遊戯王ARC-Ⅴの世界に廃人がログインしました (紫苑菊)
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原作前、いろいろありました。
第1話


始めまして、紫苑菊です。
初投稿、処女作です。
よろしくお願いします。


『ガチデッキ』

 

皆さんはこの言葉を聞いたことがあるだろうか?

 

遊戯王OCG、もしくはTCGプレイヤーであるならば一度は聞いたことがあるだろう。

 

別名『環境デッキ』とも呼ばれ、遊戯王公式大会において最も勝率の高いデッキ達のことを指す。

 

と、言っても『ガチデッキ』の種類は多岐にわたる。遊戯王と呼ばれるカードゲームは、2ヶ月、もしくは1ヶ月ほどのスピードで新規カードが出てくるのだ。

 

新規カードが出る、ということはカードの種類が増えるということだ。当然、『環境』も変動する。1年前に大会で結果を残していたデッキが、次の年にはもう大会の場には見なくなっていたり、逆に、半年前には見向きもされなかったカードが大会で使われるどのデッキにも入っていたりする。

 

また、遊戯王には『禁止・制限』と呼ばれるカードが存在する。

強すぎるカード、もしくは現大会で結果を残しすぎたカードは大体このカード群に入れられる。場合によっては使ってはいけなかったり1枚や2枚しか入れられなかったりするカード達だが、このシステムによっても『環境』は変わってしまう。

 

1つ、例を挙げてみよう。今から挙げるのは『環境』としてはトップクラスに有名な『征竜』と呼ばれるカテゴリーのカードである。

 

 

巌征竜-レドックス

効果モンスター

自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または地属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。また、このカードと地属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、自分の墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・地属性モンスター1体を手札に加える事ができる。「巌征竜-レドックス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

瀑征竜-タイダル

効果モンスター

自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または水属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。また、このカードと水属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、デッキからモンスター1体を墓地へ送る。このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・水属性モンスター1体を手札に加える事ができる。「瀑征竜-タイダル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

焔征竜-ブラスター

効果モンスター

自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または炎属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。また、このカードと炎属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札に加える事ができる。「焔征竜-ブラスター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

嵐征竜-テンペスト

効果モンスター

自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族または風属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する。特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。また、このカードと風属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、デッキからドラゴン族モンスター1体を手札に加える。このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・風属性モンスター1体を手札に加える事ができる。「嵐征竜-テンペスト」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

・・・・・。

 

おい、ちょっとこのカード考えたやつ出てこい。

 

まあ、兎に角凶悪の一言に尽きるカード群である。

除外するだけでサーチできる上に簡単なコストでの特殊召喚、更に各属性によって異なるものの、手札からドラゴン族を墓地に送るだけで各々の効果を発揮する。1ターンに1度しか効果を使えないのも気休めにしかならない。同族のコストになってもサーチできる。互いのシナジーが合いすぎている。

 

それだけではない。遊戯王初期に作られたカードや、同時期にあらわれたカードのせいで、大会は『征竜』一色に染まったのだ。

 

まあ、その『征竜』に1枚のカードで対等に渡り合ったカテゴリーもあるのだが、今は置いておこう。

 

 

超再生能力

速攻魔法

このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、このターン自分が手札から捨てたドラゴン族モンスター、及びこのターン自分が手札・フィールド上からリリースしたドラゴン族モンスターの枚数分だけ、自分のデッキからカードをドローする。

 

 

封印の黄金櫃

通常魔法

デッキからカードを1枚選んでゲームから除外する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、この効果で除外したカードを手札に加える。

 

 

七星の宝刀

通常魔法

手札または自分フィールド上に表側表示で存在する、レベル7モンスター1体をゲームから除外して発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。「七星の宝刀」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 

・・・・・・・・・・・・。

お分かりいただけただろうか。

征竜が『環境』トップになるには十分すぎるカード達である。封印の黄金櫃に関しては実質2枚サーチできるし、七星の宝刀の本来デメリットである除外は得しかしないのでドローは手札1枚のアドが取れるのだ。

 

極め付けは超再生能力。征竜は手札から捨てて効果を発動できる。つまり1枚の征竜の効果を発動するだけで2ドロー、更にもう1枚効果をつかえば4ドローと、頭のおかしいとしか思えないドローができる。

 

だが、これだけではない。カードを作っている某企業Kはこの征竜に更にカードを追加した。

 

 

地征竜リアクタン

効果モンスター

ドラゴン族または地属性のモンスター1体とこのカードを手札から捨てて発動できる。デッキから「巌征竜-レドックス」1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。「地征竜-リアクタン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

水征竜ストリーム

効果モンスター

ドラゴン族または水属性のモンスター1体とこのカードを手札から捨てて発動できる。デッキから「瀑征竜-タイダル」1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。「水征竜-ストリーム」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

炎征竜バーナー

効果モンスター

ドラゴン族または炎属性のモンスター1体とこのカードを手札から捨てて発動できる。デッキから「焔征竜-ブラスター」1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。「炎征竜-バーナー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

風征竜ライトニング

効果モンスター

ドラゴン族または風属性のモンスター1体とこのカードを手札から捨てて発動できる。デッキから「嵐征竜-テンペスト」1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。「風征竜-ライトニング」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

インチキ効果もいいかげんにしろ!

ふざけんなよ! 征竜をサーチすんなよ! なにがしたいんだよKO●MAI!

と、いろいろ叫びたいのだが、これ以上は自重しよう。運営に消されかねない。

 

一応、動きの例として、wikiにも載った有名な動きを見てみよう。

 

墓地に最上級征竜3種類が存在。

 ↓

内、2種類を除外して残った1種類を特殊召喚。

 ↓

除外された2体の効果で子征竜とドラゴン族をサーチ。

 ↓

ドラゴン族をコストに子征竜の効果発動。デッキから最上級征竜を特殊召喚。

 ↓

結果: 最上級が2体特殊召喚 +次のターン用の征竜と除外コストが揃う。

 

・・・・。

 

なあにこれぇ?

 

ちなみに征竜の実質サーチするカードならほかにもある。

嘗て『ドラグニティ』というカテゴリーにはこのようなカードが存在した。

 

竜の渓谷

フィールド魔法

 

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札を1枚捨て、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●デッキからレベル4以下の「ドラグニティ」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

●デッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る。

と、墓地からも特殊召喚できる征竜にとっては墓地も手札のようなもののため、実質サーチである。他にも竜の霊廟というカードも征竜に力を貸した。

 

竜の霊廟

 

通常魔法

デッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る。墓地へ送ったモンスターがドラゴン族の通常モンスターだった場合、さらにデッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。「竜の霊廟」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

このようなドラゴン族のサポートも受けることのできた征竜だったが当然、ここまで強力なものを公式が野放しにするはずもない。

 

計3回の制限の制限を経て、この征竜が原因でうけた規制がこちらだ。

 

禁止

「炎征竜-バーナー」

「水征竜-ストリーム」

「地征竜-リアクタン」

「風征竜-ライトニング」

「異次元からの帰還」

制限

「巌征竜-レドックス」

「瀑征竜-タイダル」

「焔征竜-ブラスター」

「嵐征竜-テンペスト」

「七星の宝刀」

「封印の黄金櫃」

「竜の渓谷」

「竜の霊廟」

 

・・・・・・・。

 

ドラグニティェ・・・・。

そして軒並み禁止・制限の征竜。ここまでしないと止まらないカテゴリーも珍しい。というよりこれ程の制限、ドラグニティにドラゴン族を殺してまでするくらいなら征竜制限じゃなくて禁止でいいじゃないか。

 

と、思ったら2015年4月、ついに禁止になった。

 

いいぞKO●AMI。その調子で「渓谷」と「霊廟」を返してください。

まあ、長々と『征竜』について話してきたが、ガチデッキは大半がこんな感じにひどかったりする。中にはじゃんけんゲーとまで呼ばれるものも・・。

 

さて、本題に入ろう。

 

遊戯王ARC-Ⅴ

 

遊戯王のアニメ作品でペンデュラム召喚を操る榊遊矢を主人公とするストーリー、どうやら自分はその中に来てしまったっぽいのだ。

いや、そんな目で見ないでほしい。朝起きたら未来都市で、慌ててテレビをつけたら榊遊勝と呼ばれる人物がカードゲームをやっているのだ。

「榊遊勝」

遊戯王ARC-Ⅴの世界において行方不明になった榊遊矢の父親。

その人物がテレビに出ているのだから十中八九ACK-Ⅴの世界だろう。

いや、何をいっているのかわからねえと思う(ry

 

まあ、そんなわけで、

私、立浪菊、17歳男子高校生兼、遊戯王廃人。

 

見た目は子供、精神年齢は高校生と、どこぞの名探偵みたいにアポトキシンを飲んだ訳でもなくショタ化して遊戯王の世界にやってきました。

 

な、何をいって(ry

 



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第2話

感想ありがとうございます!
禁止制限ある程度は守りますが、デッキによっては全盛期の力を出すためにあえて禁止制限を破る場合がございます。
まあ、それ以外はできる限り守っていきますのでご了承ください。
そして、まだデュエルしてない遊戯王小説・・・。


 さて、この世界、遊戯王ARC-Ⅴに来て早1週間、とりあえず自分の置かれている状況は理解した。

 

 と、いうか理解するのに時間はかからなかった。と、言うのもこんな手紙が二つもあったのだ。

 

 要約するとこうだ。

 

 お父さんと菊へ

 

 お母さんはお父さんに愛想がつきました。なので私のことは忘れて生きてください。菊の戸籍などはテレビ台の下の引き出しにこの家の登記簿とともに全部入っています。菊、私が言えた義理じゃありませんが、お父さんと二人で元気でね。

 

 幸子と菊へ

 

 お父さんはとんでもないことをしてしまった。

 詳しくは言えない。だが、君たちが当分生きていけるだけのお金は用意してある。通帳の暗証番号は●×◇△だ。これは菊の机の上に置いておく。それから困ったことがあったら柊さんを頼りなさい。きっと力になってくれます。

 

 だいたいこんな感じである。

 

 ウソでしょ?ねえ、ウソでしょ?こんな事現実にあるの?スッ●ップファザー●テップまんまじゃん!

 

 近年稀にみるよこんな事態!そして父親ァ!!なにしたんやオマエェ!!

 

我が家族の今明かされる衝撃の真実ゥ!ってか?!言っとる場合かボケェ!!

 

 母親に関しては、うん、仕方ないね。なんかやらかしたであろう父親に愛想つかしても不思議ではない。ただ、タイミングが最悪としか言いようがない。せめて出る前に書斎を覗いていたらよかったのに・・・。

 

 まあ、嘆いても仕方ない。むしろ俺がおきた時になぜかあったカード達の説明をする必要が無くなった。

 

 そう、なぜかあったのだ、前回説明した「征竜」を始めとする環境デッキ達が。

 

 「魔道」「聖刻」「クイックジャンクドッペル」「クリフォート」「インフェルニティ」「カエルドライバー」「BF」「甲虫装機」「シャドール」「ネクロス」「AF」「セイクリッド」「ハンデス」「八咫ロック」「ゼンマイ」「カオス」「推理ゲート」「エグゾディア」「六武衆」「サイエンカタパ」「デッキ破壊」「デビフラ巨大化」「猫シンクロ」「M・HERO」「テラナイト」「除去ガジェ」「帝」「暗黒界」「アンデシンクロ」etc...etc...

 

 そして、ここに来る前に使っていたお遊びのデッキ

 

「sinスキドレマシンナーズ」「ガスタ」「リチュア」「終世」「リゾネーターキング風味」「インフェルノイド」「素早い神」「エクゾシンクロ」「融合しないHERO」「ブラック・マジシャン」「ヴェノミナーガ」「ダークコーリング」「クッキング流」「人は決闘できた」「ユニゾンビシンクロ」「魔轟神」「ロックバーン」「炎王」

 

 某動画サイトにアップされたレシピを自分なりに改良したものもあり、一応、このデッキレシピは自分だけのものと言える。さらにスリーブも、以前使っていたものとおなじため、間違いなく自分のデッキである。ただ、不思議なのは、以前の自分はプロキシを使って完成(仮)の状態にしていたデッキがいくつもあった。

 

 「魔轟神」や「マスマティシャン」なんかは高くて手が出せなかったし、昔のカードすぎてストレージをどれだけ漁っても見つからなかったカードはプロキシにしていたはずなのだ。

だが、目の前のデッキを見てほしい。

 

・・・・・・。

 

何ということでしょう。なんとそこには完成されたデッキ達が!

 

B●的に言ってる場合じゃない。え、なにこれ。え、え、きく、こんなの知らない。

 いや、冷静になれ、落ち着け、立浪菊。逆に考えるんだ。万が一自分のものじゃなくてもいいさと考えるんだ。

 

 いや、よくねえよ。何言ってるんだよジョースター卿。

 

 いや、でもとりあえず考えてみよう。今、ここにあるもので自分の財産といえるものはこのデッキと家、通帳のお金くらいだ。とりあえず通帳には1000万は入っている。当面はこのお金で暮らしていける。その合間に何とかして稼ぐ方法を考えないと。

あ、あと戸籍も確認した。11歳。と、とりあえず高校に行くまでは何とかなりそうだ。 

 

 そこからはデュエルで何とかしよう。デュエルが何とかしてくれるさ。

 

 うん、どこもおかしくないな(錯乱)。

 

 まあ、それはおいといて、この父?の手紙にある「柊」これってあれだよね、絶対あれだよね。

 

 どうかんがえてもショックルーラーストロング柚子の父親の熱血先生のとこじゃないですかやたー(歓喜)。

 

 つまりあれだよね、あの修●的なキャラの人に会えるってことですよねやったー。 何気に好きなんだよね、あのキャラ。

 

 とりあえず、目標としては怪しまれないように柊家に接触、協力してもらうこと。そして、なるべく目立たないようにデッキを作り変えること。

 

 クエン酸とかSINとか出せないだろ。と、なるとカオスも怪しい、特に開闢や終焉。デッキ破壊は嫌われ確定だろうしロックバーンもOUT。セイクリッドは被るし、エクシーズがこの時代に使えるのかも分からない。エラッタ情報がどこまでいっているのかもわからない。

 

 つまり、エクストラを使わないデッキでなるべく勝率の高い、そして相手が勝てる見込みのあるデッキでレアカードをなるべく使わないデッキとなると・・・。

 俺はガチデッキの山をケース(社長が持ってたみたいなアタッシュケース)に片づけ、その中から2つ取り出す。

 

 うん、とりあえずガチと中堅、両方もってカードショップに行こう。 

 

お楽しみはこれからだ。

 

 

 




感想でご指摘いただきました、遊戯王ARC-ⅤがACK-Ⅴになっていたため編集しなおしました。


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第3話

ようやくデュエル回です。


 うん、まあ、とりあえず一言。

 

 どうしてこうなった!!

 

 さて、どうしたものか。話は数分前に遡る。

 

 というのも、カードショップについたとき、如何にも悪ガキですみたいな中学生が小学2年生くらいの女の子と男の子にからんでいたのを見てしまったことから始まる。声をかけようか悩んだのだが、そこに今度は小学4年生くらい、自分よりも1歳年下っぽい(あ、肉体年齢ね)子が割って入っていった。どうやら4年生くらいの子と中学生くらいの子は顔見知りらしく、教えがどうのこうのと聞こえたが、まあ、それは割愛。

 

 問題はその4年生くらいの子、どうやら権ちゃんらしいのだ。

 

 権現坂昇

 

 遊戯王ARC-Ⅴの中で主人公の親友。「超重武者」と呼ばれるモンスターのみで構成される『フルモン』デッキ使いである。

 男気のある性格で、初めてあのキャラをテレビで見たときはFAI●YTA●Lの弟君を彷彿とさせた。

 

 そして、おそらくあの中学生くらいの子、名前は忘れたが榊遊勝がどうのこうのでいちゃもんをつけてたキャラだ。名前は・・・、悪代官じゃないし・・・、まあ、いいか。

 

 というか、止めに入らないとやばくね?なんか殴りそうな勢いだし・・。

 

 仕方ない、ここは・・・。

 

 「おい。」

 

 悪代官(仮)に声をかける。

 

 「んあ?!」 

 

 こえええ。中学生の迫力じゃねーよ?!

 

 だが、今のおれは決闘者。落ち着け、クールになれ、俺。

 

 よし、意を決して・・・。

 

 「決闘しろよ」

 

 会話のドッチボールだよ、これ!

 

 回想終了

 

 以上が、このデュエルまでの経緯である。

 

 こちらが勝てば悪代官君はあの子たちに関わらない。

 

 向こうが勝てばレアカード(団結の力、元19円、この世界→レア→高い)をかけて決闘することになった。

 

 よくよく考えたらさぁ、俺、得すること無くね?てか負けた時のリスクしかないよね?いやまあ、いいけど。団結の力余ってるし。

 

 あ、デュエルディスクは貸してもらった。優しいね、権ちゃん。こんな怪しい小学生に貸してくれるなんて。YMA先生並の菩薩メンタルじゃないかな?

 

 まあ、権ちゃんの後ろでうずくまってる遊矢君や柚子ちゃん達の信頼がメリットってことにしよう。うん、やる気でてきた。

 

 「へへへ、こんなやつに勝つだけでレアカードがもらえるなんてついてるぜ」

 

 カッチーン

 

 「ふん、図体だけがでかいだけの雑魚が、弱い者しかいじめることの出来ない奴が。それともそうやって虚勢しかはれないのか?そんな奴はさっさと帰ってママのおっぱい吸ってろカスが。」

 

 ビキビキ

 

 そう聞こえるんじゃないかっていうくらい向こうは額に皺を寄せている。完全に怒らしてしまったようだ。だれだよ、そんな事した奴は。

 

 あ、俺か。

 

「俺のターン!」

 

 あ、先行取られた。

 

「俺は手札から蛮族の狂宴LV5を発動!バーバリアン1号バーバリアン2号を特殊召喚!更に2体をリリースし、バーバリアンキングを召喚!こいつは2回攻撃できる!これでターンエンドだ。」

 

 ANKOKUJI

 手札 5→1

 

 ・・・。

 

 え、終わり?OWARI?

 

「ふはは、このモンスターに声も出ないみたいだなぁ!」

 

 いえ、あまりにもプレイングがお粗末すぎて声が出ないだけです。つか泣きそうです。せめてブラフでもいいから伏せようよ。

 

「俺のターン」 

 

KIKU 

手札5→6

 

 おいおい、これじゃあMeの勝ちじゃないか。つか、一応ガチデッキに分類されるコレ、やっぱ持ってくるんじゃなかったな。リチュアでもよかったか。

 

「俺は、手札から暗黒界の取引を発動、お互いに1枚ドローし、1枚捨てる。この効果で捨てた暗黒界の術師スノウの効果を発動、デッキから暗黒界の龍神、グラファを手札に加える。」

 

 暗黒界の術師スノウ

 効果モンスター

 

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、自分のデッキから「暗黒界」と名のついたカード1枚を手札に加える。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手の墓地に存在するモンスター1体を選択し、自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する事ができる。

 

KIKU

手札6→5→6

 

「攻撃力2700だと?!だが、最上級モンスターの召喚には2体のリリースが必要だぜェ。それに、バーバリアンキングの方が攻撃力は上だ!」

 

「そんなことは分かっている。手札からトレードインを発動。手札のレベル8モンスターを1枚捨てて2枚ドローする。」

 

「へ、とんだプレイミスだな、せっかく手札に加えたモンスターを捨てちまうなんて」

 頭大丈夫か?こいつ。いや、グラファの効果を知らないのか。

 

「更に暗黒界の門を発動。門の効果、墓地の悪魔族モンスターを除外し、手札の悪魔族モンスターを手札から捨てることで1枚ドローする。墓地のスノウを除外し、手札のブラウを捨てて1枚ドロー。更にブラウの効果で1枚ドロー。無の煉獄を発動し1枚ドロー。今引いた愚かな埋葬を発動。グラファを墓地へ送る。」

 

 暗黒界の門

 フィールド魔法

 

フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。 1ターンに1度、自分の墓地に存在する悪魔族モンスター1体をゲームから除外する事で、手札から悪魔族モンスター1体を選択して捨てる。 その後、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

暗黒界の狩人ブラウ

効果モンスター

 

このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらにもう1枚ドローする。

 

KIKU

手札6→5

 

 回る回る。今日は運がいい。

 

「カードを2枚伏せ、手札抹殺を発動。お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて其の枚数分ドローする。」

 

KIKU

手札5→3→2

 

ANKOKUJI

手札1→1

 

「更に手札から捨てたブラウとスノウの効果を発動、チェーン1ブラウでチェーン2スノウ。スノウでグラファをサーチしブラウで1枚ドロー。」

 

KIKU

手札2→4

 

「手札が減ってねぇだと?!」

 

「まだ続く。成金ゴブリンを発動、相手を1000ライフ回復させて1枚ドロー。引いたのも成金ゴブリン、1枚ドロー。」

 

ANKOKUJI

4000→6000

 

「ありがとよ、ライフを回復してくれて。とんだ素人みたいだな。」

 

「素人はお前だ。このカードの価値も分からんとは。」

 

「何だと?!」

 

「トレードインを発動、サーチしたグラファを墓地に送り2枚ドロー。さらにカードを伏せて伏せていた墓穴の道連れを発動お互いに手札を1枚捨てさせる。そして、その後1枚ドローする。お前の手札は1枚、よってそのカードを選択。さあ、次はお前の番だ、選べ」

 

「また手札交換カードか。俺はゼピュロスを選択。」

 

 手札が入れ替わる。

 

「更に引いた墓穴の道連れを発動。そのカードを選択。」

 

「ならおれはベージを選択するぜ。」

 

「ならベージの効果を発動。このカードを特殊召喚する。さらに墓地のグラファの効果を発動。ベージを手札に戻し、このカードを特殊召喚する。」

 

「なんだと?!」

 

 暗黒界の龍神グラファ

 効果モンスター

 

このカードは「暗黒界の龍神 グラファ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「暗黒界」と名のついたモンスター1体を手札に戻し、墓地から特殊召喚する事ができる。このカードがカードの効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。相手のカードの効果によって捨てられた場合、さらに相手の手札をランダムに1枚確認する。確認したカードがモンスターだった場合、そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

 暗黒界の切り札、ゆるゆるの召喚条件から簡単に出せる攻撃力2700のアタッカー、不死身の龍神様の降臨である。

 

「更に手札から死者蘇生を発動。ブラウを特殊召喚し手札に戻し2枚目のグラファを特殊召喚。」

 

「ンなぁ?!ってたしかお前、もう1枚グラファを墓地に送っていたよな?」

 

「察しがいいな。門を戻してゼピュロスを特殊召喚。効果でおれは400ダメージを食らうがささいなもんだ。門をもう一度発動し、墓地のブラウを除外しベージを捨てて1枚ドロー。ベージを蘇生し更に戻してグラファ蘇生」

 

KIKU

4000→3600

 

「成金ゴブリンを発動し1枚ドロー。更にバルバロスを通常召喚」

 

 ライフは7000になるがこれなら削り切れる

 

「さあバトルだ。グラファでバーバリアンキングに攻撃」

 

「クゥ!」

 

バーバリアンの王と不死身の龍神が相打ちになり、フィールドががら空きになる。

 

「2枚目のグラファでダイレクトアタック。」

 

「墓地のネクロガードナーの効果を発動!一度だけ攻撃を無効にする!」

 

手札交換の時に墓地にいったか。

 

「なら3枚目のグラファで攻撃、更にゼピュロスとバルバロスで攻撃」

 

ANKOKUJI

7000→4000→2400→500

 

「伏せていた暗黒界の取引を発動。1枚ドローし1枚捨てる。ベージを捨てて特殊召喚し戻してグラファ召喚。エンドフェイズ時、無の煉獄の効果で手札を全て捨てるが、捨てられたスノウとブラウの効果を発動。ベージを手札に加え、1枚ドローする。ターンエンド。」

 

KIKU

フィールド

グラファ×3

バルバロス

ゼピュロス

暗黒界の門

伏せ2枚

 

 やっと終わったw

 

 ここまでがん回りする暗黒界も珍しい。

 

「お、俺のターン、ドロー。」

 

言葉に詰まる悪代官、っじゃなかった暗黒寺。涙目。

 

まあ、そうなるわな。だが甘い。

 

「この瞬間、罠発動。闇のデッキ破壊ウイルス。グラファをリリースし魔法を選択。さあ、手札を見せてみろ。」

 

闇のデッキ破壊ウイルス

通常罠

自分フィールド上に存在する攻撃力2500以上の闇属性モンスター1体をリリースし、魔法カードまたは罠カードのどちらかの種類を宣言して発動する。相手フィールド上に存在する魔法・罠カード、相手の手札、相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、宣言した種類のカードを破壊する。

 

 暗黒寺が手札を見せる。死者蘇生に、バーバリアンの奇術。片方は聞いたことのないカードだが魔法カードだ。慈悲は無い。

 

 手札を全て捨てる暗黒寺。これにより手札、フィールド共にゼロ。若干泣いている気がしないでもない。

 

「ターンエンド・・・。」

 

「俺のターン」

 

 残念だけど、これ、現実なのよね。

 

「ベージを召喚しグラファを蘇生、更にスキルドレインを発動。これによりバルバロスの攻撃力は3000になる。」

 

KIKU

3600→2600

 

 やめたげてよぉという声が聞こえなくもない。だが知らん。

 

「全モンスターでダイレクトアタック!奴を引き裂け!」

 

 それライズ・ファルコンっと1人突っ込みを心の中でやりながら攻撃宣言する。やはり慈悲はない。

 

ANKOKUJI

500→-13100

 

WINNER KIKU・TATUNAMI

 

うん、スキドレ暗黒界はつよい(確信)

 




というわけで、暗黒寺のバーバリアンに対し『スキドレ暗黒界』でした。
本当ならバルバロスの枠はSINスターダストかSINサイバーエンドなのですが、SINはまだ使えないので急きょばるばに変更しました。
スキドレでアタッカーにしてもいいし、トレインのコストにしてもよし。ランク8エクシーズや三体生贄で召喚して相手をがら空きにさせてもOK
強い(確信)

じ、自重はしましたよ(震え声)


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第4話

亀更新とタグにあるくせにもう次話投稿。


前回のあらすじ

 

暗黒寺、号泣! スキドレ暗黒界は強かった!

