なんとかマサラ人 (コックリ)
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ノーマルマサラ人 1話

基本アニメ展開ですが何分昔の放送はうろ覚えなのでいろいろオリジナル展開してごまかしてみます。主人公はゲーム知識あり、アニメ知識なしです。(作者もうろ覚え)
ほのぼの9・シリアス1ぐらいの割合で進めていきます。
タグに原作崩壊を入れるべきか本気で迷いました・・・。

アマチュア作者で亀更新ですが頑張って続けてみたいです。


転生したい世界はどこですか?と聞かれたらあなたはどんな二次世界(妄想世界)に行きたいですか。

色々な所に思いを馳せるだろう。MHの世界・東方の世界・親父にもぶたれたことのない世界。

どの世界も魅力的だ。どの世界にも行ってみたい。どの世界でも原作知識を活かして英雄(ヒーロー) になりたい。

そんなことを一度は考えたことがあるだろう。(主にこんな駄文を読もうとしている読者様方とか)

しかし、現実と妄想は違う。妄想世界にリアルの現象があれば妄想に浸ることが楽しくなくなるだろう。

例えば・・・

「真ん中ねらいまーす。・・・・・(ヒュッ・・・バスッ!)・・・・・次、2番ねらいまーす」

まさに、今現在進行形の訓練だ。

「8番ねらいまーす。・・・・・(ヒュッ・・・ガン!)」

「ハイッ、また最初からね。一球も外さずビンゴ出来るまで朝ごはん食べれませんからね」

「orz」

ポケットモンスター、略してポケモン。

今では子供から・・・というよりもはや大人向けゲームになりつつあるようなそんなゲーム。

そんなゲームに私こと、この駄文の主人公が転生してきました。

「次、4番ねらいまーす。・・・・・(ヒュッ・・・バスッ!)」

「はい、とりあえずビンゴ出来たから今朝の練習は終了。朝ごはん食べて学校行きなさい。

帰ったら夜の練習もちゃんとするのよ」

そうポケモンなのだ。ここは間違いなくポケモンの世界のはずだ。

町の外を歩けば野生のコラッタは出るし、水道を見ればコイキングが泳いでるし、

テレビを見ればバトルの中継がされてる。

だれがなんと言おうとポケモンの世界なのだ。

のっけからわけのわからんことをしていると突っ込まれているかもしれないがこれにも理由があるのだ。

「ポケモンをゲットするにはボールを投げる!これは常識ね。けれどボールは当たらなければ意味がない!

だからボールを百発百中にする訓練が必要!」

「言いたいことは理解した。けれどやってることに疑問があります。この訓練初めて1カ月経つんだけど

いつまでやるの?」

「カーブで2枚抜き、かつビンゴが出来るまで。もちろん一発も外さずに。」

「orz」

そう、現実と妄想は違う。ゲームのようにボールを使用すればポケモンに当たることが必然ではないのだ。

故に、こんなスト○ックアウトみたいな訓練をせねばならんのだ。

・・・トレーナーになりたいとしか言ってないのに。

「肩を痛めないように正しいフォームで投げなさい。それから出来るだけ胴体をねらいなさい。

  もし相手が動いても腕とかに掠ればボールに入るから」

「わかったよ。それじゃ学校に行ってきます。帰りに研究所に寄ると思うから少しおそくなるよ」

「はいはい、おじいちゃんの邪魔にならないようにね。いってらっしゃい、シゲル」

「いってきます、姉さん」

こうして、転生主人公ことシゲル(8歳)の話が始まります。

 




おねえちゃんは作中最強です。(身体的な意味で)

ところでシゲルお姉ちゃんはともかく、サトシのパパさんは旅に出た設定だったけど作中一回も触れられてなかったような。

カントー地方から旅に出たサトシに一度も出会ってないとかどこにいるんだ・・・。


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ノーマルマサラ人 2話

まだまだ続くよ幼年期物語!
・・・手持ちのポケモンどころかモンスターボールすら触ってない主人公って。

アニメ準拠?のタグを入れておきながらゲーム設定を頻繁に使ってます。
もう少し世界観の設定を説明するためあえて旅に出てない幼年期で説明しようとしました。

幼年期のお話はもう少し続きます。本文もまだ少なめですが暇つぶしにでもどうぞ。


「えーと、フシギダネの種が以前より5cmほど成長。それに伴いフシギダネの身長も成長。体重も問題なし。っと」

 

学校が終わり、習慣となっている研究所の手伝い。

この世に生まれ(転生)物心つくころから研究所に出入りしてポケモンを見ているのだ。

 

普段、研究所は新人トレーナーがポケモンを貰いにくるか、図鑑を見せに来る人が来る程度で俺のような見た目子供が来る所ではないのだが、

 

「お~い、シゲル。そっちは終わったかの」

 

「今終わった。問題なしだったよ」

 

このオーキド研究所は名前のとおり、俺の祖父ことオーキド博士が建てた研究所なのだ。

ゲームでもほとんどのシリーズに登場か名前が出る有名な博士だ。

そして俺はその孫。遠慮する必要もなく、むしろ生まれたときから来てる所だから家のような感じだ。

 

「そうか、このポケモンたちも来週には新人トレーナーの誰かの最初のポケモンになるのだからな。小まめに健康チェックをせねばな。」

 

そう、このポケモンも来週には旅立つのだ。

この世界は10歳からポケモンと共に旅立つことが許されているのだ。

ゲームでは意識しなかったが10歳って早すぎね、ホームシックになって帰ってくるんじゃね。などと思うがこの世界では常識なのだ。

かくいう俺も早く旅立ちのだが、あと2年待たなければならない。

 

「それにしてもシゲルもずいぶん仕事が出来るようになったの。おかげでわしも腰痛に悩むことが少なくなったわい」

 

「じいちゃん、さすがにその年で自転車で段差降りるのは無茶だって。トキワシティなんて歩いていけるじゃん」

 

たまにアグレッシブになるじいちゃんなのだ。

 

「いや~なに、若い頃を思い出して自転車で移動したかったんじゃ。あの頃は洞窟の中でも自転車で移動したんじゃが。」

 

「フラッシュせずに適当にぶつかりながら出口に出たんですね、わかります」

 

初代じゃ頻繁に真っ暗になるし、いちいちフラッシュ選択するのめんどかったし。

 

「しかし、シゲルも8歳か。2年後には旅立つのか?」

 

「そのつもりだよ。サトシもそう言ってたね」

 

サトシは俺の幼馴染だ。一緒に遊んで、一緒にポケモンについて語ったり、どこにでもいる幼馴染だ。・・・女の幼馴染はいないけど。

 

 

「そうか、今はその訓練をやっとるんだったな」

 

「・・・うん。トレーナーの訓練・・・だと思う」

 

相変わらず続けてるカーブ2枚抜きビンゴゲーム。

決してそっちの道のプロになるつもりはない。

 

「シゲルは将来なんになりたいんじゃ、研究員か?」

 

「さあ、まだはっきり決めてないよ。今みたいにポケモン観察して研究員になるのも悪くないとは思ってるけど」

 

この世界は転生前の世界と違ってほとんどの仕事にポケモンが関係する。

政治や環境問題にもポケモンが関係するのだ。

たしかに数学や物理などの基本的なことは変わらない。けど歴史や宗教になるとまるで変わる。

今現在カントーは150匹しか確認されてないが、ゲームではポケモンが世界を作ったとか、ポケモンが過去や未来に移動する。

そんなことが図鑑に載ってた気がする。

 

なんの仕事するにも今までと価値観が違うのだ。

流石に、小・中学生レベルの算数や理科などは問題ないので成績は優秀だ。

そういうことから研究員が俺には向いてるのかもしれないけど。

 

 

「サトシは『ポケモンマスターになる!』ってはりきってたけど」

 

「うむうむ、サトシらしいのう」

 

しかし、ポケモンマスターってどうやったらなるんだろうか。

 

リーグ優勝?いや、そしたらチャンピオンだな。

ポケモンを知り尽くす?それって博士って呼ばれるんじゃなかろうか?

ポケモンを極める?・・・なにそれ?

 

いまいち定義がわからんな。

 

 

「とりあえずポケモンは好きだから、トレーナーになって旅に出て、いろいろ考えてみるよ」

 

「うむ、なにをするにしてもポケモンと関わるならまずは一人前のトレーナーなることじゃからな」

 

じいちゃんも洞窟で自転車乗ってたときはいろいろやってたんだろうか?

 

 

「それじゃ、そろそろ帰るよ。あんまり遅くなると姉さんが心配して、『出来るだけ早く帰れるように』っていいながら走り込みの訓練メニューを追加してくるかも知れないから」

 

「そうか、今日は遅くなると伝えておいてくれ」

 

 

 

 

・・・これが俺の日常だ。

 

 




アニメではトキワシティまで何日もかかるらしいですがチャリなら関係ねぇ!みたいな感じです。
本文書いてると初代のゲームを思い出します。

登録ボタンなんてなかったから一々どうぐから自転車と釣りざおを出すまどろっこしさ。
フラッシュや波乗りを一々ポケモンから使わせるまどろっこしさ。
最近はフラッシュ使う洞窟減ってきたなぁと思いを馳せております。

次回はポケモン出します! 


・・・モンスターボールは使わないけどな!


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ノーマルマサラ人 3話

今回は長めです。
相も変わらず幼年期。冒険に出るのはもう少し。


 

「さあ、ポケモンは突っ立ってるわけじゃないんだから、ポケモンに逃げられないように足腰鍛えないと」

 

「・・・・・・姉さん、これ・・・・いつまで・・・走ればいいの」

 

「もちろんポケモンより早く走れるまで。そうねドードーは無理でもドードリオぐらいまで頑張りなさい」

 

 

 

「ドードー」・・・ふたごどりポケモン

とつぜんへんいでみつかったふたつのあたまをもつポケモン。じそく100キロで はしる。

byファイアレッド図鑑

 

 

 

「ドードリオ」・・・みつごどりポケモン

しんかのときにドードーのあたまのどちらかがぶんれつしたちんしゅ。じそく60キロいじょうで はしる。

byブラック・ホワイト図鑑

 

 

 

あれ遅くなってね?・・・そんな突っ込みを入れる余裕もなく、現在、私ことシゲルは走ってます。

 

・・・時速60キロの壁を目指して。

 

 

 

 

 

 

いつか来るだろうなぁと思ってた走り込みの訓練。

この訓練を初めてからどれくらい経つだろ。時速60キロの壁はいまだ越えられず、ただ走り続けております。

 

おかげで姉さんの言ってたとおり足腰がかなり鍛えられております。

正直、この年でここまでふくろはぎが引き締まったら何年後かに来る成長痛がやばいんじゃなかろうか。足の成長痛って骨が出っ張って痛いんだよね、膝とか踵とか。

 

「ほら、とりあえずあと一時間走りなさい。私はお昼御飯の用意をしてくるから。」

 

姉さんがなにか言ってるなぁ。

 

ああ、そういえば今日はまだ休憩を取ってないないなぁ。

 

忘れられてるんだろうなぁ。

 

 

 

(バタッ)

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

目を開けて回りを見ると清々しい晴天だ。

 

ここはどこだろう。

 

俺は今、虹の橋を渡っている。

 

本来ならあり得ないこと。

 

それを当り前のように歩いている。

 

間違いなく夢の中だ。

 

虹の橋を渡り切ると、なぜかカフェが建っていた。

 

とりあえず覗いてみると

 

「8月30日の期間限定のため当店は閉店しました」

 

そんなことが書かれていた。

 

なんの期間だっけ?

 

どっかで見たことがある日だ。

 

他になにも無いので近くの森に入った。

 

森に入るとミノムッチを見かけた。

 

カントーではまず見ないポケモンなので懐かしい気分になれた。

 

次にドーブルに会った。

 

なぜかドリンクを運ぶよう頼まれたのでミノムッチまで渡しに行った。

 

こんなもんいるかと捨てられたのでミノムッチの糸を引きちぎってやった。

 

ドーブルにそのことを伝えるとサムズアップしてきた。

 

サムズアップし返した。

 

お礼にきのみをくれた。

 

ドリンクを運んだお礼なのか、糸を引きちぎったお礼なのかわかりません。

 

また森の中を歩くとイーブイに出会った。

 

こっちに擦り寄ってくる。

 

どうやらきのみが目的みたいだ。

 

きのみをあげると喜んだ。

 

イーブイがなつきました。

 

イーブイと一緒に森を歩くと大量のニョロゾがいた。

 

ニョロゾが一斉にこっちを向いた。

 

おなかのうずまきを見てると睡魔に襲われた。

 

とりあえずこっちもニョロゾに向かってうずまきと逆方向に指を回してみた。

 

ニョロゾがなぜか興奮しだした。

 

ニョロゾが一斉に襲ってきた。

 

イーブイ抱えて逃げた。

 

しかし追いかけてくる。

 

しょうがないので島から飛び降りることにした。

 

どうせ夢だから大丈夫だろ。

 

イーブイごと飛び降りた。

 

アイキャンフラーイ

 

 

 

 

 

(バシャッ)

 

 

 

 

「あら、起きた。もう、ダメじゃない。走ってる最中に寝たら」

 

バケツの水のおかげで目が覚めました。

 

「・・・・・疲労で睡魔に襲われたら(気絶)、さらに睡魔に襲われて、最後に30匹近くのスイマーに襲われました」

 

「頭打った?」

 

これが3日前の出来事であった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

いきなりですが、あと来年で10歳になります。

それに伴い姉さんの訓練も種類がどんどん増えてきました。

 

旅に出てから簡単に作れる料理、食べられる野草の区別、野宿するときのコツ、etc

いろいろなことも学びました。

 

 

ところでこの訓練ってほかのトレーナーもやっているのだろうか。

サトシはいつも元気でやつれてるところを見たことがないんだが・・・。

(この一家だけです。)

 

 

さて、来年で10歳になり、旅立つことが出来るのだが、じいちゃんの研究を見たところ、どうやらこの世界ではまだ個体値・努力値は発見されていないようだ。

それと性格についても、特に気にされていない。

 

しかし、ポケモン図鑑でポケモンを確認すると性格が表示されている。・・・なぜだろう?

そうなると、やはり実際に3匹の性格を確認してから選んだほうがいいだろう。

最初にもらうポケモンなのだから長く付き合いたい。

性格さえ合えばなんとか育てたいように育てられるだろう。

 

個体値などのほかにも、この世界はまだまだポケモンについて発見されていないことが多いのだ。

例えば、ゲームの初代カントーはでは無かったこと。

金銀のジョウトで発見された出来事。

厳選という形で当たり前のようにあるゲームシステム。

廃人ならば一体のポケモンに4,5日かけて厳選したりもする。

 

それは、「タマゴ」だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・「タマゴ」拾いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉さんめ、失神した相手に脂っこい肉料理を食わせるなんて。・・・あれ?」

 

今日も今日とてトレーナー必須訓練(と言われた)を終え、日課であるポケモン観察をしに、研究所に向かってる途中珍しい人にあった。

 

「・・・ナナカマド博士ですか?」

 

「ム? おお、シゲル君か」

 

ナナカマド博士、何でもじいちゃんの通っていたタマムシ大学での先輩らしい。

シンオウ地方のマサゴタウンに研究所を構え、主にポケモンの進化について研究してるのだとか。

 

「お久しぶりです、ナナカマド博士。珍しいですね、わざわざマサラタウンに来るなんて」

 

「うむ、実はオーキド君にポケモンが新種の細菌に感染されていると聞いてな」

 

「ああ、ポケルスのことでしたか」

 

「ポケルス?」

 

「じいちゃんがそう呼んでいましたよ。仮名として名づけたらしいですが」

 

・・・ポケルスについてはググってください。

 

「送られた資料を見たが、確かに新種のようでな。私も自分の目で確認したいと思って来たのだ」

 

「そういうことですか。今はじいちゃんも居ますのでどうぞ」

 

「うむ」

 

年を考えずにトキワシティまで自転車で行ってるからな、あのじいちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで気になっていたんだが?」

 

「なんでしょう?」

 

「そのタマゴはなにかね?」

 

「川から流れてきたので拾ったんです」

 

「・・・タマゴをかね?」

 

「タマゴをです」

 

「・・・なんのタマゴかね?」

 

「さぁ?」

 

「・・・随分と大きいようだが」

 

「はい、けっこう重いです」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・なにか?」

 

「・・・なぜダンボールに入れて持ち歩いているのかね?」

 

「・・・姉が狙ってるからです」

 

夕食的な意味で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって研究所。

 

「ほう、これが新種のウイルスか。やはり珍しい色をしているな」

 

「ナナカマド博士、やはり新種のウイルスですかな?」

 

「うむ、少なくとも私は初めてみるウイルスだな」

 

「おお、そうですか。これでまたポケモンの研究が進みますな!」

 

「うむ!」

 

 

 

 

楽しそうだなぁ、じいちゃんたち。

傍から見ると子供がはしゃいでるように見える。

けど、懐かしいなぁ。ポケルスって言葉。

 

この世界に生を受けて早9年。

流石にゲーム内での言葉を久々に聞くと懐かしい気分になる。

 

 

 

 

 

 

「このウイルスを解析し、特許が取れれば、ワシはがっぽがっぽですな!」

 

「くっ!なんとうらやましい。私の研究所の機材も買い替えたいというのに!」

 

「HAHAHA、これで念願のマッハ自転車を手に入れることが出来る!」

 

「なん・・・だと・・・。くっ、私はランニングシューズで隣の町に通っているというのに!」

 

 

 

 

 

 

楽しそうだなぁ、じいちゃんたち。

傍から見ると狸の皮算用に必死なジジイ共にしか見えない。

内容のレベル低いし。

 

 

「ブイ」

 

というか見たところ、ナナカマド博士ってポケモン持ち歩いていないような?

 

「ブイ」

 

ということは、このマサラタウンまで『そらをとぶ』で来てない。

 

「ブイブイ?」

 

シンオウ地方からカントー地方は船で行き来する。

 

「ブイ」

 

カントー地方の港はハナダシティしかない。

 

「ブイブイ」

 

自転車もなく、『そらをとぶ』を使ってない。

 

「ブイブイ?」

 

つまり、あの人は徒歩でハナダシティからマサラタウンまで来たということだ。

 

「ブイブイ!」

 

けっこう年食ってるはずなのに、アグレッシブだな。

 

「ブイ!」

 

自転車で移動するうちのじいちゃんもだが、トレーナーってすごいな。

 

「ブイブイ」

 

俺もいつかああなるんだろうか。いやだなぁ。

 

「ブイ」

 

 

 

 

 ・・・・・・

 

「・・・・ブイ」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どちらさまで?」

 

「ブイ!」

 

 

 

タマゴの破片が散らばっていました。

 

 




ようやくタグをアニメ準拠?からオリジナル展開に変えたほうがいいか迷ってる作者でした。
アニメではブラッキーに進化してたなぁ・・・。
このイーブイはどうしようかなぁ。


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ノーマルマサラ人 4話

ふう、そろそろストックが切れてきた・・・。
ネタは浮かべども文字にするのはやはり難しい。
更新ペースが落ちてくるなぁ。


アニメ本編の主人公登場!そして相変わらずモンスターボールを触ってない主人公(笑)!
相も変わらず駄文ですが暇つぶしにどうぞ。


 

 

あれから色々あった。

「ブイ」

 

 

まずタマゴからポケモンが生まれて、じいちゃんたちが発狂した。

「ブイブイ」

 

 

そして、この「ブイ」しか言わないナマモノを観察した。

「イー」

 

 

なんか反抗しやがった。・・・昔の全身黒タイツの雑魚みたいな鳴き方だぞ。

「・・・ブイ」

 

 

話を戻して・・・タマゴの殻とかこのナマモノを世間に公表した。

「ブイ!」

 

 

そしてポケモンはタマゴから生まれるということを世界に電撃発表した。

「ブ~イ」

 

 

ついでにタマゴの第一発見者である俺も発表された。・・・ついでにいろんな所に顔を出す羽目になった。

「ブイ」

 

 

俺とこのナマモノこと「イーブイ」は一躍有名となった。

「ブイ!」

 

 

ナナカマド博士はハナダシティまでランニングシューズで駆けて帰っていた。

「ブ~イ」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「いいよなぁ、シゲル」

「なにが?」

「だってさ、もうポケモンを持ってるんだぜ」

「モンスターボールに入れてる訳じゃないから持ってるってのは語弊があると思うぞ」

「く~、俺も早くポケモンをゲットしたいぜ!」

「・・・人の話聞いてる?」

「ブイブイ」

 

 

10歳まであと2か月。

タマゴの第一発見者の俺はここ数カ月いろいろとバタバタしていた。

こうしてサトシの家で話をするのも随分と久しぶりだ。

 

ちなみにこのイーブイはまだゲットはしてない。

まだ10歳ではないからモンスターボールを使うことが許されないのだ。

余談だが、こいつはやたら俺の肩に乗りたがる。足が短いのに器用なものだ。

あと、見た目よりけっこう重い。

 

 

「けど俺たちもあと2か月だな」

「ああ!やっとポケモントレーナーになるんだ、楽しみだぜ」

「そうだな、確かに「やっと」って感じだな」

「ああ、ようやくポケモンマスターの第一歩だ!」

 

 

相変わらずサトシはポケモンマスターを目指している。『ポケモンマスターになる』、は昔からの口癖だった。

未だにポケモンマスターってどんなもんか分からんけど・・・。

 

「そういや、シゲルは最初にもらうポケモンは決めたのか」

「うん?いや、俺は実際に見て決めるつもりだよ」

「そっか。俺もまだ決めてないんだよなぁ」

「ま、とりあえず俺にとっての最初はこいつになるのかね」

「ブイ!」

 

 

胡坐をかいている俺に座りおとなしくしているイーブイを見ながら考える。

イーブイというポケモンは中々野生で見ない珍しいポケモンである。

そして進化する種類の多さで有名だ。

初心者用の最初のポケモンとこいつの進化させる『タイプ』についても考慮する必要があるな。

流石にリーフィアやグレイシアは距離的にちょっと無理あるけど進化はさせておきたい。

チャンピオンリーグまでイーブイのままとか正直戦力にならん。

タマムシシティのデパートで石が売ってあったはずだから遅くてもそれまでに決めておきたいな。

 

 

「旅に出たら俺とシゲルはもうライバルだな」

「まぁ、ジムバッジ8つ集めてポケモンリーグに出ればやりあうかもな」

 

ポケモンリーグはトーナメント方式らしいし。

 

「そのときはお互い本気でバトルしようぜ!」

「わかってるって。これだろ」

 

そういってポケットから半分に割れたモンスターボールを出す。

 

「ああ、俺とシゲルがライバルの証だぜ」

「そうだな、将来の目標ってのはまだはっきりしてないけど、俺もバトルで負けるつもりはないよ」

「俺だって絶対に負けないからな!」

 

 

 

ポケモントレーナーまであと2か月。

こうして友人兼ライバルとの何気ない会話もあと2か月。

習慣となっているトレーナー訓練も研究所の手伝いもあと2か月。

こうして間近になってみるとなんだかさびしい気分になってくる。

 

 

 

・・・・・・別にさみしがり屋なわけじゃないんだからな!

目尻が熱いのは今までの訓練を思い出したせいなんだからな!ホントだぞ!

・・・本当に熱くなってきた。

 

 

 

 

 

 

「・・・ところで話がかわるんだけどさ」

「なんだ?」

「このさっきからテレビで流れてる番組なんだけどさ」

「これ?シゲルが居なかった時に放送されていたポケモンバトルを録画したやつだけど」

「いや、これを見せるためにわざわざ録画して見してくれるのはうれしいんだけどさ」

「どうかしたのか?」

 

 

 

 

『おーっと!ここでサンドパンを出しました!』

『対する相手はスターミーを選出っ!』

 

『サンドパン!スピードスターだ!』

『スターミー!かわせ!』

 

『スターミー、見事にかわしました!』

 

『スターミー!こっちもスピードスターだ!』

『サンドパン、避けろ!』

 

『サンドパンも見事回避!両者熱いバトルが繰り広げられてます!』

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

「どうしたシゲル?この試合は今回の名勝負だったんだぜ!」

「・・・いや、俺もこういった番組はそれなりに見るけどさ」

「どうかしたのか?」

「・・・・・なんでもない」

 

 

スピードスターは星型のなにかを飛ばすだけの攻撃なんですね。

そして「かわせ」という技があるんですね。

スピードスターすらも回避出来る優れた技なんですね。

 

 

 

・・・・・解せぬ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ただいま~」

「ブイ~」

 

「あら、ちょうどよかった、ちょっと待ってね・・・シゲル、電話よ~」

「電話?だれから」

「話せばわかるわよ、ほら変わって」

 

そういって受話器を俺に渡し、意味ありげな笑みを浮かべながら姉さんはキッチンに去って行った。

 

「・・・?。もしもしお電話変わりました~」

『あら、お帰りになられたのですね、シゲルさん!』

 

 

「・・・・・・・・・・エリカ?」

 




アニメ設定ではオーキドじいちゃんはタマムシ大学卒業生だそうです。(ナナカマド博士も)

エリカの出会いの小話は余裕があるときでも投稿するつもりです。
とりあえず今は本編の話を進めたいのでサイドストーリー的な話は一段落ついてからですかね。

あとこのssをお読みくださってる読者様方。
遅くなりましたがあとがきまで読んでくださり感謝してます。
UAが増えてるのを見るとうれしくなります。

では ノシ



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ノーマルマサラ人 5話

ようやく旅に出る主人公。5話目でようやくって・・・。

今回はゲーム設定の説明を長々としております。
知ってる方もいると思いますが、ゲームをやりこんでる人じゃないと知らない方も多いと思うので軽く説明しました。

では暇つぶしでもどうぞ。


念願の10歳となり、待ちに待ったポケモントレーナーとして旅立つ日。

二日前から荷物の準備をし、何度も何度も忘れ物がないか確認した。

そして昨日の夜は遠足に行く子供のように寝つけが悪かった。

こっちの世界に転生してから、あれほど緊張した夜は初めてだ。

旅なんかしたことがないから当然だろう。

 

本日は晴天なり。

見上げれば雲一つない空をポッポの群れが見える。

旅立ちにふさわしい空だ。

 

「それじゃ、行ってらっしゃい。立派なトレーナーになりなさいよ」

「・・・姉さん」

「あら、忘れ物があったの?」

「いや、そうじゃないけど」

 

これからしばらく、もしかしたら何年もここに戻らないこともあるかもしれない。

やっと旅立つことが出来ると思う反面、やはりさびしいと思う気持ちもあるわけで。

実年齢はともかく、なんだかんだで体は10歳になったばかり。

無意識に一人で旅に出ることに不安があるのかも知れない。

言いたいことは今言うべきだと思った。

 

 

「姉さん、いままで俺の訓練に付き合ってくれてありがとう。姉さんのおかげで色んなことも学んだよ」

 

何度も気絶したが姉さんの訓練のおかげで前の自分じゃあり得ないぐらいたくましくなった。

 

「姉さんが鍛えてくれなかったら、もっと不安な気持ちで旅立つことになってたと思う」

「・・・」

「つらくてやめたいって思ったこともあったけど」

「・・・」

「でも姉さんの訓練のおかげでこれから何があっても大丈夫だって思えたりもするんだ」

「・・・」

「だから、ありがとう」

 

本当はもっと言いたいけど恥ずかしさが出てこれが限界だった。

姉さんの顔を見上げると目が少し潤んでた。

こんな姉さんの顔を見るのは初めてだ。

 

「・・・シゲル。あなたは今までよくがんばったわ。今ではフォークボールを使って2枚抜きが出来るようになり、ドードリオに引けを取らないほど走れるようになったわ」

 

潤んだ目で俺を見ながら今までの俺の頑張りを認めてくれる。

 

「あなたはこの旅が終わったら、今の自分よりもっと立派になって帰ってくるわ」

「姉さん、俺きっと・・・」

「そのときは、今度はイワークを超えれるように鍛えてあげるわ!」

 

 

「イワーク」・・・いわへびポケモン

おおきないわをもくらいながらじめんのなかをほりすすむ。そのスピードはじそく80キロ。

byプラチナ図鑑

 

 

とんでもねぇオチがつきやがった!!

 

「だから頑張りなさい。そしてちゃんと帰ってくるのよ!」

 

・・・・・・・・つまり、立派になるまで帰らなくていいってことだよね。

 

「姉さん、俺立派になるよ。・・・時間が掛かると思うけど」

 

たぶん4,5年ぐらい時間掛ける・・・じゃなくて掛かると思う。

少なくともイワークを忘れてくれるぐらいの時間が。

 

「・・・それじゃ行ってきます」

「ええ、行ってらっしゃい!!」

 

潤んだ目でハンカチを振り出す姉から、走って逃げたい気持ちを抑え研究所に向けて歩き出す。

旅はまだ始まってもないのに足取りはすこぶる悪い。

旅立ちにふさわしい晴天なのに気分は全く晴れやかではなかった。

静かに足を叩いて首を左右に振るイーブイのしぐさに哀を感じながら俺の旅が始まる。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「おお、一番最初に来たのはシゲルじゃったか」

 

「あれ、誰もいない。早すぎた?」

 

時刻はAM9:00。

 

これまでの先輩トレーナーもだいたいこれくらいの時間に研究所にきてたはずだけど。

せっかちな人は前日の夜に研究所の前に居座って、寝袋でスタンバってるくらいだ。

正直、あれはうっとうしかった。

 

 

「実はのシゲル、今回は少々問題があってな」

「問題?」

「うむ、本来初心者用のポケモンは人数分用意されるんじゃが」

 

この研究所で長いことその手伝いをしているから、それは知ってる。

 

「しかしのぅ、前日になって内1体のポケモンの具合が悪くなってのポケモンセンターに送ったのじゃ」

「え?もしかしてもらえないってこと」

「いや、送ったのは1体だけじゃ。ただ人数分のポケモンが用意されてないんじゃ」

「・・・たしか今回旅立つトレーナーって、俺とサトシ含めて4人いなかったっけ?」

「そうじゃ、しかし今用意されてるポケモンは3体しかいない」

 

あれ、そうなった場合どうなるんだ?

 

「まぁ、こうなってしまった場合早いもの勝ちじゃな。今までもそういったことがあったしのぅ」

 

 

ポケモンをもらう時は基本的に人数分用意されている。

新人トレーナーが何人いても一匹を渡せるように予備も用意しておくのだ。

旅立つトレーナーがよほど多い町とかは誕生日に期限を記入して別々に取りに来させる所もある。

ただ、マサラタウンのようなそれほど大きくない町はこうして一斉に取りにこさせる所もある。

なぜならトレーナーが来るたびにポケモンの様子をチェックして渡さなければならない。

それならばまとめた日に来させてポケモンもまとめてチェックして用意したほうが楽だからだ。

 

またオーキド研究所は研究員が少ない。

そのため必然的にポケモンや図鑑の説明はじいちゃん一人でやる。

しかし、仕事が重なって他の町に出かけることもあるため、その人の誕生日に無理があったりする。

 

もろもろの理由からマサラタウンでは決まった日にちに旅立つようにしている。

 

 

「といっても、ポケモンセンターからの連絡では3日で戻ってくるようじゃ。 一番遅かったトレーナーにもちゃんと渡すことは出来る」

「そうだけどせっかく旅立つのにいきなり3日延長ってがっかりすると思うよ」

「しかし、こればかりはのぅ。・・・まぁ4体目がいないわけじゃないんじゃが」

「え、なに?」

 

じいちゃんが目をそらしながらぼそぼそとなんか言ってる。

じいちゃんは首を振り、なんでもないとつぶやきながら少し奥に進み、

 

「さぁ、シゲル。気を取り直して最初のポケモンを選ぶのじゃ!」

 

そういってじいちゃんはモンスターボールを置いてる円形の台から一つを手に取り・・・

 

「まずは炎タイプ・ヒトカゲじゃ」

 

そういってモンスターボールが開き、中から光と共に赤色の体色のトカゲが現れる。

 

「次に水タイプ・ゼニガメじゃ」

 

2つ目に出てくるのは甲羅を背負った水色のカメだ。

 

「最後に草タイプのフシギダネじゃ」

 

3つ目は緑色に大きな種を背負った・・・・・カエルかな?

ゲームもやってたし、こっちの世界に来てからも見てたんだが図鑑じゃ「たねポケモン」としか書いてないんだよ。

まぁ、いちいち突っ込んだら駄目なんだろうけど。

 

 

「さぁシゲル、この中から一匹を選ぶのじゃ」

 

やっぱり色違いはいないな・・・ちょっとは期待してたけど。

 

「その前にじいちゃん。ポケモン図鑑くれない」

「なに?」

「1匹しかもらえないんだから、せめて他の2匹も図鑑に登録しときたいんだ」

 

ほんとは違う理由だけど。

 

「なるほど、そういうことか。ほらこれがポケモン図鑑じゃ」

 

そういってじいちゃんはポケモン図鑑を渡してくれた。

 

「ありがと。それじゃ早速」

 

ポケモン図鑑を開き、さっそく3匹をそれぞれ図鑑に登録する。

そして同時にポケモンが覚えてる技と性格に目を通す。

 

 

「ヒトカゲ」・・・うまれたときからしっぽにほのおがともっている。ほのおがきえたときそのいのちはおわってしまう。

『おくびょう』な性格  特性-もうか    

わざ『ひっかく』『にらみつける』『ひのこ』

         

 

 

「ゼニガメ」・・・ながいくびをこうらのなかにひっこめるときいきおいよくみずでっぽうをはっしゃする。

『ゆうかん』な性格   特性-げきりゅう

わざ『たいあたり』『なきごえ』『あわ』

 

 

 

「フシギダネ」・・・うまれたときからせなかにしょくぶつのタネがあってすこしずつおおきくそだつ。

『おだやか』な性格   特性-しんりょく

わざ『たいあたり』『なきごえ』『つるのむち』

 

 

 

うむ、やはりゲームの時と違って各タイプのわざを最初から覚えてる。

この世界の初心者用ポケモンはゲームの時と違ってある程度育てられてる。

今までも先輩トレーナーのポケモンを見せてもらった時もそうだった。

たまに最初から『ほのおのうず』や『バブルこうせん』を覚えてる個体もいたな。おそらく親から遺伝したのだろう。

 

まぁそれよりもポケモン図鑑を先に渡してもらった理由はわざだけじゃない。

俺が一番気にしたのは「性格」だ。

ポケモンを育成するにあたってどういった育成をするかを決めるのは性格といっても過言ではない。

ポケモンは性格によって上がりやすい能力と上がりにく能力が決まっているのだ。

 

例えば「ヒトカゲ」の『おくびょう』な性格は

「すばやさ」が上がりやすく、「こうげき」が上がりにくい。

 

似たような性格で『ようき』な性格の場合は

「すばやさ」が上がりやすく、「とくこう」が上がりにくい。

 

この二つの性格を比べた時、上がりにくい能力が「こうげき」と「とくこう」と分かれている。

つまり物理主体の技構成(『ほのおのパンチ』や『つばさでうつ』など)の場合は「とくこう」が下がっても気にする必要はない『ようき』な性格が適している。

逆に特殊主体の技構成(『かえんほうしゃ』や『ひのこ』など)の場合は「こうげき」が下がっても気にする必要はない『おくびょう』な性格が適している。

これは一例に過ぎず、『ゆうかん』の性格は「こうげき」が上がりやすく、「すばやさ」が上がりにくい。

「こうげき」が上がりやすい性格だが「とくこう」はなんの影響も受けないため、「こうげき」・「とくこう」両方の技を覚えさせる(両刀型)なんてのもある。

 

 

さてこれ以上はキリがないからこれまでにしておこう。

問題はこの3匹からどいつを選ぶか・・・。

 

『おだやか』な性格のフシギダネは選択肢から除外する。

『おだやか』な性格は「こうげき」が上がりにくく「特防」が上がりやすいからだ。

 

ゲームの対人戦では十分活躍できる性格だが、ストーリー攻略の際はあまり活躍できる性格ではない。

基本的にストーリー攻略を優先するならば攻撃寄りの性格を選んだほうが手っ取り早い。

対人戦特有の読みあいがないためゴリ押しでどうにかなるからだ。

 

ゲームと違うとはいえテレビのバトル中継を見る限り、技の読みあいはあまりない。

ほとんどが攻撃技の応酬。ゴリ押しだ。もしくは補助技に頼りきる戦い方だ。

 

そしてほとんどのトレーナーが「かわせ」と指示してたりする。

・・・解せぬ。

 

話を戻して、選ぶならヒトカゲかゼニガメのどちらかだが、こいつのことも考慮しなければならない。

 

「イーブイ、ちょっといい」

「ブイ?」

「ついでにお前も図鑑に登録しておくから、ジッとしといて」

「ブイ!」

 

こいつの性格も確認して、進化形に目途をつけておこう。

物理攻撃寄りの性格ならブースター・特殊攻撃寄りの性格ならサンダース・防御寄りの性格ならシャワーズにしよう。

あとはタイプがダブらない方のポケモンを選ぶのが無難だろう。

 

「イーブイ」・・・3しゅるいのポケモンにしんかするかのうせいをもつめずらしいポケモンだ。

『ひかえめ』な性格   特性-きけんよち  

わざ『たいあたり』『しっぽをふる』『すなかけ』

 

 

 

   ・・・・・

特性-きけんよち

 

 

   ・・・・・

特性-きけんよち

 

 

 

「アイキャンフラーイ」

「ブ~イ!」

 

この子、ドリームワールド産のポケモンでした。




   ・・・・・
特性-きけんよち

大事なことので2回書きました。

3話目の8月30日というのは2011年に限定公開された「ポケモングローバルリンク」の「ポケモンカフェ」の公開期間でした。
この期間中「イーブイ」・「ドーブル」・「ニョロゾ」・「ミノムッチ」の夢特性が限定配布されました。
夢特性とは通常の特性とは違う特性のことです。
イーブイの通常の特性は「てきおうりょく」です。

正直、このカントー地方の話で特性のゲーム設定は付けないほうがいいかなぁと思いましたがアニメではいつの間にか特性という設定が出来てました。
今ここで特性の設定をつけないと何時つければいいかわからないので最初からアリにしました。


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ノーマルマサラ人 6話

やばい、長文だ・・・。(作者の基準で)
本当はもう少し区切りながら出したかったけど、キリのいい所が分からずこんなことに・・・。
話を簡潔にまとめるのは難しいものですね。


主人公が選んだ初心者用のポケモン、活躍無し!
いや、出してはいるんですけど中々活躍のシーンを作るのって難しいものでして。
・・・しかも、活躍が出来るシーンの時には既に進化させてるレベルまで行ってそうで。
・・・どうしようかと悩んでる作者です。

追記
このssはタグに無いようにアンチ・ヘイトのつもりはありません。
あくまでシリアス・ほのぼのを1:9で進めてるつもりです。(もしくはギャグ)
書いてる意味がわからないと思いますが読んでるとわかります。
動物愛護団体に喧嘩を売るつもりはありません。
むしろ動物大好きです。
あしからずご了承ください。


「イーブイ!『たいあたり』!!」

「ブイ!(ヒュッ・・・ドゴッ!)『ピカッ!?』」

 

イーブイの『たいあたり』が決まり後ろへ吹き飛ぶピカチュウ。

これで三度目の攻撃。ピカチュウもかなり弱っている。

 

 

 

ここトキワの森であっさりと野生のピカチュウにエンカウントしたのは運がいい。

手持ちのポケモンのレベル上げに来ただけのつもりが思わぬ僥倖だ。

 

「ピカー!!」

「―ブイ!」

 

放たれる『でんきショック』を難なく避けるイーブイ。

『すなかけ』を一度も使ってないのにこれで二度目の回避だ。

命中率100の攻撃をかわしきっている。

指示も出してないのにすげぇ・・・。

 

 

状況は完全にこちらが有利。

イーブイはノーダメージであり、対するピカチュウは息が荒く倒れそうになってるがなんとかこらえている状態だ。

遭遇した時に図鑑で確認した通り『がんばりや』な性格のようだ。

 

「イーブイ、ピカチュウの動きを抑えるんだ!『すなかけ』!」

 

最近知ったことだが技には本来の効果以外にも副次効果があったりするようだ。

例えばこの『すなかけ』。本来の効果は相手の目を砂でつぶして命中率を下げる技だ。

しかし、実際目を砂でつぶされたらその場で目をこすったり(目をこするのは良くないけど)かぶった砂をはらうために頭を振ったりする。

要は多少なりとも相手の動きを抑えられるのだ。

 

イーブイの『すなかけ』をもろに食らい予定どおり目をこすりだすピカチュウ。

完全に動きが止まっている。今ならただの「まと」だ。

 

「イーブイ、ピカチュウをゲットするから攻撃するなよ」

 

俺の指示通り少し距離を取り待機するイーブイを確認し、腰のホルダーから空のモンスターボールを手に取る。

ボールのボタンを押し手のひらぐらいの大きさに変える。手に馴染んだ感覚だ。

2年前から始めていた2枚抜きビンゴゲームで使用していた球はモンスターボールと全く同じ大きさであった。

あの何度も心が挫けそうになった訓練も無駄ではなかった。

今ではカーブからフォークボール、チェンジアップすら投げることが出来る俺に目の前の「まと」を当てることなぞ造作もない。

・・・チェンジアップは無駄だったかも知れない。

 

 

狙いは胴体、ピカチュウの腹部。

両手で目をこすってるために完全に無防備。

球種は一番速度があるストレート。

右手にボールを構え、左足を上げ、腰を捻る。

狙いを再確認し、左足を着け、腰の捻りと同時にボールを、投げる!!

