とらいあんぐるハート3x修羅の門 (minmin)
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不破と不破
評判よければ続き書いてもいいかな?
「……どういうことなの、それ」
娘の美由希がげんなりといった様子で呟いた。頭痛がするのかこめかみを指で揉んでいる。
そんな友人を見て苦笑いしたのは縁側で一緒に茶を飲んでいるエイミィという美由希と同じ年頃の娘だ。
剣術漬けの日々を送っていた美由希にとって、自衛隊と警察が一緒になったような組織であるという時空管理局の職員であるエイミィは気の置けない友人としてなくてはならない存在になっていた。
「えーっと……
なのはちゃんが私たち魔導師の中ではずば抜けた才能の持ち主だっていうのは前に言ったでしょ?」
美由希が眼鏡を持ち上げながらうなずく。
魔法とやらはさっぱりわからないが、どうもそうらしい。初めて聞かされた時は内心驚いたものだ。
「私たち魔導師も全く接近戦や格闘戦をする人が全くいないわけじゃないの。治安維持担当の人とかに多いんだけどね。リンディ提督の知り合いがそういう武術に詳しい人で、この前美由希ちゃんに見せてもらった恭也さんとの模擬戦の映像を見て言ったらしいの。
『この家族は全員皆戦闘民族の血を受け継いでいるんじゃないか?』って」
あははーとエイミィが笑う。
「それで『戦闘民族高町家』って……」
美由希が再びこめかみを揉み始めた。
まあ、気持ちはわかる。あながち間違ってはいないところがつらい。自分も、恭也も美由希も、紛れもなくそういう一族なのだ。
しかし、高町桃子の夫、高町士郎としては口を出したいことがあった。
「一つ訂正して欲しいかな、エイミィちゃん。
戦闘民族なのは御神家であって、高町家ではないからね」
リビングの椅子に座ったまま縁側に向かって声を掛ける。
すると、並んで座っていた二人が揃って振り返った。
「ミカミ……御神、ですか。
確か皆さんの剣術の名前が御神流、でしたっけ」
こちらへと向いていた視線が隣の美由希へと移る。それを受けて美由希は咳払いを一つしてから話し始めた。
「永全不動八門一派神刀御神流小太刀二刀術。
……略して御神流」
予想通りエイミィの頭の上には大量の『?』が浮かんでいた。
美由希と二人顔を見合わせて笑う。同じ日本人でも一派のあたりで理解できていないという顔をする。日本人でないどころか地球人でさえない彼女には難しすぎるだろう。
「何かよくわからないけど強そうだねえ」
理解できないなりに感じるところはあったようだ。美由希はそれを聞いて自慢気に胸を張る。
「まあね。
『戦えば勝つ』
それが御神流だから」
言い切った美由希にエイミィがおぉーと言いながらぱちぱちと拍手する。美由希は少しくすぐったそうだ。
だが――。
「それも少し違う」
二人が再びこちらを向く。もっともその表情は先程とは違い温度差があった。純粋な疑問と、信じられないという驚愕と。
「どういうこと?」
美由希がほとんど睨みつけているように問いかけてくる。
「ご先祖様はどうかしらないが、少なくとも俺は負けたことがある。相手は引き分けだ、なんて言っていたけどね」
美由希の目が大きく見開かれた。
信じられないというよりは、信じたくない、というところか。
「いつ?誰に負けたの?御神の人じゃないの?」
あれは、いつのことだったか。もう随分前だ。
「まだ俺が不破だった頃だ。
ボディーガードの仕事中でな。戦った相手も――不破だった」
まだ身体が万全だったころ。間違いなく、不破士郎の全盛期。それでも、勝てなかった。
彼は今どうしているのだろうか。
あの男――不破幻斎は。
「どうしました?Mr不破」
護衛の一人、アメリカ映画に出て来る黒服サングラスそのままの姿の男が声を掛けてくる。
「……何か来る」
「え?」
これまた同じ格好の護衛の相方が声を上げた。
扉の左右にこの二人。そして自分、不破士郎。これが上院議員アルバート・クリステラの護衛体制の最終ラインだ。
