾帯を抜いてから再度コッキングレバーを引き薬室から弾丸を弾き出す。

「全艦反転。直ぐに帰投する」

''了解しましたー''

私は船体を鎮守府へ向け速力を上げた。

 

「調査...?」

「そうだよ。一応、万が一の拠点としてね」

鎮守府へ帰ると提督に呼び出された。

内容としては、このパラオ鎮守府の第二拠点として基地を築くとの事だった。

その調査として揚陸艦の役目も持つアメストリア型戦艦が選ばれた。

リバンデヒは深海棲艦撃滅の為にフルで動き回っているし、カイクルに至っては遂に人間を辞めた。元々人間では無いけども。深海棲艦に対して砲撃と白兵戦をテイストした悪夢の様な攻撃をゲリラ攻撃を繰り返しているし、ノイトハイルは軽巡洋艦や駆逐艦を連れて水雷戦隊を組んでいる。最も、本人は主砲や副砲を使った支援や自らを盾とした戦艦らしい攻撃方法で深海棲艦を撃滅せんとしている。

ともあれ、私しか空いているアメストリア型戦艦が居ない為必然的に私が調査に充てられる事となる。

「僚艦は要るかな?」

「......一応、空母と軽巡か重巡が欲しい。」

「分かった。なら...川内型三隻と龍驤をつけるね」

「了解だ。早速行ってくる。」

船体へ直ぐに転移し、装備を整え直す。船体は補給の為ドック(地下)へ入っており、弾薬箱が運び込まれている。武器庫からベガルの弾帯とボックスを二つ運び出し、軍刀と鉈を引っさげてベネリM4を背中に下げベルトには大量のシェルを入れている。

『またよろしゅうなアメストリア』

『よろしくねアメストリアさん!さぁ夜戦だー!』

『那珂ちゃんだよー。今回は守らせてもらうねー!』

『神通です。よろしくお願いします』

うん。それぞれのキャラが濃いのでは無いだろうか?

龍驤にはF-222を積み、川内型は弾薬をフルで積み込み主砲には使わないと思うが粒子弾も積んだ。これは別で作って積んでいる。川内型は当然旧海軍の艦娘である。つまり、粒子弾を積んだ事がなく、使用経験も無く〔弾薬〕から粒子弾を作り出すことができない。

つまり使ったこと無い砲弾は作れないぜ?っということだ。

 

「仮称パラオ鎮守府第二拠点調査艦隊、出撃する。」

『了解や』

『了解っ!夜戦あるよね!』

『りょーかーい!』

『分かりました。錨上げ!』

機関がうねりを上げ湾を出発する。

正直ヤバイと思う水流を作り出し、船体が前進してゆく。龍驤達は前方にいる。

波に巻き込まれて転覆とか笑えないし。

鎮守府は滑走路が臨時の修理が施され、時折対空砲が火線を引く。

湾外では待機しているもがみんこと最上や三隈が洋上へ浮かび、最近パパラッチ活動を何故か辞めた青葉が対空射撃をしている。ん?何故かって?聞くか?トラウマになるが?

ともあれ、比較的安全である。さっさと行こ。

 



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42.ナウル島上陸調査

日曜日にサバゲー参加しました。
虫に刺されまくりました。今も跡があります。かゆい...


 

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やあやあ私だ。

現在、5隻の艦隊を率いて高速で移動している。

上空には龍驤から発艦した完全武装のF-105が編隊を組んで飛び、全艦に第一戦闘態勢を取らせている。

''レーダーに感あり!方位0-2-6、数4です!''

''発見しましたー!''

''主砲よーい!''

「妖精さんに任せる」

''了解しました!''

''しましたー!''

すると、第一砲塔が旋回し、一本の砲身から砲弾が放たれる。

恐ろしい程の衝撃が船体を揺らし、海面を激しく叩く。一発でも衝撃波が凄い為あんまり連射したく無いのが実情だ。砲身の冷却もあるし。黒い薬莢がゴロゴロと転がり、大きな波音と共に海へ落下する。砲弾はというと四隻いた深海棲艦の中央に命中し、攻撃性の結界を撒き散らす。爆炎が上がり、深海棲艦の黒い船体を幾つもの結界が貫き穴だらけになり沈む。

「妖精さん、ナウル島までの距離は?」

''大体200kmくらいですなー''

''ひとっとびー''

''でも艦娘さん置いて行っちゃう?''

なる...私単艦なら直ぐに行けるが艦隊行動となると遅くなるか...

「龍驤、艦載機を直庵以外全機収容してくれ」

『了解や。けど何でや?』

「少し、速度を上げる。川内、那珂、神通、三隻で三角陣を引き索敵陣形を取る。龍驤は私の前に付け。全艦40ノットに上げ!」

『『『了解!』』』

船体がぐんと揺れ、速力が明らかに上がる。スクリューの回転数は急激に上がり、機関が唸る。

川内型の艦艇が鋭い起動を見せ素早く指定された位置へ付くと電探を起動させ索敵を開始する。

 

ナウル島は全体がリンでできた島である。本来ならナウル共和国という国民失業率90%の色々と終わってる2050年までには消滅するだろうと言われていた国土第三位の国家が存在した。

しかしこんなどの先進国とも離れた孤島である為に深海棲艦との戦争で真っ先に潰され、壊滅した。今回の私達の目的はナウル島が使えるかどうかと確認とナウル国際空港の状態確認である。

国際空港が使えるならばすぐさまにパラオ鎮守府から資材や工廠妖精さんを大量に満載したCT-7が飛び立つ。

しかし、このナウル島。使える土地が極端に少ない。殆どがリンの奇形岩の岩礁地帯に覆われている為人が住める部分が海岸しか無い。因みにかの旧日本軍はここまで進軍し基地を築いていた。

「では私は上陸する。各艦警戒を厳としろ」

『任せてや!』

『夜戦っ!』

『わかったよー!』

『了解しました』

なんか一人大丈夫じゃない艦娘がいるけど気にし無い。夜になったら更に暴れるし今更気にし無い。隼を降ろして転移する。既にアメストリア本体には妖精さん主導で対空警戒と海上警戒をしてもらっている。

 

隼を海岸に突き刺し、武装をチェックしてから降り立つ。

唯一有った都市部は深海棲艦の砲撃によりビルは倒壊し民家は全てと言っていいほど破壊されていた。しかも放棄されてから時間が経っている為所々で人工物の崩壊が始まっており、内戦中の市街地を彷彿とさせる残骸の塊だった。

しかし地盤はしっかりとしており、あの奇形岩も健在である。

ベガルM115を構えながら前進してゆく。人間はおらず、自然の生態系が崩壊していた。元々あってもなかったようなものだが。

ん...やっぱ邪魔だ。隼を操り前方の甲板、そのハッチが開き中から巨砲が飛び出す。

レーダーの反射を考えやら角ばった形をした連装砲で口径は改修してい無いので41cm。

しかし41cmでも十分すぎるほどの威力を持つ。その連装砲が旋回しナウル市街地跡を向く。

そして轟音と共に榴弾が放たれる未だ残っていた廃墟を粉砕してゆく。

詰まる所、脳筋式の整地である。これから此処にはアメストリア型戦艦を収納でいるドック四つに大和、武蔵、長門、陸奥、金剛、榛名、比叡、霧島、赤城、加賀、大鳳、龍驤、蒼龍、飛龍、雲龍、天城、葛城、翔鶴、瑞鶴をいっぺんに停泊させられるドックに重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦、潜水艦全てを泊めれるドック。その巨大建造物を作りさらに提督棟などの建造物を建てなければなら無い。それに民間の建造物、廃墟は邪魔である。

全てを無に帰し、隼の主砲がすっかんかんになったので砲撃を止め再度突入する。

幾つか、取りこぼしがあった為M115の銃撃で粉砕し、鳥とかはベネリで落とした。

 

人の手が加わらなくなったことにより、荒れに荒れたナウル島であったが、私による整地で劇的リフォームを遂げた。ふふふ...楽しかった。

人工物が全て消え去り、更地しか残ってい無い。

リンで構成された山はアメストリアの砲弾で破壊し完全に更地にした。

あと、国際空港の滑走路だが荒れていたが使え無いこともないので妖精さんの乗るCT-7が続々と着陸する予定だ。そして私はベガルのかなり太く、鋼鉄で出来た頑丈なバイポッドを立て、M115を伏せ撃ちの態勢で持っていた。私の眼前に居るのはパトロールだと推測される深海棲艦。

数はホ級が一にニ級が三。所詮雑魚である。

コッキングレバーを引き弾丸を装填する。スコープの照準を合わせ、風の影響などを艦娘スペックで観測し修正する。海風が吹き抜け、長い髪やシンプルな巫女服を揺らす。

ゆっくりと呼吸を繰り返し、トリガーを引き絞る。

ベルトリングが一発分機関部に引き込まれ、反対側に大きな薬莢が排出され岩にあたりカンッという甲高い音を出す。同時に二射。地面を衝撃波が遅いかたに重い衝撃がくる。

ベガルM115AXから放たれた銃弾はまっすぐ深海棲艦へ飛んで行き、ボイラーのある位置へ命中する。そして、その特殊性を遺憾なく発揮し大爆発を起こす。

三隻の深海棲艦は同時に爆発を起こし轟沈してゆく。言っておくが、私が持っているライフルは対艦ライフルである。本来ならこうやって艦船に対して使用するライフルだ。

初めてちゃんと使った私だが。

まぁ、いいや。それを人間に使ったりしてるの私達だし。

直ぐに隼へと戻り、火力のあるアメストリア本体へ戻ろうとする。

しかし、そう簡単には物事は進まないようだ。深海棲艦が数艦隊接近している。粗方、私の砲撃音で気付いたのだろう。派手にぶっ放したし。

 

「全艦自由戦闘!全て生きて返すな」

『了解や。艦載機、じゃんじゃん出してや〜!』

『夜戦だ!夜戦!』

まだ日も沈んでいない、とだけ言っておこう。

警報が鳴り響き、妖精さんが慌ただしく動きまわる。艦橋の窓から見える三基の主砲はそれぞれ自由に旋回し指示を待つ。副砲の150cm四連装砲も起動し、捕捉した深海棲艦へ照準をロックする。

「ってぇー!」

赤い閃光が煌き、黒い爆煙を上げながら砲弾が飛び出してゆく。

砲身が炸薬の威力で下がると発射機構がせわしなく動き次の砲弾を下から装填する。そして巨大かつ強力なスプリングにより元の位置へ押し戻され撃鉄が起こされ新たに砲弾を撃ち出す。そしてまた砲身がさがる。それを繰り返す。ただ繰り返す。それだけで、深海棲艦の艦隊が一つ消し飛ぶ。

跡形もなく、原型を留めない破壊のされ方で沈んでゆく。

私も一度砲塔内に居た事があるのだが、炸薬の爆発音は恐ろしく爆発と装填機構の熱気にやられ到底過ごせる状態ではなかった。妖精さんもそれを管制する役目しか持っていない。

あとは、整備や修理をする位だ。あの衝撃波は凄いぞ。味わうか?確実に死ぬが。

さて私の主砲の話などどうでも良い。私の砲撃により敵さんの艦隊は二つ消え去った。

 

龍驤の飛行甲板から垂直離陸してゆくF-105は主翼を水平に戻すと一気に加速し、ソニックブームを置いてきぼりにしながら飛んで行くと深海棲艦の遥か遠くでST-8を数発発射する。

ST-8、汎用ミサイルは、対艦ミサイルクラスの威力を持つどんな攻撃にも使用できるかなり便利なミサイルである。かつF-105は600発装備しており、たった一機で米に喧嘩を売れる位すごーく強い。で、そのミサイル二発が深海棲艦の一隻へ集まり、爆発四散。

さらにF-105は深海棲艦の残存艦上空を通過すると主翼、尾翼を複雑に動かし360度ターンするとホバリングし、ST-7を乱射する。

そう。ミサイルを乱射するのである。アパッチのミサイルランチャーの如く大量のミサイルを一秒毎に発射して行き、深海棲艦を撃滅する。

前、F-105を配備したての時は経験も浅く、操縦はたどたどしくミサイルを一発撃てれば御の字という有様であったが、今ではパラオ鎮守府古参の航空母艦である。

一航戦にも劣らない機動を見せてくれる。

 

''目標、全ロストです!''

''やったー!''

''全て滅ぼすのだー!''

''やめてっ!?''

''何をするー!''

なんか妖精さんが最近ハイになってる。ストレス?

着任当時に戻ってきてるから別に賑やかなのは良いが...

「良くやった。全艦、直ぐに帰投する」




短いなぁ...すみません。
感想、評価募集中です。


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43.第一波

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「主砲、ってぇー!」

轟音と激しい閃光が輝き船体を衝撃波が揺らす。

現在、全艦がパラオ鎮守府に集結し、自らの砲全てを使い防衛していた。

さながら呉空襲の形相を呈しており、まるで地獄のようだ。

空は黒々とした厚い雲に覆われ、風が強く、駆逐艦が、軽巡洋艦が、重巡洋艦が、航空母艦が、戦艦が。全ての戦闘艦の対空砲が逆向きの雨を降らせ、重力に従って火達磨が落ちてゆく。

 

私達アメストリア型戦艦はドック近海に天龍、龍田、最上、三隈、鈴谷、熊野と共に布陣しており、後方にはせわしなく制空戦闘機としてF-105やF-222を飛ばす航空母艦達が控えている。

レーダーに映る反応は全方面から1000を超えていた。

前衛艦隊が迫ってきたと思われる。

既に工廠妖精さんなどの非戦闘艦もCT-7で送られ、間宮は高雄、愛宕、鳥海、摩耶、ドミートリーの護衛の下ナウル島へ向かっている。大体3時間程で撤退は完了する。

''弾薬の備蓄五割を切りました!''

「万能生産装置を起動させろ。次目標!前方深海棲艦集団、主砲、放てぇー!」

第一砲塔から順に砲塔が回転し、砲弾を吐き出してゆく。

同時に対処できる目標数は大体、駆逐艦が30、軽巡洋艦が50、重巡洋艦が75、航空母艦が100、戦艦が300〜5000である。無論、5000は私だ。

その対処数をギリギリ超えるかどうかという数が来ており、特に前線にいる駆逐艦の弾薬の消耗が激しい。比較的という話だが。だって駆逐艦の主砲や対空砲の弾薬消費量と500cm四連装砲の弾薬消費量なんか釣り合うわけないじゃん?

 

海面が深海棲艦の残骸で覆われた頃、やっと戦闘が終了した。

各艦から煙が上がっているが、砲身の冷却や破損だ。気にしなくて良い。

私達は生産装置をフル稼働させ〔弾薬〕を大量生産し艦娘に配分している。

今の内だ。束の間の休息ってやつだろう。隼も使用し各艦に補給してゆく。しっかし空母さん。ボーキサイトの消費量どうにかしてもらえませんかね?F-105とかの修理に使うのは分かるけども。

 

さて、久しぶりにフィーバーした訳だが、正直な所苦しい。

二回(小規模を含めると三回)にも及ぶ戦力拡張により鎮守府自体の戦闘力が上がったにも関わらずだ。この攻撃が無い時間にも深海棲艦は布陣し包囲網を構築しているだろう。

生き残れるかなあ...いや、旗艦がこうでどうする。不安を押し潰し気丈に振る舞う。

現在時刻は13:36。ちょっと遅い昼時だ。深海棲艦にも昼飯という概念はあるのだろうか?

気になるところだが、今はそれどころでは無い。

機材や資料を満載した最後のCT-7が滑走路より飛び立ち、護衛機と共に遥か上空へ退避してゆく。

因みに提督は私の艦長室に居てもらっている。絶対安全、とは言わないが多分大丈夫だ。

 

「提督、報告だ。我が方の被害は暁と雷が小破。あと〔弾薬〕200000の消費だ。深海棲艦は予測だが1000隻以上の轟沈と航空機少なくとも2000機以上の撃墜だった。」

「そう...うーん...アメストリア、君はどう思う?」

「まだまだだろう。これからも散発的な襲撃があり本隊により攻撃があると思われる。」

「僕も同じ考えだよ。パラオ鎮守府破棄も検討してるけど、脱出にどれ位かかる?」

「この鎮守府自体を囮とするならば密集陣形で高速離脱だろう。多少は被害を受けるが、私達が主戦力として出る。あとは鎮守府を爆破でもすれば良いだろう。

また、鎮守府防衛戦となると、防衛線をもう少し広げなければかなり厳しい。

現在の体勢のままだと補給、戦力共に不足している。」

「だよね...想定される被害は?」

「私達が良くて小破、悪くて大破または...轟沈だ。」

「......生存を第一目標とすること。これは命令だよ」

ん?ネタか?あ、違う?失礼...どちらにしろちょっとキビシーんだよなぁ...

敵も馬鹿じゃ無いのだ。戦場では何が起きるかわからない。深海棲艦がどんな戦術を使ってくるかどうかわからないのだ。

結局、全艦娘を招集し、下された決議が、

 

ーーパラオ鎮守府の破棄。そして既存艦隊による全力攻撃。

 

だった。苦渋の策、出来れば取りたくなかった案だ。

それに伴い寮から私物を己の船体に運び、反撃の体勢を取るのに30分を要し、陣形も変更した。

総艦隊旗艦である私が最前線へ出て、左右をリバンデヒ、カイクル、ノイトハイル。間に大和らと続いてゆく。

 

この後の反撃を説明しよう。

まず深海棲艦の襲撃があったら真っ先に鎮守府を破棄。私を先頭に第五戦速にて離脱をはかる。

そして30km以上離れた所で陣形を変更し、アメストリア型戦艦を四方に展開し、中央に航空母艦や軽巡洋艦を放り込み隙間を埋めるように戦艦や重巡洋艦、駆逐艦を配置する。

対潜警戒に難があるが、高速で移動するから大丈夫だろう......多分。

「妖精さん。非常警戒体勢、いつでも全速航行出来るようにウンターガングエンジンのご機嫌取りをしていてくれ」

''了解しましたー!''

''やったるぜー''

''れっつごー!''

''今の内にかくを...''

''それはイケない''

''ダメなのです!''

''それ以上はイケない''

またカオスだ...見ていて飽きない。けど、今それどころじゃないんだよねぇー...はぁ...

肩の荷が重い...重責を担っている。

「姉さん、あまり気を重くしないでくれ」

「そうだな...ありが............と......う......?」

ちょっぉぉぉぉぉぉぉと!?カイクルさん?いつの間にか転移するのはいつも通りだから良いとしてもその肩に乗せてる明らかに300cmを超える銃?は何なんだろうか?カイクルの方が肩に重い物を乗せてるよね!ちょっとこれはOUTだろう。どうせカイクルの妖精さんと共謀してキチガイ銃を作り上げたんだろ?わかってるよ...

「おい待てカイクル。その砲か銃かよく分からない物体は何だ?」

「む?これか...これは私の妖精さんが作り上げたベガルM634だ。口径19.8mm、全長4500mm、重量48.6kgの機関『銃』だ。」

「はぁ...?その、ベガルM634とやらは、何に使用するつもりだ?」

「無論、深海棲艦に使う予定だ。ベガルM115だと沈められない時があるからな。ギリギリの口径ライフルを作った。姉さん達の分もあるぞ」

「なんていう物を作っているんだ...はぁ...もう勝手にしろ...」

「了解だ。気をつけよう」

絶対反省してない。断言しよう。なんやねん19.8mmって。ゲパードより酷い。

反動が非常に気になるが、一般的に『砲』という定義は20mmからである。M61A1などの機関『砲』やファランクスなどが代表的である。また、20mm以下が『銃』という分類に入る。99式対物狙撃銃は12.7mm。それ以上は14.5mmがある。

恐らく、銃なら良いんでしょう?なら、ちょっと20mmにならない程度にしようぜ的なノリでそライフルは誕生したのだろう。取り敢えず、一言。

 

い い か げ ん に し ろ !

 

何回私を困らせたら気がすむんだ!そんな軽いノリでゲテモノ作るな!連射性能つけるな!

もうやめてくれ...管理しきれない(断言)。

はぁ...すまない、少し荒ぶった。しかし、このベガルM634というライフルは外見がバレットM82A3に似ている。アレに何か太すぎる銃弾が弾帯でぶら下がっている感じだ。

バレルの太さは優に50mmを超え、機関部は特殊装甲によって頑丈に張られている。最早銃じゃない。しかし、気になる。私も()も新兵器という未知のゲテモノに好奇心を刺激されている。

事実''彼女''から撃ってくれオーラがででいる。

「......カイクル、一丁くれ」

「ふふふ、了解した。これだ」

カイクルが片手でM634を渡してくる。私は意外に重いと感じたが、両手で扱いかつ、バイポッドを展開した状態でなら撃てるだろうと予想する。

「...妖精さん、そこら辺に丁度いい的は居ないか?」

''えっと...あっ!距離4900に深海棲艦の哨戒機です!''

丁度いい。このキチガイ銃の餌食となってもらう事にしよう。

19.8mm劣化ウラン爆裂徹甲弾の弾帯を給弾口に入れ、私の親指二本分の太いボルトを引く。

そして艦橋デッキに出るとバイポッドをしっかりと付けると3×60のちょっとよく分からないスコープを大分細く感じる20mmレールに滑らせると覗き込む。まるで記憶にあるFPSのような画面が映り、距離、対象の大きさ、種類などが表示される。これ便利だ。

「カイクル、撃つぞ」

「うむ。耳を塞ぐ」

カイクルに一言いってから、かなり堅く重いトリガーを引き絞る。

ズガァァアンッ!という絶対銃から出ない轟音と共にマズルブレーキから大きな爆炎が上がり腕程の大きな薬莢が排出されゴンという薬莢らしからぬ音を立て落下した。

問題の爆裂徹甲弾は空気を無理矢理裂きながら進み、空を飛んでいた黒い機体に命中する。

途端、爆音が轟き、銃弾が弾ける。

装甲を食い破った銃弾が中の炸薬を破裂させたのだ。対象の深海棲艦は火達磨になり海面に激突。爆発を起こし煙を上げる。

「おぉ......」

思わず、唸る。

それ程までに、この銃(笑)は素晴らしかった。撃った途端にバレットの特徴とも言えるバレルが大きく後退し機関部内部もスプリングロングリコイルという強烈なバックブラストを逃す為の専用機構が作動し、反対側、銃口側に衝撃を逃す。かつグリップ側にも衝撃が逃がされており、銃撃時のズレが少なく、次弾も関係なく連射できるだろう。

素晴らしいとしか言いようがない。

恐らく私は今キラキラしているだろう。こんなのはベガルM115以来だ。

「どうだ?」

「素晴らしい......これは、良いな。すぐに使い始めよう。」

「それは良かった。直ぐにリバンデヒやノイトハイルに知らせてこよう。」

「妖精さん、出航までの時間は?」

''今が16:03ですなー''

''だからあと7分ですー!''

あと7分出そうだ。恥ずかしい事に私はこの銃を使いたくてウズウズしている。

子供っぽいが、しょうがない。わくわくしてうるのは事実なのだから。

 

「全艦錨上げ!出航する!」

私の船体から腹の底から響く重い汽笛が鳴りスクリューが回転をはじめる。

そして巨艦がゆっくりと前進して行き、後続艦が次々と雄叫びを上げてゆく。

主砲の砲身が下がり一式徹甲弾が装填される。レールにも同様の砲弾が転がり、一番砲塔が63°、二番砲塔が24°、三番砲塔が84°へ旋回する。

反撃の開始である。

 



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44.二回目

ーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

海面を鋭い、突撃を想定して作られた艦首が引き裂きながら私は前進した。

後方甲板の二基の主砲も別々の方向を向き、どの方向から来てもすぐに反撃出来る体制へと移った。

''レーダーに感あり!数500以上!''

上空に黒い点が夥しいほど現れ、垂直に私を狙ってくる。おいおい他を当たってくれ。私は今忙しいしイライラしているんだ。だって寝ていないんだぞ?艦娘の中で誰よりも。

「45mm対空機関連装砲用意!狙え...てぇ!」

多銃身のバルカン砲が一斉に上空へ向き、大量の弾丸を打ち出し赤いカーテンを作り出す。

例え紙飛行機でさえも無事にたどり着くことができないような密度の弾幕の前に、急降下爆撃をしようとしていた米特有の美しさの欠片も無いレシプロ機が微塵切りになり塵が落下してくる。

 

何故、今更レシプロ機を使った?

 

その疑問が私の中で湧き上がる。

今までの航空攻撃は最初を除くと全てがジェット機、アメストリア軍機であった。

それが、急にレシプロ機という全く歯が立たないはずの機体を出してきた。

もっと、他の目的があってレシプロ機を特攻させたのでは無いだろうか?

そう考え、その想定される事態を考え始めようとした途端、私の身体は吹き飛ばされた。

私の電探にはある弱点がある。海面スレスレの物には反応し無いのである。

何せ、船体自体が海面から30mの高さにあり、113号電探に至っては420mの位置にある。

至近距離の飛翔物は捉えることができなかった。

船体の両側面に大量の水柱が立ち、私自身も激しく殴られたような衝撃に襲われる。

かつ、同時に海面スレスレを飛んでいたF-222かF-105かF-75かは知らんが戦闘機が艦橋群へ大量のミサイルを撃ち込んできた。

雷撃だった。この特殊装甲を積んだ海上の鉄壁の城とあれど、海面下の防御力は高くとも低い。

それも、海面が私の進む事によって白波が立っており魚雷の雷跡など見えなかったのだ。

装甲が食い破られ、浸水が始まっていた。代わりに私の腕や胴体から出血し、巫女服を赤く濡らす。頭が痛い...思い切り叩きつけられたため三半規管がやられフラフラと立ち上がる。

「被害、報告を......」

''右舷喫水線下大惨事ー!''

''海水ドバドバー''

''ちょっとヤバイ感じです?''

''中破な感じですー''

なるほど...これだけの被害で中破か。

中々に損害判定はルーズなようだ。両舷の装甲が破壊され今なお浸水が止まってい無いわけだが、

ハッチを閉めも新たに撃たれた魚雷によってまた破られ中央区画まで一部浸水している。

『お姉さんっ!?』

『姉さんっ!?』

「大丈夫だ......けほっ...中破だな。先に大和達を出せ。手負いがいても足手纏いになる。」

『了解した...』

カイクルは納得いってい無いようだが、受けるかこの雷撃?

すっごい痛いぞ?まぁ、愚痴るのは後でだ。

口に溜まった血液を吐血しながら艦内をチェックしてゆく。

すでに万能ソナーが潜水艦の探知を開始し、アメストリア型戦艦(姉妹達)が一式徹甲弾による攻撃を開始しているが、私はしてい無い。砲撃による凄まじい衝撃で船体が折れたなんて笑えない。

そのため、私はこの浸水を止める作業に没頭する。すでに喫水線が1m下がっているようだ。

かつ、私はどこまでも不幸なようで私の中破が合図となり深海棲艦の襲撃が始まった。

取り敢えず撃てる砲...30cm連装電磁力砲や20.3cm連装砲、45mm対空機関連装砲だけを動かし深海棲艦を撃破しつつ、艦内のハッチを閉めてゆく。

機関室がやられたらリアルで地球が吹き飛ぶので厳重に閉じておく。ごめんな妖精さん。ちょっと我慢してくれ。

応急修理妖精さんが出ようとしているが止めさせ、船体が裂け無い範囲で加速する。

こんなまともに身動きが取れ無いかつ後ろに沢山の艦娘がいる状況で戦えるはずもない。

脱出を邪魔したくは、無い。

 

30分が経過し、大和達は反対したものの私の珍しい怒鳴り声で黙らせ、行かせた。

今頃はナウル島200km圏内だろう。

妹達はASROCのバーゲンで敵潜水艦を全て沈め、海上艦は艦種関係なく撃沈した。

ちょっと引いた。だってリバンデヒやカイクルやノイトハイルがキレたんだぞ?ガチでは無いがかなり怒ってた。まぁ、その甲斐あってか深海棲艦は取り敢えず全滅した。

''しゅーり完了ですー!''

''終了な感じです?''

''あきらめt''

''それ以上はイケナイ!''

''アウトです〜''

なんか言っちゃいけ無いセリフを言おうとした妖精さんを他の妖精さんが群がって取り押さえるという微笑ましい状態に遭遇し、何も言えない。うん、乙。

「どうだ?」

『暇だわ。すっきりしたけれど』

「そうか。一応カイクルにはベガルM634の使用許可を出していたがどうなった?」

『数千発撃って薬莢で地面が埋まったそうよ。あと、薬莢踏んでさっき転んでいたわ』

「そ、そうか...」

簡単に想像できるが、あのカイクルが、なぁ...?

以外とドジな所もあるようである。あとで弄るネタとして使う事が脳内で決定した。

「取り敢えず、私の点検が終了次第出航する。今のうちに整備をしておいてくれ」

『了解よ』

『...ムゥ...了解した』

『分かったよー』

なんかカイクルが不機嫌だが気にし無い。私もやる事があるのだ。

ベガルM634を持ち、腰にM93Rが入っている事を確認し、隼を降ろす。

 

提督へある事の許可を得てから既に艦娘はいなくなり立派な軍艦の姿が一隻も居なくなってくたびれた印象のある私の母港。

妖精さんによって常に整備され万全の体制であったドックは流れ弾により所々クレーターが出来、深海棲艦の墜落機による煙が上がっており戦後の軍港を思わせる埠頭の一つへ隼を接舷させると降り立つ。一応腰だめにM634を構えながらも今は誰も居ない寮を流し見つつ工廠へ急ぐ。

 

私はある事の為に地下へ降りドック(地下)にある工廠の第三倉庫へ向かった。

そこは使えそうな兵器はCT-7によりナウル島に運ばれたが、まだまだ死蔵されたキチガイ兵器が眠っている。正直、ここに私が来るとは全く思っていなかったのだが、来てしまった。

そして倉庫の中にある何に使うのかよく分からない砲塔や砲身などを無視し目的の物が入った鋼鉄製の格納容器を見つけ出し、艦娘の力に物を言わせ引き摺り出す。

重いんだよ。そこまで荒く扱ってないから安心しろ。

そして、『大きさの違う』格納容器を『4つ』設置すると誘爆しそうな物を取り敢えず周りに集め時限式の起爆装置と20kgのC4を作り出し、ワイヤーでぐるぐる巻きにし、信管を適当に一番上のC4に突き刺し、即席のちょっとよく分からない威力を持ったC4爆弾を作ると時間を40分に設定し兵器群に放り投げ急いで地上へ戻る。これで準備は完了しフェイズ2へ移行する事が出来る。

 

隼へ乗り込むとすぐに埠頭から離れ、敬礼をしながら離脱する。

同時に私の船体が丸ごと入る深さを持つ深い深い海から錨を巻き上げ始める。

500m以上の深さがある為(多分。測った事は無い。忘れてた)鎖の巻き上げには時間がかかる。

その間に隼はアメストリアの船体に到着し、海中に下されたレールに身を滑らせ、巨大クレーンにより船内へ格納される。並行作業として機関を始動させ、何時でも出航できる状態にしておく。

先程は発射する事のできなかった射程400000mを誇る主砲にも粒子弾が装填され、その撃鉄を弾かれる時を待っている。妖精さんが''ふぃーばーします!''って息巻いていたのは可愛かった。

話題がずれたが、ひとまず隼を格納し、時間を見るとあと31分35秒で起爆するらしい。

急がねば。

「出航用意!」

『リバンデヒ、完了よ。何時でも殺れるわ』

『カイクル、とうの昔に完了している。』

『ノイトハイル今終わったよ〜』

「提督、では鎮守府より撤退する。」

「うん.....」

一応提督にも第一艦橋に来て貰っている。やはり、最後まで見届けて貰いたかった。

「微速前進!絶対干渉結界起動!全天レーダー回せ!」

''よーそろー!びそくぜんしーん!''

''ごーごー!''

''おれの主砲が火を吹くぜー!''

''レーダーに艦影なしです!''

艦首が海をゆっくりと割りながら、船体が前進する。

十枚刄という未だに理解する事のできないスクリューがウォーミングアップに緩やかに回転し、舵が切られる。後ろに続くリバンデヒ、カイクル、ノイトハイルも同様に波を立て前進する。

「主砲、四番、五番砲塔何時でも砲撃出来るようにしておけ。」

私の指示のもと測距儀の形をした自動射撃統制装置IIが後方へ旋回し、砲塔の統制をする。

艦橋群の至る所にある45mm対空機関連装砲が上を向き、高高度超精密誘導爆撃や雷撃、低空爆撃、ミサイルを警戒する。

「全艦単縦陣より単横陣へ。全砲塔をオンラインにし第一戦闘態勢で離脱しろ。速度50ノットに上げ!」

スクリューが回転を上げ.............なかった。

何故なら艦尾の結界に魚雷が命中し空高く水柱が上がる。何故また奇襲を受けた!?

すぐに船体とのリンクを強め、ピンガーを打ち潜水艦の位置を特定、ASROCを50発ぶち込む。

「来るぞ!主砲全砲塔起動!旋回始め!」

主砲が素早く旋回して行き、自動射撃統制装置IIが働き妹達と互いに射線が重なるように主砲が向き、それぞれの砲身がバラバラの角度を取る。

''来ました!深海棲艦数計測不能!大艦隊です!''

おう.....?計測不能って何だ?嫌な予感しかしない。〔弾薬〕はたんまりとある。砲弾も贅沢だが全て粒子弾を使用している。今回も同じく雷撃からの襲撃であったが、レーダーをみると私達を包囲するように幾つもの艦隊陣形を組んだ深海棲艦の反応が鮮明に移されている。艦種別に表示する欄にはerrorの文字が並んでいた。

んーー?ナニソレ...?

「提督.....大丈夫か?」

「あ、うん。僕は大丈夫だよ。」

「そうか、主砲てぇーー!」

激しい閃光と爆煙、爆炎が上がり全方位に粒子弾が撃ち込まれる。

粒子弾は薬莢内の大量の炸薬を炸裂させると太く長い砲身を通り放物線を描かずにまっすぐと天気風向気温全てを無視し突き進み、包囲していた深海棲艦の一番前の艦に刺さると爆発を起こし、青白い太陽を生み出し莫大な衝撃波によって周りごと破壊する。

周り、というのは酸素 窒素 二酸化炭素 海水 深海棲艦関係無く全てを消し去るのである。

私達は速力を今度こそ上げ、主砲、副砲の毎秒連射で離脱を図る。

しかし、深海棲艦もストーカーの如くしつこく追撃してくる。しつこい男は嫌われるぞ?私の場合殺しちゃうからな.....?

 

薬莢が我先にと海へと没して行きその数だけ粒子弾が発射される。

40km先では幾つもの太陽が灯っては一瞬で消える。時々結界に500口径の砲弾が命中しているため、今回はアメストリア型戦艦があちらさんにも居るようだ。関係無く撃滅するが。

しかし射程が同じってキツイ。反航戦になるようだ。

深海棲艦はアメストリア型戦艦二隻に戦艦20隻。フッ...甘いな!

「妖精さん、座標固定。BGM-9及びグラニート発射。」

''りょーかいでーす!''

大きなミサイルハッチが開くと粒子弾頭を搭載した弾道ミサイルが空高く飛び立たずに海面上300mをグラニートと編隊を組みながら飛んで行く。わざわざ大気圏まで行かれても困る。

「砲雷撃戦用意!一番、二番、三番砲撃やめ!0°に戻せ!四番、五番砲塔!手当たり次第に深海棲艦を屠れ!」

未だに砲煙をあげる砲身が素早く旋回した事により煙を切ると水が掛けられジューーーッ!!という何時もより激しい音を立て瞬時に水蒸気へと変わる。妖精さん、かなりヒャッハーしているようである。まぁ、滅多にない総力戦だ。丁度いいストレス発散になる。

「..........ってぇーーー!!」

私の一声で十二門の500cm砲口から粒子弾が大量に打ち出されてゆく。うん。この光景は良いな!気分が高揚する!珍しく''彼女''もご機嫌である。

あと12分だ。

「チィッ!リバンデヒ!私が突撃する!援護しろ!」

『お姉ちゃんっ!?止めなさい!』

相手も結界を張ってきたのだ。深海棲艦が、である。もう今までの様にはいくまい。アメストリア型戦艦の火力は他の艦よりも群を抜いて高く、危険なのだ。私達がここで止めなければ脱出中の大和達が蹂躙されてしまう。それだけは、なんとしても避けなければ。

「甲板にいる妖精さんは退避しろ!対空射撃止め!」

上空を飛び交う戦闘機を全て無視する。いくらST-8や7を撃ち込んでも絶対干渉結界がある限り無駄だ。しかも後ろに続くリバンデヒが支援砲撃で次々と落としてゆく。ほっといても良いのである。というか、こっちの戦力戦艦四隻で、あっちは数百隻に制空権。どう見ても勝てないが、全てをひっくり返すイレギュラーが私である。深海棲艦は今や200隻近くまで数を減らし、戦闘機は未だ多いが、45mm対空機関連装砲がカーテンを張る限り危険は無い。

 

90ノットに達し、両舷に派手に海水をぶち撒けながら船体を槍とし突撃する。

深海棲艦の戦艦には目もくれず挽き飛ばす。

アメストリア型戦艦の一隻に食いつくことを決め、四枚の舵を大きく切り突っ込む。

結界と結界が激しくぶつかり合い、私のスピードと合わさり凄まじい衝撃がくるしあちらにも攻撃力となり襲いかかる。

「主砲右舷90°旋回!」

五基の主砲は忠実に旋回し砲撃を待つ。

結界に大量の負担がかかり中央演算処理装置が悲鳴をあげ始める。

 

バリィィィインッッ!!!という派手な音を立てて結界が崩壊し、直に艦首の船体が接触する。

私の艦首が深海棲艦に触れると前進し船体に突き刺さらずに滑りまた側面同士をぶつける。

そして火花を散らしながら装甲が擦れ、深海棲艦の艦尾向けてゆっくりと進む。

分かりやすく言えば、同型艦が反対向きで睨み合っているのだ。

「全主砲、放てぇーー!」

主砲が待ってましたと言わんばかりに粒子弾を深海棲艦の甲板むけて撃ち込み爆発を起こしてゆく。150cm四連装砲や46cm三連装砲も遅れて甲板へ砲撃を始める、深海棲艦の妖精さん特製装甲を積んでいない強い筈の装甲を突き破り、艦内で地獄の太陽を咲かせる。

500cm四連装砲が、150cm四連装砲が、46cm三連装砲が、30cm連装電磁力砲が、20.3cm連装砲が。砲塔という砲塔が粒子弾を放って行き、深海棲艦の艦橋が近付くと45mm対空機関連装砲がカーテンを浴びせる。一発一発がボフォース40mm機関砲を遥かに上回る威力を持つ砲弾が雨あられと撃ち込まれ艦橋を穴だらけにする。

左舷のミサイルハッチがドンドン開いて行きグラニート、SM-3、SM-2関係無く発射される。

相手も黙っている筈も無く、主砲を撃ち返してくるが、甲板の木材を破壊するだけで、その下の強固な装甲は破っていなかった。しかし、砲弾口径関係無くゼロ距離で放たれている為、甲板の右舷が装甲の灰色に染まりつつあり、火災も発生し、装甲が凹み始めている。

深海棲艦の艦尾へ到達し、右舷に多大なる被害を受けつつも無事に抜けた私。

対する深海棲艦は右舷は原型を留めておらず、内部も浸水し、爆発が続いている。

大破、であった。もう少しで沈むであろう。

『......大丈夫かしら?お姉ちゃん?』

「大丈夫だ。それより次だ!」

『......。』

急に無言になったリバンデヒと交差し、航跡が十字に切られる。左右を交代し、もう一隻の深海棲艦へ牙を向ける。リバンデヒの態度が気になるが、それは後回し。

リバンデヒは右舷に主砲、副砲を集中させ、速度を落としている。

「全砲塔左舷90°へ旋回。弾種変更。榴弾式結界弾だ。」

''了解です!''

''榴弾式結界弾装填ー!''

''ねらってー!''

煤焦げた巨砲が旋回し、右舷の生き残っているミサイルハッチが開いてゆく。

左舷の無傷な砲塔が全て旋回し、自動射撃統制装置が全て左舷へ向き45mm対空機関連装砲が砲身の回転を始める。

「提督、耳を塞いでおけ」

「え?わ、分かったよ...?」

私も艦橋の床に置いておいたM634を持つと弾帯を給弾口へ叩き込みコッキングレバーを勢いよく引く。スコープはつけていない。要らないし。

一発試し撃ちを兼ねて発射。艦橋のガラスを一枚割る。

そこから5cmの太さを誇るバレルを出し、バイポッドを構える。

提督は.....あ、危険を感じ取ったのか艦長室へ帰ったようだ。うむ、その判断は正しい。

そして、深海棲艦との距離3000mで反航戦(両舷からの挟み撃ち)が始まる。

「ってぇーーー!!!」

同時に私もトリガーを引き絞り続ける。巨砲が唸り、二隻合わせて40発の榴弾式結界弾が左右から襲う。一秒後、500発を超える砲弾が更に襲い掛かる。

艦首から様々な部分に着弾し船体を抉って行く。深海棲艦も一番、三番砲塔をこちらに向け砲弾を撃ち出すが、主砲の装甲に当たり甲高い音とともに弾き飛ばされると何処かへ飛んで行く。

後は知らん。

私も適当に掃射してゆくが、艦橋を狙ってゆく。しかし、今までの深海棲艦のアメストリア型戦艦を見てて感じるが、アメストリア型戦艦は旧海軍の常識に当てはまらないという事を分かっているのだろうか?どうもただの戦艦として使われて本来の運用がされていない感じがする。

単艦でも強いんだからそれに装備速力共に大きく劣る既存艦と混ぜたら折角の性能が台無しになるだろうに。何?深海棲艦の上層部...があるか知らんが上層部は馬鹿なの?死ぬの?

でもお腹すいたからおうどん食べたい。これは割と本音である。

ヴォォォーーー!というファランクスよろしくの爆音を鳴らし45mm対空機関連装砲がカーテンを展開し、穴だらけにしてゆく。

深海棲艦も必死で砲弾を発射しミサイルを撃っているが、戦い方が、なんというか古い?

旧海軍の戦い方を無理矢理アメストリア型戦艦がやっている印象を受ける。それが性能を大きく下げ、大して強くない戦艦に成り下がっているのは如何なものか...

不憫すぎるため、手早く仕留める。砲身が焼けようとも、砲塔に命中して装甲が凹もうと関係無く砲撃を続ける。

こちらに大きな衝撃が発生し、第二砲塔から炎が上がる。

「どうした?」

''第二砲塔が被弾しましたー!''

''砲身が一本折れてる感じですー''

''隣の砲身に引っかかってちょっとヤバい感じです?''

とのこと。始めて大きな被害である。第二砲塔の三本目の砲身に被弾し、熱くなっていたのも合わさり砲身がポッキリ逝って二本目と四本目に引っかかっているという状態であり、四本目の砲身は曲がっている。第一砲塔と第三砲塔が健在である。第二砲塔自体を停止させ、残りの砲を撃ち続ける。

水も掛けているが、意味無いな。直ぐに蒸発する。まぁ、良いや。

M634を横薙ぎに弾幕を張ってゆく。腕サイズの薬莢が転がり下へ落ちてゆく。アレ、甲板に刺さらないかと今更ながら心配する。ここ結構高く、ここから薬莢落としたら余裕で甲板に突き刺さる。これ、ヤバくね?後で木材張り直すの大変なんだけど...

熱くなったバレルを引っこ抜き新しいバレルを冷却の間付け替える。

こうやって二本のバレルを交互に使うことによってバレルの焼き付きを防いでいるのだ。

因みに時間経ったら冷えてバレルは元どおりになる。便利だよね。

 

二隻の深海棲艦が大火災を起こし沈んでゆく。

同時に、水平線の向こうで火山が噴火したかのような赤い山が出来、遅れて空気を激しく叩く衝撃波が襲う。あれの方向はパラオ鎮守府。そう。起爆したのだ。

私はそちらの方向へ敬礼を捧げ続ける。今まで着任からずっとお世話になった場所だ。

いろいろと思うところはあるし、私がこの手で手を下して良かったのかも未だにわからない。

以前、私は工廠での開発で、あるものを開発していたのを覚えているだろうか?

 

そう。人類最凶の大量破壊兵器、原子爆弾である。

私も使いたくなかったが、技術隠滅のため、跡形も無く吹き飛ばす必要があり、放射線による汚染で爆発後も接近出来ないのはこちらとしては実に都合が良かったのだ。

ついでに私は格納容器を四つ置いた。核、粒子爆弾、波動砲、粒子爆弾だ。

在庫処分となったから良いが、粒子爆弾は核を補佐しパラオ鎮守府を島ごと吹き飛ばしてくれただろう。一際大きなキノコ雲が上がる。あーあ...使いたくなかったなぁ...

よりによって米と同じ手を使うとは屈辱である。やだなぁ......

『...お姉ちゃん?』

『姉さん?まさか...』

『お姉さん.....核を使った?』

「あぁ...色々と都合がいいからな」

『そう...』

『そうか。ならばいい。』

『まぁ、そこは同意するけどね〜』

罪悪感というより嫌悪だな。同族嫌悪では無いがなんかやだなぁという感じだ。

ん?分からない?だろうな。私もよくわからない。

「全艦満遍なく船体に放水しろ」

一応、放射線の危険性を考慮し水をまいておく。十分で無いのは承知の上だ。砲身の冷却も兼ねている。というかそっちが大きい。

 

艦橋の高い部分から大量の水が放出され、甲板に降り注ぐ。

砲塔が水を受け赤くなった砲身から水蒸気が立つ。甲板の木片は洗い落とされ、少々...とは言え無いくらいに凹んだ装甲が露出し凹んだ部分に水が溜まる。

主砲からは雲が出来る程の水蒸気が発生し、艦全体が水でキラキラと輝き大量の水蒸気で蜃気楼の様だった。

「被害報告」

''ほーこくです。甲板全滅、装甲小破、船体特殊装甲は中破、第二主砲大破、30cm連装電磁力砲三基大破、十五基中破、20.3cm連装砲二基大破、五基中破、艦橋群一部損傷。総合的には被害軽微、航行にししょーありません''

''全然大丈夫だぜー!''

''まだまだ撃てるよー''

流石はアメストリア型戦艦というべきか、かなりの被害を覚悟していたが、大破にも満たないレベルだった。二隻ものアメストリア型戦艦と殴りあったのだが、これだけの被害とは...妖精さん万歳。凄いと思う。

「弾薬消費は?」

''はいはーい!500cm四連装砲は8695発でーす!''

''...150cm四連装砲、6272発''

''46cm三連装砲7861発です!''

''30cm連装電磁力砲大体3000発だよー!''

''20.3cm連装砲2806発なの''

''45mm対空機関連装砲、83165979464発です!''

 

...

 

.......

 

..........

 

..............

 

ん?45mm対空機関連装砲......は?

ちょっと待てい、そんなに撃った覚えない。うん。絶対撃ってない。

は?殴り合いで両舷共に沢山撃ってた?あ、そっすか...そういうこと...

正直、消費弾薬量が恐ろしいのだが...

「〔弾薬〕消費量は?」

''えっと...2106です!''

''しんきろく!''

''いえーい!''

''ぱふぱふ〜!''

''げっとd''

''OUTー!''

2106って何?〔弾薬〕消費量ではないよな?大和って本気で大体300〜500位だが、これ何?

2000代......怒られるなぁ...修理にも鋼材とボーキサイト...あぁ...万単位で消えるなぁ...はぁ...

また、工場か...憂鬱になる...もういいや...

 

 

 



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45.ナウル島とーちゃーく!

今回はシリアル回。


ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ドックとの接岸!」

''確認しましたー!''

''とーちゃーく!''

「錨下ろせ!機関停止。全武装を一時停止する」

''錨じゃらじゃら〜''

''主砲てーし!''

''上陸する感じです?''

''する感じですなー''

取り敢えず妖精さんはいつも通りの様である。

船体の機関が停止したのを確認し、真新しいドックに降り立つ。

 

...

 

......

 

........

 

ちょっと色々と突っ込んでもいいだろうか?

妖精さん達を最初に送り出したのが5、6時間前だ。

しかし、ナウル島はすでに改造されており、私が以前砲撃で更地にした場所には少しだけ豪華になった、資材をふんだんに使った頑丈そうな軍事基地が出来上がっており、赤レンガの提督棟、戦艦寮、空母寮、重巡洋艦寮、軽巡洋艦寮、駆逐艦寮が並び、周りは鋼鉄製の壁で覆われている。

 

そしてその外側には対空砲として45mm対空機関連装砲や10cm、12.7cm、20.3cm口径の高角砲の砲塔が大量に並んでいた。ミサイルハッチも離れたところであるが膨大な数が地面に現れた。

あの滑走路は改造されて地盤自体が強化され地下格納庫にはCT-7やF-105が眠っているだろう。

ちょっとした山は緑が消え、灰色に染まっていた。全て装甲化され、所々に巨大なトーチカが存在し、張り出した土台には500cm四連装砲がその巨大さを堂々と見せつけていた。

重装甲の壁が島全体に幾重にも張り巡らされ、陸軍の駐屯''城''まであった。

完全な要塞である。鉄壁の防御と凶悪な攻撃力を持つ正真正銘世界最強の要塞がたった数時間で完成したのだ。異常性に気づいてくれただろうか?

うん。これはおかしい。何と戦う気だ?GOJIRAか?ウルト○マンか?どちらにしろ勝てる自信がある。断言しよう。どうせ地下も魔改造されてるんだろ?分かるよ妖精さんと付き合ってるんだから。思考回路は分かるよ。はぁ...これは面倒なことになりそうだぞ...電子的防御の面はレーダーが113号電探を四方に設置し、一番外の外壁は厚さ...目測だが20000mmを超えていた。水深は500mまで削られていると思われる。無論、海底まで鉄壁の外壁は刺さっている。

なんか、アル○ジオの横須賀を彷彿とさせる。あとはナチスの要塞だろう。なんか島自体が灰色に染まり、所々、例えば海岸(残り)や赤レンガの寮、黒色の巨大工場の工廠などが偶にあるだけで、正直滑走路より私がでかいから私達が一番目立っている。

ドックには大和達が全艦停泊し、見た所特に損傷もないようで、安堵の息をつく。

良かった...無事、到着したんだ。

それに比べて、と私の船体を見上げる。全高360mを誇っていた艦橋は一部が欠けており、小さく煙を吐き出し、本来硝煙などを吐き出すべき二本の巨大な煙突からは黒々とした煙が上がっていた。

威風堂々とした完璧な黄金比を保っていた船体は甲板が捲れ上がり第二主砲は砲身が折れ中途半端な旋回で停止している。両側面の装甲は激しく損耗し、緊急修理のための継ぎ接ぎの装甲や深海棲艦の主砲弾ゼロ距離直撃により凸凹になったり、対空砲により至る所にひしゃげた45mm砲弾と薬莢が転がっている。45mm対空機関連装砲も幾つかが敵砲弾により崩れ、大破していた。

艦首、艦橋、艦尾の順で張り巡らされていた太いワイヤーは切れ、凸凹の装甲が晒されている甲板に横たわっていた。全体的に煤汚れ、激戦のあとを物々しく語っている。

「姉さんっ!」

背中に重い衝撃を感じ、体制を崩しかける。

カイクルが突っ込んできたのだ。思い切り抱きつかれ、体が締め付けられる。

ちょっ、きついきつい...しかし私に反対する権利は無い。また殴り合いをしたのだ。挙げ句の果てに中破し、巫女服も所々が破れ黒く汚れていた。幾つもの血痕があり、首元には赤黒い吐血痕が生々しく残っていた。緋袴は裾が切り刻まれた様な悲惨さを呈していた。

また着替えなきゃなぁ、と呑気に考えていると今度は前方からポニュンという柔らかい感触がし、誰かに抱かれていることがわかる。しかし視界が完全なに遮られており、カイクルによって一切の身動きが取れないため大変パニクってる。何!?誰が抱いてる!?

息続かんから止めろ!

「ふぐっ....リバンデヒ、か?」

「そ、そうよ!散々心配かけて!お姉ちゃん相応の責任を負っているのよ!?少しは自覚しなさい!」

「僕はお姉さんが死んだら自殺するよ?だって戦う意味がなくなったもん。それ位、お姉さんが大きな存在なんだよ?」

リバンデヒ、ノイトハイルから苦言と暴論によって説き伏せられる。

し、しかし私だって責任は理解しているつもりだ.......いや、認めなければならない。完全には理解していなかったようだ。

私は本当のアメストリアでは無い。()こそが、真のアメストリア型戦艦一番艦アメストリアである。そこの区別はしっかりとしているつもりだし、私の行動理念は一貫している。

けど、その行動理念には艦娘の精神に対する配慮がなかったようである。無事かどうか、絶対に艦娘だけは助けると決め、そう動いていた。私の被害など眼中にすら入れていない。ただ、結果として艦娘に良い印象を与えていただけで、よりにもよって最も大切な妹達に対する配慮を考えていなかった。

あぁ...私何やってんだろ...

「すまない......」

「........」

「........本当よ...」

背中から泣き声を押し殺したしゃくり声が聞こえる。まーた泣かしちゃたなぁ...

妹達に対して、深く考えていなかった。もしかしたら部下のような感覚だったのかもしれない。一種の信頼であるが、妹としての態度では絶対に無いだろう。

私は、本当に自分の意思で動いていたか...?否。

アメストリア軍籍の末席を頂いていた頃の、本能や経験に従っていただけだ。つまり、前例主義だった訳だ。

私がしたいと思って動いたのは実の所、ほとんど無いのでは無いだろうか?

最初の戦闘然りドック魔改造しかり妹達の建造然り。まぁ、鎮守府の着任は私の意思であったが。

これからは、私のしたいという意思で行動することにしようと思う。無論、妹達と艦娘を第一に置く。護りたいのだ。戦艦の本来の意義として。国なんて大層なものではなく、私が護りたいと思った相手を守りたかったのだ。悪いが、それを邪魔するものは全て撃滅する。

なんであろうと、国であろうが星であろうが全て叩き伏せる。これを狂気と言うのだろうか?『私』の本質であるが何か?元々戦艦にまともな精神を持ったヒトがいるわけが無いだろうに。

人間は知らんが。今の人間って銃の扱い方だって知らないらしいじゃ無いか。

関係なくもなくあるわけでもない。人を躊躇いなく殺せるかどうかだ。

 

閑話休題

 

「大丈夫、かな?」

「......私は一応大丈夫だ。妹達の精神状況はかなり危険だが。」

「自覚してくれてなによりだよ。まぁ、僕はこの鎮守府を取り敢えず回ってくれから、休んでおいてね。」

「了解した。カイクル、良い加減離れろ」

「嫌だ...」

「はぁ...」

まぁ、カイクルが駄々をこねるのはかなり珍しいため無理に動かさ無い。

リバンデヒは大人(笑)の為、すぐに離れると表面上だけ取り繕って私が手足を動かせないことを利用し頰にキスをして自らの船体へ帰っていった。は、恥ずかしっ!!

「ノイトハイル...」

「ん〜?」

「すまなかった」

「良いよー!僕はお姉さんが大好きだからね、許してあげるよ。けどね?ちょっと言うことは従ってもらうよー?」

「...わかった」

「やったね。お姉さんは僕のどれ....(しもべ)さんだね。それじゃ、じゃあねー」

そう言ってノイトハイルも去って行く。ちょっと聞き捨てならない言葉が聞こえたが、拒否権などあっても無いものだ。

大和達は私達の空気を察してか既に寮に戻っていた。

私達も海風が吹きオイルや硝煙の匂いが漂うドックに突っ立っているわけにもいかんので私の船体へ転移する。医務室だが。良い加減負傷を治したい。しかし、

カイクルが抱きついていて何も出来ない。これどうしよう。

別に甘えたかったら好きなだけ甘えて貰えて構わないのだが、今だけはやめて頂けないだろうか?結構痛いんだよなぁ...

 

「カイクるぅ!?」

思わず声が上擦ってしまった。無理もない。何故か突然ベッドに押し倒されたのだ。

その為至る所の傷が痛み、激痛が走る。

「か、カイクル?」

「どうした?」

「何かおかしくないか?」

「何がだ?私が姉さんの四肢を拘束しているだけではないか」

いやいやいやそれどう考えてもおかしいからね?ね?犯罪臭プンプンするよ?どっちも美貌だけは恐ろしくイイ為余計危険臭が!

「元はというば姉さんが私達の気持ちに気づかなかっただけではないか。元々私達は姉さんの事が心から好きなのだぞ?」

「それは、いいから、今は離れろぉ!」

私がきゃんきゃん騒いでも拘束は解かれない。くそぅ...結構痛い...カイクルってヤンデレか?いや違う。確かにちょっと妹達自体病んでるけどこれは違う。ちょっと驚いてるし。わけわかめ。

 

ちょっと痛い...というか血がやばい。さっきの組み伏せられた時に傷口が開いたらしい。どくどくと容赦無く血が流れ、軽く貧血だ。こういう時は、意図的に意識をブラックアウトするのが良いんだが...何されるか分からんからな...私の周りは知らぬうちに危険になっていたようだ。

まぁ、いいや。意識はーなそ。

 

ーーーーーーーーーーーーーカイクルsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いま組み伏せた姉さんの体から抵抗していた力が抜け、首が力無くベッドに落ち、横を向く。

気を失ってしまったようだ。しかしその顔は苦悶の表情を浮かべているわけでもなく、狂気や恐怖を感じさせない無表情であった。それでも綺麗なのが姉さんだがな。

やはり、姉さんは綺麗だ。滅多に笑ってくれないが、無表情であってもその美貌だけは衰える事はなく、綺麗に弧を描く眉毛に長い睫毛。閉じられた瞳、小さな鼻に桜色に染まる小さな唇。

病的までに白い肌はすべすべとしており、シミひとつなくいっそ神々しいほどの完璧な美を纏っていた。

腰まである艶やかな鴉の濡れ羽の如く見事な黒髪は押し倒したせいか扇状に広がり乱れていた。

しかし、その中身はえらく空っぽであった。何かがなかった。今まで伊達に4900年妹をしていない。何と無く、分かる。『何か違う』と。しかし今となってはもう気にならない。姉さんが私達の事をしっかりと本当の意味で見てくれるようになった。なってくれた。

けど、あの深海棲艦とのなぐりあいはヒヤヒヤしたぞ...今もこの船体はボロボロになっている。しかしあの妖精さんの事だ。姉さんの船体の修理は始めているだろう。何故か姉さんは妖精さんに好かれているからな。

さて、私も目的であった姉さんの治療をしないとな。

拒否されても困るから拘束していたんだが、姉さんは何を勘違いしたのか抵抗してきたからな。

驚いたぞ。私はリバンデヒやらノイトハイルとは違うんだが...取り敢えず、姉さんの血に濡れた白衣を脱がせ、襦袢をはだけさせる。

形のいい筈の胸が無理矢理押さえつけられ、谷間をより深く作り出している。これ姉さん無自覚か?恐ろしいな...何?私の方が大きいって?知るかそんなもん。ただ大きくても困るぞ?ベガル製重火器が扱えなくなるからな。

 

妖精さんに包帯とガーゼ、消毒液を持ってきてもらい、慎重に全ての傷を治療してゆく。殴りあったとあって、打撲痕みたいな痣があったが、気にしないでおこう。

ガーゼに消毒液を染み込ませ、傷口に当てる。

「んっ!.........」

すると姉さんが形のいい眉を歪めながら歯を食いしばっていた。おそらく無意識にとっている行動だろう。なるべく手早く終わらせる事にする。

あまり姉さんを痛めつけなくないからな...

『カイクル、お姉ちゃんはどう?』

「む、リバンデヒか。大丈夫だ。少し凹んでいるが問題はない。しかし物理的な傷が酷い」

『そう.......私はすぐに修理次第近海の掃除に行ってくるから、ノイトハイルを送るわ。』

「了解だ。」

ノイトハイルが来るという。外を見ると、リバンデヒの至る所から火花が散り妖精さんが忙しなく動いているのが分かる。修理が始まったのだろう。私は特に損傷していないからな。

姉さんは突っ込んだが。姉さんは突っ込んだが!

 

「お姉さんは?」

「大丈夫だ。」

数分経ち、ノイトハイルが姉さんの医務室へとやってきた。

急いでいたようで息を切らしているが、転移すればいいだろう...

いや、それほどまで焦っていたのかもしれない。

「ふふふっ...やっと僕もお姉さんを好きにできるね...」

「む......それはいけないな。姉さんは私達の物だ」

「いやいやさっき僕はお姉さんから奴隷宣言もらったからね。もう本人の了承は得ているんだよ」

「.......」

「....貴様ら本人を無視して何話してる.......」

「姉さんっ!」「お姉さん?」

どうやら知らぬ間に姉さんが意識を回復していたらしい。

良かった...

 

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

凛とした声と優しさのある落ち着いた声が聞こえ、目を開ける。

どうやら医務室のままであるらしい。

「いやいやさっき僕はお姉さんから奴隷宣言もらったからね。」

ん?...あぁ、アレか。というか会話自体すごく危ないと思うんだがどうだ...?

「...貴様ら本人を無視して何話してる.......」

相当な心配をかけてしまっただろうか?いや、私は大切な物を失いかけたがそれを引いても償えない程の心配をかけてしまっている。

しかしノイトハイルに隷属宣言をしたのはまずかったかなぁ...Sだし何されるかと考えるとゾッとする。絶対リバンデヒを呼ぶだろう。今度こそ泣くぞ?

「姉さん、私も好きにしていいか?」

「ダメだ。私は物では無い。」

「むぅ...まぁ、良い。兎も角、体は大丈夫か?」

軽く体を見た。

巫女服は新しい物に変えられ、大量の包帯があちこちに巻かれている。

毎回の事であるため、もう見慣れた。しかも動いた事によりまた血が滲んでいる。

はぁ...どうしよっかなぁ...



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第四章 ナウル鎮守府
46.新生 パラオ鎮守府...ん?ナウル鎮守府か?


真っ白に...燃え尽きたよ...

どうも、諷詩です。夏休みとあってダラダラしていたのですが、補習で急に生活ペースが乱れて色々と大変な事になってます。私は夜型だっ!



ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

足を引きずりながら............という訳でも無く、少したどたどしいがなんとか歩き、取り敢えず提督棟へ急ぐ。設備は傷一つ無く、新品の状態であり、真新しい要塞砲の砲塔はピカピカに磨かれている。

パラオ鎮守府なんて煤汚れているのが当たり前だったからな。500cm四連装砲は流石に巨大さと使用頻度の低さが相まって比較的綺麗であったが、対空砲などは真っ黒になっていた。地面は薬莢に覆われかなり大変な事になっていた。あれは...うん。いろいろとヤバイ。

 

「報告だ。まず大和達既存艦娘の被害は軽微。既に修理は終了した。しかし私達アメストリア型戦艦についてはカイクル、ノイトハイルは無傷、リバンデヒが小破、私が中破となっている。すまない...私が殴り合いなんかしたばっかりに...かなり、揺れただろう?」

「まぁ...うん、確かにすごく揺れたけどすごかったよ?あそこまで深海棲艦に接近して砲撃をした事なんてなかったからね。良い経験だったよ」

「そうか...そうなら、良いが...迷惑をかけたな」

「いやいや、本当に気にしないでね。あ、そうだ。アメストリアもこの鎮守府を巡ってみるといいよ、色々凄いから」

「...ふむ、そうさせてもらおう。失礼する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、この要塞ことナウル鎮守府は東西南北四つの区画と地下と山に分かれているらしい。らしいというのは現在進行形で妖精さんから教えてもらっているからだ。悪いな、確認して無くて。

で、区画は西にドック。具体的な位置としてはナウル島の凹んでいる部分で、リン鉱山の方面だ。これはパラオ鎮守府のように昇降板を使った某潜水艦アニメのドック(地下)では無く、普通のドックに係留する形だ。形は簡単に言うと凸の形をしており、下の一辺が無い感じだ。右の出っ張りに私達が四隻並んで停泊し、左の出っ張りに大和達既存艦娘の船体が停泊している。無論、これからを考えて余分に大きく作られているが。

 

 

そして南は元々ヤレン地区という事実上の首都であった場所だが、私が砲撃で跡形も無く吹き飛ばし、妖精さんが元々あった国際空港を地盤から作り直し立派な軍用航空基地になった。滑走路は長さ4500mを誇り、私の船体位ある。というか、それくらい無いとCT-7が飛ばせ無い。アレは固定翼機の中では最大の航空機であり、離陸に必要な長さが2000mとちょっとよく分からない駆逐艦クラスの輸送機だ。それが離着陸出来る空港となり、大型化した。海上にも沢山並んでるけどな。バンカーは大小40を越え、格納庫は流石に地下式格納庫となった。他にも管制塔や外賓用格納庫やそれ関連の施設が幾つか。

 

東にはリン鉱石産業施設が存在していたが、私の砲撃で破壊し、今は私達の補給基地となっている。万能生産装置を三基完備し、海水浄化装置や軍需工場が幾層にも地下に構成され、地上には陸軍駐屯城があり、45mm対空機関連装砲や8cm12,7cm高角砲が所狭しと並んでいる。

更に修繕用ドックがアメストリア型戦艦用一つに戦艦サイズの乾ドック5基が設置され500mのクレーンが堂々と聳えている。主にこのエリアは「工廠」と呼ばれている。

本来工廠とは軍需工場やドックの事のため、あながち間違っていないと思う。

工廠長を始めとした妖精さん達がふぃばぁーー!!した事は言うまでも無い。妖精さん達の居住区も此処にあり、後で行ってみる予定だ。

 

北には提督棟などの建造物が立ち並び、高射砲島が人工的に近海には築かれ、高射砲塔が五本程建っている。正直やりすぎなレベルの防衛施設が揃っている。高射砲島には500cm四連装砲が一基に46cm三連装砲が三基、12.7cm三連装砲が15基配備されミサイル12000基、45mm対空機関連装砲7000基とオーバーキルな設備の島が四つ浮かんでいる。針山というのはこれの事では無いだろうか?ちょっと怖い。私でもちょっと突撃は遠慮したい。

高射砲塔の方は150cm四連装砲(固定)四基が各方面に一基ずつ。20cm三連装砲が無数。これは至る所にニョキッて生えている。ミサイルは2000と控えめで頂上がびっしりと埋め尽くされている。

対空砲だが...10000を越えてから数えるのを止めた。だってフジツボみたいにびっしりとくっついてるんだもん。あれは...キモイ。うん.......妖精さんごめんね?泣くとは思わなかったんだ。うん。本当だよ?いやさアレちょっとキモ...ゲフンゲフン!外見針山(笑)だけどさ...ね?泣かないで?

ごめんって...いや本当に...

 

すまない、話が逸れたな。建造物の方は至って普通の赤レンガ建造だった。

唯一外見に問題の無い施設だろう。断言しよう。だって異様に長い滑走路の空港とか凸型の巨大ドックとか針山島とか...うん。まともな施設が少なすぎ無いだろうか?大体の原因は私だけどさ...

提督棟は執務室と居住区に分かれ、貴賓用の部屋も完備され、食堂も此処にある。

寮は高級ホテル真っ青な部屋...というわけでも無く純和風の質素な部屋だった。

落ち着くから気に入っている。

 

そして、中央には灰色の針山がある。冗談抜きで。500cm四連装砲が掘り込まれた砲台に設置され、150cm四連装砲や46cm三連装砲、30cm三連装砲などが無数に設置され、塹壕のような堀が線を引く。五稜郭を重武装化したらこうなるという感じで、形も綺麗で色々と内部は大変なことになっている。一応、五基のヘリポートもあり、大体の事はできる万能な要塞となっている。

要約すると、

 

や り す ぎ で す 妖 精 さ ん 。

 

私でも攻略できないぞ?なんていう要塞...じゃなくて鎮守府(笑)作ってるんだよ...笑えないぞ?防衛固すぎるだろ...

''やりすぎた感じです?''

''またまだぁ!''

''もっとふぃーばーするべきだと思うのです''

''せかいさいきょーの要塞です!''

''もっとやるぞー!''

取り敢えず工廠妖精さんは止めてくれ。うん。これ以上心労を掛けるな。私が死ぬ。

これ以上の改造ってどこに何をつけるんだよ...なんだ?展開可能の防壁でも作るのか?......なんか妖精さんなら出来そうで怖いな。言わないでおこう。

そう。私は工廠にいる。提督棟から空港、ドックと巡り、今は工廠にたどり着いた所だ。

もくもくと''紫色''の煙を吐き出す煙突が地面から生え、地下へ行く人間サイズの昇降機と妖精さんサイズの小さなそれこそミニチュアサイズの昇降機が幾つも設置されている。なんか小さくて可愛い。むっ!?私も染まり始めているな...乙女(笑)に。

 

 

 

......ん?紫色の煙?何作ってんだ妖精さんは?

〔弾薬〕か?それしか考えられないが...食料とかだったらちょっと見てはいけないものを見たというとこになってちょっと食べれなくなる自信がある。一応、ホルスターからM93Rを引き抜き、昇降機へ乗る。昇降機自体は飾り気の無い軍用です!という感じの内装だが、肝心のボタンが堅苦しい機械的な文字では無く、妖精さん手書きだと思われる丸っこい字でひらがなで書かれている。

よ、読みにくい...えっと...

『1階 弾薬庫』『2階 妖精さんのマイハウス!』『3階 生産区画』

と書かれている。あ、既に私の脳内変換で漢字変換したからな?まぁ、可愛いから良し。

チーンという鈴の音と共に扉が開き、視界一杯に木箱が映る。弾薬庫というのは本当の様だ。

薄暗い照明の下木箱がぼんやりと照らされ、なんかどっかで見た光景がある。某ピラミッド行ったり壁に埋まってた地元民に襲われたりする冒険家の映画でどっかの軍隊と派手なトンパチした時の倉庫に似ている。なんでこういう知識だけは残っているんだ...

二階、妖精さんのマイハウス!と書かれていた空間は、まさにミニチュアであった。

まるで京都のように碁盤の目状に張り巡らされた道に個性溢れる家屋。二階三階どころでは無く、無秩序に上へ上へと伸ばされた感のある家屋の集合体が聳え、大通りには妖精さんサイズの戦車が走っていた。

小さな都市...基地が存在していた。しっかりと海まで再現され、軍艦がドックに係留している。あれは大和と武蔵、信濃だ。そして海上には長門や赤城が海を走っている。

空にはF-105を1/300程した大きさの戦闘機や大きなヘリが空を飛ぶ。あれは輸送機か...

空は天候や時間まで完璧に再現され、ファンがある事から風まで作っているのだろう。電光掲示板など存在せず、ホログラムが空中邪魔になら無い様に浮かび情報を映し出していた。最も小さすぎて読め無いが...こう、ガリバー旅行記ってこんな感じなのかなって不覚にも感動してしまう。()の知っている文化はアメストリアという國の文化だ。それを知っているからこそわかる。

この妖精さん達の都市はアメストリア國を精密に再現した物であると。

驚愕する。まさか、こんな感じだったとは、と。凄い...

 

「な、何これ..」

 

''ふふふー!驚いちゃた感じです?''

''我々の技術力は世界イチィィィィィィ!!''

''素晴らしき日本文化です!''

 

「そうだ、な...」

 

こんな所でも続いていることが嬉しい。()の暮らしていた環境に、本物では無いとはいえ、間近に見ることができた。こんな素晴らしいんだな...確かに日本の国は歴史でもある通りお世辞にも良いルートを辿ってきたとはいえ無い。まぁ、比較的マシであるが。

それでも、誇れる文化は存在したのだ。茶の湯が政治利用されようと、米が軍事品となろうと、一歩遅れて最新技術が来ようと、やはり元の日本の独自文化である日本文化は、誇ることのできる文化である。宗教観も最近の人間は壊滅的で心から軽蔑するが、物を大切にし、自然を愛し感謝する。海を、川を、魚を、山を、山の幸を、雷を、雨を、雪を、稲を、地球を。人が作りし道具にまで感謝をする。それが八百万の神という概念を生み、九十九神や妖という物を作り出した。

最近は仏閣をパワースポットか何かと勘違いしている感じだが、違うぞ?

おっと、270°話がずれたな。ともかく、此処に日本文化が残っててよかったぜということだ。以上!

 

生産区画は、ゴウンゴウンと、いう轟音を立てせわしなく機械が動き続け、〔弾薬〕〔鋼材〕〔ボーキサイト〕を作り出していく。弾薬は正直なところ弾種が決まる前の形は見たことがないが、まぁ、一式徹甲弾の様な感じだろう。気にしなくて良い。鋼材は...うん。延べ棒?ボーキサイトは...とんかつだな。ちょっと美味しそうだったのは艦娘だからだろうか?いや、赤城とかよだれ垂らして欲しそうにしてたし、多分、艦娘だからだろう。航空母艦は全体的にボーキサイト大好きだと思うが。私は残念ながら食べたことはない。なんか、食べたら負けだと思ってる。

 

私は目的を終え、地上へそ戻った。人工的な光ではなく、天照大御神の照らす太陽の光に思わず目を細める。まぶしっ...まぁ、気分転換にはなったかな。多分。ストレスは軽くなった感じがする。この後にまた会議になって無い胸糞悪い会議とか白き山となった書類をカイクルと共に処理していかなければなら無い。はぁ...先が思いやられる。

一度寝よう。そうだそうしよう。

 

 

「ふふふっ...忘れたかな?お姉さんは僕の(しもべ)さんだよ?」

急に耳の真横で囁かれ、飛び起きようとするが既に押さえ込まれており、起き上がることができなかった。目の前には笑みを深くしたノイトハイル。な、何がしたい?

「.......眠い...何のつもりだノイトハイル、後どけ」

「うーん...お姉さん、僕の奴隷さんだよ?指図される意味合いはないんだけどなぁ...」

「関係ない。どけ、ノイトハイル。」

「じゃあ、仕方ないね。実力行使に移らせてもらうよ」

「何を...ひゃんっ!?」

ノイトハイルがまさかの胸を揉みしだいてくる。何故にっ!?何故にそうなる!?理由が意味不明だ!そう至った過程がわからん!しかも地味に上手いし...百合?男よりマシだからまぁ良いが、妹は、無いだろう...

「ノイト、ハイるぅ!?ひぃ!...やめっ...」

「ふふふっ...可愛いなぁ...」

白衣が体を捩っている事により乱れ始め、私の羞恥心を更に強くする。前回もリバンデヒに襲われてるから恥ずかしいんだよ!次第に、体に力が入らなくなってくる。ちょっとヤバい...

そして体が火照り、息も荒くなる。私よ静まれ!あ、最後のはイタイな。やめておこう。

 

「何を、している、ノイトハイル」

「カ、カイクル?ど、どうしたのかな?」

「姉さんに跨って、何をしていると聞いている」

「えっと...あはは...」

スチャッという刀を抜き去る音が小さく鳴り、ノイトハイルの首元にギラギラと輝く手入れされた切れ味抜群の刃が差し込まれた。そう。カイクルが到着したのだ。た、助かった...

しかし、当の本人は後ろから般若が見えそうな程、キレていた。唯でさえ鋭い双眼はノイトハイルに冷たい視線を送り、ノイトハイルの首元に刃の方を当てている。峰ではなく、刃の方である。

ちょっとあぶない、かなぁ...?

「私は姉さんを呼びに来たら中から姉さんの泣き声が聞こえたものでな。何を、していた?」

「えっと....あの...僕はね?」

「言い訳など求めていない」

「あ、ハイ...僕がお姉さんを虐めていました...」

「.......確かに貴様は姉さんを自由にする奴隷宣言を獲得しているが、それは私達の妨害に関して何一つ言及されていない事を気をつけろ?」

「うん...」

す、スゲェ...ノイトハイルが論戦で負けた...九割カイクルの威圧によるものだと思うが、それでもあのノイトハイルが笑みを消ししょんぼりとした表情で頭を下げていた。

「姉さん、大丈夫か?」

「あ、あぁ...」

「随分と、甘い啼き声を出すものだな」

「う、うるさい!私だって出したくて出していない!」

「ふふ、冗談だ。それよりも提督が呼んでいたぞ?確か本日は会議出会ったはずだ」

 

あ.......忘れてた...一時的だが、忘れていた...元の予定では会議まで寝て参加して書類処理してまた寝る予定だったのだが、予想外の襲撃により睡眠時間は大幅に削れ、体力も消費した。

重い体に鞭を打ち何とか立ち上がる。まだ右足が完全ではないのだ。

じっとりと湿っていた巫女服を素早く脱ぎ捨てると新しい袴と白衣を作り出し着て行く。まず襦袢を羽織ると襟詰を更に着て袴を纏う。そして白衣を最後に羽織り、帯を締めホルスターを下げると急いで提督棟へ急ぐ。かなり...というのは言い過ぎかもしれないがそれなりの距離が提督棟と寮には存在し、戦艦寮は寮の中でもドックに近い方にあるため一番遠いのだ。だから、走って3分程はどうしてもかかってしまう。時間的にはあと7分程あるため大丈夫だが、油断はできない。

急がなければ。最近走って無いからな。遅れる危険性がある。

 

 




なんか女主人公の小説って少ないね。


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47.欲求不満

ども、諷詩です。
最近第10次マイクラブームが到来しまして、マイクラばっかりやっていました。すみません。
......石投げないでっ!

ぎょーむれんらく
明日からちょっと部の合宿に参加するので、ちょっと遅れるかもです。あ、いつもですね。すみません...


ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

急いで提督棟へスライディングし、駆け込み寺の如く会議室へ走り込んだ。

会議は14:00から開始し、現在時刻は13:59。本当にギリギリだった。あのクズどもに何を言われるかわかったもんじゃないからな。弱みを見せたくない。

「て、提督...はぁ...はぁ...」

「ん、間に合ったようだね。」

「あぁ...」

あまりに急ぎすぎて息が乱れてしまった。最近この艦娘の方で走ったことがなかったからな...いつも転移ばかり使ってたし。そもそもこと会議室に行くこと自体が稀だ。なんで一々私が文句言われなきゃならんのだ...ストレス溜まるしさぁ...まぁ、ウダウダ言っていても意味がないので、意識を切り替え、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアとしての顔になる。具体的には仏頂顔。

そして服装が乱れていないかを確認し、いつもの定位置である提督の横少し後ろへと立つ。

この会議は定時報告の意味が強い。各鎮守府がそれぞれ気になった点を挙げて行き、危険性などを話し合う。他にも見たことはないが『鬼級』や『姫級』が出現した時に複数の鎮守府による合同作戦のブリーフィングなどにも使用される。テレビ会議だが、私の技術力によって4K並の画質を誇り、都合のいい部分だけ拾うようにマイクは細工している。

しかし、実際のところ定時報告とは名ばかりの聞いていて、いや、見ていてイライラする貴族の甘やかされて戦場という現実を知らない木偶の坊の無能共と低脳な社交場となっている。

無論、あのトラック島の大佐さんのように優秀で真面目な提督もいるが、やはり身の程を知らない己を制御できない未熟者に過度な権力と戦力を渡すと腐敗し犯罪のオンパレードとなる。

 

感情に流されやすい奴に権力を握らせてはならない。

 

これすごく重要な。テスト(笑)に出るぞー。実際、自分で銃も扱ったことのないちょっと何でお前軍人やれてるってる?っていう無能共が多すぎるため、優秀な提督に負担が集中し、あまつさえ無能共が自分の地位を築くために使える人材を消すことさえある。それが大日本帝国という国の窮地に直結していることに気付かずに。ほんと呆れてしまう。一旦貴様らF-222の洗礼受けてこい。重力の影響はカットされてるけどあの機動性と速度は変わらんから。ヴァーチカルローリングシーザスを5回連続でやってやるよ。

 

『それでは、これより提督会議を始める。』

あぁ、言い忘れていたが、参加人数は主に20人ほどだ。最前線の提督が集められ、ショートランドやミッドウェー、フィリピンやサイパン島などの提督が集まっている。主催は大本営だ。

先ほどの声もあの大将のものだ。

『うむ、まず私が報告を。先日、パラオ方面にて巨大な爆発を確認。一斉に深海棲艦が鳴りを潜め、大規模な海戦があったと推測される。そこの所は、どうなのかね?』

「はい、我々旧パラオ鎮守府陣営は深海棲艦約75000と大規模で長期的な海戦に突入。

アメストリア型戦艦四隻及び大和以下艦娘全艦が総動員し深海棲艦を撃滅いたしました。」

『おぉ...』

『な、75000だと...』

『ふん、どうせ虚偽の報告だろう。』

『それよりも、旧、とはどういうことかね?』

「途中、深海棲艦増援150000により包囲され、アメストリア型戦艦四隻を残し全戦力のナウル島への移転を決定しました。おそらく、件の爆発は我々が起こしたパラオ鎮守府自体を爆弾とした核などの大量破壊兵器の爆発では無いでしょうか?』

『なんだとっ!?貴様ら鎮守府を破棄したのか!?』

『提督として許されるべきでは無いぞ!』

『やはりあんな若造に過剰な戦力を持たせるのは...』

『しかしナウル島というば事実上の最前線だぞ...?』

少なからず、無能共に動揺が走る。どうせお前ら同じことできねぇだろうが。

というか下心見え見えの発言は控えてもらいたいな...はっきり言ってキモイ。

『つまり、現在は君達はナウル島へ全戦力を移動しているのかね?』

「そういうことになりますね。パラオ鎮守府は跡形もなく吹き飛ばしておりますし、既にナウル島を改築し要塞化を進めています。」

『勝手に何をやっているんだ!』

『あのよく分からない兵器を使っているのだろう!?』

『悪魔め!』

『やはり我々が兵器を没収すべきだ!』

『そうだ!然るべき人間に''兵器''は扱わせるべきだ』

『その点は大本営も同意見だが...君は良いのかね?最前線であるぞ?』

「えぇ。既に二個艦隊を近海に派遣し半径100km圏内の深海棲艦を全て撃滅しています。」

『嘘だ!』

『貴様出任せも良い加減にしろ!』

ちょっとウルッサイデスネェ.......?こちとら疲労困憊な中命懸けで戦ってんだよ...しかも艦娘を兵器扱いするな...何回も言ってるだろう...馬鹿なの?死ぬの?というか死んでくれ。

ただでさえ妖精さんが本気を出してナウル島を要塞化し、リバンデヒとノイトハイルがわざわざ補給も受けずにすぐに出撃し、暴れている。トリッキーしたリバンデヒを想像して背筋が凍りぶるっと寒気が通る。怖っ...巫女服を血とオイルや煤に染めてM634を片手に口裂け女の様に狂気的な笑みを浮かべるリバンデヒ。背景は黒々と炎上する深海棲艦に決まりだ。

流石に精神が壊れることはないだろう。4900年も生き続けてきたのだ。それくらいで壊れられては困る。()が死ぬとリアルで壊れそうだが......

こんな馬鹿馬鹿しい考えはすぐにダストシュートし、話し合い(笑)に意識を戻す。

どうやら別の議題に移っていたようで、聞くと私の技術供与による軍備の更新が終了し、続々とF-105が最前線に使用され始めているらしい。艦娘の犠牲が少なくなるからとても嬉して事だが、その技術が他国に流失し無いかが心配だ...あの戦闘機は、現在の地球では考えられ無い設計と技術を用いた他の兵器と隔絶した強さを持つオーバースペックな戦闘機だ。F-222の方が強く技術も上だからといっても、F-105も十分すぎるほどの技術だ。

そんなのをコピーがお家芸の国家がパクったら.......滅ぼす。研究所、政府関係なく撃滅する。

元々私達アメストリア型戦艦は地球所属の海軍艦では無い。日本が責められても特に影響の無いのだ。いざとなればあると願いたい本国への救難信号を送る事も想定している。

『黙れっ!貴様は黙って我々の指示に従えばいいのだ!''兵器''の消耗など鼻から計算に入れてい無い!』

とあるゴミ屑が、ついに言った。我々艦娘に対する、重大な裏切り発言。

ふふふふふ.......どうしてくれようか...私の船体は残念ながら未だ修理中だ。ST-8は撃てることもないが、面倒なことになるので直接攻撃はし無い。が、私は持ち前の演算速度を武器にありとあらゆる軍機や情報を持っていることをお忘れだろうか?

妖精さんの協力のもと、E-7という電子戦機を飛ばしており、航空写真や盗聴、ハッキングを持ってして汚職関係の情報も集めている。

船体とのリンクを強め、中央演算処理装置に眠る膨大な情報の海の中から汚職関係のファイルを取り出し目標鎮守府の項目を引っ張り出す。データリンクでこの提督棟のスパコンに情報をコピーする。よし。

「少し、良いだろうか。貴様らの様な愚かな人間の弱みなどは、いくらでも握っている。例えば貴様...おや、資材の横領に私と提供した図面の何処かへの転送...随分とまぁ黒いな。人間よ、我々を余り舐めないでもらいたい。本気になれば、こんな地球の一つや二つ、簡単に撃滅する事さえ簡単なのだ。私の艦内には核など比べ物にならない威力を持つミサイルもたった一機で大国を滅ぼす戦闘機や一撃で戦艦を破壊する主砲をいくつでも保有している。重ねて言う。我々を余り舐めないで頂きたい。」

そう言ってホログラム式のキーボードを叩き先程のデータを送る。

これで各提督へ届いた。

『嘘をつくな!』

『貴様のような艦娘の分際で司令官に楯突くとは何様だ!?』

『虚偽の報告をしてあまつさえ上官の提督をはめようとするとは、何をしている!』

「黙れ愚民。真っ黒な貴様らなどに構っているほど忙しくないんだ。こっちは実際に命を懸けてわざわざ人間の為に戦っているんだ、国民の為にな。」

話にならない。提督に一言言ってからすぐに退出する。胸糞悪い。こんな言葉遊びをしに来たわけでは無いのだ。そんな事に時間を浪費するなら私は深海棲艦を虐殺する事を選ぶ。

戦う事こそ私の存在意義だ。

 

「機関始動!錨上げ!」

''機関始動します!''

''錨巻き上げー!''

''せんとーよーい!''

「微速前進。戦闘配置」

''主砲よーい!''

''副砲、装弾します''

予備を含め、15基の主機に火が入り甲高い音を立てる。スクリューがゆっくりとだが回転を始め莫大な量の海水をかき混ぜ、船体が前進し始める。

主砲の発射機構が下がり一式徹甲弾が下のレールに転がりマガジンに当たる部分に押し上げられ薬室に装填される。今度、多段薬室式の砲でも作ってみるか...ドイツが作ってたしな。湾岸砲は...呆れるほどあるしな...何処に置こう...

多段薬室式砲というのは通常、炸薬が通常一箇所に集められて砲弾を発射するが、その炸薬を入れる薬室が複数あるタイプの砲だ。特徴として砲身が長く、射程がすごく長い。ドイツからイギリスまでを射程に収める事ができたらしい。何それっていうやつだが、ナチスドイツはV3という報復兵器として実際に作り出している。私も最近知った。V2なら知っているんだがなぁ...まぁ、兎も角、後で妖精さんに相談してみよう。

 

''レーダーに感ありです!''

「隻数は?」

''戦艦レ級1!ル級3!二級5、距離50000です!''

''やっちゃう感じです?''

''やっちゃいます?''

「よし、主砲、座標固定!自動追尾」

''座標固定ー!''

''電探とれんどーします!''

すると、主砲が毎秒5°のスピードで旋回し、砲身を上げて行く。この主砲、砲身は長い為...80口径長位?だから少し遅めに上昇する。そして、

「ってぇー!」

海面が扇状に叩きつけられたかのように衝撃波が広がり遅れて黒々とした爆煙と紅蓮の炎が海を覆い尽くす。音速を軽く超えた一軒家サイズの砲弾は放物線を描かずにまっすぐに飛ぶと、一際巨大な、滑走路と戦艦を無理矢理くっ付けた感じの美しさの欠片もない深海棲艦に命中し、何事もなかったかのように貫通すると、その更に後方に居た深海棲艦に命中し大爆発を起こす。砲弾は横っ腹に命中。船体をまっぷたつに裂き、巨大な水柱を立てる。よし、まずは一匹。

「続いて二射、ってー!」

再び衝撃波が艦橋を襲いガラスを揺らす。砲弾は小さな深海棲艦に命中し大爆発を起こして爆沈する。なんか凄く呆気ないと感じるのはアメストリア型戦艦だからか?ふつーはこんな感じにならないと思う。うん、最近自覚してなかったけどやっぱりチートだなぁ...いやぁさ?そう考えると()のテンションがダダ下がりになるから考えなかったんだけどさ...

''やった感じです?''

''まだ大きい艦影あるのですー!''

''核使うのだ!''

''それは駄目ーっ!''

''あうとー!''

「おい、妖精さん核は使わんぞ?あんなのより我々の方がよっぽど脅威だ」

''賛成なかんじです!''

''同意しますー!''

''核より危険な戦艦?''

''へんなのー!''

変なのって...あんたその戦艦に乗ってるんでしょうに...

いやさ?戦いに楽しさを求めるとひゃっはーさんになるからさ、それは提督に迷惑をかけてしまうから自粛しているが、戦い甲斐がない。もっとさぁ...こう、深海棲艦10万とかさ?

あ、世界中パニックになるね。やめとこう。フラグになる。

でも、根本がバトルジャンキーなので、本能的に戦いを求める。お前日本人だっただろって?

もうアメストリア國の艦娘ですし?平和ボケしすぎた国民性はポイしちゃいましたしおすし?

既に日本人というアイデンテティは消えかかっているかもしれない。日本伝統については絶対に消えないだろうが。まぁ、いいや。考えるのやーめた!

 

「第三射、弾種変更、榴弾式結界弾。撃ち方用意!」

砲塔が一旦元の角度へ戻ると砲弾の種類が変更され、装弾される。この間、実に50秒。

史実では弾種変更には30分程かかるらしいが、たったの50秒だ。これは、艦娘特有の事情からきている。〔弾薬〕というのは様々な砲弾に変身するのだ。だから、レールに並んでいようが装填されていようが発射されていなければ弾種など変え放題なのだ。まぁ、毎回50秒掛かるし逆を言えば発射したら弾種が固定されてしまうのだが。

詰まる所、既に撃てるのである。

「撃ち方始め!」

高性能な113号電探により正確な位置が特定され、座標固定。そして前方2基の主砲が再び旋回し、最も当たると演算された仰角に砲身をあげると恐ろしい速度で砲撃を開始する。

ドンドンドンッと腹の底から響く巨大な衝撃が連続して起こり、海面に薬莢が転がってゆく。大きな爆雷を投下しているようにも見えないことはない。まぁその大きさから言って爆雷のレベルでは無いが。

撃ち出された大量の砲弾は自らが意思を持っているように深海棲艦に吸い込まれ船体に食い込むと内部の結界を破裂させ艦内をズタズタに引き裂く。それがさらなる引火や誘爆を招き、まさに地獄絵図となる。元々、それを目的とした榴弾式結界弾だ。船体自体に対してでは無く、その内部の設備の破壊、乗員の殺傷を目的とした砲弾だ。陰陽術がふんだんに使われており、少々〔弾薬〕の消費が大きいが、大して気にならない。

''目標に全弾命中した感じです!''

''沈没します?''

''するー?''

''沈んじゃえ〜!''

''もっと撃て〜!''

砲弾は一発も外れずに当たった。これ自体かなり異常な事だが、自動射撃統制装置による電探連動の砲撃はまず外れない。むしろ50000位の距離で外してたまるかという感じだ。

しかし中央演算処理装置に負担を強いている事も事実だ。正直ちょっと頭が痛い。

時刻は...15:10。おやつの時間だ。私達艦娘には関係な......あるか。

私は興味無いが。それよりも昼寝したい。最近寝てなかったから身体が睡眠を欲している。

医務室は...また怪我してるって誤解されるから却下。

甲板は波がすごいから確実に濡れるから却下。

第二艦橋は暗すぎて時間がわからんから却下。

此処は...今までの経験上かなりの確率で狙われるのでちょっとやだ。

機関室は...うるさすぎる。却下。

主砲、却下。

あ、ちょうどいい場所あったじゃん。妖精さんに戦闘の指揮権を渡すとすぐに転移する。

やっぱ転移は楽だわ...全長4600m超えている身としては。

 

私が転移したのは格納庫。と言っても隼の方では無くF-222改が放置されている後部格納庫だ。上の甲板に通じるエレベーターに続く中央の道を中心として、その道の左右にF-222の巨体が順番に佇んでいる。天井が高いため、照明の光は弱く、ぼんやりと戦闘機を照らしなんとも言え無い美しい光景を演出している。少し、淋しそうな印象を受けたのは艦娘だからか、日本人の感性故か。事実最近飛ばしてい無いので原因は私にあるが。

で、当初の目的であるF-222の一番機に登ると、その広々とした背中に仰向けに寝そべり、目を閉じる。この戦闘機無駄に大きい為、主翼、胴体合わせて10m以上ある。ゴツゴツとしたクソ厚い装甲のせいで寝心地は良いとは言え無いが、これでも兵器であるため、背中の寝心地など考慮されているはずもないと無理矢理納得した。まぁ、寝心地の良い戦闘機ってなんやねんっていう話。

主翼はその特徴ともいえる根元に切れ目が走り、戦闘時には急な旋回として主翼が展開、回転し恐ろしい空中戦闘機動を見せる。しかし、その羽を私は本来の使い方をせず、ベッドとして使っている。尾翼は必要な時以外ペタンと主翼にくっついている為睡眠を妨げる物はない。

意外にも寝れる事がわかり、私は安心して意識を微睡みの中へ入る。

 

私の艦娘としての機能として電探が反応を捉え、意識を覚醒させる。あの中央の大きな島とそれを守る布陣の諸島は我が母港のナウル鎮守府だ。やっぱ電探から見てもわかるがこれは可笑しい。

これを作った妖精さんも、これを作る原因も。

どうやら、時刻を見るに妖精さんはゆっくりと周囲を順航していたようだ。

太陽が水平線に沈みかけ、空を夕焼けの綺麗なオレンジ色に染める。やっぱ海上からみる日の入りは格別だと思う。凄く綺麗だ。

5ノットで防壁を通過し、三隻の停泊する巨大ドックにこの身を滑らせると投錨し、機関を止める。同時に妖精さんが我先にと退艦を始め、私もドックへ直接転移する。後で提督に謝らないとなぁ...絶対に迷惑かけただろうし...でも元はといえばあのゴミ屑達が原因だ。他人の所為にしている気もするが、気にしない気にしない。私達を兵器呼ばわりするのは許さないからな。

というか、不思議なんだが、大体の艦娘は人間より遥かに長い月日と命がけの経験を積んだ人間で言うかなりの年月を重ねた老人だ。実力は別として。

なのに、なのにだ。何故若い筈の人間が私達を敬わずに命令しかしないのだろうか?

目上を尊敬し、尊重するのは基本だと思っていたが...そんな風潮も消えてしまったのだろうか...?

年齢序列は確かに良くないが、せめて敬意位は持って欲しい。私達は国を守る、国民の為に戦って人間に沈められた戦士なのだから...ただのエゴかなぁ...でも敬意は持って欲しいなぁ...

見下す目線もだ。下心ある目線は...うん、艦娘美人しかいないからわからないこともないから実害がない限り放置してやる。

 

 

 

今日なんか色々と考えることしかしてないからもう寝るっ!

......リバンデヒ?何で私の布団に居るんだ?



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48.日常でも戦闘が無くならない件について。

ま、間に合わなかったぁーーー!
スライディング!→そのままtodust!
いやー、なんか全然筆が進まなくてですね...はい。スミマセン...


48.日常でも戦闘が無くならない件について。

ーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私だ。パラオ鎮守府が新生ナウル鎮守府となってから早一ヶ月。

いやー、時の流れってもんは随分と早いと実感した。鎮守府の移動が夏頃だったが、既に季節は秋へと移り変わり始め、日本では紅葉の紅葉が暖色系の葉で山を彩っているだろう。

行ったことないから知らんが。

此処、ナウル島は特に影響があるわけでもなく、あるとすれば土地が大体コンクリート製になった為昼暑く夜暑い位だ。クッソ暑くてやってられんから妖精さんにお願いして寮にクーラー擬きを導入した。擬きというのは冷暖房は勿論、空気洗浄に湿度調整、そして何故か目覚ましという謎機能が追加されているからだ。しかも掃除いらず。便利だが、何処をどう作ったらそうなるのかよく分からない。 やっぱり妖精さんはチートだ。

という訳で現在太陽が真上に来てクッソ暑かったので寮の自室にてぐたーっとしている所だ。

無駄に広いベッドに寝っころがり、特に何をする訳でもなくただ寝っころがっている。

こういう時間は大切だと思う。何も考えずにただ寝る。

巫女服のままだから皺になるかもしれないが、作り直せばいいし別に気にしない。

M93Rを始めMk.23やベガルM115やM634も全てガンラックへと納め、丸腰だ。流石にカランビットがテーブルと上に置いてあるが。

そして、一番の問題が隣にいい匂いのする柔らかな肌に豊満な胸を惜しげもなく私に押し付けてくる少し幼そうで、いつも纏めている髪を珍しくおろしている...つまりノイトハイルが何故か寝ていることだ。

いや、何かな?この部屋に来たら既に寝てるんだよ。自分のベッドじゃなくて私ので。

なんでだよ...いやさ、嫌じゃないけど...どうよ?ノイトハイルだから考えるのも馬鹿らしくなってもう面倒くさくなってノイトハイルをいない事にして寝ようとしたのだが、寝ているはずなのに目敏く察知したノイトハイルは私に抱きついてきた訳で、下手に動けない状態が出来ている。

もう、いいや。これ以上考えたくない。寝よっ...

 

 

「どうしてこうなった...」

はいはいアメストリアだ。目の前では普段まず言わないであろう暴言を吐きまくりながら激しく、火花が派手に散るほどに刀を打ち合うカイクルとノイトハイルがいた。

カイクルは斬馬刀を考えられないスピードと手数でより重い攻撃を繰り出しノイトハイルがそれを躱し受け流し斬り返し果敢に反撃をしている。

すくい上げるように斬馬刀が地面すれすれを斬り、ノイトハイルがそれを察知し直前に飛び上がり上段から斬り込む。カイクルは斬馬刀をそのまま遠心力を利用して手元に戻すと刃をノイトハイルに向け切り上げる。

空中で刃と刃がぶつかり合い、甲高い金属の擦れる音が響き火花が飛び散る。

カイクルは斬馬刀を引くとノイトハイルはそれを追うように斬り結び一切の予断を許さないガチの殺し合いが発生していた。

 

何故こうなったかを説明しよう。

まず、あの後私も寝たのだが、随分と寝ていたようで日が沈みかけ、カイクルが夕食の準備が整った事を知らせようと私の自室に来たら私にノイトハイルが抱きついていた→カイクルがキレる→鬼ごっこ→殺し合い ←今ココ。

という訳だ。それぞれが激しい銃撃戦を繰り広げたんだが、全く当たらずに薬莢だけが鎮守府全体に転がるだけだったので接近戦に舞台が移り現在に至るという訳だ。

 

いや、何でよ。

 

カイクルは私を大切に思ってくれるのは嬉しいんだが、だからと言って仮にも妹であるノイトハイルを軽く本気で殺しにかかるのはどうかと思うんだよなぁ...カイクルは「大丈夫だ。少しお灸を据えてやるだけだ」と言っていいた為、殺す事はないと思う...うん。ガチギレしたらわからないけど...まぁ、こうしてちょっと過激(笑)な姉妹喧嘩が鎮守府全域をフィールドに繰り広げられている訳で...迷惑極まりない。しかも原因に私が多大に影響を及ぼしている為私も関係無くはない訳だ。

 

「しかし...いい加減やめないか...」

 

もう、良いよね?ベガルM634を天高く掲げ、グリップをしっかりと握りこむともう片方の手でハンドガードを握りスコープを覗き込む。

コイツの反動は凄まじい為きっちりと地に足をつけている。風向や風速、距離を艦娘パワーで測ると()の勘で照準をカイクルに当てる。

そして、ズガァンッッッ!!!という何が起きたしっていうレベルの銃声?が乾いた空気を乱雑に叩きまくる。マズルブレーキを中心として巨大な爆炎が上がり、バレルが大きく後退し、同時に太すぎる薬莢が排気口より排出されガコンという響かないぐぐもった音を立て地面に転がる。

口径19.8mmの最早銃弾では無い弾頭は狙った通り、カイクルとノイトハイルの間に着弾し、カイクルの斬撃や銃撃戦にも耐えた地面を軽々と抉り、大きなクレーターを残す。

 

「ッ!?」

「おぉ〜」

 

カイクルは驚きのあまり動きを止めてしまっているが、ノイトハイルは驚いてはいるものの、声を上げるくらいには余裕であるようだ。何この人。

斬り合いの最中にど真ん中に銃弾が命中したのにまともな反応をしていない。

無論、そんなことには慣れていないはずなのにだ。なんでかなぁ....何処でそんな度胸身につけたのかなあ...まぁ、取り敢えず......

 

オイタノスギタコニハチョット''キョウイク''シテヤラナイトネェ?

 

カイクルとノイトハイルの叫び声と泣き声がナウル鎮守府に響き渡たったのはいうまでも無い。

ん?何したって?アメストリア伝来の般若面に右手にM634、左手にスタンショットガン片手に2人を正座させてちょっとO☆HA☆NA☆SH☆Iをしただけだぞ?特にキツイことはしてい無いつもりだが...まぁ、なんか二人共がガチ泣きしたので止めたが...なんか問題あったかなあ...?

リバンデヒ曰く、「あれはこの世の地獄では無いかしら?ソ連の尋問より酷いわよ?」との事。失礼な...

 

閑話休題

 

やはり私はよく寝るのだろうか?

O☆HA☆NA☆SH☆Iをした為に体力を消費し、かつなんか飽きたのでまた私の船体の艦首に転移し寝っ転がっている。なんか眺め良いから此処に来ちゃうんだよな。

は?仕事しろって?非番だから良いだろ。というかカイクルは今日巡回だったはずだが...?

従属艦が天龍、龍田、大鳳だ。龍田は怒ると怖いぞー!(棒)

 

『お姉ちゃんっ!またあの説教したんでしょう!カイクルが動けなくなって私が出ることになったじゃない!』

「......うぅん...すまない...つい、な.......ふわぁぁ...それで、どうだ?」

『どうって...あぁ、ノイトハイルがまた泣いてたわよ』

「......やりすぎたかもしれんな...」

『いや、間違いなくそうでしょう。すぐに慰めなさいよ?』

「了解した」

 

とのこと。あのノイトハイルが撃沈しているらしい。

やっぱやりすぎたな。(確信)

という事で、素早く起き上がると甲板に置いていたM93Rをホルスターに入れ、M634のキャリングハンドルを持ってバイポッドを折りたたむ。このバイポッドは理論上300kgまでは何されても大丈夫らしい。流石に300kgの物体を大気圏から落としたりレーザーには勝てないが。

太さは私の手がやっと包み込める程太く、三箇条の支点で支えられている。まず根元、そして一本目の一回り太いものに、ソレに収納する形で二本目の少し細い柱がある。まぁ、よくあるバイポッドだ。

そこのお前、何か変な妄想したか?したか?おい、19.8×100mm劣化ウラン爆裂徹甲弾食らうか?

 

まぁ、そういう事で、寮まで戻り、私室まで戻る。

あ、そっかぁ...私ノイトハイルと同室だ...何故だっ!すごく入り辛いぞっ!

こう、ドア越しでも分かるほどに「Zuuuuuuuuuuuuuuuuun......」っていう雰囲気が漏れ出しているんだよ!なんでだよ...そんなにノイトハイル精神弱くなかっただろう...

 

「の、ノイトハイル」

「ひぃっ!?お、お姉さんっ!?!?」

 

なんかすっっっごい怯えられてるんだが...キャラ崩壊激しすぎませんかね?

妹達の怯える姿はあんまり見たくないんだが...

 

「は、入るぞ...」

「えっ!?ちょ、ちょっと待って!?」

との事。これで待つ奴はいないだろう。念の為室内で取り回しのし難いM634は壁に立て掛け、ドアを上げる。

 

...

 

.......

 

..........

 

 

「......は?」

 

なんか、さぁ?ドア開けたら視界いっぱいに黒い砲口が見えた。

なにこのホラー。四角く、ゴツいマズルブレーキが堂々と視界を遮り、小刻みに揺れまくっている事からコレが銃であるとわかる。

此処にいるのはノイトハイルのみの為、恐らくベガルM634を向けられているのだとなんか冷静に解析してみる。いやいやいやなんでさ!?

なんで妹に銃口向けられなきゃならんっ!確かにやりすぎたとは思ってるが...

 

「あ、あの...ノイトハイル、すまなかった。少し、叱りすぎたようだ...本当に...すまない...」

「...あ、えと...あの...お姉さん?僕もわるかったから、ね?」

 

銃口が下げられ、重い音を立てライフル(笑)が床を転がる。そして私に何かがぶつかり、姿勢を維持する為に思わず右足を一歩下げてしまった。

ノイトハイルが抱きついてきたのだ。良く見ると肩は小刻みに震えており、あの何時も一房に纏めている白いリボンは解けられ艶やかな黒髪が乱れていた。といっても元々の髪質がいい為たいして乱れていないが。

 

「うぅ...怖かったんだよ?」

「あぁ...すまない...こわがらせすぎたな...」

 

普通、本人を散々怖がらせた言わばトラウマを植え付けた奴に抱きつく人などいないだろう。しかし、ノイトハイルはそれでも私に抱きついてくれたのだ。

なんか素直すぎる気もするが、疑うのは罪だろう....ちょっと待て。

 

「おい」

「むっふふ〜〜」

「お、い!」

 

あろう事か、さっきまでの怯え様は嘘の様に震えは止まっており、私の胸を揉みしだき始めた。

いや、何で!?

 

「ムフフフ...お姉さん、奴隷宣言、わすれてないよねぇ...?」

「う、うむ...」

 

なんか、大変イヤーな予感がする。まさか...リバンデヒ、計ったなっ!?

ノイトハイルが泣いているという嘘の報告をし、私の行動を予知して全く泣いてもいないノイトハイルが待機し、さも怯えている様に演技し、私に抱きつく。あとは...察しろ。ノイトハイルだから。

 

「流石に僕もあの説教は怖かったけど、今回はカイクルお姉さんがいないもんねー?」

「カイクrーーーむぐぅ!?」

 

なにも考えない...なにも考えない...なにも考えない...私は戦艦。

私はアメストリア型戦艦一番艦アメストリア。世界最強の戦艦...妹に襲われてなんかない...ない...と思う...

しかし、現実は非情である。内容は確実勝手に想像してくれ。しらん。私は襲われてなど無いと思いたい。カイクルーー!help!help!




ホモより百合の方がマシっしょ?
というか作者は百合派です。あと、主人公は大切にするので愛着が湧き出来るだけ苛めてあげる派です。
私はSでは無いっ!

















多分。


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49.迷惑な視察 l

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

突然だが、ナウル島の位置はご存知だろうか?

座標としては南緯0度32分 東経166度56分/南緯0.533度 東経166.933度というまぁなんとも言えないエリアに存在する島だ。わかりやすくいえば珊瑚海や魔のソロモンより少し日本側にある孤島である。

この深海棲艦との大戦が始まる以前はナウルにも国があったが以前リンによって儲けたせいで国民の生活が堕落し、リンが撃沈すると失業率90%以上というちょっと国として終わっている島であった。そのため、まともな軍など持っている筈もなく、一瞬で深海棲艦の支配下となった。他国にもとうの昔から見捨てられていたのでまぁ別に良い。私達が有効活用しているからな。

そんな領土世界第2位の国(笑)は滅び、現在は世界最強の要塞もとい鎮守府があるわけだが、当然、無許可の突貫工事である。第日本帝国はもちろん、最近やばくなってきているオーストラリアや艦娘が独立心高過ぎて軍として成り立っていない米国など、どの国にも一切の告知なく建築したため、当然問題が発生した。

 

まず、例の如く米国が煩く抗議してきて、元々俺たちの領土だ!という世迷言を言っていたし、ついでに私達アメストリア型戦艦を接収しようとしてきたので白い家にICBMをぶち込んでおいた。

 

そして、オーストラリアだが、案外煩くなかった。オブラートに包まれた抗議文だったが、本心か、深海棲艦の釘付けになる鎮守府(囮)が出来て嬉しいようだ。まぁ、軍事力では少し劣っているからな。しょうがないし、私達も戦うこと大好きなので異論はない。

 

で、何故かまたあの無駄に領土広くて国民が例の黒光りするGの如くうじゃうじゃという国家やちっさな半島一つ統一できない四流国家が意味不明の脅迫文を送り付けて来た。うるさい。

 

それで、だ。

今一番困っているのは大本営と米国海軍が視察に来るということだ。

大本営は良いだろう。最近頑張っているみたいで、戦力にも余裕が出てきて『大掃除』も行われたみたいだ。一応は帝国海軍に所属しているため、まぁ良いだろう。

しかし米国海軍は別である。何で米国が首を突っ込んでくるのか全く理解できないが、もうそういう国だからしょうがないと諦めている。

駄菓子菓子、何故私達が迎えに行かなければならないのか?全くもって理解不能だ。

ふざけんなよ。何で米国海軍を帝国海軍が迎えに行かなきゃならないんだよ...めんどくさいなぁ....まぁ、確かに米国の艦娘にはあまり興味はないが、ない事はない。少し行ってみたい気持ちはある。

「リバンデヒ、どう思う?」

「えぇ...おそらく、小手調でしょうね。太平洋を横断して米国まで行き、ナウル鎮守府まで行けるか、そしてまた帰りも送る事ができるか?そこを確かめたいんでしょう。」

「やはり、か...」

「私が行こう」

「ダメだ。カイクルはノイトハイルとこの鎮守府の防衛についてもらう。リバンデヒ、お前もだ」

「わ、私も?」

リバンデヒは付いてくるつもりだったのかキョトンとしている。可愛い。

恐らく挑発している。私達に出来るはずがないと。かつ、米国には出来ないから実力調のついでに乗せてもらおうというつもりなんだろう。まったくふざけた連中だ。

「......了解した。では厳重警戒態勢にて待機しておく。防衛システムは起動しておこう。」

防衛システムは言わずもがなあの無駄に多すぎる砲の数々に分厚すぎる防壁だ。

あの私達が通れるサイズの門?が閉まるようになっている。

船体のほうはバッチリのため問題はないのだが、米国海軍用の食料に客室、妖精さんの指示はしていない。以前の失敗は絶対に犯したくないので、重武装にて接待する予定だ。

『あー、聞こえているかな?アメストリア、すぐに提督室へ来てね』

「では、呼ばれたので失礼する。頑張ってくれ。」

そう言うと妹達は己の船体へ転移し、警戒へと向かう。

 

「提督、何かあっただろうか?」

「え?いや、これからアメリカに行くから、ちょっとね。」

「?」

「君、今のレベル99だよね?」

「まぁ、そうだが」

何故か、提督室へ行くとそわそわした提督がいて、何故かレベルの話になる。何で?

ん?なんか忘れている気がする......?

「えっと...うん、いいや。ごめんね。送迎は大変かもしれないけど、頑張ってね。」

「.....?うむ。潜航して高速航行する予定だ。」

そう。私はせっかく潜れるのだ。海上を走ると必ずと言っていいほど深海棲艦にエンカウントするので、潜水艦しか居ない海中を移動する事にしたのだ。楽だし。

しかし、なにも利点だけではない。海上では500cm四連装砲をはじめ150cm四連装砲や46cm三連装砲、30cm連装電磁力砲、20.3cm連装砲、45mm対空機関連装砲、ミサイル4500基が一斉に攻撃する事が可能であるが、海中では全ての攻撃が不可能となる。考えれば当たり前だ。

海中で主砲など撃ちたくない。面倒だし海水溜まるし。撃てるとしたら...水流か?撃つっていう感じじゃないが、90ノットのスクリューの生み出す水流は凄まじいものだ。大和のバラスト圧なんか目じゃない。

 

「機関始動!碇上げ!」

ウンターガングエンジン15基が唸りを上げ、艦全体にエネルギーを回し、艦橋の電子機器が一斉に起動する。画面が一瞬処理による膨大な文字で埋め尽くされた後、船体のチェックがされ、異常無しとでる。いや、私艦娘だから分かるし。自分の体調くらい分かるし。あ?以前風邪で倒れた?気にするな。あれは疲れていたんだ。

兎も角、全ての碇が巻き上げられ、船体にロックされる。

「微速前進。」

''びそくぜんしーん!''

''スクリューぐるぐるー!''

''しゅっぱーつ!''

巨艦がゆっくりと動き出し、その巨艦以上の広さを持つドックから離岸する。

そして、4つの巨大な舵を切り、門へと向かう。ドックを見る限り、かなりの数の艦が既に出航しており、警戒か、見送りかだろうと思う。私も()も嬉しい限りだ。

「20ノットに増速。門を抜けたのち、全砲をロック。隔壁を閉鎖しろ」

''増速しまーす!''

''ロックする感じです?''

''隔壁閉めちゃう?''

''潜る感じです?''

ぐん、と船体が増速し、門を抜け始める。まずは艦首から100m程が鎮守府から抜ける。

外海には、リバンデヒやカイクル、ノイトハイルや大和、武蔵、長門、陸奥、高雄、愛宕、龍田、大鳳、吹雪、熊野、酒匂、那珂、葛城が勢ぞろいしていた。残りは警戒艦隊だろう。しかし、これだけいればかなり圧巻である。アメストリア型戦艦が大きすぎて大和達が内火艇みたいだが、それでも戦艦である。三基の150cm三連装砲を堂々を掲げ、日本海軍特有の美しい艦橋を誇り高く天に伸びる。

艦娘として少し増速して、更に門をくぐってゆく。

『いってらっしゃい』

『姉さんの航海の安全と奮闘を願う。』

「あぁ、行ってくる。妖精さん、70ノットまで増速!全武装ロック!」

''増速ー!''

''もっとすすめー!''

''バイバーイ!''

''砲塔、ロック確認''

''砲身、下げます!''

感覚で分かる。主砲、副砲、対空砲、ミサイルハッチの順で次々と武装がロックされ、砲塔に海水が入らないように隔壁が閉まり、艦内も続々と外側からしまってゆく。

船体はぐんぐんと進んで行き、70ノットという考えられない速度で海面を滑る。

「潜航開始!」

''ちゅーすいしますっ!''

''海水ドバドバー!''

''潜っちゃう感じです?''

''潜る感じですー!''

徐々に船体が下がって行き、艦首が海面へと刺さり、大量の海水を巻き上げる。

しかしそのまま船体は沈んで行き、甲板まで沈んでゆくと、外部への道が全て厳重に閉鎖され、一気に沈んでゆく。まず主砲と甲板にある副砲が沈んで行き、艦橋群が下からどんどんと飲み込まれてゆく。海中でダメージを受ける可能性のある113号電探などは収納され、抵抗も少なくなっている。

そして遂にこの第一艦橋も水中に入り、視界が青一色に染まる。

といっても私が潜航する影響で海中はぐちゃぐちゃにかき回されており、泡だらけだが、南国の海とあって、とても綺麗だった。太陽の光が屈折でゆらゆらと差し、幻想的な光景を、一隻の戦艦が進んで行く。四つの水流を艦尾から吐き出しながら、高速で進んで行く。

「妖精さん、あとは任せた。米国10km手前で浮上しろ。」

多分試算では明日には着く。ゆっくりとさせてもらおう。

''りょうかいですー!''

''艦娘さんは休んでくださいー!''

''静かで懐かしいですねー!''

確かに。最初は私一人だった。妹達は一隻もおらず、この世界にきて最初はたった一隻で、すぐに大破した。今となっては懐かしいな。人恋しいと思ってしまう。あの騒がしさに慣れてしまったのだろう。人間なれるのである。怖いねー(棒)

まぁ、そういう訳で暇なので武器庫へと向かう。

 

ハッチが開き、一コンマ遅れて照明が灯り、ズラリと並んだ銃器を神々しく照らす。

この光景は好きだ。なんかかっこいい。いい感じに未来感が出ているが、慣れ親しんだ硝煙の匂いが仄かにし、思わず笑みを深める。

大量の銃器をまえにニヤニヤする美少女という誰得な展開になったのでさっさと中へ入る。

今回は、思い切って武装をチェンジしてみようと思う。

ライフルはベガルM634、M115AX。

アサルトはベガルM145。

拳銃は今まで9mm口径のM93Rを使用してきたが、いい加減変えようと思う。

それで、だ。今まで触れてこなかった何故か巨大な拳銃の並ぶエリアへ移動する。

そこには三種類の拳銃が置かれており、それのどれもが巨大である。30cmもあるんだもん。ナニコレ。

まず、一番大きく、外見SOCOMに見えるが、下にレーザーポインターのついた全長450mm重量1.5kgの怪物拳銃。口径13mmという異常性にも関わらず、兵士の間では軍関係なく人気を集めていたと言う。(()談)ベガルMH-5、通称五式自動拳銃。

次に、ベガルMH-4、四式自動拳銃。口径12mmと五式に比べ1mm小さいが、外見デザートイーグルのすこし小ぶりな拳銃だ。まぁ、全長240mm、重量1.2kgというバケモンだが。

そして最後はベガルMH-6、試製六式自動拳銃。口径11mmと比較的小口径だがそれ故に反動が少なく、初のフルオートを搭載したらしい。まぁ、五式とか四式のフルオートなんか見たくないわな。

 

え?普通に改造されてた?.....うそん。

 

そういう訳で、無論考える訳なくMH-6をとる......訳もなく五式自動拳銃を取る。ずっしりとした比べ物にならない重さを直に感じ、改めてこの拳銃の巨大さと溢れる重厚感に酔いしれてしまう。

なにこのロマン兵器っ!超感動する!今まではなんか使い辛そうだったから避けていたが、威圧としても使えるかなと今回導入した。

棚の一段下にあるこれまた巨大なダブルカラムのマガジンを滑らせるとセーフティを掛け、新しく用意したナイフの鞘のような長さのホルスターに五式を両腰に入れると、思わず撫でてしまう。

これからよろしくと思わず声に出してしまうが、一人だからいいだろう。

私の細い指と比べて太く分厚いトリガーに、大きなグリップ、300mmの長いバレルに、重厚感溢れるフルメタルのボディ。艶のある黒には刻印で〈VEGAL〉と筆記体が彫られている。

うん。とってもかっこいい。一目惚れしたわ。

あ?キモイって?知らんがな。この銃の魅力が分からないようだな。可哀想に。

 

ぼふんっという反動が返ってくるほどの高反発なベットに寝っころがる。

シーツは絹のような柔らかさを持ち、モッフモフである。時間はあと20時間はあるので、すこし寝るつもりだ。暇だし。

''わー!''

''トランポリンだ〜!''

''ピョーンってとべるのです!''

''ここからの眺めも素晴らしいですなー!''

''この双丘はまた、見事な!''

なんか妖精さんならぬ、変態さんがいたが、気にしない。大きいのはとうの昔に自覚している。

90位あるのか?知らんけども。だって割とどうでもいいんだよなぁ...街中ではジロジロと見られるが、あれは仕方がないと割り切っている為、あれはあれだ。

テーブルに五式自動拳銃二丁は置かれ、照明を受けて鈍く反射している所がまた良い。

そしてM145やM634が傍らに立てかけられており、M634は弾薬BOXを抜きテーブルに置いている。あれだって何時でも装着しておくものではない。

''わーい!もっとやわらか〜い!''

''ぽよんぽよんするー!''

オイお前ら...何で私の胸の上に登ってくる...しかもお前飛び跳ねるな!地味にクるから!

そこのお前は寝るな!お前ら良い加減降りろ!

「んっ.......お前ら...降りろ...」

そう言って、摘んで降ろしてゆく。

何で私の胸に弾力があったかだって?お前も変態だな。まぁ、寝る体勢だから巫女服は脱いでるんだよ。だから当然サラシも取っており、襦袢一枚な訳だ。透けてないからな?

掛け布団とでも言うのだろうか?シーツを思い切りかぶると、目を閉じる。

眠い...

 

 

 



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50.迷惑な視察 ll

妖夢のクリアファイル探して神戸、京都のアニメイトをハシゴしてきた諷詩です。目的は帰省ですよ?
遂に50話を突破しました。連載を始めて5ヶ月ですが、感慨深いですねぇ...
帰省から帰ってきました。次も続きなので、なるべく早くあげたいですね。


ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

''きゅーそくふじょー!''

 

妖精さんの声を機に、アメリカ領海内に、巨大な黒々とした艦影が浮かび上がる。

しかし海上にはその影の主は居ない。だが、大量の海水が排出された影響で海面が乱れに乱れると、艦橋の位置から、測距儀が飛び出し、続けて大和型の艦橋がそのまま大型化したような鋼鉄の城が飛び出す。

 

視界が海中から一気に上昇して行き、甲板を見ると海面から大陸が出現したかの様に見える程の巨体さで、側面から甲板上の海水を追い出し、主砲が仰角を上げ、武装のロックが次々と解除されてゆく。破損の恐れがあった電探などは海上に浮上した事で展開して行き、とてつも無い距離を警戒してゆく。

「浮上終了」

''各部浸水なーし!''

''電探問題無い感じです?''

''電子系統異常なしですー!''

「武装旋回テスト開始しろ」

500cm四連装砲の五基が右へ左へと順に旋回してゆく。海水が未だ残る中でやっているため、かなり迫力がある。撒き散らしているのには違い無いのだが。

副砲の150cm四連装砲六基が別々に旋回し、四本の砲身が上下に動く。

46cm三連装砲は20基も装備されているため、時間がかかってしまった。連装砲?知らんな。甲板下の窪んだスペースにあるから心配だったが、まぁ、問題なかろう。

45mm対空機関連装砲は電探連動の為、計3500基、片舷1750基の一斉稼働となる為、テストは楽だった。

「両舷前進!ここからは米国海軍の介入の恐れがある!決して当てるな!掠らせるのはアリだ」

''イエェェエェェェィ!ガンガン撃つです!''

''ヒャッハー!ぱーてぃーです!''

中々に好評の様だ。なぜに...

 

さて、現在時刻はヒトマルマルマル、つまり10:00なわけだが、来いと言っていたのは12:00な訳である。しかし、それは出発時間である為に、到着時間が早かろうとあまり関係ない。

準備が垂れていなかったというのは言い訳にしかならんだろう。

私も二時間前行動になるとは思っていなかったが。

電探の出力を上げ、アメリカ艦の位置を把握してゆく。どうやら、今の所は周囲に艦は一切無く、本当にここアメリカ領か?と疑ってしまう。てか本当に此処米国だよな?な?

「.....速度を上げる。警戒を強め、主砲はいつでも放てるようにしておけ」

主砲砲塔内では、装填機構が作動し、レールを転がって来た〔弾薬〕の三式弾を装填すると前進し、薬室内がロックされる。各砲塔四本ずつ砲弾が装填され、バラバラの方向へ旋回してゆく。

副砲は......どうしよっか...

 

ヒトフタマルマル、遂に約束の十二時となった。

私は指定された軍港の沖合10kmに停泊し、錨を全て降ろしていた。

警戒態勢は解いておらず、150cm四連装砲や46cm三連装砲も追加で作動させておいた。

これで大体の防衛はできる。あとは妖精さんの判断て。動くことになっている。万が一深海棲艦の大襲撃にでもあったら対空砲が作動しないという戦艦としてあるまじき事態になるからな。

しかし、深海棲艦だろうと艦娘だろうと撃ちそうだと予想するのは私だけだろうか?すごく心配なのだが。

いや、割と切実に。

 

で、だ。私は側面の装甲を展開すると、ハッチが作動し、海面へ下がる。そして、格納庫(大)の中にある最近使ってなかった隼を起動させると、すぐに転移し、海上に滑らせる。

「機関始動、両舷前進」

この隼は私一人で操れる艦である。数少ない、な。あとはF-222くらいだろうか?なんか少ないな...アメストリア型戦艦は妖精さんの協力なしじゃ到底満足な動きはできない。妖精さんが居なくても、動けるし、戦闘もできるが、本来の実力を発揮することはおろか、私という中身は全くのどしろーとなので、まともに戦える訳がない。だからこの隼は小さくて早く、武装も41cm速射連装砲とそこそこ強力なので使い易い。

一応、この全長200m越えの『内火艇』は、高速艇の分類に入るため、海面を滑るというか、若干浮く。抵抗が少なくなって、早くなるからだ。これ以上早くても、戦艦クラスの大きさのステルス重視の船体がボートと同じスピードで動くというホラー現象が発生する。は?もろ起こってるだろって?し、しししし、知らんしっ!

 

それで、隼での迎えをすることにしたのだが...何故米国海軍の艦娘が敵を見るような目で睨みつけてくるのだろうか?色々と心当たりはあるが、自業自得である部分も多いため、私が睨まれる謂れはない。

だから、艦橋にはM634を設置し、現在ドックに降り立っているが、例の五式をホルスターに入れ、フルカスタムしたベガルM145を持っている。襲われるのはいやだからな。

一応、7.92×99mm弾が入っていることを確認し、上に乗っけてあるスコープを撫でておく。暇だなぁ...

 

5分程経ち、一台の黒塗りの高級車が走ってきた。ぶつかってたまるか

恐らく、今回の視察団だと思われるが、連行される危険性もあるので、右足を少し下げ、体を斜めらせ、銃底を肩に当てる。グリップはしっかりと握り、セーフティーを解除。いつでも撃てる。

高級車は私の前で停車すると、ドアが開き、中から正装の軍人が幾人が出てくる。

無論、全員が米国人であり、階級を見る限り少なくとも中佐である。元帥はいないようだが。

ジジイ三人ガキ二人だ。メンドクセェな...一応構えを解き、無表情のままM145を腰だめに下ろす。失礼の無い(多分)体勢になる。

「貴官らが視察団の方々だとお見受けする。御存じだと思われるが私がアメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。」

誠に、まっことに不本意ながら敬語で接する。大本営なら私の恐ろしさを身をもって味わっているのでタメ語で接しても特に問題無いのだが。←

米国は基地にピンポイントでミサイルが刺さったぐらいしかダメージが無いため、本当の恐ろしさを知らない。本当ならワシントンDCでも砲撃したいのだが、面倒なことになるので自重している。当然だって?知らんがな。人間の定規で測るな。

「そうだ。私は米国海軍所属少将のダレス・N・ノーマンだ。」

イエスマンでは無く?と思ってしまった私は悪く無い。Nってなんだろうと思うが、米国に一切の興味は無いので、気にし無い。人柄は不明、だ。壮年の男性だが、体は引き締まっており身長は私が170程だが、足り無いくらいの200cmだ。バスケでもやっていたのだろうか?

サングラスを掛け、艦娘スペックの鼻では葉巻の匂いがする。スモーカーか...あ、何処ぞのモクモクした大佐じゃ無いぞ?まぁ、マッカーサーみたいな奴だ。

「俺はケビン・シルバーだ!よろしく頼む!」

そう快活な大声で言っているとは大柄な黒人の男性だ。外見完全にラグーン商会のてんちょーさんだが、気にしてはいけないのだろう。此方からは煙の匂いはせず、硝煙の匂いが少々する。

階級章を見る限り少将だ。武装は...みたところしていないが、中にはあるだろう。後で置いて行かせなければ...

「...俺は、メイカードだ。大佐だ」

で無口な男性は見る感じ弱そうだが、格闘技をやっているのか歩き方に淀みは無く、覇気がある。なんか睨んできているが、無視。怨念は感じない。というか人間の怨念などなきに等しい。

まぁ、どうでもいい。問題は後ろのガキ二人だ。

正装をしているが、明らかに私を見下しており、バカにしている。むかつくな...

「ケビン少将の秘書艦のアリゾナ中佐よ!」

おや、艦娘であったらしい。というか艦娘に階級与えるとかもう末期だな...そこまで大した武力も無い功績を見せたがるのか?愚かな...

自己主張は勝手にしてくれ。秘書艦アピールも、いらん。どうでもいい。

金髪は背中まで伸ばしており、いかにもお嬢様気質のあるプライドの高そうなガキだ。

「私がコロラド級戦艦一番艦コロラドだ。今回の視察はよろしく頼む。」

「ちょっとコロラド!なんでジャップの艦娘なんかにお願いしてるのよ!」

なんか馬鹿が噛みついていたが、無視する。

コロラド級戦艦一番艦コロラド...たしかビックセブン(笑)の一隻であったはずだ。まぁ、現在では電でも勝てるだろうが。正装に、きっちりと背筋を伸ばし、腰まである長い茶髪を乱雑にポニーテールに纏めており、鋭い蒼眼をした美人である。まだ良識のある艦娘だろうか。『艦娘』として見てやろう。

階級も主張しないことから、そんな下らないものには興味を持っていないのだろう。唯一好印象を持てる艦娘だ。

「では、これからの予定を説明させて頂く。まず私の内火艇である隼に乗り、アメストリア型戦艦一番艦アメストリア本艦に乗船して頂く。」

「待ってくれ。まさか、後ろのステルス艦は''内火艇''なのか?」

「その通りです。ダレス少将。そして、その後80ノットにて高速航行、ヒトサンマルマル、13:00にナウル鎮守府へと到着、夕食まで視察後食堂にて夕食をとり、日没後に夜間視察、そして翌日へという流れになります。」

なんか アレで内火艇か...恐ろしいな... とダレスが呟いていたが、驚くのはまだ早いのだよ。

「了解したぜ!ジャパンのワショクには興味があったからな!」

そう言ったのはシルバー少将。こちらは日本文化に興味のあるらしい。

恐らく、そういう馬鹿のいないメンバーで送る予定なのだろう。米国上層部も必死である。笑うな。

「それはご期待ください。では付いてきてください」

そう言って無駄に長い黒髪と巫女服を翻し隼へと向かう。後ろからガキの殺気が来るが、ガキの戯れだ。

きにしなーい。隼を操作し喫水線を下げ、装甲と一体化していたタラップが降ろされてゆく。

急遽設置した客室へと案内すると妖精さんに接待を任せようとしたら全力で拒否されたので、仕方なく、仕方なく並立思考で隼を操りながら接待もこなしてゆく。アメストリアへはそう時間は掛からないので、少し豪華に装飾した会議室に少将達を押し込め、緑茶ことグリーンティー?を作り出すとメイドさながらに丁寧に対応する。内心腸煮えくり返っているが、表情は生憎、無表情である悟れられない。因みにM145は邪魔だった為艦橋に送った。

機関を始動させ、バラスト排水。タラップを格納し、錨を巻き上げる。

武装である41cm速射連装砲を甲板上に展開し、対空砲も展開してスクリューをゆっくりと回してゆく。鋭い艦首が海面を切り裂き、200mの船体がその巨艦に似合わぬ機動性で素早くドックを離脱してゆく。少将達はその隼の軽い身のこなしに驚いていた。まだまだ。

「アメストリア、出来れば甲板は上がりたいのだが?」

「............分かりました。こちらです。」

はぁ?何言ってんのこの人?馬鹿なの?死ぬの?死んだら私の責任になるんだぞ?わかってんのか?あ?

まぁ、文句言えないので渋々案内してゆく。甲板へは密閉されたハッチを二枚通るだけで行ける。甲板はステルスという特徴上木製ではなく、特殊装甲に錆止めが塗られ、濃い灰色であり、比較的小型な艦橋の前には二本の長い砲身を掲げる凹凸の少ない砲塔をした41cm連装砲がある。

少将達はその連装砲を眺めたり触ったりした後に手すりに捕まり海面を眺めていた。この巨体が40ノット近い速度で航行するのが信じられなかったようだ。まぁ、この速度出せるの島風くらいだしな。あとはナウル鎮守府所属艦娘全艦。戦艦関係無く。やっぱおかしい。

 

数分経ち、あとアメストリアまで3kmとなった所でレーダーが深海棲艦の反応を捉えた。いや、なんで領海内で深海棲艦の反応があるのか理解に苦しむが、まあ、艦娘として駆除しなければならない。

「ダレス少将、少しアクシデントが発生した。耳を塞ぎ、口を開けて頂くとありがたい。」

「何?それではまるで爆発が起きるように...」

そこでダレス少将は言うのをやめ、考え込んだ。意味がわかったようである。

私は転移して艦橋にあるベガルM634を持って再び甲板に転移する。

私が全長4m50cmの馬鹿でかいライフルを持ってきたことに驚いているようだ。コイツは銃かよくわからないヤツだからな。無理もない。3mの砲身を深海棲艦へと向ける。

「な、なんだそれ!」

「ベガルM634、19.8mm重機関銃ですシルバー少将。弾種...19.8mm超圧縮式時限信管炭酸バリウム弾に決定。」

弾頭が黒く塗装された弾帯をM634の給弾口に入れてコッキングハンドルを思い切り引く。

そして、足を肩幅よりやや大きく広げ、しっかりと腰を下ろすとスコープを覗き込み、十字に深海棲艦を合わせる。そして、深呼吸。

 

ズガァンッ!

 

銃から出てはいけない爆音と共に炸薬が爆発し、19.8mmの科学弾頭は3200mmの長いバレルを通過し、1260m/sでマズルブレーキのついた銃口から飛び出すと深海棲艦へまっすぐと飛んで行き、着弾。瞬間、深海棲艦が爆ぜた。この科学弾頭は炸裂弾である。しかも当たりどころにより一発轟沈を引き起こす程に。今のはボイラーに命中して、炸裂し大爆発を起こしたのだ。

次の目標...戦艦か重巡洋艦。面倒だな。

唖然としている視察団を無視し、腰だめにM634を持ってくると、しっかりと構え、引き金を引き続ける。

連続したは圧倒的な爆音で周囲の大気は激しく叩かれ、まるで12.7cm砲が発砲されているかのように思う。原因は私だがなっ!!(キリッ

次々と19.8mm弾が撃ち込まれて行き、巨大な薬莢は甲板を転がってゆく。

深海棲艦の重巡は私の砲撃(笑)にたちまち爆沈。隣に居た深海棲艦の駆逐艦には3発ほど撃ち込むと勝手に爆沈した。物足りんな...思わず眉を寄せてしまった。

「.......」

「.......」

「.......」

以上が視察団の反応だ。まぁ、当然といえば当然だが、なんかリアクションして?

「な、なんなのよそれは!」

「口径19.8mmの狙撃銃だが?」

「それは狙撃銃とは言わないでしょう!」

「ぜひ俺も撃ってみたいなっ!」

止めてくださいシルバー少将。冗談抜きで死にますよ?コレは人間の運用は考慮されていない。妖怪なら持てるだろうといった具合だ。良い子のみんなは使っちゃダメだよっ?って事だ。

 

 

さて、無事深海棲艦の襲撃は突破し、アメストリアへと更に接近してゆく。

遥か彼方と水平線に、うっすらと小さな艦影が確認できた。あれが私だ。本来ならドックからも見えてるはずだが、恐らく妖精さんが光学迷彩でも使っているだろう。

2kmを切ると、その大きさが目に見え、全長4650mの威厳がビシバシ伝わってくる。海面に佇むその姿は実に堂々としており、神々しくもある。

「な、なんだアレは...」

「monster...」

「......」

化け物、か...私にはお似合いの言葉だな...

「oh...mygod...」

「...アメストリア殿、アレがアメストリア型戦艦一番艦アメストリアなのか?」

「そうです。あの戦艦が私の本体であるアメストリア型戦艦一番艦アメストリアです。」

 

幸い波は穏やかであり、格納は素早く終える事ができた。現在時刻12:30。あと30分でナウル鎮守府まで向かう。普通なら無理である。しかし、私はアメストリア型戦艦だ。普通じゃない。

少将達をあの無駄に豪華な貴賓室へ案内すると直ぐに第一艦橋へ転移し、M634を立て掛けると

15基の主機に火を入れ、艦全体にエネルギーを伝達する。

妖精さんが慌ただしく動き回り、私は艦を動かす事に集中する。なにせこの巨体である。まだ小回りの効く隼とは勝手が違う。まぁ、戦艦が本分の私だが、油断は禁物だ。

錨が巻き上げられるとスクリューが回転して行き、徐々に船体が前進してゆく。

警戒態勢が更に高まり、システムに異常がない事が報告される。よし。行けるな。

「アメストリア、母港へ向け帰港する」

 




最近、ISと艦これが相性いいんじゃないかって思ってきた。(錯乱)
それで、艦娘を考えていたら、何故か信濃になっていた。何故だ....
いや、理由はあるんですよ?戦艦だと弾薬馬鹿みたいに食いますし、燃料供給できるか分かりませんし、航空母艦もボーキよこせっ!ですが、まだマシです。駆逐艦は単純に威力不足ですし。(脳筋)
良くて重巡じゃないかなぁーと考えてみたり。


見たいですか?
息抜きに書きたいんですけど...(ボソッ


アメストリアが10km圏内で見えなかったのは妖精さんの独断で光学迷彩を応用した認識阻害が作動していたからです。


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51.迷惑な視察 lll

マルイのL-96で射撃訓練してたら跳弾でまっすぐ跳ね返ってきて見事に命中(自爆)した諷詩です。
皆さんは狭い密閉空間で砂はぶっ放さないように!←


ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

米国海軍の将官を私の本体へ乗せ、30分というどう考えても可笑しい時間でナウル島へと向かった。途中、何回か深海棲艦による奇襲があったが主砲でわざわざ潰した。これには米国海軍への威圧も含めている。あの主砲の発射時の爆音の衝撃破は精神的にインパクトを与えるからな。

中々に便利である。

『こちらカイクルだ。此方でも姉さんを確認した。先導は五分後を予定している。』

「了解した。カイクル、ご苦労だな」

『いや、パフォーマンスの一つだろう。これ位はなんでも無いからな』

「そうか。」

私一隻だと抑止力というか武力というか、見えない抑止力では無く、見える抑止力が足りないので、妹達に要請し、カイクル、ノイトハイルが途中で合流する事になっている。因みにリバンデヒはナウル鎮守府の警備だ。まぁそういう事で、反応を見に行く為将官達を入れていた貴賓室へ向かう。

 

「アメストリアです。失礼します。」

ちゃんとノックをして入る。これ基本な。

「どうした?」

「いえ、ナウル鎮守府への到着があと12分46秒となり、先に失礼ながら私の妹達が先導を務めさせていただきます。それをお知らせに参りました。」

なんで私が敬語使ってるんだろうなあ...()のアシストもあり違和感の無い(多分)英語を喋れているはずだが...あ、前回からナチュラルに英語に切り替えてるからな?米国海軍の将官が日本語を喋れるわけ無いだろ?私が合わせてやったんだよ。

まぁ、観察には少しといってもあと1分位だが、時間がある為、ドアの近くに直立不動となり、後ろで手を組む。軍隊式だ。

「ところでアメストリア、この艦は何ノット出ているのだ?」

「はっ.......85ノックですダレス少将」

私艦娘だぞ?そんな事分かっているに決まっているだろう。

「随分と早いのだな...この様な巨大戦艦がその様な速度を出すには相当のエネルギーを必要とするだろう。そのエンジンはどういうものだ?」

なんか堂々と技術見せろついでによこせって言われたんだが...なんて返せばいいんだ......?