 

 

「――行け!モンスターボール!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピッ・・・・・・・・・ゴフゥ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・あれ?

 

 

 

 

 

 

 

「ピ・・・ピ・・・ゥゥ・・・オェ・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・状況を確認しよう。

 

狙いは胴体、ピカチュウの腹部。

両手で目をこすってるために完全に無防備。

球種は一番速度があるストレート。

 

そして俺の投げたストレートは狙い通りピカチュウの腹部に当たっ・・・めり込んだ。

モンスターボールは「ポケモンを入れる」という仕事をせずにピカチュウの腹部から転がり落ちなんの反応も起こさない。

そして両手で腹部を押さえ蹲りながら今にも『ヘドロばくだん』しそうなピカチュウ。

すでに口元から『いえき』が垂れている。

 

 

ようやく状況がわかり呆然とする俺。

風が吹き地面を転がり始めたモンスターボール。

今だ呻いているピカチュウ。

「勝った、勝った~」と言わんばかりに辺りを飛び跳ねるイーブイ。

 

 

 

・・・・・・・・なんでやねん。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「お待ちどうさま。お預かりしたポケモンはみんな元気に・・・なったはずなんだけど、なぜかこのピカチュウだけすごく震えてるの」

「そ、そうですか・・・」

 

現在ニビシティポケモンセンター。

あの後明らかにオーバーキルしてしまったピカチュウをポケモンセンターに運びジョーイさんに預けた。

流石にあのまま放置するのは良心がブロークンしそうであった。

 

手持ちのポケモンと一緒預け、治療から返ってきたピカチュウであったが・・・

 

「・・・ピ・・・ピ・・・ピカ・・・」

 

・・・めっちゃ震えてる。

明らかに怯えている。ピカチュウからすれば自分をオーバーキルしていた奴と再びエンカウントしてしまったのだから当然と言えば当然だろうが。

 

「えっと、大丈夫か。ピカチュ「ピガーーーーーーーーーーーー!!!」うおっ!?」

 

語りかけようと近づくと悲鳴をあげて逃走するピカチュウ。

ちょうどポケモンセンターにだれか入ってきて自動ドアが空いた瞬間、全力疾走で野生に帰っていった。

あのピカチュウ・・・絶対トレーナー恐怖症になっちまったな。

意図せず強烈なトラウマを植え付けてしまったピカチュウに心から謝罪。

・・・次あったら土下座でもしよう。即座に逃げそうだけど。

 

「君!あのピカチュウ逃げちゃったわよ!?」

「あ、大丈夫です。あのピカチュウ、俺の手持ちじゃないんですよ」

「あら、そうなの。じゃあ君はけがをしたピカチュウをわざわざ連れてきてくれたのね」

「・・・え、ええ。・・・まぁ」

「ふふ、やさしいのね」

「ハ・・・ハハ・・・ハハハ」

 

言えなかった・・・。「モンスターボールを叩き込んだ」なんて俺には言えなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

しかしまいったな。モンスターボールでひんしなんて洒落にならんぞ。

ポケモンをゲットする道具がポケモンを倒す道具とか。

思えば腹部とかもろ急所じゃないか。オーバーキルにもほどがある。

 

 

その後手持ちポケモンを受け取りポケモンセンターにて早めのランチタイム。

ここポケモンセンターではポケモンの回復だけでなく、トレーナーなら誰しも食事や宿泊がタダで使用可能である。

まさに至れり尽くせり。・・・というかどうやって利益がとれるんだろうか。

手持ちのポケモンに無料のポケモンフードを渡し、ふと思い出す。

 

「今思えば、お前をゲットした時はヒゲに当たってたな」

「ニド?」

 

「呼んだ?」といった感じでポケモンフードを一心に頬張っていたニドラン♀がこちらを向く。

 

「いや。もしあの時、お前が動かなかったらツノを根元からへし折ってたかもって話」

「ニド!?」

 

あの日マサラタウンから旅立った俺はまっすぐにトキワシティ・・・の西のほうにある22番道路へ直行した。

目的はこのニドランをゲットするためだ。

途中出てきた野生のコラッタやポッポなどは経験値としておいしく頂いた。

 

正直♂でも♀でもどっちでもよかったが、たまたまエンカウントしたこのニドラン♀、性格が『しんちょう』だった。

「とくこう」が上がりにくく、「とくぼう」が上がりやすい性格だ。

防御寄りの種族値をしているニドクインには悪くない性格だったのでゲットしようとした。

 

ピカチュウ同様『すなかけ』を使用し、相手の動きを抑えてからモンスターボールを投げたのだが、こいつはピカチュウと違い完全に四足歩行のポケモンだ。

つまり目をこする事も出来ないため頭をめちゃくちゃに振り回して砂をはらっていた。

狙った通りならモンスターボールは額の近く、ツノらへんに直撃するはずだった。

しかし当たる直前にちょうど顔を側面に向けボールはヒゲに当たった。

ヒゲだろうとポケモンに当たったことには違いないのかモンスターボールが反応。

そのままゲットした。

 

「よかったなニドラン。最悪の場合、毒技が出せない毒タイプのポケモンになってたぞ」

「・・・ニド」

 

 

「ニドラン」・・・ちいさくてもどくばりのいりょくはきょうれつでちゅういがひつよう。メスのほうがつのがちいさい。

『しんちょう』な性格  特性-どくのとげ

わざ『ひっかく』『なきごえ』『しっぽをふる』

 

現在のニドランのステータス。

なぜ最優先でニドランをゲットしたかというとニビジム攻略のためだ。

2日前からここニビシティに滞在しているが今だニビジムの門を叩いていない。

というのも今の手持ちのポケモンでは勝ちが見込めないからだ。

 

「カゲ?」

「いや、なんでもないよ」

 

そう、俺は初心者用のポケモンの中からヒトカゲを選んだのだ。

これにはイーブイの夢特性が関係していた。

 

「・・・ブイ」

「ん?もういらないのかイーブイ。お前はこいつらと違って食べる量が少ない気が、・・・・・・・『ひかえめ』な性格ってそういう意味じゃないよな」

 

夢特性のイーブイ。

夢特性のポケモンは通常の個体とは違う特性である。

同時に進化形の特性も変わってくる。

 

通常のイーブイ進化形の特性は、

 

「ブースター」特性-もらいび・・・受けた炎技を無効にし、自身の炎技の威力が1.5倍になる

 

「サンダース」特性-ちくでん・・・受けた電気タイプの技を無効化し、最大HPの25%を回復する

 

「シャワーズ」特性-ちょすい・・・受けた水タイプの技を無効化し最大HPの1/4を回復する

 

と、それぞれ自身と同じタイプの技を無効化する特性だ。

ゼニガメかヒトカゲを決める時、イーブイの性格を見てサンダースが適していると思ったが、夢特性ならば事情が変わる。

 

夢特性のイーブイが進化した場合、

 

「ブースター」特性-こんじょう・・・状態異常のときに攻撃が1.5倍になる

 

「サンダース」特性-はやあし・・・状態異常のとき素早さが1.5倍になる

 

「シャワーズ」特性-うるおいボディ・・・雨のときに状態異常が治る

 

このように特性が大きく変わる。

そしてこの中で特性とタイプが一番マッチしてるのがシャワーズだったりする。

シャワーズはイーブイの進化形の中で一番体力(HP)が多い。

またサンダースと同じ「とくこう」の数値を持っていたり、「ぼうぎょ」の数値は低いが「とくぼう」の数値は平均以上を持っている。

つまりサンダースのような速攻アタッカーとは違い、居座って安定した戦いが出来るのだ。

 

そしてこのうるおいボディとは非常に相性が良い。

大まかな流れとしては、

 

「あまごい」→「ねむる」→「うるおいボディが発動」→「起床」

 

といった長々と居座ることが出来るようになる。

また雨の状態では水タイプの威力が1.5倍になる。

 

こういったことからこのイーブイ、シャワーズに進化させようと判断。

水タイプの枠が埋まったから炎タイプのヒトカゲを選んだ。

 

 

しかしそうなるとノーマルタイプのイーブイ・炎タイプのヒトカゲではニビジムの岩タイプのポケモンに有効打がないことになる。

そこでこのニドランである。

 

ニドランは序盤手に入るポケモンの中で格闘タイプの「にどげり」を覚えることが出来る。

相手は岩・地面タイプを持っているが地面タイプの技を覚えていないので毒タイプでもさほど問題ない。

つまり、このニドランがニビジム攻略のカギになってくれるだろう。

 

 

「さて、飯も食ったしそろそろ行くか」

 

といってもまだニドランが「にどげり」を覚えていないため現在トキワの森でレベル上げの最中だ。

ゲームと違ってレベルを数値として見れないためどれくらいレベルが上がったかわからない。

ひたすら野生のポケモンを相手にして図鑑で確認する。

今日中には覚えてほしいところだ。

 

 

(・・・おい、聞いたか。あの話)

(ああ、聞いたとも。どうやらまじらしい)

 

・・・うん?

 

(3番道路の方から来たらしい)

(ああ、自転車で来たみたいだぜ)

 

飯を食ってた反対側の席。窓際の席の二人がなにやら小声で会話をしている。

・・・余計怪しいだろうに。

 

(まじか、自転車で来てたのか。あの「へそ出しルック」の子)

(今はトキワの森に行ったらしいぞ。その「へそ出しルック」の子)

 

 

 

 

・・・へそ出しルック?

 

 




さあてそろそろ本気で「ストーリー改変」のタグを入れるかな!っと心の中で決めてる作者です。

ということでポケモンはヒトカゲになりました!・・・アニメではゼニガメでしたけどね。
感想の方にも書かれていましたが炎ポケモンでニビジム・ハナダジムは正直活躍の場がないような。
というかイーブイすらあまり活躍出来ないような・・・。

とりあえず予告として次の話は「へそだしルック」の子を出します。

更新速度のほうはあまり期待せず、ごゆるりとお待ちください。


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ノーマルマサラ人 7話

湯たんぽと電気あんかは文明の利器や・・・。
皆様こんにちは。どうでもいいことを前書きで書いている作者です。
最近冷え込んでるのでいかに電気代を節約出来るかと思いこの二つを愛用しています。
どうでもいいですね。すいません。

今回は前回と比べ本文が少なめです。
正直ネタはあれども執筆する時間がないです。
リアルが忙しい・・・。

今回は前回の予告どおりあの方を出しました。
といっても相変わらず少ししか出てませんが。

では暇つぶしでもどうぞ。


「いや、参った。お主強いでござるな!」

「・・・はぁ、どうも」

「拙者もまだまだ力不足だということを体感したてござる」

「・・・はぁ、そうですか」

「こうなればひたすら修行でござるな!」

「・・・はぁ、頑張ってください」

 

現在トキワの森、トキワシティ方面。

私ことシゲルは今目の前のトレーナーとバトルを行いました。

正直、どうリアクションをとればいいかわかりません。

 

 

なぜトキワの森に住んでるのか。

なぜ語尾に「ござる」をつけるのか。

なぜトキワの森に出ないはずのカイロスを持ってるのか。

なぜ『かたくなる』しか使わないトランセルを出したのか。

 

 

そんなことがどうでも良くなるような疑問を抱いています。

 

 

「うむ、お互い精進するでござる!ハーハッハッハ!」

 

 

 

・・・なぜノースリーブシャツと短パンで鎧兜を着けてるのか

 

・・・なぜ刀を差してるのに背中に虫取り網があるのか

 

 

 

非常に気になってます。

 

「・・・ところで拙者の格好どう思うでござる」

「個性的です」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『スピアーが?』

『左様、最近妙に攻撃的でござる』

『・・・例えば?』

『普通スピアーはなわばりに入るものには容赦なく集団で襲うでござる』

『そうらしいな』

『ただ、最近は森で見つけたものは片っ端から襲いかかってるでござる』

『1匹で?』

『いや、2・3匹のグループで巡回して襲うでござる。それから持ち帰れそうなものは巣に運んで行くでござる』

『・・・ちなみにいつぐらいからそんなことに』

『そうでござるな。だいたい2・3日前ぐらいでござるな』

『・・・・・』

『どうしたでござるか?急に考え込んで?』

『いや、なんでもないよ。情報ありがとう。えっと・・・・・・・落ち武者君?』

『サムライでござる!』

 

 

 

 

 

そんな会話で別れたのが今より2時間前。

俺はその間ずっと、さっきのスピアーのことを考えていた。

 

・・・というよりも多分原因は俺かなと思ったりしてる。

22番道路でニドランをゲットしたのは3日前。

そしてここ2・3日間、ニビシティのポケモンセンターとトキワの森を行き来して経験値を稼いでいた。

 

主な標的はコクーンやトランセルだ。

 

理由は単純。楽だからだ。

この2匹はトレーナーの指示で『どくばり』や『たいあたり』といった攻撃が出来る。

しかし野生のこの2匹は身を守ることが最優先なのか『かたくなる』しかしない。

ニドランに『にどげり』を覚えさせたい俺からすれば非常においしい話だ。

だがさっきの話を聞く限り、どうやらコクーン大量虐殺の結果、スピアー大激怒となってしまったようだ。

おそらくグループで巡回してるのは巣にいないコクーンを探して、見つけ次第巣に運ぶ仕事をしているのだろう。

もしくは餌になりそうなものを運んでいるか。

 

ちなみについ先ほど「にどげり」を覚えた。

 

「目的は達したし、今日はもうポケモンセンターに戻るか」

「ブイブイ!」

 

夕日も沈み始めて夜行性の虫ポケモンが活発にもなるだろう。

さっきの話から下手に長居してスピアーと遭遇するのは望むところじゃない。

さっさと戻って寝よう。

 

「・・・ブイ?・・・ブイ!」

「・・・どうしたイーブイ、トイレか?だったらそこらへんの木でいいだろう。マーキングはほどほどにな」

「ブイ!ブイ!」

「ってどこに行くんだよ!?マーキングならそこでいいだろ!・・・え、ちがう?」

 

いきなり駆け出すイーブイ。

もしや大か?ならばエチケット袋をとついて行きながら用意しだす俺。

 

しばらくついて行くと、イーブイがいきなり止まりだす。

ここで大か、と袋を広げた俺の視界に入ったのは・・数十匹のスピアー。

そして大量に気にぶら下がってるコクーンと木に張り付いてるビードル。

ついでに糸でぐるぐるに縛られ木にぶら下がってる「へそ出しルック」。

 

 

・・・「へそ出しルック」・・・だと・・・!?

 

 

 

「いや~~~虫はいや~~~~~~~!!!!」

 

 

 

 

 

・・・モノホンの「へそ出しルック」を見ました・・・。

 

 




とりあえずタグに原作改変を今度加えておきます。
登場させちゃいました。へそ出しルックの子。
次回はこの子の視点の文を書こうしていますが中々難しそう。
とりあえず色々試してみます。

本文少ない割に更新があまり出来ず申しわけありません。
相変わらず更新速度は期待できませんが次回はもう少し量を増やしたいと思っています。

それではノシ


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ノーマルマサラ人 8話

前回少なかった分、今回は多めに!
・・・すいません嘘です。単にどこで区切ればいいかわからずにずるずると。
おかげで更新も遅くなり申し訳ありません。
次はもう少し文字数減らして更新をしたいと思ってます。

今回はいよいよあの「へそ出しルック」の正体が!

・・・まぁみなさん今更でしょうけど。

では暇つぶしでもどうぞ・


旅に出た理由は単純。居心地が悪かった。

 

 

アタシには3人の姉がいる。両親はいない。

そして前々から居心地が悪かった。

 

 

ジムに居れば3人の姉さんたちと比較され、嫌味や面倒事を押しつけられる。

ジムのショーを見に来る客も姉さんたちを見に来るだけで陰で苦労しているアタシを見向きもしない。

 

姉さんたちもそれをいいことに「ハナダジムの美人三姉妹」なんて自称して自慢してくる。

 

 

うろ覚えの両親はアタシが幼い頃に家を出て行った。

姉さんたちには服や鞄を買っておいて末っ子のアタシには姉さんのお下がりしかもらえない。

・・・ポケモンのひな人形、欲しかったな・・・。

もうまともに顔も覚えていない。

 

 

だからアタシは旅に出た。

姉さんたちに強気な啖呵を切って。

行き先は決めていない。どこでも良かった。

姉さんたちに比較されず、嫌味や面倒事を押しつけられなければ良かった。

 

 

旅に出た感想は「楽しい」だった。

なにもかも自由だった。

欲しい服を買ったり、好きなものを食べたり、好きな所に行ったり、自分の好きなように時間を使える。

とても楽しかった。

 

 

・・・野宿には慣れず、毎日お風呂に入れ訳でもなく、ご飯が缶詰だけのときもあったが。

とにかく楽しかった。

 

 

それでも同じ所に長居するのではなく少しずつ場所を変えて・・・ハナダシティよりも遠くの場所へ行った。

姉さんたちの居る所から遠ざかりたかったのかもしれない。

自転車に乗って好きな所で好きなように時間を使える。

とても楽しかった。

 

 

だからこそ油断・・・いや、単に浮かれていた。

そして知らなかったのだ。

旅は楽しいことだけでなく、恐ろしく危険なこともあるのだと・・・。

 

 

 

3番道路を抜けてトキワシティで軽く買い物をし、トキワの森へ向かう。

旅に慣れ始め、そろそろポケモントレーナーの本分、ポケモンをゲットしようと思ったからだ。

ここまで来るのにアタシの欲しいポケモン、水タイプのポケモンを見かけることもなかった。

そしてトキワの森に入ること数十分。

水タイプのポケモンが好みそうな絶好の水辺を見つけた。

歓喜しながらも急いでバッグから道具を取り出す。

使い込まれた「つりざお」とルアー・・・「カスミちゃんスペシャル」。

これで釣れぬものなし。

 

 

釣りを始めること数分。

今だつりざおに当たりはない。

釣りをすればこういうこともあるのだ。こういうときはひたすら待つ。

正直じっと待つのは苦手だが大好きな水ポケモンのためにひたすら待つ。

 

 

 

 

ハッと顔を上げれば夕日が出ていた。

当たりの景色がオレンジ色に染まっている。

随分と根気強くじっとしていたようだ。

竿に当たりはない。今日はぼうずだった。

こんな日もあるかとため息一つ。つりざおを上げルアーを回収。

つりざおをカバンにしまう。

 

今日はニビシティのポケモンセンターで泊まろう。

近くのポケモンセンターでお風呂やご飯が食べれるのにわざわざ野宿する必要はない。

木に立てかけていた自転車へ向かい、気付いた。

 

・・・立てかけていた自転車がない。

 

(まさか盗られた!?)

 

そんな慌てふためくアタシに妙な音が聞こえた。

一つではない複数の、背筋が震えるいやな音が。

恐る恐るゆっくりと振り返る。

見たくない・・・そう否定しながらも確認しなければ気になってしょうがない。

 

 

ゆっくりと振り返り、そこにいたものを見てアタシは、「こおり」ついた。

 

 

 

・・・3匹の「スピアー」がそこにいた。

 

 

悲鳴を上げる前に「こおり」ついて硬直したアタシに、スピアーの『いとをはく』。

3匹からの『いとをはく』でぐるぐる巻きにされたアタシをそのまま連行。

スピアーの行きついた先は虫ポケモンの巣、スピアーだけでなく「コクーン」や「ビードル」の巣だった。

(あ・・・ぼろぼろの自転車がある)

おそらく私と同じくここに連行されたのだろう。

所々かじられたような跡がありタイヤもパンクしていた。

 

 

それらを理解し、ようやく「こおり」状態から回復したアタシ。

同時によみがえる背筋の悪寒。込み上げてきた心の叫びを無意識に発していた。

 

 

 

 

「いや~~~虫はいや~~~~~~~!!!!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

(・・・どうしよう!?どうしよう!?どうしよう!?)

 

叫んだ瞬間、一斉にこちらを向いた虫ポケモンを刺激しないよう慌てて口を噤む。

これ以上刺激すればどうなるかわからない。

 

(・・・どうしよう、もう夕暮れなのに。こんな時間に他のトレーナーなんて・・・)

 

辺りは暗くなり始めている。

こんな時間にこの辺りを通る他のトレーナーなんていないと思う。

アタシだってそろそろポケモンセンターに行こうと思ったのだ。

他のトレーナーだってそうだろう。

つまり助けを期待できない。

 

 

(だからって、どうしろっていうのよ!?)

 

 

通りがかってくれる人は期待できない。

近くにいたとしても大声を出せば虫ポケモンが反応する。

かといってこのままジッとしていれば、

 

 

(あの自転車と・・・同じ末路に・・・)

 

 

刺激しないようゆっくりとぼろぼろの自転車に視線を向ける。

パンクしているタイヤ、かじられた跡があるハンドル、穴があいているカゴ。

この中であんなことをするのは「ビードル」だろう。

つまり私にも「ビードル」が這い寄り、かじられる。

 

 

(・・・死には・・・しない、わよね・・・)

 

 

自分で思ってて自信がない。

そもそも「ビードル」に這い寄られる時点で完全にアウトだ。

精神が保てそうにない

 

けれど打開策がない。

手持ちのポケモンはカバンに入ってるが、こうも縛られている状態では両手が使えない。

 

 

(・・・だれも助けにきてくれない)

 

 

だんだんと恐怖で竦んでくる。

楽しかった旅を思い出して気を紛らわそうとしても、

 

(・・・だめだ。・・・そういえばアタシ、旅に出てから一人だった)

 

ジムを飛び出してから一人だったことに気づく。

あの居心地が悪いハナダシティにも口うるさくも姉さん達がいつも一緒にいたことを思い出す。

・・・さびしいなんて今まで思ったこともなかったことに気付いた。

 

 

横暴でわがままな姉さんたちに会いたい。

さびしい思いをしなくて済むから、姉さんたちに会いたい。

 

 

(・・・こんなことになるなら、旅なんて・・・)

 

 

だんだんと涙ぐんできたアタシに、

 

 

 

 

 

「ニドラン! 『たいあたり』!!」

 

 

 

 

 

男の子の声が聞こえた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

(だれかいるの!?)

 

湧き上がる期待感で涙腺が緩んでくる。

 

「だれかいるの!お願い助けて!」

 

思わず声を出す。

周囲のスピアーの目を気にする暇なんてない。

そんなアタシの目に映ったのは1匹のポケモンが木に『たいあたり』をしていた。

 

大きく揺さぶられる木々。

いきなりの振動で驚いたのか次々と落ちてくる「ビードル」。

振動で糸が切れ地面に転がる「コクーン」。

そして「ビードル」と「コクーン」を保護しようと慌てる「スピアー」。

 

私の周りにいた虫ポケモンが遠ざかっている。

 

 

「おい、君!走れる・・・訳ないよな。担ぐぞ!」

「え、ちょっ!?」

 

 

いきなり私の前に現れた男の子。

年は、アタシと同じぐらい。

その子がアタシの体をつかむと一気に引っ張る。

アタシを吊るしてた糸を引きちぎった。

そして、アタシを荷物のように肩に担いだ。

 

 

「ちょっと待ってよ!なんでこんな格好!?先に糸ほどきなさいよ!」

「そんな時間無いし、こっちの方が速く走れるんだよ。両手ふさがらないし。戻れ、ニドラン!」

 

 

ポケモンを戻し、アタシを担いだこの子。

ものすごい速さで一気に巣の外へ駆けだした。

 

 

「悪いけどお姫様だっこのご所望は今度にしてくれ!」

「!?・・・だれもそんなもの所望してないわよ!っていうか降ろして!」

「君が俺よりも速く走れるなら降ろすよ!って、もう来たか!」

 

 

そんな言葉に気付きアタシは顔を青ざめただろう。

なにせ数十匹のスピアーが一斉にこちらへ向かってくるのだから。

 

 

「どうするのよ!?このままじゃ追いつかれるわよ!」

「わかってる!・・・直線なら負けないけど足場が・・・っと、こうだと思うように走れないな!」

 

 

私たちが走っている(走っているのはこの子だけど)足場はひどく乱雑な道だ。

というよりも道ではない。ひたすら森の中を走っている。

おかげで凸凹した道であったり、むき出しの木の根っこのおかげで飛んだり跳ねたりしている。

対して向こうは飛んでいる。道の良し悪しなんて関係ない。

 

 

「うお!?『どくばり』飛んできた!・・・なあ、君。俺は走るのに集中するから盾になってくんない?」

「はぁ!?いやよ!っていうか助けてくれるんじゃないの!?」

「いや、そのつもりだったけど・・・。いざ命の危険に晒されるとやっぱ自分が大事とか思っちゃったり」

「なによそれ!っていうかアンタ、なんか余裕じゃないの!?」

「旅に出る前から命の危険があったからね・・・っと。けど流石に毒の耐性の訓練なんて・・・・・」

「・・・なによ、いきなり黙って。ってまた『どくばり』飛んできたわよ!聞いてる!」

「・・・いや流石に姉さんでもそんなことは・・・・・やばい、してそうだな」

「なによさっきからぶつぶつと」

「・・・いや、漫画みたいに実は幼い頃から食事に少しずつ毒を入れて耐性をつけてたってオチがありそうな」

「・・・言ってる意味はわかるけど、そんな事する人なんていないでしょ、って数が増えてきてるじゃない!」

「いや、姉さんならやりかねん!・・・なぁ君、ポケモン図鑑で俺の特性とか見れないか。『めんえき』とかだったらどうしよう・・・」

「いいから!速く走りなさいよ!!」

 

 

なんで命の危険に晒されてる状況でこんなアホみたいな会話をしてるんだろうか。

アタシたちのアホみたいな会話なんてお構いなしにスピアーが少しずつ距離を縮めてくる。

 

 

「どうすんのよ!このままじゃ逃げきれないわよ!」

「この先に開けた場所がある!そこを超えた先の川に飛び込むぞ!」

「開けた場所って!囲まれちゃうじゃない!」

「平坦な道なら負けないよ!それに、下手な場所で打って山火事になったら困る!」

「山火事ってなに!?」

「行けばわかる。っていうか着いた!・・・ヒトカゲ!」

 

 

男の子の声の先に赤く灯る火が見える。

たき火・・・ではない。動いてる。

この子がさっきいった通り、ポケモンの「ヒトカゲ」だ。

アタシたちを待っていたかのようにそこにたたずんでいた。

そしてヒトカゲとすれ違い、走り抜く。

 

 

「ヒトカゲ!『ひのこ』!!狙いをつける必要はない、まき散らせ!」

「カゲ!」

 

この子の指示に従い返事をするヒトカゲ。

この子の手持ちのようだ。

 

ヒトカゲから出される『ひのこ』。

辺りかまわず『ひのこ』がまき散らされる。

この子の言った山火事の意味がわかった。

 

いきなりの炎タイプの攻撃に驚き速度を緩めたスピアーたち。

効果はバツグンだ。

そして狙いをつけずに適当に吐き出されているためスピアーたちも戸惑っているようだ。

とはいえ時間を稼いだのは数十秒ぐらいだ。

距離を取り態勢を整え始め、一斉にヒトカゲに襲いかかろうとする。

 

「よくやった、戻れヒトカゲ!」

 

ヒトカゲの稼いだ数十秒の間にかなりの距離を稼いだアタシたち。

走りながら後ろを向かず片手でモンスターボールにポケモンを戻す様子を見て場違いにも器用だなと思った。

 

「このまま川に飛び込むぞ。長いこと潜るから息吸っとけよ!」

「潜るって言ったって・・・スピアーが待ち構えてたらどうするのよ?」

「別に飛び込んで通りすぎるのを待つわけじゃない。そのまま下流まで泳ぐぞ」

「下流まで?」

「ここから下流に向かえばオニスズメのなわばりだ。虫ポケモンは寄ってこない。そこまで泳ぎきる」

「って言ってもアタシ糸で泳げないわよ!?」

「俺が泳ぐ!君はひたすら耐えてりゃいい」

「そんなこといったって・・・」

「川が見えてきたぞ。息を吸って、じっとしていてくれよ」

「・・・わかったわよ。・・・離さないでよね」

「途中離れて溺死したら俺の枕元に立っていいよ」

「離さないっていいなさいよ!」

 

 

そんなやりとりをしながら深呼吸をして心臓を落ち着かせる。

不安ではあるが、この方法でしか逃げきれないとも思う。

距離を取ったとはいえ少し離れた所からスピアーの集団がこちらへ向かってくるのが見える。

・・・覚悟を決めよう。

 

「行くぞ!・・・っ!」

「・・・っ!」

 

思ったよりも流れの速い川に身を投じたアタシたち。

アタシの体をしっかりと抱きしめてくれてる、思ったよりも力強い腕を感じながら、

 

「・・・っ!・・・っ!」

 

私の意識は真っ暗になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶはっ!!ゲホッ!!ゲホッ!」

 

 

 

景色はすっかり暗くなっていた。

あのスピアーとかなりの時間鬼ごっこをしていたらしい。

 

 

「・・・・・はぁ~~・・・・ゲホッ!流石に2分近く泳ぐのは初めてだ。・・・よっと」

 

 

抱きかかえていた女の子を地面に横たえる。意識がないようだ。

無理もないと思う。

 

「まさか必要ないと思ってた潜水訓練が役に立つ日が来るとは・・・」

 

姉さんの訓練(強制執行)で学んだ潜水泳法。

正直なんの意味があるのかと何度問いかけそうになったことか。

 

「って回想に浸ってる暇はないな。イーブイ、いるか!」

「・・・・・・・・・ブイ!ブイ!」

 

茂みが揺れイーブイが顔を覗かせた。

予めここで荷物を置き、番を頼んでいた。

 

 

「イーブイ、枯れ木を集めてきてくれ。それと辺りに野生のポケモンがいたら『すなかけ』して遠ざけといて」

「ブイ!」

「さてと・・・」

 

 

横たえた女の子を見やる。

女の子のまな板・・・・・胸板を確認し、呼吸を確認する。

素人目だが規則正しい呼吸をしていると思う。

とはいえ素人目の判断は危ういだろう。

2分近くも潜水したのだ。水を大量に飲んだ可能性もある。

念のため姉さんから教わった救命法を試した方がいいかもしれない。

 

「えっと心臓マッサージで押す場所は、胸の真ん中で・・・」

 

ここでマウスtoコラッタなんて甘酸っぱい展開なんて起こさない。

溺水した人に何よりも優先するのは心臓マッサージだ。

人口呼吸は熟練した人がやって効果を発揮するのだ。

素人は人口呼吸よりも心臓マッサージを行い、意識を回復させることのほうが確実だ。

 

「手の甲に手のひらを合わせて、手首に近い位置で強く押さえて・・・」

 

テンポは1分間に100回・・・だが、いちいち正確に数えられる訳ない。

出来るだけ早く、リズミカルに押すことが肝要。

 

「意識を起こすために声を掛けながら・・・」

 

あとは意識を覚醒させるために声をかけながら、心臓マッサージ!

 

 

 

 

 

 

「へそ出しルック!!へそ出しルック!!へそ出しルック!!」

 

 

 

 

 

 

ひたすら声を掛けて心臓マッサージ!

 

「起きろ、へそ出しルック!目を覚ませ、へそ出しルック!」

 

心臓をリズミカルに押しながら強く押し続ける!

 

「風邪引くぞ、へそ出しルック!腹壊すぞ、へそ出しルック!」

 

何度も何度も意識が回復するまで、回復しなければ最終手段のマウスtoコラッタをしなければならない。

 

「なんでへそ出しルック!?子供なのにへそ出しルック!?」

 

深く考えずとりあえず言葉を発する。ひたすらに。

 

「へそ出しルック!!へそ出しルック!!へそ出しルック!!」

「・・・っ」

 

「へそ出しルック!!へそ出しルック!!へそ出しルック!!」

「・・・っ!」

 

「へそ出しルック!!へそ出しルック!!へそ出・・・ゴフッ!!??」

 

突如放たれた右ストレートがボディにめり込む。

くずれ落ち蹲ながらふと思い出す、あのピカチュウ。

あの時のピカチュウの気持ちが少しわかったかも。

 

「ゲホッ!!ゲホッ!!だれが・・・はぁ、はぁ・・・・・へそ出しっ・・・!!」

 

怒ってる・・・なんとなくそんな気がする。

そして今までの鬱憤をはらすような怒号が響き渡った。

 

「アタシは・・・・・・『カスミ』よ!!!!」

 

 

 




書いてる途中「え~りん!え~りん!え~りん」と脳内で流れてました。


颯爽と現れ、颯爽と救出し、颯爽とフラグを建てる・・・そんなことは主人公(笑)に出来ません。
最初の方を読んでシリアスの話だと思った読者様方。
残念ですがこのssはシリアス1:ほのぼの9(もしくはギャグ)で出来ているつもりです。
悪しからずご了承ください。

では次もあまり更新速度は期待できませんがよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 9話


これくらいの文字数が自分にはちょうどいいぐらいかなぁ。
正直文字数が8000以上のssを出しまくってる他の作者様方パネェっす。

今更ながら最初のジムに来るまでえらく長かったなぁと反省。
正直この世界観と主人公(笑)とカスミの話を持ってくるためにここまで長々としたんですけど。
ジム戦終わったら色々はしょってトントン拍子で進みたいですね。

・・・エリカどうしようorz


ちなみにssの書式?書き方?を少し変えてみました。
こっちの方が読みやすいか実際に投稿してテストも兼ねてます。
読みにくいようなら前の書き方に戻すつもりです。

では暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

「っていうわけで、今からニビジムに挑戦するつもりだよ」

『なにが「っていうわけ」なのかわかりませんけど、とりあえず頑張ってください』

 

こうしてエリカと話をするのも、旅に出る2カ月前に電話で話した以来だ。

その後は経営している香水の店が忙しくなってくるということでお互い連絡を取らなかった。

 

「タマムシシティまで遠いけどバッジ集めていくつもりだから必ずエリカのジムに寄るよ」

『はい、楽しみにお待ちしております。そのときは私も手加減いたしません。

・・・あの、ところでシゲルさん?』」

「ん? なに?」

『シゲルさんは今・・・お一人で旅をなさってるので?』

「?・・・ニビシティまではそうだったけど」

『そうですか、お一人で旅を! ・・・・・ニビシティまで?』

「いや、別に一緒に旅をしているわけじゃないんだけど、

一昨日ちょっとしたハプニングとその被害にあった女の子と知り合ってさ」

『・・・女・・・の子・・・ですか?』

「たしか年は俺と同じだっ(ちょっとシゲル!いつまで電話してんのよ!)

・・・ごめん、ちょっとせっかちな子だからそろそろ電話切るよ」

『・・・え、シゲルさん!?ちょっと』

「次の町のハナダシティに着いたらちゃんと連絡するからさ。それじゃ」

『いえ、それよりも!一緒にいる方は一体どんな(ブツッ)』

 

切る時なんか言ってたな。次に連絡したときにでも謝っとこ。

受話器を置き、一昨日出会った『せっかち』な子に向かい、溜息一つ。

 

「カスミ。電話くらいゆっくりさせてくれよ」

「アンタ今日ジム戦でしょ! なにのんびりしてるのよ!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「それで、どうするつもりなのよ」

「・・・・・なにが?」

「なにがじゃないわよ、ジム戦よ。はっきりいって勝ち目なさそうじゃない」

 

 

一昨日出会った「へそ出しルック」の子ことカスミと一緒にポケモンセンターで朝食。

メニューは簡素なパンとスープとポッポの卵のスクランブルエッグ(無精卵)。

ポケモンを食ってることなど今さら気にしない。ここでは当たり前なのだ。

対面に座ってるカスミもポッポの卵を使っただろうオムライスを食している。

・・・朝から重くないか。

 

 

「勝ち目のない戦いはするつもりないよ。相手から挑まれても断って逃げるさ」

「・・・かっこ悪いとか思わないのアンタ?」

「まったく」

 

 

人それを「へたれ」という。

 

 

「それよりイーブイの尻尾弄りながら食事は行儀悪いぞ。イーブイもいやそうな顔してるし」

「・・・・・ブィ」

「だってこの子かわいいんだもの。尻尾もすごいふさふさしてさわり心地いいし」

「そりゃ暇なときは手入れしてるからな。ケチャップ飛ばすなよ」

「・・・手入れ? 誰が?」

「ここらへんに美容院なんてないだろ。俺の手持ちなんだから、俺がやってるよ」

「・・・アンタ、そんなこと出来るの!?」

「・・・俺が手入れするのがそんなに意外か」

 

 

イーブイが孵化し、家に連れて帰ってきたときから姉さんに教わった。

まぁ、正直俺も姉さんからは肉体的訓練しか教わらないと思ってたけど。

毛の手入れや切り方、爪の磨き方など多義に渡り教わった。

・・・風船相手にカミソリの練習させられた時は本当にトレーナー訓練か心配したが。

ちなみにイーブイには主に毛の手入れ、ヒトカゲとニドランには爪の手入れをしている。

 

 

「じゃなくて、ジム戦よ!ジム戦! 本気で大丈夫なのアンタ!」

「さっきも言ったけど勝ち目のない戦いはしないよ。勝つ見込みがあるなら挑むさ」

「そんなこといってアンタの手持ちってこの前見た3匹でしょ? ほとんど相性が悪いじゃない」

「攻撃面じゃまだ不安があったりするけど、防御面はそこまで問題ないよ。用は戦い方次第さ」

「戦い方次第って・・・。何よ余裕そうな顔して・・・。

わかったわよ、アタシからはもう何も言わないわよ。せいぜいジム戦で後悔しなさい!」

 

 

そういって残り半分のオムライスを掻き込みだす。

本人なりの心配を無碍にされたと思ったのだろうか。

余計なフォローを入れるとさらに不機嫌になりそうだ。

一昨日から昨日の間に学んだ彼女の性格からして。

こういう時は熱が冷めるまでそっとしておくのがベターな選択だろう。

飯も食い終わったことだし。

 

 

「それじゃ俺はジム戦に行ってくるよ。イーブイ行くぞ」

「ブイ!」

 

 

ようやく解放されると喜んでいるイーブイをモンスターボールに戻す。

普段はモンスターボール入れず肩に乗せて一緒に行動しているが、これからジム戦だ。

手持ちのポケモンを外に出せば相手にこちらの手持ちにイーブイがいる、と知られるので面白くない。

相手にこちらの手持ちをばらすようなものだ。

トレーナーを相手にするときはボールに入れ悟られないようにしている。

 

 

「じゃ、俺はこれで」

「!? ちょっと待ちなさいよ! アタシまだオムライス残ってるのよ!」

「?・・・え~と、ごゆっくりどうぞ」

「じゃなくて! ・・・待ってくれたっていいじゃない」

「?・・・・・なんで?」

「なんでじゃないわよ! アタシもジムに行くわよ!」

「え・・・。あ~、カスミもジムに挑戦するんだ。だったら先に挑む?」

「違うわよ! アンタのジム戦見るって言ってんのよ!」

「え、応援してくれるんだ」

「な!?・・・そんなわけないでしょ。アンタの負けっぷりを見に行くだけよ!」

「やっぱ俺ジムに行くわ」

「待てって言ってるでしょうが!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

そんな周りのトレーナー方にご迷惑を掛ける(音量)やりとりを終え、現在ニビジムの門の前。

結局カスミが食い終わるまで待ち、俺のジム戦を観戦しに付いてきた。

 

 

「それじゃ、行くか」

「・・・うっぷ」

「・・・あんなに急いで掻き込んだらそうなるって」

「・・・うるさい」

 

 

締まらない面子だった。

 

 

「それじゃ、失礼しま~す」

 

 

やたら重々しい外見の割にあっさりと開く門を通る。

中は真っ暗だった。

 

 

「すいませ~ん。ジムに挑戦しに来ました~。ジムリーダー居ますか~」

「・・・あんた緊張感ないわね」

「うるさいよ」

 

 

そんなやりとりをしながらジムに入り、奥へ進むと、

 

 

「君が挑戦者か?」

やや低めの声と共に照明が付いた。

 

 

「うお、まぶしっ。え~とニビジムのジムリーダーで?」

「そうだ。俺がジムリーダーのタケシだ。どっちがこのジムの挑戦者かな?」

「あ、俺です。俺はマサラタウンのシゲルって言います」

「そうか、では早速だがジム戦を始めよう(パチッ)」

「へ?・・・うおっ」

 

 

いきなり始めようと言って指を鳴らすと部屋の両面から岩の何かが迫ってきた。

 

 

「って、走るぞカスミ!」

「え・・・ちょっと!?」

 

 

カスミの手を取りジムの入口まで走る。

っていうかなんでわざわざ大仕掛けのジムにしてるんだ。

・・・する意味あるのかこれ。

 

十分距離を取り振り返ると両面から出た岩の何かがくっつく。

そして凸凹の激しい岩のステージが出来ていた。

・・・最初からこのままでいいじゃないか。

 

 

「さて、ジム戦を始めようか。審判、就いてくれ!」

「使用ポケモンは2体! ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます!

