ペルソナ3~月光館学園での日々~ (アイロン)
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4月22日 朝 教室
…よし、今日の授業の教材は全て机のなかに用意し終えた。後はホームルームが始まるまでまでささやかな眠りの時間を楽しもう、そう思った矢先に、
「うい~っす、昨日はお疲れ~」
気だるそうな声が頭の上から降ってきた。声の主はすぐにわかった。順平か、ならいいや。気にせず眠りに落ちようとすると今度は頭をポンポンはたかれる。
「おい理~、無視すんなよ~」
さらにポンポン攻撃を続けてくる。くっ、これじゃあ寝たくても寝れない!仕方なく順平に付き合おうと顔を上げるとそこにはもう一人の同級生のペルソナ使い、岳羽ゆかりも集まって来ていた。
「しっかしたまげたぜ~、夜の学校があんなになってたとはな~」
順平の言葉に岳羽が答える。
「私もセンパイたちから話は聞いたことあったけどまさかあんなだったとはね~。まさにシャドウの巣窟って感じじゃん?」
「そこで今こうして喋ってるなんて信じらんねえよ、な、理?」
!、急に話を振られて困ったがとりあえず
「学校の怪談だね」
と口に出してみた。すると何故かその言葉に岳羽が反応してくる。
「はぁ?か、怪談とかお、お化けとかそういうの子供っぽ過ぎるんだけど!そんなのいるわけないじゃん!」
「な、何もそこまでプリプリ侍しなくても…あ、もしかしてゆかりッチ、お化けが怖くて夜中とかに一人でトイレとか行けないカンジ?」
順平がニヤニヤしながらゆかりをからかう。
「そ、そんなんじゃないわよ。カイダンとかユウレイとか、そんな非科学的なものいるわけないって言ってるの!ホッんとバカじゃないの!?」
「ほー、ナルホドねー、ニヒヒん」
順平の顔はニヤニヤしたままだ。
「それより順平、あんたこんなところで油売ってていいわけ?昨日出された古典の宿題、今日までだけど終わってんの?江古田先生、怒らせるとメンドウよね~」
「あぁーヤベっ!ゆかりッチ写さしてくれよ~」
「フンっだ、自分でなんとかすれば!」
岳羽は自分の席に戻ってしまった。
「頼む!理、お前しか頼れるやつはいない!」
そんなこと言い切られても…しょうがないなと言おうとした矢先、チャイムが鳴って鳥海先生が入ってきた。
「はい、じゃあホームルーム始めるわよー。みんな、ちゃんと席につきなさーい。」
「うわ、古典一限じゃん!終わった~…」
順平は諦めて席に戻っていった。
…はっ!そういえばホームルームまでの間、全く寝られなかった…この分は古典の時間中、順平が怒られてる間に取り返させてもらおうかな…
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5月3日 夜 寮のラウンジ
ゲームでは隠者のコミュ活動をすると一日使いますけどそこはツッコミなしでお願いします
というかさすがに一歩も部屋から出ないなんて事はないんじゃないかな…
あぁ~肩がこった。せっかくの休日なのにネットゲームで一日の大半を使ってしまったみたいだ。「夕飯くらい食べようかな」一人呟きながら寮の階段を降りる。さすがに朝から飲まず食わずはこたえるな、今日のタルタロスは無しかな…
一階に降りてみるとそこでは順平、岳羽、桐条先輩の三人がくつろいでいた。
「ん、部屋にいたのか。朝から何やってたんだ?」
順平が尋ねてきたので答える。
「ネットゲーム」
「ま、マジか。お前以外とゲーマーだな…」
「え、一日中ゲームしてたの?へぇーなんか意外。順平ならイメージ通りだけど。」
順平と岳羽も驚いた様子だ。
「息抜きは必要だが、学生の本分は勉強だ。特に我々には普通の生活の他にシャドウとの戦いも有るんだ、学業を疎かにしてもらっては困るぞ。」
桐条先輩からもたしなめられた。
「まあ、まだ中間までは二週間もあるんですよ。そんなに厳しくしなくてもいいじゃないですか~。」
順平の言葉。
「伊織、君の方こそ勉強に抜かりは無いだろうな。シャドウとの戦いは成績の言い訳にはならないぞ。」
「えぇー、勘弁して下さいよ~」
順平の言葉にも桐条先輩は表情を崩さない。
「もしも赤点など取ろうものなら…その時は“処刑“だな」
薄笑いを浮かべながら言う桐条先輩。こ、怖い…
けど、今は腹がへってるんだった。お構い無しに全く関係ない話題を持ち出す。