 

 うん、反省はしているよ。後悔はしてないけど。

 

 それもこれもこのガチデッキが悪い。手札が無慈悲すぎた。いや~、バーバリアンは強敵でしたね。だがしかし、まるで、全然、この俺を倒すには、程遠いんだよねぇ!!(ゲス顔)

 

  いや、自重はしたよ?ほら、SINの枠をバルバロにしたり、最後の手札も全部伏せたりしなかったし?それに相手がミラフォ伏せてたら問題なかったよね?

 

 『うん、僕は悪くない』

 

 球磨川君も吃驚の開き直りをしたところで、報告することがあります。

 遊矢君と柚子ちゃんになつかれました。権ちゃんもなんか尊敬のまなざしで見てくるし。あ、自己紹介はしたよ?みんなまだ2年生なんだって。因みにさっきの子はまだ小学4年生らしい。びっくりだね。権ちゃんもさっきの雲黒斎(だっけ?名前覚えてない)も貫禄ありすぎぃ!

 

「そうですか、柚子の家族に会いに来たのですか」

 

「うん、なぜか知らないけど手紙には「柊」さん家に頼るように書かれてたからね。その前にカードショップに寄ろうとしたらさっきの君たちに遭遇したわけ。まさかその女の子がその柊さんの娘さんだとは思わなかったけど。あ、権ちゃんさっきはかっこ良かったよ。」

 

「お父さん、今の時間は遊勝塾にいるよ?」

 

「本当かい?なら、遊勝塾に向かおうかな。ありがとうね、柚子ちゃん。」

 

「だったら俺たちと一緒にいこうよ、菊兄ちゃん!」

 

「そうだね、そうさせてもらうよ遊矢君」

 

 眩しい!!!何この子達いい子!!!

 

 ああ、荒んだ自分の心が洗い流されていく・・・。

 

 あ、その前にカードショップに寄らないと。さっきの店、品揃え悪いのかシングル全然売ってなかったしな。

 

「ちょっといいかな。」

 

「「「?」」」

 

「実は塾に行く前に別のカードショップに寄りたくてね。この辺で一番品揃えのいいショップってどこかな?」

 

「それなら案内するよ、いこうぜ柚子、権現坂!」

 

「あ、遊矢」

 

「走ると危ないぞ、遊矢。」

 

「大丈夫大丈夫。早くいこうぜ。」

 

 

 というわけでカードショップ2件目へ突入!

 

 そして吃驚!!

 

 なぜかって?カードの値段が高すぎるのだ。パックも、シングルも。カードプールも違いすぎるし。

 

 これを例に出してみよう

 

偉大魔獣ガーゼット

 

50万円

 

もう一度言う、50万円だ。

 

 リリースしたモンスターの攻撃力の二倍数値になるこのカード。ステータス重視のこの世界ではどうやらとんでもない値段になるらしい。元の世界なら30円で売ってる場合もあるこのカードだが、えげつないインフレである。他にも開闢をみてみたが、1億とありえない値段がついていた。

 

 やはりカオスはしばらく使えない。遊戯王初期に出てきたときに世界に●枚しかないとかいう設定があった気がしたから持ってこなかったが正解だったようだ。

 

 あと、このカードを見てほしい。

 

幽鬼うさぎ

 50円 しかもノーマル

 

 なんでや!!なんでや!!

 

 思わず10枚買いしてしまった。それでも500円。

 

 どうやら攻撃力0が問題らしい。どんだけ脳筋やねんこの世界のデュエリスト。

 

 この世界でトライホーンドラゴンを売ったらすごいことになりそうだ。やったねトライホーン、君にも価値が出てきたよ。専らコストだった君が!

 

 あと、シンクロエクシーズはなかった。辛うじて融合はあったがあるのは砂の魔女みたいなバニラ融合だった。やはりクェーサーやSINも大半が使えなさそうだ。

 

 それから、禁止・制限。あれも頭おかしかった。

 

 禁止にかかるのは基本的にロックカード、それから数値の高いバーンカードばかりだ。マジックシリンダーが禁止、八咫烏は制限だったのに頭おかしいとしか思えない。

ハンデスカードも規制を受けてなかったし、これがOCGなら魔境もいいとこだ。

 

 あと、レアカードだがトーチ・ゴーレムは安かった。トークン2体のかわりに相手に3000打点を与えるのはこの世界にとってデメリットが大きいのだろう。『ヘルテントーチ』作ろかな。いや、間違いなく嫌われるな。やめよ。

 ステータスを大幅に上げるカードも高かった。

 

団結の力

20万円

 

進化する人類

12万円

 

魔導士の力

10万円

 

下剋上の首飾り

2万円

 

デーモンの斧

5000円

 

 なあにこれぇ?

 

 頭おかしいカードプールである。

 

 と、いうよりこれだけではなかった。これだけならまだよかった。問題はパックである。

 

 1つのパックから出る種類の数が半端じゃないのだ。10枚入り500円1パックにつき約1000種類。

 

 ふざけるなよ、ドン・サウザンドォォォォ!!!!(八つ当たり)

 

 いや、まあ同時に納得もした。占い魔女やクックメイトみたいなOCGにはないカテゴリーが多数ある世界、そりゃあ、汎用カードの再録も含めたらこんな事態にもなるだろう。だからといって多すぎる気がしないでもないが。

 

 この世界であれだけ偏ったカテゴリーを集められる主人公たちには脱帽です。

 

 あと、遊矢君たちと一緒にパックを買った。そしたら、うん、こんなの当たった。

 

 「オッドアイズ・ドラゴン」

 

 「EM ディスカバー・ヒッポ」

 

・・・。

 

・・・・・・。

 

 うん、遊矢君にあげよう。その内彼がこのカードをリ・コントラクト・ユニバースしてくれる。

 

 その時に遊矢君から逆にカードを貰った。被ったそうだ。

 「EM・トランポリンクス」

 

 ・・・。 

 

 ・・・・・・・。

 

 クリフォート強化待ったなし。

 

 と言っても家のクリフォートはまだペンデュラムカード化してなかったので、彼がカードを書き換えるまでお預けといったところだろう。

 

 さて、用事も済んだ。

 

 そろそろ塾に向かおうかな。

 




感想にあった質問ですが、主人公のデッキは一応なるべく目立たない強いデッキを使います。
ので、クエン酸みたいな赤き竜のカードや、自縛神、SIN、時戒神のようなカードはなるべく使わないように構築するときに考えられています。


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第5話

更新遅れました。
アロマージーデッキ考えたりいろいろしていたら2日も過ぎていました。
できる限り毎日更新するつもりだったのに・・・。


 元の世界の家族・友人へ

 

 私、立浪菊、お兄ちゃんになりました。柚子の。

 

 いや、突っ込みどころがあるのは理解している。いろいろあったんだ。

 

 まあ、簡単にまとめると、

 

・柊さんに手紙を見せて、事情説明

・柊さん親にブチ切れ。(あのくそ野郎とか言ってた)家で預かるって言い出した。

・結果、柊さん家の養子になることがほぼ決定しました。以上。

 

 と、いうのも、うちのなんかやらかしたであろう父親は柊さんの友人にあたるらしい。そして、柊さんの奥さんは俺の父親の妹。

 

 そう、つまり柚子ちゃんは俺の従妹になるのだ。

 

 しかし、そうなると柚子ちゃんと俺が面識のないことがおかしい。と、思ったら、柊さんいわく、父は結婚するときに駆け落ちしたのでほぼ絶縁状態。妹、つまりは柊さんの奥さんとほぼ疎遠になっていたらしい。それでも、修造さんの奥さんがいなくなってからも手紙や電話で何度か話したりはしていたから、俺の存在は知っていた。

 

 だが今、両親は行方をくらまし、祖父祖母は俺の存在すら知らない。なら、従妹の柚子もなついていることだし家で預かろうということになったのだ。

 

 つか、父さん。駆け落ちまでした相手に逃げられたのか。馬鹿じゃねえの?哀れすぎるw

 

 あ、養子になるっていっても苗字が変わるのは俺が小学校を卒業してからにするみたい。それまでに両親が見つかれば、その時の俺の選択次第というわけだ。

 

 これからとりあえず柚子ちゃん家に泊まることを言ったら柚子ちゃんには喜ばれた。あと、デュエル教えてとも言われた。いや、あんたの父親、プロだろうに。そっちで教えてもらいなさい。

 

 つか、俺が教えたらやばいことになる。幻奏デッキがただのクリスティアでのパーミッションになっちゃう。いいの、柚子ちゃん?お兄ちゃんその気になれば本気だして柚子ちゃんガチ勢にしちゃうよ?

 

 んでまあ、今現在、柊さん家にいます。修造さんは俺の住所変更手続きや学校への申請書類などの準備をしてくれている。なので、俺はとりあえず、家にある自分の荷物(といってもスマホとカード、筆記用具や着替えぐらいなのだが)をこっちに移す作業中。

 

 柚子ちゃんも手伝ってくれている。ありがとう柚子ちゃん。あとでヴァルハラとヘカテリスあげるね。

 

 あ、あと遊矢君のボディーガードみたいなことも頼まれた。なんでも、榊遊勝の息子ともなるといろいろあるらしく、遊矢君にいじめまがいのことがたまに起きてくるらしい。とりあえず気にかけてみようと思う。

 

「ねえ菊お兄ちゃん?」

 

「ん?何だい柚子ちゃん?」

 

「お兄ちゃんってデュエル強いよね、あの暗黒寺に勝っちゃうんだもん。」

 

「うん、まあね」

 

 俺がというよりはデッキが強い。なんせガチデッキだ。そんじょそこらのデッキには負けない。

 

「なら、私とデュエルしようよ」

 

 ・・・。

 

 ・・・・。

 

 さて、困った。どうしよう。

 

 今あるデッキ、ガチデッキばっかだ。そんなもん小学生相手につかえるか!下手したらトラウマなるわ!

 

 だが、変なデッキを使って負けるのは嫌だ。1日目にして兄の威厳が無くなる。それは避けたい。

 

 さて、ならどうするか。ビートダウンで勝ちも狙えるデッキとなる。そんでもって小学生仕様に相手をなるべく阻害しないデッキ。

 

 ・・・・。

 

 ・・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・。

 

 思いつかねえ・・・orz

 

「お兄ちゃん?」

 

「ちょっと待っててね?デッキ組むから。」

 

「うん、わかった!」

 

 さて、本当にどうしよう?

 

 シンクロもエクシーズも出来ない、辛うじて融合が使えるレベルのこの世界、出来ることは限られる。

 

 そうやって頭を捻っていると

 

「柚子ー。ご飯出来たぞー。菊くんも連れてきてくれー。」

 

「ハーイ」

 

 どうやらご飯の時間らしく、気が付けばもう7時。この家に来たのが6時ごろで荷物を映し終わったのが6時45分ぐらいだから、かれこれ15分も考えていたことになる。柚子ちゃんに悪い事したな。

 

 そんなことを考えていると、柚子ちゃんが服の裾を引っ張ってくる。

 

「ご飯食べにいこ、おなかすいちゃった。」

 

 うん。とりあえず、ご飯食べながら考えるとするか。

 



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第6話

投稿遅れました!!すみません!!
受験生に執筆活動はきつい・・・。


 ご飯を食べ終えて、部屋に戻ると、柚子ちゃんが来た。言っていたデュエルの件らしい。1階にデュエル専用のスペースがあるから、そこでやろうとのことだ。

 

 ご飯を食べているときに考えたデッキもある。連戦用に2つ、予備のガチデッキで1つ。計3つのデッキを持って1階に向かう。

 

 どうでもいいことだが、柊家には修造さんが元プロデュエリストだからか、1階の居間の横の広い部屋をデュエルスペースとして使ってるらしい。アクションデュエルは無理でも、デュエルディスクを使用したものなら問題なく使えるスペースがあるそうだ。

 

 

 んでもって今,この家にいる全員が(といっても3人だが)集合している。

 

 なんでも、柚子ちゃんに俺がすごいデュエリストだと聞いたらしい。それなら、1度修造さんも見てみようということに・・・。

 

 え、これガチ使う流れ?どうするのこれ?持って来たの完璧ネタですよ?ガチとして一応暗黒界持ってきたけど、こんなもん柚子ちゃんにつかえるか!

 

 落ち着け、落ち着け俺。とりあえず今やらなければいけないことは?

 

 1・柚子ちゃんを傷つけないようにある程度手加減したデッキ(事故注意ネタデッキ)で戦う

 

 2・幻奏相手にこのデッキで柊家の皆の期待に添えるように実力を見せる。

 

 あれ、無理じゃね?

 

 だってこのデッキ、回したけどまだまだ構築に穴があるのか事故率50%だよ?

 

 そんなデッキにさっき渡したヴァルハラ入り若干ガチ構成気味の幻奏に勝つ?

 

 上等じゃないか!余裕がない?冗談言うなよ。こんなデュエル、クリスティアヒュペ天代行天使を相手にしたって僕にはできる。遊びさ。本気でやるわけないじゃん。僕の仲間(ガチデッキ使い)だってそう。みんな遊びで君たち(初心者兼ファンデッキ使い)を狩ってるんだ。だって君たち(ネタデッキ使い)は僕ら(影霊衣達)にとってハンティングゲームの獲物なんだから!(ゲス顔)

 

 さっすが紫雲院さんやでぇ。よくこんなん言えたわ。その内素良さんはシャドールでも使いそうな気がする。このゲス顔を再現したくてファーニマル作ったわ。

 

 そんな事考えていると柚子ちゃんに心配された。大丈夫と早くやろうだけ言って準備する。なんだかんだ言って融合も一応あるとはいえ、こっちのネタ(ダークガイア式ダークキメラの計算ジャッジキル)はやめておこう。柚子ちゃんだけならともかく、元プロの修造さんまでいるのに変なことをしたら怪しまれかねない。ラビエル素材とか。

 

「いっくよー「「デュエル!!」」

 

 柚子ちゃんの掛け声とともにデュエルが始まる。

 

「私の先行!私は手札のヘカテリスの効果を発動!デッキのヴァルハラを手札に加える!」

 

 うん、さっきあげたカードを早速引く君の運が羨ましい。

 

「さらにヴァルハラを発動!その効果で手札の幻奏の音女アリアを守備表示で特殊召喚!」

 

 神の居城-ヴァルハラ

 

 永続魔法

 

1ターンに1度、自分メインフェイズにこの効果を発動できる。手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する。この効果は自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動と処理ができる。

 

 幻奏の音女アリア

 

 効果モンスター

 

特殊召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「幻奏」モンスターは効果の対象にならず、戦闘では破壊されない。

 

手札5→3

 

 アリアか、厄介な。

 

「更に私は幻奏の歌姫ソプラノを特殊召喚!トランスターン発動!効果により幻奏の音女エレジーを守備表示で特殊召喚!私はこれでターンエンド。」

 

 幻奏の歌姫ソプラノ

 

 効果モンスター

 

 

「幻奏の歌姫ソプラノ」の1の効果は1ターンに1度しか使用できない。

1・このカードが特殊召喚に成功した時、「幻奏の歌姫ソプラノ」以外の自分の墓地の「幻奏」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。2・1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。「幻奏」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。 

 

 トランスターン

 

 通常魔法

 

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を墓地へ送って発動できる。墓地へ送ったモンスターと種族・属性が同じでレベルが1つ高いモンスター1体をデッキから特殊召喚する。「トランスターン」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

 幻奏の乙女エレジー

 

 効果モンスター

 

このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの特殊召喚された「幻奏」モンスターは効果では破壊されない。特殊召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの天使族モンスターの攻撃力は300アップする。

 

手札3→1

 

 ・・・。

 

 ハァ?これに勝てと?

 

 幻奏のロックコンボ、アリアエレジー。厄介すぎる。沢渡さんレベルでカードに選ばれてますよ、ストロング柚子様。伏せカードがないのが救いだな。

 

 見てくれたらわかると思うが、アリアとエレジーの効果は互いが互いを守る形となっている。効果の対象にならず、戦闘、効果の両方で破壊されない。守備表示なのでダメージを与えて勝つことは難しい。

 

 ブラック・ホールみたいな全体除去をしても除去不可能。汎用バウンスの強制脱出や効果を無効にするデモチェは『対象』をとるのでまず使えない。永続効果なので出た以上、神宣も使えない。まさにロックはガチガチ。勝負もガチガチ。

 

 シンクロが使えるならトリシューラを出して『対象を取らず』に『除外』できるので突破できるが、この時代にトリシューラは出せない。エクシーズでNo.101やインフィニティを出しても対象に取れないし時代的な意味で使えない。

 

 そう。ぶっちゃけこれを除去して突破するのは難しい。ネタデッキならなおさら。

 柚子ちゃん、早速兄の威厳は保てそうにありません。なんでそんなに勝負はガチガチなの?お兄ちゃん、泣いちゃうよ?

 

 ほら、見てよあの修造さんの顔!引いてるよ!実の娘のあまりのガチ具合にひいちゃってますよ?!

 

「俺のターン。ドロー。」

 

 引いたカードを見て安心する。とりあえず事故は免れた。さて・・・。

 

「俺はテラ・フォーミングを発動。効果でアロマ・ガーデンをサーチ。そしてアロマ・ガーデンをそのまま発動。更にアロマージージャスミンを召喚。」

 

手札6→4

 

「さっきのデッキじゃないんだ。でもそのアロマ?だっけ、可愛いね!」

 

 そう?ありがとう柚子ちゃん。後でゆっくり見せてあげるね?

 

 アロマガーデン

 

 フィールド魔法

 

1ターンに1度、自分フィールドに「アロマ」モンスターが存在する場合にこの効果を発動できる。自分は500LP回復する。この効果の発動後、次の相手ターン終了時まで自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は500アップする。自分フィールドの「アロマ」モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合にこの効果を発動する。自分は1000LP回復する。

 

「なら、アロマガーデンの効果を発動するよ。この効果で俺は500ライフを回復。そして回復したことでジャスミンの効果が発動する。デッキからカードを1枚ドロー。」

 

「ライフを回復することで発動する効果?!」

 

「そうだよ、面白いでしょ。」 

 

KIKU 4000→4500

手札4→5

 

「じゃあ、続けるね。ジャスミンの2つ目の効果。もう一度植物族モンスターを通常召喚する。これにより薔薇の恋人を通常召喚。更に超栄養太陽を発動。薔薇の恋人をリリースしてローンファイア・ブロッサムを特殊召喚。効果でブロッサムをリリースして2体目のジャスミンを守備表示で特殊召喚。超栄養太陽は自身の効果で破壊される。カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

手札5→3

 

 そう、今回のデッキはアロマだ。ライフゲインをテーマにするこのデッキならまだ融合もエクシーズもない幻奏とそこそこにいい勝負をするのではないかと思ってのことだ。

 

まあ、作ったのはいいが対して回してないからどのくらい戦えるのかは全然分からないのだが。ADSだと事故率高かったがな。

 

 柚子ちゃんにターンが回る。

 

「私のターン!ドロー!私は手札のトレード・インを発動!効果で手札の幻奏の音姫プロディジー・モーツァルトを墓地に送り、2枚ドロー!来た!死者蘇生発動!墓地のプロディジー・モーツァルトを特殊召喚!」

 

YUZU

 

 手札2→1

 

 うっげ、めんどくせぇ。安全に手札から1体を毎ターン出せるのかよ。でもトレード・インか、天空の宝札の方がデッキ的にいい気がするんだがなぁ。

 

 ちなみにこの世界、トレード・インが異様に安かったりする。壺カードや天使の施しが制限とはいえ現役なのだ。レベル8という最上級モンスターをコストにするからでもあるらしい。馬鹿じゃねえの?