先に2体のポケモンが戦闘不能になった方が負けとなります!」

「では始めようか、俺のポケモンは『すいません!ちょっといいですか!』・・・どうした?」

 

「おい、カスミ大丈夫か!?エチケット袋いるか!?」

「大・・・丈・・・・・・うっぷ」

「無理すんなよ! あんなにオムライスを掻き込むからそうなるんだよ!

すいません!女子トイレってどっちですか!?」

 

「・・・あっちの奥の突き当たりに」

 

「だとよカスミ! ほら背中さするだけじゃどうしようもないからトイレ行けって!」

「大・・・丈・・・夫・・・。あんま、・・・動かさないで・・・」

「すいません、椅子とか座るとこないですか!」

 

「・・・そこに観客席が」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「・・・すいません、お騒がせして」

「・・・いや、こちらこそすまなかった。今度からジムのアトラクションは控えるよ」

 

 

全く締まらない雰囲気がジムに蔓延していた。

・・・どうしてこうなった。

 

 

「え~と、ジム戦を始めてもいいかな?」

「あ、はい。お願いします」

 

 

ゴホンっと場の空気を払拭させるためか咳を一つし、

 

「それじゃ、俺のポケモンはこいつだ! 行け『イシツブテ』!」

 

「一番手はお前だ『ニドラン』!」

 

「・・・それでは試合、始め!!」

 

無理やり空気をシリアスにして俺の初めてのジム戦が始まった。

 

 





アニメでは審判いませんでしたがこのssでは登場させました。
実際チャンピオンリーグのときにはいましたし、
やっぱ判定をとる人はいた方がいいかなと思いましたので。

さて次はいよいよポケモンバトルの話でしたが・・・遂に来てしまった。
正直作者の文章力でバトル描写は難しいです。
アニメのように「かわせ」の指示は主人公(笑)は使いませんが、
かといって無双すぎるのはなぁと思っています。

一応ゲーム設定で使える技のみで演出するつもりです。
設定に沿ってある程度制限しとかないとなんでもありになりますし。

アニメ設定とゲーム設定を上手に使えるスキルと表現力がほしい・・・。

相変わらず更新速度は期待出来ませんが次話をお待ちください。ノシ


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ノーマルマサラ人 10話



バトル描写・・・難しいですね。
わかってましたけど、自分の表現力の限界にorz
いっそバトルパートをカットするかと思いましたが、流石に全部カットするのはどうかなと踏みとどまりました。

まぁ、今後は色々とカットするつもりですが。
とりあえずニビジムでのバトル描写は最後まで書き上げます。



それと10話までこのssをお読みくださった読者様方。
UAや被お気に入りを見てテンション上げてました。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
10話というキリのいい所なので改めてお礼申し上げます。
まだ先が長くなりそうなssですが今後ともよろしくお願いします。

それでは暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

 

 

 

「・・・それでは試合、始め!!」

 

 

「ニドラン、『にどげり』!」

「イシツブテ、『たいあたり』!」

 

 

 審判の開始の合図が耳に届くと同時に、すぐさま予め決めていた指示を出す。

お互いのトレーナーの指示に従い駆けだすニドランとこちらに迫るイシツブテ。

互いの相手の間合いが自らの攻撃範囲内に入ると『わざ』の態勢に入る。

 

 

 腕を曲げたまま頭をやや下げニドランに迫るイシツブテ。

片や体を反転させて足を向け、イシツブテ向かって跳躍するニドラン。

2匹の間合いが一気に近づき、

 

 

「ニド!!」 「!!?」

 

 

 結果は『たいあたり』をもらう前に『にどげり』が決まり、後方に吹き飛ぶイシツブテ。

『たいあたり』は不発に終わったようだ。

 

 

「イシツブテ! もういちど『たいあたり』だ!」

「少々もらってもかまわない! ニドラン!『にどげり』!」

 

 

 技を決め着地し、態勢を整えているニドランに再びイシツブテが迫ってくる。

先ほどと同じ態勢からの『たいあたり』。イシツブテの攻撃が決まり後方に飛ばされるニドラン。

それでも爪を地面に立てて踏ん張りブレーキを掛ける。

そして指示通りすぐさまイシツブテに向かって再び駆け出し、跳躍。

 

 

「ニド!!」 「!!??」

 

 

 

「イシツブテ、戦闘不能! ニドランの勝ち!」

「戻れ、イシツブテ!」

 

 

 審判のジャッジを聞きイシツブテをモンスターボールに戻すジムリーダー。

ニドランを優先的にレベルを上げた甲斐があった。

タイプが一致してないとはいえ、効果がバツグンの二度の格闘タイプは耐えれなかったようだ。

 

 

 予想通りの試合展開と自分の記憶に内心安堵する。

このジム戦、タイプの相性を考えればこちらの手持ちのポケモンでは分が悪い。

ニドランに格闘タイプの技を覚えさせてはいるがゴリ押しではニドランに勝ち目がない。

・・・というよりもニドランの『にどげり』は相手によって命中率がすこぶる悪かったりする。

 

 

「命中率とか関係ないもんなぁ・・・」

つぶやくようにニドランの足に目をやって愚痴てみる。

 

 

 そうなるとこちらの取れるアドバンテージは自分の記憶。相手の手持ちのポケモンだ。

相手の手持ちがわからないのはここでは当然だ。いつもモンスターボールに入れているのだから。

けれども俺には記憶がある。

 

 

 もちろん全てが記憶通りというわけではないだろう。

むしろ相手が違うポケモンを出して来たら、作戦が台無しになり負けてしまう。

あいまいな記憶を探ってるため不安要素が多い。

けれでも作戦通りに行けば、確実とは言えないが高い勝率が見込める。

脳内シミュレーションで何度も試行錯誤したのだから。

 

 

 あと一体の相手の手持ちを倒せばこちらの勝ちだ。

こちらは『たいあたり』を一発もらったニドラン。

ここまでは好調だ。

 

 

「岩タイプのポケモン相手に毒タイプのポケモンを出した時は

駆け出しのトレーナーかと思ったが、ちゃんと対策はしてあるようだな」

「むしろこのためにこの子をゲットしてレベルを上げてましたからね」

「なるほど。新人トレーナーってわけじゃなさそうだな。なら、行け『イワーク』!」

 

 

 ジムリーダーが繰り出したのは平均8.8m・重さ210キロの巨体を持つ『イワーク』。

最初のイシツブテで予想していたがやはりゲーム通りの手持ちのようだ。

・・・これなら作戦通りでいけるかもしれない。

 

 

「それでは試合、始め!!」

 

 

「ニドラン! 『なきごえ』!」

「イワーク! 『いわおとし』!」

 

 

 辺りに響く『なきごえ』がイワークの「こうげき」を下げる。

自身の変化を感じ取ったのか顔を歪めながら尻尾を振り上げるイワーク。

次いでイワークの『いわおとし』が決まりダメージを受けるニドラン。

・・・よく潰れなかったな、お前。

 

 

「ニドラン、距離を取れ! 『なきごえ』だ!」

「イワーク、接近して追いつめろ! 『たいあたり』!」

 

 

 ・・・イワーク相手にゴリ押しはしない。出来ない。

ニドランの『にどげり』はイワークにまず当たらないからだ。

 

 

「ニドラン! 防御に徹しろ、『なきごえ』!」

「イワーク! 接近して『いわおとし』!」

 

 

 ひたすら『なきごえ』でイワークのこうげきを削ぎ落とす。

おかげで相手の巨体から放たれるこうげきは次々と当たるが、まだ闘えそうだ。

 

 

「アンタねぇ! さっきからなにやって!? ・・・・・うっぷ・・」

「・・・カスミ、いきなり叫んですぐさまカミングアウトするのはどうかと思う。

・・・っていうかおとなしくしてろよ」

 

 

「うっぷ」って言うな。こっちは真面目にバトルしてるのに脱力するわ。

 

 

「・・・うるさい。・・・アンタ、さっきから、なにやってんのよ・・・」

「・・・無理に声出そうとするなよ。そこでいい子にして見てろって」

「子供あつか!? ・・ぅぅ・・・・・扱いするんじゃ・・・ないわよ」

「だから! 無理して叫ぼうとするなよ! 変な空気になって脱力するんだよ!!」

 

 審判もジムリーダーもおかしくなり始めた空気を呼んでバトルを一時停止してるし。

申し訳なさで俺に精神的ダメージがボディーブローのようにじわじわと来てる。

 

 

「・・・すいません、再開してもらえますか」

「・・・まぁ、君がいいなら」

 

「・・・それでは試合、始め!!」

 

 

 本日二度目のおかしくなった空気を無理やりシリアスにしてバトル再開。

 

 

 カスミの言いたいこともわからなくはない。

岩タイプに効果がバツグンの『にどげり』を持ってるのに、

なぜ使わないのかということだろう。

 

 

 ニドランが『にどげり』を覚えるまでは俺もそうしようと思ったし、

そのためにニドランをゲットしたのだが、・・・誤算があった。

 

 

 ・・・それは「ニドラン」と「イワーク」の『体長』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それで私に電話してきたわけ?」

『はい、ぜひともお願いします!!』

「・・・・・正直、あまり気乗りしないわね」

 

 

 珍しく慌てていた様子の友人からの電話に少々あきれていた。

電話を取った直後に聞こえてきた焦燥感に満ちた声。

なにかあったのか!? と本気で心配した数分前の自分を振り返り溜息をつく。

 

 

「・・・私、出歯亀って好きじゃないんだけど」

 

むしろ好きな人がいるのだろうか。

 

『そこをなんとか! ぜひとも今のシゲルさんの様子を覗き見してください!

エスパーのナツメさんならば出来るはずです!』

 

 

 言い繕う余裕もないのかはっきりと「覗き見」なんて言ってくる。

犯罪行為だと理解しているのだろうか。

 

 

「・・・エリカ。 私、自分の能力をそういうことのために使ったことないんだけど」

 

 

 疑う余地もなく犯罪行為だ。おそらくバレないだろうが進んでやるようなことじゃない。

数少ない友人のプライベートに興味がないわけじゃないけれども、流石に覗き見はどうかと。

 

 

「・・・シゲルなら大丈夫でしょ。彼、まだトレーナーになったばかりの10歳よ」

『いえ! 電話越しで途中で途切れましたが、間違いなく「俺と同じ」と聞こえました!

今シゲルさんと共にされてる方は同い年なのでしょう!』

「・・・それに何か問題があるの?」

『大問題です!! 私のお店で働いている子が持っていた雑誌に書いてありました!

「自分と近い年の女性を恋愛対象に、自分よりも年下の女性を性欲対象に」と!!』

 

 

 ・・・ただの偏見だと思うんだけど。単に個人の好みの問題じゃないのだろうか。

この友人、普段は楚々とした花も恥じらう乙女なのだが、

たまにパニックになると普段からは考えられないようなアグレッシブなことを仕出かす。

こと「彼」のことになるとなおさらだ。

 

・・・というか乙女が大声で性欲とか言うな。

 

 

「・・・よくあるゴシップ誌のネタを鵜のみにするのもどうかと思うのだけれども。

はぁ・・・、わかったわ。今日はジム戦の予約が入ってるから、また今度ね」

『はい! 急なお願いで申し訳ありませんがぜひともお願いします!! 

・・・あら、すいません。こちらもそろそろジムの挑戦者の方が来られるので、これで』

「ええ、・・・そっちも頑張ってね。それじゃ」

『はい、ナツメさんも。それでは失礼します(ブツッ)』

 

 

 ふぅ、会話を終え軽く溜息。

友人との会話は好きだが、内容がアレなだけに少し疲れたのかもしれない。

『元引きこもり』エスパー少女の私からすればそれほど難易度の高い頼みではないけれど。

・・・やっぱり気乗りしないわね。

 

 

 とりあえず今日の予定のジム戦を終わらせてからにしよう。

少し重い足取りで部屋を出て家の扉を開けてから、

おそらく居間とキッチンで仲睦ましく居るだろう二人に声を掛ける。

 

 

「・・・お父さん! お母さん! ジムに行ってくるわね!」

 

 

 

 

 







後半部分書いてるとやっぱり日常的な話は書きやすいなぁ、と思いましたね。
キャラクターを動かすことが楽しいです。

新しく登場したキャラクター「ナツメ」ですが、
今までの話の中でも、けっこうキャラ崩壊が大きいキャラにしています。

というよりもアニメのキャラクターの性格というか個性というか・・・。
正直、表現しにくいというか、個性的すぎるというか。
・・・アニメのあの話はかなりサイコホラーでしたし。

ということでゲームのようなおとなしい性格+アニメ設定改変を行いました。
アニメの引きこもりで家族を人形にしたルートは回避しております。
結局のところ引きこもり気味が原因みたいでしたし。

シゲルとエリカという友人のおかげで幾分年相応みたいな感じで。


まぁ、この人。BW2じゃポケウッドで女優になってたりしてましたが・・・。
HG(ハートゴールド)やSS(ソウルシルバー)で髪の毛も大きく様変わりしてましたし。
ある意味原作ゲームで1番キャラ崩壊してるキャラだったり。


それでは毎度のことながら更新速度にはあまり期待できませんが、
次回もよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 11話 + 登場人物紹介

ニビジム後編ってとこですかね。シリアスはやはり難しい。

シリアスだけでは物足りないと思い登場人物紹介も入れました。
ここでほのぼの分を補強しましたぜ。


では暇つぶしにでもどうぞ。


 

 ポケモンにも色々と個体差がある。色違いが最たる例だ。

ポケモン図鑑で表示されるのは、そのポケモンの平均の値だ。

 

 

ニドラン♀―――たかさ(全長)0.4m(40cm)

 

イワーク ―――たかさ(全長)8.8m(880cm)

 

 

 

ニドラン♀の足の長さ(爪含む)をおよそ15cmと推定。

 

イワークの尻尾の長さ(全長の半分)をおよそ4.4mと推定。

 

 

ニドランの『にどげり』を当てるには最低でも約15cm接近しなければならない。

こちらから接近するにはイワークの約4.4mの尻尾をかわさなければならない。

 

 

 

・・・・・・無理だ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 気付いたのはニドランが『にどげり』を覚えた日。

覚えたての技を見たくて野生のポッポを相手に『にどげり』を試した。

 

 

 指示に従いポッポに向かって駆け出すニドラン。

危険を察知したのか羽ばたかせ飛び上がるポッポ。

飛び上がったポッポを追うように跳躍するニドラン。

そして体を反転させ両足を曲げ相手に、ビシィッ! っと足を15cmほど伸ばした。

 

 

 

 

ビシィッ!・・・・・スカァッッッ!!

 

届くわけなかった。

 

 

 

 

 飛翔しているポッポに跳躍したとはいえ15cm以上接近出来た訳ではない。

むしろ飛んでる相手に跳んで届くことなどまず無理だろう。

一部のジャンプ力があるポケモンは例外だろうが四足歩行で主に陸上を走り回る生活を

しているニドラン♀にそんなことは期待出来ない。

 

 

 思い返せば「なにを当たり前のことを」と愚痴りたくなる。

常識的に考えればあれだけ距離があって、ニドランの体長や足の長さなどを見れば、

届かないのは一目瞭然だった。

 

 

 そしてポッポの『かぜおこし』で吹き飛ばされながらもなんとか俺の指示を果たそうと、

「届け、届け!」と必死の顔でつま先を伸ばし続けるニドランを見て罪悪感で一杯になった。

 

・・・あとちょっと癒された。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「っ・・・イワーク! 『しめつける』攻撃!」

 

来たっ! っと内心で歓喜した。これを待っていた。

 

 

 3度目の『なきごえ』をもらったイワークの「こうげき」は元のステータスの5分の2にまで落ちている。

その「こうげき」の数値ではタイプ一致の『いわおとし』ですら大したダメージは与えられないだろう。

そしてニドランを倒しても俺にはまだ一体のポケモンが残っている。

相手からしてはこれ以上『なきごえ』をもらえば次のポケモンに勝てないと危惧するだろう。

たとえイワークにとって有利な相性でもこれ以上「こうげき」を落とされれば・・・と。

 

 ならば相手の取る最良の手はこちらの動き、「なきごえ」使わせずに倒すこと。

イワークの『しめつける』で相手の行動を完全に封じることが最良だと考えるだろう。

既にニドランにも十分ダメージが入っている、倒すの容易いはず。

 

 

 イワークの尻尾がニドランに巻きつき拘束を掛ける。

俺の位置からでは既にニドランが見えなくなり、イワークがさらに圧力を掛け出す。

後はニドランが戦闘不能になるまでこの拘束を続ければいいだろう。

体格や体長から見てもニドランにイワークの拘束を解くほどの筋力はない。

 

 

(・・・・・・・っ)

 

 

 イワークの『しめつける』が決まりニドランが拘束されてから

何秒経ったかわからないが、やけに時間が長く感じる。内心焦っている。

それはジムリーダーも同じなのか、緊迫した沈黙がフィールドに。

 

 

 ふと、観客席に座っているカスミに目がいった。

叫ぶと色々迷惑を掛けることを理解してか口を開けようとはしてないが、

ニドランの行方が気になっているのか真剣な目でこちらを様子を見ている。

 

 俺のジム戦なのに自分の事のように心配をしてるみたいだ。

案外、感情移入しやすいというか、情に厚い子なのかもしれない。

 

 

 そんなことを思いながら気分を落ち着けているとイワークに変化が起こった。

 

徐々にだが拘束を緩め始めている。

 

 

ニドランが戦闘不能になったのか。

審判がジャッジを下そうと目を細め、状況を把握しようとしている。

少しずつ拘束が緩んでいく、途中に、

 

 

イワークが苦悶の表情を浮かべていた。

 

 

「刺さった・・・!!」

そう確信出来た。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「ニドラン! 『にどげり』!!」

 

「っ!?」

 

 

 ここでニドランが戦闘不能になっていると思ったのだろう。

相手のジムリーダーは聞こえてきた俺の指示に驚いている。

 

 

 俺の指示が聞こえ、緩んでいた拘束からじたばたと体を動かしイワークから抜け出す。

そして眼前にはイワークの体。自身の足の長さなど関係ない距離。

 

 

「ニド!!」

 

 

すかさず『にどげり』を決めた。

 

 

 

「どうしたイワーク!?」

 

 

 効果がバツグンのダメージを受け後退したイワークに問いかけている。

そして、なぜ拘束を緩めたのか、と疑問を投げる前にイワークの様子気付く。

 

 

「・・・「どく」を受けたのか!?」

 

「よくやった! 戻れ、ニドラン!」

 

 

 特性「どくのトゲ」は体に接触すると確率で発動する、それがゲームの設定だ。

だが、この現実においてそれは確率によって発動するのではなく、接触する「場所」による。

ニドランの体のどこかにある「どくのトゲ」の場所に相手が刺さると発動するのだ。

ならばニドランの全身を覆った『しめつける』ならば確実に刺さる。

『なきごえ』を使い続ければ、「こうげき」が下がるのを嫌い『しめつける』を使うと踏んだのだ。

 

 

 相手の戸惑いに答える必要はない。

かなりのダメージを受けているニドランをすかさずボールに戻す。

ここまで頑張ってくれたのだ、「ひんし」になるまで無理をさせることはない。

あとは他の奴にまかせれば大丈夫だ。

 

 

「イーブイ! 後はまかせた!!」

 

 

 二番手に出すのはイーブイ。

『なきごえ』を受け続けたイワークとはいえ、急所にもらえば「ヒトカゲ」では落ちてしまう。

ノーマルタイプのイーブイならば耐えてくれるだろう。加えて・・・、

 

 

「試合始め!!」

 

 

「イワーク! 『しめつける』攻撃!!」

 

「『すなかけ』だ!!」

 

「っ!?」

 

 

 ある程度距離があっても当てることが出来る『すなかけ』を持っている。

『しめつける』の攻撃は命中率85と低くはないが高くもない数値だ。

しかしピカチュウの『でんきショック』すらも自身の判断でかわすこいつならば命中率85は大した数値ではない。

そして『すなかけ』でさらに命中率を落とせば『しめつける』は脅威ではない。

 

 

「イーブイ! 『すなかけ』を続けろ!」

 

「イワーク! 『いわおとし』!」

 

 

 命中率の高い『いわおとし』を選択し、イワークが攻撃してくる。

『すなかけ』を行った直後だったイーブイに当たる。

・・・が、すぐに立て直して距離を取り待機する。俺の指示を待つ態勢だ。

もはや通常の攻撃では大したダメージを与えられないほど「こうげき」は落ちている。

 

そしてニドランから受けた「どく」がイワークを確実に追いつめる。

 

 

その後もイーブイの『すなかけ』とイワークの攻撃をかわすやりとりを繰り返し、やがて、

 

 

「イワーク、戦闘不能! イーブイの勝ち!

よって、勝者! チャレンジャー・シゲル!!」

 

 

 

俺の初めてのジム戦が終わった。

 

 

 

 

◆◆◆登場人物紹介(ニビジム攻略後)◆◆◆

 

 

 

 

◆シゲル「主人公(笑)」

 

本ssの主人公。

姉による訓練というなの肉体改造によりネタになるくらいの身体能力を得た。

同時に数々のトラウマと欲しくもない身体能力(モンスターボール射殺事件)も得た。

実はイワークの事を考えた時は時速80キロを思い出し胃が痛くなったとか。

 

いまさらだがゲーム知識豊富・アニメ知識無し。

なぜカスミがハナダジムにいないのか疑問に思っている。

 

またゲーム知識は豊富だが二次元と三次元の差にまだ慣れていない。

ポケモンバトルが特に顕著のため、ゲーム知識を生かしながら作戦を立てて挑んでいる。

 

(余談)

原作アニメでは「サ~トシ君」で有名な彼だがこのssではそんなことは言わない。

また最近じいちゃんがハマってる俳句にもあんまり興味がない。

 

 

◆イーブイ

 

シゲルの最初のポケモンであり、何気に夢特性の個体。

「ひかえめ」な性格だがあんまり「ひかえて」ない。

食べる量が「ひかえめ」らしい。・・・どうでもいいわ。

 

無邪気に黒い所があり、今後もネタに出す予定。

 

(余談)

最近テレビで見た『はかいこうせん』にロマンを感じたらしい。

 

 

◆ヒトカゲ

 

シゲルが3体の内から選んだポケモン。

「おくびょう」な性格でその性格どおりの行動をとったりしている。

シゲルにも最初は微妙な関係だったが、何度かの爪の手入れなど結果「なつき度」が

上がりシゲルの指示に忠実。

 

(余談)

ジム戦では活躍の機会が無かったが実はトキワの森でのトレーナー戦では一番よく

使用していた。『ひのこ』でみんな燃やした。

 

 

◆ニドラン♀

 

シゲルが初めてゲットしたポケモン。

「しんちょう」な性格。ヒトカゲ同様何度も手入れしているため「なつき度」は高い。

毒タイプだが今のところ格闘タイプの『にどげり』がメインウェポン。

ジム戦での一番の功労者。

 

(余談)

よく見ると片方のヒゲが少し短くなってる。

 

 

◆カスミ

 

ハナダジムの4姉妹の末っ子。

トキワの森の一件からシゲルと出会い、行動を共に。

実はその一件から1人で旅をするのが不安になっている。

そのため出会ったシゲルに強引に付いていこうとしている。

 

今のところシゲルに対して恋愛感情はないが助けてくれたこともあり、気にはなっている。

同年代ということもあり遠慮はいらず、接しやすいらしい。

 

(余談)

「おてんば人魚」なのにこの前溺死しかけたとか言っちゃいけない。

 

 

◆エリカ

 

タマムシジムのジムリーダー。

シゲルが幼少の頃からの友人(シゲル視点)。

本人はその頃から恋愛感情を持っているとか。

シゲルと行動を共にしている女の子を非常に気にしている。

 

普段はおとなしい大和撫子的な感じだがパニックになるとかなりアクティブティ。

 

(余談)

店で働いている店員たちから色々な知識を学んでいる。(かなり歪んだ知識)

 

 

◆ナツメ

 

ヤマブキジムのジムリーダー。

シゲルとエリカとは良き友人の関係。

シゲルとは卵の発表の際にタマムシシティに赴く家族に同行し出会った。

その頃から超能力に没頭し引きこもりがちだったが家族に無理矢理同行されたとか。

シゲルと出会い色々考えを改めたらしい。シゲルの紹介でエリカと友人に。

 

現在の手持ちの「ユンゲラー」はその時シゲルからもらった「ケーシィ」。

 

(余談)

元引きこもりで親の脛をかじりまくってたこともあり、

現在は「働かないと負けかな」と思っているとか。

 




戦闘視点は正直悩みます。
これでいいのかとかわかりづらくないかと四苦八苦しました。


登場人物全員というわけではないですがとりあえず主要人物というかそれなりに出番があった
キャラクターの紹介をしました。

やっぱりこういったほのぼのやギャグを書くのは楽しいですねw
今後は登場した人物の説明を定期的に書いた方がいいかなと思ったり。
原作アニメを知らない人から見れば「こんな奴いたっけ?」とか思われそうですし。
なんにしろ思案中。


では次回も更新速度は期待できませんが気長にお待ちください。ノシ


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ノーマルマサラ人 12話

更新がすこぶる鈍くてすいません。
クリスマス、年末と続くとどうしても忙しくなります。(言い訳)
おまけに話はそこまで進んでないという・・・。

もうちょっと更新スペースを早めるよう努力します。

とりあえず、暇つぶしにでもどうぞ。

それとこのssを読まれる読者様方、

あけおめ!!ことよろ!! です。


 

 

 

「アンタってポケモンの手入れ以外に料理も出来たのね。けっこうおいしかったわよ」

「・・・それはどうも。というか、カバンの中が缶詰だらけって女の子としてどうよ」

「なによ、いいでしょ。料理は男の仕事なんだから」

「・・・流石にそれは偏見すぎる」

 

 

現在お昼過ぎ、ランチタイム後。

途中に作った昼飯を胃に収め、ハナダシティに向かって足を進めている。

俺が昼飯作っている最中、自分の分も要求していた彼女と共に。

 

 

・・・一緒に旅をすると誘った覚えもなければ、誘われた覚えもないんだけど。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

今日の朝方のニビジム戦勝利後、ジムリーダーからバッジをもらい、ポケモンセンターで

手持ちのポケモンを回復させ次のジムのある「ハナダシティ」へ向かおうとしていた。

 

 

これ以上ニビシティに留まる理由もなく、あらかじめ必要な食糧や道具を

「フレンドリィショップ」で買っていたのですぐさま次の町へ出発する・・・はずだった。

 

 

『じゃあ、俺はこれからハナダシティに行くから。これで・・・』

『待ちなさいよ! アタシまだ買い物してないんだから!』

『・・・?』

『ちょっと買い物するから待って・・・ううん、やっぱり付いてきなさい』

『・・・なんで?』

『アタシはまだなのよ! いいから付いてきなさい!』

『いや、だからなんで・・・ってこら! 服引っ張るな!』

『い・い・か・ら! 黙って付いてくる!!』

 

 

 その後、大量の缶詰を買い込み、カバンに押し込み、『さぁ、行くわよ!』と、なぜか

そのまま、ここまで同伴しながら旅をしていた。

 

 

「・・・まぁ、別に嫌ってわけじゃなんだけどさ・・・」

「なにか言った?」

「前に『おてんば』人魚って自称してたけど、

自覚しているなら直せばいいのにって・・・・・ブッ!?」

 

 

鮮やかな『メガトンパンチ』が決まったとさ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

――ここまで来たのに今さら「何で付いてきたのか」と聞くのも引けるし。

――下手な事言って不機嫌になられるのもめんどくさい事になりそうだし。

 

 

 痛む頬をさすりながらそう自分を納得させ、

話題を変えるために前から聞きたかった疑問を投げてみた。

 

 

「カスミはハナダジムってどんな所か知ってる?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

『カスミはハナダジムってどんな所か知ってる?』

 

 

 その言葉を耳にした時、グッと眉根が釣り上がるの自覚した。

聞いてきたコイツに悪気もなければ含むものもないと思う。

ジムに挑戦するのだから単に『どんな所』かを聞きたかっただけだろう。

・・・それでも、あまり聞きたくない話題だった。

 

 

「・・・なんで私に聞くのよ」

 

 

 声音は無意識に低くなっていた。

強張った顔を見られたくないから、少しアイツから顔を背ける。

 

 

「え!? ・・・いや・・・え~と、偶然腹だs・・・ゴホン! カスミらしき女の子が

『3番道路』から来たって聞いてさ。もしかしたらハナダジムの事知ってるのかな~と」

 

 

 途中まで聞こえてきた単語に再び握りコブシを作っていたがなんとか踏み留まる。

妙に言いづらそうに答えたアイツ。今度はアイツの方が顔を見えないように背けていた。

 

 

「・・・知ってるわよ。ハナダシティじゃ有名だもの・・・」

 

 

 少し目を背けながら愚痴るようにつぶやいていた。

そんなつぶやきも近くにいたコイツには聞こえたのだろう。

興味深そうというか好奇心が刺激されたような、明るい表情をアタシに向けてくる。

 

 

「やっぱり知ってるのか。それでどんな所なんだ? あとジムリーダーも気になってる」

 

 

・・・ジムリーダー。

その単語を耳にして気分がさらに悪くなる。

コイツもハナダジムのジムリーダーがそんなに気になるのか・・・と。

 

 

「・・・アンタも気になってるんだ。ハナダジムのジムリーダー」

「そりゃそうだろう、ジム戦を挑むんだ。相手の事は出来るだけ知っときたいさ」

「・・・本当にそれだけ」

「? ・・・それだけって、なにが?」

「・・・ジム戦のためだけに知りたいの?」

「他になにかあるのか?」

 

 

 目を細めて疑いの眼差しを向けてみる。

瞳に映ったアイツはアタシが何を言わんとするかわかってないようだ。

アタシの苦悩を知らないアイツの呆けた顔を見てると段々と腹が立ってきた。

 

 

「そう、それじゃ教えてあげる!

                ・・

ハナダジムのジムリーダーって凄い美人らしい女の人よ!」

 

 

 脳裏に浮かぶのは『美人三姉妹』とか『出涸らし』とか言ってくる姉さんたち。

いつもいつもいつもアタシを馬鹿にして面倒な事ばっか押しつけてくる。

おかげでアタシは、いっつも貧乏くじ引かされて苦労していた。

 

 そしてジムに来る男たちも、みんな姉さんばかりを見てる。

大抵の男はいっつもそうだった。

 

 

「へぇ、ジムリーダーは女なんだ。やっぱり水タイプのポケモンがメインなのか?」

               ・・

「・・・そうね、ジムリーダーの美人三姉妹は水タイプのポケモンを使うわね・・・」

「つまり誰と当たるのかわからないってことか。そうなると相手の手持ちが定まらないな」

       ・・

「・・・それと美人三姉妹は大きなプールでジム戦をするわ・・・」

「ニビジムみたいにフィールドが変わったりするってこと? それは面倒だな」

              ・・

「・・・・・ジムリーダーの美人三姉妹は街の男の人からすごい人気があるのよ・・・」

「そうか男の人に・・・・・それってジム戦に何の関係があるんだ?」

 

 

――大抵の男はいっつもそうだった。

 

 

「・・・・・・・・・・・ねぇ」

「なに?」

       ・・  

「ハナダジムの美人三姉妹なのよ?」

「さっきからそう聞いてるけど?」

「・・・興味ないの?」

「あるよ、相手の手持ちのポケモン。三姉妹ってことはそれぞれ手持ちが違うんだろ?」

 

 

――大抵の男はいっつもそうだった・・・はず。

 

 

「・・・・・・・・・・・ねぇ」

「なに?」

 

「・・・ポケモンに興味があるだけ?」

「さっきからその話をしてたんじゃないのか?」

 

 

―――なら、例外の男だって居てもおかしくない・・・はず。

 

 

「・・・そっか興味ないんだ。美人三姉妹に」

「いや、だから興味はあるって。・・・・・なに笑ってんの?」

 

「別に。アンタは『ポケモンバカ』なんだなぁって思ったのよ」

「・・・初めて聞いたよ、その名称・・・」

 

 

 さっきと似たような呆けた顔をするアイツ。けどさっきみたいに腹は立ったりしない。

むしろ、おかしくなってアタシの顔が少し緩んでくる。口元には笑みが浮かんでくる。

 

 

「どうしたんだ? さっきからこっち向いてニヤけて」

「べっつに、なんでもないわよ! ほら、歩いてないで走るわよ!

あんまり遅かったら野宿する羽目になるんだから。ポケモンセンターまでダッシュよ!」

「日没まで十分余裕あるって。別に急がなくても・・・コラ! 服引っ張るなって!」

 

 

――やっぱり旅をするのは楽しい。




今回はおてんば人魚さんの話。
前回までのギャグ係を払拭させるために少しシリアスに・・・!

・・・払拭されてない気がする。


まぁ原作アニメでもこの人魚さんはツッコミ+バイオレンスの役回りだった気がしますので。
大体こんなキャラかなと。


・・・それと今回の原作崩壊部分。
・・・タケシさん・・・いません・・・。


それでは更新速度は期待できませんが次回もよろしくお願いします。 ノシ


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ノーマルマサラ人 13話

相も変わらずゆっくりとしたペースで話を進めております。
まぁ、ショートカットしすぎると話分からなくなりそうなんでもう少しこのまま・・・。

今回もほのぼのとしたお話。
バトル描写より書きやすいと思ってしまうのは作者の実力不足なんだろうなぁ。
とりあえず頑張って執筆します。

では暇つぶしにでもどうぞ。


 所々に明かりが点いてあった『オツキミ山』を半日掛けて抜ける。

暗がりに目が慣れていたため日差しを受けた目が少し痛む。

目を慣らすために両目を軽く揉んで瞬きを繰り返す。

そうすると視界に広がったのは日に当たりいい具合に茂っている草木。

そして遠くに目を向けると小さく見える町々。

 

 

「あそこがハナダシティか・・・」

 

 この「4番道路」をまっすぐ行くと着くだろう。

らしくもなく逸る気持ちをそのまま行動に移す。

ここまで付いて来ている旅の同行者、カスミのスピードに合わせて走り出す。

 

 

(ハナダシティまでもうすぐだ!!)

 

 

 

「・・・ねぇ、さっきアンタがゲットした『イシツブテ』なんだけど・・・」

「ほらカスミ、急ぐぞ! ハナダシティまでもうすぐなんだからさ!」

 

「・・・アンタの投げたモンスターボールで両腕がもげた気がするんだけど・・・」

「HAHAHA そんなわけないじゃないか! 

きっと相当弱ってて、たまたまタイミングがジャストミートしただけだって!」

 

「・・・アンタの全力で振りかぶったボールで片腕がもげたわよね・・・」

「HAHAHA そんなわけないじゃないか! 

モンスターボールでポケモンにダメージが与えられるわけじゃあるまいし!」

 

「・・・ゲットに失敗したからってもう一回投げて、残った片腕もいだわよね」

「HAHAHA そんなわけないじゃないか!

顔面に当たると痛そうと思って投げたら腕がもげたなんて思いもしなかったさ!」

 

「・・・アンタ、今認めたわよね・・・」

「HAHAHAHAHA」

 

 

 

(ハナダシティのポケモンセンターまでもうすぐだ!!)

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 『4番道路』を駆け抜け、途中挑んできたトレーナーはガン無視。

ハナダシティに着くとすぐさまポケモンセンターへ駆けこみ、外に出すのが怖い

『ばくだんいわ』・・・もとい『イシツブテ』と手持ちのポケモンを預けた。

 

・・・戻ってきたときには腕があるといいな。

 

 

「・・・とりあえず町を見て回るか」

「・・・そうね」

 

 ツッコミを入れるのも無駄と悟ったのか、疲れた表情をしている。

指摘するとさっきの話題が蒸し返されそうなので気付かぬふり。

 

「カスミはこの町詳しいんだろう。良かったら案内してくれない?」

「・・・別に良いけど・・・。正直、案内出来る所って少ないわよ」

「良いよ、それで。とりあえずジムの場所から案内してくれる?」

「アンタってホントにジム戦のことしか頭に無いのね」

「別にいいだろう。元々ポケモンリーグに出るつもりで旅をしてるんだからさ」

 

 本当はポケモンリーグに出場するために旅に出たわけじゃないけど、

けれどもポケモントレーナーとして旅に出たからには目指してみたい。

 

 ゲームではそれほど難なくチャンピオンになれた。

けれどもこの世界で生きて、二次元ではなく三次元の世界でもなれる

可能性があるならば挑んでみたい。ポケモンリーグに。

 

 それに約束もある。

この世界での俺の友人兼ライバルのアイツと、お互い本気でバトルするのだと。

別にポケモンリーグでバトルすることにこだわってるわけじゃないけれど・・・。

どうせならお互いが盛り上がれる場所でバトルしてみたいのだ。

そのために今はバッジを優先して旅をしている。

 

(・・・バッジといえば、エリカに連絡してなかったな)

急いで連絡する必要もないだろうけど・・・。

ハナダシティを見て回ったら電話しとこう。

 

「ちょっと、なにボーっとしてるのよ。 着いたわよ」

「へ? ・・・・・ココ?」

「そうよ、そこにジムの看板があるでしょ」

 

 カスミが指差した先を見るとジムの表記がされた看板が立っている。

確かに『ハナダジム』と書かれているのだが、

 

「なんで『のぼり』とか『ポスター』とか『バルーン』があちこちにあるんだ?」

 

 ポケモンバトルを行うジムにしては明らかに装飾過美の外観。

これじゃジムというよりどこぞのステージ会場だ。

ニビジムはもっと簡素な外観をしていたはずだけど。

 

 

「そういえば、アンタ知らなかったわね。ハナダジムってこういったショーをするのよ」

ほら、と再びカスミが指差したポスターに目を向けると、

 

 

 

『ハナダジム 美人三姉妹・水中ショー 本日開幕!(ポロリはないよ♡)』

 

 

 

・・・無いのかよ。

いや、つっこむ所が違うけれどもさ。

 

「ハナダジムはこういったショーを定期的にやってるのよ」

「・・・この前カスミが言ってた、男に人気があるって意味がわかったよ」

 

 貼ってあるポスターには『大人のお姉さん』的な3人が水着姿で写っている。

顔も均整が取れていて、体のプロポーションを惜しげもなく晒している。

ポスターとはいえ、素人目で見てもえらく気合いが入った出来だ。

確かにここまで大々的に宣伝してあったら男は食いついてくるだろう。

 

「・・・この水中ショーをやってる間ってジム戦出来たりする?」

「出来ないわよ。ジムリーダーが水中ショーに出演してるんだから」

「・・・だよな。終わるまでこの町に強制滞在か・・・」

 

 ポスターに右端に記してあった開催期間を見ると明後日の午前までやってるようだ。

午前と午後に1回ずつ行ってるようで明後日の午後からジム戦の受付が可能らしい。

 

「まぁ、俺の方も手持ちのポケモンのレベルを上げたいから急ぐ必要はないだけどさ。

けど実際問題、ジムでこんなことして良いのか?」

「・・・ポケモン監察官はなにも言ってこないみたいだから黙認してるんじゃない。

ほかのジムも勝手にいろいろなアトラクションとか付けてるみたいだし・・・」

 

 

(ニビジムのあれもジムリーダーの趣味だったのだろうか・・・)

 

 

「・・・とりあえず、場所はわかったから他の所案内してくれる?」

「そうね。アタシもあんまりここに長居したくないし。それじゃ次は・・・・・ゲッ!?」

 

 年頃の女の子が出すような声じゃない声を出して硬直。

虫ポケモンでも出たのかとカスミの視線を追ってみれば・・・、

 

 

「あら、カスミじゃない。もう帰ってきたの?」

 

 

ポスターに載ってた顔と同じピンク色の髪をした『大人のおねえさん』がいた。

 

 

「どうしたの? 『水ポケモンマスターになる!』って言って家を飛び出したのに

もう帰ってくるなんて。もしかして、寂しくなって帰ってきたとか?」

「別にそんなんじゃないわよ!! アタシは・・・え~と、コイツに頼まれたからよ!!」

「え!? 俺!?」

 

 唐突な会話についていけず困惑する俺を余所に二人の会話はヒートアップしている。

 

「そんなこと言って、本当は寂しくなったんでしょ。素直に言えばいいのに」

「違うわよ!誰が寂しがるもんですか! アタシはコイツに頼まれただけよ!」

「嘘ばっかり。アンタ友達居いないじゃない」

「いるわよ! アタシは水ポケモンと友達なんだから! ・・・ギャラドスは苦手だけど」

 

・・・人間はいないのかよ。

 

 

「とにかく! アタシは今コイツと旅をしてて、ここまで連れてきただけなんだから!」

 

・・・俺の記憶ではニビシティからここまで勝手についてきたのは君のほうなんだけど。

・・・いや、確かにこの町でハナダジムの案内は頼んだけどさ。

 

 

「・・・一緒に・・・旅?」

「そうよ!」

「・・・その・・・男の子・・・と?」

「そうよ!!」

 

 

 先ほどまでヒートアップしていた会話が急に冷めていく。

見れば『大人のおねえさん』が目を見開いて『信じられない』といった顔をしている。

『驚愕』といった言葉がふさわしい表情だ。

 

「そんな・・・嘘・・・」

「嘘じゃないわよ! アタシはここまでコイツと一緒に来たんだから!」

 

 そんな様子に気づかず1人ヒートアップしているカスミ。

対する相手はさっきまでの勢いが無くカスミと俺を交互に顔を向けて確認しているようだ。

 

 

「そんな・・・カスミに・・・」

「?・・・姉さん、どうしたのよ?」

 

・・・姉さん?