「し、しかしこのフロア及び一つ下のフロアは議員が貸し切りにしています。テロの予告があったため日本警察からも大量の人員が投入されていますし、隠れて爆発物などを仕掛けるならともかく、真正面から乗り込むのは難しいのでは……」
「…………」
護衛の言うことは尤もではある。しかし、何かが確実に近づいてきている。
廊下の先からの圧倒的な存在感。これ程の圧力は、本気になった静馬以来だ。
「……来るぞ。
お前たちは何があっても此処を離れるな。悪いが余所見をしている暇はなさそうだ」
「は、はい……」
二人がゴクリと唾を飲む。
いつの間にか、自分からも殺気が漏れていた。中てられているのか。
そして――ゆっくりと、一人の男が階段から姿を現した。
若い。まだ20代、見た目以上でも30そこそこだろう。空手家のような白い胴着だが、足首のあたりを紐で結んでいた。
一目でわかった。こいつは、強い。
無言のままゆっくりと鞘から二刀を抜く。それを見て、男はにやりと笑った。
「一応聞いておこうか。
議員のファンの表敬訪問、ってわけじゃないよな?」
「ああ。
議員を殺すよう依頼されている」
男は特に気負った風もなく返事をした。
その答えに、後ろの二人の顔が強張る。
「……そうか。
下の階にいた警察や他の護衛はどうした?」
男は一人。下の階には最低でも二人一組で行動する人員が二十人はいたはずだ。
「全員寝ているさ。ああ、殺してはいない。
俺は依頼された殺ししかしない主義でね」
とりあえずは安心する。
だが――それは、依頼された殺しは必ず実行する、ということでもある。
半身。左構え。右手は上方に。左手は下方に。
「永全不動八門一派神刀御神流小太刀二刀術、不破士郎だ」
男がおやっという顔をする。だが、すぐに獰猛なそれへと変化した。
「不破圓明流、不破幻斎」
互いに名乗り終わった次の瞬間、同時に飛び出した。
如何でしたでしょうか?
修羅の門知ってる人がこのサイトにどれくらいいるのか。そっちを知らないと面白さ半分以下になるというクロスとしてはあんまりよろしくないネタですね。個人的にはすごく熱くなるバトルなんですが。。
感想お待ちしております。
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化物
もともと戦闘シーンの練習のつもりで書いたので、『もっとこうした方が臨場感が出る』等々指摘してくれたら嬉しいです。
ではどうぞ~
左の小太刀で牽制の初手。
半身で軽やかに躱される。最初から当たるとは思っていなかったが、まだまだ余裕がありそうだ。
右で追撃。これも躱す。
左頭部に反撃の右拳がくる。小太刀の重みで重心は右寄りだ。受けるしかない。
左腕に衝撃。
「ぐっ……」
思わず声が漏れる。格闘家ほどではないが、身体そのもは鍛えてはいる。鎧とは言えないまでも筋肉もつけている。それでも、全身にずしんと響いた。
衝撃に逆らわず後ろに飛んで距離を取る。
左腕は――多少痺れてはいるが、動く。問題ない。
好機と見たか幻斎が一気に距離を詰めてきた。
右の薙ぎ払い。身体を前のめりに沈めて躱される。そのまま一回転。こちらが右腕を振り切ったと同時に、かかと落とし気味の回し蹴りが降って来た。
暗殺者の技にしては動作が大きい。つまりは、隙も大きくなる。
半身で躱す。左の小太刀を二の足に当てて後ろに下がる。後は回し蹴りの力で勝手に切り裂かれ、機動力は失われる。そうなったらこちらの勝だ。
そう思ったところで、頭部めがけて左足が飛んできた。
慌てて背後へと跳ぶ。斬るには斬れたが、浅くなった。
幻斎もまた後ろへ跳んだ。そのまま五歩の距離での睨み合いになる。
「……初見で旋を躱すかよ」
どうやらあの技は『旋』というらしい。
「半分は運だ。
一の蹴りを躱した後に、空中で追撃の回し蹴りがくるとはな」
正に旋風のようだった。御神にも薙旋という技があるが、それに勝るとも劣らない。
「運か。よく言う」
幻斎が嗤う。暗い、暗い嗤いだった。
「お前、人を斬り殺したことがあるだろう」
――。
「人はそんな簡単に斬れるもんじゃない。