馬鹿なのか?ウンターガングエンジンなんか最新技術の塊だし、この年代では複製不可能だ。しかし、その開発途中で何かが出来たら、私には対応できない。その不確定なモノには介入するのはあまりにも危険すぎる。というかメリットがない。別にこの地球は私の母星ではない。特に思い入れもない。

「我がアメストリア國の最新軍事技術につき、他国への技術供与は大日本帝国を含め一切行っていません」

そう言って曖昧に微笑む。尚微笑めているかは不明。さっさと話題ズレせやオラ!

兎も角、あんな世界を揺るがすクラスの技術なんか米国如きに与えるわけねーだろバーカッ!

 

すると、空気を読んだかの様に実にいいタイミングで腹の底から叩かれる低い重低音が鳴り響く。

カイクルとノイトハイルの汽笛だ。なんか前に言った気もしないでもないが、あの巨艦の場合、鳴らさんでも遠くから見たらすぐに分かるのだが、霧や、他の星の場合、視界がよろしくない場所もあるのだ。そんな時に位置を知らせるのが汽笛である。

別にレーダーなどもあるが、損傷した場合の位置を知らせるの手段として、汽笛が今尚使われている。まあ、何せ遠くの相手に知らせる為の汽笛だが、威圧の面でも使用される。

敵が攻撃準備の為に主砲に装弾したり、対空戦闘のために艦内を走り回ったりと。その時にあの大音量で汽笛が鳴り響いたらどうだろうか?乗組員は作業を止め、萎縮してしまうだろう。

その間に私は攻撃を開始する。するとあら不思議。反撃無く一瞬で撃破する事が出来るのだ。

事実、海中に潜れるアメストリア型戦艦以外だったらガラスは砕け散っていただろう。音は空気の振動で伝わるのだ。

「あ、あれは..君の妹さんかね?」

「えぇ、アメストリア型戦艦三番艦カイクル、アメストリア型戦艦四番艦ノイトハイル。二人とも私に引けを取らない戦闘力を持っています。くれぐれも気をつけるようお願いいたします。」

流石にカイクルやノイトハイルがキレたら制圧にはかなりの火力と数が必要となり、犠牲は夥しいものとなるとおもう。いやマジで。

カイクルは本気出せば至近戦闘だったら私瞬殺されるし、ノイトハイルは私が食われる(性的に)と思うのだが...つまり私でも宥めれるか分からないほどの危険性も持っている。まぁ、安全な戦艦ってなんだろうって話になるがな。

 

「機関停止!錨おろせ!」

''機関てーし!''

''錨下ろす感じです?''

''錨下ろすです''

アメストリアがドックへの接岸し、錨が下される。そして流されていかないように...多分しなくても流されないが念のためドックとの縄が幾重にも繋がって行き、側面の装甲が割れたかと思うとその中からタラップが降りてゆく。

そして米国海軍の将官達をドックへと誘導してゆくと、ドックに陸軍基地から妖精さんが操る車両が走ってくる。

「アメストリア、あれはハンヴィーかね?」

「いえ、アメストリア陸軍の一式重武装車輌二台に七式装甲車輌二台です。」

そう、一見完全にハンヴィーの外見をした装甲車輌が四台走ってくる。

サイズもハンヴィーまんまだが、武装は恐ろしく、開発はアメストリアという軍隊が発足してから1年目という超ロングセラーの傑作装甲車輌だ。4900年以上にわたって使用され続けているわけだが、当然の如く、何回も改修されている。しかしどこかの重機関銃宜しく基本構造は変化しておらず、装甲を最新式にしたり電子機器を入れたりとかそんな感じの改修しかされていない。逆に言えばそれくらいしか必要ないのだ。それだけでもこの一式重武装車輌がどれだけ優秀か分かると思う。

 

この一式重武装車輌は全長2.5m、全高1.32mで重量14tとまんまハンヴィーであるが装甲はアメストリア特製の特殊装甲を持ち、硬くて地雷など全く脅威にならない。

最大速度260km/hを誇り、武装はあのM634重機関銃を一丁。乗員は四名の重武装のジープだ。

今回は護衛の名目で派遣してもらっている。

そして、その一式に挟まれて走っている二台が七式装甲車輌という武装をM3___正式名称M3-25 14.5mm重機関銃という大口径の重機関銃を銃架に乗っけた軽武装の装甲車輌だ。

サイズも外見も一式に似ているというかまんま同じで、ハンヴィーである。

まぁ、詰まる所乗っけてる銃が違うだけである。しかし、装甲については一式の方が分厚く、核にも耐える。七式もだが。あれ、マジで変わらんな。

 

''一式二輌に七式二輌ただいま到着しました!''

ハンヴi...一式と七式から陸軍装備(妖精さんサイズ)をまとった妖精さんが降車してゆく。

今回の護衛の担当だ。必要なのかは分からんが、まぁ、外交的な問題だ。くだらんな。

「了解した。ダレス少将方、七式装甲車輌へお乗りください。」

ちなみに私は先頭の一式に乗ってゆく。一輌目にダレス、ケビン、アリゾナが乗り込み、二輌目にメイガード、コロナドが乗ってゆく。めんどくさいなぁ...

 

アメストリア型戦艦一番艦アメストリアを係留する『特 大型ドック 四番』から四輌は走り出し、

軍港から出ると、島内に巡らされた舗装道路に入ると、一式や七式が時折すれ違う。偶にその無限軌道のキャタピラーを回転させながら堂々と走って行く一五式戦車という陸軍の主力戦車が走り去って行き、後から付いてくるように一七式戦車や五七式重装甲輸送車などがまとめて大隊規模が移動している。おそらく、今回の視察に含まれている大規模な陸上戦力の一斉演習の為の戦力の移送だと思う。妖精さん、お疲れ様です。

アメストリア陸軍の誇るキチガイ兵器達のオンパレードだから、その時に色々と紹介しよう。驚くなよ?少々ネタバレになるが80cm砲は野砲だ。移動するし、連射できる。

まぁ、500cm口径の艦載砲が連射できる時点で察してほしい。個人的にはナチスの作った兵器達は中々にロマン兵器が多くて見ていて嬉しいのだが、まさかのあの運用に千人単位の人員が必要なドーラを正式に戦力化したのだ。アメストリアの工廠の連中の底力と熱意を感じるな。ちょっと引くが。

 

因みに、米国海軍の将官達は終始窓の外の光景に、驚きっぱなしだった。

まぁ、あの後ルート的に軍港から巨大なF-222やC-7が轟音を立てながら離陸して行く航空基地を通りすぎ、要塞となった山に掘られている弾薬や輸送車輌の通れるかなり大きなトンネルを通り抜け、更に厳重な警備となったエリアにたどり着いた。

提督棟や艦娘の寮などの、重要な施設が集まった北のエリアだ。

「ここに来てから驚いてばっかりだな!あのエイブラムスそっくりな戦車やジャパンの戦車の様な戦車から駆逐艦の大きさの様な航空機!いやー!本当に凄いな!!」

そう絶賛するのはシルバー少将。やはり彼は武器大好き人間の様だ。まぁ、ロマン兵器の塊だから分からんこともないが、カイクルと話が合いそうだな。カイクルも武器大好き艦娘だからな。

というかあのlike度はやばくないかと度々思う。同室のリバンデヒによると私に抱きついて寝ない時はベガルM634やM115を抱き枕の様に抱いて寝ている様だし、大体カイクルが銃を持っていない時を私は見たことがない。ちょっとクレイジー過ぎませんかねカイクルさんよ。

メインウェポンも五式だしさぁ、何時も暇さえあれば斬馬刀降ってるしさぁ、偶に一七式戦車乗ってるしさぁ、アレ、どうにかならないの?

 

まぁ、私が脳内で散々愚痴りつつも並行思考でなんとか車輌から降りた後も提督棟へ案内して行き、そこにいたリバンデヒに交代した。そして私は一目散に自室へ全力ダッシュし......用として寮から沢山の艦娘が提督棟を遠目に見ているのに気づいた。しかしその多くの目にはあまり良い感情は無く、敵国という印象がビシビシと私に突き刺さる。あ、ちょっと痛いぞ?いつから殺気って物理的攻撃力持つようになったんだ?

「あの...アメストリアさん、米国海軍の視察団というのはどのような感じでしょうか?」

大和が問いかけてくる。その目には無念という悲しみの感情が浮かんでいた。

同じ疑問を持つ艦娘は多いらしく、見た限りでも、

 

大和、武蔵、長門、陸奥、金剛、榛名、比叡、霧島

赤城、加賀、蒼龍、飛龍、龍驤、大鳳、葛城、天城、雲龍、翔鶴、瑞鶴

利根、高雄、愛宕、摩耶、鳥海、青葉、衣笠、最上、三隈、鈴谷、熊野

天龍、龍田、矢矧、川内、那珂、神通

暁、雷、電、響、吹雪

 

というナウル鎮守府所属全員が集まっていた。相当に興味あるんだな。というか仕事しろよ。

特に長門と金剛、葛城に利根に衣笠と三隈は今回の警戒艦隊だろ?仕事しろよ。興味と仕事の優先順位が色々と違うと思んだが...まぁいいけどさ。

「特に、悪印象は持たなかったな。米国海軍の上層部も馬鹿ではないだろう。まともな人材を送ってきた。かつ、既に数々の兵器達が見られている。技術漏洩の危険性がある。」

「そうか...」

そう言って考え込み始めるのは武蔵。あとは長門も考え始めた。なんかギャップが凄いな。連合艦隊の旗艦としての貫禄があるからか様になっているが、普段のキャラ崩壊こと小さいもの好きを知っているものとしてはな。あれは...ロリコンというのか?いや、よく分からん。うん。いいや。

「ここに居る全艦へ通達する。これから視察団はこのナウル島の代表的な施設へと向かうが、貴官らの接触は可能な限り避けたいと思っている。だから、全艦自らの船体へ乗艦し、艦隊として海へ出て貰いたい。」

「それは...下手な接触を防ぐためかしら?それとも、''敵国''であるメリケンという私達との関係性を考慮した意味かしら?」

中々鋭い点を付いてくるな加賀よ。ぐっちょぶだ。

「両方だ。特に相手は米国海軍だ。艦についてのアイデアを与えたくない。」

これは本心だ。本来、砲と言うのは連装砲、三連装砲、四連想砲になるに連れ命中率が下がって行く。そのため、イージス艦などの現代艦艇は単装砲に削り、その火力の低さを連射力と高い命中率で補っている。といっても個人的には砲の数が少なすぎて多数の敵の同時攻撃には完全に対応できないだろうと考えている。単装砲一基に対空砲二門とか舐めてるだろ。幾らミサイルで解決するからってあれは酷すぎる。あと、外見的に単装砲はあまりよろしくない。これは個人的解釈だがな。戦艦らしい偏見に満ちた火力重視の考えだが、現代艦艇の装甲の薄さや攻撃力の低さは深刻である。弾薬の共通化などは評価できるが、それが当たり前だ。

 

閑話休題

 

さて、私はまた戦闘車輌に乗っている。待ちに待った陸軍の演習である。

少将達はまた七式装甲車輌に乗り、前後を一五式戦車で固め、演習の行われる広大な空き地へと向かう。上空を時折完全に外見ブラックホークなヘリが飛ぶ。もう外見がブラックホークだから、私はブラックホークと読んでいる。妖精さんにはそれが通じなかったが。

私は先頭の一五式戦車の砲塔に立ち、妖精さん達の報告を聞いていた。

''第一戦車大隊準備完了であります!''

''第二機甲大隊指定の位置に着きました〜''

''野砲の設置終わった感じです?''

''全車輌の配置完了しました!''

まぁ、こんな具合で準備が着々と進んでいる。あとはヘリの大隊が航空基地から来ているのだが...

''こちらCH-4の一番機ですー!同型機5機にCH-31六機、AH-3915機、AH-605機あと二分で到着するデス!''

残念ながら、今回の演習にC-7やC-203やC134などの輸送機は使用しない。まず着陸出来んし、使わんし。既に戦車100輌以上が集まってるのに航空戦力は対地攻撃機だけで十分だ。

 

「さて、あと5分後に陸軍大規模演習を開始する。」

 




なんかNHKでサンダーバードがアレンジされていましたね。
人形だからこその魅力があったんですけど...なんか違和感を覚えました。


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52.迷惑な視察 lV

東方のプリントTシャツが届いて狂喜乱舞している諷詩です。
予想以上のクオリティでした。因みに柄は永遠の十七歳ことスキマばb......ゆかりんです。あと幽々子ですね。完成度高い...




米国視察団、4話目だけど終わらない...これから大本営もあるのに...すみません、もう少し続きます。あと一話かなぁ...


ーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ドガガガガッ!!と爆音が響き、単横陣に並んだ一七式戦車が次々に150mm砲弾を毎秒のペースで撃ち続け、車体の後ろに排出口からジャラジャラと薬莢を排出してゆく。一両が馬鹿みたいに連射し、それが一列25輌並び一斉射撃している。思わず私も耳を塞いでいる。

戦車達が撃っているのは厚み50cmの装甲板で、主に砲弾によって凹み、一部貫通している。

ウワーコワイナー。

 

日本の10式戦車のようにスラローム射撃をしながら時速90kmで爆走する一五式戦車。

粒子エンジンの静かで甲高い音を鳴らしながら土を巻き上げ、土煙をキャタピラーが巻き上げる。

30kmから50km先にある海上に浮く的に向けて次々と砲弾が命中し、巨大な水柱をあげる。そう、全弾命中しているのである。これだけでも恐ろしいが、その砲弾の威力も問題である。なんで一発で的が全壊してるんですかねぇ?

 

ぴたりとタイミングを合わせて動き回る五七式重装甲輸送車は上部砲塔に載せた45mm機関砲の砲身を回転させて莫大な量の機関砲弾を海上、上空の的に向けて発射してゆく。

言っておくが、全て実弾による演習である。その為、模擬弾とは違った重い銃声の激しい閃光がほとばしる。

 

「素晴らしいな...圧倒的だ」

「アメストリア!なんで戦車が連射しているんだ?」

「......軍機につきお教え出来ませんが、私達の艦船の砲のレベルを吟味していただけると良いかと。」

 

''第二大隊!海上目標No.68からNo.160に標準合わせー!''

「了解。全車両うちぃーかたぁーはじめぇー!」

''分かりましたー!全車撃ち方はじめー!''

50輌の一五式戦車が主砲を速射砲の如く連射し、砲塔に積んでいる同軸機銃や上にあるM634が負けじと発砲し、M3も銃撃を開始する。

圧倒的な爆音とこの安全圏にまで漂う濃密な炸薬の硝煙の匂いは目の前で起こっているまさに殺戮の状態を表していた。いや、ごめんな?なんかもうレベルが凄すぎてもう私が表現できないんだよ。当てはめる言葉が見つからないんだ。

スペックだけは公表しようと思う。これな↓

 

■一五式戦車■

全長 10.54m 全幅 4.75m 全高 2.39m 重量 79t

最大速度 98km/h

行動半径 無限

エンジン 三年式陸上兵器用特大型粒子エンジン二基

主砲 150mm速射単装砲

副砲 [同軸機銃]M634六砲身ver ×1 [砲塔上部]M634通常ver ×1 M3 14.5mm重機関銃 ×1

アメストリア陸軍十五世代主力戦車。形状は非常にエイブラムスに酷似しているが、性能は段違いで高い。エンジンは陸軍がよく使う粒子エンジンで、名の通りアメ歴3年に開発された陸上兵器用の大出力を持つ強力なエンジン。これだけは大した改修もされていない4897年使われるベストセラー。武装も強く、主砲は速射単装砲で1分で60発発射可能。自動装填装置完備で、砲弾は装弾庫が時間逆行術式が刻まれている為実質無限。しかし、その為砲身にはマズルブレーキが装着され、車体も姿勢制御装置が組み込まれている。

同軸機銃の六砲身verM634だが、機関部を大型化し、バルカン砲として連射力を強化し1分で4000発が発射可能である。

今回使用された戦車は全て妖精さんが操縦しており、兵員が操縦するよりも若干性能が落ちている。しっかりと兵員に対する配慮はされており、冷暖房完備で、水符による給水可能である。

水符とは、陰陽術の発展系に誕生した水を生み出す戦争に向けて作成された。全ての車両に搭載され、自衛用に食料(時間停止術式済み)1ヶ月分が全員分にM145一丁にMs95 九五式短機関銃三梃が装備されている。

 

らしい。所々に陰陽術という胡散臭い物が導入されているが、陰陽術が科学と融合し、共に発展していった結果らしい。確かにあの妖精さんのマイハウスを見る限り古来の日本文化を受け継いでいる為、陰陽術をそのまま使用されたのだろう。まぁ、なんか面白そうだからっていう理由が強そうだが...しっかし...M634のバルカン砲パターンで悪夢だろ...

 

■一七式戦車■

全長 12.4m 全幅 5.12m 全高 3.5m 重量 188t

最大速度90km/h

行動半径 無限

エンジン 三年式陸上兵器用特大型粒子エンジン二基

主砲 150mm速射単装砲 ×1

副砲[同軸機銃]45粍単装機関砲×1 [砲塔上部]19.8mm重機関銃×1 M3 14.5mm重機関銃 ×1

陸軍の十五.五世代主力戦車。一五式戦車を更に重装甲化した結果、外見が10式戦車に似てしまい、装甲が厚くなったことから車体が大型化した。特に一五式との変更点は無く、内装はそのままである。

 

ということで、重戦車という事だ。以上。だって特に装備変わってないし、装甲か。分厚くなっただけだぞ?次だ次。

 

■五七式重装甲輸送車■

全長 9.83m 全幅 3.9m 全高 3.1m 重量 69.5t

最大速度 120km/h

行動半径 無限

乗員 2名+24名

主砲 45mm連装機関砲 ×1

副砲 M634×1 M3 14.5mm重機関銃×1 場合により四連装ミサイルポッド二基

重装甲化した武装輸送車。外見UAV-25の車体だが、武装が桁違いの破壊力を持つ。

主に戦車に従属する車両の一つであり、その装甲は核をも耐える。

幅広い任務に対応し、主砲の45mm機関連装砲は対空砲としても使える。また、砲塔に連装砲として搭載され、二本の砲身合計で毎分 12000発の発射が可能であり、回転砲身型の最新式である。通常武装の兵士24名を輸送し、特殊武装兵9名を収容可能。積載量90tであり、量子変換が使用されているが、あまり出力は強く無く、主に量子変換機にあらかじめ物資を搭載してからその量子変換機をこの車両に積むのが一般的である。

8輪装甲車であるため、大体の地形に対応し、水没しない限り大丈夫である。

 

因みに通常武装というのは陸軍の場合野外戦闘服に主武装とセカンダリ、そしてブレスレット型量子変換器である。防具やらバックパックやら色々ないがそもそも必要がないし、殆どブレスレット型量子変換器で事足りてしまう。あ、ブレスレット型量子変換器ってのはよくゲームとかであるアイテムBOXとか通信機能とかを全部実装したスゲーやつだ。要するにリアルでゲームみたいなアイテム回収とかができるめっちゃすごい林檎ウォッチみたいなもんだ。

だからよく積めるらしいな。特殊武装兵?私も知らん。一応特殊部隊らしいぞ?小隊で国滅せるだとか。恐ろしいな...サイヤ人かよ...いやサイヤ人すら比較対象に相応しくないな

 

 

''攻撃ヘリ、全機指定の位置に集結!''

''輸送ヘリもですー''

「分かった。行動を開始せよ。」

「次は何だ?」

「攻撃、輸送ヘリの編隊飛行及び単機の機動性能の公開です。」

ダレス少将が問いかけてくると同時にババババババ......というヘリのローター音が鳴り響き、私達を一瞬暗くする。上を向くと、その巨大さで異様な雰囲気を出す巨大なカーゴヘリ、CH-4が飛び去り、あとからCH-31が続いて飛んでくる。

三角の陣形を組み、飛んでゆくが、間隔を一気に開けたかと思うとその巨大さに見合わない機敏な機動性を見せ、全機全くズレないタイミングで''宙返り''する。

そう。全長45.7mのヘリが宙返りしたのだ。絶対おかしいと思うけど、現実なんだよなぁ...これが。だってヘリってローター回転させて空気の流れを人工的に作り出してその機体を浮かせているんだぞ?なんであの大きさの機体がぐるぐる回転するんだよ...馬力どうなってるんだよ...

 

ガガガガガガカガガカガガガガッッッ!!!!という機関砲の乱射される音と共に攻撃ヘリの機関砲から大量の45mm砲弾が周囲に展開された的を跡形も無く粉砕してゆく。曳光弾を混ぜているせいか火線がくっきりと見え、それを悪用してかぐるぐると横に回転しながら機関砲全門をぶっ放すという曲芸飛行を見せてくれる。

その曲芸を見せているのは外見がアパッチにしか見えないAH-39、通称《ミク》だ。

正式名称回転翼攻撃型大型ガンシップである。いや、ヘリなのにガンシップって何さ。色々と突っ込みたいが、スペック紹介からしよう。あ、これは米国将校達にも一部教えているぞ?

 

■AH-39■

全長 (胴)26.1m (翼)31m 全幅 (胴)3.9m (武装込)4.9m 全高4.2m 重量 56.7t

行動半径 無限

主兵装 45mm機関砲 ×4

ミサイル ST-8凡用ミサイル ×200 ST-7 ×150 SBM-78通常爆弾 ×20

正式名称、回転翼攻撃型大型''ガンシップ''対地攻撃特化型攻撃ヘリであり、外見はアパッチを少し太らせた感じであり、かなりの重武装を施された殲滅を目的としたヘリコプター。

開発は無論ベガル工廠であるが、その中でもヘリコプター最大級の武装を持つ。

兵装はアパッチのようにぶら下がっているわけでは無く、機首に四門、つまり左右に二門ずつ内蔵され、側面のガンラックに四連装のミサイルポッドが二つずつ左右に設置されている。

ST-8、ST-7という戦闘機にも使用される万能型のミサイルを搭載し、IFFを利用し自動的に敵を見つけるとその脅威度を自己判断し攻撃する。

SBMは底にF-22のような爆弾倉がある。その爆弾倉から投下し、自然落下で攻撃する。その威力は10t爆弾を凌ぐとも言われ、核シェルターなら余裕で貫通する威力を持ち、且つ半径600mに壊滅的なダメージを与える。

 

といったキチガイ染みた攻撃ヘリである。しかもあの機動性。ナニコレ。最早ヘリでは無い。これをヘリのいうならばヘリコプターの定義を変更しなければならない。それくらいヤバイ。

まぁ、私も採用したが。テヘペロ ミ☆だって甲板広いし戦闘機とCH-31だけじゃ色々と困るもん。あ、妖精さんによるとこれから来るヘリとか戦闘機は龍驤が統括しているらしい。龍驤って航空母艦だよな?ヘリ空母じゃあ無いよな?いっその事龍驤を地上攻撃機専用航空母艦にするか?

龍驤は重巡洋艦並みの大きさを持った軽空母である。私達の戦闘機は滑走路実質必要無いので甲板の長さなんか関係無いので大して問題にならないが、問題はそこでは無く、排水量の問題だ。

私達の使う戦闘機、F-222やF-105はレシプロ機に比べ圧倒的に重い。

戦闘機にその整備機械、武装を保管する量子変換器などを新たに積載している為、機関を粒子に変えたとは言え、少々航空母艦として運用するには難があるのだ。赤城や加賀のように最早空母じゃ無い航空母艦?なら余裕があるし、何気に赤城や加賀は元が大和と同クラスの大きさを持っていたから改造しやすかった。バルジや船体の拡張、アメストリア式の特殊装甲などetc...

しかし、重巡サイズの空母となると話は変わってくる。無理をさせてしまうのだ。

艦娘を第一とする、私の理念に反するし、龍驤はそれなりに古参だから大事にしたい。

まぁ、なんで生まれ関東なのに関西弁喋るかは謎だがな。あれって何でなんだろう?めっちゃ気になるんだが。

 

私達の頭上を60機以上の攻撃ヘリが飛び去る。あぁ...もうAH-60とAH-182の出番か...

「アレは先程の大型の攻撃ヘリとは違うようだが、どのようなものかね?」

「はい、アレらはAH-60回転翼対地攻撃型中型ガンシップヘリとAH-182回転翼対地攻撃型中型ヘリという最新の攻撃ヘリです。」

そう。AH-60というのがまず最初に生産され、実戦投入されたのだが、中々に使い勝手が良く、一五式戦車も輸送できる為、実戦で重宝されたらしいが、超高層の建築物のある都市での市街戦では小回りが利き辛く、より機敏にかつ素早い制圧力を求められてベガル工廠の技術者達がガチで開発したのがAH-182である。比較してみよう。

 

■AH-60■

全長 (胴)19.8m (翼)21m 全幅 (胴)2.9m (武装込)3.2m 全高 3.5m 重量 48.21t

乗員 二名

行動半径 無限

主兵装 45m機関砲 ×1 M345回転砲身式機関砲 ×2

ミサイル ST-8 ×150 SBM-78 ×20

対地攻撃に特化した攻撃ヘリ。こちらは外見がマングスタに酷似しているが、アパッチの様に機首に45mm機関砲を吊り下げ、コクピットの後ろに二門のバルカン砲式のM345が埋め込まれている。ミサイルはAH-39を模倣している為以下略。

AH-39を大規模都市を根こそぎ破壊する攻撃ヘリとすれば、このヘリは市街戦の援護も主にしたヘリコプター。地上に展開する部隊の要請を受け援護する遊撃の立場を取る。尚、武装は完全に対地攻撃用のなっている。唯一ST-8が対空にも使う事ができる。狭いビル谷を進む事が可能になり、範囲殲滅からピンポイントの小規模な破壊を可能とした理念を一新した革新的な対地攻撃ヘリコプターである。

 

■AH-182■

全長 (胴)17.3m (翼)19m 全幅 (胴)2.1m (武装込)3.1m 全高 2.9m 重量 32.59t

乗員 二名

主兵装 45mm機関砲 ×1 M345 ×2

ミサイル ST-8 ×80

回転翼対地攻撃型中型ヘリという事実上の最新機である。

妖精さんが何処からか情報を手に入れると面白半分で作り上げた。

前線の兵士からの最も市街戦に入り込める攻撃ヘリをという要望にベガル工廠が総力を挙げガチで作り上げたげた渾身の攻撃ヘリである。AH-60と編隊を組む事が多く、必要に応じて編隊から離脱しビルの間に突入するのである。ベガル工廠最高傑作とあり、横向きでのホバリングが何故か可能となり、細い路地でも入ることが出来る。外見はAH-60と同様であり、武装の配置も同様である為に以下略。

日本の偵察ヘリを超える機動性を最低ラインとして開発され、軽量化を図った。その為、ミサイルが少なくたったが、その代わり化け物染みた機動性と対空の備えが施されている。

 

という言わば姉妹の様な攻撃ヘリである。陸軍基地でもよく隣り合って駐機してあるところを見掛ける。というか私は''あのベガル工廠''が本気で作ったって言うのがすごく怖いんだが...何が起きるんだ...そう考えていると、米国将校達から驚きの声が上がり、何事かと見上げると、曲芸の域を軽く超えてしまっている危険な飛行をするAH-182三機の姿が。

機首を地面に向け85°程に傾くと、その体勢の三機が三角になる様に陣形を組むと右に『回転を始めた』。

 

 

...

 

 

......

 

 

 

.........

 

 

 

........................はぁ!?

 

な に し て く れ て ん の 妖 精 さ ん っ ! ?

 

いやいやいやなにしてんの妖精さん?どういう機動をしてんの?浮力は?風は?物理法則にがっつり喧嘩というか500cm砲突きつけてるんだが。なにがどうなってそうなったんだ......?

理解できん...しかもシルバー少将がスゲー!って喜んでるし...子供か...

「妖精さん、今すぐに中止しろ。事故がおきかねん。妖精さん達の技量はまだまだであることは理解しているので、次に進めろ」

''りょーかいしました!''

''えー!もっと飛びたーい!''

''撤退する感じです?''

AH-182は陣形を回転して距離を取って崩すと通常の体勢に戻り、飛び去って行く。

これからは少々問題が起きるだろうなぁと他人事の様に考える。

 

''こちらブツの輸送機隊です!あと一分で到着します!''

「了解した。所定の位置にブツを配達してくれ。ダレス少将方、大変失礼ながら、これからは今までとは比べ物にならないほどの爆音が発生する為にイヤーマフを付けていただきたいのです。」

「これからの予定は?」

「野砲の遠距離精密砲撃ですダレス少将。」

それだけしか答えられない。だってこれから運ばれてくるのは度肝を抜く()()()()である。

初見は私も腰を抜かしてしまった。何でコレが、と。兵器マニアの私からすれば嬉しかったがな。

すると、遠くからババババババ.....というヘリのローター音が響き、そちらを向くとCH-4が四機至近距離に接近してワイヤーである物を共同で吊るしている。

 

M503野砲 五○三式800mm野外砲

 

という、ナチスドイツの列車砲が地上砲として復活したのである。その規格外の太さを持つ重厚感溢れる砲身を支えるのは15本にも及ぶ太い支柱で、四方向に足を延ばすと、地面に深くアンカーを射出し、固定すると、仰角を上げ砲弾が装填される。するとあとはトリガーを引くだけで何発も撃てるという悪魔の砲だ。そんな浪漫の塊としか言いようがない砲がCH-4四機でやっと輸送できるのだ。

M503は全長973.2m、全幅673.5m、重量590tというこの口径に見合わない軽さと大きさを備えている。大規模作戦には必ず参加し、恐ろしいほどの砲弾を浴びせる。無論、連射可能である。

コワイナー。

 

 

 

 

 

 

...........はぁ。

まぁ、兎も角地上に輸送されたM503はその折りたたまれた足を延ばすと、アンカーを射出して厳重に固定するとこれまた格納していた砲身を展開し、装填機構、駐進機機構が作動し、砲弾が量子変換でレールへ転がると上から砲身へと入り、密閉される。

''各機構異常無〜し!''

''照準よーし!''

''アンカーよーし!''

''装填良し!''

''砲撃準備よーし!!''

「ドーラ、発射せよ」

''M503てぇー!''

私はドーラと呼んでいる。

私の主砲には及ばない物の、戦車の主砲とは比べ物にならない爆音が空気を叩きつけ衝撃波が周りの地面を駆け巡り遅れて私達を通り過ぎる。黒々とした砲煙は60m以上上がり、本当に野砲なのか疑ってしまう。砲身が後退し薬莢が排出されると同時に初弾と同じ位置から砲弾が装填され、駐進機によって元の位置に砲身が押し上げられる。すると私の主砲と同じように密閉される訳だ。

しかし、その立派な機構や巨大な砲身達と、明らかに大きさが両立していない。絶対なんか抜いただろって思う程に小さい。

まぁ、撃てるんならもう良いんだが。

 

他にも数々の野砲ーーーM720重野砲(46cm)M970速射野砲(20.3cm)M1020野砲(15.5cm)とかM10野砲(12.7cm)も発射され、米国将校達がやたらと騒いでいた。あいつらやっぱり火薬好き(トリガーハッピー)か?良く自衛隊が火力演習で155mm砲ぶっ放していたりするだろ?アレが連射されたり口径が違くて爆炎、爆音が桁違いな感じだ。(富士総合火力演習の知識はあった。何故に...)

で、だ。一番の問題が各兵器の展示だ。実際に触れることが可能で、火器は試射も可能となっている。コレが一番の懸念材料なんだよなぁ...だって試射だぞ?妖怪が使用することを前提とした兵器達ばっかなのでかなりデンジャラーな武器しか無い。なんだよ19.8mm重機関銃とか14.5mm重機関銃とか射程5000mの12.7mm狙撃銃とか。

各小銃は射程が頭おかしい事以外''は''まともだから良いが...良し。拳銃は規制しよう。アレは私達の様な人ならざる者が使う兵器だ。人間が使う物じゃない。.......あれ?それ言うと殆どの銃規制対象だよね?弾数無限だし射程3kmだし外見どっかで見たなぁ...っていう銃ばっかりだし。

逆に違和感が無いんだが、撃つと違和感しか沸かない不思議な武器達だ。かなり問題じゃね?

 

「なんだこれーっ!」

「これは...素晴らしいな。」

上がシルバー少将で下がコロラドだ。シルバー少将に至っては目をキラキラさせてるし、コロラドは既にM99ーー九九式狙撃銃。口径12.7mm重量7.2kg有効射程4500mの化け物対人狙撃銃を手に様々な場所を眺めている。

「これは...」

地上に羽を休め、その巨体を堂々と見せつけるCH-4の前にアリゾナ。確かにCH-4は輸送ヘリ常識を真正面から破壊したヘリコプターだからな。唖然とするのも分からんこともない。

肝心のダレス少将は一七式戦車を様々な箇所から見て、実際に触ってみて「我が国の装甲とは桁違いだな」と呟き、報告しなければという危ない独り言を言っていた。

 

影が薄くて私も存在を忘れそうになるメイガード大佐だが、ベガルM75、特型歩兵小銃という海軍が正式採用した自動小銃の前に立つと銃口をさりげなく私に向けてきた。

他の将官や艦娘はそれぞれが兵器に魅入っているので気付かない。

「...........死ね」

馬鹿かこいつ。ここで撃ったら国際問題になるだろ。殺るなら影でやれよ。

けどやはり、かとも思う。コイツ影薄すぎるもん。ずっと喋らずに私を睨み続けるし、提督棟内を案内したリバンデヒからも警告された。恐らく、暗部だろうと。

銃声は目立たなかった。コロラドがM99を的に発射したからだ。その銃声に合わせるかの様に発射されたM75の7.92×99mm弾はまっすぐと私に飛ぶと、真っ二つに斬り裂かれ何処かへと軌道を歪められ、飛んでゆく。そう。私が大型のカランビットナイフで『斬った』のだ。銃弾を。

恐らくベガル工廠の武器だから初速は900m/sを越える銃弾だろうが、私、艦娘には関係無い。切れる。

「......っ!?」

驚愕している様だが、まだまだ甘いな若人よ。

私には()が居るのだ。大体の攻撃には対処できる.......筈。だって今までの負傷を考えるに私の地のセンスが無かったんだろう。......多分、きっと。...悩んで解決するわけじゃ無いし。

「アメストリアーっ!その拳銃は撃たせてくれないのかー!」

「大変申し訳ないのですが、この拳銃はベガルMH-5、五式自動拳銃という口径13mmの超大口径の拳銃でありますので、艦娘でないと扱うことができません。」

ついでに言うと馬力的に重巡からかなと思う。

「じゃあ、撃ってくれるか?」

「それなら、構いません。」

そう言って二丁の五式自動拳銃をホルスターから抜き去ると的を一切見ずに引き金を引き続ける。

全弾が的に命中し粉砕する。射程450mだから中々に使いやすい。これなら兵士達から人気があると言うのも納得できる。全長45cmという大きさを除けばだが。

だってでかいからホルスターも大きくなって動きにくいんだもん。

 





コロナドからコロラドに。コロナドって誰だろう


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53.迷惑な視察 V

久々にHELLSING見てニヤニヤしてた諷詩です。
是非みなさんも見てみてください。凄く爽快系です。あと、アーカードさんが主人公の仕事をしていません。あれはある意味凄いです。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

妖精さんの普段のストレスを発散した陸軍大演習は終了し、視察もまぁまぁ終了させた後、シルバー少将の楽しみにしていた夕食の時間となった。

このナウル鎮守府にはあの間宮さんがいる。腕は確かであり、秋津州や伊良湖がいないのは少々残念ではあるが。だって料理できる艦娘は何人いても困らないじゃん?というか秋津州は個人的に興味がある。大艇の使い手とあり、その二式大艇を思い切り改造したい。

最近工廠妖精さんがふぁいあーしてないからさせてやれるし。

 

私は食事を取らずに給仕に徹していた。間宮さんはシルバー少将と和食について話し合っており、シルバー少将は相当日本文化に興味のあるようだ。外国人が日本文化について興味を持って貰うのは嬉しいんだが、米国となると複雑な感情を抱く。

日本人の根幹であるアイデンティティーを破壊し神道を破滅へと追い込もうとした奴らである。神道の教えがかなり強い『アメストリア』としては星ごと消し去るレベルの侮辱である。下手すると銀河系が一つ吹き飛ぶ事にならかねない程の問題なのだ。

「これは本当に美味しいな」

「ありがとうございます。そちらは胡瓜の浅漬けでございます。」

どうやらダレス少将は胡瓜の浅漬けが気に入ったようだ。分かるよ。私も好みだ。

しかし、私が給仕に徹しているのはメイガードの監視という意味もある。

一応、米国で全ての武装を置いてきてもらっている事になっているが、密かに持ってきている可能性を否定できない。かといって検査すると信用問題に発展するしと中々にめんどくさい事案だ。

まぁ、私が暗殺される事はないだろうとは思う。

いや、慢心じゃないぞ?慢心ダメ絶対だからな。身を以て知っている。

丁度いい。あまり考えたくないが、船体が轟沈、又は艦娘が何らかの理由で死亡した場合、船体、艦娘共に何があろうと沈没する。どんな理由があろうとも、艦娘が死ぬと船体は自沈を始める。これは絶対に回避する事のできない事だ。

つまり、私が暗殺されると船体は二度目の自沈を始める。

データも自動的に全て削除されるようになっており、何より、妹達がブチギレるとおもう。うん。本当に。

敵さんマジ許早苗っていう感じで地球ごと滅ぼすんじゃないかなあ。無論、そんな事は起こさせないし、万が一妹達が轟沈したら私はこの世界を物理的に破壊する。なんでも使って地球のコアをBAN!する。怨念として絶対に呪ってやる...

 

私が思い切りダークな思考に埋まっている頃、リバンデヒやカイクル、ノイトハイルが到着した。

米国視察団はそのアメストリア型戦艦の並外れた美貌に目を奪われている様だった。

まぁ、確かに()と私の自慢の妹達だからな。

他の艦娘は全員海上へと避難している。米国との諍いもあるだろうという私達の独断で全隻出港させた。一応、ドミートリーが潜航して警戒しているため、大丈夫だ。

「姉さん、どうすればいい?殺すか?事故で処理するか?」

「...........」

「姉さん?」

「へ?あ、あぁ.....いや、泳がせておけ。見ていて面白いガキだ」

「む...そうか。了解した」

事実、()は面白がっている。4900年も生きていたら船体を狙われる事などいくらでもあっただろうし、楽しみなど殆ど経験してしまっただろう。要するに、娯楽に飢えているのだ。

その娯楽が私への暗殺なわけだったりするんだが...いや、私の精神そこまで強くないからね?鉄の女とかじゃ無いからね?前世平和ボケした日本人ですよ?分かりますか?暗殺されそうになってるんだぞ?現在進行形で精神がガリガリ削られている。うぅ...胃が痛い...

落ち着く為にホルスターにある五式自動拳銃を撫でておく。

 

 

ん?もうこの時点でもう色々とOUTだよねと気づく。なんで私自動拳銃撫でて安心してるんだろ...こんなのだったらノイトハイル撫でてたほうがまだ良い。ノイトハイルは対価を要求されそうだがな。ん?分からなくなってきたぞ?

「そういえばアメストリア、ぜひ君にお願いしたいことがあるのだが」

「...何でしょうか?」

「無論、タダでとは言わないが、ウチの艦娘を鍛えてやってくれないかな?」

......既に米国海軍としての形を崩壊させている癖に何をほざいているのだろうか?

イラつく。

しかも対価を貰って動くと侮られている。これは屈辱だ。私達は傭兵じゃあ無いんだ。金貰って戦っているわけじゃ無い。かつての祖国を守る為に戦ってあげているのだ。巫山戯たことを言いおって......っ!

「.........提督の許可がなければ出来ません。私の一存では判断しかねます故」

「いや...そうか......済まなかった。忘れてくれ」

恐らく、再び米国海軍としての体裁を復活させたかったのだろう。艦娘の指揮を提督が

執る。日本では当たり前だが、米国は行き過ぎた独立心で軍隊から艦娘が離脱した。何してるんだっていう話しだが、そんな事まで他人に頼るのか?そんな身内の問題位身内で処理しろよ。

やっぱり基督教なんかいうちょー他人任せの宗教に縋っているからか?あ?祈りという名で神に全ての責務を丸投げするのはお姉さんイケナイと思うんだよなぁ...

「(やはり殺すか?)」

「やめい。国際問題に発展する。」

別に日本にどんな影響があろうと気にしないのだが、めんどいじゃん?どうせ私に全責任押し付けて切り捨ててくるだろ?いいよいいよ。それで。全部破壊するから。

search and deathtroyってな?

 

夜、米国視察団に提督棟の貴賓室へ案内した後、私達も軽く夕食をとり、風呂に入った。

リバンデヒとノイトハイルの奇襲があって色々と放送禁止な事が起きたが。

一応本日のお勤めは視察団を貴賓室に押し込めて終了した事になっているが、監視しなければならない。この間に潜入部隊でも入られたら厄介だ。

一度私室へ戻って装備を改めた。五式自動拳銃二丁にM115AX、M145各一丁ずつ。完全装備だ。

ノイトハイルは船体へ戻ってもらい、外海の監視と監視ネットワークの構築。

リバンデヒはドックで陸軍妖精さんと共に警備にあたってもらっている。カイクルは艦娘寮を周回し、私は提督棟の周囲を警備する予定だ。

だから今提督棟の外に居る。なんか嫌な予感しかしないが、()の意向だ。逆らえない。でも絶対あの根暗野郎から襲撃あるじゃん?嫌なんだよなぁ...撃たれたり殴られたりするの。私Mじゃないですしおすし?()真性のSですし?自分にに感覚伝わらないからって私を容赦なく罠に突貫させるの止めてくれませんかねぇ?なんか最近()が某吸血鬼さんに見えてきた。あの人吸血鬼の真祖らしいね。自分が木っ端微塵になろうが再生して襲ってくる命のストック300万っていう素敵仕様なサディストさんである。似てるよなぁ...痛っ!抓るな!自分で抓るって結構滑稽だから止めろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...手を上げて、武器を捨てろ」

ほらー!やっぱりこうなるじゃん!分かってたよ?うん。でもさあーここまで予想通りに進むともうやになってくるよねーホント。あの根暗野郎に知らぬ間に接近されていた様だ。いや、多分私と()が脳内で喧嘩してたからだろう。あ、自業自得じゃね?

まぁ、兎も角だ。どこから持ってきたのかサイレンサー付きの拳銃を頭に当たられ、動いた途端脳天をぶち抜かれるという軽く詰んだ場面になった訳だ。

「...........貴様の用事は私達アメストリア型戦艦のデータであろう?」

「...」

「その沈黙は肯定と受け取ろう。どうせくれてやってもいいが、この時代の技術力では対空砲でさえ再現できないと思うが?」

主に弾薬関係とか弾薬関係とか弾薬関係とか。陰陽術使ってますし?無理っしょ?アレ解析不可能だから。

「...武器を捨てろ」

大人しくM115を下ろす。音を立てない様に下ろしたのは他の姉妹に気付かれたくないからだ。だって絶対後で怒られるし、体が痛くなるもん。特に腰。

「いかに米国海軍の工廠が優れていようとも、私の4645mの船体は建造できないだろう。」

そう言って次はM145を下ろす。

「まぁ、米国如きがアメストリアの技術力を模倣できるはずも無i...ぐぅ!?」

「...黙れ」

流石だな。愛国心(笑)に溢れている。母国を馬鹿にされているんだからな。私だって怒る。

背中に蹴られて床に倒れこむとメイガードに押さえつけられ、腕を掴まれると何かに拘束される。多分、結束バンドかなにかだと思う。アレ軽いし目立たないから持ち運びしやすく、まあまぁ頑丈である。後頭部に銃口を突きつけられ、五式自動拳銃が没収される。

「ふっ...野蛮人め。所詮は米国だな。暴力で訴える。」

「...黙れっ!」

おうおうキレたな餓鬼が。よりにもよって銃底で殴られた。痛ったい...

さっきチラリと見えたが、あれはベレッタM92Fだな。サイレンサー付けれるし形独特だし。

「...雌豚が。さっさとデータを渡せ」

「良いだろう。持っていけ。私のポケットにUSBメモリがある。好きに持って行くがいい。

想定していたので、あらかじめ設計データなどはUSBメモリに入れてある。まぁ、細工はしてあるがな。

「...ふん、どうせ細工がしてあるんだろ?」

「無論だ。アメストリア軍情報局の200万個の情報プロテクトと自己管理システム、、自己防衛プログラム、自壊プログラムが仕組んである。現在のどのプログラムでも解読は不可能だ」

ふふふ...アメストリア仕込みだ。因みに内容は私の全体図だけである。三面図な。もしも解けてもその画像一枚だけだ。その後もあるが、解読は無理だろう。ザマァwwwとなる訳だ。

「さっさと行け。もうすぐで猛烈に殺気立った私の妹達がやって来るぞ?」

「...Fuckn'!」

くだばれと。嫌だね。そう思っていたら更に殴られ、蹴られて意識を失う。まぁ、外だから妹達が見つけてくれるだろう。インカム入れっぱなしだし。

 

 

「姉さん!目を覚ましてくれ!」

「........ぅん....ん...........カイ、クルかぁ?......」

「そうだ。姉さん、大丈夫か?」

「......大丈夫、だ。」

腕が痺れているがな。あと頭がガンガンする。あの根暗野郎め。祟ってやる。

「あの根暗野郎は?」

「既に自室に戻っているようだ。ノイトハイルが狙撃体勢に入っているが?」

「ダメだ。面倒なことになる。大丈夫だ。まともな情報は出していないから、大した損害も無い。泳がせておけ。」

だって図面一枚だもんねぇ?縮尺も書いて無いし、大丈夫だろ。というかこの結束バンド切ってくれ...地味に腕が辛い...

 

 

ー翌日ー

朝になり、昨日撃てなかったからか抱きついてきたノイトハイルを容赦なく引っぺがし起き上がる。昨日巫女服のまま寝ちゃったな...別にどうというこそは無いが、寝にくいじゃん?

装飾少ないとはいえ仮にも巫女服だからさ?色々とねぇ...

巫女服を一度作り直し、若干寝癖のある長い髪を手櫛で解く。これだけで寝癖はすべて消えてしまう。元々髪質が良いからな。.........なんか全国の女性を敵に回した気がする。し、しかし長いから洗うの大変なんだぞ?以前切ろうとしたらナイフを撃たれて弾かれ、首元に刀が差し込まれ私が泣いて謝るまでリバンデヒに説教された。なんでも切ってはいけないらしい。あまり伸びることもないからそこは困らないが。

「ふわぁ...んー!お姉さん?どうしたのー?」

「いや、何でもない。」

そう言って変なところがないかチェックする。そしてホルスターを通す為に軍用のベルトを腰に巻いてゆく。分厚いから結構硬い...

「むふふー...お姉さん、心配してるでしょ?」

「.....まぁ、な。」

もしもセキュリティを突破され、図面のトリックも見破られたらどうしようか、という最悪の想定もしてしまっているのは事実だ。()の指示に従って実行したが、不安はある。

「大丈夫だよ。僕達でも艦内の中央演算処理装置が出来ないセキュリティだからね。」

 

 

 

.........は?

 

 

 

あの中央演算処理装置でも解読できないセキュリティを組み込んだのか?なんてもの作ってるんだよ...ペンタゴンを片手間に掌握できる性能を持つ演算装置だぞ?どういうセキュリティだ...しかも自壊プログラムもあるし自己防衛プログラムもある。何このプログラム。怖い。

「そ、そうか...」

「そうだよー」

ホルスターをベルトに通し、太腿にホルスターを固定する為のベルトを繋ぐと、テーブルに置かれた弾倉を抜いた五式自動拳銃の一丁を持つと重厚かつかっこいい鋼鉄の弾倉を滑り込ませ、セーフティロックを掛ける。

「今日はあの要塞山と航空機の視察だったか?」

「うん。そうだね。でも案内はリバンデヒとカイクルがやるからお姉さんは休んでて良いよー?」

ホルスターに五式自動拳銃を滑り込ませ、ロックする。

「いや、後ろから護衛しよう。」

「うん。分かったー」

ノイトハイルは、何をするんだろうか?昨日から視察のときサボっている印象しか無いんだが...

もう一丁の五式自動拳銃もホルスターに収めると、私室を出る。ノイトハイルは既に準備を終えていた。貴様っ!出来るなっ!

 

という事でリバンデヒが先導する視察団を後ろから護衛している。護衛は名ばかりだな。

要塞山だが、基本登る手段は無い。上にヘリポートが五ヶ所あるが、専用のエレベーターがあるだけで他はすべて多分何も効かない装甲に覆われている。所々砲身がせり出していて、妖精さんが洗っている。痛む事は無いが、汚れは溜まるからだ。

内部は幾つかの頑丈なトンネルが各区画を通しているだけで、歩道も施設も無い。そういう事で提督棟に陸軍基地から一五式戦車を寄越して戦車で登山している。シルバー少将は大喜びしていたが。一五式戦車は馬力が高く静かだから試乗体験も兼ねているようだ。兵器好きには一生に一度あるか無いかの機会だからな。アメストリア陸軍の兵器に乗れるのは。

「......うちの提督が迷惑をかけたな」

「...いえ。幸い怪我もありませんでしたので、大丈夫です。」

そう。コロラドと乗っているのだ。私が乗っているの一七式だが。メイガードの部下のようで、直接謝罪が来た。別に要らんし。有っても役に立たんし。

怪我は...無かったっけ?忘れたな。精神的に苦痛だったがな。主に()の所為で。痛っ!

 

 

あの後要塞山を回り、要塞砲を見て回った後に地上へと戻り、待機していた一式車輌に乗り換えると航空基地に向かった。

ゴォォォォォォォオ...というジェット機の轟音を轟かせながら上空を三次元戦闘を前提とした戦闘機達が飛び去って行く。一機一機が爆撃機のような大きさを誇り、その黒い機体を太陽でキラリと反射させると軽くマッハ5程上げて一瞬で飛んで行く。主翼を回転させ鋭いバレルロールとキックを行うと垂直に急降下したかと思うと機種を上げて着陸態勢に入りヘリのようにホバリングすると着陸する。正直言って、妖精さん張り切ってるなぁ...遊びまくってるじゃん。

宇宙でも戦えるというかそっちがほんぶんの戦闘機達だからな。見た所武装も吊るしたままである。誘爆する危険性は無いから安心しているが。

「お姉ちゃん!ちょっとF-222連れて来て!」

「......了解した」

今来たのはFB-99だ。九九式艦爆とでも言えるな。その航空母艦は馬鹿でかいが。だって7kmとか何機積んでんだよ。しかも戦艦の主砲クラスの砲積んでるし...まぁ空軍のキチガイ艦艇は気にしないとして、私のF-222か...船体とのリンクを強めて行く。視界は邪魔な為目を閉じる。

格納庫が息を吹き返す。高い天井の照明は順に点灯してゆき、格納されていた機体を照らして行く

そしてその機体が甲高い音を立ててターボを回転させて行くと、コクピット内の機器が起動してゆく。

ーーー三次元ジャイロ、正常

 

ーーー敵味方識別装置、正常

 

ーーー武装システム、正常

 

ーーー速度計、正常

 

ーーー高度計、正常

 

ーーー武装量子保管庫、正常

 

ーーー粒子ターボエンジン、正常。圧力上昇。

 

ーーー機銃、正常

 

ーーー無限弾倉、正常。

 

昇降板で艦載機を甲板上にあげると、主翼を回転させ、回転数を上げて行く。

より大きい爆音が鳴り響き機体が浮き上がる。

 

ーーースラスター、展開。

 

様々な所にあるスラスターが粒子ターボエンジンから回ってきたエネルギーを噴射し、姿勢を安定させると双発のエンジンが莫大なエネルギーを噴き出して機体を飛ばす。あと数十秒で到着するだろう。

「あと数十秒で到着する。」

そう言って目を開ける。多分もう直ぐ来るだろう。

既に轟音が聞こえてくる。

 

三機の黒く巨大な機体が特殊な主翼を回転させて地上に着陸する。

これ全て私の手の動きで指示しているため、結構きつい。

あぁ...もう終わら無いかな...

シルバー少将が凄いはしゃいでいたとだけ言っておこう。疲れた。これ以上働きたくないでこざるっ!




気分転換に以前話したISの二次を書いていたら一話目からhardになった件について。なんか自分が小説書くとからなず主人公が捕まるんですよねぇ...何故だ...

そんなことはさておき、いい加減私が米国視察団編に飽きてきたので、強引ですが、切り上げます。もうなんか嫌になってきました。次からは日本です。多分一話で終了するんじゃないですかね。(←

以上、大和型戦艦一番艦大和(1941年)を眺めてニヤニヤしている諷詩でした。


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54.日本の視察団

別にこれ艦これの二次じゃなくて火葬戦記な気がしてきたこの頃。

おくれますた。すみません...


 

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、唐突だが私は今CT-7に乗っている。外を見れば護衛機としてGF-21とF-222が各四機ずつCT-7を護るように飛んでいる。妖精さんと目が合うと色々としてくれるから見ていて飽き無い。

あ、一回転(縦)してくれたな。よくマッハ2の高速飛行中に一回転しようと思ったな。ある意味スゴイぞ。

まぁ、それは、兎も角、何故私がCT-7に乗っているのか?それはあの米国視察団が帰ってから数時間後に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......つまり、大本営からも来るのか?」

「うん。そうみたいなんだよね。」

「......何故」

「いや、仮にもここ大日本帝国海軍所属なんだよね?」

「それは...そうだが...」

いやーだってめんどくさいじゃん。ただでさえ米国の阿呆どもの相手してストレスがマッハで人類の好感度だだ下がりなのにまた視察?めんどくさいなぁ...

「あっちから来るのか?」

「えっと...いや、最近ミッドウェーが怪しくなってきてるから下手に動け無いんだって」

「成る程.......了解した。すぐに航空基地にCT-7と護衛機の用意をさせておこう」

「うん...よろしくね?」

「分かっている。」

さてさて武装の準備をしなければ

 

 

 

 

 

 

 

という訳だ。何?分からないって?知らんがな。

まぁ簡単に言うと日本の視察団が深海棲艦の動きが活発で釘付けになってるから大本営まで迎えに来いという訳だ。は?そんな説明されて無いって?あ、してなかったな...

 

...

 

........とでも思ったか!謝る訳ねーよバーカッ!痛っ!あ、ごめんって!お願いだから妖精さん、M3向けるのやめて貰えません?いくら艦娘でも14.5mm銃弾をフルオートで受けれる自信は無いなぁ...?ごめんね?

 

仕切り直して、取り上げず現在は太平洋のど真ん中を飛行中だ。偶に深海棲艦の偵察機に見つかって12.7mm銃弾を受けたりするが、CT-7の強固すぎる装甲に防がれ護衛機にズタズタにされてゆく。精々弾痕(塗装が剥がれる程度)ぐらいしか残って無いだろう。対航空機用だとしても関係無い。CT-7を落としたいならそれこそドーラさんもってこい。多分避けるけど。大気圏超えれますしおすし?装甲やばいですし?機首に60cm砲一門積んでますし?

 

っていうかなんで機首に60cm砲なんか積んでんの?馬鹿なの?45mm対空機関連装砲十門に60cm砲一門。これがこの''輸送機''の武装だ。なんか言ってなかった気がするから改めて言っておくぞ?

あと荷物に一七式戦車2輌と五七式重装甲輸送車一両を載せている。無論、実弾満載でだ。

コレは大本営まで迎えに行く時に必要になるだろうと思って積んできた。

だって大本営に直接CT-7という一キロ以上の滑走路を要する輸送機で行く訳にも行かんだろ?

だから、

 

Q.近くにある空港といえば?

 

A.成田国際空港

 

成田国際空港は深海棲艦の出現で旅客機関係なく落とされるようになってから海を横断する航路が遮断され、大幅に路線数が減少した。しかし、大陸を横断するルートは封鎖されてい無いため、大陸への航路を増やし、戦争中にもかかわらず、国内便、国際便問わず飛んでいる。大体一日に150便ほどだ。どれ程少なくなったかはお分かりだろう。

しかし、深海棲艦がそんな空の大動脈を狙わないはずがない。

事実艦娘が出現する以前は海上自衛隊が命懸けで防衛していた。軍用機も利用できるからだ。

東京というのは重要な防衛拠点だ。従って軍用地は多い。航空基地も新設を含め10に達する。

しかし、大規模な物資輸送や要人輸送などで使用するにしても、予備として考えると十カ所はあまりにも少なすぎる。深海棲艦には私達のようなアメストリア型戦艦も居るのだ。地球の裏側から攻撃されてもおかしくない。だから、空港の数が少なく、緊急時の軍用空港としても使用できる成田国際空港は重要なのだ。現在も私の技術提供による数々の対空砲が設置され、湾岸砲が配備されている。

''目標空港まであと200kmデス!''

「了解した。速度をマッハ1まで落とせ。ゆっくりな。」

いきなり速度を落としたら落ちるからだ。嫌だよ?海の漂流なんて。

護衛機の陣形が変化し、四方をGF-21が固めて、菱形にF-222が外側を護衛する。

「こちらは大日本帝国海軍ナウル鎮守府所属の特別輸送機だ。成田国際空港、至急用意を願いたい」

『こちら成田国際空港管制、貴機の機種が不明である。現在我々のレーダーにはunknownとして反応している。』

「こちらCT-7だ。関係無い。直ぐに滑走路を二つ程開けていただきたい。並びに民間機の離着陸を一時的に禁止願いたい」

『こちら成田国際空港管制、現在大本営に問い合わせている。待機せよ』

「こちらCT-7、了解した。待機する。」

どうやらアポなし突撃はできなかったようだ。まぁ、当たり前だわな。

 

10分後、大本営からなんでそっちに行った!?っていう抗議と説教が飛び、許可が下りた。

『こちら成田国際空港管制、A滑走路を使用せよ。複数の滑走路使用は許可できない」

「こちらCT-7、了解。感謝する。」

成田国際空港のA滑走路といえば長さ4000mの一番長い滑走路だ。真横に第一ターミナルがあり、方向的に出口とも近い。

速度が落ちて行き、四発の巨大な粒子ターボエンジンが轟音を立てて減速してゆく。宇宙でフラップ展開しても意味ないじゃん?しかしアメストリアクオリティ。当然の様にエルロンごと完備している。 護衛機はいつの間にか後方で単縦陣でついてきている。無駄に整列している。

 

視界に成田国際空港が入った。照明灯が灯っており、民間機はターミナルに避難している。

レーダーにも飛行中の民間機の反応はない。

1300km/h...1200...1100...1000...900...と速度計が数値をどんどんと減らして行き、粒子ターボエンジンが変形を始める。逆方向にエネルギーを噴射するためだ。

高度が900mを切り、降着装置が降ろされてゆく。巨大で太いタイヤが姿をあらわす。因みに機首に六つのタイヤがあり、胴体後方に二十ずつタイヤが降ろされている。この巨体を支えるにはそれくらい必要なのだ。

通常、航空機のタイヤには窒素が注入され、ゼロ回転のまま着陸する。すると、滑走路との摩擦でタイヤは150°まで高温になり、最悪の場合パンクする。しかし、アメストリアは違う。まず垂直離着陸が主流である。巨大な輸送機を除いてだが。

輸送機も可変翼機のものが五分五分な感じだ。固定翼の方が多いかもしれない。電子戦機などを含めるとだ。まぁ、そんな訳で大体の機体が馬鹿でかい訳でタイヤも相当強固に作られている。

時間逆行の術式が丁寧に彫り込まれ、中身は特殊ゴムに謎パワーでパンパンだ。

以上が妖精さんによる説明だったが、謎パワーってなに?妖精さんも良く知らないらしいんだが、気にする必要もないか?

 

滑走路とタイヤが接し、盛大に煙をあげる中、良くある機体の揺れは全く起きず、エンジンが変形し逆噴射し、各部スラスターが青い焔を放つ。ゴォォォォォォーーーッ!!!という一際大きな轟音と共に機体が速度を落とし、陸上を移動する速度まで下がった。航空機用粒子エンジンの発する甲高い音は未だに鳴り響き、1200m程で着陸したCT-7は滑走路の幅と合っていない主翼を堂々と広げながらA滑走路の端まで進むと停止する。

「良くやった。中々快適だったぞ」

''ありがとデス!''

後続でGF-21四機がする次々と着陸し、CT-7後方で等間隔で停止する。武装は仰角一杯で攻撃態勢だが。そしてF-222が600km/hで滑走路に突入しスラスターを吹き、主翼を回転させながら着地する。僅か5mで着陸した。なんかすごいな...妖精さんの練度。

「ハッチ開けー!」

後方の荷物ハッチがゆっくりと開いて行き、昼の明るい光が隙間から差してくる。

「一七式戦車及び五七式重装甲輸送車要員は乗車せよ!」

妖精さんが走ってきて、各々の装甲車両に乗り込んでゆく。

静かに粒子エンジンが始動し、一七式が無限軌道を回転させ始める。

私も荷物の中にあるベガルA-10 十式自動散弾銃(サンダーボルトじゃ無いよ!)という外見AA-12な12番ゲージのシェルを使用するショットガンを持ち一七式とともに降りてゆく。

 

一般車両と共に明らかに可笑しい軍用車両が公道を走ってゆく。

具体的には戦車二両が装甲車一両を前後で護衛する形で走っている。自然とその周りは一般車両がおらず、堂々と走っている。

何よりも主砲は少し上を向き、砲塔に設置された機銃は既に発射態勢に入っている。なにが起きるかわからないからな。

それで、あの後陸軍妖精さん達に機体の守備を任せ、五七式に乗り込むと私は一七式を連れて公道へ向かった。ちょっとした注目を浴びたが、車体にはがっつりアメストリア國の国旗が印刷され、その威圧感を与える黒い無骨な車体は見るものを本能的に遠ざけた。んー...道迷ったなぁ...

だって丁寧に大本営まであと○○kmとか案内ないし、看板もない。取り敢えず横須賀ってあったからそっちに向かっている所だ。

ん?なんか黒いバンが接近しているな...偶然か?

一応妖精さんに指示を出し前方の一七式に主砲発射用意をさせておく。

あ、なんか横のスライドドアかー開いて覆面の男達が出てきた。確実に敵性勢力だな。

前方の一七式の砲塔が旋回して行き、その150mmという軽巡の主砲以上の口径砲を向ける。

爆音と激しい閃光が光り、主砲が発射される。

弾種はただ一つ。多目的榴弾。無論ただの砲弾ではないが。

バンは見事に命中したのか爆散し、炎を上げて近くの電柱に衝突する。ザマァww

「良くやった」

''Deathtroyな感じです?''

''そんな感じですなー!''

まだまだ撃ち足りないようだ。あ、また来た。馬鹿だろ。今回は私がやろう。なんか五七式に乗り移ろうとしてるし。砲塔の乗員用ハッチから上がると、A-10をコッキングする。

「御苦労さん」

バァンッ!というショットガンならではのクソうるさい銃声と共にホローポイント弾が撃ち出されバンに命中。しかし一発だけじゃあ沈まないようだ。ならば連射するまで。

 

バァンッ!バァンッ!バァンッ!バァンッ!バァンッ!バァンッ!

 

六発の散弾を撃ち込み、最後に置き土産にC-4を投げ込んで放置する。すると後ろで大爆発を起こし、横転する。私は使用済みのシェルを排出させると車内に戻ってゆく。うむ。初めてショットガン撃ったが大丈夫だったな。ショットガン(連射)って悪夢だが、今回は自衛だ。容赦なく使用する。

「妖精さん、少し速度を上げてくれ」

''りょうかいしましたー!''

''合点承知!''

3輌が速度を上げて、公道を走り抜ける。あ、因みに東京は残念ながら戦車に耐えられる公道が存在しない為、一七式戦車はそのままだと沈んでしまう。だが今回走れているのはアメストリアにもそういう経験があるのか、一七式戦車の地面に対する圧力を軽減する装置を起動しているからだ。これは反重力を利用した装置でこれを使うことにより沼地や橋などで一七式戦車を初めとする超重車輌が擱座するのを防止出来るのだ。まぁ一々救出作業とか面倒だもんな...

ルート的には新空港自動車道から東関東自動車道と東名高速道路を乗り継いで到着する。

有料区画があるのだが、原則軍用車両はタダである。まぁ、それを今回は利用させてもらっている。インターチェンジには幾つかの車両がたまっていた。どうやら渋滞が発生しているようだ。

無線の傍受を開始...

 

...

 

.......どうやら玉突き事故とタンクローリーの炎上事故が同時発生しているようだった。

なんか意図を感じるな...一応準備しておくか。

二丁の五式に実弾が入っていることを確認し、十式自動散弾銃を片手に五七式から飛び降りる。

因みに3輌とも端に寄せてある。防衛しやすいからだ。

なんか巫女服姿の武装した艦娘?が出てきたことにちょっとした注目を浴びている。

「すまない、少し良いだろうか?」

「はい、なんでしょ.......」

なんか私をみて係員が固まったんだが...?そんなに有名になってたか?

只の艦娘なんだが...いや、APP最大値超えるクラスの美貌を()は持っている。そっちにやられたか?

「私は大日本帝国海軍所属のアメストリア型戦艦一番艦アメストリアだが、大本営への任務でな。通してくれまいか?」

「あ、えっと、はい。大丈夫...です。」

なんかめっちゃきょどってるんだけど。反応が面白いな。

それよりも、さっさと行かないと塵屑どもにナニにされるか分からないからな。時間短縮のためにもここは通りたい。

まあ、了承は得られた為、大型車両用の入り口から入って行く。一七式とかギリギリだったけど何とか通ることができた。

 

120分程で東名高速道路の出口から出て、一般道に入った。

なんかすごく目立ってるし。確かに軍の兵器が一般道走るの北海道くらいだが、別に帝都の一般道を戦車が通ったくらいで騒ぐなよ...写真撮ってる人居るしさぁ。あんまりやめてほしいなぁ...ネットの拡散は。任務にならんじゃん。

気にせずに一般道を走り続け、横須賀を目指す。またあの大将から怒られるのかなぁ...



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55.なんか特大の爆弾が落とされた件について

遅れました...ほんっとすみませんでした...


 

ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は頭を抱えた。

堂々と3輌で大本営まで辿り着き、説教覚悟で待機していると、例の大将ただ一人のみが近づいてきた。大本営、ちょっと人材の使い方荒くないですかねぇ?大将、一応壮齢の男性である。軍人として鍛えているため未だにキビキビと動けているが、大丈夫かと心配したくなる。

「まぁ、よくも派手にやってくれたな」

「手荒い歓迎があったからな。迎撃したまでだ」

「そうか。ならさっさと行くぞ。先ほどから苦情しか聞いていないからな」

「了解した。」

そう言って五七式に大将を案内した。

内装の頑丈さと清潔さに驚いている様だが、これくらい普通だぞ?兵器自体に時間逆行術式が刻まれているからだ。正直な所、妖精さんなにやってんの!?って軽く小一時間ほど問い詰めたいが、ここには陸軍妖精さんしか居ないので意味ないなーと思考放棄する。

 

静かにエンジンに火が灯り大した騒音も立てずに五七式が走り出し、そのゴムパッドを履かせた履帯を回転させて一七式が前後を固める。五七式にも砲塔はある。素早く空港まで辿り着かなければならない。面倒なぁ...

 

 

案外早く着いてしまった。

特に敵さんからの襲撃は無く、相変わらずと注目度を除けば至って静かであった。

やはり行きの迎撃が効いたのだろうか?いや、でもちょっと嫌な感じがする。だってあの国だぞー?手っ取り早く制圧するために戦車でデモしてる馬鹿どもをローリングした挙句逆効果になって収束つかなくなったあの国家だぞ?あの光沢のある髪の屑が作ってしまった国家だぞ?ここまで大人しいとは思えないなぁお姉さん。

空港に到着するとCT-7にそのまま車輌を押し込み、すぐに離陸準備に移らせる。

ただでさえ滑走路一本占拠して居座っているのだ。これ以上迷惑はかけたくない。

「アメストリア、降りても良いか?」

「大丈夫だ。」

コクピットの妖精さん達が手を忙しなく動かして巨体を動かそうとする。

航空機用粒子エンジンが起動しロマンなのかなんなのか何故かあるファンが回転を始め、甲高い音と共に推進力が生まれる。

つまり機体が前進し始めた訳だ。護衛機のF-222四機は既に上空へ垂直離陸するとCT-7やGF-21の離陸時の護衛についている。

 

先に二機のGF-21が離陸して行き、陣形の前半分を組む。そしてCT-7も加速を始め、噴進口から轟々と粒子が噴き上がり、スラスターも駆使しながら離陸。上に上がることで重力や慣性の影響があるが、この機内には関係ない。宇宙での飛行を前提とした輸送機だからだ。

という事は大気圏にコイツが突っ込んでも大丈夫という事になるんだが、大丈夫か?駆逐艦が大気圏に突入するようなものだぞ?強度は段違いだが、羽はあのデルタ翼ではない。後進翼だ。一般的な輸送機の形だ。つまり、主翼に対する抵抗が恐ろしい事になるんだが、折れないのだろうか?すごく気になる。

''離陸に成功した感じです〜''

「よくやった。」

窓を見ると後続のGF-21二機も無事離陸し、GF-21が長方形、F-222がその外回りを菱形で護衛している。両機共に武装が展開されており、厳重警戒だと良くわかる。

流石に空中では艦娘スペックは使えない。精々良すぎるほどの視力ぐらいだろ。レーダーは機能してないと思う。航空機のレーダーと戦艦のレーダーは勝手が違うし。

大将は離陸した後に五七式から出てきて、広々とした貨物庫でのんびりしている。無駄に広いからな。存分に使っていただいて構わない。かく言う私も一七式に仰向けで寝転がり頬杖をつきながら窓をぼんやりと眺めていた。ちょうどいい感じに装甲が冷えてるから気持ち良い。

しかし以前この体勢を鎮守府でした所、姉さんはそれだけで絵になるほどの美少女なのだから自覚しろとカイクルからお咎めを頂き、強襲的なナニかをされかけた。意味が分からん。

しかし、空を眺めていても何も変わらない景色である。ただ青い景色にたまに白い雲や積乱雲などが点在するだけだ。

 

しかし、そののんびりとした時間は崩された。

窓を眺めていると、右護衛を任されていたF-222二番機が主翼を派手に回転させて急降下していった。そして元の水平に戻すとエンジンの出力を上げて急加速。何処かへ飛び去った。

十中八九敵襲だろう。というか現在位置を確認したが、此処は公海上だった。

流石汚い。粗方墜落事故とかで片付ける気なのだろう。馬鹿かっての。アメストリア製の兵器が落ちる訳ないだろ。そんな人為的ミスで。重ねて言うが兵器一つ一つに時間逆行術式が刻まれているため、常に最高の状態、出荷直後の状態を何もしなくても保つすごく便利な兵器達である。

従って攻撃などが無い限り墜落はしない。絶対にだ。これは断言して良い。

おっと、遂にGF-21の片翼12門の45mm機関砲が火を吹き始め、襲来する張りぼてのまともに役立たない戦闘機?が炎上して墜落してゆく。あるものは自分の出した速度に耐えきれずに空中分解しているものもある。何してんだあの馬鹿ども。

どうせ空母持ってきて飛ばしているのだろう。増槽が無かった。まぁ、フル武装したら空母から離艦できない戦闘機だから仕方ないだろう。

アホの一機が奇跡的にミサイルを放つ。AAM、つまり空対空ミサイルだ。多分見栄張って自国生産した粗悪品だから大丈夫だ。

CT-7の対空砲は一切動かずに、胴体に命中した。しかし、たいして揺れる事もなく、何事も無かったかのようにそのまま飛んでいる。ざまぁwwwそんな矢なんか効かないんだよwww次々に最新戦闘機(笑)が落とされてやっと一発撃ててそれも効かなかったってねぇ、どんな気持ち?ねぇ?ねぇ?ねぇ?m9(^д^)プギャーwww

 

 

...

 

 

.....

 

 

.........はぁ、なんかもう良いや。

 

 

飽きた。こんなつまらない余興は良いんだよ。あ?チートすぎるって?全然。私の本分戦艦だから。何も私してないから。

「妖精さん、被害は?」

''F-222が一機機銃に被弾したそうですが全く効かなかったそうです〜''

''GF-21も当たった感じです?''

とのことだ。戦闘機の機銃というのは20mmが多い。30mmや35mmもあるのかもしれないが、私は知らん。言えるのはアメストリアの戦闘機は機銃が45mm口径だという事だ。

当然、対45mm装甲が機体全てを覆い、機銃は全く効かない。まぁ、ミサイル食らったら多少姿勢を崩すだろうが。しかし姿勢を崩す程度だ。ミサイル食らってもだぞ?この異常性はおかしい。

ファン巻き込まれるという可能性は無い。空気使って飛んでいるわけでは無いからエアアンティークなんてものもないしな。

宇宙でどう飛ぶんだよっていうツッコミが来るからな。

んーー......もうなんか良いや。つまらんかったし。弱かったし。

 

巨体が広大な敷地を誇る滑走路へその身を滑らせ、スラスターの逆噴射で停止する。しかし慣性をそのまま利用して格納庫まで機体を運んで行くと、護衛機が続々と着陸しているのが確認できる。

貨物ハッチが開かれて行き、太陽の光が差し込んでくる。うわっまぶしっ...

先に邪魔な車輌を外へ出し、大将と共に鎮守府の地面に降り立つ。

「すごいな...」

思わず大将がそんな言葉をこぼす。

まぁ、わかる。4.5kmの航空基地なんか見た事無いし。というかなんでそんなに滑走路長くしたかなぁ...絶対そんなに要らんだろ。CT-7だって1500mもあれば離陸できるし。C-203とかは垂直離陸だし。GF-21も短いし?なんで4008m級滑走路を作ったかなぁ...

 

大きな蒲鉾、そんな感じの格納庫にCT-7が格納されて行き、地下の駐機場に地面ごと下降していった。五七式とかは先に陸軍基地に戻っていった。そして迎えの一式と七式車輌が車列を組んでやってきて、大将を護衛する。

前回の阿呆共...失礼。米国視察団の時は物理的火力を見せつけるため火力演習真っ青なかつて無い大規模演習はするつもり無いし。あの時調子乗ってドーラたん出しちゃったからなぁ...あれは、すこし後悔している。しかし反省はしていないっ!(キリッ

 

さて、一人で淋しく、くっだら無い脳内茶番はゴミ箱にポイするとして、大将と共に各エリアを軽く回った。大将曰く、別に今更見なくてもお前らのチート具合は良く分かっている。との事だ。すごく失礼な気がするが、気にしない。毎度の事だ。

 

航空基地から出ると軍港へと向かった。

今回は同じ海軍所属だし色々と問題もないので全艦停泊している。え?警戒はって?

いや、隔壁全部閉じてるから侵入できないと思う。珍しく高射塔も作動している。

右手にアメストリア型戦艦四隻。左手に大和、武蔵をはじめとする戦艦や赤城ら加賀などの航空母艦、姉に寄り添うように停泊している重巡洋艦、軽巡洋艦。

駆逐艦はその数の少なさからか一ヶ所に集まっている。やはり、独特のグループが出来上がっている感じがする。別に問題が起こらないなら基本ノータッチの方向だがな。ん?なんで私が統率側になってるんだ?秘書艦だから?いや、違うだろ。んー?おかしいなー?()の影響か?まぁ、そういう事にしておこう。

 

生産区画は長時間止まる事はなかった。まぁ見るものないし良いんだが。

場所は変わり提督棟。応接室では提督と大将が向き合い、私が提督の後ろに控えている。

例の如く五式自動拳銃を撫でながらだが。やっぱ落ち着くんだよねー。何処ぞのバーサーカーでは無いが、武器を大切にしているという面では普通だと信じたい。あ、なんか自信なくなってきた...

アメストリア人は戦闘民族じゃ無いんだよな?多分。うん...え?武器を見ろって?いやー、敵に対して容赦し無いだけだしっ!

「アメストリア、六式を持ってきてくれるかな?」

「......?了解した。」

取り敢えず、指示があった為、私の船体の武器庫に転移し、拳銃のガンラックを見渡す。30cmの長い五式がずらりと並び、隣にちょこんと並んでいる六式自動拳銃。

口径を11mmに縮小し、初のフルオートを採用した最新式自動拳銃らしい。そう。今までの自動拳銃。全てをセミオートなのだ。当たり前だが。外見はベレッタなのだが、フルメタルでマガジンが長い。艶消しされた素晴らしい銃でカイクルならば確実に頬擦りしてるだろうが私はそこまで末期患者では無い。

その中から一丁持ち、ケースを取り出してその中に入れる。マガジンも弾格別に入れておく。通常弾薬と科学弾頭(以前使ってたやつ。痛かった。)と炸裂弾を入れておく。ホローポイントとかダムダムはいいだろう。

ケースを閉じてロックをかける。今の所私のみが解錠できるようになっている。機構?秘密だ。

 

「持ってきたぞ」

「ありがとう。では、大将殿。こちらでよろしいでしょうか?」

「あぁ。」

賄賂か?賄賂なのか?流石に許さんぞ?私が。

只の贈り物だな。うん。そう思う事にしよう。うん。

 

 

さて、現在はCH-4に乗っている。逃げたとか言わない。言わないったら言わない。言わせんぞ?

で、だ。なぜCH-4なんか言う巨大輸送ヘリに乗っているかというと大将を日本に送り返しているからだ。護衛機はAH-39、AH-60攻撃ヘリに任せている。

武装は39(通称ミク)に至っては45mm機関砲四門にST-8二百発だ。大丈夫だろう。

普通、ヘリで海越えは不可能である。燃料やら時間やらで。

しかしアメストリア製のヘリである。燃料要らずだし、速くてすぐに着く。まぁ、市街戦に強いヘリもいるが。帝都だからな。ビルの間を通るには丁度いいだろうと判断して連れてきた。

 

帝都が見えた。ビルが聳え立ち、光学フィールドみたいに霧がかかっている。最近寒いからな。雲が低いんだろう。公害もありそうだが。

AH-60二機が前方に移動する。そして被弾率を下げる為に小刻みに移動し続ける。

一応防衛隊も出動していたが、機体に描かれたアメストリアのエンブレムを見た途端バンクして去っていった。なんで...

「大将殿、もうすぐ都市戦闘体勢のまま突入する。しっかりと捕まっていてくれ」

「了解だ。」

高速で飛行のままビルの合間を飛行してゆく。ババババババッ!っていう爆音を轟かせながら飛んで行く為、すごく目立っているが、このヘリ、密閉タイプなので内部は見えない。

武装を積んだまま突入している為、翌日の瓦版は賑わうだろう。話題の提供ってやつだ。リバンデヒには怒られたが。

大本営まであと806mとなり、ゆっくり減速してゆく。

ローターの回転数が僅かに下がり、機体が前傾姿勢から水平体勢に移る。

大本営にはヘリポートも存在する。そこにCH-4のみ着陸し、上空を二機のミクが警戒する。AH-60は一緒に着陸している。

スライドドアを開けて、地上に降り立つ。日の光が眩しくて覆ってしまうが、艦娘スペックですぐに慣れる。

「では、大将殿、これにて我々は失礼します。」

「すこし待ってくれたまえ。貴様にも用がある。」

そう言って大将は封筒を取り出すと私に渡す。は?

「呉に海軍大学校があるのは知っているな?」

「......あぁ」

何だかすごーく嫌な予感がするなー(棒)

「次世代の軍人の育成は重要だ。それにおいて、貴様らのような規格外の艦娘に対する重要性などを理解させておく必要がある。」

「まぁ、そうだろうな」

嫌な予感しかしないなぁ...

「よって、それを理解するには本物を見た方が早いだろう。」

「.......」

「だから、アメストリア型戦艦一番艦アメストリア、貴様を出向させる」

「...........拒否する」

「勅命だ。拒否権はない」

「あんな偽りの神なんぞに信仰心は向けていない。」

()は本物の神に作り出されている。

 

「まぁ、行け」

「断る。」

私は、また、頭を抱えた。

もうやだぁ......(泣)

 



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第五章 教導編
56.出航...間違えた出向か。


文化祭が終わったのでこれからは比較的早く更新できるかもです。いや今回からの教導編はプランを練っていないのですが...どうしましょうかねぇ...


ーーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーー

時刻は午後23:00。すっかり太陽は水平線の彼方に逃亡し、代わりに月が煩く自己主張する。

古来より月は神聖視され、日本でも月夜見という月の神が祀り崇められている。

また、『魔』という捉え方もあり、月の光には人々を魅了する力があるとも言われている。

まぁそんなご大層な月の光っていうのは太陽からの光を反射しているんだが、それをいうのは無粋だろう。

さて、何故長々と月について語っていたかというと既に瀬戸内海へと入り、月の光に照らされて隠密航行しているからだ。結構幻想的な感じになっていて私は(船体が)好きだ。まぁ、自分の体だし。後ろにはリバンデヒと金剛、天城、最上、三隈。格納庫に矢矧、響がいる。上空にはE-9とその護衛機のF-222が6機私達に害するモノがないかを随時監視している。因みにその航空機全て天城から飛ばした。

今回の出向の目的は、呉の海軍大学校での次世代の提督育成においての私達バケモノの戦術的価値などの理解をさせるためだ。しかし大本営はそれだけではなく、真っ先にアメストリアの技術を投入し実践している我々に各艦の派遣を要求してきた。他の鎮守府は?っていう話だが、あちらだってアメストリアの技術を完全には扱いきれてい無いのだろう。第一、現在も戦争中だ。戦力を裂いている暇はないのだろう。戦艦とか。

 

そのため、まぁまぁチートしている艦娘達を連れてきた。本物の、それこそ初期からいる大和や武蔵、長門、陸奥やら赤城、加賀、高雄、愛宕達は鎮守府の防衛に回している。彼女らだったら話になら無いからだ。ん?私もか。

 

それでだ。午後19:00に間宮さんの晩飯(海軍カレーだった。金曜日か。)を食べてからナウル鎮守府を出た。そこからのんびりと航行して現在やっとついたわけだ。

私が20ノット以上で進むと大変音が立つ為5ノットまで減速し、照明灯まで消して進んでいる。

大本営の手回しか漁船や民間船は居ない。つか居たら確実に転覆する。

『お姉ちゃん、呉を視認したわよ』

「了解。こちらでも確認した各艦、停泊用意」

『リバンデヒ了解したわ』

『此方金剛デース!了解シタネー!』

『天城です。了解しました』

『最上、了解したよ』

『三隈ですわ。かしこまりました』

呉は市街地は眠らず照明で彩られ、周囲も街があるのか、かなり明るい。

そんな中軍港の灯台の光を確認し、誘導に従って動いて行く。

闇に紛れてってやつだな。

 

私は埠頭に接岸しなかった。いや正しくは出来なかった。まぁー私の大きさ分かってたけどさ?

こうも分かりやすく施設に拒絶されるとこう、なんか落ち込むね。本当に。はぁ...

埠頭には最上、三隈、矢矧が停泊している。流石に呉とはいえ四桁メートルの艦船は収容出来なかったらしく、金剛と天城は私達の間に停泊する事になった。艦娘スペックで埠頭に艦娘が降りていることも確認できる。響は私達に寄り添うように投錨されており、私達を回収してから埠頭に向かう予定だ。

寄り添うように投錨されており、私達を回収してから埠頭に向かう予定だ。

「リバンデヒ、急げよ」

『分かってるわよ』

どこか嬉しそうなリバンデヒの声を聞きながら私も準備を整える。まずホルスターに五式自動拳銃二丁。マガジンも弾格別に科学弾頭とゴム弾。そしてM145を一丁スリングを通して腰に下げるとM634を持って甲板に出る。そこには無骨なコンテナ型の木箱が二つ鎮座している。

当然、この中にも武器が入っているが、替えの巫女服や必要そうな資料なども少量入れている。まぁ、船体に戻れば大体なんとかなると思ってるからだ。

響の甲板に木箱を置かせて貰う。

 

「久しぶりに日本へ戻ったよ」

「そうだったか?」

 

多分、そうだろう。パラオ鎮守府で建造して一度も日本へ帰って無い。前世の記憶だろう。

私には''アメストリア''という前世があるが。いや、私にも知識はあるがな。ん?記憶じゃなくね?

まぁ、良いや。これを人は現実逃避、または思考停止というが、もう良いや。こんがらがってくる。

 

「さて、私にも久しぶりに活躍の機会が来たんだ。精一杯働かせて貰うよ」

「あぁ、頼む。」

 

確かに響には活躍をしてもらってい無い。大体戦艦が主砲かミサイルで処理しているからだ。

駆逐艦には活躍の機会があまりないというのは事実だろう。しかし、演習や少し遠くの出撃には必ず駆逐艦を同伴させている。小さくて機動性のある駆逐艦が居た方が何かと便利だからだ。雷撃とかな。そういう面でも響はアメストリアの技術で魔改造を受け、高速艇となって今まで一番長く戦ってきている。経験、そういう意味で話は響を連れてきた。

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

遥か彼方の地平線が淡いオレンジ色に染まり、水墨画のようにぼんやりと赤みを増してゆく。

 

『ふわぁ〜.......お姉ちゃん、時間よ〜』

「そうか。全艦戦闘態勢。私とリバンデヒは主砲を起動。」

今は午前7:00。朝日が昇る時間だ。夜は光学迷彩を全艦が起動させて就寝をした。

 

防衛は自律防衛システムに任せた。まず光学迷彩で見えないから大丈夫だとは思うがな。保険ってやつだ。

で、だ。何故日の出と共に戦闘態勢になったか?

前線では何時深海棲艦が来るのか全く予想できない。昼かもしれないし夜かもしれないし丑三つ時かもしれない。もしかしたら早朝に奇襲があるかもしれない。

そんな時にちんたら寝ていたら確実にその鎮守府は堕ちる。私としてはそんな馬鹿の所為で艦娘が死んでほしくない。司令官は良い。人間は幾らでも替えが聞く。しかし艦娘は効かない。建造で確かに幾らでも『戦力』としては補充が効くだろう。しかし、それでは全く意味がない。消耗戦となってしまいいずれ滅びるだろう。

だから、徹底的に鍛え直すことに決定した。

本来ならThe 軍人 なカイクルが適任だろうが、カイクルとノイトハイルには別の任務を任せている。そう、大日本帝国海軍の敗北への最大の転機とされているミッドウェー作戦。そちらの方に戦力を割いた。因みに赤城達が来れない理由の一つでもある。

 

 

「光学迷彩、解除しろ」

''りょうかいですー!''

''了解な感じです?''

''あいあいさー!''

 

バリンッというガラスが砕け散る音が鳴り響き、太陽の光さえも欺いていた空間が歪み、割れる。

すると先程まで存在しなかったはずの艦影が突然出現する。しかし、大日本帝国海軍、大日本帝国空軍、大日本帝国陸軍は一切動かない。前もって通知しているからだ。

 

「主砲、空砲を装填」

''くーほー装填!''

''装填っー!''

''動かす感じです?''

 

ゴロゴロと弾頭の炸薬が入っていない砲弾がレールを転がり、下に着く。そしてガコンという音と共に砲弾が薬室に装填され、駐進機が砲身を前進させ安全弁が閉じられる。

 

「主砲、全基右舷90°に旋回。全門開け」

''せんかーい!''

''ぐるぐるー!''

''しゅほー旋回しましたー!''

''あとは撃つ感じです?''

「目標、呉海軍大学校。仰角合わせ」

 

恐ろしい程の莫大なエネルギーを持って巨大な主砲がその重さを感じさせずに旋回する。

今更だが主砲の500cm四連装砲は航空母艦と同じくらいの重量を持つ。24000tくらいだ。そんな巨大かつ超重な主砲を軽々と旋回させる出力を持つのは粒子エンジンでも一つでは回せない。というか安全面を考えて複数で運用している。一個壊れても旋回出来るように、という意味だ。

ベアリングも頑丈でよく回転する。

 

素早く一本1000tの重量をもつ砲身が次々と上がって行きある角度ーーー呉海軍大学校に届く角度に上がると上昇を止め沈黙する。

リバンデヒも旋回を完了させている。

埠頭にいる天城は万が一のために灰色の全通甲板にF-222を展開させ、次の第二波にGF-21やE-9、AH-39を用意し始めている。

まぁ、妖精さんが忙しなく動き回っているがな。主に遊びの方向で。いや妖精さん、仕事してくださいよ。

jobやってください。ね?割と真面目にね?え?無理?そうか.......何で?...つまらないから?

いや最近詰まらん事は自覚してるけどさぁ、ねぇ?別に深海棲艦が億単位、兆単位で殺って来る訳でもないし周辺の威張り散らしてるヘタレチキンはへっぴり腰だし。

私も詰まらん。()?とっくの昔に飽きてるよ。

 

''仰角設定ー!''

''主砲固定。良さげな感じです?''

''発射準備かんりょーしました!''

「てぇっ!」

 

轟音と閃光が迸り、第一艦橋のガラスを叩く。

真っ白な、純白の煙が次弾の為に後進した砲身からもくもくと上がり、未だに衝撃波は止まらない。やはり主砲は良いものだ。口径50000mm。(500cm)砲弾は空砲でも薬莢に詰められた炸薬は45t以上になる。それのエネルギーが砲弾を押し出し、超高性能炸薬を満載した砲弾がライフリングで回転して飛び出すと弧を描く...訳もなく直進して敵に突き刺さるかそのまま貫いて後から慌てて付いてくる衝撃波に粉砕される。普通にVT信管もあるからな?妖精さんがそれをはめていないだけで。しかし何故かウチの妖精さんは通常の信管を装着して砲弾を飛ばす。

未熟な私には信管まで干渉する力がない。やはり私は()では無いので万能な艦娘とはいかない。

いきたいけどなぁ...無理なんだなこれが。いつまでも前世の記憶からの人間としての計算能力などを基準としてしまい、中央演算処理装置を真の意味でフル活用していない。

していたら私は一人でも動けるし。

 

ともあれ、500cm口径の砲声は莫大な音量を誇り、金剛が放った主砲の空砲でもかなわない。当たり前だが。というか勝ってもらっちゃあ困る。

海面を人工的に歪ませ呉海軍大学校に過去最大の目覚ましをプレゼントする事ができた。

そこに関しては満足だ。これから大日本帝国海軍としての軍人をきっちりと教え込んでやる。趣味などには干渉したく無い。というかめんどい。いちいちやってる暇は無い。

だから授業や実習という形でガンガン実戦や()の誇る怨念じみた殺気を感じてもらう。

 

ついでだ。この呉海軍大学校のシステムを紹介しよう。

まずこの学校は次世代の海軍を担う「提督」という役職の軍人を育てる為だけのものだ。

海軍の大本営や本土鎮守府などの後方支援は別の学校にて教育される。

つまりこの海軍大学校は提督としての素質を養い、艦娘をより理解してその艦娘の長所短所を把握した上で作戦を立てる。その中にもここをどの編成でどう攻めるかなどかなり緻密な戦術が要求され幾重のパターンを考えておかなければならない。

だから「提督」という役職は色々といや、無理だろっていう何このマゾゲークラスのスペックを要求される。現職はそれを当然としてやってくれている。というかそうし無いと艦娘は提督に従ってくれない。

その提督を育成する為にはまず駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦、戦艦、航空母艦、潜水艦、給油艦、潜水母艦、水上機母艦、大発母艦などの艦娘の特徴や長所、短所を学び、それを踏まえた上で有効な戦術を教えてゆく。こういう場合は水雷戦隊を〜〜〜といった具合だ。

一応、軍人としての基礎レベルは鍛えられており、拳銃の発砲授業もあるらしい。

 

 

しかし、

 

甘い。あまりにも甘すぎる。まずこれらの教育カリキュラムが典型的な無能を無限に生み出してゆく詰め込み式教育を未だにしようしている。これでは自分で考えて行動することができず、深海棲艦が予想外の奇抜な戦術をとってきたときにテンプレ、教科書通りと対応しかできない無能では鎮守府が潰される。深海棲艦は戦術を持たない。それ故に戦術の固定概念や前提を持たず、ときに奇抜すぎる戦術を繰り広げる。そんなときに対応出来なかったら私がキレる。

だから、自分の考えをしっかりと持ち、自分の意思、経験、発想で動かなければこの戦争を生き抜くことは100%不可能だ。

だから私は従来の戦術を教え無いつもりだ。つかそんな物知らんし。

アメストリア流の戦術を教えてやる。恐らく、ここの生徒が提督になる頃には大体の鎮守府の艦娘はアメストリアの技術での改修が施された後だろう。アメストリアの技術は従来の戦術を根本から破壊する。例えば会敵。昔は索敵機(水偵)を飛ばして見つけて報告してやっと戦闘準備。だっただろうが現在は電探で発見して取り敢えずハープーンをブチ込む。そして主砲や噴式魚雷による砲雷撃戦となる。偵察というプロセスは必要ないのだ。航空母艦であってもそうだ。一々爆装したり魚雷積まなくてもST-8積んで飛ばせば大体は大丈夫だ。つまり、今までの戦術は一切通用しない。

それにも関わらず古い戦術を教えていても全く意味がない。

むっふふー。どう教えてやろうか。私はこれからのカリキュラムを考えながら不敵に微笑んだ。




VRMMOを題材とした小説を書きたいと思っているこの頃。
テーマは戦闘機ですね。この小説巨艦巨砲主義ですし。戦闘機活躍してませんし。
無論戦闘機はF-222が出てきます。てへぺろ☆ミ


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57.とりま叩き潰す。

M249MINIMIが欲しいなぁと思ってきた私です。定価で42000超えてるんですよねぇ...高いなぁ...それにバッテリーや充電器、予備マガジンにダミー弾帯...ウッアタマガ.....


おくれますた。申し訳ございません。体育祭やらでバタバタしてました。


 

ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先程の空砲を起床ラッパとしてグラウンドに集合しつつあるのをスコープで確認した。

おっそいな。普通5分以内だぞ。これでも妥協している方だ。実戦でこんなちんたらしてたら確実に鎮守府が爆撃されておじゃんだがそこら辺考えてるんだろうか?すごーく気になるなお姉さん。

恐らく、三者からみると私は額に青筋を立てて馬鹿でかい狙撃銃を構えていることだろろう。

正直、此処まで堕落していたとは要素外だった。本当に軍人の卵かこいつら。

 

「次弾発射!」

''ふぁいあー!''

''撃つです!''

 

ドドォォォォォオオン.....という大音量が再び響き渡り、砲口から白い煙が噴出する。

 

「射撃体制解除しろ。必要無い」

''砲弾ゴロゴロ〜!''

''安全弁締める感じです?''

''せーふてぃーロックするです。''

''装填無し確認するです''

 

主砲が元の位置へ旋回し、ロックがかかり解除され無い限り発砲ができなくなる。

だからと言って私が動けなくなるわけでは無い。というかそんなの困る。

私艦娘だぞ?艦娘としての攻撃手段を奪われては困る。

 

「機関停止しろ」

''きかんてーし!''

''エンジン停止する感じです?''

''全システムオールダウンです''

 

投錨する。

18tの超重量級の巨大な錨が同じくクッソ重いかつ無駄に頑丈な鎖と共に海中に突撃し、海底に行くつくと内部機構が作動し、左右の湾曲したトリガーがロックされてより強固に海底と船体を結ぶ。

これは今までに無かった方法で私が冗談半分に提案したら妖精さんが乗ってきて実用化しちゃった妖精さんの暇つぶし作品である。潮の流れが速いところとか嵐の中でも停泊できるようにという理由だがな。これ後付けな。言っちゃいかんぞ?お姉さんとの約束な。

因みに性能的には20〜30mクラスの津波でも流されないらしい。いや、それは船体の巨大さからだろってツッコミを入れたいが言おうとしたら妖精さんにドロップキックされたので言わない。痛くなかったけど痛かった。おもに精神的に。

 

 

さて、昨夜からずっと待機して貰っていた響に飛び移る。リバンデヒも同じく投錨して転移してきた。既にフル武装の状態である。甲板には夜に木箱を置いてある。大体の装備はそこに入っているがホルスターには五式、背中にはスリングでM145を吊るしている。

M634は...ほら、あれだろ?重いしデカイだろ?甲板に放置したよ。可哀想で銃だけど何故か哀愁が漂っていた。ごめんな。これから使ってやるから。

 

「行くぞ。叩き直してやる。」

「ふふふっ退屈しなさそうね」

「やっぱり君達は怖いよ...ある意味でね」

 

そうか?()の意思でもあるが、私の意思が強いと思う。これ以上無駄に艦娘が犠牲になって欲しくない。艦娘だって生きているのだ。

意志を持ち理性がある。しかし人間とは根本的に違う。

船体を己の半身として操り、WWll時代ではあるが戦争ができる攻撃力を持つ。また艦娘自身も並外れた身体能力と頭脳を持っている。人間とはスペックが違いすぎるのだ。

 

私はその仇となる存在を消し去る。力持ってるから他人のために〜〜とかいう理想論者ではない。

力、取り分け武力を扱う際は己の意志が必要だと思う。

義務とか責任とかでは無く。

 

武器が人を殺すというが、違う。

その武器を扱う人間の殺意が人を殺すのだ。

事実有名だが人の死因にAKが堂々と上位にランクインしている。まぁAKシリーズの生産性とバリエーションやコストを考えると納得するが、銃であれど銃が意志持ってヒャッハーしているわけではない。

これを持つチンピラや人権をナニソレオイシイノっていう精々大規模な掃除の対象となるゴミ屑どもだ。因みに某イスラムと愉快なチンピラ達のお掃除ではF-22も出撃しているらしい。私は感動したが。

やったねラプちゃん!出番がやっと出てきたよ!

 

ラプちゃんは冷戦時代から開発が進められ、1990年くらいにばばーんと発表する予定だっだが資金などの問題で2003年にズレ込み、国防費の削減によって750機の予定が175機に削減されたかなり不幸な戦闘機である。

しかしアメリカの最新技術がこれでもかとブチ込まれており、世界最強クラスの戦闘機だと私は予想する。まぁ、F-222はおろかF-75という同じステルス戦闘機にも瞬殺されるけどな。あ、F-75は開発からあっちの時間軸で2000年を超えて旧式化してるから大体の前線からは姿を消しているらしい。大体個人所有か適当な格納庫に実弾兵装のまま放り込まれているらしい。恐らくミサイルの弾薬庫として活用しているのだろう。まぁ、

格納庫にF-75のような先進的なデザインの戦闘機がズラリとならぶ風景は中々乙だろう。私は見たことないが。

 

閑話休題、態々金剛と天城がスペースを空けてくれていた僅かな、駆逐艦1隻ぴったりの隙間に響が寸分狂わず正確な操舵でピットインさせ、接岸する。

響の操舵技術がレベル99カンストしてる気がするが、駆逐艦の特性なので気にしない。私は出来ない。多分だがな。妖精さん達なら出来るんじゃね?

木箱を先に降ろし、M145を肩に担ぐと陸に降り立つ。そういやM634はバイポッドを畳んで縮小させる事ができる。苗この際に肩に当たると大変な事になる(経験者),当たったら凄く痛かったから反省してる。うん。あれは痛かった。バイポッドには反動が強すぎるからちょっとしたスパイクが付いている。と言っても設置する場所に傷つけないで?っていう要求に答えてしまったやつなのでとんがった針があるわけではなく、アンカー式だ。ん?針な気がするが気にしない。先端丸いから。

しかしある時射撃訓練で立て続けに様々なパターンと的を撃っていたため移動に面倒になって肩に担いだらバイポッドが突き刺さり、大量出血するという一緒に撃っていたカイクルやノイトハイルを巻き込んだちょっとした大事件となっている。いやー、あれはもうやだなー。痛いし。

 

グラウンドにリバンデヒと到着すると更に阿呆どもの醜態さがよくわかった。本当にお前らやる気あるんか?列は整列しておらず、偶にゲームやらスマホいじってる奴もいる。殺したろか貴様ら。

M145をリバンデヒに預けると朝礼台へと登る。そこからは栄えあるアメストリア海軍軍人としての、艦娘としての本気の顔を張り付けて登る。ある阿呆は私が拳銃を持ったままであることに疑問を持ち、ある馬鹿は私の淀みないピンと張られた背筋や歩き方に圧倒的な実力を感じ取り本能的に姿勢を正し、周りの理解していない阿呆どもがそれを見て笑う。馬鹿だなやっぱり。

またある阿呆は私に遠慮なく不躾な、下品丸出しな下心ある目線を舐め回すようにぶつけてくる。よし。あいつは殺してやる。というか未だにスマホいじってる奴はある意味すごいな。

年齢は大体まだ青さの残る10代後半から20代前半。偶にショタがいるが私はショタコンでも無いしフェミニストでもない。百合ではあるが、変な性癖は無いので全く興味は無い。というか無駄に顔が良いためそれを利用して金巻き上げてるなアレは。()が教えてくれている。

台へ立つ。ただそれだけで威圧感が漏れ出し、私が殺気を放っているとよくわかるだろう。激おこぷんぷん丸である。そしてその整った完璧過ぎるほどの美貌から全ての感情が抜け落ちると、白い両手にホルスターから抜かれた馬鹿デカイ、全長450mmの真っ黒な拳銃、五式自動拳銃が握られ、銃口を阿呆どもに向ける。私は照門や照星を合わせるまでもなく引き金を引いてゆく。何度も何度も。

その度に巨大なスライドがバックしてからになったこれまた巨大な薬莢を排出する。弾倉から青いゴムの弾頭がついた弾薬が薬室へと吸い込まれ、トリガーと連動した撃鉄がプライマーを叩き内部の点火用炸薬に火をつけると弾頭を飛ばす為のガンパウダーに引火し、青いゴムでできた弾頭がライフリングを高速回転しながら転がり、爆炎と共に銃口から飛び出すとまっすぐある物に命中し、次弾も同じようにある物に命中する。

私はいじってた奴のスマホだけを全て撃ち落とした。

 

「私は、アメストリア海軍所属、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。別に情報端末を否定するつもりは無い。外界との繋がりとなり、情報を収集し吟味する為の重要なアイテムだ。しかし、それを公私混同してこのような場でさえも私用に活用するのは私が許さん。さて、今日から貴様らの私達化け物に対する特別講師として着任したが、今までのぬるま湯は二度と味わえ無いと覚悟しておけ。以上。敬礼ぇ!」

最後に私が声を張り上げアメストリア海軍式の敬礼をすると、遅れて一部の阿保が答礼する。しかし、私の言った内容に理解が未だできないチンパンジー共は対応できず、立ちすくんでいる。そんな奴らは知らん。負け犬は負け犬らしく這いずり回っておけ。それが嫌なら自分の力でのし上がれ。出来ないなら死ね。勝手に死ね。

敬礼を止め、素早く台から飛び降りるとニヤニヤしているリバンデヒからM145を受け取り、ここの教官と会うべく教官室へと向かった。金剛達は船体で待機してもらっている。彼方も通常の艦娘では無く、私達化け物側だからだ。あと、護身術を身につけていないからだな。襲われて奴隷になっていましただと私がキレる。絶対そいつら殺してやる。

若干イライラしながら歩いて行く。

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

私は再びイライラしていた。

現在私がいるのはアメストリアの会議室。そこにはリバンデヒを始め艦娘しか居ない。

先程、教官室に行ったのだが、話しているうちにまともな教官がいないことが判明した。生徒に対して権力が存在せず、左遷先のような感じであった。柄の悪い連中が揃い、生徒とグルになってるクズもいるようだ。私の優れた嗅覚は少量のヘロインと覚せい剤、そして強めの香水を確認した。何をしていたかは想像に難しく無い。なんでこんなに絶望的なのかねぇ...ジロジロと下衆な目線向けてくるわでイライラする。

 

「さて、どうする?」

「アメストリア提案があるネ。」

「金剛、言ってみろ」

「私達にもweaponをpleaseデース。」

「......自衛だな?」

「of course!もちろんネー!」

「...良いだろう。撃ち易く扱いやすい銃を手配しておく。他に意見は?」

 

脳内のリストから扱いやすい銃をピックアップしてゆく。くそっ...どれも化け物級だから少ない...なんでだよ...七五式とか良い感じだろうか?

 

「僕からも良いかな」

「最上、言ってみろ」

言ったのはボーイッシュな少女、最上。隣には三隈もくっついている。

「まず、僕達が派遣されたのは貴女のような規格外の存在に対する理解、とあるけど多分違う。この学校を改革して欲しいんじゃないかな」

「私もそう考えたよ」

響も同意を示した。やはり、その結論に至ったか。それも考えたがあんまり変えると色々と面倒がなぁ...闇組織幾つか消さなきゃならんし。面倒じゃん。

「というかあいつら本当に軍人の卵なの?」

 

そういうのは矢矧。彼女もあの酷さを見てイラついているようだ。

よくわかるよ、その気持ち。

 

「私としては大本営の指示などどうでも良いからさっさと教えて撤退するぞ」

「私も賛成だわ。あの猿たちにお姉ちゃんの身体を渡すわけにはいか無いもの。」

 

リバンデヒの頭、出来るだけ脳天に近い中枢を叩きながらスルーする。私が襲われる?冗談言うな。そこまで何回も失態を犯すわけがないだろう。多分な。いやさぁ、毎回ジロジロと下心ある目線を向けられると慣れちゃうんだよなぁ...これが。だから襲われる兆候が掴みにくいことは否定出来ない。警戒すべきか...?一応、後で武器庫から実弾のマガジンを持って行っておこう。

何度も言っているが、艦娘はその船体と同クラスの身体能力を持っている。要するに力が半端ないのだ。しかし、その力を入れるプロセスは人間と一緒であり、関節技を極められたり関節を外されるとその本来の力が発揮できず、外見相応の力以下しか発揮できない大変危険な状況になってしまう。今までの私への強襲の敗北原因No.1である。だから、それに対応した柔術などの技も学んでみようかと検討しているが、今の所やる気は無い。というかやる気起こらない。船体沈まない限り不死だしゆっくり考えよーっていうテキトー理論(思考放棄とも言う。)で納得している。因みにリバンデヒやカイクルは既に結構な数の格闘術を習得している。

 

「......兎にも角にも、取り敢えず貴官らには自衛用武器を渡しておく。扱い方も私が教えよう。」

そう言って武器庫へ転移する。やっぱ七五式かなぁ...うーん...九九式...いやアレは化け物か。どうしよっかなぁ...

 

「さて、こいつはベガルM69、六九式特型歩兵小銃という。本来なら空軍正式銃だが、取り回しがしやすく、軽いため扱いやすい。」

 

今回採用したのは六九式特型歩兵小銃という小銃で、外見がG36Cのバレルやハンドガードを少し伸ばした形のアサルトライフルだ。艦内での銃撃戦を想定し、コンパクトかつ威力が高いため、今回の状況にぴったりだと思った。響では扱いきれないとは思うが他の銃を出す予定だ。

この六九式だが口径はアメストリア軍標準の7.92mm。弾薬は7.92×99mmを使用。

NATO規格より大きく、威力は御墨付き。

重量は2.4kg。全長920mmで有効射程3000mを誇る自動小銃だ。

一応スリングを通しておき、弾倉は抜いている。

金剛、天城の順で渡して行く。矢矧まで渡すと、リバンデヒから受け取ったMS95、つまるところサブマシンガンを渡す。

 

「響にはこれだ。」

「ありがとう。これは...?」

「九五式短機関銃と言って11mm弾を使用するサブマシンガンだ。小さくて取り回しが効く。」

 

九五式短機関銃というのはアメストリア情報局が現地に持ち込める大火力の銃器を要求して誕生したサブマシンガンだ。バックにも入れれるほどの全長450mm。重量は1.8kgととても軽く、小学生くらいなら持てるだろう。撃てるかはともかく。使用弾薬は11mm弾。仕様変更で9mmパラベラム弾も使用できる便利な銃だ。

外見はMP5。しかし折り畳み式固定ストックだ。

有効射程は大体サブマシンガンならば精々頑張って200mだろう。しかしこいつは驚異の1000m。

無論条件にもよるが。台風の中で撃っても意味ないだろ?というかそんな中で届く銃を教えて欲しい。あ...M145とかM634は別な。アレは多分届くから。

 

「今回、特別に銃器を貸し出したが、あくまでも自衛用だということを忘れないで欲しい。くれぐれも私利私欲のために利用はしないでくれ。私は艦娘に対して一切の実力による処分は絶対にしないが何が起きるかは伏せておこう。」

 

まぁ、何もしないがな。別に人間が私の渡した銃で死のうが正直どうでもいい。艦娘と人間の一つあたりの価値は断然艦娘が高い。絶対数も少ないのだ。

 

......リバンデヒはするかもな。ナニをとは言わんが。

さて、これからまともに扱えるように教えなければならない。多分艦娘だから大丈夫大丈夫とは思うが...

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2018/1/18 熊野から三隈に変更。やっぱ熊野は鈴谷とだと思うの。


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58.ふぁいあ〜

ONE PIECEに海軍艦艇出したらどうなんだろうって想像してたら遅れました。すまぬ。


ーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーー

バババババババッッッ!!!という重い重低音の銃声が重なり、金色の薬莢が排出口から吐き出され甲板に転がってゆく。鋼鉄のタングステンよりも硬度の高いフルメタルジャケットの、7.92mmの弾丸が遠くの的を抉り火花を散らす。

 

そう。現在は艦娘たちに射撃訓練を施していた。

やはり、本職が砲撃とありかなり練度は高く、最初こそ扱いに戸惑っていたものの今では私の甲板に設置された臨時の的(1000m先)に平気で命中させている。

響きを除き全員がM69であるが、そのM69の射程は3000mを誇る。

まぁぶっちゃけるとちょースゲーアサルトライフルな訳なんだがマガジンの交換が必要無い為、銃撃が途切れる、という事が銃を破棄しない限り起こらなくなったということである。

これは戦場や実戦ではとても大きなメリットとなる。兵士が攻撃すべき時に攻撃できない原因は大体下記の三つに分けられる。

 

一つはリロード。銃には弾薬数という制限があるからだ。これは現在地球上のすべての銃器にかかっている忌まわしき楔である。マガジンに入っていた弾丸が切れれば次のマガジンを入れる為にマガジンキャッチを押してアモを自重で落としてから新しいマガジンを押し込む。そしてコッキングレバーを引いてチャンバーに初弾を入れてからやっと引き金を引くことで弾丸が発射され音速を超え敵を撃滅する。どうしてもリロードするときはそちらに意識を持って行かれる。弾切れは銃から遠距離攻撃の手段を奪うに等しいからだ。そのためにそちらに集中するとその間に撃たれたり斬られたり潰されたりする。致命的な欠点だ。

しかし弾薬数というのはある種の保険だと思う。銃本体の耐久力を長持ちさせるという効果があるからだ。銃弾は今の所バレルに刻まれたライフリングを通ることで回転力を得て高速でより威力を持って発射される。つまり銃を撃つと絶対にライフリングを通るのだ。

ライフリングとて絶対に壊れないという便利な御都合主義万歳な設定はない。消耗し擦切れる。命中力は格段に悪くなり威力も落ちるだろう。M2などがバレルを交換するのはその理由も一つだ。

 

二つ目は弾切れ。これはもうどうしょうもない。攻撃手段を失ったも同義だ。確かにCQCとかコンバットナイフとかあるだろうが、実戦で使用される機会は少ない。大体榴弾砲の雨にさらされるかミサイルの洗礼を受けて敵さんが大☆爆☆発☆しているからだ。あとはM249ことミニミやM4...最も最近はM4を使っていないようだがアサルトライフルが処理する。つまることろ、よほどのことがない限りコンバットナイフやCQCのみでの戦場は訪れない。無いとも限らないが。

 

そして、三つ目が負傷者を搬送するときだ。

例えば、10人の小隊があったとしよう。彼らはある作戦で某中東の国家で紛争に介入していた。そんな時、敵からの銃撃。警戒していた彼らはすぐに物陰に散開し、反撃をしてゆく。

大体敵が使うのはAKやライセンス生産された粗悪銃である。威力はまぁまぁ高く、いくら殺しても殺してもどこからか現れるウジ虫が扱う素人級の馬鹿な撃ち方だろうが当たるときは当たるのである。ついにその内の一発が隊員の一人を貫き伏した。

この時、この隊員を運ぶのに四人のまだ戦える戦力を動かして安全圏に運ばなければならない。つまり、残存兵力は10人から5人に半減するわけである。かつ衛生兵もそちらに動員される為その後負傷した隊員には完全な対処はされないという最悪の事態を引き起こす。

 

 

 

おっと話がずれたな。ともかく撃ち続けれるのは得だZE☆っていることだ。

利点としてかなり大きい。かつ命中精度と扱う艦娘の腕が良ければなおさらだ。

 

「撃ち方やめ!」

 

私が声を張り上げると全員が引き金から指を離し銃口を下に向けてマガジンを抜きとりスリングで下げる。うん。完璧だ。安全確認はしっかりとやっている。

 

「全員素晴らしい命中率だ。しかしただ動かない的を撃っても意味が無い。これからはより実践的な訓練に移行する。」

「そのpracticeはどゆもーのですネー?」

「...私を、撃て」

ニヒルな笑みを浮かべながら言い放つ。

「「「......はぁ!?」」」

 

普通、自分撃って〜っていう馬鹿はいないだろうが、やはり一番は動く的、特に人型が最適である。敵は人型なのだから。

第一に私は銃弾が命中しようと死にはしない。痛いけどな。万が一ヘッドショットされても高速修復材があれば何とかなる。心肺停止、つまるところ死亡。そんな確実に死んでも艦娘というのは大丈夫なのである。案外丈夫なのである。以前、私が心肺停止になった時カイクルが人工呼吸する事で私は生き返ったが、あれも処置の一つである。

人間と同じ処置でも艦娘は生き長らえることができるが、艦娘としての処置でも生きることができる。そういうところは便利な艦娘だ。救命手段が二つもあるのだから。しかし、人間に高速修復材をかけたところで意味が無い。不憫だな。

 

転移を応用して2kmほど離れた甲板に降り立つと腰に差しておいた大太刀を抜刀する。

そして深く腰を下ろし右足を前に、左足を後ろに下げ胴体自体を捻ると大太刀を両手で持ちくっつける。この体勢から斬りかかるとなかなか便利なのである。

ランス構えているみたいで私はあまり使わない構えだがな。いつも『突く』というより『切り裂く』だし。

それでも艦娘の為ならやるのだ。(ドヤァ

 

私の優秀な瞳は正確に飛んできたあまり殺意の無い、迷いのある銃弾を捉え、脳内で処理するとそのままバレットラインを構築する。弾道予測線とでも言おうか。そんなものを片手間に構築しつつ大太刀を振り上げ片手で振り下ろすと逆手に持ち直し振り上げる。ただそれだけで全ての銃弾が叩き落される。初速は大体2500m/sくらいである。何Mだっていう話だが重力や酸素の影響で性能が左右されても困る為アメストリアの銃器は初速が途轍もなく速い。もう、それはもう。

更に銃弾が迫り来る。しかし、それは動揺が現れているかのように弾道がぶれている。

回避もせずに全て切り裂かれたのが驚きであったのだろう。どうだすごいだろうとは言わん。そこまで自惚れてはいない。なんか、負けだと思うから。

 

閑話休題。訓練は無事に終了した。全員が恐ろしいほどの命中率を誇り、私にも当たりそうになるなど中々に撃つ覚悟が出来てきたようであると内心ほくそ笑む。これで最低限の自衛は可能となるだろう。現在は各々の船体へ戻り自由時間となっている。かく言う私も自由時間として暇を貰い例のアングルデッキ、露天艦橋にて緩やかな時間を過ごしていた。

標高360mという東京タワーよりも高い位置からの光景は圧巻である。呉という土地からか港が多く、軍艦特有の灰色塗装された艦が多く停泊している。その多くが駆逐艦や軽巡洋艦だ。おそらく、警備か護衛だと思われる。

呉は古くから造船で栄え、有名なのはあの大和型戦艦一番艦大和を建造せしめたということだろう。確か知識によるとそのドックは未だに現存している筈だ。

大和ミュージアムという資料館も艦娘が出現する以前から存在し、スケールは忘れたが20m超えのレプリカ、ミニ大和が展示されていた筈だ。

他にも三式弾などの砲弾や零式艦上戦闘機などが希少にも展示されていたが艦娘の出現により零式二一型などは腐る程鎮守府にて生産され希少価値は消滅した。

 

「大和」というビッグネームも船体が復活したことで人気は衰えたが基本的に鎮守府が戦力を堂々と係留している筈もなく実際に大和を始めとする艦娘の姿を見ることができるのは何時ぞやの海軍式典や記念式典などのみである。

当たり前といえば当たり前である。

誰が好き好んで他の国の間者がいるかもしれない可能性があるのに軍機の塊である戦艦を飾らなければならないのか。

かつ、展示用に戦艦を裂けるほど戦力に余裕は無い。

つまり艦娘のリアル船体ではないものの「戦艦」と最も身近に接せるところは大和ミュージアム他ない訳で未だに人気は衰えない。否、深海棲艦との戦争以降むしろ増加しただろう。

 

けれども、いくら私の技術が来ようとも戦線の拮抗は崩れない。

いたちごっこなのだ。深海棲艦との戦争は。こちらが新型を出せばあちらもそれ以上の存在を出してくる。私が来れば深海棲艦もアメストリア型戦艦を出してくる。本当もう嫌になってくる。国民守るだとか国守るだとか主張主義守るだとか割ともうどうでも良くなってきた。

けれども、現在進行形で進むこの問題は解決せねばならん。

 

「はぁ...」

「〜〜♪〜〜♪」

 

そう。リバンデヒが抱きついているのである。

せっかくこれからの事考えてたのに...考えてないけど。

とりあえず...私の深淵は教えるつもりは更々ないが効果的かつ艦娘の負担が少ない戦術や長期的な、後で効果を発する長期的な作戦を教えていこうか。使えるかは兎も角。

 

「なぁ、リバンデヒ。」

「ん〜〜?どうしたのかしらぁ〜?」

「お暇もらったら日本を探索するぞ。」

「ふふふ〜アメストリアでも日本は人気よねぇ...大体は平和すぎて落胆と失望とともに帰ってくるらしいけれど」

 

やはりそうなのだろうか?現代日本はあまりにもぬるま湯に浸かりすぎている。

戦争中だというのもだ。全部に任せっきりにして自分に危害が及べば政府のせいにして暴れて馬鹿みたいなデモだのテロだのを起こして挙句の果てに超理論跳躍した謎の主義掲げて今の政府倒すだの俺たちこそが正義だのとほざく愚民共が蔓延っている。

例えばジョークだろうがドッキリだろうが突然爆発音が鳴り響いた時日本人はまず何を想像するだろうか。何を感じるだろうか?

事故?恐怖?そして自分には関係ないとタカくくって安堵して気をぬく。その時点で重篤クラスの平和ボケだ。ガス爆発だったのかもしれない。タンクローリーが横転して大爆発を起こしていたのかもしれない。しかし、敵...深海棲艦かもしれないし他国かもしれない軍隊の攻撃だったら、そういう想定がない時点で相当終わってるのである。

すぐに窓を確認し自分の目でしっかりとその状況、原因、規模を確認した上で何をするべきかを考えて欲しい。感情的に怖いーだの俺には関係ないだの言ってる暇あったら動け。

これはマスメディアにも言えることだろう。

日本には様々な新聞社、テレビ局が存在する。その数はゆうに200を超えるだろう。

ネットを含めるともう考えたくもない。

そのマスメディアの中には某C国かぶれの反日マスゴミが存在する。誠に遺憾ながらもだ。

そのような根拠もない絵空事の報道を堂々と流されても私としては困るんだが更に困るのはそれを鵜呑みにして感情的に行動するステキ(笑)な市民(自称)サマ方だ。

 

反吐がでる。

 

ムカつきすぎて色々と破壊したほどだ。資材が200ほど吹き飛んだ。

自分でその情報の真偽性さえも確かめずに行動する自称市民。真面目に黄泉に還って頂きたい。例えば最近の話題かは分からんがV-22 オスプレイなどは代表的ではないだろうか。

あそこまで滑稽な茶番は中々ない。

V-22というのは初めて実戦レベルまで開発が追いついた初のプロペラの向きを変えて離着陸するヘリコプターである。

ローターの安定性がイマイチだというが今まで固定された軸のヘリコプターを操縦していた者がローターの回転軸自体が回転する摩訶不思議なヘリコプターをいきなり操縦しろと言われても無理である。しかも当初は配線ミスもあったらしいし。現在では数少ない安全?な機体だ。強いかと言われれば微妙と答えよう。確かに早いし便利だが量子変換器積んでない時点でもう役立たずだ。

事故率はかつてないほど低く、よくマスゴミが騒ぐ事故は初期のものだ。

現在では頻発していない。というかそうぽんぽんと地味に高いオスプレイが堕ちて堪るか。

なのにもかかわらずデモ起こしている自称市民がいる。

騒音ならまだ分かるが事故はもうどうしようもない。起きるときは起こる。自然災害とは違うが偶発的発生という意味では自然災害と同じだ。

自称市民の皆様は地震や洪水が起こるたびにユーラシアプレートや川にデモをするのか?

否、いないだろう。つまりそういうことだ。もう少し理性を持って行動していただきたいものである。理性のない人間は人間ではないからな。それはただの獣だ。人権は無いし法律も適用しなくなる。私は、

ーーー躊躇いなく殺すぞ?

 

一切の躊躇なくその獣が何であろうと殺す。何するかわからんからだ。

あの時殺しておけば〜〜なんていう後悔はしたく無い。れっつですとろーい!だ。

閑話休題、兎も角アメストリアの国民からすれば、戦争に最も身近に接している彼女らからすれば日本とかいうUSAの属国は酷く詰まらないのだ。銃声はならないし銃を持つどころか銃弾を持つことさえできない。ふざけてんのか貴様らって言う感じである。

確かに現状銃刀法を解禁すると治安は悪化するだろう。何故か?暴力団とか言う日本版マフィアや人間のクズが己の欲のためだけに使うからだ。

別にそれ自体を否定するつもり間全く無い。私も武力の象徴だから。

しかしクズのやることはいただけない。

 

案外知られていない事実だかアメストリアでは、3桁からの惑星では治安が悪い。別に管理できてないとかではなく意図的に緩くしているのだ。

意図的にゴミどもを入れて定期的に掃除する。運動のようなものだ。

そうやって日常から戦闘を感じることで銃というモノを理解してゆくのだ。銃を強欲に使う結果が。

 

銃撃戦が各地で起こりクズが死んでゆく。

別にそれは問題じゃないしそれを目的として緩くしているのだから良い。元々国民性として謙虚だし貧欲だ。必要なものを必要なだけ。あとは緊急時。

その思想がプロミングされているから通貨というものが存在しなくてもアメストリアという軍隊は成り立っているのだ。

 

大量の万能生産装置によって国民の消費する物資が生産され国民が欲しい時に欲しい分だけ要求する。

そのシステムでアメストリアの世の中は回っている。

銃器に至っては最も親しみを持っているだろう。アメリカよりもだ。一家に一丁らしいがアメストリアは一人三丁が常識だ。ハンドガンにアサルトライフル、狙撃銃。銃は個人の好みだが。

 

そんな世界だがどこぞの世紀末のような事にはなっていないし軍隊として成立し続けあちらの時間軸で4945年。

何かと続く。王室だの皇室だのという不必要なものは存在せずに地球人が信じるジーザスみたいな何もしない神とは違って実在する八百万の神々に擁護され助けられる世界。

陰陽術が息づき科学と融合してより発展した化け物兵器を生産してゆく。日本のように四季があり暦がある。時間という概念は割とフリーダムだ。刻単位。あとは三十分単位だろう。

流石に戦闘時は秒単位、下手すればナノ秒単位だが。

 

「お姉ちゃん、私もひろしま?行ってみたいわ」

「そうか。では次に行ってみようか」

「ふふふ〜楽しみね〜」

 

ぎゅーと抱きしめてくる。あのー首絞まってるんですがこれ。息止まってるんですが...

あ...意識が...あの、視界が霞んできたのですけど...ちょっと殺す気なのかねぇ?

あのー助けてーー...う〜〜......

 

「〜〜♪」

「ふぅ......ぐぅ......り......ん...で...........ひぃ......」

「〜〜♪〜〜..........ヒィッ!?ちょっとお姉ちゃん大丈夫!?」

「ゲッホゲッホ......ぐぅ...リバンデヒ、殺す気か?」

「ご、ごめんなさいね...」

「ゲホッ...あぁー、もう良い。私は寝る」

「ちょ、ちょっとぉ〜!?」

 

素早く転移してGo to bedする。

眠い...

 

 




話が進んでない...今回の章は難産かもしれないデス。うぅ...

2018/01/18 ヒロシマはカタカナだと核攻撃の事を指すそうで、平仮名に変更しました。


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59.一時間目、生徒が終わっている件について。

皆さんが忘れた頃にひっそりと投稿。すみません...期末テストがありまして...

スライディング投稿!→甲板から落下!という流れですね。テヘペロ☆ミ


ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

翌日、例の如く空砲で目覚ましを行った結果、比較的早くアホどもは集合した。

私は主に参加しない。ん?誰だ今ニートって言った奴。サボってないから。ていうか事務処理してるから。

主にリバンデヒに統率させている。あっちの方が色々と良いからな。ん?何がって?そりゃあナニだよ。君たちのKENZENな思考回路で考えてみろ。あぁ、襲ったら殺すつもりだ。

事実リバンデヒは人間の統率に長けている。人心掌握などが得意だからだ。

カイクルは某軍曹だがノイトハイルはおそらく仕事しない。あの4900年以上the freedomな性格のとっつきにくいあのノイトハイルだ。

私?私は......軍曹とはいかんが軍隊式だ。というか軍学校なのに高校みたいなノリで行くのはおかしいか。

 

それは兎も角、リバンデヒが統率している間に説明しよう。

今回私達が教えることとなったのはアメストリア型戦艦を含めた戦術や様々な要素が盛り込まれた複雑な戦術。どんな状況でも使える戦略などなどだ。

主に座学がメインとなるだろうが軍人たるものインテリモヤシはアウトである。基礎体力もつけてもらう。まぁ、それくらいは出来ているだろうが。

 

武装に関してはあまり持ち込まない。移動が面倒という理由が九割九分占めているが万が一強奪された場合のリスク回避の為だ。M634が強奪された時なんかは...考えたくもない。私とて受け止めれるか厳しい。元々あれ機関銃だし。対艦通り越してるし。最早用途不明な機関銃だし。あれに関しての文句ならいくらでも出てくるがやめておこう。兎も角強奪された際の被害が大きくなってしまう為デカイ銃は持ち込めない。アサルトライフルは人間でも扱えるほどの反動な為少し危険だ。他の艦娘にはそんなことより火力と連射力を重視した為配備したが私は基本五式で頑張ってみようと思う。

ホルスターに二丁入れておき弾種の違う...模擬と実弾のマガジンをベルトの予備マガジンを入れる為のポーチに入れておく。あとは緊急用のナイフ。そして象徴たる大太刀。

この大太刀、地味に装飾にこだわりが出ている。私が毎日磨いている為か新品同然に輝き、漆塗りされた艶やかな鞘には植物がからむような金細工が施され鍔と接する位置には家紋と思われる鳥居と麦が彫られている。刀にも細工が彫られており閂にはアメストリアを表す四角い鳥居が彫られている。

私は大太刀を一撫ですると踵を返し今回の授業の為に製作した資料を船体へ取りに行く。

 

授業が終わった後の為か若干騒がしい構内を堂々を歩いて行く。

ツカツカと控え目の鋼鉄を仕込んである膝丈の長いブーツが硬い材質の床と当たる音がなると共にゆらゆらと尻尾のように髪が揺れる。

床から壁まで純木製という鎮守府ではあまり見ない方式の校舎だが、昔の校舎を見ているようで時代の錯覚を覚える。後ろに付くリバンデヒもどこか珍しそうに辺りを見回している。

廊下は比較的広く設計されている為時折すれ違う生徒が顔を赤くして小走りに立ち去ってゆく。見ていて面白いな。反応が初心で。

「お姉ちゃん、どうするの?一時間しか無いのよ?」

「大丈夫だ。問題ない。」

問題しかないですハイ。一時間しかないんだぞ?それでこの学校全体の改革をしろ?無理だろうに。無理難題にもほどがある。私としては生徒共がどれくらいの知能なのか分からんから判断しかねている。恐らく、知識では学校というのは幾つかのグループ、派閥に分かれてゆく。

真面目だったり共通の趣味だったり後先考えないチンピラ共などなど。

私としては戦術などの基礎的な部分覚えていたらいい方だと考えているが、そこまで期待したくない。チャイムの代わりか、ラッパが鳴り響き次の授業の始まりを告げる。

今回は各生徒の派閥確認や苦手な部分などを解析していきたい。

 

ガラガラガラという木製のスライド式ドアがレールを通って開く音で生徒は一時的に黙り込む。どうやら私の最初の効果は未だに続いているらしい。少し悲しくなる。

教卓に立つ。

「さて、時間がないのでさっさとやるぞ。まずは貴様らがどれだけ適性があるかを調べさせてもらう。」

そう。今回調べる為にわざわざ問題を作り上げた。所謂小テストだ。

しかし難易度は提督から見たら問題を見なくても分かるほどの基礎的過ぎる問題しかなく、

砲の口径順(穴埋め式)や艦影での艦種判別。陣形の図を貼って名称を答えさせる物。それくらいしかない。本当に簡単すぎるほどの問題だ。

リバンデヒに複製しておいたテスト用紙を配ってもらいつつ、質問がないかを確認する。

 

「質問は?」

「満点取ったら何かもらえるんですかー?」

「あるわけなかろうが。これは出来ていて当たり前の知識しか載せていない。」

 

どうせお前ら私達の体目的だろう。絶対にやらせんぞ。

 

「せんせー、俺艦影なんて知りませんー!ていうか提督が艦影判別しなくても良いしー」

「......戯けが。提督として、いや海軍軍人として当たり前の知識だ。異論は認めない」

「あめちゃーん!あんた彼氏いるの?」

 

あめちゃんって誰だろうか。真面目に誰なのかわからない。

というか「あめちゃん」なる人物は誰か分からんがなぜ色恋関係しか質問せんのだこの猿共は。なんだ?お前らの思考回路は欲望と直結しているのか?直結厨なのかお前ら。

 

「..................。」

「もしかしている感じー?」

「.........。」

「ねぇねぇ、いるのー?いなかったら今夜俺たちとお茶しようぜー!歓迎するぜ!」

「......死にたくなければさっさと問題を解かんかうつけ者がっ!」

とりあえず怒鳴っておく。こいつらとは会話のキャッチボールよりデッドボールしかない気がする為もう会話しない。

さっき教官室で発見した教科書をペラペラと見ておく。

内容は......

 

 

...

 

 

......

 

 

........。

 

 

無能が生産される要因ってここが担ってないか?

というかそうだろう(確信。教科書の内容というか書体がなんかチャラいしデフォルメされたキャラクターで進行している。どこが重要なのかがイマイチ分かりづらく、重要な部分がさりげなく端に書かれているなど酷い有様だ。小学生向けだろコレ。

明らかに軍の高等教育機関として間違ったチョイスだぞコレ。というか、私が以前調べた使用教材と違うんだが。なにこれ。ふざけてんのか、これ。

 

「......。」

「(お姉ちゃん、見て回ってきたけれど一部の生徒しか解けていないわ。珍回答は結構あったけれど。あと違反品と大麻コカインなどの麻薬臭を確認したわ)」

「(......あぁ、了解した。リバンデヒ、これ見てみろ)」

そう言って教科書を渡す。と同時に並立思考で既にこの後の私達化け物の紹介においての順序を考えてゆく。

「(...........これは、使えるのかしら?)」

まぁそう思うわな。

「(無理だろう。)」

 

チラリと真剣にテスト解いてるはずの生徒共に視線を向けると解いているのが一割、解き終わっているのが一割、(頭が)終わっているのが八割。

絶望的、という言葉はこういうことを言うのだろう。

ゆっくりと気配を消して周ってゆく。真面目な回答は一部あるな。なんか大和の艦影に宇宙戦艦って書いてあったり信濃とか見当違いの解答もあるが気にはしない。なんか悪戯書きが芸術の域に達しているのがあるがそれも気にしない。艦首にドリル書き足してたりスペック一覧を書き出してるマニアもいるが気にしない。ちなみにそいつは満点だった。なんか喜べない私がいる。

 

テスト終了。1束に纏め上げ高速でペラペラとめくってゆく。

それだけで書かれた内容全てをスキャンし脳内で解析してゆく。おもに中央演算処理装置の力だな。スパコン万歳。

そして事前に用意した解答と照合し点数化。エラーが多発したが私が直々に採点し直している。ふむ......12番と18番が満点。三十人クラスだから十五人に一人しか使える人間がいない。

 

「......結果だが、満点が二名。12番と18番だ。合格圏にいるのは二名を含めて七名だ。貴様ら、ふざけているのか?これは基礎中の基礎だ。これを知らなければ話にもならない。それを理解しているか?」

「でもこれ知らなくても提督なれるしー?艦娘好き勝手できるしー?」

「...貴様のような軟弱者に務まると思っているのか?」

 

そう言って五式をホルスターから抜き取り、マガジンを実弾に換装する。

そしてクソ重たいスライドを引き、初弾を装填。照門と照星を馬鹿に向ける。

 

「良ィノォ?俺撃ったら君酷いことになるよー?」

「ほぅ、それは是非とも何故か聞きたいな」

「俺の家良いとこだから君みたいな下っ端なんか幾らでも好きにできるんだよー?」

「...確か金木家、だったか。大本営人事課総務。随分とご立派な家だな。深海棲艦信奉派とつながりを持ちマフィアとパイプを持つ由緒ある(笑)家らしい。」

 

随分と黒いなと思っていた家だ。ここに来る前に私が調べてないわけないだろ?

色々と問題がある家しかなく、その権力を鼻に掛けるクソガキが多そうだなぁって予想していたがやはりか。

 

「へぇ、調べてるんだー?」

「貴様は確か前科27件、強姦傷害エトセトラ。素晴らしい犯歴だな。えぇ?」

 

そういっつ引き金に指をかける。同時にリバンデヒがM145を窓へ向かって構える。

ゆっくりと引き金を絞ってゆく。

 

ここまでくると周りの金魚の糞は怯えて後ずさり、ターゲットのクズから一斉にいなくなる。ヘタレが。身を挺して守ってみろよ。

 

引き絞る。

スライドが強烈な爆音とともに後退し炸薬を燃焼させ終わった薬莢を排出する。

300mm以上の長いバレルを通った13mm通常弾は初速700m/sを超えてまっすぐと的へ飛んで行き衝撃波のみで頭部を破壊。遅れて肉片やら血飛沫が舞い上がる。

見せしめという面が強いが、同時に私も相応のリスクを負っているためあんまりやりたくない手段だ。

バババババババババッッッ!という重い銃声が五式の銃声に覆いかぶさり7.92mm薬莢を吐き出す。M145から飛び出した大量の銃弾は窓の向こう、1200m程で待機していた監視部隊にまっすぐと、放物線を描かずに飛んで行きバレルだけを正確に破壊してゆく。

それがわかるのは艦娘パワーで強化された視界だ。そして私は腕を横へ向けると見ずに引き金を絞ってゆく。

突入してきたまあまあ揃っている装備をした武装兵へと命中して行きボディーアーマーを紙のように粉砕すると肉体を粉砕してゆく。

 

「......死んだ貴様には関係ないだろうが金木家は私が大本営を潰した際に消しとばしている。粗方お前のような膿には教えられていなかっただろうがな。」

 

遅れて、ムワリとむせ返るような濃厚な血の匂いとガンパウダーの匂いが漂ってくる。

生徒は吐いているものや顔を青ざめているものが多い。

甘いな。鎮守府が襲撃を受けた際の死者にあったらどうするつもりだったのだろうか。

戦争は必ず死者を産む。これは避けられない絶対の定義だ。

銃を持ちミサイルを持ち最新の兵器でその身を固めようとも絶対に死者は出る。

ほら、アメリカ製の兵器は比較的優秀だがアメリカ軍に死者ゼロが訪れた年はないだろう?

エイブラムスの被撃破数ゼロとか聞いたことないだろう?