 

 

 

 

 

「カスミに・・・・・・・・男が出来てるなんて!?」

 

「なっ!? 違うわよ!! コイツとアタシは別にそんなんじゃないわよ!!」

 

「もしかして、あの人カスミの姉なの?」

「なんでアンタはリアクション薄いのよ!!!」

「理不尽!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆登場人物紹介&用語説明◆◆◆

 

 

 

 

 

◆イシツブテ

 

 

シゲルがオツキミ山でゲットしたポケモン。

「いじっぱり」な性格。モンスターボール射殺事件二匹目の被害者。

前回の失敗を活かしてノーダメージの状態でモンスターボールを投げた。

結果、ダメージを与えて部位破壊に成功! ・・・・・そういうゲームじゃない。

なんとかひん死寸前でゲット。最後は丸くなってしまったイシツブテを取り押さえて

上からボールをフリーフォールさせた。・・・傍から見ればヤバい人。

 

腕は戻る予定。

 

 

 

 

◆ポケモン監察官

 

 

アニメ特別編ニビジム・ハナダジムにて登場した人物。

主に印象に残っている外見はサングラスを着用し、コートを羽織ったジョーイさん。

ジムに置いてなんらかの不備があった場合ジムリーダーの資質を確かめるため

ジムに赴きポケモンバトルを行ったり、監察官の名を出さずジムリーダー候補を見て

ふさわしいかどうか判断する様子。

ジョーイさんと言えばおっとりしたイメージだがこの監察官はれいせいな性格っぽい。

ニビジムに於いてのポケモンバトルではラティアスを使う鬼畜っぷり。

どう見ても殺る気マンマンである。

 

 

 

 

 

 




とりあえずこんな感じで新しい登場人物やら用語を少しずつ書いていくつもりです。

ポケモン監察官ってアニメ見てない人はわからないだろうなぁ、と思いましたので入れました。
しかしラティアスか・・・。ゲームではチャンピオンですら使わんのに・・・。
まぁ、ダークライとかフリーザーと友達な登場人物が居るぐらいですし。
これもアニメならではってやつですかね。


それでは次回も更新速度は期待出来ませんがよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 14話



祝!!ポケモン新作発表!!!!


と、告知してみる。

10月が待ち遠しいですね。新種のポケモンも出るようですし。
戦闘は完全に3Dのようで面白そうです。

個人的に初期ポケは単色タイプよりも複合タイプの方がうれしいかなと。
あ、炎・格闘タイプはもうけっこうですから。


なんてゲームのことしか前書きに書いてませんが暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

 

 

「それでそれで! カスミとはどこまで行ったの!」

「もうアヤメ、そんなにがっついたら駄目よ。それでどこまで進んだの?」

「サクラ姉さん、それ同じこと聞いてるわよ。ここはまず、二人の出会いから聞かなきゃ!」

 

 

・・・『女三人よれば姦しい』というが昔の人の名言は的を射ている。

矢次早に飛んでくる質問・・・というよりも野次馬。

大人のおねえさんに囲まれながらという状況はうれしいが、こうも露骨に野次馬根性丸出しだと呆れと疲れが先に出る。

対面に座っている道連れことカスミに目を向けるとあちらも同じことを思っているのだろう。疲れた表情をしている。

・・・どうしてこうなった。

 

 

 

 

 数分前、カスミから理不尽な言葉をもらった後、目の前のお姉さんに強制連行。

なにか発言する間もなく「姉さん達に報告しなきゃっ!!」と言いながらジムに連れ込まれ『休憩室』と書かれた部屋に。

中に入ると休憩でもしていたのだろう二人の女性が水着姿のままドリンクを飲んでいた。

俺に不審そうな目、カスミに驚きの目を向けてから俺達を連れてきたお姉さんに何事かと尋ね、

 

 

「私たちに弟が出来るのよ! カスミに男が出来たわ!!」

(・・・ナニヲイッテルノカワカラナイ)

 

 

そんな感想を抱かざるを得ない返答をしていた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 そして現在に至る。

 

「あたしたちって姉妹しかいないから弟って新鮮ねぇ」

「そうよね、カスミよくやったわ。顔も悪くないし」

「そうね、カスミにしてはよくやったわ! 一体どんな手でゲットしたの?」

 

「そんなんじゃないわよ・・・」

 

ツッコミにも力が無く、しきりに溜息をついている。流石にちょっと同情。

 

 

「え~と、みなさんカスミのお姉さんで?」

 

話題を変えるため個人的に気になってた所を聞いてみる。

 

 

「あら、カスミから聞いてなかったの? 私たちのこと?」

「・・・ええ、カスミに姉がいること自体知りませんでした」

「もう駄目じゃないカスミ。ちゃんと家族のことを教えとかないと」

「私たちは『ハナダジム美人三姉妹』で有名なのよ」

「ちなみにそこにいる四女は出涸らしよ」

 

「誰が出涸らしよ!! 全然劣ってなんかないんだから!!」

 

(・・・ゴメン。変える話題間違えた)

 

「だいたいっ! そいつはジム戦をしに来ただけよ! アタシとはなんの関係も無いの!」

「あら、シゲル君ジム戦をしたいの?」

「・・・カスミの後半の叫びはスル―ですか・・・。 ええ、まぁ今すぐってわけじゃ無いんですけど水中ショーが終わったら挑戦しようかと」

「・・・ショーが終わったらすぐに挑戦するつもり?」

「ええ、そのつもりです」

「「「・・・・・・・」」」

(・・・あれ?)

 

 突然顔を見合わせ渋い顔をしている3人。

なにかまずいことでもあったのか、気まずそうにしている。

 

 

「なにか問題があるんですか?」

「・・・え~と、ごめんなさい。ショーが終わってすぐには無理なの」

「?・・・ ショーが終わった後でもですか?」

「今回の水中ショーには私たちのポケモンも出しているの」

 

 

 話しを詳しく聞くと、どうやら今回の水中ショー、今までと違って自分たちの手持ちのポケモンも出演させているとか。

今までは3人と数人のマネージャーで開催していたのだが、たまにはいつもと違ったことをしてみようと試したらしい。

不評ならば明日からはいつもどおり3人でショーをするつもりだったが概ね好評。

ならば明後日までの間、このプログラムを続けようとマネージャーと決めたらしい。

しかし、そうなると明後日のショーが終わるまでポケモンにはほとんど休み無し。

3人は慣れているがポケモンたちには慣れない仕事で疲労困憊になってしまい、満足にポケモンバトルどころではない。

このショーが終わったらしばらく休養させるつもりだったとか。

 

 

 

「たぶん、バトル出来るのは今回ショーに出ないこの子ぐらいね」

 

 

そういってモンスターボールから出したのは、

 

「・・・トサキント・・・だけ、ですか」

「ええ、この子だけなの。アズマオウにでも進化してくれればある程度戦えるんだけど」

 

 

 そういって溜息をしながら床を跳ねていたトサキントをボールに戻す。

確かにトサキント1体だけでジム戦というのは・・・。

 

 

「では、ショーが終わってからどれくらい経てばジム戦が可能ですか」

「そうね・・・・・3日ぐらいかしらね」

「3日・・・ですか」

 

 

 確かに急いでる訳じゃないけれど・・・。

明後日のショーが終わるまでの日数を数えると5日間ここに滞在しなければならない。

そこまでこの町に長居するつもりはなかったんだけど。

 

 

「まぁ、そちらも事情があるようですし・・・」

「それに問題はそれだけじゃないのよ」

「私たちのほうにも問題があるのよねぇ」

「・・・そちらに問題があるんですか?」

「それが大アリ」

「ジムでショーはしているのだけどジムリーダーはショーよりもジム戦を優先しなきゃいけない決まりがあるのよ」

「じゃなきゃジムリーダーの資格を剥奪されちゃうの」

「・・・なるほど」

 

 

 納得出来る理由だ。確かにジムリーダーの本来の仕事、ジム戦を疎かにすれば問題アリと見なされるだろう。

これまでジムでショーをやってても『ポケモン監察官』が黙認しているのも頷ける。

用はちゃんとジム戦をしていればジムで何をしようが構わないといった体裁なんだろう。

 

 

「ここ最近ジムに挑戦する人が居ないから連日でショーをしようって話になっちゃってね」

「それで今回のショーは特別に3日間連続で行うことにしたんだけど・・・」

「中止しようにもチケットは完売して観客席はいっぱいの状況だから・・・」

「まぁ、中止なんて言った日にはクレームの嵐でしょうね・・・」

 

 

 思ったよりもややこしい事態になっているようだ。

ジム戦を優先しなければならないけれど、かといってショーを中止するわけにもいかず。

 

 

「・・・挑戦者の俺が挑戦を取りやめたってことで解決しません?」

「う~ん、シゲル君がジムに挑戦するってことを私たちに伝えた時点でジムリーダーの責務を果たさなきゃいけないのよね。一応」

「どこにポケモン監察官の目があるかわからないしね」

「まぁ、さっきショーが終わってからってシゲル君が言ってたからそれまでは向こうは口を出さないでしょうけど・・・」

「ショーが終わってるのに挑戦を受けてないってバレると問題になるってことですか」

 

 

 ニビジムの時と違ってジム戦をする前にジムに入ってしまったのが思わぬ弊害を起こしてしまった。

こんな展開になるとは思いもしなかった。

 

 

「まぁ、こんなことになってしまったんなら解決策は1つね!」

「なにか妙案が?」

「ええ、パウワウ!」

 

 サクラさんが手を鳴らして呼びかけるとドアが開き入ってくるパウワウ。

何気に賢いな・・・その手でどうやってドアを開けたが気になるが。

 

 

「パウワウ、お願い」

「パウワウッ・・・んべぇ~~~」

 

・・・どこにバッジをしまってやがる。

 

 

「はい、これブルーバッジ。受け取って」

「・・・これが妙案ですか?」

「ええ、別にバッジを渡す条件はポケモンバトルだけじゃないもの」

「・・・そうなんですか」

「そうよ、用はジムリーダーから認められればいいんだから!」

「俺は認められるようなことはなにもしてませんよ」

「大丈夫! 私たちはあなたを弟と認めるわ!」

 

(・・・・・会話は成り立ってるけど噛み合ってない)

 

「・・・まぁ、くれるって言うならもらいますけど、良いんですか?」

「ええ、監察官にはジムリーダーが認めたってことで言い訳出来るし、シゲル君もバッジが手に入るし、良い事尽くしでしょ」

「・・・はぁ、それで良いって事なら遠慮なく」

 

 

 

 

 

「ちょーーーーーっと待ったーーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

「何よカスミ、居たの。てっきり空気になってるのかと思ったじゃない」

「そうね、さっきから一言もしゃべらなかったから空気かと思ったわ」

「誰が空気よ!! それとサクラ姉さん!! ジム戦もせずにバッジを渡すのはハナダジムの沽券に関わるわ!!」

 

 立ち上がり、息を荒げながら詰め寄ってくる四女。

ジムバッジと俺の間に割り込み指を差してくる。

 

 

「シゲル! 姉さんの代わりにアタシがジム戦をするわ! ジムバッジが欲しいならアタシとポケモンバトルよ!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『・・・それで、ナツメさん。調査の方は・・・』

「・・・エリカ、怖いわよ」

 

 

 本気と書いてガチと言えそうなくらい真剣な表情で写っている友人。

口元を横一文字に引き締め、目も睨んでるように見える。

いつもの赤い色を頭に巻いていたものが今は『必 勝』の鉢巻きに変わっている。

まるでこれから戦いに赴かんとしているようだ。

 

 

「・・・まぁ、報告からするわね。件の女の子は今もシゲルと一緒に旅をしているようね」

『・・・・・そうですか』

 

 

 おそらく想定範囲内の答えだったのだろう。

取り乱す様子もなく、静かに受け入れている。

 

 

「・・・私が最後に覗・・・コホン、観察したのはオツキミ山前のポケモンセンターから出たとこまでね」

『その間、お二人の様子に変わった所は?』

「・・・これといってないわ。特に邪推するようなことは起きなかったし」

 

 

 私はシゲルと女の子の二人がポケモンセンターに入り、次の日にオツキミ山へ入っていたところまでを観察していた。

無論、二人が食事をしている間や就寝に入った時は私もそれに合わせて観察を中断していたが。

二人の様子は喧嘩するほど仲が良いといった感じだ。

私の力は見る事は出来るけれど聞くことは出来ないのだが険悪な雰囲気にならず会話も弾んでいるようだった。

邪推するようなことはなく、仲の良い友人という関係だった。

 

 

 その事をエリカに伝え、落ち着くように言い聞かせる。

段々と強張ったエリカの顔も柔らかくなり始め、電話越しで安堵した雰囲気が伝わってくる。

 

 

『そうですか。シゲルさんに仲の良い友人が出来たのですね』

「・・・ええ、ポケモンセンターで一緒に食事している時も会話が弾んでいたようだし」

『それならば、タマムシシティに赴かれた時に三人一緒に食事をしながらお話しでもしましょうか。とても楽しそうです』

「・・・そうね、それがいいわ。友達が増えることは良いことよ」

 

 

 穏やかな友人との会話と雰囲気。

和んだ空気は心を弾ませ、会話は続いていく。

 

 

『それではお食事の後はそのまま就寝されたのですね。ナツメさんもありがとうございます』

「・・・別にいいわよ。私も友人のプライベートを見るのは・・・まぁおもしろかったから」

 

褒められた行為をしたわけじゃないけれど、それは事実だ。

二人の様子を見ながらこちらも微笑ましい気分になり和んだりもしていた。

 

 

「・・・とりあえず二人が揃って就寝したから私もその日は寝たわね」

『そうですか。お疲れ様で・・・・・二人、揃って?』

「?・・・ええ、二人揃って寝たわ」

 

 

 再び強張り出す友人の顔。

いや、先ほどと違って焦燥間も醸し出している。

 

 

『・・・ナツメさん。揃って、ということは・・・お二人は、共に・・・寝られたのですか』

「?・・・ええ、そうよ」

 

 

 いまいち要領を得ない質問に答える。

・・・と、いきなり目を見開き、口を抑えて、驚愕の表情を浮かべる。

次いで顔を真っ青にし、目尻からは涙が滲み出している。

 

 

「!!・・・どうしたのエリカ!?」

『・・・そんな・・・そんな・・・そんな、ことって・・・』

 

 

 私の声が届く様子が無く、体を震わし涙の量が増えていく友人にどうすればいいかわからず、オロオロと動揺してしまう。

私はそんなにもまずいことを言ってしまったのか・・・。

 

 

「・・・エリカ、落ち着いて。一体どうしたの?」

「そんな・・・二人は、既に・・・既に・・・」

 

 

 目の焦点が合ってない・・・。

画面に映る友人の瞳は涙に濡れながら、自身の体と同じ様に震えている。

こんなにも絶望している友人を初めて目にした。

 

 

「・・・エリカ、エリカ、落ち着いて。何があったの」

 

 

 尋常ではない友人に何度も問いかける。

こういうとき自分の対人能力の無さが悔やまれる。

気の利いた言葉を探せども思い浮かばない。

 

 

『・・・二人は・・・既に・・・っ!』

「・・・エリカ・・・」

 

 

 

 

 

『二人は・・・既に・・・・・・同衾をなされた関係なんて!!!』

 

 

 

 

 

(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

「・・・・・単に一緒の部屋で寝てただけよ」

 

10歳の少年少女相手に何を考えているのだろうか・・・。

 

(・・・・・疲れた)

 

重い重い溜息をついた。

 

 

 





3姉妹の誰が話しているのかは想像におまかせします。
正直、どうやって区別付ければいいかわかりませんでした。

しゃべり方も文字にするとそこまで違いがなく、セリフの前に名前を付けたときはこちゃごちゃしてわかりづらかったのでいっそ無しにしました。

今回は原作をいろいろいじってこんな風にしました。
次回はシゲルVSカスミのジム戦にします。


では更新速度は期待できませんが次回もよろしくお願いします。ノシ


・・・エリカ?
こんなキャラクターとしか言いようがありません。


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ノーマルマサラ人 15話

やっと出来ましたハナダ戦!

もう少し早く上げたかったのですが、中途半端に区切ると読者様方に展開が読まれそうだなと思い、今回は長めの話にしました。

・・・その結果がこの執筆の遅さだよ。
・・・バトル回は相変わらず表現が難しいです。


とりあえず、バトルの裏設定とかはあとがきに書きました
アニメ設定を入れつつ、ゲーム設定を入れるようにしてみました。


では、暇つぶしにでもどうぞ。



 

 あのどたばたから2日目のお昼過ぎ。

 

――まぁ、戦えるポケモンを持っているのはカスミぐらいだし、いいんじゃないかしら。

 

ということこで、結局ジム戦はカスミと行うことになった。

ジム戦までの間レベル上げに集中したい俺と、姉の半強制的手伝いに駆り出されたカスミとで別れた。

この2日間はお互い顔を合せることはなかった。

 

 

 腰のホルダーのモンスターボールを確認する。

正直、不安で一杯だったイシツブテもすっかり腕は治り、今では立派な戦力だ。

流石ポケモンセンター、流石ジョーイさん。

笑顔で「お預かりしたポケモンはみんな元気になりました」とモンスターボールを差し出す様に痺れて憧れた。

となりに立っていたラッキーのタマゴ袋に差し込まれてた『木工用ボン』とまで見えた黄色いものは見なかった事にした。

・・・治っていたのだから何の文句も言えやしない。

 

 

「さて、行くかイーブイ」

「ブイ!」

 

 

 既に昼食は済ませた。

イーブイを肩に乗せてポケモンセンターを出る。

今回はイーブイをわざわざモンスターボールに入れることはしない。

 

 

既に水中ショーは終わっているだろう。

ハナダジムに向けて歩き出す。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「・・・よく来たわね、待ってたわ・・・」

「なんか・・・ちょっと見ない間にやつれたな、カスミ」

「・・・ブイブイ?」

「・・・色々あって、疲れてるのよ・・・」

 

 そこまで姉の手伝いは酷かったのか、疲れた顔のカスミが出迎えに来ていた。

後ろにはその姉達が爽やかな顔で手を振っている。

疲れというよりもストレスが解消されたみたいに爽やか顔。

3人からいじられまくったようだ。

 

 

「・・・とりあえずシゲル、手加減しないからね。・・・覚悟しなさい」

「そんな疲れた顔で言われても・・・」

「・・・うるさい、とにかくジムに入りなさい」

 

 

 ジムに入ると既に用意は万全なのか審判も立っていた。

指定された場所に立ち、対面にはカスミが立つ。

両手で顔を叩き気持ちを引き締めようとしている。

改めて視線を向けるとさっきまでの疲れた顔はなくなり、真剣な表情を作っていた。

 

 

「それじゃ改めて、シゲル! 手加減なしの本気でバトルよ! いいわね!!」

「わかってるよ、バッジが掛かってるんだから手加減なんかしないさ」

「ブイ!」

 

 

 肩に乗ってるイーブイも高揚してきた場に感化されたのかご機嫌だ。

二人の間に静かな緊迫感が醸し出してきた。

 

 

『がんばってね~二人とも~』

『パウワウ、あなたもこっちに来て観戦しなさい』

『パウワウ~』

『カスミ~、変な顔してないでさっさと始めなさ~い』

『パウワウ~』

 

 

「・・・っ! ・・・・っっ!!」

(・・・・・すげぇ奥歯噛みしめてる)

 

 

空気をぶち壊して、さりげなく馬鹿にされたジムリーダー代理。

青筋を浮かべながら怒鳴りたい気持ちを必死に抑えている。

視線もきつくなり睨んだような顔になっている。

・・・こっち見んな、怖いわ。

 

「・・・カスミ、始めるか」

「ええ、始めるわよ! 審判! 早く始めて!!

「はっ、はい!!」

「・・・やつあたりするなって」

「うるさい!!」

 

オドオドしている審判がコホンっと咳をし、気持ちを切り替える。

 

「え、え~と。それでは、使用ポケモンは2体! ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます! 先に2体のポケモンが戦闘不能になった方が負けとなります!」

 

「勝負よシゲル! 行きなさい『ヒトデマン』!!」

 

「・・・頼むぞ『ニドリーナ』!!」

 

「そ、それでは試合開始!!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「ヒトデマン、『たいあたり』!」

 

「ニドリーナ、迎え討て! 『にどげり』!」

 

 

 カスミの指示に従い縦方向に回転しながら接近するヒトデマンをニドリーナが待ち構える。

 

「ヘアッ!!」

 

(あの鳴き声が気になってしょうがない・・・)

 

「ニドッ!!」

 

 ヒトデマンの『たいあたり』が決まる前にニドリーナが体の向きを反転し、ヒトデマンに『にどげり』が決まる。

ニドリーナに進化し体長も0.8メートル近く成長し、それに伴い足の長さも成長したため『にどげり』の攻撃範囲も伸びた。

一撃目・左足でヒトデマンに当て回転を止め、二撃目・右足で無防備になった胴体(カラータイマー?)を蹴り飛ばす。

鮮やかに決まる『にどげり』にこれまでの使用率が伺える。

 

「ヘアッ!?」

 

(・・・3分経ったら勝てるのかな)

 

 

「だったら、ヒトデマン! 『みずでっぽう』!!」

 

「ニドリーナ! 『どくばり』で応戦しろ!」

 

「ヒトデマン、潜って回避!!」

 

「なにっ!?」

 

 ヒトデマンが『みずでっぽう』を放つと同時に『どくばり』を飛ばすニドリーナ。

しかし被弾したのはニドリーナのみ。

ヒトデマンはカスミの指示通りプールに潜り回避をする。

 

 

「どう! 水辺があれば水ポケモンは強いんだから! ヒトデマン『水中たいあたり』!」

 

「なにその技!?」

 

 

 カスミの指示を聞き水中から飛び出し『たいあたり』。

これを回避するニドリーナ、がすぐさま再びプールに潜り『たいあたり』の攻撃をニドリーナに仕掛ける。

これを回避できずダメージを受ける。

 

 

(・・・・・面倒な)

 

 

 ニドリーナが体勢を整えた時には再びプールに潜ったヒトデマンを見て毒づく。

シゲルの誤算はこのジムのフィールドだった。

本来、単純な攻撃技の応酬、殴り合いではニドリーナの方に分がある。

二匹の種族値(ステータス)を比べるとHPが低いヒトデマンは殴り合いに向かず、種族値だけを見ればまずニドリーナが負けることはない。

だがこのフィールドが問題であった。

 

 現在ポケモンバトルを行ってる場所は大きなプール。

そして所々にビーチマットのようなものが浮いてあり、そこにニドリーナが居座っている。

しかし、所々にしか浮いておらず、当然足場も不安定である。

この状況で陸上を主に生活しているポケモンは当然不利であり、逆に水ポケモンにとっては絶好の環境である。

もし泳げないニドリーナがプールに落ちてしまえばヒトデマンの格好の餌食。

モンスターボールに戻さざるを得ない。

けれども、それで二体目のポケモンを晒すことになるのはおもしろくない。

 

 

(ここまで露骨に水ポケモンが有利なフィールドとは思わなかったな・・・)

 

 

 ニビジムの岩のフィールドではさしてこちらが不利になることはなかった。

だが、このハナダジムは有利不利がはっきりと分かれるフィールドだ。

水タイプのポケモンや飛行出来るポケモンを持っていないシゲルにとっては当然不利だ。

有一影響を受けないのはバトル時に浮遊しているイシツブテぐらいなものだ。

 

 

「いいわよヒトデマン! その調子! もう一度『水中たいあたり』!!」

 

「ヘアッ!!」

 

「クソッ! メンドクサイ技しやがって! ニドリーナ、『なきごえ』!!」

 

「ニド~!」

 

 

 『なきごえ』でヒトデマンの「こうげき」が下がる。

ヒトデマンの『水中たいあたり』がニドリーナにヒット、が元々「こうげき」があまり高くない上、こうげきを下がった状態では大してダメージにはならず。

『水中たいあたり』が思ったほどダメージが無かったのか先ほどよりも体勢を早く立て直す。

 

 

「ニドリーナ、『にどげり』!! 二撃目は蹴り上げろ!」

 

 

 指示を聞き、一撃目を胴体(カラータイマー?)に当て、二撃目で両足? の股間の部分を蹴り上げる。

 

「デュワッ!!??」

 

・・・急所に当たったようだ。

 

 

「ああっ!? ヒトデマンが苦悶の表情を浮かべてる!!」

 

(いや、確かに痛そうな所に蹴りが入ったけどさ・・・表情がわかるの?)

 

 

「ヒトデマン、『みずでっぽう』よ!」

 

「ニドリーナ、『どくばり』を飛ばせ!」

 

 

 再び交わされた「わざ」。

ニドリーナに『みずでっぽう』がヒットする、が先程と違い宙に浮いているヒトデマンにかわす手段はなく『どくばり』がヒットする。

そしてヒトデマンの胴体が点滅を始めた。

 

 

「! ニドリーナ、もう一度『どくばり』だ! 相手は弱っている!」

 

「ヒトデマン、こっちも『みずでっぽう』!!」

 

 

 三度目の遠距離攻撃の応酬。同時にダメージを受ける二体のポケモン。

宙に浮いていたヒトデマンがプールに着水し、水しぶきを上げる。

着水したヒトデマンの様子が確認出来ない。

マットの上で荒く呼吸を繰り返すニドリーナ、こちらは相当弱っている。

 

「「・・・・・・・」」

 

 カスミとシゲルの二人がプールに着水したヒトデマンを確認しようと目を見張る。

イーブイや審判、観客席で傍観している三姉妹も固唾を飲んで様子を見ている。

 

やがて、ゆっくりとプールから姿が浮かび、現れる。

姿を現したヒトデマンの状態、何の動きも見られずプールに浮かんでいた。

胴体の中心部の色は・・・・・鈍く黒ずんでいる。

 

 

「・・・ヒトデマン、戦闘不能!! ニドリーナの勝ち!!」

 

「よくやったニドリーナ!!」

「ブイブイ!」

 

「っ!・・・・・お疲れ様、ヒトデマン。ゆっくり休んで」

 

 

 くやしがりながらも奮闘したヒトデマンをボールに戻し労いの声を掛ける。

モンスターボールを小さくして、次のモンスターボールを手に取る。

 

 

「・・・流石にやるわね、シゲル」

「(ほとんど力押しだったんだけど)・・・珍しいな、俺を素直に褒めるなんて」

「別に。ただニビジムの時もだけど、アンタってヒヤヒヤさせるような戦い方の割にちゃんと考えてバトルしてるって思っただけよ」

「まぁ、一応作戦立てて挑んでるからな(このプールのせいで大苦戦だったけど)」

 

「けど、アタシだってハナダジムの四女なんだから負けるつもりはないわよ! 行くのよ!『スターミー』!!」

「・・・スターミーか」

 

 次にカスミが繰り出したのはヒトデマンの進化形。

当然、一体目のヒトデマンよりも種族値が高い。

ヒトデマンであれほど苦戦したのだ、スターミーはなおさらやっかいだ。

 

 

――ダメージが大きいニドリーナはすぐに倒せる――

――次に出してくるポケモンは水タイプに弱くないイ―ブイ――

――けれども、このフィールドでは『すなかけ』は使えない――

――勝てる!――

 

 

(・・・なんて考えてそうなだな、あの顔)

 

 自身満々、俺の肩に乗っているイーブイを見ながら不敵な笑みを浮かべている。

 

 

「ブイ?」

「・・・なんでもないさ。むしろ予定通りだ」

 

 

 イーブイを出しっぱなしにしていたのは布石だ。

ニビジムの時にイーブイをボールに戻したのをカスミは見ている。

だが、このハナダジムに来たときからイーブイは外に出していた。

そして、このジム戦の最中もずっとイーブイは俺の肩に乗っている。

カスミの頭には「イーブイ」がいるという固定概念が出来たはずだ。

 

もしかしたらカスミはジム戦をする前からイーブイは出る、と決めつけていたかもしれない。

カスミはこちらの手持ちのポケモン知っている。

水タイプに不利な他の2匹は除外して、シゲルはニドリーナとイーブイを出してくると。

そう確信していたかもしれない。

けれども、作戦通りだ。

 

 

――このジム戦、『俺』の勝ちだ――

 

 

「よくやった! 戻れ、ニドリーナ!」

 

 荒い息をついていたニドリーナを戻す。

このフィールドのせいで苦戦してしまったが十分役目を果たしてくれた。

あとは『こいつ』にまかせれば、勝てる。

 

 

 

 

 

「派手に頼むぞ!! 出番だ、『イシツブテ』!!」

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・はぁっ!?」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 アイツの言ったセリフは幻聴なのだろうか、と思わず耳を疑った。

しかし、アイツの投げたモンスターボールから出てきたのは紛れもなくイシツブテ。

 

 

(・・・・・あ、腕治ってる)

 

 

 それは置いといて・・・。

現在、フィールドでアタシのスターミーと対峙しているのは紛れもなくイシツブテ。

アイツの手持ちに居るのは当然知っているけれども。

 

 

「・・・どういうつもりよ?」

「なにが?」

「よりによって水タイプが苦手なイシツブテを出したことよ。・・・まさか、試合放棄するんじゃないでしょうね」

 

 

(・・・本気で試合放棄するつもり?)

 

 観客席にいる姉さん達も不思議そうな顔で見合わせている。

おそらく審判も内心、不思議に思っているのだろう。

イシツブテを出すぐらいならアイツの肩に乗っているイーブイを出す方がまだ納得出来る。

この場にいるアイツを除く誰もがそう思うはずだ。

 

(なのに、なんで・・・?)

 

 

「それこそ『まさか』さ。試合放棄をするつもりはないよ。・・・むしろ、このジム戦、俺の勝ちだ」

 

「・・・・・なんですって」

 

 

 不敵な笑みを浮かべながら聞き捨てならないセリフをのたまう。

 

 

「・・・随分余裕ね。アンタ、イシツブテは水タイプに弱いって知らないの?」

「当然知ってる。けど、さっきも言ったように俺の勝ちだ」

 

 

 表情を崩さず、余裕の態度でアタシを見ている。

なぜこうも自身満々なのか。

けれどもアイツがあんな風な顔をするのも初めて見た。

ニビジムの時もあんな顔をしてはいなかった。

・・・よほどの自信が伺える。

 

 

「俺にとっての最大の難関はカスミの一体目のポケモンだったからな」

「・・・スターミーはヒトデマンに劣ったりしないわよ」

「ああ、知ってる。けど正直、カスミの二体目のポケモンはどうでもよかった。まぁ、とんでも無く硬い奴だったらヤバかったんだが」

「・・・どういうことよ?」

「俺にとって今回のジム戦の勝利条件は、ニドリーナが一体目のポケモンを倒す、かつ『ひんし』になってないことだ。結論を言えば勝ち残ればどうなっても良い」

「それだけで、アタシに勝てるってこと?」

「ああ、そしてニドリーナは戦闘可能状態のまま既にモンスターボールに戻した」

 

 

 だから勝ちだ、とアイツは言っている。ますます意味がわからない。

アタシのスターミーは体調も万全、当然ダメージも受けていない。

アタシに負ける要素は見当たらないはずだ。

 

 

「・・・両者よろしいですか?」

 

「俺はいつでもOKですよ」

「・・・アタシも良いわよ」

 

「それでは、試合開始!!」

 

「スターミー、『みずでっぽう』!!」

(うだうだ考えてもしょうがない!)

 

 

 先手必勝、審判の宣言するとすぐに攻撃の指示を出す。

アイツがどんな隠し玉を持っていてもアタシは全力で戦うのみだ。

何より悩んで行動しないなんてアタシらしくない。

 

 

 アタシの指示を聞き、イシツブテに向かって『みずでっぽう』を放つ。

「いわ」と「じめん」タイプのイシツブテには効果がバツグンだ。

見た目の小ささの割に重く、「すばやさ」も低いイシツブテは俊敏には動けない。

スターミーの『みずでっぽう』を避ける間もなく被弾するイシツブテ。

腕を交差して必死に耐えているが、すぐに決着は着きそうだ。

・・・やはり、アタシに負ける要素は見当たらない。

 

 

(なにを考えているの・・・)

 

 

 さっきまでの自信満々だったアイツの態度が気になってしょうがない。

対面に立っているはずのアイツの顔をにらみつける。

 

 

 

 

・・・・・・・・が、

 

 

 

 

「って!? どこ行ってんのよアンタ!?」

 

 

 

 対面に立っていたはずだったアイツが、・・・居なかった。

見えるのは背を向けジムの出入り口まで全力疾走しながら全力失踪しようとしているアイツの後ろ姿。

肩に乗っているイーブイが必死にしがみついている。

 

 

「アンタッ!! 本気で試合放棄する気だった訳!?」

 

 

 ハナダジム全体に届くようなアタシの大声にもアイツは無視して走っている。

答える余裕も無いといった感じだが、そんなことはどうだっていい。

 

 

「ちょっと! なんか『イシツブテッ! [じばく] よろしくっ!!』・・・・・・え?」

 

 

 (・・・今、アイツはなんて言った?)

 そんな感想が頭に浮かんだ時には既に体が赤くなり始めたイシツブテ。

先ほどの『みずでっぽう』を喰らった時のような苦悶の表情を浮かべている。

そして、それまで見ていた姉さんや審判が慌ただしく動き出す。

 

 

――さっきまでの一番近い観客席から一番遠い観客席まで距離を取る姉さんたち。

 

――仕事を放棄して背を向けて走り出す審判。

 

――ジムの出入り口まで走り抜き、額の汗をさわやかに拭っている憎いアンチクショウ。

 

――「ブイッ!」と鳴きながら右前足で敬礼しているイーブイ。

 

 

 それらが視界に入り、ジム内に光が照らされた。

真っ赤になったイシツブテから光と衝撃が発せられる。

真っ先に、対峙していたスターミーが壁まで吹き飛ばされる。

プールに浮かんでいたマットは爆風でどこかに飛ばされている。

爆風によって荒れ狂うプール。

 

 

それらから導き出される効果は、津波。

アトラクションを行えるほどの大きなプールから津波が起こり襲いかかる。

・・・・・・・アタシに。

 

 

「って、きゃぁ~~~~~~~~~~~~!?」

 

 

 

 

『ざっぱ~~~~~~~~~~~~ん』

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・イ、イシツブテ、スターミー、共に戦闘不能・・・。

よって勝者、チャレンジャー・シゲル・・・」

 

 

『ヨシッ!』

『ブイッ!』

 

 

 

(・・・ヨシッ! じゃねぇ・・)

水死体と化したカスミを除く全員が心を一つにした。

 

 

 

 

 




まずは設定の説明でも。

イシツブテの特性は「がんじょう」ということにしています。
「がんじょう」の仕様はBW2のHPが満タンなら1残って耐えるにしています。

次いでイシツブテの『じばく』ですが、正直迷いました。
ゲームボーイの金銀・アドバンスのFRではレベル21に覚え、DSのDP・HGSSはレベルに18に覚えます。
けれども、BW以降はレベル29に覚えます。
正直、ハナダジムまでにレベル29は流石に行き過ぎかなと思い、こういうとこだけ金銀やFRの設定を取り、既に『じばく』を覚えてるようにしました。
「がんじょう」は最新のゲーム設定なのに『じばく』は旧設定かよ、とのツッコミはご容赦ください。

次にヒトデマンですがアニメ設定オンリーにしています。
よって『じこさいせい』は使いません。
そのかわり、アニメでカスミが言ってた『水中たいあたり』はありにしています。
状態異常回復の『みずあらい』なんてのもありましたが、粉系のわざは使わないのでssには書きませんでした。

最後にもう一度『じばく』の設定について。
最新のゲーム設定では『じばく』は弱体化し、スターミーを一撃で倒せません。
ですがアドバンス・FRの設定を採用し、弱体化していないことにしました。
ダメージチェッカーで確認しても努力値次第で同レベルぐらいだとイシツブテの「じばく」で
スターミーは一撃で落とせます。
前の登場人物紹介でもイシツブテは「いじっぱり」な性格と「こうげき」が高い性格にしていますし。



以上です。
長々と設定を書き連ねましたが、出来るだけ矛盾点が無いようにしました。

・・・イシツブテの腕?
ジョーイさんに不可能なことはないんですよ、きっと。


それでは次回も不定期更新ですがよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 16話

悩んだ末に執筆しました「ポケモン必勝マニュアル」編!