如何に優れた刃物でも、戦闘中に斬りつければ骨で止まる。そうならないよう、深すぎず浅すぎず斬り、出血多量を狙うのが正しい殺り方だ」
そう言いながら先程斬った腿の傷を一撫でする。
「この斬り口。常日頃から刀を握り、人を殺す為に技を磨いた者の傷だ。
新撰組から百年以上。竹刀や木刀でいくら腕が立ったて人を殺せるってもんじゃあない。
まだお前みたいな奴が残っていたとはな」
一太刀でそこまで見抜いたのか。不破圓明流とは無手の流派だろう。刀は専門外だろうに。
改めて、不破幻斎という男に戦慄する。
「……不破は御神の分家でな。
今はボディーガードなんてやっているが、その昔は御神の『裏』として汚れ仕事をやってきた。
俺は、その業を継いだ最後の生き残りだ」
気が付いたらそんな言葉が口から出ていた。人に話したことなどほとんどないのに。
この男は、どこか自分と似ている。そう感じたせいだろうか。
果たして、それは正しかった。
「俺も分家だ。
不破圓明流は、初代より歴史の闇に生きてきた。
暗殺を繰り返して、な」
少しばかり驚いた。
自分も不破、相手も不破。ともに分家であり、暗殺を生業にしてきた。
時代の闇に生きてきた二つの不破が、今こうして向かい合っている。
「傷を負ったのは、現とやった時以来か」
幻斎がぽつりと呟く。
現。これ程の男に傷を負わせる、おそらく男。一体どんな人物なのか。
「久方ぶりだ。
……俺の中の修羅が、起きてきた」
幻斎という修羅が、嗤う。
気づけば、自分もいつの間にか嗤っていた。
それは恐怖か。或は、歓喜か。
「ここからは、不破らしくやらせてもらう。
お前も、出し惜しみするな」
不破幻斎という修羅の獰猛な嗤いに、不破士郎の中の化物が目覚めの声を上げた。
如何でしたでしょうか?
やっぱり戦闘シーンは難しいですねえ……。
一応次回で戦闘は終了する予定。そしたら全部一つに纏めて短編にするつもりです。
同じ世界観でもう一つ書きたい死合いもありますので。
感想、ご指摘お待ちして追います。
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終幕
『もっとこうしたほうが臨場感が出る』等々、よろしければアドバイスを頂ければ幸いです。
では、どうぞ~
――さて、どうするか。
とは言ったものの、剣と無手が相対してやることなんて決まりきっている。相手はこちらの懐にもぐりこもうとする。こちらはそれを防ぐ。相手の攻撃が届かない間合いから、こちらの攻撃だけを当て続ける。そうすれば勝てる。戦闘だろうが戦争だろうが変わらない世の真理だ。
剣道三倍段、というわけにはいかないが、一般的にはわずかばかり剣の方が有利ではあると思う。そう、一般的には。
残念ながら、目の前にいる修羅はそんな一般論が通じる相手じゃない。僅かでも隙を見せれば簡単に懐に入られる。それだけであっさりと負けるつもりはないが、苦しくはなるだろう。
普通に攻撃しても避けられる、または防がれることは目に見えている。
――なら、小細工を弄してみるか。
左腕を軽く一振り。準備運動のための切り払い、じゃない。それに合わせて針が飛んでいる。それを追って自分から距離を詰める。防具を身に着けていない幻斎には防ぐ術がない。確実に避けられるだろうが、その避ける一瞬があれば十分だ。
――なんて目論見はそれこそ一瞬で打ち砕かれた。
驚愕する。幻斎もまた距離を詰めてきたことにじゃない。この男ならば前進しつつ針を避けるぐらいのことは難なくやってのけるであろうころは想像していた。が、不破幻斎という男はそんな想像を軽々と越えていく。
飛んできた針を避けるでもなく。腕などで防ぐでもなく。ただその胸で受け止めて見せたのだ。
「っ!?」
無茶をする。一歩間違えれば心臓に届くかもしれない。そんなこちらの考えはお構いなしに距離を詰めてくる幻斎。
――御神流奥義ノ参・射抜。
一射目。躱される。すかさず腕を引く。持ち手を滑らせ、捻りを加える。初太刀より疾い二射目。頬を斬る。浅い。更に距離が詰まる。拳の間合い。幻斎が構える。
――本命は、こっちだ!