 

「これからはもっとスプラッタな死体を見ることになる。血の匂いや鉄、硝煙の匂いを提督になれば嫌でも嗅ぐことになる。艦娘は割と丈夫だが、身体機能は人間と同じだ。四肢が欠損する場合もある。しかし、艦娘は高速修復材でそれは治るが、出血するし肉の断面も映る。それが戦場だ。平和ボケした日本では決して見られない残酷な事実だ。しかしそれに逃げていては軍人など務まらん。良いなっ!!」

「「「は、はい!!」」」

「良し。文句があるなら後で聞く。今回私達がわざわざミッドウェーでの作戦で戦力不足に悩まされる中わざわざ二隻もアメストリア型戦艦を派遣したのは言うまでもない。これからは、貴様らが着任するときには大体の艦娘の装備はアメストリア製にに切り替わっているからだ。従って今までの戦術は全て通用しない。これは少し考えれば理解できるだろう。」

「ま、まさかミッドウェー作戦が行われているんですかっ!?」

 

そう発言したのは満点の一人。マニアの方だ。

 

「そうだ。現在同時進行でミッドウェー攻略が行われている。丁度いい。出撃から交戦までのプロセスを説明してみろ。」

「は、はい!まず缶を温め機関を始動させます。この時点で戦艦なら17時間以上かかるでしょう。そして出撃しますが、そう簡単に会敵しません。まずこちらから九五式水偵や彩雲などの偵察機を出し敵を発見。戦闘態勢に入り航空母艦から艦載機で先制攻撃後戦艦が速度や距離を測り砲雷撃戦へと移ります!」

「そうだ。今までではそうだろう。しかし、これからは前提から崩れる。

まず私達が使用する機関は粒子エンジンという機密の塊だ。始動僅か10秒で最大速度まで加速させることができる。これは駆逐艦から戦艦まで全てだ。

偵察は水偵が必要ない。電探を使用して索敵し、先制攻撃としてミサイルを撃ち込む。それでもダメだったらウチの超音速戦闘機を使用して攻撃する。戦艦や重巡洋艦は航空母艦が居なくても大体のことに対処できるようになっているだろう。主砲から対空砲まで全てが桁違いの連射力を持っている。分かるものには分かるだろうがオートメラーラのようなスピードと解釈してもらって構わない。」

「す、すごい...」

「なんだそれ...」

「チードだ........」

各々から驚愕の感想が漏れる。ふふふ〜そうだろうそうだろう。鼻がたかいな。

「よって、今までの戦術は適用されない。しかし、千単位万単位での深海棲艦には太刀打ちできない。それこそ私達アメストリア型戦艦でなければな。」

「し、質問よろしいでしょうか?」

そう発言したのはもう一人の満点者。こちらはまともな人種のようで由緒ある軍人一家だったはずだ。声が高く、容姿も中性的な美少年だが、警戒する。なんか怪しいな。

違和感がある。リバンデヒはその違和感の状態に気づいたようたが、あらあらと言って微笑むと私に視線をちらりと向けてきた。いや、分からんって。

「あなた方のようなアメストリア型戦艦は現在ナウル鎮守府に四隻全てが集結され、本土には一隻もおりません。これは何故でしょうか?」

「.........ほぅ、そこを聞かれるとは思わなかったな。よし。良いだろう。教えてやる。私達アメストリア型戦艦のコンセプトは単艦での半永久的戦闘だ。

そのために絶対干渉結界という万物全てを拒絶する万能の盾を持ち500cm四連装砲という最大の槍を持っている。何かを守りながら戦うのはあまり得意ではないのだ。

殲滅のみに適した戦艦なのでな。かつ、私達はバトルジャンキーだ。戦闘しなければそれこそ日本が大惨事となるだろう。あとは...そうだな成り行きだ。」

「そうですか、失礼しました。」

「さて、他にも質問はあるか?」

「じゃあ質問良いっすか?」

そういうのは比較的マトモな分類のチャラ男。

「あなたの装甲ってどれ位なんすか?」

「アメストリア型戦艦の装甲は二重だ。まずは絶対干渉結界。これがあれば本来装甲など必要ないが、設備が大規模な為アメストリア型のみでしか搭載できていない。

そして船体には妖精さん特製の装甲が全体に張り巡らされている。600口径までならゼロ距離でも耐えるだろう。」

因みにゼロ距離射撃と言うのは厳密にはゼロ距離ではない。

というかぴったり砲身つけたら衝撃波が大変なことになる。ちょっと離して撃つのだ。

「すごいっすね...」

「あぁ。これがあるから深海棲艦側のアメストリア型戦艦とも堂々と戦うことが出来る。」

 

あの後も質疑応答が続いた。

ただ一つ嬉しい誤算があった。案外生徒が使えるのである。

金木とかいうクズが消えてしこりが消えたからか解放された印象を受けた。しかし一部生徒はまだ反抗的で不良化している。まぁ、そいつらはシカトしてやっている。

まぁ、とりあえず素質はあり、一部はすでに開花している。

特にあの海軍マニア。かなり詳しいようで質問も中々深い所を突いてきた。軍機にあたる内容を何故か知っていたが、気にしないでおこう。

「heyアメストリア!studentsはドウデシタネー?」

今は午後。金剛や響、矢矧と共にafternoonteaを楽しんでいるところだ。

イギリス式の丁寧な入れ方が金剛が上手く入れてくれた為かなり美味しい。

響に出されているのはロシア式だがな。ジャムとスプーンが添えられており金剛の気配りがうかがえる。天城は暇な為か寝ており、もがみんとくまりんこは市街地へ繰り出している。

本来出向は私達アメストリア型戦艦のみであった為艦娘達は暇なのである。その為に呉という神戸に近い土地故か三隈が頼み込んできた。妹の故郷を訪れさせて欲しいと。

流石に断るほど私は鬼畜ではない為(艦娘に甘い為とも言う)ポンと作り出した二百万の現金を渡した。戦時中物価が上昇するのを見越してかなり多めに渡している。

かつ、艦娘といえど女の子である。おしゃれもしたいだろうし何かと金がかかるだろう。だから多めに渡した。これでも少ないのではないかと心配しているが。

ついでに護衛としてF-222を一機付けている。

え?なんでリバンデヒが居ないかって?それはここぞと私達を拉致しようとしている勢力を潰しに...

『お姉ちゃん、あの怪しい子、一切秘密を漏らさないわ』

潰しに...

『あの子、ちょっとどころじゃない程の警戒心を持っているわね』

潰しにかかっている筈である。断じてストーカーはしていない筈である。

そう信じたい。つーかなにストーカーしてんだよリバンデヒ。さっさと戻れ。

「アメストリア!聞いてますカー?」

「へ?あぁ...すまない、聞いていなかった。」

「しっかりしてpleaseネ!」

「すまん。それで、何だ?」

「ここに来た面子で本土を探索しましょうっていう話よ」

と矢矧が教えてくれる。成る程。旅行か。私としてもちゃんと日本巡ったことないから行ってみたいな。大和ミュージアムとか厳島とか。

しかし金剛を始め最上、三隈、矢矧、響、リバンデヒ、そして私という面子は美人どころしかいない為大変目立つと思うんだがそこらへんどうするのだろうか?

「でもアメストリアとかは綺麗だし目立つと思うけどな」

響が突っ込む。というか何で私を例に出す。リバンデヒで良いだろ。

「oh...そこは考えていませんデシター...」

「幾つかの班に..いえ、無理ね。」

「私とかは白髪だから目立つね」

「...資金面は問題ないが...まぁ、大丈夫だろう。全員に六式自動拳銃を渡しておく。」

ついでに私はM145をタッピングビスを抜いただけの簡易解体状態で持って行こう。あとは...小型の銃器なども持って行こう。そうしよう。

「目的地は?」

「私としては以前アメストリアが言っていた大和ミュージアム?に行ってみたいのだけれど。」

「私はどこでもOKデース!」

「私もどこでも良いよ。」

矢矧よ。やはりそうきたか。まぁ、良いが...金剛と響はあんまり知らんからだろ。丸投げするなし。考えるの面倒なんだよ...でも楽しそうに感じてしまう私がいる。

楽しみだな。色々と。宿泊は出来んな...うーん...




最近ガルパンに浮気している諷詩です。
いやー、私がハマるジャンルって見事にミリタリーですね。艦これ然りガルパン然りヤマト然り。あ、東方Projectは別ですよ?あれは別格です。艦これでいう嫁艦です。異論は認めません。


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60.二時間目、問題発生な感じです?

すまぬ。遅れてしまった。
いやーこんな感じにするつもりなかったんだけどなぁ.....?


ーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーー

硝煙が銃口から煙を引き、地面には太く大きい13mmの薬莢が転がる。

スライドはすでに元の位置へと戻り薬室に次弾が装填されている。マガジンには発砲した分と次発、二発分の空きは時間逆行術式により満タンに戻っている。

裏路地には血の匂いや火薬の匂いが充満していた。

壁には血飛沫が付着し、先ほどまで私が最も恐れていた事をしようとしていた人間だったモノが肉塊となって飛散している。

 

「......大丈夫か、響。」

「...あ、あぁ、うん。大丈夫、だよ......」

 

そう言って恐怖で歪んだ笑みを浮かべ平気だと返す響。

自分に言い聞かせているような言葉は、とても痛々しく私の心を容赦無く猛毒の牙となって貫いてゆく。

よりにもよって体格的に劣る響を狙われたのは私の失態だ。

リバンデヒが陰から護衛しているのは金剛や天城と言った大型艦。矢矧や響はしっかりしている為むしろ大丈夫だと思ったのだが、私の予測は何処までも外れるらしい。

しかし唯一の救いはアウトラインにまで至っていない事か。

 

一般的に船体の大きさ、設備、艤装の量や豪華さによって艦娘の体も変化してゆく。

全長が大きく、かつ乗員も多いため設備の整った戦艦は背が高く、胸も大きい。

航空母艦は戦艦と全長がタイマン張っているため当然の如く正規空母は背が高く胸も豊満である。一部の艦娘を除き。

龍驤などの軽空母は全長が重巡洋艦程のため背が低く、体格も恵まれない...いや、あれは龍驤だけか。軽空母はよく分からん?

重巡洋艦は...とても恵まれているとだけ言っておこう。戦艦と背丈は似ているし設備も充実した艦もある。愛宕なんかは特にだ。旗艦用に設備が改められているし。

軽巡洋艦も比較的背丈は高く、体格的に高校生から中学生後半くらいだろうか。雰囲気は前世、WWll時代の戦歴や船員の影響により様々だがしっかりものが多い印象を受ける。

そもそも私達が大艦巨砲主義に染まりきっている為火力の高く船体も拡張性がある艦ばかりを建造している為軽巡洋艦はあまりいないが。あ、那珂は別な。あの姉妹はキャラが濃すぎる。

駆逐艦は...うん。第六駆逐隊と吹雪くらいではないだろか。一応中学生位の体格で、性格は明るいものが多い。幼いとも言うが響やぬいぬいこと不知火などの落ち着いた艦娘もいる為一概には言えないが。まぁ、兎も角小さいのである。駆逐艦は。

私はできるかどうか知らんがリバンデヒなら簡単に制圧できるほどに体格面で劣っているのだ。別に悪いとは言わないが、自衛面で不安が残る。だから銃まで渡していたのだが。

従ってここの生徒、軍人候補の体格と合わさり駆逐艦はまともに抵抗できない可能性があるのだ。馬力は船体と同じだが、それを咄嗟に生かせるのは私達アメストリア型戦艦や長門などの肉体派のみではないだろうか。あと大和?最後の艦長中々に様々な武勇を持ってたし。

 

「無理を言え。震えているだろうが」

「......大丈夫、だよ...本当に、ね...」

 

しかし立ち上がる気配もない。何時も大切に被っていたローマ数字のlllのバッチが止められた帽子を固く握りしめて肩を小刻みに揺らしている。仕方がないと思う。襲われたのだ。私も幾らかあるが最初はとても怖かった。思わず木っ端微塵にしていたし、MINIMIを持ってカイクルに泣きついた程だ。とても怖いのだ。響の気持ちはとてもよくわかる。

 

ポツリポツリと未だに乾いていない血痕が派手にぶちまけられたコンクリートの地面に新たにシミが出来上がる。しかしそれは一つだけではなく、どんどんとその数を増やしてゆく。

泣き出したか...

 

「......。」

「ひぐっ...ぐすっ......うぅ...」

 

帽子で顔を隠すように覆うと押し殺された泣き声が響く。

私としては派手に五式ぶっ放した為に野次馬が集まってこないか気が気でないのだが、下手に刺激するのは響の為にはならない。

 

「お姉ちゃんっ!?どうしたの?」

 

ドタドタと駆けてくる音の後にズザザーッ!というスリップしながら減速する音が響きリバンデヒが到着する。恐らく銃声で察知したらしい。

しかし、そこで起きている惨状を見て言葉を失い、素早く切り替えると私のような仏頂顔になると持っていたM145を片手に背を向けると野次馬を追い払ってゆく。時々発砲音と薬莢の転がる音が聞こえるのだが、その銃弾、空砲だよな?実弾だったら降ってきたときに怖いんだが。

因みによく中東あたりの目先のことしか考えていない知能の低い自称ジハードの戦士はAK47の粗悪生産品を天に向けて乱射しているが、あの銃弾は無限に飛ぶわけではないのでいずれ落ちてくる。それによって偶々命中した市民が死亡するなどの事例がたまに報告されている。

拠点とかで撃っている時があるが、あれそのまま自分たちに降り注ぐのを考えていないのだろうか?すごく気になるなお姉さん。

兎も角、リバンデヒはそこのところ考えているのだろうか?私撃たれたくないよ?当たりそこで怖いんだけど。いや、マジで。

 

「うぅ...うあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

遂に声をあげて泣き出してしまった。思わず仏頂顔を崩して狼狽える私である。情けない。

取り敢えず野次馬をどかす為に足元に実弾を幾らか(十数発)撃ち込んで目線で威圧すると大泣きしている響に抱き抱えて素早く離脱してゆく。

響は羞恥心は残っているのか私の肩に顔を埋めて泣いていた。お陰で巫女服が濡れて行き一部サラシまで染みているのだが、言うべきではないだろう。

 

うぅ...ちょっと動きにくい...転移で私の船体の医務室に移動すると響を降ろす。

響は目元を赤く腫らせると時折ひぐっ...っと泣き始める。相当ショックだったのだろう。私は前世の知識や()の楽観的精神プロテクトでマシだったが、響にはプロテクトはない。ダイレクトにダメージが来るだろう。

私はホルスターのベルトを解除してテーブルに二丁とも置くと響の隣に腰掛け、響を抱き締めて頭を撫でる。安心させるように、優しくゆっくりとだ。幸い私の胸大きいし体格差で響の頭が丁度いい位置にある為撫でやすい。

 

オイ誰だ今羨ましいって言った奴。m9(^д^)愉悦!と言っておこう。

 

響も安心してきたのか私に腕を回すと無駄に豊満な胸に顔を埋め私のナデナデを受け入れてくれる。何この可愛い生物。めっさ可愛いんだが。響ってこんなんだっけ?

 

 

響から力が抜け、私に回していた手がベットへとだらりと垂れる。

寝てしまったか、と予想しゆっくりと起こさないように響をベットに寝かせる。布団もあるのだが、いちいち入れ替えるのも面倒だからやらない。できるけどやらない。

響は安心した様な、穏やかな顔で眠っている。良かった...

このまま鬱になってしまわないか懸念だったが心配はいらない様だ。

 

響はなんだかんだ言って古参メンバーの一人だ。

電から始まり暁、雷、響。高雄、愛宕、摩耶、鳥海、龍驤、大鳳。

リバンデヒにカイクル、大和、武蔵、長門、陸奥、赤城、加賀。

古参といえばこれくらいだろう。

 

私が横須賀に行っている間の戦力強化や金剛たちの大規模戦力拡張は新参だ。だからと言って優越はないのだが。

駆逐艦という概念でいいのかちょっと疑ってしまうが高速化し、ウォータージェット推進でミサイル艇のように若干浮いて海上を翔ける。主砲は15.5糎三連装砲だが速射砲となり命中率は電探や演算装置の高性能化で百発百中が常識。魚雷は噴式魚雷。ミサイルのような燃焼機関を採用した超高速の矢でホーミング機能があり基本外さない。ミサイルハッチも少量ながら設置し、対空砲も45mm対空機関連装砲を使って底上げした。初期とは大違いの性能を持った。イージス艦の超進化版のようなイメージでいい。同時対処目標数は200。主砲、ミサイル、対空砲を含めて数で、実戦ではもっと少ない。ミサイルをミサイルで迎撃するという完全にイージス艦の仕事もぶん取っている。練度も高く既にlevel110。ケッコンカッコカリはしていないが。

 

最後に響の頭をひと撫でしてからホルスターを巻き直し、インカムを摘む。

 

「こちらアメストリア。リバンデヒ、事情は把握しているな?」

 

我ながら随分とドスの効いた、低い声が出ているなと自笑する。なんだかんだ私もキレテイル。

 

『えぇ、承知しているわ』

「ならば警戒は?」

『既に対処済みよ。護衛対象を全員に変更して直庵機も増やしているわ』

「了解した。響の方は私が対処しておく。」

『えぇ、宜しく頼むわ。あと、冷静に、よ』

「うむ。心得ている。」

 

驚くほど冷静であると自認している。最初はテンパってたのに。

懐かしいな。最初は全然強くなかったし鎮守府も静かだった。初期艦の電しかいない旧パラオ鎮守府に漂着して戦って戦って大破して大破して。

思えば私が微妙な損傷を受けること自体少なかった気がする。大破か無傷か。両極端だなぁ...

十分異常な兵器達によって成り立っている戦績だが、鎮守府襲ったり大本営初期状態で襲撃したりと結構な問題を起こしている気がするのは初めてではない。ん?白い家にミサイルぶち込んでるって?い、嫌だなぁ私がするわけがぁないじゃないかぁ...(目逸らし

 

読者は私の異常性に一定の理解があると思うが、やっぱりこれでも欠点はある。

頼みの絶対干渉結界は絶対干渉結界同士が衝突すると限界を超えて臨界に。そして膨大なエネルギーと共に爆散して機能しなくなる。再起動にはそれなりの時間がかかるしエネルギーもよく食う。

主砲は旋回速度5°/sという127mmオートメラーラクラスの旋回能力を持っているが砲身の付け根は弱く、砲身、砲弾、砲塔全てがとってもなく巨大な為再装填が早かろうと砲撃までは1秒かかる。光学兵器になればもっと早くかつ砲塔に予備スペースが出来るだろうからもっと威力が増すだろう。しかし、しかし、だ。

私の様な全長4600mを超える立派な島のような戦艦が、信じられない速度で砲塔を旋回させて撃つと思ったらなんか太いファイナルスパークが出てきたとなると楽観と失望が浮かぶだろう。ロマンを重視するわけだ。

戦艦って国家の象徴であるわけだし、その国家の技術力、根性、発想力が試される戦艦という看板において実弾を使用しないというのは些か格好が悪い。

レーザーも光量と言う強みがあるが、実弾と比べ迫力に欠ける。

轟音に硝煙の匂い、閃光に衝撃波。視覚聴覚嗅覚と五感の内の三つに刺激を与える実弾は色々と便利だしロマン溢れる兵器である。

以上、私が実弾を使う理由ですた。終わり!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、終わる訳無いんだがな?

響が襲われてから一時間。偶に響が泣き出したりするなど今まで相当溜め込んできていたという事が分かり私は響の介抱に付きっ切りとなった。私としては響が途轍もなく可愛かったので良かったのだが、リバンデヒにはかなり迷惑を掛けてしまった。金剛、天城、矢矧。三人の護衛を全て請け負って貰っていたのだ。

一人でも万全を期すには一個中隊は必要となる。それを三人分。三個中隊分を一人でやったのだ。

しかも三人全員が大型。100mを軽く超える船体を持ち侵入者に対しては敏感であるが、外へ出ると分からなくなる。艦娘パワーで探知できるが、奇襲には対応出来ない。

つまり船体は自身の身体であるから感知出来るが、外に出るとちょっと気配に敏感な女の子でしかなくなるのだ。だからリバンデヒでも対応仕切れない。

私も加われば何とかなるが、リバンデヒ一人では限界がある。だからF-222を動員してまで護衛しようとしているのだ。な?大変だろ?数が足りないんだよ。かと言って接近戦最強のカイクルを呼ぶのは忍びない。彼方は墜ちたミッドウェー攻略を集中してもらいたい。

 

 

不思議だなぁ、何を血迷ったのか、妙に統率の取れた動きで金剛、矢矧、天城の順で次々と襲い掛かってきた不審者が、肉塊へと体を変えヴァルハラへと旅立った。多分。

何か臭うなぁと思いつつ船体に走る矢矧を援護してゆく。まぁ簡単だ。血走った目で矢矧を追いかける塵に十字を合わせトリガーを引く訳だ。簡単だ。また一回引き絞る。

轟音が私の船体の一番高い露出艦橋から鳴り響き閃光と爆炎があがる。腕ほどの大きさを持つ薬莢が鈍い音と共に転がり熱さからか湯気を上げる。季節は忘れたが秋だか夏だ。冷えるだろ?薬莢って撃った後すごく熱くなるんだな。以前()の忠告を聞かずに触ったら大火傷を食らった、熱かったなあれは。

思わず高速修復材を使ってしまった。バスクリンってなんか変な感じを受けるが、なんか不思議な感じがするんだよ。あ、ヤクはやっていないぞ?ゴミじゃああるまいし。

また引き絞る。矢矧さんや。いい加減転移っていう手段を思い出してもらえませんかねぇ。




文章の質が落ちてきてる......うぅ...


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61.三時間目、出張授業って意味あるん?

ども、諷詩です。また遅れました。すみません...一応言い訳として、
今回の教導編の話数が余りにも少な過ぎる事が判明したため水増し用に書いていた次第です。すんません。

では子供達と戯れるアメストリアをご覧ください。


ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーー

出向から早二週間。時の流れは速いとしみじみ思う。

光陰矢の如しとはよく言ったものだ。偶に来る塵を処理して、最近まともになって来た組を重点的に頼まれた通り教育しているが、正直なところあまり成果は無い。まず聞かない奴多過ぎるし反応が馬鹿すぎるし。はじめからやる気なんぞ無かったが、これで完全にこの呉海軍大学校に居る義理は無くなったがまだ居るつもりだ。主に原因は二つ。

 

 

一、あのもがみん姉妹がまだ帰ってこない。

 

一、新たに大本営から通達が来た。

 

 

この二つだ。

前者は良いとして、後者は大問題だ。何てったって何でわざわざ私が小間使みたいに一々動かなきゃならんのだ。

なんかこの台詞のみだと私が命令に従わない問題児なNEETみたいだが事実、私が小間使いとして使われているのは一回や二回では無い。

視察然り今回の出向然り。何となく良い感じの理由を後付けして私が良いように使われている感じがしてならない。

しかし、以前大本営を襲撃した前科がある為に強く言い返せない。力技で解決できないことも無いが何となく面倒くさい。

後処理が面倒だし今ままでのように「俺、自由!」という訳にもいかない。あの時は大して問題もなかったし何よりもフリーダムだったから自分のやりたいままにやっていたからな。若気の至りだ。楽しかったが。

 

それで、大本営からの指示というのは、「将来的に軍人への育成として、一般の教育機関への出張教室に同伴せよ」という内容。

これには私は二つの感情を抱いた。幾ら色々と終わっている大本営でも長期的な計画性を持って行動をしていることへの安堵。

さっさと戦争を終わらせるつもりが無いという一種の諦めが盛り込まれているためイラつき。

しかしそれはただの感情的な、目先を考えない考えだ。無垢で無知な聞いていて私が一番嫌いな考え方だ。

戦争というのは『国家』というものの寿命を急速に消耗する。平和な時と比べて緩やかにではなく崖のように急速に資源、人材を消耗してゆく。湯水の如く消しとばしてゆく。だから戦争で他人から分捕るのだ。それを非難するものはいるが、

人間は他の物を淘汰し犠牲にすることで生きる種族だ。戦争はその手段の一つである。と、私は考える。

 

......まだ私に前者の思考が出来てしまうとは思わなかった。まだ前世の甘ったれた人間性が残っていたとは...

意外である。

「何回想しているのかしら?(ニヤッ」

「ひゃんっ!?な、なにしてる!?」

何故か考え込んでいるとリバンデヒから襲撃された。アイェェェェェッ!ナンデ!?何で私の胸を揉む必要がある!?

電流が体を駆け抜けるような、良く分からない感覚が私を襲い、身体中から力が抜ける。この感覚は慣れない。

リバンデヒに度々夜這いをかけられ、ノイトハイルからは奴隷宣言を食らった。その度に何かとナニかをされていた私であるが、慣れることは無い。というか慣れたら負けだと思ってる。なんか...うん。

「ひうっ!?やめいっ!!」

「むっふふっー!あぁ!お姉ちゃんはやっぱり柔らかいわぁ...!」

「ひいぃ!?」

というか....場所を理解しているのだろうか。いや絶対理解してないよね。ひぅ...足も複雑に絡められ、身動きさえできなくなってしまっている。さりげなく格闘柔術を使用してきているあたり、

本当にいやらしい。

「貴女達...本当になにやっているのよ......」

呆れの混じった矢矧の声が上から掛けられる。良く見ると後ろには天城と響も着いついてきている。

天城や響は顔を若干赤らめており響は帽子で隠していた。いや天城さん。あんた痴女に近い服装してるでしょうに...。

そして響。さっきまで撃沈してた割には元気だなおい。

「んっん!失礼した。リバンデヒ、離せ」

「はーい...」

リバンデヒが悪びれた様子もなく間延びした声で答え、私の拘束を解くと何処かへと歩いて行った。ルンルンとしているのは気のせいでは無い。何処かへ転移して行ったがおそらく自分の船体へ戻ったと思われる。

「大丈夫かしら?」

「うむ...問題無い。」

そう言って立ち上がり、緋袴についたホコリなどをパンパンと払うと不敵な笑みを浮かべて頷く。

それだけで何故か三人の顔の赤みはより増したように思える。大方()の美貌に目を奪われたんだろう。簡単に予想がつく。

全員可愛いと思うがな。

 

 

閑話休題。

 

 

兎も角、今回の大本営からの長期的な計画とやらの一般の教育機関への出張授業だが、大本営に私達の移動手段に武装の自由を認めてもらった。これはさすがに譲れない。大本営へ大将殿の迎えをしたときの襲撃然り、どんな介入があるかどうか分からんからだ。

その為に、天城には金剛や矢矧、響の護衛に徹し、全員が船体に閉じこもることに決定。

幸いかどうかは不明だが学校は休みとなっており、自由が利くのだが、この呉海軍大学校では全寮制の為休日でも忌々しいことに直結厨がうじゃうじゃ湧いて出てくるので危険極まりない。クソガキの中に私の大好きな艦娘を放り込むほど私は老衰したつもりはないので今回の対策となった。

「では行ってくる」

「ええ、いってらっしゃい。」

そう言うと妖精さんが運転をする装甲車輌が順次発進してゆく。

動員した車輌は私の船体から引っ張ってきた五七式重装甲輸送車一輌に一式重武装車輌3輌。それに天城の甲板に一七式戦車を量子変換で格納したCH-4や多目的支援機としてF-222がスクランブル待機している。完璧とは言い難いが結構強固な護衛システムを構築している。

そう言えば一式重武装車輌に搭載したM634って人力で操作するものだったはずなんだが、妖精さんとサイズから考えて不可能だったためターレットになっている。軽く砲塔化しており、なんかもの完全に重装甲ですありがとうございますといったかんじになっていた。妖精さん、自重しよう?な?

 

私が乗るのは当然のこと五七式重装甲輸送車である。24名の兵員を載せることができる広い空間にはM634が弾帯BOXを外された状態で床に鎮座しており、座席にはあらゆる状況に対応するために超高性能炸薬。私の主砲の炸薬にも使用している爆薬を3ブロック程積みベガルM147という軽機関銃を二艇。10式自動散弾銃一艇に89式対戦車携帯砲という外見どう見てもSMAWなバズーカが並べられている。

またM145にB-401というグレネードランチャーを下のレールに滑らせており、上の20mmレールにはレッドドットサイトに3×9倍の短いスコープが組み合わせて滑らせている。それをスリングを通して肩にかけ、腰には五式自動拳銃が二艇銃剣のようにぶら下がるっている。これって結構ベルトがお腹圧迫するから長時間したくないのだが今回ばかしは仕方ない。対応する為にはこれ位は武装しなければならない。

やりすぎかもしれないとちょっと思っているが...

 

一般の教育機関への出張授業だが、当然私のみでやる訳ではない。

呉鎮守府からの広報担当が本来出向くのだが、毎回の事数人の艦娘を同伴させることが通例となっている。

前回は調べた限りだと呉鎮守府所属の伊勢、千歳に木曾、天津風に時津風が動員されている様だった。しかし今回は先日の件もある事から金剛らの動員はしない事とし、私のみでの派遣となった。

ここで私達のナウル鎮守府の違いを説明しよう。通常の鎮守府はただ軍港しかない訳ではない。鎮守府としての付属する施設がある。

事務管理に憲兵団詰所。基地全域を覆ったフェンスに簡単ながらも防衛施設。大量の対空砲やレーダーサイトなどの一通りの軍事施設は揃っており、その地域の軍事関係の総司令部としての意味も持つのだ。佐世保などは自衛隊も基地が合併されており一大軍用地となっている。

詰まる所駐屯地の超グレードアップ版の軍事基地なのだが、ナウル鎮守府に限っては存在しない。

そもそも提督棟のみで全ての事務処理が可能で守るべき対象となる都市が存在しないため鎮守府を守るためだけに特化した防衛システムを設置できる。だから、あんな要塞になったわけだが。妖精さんが荒ぶったんだ。しょうがない。

仕方ないったらしかたない。気にさせるな。私が心労で倒れる。

 

一般道に入る前に地味に広大な用地を擁する正面の庭とでも言うのだろうか、なかなか広い西洋式庭園が広がるなか邪魔しない程度に抑えられたアスファルトの道が正面エントランスを描くように半円に通り、そこから正門へまっすぐ車輌用と歩行者用の道がある。

そんな土木関係だけでいくら掛けたか分からない金と血でできた道を4輌の重武装車輌が威風堂々たる姿を見せると明らかに重装甲の戦闘車両が走り去って行くためか注目が集まる。

一部は携帯向けて写真を撮っているようだが、軍機の塊の為あんまり撮影は遠慮したい所が本音だ。

「妖精さん、急いでくれ」

''了解です!''

すると音も立てずに車輌が加速してゆき、厚さ200mmの耐爆ガラスに映る景色がガラリと変わる。

丁度正門を出たようだ。しかしすぐに一般道とはいかず、緩衝帯として更に広いスペースがある。そこには申し訳ない程度の、最低限の防衛施設がある。具体的にはM2のトーチカや地雷、クレイモアなどの設置型トラップなどだ。

しかしその設備の貧弱さはお察しのとおりだ。大方予算のしわ寄せが来た結果だろう

予算管理の杜撰さがよく分かるが、そんな事はどうでもいい。関係ないし。

 

......

 

 

............

 

 

.................

 

 

......何か、団体さんが居座っている。

大体人数は50〜60人程度で拡声器でリズムよくdisってる。

バカの集まりだろうか、と言うか絶対そうだろう。阿呆っぽい感じのやつらばっかだし意味不明な主張だし。

 

軍縮しろーだの、深海棲艦との和平を模索しろーだの、戦争反対だの。

戦場を知らないから言える甘ったれた妄言だ。そうやって暇を潰せてるのは誰のおかげだと思ってるのだろうか、そこをよく考えて欲しい所だが言っても無駄だろう。奴らは国民のため子孫のためと言いつつ自分達さえ良ければ他はどうでもいいっていう連中だ。

現在は警備部隊が必死に止めているが、いかんせん数が多い。一応介入すべきだろう。船体にたどり着かれたらたまらん。穢れるじゃあないか。妖精さんに全車輌停止の旨の指示を出してもらい、五七式重装甲輸送車の上にある砲塔のハッチを開けて外へ出る。

一式重武装車輌は既に全装甲化されたM634が団体さんに向けられている。まさかとは思うが実弾じゃないよな?妖精さん。え?空砲何か積んでない?ちょい..何やってるの妖精さん......インカムをつまみ、指示。

「上部砲塔旋回。団体に向けろ。」

すると重苦しいモーター音と共に砲塔が旋回し、弾道を計算した結果算出された仰角に砲身が上がる。

「弾種、儀礼用空砲装填」

ガコン、と全自動装填装置に弾頭のない砲弾が装填され、ナノミリ単位で照準の修正がされる。

全自動装填装置の下には私の主砲の様に3発分だがストックされており、機構は500cm四連装砲と全く同じだ。

量子変換で出せるのは1500発以上。実質無限だ。補給廠から転送されるし。私の場合船体から送られるためやっぱり無限だ。

「ってぇーーー!」

轟音が轟き砲身から閃光が煌めく。白い白煙が勢い良く飛び出すとそれより早く衝撃波が団体さんを襲う。

 

遅れて第二射。再び砲声が響き僅かにくすんだ薬莢が車体と砲塔の隙間から排出され整備されたアスファルトに鈍い音を立てて落下する。

 

そして第三射。薬莢が落下し再び砲声が轟く。

白い砲煙が上がり、正直うるさい爆音で団体さんは黙りこくっている。おい、口開けて阿呆面晒すな気持ち悪い。

あとは防衛部隊に任せるしかない。多分大丈夫だろう。多分。

 

 

一般道にやっと入ることができた。長かった...今の所団体さんさんが居座っていたのを排除するきっかけを与えたくらいだがなんか精神的に疲れた。さて、気分爽快フレッシュし、今回広報係と合流するのは一般道の外れ、鎮守府のエントランスでのエンカウントとっているのだが、そこまでの距離が1kmと以外と長いのだ。その間、重装甲の武装車輌が4輌も走るという緊急事態にしか見えない事態となった。これヤバくねっ?と内心密かに思っているのだが、自然と一般車両が避けてくれるのでその点は便利だ。

先頭の一式は右を、2輌目は左に、五七式は前方を、3輌目の後方へ砲塔が向けられており、どの方向からヒャッハーしてきても対応できる体制になっている。しかしこれも万全とは言いがたく、地雷や特攻には耐性がない。一式重武装車輌や五七式重装甲輸送車は対空砲を積んでいないからだ。あくまで対歩兵用、対装甲車用なのだ。可動領域もM634の銃架は70°、五七式の連装の45mm機関砲に至っては65°と射程が長いから航空機が遠いなら撃墜できないこともないが、近くまで寄られると何もできなくなる。

その為に五七式重装甲輸送車には四連装のST-7ミサイルポッドが追加武装が装着できる様になっている。残念ながら今回つけていないが。

まぉ、兎も角。対空防御に難があるが十分対応できるだろう。うん。そうなって欲しいが。

というか今回襲撃があったら確実に内通者がいるか私に四六時中監視がついてることが分かるからデメリットだけではないのだがやはり面倒だ。

 

 

「私は今回大本営より指示されて出向したアメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。この度はよろしく頼む。」

「俺は呉鎮守府広報係課長、中尉だ。今回はよろしく頼む」

そう言ったのは筋肉質の男性。その肩の階級章には中尉を示すピンク色の下地に二つの櫻という階級章を付けている。

他の腐食したゴミ屑とは違いしっかりとした人物の様だ。後ろには部下なのか数人の士官がいる。私の後ろにある装甲車輌に目を奪われている様だが...大丈夫なのだろうか。ちょっと心配だなお姉さん。

取り敢えず段取りなどを教えて貰い、さっさとミーティングを終わらせると中尉達は軍用車なのかよく分からないが装甲のありそうなゴツゴツとした車両に乗り込んで行くと、私も護衛陣形を変更する。一輌目と二輌目の中間に中尉達の軍用車?が入るようにする。

先頭が潰された時に厄介になる車列だが一式重武装車輌はRPG-7だろうが対戦車地雷だろうが効かないので特に問題はない。

あるとすれば運転から機関銃手に至るまで全員が妖精さんである事だろうか。だってさ、無人で走ってる装甲車輌に囲まれた有人の車両とか絶対目立つじゃん。私目立つのやだしー(陸では)

何か問題起きそうじゃん?既に私達を監視している方々が複数いらっしゃるが、ばれてるからな?艦娘パワーナメんなよ?陸だろうと20km半径だったら悪意ある者は大体感知出来るし後は船体からトマホークでも飛ばすか戦闘機か爆撃機出せばいい。簡単なお仕事です☆

今回は面倒くさいし見られて問題無い件だから良いんだが、偶にストーカー根性ォ!って偵察型UAVを飛ばしてくる奴らも居て引いた。

一応ハッキングで飛ばした奴ら特定したが...うん。ラングレーとだけ言っておこう。無論データは消しとばしたけどな。建物ごと。

ん......あと10分程で着くようだ。少し寝よ...最近また寝てないし...

 

 




誰 が こ の 話 で 戯 れ る と 言 っ た ?

あ、すみませんなんか移動だけで6000いったので切ります。だから石投げないでっ、あ、それ核砲d...


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62.課外授業、ガキは好かん

間に合わなかった...テスト勉強と言う中ボスに苦戦しておりました。すみません。

61.の後半です。何故か10000文字突破。不思議。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私だ。アメストリアだ。あ、なんか最近この挨拶してなかったな。

それは兎も角、一般道を幾つか経由して学校へ向かっているのだが、市街地を見るとレンガやコンクリート製の頑丈な建物が数多く並ぶ事に気づいた。木造は少なく、大多数はコンクリート製のビルだった。当然と言えば当然である。

 

深海棲艦の攻撃が小康状態とはいえ未だ戦時中。直撃は言うまでもないが至近弾でも中々の威力を持つ。

着弾した対象の破片に砲弾の破砕片。強力な衝撃波に炸薬の爆炎と砲撃のダメージは二次効果によるものが大きい。そんな凶悪な攻撃に対して木造はあまりにも頼りなさすぎ、また延焼の危険性もある。

だからコンクリート製が多いのだろう。かつ帝都のようなコンクリートジャングルではなく、法律で制限されているのか高層ビルが見当たらず、七、八階のビルが散見できるが五、六階のビルの方が圧倒的に多い。車通りは普段通りなのか渋滞が発生しないかどうかの程よい交通量。

私としては動き易いため便利なのだが、いかんせん私達の乗る装甲車輌は巨大である。というかアメストリアの兵器達は陸海空全てにおいて巨大である。市街戦において装甲車輌を投入できない気がしないでもないのだが、そこの所は解決されている。

 

まず、兵士は妖の者。身体能力や感覚、技量が桁違いに高い。某土管工の1upジャンプみたいなジャンプを野外戦闘服の軽めのBDUにそれに付属するダンプポーチやインカムなどのアクセサリー。陸軍ならばM145一艇に五式自動拳銃。そして個人の裁量で持参しているショットガンやグレネードランチャー、対戦車擲弾発射機(RPG)などなど。総重量40〜60kgのフル装備のままで飛んでしまう。

その上撃たれても吹き飛ばされても復活して攻撃を続ける。銃器や兵器には時間逆行術式が部品一つ一つに刻まれているため破損しても次の瞬間には修復されており、より強くなってゆく。そんな兵士が最低ライン。妖怪さえも辞めているような兵士もいるのだ。

砲に届く位の機関銃を振り回す兵士やミニガンを振り回す兵士。

対人 対装甲戦闘車両 対艦 対航空機 破壊活動 要人警護 殲滅活動 なんでもござれの兵士だっているのだ。大隊規模で、師団規模で、軍団規模で。要請すればいくらでもやってくる不死身の軍隊。

敵には悪夢である。

 

 

だから市街戦でも全く問題にならず、攻撃ヘリ(変態機動の例のアレ)や対地攻撃機も支援に回る。

テロなどの組織壊滅はアメリカさんお得意のピンポイント爆撃の様にチマチマと殺らずにB-97というCT-7の爆撃機版でその都市ごと消し飛ばす。発想が第二次大戦だが大規模な戦術の基盤には第二次大戦の戦術が取り入れられている。海軍とかモロに受けてるじゃん?主砲の連射とかさ。

 

まぁ、そんな訳で(閑話休題)

 

移動しやすいというわけだ。装甲車輌(五七式重装甲輸送車)の幅がでかくて二車線使っているが。

こういう場面では上からRPGとかが来るのが定番で、先頭車両が炎上して車列が停止するのが常だが残念ながら効かないしwww (^д^)m9 プギャー!

暫くするとビル群から離脱した様で郊外へと車列が向かう。ビルなどの姿が一気になくなり、なだらかな丘陵地帯に市街地が広がっている様だ。

つまり、目的地は近いということが分かる。一軒家が多くなり、ところどころに高射砲塔が散在しており、見る限り対空ミサイルは無く、30〜45mm対空砲が平均五門から七門配備されている。

まぁ、それくらいが妥当じゃ無いだろうか。深海棲艦の標的になりにくいし。一般的に敵本土攻撃の最優先目標は軍港や軍需工場などの軍事拠点だ。市街地まで落としているのはB-29でHAHAHA!してた連中くらいだ。したがって市街地は標的になりにくいのだ。余程のことがない限り。

しかしこういう路地が狭く、屋上が多い場所はアンブッジュするのに最適だ。思わずM145を撫でる。念の為M634もようにしたほうが良いだろうか...うーん...本当に悩ましい。大火力だし連射できるし...うーーーーん.......ほーんっとに悩ましいっ!

 

 

 

結局の所、私がただ使いたいだけである。

ここは一式重武装車輌のM634に頑張ってもらうしかないか...と言いつつ軽機関銃を手に取る。

M145は邪魔な為背中に回す。ぶっぱするには後部ハッチを下すか砲塔に身を乗り出すしかないわけだが私は砲塔を選ぶ。ヘッドショットワンパンキルされる危険性が非常に高いのだが私はそんなことで死ぬことはまず無いので気にしない。砲塔の人員用ハッチから上半身のみを這い出して、軽機関銃はM147という7.92mm口径という対人には十分すぎる口径に射程2700mという優秀な軽機関銃で、重量3.9kgと取り回しもしやすい。20mmレールはハンドガードやギアボックスにも設置されている。私はそこにフォアグリップやフラッシュライト、レールカバーを取り付けている。機能性を重視しており、3×9倍スコープを滑らせている。暗視装置搭載型だ。そして硬い装甲の上にバイポッドを展開し、前方に向ける。

 

 

 

その後は特に問題も無く進んだ。市街地と言えどどこぞの人口過密とは違い区画整理されている為整然と並んだ様々なデザインや意匠の民家は見ていて飽きなかった。実に生活感に溢れており、本来私達軍隊が守るべき対象だ。

 

私は余りそう言う意識は無いのだが。だって私艦娘第一の艦娘LOVE勢だぞ?ナウル鎮守府さえ無事ならあとどうでも良いしー?まぁ、確実に問題発言となってハイエナ共に揚げ足を取られるから余り言わないが。うん。多分な。既に行動で示した気がするのだが、気にしてはいけない。良いな?私との約束だ。

 

''目標を目視しました!''

「こちらも確認した。中尉殿の車輌にも通知しろ」

 

若干車列減速し、私も砲塔から車内に戻る。

147式軽機関銃のバイポッドを収納すると立てかけて、背に回した145式歩兵小銃を手に取ると、いつでも撃てるようにスリングを腕に絡め、肩に銃床を当てる。窓から様子を見ると車列の行く先には典型的な建物配置の変哲のない学校が広がっていた。

2mくらいのコンクリート塀で囲い、グラウンドの端には樹木を植え、その奥には体育館や屋外プール、くの字型やT字型の白く汚れで所々黒ずんだ校舎が聳える。いや、適切ではなかったな。校舎は商船迷彩が施されたままだし、特別教室の棟は爆撃によって一部が崩れたのかブルーシートが掛かっていた。生々しい、戦争の傷痕がこんな所にもまだ残ったままなのだ。

まぁ呉付近にあって、これだけのサイズをもつ施設なんだから深海棲艦も軍事施設と誤認してもまぁ不思議ではない。迷彩もあるしな。

正門へと回りこみ、堂々と入っていくのだが、例のごとく視線がヤバイ。校舎の窓から興味津々の様子で見下ろしている。おう勉強はどうした。

 

担当と思われる年配の教師の案内で空き地に車列を止める。一式重武装車輌や五七式重装甲輸送車が等間隔で駐車し、わらわらと妖精さんが出てくる。かく言う私も後部ハッチが開くと同時に外へと足を踏み出したのだが、この空き地木が植えてある以外は何も無いただの空き地だった。しかし植えられた大樹は立派に葉を茂らせ優しい木洩れ日を地面へと届けている。装甲車輌も例外でなくまるで迷彩のように光が差して装甲を明るく彩っている。砲塔から伸びる砲身が鈍く反射し、やはりカッコイイ。

どんな背景でも絵になるからな装甲車輌は。砂漠だとデザートカラーに塗装され偽装網が砲塔などに掛けられ対空装備として四連装ミサイルポッドを装備。

森林ならば森林迷彩がダークグリーンの車輌に映え凹凸を消す為にこちらも偽装網や現地の植物が積まれている。想像するだけで胸が高鳴るな!

残念ながら今回はただの移動の為何も無い。偽装網も現地の偽装も迷彩も。偽装網は車内に積んである。あ、今使うか。侵入者対策に役立つ。光学迷彩もあるがわかりにくくなるので却下。

五七式重装甲輸送車の後部ハッチを閉じると車輌全体を覆う様に偽装網を掛け、直線を消す。

 

現在はヒトヒトマルマル、10:00だ。出張授業は三時間目。

大体50分くらい準備時間があるため、ある程度のクオリティを持ったプレゼンをすることができるだろう。中尉の指示に従って機材を運んで行く。見たところ、プロジェクターにZ旗、パソコンだった。()によるとセキュリティも固くなく掌握するのにはそう手間はかからないとの事。いや、そんなこと聞いてないから。するつもり無いしすること自体めんどいから。私が紹介するときには使用するかもしれんが。

さて、考える。インパクトを与えより印象に残るプレゼントは何か。ガキどもに興味を持ってもらわねば今後の軍事力に直結するため出来るだけ面白く、固くない物を...

 

...

 

......

 

........

 

...あ、思いつかん。どうしよ...将来の艦娘の戦力兵装の充実さを説いて資料映像もクラッキングで流すか。

私について紹介しても面白くないだろ?別にナウル鎮守府以外にアメストリア型戦艦が来るわけでもあるまいし。しかも私の圧倒的な火力を見て艦娘みんなが私のような火力を持った軍隊だと勘違いされても困る。というか私という規格外の火力(便利屋)を当てにされて私達の負担が増えるのも困る。以前大本営の作戦指令書をクラッキングして見たんだががっつりアメストリア型戦艦を主力火力として採用する作戦を立案していた。確かにさぁ?私達大体の作戦で対応できるけどさぁ?私達が万が一轟沈したりしたらどうするん?私達だってアメストリア型戦艦(深海棲艦)

に囲まれて寄ってたかってボコボコにされたら私でも、沈む。主砲が500cm四連装砲であろうと絶対干渉結界があろうと万能ではないので沈む時は沈むのだ。無論沈むつもりは毛頭ないので、大和達深海棲艦絶対殺すマンの艦隊を随伴することにしている。相変わらず駆逐艦が少ないことはご愛嬌だ。やっぱり拡充すべきかなぁ...駆逐艦という名の軽巡クラスの火力艦とか幸運艦とか。

 

それは兎も角、しっかりと大本営にはクラッシュ食らわせておいた。クリックしたら毎回クラッシュする様にしておいた。ムフフ。

体育館と思われる大型の施設にプロジェクターなどを運び込み、一度ステージから降りて床に立つと右腕を上に掲げる。そして砲弾を作り出す。

幅5m、縦7mの巨大すぎる砲弾が作り出される。半分くらいを金色に輝く新品の薬莢に覆われ、黒い弾頭は天井の大きめの照明に照らされて誇らしく輝いている。重量45t以上だが、私からすればこんなものは持ったに入らない。

直ぐに消すと45mm対空機関連装砲を作り出す。これはゆくゆくは全国配備してもらう予定の為公開しても問題はない。あー、でもこれでは伝わりにくいか...............,.

よし。大体の予定は決まった。あとは待つだけだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、これより海軍広報課の方々に海軍さんのお仕事を紹介していただきます!」

 

その一言で、体育館に集められた高学年の注目がステージに集まる。しかし私はもう少し後に出るのだ。待機する。

中尉達が先にでると、黒い一種軍装の姿に驚きの声が上がる。声が高くてうるさいな...中尉と部下が素早く設置しておいたプロジェクターとPCを操作してすでに下ろしておいたスクリーンに画面を表示させる。因みにデスクトップは呉鎮守府から望む軍港だった。見た限り阿賀野型軽巡洋艦と鳳翔、大和がいる。洋上には駆逐艦が数隻。睦月型と陽炎型だな。

そしてワープロを開くと今日の日付とながもんのカラー画像がつけられた画面が表示される。

「あ、ながとだぁー!」「戦艦だー!」と馬鹿みたいな反応をしている。

 

 

 

 

 

「さて、今回は巷を賑わせる有名な戦艦の艦娘に来てもらいましたー!」

........、私って巷を賑わせているのか?最近ナウル鎮守府に引きこもっていたが。確かに昔は色々とやらかしたが最近は暇してたはずだが...確かノイトハイルが某有名掲示板にお邪魔した時なんか賑わってたな。

 

やはり島見たいな戦艦は目立つのか...軍艦島の所以たる超弩弩級戦艦 土佐の八倍の船体を持つしちょっと動くだけで津波が起きて巡航速度で走ると海流変わるけどさぁ、主砲がグラウンドくらいだけどさあ、仕方ないじゃん?そういう戦艦(大陸ごと吹き飛ばす戦艦)なんだから。

それはさておき入れさっさとって言外に指示されたので巫女服に乱れが無いかをチェックし歩く。

 

私が歩く度に腰にある銃剣サイズのホルスターが宙を舞いまた叩きつけられる。地味に痛い。土足厳禁だった為に足袋のため足音は立たずに静かに歩く。と同時に艦娘パワーで最大探知。

深海棲艦はこういう時に襲撃をかけるからだ。全く油断ならん相手だ。

 

沈めても沈めても湧いてくる。対して火力も無いのに撃ってくるし。

学習しないし、()の元妹達をぞんざいに使ってるし。

嫌になる相手だ。

 

「ご紹介に預かったアメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。今回の出張授業の為に遥々ナウル鎮守府から来た。本日はよろしく頼む。」

 

マイク無しで自己紹介する。汽笛が大きい私にとって声量はさして問題ではない。

注目としては上々だ。私については諜報でも掴んでいたがニュースにもなっていたため私があの戦艦だといいうことに気付いた生徒も多い様だ。

 

「私から今回の海軍誘致の説明をさせて頂く」

 

そう言ってPCにかぶりついている中尉の部下に視線を向ける。すると意味を察してもらえたのか頷くと次のページに移る。心なしか顔が赤い気がする。

体育館内の照明が段階的に落とされて行き、電動のカーテンが窓を覆う。より明細なスクリーンとなり、次のページである海軍の主な活動内容が書かれている画面がより見えやすくなる。

 

[大日本帝国海軍の主な活動内容]

大日本帝国の防衛

深海棲艦の攻撃に対する迎撃

深海棲艦の泊地殲滅

全世界の海域解放

 

という夢の様な目標が掲げられている。

「この様に我々海軍(・・)は対深海棲艦戦という戦争をしている。そのため戦死数は多く、戦線はキス島からナウル島、トラック島まで伸ばしており、日々戦闘を繰り返している。」

 

そう言って画像を世界地図に変える。その地図には各鎮守府が赤点で表示されており、最近陥落したミッドウェーにある泊地には赤でバツが書かれている。公表するのか、と内心驚いた。大本営発表じゃないな良きかな良きかな。おねーさん嬉しいぞ。態々体張って殴り込み掛けた甲斐があるってもんよ。

各鎮守府が黒い線で結ばれ、防衛戦線とデカデカと書かれていた。

 

「そして、深海棲艦は様々な艦艇を導入し、我々の艦隊と一進一退の攻防戦を繰り返しているが、今の所優勢だ。何故か分かる者がおるか?」

 

そう問うと幾ばくかの生徒が手を挙げる。ふむ...少ないな。関心が。

 

「ではそこな赤い服の生徒」

「は、はい!最近海軍の装備が新しくなっているからです!」

「その通りだ。」

 

そう言って微笑みかける。するとなんか真っ赤になった生徒が大量発生。初心だなぁ...反応が面白い。内心ほくそ笑みながらそう思う。

最近妹達は反応しないし戦艦達はなれてしまったのか全然反応してくれない。駆逐艦とかは結構面白いのだがな。電とか。「はわわわわっ!!??」って顔真っ赤にしてアワアワしだす。これがすっごく可愛いんだよな。抱きしめたくなるくらい。無論抱きしめたが。

 

PCをクラッキングして制御下に置いて船体の中央演算処理装置のデータベースから引っ張ってきた画像を貼り付ける。

それは駆逐艦に配備している15.5cm連装砲の三面図に軽巡洋艦に配備した20.3cm三連装砲が表示される。

そして画面を切り替え、動画へと移行する。これは私がF-222でわざわざ撮影した資料映像だ。

 

「まず見て頂くのは今までの12.7cm連装砲の発砲映像だ。そしてそのあとに続くのは新型の15.5cm三連装砲の発射映像だ。よく見て比べてほしい」

 

そして再生する。撮影した駆逐艦は暁。新型はブッキーだ。

上空からの映像に切り替わり、揺れることのない鮮明な映像だ。暁が発砲し、砲声が響き渡る。

砲炎が長砲身の127mm砲から上がり、海面を扇状に衝撃波が広がっていた。発射された砲弾が白い軌跡を残しながら的へと飛び命中する。何故か拍手が起きた。何故に。

 

映像が途切れ別の映像に切り替わる。映し出されるのは吹雪。

砲塔の形が微妙に変化し現代化している。砲塔が速射砲の様な速度で旋回すると電探連動で仰角が上がり、発射。ありえないほどの炸薬が点火され、砲身へ砲弾が莫大な力で押し出した。

砲煙や閃光と共に砲弾が勢いよく飛び出す。同時に砲尾装填式の砲が後退し、尾栓が限定的に解放。薬莢を排出して下の開いたチャンバーから新しい15.5cm砲弾が押し込まれて駐進機によって元の位置に戻ると再び発射。その間実に1秒だ。次々と連射される砲に思わず驚きの声が上がっている様だ。用意した的は200mmの装甲板。次々とピンポイントで命中してゆく砲弾に中の炸薬による爆発、ひしゃげる金属音は迫力がある。今度一七式戦車でやってみるか。面白そうだ。

 

映像によるつかみは上々。ならここで一発インパクトを与えよう。

「現在でもなお主力を務めるのは海の王者、戦艦だ。戦艦の主砲は駆逐艦や軽巡洋艦と比べ物にならないほど大きく、威力も抜群だ。口径を知っているものはおるか?」

すると、「三十センチー!」という答えが返ってえってきたが、残念ながら30.5cm砲は第一次世界大戦の戦艦などの主砲で加農砲で運用され、敷島型などで活躍した。

 

「残念ながら違う。35.6cm、41cm、46cm、51cm、500cmなどがある。そのうち今回は有名な大和砲こと46cm砲弾を公開しよう」

 

そう言って右手に46cm砲の砲弾を作り出し、片手で持つ。大きさとしては2m。重量1tと軽い。持っている感覚さえない。

ざわり、と煩くなる。

 

「この様に巨大な砲弾だ。威力は改良によってバイタルパートを抜くことができたら戦艦でも轟沈させることができる」

 

これは大和によって実証された。そして武蔵がこれで無双した。150cm三連装砲ちょっと重いって文句言われたから口径減らして超砲身化したやつを妖精さんがフルパワーで開発中だ。

主砲の連射速度も大和砲が30秒/発だったのに対し、速射タイプでは毎秒1秒。60発/mであるため戦力差は純粋に30倍。大和型の主砲は十五門の為450倍だ。

この戦略上の重要性や戦力的な意味を理解する者は居ないだろう。

 

「そして.......

 

 

 

 

カットした。だってこれからは説明会だもん。

面白くないだろう?艦隊に提督は付いていかないから死ぬ心配はないとか船体は強いから戦力が減ることはないとか。これの説明は大本営から指示された内容だ。

これ位念を押さないと人員が集まらないのだろうか。別にあんまり関心はないが。

 

「さて、貴官には生徒とのふれあいとして昼食を共にして頂く」

「.......意図が読めないな」

「やはり直接艦娘との関わりを持った方が関心が続くとのデータがあるからな。通例だ。まあ金剛の様にやってくれ」

「......」

 

いや、あのフレンドリー全開のように振る舞うことは不可能だが......というかなんかヤダ。キャラが崩れるようでなんかヤダ。()も幼稚園児の扱いについての心得はないみたいだし。

 

「クラスは?」

「貴官が決めていいようだ」

 

なにその全て任せるから責任はお前がとれよっ?あとは任せた!っていうノリは何だろうか。

すごく困るんだが。殺しちゃうじゃん。私馬鹿みたいな火力持ってるんだからさ。

 

「ここか。」

 

なんか全部任せられたので、適当に選んだ。

今回はさすがに新しく作り直した編み上げの長いブーツに変えて歩いている。念のため200cmの大太刀をスリング通して肩にかけている。何が起きるかわからからんからな。

つかつかと歩いてきたが案内もないし校内の案内もないからわざわ電探で索敵して探した。三次元的なグラフィックを脳内に作り出した。面倒かった...

見上げる先には[6-2]と書かれたプレートが掲げられている。

ノックして、返答を待つ。

 

「はい!なんでしょ......う......?」

「...む?失礼した。生徒達と昼食を共にするように指示されてな。邪魔だっただろうか?」

「い、いえ、ととととんでもありません!」

すごくどもってて聞きにくかったが何とか理解した。一応オーケーらしい。多分このキョドりまくっている生徒が委員長だろうか。すぐに応答したし。いや、その確証はないな。愚直に決めるべきではないか...

 

.....何でそんなこと考えてるんだろ。どうでもいいしそんな事。

「どの班に行けばいい?」

「す、すぐに決めてきます!」

なんか初心だなぁ。昼食は見る限り...ボックスに詰められた35食分位の白ご飯にけんちん汁に竜田揚げに紙パックの牛乳だった。

竜田揚げとはなんか、悪意がある気もしないが気にしないでおこう。龍田に殺されそうだ。此処が。

 

結局各班の班長がじゃんけんして決定していた。どうやら3班のようだ。教師はいないようだが、職員室に引きこもったか?

「では失礼する。」

三班は入り口と窓側の中間。うん、中途半端だな。

大太刀を消して用意してもらった座席に座る。そして机に風呂敷を敷くと給食が運ばれてくる。陶磁器製の食器の様だ。豪華だな。

 

「いただきます!」

「「「いただきます!」」」

「頂きます」

と小声で言い、これまた作り出した和風の箸で片手で持った茶碗から白ご飯を一口。

うーん...微妙。なんかモチモチしてないしべちょべちょしてるし。鎮守府では高級米ばかりだったからか彼方に慣れてしまった。だって間宮の作るご飯はすごく美味しいんだ。

出向してからは自衛隊のミリ飯などで済ませることが多いし。

それにしても、騒がしい食事はいつ頃だろうか。パラオ鎮守府では日常だっだがナウル鎮守府となってから静かになり黙々と食べる艦娘が多くなった。更にシフト制だから非番の艦娘達の起床時間がバラバラでまず食堂に一同が会するなんて事自体起こりにくくなっている。

赤城や加賀は相変わらずすごい量を消費してるが。最初私が作ってた頃はキツかったからな。制作量的に。

さて、けんちん汁を一口。濃ゆいな味が。芳ばしい味噌の香りが口の中に広がり優しい甘さが後から来る。普通に美味だ。

白味噌だし、具も多く栄養もある。便利だなこれ。

竜田揚げは......うん。龍田に刺されたく無いので深く言わんが美味しかった。

「あ、あの......」

「む?何だ?」

「あの...戦闘ってどういう感じなんでしょうか?」

...どうと聞かれても戦闘の種類によって変わるんだが?

「そうだな...現在の砲撃戦においては超長距離砲撃の砲撃戦かミサイル攻撃がメインだな。兎に角煩いぞ?」

「そ、そうですか...」

何を想像したのか知らんがそんな派手すぎる戦闘はしないし。

牛乳を素早く飲み干すと馬力に物言わせてビー玉サイズに圧縮すると風呂敷の上に置き風呂敷を消す。長居は無用だ。さっさと帰る。

 

 

ーーーーウウウゥゥゥゥゥ、ウウウゥゥゥゥゥ、ウウウゥゥゥゥゥ!

 

なんでこんな時にくるかな深海棲艦。というか仕事しろよ航空隊。

空襲警報が町中に鳴り響き、各地の高射砲塔の対空砲が仰角を上げる。そして各地のレダーサイトから送られ情報をもとに迎撃を開始するが、F-222には当たらない。町中から重力と反対の火線が上がる光景はなんかレアに感じる。私達や艦娘の対空迎撃とは違うからだろうか。

し、か、し。そんな中ここの生徒と言ったらパニックになったのか動かない。さっさと動け平和ボケ世代。......ダメだこりゃ。

恐らく狙いは私一択。以前話した通り艦娘が死亡すると船体は自沈する。つまりいかに対空防御が硬かろうが船体と離れて無防備になり死亡したら船体はダメになる。だから今狙った。

「妖精さん、敵影は?」

''あります!敵航空機 戦闘機4爆撃機1高度16500です!''

「了解した。」

対空砲は届かんな。m634も届かん。どうするか...

立ち上がる。そして窓へと歩きながら腰に手を当て、ホルスターから五式自動拳銃を抜き取る。

そして片手で狙いをあまりつけずに発射。

轟音と爆炎が上がり悲鳴があがる。しかし無視する。続けて撃って撃って撃ちまくる。

薬莢が床に転がり、カランッ!と甲高い金属音を響かせる。

窓が粉砕され、スペースが開いたところで、軽く駆けて窓際に手を掛け飛び降りる。

ここは4階。9m近くあるが艦首から飛び降りても平気の為問題無い。

対抗策は練っている。m634の射程は5000M。到底足りない。しかし45mm機関砲は20000Mと長い。

五七式重装甲輸送車を緊急発進させグラウンドに持ってくると二本の砲身を名一杯上げて、撃つ。ドォンッ!と重なった砲声が響き薬莢が二つ排出される。後は作業ゲーだ。M2見たいな連射速度で45mm砲が火を吹き、曳光弾の線が空高くに伸びてゆく。

見ると、火が上がった戦闘機が一機。これが限界か。

「妖精さん、主砲起動!三式弾装填!目標呉上空に侵入した深海棲艦!撃ち方初始めぇ!」

私の一声で呉湾にいる船体の主砲が旋回し、対空専門の三式弾を撃ち出す。その数20。斉射したのだろう。ここまで響いてくるな。ここまで大きかったのか私達の500cm四連装砲。確かにブラストで敵沈めれるが...音大きかったんだな......

白い軌跡が放物線を描かずにまっすぐと飛んで行くと空中で分解。大量の揮発性の高い燃料が辺り一帯に撒き散らされその中に深海棲艦が突っ込む。すると信管が起動し点火。一斉に燃え上がる。弾道の通りに炎上し、花火を咲かせてゆく。

もう落ちただろう。

''艦娘さん!深海棲艦の爆撃機が投弾していましたー!''

「何?」

マズイ。爆撃機と言うとB-97しか思いつかない。B-97はツァーリボンバーを500発投下可能でありもし落とされたらかなりヤバい。

しかしFB-99の場合もある。あちらはSBM-93という粒子爆弾と言うMOABの超強化版を投下可能だ。

五七式重装甲輸送車が迎撃を開始。薬莢がグラウンドの砂に次々と刺さり溜まってゆく。私も迎撃態勢に入る。m634を車内から引っ張り出し弾帯を機関部給弾口に突っ込む。そしてコッキングハンドルを引き初弾を装填。地面に寝そべると真上に構える。

五七式重装甲輸送車の濃密な対空砲火によってなんかクソでかい爆弾の7つは破壊。後3発は未だに落下を続けている。その視認に遅れてトリガーを引く。腕くらいの薬莢がごとりと落下し砲身が大きく下がる。そしてすぐに第二射。第三射。

3発の19.8mm砲弾が空へ超高速で飛ぶ。そして落下してきている超巨大な爆弾に命中。先端を食い破って中で爆発。跡形も無くけし飛ぶ。

ふぃーーー。疲れたぁ...色々と。

 

 

 

 

 

 




ガルパンの劇場版を拝見してきました。
もう最初から最後まで興奮しっぱなしでした!とにかくもう凄まじいですね。サンダースがあまり仕事してませんでしたが、また見に行きたいと思います。ではではそのうちガルパンも出しますね〜


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63.観光です!って行く先が軍事関係な件について

お久しぶりです。私は生きています。しかしテストは死にました。神は死んだっ!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やあやあアメストリアだ。というかこの挨拶も久しぶりだな。

今回は恐らく着いてきた艦娘達の主目的とも言える慰安旅行だ。目的地は広島。そこ、元々広島だろって言わない。

行動半径と戦闘を考慮した結果だ。移動手段には一式重武装車輌を使用しようとしたが差し止められた。くそう...

何でもいくら何でも装甲車輌で一般道を走るのは問題があるとの事。今までも走っていた気がするので、なぜに今更止められるのかが理解できん。五七式重装甲輸送車でないだけマシに思ってほしいものだ。

 

それはさておき、艦娘がキラキラしている。

金剛はいつも以上のハイテンションであり、天城がそれを宥める。矢矧は普段着ないカジュアルな服装に顔を赤らめていた。

そう。全員が服装を普段の露出が激しい巫女服とか和服ではない。リバンデヒは最近伸びてきて背中にかかるセミロングの黒髪に合わせたのかクリーム色のロングコートに白色のレース付きロングスカートだ。尚靴底に鋼鉄を仕込んだ編み上げブーツを履いている模様。やめい。

金剛は普段の複雑すぎて私も分からん結い上げをそのままにこちらも落ち着いた紺色のレザージャケットに寒くないのか元気に膝丈のショートパンツに身につけていた。天城は何時もの和服に慣れたからとの事で袖の大きい巫女服でいう白衣のような白いシャツに黒い袴のようなフレアスカート。矢矧は何故か制服に近い、ドレスシャツにチェック柄のスカート。いつもとそう変わらんな。

響は空色の厚いコートに紺色のミニスカート。黒タイツを履いており、マフラーを二回首に巻き、頭にはあの帽子では無くニット帽のようなつばのない帽子を被っていた。可愛い。

 

ん?私か?特に言うほどでもないぞ?

普通に長袖のブラウスにショルダーホルスターでMH-6を二丁吊るし、更にミリタリー仕様のダッフルコートを着込み、カーキ色のカーゴパンツだ。珍しく私がズボンだが、汎用性を考えた結果だ。

 

 

さて、実は私達の居る呉海軍大学校は、仁方という土地にある。

呉の端だが、その国道279号線までの開発された三角州を利用して建築されている。その為クソでかく、呉線の仁方駅が一番近い。

その為今回は鉄道を移動手段として選定し、それに伴い行く先は仁方駅。そこまでの距離はそれほど遠くなく、大体800m程。市街地は無くただだだっ広い空き地が広がり木が偶に生え木漏れ日が歩道を照らす。しかし現在は冬だ。秋?最近終了したが?おかげですっかり寒くなり私達は耐えられるが生徒共が厚着し始めて非常に暑苦しい。暖房はあるにあるが教室全体は暖まらないと言うあるあるが発生している為仕方ないのだが...

「お姉ちゃん、どうするのかしら?私達今即座に展開できる兵器は六式二丁とバヨネットしかないわよ?」

「一応バックパックに入れてあるから大丈夫だろう」

そう。今私とリバンデヒ、そして金剛がバックパックを背負っている。その中身は無論ビス抜いただけの簡易解体をしたM145が一丁ずつ。私のやつにはB503、つまりグレネードランチャーが装着してある。そして即時展開戦力として私の六式自動拳銃二丁にリバンデヒのバヨネットナイフが不明。コートだから分からん。擦れることは聞こえるがな。

 

自動券売機で全員分の切符を作り出したリアルマネーで購入した。

実のところ軍属の人間は移動手段にコストがかからない法律が制定されているが今回はお忍びだ。一々そんなチミチミした法律何ぞ配慮するつもりはない。だって私が作った金だし。

切符は最近の新幹線のような大きな切符では無く、裏が黒いちっさな切符だ。あの裏面の黒は磁力何だろうが、ちょっと私の電子機器に干渉しないか心配だったりする。電探とか鈍ったら困るし。まぁ、こいつ自体が磁力を発しているわけではないので大丈夫だとは思うが...

駅は廃れており、小規模でホームにいる乗客もまばらだ。一桁だな。

しかし私達が入って二桁だ。やったな運営会社!収益が上昇したぞ!

 

.......こほん。兎も角、自動改札を抜けてホームへと上がったのだが、時刻表を見るに、後5分ほど到着まで時間があるらしかった。

そういえば配布するのを忘れていた、と今更ながら思い出し、内心責め立てながら五台の端末を作り出す。

「全員にコレを配布する。」

端末は四角くゴツゴツとしていてとても市販品には見えない。所謂PDAというやつだ。デザイン的には某食べかけの林檎の端末に似た構造だが、内部スペックは大幅に違う。データ量は10TB。回線は私の中央演算処理装置を介しての超高速回線で秘匿性が高い。

内容はGPSに支援要請、PDA同士の連絡用アプリケーション、ネットと少ないが十分だ。

「What's?コレは何デスカー?」

「こいつは私の中央演算処理装置を利用した最高機密クラスの秘匿性を持った連絡用端末だ。救援要請などはこれでしてほしい。」

「どうやって使うのかしら?」

「側面についている押し込み式スイッチを押せば電源がつく。基本電源が尽きることはないから基本付けっぱなしだ。他にも天城の甲板にスタンバイしているF-222やFB-99の支援要請が出来る」

Спасибо(ありがとう)でもいつ使うんだい?」

「おもに連絡用として使ってくれ。以上だ。」

丁度、列車の到着を告げるメロディがホームを響き渡り渡る。

轟音と強風を纏った鋼鉄の箱が二本の鉄の棒を滑り減速。空気圧が抜ける音が鳴り両開きのスライドドアが一斉に開き車内の暖気が漏れ出す。残念ながら降りる客は軍人か近くの近隣住民のみ。

私達も乗り込む。ちらりと確認しても車両にいるのは十数人。私なら制圧できる範囲だ。ちらりと脇にあるホルスターに視線を向ける。ただそれだけでリバンデヒは私の考えが読めたようで小さく整った唇を歪ませている。戦闘狂か?

...視線が集まるのを感じる。まぁ綺麗所しかいないからな。リバンデヒとか金剛とか天城とか矢矧とか響とか......あ、全員だな。うん。

流麗な艦娘しかいない為自然と一般市民の視線を集めるのは当然といえよう。しかし、冬グラverだ。可愛いに決まっている。

 

 

鉄道に揺られる事30分。

幾つもの駅を経由し、その度に幾つもの好奇の目に晒され、一部携帯を向けてくる輩がいたがリバンデヒが懇切丁寧にお断り願った。...スゴクコワカッタデス。ハイ。車窓から見える景色はトンネルを抜けると〜、のようなある意味すごい変化はないものの海から住宅街、天に向かって聳えるビル。その建物一つ一つも細かい装飾から色彩、洋風から和風、ハーフまで十人十色の形相を呈しており、見ていて飽きないものがある。架橋を列車が通り、減速を指示する信号が流れ、ブレーキが掛かり始め、車窓に映る景色の流れる速度が鈍る。

ここからは開けた建物が多いため警戒を強める。

ボウリング場やドリームタウン呉という呉では一番大きな商業施設が並び、その屋上には室外機などで見にくくなっており、狙撃の危険性が否定できない。

「お姉ちゃん、敵さん三人ほどが居るわね。けどチキンだわ」

「...こちらでも確認した。泳がすぞ。私達は非番だ」

「了解したわ。あと、目的地の隣に何かあるわよ?」

そう。本来なら海軍...海自の軽い基地があったのだが戦時とあって鎮守府とまでいかないものの警備府と言うのだろうか。

駆逐艦が数隻程度の戦力のみが配備されている。正直、何に使うのか分からない。避難指示?鼠輸送でもするのか?すごく分からない。

戦力的にも駆逐艦しかいないため、火力はお察しだ。足は速いが積載量がある訳でもなく、装甲が厚いわけではない。

せめて軽巡洋艦や重巡洋艦だったら避難という意味では役に立つし、装甲も最近妖精さんの量産型特製装甲を装備していて大和砲でも抜けない艦が増えてきているのだ。便利だろうし火力も20.3cm連装砲だ。対地攻撃ではかなりの威力を持つ。だが...駆逐艦だ。旗艦に軽巡洋艦がいるだろうがやはり火力不足が否めない...

「あとで大本営に通告するか...」

「あら、これ以上増設すると軍港自体を拡張して海底も掘り下げなければならないわよ?」

「そんな事は大本営の仕事だ。」

「そう。ふふふ、意外ね。人間の心配をするなんて」

「違う。この基地の艦娘の轟沈は避けたいからだ。」

だって、本家大和型戦艦一番艦大和、艦娘として大量に建造される全ての源、それを安置する場所を守護する戦力だ。

それが駆逐艦だけというのは...本家さんに失礼じゃないか?まぁ、中央演算処理装置に資料を取り寄せたところ、あの基地...第17警備府は磯風、浜風、雪風、朝霜、初霜、霞だった。あれ?軽巡洋艦は?というか矢矧は?居ないんだが...えー....確かに今現在矢矧はこちらにいるし、願いの通り大和の護衛艦として軽巡洋艦以上の火力を発揮している。

しかし...あの活躍ぶりは鬼神に迫るものがある。魚雷というものを撤廃した戦術で、某霧の艦艇の様にミサイルをバンバン発射して主砲、副砲関係なくひたすらに撃ちまくる。しかし突撃するわけではない。

しっかりとした()の膨大な経験から組み立てられたリスクのない戦い方をしている。だから轟沈する事はない☆

 

目的の呉駅に停車すると自動でドアがスライドした。比較的多い人数乗客が降車し、私達もそれに混ざり降車し、改札に切符をダストシュートするとさっさと向かう。実は大和ミュージアムは呉駅と高架で繋がっているのだ。だからそこを通れば信号や交差点で止まる事なく移動できるという訳だ。良く考えたな。かつ、その道中ドリームタウンを通るようにできており、経済効果は計り知れないものがあるのかもしれない。

私達はそこを歩いている訳だが既に艦娘だと気付く者がチラホラと出ており、視線をまず響か私に向けて艦娘だと気付き金剛や天城、矢矧で確信するという流れだ。何故私を見て艦娘だと気付くのかは不明だが、多分...ネットに出回ってるんだろうなぁ......

響は絹のような銀髪とあり目立つ。他は茶髪や黒髪と一般的な日本人的特徴を抑えているが、響はその中一くらいの背格好に現実離れした可愛らしい美貌、粉雪のような白い肌、そして極め付けは生糸のようにくすみのないサラサラとした流麗な銀髪。

完全に目立つ理由は分かりきっている。個人的にはフード付きのコートでも着て欲しかったのだが本人がそれを望まないならば服装まであれこれと言うつもりはない。それに、可愛い。

しかし、例の如く私にも視線が集まっている。

「heyアメストリアー、モテモテネー!」

「全く嬉しくないな。警戒がしにくい。」

そう。視線が集まり、かつその視線には様々な感情がこもり、敵意のある視線が分かりにくいのだ。ヒットマンが忍んでるかもしれないし、ラングレーがいるかもしれない。

「良かったのですか?こんな所に来てしまって?」

「別に構わぬ。今回は非番だし、何時も貴官らには船体に篭ってもらっているしな」

「流石アメストリアネー!」

天城が心配そうに問いかけ、金剛が満面の笑みで私に抱きついてくる。色々と当たってるぞ金剛さん。私としても眼福なんだが、周りの野郎共が顔真っ赤にして狼狽えており、一部雄叫びを挙げる輩がいた。金剛love勢か。確かに金剛は可愛い。これは言うまでもない事実であり、皆も知る当然の事だろう。金剛という火力は確かに有力であり、序盤から中盤、改装で後半まで活躍できる汎用性の高い戦艦だ。

しかし、そんな事を言っているのではない。やはり人気の理由は、その明るく溌剌とした性格にその白くハリのある肌。僅かに西洋の顔立ちを残した美貌。十中八九美人だと言うだろう。そして、数いる艦娘の中でも断トツの提督LOVE勢。そのはっきりとした行為はリアルでは決してないキャラだった。しかし、そのキャラにも必ず理由がある。奮闘しそれでも尚酷い仕打ちを受け反抗的な性格になったり、普段は穏やかだがその中に化け物を飼っているもの。艦齢の若さ故に明るく、しかしその内情に深い傷を負う者。

様々な者がいる。金剛は二次大戦前、否、一次大戦後の英国建造にもかかわらず二次大戦前末期まで活躍し、老艦となってもなお戦い続け最期には老朽化した船体をゴミ共の鉄鯨の魚雷とが食い破り、長門を狙い外れた魚雷の命中した浦風や艦長や司令官以下1300名と共に沈没した。

戦艦金剛の活躍は輝かしいものがあり、マレー沖海戦では榛名と共にクリスマス島砲撃やヘンダーソン基地艦砲射撃では妹の比叡、霧島の最期を見送り、レイテ沖海戦では愛宕、摩耶、武蔵が沈没するのを見送りゴミ共の空母を一杯大炎上に持ち込んだ。大切な仲間を目の前で殺され、最期は長門に見送られ撃沈した。妹や後輩達を殺されあの明るさは正直尊敬に値するものであり私は内心敬意を払っている。アメストリアでは武勲艦の一人として広く知られているとの事。海軍や空軍で新たな『金剛』として活躍している。

今私に抱きついて来ている彼女もまたこの世界で戦い沈んだ軍人であり、その体は私達がより沈み難く、より強く。

ただそれだけを追求して悠久の時を経て熟成された設計に従って船体を改装した。主砲は51cm三連装砲へとランクアップしている時点で察してほしい。妖精さん特製の特殊装甲を船体全体に施した。今ではあの忌々しい兵器である核でもビクともしない戦艦へとなった。

正直スペックだけ見るとお前誰?って真面目に問いたくなるほどの大改装であり、建造時に組み込んだことから艦娘にも影響が出るのではないかと危惧したが、そんな事はなかった。天真爛漫のままだ。

「金剛、いい加減に離せ。あと二百と三十五で到着する。」

この先は敵からも見えやすい露天だ。一応黒い屋根は設置されているが、効果は疑わしく、防弾性もクソもないので警戒性は無い。

鋭い視線を周囲へと忙しなく向け、不審人物や屋上付近の敵影などを確認するが、今の所は確認出来ないがいつ来ても可笑しくは無いし、私達も反撃する用意を整えている。念の為に、船体にも支援要請をしておくべきか?今の所大気圏に E - 9 (早期警戒管制機)や一個編隊のF-222が待機している。

さて、例の監視していた三人だが、引いたようだ。チキンめ。

 

大和ミュージアム、正式名呉市海事歴史科学館は大和ひろばや零戦六二型や回天、酸素魚雷として有名な九三式魚雷。大和砲の名を冠する九一式徹甲弾や長門の41cm砲弾。現在では鎮守府の工廠へ行けばゴロゴロ転がっているが一般に開放されている砲弾としてはかなり貴重なものだろう。しかも技術革新で薬莢式となり弾格も多少変更された為今では生産されていない。そういう意味で希少性はあるだろう。

零戦などは更に無い。山奥の飛行場でもなければ前線は勿論本土でもジェット機が使用されている。

レシプロ機を使っているのは大日本帝國以外の軍位だろう。

「お姉ちゃん、こんな兵器で戦っていたの?」

「そうだ。これで戦っていた」

対深海棲艦戦初期では現代兵器が軒並み壊滅し、効果が無いことが判明し、妖精さんが現れ、協力者として艦娘が現れた。

その艦娘が持っていた兵器は二次大戦のもの。つまり今ここに安置されている兵器達だ。

大和や雲龍などの新造艦は登場が遅く、のちに参戦することとなり、それでも尚深海棲艦とは拮抗した。こちらが新しい艦を出せばあちらも新造艦を出す。埒があかない。

そして、私 達(アメストリア型戦艦)が登場した。

一階には数多くの入場客がおり、両サイドのパネルや呉の歴史を紹介するパネルを眺めながら、十分の一サイズのミニ大和を眺め、スゲーと意味の無い言葉を感慨もなく零している。

「随分と私達の所にいる大和とは違うわね。」

「一度、アメストリアが大破した時にトラックから連れて来ていたね。」

あれは懐かしいな。戦力を建造する暇が無いなら他からぶん取ればいいじゃ無い理論で突撃したら護送中に深海棲艦のアメストリア型戦艦に攻撃された。

そして二度目の大破をした。後悔はしていないが、痛かったのは事実だ。

十分の一大和をぼんやりと眺めながら考える。金剛は自らの船体に備えられていた一次改装次に取り外された缶を見に行き、天城は零戦六二型を見に行った。矢矧は私の隣でミニ大和を眺めている。響はリバンデヒと共に屋外展示の方へ行ってしまった。こんな時にテロでも起きたら物凄く面倒なんだがなぁ?

「偽物なのかしらね」

「全くの偽物、というわけでは無いだろう」

人形、人の形をしたモノ。人に似せることによって意味を齎す。呪術や神仙術などでも、古今東西使用された理由はそういう意味がある。

人の形を模すことで特定の意味を持たせて術を使う。式神や藁人形が有名だろう。

それと同じく、似せて作ったものには本物に対しての念などがこもりやすく、例えそれが戦艦であっても同様の効果をもたらす。

『戦艦大和』という戦後のビックネームに対しての信仰とでも言うのだろうか、そんなチカラや米帝共の怨念。そういうチカラが溜まっている可能性だってある。艦娘は霊格を持っているのだ。人間もそうだが、その器の大きさや耐久度が段違いに強くそれは国民にどれだけ知られているかによって左右される場合もある。前世で凄まじい戦果を挙げておりそれなりの知られている艦艇は性格に影響を受けている。

 

「私達も、同じ様なものだからな。」




キャラ描写が薄いと感じているこの頃。
もしかしたら次の作品の投稿早くなるかも


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閑話 はっぴーにゅーいやー!

読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。
これからもこんな駄作を宜しくお願い致します。やっぱりクオリティ落ちてきてます。ハイ。

ではではパンツァーフォー...じゃなくて両舷全速、第三戦速!


ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーー

本日は12月31日。師走の最終日、今年最後の日にちだ。

今、ナウル鎮守府には所属する全艦隊が揃っており、珍しく第一から第三隔壁までを完全に遮断し、誰も受け付けない体制へと移行し、全要塞砲が起動。装填済みで地平線を睨みつけている。半径500kmの高性能レーダーが全ての方位を探査し、敵が現れようものなら要塞砲や対空砲が撃滅する。

凸型の軍港には駆逐艦から戦艦の全艦ずらりと並び、大型の探照灯が艦橋を照らし出し影とのコントラストでまた別の顔を見せる。

駆逐艦は艦首が少し反った船体からその上に載る主砲やミサイルハッチなどが照らされ、モノクロの景色を映し出し、艦前方にある小さな艦橋や煙突、探照灯などの設備は特に入り組んでおり、凹凸が多いため複雑な影模様を描いていた。

矢矧や川内姉妹はあまりにも多すぎるくらいのミサイルハッチがドット絵のように甲板を彩り、偵察機として搭載されているF-222が珍しく地上へ姿を現し黒い機体を鈍く反射している。軽巡洋艦は全艦で統一した20.3cm三連装砲は決まったデザインだが船体は個々が微妙に異なりまた違った主砲のように見える。何故か那珂はクリスマスカラーようなカラフルな照明で自らの船体を彩っており、逆に川内は夜戦において視認されにくいようにステルス性のある黒い塗装で照明に照らされていても分かりにくい。唯一デフォルトのままなのは神通だけだ。外面上は。内面?しらんよ。

背負い式の35.6cm砲を反射する重巡洋艦達は姉妹毎に並び、一つの桟橋に二隻ずつ停泊。艦載機や弾薬などの鋼鉄製の箱が置かれており、所々に濃い灰色の塗装が剥がれた跡があって幾度となく激戦をくぐり抜けたという事が分かる。更に甲板や砲塔には煤が黒々と砲身を染め上げ、砲塔付近の甲板には鈍く反射している薬莢が転がっている。

金剛、榛名、比叡、霧島の四姉妹はキッチリと仲良く並んで停泊しており、控えめな照明に照らされていた。金剛は心なしか明度の高い探照灯に照らされ、榛名は優しいオレンジ色の探照灯に照らされている。比叡は金剛に負けずの明るい照明で、霧島は妙に51cm三連装砲を照らしている。なんでや。

長門、陸奥、大和や武蔵はその姿を変え、より巨大化し強力な戦艦へと生まれ変わった。しかし150cm三連装砲はその口径ゆえに反動が大きく、満足な連射が出来ない。そこで、妖精さんと相談していっその事口径縮めて砲身長くして威力増やそうという話になっているのだ。流石にさ?大和型の拡大では150cm三連装砲は辛いものがあるんだよ。

46cm三連装砲でも本来かなりの衝撃とバラスト圧があるのに、その四倍の口径を持つ主砲へと換装すると、無理があったのだ。一々船体が馬鹿みたいに傾き連射や命中精度を犠牲にする。ならいっその事口径を無理ない範囲に収めて、代わりに長砲身で威力を賄う事にしたのだ。開き直りとも言う。

赤城と加賀は既に航空母艦から離れている為か戦艦側に停泊しており、対抗心か瑞鶴が戦艦よりに停泊し、その隣に翔鶴が寄り添うように停泊。どちらも灰色の装甲空母へとその姿をグレードアップさせ、甲板上にはF-222が待機していた。

他にも雲龍、葛城、天城の三杯や蒼龍飛龍もF-222やGF-21、FB-99を甲板上に展開しておりいつでも発艦出来るように備えられている。そして飛行甲板の至る所にある照明が船体を照らし出し、幻想的な光景へと航空母艦を変えていた。

その少し離れた隣には船体として今まで一切動くことのなかった間宮が停泊しており、その姿はついでの改装だが船体全体を特殊装甲で覆い、対空砲に45mm対空機関連装砲を至る所に、10cm高角砲があきつ丸のように天にその砲身を掲げている。正直かっこいい。ただまぁ近くが1000m級の艦船達がズラリと並んでいる為か妙に小さく見えてしまう。

また、最近は専らアメストリア式の訓練に身を費やしていたタイフーン級の元原潜、ドミートリーは軍港の最も奥にその身を預け、照明も照らされていない。

実の所、大本営にドミートリーの存在を報告していない。リバンデヒやカイクルのドキッ☆拷問級の海軍再教育☆によって忠誠心はアメストリア海軍...ではなく何故か私へと向けられ、キラキラとした無垢なる瞳を向けられて大変困る。かつ最近魚雷を完全に撤廃して全てミサイルに武装をシフトして申し訳ない程度にF-2225機と20.3cm連装砲が格納式で装備されているからか服装も変化してスポーツ水着の上から提督の着るような礼装を羽織るようになった。結構様になっており、正直に褒めたら顔を真っ赤にして走り去っていった。若いな。

そして私達アメストリア型戦艦は四隻全艦がもう片方の埠頭へと身を繋げ、特に大型の探照灯でライトアップしている。300を超える区画に分かれる複雑な艦橋群に刀身のような鋭い艦首。そしてそこから伸びる緩やかな大和坂ならぬアメストリア坂に埋め込まれるは500cm四連装砲。一番から三番まで順に高く設置され、四番五番砲塔は後方艦尾側に搭載されている。大和型の超大型艦橋にその頂点に乗っかる測距儀の形をした自動射撃統制装置。

二本の途轍もなく太い煙突にその後方にある大和型のマスト。そして後部艦橋群。副砲は六基等間隔に設置され、主砲や46cm三連装砲と互いに射角が被らない位置に設置されている。

甲板下、船体から窪んだスペースにはスーパー北上さまの魚雷発射管の様に大量に設置された30cm連装電磁力砲に20.3cm連装砲。そして甲板を覆い尽くす4500基のミサイル。びっしりとしたハリネズミのような姿を見せる45mm対空機関連装砲は亀の甲羅のような砲塔装甲艦橋群付近を重点的に覆う。他にも緊急用に船体全体に配備されたM3-25 14.5mm重機関銃の連装機銃がハッチでその姿を隠している。そんな威風堂々たる威圧感を放っている戦艦は白黒だが影の濃淡で墨絵の様な美しさを感じさせるライトアップとなっていた。私の身体(本体)だがいつ見ても美しいとおもう。戦艦としての黄金比を完璧に完成させた完全な戦艦。誇張なしに大陸を吹き飛ばす莫大な火力に絶対干渉結界という全ての攻撃を拒絶する結界。ふつくしぃ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、ナウル鎮守府に所属する艦娘の船体が姉妹毎にまとまって停泊しており、探照灯の量も多くなり、様々なところを照らし出してとても美しい。やはり軍艦は良いものだ。

その操り手である艦娘はというと鎮守府の食堂に全員が集まっていた。

立食形式の今年最後の食事会には純和食の白米や味噌汁、漬物などありとあらゆる和食が並び、洋食はご飯類から麺類、ありとあらゆる英蘭仏伊独フィンランドなど各国の料理が色鮮やかに机を彩り、視覚を楽しませてくれる。

艦娘達は思い思いのグループで印象深かった戦闘や過去の思い出話に花を咲かせ、屈託の笑みを浮かべていた。また、赤城はそんなことは知らんっ!と言わんばかりの食欲を見せつけ、樽単位のご飯などが消し飛んで行く。

最近情報収集任務から帰還した天龍は相変わらず駆逐艦に振り回されており、それを龍田が微笑ましく見守っている。

矢矧は大和と二人で少し離れた机にて談笑しており、楽しそうな雰囲気であるために大丈夫だとおもう。武蔵は長門と話し合っており、会話にちょくちょく三式弾やら九一式徹甲弾、一式徹甲弾という物騒極まりないキーワードが混ざりこんでおり、貴様ら何する気だと問いただしたくなるが、いちいち聞いていては私が倒れるのでやめておく。私の妹であるリバンデヒはドミートリーと共にロシア料理があるエリアに立ち、ドミートリーが一つ一つ解説していた。確かにリバンデヒ達は知らないだろう。良い経験だ。

カイクルは......うん。日本酒飲んでる。大丈夫か?酔っても知らんぞ?

ノイトハイルは......暁に抱きつかれている。何が起きた?結構気になるな私。

へ?私か?私は別に何もしておらんよ。ただ右手に杯があり、透き通った透明な液体が波打っており、照明を受けてキラキラと輝いているくらいだ。心なしか頰も赤くなっている気がする。

現在時刻は午後11:30。九時からゆっくりと忘年会はスタートして、和気藹々としたムードが漂い、私はそれをただ眺めていた。

「大丈夫かい?ちょっと顔が赤くなってるけど」

「......む?提督か。私は大丈夫だぞ、とても幸せだ」

「そう...なら良いんだけどね......ねぇ、アメストリア?」

「...何だ?」

提督が話しかけてきた。

そこ、リバンデヒニヤニヤするな。

「君は僕の事、す「Hey!アメストリアー!元気にpartyシテマスカー?」...はぁ...」

「そちらは随分と満喫している様だな金剛?」

「of course!勿論ネー!何時もbattleばかりしてるから今日位はbreakスルネー!」

「ふふふ、楽しんでくれ金剛。」

顔に赤みの差した金剛が飛び込んできた。

無論抱き止め、立たせてやると上機嫌で歩き去って行く。呑んでるなぁ...

榛名や比叡は既に顔を真っ赤にして倒れており、天城や愛宕の介抱を受けていた。高雄や鳥海、摩耶が飲み比べで勝負しており、賞品は間宮アイス特大サイズ。なんか色々とカオスだが、悪い気はしない。自然と、笑みが零れる。こういう生活も、悪くはない。

私達艦娘は戦闘兵器だ。しかし人の形をとり人と同じ感情や自我を持つ。それどころか精神に常人では到底耐えられないほどの深い傷を負っている者もいる。しかしそれでも前を向き闘い続けている。眩しいなぁ.....

思わず目を細め、騒ぎまくっている艦娘たちを眺める。

ん?リバンデヒどこいった?ドミートリーは完全に食事モードに移行してるし、リバンデヒが誰かと会話している訳でもなく、食事をしている訳でもない。何処いっt......「ひゃんっ!?」

電撃が身体を駆け抜け、一気に筋肉へ力が入らなくなる。

ガクリと体が崩れ去り、地面へと倒れ伏す.........前に誰かに抱きとめられ、転ぶのは回避された。尻餅をつく前の体勢だが、問題は誰がやったかだ。

幸いか分からないが、誰かが気づいた様子はない。提督は...金剛に突撃されている。

後ろに首だけを回し、犯人を睨みつける。大体目測はついているが...

「......リバンデヒ。覚悟は良いな?」

「あら、犯人は私だけでないのよ?」

「............なに?」

うっそぉーん...リバンデヒ以外も色情魔なんか居たか?

多分私は今キョトンとした表情になっているだろう。かつ同時に見計らったかの様に胸が揉まれ、抵抗するためにスタンバイしていた体制が崩れる。ちょっ、これ完全に犯罪な、光景だって...

袖括りの紐が思い切り引っ張られ袖が締め付けられると引っ張って余った袖くくりの紐同士を結び合わせる簡易の拘束が完成。確実に手慣れているな...しかし袖括りの紐はあまり頑丈ではないんだが...そこの所分かっているのだろうか?

腰には五式自動拳銃二丁。そこには手は届かないだろうが、腰の後ろ、背骨と骨盤の付近には別の弾頭が収められた予備マガジンが収められたミニポーチが複数あるのだ。

素早くマガジンが飛び出ない様に押さえつけている覆いを取り去り、マガジンを握り締め、腕を振り上げる。そして死なない程度、精々気絶する程度の威力で腕を振り下ろし、犯人の頭へ...「お姉ちゃん、その手が通用するのは初見だけよ?」

抑え込まれ、そのまま床へ叩きつけられる。くそっ...目立たない様に陰にいたのが仇となったか...っ!

「リバンデヒ、共犯は?」

「んー?僕を忘れていないかなー?」

 

 

......

 

 

............

 

 

...................

 

 

 

 

な ん と い う こ と だ !

 

 

 

 

よりにもよって規格外のクレイジーサイコレズの二人が集合してしまった!

終わりだ...終わりだ私。いや、割と本気で終了だよな。

()から聞いていたが、アメストリア海軍でも他の戦艦にちょっかいかけて何人も落としているらしいし誰一人不幸にしていないという憎たらしさ。

犠牲になった艦艇は少なくなく、ノイトハイルも食い物にしているのだ。

ノイトハイルもノイトハイルで色々とアウトだしSだし今まで私が色々とナニされていたかを思い出すと体が無意識に震え抵抗が100%不可能になる。十分私も落とされているようだな...くそう...。

身を捩ろうにもがっつり拘束されており関節が決められているために動くことさえも許されず、手首は痛みを感じるクラスで捻られ堪らずマガジンを落とす。

「むっふふーっ!お姉さん、今日はナニしたいー?」

「......黙れ。何も喋るな」

「おー、怖いね〜」

怖がっていない癖に何を言う。口調からも分かる通り、ノイトハイルは何処までが本気なのかわからないところがある。しかし唯一声色や態度からはっきり分かるのが私をイジメる時だ。

私の初々しい反応が面白いのかいかにも愉快です!という態度に変わる。

私としては全力で拒否したいのだが、()が愉悦そうな感じで身体の制御権を私からぶん取って私を無抵抗状態に仕立て上げるため私には味方がいない。途轍もなく悲しいですハイ。

一発の祝砲が外から響く。音からして150cm三連装砲。大和らだろうか。

 

つまりあと10分で新年ということになる。

そういう風に指示しておいたからだ。リバンデヒやノイトハイルはその祝砲に舌打ちをすると素早く散開。何事もなかったかの様に食事に混ざっている。

私はというと拘束に利用された袖括りの紐を苦戦しながらも解き、袖に違和感がなくなるまでピンと伸ばすと床に落ちたマガジンを拾い上げマガジンポーチに納めると、二度、三度ゆっくりと深呼吸すると食事の置かれた机へと何事もなかったかの様に向かう。くそう...屈辱だ。あとで絶対にシバイテヤル。

まぁ、それは後でじっくりヤるとして、新年まであと十分。

今思えば、提督の所属となってから1年と経っていないではないか。数ヶ月の間に濃密な出来事がありすぎて、何年も戦っていた気がする。いや、それは()の経験が感覚として混ざっているだけであって『私』が積んだ経験はその一部、1%にも満たないような悠久の時間の刹那に過ぎないが、私がはっきりと記憶している記録だ。

懐かしいが、一々思い出さないぞ?今までだって思い出してるしほぼ黒歴史だし。

 

そうやってぼんやりと杯片手に外を眺めていると、また祝砲が鳴り響く。

あと五分。

今年に別れを告げ、来年という暦に切り替わる瞬間。年神様が交代する時。

happynewyear!というべきなのだろうか?賀正新年だろうか?分かんない。まあ正直どうでもいい。

「姉さん、ここに居たのか」

「......あぁ。」

前回の失態から若干警戒しながら振り向く。

そこには顔を若干赤らめ御神酒を片手に僅かに笑みを浮かべたカイクルが立っていた。

おいなに御神酒飲んでんだ此奴。それは神に捧げる酒であって貴様に供えられた酒じゃあ無いんだぞ?確かにカイクルは霊格が強すぎるし付喪神と化しているだろう。アメストリアでも4900年間...正確には4950年主力艦として勤め上げ陸海空軍全軍の兵士から絶大な人気を誇っており、その向けられる敬意はやがて神聖視するものへと変化するのが常道だろう。だからアメストリア型戦艦の艦娘は神格持ちかもしれんぞ?多分戦神な。

私か?そんな大したものは持ち合わせてない。私は船体の制御権だけで十分だ。

「呑むか?」

「......それは御神酒だろう?」

「いいじゃないか。別にバチが当たるものじゃない。寧ろ問題はあるまい」

「まぁ、そうだが...余り良いものではないだろう...」

「ふむ、姉さんは嫌か...リバンデヒやノイトハイルは寧ろ進んで呑んでいるぞ?感じが違うそうだ。」

感じが違うねぇ......多分そのあとの酔いが違うのだろう。以前長門とともに飲み交わしたりしたが、アレは良かったと記憶している。

また今度誘おうか。

「そろそろ年明けです!皆さん杯を持ってください!」

大和が声をかけると、全員が談笑や食事を止めて朱色に塗られた杯を持ち、間宮さんや武蔵が注いで行く。間宮さんのその流れるような動きには慣れを感じるが、決して巫山戯たような雰囲気はせず、儀式という言葉が合うような厳かなものだった。

武蔵は対称に呑みたくてしょうがないという雰囲気がありありと伝わってくる。事実注がれている艦娘は気付いているらしく苦笑いを返しているようだ。武蔵ェ......

「.............ん?」

「2828」

「......」

カイクルに一本取られた。

杯に知らぬ間に御神酒がなみなみと注がれその衝撃か波打ち私の顔を歪んで映し出していた。

いつ間に注がれていたのだろうか...それなりに警戒はしており、足音でも立てようなら五式自動拳銃をすぐに抜き取り引き金を引くことが出来るくらいには。

しかしそれをカイクルは易々とスルーして杯に御神酒を注ぎ、離れた。これがどれだけ異常な事かは分かると思う。彗星でイージス艦に挑み500kg爆弾投下して戻ってくる程無謀なことだ。カイクルさん。無駄に高い隠密技能を無駄なところで発揮するなよ...

しかし注がれた御神酒を捨てる事こそ失礼に値する。不本意だが、飲むことにする。

 

年明けまではあと二分。

短いようで長い二分間。例えば二分間で何ができるだろうか?

自動射撃統制装置を起動して主砲を回して発砲。または電探が敵をキャッチして迎撃の為に45mm対空機関連装砲やSM-3、SM-2を撃ちまくれる。

大和達ならば小型だが自動射撃統制装置を搭載している為全火器が様々なことをすることが出来るだろう。私の様に艤装が大きくないから。

 

年明けまであと一分。

ミサイルとかは電探から送られる座標データを入力することを「座標を固定する」という。

最近はそれを言う前にミサイルが飛んで行くがな。

すぐに脳裏には膨大な量の図面が浮かび上がる。アメストリア型戦艦の全体図(三面図)から拡大されて行き別のファイル。本が風にさらわれてページがめくれる様に大量のファイルのなかに纏められた図面がめくられて行き、あるページでピタリと止まる。

そのページの図面が表示される。それはミサイルハッチに関する図面やミサイルの図面。

ミサイルハッチは1m×1mの大型のハッチで様々なミサイルを発射することが出来る。トマホークやグラニートからSM-3やSM-2などの太い近接迎撃ミサイルまで。しかし大陸間弾道弾はそれではいかない。あれは本来FB-99に詰める超巨大投下型爆弾(・・・・・)を噴進弾にしたミサイルを発射する為に必要なBGM-9用のハッチも15基用意している。

現在は白い家への威嚇とかにしか使ってないけどな。だってアレ簡単に言うと放射線を放出しない核ミサイルみたいなもんだぞ?爆発力は核ミサイル以上。爆心は存在を消し飛ばすくらいで、そのままMOABのように広範囲の『全て』が消し飛ばされる。

本当の威力は破滅をもたらす悪魔の兵器だ。米は解体して解析しているようだが、あれ爆薬が粒子だから開けた瞬間BON!だ。

実際に半径15kmが吹き飛んだ情報がネットに上がった事がある。あっちは必死になって否定していたがな。

「あと30秒!」

誰かがそう言った。

「20秒」

カイクルが呟いた。他にも駆逐艦がウズウズとしてた様子で言い放つ。

「10秒ですわ!」

熊野が興奮した様子で言った。顔が赤い。酔ってるな...やや顔を赤くした最上がなだめている。キマシタワー。..........ん?三隈は?

 

「5...4...3...2...1...っ!」

「「「ハッピーニューイヤー!」」」「「あけましておめでとうございます!」」

新年を迎え、皆が一斉に杯に注がれた酒を飲み干し、歓声をあげる。

やはりイベントは大事なのだろう。そう感じた。艦娘が楽しそうにしているだけで私は嬉しい。ハッピーニューイヤーと言ったのが六割。あけましておめでとうございますが四割だった

別に良い方は自由だがハッピーニューイヤーの方が言いやすいからな。うん。

「姉さん、新年あけましておめでとうございます。旧年は格別な采配を賜り誠に有難く厚く御礼申し上げます。本年もより一層の御采配をお願い致します」

なんか途轍もなく堅苦しい挨拶が帰ってきて絶賛膠着中の私だ。カイクル.......

「カイクル、そんな硬くなくて良いのよ。お姉ちゃん、新年あけましておめでとう!」

リバンデヒはいつも通りだったな。なんか安心した。

堅苦しくない、適当感溢れる感じだ。ノイトハイルのようなフワフワとした突つかみのない全く安心出来ない感じとは違う。

「あぁ、今年もよろsムグゥ!?」

いやいやいやいや、私にダイビングッ!されても困るから!

というか胸を押し付けるな息ができない!リバンデヒはどうやらしっかりと私の首に腕を絡めているようで抵抗しても全く外れる様子はない。

「ふふふふふふ〜〜〜っ!やっぱりお姉ちゃんは良いわぁ...イタッ!」

カイクルがやれやれといった様子でリバンデヒ(愚妹)の頭に手刀を食らわせる。

リバンデヒはそれを回避する事ができずにまともに食らった。結構クリーンヒットしたようで、割と真面目に着弾点を摩りながら蹲っていた。ざまあない。

「姉さんは私の物だ。スキンシップは程々にしておけ。これくらいで良いのだ。」

「感謝する...ひゃあんっ!?」

訂正。此奴もカイクル(愚妹)だった。リバンデヒの巫女服の襟を片手に掴み、ズルズルと引きずって行く途中、さりげない様子で撫で回してきた。慌てて振り返ると撃沈するリバンデヒを片手にしてやったりという憎たらしい笑みを浮かべて高笑いしながら立ち去って行く。恐らく、リバンデヒを連行してゆくのだと思われる。

私は顔を真っ赤にして足を竦ませていた。あんにゃろ...。

「......アメストリアさん、大丈夫ですか?リバンデヒさんに抱きつかれていましたけれど...」

大和が心配した様子で近付いてきた。一瞬ビクリと警戒してしまうがすぐに解き、ピシリと背筋を正す。大和は流石に悪意の塊であるリバンデヒやカイクルでも無ければ真っ黒なノイトハイルのようではないので比較的安心できる。あれ...これ天使か???......いや元から天使か(錯乱)

「うむ...大丈夫だ...」

精神は大丈ばないががな...

毎回私、こんな立ち位置になっている気がするのは気のせいではないだろう...うん。

なんかもう...良いや。

 




閑話に費やして本編がまだ1500文字ということは秘密。泣けてくるぜ...
あ、次くらいでやっと本格的に海上戦闘です。やった...っ!!!

あ、本編にこの話は一切関係ないので、ミニ大和云々はこの話限定の設定です。


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64.観光です!って行く先(ry ぱーと つー

おくれますた。
先週にスキー合宿に行ってきました。正直キツかったっす。誰でしょう一番レベルの高いクラスに入れたのは。

前回海戦があると言ったな。アレは嘘だ。すまぬ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーー

妹や艦娘達が呉海事歴史科学館で自らの記録を眺め、時間を潰している頃、私ことアメストリアはミュージアムの外に居た。

なぜかと言うと、あの出向当日に出生の跡を見に行ったもがみん姉妹と此処で待ち合わせしているからだ。

その為顔を出し周囲を捜している為大変目立つ。()は十人中百人が振り返りネットで何千万人が反応するクラスの美貌を持っている。かつ実は私の設計には大和型が取り入れられたためか背格好は大和...いや、武蔵に共通性があり戦艦らしく背が高く胸も90近くある。まさにモデル体型ここにあり、と言う感じで顔立ちは凛として大人びた西洋風の無表情。

服装は何時もの巫女服ではなく軽く動きやすい冬グラ。何やらエラくゴツゴツしたMOLLEを採用した軍用のバックパックを片方掛けした姿は見えとても美しく、自画自賛になるがとても綺麗だと思う。だから無闇に視線を集めても警戒できないので止めて欲しい。

「......」

軽く有名人がばれたときのようになっており周りを囲まれている。カメラを向ける者もおり、正直情報漏洩が著しく、万が一弱みでも握られたのならばカイクルかノイトハイルにナニされるかわからないし妹達に情報隠滅などの無駄な労力を割いて欲しくない。今はミッドウェー攻略に力を入れてもらいたいし。

腕を組むフリをしホルスターの六式自動拳銃のグリップを握り、アモを抜き取る。

ちらりと確認し、青い弾頭が装填されていることを確認すると、再び装填する。セーフティーロック?そんな物はベガル社製の兵器には存在しない。DE(デザートイーグル)もびっくりである。しかし暴発することはない。トリガーが重く人間だと長時間引き続けるのは厳しいからだ。使用者?彼女らは妖怪だから大丈夫じゃね?

 

それは兎も角、妖精さんネットワーク経由の連絡だと、そろそろ到着してもいいと思うんだが...........あ、居た。

がっつり腕を組んで、まるで恋人のようにくっついてキョロキョロと私を探している。キマシタワー。

「最上!三隈!こちらだ!」

私が声を上げると、ビクッと肩を揺らしてから此方へと首を向けると笑顔になり、手を振ってくる。かわええの。しかしもがみんさんや、視線が一気にそちらへ移ってロックオンされたことに気づいてくれや。しかし気付かないのがもがみんクオリティ。

あーもー...何故私ばかり苦労が回ってくるのか...真面目に問い正したい。誰だよ運の値に二万入れた奴。今なら嘘つけ!って全力で文句言える。

溜息をつくと素早くもがみん姉妹に近付く。

「久し振りだな。最上、三隈。ドックはどうだった」

「うん。お陰で行くことができたよ。ありがとう」

「私の勝手を叶えてくれて本当に感謝しておりますわ。ありがとうございます。」

「いや、連れてきたのは私だからな。多少の無理は叶えるさ。それよりも残りの者はすべて館内にいる。行くぞ」

「うん。」「えぇ、わかりましたわ」

無事合流することが出来た。最上はボーイッシュな服装とは違い綿素材の柔らかなスカートに厚手のカーディガン。三隈は寒がりなのかモコモコの重装備になっているがまた似合っている。かわいい。

さっさとチケットを購入して二人に配布すると館内へ入る。早速最上だと気付く者がおり、指をこちらに差してヒソヒソと話し始めるが、残念ながら私の(ソナー)はそれを逃さずに、より鮮明な言葉を運んでくる。

どうやら最上型だというところまでしか分かっていないようで、最上か?三隈か?と二人で話し合っているようだ。何処をどう比べたら最上と三隈を間違えるのか不明だが、海軍の情報自体すべてオープンというわけでも無いし、にわかはそんなもんだろう。

「お姉ちゃん!こっちよー!」

リバンデヒがこっちだと言わんばかりにわざとらしく手を振って激しく位置を主張する。

何故に皆さん揃って注目を集める事に警戒がないんでしょうかねぇ?リバンデヒは確信犯だろうが。だって絶対そうじゃん。リバンデヒは文句なしの美人だ。これは艦娘全般に言えることだが、リバンデヒはそれに群を抜いていると思う。

APP18位のそれこそ二次元の住人か何かかと思ってしまう程の美貌を持ち、その上でそれを把握している。しかし変に鼻に掛けることもなく自慢するわけでもない。多分理由の一つ(99%)()の存在があるからだ。海軍の中でも最古参の戦艦にして最強の戦艦。そして頼り甲斐のある姉であるということ。最期は姉を守って沈んだこと。色々と原因はあるがリバンデヒはアメストリアが大好きなのだ。

勘付かれている可能性は大いにあるが、リバンデヒはレズビアンであってヤンデレでは無い。「紛い物だっ!」とバッサリ殺られていないことから私も含めた()を見逃してくれている可能性が無きにしも非ず。.........あのスキンシップはなんとかしてほしいものだが。

毎回襲われてるし動けなくなるしで大変なのだ。私が原因の負傷は甘んじて受けるつもりだが、リバンデヒやノイトハイルの性的な攻撃に対しては容赦するつもりは無い。まぁ反撃できてないのが現状だがな...笑えよ。

 

 

 

 

二つの針が頂点を向いて重なる時刻。正午から少し過ぎてから、やっと今回の日本出向組が全員しゅーごーした。

実に一週間と少しぶりだ。呉海事歴史科学館の四階リフレッシュルームにて二つほどテーブルを占領して全員が席についている。しかし皆綺麗所の為か注目を集めており、記者を招いた会談のようになっている。しかし私達はそんな有象無象に一切の関心を寄せずに今後の訪問地を話し合っていた。この旅行が企画された当時の目的地候補にはこの大和ミュージアムの他に厳島神社があり、今脳内で計算した日程でも余裕がある。

つまり行ってもおっけーな訳だが、金剛や矢矧の関心は最上や三隈のお土産話に向いており、響は先程リバンデヒと行ってきたショップにて購入したのか「大和マイクロシップ」をプラスチック製のケースから外して眺めていた。妙にキラキラとしているし本人は幸せそうで何よりだ。値段は兎も角。確かマイクロシップは19600円なり。真鍮などの金属で製造された文句無しのクオリティだが、高い。約2万だぞ?それなりの値段じゃん?リバンデヒなら関係無いだろうが。現になんか袋持ってるし。多分お土産だと思われるが、箱型の形状が浮かび上がっていることから同じような完成形模型だと思われる。そしてリバンデヒの無限生成から考えてマイクロシップを幾つか買った可能性が大。経済的に良いのだがある意味の偽札だからなぁ私達の使用する紙幣って。まあいいや。別にそんな事。

「リバンデヒ、その模型は誰に?」

「あら欲しかったのかしら。別にただ本人達にあげるためよ」

つまり大和か。しかし''達''と言っているため武蔵も含まれるのだろう。今回は参加しなかった大和ミュージアムの展示対象のモノホンさん。巨大戦艦 大和だ。なんだかんだ言って面倒見が良いリバンデヒだが、それを餌に食いものにしないかとても不安である。

ん?天城は何してるんだ?と思う人はいるだろう。天城は響と一緒に眺めてるぞ。別にそれ以外は何もしていない。「ナウルにいる大和さん方と随分と違いますね..対空砲とか主砲とか...あれ?全部でしょうか?」って言っているが正論ですよ天城さん。

主砲とか150cm三連装砲だし対空砲は45mm対空機関連装砲名一杯積んでるしミサイルびっしりだし。

装備やスペックを見れば、もう大和では無くなっている。あの例の鎮守府からぶんどってきたときは本当に酷かった。私との演習の傷痕は『罰』として意図的に修理が遅らされていたためにそのまま傷を残し、甲板はスス焦げた木材に覆われ、マストは歪み対空砲はロクな整備もされていなかった。さながら終戦時の榛名のような有様になっていた。護送時に無理に引っ張った為船体は更に痛みパラオ鎮守府到着直後に二次改装に当たる応急的な改装をする事になって大変だったんだぞ。

だから今の大和達は改三なのだ。船体は作り直しに近い程改造され、艦橋を始めとしたそれに準ずる艦橋群は原型をそっくりそのまま原型を留めているが甲板や側面バルジ、果ては機関まで原型を留めていない。

しかし艦娘の自意識は''戦艦大和''であり、それが変わらない限りどんな装備になろうともそれは''大和''である。

だから別に構わないのだ天城さんや。多分......30km先からなら大和に見えるだろう。妙に大きいが。

 

話し合いはリバンデヒが仕切った。理由?私が面倒くさくなったからだよ言わせんな恥ずかしい。

サクサクと進み、これからの行き先は厳島神社で、そのあとは海軍特権で私の内火艇である隼を船の発着場に呼び寄せのんびりと帰る算段らしい。なんか知らぬ間に私の内火艇が使用される事が前提になっているんですがそれは......ちらりとリバンデヒを流し見るもギロリとアメストリア型戦艦としての威圧感(殺気)を向けられ撃沈。私に拒否権はないんですねそうなんですね分かります。

 

..........はぁ、別にさ?隼を使用する事自体に問題はないんだよ''使用する事''自体には。しかし海の上は空の上と同様にダイヤが組まれ、複雑に航路が絡み合って形成された網目が存在するのだ。タンカーであったりコンテナ船であったり漁船であったり哨戒艇出会ったり呉鎮守府所属の艦隊であったり。そんなところに今までの艦艇から一線を期すインディペンデンスのようなのっぺりとした軍艦が許可もなく軍事行動でもないのに航行したらそれはもう迷惑だ。苦情が来るの誰だと思ってるんだ。大本営の受付とその報告に大将。そしてウチの鎮守府にまで来るのだ。

要するに、私の仕事を増やすなこの野郎...という事だ。随分と利己的で自分勝手な事情だと自認しているがこれ以上書類や仕事が増えると真面目に私が倒れるのでやめて欲しい。

 

 

 

......でもまぁ、愛すべき艦娘の要望だ。叶えないわけがない。意識して船体の機関に火を入れると隼の出撃準備にかかる。腐るほどに備蓄された[弾薬]の箱を隼へと運び込み補給させると隼自体の機関を回し始める。こっちはアメストリア型戦艦のウンターガングエンジン(夢の悠久機関)とは違い粒子エンジン(小型化された永久機関)の船舶用エンジンを使用している。

まあウンターガングは破損したら最後。BOOON!地球終了のお知らせという事になるがな。

 

船体の格納庫(特大)のハッチのロックが解除され歯弧式の巨大な仰俯角装置のようなギアがハッチを下げ海面にレールが降ろされる。隼が大型のクレーンでゆっくりとレールにセットされ滑り落ちると、派手に波を立てながら隼が海面へ着水する。二本の軸が回転を始め水流を生み出すと船体が前進を始め、艦首が波を切り裂き厳島神社へと向かい始める。

武装は既に展開しており戦闘態勢へと移っている。主砲の41cm速射連装砲は凹凸の少ない単装砲のような意匠の砲塔を前方へと向け、その長門クラスの太く長い二本の砲身は地平線を睨みつける。甲板には霧○艦隊もビックリの量のミサイルハッチが敷き詰められており、艦橋の第一艦橋がぼんやりと照明で照らされていた。

しかしその速度はとても遅く5ノットも出ていないだろう。だってこれからの向かうんだし早く到着して注目を集めるのは賢い判断ではない。

 

「じゃあ行くわよ〜」

リバンデヒの先導で大和ミュージアムを後にすると同時に正面玄関前の道路に明らかな軍事車両が停車する。

外見的にはハンヴィー似。つまり一式重武装車輌だ。車輛数は4輌。全員分にしては多過ぎるくらいだが内2輌は護衛用。しかも艦娘パワー(三次元レーダー)で探知した限りだと上空のF-222が15機に増量され、FB-99も6機動員されておりGF-21が3機フル武装で待機している。

.............幾ら何でもこの体勢は異常だ。万能戦闘機が五個編隊に爆撃機が二個編隊、対地攻撃特化型戦闘機が一個編隊。

これだけでも半島くらいなら軽く5回以上吹き飛ばせる火力だ。護衛のレベルを超えている。何かあったのだろうか?だったら私かリバンデヒに何か一報があるはずだ。しかし何も無かった。つまり考えられる事は二つ。

 

一、妖精さんが念入りにと増援を寄越した可能性。

 

一、連絡をする暇も無く、何か問題が起きたか。

 

如何にも嫌な予感がする。こういう時の勘は良く当たる...のが大体なのだろうが私の場合確率が低い。むしろそれを利用されて逆に襲撃される事態があったりしたので何かとこの予感を警戒している。というか本当に正しいのか悩む。

一応、リバンデヒに視線を送る。リバンデヒは丁度先頭の一式重武装車輌に乗り込むところだったようで私の視線にピクリと肩を揺らすと頷く。彼女も同じ事を考えていたようだ。運転は妖精さんがしているが、銃架に載せられたM634の射手は無人だ。だから艦娘が務めなければならない。まぁ一式重武装車輌の装甲を持ってすれば大体は大丈夫だ。上の射手用ハッチを閉じる。

M634は銃架に取り付けられたまま、弾薬は金属製のアモボックスが装着され弾帯がM634へと続く。外から見れば完全に実銃だとわかり、思い切り威圧感を出している。

「出してくれ」

車列はエンジン音を響かせることも無く進み始め、乱れぬ動きで車道を走る。

その物々しい姿に一般車は自然と避けて行く。港までは大して時間はかからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んーーー、やっぱ敵対勢力の攻撃がある可能性が否定できない為、銃座に上がりM634のアモボックスから19.8mm弾の弾帯を引っ張り出し給弾口に突っ込むとコッキングレバーを引き初弾を装填するそして軽くターレットリングを利用して旋回させてみる。よし。駆動系は問題なし、と。

本当なら試射もしておきたいのだが、M634は銃の定義ギリギリの19.8mm弾を使用している為一発の威力がコルセア位なら粉砕するのでそう簡単にパンパカと撃つことができないのだ。私としてはヒャッハーッ!最高だぜーっ!って殺りたいのだが、面倒くさくなるからやめておく。あぁ、撃ちたいなぁ........。

 

 

 

さてさて、此処はフェリーの着艦場。

あの後は無事何事も無く行くことができたので私がM634を撃つ機会は誠に不本意ながら無かった。本当に不本意ながら。

しかし港に無事着くことは出来たので目的は果たせたと言えよう。

全員が降車すると当たり前のように注目が集まりちょっとした騒ぎになっているが一切を無視してバックパックを背負い券売機へと向かうと

さっさと8枚購入し艦娘達に分配する。定期便の為時刻は決まっているが、幸いあと三十分ほどで到着するようだ。

周囲を見回すと、一式重武装車輌の車列は既に走り去り、船体へと帰還を始めていた。

屋根に覆われたアーケードのような構造の発着場からはさざ波の音が聞こえ磯の香りがほのかに漂う。いつもの、嗅ぎ慣れた匂いとは少し違うが、不快にはならない。精々硝煙の香りが無いだけだし。

私と同じくフェリーに乗船すると思われる人数は十数人。これからも増え続けるだろうが、警戒はあまりしていない。皆一様に覇気が無くナヨナヨしたモヤシ共だ。警戒すべきはヒットマンやスナイパーだ。いつ撃たれるか分からんし。

港は、コンクリート製の桟橋に、遠方には湾岸砲が聳え、その長砲身の砲身を水平に保っている。砲塔は長門型に準じた51cm連装砲だ。

その下には対空砲がビッシリと設置され周囲にはミサイルサイロが張り巡らされ滑走路も確認できる。多分、技術提供で製造された噴式蒼莱とかのジェット戦闘機が配備されているのだろう。軍事力としては脅威に他ならないが天城だけでも殲滅できる。

 

 

 

「さて、乗るぞ」

と言いつつリバンデヒに目線を送ると、理解してくれたようでニヤリと物騒な笑みを浮かべるとバックパックを背負い直していた。オイ。

汽笛を鳴らしながらフェリーが接近してくる為、一応周囲に警戒をしておくが、軍事兵器は上空のF-222とかFB-99とかGF-21ぐらいしか気にならない。

フェリーがゆっくりと港に接舷すると、乗船する為のタラップが船と繋がれ、係員の案内で乗客が乗り始める。

私達も案内に従って乗船して行くが、毎回係員とか乗客が顔を赤くするのはいい加減飽きてきた。一応、 美人であることは自覚してるし、自他共に賞賛すべき美貌を持っていることは分かっている。()は頑なに否定しているが。

「お姉ちゃん、隼は?」

「......あと750mで光学迷彩を起動させて待機している。」

「uuuum...私もlaunchがwantデース......」

「それは...無理だろう。」

だって隼、200mあるし。金剛だったら流石に厳しいだろう.......。

フェリーが出航したようだ。グンと進み始め海面を武装も装甲も無いヤル気あるのか気になる民間船舶が海上を滑り始める。

乗客は大体50人前後と少ないが、見たところ敵対勢力は居ないようだ。視線は集めているし下心は確認できたが。別に大した問題でも無いから無視してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......っ!?」

急に、船体......アメストリア型戦艦一番艦アメストリアが機関を回し始め、全武装がオンラインに移行していた。

何故......?私の制御権を離れ、勝手に起動し始めている。500cm四連装砲、150cm四連装砲、46cm三連装砲、30cm連装電磁力砲、20cm連装砲、45mm対空機関連装砲、ミサイル。その全てに主機関のエネルギーが伝達され、起動して行く。

恐ろしいほどの重低音を響かせ、抜錨すると船体は前進を始める。しかしその速度は周囲の艦に配慮されているのか5ノット以内で航行していた。私の意志なしに動き出した理由は一つしか無い。

妖精さんだ。

何か問題があったに違い無い。何があったのかはさて置き、緊急事態には変わり無い。

私の並々ならぬ不安そうな顔に気付いていたのか全員が集合しており、リバンデヒは既にバックパックを床に降ろしていた。

「......緊急事態だ。私の船体が独断で起動。全武装が起動している。」

「それは...つまり妖精さんが動かしているということかしら?」

「そういう事に、なるね」

「三隈、一応僕たちも機関を回しておいて」

「分かりましたわ」

流石は対深海棲艦戦最前線の鎮守府所属艦娘とあってかすぐに自らの船体を起動させ始めているようだ。

私の船体が直々に動き出す程の緊急事態。どれ程の脅威かは身を以て知っている子たちだ。すぐに動き出している。全員分の正装を作り出すと渡して、着替えるように指示する。艦娘達は合点承知とすぐにトイレへと駆け出し、私達もコートを脱ぎ捨ててバックパックから解体しておいたM145を取り出すと素早くタッピングビスを差し込んで行き、組み上げる。この間実に十五秒。

同時に隼にも火を入れ、光学迷彩を解除。武装を起動させてこちらに向かわせる。

私達の服装は、すぐに変化する。アメストリア型戦艦限定で、服装が一瞬で変化させれるからだ。多分万能生産装置が船体に設置されている副作用なものだと思う。いつもの巫女服へと変化させ、リボンを結ぶとM145を構える。リバンデヒも巫女服へと変化させるとM145を持って寄港させている学校の方を向いている。恐らく船体をこっちへ向かわせているのだろう。

 

一分後、全員がいつもの正装姿で駆けてきたので、新たに作り出したM69を渡し警戒してもらう。

今回は私の船体が勝手に動き出している為他の艦隊と動きを合わせることが出来ない。波があるし。

だから個別で転移することをせずに隼で船体へと向かい、出撃する事にしたのだ。これを一瞬で理解できる艦娘達はやはりすごいな。

金剛、天城、最上、三隈、矢矧、響。全員が武装して警戒に当たる中、周囲はどよめいていた。

一部は実銃に悲鳴をあげているバカも居るが生きていない者として一切を無視している。

「私達は大日本帝国海軍所属の艦娘である!緊急事態につき、全員が武装している!が、しかし貴様らに攻撃する必要も無い為に邪魔はしないで頂きたい!」

私が先頭に立ってそう叫ぶと、さらに騒めきは大きくなるが私達に向かって殴りかかってくる者とかは居ない。

また、大きな声があがる。隼が来たのだ。

「......来たぞ。全員乗船せよ」

「「「了解(です(ですわ!(だよ」」」

15ノットで航行する隼がこのフェリーと並走し、タラップをこちらへと伸ばす。

私達はそのタラップを使って乗船すると私の指揮権限で隼をアメストリア型戦艦一番艦アメストリアへと向ける。

よく見ると...いや見なくてもわかるか。金剛型戦艦が一隻に雲龍型航空母艦が一杯。最上型重巡洋艦が二隻、阿賀野型軽巡洋艦が一隻に暁型駆逐艦が一隻。

つまり、彼女達の船体だ。後ろには、金剛型戦艦よりも遥かに巨大な島のような艦影が浮かび上がっている。

リバンデヒだろう。

フェリーなんか気にせずに、40ノットで高速航行を開始。派手に波を立てながら海上を滑る。

隼の鋭い艦首が荒波を切り裂き、知らぬ間に...いやレーダーでわかるけどこの小さな海道の中に押し込められた戦艦や航空母艦へと向かって行く。何故か、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアは船体を無線封鎖で航行している為私から停止命令を出すことができない。

早く行かなければ、もっと恐ろしいことになる。多分アメストリア型戦艦一番艦アメストリアが向かう先はMI/AL作戦の実行されているミッドウェー諸島かナウル鎮守府。

考えられるのは作戦に何か大きな問題が発生し、その問題に対しての対処に残存戦力で対処できないので、妖精間での決定で私には無断で対処を開始した可能性。

また、あまり考えたくは無いが、危機管理上考えなければならないのが.......妖精さんの反乱だ。

妖精さんというのは未だに多くの謎に包まれている。その構造に行動原理文化に至るまで全く分かっていない。何を食べてどんなエネルギーで動いているのか...私の妖精さんはアメストリアの文化を基盤としており、その行動基準はアメストリア海軍の軍事規約や軍人としての精神を根幹としており、カイクルと仲がいいし、なぜか私の言うことはよく聞いてくれた。これは私の妖精さんに限らず他の艦隊の妖精さんや工廠でもだ。文句は言ってくるが。

 

...待て。ならば何故...何故そんな私の事を聞いてくれていた妖精さんが私に無断で私の魂...は違うだろうが私の本体とも言える船体を無断で動かしたのだろうか?別に大した問題では無いが私が転移して直接船体の指揮権を行使して停止させればいいだけだ。

しかしそんなことは妖精さんも承知の筈だ。しかしその可能性を無視してでも緊急出撃を敢行した理由。

何かは色んな問題がが想像できるが、敢えて考えないようにしておく。

「......お姉ちゃん?」

「ん?いや、すまない。少し考え事をしていた」

「その割には、随分と()()()表情をしていたようだけれど?」

「......まぁ、な。リバンデヒ」

表情を引き締める...といっても何時も仏頂顔だが、少し凄みを増し、軍人としての顔だ。

「何かしら?」

「現時点を持ってナウル鎮守府付派遣艦隊旗艦をアメストリア型戦艦一番艦アメストリアからアメストリア型戦艦二番艦リバンデヒに移行し、私は指揮権を放棄する。」

「......分かったわ。無事でね」

賢い妹は意味を理解したようで、リバンデヒは踵を合わせ左手を45度に傾け敬礼する。後ろに待機していた金剛、天城、最上、三隈、矢矧、響。全員が大日本帝国海軍の全員が敬礼で返礼してくれた。

私もアメストリア海軍式の敬礼で返礼すると私の船体へと転移する。あとは妖精さんに事情を聞き場合によっては最大戦速で向かわなければならない。出来るだけ停止させるつもりだが。

 

視界が数瞬暗転し、原理不明な不思議パワーによる船体への直接転移が行われる。

エフェクト的には何処ぞのUBWの霊体への変化に近いだろうか、艦橋から目的地に転移出来ないのが残念だがそれ出来たら移動手段要らなくなる。かつこの転移、人間を伴っての移動は難しい。それはもう。

目を開くと、照明のつけられていない薄暗い艦橋。画面が電灯の役割を果たしていた。

しかし、人っ子一人居ない。妖精さんもだ。周囲を見回しても妖精さんの一人もおらず、司令官の服を着た妖精さんも居ない。

現代艦艇のような未来感のある艦橋には人の気配は愚か、音一つ無く私が動く衣摺れや息遣いのみが冷たい空間に響く。妙だ。

あまりにも不気味で可笑しい。本能的にホルスターに手を掛け、五式自動拳銃を抜くところで、真後ろに気配を感じジャンプしつ距離を取り、振り返る。そこには、何も居なかった。

「...っ!?」

可笑しい可笑しい可笑しい!あまりにもおかしすぎる。

気配は感じた。しかしその姿は無く音も気温の変化もなかった。絶対にこの空間にいる。それは断言出来よう。

しかし位置は特定できず、相手は何かさえもわからない。

五式自動拳銃を一丁のみ抜き取り、両手で構える。そして視界に入る範囲、気配を察知する範囲全てに向けられるように脇を締め程よく腕を脱力させて照星と照門を視線の前に持ってくる。

「.......ぐっ!?!?」

突如、警戒していた筈の後方から強い衝撃が加えられた。

視界に火花が散り、急に暗くなってゆく。見事に頸椎をピンポイントに捉えられたようで四肢に上手く力が入らず五式自動拳銃を取り零し私自身も仰向けに倒れこむ。急激に感覚が遮断されて行き、瞼が降ろされる。私は何が何だか全く理解できないうちに意識を失った。

何故に自らの艦橋で襲撃されたんだ?

 




昨日からFate/staynight UBWを見直していたんですが、やっぱり凛は可愛いですハイ。あ、無論セイバーもですよ?当たり前です。
また徹夜して地獄少女とか喰霊とか屍姫とか見てたんですが何故に私が見るアニメは暗くなるんでしょうか?
女主人公を選んだらこうなった...何故に。

多分次回から急展開。
今もだけど。


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65.なんかデジャブだなぁ......

どーも、諷詩です。
英検やらテストやらゴタゴタして中々執筆の時間が取れなかった私です。
因みに3級一次試験合格しました。熱あったのに。何故だろう...

あと、前話で大和ミュージアム行ったので久しぶりに行ってまいりました。何か...展示品が少なくてしょぼかったです。こう、ロシアとかドイツの戦争博物館とかの方が面白そうですね。私ドイツ語もロシア語も話せませんけど。話せるのはエーリカとカチューシャだけですね。
あの10分の1大和、民間の寄贈品らしいですね。何回も言っていたのに初めて知りました。
大和とかの九一式徹甲弾見てきたんですが、アメストリアを考えるとねぇ......?


ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーー

私が意識を取り戻すと、そこは貴賓室が一つだった。

和風の意匠をした貴賓を迎える為の応接室。アメストリア型戦艦という豪華すぎる戦艦とあって絢爛だがデコデコに金粉塗ったくっているわけでも無く必要な物のみで構成された質素な印象も受ける。そんな和室の一つに私は何故か居たのだが、これは一体どういう事だろうか。

「......っん.......んぅ??」

今でも頭がぼんやりとして、上手く思考が回らない。

確か...私は妖精さんの独断専行による緊急出撃に只ならぬ異変を感じ取り転移で艦橋へと向かったが誰一人として居なかった。

だから五式自動拳銃を抜いて警戒したのだが...そうだ。そこで奇襲を受けて不覚ながらも気絶してしまったんだ。

私を墜とした犯人は脊椎を正確に打ち気絶させた事から、手練れだと思われる。気配を探るが相変わらず一切の反応無し。

以前船体は前進を続け、単艦進撃を続けている。

立ち上がろうとして何かに阻止され、五式自動拳銃を取ろうとて今更ながらに手首が拘束されている事に気付いた。

同時に私が動き出すと同時に何故か設置されていた黒い三脚に支えられた巨大で重厚感に溢れる敵の恐怖心を煽りまくる最強の『分隊支援火器』M634重機関銃の銃口がこちらへと向けられて、大変怖い。

恐怖心を押さえ込みよく確認すると既に給弾口に弾帯が突っ込まれており、コッキングされた様子も確認できる事から妖精さん?は本気で私を殺しにきている事がよくわかる。首を回して探すと、他にもあと三つ同様に自立制御のM634が今か今かと私を穴だらけのミンチにするときを待ち浴びている。絶体絶命というやつだろう。

しかし私を拘束するのは無意味だと犯人もわかっているだろう。しかし手首に縄でぎっちりと拘束し足も椅子に縛り付けている。

多分、転移するならやってみろその前に挽肉にしてやるという精神だろう。まこと持って不本意だが事実で不用意に行動を起こすのはやめておこう。艦橋に転移したら既に肉塊になってましたとかマジで笑えない。

軽く見回しても、M634がピッタリストーカーのように銃口を合わせてきておりヒジョーに怖い。だってCIWSのほぼ同口径の重機関銃が4基常に私を殺すときを今か今かと待ち浴びているんだぞ?

 

「........妖精さん、か?」

何故か、艦娘としての能力が発揮しきれない。具体的には、ソナーや電探の恩恵を享受出来なくなり精々船体内のみ。

耳は全くと言っていいほど聞こえず、M634の三脚基部のモーター音も聞こえず船体の轟々としたウンターガングエンジンの唸り声も聞こえない。四肢にはかろうじて力が入るがこの手首と足首、そして腹から胸にかけてギチギチに回された縄を引きちぎる事はおろか新たに銃やマチェットなどのナイフを作り出す事さえもできない。

要するに持ち前の馬力も気配察知も攻撃も一切出来ない小娘のクズだ。役ただずは真っ先に死んでゆくのが世の常。

つまり、私は殺される率が一番高い。

''お久しぶりです艦娘さん!''

「...私の大幅な能力ダウンは妖精さんの仕業か?」

''イエッサな感じです?''

''クスリ使いました〜?''

''使ったーっ!''

どうやら私が役立たずの小娘になったのは妖精さんが投与した薬物によるものらしい。

私はつくづく薬物に縁がないようだ。試しにダメ元で手に力を入れても腕が震えるだけで全く動く様子はない。これでは立つ事も五式自動拳銃を握る事もできないだろう。集中力も散漫になり船体の装備を駆使しての戦闘も不可能。本当に私何が出来るのだろうか?真面目にわからない...ヤベェよ...

「...何故、こんな事をした?」

ダメだ。頭がボーとして思考が上手く回らなくなってきている。これも以前感じた事があるな。過労で倒れて熱を発症した時だ。

あの時は随分とリバンデヒやカイクルに迷惑をかけてしまった。吐き気がして、会話も覚束なるが精神で押さえ込みなんとか妖精さんの返答を理解しようとする。

''実は...カイクルさんと十二時間前から連絡が途絶しました。他にもミッドウェー攻略艦隊に動員されていた大和、長門、陸奥、加賀、翔鶴、瑞鶴、高雄、愛宕、川内、神通が音信不通となってしまいました......''

「.......何...?」

目先が真っ暗になる。

まさか、まさかカイクルが堕とされるとは思ってもみなかった。接近戦最強のカイクルが轟沈ないし鹵獲され、主力艦隊の平均level130を誇る打撃艦隊が丸々行方不明。最古参たる利根、大鳳、暁、響、雷、電、摩耶、鳥海が残っているが、確か高雄型重巡洋艦は全艦動員された筈だ。つまり意味するところは損傷しながら逃げ延びてきたのだろう。

 

残存戦力としては武蔵、龍驤、赤城、大鳳、飛龍蒼龍、雲龍葛城天城。そして金剛比叡榛名霧島の四姉妹に青葉衣笠、最上三隈鈴谷熊野の重巡洋艦に、天龍龍田の軽巡姉妹。そして私の妹であるリバンデヒ、ノイトハイル。私自身は全く戦力にならない。そして大破の愛宕、摩耶。

''全ては我々妖精の不始末が招いた事。身内のミスは我々で対処したい感じなのです?''

「......」

多分航法関係でミスったのだろう。電子羅針盤が狂ってたとか。

しかし私が薬物で行動不能にされるのは不服である。そう言ってくれれば私だって全力で対処するのに。

 

......いや、だからこそか。妖精さんには妖精さんの文化や派閥が存在するし、担当もバラバラに分かれている。

私達艦娘のように統括する側ではなく、その艦娘の指示で船体を動かす直接的な操艦をする者たち。だからこそミスを犯し結果的に第二艦隊が壊滅してしまった。その責任に負い目を感じ自らの手で決着を、つまりアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの火力を持って処理しようというらしい。確かに理にかなっている。

アメストリア型戦艦一番艦アメストリアは単艦での殲滅活動をテーマとした戦艦だ。

何者も貫けない絶対の盾(絶対干渉結界)に如何なる装甲も食う破る絶対の鉾(500cm四連装砲)。速力は90ノットに及び限界を無視すれば100ノットを優に超える。その(三次元レーダー)は半径500kmのハープーンの一発一発を探知する事ができる。

はっきり言ってチートだが、これでも何回も大破中破を繰り返している。全部私のミスだがな。しかし、しかしだ。そんな殲滅を持って任務を果たす戦艦は一隻では無い。妹達は沢山いた。現在ナウル鎮守府にはノイトハイルも居るはずだ。だがわざわざアメストリア型戦艦一番艦アメストリアを動員した。つまりアメストリア型戦艦の火力一隻では厳しいということだろう。

ミッドウェー、どうなってんだオイ。何でアメストリア型戦艦一隻の火力をもってしても攻略できんのだ?だから他の副次戦力として大和型に長門型と戦艦の火力に航空母艦も何杯も入れた。でもその多くは鹵獲され、戻ったとしても極一部で破損している。

やっぱり、ミッドウェー、どうなってんだオイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーリバンデヒsideーーーーーーーーーーーーー

はいはーい!最近出番さえ無かったリバンデヒよ。

久しぶりね。現在私達は勝手に出航したアメストリア型戦艦一番艦アメストリアを追うために単縦陣40ノットで追尾中よ。

お姉ちゃんが船体に先行したのだけれど、全く応答もなくて、とても不安なのだけれどまぁお姉ちゃんだから大丈夫でしょう。

『heyリバンデヒーっ!2-4-0に深海棲艦の反応ネー!』

金剛ちゃんから連絡が入る。どうやら攻撃範囲内に俗物の雑魚共が寄ってきたみたいね...掃除しなきゃ。

「妖精さん!久々の海上戦よ!全武装オンライン」

''ヒャッハーッ!久々に撃つのdeath!''