書こうかどうか迷いましたがクチバシティまでの道中の話もなんか入れたいと思っていたので書いてみました。


果たして需要があるかどうか…。
とりあえず前後編で次の話で終わらせるつもりです。


とりあえず暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

 

「お~い、もしも~し。カスミさんや~。いい加減機嫌を直しておくれ~」

 

「…………」

 

「いや、確かに『じばく』はジム戦の前から考えてたけどさ」

 

「…………」

 

「ジム戦があんな津波が起きそうなフィールドなんて知らなかったんだよ。いや、ほんとに」

 

「…………」

 

「まぁ、確かに。あの時の水死体のような状態は打ち揚げられて死に掛けのトサキントっぽくて、ちょっと笑ったけどさ」

 

『カスミのにらみつける!』

『シゲルのぼうぎょがさがった』

『カスミのにらみつける!』

『シゲルのぼうぎょがさがった』

 

「何か言うことは?」

「すいませんでした。だからその右手のメガトンパンチは勘弁してください」

 

一撃で目の前がまっくらになりそうです。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「ところで、ここってどの辺なの?」

 

「さぁ? ハナダシティとクチバシティの間のどっかじゃないのか?」

 

 

 なんとか怒りを鎮めた自称おてんば人魚と一緒にどっかの道を歩いている。迷子である。

というのも、辺りの風景はどこを見ても真っ白の霧。

二人はこの霧のお陰で現在、道なき道を歩く迷子であった。

 

 

「アンタがちゃんと地図を見てないからこうなるのよ」

「ここで残念なお知らせだ。実はこの地図、カスミのお姉さんからもらったものなんだが、日付を見ると俺たちが生まれるより前に作られたものだった」

「……つまり」

「道が改装されて変わっててもおかしくないってことだ。霧が出て道がわかりづらかったからこの地図に頼ったんだが……その結果がこれだよ」

「くっ……姉さんっ!」

「ブイブイ」

 

 

 こんな会話をしながら霧の深い道を歩いているところから、二人と一匹はまだまだ精神的に余裕のようだった。

 

 

「ま、方角は合ってるからいつかクチバシティに着くさ」

「…そうかもしれないけど」

「というか、こんだけ歩いているのに野生のポケモンが出ないことが気になってるんだけど」

「そういえばそうね。近くに町もないのに。……アンタ、この前みたいなショッキングなゲットはやめてよね」

「……そればかりはどうしようも出来ない」

「……なんでよ。なんであんなモンスターボールを剛速球で投げるのよ…」

「長年の癖でつい……。いや、大丈夫だ! ハナダシティで実家に連絡入れた時アドバイスをもらったから、今度こそ問題ないはず!」

「……今度こそって。アンタ、前のイシツブテ以外にもこんなことあったの?」

「ノーコメント」

「それもう答え言ってるから」

「ブイブイ」

「…大丈夫だこんどこそは……ん?」

「どうしたの、立ち止まって?」

「いや、……明かりが」

 

 

 そんな会話のキャッチボールを続けていると霧の中にぼんやりと明かりがあった。

それも一つでなく複数の明かりであった。

カスミも視認したのか不思議そうに視線を向けている。

 

 

「ほんとだ……なにかしら、あれ?」

「複数あるし、なんか動いてね」

「……もしかしておばけ!?」

「ブイ~~~ブイ~~~~」

「こんな昼間からか? 出るなら人魂かもしれないけど。……あとイーブイ、うらめしや~って言いたいのか?」

「人魂だろうがおばけだろうが一緒よ!」

「待てよ、案外ゴーストタイプのポケモンかも知れないな。俺ちょっと見てくるわ」

「って、待ってよ!? 1人にしないでよ!?」

 

 

 二人と一匹が明かりへ近づいていく。

明かりはそれほど大きくなく、ゆらゆらと揺れている。

近づくと少しずつはっきりと見えてくるのは、ロウソク。

火を灯したロウソクをそれぞれ持っている数人の人影が見えてくる。

おばけじゃなかった、と安堵しているカスミを見ながらさらに近付くと、そこには……、

 

 

 

 

 

 

『さぁ、これはなんだ』

『…えっと、ズバット…ですか?』

『霧が深いからといってコウモリポケモンとは限らないぞ』

『……あ、それポッポです!』

『そのとおり。けど、わかって当然。僕たちはその得意技を聞いているんだよ』

『ポッポの得意技は【かぜおこし】、レベル5で【すなかけ】、レベル・・・』

『なのは常識だ。ポッポはどのくらいのレベルで進化する? そしてその進化形の名前は?』

『………』

『ほら、早く答えないとさらに早く走らないといけなくなるぜ』

『……っ』

 

 

 

 

 

「……………」

「……………」

「………ブイ」

 

 

「お、あんなところに公衆電話が。ちょっと用が出来たから電話してくるわ。イーブイ、お前はボールに戻れ」

「ブイ!」

「あ、アタシも」

 

 この世界は旅をするトレーナーが多いためか公衆電話は割とどこにでもある。

しかもお金を払わずに使えるというなんともすばらしい公衆電話だ。

カスミとイーブイと共に公衆電話の前に立ち、受話器を取る。

 

 

「カスミが先に電話する?」

「アンタが先で良いわよ。どうせ同じ所でしょ」

「それもそうだな」

 

 

 受話器を耳に当てダイヤルをプッシュ。

『1』・『1』・『0』と……。

 

 

 

 

「あっ、ジュンサ―さんですか。すいません、こちらに怪しい宗教団体が…」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「え、愛の鞭? 野外でトレーニングマシンで走ることが?」

「はい。いつもしていますから」

「なんで野外で……。トレーニングマシンって屋内で使用する物だぞ」

「それも愛の鞭なんです」

「…ゴメン、意味がわからない」

 

 

 電話でジュンサ―さんをコール、すぐさま現場へ到着された。

流石にただならぬ雰囲気を感じ、全員そのまま逮捕…というわけではなく事情を聴き厳重注意のお叱りを受けた団体様方。

聞くところによるとポケモンゼミの生徒だったらしく、団体の方もなにか問題を起こして成績を落としたくないらしく、すぐさまゼミに帰っていた。

残ったのは野外でトレーニングマシンの上で走らされていた、『ジュン』という生徒。

 

 

「…ジュンサ―さん呼んで正解だったな。俺じゃあの状況を愛の鞭で済ませそうにない」

 

あの団体も流石にジュンサ―さん相手に強く出られなかったのだろう。

おどおどしながらゼミに帰っていった。

 

 

「なんていうか…イヤイヤさせられてるんならもう少し強気で抗議したほうがいいんじゃないのか?」

「シゲルも強気でさっきの男たちをやっつければよかったのに。すぐジュンサ―さんに頼るなんて男らしくないわ」

「そんなことになったら俺は腰に着いてる空のモンスターボールに手を掛けざるを得ないな」

「……やっぱジュンサ―さん呼んで正解だったわよ。下手すれば『119』に掛けることになったかもしれないわね」

「最悪、相手が顔面スプラッターになってたかもな。……自分で言うのもどうかと思うけど」

「ブイブイ」

「……あの、何の話をしているんですか?」

 

 

なんでもない、と言って気になっていた事に話題を変える。

 

 

「ポケモンゼミって、確か学校みたいところだったよな?」

「はい、そうです。僕はそこの初級生徒です」

「その学校ってどこにあるんだ? 見当たらないんだが…」

「ああ、今は霧を出してますから見づらいんですよ。ほら、すぐそこにあります」

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

 

 なんとも懐かしいフレーズが聞こえると同時に霧が晴れだす。

そして見えてくる大きな校舎がかなり近くに立っていた。

 

 

『今日の授業の霧の中は終わります。明日は雪の中での授業を行います』

 

 

 学校特有のエコーのかかった放送がかかり終わると完全に霧が晴れていた。

あの霧の原因はこの校舎のようだ。

野生のポケモンが出ない理由も近くに人口建築物のこの校舎が原因みたいだ。 

 

 

「…はぁ、明日は雪の中か…。きっと雪だるまにされちゃうよ」

「君はいつもあんないじめにあってるのか」

「いえ、いじめではありません。愛の鞭です」

「…君は実はただのマゾなんじゃ…」

「ほら、あの人を見てください」

 

 

 ジュンが指差しをした方を見ると牛乳瓶の蓋の様な眼鏡を掛けた中年の男が芝生に座り読書をしていた。

 

 

「あの人、留年して年を取りすぎちゃって、もうみんなから目を向けられなくなって愛の鞭をしてもらえないようになってるんです」

「…あれだけ年を取ってまで留年続けてるのもある意味すごいな。俺なら実家に帰ってるよ」

「そんなこと出来ませんよ。せっかく入学出来たのに親に合わせる顔がありません」

「ああ…そういえばゼミって入学金がとんでもなかったもんな。帰りづらくもなるか」

 

「あの人、僕と同じ初級なんですけど。ずっと1人で参考書を読んでます」

「あれだけ年取っても初級か…。なおさら帰りづらいな」

「ちなみに名前はベンゾウさんとか」

「いや、名前を教えられても…………え?」

「ねぇ、ポケモンゼミってどんな所なの?」

 

 

 霧が晴れてから校舎を不思議そうに見ていたカスミが会話に加わわる。

どうやらこの面子でポケモンゼミを知らないのは自分だけだと感づいたらしい。

 

 

「ポケモンゼミは全寮制のトレーナー養成学校です」

 

 

ちなみに僕は初級なんでバッジ2個分の資格があります、と前置き説明をする。

ポケモンゼミは入学金・授業料がとんでもなく高いが、卒業者には各ジムでバッジを集めなくてもポケモンリーグに参加が可能になる。

卒業するためには初級・中級・上級とクラスを上げていかなければならない。

初級はバッジを2つ分と同じレベル・中級は4つ分・上級卒業者になるとポケモンリーグ出場資格がもらえる。

なんども言うが入学金・授業料がとんでもなく高い。

 

 

「そういうわけで僕もこのゼミに居たいんです。パパとママが高いお金を払ってここに入学させてくれましたし」

「…そうだったの」

「けど、だからって愛の鞭を素直に受け入れるのもどうかと思うんだがなぁ」

「良いんです。だって問題に正解したらもっと難しい愛の鞭をさせられますから」

「……君、完全に卒業する気ないよね」

 

 

もしかしたら家に帰りづらくてずっとここに居たいだけか、と思ってしまう。

 

 

「というかシゲル。アンタやたら詳しいわね。ここのゼミのこと」

「俺の所にここのゼミから推薦状が来たことがあったからな」

「え!? 推薦状って言ったらここの入学金と授業料が免除されるじゃないですか!!」

「あ~、そんなこと書いてあったっけ」

 

 

もう捨てちまったな~、とぼやきながら思いだす。

オーキド博士の孫、という理由で推薦状が来たのか。

はたまたタマゴの第一発見者ということで一部の研究者から目を付けられたからか旅に出る数か月前に一通の推薦状が来た。

最も、内容を読んでからすぐさま興味を無くし断った。

シゲルの姉もやめときなさい、と言ってシゲルに賛同したし、祖父のオーキド博士も同意した。

 

 

「なんで断ったの? アンタってポケモンリーグを目指してるんでしょ?」

「そのつもりだけど、考えてみたらこの全寮制の校舎で限られたトレーナーとしかポケモンバトル出来ないって思ってさ」

「……ああ、なるほど。確かにポケモンのレベルが中々上がりそうにないかも」

「実践経験も乏しくなるし、ポケモンバトルも決まった闘い方になって新鮮さがないし。なにより全寮制だから遠出して目新しいポケモンがゲット出来ないし」

「確かに息苦しい環境かもしれないわね」

「………けど推薦状をもらえるなんてすごいです! この学園にはセイヨさん以外もらった人はいないんです!」

「…誰、その人?」

 

 

初級クラスのトップの人です、と懐から一枚の写真を取り出す。

 

 

「この人がセイヨさんです。初級クラスなのに既にバッジ3つ分以上の実力を持っているすごい人なんです。しかも他の生徒たちからもすごい人気もあるんです」

「人気があるって、もしかしてさっきの集団の生徒たちも?」

「はい、セイヨさんは特に男子生徒たちから人気がありますから」

 

 

 それは君もなんだろうな…と言いそうになった言葉を飲み込む。

写真の右上に書かれた、傘の下にある『セイヨ』・『ジュン』の二つの名前は見て見ぬ振り。

野暮なことは聞かないのがマナー。

 

 

「要はさっきの集団のリーダーがこの女なんでしょ。なんか性格悪そうね」

「カスミ……ひがむなよ」

「ひがんでないわよ!!」

「やめとけって。カスミが男共を侍らせてたら引くぞ。カスミは今のままで良いんだって」

「なんで慰めてるみたいな目してるのよ! 違うわよ! 姉さんやこの女がうらやましい訳じゃなんだから!」

「わかってる、わかってるって。カスミは今のままが一番ってわかってるって」

「なんかアタシを見る目がかわいそうな物を見てる目になってない!?」

「…あの僕はセイヨさんみたいに性格悪くてもかわいければいいんで」

「悪かったわね!! この女よりもかわいくなくて!!」

「えっ!? いえ、僕はそんなつもりじゃ!」

「カスミ……ひがむなよ」

「ひがんでないわよ!! わかった! こうなったらアタシがソイツに直談判してくる!!」

 

 

 肩をいからせ、大股で校舎に向かおうとしているカスミを慌てて止める二人。

が、ずるずると引きずられながらカスミを歩みを止めることが出来ない。

 

 

「待てっ! 今のお前が校舎に入ると確実に死人が出る! 落ち着け!」

「ゼミで暴力は禁止なんですよ! そうなったら僕このゼミに入れなくなっちゃいますよ~!」

「ここまで言われて黙ってられる訳ないでしょ! なんか言ってやらないと気が済まない!」

「お前は真っ先に手が出るタイプだろうが! 出会い頭に何仕出かすかわからんわ!」

「うるさい! アンタもその写真見て何も思わないの!」

「いや、俺は別にひがんでないし………ブッ!?」

 

 

 真っ先に手が出てシゲルにメガトンパンチ。

流れるようなモーションからこれまでの使用率が伺える。

ほとんどシゲル相手に使用率を増やしていってるが。

 

 

「っ痛て。わかったわかった。ジュン、写真を見せてくれ。こいつの怒りを鎮められそうな物を写真から探す」

「えっ、……あ、はい。どうぞ」

 

 

 カスミを抑えながら再びジュンの懐から出された写真に目を通す。

年は同じくらい、顔もなんの欠点も見当たらない美形。

写真に映っている後ろ姿からはなんの問題もない。

楽しそうに学友と話しているようでもあるし、性格が悪いと言われていたが、あまりそうにも見えない。

完璧超人と言われても通じそうである。

 

 

「…………ん?」

「どうかしました?」

「………いや、この写真って君が撮ったの?」

「え、ええ、まぁ」

 

 

 右上の相合傘が今頃恥ずかしくなってきたのか頬を染めながら頷く。

しかし、シゲルが気にしているのそこではなく・・・、

 

 

「…この写真、明らかにカメラ目線じゃないんだけど・・・。これどこで撮ったんだ?」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

すっ、と写真を懐にしまい、校舎の方へ歩いて行く。

 

 

「…今の時間ならセイヨさんはトレーニングルームに居ると思います。こっちです」

 

 

カスミがドン引きしていた。

 

 

 

 

 





うむ、サブキャラまでもがキャラ崩壊しているな。
けどこれってキャラ崩壊というのだろうか・・・。
原作でも色々とツッコミ所が多い話だった気がします。


今更ながら、カスミの扱いが原作よりもひどくなってる気が・・・。


気のせいですね!!


では、相変わらず更新速度は期待できませんが次回もよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 17話


 前後編と言っておきながら、次回に話を持ち込むことにしました。
長々と話を書いてると修正したい部分がどんどん出てきてしまう…。
なので今回は本編短め+おまけということで。

それでは暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

 

 霧が晴れてそびえ立っている校舎の玄関に入り〝入校許可証″をもらう。

ここにいる生徒の大半は高い入学金と授業料を払えるお金持ちの家が多いため、その手の悪い人から狙われやすい。

ポケモンを持っているとは言え、年若い生徒たちを危険を負わせたらお金持ちの親から苦情が殺到して運営も危うくなるだろう。

そういったことのため、このゼミに入るには〝入門許可証”がいるのだ。

そう説明しながら、校舎内の案内をしているジュンに付いていく俺たち。

やがて『トレーニング室』と書かれた部屋に着いた。

 

 

「いつもここでセイヨさんは自主練習してるんです」

「………ゲームセンター…?」

 

部屋に入って第一声の感想がこれだった。

 

 

「セイヨさんを納得させるならポケモンバトルで勝たないと意味がないよ。

ここはポケモンバトルの実力が物を言うんだから」

「……ここで、自主練?」

 

 

 奥にポケモンバトルを行うフィールドがあるが、それ以外はゲームセンターに置かれてそうな筺体ばかりが置いてある。

もしくは自動車の教習所に置かれてる筺体か。

 

 

「これなに?」

「僕たちはこのシミュレーションで自主練しているんです」

 

 

 そういって一台の筺体の前に腰を掛けて電源を入れる。

しばらくすると画面に『ゲンガー』と『ニドリーノ』の闘っている映像が映り、

 

(………あれ?)

 

その映像が終わると『ポケットモンスター 学』というタイトルが表れてゲームが開始される。

ボタン操作で『つづきからはじめる』を選択。

そして8bitクラスのドット絵が映され、十宇キーはなくスティックでキャラクターを移動させている。

 

 

「………って、なんでやねん!!」

「イタッ!? え、なんですか!? なんで僕叩かれてるの!?」

「なんだよ『つづきからはじめる』って!? なんだよ『ポケットモンスター 学』って!? なんだよこのドット!? ほかにも色々ツッコミたいけどなんだよコレ!!」

「え、いやだから……これで自主練を」

「おかしいだろ!! なにがおかしいってなにもかもおかしいよ!! ツッコミ所が多すぎてどこからつっこめばいいかわからん!!」

 

 

 ここまで感情を高ぶらせたことがあっただろうかと訝しむカスミ、呆然。

叩かれたジュンもあまりのテンションの高さに付いていけず、呆然。

尋常でないシゲルを止めるためにカスミのメガトンパンチ。――――静かになった。

 

 

「え~と、これでアナタはいつも練習してるの?」

「え、ええ、まぁ。大体みんなこのシミュレーションで練習しているんだ」

「へぇ~。けど、これで練習になったりするの?」

「もちろん。これにはカントー地方のジムリーダーのデータが入ってるんだ。ほらこれ」

 

 

 画面に映っているキャラクターを動かしどこかの施設へ入るとなにやらバトルが始まった。

お相手はハナダジム・ジムリーダーと映っている。

 

 

「僕はだってバッジ2個以上の実力を持ってるからね。いつも勝ってるんだ」

 

 

 ほらね、と画面でバトルをしているのはスターミーとウツドン。

ボタンを操作し、はっぱカッタ―をウツドンに指示。

スターミーが倒れる。

 

 

「なによこれ!?」

「なにって、僕だってバッジ2個分の実力はあるからね」

「冗談じゃないわよ! ハナダジムがこんな弱いわけないでしょ! シミュレーションはシミュレーション、アタシはアタシ!」

「え、君ってハナダジムのジムリーダー?」

「ハナダジム美人4姉妹の末っ子よ! ついこの間のジム戦もアタシが受けたんだから!」

「へ~、けど僕だっていつもこのシミュレーションで勝ってるんだ」

「上等じゃない! 実際に闘ってみようじゃないの!!」

「なら向こうにフィールドがあるんだ。負けないよ」

 

 

 慌ただしく、当初の目的を完全に忘れている二人がポケモンバトルを行うためにフィールドへ向かっていく。

そんな二人を静観し、われ関せずの姿勢を崩さない一人の男。

 

 

「……スティックでキャラクター動かすの難しいなぁ。おお、Bボタン押しながら移動しても走らない! 初期の方のバージョンだな。せっかくのゲームなんだし、最初はフシギダネを選んで……あ、あぶね、遂レポートするところだった」

 

 

 周りの空気なんて知ったこっちゃないと思わんばかりにメガトンパンチから復帰し、筺体の前に座ってシミュレーションを楽しんでいるシゲル。

気分は久々にゲームを初めからしたくなるゲーマー、誰もが経験はある『最初からプレイ』。

 

 

「ゲーセンの筺体でポケモンが出来るとは。ゲームの世界でゲームするってのも変な気分だけど」

 

 

 などと言いつつ、スティックでキャラクターを操作ながらゲームに没頭する主人公。

向こうで相性悪いはずのウツドンを一方的にボコって最近の扱いの悪さの鬱憤を晴らすカスミ。

吹き飛んでいくウツドンを見ながら絶望の雄たけびを上げているジュン。

レポートされそうになった、危うし見知らぬ生徒のセーブデータ。

 

協調性がない面子だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「…それで、あれから落ち着いた…」

『はい、ご迷惑をお掛けしました』

 

 

 数日前の電話から、様子を見るために友人である彼女、エリカに再び連絡をとったナツメ。前の電話では、正直彼女の狼狽っぷりとあまりにもぶっ飛んだ話題に疲れたので少し投げやり気味に電話をこちらから切ったのだが…。後々思い出すとその後とんでもないことを仕出かすのではないかと不安になり、こうして電話をした。

 幸い、画面に映る彼女からは少なくとも負の感情は感じられない。自分を落ち着かせ、心にも整理が出来ているようで安心した。

 

 

『念のため、ナナミさんに連絡を入れて仔細を伺ったのですが、どうやら私の懸念だったようです』

「……そう、ナナミさんに」

 

 …まぁ、それで落ち着いたのなら良しとしよう。

シゲルの姉であるナナミさんに確認したのならば安心もするだろう。

覗きで得た情報を相手の家族にバラして大丈夫かなぁ、と思いもしないが。

 

 

「……一応確認して置きたいんだけど、……どんな風に聞いたの?」

『シゲルさんは異性との遊びに盛んなのかと』

「……聞くんじゃなかった」

 

 

 …よりによってなんて聞き方をしているのだろうか。明らかに相手の家族を不安にさせる聞き方だ。

 

 

「……それで、なんて答えられたの?」

『旅に出ながらそんな遊びが出来るほどあの子は器用じゃない、と』

「……聞くんじゃなかった」

 

 

 …あまりにもシビアで現実的な意見。確かに家族であるナナミさんなら弟のそういった事を分かるかもしれないが…。だとしても答えに優しさが全く無いような。

 

 

「……それで、納得して落ち着いたアナタもけっこうひどいような」

「? すいません、聞き取れなかったのですが」

「…なんでもないわ」

 

 

 まぁ、この友人はシゲルとの付き合いが長いから納得するところが合ったのかもしれない。

あまりとやかく言っても意味もないようだし。

 

 

『そういえば、ナナミさんに電話した時、少し前にシゲルさんからも電話があったようです』

「…そう、シゲルもホームシックにでもなったのかしら」

『いえ、なんでもポケモンに出来るだけダメージを与えずゲットすることは出来ないか、と』

「? ……ポケモンバトルでダメージを与えずにゲットしたいということ?」

『いえ、モンスターボールでダメージを与えずに、と。私も意味がわからなかったのですが』

「……………ポケモンにまで被害を与えてるとは」

『ナツメさん? どうされました、額に手を当てて』

 

 

 思い出されるのは彼との初めての邂逅。いや、邂逅と言えるのかもわからない。

 何か理由があったのか、今思い出してもわからない。ただ、いきなりこちらへと投げられた剛速球。訳もわからず私へ向かってきたボールに驚くよりも早くボールは私に当たった。いや、正確には私の持っていた人形に。完全に殺人級の球速だった。

 首から上が文字通り吹き飛び、無残になった人形にSAN値が一気に減ったものだ。その後、彼に詰め寄り色々文句を言ってやったのが彼との出会いだった気がする。

 

 そういえば、あの後人形がどこにいったのかまるで消えたかのように私の前からなくなってしまった。両親が捨てたのかと思ったが、彼に詰め寄り怒りを露わにした私を見ながら驚いて固まっていた両親が捨てたとは考えにくい。

 あの人形はどこにいったのだろう?

 

 

『ナツメさん?』

「……なんでもないわ、考え事をしていただけ」

『? そうですか。あの、申し訳ありませんが私、これからジム戦がありますのでこれで』

「…ええ、ごめんなさい。長々と電話してしまって」

『いえ、全くかまいません。私もナツメさんと話そうと思っていましたから。それでは失礼します』

 

 

 手を振りながら笑顔で電話を終えた彼女が画面から消える。こういった礼儀正しく明るい表情が彼女の常なのだ。…最近はやたら暴走することが多くてこんな別れ方を久しく見なかったが。

 友人との会話を終えて部屋を見回す。もしかしたらあの人形があるのではないか、と。けれどもやはり見つけることはなく。

 

 そういえばあの人形はいつから持っていたんだっけ…?

 

 

 

 

 

 

◆◆◆登場人物紹介◆◆◆

 

 

 

 

◆ナナミ

 

遂に名前が出た本編最チートキャラ。

シゲルの姉であり、シゲルの師であり、シゲルの恐怖の対象。

アニメでは名前のみしかわからず、どんな容姿かも不明。

ゲームではポケモンのなつき度を上げてくれるキャラクターだったが…。

このssではシゲルの基礎ポイントを上げてくれるキャラクター。

このssで屈指のキャラ崩壊がすごい人。(容姿・性格が元々不明なためキャラ崩壊というよりもキャラ設定というのかもしれない)

 

 





今更ながらポケモンのssなのに、ここまでポケモンが出ないのもどうかなぁ~と思ってたり。

ただポケモン出すと鳴き声の表現が難しくて……。
出すのを控えざるを得ないというか……。


とりあえず次回もこの話の続きを書きます。
更新速度は相変わらず期待出来ませんが次回もよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 18話


 こんにちは、こんばんは、初めまして。
 なんてテンプレなあいさつをかますほどお久しぶりな投稿ですいません…。

 とりあえず、ちゃんと生存していますよ! なんとか終わりまで書き続けて見せる!
 なんて活きこんでるんならもっと早く書けとか言われそうですけど、すいません。けっこうギリギリです。主に更新速度が。

 言いわけをするなら今回、内容をほとんどオリジナルにしてみました。
 原作通りを書いていくうちに「なんか納得出来ないなぁ」と自分で書いたssに納得が出来ず、いっそオリジナルにしよう、と。その結果がこの更新速度だよ…。

 まぁ相変わらずのはっちゃけたssですが暇つぶしにでもどうぞ。




 

 

 

 

 

「そ……そんな、ウツドンは水タイプに強いはずなのに」

 

 

 ゲームに没頭しているシゲルから数メートル離れたフィールド。

シミュレーション通りの相手のポケモンを見て余裕ぶったのも束の間。ハナダジム代表のカスミのスターミーの前にあっけなく惨敗。結果を目にしたジュンの胸中は驚愕と衝撃であった。

 

 

「どう! シミュレーションはシミュレーション、アタシはアタシ! わかった!」

 

 

 対面にいるカスミの声に意識が向く。

 シミュレーションはシミュレーション…つまり実戦的ではないと言っているのだろうか。なら、自分やこのゼミに居る生徒が学ぶことは意味があるのだろうか。ジュンの胸中に疑問が浮かび上がった。

 

 

 

「……だからアナタは駄目なのよ!」

 

 

 

 いきなり後ろから聞こえてきた女性の声に体が跳ね上がる。聞き間違えるはずがないほどジュンはこの女性を日ごろ常に意識しているのだから。

 

 

「セイヨさん!?」

 

 

 後ろを振り向くと、数人の男子生徒と、その中心に毅然と立ち、こちらに視線を向けている一人の女性・ユウトウセイヨの姿があった。

 

 

「……アンタがセイヨ、ね」

 

 

 またもや後ろから女性の声に体が跳ね上がる。

 さきほどのセイヨのような凛とした声ではなく、腹から絞り出すような低い声に寒気を感じた。

 対面に立っていたセイヨには聞こえていなかったようだが、間に居るジュンにはしっかりと聞こえた。……聞きたくはなかったが。

 

 

「彼女がハナダジムの末妹とはいえ、ジムリーダーの代理を務めることもある。まして、旅に出て持っている水ポケモンもそれだけ成長しているわ」

 

 そう言いながら近づいてくる。平素ならジュンの内心は大いに喜んでいただろう。けれども、見つめる瞳は冷めたものを見る目であり、こんな目で自分が見つめられることは初めてだった。

 

「…ジュン君。私はね、クラスメイトとは良きライバルでいたいの」

 

 瞳を閉じて、感慨深く言葉を発するセイヨに、ジュンは心を奪われた。けれども再び開かれた瞳にはやはり冷めた目をしていて…。

 

「互いに切磋琢磨し合って、共に強くなる。クラスメイトで在り、ライバルである、そんな関係でいたいの。――けれどもアナタはなに?」

「…えっ?」

「アナタはいつも周りの友達から愛の鞭を受けているのに、いつまで経っても勉強不足のままで、いつまで経っても強くなれていない」

 

 その言葉にはなにも言えなかった。確かにずっと愛の鞭を受けていたし、分からない問題――否、答えが分かっていてもこれ以上厳しくなるのがいやだから分からない振りをしていたし、先ほどのカスミとのバトルでも相性が良いはずのポケモンなのに惨敗。勉強不足、強くない、そんなセリフを言われてもなにも言い返せなかった。

 

「いつまで経っても強くなれないのなら、いつまで経ってもそのままなら――このゼミから、私の前から!」

「………」

「―――消えて」

 

 目の前でセイヨが体をひり返すのを見ながら、絶望的な言葉を掛けられ、目の前が真っ暗になっていく。クラスメイトに、それも自分が想っていた少女から言われた言葉だからこそ、なおさらジュンの心が傷つく。

 そんなジュンを見向きもせずに去っていくセイヨにただ、縋るような視線を送ることしか出来なかった。

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

 これで話は終わり、と言わんばかりの空気をぶち壊すような鋭い叫び声に、セイヨが、誰もが視線を向けた。

 視線の先には仁王立ちをし、怒気を隠さんばかりの表情をセイヨに向ける少女。先ほどジュンをポケモンバトルで完勝したカスミがにらみつけていた。

 

 

「さっきから黙って聞いてれば、いい! 『弱い』男の子を守って上げるのが――本当の女の子よ!!」

 

『―――――漢らしい!?』

 

 潔く言い切ったカスミのセリフに取り巻きの男子生徒の誰もがそう思った。心なしかカスミの背中に津波が起きたかのような心象風景が見えるほどの錯覚に陥る。

 …弱い男の子、と追い打ちを掛けられ更に傷ついているジュンには誰も気づいてない。

 

 

「男の子にひどいことばっかり言って…。一人の女の子としてアナタが許せない!」

(……あなたも言ってるんですけどね)

 

 そんなジュンの心境などお構いなしに二人の少女はにらみ合いを続ける。互いの主張を譲らないかのように、ここで引いては女が廃る、と言わんばかりの気迫に取り巻きの男子生徒も固唾を飲んで見守る。

 

「あら、私は何も間違ったことは言ってませんわよ」

「間違ってないわよ! けど、言って良いことと悪いことがあるじゃない!」

「直接言わなければいつまで経ってもダメなままで現状に甘えて成長しないわ」

「確かにダメなままだけど、そこは心の広さを見せて長い目でダメな彼を見なさいよ!」

「見たわよ! 何度もダメな彼が愛の鞭を受けているところを! けどいつまで経っても成長しない弱いままなのよ!」

「だったらアナタが弱い彼を強くしなさいよ!」

「弱いままで、いつまで経っても成長しない生徒と一緒に勉強しても学ぶことなんてないわ! そんな彼と付き合うなんて時間の無駄よ!」

「それでも一緒に勉強して上げるのが女の子が見せるやさしさじゃないのよ! ああいった男の子はね、こっちからアクション起こさないと何もしないウジウジ・ジメジメとした奴になるんだから!」

「既にそうなってるのよ!」

「だったらなおさら強気でしごいて、矯正させるぐらいのつもりで一緒に勉強してあげなさいよ!」

「だから、それが時間の無駄だって言ってるのよ!」

 

 

『―――もうやめてあげて!?』

 

 

 固唾を飲んで女性二人の口論を見守っていた取り巻きの男子生徒全員が思わず同情してしまう会話内容に心を一つにした。既にジュンは泣きが入っている状態である。

 ジュンの成績を知っている彼らは立場的にセイヨの味方だし、口論が始まる前はセイヨの考えに賛同していたのだが……。 流石にこの口論内容の酷さを本人が直に聞かされるのを見ると思わずジュンに同情してしまう。 ここにいる男子生徒同様にジュンがセイヨを慕っていると知っているからなおさら。

 自分たちが本人から直接こんな話を聞かされたら、と思うと心情的にジュンを慰めたくなる。

 かといって、このヒートアップしている二人の女性の間に入る勇気なんてあるはずもなく。

 

 

『―――もうやめてあげて…』

 

 

 とりあえず、この一件が終わったら今後やさしく接しようと思う彼らであった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「いいわ! こうなったらポケモンバトルで白黒着けようじゃないの!!」

「望むところ! このポケモンゼミ初級クラスの一番星のユウトウセイヨがどれほどの実力か思い知らせて上げるわ!」

 

 もはや当事者であるジュンをそっちのけで勝手にヒートアップしている二人に誰も口を挟む勇気がないため、成るように成れと言わんばかりに誰もが静観している。ぶっちゃけ、なんでも良いから早く終わって欲しい。

 

「末っ子だからってハナダジムをなめないでよね! がんばって、スターミー!」

 

 先ほどのウツドンの戦闘から出っぱなしであったスターミーをそのままフィールドで戦闘をさせるカスミ。ウツドンとの戦闘では『みずでっぽう』一発で決着を付けたのだからダメージを受けていない。なによりカスミの手持ちのポケモンの中では一番強いポケモンでもある。

 対し、セイヨもフィールドに立ち、そばにある棚からモンスターボールを一つ手に取る。

 

「――知っていてカスミさん。ポケモンは相性が全てじゃないのよ」

「なによ、もう負けた時の言いわけ。言っとくけどさっきのバトルじゃ相性の悪いウツドン相手に余裕だったんだからね」

 

 余裕とか言ってやるなよ、とツッコミを入れたい男子生徒一同。

 

「そう、いくら相性が良くても負けることはある。ポケモンバトルで必要なのは『レベル』よ。―――行きなさい『ゴローン』!!」

「―――――!?」

 

 モンスターボールをバトルフィールドに投げ、閃光と共に姿を現したのは『ゴローン』。

 セイヨが選択したポケモンは、『いわ』・『じめん』タイプのイシツブテの進化形であるゴローン。進化形であるためイシツブテよりも能力は高く、主に物理攻撃を得意とするポケモンである。

 そしてタイプを見れば当然水タイプに『弱い』。

 

「……ゴローン…なんて…」

「ふふふ、見せて上げるわ。相性が悪くてもレベル次第で勝てるということを!」

「……ゴローン……ゴローン…」

「先にポケモンを出したのはあなたなのだから、先手をどうぞ」

「……ゴローン…イシツブテの…進化形…」

「さぁ、早く始めなさい!」

「―――アンタ馬鹿じゃないの!!」

 

 

 ―――なんですって?

 

 

「……どういう意味かしら。この私に対して…『馬鹿』とは…」

「そのまま意味よ! アンタってバッカじゃないの!!」

「!!―――なんですって! この私に対して馬鹿ですって!?」

 

 

 ポケモンバトルが始まっていないにも関わらず、いきなりカスミのヒステリーと暴言。

 暴言を喰らった本人であるセイヨが怒るのは当然とも言える。

 

 ……が、

 

「アンタ死にたいの!? 本気で危ないのよ!」

「……はぁ?」

「死ぬかもしれないのよ!? アンタも、アタシも、そこに居る生徒たちも!!」

「………(意味がわからない)」

 

 なんか意味もわからず心配している、と誰もが思っている。男子生徒たちもカスミが何を言わんとしているかが理解出来ず首をかしげるばかり。無視してポケモンバトルを始めようかなぁと思ったりもしていたが相手のあまりの狼狽っぷりにそれも躊躇わられた。

 

「ちょっとそこで待ってなさい! アイツ呼んでくるから!」

「……はぁ」

 

 状況が一向に理解出来ずに生返事。

「シゲル~~!」と呼びながら、シミュレーションをしている男の子に向かうのを黙って見ていることしか出来ない一向だった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

「シゲル! アンタなにやって………なにシミュレーションで遊んでんのよアンタは!!」

「うお!? …びっくりするだろカスミ。いきなり大声出すなよ」

「アタシがポケモンバトルやったり、かよわい男の子を守るために舌戦したりしてる間、アンタなにやってんのよ!?」

「待て!? 拳を握り締めるなカスミ!? 俺は見ての通りシミュレーションで勉強してたんだ! なにもおかしなことはしてない!」

「少しはアタシを応援したり労ったりしなさいよ!」

「応援したり労ったりって……。なに? 負けたのポケモンバトル?」

「負けてないわよ! 余裕で勝ったわよ! アタシの完勝だったわよ! それで今は腹立つくらいに男を尻に敷いてそうな女とポケモンバトルを………そうよ! そいつがヤバいのよ!?」

「……テンション高いなぁ。……どったの?」

「そいつ『ゴローン』を出したのよ!?」

「?……別に良いじゃないか。誰がどのポケモン出そうとそいつの自由じゃないか」

「アタシの『スターミー』相手に『ゴローン』出して勝とうとしてるのよ!!」

「……なん……だと!?…」

 

 

◇◇◇

 

 

「死ぬわよ! 冗談抜きで死ぬかもしれないのよ!」

「するなよ! 絶対に『じばく』するなよ!」

 

(………増えた)

 

 シミュレーションをしていた男の子を引き連れてきた後はようやくバトルかと思ったのだが。

 なぜかそのまま一緒になって『ゴローン』を糾弾している。相変わらず状況が全く理解できない一同。ここまで相手が必死なのに意味が全く伝わらないのが、なぜか少し申し訳ない気分になってくる。

 

「こんな機械が多いところで『じばく』したら大惨事になるのがわからないの!?」

「するなよ! 絶対に『じばく』するなよ! フリじゃないからな!!」

 

「………『じばく』しませんから、もう始めていいかしら。『じばく』しませんから……」

 

 大事なことなので2回言ったそうです。大事な事なので。

 

 

◇◇◇

 

 

「スターミー!! 『みずでっぽう』!! 油断しないで常に距離を保って!!」

「良いぞスターミ―!! 攻撃後は特に相手の動きに鋭敏になるんだ!! 油断するともらうぞ!!」

「ブイ!! ブイ!! ブイーー!!」

 

 紆余曲折あって、ようやくポケモンバトルが始まったのだが…、

 

「…………強い」

 

 現在、フィールドではスターミーが優勢であった。

 

「スターミー!! 続けて『みずでっぽう』!!」

「距離を縮められてるぞ! 間合いを取るんだ!!」

「ブイ! ブイ!!」

 

 ポケモンのレベルは間違いなく『ゴローン』が上である。その証拠に何度か『スターミー』からの攻撃をもらっても『ゴローン』は闘えている。同レベルの『ゴローン』ならば既に倒れているはずのダメージを耐えきっているいるのだ。

 シゲルはそれを見て「…パネェ」と呆然としていたが、事実、まだ『ゴローン』は闘える。

 セイヨもレベル差による力押しで『ゴローン』で『スターミー』を圧倒出来る、攻撃を耐えきれると踏んで選出したのだ。

 けれども、現在フィールドによる試合展開は全く予測出来なかった。

 

 

「ゴローン! 『たいあたり』!!」

「スターミー、飛んで!!」

 

 

 攻撃を跳躍して回避する『スターミー』。これも何度目かの攻防のやりとり。

 

 

「スターミー、『みずでっぽう』!! 水圧で距離を取るのよ!!」

 

 

 『ゴローン』に向かって『みずでっぽう』の攻撃を行いながら、自身は発射した水圧で空中で距離を離す。文字通りの「ヒット&アウェイ」を見事に使いこなす様はセイヨだけでなく男子生徒ですら舌を巻く光景だった。

 なにより、この闘い方は近距離で物理攻撃を得意とする、所謂『インファイト』の『ゴローン』が一番苦手とする。

 

 

「ゴローン!! 『たいあたり』!!」

「スターミー! 『かたくなる』!!」

 

 

 どうしても捌ききれない攻撃は回避という選択肢をすぐに放棄し自身の『ぼうぎょ』を底上げしてダメージを抑え、すぐさま距離を取る。これも何度目かの光景であった。

 

 

(っ! ……状況を挽回出来ない!)