 

「バトルよ!モーツァルトで攻撃表示のジャスミンを攻撃!」

 

 ん?手札にモンスターがないのか?まあいい

 

「罠カードオープン。ドレインシールド。相手モンスター1体の攻撃を無効にする」

「く、惜しい!」

 

「更に、そのモンスターの攻撃力分、ライフを回復する。よって俺はモーツァルトの攻撃力2600にエレジーの効果で上がった300ポイント、合わせて2900分、ライフを回復する。」

 

 KIKU 4500→7400

 

「なんですって?!」

 

「驚くのはまだ早いよ、柚子ちゃん。ジャスミンの効果は知っているよね?」

 

「え、もしかしてそのモンスター、相手ターンでも発動できるの?!」

 

 そう、その通り。しかも俺のフィールドには2体のジャスミンがいる。それだけじゃない。

 

「ジャスミンの効果にチェーンして永続罠、神の恵みを発動。俺はジャスミン2体の効果で2枚ドロー。さらに神の恵みの効果でライフを1000回復」

 

 KIKU 7400→8400

 

  手札3→5

 

 開始3ターンでOCGの初期ライフ越え。だがまだまだだね。

 

「ライフが倍近くになっちゃった。バトルフェイズ終了。私はカード1枚伏せてターンエンド。」

 

 YUZU 

 

  手札1→0

 

「なら俺のターン、ドロー。神の恵みで回復。ジャスミン効果で2枚ドロー。更に回復。」

 

 KIKU 8400→9900

 

  手札5→8

 

 なんかライフがすごいことになってきた。ヲーさん今です!ライフちゅっちゅギガントさんの見せ場がきましたよ!入ってないけど!!

 

「手札から3枚目のジャスミンを召喚。さらに攻撃表示のジャスミンを守備表示に変更」

 

「う、またそのモンスター。」

 

「更に墓地の薔薇の恋人の効果を発動。手札から植物族モンスターを特殊召喚。来い、アロマージーベルガモット。更にジャスミン効果で召喚、アロマージーガナンガ」

 

手札8→5

 

 アロマージーベルガモット

 

 効果モンスター

 

自分のLPが相手より多く、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の植物族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。1ターンに1度、自分のLPが回復した場合に発動する。このカードの攻撃力・守備力は相手ターンの終了時まで1000アップする。

 

 アロマージーガナンガ

 

 効果モンスター

 

自分のLPが相手より多く、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。1ターンに1度、自分のLPが回復した場合、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動する。そのカードを持ち主の手札に戻す。

 

「墓地から効果?!でも、そのカードの攻撃力は2400。2900のモーツァルトは超えれない。私にダメージは与えられないわ!」

 

 だめだ、それ以上はいけない!(死亡フラグ的な意味で)

 

「アロマガーデンの効果。ライフを500回復し、500ポイント自分フィールドのモンスターの攻守をアップさせる。更にベルガモットの効果で1000ポイント攻撃力をアップ。ジャスミン効果で1ドロー。ガナンガ効果で伏せカードをバウンス。」

 

「あ~!ミラーフォースが!」

 

悲報、ミラフォが仕事しない。あと、言っちゃダメだよ柚子ちゃん。てかトレード・インのドロー危なすぎ!!なに蘇生とミラフォひいちゃってくれてんの?!その運命力ください。俺なんかこんだけ引いて3積みのミラフォとリビデに死者蘇生ひいてないんだよ?1枚も!!

 

 KIKU9900→10400

 

 手札5→6

 

「バトルフェイズ。アロマージーベルガモットでエレジーに攻撃。」

 

「どうして?!エレジーは守備表示。ダメージは与えられないよ?!」

 

「本当にそうかな?」

 

「え?」

 

「ベルガモットは自分のライフが相手より多いとき、貫通ダメージを与えるのさ」

 

「そんな!」

 

 YUZU 4000→1300

 

「俺はバトルフェイズを終了。カードを4枚伏せてターンエンドだ。」

 

KIKU

 

 手札6→2

 

 アロマージーガナンガ

 

 アロマージーベルガモット

 

 アロマージージャスミン

 アロマージージャスミン

 

 アロマージージャスミン

 

 アロマガーデン 

 

 神の恵み

 

 伏せ4

 

 改めてフィールドを見る。うわ、気持ちわり。案外頭おかしいな、これ。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 戦意消失してない柚子ちゃんマジストロング。

 

「私はハーピィの羽根箒を発動!これで伏せカードとそのフィールド魔法を一掃!」

 

 さっきから引きよすぎぃ・・・。一掃されるのはこっちだけと。だが・・・。

 

「ならそれにチェーンし、ご隠居の猛毒薬を発動。更にチェーンし非常食。非常食の効果でアロマガーデンと神の恵み、伏せカード2枚を墓地に送り、ライフを回復、更にご隠居の猛毒薬の効果で相手に800のバーンダメージを与える。」

 

「きゃあ!」

 

 

KIKU 10400→14400

 

YUZU 1300→500

 

 鉄壁入りましたー!

 

 ああ、さよなら神の恵み3枚、ドンだけ固まってんだよ。

 

「だが、ライフを回復したことでジャスミン3枚の効果、ベルガモットの効果、ガナンガの効果が発動。ガナンガの効果でヴァルハラを手札に戻す。ベルガモットの効果で攻撃力アップ。ジャスミンの効果で3枚ドロー。」

 

KIKU

 

 手札2→5 

 

 引いたカードはリビデ3枚、どうなっているこのデュエルディスク。

 

「私は・・・、モーツァルトを守備表示にしてカードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 どちらかがミラフォか。何とかしないと。サイクロン入れてないんだよね。ならいっそ。

 

「ドロー。ガナンガを守備にしてベルガモットでエレジーに攻撃。」

 

「罠発動、聖なるバリアミラーフォース、これで攻撃表示モンスターを全て破壊!!」

 

 あ、すっごい嬉しそう。てかミラフォが仕事した、倒したの1体だけだけど。

 

「なら俺はカードを4枚伏せてターンエンド」

 

KIKU

 

 手札6→2

 

「またガン伏せ・・・。私のターン!私はプロディジー・モーツァルトの効果発動!効果で幻奏の音姫ローリイット・フランソワを特殊召喚!」

 

 引きがよ(ry

 

 幻奏の音姫ローリイット・フランソワ

 

 効果モンスター

 

このカードの効果を発動するターン、自分は光属性以外のモンスターの効果を発動できない。1ターンに1度、自分の墓地の天使族・光属性モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

「幻奏の音姫ローリイット・フランソワの効果!墓地のヘカテリスを回収!更にアリアを除くモンスターを攻撃表示に変更!バトルよ!フランソワでジャスミンに攻撃!」

 

「罠発動、ドレインシールド!効果でライフを回復し、3枚ドロー。」

 

 KIKU

 

  手札2→5

 

「また回復にドロー・・・。だけどあと2体でジャスミン達を攻撃!」

 

 ついに破壊されたジャスミン。まあ、これ以上残るとデッキがやばいので消えた方がいい。さよなら、ジャスミン、君たちのことは忘れない。

 

「私はこれでターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー。伏せていたリビングデッドを発動、効果でローンファイアを蘇生」

 

「『ベルガモット』じゃないの?!」

 

「また別のカードがあるのさ。ローンファイアをリリースし、デッキから桜姫タレイアを特殊召喚!」

 

 桜姫タレイア

 

 効果モンスター

 

このカードの攻撃力は、自分フィールド上の植物族モンスターの数×100ポイントアップする。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外のお互いのフィールド上の植物族モンスターはカードの効果では破壊されない。

 

  フィールドにはこのカードとジャスミン、ガナンガ。つまり・・・.

 

 

「攻撃力3100のモンスター?!」

 

 

「バトル。タレイアでエレジーに攻撃」

 

 サンドバッグエレジー様、すいません。

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 YUZU 500→0

 

 WINNER KIKU TATUNAMI

 

 ***********************************

 

 デュエルが終わったあと、俺は柚子ちゃん一家に今日使ったデッキを見せていた。

 

「このアロマデッキ面白いね、特にアロマガーデン!でも、地獄の暴走召喚は入れないの?」

 

「入ってもいいけど、上級展開されるとジャスミンなんかは維持できないからね。今日あんだけドローできたのは柚子ちゃんがロックに回ったからだよ。」

 

「なるほど。ならこれはどうするんだい?」

 

「これはこのカードと一緒に使うんですよ、修造さん。」

 

 こんな感じで、柚子ちゃん一家とは仲良くなった気がする。

 




ガチは使ってない、ガチは。

4/15
感想であった勘違い等を訂正しました


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第7話

遅れて申し訳ありません。

それから、今回オリキャラが登場するので嫌な人はプラウザバックをお勧めします


キング・クリムゾン!!

 

冗談です。スタンドなんか使えない一般peopleな菊です。あれから3年たちました。自分は中学2年生になり、義妹の柚子ちゃんや弟みたいな遊矢君はもう5年生になりました。時が経つのははやいものです。

 

今、少し後悔していることがあります。なんだと思いますか?皆さん。

 

実はこの度、私、立浪菊改め、柊菊。自重を忘れてガチデッキで遊矢君や柚子ちゃんにちょっかいをかける悪ガキどもや、身にかかる火の粉をデュエルで払っていると(頭おかしくないよ、正常だよ)・・・。

 

いつの間にか、プロデュエリストになってました。しかもI2社のスポンサー付の。

 

 I2(インダストリアル・イリュージョン)社

 

 かつて、この世界で、デュエルモンスターズの生みの親であるペガサスが作った会社で、カードがどの会社でも自由に作れるようになっているこの世界でも、最も重要な立場にある会社である。一番の収入源であったカードの専売特許も数年前に無くなったらしい(期限切れのため)が、それでもなお、カード生産の世界トップシェアを誇る大会社。

 

 それのプロデュエリスト、俺。まじで。

 

 ポルナレフも吃驚のこの状況だが、まあ、もちろん訳がある。

 

 今から1年前、俺は中学1年生になり、ジュニアユース選手権への切符を手にした。

 

 しかし、そこで俺はとんでもないミスをしてしまったのだ。

 

 記入の場所をジュニアユースではなくユース選手権の場所にチェックを入れるというミスを・・・。

 

 まあ、ジュニアユースは本来、中学生向けの大会となっている。高校生以上となるとユースになるのだが、まあ、当然俺は入れないはずだった。

 

 しかし、公式戦において無敗の勝率100%を叩き出した(中学生相手にインゼク、お触れホルスに魔道使ったら・・・。うん、まあ、その、察しろ)俺は、特例としてユースに出ることになった。

 

 当時はそれなりに世間の話題になり、何回戦まで行けるかクラス内でトトカルチョが流行ったり(おい、中学生)したが、俺はその大会で異例の優勝をはたした。

 

 そこに試合を見ていたI2社のスカウトマンが、スポンサーになるからプロにならないかといってきたので、それを了承。俺は世界最年少のプロデュエリストの称号を得たのだ。

 

 因みに、3日に1回プロの仕事があるので、中学校は出席日数がやばい。さらに学校にいけばプロになってから異様に増えた蟹式コミュニケーション(おい、デュエルしろよ)が増え、デュエルしない日はないと言ってもいい。

 

 いいかげん疲れたよ、パトラッシュ・・・。もう、ゴールしてもいいよね・・・?

 

「と、いうわけでどうしたらいいと思う?」

 

「しるか。」

 

「仕方ないと思います。」

 

「自業自得よ。諦めなさい。」

 

「酷い。」

 

 クラスメイトに聞いたが、こんな答えが返ってきただけだった。

 

 彼らを上から紹介していこう。この世界での俺の初めての友人である彼らを。

 

 1人目は『刀堂大牙』。辛辣な言葉で俺のLPをかっさらう剣闘獣デッキ使いの男の子。小学校の時に転校生として入った時、真っ先に突っかかってきたのでぼっこぼっこの返り討ちにしたら、その後無駄に絡まれ(リアルファイト含む)、なぜか今に至る。本当、何があったのやら。

 

 2人目は『志島凪流』。なんとも読みにくい漢字の名前である。因みに読みは『ながれ』。同級生相手でも敬語で話してくるのだが、その実、遠慮がない。中学に入ってすぐになぜか俺に弟子入りを希望した『聖騎士』使いの女子。なんでも光津に負けたくなかったらしい。

 

 3人目は『光津香澄』。凪流の幼馴染でライバルの女子というか女性。使用デッキは『ギガプラビート』。俺がアロマデッキで対戦してる時に声をかけてきて、意気投合。因みにドS。

 

 そう、苗字を見てくれたら分かるだろう。こいつらはあの、鉄の意志も鋼の強さも感じないLDS3人組の兄姉たちである。原作にはいなかっただろ、こいつ等。俺の記憶違いか?これ。

 

「酷くねえよ。お前がやれ『ファンサービス』だやらやれ『こいつで血の海渡って貰おうか』だのやって相手を挑発してっからだろうが。」

 

「え?挑発してるつもりないよ?」

 

 ただ、僕の休暇である学校生活を邪魔する奴らにそれ相応の対応とデュエルで返り討ちにしただけで。

 

「なお質が悪いですよね?それ。」

 

「本当にね、凪流。こいつは一遍死んだ方がいいわ。」

 

「酷い、酷すぎるよ香澄さん。」

 

「酷くないわよ。最近、あんたと仲がいいからって私たちにまで挑んでくる奴もいるのよ?その被害を考えれば縁を切らないだけマシだと思いなさい。」

 

 え、まじで?

 

「え、もしかしてそっちまでデュエルの申し込みきてるの?」

 

「はい、アンティまで仕掛けてくる人もいまして。酷い人なんかはあなたに負けた腹いせに私たちに挑んで、デッキをかけろと言い出す始末。断ればある事ない事言いふらすなんて言って脅してまでデュエルしようとしてきます。流石にあなたの妹さんまで挑もうとはしないみたいですが。」

 

「え、その話本当?なら今すぐにでも先生に相談するか、次からトラウマになるレベルでボッコにするけど。」

 

「大丈夫よ。それをするのは一部の奴だけ。それにやろうとした奴は全員返り討ちにして生徒指導部に突き出してるから。それからそのトラウマレベルはやめたげなさい。」

 

 え・・・。

 

「「「香澄が慈悲を与えただと・・・。」」」

 

「おい、どういうことだそれは。」

 

「いや、なんというか、なあ?」

 

「「うん」」

 

「お前らぶっ殺すぞ」

 

 まあ、それはいいとして

 

「よくない」

 

「よくないです」

 

「お前、香澄がドン引きするレベルのトラウマってなにやったんだよ?」

 

 え、別に普通だと思うんだけど。

 

「普通、ねぇ?なら、最近のデュエルを私たちに教えて?」

 

「最近?そうだなぁ・・・。」

 

 えっと。まず、ヘカテリスからのヴァルハラ発動The worldとセカンド・チャンスで「当↑然↓正位置だ」ってやってヴィーナス召喚玉3体召喚玉リリースで相手ターンスキップしてWRYYYYY!!てやったり、ホルスレベルアップからのお触れでついでにBloo-D召喚してロック作ったり、聖刻出してトライホーンその他並べた後ガーゼット出してアーミタイル越えしたり、下級天使リクルート派遣社員(社員エンジェル=サンはしめやかに爆発四散!!)に泉と聖域張ってからのライフ回復しリクルーター尽きたならマーズ召喚してこれまたアーミタイル越えしたり、光と闇の竜とクリスティア並べたり、相手のエースをハンバーガーにしたり、グォレンダァ!!したり、ダンセルホーネットしたり、ボチヤミサンタイしたり、グラファ3体ならべてスキドレ虚無したり、SINサイバーとマシンナーズにガジェドラ並べてこれまたスキドレしたり、相手のガーゼットにヴェーラーうって『悔しいでしょうねぇ』って言ったり、モリンフェンしたりしただけだよ?

 

 強脱や奈落があまり使われない環境って素敵だね!!たまにヴェーラー幽鬼うさぎ飛んできても強脱に比べれば何とかなるし。バウンスはホント困る。

 

「「「うわぁ」」」

 

 え、なに引いてんの?OCGでなら案外突破されるんだよ?このぐらい。

 

「いや、その理屈はおかしい。」

 

「こんなの中々突破できませんよ。」

 

「死ね」

 

「うぉぉい!!最後酷くない?!」

 

「てか、何気に変なの混ざってたよな?」

 

「気にしない気にしない。」

 

 気にしたら負けだ、うん。

 

「そういえばさぁ」

 

「うん?」

「大丈夫なのか?」

 

「なにが?」

 

そう聞くと、困ったみたいに刀堂が言う。

 

「ほら、榊遊勝いなくなっただろ?お前の塾のとこ、人数もだいぶ減ったし遊矢君?だっけ、あとお前の妹。いじめられてたりしないのかって。」

 

ああ、それなら。

 

「大丈夫。とりあえず先生に気にかけてくださいって言ってあるし、登下校は俺が送り迎えするから。それに柚子ちゃんや遊矢君には頼れる仲間の権現坂君もついてるからね。」

 

「ですけど・・・。」

 

まだ心配そうにしている凪流。

 

「大丈夫、無問題無問題。」

 

でも、この話はやめておこう。何とか別の話題に・・・。

 

「あ、そうそうそういえば。」

 

よかった。どうやら凪流が気を利かせてくれたらしい。とりあえず話題をシフトチェンジ。

 

「新しい召喚方法、出でましたね。」

 

「うん、なんだっけ?凪流」

 

「『シンクロ召喚』ですよ、香澄」

 

 そう、つい先日やっとシンクロ召喚が発表されたのだ。これでやっとジャンドや六武にSINデッキなんかがまともに使える。

 

「まあ、俺には関係ないがな。」

 

「大牙は融合軸だからね。今のところは確かに必要ないか。」

 

「私はいくつか欲しいですね。聖騎士はシンクロも出ましたし。」

 

「私もかなぁ。スポーアやグローアップ・バルブが手に入ったらシンクロもできるし。」

 

「菊はどうなんだよ?」

 

 ふふふ、よくぞ聞いてくれました!!

 

「何とこの度、私柊菊はシンクロ召喚のテストプレイヤーに選ばれました!!」

 

・・・。

 

時が止まること約10秒。

 

「「「・・・はぁ?」」」

 

 ふはは、その反応が見たくて秘密にしていた甲斐があったってもんよ。

 

 因みに柚子ちゃんと父さんには決まったその日に伝えた。自分のことのように喜んでくれた上にプレゼントまでくれた。その日は泣きそうになった。

 

「さすが、プロデュエリストランキング新人1位だな。なあ、『軍師』さま?」

 

「その名前で呼ぶの、本当にやめてくれ。」

 

 『軍師』。それがプロデュエリストでの俺の2つ名だ。

 

 プロデュエリストになると、ある一定の注目を浴びるデュエリストになると、メディアが2つ名をつける。俺の場合、相手の戦略を妨害し、なおかつ自分は確実に展開していく。そんな戦略からついたのが『軍師』だった。若干厨二チックで嫌だったが、他の2つ名が『魔王』や『醜悪』だったり『征服王』だったり『料理人(間違いなくハンバーガーのせい)』だったり碌なのがなかったため、妥協した。

 

 そんな経緯を知っているこいつらはたまにこうやってからかってくるのだ。

 

「昨日、学校を休んだのはもしかして・・・?」

 

「いや、その前からテストプレイヤーの件は決まってたよ。呼び出されたのは別の件。」

 

「別の件?」

 

「ああ。」

それにしても昨日の件は驚いた。

 

 まさか、なあ。

 

 自分が赤馬零児のプロ試験官を務めることになるなんてなぁ・・・。

 

ああ・・・。

 

 嫌な予感しかしねぇ・・・。

 



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第8話

またまた遅れて申し訳有りません。

それはそうとARC-Ⅴはだんだん5D'sになってきましたねぇ。


 日は変わって日曜日。

 

 本来なら学校も試合もなく、久しぶりに柚子ちゃんや遊矢君と遊んだり、LDS兄姉組と出かけたり、1日ゴロゴロしたりするはずの1日を過ごすはずだったこの日は、試験監督として呼ばれたために半日崩れることになってしまった。

 

 あ~、休暇が欲しい。昨日だって試合があったから朝から出かけてデュエルしてたのに。平日の休みは学校だから、あんまりないんだよね1日オフ。

 

 まあ、仮にもI2社社員の席に置かせてもらってるから、拒否権ないしね。給料もらってる身だからなんも言えない。まだ中学生だし、新人だし。

 

 さて、そろそろ突っ込んでいいかな?

 

 いや、今目の前に赤馬零児がいるんだけどさぁ。

 

「えっと?何してるの?」

 

「なにって、準備運動ですが、なにか?」

 

 問題でも?とでも言うように首を傾げながら屈伸する零児君。

 

「いや、うん。ならいいんだ。」

 

 まじかぁ・・・。

 

 試験、アクションデュエルかぁ・・。

 

 苦手なんだよなあ・・・。

 

 

 『アクションデュエル』

 

 ARC-Ⅴの世界において一番の特異点であるデュエル方式。5D'sの世界にあった『ライディングデュエル』と同じように特殊なフィールド魔法『アクションフィールド』を発動しアリーナの中を駆け巡りながらのデュエルである。フィールド内には至るとことに『アクションマジック』が落ちていて、それらは自由に使うことが出来る。

 

 普通のデュエルとは異なり、ソリッドヴィジョンシステムが『質量を持って』実体化するためかなり迫力のあるデュエルを見、体験できることから、この舞網市において絶大な人気を誇るデュエルだ。

 

 まあ、プロの試合は基本的には『スタンディングデュエル』、つまりは普通のデュエルが主体であるので、プロ戦ではほとんどやったことがなかったりする。

 

 と、言うのも、あくまでアクションデュエルは『舞網市』で評判なだけであって、実のとこと舞網市以外では予算やスペース、その他もろもろの問題からあまりメジャーじゃなかったりするのだ。

 

 まあ、決して人気がないわけでは無く、時々行われるプロのみが参加し、ランキングを決める大会なんかには会場を軽く埋め尽くす人で埋まるので、することはあるのだが。

 

 まあ、苦手な理由としては、アクションマジックの位置を各フィールド魔法ごとに把握したりするのが面倒なのと、ピンチの時にアクションマジックを取ったら『マッドハリケーン』(自分フィールドのカードを全てデッキに戻すだけのカード。ディスアドバンテージ極まりないので使うわけにいかない)だったりして他のアクションマジックを取れなくなったとか、せっかく攻撃力10000が出たのにダイレクトアタックを『回避』で無効にされたとか、その程度のことだったりする。どうして俺に気持ちよくデュエルさせねえんだ。

 

「はじめてもいいですか?柊プロ。」

 

「ん?ああ、考え事をしていただけ。始めていいよ?あと、その柊プロってやめてくれないかな?むずかゆい。」

 

「それでは『軍師』さんと」

 

「やめろ」

 

 まったく、どいつもこいつもそれで呼びやがる。

 

「柊さんとかそういうのでお願い。たいして年離れてないし」

 

「分かりました。中島、始めていいぞ」

 

 あ、審判さんあの中島さんなんだ。磯野といい中島といい、サザエさんに出てきそうだな。

 

「わかりました。アクションフィールド、セット・オン!」

 

 その瞬間、フィールド魔法起動合図の機械音声が飛んでくる。それと同時にデュエルディスクにも機械音声が流れ出た。

 

『アクションフィールド『プレイン・プレーン』起動。』

 

「フィールドに集いし決闘者たちが。」

 

 え、それ言うの?なんか恥ずかしい。

 

「モンスターとともに血をはり宙を舞いフィールド内を駆け巡る。」

 

「見よ、これがデュエルの最強進化系。」

 

「アクショーーーーン「「デュエル!!」」

 

「先行は貰います。私のターン!」

 

 あ、また先行取られた。まあ、今回は試験だししゃーないか。先行は譲らないとね。

 

「私は手札から愚かな埋葬を発動し、デッキから黄泉ガエルを墓地に落とします。更にモンスターを裏側守備表示でセット。カードを1枚セットしターンエンドです。」

 

 黄泉ガエル

 

効果モンスター

 

星1 水属性 水族 ATK100 DEF100

 

自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が表側表示で存在する場合は発動できない。

 

 REIJI 4000

 

  手札5→2

 

 うわ、おろ埋でおとしたの黄泉ガエルかよ。カエルデッキじゃないよな、多分。使うやつあんまりいないし。嫌な予感しかしねぇ。

 

「俺のターン。ドロー。「この瞬間、威嚇する咆哮を発動。このターン攻撃宣言できません。」・・・モンスターを伏せて、カードを2枚伏せてターンエンドだ。」

 

 やっぱあの伏せはフリーチェーンのカードか、予想通り。まあ、黄泉ガエル落とした時点で蘇生を阻害するカードである永続系でないのはほぼ確定だったし。この様子だと和睦も入ってるかな?