''主砲、副砲の準備完了?''

主砲(500cm四連装砲)第一から第三砲塔は一式徹甲弾装填。第四第五砲塔は三式弾を装填しておいて頂戴」

私の一言で、砲塔内では駐進器が砲身や薬室を強制的に後退させマガジンのような揚弾筒に収まる白い弾頭を持つ金色の薬莢付き砲弾が装填され元の位置に砲身が前進する。砲塔内で四箇所同時に装填作業が行われている頃よ。

そして自動的に船体側面に長方形の切れ目が入って装甲がスライドして無くなるとレールが姿を表す。薬莢を捨てる為の穴ね。

主砲副砲高角砲関係無く一斉に装填作業が終了したのは三十秒後。ミサイルサイロ内では筒側面に埋め込まれた量子変換器という黒い立方体からグラニートが生み出され装填される。後は私が攻撃命令をするだけで大陸が吹き飛ぶ攻撃が始まる。この瞬間は好きだわぁ...

ちらりと他の艦娘達を確認すると単縦陣から一気に散開して各々が戦闘体勢に移行していた。流石はお姉ちゃんに育てられた艦娘達ね。

主砲が艦首から-60°に旋回して行くと其れだけでも風が起き80口径の極超砲身が振り回される。

副砲達は他方向に指向させ、様々な仰角を向かせているわ。これは言わなくても分かるだろうけどどの方向から奇襲を受けてもいずれかの砲が現れた瞬間に発砲できるようにするためよ。搭載砲数が多い艦の特権よね。

「.......撃てーっ☆」

私がそう告げるだけで艦橋のガラスが一面光に埋め尽くされ遅れてお腹の底から響いてくる衝撃波が船体全体を揺らして行くわ。

500cm四連装砲の砲口から150m以上の大きな黒煙が噴き出して、業火と共に砲弾が高速回転をしながら飛んで行ったわ。弾着までは五秒ほど。けれど既に主砲は装填が完了しているわ。パーフェクトね。

ここだけの話、この主砲に採用されているブローバック式の装填機構の開発は相当難航していたのよ?

今となっては80cmの野砲とかにも採用されている装填機構だけれど建国当初は酷かったのよ?まだ装薬式だったし一々砲弾と装薬を込めて撃っていたの。けれど私達の主砲は当時150cm四連装砲。そんな砲弾だったから装薬式でも事故が多発していたのよ。装填中に攻撃を貰うことだってあったわ。

だから工廠が開発していたのだけれどこれも難航していたの。まぁ当たり前なのだけれども。

だって150cmサイズのブローバックよ?機構も大きいし無駄が多いのよ。部品の耐久性については時間逆行術式があったから心配ないけれど大量の炸薬の使用に砲塔内の高温とかの問題が多かったの。46cmなら既に実証段階にあったのだけど其れも事故で連射中に吹き飛んで何人か兵士が死んでしまったわ。次の瞬間には生き返ってるけど。

でもここで鍛冶の神様が動き出してくれて、何とか解決してくれたわ。主神も遥か遠い未来から技術を持って来てくださったおかげで何とか500cm四連装砲が完成したのよ。150cm四連装砲?鍛冶の神様が作ってしまったわ。

その零号機はお姉ちゃんの第一主砲の三番砲にに使用されているのだけれど度重なる破損大破でもう原型をとどめていないわね恐らく。

さてと、話を戻すけれど、500cm四連装砲の一番から三番が火を吹いた結果が今。

''.........だんちゃーく...今っ!''

遥か遠くで雷鳴が響き黒々とした煙と爆炎が上がる。無事に撃破したようね。けれど戦艦としての性か、まだまだ撃ち足りないわ...。

けれど、お姉ちゃんからまだ連絡がこないわねぇ...少し、心配になってしまうわね。

「金剛〜?ついてきてるかしら〜?」

『Yes!バッチリと付いて行ってマース!』

『天城、ちゃんと追従していますよ』

『最上だよ。大丈夫だよ〜』

『三隈、しっかりと付いていますわ』

『こちら矢矧、大和さんは....』

『響だよ。ちゃんと付いて行っているから大丈夫だよ。』

「そう、なら良いのだけれど...大和は、消息不明よ」

『そう...また、私は守りきれなかったのね...』

いえ...まだ沈没したとは言っていないのだけれど...まあ本人が思うなら私は否定しないわよ?だって私も断言はできないのだもの。

私とて伊達に生きていないもの。目の前で仲間だったものが砕け散り悲鳴や爆音と共に船体の破片である大きな鉄片が降り注ぎ大量の血肉が甲板に打ち上げられる。あの途轍も無い喪失感と悲しみ、憎しみは慣れないわ。決まって姉妹の機嫌が悪くなって、大変なのよ?

でもまぁ、すべて元どおりに修復されるのだけれどね...だってすべてのパーツに時間逆行術式が刻まれているもの。乗っている船員も妖だから、例え被弾して吹き飛ばされても生きているし何やかんや紆余曲折で軍に戻ってまた戦い始めるのよ。呆れるわよね...何をそんなに戦いたいのやら。けれど其れがアメストリア人(戦闘民族)であり、軍人(ツワモノ)なのよね〜。

 

「さて、と。金剛、少しだけ指揮権を譲るわ。お姉ちゃんを回収しなきゃ」

『oh、了解ネ!任せて下サーイ!』

流石に、ここまでお姉ちゃんから連絡が無いのは異常だわ。お姉ちゃんとて戦艦の艦娘。

敵を認めればすぐに攻撃しているはずなのに、今回はしなかった。恐らく、船体のほうで何かトラブルが起きたのだと思うわ。だから私自身が確認に行くのよ!他の艦娘じゃ実戦経験が少ないし、お姉ちゃんの艦娘達なのだから傷付けるのはやぶさかよ...けれど、少し不安なのは私だけかしら.......?何か途轍もなく大変な決断を犯した気がしないでも無いけれど、気にしないほうが良いわね。

念のため、五式自動拳銃を両方とも入れて、A-10を持つわ。A-8でも良いのだけれどアレはポンプアクション式だから連射に劣るのよね。だからフルオートが可能な十式自動散弾銃のほうが良いのよ。

警戒を最大まで高め、お姉ちゃんの船体へと転移する。さてさて、蛇が出るか狐が出るか。ふふふ、楽しみね...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

視界がグワングワンと歪み回転する。最早どこが床でどこが天井なのかさえも分からなくなってゆく。平衡感覚は完全に狂ってしまったようだ。音も、光も、感触も、味も、匂いも。全てが感じれなくなって行き、何が何だか分からなくなる。

「..............っう...妖精、さ...ん、解毒...剤、を......」

割とマジで辛いっす。何か私自身を激しくシェイクされている感じを常に与えられ、尚且つ妖精さんより告げられた第二艦隊の壊滅に()と私の愛しき妹であるカイクルの鹵獲されてしまうという私に重くのしかかる精神的重圧。

いろんな要素に一斉攻撃され気分が途轍もなく気分が悪い。残念ながら私はMでは無いのでこれを喜んで受け入れる事は出来ない。

''確かに艦娘さんにはとてもお世話になっています''

''楽しかったー!''

''作れたし撃てたー''

''しかし、これは私達の果たすべき義務です!''

いや、それは分かってるんだよ?分かってるから。私は取り敢えず解毒してくれって言ってるんだな?これ分かりますかー?

只でさえこういった思考をする事で気持ち悪さをごまかし、思考を絶やさないように頑張っているのだが、そろそろ限界だ。意識が吹き飛びそうになる。口を動かすのでさえ覚束ないのだ。

「........だか..らぁ........げど..くを.......」

''今回の薬物に致死性はありません。精々が意識が飛ぶ程度です''

いやいやいや、それも十分に危険だぞ?それよりもゲテモノ喰らった私が言う事では無いが充分に威力を持っていて、現在最大の壁となっている。動けないし考える事も出来ない。

さっさと解毒剤打ってもらえませんかねぇ......?抵抗はしないし邪魔はしないからさ。手出しだってしないしただ見るだけにするからさ?解毒剤、もらえなうのかねぇ...?あーあー。段々と意識が根こそぎ奪われてゆく。四肢の感覚は完全に無くなり欠損しているみたいだ。体温も感じる事ができず鉄のように冷たいのか、煮え滾るマグマのように熱いのかわからない。

「___________」

「---------------!?」

何か聞こえる。しかしそれが誰で何を言っているのかは分からないが、妙に安心できる。......聞き慣れた音?銃声?モーター音?否。ヒトの声だ。聞き慣れた、耳障りのいい声。リバンデヒ?カイクル?ノイトハイル?分からないが、多分妹だろう........というかそうであってほしい。

そんな不安定な安堵を残して私は遂に意識を手放した。




諷詩です。今回は短かったのですが、これから結構大きく動くと思われます。例の如く室内戦に人間の汚さなど。

尚、アメストリアはあまり活躍しない模様。


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第六章 MI/AL攻略作戦 EXTRA-STAGE
66.今更のスペック紹介


本当に、遅れました。
作者が最近スペックを把握しきれなくなってきているので、把握用に書き上げていたんですが、色々あるうちにかなり書き上げていまして、他の艦船も設定を書き上げていました。

更に期末テストが追い打ちをかけて私のHPは-100000となりました。まる。


■アメストリア型戦艦■

◇全長 4650m

◇全幅 530m

◇全高 420m

◇排水量 19565000t

◇速力 「巡航」75ノット

「最大」90ノット

「限界突破」120ノット

◇機関 ウンターガングエンジン六基 + 船舶用粒子エンジン120基

◇大舵四つ 副舵五つ

◇10枚刃スクリュー 四つ

 

−兵装−

◇80口径500cm四連装砲 五基 20門

◇65口径150cm四連装砲 六基 24門

◇55口径46cm三連装砲 二十基 60門

◇65口径30.5cm連装電磁力砲 六十基 120門

◇50口径20.3cm連装砲 八十基 160門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 二十四基 48門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 四百四十八基 896門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 二百六十基 520門

◇ミサイルハッチ 4500セル

◇超大型多弾頭ミサイルハッチ 十五基

◆F--222改 六機

◆C-203 一機

◆CH-31 三機

◆隼 一隻

 

同型艦

一番艦 アメストリア

二番艦 リバンデヒ

三番艦 カイクル

四番艦 ノイトハイル

 

 

【挿絵表示】

 

 

備考

今作品の主人公。元は現代日本の学生だったが何故かアメストリア型戦艦一番艦アメストリアに憑依した不憫すぎる人物。

妹からは何処か決定的な違和感を感じるが我が姉であると一応認められている模様。それもそのはずで()の影響によりバレやすい点は無意識下に修正され、継接ぎだられだがなんとか誤魔化されている。性格や思考に関しては()も面白そうという理由で放置。そのお陰で主人公は度々生命の危機に瀕している。が、''彼女''には感覚も伝わらないので特に問題はなく、遠慮なく追い詰め放置して鑑賞している。中々に外道である。

口調は()同様男口調で一部言い回しに古臭いところがあるが、それは前世の影響と思われる。

主人公自身は前世に関して知識しか残っておらず、自分が男性であったのか女性であったのかさえ憶えていない。裏設定として俺っ子であるかもしれない、という可能性が微レ存。

容姿は、深海棲艦バリに色素のない真っ白なハリのある肌に輝きを失ったように濁り切った蒼眼を持ち、顔立ちは鼻はスッと通り瞳は猛禽類のような鋭く威圧感がある西洋然とした途轍も無い美人である。しかし残念な部分も多い。

主に好むのは五式自動拳銃の2丁拳銃にM145、M634などである。戦艦故か肉弾戦も一通りこなす事はできるが、リバンデヒやカイクルには遊ばれ、ノイトハイルには瞬殺されるほどの弱さ。つまり周りがおかしい。

 

史実

アメストリア型戦艦の竣工は海軍の艦艇ではどれよりも早く、一番最初に建造された戦艦である。

建国のタイミングに合わせて進水し、実戦へと配備された。故に「アメストリア型戦艦」のネームバリューは絶大で、現代で言う大和、向かいで言う長門の状態となっている。また進水から4900年経過している為に数々の逸話を残している。中でも有名なのが、とある国家が後継者争いで内戦状態となりゲリラか、反政府か何者かの攻撃でアメストリアの大使館が焼かれ、明確な宣戦布告として受理。海軍が投入され、結果アメストリア型戦艦だけで大陸が一つほど跡形無く吹き飛んだ。その頃にはすでに第二改装が終了していた。

他にも以前に奇襲で乗り込まれた際に45mm対空機関連装砲で甲板ごと木っ端微塵にしたり、主砲のバラスト圧で周囲の敵艦ごと木っ端微塵にしたりしている。またある時は核爆弾に似た威力を持つ爆弾を五発喰らいながらも戦闘を継続し続け、結果的にそのままストレス発散に敵国を幾つか平らげたなどなど。探せば山のように出てくる武勇伝で溢れ変えっている。両親(両方女性)の家だと必ずと言っていいほど訪れる戦艦である。しかしその巨大さ故に行動できる戦場は限られており地球のような海洋惑星のみに限定されている。但し何事にも例外があるもので、1200年代のとある戦争でアメストリア型戦艦を輸送していた空軍の輸送艦から直接投下して山脈を粉砕してダイナミック着''地''し、奇襲的攻撃で相手を殲滅したことがある。

 

 

 

■大和型超大型甲種重装戦艦■

◇全長 965m

◇全幅 192m

◇全高 142m

◇排水量 1598700t

◇速度「巡航」50ノット

「最大」120ノット

「限界突破」150ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン 35基

◇大舵一つ 副舵 四つ

◇五枚刃スクリュー 八軸

 

−兵装−

◇70口径56cm三連装砲 五基 15門

◇60口径20.3cm三連装砲 六基 18門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 六基 12門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 八十四基 168門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 九百五十基 1900門

◇ミサイルハッチ 3500セル

◆F-222 六機

 

同型艦

一番艦 大和

二番艦 武蔵

 

 

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備考

トラック島第三鎮守府よりアメストリアが戦力不足のため分捕ってきた戦艦の一つ。

第三改装時に150cm三連装砲というバカみたいな主砲を積んだが斉射すると傾斜角35°を超え、到底戦闘できる状態ではなくなるため、無理の無い口径に縮小されている。

しかし口径が大幅に小型化し、威力も落ちたことには変わりなく、苦し紛れの策として口径長を70に延長している。

 

しかし主砲が小型化したお陰で速力が上昇し、霧なんか目じゃないレベルまで強化された。作者はなんか兵装の欄が薄くて微妙との評価だが、これ以上載せる事は限界なのであきらめた。そもそもミサイルハッチこんなにつかないと思う。

 

艦娘に関しては特に変化は無い。艤装をつける事は無いために違和感は残るかもしれない。それは読者の捉えようによる。

アメストリア姉妹に関しては、大和、武蔵共にあの鎮守府から救出してくれたことに感謝しており、「アメストリア」を上官として認識している傾向がある。これは大和に限った話ではなく、他の艦娘達でも同じことが言える。

 

大和「アメストリアさんはとても信頼できる方です。リバンデヒさんは...何か危険な感じがするのであまり近づきたくありません。カイクルさんは...何時も日本刀を振っているところしか見かけませんが、凄い人だというのはわかります。ノイトハイルさんは...よくわかりません。お姉さんのことを慕っているのは分かるんですが、それが本心なのかさえも...」

武蔵「アメストリアは面白いぜ。何より酒に理解があるし、大艦巨砲主義の塊だからな。リバンデヒか?たまに入渠中に胸を揉んでくるのにはおどろいたが、アレもあれで面白い人物だろう。カイクル?いつか拳で語り合いたいところだ。ノイトハイルは...よく分からないな。隠れえす?だとアメストリアは嘆いていたが、''えす''ってなんだ?」

 

 

 

 

■長門型弩級巡航戦艦■

◇全長 844.9m

◇全幅 296.59m

◇全高 99.5m

◇排水量1270100t

◇速度「巡航」65ノット

「最大」85ノット

「限界突破」100ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン 32基

◇大舵一つ 副舵五つ

◇八枚刃スクリュー四軸

 

−兵装−

◇60口径51cm三連装砲 六基 18門

◇50口径35.6cm単装砲 八基 8門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 八基 16門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 八十八基 176門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 七百五十基 1500門

◇ミサイルハッチ 3400セル

◆F-222 四機

◆CH-31 四機

 

同型艦

一番艦 長門

二番艦 陸奥

 

 

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備考

大和型と同じく戦力強化の名目で分捕ってきた戦艦。しかしこちらは船体が大正時代の設計とあって無理に改装するとバキリ逝く危険性があったので過度な改装はせず、骨組みが全体的に強化され主砲周りは時に強化されている。件の主砲は大和と同じ理由で51cm三連装砲に下げられた。それによって速力が上昇し、余分なスペースができたため側面の副砲が復活。ちょうど余っていた35.6cm砲を単装砲として埋め込んだ。他にも大口径対空砲を積み、対空、対地両方の火力が重視されていることがわかる。

艦娘に関しては変化は無い。電探型のカチューシャをつけているし、腰回りに艤装をつける為のベルト?も残っている。

 

長門「アメストリアか?今でも定期的に月を見ながら酒を飲み交わしているぞ。あいつの船体にある日本酒は格別でな!御神酒らしいんだが、本人は気にするなと言っていたな。リバンデヒか?随分と姉を慕っていたようだな。偶にアメストリアの悲鳴が聞こえるぞ。実に面白い姉妹だ。カイクル?いつか殴り合いたいな。ノイトハイルは、油断ならない相手だな。行動理念は極めて単純だが、取る方法が複雑怪奇だ。見ていて面白いな」

陸奥「アメストリア?いつもは姉さんみたいに凛としているけれど、偶に崩れて素が出るのか可愛いわよね。リバンデヒは、よく話が合うわ。双方可愛いけれど不器用な姉を持つと話題が一致するのよね。そのせいでよく長湯になってしまうのよ。カイクル?面白い人よね。ノイトハイルは...よく分からないわね。」

 

 

■金剛型高速巡航近接戦艦■

◇全長 819.4m

◇全幅 135m

◇全高 99m

◇排水量 1052000t

◇速力「巡航」70ノット

「最大」100ノット

「限界突破」150ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン三十二基

◇大舵 一つ 副舵二つ

◇六枚刃スクリュー四軸

 

−兵装−

◇60口径51cm三連装砲 六基 18門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 二十四基 48門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 七十六基 152門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 三百六十基 720門

◇ミサイルハッチ 1150セル

☆側面展開式近接刃 2基

◆F-222 二機

◆CH-31 一機

 

同型艦

一番艦 金剛

二番艦 榛名

三番艦 比叡

四番艦 霧島

 

 

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備考

パラオ鎮守の対深海棲艦戦において戦力拡大の為に建造された戦艦の一つ。

元が高速戦艦とあってそのコンセプトを踏襲しつつそれでもって打撃力との両立を目指して工廠長が割と本気で設計した経緯がある。

その為機関にはアメストリアから吹雪まで使用している船舶用粒子エンジンを32基も贅沢に使用しより多くの海水を掻き分ける為に六枚刃のスクリューを採用。船体の形も少々変更し船体中央部の埋め込み式副砲が取り払われ幅を広くし対空砲を強化している。

また打撃力の為に当初46cm三連装砲が計画されたが攻撃力不足という火薬に麻痺した意見により51cm三連装砲へとランクアップした。主砲の配置は元ネタと変化無いが水偵を回収する為のクレーンが撤去されている為割とスペースは余り、ミサイルハッチがそこに敷き詰められている。

 

 

 

■赤城型二段式航空母艦■

◇全長 1360.67m

◇全幅 251.32

◇全高 35m

◇排水量 1934000m

◇速力「巡航」65ノット

「最大」99ノット

「限界突破」120ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン五十基

◇大舵二つ 副舵三つ

◇ターボファン 二十基

 

−兵装−

◇70口径20.3cm連装砲 六基 12門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 四十八基 96門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 六十二基 124門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 四百二十五基 850門

◇ミサイルハッチ 32480セル

◆F-222 千六百機

◆FB-99 千二百機

◆B-97 二十機

◆E-7 三十機

◆E-21 二十機

◆E-9 二十機

◆CT-7 二十機

◆CH-76 百二十機

◆C-203 五機+二機

◆C-134 五機

◆CH-4 五機

◆CH-31 三機

◆AF-56 五十五機

◆AH-39 十五機

◆AH-60 二十機

◆AH-182 二十五機

◇五七式重装甲輸送車 120両

◇七九式装甲輸送車 70輌

◇一式重武装車輌 1570輌

◇七式装甲車輌 2500両

◇三一式特大型輸送車両 50両

二九式半駆動式大型輸送車両(ハーフトラック) 95両

◇二五九式装輪装甲輸送車 40両

 

同型艦

一番艦 赤城

 

 

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備考

大和ら長門同様分捕ってきた航空母艦だが、大改装によって航空母艦の形をしたナニカとかしている。

船体を拡張して枠から強化し飛行甲板を二段に倍増させた。これにより上段の飛行甲板をどう支えるかと言う問題が浮上し、エレベータ及び艦橋群で繋げ、後はトラス上に支柱を張り巡らせて行く方法で無理矢理解決した。また船体の側面に大量の出っ張り、銃座を設置することで規格外の対空砲を大量配備することに成功した。また量子変換器によって化け物みたいな艦載数を誇り、万が一の為に陸上兵器も師団単位で貯蔵されている。これは赤城の乗員及び搭乗員全員分にあたる車両数以上が搭載されており何らかの事情で海上行動が出来なくなった場合に備えられたものである。量子変換器万歳。

また、戦艦の名残か余分なスペースに20.3cm連装砲が配備されており、直接的な火力も十分確保されている。

というか甲板に七九式装甲輸送車や五七式重装甲輸送車を並べて撃ったら砲門数が大変な事になる気がする。

 

 

 

■加賀型超多段式三胴艦戦略航空母艦■

◇全長 1488.5m

◇全幅 420.6m

◇全高 139m

◇排水量 2589000t

◇速力「巡航」45ノット

「最大」78ノット

「限界突破」100ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン八十五基

◇大舵二つ 副舵 五つ

◇ターボファン 三十八基

 

−兵装−

◇50口径51cm三連装砲 十基 30門

◇55口径46cm三連装砲 八基 24門

◇70口径10cm高角連装砲 二十基 40門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 4420基 8840門

◇ミサイルハッチ 13000セル

◆F-222 2400機

◆FB-99 1600機

◆CT-7 100機

◆B-97 85機

◆E-7 20機

◆E-9 20機

◆E-21 20+2機

◆C-203 10機

◆C-134 12機

◆GF-21 70機

◆CH-4 50機

◆CH-31 50機

◆AF-56 150機

◆AH-39 45機

◆AH-182 75機

◆AH-60 65機

◇五七式重装甲輸送車 2500両

◇七九式装甲輸送車 5700両

◇一式重武装車輌 2700両

◇七式装甲車輌 2500両

◇三一式特大型輸送車両 150機

◇二九式半駆動式大型輸送車両 195両

◇二五九式装輪装甲輸送車 140両

 

同型艦

一番艦 加賀

 

 

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これこそ船体に無理言わせた究極系。モデルは鋼鉄の咆哮よりハリマ。アレをさらに強化して航空母艦に成形した正直作者もやり過ぎたと思っている航空母艦。搭載量はF-222 2400機にFB-99 1600機という大火力。またAH、つまり対地攻撃用のガンシップも積まれており、陸上車両も十個師団クラスを搭載し、また51cm三連装砲も中央の船体に10基積載。左右の胴体には46cm三連装砲が4基ずつ、中央の船体の後方に一基積まれている。しかしその分排水量25890tと馬鹿みたいに重く、船舶用粒子エンジンを85基使用して78ノットまで無理矢理あげている。

 

 

■蒼龍型戦略航空母艦■

◇全長 1256.7m

◇全幅 129.9m

◇全高 79.2m

◇排水量 1054000t

◇速力「巡航」75ノット

「最大」100ノット

「限界突破」170ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン七十基

◇大舵二つ 副舵五つ

◇ターボファン十五基

 

−兵装−

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 三十四基 68門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 七十基 140門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 千四百基 2800門

◇ミサイルハッチ 2800セル

◆F-222 900機

◆FB-99 540機

◆CT-7 6機

◆B-97 9機

◆E-7 15機

◆E-9 9機

◆GF-21 6機

◆C-203 6機

◆CH-4 25機

◆CH-31 50機

◆AF-56 70機

◆AH-60 60機

◆AH-182 30機

◆AH-39 20機

◇七九式装甲輸送車 70輌

◇五七式重装甲輸送車 150輌

◇一式重武装車輌 1500両

◇七式装甲車輌 2200両

◇二九式半駆動式大型輸送車両 170輌

◇二五九式装輪装甲輸送車 155輌

◇三一式特大型輸送車両 140輌

 

同型艦

一番艦 蒼龍

二番艦 飛龍

 

 

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備考

機動力に重点を置いた正規空母である。

積載量としては赤城型の劣化版であるが、兵器全体の火薬量としては雲龍型に比類する。また対空砲の火力も重視している為20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲、128mm三砲身対空機関連装砲や88mm四砲身対空機関連装砲を導入している。他にもミサイルを2800セル備えている。

ミサイルハッチに関しては艦橋上に設置された113号電探が捉えた目標を一斉に攻撃することが可能でありその様は航空母艦の上が全て煙幕で覆われるようになっており当然ミサイル攻撃中はF-222を始めとして航空機の発艦は不可能となる。

外見的には元ネタと大差無いが装甲を張り巡らせている為に大鳳の様に灰色になり、艦橋に蒼、飛と白く描かれている。これは有視界戦闘において一瞬で艦が判別できる様にという意味でアメストリア型戦艦以外は全てに書かれている。

例えば武蔵であれば「武」と書かれているが、駆逐艦はいかんせん姉妹艦が多い為「睦月9 菊月」と言う表記になっている。

 

 

 

 

 

■翔鶴型重装甲戦術運用型航空母艦■

◇全長 1295.7m

◇全幅 131m

◇全高 79.75m

◇排水量 1587000t

◇速力「巡航」75ノット

「最大」98ノット

「限界突破」135ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン 八十五基

◇大舵三つ 副舵二つ

◇ターボファン十基 10枚刃スクリュー五軸

 

−兵装−

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子三十六基 72門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 百二十八基 256門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 七百八十基 1560門

◇ミサイルハッチ 2870セル

◆F-222 700機

◆FB-99 720機

◆CT-7 9機

◆B-97 12機

◆E-7 14機

◆E-9 9機

◆GF-21 15機

◆C-203 15機

◆CH-31 52機

◆AF-56 60機

◆AH-60 62機

◆AH-182 35機

◆AH-39 25機

◇二五九式装輪装甲輸送車 170輌

◇二九式半駆動式大型輸送車両 185輌

◇三一式特大型輸送車両 69両

◇七式装甲車輌 2520輌

◇一式重武装車輌 1750両

◇五七式重装甲輸送車 165両

◇七九式装甲輸送車 165輌

 

同型艦

一番艦 翔鶴

二番艦 瑞鶴

 

 

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備考

戦力強化の為に建造された航空母艦。

艦これでは装甲空母として改ニが実装されているが、それより以前に、戦艦クラスの重装甲を誇る航空母艦として建造された。

積載量については赤城や加賀と同じく量子変換器で馬鹿みたいに積んでいるが、控えめなご様子。これは戦略航空母艦に比べて重装甲化させている為量子変換器に取れるスペースが減少したためである。

船体は元ネタのままだがそれをそのまま拡張して装甲を張った感じ。外見に変化は無く色も公式改ニのままである。艤装は対空砲、ミサイル共に充実させ、大型の襲撃物に対して対処できる様になっている。

その装甲の厚さからも話ある通りどんな様子でも発艦出来る事をコンセプトとしている。

船体の全長からしてB-97やCT-7の発艦も楽々。

 

 

■大鳳超弩級装甲航空母艦(甲)■

◇全長 1360.6m

◇全幅 243.6m

◇全高 81.23m

◇排水量 347005t

◇速力「巡航」50ノット

「最大」72ノット

「限界突破」95ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン九十七基

◇大舵二つ 副舵三つ

◇ターボファン十五基 10枚刃スクリュー七軸

 

−兵装−

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 十二基 24門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 五十六基 112門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 千四百基 2800門

◇ミサイルハッチ 2200セル

◆F-222 800機

◆FB-99 820機

◆CT-7 12機

◆B-97 13機

◆E-7 20機

◆E-9 15機

◆GF-21 15機

◆C-203 16機

◆C-134 12機

◆AH-39 35機

◆AF-56 75機

◆AH-60 70機

◆AH-182 42機

◆CH-4 50機

◆CH-31 65機

◇五七式重装甲輸送車 170輌

◇七九式装甲輸送車 170輌

◇一式重武装車輌 1870両

◇七式装甲車輌 2750輌

◇二五九式装輪装甲輸送車 190両

◇二九式半駆動式大型輸送車両 100輌

◇三一式特大型輸送車両 175両

 

同型艦

一番艦 大鳳

 

 

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備考

パラオ鎮守府時代から所属する古参の航空母艦。

当初高雄らと共にアメストリアに保護された。捨て駒同然の出撃をさせられた原因として、大鳳という重装甲さは利点にあたるがその燃費の悪さや修繕にかかる資材の多さ、艦娘自身の提督への反逆から厄介払いとして無理な出撃をさせられた経緯がある。

以前に所属していた鎮守府が俗に言うブラック鎮守府の一つであり、元々大本営や憲兵隊総司令部から目をつけられていたが、現地の憲兵隊は腐敗し真っ黒だが黙認されていた。

艤装に関しては対空砲には航空母艦としては平均的な20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲、128mm三砲身対空機関連装砲、88mm四砲身対空機関連装砲を配備している。ただ数は装甲を張るために削減されている。

ミサイルハッチも削減し、その余剰スペースを利用して更に重装甲化し、対500cm装甲にまで膨れ上がった。

また格納庫に量子変換器を使用しており艦載数は蒼龍型に匹敵する。量子変換器も搭載されたEVは小型、中型、大型と多彩に揃えられており、幅広い航空機に対応できるようになっている。

 

 

■雲龍型潜航航空母艦■

◇全長 1299.3m

◇全幅 232.5m

◇全高 71m

◇排水量 1430054t

◇速力「巡航」70ノット

「最大」100ノット

「限界突破」152ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン四十二基

◇大舵二つ 副舵四つ

◇ターボファン二十基 9枚刃スクリュー 四軸

 

−兵装−

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 三十六基 72門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 72基 144門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 2100基 4200門

◇ミサイルハッチ 3000セル

◆F-222 880機

◆FB-99 620機

◆CT-7 13機

◆B-97 13機

◆E-7 15機

◆E-9 13機

◆GF-21 25機

◆C-203 15機

◆CH-4 35機

◆CH-31 30機

◆AF-56 70機

◆AH-60 60機

◆AH-182 58機

◆AH-39 35機

◇五七式重装甲輸送車 155輌

◇七九式装甲輸送車 150輌

◇一式重武装車輌 1270両

◇七式装甲車輌 2570輌

◇二五九式装輪装甲輸送車 135輌

◇二九式半駆動式大型輸送車両 195両

◇三一式特大型輸送車両 150輌

 

同型艦

一番艦 雲龍

二番艦 天城

三番艦 葛城

 

 

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備考

戦力強化の目的で建造された航空母艦の一つ。

推進機関にターボファンとスクリューの混合型を採用する事によってより速度を確保したが、結局のところ排水量は増え続け大した速力アップに至らなかった。但しその速力を犠牲にした為に重装甲化は進み大和砲であろうと弾きかえす。因みに蒼龍型は46cm、雲龍型、翔鶴型は56cmの砲撃を弾きかえす。

また雲龍型の最大の特徴はなんといってもやはり潜航機能である。これは潜水艦同様完全に潜水が可能であり、潜水中はミサイル攻撃しか出来ないものの、水という自然の装甲を獲得することに成功した。

外見は鯨のようなのっぺりとした特異な形状でこれは潜航などでの安定性を保つ為であり、またバルジ兼バラストタンクにもなっている。

 

原作では微妙なスロットにやけに入手難易度の高い艦娘だが、アメストリアの前では入手難易度などあってないようなものなので、妖精さんに発注して建造された。

三人とも、食堂にて美味しそうにご飯を食べる光景が多数目撃され、史実初期勢の艦娘から何かと気にかけられている。あと雲龍下さい(血涙)。

 

 

■高雄型甲種高速重装重巡洋艦■

◇全長 403.76m

◇全幅 47.4m

◇全高 45m

◇排水量 110000t

◇速力「巡航」70ノット

「最大」100ノット

「限界突破」135ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン二十五基

◇大舵二つ 副舵三つ

◇八枚刃スクリュー 五軸

 

−兵装−

◇60口径35.6cm三連装砲 七基 21門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 二基 4門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 十六基 32門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 七十基 140門

◇ミサイルハッチ 2500セル

◆F-222 15機

 

同型艦

一番艦 高雄

二番艦 愛宕

三番艦 摩耶

四番艦 鳥海

 

 

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備考

大鳳と同時期に捨て駒として捨てられた艦隊の一員。そのため割と古参。

元ネタの大和型の1.5倍程の巨大な船体に戦艦クラスの35.6cm三連装砲を7基も搭載するという重巡洋艦の定義を疑う超火力艦。対空砲にも20.3cm、128粍、88粍とバランスよく配備されており、主砲は艦首に背負い式を二つ、艦尾に背負い式に二基と一基普通に搭載。

 

史実

高雄型重巡洋艦は軽巡洋艦や駆逐艦との艦隊を組んで行動することを目的としており、その為駆逐艦の速度に対応できる為にかなり足は早く作られている。火力も打撃力の確保として35.6cm 三連装砲を七基配備し対空砲には128mm口径などを採用している。

元ネタと異なって魚雷は撤去されており代わりにミサイルハッチが敷き詰められている。これはミサイルの方が攻撃手段として優秀だった為魚雷に見切りをつけミサイル技術に心血を注いだアメストリア海軍の思想の表れでもある。

 

 

■最上型超重装丙種打撃型重巡洋艦■

◇全長 425.6m

◇全幅 43.5m

◇全高 31m

◇排水量 127000t

◇速力「巡航」75ノット

「最大」110ノット

「限界突破」145ノット

◇機関 ウンターガングエンジン一基

◇大舵二つ 副舵二つ

◇9枚刃スクリュー 四軸

 

−兵装−

◇55口径35.6cm 三連装砲 八基 24門

♢50口径20.3cm三連装砲 二基 6門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 二基 4門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 六基 12門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 二十五基 50門

◇ミサイルハッチ 2450セル

◆F-222 20機

◆FB-99 5機

 

同型艦

一番艦 最上

二番艦 三隈

三番艦 鈴谷

四番艦 熊野

 

 

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備考

深海棲艦との戦闘の戦力拡大として建造された重巡洋艦姉妹。

船体は大きく改変され、先に改装されていた高雄型で得られたデータを教訓に幾つか修正が加えられている。ここには工廠長の苦労が詰まっていることは言わずもがな。

火力しか考えていないキングオブキチガイ設計。打撃力の確保の名目で主砲が八基に増加し、他にも副砲として20.3cm砲を配備している。そして対空砲にはお馴染みの20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲、128mm三砲身対空機関連装砲、88mm四砲身対空機関連装砲が採用されており、対海上、対空共に大きな火力として活躍している。しかしその過剰とも言える大量の砲を維持し稼働させるには船舶用粒子エンジンでは深刻なエネルギー不足となり、結果ウンターガングエンジンが採用された。アメストリアは余りいい顔をしなかったという。もがみんは500cm四連装砲に興味があるご様子。

 

史実

備考同様に高雄型の発展系として設計された経歴を持つ。

主砲は八基に増量され対空砲も増やした、元ネタの白露型のような艦船である。しかし大火力であることには違い無く元ネタの改装案としてあった航空重巡洋艦の面を踏襲し、F-222 20機、FB-99を5機搭載している。

変態艦の集まりであるアメストリア海軍でも一際異彩を放つヤバい姉妹。また好戦的な艦長が在任した時期が長く、数々の問題や事件を引き起こした(最上)。尚逃れられぬカルマなのか衝突事故も無論発生していた。

あと最上は可愛い。鈴熊はジャスティス。

 

 

 

 

■利根型甲種航空機運用型重巡洋艦■

◇全長 401.6m

◇全幅 39.4m

◇全高 25m

◇排水量 128870t

◇速力「巡航」70ノット

「最大」100ノット

「限界突破」125ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン三十五基

◇大舵二つ 副舵三つ

◇9枚刃スクリュー 四軸

 

−兵装−

◇60口径35.6cm 連装砲 五基 10門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 十四基 28門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 七十六基 152門

◇ミサイルハッチ 4500セル

◆F-222 50機

◆FB-99 50機

◆AF-56 25機

◆GF-21 30機

◆AH-60 15機

◆AH-39 20機

 

同型艦

一番艦 利根

 

 

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備考

さりげなく高雄らや大鳳よりも最古参であったりする。建造されたのはアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの次、パラオ鎮守府の三番目の所属艦娘であり本作では描写していないがその重武装でflagship位なら容易に叩き潰すことができる位には練度が高く、アメストリアに懐いている艦娘の一人。のじゃっ娘は可愛いです。

船体は高雄や最上型と比べれば少々小型と言えるが、その代わりに船体の半分を飛行甲板で埋め、F-222からAF-56まで一通りの航空機を確保している。その代わりに直接的打撃力となる主砲は35.6cm連装砲が五基、対空砲は128mm三砲身対空機関連装砲が十四基に絞られ些か火力不足が目立つ珍しい艦艇である。

艦首側に四基集中配備した主砲に何故か格納庫の上に載せられた五基めの主砲といい中々に変態的な設計がなされている。

 

史実

本作同様アメストリア型戦艦が建造された際に、次々と航空母艦が進水した。しかしそんな中単独での行動が出来て尚且つ航空機を飛ばすことのできる小回りの効く重巡洋艦と言うのが必要となり、大慌てで設計が行われた重巡洋艦である。

そのニーズの通り他の艦艇とは艦隊を組まずに、組んだとしても防空として秋月型と組むのみの単艦での任務が多い重巡だった。喫水線は浅い為大体の運河や大河を登ることができる為闇に紛れて目標地点まで川を上り航空機や主砲で攻撃する事を主とした忍者の様な艦だった。

 

■青葉型超重装乙種重巡洋艦■

◇全長 585.17m

◇全幅 57.558m

◇全高 36.7m

◇排水量 2790000t

◇速力 「巡航」78ノット

   「最大」130ノット

   「限界突破」165ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン42基

◇大舵 3つ 副舵 2つ

◇スクリュー  10枚刄四軸

 

-兵装-

◇70口径35.6cm三連装砲 九基 27門

◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 八基 16門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 二十四基 48門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 百二十基 240門

◇ミサイルハッチ 200

◆F-222 12機

◆CH-31 1機

 

同型艦

一番艦 青葉

二番艦 衣笠

 

 

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備考

パラオ鎮守府防衛戦時に戦力強化を名目に建造された。

手っ取り早く戦力を強化する為に砲のデパート状態で超火力。載せるだけ載せたを体現した艦であり、それでいてF-222も12機搭載できた夢の艦。

 

 

■天龍型情報収集型軽巡洋艦■

◇全長 202.6m

◇全幅 24.52m

◇全高 19m

◇排水量 18020t

◇速力「巡航」80ノット

「最大」130ノット

「限界突破」150ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン二十基

◇大舵二つ 副舵二つ

◇10枚刃スクリュー 四軸

 

−兵装−

◇70口径15.5cm三連装砲 三基 9門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 六基 12門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 二十四基 48門

◇ミサイルハッチ 1500セル

◆F-222 5機

◆五七式重装甲輸送車 一輌

◆一式重武装車輌 三輌

 

同型艦

一番艦 天龍

二番艦 龍田

 

 

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備考

吹雪と同時期に建造された艦。

姉妹揃って建造されたが、その船体は拡張され火力の確保として主砲は15.5cm三連装砲が三基。

また対空砲には重巡洋艦と同様の128mm三砲身対空機関連装砲や88mm四砲身対空機関連装砲を三十基装備している。

イージス艦と同等の全長のどこに積むのか非常に気になるところだが、余り深く考えてはいけない。公式同様艦娘は黒を基調とした制服風で刀剣を所持している。尚ちゃんと斬れる模様。

天龍はカイクルに教えを請いてメキメキと実力を上達させ、龍田は薙刀が使えるノイトハイルに偶に教えて貰っている。

ナウル鎮守府での所属は特殊な艦隊である為に正式名称は無い色々と黒い部隊に所属している。これはアメストリアの独断で設立された『裏』を 主とする艦隊で他には何も所属していない。

本国や他の鎮守府に潜入したり偵察行動を主任務としており主砲が少ないのはソレ用の機材が積み込まれているからである。実質的な艦娘版憲兵隊であり、その船体の火力を持ってして実力行使する特殊部隊の様なもの。本人達の了承は受けており、妙にアメストリアが情報を得ていたのもこのお陰でもある。

 

史実

本作同様秘密裏の破壊工作や情報収集を主任務として建造された。船体には砲の可動域が考慮され、また防弾性の高い艦橋形状、またヘリポートやF-222用飛行甲板を始め船体側面には上陸艇や内火艇を下ろすハッチなど工作活動に特化した設計が成されている。事実、格納している五七式重装甲輸送車や一式重武装車輌を上陸させ敵側の首級を拉致したり暗殺したりに使用していた形跡があり、かなり活動範囲は広かったようだ。空軍の時空潜行艦という特殊な潜水艦で輸送し誰にも悟られずに海域を駆け回り情報を根こそぎ持って行くと用は無いと言わんばかりにさっさと帰還する。

また、現地諜報員などのマザーベースとして機能できる様に居住空間の他にも空間拡張術式を使用した広々とした休憩用スペースが確保されている。また大量の重火器も備蓄されており、これだけでも大国を一つ平らげる事が可能であるほど。

 

 

■川内型快速軽巡洋艦■

◇全長 262.5m

◇全幅 25.7m

◇全高 18.9m

◇排水量 72500t

◇速力「巡航」120ノット

「最大」153ノット

「限界突破」160ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン二十基

◇大舵一つ 副舵二つ

◇9枚刃スクリュー 五軸

 

−兵装−

◇75口径20.3cm三連装砲 五基 15門◇20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲 五基 10門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 十四基 28門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 五十六基 112門

◇ミサイルハッチ 1500セル

◆F-222 2機

 

同型艦

一番艦 川内

二番艦 那珂

三番艦 神通

 

 

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備考

言わずもがなの三姉妹。各艦娘についての説明は省略する。服装は改ニの状態。

艤装に関しては打撃力の確保として20.3cm三連装砲が五基。対空砲は70基。さすがに35.6cmは小柄な川内型にはキツかった。

この姉妹は教導部隊として主に活動しており、暇になった艦娘が良く協力している。長門とか愛宕とか何故か龍田とか。仕事はどうした龍田さん。船体に関しては天龍型より60m拡張された比較的小柄(!?)な艦船であり、速力を稼ぐ為に船舶用粒子エンジンは二十基。しかしスクリューには九枚刃を採用している為機関最大で120ノットを叩き出す。何だこれ。

対空砲は艦橋と煙突を中心とした集中防御型で、艦首や艦尾には特に設置されていない。というかそんなスペースは無い。また主砲の仰角俯角の関係上前方や主砲横に設置する事が不可能である。

尚川内はこの当たらなければどうという事は無い精神に狂乱していた。

 

史実

その速力と小柄さを活かして駆逐艦と共に超高速の水雷戦隊を組む事が多かった。

設計段階において、戦艦の重点配備だけではチマチマとした小型艦や水中に対する攻撃が億劫になってきているという背景から、より小型化した足が速く小回りも効く駆逐艦との連携が取れる軽巡洋艦としてのスペックが要求された。当時この頃工廠は初の国産戦車の改良に全力を尽くしてきた為、深夜テンションで設計されてしまった。その為艤装は無理をしており、小回りを効かせるために艦首が甲板から鋭角で構成されていたり煙突が大和型の影響を多大に受けていたりと割と無理クリな設計。

 

 

 

 

 

■阿賀野甲種装甲軽巡洋艦■

◇全長 284.5n

◇全幅 27.34m

◇全高 17.8m

◇排水量 87000t

◇速力「巡航」85ノット

「最大」115ノット

「限界突破」145ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン二十基

◇大舵一つ 副舵二つ

◇七枚刃スクリュー 四軸

 

−兵装−

◇70口径20.3cm三連装砲 八基 24門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 十六基 32門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 二十六基 52門

◇ミサイルハッチ 1280セル

◆F-222 二機

 

同型艦

四番艦 矢矧

 

〜製作中〜

 

備考

吹雪や天龍田と共に建造された艦艇。

艦娘に関しては原作(艦隊これくしょん)と差異は無いが、強いて言えば大和から送られたシュシュの他に、アメストリアから12月29日に送られたリボンをつけていることくらいである。これもアメストリアの艦娘達との交流、今感度アップ作戦の一環だが効果は抜群の様である。艤装に関しては、元ネタと異なり20.3cm砲を搭載しているが、こちらは三連装砲で、毎秒...正確には0.75秒/発で連射する様に改造が施されている。また対空砲には同じく128mm三砲身対空機関連装砲、88mm四砲身対空機関連装砲が用いられ、速力を上昇させている。これも全て大和を護衛する為の専用艤装となっており、それだけしか考えてられていない設計である。また、これはこれからのお話でネタバレになるが、【試製 絶対干渉結界発生装置小型艦艇仕様】の搭載が検討されている。これはアメストリア型戦艦がもつ万能の盾である絶対干渉結界の発生装置を軽巡洋艦でも積める様に限界まで小型化した仕様で、妖精さんが深夜テンションで作り上げてしまった。

守護の役割を求める矢矧には必要な装備の一つだと考えている。

 

史実

大和型の建造と同じくして竣工した阿賀野型軽巡洋艦は「大和って...いいよね」と日本海軍オタのアメストリア海軍高官や工廠兵の無念から当初より大和の護衛艦隊を目的として設計されている。

その為軽巡洋艦には似合わない20.3cm砲を24門搭載しており、対空砲には128mmAA砲を32門搭載したため、火力は非常に高く、艦載機の発艦方法が不明な艦となってしまった。しかしその過剰火力の為か速度は若干他の軽巡洋艦に比べて遅く、最大115ノットである。但しこれは川内型の153ノットに比較した場合である。

しかしこの護衛しか考えていない様な設計は、活躍し搭載予定の絶対干渉結界を駆使して見事に大和ほか数々の味方感を護り続けてきた。

とある逸話が残っている。とある激戦を極めた戦場にて血を血で洗う実に猟奇的な戦場に取り残された、巻き込まれた集落があった。その集落に住まう者達はその戦火から逃れるために村を捨て大移動を開始したが、海岸線にて上陸作戦に出くわす。これは敵方の奇襲的な上陸作戦で、海岸近くに敷設された我が軍の基地を占領する事が目的であった。しかし偶々近くを航行中だった大和麾下矢矧の艦隊はそれを発見して気分的にそろそろブッパしたいという欲望に駆られ矢矧を海岸線へ向かわせた。

そして敵方から上陸支援で放たれた砲撃を絶対干渉結界で全て防ぎ、片舷の対空砲や八基の主砲全てを使用して迎撃。同時に矢矧と向かい合う様に布陣した大和らが殲滅砲撃を開始。敵さんを挟撃して消しとばした。これにより結果的に集落の人々は護られ、矢矧の守護は有名となった。して、件の基地は実の所当時の陸軍最新戦車が配備された切り札であったという。

 

 

 

■吹雪型防空駆逐艦■

◇全長 157.5m

◇全幅 14.65m

◇全高 19.8m

◇排水量 5870t

◇速力「巡航」90ノット

「最大」135ノット

「限界突破」155ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン十二基

◇大舵一つ

◇六枚刃スクリュー 二軸

 

−兵装−

◇60口径15.5cm三連装砲 五基 15門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 三十基 60門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 十八基 36門

◇ミサイルハッチ 180セル

 

同型艦

一番艦 吹雪

 

 

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備考

天龍田、矢矧らと共に建造された艦娘。アメストリア達が出向している間の戦力拡大を名目に建造された吹雪は第二艦隊で赤城や加賀ら航空母艦の直衛艦として活躍している。本作ではあまり描写されていないが航空母艦の護衛として莫大な戦果を挙げている。それもそのはずで現代艦艇でも20mmのCIWSを二基搭載するにとどまる中幾重にも改良が加えられた128mm三砲身対空機関連装砲30基、88mm四砲身対空機関連装砲18基が搭載されており、「駆逐艦」として見れば規格外、不必要なほどの火力を備え、またどこに積んだのか主砲も5基積み込んでいるためそれなりの打撃力も確保されている。

 

史実

元来、アメストリア海軍では対空砲を対空として使用したがらない悪い癖があり、また当時はそこまで脅威のある空中目標が存在しなかった為45mm対空機関連装砲のみ採用されていた。しかしとある文明圏では惑星に土着している巨大飛行生物を飼い慣らしており、案の定戦争が始まったのだがここで45mm対空機関連装砲の威力不足が露呈。また高速で飛翔する物体の撃墜にも時間がかかり、このままでは拙いと軍がベガル工廠に開発させたのが128mm三砲身対空機関連装砲、88mm四砲身対空機関連装砲である。これを全艦に搭載するに辺り対空砲特化艦のプロトタイプとして量産されたのが吹雪型防空駆逐艦である。他にも軽巡にも長良型がこれに該当する。

 

 

■暁型快足駆逐艦■

◇全長 157.5m

◇全幅 15.65m

◇全高 18.9m

◇排水量 5650t

◇速力「巡航」120ノット

「最大」160ノット

「限界突破」195ノット

◇機関 船舶用粒子エンジン十二基

◇大舵一つ

◇ターボファン 二つ

 

−兵装−

◇50口径15.5cm三連装砲 六基 18門

◇128mm三砲身対空機関連装砲 六基 12門

◇88mm四砲身対空機関連装砲 十基 20門

◇ミサイルハッチ 190セル

 

同型艦

一番艦 暁

二番艦 雷

三番艦 響

四番艦 電

 

 

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備考

電はアメストリアよりも古参の、四姉妹揃ってかなりの古参である。利根と同時期。

船体の改装は比較的なく無く、魚雷を撤去してその代わりに主砲を載せ、重武装化。しかしその為に排水量が増えてしまい、速力確保の為にスクリュー推進からターボファンに換装し、水面を滑る滑走艇の様な駆逐艦となった。




2018/03/20 完成した艦艇の図面を追加。
塗装は許してください。

2018/03/21 だらし姉ぇ型の図面を追加。
-補足-
⚫️は128mm三砲身対空機関連装砲
○は88mm四砲身対空機関連装砲
線やらマス目はミサイルハッチです。


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67.ミッドウェー攻略作戦 その一

早く上げられて飛び跳ねてMP5-RASが足に直撃した諷詩です。

めっちゃ痛かったですハイ。
それはともかく今回は遂にミッドウェー攻略作戦開始でございます。
しかしあまりの文字数に前半後半と分けた次第です。後半は現在誠意執筆中です。しばしお待ちを。


ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーー

先に結果から言おうと思う。

あの例の声はリバンデヒだった様で自らの医務室から解毒剤を持ってきて私を救出してくれたらしい。本当に感謝しきれない素晴らしい妹達だ。対価が些か高すぎる気もするが。

 

それで、私が運ばれたのはリバンデヒの医務室で起きると巫女服ごと新品に変えられており、ホルスターや五式自動拳銃はテーブルに置かれていた。

そしてその装備品達を身につけ終わった頃に巡回にやってきたリバンデヒとエンカウント。会話の前に押し倒されて何やかんやあったがそれはまぁいい。問題は私の船体についてだ。

ここで簡単に状況を整理しようと思う。

まず第一に私は現状全く戦力にならない唯の銃を持った小娘に過ぎない。どうやら万能型生産装置は電源を落としている様で能力として行使する事ができなくなっていた。

また艦娘としての船体への介入は妖精さんによって却下されている。

第二に問題のアメストリア型戦艦一番艦アメストリアは妖精さんの反乱...独断によって以前進撃を続けており、航路から予想されるのはミッドウェーとの事。〔弾薬〕の備蓄は腐る程ある。それこそミッドウェーを吹き飛ばしてもまだまだお釣りがくるほどに。

第三にそのアメストリア型戦艦一番艦アメストリアを追いかけているのはリバンデヒ、天城、金剛、最上、熊野、矢矧、響で、上空から天城所属のF-222が監視しているらしい。

これらの状況から言える事は私無能だという事とこのままだとミッドウェーという対深海棲艦戰の橋頭堡が根こそぎ消し飛ぶこと。

尚これは無線で確認したことだから間違いないがナウル鎮守府では現存している戦力が全艦戦闘態勢で待機中らしく、旗艦はノイトハイルが勤めているらしい。心配だ。

ここからナウル鎮守府まではアメストリア型戦艦が機関最大にして10時間はかかる。90ノットしかないしから何にせよ時間がかかりすぎるのだ。

「という訳で私達はこのまま補給無しでアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの追跡を続行し洋上で今回の攻撃艦隊と合流する予定だ。異論は?」

『お姉さん、カイクルの生存率が20、30%程下がるけど良いのかな』

そう言うノイトハイルの声色は珍しく硬い。

「私もそう思うわね。幸い天城には十分な陸上兵器はあることだしここはこの戦力だけでまず突っ込むべきだと思うわ」

リバンデヒが珍しく好戦的だ。いやいつも好戦的だがそう言う意味ではなく、焦りを孕んだ危険な好戦欲だ。

「いや、今回は何処かクサイ。仮にも世界最強の戦艦であるアメストリア型戦艦が一隻食われているんだ。深海棲艦が何かしらの対処策を気づいてきた可能性が高い。このままだと深海棲艦側にアメストリア型戦艦が三隻鹵獲され私達は晴れて敵の捕虜に仲間入りだ」

死んでも捕虜はお断りだ。これは()の意見でアメストリアでは捕虜になることは最大の恥とされておりそんなものになるのならいっそ自爆して死を偽装して泥を啜ってでも生き延び必ず反撃せよとされている。実に妖怪を基盤とした軍隊の思想だとしみじみ感じるが私だって深海棲艦の捕虜などになりたくはない。

「......」

『......』

二人とも黙り込んでしまった。

さて、これからどうするべきか......じっくりと様々な可能性や危険性を吟味する為に目を瞑り、中央演算処理装置のスペックを駆使して何万何億何兆。無量大数の想定を処理してゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしているうちにも遂にミッドウェーから25kmの海域に到達してしまった。

いや、私達だって何もしなかった訳ではないぞ?天城には陸上兵器の準備を進めてもらっているし、響には本隊への連絡役と言うか、引導役として向かってもらっている。因みに護衛に矢矧をつけている。金剛はアフターヌーンティーを満喫していた。呑気ですね金剛さん。

「大丈夫ネー!アメストリア。私達はそこまで弱くありまセーン!youのことはpromiseしていマース!安心して進んでクダサーイ!」と逆に励まされてしまったので文句は言えない。と言うか信頼がくすぐったくて、何も言えなかった。嬉しかったのだ。

「リバンデヒ、少し、妖精さんと交渉してくる」

「気をつけるのよ?私は何回も救出してあげるけど積極的な支援はするつもり無いわ」

「分かっている」

リバンデヒに一言断りを入れてから己の船体へ転移する。

 

転移したとたん、視界に広がったのは巨大な銃口。19.8mm口径の銃口が向けられ体が硬直するが、直ぐに持ち直し抵抗の意思がないことを表明するために両手をあげる。

''艦娘さん何の用な感じです?''

''ごよーけん伺いますです?''

「......提案だ。」

''......なんでしょー?''

「このアメストリアには陸上兵力が無い。いやある事にはあるが上陸手段が無い。だからミッドウェイ島への制圧攻撃を仕掛けることは不可能だ。そうだろう?」

''そうです''

''ですです〜''

''そのとーおり?''

「だから、私を制圧用の道具として起用しないか?」

''......艦娘さんのメリットがありませんー?''

''私達も一七式戦車を出す感じです?''

確かに、一七式戦車ならば水密性はは高く海を渡ることも不可能ではないだろう。しかしあれは重量185t。重過ぎるし大きすぎて制圧には向かない。結局は歩兵が必要なのだ。そこは百戦錬磨の妖精さんだって分かっているはず。なら必然的に私の提案を受け入れざるおえないのだ。且つ私はこのアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの艦娘。死ぬと船体は自沈を始める。死に向かわせることは必然的に不可能になり、私も安心して虐殺できるわけだ。

「...今ならリバンデヒやノイトハイルといった陸上戦力も付いてくる」

''......分かりましたー。その提案を受け入れる感じです''

''了解ー!''

''れっつぱーりぃ〜!''

「感謝する。ついでに天城から五七式重装甲輸送車や七九式装甲輸送車をCH-4などで空挺輸送して上陸させる予定だ。妖精さん達は砲撃に専念してくれ」

''分かりました''

一先ずは成功。天城には少し負担をかけてしまうが、ナウル鎮守府から赤城も応援でやってくると思うので負担は小さくなるはずだ。合流した後の戦力はアメストリア、リバンデヒ、ノイトハイル、武蔵、金剛、榛名、比叡、霧島という戦艦部隊を主力とすることができる。後は赤城の航空隊が上空支援。航空母艦の甲板を利用して大量の空挺を行う。

 

 

 

ミッドウェイ20km手前。妖精さんにも通達し、やっとアメストリア型戦艦一番艦アメストリアは停船。ナウル鎮守府からやってきた全勢力が合流した。三個艦隊に分けることとなり、護衛が少なくなるが第一警戒態勢のまま戦闘海域へと突入する事となった。

アメストリア型戦艦三隻が前面に出る威圧感は凄い。天を貫く巨大な大和型艦橋に黒々とした煙を上げ続けるミッドウェイ島の方角をピタリと向けたまま微動だにしない500cm四連装砲。副砲の150cm四連装砲や46cm三連装砲も向けれる砲は全て向き、その2km後方を武蔵を旗艦とした戦艦と重巡洋艦の一部の打撃艦隊(回りこみ)第二艦隊。そしてさらに後方には一定間隔で航行する平べったい艦船達が追従しハリネズミののように対空砲をこれでもかと満載した軽巡洋艦や駆逐艦が護衛する。その大艦隊が描く航跡は巨大な三角形であり、まるでランスのようだ。

上空には赤の一本線が描かれたF-222が13機で大きな三角を描く編隊が幾つも空を埋め尽くし、FB-99も編隊を組んでいる。それに各編隊ごとにE-21が配備されており、AWACSとしてE-7が遥か上空にF-222の直衛の下管制している。

この大艦隊の姿は異様であるがその規模は馬鹿にならず火力から言ったら100,000,000,000t以上の火薬量を誇っている。

 

突如、リバンデヒの艦橋内に警報が鳴り響く。同時に照明が赤く切り替わり、パネルの文章量が格段に増加し、電探を反映する現海域のMAPから気象状況、風向まで表示出来るパネルには23の大小の光点が映し出される。

''敵深海棲艦が出現!戦艦5、重巡3、駆逐艦15です!''

「主砲座標固定!撃ち方始めなさい!」

''了解しましたー!''

''よーそろ〜、主砲500cm四連装砲目標の座標固定!''

''距離21300m!''

リバンデヒの前方三基の砲塔が5°/sで旋回して行き、とある角度で固定。砲身がゆっくりと上を向いて行き、停止。砲塔だけで、大和型以上な大きさを持ち砲身は400mと、陸上のトラックと同じ長さをもつ。その姿には威厳が篭り、5mな砲口は化物が開いた口に錯覚する。

 

そして次の瞬間には途轍もない周囲を消し飛ばす衝撃波が放たれその莫大な砲声と閃光は艦橋を覆い尽くす。砲身が大きく後退して行き、黒々とした砲煙と共に500cm榴弾式結界弾が飛んで行く。艦橋の分厚い防弾防爆ガラスを激しく叩き船体はわずかに揺れる。12門の斉射はこれ位の反動を要するのだ。そのデカすぎる砲声は100km先に響きミッドウェイ島にも直撃している。砲付近に駆逐艦がいようものなら確実に押しつぶされ、戦艦でさえも転覆してしまうだろう。耐えれるのは姉妹艦のみ。

船体側面の海面がクレーターのように消え、その減った面積を埋めようと海水が流れ込む。艦首が切り裂いて掻き分ける海水も埋めるのに役立っているようだ。側面の排莢口からは金色の鈍い反射を返す巨大は薬莢が廃棄され、大きな水柱を立てて海中に没する。

もう一度。しかし今回は小さめの砲声が後方から響く。振り返ると武蔵が別の深海棲艦をロックオンしたのか150cm三連装砲をぶっ放していた。側面に巨大なバルジをつけたおかげで20°くらいの傾斜に収まっているが、船体自体が大きく傾き、あれでは副砲の砲撃や対空砲での迎撃など不可能となってしまっている。さすがに100cm以上の口径を1000m以下の戦艦に載せるのは危険なのだろう。

他にも金剛型が51cm三連装砲を一斉に斉射しておりその大きな煙と砲弾が曳く赤い火線が緩やかな弾道を描き飛んで行くのはどことなく美しかった。私が撃てればどれだけ気持ちいいことか。突如、全艦からミサイルがハッチから飛び出して行き、とある方角へ一直線へ飛来してゆく。そちらの方向には分厚い雲が立ち込めており視界は悪い。しかし全ての艦に搭載した電探には関係ないようで多数の敵航空機を補足しリバンデヒの中央演算処理装置で振り分けた目標に各々がSM-3を発射したのだ。

黒々とした雲が緋々と染まりきり、被弾した例の深海棲艦航空機が残骸となって落下していった。雨のように大量の残骸が海に降り注ぎ水柱が大量に発生する。しかしそれだけでは収まらず、リバンデヒやノイトハイルの46cm三連装砲、左舷側の十基が旋回して行き、最大仰角へ砲身を向けると、発砲。30門の46cm砲の砲声は重なり、共鳴して500cm級へと大型化する。しかしそれでも一門分で、500cm四連装砲の砲声の大きさはやはり規格外なのだろう。

誰だ作ったの。

三十発の46cm気化弾は盛大に揮発性の高い燃料をばら撒きながら飛翔し生き残った深海棲艦航空機の間を通り過ぎ、自爆。次の瞬間その弾道が真っ白に染まり遅れて熱風が全方位に降り注ぐ。弾道上は線が焼き払われ航空機が消し飛ぶ。

後方を確認すると航空母艦の艦隊に急降下爆撃が行われているようだがその深海棲艦にとって獲物たる空母は私が改造し、ハリネズミと化している。船体にこれでもかと積まれた45mm対空機関連装砲は垂直に二本の六砲身を向け、ターレットリング1mと言う小さな半径で次々と撃墜してゆく。しかし深海棲艦の怨念は凄まじいもので、数に物言わせて爆弾を投下しながら急降下爆撃を敢行。機銃もずっと撃ち続けている。互いに交わされる火線の量は凄まじく、隙間が見当たらない。まるでアメストリア型戦艦の対空砲火の様だ。

深海棲艦はその身までをも爆弾とし、赤城を始めとした航空母艦の対空砲が跡形なく破壊する。防空任務の駆逐艦...暁型や吹雪の活躍は凄まじく、60ノット程で駆け巡り、バルジの片方を沈めて無理やり仰角を増やして主砲で迎撃している。また少なくも搭載した128mm三砲身対空機関連装砲が迎撃を続けている。しかし、それでも爆弾、ミサイルの嵐は完全に防ぎ切れず遂に雲龍に一発のST-11爆弾が着弾。

全通甲板に紅い花が咲き、雲龍が大きく揺れる。対空砲は沈黙し傾斜。黒煙が立ち込め空母の姿を包み隠す。しかしそれを心配する声は上がらない。誰もが信頼しているからだ。

「雲龍、被害報告を」

無線には、特に雑音が混ざることもない高音質で、船体の爆音を異常を報せる警報も無い。

「こちら雲龍です。45mm対空機関連装砲が数基煤汚れましたが、大した損害はありません。」

「そうか。なら良かった。」

被害は皆無。当たり前だ。航空母艦には戦艦の様な塔は作れない。戦闘機の離着艦に使用する為だ。従って甲板は平べったく対空砲も設置出来ない。

つまり常に弱点たる土手っ腹を晒し続けているのだ。それは攻守両者が知る事。そこを攻撃して沈んだ航空母艦は史実では少ないが発艦不可に陥る事は多発している。ならば対策する事は当然。

工廠長と揉めながら設計した甲板は型番関係なく対46cm装甲を施されており、船体装甲に至っては51cmから56cmに及びVP(バイタルパート)は対100cm装甲を施されている。

大鳳に至っては船体全体に対500cm装甲が施されている。あの時は深夜テンションで設計したからな。うん。大鳳が引き攣った笑みで「.......感謝...したら良いのかしら......うん。」と感謝?されたのは良い思い出だ。大鳳は空母の割には発育が遅れている。それは史実に置いて乗員が習熟仕切っていなかった為か、燃料庫などが装甲空母として未熟だった為か身長は低い。また前の鎮守府の冷遇か対応が冷たく会話もしなかった事が一時期あった。いや、今も引きずっているだろう。メンタル面での配慮は急務だろう。

 

と、何を考えていたのか。今はその事を考えている暇はない。

つまり何が言いたいかというと飛行甲板には46cm装甲があるから並の爆弾では傷一つ負わせることもできないのだ。HAHAHA!無駄無駄無駄ァッ!

 

「.........お姉ちゃん、アレを見てみて」

「...何だ」

リバンデヒから軍用のレーザー式双眼鏡を受け取り、指差した方向を見る。

その方向はミッドウェイの筈。何かあったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭が真っ白になり、遅れてぐつぐつとした烈火の如く怒りがこみ上げてくる。

覗いた先には、鹵獲されたのであろうアメストリア型戦艦三番艦カイクルが幾重にも鎖が張り巡らされて係留していた。しかしその姿は歪でバルジに注水しているのか喫水線は下がっており、側面には無理矢理といった具合で橋がかけられている。アメストリア型戦艦自慢の対600cm特殊装甲は無理に引き裂かれたのか爆薬でも使われたのか装甲はひしゃげ、めくれ上がっていた。そこへ橋がかけられているのだが、問題はその位置だ。

アメストリア型戦艦の中央部に設置されている、大型の万能型生産装置がある。そこへ到達するには対600cm特殊装甲を四枚程貫通しなければならず、まず深海棲艦には不可能だ。

 

その筈だった。

 

あの装甲のひしゃげ具合からわかる。あれは確実に複数の装甲をぶち破っている。その上の窪みに設置された20cm連装砲は爆散し、炎上したのか焼けた跡が生々しく残っていた。

そして、橋や桟橋には有り余る量の黒いコンテナが山のように積まれている。これだけ見ればもうわかる。誰でもわかる。深海棲艦(奴ら)はよりにもよってアメストリア型戦艦に搭載されている万能型生産装置を利用して自分たちの資材や弾薬を無限に生産していたのだ。

 

......許せない。

 

......許せない。絶対に許せない。絶対に絶対に許せない。よりにもよって愛すべき我が妹の魂とも呼べる船体を傷付けこじ開け、あまつさえ土足で踏み込んだ。血が煮え繰り返るのがよく分かる。私は、今ブチ切れている。

「............リバンデヒ、あのゴミ共だけを正確に撃ち抜け」

「分かってるわ.......言われなくてもね」

リバンデヒの一番砲塔が旋回し、一番のみが仰角を上げて行く。そして途轍も無い圧倒的な火薬量の爆音を轟かせ一発の砲弾を撃ち込んだ。砲弾は弓なりに弾道を描くこともなく真っ直ぐに飛翔。空気抵抗か赤々とした光跡を残しながら音速を超えた速度で飛んで行く500cm一式徹甲弾は桟橋に積まれていたコンテナを貫通力に物言わせて全て貫通。遅れてやってきた衝撃波によってコンテナはぐしゃぐしゃに圧縮される。一式徹甲弾はそのまま幾つもの敵施設を貫通して遅延信管が作動し20tの超高性能炸薬に点火。通常弾に比べたらわりかし小さいが、そこはC4以上の爆発力と殺傷力を持った爆薬。派手に様々なものを巻き込みながら爆発する。

これが開戦の合図だ。

「リバンデヒ」

「えぇ。『全艦に告ぐ攻撃を開始しなさい。繰り返すわ。攻撃を開始しなさい』」

リバンデヒ、ノイトハイルが停船し主砲五基全てを向け、砲撃を開始する。陸奥はその更に5km後方で砲撃を開始。三斉射すると、ミッドウェイ島の地上施設はほぼ壊滅する。といっても表面上の湾岸砲台やアチンタンクバリケードなどのみだ。地下施設は無傷だろう。

アメストリア型戦艦一番艦アメストリアが進撃を開始。

同時に天城から5機のCH-4が離陸する。私もリバンデヒに待機しているCH-31へと乗らなければならない。計6機の輸送ヘリでミッドウェイ島を制圧するのだ。しかし搭載されている陸上兵器は50輌以上だ。

赤城、雲龍、葛城、天城から離''陸''した大量の航空部隊が一気に攻めかかり、大量のミサイルを湯水の如く投下してゆく。ミサイルも爆弾も関係なく大量に投下して焼き払ってゆく。基地自体が深海棲艦化してしまっているため、もうミッドウェー鎮守府の施設は人類に使用することができなくなっている。だから徹底的に消しとばして再び建造しなければならないのだ。

だから根こそぎ跡形なく消しとばして蹂躙しなければならない。だからナウル鎮守府の持つ全勢力を持ってお掃除しているのだ。最初の三斉射。40発の榴弾式結界弾は地上の対空砲や湾岸砲台を吹き飛ばしたが、埋め込み式...特にシェルターのように奥深くに設置された砲塔は破壊することができない。

 

私達は転移で集合した後、リバンデヒの後部甲板で既にローターを回していたCH-31に乗り込む。

「お姉ちゃん、本当にいいのね?」

「あぁ。突入する。」

「お姉さん、だからと言ってM634は無いと思うなぁ...?」

そう。現在の私達の服装は異なり動きやすい黒色のBDUに五式自動拳銃を二丁入れたホルスターを両腰に下げ太ももにマガジンを突っ込むダンプポーチを付ける。これは自衛隊も愛用するマガジンポーチで私達は弾種の異なるマガジンに換装するときに活用している。背中には複数のマガジンを入れ右の太ももにはM84やM64などの様々な種類の手榴弾を下げる。

背中にはスリングで下げたM145-SA1が畳まれ、私の手には4mの大きさを持つM634機関銃がある。リバンデヒは殆ど同じ武装だが追加でA-10(フルオートショットガン)を下げておりM145にはB-503というグレネードランチャーを装備している。

ノイトハイルは五式自動拳銃だがM145ではなくM147を装備し他は特につけていない。

別にCH-31自体にも機銃は据え付けられているけどな。気分だよ

F-222やFB-99が撤退して行き、龍驤から離陸したAH-39やAH-60、AH-182が出撃したCH-4の護衛として陣形を構成する。搭乗スペースに腰掛けると、M634の銃床を肩に当てる。

リバンデヒとノイトハイルは反対側に乗り込んでいる。

「妖精さん、離陸してくれ」

''リョーカイです!''

CH-31の航空機用粒子エンジン二基が更に出力を上げ耳を聾する轟音となって機体を上昇させる。機首が下を向き高度を上げながら上昇。視界は広がって行きリバンデヒの後部甲板が遠ざかって行く。後ろから見るアメストリア型戦艦はまた違った顔を見せ、印象はガラリと変わる。大和をそのまま大きくしたような外見だが至る所に88mm四砲身対空機関連装砲や128mm三砲身対空機関連装砲がこれでもかと設置され甲板にはタイルのようにミサイルハッチが敷き詰められている。しかし第一甲板の一つ下。20.3cm連装砲や30cm連装電磁力砲と同じ高さにあるF-222やCH-31達の飛行甲板があり、そこだけはミサイルハッチも45mm対空機関連装砲も無い。

そろそろだ。高度が800mを超え、陣形に加わると黒々とした煙を上げる蹂躙されたミッドウェイへと向かう。その間に私はボックスマガジンに入っている弾薬が青色の19.8mm超圧縮式時限信管炭酸バリウム弾であることを確認するとコッキングレバーを引き初弾を薬室へ送り込む。気分はガンナーだ。しかし高揚はない。これからの最優先目標はカイクルの救出。

救出もせずに蹂躙したのには訳がある。まず人質を得るときは必ずといっていいほど死ににくい場所へと幽閉するか連行する。ミッドウェイ島の地下には200を越える地下トンネルが張り巡らされている。理由は様々だが大きいのは鎮守府への直接攻撃下での安全な移動のため、上陸された時の妨害のため、隔壁を閉鎖して要塞下するためなどが挙げられる。

ならばカイクルという死ねば船体を沈んでしまう存在を簡単に死ぬ場所に収監しない筈だ。と考え容赦無く()()()()()()1()0()m()()()()()を吹き飛ばしたのだ。

 

CH-4が後続に続く中私達の乗るCH-31はミッドウェイ島上空に到達した。

バババババというヘリ独特の轟音を鳴らしながら接近するが、接敵は今の所ない。AH-39が一機離脱して敵のヘリを撃破していたが気にはしない。

艦娘パワーをフルに活用して索敵して行くが特に敵影は認められない。見渡す限り全て破壊されており、地下の残骸か穴が開いている。

機体に火花が散る。どうやら雑魚が地下から湧いてきたらしい。弾道を中央演算処理装置で演算して割り出すと、そこへM634(19.8mm重機関銃)をむけ、引き金を絞り続ける。

見ると雑魚は個人を特定できない黒々とした人型であれが深海棲艦での細かな作業や上陸を行う歩兵役なのだろう。持つ銃火器はM1ガーランドやグリースガン、トンプソン短機関銃だ。つまりWWII時代の米国兵器。CH-31やCH-4には戯れでしかない。

肩に重い反動が襲いかかるが意に介さず横薙ぎに掃射してゆく。閃光が迸り砲身が何回も前後する腕位の薬莢がジャラジャラと吐き出さられ地面に転がってゆく。発射された科学弾は地上の的を粉砕して行き大爆発を起こしてゆく。私と()の最も愛する妹を傷つけた奴らだと考えるとイライラしてくる。奴らに感情がない事が悔やまれる。もともとアメストリア軍のスタンスは恐怖の拡散、搾取だ。妖だから人々の畏れがなければ弱ってしまう。だから殺し方は非常に冒涜的で残虐極まりない。アメストリア陸軍では部隊配備の初日に「敵には最低100発撃ち込め」と言われるらしい。無論7.92mmを100も浴びれば跡形もなくなるのだがこれを群をなす敵にやれば効果は抜群だ。恐怖は伝搬しパニックへと陥る。早く降伏しなYO☆って分かりやすく伝える訳だ、しかしアメストリアは捕虜を取らない。異性に対してはやたら厳しいのが陸軍。降伏しても皆殺しになる。これは復讐の連鎖を防ぐ為、と言う理由らしい。確かに正論だから文句は言わない。

アメストリア空軍ではその馬鹿みたいな装弾数を鉾に消し飛ばす(・ ・ ・ ・ ・)ことを良かれとしている。

海軍は...しらん。船乗りの礼儀があるから、虐殺はしないらしい。同性贔屓な所があるのはお察しだ。

 

さて、AH-182が着陸ポイント周辺を掃射して確保するとそこへ飛び降りる。他のCH-4は後部貨物ハッチを全開にすると地面スレスレを飛び去り量子変換器で出現した五七式重装甲輸送車や七九式装甲輸送車を次々と投下して行く。瓦礫となった平原に降下した輸送車は瓦礫をその重量で踏み潰しながら停止し数瞬の時間を持って再び動き出す。可変サスと搭載された車輪が細く上下し瓦礫を踏破し、モーター音を伴って砲塔が旋回する。

大量に降下した五七式重装甲輸送車と七九式装甲輸送車は各班に合流し分隊ごとに行動を開始する。私達もCH-31に合図して帰らせると各々の武装を展開。M634はCH-31に置いてきた。取り回しに難があるし。だから持ってきたM145に持ち替え、三人で分隊として行動する。敵施設への進入口を探さなければならない。

 

時折45mmの砲弾が発射される低い発砲音をBGMに145式歩兵小銃をフルオートで敵の人型を跡形もなく吹き飛ばすと入り口に飛び込む。

硬い材質に軍用ブーツがぶつかる硬い音が地下通路に響く。最も、瓦礫が散乱し地上から貫通した穴がある時点で”地下”トンネルとは言えないが。

被弾率を下げる為に壁側に張り付き制圧してゆく。時々深海棲艦が襲撃をしてくるがどれも散発的で統制のない動きだった為に特に問題にはならなかった。

照門と照星を合わせてあとはトリガーを数秒間絞るだけ。簡単なお仕事です。

 

 

 

 



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68.再開のシュチュレーションがこれって...

ども、早めに出せた諷詩です。
最近Fateシリーズが盛り上がっているようですね。残念ながら2017年らしいですが。
あとSAOも来年。嫌がらせでしょうか。今年をどう過ごせと...


 

 

 

 

誰だ簡単なお仕事ですって言った奴。

現在絶賛大乱闘中なアメストリアだ。さっきから壁に張り付いたまま一切の身動きが取れないでいる。どうやら深海棲艦もただの馬鹿ではないようで閉じかけて停止している隔壁を土嚢で補強してM2をターレットとして配置。ここで侵入を食い止める防衛線にしているらしかった。おかげで私達は此処に釘付けとなり動けない訳だ。

しかし私達も馬鹿ではない。右の太ももにあるポーチから手榴弾をおもむろに取り出すと安全ピンを抜きとり、信管となるカバーを指で弾くとぽいっという擬音がなりそうなほどの手軽さでなげいれる。その後はM145-S1Aを構え、何時でも突撃できるように。

「3コールで突入だ。...3」

するとどうでしょう。あら不思議。M2の真下で手榴弾が見事に爆発しM2が暴発。弾薬に誘爆して更に大爆発を起こした。12.7mmの弾丸が辺り一面に飛び散り跳弾を繰り返す。無論曲がり角であるこちらにも幾つかの跳弾が襲いかかるが全てノイトハイルがM147で迎撃。弾丸当てという超高等テクニックで全て叩き落としている。優秀で何より。

「...2」

爆発が落ち着きM2だった物が炎を上げて炎上するだけになったのを確認する。

「...1。Angriff!(突撃せよ)

まず私がM145-S1Aを構えながら通路に体を出し第一の制圧。丁度敵が一ついたのでフルオート。リバンデヒがそんな私の後ろから飛び出し私のフルオートを援護射撃として一気に進んで第二の制圧。そしてゆっくりと警戒しながら進んで行くノイトハイルが敵にM147でフルオート。これが第三の制圧。私の145式歩兵小銃と147式軽機関銃のダブルフルオートは敵を粉々に粉砕し通路に黒い血痕を大量にばら撒いた。

そのままハンドシグナルでfollow me!と伝えると警戒を怠らないまま歩みを進める。

通路は曲がり角か直線しかない為カーブなどの面倒極まりないルートはない。それがせめてもの救いだろうか。また現れたM1ガーランドを乱射しながらやってくる雑魚をM145-S1Aのフルオートで粉砕しながらも歩みは止めない。

 

あの後も3ブロックほど制圧は無事に進み1階層分降りることに成功した。

リバンデヒが後方を警戒し私は前方。ノイトハイルはその間でどちらにでも対応できるようにM147を構える。このスタイルは効率が良いようでサクサクと処分することができた。偶に奇襲のつもりなのか後方から襲い掛かる深海棲艦がいたからだ。

 

この先は見取り図によると開けたスペースで、幾つかのエリアへ繋がる通路が集まっているらしい。一応と言った形でM145-S1Aを構えながら進むが、如何にも怪しい。

気配を一切察知することができない。あぁ、これは艦娘パワーでは無く今までの戦闘経験で培った感覚と()という実は一番のチート補正があるからだ。その二つの技能を持ってしても深海棲艦の気配が察知できないのだ。これは怪しいとしか言いようがないだろう。

念のためマガジンを落とし焼夷弾に切り替えて置く。

「リバンデヒ、B-503に装填しておけ」

「了解したわ。それにしても薄暗いわね」

そうなのだ。これも私が警戒する原因の一つで、ある意味自業自得とも言える。等間隔に設置された蛍光灯はかなりの量が割れ、照明としての役割を果たすことが不可能となっている。その原因が私達の徹底的な砲撃と爆撃により衝撃波。蛍光灯とてガラス製の筒だ。500cmの着弾時の衝撃波には勝てないし勝つことはありえない。

カツカツと隠すつもりもなく堂々と歩いているが襲撃は無く銃弾一発でさえ飛んでこない。何か物足りない気分になってしまい、血が熱く発熱する。

......いかんいかん。戦闘狂の気がコントロールできなくなるところだった

 

通路を抜けーーーようとして慌てて身を壁に寄せる。さっきまでいた位置には幾つもの銃弾が飛んできておりあのまま進めば私は蜂の巣になっていただろう。

喧しいほどの銃声のオーケストラは途切れることを知らず軽く連続した音から重く連射速度の遅い音まで様々な銃声が混ざり合いカオスなコントラストを描いていた。要するに不協和音である。開けた空間には深海棲艦が待ち伏せしていたのだ。

土嚢を積み上げバリケードとしM2重機関銃を山の様に配置して圧倒的な弾幕を展開。

床には意地でも侵入させないつもりか対戦車地雷がばら撒かれている。

そんなに殺したいんですかね。

そこから続く筈の通路は鉄板で封じられ、深海棲艦の本気さが伺える。

同時に疑問も湧き上がる。深海棲艦ってそんなに知能あったっけ?という件だ。今までの海戦の通り深海棲艦は正面から突っ切って正面からぶつかり合う事がメインの幼稚な戦術に従って攻撃してくる。しかし最近の戦術は裏をかいたり囮を使って複雑な罠を仕掛けたりと深海棲艦らしくない、人間の狡猾さが現れた攻撃が多くなってきている。

事実私が出向した時に市街地で爆撃機飛ばしてきたしな。

 

...

 

.......待てよ。何故私が小学校に出張授業する事が深海棲艦にバレていた?

偵察機?そんなものが飛んでいたら即刻撃墜していたし電探には反応がなかった。大気圏にも天城のF-222やE-21達がいた。だから自力で探知する事はできない筈なのだ。

密偵?それとも、書類が漏れた?誰によって?スパイだろう。深海棲艦がスパイを放ってきている?では誰が?

.......私が日本に来てから接触した人間は少ない。

憲兵に学生、他の提督にうちの提督の父親。大本営の例の大将に広報官。

これ位しかいない筈なのだ。遠方からの監視?確かに慰安旅行では監視があった。しかしアレはラングレーや特警だろうと予測をつけていた。しかし違ったのだろうか?

まさかの、深海棲艦地上部隊の監視だったのだろうか。荒すぎる監視網も納得できる。

まぁ私達の行動は筒抜けだろうとは考えていたが直接監視していたとは.......待てよ?それだと出向が漏れていたのは分からない。潜水艦だろうと何だろうと全天レーダーやソナーは捉える。移動中は全て消してきた。あ、だからばれたのか。

しかし陸上で監視されていたとはいえ小学校に出張授業をする事がばれていたのは腑に落ちない。まあ気にしても変わらないからこれ以上の思考は破棄する。

 

けれどまぁ、よくもまぁ基地内で重機関銃をぶっ放せるよなぁ...

「武蔵、聞こえるか?」

『...よく聞こえている。何やら騒がしいがどうした?』

「所定の位置についたか?」

『無論だぜ。指示を乞う』

「100cm以下の小口径弾を使用しての砲撃を開始せよ」

『大丈夫か?』

その言葉は私達がいるのに地上を焼いても大丈夫なのか?という問いだろう。無論だ。

陸上兵器も地下に侵入を開始した様だし徹底的に焼かなければならない。

「無論だ。攻撃開始」

『了解した。この戦、武蔵に任せてもらおうか!』

いえ、貴女の主砲は150cm三連装砲だから副砲しか撃てないんですがそれは。

しかし第二艦隊には他にも艦艇はいる。次々と主砲を放ち高角砲も俯角をとって連射してゆく。各艦艇が重機関銃の様に唸り赤い火線を大量に投射する。砲煙はここからは見えないが恐ろしい事になっているだろう。

「リバンデヒ、グレネード」

「了解」

一言だがリバンデヒは理解してくれた様で40mmグレネードを装填し発射。

ポンッという気の抜けた音と共にゆっくりとした速度で飛んで行くと空中で爆発。大量の破片を散らし鉄の矢を全方位に降り注がせる。撃ったのは40mmフレシェット弾。

フレシェット弾と言うのは小さな鉄の矢をこれでもかと積み込んだ砲弾の事で破片手榴弾より拡散し突き刺さる。また爆発する威力は高く貫通力にも優れているため使いやすい。しかし全方位に撒き散らすため味方にも飛んで行く可能性があるため使い所は限定される楽しいグレネードだ。

深海棲艦は血を流さない。しかしM2に突き刺さった鉄の矢は暴発を招き爆発。

同時に三人同時に飛び出しフルオートで射殺してゆく。AIMは幸い優秀な為姉妹との絶妙な連携で虐殺を遂行する。阿吽の呼吸ともいうべき行動のタイミングの一致で制圧にかかったのは5秒。

そのまま突撃し土嚢を蹴り飛ばすとM145-S1Aを下ろし散らばっている土嚢の一つを掴み上げる。そして息を整え利き脚を僅かに下げ体を捻る。

「...シッ!」

鋭い息を吐き思い切り腕を振り下ろす。鞭の様にしならせ最も力が伝わる投げ方で。

途轍も無い馬力で飛ばされた土嚢は重力と慣性によって鋭角の三角形に姿を変えそのまま鉄板に直撃。派手にひしゃげた音が鳴り響き衝撃波で鉄板がくの字に変形し吹き飛ばされる。そこへ私は抜き取った五式自動拳銃を撃ち込んで行く。念の為だが待ち伏せていた深海棲艦は居ないようだ。

「行くぞ」

「......えぇ。」

「......はぁ...」

なんかドン引きされているが私は気にしないもん。気にしないったら気にしないもん。

五式自動拳銃をホルスターに戻しつつM145-S1Aを構えレールにつけておいたタクティカルライトを点ける。限定的ではあるものの明るい視界が確保された。

一応タップで7.92mmを数十発送り込んで見るとあら不思議。闇に潜んで待機していた深海棲艦に命中し残骸に変える。

 

 

 

「ノイトハイル、ここの下か?」

「うん。どうやらこの電子ロックの扉の下に階段があって重要な営倉があるようだね」

「よし。ノイトハイル、撃て。」

「りょうかーい♪」

妙にルンルンした声でノイトハイルがM147を構えると40発/sという膨大な連射力で7.92mm弾を送り込んで行くと最初は跳弾ばかりしていたが徐々に削れそこにピンポイントで送り込まれる7.92mmが抉り扉を削り取ってゆく。

通常の銃火器なら耐えられたであろう防弾扉は時間逆行術式を搭載した無限弾倉には勝てなかったようで穴だらけになって遂に力尽きた。蝶番も粉砕された扉を廊下に投げ捨てるとM145-S1Aを構え慎重に歩いて行く。こういうところで奇襲してくる奴がいるかもしれないし。隅々まで警戒したまま制圧をしてゆくと薄暗い照明に照らされた階段を発見。リバンデヒが後方を警戒し私が先頭に。中間にノイトハイルを挟んだいつも通りの陣形で制圧しながら階段を降りてゆく。金属製なのか歩くたびにカツンカツンと乾いた音をジメジメとした空間に響かせている。そして一番下に降りた先には覗き穴が鉄格子で封じられた扉。

鍵の部分と蝶番を7.92mmで排除して蹴り倒すとそこは赤いランプに照らされた閉鎖空間。

等間隔に鉄の扉が広がる不気味な光景だった。しかし私が扉を踏み倒した時に悲鳴が聞こえたことから艦娘が生存していることが確定した。

「リバンデヒ、片っ端から扉を破壊して救出しろ。ノイトハイル、ここで敵を排除しろ。誰一人入れるな?」

「「Verständnis!」」

かくいう私も扉のドアノブをM145-S1Aの銃床で叩き壊すと力尽くで取り外して艦娘を救出する。そこにいたのは捕虜として捕まっていた翔鶴。

こんな時でも冷静さを失っていないのか背筋を伸ばして静かに座っていた。しかし肌は土気色で所々装束は赤色に汚れている。少々やつれているがその琥珀色の瞳は決して生気を失っていない。

「.......待たせたな」

「......ごほっ、...いえ、大丈夫です。それよりも、瑞鶴は...」

「大丈夫だ。」

多分隣だろう。今リバンデヒが突入した為大丈夫な筈だ。

翔鶴に手を差し伸べると微笑みながら手を取り立ち上がる。しゃんとした立ち方には気品が感じられ、余裕を持っている。すごいメンタルだ。

翔鶴と共に営倉から出るとリバンデヒが救出したと思われる陸奥が立っていた。

リバンデヒ仕事早いな。いつもそうであればいいのだが。

 

続けて扉を粉砕して中へ入ると随分と憔悴した様子の加賀が壁にもたれかかっていた。

これはやばい。色々な意味で危険だ。すぐに駆け寄ると手首を取り脈を確認。

.......あることにはあるが弱々しく今にも途切れそうだ。

危篤...ではないが危険域に到達していることは事実。すぐに搬送する必要があるだろう。

「ノイトハイル!治癒符を持ってこい!」

「わかった〜!」

すぐにノイトハイルが作り出した治癒符を加賀に貼ると幾分かマシになった様子。

治癒符というとはこういう衰弱や負傷状態から回復させてくれる便利な符だ。ぺらぺらの和紙にくったくったような良く分からない文字がこれでもかと敷き詰められた紙幣ほどの大きさの紙切れは絶大な効力を持つ。因みに「符」というのは山奥に暮らしていた引きこもりが発案した命繋ぐ術だったという。山奥にて己の厳しい修行を積んだ山伏が野菜などの食料を得る手段として加護がありそうな感じで作成した木製の札を貨幣のように使用したのが始まりだとか。そこに目をつけたのが神社。今では『御守』と名を変えているがあれが陰陽術の札と起源は同じなのだ。神社にとっては財政をやりくりする上での苦渋の策だったのだろうが。

そんな事情を全く無視した陰陽術に精通したアメストリア國ならではの野戦治療法だがこれは効果がある。

 

加賀を救出した艦娘達の側に寝かせると次の扉を破る。

「.......あらあら〜?アメストリアさんじゃないのぉ........」

普段と変わりない口調で迎えたのは能天気な性格の愛宕。しかし普段の余裕は無く強がっているようにも見える。その独特なコートにも見える服は中破したように破け切り裂かれている。それを見るたびに胸が締め付けられ、深海棲艦への憎しみが増幅してゆく。良くも私の愛しき艦娘達をッ!という感じにな。

「うむ。遅れたな。救出に来た」

「よかったわぁ...早く高雄姉さんもよろしくおねがいするわ...」

「そちらはリバンデヒが救出した。」

愛宕に肩を貸して営倉から出るとちょうど瑞鶴と翔鶴が抱き合っていた。うむ眼福眼福。

 

 

「........何故だろうな。私にはカイクルが見当たらないのだが、私の目は節穴になったのか?」

「そうなったら私が飼ってあげるから安心しなさい。けれどカイクルはいないわね。」

「他にも大和たちも居ないねぇ...」

そう。営倉全てをこじ開けて艦娘を救出したが一部いないのだ。

カイクル、大和、長門、神通がいないのだ。お陰で陸奥や川内は随分と憔悴し落ち着かない様子だ。

「.......あの部屋にもいなかったしねぇ........」

営倉の並ぶ廊下の奥に、蒸せ返る濃厚な血の匂いが充満する部屋があった。

分かりやすく言うと、拷問部屋。無理矢理にでも聞き出したい情報があったのだろう。

翔鶴や瑞鶴によるとカイクルが連れて行かれるのか目撃したらしい。あと長門の悲鳴も。

つまり一歩遅かった。深海棲艦がすでに連行したあとだったのだろう。だから各地で殺しに来たのでは無く足止めが多かったのだろう。

「取り敢えずまずは脱出が先だ。妖精さん、ここの近くに七九式装甲輸送車か五七式重装甲輸送車を持ってこれるか?」

''お安い御用です!''

無線の向こう銃声や45mm砲の連続した砲声が聞こえるなか妖精さんがはっきりと断言した。

同時に廊下も此処も大きく揺れ、爆発音が響きわたる。爆発音に混じってビルを取り壊す時のような音が聞こえることから強行突破してきているのだろう。

''アメストリアさんアメストリアさんできるだけ端によってほしい感じです?''

''突き破る感じです?''

「了解した。総員聞いてくれ。動くけるものは重傷者を背負って端に移動してくれ。」

「「「了解!」」」

艦娘達を避難させて妖精さんに一声かけると、一際大きな金属のひしゃげる音がすぐそばで響き、その度に艦娘達がびくりと肩を揺らす。相当怖い思いをしたのだろう。幸いか精神がやられた艦娘はいないようだが心身共に激しく衰弱し加賀は未だに危険域を上下している。

''艦娘さん、突入する感じです?''

「やってくれ」

すると、爆発音か踏み潰す音が隣で響き先ほどまで艦娘が集まっていた壁がそこから押されたように変形を始める。巨大な力で押されたのであろう壁は既にボロボロになり一部は亀裂が入り眩しいほどの光が漏れ出している。成る程。此処まで五七式重装甲輸送車を持ってきたのか。妖精さんもやることが違うなぁ...なんと言うかいつも通りアグレッシブだ。

壁の一部が引き裂かれ、明らかに太く、大きなマズルブレーキがひょっこりと姿をあらわす。そしてにょきりと砲身がそのまま突き出してくると壁全体が次々と布の様に引き裂かれて行き五七式重装甲輸送車の灰色では無く鋭い傾斜装甲を持った黒色の車体が覗く。

重いモーター音と共に砲身が旋回して行きナイフの様に...切れ味の悪い鈍らが無理矢理押し除けた様に金属の板を除去すると巨大な車体が一気に突入してきた。

あれれー?おかしいぞー?(KONANN感)なんで車高がこんなにも高いのかなあ?五七式重装甲輸送車は3m近くあった筈だけどなぁ?なんでこんなに大きくて車体の後方が埋まっているままなんだろう。私不思議だなぁ......はぁ、もういいや。なぜか突入してきたのは一七式戦車だったのだ。

格納式のランプを点灯させ無理矢理力任せに進んできたのだろう。砲塔には配管や壁の残骸が盛りだくさんにトッピングされ、中々にカオスだ。

しかし地上から地中深くの此処まで強行突破するなら一七式戦車をチョイスしたのは正解だろう。五七式重装甲輸送車も七九式装甲輸送車も装輪式。分かりやすく言い換えればタイヤを転がして走るやつなのだ。これは道路などの整地では良いのだろうが山岳などの不整地には向かない。しかしメリットは多く履帯式と比べ修理が楽だ。なにせ破れたタイヤを交換するだけで良いのだから。しかもサスペンションによりそれぞれが独立した動きをできるため横転しにくい。陸軍では他にも三一式特大型輸送車両や二五九式装輪装甲輸送車、七式装甲車輌、一式重武装車輌は装輪式だ。しかしデメリットも多くタイヤとあって予備を積むと嵩張るのだ。だからわざわざ外付けの装備の面積を削ってタイヤを付けないといけないし、何よりダサい。弱そうに見えるのだ。アメストリアにとっては関係ない問題だ。

比べて履帯式。キャタピラーを使用した兵器は安定する。不整地も整地も楽々走破し踏み潰す。しかしこれは無限軌道。帯を回転させて進んでいるため一枚でも履帯が破損したら走行不能に陥る。これはタイヤの方が便利だろう。戦場の真っ只中で履帯が切れたらあとは大惨事だ。固定砲台と成り果て敵にとっては良い的だ。

良いところでtierの低い戦車に履帯を切られて撃破された戦車ゲーマーも少なくないのではないだろうか。そういう危険性を伴うし何より重い。ゴム製のタイヤと違ってこちらは直に地を踏みしめるため全金属製だ。形も複雑で数も多い。修理や整備には時間がかかるだろう。これもアメストリアにとっては関係ないことだが。ほんと時間逆行術式万能だな。これ作った人天才じゃね?

兎も角、突入してきたのはよりによって全長17.7mの超重戦車だった訳だ。

砲塔のハッチが自動で開くと妖精さんが這い出してきてこちらに敬礼してくる。当然返礼しリバンデヒとノイトハイルに視線を送る。すると優秀な二人は硬直していた艦娘達を誘導し一人ずつ一七式戦車に入れてゆく。

''どんな感じですか?''

「......全員が慢性的な栄養失調と脱水症状。尋問を受けたのか負傷している者が多数だ。特に加賀は危険域を脱していない。早急に医務室に運べ。」

''りょーかいしましたー、しかし足りない感じです?''

「.............間に合わなかった。既に連行された後だ」

ギリッ、と歯をくいしばる音が漏れてしまう。私達がもっと早ければ連れて行かれなかったかもしれない。連れて行かれたのはカイクルに大和、長門、神通。

カイクルと長門は拷問された可能性が高いし、非常に落ち着かない。心配で心配で堪らない。

『武蔵からアメストリアへ。報告だ。たった今ミッドウェイ島を焼き終わった。後は貴様らの脱出を待って最終砲撃を開始する。』

「了解した。お疲れだ」

『それよりも、我が姉は無事か?』

「......本当に申し訳ない。」

『.......................。そうか。』

「既に連れて行かれた後だった」

『......そ、そうか...』

ん?何か二人の間で語弊がある感が否めない。

『帰還を心より待っているぞ』

「うむ。全員乗り込んだか?」

「ええ。私達以外は。」

「なら出してくれ」

私達も車内ではなく車体の上に飛び乗るとちょうど良いシャーシの部分に腰掛け、M145-S1Aを片手に警戒する。よくソ連兵がやっていた乗り方だか一七式戦車は凹凸が少ないため座りやすいのだ。

 

一七式戦車が走り出し踏み潰されて坂道に成り果てた地下通路を登って行くと不意にキューポラが開いた。

''アメストリアさんアメストリアさん。アメストリア型戦艦一番艦アメストリアの艦長さんより通信です''

''電信な感じですー?''

「了解。どうした?」

''私達の目的は一応完遂されました。なのでアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの指揮権を正式に返却する感じです''

''艦娘さん復活な感じなのです''

「...受けた。妖精さん、全基オンライン。主砲九一式徹甲弾装填。副砲に気化弾を詰めておけ」

''かしこまりー!''

''ガンガン行こうぜ〜!!''

 

艦娘達を乗せた一七式戦車が地上に到達するとそこはただの平原と化していた。残骸と呼べるものはほとんど残っておらず全てが灰と塵に変化していた。どこぞの緑の悪魔より悪質なリフォームだ。根こそぎ吹き飛ばして対価は貰わない。寧ろ私達が弾薬を湯水のごとく消費して『吹き飛ばしてあげている』のだ。

一七式戦車の後方にはいつの間にか残骸をトッピングした五七式重装甲輸送車と七九式装甲輸送車が合流しており、確認できる限り深海棲艦の反応はゼロ。洋上を見ても美しい艦影が優雅に浮かぶ姿のみ。島の裏側には武蔵もいる。正面側にはアメストリア型戦艦三隻に金剛型。

後方には航空母艦が布陣しているだろう。

隼が向かってくるのを眺めながら、決して良い顔をしていないリバンデヒに報告を受ける。

「どうだった」

「ダメね。どこにもいないわ。あとこじ開けられた穴の他に船底に大きな破口があって水密弁が閉まっていたわ。何かあったようね」

一応、リバンデヒにアメストリア型戦艦三番艦カイクルの内部を調査してもらっていたのだが、無駄足に終わったようだ。まぁ成果はあったのだろう。船底に穴となると相当だ。船底というのは常に海水に浸かる場所。アメストリア型戦艦は速力を出さなくても莫大な海水をかき分けて進むため船底に掛かる負荷は途轍も無い。だから船体上部とは比べ物にならない程強固で精密な設計が施され、ましてやこれは軍艦。魚雷対策に装甲も貼られ耐久性は半端ない。

多分対1000cm位あるんじゃ無いだろうか。多分他の艦艇も同じようなものだ。あ、暁型は水上スキー型に魔改造したからもっとだな。特にキールとか。

 

「全艦全砲門をミッドウェイへ!撃ち方...始めェ!」

その一声を機に全艦が持てる砲を放ちは始める。それは途轍も無い轟音となって響き渡り島の周辺全域が濃い霧に覆われる。しかし砲撃が止むことはなく、決して止めることなく500cm四連装砲を、150cm四連装砲を、46cm三連装砲をただひたすらに撃ち続ける。ジャラジャラと主砲の薬莢が排出されて行き、4本の砲身が順に上下して行き大口径といえないレベルの砲弾が毎秒のペースで放たれ曲線を描かずに着弾。徹甲弾だからそのまま地中へと深く突き刺さり時限信管が起動し大爆発。これが60門。それに副砲や30cm連装電磁力砲、20cm連装砲の片側が発砲し使用されていない側のミサイルハッチからはトマホークが乱れ撃ちされる。

しかしそれを同時にやって自動射撃統制装置や姿勢制御装置、三次元レーダーや対空電探を同時に動かしても大して負荷のかかっていない中央演算処理装置。戦艦からは副砲を含めて大量に打ち込まれまるで再び噴火した様な形相を呈している。

不本意だが硫黄島の砲撃のようだ。数えられないほどの砲弾が着弾し地下深くを爆破して掘り下げて行く。あ、そうそう。鹵獲されていた艦娘達の船体は別の島に纏めてあったらしい。今頃第三艦隊が確保している筈だ。

兎に角撃って撃って撃ちまくる。情け容赦なく処分する。うーむ。この艦隊ぐるみのフルボッコはなんとも言えない快感をもたらしてくれる。こう言い知れぬ達成感とストレス発散にはもってこいなのだがざっと計算したところ、今回のMI/AL作戦では100万単位の弾薬を消費している事になる。まぁ私達が工場になるけど気にしない。今回は無講礼だ。鬱憤を晴らして暴れまわって構わん。〜〜♪

 

「全艦、砲撃止め。各艦は残弾を報告せよ。」

『リバンデヒ、残弾はそうねぇ...あと三斉射出来るくらいかしら。』

十分じゃ無いですかやだぁ...

『ノイトハイル、えへへ〜全部使い切ったから万能生産装置を起動してるよ〜』

『武蔵だ。こちらは全て使い切った。補給をしたいな...』

『Heyアメストリアー!All-out attackシテクレテthank youネー!Mysister'sは榛名が5attack残ってるけどme達はもう無いネー。lm'sorry...And later treat the tea!』

「ふむ、後でお邪魔しよう。」

今の所戦闘できるのはリバンデヒと榛名。リバンデヒは万能生産装置で各艦に補給兼護衛をしてもらうとして、あと4隻くらいは欲しいな。

『龍驤や。こちらもF-222達は現在補給中やから今飛ばすのは無理やなぁ...』

『赤城です。こちらも現在機体を総点検させているので少し厳しいです...』

「そうか...」

これはアメストリア型戦艦からF-222改を飛ばすしか...

『大鳳です。こちらは余裕がありますが如何しましょうか?』

「それは本当か...ならば三個編隊程飛ばしてくれ。」

『編成は?』

「...F-222とGF-21だけでいい。管制はこちらでやる。」

『了解しました。』

これで大鳳の航空支援をゲット、さすがは大鳳といったところか。こうなる事も想定して飛ばせる機を温存していたのだろう。

『こちら最上だよ。僕達は少し厳しいかなぁ、ごめんね』

「いや無理をしてもらうわけにはいかん。弾薬の心もとない艦を中心に艦隊を編成して撤収を始めてくれ。榛名はこちらに」

『了解です』『了解いたしました!』『了解いたしました』

「他に弾薬の余っている艦はいないか?」

ダメ元で聞いてみる。まぁいないだろーーー

『青葉ですぅ!衣笠は無理でしたけど私は行けますよぉ〜!』

『龍田よぉ...私達も結構余っているわ。あら天龍ちゃん暴れれなかったからって喚かないの』

『だってあまり撃つなと言われて納得できないに決まってるだろ!』

『あらぁ?そんな事言って良いのかしらぁ?』

『アッハイ。』

「........了解した。」

なんかすっかり尻に敷かれているな。天龍。天龍幼稚園(笑)とか言われているが実は一番苦労しているのでは無いだろうか。頑張れよー(棒)。

『こ、こちら吹雪です!アメストリアさん!至急報告したい事が...!』

「どうした。落ち着いて報告してくれ」

『は、はい...実は先程電探に不審な反応があって...反応から深海棲艦では無いんですが船籍が表示されないんです...!』

それは...明らかに違法漁船か何かだろう。しかしこのタイミングで不審船とか怪しすぎるんだが...一応妖精さんに指示を出し電探を起動させるとすぐに捕捉できた。恐らく私達のドキッ☆冬の大掃除大会!(島の地下が)ポロリもあるよ!が開始されてから慌てて逃げ出したのだろう。そう大して離れていない。

「よく報告してくれた。随伴艦に榛名!」

『はいっ!』

「青葉!」

『はい〜!』

「天龍、貴官には龍田と共に臨検隊をやって貰いたい」

『おう!任せとけ!腕がなるぜ...』

『私もオーケーだよ』

「ならばこちらに来てくれ。重火器を配布する。」

 

「これは何なんだ?」そう問う天龍の指差す先には艦橋のテーブルに乗せられた二丁のアサルトライフル。一見HK417に見えるその突撃銃はアメストリアにおいて親衛隊が使用している法務実行部隊用にカスタムされたM145-S1Aの派生系。M69。以前呉に出向した際に艦娘達に渡した銃火器だ。あ、アレまだ返却してもらってないや。まあ良いか。

「コイツはM69。取り回しの良い歩兵小銃だが、命中率や射程は高精度でマークスマンライフルとしても活用できる。」

「まーくすまん?」

「あぁ、マークスマンライフルというのは戦場用にカスタムされたり設計されたライフルだ。セミ、フルオートが出来る狙撃銃だと思ってくれ。」

「へぇ...すげえな...」

天龍がしみじみと見つめる中、龍田は何の戸惑いもなくM69を掴むと銃床を肩に開け脇をしめる。足は肩幅に力を抜いて。なぜか様になっていた。教えた覚えは無いのだが。

「うふふ...これは良いわねぇ...もらって良いかしら?」

「それは構わないが...」

やはり才能だろうか。一発でWWIIの小銃とはかけ離れた形をしているのに扱いをまるで知っているかのように手に取っている。しかもマガジンも装填しコッキングレバーも引いて初弾を送り込んでいた。お主天才か。そこまで分かるとかマジ無いわー。マジやばいわー...

「さて...全艦三角陣形にて前進せよ。第三戦速!」

その指示で一斉に戦艦も重巡洋艦も軽巡洋艦も関係なく前進を始める。

その馬力は凄まじく海水を一時的に消した程だ。かく言う私もゆっくりとした時間をかけて前進を開始。速度を上げて行く。上げすぎると榛名達が転覆するからな...

上空には爆撃機...否F-222の編隊が到着し並走している。

大鳳の所属を表す灰色の三本線が描かれたF-222やGF-21は上空を旋回しながら隙間なく警戒している。西の海岸線には日が沈もうとしおり空全体をオレンジ色に染め上げていた。さらには雲が混じり水墨画のような芸術的な天空に昇り墨となって塗り潰すは先程撃敵リフォーム☆afterしたミッドウェイ島。本当に噴火したみたいな惨事になっているが知ったことでは無い。

 

すっかり太陽は潜り込み夜の茅が覆う暗闇の世界。ちょうど今日は新月らしい。星の光も照らす力には及ばず真っ暗な闇と化している。ミッドウェイ島をみると炎上しているのか煙の中に赤々とした業火がチラチラと見える。

私達はというと最低限の照明のみに絞り光源を制限。榛名を先頭に全艦を先行させている。

突然榛名の探照灯が遠隔操作で作動し海面を照らし出す。そこにいたのは150mを超えるであろう大きなタンカー。何故か照明を点けずにコソコソと航行していた。残念ながら113号電探は暗闇を苦としないためバッチリ捉えている。

「そこの不審船に告ぎます。我々は大日本帝国海軍ナウル鎮守府です。速やかに停船してください。繰り返します。我々は大日本帝国海軍ナウル鎮守府です。速やかに停船してください」

探照灯で照らされているにもかかわらず、タンカーは停船しない。そこへ闇に溶け込んだ真っ黒な船体から探照灯が照射され、三方位を封じ込む。天龍龍田の15.5cm三連装砲は既に旋回しており砲口は向けられている。これは私も動いたほうが良いだろう。タンカーの進路上に陣取り、闇に紛れる。

するとタンカーの方で動きがあり僅かに進路を右へずらすと同時に甲板に乗員が上がってきた。

そして甲板上に被された布をとると、そこには最近の装備一斉更新で破棄された筈の12.7cm単装高角砲が。乗員がそれを操作して榛名へ向けた。榛名も副砲を旋回させているが間に合わない。というか下手に撃てない。

ドォンという私達の砲に比べたら虫みたいな小ささの砲声。しかし打出された砲弾はMausとほぼ同口径の127mm砲弾。とにかく撃ったのだろう、砲弾は艦橋に飛んで行き着弾。そして何事もなかったかのように弾き返した。戦艦の装甲を舐めてはいけない。金剛型であろうと私という過保護がいる限り最強になる。高々127mm位で貫通する筈もない。

『そこの不審船に告ぐわぁ...さっさと停船しなければ撃つわよ〜?』

楽しそうな声色で龍田が警告するもタンカーは止まるそぶりを見せない。

多分パニックになっているのだろう。暗闇に紛れてコソコソと航行していたら突然戦艦に発見され更に127mm砲もビクともしない。しかも追い打ちをかけるが如く真っ黒に塗装された軽巡洋艦が突然現れ包囲された。逃げようと前進するもレーダーには島が出現。壁のように聳えるナニカに慌てて転進。そんな具合だろう。

 

あろう事かタンカーの乗員はAK-47のコピー品を持って銃撃。龍田が被弾した。

他にもG3のライセンス品か粗悪銃も繰り出し必死に銃撃を続けている。そこに上空からライトが照らされ、爆音と暴風に襲われる。主翼を回転させてホバリングしたF-222が監視していた。まだ諦めないのだろうか。

「天龍、龍田。乗船用意。奴らが人質を繰り出してくる危険性がある」

「分かったぜ」

「了解よ〜」

私も右舷に設置された巨大な250cm探照灯を起動させタンカーへ向ける。同時に艦橋群の照明を点灯させ船体に埋め込まれた信号用の電灯を一斉に点灯させる。船体中に散りばめられたオレンジ色の光を発するライトに飾られた超巨大な戦艦。暗闇に浮かび上がるその姿はライトとその陰によりより偉大さを感じさせ、威圧感に溢れている。

一番主砲が旋回して行き砲塔が合わせられる。

『アメストリア型戦艦一番艦アメストリアより最後の警告を発する。今すぐ抵抗を止め即刻停船せよ。止むなしは撃沈も考えている』

そう言うとやっとタンカーは停船した。

一応露天艦橋からバイポッドを手摺に引っ掛け115式対艦機関狙撃銃を構える。最近19.8mm重機関銃しか使ってないからなんか小さいように感じる。これでも2150mmあるんだが。自動で調整されたスコープを覗き込むと未だに重火器で武装したむさ苦しい男共が群がっている。

「二人共、突入してくれ。発砲は許可する」

武装した二人がタンカーに乗り付け発砲。たちまち激しい銃撃戦へと発展する。私も支援を目的としているのでトリガーを引き絞って行く。カーソルに対象の頭部を合わせて引きしぼる。

ただそれだけで弾薬に点火し弾丸が高速で飛翔。派手に肉片と血しぶきを散らして対象が吹き飛ぶ。しかしアホみたいにワラワラと湧いてくる蛆虫に二人も苦戦しているようだ。しかし龍田に至ってはルンルン気分で次々と射殺している。龍田さんやはり天才か。

私も147式軽機関銃も持つと甲板に転移。タンカーに飛び乗る。無論その間も銃撃することは忘れない。艦娘パワーで飛び乗ったあとは機械的にフルオートでグチャグチャになって人間と判別できなくなるまで消し飛ばすと次へ。

ミッドウェイでの室内戦より楽だ。こいつら銃の扱い方下手だしなんか腰だめで撃ってるし。それ素人のすることだからな?上手くなるのって本当のプロだけだからな?

そんなゲリラみたいな原始的な戦法に無理やり銃をくっつけたような中途半端な構え方で撃ってくるなし。銃が穢れる。

「大丈夫か、天龍龍田。」

「おうよ。いつもに地味な任務しかしてないからな。」

「確かに最近は潜入とか偵察が多かったわねぇ〜?」

そう。この二人は通常の任務に就いていない。色々と黒い、裏の任務を遂行してもらっている。最近は偵察が主任務と化しているが、いざとなれば拉致だって拷問だってやる。無論人も殺す。関係者も無辜な市民も。任務に立ち塞がるものは武力で排除する諜報部隊なのだ。以前君たちはそんな事をするために生まれたんじゃない!とか君達は無実の人々を殺して恥ずかしくないのか!とか正義心(自己中心的な価値観の押し付け)で任務を邪魔してきた若者(厨二病患者)が居たらしいが今は魚の餌になっていることだろう。来世でまた会おう。もっとも会ってやるつもりもないが。

 

再び湧いてきた雑魚を除去し、船内に突入。天龍は艦橋へ。龍田は私と共に船内のタンク部分へ。ちゃんとしたタンカーならば空洞などなく何かしらの資源で埋められていた筈のタンク。

しかしそこにはタンクは存在せず、代わりに間仕切りが幾つも作られ監獄と化していた。衛生面など考慮されていないのか床はコンクリートのように汚れ荒れているしまずびしょ濡れ。上を見るとここは金網が天井の様だ。なら水は流れ込んでくるだろう。中にも雑魚共はいたが7.92mm弾で黙らせてゆく。

『天龍、クリアだ』

Ja(ダー)

こちらも隙間さえあれば全て確認しチェックしてゆく。

禁制品なのか何も印字されていない木箱が積み上がり一部は見慣れたミリタリーグリーンの箱。兵器の横流し品だろう。中国語だ。簡略化しすぎて全く読めない民族性を濃く表す文体は適当で微妙だ。他にも、奴隷と思わしき人間も発見したが構っている暇はない。

虱潰しに制圧してゆくと木箱、木箱、麻薬擬き、奴隷と見事に外れいている。

「カイクル!居るか?」

「________________ 」

僅かに、音が聞こえる。

布の擦れる音が僅かに響き、うめき声のような悲鳴のような良く分からない声が聞こえる。

すぐに147式軽機関銃を構えて駆け寄る。しかし警戒は怠らず。

銃口を向けつつ隅々まで睨みつけるように確認した私は、中央の物体を見て息を飲んだ。

まず、顔が判別できないようにか麻袋が被せられ周囲には拷問器具なのか分かりたくもない見たくもない大きなペンチなどが散らばり一様に血だらけだった。思わず目を背けたくなるが、その既に服の役割を果たしていない巫女服は確かにアメストリア型戦艦だし、ポニーテールに纏めた白いリボンは血に染まり赤くなってしまっている。両腕は天井につながる鎖によって吊るされ紫色に変色している。これは...誰がやったのだろうか。絶対に許すことができない。

すぐに鎖を切るとカイクルを回収する。麻袋を慎重に剥がすと吐血したのかゴフリと黒々とした血液が吐き出される。まだ、大丈夫だ。

「龍田、少し来てくれ」

「何かしらぁ?...........預かるわ」

「頼む。」

 

今回はカイクルのみの救出ではないのだ。あと大和と長門と神通。三人を回収しなければならない。

147式軽機関銃を持ち直し他のエリアも探索すると、中に長門と大和が纏めて放置されていた。扱い荒っ...手枷が嵌められ暴行されたのか身体中に青痣や痕が残っている。あまりにも悲痛すぎて直視ができない。しかも、よりによって大和はトラウマが再発している。

その反対側の牢には神通も倒れている。こちらは出血した痕跡は見当たらないが、打撲痕が夥しい。気絶しているのが幸いか。

......確かにこの状況は以前と似ている。ジメジメとした悪い空気。灯りは少なく闇が近い。

そう。あの収監されていたあの鎮守府に。

「......大和...」

「...ヒィァッ!?!?」

怯えきっていて、私がアメストリアである事も判別出来ないようだ。これは重症だぞ...メンタル面のケアなんか知らないし......

「天龍、艦橋を破壊後すぐに来てくれ。少しヤバイ」

『了解』

天龍はすぐに来てくれた。両腕を真っ赤に染めながら。いやそれ返り血っすよね?なんか明らかに肉片とか混じってるんですがそれは。黒を基調とした制服や指抜きグローブと合わさって絵になるが危なっかしい。天龍もその惨状に顔を顰めると、黙り込んで無表情になる。そして機械的に長門の脈を確認して背負いあげると龍田の方へと歩き始める。

私はスリングに任せて147式軽機関銃を手放すと大和と神通を慎重に割れ物を扱うように背負い上げ船内から出ると、風に迎えられる。今だライトをつけてくれていたのだろう。F-222が上空でホバリングし榛名の探照灯がこちらを照らす。

妖精さんに寄越してもらったCH-31に四人を乗せると私もソリの部分に足をかけ指示を出す。

「天龍、龍田。良くやってくれた。このままナウル鎮守府に全速力で帰還しゆっくりと休んでくれ。一週間ほど休暇を与える」

「それは有り難いな。」

「今日はちょっと疲れたわぁ...」

疲れの色を見せた龍田は初めてだ。そうなるまで今回の作戦は大胆かつ過激だった。

全戦力を持ってミッドウェーを正面から襲撃し叩き潰す。そして地上兵力を送り込み制圧兼捜索。

舞い上がったCH-31の機内で考える。今回はあまりにも負傷が多すぎた。

船体云々ではなく、艦娘の精神的、肉体的問題だ。

「提督、たった今攻略作戦が完遂された」

『良かった...カイクル達は無事かな?』

「......お世辞にもあまり宜しくない。今回の戦闘でトラウマを抱えたり再発した艦娘がいる可能性がある。」

『そう...だよね。みんな既に到着してるけど疲れている子達が多いみたいだし...あ、あと間宮から伝言だよ。美味しい夜食を作ってお待ちしています、だって』

「ふふ、そうか。すぐに帰還する。」

『無事に、ね。』

「無論だ」

甲板に着艦したCH-31からすぐに医務室に四人を運び込み、すぐに手当してゆく。輸血などの大掛かりな処置は必要ない。傷の大きな場所に治癒符を惜しげもなく使用してゆく。そしてその上からそっと包帯を巻き、できるだけ自然体に。あと服装も工作班の妖精さん提供の服に着替えさせている。流石に汚れたままだと化膿する危険性もある事だし。

「........っ.......ここ、は...」

ピクリと肩が揺れ、すぐさま振り返ると薄く、弱々しく目を開けた長門の姿が。

左腕は固定され折角の健康的で柔らかな肌は包帯で覆われている。

「目が覚めたか。長門よ」

「.......アメ、スト...リアか?...ゴホッ!...つぅ.......」

「まだ絶対安静だ。いくらアメストリアの医療技術が優れているとは言え瞬間的に完治できるほど優れていない。」

大和は私が背負ったと同時に意識を失った。何か私嫌われる事しただろうか。したのはリバンデヒだろうに。誰彼構わず胸揉みおって...

『榛名です。一応報告を。たった今到着いたしました。』

「了解した。ゆっくり休んでくれ」

『はい!』

どうやら帰還していないのは私だけらしい。

長門に安静にする様伝えてから艦橋に転移する。

「機関最大!進路ナウル鎮守府に向け!。主砲粒子弾装填」

''機関最大!ぐるぐるぐるー!''

''フルパワー!''

''主砲、回す感じです?''

''主砲装填する感じです?''

「目標、不審船上空。てぇーっ!」

第一砲塔から四発の粒子弾が放たれ、真っ直ぐ飛んで行く。そして予め入力した座標に到達すると、太陽が咲いた。月の光もない中、四つの青白い太陽が連続して咲き、莫大な衝撃波を周囲に撒き散らす。圧倒的な熱量は周囲を焼き尽くし金属であろうと蒸発させる。これは直撃させたほうが威力が少なくなる珍しい砲弾なのだ。さっさと消し去るとウンターガングエンジンが大きく唸り声をあげ莫大なエネルギーをシャフトに伝える。純粋なエネルギーで回転させているスクリューは十枚刃と多くの海水を掻き分ける事が可能で四つもあれば尚更。津波を発生させながら進んでゆく姿は警戒など知らないと言わんばかりに艦橋群を中心に照明を点け軍艦旗が翻る。しかしその速度は異常。85ノットというアホみたいなスピードで高速航行を続ける戦艦には特に負担らしい負担を浴びる事なく難なく切り裂いて進んでいる。

 

暫くすると、電探が鮮明な表示でナウル鎮守府の第一隔壁を映し出した。

「速度落とせ!全砲門ロック。すべての装填中の砲弾を抜き取っておけ」

''りょーかいなかんじです?''

''あいあいさー!''

''機関出力ていかー''

''速度落ちますー''

ウンターガングエンジンの唸り声が穏やかになり、スクリューの回転数が急激に減少。すると当たり前だが掻き分けていた海水の勢いが緩まりクッションとなって速力をさらに低下させてゆく。しかし海水を押し流してきているのも事実。20mクラスの大津波が隔壁を襲う。

しかし隔壁は100mを超える高さだ。それ位じゃあビクともしない。更に隔壁は海底奥深くまで突き刺さり三角形のトラスも耐久度上昇の為組み込まれている。外から見たら海を分け隔てるダムのように映るだろう。灰色に塗られた分厚い隔壁には内部にも広々とした通路が広がり、一七式戦車でも楽々走行できるほど。

かつ当然だが湾岸砲台として500cm四連装砲が2km毎に。46cm三連装砲が至る所に設置されている。そんな隔壁の先に進んでゆくと、けたたましい警告音が鳴り響き、隔壁が閉鎖されてゆく。普段は海底に埋もれている水門が浮力やモーターを利用してせりあがり海面を突き破った。なんかこれだけでも壮大だ。大規模な施設の大きな動きというのは圧巻の一言に尽きる。その大規模な施設の本人が言うのもなんだが。

10ノット程でゆっくりとすっかり要塞化したナウル島へ向かってゆく。第一隔壁には小規模ながら大和でも入る桟橋を備えているため巡回の艦隊が一時的な休憩スペースとして利用している時がある。

見たところ第二隔壁にも存在するがそちらには既に先客が。

天龍と龍田の船体が係留されている。他にものっぺりとした鯨のような巨大潜水艦。ドミートリーは書類上存在しない文字通り幽霊船の為目立たない場所に置かなければならないのだ。

凸型の超巨大軍港には既に私以外の全艦娘の船体が留められ、私も所定の位置に入港する。本来ならタグボートが細い誘導をしてゆっくり時間をかけてやるものだが、私達はそんな事はしない。90度直角に旋回するとあとはパズルのように接舷するだけ。簡単に言うがこれかなり難しいからな?私達という規格外だからこそできる神業ってやつだ。1m単位の誤差でスルリと入ってゆくのは中々壮観だが、桟橋から見るとびしょ濡れになるがな。

「速力落とせ!回頭90°!」

''よーそろー!''

''船体ぐるぐるー!''

船体がゆっくりと回頭する。ここは海ならではの直角旋回をしてゆく。右舷が莫大な海水を押し分け、ゆっくりと回頭。そしてスクリューが逆回転を始め逆方向に進んでゆくとドックにすっぽり収まってゆく。中央演算処理装置の精密な計算のなせる技だが、別に経験さえ積めば駆逐艦でも出来る。というか三回転くらいして海上ドリフトで接舷する事ぐらいやってる。響ならT-34ジャンプならぬ駆逐艦ジャンプしてる。

停止。機関がエネルギー放出を停止させスクリューが回転を完全に止める。

騒音となっていた様々な音が徐々に停止する。

これで、やっと帰ってきたという実感が湧いてくる。やっと、帰ってきた.......

 




ランスロットが使ってる剣ってなんだったんでしょう...あ、アロンダイトですね。アニメでは使用されませんでしたが。あとセイバーさん、叫びすぎです。


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69.心の調子 じょー。

あるぇ?一話で収めるつもりだったのになんで関係ないところに13000文字も使ってるんだぁ?
いや、すみません。だいぶ遅れてしまいました。次の二時創作の大まかな流れや設定の熟成、この小説の流れを考えておりました。いやー、新学期きついっす。


 

 

ーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーー

MI作戦が終了し、各々が大規模作戦の安息の余韻に浸り、全員が十分とは言えないが休息を取った。

特に天龍龍田の二人には一週間の休暇を与え、私達も情報収集のレベルを3段階ほど下げている。

其々が好きに過ごし実にほのぼのとした時間を過ごすことができ私は眼福であったが、私達の失態による影響は深く深く根を下ろし未だに回復と兆しを見せない。

意識を失った大和や元々失っていた神通。少しだけ意識を回復した長門。長門は翌日から意識を回復し、衰弱と脱水症状こそ残るものの表面上は快調な様子を見せていた。しかし心の奥底にはあの体験が絶対的な恐怖の象徴、トラウマとなってハッキリと刻まれた事だろう。付きっ切りで看病してうた陸奥もそれだけを心配していた。

神通に関してはあくまで私見だが拷問が加えられていなかったのだと思う。一度施術の為に身体中の傷を調べたが主にあったのは打撲痕に切り傷、擦り傷程度だった。数はとても多くて痛ましかったが全て治療し目視で確認できる限りの傷は全て消えている。これも治癒符のお陰だ。人体の回復力を促進し自らも回復力の糧となって治療してゆく。使い捨てだが優秀な符である事に間違いはない。神通の白くて華奢な体つきは少し心配になってしまうほどの儚さを孕んでいたが内に秘める熱意や戦意は誰よりも高い事を私は知っている。史実での壮絶な戦闘経験故か普段はおとしめやかだがいざ戦闘となると才能を遺憾なく発揮し深海棲艦を虐殺してゆく。最大戦速のまま深海棲艦の艦隊に突貫し翻弄し鬼神の如き戦いをする。船体を大きく傾かせキールや舵、スクリューの回転率全てを巧みに操り船体を横滑りさせながら電探を駆使して主砲を別々の標的へ旋回させそのまま発砲。アメストリア軍世紀の三大傑作発明の一角を占める全自動装填装置の恩恵を存分に活かし瞬間的に155mm砲弾を雨あられと浴びせてゆく。同時にハープーンも放ち敵航空機をハリネズミの様に配置された45mm対空連装機関砲が迎撃し空から突き落とす。一度暴れだしたらてんこ盛りの戦果を引っさげて無傷での帰還。文句無しのS勝利を収め帰ってくる彼女には私も尊敬の念を送らざるおえない。

大和に関しては......一週間経った今でも目覚める兆しがない。武蔵は毎日欠かさず看病を続けているがその武蔵にも疲労が溜まってきている。これでは本末転倒であり流石に今日は隣のベッドで仮眠を取ってもらっている。因みに普段の勝気な姉御肌とは似合わない可愛い寝顔であった。眼福眼福。

大和は今回の作戦で私達の受けた損害で一番大きかった艦だ。船体の意味ではない。精神の面で多大なるダメージを負い今尚眠り続ける大和に私は何かやってやることさえ出来ない。

なんだかんだで船体も抉られ中破判定。艦娘は鬼畜過ぎる拷問を受けて確実に廃人コースを歩んでいたカイクルは意外にもケロッとしており今日も朝から斬馬刀を振り回し、ノイトハイルがからかいまた鬼ごっこ(ガチ)が勃発し私達が微笑ましく見守るという光景が見られた。私はその間にも別の準備を進めていた訳だが。

兎も角大和が目覚めないのは大変心苦しいが『戦力』としてみた場合大和は第二艦隊旗艦という実質的なナウル鎮守府主力艦隊の総旗艦。主力中の主力で、戦艦という超火力の中核を担っている。そんな重要な艦娘がいつまでもダウンしていては、戦線が維持出来なくなり、支配海域が縮められる危険性は高まってゆく。加えて武蔵も看病に付きっ切りとなり現在の主力は長門、陸奥、一、二航戦そして第三艦隊の金剛型や五航戦なのだ。火力不足は否めない。

駄菓子菓子、誰よりも艦娘を大切にしていたい、艦娘至上主義である私は、艦娘を消耗品としてみる事は絶対にしないし、したくもない。大和が病んでしまうのは考えるだけで心苦しいし実際に回復の兆しが全くない事に軽く絶望感を抱いている事も事実だ。しかし重要なのはそこで立ち止まってグズグズと自分を責めて悪化させて本来気をかけるべき対象を蔑ろにするか、それでも諦めずに泥水啜ってでも救うという絶対の決意を持って対象にアプローチを続けるかどちらかを選択する事だ。因みに私は後者を選択するがな。

 

 

 

 

 

夜の茅に降ろされた漆黒の闇の中。

夜襲対策か最低限の照明に落とされた鎮守府の桟橋は存在の隠蔽のために照明は全て落とされている。その凸型の桟橋の中には存在しない、設計図にも記載されていない存在自体がなかった事にされている桟橋がナウルには存在する。闇に紛れる様に真っ黒な塗装が施され、第一隔壁に寄り添う...付け足された感がある桟橋は、表立って公表することのできない『裏』の部隊が運用する専用港。表立った作戦で華々しく公表されることのない、しかしそれ以上に重要な意味合いを持って作戦を誰の目にも入る事なく秘密裏に遂行する闇の部隊。

ナウル鎮守府には残念ながらそんな部隊が存在する。部隊構成はたったの三隻。

存在自体が無かったとされている建造記録さえまず作成されていない天龍型軽巡洋艦。艤装はアメストリア軍の海軍工廠が保有していた最先端技術を惜しげもなく注ぎ込み、直接的攻撃力は50口径15.5cm三連装砲二基 六門。あと対空砲として限定旋回の45口径12.7cm連装高角砲四基 八門と軽巡洋艦としても少なく、対空砲は200門。ミサイルに至っては1500セルという現代の戦闘艦のような艤装の分布は天龍型という特定はまずできないだろう。船体も黒く塗装され目視での確認自体が困難になるだろう。加えてF-222も5機搭載し幅広い任務に対応できるように設計されている。兵装の間隔は開いていてその代わりに諜報用の電子機器や限定的ではあるが物理的な電子防御を張れる試験段階の機材もこの一週間で組み付けられた。なんか史実の夕張みたいな扱いだが、特殊部隊なんてそういうものだ。常に最先端の装備が支給されそこでの運用データをもとに改修する。そういう実験場的な扱いを受けるのは自明だ。

「......本当ならもう少しゆっくりさせてやりたいんだがな」

「いいよぉ、私達ものぞんでいるのだからぁ...」

「良いんだ。俺たちだって嫌々やっている訳じゃねぇからな。むしろ...」

「天龍ちゃ〜ぁん?」

「...ゔっ!わ、わかったよ......」

天龍、龍田の他にも、諜報ではなく情報収集専門の艦艇だって存在する。

それが鹵獲して色々な意味で魔改造された潜水艦。ドミートリー・ドンスコイだ。

元ネタは一隻で核戦争ができる原子力潜水艦だが、妖精さんが改造した事によって機関は船舶用粒子エンジン25基に換装されスクリューは静音性の高い七枚刄スクリューが四本。キールは鋭く魚雷を撤廃し甲板には出来る限りミサイルハッチが敷き詰められ、側面にもミサイルハッチが窓のように配置されている。装甲は分厚く対150cm装甲。艦娘という最低限の設備で済む設定を利用し他のエリアを全て潰してミサイルハッチの内部、量子変換装置に割り振り、内部には中央演算処理装置の二分の一程度の演算量を誇るスーパーコンピュータを搭載。ありとあらゆる情報収集の為の機能が積まれている。

「ドミートリー?」

「何でしょう?お姉様」

この有様である。リバンデヒやカイクル、果てはノイトハイルまでもが再教育に参加し、アメストリア海軍用に訓練し直したらしい。私は本能的な嫌な予感で見る事をしなかったが、恐らく色々とやばい事をしていたのだろう。ロシア式の海軍礼装にスク水という服装は変わらないが艤装の変化か、インカムをつけているし、目は鋭く細められている。リバンデヒ達とは少し違う印象を受ける。なんか、リバンデヒ達の欲望や理想を名一杯詰め込んだ感が否めないが都合よく改変されるよりはマシだろう。調きょ...再教育の成果は絶大だった訳だ。まぁ反逆されても困るしなぁ...