 

 

 セイヨはカスミの戦術に翻弄されていた。

 

 

◇◇◇

 

 

「スターミー!! 『みずでっぽう』!!」

(何としてでも! 『じばく』される前に殺らなきゃ!!)―――カスミの心の声。

 

 思い出されるのは、数日前の溺死(しかけた)事件。

 こちらに相性の悪いポケモン相手に楽勝だと思ったら、あのザマだ。

 試合に負けるわ、水難に合うわ、挙句に姉に笑われるわ。

 あんなトラウマになりそうな思いはもうしたく無い、とカスミは一切の油断と妥協を捨て、この試合に挑んでいる。全ては自身のプライドと体裁のために。

 

 

 

「良いぞ、スターミー!! 相手の攻撃の予備動作をよく見るんだ!!」

(何としてでも! 『じばく』される前に逃げなければ!!)―――シゲルの心の声。

 

 思い出されるのは、数日前の津波(を引き起こした)事件。

 フィールドがプールなんて試合前には思いもしなかったため、あの試合では一名の被害者を見取って二次被害の恐ろしさを改めて知ったが…。こうして自分に襲いかかる危険が目の前にあると思うと、今すぐ逃げ出したくなる。

 とは言え前回の事件で、それなりにカスミに悪い事をしたなぁ、と思うこともありギリギリまで応援をしようと逃げずにいる。

 けれども、既にカバンから軍手を取り出し、着用。窓を背にし、窓の外がプールであることも確認。そして保険で『イーブイ』をボールから出す。

 相手が『じばく』しようものなら、すぐさま体を180°回転。アクション映画よろしく両腕をクロスして窓をぶち破って脱出。手を切らないように軍手も着用。意味があるかどうか分からないが、保険で『イーブイ』の特性『きけんよち』を頼りに逃げる準備は完璧である。

 あんな悲惨な目に合いたくない、とシゲルは一切の油断と妥協を捨て、応援をしている。全ては自身の体と生存のために。

 

 

◇◇◇

 

 

 そんなそれぞれの思い(打算)なんぞ、相手が知る由もなく、試合は佳境に入る。

 

「スターミー! 『かたくなる』!!」

「っ! ……『ゴローン』! 力づくで突破なさい! 『いわおとし』!!」

「今よ! 『じこさいせい』!!」

「―――っ!!」

 

 

 今まで回避に専念し、捌けないものは『かたくなる』で防御力の底上げを図っていたが、この試合で一度も『じこさいせい』を使ったことはなかった。

 というのもこれもカスミの作戦であった。

 

 序盤に相手に『じこさいせい』を見せると相手はそれを疎ましく思い、大技で一気に攻めてくる可能性が高く、下手をすれば一撃でスターミーを落とされる危険もある。

 そこで相手がこちらの実力を測るために小手調べをしている時に、こちらは回避の間に何度か補助技で自身の強化をしておく。

 試合が終盤、相手が焦れて勝負を掛けようとしたときに『じこさいせい』でHPの回復。

 『かたくなる』でダメージを抑えられたとはいえ、何度か被ダメージを受けていたからこそ勝負を仕掛けたのに、ここで回復をされれば相手は浮足出す。加えて防御力が上がっている状態から回復すればスターミーの短所であるHPの低さを補える。今までのバトルで本命であるこの技、『じこさいせい』を使うタイミングを常に測っていた。

 また相手にこちらの考えを悟らせいないように『みずでっぽう』で相手の気を引かせていた。

 レベル差があるとはいえ、弱点の水タイプを貰い続けることは相手にとって看過出来ない。故に何度かちらつかせれば相手は水タイプの攻撃技のみしか気が回らないだろう。

 

 

 相手はレベル差による短期決戦を挑むだろう、とカスミは踏んでいた。

 なぜならば、つい先日に相性の悪いポケモンと文字通り短期決戦を行ったのだから。

 「ほとんどの場合、相性の悪いポケモンが補助技なしで長期戦を挑む訳がない」、と隣にいる少年もいつか言っていた。それ故にこちらはあえて長期戦の構えをとっていた。

 相手が『じばく』しないと言ったとはいえ、いざとなったらやりかねないかもしれない、と危惧もしていたが確実に勝利を得るためにあえて危険である闘い方を選んだ。

 

 

 (―――考え方がだんだんコイツに似てきたわね。アタシ)

 

 

 良いか悪いかはともかく……。

 それはともかく、バトルは終わりを迎える。

 

 ゴローンの一撃をスターミーが正面から『みずでっぽう』で迎え撃つ。

 『みずでっぽう』の水圧で押され、一気に近づこうとしたゴローンを鈍らせる。しかし苦悶の表情を浮かべながらもそのまま攻撃体勢に移行、おそらく渾身の一撃であろう『たいあたり』をスターミーにぶつけた。

 

 攻撃を喰らい吹き飛ばされるスターミー。だが、『かたくなる』の底上げのおかげだろう。すぐさま体勢を整え待機する。倒れる様子はない。

 対し、ゴローンは追撃をせず、―――否、出来ず倒れ伏す。

 

 ―――決着がついた。

 

 

「―――私の負け…ね」

 

 悔しさも悲しさも感じさせず、自分に言い聞かせるようなセイヨの声が試合を締めくくった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「セイヨさん、僕、ゼミを退学します」

「…そう、ゼミをやめるんだ」

「うん。…さっきのポケモンバトルを見て思ったんだ。ゼミで習う事だけがポケモンバトルの全てじゃないって。だから、僕は家に戻って最初の一匹からやりなおしてみたいんだ」

「―――私も同じ気持ち。ゼミだけではわからないこともあるってわかったわ。けど私はゼミに残ってもう少し自分を見直してみたいの」

「……あの、それで。……僕、セイヨさんの写真を持っているんですけど、これからも持っていて良いですか? ゼミに居た事を忘れないように……」

「……ジュン君。私も持ってるの、クラスメイト全員の写真を」

「―――え?」

「クラスメイトで共に学んだ友人を忘れないようにこれかも大事に取っておくわ。この写真」

「……セイヨさん」

「いつか、また会いましょう。友人として、良きライバルとして」

「ハイ!!」

 

 

 夕焼けが二人の影を延ばし、影が重なっている。

 そんな中、二人は約束をする。いつかまた会おう、と。

 今は離れるけども、いつか交わるときが来ると、二人の心も重なっていた。

 

 

 

 

 

 そんな中、もう一つの二人組は、

 

                 ・・  

 (……盗撮した写真とクラスメイト全員の写真だから、実はロマンも愛も欠片も無いという)

 (……シッ! 言っちゃダメよ、良い空気ぶち壊すから)

 

 

 ……終われ。  

 

 

 

 

 

◆◆◆登場人物紹介◆◆◆

 

 

 

◆ジュン

 

 

 ポケモンゼミの生徒であり、実は盗撮の疑いのある人物。

 アニメでサトシたちに見せた写真ではマジでセイヨのみの後ろ姿、しかも全身を映しているという。トオル(カメラマン小僧)に匹敵しそうなテクニックを持っていそうである。

 アニメでは故郷に帰ってやり直すということだが、当然、その後の動向は不明。

 彼は今なにをしているのか。

 

 

 

◆セイヨ

 

 

 ポケモンゼミの生徒で、ゼミの基準ではバッジ3つ分の実力があるそうな。

 このssでは「露骨な尺伸ばしかなぁ」と思い、触れていなかったが、

「そう、天下に名高き名門予備校ポケモンゼミ初級クラスの一番星、銀河の果てのそのまた果てに光り輝くアンドロメダかと人は呼ぶ、しかして、その実態は、ユウトウ・セイヨ!」

 というロケット団ですら「自分たちよりも壮大」と言わせるほどの前向上を持っている。

 当時のスタッフもすごいことを考えているのだと思ってしまう。ちなみに前向上中は背景が宇宙であった。

 

 




 
 相変わらず文章の書き方が安定していなくて申し訳ありません。
 なんか謝ってばっかですけど…。

 色々試して、読みやすいと思ったらそれにしますが、どうにもイマイチ感じが掴めないというかしっくりこないというか。

 では、相変わらず更新速度は期待できませんが次回もよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 19話

最近ポケモンX・Yよりもモンハン4が気になってる駄目作者です。
今回は読み切りみたいな感じにしたかったんですけど、もうすこし続けます。
 
話的には一気に飛んだ感じですけど…。

とにかく暇つぶしにでもどうぞ。


「ゴローン! 『じばく』!!」

「ッ!!」

 

 

 ジム内で一際大きい爆音が響き渡る。

 光と音が終わると、爆風と砂埃が起こり、視界が塞がれる。

 少しずつ視界が戻ってくると、やがて2体のポケモンが見えてくる。しかし、砂埃が舞う中、ぼやけて状態が確認出来ない。

 対面のジムリーダーも同じだろう。固唾を飲んで目を凝らしている。

 

 そして、少しずつ視界が広がった先には、2体のポケモンが倒れ伏していた。

 『じばく』したゴローンと、―――至近距離でモロに喰らった、ライチュウが…。

 

 

「ライチュウ! ゴローン! 共に戦闘不能!! よって勝者、マサラタウン・シゲル!!」

「Oh!! No~~~~~~!!」

 

 試合終了の宣言と共に、野太くも流暢な英語がジム内に響き渡った。

 

 

 現在クチバシティのクチバジム内。そしてクチバジムのジム戦を攻略したシゲルであった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「クレイジーなバトルだったぜ、ボーイ! ここまで思い切りの良いバトルは久しぶりだ!」

「どうも。マチスさんもかなりアグレッシブな闘い方で驚きましたよ」

 

 握手をしながらお互いを讃える。ゴローン相手に『メガトンパンチ』を繰り出すライチュウに「なんて命知らずな!?」ということで驚いていたのだが。

 

「けど、こう言っては失礼かもしれませんけど…。なんで『でんきタイプ』のジムリーダーなんですか? 随分立派な体格をなさっているので『かくとうタイプ』のジムリーダーもありなのでは?」

「HAHAHA、確かに軍人は体が資本だが、軍に所属していたものは全員『でんきタイプ』のポケモンを所持しているのさ!」

「?……そうなんですか?」

「Sure! いざという時は『AED』の代わりになるからさ!」

(自動体外式除細動器、電気心臓マッサージ)

「………なるほど」

 

 思わず納得してしまった。

 

「これがジムバッジだ。受け取ってくれ!」

「はい、ありがとうございます」

 

 胸ポケットから出されたバッジを受け取り、バッジケースにしまう。

 これで3つ目。順調にバッジが集まっていると内心でガッツポーズ。

 この調子ならばポケモンリーグ参加も難しくはない。

 

「それでは、これで失礼します。ジム戦ありがとうございました」

「痺れるようなバトルがしたければいつでも来てくれ! 歓迎ずるぜ!」

「はい、機会があれば」

「次のジム戦も頑張れよ! Good bye! ボンバーマン!!」

 

 

(………そのあだ名はやめてほしい)

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「お待ちどうさま。お預かりしたポケモンはみんな元気になりましたよ」

「どうも」

 

 

 ジム戦を終え、ポケモンセンターでポケモンを回復。それと遅めの昼食。

 ポケモンフードをもらい、手持ちのポケモンにも遅めの昼食。

 お昼時が少しずれているおかげか、席は問題無く確保出来た。

 

「おまえらおつかれさん。飯の時間だぞ~」

 

 手持ちの4体全員を出して、席に着いて食事。今日はカツカレー也。

 

「ここでカスミが居たら対面にオムライスを食しながらお前の尻尾をいじってるんだが…、よかったなイーブイ。お前の今日のランチタイムは平和だぞ」

「ブイ!」

 

 現在カスミはここにいない。

 別に旅の道中で別れた訳ではなく、このクチバシティの港に停まっている『サントアンヌ号』を見に行っているためである。

 クチバシティに着いてすぐに、ポケモンセンターに貼ってあったポスター。『現在サントアンヌ号停泊中、船内見学ご自由にどうぞ』という内容にカスミは真っ先に喰いついた。

 

「アタシ絶対見たい! シゲルも行きましょ!」

 

 と、誘われたが正直あまり興味がなかったため辞退した。

 ジム戦を優先したいのもあったが、船の中に入ったら絶対他のトレーナーからバトルを挑まれて時間がかかって、今日中にジム戦が出来るどうかが分からなくなりそうでもあったし。

 とはいえ、案の定ふて腐れて一人で見に行ったカスミには申し訳無かったが……今度なんか埋め合わせしとこ。

 

「というわけでイーブイ。カスミの埋め合わせを手伝ってくれ。具体的には進化直前に尻尾の毛を抜いてネックウォーマーを作る感じで」

「ブイ!?」

「大丈夫大丈夫。進化すればきっと毛は生え治ってるから……たぶん」

「ブイ! ブイ!!」

「大丈夫大丈夫。シャワーズに進化すれば尻尾が尾ヒレみたいなるから毛なんか気にしなくなるって……おそらく」

「ブイ~~~!?」

「ブースターやサンダースに進化しても……きっと生えてるって。……待て待て、冗談だ逃げるな」

 

 カスミが居なくてもなにかと話題に事欠かない面子と会話(鳴き声)を続けながら昼飯を消化。

 あとはカスミが帰ってくるのを待つまで時間を潰すのだが。

 ジム戦が思いの外スムーズに終わったのですることが無い。

 

「……フレンドリィショップに行っても買うものないしなぁ」

 

 必要な『どうぐ』は揃っている。

 このクチバシティに着くまでの道中、特に消費した道具はなく、モンスターボールも補充する必要はなかった。あまり持ちすぎてもバッグの中が膨らんでかさばるので精々5~6個ほどのストックで十分。

 しかし、どこにも行かないとなると本当に暇な訳で……。

 

「……よし、久しぶりにお前らの手入れでもするか。イーブイ、こっち来な」

「…ブイ~」

「……警戒するなって。毛は抜かないから」

 

 しぶしぶだったが、ピョンって効果音が付きそうな軽快なジャンプで膝に着地。

 体を丸めて尻尾をふりふり。『なつき』が上がる毛づくろいを嫌がるポケモンはそういない。

 どうやら今日は尻尾をブラッシングして欲しいようだ。

 

「むぅ……進化はしてほしいんだが、そうなったらこの尻尾の手入れも出来なくなるのか…」

 

 このふさふさの尻尾は気に入ってるんだけどなぁ。

 シャワーズに進化したらどこを手入れすればいいんだろ? 尾ヒレを磨くとか? …わからん。

 

「そういやお前の意見とか聞いてなかったな。お前はなんか希望とかあるかイーブイ?」

「ブイ! ブイ!」

「……ブイブイ言われてもわからんな。……ん? なにテレビ?」

 

「あれ! あれ!」という意思表示か、前足をテレビに向けて催促。ポケモンセンターの奥の方にある大画面のテレビには現在ポケモンバトルの中継がされていた。

 

「バトルしてるのは……ゲンガーとケンタロス…。いや、俺はお前の進化形について聞いてるんだけど。……え、違う? ポケモンじゃない? なにを見ろって?」

「ブイ!」

 

 再び「あれ!」と催促するように前足を指す。テレビにはゲンガーとケンタロスがやり合っている。

 

 

『ここでケンタロスが攻勢に移りました! 『はかいこうせん』が放たれます!! だがしかし、ゲンガーの体を通り過ぎてしまったぁ!!』

 

 

「……ゴーストタイプに『はかいこうせん』を打つとは……。あぁ、ポケモン講座のテレビか」

「ブイ~! ブイ~!」

「いや、あれ見せられてもわからないんだけど…」

「ブ~~イ!」

「……どうした口を大きく開けて、歯でも磨いてほしいのか。――違う? ジェスチャー? 口を開けて、ゆっくり首を振る? ……なにがしたいのお前」

「ブ~~イ!」

「……さっきと同じことされてもな。―――え、テレビの奴? 口を開けて、首を振る…。 振ってるんじゃなくて……動かす。 ああ! なぎ払ってるのか! ……なにを?」

「ブイ!!」

「あれ! って言われてもな。さっきのテレビの……もしかして『はかいこうせん』?」

「ブイ!」

「―――『はかいこうせん』で相手をなぎ払いたいってこと?」

「ブイ!!」

「―――そんな子に育てた覚えはありません!!」

「ブイ!?」

 

 どこぞの教育ママのような口調が思わず出てきたが、そんなこと関係ねぇ、とイーブイを向き合わせて座らせる。正面に向きあい珍しく真面目な顔でイーブイの目を見る。

 

「いいか、イーブイ。『わざ』を見かけや威力で判断しちゃいけない。見た目の派手さや名前のカッコよさだけで『わざ』を覚えるのはアマチュアどころかビギナーのすることだ」

「……ブイ」

 

「オレにもそういう時期があった。『はかいこうせん』が威力高いから最強とか、ひこうタイプの『そらをとぶ』が相手の攻撃も避けれて最強とか、なぜロクに羽の無いドードリオが覚えれてリザードンが『そらをとぶ』を覚えられないとか………コレは関係ないか。―――とにかくそんな時期がオレにもあった」

「……ブイ」「……カゲ」

 

「だがしかし! それが間違いだと気付くときは大抵相手にボコボコにされて負けるときなんだ! 『はかいこうせん』を耐えられて『じこさいせい』であっという間に回復されたり、『そらをとぶ』で相手にポケモン交換の隙を与えたり、ほのおタイプの特殊わざより『きりさく』や『じしん』の方が使い勝手が良かったリザードンとか………コレは関係ないか。―――とにかくそんな時がオレにもあった」   

「……ブイ」「……カゲ」

 

「つまり! 何が言いたいかというとイーブイ! お前は『はかいこうせん』を覚える必要はありません!」

「ブイ!?」

 

「そしてそこで一緒に聞いてるヒトカゲ! お前も『そらをとぶ』を覚える必要はありません!」

「カゲ!?」

 

「―――というかリザードンになったら羽が生えて飛べるようになってるから、わざわざ覚える必要がないはずだ!」

「カゲ!?」「ブイ~~~! ブイ~~~~!」

 

「こら! 駄々をこねるなイーブイ! 大体お前の進化形は『でんき』・『みず』・『ほのお』タイプでタイプ不一致の『はかいこうせん』を撃っても大した威力は出ないの! それよりも『かみなり』とか『ハイドロポンプ』とか『だいもんじ』を撃ちなさい!」

「ブイ~~~!!」

「あんまりわがままを言うと姉さんのところに預けて鍛えてもらいますからね!!」

「…………………ブイ」

 

 ………おとなしくなった。………そんなに嫌だったのか、タイヤ付き『でんこうせっか』もどき。………まぁ、嫌だろうな。

 

 

「さぁ、この話しはここまでだ。ニドリーナおいで。爪を磨いてやるから」

「ニド♪」

 

 しょんぼりしたイーブイを降ろして、ニドリーナを足に乗せる。

 バッグからヤスリを取り出して、足を手に取り爪を磨く。あまり伸び過ぎると走っている時に引っかかったりするらしく定期的に手入れをしなければいけなかったりするのだ。

 

「―――待てよ。いっそ思いっきり……鋭角30度ぐらいまで削ったら『ひっかく』が『きりさく』になったりするんじゃ…。よし、やってみるか」

「ニド!?」

 

 

 

「―――なぁ、アンタちょっといいか?」

「……はい?」

 

 周りに人がいないから声を掛けたのは自分だと判断して声のした方へ。

 じたばたしていたニドリーナをなだめて、聞きなれない声に振り向く。

 視界に入ったのは一人の女の子。白髪というべきか銀髪というべきか…ショートの見慣れない髪に、これまた見慣れない色の迷彩がらの服を来ている女の子がこちらの様子を伺っていた。

 

「なぁなぁ、アンタってポケモントレーナーだよな?」

「ええ、まぁ。見ての通りですけど」

 

 この通り、と抱えていたニドリーナを相手に向ける。

 

「やっぱり! それでさ、アンタ『どく』タイプのポケモンとか持ってたりする?」

「?……こいつはどくタイプですけど」

「ニド?」

「こいつが!? うわ~~こっち来て初めて見た! ちょっと触らせてくれよ!」

「はぁ、どうぞ」

「サンキュー! うわ、けっこうやわらかい! なんかふにふにしてる!」

(―――なんか、ここまで新鮮な反応されるのも意外だな)

 

 ニドリーナなんてけっこう見慣れてるポケモンのはずなんだが。

 野生でも出てくるし、ニドランはゲットしやすいからトレーナーもそこそこ使ってるポケモンでもある。

 

「なぁなぁ、ちょっと抱っこさせてくれないか! こいつけっこう温かいしさ!」

「かまいませんけど…。どうぞ」

「サンキュー!! ―――重っ!?」

 

 ……おもさ20キロは流石に重かったか。

 

「っ…ぐぐ、ちょ…ちょっと無理…。悪い…取ってくんね…」

「…流石に女の子には無理だったか。ほらニドリーナ、おいで」

 

 必死にニドリーナを持って踏ん張ってる女の子から再びニドリーナを持ち直す。

 完全に荷物扱いされてるニドリーナはちょっと不機嫌のようだった。

 

 

 

 

 

◆◆◆用語説明◆◆◆

 

 

『AED』

 

 注:ゲーム設定ではありません

本文にもあるように電気で心臓をビクンビクンさせて相手を起こす道具。

病院だけでなく、最近はどこにでも置いてある救命装置。ただし正常な人には間違っても使ってはいけません。

用法・用途を正しく理解して使いましょう。

某FPSゲーム(オンラインゲーム)ではこれ一発でミンチになってようが蜂の巣にされてようが一発で復活できる―――ある意味最強兵器。

 

 

 

『はかいこうせん』

 

 ご存じ、初代ポケモンから伝統のノーマルタイプ高威力こうげき。

威力だけ見れば今でもトップクラスの威力。ただし、一発撃つと反動で次のターン行動不能になるため用法・用途を理解して正しく使いましょう。

一部では『ロマン砲』とも呼ばれたりする。

 

 

 

『タイプ不一致』

 

 ポケモンバトルに於いて必須とも言える威力上昇に関係すること。

『わざ』のタイプと使用したポケモンのタイプが同じ場合『わざ』の威力が1.5倍になる。

 

例:ポリゴン――『はかいこうせん』――1.5倍

  サンダース――『かみなり』――1.5倍

 

  シャワーズ――『れいとうビーム』――1.0倍(威力変わらず)

 

 

 

 




 さて次の更新はいつになることやら…。
自分で言ってるあたり既に駄目になってる駄目作者でスイマセン。

今回は完全オリジナルな展開ですね。
まぁ、思いついた小話みたいな感じなんでそこまで掘り下げたりしませんけど…。

次の話で謎の女の子正体が!? ………わかる人はわかりそうですね。


では相変わらず更新速度は期待出来ませんがごゆるりとお待ちください。ノシ


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ノーマルマサラ人 20話

ぐぬぬ、MH4の発売約1カ月後にポケモンX・Yが……!

なんて思っている暇があったら続き書けと言われそうな作者です。
とりあえず前回の続きで今回はちょっとした寄り道的なお話です。

たぶん、前回の話だけで女の子が誰かわかる人はそうそういないかと……。
アニメ見てる時に、思わぬ設定があったので使ってみました。

それと感想文に書かれてありましたルビの使い方をテストで一度入れてみました。
説明ありがとうございます。

それでは暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

 

「なぁなぁ! あれってオニスズメってポケモンだろ!?」

「いや、あれはポッポ」

「わかった! あれがイワークだな!?」

「アーボだな」

 

 

 テクテク、ガサガサ、ザッザッザッと草むらを歩く二人。

町を出て野生のポケモンを探すために現在ポケモンを観察しながら騒がしく歩いていた。

もっとも、騒がしいのは元気がテンションMAXの女の子の方だけなのだが。

 

 

「じゃあ……あれがニャースか?」

「あれはラッタ」

「あれは?」

「あれはピカチュウだよ…………………あんっ時は超サーセンでしたっ!!」 「ピカッ!?」

「なんで土下座っ!?」

 

 

 訂正、二人とも騒がしかった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

――――遡ること1時間ぐらい前。

 

 

 

「あぁ、こっち来て初めてどくタイプのポケモンみたよ。サンキュー♪」

「はぁ……どういたしまして」

「そっちもサンキューな。―――え~と、ニド……ニド?」

「……ニドリーナ、な」

「そうそう。サンキュー、ニドリーナ♪」

「……ニド」

 

 

 ニドリーナを今だベタベタと触りながら上機嫌でお礼を言う女の子。

対するニドリーナは疲れた顔で返事をする。

彼女の性格というか気さくさというべきか既にこちらも既に敬語が抜けている。

 

 誰だっけ、この人? 記憶を探っても該当人物は思い浮かばず、首をひねるばかり。

 

 

「船の中じゃ見なかったからさぁ。せっかくカントーまで来たのに一匹も見れないってのもくやしくってさ」

「………船の中?」

「だからマジでサンキュー♪ カントー来て初めて見たよ!」

「カントーまで来てって……今、停泊してるサントアンヌ号から?」

「そうそう! アタシ……っていうかアタシらイッシュから来てさ。カントーに来るのは初めてなんだよ」

「…………イッシュ!?」

 

 

 

 ―――イッシュ地方。

随分となつかしく、久しく耳にしなかった言葉に驚く。

 

 イッシュ、といえば今いるカントー地方のポケモンとは一風変わったポケモンが生息されている、カントーから遠く離れた場所にある地方。

一風変わっているのはポケモンだけでなく、そこに住んでいる人もこことは違った独自の文化・施設・イベントを盛んに行っていることで有名だったりする。

遠い海を越えた先にある場所―――それがイッシュ地方だ。

 

 とはいえ、それは昔―――『シゲル』になる前の『情報』だ。

『現在』のイッシュという地方は、あいにくとほとんど情報が無い……というよりも、"なにもない田舎"ぐらいとしかイメージがなかったりする。

おそらく、誰に聞いてもそうだろう。もしくはイッシュという名を全く知らないか…。

それほど今のイッシュ地方は知名度が全く無かったりする。

 

 理由は簡単、―――ポケモンが居ないからだ。

正確には未だ『発見』されていないからとも言える。

それは他の地方、ホウエン・シンオウにも言えること。

 

 現在、ポケモンは150匹以上存在する――と言われているが、主に発見・生息が確認出来ているのはカントー地方のみ。

他の地方、このカントー地方から近いジョウト・ホウエン・シンオウ地方にもポケモンを確認出来ているが、いかんせん発見されている絶対数が少ない。

そしてポケモンは昔から世界に存在する、子供も知っている『当たり前』の存在となっている。

そんな御時世、多くの研究者は日夜伝説のポケモン・新たなポケモン・既存のポケモンの生態を研究をしている。

だが、そんな研究を行えるのはポケモンが居てこそだ。

また多くはの人はポケモンを研究したい、ポケモンを見たい、ポケモンを手に入れたいと考え、集まるのだ。

 

 つまりポケモンの数が多いほど、その地方は盛んであるということだ。

逆に言えば発見されているポケモンが少ない地方は"田舎"というイメージが付いていたりする。

実際、多くのポケモン研究者はわざわざ他の地方からカントー地方に来ていることが多い。

じいちゃん―――オーキド博士の先輩である、シンオウ地方出身のナナカマド博士がカントーのタマムシ大学に在籍していたのもそういった理由だろう。

 

 

「まさか、ポケモンを見るためにカントーに?」

「うりうり♪ …ん? いやいや違うよ。カントーに来たのはまた別の理由。けど、せっかく来たんだからポケモンも見ておきたくてさ」

 

 

 相変わらずニドリーナをいじっている女の子。

とはいえ、イッシュから来るとは……かなりの遠出をしたものだと感心してしまう。

 

 

「さってと! サンキューなアンタ。アタシそろそろ行くわ!」

「ん、ああ…どういたしまして。もう船に戻るんだ?」

「……いや、まぁ、ちょこっと、な…。それじゃな!」

 

 

 妙に歯切れの悪い言葉を残し、女の子はポケモンセンターの出口まで駆けて行った。

 

 

「……なんだったんだろうな、あの子」

「ニド?」

 

 

 さぁ? と首をかしげるニドリーナも同じ感想だったらしい。

とにかく、どたばたした一時だったことは確かだけど。

 

 透明のガラス窓からはさっきの女の子がそのまま駆けて遠くへ行く姿が見えていた。

船に戻るのかと、何気なく女の子を視線で追いかける、……と。

 

 

「あの子、どっかで見たことあるような? ………あ、外に出てった」

 

 

 港とは違う方向―――クチバシティから外へ出る道に足を進めているのが見えた。

そしてキョロキョロとなぜかしきりに周りを気にしながら町を出ていった。

 

 

(………どうするかな)

 

「―――ん、お前らボールに戻ってくれ。ちょっと出かけるぞ」

 

「ブイブイ?」「ニドニド?」

 

 

 ??マークを浮かべる4体をボールに戻し、腰のホルダーにセット。

食器を戻して、カバンを肩に掛け、ポケモンセンターの受付―――ジョーイさんの元へ。

 

 

「すいません。ちょっと言伝をお願いしたいんですが」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「なんでいきなり土下座なんてしてんだよ? あのポケモンも完全に意味不明で首を傾げてたぞ」

「いや、人違……ポケモン違いだった。気にしないでくれ」

「ふ~ん?」

 

 

 あの後、行動が気になったオレはこの子の後を追うように町を出た。

そして少し距離が離れたところで発見。彼女の事情を聴き、そのまま同行している。

 

 

「それはそうとサンキューな、わざわざ付いて来てもらって」

「それは良いんだけど、いくらなんでも手持ちのポケモンなしでポケモンゲットは危険だって」

「むぅ、それはそうだけどさ……」

「……まぁ、気持ちは分からないでもないけど」

 

 

 イッシュから来たと聞いた時から予想はしていたが……そう、彼女は手持ちのポケモンを一体も持っていなかった。

そんな状態で町の外―――野生のポケモン相手は非常に危険である。

そんな危険を冒してまで外に出た理由はシンプルで、ただポケモンが欲しいということだった。

 

 

「……しょうがないじゃん。ダチに言ったらダメダメ言われまくったんだから」

 

 

 そして一人で外に出た理由がコレである。

なんでもイッシュに一緒に来て友人にポケモンが欲しいという旨を話したら、危険すぎるという理由で反対されまくったそうな。

その友人も当然ポケモンを持っていないため、一緒に外に出ることを渋った。

けれどもあきらめきれず、モンスターボールを買い込み、こっそり一人でポケモンをゲットしようと行動に移したということだ。

 

 

「事情はわかったから、とりあえずオレから離れないこと。それとむやみにボールを投げないこと。良いな?」

「ん、わかった。……サンキュな、シゲル」

 

 

 はにかみながら礼をいう彼女の気持ちが分からないでもない。

イッシュはまだ未発見のポケモンが多く、また確認されているカントーのポケモンも少ない。

せっかく10歳になるまで我慢していたのに、10歳になっても未だポケモンを持てないというのはつらいだろう。

自分だって10歳になるまでがひどく待ち遠しかった。

……早く姉さんから離れたかったわけじゃないぞ。

とにかく彼女の気持ちに同情してしまったオレは1体だけという約束で彼女のポケモンゲットに協力することにした。

ちなみに本人の強い希望でどくタイプのポケモンを。

 

 

「それでそれで♪ どくタイプのポケモンってどれなんだ!」

「さっきのアーボとか」

「うそ!? 早く言ってくれよ! お~い、待て~アーボ~~!」

「って! 言った傍から離れるなって!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「行けっ! モンスターボール!!」

 

 

―――ポコンッ! と軽い音が聞こえると同時に投げられたボールが開き、眩い光線を出す。

光線が消えると当たったポケモンが光と共にボールの中に納まる。

けれどもそれでゲット出来た訳じゃない。ボールはの中心部がまだ点滅している。

ボールの中でポケモンが抵抗しているのだ。

 

 

 1回、2回とボールが揺れて3回目の揺れが……

 

 

「あっ………」

 

 

 揺れが終わる前にボールが開き赤い光線が漏れ出し中からポケモンが出て来た。ゲットに失敗したのだ。

 

 

「もう一回………あっ!? こらっ、逃げるな!?」

 

 

 カバンから新しいモンスターボールを取り出そうとしているとポケモンが逃げ出した。

慌てて2個目のモンスターボールを投げる………が、狙いが定まってなく外している。

その隙に一気に距離を取って逃げ出し、再び野生のポケモンとなってこの場から居なくなった。

 

 

「……………っ」

 

 

 俯き、項垂れた後ろ姿。後ろから見ているオレからでは表情が見えないが……。

 

 

「………っ……っ!」

 

 

おそらく、いや間違いなく悔しげな表情が浮かんでいるだろう。

 

 

「ニド~~」

 

 

 先ほど闘っていたニドリーナが近寄り体を擦り付ける。おそらく慰めているのだろう、心配そうな鳴き声で擦り寄っている。

そして俯いている彼女は肩を震わせて、やがて……、

 

 

「……ぅ……ぅぅ………うが~~~~~~っ!! また逃げられた~~~~~っ!!」

「ニドッ!?」

 

 

………感情を爆発させた。

 

 

「ああ、くっそ~~~!! これで5度目~~~~っ!? また逃げられた~~~~っ!!」

 

 

 癇癪を起こした子供みたいに地面に倒れて手足をバタバタ。

やりきれない気持ちをひたすらぶちまけている。仰向けになって見えた顔からはちょっと涙が滲んでいた。

 

 

「うう~~~~~~っ!! うが~~~~~~~っ!!」

「……………」

「ううう~~~~~っ!! うぅが~~~~~~っ!!」

「……………」

 

 

 あまり……というか全く女の子らしくない呻き声(叫び)。

流石にこれ以上ほうっておくわけにも行かず。

 

 

「ほれ、う~う~言ってないで体起こせって。服が汚れるぞ」

「う~だって~~~」

「どんまいどんまい。今日が初めてなんだから仕方ないって」

「う~~、けど~~これで5度目~~~うが~~~~っ!」

 

 

 なんかちょっとふて腐れてるみたいだ。未だ体を起こさずにバタバタ。

 

 

 この5度目というのは察しのとおりゲットに失敗した回数である。

彼女は『自分』でポケモンをゲットしたいということで経験者の助力を請わず、ひたすら野生のポケモンにアプローチを繰り返している。

と言っても流石にダメージを与えずにモンスターボールを投げてもゲットは難しいので、現在はニドリーナを貸している。

最初はポケモンを貸されることも渋っていたが、ノーダメージではゲットどころか投げたモンスターボールをかわされることもあり、今はニドリーナを使ってゲットしようと頑張っている。

最も未だゲットは出来ていない。おそらく初めてということもあり、どれくらいのダメージを与えればいいか加減がわからないのだろう。

HPバーなんてものはない。

それに彼女の方もこちらからの助言は求めていない。

だから口出しをせず後ろから黙って様子を伺っている。

 

 ちなみにニドリーナを選別して渡したのは彼女の要望ではなくこっちで決めた。

理由は状態異常の『どく』にならないためである。

『どく』になってしまったらわざわざ薬を使ったり、ポケモンセンターまで戻る羽目になるので手間がかかる。

防御力の高いゴローンでも『どく』になると面倒なため、無難などくタイプのニドリーナを貸した。

彼女もどくタイプということなのか満足気。

レベル的にも余裕があるおかげか、五戦目にしてもニドリーナにはまだ余裕があるようだ。

ほとんどの相手がどくタイプの攻撃なので受けるニドリーナには『こうかはいまひとつ』。

ポケモンの方にはなんの問題も無い。

それでもゲットが出来ないのは彼女に原因があるわけで。

 

 

「もう少し弱らせても良かったな。あと、一度ボールに入っても油断せずに次のボールの用意をしとくべきだったかな」

 

 

 なんて偉そうに上から目線で言っているが、弱らせた所を更にモンスターボールという追い打ちで『ひんし』では無く『もんぜつ』させる奴が言うセリフではない。

初心者の方がポケモンにやさしいモンスターボールの投げ方をしていることに内心ちょっと傷ついているシゲルだった。

 

 

「ぐぬぬ」

「ぐぬぬって言うな」

 

 

 体を起こしてガバッとニドリーナを抱きしめる。……癒しが欲しいのだろうか?

あたふたしているニドリーナには申し訳ないが、ふてくされてる彼女と話すにはこのままの方が良さそうだ。

 

 

「どうする。まだ一人で頑張ってみる? 無理ならオレが代わろうか?」

「………ヤダ。………アタシがゲットする」

 

 

 ニドリーナを抱いたまま倒れて、今度は体をゴロゴロと横に転がしている。

抱き枕を抱いてベッドで転がるように。哀れ、ニドリーナ。

 

 

「………けど」

「ん? どうした?」

「………もう暗くなっちゃったな」

「まぁ、そうだな」

 

 

 夕日は既に暮れて、道の街灯の光のみが辺りを照らしている。

良い子はお家に帰る時間だろう。

 

 

「………シゲルはそろそろ」

「気にするな。オレは大丈夫だ」

 

 

 顔を横に向けてこちらの顔色を窺うようにチラチラと横目で見てくる彼女に釘を刺しとく。

チラチラとこちらの顔を窺って言外にヘルプを出してるニドリーナはスル―。

 

 

「………けど」

「どくタイプのポケモンってのは夜行性が多いんだ。むしろ今まで出現しなかったポケモンが出てくるかもしれないぞ」

 

 

 付き合うぞ――と伝える。

せっかくイッシュから来てポケモンをゲットしようと頑張っているのだ。

それが報われるように手伝うのが先輩トレーナーの務めだろう。

 

 

 意識して余裕そうな表情を――疲れを感じさせないよう――作って、彼女の手を取って立たせる。

ついでにニドリーナに絡んでいる腕を解いて解放させる。

ニドリーナのなつき度が上がった。

 

 

「ほら、行こうぜ。ニドリーナの体力もまだ大丈夫だし、モンスターボールのストックもまだあるだろ」

「………アリガトな、シゲル」

「どういたしまして」

 

 

 テクテク、ガサガサ、ザッザッザッと再び草むらを歩く二人……と一匹。

町を出た時と違って騒がしくなく、静かな雰囲気で一緒に歩いてポケモンを探す。

けれども町を出た時よりも親しくなった二人……と一匹だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「今日はサンキュな、シゲル! スゲーうれしいよ!!」

「………どういたしまして。せっかくカントーでゲット出来たんだから大切にしてやれよ」

「モチッ!」

 

 

 とっくに日が暮れて……日が昇ってやや肌寒い早朝。

結局、あれから何度目かの……何十度目かの失敗があり、ようやく彼女の要望通りに見事どくタイプのポケモンをゲットした。

失敗しても、あきらめずに何度もチャレンジした甲斐もあり喜びもひとしおだろう。

ゲットした時は感極まって抱きつかれたぐらいだ。

 

 対してここまで付き合わされるとは露ほどにも思っていなかったポケモンとトレーナー。

付き合うぞ、と言外で表現したのは何時の事やら。

疲労困憊といった具合で疲れが溜まって重く感じる体を引き摺りながら戻ってきた。

ポケモンの方はとっくにボールの中で爆睡しているだろう

 

 

「よ~し、これでアタシもポケモントレーナーだっ! へへっ、イッシュに帰ったらパパにも自慢してやるんだ!」

 

 

 徹夜と歓喜でテンションMAXなのだろう。

コイツすげぇ、とテンションMINなシゲルが思わず感心する。

 

 

「……それより、早く船に戻った方が良いんじゃないのか。友人も心配してるだろうし」

「………あっ!? そういえば黙って出てきたんだった!」

「そっちはジョーイさんに伝えといたから大丈夫だと思うぞ。 流石にここまで遅くなるとは向こうも思ってないだろうけど」

 

 

 トレーナーや観光客が町に入った時に訪れるのは宿泊施設や食事が取れるポケモンセンターだ。

もしくは交番か、どっちにしろ迷子になった友人を捜索するときポケモンセンターに確認を取るだろう。

 

 

「そっか。……サンキュな、シゲル。何から何まで世話になりっぱなしで」

「ああ、良いよ良いよ。何度も言ってるけど気にすんな。………それじゃ、オレはこれで」

「………ここで別れるのはサッパリし過ぎじゃないか……まぁ、アタシも戻って寝たいけどさ」

 

 

 なんかブツブツ言ってるけど、聞こえない。それよりも早く寝たいのだ。

 

 

「………まぁ、いいか。それじゃなシゲル。もしイッシュに来る時はアタシのとこ来いよ。今度はアタシが色々案内してやるからよ」

「ああ、そうだな。その時は好意に甘える。…………え~と………………アレ?」

「?………どうした」

「………オレ………名前教えられて無いような」

「へ?」

「いや、そうだ……間違いない。オレは名乗った憶えがあるけど、名前教えられた覚えは無い」

 

 

 なぜ今まで気付かなかった――――と今まで軽口を叩き合ってた気さくな友人を改めて思う。

確か町を出て、それから「お前の名前は?」と聞かれたから答えたが、こっちは全く聞いていない。

 

 

「………あ~~、そういえばあん時は誤魔化そうと適当に流してたな。ワリィ」

「そんな気さくに言われても」

「いや、マジでゴメンって。カントーじゃ反応微妙だったけど、名前知っててサインとか求められたらメンドウだと思ってさ」

「………もしかして有名人」

「ん~~………ちょい微妙かな。イッシュのアタシの地元じゃ名が知れてるけど、コッチじゃ来たばっかだしさ。ちょっと待ってな」

 

 

 そう言って、ポケットから髪留めを取り出し、後ろを向いて髪を弄り始める。

前髪だろうか、髪を立てて髪留めで括り、手ぐしで髪型を整え……いや、ガシガシって感じでワイルドに全体も立てる。

そしてポケットから手鏡を取り出し確認。

こう言ってはなんだが、意外だ。女の子らしい所もあるもんだ。

髪の整え方は男らしかったが。

 

 

「よしっ、どうだっ!」

 

 

 そう言ってくるりと体をこちらに向ける。

当然ながら髪型は先ほどと違う。

おでこをむき出しにして、全体的に外はねした髪型。

 

 

「……………………へ?」

 

 

 硬直するシゲル。

 

 

「やっぱり反応が微妙………。むぅ、カントーじゃアタシらの知名度はまだまだかぁ」

「…………………あれ?」

 

 

 硬直しているシゲル。

 

 

「まぁ、いいか。アタシは『ホミカ』! イッシュのタチワキシティから来たバンドチームのリーダーだ!!」

「…………………なぜ?」

 

 

 硬直が解けないシゲル。

 

 

「それじゃ、アタシは帰るよ。実は明日他の町でゲリラライブするから急ぐんだ。今日はホント、サンキューなシゲル!」

「…………………どういたしまして」

「イッシュに来たらアタシん所に来いよ! 絶対だぞ! それじゃぁな!」

 

 

 爽やかな笑みを向け、手を上げてバイバイ。

颯爽と港に走って行くホミカに力無く手を振るシゲル。

 

 こうして慌ただしい一日………を通り越して二日目の早朝にまで時間がかかった、遠い地から来た女の子との出会いが終わった。ひとまず。

 

 

「…………………Why?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「なに朝帰りなんかしてんのよ!? アタシがどれだけ心配したと思ってんのよ、バカッ!!」

「理不尽っ!?」

 

 

 ポケモンセンターに戻ると、お帰り(メガトンパンチ)が待っていました。

 

 

 

 

◆◆◆登場人物説明◆◆◆

 

 

 

 

『ホミカ』

 

 

 ポケットモンスターブラック2・ホワイト2にて初登場したどくタイプを使うジムリーダー。

アニメではイッシュ地方8つ目のバッジを持つジムリーダーだが、ゲームでは2つ目のバッジを持つジムリーダー。

アニメ・ゲームともバンドチーム「ドガース」のリーダーであり、ボーカルとベース担当らしい。

ゲームのBGMで有一、登場キャラクター自身の声付きBGMが流れるというスタッフに愛されているらしいキャラクター。

声付きBGMは他にもあるが、登場キャラクター自身が歌っているかのようなBGMは今のところホミカだけである。

(人気モデル設定のカミツレにすら無い)

 

余談だが父親はポケウッドに出演しているリオルマン。

呼び方は「パパ」。

 

 

 

 




はい。というわけでホミカちゃんでした。
カスミよりヒロインっぽいって? ………気のせいですよ?