 

 威嚇する咆哮

 

 通常罠

 

 このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。 

 

 KIKU 4000

 

  手札5→6→3

 

「私のターン、ドロー!セットしたモンスターをリリースし、邪帝ガイウスをアドバンス召喚!除外するのはその右側のセットカードです。」

 

 邪帝ガイウス

 

 効果モンスター

 

 星6 闇属性 悪魔族 ATK2400 DEF1000

 

このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、相手に1000ダメージを与える。

 

「伏せカードは魔法の筒。チェーンはない。続けて。」

 

 悲報、マジシリも働かない、訴訟。ミラフォ同様仕事しろし。

 

「はい、私はこのままバトルフェイズに入ります。ガイウスでセットモンスターに攻撃!さらにアクションマジック、フレイム・パワーを発動!破壊したモンスターの守備力分のダメージを与えます」

 

 フレイム・パワー

 

 アクション魔法

 

自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで400アップする。 またこのターン、対象のモンスターが戦闘で守備表示モンスターを破壊した場合、 破壊したモンスターの守備力分のダメージを相手に与える。

 

ガイウスの攻撃がセットモンスターに当たり、衝撃が拡散する。ガイウスの攻撃力は2800。ブルーアイズにも届きそうなその攻撃力は、いくら安全が確保されていても直接は食らいたくない威力を見せていた。

 

「だが、ただではこいつは死なないぞ。セットモンスターはキラー・トマト。戦闘で破壊されたのでデッキから攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚する。俺が召喚するのはコイツだ。来い、ユベル!!」

 

 キラー・トマト

 

 効果モンスター

 

 星4 闇属性 植物族 ATK 1400 DEF 1100

 

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

 

 ユベル

 

 効果モンスター

 

 星10 闇属性 悪魔族 ATK 0 DEF 0

 

このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが相手モンスターに攻撃された場合、そのダメージ計算前に攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。また、自分のエンドフェイズ時、このカード以外の自分フィールド上のモンスター1体をリリースするか、このカードを破壊する。この効果以外でこのカードが破壊された時、自分の手札・デッキ・墓地から「ユベル-Das Abscheulich Ritter」1体を特殊召喚できる。

 

KIKU 4000→2900

 

 ヤンデレ精霊、降☆臨!

 

「ユベルですか、聞いたことのないカードですね。」

 

「そうかい、なら効果の説明をしてあげようか?まあ、聞いたことがなくても不思議ではない。あまり使われないからね。」

 

 あ、だからあんなにガッチャさんにヤンデレたのかな?

 

「お願いできますか?」

 

「もちろん!」

 

 零児くんいい子。他のプロって効果説明しようとすれば「いらん!!舐めてるのか!!」とか言われて自爆するからなぁ。お蔭で古の森と破壊耐性モンスターだけのデッキで勝てる相手もいたからなぁ。

 

「ユベルの効果は大きく分けて4つある。1つは戦闘耐性。2つ目は攻撃されたときその戦闘ダメージを相手に与える効果、3つ目は自分エンド時に自分フィールドのモンスター1体をリリースしなければならない維持コスト。4つ目は破壊されたとき手札、デッキ、墓地からこのモンスターの進化系を出す効果だ。理解したか?」

 

 この説明を聞いて、特に2つ目の効果を聞いた瞬間に零児君は顔をしかめた。まあ、マジシリ内臓モンスターは嫌だよな。

 

「メイン2。俺はカードを2枚セットしてエンド。「エンドフェイズ時爆導索発動。この縦列のカードを全て破壊する。ユベル、ガイウス、今伏せたカードを破壊。」く、サイクロンが。」

 

REIJI 手札3→0

 

 伏せカードはサイクロンか、まあ、破壊できて良かった。

 

「では、破壊されたユベルの効果を発動。デッキからユベル-Das Abscheulich Ritterを特殊召喚。これがユベル第二形態だ!!」

 

ユベル-Das Abscheulich Ritter

 

効果モンスター

 

星11 闇属性 悪魔族 ATK 0 DEF 0

 

このカードは通常召喚できない。「ユベル」の効果でのみ特殊召喚できる。このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが相手モンスターに攻撃された場合、そのダメージ計算前に攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。また、自分のエンドフェイズ時、このカード以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する。このカードがフィールド上から離れた時、自分の手札・デッキ・墓地から「ユベル-Das Extremer Traurig Drachen」1体を特殊召喚できる。

 

「チェーンある?」

 

「ありません。」

 

「なら俺のターン、ドロー。テラ・フォーミングを発動。効果によりデッキから神縛りの塚を手札に、そしてそのまま発動。ヘルウェイ・パトロールを召喚してバトルフェイズに入る。ヘルウェイ・パトロールで攻撃。」

 

 ヘルウェイ・パトロールが零児君を轢こうと走り出す。おい、警察だよね?パトロールってかいてあるよね?

 

ヘルウェイ・パトロール

 

効果モンスター

 

星4 闇属性 悪魔族 ATK 1600 DEF 1200

 

このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターのレベル×100ポイントダメージを相手ライフに与える。自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する

 

「罠発動、ガード・ブロック。攻撃を無効にして1枚ドローします。」

 

REIJI 0→1

 

 パトロールが引き返してくる。チッってお前・・・。いや、何も言うまい。

 

「俺はこのままターンエンド。」

 

KIKU 手札4→2

 

 さて、これでユベルの効果が発動する。

 

「ユベル-Das Abscheulich Ritterの効果、自分エンドフェイズにこのカード以外のモンスターを全て破壊する。」

 

「なに?!」

 

 お、本気で焦ってる。まあ、そうか。相手エンドに毎回ブラホ打たれるもんだよなぁ。

 

 全て壊すんだ♪

 

「俺のターン、ドローしスタンバイ。黄泉ガエルを特殊召喚。リリースしガイウスを召喚。効果で「あ、因みに神縛りの塚は自分フィールドのレベル10以上のモンスターは効果の対象にならないから。」・・・そのフィールド魔法を除外します。ターンエンド。」

 

REIJI 手札2→1

 

 除外できなくて悔しいでしょうねぇ。

 

神縛りの塚

 

フィールド魔法

 

フィールドのレベル10以上のモンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない。フィールドのレベル10以上のモンスターが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。破壊されたモンスターのコントローラーは1000ダメージを受ける。フィールドのこのカードが効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから神属性モンスター1体を手札に加える。

 

「俺のターン。クリッターを召喚しエンドまで。エンド時にユベル-Das Abscheulich Ritterの効果発動。フィールドを一掃。」

 

「俺はアクション魔法、透明を発動し、ガイウスを守ります。」

 

 透明 

 

 アクション魔法

 

 自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。 このターンそのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果を受けない。

 

 チッ、ガイウスが残ったか。

 

「まあいいや。じゃあ、破壊されたクリッターの効果を発動、メタモルポッドを手札に」

 

 クリッター

 

 効果モンスター

 

 星3 闇属性 悪魔族 ATK1000 DEF 600

 

このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。

 

 今や禁止のクリちゃん。帰って来て~。君が返ってくれば大体のネタデッキが楽になるから~。

 

KIKU

 

 手札3→2→3

 

「俺のターン、ドロー!」

 

REIJI

 

 手札1→2

 

「スタンバイフェイズ、黄泉ガエルの効果で墓地から特殊召喚。更に、ジェスター・コンフィを特殊召喚!」

 

 ジェスター・コンフィ

 

 効果モンスター

 

 星1 闇属性 魔法使い族 ATK 0 DEF 0

 

このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。この方法で特殊召喚した場合、次の相手のエンドフェイズ時に相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと表側表示のこのカードを持ち主の手札に戻す。「ジェスター・コンフィ」は自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 REIJI

 

  手札2→1

 

「更に、ジェスター・コンフィと黄泉ガエルを生贄に・・・」

 

 お、最上級帝かな?

 

「光と闇の竜をアドバンス召喚!!」

 

 ・・・。

 

 ・・・・・えっ。

 

 アイエエエエ! ライダー!? ライダーナンデ!?

 

 どうしてライダーがここに?!まさか、自力で脱出(万丈目から)を?!

 

 彼は万丈目ではない(無言の腹パン)

 

 まずい、非常にまずいよこれ?!

 

 光と闇の竜

 

 効果モンスター

 

 星8 光属性 ドラゴン族 ATK2800 DEF2400

 

このカードは特殊召喚できない。このカードの属性は「闇」としても扱う。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にする。この効果でカードの発動を無効にする度に、このカードの攻撃力と守備力は500ポイントダウンする。このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。自分フィールド上のカードを全て破壊する。選択したモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

REIJI

 

 手札1→0

 

・・・。

・・・フッフフフ。

・・・・・・クッククククク。

 

なぁ~んちゃってwwwお菓子食って腹痛いわ~wwww

 

「俺はアクション魔法、ハイダイブ発動!!対象はお前のファングジョーkじゃない光と闇の竜だ!!」

 

 ハイダイブ

 

 アクション魔法

 

フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。

 

「なに?しかし光と闇の竜の効果発動!!そのカードの発動を無効にします!」

 

「チェーンしてエフェクト・ヴェーラー!!」

 

「なに?!」

 

 エフェクト・ヴェーラー

 

 チューナー・効果モンスター

 

 星1 光属性 魔法使い族 ATK  0 DEF 0

 

相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

 

 KIKU

 

  手札3→2

 

「こいつを手札から捨ててそいつの効果を無効にする。光と闇の竜は同一チェーン上では2回発動できない。つまり、このターンそのファンg・・・じゃない光と闇の竜の効果は無効となる。よかったな、攻撃力3800だ。攻撃するか?」

 

「攻撃したら自爆じゃないですか!私は墓地のレベル・スティーラーを光と闇の竜のレベルを1下げて特殊召喚し、ガイウスを守備表示にしてターンエンドです。」

 

 レベル・スティーラー

 

 効果モンスター

 

 星1 闇属性 昆虫族 ATK  600 DEF  0

 

このカードはモンスターゾーンに存在する限り、アドバンス召喚以外のためにはリリースできない。このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのレベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 いつの間にレべステを?

 

 いや、最初のリリースか、姑息な手を。

 

 ※ヴェーラー握って手札回復の算段(メタポ)つけてる奴の台詞です。

 

 それにしても、これは突破されないだろみたいな顔してやがるな。だが無意味だ。

「俺のターン、ドロー。手札からレベル・スティーラーを通常召喚。バトルだ、レベル・スティーラーで光と闇の竜に攻撃!!」

 

KIKU

 

 手札2→3→2

 

「自爆特攻?そんなことをしても、いや、違う!!」

 

 その言葉と同時にレベル・スティーラーが破壊され、俺のライフが一気に削られる。

KIKU 2900→700

 

「お察しの通りさ。俺はメイン2に移行し、墓地のレベル・スティーラーの効果を発動!しかし、この時点で光と闇の竜の効果が発動する。その効果を無効にする代わりに攻撃力と守備力が500ポイントずつ下がる効果だ。そいつは確か誘発即時効果で強制的に下がっていく俺はこれを4回繰り返し、光と闇の竜の攻撃力を800まで下げる。これでもう、そいつの効果は使えないな。」

 

「クッ!!」

 

「俺はターンエンドだ。そしてこの瞬間、ユベル-Das Abscheulich Ritterの効果が発動。」

 

 光と闇の竜はユベルから出る闇に引きずられていく。

 

「だが、破壊されたとき、光と闇の竜は自分フィールドのカード全てを破壊し、墓地のモンスター1体を蘇生させる。甦れ、邪帝ガイウス。」

 

 過労死するんやないやろか?ガイウスはん。

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイにまた黄泉ガエルの効果発動し特殊召喚!更に俺は2体をリリースし、怨邪帝ガイウスをアドバンス召喚!!」

 

 ガイウスさん出番多すぎっすよ?!

 

 怨邪帝ガイウス

 

 効果モンスター

 

 星8 闇属性 悪魔族 ATK 2800 DEF 1000

 

このカードはアドバンス召喚したモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。このカードがアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのカード1枚を対象として発動する。そのカードを除外し、相手に1000ダメージを与える。除外したカードが闇属性モンスターカードだった場合、そのコントローラーの手札・デッキ・エクストラデッキ・墓地から同名カードを全て除外する。このカードが闇属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、その時の効果に以下の効果を加える。●この効果の対象を2枚にできる。

 

 REIJI

 

  手札0→1→0

 

「効果でユベルを除外し、1000ポイントのダメージを与えます!これで終わりです!!」

 

「させるかぁ!!アクション魔法フレイム・ガード。バーンダメージは無効!!」

 

 フレイム・ガード

 

 通常魔法

 

 効果ダメージを0にする。

 

「ですが、除外はされます!さらにデッキ、手札、墓地から同名カードも除外!!」

 

「生憎、このカードはこのデッキに1枚しか入っていない。」

 

「ですがこれでフィールドはがら空き。バトル!!怨邪帝ガイウスで攻撃!」

 

「手札からバトルフェーダーの効果を発動!このカードを特殊召喚しバトルフェイズを終了させる!!」

 

 バトルフェーダー 

 

 効果モンスター

 

 星1 闇属性 悪魔族 ATK 0 DEF 0

 

相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 KIKU

 

  手札2→1

 

「ターンエンドです・・・。」

 

 随分と意気消沈している。このターンで倒せればと思ってたのだろう。実際、準鉄壁といえるラインのライフまで削られ、手札はメタポのみ。

 

 いいねぇ、これだからデュエルは止められない。久しぶりに楽しい。

 

 この血沸き肉躍る感覚、最っ高だ。満足。

 

「俺のターン!カードを1枚伏せ、モンスターをセット!ターンエンドだ!!」

 

KIKU

 

 手札2→0

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

REIJI

 

 手札0→1

 

 零児君もなんだか口調が変わってきている。一人称俺になってるし。

 

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 

「俺は黄泉ガエルの効果でこのカードを蘇生し、カードを1枚伏せ、バトル、怨邪帝ガイウスでそのセットモンスターに攻撃!!」

 

「セットされたのはメタモルポット!!お互いに5枚ドロー!!」

 

 メタモルポット

 

 効果モンスター

 

星2 地属性 岩石族 ATK 700 DEF 600

 

リバース:お互いの手札を全て捨てる。その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。

 

KIKU

 

 手札0→5

 

REIJI

 

 手札0→5

 

「私は異次元の女戦士を召喚「この瞬間罠発動、激流葬!!全てのモンスターを破壊する!!」な、このタイミングで?!リバースカードを2枚セットし、ターンエンド。その瞬間、アクション魔法フレイム・ボールを発動!!相手に200のダメージを与えます。ターンエンド。」

 

 激流葬

 

 通常罠

 

モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

 フレイム・ボール

 

 アクション魔法

 

 相手に200ポイントのダメージを与える

 

KIKU 700→500

 

「俺のターンだ。俺は手札から大嵐を発動、フィールド上の全ての魔法・罠カードを破壊する。」

 

 大嵐

 

 通常魔法

 

 フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

「チェーンはありません。」

 

 破壊されたのはミラフォと激流葬。どっちも発動出来ればフィールドががら空きになり、返しのターンで俺の負けだっただろう。

 

「俺はBF-疾風のゲイルを通常召喚。更に墓地のヘルウェイ・パトロールを除外し、手札からヘルウェイ・パトロールを特殊召喚!!更に俺はこの2体のモンスターをチューニング!!」

 

「な、シンクロ召喚だと?!」

 

「今こそ現れろ、誰がどう見てもぶっ壊れ!!シンクロ召喚、ダーク・ダイブ・ボンバー!」

 

 ダーク・ダイブ・ボンバー

 

 シンクロ・効果モンスター

 

 星7 闇属性 機械族 ATK 2600 DEF 1800

 

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

「ダーク・ダイブ・ボンバー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。自分メインフェイズ1に自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。リリースしたモンスターのレベル×200ダメージを相手に与える。

 

 かつて禁止カードになったこのカード、あまりにも強すぎて環境においてブリュやゴヨウとともにOCGでは禁止になり、その後リ・コントラクト・ユニバース(エラッタ)されたカード。

 

 だが、俺がこの世界にきて、あのカードの束を見たとき、おかしなことに気づいたのだ。

 

 あれ、エラッタしてないのもあるくね?って。

 

 因みに今回使用した、DDBの効果はエラッタ前でこうなる。

 

 自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動できる。リリースしたモンスターのレベル×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

 おい、KO○MAI。マスドライバー(禁止)の効果を言ってみろ。あとカタパルトタートルも(エラッタ前で)。

 

 まあ、高速召喚できるBFや猫シンクロとこのカードのシナジーは頭おかしいほどにシナジーがあり、当時の環境を魔境にしやがったカードの1枚である。エラッタされて出所したが。あ、ブリュとゴヨウさんは当分帰ってくんな。

 

 サモサモキャットベルンベルンDDBDDBは悪魔の呪文、みんなも唱えてみよう。デュエルが終わるよ!いろんな意味で。(主に削られるのは相手のメンタル)

 

「バトル、ダーク・ダイブ・ボンバーでダイレクトアタック!!」

 

 その瞬間零児君がアクション魔法を探そうとするが無駄だ。

 

「何故だ、今回の回避の配置場所はここの筈だ!!」

 

 まあ、そういうことだ。

 

「零児君、君は今までのアクション魔法の場所から回避の場所に検討をつけていたんだろう?」

 

「はい!」

 

 だいぶ零児君焦ってるなぁ。まあ、負けそうだし、仕方ないか。

 

「思い出してごらん?今回のメインフェイズ1で最初に発動したカードは?」

 

「最初ですか?たしか大嵐・・・まさか、大嵐はフィールドのアクション魔法まで破壊するのか?!」

 

「Exactly!その通りだよ!!ならいくよ、DDBで零児君に攻撃!!」

 

「ぐおぉ!」

 

REIJI 4000→1400

 

「さらにさらに!DDBの効果を発動!!このカードをリリースし、そのレベル×200のダメージを与える!!」

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

REIJI 4000→0

 

 ワンターンジャストキルゥ・・・。

 

 零児君が起き上がる。

 

「今日はありがとうございました。今回はダメみたいでしたが、次は負けません!」

 ん?

 

「いやいや、こっちも楽しかったよ?それでダメみたいってなにが?」

 

 そう聞くと零児君が首を傾げた。

 

「いや、これってプロ試験じゃないですか。」

 

・・・。

 

 忘れてた。でもたしか・・・。

 

「いや、君は合格だよ?零児君」

 

「へ?」

 

 そう、彼は合格なのだ。なぜなら・・・。

 

「今回の試験のクリア条件は俺のライフを500まで削ることと、それをビートダウンデッキで行うこと、君はギリギリだがクリアした。B、いやA判定くらいはあげても問題ないくらいさ。」

 

「そうなんですか?!でも半分以上のダメージが自爆特攻なんですが、レべステの。」

 

「細かいことは気にするな。それにあの手札なら俺はただ君にターンを渡すしかなかった。そう思えば仕方のない判断だったが、あのままターンを渡せばおそらく負けていただろう。だから大丈夫。君はプロでも通用するくらいには強いよ。」

 

 零児君は心なしか嬉しそうだ。なんで原作であそこまでポーカーフェイスだったのか知りたいくらいに。何があったんだろう?ホントに。

 

 まあ、とりあえず今日からプロになるであろう、彼に言葉を送っておこうか。

 

 

 

「ようこそ、プロの世界へ。歓迎するよ、盛大にね!」

 



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原作開始
第1話


今回は遊矢視点です。

短いです。


 

 

 あの日から、いろんなことがあった。

 

 学校では、1日中質問されたし、カードを狙って沢渡とかいう奴が勝負を仕掛けてきたりもした。以前の生活からは全く違う対応もされたし、いろんな奴が話しかけてきた。時には全く接点のなかったひとにまで。

 

 まあ、原因は分かってる。あの試合が原因だ。

 

 ストロング石島戦。父さんがいなくなった3年間、この舞網市のアクションデュエルのチャンピオンとして君臨した男。その人相手の非公式試合で俺は新たな召喚法を生み出した。

 

 『ペンデュラム召喚』

 

 石島との試合の中、俺が無我夢中で行った新たな召喚方法。そして、憧れの人達に近づくことが出来るかもしれない力。

 

 なぜ、あんなことが出来たのか、自分でも不思議でならない。だけれど、これなら父さんのような、みんなを笑顔に出来るデュエルを俺がすることが出来る。

 

 だから、そのためにも、今出来ることをやらなきゃ。

 

 そう思って今日も塾で勉強だ。頑張ってジュニアユース選手権で優勝し、プロになるんだ!

 

 その事を電話でアメリカにいる柚子の兄ちゃんに相談したら、「頑張れ、お前ならできる。」とか言われて切られてしまった。多分、ものすごく眠そうな声だったから、仮眠中だったんだと思う。悪いことをした。

 

 一足先にプロになった、兄のように慕ってた人。俺の憧れの人の1人。そんな人から激励の言葉を貰ったんだ。プロになってからは忙しそうだったけど、父さんがいなくなってからはいつも気にかけてくれていた。今は試合がどうのこうのとかで少しの間アメリカに行っている。早くデュエルしてみたい。まあ、あの人なら「ペンデュラム召喚?それがどうした!」とかいって簡単に倒される気さえする。

 

 なんてったって、父さんとデュエルして勝率が五分五分だったんだ。小学生だったあの人は。今はもっと強くなっているかもしれない。

 

 だからって負ける気もない。次合うときはあの人を超えてやる!

 

 でも、気にかかっていることもある。柚子のことだ。この前からなんだか様子がおかしい。素良がデザートを授業中に食べるものならハリセンがいつ飛んできてもおかしくないのに、今日はなんだか物思いにふけっている。何があったかわからないが、元気をだしてほしい。なんだか調子が狂う。

 

 授業中、そんなことを考えていたら、大声が聞こえた。権現坂の声だ。何があったんだろう?