「......兎も角、調べる事は分かっているな?」

「あぁ、俺達の御同業を攫った奴らの規模や拠点の調査だろ?」

「......その通りだ。あとは既に攫われた艦娘達の居場所の特定だ。これは実際に救出しなくて良い、私達が直接制圧する。」

これにも意味がある。艦娘を攫った組織やそれに類似する組織への警告。

万が一艦娘に手をを出したら絶対に死ぬ迄追い続けて精神を破壊してから殺してやるという最終通告だ。今回はその見せしめという面も存在する。それも報告がなければどうしようも無いのだが。

「あとだな...ドミートリー」

「何でしょうか?」

「......少々危険だがある調査に徹してもらいたい」

「畏まりました。全ては貴女様の思うままに」

うわぁ...誰だ趣味全開の調教施した奴。多分リバンデヒだな。以前私にメイド服着させてhshsしてた危ない人だし。

「近年、深海棲艦がより狡猾で高度な戦術をとってきている事は承知だな?」

「はい。此方でもピンポイントでASROCを命中させられたことが幾つか」

 

............ちょっと待てい。なんかさりげなく報告してきたがASROCを既に数発被弾している?深海棲艦でミサイルを積めるのは私達と同じアメストリア海軍の艦艇達...人類側、大本営はアメストリア型戦艦との差別化を図るためにイロハニホヘト式の命名基準から逸脱し「姫」「鬼」というなんかファンタジー臭のするキラキラネームを名付けた。貴様らはモンスターペアレンツかっての。因みに深海棲艦の加賀型は「レ級」と呼ばれているらしい。私も詳しくは知らないが。だって興味無いし。深海棲艦のアメストリア型戦艦は「戦艦棲姫」という素敵ネームで呼ばれているらしい。本人達が聞いたらどう思うだろうか。人類に勝手に名付けられて私達にボッコボコにされて。私なら撃沈して引きこもる自信がある。凄いっすね深海棲艦。鋼鉄メンタルだ。私なんか豆腐メンタルなのに...何故か話題からずれたな。

「当初私達はアメストリア型戦艦から知識をサルベージした物と考えていたのだがノイトハイルによって否定されてな。なら何故かと検討した。」

「..........まさ、か...?」

ノイトハイルは唯一私達の中で深海棲艦からドロップした戦艦だ。しかも深海棲艦時の記憶や意識を引き継いでいる。そのノイトハイルが自分からは戦術を教えていないと断言されたのだ。というか拗ねられてしまった。僕のことそんな風に思ってたんだ...ってな。私としてはなんか腑に落ちないが取り敢えず謝ったら何故か奴隷権が復活したでござる。何故に。ナウル鎮守府に引越しするついでに有耶無耶にしていたつもりだったのだが、ノイトハイル(クレイジーレズ)はきっちりと憶えていたようで凄くイイ笑顔で死刑宣告された。

「その通りだ。誠に不本意な事に人類に深海棲艦と通じて戦術という概念を付与した存在がいる可能性が高い」

「......粛清したのでしょうか?」

「...相手もわからんのに粛清出来る訳なかろう。取り敢えずその件をドミートリーは調べてもらいたい。」

Да, сэр! (かしこまりました!)Вместо него в этой(この命に代えてでも) жизни вы (必ず)всегда(遂行) осуществляется.(して参ります)

なんかフルロシア語で言われた為面食らったが()のエキサイト翻訳によってすぐにわかってしまう。此奴、ヤンデレの気がないか?なんか言い知れぬ危機感を覚えるのだが。

「...そうか。では総員、心してかかれ!」

「了解よぉ〜」

「おうよ!」

「даー!」

私の敬礼に返礼してくれる。深夜、照明もない中艦娘の不思議パワーではっきりと見える艦娘達の服装は少し異なっていた。天龍龍田はブレザーなどの制服では無くどの軍隊とも似つかない...どちらかと言えばナチスドイツの冬季用軍装だな。ジャーマングレーのロングコートによって体型は覆い隠され、ブービーキャップとか目出し帽を被ったら性別もわからなくなるだろう。しかし私は知っている。この桟橋に来る前に必要な重火器をリストアップしてもらったのだがM145-S1A、147式軽機関銃、25式歩兵小銃、115式対艦機関狙撃銃、19.8mm重機関銃が各三艇ずつ。MS95という11mm口径のサブマシンガンを今回の天龍のオーダーの為だけに妖精さんが改造した.50BMGがフルオートで発射できるキチガイサブマシンガンを二艇。あなた方は戦争をするのですかと真面目に問いたいが諜報に関しては一切の制限を設けていない為まぁなんか必要なのだろう。M634を何処で使うか知らないが。

 

照明灯の一つも点灯させることも無くじんりゅう型のような静音性に優れた十枚刄スクリューがゆっくりとした回転を始め桟橋から現代艦艇擬きが出港する。こちらから見たら艦尾と後方に設置された50口径15.5cm三連装砲と艦橋付近に左右二つずつ四隅に配置された45口径の12.7cm高角連装砲の計四本の砲身しか見えない。またさらに姿が分からないのがドミートリーだ。二次大戦ではありえなかったのっぺりとした船体は闇で輪郭がぼやけはっきりとした姿を視認するのは不可能だろう。改造の為X型の舵になった艦尾にはタイルのようにミサイルハッチが敷き詰められていることだろう。

僅かに航跡を残しながら進んでゆくその姿は何か覚悟を決めたようで決意に満ちている。

私は第一隔壁の水門を三隻が通過するまで敬礼で見送り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽が昇り始め、遥か遠くの水平線から徐々にオレンジ色へと空は染まってゆく。

いつもと変わらない景色。ドックに係留されている全艦艇を遅れて強烈な太陽光が照らし出し、その複雑な艦橋やハリネズミのような45mm対空機関連装砲、高角連装砲によって海面に映し出される影絵はもっと複雑怪奇だ。私は毎朝こうやって朝日を浴びる事にしている。此処はアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの艦橋群の中で一番高い場所。大和ならば全幅15mの測距儀があるテラスに似た露天艦橋。アメストリア型戦艦サイズとあってサッカーコートクラスの広々とした空間が広がっているが索敵用か数多くの穴が開けられ、そこからもオレンジ色の日光は差し込み測距儀を彩る。この測距儀型の巨大なドームは自動射撃統制装置が搭載されており左右の出っ張りについている金網みたいなのは113号電探だ。この下にはモアイでいうおでこの部分が広がっており五階層に渡って中央演算処理装置が陣取っている。船体の大型化に伴い巨大化した艦橋群の有効な活用方法だろう。逆を言えば土地の広さを盾に好き勝手艤装を詰め込んだ結果ともいえるが。

「やっぱり、ここに居たのね」

コツン、という編み上げのブーツが甲板を叩く音が後ろから聞こえ、同時に聞き慣れた妹の呆れの入った声が届く。

「......どうした、リバンデヒ」

「報告よ。天龍達は現在太平洋米国領に侵入を確認。ドミートリーは南米の方へ転針しているわね。後は現在時点ではどの国も特に動きはないわ」

「承知している」

それくらいは優秀な113号電探がキャッチしている。ドミートリーの転針の理由は知らないが、何か思いついたのかネタを掴んだのだろう。気にしない。

「なら良いわ。長門型の第三次改装が終了したわ。あとは大和型だけよ」

そう。例の150cm三連装砲の反動で他が動けなくなる問題の解決案を妖精さんや工廠長と話し合った結果、大和型は56cm砲、長門型は51cm砲を搭載することになった。51cm三連装砲は金剛型のデータの実績があるから問題はないし、56cm三連装砲はまんま51cm三連装砲を拡大しただけなのでまぁ問題なかろう。

「そうか...早速第二艦隊に復帰させて習熟訓練を。その間の欠員は大鳳達を充てろ」

「了解。大和はまだ...?」

「あぁ、未だに目覚める兆しはない。」

「そう...。可愛かったのに、残念だわ.......」

なんかそのセリフ大和が死んだみたいでやだなぁ...不吉な。

ああ、そうだ。MI作戦後、艦隊編成を改めた。理由はまぁ大和型の実質的な欠落だ。

こんな感じで編成してみた。

 

第一艦隊

アメストリア型戦艦一番艦アメストリア ♦︎

アメストリア型戦艦二番艦リバンデヒ ♢

アメストリア型戦艦三番艦カイクル

アメストリア型戦艦四番艦ノイトハイル

第一艦隊はまぁ、何時ものメンバーだ。その船体の巨大さに付随して発生する津波クラスの航跡からして他の艦との艦隊行動が難しい為一箇所に集めているのだがミッドウェー作戦でも実施した通り他の艦隊と同行動をする場合があるが、航跡の高さの問題で他の艦隊は30km以上後方で付随する。因みにこれ一覧にまとめた紙をそのまま読み上げただけだ。この艦の隣にある♦︎は旗艦の目印。そして♢はあまり考えたくないが旗艦が沈没及びそれに準ずる状態に陥った時に指揮権が移譲される艦だ。ほら、以前私が船体を取り戻しに行く時にリバンデヒに渡したろ?あれだ。

 

第二艦隊

大和型戦艦一番艦大和 ♦︎

大和型戦艦二番艦武蔵 ♢

長門型戦艦一番艦長門

長門型戦艦二番艦陸奥

赤城型二段式航空母艦一番艦赤城

加賀型超多段式三胴艦戦略航空母艦一番艦加賀

蒼龍型戦略航空母艦一番艦蒼龍

蒼龍型戦略航空母艦二番艦飛龍

高雄型重巡洋艦一番艦高雄

高雄型重巡洋艦二番艦愛宕

高雄型重巡洋艦三番艦鳥海

高雄型重巡洋艦四番艦摩耶

阿賀野型軽巡洋艦三番艦矢矧

吹雪型駆逐艦一番艦吹雪

第二艦隊はナウル鎮守府において、実質的な主力艦隊だ。

大和型や長門型は勿論艦載機の搭載量で言えばトップクラスの航空母艦である赤城型と加賀型や二航戦である蒼龍や飛龍を始め古参の部類に入る高雄型重巡洋艦を加えた全14隻の艦隊だ。練度で言えばLv.155オーバー。実質200相当の歴戦の猛者揃いだ。参考程度に言えば、それなりに殲滅している私がLv.120といえば良いだろうか。他にも申し訳ない程度の護衛として矢矧と吹雪を配属しているが、まあろこれは史実ウンタラカンタラだ。

 

第三艦隊

金剛型戦艦一番艦金剛 ♦︎

金剛型戦艦二番艦比叡

金剛型戦艦三番艦榛名

金剛型戦艦四番艦霧島

翔鶴型重装甲航空母艦一番艦翔鶴 ♢

翔鶴型重装甲航空母艦二番艦瑞鶴

雲龍型航空母艦一番艦雲龍

雲龍型航空母艦二番艦天城

雲龍型航空母艦三番艦葛城

最上型重巡洋艦一番艦最上

最上型重巡洋艦二番艦三隈

最上型重巡洋艦三番艦鈴谷

最上型重巡洋艦四番艦熊野

川内型軽巡洋艦一番艦川内

川内型軽巡洋艦二番艦那珂

川内型軽巡洋艦三番艦神通

第三艦隊は金剛が旗艦と少し不安になる編成だが、導入している戦力は大きい。航空母艦を中心とした艦隊で翔鶴型に雲龍型という重装甲の航空母艦を5隻配備し対空対策として最上型重巡洋艦や川内型軽巡洋艦を配備した為例えユリシーズが来ようが迎撃できるし、B-97が61機搭載されるという超火力を手にした超遠距離、アウトレンジからのフルボッコが可能な艦隊だ。編成したの私だがなんだこの艦隊。最上型重巡洋艦が積んでいる55口径20.3cm三連装砲は最大仰角が80°とキチガイ染みている為余程のことがない限り深海棲艦のB-97でもワンパンで落とす事ができる。49kmという長大な射程も持ってるし。

 

 

第四遊撃隊

大鳳型超弩級装甲航空母艦(甲) ♢

青葉型重巡洋艦一番艦青葉 ♦︎

青葉型重巡洋艦二番艦衣笠

暁型駆逐艦一番艦暁

暁型駆逐艦二番艦響

暁型駆逐艦三番艦雷

暁型駆逐艦四番艦電

この第四遊撃隊というのは特殊で、どの艦隊にも属していない。

常に鎮守府のドックにてスクランブル待機している所謂即応艦隊で、万が一には応急的に他の艦隊に編入して対応する為の艦隊だ。その任務上柔軟性を求められる為滅多に被害を食らうことすらない大鳳型超弩級装甲航空母艦を旗艦に50口径の20.3cm三連装砲を四基と12.7cm高角連装砲四基八門を装備した青葉型重巡洋艦にスキー式の意味不明駆逐艦の四隻も入れている。スクリューではなくターボファンを搭載した「限界突破」では175ノットというもう何かわからない駆逐艦と変貌した暁型駆逐艦も編入している。

 

 

X艦隊

天龍型軽巡洋艦一番艦天龍 ♦︎

天龍型軽巡洋艦二番艦龍田 ♦︎

ドミートリー・ドンスコイ ♦︎

こいつは特殊すぎるしもう良いよな?

存在自体が無かったことになっているナウル鎮守府の裏。その実行している任務は常人が知ったら確実にSANチェックになるだろうドス黒い闇の部分だが、私は結構重宝している部隊だ。全艦が旗艦であり全艦追従艦だ。それぞれが別々の任務をする事もあれば合同で活動する事もある。兎に角特殊で例外的な艦隊だから私も活動内容に口を出すことはないし位置しか把握していない。何をしているのか、そこを見てはいない。其処まで暇じゃないし。

ドックの方へ視線を移すと、形状が大幅に変化した長門型の船体がでてきていた。

廃止していた筈の側面の副砲は復活し、本来なら金剛型戦艦に搭載される筈の35.6cm単装砲が左右に四門ずつ突き刺さっており、主砲は例の150cm三連装砲から51cm三連装砲に小型化され全体的にスッと纏まった姿、本来の大日本帝国海軍特有の理想形が完成した。なんか感慨深いなぁ...戦力拡大の名の下超火力の獲得の為に150cm三連装砲を無理矢理搭載してなんか無理やり据え付けた感凄かったのだが、やっと綺麗に構成された。

長門、陸奥の二隻を同時改装したのだが、案外すぐに終了した。海を切り裂きながら進んでゆく姿は上から見るとなかなか良い景色になっており、その後方には矢矧に曳航されてドック入りしようとしている改装前の150cm三連装砲搭載型の大和型が並び、もう見る事ができないであろうレアな光景が広がっていた。

「大和型の改装には幾らかかるのだ?」

「......そうねぇ、3時間ほどでしょう。資材は...〔鋼材〕120850〔弾薬〕26500くらいね。その間は金剛達が警備を請け負う予定よ。」

「そうか」

いつの間にか大和、武蔵の二隻が工廠のドック入りし、アメストリア型戦艦にも使用される超巨大な可動式クレーンが船体を包み込みフックが降りている。ここからは簡単だ。主砲と船体を繋ぎ止めていた巨大なビスやピンを抜き取り主砲の砲塔を抜き取る。そして船体内部に埋め込まれた薬莢の廃棄機構や煙突につながる砲煙の排気口などを撤去し56cm用に新たに作り直し、動力の伝達や自動射撃統制装置などとの通信用のケーブルを接続し直して基部が完成。其処にクレーンで砲塔をドッキングして旋回装置を砲塔と基部とを繋ぎ合わせて完全にくっつけると砲塔内に回線を引いて薬莢の廃棄機構と砲をうまく組み合わせると完成。あとは動作確認と艦橋で電探連動や座標固定のプログラムを修正したり艤装として登録したりと色々とやることで溢れていた。特に電子的な部分は大変で主砲の発射プロセスに至っては1500工程以上のプログラムによって支えられている。自動射撃統制装置からの深海棲艦の位置を知らされる時のデータの進む道の誘導に構築、そしてそのデータの解析に認識。私達の使用する射撃データは特に特殊で三次元的な座標データなのだ。それはまあよく考えたら当たり前で私達の活動域は地球のみではない。他の重力や磁場、自転速度に公転速度、地軸の傾き具合も全く異なる異世界において、地球の緯度と経度を基準に演算したら大惨事だ。どこに飛んで行くかわかったものではない。だから数学的に言えばx軸、y軸、z軸みたいな三方向からの距離情報をデータとして作成しているのだ。それを元に算出された最適な仰角や旋回角度が中央演算処理装置から送られ、それをまた解析。一瞬の内に検算しそれを主砲への送信する。

それを受け取った主砲はその内部に内蔵された高スペックの演算装置により物理的な力へと変換されピストンやら駐進器やらが実際に稼働しマガジン型の揚弾筒から送られてきた砲弾を薬室にブチ込みまた密閉する訳だ。実はとてつもない程の演算に支えられているのだが、それに見合った成果を上げている。だって捕捉すれば百発百中だし砲弾によっては至近弾でも沈むし。まぁ、無論それだけではないんだがな?自動射撃統制装置は露出した艦橋の上に乗っかってるし中央演算処理装置はその下だ。今まで同様其処をピンポイント爆撃されると全ての火砲が沈黙してしまうのだ。それだけでハイ終了あなたはただの的です宣言は兵器として失格である。主砲一つ一つに妖精さんの制御室があり砲塔にも小型ではあるが自動射撃統制装置が積まれている。距離などを計るのはほらアレだ。砲塔の横に出っ張りがついてるだろ?アレだ。あれの部分に計測機器が詰まっており其処から船体奥深くにある砲塔の基部に設置された自動射撃統制装置(小型)で演算され主砲や副砲が発射できる訳だがこれは勿論命中精度が悪く、流石に史実の高雄型とはいかんがかなり外してくる。

あればイライラするのだ。幾ら毎秒で撃てて威力も高くて初速も早くても周囲に命中して馬鹿みたいに高い水柱上げて当の目標は悠々と進んでいる。最終的にキレてグラニート使うんだけどな。

 

 

 

 

 

さてさて、リバンデヒも飽きたのか転移で何処かに去り太陽は本格的に高く登った頃、甲高く壮大なジェット音と共に上空を赤い一本線を引いたF-222が編隊で飛行してゆく。どうやら赤城が飛ばしているようだ。自主的な哨戒活動だろう。達者な事で。

時間帯的には7時頃。一部の艦娘達は早速起き出している頃だろう。当ナウル鎮守府はホワイト鎮守府を目指しているため自由起床制だし、朝食も好きな時間に取ることができる。出撃と言っても毎日している訳ではないし出るのはその日の当番の艦隊。それ以外の艦娘達は基本非番で暇そうにしているのをよく見かける。姉妹で固まって活動する事が多いと思う。翔鶴瑞鶴なんか二人で鏡合わせみたいにくっついて昼寝してたし。確かに最近丁度いい日当たりと気温だから絶好の昼寝日和だしさぁ、艦娘肌焼けないし。船体が炙られたら火傷するが。

そんな実にのんびりとしたペースで始まるナウル鎮守府だが、大体時間帯によって行動が決まっている艦娘が多い。早朝から起きているのは私達アメストリア型戦艦や赤城、加賀。また長門や陸奥も起きている事があるが今日まで改装があったためまだ眠っているだろう。そして意外だったのが大和。今までの大和は早朝から起きている事が多かったのだがこれがうっかりさんで偶に寝坊する事がある。武蔵は......まぁ察しろ。

そして8時から9時頃までには大体の艦娘が活動を始めており色々な所で遊んだり自己鍛錬をしている。偶に大きな爆発が聞こえるのは気にしてはいけないぞ?以前駆けつけたら大惨事になったから。しかし艦娘といえども外見相応の行動を取る事が多く、第六駆逐隊こと暁姉妹は鬼ごっこや第一、第二隔壁の探検をしていたりと可愛い。稀に響がウォッカ飲んでることがあるが艦齢で言えば其処らの人間より上なので全く問題はないのだが、酔っ払うのはやめてくれよ?酔っ払いの対処は長門だけで十分だから。

そして軽巡洋艦といえばまぁあの個性が強すぎる川内型と大和love勢の矢矧だが、こちらはまあ可愛いものだ。那珂はいつも騒いでいるが流石にコンサートなどはしていない。川内は夜になると決まって「夜戦っ!夜戦しようよアメストリアさん!」って物凄い勢いで詰め寄られるが絶対にしないと誓っている。一度勢いに負けて了承したら徹夜で深海棲艦を狩り続ける羽目になったのだ。しかも川内は実力があるからよりタチが悪い。満面の笑みで感謝されたのは少し嬉しかったが。神通か?最近は40キロ先に3センチ四方の的を置いてそれを一発で超精密狙撃するのがマイブームらしい。なにやってんのか私には理解できない。ただでさえ彼女は20.3cm三連装砲を装備してその命中率は99.9%なのにこれ以上を求めるとなったらそれなりの設備が必要になる。大演算が可能なより高機能な演算装置にミクロン単位での計測が可能な自動射撃統制装置。そして何よりも波や潮風によって影響される砲弾をいかに抵抗を少なくして精密狙撃が可能な砲弾の開発と㍉単位での仰角の調整が可能な改良型砲塔の開発。それが必要になってくる。しかしそれはメリットだけではなくいちいちミリ単位での照準定める必要が出てくるため時間がかかる。装甲はあるが絶対じゃないし艦橋を狙撃されたらひとたまりも無い。それではダメだ。

「妖精さん、居るか」

''此処にいる感じです?''

''呼ばれて出てきてばばばばーんな感じです?''

「神通の事だが」

''それなら既に設計済みな感じです?''

''もう砲身出来てるぜー!''

''砲弾は15.5cmでテストする感じです?''

何故20.3cm新型精密砲弾のテストを口径の小さい15.5cm砲弾で行うのかは不明だが、妖精さんにも事情があるのだろう。それよりも、何故に砲身が既に出来てるんですかねぇ...

「今から見れるか?」

''無論無論感じです?''

''多分大丈夫な感じです?''

''作っちゃうぜー!''

''ダメな感じです''

''まだな感じなのです''

 

妖精さんの案内に従って艦内を歩いて行くと、一つの部屋にたどり着いた。場所的には知っているがいかんせんでかすぎるため私も行ったことが無いエリアが多々ある。今回の〔アメストリア型戦艦一番艦アメストリア艦内第一工廠〕とネームプレートが貼られた金属製のハッチを通り抜けると其処は異世界であった。艦内は灰色で統一されているのだが、此処だけはよくわからない材質で覆われており窓一つ無い。煙突型排気口へ直接繋がっているらしい換気口が中央に聳え、その周囲にはなんかよくわからない機械もどきが散らばっており、壁際には各口径の砲身が掛けられている。なにこの空間。砲の尾栓部分や砲架、ターレットリングなどが乱雑に置かれ、弾薬が散らばっている。危険だなオイ。

そして奥の方には一際長い砲身が台に乗せられており、その形状は正直異質だった。

砲身は今までの特殊鋼以外の金属で作製されたのかツヤのある真っ黒な金属で形成された砲身は先端に行くほど鋭くなってゆくのは変わり無いが戦車砲のように砲身の途中でボコっていう出っ張りがある。こいつは確か戦車砲内で燃焼すると、その分空気は無くなり圧力が上昇する。その状態で砲弾が出て行くので栓が抜けた状態になり勢い良くその分を回復しようと空気を吸い混むのだが、此処で急激に圧力が減衰するおかげで均衡が崩れ爆発するのだ。戦車砲が。そうなるとあとは砲塔がポーンッと飛んで行く。まるでドイツの対戦車砲に貫通されたM4シャーマンのように。そんなマヌケは晒せないので戦車の砲身にはガスが注入できるように作られている。それがあの出っ張りだ。あれによって急激な圧力の上下は抑えられ砲身がバナナ状態とM4シャーマン状態になるのは避けられるのだ。まぁ一七式戦車や一五式戦車には関係の無い話だが。しかし今回の15.5cm砲身には必要だったのだろう。可能な限り空気抵抗をなくしてより高速にかつ威力は高く。要求が多い砲弾だ。

密閉度の高い砲身の作製は終了しているらしいが砲弾はまだ。15.5cmで試さなければならない。そして一番の鬼門とも言えるのは砲架に仰角だ。精密性と速度を求められる。

「砲架は?」

''まだできてない感じですー?''

「なんだ。てっきりもう作ったかと思うていたが」

''済みません...どうしても難しくて...''

「ふむ...仰俯角装置の圧力は空気圧にしてみたらどうだ?電動や油圧より早いだろう」

''そのてがあったかーっ!''

''さすが艦娘さんです''

''早速試作するのだー!''

''あいあいさー!''

''かしこまりー!''

一斉に妖精さんが動き出した。さっきから肩に乗っかっている艦長妖精さんはぐてーっとしているがそれも可愛い。砲弾や砲塔をどかしてスペースを作ると早速制作を始めていた。仕事が早いですね。是非その熱意を整備に向けて欲しいです。

「妖精さん、砲弾は?」

''15.5cm砲弾なら、あっちにありますー''

その妖精さんが指差す先には名状しがたきナニかがあった。

いやいやいやいや何あれ。なんかもうほぼ針だよねあれ。確かに一番太いところはそこそこある。しかし信管のある部分は直径5cm以下。要するにすんごいとんがっている。これAPFSDSやんけ。横から見ると角度を測れない鋭角の二等辺三角形。薬莢は意外に小さく、150cm程。炸薬量は1780kgだという。まぁ私の45000kgに比べたら消しカスみたいなものだ。しかし問題がある。砲弾の全長が長い。もうそれはもう。通常の1.5倍近いその砲弾は今までの薬室では装填が出来ないだろう。本当に根本から作り直す必要がある。電動レンチやドライバーと音や溶接、カットの騒音が鳴り響き、工廠と同様の雑踏さが溢れてきた。

 

船体側面。其処に私達はいた。妖精さんがいつも以上に慌しく動き回り、準備をしていた。

「妖精さん、発射用意!」

''はっしゃよーい!''

''試製特殊精密狙撃用砲弾そーてん!''

「標準、前方71000の特殊鋼!」

すると、その指示でこの下に並ぶ大量の20cm連装砲...精密には20.3cm連装砲の内1基が旋回を始めた。そして右舷に90°旋回したところで停止し、砲身が上昇を始める。因みにそのテスト用の20cm連装砲は今回の砲身と即興で改修した砲に詰め替えられている。その黒い砲身が上昇し、とある角度で停止。そのプロセスの時間は非常に短く、ミリ単位での調整には見えない。いや、角度調整なんてやってないのだから当たり前か。其処までは間に合わなかったらしい。

「安全確認用意よし。射程よし。ってぇーー!」

''うちかたはじめー!な感じです?''

''撃ちます撃ちます!''

普段の、ズドンッ、という腹に響く砲声ではなく、真空を抜いたようなブシュッ!という特殊な音が響き、普段より大分小さな砲炎が上がった。なんかサイレンサーみたいだなこの砲身。

射出された砲弾...と言っていいのか悩んでしまう細すぎる針は途轍もない速度で真っ直ぐ飛翔して行き7km先にあった特殊鋼で作ったブロックを貫通した。普通、赤い火花を散らすが、何故か異常に発光した蒼い火花を散らしたのは気のせいではない。やはりあの砲弾はおかしい。飛んで行く時もヒューッ!という笛のような音を鳴らしてこれまた蒼い火線を描いていたし、やはり物理法則さんに正面から喧嘩売ってるとしか言えない。その物理法則無視してる代表が言えたことじゃないが。

「威力は高いが、爆発しなかったぞ?これではただのAPではないか。」

''いえいえ、今回のはテスト用だから炸薬は抜いたのです!''

''だから爆発しない感じです?''

''してたらアレ吹き飛んでるです''

「そ、そうか...」

あれが爆発してたら何が起きてたのだろうか。なんか核みたいなキノコ雲が容易に想像できた。そんな戦術級兵器は今の所私達で間に合ってる。だから要らない。

「炸薬は、少なくしておけよ?」

''かしこまりー''

''改良するです''

''神通さんに許可取ってくるです''

すでに改良について話し始めた妖精さんに一言断りを入れた去った。なんか第一隔壁でガンッッッッ!っていう嫌な音が発射後に聞こえていたがきっと岩だ。そうに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日々の日課となりつつある、大和への見舞い。

大和を寝かせているのは寮に設置された医務室だ。こちらはいつも使用されることがない部屋で、人も少ないだろうという配慮に基づく。だって船体固すぎて艦娘が怪我しないんだもん。

しかし、今日は俄かに医務室が騒がしかった。何かあったのか?

「......失礼する」

ノックをして、静かに入ると、まず聞こえたのは泣き声だった。か弱い、衰弱した泣き声。それに嫌な予感がした私は医務室の病室に駆け込むと、扉をやや乱暴に開け放った。

「大丈夫かっ!?」

随分と焦っているとわかりつつも、動かずにはいられなかった。

目に飛び込んできたのは、大和の体にしがみつき、泣き疲れて眠った武蔵と、それを母親のような慈悲深い笑みであやしている上半身を起こした大和。それを認識した瞬間、私は安堵し、次に最大級の震撼を覚えた。ゾワリ、と背を駆け抜ける不気味な危機感。

粗くなる息を呑み込んでよく見ると、大和の慈悲深い笑みは貼り付けられたもので、大和本人のあの柔らかさはない。そして一番危機感を覚えたのが一切のハイライトが消えた感情の無い瞳。あの柔らかく、凛々しい瞳は光を失い、ただ不気味な人形のような感じを受ける。なにか、怖い。

「......やま、と...?」

「...ふふふ、あら...アメストリアさん。どうしましたか?」

あの、光の無い闇を凝縮したような()に見つめられ、息がヒュイッ、と詰まる。心臓を鷲掴みにされたような、急所を全て決められた時のあの命の危機感に似た()()の感情が沸き上がる。頭がガンガンと警告を鳴らしている。

いかんいかん。こんなこと...如きで私が動揺するわけにはいかんのだ。私は艦娘達の代表であり戦闘を統括するもの。狼狽えてはいけない。

「......調子は、良いのか?」

「はい、おかげさまで随分と楽です」

何が()なのか。私は、無意識にインカムをつないでいた。私の内心に沸き上り続ける恐怖故か、()の長年の経験からの行動か。

「......り、リバンデヒ...妹を全員連れてこい...すぐにだ」

『...了解したわ。大丈夫?お姉ちゃん』

「私は大丈夫だ。大和が意識を回復させたぞ」

『それはよかったわ。すぐに向かうわね...カイクルー!お姉ちゃんが呼んでるわー!ノイトハイルも連れて行くわよ!』

変わらないリバンデヒの声に、安心した。

「......お前は、大和で良いのか?」

「ふふふ、何を言っているのですか?私は大和です。大和型戦艦一番艦、大和ですよ」

......警鐘を鳴らしている本能が、嘘だと断定する。あまりにも、普段の大和と雰囲気が異なりすぎる。こう、まるで別人みたいな......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......待て。

別人?..........だったら...そうか。そういうことか。やはりあの鎮守府は潰しておいて正解だったな。しかしそれだけでは抑まらんなぁ...ああ、非常にイライラする。グツグツと煮えたぎった溶解した鉄のようにグツグツと粘りっこい憎悪の感情。理性が無駄だと処断し、()があきれているが、感情が収まらない。納得がいかない。誰だ。この大和にトラウマを埋めつけた奴は。あ、もう殺しちゃったか...クソ。やっぱり納得できん。同じ境遇にあっている艦娘がいるかもしれない。そう考えるだけで更に溶けた鉄は追加され、憎しみは増大してゆく。

 

 

___________やっぱり、人間は嫌いだ。




予言しよう!ナウル鎮守府にはあと3隻増える!巨乳と犬と失望した人だ!


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70.心の調子 げ

またもや遅れました。あのですね。戦車が悪いんです。無駄にクオリティの高いヤークトティーガーとかタンケッテが悪いんです。だから私は悪くなiチュドーン(^з^)

今回もまたアメストリアさん瀕死です。
これも愛故...!




お知らせ
何か言った気もしないでもないですが題名を変更いたしました。
ご迷惑をおかけいたします。元ネタは土佐さんです。


ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーー

 

「...まぁ、いい。やまと、一応伝えておくが貴官の船体は破損していた為に序でに改修しておいた」

「まぁ...それはご迷惑をお掛けしました...より強くなりましたね....ふふふ」

なんか、今までの大和とは違うようなので、以後『やまと』と呼称する。これは私の推論になるが、大和はここの旧パラオ鎮守府...現ナウル鎮守府の出身ではない。トラック島第二鎮守府の生まれだ。あそこはまさにブラック鎮守府を体現したような劣悪な管理の元に艦娘が飼育(・・)されており、私達が実力を持って制圧。大和以下戦艦、航空母艦の艦娘を救出した。実の所練度は高く酷使されていたとは言え実際に戦闘していた訳だから経験豊富なベテラン艦娘だった。だからパラオ鎮守府ですぐに改修ができた訳なのだが。

因みに第二艦隊とかの他の艦娘達は別の鎮守府に移籍したり、以前私が叩き潰した大本営付近の鎮守府戦力強化に流れたようだ。今の所轟沈も無し。地味に気にかけている事だ。

 

話題を戻すが、大和はあの奴隷同然の扱いの下暮らし、そのトラウマとも言える地獄の日々は大和の脳裏にしっかりと焼き付いており、何かの拍子でそれが暴発する危険性は十分にあった。だからこそ私はそういう連想させる事柄から艦娘達を徹底的に遠ざけ、私達や天龍田達に担当してもらっていた。しかし今回の魔のミッドウェイ攻略作戦にて深海棲艦の捕虜となり、近くで馴染みのある艦娘が拷問され自身も暴行された事によって遂にトラウマのロックが外れた訳だ。『やまと』というのは大和が防衛本能から作り出した虚像。謂わば第二人格だ。

 

 

ここまで言えばもうお分かりだろう。大和は、トラウマからの精神崩壊を防ぐ為に第二人格を形成。晴れて「二重人格」、正式名称 解離性同一障害(DID)となってしまった訳だ。

かつては多重人格(MPD)と呼ばれたこの症状は厳密に言えば障害ではない。そもそも【解離】というのは別に誰でも起きる事で、例えば不幸な目にあったり親戚が亡くなった時に眩暈や気絶をしたりする者が居る。あれが【解離】だ。但しこれは正常な範囲での【解離】の話であって、限界を超える苦痛や精神的負担を記憶ごと切り取って封印する事は重度の解離で、これが成長して二重人格として現れる事を解離性同一障害という。

解離性同一障害は防衛的適応のなかでは凶悪な分類に入り、深刻な症状だと「感情の調整」が破壊され更に二次的、三次的な派生効果が生まれ、衝動の統制、メタ認知的機能、自己感覚などへの打撃となる。

またそれが精神面にも行動面にも跳ね返ってくるという負のスパイラルに陥る場合があり鬱病、摂食障害、薬物障害、また転換性障害を併発することがあり、そしてパニック障害、境界性パーソナリティ障害によく似た病状を発症する。

リストカットのような自傷行為は勿論本当に自殺しようとすることも多い。 だから私は警戒しているのだ。また他にもアイデンティティウンタラカンタラで一つの人格さえも維持できなくなって自我が消失する場合がある。これは要するにお腹が空いたから御飯を食べるのではなく身体機能を維持する為に外部からの栄養補給をする。人類の為でなく、身を守るために深海棲艦を撃滅する。眠いから眠るのでは無く記憶の整理、知識の精製の為にノンレム睡眠を摂る。一般的に云われる「人間らしさ」の一切が無くなってしまうのだ。会話は出来る。ただ同情や非難はなく、議論のみだが。楽しむ事はなく、実に合理的な行動のみを取る事になる訳だが、私の持論だが無駄があり、決断を誤るのが人間だと考える。自我の消えた人間が、「人間」と呼べるか?少なくとも私は呼べないな。生命体としては究極なんだが。

まぁ幸いにして大和は第二人格...これも第一人格から派生したものだがこれが顕現しただけに収まったのだが。

「......ともかく、生きていて良かった。」

これは偽らざる本心だ。勿論艦娘は例外なく好きだが、大和は特に気にかけている。こう、容姿だけは凛々しいのに声は少し幼く、健気に喜ぶ様は見ているこちらが幸せな気持ちになるとても魅力的な艦娘なのだ。よく武蔵や矢矧と行動することが多い大和だが、別に誰かを嫌っているわけでもなく、全員に対して平等に接していた。其処に一抹の不安を抱えながら微笑ましく眺めていたのだが、時折酷く儚く海風に吹かれてそのまま吹き飛ばされる様な弱々しい姿を目撃することもあった。そのアンバランスさ......実に危うかった。

 

 

それで、だ。解離性同一障害の治療方法だが、これが難しい。

それぞれの別人格は必ず意味があって生まれてきた大和の「部分」であるから、そこをしっかりと理解していなければならない。別人格...今出てきている人格が受け持っている不安、不信、憎悪その他の負の感情を和らげる必要がある訳だがこれまた、難しい。

やまとのもつ感情は不安や絶望といった類のおもいっきしダークな部分で、恐らく人間への不信感や憎悪が蓄積されてうずたかく積み上がっている。

これを和らげる方法など知らない。

安心感や信頼感は大和となら築いている自信はあるがやまととは繋がりさえない。

あなたのもつ憎悪はやはり汚いものです。深く懺悔し神に許しをこいて〜〜とかいう便利な謳い文句で人間が簡単に更生したら便利だが生憎と人間の心理や精神の構造はそんなに甘く出来ていない。

だってさ、今までずっと親の親の親の世代からずっーずーっとと互いに憎しみ合い、貶し合い、嵌め合い、戦争を続けてきた怨敵と、ハイ今日からみんな友達です。仲良く手を取り合って生きていきましょうねーと言われてそう実行できる人間などいるだろうか?否。絶対に居ないだろう?

 

万が一にそういう行動を取っている奴らも大体は精神がイカれて末期的なキチガイであったり思考停止した阿呆でしかない。

 

「......比喩も、隠喩もしないで直接的に聞くが、貴官はにn「はい。とてもとてもとても憎んでいます。出来れば、今すぐに全てを焼き払って皆殺しにしてやりたいくらいには。」......そうか。分かった。リバンデヒ」

「何かしら」

丁度、医務室に到着した事情を察したらしいリバンデヒ、カイクル、ノイトハイルに指示を出す。

「これより大和型一番艦やまとは、()()()()()()()脅威と判断し治療されるまで拘束する事を決定する。手枷を持ってこい」

「......良いのね?私としてはやまとの意見はごく普通だと思うのだけれど」

「私とて、これが正しい事だとは思っておらん。」

原因は人間だし、これを押さえ込んで人類の為に戦い続けたのは大和だ。しかもそれのトリガーを解き放ったのは深海棲艦と人間。二度も人間に精神の限界を超えるクラスのトラウマを捻じ込まれ、さすがに大和でも、耐えられなかったのだろう。今回こういう形で溢れてきているのだ。大和は何も悪くない。悪いのは人間だ。そもそもの原因も、ロックを外したのも。

やっぱり助ける価値あるんだろうか。真面目に悩んでしまうし、これを考える事自体人間からみたらよろしくない事なのだろう。守るための兵器が何をほざいているといった感じに。しかし此方(艦娘)から見たら、己の短絡的な野望や欲求の為に艦娘達を好き勝手に振り回し無遠慮に土足で艦娘達の傷ついた精神を更に踏み荒らしてゆく。

 

元が大日本帝國の為に最期まで戦い続けた艦達だ。魚雷を喰らいつつも主砲を撃ち続け、真っ二つになっても戦う事をやめなかった艦。エンジンが破壊されても乗員のハンモックを帆にしてまで戦闘を続行して猛烈な()()による攻撃で無念にも轟沈した艦。()()の無謀な作戦によって囮として使われ、奮戦虚しく轟沈した航空母艦。()()の航空機300機以上に15発以上の魚雷を一方に喰らいつつも、甲板を真っ赤に染めながらも戦い続け90度転覆して轟沈した戦艦。()()のミスによって敵艦隊を味方と誤認し攻撃されているにもかかわらず只管に我は味方だと表明しつつも轟沈した重巡洋艦。数々の味方艦を目の前で失い続け、戦後は復員艦として活躍し、最終的には中華民国(現在の台湾)に賠償艦...正直貴様らが賠償してほしいところだが再三にわたる返還要求も詰まらない意地っ張りにより全て拒否し最後は暴風雨によって破損し、そのまま解体された。宗谷を除けば、唯一の戦闘以外での原因の最期を迎えた駆逐艦など、誰しもが必ず傷を負っている。そんななか態々守るために戦い続けているのにそれを仇で返してくる。これはもう誰でも愛想尽かすだろう。ブチ切れるだろう。

「............はぁ、カイクル。少し休む。今日の警戒艦隊は?」

「了解した。本日の警邏艦隊は金剛、榛名、摩耶、川内、吹雪、暁だ。」

中々に練度の高い艦隊だ。大体...そうだな。120くらいだろう。火力、装甲共に十分な堅実性を持っているはずだから、大丈夫だろう。金剛は...うん。警戒くらいは紅茶片手にしないでおこうか。

 

あとは...ちょっとお仕事だ。船体に意識を向けて15基しかない超大型多段頭ミサイルハッチ(通称 BGM-9)にエネルギーを伝達。備蓄されている大型ミサイルを量子変換器から出すとミサイルハッチにセット。緯度経度を始めとした厳密な座標などの諸元入力をパパッとすませると、発射。

ハッチが素早く開ききると、爆煙が噴き上がり、大質量を伴って巨大で太く長いミサイルが飛び出てゆく。赤いような青い様な噴炎を滝の様に圧倒的なエネルギーをともなって飛翔した弾頭に特になにかといったものを載せていないミサイルは、一分以内に大気圏へ到達し、迎撃もままならない内に目標へと着弾するだろう。まあそれによって死者は出るだろうがいくら死のうが気にしない所に落としたから大丈夫だろう。精々1000人くらいだろう。

弾頭を積めなかっただけ温情だと思ってほしい。粒子爆弾でも積もうならば多分威力は日本を物理的にワンパンできるクラス。ウンターガングを積んだら......多分ユーラシアが消し飛ぶな。うん。

 

まあ今回は演習弾ですしおすし?威力は慣性と空気抵抗だけですし?

因みに、今まで詳しく言っていなかったが私の主砲である500cm一式徹甲弾は25500000J。初速は1000m/sとアホみたいに高く、重さは総重量にして45t。その中でも超高性能炸薬は30tと最早徹甲弾とは呼べないクラスの砲弾になってしまっているが、まぁそれは良い。その結果2500000Nという莫大な運動エネルギーを生み出した砲弾だ。あくまでもそれは砲身の中で回転し、飛び出した時の運動エネルギーだ。砲弾はそれだけのものでは無い。そんなのは空砲で十分だ。自動射撃統制装置の情報をもとに中央演算処理装置が算出した数値に定められた目標へと速度を上げつつ着弾。その瞬間の衝撃や信管が作動して爆発した炸薬など様々な運動エネルギーがごちゃまぜになった広範囲爆発は目標の装甲など叩き割り内部で炸裂するのだ。むろん装甲を食い破った後に炸裂するのだが。

 

 

 

兎も角(閑話休題)、いい加減疲れた。「やまと」の問題も今すぐに解決できるわけでもないし、ここ最近まともに休んでないのでいい加減ぐっすり眠りたい。無論、完全に施錠してリバンデヒ(クレイジーサイコレズ)ノイトハイル(ご主人様(仮))に侵入されて夜這いをかけられないためようにな。

なんだかんだあってあの悪魔の契約であるノイトハイルの奴隷宣言は復活してしまい、私は暫定的にノイトハイルの奴隷となっている。といっても今の所ノイトハイルからそういうコンタクトを受けたことは無いのだが。

 

一応私もナウル鎮守府においての艦娘統率の任を担い、いやがらせのレベルを天元突破した書類の山を処理し、それとは別にナウル鎮守府の防衛設備の点検や維持に消費した資源の報告書に日々自由にさせている個別演習の消費資材や戦闘経過の一部始終を軽く書いたレポートに深海棲艦との戦闘の報告書に消費資材の報告書。

様々なものが集まり私達はそれを一気に処理しなければならない。

なんかなぁ...人間って器小さいよね。そうやって自分では何も努力せずに自分より戦績を出している鎮守府をただ恨み権力を使ってくだらなさすぎて呆れる程の陰湿な嫌がらせをかけてそれで自分は出来るんだという現実逃避をして適当に深海棲艦と戦って。

未だに管轄の海域を一切解放する素振りさえ見せず近海のみを防衛するだけの鎮守府もあるらしいし、最近は殆ど物理的に消し飛ばして殲滅したブラック鎮守府も最近その予備軍らしき兆候を見せる鎮守府も現れ始めている。そうやって自分達で自分の首絞めて揚げ足とってお互いの足引っ張りあって共通の目的が世界的危機でのレベルであるにもかかわらずそれをしようともしない。やはり人間の生存本能故か保身に走るのを別に悪とは言わん。しかしそれだけに固執し他を蔑ろにするクズなど少なくとも大日本帝国海軍には要らない。アメストリアか?進んで戦火を拡大して戦争を楽しむからそんな下らない問題は無いぞ。

 

 

 

 

 

鎮守府の家屋は洋風であり和風である、和洋折衷なデザインだ。

赤い絨毯は敷かれているし、壁も障子ではなく洋風のパテを塗りたくったような壁紙。しかしその骨組みは和式、艦娘寮も大体全て和風建築だ。具体的に言えば大社造の派生版みたいな構造で屋根は高く、提督棟と同じく外側の壁はレンガが構成され、屋根は瓦というなんかよく分からないカオス建築となっており、内装もまぁ生活基準の問題上洋風の設備を導入している。具体的には、冷暖房機能完備の妖精さん特製のエアコンや加湿器、又艦娘の希望制だがベットも導入しているし、美容製品や電子機器も自由に配給している。

 

ここはどの大陸ともかけ離れた正に絶海の孤島。大陸から流入する文化なんてものはなく日本とも離れているので二次元的文化が入ってくることは無い。詰まる所、この南国の島ナウル島には娯楽と言えるものが慢性的に不足しているのである。

戦闘くらいでしかストレスを発散する手段は無く、ましてや艦娘という少女の姿をとったのだ。年頃の娘であるためにやはり楽しいことをしたいのだろう。しかしその楽しい事をする物がなければ手段もないと。

 

何という負のスパイラル。

 

し、しかしここも腐っても南国。休憩用にと砂浜は一部残してあるし海水浴だって可能だ。

 

......確かにさ。最初は艦娘達も楽しんでくれたよ?一部は。

しかし彼女らは極端に水に浸かり『潜る』という事を嫌う。いや、正しくは恐れている。

それに関しては解る。前世...WWl時でも現在でも海上を駆り、決して海中の中へ自ら進むものは居ない。海上艦の艦娘では。但し例外も存在するのが世の常。もともと海中が本分である潜水艦の艦娘は寧ろ進んで潜って行く。ナウル鎮守府でいえばドミートリーだな。他の鎮守府で言えば伊号潜水艦の艦娘達だろう。後は...U-511か。呂-500?知らない子ですね。

 

 

 

閑話休題。またしても話題がずれてしまった。どうしてこうよく思考が主題からずれてゆくのだろう。そんな和洋折衷の廊下を歩いて私の部屋へと向かっている時、おぞましい、狂気とも言えるドス黒い、明確な憎悪の()()が背中を駆け抜けた。

怖っ...と思うと同時に派手な破砕音が後方から響き渡った。.......嫌な予感がする。

こういう時の私の予感は良く当たる。念の為腰のホルスターから五式自動拳銃を一丁握り込み反転して走り出す。「やまと」が病的なまでに恨んでいるのは何か?それは己を絶望と恐怖の淵に追いやった人間どもである。なら、この鎮守府にいる唯一の人間とは?

 

即ち、提督である。

 

やばいやばいやばい。このままでは確実に提督が死んでしまう。一応提督は私の命の恩人なのだ。恩義は感じている。焦りにも似た危機感に突き動かされ、廊下を割と全力で走ってゆく。

視界に入ったのは、医務室の扉が力尽くで吹き飛ばされ、そこにもたれかかるようにして気絶しているノイトハイルが。ま、まさか...「やまと」がこれをやったのだろうか。というかそうなのだろう。俄かには信じがたいが。私だって赤子をひねるように取り押さえられるクラスの規格外の塊であるノイトハイルが一発ノックアウト。一体どんな技を使ったのか気になるところではあるが、今はそれどころではない。廊下の先を見ると、病院服のまま走り去る「やまと」の姿がチラリと見えた。まっずい。ひじょーにマズイ。足取り...?に迷いがなかったことから完全にロックオンしていることが察せられる。ここからも感じる悍ましい(おぞましい)狂気がピリピリと肌に突き刺さる。

すぐに追いかける。今回は危ないかもしれない。

 

床を踏みしめ、全速力で「やまと」を追いかける。

「ーーーーーーアアァァァァァァァァァァアアッッッッツツ!!!!」

怨霊のような、怨みしか含まれていない大絶叫が響き渡る。遂に「やまと」が提督を直接補足したのだろう。ヤバイヤバいやばい。直角の曲がり角を壁に着地する事で衝撃を緩和しそのままターン。どうにかして、「やまと」を止めねばならない。万がーに提督(人間)に危害を加えようものなら老害共が何をしてくるかわかったものではない。水を得た魚のように嬉々として私を責め立ててくるだろう。責任問題だの監督責任だの私の立場を崩しに掛かるだろう。それだけは絶対に避けなければならない。大和にもとばっちりが掛かるしこれでは私が艦娘を守ることができなくなる。それだけは避けなければならない。

「..........ッ!?」

提督は、「やまと」の気迫迫る普段の様子とは根本的に異なった顔に威圧されたのか、それとも「やまと」を大和として認識した只混乱しているだけかもしれない。兎も角、完全に硬直して回避不可能となった提督と「やまと」との距離はあと数メートル。これではもう取り押えることは不可能だろう。ならば...

 

 

 

グサリ、というよりはブチブチッ!という肉や繊維が無理やり引き裂かれる音と共に腹部に強烈な痛みが私を襲った。次の瞬間には猛烈な熱が腹を中心に広がって行き、脳がこれはヤバイと警告を発する。幸い背骨までは貫通しておらず、幾つか内臓がデストロイされたに留まった。まあ死ぬよりマシだ。

「ゴフッ......て、提督...無事か......?」

「...う、うん...大丈夫、じゃ無さそうだね...すぐに救急班を呼んでくるよ!」

「......恐...らく、妹...が........ゴホッ!ゴホッ!」

やっぱヤバイっすわ。内臓がやられた所為で出血は止まることを知らず、食道から逆流し更に吐血を繰り返す。重症というレベルではない。これは今すぐに集中治療が必要だろう。此処は鎮守府だ。多分大丈夫だろう。

「_________________ッッッッッッッッ!?!?!?イヤァァァァァァァァアッッッッ!!!」

耳のすぐ側で大絶叫が大音量で叩き込まれ、思わずあとずさる。しかし大和は私にもたれかかった状態。従ってその重さで二人とも倒れこみ、更に私には大和の手刀が深く突き刺さった。もっと痛い。私マゾじゃないからこれはキツイ...

それよりも...最悪だ。最悪のタイミングで大和の人格が戻ってしまった。くそっ...どうにかしてこの惨事を納めなければならない。失血は既に危険域だというのに...仕方ない...痙攣する筋肉を無理やり動かして大和を抱きしめる。やはり柔らかいな...色々と。うん。

「ゴホッ...大和....大和っ!......聴けっ!!」

「ァァァァァ...........な、何、ですか......?」

「これは、夢だ...あぁ、そうだとも。私は少々()()な身故な。次に目覚めた時には絶対にベットで眠っているぞ.......ゴホッ...知って、いたか?武蔵は毎日、お前を看病してくれていたの、だぞ...?、礼を......言っておけよ?」

ヤバイ。視界が霞んできた。力も入らない。

「.....これは...夢........?」

「そうだ...全くタチの悪い夢だな.......」

「...ふふふ、そう、ですよね...私は、少し眠りますね...」

「あぁ、そうしろ.......私も、少し...疲れた。」

そう言って、私も意識を手放す。いい加減限界が来ていたのだ、あとは妹達がどうにかしてくれるだろう。重なり合うように倒れ、それを中心に夥しい量の血で円を描いた光景は第三者が見ればトラウマ必須だろう。霞む視界には、誰かの姿が映っていたが、誰だかは分からない...背格好は華奢で低かったから吹雪だろうか...しかし灰色っぽかったから...大鳳、か?まぁ、いいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識を取り戻した。

もしかして此処は天国的な何かだろうかとふざけた思考を回しながらも、目を開けると、白い天井。腹にはまだ継続してズキリという痛みが走り、思わず顔を顰め域を漏らす。

「あら、やっと目を覚ましたのね...全く...お姉ちゃんは毎回心配かけすぎよ...」

「.........すまない。これしか、方法が思いつかなくてな...」

「別に、手を持って受け流せばいいじゃないの...はぁ、やっぱりお姉ちゃんはどこか思考回路がおかしいわ」

一応貴女の姉なんですが。なんか妹にネジ飛んだ人認定されたんですがどう反応すれば良いんでしょうかね。なんか不服だが、私は選択を間違えた積りはないが受け流せばよかった、と言うのは素直を受け取ろう。私がバカであった。でもさ?あの状況でそんな冷静な判断が下せるかっての。ん?なんか無駄に考えてたって?知らんがな、私はそう言う生き物だ。

「...大和は?」

「一応、隣に寝かせているわ。確か武蔵と矢矧が監視兼看病で付いているはずよ。」

「そうか...私は、何故助かったのだ?」

「あら、助けてほしくなかったのかしら」

「いや、そうとは言っていないだろう...」

「ふふ、大鳳が助けてくれたのよ?正直、悔しいけれど私達が駆けつけたのは少し遅かったの。偶然居合わせた大鳳が応急手当をしてくれなかったら今頃お姉ちゃんは冥界ね。」

「そう、か...」

やはりあの姿は大鳳だったか...なんか散々燃料庫とかで弄られている脇空母さんだが、アレでもかなり悲惨な沈み方をしている。だって燃料庫が引火して沈没とかマジで笑えない。まだ敵の砲撃が決定打になって沈むなら戦って戦没したと明確に言い切れるが、燃料庫は...なぁ?

だからこそ私は大鳳達を保護(鹵獲)した時にめいいっぱいの改造を施し出来るだけ生存率を上げる努力をした。過保護といえば済むだろうが、私は真面目に沈んでほしくないのだ。''彼女''がとても悲しくなるし。だからこそ大鳳には対500cm装甲を張り巡らせたし、高雄達には12.7cmという駆逐艦の主砲クラスの対空砲を四基設置している。これも全て艦娘の為。そのためだったらなんでもするのが私だ。

「後大鳳から伝言よ?」

「......?」

「これでやっと()()を返すことができました、との事よ。ふふふ、可愛いわね」

「......あぁ...そう言うことか。ふふ、確かにな。私はやりたかったからやっただけなのにな」

「ふふふ、ともあれお姉ちゃんが助かったのよ。それだけで良いわ」

「そうか」

二人して、大鳳が言っていた()()が微笑ましいと笑いあっていると、カイクルが入ってきた。そして私の姿を見るなり顔を緩ませ、忽ち魅惑的な笑みを浮かべる。

「おお、姉さん()目を覚ましたか」

「カイクル、そう言うお前は大和も見舞いをしてきたのか」

「うむ。彼方は残念ながらまだ目を覚ましていないようだ。あと、報告だ。たった今大和型戦艦の第三次改装が終了した。それと、天龍から報告が上がっていたな。後で確認してくれ」

「...了解した。」

やっとナウル鎮守府の実質的主力戦艦が前線復帰する条件は揃った。あとは艦娘の方だな。

天龍の報告と言うのは...幾ら何でも早過ぎないか?報告出来るということはそれだけの量の情報を得ることができたということだろう。確かに天龍龍田は諜報に関してとても優秀な才能を持つ裏の艦娘達だが、それでも今回の()は手強いと感じている。深海棲艦と繋がりを持ち、今の今まで艦娘という機密の塊を扱った人身売買を繰り返しそれをもとに運営している。これだけ派手な行動をしておきながら今まで波風ひとつ立てなかったのだ。いや、すでに立てているのかもしれない。しかしそれを揉み消している公式の権力が存在する可能性だってあり得る。それだけ今回の処分すべきゴミどもは巨大なのだ。

ともかく優秀であることに変わりはなく、報告が上がるのは別段悪いことではないので問題はない。アメストリア型戦艦一番艦アメストリアの中央演算処理装置に意識を潜らせ、複雑に暗号化され報告書を解析する。

 

 

 

 

 

解析した結果、様々なことがわかった。

まず一つ目に今までも拉致された艦娘達が居るのは確定した事。

二つ目にその犯罪組織の末端は掴み売買も既に確認している事。

三つ目に現在艦娘達が連行されたと思われる場所を調査するために組織の尾行中である事。

四つ目に拉致された艦娘達の船体は艤装を剥がされた状態でスクラップの様に放置されているらしく、轟沈判定や解体判定ギリギリを責めている事。

他にも今回の潜入任務での障害となり排除した人数。えーと...268人らしい。別に何か感じる訳でもないが。むしろそれだけ関係者がいる事に驚く。というか天龍さん優秀ですね。ここまで一瞬で調べ上げるとは。

他にも備考欄には備考の際に陸上兵器を使用している事と現在船体を隠蔽している座標に、一番気になった一文が記載されていた。

 

 

ーー今回ノ諜報任務ニオイテ天龍型軽巡洋艦二番艦龍田ガ負傷。サレド軽傷ノ為任務ニ支障ナシーー。

 

 

この一文だ。なんかさりげなく書いてあるが龍田が負傷したと言う。一応あっちの国のニュースをちらりと調べてみると、コロラド州で大規模な銃撃戦があったらしい。多分それだろう。何やってるんでしょう。なんか楽しんでいる気がしないでもないが意見するつもりはない、自分のペースでやって貰えば良いのだ。優秀だし信頼を置いているし。

それならば天龍からGOサインが出た時にすぐに救出できる様に備えはしておかなければならないだろう。アメストリア型戦艦一番艦アメストリアには陸上兵器と言ったら万能生産装置で製造した世界最大最凶の一七式戦車位しか無く、装甲車が居ない。ならば製造するだけの事。

万能生産装置を用いて五七式重装甲輸送車を一両だけ製造し、他にも一式重武装車輌を30両ほど。あとは上空支援様にAH-60 3機を。一七式戦車と五七式重装甲輸送車と一式重武装車輌ニ両のみ隼に積み込んでおき、何時でも出れるように総点検を開始。特に格納式の41cm連装砲とかをな。

 

救出作戦自体はとても簡単だ。ドイツの電撃戦のようにただ速力を生かして電撃的に制圧。

その為にはあの国に直接カチコミに行く必要が出てくるが今回は「日本艦娘の救出」という大義名分もあるため堂々と。一七式戦車を動員して敵対する行動、又はそれに準ずる行動をとった者から家屋ごと吹き飛ばしてゆく。あとは私という唯一の歩兵戦力と合流した天龍が制圧し五七式重装甲輸送車や一式重武装車輌に救出した艦娘を乗せて素早く撤収する。

天龍と龍田はその後撤収作業をしたのちに隠密性を優先し闇に紛れて撤収。私は堂々と真昼間から光学迷彩を一切使用せずに近海まで接近して威風堂々と回収して我が物顔で帰る。ただそれだけ。簡単に言ってのけたが実際に簡単なんだなこれが。

仮にアメ公の戦車(エイブラムス)が出て来ようがあっちは120mm滑腔砲でありその威力は砂漠にいる型落ち戦車になら無双できるだろうが残念ながら対する一七式戦車は正に規格外の塊。全長17.7m幅5.12mという巨体であるにもかかわらず90km/hという非常識な速度で爆走し主砲である150mm速射単装砲は毎秒で発射可能。他にも同軸砲に45mm砲を積み砲塔上部にはリモート操作が可能な19.8mm重機関銃とM3 14.5mm重機関銃が搭載され馬火力の象徴だ。その装甲は厚く正面装甲だけでも780mmあり傾斜を含めると900mm以上の重装甲となる。動くだけで震度2くらいは発生し唸り声のような起動音はもはや戦場の恐怖の風物詩として有名らしい。

 

まぁそんな感じでキチガイ兵器ばかり導入しているので多分大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




割とどうでも良さそうでどうでも良くないそれなりに重要な情報です。
MI/AL作戦はアメストリア達の独断で実行された作戦でもあります。実の所大本営が提示した期間よりも遅くやっていたので結構ギリギリのスケジュールなんですね。次からは、さらなる大規模作戦が決行される模様です。


後は例の幸運艦が......?

ともあれ、次回から次の作戦が発動します。例の如く火力無双ですが、お願い致します。



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71.ソロモンって狭いよね。

遅れましたが何とか書き上げました。
流石に私も一ヶ月掛かるとは思っていませんでした。数々の壁(主に学校とか学校とか学校とか学校とかetc...
に阻まれ中々時間を取れませんでした。あとテスト勉強とかPz.kpfw VlausfBとか。おかげでティーゲルllは3両になりましたとさ。やったね中隊だ!

さてさつ今回はソロモン攻略作戦。駆け足ですが駄作から展開の速さを抜いたら何も残らないのですからご勘弁。では、どぞ。


ーーーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーー

艦娘の救出作戦については、天龍のGOサインを受けた途端救出作戦が発動するように準備をしておく事で合意している。

内容自体は正面切って堂々と上陸し艦娘分捕ってくるだけだしそう複雑では無い。

かく言う私は既に格納庫(特大)に一七式戦車と五七式重装甲輸送車と一式重武装車輌を生産して隼に搭載済みだ。

一七式戦車も五七式重装甲輸送車も酸素の無い空間での戦闘行動を想定して作られている為、完璧な空間密閉が施されている。だから海水くらいなら浸水することは決して無い。

大陸から少し離れた所で投錨し格納庫のハッチを下ろしてそこから密閉と重量に物言わせてれっつごーダイビングッ!して馬力で強引に上陸する。うむ完璧。そこ、ミッドウェーで却下したとか言わない。あれ結局妖精さんが強引に一七式戦車セルフ揚陸してたし。ノーカンノーカン。まぁアレで一七式戦車でも上陸できることが実証された訳ですしお寿司。

 

あとは天龍らが特定した場所を強襲し艦娘を奪還する。それによって大規模な破壊活動が必要なら躊躇いなくやる。警察が鎮圧に来るなら問答無用で制圧する。せめてもの情けとして150mmHEIAP(複合弾)で消し飛ばしてやんよ。

 

「お姉ちゃん、少し問題よ」

「......む?どうしたんだ」

「...それが...先程大本営から大規模作戦が発令されたわ」

何故にこのタイミングで......?つい最近、私達ナウル鎮守府はMI/AL作戦を実行したばかりで、弾薬・精神共に消耗したばかりだから、所謂冷却期間に入っているのだ。

素人が考えてもわかる理論だが、普通連続して、一ヶ月以内に大規模作戦が発令されることは無い。あってはならない。それが緊急時、本国への最後の砦が堕ちたとかならまだしも、現在微々たる差だが人類側が勝っている状況。そんな時に態々連チャンで大規模作戦を立てること自体がおかしいのだ。少しは休ませろっての。

まぁ、確かにさ?ミッドウェー攻略はなし崩し的に出来た偶然の産物にすぎないけどさ、時期が大本営の想定より遅くなったとしてもさ、結果的には私達は大量の弾薬を消費して疲労しているんだぞ?其れなのに間髪入れずに私達を動員するのはどうだろうか。

 

 

 

 

......いや、逆に考えると、私達を動員せざるおえない事情があるとも言える。

例えば、立案する側の故意的な動員。

例えば、敵側に強力な【イレギュラー】が出現した場合。

私達は驕りでは無いが現時点世界最強の戦力だと自負できる。其れを動員する必要がある程に強い敵が出現したという事はまぁ私達が動員されるのも納得できる。

でも、其れでも違和感がある。何か''痼''を感じる。()が警告する。何か怪しいと。

「......直ぐにか?」

「いえ、動員は明日よ」

「何処に?」

「...えっとぉ...確かそろもん?、だったかしら」

......なんで今更ソロモンなんでしょうかねぇ...ソロモンといえば、ガダルカナル島の目と鼻の先。サボ島やなんかちっさな諸島があるだけの海だが、其れゆえに待ち伏せなどには適した海域である。史実では此処で3回に及ぶ海戦が行われ、大日本帝國海軍も相応の被害を受けながらアメ公の重巡洋艦を一次海戦で四隻撃沈し重巡一隻を大破。駆逐艦三隻を中破に追い込んだ。二次海戦では龍驤が沈没するもあの色々な意味で有名なエンタープライズを物理的にこんがり焼き上げ、三次海戦では駆逐艦を平らげその他駆逐艦と重巡洋艦に損害を与えた。

其れら全てが夜戦によって得られた戦果であることはお察し。

それが戦史。しかしここは現在だ。敵は残念ながらアメ公では無いし深海棲艦だが、敵がいることには変わり無い。

「敵戦力は?そもそも私達か。動員される理由は?」

「全くの不明よ。ジェット機の偵察機が落とされているらしいから〔姫〕はいるんじゃ無いかしら」

「お前も姫って使っているのか...其れよりも、情報があまりにも少なすぎる。これでは作戦すら立てられないではないか」

「それが...既に大本営から指令がきてるのよ...」

......いやーな予感がするなお姉さん。あの有名な大本営が立案した作戦とか...なんかやだなぁー。

「............ふん、従ってやる義理は無い。3日でカタをつける」

「分かったわ。」

リバンデヒが退室するのを見送ってから、私は意識を船体の中央演算処理装置へと沈める。

膨大な量のデータで埋め尽くされた電子の海。ここに納められているデータだけで世界を15回は根本から破壊できるであろう危険物が眠る中、もしも用に残しておいた大本営データベースへのバックドアを探し出し、それを開ける。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「やはり、か......」

いつの間にか止めていた息を吐き、腰掛けていた椅子に力無くもたれる。

調べた結果、今回のソロモン攻略作戦は参謀役将官は猛反対しているらしい。しかし、その反対を押し切って元帥が権力を盾に強引に決定したと言うのだ。

そのお陰で急に発令されることとなった訳で、こちらからすれば大迷惑極まりないのだが...しかも作戦内容も元帥が独断で決めたそうで、あまりにもお粗末。敵側にアメストリア型戦艦がいることが全く想定されていないゴミみたいな作戦指令書だった。

 

ふざけているのだろうか老害共は。

お陰でこっちはてんやわんやだし他の鎮守府も大混乱に陥っているだろう。最近は大規模作戦がないという事になっていたから主力艦隊を別の遠い海域へ遠征させていたりとか。それはそれで悪夢だろうが。

「妖精さん、作戦参加に問わず全艦に最大の補給をしてやれ。また、完璧な状態になるまで整備を続けてくれ」

''あいあいさーな感じです?''

''りょーかい!''

''バンバンつめこめー!''

 

流石に今回は想定外の想定外が重なっている特例中の特例。絶対に順調に進まないと確信出来よう。ならば出来る限りの備えはするべきだろう。戦艦は勿論、航空母艦も入れて警戒すべきだろう。

今回の作戦海域はガダルカナル島に程近いサボ島からソロモン諸島全域。詰まる所『ソロモン』と一般的に認知されているエリア全域を制圧してこいという訳だ。

しかもそのソロモンは此処、ナウル鎮守府と近い。ナウルからソロモンは数百キロの距離にあり前回行ったミッドウェーに比べれば十分の一位の近距離だ。しかし数百kmは数百キロ。

ナウル鎮守府に備え付けの大型電探の索敵範囲は半径550kmである為にソロモンは索敵範囲に入っておらず、深海棲艦の動きをキャッチする事はしなかった。というかするつもりもない。一々構ってやれないし。

「...リバンデヒ、作戦参加艦を招集してくれ。作戦なども合わせて今送る」

『分かったわ、直ぐに集合を掛けるわね』

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここにいる者は察していると思われるが今回大本営より再び大規模作戦が発令された。」

リバンデヒに集めてもらった艦娘が揃うアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの会議室。そこで私は今回攻略するソロモン沖の海図を前に発表する。

「今回の大規模作戦は異例の中でも特に際立った作戦だ。しかも私達はその作戦への参加が義務付けられている。かつ、昨日未明に噴式の偵察機が撃墜されている」

その言葉に集まった艦娘達が僅かに騒つく。空母なんかは、既に顔を青ざめている。確かに一番F-222達のスペックの異常さを理解しているからこその畏れだろう。対空にステ振りした艦娘も同じく。レシプロなら見なくても落とせるだろうが噴式戦闘機だと難しい。まずアホみたいな機動性にアホみたいな瞬間火力。気付いたら真後ろから真ん前に飛んでいたなんて事はざらにあるし、45mm対空機関連装砲もF-222の撃墜は10秒かかる。

「しかしそれはあちらの練度の足りない、F-105の話だ。しかし恐らく深海棲艦側にアメストリア型戦艦が動員されている事はほぼ確実だと思われる。そこで今回の作戦には......リバンデヒ」

「はぁ〜い、」

「ノイトハイル」

「ほい」

「この2名をつける。私とカイクルはこの作戦中に裏をかいてくる外敵を撃滅する為に待機する。そして無論だがここに集まっている貴官らも作戦参加艦だ。大丈夫だ。私は貴官らが最高練度の軍隊だと確信している。」

「「「はい!」」」

うむ。皆一様に凛々しい顔をしている。良い顔になったものだ。

今回は私も警戒しているため練度も火力も速力もある程度あるエリートを選出した。

「ソロモン沖作戦派遣艦隊の旗艦はリバンデヒ。そちらの艦隊には大和と矢矧が付いてもらいたい。ノイトハイルには陸奥、蒼龍、飛龍、大鳳、摩耶、鳥海が付いてほしい」

「異論はないわ」

「こっちもだよ〜。ね?」

「勿論です。今回から56cm三連装砲に換装したのでその性能を確かめておきたいですし。」

「私も依存はないわよ?51cm三連装砲の威力、見せてあげる♪」

戦艦組は戦意十分のようだ。特に大和は張り切っている。例えは悪いが新しいおもちゃを与えられた子供のように。あまりよろしくない傾向だが大和とて伊達に戦闘経験を積んでいない。流石に身の扱いくらい知っているだろう。

「ちょ、ちょっと噴式を落としたって怖いけど私は参加するよっ!ね、多聞丸?」

「そうね。私達の艦載機の練度は高いもんね!戦果を期待しても良いですよ!ね、アメストリアさん?」

「...私も参加します。あの恩義は返せても、今までの恩義は忘れてはいませんから」

空母艦娘も気合十分。大鳳は未だにあの恩義?を覚えてくれているようで、少しくすぐったい。別に私は純粋な善意で助けた訳じゃないのでここまで感謝をしてくれるのは、少し嬉しく思う。しかもあくまで私の為に参加を表明するところが食えない。海軍なのに。

「私は大和さんを最期まで守り続けるだけよ。......今度こそ、ね」

「矢矧ちゃん......」

なんか直ぐにキマシタワーが建設されているがそこの桃色は無視し作戦の概要を説明する

「では、今回の概要を説明する。今回は私達が主戦力となりソロモン沖、及びその周辺に屯している深海棲艦を一隻残らず撃滅し海域を解放することだ。その為の期限として私は3日で終わらせることを予定としている。ではどうすれば良いと思う、摩耶?」

「お?おう。アタシは考えるに...夜戦か?」

「その通りだ。夜戦に私達の機動力が合わされば怖いものはない」

実際のところ夜戦は日本海軍の十八番だ。今回もそれを採用させて頂く。私達の速力は80ノットを超える艦のみで構成されているのだ。暗闇からの攻撃では莫大な戦果を上げることが出来るだろうし、敵も補足して撃っても着弾する頃には遥か遠くに移動している。偏差射撃をしても舵を切ってズレればいいし警戒すべきなのはアメストリア型戦艦の座標固定による精密砲撃位だろう。何せ500cm砲弾だ。ただ飛翔するだけで死の衝撃波を撒き散らし周囲を壊滅させる。それは海上においても例外ではなく掠るだけでも艦橋が死ぬ。

「また、他の鎮守府からも応援として長良型二番艦五十鈴と青葉型重巡洋艦二番艦衣笠が派兵されるようだ。其方とも連携を取り作戦を遂行してもらいたい。では、解散!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

深く響く汽笛が幾つも鳴り響き、大小様々な錨が巻き上げられてゆく。

出撃する艦は認識用の照明灯を点灯させ、艦橋に描かれた白文字を浮かび上がらせる。その描かれた艦橋は各種電子機器か画面の光がガラスを照らし、ライトアップされる。

更に、機関からエネルギーが回る。昔なら出航までに10時間とかザラにあるだろうが私達は機関始動から動き出すまでに10秒もいらない。

最初は小さい艦から。矢矧や摩耶、鳥海がそれぞれの係留されていた埠頭から出航してゆく。その細く小さな航跡は戦艦に比べれば小さいものの従来を軽く凌駕する海水を掻き回していることが容易に伺える。鋭く舵をきった三隻が優雅とも言える動きで90度回頭すると素早く港から離脱してゆく。その後は航空母艦。平べったく左右に広がった形の空母はその巨体に見合わない機敏さで埠頭を離れると器用な事に後進のまま港を出た。何やってるんだろうか。

港の形状は凸だから全艦が向かい合った形になっている。中央の開いた空間しか港から出る水路は無くどうしても同時出航が出来ないのが難点だが、まぁ使えるし大して問題ではない。あ、同時出航するのはアメストリア型戦艦だぞ?その場で回頭するのだから直径6kmは中央が開いてないと回頭途中に向かい側の埠頭を軒並み破壊するという笑えない事態に陥るからな。

最後はナウル鎮守府の切り札であるアメストリア型戦艦の二隻。皆さんも体感したことがあるだろう、祭りとかで和太鼓が演奏した時の圧倒的な響き。腹にくる衝撃波を。

あれを何倍にもしたようないっそ威圧感を飛ばしているのではないかと錯覚してしまう大音量で汽笛を鳴らした二隻はリバンデヒが最初に埠頭から離れ5ノットで離脱。15分掛けて出口へと回頭すると、今度は15ノットで直進する。既に出た艦達は二列横陣で布陣しており、何時でも出れる状態に。

全員に敬礼して見送ると、その姿が見えなくなるまで敬礼をやめなかった。

願わくば、無傷で帰ってきますように。

ん、これフラグだな。考えないようにしておこう。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーノイトハイルsideーーーーーーーーーーーー

トゥットルゥ〜♪ノイトハイルだよ。

なんか電波拾ったけどきにしなくていいよね。さてさて、お姉さんの見送りを受けて出撃した訳だけど、ここからソロモンまでは800kmくらい。すぐに着くんだよね。何ならミサイル攻撃だと既に射程に入ってるんだよね。面白くないから絶対にやらないけど。

「全艦第三戦速でソロモンに向かうわよ」

「りょーかーい」

ぐん、と速力が増して船体が掻き分ける海水の量は格段に増える。アメストリアじゃ遅いって笑われる速度だけどまぁいいよね。到着は夜にしないといけないんだし。

「妖精さーん!全砲門に一式徹甲弾を装填してねー」

''あいあいさー!''

''そうてんそうてん!''

''放縦不義な艦娘さんですねー''

ふふふー、僕はそう言う性格だからねー。しょーがないね〜。

''艦娘さん!艦娘さん!上空に偵察機です!''

「んーー。じゃ、対空砲でテキトーに落としといてねー」

''了解!''

''対空砲旋回はじめー!''

''ババババー!''

45mm対空機関連装砲の一つが機械的に旋回して、圧倒的な量の弾薬を展開してゆく。この光景は結構好きだね。重力とは反対方向に赤い火線がまっすぐ伸びていって撃墜するんだよね。

僕達の船体には片舷3500基の45mm対空機関連装砲は圧倒的だからね。視界一面が45mm砲弾で埋め尽くされるのは圧巻だよ。

 

 

 

さてさて、ここはソロモンから25km離れた海域。ここに来るまでに優に100を超える深海棲艦に遭遇したけど視認圏外から一方的に蹂躙して処理させてもらったよ。あ、僕思うんだけどね、最近人間の近代日本文化に興味があるからネットに潜ったりしてるんだけど、ss?っているものがあったんだよね。アメストリアには無い発想だったからついつい読みふけっちゃったんだけどやっぱり人間の想像の限界を感じさせる作品が多かったね。王道って言うのかな。大体の作品が最初の入りとか基本的な世界観、概念、物理法則が一緒で特にそこらへんが考えられてもいない所もあって、偶に書籍化、って書かれてるやつもあったんだけどそれも大体同じ。けれどそれぞれが違う物語を展開させて読んでいて飽きないけれどやっぱり物足りないよね。こう、根本から概念を破壊した挑戦作品が少ないというか。

あと、一昔に流行ったらしい「ちーと」?って言うのは何か読んでて耳が痛いね。確かに凄いんだろうけどそれを超えた超生命体を見てきたからなんか色が褪せたみたいに魅力を感じなかったよ。別に悪いっているわけじゃ無いんだけどね。

軍隊物少ないよね。うん。これは切実に思った。

よくあったのがアメ公の兵器とか今まで使ってた二次大戦時の兵器を駆使して日本とは異なる世界で活躍するっている作品。まぁなんかテンプレ化してたね。あとそれでちーと?って感じ。それはチートじゃなくてただ強いだけだよって言ってあげたい。

展開的な問題なんだろうけど、自分達の強さを強調させるために敵側の視点から描くことがあるよね。でもね、僕達(本当のチート)たちからすれば相手が攻撃されたと認知できない程に瞬間的な火力を持って一瞬で撃滅しないとチートとは呼べないなぁ...

僕達は火力の化身みたいなモノだからね。

 

相手側に花を持たせるのはあんまり良い方法とは言えないよねっていう話だよ。盛り上がるのは確かなんだけどね...まぁ〜これが現実との違いってやつかな。うんそれだけ。ごめんね。話がずれちゃった。

深海棲艦は見るのも嫌だから視認圏外から消し去ったけど、まだまだ反応はある。

けれど意外なことにソロモン諸島内部には深海棲艦があんまりいなくて、むしろその周囲に密集しているように見えるね。

「じゃあ、作戦開始ね」

リバンデヒお姉ちゃんの合図がキッカケで、海が消えた。

うん。これは別に喩えじゃなくて文字どおり消えたんだよね。

具体的に言えば僕達戦艦が使える砲全てを斉射したんだ。お陰で砲声は空間を捻じ曲げるほどの大爆音となって響き渡り、砲煙は雲を作り出す。56cm、51cm、150cm、500cmと大火力のHE...榴弾がとある方向へと一斉に襲いかかってゆく。曳航剤による赤いラインが遠く遠くへと飛んで行き、とある島で一斉に着弾。キノコ雲を形成する。あやや、やりすぎちゃったかな...でも彼処は強固な装甲を持った飛行場だから消し飛ばさなくちゃいけなかったんだよね。一々対空戦闘しながら海戦とか面倒くさいし。

それにしても夜だから砲撃が良く映えるね。一瞬だけ真っ赤に染まってオレンジ色に船体を照らしあげる。押し出された海水が激しく動き回りザパンッというぶつかる音で船体に打ち消される。

それを僕はうっとりとした表情で眺めていたんだけど、小口径弾を除いて主砲の砲撃が止められ、上空を轟音とともに真っ黒に染められた圧倒的な存在感を誇る戦闘機達が一気に飛び抜けてゆく。青色の焔を噴き出しながら飛んで行く巨体の数々は圧巻で気分が高揚する。あ、ミサイル発射した。

他にもB-97もで出るみたいで破壊目標の遥か上空から大量の爆弾を投下していた。うん。これこそ正しき蹂躙。擬きではなくこれが正統派。うん良いねぇ良いねぇ♪

敵が赤々と炎上し黒々とした煙を吐き出す。それは絵画のようで何とも現実味が無い光景だけど僕達からすれば見慣れた光景。爆弾一発が施設一つを丸ごと焼き払いF-222の機銃掃射が地面を抉る。絶えず爆発が起こり残骸が増えてゆく。良いね。順調だ。

 

第二段階の開始。

十八番である夜戦だけど今まで見たいな感じではない。残念だけど派手さは無くて、散発的に砲撃音が響くと、深海棲艦の船体が引き裂かれると言うアサシンに暗殺されてゆくみたいな光景。暗闇の中で最低限の炎が上がり、散発的な爆発と砲声が響き渡る。

航空機のように一撃必殺の精神で一切の騒音を立てずに正確な照準で奇襲して仕留める。うん、これは凄いね。よく電探を使いこなしてる。探照灯を使わなくても、正確な位置が分かるようになってるし、砲精度だってピカイチ。夜戦と相性がいいのは、言うまでもないよね?

 

静かな夜戦が続くなか、僕達アメストリア型戦艦は光学迷彩で姿を隠し、矢矧、摩耶、鳥海が無双している。電探から得られるコンマ単位での正確な情報を元に即仕留めてすぐに離脱する。これがニンジャっていうやつなのかなー?よくわからないけど。

けど僕達も何もしてないわけじゃないよ?他の鎮守府からの応援、五十鈴や衣笠が搭載している誘導魚雷の誘導とか、深海棲艦の援軍の警戒とか色々としてるんだよー?

.......ちょっとマズイね。電探が大量の深海棲艦を捉えちゃったよ...別に雑魚がいくら集まろうが雑魚であることには変わりないけど、それ以上の化け物、〔姫〕が3隻もいるようじゃちょっと厳しいねぇ...。他にも戦艦十隻に航空母艦十五隻、重巡洋艦二十五隻、駆逐艦七十隻いるけどこっちは別に脅威でもないから無視しちゃおうねー。けど僕達と同じ火力が3隻となるとこれは話が別だよね。

「ノイトハイル、わかってるわよね?」

「In Ordnung.勿論だよぉ〜。全力戦闘だよね」

 

 

リバンデヒが右に、僕が左に布陣して、完全に防備する態勢に移行するよ。

中央に艦娘達に集まってもらって、集中防備の体制を引いてもらっている。流石にアメストリア型戦艦3隻の弾幕は大和型でも落とせないからね。

この陣形だと僕達のスペックを活かしやすいんだよねー。何時もは片舷ずつしか火力を発揮できないんだけど、この陣形だと外からの攻撃に対して主砲とかで打撃を与えられるし対空砲は両舷で活用できる。ミサイルも元々全方位で使用できるんだから360°カバーできる。迎撃に関しては火力が二倍になったわけだねー。

おっと、ちょうど敵さんが来襲したようだね。ここでも聞こえる大きな爆音の後に視界を埋め尽くす圧倒的な弾数の砲弾が赤い火線を曳いてやってくる。やー、怖いねぇ〜。

けれど効かないよ。殆どが外れていくし、当たっても鈍い金属音と共に弾かれて海中にボッシュートされちゃうんだよね。無駄だよぉ...むふふ。

同時のタイミングで上空からB-97とかFB-99が沢山飛んでくる。順次量子変換器に物言わせた無限の爆弾を投下してくる。これは面倒臭いねぇ...燃料でも撒かれたら燃えちゃうし。あれ暑いんだよねぇ...兎も角、早めに迎撃する事に越したことはないよね。SM-2、SM-3がドミノ倒しの逆再生みたいに開いてゆくミサイルハッチから我先にと発射され、投弾された爆弾へとごっつんこして撃墜してゆく。けれどそれだけじゃ爆撃機編隊が大量に投下した爆弾を捌き切ることはできない。

「対空砲迎撃開始〜!」

''落とすぜー!''

''ばんばん撃っちゃえーっ!!''

''全部迎え撃ちます!''

''ウェルカムボム!''

なんか一人だけマゾさんが居たけど僕は何も聞いていない。うん。そうだね。僕は何も聞いていない。

あ、そうそう。アメストリアお姉ちゃんね、何時もは無表情だし愉悦に浸ることが結構好きみたいだけど()()には随分と弱いみたいだねぇ〜♪。いっつも顔真っ赤にして抵抗してくるんだけど子供が戯れてるみたいな無駄な足掻きだから何時も組み敷いてるんだよねぇ。しかもそれでアメストリアお姉ちゃんが真っ赤になるから更にお得!むっふふぅーっ!

同室にしてもらえたのは本当に僥倖だったよ。むふふぅ...♪

 

 

面での対空砲火によって大小様々な爆弾が一瞬で穴だらけになり、爆散してゆく。いつもいつも見慣れている光景だけど、ちょっと怖いねぇ...まっすぐこちらに頭向けて落ちてくる実弾を示す真っ黒な樽たちが我先にと空気を切り裂くヒュー、という音を響かせて落下してくるのはに中々に怖い。勿論、我がアメストリア軍が誇る自動迎撃システムを搭載した45mm対空機関連装砲の性能を信じていないわけじゃないけど、被弾した時は本当に痛いからね。こんな大きな身体だから回避行動さえまともにできないからねぇ......。

「っ!?」

''電探に反応ありです!海中から小型の深海棲艦反応!凄い速度です!''

''魚雷な感じー?''

''Нет!(ニェット!)駆逐艦な感じですー?''

つまり、浮力やら推進力やらを合わせて海中から比較的小型な船体をもつ駆逐艦を突っ込ませて突発的奇襲を仕掛けて一気に仕留めるつもりだろうね。

まぁ、無駄なんだけど。

 

お姉ちゃんが嫌うKamikazeアタックを敢行してきた勇敢(笑)は駆逐艦は、僕がしっかりと処理する。浮上した瞬間500cm四連装砲の一式徹甲弾で吹き飛ばし、その爆風だけで引き裂く。僕に近い位置で浮上した駆逐艦には対空砲や側面に設置された30cm連装電磁力砲や20.3cm連装砲でしっかりと藻屑にかえる。まだ非常用のM3-25重機関銃を使用するまでもないね。

けれど深海棲艦もやるよねぇ、被害をまるで考えない物量でただ押すという作戦。僕達にはできない不思議な戦術だけど、それを賄えるほどの物量を所有しているという余裕があるという証なんだよねぇ...お姉ちゃんが大っ嫌いなアメリカの駆逐艦をモデルとしているらしい深海棲艦だから容赦無く滅せるけどね。けど数が多い。なんでこんなに大量の...百数十隻の駆逐艦が海中を伝って移動してきたのを僕達が探知できず、しかもこうやって魚みたいに浮上してくる駆逐艦をシューティングゲームみたいにはたき落さなくちゃいけないのか。ちょっと腑に落ちない部分があるね。もしかしたら、海中トンネルでもあるのかもしれないねぇ、人口か天然かはわからないけれど。

まぁこんな美味し...楽しい遊戯は久しぶりだから、僕も暴れていいよね?

 

「〜〜〜♪」

肩に衝撃が来るたびに、3キロ先に爆発が起きる。僕が直接撃ってるから耳に伝わる銃声は今現在進行形で放たれている500cm四連装砲や150cm四連装砲、46cm三連装砲の砲声に負けず煩い。けどその威力は折り紙付き。カラン、という甲高い金属音がなると同時に給弾される。この銃声は好きだね。12.7mm口径という余り大きくない口径の銃だけど、わざと口径を小さくして貫通力を高め、装甲を突き破った先で炸裂するように造られた専用の狙撃銃。

115式対艦機関狙撃銃と呼ばれるこの2m超えのライフルはその実歴は高く僕も愛用している。最近は19.8mm重機関銃に浮気気味だけどね。だってあれ威力高いし連射効くし狙撃銃とも使えるし重機関銃として分隊支援も行える。4mを超える巨大さは少し不便だけど、銃身を折りたたむことが可能だし、バイポッドをたてて安定させる事だって出来る。

 

 

..........それにしてもちょっと煩いねぇ...ん、いやウザいね。

さっきから島の向こう側からペチペチと12.7cm砲弾で叩いてくるうざったらしい軽巡洋艦がいるんだよねぇ......

「リバンデヒ、ちょっと叩いてくれないかな」

『えぇ。これは少しウザいわ。大和、摩耶。島の向こう側にいる軽巡洋艦を叩いてくれないかしら』

『分かりました。大和、参ります!』

『アタシも異論は無いぜ。こんな爆弾の雨の中うざったらしいっちゃありゃしねぇ!この摩耶様に任せてくれ!』

気づけば、遠い地平線の先がオレンジ色に染め始める頃。

随分と長く戦っていたみたいだね。かれこれ数時間。常に深海棲艦の奇襲や襲撃を受けた僕達にも、疲れが見え始める頃。そろそろ動かないと危ないかもしれないねー。

大和の56cm三連装砲とか摩耶の35.6cm三連装砲が旋回して芋ってる軽巡洋艦を砲撃始める。56cmといればロキ自走臼砲とほぼ同じ口径。しかもあれより長い口径長を持ってるから威力は十分だね。噴火したみたいな炸裂音と圧倒的な砲声を響かせながら56cm砲弾が九発と35.6cm砲弾が十五発。赤と黄色の火線を描いて島を跨いで飛んで行った大量の砲弾は数秒後に着弾。ここからでもわかる爆音で見事に撃滅した。

「リバンデヒ、ここに突入した後僕達で塞ぐよ」

『えぇ、それがいいわね。全艦に通達!ソロモン諸島の内側に突入するわよ!』

その一声で膠着状態に陥っていた艦隊が動き出す。一斉に機関を唸らせてかなり整った艦隊行動を取り始めた。外来の五十鈴達がずれるのは無理もないけど、やはり改めて見ると凄いね。この子達の練度は。

戦艦が航空母艦を守るように寄り添い、70ノットで一気に離脱してゆく。

 

あ、これも理由があてって、僕達が動くと莫大な海水がかき混ぜられて一時的に海流を生み出してしまうのは何回も言ってきたね。つまり此処も例外なく乱れに乱れるんだよね。

つまりそれが何を意味するかというと、艦娘たちはその荒れ狂う波の中を進軍するわけで、通常の巡航速度よりもとぉーっても早く進まないとむしろ前進さえ出来なくなるんだよね。影響があるのは大体半径15000m程。まぁこれじゃ艦隊行動にならないよねっていう話だよね。

そんなに離れてたら艦隊行動を前提とした僕達が困るし、互いに援護する事ができない。お姉ちゃんは艦隊編成の時にアメストリア型戦艦とは15km以内に近づくなって言ってたけどそれじゃ迅速な艦隊行動が出来ないよね。だから今回は土地の問題もあって密集陣形。まぁ影響受けるよね〜。

アメストリア海軍ではそもそも他の海軍との作戦じゃなくて、出力が規格外の空軍艦艇とかと共同作戦を遂行していたからね。

 

 

兎も角、各々が突入した諸島は背後をソロモン諸島、下を島。上も島に囲まれたみたいな地形なんだけど、その感覚は開いている。といっても10kmくらいでそう遠くなく、僕達がその隙間を塞ぐように布陣し、残りの余った一面を大和、陸奥に守ってもらう。

その後ろにな摩耶、鳥海の重巡勢。火力と速射力のみで言えば文句は無いからね。

他の子達はさらに後ろ、飛龍蒼龍を守るように輪陣形で待機してもらう。

此処までは想定済み。無論リバンデヒがね。しかし此処からは深海棲艦がとってくる案があまりにも多すぎかつ予測不能なため幾つかのの予備を含めて警戒してる状態なんだよね。

深海棲艦は元々此処に僕達を閉じ込めるのが目的だったのか姿を確認できない。癪だけどちまちました攻撃がないのは助かるね。

今のうちにすっかり消耗した大量の〔弾薬〕の補給とか波で傷んだ船体の補修とかしておこうね。今回は若干誘導された感があったけど全艦が全力戦闘したから主砲対空砲関係なく撃ち続けたから砲身も消耗してるだろうし、何しろずっと戦いっぱなしだから精神的な疲れが出てくる頃。一晩中戦闘し続けるのはキツイと思うよ。

僕達の船体で万能生産装置が〔弾薬〕を生産し、各艦に送って行く。今のうちに出来る限りの補給をしなきゃいけないからね。

 

 

朝日が昇る。

そんなありふれた言葉でした言えないけど、その言葉に全てが凝縮されてると思うんだよね。

朝に登るから朝日。これはまぁ分かるよね。

『昇る』

此処に僕は意味が凝縮されているように感じるんだよね。「のぼる」っていう漢字は幾つも有るよね。登る、昂、皐、上る、洄、昢、竎、襄、曻、徳、東生、曨そして昇る。

これは一部で、まだまだ「のぼる」という読みの漢字はある。そんな膨大な数の漢字の中から、昇るという漢字を当てはめた先人は凄いと思う。あ、僕達の方が上だね。齢は。

兎も角昇るという漢字を使用したのは、センスがあると思うな。

昇という漢字は陞の書き換え文字として用いられる事もある。

「昇る」は“太陽・月・位などが高く上がる”の意味らしくて、「日が昇る」「煙突から煙が昇る」「高い位に昇る」「天にも昇る心地」とかの他の使い方もある。

「登る」には一歩一歩踏みしめてゆっくりと上って行く感じがあるけど、「昇る」には一気に移動、上昇する意味が込められていると思うんだよね〜。階段とエレベーターの違いな感じかな。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

二日目、此処までは深海棲艦の襲撃はなかった。

そう。此処までは、ね。早速、幸か不幸か早朝から警報が鳴り響き、電探が捉えた反応が画面に反映される。うーん...ちょっと面倒くさいねぇ.......僕の優秀な113号電探は深海棲艦の「姫」が五隻を中心に襲撃を仕掛けている大規模艦隊の姿を捉えている。

「姫」は僕達と同等のスペックを持つ。全長も全幅も排水量も速力も絶対干渉結界だって。

無論アメストリア型戦艦の制圧力もね。それが五隻分...僕が対処できるのは精々一隻。いつもなら、見栄張ってハリボテを貼るんだけど、今回はそんな余裕もないねぇ...

リバンデヒも対処出来るのは一回の迎撃、攻撃で対処できるのは一隻だろうね。これは偏見も期待も込めない論理的な解析の結果。スペックや速度、位置の関係など、様々な要素を鑑みた結果は、この迎撃で最大戦果は「姫」二隻。それもうまく行ったらの仮定の話だし。今回は、厳しいね。

「.......リバンデヒ」

「えぇ。少し、厳しいわね。お姉ちゃんならまだしも、私達はそこまで凄くないわ(馬鹿)

 

むぅ〜〜〜っ!いまお姉ちゃんを馬鹿にされた気がする!

なんでリバンデヒ如きがお姉ちゃんを馬鹿にできるかまったく理解できないけれど、癪にさわる。むぅぅ...

「.......リバンデヒ、流石にお姉ちゃんを貶すのは許せないなぁ...?」

「あら、ごめんなさいね。そう受け取ったとは貴女の逞しい想像力による勝手な被害妄想によるものよ。おほん、兎も角今はこの深海棲艦を撃滅するわよ」

「.......。」

帰ったらお姉ちゃんに慰めてもらお。

うんうん。それが良い!お姉ちゃん僕が涙目で抱きつけば普段の余裕を崩してオロオロとしだすからね。

かわい〜よね!

いつもなら真一文字に結ばれた口も困惑したように崩され、形の良い眉は目尻とともに下げられる。それを観察するだけでも十分価値があるけど、その後にお姉ちゃんはそれに気づいて僕を叱り始めるんだけどそれがまた長くてねぇ...しかもバッサリと的確に痛いところを突いてくるから尚更タチが悪いよね。

まぁ僕は基本馬耳東風。聞き流してるけどね〜☆

 

だからあまりにも長いからはじまる前に押し倒して襲うんだよねー!

それがまた可愛くてもうキュン死しちゃいそうなんだよねぇ〜〜!

もう何回もされてるくせに、まともに抵抗もできずになされるがままのお姉ちゃんはとても素直だからね。

大体のことは聞いてくれる。

()とはもっと過激に抵抗......そうだね、例えばワザと僕の罠に嵌って捕獲された後に僕を割と本気で太刀とか爆弾で殺しにきたり最初から500cm四連装砲で吹き飛ばしてきたり色々とあったけど、中々に楽しめたよ。

 

 

けど、今は違う。決定的に違う。

 

 

昔のアメストリア型戦艦一番艦アメストリアの気配と言うか、存在は感じるんだけど、何か混ざってる感じがするんだよね。

お姉ちゃんを見ると違和感を感じるというか。

前はこうやって受肉してなかったから船体に宿る霊的存在だったんだから尚更アメストリア型戦艦一番艦アメストリアの気配の質は覚えている。

しかし今はなんか穢れているというか色が混ざり始めてる。

ううん、殆どと言って良い。正直僕としては微妙な心境なんだけど。

ん?何で分かってるのに()()しないのかって?

そんなの決まってるじゃん。

 

『面白そうだから』

 

ただそれだけだよ。押し倒して襲った時の反応も悪くないし、中々に楽しい毎日を楽しませてもらってるからね。多分あと120年くらいは飽きないかな。飽くまで多分だからね。

飽きたら()()()だけだし。ん?姉を何だと思ってるかって?あんなのアメストリア型戦艦一番艦アメストリアじゃないよ。それ擬きだよ。事実昔は強かった...いやこの言い方は語弊があるね。船員が得意だった格闘術はまるで駄目になってるしむしろなんか違う型を使ってるし。それでも僕達には敵わない。絶対に。カイクルはそれを良しとして新しい対処方法を考えるのを楽しんでるみたいだけどね。それでもお姉ちゃんは弱い。遠距離狙撃でも超高高度精密爆撃でも対処しきるだろうし19.8mm弾だって素手で掴むくらいのことはするだろうけど、それ位で強いってなった気にならないでほしいな。僕は。

何時だって殺せる。まず部屋が一緒ってどれだけ警戒してないんだろうね。内心呆れ変っちゃうよ。だから罰として奴隷にしてみた。気分だったけど今はあんまり後悔してない。無表情だけど可愛いし。

あ、顔は良いんだし体も中々。精神だけ壊して人形にするのも良いかもね。

美人はただ立ってるだけでも絵になるんだし観賞用としてそれ以上優秀なものもない。まぁ()()その時ではない。まだまだ楽しませてもらわなきゃ。この世界だって中々に楽しめる種がまだまだ眠ってるんだしまずはそれを満喫しなきゃ。

 

さてさて、今は楽しみの一つを楽しまなきゃね。さぁ、蹂躙だ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はノイトハイルの内心の一つを明かしました。これは作品の途中で設定が追加される本作においても数少ない極初期設定にあった内容であります。結局一番の危険分子であり狂気を秘めているのはノイトハイルさんってね。まぁこれにも理由があります。
まずノイトハイルはいまいる四姉妹の中で唯一の深海棲艦からのドロップ艦、しかも深海棲艦時の記憶を保持しています。
それはノイトハイル自身にも影響を与え、少々ヤンデレ化を助長させました。
いや、成長させました。
艦娘としてドロップした後に初めて遭遇したのアメさんですし。
雛鳥が親鳥を認識するみたいにロックオン。
すでにノイトハイルの深層心理がアメストリアを獲物としてロックオンしたんですね。
アメたん超逃げて!
マジレスしますと、妹達は既にアメストリアが「違う」という事を確信しています。
本人は気付かれているとは考えていないようですが。
妹達はアメストリアがアメストリアではないと知っていつつも姉として付き合っています。まぁ長い艦生の中に舞い降りた面白そうな事項なんだら楽しんでから捨てようじゃないかと考えているわけですね。
要は暇つぶしです。ノイトハイルはその中でも特殊という訳でもなく、リバンデヒもカイクルも大体同じ結論に至っています。仮にも姉の姿をしていますが玩具扱いです。辛辣ですが4900年以上の艦生経験を持っているんですから娯楽に飢えています。仕方ないね。

一番歪んだ精神を持っているのはノイトハイル。一番特殊な魂を持っているのはアメストリア。そんな感じです。



[報告]
大体のプロットが決定いたしました。最終章を除き今後30話分位の細かいプロットが完成いたしました。
これから二箇所程解放し他にも手慰め程度の作戦を幾つか。伏線はあんまりというかないので何も考えずにお読みいただけるかと。いや、いままでが良い加減すぎました。たしかにアメストリアという存在に関しての設定や兵器群の設定が強化されたのは事実なんですがね。一七式戦車とか当初ありませんでしたし。
まあ兎も角、ある程度はレールが定まりまししたのでペースは上がりませんがしっかりとした展開にはなるかと。これからも破天荒な異端の展開をお楽しみください。
私大人っぽい文章書けない.......文才をください。

P.S
大和さんの主砲は56cm三連装砲ですが、以前カール自走臼砲と同じとしていました。ミスです。はい。
カールたん前期型は54cm砲でしたはい。全然違うやんけ。っていうことですが、堪忍してつかぁさぃ...
因みに54cmバージョンはロキたんと言うらしいです。
ロキファミリ...おっと誰か来たようだ。


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72..新次元の夜戦!

こっそり置いておきますね。



ーーーーーーーーーーーリバンデヒsideーーーーーーーーーーー

ソロモン攻略作戦二日目。一日目が濃厚すぎたから少々艦娘達に疲れが見え始めているわね。

今の所膠着状態。それを利用して私達は補給しているわけだけど、電探に映る艦影はあまり宜しくないわね。深海棲艦のアメストリア型戦艦が5隻に大型戦艦が10隻に航空母艦15隻、重巡洋艦25、駆逐艦70隻という大艦隊に半包囲されてるのよね。

私とノイトハイルが3分の2を覆っているけれど残り3分の1は大和と陸奥が布陣しているから少し心配なのよね。やっぱりアメストリア型戦艦と既存艦艇の差は埋めれないのよ。

もし私が深海棲艦側の立場だったらまず確実に大和サイドを狙うわ。一応鳥海達を即応部隊として配備しているけれど恐らくは徒労に終わるでしょうね。

此方は全艦が〔弾薬〕満載、出来る限りの修繕と45mm対空機関連装砲の薬莢を始めとした甲板に溜まる大量の空薬莢を処理したわ。

まあこれでも完全ではないわね。

何で45mm対空機関連装砲だけ海中に空薬莢を投棄するシステムがないのかしら。46cm三連装砲でさえあるのに。副砲の配置を覚えているかしら?

46cm三連装砲、150cm四連装砲の配置は船体と中央寄り、第二甲板のある45mm対空機関連装砲の並ぶ棚田状の部分にあると言うのに薬莢の処理機構は組み込まれているのよ?具体的に言えばダクトのように船体側面まで繋げた投棄用の専門レールが通されているのよ。

けれど、けれどよ?何でそんな余裕あるのに45mm対空機関連装砲の薬莢投棄機構はないのかしら。今度妖精さんに言ってみようかしら...いえ、でも大体理由は予想がついてるのよ。45mm対空機関連装砲の連射速度はバカみたいに早いわ。冷却機能に上位水符が砲身一本一本に貼らざるおえない位に。

従って薬莢は数秒でドラム缶が埋まる程大量に投棄されるわ。それも発射機構の真下に。M134ミニガンみたいな感じね。下に投棄されるから金属の雨になるわけだけれど、仮にそれを漏斗みたいな形状の回収回路を作ったとしましょう。

またその回路を全ての対空砲間で繋げて一気に回収できるようにしたとして、果たして一瞬で埋まる量の薬莢が都合よく漏斗に集められて回路を通ってくれるかしら?

いいえ、絶対に詰まって内部破裂に起こすわ。

それが理由の一つ。

他にも船体側面まで遠くて薬莢が転がり切らないというのもあるわね。

時間かかるし。

46cm三連装砲とかは良いのよ?結構大きいから。

レールで誘導すれば転がってくれるもの。けど45mmとなると薬莢も小さくなって大体腕くらいね。しかも細い。

細長い形状の筒がレールで転がってくれるかしら?否。レールのスキマに滑り落ちたり引っかかったりするのがオチよ。

そこで考えられたのが発射機構から投棄される薬莢が通るパイプを直接甲板に繋げることよ。要は薬莢の滝ね。

外から見れば換気扇みたいな窓みたいな感じだけれど対空射撃したらそこから大量の金色が吐き出されるのよね。

ソレはやがて流れを成し甲板上を蹂躙する。

お陰で出撃後は必ず妖精さん総出で薬莢の処理に追われるの。

あ、お姉ちゃんはそんなまどろっこしいことしないで潜行して無理やり()()()()()()()()

最近深海棲艦の練度が着実に上昇してきているから油断できないのが本音。あの子達がいるから言えないけれどね。

 

...あら、のんびりもできないわねぇ。

対空電探が捉えた大量の、数百機単位の敵戦闘機に、全艦が警戒を強める。

私も主砲に三式弾を詰めておこうかしら。

他の艦娘は対空砲を使う事にしたみたいね。船体に張り巡らされた対空砲の砲身が上昇し始めているわ。その判断は正しい。

 

刹那、対空電探の捉える敵戦闘機がごっそりと一瞬で消え去り、代わりに緑のコンテナてー囲われた友軍を表す表示のF-222が反応を返してくる。大鳳の航空隊ね。

あの子も古参だから練度は高いのよ?毎回先を見ているような戦力運用でとても助かっているわ。MI/AL作戦でも戦力を残してくれたしね。

 

上空を轟音を響かせて飛来するF-222が各自割り当てられた目標へ噛み付く。

あとはドックファイトか、それをするまでもなくミサイルで撃墜するわ。あとはそれでも撃ち漏らした敵戦闘機を私達の対空砲が処理するだけ。簡単ね♪

『こ、こちら大和です!姫級はいませんけど見たこともない大きな主砲を積んだ戦艦が数隻来ています!きゃっ!』

慌てて確認すると、確かに大型戦艦が大和側に全艦動員されてるわねぇ...大型戦艦の艦種といえば...そうね。46cm砲戦艦、56cm砲戦艦に61cm砲戦艦、80cm砲戦艦ね。しかし大和の56cm砲弾よりも大きいとなると61か80cm砲ね。どっちも威力は規格外よ。

 

つまり考えられるのはあちらに釘付けにしてその隙に突破するのか。

本当にあちらから突破するつもりで、こちらにいる姫級は囮に過ぎないのか。

今の所どっちか判断できないのがイラつくわね。

予備戦力の鳥海が急行しているようだけれどかなり厳しいわね。示し合わせたかのようにこちらにも一斉攻撃してきてるのよねぇ...あらら、大和ちゃん至近砲撃で結構傾いてるわね...危ないわ。でも、あの水柱の大きさは明らかに61cm砲弾じゃあないのよね。

「ノイトハイル〜?ちょっと援護してあげなさい。方向的に貴女の方が近いわ」

『んー、分かったよ。四番、五番砲塔を回すね。』

つまり、それが意味するのは私の方が火力高くなる訳で、姫級のヘイトが高くなるのよねぇ。

したがってこちらに砲撃がこっちに集中する訳で、私の付近にも大量の500cm砲弾が着弾して視界が覆われる。この第一艦橋にも届くくらいの水柱が上がるのよね。いつも撃ってる私だけれど、末ながら恐ろしいわ。

 

......予想通り、私に集中砲火してくる。殆どの砲弾がこちらに集中してるのよ。

''三十六発の150cm砲弾が着弾しましたー!''

''被害軽微です?''

''被害報告〜!500cm砲弾1283発、150cm砲弾586発、46cm砲弾5689発の被弾を確認しましたー!後の小さな砲弾は知りません?''

「よくも、まぁここまで撃ち込めるわねぇ。どうせ効かないのに」

''でもでも、よくガラスとか割れる感じです?''

''小さな所がよく破損するです?''

''しゅーり面倒です?''

「ふふ、ごめんなさいね。私達はこういう戦い方じゃないと勝てないから」

''めっそーもないです!''

''特に問題ないです?''

''あの術式を入れてるから問題ない感じです?''

 

あら...時間逆行術式を入れてるのね...たしか術式が効力を停止した場合を想定した弾薬箱とかその他いろいろの器具を入れていた雑具箱とかの破損記録だけで広辞林が作れるくらいには溜まるのよ。

あれは困るのだけれど、最近ピッタリ無くなったと思えば術式を入れていたのね。

もっと早くに入れて欲しかったけれど、妖精さんに文句は言えないわ。

 

けど、時間逆行術式を兵装に積んでくれないのかしらね。元々それを実装していたはずなのだけれど、此処に来た時から何故か術式が一切なくなり、術式の効力が失われた状態になってしまっていたわ。一応、妖精さんに術式の復活をお願いしていたけれど結果は御察しの通り、ダメだったわ。実際の所時間逆行術式は永久機関なのよね。最初の起動の時点で指定された範囲を記憶してそれに変化があれば元の状態に戻るのよね。

 

つまり、何があろうと元に修復されるゾンビ...とは失礼ね。

不死身の兵器が出来上がるわけ。

それを駆使する軍隊はまさに無敵の軍隊。それがアメストリア軍な訳ね。

その無限の修復力に無限の弾薬を保有していたからこそアメストリアは強かったのだけれど...その兵器が鹵獲されて大惨事になるといった事件が偶に発生したのね。

敵に回れば悪夢でしか無い兵器が暴れまわったのだから被害は甚大。

だからこそその時間逆行術式に絶対干渉結界を貫通しゆる対術式の新兵器を開発していたのだけれど.......まぁ...そうね。

.........それに私達が沈められた訳だけれど...面目他無いわ。

「っぐ!...被害は?」

''500cm砲弾が直撃しましたー!''

''榴弾だった感じです?''

''艦側面にめーちゅー?''

''対空砲が吹き飛んだ〜!!''

「......そう。」

''報告でーす!先程の砲撃で45mm対空機関連装砲250基が爆散、もしくは破損し使用不能です!''

..........いつから500cm砲弾は片舷の仮にも500cm四連装砲の爆風に爆炎、衝撃波に次元湾曲にも耐えるそこそこ強い装甲を持った45mm対空機関連装砲を250基も破壊できる強力な榴弾を開発していたのかしらね。

これはマズイわ。着実に私達に対する有効打を深海棲艦が持ち始めている。今まで絶対的な優位にあった私達アメストリア型戦艦だけれど、深海棲艦も私達に対抗できうる手段を持ち始め、多種多様な戦術を持ち始めている。これがどれほど重い事態か、言わなくてもわかるわよね?

 

「主砲斉射なさい。撃てる限りの火砲を集中させて敵姫級を撃滅しなさい!応急修理班は対空砲の修繕はしなくて良いわ。代替え案を用意なさい!」

既に此処から動けないのよ。だったら出来る限り抵抗して敵を討ち取るまでよね♪

毎秒の間隔で放たれる500cm砲の所為で台風のような雲が出来上がりつつある。それによって日光が遮られ、僅かに此処ら一帯を暗くしだしているわね。これ収まるの時間がかかるのだけれど...今は仕方ないわね。コラテラルコラテラル。

少しずつ砲塔は回しつつ、敵の船体に満遍なく砲弾を浴びせる。これでしかアメストリア型戦艦に直接火力を叩き込むことはできないわ。

 

要は絶対干渉結界と絶対干渉結界を以前、打つけることで相殺してゼロ距離で砲撃したでしょう?

アレ、わかりやすく言えば絶対干渉結界の持つキャパシティが高くて砲撃じゃ負荷にもならないから同じデータ量をもつ絶対干渉結界同士をぶつけてクラッシュさせてるのよ。

つまり、絶対干渉結界の処理できない大量の物理的ダメージを与え続ければ結界は壊れるの。

その為には...ふふふ。

「妖精さん、主砲、副砲にウンターガング弾を装填しなさい。あとミサイルにも。」

''あいあいさー!''

''よーそろー!''

''パーティーです!''

私も少しイラついてるのよねぇ...此処まで一晩中起きている訳だし、

一睡もできないままこんな部の悪い戦場に引きずり出されたのだし、

さっきの損害で私自身も少し煤汚れたわ。

それに左腕に火傷も負ってしまったし...乙女の肌に傷をつけるのは万死に値するのよ?肌も荒れるし。ふふふ、もう許せないわ...

レールに転がる砲弾が黒に青い線が入った禍々しい砲弾に切り替わったのを待って、主砲が斉射。不完全燃焼の黒い砲煙を派手にあげて一筋の黒い光が姫級に向かう。まるで意志を持って襲い掛かんとするように煙が後を追い自然に上へと昇ってゆく。あら、また雲が分厚くなったわね。

 

ウンターガング弾が命中。絶対干渉結界に命中して船体一歩手前で起爆したけど問題無いわ。

起爆した砲弾は蒼い球体へと姿を変え、太陽のような、それでも凶々しすぎて直視できない光の塊になる。いつも思うけれどこれ眩しすぎると思うのよね。

全て、それが如何なる設定(ご都合主義)であろうと無関係に消し去る最終兵器。

それがウンターガング弾。概念だろうと関係無く全て破壊する兵器としてはとても優秀な兵器だけれど、核兵器の様に運用が難しい兵器でもあるのよね...

''敵結界の飽和を確認しましたー!''

''結界消えた感じです?''

''つまり攻撃通じる感じです?''

一斉射で絶対干渉結界を一撃破壊したわね。やはりウンターガングは恐ろしいわね...

「全砲を持って対象を撃滅なさいっ!」

でも、この好機を逃す訳にはいかない。500cm四連装砲、150cm四連装砲、46cm三連装砲全てが砲口を姫級に向け、大量の砲弾を射出しはじめる。

側面に空いた小さな穴からジャラジャラと大小様々な薬莢が滑り落ち、海面を荒らす。

火線が2隻間に結ばれ、姫級に多数の爆発が起きる。

無論姫級も片舷の全火力を持ってこちらを攻撃してくるけど、私はお姉ちゃんが施した妖精さん特製の対600cm装甲を全域に渡って張り巡らせてあるから、大体大丈夫よ。

装甲を貼っていない部分と言えば...45mm対空機関連装砲とガラス部分、そして露出艦橋くらいよ。その他は全て例外なく装甲を施しているわ。

砲塔の防楯に船体の装甲。全て妖精さん特製の対600cm装甲をしているから30cm連装電磁力砲でも強固な装甲を持っているわ。この利点は分かるわね?

姫級の小口径弾が雨のように降り注ぎ、装甲に弾かれて弓を描いて海中に還ってゆく。

例えるなら装甲車輌に小銃で攻撃するようなものね。

 

同じように全く痛くも無い攻撃だけれど目に悪いわ...45mm対空機関連装砲の連射速度は600発/s。つまり36000発/m。

それが二門あるから72000発/mの速度で撃てる強力な対空砲なのだれど艦橋にもその弾が当たることがあるのよね。外への扉とか、薄くせざるおえない部分とかに当たると簡単に粉砕してしまうし、後が面倒なのよ?

激しい閃光と砲煙によって「殴り合い」も状況が目視ではわからなくなってきた頃。あまり聞きたく無い音が響く。今度は何なのよ...

「被害報告を」

艦橋にも被害を表示するパネルがあるのだけれどみるのも面倒だわ。聞いた方が楽でしょう?

 

''うーむこいつぁまずいですなー''

''ちょっと面倒なところに被弾した感じです?''

''ラッキーショット!''

''ほーこくです。500cm四連装砲第二砲塔の旋回装置が故障しましたー!''

''甲板に跳ね返った小口径弾が入り込んで壊した感じです?''

それって...つまりその入り込んでしまった小口径弾を取り除いて砲塔旋回装置を修理しないといけないって事かしら。それはまた随分と珍しい被害ねぇ...甲板も特製装甲に覆われているのは知っているわね?だから小口径弾は跳弾するのよ。それが砲塔と甲板の間で発生すると、見事に12.7cm砲弾位ならそのままスキマに入り込んでしまうわけね。

下手に甲板が硬すぎるっていうのも悩みものねぇ.........どうしようかしら。砲塔動かなくなったじゃない。けれど砲自体は生きているから大丈夫ね。

 

''敵艦被害60%超えましたー''

まぁこれでやっと六割消したわ。あと四割。

張り切って殲滅しましょう...............修理、どうしようかしら...砲塔持ち上げて砲弾取り除いて旋回装置修理して再び砲塔はめなきゃいけない。

けれどここで重大な問題。アメストリア型戦艦って砲塔を取り外すこと想定してないのよね。

だって潜水するのだもの。

艤装はただ乗っけて自重で固定していなくて、完全に骨組みの段階で一体化するように設計されている訳。したがって一旦取って修理、は出来ないのよ。また工廠長に睨まれるわ...毎回小言言われるのよ。けれどお姉ちゃんが困る姿はイイわね。また涙目で厳重注意されるか鬼の形相で説教されるかはランダムだけれど。

『リ、リバンデヒさーんっ!?布陣の中央、更に攻撃です!』

『あ、あれは...すっごく大きいわねぇ...』

『やべーぞ!一発でも食らうと結構痛いな...』

『きゃあっ!?何て威力なのっ!?!?』

艦娘達の混乱する声が無線で混じり合い、それがさらに現実味を与える。

その犯人は艦砲とは少し違う、特殊な砲撃音が響く。空気を切る音は艦砲も同じだけれど、何か混ざってる。かつ、着弾した水柱は30cmクラスから大和クラス。何か引っかかるわね...

 

弾道を解析。

これはすぐ済んだわ。着弾地点から計算された発射点が特定され、SEと共に近海のマップに表示が現れる。

また砲撃音と砲弾の風を切る音。

そして着弾。この陣形の中央に命中し、誰もいない海を激しく波立たせている。

これは........地上からの支援砲撃ね。ふふふ、深海棲艦も考えるようになったじゃなぁい........

''敵地上戦力判明?''

''自走砲使ってるみたいですなー''

''カール自走臼砲使ってますなー!''

''ついでにシュトゥルムティーガーもな感じです?''

ど、どこから持ってきたのかしらねぇ....カール自走臼砲といえば60cm口径の砲弾を飛ばす変態国家ドイツの誇る()()()()だった気がするわ。シュトゥルムティーガーはその名の通りロケット推進の350mm砲弾を飛ばしてくるこれまた()()()()よ。

悔しいけれど天晴れだわ。自走とつくし無論自力での移動が可能だし、どうせ改造してカールでも連射出来るようになっているんでしょう。しかも作戦として非常に優秀だわ。

中央に堂々と砲弾を打ち込む事によって艦娘達は集中を削がれ、攻撃も弱まる。かつこっちに全員の意識が持って行かれるし、中央に居た五十鈴、衣笠なんかは激しく揺れているわ。直接的ダメージは無くてもその巨大な水柱にそれに混ざる灰色の爆炎と赤々とした爆炎は目立つし、プレッシャーを与えるわ。見慣れていても至近弾では実感が違うもの。

 

お陰で戦況を確認する時間ができたわ。

大和、陸奥、矢矧は大型戦艦と拮抗状態。

ノイトハイルと私で姫級の一隻をもうすぐ撃沈。

衣笠、五十鈴は中央で回避運動を開始。けれど少し遅いわね。必死さは伝わってくるのだけれど。摩耶はまだ余裕ある動きね。

「摩耶、聞こえてるかしら?」

『おう!聞こえてるぜ!』

「そこの五十鈴と衣笠連れて地上砲撃を潰せるかしら?」

『あったりまえだ!この摩耶様に任せろ!』

確か、摩耶は35.6cm三連装砲での遠距離砲撃に優れていたわね。スラロームでの。

今回の指示はそこを考慮しているけれど少し心配ね。他鎮守府からの援軍である衣笠に五十鈴が居る。それだけでも充分不安材料なのだけれど、摩耶自身深追いする癖があるから...まぁ、大丈夫、よね?.........よね?

『あー、こちらノイトハイル〜〜。リバンデヒー、敵艦載機がウザイけどもうすぐ殲滅できるよー!』

「了解。」

ノイトハイルの45mm対空機関連装砲が雨を降らしミサイルが煙幕を張るが如く噴煙を溜めてゆく。ちょっと...煙で船体が消えかかってるじゃない......主砲の砲撃で一部分だけ消え去ってその時だけ船体がのぞくのだけれどその主砲の砲煙で再び覆われるし結局白いモコモコになってるわね。そこだけ積乱雲みたいだわ。

 

私の何回目か分からない斉射で、黒い砲弾が打ち出され、残骸と化しつつあった姫級にとどめを刺した。

青い太陽は容赦無く船体を消し去り、その損傷が致命傷だったのか金属が擦れ合って折れる心地良くない歪な音を響かせて沈んでゆく。

至る所で小さな爆発を起こし、船体が折れて艦首が持ち上がった。

甲板を転がっていたであろう薬莢がそれによって宙に浮き、本当に金色の雨のなってキラキラと反射しながら船体と共に没してゆく。

さようなら、元私達の妹。今度はもっといい環境に生まれなさい。こんな血を地で煮込んでぶちまけた腐臭と鉄の匂いに充満した躍る戦場では無く、自らをちゃんと操ってくれるいい全員に恵まれた海に出なさい...お願いだから...どうか、安らかな生を。

私ができるのはこうやって祈るだけ。やっぱり毎度毎度、同士殺しは胸糞だわ...。

 

『報告するぜ。私らの砲撃で島に居た地上戦力は確認できる限り殲滅したぜ!』

「良くやったわ摩耶。そのままノイトハイルの方で補給を受けてちょうだい。」

『了解だ!』

これで姫級は残り四隻。私は生産装置フル稼働で〔弾薬〕を補充しつつ戦闘していたから問題はないわ。敵航空戦力もノイトハイルの姿が見えなくなるまでの対空攻撃と大鳳の優秀な航空隊が駆逐。大和の方では拮抗状態だけれど、ノイトハイルが本格的に援護できるようになってからは深海棲艦に後退の動きがあるわね。

戦力的にはこっちが劣っているけれど、練度、連携で言えばこちらが同じ。

これはマズイわね...マンネリ化してきたわ。拮抗で戦況が固まってただの睨み合いになってしまうわ。.............いえ、それはそれで問題ないわね。休めるし。

しかし打破は出来ないわねぇ。敵の航空戦力も空母がまだ生き残っているし駆逐艦も電探を見ればまだまだ残っている。まだ包囲網が消えかかっているわけではないわね。

「......ノイトハイル、お姉ちゃんに報告するわ。」

『うん、わかったよ。僕もそれがいいと考えてた。』

「えぇ...。お姉ちゃん、リバンデヒよ。」

 

『...............、こちらアメストリアだ。どうしたリバンデヒ。もう終わったか?』

「いえ、それが敵が思いの外練度が高くて私達対策もされていて攻略が進まないわ....」

『...そうか。まだカイクルに打撃を与えた謎の攻撃も分からない以上、充分警戒してくれ』

「えぇ、もちろんよ。あと、少し援軍が欲しいわ...」

打破するには、外部からの奇襲に近い先制攻撃が必要だと判断できる。

もし此処で全力戦闘をしたとして、どれくらいの戦果を挙げ、包囲網に穴を開けれたとしても、それには必ず最低一隻の犠牲が伴うわ。これは断言できる。もしかしたら姫級の攻撃で大和でも沈むかもね。それだけは避けなければならないわ。

一隻の犠牲も無く作戦を遂行するのはお姉ちゃん(海軍総旗艦)からの最上位命令だもの。

「お姉ちゃん、援軍を要求するわ。」

『......了解した。少し待て...そうだな。足が速く、火力がある艦は....』

「軽巡洋艦じゃないかしら」

『そうだな。川内姉妹と第四駆逐隊を送る。』

「了解。感謝するわ」

『到着は午後...いや、夜になるな。』

「140ノットは出るわよね?そんなにかからないと思うのだけれど。」

『そんなに出したらまず船体が転がるだろう。軽巡洋艦に航空機の機動を求めるつもりはないぞ私は』

確かに、海上で170ノットも出せば制御効かなくなって海上で転がる危険性だってあるわね。けれどあの子達はそんなにやわじゃないと思うのだけれど。今までだって割と140ノット出して砲雷撃戦していたし、それで実際戦艦を平らげているわ。

「大丈夫よあの子達は。それとも艦娘達を信頼していないのかしら?」

『そんなわけなかろうっ!......すまん...そうだな。できる限り速く向かわせる。』

「えぇ。待ってるわ。みんな聞きなさーい?現在見事に拮抗状態になっているわけだけれど、ナウル鎮守府から川内、神通、那珂、暁、響、雷、電が援軍に来てくれるわ。到着予定は夜。それまで()()()禁止するわ。蒼龍、飛龍、大鳳は今のうちに艦載機を整備なさい。」

『そうね。艦載機の練度もばっちりです。戦果を期待してくれてもいいよ〜?』

『わかった。ちょっと飛行甲板を補修するね。』

『畏まりました。今のうちに弾薬補給、艦載機の整備をしておきます。』

「大和、矢矧は今のうちに修理可能な損傷箇所を修繕。無論すぐに応戦できる体勢で。」

『了解致しました!私はあまり損傷していませんが矢矧さんが...』

『矢矧よ...少し痛いところに至近弾を食らったわ。修繕自体は可能だけれど時間がかかるわ...』

「...了解。時間をかけてもいいから直しておきなさい。摩耶、鳥海は陸奥についてなさい。」

『陸奥よ。別に困っていないけれど...どうしてか教えてもらってもいいかしら』

「簡単よ。援軍が来たらそこから突破するわ。」

『それなら了承するわ。摩耶、鳥海よろしくね?』

『おうさ!あたしに掛かれば一瞬で活路を作ってやるよ!』

『私も微力ながら助力いたします!』

一応、これで大体の対策はできたはず。動き出した重巡洋艦や甲板上で慌しく動き出した航空母艦を傍目に、電探を睨む。見事、としか言えない堅い包囲網が構築されているわ。姫級が四隻。三方に展開して私達の側には大型戦艦が一部。あと航空母艦と大型戦艦二隻を引き連れたフラグシップらしい姫級が一隻離れた海域に。頭を抑えられている上に即応状態の航空機動艦隊が目と鼻の先。完全にやられたわ。

 

 

 

 

 

紆余曲折あって、太陽が堕ち、黄昏を迎え月が昇った。

今では見慣れた「月」という存在は、現在は上弦の月と呼ばれる形になっているようね。

そんなことはどうでもいいわ。全艦に通達して必要な機器でさえ最低限の明るさに落として、照明灯から艦内の照明、認識灯まで全て消させて輪郭をぼやかしたわ。

勿論これにも目的があるわよ?

こちらの動きを悟らせにくくする事。一言でいうなればこれに要約されるわ。

月明かりがある以上姿を闇に溶かす事は出来ないし、光学迷彩を使っても三次元レーダーは的確に位置を捕捉してくる。意味ないのよね。

けれど一切の動きを見せない事でこのギリギリの膠着状態を少しでも長引かせるという意味では価値が生まれる。

此処まで厳重に気を使って動かしているのも艦娘に傷を付けないため。被弾するのは戦術的にもお姉ちゃんからの折檻的にも得策ではないわ。

けど何もしなかったわけではなくて空母組はくれぐれも隠密に、と厳に命令した上で甲板上にF-222を展開させているわ。あとは交代で休息を取らせているわ。

本当は航空機用粒子エンジンを回して欲しかったのだけれど粒子エンジンは蒼い光を出すから出来ないわ。しかし主翼はほぼ直角に回していつでもすぐに離陸できるように準戦闘態勢で待機しているわ。他にも主砲は私を含めて全員が深海棲艦に向けているし、砲弾も装填されているわ。

 

突如、大和側を包囲していた深海棲艦から、爆炎が上がった。遅れてヒューンという弾が風を切る音が響く。つまりそれは音速を超えた弾速の砲弾が飛来した証拠。

やっと来たのね。

お姉ちゃんが送ってくれた援軍。深海棲艦撃破数としてはトップを走る神通を含む支援艦隊。

夜戦夜戦といつもうるさい...よく騒ぐ川内だけれど実際夜間戦闘ではかなりいい戦果を残しているわ。これが忍者か...ってお姉ちゃんが言ってたけど忍者って何かしら。

兎も角、川内姉妹に暁姉妹は軽巡洋艦、駆逐艦とあって足は速く火力も高い正に水雷戦隊なのよね。魚雷はないけれど。

けど俊敏性に全振りしてるからまず被弾しないし神通が居るから練度も高いわ。

今だって視認圏外から精密な狙撃を披露してくれているし。

音速を超えているようだし、爆発も小さいからアレね。天龍姉妹にお姉ちゃんがテストとして渡していた貫通力のみに特化した砲弾。確か...試製九九式徹甲弾とか言ったかしら。

一〇式戦車を代表する現代戦車が使用するAP弾を参考にしたらしいわ。

砲口径よりも大分小さい、棒状の硬芯を本体として炸薬を少しだけ詰めているのだけれど、それだけでは主砲から撃てないのよね。口径とあまりにも違いすぎるし。だから口径に埋め合せる分本体を覆うように型を嵌めてるのよ。そうやって型にはめて仮の砲弾の形を形成した特殊砲弾なんだけど、発射したらバレルを通って加速するとそのまま型が外れ、中央に位置する棒状の本体が飛び出し、その細さで抵抗力を避けて飛んで行く。

要は細い徹甲弾を作った訳ね。釘と指だと釘の方が刺さりやすいでしょう?

あれと同じで口径よりも限りなく細くした棒状の本体を作った訳。

当然貫通力は高くなるわ。確か15.5cm試験砲で試射した結果、3500mm位抜いたと記憶しているわ。ウチの軽巡洋艦は20.3cmが基本口径だから多分それに合わせてガワも調整したんでしょう。じゃないと今回投入できないわ。

実戦配備していたとは驚きだけれどね。試験的に天龍達に渡していたけれどそれはデータを取るため。実戦配備するための準備みたいなものよ。それですら結果を得ていないというのに、いきなり実戦配備とはちょっと急ぎするよね〜。

 

でもこのチャンスは見逃せないわ。

20.3cm砲弾を大量投射してくる川内姉妹に呼応するように、私もあらかじめ狙いをつけた姫級の一隻に斉射する。

「全艦攻撃を開始しなさい!大和側から突破するわよ!全艦そこに向かいなさい!」

その一声で、一斉に艦隊が動き出す。アメストリア型戦艦、大和、陸奥、摩耶、鳥海、矢矧。七隻が一斉に照明、認識灯全てを点け、主砲、副砲関係無くウンターガング弾を撃ち込んで姫級を怯ませる。よければ沈める...事ができたらいいわねぇ...。

どうやらそれすら厳しくなってきているようだわ。姫級は私の放った87発のウンターガング弾に46cm三連装砲の粒子弾を当てて砲弾で砲弾を迎撃した。もうなんでもありね。

私達じゃ少し厳しいわ。私達だって砲弾を砲弾で迎撃するのはできないことじゃないけれど、やろうと思って咄嗟にできることじゃないわ。その飛んでくる砲弾の弾道を寸分の狂い無く正確に細くした上で波の揺れ、船体の揺れ、気温、湿度、重力、自転による影響、風速全てを考慮した上で演算した結果を46cm三連装砲に伝えて数に物言わせて迎撃。面倒よね。けど相手はそれをやってのけた。これは十分すぎるほど脅威だと分かるわよね?

沈めるのは諦めたほうがいいわね。

「回頭!できるだけ速く大和達の方へ向けなさい!」

''あいあいさー!''

''よーそろー!ぐるぐるー!!''

ふと航空母艦を見れば一気に飛び立つF-222の群れ。轟々とジェット音を響かせてゆっくりと離艦したF-222は主翼を水平に戻すと、さらに大きな轟音とともに空へ飛び立ってゆく。これから航空支援かしら。または、敵艦載機の迎撃か。激戦は予想していたけれど少し部が悪いわ。私達はこまめに動けないし回頭だっていまノソノソとやっている。空母達は大和の側に向かい始めているわ。ノイトハイルは...激戦、という言葉さえも生温い熾烈な争いをしているわね。互いに砲弾を撃ち込み至る所から爆炎が上がる。

凄いわね...兎に角撃って撃って撃ちまくるって感じがよく伝わってくるわ。

まあノイトハイルだから大丈夫でしょう。必ず勝つでしょうし。

『大和ですっ!こっちの敵大型戦艦を撃沈!那珂さんが先導を務めています!』

「了解よ。陸奥、そっちはどうかしら」

『こちら陸奥よ。突破した先にも駆逐艦が待ち伏せているわ。今はそれのお片付け中よ』

「そう。ノイトハイル、いい加減終わらせなさいぃ!?!?」

ノイトハイルへの伝令を済ませようとした瞬間、私の脇腹に痛みが走った。

何をしてくれたのかしらねぇ...

「妖精さん、何が起きたの?」

''えーと...事実確認ちゅーです?''

''ほーこくです!壊滅した対空砲群に80cm砲弾が一発命中した感じです?''

''応急修理しかしてないから刺さった感じです?''

''でも爆発してないのです?''

''不発弾な感じです?''

''でもでも深くて今除去出来ないです?''

「そう...念の為周囲20の隔壁を封鎖。対空砲群の修繕も中止して閉鎖なさい」

''りょーかいです!''

''あいあいさー!''

''クローズします?''

遅延信管の可能性も否定できないのよね。だから念の為周囲の隔壁は閉じさせてもらうわ。

艦橋から崩れ落ちて瓦礫になってしまった階段状の対空砲群を見ていると、海面にキラリと反射する物体をとらえた。

まさか...

「蒼龍!避けなさい!海面すれすれに戦闘機が来てるわよ!」

『..........へぇあっ!?』

.......遅かったようね。空母特有の側面に張り巡らされた対空砲が霧のような濃さの弾幕を張るも、F-222は熟練なのか余裕を持った動きで回避し、ミサイルをばらまいていった。

そして素早く蒼龍から離脱すると、上空の戦闘機らに気を取られているらしい陸奥に向かった。

「陸奥、敵機よ!右側面!」

『分かったわ!右副砲(35.6cm単装砲)起動して!連装砲も対空砲も使いなさい!』

陸奥の右側面。四門の35.6cm単装砲に四基の20.3cm連装砲、四基の12.7cm高角連装砲。そして大量の45mm対空機関連装砲が一斉に迎撃を開始した。

秒間で連射される大口径弾に濃密な対空砲火にF-222はかなり大きな動きで躱していたけれどたちまち対空砲火に粉砕された。けれど被害は大きい。蒼龍は横っ腹にミサイルを食らい、現在も炎上中。

「蒼龍、報告できるかしら」

『大丈夫だ、よ〜...えーと...被害報告するね......右舷第二高角砲大破、第25から48対空砲損壊。そこの装甲も貫通した、かな....お陰で弾薬に引火して火災中だよね.......げほっ...』

『多聞丸、大丈夫!?』

『大丈夫...かな安心してよ。こんな傷擦り傷へっちゃらだよ。』

「.......摩耶、蒼龍について警護、お願いできるかしら。」

『任せとけ』

「そう。良かったわ。全艦私達は良いから先にも撤退なさい。お姉ちゃん、どうせ聞いてるだろうから言っておくわ。ここにいる姫級は練度が可笑しいわ。私達じゃ少し実力不足だったみたい。」

『......そう、か...みんなすまない。私の警戒不足だったようだ。全艦全速を持って撤退してくれ。川内!頼んだぞ』

『まっかせときなさーい!さぁ、夜戦だよっ!!』

やはり川内は心配になるわね。いつも大体夜戦の事を話してくるからちょっとうるさいわ。

温厚な性格の艦娘にさえ煩いっていう認識が広がっているくらいには騒いでいるようだけれど...史実と違ってお姉ちゃんも夜戦装備ガン積みしてるからそれはもう凄まじい戦果を挙げてくるのよね。昼はからっきしなのに。なんなのかしら、夜専用艦娘なんか聞いたことないわよ?昼になると夜戦としか喋らなくなり戦闘も割と適当なものになる...とは神通から報告は受けているけれどまぁ...大丈夫でしょう......多分。

「ノイトハイル、撤退するわよ」

『はーい!じゃーねー姫さん!』

ノイトハイルも速力と排水量に物を言わせて無理矢理変針したわね。

今回は敗北だわ。Cってとこかしら。

誰よ。あんなに姫級を強くしたのは。もう嫌になっちゃうわ...

「きゃうんっ!?!?!?」

ズキリ、と明確な痛みが身体中を駆け抜け、脇腹が赤く染まり始めた。

同時に艦橋のガラスも赤々と染まり、艦内の状況を知らせるパネルが忙しなく点滅し異常を知らせる。火災を知らせるアラームも鳴り響き、妖精さんが慌しく動き始める。感覚で分かるわ。あの80cm砲弾、遅延信管がいま作動したのねっ...お陰で大損害だわっ!

片舷の対空砲群が壊滅したし、火災も発生。一部電気系統にも異常が発生しているようね。

「妖精さん、消火だけお願いできるかしら。」

艦橋に備え付けられている救急キットから包帯と治癒符を取り出しながら聞く。

''りょーかいです''

''帰ってから直す感じです?''

「そうよ。あっちには工廠もある事だしすぐに直るでしょう?」

『リバンデヒ、痛手を負ったね。』

「えぇ...まぁまだ大丈夫よ。アメストリア型戦艦がこんな損害ごときで揺れるはずがないわ」

『え、今すっごく揺れてるじゃん』

「すこし黙りなさい...貴女はいっつも揚げ足を取ろうとするんだから...」

『え〜別にいーじゃん。リバンデヒ揶揄うの楽しいんだもーん!』

「はぁ.......」

『おろ...もう飽きちゃった感じかな?かな?』

「いえ、貴女に付き合うと無駄に体力を消費するのは間違いないからスルーに限るわ。」

白衣を脱ぎ捨てて、傷口に治癒符を貼り付ける。すると筆で組まれた術式が起動し、白く発光を始める。私はそれに目もくれず包帯を二重に巻きつけ、キツく結ぶと、新しく作った白衣を羽織り、袴と合わせてゆく。一応はこれで取り繕えたわね。お姉ちゃんは過保護だからこんな傷ごときでも出撃禁止を言いかねないわ。修理もお姉ちゃんの知らぬところでさっさと済ませるに限るわね。

 

それにしても、最悪の海戦だったわ...




今回は珍しく妹達が苦戦。深海棲艦って凄いんだな〜(小並感。

それは兎も角皆様鬼ヶ島イベントでちゃんと湯の治をゲッツしましたか?
私はちゃんとゲッツしてきました。FGOも一周年という事で運営が暴走していますが、ガチャは相変わらずのようで...うっ( ; ; )
あ、今日ピックアップ召喚で青王さんが居たので備蓄すっからかんにしたら息子が出てきました。なんでやっ!
いやまぁ持ってなかったから良いんですけどね?星五2体目だから良いんですけどね?
なんでモーさん出てくるかなぁ...


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73.苦戦っぽい?

えー、諷詩っす。えっと、すね、はい。
全部FGOってやつが悪いんだっ(殴

皆さんはイリヤイベントどう攻略いたしましたか?
私もミッションも100全て攻略し、ガチャもイリヤスフィール・フォン・アインツベルンを二人お迎えできました。クロエも第四段階目まで種火貢ぎました。可愛いから仕方ないね。
そのせいで二ヶ月くらい遅れたこと、謝罪いたします(適当
で、でもですね!80日くらいで100レベ到達できたしクラス別ピックアップで青王さんを迎えて狂喜乱舞していたんです。ごめんさい。




ーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーー

それにしても驚いた。まさかリバンデヒが中破するとは。

今までも横浜での補給中に奇襲された時にマストが折れてアメストリア型戦艦特有のなんでも巨大化に従った超巨大マストによって後部艦橋を破壊される中破とかあったが、あれは奇襲だからだ。

今回は正式な作戦で、私も気を抜かず割とガチ編成を送り込んだつもりだった。

しかしそれすらも、驕りだったようだ。また私は油断していたのか、頭が緩くなってきているのか。最近暑いんだもん。

 

兎に角、リバンデヒが中破したのは衝撃的だった。

黒煙を上げながらリバンデヒらが帰港したのが2時間前。

私はリバンデヒの外見上問題なさそうな様子に一瞬安心してしまったが、被害報告を受けて思わず動揺して揺らいだ。眩暈って唐突にくるもんだな。

すぐさまアメストリア型戦艦用の大型ドックに入渠させて妖精さんのチートに物言わせて現在急ピッチで修理をさせている。

 

と言っても今回横っ腹にモロ粒子弾を喰らったため左舷対空砲が文字通り壊滅。その土台となる基礎の部分も抉り取られ、骨組みが中途半端に抜かれたため崩落寸前。

割と危険だったため仮の支え材で甲板を押し上げて残骸に成り果てた45mm対空機関連装砲や46cm三連装砲を撤去。ここまでに30分。

 

そのあと工廠から直接運んできた妖精さん印の特殊装甲をクレーンで吊るして骨組みを再構成。

溶接じゃそもそも装甲が溶けないためブロックや和風建築のように、ただ組み合わせるだけ、その特殊装甲版の建築用法でアメストリア型戦艦は出来ているのだが、今回もそれが幸いした。だって組み合わせるだけでできるんだもん。溶接だのリベットだの加工作業が一切必要ない。レゴブロックのように組み合わせて行き、梁にあたる特殊装甲が差し込まれ固定。おおよそ10分で骨組みが再構成され、第一甲板...つまり主砲とかが乗っかる普段見えてる木製の甲板だ。それを貼り始めた。といっても基部の内部なので艦内だから木材は使用されず、通路らしき壁が作り込まれ、外見にあたる一番外側の装甲が貼られ始めた。

これもプラモみたいに所定に穴に突起を差し込むだけで簡単に出来上がるが、このままでは浸水する。私達は潜水するため気密性は特に気を使わなければならない。

ここは流石に妖精さん特製のバーナーでちゃんと溶ける()()()()()()()特殊金属で溶接。それには流石に時間がかかった。何しろ全長4.6kmの船体なもんで対空砲基部も大きい。大和がたくさん乗るくらい広々とした階段状の台だ。それらすべてに溶接で穴をふさぐのでこれには50分かかった。

そして工廠から直通の路線によって運ばれてきた夥しい量の秋月砲に似た形状をした45mm対空機関連装砲が運び込まれ、CH-4やCH-31で吊るして決められた基礎にはめ込む作業が一気に行われた。何やってるんだろ妖精さん。普通対空砲の設置にクレーン足りないからってヘリで吊るさねぇよ。それ何気に高等技術だからな?ホバリング自体かなりの高難易度でしかも妖精さんはターレットリングピッタリに対空砲を下す。それをボルトで止めて旋回テスト。

砲塔が回転するか、四砲身の45mm回転式機関砲は上下するか、薬莢投棄口はしっかりと繋がっているか、しっかりと確認した上で次の45mm対空機関連装砲を設置する。

それを3000基分。

46cm三連装砲も吹き飛んでいたのでそっちもだ。二基の46cm三連装砲は流石にCH-4では難しかったのかクレーンが使用された。と言っても46cm三連装砲をぶらんぶらん揺らしながら急旋回して荒々しく設置していた。すんげぇ揺れてたのにピッタリとはまり込む光景は清々しくスッとくるものがあるが、なんか...うん。なにやってんの妖精さん...