今回はアニメ設定、ホミカのドガースはカントー遠征した時にゲットしたという会話から作ってみました。
アニメではカントーに行ったことがあるらしいですね。

それと少しイッシュの設定も書いてみました。
作者の妄想ですが、ゲーム・アニメとも発見されるポケモンや、ナナカマド博士の設定からこうではないかと思い、こんな世界観にしました。

まぁ、作者の脳内設定なのでそこまで掘り下げなくてもいいですかね。

それでは更新速度は相変わらず期待出来ませんが次回もよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 21話

 むぅ、MH4にクシャルダオラが復活か……どの毒属性武器で挑むか……。
それよりもフェアリータイプのポケモンを気にしろよ、と突っ込まれそうな作者です。

 新作に次々と新情報が入ってきてwktkなんですが、最近はリアルがより忙しくなってきてゲームの時間も心配になってきています。

 あぁ、一日が48時間なら……いや、そうなるとおそらく睡眠時間が12時間になってそうで意味がないな。などとアホなことばかり考えてないで有効な時間の使い方が一番理想なんですけどね。

 さて本文に全く関係ないことばかり書いていましたね。
今回は前回の話より少し進めた感じですね。まぁ、次のジムまでの幕間といった感じです。
あと一話ぐらい幕間を書こうかなと思っていますが、予定は未定。

 それでは暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

『シゲルさんが……来る……来ない……来る……来、ない……?』

 

「…………エリカ」

 

『シゲルさんが……来る……来ない……来る……来、ない……!?』

 

「…………エリカ」

 

『シゲルさんが……』

 

「…………」

 

 

 プチ、プチ、と押し花用の花弁を一枚ずつ毟っている状態が画面に映っている。何かに憑かれた様な虚ろな瞳をしながら花弁を毟る様はかなり恐い。………向こうから電話を掛けてきたのに。

 

 

『来る……来ない……来る……来、ない……!!?』

 

「………エリカ、4枚の花弁で『来る』から始めたら絶対に『来ない』になるわ」

 

『そう、ですか。では、今度こそ。………あら、もう花が』

 

 

 既に全て毟りつくしたようだ。画面からは見えないだろうが、床には相当な花弁が落ちているだろう。花弁のみを毟った後の花の本数が数十本は見える。

 

 

『………ああ、良かった。ちょうど良い所に大きな花がありましたわ。これで、今度こそ』

 

『クサッ!? クサックサ~ッ!?』

 

『あらあら、どこへ行くのかしら? 大丈夫ですよ。きっと……多分……おそらく……もしかしなくても……痛くない、はずですから』

 

『クサッ!? クサッ!? ク………クぁwせdrftgyふじこlp~~~~!!??』

 

「…………」

 

 

 ………クサイハナの臭い(気配)が消えた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「………もういいかしら」

 

『………すいません、お見苦しい所をお見せしました』

 

「………」

 

 

 今まで割と見てるから何をいまさら、と云った感じのナツメであった。

 

 

「………それで、今回はどうしたの?」

 

『はい、実はシゲルさんのことなのですが……』

 

「………それはわかってるわ」

 

 

 なんせ画面に映った時からアレだったのだから。

 

 

『御存じだと思いますが、シゲルさんはクチバジムを攻略し、次のジムに向かわれているところでしょう』

「………そうでしょうね。私にもジム戦に勝利したと連絡してきたから。………なぜか顔を腫らしていたけど」

『私の所にも電話をもらいました。………けれど』

 

 

 そういって、少し溜めを作る。いや、思案に耽っているようだ。

 

 

「………けれど?」

 

『……はい。けれど、シゲルさんは次にどちらのジムに向かうのか、と』

 

「………ようやく話がわかったわ」

 

 

 つまり、あの呪いのような花占いは、次に自分のところに来るかどうかと云うことだったようだ。というのもクチバシティから次のジムに向かうルートは大まかに3つある。

 

 一つはクチバシティからそのまま北に進み、私の居るヤマブキジムに進むルート。クチバシティから一番近いルートではあるが、クチバシティからヤマブキシティに行く道はあまりおススメは出来ない。なぜなら本来のジムバッジの獲得順が違うからだ。ジムバッジにはリーグが薦めた順番があり、バッジケースにその順番が形で示されている。基本的にバッジケースの順に進むのが効率良く集められる道筋である。とは言ってもあくまで『薦めた』順番であり、好きな順番でジムに挑戦しても構わないが。

 

 二つ目はクチバシティから南。東に向かって迂回して進んで行き、セキチクジムに進むルート。こちらは徒歩でかなり距離がある上に、リーグが決めたバッジの順から考えてもおススメは出来ない。

 

 三つ目はイワヤマトンネルを通じ、シオンタウンに出て、タマムシジムに進むルート。迂回して進むため、かなり距離もあるがバッジの順はこちらのルートが薦められている。

 

 

「………シゲルなら順当に進むタマムシジムに行くんじゃないかしら?………行動が玉に突飛だけれど、他のジムで博打を打つより、順当なルートで確実性を取ると思うわ」

 

『うう~、そうでしょうか……』

 

「………どのみち、私たちジムリーダーは挑戦者を『待つ』立場なんだからおとなしくしていなさい」

 

 

 しょぼ~ん、と気落ちするエリカが画面に映っているが、こればかりはシゲルの行動次第なのでどうしようもない。………出来ることがあるとすれば床に転がっているクサイハナをどうにかするべきだと思う。

 

 

「………シゲルは今頃どうしてるかしら」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「ニドリーナ、威嚇で良い。『どくばり』!」

 

 

 指示を聞き距離の離れた相手に向けて『どくばり』を放つニドリーナ。幾つもの『どくばり』が相手の近くに命中し、注意をこちらに向ける。相手に当てるつもりはないのだ。今回の目的は相手をゲットすることなのだから。

  

 

「キッ!? キッ!!」

 

 

 急な攻撃で怒り狂っているのだろう。独特の高い鳴き声でこちらに戦闘の構えをとるマンキ―。脳内のアドレナリンに従うように一気にニドリーナに飛びかかり、腕を振り上げて攻撃(からてチョップ)

 

 飛びかかった急襲を喰らうニドリーナ、とはいえかくとうタイプの攻撃。どくタイプには『こうかはいまひとつ』である。なにより単純に元々の体力やレベル差でニドリーナが野生のマンキ―に押し負けることはないだろう。すぐさま後ろに飛び去り、間合いを測るニドリーナに大きなダメージは感じない。

 

 一方マンキ―の方は攻撃を当てたことに気を良くしたのか、続けざまに攻撃を行うように再び飛びかかる。

 

 

「ニドリーナ、『にどげり』で迎え撃て!」

 

 

 相手の攻撃を何度も受ける訳にはいかない。ニドリーナが受けるダメージではなく、ニドリーナの特性が『どくのトゲ』だからだ。何度も物理攻撃を受けると逆にマンキ―が『どく』状態になりジリ貧になるのだ。ゲットをするのに『どく』で倒れてしまっては意味が無い。

 

 空中に飛んだことで避けることも出来ず、踏ん張ることも出来ず、無防備になったマンキ―に『にどげり』が決まる。

 

 元々『ぼうぎょ』の種族値が低いマンキ―。大きく吹き飛ばされ、受け身も取れず地面に蹴り落とされる。立ち上がったときは荒い息を吐いていた。

 

 

「ニドリーナ、『たいあたり』!」

 

 

 ゲットするにはまだ相手の体力を削る必要があるだろう。威力の低い攻撃で相手の体力を調整する。生かさず、殺さず。

 

 『たいあたり』が当たり更に体力が削られたマンキ―。先ほどよりも息が荒くなり、受けたダメージの大きさが表れる。これぐらいのダメージを与えれば十分だろう、空のモンスターボールを取り出し、ボタンを押して手の平におさまるサイズにする。

 

 すぐには投げない。―――否、投げるつもりはない。とても残念な結果なることはわかりきっているのだから。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『えっ? ポケモンを上手くゲット出来ない? モンスターボールの投げ方は練習したでしょ』

 

「いや、モンスターボールは今のところ百発百中なんだけど……。 問題は威力、というか球速にあってさ…」

 

『なるほど、話は分かったわ。 ポケモンがひんしになっちゃうのね』

 

 

 数日前、久々に電話で姉と画面越しで対面し、その時に今までの旅の道中で起こしてしまった悲劇について相談した。こちらの悩みを聞き、すぐさま言わんとしていることを理解してくれる姉が頼もしい。

 

 最も「話しが早くて助かる」と思うよりも、「察し良すぎじゃね?」とも思ったが。……どうやら姉もヤッていたらしい。

 

 

『大丈夫よ、シゲル。 私も旅に出たばかりの頃はそれで悩んだこともあったわ。生まれて初めてピカチュウと相対したときなんて、嬉しくて思わず決め球(ウイニングショット)のスプリットを叩き込んでしまったこともあったわ』

 

 

 ―――聞くんじゃなかった、と今までの人生でこれほど思ったことはない。そしてピカチュウの結末が気になる。イヤ、詳しく聞きたくないけど、気になってしょうがない。………少なくてもミンチになった、なんてスプラッタな結末以外で。

 

 

『シゲル、思い出しなさい。 今までの訓練で私はボールの投げ方以外にも色々と教えたハズよ』

 

「色々教えてもらったね……。 うん、色々と……教えて、もらった…ね」

 

 

 ―――思い出そうとしたら記憶が拒否った。

 

 

『そう、色々教えたわ。中でも最初に重点を置いて鍛えたのは走り込みだったわよね』

 

 

 ―――うん、何度も倒れたから覚えてるよ。……忘れられないとも言うけど。

 

 

『走り込みはポケモンゲットのために必要な特訓なのよ。中でも短距離走は絶対ね』

 

「なんでゲットに短距離走……。 逃げたポケモンを追うため?」 

 

 

 ―――走り込みは体力づくりのためだけだと思っていたけど。

 

 

『ポケモンをモンスターボールに入れる条件はただ一つ。モンスターボールがポケモンに接触することよ。……ひんしさせずに』

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 モンスターボールをしっかりと握り締め、困憊しているマンキ―との距離を測る。

 

 戦闘体勢を解いていないマンキ―に向かい合うのはニドリーナではなく、オレだ。

 

 

「…………フゥ」

 

 

 軽く深呼吸して、鼓動が早くなっている心臓を落ち着かせる。そして姉から言われたアドバイス通りに、マンキ―の行動を観察する。

 

 

「―――ニドリーナ! 『なきごえ』っ!!」

 

 

 ニドリーナが指示を聞き、辺りに『なきごえ』が響く。必然的に意識をニドリーナに向けるマンキ―。オレへの視線を外す―――コレを狙ったのだ。

 

 視線を外し、ニドリーナしか目に入っていないマンキ―に向かって一気に駆け出す。上体を前のめりにし、意識的に足を強く細かく地を蹴り、最短距離で相手に近づく。

 

 こちらの接近に気付き、再び臨戦態勢をオレに向ける―――が、オレの方が速いっ!

 

 

『ほとんどの人はボールの大きさ……手の平におさまるサイズから、ボールを投げてポケモンに当ててゲットしようとするわ』

 

 ―――右手のモンスターボールを握り締めて、

 

 

『けれども、絶対に投げなければいけない……なんてことは無いのよ。用はボールをポケモンに当てさえすれば良いのだから』

 

 

 ―――相手の一挙手一投足を見逃さずに、

 

 

『そう、ポケモンをボールに触れさせなさい。そのためにあんなに走らせたんだから。 良い? まずは相手に近づいて―――』

 

 

 ―――こちらの間合いに入ったら、左足を強く踏み込み、

 

 

『距離を縮めたら、ボールを持った手で、一気に……っ!』

 

 

 ―――腰を捻り、右手で一気に……っ!

 

 

『ダイレクトアタックよっ!』(訳:直接殴れ)

 

 

「喰らえっ! モンスターボールッ!!」

 

 

「ッ!? プギッッ!?」

 

 

 突き出した右手のモンスターボールで相手の顔面(胴体?)に肩まで入れた右ストレートをかます。右腕が伸びきった所で当てているため、そこまでダメージは無いはずだ。……めり込んでいるけど。

 

 ボールがポケモンを感知し、赤い光を出して、手に収まる。カタカタと手の中で抵抗をするのが感じられたから、出てくるなと握力を強くして抑える。やがて、振動が止まり、ボールの点滅も消える。

 

 

「………よしっ! マンキ―をゲットしたぞ、ニドリーナッ!」

 

「ニドッ♪」

 

 初めてのかくとうタイプのポケモンであり、今まで手持ちに居なかった速攻アタッカーのポケモン。これでバトルに幅が広がるだろう。加えて最近新しいポケモンをゲットしていなかったから一層喜びが増す。

 

 駆け寄ってきたニドリーナの頭を撫でて労う。新しく出来た仲間にうれしいのだろう。短い尻尾を左右に揺らしている。そして、こちらの様子を静かに見守っていたカスミが歩いて来て、

 

 

「………なにやってんの……アンタ」

 

「………実はオレも思っていた………なにやってんだろ、オレ」

 

 

 冷めた目と冷静なツッコミが心に刺さって痛い…。姉さん……オレ、もうちょっと普通にゲットしたいです。遠い目で空を見上げれば、晴天の彼方にサムズアップしている姉の姿が映る。

 

 

『ナイスフィニッシュブロー☆』

 

 

 

 

 

◆◆◆登場ポケモン説明◆◆◆

 

 

 

 

『マンキ―』

 

 

 シゲルの5体目のかくとうタイプのポケモン。シゲルのマッハパンチ(もしくは『ふいうち』)によりゲットされ、かくとうタイプのプライドが粉々になっているが、同時に師匠認定。指示はちゃんと聞く。

 ナナミ(シゲル姉)に合わせると教え技で『ばくれつパンチ』を覚えそうなのがシゲルの不安要素。合わせるな危険。性格は『むじゃき』、特性は『やるき』(ねむり状態にならない)。

 

 

 

 

 

 




 私は動物大好きです。大好きなんです。
大事なことなので二回言いました。

 というわけで新しくシゲルの手持ちポケモンが増えました。今回はそんなに酷い描写はなかったと思います。 話的に非道い結果になっていますが。(SAN値減少)

 細かい設定(言い訳)を説明しますと、このマンキーはサトシ君のゲットしたマンキーとは別の個体という設定にしています。エンカウントした場所も違いますからね。

 ゲーム設定ではイワヤマトンネル内でしか出現しないのですが、アニメでは普通に外で出現していましたから問題無いですね(言い訳)。

 続いてジムバッジの設定は完全脳内設定です。というのもアニメのサトシ君のルートはゲームではイベント的に無理なんです。加えて言えば、レベル的にも無理です。ゲームではクチバジムの次はタマムシジム-ヤマブキジムなのですが、アニメでは逆になっています。

 そこのところどうしようかと悩んだ結果、今回のバッジの設定を付けました。
これでサトシ君とは差別化出来るし、今後の展開が作りやすいと思いますし。

 それでは、相変わらず更新速度は期待できませんが次回もよろしくお願いします。ノシ


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ノーマルマサラ人 22話


言い訳はしません!

モチベーションが上がりませんでした。マジすいません!
まぁ確実に1本ずつ上げましょう。この話を作る前に何本捨てたことか……。

しかし、相変わらずシリアスがないな。このss。

とにかく暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

 

 久方ぶりに連絡を入れたじいちゃんの一言。

 

『ところでシゲル、ポケモン図鑑はどれくらい集まっておるんじゃ?』

 

「……え?」

 

『いや、なに……そろそろ手持ちのポケモンが6匹を超えて研究所の方にポケモンが転送されることじゃと思ったんじゃが、サトシからもまだ送られてこないみたでのぅ。ならば図鑑の方は順調なのかと思ったんじゃが』

 

「……え?」

 

『……え?』

 

 

 ……ポケットモンスターってポケモン図鑑を埋めるゲームでしたね。

 

そんなことを思いだした今日このごろ。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「そうだった…。バッジを集めることばかり考えて目的を忘れていた…」

 

 バッジを8つ集めて四天王を倒してチャンピオンを倒してスタッフロールが流れるから大抵の人が忘れがちなのだが、ポケットモンスターというゲーム、150種類のポケモンを集めるのが目的のゲームなのだ。

 

 いや、確かに旅に出る前にじいちゃんから頼まれたが、バッジ集めばかり頭にあったから完全に忘れていたのだ。…反省。

 

 しかも話を聞く限り同期にマサラタウンを出たサトシ含む他のトレーナーもあまり芳しくないらしく、サトシを除く他二人は連絡すら取れない始末らしい。……大丈夫か、それ? 消息が途絶えてるぞ…。

 

 

「どうしたの? そんなに眉間に皺を寄せて」

 

 

 対面に座ってオムライスをつついているカスミ。ここはポケモンセンター、今はランチタイム。

 

 

「さっきまで誰と話してたの?」

 

「ん~、ちょっと家族に現状報告してただけだよ。それで思う所があってな~」

 

 

 ちなみにオレは牛丼。普通の牛丼である。ケンタロスは入っていない。

 

 

「なに? ポケモンのゲットの仕方のこと?」

 

「当たらずも遠からず…かな」

 

 

 これも問題の一つである。ポケモン図鑑を完成させるためには色々なポケモンを捕獲する必要があるのだが、それが難しいのだから一向に埋まらないのである。姉さん、オレ…普通にゲットしたいです。

 

 

「その割にはアンタってあんまり欲張らないわよね。毎度ポケモンを見つけても図鑑に記録してるだけじゃない? ゲットの仕方はアレだけど、そこまでポケモンのゲットにこだわっていないっていうか…」

 

「そりゃ捕獲の仕方にも問題があるからって理由もあるけど……まぁ、確かにそこまで多くのポケモンを捕獲する気はないかな。当面必要になりそうなポケモンぐらいだな。あんまり集め過ぎると面倒見るのが大変だし」

 

 

 これは本音。加えて言えば、確かに手持ちで使えるポケモンを増やせることは戦略の幅が広がるが、戦力が増強される訳ではない。なぜならばポケモンバトルで重要な要素は経験値だからだ。これはレベルに限った話しではない。例えばゲームではタマゴから孵化したばかりの『レベル1』のポケモンでもコマンドを押せば戦闘行えるが、『ココ』では難しいのだ。赤ん坊に戦えと言ってるようなものだ。

 そうなると重要なのは純粋な戦闘経験、そしてトレーナーの指示をどれだけ理解出来るか、つまり判断能力が必須である。そして判断する材料としてポケモンからトレーナーへの信頼が必要だろう。

 少し話しが逸れたが、つまり野生のポケモンを捕まえ過ぎても即戦力としては使いづらいということだ。

 

 

「まぁ、他にも気になる所があるんだけど……」

 

「カゲ?」

 

 

 これが最近になって浮き彫りになってきた新たな問題。こちらの視線に気付いて食べているポケモンフーズから手を止めて見上げるヒトカゲ。実はこのヒトカゲにある。

 

 

「………お前進化しないな~」

 

「………カゲ~」

 

 

 少し目線を落としてしょんぼりするヒトカゲの頭に手を置いてナデナデ。うむ、爬虫類(?)特有のすべすべしっとりとした肌触りが気持ちいい。

 ヒトカゲ自身も最近悩んでいる問題、即ち、『進化出来ない』。

 先の図鑑の完成に当たって、進化形の登録は必須である。図鑑を埋めるためにも、今後のバトルのためにも是非とも進化して欲しいのだが。

 

 

「まぁ、こればっかりは本人……もとい、本ポケモン次第だしなぁ」

 

「言いづらそうね、『本ポケモン次第』って」

 

「……どうでもいいよ」

 

 

 同じくポケモンフードを食べているオレのポケモン、ニドリーナとゴローン。この二匹はポケモンバトルから得られた経験値で順当に進化していったが、旅に出た時から共にいるヒトカゲがなぜか一向に進化の様子が見られない。

 レベルが足りない、ということは無いはずだ。『えんまく』、『いかり』、『こわいかお』と順調にわざを覚えていってるため、レベルは十分足りているはず。

 なのに進化しない。進化出来ない。

 

 イシツブテがゴローンに進化した辺りから、ヒトカゲも気になりだした自身の問題。おまけになにが原因かわからないからなおさら問題である。

 

 

「レベルは問題ないはず…。体調も問題なし…。わからん…」

 

「ねぇ、こうなったら実家に転送してみたら? オーキド博士に見てもらえばなんとかしてくれるんじゃない」

 

「……そうなったら、その場に居合わせた姉さんによる進化という名の肉体改造が行われそうでなぁ。そのまま進化出来ずに強化されて違うポケモンになってないか不安で不安で」

 

「ずっと前から気になってたんだけど、アンタの実家って本当に研究所なの? トレーニングジムじゃなくて?」

 

「研究所と実家は別にあるんだけど、まぁ実家の方にトレーニングジムリーダーがいるんだよ。……トレーナー専用のが」

 

「……なにそれ?」

 

「……なんだろうな」

 

 

 今、オレはきっと遠い目をしてるだろうなぁ。

 

 

「話を戻して、とりあえずもう少しレベルを上げてみるか。というかそれぐらいしか現状出来ないし」

 

「あのさ、少しヒトカゲの相手を変えてみたら?」

 

「……変える?」

 

「アンタってヒトカゲには相性の良い相手ばっか闘わせてるじゃない。もしかしてそれが原因とか?」

 

 

 一理ある。

 

 確かにヒトカゲには相性の良い草や虫タイプのポケモンを主に当てている。もしくは火力で押しきれて、タイプの相性の悪くないノーマルや飛行タイプ。

 ニドランやイシツブテには相性の悪いポケモンとも闘わせた。ニビジムのイワーク然り、ハナダジムのスターミー然り。

 というのもコレはポケモンのわざのタイプを考慮したためだ。ニドランは毒タイプと地面に相性が悪いが、『にどげり』という格闘タイプが使えるため岩タイプが含まれるイワークに当てた。イシツブテもノーマルタイプの高火力『じばく』が使えたため、水タイプに当てた。

 しかし、ヒトカゲには相性の悪い水や岩、地面タイプとは闘わせたことがない。理由は単純、使える攻撃のわざがノーマルと炎しかないからだ。総じてサブウェポンが乏しい。

 加えて、まだヒトカゲの段階では打たれ弱さがあるため、あまり無理のある力押しが出来ない。

 

 

「確かにそういう実戦経験なら、ニドリーナやゴローンに比べると劣ってるな……」

 

「でしょ、試してみたら」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「という訳で、お前たちにはこれから練習試合を行ってもらう。練習試合とはいえ、二匹とも本気と書いてガチと呼べるぐらいの気持ちでぶつかってくれ」

 

 

 場所はポケモンセンターの近くにある簡素な土のバトルフィールド。そしてフィールドの上にはオレのセリフに了解の意味を込めて頷く2匹のポケモン、ヒトカゲとゴローンが対面している。

 カスミのアドバイスを参考にヒトカゲと相性の悪いポケモン、岩タイプ・地面タイプ複合のゴローンを練習相手に任せた。タイプ的に相性は悪く、単純なステータスでもゴローン方に分がある。仲間であり相手の技を知っているとはいえ、今まで相性の悪い相手を経験したことがないヒトカゲから見れば初めて相対するポケモンと何ら変わりないだろう。

 

 

「今回はオレから指示は一切出さない。それぞれの判断でバトルをしてくれ。ただヒトカゲは相性の悪い相手にどう立ち回るかを常に考えながら動くように」

 

「カゲッ!」

 

「よしっ! それじゃ、バトル始めっ!」

 

 

 両者の臨戦態勢を確認して試合開始の合図を出す。願わくばこのバトルでヒトカゲに進化の兆しが見えるといいんだけど。

 

 

「カゲッ」

 

 

 試合開始の合図と共に動き出したのはヒトカゲ。とはいえこれは当然だろう。総合的にゴローンにステータスで負けているとはいえ、『すばやさ』に限ればヒトカゲに軍配が上がる。立ち回りを意識するなら勝っているすばやさを活かしてどう闘うのかが鍵となるだろう。

 一気に距離を詰める……ようなことはせず、逆にバックステップの様に相手から距離をとる。そして口から放たれるのは攻撃技ではなく、辺りに煙を撒く『えんまく』。そしてすぐさま煙の中に自分を隠す。

 これはオレが教えたヒトカゲの遠距離での闘い方である。力押しを不得意とするヒトカゲには、距離を取り自分を隠して常に相手の死角、もしくは遠距離から『ひのこ』を飛ばして相手を弱らせて叩く、という流れである。

 

 ……例えカスミから呆れられた目線を向けられてもオレはへこまない!

 

 難点があるとすれば『えんまく』のせいで尻尾の炎が弱くなる(酸素が薄いため)ために頻繁に煙の外に出て炎を維持することと、煙が薄くなると尻尾の炎で位置が悟られやすくなるために『えんまく』を一定の間隔で吐き出さないといけないのだが。

 

 ……例えカスミから冷めた目線を向けられてもオレはへこまない!

 

 

「カゲッ!」

 

 

 十分に『えんまく』を張った後、教えた通り遠距離から『ひのこ』を放ちつつ、発射位置を悟られないよう常に移動してかく乱する。

 相性が良かろうが悪かろうが安定して相手を倒せる、倒せずとも弱らせることが出来るために、この戦い方を教えた。 ……が、ヒトカゲのステータスを考慮してオレ自身の選択で相性の良いポケモンとしか相対させていなかったため、相性の悪いポケモンとのバトルでこの戦術は初めてだ。……経験が不足している要因は相性ばかり気にし過ぎていたオレ自身の判断のせいだろう、反省。

 

 『えんまく』で相手、ゴローンのダメージは確認出来ないまでも火花の散り具合から確実にヒットしていることがこちらからも視認出来る。ゴローンもヒトカゲを狙うためか、もしくは煙から脱出するためかしきりに『たいあたり』で応戦するが、ヒトカゲも常に確認して距離を取り再び『えんまく』行い視界を塞いでいる。

 明らかにヒトカゲが優勢である。この調子ならば時間が掛かれどもヒトカゲが勝利するだろう。

 

 

「カゲッ!」

 

 

 煙の中から見える火花が段々と激しくが幾度も飛び散るのが確認できる。ヒトカゲがここに来てラッシュを掛けているようだ。

 バチバチと音が激しくなり、薄くなりだした煙から見えるゴローンの体表は徐々に熱くなっていき、まるで熱膨張のように膨らみ……、

 

 

「退避ーーーーーーーーっ!!」

 

 

 汚い花火となった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「なんで『じばく』した! なんで死なば諸共みたいなガチで練習試合してんの!? え? 『体力減ったらじばくしなきゃいけない』って? 誰がそんなこと教えた!? え? オレ? そんなバカな!?」

 

「アンタがいつもひん死寸前にじばくさせているからでしょうが!! 純度100%アンタのせいよ!!」

 

「ゴフッ!?」

 

 

 目の前には先ほどじばくをして自らの石をまき散らしてせいで一回り小さくなったゴローン。そしてその隣では肉焼きに失敗して焦げ肉のようになったヒトカゲ。なにも知らない人が見ると色違いに見えなくもないかもしれない。

 模擬戦はご覧の通り、両者ダブルKOというなの引き分け。……いや、今の状態だけを見るとヒトカゲが負けたみたいになってるけど。

 

 

「って、それよりもヒトカゲをポケモンセンターに連れて行きなさいよっ!」

 

「ぉぉぉ…、だんだんとカスミのこうげきが増してきている気がする……オェ」

 

 

 ボールを取り出し、ヒトカゲに向けて構える。ボールから赤い光線が放たれ、ぶすぶすに黒く焦げて皮膚がぼろぼろのヒトカゲの体を包む。

 

 

「……あれ?」

 

 

 ヒトカゲに向けて構える。ボールから赤い光線が放たれ、ぶすぶすに黒く焦げて皮膚がぼろぼろのヒトカゲの体を包む。

 

 

「…………あれ?」

 

「………戻らないわね」

 

「え、モンスターボールが故障した? まさかさっきの爆発の時の緊急回避で……いや、そこまで脆くないと思うんだけど」

 

「空のモンスターボールと間違えてるんじゃないの?」

 

「ん~……ボールは合ってるな。ヤバいマジで壊れたかも……」

 

「と、とりあえずヒトカゲをポケモンセンターに連れて行きましょう。ボールは後でなんとかしましょう」

 

「そ、そうだな。とりあえず、このイモリの丸焼……ヒトカゲを抱えて……」

 

 

―――ビリッ!

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「………ねぇ、アンタ今なに持ってるの」

 

「………ヒトカゲの……皮……かな?」

 

 

 もしくは黒い炭。片腕だけ取れた黒いソレ(・・)の中から見えるヒトカゲの皮膚はいつもより真っ赤になっていた。

 

 

「………今度は何したの」

 

「待てっ!? そんな目で見るな! 今回はホントに何もしてない! ただ持とうとしただけだ! これホント!!」

 

「何もしてない訳ないでしょ! アンタが今手に持ってるモノはナニよ!?」

 

「イヤイヤイヤ! これはきっと……きっと……なんだろう?」

 

「知らないわよっ!?」

 

 

――――――ビリッビリビリビリビリ―――ベリッ――――バキッ!

 

 

「グルルル………GYAAaaaaaaaaaaaaaaaaaAA!!」

 

 

「……………」

 

「……………」

 

「グルルル」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「おや、その資料は何ですオダマキ博士?」

 

「おおこれか。最近カントー地方の学会で発表された論文がこっちにも届いてね。中々おもしろい発表だよ」  

 

「カントー……というとオーキド博士ですか?」

 

「いや、なんとそのお孫さんだよ。まだ10歳になったばかりだというのにしっかりとした論文でね。ポケモンのタマゴの時もそうだったが今回もおもしろい着眼点だよ」

 

 

『ポケモンの進化はレベルや石などの影響が現在明らかになっているが、これはポケモン自体の体質にも大きく影響していると思われる。例えばヒトカゲなどのとかげポケモンは皮膚がそれほど硬くない。そういったポケモンがバトルを繰り返し成長していく中でどう体型を変化させ進化を行うか考察したところ【脱皮】するのではないかいう結論に達した。これは日々の成長とダメージによって体表に出る古い皮膚とこれまでの………』

 

 

 

 

 





はい、遂に進化しました御三家ポケモン。
流石に遅すぎると言われるかもしれませんが、大丈夫、アニメはもっと遅かったから!
ゲームじゃハナダジム辺りで進化するのになぁ。

それとたまにX・Yのアニメも見ますがヒロインがヒロインっぽくて驚いたなぁ。最初の方ですけど…。

それでは更新速度は相変わらず期待出来ませんが次回もよろしくお願いします。ノシ


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another マスターマサラ人

はい、お久しぶりです。

前回から、なんとかモチベーションを上げようと
最近のポケモンを見ていたら、違う方向へモチベーションが行って、今回のような
話になりました。

正直、「ifだからフリーダム!」みたいなこと考えながら執筆したので、
いつも以上にフリーダムな内容になってます。そしていつもより会話多すぎの文章。

まぁ、たまにはこういうのも良いかなと軽い気持ちで執筆したので深く考えずにお読みください。
特にこれの続編も予定してませんので……。

では暇つぶしにでもどうぞ。


 

 

 

「……うぅ………ここ、どこ~~」

 

 

 日差しが強く、木々が生い茂る森の中、麦わら帽子をかぶった一人の少女がとぼとぼと歩いていた。周囲に他の人影は無い。泣き腫らした目と頬に伝う涙がその少女の境遇を明確にしていた。

 

 

「みんな~~、みんな、どこ~~~!?」

 

 

 迷子であった。

 

 

「うぅ……痛いよう……グス」

 

 

 どこかで転んだのであろうか、膝は皮を擦りむき血がにじんでいた。

 

 

「ひっく………だから、キャンプなんか、行きたくなかったのに……」

 

 

 泣き顔ながら今の状況になった元凶に愚痴る。自分の意志では無く親により参加させられたこの『ポケモンサマーキャンプ』のせいでこんな迷子になってしまったのだ。迷子になったのは自分の行動のせいだと考え付かないのは子供なのだから仕方もないだろう。

 

 

「…………ぅぅぅ………ママ~~~~~~~!!」

 

 

 愚痴りながらも、この寂しさを癒してくれる存在に大声で助けを求める。自分はここにいるのだと、助けに来てくれと、大声で伝えようとする。

 

 

「ひっ!?」

 

 

 そんな声に応えるかのようにガサガサと近くの茂みが揺れる。決して大きくない茂みの揺れに小さな少女の心は恐怖で一杯になる。

 足がすくみ、ペタンと尻もちを付いてしまう。ガサガサと段々近づいてくるナニカから少しでも逃げようと必死に手を動かす。が、震える手では力が入らないのだろう。その場を離れることが出来ず。

 

 

「ぁ…ぁぁ」

 

 

 ―――そして、

 

 

「ゲフォッ!!」

 

「いや~~~~~~~~~~っ!! サダコ~~~~~~~!!」

 

「ゲホッ! ゴホッ! ゴホッ! ………………ペッ! ぐっ………水、飲みすぎた……オェ」

 

「あぅ………ぁ………ぅ」

 

「ん?」

 

「…………ぁ」

 

「え~と」

 

「………………サダコの……子」

 

「どちらさん?」

 

「……………………きゅ~」

 

「サダコ? ………あ、藻がついたままだった」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「………んん」

 

「お、目が覚めたかな」

 

 

(――男の子の声?)

 

 

 まだ眠いのに、と睡魔の誘惑に負けそうな瞼を引きとめたのはいつも起こしに来てくれるママや『つつく』で攻撃的に起こしてくれるポケモンでも無く聞き慣れない男の子の声だった。

 ゆっくりと目を開けるといつもの私の天井………ではなく、晴れやかな太陽。お昼過ぎの温かい風を感じる。

 

 

「………ここ、どこ?」

 

「ここ? ここは『ポケモンヒートエンドキャンプ』の中だけど。……というか君はこんなところでどうしたの?」

 

 

 聞き慣れない単語の意味が分からない。

 体を起こし先ほどから聞こえてきた方へ顔を向けると、草むらに座っている一人の男の子が居た。たぶん私と同い年ぐらい。

 

 

「もしも~し、オレの言ってることわかる?」

 

「え……あ、ごめんなさい。……えっと」

 

 

 目の前で手の平をブラブラされて少しびっくりした。状況がわからず混乱して、上手く言葉に出来ない。

 

 

「まずは落ち着いて状況を確認しようか。君はどうしてあんなところにいたの?」

 

「え……と、私、ママから『ポケモンサマーキャンプ』に連れていかれて……」

 

「ああ、それなら塀の向こうでやってるよ」

 

 

 ……牢屋?

 

 

「………それから、みんなと森の中に入って……たくさん歩いて……みんなが居なくなって……」

 

「たぶん、それは君の方から迷子になったんじゃないかな」

 

「みんな呼んでもこなくて……転んで……足から血が出て……」

 

「お~い、オレのこと見えてる? なんか遠い目をしてるぞ~」

 

「ママを呼んで……誰かが出てきて……ダレカガデテキテ………………ガタガタガタ」

 

「なんかトラウマ思い出してる!? 落ち着いて! あれはオレだから! 川で泳いだときの藻が頭に掛かってただけだから!」

 

「―――ハッ! ここはどこっ! 私は……セレナ!!」

 

 

 男の子に両肩をガクガクと揺らされて意識がハッキリとしてきた。

 そう私の名前はセレナ、カロス地方から船でカントー地方に来て、マサラタウンっていう町のオーキド研究所に行って、ポケモンサマーキャンプっていうので森の中に入って、みんなとはぐれて、

 

 

「え~と、君は―――セレナちゃんだっけ? つまり、迷子になってこんところに迷い込んだんだね」

 

「う、うん。えと、ここはどこ? あなたは?」

 

「さっきも言ったけど、ここは『ポケモンヒートエンドキャンプ』。オレはシゲルっていうんだ」

 

「ひ、ひ~と? えんど? ………その、みんなはどこ?」

 

「それも言ったけど、塀の向こう」

 

「…………ここ、どこ?」

 

「だから、ここは『ポケモンヒートエンドキャンプ』で………」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「つまり、ここは『ポケモンサマーキャンプ』のとなりにある『ポケモンヒートエンドキャンプ』ってところ。塀で仕切っているから普通は入ってこれないはずなんだけど、何故かセレナちゃんは入ってきちゃったってわけだね」

 

「じゃあ、みんなは……」

 

「ここには居ないね」

 

 

 お互いの状況を把握するのにけっこうな時間を要したが、なんとか話しを進めることが出来た。

 とはいえ、セレナっていう子はまだ状況に戸惑っているようだが、まぁ無理もないだろう。

 

 

「あの、どうすればみんなのところに戻れるの?

 

「ゴメン、はっきり言って無理」

 

「………え?」

 

「というか、現状は君が思っているよりもさらに悪いんだ。セレナちゃんはサバイバル経験ある?」

 

「サバイバル? ここはキャンプ場じゃないの?」

 

「うん。キャンプはするけど、ここにはキャンプ場はないんだ。ついでに言えば今日の晩御飯もない」

 

「えっと、それじゃ晩御飯は……」

 

「今あるのは……チョコレートぐらいかな。あ、食べる?」

 

「あ、ありがとう。………………苦っ!?」

 

「あ、ゴメン。カロリー補給用だから86%チョコしかないんだ」

 

「……うぐ……なにコレ」

 

 

 流石に吐き出すのは汚いと思ったのか、涙目になりながら無理矢理飲み込むセレナ。彼女は人生で初めて甘くないチョコレートの存在を知った。

 

 

「さて、とりあえずここから移動しようか。長いことここに居ると危ないし」

 

「あ、うん」

 

 

 危ない? と疑問を浮かべながらも差し出されたシゲルの手を取り、立ち上がる。そこで初めて彼女は気づいた。自分の膝に巻かれたハンカチに。

 

 

「このハンカチ……」

 

「ん? ああ、怪我してたみたいだったからね。食糧は無いけど消毒薬ぐらいなら持ってるんだ。けど、あいにく包帯やガーゼは無くてね。それで我慢してもらえるかな」

 

「……うん…ありがとう」

 

 

 簡素なハンカチで覆われた膝を見て、次にセレナを気遣うように見るシゲルの顔を見て少女は仄かに頬を染める。

 お兄ちゃんみたい…、先ほどまでずっと一人ぼっちだったセレナには同世代とはいえ精神的に落ち着いているシゲルがとても頼もしく思えた。

 

 

「とりあえず、ここから先に洞窟があるから今日はそこで寝よう。ただ、そこまで行くのにかなりキツイから、大変だと思うけど頑張ってくれ」

 

「う、うん」

 

「それじゃ、まずは最初にイシツブテ地雷地帯があるから、ほふく前進で進もう。オレが先に進んでイシツブテ撤去をするから、オレの進んだ道だけを進んでくれ」

 

「………え?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 以下ダイジェスト

 

 

 

「次はスピアー軍団の森。良く訓練されたスピアーから見つからないように隠密しながら進むんだ。もし見つかったらすぐに川へ飛び込んでやり過ごすように」

 

「うう、服が……砂だらけ」

 

「ただ川に飛び込んでも油断しちゃダメだ。川の主のギャラドスが荒れ狂っているからやり過ごしたらすぐに陸上へ上がって避難するんだ。じゃないとオレたちがアイツの晩御飯になっちまう」

 

「…………」

 

 

 ああ、だから出会った時に藻がついていたんだ……、と現実逃避した少女がいた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「……くしゅんっ! うぅ~~……寒いよぅ」

 

「火を起こすからちょっと待ってて。あ、服乾かさないと風邪ひくぞ。とりあえず服脱いで」

 

「でも替えの服持って無い…」

 

「そこに寝袋があるから包まるしかないな。あっち向いてるからパパッと脱いで寝袋に入って」

 

「う………うん」

 

 

 平然な顔をして服を脱げという同世代の男の子に、自分は女として見られていないと思い密かに落ち込む。帰ったら女子力(・・・)の努力値に全振りを少女は決めた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「………こんな風に寝るの……初めて」

 

「ごめんな狭くて。寝袋が一つしか無いから男としてはセレナちゃんに譲るべきなんだろうけど…。流石に洞窟で布団無しで寝るのは寒くて寒くて」

 

「ううん、それはいいの。その……私こそ、ごめんなさい。迷惑掛けてばかりで」

 

「しょうがないよ。初めてでココは誰だってキツイと思うし。オレは何回もやってるからさ」

 

「ねぇ、何でシゲルはこんなことしてるの?」

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………ホント、何でだろうね」

 

「…………よしよし」

 

 

 彼とて好きでこんなところに居るのではないのだと感じ取ったセレナ。遠い目をしている精神的に年上の男の子の頭をなぐさめるように撫でる。母性と親近感が湧いた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ああ、おはようセレナちゃん」

 

「……んん。……ここどこ? あなただれ?」

 

「とりあえず、近くの川で顔洗ってきたら。ほら、あっち」

 

「ん~~~~」

 

「川沿いでボ~っとしてるとギャラドスが捕食してくるから気をつけろよ~」

 

「ん~~~~」

 

 

 

 

 

 ――――――――――――GYAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!!