 

 とりあえず塾長やみんなで玄関に向かってみることにしよう。

 

 

 

 

 ___________________________________

 

 驚いた。権現坂が怒鳴り声をあげていたのは、沢渡の取り巻き3人組だった。

 

 いや、権現坂が声を荒げてたことでも、相手が沢渡の取り巻き3人組だったから驚いたのではない。何より驚いたのは取り巻き達の話だった。

 

 沢渡や取り巻き達が工場の倉庫で俺へのリベンジを決意していると、いきなり俺が闇討ちしにきたらしい。

 

 だが、俺は当然ながらも襲ってなんかいない。だけれど、その時一緒にいたらしい柚子ははっきり否定しないし、その時の俺のアリバイは立証できない上、近くにいったから疑いは濃厚。さらに目撃証言まであるときた。その件についてLDSの人、赤馬日美香とかいう女の人が、この件をたてに塾の存続をかけたデュエル3本勝負を持ち込んできた。

 

 それにしても暴論だと思う。俺はやってないし、本来関係ない話。だけど、俺に似たやつに負けたからお前が責任取ってデュエルしろって話だ。

 

 だけどやるしかない。そうしなければ塾長にだって迷惑がかかる。

 

 向こうはこれを機にペンデュラム召喚を手に入れようとしている。せっかく手に入れた力だ。やすやすと手放すわけにはいかない。

 

 俺が頑張らないと!

 

 

 

 

 ___________________________________

 

 とりあえず1勝1敗1引き分け。現在の勝率は引き分けとなった。

 

 本来関係のないはずだった権現坂まで協力してくれて、感謝してもしきれない。

 

 だけど、嫌な予感は当たるのか、赤馬理事長はこう言いだした。3回戦で勝負がつかないので4回戦として向こうが勝った融合使いと俺がデュエルすることで決着をつけようと。

 

「そんなの卑怯だ!!」

 

「「そうだそうだ!!」

 

 こんな風にアユ達もいっているが、決定権は実質向こうにある。だけど俺ならやれるはず。そう思って「やります!!」と言おうとしたとき、その声があたりに響いた。

 

 凛とした声だった。

 

「なら、決着は私がつけよう。」

 

「ああ、来たのね零児さん。」

 

 零児?また誰か来たのか?それにしても聞いたことがあるような?

 

 まあいい、気合十分!

 

「このデュエル決着を「悪いけどちょっとまってくれるかなぁ?遊矢君?」え?!」

 

 この声は、でもなんで?アメリカにいるはずじゃあ?

 

「ヤッホー、遊矢君、柚子に権現坂君。元気してたかい?」

 

「兄さん?!どうしてここに?!」

 

 柚子も吃驚している。ということはこの帰国は柚子もしらなかったんだな。

 

「いや、みんなを驚かせたくてね。そこの子達は新しい塾生かい?」

 

 アユ達を指したのだろう、兄さんが塾にいた時にはいなかったから。

 

「鮎川アユです。」

 

「原田フトシ。」

 

「山城タツヤです。」

 

「紫雲院素良。」

 

「そうか、俺は柊菊。柚子の兄だ。よろしくね。」

 

 いやいやいや。

 

「なんでここにいるんだよ?!アメリカは?仕事は?!」

 

「だからさっき答えただろう?驚かせたくて帰るのを秘密にしてただけだよ。仕事は、これ以上学校を休むといくら公欠扱いでもやばいからって言ったらしばらく休めって言われたしね。」

 

 そこまで驚かれるとは秘密にした甲斐があったって笑いながら、あ、こういう人だったなと半分諦めの境地でいると・・・。

 

「お久しぶりです。柊さん。」

 

「やあ、2年ぶりかな?零児君」

 

「いえ、1年前の大会の時に挨拶にいきましたのでその時以来かと。1年前は私は2回戦敗退だったので。」

 

「ああ、あの遠征の時かい。たしかあれの開催地はアメリカだったかな?」

 

「ええ。」

 

「・・・零児君なんだか変わった?雰囲気が」

 

「そうでしょうか?」

 

 いやいやいや?顔見知り?!この人と?!

 

「そうだよ。この子がプロ試験のとき、俺が担当していたんだ。」

 

 それよりも・・・、と次の句を告げる。

 

「一体どういう状況なんだい?まったく展開が分からないんだが?」

 

 ああ、そういえば説明してなかったなぁ。塾長、お願いします。

 

 

___________________________________

 

 塾長の説明が終わると、少し考えたあと、菊兄さんは言った。

 

「赤馬理事長。その4回戦、俺が出ます。」

 

「なんですって?」

 

「そちらが出るのは仮にもプロの赤馬零児。それならこの塾の関係者でプロである、もしくは元プロの父が出た方が勝率は高い。それに、塾の命運を決める勝負で生徒に負担をかけたくないというのもあります。」

 

「しかし・・・。」

 

 言いよどんでいる。多分、向こうとしては断りたいのだろう。プロランキング、世界トップ10に入る兄さんは向こうにとっては脅威でしかない。しかし、断れば同じ途中介入者である赤馬零児の参戦をこちらが拒否出来てしまうから、悩んでいるのだろう。

 そこに菊兄さんは言い出した。

 

「なら、こうしましょう。今回そちらが連れてきた3人の代表者、私がその3人とデュエルし、私が負けたのなら今回の代表戦には参加しないっと言うのは?」

 

 それは向こうにとってメリットでしかない提案。だけど赤馬のおばさんはさらに付け足した。

 

 なら、この3人と同時にデュエルし、勝ったのなら構いませんと・・・。

 

 さっき戦ったから相手の実力は嫌でも分かる。1人1人なら菊兄さんなら大丈夫だろう。しかし、3人となるとかなりきつい。いや、そんなのは無理だ!

 

 でも、あの人は。

 

「分かりました。ルールはライフはそちらは1人4000。こちらはその3倍といいたいですが、4000で構いません。先行ドローは無し。ただし先行はこちらからで、そちらのターンからは攻撃しても構いません。順番は私、そちらの1人目、2人目、3人目、私。その条件でよろしければ。」

 

 そんな、無茶だ。バトルロイヤルでもないのに、そんな条件!先行は攻撃できない上、ドローも出来ない。その状況でターンを返せば間違いなく返しのターンでやられる!更に3ターン何もできないのに!!

 

「構いませんよ、そちらがよろしいのなら。」

 

「なら始めましょうか。こんな消化試合、さっさと済ませて寝るに限ります。」

 

 その言葉を聞いて向こうの3人組はかなり怒っている。

 

 そんな様子を知ってか知らずか、怒らせた本人はさっさとアクションフィールドがセットされた場所に向かい、デュエルディスクを構えた。

 

 

「さあ、始めようか、破壊と暴力のパジェントを!!」

 

 アクションフィールド セットオン 『星の聖域』スタンバイ!

 

「戦いの殿堂に連なりしデュエリスト達が!」

 

「モンスターとともに地を這い宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ、これがデュエルの最強進化系!」

 

「アクショーン・・・」

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

 

 

 

 

 



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第2話

 前回のあらすじ。

 塾が乗っ取られそうだったので、急遽、自重もなんもしないデッキでデュエルすることになった。以上。

赤き竜のカードは自重すると言ったな、あれは嘘だ。

今回は敵側、真澄視点です。



 プロデュエリスト、柊菊。その名前はこの舞網市ではかなり有名だ。

 

 逃げたチャンピオン、榊遊勝が残した塾からでた、世界トップクラスのデュエリストだからだ。榊遊勝が逃げたといわれた後、閉鎖も考えられたあの塾を立て直すまではいかないまでも、ある程度の実績を出す塾という評判に変えたデュエリストでもある。

 

 その話は、姉である香澄姉さんからよく聞かされた。

 

 曰く、大会の優勝候補に対して、「お前のデュエルはつまらん」とか言った後に平然と1ターンキルを決めた。

 

 曰く、「あの大会のカード、お前のデッキに合いそうだな」と話が出たら、「あ、あれ欲しいの?なら取ってこようか。」と軽いノリでその大会を蹂躙しつくした。

 

 曰く、私たち3人が束でかかっても適わない。

 

 私はこの話を聞く限り、ずっと嘘だと思っていた。香澄姉さんや、大牙さん、凪流さんの腕はよく知っている。私たちは姉さん達を目標にしていたからこそ頑張ってLDSのコース1位という結果を残すことが出来た。

 

 姉さん達には数えるほどしか勝ててはいない。だから、そんな人に簡単に勝ててしまうその人の話は嘘か、それとも姉たちの過大評価だと思っていた。

 

 でも違った。彼は今の私たちと変わらない年齢でユース大会で優勝し、インダストリアル・イリュージョン社専属プロという、栄光の切符を手に入れた。

 

 彼がプロになってからの試合は何度か見たことがある。凄まじいとしか言いようのないデュエルだった。後攻、相手のフィールドをたった1枚のモンスターから一瞬で蹂躙し、その後もほぼ一方的なデュエルだった。

 

 凄い、あんなコンボも出来るんだ。凄い、こんなモンスターも使えるんだ。なんでこんなモンスターを入れてるんだろう。そんな風によく刃や北斗と話をしたものだった。

 

 そんな人とデュエルが出来るかもしれない。だけど私たちに向かって言われたのは、消化試合という言葉だけだった。

 

 ふざけるな。私たちはLDSだ。マルコ先生や姉たちが教えてくれたデュエルで、姉たちが勝てなかった人を倒してやる。そんな言葉は撤回させてやる!!

 

 そう、思っていた。

 

「俺のターン。メインフェイズ。手札から調律を発動、デッキからジャンク・シンクロンを手札に加え、シャッフル。そしてデッキの1番上のカードを墓地に落とす。」

 

 調律

 

 通常魔法

 

デッキから「シンクロン」チューナー1体を手札に加えてデッキをシャッフルする。その後、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。

 

 その瞬間、彼は嗤った。遠くから見てもはっきり分かるくらい、彼はその顔を笑みに変えてこう言った。

 

 おいおい、これじゃMeの勝ちじゃないか、と。

 

 まさかの勝利宣言に驚いたが、5分後にはその意味を理解することになる。

 

「手札からジェット・シンクロンを捨ててクイック・シンクロンを特殊召喚。さらにジャンク・シンクロンを召喚。効果でジェットシンクロンを特殊召喚。更に墓地から特殊召喚に成功したので手札のドッペル・ウォリアーを特殊召喚。」

 

 クイック・シンクロン

 

 チューナー・効果モンスター

 

 星5/風属性/機械族/攻 700/守1400

 

このカードは「シンクロン」チューナーの代わりとしてS素材にできる。このカードをS素材とする場合、「シンクロン」チューナーを素材とするSモンスターのS召喚にしか使用できない。このカードは手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる。

 

 ジェット・シンクロン

 

 チューナー・効果モンスター

 

 星1/炎属性/機械族/攻 500/守 0

 

「ジェット・シンクロン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ジャンク」モンスター1体を手札に加える。(2):このカードが墓地に存在する場合、手札を1枚墓地へ送って発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 ジャンク・シンクロン

 

 チューナー・効果モンスター

 

 星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 500

 

このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

 ドッペル・ウォリアー

 

 効果モンスター

 

 星2/闇属性/戦士族/攻 800/守 800

 

自分の墓地のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「ドッペル・トークン」(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

KIKU

 

 手札5→1

 

「1ターンにモンスターが4体も並んだ?!」

 

 北斗が驚くが、まだ別にありえないわけでは無い。おそらく本番はここからだろう。

実際その通りだった。

 

「まだまだ行くよ?レベル2、ドッペルウォリアーに、レベル3、ジャンクシンクロンをチューニング!カモン、TG ハイパー・ライブラリアン!更にシンクロ召喚に使用したドッペルウォリアーの効果発動!ドッペルトークンを2体特殊召喚!更に、レベル1、ドッペルトークンに、レベル1、ジェットシンクロンをチューニング、希望の力、シンクロチューナー、フォーミュラシンクロン!!更に更にぃ、シンクロ召喚に成功したのでライブラリアンの効果発動、1枚ドロー!フォーミュラの効果で1枚ドロー!更に更に更にィ!!レベル1、ドッペルトークンに、レベル5、クイックシンクロンをチューニング、シンクロ召喚、ドリル・ウォリアー!ライブラリアン効果で1枚ドロー!!!」

 

 TG ハイパー・ライブラリアン

 

 シンクロ・効果モンスター

 

 星5/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1800

 

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。

フォーミュラ・シンクロン

 

シンクロ・チューナー・効果モンスター

 

 星2/光属性/機械族/攻 200/守1500

 

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体

 

このカードがS召喚に成功した時に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。相手メインフェイズに発動できる。このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。

 

 ドリル・ウォリアー

 

 シンクロ・効果モンスター

 

 星6/地属性/戦士族/攻2400/守2000

 

「ドリル・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。このカードの攻撃力を半分にし、このターンこのカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。手札を1枚捨ててこのカードをゲームから除外する。次の自分のスタンバイフェイズ時、この効果で除外したこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。その後、自分の墓地のモンスター1体を選んで手札に加える。

 

KIKU

 

 手札1→4

 

「そんな、1ターンで3回のシンクロ召喚?!」

 

 でも、驚くのはそれだけではない。なぜなら・・・。

 

「しかも手札が減ってない?」

 

 そう、まったく手札が減っていないのだ。

 

「まだ終わらないさ。引いた調律の効果を発動!!クイック・シンクロンを手札に加えシャッフル。そして1枚落とす。チッ、調律が落ちたか。」

 

 いや、落ちたカードに文句を言うほどに困ってないだろう。

 

「まあいい、手札のボルト・ヘッジホッグを捨ててクイック・シンクロンを特殊召喚。さらにクイック・シンクロンのレベルを4にしてレベル・スティーラーを特殊召喚!レベル1、レベル・スティーラーに、レベル4、クイック・シンクロンをチューニング!シンクロ召喚!ジェット・ウォリアー!ライブラリアンで1枚ドロー!」

 

ジェット・ウォリアー

 

シンクロ・効果モンスター

 

星5/炎属性/戦士族/攻2100/守1200

 

「ジェット・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

 

「ジェット・ウォリアー」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):このカードがS召喚に成功した場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。(2):このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのレベル2以下のモンスター1体をリリースして発動できる。このカードを墓地から守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

KIKU

 

 手札4→2→3

 

「4回目だと?!」

 

「更に、ドリル・ウォリアーのレベルを5に変更し、レベル・スティーラーを特殊召喚!さあ、見せてやろう、シンクロ召喚のその先を!!レベル5、ジェットウォリアーとレベル5、ドリル・ウォリアーにレベル2、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!!」

 

「シンクロ召喚のその先?!」

 

「シンクロモンスター同士のシンクロ召喚だと?!」

 

「集いし願いが1つになるとき、新たな絆が未来を照らす、リミットオーバーアクセルシンクロォォォーーーーー!!!!進化の光、シューティング・クェーサー・ドラゴン!!」

 

 シューティング・クェーサー・ドラゴン

 

 シンクロ・効果モンスター

 

 星12/光属性/ドラゴン族/攻4000/守4000

 

 シンクロモンスターのチューナー1体+チューナー以外のシンクロモンスター2体以上

 

このカードはシンクロ召喚でしか特殊召喚できない。このカードはこのカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。1ターンに1度、魔法・罠・効果モンスターの効果の発動を無効にし、破壊する事ができる。このカードがフィールド上から離れた時、「シューティング・スター・ドラゴン」1体をエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。

 

 出てきたドラゴンは、なんていうか、神々しくて・・・。

 

「綺麗・・・。」

 

 そう、この言葉がふさわしい。というより、変にこの言葉以外を使うと、陳腐なものになる気がしたのだ。

 

「それはありがとう、だがまだシンクロ召喚は終わらない。ライブラリアンの効果で1枚ドローし、手札からラッシュ・ウォリアーを捨てて墓地のジェット・シンクロンを特殊召喚し、クェーサーのレベルを下げてレベル・スティーラーを特殊召喚。そして、レベル1、レベル・スティーラーに、レベル1、ジェット・シンクロンをチューニング!もう一度現れろ、フォーミュラ・シンクロン!!。効果で2枚ドロー!!更にワン・フォー・ワンを発動!!効果で手札のシンクロン・キャリアーを捨ててチューニング・サポーターを特殊召喚!!更にチューニング・サポーターをリリースし墓地のジェット・ウォリアーを特殊召喚、もう一度だ!!レベル5、TG ハイパー・ライブラリアンと、レベル5、ジェット・ウォリアーにレベル2、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!!シンクロ召喚!!シューティング・クェーサー・ドラゴン!!」

 

 ワン・フォー・ワン

 

 通常魔法

 

手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

KIKU

 

 手札3→4→3→5→3

 

「もう一体?!」

 

 そして7回目のシンクロ召喚である。

 

「それだけじゃないさ。ラッシュ・ウォリアーを除外し効果発動!クイック・シンクロンを手札に加え、手札のレベル・スティーラーを捨てて特殊召喚し墓地のボルト・ヘッジホッグとレベル・スティーラーの効果を発動。1体目のクェーサーのレベルを下げて、特殊召喚し、レベル2、ボルト・ヘッジホッグとレベル1、レベル・スティーラーにレベル5クイック・シンクロンをチューニング!!シンクロ召喚、ロードウォリアー!!さらにこいつの効果を発動し、デッキからデビル・フランケンを特殊召喚し、神秘の中華鍋を発動!!ロード・ウォリアーをリリースし攻撃力3000分のライフを得る。更に、デビル・フランケンの効果を発動しエクストラデッキからこいつを特殊召喚、来い、ナチュル・エクストリオ!!」

 

 ラッシュ・ウォリアー

 

 効果モンスター

 

 星2/風属性/戦士族/攻 300/守1200

 

「ラッシュ・ウォリアー」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1)自分の「ウォリアー」Sモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。その戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力は、そのダメージ計算時のみ倍になる。(2):墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「シンクロン」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

 ボルト・ヘッジホッグ

 

 効果モンスター

 

 星2/地属性/機械族/攻 800/守 800

 

自分メインフェイズに発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果は自分フィールドにチューナーが存在する場合に発動と処理ができる。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 ロード・ウォリアー

 

 シンクロ・効果モンスター

 

 星8/光属性/戦士族/攻3000/守1500

 

「ロード・シンクロン」+チューナー以外のモンスター2体以上

 

1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。デッキからレベル2以下の戦士族・機械族モンスター1体を特殊召喚する。

 

 神秘の中華なべ

 

 速攻魔法

 

自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復する。

 

 デビル・フランケン

 

 効果モンスター

 

 星2/闇属性/機械族/攻 700/守 500

 

5000LPを払って発動できる。エクストラデッキから融合モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

 ナチュル・エクストリオ

 

 融合・効果モンスター

 

 星10/地属性/獣族/攻2800/守2400

 

「ナチュル・ビースト」+「ナチュル・パルキオン」

 

このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。魔法・罠カードが発動した時、自分の墓地のカード1枚を除外し、デッキの一番上のカードを墓地へ送って発動できる。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、その発動を無効にし破壊する。

 

KIKU 4000→7000→2000

 

 手札3→4→2→1

 

「更に死者蘇生を発動し、ジャンク・シンクロンを蘇生し、シンクロ召喚、2体目のTG ハイパー・ライブラリアン。ターンエンド。」

 

KIKU

 

 手札1→0

 

フィールド

 

 ナチュル・エクストリオ

 

 シューティング・クェーサー・ドラゴン

 

 シューティング・クェーサー・ドラゴン

 

 TG ハイパー・ライブラリアン

 

 私たちははぽかんとしている他になかった。

 

 9回のシンクロ召喚。それに加えての融合召喚。攻撃力4000のモンスターが2体。おまけに刃の十八番のシンクロは出来ればドローさせたくないので使えない。

 

 茫然としていると、刃が声をかけてきた。

 

(おい、たしか1ターン目だったよな?)

 

(間違いないわよ)

 

(どうなってるんだよ、4000のモンスター2体だぞ?!)

 

(それだけじゃないわ、あの融合モンスターにも何かあるはず・・・。)

 

(おい、それはいいけど誰からいく?)

 

(とりあえず人ばしr・・北斗からだな)

 

(そうね、逝ってきなさい、人ばs・・・じゃない北斗)

 

(いま、人柱って言いかけたよな、おい!!)

 

「おーい、さっさと始めてくれ~。そんなにひそひそ喋ってないで。」

 

(さっさといきなさい人柱。)

 

(さっさとしろよ、向こうを待たせるなよ人柱。)

 

(ついに言い切りやがった!!畜生、やってやるよ!!)

 

「僕のターン。ドロー!僕はセイクリッド・グレディを召喚!効果で「この瞬間、クェーサーの効果発動!!」な、なに?!」

 

 このタイミングで効果発動?!嫌な予感が・・・。

 

「このカードは、相手のモンスター効果、魔法、罠の効果を1ターンに1度無効にすることが出来る。」

 

 ・・・はぁ?!。インチキ効果もいい加減にしなさい?!

 

 しかもそのモンスターが2体?!ふざけないでよ?!

 

 ほら、北斗の顔もひきつってるし。

 

「なら死者s「この瞬間、ナチュル・エクストリオの効果発動!」な、なに?!」

「墓地のカードを1枚除外し、デッキトップを墓地に送ることで、相手の魔法、罠の効果を無効にする。」

 

 ・・・え?

 

 イマ、ナンテイッタノ?

 

『墓地のカードを1枚除外し、デッキトップを墓地に送ることで、相手の魔法、罠の効果を無効にする。』?

 

 ふざけるな!!私のデッキ、ほぼ死滅するじゃない?!こちとら融合よ?!融合召喚よ?!

 

 いや、代償として初期ライフ以上のコストを払うことを考えたなら妥当かもしれない。

 

 だけどこれは酷くない?

 

 ほら、向こう(遊勝塾)の面々まで顔が引きつってるわよ?!

 

「ぼ、ぼくはターンエンド・・・。」

 

 まあ、北斗にやれることはもうないだろう。召喚権も使って、魔法も罠も使えない。

「俺のターン。モンスターを伏せてカードを2枚セットしターンエンド・・・。」

 

 まあ、刃もやれることはないだろう。2回もモンスター効果も使えない上、蘇生魔法も使えないのだ。

 

「私のターン、ドロー」

 

 手札は廃石融合、ラズリーにレスキューラビット、ガネットにオブシディアにジェムナイト・フュージョン。いつもなら心強い手札でも今は意味をなさない。ダメだ、どうにもできない。

 

「モンスターを伏せてカードを2枚セットし、ターンエンド。」

 

これくらいしかやれることがない。

 

 圧倒的に有利だと思っていたこのデュエル、結果は何もできずにターンが回っていった。

 

「俺のターン、貪欲な壺を発動し5枚戻して2枚ドローする。ジャンク・シンクロン、クイック・シンクロン、クイック・シンクロン、TG ハイパー・ライブラリアン、フォーミュラ・シンクロンをデッキに戻してシャッフル。2枚ドロー。あちゃー。」

 

 貪欲な壺

 

 通常魔法

 

自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

 どうしたのだろう?