しかしこの常識さんをリストラした急ピッチ修理は大成功。2時間で元どおりに修繕されたわけだ。

流石妖精さん。

今度クッキーを焼いていこう。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

さてさて、医務室に行くように言っても聞く耳もたなかったのでカイクルに強制連行してもらい放り込んだ。

提督にもこのナウル鎮守府稀に見る大敗北に少なからず思うところがあったらしく、私の提案した作戦が即日認可された。

大本営にもそれとなく、リバンデヒの損害は隠蔽しつつ敵アメストリア型戦艦の危険性を打診しておいた。

そしてこのナウル鎮守府にも第一級警戒態勢を取らせ、全要塞砲が起動。隔壁も閉じて結界が鎮守府を覆っている。

全艦に戦闘態勢をとらせた。あ、今回の参加艦は除外しているぞ。一晩中戦闘していたんだから精神的負担は大きかったはずだ。休みも仕事の一つ。

 

で、だ。

私はリバンデヒを除く姉妹全員を此処、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアの会議室に招集し、対策会議を開いた。

「して、今回の敗北で私達に匹敵する...いや、それ以上かもしれない練度の敵アメストリア型戦艦が判明した訳だ。これに提督も警戒し、今回私達は出せる限りの火力を持ってこれを殲滅することに決定した。」

「私としては異論はないが方法は?」

「ん〜〜、アウトレンジで叩くしかないんじゃないかなぁ〜。戦艦っぽくないけど」

「その通りだ。殲滅するにあたって動員するのは私達アメストリア型戦艦四隻にミサイル搭載数が多い赤城、直接火力のある加賀を連れて行くことにした。......どうしたカイクル。何か疑問か?」

「いや、そうではない。」

なんか珍しくカイクルが歯切れの悪い返答を返す。というか本当に珍しいな。何時もはバッサリとした理論で即時に返答してくるのだが。

「カイクル、珍しく歯切れが悪いな。どうしたんだ」

「.........戦闘記録を見ていて疑問に思ったのだが、私に使用された『謎の攻撃』が使用されていないんだ。これが妙に思えてな。あの兵器は絶対干渉結界をも貫通して直接艦底に打撃を与えうる現状対処策のない攻撃だ。私への戦果に味をしめて使用してこなかったのが妙でな。」

「......................」

......確かに。あのカイクルの船底をボコボコにした私達に有効打を与えうる兵器?が今回使用されなかった。これは妙だ。現状、あの攻撃がどういったものなのかさえ私達にはわからず、対処策が「気合でなんとかする」くらいしかない私としても懸念事項だった。

しかし今回のソロモン攻略作戦においてそんな攻撃はされず、異常に練度の高い艦隊が待ち構えていた。結果各艦に少なくない損害を与える結果になった訳だが。飛龍なんかは未だに修理が完了していない。対空砲などの弾薬庫に命中したせいか、飛行甲板が硬すぎる所為か爆発が艦内に閉じ込められ結果内部が深刻な被害を被ることになってしまったのだ。飛龍が戦力外になり引きずられて蒼龍も戦力外に。これは見過ごせないが目を逸らしたい損害だ。

 

兎も角あの攻撃を深海棲艦が使用してこなかったは何か理由があるはずだ。

深海棲艦が「何となく」で判断する訳がないのは今までの戦闘で十分知っている。機械的な動きのみで構成された組織なのだ。

あの攻撃はやはり深海棲艦の切り札で、容易にポンポン使えないのだろうか。

場所を選ぶ兵器なのかもしれない。

運用自体が難しく、持ち運びできないのか。

事前に設置する敷設魚雷的な兵器なのか。

そもそも兵器なのか?

疑問は増えて行き、減ることはない。

ああっ!もうっ!じれったい。

「...おそらくだが、おいそれと使えない手なのだろう。私達に使うためにわざとリバンデヒらを逃し、使う機会をうかがっている可能性も否定できないが.......」

「深海棲艦はそんなことしないよね〜」

「そうなのだ。」

そこがわからない。深海棲艦はそんな面倒なことはしない。動物的本能で人類側の物を襲うのだ。しかし最近は随分と狡猾な手段を使うようになってきた。

時間差攻撃、深海に潜れることを利用したカミカゼアタック、突発的な奇襲に絶え間ない攻撃。威力偵察までもこなすようになってきた。

段々と、深海棲艦が力をつけていている。これは明確な脅威だ。

「...兎も角だ。姉さん、出撃にはもっと火力を増やしたほうがいいと具申する」

「例えば誰だ。」

「そうだな........重装甲な翔鶴、瑞鶴はどうだ。」

「...」

翔鶴達か.......最近は専ら遠征か北方への長期出撃をしていた筈だ。

しかしカイクルが推薦するのも頷ける。ついつい赤城や加賀に目がいってしまいがちだが、二代目一航戦だ。実力は確かだし原作でもレア艦として提督達をそのドロップ率の低さで苦しめてきた。翔鶴は通常建造ではトップクラスのレア度とスペックを誇っていたと記憶している。

ナウル鎮守府では戦力増強をスローガンに大量建造した際に私が指定して妖精さんに建造させた艦達だ。

 

航空母艦らしく堅実な設計に量子変換器を多く、装甲も厚く。重装甲空母として設計した。

沈んで欲しくないし。その結果もあって見事に巨大化。艦載数は多く装甲も分厚く優秀な航空母艦として生まれたのだが、艦娘が可愛い(迫真。

 

翔鶴なんかは正におとしめやかで気品のある艦娘。

しかし根幹にある芯は強く、あれだ。神通に似通った部分があると思う。

 

瑞鶴はよく加賀とぶつかっているがまぁあれも好意の裏返しであることは一目瞭然だった為放置している。見てて可愛いしな。

よく言うツンデレを体現した活発な艦娘だが、責任感が強く、任務は全力で遂行するため何時も大成功を収めてくれている。

 

姉妹として理想形だと私は思うが提督諸氏、どう思う。

兎にも角にも、優秀なことには変わりない。

話を戻すが、性能的に見ても確かに翔鶴、瑞鶴は適任だ。

 

翔鶴型重装甲航空母艦は全長1295m、全幅131mと旧大和より巨大な船体ながらターボファンとスクリューの混合推力によって135ノットを叩き出し、その上大舵三つに副舵二つという多くの舵で駆逐艦並の機動性を手にしている。

それに加えてその名の通り重装甲(対80cm装甲)を全体に張り巡らせており航空母艦の弱点である飛行甲板には対150cm装甲を重ねており、計230cm装甲にまで膨れ上がっている。まあそのお陰で徹甲弾でも一切効かなくなっているのだが。

対空兵器は12.7cm高角連装砲が8基と10cm高角連装砲が12基。45mm対空機関連装砲は1200基ほど敷き詰められているが、甲板には今回の採用の最大の理由である2870セルのミサイルハッチ。大鳳でさえミサイルハッチは2200セルと少なめだが翔鶴型は2870セル。

 

これは戦術的に有利だということは分かると思う。流石に加賀のミサイルハッチ3000セルには敵わないが中々の量だと思う。

あ、赤城は2400セルが少ないと思った奴、正解だ。翔鶴型よりもセル数は少ないが赤城には特別な機能を搭載している。リボルバーのような輪胴弾倉一つ一つに量子変換器が搭載されていて、それが回転することによってハイペースで発射することができるのだ。他の艦は一セルが直方体の空間が伸びていてそこに一基の量子変換器を詰め込んでいるため、発射したら量子変換器からミサイルを展開して発射というプロセスが必要になるが、赤城の輪胴弾倉式では弾倉を回転させるだけですぐさまミサイルを発射出来るので、恐ろしいペースでミサイルを連続発射できるのだ。ミサイルのフルオートとして解釈してもらって構わない。

無論、〔弾薬〕の消費量は規格外だが、それでも大体800ちょい。私の主砲にに比べたら全然マシだしナウル鎮守府は資材が無限に湧くので全く問題ない。

私は艦娘至上主義だからな。このくらいの些細な問題など一切関係ない。

 

「では、作戦参加艦は私達を含め、赤城、加賀、翔鶴、瑞鶴とする。」

「えぇ、異論はないわ」

..........なんでリバンデヒが既にいるのだろうか。

カイクルが医務室に放り込んでいたはずだが。アレか、NINJA的なアレか。

「何故ここにいる」

「あら、いちゃ悪いのかしら。一応作戦参加艦なのだけれど。」

「いや、私が聞きたいのはそういう事ではない」

「分かってるわよ。フフフフフッ!!でもね、甘いわ!私のお姉ちゃんに対する愛はそれ如きじゃ防げないわよ!!」

「...リバンデヒ。(カイクル)はわざわざ拘束用の術符に亀甲縛り、猿轡に更に手足に枷をつけていた筈だが?」

「逆に聞くけれど、()()()()()で私を止められると思っていたのかしら。」

「...........」

何なのこの人。バケモンなのか?いや、確かに人間から見たら私達は十分バケモンだがその艦娘から見てバケモンってもうわけわかんねぇ...

本当にリバンデヒは規格外だということは分かっていたつもりだが、まだまだ私の知らない神秘の力的な何かがあったようだ。次から鋼鉄の乙女でも使うか。リバンデヒならそれくらい大丈夫だろ。

「....もう、いい。至急一航戦と五航戦を出撃態勢で呼び出せ」

「了解した。」

「私達も出ましょう」

「そーだねー。さぁ〜暴れるぞぉ〜〜っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「機関始動!」

''機関始動しまーす!''

''エンジンエネルギー生産開始です?''

''副機も回り始めてるです?''

私の一声で船体後方にあるはずの機関かろ唸り声を挙げる声がここまで鳴り響き、遅れて副機たる船舶用粒子エンジンが稼働し各エリアに電力を供給しはじめる。

端から順にパネルに日が灯り、処理を始める。

ホログラムの立体海図やMAPも立ち上がり、ナウル鎮守府が表示される。

''自動射撃統制装置いじょーなし!''

''中央演算処理装置も問題ないかんじです?''

''500cm四連装砲、性能に変化なしですー''

''150cm四連装砲もんだいなーしでーす!''

''46cm三連装砲もありませーん!''

''30cm連装電磁力砲、20cm連装砲正常に起動中でーす!''

''45mm対空機関連装砲異常なし''

''機関圧力上昇!規定値に達しました〜''

''113号対空電探もんだいないですぅ''

「よし。アメストリア、抜錨する!」

''鎖ジャラジャラー!''

''巻き上げ開始です?''

18mの大きな錨が海底より引き上げられるために鎖が船体に飲み込まれてゆく。鎖もアメストリアの何でも巨大化に従って負けず劣らず太くデカイのでそれを巻き上げるリールもモーターも巨大だし、消費電力も120kwと破格だ。

 

一分かかってようやく錨が海面より姿を現して、艦首に開けられた穴に鎖が限界まで巻き上げられた。

「機関上げ。原速15ノット。」

''あいあいさー!''

''のんびり進むのですー''

ゆっくりと、しかし船体故に莫大な海水を押し避けながら進んで行く。

桟橋側にいる妖精さんが帽振れをしてくれるのが地味にかわいい。

読者諸君は知っているだろうから意味は割愛するが、帽振れにも様々な思いが詰められていたんじゃないかと今となって艦娘になった私が思う。

あったらしい前世などでは、「そういう風習があった」といった現実感も伴わない漠然とした何となくそうなんだなっていう想像の延長線上でしたなかったその行為も、こうやって戦争の最中、いくら私とはいえ艦橋を撃ち向かれたりして死ぬかもしれない戦場に旅立つ『軍艦』にせめてもの思いを伝える方法として「帽振れ」はあると思う。

 

最近はあまり感じなくなったが、今は戦争中なのだ。

どこからともなく無限にやってくる正体不明原因不明構造不明原理不明。とことん不明づくしの深海棲艦との終わりが見えない戦争の最中なのだ。

戦争に犠牲者はつきもの。軍人も民間人も。民間人に犠牲の出ない戦争など起こった試しがない。電子化の進んだ現代でも誤射は無くならないし、人は死ぬ。

 

別に下らない理論主義主張振りかざして人間がいくら死のうが私からすれば知ったこっちゃないしこの世界の地球は50億人ほどいるんだから別にそう大した減りじゃない。

私が大切にするのは艦娘。ただそれだけだ。

艦娘とて軍人だし、軍人は国も守るための存在だ。現に大日本帝国海軍は大日本帝国を守るために日夜深海棲艦と戦闘を繰り広げているし、海域の奪還を進めている。

 

 

少し話題はズレるが、日本は海に囲まれた島国だ。

よって何か求めるには海を渡って他の大陸や島に向かう必要がある。

本土からザクザク資源が出てきたのは江戸までだ。今となっては情けでくれてやった万能生産装置によって各鎮守府に資材の供給や国内への安定した電力供給を確立しているが、私が来た当初は酷かった。海岸線付近は関係なく焼き払われ、従って原発はノックアウト。火力発電所も御釈迦になり頼れるのは水力や風力といった自然エネルギーの発電のみ。

しかしそれが微々たる発電量なのは知っていると思う。もうお分かりだろう。

どっかの発展途上国宜しく停電は当たり前。断水すら頻繁に多発する国家存亡の末期段階に進んでいたのだ。

だからこそ海軍が頑張って領海内から深海棲艦を駆逐し各地に橋頭堡たる鎮守府を設営。それをベースに更に制圧海域を広げ、更に制圧海域に鎮守府をおく。その繰り返しで日本は深海棲艦の直接攻撃から逃れ、空爆のない平和な世界に戻りつつあるのだ。

しかしここに海軍が、艦娘が命をかけてそれを守っていることを忘れてもらっては困る。

 

まぁ要するに「平和」という麻薬に腐るなよ?ってことだ。

「90度回頭。できるだけ急げ。」

艦橋のガラス越しに見れば、既にリバンデヒやカイクルは洋上に。ノイトハイルも水路に入り、港から出ようと前進している。あれ...私だけ出るの遅れてるぞ........?一番早く乗ったのに。赤城や加賀といった既存艦娘たちは私達の起こす荒波を船体強度と排水量に物言わせて切り裂き、港から出撃。

 

スクリューが馬力に任せて強引に回転し、船体が回頭する。

「前進30ノット。全艦に告ぐ。第一隔壁を抜けたら75ノットにて急行する。射程に入り次第各自自由攻撃を許可する。弾薬は気にするな。ウンターガング弾頭をめいいっぱい撃ち込め」

「リバンデヒ、承知したわ」

「カイクル、了解した。」

「りょーかーいっ!蹂躙するよー!!」

「赤城、畏まりました。一航戦の名誉にかけて、必ず!」

「加賀、了解したわ。」

「翔鶴です。畏まりましたわ。けれど、総旗艦...瑞鶴が....あらあら...」

「なによ加賀の癖に!何が貴女に出番はないわ。おとなしく後ろで待ってなさい、よ!!」

 

なんか出撃早々荒れまくってるんですが。

どうしましょ...加賀と瑞鶴が仲悪いのは知っていたしそれを配慮して艦隊も組んでいたが、今回、四の五の言ってられないので火力重視の艦隊を組む上で、加賀は必須なのだ。

だから衝突することは予想していたが...加賀さんや...なんで挑発したん...瑞鶴、激おこぷんぷん丸じゃないですかヤダー。

事あるごとに細々としたことでで揉めてるのはよく目にするのだが、なんでそんなに加賀は邪険に扱うのだろうか。そこが私にはわからないところだ。どちらも優れた航空母艦であることにはわかりないのだし、どちらにもそれぞれ長所があり短所がある。

その短所が見事にクリーンヒットしたのが加賀と瑞鶴なのだろうか?そうだとしたらそれはまぁ...うん。ヤバイな。

でもそんな感じはしない。本気で双方が恨み合い憎悪の露に激情をくべているわけでもないし、ちょっかいかける妹に毒舌と辛辣な態度でバッサリ切り捨てる姉にしか見えん。

だからこそ、その歪さに私は理解ができない。

喧嘩するほど仲がいいとは言ったものだが、このままでは出撃前に船体が損傷するな。それは笑えない。

「加賀、瑞鶴。そこまでにしておけ。加賀は0-3-5に転針。瑞鶴は2-4-0に転針しろ。総旗艦命令だ。」

「了解よ。」

「フンッ!言われなくても離れるわよ。翔鶴ねぇ、ごめんなさい...」

あのままだと船体でダイナミックOHANASHIが始まるのでそれは防がねばならない。航空母艦の船体側面にはこれでもかと階段状に砲座が作り込まれ、45mm対空機関連装砲をぎっしり積んでいる。かつ格納庫にも程近く、戦闘機整備区画や緊急用弾薬庫に対空砲破損用の応急砲としてFLAK.37っぽい何かとか積んであるんだからごっつんこしたら大爆発するだろうが。誰が鎮守府内部で轟沈とか割と笑えない緊急事態を引き起こしたいか。

てか本当に仲悪いな...いずれ流血沙汰になりそうで怖い...艦娘が傷つく姿なんて見たくないぞ私は.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殲滅目標であるソロモン海域深海棲艦艦隊を電探で捉えた。

ホログラムのMAP、境界線ギリギリに赤い深海棲艦の反応を示す光点が表示され、艦種は【姫級】........妖精さんも採用したのな。その呼び方。

報告にあった通りの編成が現れた。

「全艦!持てる遠距離火力全てを持って対象を殲滅せよ!撃ち方はじめぇっっ!!!」

 

航空母艦四隻から白煙...というより甲板を真っ白に染め上げる雲みたいな大量の噴煙を上げたながら飛び立っていったおぞましい量のミサイル。8000発以上のミサイルが放たれ、遅れて私達も4500基のミサイルハッチを存分に活かして斉射。ただひたすらにミサイルを撃ち続ける。BGM-9と読んでいた大型特殊弾頭も惜しみなく使いまくり、ミサイルを乱れ打ちする。

アレだ。某未来系潜水艦アニメのミサイル斉射シーンを何倍にも濃くした感じだ。

台風を宇宙から見たような雲が出来上がってるんだろうなあ...

「航空母艦は引き続きミサイルを撃ち続けろ。アメストリア型戦艦はミサイル撃ち方やめ。主砲による砲撃を開始する。」

その一言で私達アメストリア型戦艦からのミサイルがピタリと鳴り止み、代わりに砲塔だけでも400mクラスの巨砲が動き出した。

ただ動くだけでも大質量故に恐ろしい風圧を撒き散らし、四本の砲口をゆっくりと上げて行く。感覚的にはまあまあ機敏に動いてくれる砲塔だが仰角は45度までしかとれない。

ここは大和砲同様だな。しかし私の主砲は8()5()()()5()0()0()c()m()()()()()だ。

30tの高性能炸薬の爆発力に85口径の超極長の砲身を通り、砲弾はそりゃ初速は早く、1000m超えだ。あ、毎秒な。

 

だから射程は548km。113号電探の通常稼働での探知半径は550kmなのでまぁ電探で捉えたらすぐに攻撃できるわけだ。しかし2km足りない。

だから今まで2km分の進み時間を利用して、撃てるだけのミサイルを送り出した。今頃着弾していることだろう。

「妖精さん、ミサイルはどうなっている」

''はい!どうも敵さん対空砲が優秀らしくて私達の発射した計658000発のミサイルの殆どが迎撃されています!''

''けどけど一隻大型戦艦沈めたです?''

''航空母艦も炎上中です?''

''ツイッター炎上中です?''

 

......最後の妖精さんは無視するにしても、6580000発でもそれだけしか沈めれんか...

「主砲、撃ち方用意!座標固定。目標敵アメストリア型戦艦。弾種ウンターガング。......撃ち方始めぇ!」

艦橋の光を抑えるガラス越しでもその熱量と強烈な閃光が襲いかかり、ちょっとした公民館クラスの広さをした第一艦橋を隅々まで明るく照らし出した。

50m程砲身がぐんぐん縮んで行き、砲塔内では衝撃だけでプレスされる超高圧の中駐退器が必死こいて砲身を元の位置に戻そうと奮闘しているだろう。実際煙突からは砲煙だと思われる大量の煙が吐き出されている。

五基20門の500cm砲が順に放たれ、150mを優に超える砲煙が砲口より吹き出し、一秒後には追加で吹き出し、恐ろしい面積で砲煙が広がってゆく。視界が悪くなってくるな。

「副砲、撃ち方始め!」

続けて、対空砲基盤などにある150cm四連装砲が旋回し、砲撃を始める。

500cm四連装砲程ではないがそれなりに巨大な砲煙と爆炎、騒がしい炸裂音を周囲に撒き散らしながら大量の赤い火線を曳く砲弾を撃ち出す。正直なところ、これでも落ちるか心配なのだが、これってフラグだろうか。いや、フラグだな(確信。

 

 

電探の反応を見るに、ミサイルと砲弾の豪雨でアメストリア型戦艦以外は既に撃沈。

しかし命中しているのかここからだとはっきりとした爆炎が見えない為わからんが、多分迎撃されているんだと思う。砲弾がな。

横須賀に数少ない生き残ったイージス艦だって余裕があれば46cmくらいなら迎撃できるのだ。遠弾、という制約がつくが。現在の薬莢式だと厳しいんではないだろうか。

初速早すぎるし。しかしアメストリア型戦艦は違う。CIWSよろしく音速の4倍、8倍のミサイルなどを迎撃するための45mm対空機関連装砲がびっしりと詰め込まれているし、副砲の46cm三連装砲も20基60門ステンバイしている。あっちの方が連射に置いては分がある。

 

 

機関が唸る。

主砲撃ちながらもう片舷の甲板からミサイルが飛び出して行く。片舷だから数は少ないが、連射できる。しかし艦娘だからわかる。弾薬が尽き始めている。

''即応弾薬の九割を消費した感じです?''

''予備弾薬庫からレール接続です?''

''きょーきゅーかいしです?''

500cm四連装砲の装填機構にはマガジンに相当する揚弾筒擬きに砲弾を供給するレールが使われている。そしてそのレールに砲弾を供給するのが量子変換器。しかし量子変換器とて無限ではない。だからこの即応弾薬の量子変換器が尽きた時にすぐさま追加供給でするようにレールがつなぎ直され予備弾薬庫の量子変換器から砲弾が転がる仕組みなのだ。旋回装置との馴れ合いが悪いのだが、ならば、と砲塔自体がデカイから予備弾薬庫も砲塔下の機構に積み込める。詰まる所ごり押しだ。

レールに転がる黒に青い線が入ったウンターガング弾がゴロゴロと転がり、揚弾筒擬きに砲弾が吸い込まれ、上にある装填機構に装填される。だからこそほぼ無限大に撃つことが出来る。

 

 

標準はただ一隻。敵アメストリア型戦艦。あと数隻いるだろうが、同時に処理はできない。

まず一隻。一つ一つ消していかねば。

「火力を集中させろ!ただ一点。艦橋部分を狙え!」

''あいあいさー!''

アメストリアの技術とは恐ろしいもので、ここからもホログラムだが敵アメストリア型戦艦の窓の傷一つでさえ見ることが出来る。しかも砲精度は誤差1ミリ以内。

当たって欲しいところにあたる素敵仕様だ。

しかし主砲射程ギリギリとあって弾速が緩く...遅くなり威力もさがってきている。だからか、かなり撃ち込んでいるはずだが未だ決定打が打てないでいる。

歯痒い。態々私四姉妹に加賀、赤城、翔鶴に瑞鶴を投入しても尚、撃滅はおろか、一隻を鎮めるに至っていない。他の金魚を消したところで大した意味はない。あんなのは良くある無限沸きする雑魚兵だ。量産型に過ぎない。

......それを言うと私も量産型だな...。一番艦とはいえ量産型には変わりない。アメストリア型戦艦が量産型とか笑えないがな。

 

「よし、あと二隻だな。リバンデヒ、貴様はノイトハイルと2隻目を殺れ。私とカイクルは1隻目を殺る。空母組、聞こえているか?」

「はい、アメストリアさん。どうかしましたか?」

「弾薬は如何程消費した?」

「6、7割といったところでしょうか...そろそろ補給がしたいところですね。」

「...そうか。ならばリバンデヒから弾薬を輸送してもらえ。別にミサイル発射しながらでも補給は出来るだろう。」

「了解しました。リバンデヒさん、よろしくお願いしますね」

「ええ、任せなさい。少し時間はかかるけれど、戦闘中の補給は慣れているわ。」

照準を一隻目に合わせ終わった頃、リバンデヒから内火艇が側面から飛び出すのが見えた。

〔弾薬〕とされている謎砲弾は量子変換器に詰め込まれて保管されている為、その量子変換器ごと補給すれば迅速な弾薬補給が可能なのだ。

何時ぞやの大本営での補給しかり、普通は謎砲弾が詰まったコンテナや木箱を一々積み込んで補給するのだが、一段階ならず十段階ほど技術が進んでいる当ナウル鎮守府では量子変換器が普及している為それを前提としたシステムで運用されている。これもまた然り。

 

「撃って撃って撃ちまくれ。弾薬何ぞ気にするな。とにかくウンターガング弾を撃ち込むんだ。迎撃されても構わん。数を稼げ。」

''ばんばんばんー!''

''ガンガン撃つ感じです?''

''ひゃっはーっ!な感じです?''

''これほどのフルファイアはなかなかないですなー''

その通りである。私と深海棲艦では80cm砲弾と.22口径弾ほどの違いがある為まず本気を出さなくていい。ましてや主砲五基が一斉に斉射しまくるなんて光景は私も久しぶりに見た。

毎秒放たれる閃光に目がイカれそうになるが、一応艦橋のガラスが光量を遮断してくれている為まだマシである。映像を見ている諸氏なら分かると思うが、砲が瞬間的に発する光は予想外に大きく激しい。白黒映像でもそのレベルが察すれるほどのものだし、戦艦の主砲発射シーンなんかは火事でも起きたのか、ガス工場が爆発したのか轟々と燃える爆炎が見えると思う。あれ、五感にダイレクトアタックしてくるので私でも至近距離で聞きたくない音なのだ。

500cmとなればもう大変。主砲に人員が監視以外配置されていないことから分かる通り、煩いし眩いことこの上ない。だからこそアメストリアには大和の対空砲みたいに露出した部分が一切なく、全て埋め込み式か砲塔式にしてあるのだ。無論潜水の問題や装甲、主砲の次元振動もあるが、一番はやはり砲声と爆炎だ。主砲の近くにいると死体が残らないため、死傷したかさえ判断できない。むしろ次元が曲がり、揺れるほどの爆音なのだから異世界に飛ばされても私は納得できる。

兎も角、私の主砲は危ないんだよって話だ。

現在はそんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりにウンターガングを撃ちまくっているがな。

しかし。しかし、だ。もう1000000発を超えるであろうウンターガング弾を放たれても尚、目標は沈まない。結界などだいぶ前に破壊した。主砲だって潰した。艦橋だって一部抉った。船体だって抉って消しとばして崩壊させた。しかし複雑に組み上がったアメストリア型戦艦の高い生存性が中々に沈没を防ぐ。本当に厄介だなアメストリア型戦艦は。

敵に回ると対処に困る。前みたいにゼロ距離での殴り合いができれば手っ取り早いのだが、アレやるとか少なからず損害が出るしリバンデヒを始めとした妹共に叱られるし拒否権なしの夜這い(物理)を掛けられるためメリットがゼロを突き抜けているためやるつもりはない。

翌日まともに動けんしな。不思議と妖精さんからも治療を拒否されるし。湿布ぐらいくれよ...

 

だってさぁ...嫌がらせのレベルが天元突破してて処理に二時までかかりっぱなしになって疲れが限界突破してたから巫女服のままベットに倒れこんだら、そのまま夜這い(物理)。

流石に疲れてたし、ストレスでイラついていたから割と本気で抵抗したらノイトハイルが容赦なく左手折ってきたもんだからあれは驚いた。

無論痛かったのだが何のためらいもなく姉の左腕をポッキリ逝かせるその躊躇いのなさに驚いた。そのせいで普段出さないように細心の注意を払っていた女の子言葉というか、悲鳴が出てしまったのはここだけの話。しかもそのまま続けるから痛いの何の。

因みに左手ポッキリは治癒符で翌朝には治ってましたとさ。

治癒符SUGEEEEEEEE(小並感)

 

 

話がずれたな。兎も角デメリットしかないからゼロ距離殴り合いはやらない。

楽しいけどやらない。見返りどころか仇しかないからやらない.......稀に、やるかもしれない。妹共にばれないようにな。

「姉さん、敵アメストリア型戦艦の損害が70%を超えたぞ。放っておいても勝手に沈むぞ、アレは。」

「...了解。目標を二隻目に変更する。」

主砲が、砲弾を撃ちながら旋回してゆく。

..........ちょい待て。なんで撃ちながら旋回する必要があるんだ?全く意味ないだろ、砲弾の無駄だし冷却の無駄手間だし。

感覚的に把握している限り弾薬は総備蓄の三、四割。

確かにまだ余裕があることには違いがないし、万能生産装置も稼働して〔弾薬〕の搬入し始めてるから永久戦闘は可能だ。そろそろ目が疲れてきたが。

だって主砲の閃光は艦橋ガラスを通しても強烈で疲れるんだもん。あれだな、暗闇の中でスマホ見続ける感覚だ。あれも疲れるだろ?あれで銃撃戦でも見てみろ、疲労がたまる。

 

 

 

「っ!?!?」

海面が荒れに荒れ、次々とミサイルが飛び出してくる。

雨を逆再生したような豪雨のミサイル。よく見なくても全部アメストリア製グラニートだ。

しかしこれはアメストリア型戦艦。自動迎撃システムのおかげか妖精さんの補助もあり20cm連装砲、30cm連装電磁力砲が一斉に旋回し対空砲のように次々と拡散型結界弾を発射。

 

20.3cm、30cm拡散型結界弾は海面から10mを飛翔し炸裂。

内部にある攻撃性結界を周囲に撒き散らして飛び出したグラニートをボロボロにして海にリコールして行く。偶に炸薬に命中したのか大爆発を起こしているグラニートもある。しかしそれでも尚漏れるグラニート。決して20cm連装砲達が無能ではない。それでも尚迎撃できないほどの大量のグラニートが飛び出してきているのだ。

しかしミサイルハッチからSM-2が射出され、同時に45mm対空機関連装砲が各々グラニートを迎撃する。

「誰が撃ってきている?」

''...ソナー死んでるです?''

''ミサイル煩すぎてソナー捉えれないです?''

''無理です?''

''でもでも三次元電探なら出来るです?''

なるほど。海中はグラニートのジェット推進音でグチャグチャ。ソナーなんぞ使えるはずもなく、この攻撃をしてくる不埒者を捉えることは出来ないと...しかし、アメストリア型戦艦には三次元電探のいうソナーの存在価値を正面から踏みにじる系有能電探が存在する。潜水する度に引っ込むてっぺんのアレだな。大和の15m測距儀についてた電探を模した巨大な三次元電探は海上水中関係なく海底の石ころ一つ、鳥の産毛一つさえ検知する。

今までも海底の形状や深さを知れたのはこれのおかげだ。

電探をみると、立体ホログラムが形成し直され、艦のした、つまり海中が作成された...んだが記号の嵐。グラニートが多すぎてそれの表示で何も見えん。

「妖精さん、グラニートは反映しなくていい。兎に角下手人を見つけれればいいんだ」

 

海底が投影される。服の皺のような...言葉では言い表せない複雑怪奇な海底図が映し出される中、明らかに形の可笑しいモノが15。

潜水艦だ。

「翔鶴、瑞鶴。海中にいる潜水艦にASROCを撃ち込め。私達は敵アメストリア型戦艦に手が離せない。」

「かしこまりました...対潜ミサイル、発射!」

「分かったわ!目標、敵潜水艦!発射よ!」

装甲空母から細長いミサイルが幾つも飛び出し、そのまま海中に飛び込むとジェット推進にモノを言わせて進む。ホログラムにも映った。

棒状のミサイルが30発。一隻に二発ずつ命中するだろう。

ASROCは順調に潜水艦へと進んだ。しかし戦場では例外がつきもの。潜水艦の一部が恐ろしい速度で浮上を開始。

その激流でASROCも蹂躙され命中せずに爆発するものが多発。

「な、何よあの速度!スクリュー推進じゃありえないわ!?」

「あら、五航戦は想定外を知らないのかしら。敵が私達の予想を超える行動をしてくることだってあるのだけれど」

「ムキーーッ!!なによ鈍重な空母のくせに!なによ側面に甲板なんかくっつけちゃって!動きが鈍い空母の癖に避けれる訳!?」

「そこ、言い争う暇は無い。これ以上騒ぐならリバンデヒに丸裸で放り込むぞ。」

「そ、それは勘弁したいわね...」

「申し訳ありません、総旗艦。五航戦の子が煩かったので、つい」

「.......兎も角、貴官らは敵アメストリア型戦艦へのウンターガング弾発射をしておけ。浮上する敵潜水艦は私がなんとかする。」

言うだけ言って、対空砲の所為で幾分か薄くなった弾幕を更に薄くするのはあまりよろしく無いのだが仕方あるまい。46cm三連装砲の攻撃をやめさせて、最初に飛び出す潜水艦の予測域に照準を合わせる。

あと10m。砲弾が一式徹甲弾に換装される。

「ーーー。ってぇ!」

数基の46cm三連装砲から一斉に放たれた一式徹甲弾は元気よく飛び出した潜水艦.......駆逐艦だったのか、兎も角駆逐艦に命中。比較的重装甲だったのかガギンッ、と鈍い音を立てて命中した。しかし流石は46cm砲弾。元祖46cm砲弾でも駆逐艦を頑張ればワンパンできる威力を持つのだ。それがアメストリアの砲弾だとすると一発でも破壊されるのは必須。

それが何発も打ち込まれたのだ。

完全にオーバーキルですねわかります。

 

船体ではなく、金属片を派手に巻き上げながら残骸が花火のように吹き飛ぶ。

慣性か分断されたアメ公の艦首が飛んで行くのを傍目に、他の駆逐艦に照準合わせる。

......ほう、他の突貫していた駆逐艦は海面に出るのをやめたのか魚雷もびっくりと急制動で海中にてターンしてこっちに向かってきた。直接やってくる気だろう。

私の嫌いな神風か。あ、駆逐艦のほうじゃないからな?

 

私の持つ海中を攻撃する手段は少ない。

まずASROC。これはまぁ知っているだろう。

次に主砲の徹甲弾。これは主砲と副砲の150cm四連装砲にしかない。これは水中を進むためにある程度の質量が必要だからだ。

この二つしか私には対潜攻撃として使える兵装がない。

しかも主砲達には俯角という制限があり、その距離ではもう撃てない。

かといってミサイルも全弾ウンターガングで敵アメストリア型戦艦にかかりっきりになっているためすぐに弾頭を変更して発射するというのはきびしい。

まぁ喫水線下の装甲は10000mmを超えているため早々貫通することはないだろう(慢心)

 




えっとすね。これから()()()他の作者様がしたことのない深海棲艦との戦闘が繰り広げられると思われます。主にアメストリア用の有効打を考えるのも時間がかかりました。強すぎるんだもん。
魚雷効かない核効かない砲弾効かないウンターガングも単発じゃ効果なし。何このチート。
しかしそんなチート戦艦でも対策を思いつきましたのでご安心ください。戦艦でも『舟』ですからねぇ(暗黒微笑


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74. アハトアハトは浪漫だと思う(迫真)

なんかさ、遅れるのが当たり前みたいになってきて怖くなった諷詩さんです。
本当にごめんなさい...何かやる気スイッチが中々インに成らなくて何をしようにもその場しか楽しくない状況が続いて、学業の方ももう高校システムに移行し始めて成績が爆落ちしたりで一人ネガティヴキャンペーンしてました。はい。
誰か活力の補給法を教えてください...

→劇場版行ってきたらそこそこ回復しました。
帰還聞きながらぽちぽちしてます。


''敵さんの砲弾来ます!''

''500cm砲弾です?''

「...何発だ?」

''40発です?''

''でもでも一部迎撃できないのがあるです?''

よりにもよって深海棲艦駆逐艦のラムアタックが来ているというのに...!

迎撃できないのは歯痒いが今は砲弾の迎撃が先だ。

「主砲一番、砲撃止め。目標変更。」

''一番、射撃やめるです?''

''ストップするです''

''撃つのやめるです?''

「弾種、三式弾。目標敵500cm砲弾。迎撃始めー!」

一番砲塔が砲撃を止め、僅かに射線を動かした。

砲身も四本それぞれが別々の角度に仰角を上げ、三式弾を発射する。

轟音と共に激しすぎる閃光が迸り、白い塗装の砲弾を飛ばす。今までにも言った通り主砲の射撃精度はかなり高いから徹甲弾をごっつんこさせる舐めプでも良いんだが、万が一があるといけないので確実に対象を消せる三式弾を採用した。気化弾だしなアレ。

飛んできた40t以上の鋼鉄の塊に可燃性の液体が塗りたくられ、発火。

刹那、砲弾の全域が炎に包まれ砲弾ごと消失する。

しかし徹甲弾がいたようで、三式弾の迎撃にも耐えたようだ。一秒で1kmを進む500cm砲弾にとって次弾は意味を成さない。距離は950m。もう主砲は間に合わない。

せめてもの抵抗のして暇してた45mm対空機関連装砲の片舷を動員して迎撃してみたが回転による物理的な結界が発生しており、45mmという装甲車くらいならワンパンできる砲弾も弾道が歪められ、命中さえせず。まぁ元より徹甲弾なのだから表面に傷をつける程度だろうがな。

「応急班、手配しろ」

言うが先か、船体に九一式徹甲弾が船体に突き刺さった。

対空砲陣地を何もなかったかのように貫通した砲弾は構造物を破壊して進み、適当な位置で爆発した。10t以上のアホみたいな爆薬が炸裂し、好き勝手に爆風が駆け抜け、水密扉を張り倒し壁をなぎ倒す。思わず吐血し、黒々とした血液の塊が吐き出されるが、すぐに袖で拭い、主砲の砲撃を再開する。

「お姉ちゃんっ!?」

側面より盛大に爆炎を上げた私が見えたのだろう。比較的落ち着いているが焦りが隠せていないリバンデヒの声が聞こえてくる。

カイクルやノイトハイルは、と見ると加賀や赤城の方に集中攻撃がされておりそれの防衛に回っているようだ。絶対干渉結界はこの距離だと互いに重なり合って自爆するからな。というかそもそも航空母艦に絶対干渉結界は積んでいないからな。戦艦なら絶対...とは言えないがある程度使える結界発生装置を妖精さんが試作第一号を開発した所だ。実戦に使えるやつな。実証実験とか色々としてないけど。

 

「引き続きリバンデヒは攻撃を続けてくれ。私は特攻を対処する。」

「了解よ。さっさと処理しなければ艦娘達に被害が及ぶし...」

応急班が駆けつけ、抉られた場所を重点的に消化活動を開始したようだ。なんかムズムズするし。しかし15t位の炸薬とあって体育館ぐらいはリフォームの犠牲になったはずだ。かつ配線や配管、薬莢の投棄通路など様々なものが通っていたため大損害。46cm三連装砲の一基が薬莢廃棄通路がやられて使用不能。対空砲も命中した点を中心になぎ倒され押しつぶされている。取っ替えなきゃならんくなった。めんどいのに...

''ラムアタック、来ます!''

''敵速120ノット以上!''

''距離156mです?''

''貫通はないです?''

''でもでも歪んじゃうです?''

''潜れないです?''

''最大戦速だせないです?''

しっかりと艦橋に据え付けられている机にしがみつく。

120ノット(216km/h)で2000t以上の鋼鉄の塊が突っ込んでくるのだ。衝撃は想像に難しくない。

金属のひしゃげる音が悲鳴のように響き渡り、船体が激しく揺れる。

「つぐぅっ!?!?」

姿勢制御装置が緊急稼働する。慣性も加わった恐ろしい威力のラムアタックは船体に命中。かき混ぜられたような激しい痛みが脇腹あたりからズキズキとくることから貫通したのだろう。一体どこに...?

「........被害報告急げ」

''船体にドッカンした感じです?''

''隼が大破した感じです?''

.........なるほど。格納庫に突っ込んできたのか。格納庫は隼を下すために唯一船体がカットされた比較的弱い部分だ。しかしそれは分かっていたことだし、対策にトラス型になる展開型の骨組みが内側に張られており、かつ扉に当たる装甲は一枚モノ。縦横に交互に重ねたとりわけ頑丈にした部分だし、防水機能のために水密壁のように機構を仕込まず、純粋に鉄板がぴったり重なり合うように設計されていたし、後付けの防水材も張られていた。しかし、誰が駆逐艦の120ノットでの直撃を想定するだろうか。そんなの500cm砲弾よりも威力高いし。装甲も無意味になる。

 

だけどさぁ...ないわ〜。(ドン引き

お陰で見事に格納庫の隔壁は食い破られ、駆逐艦が艦内に突き刺さるという世にも珍しい珍事が発生した訳だ。

ごっつんこして艦首が切れた〜って言うのはよく聞く話だが。船体に駆逐艦刺さった〜は聞いたことないし見たことない。ヤバいと焦りつつ確認してみると、何か対策していたのか駆逐艦は無傷。隔壁の残骸に混ざって色の違う鉄板がある事から艦首あたりをギチギチに包んで突っ込んできたんだろう。つまりこれは計画的に実行された対私用の作戦であり破れかぶれや深海棲艦特有の根拠のない突発的な行動ではないということ。

 

....待てい。駆逐艦無傷やん。つまり、主砲も生きている訳で......

「ぐふぅっ!?......ぐぬぅ...妖精さん、応急修理班を寄越してくれ...」

絶賛艦内で12.7cm砲を乱射されている私です。

グサグサと釘を思い切り内臓に突き立てられているような生々しい感覚と共に想像を絶する多量の吐血と肉片を吐き出す。

思わず蹲り胸に手を当てて白衣を握りしめる。ズキズキとかそんなもんじゃなくもう痛い。とにかく痛い。やっぱ私って内側の攻撃に弱いなって軽く現実逃避しつつも鼓膜を割りかけていたインカムを毟り取って捨てる。心配は嬉しいけどうるさいっての。今痛いんだから...

「......妖精、さん...戦闘班を、緊急編成して、駆逐艦の...武装、を潰してくれ...」

''あいあいさー!''

''じゃけんアハトアハト使いましょうね〜''

''なおすです''

''れっつごーなのです!''

トタトタと駆けてゆく妖精さん達を横目に麻酔...そうだな、モルヒネあたりか。

注射器を作り出して乱雑に突き刺すと押し込む。少なくとも艦娘には薬品が効くことがわかっているからな。利用させてもらった。

幾分か痛みが無視できるようになってきたので熱を持っている腹を中心に治癒符を貼り付けてキツく包帯を巻く。まだやらなきゃならない事があるのだ。転移する。

 

 

 

転移した浮遊感に目を開けると激しい銃声と爆発音が聞こえてくる。妖精さんが武器庫から運んできたのか大口径武器の薬莢がそこら中に転がりまくっており、12.7cmと思われる軽くよく響く砲声も聞こえる。

 

まだ主砲、あるのか...ならばあれがいいだろう。

[88mm歩兵携帯砲]と呼ばれる妖精さんの自信作。実の所アメリカでの救出作戦で使う予定だったのだが前倒しだ。出し惜しみしている余裕ないし。

 

この88mm歩兵携帯砲はその名の通りかの有名なアハトアハト。アレを歩兵が撃てるように作り直された悪魔の兵器だ。口径長は48。四号シリーズ後期型と同じだな。口径は違うが。

例の如くブローバック式の装填機構に量子変換器の組み合わせで連射できるおまけ付き。

銃のように構えるのではなくキャリングハンドルとグリップを握って腰だめで撃つ。

全長は48口径長とあり480cm。4Mを超える深く考えるのがアホらしくなってくるこの兵器は大体のものに有効で関係なく吹き飛ばしてくれる助っ人的存在だ。

今回は遠慮なく使用させてもらう。

やや近未来的デザインだが戦車から引っぺがしてきたような外見のそれを構え、腰を下ろす。

しっかりと足で踏みしめ、腹に力を入れる。そしてグリップのトリガーを引き絞った。

88mmの砲声が響きまくり、足元にM634とは比較にならない巨大な薬莢が弾き回る。

予想以上に衝撃がなかった。駐退器が四本にマズルブレーキ。下方向に衝撃を逃がすために重りが移動するピストン機構まで組み込まれているためアレだな、芯に入ったホームラン打った時くらいの衝撃で撃てた。なにこれこわい。

「...中々使えるな」

「...中々使える、じゃないわよっ!!」

後頭部に強烈な打撃が入り、思わず88mm歩兵携帯砲を取り落としてしまう。

「連絡がつかないから心配してきてみたら...お姉ちゃんなにやってるのかしら。妖精さんも奮闘しているのだからお姉ちゃんは休みなさい。」

「し、しかし駆逐艦が刺さって...」

「黙りなさいアメストリア(一番艦)。思い切り内臓を二つ以上やられている姉に戦わせる程私達は落ちぶれてないわ。」

...はっきり言われたよ私。というかリバンデヒからアメストリアって呼ばれるの初めてかもしれん。大体「お姉ちゃん」だし。艦娘ならまだしも妹達に呼び捨てされた事はない。

.......夜?ノーコメントで。

「う、うむ.......すまない」

「いいわ。すぐに医務室で治療を受けなさい。この駆逐艦は私が退けておくし、穴も塞いでおくわ。」

「任せた。...すまない」

そう言って素直に転移する。

 

駆け寄ってきた医療科妖精さんにされるがままにされながら、考える。

敵さんはもう壊滅状態。恐らくノイトハイル辺りが残りの敵を喰らい尽くすだろうからあまり考えなくていいだろう。四隻アメストリア型戦艦がいるんだし。

弾薬の消費は...うん。目をつむろうか。工場行きだがまぁ仕方ない。今回はイレギュラーだったんだから。練度おかしかったし。

損傷は...うん。工廠行き待った無しなんだが、私考えた。対空砲、弱くね?って。

現在我がナウル鎮守府が正式採用しているのは45mm対空機関連装砲のみだ。あとは仰角がいい12.7cmや15.5cmの砲しかない。しかしそれは主砲だし、そもそも対空砲は対戦闘機用に配備しているからまぁ問題はない。しかし私達はそうはいかない。ある程度装甲を持った対象を叩き落とす必要がある。アメストリア型戦艦だけは規格外の戦闘に駆り出されるんだし。

45mm対空機関連装砲3500基7000門の威力は凄まじい。しかし45mmとあって戦闘機は落とせても飛来する砲弾に対してはあまり有効だになりえない。従来の砲弾なら木っ端微塵だがアメストリア製の初速の早い砲弾はいかん。

しかもアメストリア型戦艦には高角砲がないのだ。

45mm対空機関連装砲は「砲」なのだがそうじゃなくてさ、12.7cm高角連装砲とかああいう感じのがない。そこらへんはミサイルに任せているし。

取り敢えず対空砲強化に関してはこれが終わった後時間ができた頃にでも妹たちに聞けばいいか...

''かんむすさんかんむすさん、治療符の効力であと40分くらいで治るです?''

「...そうか。すまないな。今回は私も至らぬ所だ。」

''いやいや、別に大丈夫です?''

''毎回修繕に弄れるからけっかおーらいです?''

''格納庫改修できるです?..

医療班の妖精さんに混ざってつなぎ姿の妖精さんがいた。

...というか「改修」という言葉に不穏なものを感じるのは私だけではないはず。

だってあの()()()()だぞ?アメストリア型戦艦をバーナーを使ったからといって一瞬で建造したり魔が差して核兵器ポンって作っちゃうあの妖精さんだぞ?

今度はどんなことされるか分からない。

「.......程々にな...」

''最近作ってないです?''

''隼もこわれたです?''

''なかみもぼろぼろです?''

''水密壁かいぞうするです?''

''こんどは駆逐艦もふせぐです?''

''いやいや、軽巡もふせぐ〜?''

「......。」

もう、いいかな。うん。

人...艦生、諦めも大切だろう。今まで散々精神面で苦しめられている のだから、いい加減慣れてきた...........と、思う。

 

「...入るわよ。一応、破孔は鉄板で塞いだわ。あと私達の方にも突撃してきて、カイクルに命中したそうよ」

「...何?」

私だけでなく、妹達にも?

それは頂けないな...赦せん。このアメストリア型戦艦の分厚い装甲をもってしても防御できない危険な攻撃。妹達に命中したら、私と同じ被害...それよりも大きな被害が出る可能性だってある。例のミッドウェーでのカイクルが受けた攻撃ってこれだったのだろうか。

あれも船底に大きく凹んでいた。今回私は格納庫に命中したからこそ船内に突っ込んできたが、船底にぶつかればああなるのではないか?

ドックでカイクルを確認した時の事を未だに強烈に覚えている。

水を抜いて船底を見たとき、何か鋭角の物が衝突した形跡があった。無論修繕のためにわざわざ叩いて直した。アホみたいに時間かかったが。

 

「別に貫通した訳じゃないわよ。少しだけ凹んだだけよ。戦闘に支障はないわ」

「......ノイトハイルは?」

私、カイクルに被害があったのは分かった。

じゃあ、リバンデヒとノイトハイルはどうなんだろうか?

その被害によって深海棲艦のボコり具合が変化する

「...ノイトハイルに乗っかってたわよ。」

 

...

 

......

 

.........

 

...どういうことだろうか。想像がつかないんだが...?

「乗っかってたわよ」とはどういう状況なんだろうか?

艦娘のほうのノイトハイルに乗っかっていたらそりゃ即死不可避だが、恐らくリバンデヒが言っているのは船体の事だろう。というかそうであってほしい。

つまりだ。つまりノイトハイルにはラムアタックは命中せずそれどころか乗り上げたということだろうか。

「.......その後は?」

「砲塔を振って無理やり叩き落としたわ」

...さすがですクレイジーサイコレズ。やることが違いますよ。

砲身折れても交換面倒なんだぞ?手伝わんぞ?今まで撃っていたから砲身は熱くなっているだろうし、その状態で打撃を与えれば少なからずダメージを負う筈だ。

砲精度が下がったりな。死活問題だがノイトハイルだから何とかしているだろう。砲塔で落としてる可能性あるし。とりま気にしない。

「...そ、そうか。ならば問題は無いな。敵は?」

ほら、痛いからさ。私いま電探切ってるのよ。艦娘パワーの方は。

「えっと...姫級は血祭りにあげたわ。他の艦艇は赤城と加賀が沈めていたわよ?」

「残党は?」

「駆逐艦が少々」

「...弾薬は?」

「私はまだあるわ。どこかのおバカさんと違ってね。カイクルは四割、ノイトハイルは八割ね。赤城は二割、加賀は三割五分、翔鶴瑞鶴は共に五割位ね」

...耳の痛い話である。

150000位の消費に目を瞑れば今回は辛勝と言えよう。

アメストリア型戦艦が二隻破損したがまぁそれは良い。改装も一緒に済ませて貰えば良い。

そもそもソロモン戦自体想定外だったし。

「各艦に弾薬を補給しておいてくれ。あと加賀には直庵機を出させてくれ」

「了解よ。すぐに直しなさいよ?これから殴り込みに行くんでしょう?」

「うむ。隼を積み直し、修理が済み次第直ぐに向かう。」

 

そもそもの目的は天龍田の報告にあった拉致された艦娘達の救出である。

横槍があってこんなところで戦闘していたが一刻も早く向かわなければいけない緊急事態なのだ。しかし上陸用兵器を積んでいた隼はやられたし、少し時間がかかってしまう。

「.......えぇ。分かったわ。...お姉ちゃん、こちらに接近する感を一つ確認したらしいわ」

「......何?」

慌てて窓から海を覗く。青々とした、しかし砲煙で曇り始めた空に暁の水平線。

遠くには深海棲艦が燃えているのか黒々とした煙がポツリポツリと確認できるが、接近中の感を確認できない。船か?戦闘機か?

「敵か?」

「どうかしら。いま加賀の航空隊が向かっているわ」

「そうか。念の為に他の艦娘にも攻撃態勢をとらせてくれ」

「えぇ。」

インカムを新しく作り直し、耳にはめる。

同時に処置が終了したのか妖精さんがグッってジェスチャーで伝えてきたからナデナデして感謝の意を伝える。可愛い。

 

 

 

 

 

 

 

「.......夕立?」

「えぇ、加賀の航空隊が確認したそうよ。ドロップ艦かしらね。煙突から煙出していたからアメストリアの夕立じゃ無い筈よ?」

何故かぽいぬがつれたでござる。意味不なんですけど。

私が不運体質なのかわからないけど泥艦なんか滅多に出ない。ノイトハイルくらいじゃね?

しかし今回はレアなのか、夕立が出てきた。

いや、しかしその夕立が泥艦であるとは限らんしな。元々いた艦かもしれんし。

私達が絡むと泥艦はアメストリアの艦艇になるとかのシステムがあるのかもしれんし、やはり情報が足りん。どう判断することができるか...

「リバンデヒ、今私の内火艇は木っ端微塵だ。よってお前の内火艇を使わせてもらう」

「別に良いけれど...対価は高いわよ?」

こんな時にも対価を要求してくるとは...やはり外道か。

しかしなりふり構っている余裕は無い。態々F-222使いたく無いし、体に負担かかるし。

「カイクルとノイトハイル。非殺傷兵器と五式もってここに来い」

『承知した。非殺傷兵器というのは何処までだ?』

「艦娘を無傷で拘束できるものだ」

『.......無理難題を...』

まぁ自覚はある。スタンガンだって無傷じゃないしテーザーガンも電極が突き刺さるからやはり傷がつく。あとビリビリして気持ち悪い。

そもそもアメストリアに非殺傷兵器など一つとして歴代で開発、試作された形跡さえ無いのだから察してほしい。殺すか飼うかしか無いのがアメストリア軍の基本スタンスだし。

ともかく、アメストリア製重火器には非殺傷兵器なんていう優しいものが無いため、今までも地球産の非殺傷兵器を使用してきたのだが、今回は敵である可能性が極めて低い(と思いたい)ため前回のドミートリーみたいにガチ武装しなくても良いだろう。ノイトハイルみたいに極められないだろうし。寧ろされたら怖いわ。

『...姉さん、一応、ゴムよりも柔らかい物質で作った模擬弾を95式短機関銃と25式歩兵小銃に装填しておいた』

『僕も無理やりだけど25式歩兵小銃に詰めておいたよー』

「そうか。ならばリバンデヒの内火艇に集合してくれ。リバンデヒはこのまま残って警戒を」

「分かったわ。対価は後ほど頂くわ」

不安だ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本的には、私の隼もリバンデヒの内火艇も変わらない。

私のとこが勝手に隼って呼んでただけだし、戦艦なんだからカッターくらいないとダメじゃね理論で積まれてる内火艇だが、この実高性能だし、私は割と重宝している。

だって私達つっかえるんだもん。着岸できる地点がどれくらいあるか知ってるか?海上プラントとナウル鎮守府だけだよ。その他は深かったとしても大きすぎてドックや桟橋に収まりきらず、ひどい時には海流をぶった切ったり海峡を封鎖してしまう。だからこそ内火艇が必要であるのだ。

詰まる所便利な足だな。取り繕わずにいうと。

それで、その内火艇に私、カイクル、ノイトハイルが非殺傷兵器と五式自動拳銃で武装して乗り込み、航行中の夕立に接近。臨検を必達目標とする。

まぁ100km先から見える私達だし、こっちに向かってきているらしいから会うのはそう遅くならないだろう...多分な。

 

一枚物の装甲板が船体から外れて行き、クレーンに吊るされた内火艇が外に出される。

リバンデヒは内火艇をクレーンで下ろす方式らしい。

だから私だと下に開いた装甲板も上に歯弧式なのか歯車が回転しガレージのように開いてゆく。空襲対策にもなるなコレ。採用しよう。

吊るされた内火艇が海へと降ろされ、接続部が離される。

ザバン、と海面に内火艇という巨大な質量が投入された為押しのけられた海水が船体に当たって白い波へと姿を変えた。

外見の変わらない、ただ02、と数字が目立つその船は馬力に物を言わせて発進。

海を切り裂き航跡を残しながら目的の夕立へ向かって行く。

この内火艇...外から見たら戦艦クラスのステルス艦だと、漁船を引っ捕らえる巡視船みたいな身長差が出てくる。帰って動きにくくなる可能性があるし、夕立に怖がられる可能性だってある。あんな子に嫌われたら私立ち直れなくなる自信がある。あのぽいぬだぞ?

目も合わせてくれず会っても回れ右。口を利いてくれずそれでも他の艦娘達と楽しく談笑するーーー想像するだけで落ち込んできたわ...

 

夕立を視認できた。

この内火艇(笑)に驚いているのか警戒しているのか、速度を落とし僅かに船体を傾けている。

だからこそ見えた。夕立の船体には幾つもの弾痕が残っており、主砲は一基ひしゃげている。

機銃掃射の跡がミシンのようにそこら中を縦横無尽に走り回っており、大変痛々しい。

中破、といったところだろうか。残弾がどれだけあるか判断出来ないがよく無補給で今まで生き延びたものだ。敵は今まで見たこともないジェット機に信じられない程の精密かつ高密度の艦砲射撃をしてくる。当然自らが持つ武器など等に及ばず、当たったとしても重装甲に悉く弾かれる。いざ逃げん。としても敵は考えられない速度で追撃してくるし、地獄だったのではないだろうか。此処にいた深海棲艦、エリートだったし。

「私は大日本帝國海軍所属、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアだ。現在この海域は作戦区域である。貴官の所属をお教え頂きたい。」

無線周波数に合わせて、そう告げる。

「.......知らないっぽい...」

返信が来るも、どうも要領を得ない。

やはりドロップ艦なのだろうか。他の鎮守府からの脱走艦とかそういうルートも考えはしたが、知らないときたのだからドロップ艦判定でいいのだろう。

駆逐艦も少なかったし、夕立可愛いし。一石二鳥とはこの事だ。

 

何故か、夕立が停船した。

足を止め、流れにされるがまま。

錨も下ろさずにただ漂流するのみ。何だか嫌な予感がする。

沈む傾向は見られないため問題ないが、艦娘が倒れた可能性がある。

すぐに内火艇を近づけて接艦。

「カイクル、周囲警戒。ノイトハイルは私と来い」

「御意に」

「はいはーい!」

一応、五式自動拳銃を片手にささくれた甲板に降り立つ。

 

右、左、上...と警戒するも人影は無く、妖精さんの影も無い。黒煙は確認できる限りで三箇所。

煙突と主砲の残骸。煙突には過貫通したのか大きな穴が空いている。そうだな...恐らく15.5cm口径だと思われる。500cm、150cm砲弾の被弾は無いようだ。

あったら此処にいないと思うが。

警戒しつつも知識にある...というか吹雪や暁に乗せてもらった時の記憶を手繰り寄せて階段を登って行く。

 

照準を様々なところに合わせながら、遂に艦橋に到達した。

「いけるか?」

「大丈夫だと思うなー。敵意感じないし。」

「...そうか」

その敵意を感知するのにどれだけの娘が犠牲になったんでしょうねぇ...?

あれだろ、ノイトハイルが感知する『敵意』っていうのはノイトハイルが襲ってくる事に対しての警戒と殺意だろう?この女たらしめ。

戦闘においての敵意の感知なんかカイクルが当たり前にやっちゃうし、リバンデヒはそもそも姿を見ずに殺っちゃうからやはりこの姉妹は可笑しいと再三思う。

まぁともかく此処でウジウジしていても仕方が無いので、ゆっくりと忍び足で侵入する。

70年前の古く、しかし私達の艦橋とも一部共通点が見られる灰色の殺風景な空間。

初見では絶対わからないであろう観光名所などにはよくある据え付け型の双眼鏡に似た主砲照準器。中央には操舵用の円形のチャリオットの車輪みたいなヤツがあり、壁には伝声管が這っている。その壁に凭れて気絶していたのが夕立だった。

改装されていないと思われるセーラー服には出血した事を示す赤黒い血痕がはっきりと残されており、まだ乾いていない事から最近の傷である事が察せられる。

すぐさまに脈を取り無事を確認する...良かった。息はしっかりとあるようだ。

「ノイトハイル、お前のところで船体は回収しておけ。戻ったらすぐに改修を施す」

「はいはーい..でもこれはねぇ...」

「......?」

「いやー、船体にちょっとダメージが蓄積してるみたいでねー?よく見ればわかると思うけど結構錆びてるよ?」

そう言われて見回す。

艦橋はそうでも無いが、先ほど登ってきた階段を始め、確かに赤さびが多かった気がする。

長い間潮風に当たり続けた弊害だろう。

つまりついきっきドロップした可能性は無い...という事だろうか。

まぁ今は関係無いし後で本人から聞けばいいだろう。

「しかもお姉ちゃんも無視できない損害があるはずだけど〜?」

「これしきの事で問題が発生すると思っているのか?ノイトハイル」

「いやいやー、そうじゃないけどさー。隼もなくなっちゃったんでしょ?上陸どうするのかな〜って」

「.......妖精さんには修理と隼改の建造、夕立の改修を同時並行で進めてもらう。」

「ふふ、さすがお姉ちゃん。妖精さんをこき使うね〜!」

「.......。」

だって本人たちがそれを嬉々として行うんだからさ...もう、なんかさ。

諦めがついたんだよ。こき使ってる自覚はあるが、妖精さんにその概念があるかどうかさえ怪しいので、私がはっきりと言えないのも実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はてさて、此処はナウル鎮守府第一隔壁内のアメストリア型戦艦用大型ドック。

私はそこにいた。

理由はさっき話したからもう言わんが、やっぱり妖精さんってすごいね。

徹甲弾の損害は20分で完治。

格納庫は改造を加えているらしく、未だに火花が散っている。

内火艇の建造には少し時間がかかるらしく、船体の設計にもめているらしい。

といっても武装がすでに完成しているあたり、妖精さんも大概だと思う。

大和作りたかった大本営と同じ事してるやん...

この際に言っておくが、隼改め隼改は特に変化はない。

全長は拡張するらしく、263m。元ネタの大和と一緒だな。

武装も同じく46cm三連装砲三基。対空砲には何時もの45mm対空機関連装砲の他に試験運用段階の【試製 88mm回転式対空機関砲】の連装砲が左右に三基、計六基が搭載される予定だ。

そして足まわりだが内火艇とあって小回りは効かなきゃあかんだろうとの事でスクリュー式を廃止してジェット式に切り替わり、船体側面にも埋め込まれたらしい。キックでもするつもりなのだろうか。日本武尊みたいに。

舵は大舵二つに小舵二つ。

ステルス性はそのまま受け継ぎ、追加で絶対干渉結界(ミニ版)を試験搭載するらしい。

なんかインディペンデンスみたいに期待マシマシ現実ショボーン状態にはならないでくれよ...?切実に。

 

''艦娘さん艦娘さん、設計おわたです?''

''しゅーりょーです?''

''ふぃにっしゅです''

''さんどうかんはやめましたです?ー''

''左右に展開式のフロートがつくです?''

なんで三胴艦にしようと思ったのだろうか。かさばるやん。というかそれもう内火艇じゃないやん。しかし左右に展開式のフロートというのは妙案だと思う。あれだろ、二式大艇とかの機体からせり出すソリみたいな。あれの左右版だとおもう。

恐らく抵抗を増やして旋回半径を縮めたり停止に必要な時間と距離と縮小だと思われる。

合理的ではあるが、強度が心配だな。ジョイント式にするのか、アーム式にするのか、油圧式にするのか。少なくとも展開時に途轍もない圧力を一気に受けるのだから、それに耐えうる耐久性と伸縮性は必要だ。あと船体との親和性だな。

「...よかろう。すぐに作り始めてくれ。船体が出来次第陸上兵器の積み込みも初めておいてくれ。」

''あいあいさー!''

''スピード勝負です?''

''RTAです?''

''最速記録更新するです?''

''兵器は何載せるです?''

「そうだな...」

少なくともアメ公で暴れるのだし、ある程度の火力は欲しい。

しかし大きすぎてもダメだ。道に入れない。一七式戦車はダメだな。二車線半使うし。

五七式重装甲輸送車と七九式装甲輸送車だが、理想的な車両だが、火力が心配だな

敵が何を持ち出してくるかわからんし。一式重武装車輌、七式装甲車輌はあれだな。ジープだし。リストラリストラ。

「妖精さん、五七式と七九式を頼む。各5両ずつだ。」

''あいあい''

''かしこまりー!''

''たくさんつむのですなー?''

「あぁ、それと五七式、七九式の2両ずつに火力強化版を試しに入れてみてくれ。砲は任せる」

''強くするー?''

''砲積み替えるです?''

''パワーアップですなー!''

''大火力!それはせいぎ!''

''せんめつじゃー!''

一斉に妖精さんが駆けてゆく。少々不安が残るが、妖精さんだし大丈夫だろう。

使えないものは作らないだろうし。

......いやさ、英国面全開の変態珍兵器だったら却下するよ?

実際に陸軍は重戦車の車体に20.3cmとか35.6cm砲載っけて自走砲(笑)にしたら反動吸収できなくてひっくり返るやつとか作っちゃってるんだから。チョン共じゃないんだから...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室にて眠る夕立を見守りながら過ごしていると、格納庫が完成したとの報告を受けた。

隼のほうは船体が70%完成しており、艤装も詰め込み始めているという。なにやってるんだろう。

陸上兵器に関しては報告を受けていない。まだ作ってんじゃね?

それで、私も一応体の一部だし、いざ使う時に不具合が〜、となりたくないので確認に来たわけだ。

私の船体を修理する傍、余ったスペースを活用して隼は建造されていた。

この時点で色々突っ込みどころがあるが、一々突っ込むときりが無いのでスルーする。

アメストリア型戦艦のドックは全長5000m、幅900mの巨大な溝だ。

しかし船は四角形でない。艦首と艦尾は絞られているし、そこは三角形に空白が空く。

史実だとドックに金剛型の誰かと駆逐艦を余ったスペースにぶち込んでる写真を見た気がする。

だから、まぁアメストリア型戦艦クラスになると余剰スペースで大和が10隻は建造出来る。

まあクレーンが足りんのだが。

 

閑話休題。

 

建造されている隼改は確かに報告にあった通り船体は殆ど完成しており、艦橋群は設置済み。

武装はドックに並べられており、クレーンでこれから積み込むのだろう。

内装はまだ分からないが、恐らく形状からして陸に乗り上げても自力で戻れそうだった為側面辺りに格納庫があるんじゃね?

見る限り殆ど完成していると見て大丈夫だろう。

ドックには既に搭載予定の発注した五七式重装甲輸送車と七九式装甲輸送車が並んでいる。

彼方に行ってみようか。

 

 

装甲車輌が並ぶエリアに足を運ぶと、見慣れた、しかし明らかに改修が加わったであろう車列があった。

砲身に目を向けると明らかに太くなっていることが窺える。

88mmだろうか。88mm歩兵携帯砲を持った身だから分かるが、それが機関砲になって口径長も延長されたらしい。

最大の特徴は連装砲になっている点だろう。

正直妖精さんだから四連装くらいになっているかと思ったが、割とマシな物に仕上がっている。

しかし七九式装甲輸送車は違った。

なんだアレ。装甲車輌か?砲かあれ?

 

分かった。あれだろう。

ドイツの対空砲にある四連装の20mm砲。

あれの75mm版が並んでいた。

「妖精さん...四連装は色々とないと思うが」

''そうです?''

''四連装は浪漫です?''

''投射量は段違いです?''

「外見がなぁ...」

''あー、それはおもたです?''

''ちょーとださいー?''

''バランスよくないですー''

''薬莢たいへんですー?''

「だろう?ならば連装砲あたりにダウングレードした方が良いぞ。」

''うむー、しかたないですー?''

''つけかえるです''

''ちぇんじちぇんじですー''

''つくりなおすです?''

''ですですー''

私の提案を聞いた妖精さん達が一斉に動き出した。具体的に言うとその場で解体し始めた。

 

何やってるん、妖精さん。

 

 

砲関係って精密機器のオンパレードやん?

平衡器は砲の命中精度に直結してるし、それ関係の圧力調整器に集電板。

ターレットリングを回すモーターに全自動装填器(7.5cm仕様)。

薬莢処理用の機材も仕込んでるし。九割型精密機器だ。

''性能には問題ないです?''

''全然問題ないです?''

''設備無くても出来ないとお話にならないです?''

''ですです?''

「......そ、そうか........」

確かに野戦修理くらいできないとお話にならないんだろうが...時間逆行術式あるから修理もクソもないのでは...?




と、言うわけでぽいぬ追加です。
無論魔改造します。ご安心ください。
あ、追加したのも理由があるんですよ?無意味にやるのは登校だけですので。
ナウル鎮守府、駆逐艦が少なすぎるんですよね。第六駆逐隊とぶっきーだけですよ?戦艦とかアメストリア型に大和型、長門型、金剛型もいるのに。
と言うわけでキャラの特に濃い、アニメにも出たバ火力の夕立さんにお越しいただきました。
あ、まだ増えますからね(ニッコリ




P.S.
ネタバレになっちゃいますが、現在ハワイまでプロットは組んでます。
その後は知りません。なんか終わらせ方に悩んでいます。
轟沈エンドはねぇ...機関がアレだから地球ボーンだし、帰るってどこへ?だし。
あ、提督さんと結ばれるのはありませんからご安心を。


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75.殴り込みって楽しいよね。

あけましておめでとうございます(錯乱)
いつにも増して遅れてしまいました。ごめんちょ。
まぁ読んでくれる人なんか居ないでしょうけどねHAHAHAHAHAHA!.....はぁ。
ともかく、シークバーを見てる人ならお気づきでしょうが、今回は遅れ多分も含めてマシマシになっております。






先に謝っておきますよ?
今回、初月、親潮ファンにとって不快な展開になっているかもしれません。
ダメだったらお使いのPCを初期化するか、端末をぶん投げてください。

あと、文中に警告タグつけてあるからだでしょうけどキマシタワー要素があります。
皆さんも一緒に叫びましょう。せーのっ!

キマシタワー!

あ、何処であろうと今読んじゃったんだからその場で叫びましょう。(外道スマイル)








ーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーーー

妖精さんによるダイナミック改修が終了し、同時並行で行われていた隼改に積み込まれた。

これで一応は回収が可能となる。数百人クラスとかだったら無理だがな。

まぁ流石に数百隻もの軍艦を隠蔽するのは難しいんじゃなかろうか。

そう楽観的に考えている。そうじゃなきゃやってられん。

只でさえアメ公なんぞいう穢れた土地に踏み込まなきゃならんのだ。艦娘を助けるのは大事だ。私がしたいと決め、実行に移すために天龍田まで送り込んでいる。

しかし土地がアカン。嫌いな土地だし、どうせなら戦争で堂々と上陸したかった。

占領する勢いで片っ端から破壊しておきたかった。

しかし今回は私とゴミ共組織との戦争だ。主目的も占領では無く艦娘の救出だし。

目的を履き違えてはいけない。

''積み込みかんりょうしたです?''

''アメストリアにつんだです?''

''出撃準備かんりょうです?''

「了解した。別命あるまで休んでいてくれ」

一応取り決めで私の突入タイミングは天龍達に任せている。

此処から一日も掛からずに突入できるし。

 

本当は必要ないんだが、使用する火器の整備でもしてようか。

アメストリア製の火器は整備要らずで有名なのだが、これも時間逆行術式が部品一つ一つに刻まれているからだ。

しかし術式が機能を停止した場会を想定してあるのがアメストリア兵器。

戦車なら緊急弾を積んであるし軍艦なら弾薬も修理器具も積んである。

同じように重火器にも解体できる機能は付いているし、修理器具も一式銃床に積み込まれている。

露天艦橋に転移し、M634を取り出す。

そして運搬形態の半分に折る機能を応用してピンを抜いて文字どおり二つに分解してバレルを抜き取る。

歪みもないし、傷もない。新品のままだ。

平衡器もギアボックスも正常そのまま。コッキングレバーもしっかりと奥まで引き込めるし、その際に排莢機能と薬室解放もしっかりと行われているのを確認。

一度組み立て直し、汚れ...は付いていないが気休めに拭き取っておく。

「お姉ちゃん、夕立が目を覚ましたそうよ。あと19.8mm重機関銃も汚れは付かないからやめなさい。恥ずかしいわ」

「.........容体は?」

「特に問題はないみたいね。警戒艦隊か何かの軽巡洋艦に襲われて中破。命かながら逃げ延びて息を潜めていたんでしょうね」

深海棲艦にもアメストリアスペックはいたしは、今回ソロモン海域には頭おかしい練度の艦隊が居た。気づかれていたと思うのだが...態々潰すまでもないと判断されたのだろうか?

タイミングよくリバンデヒらが突入したからだろうか?

まぁそこはどうでもいい。無事だったのは変わりないし。

ソロモンで夕立を発見できたのは因果を感じるが気にしないでおく。悪魔なんか居なかった。

 

鎮守府の医務室に移った。

礼儀としてノックしてから病室に入ると簡素な病院服に身を包んだ夕立がベットに腰掛けていた。見る限り、劇的ビフォーアフターを遂げた改ニにはなっていないようだ。なりようがないが。

「夕立、体の調子はどうだ...?」

「...大丈夫っぽい。...誰っぽい?」

「あぁ...失礼した。私は大日本帝国海軍ナウル鎮守府所属、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアという者だ。説明させていただくがよろしいだろうか?」

「ぽい!」

イエス、ととっていいのだろうか。

「私達は先程ソロモン海域解放のために敵艦隊と交戦。

これを撃破したのちに貴官を確認し中破していたため此処、ナウル鎮守府まで保護させてもらった。」

「ありがとうっぽい?」

「いや、礼には及ばん。それで...此処からが本題だが、現在貴官の所属はないものとなっており、船体の修理も出来ていない。判断は任せるが、このナウル鎮守府に所属してみないか?

無論希望する他の鎮守府があれば利便をはかるが...」

「......ここに、駆逐艦の子はいるっぽい?」

「勿論だ。現在は暁、響、雷、電、吹雪が所属している。」

「吹雪ちゃんもいるっぽい?」

「うむ。何か?」

「ううん...夕立、アイアンボトムで沈んだっぽい。

あの時は、沢山の仲間も沈んだっぽい...吹雪ちゃんも、暁ちゃんも、比叡さんも霧島さんも。

あの時沈んだっぽい。勝手に仲間意識をもってたのかも...」

「別に悪いことではないだろう。」

「ぽい?」

「問題は本人の意思だろう。

そもそも、我々は艦娘であるし、その点で言えば仲間と言えよう。

たしか吹雪は現在鎮守府に居るはずだ。暁は遠征に行っている。比叡、霧島の両名は...非番だな。今日は。」

アイアンボトムサウンドというば、アメ公を含めると50隻以上の艦艇が沈没している名の通り鉄床と化す、一部の艦娘にとってはトラウマの海域なのだ。提督諸氏なら史上最凶のマップという認識があるのではないだろうか。MI?地理院が引き直すくらいには殺ったし。ノーカンノーカン。あれ新規だろまず。......こほん。私達以外の戦艦を動員しなかった理由の一つでもある。比叡とか逃走しそうだし。鬼ごっこ→クレイジーレズ共に捕食。美味しく頂かれましたエンドは避けなければならない。

あと今回私達はアウトレンジから撃破した為現地には行っていないが、いずれ然るべき儀礼は行うつもりだ。

「........後で、会ってみるっぽい」

「...そうか。何かあったら、私の妹に聞いてくれ。出来る限りの支援はさせてもらう。」

「貴女は何処かに行くっぽい?」

「うむ。少し、所用があってな」

『......お姉さん、天龍から暗号通信だよ。』

「......了解。すまない夕立。所用の時刻になったようだ。私から艦娘には通達してあるから、自由に歩き回ってもらって構わない。食事をとってもらっても構わないし、妖精さんに言って船体を修理して出て行ってもらっても構わない。」

「......少し、考えるっぽい...」

「...そうか。まぁ、ゆっくりして行ってくれ。此処は世界一安全な鎮守府だ。」

そう言って、私は艦橋に転移した。

 

転移して、妖精さんから解読された通信文に目を通す。

まぁ予測はできるがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「機関始動。出撃用意」

''きかんしどー!''

''あつりょくじょうしょー!''

''主機起動したです?''

''エネルギー伝達したです?''

照明、情報を表示するコンソール、立体ホログラムの順に明かりが灯って行き、後方から唸るような機関の音が響いてくる。

システムが立ち上がり簡易点検を開始。

艦内の照明が全て付き、照明灯も灯り都市が浮かび上がる。

大和型の超巨大版艦橋が照らし出され、此処にも光が射してくる。

「錨上げ。」

''いかりあげるです?''

''主錨、副錨両方あがたです?''

恐らく18tの錨が火花を散らしながら海底から巻き上げられ、船体の窪みに嵌ったのか、ガコン、と鈍い音が響く。

「両舷、微速前進。」

ぐん、と反作用で身体が引っ張られる。

スクリューが回転を始め、人工海流を作り出し始めたからだ。

船体はその巨大さに似合った鈍さで港から出ると、隔壁に向けて少し増速する。

 

そしてナウル鎮守府第二隔壁にから離れると一気に増速。

機関の唸り声が甲高くなり、流れる景色は一気に早くなる。

「機関最大。最大戦速で向かうぞ。」

''あいあいさー!''

''どんどんすすむです?''

''日付変更線まで7時間です?''

''目標座標までは19時間です?''

''それいじょうかかるかもー?''

''遅くなるかもしれませんなー''

「とりあえず出来るだけ急いで向かってくれ。救出は一刻も早いほうがいい。」

''どういです''

''いえすおふこーす?''

''さんせーい!''

''それなー''

どうしよう...私やることなくなった。

あっちに着くまで何かできるわけでもないし...あ、大和とか長門、赤城あたりには夕立を気にかけるように通達しておくか。

全艦娘はソロモン海域で拾ってきたとしか知らされていない為、詳しい情報に関してはそれこそ当事者か青葉くらいしか知らないだろう。

吹雪がどう対応するかは不明だが、夕立のあの明るさに少し陰りがあったのは事実。

サバイバルしてたのだから無理もない。だからこそ仲間と呼べる存在が側に必要なのではないだろうか...と勝手に妄想している。正解とは限らんけど。

 

やる事を思いついたので、艦橋に立てかけてあったM634を片手に格納庫に転移する。

格納庫は以前とは大幅に姿を変え、航空母艦が一隻丸々入るのではないだろうかと思う程巨大な空間が広がっており、外界との出口は上に撥ね上げる式にした為機構が変更されており、巨大なシリンダーが見える。

そしてメインの存在たる内火艇の隼改。吊るし式に変更した為天井を這うレールに噛んだクレーンに吊るされた巨大な前衛的デザインの艦船。

主砲の姿は伺えず、側面の上陸用ハッチの切れ目が嫌に目立つ。

高雄型のような、またはさらに凹凸を削ったような艦橋。そしてその後方にびっしりと生い繁る45mm対空機関連装砲群。結構かっこいい印象を受ける。

 

乗船してみると艦橋はアメストリア型戦艦に準じた軍艦色の艦内には最低限の操作盤と展開型ホログラフィック展開装置が設置してあるだけ。未来的なデザインに変化している。

艦橋の自動調光機能付きスモーク加工された窓から外を伺っても、タンカーのように目立つ凹凸がなく、つるつるしている。

しかし主砲の形をした切れ目が幾つも並んでいたり、ミサイルハッチのタイル床が敷き詰められているのはよく見れば分かった。ステルス性バッチリだな。

...と。今回の目的は此処じゃあない。隼改にある格納庫だ。

 

隼の格納庫は案外何もなく、剥き出しの骨組みと装甲に囲まれた台形の空間で、

等間隔に天井に埋め込まれたLEDっぽい照明が床一面を照らし出していた。

そんな明るい空間に影を落とす塊が一つ。

重厚で、無骨な意匠の軍用車両。兵員()()()のクセに砲塔を持ち88mmと75mm砲の火力を搭載した輸送車の定義を問いただしたくなる車両。もう装輪戦車って呼んでいい気がしてきた五七式と七九式だ。

そのうちの1両に乗り込み、其処に使用予定の武器を積み込んで行く。

アメストリアらしく車内にも容量は小さいが量子変換器が搭載されており

ある程度の物資などは詰め込む事ができた。

他には...やはりアイツも積んでおくべきだろう。アハトアハトも積んでおく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

''ーーーーーーさん、アーーーリアさん''

''アメストリアさん''

''げっとあっぷです?''

''あうぇいくです?''

「........うみゅ、.......妖精さん、か......?」

''そーです?''

''妖精さんですぞ?''

ぼんやりとした視界に、小さな影が複数。

おっといけない...知らぬ間に寝落ちしてしまったようだ。

フラリと危なげなく起き上がると、狭い空間が迫り来る。

「......ここ、は...五七式、か......ふわぁ...」

どうやら、五七式重装甲輸送車で寝落ちしていたようだ。

アメストリアらしく輸送車の座席でも立派な高反発座席のため長時間座っていても疲れないようになっているし、やる事ないから太刀に寄りかかってボーッとしていたらいつの間にか寝てしまっていたようだ。太刀がひんやりしてるし船体揺れないし...言い訳は哀しくなってくるな。

「現在位置は?」

''あと数分で到着するです?''

''ですです?''

「そうか。会敵は?」

''深海棲艦の艦隊と三回あったです?''

''でもでも艦娘さんすりーぷしてたからミサイルうったです?''

''警戒網はスルー余裕です?''

''よゆーです?''

「そ、そうか...」

確かにアメ公の警戒網なんぞは日本に比べたら数段緩いし適当だが、何しろ私は全長がkm単位なので、数十キロ先からでも視認できる。あとはお察しください。

 

さてさて、時刻は夕方に差し掛かってきた午後3時頃。時差があるから時計があてにならない。電波式じゃないからさ。

最近はニートしてた光学迷彩と電子妨害をかけて投錨。

格納庫のハッチを開いた。

''クレーン降下するです?''

''おちるです?''

''海水浸かるです?''

隼を吊るしていた二基のクレーンがゆっくりとアームを伸ばし隼を海面に下ろしてゆく。

隼の体積分、海水が除けられ、私の船体に白波となって波打つ。

 

「クレーン切り離せ。機関始動。」

固定していたクレーンが切り離され、露出していた接続部が格納される。

遅れて隼後部にある船舶用粒子エンジンが起動し、新たに搭載された水流噴進式推進器がジェットエンジンのように空気を取り込まず、純粋な熱エネルギーを噴射し始める。

シャッターに絞られている為出力が小さい状態のためまだ前進はしないが、これを一気に解放するとアフターバーナーを噴いた戦闘機のように急加速して一気に最高速まで加速する事ができるという優れもの。

駆け出しが遅い私とは対照的な内火艇だ。あれだな。タンケッテみたいなもんだ。

「両舷最大速40ノットに絞れ。シャッター、解放しろ。」

私の一言で推進器のシャッターが解放され、一気に急加速。

爆雷のような水柱を上げながら一気に進んで行く。今思ったんだが、こと隼改はゆっくり進むことが困難ではないのか?舵は複数あるから小回りはまぁそこそこあるから良いとして、速度調整が難しい。戦闘機の技術を流用した感がする設計だし、そもそも畑が違うだろう戦闘機と内火艇じゃ。

ノズルでの調整で速力を制御するといっても加速は良いが、減速、停船はかなり厳しいものがあると思う。シャッターを噴出口に塞ぐように展開すれば発生するエネルギーは反対方向に流し、原則はできると思うが...スクリューみたいな微調整が出来ないのは厳しいな。

側面にも噴進器を付けたのは素直に評価できるが。

「進路、強襲揚陸予定地点に合わせ。

天龍、聞こえるか?」

『ーーーこちら天龍。こっちは既に準備が出来てるぜ』

「そうか。龍田はどうした?」

『試験導入した治癒符のお陰でそこそこの回復はしたぜ。...姉として、感謝する!』

「......礼には及ばん。私も艦娘が第一だからな。艦娘の為なら最大限の支援は惜しまないつもりだ。」

『......オレはお前のそういう所、嫌いじゃないぜ』

...よせやい。恥ずかしい。

天龍のデレ期はとても貴重なものだから感謝は有難く受け取っておく。

「兎も角、此方はあと5分で到着する。そちらはどうだ」

『オレは既にポイントで待機中。龍田は船の方で待機させてる』

「......そうか。すまないな、こんな汚れ仕事ばかり負わせて」

『別にオレは嫌じゃないぜ。この任務。そもそも今回は拉致された艦娘の救出だろ?今までの任務だって無駄にならないって信じてるし、実際無駄になったことはないだろ?』

「無論だ。貴官らにしてもらっている情報収集の成果は余すところなく活用させて貰っているし、それによる結果として大本営との交渉などで上手く処理することが出来た」

『こちら龍田よぉ〜。ゴメンなさぁい...回復が間に合わなくてぇ...けど、出来る限りの後方支援はさせて貰うね』

『龍田、お前はまだ...!』

「.......龍田、どこまで動ける」

『そうねぇ...正直に言うと今も痛むわぁ...』

「下がれ。任務に支障が出る」

『ーーーいやぁねぇ...これくらいじゃ龍田は駄目にならないよ』

ぞくりときた。此処まで来るピンポイント殺気..恐ろしいな.......

「...すまない。侮辱だったな。謝罪する」

『いいわぁ...許してあげるわぁ』

やっぱり龍田には明確な拒否が出来ない...こう、リバンデヒとかはやはり妹だしそう思ってるから遠慮無く拒否もしたし抵抗もしたが、龍田はこう、逆らえない...訳じゃ無いが、殺気が違うからなぁ...天龍の気持ちも分かる。

''到着するです?''

''揚陸、準備です?''

ぐん、と発進した時の逆。慣性でたたらを踏む。

推進器にシャッターが展開されたのだ。出力が上がって、速度以上の水流が送り込まれ、激しい波が立ち、減速していく。

「陸軍妖精さん以外の妖精さんは此処で戦闘態勢のまま待機。万が一、()()があった場合は対空砲の使用のみにしてくれ。主砲は私が戻った後ならば幾らでも撃ってくれて構わない。流れ弾はコラテラルダメージだ。」

''ならしかたないです?''

''もーまんたいです?''

''うぇいとするです?''

''アップ始めるです?''

「ふふ、よろしく頼む。」

 

 

息を吐く。此処からは、戦場だ。

格納庫に移動し、88mm搭載型の五七式重装甲輸送車に乗り込むと、陸軍妖精さんが続いて各車両に乗り込んで行く。

隼が港に到着。砂浜に艦首を突き刺しつつ、側面の上陸用ハッチを開放。

桟橋には流石に入らなかった。水深もかなり足りないが、隼の全長的に入れる港自体少ないし、あったとしても大体警備員か警備兵がいる。無駄に事を荒立たせるのは救出後でいい。

「全車、出撃せよ」

陸上兵器用粒子エンジンの甲高いモーター音のような機械音が一斉に響き渡り、簡易点検が一瞬で済まされる。

''電探、データリンク、サスペンション、タイヤ内空気圧、全て問題なしです''

''砲塔、旋回確認!俯仰角共に異常なし!''

''全自動装填装置よし!''

''初弾装填です?''

輸送車の癖に、上に無人の砲塔が載っているためか、装填する音がやけに大きい。

いやまぁ88mmだから当たり前だけれども。

私も有事に備え、M634と145式歩兵小銃のコッキングレバーを再度引き絞る。

後方、兵員用ハッチが閉められ、順に装甲車輌が走り出してゆく。

妖精さんの操る一見無人にしか見えない操縦席に設置された高感度カメラによる鮮明な映像を見るに、ジェットコースターみたいな視界だ。下は見えないことは無いが、車体で隠れており、格納庫の陸へ伸びる橋に乗り上げたのか一度視界が上に跳ねあげられ、急降下。

優秀なサスペンションのお陰で私自身は倒れることはなかった。

しかし中々にスリリングな映像を拝見させて貰った。ああいうの嫌いなんだが...だってびっくりするじゃん。急に上向いたかと思ったら一気に落ちて橋がかかる陸が映し出される急な場面転換は苦手だ。一七式戦車とかは良かったんだがなぁ...そもそも上向かないし。重すぎて。

 

車列は陸に足をつけた順から車体に埋め込まれた展開式のランプ...リトラクタブルヘッドライトとか言った日産240SXとかに搭載された珍しい...装甲面を考えた結果だろう前照灯を点灯させ、速やかに砲塔を旋回。周囲警戒を開始。

''全車、上陸を開始。''

''落伍車輌、なし''

''全車周囲警戒を開始''

「了解。天龍との会合地点に向かう。警戒を厳とせよ。」

装輪を回転させ、砂浜特有の湿り気のある砂を巻き上げながら装甲車輌が一列で動き出す。

あ、言い忘れていたが今回の作戦、大本営には通達してあるがアポなし突撃だから。

一応所属が面倒なことになったためジャーマングレーで全車塗装し直して私の戦艦徽章を描いてもらっている。因みに徽章のデザインは背景に船体、そして曼珠沙華に錨だった。嫌味か。

そんな所属不明の車列は舗装された道路に乗り上げると、一気に速度を上げてゆく。

前照灯が前にいる七九式装甲輸送車(強化型)を照らす。

「天龍、聞こえているか」

『おうとも。既に上陸を確認したぜ。今むかってるところだ。』

「承知した。あと58秒で着く。」

『げぇっ!?ちょ、ちょっと待ってくれ....!?』

「............。」

『わ、分かったよ。しゃーねーなー。よっとっ!』

何故か天龍が力を入れる声を出したと同時に、天板に鈍い金属音が鳴り響く。

ーーー侵入者!

砲塔のターレットリングに手をかけて艦娘パワーに任せて攀じ登りハッチを乱雑に開け放って145式歩兵小銃を音の下方向へ向ける。

「......っ!?」

そこに立っていたのはやや草臥れた、ボロボロになりつつあるコートを着込み、目深にツバ付き帽子をかぶった不審人物。

容赦なく引き金を引き絞ろうとしーーー「ま、まってくれ!オレだ!天龍だ!」

......。念の為未だに銃口を向けたまま上から下まで、ジロリと睨みつける。なんかブルリと揺れてたけど気にしない。

「......本当に天龍なのか?」

「ほ、本当だ...ほら」

そう言って天龍(仮)は帽子をとって天龍(確信)に進化した。

 

...こほん。確かに、いつも付けてる眼帯はあるし、瞳の色も記憶に合う。しかし少々薄汚れているのは如何なものか。いやさ、送り込んだ主犯が言えたことじゃないが。

「...失礼した。入ってくれ」

「お、おう...すまない。紛らしかったな」

実にな。一瞬本当に殺そうかと考えた。

明らかに不審者のいでたちだったし。高速移動するこの車列にピンポイントで降りてこれる力量を脅威と判断したからだ。

 

車内に入り込んだ天龍はさっさとコートを脱ぎ捨てた。その下にはいつも着用している制服指定のブレザー。そして自己流にカスタマイズされたであろう装備の組み合わせが見えた。

ピストルベルトにホルスターが下げられており、様々なポーチが装着されている。

救急用ポーチに何かと便利な結束バンド。他にも経験で厳選されたであろう装備が並んでいる。

「さて...天龍。改めて報告を」

「あぁ。救出目的がいるのはコロラド州のとある郊外らしい」

「目視確認は?」

「破落戸が多いもんでかなりキツかったがなんとかな。けど艦娘らしき姿を一切確認できなかったんだ。奴ら徹底してやがる」

「......そうか。確率は?」

「そうだな...こっちでマークしてた奴も幾つか来ていたし、大体そいつらが集まるのが金曜か土曜だ。何かしら周期でやってるんだろ。それでそれが始まったのがトラック諸島での轟沈記録が急増したのと同時期だ。ほぼ確定だろうとオレは考えるぜ」

「...拉致された艦娘の船体は?」

「それがな、よくわかんねぇんだ。いや、一部は見つけたんだがほぼ残骸になっててな。スクラップ扱いだったし、隠蔽もかなり終わってるんじゃねぇかな」

しかし艦娘は船体が沈むと死んでしまう。艦娘が死ぬと船体も沈むという切っても切れない強固な前提条件だった筈だが。何かしらの解決策でも出たのだろうか?それとも実際は纏めてあって探知できていないだけか?アメリカは無駄に広いから人目につかずに大量の船体を隠しておくなんぞ簡単だろう。武装とか船体に積まれている艤装が剥がされていることは想像に難しくない。もしかして以前MI/AL作戦で制圧した偽装タンカーに積んであった12.7cm砲もそこからの横流し品である可能性がある。

「.....そちらはリバンデヒに任せる。」

アメストリア型戦艦の情報担当、リバンデヒに既に命令してある。

探し出してテイクアウトしてこいと。あっちは別働隊だがな。会うのはナウル鎮守府だろう。

「なら安心だな。」

「うむ。龍田、そちらばどうなっている?」

『あらあらぁ...心配してくれてるのかしら〜?うれしいわぁ...』

大丈夫なようだ。うん。

「......目的地まではどれくらいかかる?」

''そうですなー''

''このまますすんで''

''あとよんぶんのいち時間です?''

''ですです?''

 

つまりあと15分、と。

まぁ確かにかなり速い速度で走ってたからな。すぐに着くだろう。

揚陸地点も同州内だし。

幹線道路を法定速度ガン無視で走れば尚更。防音性が高すぎるから聞こえていなかったが、操縦席の画面には警察車両らしき白黒の車両が進路妨害してきているが妖精さんは一向に無視。天龍らから齎された目的地点に向かっている。

 

私の中央演算処理装置でちょちょいと状況を把握してみると、州警察はパニック状態。

州政府に緊急事態だと再三告げているらしい。しかし州政府はチキっているのか重い腰を上げずにウジウジしている。チャンスだな。

州兵が出てきたら戦争できるのに。少し残念だが目的ではないので今回は諦めることにする。

「そうだ、天龍。貴官は武装ばどうするつもりなんだ?」

この五七式に乗り移ってきて以来拳銃くらいしか武装が見当たらないのだ。

私の記憶が正しければM634を始めとする結構な武装を渡しておいた筈だが.....?

「あぁ、そのことなんだか...龍田に全部没収されちまったんだよ」

「.....?」

どういうことやねん。二人分武装も装備も渡しておいた筈だが...

「ほとんどの物資、武装は船体に置いてきてんだよ。オレが通常活動で持ち歩くのこいつ位だしな」

そう言ってホルスターを叩く天龍。よく見れば私が支給した11mm口径の拳銃だ。

しかし相当なカスタマイズされているのか、強化型軽量スライドに別製品のグリップ。よく見れば撃鉄も別のものに入れ替わっている。なにしてんの。

というかよく部品合ったな。

「......少々火力に不安があるな。何がいい」

「室内で振り回せる小銃だな」

「...M69だ。海軍正式採用の艦内戦闘を重きに置いた中型小銃だ」

「おぉ、コレは良いな!」

以前、金剛らにも配給した海軍用の小銃。G-36が参考にされているのか独特のボディにコッキングレバー。光学サイトが乗っけてある特徴的なフレーム。

やはりこれパク...これ以上はいけないな。妖精さんに殺される。

 

''到着1分前です?''

''減速開始です?''

''スピードダウン?''

''前照灯消すです?''

先頭から順に、照らしていた前照灯が消されてゆく。

元々暗視装置はあるので意味なかった前照灯だが、今回は救出作戦。ついでにゴミ掃除。

察知されて逃げられたら困るのだ。

画面を見るに、既に郊外へと突入しており、警察のバリケードなんかを物理的に突破したのがついさっき。SWATらしき部隊もいたが、どうなったかは知らん。激しい銃撃戦らしきものはあったが、七九式装甲輸送車(武装強化型)が動き出してから一瞬で片がついた。

 

「天龍、装備再確認」

「了解!拳銃よし!小銃よし!」

天龍がホルスターから拳銃を抜き取りコッキング。M69も同様にコッキングレバーを引いて初弾を装填。

「救急キットよし!縄よし!ナイフよし!」

身につけている装備は少なく、身軽そうだ。

対して私は出来る限りの治癒符をホルダーに詰め込んでそれを三つ。

それに固定用に大量の包帯をポーチに入れており、他にも両腰の五式自動拳銃のホルスターに別弾格のマガジン。145式歩兵小銃に背にはM634を折りたたんで下げている。重武装にも程があると自覚しているが、治療用に色々持って行ってたら多くなった。

仕方ないね。

 

五七式が停車した。

同時に車列が変化して目的の建物を包囲するように停車。

内、七九式装甲輸送車と五七式重装甲輸送車の二輌は裏取り要因としてそのまま裏へ。

私達も兵員用ハッチが開くと同時に飛び出し、建物を見上げた。

制圧対象は極普通の三階建てのアパートといった風貌で、周囲に完全に溶け込んでいる。

しかしその前に駐車してある車両は確かに高級車が多いし、人通りも少ない。

確かに温床地帯にはなっていそうだ。

「天龍、後ろは任せた。」

そう言って145式歩兵小銃のコッキングレバーを引き絞る。7().()6()2()×()5()1()m()m()N()A()T()O()()が排出され、次弾が再装填される。

無論隠蔽工作だ。私達の使用している重火器はNATO規格も使用できるように作られている。実際は7.92mmなのだが、メカボの入れ替えで7.62mmも使うことが出来る。

よって今回はNATO弾の入った弾倉を態々用意して装填しているのだ。

 

駆け足で扉を蹴り飛ばした。但し自慢の艦娘パワーでドアは吹き飛んだ。

すぐさま145式歩兵小銃の銃口を険しなく向け、処分対象を発見次第、引き金を数秒引き続けてれば、それだけで終わる。

「一号車、直接火力支援要請。奥にいる奴を吹き飛ばせ」

''やっちゃうです?''

''フォイヤー!''

私と天龍はそれぞれ物陰に隠れると同時に、壁を突き破って数発の砲弾が飛来し、HE(榴弾)だったのか中の高性能炸薬を炸裂させて大爆発を起こす。

いやいや、この建造物が崩れるやん...ほら

「天龍ッ!退避!」

「ーーっ!」

私の声に条件反射にも似た本能的な飛び込み前転は実際、生存本能から来るものだったのだろう。

上から降り注ぐ瓦礫をとっさに回避した天龍はそのまま私に飛び込んでくる。

無論私はそれを受け止め、庇うように背を向ける。

 

妖精さんによる直接火力支援は建物の一部を破壊したのみで止まり、当初の目的たる敵の殲滅という面では目標を達成している。しかし、私達にも損害が出るのは如何なものかと思う。

アメストリア陸軍兵士とかなら大丈夫だろうが、生憎と私達艦娘に妖怪じみた回復能力は無い。

「お、おい...刺さってるぞ...?」

「問題無い。救助が先だ。」

痛みに歯を食いしばりつつ、元骨組みを抜き取り、捨て置く。

襲ってきた残骸の大部分は背に背負っていたM634に防がれたが、背を覆っているわけでは無いので見事に突き刺さったわけだ。

「...アメさん、脱げ」

「...しかし」

「救助したとしても、負傷しているのを見せるのはいけねぇんじゃねぇか?」

「.......」

一理ある。せっかく救出しても、艦娘らに怯えられたら元も子もないし私は引きこもる。

仕方ないか...M634を床に降ろす。こういう時白衣って便利だよな。単衣っていうのかもしれんけどさ。

私のところの単衣は紐で縛ってあるだけなので、それを解いて袴から引き抜けば簡単に脱ぐことが可能だ。生憎とサービスシーンにはならんが上級者は勝手に妄想していてくれ。

単衣を脱ぎ去って、天龍に治癒符を張ってもらう。そして慣れを感じさせる包帯巻きで応急治療を完了すると、足音が聞こえ天龍と同時に銃口を向ける。

音の低さから男。金具の音もするため銃か刃物の所持の可能性大。

よって、

ババババババッッッッ!!!と暴走したサブマシンガンか何かのような連射速度でM145とM69が大量の薬莢を落としてゆく。

壁を楽々貫通していった弾丸は恐らく敵を撃滅しただろう。血飛沫が上がったのを確認できた。

新しく作った単衣を羽織り直し、M634を背負いあげる。

「天龍、先行しろ。援護する」

「おうよ!」

天龍が残骸になりつつある壁に張り付くと、私に目を向けてきた。

私は頷くと天龍が廊下へ転がり、私が素早く通路に躍り出て銃口を床、壁、天井を一気に確認してゆく。

血飛沫によって原型をとどめていないR18どころかR20とかになりそうな元、人間を端に寄せながら、通路を制圧する。

通路には先程の榴弾によって死亡したと思われる死体がゴロゴロ転がっているが元移民の子孫に興味は無い。

通路には二階につながると思われる階段と、その階段下を利用した収納。内容は想像に任せる。

地下へ繋がるような怪しいものは無いようだ。

そもそもこの建造物この通路以外道がなかったため、恐らく通路にある二対のドアは残りのスペースにつながっていると思われる。

艦娘が入っていたら大変なので手榴弾等の爆発系は使用不可だ。

さっき榴弾使ってただろって?ここそこそこ内装がしっかりしてるし防音対策らしく壁が分厚いから大丈夫だと判断したんだろ。妖精さんが。

手前の右のドアを指し、銃を向けたまま蹴り飛ばす。

鍵がかけられていたらしい。金具の弾け飛ぶ音と木の粉砕される音を聞きながら人影に銃を向ける。

男っぽいガタイのいい人型は取り敢えずミンチに加工したが、どうやら艦娘ではなかったらしい。破片手榴弾を二、三個ポイして次の部屋に向かう。

天龍は奥の二部屋に担当しているはずだ。

 

ドアには「staffroom」と刻まれたプレートが煤汚れひしゃげた状態で辛うじて掛かっていた。犯人は榴弾だ。

こちらには鍵が掛かってなかったのでそっと開けて様子を見る。

 

 

......そっ閉じした。

モブAからHくらいの傭兵から更にレベルを下げたような形容しがたきチンピラっぽい雑魚共。そいつらが銃っぽい何かを持ってガン待ちしてた。怖っ...その精神が知れない。

アホすぎる。次行こ次。

悲鳴が奥の部屋から聞こえるが、艦娘っぽく無いな。

「天龍?どうだ」

「...ダメだな。ハズレだ。」

「処理は?」

「わーってるよ!ちゃんとしてるぜ。あとこれは経験だけどな。()()()()場所は本命を奥に隠すんだ。多分二階にあるだろ」

「......天龍、先行しろ。援護する」

「合点承知ッ!」

挨拶代わりか、数十発の銃弾をプレゼントしながら天龍が階段を駆け上ってゆく。

怒号と悲鳴が聞こえる。私も階段の高低差を利用して塹壕みたいに伏せて構えるが、死体しかなかったので、警戒しながら立ち上がる。

 

「......アメさん、来てくれ」

天龍に呼ばれたため、クリアリングしながら駆け寄ると、そこで絶句した。

「.......どれくらい()きている?」

「...精神的なモノを除くと数人かね」

描写はしない。だってあまりにも酷すぎるから。

 

さすがに、これは引いた。

一部、お気に入りがいたのか、大切にされていたのであろう艦娘は無事だが、それ以外は家畜以下の扱いを受けていたのか、全身痣だらけ。骨折している者も多数。酷い場合は四肢が欠損している者もいる。

酷すぎるだろうこれは。誰だやったの。マジ許せないんだが。

「......妖精さん、救出用の車輌を直接乗り付けてくれ」

''了解です?でもでもなんか雑魚さんが群がってきているので早めがいいです?''

''集まりだしたです?''

「了解。天龍、全員運ぶぞ。意識があるものは居なさそうだが...」

主に駆逐艦と軽巡洋艦で構成された攫われ組。その9割方が負傷しており、到底自分で動けるものがいない。となると回収用に用意した装甲車輌に運ぶのは私と天龍になる訳で...

私は生憎とM634を背負っているため艦娘を背負うことができないし、145式歩兵小銃も持っているため横抱きも出来ない。残念なことに。

 

「一応聞くが、意識があり意思疎通の可能なものは返事をしてくれ」

「流石にいねぇんじゃ...」

「......ぅ...」

艦娘スペックの(ソナー)はしっかりと、捉えた。

僅かに動かしたのであろう衣摺れの音を頼りに、死体のように放置されている艦娘達を避けながら探す。

 

ネグリジェと言うのだろうか。幾つかのウチの艦娘が着ていた記憶がある薄い肌着。

それを纏った艦娘。

背格好は高く、女性的な理想的なプロポーションをした魅力的な艦娘。

腕や足に傷が無いことからお気に入りだと思われる。

残念な事に名前が出てこない。多分私の知識外の新たに追加されたのだろう新規艦娘。

黒髪ということしか私には分からん。誰だっけ...

「動けるか......?」

「えぇ...なんとか、ね...」

肩を貸して、何とか立ち上がってもらう。

ふむ。160くらいか。駆逐艦...の高身長組か、軽巡のロリ組か。判断ができない。

私の知識にあるの魔のMI/ALまでだからな。史実知識はあってもゲーム的知識はそこで止まっている。正直、ソロモンを辛うじて知っていた程度。よくわからない知識量で、私自身これからの展開を知らんからちょっと不安でもある。

 

妖精さんに直接乗り付けてもらった装甲車輌に天龍と二人がかりで一人ずつ艦娘らを運んだ。

例の意識のあった艦娘は私達が乗ってきた三号車に乗ってもらっている。

五七式重装甲輸送車、七九式装甲輸送車共に割と巨大なため兵員区画も広く、今回のためにベットマシマシ装備に即席改造した野戦救急車(物理)には全員乗せることができたのは僥倖。

ハッチを閉じてもらい、この金蔓の異変を聞きつけたであろう周辺からスポーンしてきた雑魚共の相手をしているのが現在の状況。以上、ダイジェスト説明終了。

 

145式歩兵小銃ではなく19.8mm重機関銃で粉砕しつつ、天龍にアイコンタクトで輸送車に乗るように指示した。

しかしこれがいけなかった。僅かでも視線を逸らしたのが仇になったのか、気がつけばロケット音。RPGのご来店だ。

「ーーッッツ!?」

思わず、弾種を榴弾にしたまま、19.8mm重機関銃で迎撃してしまった。

当然、大爆発が空中で発生し、衝撃波が私を襲う。

破片が四方に拡散し、五七式に当たったのかカンカンと硬い金属音が断続的に聞こえた。

 

耳が痛い。

キーンという耳鳴りのような、現実感の無いような曖昧な感覚に陥り、平衡感覚を失ったのか、立ち上がることができない。

しかし、急に何かに引っ張られる感覚が私を正常に叩き戻した。

多少荒かったが、天龍が私を車内に引きずり込んでくれたのだ。無論、銃は回収して。

「っう...すまん...」

「今は良い!妖精さん、すぐに出してくれ!激しすぎるぜ全く!」

''いえすみむ!急発進します?''

''火力支援開始です?''

''主砲バンバン!''

ハッチが閉められ、けたたましい銃撃音から解放された。

私は既に汚れてしまった単衣を新しいものに作り変えつつ、壁を使って何とか起き上がる。

「...隼の妖精さん、聞こえるか」

''ばっちりです?''

''クリアな音質を確保してるです?''

''高音質です?''

「制圧した作戦目標への砲撃をしてくれ。弾種榴弾。」

''やっちゃうです?''

''攻撃開始です?''

''アップはじめるです?''

''ふぉいあー!''

直後、隼から飛来したであろう46cm砲弾がアパートもどきをピンポイントで吹き飛ばし、絶大な威力を持って根こそぎ殲滅した。46cm榴弾だからな。そこそこの威力はある。

「ふぅ...天龍、怪我は無いか?」

「おう。無傷だぜ。アメストリアは...一応無事なようだな?」

「無論だ。」

いや、体の節々が痛いっす。

ちょー痛いっす。RPGの衝撃波をモロに受けたからかそのあと転がったからか身体が痛い。

破片が刺さっていた傷跡が再び開いてきている。

 

「あの......」

「...む、すまない。挨拶が遅れたな。私は大日本帝國海軍ナウル鎮守府所属、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアと言う者だ。貴官らの事は前から知っていたが、この度救出作戦を実行した次第だ。できる限りの支援はするつもりだから

遠慮無く言って欲しい」

「あ、はい...陽炎型駆逐艦四番艦、親潮です。アメストリアさん...聞いたことがあります」

おやしお...オヤシオ...親潮...はっ!SS-511か。いや違う違う。あいつは1960年就役の国産潜水艦だ。駆逐艦じゃない。

でも陽炎型駆逐艦四番艦というのは分かるが、艦娘としての知識が無い。となるとミッドウェー以降となるわけか。キャラを知らんから話し辛いな..。境遇から考えても...ね?

()()大本営に強行突入した方ですよね?」

「......そうだが。」

 

......その覚え方されてんの!?

あれ黒歴史だから忘れたかったのに...良い思い出無いし。痛かったし機関幾つか爆発するという割と危険な被害でたし。初めてだったな。物理的に心臓にダイレクトアタックされたの。

「遠征組から聞いたことがあります。...その後、すぐ売られちゃいましたけど...」

「...すまない。」

「......なぁ親潮。他の艦娘に関しては、アメストリア預かりになっても良いか?まずは治療が必要だぜ、アレは」

「はい、構いません。寧ろこちらから感謝したいくらいです...」

「拉致された艦娘はあそこにいた艦娘で全員だろうか?」

「いえ!...実は、初月がよくわからない男に連れ出されて...」

「下手人の名前は分かるか?」

「はい。おぼえてます。たしかーーーです」

「天龍、分かるか」

「あぁ。マークしてたやつの一人だ。住所、交友関係、職業から趣味まで全部洗ってある。

たしかアンクルトムの小屋の奴らも目をつけてる札付きのワルだな。成金の資産家だ」

「近いか?」

「そうだな...ここから120kmといったとこだな。」

遠いな...このまま行くと2時間ほど掛かってしまう。

護衛すべき負傷艦娘達も沢山いるし、いま調べたらもうニュースになってる。

常連どもが警戒を始めていてもおかしくは無い。

「妖精さん、隼にヘリは積んであったか?」

''ありますなー''

''こんなこともあろうかと''

''じゃじゃーん!CH-76です?''

''ヘリなのにプロペラ無いです?''

''噴式です?''

''はやいですなー''

「そうか。すぐに飛ばしてくれ。少し必要になった。あと、車両群はこのまま隼を目指す。受け入れの準備を整えてくれ」

''あいあいさー!''

''医務室、ひらけごまです?''

''武装、用意です?''

CH-76というのは、「CH」とかついていながらプロペラ使っていないジェット輸送機だ。

しかしオスプレイみたいに主翼の両端に発動機が付いており、垂直離陸が可能な重装甲と足の速さが自慢の輸送機だ。あれならすぐに向かうことができるだろう。

「天龍、これより追加任務だ。武装の再点検、弾薬の再装填を済ませておけ」

「了解。でもよ、7.62mmはだめだな。イマイチ弾道が安定しねぇ。」

「そうか...7.92mmを使うか?」

「できればそうしたいな」

「承知した」

 

7.92mm口径の純アメストリア製M69を天龍に渡した。

今度こそ本来のM69。7.92mm口径は割と反動が強いのだが運用が妖怪前提の為そこら辺は考慮されていない。しかし艦娘となれば身体機能は高く、7.92mmでも運用する事が出来るだろう。

 

「親潮、申し訳ないが、私達はこれから初月の救出へ向かうことにした。この車両は私の内火艇へと向かっている。安心して欲しい。装甲に守られた安全なシェルターの役割を果たしてくれるだろう。困ったことがあれば妖精さんに言ってくれ。恐らく殆どの事はできるだろう。」

「わかりました。本当に何から何まで、ありがとうございますわ。」

「元はと言えばこの作戦も私の独りよがりだからな。気にしないで欲しい。貴官らの船体も私の妹が探しているはずだ。恐らく回収は開始されているだろう。」

 

そう言っていると、この五七式重装甲輸送車の防音性能を持ってしても響き渡る大音量のジェット音。もう到着したか。

19.8mm重機関銃は邪魔なので、同じく7.92mm口径にアップグードさせた145式歩兵小銃と一応用心にA-10自動散弾銃を持って行く。

そうして砲塔のターレットリングを利用してよじ登り、砲塔から外に出た。

 

上空には既にCH-76が並走?空?しており、後部貨物ハッチを開いていた。

強風が私を襲う中、ゆっくりと降りてきたハッチを掴み、何とか搭乗する。

さっきからサイレンが煩い。ヘリのエンジン音も聞こえるため警察か何かのヘリも近くに来ているのだろう。ライトも照らされている。

五七式から出てきた天龍を回収し、試射ついでに背中からA-10を出して、ちょうど視界に入った黄色の塗装ヘリにアイアンサイトを向けて、引き金を引く。

散弾を装填していたため、当たってはいないが、威嚇にはなっただろう。妖精さんに言ってハッチを閉じてもらう。

「...天龍。警察、メディア、州兵も動き出している。迅速にカタをつけなければならない。分かるな?」

「おうよ。何時もはこんな大事にしないけどな。陽動でやったことはあるぜ」

「そうか。兎も角、到着後そうだな...10分でカタをつける。すぐに初月を回収したらそのまま隼に戻る。その後は隼を私の船体に戻し、ナウルへ帰還予定だ。」

「オレ達の船体はどうすんだ?」

「それなら龍田に頼む。」

 

『まぁかせなさぁ〜ぃ。天龍ちゃんの体はしっかりと持ち帰るわぁ...』

言い方やめい。龍田ボイスとあってエロいだろうが。

「......なぁアメストリア。オレの船体、無事だよな...?」

「保証しかねるな」

「......。」

「と、兎も角!今回はスピード勝負だ。妖精さん、あと何分で到着する?」

''そーですなー''

''8分の1時間です?''

''450せかんずです?''

ふむ、7分半か。最近分かりづらい伝え方してくるから困っているんだが、誰だろう変な知識仕込んだの。妖精さんは良い意味でも悪い意味でも純粋なんだから変に知識仕込んだら何が起きるかわかったもんじゃ無い。ノリで核作るんだから警戒が解けないんだよ。

気苦労が絶えない。その分恩恵も受けてるけどさ。

 

初弾を装填し、光学サイトを起動させる。

アメストリア製の未来感溢れる、銃身温度や距離、重力影響に気温湿度などの気象情報が浮かぶ上がるホログラフィックによって構成された不思議な光学サイトを覗き込み、ドットがしっかりと表示されていることを確認する。

腰に吊るしてる五式自動拳銃も両方コックし直しておく。

''到着1分前です?''

''準備おねがいです?''

ガタン、と機内の照明が落ちて赤い光に変わる。

A-10自動散弾銃を後ろから回してマガジンをスラグ弾に換装する。

多分知らない人もいるだろうから言っておくがスラグ弾はショットガンの癖して弾丸が一発に収束されてる「何だこいつ」的な立ち位置の銃弾だ。

狩猟に主に使われる銃弾で、森林など障害物が多い中獲物を仕留める際に活用される。

まぁ散弾だと殺せない可能性もあるしな。

あと威力が高い。炸薬分のエネルギー一発に纏めているから当然だが、結構強い。

レバーを引き絞り、シェルを薬室に送り込んだのを確認する。

''到着30秒前です?''

''ハッチおーぷんせさみんです?''

モーター音と共に冷たい風が吹き込んでくる。

徐々に開けてくる視界には人工的な明かりがはるか遠くに密集した、牧草地の上を飛んでいるのか、人気の少ない暗闇が飛び込んできた。

あれだろ、敷地大きすぎて住宅街にふさわしく無いから半ば追いやられるように郊外にあるんだろ、成金屋敷。ざまあない。

 

''到着10秒前です?''

機体が降下を始めた。反作用から減速も感じ取れる。

145式歩兵小銃の銃床を肩に当て、天龍を流し見る。

天龍もM69を構え、目を閉じていた。刃の如し殺気に似た覇気をビシビシ感じる。

地面が映った。さて、作戦開始だ。

 

銃声が響き、火線がこちらに伸びてくるのを確認したが先か、ごろりと転がって整えられた芝生に伏せて回避する。

どうやら既に警戒されていたらしく、チンピラなのかマフィアなのかよくわからん破落戸が出待ちしてた。ウザいな成金の分際で。

同じく転がってきた天龍を確認し、虐殺を開始する。

 

まんまMG-42の潰れた銃声。

LMGのような掃射に対応できなかった多数の破落戸がミンチにランクアップする。

怒号と悲鳴。加えて軽い銃声。敵側は大混乱のようだ。知ったこっちゃないけど。

匍匐前進の要領で進んでは撃ちを繰り返して接近する。その間に天龍は艦娘スペックを活かして素早く破落戸に近付くと超至近距離で掃射したりM69を槍のように使ってバッタバッタと薙ぎ倒していた。あの...天龍さんや。M69はそういう使い方想定されてないんですが...全長とかハンドガードとか。......ん?

そいつ、銃剣ついてませんか?私あげた覚えないぞ?もしかして愛用品か何かですか?

マイナイフってやつですかね。

 

エントランス付近のゴミ掃除は終了したため、二階以上の高い部分を警戒しながら、一気に接近してゆく。人間って集中してる時自分より高い場所を気にしなくなる事が多いからな。

これ、鬼ごっこに使えるぞ。見つかったら逃げ場がなくなるという難点付きだが。

A-10で立派な高級木材製玄関扉の蝶番を破壊し、蹴り破る。

鍵が弾けとび、一気に内部が浮き彫りになる。

 

.....うわー、ないわー。

よくある、貴族の屋敷をイメージしてもらったら良い。そのまんまだから。

これ見よがしに高そうな調度品と床にはペルシャ絨毯が敷かれ、二階に繋がる螺旋階段。

「天龍、一階を頼む。邪魔するやつは処分して良いぞ」

「言われなくてもやるさ。」

そう言って同時に走り出し、スポーンした破落戸に向けてスラグ弾をお見舞いしてゆく。

血飛沫を上げながら物言わぬ肉塊に昇格してゆく残骸を蹴り飛ばしながら145式歩兵小銃に持ち変える。

光学サイトを覗きながら、慎重にクリアリングしてゆく。

細い廊下とありアンブッシュされたら避けようがないのだ。壁から壁へ。

常に障害物を背にゆっくりとかつ大胆にクリアリングしてゆくと、また破落戸が飛び出してきた。条件反射的に数秒間トリガーを引き絞り続け、壁にスプラッタな現代アート(笑)を作成してゆく。どうせ焼くし何やっても変わらんだろ。

 

光学サイトが敵の熱源を見つけ、表示してくれる。

見たところ二、三人が群がっているご様子。壁に背をつけて手になんか握っているところを見ると待ち伏せのつもりらしい。

関係なく壁ごと撃ちぬき、肉塊に進化させてゆく。

っと。やけに豪華な扉が目に入った。

多分「アタリ」だろう。容赦なく蹴破ると、そこには豚がいた。

いや、比喩でも何でもなく、直喩で豚がいた。でっぷりとした油だらけの体にこれまた油だらけの豚顏。豚が服を着ているようなシュールな光景に一瞬止まってしまうも、警戒していたであろうなぜか固まっている護衛を消し飛ばし、銃口を豚に合わせる。

撃ったら豚汁が出てきそうで怖いな...

「ヒィィイ!?い、命だけは助けてクレェ!」

「断る」

「な...か、金なら望むだけくれてやる!他に欲しいものがあれb」

処理する。ゴミは入念に。10秒ほど7.92mm弾をぶち込んで、更にスラグ弾を100発ほど。既に赤い液体に変身した豚を一瞥し、部屋を見回す。

「......あったな。」

本当にあるとは思わなんだ。隠し帳簿。

開いてみると今までの取引先の名前に取引額、取引物に評価までつけられている。

確実な物的証拠だろう。とりま回収しておく。帰り際に適当に置いとけば警察かなんかが拾うだろう。

更に見回すと、隣に寝室なのか扉があり、先がありそうだ。

待ち構えられていたら堪らないので、そっと開ける。

誰もいないようだ。というか明かり自体ついていない。慎重にドアを開け、銃口をベット付近に向けたところで、光学サイトに熱源を知らせる影が突然現れた。

「ーーっ!?」

その黒く、思いの外素早い動きに動きが硬くなってしまい、初撃を受け止めるほかなかった。

しかし私はアメストリア型戦艦。馬力は人間の比ではない。

ライトのポール部分らしき凹んだ金属棒を弾き飛ばし、下手人を膝で押し倒す。この距離は小銃よりも五式自動拳銃の方が有利だ。素早く抜き取ると、そこで私は静止してしまった。

「......初月で、間違いないか」

「ヒッ!...そ、そうです!僕が初月だ!」

狼のような少女。夕立の様に左右に跳ねる耳の様な特徴的な黒髪に鋭い顔立ち。

しかしその整った顔立ちはやや窶れ、怯えた恐怖の色に染まっていた。

すぐにどき、銃をホルスターに戻す。因みに膝立ちだ。

「すまない、私はアメストリアと言う者だ。貴官を救出すべくここに突入した。同行願いたい」

「......そ、そうか...分かった。」

 

薄手の服一枚のみの初月には外の空気は寒いだろう。作った厚手のブラウスを渡して着てもらう。私とサイズが大幅に違うためか、萌袖になったがまぁ問題はないだろう。

ブレーカーが落ちたのか真っ暗になってしまい月明かりのみとなった。

ギュッと初月が左腕にしがみついてきたのを無視して扉に銃口を向けて、殺気を乗せて睨みつける。しかし光学サイトにも熱源はなく、ただブレーカーが落ちただけの様だ。

 

「初月、移動するぞ」

「分かった。助かる」

 

さりげなく手を繋いできたので、離さないように指を絡めて立ち上がる。

身長の差もあって若干手を繋ぎにくいが、そんなこと言ってる暇はない。

走って一階に急ぐ。

 

一階も変わらず照明が落ちているため暗かったが窓が多かったのと玄関口が何故か全開になっていて、蹴破ったドアに複数の足跡が確認できる。

 

「確保できたんだな」

「あぁ。そちらはどうであった」

「何もねぇな。それらしき場所も証拠も何もありゃしねぇ。」

「そうか。こちらで裏帳簿は回収した。撤収する」

 

噴進機の轟音が近づいてくる。CH-76だろう。

 

「あ、あの...少し良いだろうか」

「む?何だ初月」

「僕以外の艦娘達は...」

「ふふ、親潮と同じことを言うのだな。」

「じゃぁ...!」

「うむ案ずるな。既に救出済みだ。既に私の内火艇に回収済みだ」

「内火艇...そうか。感謝するアメストリア。」

「いや、礼には及ばんよ。」

やっと笑顔が戻った。はにかむ程度の者だったが、それだけでも十分可愛い。

初月って可愛いな。初見だがそう思う。

''アメリカ空軍からスクランブル確認です?''

''急いでらいどするです?''

「了解した。直ぐに乗り込むぞ!」

遠くからサイレンも聞こえてくる。やはり動きは早い。

しかし問題にはならないな。空だし。

 

着陸したCH-76に全員で乗り込むと直ぐに離陸。ハッチを閉じて最大速度で隼に帰還する。

その間天龍はM69を機内ガンラックに掛けると座席に座って深く息をしていた。

やはり戦闘は誰であれ緊張する者だ。

私も145式歩兵小銃を立てかけて座席に深く腰掛けた。初月はというと暗闇が映る窓から静かに成金屋敷を眺めていた。その心情を察することは出来ないし、深く足を踏み入れる勇気は私にない。所詮私ができるのはその場しのぎの応急的なことだけだ。

 

数々の艦娘を抱える私の言葉として不謹慎極まりないが、私に他人の人生を曲げる勇気なんてない。しかしこんな中途半端極まりない私には艦娘たちも妹達もついてきてくれる。

私が立案した作戦にも文句言わず付いてきてくれる。大規模作戦とは関係なく北方遠征や演習など決して暇ではない任務にも行ってきてくれるし、ちゃんと誰一人欠けず帰ってきてくれる。私が立てた作戦のせいで負傷しても私にカチコミしてこないし、むしろ私の心配までしてくれる。私は何もしてあげれてないのに。

でも、それが嬉しくってむずくって堪らない。

あぁ、もう。みんな大好きだよこんちくしょう。

 

''艦娘さん艦娘さん、アメリカ空軍のF-35から投降命令がでてるです?''

''どうするです?''

「無視しろ。これ以上続けるなら隼で落としても構わん。」

''あいあい''

''いえっさ!艦対空噴進弾用意するです''

''敵機補足です''

血気盛んなことで。

そう言っている間にもCH-76は隼目掛けて飛行を続け、目視できるようになった。

というのも警察が隼の上陸している周辺に封鎖線を引いておりライトやらで明るくなっているし、野次馬どもが群がっているようですごい目立つからだ。

今の所隼の45mm対空機関連装砲などは沈黙しているらしく、周辺を飛び回っている蚊共を落としていない様子。

しかし、いま発砲した。といっても対空砲ではない。

艦首、ステルス性を考慮して展開式になっていた甲板の蓋が外れ主砲がせり上がると旋回し、とある角度、仰角に砲身を向けると、12発に渡って榴弾を発射した。

無論30秒に一発という訳ではなく、私達には常識となってしまった連射である。

46cmと侮るなかれ。当時世界最大の艦載砲の砲声は巨大で、衝撃波を周囲に撒き散らした。

それを横目に隼の後部甲板に着陸したCH-76は噴進器を切ったのか出力の下がるタービン音が聞こえてくる。

更に、CH-76は驚くべき事に主翼を畳み始めた。

伊-400型に乗せる晴嵐みたいに主翼を機体に沿わせるように畳んだら、甲板ごと下降して行き、機体を船内に飲み込んで行く。初月が大層驚いていた。

というか隼が見えた頃から大和じゃないか!?って混乱していたが、今回は更に予想を超えるアクションであったらしい。

まぁ驚くわな甲板ごと下降するEVとか。

 

無事格納庫に降りたCH-76は後部ハッチを開け、ようやく役目を終えた。

私は妖精さん達をなでなでして労った後、初月を連れて船内に降り立った。

「こ、ここが船内...まるで工廠のようだ」

「ある意味そうでもあるな。ここは格納庫だが多目的に設計されている。様々な用途に使用できるよう広く作られているからな。」

因みに妖精さん談だ。修理、改造くらいなら船内でできるらしいぞ。工作室はあるようだし。

見回すと、作戦に使用された五七式と七九式が並んでおり、その周辺は騒然としていた。

医療担当の妖精さんがせわしなく動き回り、担架を次々と館内の医務室に運び込んでいた。

やはり、そうなったか。

''艦娘さん、ほーこくです?''

「聞こう」

白い白衣を着た妖精さんが駆け寄ってきた。

''助けた艦娘さんは全員脱水症状と外的損害、精神的損害を受けてるです?''

''ついでに言えばセラピーのレベル超えてるです?''

そもそもセラピー自体信頼性が低いけどな。効果も今ひとつだし。

こればっかりは私に干渉できない部分だ。

「外的損害は回復できるか?」

''あたりまです?アメストリアの技術なめるなです?''

「そ、そうか。できれば全員正常な状態に回復させてやってくれ」

''よーそろー!でもでもナノマシン的な物入れるの大丈夫です?''

''危険性ないです?''

「後遺症がないのならば許可する。初月、」

「...何だ?」

「丁度、居たようだぞ。ほら」

丁度五七式重装甲輸送車から降りてきた黒髪の艦娘。

親潮だ。妖精さんに渡されたのか海軍の佐官用礼装を肩に羽織っている。

流石に階級章は無いが白い礼装は黒髪によく映える。

親潮もこちらに気付いたのか覚束ない足取りでこちらに駆け寄るも、それよりも早く初月が走り出し、親潮を抱きしめた。......不謹慎だが叫んでいいだろうか。

 

 

ーーー キマシタワーーーーーーーー!!

 

 

 

ぐぐもった泣き声が静かな...これは嘘になるか。僅かに砲声が聞こえてくる。

格納庫に響き、作業音を消し去ってくれる。

出会い頭突っ込んできた初月に僅かに驚いた風の表情を浮かべた親潮だが、余裕を感じさせる動きで初月の頭を撫で続けてていた。和む。というか可愛すぎる。

ウチの妹達もあれくらい可愛かったらいいんだが...何分色々と成熟しすぎているからなぁ...達観している部分があるから可愛げが無い。ノイトハイルとかはまだ可愛げがあるが、アレもリバンデヒ同様キャラだろうし、なにより気が置けない。

 

『ーーお姉ちゃん、残存してる船体を回収したわ。』

「...そうか。どれくらいあった」

『一、二隻ね』

「......何だと?」

何故に二隻しかないん。

おかしい。おかしすぎる。

何故だ?よくわからなくなってきたぞ?

だめだ。頭が混乱してきた。

『因みに聞くけれど、救出した子達は何人いるのかしら』

「意識有無区別せず35隻だ。」

『......おかしいわね。33隻分どこに行ったのかしら』

「しっかりと探したのか?」

思わず、リバンデヒの探査ミスを疑ってしまう。

だってそれくらいしか原因を思いつかなかったから。

「舐めないで頂戴。三度再探索したのよ。けれど隠蔽された船体は二隻しか見つからなかったわ。それも一隻は半解体状態よ』

「.......リバンデヒ、艦娘は船体を解体したらどうなる」

「肉体だけ残るわよ?艦娘の方が艦船としての本体という認識が移るだけよ。解体はそういう儀式でもあるのよ?』

なにそれ初耳なんですけど。

あれか。轟沈は死を意味するから艦娘も死亡するが解体は船体から艦娘へ存在概念を移譲する儀式だから艦娘は死なないと。それ誘拐し放題じゃん。

だからここまで防げなかったのか...成る程。理解はしたが納得はしていない。悪用されたのが尚更頭にくる。

「.......なら残りの艦娘の船体は解体されたと考えて間違い無いか」

『えぇ、そうじゃないかしら?』

「そうか。ならば残存した船体を回収してナウルへ帰投しろ。」

『了解よ。全速で帰投するわ。じゃあ、またねぇ〜。』

「うむ。被弾するなよ」

『あ、お姉ちゃん。』

「なんだ」

『怪我してたら折檻よ?』

「........なんだと?」

『うふふふっ♪因みにノイトハイルも参加するわよ?』

終わったっ!!私の艦生オワタ。

絶対動けなくなる。断言できる。また激しい腰の痛みで暇を出すのは辛いんだが...特に龍田の意味深な笑みとか大和の引き攣った笑みとかグサグサくるから...うぅ〜〜っ!!!

 

 

 

 

 

 

 

隼が防衛とは名ばかりの蹂躙をしていたのを止めさせた。

いい加減離脱しなければアメリカ海軍に追いつかれる。

ここが海軍基地が近くなくてよかったよ。

主砲を船体に格納し終えたが先か、スラスターを逆噴射して乗り上げていた状態から海上へ船体を戻す作業を始める。

「後速30ノット。半上陸状態から脱出する。」

''あいあいさー!''

''スラスター逆噴射です?''

''敵さんが豆鉄砲撃ってきてるです?''

「鬱陶しいな。適当な対空砲で追い払え」

''撃つです?''

''お掃除です?''

右舷の対空砲の内1基が突然旋回すると片方の多砲身を回転させ始め、思い重低音を響かせてけたたましい爆音を放出する。

ジャラジャラと下に空いた小さな排気口らしき四角形の空洞から滝のように薬莢を吐き出した。

回転する多砲身から曳かれる曳光弾が線となって陸にいた雑魚共に襲いかかり、誰彼構わず障害物ごと消し飛ばしてゆく。

何しろ45mmだ。ちはたん新砲塔よりも少し小さい口径であるため貫通力も威力も桁違い。

銃は一部を除き瓶が破裂する程度で済むが、45mmという機関砲はそれだけでは済まない。トレーラーを正面から五両ブチ抜いて全部爆散させれるだけの威力がある。

アレだな。分かりやすく言えばそこらへんにあるビル一棟なら一発で粉砕できる。一階部分なら。

そんな極めて致死性の高い機関砲弾が帯となって襲いかかったのだから被害は甚大。

ハリケーンが通った後のような荒廃し、抉れた大地が姿を現した。

''水上に復帰です?''

''ざばーんしたです?''

''進水式やたです''

「方位2-0-0。50ノットにてアメストリアへ戻るぞ」

スラスターが上手く作動して()()()()()()()()()()()。つまり船体側面に付いたスラスターが珍しく仕事して一気にその場で旋回したのだ。いいなぁ、私の船体にもつけてやりたい。しかし私の船体につけることはできない。

そもそも付けたら配線と骨組みに多大な影響が出る上にほぼ一点物の船体外殻に穴を開けてしまうことになる。何より弱点になる。装甲が薄くなるし。

術式とかでなんとかするというのもあったのだが、アレも動力源よくわかってないので手が出しづらいのだ。

 

''右舷前方、2時の方向に敵PTボートです?''

''すばしっこいのきたです?''

''うざいのきたですなー''

''我々も嫌いなのだー!''

''それなー!''

「消し飛ばせ。一応客を乗せているからな。魚雷でも撃たれたら敵わん。」

 

医療活動に支障が出るだろうが。PTボートはあのウザいボートだ。ミニ水雷艇と言っても差し支えない、魚雷を積んだそこそこの脅威を誇る。遅いが。

とにかくウザいし形気に入らんから消し飛ばすことにする。

主砲を格納ハッチから引き出し、砲身をPTに向ける。弾種はHE。

 

46cmの巨砲が雷鳴し、榴弾が撃ち込まれた。

PTは回避しようとしたらしいがアメストリア製は初速がアホみたいに早いため動き出す前に着弾。優秀な信管は被帽が潰れた瞬間に作動し、大爆発を起こす。

海面を舐めるように横に広がった爆発は弾着点を中心に海水が蒸発し、物体を薙ぎ払っていた。

 

隼はその良好な稜波性を見せ、軽快に駆け抜けた。

減速が始まったのはアメストリアから5km手前。

どうやら逆噴射を使用せずに船体を横付けするようで、妖精さんが慌しく計器を弄っていた。

私はそれを尻目に初月と親潮の様子を見に行った。

転移を使って一気に格納庫に移動すると、五七式や七九式は既に量子変換で片付けられたのかその姿はなく、念の為置いたままのCH-76がポツンと昇降機に佇んで居た。

そんな中、妖精さんが支援したのか仮の休憩所が設置されており、其処に二人はいた。

蓙が敷かれた仮の床に座布団が置かれ、軍用戦闘食のレベルを超えた普通に調理されたと錯覚してしまうほどの完成度を誇るアメストリア軍全軍が採用した[軍用戦闘食 和食仕様]

が広げられ、妖精さんが宴会を始めていた。

 

何やっとんねん。妖精さんや。

よく見なくても陸軍妖精さんで、多分今回の作戦の慰労会だろう。

それなら私が咎める謂れはないんだが、初月と親潮を巻き込むのはどうかと思うんだが...

「となり、失礼する」

「ん...アメストリアさんか。構わないぞ。」

「私も構いませんわ。寧ろ参加くださいな、是非貴女の話を聞いて見たいものです」

「...私の話など、つまらな''艦娘さん艦娘さん、巡回してた警ら隊に船体が見つかったです?''ーーーそうか。国際周波数の無線にて警告後、連装砲にて威嚇射撃しておけ」

''あいあい''

''りょーかい!''

「こほん、失礼したな。私がしたことは私の独善的な思想に基づいた自分勝手な行動の結果だ。それが偶々いい方向に傾いているだけであって、意図的にしたものではない」

「.......そうか?僕には艦娘の為に身を粉にして活動していたように見えたが」

「同じく。貴女は賢いですもの。外聞だって把握していて、その価値にも気付いていたはず」

「.......ふふ、確かに他鎮守府に居た艦娘らにアピールするなどの他の意図があったことは否定しない。私は艦娘を無条件で博愛している。艦娘のためならば例え大破しようが轟沈寸前になろうがどんなことだってするつもりだ」

「今回のように...か」

「うむ。既に数え切れないほど痛い目にあってきているから、同情や忠告は受け取らぬぞ」

「そうか。なら僕は何も言えないな」

「アメストリアさん、確かにこんな所まで私達を助けに来てくれたことに関しては、一生を賭けて返すつもりです。でもね、貴女の生き方、確実に自滅すると思います。」

「......。」

 

何を今更。

私とあう存在はそもそもイレギュラー。トゥルーエンドなど迎えることができないのは初めから知っているし、ある程度覚悟している。

ハッピーエンドかバットエンドか。いずれにせよ私が迎える終わりは両極端なのだ。

私ももう二度と妹達を泣かせないって決めてるしな。下手な終わりを迎えるつもりは毛頭ないぞ?殺りたいなら空軍でももってこい。

 

''艦娘さん、あと30秒でアメストリアに到着です?''