 

 

「イヤ~~~~~~~~!?」

 

 

 強烈な朝の挨拶をもらったようだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…―――グス」

 

「ほら、もう大丈夫だから。泣かない泣かない」

 

「うぅ~~~~、食べ…られる…グス…思っ…」

 

「よしよし。もうギャラドスはいないから泣きやんで。ほら、朝ごはんにしよう」

 

「グシュ………朝、ごはん?」

 

「チョコレート食べる?」

 

「甘いの?」

 

「苦いの」

 

「苦いのは……イヤ」

 

 

「なら他のにしよう。さっきそこでパラスからもぎ取ったキノコとナゾノクサの葉を引きちぎってきたから火を通して食べよう。塩分補給用に食塩は持ってるから味はあるよ」

 

 

「…………チョコレートでいい」

 

(―――ママ、今までピーマンやニンジンを残してゴメンなさい)

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おつかれさん。なんとか今日は乗り切れて良かったな」

 

「ひぐっ………ぅぅ………お家、帰りたい…お風呂、入りたい……ごはん、食べたい」

 

「……まぁ、こういう風になるわな。よし、お湯沸かしたから髪を濯げるよ。体も拭いてさっぱりしよう」

 

「……シャンプーとせっけんは?」

 

「うん、もちろん無いよ」

 

「うぅ~~~、もういや~~~~~っ!! こんなとこ、いや~~~~~~っ!!」

 

「うん、オレも正直言えばこんなとこイヤだけど、出られないから色々我慢するしかなくてね。ほら、オレが髪濯いであげるから泣きやんで」

 

「や~~~~~っ! や~~~~~~っ!」

 

「よしよし、よしよし」

(ポケモンが寄ってきませんようにっ!! ポケモンが寄ってきませんようにっ!!)

 

 

 生活の不安と今までの癇癪を爆発させた少女の頭を撫でながらあやすシゲルの内心は少女以上に内心不安であった。なぜならここは洞窟内。逃げられない。

 

 

「よしよし、よしよし、お~よしよし」

 

 

 ナデポなんてものは存在しない。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「はぐはぐ……もぐもぐ……ん~~」

 

「そんなに慌てて食べるとのど詰まらせるぞ。 ほい、水」

 

「ん~~~……ふぅ、 タマゴおいしい~~~~!」

 

「それは何より。運よく手に入って良かったよ」

(何のタマゴか知らないけど………まぁ、火を通せば大丈夫か)

 

 

 チョコレート(甘くない)をかじるシゲルと満面の笑顔でタマゴを頬張るセレナ。先ほどの癇癪はタマゴのお陰で綺麗に吹き飛んだ。セレナからすれば、ここしばらくの食事の訳の分からないキノコや雑草と比較出来ないほどの豪華な食事に思える。ゆでタマゴに塩を付けるだけで最高の食事なのだ。

 

 

「むぐむぐ、……………ごちそうさま!」

 

「よく食べれたね。ゆでタマゴ4個は流石にキツイと思ったんだけど」

 

「だって、今度いつタマゴ食べれるかわからないもん。変なキノコも変な草も甘くないチョコもイヤ!」

 

「まぁ、そうだな」

 

「シゲルは甘くないチョコ好きなんて変だよ」

 

「いや、オレも別にコレが好きなわけじゃいぞ。効率考えてコレを食べてるだけで、出来ればオレも市販の甘いチョコを食べたい」

 

「そうなの? でもずっと変なキノコや変な草やそればっかり食べてる」

 

「まぁ、今はこれしかないからね」

 

「………シゲル、タマゴは?」

 

「……あ~、あんまり気にしなくていいよ。慣れればチョコも甘く感じるし、キノコも嫌いじゃないし」

 

「………ゴメンなさい」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

―――3日後

 

 

「ねぇシゲル」

 

「んん? どうした」

 

「……いつになったら、お家に帰れるの?」 

 

「あ、言ってなかったっけ。明日にここから西の方に行けばこのキャンプから出られるようになってるんだ。ここはエスパーポケモンの『ねんりき』を結界みたいにして出られないようなってるけど、明後日には一部の所にねんりきが無くなって出られるようになるんだよ」

 

「……明日。そっか、明日には帰れるんだ」

 

「セレナはカロス地方だっけ。まぁ、ここから出てもカロス地方に行くには少し時間が掛かるけど」

 

 

 行動を共にしてすっかり打ち解けた二人。ちゃん(・・・)付けも無くなり、お互い良い意味で遠慮が無くなってきた。

 

 

「明日の朝は適当に鶏の巣でも見つけてタマゴでも見つけてくるよ」

 

「じゃあ、私は火を起こしておくね。あと、川から水汲んでくる」

 

「ん、頼む。セレナがいてくれて、ここのサバイバルだいぶ助かってるよ」

 

「えへへ」

 

「それじゃ、もう寝よう。おやすみ」

 

「うん、おやすみシゲル」

 

 

 肌寒い洞窟の中、一つの寝袋で眠る二人。そしてシゲルの方へ身を寄せて、くっつきながら目を閉じる。

 

 この数日で抵抗もなく一つの寝袋で寝れるようになったセレナ。

 

 明日には帰れるという喜びと、もう終わりなのだと小さな寂しさを感じながら眠りについた。

 

 

 こうしてセレナのデンジャラスなキャンプは無事(?)終了した。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「うぅ~~~、ピーマンもニンジンもおいしいよ~」

 

「そ、そぅ」

 

「ちゃんと味も付いている……、おいしい~」

 

 

 カントーへ送り出すのは母親としてもやはり不安だったが、将来のためにと心を鬼にして送り出した愛娘。数日して無事帰ってきたことは何よりも喜ばしいことだった。加えて、帰って来て泣きながら縋りついてくる娘は母としてなんとも愛おしい。

 そんな娘にささやかなご褒美として、

 

「好きな夕食を作って上げる!」

 

 と、言ってあげたら

 

「味のついたピーマンとニンジン!!」

 

 と、普段残している嫌いな食べ物を要求された。

 

 

「おいしいっ! おいしいよっ! …………グス」

 

 

(………な、泣くほど?)

 

 

 一体何があったのかと不安になる母であった。

 

 




ポケモンのリメイクが11月に発売……!
ようやくルビサファの準伝説が厳選出来そうだぜ……!

なんてことを考えながらポケモンバンクをしようかどうか悩んでいる今日この頃。
そんなことよりも続き書けと言われそうですが、やめられない止まらない。

という訳で今回はアニメXYの話から持ってきました。
相変わらずヒロインがヒロインしてるセレナに正直驚いてます。
そしてこのssでは更なる不幸な過去設定が……。
弄るのがとても楽しいですw

それでは更新速度は相変わらず期待出来ませんが次回もよろしくお願いします。ノシ




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ノーマルマサラ人 23話

 さて、大半の方がお忘れでしょうが、無様にも帰ってきました。

 もうそろそろ出るであろうサン・ムーンにテンションが上がってなんとなく投稿。

 今更どの面下げてきたと言われそうですが、暇つぶしにでもどうぞ。

 ホントすいません。


 そして相変わらずの文章力の無さに絶望した…。


 

「使用ポケモンは3体! ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます! 先に3体のポケモンが戦闘不能になった方が負けとなります!」

 

 いつもの審判のルール説明を聞き流しながら対面に立つ挑戦者をじっと見据える。

 挑戦者は腰のホルダーからモンスターボールを一つ手に取りボタンを押して手の平に収まる大きさに変えて、私の方を見る。

 そして目が合い、少し笑う。私もつられて口元を緩ませる。

 

「いつか対戦するってわかってても、実際に挑戦者としてこの場に立つとなにかおかしいな」

「幼馴染との初めてのバトルがこんな形だからですか?」

「そうかもな。幼い頃からの付き合いなのにジム戦が初バトルってのもな。まぁ、年齢的にしょうがなかったんだけどさ」

「そうですね。ですが、私はずっと楽しみにしていました。この日が来るのを」

「随分と待たせて悪かったね。けど今のオレは挑戦者だから、遠慮する余裕が無いんだ。この初戦でバッジをもらうつもりだよ」

「はい、私も今は挑戦者と合間見れるジムリーダーです。遠慮も、手加減もいたしません」

 

 本音を言うなら、ここで私が勝って再戦しに来て欲しいだけれども。

 ―――そうすれば、また来てくれるから。

 

 

「それでは始めましょう。準備はよろしいですか?」

「いつでもっ!」

「では……タマムシジム、ジムリーダー・エリカ! 参ります!!」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 ―――タマムシシティ。

 

 

 大きなデパートやカジノ施設などの娯楽があり、多くの人が住めるよう大型マンションを置き、街の外は多い茂る森に囲まれている。

 人が住む環境としては至れり尽くせりである。カントーでもここまで都会なのはヤマブキぐらいだろう。………まぁ、フレンドショップどころかポケモンセンターすら無い地元のマサラタウンが町として異常なのだが。

 なんでいつも歴代の主人公の町にはこういった施設がないのだろうか。タウンじゃなくてヴィレッジの間違えじゃない?

 

 そんなタマムシシティでオレことシゲルはジムバトルを行っています。

 

 

「お行きなさい、モンジャラ!」

「出番だ、マンキー!」

 

 バトルフィールドに投げられる二つのボールから出現するのは、純粋な草タイプのモンジャラ、純粋な格闘タイプのマンキー。出現と同時に互いに敵を確認、トレーナーの指示を実行出来るよう即時戦闘態勢をとる。

 

「それでは、バトル始め!!」

 

「マンキー、『きあいだめ』!」

「モンジャラ、接近なさい。『つるのムチ』です!」

 

 審判の合図を受けて、真っ先に動いたのは素早さで勝るマンキー。その場で深く息を吸い、気合いを込めることにより相手への攻撃が急所に当りやすくなる技。一方、モンジャラは通常の草タイプの攻撃、接近しながら『つるのムチ』で動かないマンキ―を打ちすえで確実なダメージを与える。

 

「近距離戦ならお前の得意分野だ、『からてチョップ』!」

 

 『からてチョップ』は相手の急所に当てやすい格闘タイプの攻撃技。先ほどの『きあいだめ』の効果と重複する。『からてチョップ』の元々のダメージは低くとも、急所により大きなダメージをモンジャラに与えることが出来る。

 

「モンジャラ、『しめつける』攻撃!」

 

 急所により想定外のダメージを受け、動きを止めたモンジャラであったが、エリカの指示を受けてすぐさま行動に移る。体の長いツルを使いマンキ―を締め付けてじわじわとダメージを与える。だが目的はダメージではない。相手の攻撃―――腕を封じることだ。

 

「ッ!―――マンキー、距離を取れ!」

 

「モンジャラ、そのまま『メガドレイン』です!」

 

 ツルが淡く光り、マンキーにダメージを与えると同時に体力を吸収し、体力を回復する。相手を動けないようにして確実に倒す、かつ次のバトルのために体力を温存する戦い方。草タイプ特有の器用さとも言える。

 

「マンキ―、飛び回って『ちきゅうなげ』! 相手を振り回せ!」

 

 最もそんな戦い方はわかっている。シゲルが生まれてから付き合いが長いのはサトシについでエリカなのだ。

 なにをしたか、こんなことがあった、友人のこと、ポケモンこと、チャレンジャーのこと、家族のこと、最近近づいてきた女性はいませんか……。

 そんな会話をしていればエリカの手持ちのポケモンも分かる、使う技も知ることが出来る。

 

 自身に巻きついたツルを体ごと捻り、モンジャラを力づくに振り回す。モンジャラのおもさは35kg、相手のおもさと伸ばしたツルの長さが遠心力を強める。

 

「モンジャラ、『メガドレイン』です!」

「地面にたたきつけろ!」

 

 ツルが淡く光り出し、マンキ―の体力を吸おうとする前に、今までの横回転から縦に、マンキーが飛び跳ね遠心力の勢いのまま地面にたたきつける。

 たたきつけられたモンジャラは衝撃を殺せず地面にめり込む。そしてマンキ―に巻きつかれたツルが解かれる。

 

「マンキー、『からてチョップ』!」

 

 自由の身となったマンキ―が飛び、未だ地面にめり込んでいるモンジャラに『からてチョップ』を炸裂させ、さらに深くモンジャラをめり込ませる。

 何か潰れたような音がした気がするが、気にせずマンキ―は後退。次の指示を待つようにシゲルの前に立つ。

 

「モンジャラ、戦闘不能! マンキ―の勝ち!!」

 

「お戻りなさい、モンジャラ」

 

 エリカのモンスターボールに回収される。モンジャラの消えた所にはモンジャラの形をした小さなクレームが出来ていた。

 

 

「格闘タイプで力押しですか…。てっきりリザードかニドリーナをお使いになると思いましたが」

 

「……なんで炎タイプと毒タイプがいるのを知っているのかな」

「電話でナナミさんからお聞きしまして」

 

「……手持ちが……ばれてる……!?」

 

「あ、ご安心ください。流石にどんな技を使ってるか、などという話は聞いてませんので。ただ最近のシゲルさんの近況をお聞きになったらナナミさんが色々とお話してくれまして、その時に」

 

 姉さんのバカ……、イヤ、わざとか…わざとなのか。まさか旅に出てる間もこうして間接的にオレに難問を押しつけているのか…。

 

「ちなみ、その時の姉さんは普通だった? イヤ、普通だったって言う意味がよくわからないかもしれないけど……どうだった?」

 

「とても良い顔で話されていましたよ。それはもう手入れしたばかりと言わんばかりの肌のツヤは同じ女性として憧れ……シゲルさん、どうかなされましたか、急に肌色が悪くなったかのように」

 

「……なんでもないよ。ただ身内の苦労にメシウマな家族がいることを改めて痛感しただけだよ」

 

 離れてても家族と繋がってると本当なんだな。……きっとキラキラしていたであろう姉のイイ顔が容易に想像がつく。

 

「では、私の次のポケモンはこの子です。 お行きなさい、ウツドン!」

 

 

――――――続く

 

 

 

 

 

 

◆◆◆another マスターマサラ人◆◆◆

 

 

 

『ガブリアスはプリズムタワー方面へと向かって行きます! 『はかいこうせん』を辺り構わず発射して…ッ!? わ、我々報道陣にも威嚇してきました!?』

 

「これなんて映画?」

 

「違う違う、緊急生中継ですって。ミアレシティからの」

 

「え? これ生なの? うわぁ、本当に撃ってる。これミアレシティの人たち大丈夫かなぁ」

 

「野生のガブリアスなんて滅多に見ないし、トレーナーから逃げ出したのかしら?」

 

 

◇◇◇

 

 

『一体あのガブリアスに何があったのでしょうか!? 住民のみなさんは急ぎ避難をしてください! 特にプリズムタワー周辺から……え、なに、今生中継なんだから顔を出さないって…後ろから? こっちに向かって?』

 

『もしも~し、そこのヘリコプター、そこでホバーしていると的にされちゃいますよ~。撮影が仕事なのは分かりますけどもう少し動き回ってくださ~い。繰り返しま~す、そこでホバーしていると花火になっちゃいますよ~』

 

『……なにあれ? え、マイクのスイッチ……あ、やば……コホン。 え~後ろからリザードンに乗って、メガホンで我々に声を掛けてくる少年が来ました。彼がガブリアスのトレーナーなのでしょうか? あ、こっちに近づいてきます』

 

『もしもし、何度も声掛けてますけど、ここで停止してると危ないですよ。撮影するならもっと動かないと当たっちゃいますよ』

 

『あの、あなたは、君があのガブリアスのトレーナーなのかな?』

 

『いえ、違います。オレ…私はある人に頼まれてガブリアスを止めるよう来ただけです。 あれ、これテレビ撮ってる? ここチョッキンしてくれます。身内にバレたくないんで』

 

『え~と、生放送なんだけど』

 

『え、マジで。コホン、あのガブリアスはプラターヌ研究所のポケモンです。私のポケモンではありません。抗議とか損害賠償とか責任問題諸々は研究所にお願いします。大事なことなので2回言いますけど、私のポケモンではありません』

 

『……はぁ』

 

『それでは私はこれで失礼します。出来れば録画放送の時にはモザイクと音声編集をお願いします』

 

『……はぁ。 って、ちょっと君!? 危ないから近づいちゃダメよ!!』

 

『ご心配なく、すぐ終わらせますんで。 リザードンGO!』

 

『GYAaaaa!』

 

『……行っちゃった。って、うわ! あの高さから『ちきゅうなげ』!? いや両足を掴んで叩きつけてるから違うのかな?』

 

『アナウンサー! あれはキン○ドライバーですよ! キン○ドライバー! すごい!ポケモンが48のサブミッションを使うなんて!!』

 

『カメラに出てくるなガンマイク!!』

 

 

◇◇◇

 

 

「なんなのかしらね、これ?」

 

「…………」

 

「セレナどうしたの? 豆鉄砲喰らったみたいな顔して?」

 

「………ママ、私旅に出る」

 

「………はい?」

 

 




 バトルばかり話しになってなんかつまらないなぁ。なんかおまけ付けようかなぁ。

 って考えて続きを書くつもりが無かったXYの方をちょこっと追加。会話ばかりで一切補足の文が無いのでわかりづらいと思いますが、アニメの方を見てる方はなんとなく分かってもらえるかと。 相変わらずおかしいですねこのssは。

 さて次回はこの続き……ではなく、また変なanotherを突っ込んでみるつもりです。
 XYではなく、なんとなく書きたくなった物なのであまり期待しないでください。(更新速度的な意味でも)

 サン・ムーン発売までには投稿出来たらいいなぁと思ってます。
 では、またノシ




 


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another スーパーマサラ人 1話


 どうも皆さま、もうすぐ発売ですねポケモンサン・ムーン! そしてファイアローやゲンガーは泣いていい(仕様変更の可能性微レ存)
 
 なんとか新作出る前に投稿出来ました。そして内容は全く関係ないストーリー、書きたかったんや……。
 
 前のXYみたいにこういった時間軸が違うストーリーが書いてみたくノリで書き綴りました。正直今回はあまりおもしろくないかも……。
 
 まぁ、こんな展開もありかなと生暖かい目で見てやってください。


 

 

 その日はとてもいい天気だった。

 

 旅たちの日には申し分のない快晴。空は青く、風は心地よく、おかげで気分は最高だった。少し急な坂道も気分の乗っている時ならなんてこともない。自転車のペダルを強く漕ぐことを苦に感じなかった。そして登り切った後の下りはスピードを緩めることなく一気に進む。

 

 ようやく訪れた10歳の旅たちの日。この日が待ち遠しかった。家族にはポケモントレーナーになると言って旅に出る口実を作ったが、実際のところやりたいことは『旅に出る』ことだった。ただポケモンを持たないと基本的にどこの親も旅に出ることを認めてくれないからその口実を使っただけ。

 

 それどころか少しポケモンは苦手だったりする。

 

 何はともあれポケモンを貰うことで旅に出ることが許されるのだ。多少のことはがまん、がまん。

 

 

 ――――きっと楽しくて素敵な旅が始まる。

 

 

 あの時(・・・)はそう思えたのだ。

 

 

 不意に気配を感じて顔を向けると見たことのないポケモン。

 それに驚き、ついハンドルをおかしな方向へ向けてしまい道を外してしまった。

 凸凹とした生い茂った森の下り道へ。スピードが上がり転がるのが怖くて、ただ下り降りるがままブレーキが出来なかった。

 どうすればいいのかわからず、パニックになっていた。

 

「へ?」

 

 そんな気の抜けた声が耳に届いたときには既に遅く、とても大きな衝撃が体に響き、私は地面に叩きつけられた。。

 

 

「なっ!? にいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーー………」

 

 

 そんな時、目に入った光景は自分と同じくらいの男の子が吹き飛ばされ宙に少し浮き、すぐに()へと消えた。

 そしてバキバキと木の枝が折れる音、ガサガサと葉が鳴る音、キリキリと自転車のタイヤが回る音。

 自転車を見てみるとタイヤのフレームがおかしな方向へと曲がっていた。

 

「…………やばい………かも」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ホウエン地方ミシロタウン、ここには他の町には無い名所がある。それは『ポケモン研究所』。

 ホウエン地方の各町から新人トレーナーが旅立つ前に必ず一度は訪れ、最初に自分のパートナーとなるポケモンを手にする場所。

 その多くの新人トレーナーの中の一人、トウカシティから一人の女の子が訪れる。

 名前は『ハルカ』。ジムリーダーの父を持つ10歳になったばかりの女の子。念願の旅に出るために初めてのポケモンを貰う……予定だった。

 

「切り傷と打ち身が数カ所、あとはたんこぶが出来てるくらいかしら。特にこれといった大きな怪我はありませんでした」

 

「そうですか、それは不幸中の幸いだ。良かったねハルカちゃん」

 

「……ふぁい」

 

 その予定だった。だが今の彼女はとても念願の旅に出かけるような雰囲気ではない。グスグスと泣きながら嘆き悲しんでいた。

 

「ありがとうございます、ジョーイさん。すいません、ポケモンを見てもらうために来てもらったのに」

 

「いえ、これも私の仕事ですから。………むしろあの高さから落ちてこの程度の怪我で済んでることに驚きました」

 

「うまく木の枝がクッションになったのかもしれませんね。何はともあれ大きな怪我もなくてよかった」

 

 研究所の一室で会話をする二人。

 一人はここポケモン研究所の責任者であり、ホウエン地方でも有名な研究者であるオダマキ博士。

 もう一人は今日新人トレーナーに渡す予定のポケモンの健康をチェックするために訪れたジョーイ。

 そしてもう一人。先ほどからソファーに座り泣いている少女、新人トレーナーのハルカ。

 

 ことの始まりは彼女が自転車の操作を誤ったことから。不運なことにその結果一人の少年に勢いそのまま体当たりをし、吹き飛ばされた少年はさらに不幸なことに崖から落ちた。それもかなりの高さから。

 一時は放心状態だった彼女だったが一度頭が動き始めると状況を受け入れきれずパニックに。自分が助けようにも崖の高さに顔を蒼白させて余計不安が増すだけだった。死んでしまったのかもしれない、と。

 そんな彼女が唯一出来たことは助けを呼ぶこと。

 幸いなことに彼女は助けを呼ぶ人物をすぐ思いつくことが出来た。

 つい今しがた向かおうとしていたポケモン研究所。そこにいる父や母の知人でもあるオダマキ博士である。

「ほらハルカちゃん、彼に大きな怪我もなかったんだ。もう大丈夫だよ」

 

「……はい」

 

 泣きながら研究所に駆けこんだハルカ、上手く頭と口が回っておらず、わかりづらい言葉の中から判断したオダマキ博士はすぐさま車をぶっ飛ばして現場へと急行。所々怪我をして倒れていた男の子を見つけ出し保護。

 来訪していたジョーイさんに彼を預け今に至る。

 

「ほら、もう泣かないで。大丈夫だよ、ちゃんと謝ればあの男の子だって許してくれるさ」

 

「ええ、あの怪我なら治るのにそう時間も掛からないと思うわ。そう落ち込まないで」

 

「でも……服もボロボロですし、持ち物もぐちゃぐちゃで、ポケモン図鑑も壊れてますし」

 

 倒れていた男の子の回りには鞄と散らばった道具の数々。落下の衝撃でほとんどの道具は駄目になり、ポケットに入っていたポケモン図鑑は砕けていた。電源は付かず、何の反応も返さず、データの吸い出しを試みたが駄目であった。完全にジャンクとなっている。

 ちなみにちょっとやそっとで壊れることのないポケモン図鑑が壊れていて、その所有者が軽傷で済んでいることにジョーイはかなり驚いていた。

 

「なに、そんな不安になることはないよ。道具はある程度はこちらから提供出来るし、データはどうしようも無いけど図鑑も予備の物を出せるよ」

 

「いいんですか!?」

 

「今回は不慮の事故ということでね。流石に服は今すぐには無理だけど」

 

「ありがとうございます!!」

 

「それにセンリさんには内緒にしときたいだろう」

 

 砕けた表情で冗談を言う目の前のオダマキ博士にバツの悪い顔を浮かべるハルカ。実際そのことも考えていた。

 けれど感じる気遣いにハルカの表情が先ほどよりも柔らかくなる。

 10歳の少女の心に傷を付けさせたくない大人二人の気遣いだった。

 

「博士、失礼します!」

 

 ちょうど会話が一段落したとき、ノックされたドア。急いているのか入室の許可を出す前にドアが開けられる。

 

「先ほどの少年が目を覚ましたのですが……その……」

 

 急にトーンダウンする言葉に嫌な予感を覚える3人、そして部屋に入った白衣の男はハルカを一瞥すると言い辛そうにしながらも爆弾を落とす。

 

「どうにも、記憶喪失……みたいです」

 

 場が一瞬でぜったいれいどになった。

 

 

 





「ハルカはめのまえが まっしろに なった!」

 オープニングからゲームオーバーなヒロインこれいかに。おまけにギャグ要素があまりない。

 次続きを書くかわかりません、だって本編ほとんど進んでないもの……。
 
 書くときにネットで古い情報見たりしましたけど、ハルカも人気高いヒロインですねぇ。ヒカリやセレナも高いんですけど。

 まぁ、色んなところにモチベが言ってるんで次話は本編進めるかこの続き書くか又はまた変なanotherぶっこむか。

 なにはともあれサン・ムーンをやってからですかねw
 
 ではみなさんノシ
 


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another スーパーマサラ人 2話


 年始になっても相変わらずバタバタしております。

 遂に始まったな、レーティング第二弾!
 しかし、未だに全部集まっていないメガストーン!
 64BPって高過ぎじゃない!? 前は路上に落ちている石を拾うだけで良かったのに!
 などと、理不尽な怒りを募らせる今日この頃な作者です。

 やべぇよ、今作のレーティング。XYの時もそうだったが新ポケモン出るたびに環境が一変することに対応出来てねぇ。

 そしてRガラガラがレーティング上位に君臨するなんて誰が想像出来ただろうか…。
 そしてテッカグヤやミミッキュやテテフに痛い目見てる気がする。
 強敵やで……!

 スイマセン、ssの内容一切話していませんね。
 今回は旅に出る前の前日談みたいな感じです。
 では、暇つぶしにでもどうぞ。
 


 

 トウカシティ、自然と人が触れ合う街。

 それなりに大きな街には多くの人が行き交い、いつも明るい雰囲気に包まれている。街の周りには自然が多く毎朝気持ちの良い風を送ってくれている。

 

 そんな中、名称不明の一人の少年はジョギングをしていた。特に焦ることもなくそれなりに余裕のあるペースで街の外周を走っている。

 名称不明の理由は少年には記憶がない。1週間前にある事故が起き、その折に記憶喪失に陥っている。

 

 幸いなことに少年は日常的な生活が送れないような酷い状態ではなかった。

 言葉も言えるし読み書きも問題ない。目に映る物を理解も出来るし考えもしっかりとしている。

 

 ただ、自分のことに関してだけが一つも思い出すことが出来なかった。

 自分が何者なのか、どこから来たのか、何のためにあの場所にいたのか。

 

 少年が持っていたであろう道具にもこれといった痕跡もなく、トレーナーにおいて身分証明書に当たるポケモン図鑑も事故のときに壊れている。

 

 捜索願いも出されていないため、少年についての情報はほとんど無かった。

 事故状況から分かったことは少年はそれなりのポケモントレーナーではないかということ。

 

 『すごいきずぐすり』・『かいふくのくすり』・『なんでもなおし』、そしてなぜか大量の各種ボールと木の実とかたいいし、かわらずのいし。

 少年のバッグの中に入っていた道具がとても初心者トレーナーが持つ道具ではなかった。

 

 しかしトレーナーならば手持ちのポケモンがいる筈だが、何故か彼はポケモンを持っていない。

 そのことが状況をさらに混乱させている要因にもなっている。

 

 身元不明、捜索願いも無し、ポケモンもいない。

 その少年については誰もがお手上げといっても良いだろう。

 

 

「おはようミツル君。元気そうだね」

 

「おはようございます。いやぁ、記憶以外は何の問題もありませんよ」

 

「おはようミツル君、相変わらずよく走るね」

 

「いやぁ、何故か走ったり体動かさないと不安な気分になってくるんで、何ででしょうね?」

 

「少しずつ記憶が戻ってきてるんじゃないかな」

 

「だと良いんですけどね」

 

 

 朝日が眩しい中、町の人と朗らかに会話をする記憶消失の少年、仮名ミツル。そんな彼は、

 

 

 

(………ああ、朝の風が心地いい。今日もなんて素晴らしい天気なんだろう)

 

 

 

 悩みや不安なんぞ全く感じられないクッソいい顔でジョギングをしていやがった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 娘のハルカが10歳を迎え、ポケモントレーナーとして旅立つこととなった。家を出たときは旅に出ることへの不安もあったが、それ以上に旅を終えて成長しているであろう娘の姿にも期待していた。

 落ち着きの無い子ではあるが、素直ないい子に育ってくれたと思っている。将来の夢を見つけるかもしれない、その過程でジムリーダーでもある自分に挑んでくるかもしれない。

 旅に出てつらいこともあるだろうが、それでも無事に旅を終えてくるだろう。

 

 

 そう信じて送り出した娘だったが、まさか数日と経たず戻ってくるとは私を含む家族全員が思わなかっただろう。

 今にも泣きそうなハルカ、同伴者にはこの町のジョーイさんとこのホウエン地方で知らない人はいないであろうオダマキ博士。二人の表情には気まずさが窺えた。

 

 そしてハルカと同年代に見える見知らぬ少年。

 なぜか驚いた顔をされたが、この少年の事情が我が家に一番の衝撃を与えただろう。

 

 

 そしてあの時から私たち一家に一人家族が増えることになった。

 

  

 

 

「おかえりミツル君」

 

「ただいまです、センリさん。もしかして待ってました?」

 

「なに、新聞を取りに来たついでにね。相変わらずすごい体力だね、ご近所さんに聞いたけどかなり走り込んでるようだけど」

 

「そう、ですかね? そこまで長い距離走ってるように感じないんですけど」

 

 

 そう、この少年がつい最近我が家の一員となったミツル君。ただし本名ではなく、名前がわからないために暫定的に呼んでいる名前であるが。

 

 

「体の調子はどうだい、どこか痛むところとかあるかな?」

 

「いえ、怪我したとこもかさぶたが剥がれてますし、打ち身もほとんど痛みませんよ」

 

「そうか、なら良かった」

 

 毎日問いかけている彼の状態。

 彼がこの家に来て1週間が経っている。

 あの日、今はミツルと呼んでいる少年の記憶喪失、その経緯を家族に知らされた時はなんとも居たたまれない空気だっただろう。事故とはいえ一人の少年の人生に多大な影響を与えてしまっているのだから。

 

 家に来るまでに病院にて精密検査などを行ったようだが、そんなすぐに治るモノでもなく、時間経過による様子見といったことしかなかった。

 普通そういった患者は病院にて入院するのだが、我が家に連れてきたのは少し事情があった。

 

 私がジムリーダーであること、そして彼がポケモントレーナーであったかもしれないということ。

 

 

「そういえばマサトが君を呼んでいたよ。なんでも朝食前にテレビを一緒に見るとか」

 

「ああ、前にやってたポケモンバトルの再放送を見ようって言ってたんです」

 

「マサトもすっかり君に懐いているね。もうお兄さんみたいなものじゃないか」

 

「だと良いんですけどね」

 

 

 ポケモンを連れていなかったが、事故が起こる前に彼が所有していた道具から彼は旅慣れたポケモントレーナーの可能性がある。ならば彼は各地で旅をしていたかもしれない。となれば各地のジムの戸を叩いたかもしれない。

 例えジムリーダーの顔を覚えていなくても、彼の目に移ったジムや町の風景から彼の記憶に影響を与えるかもしれない。そういったことで彼はここへ連れて来られた。

 

 あいにくと私の記憶には彼の顔に覚えはなく、彼もこの場所についての記憶はなかったが。

 

 

「ところでハルカちゃんは?」

 

「もう大丈夫だろう、元気そうだったよ。さっき見に行ったときも顔色が良かったしね。ミツル君も朝食の後で顔を見せに行ってくれるかな、きっと安心する」

 

「そうですね……なんというかそれについても申し訳なく」

 

「いやいや、ハルカについてはこちらの方が申し訳なく思ってるよ」

 

 

 けれど彼を温室に案内し、私のポケモンを見せてみるとおかしなことがわかった。

 

 『このポケモンに見覚えはあるかい?』

 

 この一言から始まった彼のやりとりがおかしかった。

 

 ポケモンの名前はわかるかい?

 どんなタイプかわかるかい?

 どのポケモンの進化形かわかるかな?

 このポケモンの特性は?

 etc・・・etc・・・。

 

 

 彼はポケモンについての知識が豊富だった。

 いや、年齢を考えれば異常と言えるかもしれない。

 

 今まで大半の質問にわかりませんと答えることしかなかった彼が饒舌に返答したのはこれが初めてだったようだ。ジョーイさんもオダマキ博士も驚いた表情を浮かべ、ハルカも内容が理解出来ないまでもスラスラと答える彼に目を丸くしていた。

 

 そんなことから彼をポケモンと身近に接しやすいという環境がある我が家に引き取ることにした。オダマキ博士がいる研究所という選択肢もあったが、落ち着いた環境と負い目からくるのか、ハルカの強い願望により決定した。

 無論、その負い目は家族である私たちにもあり、彼を迎え入れることにした。

 

 

「それじゃ、シャワーお借りします。ハルカちゃんにもあの事を伝えておきます」

 

「うん、やっぱりハルカは君の記憶喪失にはかなり重く受け止めているようだから、そうした方がいいだろうな。申し訳ないけど、これからもハルカのことを気遣ってくれないかな」

 

「はい、俺の出来る限り、ですけど」

 

 

 少し荒れていた呼吸はすっかりと整えられていた。しっかりとした足取りで家に入っていく。

 見たところハルカと同い年ぐらいだろうが、受け答えや他人の心情を慮る姿勢はとても同年代とは思い辛い。記憶喪失で不安もあろうに自分よりもハルカのことを気遣ってくれることはとてもありがたかった。彼ならば今後ハルカと一緒に行動しても問題は無いだろう。

 

 

「しっかりとした子だ」

 

 

 この一言が私が彼に抱く印象だ。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 女の子の部屋をノックして相手が返事してもすぐには開けない。病人ならばなおさら。

 

 この家に来て初めて知ったことだと思う。なにをつまらないことを、と思いそうだが、これは女性にとって大切なことらしい。

 

 具体的には身だしなみについて。

 

 病人ならば身だしなみはどうしようもないと思うのだが、髪のセットやら服の皺とか汗臭さとか、とにかく家族以外の異性相手には病人は敏感なのだと、この家の大黒柱の妻であるミツコさんから力説された。

 まぁ、記憶喪失で常識も欠落されて思われているのかもしれない。真剣な顔での忠告なので今後は気を付けます、と。

 

 実際に今、部屋の向こうからはドタバタとした音が聞こえてくる。前に部屋に入ったときはそんなに散らかっていなかったと思うのだけれども。髪のセットだろうか? いや、引き出しの音も聞こえたから着替えかもしれないな。別に多少の汗臭さならば気にしないのだけど、これが常識が無いと思われているのだろうか。けれでもそれは個人の許容範囲の問題だと思ったり思わなかったり…。

 

 

「……ミ、ミツル、もう大丈夫……かも」

 

 

 思考の海に溺れかけていると、ドアの向こうから声が掛けられる。どうやら身だしなみは終わったようだった。ここで『かも』と言われると不安に思うのだが、単にこれは彼女の口癖なのだ。

 こういう時に言われるとちょっとまどろっこしい。

 

「それじゃ、失礼します。ハルカちゃん、もう大丈夫?」

 

「う、うん、もう全然平気だよ。ごめんね、心配掛けちゃって」

 

 

 部屋に入り彼女が寝ているベッドの傍に座る。

 布団から出ているパジャマの皺の無さから見るにどうやら先ほどの時間で着替えたようだ。あの短時間で着替えを終えたということはもう体は問題ないようだ。

 

 

「大丈夫そうだね、安心したよ。ミツコさんからもう熱も無いって聞いたけど顔色も良さそうだ」

 

「うん、昨日の夜から平熱に戻ったの」

 

「今朝もおかゆを卒業してたみたいだし、食欲も戻った?」

 

「大丈夫、今朝は普通のご飯をちゃんと食べれるようになったよ」

 

 

 笑顔の返答から、おかゆ生活の脱却がとてもうれしいのだろう。と言ってもすりおろしリンゴやハチミツレモンやフルーツゼリーとかしっかりと甘いものを要求していたようだが。まぁ、消化の良いものだから問題は無いけど。

 

 

「これで私も一緒に旅に行けるようになったかも!」

 

「ああ、うん……そうだね……」

 

 

 気まずさというか負い目というか、そんな感情が胸に渦巻く。

 実を言うとオレはこれから旅に出る。目的は、特にない。

 ただ、記憶を失う前にの自分はどうやらポケモントレーナーだったらしい。それも駆け出しの初心者ではなく、それなりに旅慣れているほどの。

 

 なら記憶を失う前にはなにか目的があって旅をしていたのだろう。体が覚えているのなら、それを回顧しながら記憶が戻るかもしれない。

 そんな期待を持ちながら近い内にこの家を出るつもりだ。まぁ、いつも気遣って貰ってる上に、いつまでもタダ喰らいというのも気が引ける。

 

 そんな理由で旅に出ることを決めた。一人のつもりで。

 

 しかし、予定と違い一人の同伴者が出来た。無論、目の前に居るハルカちゃんだ。

 深い理由はなくオレに対する負い目だそうだ。記憶喪失の原因が自分にあるため、オレの旅のお手伝いをすると。

 

 

 基本良い子の同い年の女の子が笑顔で旅に同伴してくれる。

 

 

 ここだけ取れば何の問題も無く、喜んで頷くだろう。一人旅よりずっと楽しいだろうし、記憶の無い今、心細さもある。

 あるんだけど……。

 

 

「絶対……絶対に、私がミツルの記憶をなんとかするから!」

 

「あ、うん」

 

「困ったことがあったら何でも言って! 私なんでも手伝うから、ミツルの力になるから!」

 

「あ、はい」

 

 本気と書いてガチと言える顔でオレを見つめてくるハルカちゃん。正直、記憶が無くて人様に迷惑かけるのは気が引けているのだが、自分自身にとってはさほど困っていない。

 確かに記憶が戻った方が良いのだが、特に日常生活で困ったことはないし。なんというか妙に心が晴れているのだ。重荷を下ろせたというか、重圧から解放されたというか、とにかくなんか解放された感があって心が軽いのだ。

 

 ……なのだがそんなことを知る由も無いハルカちゃんにとっては逆にそのことが重圧となっているようで、

 

 

「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だよ。きっとすぐに記憶が戻るかも!」

 

「……ソウデスネ」

 

 

 正直、旅の同伴者になる娘の気合の入りように引いてるんですが。

 なんというか………重い。

 

 

 

 





 カスミとハルカでえらく対応が違うかって?

 ハハハご冗談をwww

 ……アニメ本編でもそんな感じだった気がするので問題ないよね!

 実際アニメではカスミは突っかかる感じで(ツンデレ?)ハルカは精神年齢的にも同年代の友人って感じの立ち位置のようだったのでこんな感じにしています。

 記憶が無くなっても精神年齢が上のシゲル(笑)と年相応のハルカと掛け合いは同年代の友人ではなく、年下を宥めるぐらいのイメージで付き合うようにしました。

 カスミのように強気でもないから付き合い方もマイルドというか、穏やかというか。
 まぁ、最初の方だけで後で色々と壊れていくんだろうけどねw

 では、今回はこの辺で、ノシ


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