 

「俺は墓地のデビル・フランケンとチューニング・サポーターを除外してカオス・ソルジャー -開闢の使者- を特殊召喚!!」

 

 カオス・ソルジャー -開闢の使者-

 

 効果モンスター

 

 星8/光属性/戦士族/攻3000/守2500

 

このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつゲームから除外した場合に特殊召喚できる。1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。●フィールド上のモンスター1体を選択してゲームから除外する。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。●このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃できる

 

 出てきたのは伝説のカオスモンスター。こんなカードもデッキに入っているなんて・・・。

 

てか、確実に私たちを殺りに来てるわね。

 

「バトルフェイズ、開闢で刃君のセットモンスターに攻撃。さらに開闢の効果!このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃できる。真澄ちゃんのモンスターにも攻撃!!返す刀で敵を討て!!更に1体目のシューティング・クェーサー・ドラゴンで北斗君に攻撃!!」

 

HOKUTO 4000→0

 

 北斗のライフが一瞬で0になる。だけれどそれだけじゃなかった。

 

「シューティング・クェーサー・ドラゴンはこのカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。いけ、刃君にも攻撃!!そして、2体目のシューティング・クェーサー・ドラゴンで真澄ちゃんにも攻撃!!」

 

2回攻撃持ち?!伏せモンスターで凌ぐことも出来なかったの?!まあ、防いでも何もできなかっただろうけど・・・。

 

YAIBA 4000→0

 

MASUMI 4000→0

 

 私と刃のライフも0になり、アクションフィールドが消えていく。何も出来なかった私たちにむかって、彼は、プロデュエリストランキング2位のデュエリスト、『軍師』柊菊はこう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

「君たちのデュエルは本来、素晴らしいものだったのだろう。コンビネーションも!戦略も!!だが、しかし、まるで全然!この俺を倒すには!程遠いんだよねぇ!!」

 

 こうして私たちは、何の結果も得られずに、負けてしまったのだった。

 




ジェムジェム「今回のデュエルで我々は、何の成果も得られませんでしたぁぁ!!私が無能なばかりにライフも削ることも出来ず、優勝塾を乗っ取ることが、できませんでしたぁぁ!!(進撃風)」

また、その他の反応

かませ人柱「僕の扱い酷くない?」
フォルトロループマン「どうしろって言うんだ・・。」
しびれ「し、しびれすぎだぜ・・・。」
赤BBA「これが軍師の実力・・・。」
柑橘系ヒロイン「に、兄さん・・・。」
不動「流石は菊さんというべきなのか・・・。えげつないというべきなのか・・・。」
マスコット「こ、怖いよぅ・・・。」
院ゲス「あ、あればかりはこの僕でも勝てそうにないね・・・。」
インテリ「す、凄い・・・。」
熱血「アメリカに行ってからかなり実力はあがっているな。熱血だー!」
主人公兼ヒロイン「か、勝てるのか・・・?」
2代目社長「試験の時あのデッキでなくてよかった・・・。」


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第3話

更新遅くなりました。

それもこれも全部テストってやつのせいなんだ・・・。

絶対に許さないぞドン千(八つ当たり)!

今回、プレミ等あるかもしれませんし、かなりご都合主義です。それでも良ければどうぞ。


side YUYA

菊兄さんのデュエルは凄まじいとしか言いようがなかった。

 

 本来なら圧倒的に不利な条件、そんな中で先行で相手に展開させないコンボと、次のターンで相手3人を全て倒すだけの準備を終わらせたのだ。

 

 ところで、なぜか頭に髭のおじさんが出てきて「ワンターンスリィキルゥ」という声が聞こえたが、あれは何だったのだろうか?まあいいや。

 

「次は君だよ、赤馬零児君。さっさと降りてきなさい。ほら、はやく。」

 

 どことなく、兄さんの声はイライラしているようにも感じる。さっきは気付かなかったが、兄さんもこの理不尽な買収に怒ってたんだ。まあ、そうでもなけりゃあんなデッキ使わないか。それにしてもシューティング・クェーサー・ドラゴン2体にナチュル・エクストリオかぁ。どうやったら突破できるのだろう・・・?

 

「分かりました。すぐ行きますがその前にデッキ調整をさせてください。流石にあのデッキに勝てる気がしませんので・・・。」

 

「心配するな、さっきとは別のデッキを使ってあげるから。それにデッキ調整なら俺がやってる合間に出来ただろう?あまり今の俺をイライラさせないでくれないかい?」

 

「分かりました、すぐ行きます。ですから頼みますのでその怒りを収めてください。」

 

「社長、危険です!!あのモンスターの攻撃、いくらソリッドヴィジョンでも下手すれば・・・。」

 

「いや、あの人は別のデッキを使うと言っていた。あのモンスターが出るデッキとなると専用の構築が必要になるだろう。それにあの人の怒りももっともだ。これ以上待たせるわけにもいかない。」

 

「しかし!!」

 

「くどいぞ中島!大丈夫だ。」

 

 なんか、戦場へ行く兵士みたいな会話してるなぁ・・・。まあ、あのデュエルを見た後で進んでデュエルしようとする人は中々いないだろうなぁ・・・。

 

 そしてついにデュエルが始まった。相手、赤馬零児の先行。

 

「私の先行、手札から地獄門の契約書を発動、このカードは自分のスタンバイフェイズに1000ダメージを受ける代わりに自分メインフェイズ時にデッキからDDモンスターを手札に加える。この効果で私はDDナイト・ハウリングを手札に加える。」

 

 地獄門の契約書

 

 永続魔法

 

 地獄門の契約書の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。(1):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「DD」モンスター1体を手札に加える。(2):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

 REIJI

手札5→4→5

 

「なに、なら奴は次のターン、1000ポイントのダメージを受けるのか?!」

 

 みんなが驚いている。俺も驚いている。それもそのはず、権現坂の言うように1000ライフを失うということは初期ライフの4分の1を奪われることと同義。そんなことをすれば自分から負けに行くようなものじゃないか!!

 

「更に魔神王の契約書を発動、効果で私は自分のスタンバイフェイズに1000ダメージを受ける代わりに自分メインフェイズ時に悪魔族モンスターを融合なしで融合召喚できる。私は、手札のDDリリスとDDケルベロスを融合。」

 

「融合なしで融合召喚だと?!」

 

 魔神王の契約書

 

 永続魔法

 

「魔神王の契約書」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分メインフェイズに発動できる。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。「DD」融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。(2):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「現れろ、DDD烈火王テムジン。」

 

 DDD烈火王テムジン

 

 融合・効果モンスター

 

 星6/炎属性/悪魔族/攻2000/守1500

 

「DD」モンスター×2

 

「DDD烈火王テムジン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがモンスターゾーンに存在し、自分フィールドにこのカード以外の「DD」モンスターが特殊召喚された場合、自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。(2):このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合、自分の墓地の「契約書」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

 REIJI 

  手札5→2

 現れたのは攻撃力2000のモンスター、でも、絶対に何かある・・・。下手をすれば下級アタッカーと同じ攻撃力のモンスターだ、その分効果が強いと見て間違いはないだろう。いや、兄さんが使ったモリンフェンは別だが。はたしてあれはモンスター1体をリリースする価値があるのだろうか?

 

「更に私はチューナー・モンスター、DDナイト・ハウリングを召喚、効果でDDリリスを蘇生。更にテムジンの効果でケルベロスも蘇生。」

 

「シンクロ召喚か。」

 

 兄さんがそう口をこぼした。シンクロ召喚?!あのデッキは融合のデッキじゃあないのか?!

 

 DDナイト・ハウリング

 

 チューナー・効果モンスター

 

 星3/闇属性/悪魔族/攻 300/守 600

 

(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は0になり、そのモンスターが破壊された場合に自分は1000ダメージを受ける。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は悪魔族モンスターしか特殊召喚できない。

 

「私はDDナイト・ハウリングとDDリリスでシンクロ召喚、現れろ、DDD疾風王アレキサンダー。更に手札から死者蘇生を発動、こい、DDリリス。リリスの効果でDDナイト・ハウリングを手札に。」

 

 DDD疾風王アレキサンダー

 

 シンクロ・効果モンスター

 

 星7/風属性/悪魔族/攻2500/守2000

 

「DD」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「DDD疾風王アレクサンダー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがモンスターゾーンに存在し、自分フィールドにこのカード以外の「DD」モンスターが召喚・特殊召喚された場合、自分の墓地のレベル4以下の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 DDリリス

 

 効果モンスター

 

 星4/闇属性/悪魔族/攻 100/守2100

 

「DDリリス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、以下の効果から1つを選択して発動できる。●自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。●自分のエクストラデッキから、表側表示の「DD」Pモンスター1体を手札に加える。

 

「今度はレベル4モンスターが2体か。さすがだね、零児君。」

 

 え、そんな、まさか?!

 

「私は、DDリリスとDDケルベロスでオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。現れろ、DDD怒濤王シーザー。私はこれでターンエンド。」

 

 DDD怒濤王シーザー

 

 エクシーズ・効果モンスター

 

ランク4/水属性/悪魔族/攻2400/守1200

 

悪魔族レベル4モンスター×2

 

「DDD怒濤王シーザー」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターンに破壊されたモンスターをバトルフェイズ終了時に、自分の墓地から可能な限り特殊召喚する。次のスタンバイフェイズに自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの数×1000ダメージを受ける。この効果は相手ターンでも発動できる。(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「契約書」カード1枚を手札に加える。

 

 手札2→1

 

 驚いて声が出ない。そんな、1ターンで融合、シンクロ、エクシーズが並ぶなんて。

 だけれど、兄さんはちっとも驚いていない。むしろ、「そんな展開で大丈夫か?」とすら言っている。「大丈夫だ、問題ない。」と赤馬零児は答えていたが、死亡フラグに聞こえたのは何故だろう?

 

「なら俺のターン、ドロー。さあ、満足させてもらおうか!!」

 

兄さんはそう、高らかに宣言した。そうだ、兄さんならきっと何とかしてくれる。頼みます、菊兄さん。父さんの塾を守ってください!

 

side KIKU

 

 さて、カッコつけたはいいものの。どうしよう、事故った・・・。

 

 いや、この世界に来て運命力は上がったと思ってたんだけどなぁ。

 

 それなのに零児君ワンターンスリィDDDとか殺意溢れる某希望集団みたいな展開しやがって・・・。最終回アストラルかお前は!!

 

 それにしても、満足のまの字もねえ糞手札だなぁ。これ、満足デッキなのに。しかたない。

 

「俺はこれでターンエンド。君の番だ、零児君。」

 

 KIKU

  手札5→6

 

 この宣言に皆驚いている。仕方ねえだろぉが!!下手に動くより手札で唯一使えそうなこいつを使った方がいいしな。後は次のドローとアクション魔法に賭けよう。

 

「私のターン。ドローしスタンバイ、この瞬間、地獄門の契約書の効果で1000ダメージを受ける。が、この瞬間手札のDDD反骨王レオニダスを特殊召喚。効果で今ダメージを受けた数値分、ライフを回復。更にこのカードがフィールド上に存在する限り、私は効果ダメージを受けない。」

 

「なに、ライフダメージを受けないだと!!」

 

 DDD反骨王レオニダス

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星7/闇属性/悪魔族/攻2600/守1200

 

【Pスケール:青3/赤3】

(1):自分が効果ダメージを受けた時にこの効果を発動できる。このカードを破壊し、さらにそのターン、LPにダメージを与える効果は、LPを回復する効果になる。

【モンスター効果】

(1):自分が効果ダメージを受けた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、受けたダメージの数値分だけ自分のLPを回復する。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分が受ける効果ダメージは0になる。

 

 REIJI

  手札1→2→1

 

 ふざけるなよ!!なんでデッキトップレオニダスなんだよ!!俺、DDでそんなに回った覚えないぞ!!てか契約踏み倒しやがった。ブラック企業じゃねえか。甘い蜜だけ吸うんじゃねえ。

 

 契約?知らんなぁそんなもの。これはDDにおける格言。

 

「地獄門の契約書の効果を発動し、デッキからDD魔導賢者ケプラーバトル。テムジンで攻撃!」

 

 その宣言と共に俺のライフは大幅に削られる。

 

 KIKU 4000→2000

 

「この瞬間、冥府の使者ゴーズの効果発動。自分が戦闘ダメージを受けた時、このカードを攻撃表示で特殊召喚しその数値分の攻撃力、守備力のカイエントークン1体を特殊召喚する。」

 

 冥府の使者ゴーズ

 

 効果モンスター

 

星7/闇属性/悪魔族/攻2700/守2500

 

自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。●カードの効果によるダメージの場合、受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。

 

 冥府の使者カイエントークン

 星7/光属性/天使族/攻2000/守2000

 

  KIKU

  手札6→5

 

「なら私は守備表示のカイエントークンを破壊し、ターンエンドです。」

 

「俺のターン、ドロー。モンスター1体を伏せてターンエンド。」

 

 KIKU

  手札5→6→5

 

「また何もしない?」

 

「兄さんらしくない・・・。」

 

「え、どうしてなにもしないの?」

 

 うん、いろんなとこから疑問の声が出てるけど、『展開しない』じゃなくて『できない』んだよねぇ・・・。

 

 手札は見事にほぼ真っ赤。あと1枚緑色。罠ばっかだけどいま伏せても意味ないし、初手にソウル・チャージ来てもただの事故なんだよなぁ・・・。 

 

「何故展開しないのか、疑問に思いますがまあいいです。私のターン、このままバトルフェイズ。伏せモンスターを攻撃。」

 

「攻撃されたのはヘルウェイ・パトロール。破壊される。」

 

「なら、カードを1枚伏せてターンエンドです。」

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 このカードは・・・。うん、とりあえず発動しておこうか。

 

「俺はブラック・ホールを発動、フィールドの全てのモンスターを破壊する。」

 

「ならそれにチェーンして契約洗浄を発動。フィールドの契約書2枚を墓地に送り2枚ドロー。更にその枚数分1枚につき1000ライフを回復。」

 

 あ、やっべ。

 

「更に破壊されたテムジンとシーザーの効果を発動。デッキから戦乙女の契約書をサーチ。更に墓地から地獄門の契約書を回収。」

 

 REIJI

  手札1→5

 

 うわぁ、手札が一杯だぁ(現実逃避)。

 

「俺はモンスターを1枚セット。これでターンエンド。」

 

 KIKU

  手札5→4

 

 でも幸い、今の発動の時にどさくさに紛れてアクション魔法をひろうことが出来た。

 でも、なぁ。手札6枚、いや、ドローあわせて7枚のDDかぁ・・・。

 

「私のターン、ドロー。私は地獄門の契約書を発動。対象はDD魔導賢者ガリレイ。」

 

 来たか。『ペンデュラム』。シーザーの効果を発動しなかったからペンデュラム狙いなのは分かってたけど、きついなぁ・・・。

 

「私は、スケール1のDD魔導賢者ガリレイとスケール10のDD魔導賢者ケプラーでペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 遊矢君たちが驚いている、というより遊矢君だけはショックを受けている。まあ、自分だけのアイデンティティを奪われたんだ、無理もないか。

 

「我が魂を揺らす大いなる力よ。この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!DDD死偉王ヘル・アーマゲドン!レオニダス!!」

 

 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×3

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守1000

 

 【Pスケール:青4/赤4】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「DD」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。

 【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合、そのモンスター1体を対象として発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、対象のモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果を発動するターン、このカードは直接攻撃できない。(2):このカードは、このカードを対象としない魔法・罠カードの効果では破壊されない。

 

 ワンターンスリィDDD再び。ドローのほとんどがゲドンさんとかマジふざけんなし。詰め込みを疑うレベルだなぁ。まあ、そんな不正はないだろうけど。てか、戦乙女あるなら1枚召喚せずに握っとけばよかったような?いや、このターンで終わらせる気か。甘いな。

 

「バトルです。1体目で伏せモンスターに攻撃。」

 

「バトルフェイズに入った瞬間、手札からアクション魔法大脱出を発動。バトルフェイズを終了させる。」

 

「く、やはり拾っていたか。ならばこれでターンエンド。」

 

 REIJI

  手札7→1

 

 ペンデュラムスケール

 

  DD魔導賢者ガリレイ

 

  DD魔導賢者ケプラー

 

 フィールド

 

  DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

 

  DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

 

  DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

 

  DDD反骨王レオニダス

 

 魔法罠

 

  地獄門の契約書

 

  伏せ(戦乙女の契約書)

 

 フィールドのほとんどが埋まる。対して俺は何もないフィールド。

  

・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・。

 

 く、クククク。

 

 やばい、面白い。

 

 手札事故でもしなきゃ、この興奮は味わえなかっただろうなぁ。

 

 そうだ、周りがあんまり弱いんですっかり忘れていた。デュエルって、こういういつ負けるかもしれないものなんだよなぁ・・・。てか、不満足さんみたいになってんな、俺。まあ、いいや。

 

 だけど、今回は負けられない。塾がかかってるんだ。だから、そろそろ満足させてくれよ?俺のデッキ。

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 よっしゃ、来た。

 

「俺は手札抹殺を発動!!お互いの手札を全て捨て、その数ドローする!チェーンは?!」

 

 手札抹殺

 

 通常魔法

 

お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。

 

「有りません。1枚捨てて1枚ドロー。」

 

「ならば俺は手札を4枚捨てて4枚ドロー!さて、今度こそ満足させてもらうぜ。」

 

 手札はなぁにこれぇ状態から満足状態まで改善された。これだけは言わせてもらう。

俺たちの満足はこれからだ!!

 

「俺はまず反転召喚、インフェルニティ・ビートル。そして、魔法発動愚かな埋葬。デッキからインフェルニティ・デーモンを墓地に送る。更に、カードを2枚伏せる。」

 

 これで準備完了。

 

「まず、死者蘇生発動、対象はインフェルニティ・デーモン。チェーンは?ないか、なら続ける。デーモンを特殊召喚し成功時効果。インフェルニティ・ガンを手札に加え、発動。更にインフェルニティ・ビートルの効果でこいつをリリースしデッキから2体のビートルを特殊召喚。」

 

 インフェルニティ・ビートル

 

 チューナー

 星2/闇属性/昆虫族/攻1200/守 0

 

自分の手札が0枚の場合、このカードをリリースする事で、デッキから「インフェルニティ・ビートル」を2体まで特殊召喚する。

 

「レベル4インフェルニティ・デーモンにレベル2インフェルニティ・ビートルをチューニング!シンクロ召喚、氷結界の龍ブリューナク!!」

 

 氷結界の龍ブリューナク

 

 シンクロ・効果モンスター

 星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400

 

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

手札を任意の枚数墓地へ捨て、捨てた数だけフィールド上のカードを選択して発動できる。選択したカードを持ち主の手札に戻す。

 

「この瞬間罠発動。戦乙女の契約書、効果で手札のDDリリスを捨ててブリューナクを破壊「アクション魔法透明だ。チェーンは?」ありません・・・。」

 

 戦乙女の契約書

 

 永続罠

 

「戦乙女の契約書」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):手札から「DD」カードまたは「契約書」カードを1枚墓地へ送り、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの悪魔族モンスターの攻撃力は、相手ターンの間1000アップする。(3):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

 透明

 

 アクション魔法

 

(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。このターンそのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果を受けない。

 

 おっしゃ、通った。

 

「伏せていたソウル・チャージの効果でデーモンを蘇生。代わりに1000ライフを失うがこの際どうでもいい。」

 

 KIKU 2000→1000

 

 死ななきゃ安い。これは格言。

 

「デーモン効果でデッキからインフェルニティ・ネクロマンサーを手札に、そしてヘルウェイ・パトロールの効果でそのまま召喚し、ネクロの効果で墓地のビートルを蘇生。」

 

 インフェルニティ・ネクロマンサー

 

 効果モンスター

 

 星3/闇属性/悪魔族/攻0/守2000

 

このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。また、自分の手札が0枚の場合、このカードは以下の効果を得る。1ターンに1度、自分の墓地から「インフェルニティ・ネクロマンサー」以外の「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

 そして、この一連の動作の時に俺のもとをいつの間にか離れていたブリューナクが戻ってきた。ブリューナクの口にはあら不思議、アクション魔法が。

 

 犬かお前は。だがナイスタイミング。撫でてあげたら気持ちよさそうにしている。

 

 うん、犬だこれ。

 

「更にブリューナクが拾ってきたアクション魔法を捨ててブリューナクの効果発動。戦乙女の契約書を手札に戻す。そしてシンクロ召喚、氷結界の龍トリシューラ。効果発動!手札1枚と墓地のケルベロスと地獄門の契約書は除外。」

 

「クッ、アクション魔法ミラーバリアを発d「無駄だ、トリシューラの効果は対象を取らないうえ、破壊ではない、除外だ。」なに?!」

 

 破壊ではない、除外してもらう。

 

 地獄門も手札も凍り付く。まあ、伝説のフィッシャーマン3世よりましだと思ってくれ。KO○MAI、あんなもの作りやがって・・・。青天の霹靂で出せばほぼ無条件で除外出来るだろうが!!今すぐ霹靂か3世は制限にしろ!!今すぐにだ!!