「何か食べ物はありますか? 」
桐条先輩が答えてくれた。
「ああ、今朝がた宗家の者が食料を運び入れていたからな。冷蔵庫に何かあるはずだ。」
「けどホント、あんな立派なキッチンが使われてないなんてもったいないですよね。ここ、昔は寮母さんがいたんですよね、いなくなってから他に料理する人はいなかったんですか?」
岳羽が桐条先輩に聞いている。
「うむ、そういえば荒垣がよく料理を…いや、何でもない。それより結城、何か食事は見つかったか?」
冷蔵庫の中には巨大などんぶりに入った肉丼があった。
こ、これは…
全てを受け入れる“寛容さ“、
正しくペース配分する“知識“、
肉の群れに突っ込む“勇気“、
食べ続ける“根気“、
それら全てが必要そうだ…。
「桐条先輩、こ、これは…」
「ああ、それか。駅前にはがくれというラーメン屋があるんだが、そこのマスターの親戚の店で開発した新商品だそうだ。」
「ラーメン屋の親父さんは普通マスターとは呼ばないんじゃ…というか何でそんなものがここにあるんですか?」
岳羽の質問に先輩が答える。
「駅前一帯の土地の所有者は桐条家だから、その関係でな。」
「す、すげぇ。さすが桐条パワー…てか理、お前そんなデカい肉丼食えんのか?」
順平が何か言った気がするが、今の俺には聞こえていない。
チャレンジあるのみ!
…たが、食べても食べても、ご飯が見えてこない…肉・肉・油・肉・油…そして肉…
…。今の自分にはとても無理だった。心なしか意識が朦朧としてきた気がする。
「ちょ、ちょっと結城君大丈夫?た、大変順平!水か何か飲ませないと!」
「お、おい理しっかりしろ!いま水持ってくる!」
「私としたことが迂闊だったな、まさかこんな危険な代物だったとは…」
みんなの声が遥か遠くに聞こえる。あぁ、連休初日から何でこんなことに…
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5月29日 放課後 ベルベットルーム
あ、ペルソナと全く関係ない話ですよね、スイマセン(^^;
本当は日付を6月2日辺りにしたかったんですが6月の前半は割とイベントが詰まってますし、風花救出後は風花も登場させたいので何か中途半端な日付になっちゃいました…
放課後のポロニアンモール、下校途中の月高生で賑わう中を路地裏への道を急ぐ。行き先はもちろん“あの部屋“だ。
人混みを掻き分け、ようやく扉の前まで辿り着いた。軽く深呼吸をして、扉の取っ手に手をかける。どこか懐かしい不思議な感覚、どうもまだ馴れないな…
頭の中におごそかなピアノの旋律が流れ込んでくる、部屋の中を見渡すと、あれ?いつも部屋の中央の椅子に腰かけているイゴールの姿が見当たらない。
「ようこそ、ベルベットルームへ」
エリザベスが出迎えてくれた。
「イゴールは?」
「申し訳ございません。あいにく主はただ今留守にしております。日が暮れるまでには戻るかと存じます。」
「そうなんだ。じゃあまた来ることにするよ。」
そういって帰ろうとするとエリザベスに呼び止められた。
「お待ち下さい、お客様。」
「ん、どうかした?」
「実は私、是非お客様とお手合わせ頂きたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
お手合わせって一体何だろう?なぜか一瞬とても嫌な予感がしたが、この間ポロニアンモールに連れて行ったときの事を思い出し、思い直した。エリザベスのことだ、また外の世界のものを変な風に勘違いしているに違いない。
「今日はヒマだし、大丈夫だよ。」
「ありがとうございます、では早速。」
エリザベスは口元に微笑を浮かべると、パチンと指を鳴らした。次の瞬間頭の中に流れていたピアノの音が途切れ、いつの間にかエリザベスがテーブルを挟んで自分の向かいに立っていた。木彫りで上品なデザインが施された高そうなテーブルだ。
「えっと、これは何かな?」
「ご覧の通り、テーブルでございます。」
「あ、うん…で、手合わせっていうのは何をすればいいのかな?」
「私が今最も気になっている球技にございます。そちらの世界では卓球やtable tennisと言った名前で親しまれております。」
見事な発音を披露するエリザベス、英語の寺内先生に負けず劣らず、といったところだ。…って、つっこむポイントはそこじゃない!