 

減速が始まり、噴式の轟々しい濁流の音がここまで響いてくる。

ナウル鎮守府の駆逐艦のような曲芸航行を持ってアメストリアの側面格納庫に滑り込ませるのだ。あとはクレーンが素早く掴み上げると船内に引っ込めて装甲板を元の位置に戻せばもう安心。突然地球が爆発しようとも演算領域最大に回せば防げるほど、世界一安全なシェルターに艦娘らを保護することができる。

 

「リバンデヒ、そちらはどうだ?」

『こちらリバンデヒ。現在ナウルから2000海里よ。帰還後はどうすればいいのかしら』

「回収した船体を通常艦用ドックに入れて、維持をしてこいてくれ」

『無茶言うわね。正直言うと金属疲労は限界突破。あちこち腐敗して雨風にさらされ続けたからか船底には穴が開いて艤装も満足に載せれないし、ドックに移すのもやっとなの』

「......そうか。取り敢えず足場だけ組んで姿勢固定しておけ」

 

そう命じて、初月と親潮の手を掴んで裾などいろいろな面積の多さを活用して抱き込むと格納庫に据え付けられた手すりにつかまり、衝撃に備えた。

突然のことに初月と親潮は硬直し、何もできないでいたため寧ろこちらとしては都合がいい。

 

突如船体が軋み、慣性で強烈な圧力が私達にもかかった。

思わず、放り投げられそうになったがそこは艦娘パワーで何とかしがみつき、耐え凌ぐ。

隼はチハたんのごとく曲芸航行を要求するじゃじゃ馬なので、妖精さんでも完璧な操縦ができない。

しかしそんな中何故か妖精さんは減速を利用しない強引な転舵でダイナミック格納を行なうことを決定した。まぁ警ら隊とかがうろちょろしてて恐らくすぐに海軍が駆け付けてくる可能性がある中態々時間かけて減速してクレーンで吊り上げて格納。ハッチを閉じて濡れた船体を乾燥と塩化防止処理をしなければならないが、この中で一番時間を食うのは減速の時間だ。

 

これは高速航行から低速に移行すると当然船体に負担がかかるし、発生する波も巨大なものに変わり、その反動もまた船体に返ってくる。その急激な変化は主砲や対空砲にも影響し、重力や反動云々で命中精度はゼロに等しくなるし舵の効きも悪くなる。

当然と言えば当然だ。

動力が噴式である以上一瞬でトップスピードまで加速する。

スクリューのように徐々に加速というのができないのだ。逆も然り。

減速は噴式、急なものでガクンと体が引っ張られてしまう。あれだな。車乗ってて急停車した時のアレだ。今回は急カーブした時の感じだな。

 

軋む声が小さくなった頃、ガタンッ、と機械音が甲板から聞こえてくる。

恐らくクレーンが接続された音だと思われる。

 

「......あ、あの...」

「...む、すまない。」

 

まだ、抱き込んだままだった。

赤くなっている二人から離れ、立ち上がる。やることはまだまだある。

今気づいたが、113号電探によると海軍基地から既に艦隊が緊急出撃している。

隻数は六。駆逐艦が多いが、何故か戦艦が一。

全長から見てコロラド級。誰かは知らんが、妨害してくるならばそれ相応の処理をしなければければならない。

「ここからは妖精さんと過ごしてくれ。何分私の船体は巨大故な、迷い子になったら一年は出れなくなるからな」

「一年...それまたすごいな...」

「この船は違うのですか?」

「こいつは隼と言って私の内火艇だ。」

「先ほどから思っていたが内火艇の次元を超えていると思うのだが...」

「まぁ、そうでもある。しかし私本体の大きさから見ればこれくらいの大きさになるのだ。格納庫も大きいしな。何たってこの隼は46cmを二基積んでいる」

「......は?」

「...はぇ?ほ、本当なんですか?」

「うむ。46cmと対空砲を幾つか積んであるが」

「それは内火艇と呼ばないと思うが」

「そうよ。内火艇は砲を積まないし、対空砲も良くて機銃の程度ですよ?」

まぁね?私も最初は驚いたよ?何でこれを内火艇と名付けたのか本人とじっくり話し合ったらこれ、子機らしいんですわ。

内火艇兼上陸艇、補給艦に戦艦らしい。アメストリア自体多目的艦だが、子機もそれを引き継ぐか...呆れた記憶がある。

 

「正論だが、私達には通用しない。これから向かう鎮守府は貴官らにとってまさに常識外のことになると思うが、気を確かに持ってくれ」

「......?何となく嫌な予感はするが」

「そうですね。そう言えば私達の船体の現状をお教え頂きたいです」

「現在貴官らの船体は非常に危険な状態であった為ドックに入れて維持をさせている。」

 

リバンデヒが仕事してれば、の話だが。

 

「現状、貴官らの船体のみ残っていたのだが。他の艦娘を含め、一旦全員を保護するが、その後は大本営の指令か、恐らく新設されるであろう鎮守府に配備されることになると思われる」

「そ、その...実は頼みたいことがあってだな」

「...?なんだ」

「僕達を迎えてはくれない...か?」

 

まさかの着任要請である。

確かに私の持ってるカードの幾つかを切れば容易いことだ。

史実から優秀な傑作?駆逐艦の陽炎型に対空特化の秋月型。

妖精さんに頼めばそれはもう素晴らしいスペックにレベルアップしてくれるだろう。

現状主力らに配備されている駆逐艦は吹雪のみ。

ぽいぽいも加わってくれれば二隻。まずおかしい編成だと私も自覚している。だって第二艦隊の編成が、

 

大和、武蔵

長門、陸奥

赤城、加賀

蒼龍、飛龍

高雄、愛宕、鳥海、摩耶

矢矧

吹雪

 

だぜ?駆逐艦一隻やん。

軽巡洋艦も一隻、重巡は四隻いるけど14隻中四隻は戦艦、四隻は空母だぜい?

頭おかしいだろという意見は甘んじて受ける。認めんが。

アメストリア式に入れ替わってるから仕方ないんだもん。装甲硬いし戦艦の弱点改善されたし実質駆逐艦といれば対空要因でしかないのだ。ウチの鎮守府では。

でも第三艦隊にはそもそも駆逐艦が居ない。

川内型いるけど水雷戦隊組んでない。組むなら第四遊撃隊から暁四姉妹を引っこ抜いてくるしかないのだ。何時も夜戦ができなくて文句垂れ流してくるのはキツイ。色々と。

因みに神通先生は健在です。

 

うーむ。採用する需要はまぁ確かにある。

でも心配なのは拉致組だということだ。下に見てるとかじゃなくてうちも中々ハードな経歴持ってる艦娘は結構いるから関係に問題はないだろうけど、他の艦娘はどうするんだろうか。

初月と親潮だけ引き抜いて問題はないのかが気になるところだ。

しかしそれを伝えたところ、寧ろいいとの事。

 

どういうこっちゃと思っていた所拉致組は結束が強く、それ故に若干依存気味であったとの事。このままだと全員ダメになってしまう危険性が高い為一度離れてお互い回復する機会が欲しいらしい。

成る程。それなら受け入れないというのは酷だろう。私は艦娘至上主義ですしおすし?

採用するとして問題はどこに配属するかだ。

どうしようかねぇ...改装案も出さなきゃだし...

やることいっぱいやね。

 

 

 

 

 

序でに記しておくと、アメリカ海軍にはちょっと会ってしまったのだが、その時に例の視察でお世話になったコロラドにエンカウント。血の気の多い駆逐艦らを引き留めて引いてくれたのは素直に好感が持てた。

冷静に物事を見る目があるな、コロラドは。

で、なんとかナウルまでフルパワーで寄港したのだが、第一隔壁に初月も親潮もびっくり。

更に水門の開閉や警戒のためか第一、第二隔壁間で待機していたリバンデヒ、カイクル、ノイトハイルにまたまたびっくり。

 

更に更にナウル鎮守府所属艦艇が一同に会する巨大埠頭の規模、数にびっくり。

まぁわからんこともない。10kmあるしな。

ナウル島名物要塞山に対空砲塔にも驚いていたのだが、それまでのインパクトに負けたのか、ただ単に疲れただけなのか反応が薄かった。

案内は暇してたノイトハイルに押し付けて私は提督と今後を話し合ったのだが、問題が一つ。

夕立が吹雪にべったりなのだ。いや、スキンシップらしいのだが、ぽいぽいって犬っぽいじゃん?

ここでもそれを発揮し、吹雪を仲間と認識したのかべったりになり、私を主人認定したらしく、リバンデヒと物議を醸していた。いや、タメ張らなくていいから。

しかもリバンデヒ、「お姉ちゃんの方が私達のペットなのよ?」ってお前、後で寮の裏に来いよ?

 

とまぁ、いろいろ問題多発したが夕立、初月、親潮と一気に三隻も駆逐艦が所属する事とになり所属艦艇がアップ。

工廠妖精さんのヤル気もアップ。止めてくれよ?駆逐艦に波動砲載せるとか言い出すのは...?え、計画あったの?

んなの廃棄廃棄。




劇場版出ましたね。(挨拶
私は勿論初日から三週行きましたよ?特典欲しさに。
徽章は良かったです。でも二週目からの特典、非売品にする価値ありましたかね...ウワーナニヲスルダーッ!!





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76.くちくかんのしれん

やっと着任できました(挨拶)
4日前にラバウルに着任しまして、ナウルに居る艦娘を当ててキャラ再把握に尽力していました。
みんなちょっと違う...あとちとちよの泥率がおかしい。


ーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーー

さてさて、みんな大好き妖精さんの改造タイムだ。

今回の犠牲者は夕立、初月、親潮の三人。

妖精さんに話聞いてみた所、既に設計図は出来ており、幾つかの計画案があるらしい。

 

まずはA案。

これは機動性を主観に置いた改装案で、隼よろしく機関を噴式に変更してスピードを限界まで上げる。ステルス性は気にしない為名一杯武装、装備を満載して潜水艦型の船体に載せるそうだ。これは実際にアメストリア海軍のぜかましの艤装パターンらしく実績があるらしい。

確かに''彼女''によると二隻だけやけに早い駆逐艦が居たそうな。

しかしながら早すぎて細かい舵取りは出来ないとの事。そんな器用貧乏要らんがな。

 

B案。

これは防御力に主眼を置いた火力捨てて守る事しか考えていないパターン。

船体側面に展開式の特殊鋼製防盾を設置し、艦隊護衛をするらしい。しっかりと傾斜装甲を採用し、一応ミサイルが積んであるらしいが砲は対空砲のみ。そりゃ射界が確保できんもんな。

これ、アメストリアと気質というか基本姿勢からあまりにも離れた異端作じゃないのか?

妖精さんによると''オールドタイプです?'' ''シールドできたら取ったです?''とのこと。

成る程、絶対干渉結界が開発されていない頃の苦肉の策だったようだ。まぁ使えないこともないが鈍足だし、重戦士そのものだ。火力に期待できないし艦隊行動の妨げになりかねない。

あんまり採用したくないな。夕立とか絶対嫌がるだろうし。

 

C案。

これが一番アメストリアの気質を表していた。

民族病と言っても差し支えないほど、アメストリアは火力を求める。

確かに()()()()()機動力や装甲を要求するが、これは資材、技術ともに余裕があるからこそできたごり押しで、地球ではこんな欲しい機能を全部持ってく、というのは不可能だ。

WWllの日本海軍じゃないんだから変に優秀な設計士のせいでデタラメ要求が実現する訳がない。だからこそ各国は其々専門の機能を与えた適材適所の艦や戦車を開発してきたのだ。

しかしアメストリアには隔絶した高すぎる技術力がある。資金は無限大。そもそも通貨制度ないしな。資材も万能生産装置によって無限に湧いてくる。

これらが合わさるとどうなるか?アメストリア型戦艦一番艦アメストリアが出来上がるのだ。

私だってそもそも初期の初期の戦艦だぞ?改装を前提にしていたとは言え設計も建造も珍しく手作業で組み合わせられた古い艦だ。

知ってたか?初期状態は船舶用粒子エンジンしかなかったんだぞ?

おかげで鈍足で仕方なかったし。私が出てきたことは既にウンターガングが実装されていたが、進水当時は酷いったらありゃしない。電子化もされていなかったしな。

全部感覚と経験に依存した扱いの難しいわがまま姫。

アナログ操作によって操艦、照準、伝令がされていた為初動が遅かった。そりゃまぁ伝声管なんて届かんからな。艦橋から機関室とか。流石に電話が引かれていたらしいぞ?今は四次元無線だが。

それは電波というよりは「波」そのものを四次元を通して伝達する方法で、傍受や妨害が難しい安全な通信になったのだ。詳しくはナデシコ見てくれ。

んで、C案だが、これは火力しか考えていない案だ。

現状の艤装配置を一新して現代艦よりに。と言っても主砲は15.5cm三連装砲だし、ミサイルハッチは敷き詰められている。

艦橋は一応据え置き。しかし延長して演算装置やらを搭載するらしい。あと装甲面を考慮してT-34/76みたいな三角になるらしい。まぁアメストリアはミリ単位の照準が出来るからな。艦橋だけピンポイントで狙われても可笑しくない。

 

艦橋より前に三基三連装砲を置いて後方には煙突を据え置いて魚雷を保管していたあの出っ張りは縮小して対空砲陣地に。 アレだ。高雄型みたいな。

主砲は5基らしい。計一五門。対空砲は100位だが、まぁそれくらいだろう。

電探も最近妖精さんが開発した新型電探、【特 一一六号三次元電探】を搭載。こいつは成層圏外まで探知可能なもう何したいかよう分からないキチガイ電探だ。

なんだろう。lCBMでも撃ち落とすのだろうか。主砲で。

あ、主砲の15.5cm三連装砲だが、60口径になるらしい。

当初は50口径あたりだったらしいが、装甲貫けないやんってことになったらしく急遽60まで延長。お陰で成層圏まで届くようになったらしい。これ三式弾の話な。流石に徹甲弾は届かんよ?あと、夕立には15.5cm砲すら積まれていない。火力を第一に置いたため、特別な主砲を用意した。ズバリ、【65口径20.3cm上下連装三連装砲】である。まさかの軽巡標準口径だし、主砲一基に六門搭載するというキチガイっぷり。アメストリアでも白露型でしか採用されなかったのが全てを物語っているが、これは完全にロマン枠である。実際使えたら強いんだろうけども。

 

それで、私はとある提案をした。

ATフィールド的なの作れないかと。妖精さんの返答は''まずまずですなぁ''だった。

つまり不可能ではない。というか開発しちゃった。

え、絶対干渉結界あるだろって?アレまだ戦艦クラスしか積めないんだぞ?小型化が思ったより難航しててな。供給エネルギーと演算装置関係で行き詰まっているらしい。

一層の事演算装置新しい視点からのにしなきゃあかんらしい。虚数空間まで手を出した妖精さんがそう言うのだ。虚数空間ってアレな。存在自体確立されてないある意味すごいフロンティアなんだが、妖精さんはとうの昔から虚数空間の制御技術を確立していた。

私も最近知ったんだがな。今まで教えてくれなかったんだが。

まぁアメストリアも創立から500年以内に並行世界の存在確証に渡航技術の確立、物質の往来までやっちゃったからな。工廠恐ろしや。

 

それで、妖精さん。実装しちゃった。

エネルギーを盾状に展開する装置と念のためB案から展開式の小型防盾を搭載した。と言っても部分的にだけどな。艦橋周りだけだ。エネルギー防盾は全体に掛かるようになってるけどな。

あと他にも依頼したのが結界ミサイル。

これは元々砲弾に仮設の結界を発生させる装置を搭載した野砲はあったのだがこれを技術転用してミサイルに搭載出来ないかと工廠長と相談したところ、出来たらしい。

偶然の成功らしいが、ミサイルの弾頭に結界発生装置を搭載したところ、まぁ普通は結界張ったミサイルが飛んでくだけだ。それじゃ意味がない。

私が作りたかったのは所定座標で起動してその場で盾を作り出すミサイルだったのだ。

ここは妖精さん。作っちゃだらしく私にも早速試験搭載してもらっている。試射は済んでいるらしく、150cmまでなら防げるらしい。500cmは無理だったよ...

兎に角、色々作りつつ今回の犠牲者にどれがいいか聞いた所全員C案を選択。しかも夕立は誰に仕込まれたのか...いや犯人はわかっているがウンターガング弾を要求してきた。

いやいや15.5cmサイズに縮小できてないから。

代わりに例の貫通しか考えてない特型の徹甲弾は搭載しておいた。15.5cmサイズーあったんやな。特殊貫通徹甲弾だが弾帯が刻まれた装弾筒のついた大変珍しい砲弾。

全長も長くなっており薬室が対応しなかったので今回新型の15.5cm艦載砲を採用したのだろう。

 

''艦娘さん艦娘さん、夕立の船体改装終了したです?これから艤装取り付けに入る感じです?''

''初月さんは主砲取り付けに手間取ってるです?''

''親潮さんの艤装取り付けは完了したです?でもでも電気関係に時間かかるです?''

「そうか。ご苦労、別に急がなくとも教官はまだ到着しておらん。ゆっくり着実にやってくれ」

''いわずとも?''

''やっちゃうです?''

''取り付け大変です?でもエンジョイです?''

それは重畳。

初月の主砲に手間取っているのは、初月だけ主砲が特殊なものだからだ。

何故か?それは初月が秋月型というのに由来する。

秋月型は防空駆逐艦。対空関係の重点的な火力強化がされていた駆逐艦だが、アメストリアクオリティはそれで満足しない。

対空地両用できないとお話にならない。しかもアメストリアらしいと思ったのが、秋月型の開発経緯が敵大型飛行生物を撃墜するためだとか。

つまり対ドラゴンとか対アイガイオン級らしいのだ。45mm対空機関連装砲が通用しない相手を想定した防空駆逐艦らしいんだが...察してくれ。

アメストリアはそこでガトリングに目をつけた。

連射力よし。威力良し。爆音よし。と三大良しを網羅したロマン兵器を実戦配備しちゃったのがアメストリア。

開発されたのが、【20.3cn六砲身機関対空連装砲】詰まる所45mm対空機関連装砲の20.3cm口径仕様だ。コレは空軍が現在採用している大口径対空砲で、威力は20.3糎とあり凶悪の一言に尽きる。正直これを私に搭載すればぶっちゃけ強くなるなるやつだ。

これを主砲に据えた、何やってるんだろうね。駆逐艦に何を求めてるんだって話だが、まぁ実戦データが欲しいんだろう。初月、南無。

しかしまぁ薬莢排気口とか嵩張るし特に時間がかかるだろう。

気絶した艦娘らは現在暇してる高雄、愛宕に任せてあるから大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

''艦娘さん、改装、おわたです?''

''ふぃにっしゅです!''

''やりきったです?''

'傑作つくたです?''

「ふふ、そうか...傑作か...」

妖精さんをも傑作と言わしめるとは驚きだ。

駆逐艦という小さく多い制約の中にやりたい事好きなだけ詰め込んだ上に高スペックときたらまぁ傑作といえるだろう。しかしこれは船体スペックでありこれを艦娘が使いこなさねば意味が無い。どんな高性能な機器でもガラクタに成り下がってしまう。

そのため、普段は先輩が教えるのだが、今いる駆逐艦は暁四姉妹に吹雪と言うちょっとアレな艦娘が多い為、教えるには適さないため教官にはあの人を任命した。

今は週一の()()から帰投しているはずだ。教えるならあの人という勝手なイメージでつい任命してしまったのだが、本人はあっさり了承。

むしろやり甲斐があるらしく笑っていた。また悲鳴が響き渡ると考えると...うん。一部の艦娘が非常に顔色悪くするから...どうしよっかねぇ.......?

 

因みに大和や武蔵もあの人の訓練を主砲を56cmにした時に教練担当の長門の補助として対空射撃訓練などを受けた事があるのだが、地獄だそうだ。(大和談)

死んだほうがマシ(武蔵談)とはまぁよく軍人に言わせたもんだ。

じっさい阿鼻叫喚の地獄、魔の強制訓練になっていたんだがその分途轍も無い練度に豹変するし、思わぬ才能が開花する事もある。

大和なんかはあれだ。回避機動中の砲撃の精密性はピカイチだ。

長門さえも信頼を置いているのだから実力は本物。長門本人は私達がしごいたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、貴女達はこんなものではないでしょう?ほら、やれば出来ましたね。はい、次は速度1.5倍でやってみましょう。初月さん?貴女の主砲はばら撒くものではありませんよ?」

いや、初月の20.3糎ガトリング砲はばら撒く主砲なんですけど...多分初月が掃射するみたいに撃ったまま砲塔旋回をしたからだろう。それは弾薬の無駄だし、撃ち続けるよりタップ撃ちしたほうが効率がいいのは事実。しかしガトリングとなると掃射して吹き飛ばすものだ。

数発だけ撃つ、というのはこれはもう艦娘の感覚次第なのだ。どれだけの時間撃てばどれだけ砲弾が飛んで行くか、それを常に把握して残弾と相談して砲撃をしなければならない。

現在の海戦に時間の余裕など一切無いので激しい砲撃戦が当たり前になっている。双方連射速度が段違いなのだから当然の道理だ。しかも動きながら。

回避運動しながら深海棲艦には正確に当てなければならず、ついつい掃射してしまうのは分からんでもない。

 

 

 

今私が居るのは露天艦橋。

ライフルスコープ片手に教官の神通に三人がしごかれているのを視察中。

夕立は海上に浮いた間隔50mとかいう頭おかしいブイを最短距離かつ機関最大で駆け抜けながら15の的を正確に全て撃ち抜くという訓練中。あ、外した。

初月は暇してたにこーせんの蒼龍飛行隊を仮想標的に対空砲撃訓練。

ニ航戦って割と実力あった気がするんですが...ほら、垂直上昇始めたよ。うわー、ようしゃねー...

 

親潮は以前暁四姉妹がやってたドリフト駐車ならぬドリフト繋留を練習中。

無論機関最大で突っ込んだ後スクリューの絶妙な回転率変換率変更でドリフトして決まったエリアに正確に船体を滑り込ませる訓練だが、まだ動きがたどたどしく、動きが鈍い。

三人とも頭おかしい訓練中である事には変わりないが、三人同時に教練してる神通はもっとすごい。

見る限り夕立は流石。天才肌らしく神通の言う規格外条件を難なくクリアしてゆく。

さっきミスってたがアレは調子乗った結果だ。

親潮は性格もあるのか正確な動きが得意なようで踊る様な操艦は見事。

初月は少々操艦に荒いところがあるが立ち回りは上手く、早速ATフィールドもどきを活用しつつ対空戦闘をこなしている。

「むふふー、頑張ってるみたいだねー」

「そうだな。三人ともなかなかどうして素質があるようだ」

「そうだね〜。初月って子は可愛いし健気っぽいしいいなぁ...今度食べちゃおうかな」

「コロがすぞ貴様。...頼んだものは?」

「んー、これだよ。お姉さんも優しいんだねぇ〜?」

「艦娘に最大限の支援をするのは当然のことだ。」

「餌付けも?」

「........人聞きの悪い、労いだ。親密な関係は連携にとても大事なものだからな」

「それ餌付けだよねーふふふー。」

ノイトハイルに頼んだのは艦娘全員が病みつきの間宮羊羹。

以前あまりの人気に間宮本人が生産制限をかけた一品。本人手作りのお菓子なのだがこれがまた美味しい。よく私達四姉妹も茶会の時のお菓子に使わせてもらっている。

確か熊野が「オイシイデスワァァァァ!!」って奇声あげてた。鈴谷に散々いじられて喧嘩に発展してたけど。

アイスと並んで人気商品なのだ。まぁここ暑いし娯楽少ないもんな。

でもさ、ここがいくら艦娘が多いからって制服を着崩すのは頂けない。

赤道が近いこともあって年がら年中温暖な気候で、日中外にいるのは妖精さんのみというのがナウル鎮守府の当たり前の光景。

コンクリの地面のため熱やら色々害しかないからな。

寮や提督棟は冷房完備の為外に出る艦娘は少ない。出たとしても車両を活用している場合が多い。案外運転できる艦娘多いんだよな。というか教えたらすぐに物にした艦娘が多かった。

でも五七式重装甲輸送車とか七九式装甲輸送車を好き勝手に塗装するのは止めてもらいたい...なぁ......七式装甲車輌とか一式重武装車輌ならカスタムしても良いからさ、8輪の大型輸送車は止めてくれ...

 

 

 

 

 

おっと、訓練の内容が変化したようだ。

五分の休憩後、高雄に協力してもらい重巡洋艦を旗艦にした艦隊行動訓練。

単縦陣に複縦陣、単横陣に輪形陣、対空戦闘の為に中央に集結した特殊陣形まで一気に神通は教えているようだが、殆どは史実でもやっていただろうしつつがなくこなしていた。

 

あとは各艦が距離を取って神通から発射された対艦ミサイルに主砲弾を当てるという対空訓練にそれが出来た艦娘から神通自らが発射した20.3cm砲弾を迎撃する訓練。

これが十分おかしい事を察してくれる諸氏でいてくれることを期待する。

イージス艦じゃないんだから砲弾に砲弾を当てて迎撃なんて芸当は普通は無理だ。

実際、他の鎮守府に演習に行った艦娘(利根さん)に聞いた所出来なかったらしい。

しかしナウル鎮守府では出来なければ可笑しい、くらい常識的なスキルとなってしまっている。

私?.......黙秘する。いや、やろうと思えばできるんだけどさ、私の主砲デカ過ぎて掠らなくても砲弾がどっか明後日の方向に飛んで行くんだよね。砲弾の回転した時に発生するソニックブーム的なものに。

態々迎撃しなくても結界あるし、三式弾使えば一発だ。万が一は粒子弾やウンターガングを使うがな。

 

ーーこほん、ナウル鎮守府では全員ができると言っても過言でもない砲弾ショットは新入りに掛けせられる恒例の無理難題と化している。

夕立は流石。一発成功。マジであいつなんなんだ。

親潮は数発逃した後照準の仕方のコツがわかったのか3発に一発は当てるようになった。

初月は...うん。20.3糎六砲身機関対空連装砲を封印されたから涙目で備え付けの41糎砲で迎撃しているな。可愛いが流石に酷じゃないだろうか。

なんで駆逐艦がビッグセブン砲積んでるんだっていうツッコミはともかく、流石に全部ガトリング砲となるとアホみたいに弾薬を消費するからな。普段使い用の砲として60口径41糎三連装砲が二基配備されており、威力は砲弾にもよるが一部51cm相当になる。これ駆逐艦だよな...?

二基だけだが41cm三連装砲を積んであるからそれも使えるようにならなければならないため、実質初月は二隻分の射撃訓練をしている訳だな。

私の中央演算処理装置みたいな大規模演算が可能な演算装置なら良かったんだが流石にそれは無理だったので未だに艦娘の感覚に頼っているのだ。

というか流石に主砲の照準まで任せきりになると艦娘の仕事が無くなる。

ただでさえ自動操艦も出来るんだから。

あ、その代わりに駆逐艦には全員に全海域対応型万能電探後期型という116号電探とは別に配備している。こいつは水上、水中、地下に特化した電探で雨だろうと台風だろうと関係無く詳しい索敵ができる優れ物で、既に私で実証試験済みだ。そこそこ使いやすかったぞ?三次元電探よりも性能が良かったから私も測距儀型電探をコレに入れ替えてある。

まぁ片方が吹き飛んでも継続して索敵が出来るように、という保険だがな。

 

 

 

 

 

ヘトヘトになった駆逐艦艦娘三人が水揚げされた。

船体は丁寧に繋留されているが、当の本人たちが撃沈している。

船体には整備用クレーンが伸び、修繕箇所の点検と〔弾薬〕の補給が行われている。

神通も厳しめに行ったのか破損箇所が多い。

夕立の艦橋後ろにあるマストも折れてしまっている。そのせいで後ろにあった砲塔が旋回不能になってるし。他にも砲身が抉り取られた第三砲塔など、こってり絞られてたようだ。

南無三。

「......ご苦労だった。夕立、初月、親潮。これは私からの餞別だ。受け取ってくれ」

「ーーーもう、無理っぽぃ〜〜っ!」

「流石に、僕も疲れたな...慣れない装備は苦労するな。」

「そうですね...神通さんは厳しい方でした...あ、アメストリアさん。ありがとうございます」

「随分絞ったようだな、神通?」

「いいえ、まだまだこれからです。基礎の基礎は教えましたが、まずは基礎を身につけてもらわねば、困ります」

スパルタだなぁ...どれもこれも艦娘為なんだろうが...本人たちがどう思うかなんだよな。結局は。教官というのも中々楽じゃない。

「......ふふふ、確かに技量がなければ話にならない。しかしやり過ぎには注意しておけよ?」

「えぇ。勿論心得ています。ですが厳しくいかなければこれからの戦場を生き残る術は身につけれません。私達だっていつ援護できるか分かりませんし」

「駆逐艦単艦での任務などさせんけどな。」

「ふふふ、それは良かったです。単艦任務は護送作戦以上に無謀ですからね」

「当然だな。私達の設計に単艦任務を想定されてはいるが実際にすることはない」

 

 

 

 

突然だが、現在私は鍋を回している。

理由としては駆逐艦艦娘らに頼まれたのと、どこから聞きつけたのか目ざとく発見した赤城、加賀に現在進行形で大量消費されていること。そして最大の理由に食べたことないからとノイトハイルに脅迫されたことだ。曰く作らにゃ殺すとのこと。

最近ノイトハイルの私についての扱いが荒くないか?

しかしニューフェイスな駆逐艦艦娘らの頼みとあれば断る理由がない。

今日は金曜の為の海軍の慣習に従いカレーを作っている訳だ。本当なら一日二日置いておいたほうが良い味を出してくれるのだが、そんな悠長なこと言ってられないので、手当たり次第に大量生産している訳だ。どうしてか私が作ると絶品になるらしいからな。艦娘スペック恐ろしや。

だが結局非番の艦娘達が全員集まってしまい私が全員に振舞うという結果に落ち着くのは...うん。だいたい予想してたけども、もうやらん。

「うん〜〜〜〜〜〜〜っ!!おいしいっぽいっ!!」

「確かに、これは美味だな」

「美味しいです!アメストリアさん!」

「そうか、それは良かった.......赤城、非番だからと言って食べ過ぎは控えろよ?」

「勿論ですアメストリアさん。ちゃんと腹八分目に抑えています」

「そうね。私も赤城さんと同じくある程度遠慮はしているわ。アメストリア、心配は無用よ」

.......貴女方の腹八分目は20皿ですか?

確かに艦娘達の笑顔が見れたし美味しいと言ってくれたのはとても嬉しいことこの上ないが、重労働はごめんだ。あー腕が痛い...

 

 

午後は流石に私も疲れたし見学ということで駆逐艦艦娘らにも休憩を与えて私も第一、第二隔壁間の海域で訓練を開始した重巡たちをぼんやりと眺めている。

今日暇してたのは高雄、愛宕、青葉、衣笠、最上、三隈。

熊野鈴谷の二人組は金剛と演習だ。

 

六隻が見事な単縦陣で航行している。

穏やかな波を切り裂き、機械音を響かせ威風堂々とした風貌で航行する様は胸が熱くなる。

二次大戦特有のゴツゴツした、なんか色々付けた城型建築みたいな日本艦のみにある独特の造形美と数々の戦歴を伺わせる所々黒ずんだ船体。砲口付近には煤が付着し、確かに実戦に生きる艦艇なのだということを私に知らしめてくれる。

正面から見た重巡というのは綺麗に三角の形が取れた、それはもう美しいもので六隻も連なっていると言葉に言い表せない美しさがある。

四基の35.6cm三連装砲にイージスのような要塞型艦橋。側面には12.7cmの対空砲や45mm対空機関連装砲がハリネズミのように砲身を生やし、排煙用の...実の所装飾用の煙突に大きく高いマスト。水上機を発艦させるカタパルト及びクレーンがあったところには現在格納庫とF-222用昇降機が備えられている。と言ってもF-222の全幅は着艦用甲板以上なのではみ出す形になるのだがそこはF-222の主翼が展開式であることを利用し畳んで主翼を90度回転させて折り畳む。丁度輸送形態のオスプレイみたいな状態だな。アレをカタパルトにセットした状態で設置してある。クレーンは必要ないので撤去した。F-222が発艦できなくなるし。

そして後部三基の主砲に敷き詰められたタイルのようなミサイルハッチ。

前から見ると無線用だったマストからアンテナや旗竿などに張られたワイヤーもそのまま残してある。現在は専ら乗員の洗濯用になってるが。というかそういう使い方をしていたらしい。アメストリアでは。室(艦)内で干すと臭くなるもんな。そもそも干す空間をとる余裕などないだろうし、太陽に当てないと細菌が増えるから室外で干したほうが良いぞ?くさい原因も細菌だしな。ナウル鎮守府は暑いからすぐ乾くし衛生的にかなり気を使っているので多分安全だしな。海上は知らん。

 

六隻が一斉に主砲を旋回させ始めた。

試製のアレっぽい意匠の35.6cm 三連装砲はそれはもう良好な性能を見せている

安定した火力と抜群の破壊力。史実でも夜戦の火力として活躍していたのも頷ける。

全自動装填装置があるから速射に関しては心配しなくて良いし、重巡とあって弾薬庫は多く取れたので装弾数はそこそこ。そうだな、〔弾薬〕を全て主砲に回すとしたら20万発は撃てるだろう。対空砲にも回すから大体7万発位だろう。いつもの装弾数は。

因みに高雄型の総装弾数と500cm砲弾10発が同じ位だ。

やっぱ500cmはおかしいと思うの。弾薬庫でかすぎでしょ私の。

 

アメストリアの艦載砲は基本船体に埋め込んである筒の部分には装填する分のマガジンと量子変換器と排莢した空薬莢を一ヶ所に集め船外に排出する為に漏斗が一番下に仕込まれており、穴から滑り台式に薬莢が排出されてゆくシステムを採用しているのだが、よく考えたらマガジンだけつけてそれを時間逆行術式で保存すれば弾薬無限の砲が出来上がると思うの。

それしたら毎回悩まされる戦闘時の〔弾薬〕不足という問題は解決されるし、一気に楽になると思うのだが、幾ら頼んでも妖精さんは頑なにそれをしようとしない。

船外にある消耗品とかには時間逆行術式を導入して修理の量を減らす取り組みはあったのだが、パーツに時間逆行術式刻んで無敵戦艦とかにはならなかった。

まぁ流石にそれはバランスブレイカーの域を超えてしまうし私も損害関係の感覚が麻痺してしまうからあまり必要ないと思っているのだが、砲はせめて対空砲だけでも良いから〔弾薬〕問題を解決したいなぁ...対空砲って地味に〔弾薬〕食うんだよね。主砲には敵わないけど結構な量消費するからどうにかしたいんだけど...今度妖精さんに土下座して頼むか。

 

私のどんよりとした思考は爆音によって途切れた。

六隻が順に砲撃を開始して行き、フルオートの銃を六挺並べた時のような濃密な弾幕が張られてゆく。標的用らしい100cm厚の装甲板は大量の榴弾に徐々に削られていっているようだ。

精密性は満点。フルオートで主砲ぶっぱしてるのに今の所外れ無し。全力航行だろうに。すごいな。

流石は重巡洋艦達だ。

戦艦は確かに主役だが戦艦は極端に言えば大口径砲を戦場まで運ぶ運搬屋であるので、実質戦場で主な攻撃や指揮をするのは重巡洋艦だ。

戦艦以下の主砲ながらも魚雷が撃て、夜戦においても安定した制圧力を発揮する。

従って重巡洋艦にはかなりの練度が求められ、それはアメストリアスペックとなった今でも変わらない。

私達アメストリア型戦艦は別にして、大和始め戦艦勢は船体にスペースの余裕があるため、会議室や通信設備など充実させることが可能で、派遣した先での作戦会議などは戦艦に活用する。しかし今でも駆逐艦や軽巡洋艦を連れる時は臨時旗艦を重巡洋艦にするし、偶に戦艦を含んだ艦隊でも旗艦を重巡洋艦にする場合がある。

 

単縦陣をYの形に航跡を変化させ、二列縦陣に変化するとそのままターンして反転。

増速してジグザグに転針を繰り返して回避運動を取ると二航戦のF-222が襲いかかった。

動きはさながら急降下爆撃。

九十度直角に突入したF-222から実弾のミサイルが発射されるとより増速して警告音と共に対空戦闘を開始。

曳光弾の色とりどりな火線が雨を遡って伸びて行き、的確に対艦ミサイルを迎撃する。

爆炎が幾つも空中に咲き、黒煙が破片と共に降り注ぐ。

青葉姉妹は機動戦を仕掛けているようで息ぴったりな動きで撹乱し、攻撃の密度を減らさせていた。最上三隈も負けじとF-222搭載能力を捨てて戦闘力にガン振りした艦首側四基の55口径35.6cm 連装砲をバラバラに指向させ、気化弾を斉射した。F-222と黒鉛に彩られた青空に強烈な閃光が加わった。

飛行甲板が一瞬にして真っ青になり、離艦不能に。ちゃっかり操縦席付近が重点的にペイント弾の餌食になっているのは技術故か。

しかしそれで廃る最上型ではない。前方にある4基の35.6糎連装砲を使って三式弾で迎撃を開始。各地でサーモバック爆弾が爆発したような焔が上がった。

なんかもう実戦になりつつあるんだけど終了とかあるんだろうか。あ、第二波来た。

「.......蒼龍、仲間内で殺し合いは避けて欲しいのだが」

「え、やだなぁアメストリアさん...訓練ですよ訓練!」

「...っあぁ、めっ!艦載機が落ちちゃいますからぁ!もがみんやめてぇ!」

「.......はぁっ、各艦発砲を禁ずる。蒼龍飛龍も速やかに艦載機を帰投させろ。さもなくば500cm三式弾を食らわせるぞ。」

「わぁっ!?そ、それはかんべんだよぉ!」

「それはやだねぇ、多聞丸、帰投させよっ?」

「あらやだ...熱くなりすぎました...最近こういう戦闘が無い所為かしら...」

「わたしもよぉ〜。アメストリアさぁん、敵艦をくださいな?」

「ガサー?そろそろやめますよぉ?」

「あ、青葉、もう終わりなの?」

「ボク達も止めようか、三隈?」

「そうですわね。」

各艦が砲撃をやめ、主砲を元の位置に旋回させると、舵を切って単縦陣に戻り始めた。

若干気持ち最上が高雄に近すぎる気がするのは気のせいだろうか。

対空戦闘とあって各艦が縦横無尽に動き回ったため向きも位置もバラバラ。海面は航跡で荒れ、波は高く白波を立てていた。

あ...最上またぶつかった。

 

 

「......最上、衝突事件、これで何度目だ?」

「えへへ...三度目、かな...?」

「五度目だ馬鹿者。内二回が三隈との衝突。残りは高雄、愛宕、私とは...貴官、重巡洋艦以上と衝突する癖があるのか」

「いや〜、何でか舵の効きが悪くなったりするんだよねー」

「......あとで工廠妖精さんに総点検させるか」

「ちゃんと前向いてたんだよ?ボク」

「...ならば何故あぁも見事に正面衝突できるのだ?」

「何でだろうねぇ?ボクも不思議でたまらないのさ」

この野郎...まぁ確かに史実は不幸姉妹以上に呪われてる姉妹だから多少は大目にみるけどさ...何でこんなに衝突事件を起こしまくるのかね。今回も高雄と正面衝突。

高雄の不注意もあったが、やはりもがみんが悪いと思うんだ。

以前戦艦との共同訓練の時も大和や金剛に衝突しそうになったし、実際榛名に接触事故起こしてたし。私に衝突した時はびっくりしてお茶こぼしたんだぞ?折角本物のダージリン入手したのに。

確かにさ、重巡洋艦ともなると戦艦クラスの船体だし、舵の効きが遅いこともわかる。

駆逐艦みたいに飛んだり跳ねたりみたいなアクロバティックな動きは求めてないからさ、もうちょっと気をつけて欲しいなぁ...罰則は無いけどさ。

「......修理には30分程掛かるそうだ。高雄に謝罪しておけよ?以上だ。」

「うん、ゴメンね?ボクも次から気をつけるよ」

信用できん...したいけど、できないっ!

今回も綺麗に艦首をペシャンコにしてしまった為ブロック工法に基づき、艦首を作り直している最中。高雄の方は軽微だった為装甲を張り替えているだけだ。

何であんなに衝突しまくるのかは不明で、今の所対処策も無い為アレがもがみんくおりてぃだと納得するしか無い。今の所実戦で衝突事件起こしたこと無いし。

全部演習か、戦闘後に起こしてるから...多分、大丈夫だろう。うん。そう信じたい。

 

「妖精さん、今回の訓練での消費資材は?」

''15000なりー!''

''もがみんが効きましたなぁ。鋼材、結構つかたです?''

''弾薬は700くらいです?''

''二航戦も効きましたなぁ''

「......二航戦ってあんなに血の気多かったか?」

''海軍さんは大体ああいう感じです?''

''内に秘めたる獣です?''

''能ある鷹は爪を隠すです?''

妖精さん、使い方ちゃうでその諺。

でも海軍、大体ああいう感じってやばく無いのかね。

確かにいけいけの艦娘は多いけれども。

霧島とか戦艦キラーだし、長門は殴り合いを要求してくるし...というかやってるし、あの大和でも結構殺っちゃう系だし。確殺に拘りを持っていた。やはり狙撃タイプか。

水雷魂とか夜戦とか史実からぶっ飛んでる艦娘多いし、スタンスにガンガン行こうぜ!航空機は無しな!っていう感じだから吶喊が好きなんだなぁ。戦果挙げてくるだけに対応に困る。

まぁ、私がどうこう考えても仕方ないな!(思考放棄)

うん。そうだ。考えても仕方ない。ピンチになったら私が全身全霊で助ければいい話。

例えこの身を盾にしても絶対に艦娘は守らねばなるまい。まずは書類と権力から...

さぁ、事務仕事だ...(白目

 

 

 

 

「フタフタサンマル...少し休憩するか。ノイトハイル、茶を淹れてくれ」

「んー、媚薬入りでよければ何杯でも淹れてあげるよぉ〜」

「...いらん。私がいれる」

ノイトハイルは有言実行...無言実行のため、本当に入れかねない。既に何回か食らっているので、流石に私も学習した。

部屋に備え付けのキッチンでやかん、ポッド、カップ2杯を用意する。

 

まずはじめはやかんに軟水(日本の水道水などがこれに当たる)を注いでIHモドキで加熱する。

この時、沸騰直前の95度が最適らしい。沸騰させてから95度まで下げるのはもってのほか。これは紅茶の命、酸素含有量に関係する。

因みに95度を目視で判断する方法として、お湯が沸いてくると始め小さな泡が出てくるだろ?あれが急に大きな泡がボコボコ出てくるタイミングが95度らしい。

温めている間にポッドとカップは湯で温めておく。これはわかるよな?カップが冷えてたら熱々の紅茶と相性が悪いからな。うん。

以前紅茶馬ゲフンゲフン、血走った目の金剛に熱弁されたからよーく覚えている。

 

そして温めてあるポッドに私とノイトハイル分のティースプーン3杯分を入れる。

以前サーフィンして見つけたトワイニング社によると一人当たりティースプーン1.5杯。ジャクソン社によるとティースプーン1杯らしい。

 

ポッドにお湯を注ぐ時に某毎回主人公がお怒りになる警察ドラマの主人公の如く、高いところから注ぐと、酸素とよく混じり、紅茶が美味しくなる。跳ね返りには注意な。

そしてお湯を注いだら3分蒸らす。

この時にポット内で「ジャンピング」という要はお湯が循環する現象が起きる。

逆に起きなければ美味しい紅茶は入れない。それくらい大事な作業だ。

このジャンピング、重要な割に難易度が高いもので、熱すぎると茶葉が沈んでしまい浮いてこず沈殿するだけだし、低すぎると浮いたまま沈んでこない。

今回は練習の成果かうまくいったようだ。芳醇なダージリンの良い香りがする。

あ、ジャンピングはティーバックでも出来るのだが、ティーバックの紐を上下させて自分でやっちゃうと台無しになるので注意が必要となる。

要は温度に気をつけて放置ということだ。

 

よし、うまくいった。

紅茶の入ったポットと温めたカップを盆に載せて、事務関係の部屋に運ぶ。

ちょうどノイトハイルが暇潰しなのか書類を作成していた。

「ノイトハイル、ダージリンだが、よかったか」

「んー、大丈夫だよぉ?もうやになっちゃうよね。この量はなんなのさー」

「ふふ、自分でどうにかする度胸もないもやしチキンの精一杯の抵抗だ。微笑ましいじゃあないか」

「いうねぇお姉さん。まぁ、そうなんだけどねぇ〜。あ、ダージリンだねぇ、僕も滅多に飲まないかなー」

アメストリアは万能生産装置があるから物質なら何でも...ってこれは野暮か。

味とかも再現されているのだが、人間意識の仕方で味のとかの感覚もガラリと変わるもので不味く感じるのだろう。犬用ビスケットを想像してもらえるとわかりやすいだろうか。

あれも実は人間食べれるぞ。というか成分一緒だぞ。原材料も。

読者諸君も何も知らずにビスケットだけ出されてたら普通、犬用とか意識しないはずだ。

しかしこれは犬用ビスケットですと説明されると途端に食べたくなくなるだろ?アレだ。

あの感覚だろう。アメストリアは万能生産装置を前提としているからそこら辺の価値観は真逆だろうが。

「んーっ!美味しかったよぉ〜お姉さん。あ、この書類群は遠征報告書、こっちの山は演習結果詳細ね。出撃、消費資源報告書はここね〜」

......ノイトハイルさんや、スペック高すぎやしませんかね。

私が紅茶淹れてた間に書類を全部種類別に分別したと?

一体何枚あるのか数えたら精神崩壊しそうだから無心で処理してたけど、こうやってみるとわかりやすいな。やっぱり遠征報告書、演習結果詳細はどんぐりの背比べクラスにトップタイだが、出撃、消費資源報告書はダントツで少なく、こじんまりとした山になっている。あいつら出撃してないのか。

試しに、と適当に一枚引き抜いて確認すると、鎮守府海域、カルラン半島くらい。1-4が多いな。初心者だらけなのか、レベリング中なのか。判断しかねるが、連続出撃は辛いぞ?

ナウル鎮守府はすでに引越しの時に経験済みだし。

 

「......ん〜?ありゃりゃ、来ちゃったね」

「......む、報告書か」

複雑な三重暗号の秘匿回線を通して送られてきた天龍龍田の報告書。

報告書自体にも五重のプロトコルが組まれた余程読まれたくないと見えるデータに中央演算処理装置を使って片手間で解読する。

主に最近の日本本土の動向についての報告だが、幾つか気になるものを発見した。

一つは内閣が変わり、政権交代、議会解散が行われ、左翼に傾きつつあること。

二つ目はそろそろ皇紀変わるんじゃねって噂されてる事。

一つ目はまぁどうでも良いし軍部は命令権が天皇に全任されているから内閣が幾ら変わろうと基本的に方針がねじ曲がったりねじれ状態にはならない。

しかし二つ目は別だ。天皇の崩御か、生前退位か。大日本帝國の陸海空の最高指揮権を保有する天皇が変わるとなると、次の天皇が別の考えを示した場合軍部は計画の変更を余儀なくされ、その影響は末端に直撃する。

しかも、大日本帝國の象徴たる、血筋だけは2000年以上続いているらしい天皇家の大幅な変化は国全体にも影響を及ぼすし、膨大な遅延が発生する。

今の所艦娘らに天皇について聞いた事はないが、恐らく落ち込むのだろうと思う。

というか今の公家やばいからな。嫡男全然居ないし、天照とか先祖だからか女系っぽいし。

これはまずい。元号変えなあかん。更新がめんどい。

衰退するか繁栄するかは天皇次第だし、一蓮托生なのだ。

 

「軍を失う事すなわち己を失う事。」

とあるアメストリア海軍元帥の言葉。これは私は日本に一番必要な言葉だと思う。

軍縮だ何だと喚いてる現実見えてない意識低い系の蛆虫どもがいるが、現在は地球の七割を敵に回した戦争中なのだ。そんな時に軍縮とか狂気の沙汰。

既に南の方は壊滅してるし石油だってパイプラインが危険な状況は依然続いてるんだからもう少し視野を広くして語ってほしい。

ニダ?あぁ、最近音沙汰なしだが、なんかあったのだろうか。

まぁどうでも良いけど。

 

ーーーん?

最後に、最重要機密って物々しく打たれた文字。

うわー。読みたくないわー。絶対面倒ごとだわー。疲れるんだよ...

何々.......

 

.........アホなのだろうか赤レンガは。

よりにもよって今、赤レンガは士官候補生の実地派遣を行おうとしている。

こんな時に。

「......ん、お姉さん、その赤レンガから電文だよ」

「......読め」

「はぁーい。えーと何々...発 大日本帝國海軍総司令部 宛 ナウル鎮守府

この度更なる戦線拡張に備え、未来有望な士官候補生の実地経験を積ませるべく、貴鎮守府にも幾人か派遣する予定である。準備せよ...だって?」

「......はぁっ...返信、発ナウル鎮守府総旗艦アメストリア型戦艦一番艦アメストリア。宛 あほど...大日本帝國海軍総司令部。士官候補生の実地経験を積ませる意味は強く、これからの世代たる士官候補生に良い影響があると判断し我がナウル鎮守府は候補生の受け入れを受諾。これからの大日本帝國の発展に寄与するものと願う。尚、当鎮守府は現在第一警戒態勢のため大人数の受け入れは許容できない。」

これなもんで良いだろ。ナウル鎮守府とかいう他の鎮守府とだいぶ違うとこに送ったって特に何も得られないと思うのだが、まぁ赤レンガの考えている事はわからんし理解もしないから放っておく。今回は士官候補生だから視察とかじゃないし全艦避難とかはしなくて良いな。

知られたら消せば良いし。

 

士官候補生といえど容赦はできないし、実際警戒態勢が続いているのは事実だ。

最近深海棲艦の動きが怪しいし。

さぁて、日程を組まなければ...

 

【オマケ】

夕立

 

【挿絵表示】

 

 

初月

 

【挿絵表示】

 

 

親潮

 

【挿絵表示】

 




次回から新章ですかね。
いやー日常回難しいです。みなさんすごいんですねぇ...私にはほのぼのしたネタが思いつきませんでしたので、今回もハードシナリオ増し増しです、すみません。

えっと、次回ですが、提督の卵がナウルに実地研修しにくるんですが、まぁ、だいたい察せられますよね。
呉の海軍大学校からやってきます。さてはて何が爆発するのか、楽しみですね。

2018/03/20 夕立と初月の図面を追加。スペックは図面の方が正しいです。
2018/03/22 親潮の図面を追加
-補足-
⚫️は128mm三砲身対空機関連装砲
○88mm四砲身対空機関連装砲
線やらマス目はミサイルハッチです。


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第七章 教練編
77.候補生襲来!急降下!


 

 

ーーーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーーーーー

さて、大本営からの、相変わらずの突然の通告。

要は提督候補生に実戦の空気を感じてもらいたいらしく、提督の仕事など、現場でなければわからない事を学ばせる目的であるとの事。

んな事知らんと言えればよかったのだが、今更抵抗しても大将の負担が増えるだけで何も変わらないので文句は言わない。()()はするがな。

 

それで、この通知書は幾つかの他鎮守府にもきていたらしく、大混乱の嵐。

恒例のテレビ会議でも各人が揃って頭を悩ませるというシュールな光景にありつく事ができた。

しかし他とは決定的に異なる点は我がナウル鎮守府には特に成績優秀者が送られるという点。

 

こんな常識の次元が三次元ほどズレている鎮守府を見せても意味ないと思うのは私だけだろうか?同封されていた名簿によるとあの男モドキやテスト満点だったオタクもここらしい。

 

候補生受け入れに当たって全艦娘に召集をかけ、対処を検討した結果取り敢えず提督棟の客間を開ける事になり機密情報の隠蔽作業が始まった。

やってくるのは今日から一週間後。

それまでに受け入れ態勢を完成させなければならない。

候補生がいるのにいつも通りテキトーに出撃するわけにもいかんので演習を全て取りやめ、全艦を桟橋に係留する事に決まった。

まぁプチ休暇だ。

それで、当日の日程は色々と考えてはいるが、ここの常識で語ってもまず役に立たないのでとても悩ましく、頭が痛い。

新規艦娘だからと言って候補生に実態を見せるわけにもいかないので、夕立、親潮、初月は川内姉妹の地獄の周回に強制連行させた。今頃ヒィヒィ言ってるだろう。

実戦は兵士を成長させる。なぜなら実戦以上に経験を積めるものなどないからである。

訓練の難易度を上げ、死者が出るクラスにしたとしても、訓練のは反復、実戦でも基礎が動かせるように、という反復練習でしかない。

模擬戦を実戦さながらにするのは良いが、模擬戦には横槍がないし、後ろから撃たれる事もない。しかし実戦では卑怯なんていう言葉はリストラされるので容赦なく裏取りされて奇襲される事もあるし、思いもよらぬ手段で攻撃される場合が多々あるーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーと、回想しつつも書類をさばいてゆく。

案外有能だったという事が最近判明したノイトハイルを援軍に、割と減少した出撃、遠征報告書、演習報告書を手早く処理して大本営に送ってゆく。後はあちらの仕事だ。

提督執務室にはいつ間にか設置されていたジュークボックスやBOSEの高性能スピーカーが並んでおり、現在はそれを使用せず外から聞こえる演習の砲声をBGMに作業を進めている。曲を流しても良いんだが、そっちに気を取られて作業効率がむしろ落ちるというのがよくあるので、いつも無音で事務仕事をするのが専らの慣習だ。

「.......来たか」

「そーだねぇ、丁度防空識別圏に入ったね。妖精さんよろしくね〜」

私達の電探がナウル鎮守府に接近する超巨大航空機を捉えた。113号対空電探の敵味方識別装置で所属が明かされた。

 

【大日本帝国海軍呉鎮守府所属 富嶽1号機】

 

との事。とりあえず味方なのはわかったが、富嶽って...いつの間に作ってたん...?

大方、日米安保の破棄に伴う軍備拡張に私達から提供した技術や実機を元にオリジナルまたはリスペクトして変なの作ったのだろう。

私達が技術供与したものはアメストリアの時代で約4800年前。つまり創立直後の第一世代だ。何よりも量産が効きそれでいて高水準の性能を誇っているからだ。

あれだぞ?戦闘機に75mm二門とか基本武装に30mm、40、50mmはざらにあったんだぞ?

当然それを積んだ上での機動性や速力を確保するために大出力発動機が投入されている。

零戦の21型とかは1000馬力ちょっと位という貧弱極まりない発動機だった為にあまり装甲も貼れなかった。それでいてあの航続距離と機動性はおかしいと思うが。

 

しかしアメストリアはその更に三段階上を行った。

零戦21型の機動性に呑龍とかのバ火力を足したのだ。そんなキチガイ染みた戦闘機を実機で渡したのだが、何処をどう学んだのか、富嶽が出来上がってしまった。

アメストリアにあった富嶽とはだいぶ違うだろうが。

アメストリア版富嶽は30mm十二門に50mm三門、1t爆弾25発を積めたからな。頭おかしい。

今回の候補生の搭乗する機体だと思われる。まぁ自力でこっちに来るならそういう長距離爆撃機とかじゃなきゃ無理だわな。

一応、防空識別圏の1200kmに入ったのでナウル航空基地の管制妖精さんへ連絡を入れ、護衛機としてF-222を四機スクランブルさせた。

今頃到着している頃だろう。宇宙空間での戦闘を前提としているF-222ならば1200kmという距離は目と鼻の先だ。

 

全艦に連絡を入れ、念の為対空警戒をさせておく。こういうのって高高度から尾行してきた敵機とかが襲いかかってくる場合があるからな。

時刻は14:30。到着は16:45位だろうか。まぁのんびりするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6発の大型発動機がけたたましい空気を叩き付ける爆音を響かせながら、富嶽は降着装置を下ろし、エルロンやフラップなどを全開にした。

全長50mは超えているだろう超巨大航空機。両端は実に85mを記録し、ウチのCT-7にも迫る勢いだ。ただ、CT-7は空飛ぶ駆逐艦だが。

 

タイヤが噴煙を上げながら回転し、一気に減速してゆく。

4000mの長すぎる滑走路を贅沢に使用し、陸上で移動する速度まで遅くなった富嶽は漸く鮮明に見る事ができた。

日本機特有の暗緑色に彩られた円筒の胴体に高翼の大きな主翼。

鋭く絞られた尾翼部分は水平、垂直共に機体相応の大きさになり、ワイヤーで補強されている。

所々に旋回式の対空機銃が設置されているようで20mmだろうか、連装が散見できる。

底面には一切の構造物が飛び出しておらず、今は降着装置が降りている以外は何もなかった。

思えば、二式大艇に似ている気がする。

 

 

ーーーーーーこれ、飛行艇なん?

え、マジで?本当に?そんな長すぎる巨体とか海面に叩きつけられて終わりだろうに。

アレだろうか。ソリがせり出てある程度の高さを確保できるようになっているのだろうか。

というか鰹節あるんかね?

 

ある意味船になるのかもしれん。形的に。主翼が飛び出してるけど。

ーーあ、主翼にもフラップ有りましたわ。......マジでか。

日本がこんな変態機作るとは夢にも思わなんだ。何この変態機。

誰だ作ったの。あれか、現代の堀さん出てきたか?

 

富嶽が停止し、発動機が切られたのか徐々にプロペラの回転が緩んで行く。

密閉式の扉が開かれ、内部からラッタルが飛び出して地上との架け橋が完成した。

一応、途中で奪われて敵国の戦闘員が乗っていたら、などの敵対行動を想定して要塞山には一七式戦車一個中隊と航空基地の管制塔や格納庫が集まるエリアには一七式戦車や五七式重装甲輸送車改、七九式装甲輸送車改が。

そして「出迎え用」として五七式重装甲輸送車改二輌に一七式戦車が一輌。

現在は要塞山の一個中隊と施設防衛用の車両群の砲口が向いているはずだ。

 

その標的たる富嶽のラッタルに姿を現したのは、多少髪が伸びたと思われる男モドキ。

後ろで一房に纏めているその姿はどう見ても女性のものだが、本人はバレてないと思っているんだろう。候補生の紺色の軍礼装に身を包んだその姿は様になっている。

続いて現れたのは何やら荷物が妙に多い海軍オタク。何やってんだあいつ。

男モドキがトランク一つなのにお前30Lバックパックにトランク二つって何積んできたんだ。

アレか、ラノベ満載してきたのか。

 

「.......ようこそ、我がナウル鎮守府へ。貴官らはご存知の、アメストリア型戦艦一番艦アメストリアこと私が今回の派遣に関して案内をさせて頂く。」

「はっ、この度のご歓待、誠に感謝の至りであります。若輩者どもでありますが、どうか何卒ご教授ご鞭撻をお願い申し上げます。」

「よろしい。ではまずこの輸送車にお乗り頂きたい。此処は鎮守府中枢から些か離れすぎている故な」

 

私が五七式重装甲輸送車改を指すと、妖精さんが察して後部ハッチを開けてくれる。

外界との干渉を一切断ち、窓は厚さ85mmの防爆防弾防光学の鋼鉄の籠。六角形の容器にはこの後部ハッチと、天板に開けられた円形のターレットリング。

ターレットリングで繋がれた砲塔には88mm戦車砲が積まれ、仰角を僅かに上に向けている。

候補生らはそのゴテゴテの軍事車両に萎縮しながらも乗車してくれた。

 

候補生を乗せた五七式重装甲輸送車改と、私を乗せた五七式重装甲輸送車改が整備された軍用道路を走って行く。いやまぁ軍用道路しかないのだが。

私達を乗せた二輌の五七式重装甲輸送車改は埠頭を通って要塞山の内部を通過する予定だ。

検問所にも似たゲートとトーチカの置かれた防衛線を通過すると、視界はトンネルを抜ける。

するとそこは一面雪の世界だった、というように一気に変貌する。

 

広く開かれた巨大な10kmの埠頭には両側に数え切れないほどの桟橋が伸ばされ、巨大な二本のレールにはキリンと呼ばれるガントリークレーンや各桟橋に備え付けの固定式クレーン。

他にも工廠から弾薬やその他補給物資を運び出す埋め込み式の通用路が点在する。そんな後方支援としては最上級の、珍しく満席のドックに収まるはナウル鎮守府に所属する全艦。

駆逐艦から軽巡、重巡、戦艦、航空母艦。そして隅には一応存在する間宮の船体。

 

日本艦独特の正面から見たら三角形に見える、軍艦の黄金律を惜しげもなく表現した猛者たち。小柄な駆逐艦は姉妹ごとに区画分けされた桟橋に係留しており、現在は半舷上陸の状態なのか妖精さんが遊びまわっていた。

最近の妖精さんブームとしてはうず高く聳えるマストに張られたワイヤーに使った降下訓練もどき。適当な材料を使ってワイヤーに引っ掛けて滑り落ちる。そして途中で手を離して如何に面白い技を繰り出して着地するかがポイントらしい。

割と本気で挑んでいる妖精さんが多いらしく、前は大車輪モドキを披露していた妖精さんがいた。因みに所属は給糧兵。何やってるんだろう。

 

電探や装甲、目視での索敵をするための台場やマスト。煙突に主砲と多種多様な装備品が満載された船体はどこから見てもよく映え、数が少なくても立派に見える。

 

灰色の桟橋に並ぶ現代艦ゲフンゲフン軽巡洋艦。

駆逐艦より一回り大きい船体の艤装配置は現代艦や戦艦に近いものになり、軽巡の標準主砲の15.5cm三連装砲を幾つも搭載した小回りのきく船体には両舷にハリネズミのように45mm対空機関連装砲が生え揃い、厳つい。

 

反対側の桟橋には重巡、戦艦が立ち並び、その姿はさながら海上の城。

軽巡らとは比較にならないほどの大きな艦橋には演算装置や会議室、夜戦艦橋や果ては浴室や居住区まで備えている。遠目から見ても巨艦が並び、視点故か重なって見える様は海軍という印象を濃く見せる。

もう一つの埠頭には私達四隻が係留しており、その大きさ、規模は比較にならない。

地球上に存在するどの艦よりも15倍以上ある全長に物言わせた豪華絢爛な艤装は30km先からも視認できるほど。

本当ならもう少し高くできた艦橋は防空面を考慮して360m。此処に喫水線30mと海面下の30mを合わせて420m。十分巨大だし、大和縦にしても高いんだから大して意味ないと思うけども。

 

おっと、要塞山方面に道路が切り替わったらしい。

視界は回転し、一気にナウル島中心の要塞山が見えてきた。

八角形に整形された要塞山には大量の火砲が潜んでおり、その総火力は想像ができない。頂上には全海域対応型万能電探後期型が搭載され、四方には三次元立体全天電子探査機が予備として搭載されるなど、固定版アメストリア型戦艦みたいなスペックを誇り始めている。

と言うのも妖精さんが暇過ぎるのか気分的に魔改造、改修が加えられ続けているからだ。気づいたら要塞砲が別のものに変わっていた、何てことはザラにある。最近は浪漫だからという理由だけで波動砲を乗せようとして、私達全員で必死に阻止した記憶がある。

 

 

そんな曰く付きの要塞山内部は思いの外質素だ。

車輌や戦車が通れるように広いトンネルが貫通しており、全海域対応型万能電探後期型の直下を中心に交差点が作られている。等間隔に設置されたオレンジ色の照明に照らされ、横断してゆく。

途中、幾つかの五七式重装甲輸送車改のグループを見たが、何かあったのだろうか。

 

まぁ、何かあったら妖精さんか妹達から報告が入るだろう。

道は提督棟に繋がっており、直通ではないが、比較的早く行ける手段ではある。

一番は徒歩だがな。これにも理由があって、想定はしたくないが、このナウル鎮守府に深海棲艦が強襲上陸してきた際に、何も防衛設備が無くて一気に提督棟や工廠に攻め入りられたら目も当てられない。

できる限り可能性は潰しておきたいのが本音。後から追加しておいた。

トーチカや検問所モドキにはM634や固定機銃で45mmの単砲身機関砲を配備している。流石に、45mm対空機関連装砲についている回転砲身をつけるのは大きさ的に無理だった。残念で仕方がない。誠に遺憾である。

 

 

 

五七式重装甲輸送車改が停車した。どうやら提督棟に到着したようである。

圧力の抜ける音と共にハッチが徐々に開いてゆく。南国という地理上、強烈な太陽光線が降り注ぎ、このわずかに開かれたハッチの隙間からも容赦なく侵入し、思わず目を細める。

最近は雨もなく、カラカラに乾いた、しかしほんの少しばかり潮の匂いがする風に靡かれ、髪が揺れる。

手で押さえて、振り向くと、ちょうど降りてきたであろう男モドキが、顔を真っ赤にして停止しているのを見て、思わずこちらも止まってしまう。

「......こほん、こちらが我がナウル鎮守府の司令塔であり、貴官らが宿泊する宿でもある。先に荷物を下ろすか。ついてきていただきたい。」

言うだけ言って、足を提督棟へ向ける。

気休め程度に打ち水のされた、提督棟と道路を繋ぐ石畳。

其処を革靴と軍用ブーツと硬い足音がコツコツと硬い音を立て、それに気づいたのか提督棟のメインエントランス、その大きな()()()()()()()()のドアが重い音を響かせて開いた。

大体こういうのに気付くのはウチの妹達か、天龍田。

今回はカイクルであったようだ。大太刀を腰に差し、加えて50cmのホルスターを下げた重武装の艦娘。カイクルは候補生らを一瞥して男モドキをみてニヤリとすると、提督棟へ入るよう促した。そのお陰で見えたのだが、リバンデヒも居た様だ。

珍しく...本当に、珍しくポニーテールにしたリバンデヒはその手にM145-S1Aを持ち、腰に五式自動拳銃を下げていた。一応、警戒はしていたということだろう。

姿の見えないノイトハイルも、どうせ19.8mm重機関銃やら115式対艦機関狙撃銃でも構えて今も監視しているだろう。

 

いつぞやの大和暴走回でも話したが、我がナウル鎮守府の提督棟、艦娘寮は和洋折衷なデザインとなっている。主に景観上の都合で煉瓦が最外殻に張られているが、周囲は森の為ズイズイみたいな若草色と暗緑色の商船迷彩が施されている。

しかし内部は豪華堅牢な物で、最外殻の煉瓦と内装の白い壁の間には1200mmもの分厚い妖精さん印の特殊装甲が張られて、シェルターと化している。

見事に磨き上げられた木目が映える、杉色の道。

大体板張り...そうだな。睦月シリーズの家具見たいなデザインを基調としたインテリアの数々には、実に多彩なものがある。

どこから持ってきたのか巨大な旭日旗や青葉が撮ってきたと思われる戦闘、平時問わずの軍艦の写真の数々。更には実弾が装填されている骨董品のG43やKar98.三八式歩兵銃まで。

そんな些か物騒な廊下を、候補生を私達が挟んで歩いて行く。

時折用事があったのか通り過ぎる艦娘と適当に会釈しながら、目的地へと向かって行く。

提督候補生の宿泊する客間は提督棟の中でも東側の出っ張りに位置し、元々客人を意識して設計された部屋だ。今まで使用されることがなかったのが、今回は日本側の使者ということで使用することになった。因みにアメ公共は西側に詰め込んでいた。

「此方だ。この部屋とその部屋を使って頂きたい。ここでの扱いは海軍司令部からの客将だ。起床時間はこれといって決まっていないのが此処だが、それは此処が異例だからである。

起床時間は朝六時。担当の艦娘が訪れるであろうから、艦娘の指示に従っていただきたい。」

「......一つ質問をしても?」

「何だ?」

いかん、さっきから敬語が崩れてきてしまっている。

やはり私に敬語は合わない様だ。何というか、ムズムズしてしこりがあるみたいにぞわぞわする。

「ここの風紀は随分と緩いようですが、軍規の方はどうなっているのでしょうか」

「...前線などこういうものだ。一応私達は軍隊である以上、規律にしたがって生きてはいるが、何しろ此処は攻められる側ではないのでな。特に逼迫した状況でもないからこうなっている。」

「......」

男モドキは納得がいっていないようである。

しかし、現実問題こんなもんである。非番なら起床時間とか自由だし、特に何やっていても構わない。別に自主練だろうと遊び倒そうと引きこもろうと艦娘の自由なのだ。

流石に当番というシフトは艦隊ごとに設定して一日ごとに警戒は切り替えているが、そっちも特に規則があるわけでもなく、誰が決めたものでもなく自然に早めに集まって軽い会議。そして適当に出撃しているだけである。

航路はパターン化されているがな。

 

「確かに、他の鎮守府ならばこうもいかないだろう。ここまでの戦力と技術があるからこそ、此処ナウル鎮守府は安定した戦況を維持できているのだ。前線のなかでも此処は特異すぎて参考にならんだろう」

「......そう、ですか」

ナウル鎮守府は特殊すぎるのだ。

運用方針も、技術も、何もかも。

例えば他の鎮守府の主力艦の速力は精々20ノット後半。

翔鶴型は非公式に40ノット出せたらしいが、他艦艇はそうもいかないし、燃費によろしくない。作戦行動なんか取れたもんじゃないしな。

 

他にも、砲だって違う。ウチでは最早型落ちになりつつある46cm三連装砲とて、他では未だに最強の火砲だ。射程は40kmを超えるし、その威力は改良型砲弾でバイタルを抜けば戦艦とて屠ることが可能な圧倒的な火力。三十秒毎発という威力にしては高レートな発射速度も合わせて持った名実ともに最強の砲だ。

駄菓子菓子、悲しきかなナウルには500cm四連装砲がある。

最強の座は受け渡し、積んでいた大和でさえ56cm三連装砲を積んでいる。

あとは、電探か。未だに二十一号とか三十二号とかで頑張っているのだろうが、ナウル鎮守府では全海域対応型万能電探後期型、三次元立体全天電子探査機、113号対空電探をはじめとしたミリコンマで探知可能な高性能電探のオンパレードだ。

 

あとはアレだ。魚雷が無い。

よって水雷という概念がなくなり、攻撃手段の大幅なレンジ拡大につながった。

ミサイルは言うなれば火薬を積んだロケットである。当然ロケットは大気圏、果ては宇宙空間にまで到達するためのものであるからにしてそれに火薬を積んだのだ。当然だが魚雷とは比較にならない射程と速度を誇る。これほど便利で使いやすい兵器は中々無い。

まぁデメリットが無いわけでは無い。現実的に考えればミサイルは単価が高くまた搭載量も小さくならざるおえない。デカイしな。

しかし、アメストリアにはそんなことは関係が無い。便利な事に艦娘のシステムとして〔弾薬〕という概念が砲弾からミサイルまで一緒くたにしているため装弾数はモーマンタイ。

しかも〔弾薬〕で生成しているから単価なんかあってないようなもの。量子変換器もあるし。

魚雷は当時の価値で一億円という話は有名だが、現代のミサイルはもっと高額である。

誘導装置やら希少金属を使用した噴進部分など馬鹿みたいに金がかかる部分が多いからだ。

私達が使用しているハープーンやグラニート、トマホークも例に漏れず高額で1発が空飛ぶフェラーリだが其処は妖精さんクオリティ。改造されているし、繰り返しになるが〔弾薬〕があれば幾らでも作れるので全く問題が無い。

 

軍隊の抱える装弾数の少なさと精度の問題から解放されたナウル鎮守府だからこそ特異で強靱なのだ。無論、それを使いこなす艦娘の練度もあるのだが。

 

 

さてさて、候補生らには荷物を置いてもらい、その足で提督室へ。

途中リバンデヒは予定があると言って離脱したが、代わりにノイトハイルがパーティに加わった。

「提督、提督候補生をお連れした。入ってもいいだろうか」

「どうぞ」

扉を開けると、多少は片付いた、しかし山盛りに積み重なった書類に囲まれた空間が広がった。まるで雑誌の編集社のような有様に候補生らは絶句している。

おおよそ提督になったらこんなに書類が湧いてくるのかと戦々恐々しているのだろう。

いやいや、まず無いですからこんなこと。

 

「あぁ、ごめんねこんな有様で。ナウル鎮守府は周辺の鎮守府のハブだから書類が集まるんだ。他の鎮守府はこんなになってないからね。ははは、」

 

提督は余裕たっぷりに笑っていた。随分と面の皮が分厚くなったようで。

上手いこと誤魔化せたようで、何よりだ。

 

「えっと、提督の業務内容だったね。まず、提督は指揮官だ。後方に引き籠って艦娘に戦ってもらう。僕らは実質何もできないんだ。そこは重々承知していてほしい。」

 

「じゃあ提督はどうやって支援するかというと、一応軍隊だから演習や遠征、出撃をするとその成果や戦闘記録を報告しなきゃならないんだ。この報告書の作成や艦娘のシフトを組んだり編成を決定したり。でもこれは前線に居ない僕らが決めたら大惨事になるから『秘書艦』といって補佐をする艦娘を任命するんだ。」

「その秘書艦と相談して最終的に編成や艦隊を決定。作戦を実行したりする。だから君たちも最初は秘書艦選びが最初の仕事になるんじゃ無いかな。」

 

そう語る提督は、実に様になっていた。

パラオ鎮守府から続いて早二年。もう新人では無いだろう。鎮守府を放棄するという苦渋の決断を下すことだって経験しているんだ。事実私達が提督業務としてこなしているのは事務方。編成は作戦でも無い限り提督が決定している。

あれだ、最初は酷かったぞ?新造した戦艦を遠征に入れてガン回ししようとしとたからな。

そんなことしたら破綻する。

 

「寺塚中佐殿、質問をしてもよろしいでしょうか」

「うん、何かな。」

「先程港を拝見していたのですが、四連装砲や回転砲身などといった新装備が散見でき、46cmを超えると思われる主砲を多数見かけたのですが」

「あー、それは此処の工廠妖精さんは物好きでね、よく変な兵装を開発するんだ。けど、その観察眼には恐れ入ったよ。遠目から見たら分からないはずなのに」

 

確かにそうである。港は姉妹ごとに固めて係留しているにしても重巡、戦艦、空母は出来る限り外見に変化は無いように努めていた。あ、空母はその限りじゃ無いけどな。加賀とか。

 

「代々軍人の家系でしたので幼い頃から実艦は拝見させていただいておりました」

 

成る程。それなら違和感に気付くのも当然と言える。ウチの金剛型や長門型は三連装砲積んでるしな。

 

「あぁ、成る程。だからかな聞き覚えがあったよ」

「恐縮です」

「うんうん、では見破った報酬に、情報をあげよう。現在我がナウル鎮守府には金剛型、長門型がいるんだけど全艦、51cm三連装砲を装備しているよ。大和型は最高機密だから教えられないけどね。」

 

尚私達の500cm四連装砲は普通に暴露されている模様。

まぁ明かした所で対策できんわな。絶対干渉結界でももってこい。

 

「.......51cmは試作のみで終わっていた筈では...」

 

流石オタク。だがしかし工廠妖精さんを舐めてはいけない。

ノリで核を作る危険民族なのだ。私が頼んだ戦力拡充を不具合なく完璧に仕上げたその実力はこの鎮守府をもって証明されている。

 

「うん、でも最近深海棲艦も脅威度が上がってきていてね。現状の兵装じゃ対抗できなくなってきたんだ。」

 

深海棲艦にも二種類いる

一つが今までの燃料を燃やして足を動かし精度の悪い電探と砲弾で攻撃してくる旧式深海棲艦。

もう一つがアメストリアスペックを誇る新型の深海棲艦。

脅威度が高いのがどちらかは言うまでもない。

 

「あとはーーーーーっ!?」

突如鎮守府に警報が鳴り響き、俄かに騒々しくなる。

急いで意識を中央演算処理装置に潜り込ませれば、全海域対応型万能電探後期型が突如出現した不審艦をキャッチ。第一戦闘体制に移行し、警戒態勢が戦闘態勢に切り替わったのだ。

「こちらアメストリア。状況を知らせ」

『こちら吹雪です!巡回中に目視にて不審艦を確認!現在追尾中です!』

「了解した。現在即応艦隊が急行している。付かず離れずの距離を保ち追跡を続行せよ」

『了解ッ!』

砲声が聞こえるのは、例の不審艦と砲撃戦になっているからだろうか。

ちらりと窓を覗くと警報に追われた第六駆逐隊と川内が緊急出撃している所だった。

 

 

 

あ、

 

 

 

 

 

 

.......あれ程湾内で緊急加速するなと言って聞かせたのに...

派手な水飛沫を上げて大きくせり上がった艦首が着水すると一気に加速し、目にも留まらぬ...追えたけど素早い動きで出撃していった。

当然ながら突如出現した着弾の水柱のようなものや爆発音ような全速で進んだことによる水の叩きつけ合いに他の艦娘が騒然として出撃しかけた。

またか...

 

「全艦落ち着け。今のは川内の湾内における全速前進に伴う水柱である。着弾ではない。繰り返す。着弾ではない」

 

慌てて旋回させていた主砲を元の位置に戻す艦娘が多発。

気の早い艦娘は既に湾内に漂っている。

 

『...こちら神通です。川内姉さんがご迷惑をお掛けしました...後でキツく言っておくので、ご容赦ください』

 

....南無三。

君のことは忘れないぞ夜戦バカ!

 

 

 

.......冗談はこれほどに、不審艦は十中八九深海棲艦だろうが、問題は全海域対応型万能電探後期型が探知できなかったことにある。

曲がりなりにもアメストリアの技術で作られた全海域対応型万能電探後期型は優秀な性能を発揮する。しかしその電探をもってしても探知できなかったのだ。これは異常だ。

深海棲艦が全海域対応型万能電探後期型すら欺くステルス艦を作ってきた可能性がある。以前のようにトンネルを掘られてはたまらないので、三次元立体全天電子探査機によって海底はくまなく探し出されている。その結果がトンネルは無し。

ならばステルス艦を開発してきたと言う線が濃厚だろう。

またはあまり考えたくないが、転移してきたか。

これもあながち否定できない。だってアメストリア軍は出来るんだもの。

何らかの転移技術を確立して、今回テストしたと言う可能性は否定できない。

まぁ普通こんなとこにテストで送り込まないと思うが。

 

「吹雪、不審艦の外観的特徴を報告してくれまいか」

『えっ!?あ、はい!えっと...全体的に黒く、突起が少ないです。あと主砲も変な形をしています』

「......そうか。引き続き警戒しつつ追尾していてくれ。もう少しで援軍も到着する」

『はいっ!...あ、でもどうしましょうかこと不審艦...』

「何、やることは変わらぬ。撃沈してサンプルを幾つか見繕ってきてくれ」

「了解です!』

「提督、先に失礼する」

「うん、気をつけてね」

「承知した」

 

転移して、直ぐに妖精さんを集合させる。

 

「妖精さん、集まってくれ」

 

その一言に暇してたであろう妖精さんがわらわらと集まってくる。

 

「話に聞く通り現在鎮守府近海に不審艦が出現。現在吹雪が追撃中である。

私達の目的は不審艦の残骸の調査だ。例の艦内工廠は空いているか?」

''現在例のブツの開発中です?''

''場所とるです?''

''危険ですなー''

「そうか...ではナウルの方の工廠にて解析する。周囲に同型艦がいないか注意して警戒していてくれ」

''あいあいさー''

''かしこまりー!''

''サーチアンドデストロイです?''

''デストロイアンドデストロイです?''

 

なんか破壊論者が混ざってる気がするが、妖精さんにも色々あるんだろう。触れないでおく。

帰投するため反転を始めた吹雪らを傍目に私も工廠へ足を運ぶ。

ナウル鎮守府の場合工廠は別途、地下にあるから移動に時間がかかるのだ。

工廠とドックは間反対の位置にあり、それを結ぶのは物資輸送用の細かい地下連絡網のみ。

島を囲むように工廠、航空基地、修理工廠、軍港、提督棟防衛用の人工島にある高射砲塔。

そして中央に鋼鉄製の要塞山があるわけだ。

当然ながら移動にはとてつもない時間がかかる。だから車両を使用して移動しているわけだな。

 

 

五七式重装甲輸送車改を使って直ぐに工廠に移動。

工廠の地上施設は一部海に接しており、私達は無理だが大和や加賀でも接岸できるある程度の機能を持った港湾設備を備えている。

見ると既に吹雪が接舷しており、その周りには工廠所属の三一式特大型輸送車両や二九式半駆動式大型輸送車両が集まっており、仮設クレーンが残骸らしき黒い破片を吊り上げ、輸送車に乗せるという作業を開始していた。

珍しく工廠地上設備が息吹を吹き返している。いつもは地下で完結しているので地上設備は一切稼働していないのだが、今回の不審艦残骸回収の為地下へ通じるハッチなどが稼働。俄かに活気付いている。

 

「吹雪」

「あっアメストリアさん!」

「よくやってくれた。見る通り妖精さんは大喜びだ」

 

主に未知の技術が目の前にあるお陰で。

 

「い、いえ!私はただ不審艦を撃沈して妖精さんに残骸を回収してもらっただけですし...」

「いや、不審艦というのは未知の塊だ。どういった攻撃手段でどんな威力があるかもわからない。それに近づけというのだ。酷な任務を置きつけてしまって申し訳ない」

「いやいやいや!わざわざアメストリアさんが謝ることじゃありませんってば!それに、昔と比べてだいぶ安全な任務ですからっ!」

「......そうか。すまない」

 

あとから考えたら、あまりにも軽率な命令だった。

さっきも言った通り不審艦は何もかも分からないから不審艦なのだ。

艤装の技術的年代。装甲や兵装、速力一切が不明。

無線から砲声が聞こえていたから火薬を使用した砲熕なのだろうと推測したが、レーザー兵器を副武装に備えていても何ら不思議はない。反省がひつようだな、これは。

 

''艦娘さん艦娘さん!残骸の回収完了したです?''

''輸送車できゃりーしてるです?''

''解析は時間かかるです?''

''よんあわーです?''

「...承知した。解析は慎重に正確に頼む。.......全艦に通達する。全艦準戦闘体制に移行せよ。繰り返す。全艦準戦闘体制に移行せよ。あと川内、第六を連れて巡回に出てくれ。大和は適当に戦艦、重巡を第二艦隊から抽出して臨時編成。鎮守府近海12海里にて戦闘待機していろ」

『...こちら川内、了解だよ!第六はどこだ〜!』

『大和、承知しました。武蔵と長門さん、鳥海さん、摩耶さんを連れて戦闘待機致します』

 

此処からでは伺えないが恐らく大和と武蔵、長門、鳥海、摩耶が動き出しているだろう。

巡回には川内、暁、響、雷、電。

川内は高練度かつ高火力。六駆は一応古参だし信頼を置いている。旗艦の方が心配だ。

追撃には大和、武蔵、長門、鳥海、摩耶。

大和、武蔵は56cm三連装砲。長門は51cm三連装砲、鳥海、摩耶は35.6cm三連装砲。

火力は十分。尚全員神通の教練の犠せ...卒業生だ。



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78.性別詐称はバレるもの

えーと、はい。大変に長らくお待たせいたしました。
学校関係でいろいろバタバタしておりまして。はい。
かくいう今もテスト勉強中でして、はい。

すみませんしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!、!
申し訳ない。色々ありまして。
皆さんもやったかと思いますが、偵察作戦にて初イベデビューしまして、今回の北海道でのイベでは現在E-3までやってます。ラスダンに泣いていますがね。古鬼とかふざけるなよ...

因みに占守や阿賀野、衣笠、神威をげっついたしました。これが遅れた主な原因ですね。しむしゅしゅしゅー!!
あと今資料の改定中でして...全長4.6kmの船体の割に、対空砲とか色々足りなくないかとか、電探の設定を作っておりました。


ーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーー

時間は少し飛び、候補生の襲来の夜。

私は残骸の解析結果を纏めた報告書を片手に、月を眺めていた。

 

結局、残骸は極普通の特殊鋼に従来のステルス用の電波吸収剤が散布されているだけの物だった。何とも言えない結果に、何とも言えない。

全海域対応型万能電探後期型はそれこそ()()()()()()()()()()()だから光学迷彩だろうと何だろうと検知するのだが、その探査の方法には電波を使用していなかったのだが、原理的には電探と同一だ。だから電探ってついてるんだがな。

それが一般のステルスでこうも見事に欺けられるとは、全く思っていなかった。

 

基本アメストリアの原則にステルスなんて想定はない。

あの船体の大きさや、ステルスを考慮しない造形で御察しの通り隠密行動を戦艦に求めてはいないのだ。光学迷彩は実装してあるがな。

従って妖精さんには私達を建造する際、全海域対応型万能電探後期型を作る際に地球でのステルスの概念をガン無視していたのだ。

 

それが仇になり今回深海棲艦の接近を許してしまった。

あ、不明艦は深海棲艦だった。断言していなかったな。

 

それは兎も角、ステルスの対策は早急に取らねばならない。幸い、三次元立体全天電子探査機の方は残骸を捉えることができるようなので、しばらくは全海域対応型万能電探後期型と三次元立体全天電子探査機の平行利用で対処するしかない。

何れはステルスも捉えれる新型電探をまた開発しなければならない。

いや、全海域対応型万能電探後期型を改良するだけでいけるか?

うーむ。これは妖精さんと話し合わなければならないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「......月が綺麗だね」

「...堂々と口説くとはいい度胸だな。」

「いや、そのつもりしかなかったよ」

 

ーーなかったんかい。

電探の改造に思いを馳せていると、後ろから声がかかった。

初っ端から口説いてくる艦娘は一人しかいない。

あとはセクハラか斬りかかってくる奴らしか居ない。...ロクな妹がいないなオイ。

 

「で、ノイトハイル。何の用だ。できればさっさと寝てもらいたいのだが」

「やだお姉さん大胆〜!...それはそうとして、ドミートリーが帰投してくるようだよ。」

「...そうか。すぐに向かうぞ。」

 

下ろしていた五式自動拳銃を再びホルスターに収め、立ち上がる。

寝静まった丑三つ時に帰投するのも情報統制の意味合いが強い。どうせ前もって候補生の話は独自に手に入れているだろうからその意味もあるのだろう。

寮から港まではそれなりに時間がかかる。

車輌を使うと駆動音などで艦娘達を起こしてしまうかもしれないし、居ないとは思うが夜更かししてる艦娘が居ないとは限らない。

 

こういう時は裏技を使用する。

まず転移で自らの船体に移動して下船するとあら不思議。すぐにドックに到着する。

今回もそれを利用し船体から手っ取り早く桟橋に移動する。

 

照明の落とされた桟橋には数々の軍艦が停泊するだけで、真っ暗で何かを視認することは難しい。補給用か何なのか妖精さんが埠頭の方にコンテナを積み上げていたりと障害物はそれなりに多く、それ故に密会にはうってつけの場所と言える。

ドミートリー・ドンスコイ。例の魔改造潜水艦は影の部隊。今回も会ったこと自体()()()()()なのだから都合がいい。

僅かな排水音と水泡を伴ってのっぺりとした鉄のくじらが浮上する。

筋から海水を排出しながら、潜水艦が停泊している時の高さまで船体を持ち上げると停止。

照明さえなく、真っ暗闇に融けた隠密艦。

そんな潜水艦のブリッジ、そのハッチが金属音と共に開きにょきりと艦娘が姿を表す。

 

前見た姿をまんま。黒を基調に白と赤のラインが入ったスポーツ水着に礼装を羽織ったロシアン。彫りの深い顔立ちは私達に共通するところだろう。

スポーツ水着に直接下げているのか斜めにベルトを巻き、六式自動拳銃(11mmハンドガン)をホルスターに入れた姿は様になっており、任務に慣れを感じさせた。

 

「...ドミートリー・ドンスコイ、任務を遂行し無事帰投しました」

「うむ、良くぞ帰った。何か報告する事はあるか」

「...いえ、特には。」

「そうか。貴官には一週間の休暇を与える。十分に身体を休めてくれ」

「はっ、感謝いたします。あぁ、そういえば深海棲艦か所属は不明でしたがソロモン沖にて哨戒機を探知いたしました」

「...何?」

ソロモン沖といえば、私達が苦労して開放した海域ではないか。

もう何か来ているのか。ハイエナ根性逞しいな。見習いたくはないし撃滅したいが。

手慰み程度にデータベースにアクセスすると、ソロモン沖近海に哨戒機を出した記録は無し。

となると深海棲艦かハイエナだろうか。最近輸送船団は見かけるがそれ以外はまず見ない。

 

あぁ、輸送船団というのは無論大日本帝国海軍の輸送船団だ。

20隻以上の大型貨物船と護衛に沖ノ鳥島警備府の二個水雷戦隊が派遣されてきてソロモン諸島に何やら建造しているようだ。

まぁいつもの海域開放→鎮守府設置→鎮守府起点にさらに海域開放のスタイルに基づいた新鎮守府だろう。

着任してくる奴が誰かによって私達の苦労が色々と変わるのだが。

ソロモン諸島とナウル島は割と近い。700km程度しか離れておらず、やる気だけば一日で往復も余裕だ。航空機的にも一瞬で着く範囲だし、何よりも防空圏内なのだ。

そんな『お隣さん』にクソ野郎が着任したら私絶望する。すんごい疲れるもん。

ーーーん、でも大本営も分かっているようだ。「アイツ」を着任させるつもりらしい。

 

 

「...お姉さん?」

「......んぁ、すまない。ドミートリー、休暇後で構わない。ソロモン沖をちょいと哨戒していてくれまいか」

「はい、かしこまりました。仮設拠点などは」

「要らぬ。近くには新設の鎮守府もある事だし、どうせだ。偽装しておけ。こちらでペーパー面は偽装する。...そうだな、伊号潜水艦600型とかどうだ。」

「それでよろしいかと。」

「後で妖精さんに作業してもらおう。」

 

深海棲艦に間違われて警戒でもされると厄介だ。

新鋭艦とかいう設定にしてナウル鎮守府が試験運用している伊号潜水艦という事にしておく。

一応原潜の形状を小改造したものだから伊号とは程遠いのだがどっかのチート艦隊も同じような事してX艦隊作ってたし大丈夫いけるいける。

[イ-600]とか書いておいたら大丈夫だろう。艦娘の方はまぁ大丈夫だろう。

薄い金髪だけど日本艦娘の癖に緑とか赤とか色々いるし。うん。

 

ドミートリーの船体が工廠へ向かったのを見送って私達も帰路へつく。

......む、仕事が増えたな。

 

「ノイトハイル、鼠だ。()()はするな。捕縛しろ」

「はいはぁーいっ!」

 

それを残してノイトハイルが消える。

風を切るような鋭い音と、白いぶれた線が暗闇に浮かび上がり、滲んで消えると再び静かな夜へ戻る。

 

「ノイトハイル、部屋に運んでおけ。あとどうせ見ているだろうから言っておくがリバンデヒ、カイクルは私の私室に来るように」

『はーい!むふふふふふー』

『了解よ、ドミートリーは何と言っていたのかしら』

「別に、ハイエナが湧いてきている程度だ」

『姉さん、尋問道具は必要か』

「要らん。別に痛めつけるつもりはないからな。」

 

ツカツカと寮へ戻る。

そういえば、高速移動術の欠点は帰り道は徒歩という点だろう。うん。どうにかならないものか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝静まった艦娘寮。

その内私達のサービス残業に考慮されて離れた場所に作られた私達アメストリア型戦艦の私室に入ると、妹達が勢揃いしていた。

...全員武装している事に関しては突っ込まないでおく。

 

ちらりと視線を床に移せば転がっている哀れな贄が一匹。

手足を縛られ、首にも掛けられていることから動いたら首が締まるものだろう。

ノイトハイルの趣味がうかがえる。悪趣味の外道系ドSめ。

猿轡に目隠しまでされている徹底ぶりで僅かに身体が震えているのは見間違えではないだろう。私だってその立場は怖かった。

 

「カーテンは全て閉めておけ。リバンデヒ、立たせろ」

 

カイクルが素早くカーテンを全て閉め外の景色を消すとノイトハイルが照明を最低限に落とす。そしてリバンデヒがナイフで首につながる縄だけを切り落とすと贄の脇に手を差し込んで無理に立たせた。さりげなく触っているのには目を瞑る。何処に、とも言わん。

 

「リバンデヒ、猿轡と目隠しは要らぬだろう。」

「そうね。何かできるわけでもないし」

 

そう言って贄から猿轡と目隠しが取られ、顔が露わになる。

姫さまカットと言うのだったか。前髪は切り揃えられ、髪は白いリボンでひと束に纏められた男モドキ。純日本人の整った「綺麗」という言葉がよく似合う顔は随分と暗い。

何だろうか、殺されるとでも思っているのだろうか。

 

「さて谷村中尉、下手人はどうせ本家だろうし詳しくは聞かんし興味もない。重要なのは貴官がどういう存在か、だ」

「そう、言われましても。僕は谷村家の者としか。」

「...あぁ、無理に取り繕う必要はない。」

「ーーどういう、意味でしょうか」

「ふふ、君さぁ。戸籍間違えてないかなー?」

「いえ、間違いなど」

「そう、あくまで貫くつもりなのね。随分と固く結んでるみたいだけど、息苦しくはないのかしら」

「......」

 

...黙ってしまった。冷や汗がすごいから、どう弁明しようか考えているのだろう。

別に私が問いたかったのそこじゃないんだが。

 

「そうか。リバンデヒ、剥いて良いぞ」

「...あらお姉ちゃん大胆ね。」

「リバンデヒ、貴様は食い物にしたいだけだろう」

「だよねぇ〜。正直言って可愛いしねこの娘」

「...ひぃっ、わかりました!ぼ、僕は性別を偽っていました...女、です」

「そうか。知っている。」

「...へ?」

 

もしかしてバレてないと思っていたのだろうか。

どう見ても骨格は女性のそれだったし、顔立ちも中性的...でもない。

髪質も随分と良いようだしな。今はリバンデヒの餌食になっているが。

 

「貴官はどう見ても女性であろうに。呉海軍大学校の時点で分かっていたぞ」

「...そん、な...」

「まぁ別にそれは良い。本題は貴官、これからどうしたい?どういう存在になりたいのだ」

「......考えれる立場にありません」

「思考停止するなよ小娘。私はどうしたいかと問うておるのだ。さっさと答えぬか」

「...私は」

「答えなければ貴官はこのままリバンデヒかノイトハイルあたりの人形にするが」

「......私は、」

「どうする。何を選び、何を捨てる?」

「......提督となりたいのは、本心です。」

「ふむ、そうか。......そうかそうか。ではよろしく頼む。『お隣さん』よ」

「......?」

「...あら」

「ほう」

「むふふ、お姉さんこの娘気に入った?」

「...ふふ。嫌いではないな」

 

そりゃわからんわな。帰ってから辞令が出る予定らしいし。

何よりも、この娘の目が気に入った。私達と違って澄んだまっすぐな瞳。

例えるなら神通。強い決意が芽生えた覚悟を決めた者の眼。

私は嫌いではない。そういう者。

 

「リバンデヒ、放してやれ。」

 

縄が解かれ、彼女は崩れ落ちる。

確かにちょろっと殺気を乗せて聞いたが、人間には大分堪えたようだ。

肩で息をして滝のような汗をかいている。

 

「ふむ、そうだな。カイクル、客室まで送ってやれ。リバンデヒとノイトハイルは解散だ。」

「承知した。谷村殿、私が案内する。」

「は、はい...」

「あぁ、谷村中尉。一応言っておくがこの事を誰かに漏らせば其処に大型噴進弾が降り注ぐと思え」

「ーーーっ!!!」

 

さぁぁっと顔を青くする男モドキ。

どうやら意味がわかったらしい。中々に頭が回り、記憶力の良い娘らしい。

どっかの白い家事件の犯人もわかったらしい。

 

これは磨けばとんでもない逸材に豹変する可能性があるな。少々肝が小さいがこれは実戦不足によるものだろう。

ある程度の戦場を体験すれば『軍人』として完成された言い換えれば優秀な()が出来上がるだろう。と言っても噛みつかれる危険性を孕んでいる猛犬の方だが。

 

「お姉さんがここまで気にいるとは珍しいね」

「そうね。大体敵か上官だものね」

 

確かに。ここまで素直に気にいるのは初めてだったと今更に気づく。

同性であるというのが一番の根拠であろうが、それ以上に()の経験や知識が語る。

「こいつは伸びる」と。

磨いてみたいと思った。ほんの気まぐれ。しかし私達の持つ全ての知識を与え出来る限りの技術を与えてみたい。私の元で磨いて作ってみたい。

丁度『お隣さん』になるようだし、暇があればお邪魔するとしよう。

 

「ふふ、使()()()じゃないか、あの娘は」

「まぁ、そうね。もしもの時は肉人形にでもすれば良いし」

「んーー、僕は奴隷にしたいなぁー。そろそろお姉さん奴隷にするの飽きちゃったんだよね」

「ならばやめれば良いだろう。」

「ん、そうだねぇ〜。うんそうしよう!お姉さん、現時点を持って僕の奴隷さんを解任しまーすっ!」

「...殺すのか?」

「まっさかぁ!()()お姉さんだからね。総旗艦だし。」

「......そうか。」

 

ふぃーーー。皮一枚で繋がったぜ。

ノイトハイルは時折私を玩具のように扱って弄ぶ時があり、割と殺気を乗せた攻撃や苛めをされた事も多々ある。殺されるかと考えた事は両手では足りない。今回もその類かと邪推したのだが、今回はただ単純に飽きただけのようだ。よかった。

 

「...兎も角、明日から少々予定を変更する」

「具体的には」

「そうだな、実習だ。私達の練度を見せるのは、頼りにされるのは迷惑だから嫌なのだが仕方あるまい。教本を見せる必要があるだろう」

「んー、その点は参考かなぁ。女の子に依存されるのは悪くないけど頼り切りにされるのはウザいからねぇ〜。それで、どぉーするのぉ?」

「...近海、いや日付変更線まで短期遠征を決行する」

「あらあらあらぁ、其処まで気に入ったのね。編成はどうするのかしら。」

 

うるさいわい。私の欲でやるのだ。しかしメリットは大きいしあちらのメリットも大きいからまあ先行投資ってとこだ。

日付変更線はご存知の通り都合よくグニャグニャした奇怪な線なのだが、あの付近はまだ未開放の海域で私達がよくレベリングに使用している海域である。

 

アレだ。1-5とか2-4周回とか3-2-1とか2-4-11とかあんな感じだ。

あそこを一週間連続篭りきりで強制レベリングすると3回で99まで上がる。

これのおかげで新参艦でも一瞬で戦力にする事ができたし、迅速な戦力拡張が出来たのだ。

誰もが死んだ目になるが。

要するに馴染みの戦場だから正直誰でも活躍するのだが、さてどうしたものか。

最近作戦に出撃したのは主に第二艦隊の面々。主に戦艦、空母だろう。

ならば今回は重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦を連れて行くか。

レベリング序でにぽいぽいは確定として念の為川内姉妹...いや川内に熊野、鈴谷。青葉と衣笠もだな。

 

「私を旗艦に大和、熊野、鈴谷、青葉、衣笠、利根、川内、矢矧、夕立、初月、親潮だな。」

「...まぁ妥当かしらね。空母は良いのかしら?」

「む、赤城も招集してくれ」

「うふふ、はいはい。」

 

ニンジャ、鈴谷と夕立以外は早起きの艦娘達だ。恐らく大丈夫だろう。

...いや。夕立はその日当番だな。

鈴谷ならば熊野あたりが起こすだろう。

ニンジャ?妹がしっかりしてるし、やる時はちゃんとやる艦娘だから大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、当番でもギリギリに起きた夕立が「ぽいぃぃぃぃぃぃ!!」って叫びながら集合したのが最後だった。恐らく起こしてくれる艦娘が非番だったのだろう。

 

「では行くぞ。各員乗船せよ!候補生らは私に乗って頂きたい。」

「「「はいっ!!!」」」

 

昨日の事があってか心なしか距離がある男モドキに精神を削られながら、私は妖精さんに指示を出して一式重武装車輌と一七式戦車を一両ずつ寄越してもらった。

 

無論一式重武装車輌は候補生用。一七式戦車は私が()()用だ。

いやー、埠頭を一七式戦車で走ると風が気持ち良いんだよな。

アメストリア陸海空軍の車両にオープントップはないので、海風を感じながら走るのは無理なので、外に出やすい、というか上向きにハッチがある奴に限られるのだ。しかし上向きのハッチとか銃座しかないので、仕方なく私は一七式戦車という幅は5mある平べったさを活用して走る板的な使用法をしている。因みにこれを話したらリバンデヒに冷たい目をされてカイクルからは呆れられノイトハイルからは大爆笑された。妖精さんにも心なしか冷たい目線を向けられるのが一番のダメージだったが。

 

 

 

 

船体側面の出っ張り。ミサイルハッチのある台形のバルジは海水を注排水して姿勢制御をする何気に重要な区画だ。中空装甲にバルジ、姿勢制御と大事な枠割を果たすためにミサイルハッチと骨組み以外の区画は装甲板で囲われた巨大なタンクと迅速な排水が行えるように途轍もなく強力なポンプが配置されている。具体的に言えば、一分で利根川を干上がらせる事ができるキチガイポンプを左右二十機ずつ配備されているからこそ私達アメストリア型戦艦は500cm四連装砲の斉射連射を実現しているのだ。

 

そのバルジの側面に開く注水口が開き、莫大な海水をがぶ飲みしてゆく。

溜まり始めたのか徐々に喫水線が下がり、ぶら下がり状態のタラップが降りてくる。

タラップが埠頭に接するのを合図に注水口は閉ざされ、注水が止まる。

 

「さて、私の船体は大和型以上に複雑怪奇かつ巨大だ。もう遭難すれば数十年単位で陽の目を見る事ができなくなると思え」

 

そう警告してタラップを登って行く。

後ろで唾を飲み込む声が聞こえたが、気にしないでおこう。普通に着いてきたら全く問題がないことだし。

 

唐突だが、私ことアメストリア型戦艦の艦内に入る扉は以外と少ない。

攻撃で軽装甲部が破損したならともかく、万全の状態で艦内に入るには二十ヶ所ほどある三重ロックの水密扉か、露天艦橋から第一艦橋に入るか。そっちもハッチがあるが。

 

電子的・物理的に防御された扉で現在の地球の技術では無理に開けることはまずできない。

原爆が隣で爆発しようがノーダメで凌げるためまぁ物理的には無理だ。薬品もそもそも妖精さん印の特殊装甲は構成分子、原子から違う、()()()()()()()()()()()なので無駄である。そもそも対策してあるに決まっている。

 

一点突破がご自慢のパイルバンカーでも、化学反応で一気に高温で焼き切ろうとしても一切を通さない鉄壁の守備なのだが、同型艦との殴り合いでは...まぁ、無駄に終わる。

500cmやら150cmやら質量の桁違いな攻撃の飛び交う戦場においては「もういいや」って諦められているため直ぐに破損する。

 

特殊装甲は相互に支えあっているから強固なのであって扉や隔壁などの独立した小さな部分ではその硬さを発揮することができないから、防ぐこともできない。

だからその後ろには水密扉があったり、通路は海水が流れ込みにくい構造になっていたりするのだが、周囲一帯根こそぎ消し飛ばされるため徒労に終わっている。

いやさ、150cmなら水密扉で海水は防げるんだけどさ。500cmはさすがに無理なんですわ。

 

あぁ、喫水線30mもあるんだから海水来ないだろって?

いやいや、姿勢制御装置で戦闘時にはタンク一杯に海水溜め込んでるからさ、喫水線が約5mまで下がってしまうから、海水ドバドバ甲板に乗り上げるわけですよ。

後はお察しください。

 

そんな強固(500cm砲弾を除く)な扉が第一甲板には二十ヶ所あるんだが、塔楼付近には四ヶ所しかない。何故なら外付けの階段や塔楼から増設された沢山の銃座やテラスから直接飛び降りちゃう兵士が多いから。そっちの方が早いらしい。

妖怪だからなせる技。もし人間の水兵だったら「効いたよね、早めのアヴァロン」でも直す暇が無くお陀仏である。

 

兎も角、数少ないハッチから入ると、そこは現代艦のような現代的な通路。天井には光量の高い照明が等間隔に埋め込まれ、壁には第一甲板の艦内図に艦章が刻印されており、よく見ると何かの図形が等間隔に刻まれている。恐らく、艦内での近接戦闘用のM75や予備の太刀やサバイバルナイフ、脇差などが入ったウェポンボックスが内蔵されている事を示しているのだろう。距離は...銃撃戦の基本距離である30m毎。なんで拳銃の交戦距離毎にバトルライフルが配備されているのかは理解に苦しむが、どうせ難破や座礁などの非常時を警戒しているのだろう。

この備えが設置されたのは以外にも50年前。

 

とある海洋国家との戦闘時に大規模な白兵戦が繰り広げられてしまい、当時私室にしか配備していなかった重火器や刃物が不足。多くの負傷者を出してしまったらしい。

それを反省にこのように過剰な備えが据え付けられているらしい。

アメストリアはやりすぎなくらいに改善するからこれもその一例だろうか。

 

そんな物騒な通路を二回右折、三回左折した辺りで開けた場所に出た。

それぞれの通路の交差点であり、各フロアへ行き来するEVの乗り場だ。

設計当時はエスカレーターを採用して籠城しやすいように、と考えられていたそうだが移動が途轍も無くめんどくさくなるとの理由でEVが採用されたらしい。

他にも指向性短距離転移装置...つまりゲームとかであるマップで一気に移動できるやつを実装しそうになったらしいが、開発が遅れ断念。

今では移動に不便な区域のみに採用されているらしい。具体的に言えば、船体から独立しているバスケットを持つ砲塔の管制室や端っこの機関室などだ。

 

センサーに軽く手を近づけるとホログラムが起動し、[バスケット移動中]と表示され、その下に行き先を選択する為か、船体各フロアの名称がずらりと並んでいた。

エレベーターのバスケットにもボタン式で大雑把な指定は出来るのだが、隅々まで行きたいとなると、こっちを使用せざるおえない。

 

 

あぁ、言い忘れていたがこのエレベーター、上下左右に可動する。何処ぞのチョコレート工場みたいにな。スペースだけは無駄に有り余っているのでこんな設備や艦内道路、資材運搬用鉄道なども完備されている。といっても普段は妖精さんの遊具とかしているのだが。

資材運搬用鉄道は貨物を乗せるスペースに妖精さんが満載されて走っていた時はビビった。

軽くホラーだったし。

 

しかしこの鉄道、乗ってみると案外楽しい。2路線しかないが、何故か大容量量子変換器を搭載した貨物車があるため格納庫から艦首までF-222を持って行くことも可能だ。

まぁ本来の使用目的は万能生産装置から各所に補修資材の運搬や代替え武装の高速輸送だ。

といっても機銃と装甲板乗せて即席の装甲列車にも出来るように、とのことらしいが。

艦内道路も幅は20m。高さは6mと巨大で、これまた一七式戦車が行き来できるようにとのこと。一体なにと戦うつもりなのだろうか。

営倉も多数確認したし。

 

エレベーターに乗り一気に艦橋まで移動した。

見慣れた光景。防弾の関係か天井は低く、配管や配線が這っている。

体育館のような広さには大量のホログラムが並び、大量のプロセスを消化していることがうかがえる。既に出撃準備は整っているようだ。

 

「適当な椅子に座っておいてほしい。ーー出撃用意!錨上げぇいっ!」

''あいあいさー!''

''鎖ぐるぐる〜''

錨が巻き上げられ、機関の圧力が上昇してゆく。

その莫大なエネルギーはシャフトへと伝えられ、初めはゆっくりと、徐々に回転数が上がってゆく。

 

「零速を維持。大和らが離れるのを待って速度を上げる。」

''ようそろー!''

''わっつあも?''

''そろそろ撃ちたいですぞ?''

「...そうだな。今回は軽いレベリングだ。何時ものセットにしておいてくれ」

''あいあい!弾込めかいしー!''

''いえっさ!''

 

砲身が下がり、薬室に実弾が装填される。

一斉に行われた為、そこら中からガシャンという機械音が響き渡る。

主砲、副砲の叩いたような音から45mm対空機関連装砲のSCARのレバーを引いたような装填音。

といっても45mm対空機関連装砲はガトリング式だから装填音も何もない気がするのだが、気にしてはいけない。

電探を見ると大和ら十一隻は既に埠頭を離れ、水門へ向かっていた。

そろそろ動いていいだろう。

 

「速度上げ。同時に武装動作確認をすませるぞ。」

''砲塔くるくる?''

''薬室、問題なしです?''

''弾倉、もーまんたい?''

 

各武装が順番に旋回、上下を確かめてゆく。

初めは主砲から。

前方三基、後方二基の全幅三分の一の大きさを持つ大和砲をそのまま大きくした四連装砲は己が回れる限界の角度まで旋回。同時に最大仰角である45°、そして最低俯角である-5°までクッソ長い砲身を上げ下げした。

 

二番手は副砲's。

150cm四連装砲、46cm三連装砲は塔楼や煙突などを囲む対空砲陣地の一部を間借りする形で配備されている。理由はいろいろあるが、段々畑状だと一列に並んでいても全基可動するこそができるから、というのが一番だろうか。

ともあれ、対空砲陣地の中にポツンポツンと聳える巨砲も同様に旋回と仰俯角の試験を完了。

 

三番手は対空砲。

実はこれが最大の目的だ。

前々より妖精さんに開発を依頼していた()()が完成したのだ。

 

アメストリア軍においては標準口径である88mmを使用した回転砲身の機関砲。

遂に実装したのだ。88mm四砲身対空機関連装砲が。

初月には20.3糎六砲身対空機関連装粒子砲を積んであるが、アレの小口径版だ。

それを妖精さんが遂に完成させたのだ。それを私は早速実装。左右に100基ずつ搭載してみた。旋回半径は7m。装甲を含めると全幅は10.4m。77口径と超長砲身で発射レートは1080発/分。つまり毎秒で三発撃てる。これぞ回転砲身の強みだろう。

しかも88mmは榴弾、徹甲弾を含む多種多様な砲弾を装填できる点は強力な武器になる。

今迄迎撃できなかった攻撃もある程度撃破することができるようになるだろう。

そうだな...頑張れば150cm砲弾までならいける。

しかし500cm砲弾は防げない。

 

ならば防げる手段を作るまで。

それで新規開発した()()()

それが【128mm三砲身対空機関連装砲】だ。まんま88mmや20.3糎の拡大発展型だが、大口径故に火力と突破力がある。

だから使用する砲弾は500cmの放出するエネルギーを突破する為に態々作った専用の特殊砲弾。プラスドライバーのように十字に砲弾の先端が加工された専用砲弾。

とある結界が彫り込まれている為500cmでも届く。しかしこれはまだ実戦段階に過ぎないのでこの128mmAAは試験砲という扱いになっており、まだ対空砲陣地の一角に一基のみ配備するに留まっている。

正式採用に至れば左右に50基ずつ配備される予定だ。

その代わり45mm対空機関連装砲が合計700基程減少してしまう。

まぁ必要な犠牲だろうとは思っている。外した45mm対空機関連装砲は島の方にまわした。

 

「こちらアメストリア。大和、そちらはどうか」

『大和です。こちらは既に準備完了です。例の海域に向かうのですね?』

「うむ。日程は二日の予定だが、伸びる可能性もある。食料などはこちらで手配するが、」

『分かっています。念の為二週間分の備蓄を、ですね?』

「...うむ。では向かうとしよう。陣形は複縦陣。速力は70ノットを維持だ」

『了解です。』

 

よく育ってくれたものだ。

私の指示があるや否や、大和が令を発し艦隊が変化する。

各艦が舵を切り、単縦陣から複縦陣へ。その時間実に20秒。

船舶用粒子エンジンが生み出す莫大なエネルギーに支えられた速力と、凌波性の高い船体形状のなせる技だ。

そして増速。ぐんと艦隊の行軍速度が上がり、一気に距離を離されてゆく。

さて、此方も動き始めなければ。

 

「速力40ノットに上げ。行くぞ」

「よ、40ノットっ!?」

「この巨体が、ですか...」

「うむ。伊達にナウルの切り札を担っておらんのでな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、日付変更線近海。

ホログラムに表示される海図にも日付変更線がくっきりと表示され、いつもの海域に来たと漸く実感が戻ってきた。

所謂裏作業だったし、私達は見守るだけだったので特に意識しなかったのだが、ここはかの神通教官が猛威を振るう十八番の海域だ。だから高速レベリングができるんだけどな。

 

ここは駆逐艦から戦艦まで全種がレべリングできる珍しい海域だ。

しかも五十代では4回でレベルアップするので凄まじい経験値効率で、合宿すると三週間後にはlv99に変貌している。

その上この海域に出没する深海棲艦は多彩で潜水艦や水雷戦隊、輸送船団に通商破壊艦隊。そして連合艦隊まで実に多種多様でわりかし役に立つ実戦経験が積めるのだ。

 

「さて、候補生殿。ここは日付変更線に程近い海域で、何時も我々がレべリングに使用しています。ここに来れれば大概の艦娘は高練度となり、百戦錬磨の熟練艦となります。

それが今後の鎮守府の戦力として中核を担うのです。特に谷村中尉、貴官はお世話になるであろう。」

「はっ...どういう...?」

「何、そのままの意味だ。大和、準備は」

『はい、既に完了しています。』

「よし。これから行うのは二個艦隊に別れてそれぞれで戦闘。レべリングを行います。この海域での単艦戦闘は非常に危険なものがあり、一日もせずにK.I.A.となります。

最低でも四隻は必要です。かつ、編成は姉妹ごとに区切った方がよろしいでしょう。連携が取れますから。今後の艦娘装備は我がアメストリア製の高性能な兵器へと置き換わって行きます。貴官らもレべリングをする際は留意してください。そのアメストリア製兵器群を持ってしてもこの海域、付近では単艦は危険なのです。」

 

これは経験に基づく。

戦闘記録の敵艦一覧にはエリートやらフラグシップがゴロゴロ。一部は姫級とやりあって撤退している例もある。その際にはナウル鎮守府では滅多に起こらない全艦大破。しかもゲームで言うHPゲージが1残った轟沈寸前。強者がウジャウジャしてる危険海域なのだ。

 

いずれは殲滅しなきゃいけないのだが、大本営からこれと言って通知もないので、上層部はここを見なかったことにしているらしい。

上層部にとっては戦争が長引くのはデメリットもあるが、政治的観点からすればメリットしかないからな。

特に今の日本みたいなとこだと。軍部が発言権を持った国は悉く滅亡しているのだが、それで反省しないのが人類だ。古代からずっと繰り返しているし、これからも繰り返すのだろう。

少なくとも私達は沈まない限りそれを見続けることになる。

見切りをつけるのが先か、精神がやられるのが先か。他の艦娘は多分ダメになる娘が多いと思われる。トラウマ持ち多いからな。

 

人間の最大の敵たる魔物はズバリ権力だ。

穀物と共に誕生した階級というマモノは現代に至るまですくすくと莫大な血と金を吸い上げて育っている。

「全ては己の権力の安泰の為」

これを至上の行動原理とし、今後戦局を良い方に傾けたかもしれない優秀な芽を保身の一心で潰し、優秀な、後世で傑作と言われたかもしれない兵器を賄賂や癒着で見送り惨敗したり、自分たちにとって目障りな物は全て敵として排除する。

 

これを一般に「老害」「上層部」と呼ぶ。

結局そいつらが居たせいで正確な判断が下せたのにも関わらず保身の為に兵を犠牲にしたり、重大な決断をまげ、敗戦へ突っ走っていったりと、居るだけで害となる厄介極まりない害悪なのだが、症状たる強欲な権力欲による地位や権力の所為で下手に動かすことが出来なくなってしまう。頭を切ってもまた次の害悪が生まれるだけで、根を断ち切らないと無限に湧いてくる蛆虫のような危険極まりない病なのだが、まぁ対処法はある。

民衆が「テメェ邪魔。土に還れ」と主張すればいいのである。

しかし民衆と書いて愚民と読む群衆共は基本お粗末な思考回路しかなく、三流小説のような白と黒がはっきりした物語でしか動くかず、普段は不満ばかり漏らすこっちもある意味邪魔だが必要な厄介な存在なのだ。「民なくして国無し」とあるように民がいるから国として存在できるのだが、その(愚民)は感情で動く制御が難しい塊なので、政府は常に板挾みされる不憫な立ち位置に立たされる。

そんな中稀に愚民の不満を巧みに利用して誘導し、革命を起こさせる自己中が発生する。アレは厄介だ。自分が正義、愚民を動かしているだけで世の中俺の手の中で踊ってると勘違いしてしまっているかなり頭のイタイ馬鹿共だ。

ああいうのはさっさと行動を起こす前に処分するに限る。

愚民が祭り上げて現人神現象が発生して手に負えなくなる。シベリア出兵など良い例だ。

あれは共産主義の感染を防ぐために当時の列強(笑)が兵を送って見事に失敗した。

結果ソ連が誕生し、世界史は大きくブラックな方向へ転がり落ちて行った訳だ。ソ連は兵器開発は優秀だが...うん。人間のレベルが低すぎて私は嫌いだ。

 

ーーードォォォォォオン....

 

 

砲声に意識を戻され、遅れて電探が敵影を捉えたのか、アラームが聞こえた。

砲声は46cmのもの。私の副砲が稼働したと言う事だが、それが示すのは大和砲をつわざるおえない深海棲艦を確認したと言う事。

直ぐに確認すると、アメストリアスペックの大型戦艦が多数。

恐らく私が来た事に対する緊急措置なのだろう。打てば帰ってくるその反応は素晴らしい。レべリングが捗る捗る。

 

「全艦、戦闘用意!格好の獲物だ。経験値に変えてやれ」

『承知しました!大和、出撃します!』

『一捻りで黙らせてやりますわ!』

『さてさて......突撃いたしましょう!熊野には負けられないし?』

『第一遊撃部隊、出撃ですねぇ?ガサ!一番乗り、行きますよぉ!』

『青葉!待ってってば!衣笠、出撃よ!』

『その艦、我輩が貰ったぁ!』

『砲雷撃戦!よーい、てぇー!このまま夜戦だぁーっ!』

『砲雷撃戦、始めます!大和、支援をお願い』

『さぁ、素敵なパーティー始めましょ!』

『敵艦隊発見、合戦準備。撃ち方ー、はじめ!初月、行きますよ!』

『分かっているさ。敵は多いぞ、砲雷撃戦用意!行くぞ!』

 

一斉に軍艦達が動き出す。単縦陣から一気に二つの単縦陣へと乱れぬ艦隊行動で分裂したかと思えば更に分裂。合計4つの集団に別れそれぞれで砲雷撃戦を開始した。

主に姉妹ごとや特に中の良い艦娘達で集まって砲撃。蹂躙を開始している。

アメストリアスペックに最大改修の装備だ。強いに決まっている。

 

現に群がってきていた水平線を埋め尽くす、ざっと1000隻を超えていた大艦隊も前列が壊滅しており、ごおごおと燃え黒煙が立ち込める中連発した炸裂音があちこちから聞こえてくる。

駆逐艦や軽巡洋艦は至近距離...10m以内まで一気に肉薄して集中砲火を浴びせる機動性に物言わせた変態戦闘を行っており、重巡洋艦は基本的に空からやってくるレシプロ相手に対空射撃やその親元の根絶を主に担当。

自然と役割が分担され、効率的に殲滅が進んでいる。

 

候補生達はその戦いっぷりに食い入るように見ている。

いやいやこれあんま参考にならんから。

......それにしても妙だな。何時もなら噴進機がわんさか押し寄せてくる癖に今回はレシプロだ。親元を見ても護衛空母だったりと骨董品ばかり。

これはあれだろうか。在庫処分的な、私達に処理を押し付けてきている感じだろうか。

何か癪だ。罠な気がする。

 

''艦娘さん!左舷に高速で接近する敵軍集団を確認です?''

''ですです?''

「承知。青葉、衣笠、夕立は処理に当たれ。喜べ。éliteだぞ」

『りょぉーかいです!ガサ、先に行きますよー!』

『ま、待ちなさい!青葉ーっ!』

『ぽいぽいぽーい!!!』

 

派手に水柱を上げて突撃する三隻。

先制攻撃として数十発の砲撃を食らわると敵艦隊の先頭にいた警戒艦隊が火の玉となって爆散。周囲に破片を撒き散らした。

しかしそれには目もくれず三隻は速度を更に上げて突撃すると今度はグラニートを発射。

合成速度によっていつもより気持ち速いグラニートは敵主力と思われる大型戦艦に突き刺さり船体を真っ二つに叩き割る。二つになって沈み始めた船体を突き破って突撃した青葉はそのままキックして一気に舵を切ると周囲にいた深海棲艦に主砲弾をばら撒いてゆく。

ドリフトしているにもかかわらず一発もハズレがないのは青葉の練度が高いお陰だろう。それを見て焦ったのか衣笠は増速して青葉の餌食となった戦艦の隣の戦艦にラムアタック。艦首を切断すると犠牲者を置き去りに航空母艦を平らげてゆく。

...いやらしいミサイルの使い方をする。SM-2を45mm対空機関連装砲で撃ち抜いて煙幕として利用したりワザと自分に当てて急激な方向転換を実現している。これはある程度装甲のある重巡洋艦だからこそできる力技だ。軽巡洋艦でやろうものなら.........いや、川内はやってたな。神通も。...あれ?

 

『よりどりみどりっぽい?でも、夕立はちびっこを平らげてあげる!』

青葉姉妹の後から続いた夕立は衣笠の犠牲者を盾として利用しつつ航空母艦に張り付いていたものの衣笠に軽くあしらわれた深海棲艦の軽巡洋艦、駆逐艦を次々とワンパンしていった。

流石バ火力。しかもそれだけに飽き足らず、先程衣笠が披露したミサイルを己の船体にぶつけて転舵する高等テクニックをさも当然のように使ってスケートで障害物を避けてゆくようにスルスルと奥深くに侵入。固まっていた敵水雷戦隊を三つ殲滅した。

何だかの狂犬。神通も教えてなかった高等テクニックを何故にさも当然のように使ってるんだ?

もしかして、もしかしてだが、衣笠のを見取り稽古に一発で習得したのか?

もしそうだとしたら夕立は戦闘の天才だろう。天性の才能を持っているに違いない。

あ、でも突っ込み癖は治っていないようだ。

深く入り込みすぎて戦艦群に包囲されている。ざっと三十隻か。

 

『ぽ、ぽぃぃ〜〜っ!戦艦は反則だってばー!』

「はぁ...妖精さん、主砲、てぇー!」

''おけおけ。''

''かしおまりー!''

''ふぉいあー!''

 

私の声で第一砲塔が旋回し、三番砲のみが僅かに仰角を取ると、一拍置いて閃光が放たれた。

遅れて轟音が響き渡り、同時に囲んでいた敵戦艦と、直線上にいた深海棲艦を全て抉り取って遥か後方で大爆発。大きな爆炎が確認できた。

 

『アメストリアさん!ありがとうっぽい!』

「いや、礼には及ばん。しかし突撃は程々にな。」

『はーい!分かりましぽぃぃぃぃぃぃぃぃいいい!?』

『おぉ!?!?う、浮いてますぅ!?』

『きゃぁぁぁぁ!?!?』

 

突如、夕立のいる辺りがナニカに覆われ、見えなくなった。

いや、そんなものじゃない。青葉や衣笠のいた区域も纏めて、何か下から来た物によって全てが見えなくなった。幕ではない。大型の、それも超弩級の巨大構造物だ。

何が起きたのか、分からない。

 

慌てて窓に駆け寄り、構造物の全貌を掴む。

見上げても見切れ、首が痛くなるほどに全高が高い意味不明の物体。

莫大な量の海水を押しのけたせいか未だにその物体の周りには海水が舞い上がっており、所々にポツンポツンと黒い点がある。

あれは......ーーーッッッッッ!?!?

 

あれは、船だ。

先程まで駆られていた深海棲艦達。生存艦、残骸問わず、全てが打ち上げられていた。

それが意味する事は、艦娘もまた巻き込まれたという事。目測で測ったこの超巨大構造物は全幅は軽く1kmを超え、全長は計測不能。おそらく5km以上。

こ、こんなのを深海棲艦は持っていたのか...?

こんなの範囲殲滅ができる最強兵器ではないか。

......カイクルがやられたのは、コレか?あの船底の大きな凹み。

まるでパイルバンカーにつらぬかれたような弾痕ではなかっただろうか。

 

やられた!

 

「全艦!緊急事態だ!速やかに戦闘を中止し、一刻も早く全海域を離脱せよ!どこにあれがあるか分からないぞ!」

 

そう。わからないのだ。三次元立体全天電子探査機を持ってしても、探知できたのはただの海底。今回の巨大パイルバンカーの射出口と思われる巨大な穴以外、怪しい点が伺えないのだ。

 

「候補生!座席に座ってベルトで固定しろ!これから何が起こるか予測不能だ!」

 

慌ててベルトを締め始める候補生を横目に私は探知レベルを最大に拡大して警戒。そしてやっと沈み始めた巨大パイルバンカーの方向へ急行する。

目が良いから分かってしまう。見えてしまう。真っ逆さまに落下してゆく数多の艦艇達が。

既に着水した深海棲艦の末路が。

ビルから自殺したように、空中分解した機体のように。跡形を残さず爆散する。

私は青葉達のそんな姿を見たくない!...でも対処策は見つからない。

 

どうするか、分からない。

でも、動くしかないだろう?

 

しかし、青葉達は私の予想を超えた対応をした。

Aチームよろしく、主砲を海面へと放ち、姿勢制御をしてのけたのだ。

でも、現実はそこまで甘くなかった。

 

海面には深海棲艦の残骸が山となって漂っている。

その中には先程真っ二つになった深海棲艦の残骸もあった訳で、それがナイフのような役割を果たし、青葉はそれに見事に着弾。

船体後部が切断されてしまう。機関とスクリューが持って行かれ、浸水が始まったのか徐々に沈み始めた青葉。

更に不幸は続く。其処に深海棲艦の駆逐艦が着弾。上部構造物に追い打ちをかけた。

不味くないだろうかあれ。

しかし私もそれどろこではないのだ。

 

「た、対空射撃開始!何としても落とせ!」

 

私も向かった訳だから、私にも深海棲艦が降り注いできたのだ。

様々な艦種の深海棲艦が急降下爆撃を敢行してくるのに対し、私は新兵器の88mm四砲身対空機関連装砲と128mm三砲身対空機関連装砲をフル活用。

駆逐艦や軽巡洋艦、重巡洋艦位なら迎撃できる。

現に爆散した駆逐艦の破片が降り注ぎ、第二主砲の横に突き刺さってゆく。

これは私の船体の至る所で見られ、あちこちで残骸が直撃し、一部では火災が発生している。

しかし私はいい。それよりも青葉を救出しなければ!

 

ーーー衣笠と夕立は?

何処かと探し出すと、衣笠はすぐに見つかった。

艦首を海面と垂直に向け、突入したところだったからだ。

200m級の水柱を上げながら着水した衣笠は意外にも直ぐに浮上した。

しかしその姿は無惨の一言。

 

艦首は完全に潰れ、衝撃に耐えられなかったのか船体前方にあった主砲三基は根元から粉砕されており、押し潰された主砲の残骸が艦橋に直撃。装甲のお陰かある程度は防げたようだが、発射機構等、機構の都合上剛性が高い主砲周りは比較的原型を留めていたせいか、尾栓付近の部品が突き刺さっているようだ。

しかし指揮所には破片が届いてはいないようだ。生存率は高いだろう。

 

「......青葉、応答せよ」

『ーーーーーー』

「...衣笠」

『こっちは大丈夫よ!私は良いから青葉を!』

「承知。直ぐに回収する。」

 

急いで、しかし慎重に船体を進める。

未だ降り注ぐ破片共は対空砲に任せ、残骸は圧し潰す。

私が発生させる波の影響を青葉達にできるだけないように、慎重に慎重に舵をとる。

スクリューの回転速度を変更しても、それが反映されるまでにはそれなりに時間がかかる。

よって私は未来を想定してスクリューの回転速度を調節して舵を取らなければならない。

海流の最新データや漂流する残骸の精密な位置データそれら全てを収集して解析。軸に当たらず、かつ不必要に波を発生させないように細心の注意を払って操舵している。

 

これ。比較的に、だが中央演算処理装置にかなりの負荷をかける。

塔楼のあらゆる出っ張りなどに配置された各種観測機器は勿論、その予備機材までもフル活用しデータの収集を続ける。

巨大パイルバンカーが他にもいるかもしれないし、あったとしてそれの観測や何か予兆などの情報を集めなければならない。新兵器が登場した場合、まずはその新兵器に関する情報を観測、収集をしなければならない。

知らなければ対策のしようがないからだ。巨大パイルバンカーはまさか海底を移動しているとは考えづらい。海底の振動も観測されていないしな。

だとすればパイルバンカーは固定式。埋まっている状態を探知できれば、それだけでも十分な成果が得られる。なんとかしてパイルバンカーの位置を特定しなければこのままでは連れてきた艦娘達に甚大な被害が及んでしまう。既に重巡二隻が轟沈寸前まで喰われたのだ。

 

 

ーーー夕立、どこいったし。

駆逐艦だからよく飛ぶのは理解できるが、どこいったのだろうか。

未だ滞空しているとは考えられない。曲がりなりにも100mを超えた特殊鋼の塊だ。

割りと重い。既に落下していてもおかしくはないのだが。

 

「妖精さん、夕立はどこに落ちている?」

''さぁ?''

''わからんですなー''

''でもでも船体に駆逐艦が軟着陸してきてたです?''

''ですです?''

''第二艦橋潰れたです?''

''帰ったらまた改造です?''

 

......なんという事でしょう。

恐らく夕立は船底をうまい具合に第二艦橋の塔楼に当てて、クッションにしてのけたのだ。

確かにさ。間違ってはいないとは思うのだが、私にも気付かせんとは...

いやまぁ青葉を助ける事を第一にしていたから船体に刺さってくる残骸は気にしていなかったが、知らぬ間に駆逐艦が刺さっていたとは。

 

駆逐艦...刺さる...ウッ、アタマガ.......。

 

「...夕立、一応聞くが、無事か?」

『勿論っぽい!ちょっとヒヤッとしたけど大丈夫!』

「...そうか。そのまま待機していてくれ。妖精さんが回収する。妖精さん、夕立は船体に固定してくれ。青葉、衣笠は内火艇格納庫に回収。急いでくれ。」

 

下手すれば轟沈してしまう。幾ら硬くて丈夫な特殊鋼製の船体だろうと、こういうスケールの違う物理による攻撃には耐えられない。空軍じゃあるまいし。

側面のハッチを解放すると、妖精さんがテキパキと回収用クレーンを利用して喫水線が大幅に下がり甲板が沈み始めていた青葉の船体にワイヤーを張り巡らせる。

このワイヤーも妖精さんの特製らしく、一本で大体10000tぐらいまでなら支えられるらしい。無論釣りではないので複数のワイヤーを駆使してバランスをとって釣り上げる。

私も艦娘を救助する為に格納庫で作業を見守っている。

 

妖精さん達は手際良く青葉の船体にある出っ張りにワイヤーの金具を取り付けてゆく。

一瞬にして吊り橋のような状態になった船体はゆっくりと持ち上げられてゆく。

破口から大量の海水を吐き出しながら徐々に露わになる無惨な船体。上部構造物には残骸の直撃で艦橋後部から後部主砲に至るまでの広範囲をペシャンコに潰され、

切断された後部は断面図を見せながら海水を吐き出す。随分とコンパクトになってしまった船体。これは竜骨も逝ってしまっている為、作り変えるクラスの以前加賀達にやったような大工事が必要になるだろう。

また妖精さんが荒ぶるのか...考えたら胃が痛くなってきた。はぁー...仕方ない。覚悟を決めるか...

 

あぁ、そうだ。なんでこんなに落ち着いているかというと、私の到着まで青葉が沈没していなかった為だ。これは艦娘の生存を示す確定的な証拠だ。

艦娘至上主義を掲げる私としてはすぐにでも行きたいのだが、まずは船体の回収が先。

艦娘を下手に傷つけて轟沈判定をもらっては堪らない。

 

衣笠だが、船というのは艦橋より前を失っても案外なんとかなるもので、艦首を切断してもそのまま寄港する事も一応可能だ。曳行は必須だが。

駆逐艦みたいに装甲があってもないような艦はそれが顕著だ。

駆逐艦は艦橋より前ならば脱落しても浮ける。これは重巡洋艦でも同じ事だ。と言うのも船の重量を占める機関は中央寄りの後部にあるのだから重心的にも前が軽くなってもある程度は大丈夫なのだ。すぐには沈まない。

逆説的に言うと後部を失ったらかなりマズイのだ。

重心的に前に傾く事になり、艦首が容赦なく海面を切り裂きそのまま沈みかねない。

これはアメストリアスペックの場合な?通常艦なら折れた時点でそこから沈んでゆく。

色々と常識が通じない私達アメストリアスペックだからこその安全?策なのだ。

 

緊急性が高いのは衣笠より青葉。だから先に青葉を収容した。

それだけの話だ。

クレーンによって格納庫の奥に搬送された船体は即席で用意された船渠に降ろされるとワイヤーをそのまま利用して床の金具と固定。横転を防止する。

同時に艦内工廠から急行したらしい工廠妖精さんがわらわらと駆け寄り船体の状態を確認し始める。それを脇目に私は一気に艦橋に飛び移ると青葉を探す。

青葉とてバカじゃない。とっさにどこか頑丈な所に逃げ込んだはず。

 

蛇足だが、アメストリア海軍史に残る大事件が存在する。

一言で言うなれば、海上での重巡洋艦と重巡洋艦の正面衝突。全速力での、だ。

これを引き起こしたのはまぁ御察しの通り最上と三隈だ。

とある作戦の遂行中、航行装置が誤作動を起こしていたらしく、二隻の進路が重なっていたらしい。しかも生憎の濃い霧の中を航行していたため双方気づいた頃には衝突。

それぞれの艦首が鍔迫り合いの後に最上の艦首が三隈の前部船体を切り裂いて機関まで達してしまった。無論最上の船体も無事では済まず、艦橋より前は全損。互いに艦首を吹き飛ばしてくっついた。

艦橋には主砲があり、当然予備弾薬が満載されていた訳で、大爆発。互いの船体を吹き飛ばして周囲に残骸を振りまいた事件がある。

実戦だった為に攻撃と勘違いした艦隊は戦闘体制に移行。

誤射が多発し味方同士で甚大な被害を齎した最悪の事故だった。

この時、当時の最上の艦長は至近戦闘を愛する変な奴だった為艦橋に乗員が掴まる用の柱を増設したり、防弾用の衝立を用意していた。

これが功を奏し艦橋要員は大して怪我もせずに済んだらしい。艦首の乗員は全滅したが。

戦死はしていないからな?すり潰された如きじゃアメストリアの兵士は死なない。

兎も角、この時の柱や衝立はある程度の効果があると考えられ、重巡洋艦、戦艦の多くにそういった設備が増設された。私達アメストリア型戦艦は大きすぎて突っ込まれても大した衝撃は発生しないとしてスルーされたが、重巡洋艦には大きな利益となった。

後に矢鱈突っ込んでくる敵と戦闘になったからだ。毎回衝突されてかなりの揺れだったらしいが、柱があったおかげで吹き飛ばされる乗員はゼロ。落ち着いた対処が出来たらしい。

 

 

というわけで、重巡洋艦には衝突に備えて衝立が設置してあるのだ。

その裏を見れば、ほらいた。

衝立に背を預けて息を荒くする青葉。

見たところ出血等の怪我はしていないようだ。まぁ『被弾は』していないからな。

船体の破損は骨などの中身に影響するのだ。

 

「青葉、無事でよかった」

「これは...無事なんですかねぇ...」

「生きているだけ儲けものだろう。立てるか?」

「いえ、両足の骨が粉砕されてまして...あはは」

「機関は?」

「殆ど持ってかれましたけど、まだ二つだけ生き残ってます。最低限は維持できますよぉ〜」

「そうか。既に妖精さんによる応急修理が開始されている。エネルギーも外部から供給しよう。まずは貴官の治療が先だ。失礼する」

 

脇と両足に腕を通して持ち上げる。

青葉は顔を顰めたものの、声には出さない。本当に強い娘だ。

直ぐに医務室に転移して妖精さんの手を借りながら治療をしてゆく。

と言っても両足に治癒符を張って包帯で固定するだけだ。

服を脱がすとそこら中に内出血、打撲、骨折が広がっており、至る所が紫色に変色していた。

コレに耐えていたのか。私も割と頻繁にあったのでコレの痛みはよく分かる。

骨折は外から強烈な力で思い切り抑えられているような痛みがあり、打撲はそこの感覚がなくなる。残骸などが突き刺さっていないだけマシだろう。私は磔にされたから。

うん。不幸だわ...

 

そうそう、最近発見したのだが、治癒符は重ね貼りによって治癒力が格段に上昇することがわかった。以前またノイトハイルに夜這いを仕掛けられてそのまま右足を折られたのだが、その際にヤケクソで5枚ほど重ねて張ってぐるぐる巻きにしたら翌日には完治したのだ。普段なら骨折は完治までに一週間ほどかかる。

 

この発見で急速な回復が可能となったのだ。

これでバスクリンとはおさらば出来る。今回も利用してそれぞれに5枚ずつ治癒符を張り付けて包帯で固定する。

他の骨折箇所にも治癒符を5枚ずつ張り付けてガーゼで固定する。

打撲程度なら一枚で事足りる。胴体がミイラ状態になったのは...なんだかデジャブを感じない事もないが、まぁ出さないだろう。

 

明日までは絶対安静を言い渡す。

副砲が稼働しているらしい。500cm四連装砲や150cm四連装砲といった人外クンは青葉に配慮してか使用せず、積んであった46cm三連装砲や側面砲の30cm連装電磁力砲や20cm連装砲を使っているようだ。

慌ててクレーンが内側に引き込まれ、装甲板が降りてくる。

引き込まれた装甲板はそこまで早くなく、ゆっくりと閉まってゆくので、滑り込みで砲弾が入ってくる可能性が否定できない。一応、私も妖精さんを抱いて調べて衝立の裏に滑り込む。

 

''艦娘さん艦娘さん、敵さんシップチェイスです?''

''てきぜんとーぼーです?''

''脱走者は銃殺です?''

''ですなー''

''ぴぃ〜!''

「追撃しろ。取り逃がすのはまずい。」

''かしこまり?''

''両舷はんそー!''

''追いかけっこです?''

 

ぐん、と慣性に襲われる。

追撃を開始。弾薬はゴリゴリ削れているのが感覚で分かるが、特に気にしない。

念の為予備弾薬を万能生産装置で生産を開始。運搬は艦内鉄道だ。

こういう時に使える。と言っても艦中央部にある万能生産装置と主砲とは1kmは離れている為それなりに時間がかかる。何しろ主砲砲弾は一発がティーゲルlクラスの重量を誇り、かつ〔弾薬〕形態でも主砲砲弾の大きさは変わらない為鉄道に載せようにも数発しか積めないのだ。

 

そこで私と妖精さんは考えた。

万能生産装置で生産し、それをそのまま量子変換器にin。

そしてその量子変換器を鉄道で運べば前者の方法と比べて遥かに効率的かつ効果的に〔弾薬〕の輸送ができる。この方法は他の物にも応用できる為、かなり便利だ。

というか妖精さんがこの方法を取っていなかったことが驚きだ。普通こう考えん?折角マジカルアイテムあるんだから利用しないと損だろうに。

あ、でもアメストリア兵器は術式の無効化や量子変換器の使用不可を前提にした設計、運用をしている節が見受けられる為、使わなかったのかもしれない。

いざという時に量子変換器に頼り切りで何もできなかったら笑えん。

 

話がずれた。衣笠を救出せねば...