 

「更にインフェルニティガンを墓地に送り、効果でネクロマンサーとデーモン蘇生でデーモン効果でインフェルニティ・バリアをサーチ。そしてブリューナク効果発動、バリアとアクション魔法を手札から捨ててアーマゲドン二体を手札に戻す。シンクロ召喚トリシューラ、効果で手札1枚だが、さっき戻したアーマゲドン1枚のみ。なのでそれと墓地のナイト・ハウリング、フィールドのアーマゲドンを除外する。ブリュの効果を発動。さらにもう一度拾ったアクション魔法を捨てて効果発動しブリュ自身を手札に戻す。」

なんで戻したんだろうという声があちこちから聞こえる。動揺していないのは素良君と零児君だけ。

 

「更に伏せていたZERO・MAXを発動しネクロ蘇生効果でデーモン蘇生さらに効果でガンサーチ。ガン発動からの墓地送りでビートル蘇生し、シンクロ召喚トリシューラ。効果で墓地のリリスとフィールドのレオニダスも除外。このターン、ソウル・チャージの効果で攻撃できないのでエンドフェイズに入る。さあ、君のターンだ。」

 

 アクション魔法って便利だなぁ(コストとして)。

 

 インフェルニティガン

 

 永続魔法

 

1ターンに1度、手札から「インフェルニティ」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事ができる。また、自分の手札が0枚の場合、フィールド上のこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地の「インフェルニティ」と名のついたモンスターを2体まで選択して特殊召喚する。

 

KIKU

 

 フィールド

 

  氷結界の龍トリシューラ

 

  氷結界の龍トリシューラ

 

  氷結界の龍トリシューラ

 

 伏せ

 

  無し

 

REIJI

 

 ペンデュラムスケール

 

  DD魔道賢者ケプラー

 

  DD魔道賢者ガリレイ

 

 フィールド

 

  無し

 

 伏せ

 

  無し 

  

 やられたらやり返す。倍返しだッ!というわけでワンターンスリィトリシューラやってみたんだが、酷いな、コレ。地獄門とペンデュラムカードは残ってるからドローしだいでワンチャンあるかないかってところかな?いや、無理か。ブリュ潰さなきゃいけない上に攻撃力2800を召喚しないと次でやられるからなぁ。全盛期ガン3積みのインフェルニティが環境の時はこれがデフォだったんだよなぁ。ガン3積みエクシーズでも良かったんだが、やっぱこっちの方がえげつない。まあ、そのせいでさっき事故ったんだが。手札がゴーズビートルインフェルニティ・ブレイク3枚とかマジふざけんなし。最初のドローもソウチャ。ゴーズ抜いときゃ良かった。まあ、ヘルウェイ来たし何とか持ちこたえたし、ポジティブに考えよう。

 

 さて、零児君はどうするのかな?若干FXで有り金全部溶かした人に見えなくもない顔してるけど。悔しいでしょうねぇ。

 

「私のターン、ドロー。」

 

 お、ちょっと希望の出てきた顔になった。

 

「私のスタンバイフェイズ「大変です、社長!!」どうした、中島。」

 

 ああ、たしか原作でも邪魔が入ったんだよなぁ。何やら深刻な顔で話している。

「すみません、この勝負、私のまけで「行っておいで、零児君。」え?」

 

「今、何か大変なことが起こったんだろう?秘書の磯野・・・じゃない中島君があれだけ焦っている。ということは何か深刻な事態が起こったんだろう。それに今回は君がどれだけやってももう勝てないだろうしねぇ。」

 

「いえ、今私が引いたのはDDD制覇王カイゼル。ペンデュラム召喚さえすれば、そのトリシューラ2体とブリューナクは戦闘破壊できます。」

 

 遊戯王に解説は死亡フラグ。

 

「果たしてそうかな?」

 

「なに?」

 

「自分のペンデュラムスケールをよく見ろ。」

 

「なに?これは?!」

 

 DDのペンデュラムスケールが2と5になっている。そうだった、アニメでは確か最初だけペンデュラムスケール下がりが違うんだったな。まあ、OCGでも3と8になるから召喚不可能だっただろうけど。

 

「さあ、フィールドには使えないペンデュラムスケールのみ、手札は最上級モンスター。アクション魔法で乗り切ってもいいが、逆転は困難だろう。この状況で何が出来ると?」

 

「・・・何が望みですか?」

 

 お、こっちの要求を聞いてくれるのか。あ、脅しじゃないよ?取引だからね?そこのところ間違えないように。

 

「なら、今後遊勝塾、いや、榊遊矢及びその周辺の人物に対する不干渉と、試作品のペンデュラムカードの開発に成功した場合、その1部を遊勝塾に提供すること。」

 

「それだけで構わないので?」

 

 零児君が聞いてくるが全く問題はない。

 

「構わないよ。1つ目は彼の安全。2つ目としては、ペンデュラムをジュニアの子たちに使わせてあげたいだけだし、それは今後遊勝塾を売り出す目玉になりえる。こちらにとってはメリットしかない。そちらとしては、今回の半強制的な吸収合併を世間に公表されずに済む。今回の問題はこちらから営業妨害で訴えてもおかしくないだろう?」

 

「そうですね、ならその条件で。開発中ですが、また後ほど開発したペンデュラムカードは送らせていただきます。いくぞ、中島。」

 

「ハッ!」

 

 はあ、何とかなった・・・。事故ったときは本気で焦ったわ・・・。

 

 遊矢君たちはこっちを見ている。何人かはまだ若干呆けているが、とりあえずこの言葉をかけておこう。

 

 

 

「ガッチャ、(後半は)圧倒的なデュエルだったぜ。」

 

 




インフェルニティをほとんど回したことのない作者には書くのがきつかった・・・。

非力な私を許してくれ・・・。


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第4話

前回投稿したデッキレシピですが、利用規約に引っかかるらしいので、活動報告の方に移しました。

申し訳ございません。


 side YUZU

 

 遊矢の様子が可笑しい。いや、態度がおかしかったのは自分もなんだけれど。

 

 それでも、今の遊矢はなんだか自信を失っているような気さえした。いや、もしかしたら自分自身すら見失っているのかも。兄さんはアイデンティティが奪われたショックだと言っていたから、多分あれが原因なんだろう。

 

 あの青年、赤馬零児が使ったペンデュラム召喚。融合、シンクロ、エクシーズを1ターンで行い、更に最後に行った召喚方法。

 

 今までそれを使えるのは遊矢だけだった。遊矢はその事を嬉しく思っていたし、何より、自分のお父さん、榊遊勝や私の兄、菊兄さんに追いつくことが出来るという目標が見えてきたところだった。

 

 だけれどもその、自分だけが使えるという遊矢のアイデンティティ、いや、自信そのものが壊れてしまった。

 

 私は正直想定していなかったけれども、お父さんや菊兄さんは想定内だったみたい。それでも、今回の生産化ははや過ぎだとは言っていたが。

 

 でも正直今の遊矢は見ていられない。昔に、榊遊勝がいなくなった時に戻ってしまったようで。

 

 今の遊矢はゴーグルをかけて、皆の目を見ようとしない。そんな遊矢にお父さんが叱責を飛ばしている。だけれども遊矢の顔色は優れない。

 

 そんな中、お父さんが叫んだ。

 

「遊矢、今すぐ俺と、デュエルしろ!!お前のそのすぐ後ろ向きになる性格、俺の熱血指導で叩き直してやる!!」

 

 何を考えてそんなことを言ったのだろう?負けたのは私だ、兄さんや遊矢が勝って、この塾は守られた。権現坂も引き分けにまで持ち込んでくれた。素良なら、もっとうまくやっただろう。

 

「ちょっと、何言ってるのお父さん?!今回負けたのは私でしょ?!」

 

 だけれど、権現坂がそれを止めた。

 

「口出し無用。塾長にも考えがあるのだろう。」

 

「それは・・・。」

 

 だけれど、お父さんは遊矢を無理やりにアクションフィールドに連れ出そうとする。その瞬間、それを見ていた、今まで静かに事の成り行きを見ていた兄さんがこう切り出した。

 

「待ってください、父さん。」

 

「なんだ!悪いが今はあとにし「そのデュエル、俺がやります。」なに?!」

 

「「「え?」」」

 

 アユちゃん達も驚いている。兄さんまで何を考えているの?!止めてよ!!遊矢は悪くないじゃない!!

 

「父さんの考えは分かっています。それに、確かにその役回りは榊遊勝の弟子であり、友人だった父さんの方が向いているのかもしれません。でも、やらせてくれませんか?仮にも遊矢の兄貴分として、遊矢君へのデュエリストの先輩として。」

 

「・・・分かった。」

 

 父さん?

 

「権現坂君、一緒にアクションフィールドの準備をしよう。」

 

「分かりました。」

 

「あ、アユちゃん達、遅くなるかもしれないから先に帰ってくれても「「「イヤ!!」」・・・分かった、後で送りに行くよ。親御さんに連絡してくる。すまないが権現坂君、1人で準備をお願いすることになるが・・・。」

 

「分かりました、この権現坂、確かに頼まれました。」

 

「頼んだよ。」

 

「はい。」

 

「ごめんね、権ちゃん。」

 

「いえ、構いません。それよりもう中学生ですからその呼び名は・・・。」

 

「え~。権ちゃんは権ちゃんだよ。」

 

「分かりました・・・。」

 

 ちょちょちょ、ちょっと待って、皆本気?!そうだ、とりあえず遊矢のお母さんに連絡を・・・。

 

「ちょっと待ってよ、菊兄さん!俺まだやるなんて一言も・・・。」

 

「悪いけど、拒否権はないよ。俺も遊矢君のその性格は直すべきだと思っているしね。」

 

「だけど・・・。」

 

 でも、次の兄さんの言葉は、遊矢をその気にさせるには十分だった。

 

「逃げるのか?世間で言われている榊遊勝みたいに。」

 

「父さんは逃げてなんかいない!!」

 

「なら、息子のお前が逃げるんじゃない!そんなんでプロに、皆を笑顔にするデュエルなんて出来るわけないだろ!!」

 

 その言葉は、あたりに響いた。いや、きっと遊矢にも響いたのだろう。黙ってしまった。

 

「始めて、権ちゃん。」

「は、はい。アクションフィールド、セット。」

 

 アクションフィールド スタンバイ

 

 たったそれだけの機械音声、いつもなら歓声で掻き消えるその声が、あたりに響く。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストが。」

 

「モンスターと共に地をはり宙を舞い。」

 

「フィールド内を駆け巡る。」

 

「見よ、これがデュエルの最終進化系。」

 

「アクショーン。」

 

「「デュエル!!」」

 

 先行は遊矢。

 

「俺のターン、俺は・・・!」

 

 どうしたのだろう、手が止まっている。

 

「EM ディスカバー・ヒッポを召喚。カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 EM ディスカバー・ヒッポ(アニメ効果)

 

 効果モンスター

 

 星3/地属性/獣族/攻 800/守 800

 

 このカードはアドバンス召喚する際に2体分のリリースとして扱う。

 

 YUYA

  手札5→3

 

 手札にペンデュラムカードが来なかったのだろうか?最近の遊矢にしては随分と消極的だ。いや、あれではまるで。

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 KIKU

  5→6

 

 榊遊勝がいなくなった時の遊矢に戻ったみたいだ。それを兄さんも感じていたのだろう。あの人は、私や遊矢、権現坂の試合があれば、その映像をどこからともなく集めて全部見ていたような人だった。遊矢のお父さんがいなくなってからは、私と一緒に遊矢を外に連れ出して、元気づけようとしていた。私たちのことを、いつも気にしているようだった。気付かない筈がない。

 

「遊矢君、ペンデュラム召喚を赤馬零児に使われてどう思った?」

 

「え・・・?」

 

 遊矢が、ハトが豆鉄砲を食らったような顔になりながらも答える。

 

「・・・正直、吃驚した。それから、なんだか裏切られたような気分になった。」

 

「ペンデュラムがお前だけのものではなくなったから。」

 

 遊矢がうなずく。

 

「なら聞こう。あの榊遊勝のデュエルが誰にも真似されなかったと思うか?」

 

「それは・・・。」

 

 遊矢が返答に困る。

 

「そうじゃないよな?皆が皆を楽しませれる、今のアクションデュエルは、あの榊遊勝から始まった。当然、真似される。面白いものや凄いものは、そうやって伝染していく。」

 

 遊矢だけじゃない。皆聞き入っていた。

 

「でも、皆真似して終わりじゃない。アレンジして、やがてそれは自分のものになっていく。だから、遊矢君。」

 

 そう言って、兄さんは大きく息を吸い込んでこう言った。

 

「真似されたぐらいでそんなにうなだれてたら、何もできない。君だけの何かは、ペンデュラムなんかじゃない。それに榊遊勝はペンデュラムなんかなくたって、皆を笑顔にできたじゃないか。いつか皆がペンデュラムを使えるような時代が来たとき、お前が皆を引っ張って、笑顔のデュエルを作り出せ!」

 

 その言葉を聞いて、遊矢の顔に笑顔が戻った。その雰囲気は、最近の、私たちの知っている元気な遊矢で。

 

「いい顔になったじゃないか。じゃあ、デュエルを再開しようか。まず、俺は強欲で謙虚な壺を発動。出たカードは魂の転生、スキルドレイン、サイクロン。俺は魂の転生を手札に加える。俺はクリフォート・アーカイブを通常召喚。本来、このカードはレベル6でだが、レベル4、攻撃力1800のモンスターとして妥協召喚できる。更に機殻の生贄を発動。このカードの効果で、アーカイブの攻撃力は300ポイントアップし戦闘では破壊されない。」

 

 強欲で謙虚な壺

 

 通常魔法

 

「強欲で謙虚な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。(1):自分のデッキの上からカードを3枚めくり、その中から1枚を選んで手札に加え、その後残りのカードをデッキに戻す。

 

 クリフォート・アーカイブ

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星6/地属性/機械族/攻2400/守1000

 

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。この効果は無効化されない。(2):自分フィールドの「クリフォート」モンスターの攻撃力は300アップする。

【モンスター効果】

(1):このカードはリリースなしで召喚できる。(2):特殊召喚またはリリースなしで召喚したこのカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。(3):通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。(4):このカードがリリースされた場合、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを持ち主の手札に戻す。

 

 機殻の生贄

 

 装備魔法

 

「クリフォート」モンスターのみに装備可能。(1):装備モンスターの攻撃力は300アップし、戦闘では破壊されない。(2):「クリフォート」モンスターをアドバンス召喚する場合、装備モンスターは2体分のリリースにできる。(3):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「クリフォート」モンスター1体を手札に加える。

 

 KIKU

  手札6→4 

 

「バトルだ。EM ディスカバーヒッポに攻撃。」

 

「アクション魔法回避!!」

 

「残念、避けられた。だけどその調子その調子。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 KIKU

  手札4→3

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 YUYA

  手札3→4

 

 遊矢に元気が戻ってきた。

 

「レディースアンドジェントルマン!!これより、本家本元、榊遊勝直伝の、エンタメデュエルのお時間です!!」

 

「来た、ペンデュラム召喚!!」

 

「やっちゃってーーー!!」

 

「いけーーー、遊矢兄ちゃん!!」

 

 みんなが楽しんでいる。頑張れ、遊矢。

 

「そうだ、菊の言うとおりだ。頑張りな、遊矢!」

 

 いつの間にか、遊矢のお母さんも来ている。いつから来ていたんだろう?

 

「私は、スケール1の星読みの魔術師と、スケール8の時読みの魔術師でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 星読みの魔術師(アニメ効果)

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星5/闇属性/魔法使い族/攻1200/守2400

 

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分のPモンスターが戦闘を行う時、相手の発動した魔法カードの発動を無効にし、そのカードを元の位置に戻す。このターン、そのカードは発動できない。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、自分フィールドのPモンスターが相手の効果で自分フィールドを離れた時に発動できる。その同名モンスターを手札、エクストラデッキ、デッキ、墓地から特殊召喚する。

 

 時読みの魔術師(アニメ効果)

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星3/闇属性/魔法使い族/攻1200/守 600

 

【Pスケール:青8/赤8】

自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこのカードを発動できる。(1):自分のPモンスターが戦闘を行う場合、相手が発動した罠カードの発動を無効にし、そのカードを元の位置に戻す。このターン、そのカードは発動できない。

【モンスター効果】

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、1ターンに1度、自分のPゾーンのカードは相手の効果では破壊されない。

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!!」

 

「揺れろ、魂のペンデュラム、天空に描け光のアーク!!」

 

「ペンデュラム召喚、現れろ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!! EM ハンマーマンモ!!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(アニメ効果)

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

 

【Pスケール:青4/赤4】

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。(2):自分エンドフェイズに発動できる。このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。

【モンスター効果】

(1):このカードがレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

 

 EM ハンマーマンモ

 

 効果モンスター

 

星6/地属性/獣族/攻2600/守1800

 

(1):自分フィールドに「EM」カードが2枚以上存在する場合、このカードはリリースなしで召喚できる。(2):自分フィールドに他の「EM」カードが存在しない場合、このカードは攻撃できない。(3):このカードの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールドの魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す。

 

 YUYA

  手札4→0

 

「バトルだ!!ハンマーマンモで攻撃宣言時、相手フィールドの魔法、罠カードを全て手札に戻す!!」

 

「罠発動、魂の転身。効果でアーカイブをリリースし、2枚ドロー。そして墓地に行った機殻の生贄の効果でクリフォート・ツールを手札に加える。」

 

 魂の転身 

 

 通常罠

 

「魂の転身」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。(1):自分フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在しない場合、自分フィールドの通常召喚された表側表示のレベル4モンスター1体をリリースして発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

 KIKU

  3→6

 

「だけどこれで菊兄さんのフィールドはがら空き!!」

 

 私も、つい嬉しくなって叫んでしまう。

 

「いっけー、遊矢兄ちゃん!!」

 

 アユちゃんが叫ぶ。

 

「いけ!EM ハンマーマンモ!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!ダイレクトアタックだ!!」

 

 この攻撃が通れば遊矢の勝ち!!ついに遊矢があの人に勝っちゃうの?!

 

 攻撃の余波で兄さんの姿が見えなくなる。どうなったのだろう?皆見入っている。

 

 そしてついに、砂煙の中から兄さんの姿が見えた。

 

「俺は、アクション魔法、回避を発動させてもらった。これによりハンマーマンモの攻撃は不発に終わり、ダメージはオッドアイズのみ。惜しかったな、遊矢。」

 

 KIKU 4000→1500

 

「く、くそ・・・。ヒッポを守備にしてターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 KIKU

  手札6→7

 

「遊矢君、強くなったな。」

 

「え?」

 

「以前の君なら、俺にアクション魔法を発動させることなく負けていた。俺がそこまでアクション魔法を信頼していないのもあるが、それでも、今まで俺は君に対してアクション魔法を発動させることはなかった。だけど今回、俺はこれを使った。使わなければ負けていたかも知れない。」

 

 遊矢が真剣な顔で聞いている。

 

「強くなったな、遊矢。」

 

 あの人が初めて、遊矢を君付けなしで呼んだ。あの人は気付いてはいないかもしれないが、君付けしないで呼ぶ人はほとんどいない。あの人に認められた、その言葉を聞いた瞬間、遊矢が少し泣きそうになっているのに私は気付いた。

 

「だけど、まだ君に負けるわけにはいかない。俺はクリフォート・ツールをペンデュラムスケールにセッティング。」

 

 クリフォート・ツール

 

 ペンデュラム・通常モンスター

 

 星5/地属性/機械族/攻1000/守2800

 

【Pスケール:青9/赤9】

(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。この効果は無効化されない。(2):1ターンに1度、800LPを払って発動できる。デッキから「クリフォート・ツール」以外の「クリフォート」カード1枚を手札に加える。

【モンスター情報】

システムをレプリカモードで起動する準備をしています...

C:¥sophia¥sefiroth.exe

実行中にエラーが発生しました。次の不明な発行元からのプログラムを実行しようとしています。C:¥tierra¥qliphoth.exe の実行を許可しますか?

<Y/N>...[Y]システムを自律モードで起動します。

 

 ・・・。え?

 

「「「ペンデュラムモンスター?!」」」

 

「ど、どうして兄さんがペンデュラムモンスターを?!」

 

「後で答えてやる。だが今はデュエルの時間だ。俺はクリフォート・ツールのペンデュラム効果を起動!ライフを800支払い、クリフォートカード1枚を手札に加える。俺が加えるのはクリフォート・アセンブラ。そしてアセンブラもペンデュラムスケールにセッティング!」

 

 クリフォート・アセンブラ

 

 ペンデュラム・通常モンスター

 

 星5/地属性/機械族/攻2400/守1000

 

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。この効果は無効化されない。(2):自分がアドバンス召喚に成功したターンのエンドフェイズに発動できる。このターン自分がアドバンス召喚のためにリリースした「クリフォート」モンスターの数だけ、自分はデッキからドローする。

【モンスター情報】

qliphoth.exe の 0x1i-666 でハンドルされていない例外を確認。

場所 0x00-000 に書き込み中にアクセス違反が発生しました。

このエラーを無視し、続行しますか? <Y/N>...[ ]

===CARNAGE===

たッgなnトiのoモdる知rヲu悪o善yりナnにoウよyノrりgトnひaノれsワiれワdはo人Gヨ見

イdなoレo知lもfカるeキr生iにf久永gベn食iてrッb取もoラtか木tノn命aベw伸ヲd手nはa彼

 

 KIKU 1500→700

  手札7→6

 

 表示されたスケールは1と9。

 

「これでレベル2から8のモンスターが同時に召喚可能。」

 

「プログラムsophia起動!!揺れろ、クリファのペンデュラム!!現れろ、邪悪なる機械達よ!!」

 

「ペンデュラム召喚!!手札より、クリフォート・アーカイブ!クリフォート・ゲノム!エクストラデッキより、クリフォート・アーカイブ!但し、特殊召喚されたこいつらは攻撃力1800にレベル4となる。」

 

 KIKU 

手札6→4

 

 現れたのは先ほど倒したモンスターとそれに類似したモンスター。でも、そんなモンスターを並べても遊矢のオッドアイズやハンマーマンモには届かない!

 

「遊矢、ペンデュラム召喚を俺も使えると知ってショックか?」

 

 遊矢が首を横に振った。

 

「いや、もうそんなことないよ。むしろワクワクしてきた!」

 

「そうか。だが、勝負は、プロの世界は非情だぞ?おれはこいつ等3体をリリース。」

 

 ええ?!リリースしなくてもペンデュラム召喚のときに召喚すればいいんじゃ・・?

 

「こいつは通常召喚しかできなくてね。だが、強いぞ?いでよ、アポクリフォート・キラー!!」

 

 アポクリフォート・キラー

 

 効果モンスター

 

 星10/地属性/機械族/攻3000/守2600

 

このカードは特殊召喚できず、自分フィールドの「クリフォート」モンスター3体をリリースした場合のみ通常召喚できる。(1):通常召喚したこのカードは魔法・罠カードの効果を受けず、このカードのレベルよりも元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果も受けない。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。(3):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。相手は自身の手札・フィールドのモンスター1体を墓地へ送らなければならない。

 

 現れたのは攻撃力3000のモンスター。伝説の青眼の白龍と同じ攻撃力。

 

「リリースされたアーカイブ2体とゲノムの効果を発動。ゲノムの効果で時読みの魔術師を破壊、アーカイブの効果でオッドアイズと、ハンマーマンモはもう一度出てこられたら困るな、ディスカバー・ヒッポにしておこうか、そいつらを選択し、手札に戻す。」

 

 クリフォート・ゲノム

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星6/地属性/機械族/攻2400/守1000

 

【Pスケール:青9/赤9】

(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。この効果は無効化されない。(2):相手フィールドのモンスターの攻撃力は300ダウンする。

【モンスター効果】

(1):このカードはリリースなしで召喚できる。(2):特殊召喚またはリリースなしで召喚したこのカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。(3):通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。(4):このカードがリリースされた場合、フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

「え」

 

 YUYA

  手札0→2

 

 遊矢がすっとぼけた様な顔になり、同時にオッドアイズとヒッポ、時読みの魔術師の姿が消える。そこで遊矢がハッとする。

 

「時読みの魔術師は破壊されたとき、エクストラデッキに行く。」

 

「なら次はアポクリフォート・キラーの効果発動。相手は自身のフィールド、手札からモンスターを1体墓地に送る!」

 

「俺はディスカバー・ヒッポを選択し墓地へ・・・。」

 

 YUYA

  手札2→1

 

「バトルだ、ハンマーマンモに攻撃!!」

 

 ハンマーマンモは兄さんのモンスターのレーザー光線によって倒される。

 あ、フトシ君達男の子やお父さんは目を光らせている。か、かっこいいのかな?あれ。遊矢も若干興味深そうだし。

 

「男の子はドラゴンやロボット、レーザービームなんかには興味が尽きないんだよ、柚子。」

 

 兄に考えを見透かされてた。じゃあ、誰よりも目を輝かせている遊矢のお母さんは何なんだろう?まさかおとk・・・。

 

 ギロリッ!!