「えっと、卓球は別に本当にテーブルでやるわけじゃないんだけど…」
「何と…私としたことが申し訳ございません。ですが、せっかくですのでこのままお手合わせ頂きたく存じます。」
「そうだね、エリザベスの先攻でいいよ。」
「ありがとうございます。では参りま~す。」
急に変なテンションになるエリザベス、たが次の瞬間、
!
耳元を鋭い衝撃が通り抜けた。テーブルを見てみると一ヵ所木の表面が黒く焦げ、そこから煙が立ち上っている。い、今のは何だったんだ?
「フィフティーンラブ、でございま~す。」
「ちょ、エリザベス!卓球はテニスとは違、うわぁ!」
もはや勝敗なんてどうでもいい、ともかく今は無事ここから生きて帰らなくては…!
その後もエリザベスの殺人光線を試合が終わるまで避け続けた。全ゲームストレート負けだったけど命が無事な方が重要たった。
「お手合わせ頂きありがとうございました。帰り道もお気をつけて。」
こんな危ない目にはこの後の人生でそうも会わないよ、心の中でそうツッコみを入れながら寮に逃げ帰った。
「君か、お帰り。どうしたんだ、制服がボロボロじゃないか。」
寮に帰ると、桐条先輩に驚いた声で迎えられた。
「いや、何でもないです。」
そういって足早に部屋に急ぐ。何でこんな目に遭わなくちゃいけないんだろう…
そう考えてふと、宮本の顔を思い出した。そういえば今日は金曜日、剣道部の練習があったんだっけ?今度からマジメに部活行こうかな…
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6月16日 放課後 マンドラゴラ
SEESメンバーの歌の上手さはわからないのでイメージで決めちゃいました
「ヤベェ、もう体力が持たねえ…理あとは頼んだぜ…」
そう言って順平は力尽きた。その横では既に岳羽が気絶している。
「おい順平!しっかりしろ!」
かく言う自分も体力は残り僅か。マズイ、このままじゃ全滅だ…
「ぐぁぁ!」
強力な衝撃波をまともに食らい、意識が遠のいていくを感じる、もはやこれまで…そう思った時、ポケットの黄昏の羽根が輝き始めた…
ちなみに、ここはタルタロスじゃないし、今はシャドウと戦っているわけでもない。というか影時間ですらない。じゃあ何で俺たちがこんな状況にいるのか、話はほんの数時間前、今日の昼休みまでさかのぼる…
「え、カラオケ?SEESの二年生のみんなで?」
「そうそう、風花も新しく仲間に入った事だしこの辺で一つみんなで親睦を深めましょう!って事よ。ゆかりッチも来るだろ?」
「う~ん、今日は部活休みだしまあ行っても良いけど。」
「よっしゃ、じゃあ決まりだな。理も来るだろ?」
カラオケか…夜の一人カラオケしか行ったことないし行ってみようかな。今日は部活も休みだし。
「うん、行くよ。」
「よっしゃ、じゃあ決まりって事で!」
順平はそう言って居なくなってしまった。
「カラオケか…最近全然行ってないな~。結城くんはよく音楽聞いてるけど、どんな曲歌うの?」
「カラオケに着いてからのお楽しみ」
「お、何か自信ありげね。私もこう見えて結構歌上手いんだから。」
「へぇ、意外だね。」
「…、バカにしてるでしょ。負けないんだからね。」
そんな話をしていると順平が戻って来て言った。
「風花もオッケーだってよ。というわけで放課後に下駄箱の所に集合な。」