右の小太刀を下から掬い上げるように切り上げる。やや水平気味の胴薙ぎ。同時に体を自ら詰めて、拳の勢いを殺す。
衝撃。
重い。が、耐えられないほどじゃない。それよりも。こちらの刃が、入っていかない。勢いを殺されたのはあるだろう。しかし、それでもおかしい。まるで、筋肉で止まっているかのような――。
――っなんだ!?
――――――――――――――――――世界が、引き伸ばされる。
こちらの腹に押し当てられたままの拳。何も変わりはない。止まったままだ。しかし、直感が危険だと告げている。右の小太刀は手放せない。全力で身体を捻り半身にする。
――――――――――――――――――そして世界が動き出す。
再びの衝撃。咄嗟に左手首を捻る。鋼糸を幻斎の手首に巻き付け縛り上げた。
吐く息が荒い。なんなんだ、今の業は。掠めただけで、肋が1本もっていかれた。
「虎砲も躱すかよ。つくづく、疾いな」
幻斎が言う。虎砲。虎のような一撃だった。
「なあ。1つ聞きたいことがあるんだが」
なんだ?殺し合いの最中に。そう思って視線を合わせると。
何かが、当たった。
思わず、右目を閉じる。
落下音。音の大きさからすると、小さい、粒のようなもの。この鈍い音は、鉛か何かか。今更そんなことがわかっても、どうしようもない。
「さっきの動き。そうそう連発はできないんじゃないのか?」
まずい。見破られている。両腕が掴まれた。足が払われる。巴投げか?足を絡めて投げを潰そうとする。幻斎と俺の身体が、折り重なって倒れていく。そのまま、放り投げられた。
なんとか受け身をとって立ち上がる。右目の視力はまだ回復していない。遠近感が戻らないままこの男と戦うのは――まずい。そう、思っていたのだが。
「――――やめだ」
先に立ち上がっていた幻斎は、ひどくつまらなそうな顔をしていた。
「……俺はまだ死んではいないぞ。議員を殺したいのなら、まず俺を殺してからにするんだな」
そう言って睨みつけるも、幻斎からは修羅の気配は既に消えてしまっていた。
「……俺は依頼された殺ししかしない。依頼主が殺されたなら、俺の仕事は終わりだ。そこまでの義理もない」
「なんだと?どういうことだ?」
それには答えず、幻斎は背を向ける。
「今回は、分けだ。次に会う時は――殺す気でこい」
それだけ告げて去っていく。理性では仕掛けるべきだとわかっていても――何もできなかった。
如何でしたでしょうか?
今回も相変わらず短いですねえ。そのうち3つを1話に結合する予定です。それでようやく短めの1話分になるかな?
このクロスで書きたい戦闘シーンはまだまだあるので、次の話を投稿するときにでも結合しておきます。
感想お待ちしております。
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