 

 

 

 

 




さてさて遂にカイクルに一矢報いた深海棲艦特製の兵器が初登場です。
ずばり。

【巨大パイルバンカー】

です。まんまです。いやね、敵側の兵器とかざっくりとしかい作ってないので、一秒で考えた適当な名前です。



さて、今回から新章な感じです。
言うなれば「進駐編」です。意味は皆さんご想像下さい。
一気に加速...するかもしれません。


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79.敵新兵器って対処できんよね。

さてさて、皆様はコミケに向かわれたのでしょうか。
私はその一週間前に東京に赴きました。何やってるんでしょう。しかも秋葉探索に行ったのがまさかの37度ですって。作者は馬鹿なのでしょうか。
因みにサバゲ装備真っ黒けバージョンを一式揃えて個人的に大満足です(*´꒳`*)
でもね、私の愛銃SCAR-Hなんすよ。マガジンでかくてベストにつけれないっす(´・ω・`)

あ、今回は気持ち短めです。
あと相変わらずアメストリアが酷い目にあってますが、これも愛故。
...11178文字なんで長いんですけどね。


 

ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

 

さてさて、絶賛精神をゴリゴリ使って航行中の私だ。

先程青葉は艦娘、船体共に回収を完了。 今は今尚降り注ぐ残骸や私の発生させる波に細心の注意を払いながら衣笠の所へ向かっている。

 

こうしている今にも深海棲艦のアノ兵器がいつ牙を剥くかもしれないので、警戒は取れる限り最大に。

全海域対応型万能電探後期型に三次元立体全天電子探査機、予備の電探も全て起動させ、徹底的に索敵を繰り返す。

 

ーーあぁ、そうだ、大和達はどうなっているのだろうか? 巻き込まれていないといいのだが....艦娘らにとってこの攻撃は防ぎようがない。 質量が莫大な為迎撃も不可能で、何処に潜んでいるのかも不明。 兎に角当たらないことを祈ってひたすら逃げるしかない。

 

「総旗艦より大和へ、そちらはどうなっている?」

『こちら大和です。 既に日付変更線から120kmの地点まで退避しています。 こちらは無事なのですが...大丈夫ですか?』

「こちらは夕立、青葉、衣笠が巻き込まれ、青葉は船尾を脱落。 衣笠は艦首を潰されている。現在救助活動中だ。」

『そうですか...こちらは被害なし、すぐに戻って防衛体制を構築します。』

「頼む。 リバンデヒ、聞こえているだろうな」

『勿論よ。 状況も把握済み。 どうするのかしら?』

 

今は情報がなさすぎる。

新兵器の材質や大きさだけでも掴んでおきたい。

それが分からなければ対処策を考えるどころか、メカニズムさえ不明。 未知の悪魔の兵器になってしまう。

 

「...衣笠を回収後、全速力で帰還する。 その後は全隔壁を閉鎖し第一戦闘態勢だ」

『了解よ。 アメストリア型は全艦出すわ。 漁夫の利を狙う深海棲艦がいる可能性があることだし。』

「そうだな、そうしてくれ。」

 

ともかく、まずは衣笠を回収せねば。

側面のハッチを開き、回収用にクレーンを移動させる。

 

重心が後ろにある為か、そこまで浸水していない衣笠の船体。 しかしその姿は見るも無惨で、グシャリと潰された紙のような艦首。

強固な構造故衝撃にも耐えてしまい艦橋構造物に突き刺さる砲身。 三連装だったので、艦橋に三本深々と突き刺さっている。

 

まずはクレーンから下ろしたワイヤーを船体に固定し、釣り上げる。

抜き取られた莫大な質量を補填しようと周囲から海水が流れ込み、白波が荒ぶる。

沸き立った無数の水滴がキラキラと太陽光を反射し、それはまた幻想的な光景だった。

主役が少々傷ついているが。

 

ともあれ、クレーンがレールを通って私の船体へ格納されて行く。 後は衣笠の船体を固定して全速力で帰還するだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーあ、これフラグですわ。

いかんなぁ、これは。

 

『ぽぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!?!?!?』

 

能天気な感想を片手に私は宙を舞う。

夕立も船体共々宙に舞う。

深海棲艦の再度の攻撃。 回収中だった私は為すすべなく直撃。

全力のアッパーを食らったような、強烈な圧迫感を叩きつけられた。 実際遅れて物理的にアッパーが決まった。

 

宙に浮く妖精さんをキャッチ、抱え込んだところで反動がカムバック。

突き上げられた船体が海面にダイブ。

 

私の体も再度の圧迫感。

体の叩きつけと船体の叩きつけ。 ダブルで来た衝撃に、身体中が危険信号を発し、例の如く喀血した。 多分口の中を切ったんだろう。

...それだけじゃない気もするが。

 

衣笠とは比べ物にならない程キチガイ染みた質量が海面に投入された為、喫水線を無視して莫大な海水が船体に上陸。 甲板を覆い尽くした。

 

更に不幸は続く。

攻撃があった瞬間は、衣笠の回収中。

当然隼の格納庫ハッチを全開にしていた訳だ。

屋根になるような形式のハッチは強度がアホみたいに高く、そのため突き上げられた海水はハッチによって直角ターン。

格納庫に大量の海水が流れ込んだ。

そのため衣笠を回収する為に集まっていた妖精さんが多数呑み込まれ、機材も全滅。

ていうか現在も海水は絶賛蹂躙中である。

 

通路にも流れ込んだ海水は私をも襲い、激痛のレベルがアップ!

こんなに嬉しくないレベルアップはまず無いだろう。

 

キャッチした妖精さんは辛うじて持っていたので、震える手を離し、自由にしてあげる。

ーー出来れば助けを呼んでもらえたらお姉さん嬉しいなーって。

 

''大丈夫です?艦娘さん''

「ーーこれ、が...大、丈夫に、見え...る、か...ガフッ!」

''見えませんなー''

''絶体絶命です?''

''危機一髪です?''

 

そうです。 そうです、今私は黒髭危機一髪クラスにやばい状況なんです。

多分衣笠は船体に居るし、船体はクレーンに吊るしていたから大丈夫。 青葉も船体は既に固定済み。 艦娘も医務室に運んである。

...夕立は?

 

辛うじて見えた窓からは、巨大な水柱を上げて入水した夕立の姿が見えた。

うん、アレなら大丈夫だろう。 多分。

だってもう活動を再開しているんだもの。

 

''すぐ医務室行くです?''

''そうさなー''

''でもでも艦娘さん運べないです?''

''ぽいぬさん呼ぶです?''

''ですです?''

 

どうやら、妖精さんズはあの狂犬を呼んで救助に協力してもらうらしい。

まぁ私今動けんしな。 多分基礎逝ったわ、これ。

 

船体(自分)の事だからよくわかる。

船体フレームに軽微の打撃があり、船底の広範囲に損傷。

貫通こそしなかったものの、大きく凹んでおり、骨組みが破壊され、甲板にまで突き上がっているようだ。

道理で骨が突き刺さっている訳である。 だから血が止まらないんだろう。 本能で血を吐き出そうと喀血しているが、そろそろマジで間に合わなく...

 

「だ、大丈夫っぼい!?」

 

視界の端にロファーが見えた。 黒い服装から、夕立だと考えられる。

どうやらもう到着したらしい。 有能かよ。

 

「...ゲホッゲホッ...医務、室へ...」

「了解っぽい! アメストリアさん!ちょっと我慢っぽい!」

「ーーぐうぅぅぅぅ!!!!」

 

再び激痛が体を駆け抜け、這い回る。

夕立が私を起こしたおかげで、骨格が変動し折れていた骨が周囲を傷つけたのだ。

だが歯を食いしばって耐える。耐える。

 

「アメストリアさん! 医務室何処っぽい!?」

 

まさかのコレである。

一瞬痛みを忘れ、頭が真っ白になった。

そうだった、忘れていた。 アメストリアは難攻不落の大迷宮なのだ。

艦内を鉄道や道路、EV、通路が張り巡らされており、その難易度は鬼畜の一言。

初見の夕立が解けるわけがない。

しかしここには有能な妖精さんがいるのだ。

 

''艦娘さん艦娘さん、そこの犬っぽい艦娘さん!''

「ーーっぽい?夕立の事?」

''いぐざくとりー! ふぉろみーなのです?''

''ですです?''

「っぽい!わかったっぽい!」

 

一歩一歩、ゆっくりと歩いて行く。

身長差か、背中をまげざるをえず、そのせいで逝った背骨が危機的状況を生み出しつつある。

 

やばい、神経が死に始めた。

動脈も脈が弱くなってきているのが、実感できる。

 

「ガフッ!」

「っぽい!?アメストリアさん!だいじょーぶ?」

「...割と、やば、い...ゲホッゲホッ!」

 

更に喀血を繰り返し、べっとりと血が夕立にも付いてしまう。 すまない...本当にすまない...

視界が暗くなってきた。 割とガチでヤバイ。

 

船の命たる基礎が破損気味なのだ。

器たる艦娘へのダイレクトアタックは計り知れず、死という形でしか把握しきれない。

今の所沈みはしていない様だ。

 

しかし艦橋の妖精さんが上手くやっているのか、既に衣笠は今度こそ回収。

ハッチを閉め、全域にて排水作業を並行しつつナウル鎮守府に向け半速。

既に緊急電は妖精さんが発信したので、異変を察知して妹がどうにかするだろう。

 

旗艦たる私がこの状態。

妖精さん達は旗艦権限を副旗艦であったリバンデヒに移譲している。

 

「アメストリアさん!もう少しっぽい!がんばって!」

 

よーしお姉さん頑張っちゃうぞぉーーー!!

 

......とはいかないんだなこれが。

もう余裕がない。割とマジで。

通路に響きわたる警告音が酷く遠くに聞こえる。

加えて寒い。とても寒い。

無論実際に寒い訳ではなく、感覚としてとても寒い。 これは冗談抜きに危険信号だわ。

 

艦娘の構造は人体と大体一緒だから症状も似るのだ。

そろそろ私の艦生にチェックメイトがつきそうな件について。

 

''とーちゃーく!''

''電気除細動器すたんばーい!''

''さーぬぎぬぎしましょーねー''

「ぽ、ぽいっ?!ア、アメストリアさん!返事して!お願いだから返事してよぉ〜!」

 

夕立の泣きそうな声を最後に、プツリと訳ではの意識は切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーハッ!

意識が急速に回復してゆき、視界が開ける。

 

知ってる天井だ。

ナウル鎮守府の医務室。清潔感を出したいのか白塗りにされた空間は、良くお世話になる場所。

ツンとする鼻に付く消毒液の匂いは保健室が如く。

 

「あぁ、良かった...目覚めたのね...」

「その声は...リバンデヒ、か...ぐっ!?」

 

リバンデヒを見ようとして身体を動かそうとーーーー出来なかった。

少しでも動くと背中に激痛が走り、連続的に他の個所でも激痛がはしる。

今分かったが私うつ伏せの状態らしい。

背骨をやったんだから当然と言えば当然だが、なんだか新鮮だ。

 

「あの後、どうなった?」

「なんとか船体が持ったらしく、なんとかナウルに到着。直ぐに緊急入渠よ。お姉ちゃんもこの後入渠よ?フフフ...」

 

なんかぞくりとしたぞ私。

何気に危機が迫っている気がするな私。

 

「夕立は?」

「あの娘なんなのかしらね、無傷よ。 カスダメはあるけれど、中破以下よ。 ずっと運んできてくれたのよ、感謝しなさい?」

 

他の艦娘に助けられたのはパラオ鎮守府防衛戦以来か。 あの時はウチのサイコレズが吹雪にお世話になったが、今回は私本人だ。

面目ない...

 

「あぁ、候補生は?」

「今は提督室よ。お姉ちゃんが眠っている間に休憩とって現在は歓談中よ。」

「そうか..深海棲艦の方はどうなっている?」

「現在は第三、第二艦隊が警戒中。 カイクルが指揮をとっているわ。ノイトハイルには第四艦隊を率いて遠方の草刈りをさせているわ。」

 

ノイトハイルに関してはそうでもして追い出さないと、私がマリオネットになりそうである。

解体されてましたエンドは誰だって避けたい。

 

「あぁ、候補生の受け入れはいつまでであった?」

「えぇと...明日までね明日見送りよ。」

「そうか...ならば第二艦隊の方で効率的な戦闘指南をさせておけ。 第三と第四はさげてアメストリア型だけで警戒を。 あと妖精さんを呼んでくれ。 船体修繕の件で話がある」

「了解よ。妖精さんはすぐ来ると思うわ。 あとで入渠よ。 忘れないで頂戴?」

「........承知、した。」

 

 

 

 

 

 

''到着です?''

「妖精さん、現在の修理状況はどうか?」

''んー、難しいですなー''

''ですです?底がやられているからだめです?''

''上のものじゃまです?''

 

成る程。船体や骨組みを修理したいが、主砲や艦橋群といった上部構造物があるため修理ができないと。

解体するにもどうしたものか。 この後戦闘する可能性がゼロではない以上、戦闘指揮をする艦橋というのはとても重要だ。 主砲は言わずもがなだが、艦橋群には電探を始めとする観測機器もズラリとしているのだ。

 

「観測機器はどうなった?」

''ムスー!着水で吹き飛んだです?''

''電探ポーン!''

''みんなぽーん!''

 

どうやら電探さんがログアウトしたようです。

三次元立体全天電子探査機、113号対空電探、全海域対応型万能電探後期型この三つに予備、気候情報や重力、地盤に磁場、太陽フレアなどの情報を観測する機器も全滅。 こいつぁは解体するしかないですねぇ(暴論)。

 

「よい。やってくれ。 艦橋群から先に撤去。主砲は最後にしてくれよ?」

''あいあいさー!''

''ついでに改造を..''

''さぁー!2-4-11!''

 

ーー撃てるかは知らんがな。

船体が歪み、骨組みが突き出している以上、主砲が撃てる望みは低い。

それでも万が一を想定しなければならないのが軍の辛いところ。

最後に妖精さんをナデナデしてから送り出す。 優秀な工廠妖精さん達だ。 直ぐにやってくれるだろう。 艦橋群だってブロック工法だし。 あ、でも溶接があるから時間かかるか?

 

''艦娘さん、艦娘さん、麻酔薬をオススメします?''

''しゃぶちゅー!''

''やくちゅー、だめ、絶対?''

''スヤァすいしょーです?''

 

Q.何を企んでるんです?

 

A.大惨事改装DA☆

 

 

 

 

 

...いやーな予感がするなお姉さん。

ーーこれはまずい。洒落にならん。

ナウルが誇る要塞山。そこには数々の砲が収められており、無論500cm四連装砲も配備されている。

その砲塔がゆっくりと回転を始めていた。 砲身は意図的に一度後退。 ブローバック式の為、砲弾を装填するには銃をリロードするように『コッキング』が必要なのだ。

 

装填された砲弾は恐らく榴弾。

四本の砲身の内二本が仰角を下げて行き、俯角を取る。

狙うは海上に聳える艦橋群。

お分かりだろうか。 妖精さん達はまさかの解体に砲撃を利用しようとしているのだ。

 

「り、リバンデヒ!緊急事態だ!直ぐに私に麻酔を打て!!」

『え、えぇ!これは予想外だわ...あと1分で着くわ!こらえなさい!』

「む、無理かもしれん...」

 

いやいやいや、無理っしょそれは。

500cmやで? 熱量半端ないんやで? 艦橋群吹き飛ぶんやで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ...

 

 

ギャャャャァアアアアーーーーッッッ!!!

 

「ぐぅっっっっ!!!!」

 

ギリリと歯をくいしばる音が聞こえる。傷付いた体に追い()()を掛けた一撃は体に良く効いた。 例えるなら灯油をガブ飲みして火をつけた感じ。

焼印を傷口に押し付けられた感覚。 脳が危険と判断したのか、瞬間痛覚は切断された。

 

遅れてリバンデヒが到着。 無針注射器にて麻酔を注入。

じんわりと体が麻痺してゆく。 感覚があるようで無い感じ。

神経系に麻痺が回った頃には、艦橋群のダイナミック解体は終了。 誘爆なのか、三番主砲が吹き飛んでいたが、気にしてはいけない。 イイネ?

 

「さぁ、お姉ちゃん。入渠、しましょうか」

「りばんでふぃ...おぶぉえてろぉ...」

 

麻酔の所為か、上手く呂律が回らない。

酔った時のようだ。 アレはアレで良い思い出がないのだが...美味しく頂かれたりお持ち帰りされたりお持ち帰りされたり...主犯は勿論我が妹共だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーしばらくお持ちくださいーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぃーーー、ひどい目にあったぜ。

散々な日だな今日は。 新兵器の犠牲になってFFの犠牲になってリバンデヒの犠牲になって。

...最後は納得がいかないが。マッサージされたから文句言えん。 治癒符をベタベタに貼りまくり、胴を包帯でグルグル巻きにされた。

何気に治療されてるから文句言えん。 ぐぬぬ...。

 

てか猛攻(意味深)に慣れてきた私は複雑な心境である。

余裕が生まれてきたが、負傷箇所に腰が加わったのは頂けない。

入院期間伸びたやんけ。

 

あ、そうそう。

妖精さんのダイナミック解体だが、上手く?いったようで、艦橋群が予定通り吹き飛んだ。

ついでに第三砲塔もM4みたいに吹き飛んだ。

現在は第一甲板から船底まで一気に解体して骨組みを再構成しているらしい。

ついでに区画整理も。 ようやくラビリンスから脱却だぜ。

碁盤の目状に再構成してそれぞれに番号を振って整理したらしい。

予定としては現在再建造中の第三砲塔を設置後、艦橋群を再構成。 これまた工廠で作成中の観測機器、電探を搭載して、対空砲陣地に128mm三砲身対空機関連装砲を正式に配備する運びになった。

ついでに従来の45mm対空機関連装砲も量は減るが、88mm四砲身対空機関連装砲に総入れ替えするとの事。

ふふ、一番艦の特権である。

 

修繕が終了し、進水までに五時間。

海上にて艤装取り付けに六時間。 計11時間のフリータイムが発生したのだが、残念ながら背骨をやっている為行動は不可。

妖精さんや妹達が改良を重ねているらしいが、ハイポーションみたいな効能は現在の所実現不可である。 バケツもあんま役に立たないしな。

 

だが今回は役に立つ。

正式名 高速修復材、通称バケツ。妖精さんが知らぬ間に量産する原材料、精製法共に不明な怪しい液体だ。 パラオ鎮守府、ナウル鎮守府ではそもそも大破艦自体出ることが稀だった為、バケツ自体はレンガ倉庫に天井まで積まれているのが現状。

しかし効果は凄まじく、艦娘の傷を一瞬で全回復...とまではいかないがそこそこ修繕してくれる。

ある意味これがポーションだと思うが、何故か風呂に入れて入渠しなければ意味がない。

恐らく傷に対して外部から干渉するタイプなのだろう。

 

このめちゃくちゃ有能なバケツ君を今回は投入したのだ。

それに治癒符の大量投入で中破程度にまで傷は回復。

内臓はまだ完全に回復していないが、辛うじて立てて歩ける程度にはなっている。

 

リバンデヒに無理を言って立たせてもらい、工廠まで移動。

パラオ鎮守府のような地下式ではなく、呉や横須賀のような工廠の形になったナウル鎮守府の工廠。

生産拠点や開発区画、備蓄は地下にあるが、アメストリア型戦艦の大型ドックは地上にある。

大型の移動式クレーンが10に、中型の伸縮式クレーンが20。

今まさにそれら全てがフル稼働し私の船体を組み上げていた。

 

艦橋群の軸となる、所謂「大黒柱」となる幾つかの全高300mの太すぎる柱が建てられ、それらを結ぶように夥しい量の梁が張り巡らされている。 全体的に軍艦色の施設に、黒に近い色に塗装されている私の船体は何だかミスマッチだ。

地下の工廠から運ばれてくる大量の部品がクレーンによって吊り上げられ、テトリスのようにピタリと嵌まってゆく。 見ていて気持ちの良いものだが、部品が明らかにおかしい。 何故に大量のアハトアハトが運び込まれているのだ?即応砲か?それなら対空砲陣地に置いておくものだろう?何故に艦橋群に置いてくんだ?

 

ま、まさか...あの広い通路、アハトアハトに対応してるのか、規格が。

えぇ...いくらなんでも...あぁ...今度は127mm野砲が積まれている...ーーー胃が痛い......。

 

 

 

 

 

その後は割と簡単に組み上がった。 内装に大きな変化がなかったからだろう。

分厚すぎる鉄塊のような外壁が合わさってゆき、基礎的な塔楼が完成。後にバルコニーや88mm四砲身対空機関連装砲を設置してゆき、最後に手すりを張りめぐらしたら完成だ。

これまでと違い、塔楼などにも一部対空砲陣地が作られ、88mm四砲身対空機関連装砲が二基から四基配備されている。

露天艦橋には全海域対応型万能電探後期型に三次元立体全天電子探査機が二基ずつ設置され、その下に設置されている中央演算処理装置は面積を拡張。処理能力をちょっと上昇させた。

 

 

むろんそれだけで埋まるはずは無く、艦橋へのエネルギー供給の為だけに予備の船舶用粒子エンジンが3基設置された。他は前回と同様に食堂やら居住区やら。

しかし余剰スペースには即応砲が積まれ、対空砲陣地の近くにはアハトアハトが配備されている。

...前より重層化しているような感じを受ける。

装甲は前回とほぼ同じだが、遂に指揮所のガラスに防護壁が増設された。

鉄板なのだが、普段は閉まっておける。戦闘時のみシャッターの様に下がってきてガラスを保護する様な形式。しっかりと覗き穴は開けられており、また分厚さも十分。

妖精さんの特殊鋼を160mm積んだ非常に強度が高い装甲板だ。

 

また、潜航時に電探や観測機器を格納するのだが、そこも装甲化され、VLSのような形式に変更された。

 

割と大改装が施されている割には、外見に変化は無い。

大和型の立派な塔楼。根元に広がる対空砲陣地には少々変更がなされた為か幾分かすっきりとした印象を受ける。

 

 

近海に警戒で出ている...あれはカイクルか。同型艦と見比べても大きな変化は見えない。

いっそのこと長門型塔楼とかになったら変化が分かりやすいのだが。

利点はあまり無いから妖精さんはやらないだろうが。

 

何故なら長門型塔楼には防弾性に難があるのだ。形状的に。

模型を所有している提督諸氏なら理解していただけると思う。

長門型の近代化改修後の塔楼は改修前の柱をそのまま利用している為、剥き出しになっている。

それをアメストリア型戦艦に採用すると即おじゃん。一発で指揮系統が死滅する事になってしまう。それでは軍艦として致命的だ。

時間逆行術式というチートをもってしても復旧には時間がかかるし、人員は元に戻らない。

飛ばされたりすると帰還は自力になるのだ。そういう面でも、長門型塔楼はアメストリア型戦艦には向いておらず、その結果大和型塔楼が採用されたわけだ。

 

唯一の昭和生まれの戦艦だしな。大和型は。

そもそも一次大戦の塔楼が無い為新規で設計できたからああいう美を体現した形状を実現することができたのだ。

長門型、扶桑型、伊勢型、金剛型という海軍の戦艦の殆どは大正生まれである。

昭和生まれというのは補助艦艇を除き、主力艦では割と少ない。

 

そういうわけで、アメストリア型戦艦には防弾性に優れた大和型塔楼が採用された。

 

''艦娘さん艦娘さん、塔楼の工事は完了。対空砲は数が多くてまだです?''

''ですです?''

''配線が面倒くさいですなー''

''ですなー''

「そうか。因みに妹達に同様の改装をするならばどれくらいの時間がかかる?」

''うーむ''

''大体とぅーあわーです?''

''120分です?''

 

なんと。

対空砲の総入れ替えに区画整理...は無理だろうが塔楼の増設工事は二時間で出来るという。

妖精さんのレベル上がってませんかね。いや、パラオ鎮守府の頃からこいつらヤバイなって片鱗は見せていた。しかし最近は配線や薬莢廃棄の配管の複雑さで掘り作業並みに泥沼になる対空砲陣地の改装ですら2時間。

確実に妖精さんの技術力は進歩しており、熟練となっている。

まぁ、原因のほとんどは私なんだがな。名付けるならば、そうだな...〈熟練工廠妖精〉と言ったところだろうか。フリーダム、過剰労働、暴走が多い問題を起こすに関してはトップの存在だが、居なければ私は三回は魚礁と化していただろう。

改ニにしてくれたのも妖精さん。

毎回修理してくれるのも妖精さん。

補給してくれるのも妖精さん。

索敵してくれるのも妖精さん。

私の手足となり砲を動かし、狙うのも妖精さん。

ウンターガングエンジンの御機嫌取りをしてくれるのも妖精さん。

船舶用粒子エンジンを整備運用してくれているのも妖精さん。

舵を切るのも妖精さん。

 

...あれ?私完全に妖精さんに依存してません?

いやね?実際は全部私で出来るんだよ?なんたって自分の身体ですから。

照準、旋回、仰俯角、発射。

全て自分で出来るが、それら全てを自分で処理しつつ、指揮をするのは限界があるし、私は一人だからダメコンは出来ない。だから私は指揮に専念し、実際に艤装を動かすのは妖精さんに一任している。

ぶっちゃけ妖精さんは以前クソ憲兵に横須賀で爆破された船舶用粒子エンジンの爆発にも無傷で耐えるし、同型艦との激しい殴り合いでもピンピンしている不死身の摩訶不思議生命体なので、割とこき使っている。

本当に何者なんだろうね。嫌われたら私死ぬんだけど。

妖精さんには妖精さんのポリシーがあるらしく、自分の後始末は自分ですべし。

これはミッドウェーでの一件で行動に移されている。

確かに航法関係等で妖精さんがミスった事により艦娘らが多数鹵獲され、大惨事になったが、後始末はつけた。本土襲撃までしたしな。

アレはいい思い出だ。またやろうかな.........冗談だよ。ーーー多分。

 

「お姉ちゃん、改修工事終わったんでしょう?さっさと埠頭に戻りなさいよ。此処を母港にするつもり?」

「いや...すまない。すぐに動く。深海棲艦のほうはどうだ?」

「特に何も。姫級の動きはなし。雑魚は何回か来たけれど、全て隔壁で対処したわ。」

「そうか。警戒態勢はそのまま。リバンデヒも休め。」

「そうさせてもらうわぁ。いい加減疲れたのよねぇ...」

『こちらカイクル。私の方も警戒態勢を解除。休ませてもらう』

『僕も休ませてもらうねぇ〜。あ、そうそう。この間に対空砲強化改修でもしたらどう?お姉さん』

「...そうだな。私は代わりに警戒に出る。貴官らは改修工事に入れ」

「そうするわ。」

『承知。』

『はいはーい。ねぇカイクル〜!一緒に寝よー!』

『斬り殺すぞ貴様』

『ひゃー!怖いね、カイクルは』

「そこ、戯れるな。さっさと改修工事に入れ」

『すまない...』

『はーい』

 

三隻の動きを新調した電探で確認しつつ、艦橋へ転移する。

以前と変わらない景色。

体育館のような広さの広々とした空間には大量の管制用機器が並び、ホログラム発生器や海図が置かれている。

私はいつも通り艦長用の椅子に腰掛けると、号令を出す。

 

「錨上げー!機関始動!」

''くさりじゃらじゃらー!''

''巻き上げ完了です?''

''主機、稼働開始です?''

''副機関、エネルギー生産開始。圧力正常値です!''

''主砲、副砲にエネルギー伝達を確認。''

''対空砲陣地、エネルギー伝達を確認!''

''全海域対応型万能電探後期型、三次元立体全天電子探査機稼働します?''

''電探ぐるぐる?''

''113号対空電探もすたーと?''

''舷下副砲群、エネルギー伝達です?''

 

「主砲、動作確認。」

''あいあいさー!''

''ようそろー!''

''一式徹甲弾装填開始ー!''

 

号令で、これまた新調された500cm四連装砲が駆動を始めた。

使い物にならなくなった三番砲塔は新しくなり、元の姿へと修繕。

ターレットリングが回転し、機敏な動きで砲塔が旋回してゆく。80口径というアホみたいな超長砲身は全長400m。重量は一本あたり5500t。一つの砲塔で2万2000tという頭のおかしい重量を誇る、そんな砲身を振り回しながら砲塔は可動域を二週。

仰俯角に関しても同様で、仰角45度、俯角-10度まで四本全ての砲身を上下させ動作に問題がないか確認。

 

副砲も上記と同じことをして確認。

対空砲に関しては陣地が途轍もなく巨大で、迎撃には急を要するため360度ぐるぐる回るように設計されている。

大和型にある12.7糎高角砲のような外見の対空砲が夥しい数並び、一斉に旋回をしている光景は寧ろ不気味さを感じる。

軽いモーター音を立てながら88mm四砲身対空機関連装砲、128mm三砲身対空機関連装砲はぐるぐる回旋し、更に旋回時のモーターとはまた毛色の違うモーター音を響かせながら駆逐艦の主砲クラスの束ねられた砲身が高速で回転する。

ガトリング式を採用している為、砲身一つ一つに薬室があり、いわばボルトアクション式の銃を束ねたような感じ。

 

回転する事によって順番に撃って手数を増やしている訳だが、空撃ちでその動作に問題が無いかを確認。ついでに対空砲其々にある光学式照準器とのラグなどが検査される。

うん。流石アメストリア製の兵器だ。性能が違いますよ。

納入された88mm四砲身対空機関連装砲、128mm三砲身対空機関連装砲では一基も問題は無し。全て完璧な状態で配備されていることを確認した。

 

「両舷微速!5ノットにて工廠ドックから離脱後、第二隔壁内を周回する。電探は警戒を厳としろ」

''あいあい!''

''よーそろ!両舷微速!''

''進路、第二隔壁内に設定です?''

''スクリュー、回転開始です?''

''回転数、500から510の間に安定です?''

 

切り裂くことも想定された鋭い艦首が工廠の穏やかな海面を進む。

もう慣れてしまった莫大な量の海水は両舷のバルジに当たり破砕。勢いを消されながら側面に流れてゆく。

工廠の方を見れば、対応策として陸地には格納式の堤防なのか、30m級の隔壁がせり上がり、流された海水が叩きつけられていた。

 

舵を少し切り、第一隔壁の水門へと向かう。

入れ替わりで、リバンデヒが工廠ドックに入っていった。

さぁて、暇で暇で仕方ない警邏の開始だ。

 

 




今回も更新に間が空き、申し訳ございませんでした。
これも夏休みって奴が悪いんだっ(殴

艦これの欧州再打通作戦にfgoのカオスイベが重なりまして、やばいことになっておりました。
といっても艦これもE-3で泥沼になってるんですがね。主にバケツの所為で。
誰でしょう直前まで3-2-1やってバケツ浪費してた馬鹿は。
あと長門さん、改ニになってからアホみたいに〔弾薬〕貪るのやめていただけません?〔弾薬〕だけ桁が一個少ないんすよ。

でも戦利品は良かったです。
天城に旗風、清霜に藤波が来てくれました。あとは掘り作業だけですね(白目


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80.新しい物ってワクワクするよね。

(´・ω・`)


 

ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーー

私だ。第二隔壁の巡回は順調に進み、妹達が改装終了する時間...三隻で360分。

六時間を潰した。

 

現在は新改装が済んだ四隻で並んで外海を航行中。

データリンクには問題なし。処理能力が上がったおかげか、迅速かつ正確な情報共有が可能に。

対空砲の火力は主砲よろしく馬火力になり、破壊力バツグン。

現在第二艦隊の...大和、武蔵に同様の改装を施しているところだ。何れは全艦で対空砲の強化をして行く予定だが、一斉入渠など愚の骨頂の為段階的に、同艦隊でも順番に改装していって戦力の減少を最小限に留めている。

 

その為今第二艦隊での臨時旗艦は長門。

最近衣装が変わったらしく、SAMURAIのような服装にグレードアップしていた。

本人曰く、「暑くてかなわん」との事。

ナウルには合わない服装だと言うことは私も分かった。一応術式を刻み込んで快適化を計ってみたが、当の本人は現在艦隊行動中の為聞けない。

他の艦娘らの制服とかにも応用するから感想を聞きたいところなのだが、大切な演習の為自重している。

 

その演習というのは、例の深海棲艦新兵器の所為でお釈迦になった出撃の代替として、第一、第二隔壁間で第二艦隊によるもの。

動員艦は長門、陸奥、高雄、愛宕、摩耶、鳥海、矢矧、吹雪。

 

長門、陸奥を先頭に複縦陣で航行中。

いま先頭の二隻が砲撃を開始した。

装備した前方三基9門の51cmが高々と砲声を響かせ、それを合図に全艦が散開を始める。

 

散開したことによって確保された射界。一斉に砲撃が開始され大小様々な砲弾が目標に叩き込まれる。

その砲弾は当然の如く全弾命中。流石はナウル鎮守府の艦娘。

他の鎮守府も装備更新が行われているが、ここまで高レベルに纏まった艦隊はそういないだろう。

 

雷鳴が轟き、煌々とした赤い花火が上がる。

毎秒で連射される51cm、35.6cm 、20.3cm、15.5cmの衝撃波は凄まじく、観覧席として用意した私の露天艦橋にまで到達する。

 

データリンクによって各艦の位置は共有され、一見乱雑に見える航路も重ならない順路に沿って進んでいる。

 

そんな人外技を見せつける艦隊を前に、候補生は圧倒されたのか微動だにしない。

 

「これは凄い...既存の戦術が使えない訳ですね」

「その通りだ。連射速度、砲撃精度、速力、装甲。どれをとっても今までとは比べ物にならない」

 

ーーーん、ドミートリーから入電だ。

要約すると、休暇長すぎて暇や。出撃していい?

 

との事。アンタもバトルジャンキーになってしまったか。いや、今の今までまともに休暇を過ごしていなかったのだろう。

''再教育''もあったことだし。

 

もしくは己の船体が一番落ち着くという場合もある。

うちの艦娘にも何人かいるからこれは分かる。

 

しかし「出撃、いいっすか?」は駄目だろう。

海の上でのんびり、なら分からんこともないが、常に闘っていたいとかカイクルかよ。

 

ドミートリーの船体は最新鋭伊号潜水艦風にしていたはず。もう出来ていて不思議は無い。

作業してたの妖精さんだし。

 

一応許可を出しておく。

なんだかんだでドミートリーという情報収集手段は貴重なので、普通に航行させるだけで何個か機密を拾ってくる。なので本人の自由にさせておくのが一番の運用法なのだ。

 

 

 

 

 

 

本題だ。

演習の終了後、候補生には私の会議室に移動してもらった。

これからは私による大事な講義。ズバリ、

 

「はじめての鎮守府運営」

 

で、ある。

これから鎮守府運営を任せられる候補生らにこれだけはやっておこうという重要事項をレクチャーする時間。

 

現役軍人からそんなノウハウを聞ける機会はそうそう無い。

てかまず無い。普段は大学校に篭ってるしな。

 

「では、鎮守府運営初期段階において、まず初めにするべきものはなんだと思う?」

「...鎮守府全体の把握でしょうか」

「開発、建造であります」

 

若干まだ距離のある例の娘に精神的ダメージを受けながら、典型的な返答を受け流す。

チッ、チッ、チッ、そんなことでは無い。

 

「初めにやることはズバリ立地の確認、その次に海図での潮流の確認だ。現在海軍では新規設営鎮守府に対しては近辺の鎮守府から水雷戦隊が暫くの間派遣されるように手配されている。

まずはその艦娘らに鎮守府近海の状況を探ってもらい、まず安全確認をして貰う必要がある。」

 

本土の鎮守府なんぞ有り余ってるので、自動的に新規設営鎮守府はこっち側、つまりオーストラリア方面になる。

残念ながら大日本帝国海軍支配域はオーストラリアまで到達しておらず、現在一進一退の攻防が繰り返されている。

といっても最近は小康状態だが。睨み合ってるだけだし。

私達は最前線の為第三艦隊、第二艦隊を出している。

私達が行くと一発なのだが、あまりにも呆気なく海域解放をすると油断が生まれるし、艦娘達には経験を積んでもらいたいので私達以外の艦娘らを動員している。

 

「そして、鎮守府には本土より資材が支給されている。まずは工廠妖精さんらに発注してみるのも一つの手だろう」

「工廠妖精に対して発注してもその物が出てくる確率が低いとされているのですが、これは本当なのですか?」

「恐らくそうなのだろうな。いや、私達ナウル鎮守府では私が仕切っているから妖精さんには大体望む物を生産してもらっている。といってもこれは特異例だ。一般的には回数を重ねて目的の装備を揃える」

「建造に関しても同様でありますか?」

「基本的にはそうだ。しかし投入する資材の量が桁違いに多い【大型建造】では流石に発注した艦娘が出てくるぞ。アレは国家級の計画艦艇のみの建造だからな。」

「そうでありますか」

 

「まぁ、初めは資材を節約するのが良いだろう。現場は戦場だ。何がいつ起こるかは予測不可能だ。鎮守府が襲撃を受けるのも珍しくは無い。まずは二、三隻建造し、装備を開発し改修し強化して行くのがいいだろう。派手な動きができるのは戦力的に余裕のある鎮守府だけだ」

「あの、こと鎮守府には隔壁があるようですが、実際どれだけの効果があるのでしょうか」

「そうだな...我が鎮守府にある隔壁は大体のものを防ぐ。それこそ水爆や戦術核、突撃してきた戦艦だって防ぐ。だが我が鎮守府にあるのは比較対象になりえない。巨大すぎるからな。貴官らも設置を考えているならもう少し小型のものを作るといいだろう」

 

正直、あの隔壁は規格外。比較対象として適切では無い。

見るたびに硬くなってる気がするし、なんか色々装備が追加されている気がする。

内部を一七式戦車が走行できるぐらいだしな。

入り口は幅五百メートルの分厚い鉄板が二枚。しかも二重。何を防ごうと考えたらこうなるのか全くもって理解できない。

 

「後はそうだな...周辺の鎮守府や本土との連絡網やら、通信設備の確認、工廠の設備に不備がないか確認だな。それのついでに開発やら建造をやってみるのもいいだろうな」

 

通信の確保は大事。

これ古事記にも書いてる。

有線が通信網を構築し、無線が空軍を強化したように、本土から遠く離れた孤島には無線設備が必須なのだ。

 

通信の重要性に関しては語るべくも無いと思う。

狼煙と無線、どちらが情報を正確に伝えられるか、考えなくてもわかる。

敵の規模や装甲車両の有無、空軍の有無など、送信できる情報量が全く違う。

 

工廠に関しては妖精さんが大体やってくれるが、建造はこちらが支持しなければ実行されることは無い。開発?ナウル鎮守府では勝手に兵器が増えたりしてるから断言できんわ。

 

てかさ、勝手に防衛兵器が増えてるっておかしく無い?

お陰で私も毎回武装の把握が苦労する。いざという時に何があるのかわからない状況で防衛線を築くとか私はやりたく無いからな?

 

「...アメストリア殿?」

「ん...すまない。まぁ、基本的には提督がするのはデスクワークだ。遠征報告書に出撃報告書、開発、建造、修繕、消耗品補充要求書やら鎮守府全体の運営が主だ。戦闘やら深海棲艦に関することは全て艦娘が請け負う」

「では、初期段階では何人程度の艦娘が居るのが望ましいのでありますか?」

「...ふむ、興味深い質問だ。」

 

確かに、初期段階の鎮守府に必要な艦娘が何人なのか?

これは議論の余地がまだまだあるテーマだろう。ゲームシステムの制約が無いこのリアルの世界では、賄えるなら何人でも艦娘が居ても問題が無い。

しかしその分資材は消費するし、趣向品というシステム外の消耗だってある。

深海棲艦が鎮守府を攻撃してくることだってあるし、都合のいいレベリングスポットなんかない。

私が使ってる3-2-1だってあれつまり最前線だからあんなに多種の深海棲艦があるし、いつもいるのだ。

 

ゲームシステム的に考えれば、1-1で無限周回すれば理論上は99になる。

しかし同じ作業を繰り返させてもこの世界でレベルなどあがらないし、艦娘だって経験が詰めない。

 

初期は最寄りの鎮守府から二個水雷戦隊、つまり十二隻の軽巡洋艦、駆逐艦が貸与されるが、それに頼りきりにはなれない。

出来れば軽巡洋艦、重巡洋艦が居るのが望ましい。

 

「初期艦を除く二、三隻の駆逐艦と軽巡洋艦、重巡洋艦が合計三隻。これくらいいれば取り敢えずは大丈夫だろう。航空母艦や戦艦はもう少し安定してからだな。装甲空母や潜水艦、揚陸艦はもっと後だ。あれらの運用は複雑だからな」

「成る程...勉強になります。」

「打撃力という意味では軽空母は必要ではないですか?」

「軽空母は確かに必要だが、載せる航空機の運用まで手を出すのは性急だろう。大体鎮守府には基地航空隊があるからな。最初からそっちに航空機は少量だが配備されているぞ。」

「成る程」

「ぐ、具体的にはどんな航空機が配備されるのでありますか!?」

 

そういえばパラオ鎮守府、基地航空隊無かったよな?

基地航空隊って何が配備されるんだろね。そもそも基地航空隊って海軍か?陸軍か?空軍か?

配備される航空機は今後の運用を考えると海軍機が望ましい。空母との連携が出来るからな。あと機種転換が楽だ。

 

しかし他の鎮守府では以前、九六式と一式陸攻、飛燕、疾風やらを運用していたらしい。

一部の大陸寄りでは連山が運用されていたと言う記録も見覚えがある。

...割と雑食じゃね?政治的に考えたら陸軍が出しゃばってきても可笑しくないのに。

 

いや、そんな余裕が無かったのか。

でもまぁ、よく燃えやすい日本機で戦ってきたものだ。

ワンショットワンライターやら、数々の不名誉かつ不愉快極まりないあだ名がつけられる陸軍機、海軍機だが、一応性能は高かったんだぞ?

防弾性以外は。防弾性以外はな!

航続距離やら機動性では群を抜いて強かったんだが、防弾性を犠牲にしたせいでまぁよく落ちる。ダメコン機能は艦船でも大事。これは信濃でお分かりだろう。

航空機だって機銃を大量に浴びるわけで、ミサイルのようにワンパンしてこない。

だからこそ多少の被弾をモノともしないタフネスさが必要だった訳だが、それをすると航続距離が大幅に縮んでしまう。航続距離の縮小は戦闘時間の短縮に繋がり結局継戦能力が無くなり弱くなってしまう。この匙加減がかなり難しい訳だな。

 

ちなアメストリアでは燃料を使わないという大胆な手段で解決したそうな。

そんなの出来るのあんたらだけだよ。

 

「恐らく海軍機だろう。現在は噴進機に入れ替わっているのであまり差は無いが、爆撃機、戦闘機はある程度揃っているだろう。連絡機や偵察機は不明だ。所属する鎮守府によるな。」

「そちらの運用の方が難しいのでは?」

「いや、操縦も整備も製造も全て妖精さんが行うからな。こちらは指示するだけでいい」

「そうですか。では、補給はどうなるでしょう?食料、燃料、弾薬...」

「そちらは本土から月一で補給船が来る。400m級の大型補給船を海軍は大量に保有しているからな。一気に運んでしまうのだ。無論近海などで取れる場合もあるし、大体製油所地帯

は近くにある。海底から掘削することに成功したからな。資源に関しても同様だ」

「では燃料を必要としない艦娘が居るという噂はデマカセだったのでしょうか?」

「否。私達がそれにあたる。また他の鎮守府の艦娘に関しても段階的に機関や船体強度の改装が行われている。流石に私達のようなサイズでは無いがな。まず見かけないのは習熟訓練に時間がかかり現在も少数しか配備されていないからだ。しばし待て」

「そう、ですか...あのシステムがあれば燃料は不必要となります。それだけでも補給面で大きな利益がありますが...」

 

確かにね、万能生産装置やら船舶用粒子エンジンやらを各鎮守府に置けば戦線は有利になる。

しかしそれでは鎮守府の独立性が一層強力なものになってしまう。なんたって補給を必要としないのだから。

それでは海軍というシステムが崩壊してしまい、結果戦線を維持することが不可能となってしまう。好き勝手に独立やクーデターを起こされても困るのだ。

店だってレジ員が職務放棄したら商売にならんだろう?アレと同じだ。

 

おっと、どうやら私達は随分と話し込んでいたらしい。

正午を報せる鐘が響いてきた。この後の予定を考えるとそろそろ移動したほうが良いだろう。

何しろ本土まで返さなあかんし。

 

「む、正午になってしまったようだ。この後は丁度今日は金曜日なのでな、海軍カレーを昼食にとって頂く。その後は本土まで私が送らせてもらおう」

「海軍カレーは、かしまカレーでありますか?」

「いや、間宮カレーだ。」

 

艦艇によってカレーの味が異なるというのは良くある話。

中にはホテルのカレーレシピのちょっと高級なものがあったりと、探ってみると案外面白いものに出会える。

因みに間宮さんが作るカレーは駆逐艦にも配慮し甘口。ビーフシチューにも似たまろやかな甘みが特徴の、自然と手が止まらなくなる絶品だ。余談だがかしまは現存している。確か今は佐世保の方で保存されていたはず。今頃かしまカレーを作っているだろう。

 

他にも赤城や長門、大和カレーなども偶に出てくる。

大和カレーだけホテルクラスの一品料理なのはご愛嬌。他にも神通や大鳳、高雄らも稀にカレーを作ってくれる。神通のはちょっとピリ辛。その中にほんのりと甘みが隠されておりこれまたたまらない。

大鳳カレーは中辛位のビーフシチュー。具材をよく煮込んで二日前から仕込む本格さ。

その分味は格別で何より深みが違う。

高雄カレーは大和カレーにも似たホテルっぽい味わい。司令部があった名残なのだろうか。そういえば高雄型の四人は全員カレーがおいしかった記憶がある。やはり艤装の充実さなども影響しているのだろうか?

私的にはながもんが割と食べれるモノを作れることに驚きを禁じえなかった。

ながもんって案外器用やね。あ、比叡は別格なんで。あれは兵器だから。

 

私の船体から脱し、妖精さんに回してもらっていた一式重武装車輌に乗り込む。

私は補助席に座り、候補生は後部座席。

車体中央にある旋回式キューポラから覗く青々とした晴天から差し込む日の光が車内を明るく照らし、装備品が鈍く反射する。

 

一式重武装車輌も例に漏れずチート化しているものの、モデルがハンヴィーという事もあってか車内はスッキリしており、シャフトが無い分むしろモデルよりスッキリとした印象を受ける。

しかしキューポラの下には足場があり、其処には予備の弾帯が満載された弾薬箱が数個安置され、他にも手榴弾やらが入った箱がぎっしりと詰め込まれ、座席の隣にはガンラックが其々据え付けられており、既に全席に145式歩兵小銃が配備済み。天井には19.8mm重機関銃が格納状態で吊るされ、ランチャーらしきものも吊るされている。

 

なにこの走る武器庫。

どうせ後ろのトランクにも大量の重火器が積んであるんでしょ?知ってるよ。

これ一両でも鹵獲されたら終わりなんだが、其処らへんアメストリア軍はどう考えていたんだろうか?とても気になるなお姉さん。

 

途中、二五九式装輪装甲輸送車や七九式装甲輸送車改の車列や偶に一七式戦車の列とすれ違いながら幹線道路を利用して提督棟に向かう。

要塞山を経由して棟へ向かうと既に多くの艦娘が集まっているようで、七式装甲車輌やら一式重武装車輌が並んでいる。きっちりと駐車されている所は流石軍隊か。

 

「す、すみませんアメストリア殿?」

「...何か気になる点でもあっただろうか」

「い、いえ...この鎮守府は艦娘達に車輌を貸与しているのですか?」

「あぁ。このナウル鎮守府は設備が何もかも巨大でな。移動にも時間がかかる。よって許可制だが希望者には軽車輌を与えている。流石に輸送車は無理だがな。」

 

一応、万が一上陸された時に各自で抵抗し逃走が容易な様に、という思惑もある。

その為艦娘に与えている七式装甲車輌、一式重武装車輌には全車19.8mm重機関銃、147式軽機関銃が備え付けられている。

まぁ専らは移動用だな。ナウル鎮守府って赤道近いから暑いんだよ。

冷房必須。あ、年中な。

 

幸いというかアメストリア軍兵器は冷暖房はおろか某紅茶陸軍の様に給湯器や一七式戦車には簡易的な調理セットまで完備されている始末。

居住性最高なのだ。なんなら一七式戦車は暮らせる。てかそういう事も想定されてる。

海底に沈没して救助待ちでも普通に生活できる様に、ってかなりの設備が用意されている。

まぁ185tだから沈んだら一発アウトなのだ。海溝とか脱出不可能だしな。撃てないし。

 

一式重武装車輌が停車した。

提督棟には続々と艦娘らが入って行き、私の妹達が既に待機していた。

装甲ドアを開け、外界に出る。......やっぱ暑すぎるってこれは。私も巫女服だから割と薄着の筈なんだがすんごく暑い。

候補生は襟詰だから余計にやばいのでは?礼装も紺色だし。

さっさと棟内に案内し、残りをリバンデヒとカイクルに任せる。私とノイトハイルは少々用事があるのだ。乗ってきた一式重武装車輌でそのまま工廠へと向かう。

 

 

 

相変わらず毒々しい色の煙をもくもくと出す怪しげな施設群。

構造物の殆どが地下にあるナウル鎮守府の心臓部の地上施設。其処の一番ドックは珍しく注水されており、「とあるブツ」が浮かべられていた。

防熱の為か遮熱シートが張られ全貌を知ることは出来ないが、その大きさは駆逐艦以上。

縦にも横にも大きく、端はドックの陸地に届いている程。

 

「お〜〜、どうやら完成してるっぽいねぇ〜」

「その様だな。流石は工廠妖精さんだ。」

''えへへー、がんばったです?''

''艦娘さん褒めて褒めてー!''

''珍しいものつくたです?''

''おもしろかったー!''

 

妖精さんを持ってしても珍しい、と言わしめるアメストリア軍では珍兵器に入る部類のブツ。

今回私はこれを候補生の送還の為の手段に活用する事を思いついた。

妖精さんの気紛れで製造されたが、別に其処まで必要性のなかったこれを私が有効活用した訳だ。

 

「塗装はもうしたのか?」

''したです?''

''いぇっとです?''

''ダズル迷彩はあきらめたです?''

''ですです?''

''でもでもこっちに合わせたです?''

「そうか。よくやってくれた」

 

駆け寄ってきた妖精さん達を抱き上げてよしよしする。

うむ。とても可愛い。成果には然るべき報酬を出すのは当たり前なので、撫でまくる。

妖精さんに金銭や権力といった形での報酬は通用しない為、また本人達の希望によりこうなっている。私としてもフニフニしてる妖精さんを撫でるのは楽しい。

 

でもさ、アレにダズル迷彩は合わんと思うのよ。そもそもダズル迷彩自体目視での照準の妨害が目的だったんだしさ、今じゃ全く役に立たんよね。

でもレーダー関係の対策は絶対にしてあるだろう。

 

「90分後に出発予定だ。準備をしておいてくれ。」

''あいあいさー!''

''よーそろー!''

''つみこむぞぉ''

''やっちゃうです?''

''ですです?''

「お姉ちゃん、随伴はどうするの?」

「そうだな...まぁ不要だろう。その間の指揮権はリバンデヒに移譲。一応警戒態勢と引き続き改装計画を進めておいてくれ。」

「らじゃー!むふふふ、この兵器の対応させる改装はどうするのぉ?」

「......先ず赤城、加賀に施してくれ。実際の運用をしてみなければ判断出来ない」

「はいはーい。そういう事にしておくねー」

 

何故かるんるん気分で歩いて行くノイトハイルを見送り、私もさっさと提督棟に戻る。

間宮カレーが私を待っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食後、私達は荷物を纏めた候補生らと共に提督棟側にある桟橋にて待機していた。

妖精さんによるとそろそろ例のアレが動き出すとの事。

「アメストリア殿、私達が帰還する為の手段とは一体何なのでしょうか?」

「それは会ってからのお楽しみ、というやつだ」

「......?」

 

ふふふふふ。遂に巨大兵器が稼働するのだ。

誰だってワクワクするだろう。以前、大将殿を送り返す時はヘリを使ったりCT-7を使ったが、送り先は呉海軍大学校。最寄りの私達の輸送機が着陸可能な飛行場が存在しなかった為、今回は海路?で向かう事にしたのだ。

飛行場さ、ある事にはあるんだが関空なんだわ。

遠すぎて陸路での移動が時間がかかってしまうし、C-134しか離陸不可能だった為この手段をとる事になった。

 

何処からか轟音が聞こえてくる。

ヘリのローター音にも似た、空気を切り裂き叩きつける力強い音。

強力なエンジンから生み出される騒音は8基で、より大きなものとなり本体を動かして行く。

 

「.............な...」

「何という、大きさ...」

「...飛行艇?」

 

そう。何を隠そう。アメストリア軍が最初で最後に作り出した超巨大飛行艇。

正式名[四式8発超大型攻撃機]だ。

全長は250mを記録し、全幅に至っては脅威の325m。

そのお陰で航空機にしては破格の6780t。

 

その巨体を動かす、今時珍しいレシプロエンジンはアメストリア製とあってスペックは頭おかしいの一言。[10式48気筒大型噴進発動機]という前方にレシプロエンジン、後方に航空機用粒子エンジンを積み込んだ変態エンジンを8発積んだ空飛ぶ要塞。

 

搭載砲は128mm航空機関砲、75mm機関砲、88mm航空機関砲35.6cm単装砲を備え、まさかの短距離滑走路及び格納庫まで完備。

また機体後部には空挺団用のスペースまで用意され、側面には爆弾倉も完備。

160連誘導噴進弾砲や480連噴進弾砲というミサイルランチャーが多数用意され、対空砲は128mm三砲身対空機関連装砲、45mm対空機関連装砲、新規開発した75mm対空機関連装砲を使用。

 

二式大艇を大型化して重装甲化したようなゴツイ見た目。

今回の為に機体は暗緑色と明灰緑色に塗装され、まさかの日の丸が描かれている。

 

まぁその隣にアメストリアの徽章がプリントされているが。

 

 

それが()()存在した。

そう。二機だ。一機は私達が乗る四式だが、もう一機は予備。囮でもある。

 

何故ならこの四式、とても遅いのである。

零戦に追い抜かされる程の鈍足で、機動性は最悪。

旋回半径は170mと広く、容易く攻撃されてしまう。しかしそれをこの四式は重装甲で補った。機体全体に対15.5cm装甲が張られ、武装で対応力を上げた。

 

詰まる所の脳筋方式である。

この四式で候補生を送り返す訳だが、勿論四式二機のみで飛行する訳では無い。

基地航空隊からF-222を8機配備する。

四式には短距離滑走路と滑走路がある為、其処に駐機すれば陸地に土地を用意しなくても良いからな。

 

二機の四式から聞こえるエンジン音が低くなった。

回転数が落ち、推進力が抵抗を下回ったのだろう。しかしちょっとした大和型の大きさを持つ機体なので安定はしている。

主翼にフロートがつけられているので尚更安定性は高い。

 

静止した四式は桟橋から大体2、300m。

四式までは内火艇で向かう。その内火艇も私にある隼ではなく今回四式に合わせて新規開発した新型内火艇だ。

それを【四四式小型内火艇】という。

外観的には硬化ゴムボートに近い。てかそれをモデルだ。

全長は8.2m、全幅1.9m。良好な速力を有し、本当に中継ぎを目的としている為非装甲、軽武装だ。まぁ19.8mm重機関銃つんでるんだが。

 

今回四式に既に搭載済み。

機体後部の側面ハッチが開き、四四式小型内火艇が降ろされる。

妖精さんが船舶用粒子エンジンを駆動させ、桟橋まで持ってくる。

 

その機動性から1分で桟橋まで到着。

一定間隔に設置された舫に縄を掛け、臨時に固定される。

 

「こっちに乗ってくれ。この後はすぐだ。」

「わかりました。荷物も積んだ方がよろしいので?」

「うむ。」

「了解したのであります。よっと...」

 

私も手伝い、候補生の荷物も四四式に積み込み、縄を解く。

私の合図で妖精さんがレバーを上げ、四式へ舵を切る。と言ってもモーターボートみたいに船舶用粒子エンジンを可動させてそれ自体を舵として活用するタイプだ。

 

隔壁のおかげか、穏やかな海を進む四四式。

その進路の先には超巨大飛行艇が二機。アイドリング状態の控えめな轟音を響かせながら静止する飛行艇。上空には赤城の航空隊が編隊を組んで飛行し、またCH-4やCH-31がプラトーンを組んで移動している。80cm野砲を吊るしてるのは気にしないでおく。どこに運んでるんだろねアレ。設置できる場所は隔壁なり色々あるから特定はしない。

 

ハッチを跨いで四式へ乗り込む。

此処は最下層5階。大部分が貨物室だからか骨組みが剥き出しになっておりまさに最低限の設備のみが設置されている。私達が乗り込んだのは空挺エリア。降下猟兵が待機するエリアだ。その為機体最後部に三つのハッチが並んでおり、歯弧式とピストンが可動部だと思われる。

 

四四式は妖精さんに任せ、私達は最寄りの階段から上の階に上がる。

四階が降下猟兵用の居住区画及び128mm連装砲、88mm連装砲、爆弾倉のエリア。

 

爆弾倉は量子変換器を利用して各種爆弾を任意でばら撒ける素敵機能付き。

 

連装砲は左右45度ずつの限定旋回、

丁度長門や金剛の15.2糎単装砲のような砲塔。

連射速度は御察しの通り毎秒。しかしそれに発生する大量の薬莢は一方方向に開くように工夫されたシュートから廃棄される。例によって海面にダイナミック不法投棄だが軍事兵器にそんな事求められても困る。

 

それいったらレベリング会場とか水深が若干ゃ浅くなってるんだ。薬莢に溶けたりする機能はないので、数世紀掛けて分解されるしかない。

態々引き上げて一々処分しろなんて命令は聞けない。魔のマリアナ海峡とかまだ未占領だがあんなとこに薬莢取りに行きたくない。

 

「こんな巨大な飛行艇は初めて見ました...」

「右に同じくであります。貨物船か戦列艦のような構造。こんな巨大な構造物が飛行するとは...」

「まぁ此処まで巨大な飛行兵器は中々無いからな」

但し空軍艦艇を除く。アレらは比較対象にならんからな。大体30kmとか桁がおかしいんだよ。

小回り効かないのにどうするつもりなんだろうか。あ、私も他人の事言えんわ。

旋回に15分。旧大和より早いのは気にしては行けないがその代わり新しい海流を生み出すのだ。

一ヶ月で収まるけどさ。

 

 

ぐん、と慣性に引っ張られたたらを踏む。

どうやら離水を開始したらしい。猛々しい発動機の唸り声が大きくなっている。

 

窓から流れる景色は段々と早くなって行き、それに比例して轟音は肥大化する。

片翼四発の発動機は二重反転ベラをフル回転させ、海面を風圧で抉っていた。

 

おっと、離水も最終段階に差し掛かったのか、発動機の後部、Su-57の様な生物的なデザインのノズルから粒子が噴きだし、より一層四式は速度を増す。

「あ、あの発動機は噴進だったのでありますか!?」

「しかしブレードは二重反転...」

「うむ、あれは前方に二重反転の発動機を積み、後方に噴進発動機を装備している大変珍しい発動機だ。恐らくこの四式にのみ装備されているだろう」

 

だって必要ないのだもの。

発動機自体が胴体から外れていないと複合型は組み込む事が出来ない。

なぜなら発動機の全長が機体の全長になってしまうからだ。ドルニエの爆撃機よろしく機首、尾につけるなら話は別だが、そこまでしてレシプロを採用する意味がないのだ。

 

ならなぜこの四式はレシプロの、二重反転なんか導入しているのか?答えは簡単。噴進発動機のみだと飛べないからだ。

緊急用、というやつだ。レシプロエンジンのみでも離水可能だが、短距離離水なら噴進も合わせて使う。

 

あ、あと例に漏れずこいつも星間運用を前提にされているからだ。レシプロは宇宙空間じゃ使えないからな。

宇宙空間での戦闘もあるだろうから実体弾が使われているのだし、発動機も噴進発動機を混載しているのだ。

 

一階に着いた。

ここは大部分がミサイルハッチとなっており、機体後部はF-222の格納庫になっている。

そして乗員居住区。

といってもF-222の操縦士らと四式の操縦士、レーダー員、砲手がいるだけで、そこまで広くはない。

ビジネスホテル位だろう。あ、個室な。

 

「ここらの部屋を使ってくれ。明日には着くだろうから、寛いでくれ」

「分かりました。因みに何時頃になりますか?」

「そうだな...着水はマルキュウサンマルを予定している。そこからは内火艇での移動だ」

「なるほど、この巨体では水道を通る事は困難でありますから先ほどの内火艇で移動するのでありますね」

「その通りだ」

 

実際、水道には行けないこともない。

しかし瀬戸内と外界を結ぶ戦略上でも重要な水道の為、対潜網は引かれ、監視所が24時間目を光らせ、定期的に呉鎮守府の警戒艦隊が巡回する。

 

他にも漁船やらタンカーやら民間船舶だってくるのだからダイヤを破壊するのは忍びない。

 

...そこ、以前全力で破壊してただろとか言わない。

あれは私の船体の制御が効かなくなるわ攻略艦隊が全滅するわで大変だったのだ。軍事上の緊急事態につき、走らせて貰った。

 

部屋に入る候補生を見送り、私は操縦区画に足を踏み入れる。

相変わらずの武骨なデザイン。梁と装甲板しか視界には映らず、明るい照明が酷く不似合いに見えてしまう。

流石というべきか、等間隔に私の船体にもあった武器庫が設置され、壁には88mm歩兵携帯砲が掛けられている。

 

こんな機内でアハトアハトは不似合いだと思うが、いつ使われたのだろうか。

三重の隔壁を通り、独立した隔壁に守られた操縦区画。

 

その外観は意外にも現代のジェット機に似た随分とアメストリアからみたらレトロな意匠だった。

機器こそ最新で、ホログラムが浮き上がっていたり映し出しているのか広い視界があったりと近代化改修をした機体、といった印象を受けた。

 

というのも、アメストリア軍にはここまで巨大な航空機の設計経験などなど無かったのだ。

C-203やらCT-7はあるが、あれも35やら108m。

この四式には遠く及ばない。

しかも初の飛行艇と来た。さぞ悩んだのだろう。

 

結果同系列の二式大艇をコピペ。

機材だけ流用して丸々大型化して解決させた。

その割には駆逐艦の艦橋位の大きさがあるのだがそれは。

 

操縦士は二人。

それにレーダー員が一人に操縦区画に設けられた砲手席に四人。交代要員はニシフト制なので14人。14人でこの巨大を動かしている。

今は7匹の妖精さんによって運用されているのだ。

......ブラックになってません?

大丈夫なん?

 

「妖精さん、交代はしなくても良いのか?」

''大丈夫です?''

''のーぷろぶれむです?''

''我ら社畜なり''

''疲労知らずです?''

 

成る程、妖精さんに「疲労」という概念は無い訳か。だからこそナウル鎮守府の異常な生産量はある訳か。建造だって早いだろう?

 

ゲームでも18分で睦月型を作り上げるのだ。

疲労という概念があっては到底できない技だろう。

 

投影式の視界にF-222が映り込む。

二機ペア、計4組の編隊で周りを囲むように飛行するF-222の姿は異様であった。

というのも諸氏ご存知の通りF-222は速すぎて、四式は遅すぎるのだ。航行速度を限界まで落としても700km/h。こっちの全速力を軽く超えているわけで護衛が成立しない。

 

Q.妖精さんはどのようにお考えで?

 

A.主翼を回転させて抵抗を増やすです?

 

まさかのF-222の垂直離着陸用の主翼回転機能を悪よ...利用して抵抗を増やして無理やり減速しているのだ。いや、普通に失速して堕ちません?

8の字飛行すれば問題ないと思うのだが、そこら辺どうなのだろうか。

 

「妖精さん、護衛機に8の字飛行を指示してくれ。あれでは墜落しかねん」

''わかたです?''

''ぐるぐるです?''

 

F-222の軌道が急激に変化し、700km/hの状態とは思えない機動性能を持って8の字飛行に移行した。

いつ見ても見てるこっちがヒヤヒヤする光景だ。

物理法則を全力で殴り飛ばした様な変態機動は宇宙空間でも機敏に動ける様にと機体に散りばめられたスラスターを活用したものだが、当然操作には細心の注意が必要だ。

ズレたりしたらたちまちバランスを崩しブラックホークダウン状態だ。

それな何気に高等技術を通常空間でやってのけるあたり妖精さんの技量は高いことが伺える。

 

操縦区画から離れ、私に割り当てられた部屋に移動する。

荷物、と言ったものはない。全部作ることができるからな。

 

プシュ、という圧縮空気の抜ける音と共にドアが開き、居住区画の一室が全貌を明らかにする。

第一印象は意外にも広い、という事だ。

ベット完備。てっきり潜水艦の艦長室位かと想像していたのだが、案外広く縦に長い。

 

しかし構造上壁は薄く、棚も少ない。

限られた場所を最大限活用すべく、様々な工夫が見える。

まずシャワーはなし。これは大浴場があるからだろう。あと水道。

あとは壁から引き出すタイプの棚や机。取っ手を引けば折り畳まれていた机が広がり、通路を占領する。

幸い天井は高く、読書灯らしきライトも完備されている為窮屈には感じないだろう。

ずっと吊り下げていた五式自動拳銃を降ろし、仕込んでいたFN5-7も机に乗せる。

FN5-7は最近カイクルに勧められて使い始めたのだが、軽くて使いやすい。

弾薬もライフル弾を模している為貫通力に優れ、ツーマンセルには最適。

またコンパクトで太股に付けたホルスターにも収まって丁度良いのだ。

 

バタフライナイフや苦無を小型化した様な、一見ペーパーナイフにも見える投擲用暗器も降ろし、ベットにダイブ。

わさりと降りかかってきた長い髪を振り払い、シーツにスリスリする。

仄かな香の香り。妖精さんが炊いてきたのだろうか。

これは祇園香か。チョイスが渋いなおい。

 

だが、いい。

なんとなく落ち着く気がして、ついついウトウトしてしまう。

...寝ちゃって、いいよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーハッ!!

いかんいかん。不覚にも寝落ちしていた。

最近は無かった...いや妹らによる攻撃でトんだのを除けばないな。うん。

 

くしゃくしゃになってしまった髪を纏め、首筋あたりで纏める。

チラリと鏡を見ると、普段とはまた印象の違う美少女が。イイっすねー。

 

ちょいちょいキスマークらしき痕や歯型っぽいナニカが見えるが、大体ノイトハイルの所為なので気にしないでおく。

あいつの表現方法は精神的にクルものがあるのだが、文句言ったら四肢の何処かをバキバキにされてしまうので、死んでも言えない。

 

以前聞いたら、罰ゲームを何種類か用意しているらしい。怖くて内容は聞けなかったが、ノイトハイルのことだ。どうせロクでもないものだろう。

多分、アメストリア型戦艦の艦橋、観測機器を設置するためのツノみたいな部分を目隠しで往復とか平気で言ってきそうだ。

多分落ちても助けてはくれないだろう。ノイトハイルだし。

または一七式戦車かなんかでひき回しにされる可能性も否定できない...

 

 

やめだやめ。

こんな事考えてるからノイトハイルに実行されるんだ。

あいつ、小五ロリよろしく心を読んでくるのか、というぐらい考えている事をピシャリと当ててくるので私の想像を実行してくるのだ。やめてくれませんかねぇ。

 

机にあった五式自動拳銃を拾い、浴場へ向かう。

こういう時は風呂に限る。服装もラフなものに変え、浴場に向かう。

たしか大浴場は居住区画の中央にあったはず。候補生案内してた時に「ゆ」って見えたし。

 

相変わらず碁盤の目の様な整理された通路を通って大浴場へ。

時刻は大体丑三つ時。現在地点は予定では最南端の300km南くらい。

防空圏の関係上ここから大きく迂回しなければならない。

というのも南鳥島や沖ノ鳥島には鎮守府と要塞があるのだが、それより南にも人工島がいくつもあり、それらはすべて対空砲陣地になっているのだ。

 

この対空砲陣地が厄介で、現在故障中。

敵味方識別が不完全でこちらを攻撃しかねないので射程外を一旦迂回しなければならないのだ。あの対空砲陣地には私達の技術力提供のテストヘッドの新型高性能対空砲がわんさか積まれている為、迂回半径もとても大きくなった。

 

その分時間もかかり、どうせならと余裕を持って夜をまたぐ事にしたのだ。

深夜なら候補生も寝静まっているだろうし、ゆっくり湯船につかる事ができるだろう。

 

朱で「ゆ」と描かれた暖簾を潜り、服を脱ぎ捨てる。

籠に服を入れた後、髪を結ってたリボンを解き、最後に乗せる。

思えばこのリボンとも長い付き合いだ。改ニになったと同時に結んだまっさらな白いリボンも激戦の為か、不本意だが私の負傷のせいか所々がよれており、赤い染みもいくつもある。

そろそろ新調したほうがいいのだろうか?これは妹らに聞いてみる必要があるな...いや、妹らに聞くと首輪しか貰えないから止めておくか。

 

ならば誰が良いだろうか?

リボンを付けている艦娘というのも案外少ないな。

駆逐艦娘には結構いるのだが、残念ながらナウル鎮守府には居ない。

あ、神通が居たな。あとは初月も鉢巻みたいに結んでいたな

たしか〔第六十一駆逐隊〕だったか。史実基準の鉢巻だが、私もリボンをあんな感じで結んでいる為、相談するのも良いだろう。

 

飛行艇にしては異様にスペースのとられた大浴場。アメストリアの気風が濃く現れているな。アメストリア人はローマ人よろしくテルマエが大好きだからね仕方ないね

防水扉を開けると、タイル張りの床と、湯気の立つそこそこ大きな湯船が見えた。

 

.......ん?人影が無いか?

いやまさか。丑三つ時だから、()()か?

 

「そこに誰かおるのか?」

「ひゃっ!?ア、アメストリアさん!?」

「あぁ、谷村候補生か。いやなに、このような時間帯に相見えるとは思わなんだ」

「そ、そうですね...」

 

何故か距離を取られる件について。

現に私が浴槽に入ると、反対側で縮こまっている。ほほう、中々のモノをお持ちで。

 

しっかしやはり風呂は良いものだと思う。

気分転換になるし、とても落ち着く。ゴウンゴウンというタービンのようなエンジン音もまたBGMとして機能し、ちょうど良い温度の湯船が睡魔を誘う。

いかんいかん。せっかくこれからも付き合うんだし、あの男モドキとはある程度関係を持たなければ。

 

「谷村候補生、貴官は艦娘をどう思っているのだ?」

「へ?...そ、そうですね...共に戦う仲間、でしょうか」

「ふふ、それは良かった」

 

どうやら人情派の提督らしい。

兵器派とか言うブラ鎮生産装置はこっちからも、大本営からも掃除が進んでいる為もう居ないが、若干疑惑のある鎮守府は幾らかある。

私とて万能では無いので詳細は知らないし、現地の艦娘がどう思っているのか不明の為断定はできない。

 

ちゃんと艦娘の事を一生命体として捉え、仲間して迎えるのならば、艦娘達は自ずとついてきてくれる。これは私の経験則。

当然それなりの努力やら苦労はまず間違いなくあるだろうが、どう成長するか見ものだ。

ふふ、と笑みを零すと男モドキが真っ赤になった。初心だわぁ。

 

「だが谷村候補生、忘れないでほしい。私達艦娘は自らの意思で()()しているにすぎない」

「はい。承知の上です。愛想をつかれたのならば、所詮僕はそういう存在であったというだけの事です」

「...そうか」

 

やはり、自分を卑下し過ぎるきらいがあるな。

ある意味覚悟を決めているとも言うが、何かの拍子にポックリやられそうで危うい。

 

「まぁそう自分を卑下するな。卑屈な上官など艦娘は付いて来てくれないぞ」

「そうなのでしょうか...」

「そうだ。司令官たる者、皆の先頭に立ち進み続けなければならない。それを止めた者から負けてゆくのだ。現在は戦線が拮抗しているとはいえ、いつ崩れるともしらない危険な状態だ。そんな状況下を艦娘は敏感に感じ取っているぞ」

 

あとはどう感じるかは候補生次第。

実際艦娘が敏感に感じ取っているのは事実。私を含めな。

大和から吹雪に至るまで現状は知っているし、戦況がどう傾くか、其々考えておくように言い含めてある。まぁ腐っても軍艦だったし、それくらいは自分でしていたのだが。

 

 

床を軽く蹴り、スイーっと候補生の近くに接近する。

候補生が狼狽えているのは気にしない。ほら、裸の付き合いとも言うじゃまいか。

 

「なっ、なぁぁぁーーー」

「谷村候補生、ここだけの話な。私達としては、新規鎮守府設営に伴う支援艦隊だが、望む艦種があれば言ってくれ。叶えよう」

「えっ、でも鎮守府設営の講義で...」

「分からぬか?私は貴官に期待しておるのだ。」

 

ずずいっと顔を近づけると、候補生がますます真っ赤になってゆく。

見ていて面白いなこの娘。

 

「しかし...いえ、出来れば、航空機の運用は早期から確立したいのです。ですから、空母を一杯。あとは戦艦と軽巡洋艦を派遣していただければ幸いです」

「そうか...あいわかった。こちらで選抜した精鋭を送らせてもらおう」

「感謝致します。......あと、ち、近い...です...」

「ふふふ、そうか?妹らとはこれが普通だぞ?」

「えぇっ!?いや、あの...でも......」

「ふふ、すまない。若者を揶揄うのは楽しい故な。つい興が乗ってしまった」

「...艦齢、お聞きしても?」

「黙秘したいところだが、確かそろそろ5000になるな。」

「ご、五千!?」

「そうだ。私達は少々特殊でな。日本艦艇ではない」

「やはり、そうでしたか」

「うむ。私達はとある軍隊の創設当初から在籍していてな。数多の改修の後、現在の形になっている」

 

「では、電探や主砲などの技術力が高いのも...?」

「そうだ。日本出身ではない、別の軍隊の技術だ」

「そう、だったのですね...。つまりその技術が新型艤装の砲熕や機関に使われており、その技術に対応した艦隊を率いることになるのですね」

「そういう事だな。全長等は変わらないが、排水量や耐久性が上昇している」

「なるほど...戦術が変わる、というのはそれが根拠なのですね」

 

「そうだ。...あぁ、そう言えば本土はどうなっておるのだ?」

「と、いうと...?」

「いやなに、私達の技術供与は民間にも及んでいると聞く。どうだ、生活に変化はあったか」

「そう...ですね。確かに以前のように物資不足は少なくなったように感じます。空襲のサイレンもここ最近は聞いていませんし、停電もありません」

 

成る程。暫く聞き取ってみると、私の供与した万能生産装置は有効に使われているようだ。

あれは一機あるだけで全てを変えるからな。

 

いうなれば対価不要の錬金術。

なんでも要望の物を作り出してくれるため建材、エネルギー、食料も生産ができるのだろう。

また電子技術の進歩も進んでいるらしく、最近VRとやらが一気に普及を始め、拡張現実 AR技術が浸透を始めているらしい。

 

近代化は止まらず、周辺に反比例するように成長を続けているらしい。

プチ鎖国状態の大日本帝國だが、今の所なんとかやっていけているようだ。安心安心。

 

その異様な成長具合に他国から色々と言われているらしいが、知らん顔。

だって防衛力は持ったのだから。今にも滅びそうな自称大国に下手の弱腰外交をする必要はない。むしろ海域を防衛しているのは大体大日本帝國なのだから文句言われるののは不本意である。

 

ここで世界情勢に関して少し話しておこう。

我らが大日本帝國は絶好調。戦線は膠着し、その間を利用して軍事力増強を続けている。

維持費など掛からない物を作っているのだから財政に影響なし。寧ろ町工場やら技術系の産業が賑わい、雇用が創出されているらしい。

 

日本海を挟んだ大陸側は絶賛内戦状態。

核が使われたーとかいう噂も耳にしたが、まぁ元から人口過多だし深海棲艦海からだから瞬殺されたし特に気にしない。

 

北海。

樺太には日露共同の鎮守府が最近新設され、双方なかなかに友好関係が結ばれつつある。

あちらもバカではないのか、こんな時に睨み合ってる場合ではないと分かっているのか協調が取れている。

国土の方では海はよく凍るため深海棲艦もノータッチ。北極海では深海棲艦の航路があるらしく、そちらで激戦になっているらしく、一部陸上型の深海棲艦に上陸されており地上戦が繰り広げられているらしい。

 

欧州に関しては距離的にあんまり情報が入ってこないのだが、かなり逼迫した状況らしい。

複雑な地理や政治的にも邪魔され協調はなかなか上手くいかず、あちらにもアメストリアスペックがいるらしく完全に手詰まり状態。

運河もそろそろ塞がれるんではないかという緊急事態で、近々支援要請がくるのではないかと大日本帝國は予想している。

実際、それを裏付けるかのように日本側に〈駐在武官〉の名目で欧州艦娘の派遣が打診されているらしい。

 

...どう見ても戦力の退避温存ですありがとうございました。

候補はまさかのビスマルクにウォースパイト。パスタの国からはリットリオやローマが検討されているらしい。一大戦力ですね本当に(ry

 

流石に虎の子の航空母艦は居ないようで、殆どが戦艦か重巡だった。

あっちにはドイツやら紅茶が居るんだから大丈夫だと思っていたのだが、案外ダメだったらしい。

なんでも小型兵器が深海棲艦から多数投入され手を焼いているらしい。真偽は定かではないがな。

 

「あの...」

「んあ、すまない。考えていた。まぁ、復興か。進むのは良い事だ。...そう言えば修了はいつになるのだ?」

「確か、二ヶ月半後と記憶しています」

「その後着任となると約三ヶ月か」

「そうなると考えられます」

「ふむ...これは私の勘なのだがな、その間に一戦ありそうだ」

「そう、ですか...どちらで?」

「まだ分からん」

 

しかし戦力の拮抗がある中、打開を図るのは深海棲艦も同じ。

恐らく、絶対に深海棲艦は戦力を集結させているだろう。

三ヶ月、いやもっと早い内に一回武力衝突があるだろう。そのキッカケが人類側か深海棲艦側かは不明だが、相当大規模な戦闘になるだろう。

 

長射程のぶどう弾頭の噴進弾でも新規開発するか?

他の鎮守府に攻撃があった場合、どうなるか分からない。

こちらから支援できる手段があったほうがいいだろう。現在私が持っている手段はBGM-9のみ。これでは力不足といいざるおえない。

 

''艦娘さーん!護衛機が飽きたといってまーす!''

 

ポヨン、と妖精さんが降ってきた。

妖精さんの服からして操縦士。内容が内容だが、まぁ妖精さんだし仕方がない。

 

 

ずっ飛び続けているだけじゃ妖精さんは飽きてしまうだろう。

航路予定ではあと六時間。どうしたものか...

 

「これが、妖精...」

「む?そうかそうか。妖精さんを見た事がなかったのか。そうだ、ことちっこうのが妖精さん。我々艦娘にとって必要不可欠な、協力者だ」

''艦娘さん艦娘さん、この人が提督候補です?''

「そうだ。今後、何かと関わりを持つかもしれん。他の妖精さんにもそう知らせておいてくれ」

''かしこまり?そな、ばいならー''

 

てくてくと妖精さんは帰って行く。

その様子を男モドキは興味津々といった風で見つめる。

やはり人の子女の子か。確かに妖精さんは可愛いし、プニプニしてて感触に飽きがこない不思議生命体だが、目下最大の(胃の)敵でもある。

 

毎回私の予想の斜め上所か範疇を突き抜けて行く突拍子もない行動の数々には散々苦しめられてきた。特にあのダイナミック解体に関しては一生モノのトラウマになりつつある。

 

なんやねん解体の手間を省くために要塞砲の500cmを叩き込むって。

普通に考えて頭おかしいやろ。せめて以前みたいに麻酔薬入れて欲しかった。

確かに速やかな解体は出来ただろう。

でもさ、あれめっちゃ痛かった。それはもう。

 

これまで幾度と無く大破を繰り返してきた私が経験したトップの痛みだった。

もうアレは味わいたくない。二度と。

 



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81.え?薄い本の人来るの?

(`・ω・´)チラッ

チラッ(´・ω・`)

(;´Д`つ81話

(´∀`)バレテネェナ...


ーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーー

候補生を届け、上陸した私。

ニ、三ヶ月ほど開けた期間だが、景色は全く変化していない。

新造のレンガ造り風の建造物が並び、広い敷地はフェンスで囲われている。

 

一応145式歩兵小銃を肩に下げ、候補生の後ろを歩いて行く。

他の生徒らはまだ戻ってきていないのか、大学校は伽藍の堂だ。

 

射撃練習場や武道館、海を見れば海防艦娘に守られた漁船群や哨戒艦隊、演習艦隊が見える。

上空には軍事施設だからか航空機は一機もおらず、居たとして対潜哨戒機だ。

 

事務的な処理を手早く済ませつつ、帰還手段を準備する。

候補生らは先ほど別れ、ちゃんと返したぞと書類を作成しているのだ。

一々報告に書類を作るのは非効率だと常々思うが、なぜかこれは変わらない。

さっさと電子化はよ。

 

「アメストリアさん、大本営から電文です」

「......大本営から?」

「はい」

 

そう答えるのは事務員。

このタイミングで入れてくる大本営はやはりウザイと思う。

またなんか押し付けてくるんだろ?知ってる。

 

「第一級軍機の電文です」

「たしかに受け取った」

 

渡された封筒。

開封して字面を一瞬で読み取り、意味を咀嚼する。

ふむ、内容を要約するとこうだ。

 

艤装の改修終わったから、艦娘の方の訓練が必要やん?

だから訓練をしてくれる艦娘必要やん?

 

でもあんたらやらないやん?

だから代わりに練習艦送るからその艦娘育ててや。

 

とのこと。

まぁ理に適っている。

艦娘だって今までと全く仕様が違う艤装なのだ。旧史の使い勝手が全ての経験の艦娘を実戦で活躍できるようにするには新艤装の扱い方を把握しているエキスパートが必要だ。

だからそのエキスパートを育てなさいという事だが、じゃあ練習艦は誰だろうか?

まず今どこなん?

香取か?鹿島か?香椎か?

 

機密保持の都合上、書類を跡形もなく消し飛ばす。

そしてあたりを見回しても艦娘の姿はない。

古い学校の廊下が見えるだけだ。

 

既にナウル鎮守府に向かっているという事なのだろうか?それなら色々納得出来る。

もしそうだとしたらさっさと引き上げた方がいいだろう。

 

方針を決めた私は出口へと向かった。

この建造物は軍事施設とあってそこそこシンプルな作りになっている。

まぁラビリンス作っても使いづらいのだがら当然だ。

何箇所かある出入り口の一つ、桟橋方面のドアを開けると、そこには一台の黒塗りの車。

 

あらー、出待ちされてましたわ。

どこから出るのかはあたりがつけられていたか。

ナウルだから陸路じゃ行けんしな。大体分かるか。

周囲をさりげなく索敵しても護衛やら何やらは確認出来ない。

車にも一名のみが確認でき、驚くべき事にそれは艦娘の反応だった。

 

艦娘が運転できるのはナウル鎮守府がなによりも証明していたため驚きはないが、許可されているということに驚いた。

本土でも出来るのか。いやまぁ私達堂々とやってたけど妖精さんが実際は運転してたからセーフと思いたい。妖精さんが付属品か、独立した勢力かどう思われているのかは知らんが。

 

ガチャリと、ロックが外れる音と共にドアが開く。

風に揺られる銀髪。

ツインテールにしたその艦娘は士官服のような制服を身に纏っていた。

白を基調としたジャケットには肩章や飾緒もあり、一般的な艦娘の制服とは一線隔した意匠は戦闘艦ではない事を教えてくれる。

だが階級章はないことから艦娘には階級といった縛りを付けていないのが察することができる。

 

ともあれ、練習艦娘、鹿島が来たのだ。

そう、あの薄い本の人だ。いや失礼。

ゲームだと艦隊に編成するだけで獲得経験値が上がるという演習に有難い存在であった鹿島だが、ここは現実。

練習艦という艦種ながら本来の役目である海兵育成の役割は外され、新人艦娘の指導が専ら。

実際史実でも球磨型や夕立も教官をやっていたと聞く。それと同じようなものだ。

戦闘訓練が果たして香取型にできるのかは少し疑問だが、艤装、おそらく足回りやら船体に関してではないかと推論する。

砲やらは先輩艦娘に任せるしかないだろう。

砲撃方法だって今じゃ現代艦と同じだ。砲精度は上がり、探知精度もある。

艦娘のする事なんて戦闘指示だけになっている。

 

私が来る前は照準から舵取りまで艦娘がやっていたらしく、妖精さんは補助をしていたらしい。

揚弾やら装填やら缶のご機嫌とりやらな。

しかし私の技術支援により機械化は進み、艦娘の負担は減りつつある。

やる事なんて妖精さんの指揮と照準だけだ。

足は妖精さんがやってくれる。実際砲照準は妖精さんでもやってくれるのだがここは艦娘がやった方が早い場合がある。

てか艦娘の存在価値的にそれくらいはやらせてほしい。

 

妖精さんだけでも艦が運用できるのはミッドウェーの一件で分かっているので、お飾りにはなりたくない。

 

「貴様は鹿島にちがいはないか」

「はい。香取型練習巡洋艦二番艦、妹の鹿島です。この度、ナウル鎮守府にて次代の艦隊を育てるための艤装技術訓練を受けるために派遣されました。よろしくお願いしますね、アメストリアさん」

「あぁ、よろしく頼む。...そう硬くならないでくれ。」

 

なんか距離があるのですが。

私、怖いかなぁ?たしかに仏頂面だが、別に怒ってる訳では無いぞ?

 

「いえ、申し訳ありません!つい、緊張してしまって...」

「すまないな、仏頂面が通常なんだ。まぁまずはナウルに向かおうか。鹿島の船体はどこにあるのだ?」

「はい、ナウル鎮守府に向けて出航準備の為呉鎮守府の方に。缶の調整に時間がかかるそうです」

「やはり妖精さんも慣れていないか?」

「えぇ、既に現代化改修が終わった子達は習熟訓練をしていますが、どうにも扱いきれないようで、望むタイミングで停止できなかったり速度の振り幅を間違えたりしているそうです」

「成る程、艤装の指導は急務か。あぁ、それと船体だがナウル鎮守府から使いを出して船体ごと輸送する。私達は先にナウル鎮守府に向かうとしよう」

「船体ごと!?そんな事も出来るんですか?」

「うむ。ウチの艦載機は推力が大きいからな。6697tなど容易く輸送できる能力はある。」

 

なんたってドーラたんをヘリ4機で輸送できちゃうのだ。

 

「こちらアメストリア。ナウル鎮守府からC-134を四機ほど回してくれ。鹿島の船体を運び込む。あと船渠も一つ用意してくれ」

『リバンデヒよ。承知したわ。C-134を送るわね。船渠は現在準備中よ。地下じゃなくていいのね?』

「あれは地下も何もあるものか。」

『いえ?お姉ちゃん見てなかったのかしら。妖精さん達地上のドックを改造してパラオ鎮守府みたいに地下にいくつかドックを作っていたわよ?』

 

............え?

聞いてないよ私。え?マジで?

本当に何やってるんですか妖精さん。

暇になるととんでも無いことをやらかすのやめてくれませんかね?

イメージは多分格納式の駐車場。地上の船渠が水抜きして船渠ごと下がって地下にある空間にセット。そこがドックになるのだろう。

あれだ、紙パックの自販機みたいな。

以前の某潜水艦アニメみたいな感じではなく、規模はまぁ小さい。

同時並行的に修理が出来るし、空襲対策やらドミートリーを隠すのにもってこいだろう。

まぁ有用だし許すか。

 

 

兎も角艦娘の方を運ばなければならない。

どうしようか。用意してたのF-222なんだけど。早いし便利かなって用意してたが想定は私一人だ。

うーん、F-222のコクピット異様に広いし大丈夫...か?

重力制御装置のお陰でGの影響はないからそっちの心配はしなくていいが、本人がどう返答するか...

 

「鹿島、生憎と私の帰還手段は一人乗りなのだが、手狭になってしまってもいいだろうか?」

「え?あ、はい...一人乗りってどういうことでしょう?」

「あぁ、こういう事だ」

 

そういってF-222を操作する。

航空機用粒子エンジンの圧力をあげ、スラスターを解放。

主翼は垂直に回転させ、海面を叩き割る。

 

何を隠そう、F-222は海中に待機していたのだ。

噴式機からして色々とおかしいが、ターボプロップエンジンではないので水中も行けるのだ。そもそも宇宙空間での戦闘を想定しているしな。

眩いスラスターの光を瞬かせながらF-222は半浮上する。

完全に浮いたら私達が乗り込めないから船のように半浮上状態だ。

 

「......鹿島?」

「ふぇ!?....えぇ、大丈夫です。大丈夫、です...ここまで進んでいるとは思わなくて」

「確かにSTOL機は配備されていなかったな。艦娘には」

 

そうなのである。

流石にアメストリアスペックの艦載機をそのまま配備すると核兵器以上の戦略兵器が溢れかえる事になるので配備はされていない。

大日本帝國が独自に開発した多目的戦闘機を採用し、魚雷が全廃された。

対艦、対地は噴進弾へと置きかわり魚雷は対潜攻撃用へと専門化していった。

さながら現代艦艇である。

まぁ、実際艦娘達に配備されている艤装もナウルのとは違い最低限の改修で装備可能なそこそこの性能の物だ。十分火力あるがな。

噴進弾は限定的配備に止め、主砲は連射力が上がりバルジや水密壁など安定性を重視。

艦橋などの重装甲化に機関の無限化。

電子機器の完全導入にアメストリアスペック直乗せの高性能電探。

 

正直言ってめっちゃ強い。

扱いになれればアメストリアスペックの深海棲艦との十分渡り合えるだろうが、まだ扱えない。そこを今回なんとかするべく鹿島がここにいるのだが。

 

「貴官の荷物はあるか?」

「は、はい」

 

そういって出されたキャリーバックを量子変換器に収納し、F-222に飛び移る。

やはり平べったいな。亀みたいだ。

 

「鹿島、貴官も此方に飛び移って欲しい」

「え、えぇ!?この戦闘機...?にですか?」

「うむ。大丈夫だ。出力が大きいのでな。ビクともせん」

 

派生型に35.6cm単装砲を括り付けたものがあるくらいだ。

推力比には余裕があるし、大体鹿島は軽いから重量のうちに入らないだろう。

 

「分かりました...えぃ!」

 

ぴょん、と飛び移ってきた鹿島を受け止め、コクピットに乗り込む。

しかしF-222は一人乗り。

 

「あ、あの...座席が一つしかないのですが...」

「む?貴官も乗ってくれ」

 

左手でF-222の最終チェックを済ませながら右手で自らの太腿を叩く。

まぁ、これしか方法が思いつかんかったんじゃ。

 

「え、えぇ!?し、しかし貴女に失礼じゃ...」

「いや、どうという事はない。それに貴官は軽いからな。負担にも入らないだろう」

「そうでしょうか...?それに、操縦もし難いのでは?」

「それについては大丈夫だ。これは自動航法があるからな。勝手にむかってくれる」

「其処まで言われましたら、承知いたしましたわ。失礼しますね」

 

F-222のコクピットというのは外界との遮断機構の関係上そこそこ深く、乗り込むのには手間がかかる。

それでいて機械類は少なく、態々手すりが付いているくらいなのだからバリアフリーは進んでいるのだろう。

 

視界が銀色に染まる。

華やかな薔薇の香りが仄かに漂い、一瞬で戦闘兵器の空間からフローラルな小部屋へと姿を変えた。

こんなにも変わるものなのかと正直驚きを隠せない。

私の膝の上に背中を丸めてちょこんと座る鹿島。彼女がいるだけで最低限の内装だった戦闘機は華やかになり、また優雅に見える。

いや、F-222の造形美を否定するつもりはないがな?やっぱ初めてのタイプの艦娘だし、こんなに密着したの初めてだからね、仕方ないね。

 

右手側にあるキーを押すと駆動音と共にキャノピーが下がってくる。

涙を引き延ばしたようなシャープな強化ガラスのようなこれも、アメストリアの技術によって防弾性能は飛躍的に上昇し、ここにHUDの情報を表示する事もできる。

といってもアメストリアはヘルメットを使用しないのだが。返って見えにくいらしい。

そんなのお前らだけだよ。

 

「では発進する」

「お願いしま...きゃっ!?」

 

右腕で鹿島を抱き寄せつつ操縦桿を握りしめ、左腕でスロットルレバーを掴む。

先程自動航法があると言ったな。あれは嘘ではない。

だが直接操縦したほうがいいのは当然で、更にアメストリアの事情もある。

このF-222を始めとしたアメ製航空機は基本的に宇宙空間での使用を前提としており、大気圏内はおまけのようなもの。

 

「あ、あの...当たって......」

「む?ああ、申し訳ない。だがこうしなければ飛べないからな、少し我慢を。」

「はぃぃぃ...」

 

真っ赤になった鹿島にニヤニヤしつつ、レバーを倒す。

タービンのような唸り声が更に大きくなり主翼のスラスターから蒼い火焔が吹き出し機体を浮き上がらせる。

何をどうやったのか主翼に設置されたスラスターだけでこのT-34くらいはあるF-222を浮かせるのだから出力はF-16に匹敵するのではないだろうか?

流石アメストリアの技術だ。

 

離水したF-222は私の操縦に忠実に従い、機首をナウル鎮守府方面へ向けるとノズルを拡大。

一気に増速した。

 

F-222の強みたる瞬間的な加速により、キャノピー越しに映る世界は線となり塗りつぶされた。

スロットルを少しずつ絞りながら方向舵は維持する。

 

チラリとF-222搭載の電探を確認するとC-134の反応が四つ一瞬だけ映り込んだ。

相対速度でいえばマッハ5。映り込むのは一瞬なのは当然だ。

そのまま進むと、ナウル鎮守府からの誘導信号をキャッチする。

なまじ高速な機体が多い為、500kmの距離で信号が発せられているのだ。

 

信号がきた為スロットルを引いて行く。

段階的に引かないと慣性やら作用やらが面倒なのだ。コクピットは重力制御が施されている為どんな動きだろうが身体に影響を及ぼさないのだが、今回は初搭乗の鹿島がいるのだ。

 

F-222は減速を始める。

主翼のスラスターが仕事をし始め、電子表示の速度メーターが目まぐるしく変動する。

視界が通常に戻った。丁度第一隔壁を通過する頃。ここまでくると500km/h程に減速している。

 

「わぁ....」

「ここまで要塞化された鎮守府は珍しいだろう」

「はい、こんな巨大な隔壁なんて初めて...」

「私達は一度鎮守府を棄てた経験があるからな。過剰になってしまうのだ」

 

パラオ鎮守府の事は忘れない。

既にナウル鎮守府での着任がある今、経験がある艦娘とない艦娘があらわれている。

まぁない艦娘もそれ以外でヘビーな経験を積んでいるわけだし鎮守府を出た身だからある意味ナウル鎮守府の艦娘は皆鎮守府を失ったことがある経験を持っていることになる。

 

第二隔壁に差し掛かると、訓練なのか艦載機仕様のF-222の編隊や輸送機が目につく。

白の一本線。今日は翔鶴のようだ。

見渡すと、他にも赤の一本線が。どうやら赤城との合同訓練らしい。

 

海上に目を向けると今日の当番の筈の第三艦隊が洋上に居た。

縮尺を間違えたような巨艦がならび、びっしりと主砲や対空砲が生い茂る様は心にくるものがある。なんたって秋月型でさえ大和と同サイズなのだ。

いうなれば他の鎮守府の艦娘を1/1000スケールの船とするとアメストリアスペックたるナウル鎮守府の艦娘は1/350。もしかしたらそれ以上。

 

そんな隔絶されたサイズ差があり、それから生まれる莫大な搭載量の余裕はミサイルガン積みと主砲モリモリに割いている。

だからバ火力を手にしているわけだが、これは参考にならない。今回はダウンスペックの艤装に関しての教練なのだ。

うーん。一番マシなのは吹雪型くらいか?あとは規格外すぎて例えにも使えない。

 

「なんだか別世界みたい...です」

「成る程、言い得て妙だ。ここは正直参考にならんからな。悩ましい所だ」

 

主翼が垂直に旋回し、スラスターが至る所から噴出。その場でホバリングする。

丁度飛行場は輸送機が待機しており、管制塔の指示に従って待機する事になったのだ。

 

滑走路に進入したC-134を傍目に、代わりに着陸できる場所はないか、と探してみる。

.......別に地上である必要なくね?

 

態々CT-7が飛べる移動式滑走路が居るのに活用しないのは勿体無いだろう。

早速提案してみる。

 

「蒼龍、飛龍。どちらかF-222を今すぐ受け入れる事はできるか?」

『はいはい!アメストリアさん!私の方でできるよ』

 

応答したのは飛龍。

明るいすみぺボイスに鹿島も誰か分かったようだ。

 

「そうか。では飛龍、今からF-222を着艦させるので車輌の方の用意を頼む」

『かしこまりー!多聞丸、車輌の用意お願いね』

『了解!私が用意してあげるね!』

 

飛龍の方へ操縦桿を向ける。

空母艦娘らは一箇所に船体が並んでいるため実に個性豊かだ。

加賀なんかは半分戦艦だし、何より横幅が違う。

赤城は二段空母とあって全高が高く、翔鶴や瑞鶴、大鳳は装甲空母の為ズッシリとして濃い灰色に包まれている。

他には雲龍の姉妹達は龍驤と隣り合っており、龍驤の小ささがより際立つ。

 

件の蒼龍飛龍は姉妹艦として再設計したので正真正銘姉妹となり、仲良く並んでいる為わかりやすい。

飛龍は左側に艦橋がある方だから...あっちか。

スクランブル待機用なのか飛行甲板にはF-222やFB-99が並んでおり、スペースを捻出した所らしい痕跡が見て取れた。

スペースに着艦する。

 

古今東西着艦というのは至難の技で、数多くの失敗例がある。

というのも空母とて船のため波の影響を受ける。

大体1mは上下するのだ。そんな不安定に動く滑走路に着陸しようというのだからそりゃ難しい。

着輪した途端に船体が跳ねて直撃。機首から突っ込むなんてこともあるし、そもそも幅も長さもギリギリなのだからワイヤーで無理矢理急停止しているわけだ。

 

しかし、アメストリアスペックを侮ってはならない。なんたって4桁全長である。

長さは余裕。幅もCT-7が載せられるほどで、無理すればC-4も載っかるくらいの広々さ。

当然のごとくワイヤーなど無く飛行場と同じ運用がされる。

更にF-222は垂直離着陸機なので滑走路を使わない。駐機スペースを確保するだけで充分なのだ。

 

主脚が衝撃を吸収し一旦縮む。スプリングがそれを跳ね返し、巨体に似合った重量を支えた。

航空機用粒子エンジンが切られ回転数が落ちてゆく。別にターボファン式とかじゃないが部品構造上タービンがある。

主翼が平行へと戻って行き、同時にコクピット部に梯子がかけられる。

私もコンソールを操作してキャノピーをあけると途端にムワッとした懐かしい空気が駆け抜けた。そうそうこの風だ。

赤道が近いから常夏の状態となり、常に真夏日。

湿気を多く含んだ陸風が吹くこの環境こそがナウル鎮守府のいつもだ。

 

「鹿島、そのまま梯子を下りてくれぬか?」

「あ、はい。分かりました」

 

いそいそと降り始めた鹿島を横目に走り回る妖精さんを注視する。

整備担当の妖精さんがあちこちを走り回り乗ってきたF-222にも取り付いている。

 

「アメストリアさん!おりました」

「そうか」

 

そう言って梯子を使わずに飛び降りる。

F-222ってデカイから全高も中々にあり4m。本当に戦闘機なのか怪しくなるが、まぁ機首に六門積んでたからこうなる。

 

「では行こうか」

「はい!」

「あ、いたいた!アメストリアさーん!」

 

飛龍が駆け寄ってくる。

どうやら今日は非番らしく私服だった。態々迷惑をかけたかね?

 

「すまないな飛龍。折角の非番に」

「いえいえ!私達も暇だったからねー。あとこのままだと加賀さんに捕まりそうで...おっと。今のなーし!」

「ふふ、大方赤城が翔鶴に付いているから加賀も暇しているのだろう。放っておけば瑞鶴辺りが絡むだろう」

「あー、そーだよね。以前みたいにほぼ実戦にならないといいけどねぇ...」

「それは貴官らも同じことだがな。重巡との演習ではヒヤヒヤしたぞ」

「んふふふ〜!そぉ?ちゃんと手加減したんだよぉ〜?」

「あの...飛龍さん、でよろしかったですか?」

「ん?なになに鹿島...さん?」

「はい、香取型練習巡洋艦二番艦、妹の鹿島です。あの、ここでは航空母艦と重巡洋艦で演習をするのですか?」

「んふふ、そぉだよ!この艤装になってから出来ることいぃーぱい増えたからね!深海棲艦の艤装もこっち側になってきてるし、対応出来るように訓練は必要なんだよねぇ」

「なるほど...」

「深海棲艦にも私達の艤装と旧艤装の二種類がいるからな。侮れば私達とて無事ではない」

 

経験者は語る。何度も痛い目見てきたからな。いやでも警戒するというもの。

おっと、来たようだ。蒼龍飛龍共に1000mを超える巨艦。移動は時間がかかってしまうため私にあった艦内鉄道や道路が導入されている。無論縦方向にも道路は走っており、丁度蒼龍が運転してきたと思われる七式装甲車輌が船体横のスロープを使って甲板に登ってきた。

 

ハマーのような要人警護用の大型護送車、といった風といでたちは威圧感満載でカクカクとしている。アメストリアの兵器の特徴たる直線で構成された洗練されたフォルムは見ていて飽きないものがある。艦娘達に貸与されている車両となると塗装されていたりマークがあったりするのだが、意外なことに蒼龍の車両にはこれといった加工はなく、原色のジャーマングレーのままだし、マークといえば錨がプリントされているくらいであとは二航戦と描かれていた。シンプルなのが好きなのかね?

運転席と装甲ドアが開き、ひょっこりと蒼龍が現れた。

 

「あ、多聞丸!今回はそっちにしたんだ〜」

「そうね、今回はお客さん迎えるって聞いたしこっちの方が良いかなぁ、って思ったんだけど。どうかなぁ、飛龍?」

「うんうん、良いと思うよぉ。おっきい方が飛龍は好きだけどあれは飛龍達用だもんねー」

「...蒼龍、提督棟まで頼めるか?」

「え?あ、わかりました。てっきり寮か工廠かと思ったんだけど、違うんだねぇ」

「もう船体の輸送は終了したのか?」

「ん?そーだよアメストリアさん。聞いてなかったー?」

「先程C-134が船体を運び終えてましたよ?。多分妖精さんが既にいじり始めてるんじゃないかなあ」

 

流石はC-134。

7000tなど荷物に入らないか。しかしそうか。既に船体が到着したとなれば話は別だ。鹿島本人の意見を反映させたいし、工廠の手順自体もまた知識となるだろう。

 

「鹿島、貴官の船体だが、此方で改装する事は以前にも話したが、貴官自身の希望等があれば妖精さんに伝えてくれれば大体は実現してくれる。蒼龍、工廠の方へ目的地を変更だ」

「かしこまりー!直ぐむかっちゃうよ!」

「あ、あの...具体的にはどのような...?」

「む?そうだな...飛龍、例えば言ってみてくれ」

「え?飛龍?んー...あ、あのC-4の着艦に関してなんだけどいーい?」

「良いぞ。言ってみろ」

「んーC-4ってとってもおっきぃと思うんだけど、今だとクレーンで引き揚げて専用のカタパルトで飛ばしてるじゃん?」

「そうだな。」

「あれはちょっと隙になるかなぁ〜って飛龍は思ったなぁ。カタパルトの方で回収出来ないかなぁー?」

「ふむ...船体自体を速度に乗せてC-4の逆噴射を利用すれば行けるな。カタパルト自体も小規模改修で行ける。」

「あの...しぃーふぉー?というのは...」

「む?あぁ、C-4と言うのは我がナウル鎮守府が運用する大型飛行艇でな。貴国にも富嶽があっただろう?あれの四倍程度の大きさの物でな。現在航空母艦に艦載出来るよう順次改修を施しているのだ。」

「あの富嶽の四倍っ!?そ、それは凄いですね...富嶽でさえ陸上機がやっとなのに...」

「全長的には大和型と同率だな。無論それに見合った搭載量を誇り、様々な場面で活躍することが期待されている」

 

具体的には上陸作戦とかな。

強襲にも使えるし、当初の目的である空挺降下が出来る。また...砂漠に着陸も出来る。かなり無理やりだが海のような広さなら、いける。

 

さて、工廠だ。蒼龍姉妹に別れを告げ、工廠に足を踏み入れる。

既に船体は運び込まれているようだが...まぁ案の定地下工廠の方にあるようで地上の設備には鹿島の船体が見当たらない。

 

 

「まぁ..,ここも巨大ですね...」

 

確かに此処には私達の乾ドックもあり、運河のような広大さがある。

移動式のガントリークレーンや100kt級クレーンが整然と並んでおり、確かに巨大だ。

感覚が狂ってしまうのが難点。

 

「まあ此処の艦船のサイズに合わせるとどうしても施設の巨大化は避けられない。本土には設置できまい」

「そうですね...せめて柱島...いえ沖ノ鳥島なら配備できますか?」

「ふむ...出来るだろうがそこまでしてする必要は無いだろうな。そもそも...」

''艦娘さん艦娘さん、ロー○ンさんの船体、改修どうします?どうします?''

「鹿島、何か要望はあるか?」

「そう、ですね...私、練習艦ですが母艦としての能力もあった方が便利でしょうかと思った事は...海防艦の子達の休憩出来る娯楽室を作って頂けますか?」

「どうだ妖精さん」

''がってんしょーちです?かしこまです?''

''他にあるです?''

「そうね...最低限の自衛ができる武装とヘリコプター搭載機能が欲しいです」

''あいあい!すぐ作るです?艦娘さん、装甲はどうするです?''

「そうだな、母艦としての機能を鑑み、対56糎装甲にしてくれ」

''がってんしょーち!''

「56糎!?そんな口径を持つ戦艦が深海棲艦に...?」

「うむ。私達の大和型も56糎主砲を使っている。これなら避難所としても守る事ができよう」

「ありがとうございます!アメストリアさん」

「お礼は妖精さんに言ってくれ。私は橋渡し役だからな」

 

まぁ練習艦もとい補給中継艦として見てもそんなに要らないとは思うが、まぁ念の為ね?

あと自衛用の砲熕か。んー、香取型は14糎連装砲を装備していたはず。

多分既に妖精さんにバラされているだろうから当てにできないと考えても20.3cmが妥当だろう。対空砲には最近緊急生産して余剰している88mm四砲身対空機関連装砲と剥がした45mm対空機関連装砲を流用すればいいだろう。

機関が多くなるがまぁ仕方ない。

あー、観測機器等も必要になってくるか。電子化は必然だが慣れてくれるか不安があるな。

いずれ艦娘には全艦導入されるだろうから教導する側ならマスターして欲しいところ。

 

EVを使って地下へ。

珍しくゴンドラ式のEVから見える景色は特殊であった。

船体の出し入れをする大型EVを中央に置きそれから放射状にドックが並んでいる。一回層につき五個のドックがあるようで、サイズは加賀が入るサイズが一つに残りは大和が入るサイズ。

成る程、各階には航空母艦、戦艦、戦艦、戦艦、戦艦の配置がされているようだ。

航空母艦の中でも最大の加賀をベースにする事でスペースに余裕を持たせている。また他のドックも大和型に合わせる事で全艦収容可能。

また地下に作った事で四方にクレーンやら機械を設置可能になり、ここからでもロボットアームが確認できる。

 

EV自体はオーブンのトレーを出し入れする様に船体を乗せたプレートが上下するようだ。

ここはパラオ鎮守府と変わらないようだ。まぁたしかにあれ便利だもんなあ。

 

鹿島の船体は...と。あった。

第二階層のドックに収まっている。現在は...何時もの骨組みまでバラしている段階のようだ。

しかし既に工廠から艤装は届いているあたりがなんともまぁナウルらしいというかなんというか。

 

「わぁ......これは凄いですね」

「うむ...私も初見だが、こんなものを作っていたとは...」

「これ程大規模な地下建造物は見た事がありません...」

 

規模で言えば洪水時に一時的に水を貯める地下貯水池のようなものがズラリとならんでいる。

そんな浮世離れした空間を鹿島と歩く。

階段をいくつか下ると、絶賛解体中の船体が。

 

こんかい鹿島の改修に伴い、船体は70mの延長。船舶用粒子エンジンを搭載し、電子機器山盛り。

対56糎装甲に20.3cm連装砲を四基配備。88mm四砲身対空機関連装砲を四基に45mm対空機関連装砲を三十。

 

武装は既に運び込まれており、四方のアームには装甲板が握られている。

竜骨から弄っているため天井のクレーンには特殊鋼の骨組みが吊るされ、今元の竜骨に接続。

さらに元の竜骨では船体が支えきれないためもう二本全長分の竜骨が追加され最中式に挟まれた。

 

そして左右にブロック単位で小骨が設置されてブロックのように船が組み上がって行く。

装甲板がパチパチ組み上げられ、艦内の床や壁が敷き詰められる。そしてあらかじめ配線が積み込まれた後第一甲板で蓋をされ、上部構造物がこれまたプラモのように設置されて行く。

艦橋は一体成型。内装も既に積まれており、艤装として積み込まれた途端配線工事が始まった。

あとは煙突が差し込まれ排気管と接続。またマストが立ち、最後に主砲と対空砲が設置されて行く。

 

これで調度品やら生活に必要なものを除き進水可能な状態まで組み上がった。

この時間実に2時間。もう手馴れたものなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 




色々申し訳ない。
失踪は誓ってしません。

らっきょを走り抜けてました。おい塩川2月はもう終わったぞ?
龍田改ニに一目惚れしてガン回ししてました。昨日達成しました。

イベントe-3まで行って燃料弾薬が尽きました←今は武蔵のせい。5-4しゅごい。
秋月が始めて来ました。日振ちゃんかわいい。

春イベ例の作戦ワンチャン?大和60で止まってるんだけど...磯風も育てなきゃ(´・ω・`)


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82.荒波は船上から見たら恐怖

まず一言。
私は生きています。大変お待たせしてしまいました...
進級してから時間が取れず、ちまちま書き溜めてました。めっちゃ時間かかった。

皆さまは史上最悪(自分的)のお米イベントどうだったでしょうか。
私は全時間を費やしてカタパルトをもぎ取って来ました。直後に設計図二枚要求ってね。うん。
熊野が96レベになっても改ニになれなかったので今回こそ、と改装。また耐えきれず鈴谷とケッコンカッコカリしました。嫁は大和なのに。大和なのに...修羅場に胃を痛めています(阿呆

黒潮にやられました...設計図また要求しやがって...売りやがってくださいお願いします。


ーーーーーーーーーアメストリアsideーーーーーーーーーー

なんやかんやあって、鹿島の船体は完成した。

一応改修という体を取っているため進水式などの儀式は行わない。

 

今回の艤装改修のおかげで全長は長門型に迫り、それでいて武装を最小限にして居住区をめいいっぱい大きく取った。

その結果200人以上の個室と遊戯室、食堂、大浴場に10の会議室を備える豪華客船となった。いや、武装しているから仮装巡洋艦だろうか?

 

まぁそこはいい。

推進システムには4軸の5枚刄。それを動かすために船舶用粒子エンジンを四十基搭載した。

まぁそれなりのものが出来たと思っている。非戦闘艦なんて間宮以来のため、妖精さんもはっちゃけたようだ。

全周囲対56糎装甲に塔楼には対20.3糎装甲を追加。

 

また砲に関してだがアメストリア式のブローバック式だと凄まじい勢いで弾薬を貪るので、オートメラーラのような自動装填装置を新規開発して搭載した。一体弾薬で、ドラム式の弾倉に収まっている。

一門あたり即応弾50発に追加弾倉450発。これが二門の砲塔が四つ。合計4000発の携行弾薬がある。

対空砲?あれは勘弁してくれ。量子変換器に直付けだよ。

 

船体が妖精さんの主導で移動する。

警戒音が鳴り、遅れてライトが点滅する。

船体を固定したトレーが可動し、私達は鹿島に格納式ラッタルを使って船体に登る。

 

地下工廠の中央にある伸縮式のEVにトレーが接続されると、地上のハッチが開いてゆき光が差し込む。

次世代護衛艦のような被弾傾避やステルス面の考慮されたスリムな形状の艦橋にこれまた被弾を前提にした鋭角で構成された20.3糎連装砲が二つ。

 

光が差し込むこむことによって照らされた鹿島の塗装色は横須賀海軍工廠色。

これは横須賀海軍工廠で艤装が施されたからだろう。

 

伸縮式EVが登りきり、地上に接続された。

数百本のバーが差し込まれ、完全に固定される。

今度は地上設備の警報が鳴り響き、水門が解放される。効率的に注水されるように構成された注水口と正面水門から莫大な海水が流れ込み、既に水深は50cmに達した。

 

船体を固定するアームが覆われ、水深は5mに達する。

注排水機能は抜群に優秀な為直ぐに進水可能な水深に達した。

鹿島の全長や排水量から考えて必要な水深は15m。アメストリア艦艇の特徴たる平べったい船底のお陰で喫水線は浅く済むのだ。

 

「では鹿島、固定具を解除する。意識を操舵の方へ向けてくれ」

「分かりました」

 

水中で船底を固定していたアームが解除され、浮力のみで船底が浮き始める。

強靭な鋼鉄によって構成された船底は軋むこともなく波を受けている。

 

 

「では始めに、機関を始動する」

「はい!」

 

艦橋に私達は移動した。

これからはアメストリアスペックのチュートリアルだ。

まずアメストリア艦艇の第一手順は機関を始動すること。

この機関はご存知の通り夢の悠久機関であり、色々と特殊である。

今回使用されている船舶用粒子エンジンは際限なく指方向性の粒子を生み出し続ける物で、それをタービンに注ぎ込むことで軸を回転させスクリューを回すのだが、今回鹿島のように日本に対応させる為に船舶用粒子エンジンとタービンの間に大出力の発電機と分圧機を設置して使用するエネルギーを電力に置き換えた。

本来なら粒子を使用しているのだが互換性が無くて補給面で不安が残るので、人類で幅広く使用されている電力を主に据えた。

 

全て電動にしたため割と便利になっていると思われる。

でもまぁ機関は船舶用粒子エンジンなので手順は変わらない。

 

「まず、艦娘は基本的に指示するのみだ。機関や舵取り、砲熕の照準に至るまで妖精さんが行う。無論、艦娘が直接操作も出来る」

「はい。どうやって機関を始動させるのでしょうか?」

「そうだな、イメージは個々それぞれだ。レバーを倒すイメージやエンジンをかける感覚。色々とあるな。カネーシャを回す感覚やらクランクを回す例もある」

「やってみます...」

 

一、二分経っただろうか。

タービンの騒々しい駆動音と共に電力が供給され艦橋の照明や機器が一斉に点灯した。

予めセットされているプログラムが立ち上がり、初期設定が全自動で完了してゆく。

 

「うむ、機関が始動したみたいだな」

「はい」

「では他の点だが、基本的に従来と変更はない。以前の感覚がそのまま使えるだろう。しかし幾つか新規の機能が搭載されている。まずは電探や照準器等の電子機器はかなりの高性能を誇っている。まず外れないし、狙いを合わせるだけで当たる。」

「そんな性能が...?」

「うむ。思い切り耳と目が良くなる感覚があるはずだ。あとは、砲だな。装填装置が現代基準でな。30発は毎分で放つことが出来るだろう」

「30発!?それでは装弾数が...」

「うむ。その為妖精さんの技術を使用してそれなりの携行弾薬数を実現している。そこそこの戦闘はできるだろう。砲弾は徹甲弾、榴弾弾、三式弾等様々な砲弾を用意した。継戦能力はかなり高いものと推測できる」

 

母艦だし、これ位はしておかないと安心出来ない。

 

 

 

さてさて、鹿島は順調に動き出す事が出来た。

感覚は以前と大体同じな為、操舵は大丈夫。

速力に関しては振り幅が大きいため、まずは1ノットから順番に上げて行き、左舷、右舷に回るコツを掴んでもらった。

鹿島自身才能なのか元が優秀なのかスラスラ覚えおぼえてくれ、現在は急加速や高速航行こそ出来ないものの、かなり動けている。

 

そこで、私は早速訓練を開始する事にした。

まぁまずはあちらでもする事になるであろう艦隊行動から。

その為には他にも艦娘が必要であるので、暇...という訳ではないだろうが、当直ではない艦娘を幾人か呼んだ。

鹿島の船体全長的に軽巡洋艦か駆逐艦しか呼べないので今回は初月、親潮、翔鶴、瑞鶴を呼んだ。

 

え?軽巡洋艦どころか空母が来てるかじゃないかって?対空訓練に決まってるジャマイカ。

艦隊行動はとらない。てか取れない。

 

「では、初月を旗艦に単縦陣から」

「分かりました。舵そのまま、15ノットにて追従します」

『初月、承知した。15ノットにて前進する。加速はしてもいいか』

『親潮、了解です。取舵45度、17ノットにて単縦陣に加わります』

 

鹿島の前方に秋月型の独特なフォルムが滑り込む。全長252mに反比例して艦橋は必要最低限に留め、対空電探用の高いマストが聳え立つ。

防空駆逐艦を謳いながら何故か配備された60口径41糎三連装砲に、二基の空軍で使用されている20.3糎のガトリング砲。

凶悪な火力を誇る自称駆逐艦。

後部から見れば完全に戦艦である。

 

更に追加で割り込みだ。

救助以来よく初月と一緒に居る所を目撃する陽炎姉妹の四番艦。ウチの四番艦とはえらい違いで、よく出来た艦娘だ。

艦隊型駆逐艦としての機能を考慮した艤装配置や船体のデザイン。

アメストリアでは史実で吹雪型に使われた「特型」の称号が与えられ、特化型ではないマルチロールとしての役割を期待された設計。

船体を一杯に埋め尽くす五基の15.5cm三連装砲。全長が198.5mしか無い関係で128mm三砲身対空機関連装砲は10基。88mm四砲身対空機関連装砲に至っては20基の少数配備。

まぁ防空駆逐艦でもないのでこんなもんである。

そのかわりみミサイルは船底や喫水線下や甲板に敷き詰められ、152セルを確保。一マスあたりが小さいのが唯一の救いだった。

 

どちらも全長からしてロシア製駆逐艦なのだが、スペックは残念ながらアメストリアスペックである。当然のように速度は3桁いくし、装甲も対20.3糎装甲が張られている。初月に至っては対41糎装甲だ。

 

そんなキチ...やばい二隻が先導を務め、第一隔壁を通過する。

ドーナツ状の海域は舵や速力の練習にはもってこいの場所なのだ。

 

「全艦、第二戦速に増速。次いでだ、妖精さん演習用標的の展開を頼む」

 

第二隔壁にいつのまにか増設された演習用標的。

1000ミリの特殊装甲で作られた十字と白と赤で年輪が描かれた的。

滑車で吊るされた幾つかの的が現れた。

 

「全艦、艦隊行動演習に砲撃訓練を兼ねる」

「承知しました。砲撃用意!」

『了解だ。主砲、高角砲を起動する。第一隔壁に指向始め!』

『主砲、目標を捕捉しました。撃ち方よーい!』

 

鹿島の主砲が旋回してゆく。

性能は格段に良く、精度も良い。しかし慣れが無ければ使いこなすことはできない。

 

「撃ち方、始め!」

「発射始めます!てぇー!」

『撃ち方、はじめるぞ』

『射撃、開始します!』

 

閃光と轟音。

大口径の砲弾が次々と射出され、一瞬で命中する。

爆炎をあげて命中したことを教えてくれる。演習弾などナウル鎮守府では使わない。

演習なら兎も角、射撃演習では演習弾だと分かりにくいのでもっと直接な榴弾を使用している。

 

15.5cm、20.3cm、41cm。主砲弾はかなりの炸薬を積み込んでいる為、その分破壊力は高い。しかしこれだけを撃ってもなお、標的の鋼鉄には傷一つない。

そりゃそうだ。妖精さん印の特殊鋼がそれで傷がついても困る。私の性能に直撃するではないか。

 

 

「撃ち方やめ。次は対空射撃訓練だ。各艦対空戦闘用意!」

「了解しました!対空戦闘、用意しますね」

『了解。僕の本領だ。本気で行かせてもらうよ』

『ふふ、張り切るのね初月さん。ならば私もいきましょう』

「翔鶴、瑞鶴。対空訓練開始だ。やってくれ」

『承知しました。艦載機、攻撃開始します!』

『わかったわ!攻撃...開始っー!』

 

瞬間、轟音と砲声が同時に響いた。

各艦に満載されている対空砲が一斉に反応。各個に射撃を開始。雨のように遡る88粍と128粍砲弾。三式弾の様で上空には火花と花火が花開く。

 

しかしそれだけで五航戦は落ちない。

上空から襲いかかる白の二本線を描いたF-222は変態機動で避け、時に45粍機関砲で迎撃しつつ肉薄してくる。大気圏内とありそこまでの速度は出せないが、それでも余りある速力。

砲弾を追い越せる速度を出しながら接近し、搭載したST-8を発射して花畑の中を優雅に飛び去って行く。

 

当然複数発射されたST-8だが、濃密で視界が遮られるほどの熾烈な対空砲火には勝てなかったのか次々と迎撃され、炎上する。

しかしそれを抜けた幸運な一発のST-8。海面スレスレまで降下した後そのまま命中しようと試みるが、標的は初月である。

対空艦がそれを許すはずも無く、サイドキックを行って回避運動をしながら88mm四砲身対空機関連装砲で薙ぎはらう。一瞬で埋め尽くされる弾幕。

一発でも現代戦車が致命傷になる高威力の砲弾が次々と命中し、忽ちST-8は爆散した。

 

親潮にAF-56の編隊が襲いかかる。

AF-56は88粍を四門搭載するという狂気の沙汰を実戦配備した紅茶臭溢れる兵器なのだが、なまじ推進力が強いせいで反動を苦にしない思いの外優秀な攻撃機なのだ。

 

親潮も電探が反応し、対空砲が反応する。

舵が大きく右に切られ、射撃開始。何故か主砲も旋回を始めている。

 

 

『撃ちます!』

 

......何をするかと思えば、そう来るか。

以前私が妖精さんに指示したその場で滞空して結界を展開する砲弾、あったじゃろ?

アレ、15.5cmもある訳ですよ。アレを活用して上手い事身を隠しつつAF-56の進路を阻害し、誘導する。そしてドン。

128粍だろう。AF-56の一機に直撃し、炎上。そのまま墜落しながらも離脱した。

それを見た僚機は一斉にブレイクすると遠距離から88粍の大量投射。多数が命中するも88粍だ。効かずにその場で弾かれ、爆発する。

 

当然、鹿島も標的である。

最大仰角の20.3cm連装砲が繰り返し砲撃を続け、対空砲が接近する脅威の悉くを排除する。

また不規則的な回避運動を展開し、その足は最大戦速に近い。

海面には艦載機の爆弾やミサイル、砲弾によって荒波と水柱が上がり、艦首がそれを切り裂いて行く。

下部分を失った水柱は勢いよく鹿島の船体に降り注ぎ、ちょっとした雨のようだ。

艦橋からの光景は実にスリリングだ。至る所で巨大な水柱が上がり、上空には莫大な数の対空砲弾が遡る。悠々と滑る艦載機が偶にうつりこみ、その度に船体がゆれ、爆発が起きる。

しかし対56糎装甲。ビクともしない。

取り舵を取りながら主砲が一斉に旋回した。機械的に寸分違わぬその動きにはロマンを感じざるおえない。

 

『アメストリアさん、B-97の投入、許可してくれる?』

「ふむ、いいだろう」

 

刹那、20.3cm連装砲が次々に砲弾を吐き出してゆき、目標へ命中して行く。

近接信管の榴弾。雨霰と放たれた弾幕に側面から突入したST-8群は次々に吹き飛ばされ、爆散する。現代砲と同じく、砲身の下から排莢する仕組みにしたため甲板は忽ち銀色の薬莢に埋め尽くされた。

 

迎撃が終わった途端、けたたましい警告音が鳴り響く。

対空電探が多数の目標を探知。警戒を促し、対空砲が反応し我先にと迎撃を開始している。

 

迎撃はなされている。

事実爆散する爆弾を多数確認できるが、一向に電探の反応は減らない。

何故か?それは相手がB-97だからである。規格外の搭載量を誇り、一機だけで日本列島程なら焦土にできる搭載量にモノを言わせ大量の爆弾を投下してくる。一発一発が10tクラス。更にデイジーカッターのような地中貫通可能な徹甲弾タイプも降り注ぐ。

 

鹿島は慌てて右に舵を切るも爆弾の落下速度の方が早かった。

次々と着弾し、噴火を繰り返す。視界一面が光と炎に覆われ、遅れてシャッターが閉まる。

外部からの光が遮断され、切り替わるように電灯がつく。

 

船体の状況を示すホログラムには着弾地点がズラリと一覧で並び、ありとあらゆるところで炎上エフェクトが発生している。

 

「丁度いい。鹿島、潜水機能を試してみろ」

「潜水も出来るのですか!?」

「うむ。といっても半潜航状態だがな。潜水艦が浮上した状態のような形態になれる」

 

水面を利用した装甲策の一つだ。

焼夷弾やら薬莢を洗い落とす際に使われる。

 

「わかりました...半潜航、用意してください!」

''あいあい!''

''あいまむ!''

''ずぶずぶー!''

 

バルジ兼中空装甲が解放され、喫水線が沈み込んで行く。

浸水しないように砲は仰角を上げ、対空砲も同じく直角に上がる。

そしてどんどん潜航してゆき、海水が甲板に乗り上げ、薬莢が流されたのかガランガランと金属音が鳴り響く。

炎上エフェクトがみるみるうちに消えて行き、代わりに浸水エフェクトが甲板を覆い尽くす。

 

「よし、浮上だ」

「はい。浮上してください」

''お水だばー!''

 

ポンプにより水が排出されてゆき、どんどん喫水線が回復してゆく。

同時に砲が回復し迎撃を再開する。大型ミサイルまでもが飛来し、88mm四砲身対空機関連装砲によって撃ち落とされて行く。

 

「よし、全艦演習を終了する。直ちに兵装を収め、艦隊行動に移行せよ。」

『初月、承知した。久々に腕がなったよ』

『対空兵装、停止します...演習、終了ですね』

『こちら長門だ。アメストリア、丁度暇していたところだ。陣に加わってもいいだろうか』

「ふむ、大型艦に対する耐性は必要か」

『そうだ。私達のような大型艦と相見える可能性はゼロではない。なら今のうちに経験しておくのはそう悪いことではないと思うのだが』

「了解した。では長門、先頭に立ってくれ」

『承知した!初月、親潮、鹿島!少し揺れるぞ、舵を保て!』

『了解!』

『了解しました。妖精さん、機関圧力上げて!』

「わ、わかりました...アメストリア、さん...?大丈夫なのでしょうか?」

「問題は無いだろう。嵐の中をゆく良い経験にもなるしな」

「それはどうい...わぁ、おっきい......」

 

艦橋のシャッターが上がられ、同時に影が出来る。圧倒的なサイズ感。

莫大な排水量による大波によって船体は大きくゆれ、傾く。

大和型サイズの初月でさえも遥かに小さく見える超巨大艦。鹿島の後ろから追い抜く形になった長門はそのまま速力を上げ先頭に移動した。元ネタをそのまま大きくして砲を追加した様な威圧感満載の姿。防弾性の都合上、一部近代化した塔楼。側面の副砲も健在で、元ネタより二倍巨大化した長い砲身をもつ単装砲。埋め尽くされる88mm四砲身対空機関連装砲、128mm三砲身対空機関連装砲群。

聳え立つマストに、五基の巨砲。51cm三連装砲の外見は大和砲。艦尾からみれば六門の砲口が覗いている。

 

巨大タンカーを二隻縦に並べても足りない全長をもつ以上、発生させる波も大きく、一瞬にして嵐が訪れた。10m級の津波が次々と現れ、初月や親潮は傾きながらも鋭い艦首で切り裂いてゆく。突撃も想定されたアメストリアの艦艇の艦首はかなり強硬に作られているため、波に切られて艦首切断、なんて事件はまず起こりえない。むしろ波を切ってなんぼである。

 

「面舵!回避します!」

「いや、よーそろー、そのままだ。」

「しかしかなり高い波が...」

「大丈夫だ。改装を受けた以上これしきの事では損傷はまずしない」

 

鹿島の船体が上を向き、波にぶつかる。

無理やり切り裂いて突破し、着水。一部艦底すら見えるのだから激しさは伝わると思う。

まぁ全長844.9mの長門型ですらこれなのだから大和型や私達なんかだともっとヤバいわけだが...戦艦、航空母艦勢なら問題ないが200mしかない重巡、軽巡、駆逐艦メンバーには少し荷が重いというもの。作戦行動ではまずしないが、対空戦闘やらで航跡を突っ切る可能性はゼロではない。

 

訓練の一つとしてこれはやっているが皆会ったこともない大荒れの海の為大混乱する。

激しく撹拌された海流は不規則な波を引き起こし、駆逐艦は見ているこちらが不安になる程揺れる。時折ドリルのような回転数のスクリューが覗き、着水する度に水柱をあげる。

しかしアメストリアスペックである。絶対に転覆せず、復元する。

 

「長門、もうよいぞ。速やかに離脱してくれ」

『了解した。おもかーじ!』」

 

巨艦が転針する。

嵐のような、なにかおどろおどろしい金属音を響かせながら舵が切られる。同時に機動性確保の為に苦肉の策である船体に埋め込まれたスラスターの防弾シャッターが開き、スラスターがエネルギーを放出する。

ぐん、と急激な動きで長門は進路を変え、対応出来なかった大量の海水が右舷に叩きつけられ、捲き上る。

強引に海水を掻き分けながら長門は単縦陣から離脱。私達も速度を徐々に下げてゆく。

 

「よし、では私達も撤収するとしよう。取舵、進路を埠頭へ向けろ」

「はい!とぉぉぉりかぁじ!速度35!」

『了解だ。取舵、進路を母港へ向ける』

『分かりました。転舵、速度はそのままで!』

 

三隻の小型艦船が転舵し、進路を海上に聳える山々に向ける。各姉妹がそろうナウル鎮守府では埠頭はどの角度からみても大体カオスな光景が広がっており、ミリオタからしたらすい垂涎ものだ。

塔楼やマストが複雑に重なった様は一日中見ていても飽きないもので、一応軍事基地なので臨戦態勢にいる艦もいたり、妖精さんが動き回っていたりと小さな発見があって楽しいものだ。

また夜になると表情をガラリと変え、ぼんやりと点灯する照明灯や艦橋のライトなどでまるで大都市の夜景の様になる。夜景百景なんて目じゃないぞ。

 

 

哨戒担当だろう。まだ速度を乗せていない暁四姉妹と神通が単縦陣ですれ違う。

各艦かなりのクセの強い設計なだけに見た目も中々に奇抜である。

艦橋を見ると神通はしっかり敬礼していたのでこちらも返礼する。やはり神通は凄いな。

 

長門が戦艦エリアに向かったのを横目に、親潮初月は駆逐艦エリアへ。鹿島はそもナウル所属ではないので埠頭の空きスペースに寄港してもらった。タグボートなんて物は此処にはないので、艦娘の腕の見せ所となる。

艦橋のモニターには簡易化された埠頭と艦の図が表示され、更に埠頭を写すカメラ映像もホログラムで投影される。

細かな軸のピッチ調整。

埠頭には妖精さんが既に舫縄をもって待機しており、同時に鹿島の妖精さんも受け取る為に左舷に集まっている。

クッション代わりの浮きに船体が接触し、舫縄が掛けられてゆく。こういう所は変化しないものだ。投錨でもいいのだが密集する駆逐艦や軽巡エリアでは衝突事故が多発するため、舫縄を採用している。本当ならアームで固定するのもいいのだが、好戦的な艦娘らの意見によって採用は見送られた。今は重巡や戦艦が採用している。あちらはデカすぎて波の影響とか受けにくいからな。アームでもいいのだ。

 

「良し。いい腕だ。鹿島、下艦するぞ」

「ありがとうございます。はい!」

 

タラップを降りて、埠頭に降り立つ。

ここからはまた違った視点で並ぶ艦達を眺めれる。人間サイズからいえば駆逐艦でも十分巨大である。滑走路程ある埠頭の左右にびっしり並ぶ駆逐艦、軽巡、重巡、戦艦。

分岐する様に姉妹毎に区切る桟橋が浮かび、幾つかの艦の前にはコンテナや木箱が積まれ、輸送車両が走り回っている。

 

迎えは呼んでいないので、私が運転する事とする。そうだな...一式、七式はいつも載っているからなぁ...道中で親潮や初月、長門も拾う予定なので積載量があるのがいいな。

七九式、五七式はデカすぎるし毎回使ってるから、趣きを変えてみようか。

私は船体の機能たる万能生産装置を応用し、新たな装甲車輌を創り出す。

アメストリアにおいても一際奇抜な造形。

胴体に付け足した様に車輪が連なるブロックが増設されたナチス偵察車輌に似た輸送車。

二五九式装輪装甲輸送車である。胴体中央には砲塔と90口径50粍砲が搭載されており、ある程度は自衛が可能となっている。スモークディスチャージャーも完備し、被弾傾斜に優れた鋭角を多用した車体。実にシャープな車輌だ。かっこいい。

足は良く、武装がそう強くないためアメストリア軍では専ら偵察車輌として使われていたらしい。

 

胴体中央にある防弾ハッチをあけ、車内へ入った。案外広く、すぐ上にターレットリングと砲が見える。確か16名収容とあった筈の一列8人掛けの長椅子が私から見て右側、車体後部にあり、左側、前方には運転席と砲手席があった。私は鹿島に一声掛けてから運転席に着席した。

偵察車輌という性格からかゆったりとしたリクライニングシート。視界はホログラム式。ハンドルとブレーキ、アクセルだけと非常にシンプルな構造。一応レバーはあるためバックなどは可能だろう。

 

「鹿島、どうかその辺りに座っていてほしい。これから鎮守府棟に向かうが、道中初月達を拾いたいのでな」

「は、はい...凄いですね...」

「こんなんでも一番武装は貧弱だがな」

 

エンジンを始動させた。

タービンの様な甲高い独特な音と共に車内の電灯やホログラムが起動してゆく。

車内は白色で塗装されているようだ。モーター式の車輪が回転してゆき、ゆっくりと走り出す。

 

速度は35km/h辺り。何分巨大な為、時間が掛かるので飛ばしたいが輸送車やらが動き出すことがあるのでそう速度を上げられないのだ。

秋月型、陽炎型の区画は確か川内型の隣だったはずだから、そろそろである。

軽巡から駆逐艦に切り替わる境目。そこにいた筈だが.......お、いたいた。

二人で並んで立っているのを発見する。心持ち二人の距離が近い気がするが、まぁ気にしないでおく。うん。

ブレーキを踏み、減速する。ハンドル操作は慎重に。

多輪式なのでちょっとした操作じゃあそう動かないが、補給物資などが積まれている為、衝突したら大惨事なのだ。

 

「鹿島、そこの扉を開けてくれんか?」

「はい、わかりました...よいしょ...」

 

速度を表示するホログラムが0を示し、車体が動きを止める。

鹿島が側面の乗り降り用ハッチをあけ、親潮と初月が乗り込む。

 

「よし、全員乗り込んだな」

「はい」

「ええ」

「ああ」

「うむ、では出発する」

 

アクセルを踏み込み、速度を上げる。

ここからが長いのだ。何しろ軽い艦から海に近いから。要するに駆逐艦は埠頭の一番先頭に並んでいるのである。ここから軽巡〜航空母艦まで全部走り抜けなければならない。埠頭の中央に整備された二車線の道路を走り、どんどん艦を抜き去って行く。

ようやく戦艦エリア。さて長門は...服装からして分かりやすかった。

超弩級の巨艦が並ぶエリア。縮尺が間違っている様な、自分が小人になったような感覚に陥る戦艦エリア。人よりも巨大な砲弾が並んでいたり、食料やら消耗品と思われる物資のコンテナの山。それらの積み込み用のクレーンの側に長門は居た。

改ニの証たる黒いコートをはためかせ、腕を組んでこちらを見ていた。

 

乗り込んだ長門は慣れた様子で椅子に腰掛けた。

多分、普段はこいつを使っているのだろう。一式と七式のみとお願いしていたんだが...まぁいいか。

 

「そういえば長門、改修した服装の感覚はどうだ?」

「そうだな、前よりも大分涼しくなったぞ」

「そうか、それは良かった」

 

そう、例の暑そうな改ニ衣装の改修である。

本人もあのデザインは気に入っているらしく、外見は変えないよう注文は受けていたので、術式やら、無駄に発展した衣服関連の技術を注ぎ込み完成した。

どうやら好感触な様子。良かった良かった。

通気性を限界まで良くして、かつ気温調整機能を完備。シベリアも行けるクラスの耐寒性能を持っている。お陰で快適な生活を送る事ができる。

 

...何故最初から付けてくれなかったのだろうね。

改装前とかめっちゃ暑かったんだけどなぁ...まぁ過去は過去だ。今は私達にも導入している。

.......単純にスリッド入れて解決したカイクルを除いて。

 

 

 




頑張って書いたのに一万字...やばいなぁ、としみじみ思うこの頃。
現在は帝都蹂躙を終了して時限待ちなので沖田さんを90にする作業が待ってます。


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