順平がそう言い終わるとちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、順平も岳羽も自分の席に戻っていった。
放課後に下駄箱の前で他の三人を待っていると、風花がやって来た。
「あ、あの、ごめんなさい、待たせちゃった?」
「いや、まだ誰も来てないけど。」
「そ、そっか。私あんまり友達と学校帰りに寄り道とかしたことないから緊張しちゃって…」
風花はそれっきり黙ってしまった。
「…別に気にすることじゃないと思うけど。」
「そ、そうかな。そういえばあのね、結城くんには一度ちゃんとお礼を言いたくて。」
「お礼?何の?」
「ほら、私が森山さんたちに教科書を床にばらまかれた時に拾ってくれたし、それに怪物だらけの学校まで助けに来てくれたし、命の恩人だよ。」
「別にいい、普通の事だから。」
「そ、そうかな…でも、その…ありがとう」
風花がそう言った時、順平と岳羽がやって来た。
「ごっめーん、待たしちゃった?私たち掃除だったのすっかり忘れててさ。」
「別に、そんなに待ってない。」
「よっしゃー!全員揃ったところでカラオケにレッツゴー!」
「全くあんたは…相変わらずお気楽というか…」
下校用のモノレールを途中で降り、ポロニアンモールへとやって来た。下校途中の生徒で賑わう中をカラオケマンドラゴラへと向かう。中へ入るとちょうど受付には誰も並んでいなかった。順平が受付まで歩いて行って言う。
「すいませ~ん、学生四人フリータイムでお願いします。」
「かしこまりました、当店のポイントカードはお持ちですか?」
「いや、持ってないで…
「あります」
すかさずポケットから容易しておいたポイントカードを取り出す。
「お、理会員だったのか。意外だな。」
「かしこまりました、ではお部屋までご案内します。」
部屋に着いた。
「ドリンクは自由らしいけど、みんな何か食い物頼むか?」
順平が皆に聞く。
「私と風花はパス、順平と結城君はどうするの?」
「俺は頼まなくていいよ。」
「よっしゃ、じゃあとりあえず何も頼まないどくぜ」
「そんなことより誰から歌う?誰も行かないなら私が一番いっちゃいまーす。」
言うがや早いか岳羽は自分の予約を入れてしまった。曲は「Burn My Dread」だ。くそ、取られた…
「お、待ってましたー! 」
順平は備えつけのタンバリンを叩いている。
~♪♪♪~岳羽が大音量で歌うなか風花が話しかけてきた。
「次。私いいかな!」
「どうぞ!」
岳羽の熱唱に掻き消されないように声を張り上げる。
岳羽の歌が終わった。
「イェーイ!よかったぜ~ゆかりッチ~!」
順平が叫ぶ。なかなか上手い、負けていられないな…そう思っていると風花の歌が始まった。知らない洋楽のようだ。
~☆¢△‰¢&§~風花が歌い出した。
!これは…ものすごい調子っぱずれの歌声だ…
「ちょ…風花、これそんな声で歌うんじゃな…」
言い終わらない内に岳羽は倒れてしまった。
「ちょ、ゆかりッチ!理!一回風花の歌を止めさせてくれ!」
「そうしたいけど!…」
風花の歌声で意識がもうろうとして前に進めない。
「風花!、おい風花!ダメだ、聞こえてねぇ…理、後は頼んだぜ…」
順平はそう言って倒れてしまった。ま、まずい。そうこうしているうちに自分の意識も遠のいていく。まさかこんなところで力尽きることになるとは…
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