 

 睨まれた、怖い。失礼だったし考えるのやめよう。

 

「ははは、カードを1枚伏せてエンドフェイズ。アセンブラの効果でこのターンアドバンス召喚に使用したクリフォートの数だけドローする。3枚ドロー。」

 

 KIKU

  手札4→3→6

 

 ぶっ壊れだった、あのペンデュラムモンスター。

 

「一応、デメリットはあるよ?このカード達がペンデュラムゾーンにいる限りクリフォート以外は特殊召喚できないっていう。」

 

 それはほとんどデメリットになっていないと思う。今までクリフォートと名の付いたモンスターしか出ていないし。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 遊矢の、このドローでゲームの勝敗が決まる。

 

「俺は、シャッフル・リボーンを発動!効果でハンマーマンモを特殊召喚し、デッキから1枚ドロー!ドローしたのはハーピィの羽根箒!発動して魔法と罠を全て破壊!」

 

 YUYA

  手札2→1

 

 兄さんのペンデュラムカードと伏せカードが破壊された。伏せカードはミラーフォース。

 

「破壊されたペンデュラムモンスターはエクストラデッキに行く。だが、アポクリフォート・キラーの効果でハンマーマンモの攻撃力は500下がっている。攻撃しても倒せないぞ?」

 

  シャッフル・リボーン 

 

  通常魔法(アニメオリカ)

 

自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動出来る。そのモンスターを特殊召喚する。 さらに、自分フィールドのカード1枚をデッキに戻し、自分はデッキから1枚ドローする。このカードの効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、このターン終了時にこのカードの効果でドローしたカードと共にゲームから除外される。

 

「バトルだ、アポクリフォート・キラーにハンマーマンモで攻撃。この瞬間、アクション魔法、ハイダイブ!」

 

 ハイダイブ

 

 アクション魔法

 

フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。 そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。

 

「これにより、ハンマーマンモの攻撃力は3100だ。」

 

「これなら!!」

 

「あのモンスターを倒せる!!」

 

 アユちゃん達の声援もあって遊矢のやる気は十分。

 

「いけ、ハンマーマンモ!」

 

 KIKU

  700→600

 

「メイン2、オッドアイズをペンデュラムゾーンにセッティング。そしてエンド時に効果発動!!効果によりデッキからEM ペンデュラムマジシャンを手札に加える。更にハンマーマンモはシャッフル・リボーンの効果で除外される。ターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー。俺は・・・。クリフォート・ゲノムを妥協召喚。機殻の生贄を発動し、バトルフェイズ、ゲノムで攻撃。」

 

 KIKU

  手札6→7→5

 

「アクション魔法ゼロ・ペナルティ!」

 

 ゼロ・ペナルティ

 

 アクション魔法

 

(1):相手フィールドのモンスター1体を対象として発動出来る。その相手モンスターの攻撃力を0にする。

 

「ダメージは通らないか。カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 KIKU

  手札5→3

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 その瞬間、遊矢が笑った。

 

「来た!俺は手札抹殺を発動!!互いに手札を全て捨て、その枚数分ドロー!!」

 

「チッ、出し惜しみせず伏せておけば良かったか。手札3枚を捨てる。3枚ドロー。」

 

「俺は1枚捨ててドロー!そして金満な壺を発動!!墓地のペンデュラムマジシャン、エクストラデッキの時読み、オッドアイズをデッキに戻し2枚ドロー!!・・・このカードは!!」

 

 金満な壺

 

 通常魔法

 

「金満な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はP召喚以外の特殊召喚ができない。(1):自分のエクストラデッキの表側表示のPモンスター及び自分の墓地のPモンスターを合計3体選び、デッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする

 

 どうしたんだろう?

 

「俺は今引いた時読みでペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

「これで、レベル2から7のモンスターが再度召喚可能!!揺れろ、魂のペンデュラム!!オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!!」

 

 YUYA

  手札2→0

 

 凄い!!戻したカードを2枚とももう1度引くなんて!!

 

 ・・・兄さんは若干引いている気がする。まあ、あの引きは・・・。

 

「バトルだ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!「バトルフェイズに入る前にこのカードを発動させてもらう。」なに!!」

 

「俺は速攻魔法、リミッター解除を発動させてもらう。時読みの効果はバトルフェイズのみだからな、無効に出来ない。効果でゲノムの攻撃力は倍になり4200となった。オッドアイズでは突破できないぜ?」

 

 リミッター解除

 

 速攻魔法

 

このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。このターンのエンドフェイズ時、この効果を受けたモンスターを全て破壊する。

 

「く・・・、ターンエンd「エンド宣言時に発動、神秘の中華鍋」

 

 そのカードはライフ回復の・・・!

 

「これにより、4200のライフを回復し、墓地に行った機殻の生贄の効果でデッキからクリフォート・ツールを手札に。」

 

 KIKU 600→4800

  手札3→4

 

「そして、俺のターン、ドロー。さあ、次は俺の番だな。プロのデュエルを見せてやる。」

 

 兄さんがそう宣言した後、もう1度ペンデュラムスケールが張られる。それの片方は先ほど加えたペンデュラムモンスター、クリフォート・ツール。そしてもう片方は・・・。

 

「EM トランポリンクス?!」

 

 遊矢が叫ぶ。

 

「そうだ、あの時もらったカードだ。ある日いきなりこのカードがデッキと共にペンデュラムカードになってね。あとで確認したら他にもいくつか俺の持っているカードはペンデュラムカードになっていた。」

 

 それってもしかしてあの時に・・・。

 

 KIKU

  手札4→5→3

 

「さあ、行こうか。まずはツールのペンデュラム効果でデッキから・・・、そうだな、クリフォート・シェルを手札に加える。

 そして、ペンデュラム召喚、揺れろ、クリファのペンデュラム!!ペンデュラム召喚!!

 エクストラデッキから、クリフォート・アセンブラ、ツール、ゲノム2体を特殊召喚!!」

 

 KIKU 4800→4000

  手札3→4

 

 現れたのは、さっき破壊されたペンデュラムゾーンにあったモンスターと、生贄にされたとき魔法罠を破壊するモンスター2体。

 

「そして、EM トランポリンクスの効果を発動!!効果により、ペンデュラムゾーンのツールを手札に戻す。そして、俺はツールとアセンブラでエクシーズ召喚!!今こそ降臨せよ、機械の龍!!サイバー・ドラゴン・ノヴァ!!」

 

 EM トランポリンクス

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

 星2/地属性/獣族/攻 300/守 300

 

【Pスケール:青4/赤4】

「EMトランポリンクス」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分がP召喚に成功した時、自分または相手のPゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):このカードが召喚に成功した時、自分または相手のPゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。

 

 サイバー・ドラゴン・ノヴァ

 

 エクシーズ・効果モンスター

 

 ランク5/光属性/機械族/攻2100/守1600

 

 機械族レベル5モンスター×2

 

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。自分の墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。また、1ターンに1度、自分の手札・フィールド上の「サイバー・ドラゴン」1体を除外して発動できる。このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、2100ポイントアップする。この効果は相手ターンでも発動できる。このカードが相手の効果によって墓地へ送られた場合、機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。

 

 KIKU

  手札4→5

 

 え、どうして?!

 

「どうしてクリフォートモンスター以外のモンスターが召喚出来るんだ?」 

 

 フトシ君が私も疑問に思ったことを口に出す。

 

「よく見て、あの人はトランポリンクスの効果でツールを手札に戻したでしょ?」

 

「あ、ほんとだ!!」

 

 アユちゃんが私も疑問に思ったことの正解を口にする。小学生に負けた・・・。

 

「更に俺はノヴァをエクシーズチェンジ!!機械の龍よ、今こそその真の姿を現せ!!制圧せよ、サイバー・ドラゴン・インフィニティ!!」

 

 サイバー・ドラゴン・インフィニティ

 

 エクシーズ・効果モンスター

 

 ランク6/光属性/機械族/攻2100/守1600

 

 機械族・光属性レベル6モンスター×3

 

「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」は1ターンに1度、自分フィールドの「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」の上に重ねてX召喚する事もできる。(1):このカードの攻撃力は、このカードのX素材の数×200アップする。(2):1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。(3):1ターンに1度、カードの効果が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その発動を無効にし破壊する。

 

 エクシーズチェンジ。LDSの志島北斗も使っていた召喚法!

 

「更に俺はゲノム2体を生贄に、クリフォート・シェルをアドバンス召喚!!ゲノムの効果で星読み、時読みの両方を破壊する!!」

 

 KIKU

  手札5→4

 

「破壊された星読み、時読みはエクストラデッキに行く。」

 

「更に更に!!インフィニティの効果発動!!1ターンに1度、フィールド上の攻撃表示のモンスターを自身のオーバーレイユニットに変える!!俺はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを選択!!」

 

「アクション魔法透明を発動!!」

 

「無駄だ!!インフィニティのさらなる効果!!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手の魔法、罠、効果モンスターの効果を無効にする!!」

 

「何!!」

 

「透明は不発!!よってオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンはインフィニティのエクシーズ素材となる!」

 

 サイバー・ドラゴン・インフィニティにオッドアイズが吸われていく。

 

「オッドアイズ!!」

 

「バトルだ!!クリフォート・シェルでダイレクトアタック!!」

 

「アクション魔法回避!!」

 

 これでこのターンは・・・、と思ったところに兄さんは言った。無慈悲に。

「残念だがシェルは2回攻撃が出来る!いけ、クリフォート・シェル!!サイバードラゴン・インフィニティ!!」

 

 クリフォート・シェル

 

 ペンデュラム・効果モンスター

 

星8/地属性/機械族/攻2800/守1000

 

【Pスケール:青9/赤9】

(1):自分は「クリフォート」モンスターしか特殊召喚できない。

この効果は無効化されない。

(2):相手フィールドのモンスターの攻撃力は300ダウンする。

【モンスター効果】

(1):このカードはリリースなしで召喚できる。(2):特殊召喚またはリリースなしで召喚したこのカードのレベルは4になり、元々の攻撃力は1800になる。(3):通常召喚したこのカードは、このカードのレベルよりも元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果を受けない。(4):「クリフォート」モンスターをリリースして表側表示でアドバンス召喚に成功した場合、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃でき、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

 現実は非情である・・。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

 YUYA 4000→0

 

 ライフが0になり、遊矢の負けが表示される。

 

 でも、私には、遊矢の顔が、どことなく嬉しそうに感じた。

 

「目が覚めたかい?」

 

 遊矢のお母さんが聞いた。

 

「ああ、もっと頑張らなくちゃな。」

 

 遊矢が答えた。

 

「頑張りな、あんたならできるさ。私と、榊遊勝の自慢の息子なんだから。」

 

「そして、俺の弟分なんだ、君なら絶対出来るさ。」

 

「熱血だーーー!遊矢ーーー!!」

 

「この漢、権現坂も期待しているぞ!!」

 

 みんなが口々に応援してくる。

 

「頑張ろうね、遊矢。」

「ああ、絶対に父さんや菊兄さんみたいに、強くなってやる。」

 

 

 

「ところで・・・。」

 

「え?」

 

「君なら、本当の義兄弟になっても構わないからね?」

 

「?」

 

 ちょ、ちょっと。

 

「何言ってるの兄さん?!」

 

 思わずハリセンで兄さんの後頭部を叩く。ゴキュという音が聞こえたが多分大丈夫だろう。

 

「? 菊兄さんが言ったのはどういう意味なんだ?柚子。」

 

「ゆ、遊矢は気にしないで!!いい?!」

 

「わ、分かったからハリセンを振り回すな!!あと、菊兄さん大丈夫か?」

 

 知らない。自業自得だ。たとえ気絶しようが構うものか。

 

 ほんとにこの人は、爆弾を少しずつ投下していくのはやめてほしい・・・。

 

 それさえなければ完璧なのに・・・。

 




「ン熱血指導だ!!」
という空耳が聞こえた。本気で熱血デッキにしようか悩んだ。

まあ、結果は
「うれしいよ遊矢クゥン!!相性のいいデッキ相手にここまでダメージを喰らうとは・・・!」(喰種風)
と、月山風になりました。中の人つながりで。

いつか主人公にトレビアン!!って言わせたい。


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第5話

生存報告代わりの投稿。
明日からテストラッシュなので投稿遅くなります。
それはそうとファイアーエムブレムifが面白くてやばい。勉強しなきゃ・・・。


 ああ、憂鬱だ。

 

 と、いうより面白くない。

 

 つまらない。

 

 原因は分かっている。面白い対戦相手がいないのだ。

 

 友人達であるLDS兄姉三人は現在舞網チャンピオンシップへの出場資格に向けて公式戦中。

 

 権ちゃんや柚子は公式戦の出場資格はもう目前、もしくはもう取得しているらしいので公式戦はないが、決して全力のデッキで戦える相手じゃない。精々彼らの今の実力は俺のハンバーガーデッキと戦えるくらいの実力しかない。まあ、元がシンクロ植物族にハンバーガーとユベル足しただけだからかなりガチよりではあるんだが。開闢も入ってるし。

 

 実は何気に一番期待できる遊矢君は、出場資格がないからっていうことでニコさんが手配した公式戦に出ている。

 

 そっちを見に行っても良かったんだが、生憎今日は仕事が入っている。だけれど、日本のプロは何というか、エンターテイメント性が強すぎるせいか、海外に比べるとレベルが下がるのだ。

 

 おかげで今日あった試合は酷いものだった。いや、相手も強かったよ?先制でアトゥムスとエネアードとレダメ並べる程度には。ブラホで終わったけど。あれだけ展開したのにカウンターない方が悪い。守ることくらいきちんと考えてデュエルしろ。まだLDS兄姉組の方が強いぞ?

 

 ほんと、不完全燃焼。零児君レベルは中々いない。DDにあの引きはアカンが。

 

 ああ、どうしよう。

 

「なにをやっているんですか。菊さん。」

 

「ん?」

 

 あれ?

 

「なんで凪流がここにいるの?」

 

「それはこちらの台詞です。私はユースの公式戦のためにこの会場近くに来ていたので見学しに来たんです。丁度プロの試合が行われるからと聞いたので。」

 

 ああ、なるほど。

 

「ならそれは多分「あなたの試合でしたよ。」あ、やっぱり?」

 

 はあ、と彼女はため息をついた。

 

「まったく、あれほど酷い試合は中々見ませんよ。ブラック・ホールからの光と闇の竜にクリスティアなんて、どうやればいいんですか。」

 

「いや、それを俺に言われても。突破できない方が悪い。」

 

 その瞬間、壁の向こうから何かが崩れるような音が聞こえる。あと嗚咽が。

 

「そういえば対戦相手の控室、この近くでしたね・・・。」

 

「悪い事いったなぁ・・・。多分崩れ落ちたのあの人か・・・。」

 

 ドンマイ、それからもう少し、本っ当に1枚でいいからカードを伏せてください。フルモンじゃあないんだから。

 

「っで、凪流はもう帰るの?」

 

「いえ、あなたの試合、もう一戦あるのでしょう?それを見てからに「ないよ。」・・・え?」

 

「棄権した。」

 

「・・・え?」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる凪流。あれ、デジャブ。

 

「こっちの試合に勝つと、次の試合が舞網市の大会と日程が被るんだ。この試合、会社が手配したから義理で出ていたんだけど、別に負けてもいいって会社からは連絡来ていたし、それなら当日応援したいから棄権した。だからもうすぐアナウンスが・・・流れたみたいだね。」

 

 話している途中にアナウンスが流れる。

 

「皆様、この度予定されていた柊菊選手の試合ですが、選手側から棄権の申請が届きましたので、予定されていた第5試合は不戦勝となります。第6試合の方は試合場に来てください。」

 

「・・・というわけ。」

 

「・・・馬鹿なんですか?」

 

「酷いな、大真面目だよ。」

 

 凪流がため息をつく。

 

「さて、俺は帰るけどどうする?送ろうか?」

 

 するといきなり睨みつけてきた。

 

「いえ、今から大牙と香澄とで集まる予定なんです。貴方が帰っているとは思わなかったので誘いませんでしたが。」

 

「すいませんでした。」

 

 なんでここに凪流が来たのか今、分かった。帰ったことを連絡せずにいたのを攻めに来たらしい。

 

「いや、聞いてくれ凪流。連絡しなかったのは悪かった。でも、こっちもバタバタしていたんだ。遊勝塾で「知ってますよ、私の弟が迷惑をかけたようで。」あ、知ってたんだ。」

 

 はあ、とため息をつく凪流。

 

「どうにも弟の様子が可笑しいからちょっと事情を聴いたんです。弟にはそれなりに説教をしましたが。」

 

「南無阿弥陀仏。弟君のご冥福を祈ります。」

 

「死んでませんよ。グロッキーなところに説教したせいか、途中からごめんなさい、許して下さいとしか言わなくなりましたが。」

 

「それ、死んでるよね?肉体的じゃなく、精神的にやられてるよね?」

 

「さあ?大丈夫でしょう。」

 

「お前は間違いなく、香澄の幼馴染だよ。ドSなところがそっくりだ。」

 

「なにを今更。」

 

 そういって笑う凪流。でも目が笑っていない。怖い。本当、北斗君はご愁傷様です。あれ・・・?

 

「でもさあ、北斗君、そんなになるまで怒られるようなことをした?」

 

 その瞬間、更に大きいため息をつかれた。そして「はっ」となる。

 

「あなた、もしかして北斗(あのアホ)と遊矢君の試合、デュエルログを見ていないんですか?!」

 

 え、なにそれ?

 

「デュエルログですよ。アクションデュエルはデュエルディスクにその映像が保存されます。うちの北斗(バカ)は負けた試合をもう一度見てプレイングを直すようにしているんです。っていうか、今までどうやって試合を見ていたんですか?!」

 

「え、そりゃあ普通にビデオカメラで撮ったり父さんや柚子達お願いしてビデオをみせてもらってたけど。」

 

「ビデオカメラって・・・。アナログすぎます。おじいちゃんですか貴方は。」

 

「酷い。老け顔気にしているのに。」

 

「黙れおっさん。」

 

「同い年!!って、それなら君もおばさ・・・何でもないです。」

 

 怖い。本気で怖い。殺されそうなくらい。絶対何人か殺ってるよ・・・。北斗くんドンマイ。この人が姉で。

 

「まったく・・・。それで、試合見ますか。短いので20分もあれば大体は見れますが。」

 

「お願いしていい?」

 

「ええ。どうぞ。」

 

 そういって画面を俺に向けてくれる。映像は北斗君が先行プレアデスを出したところだった。

 

 あ、思い出した。たしかあの試合って・・・。

 

 

 

 

 ビデオを見終わったら凪流が「事情は分かりましたか?」と聞いてくる。

 

「うん、あれは酷いね。けが人が出たかもしれないプレイング。下手すれば加害者だ。」

 

「ええ、ですから謝りに来たんです。」

 

「成程。でもまあ、遊矢君にもちょっと注意しないといけないね。最悪、怪我して大問題になるところだった。」

 

「それはそちらにお任せします。後日、北斗には謝るように言っておきました。謝ってすむ問題ではないかもしれませんが。」

 

「その辺は当人同士に任せよう。」

 

「それもそうですね。」

 

 そういって笑う凪流。実際可愛い。

 

「まあ、アクションデュエルはもっと酷い妨害があったりするからね。何とも言えない。」

 

 照れ隠しみたいに話題を変えようと言ってみたが、凪流はすぐにその意味を理解した。

 

「梁山泊ですか・・・。」

 

「うん、あそことは必ず試合をすることになるからねぇ。」

 

 実際、あれの相手は大変だ。

 

「まあ、あなたがやった対処はいたって簡単でしたね。」

 

「そりゃあ、アクション魔法を使わなければいい、使わせなければいい話だったからね。」

 

「あれが原因であのプロは引退したそうですよ?」

 

「メンタル弱いね。」

 

「いや、あの試合は誰でも辞めたくなります・・・。」

 

「え?」

 

 そんなにひどかったかな?

 

「エクストラデッキのカードを全て破壊され、その上魔法罠は使えない。そんな状態であなた、何ターンいじり続けたんですか?観客の前で。いくら梁山泊のデュエルが批判的な意見が多いとしても、あれはやりすぎですよ。途中から泣いてたじゃありませんか・・・。観客は引いてましたよ?」

 

 思い出した。ザボルグデッキだ。ミラクルシンクロフュージョン、フォトン・サンクチュアリ、轟雷帝ザボルグが初手で来た回。たしかあれの餌食になったんだな、あの人。てか辞めたんだ。

 

「おまけにその後の2ターンで残ったエクストラも刈り取りましたね。融合デッキ相手に。プロだからサレンダーも許されない。肉弾戦に持ち込もうにもモンスターがその邪魔をする。悪夢ですね。」

 

「悲しいけど、これ、現実なのよね。」

 

 現実は非情である。慈悲はない。

 

「あの試合を見て、あなた相手にエクストラを使うのは得策ではないという人も出るくらい酷かったです。少しは自重してください。」

 

「先行エクゾ使わないだけ良心的じゃないか。」

 

「ダメだこいつ、早く何とかしないと・・・。」

 

 ほんと失敬な。先行1キルは数えたほどしかしたことないんだぞ。あの環境当時はほんと酷かったらしいが。エクゾはビートダウンかギリ活路が許される。活路はあれだ、意外とレッドアイズで止まるんだよな、あのランク7エクシーズで。止められたら絶望だが。

 

「そういやあ、さぁ。」

 

「はい?」

 

「時間、大丈夫なのかい?」

 

「あ・・・。」

 

 そう言って顔面蒼白になる凪流。ま、分からなくもない。香澄を怒らせるととんでもないことになるからなぁ。1度大牙が遅れてきたとき、速攻で金的されてあいつ沈んだからね。

 

「やっぱり送っていくよ。今日はバイクで来たから、後ろに乗れば今からでも間に合うだろう?」

 

「お願いします!!」

 

「うわ!」

 

 あんまり食い気味に頼み込むのでびっくりして変な声が出た。そこまで怖いのか、香澄。

 

「わかった、急ごう。場所は?」

 

「LDS校舎近くのショップです。」

 

「オーケー。急ごう。待ち合わせまで何分?」

 

「10分切りました。」

 

「まずいでしょ!!なんでそこまでゆっくりしたの?!こっから向こうまで15分はかかるよ?!」

 

「あなたがいたのにびっくりして時間を忘れたんですよ!!次からは帰国するとき私たちにも連絡をください!!」

 

「すいませんでした!!許してください!!」

 

 そんなやり取りのうちにガレージにつく。大急ぎでヘルメットを渡し、凪流とバイクにまたがる。

 

「急ぐぞ!!舌かむなよ!!」

 

「いや、どれだけ急ぐ気・・・きゃあ!!」

 

 可愛い悲鳴が聞こえたが無視。とりあえず、道交法違反にならない程度に飛ばす。自分ひとりだけだと結構日常茶飯事なのだが、流石に凪流は初めてだったのかずっと叫んでいる。

 

「スピードあげるぞ?本当に舌かむなよ?」

 

「・・・!?・・・・!!・・・・・・・・・・・・!!くぁwせdrftgyふじこlp!!」

 

 もはや声も出ないらしい。だけれどこれで。

 

「良かったな!!これで遅刻しなくて済むぞ!!いま信号で止まっているがもうすぐ着く!!」

 

「いっそ殺してください!!!!」

 

「HAHAHA。急ぐように言ったのは凪流じゃないか!!」

 

「・・・!!・・・・・・!!くぁwせdrftgyふじこlp!!」

 

 なにか言いたそうだったが、右グリップを回した瞬間に聞こえなくなった。

 

 

 

 まあ、当然ながら着いた瞬間、凪流に殴られた。グーで。

 

「殺す気ですか貴方は!!」

 

「着いたからいいじゃないか!」

 

「限度ってものがあるでしょう!!免停なりますよ?!」

 

「大丈夫!!信号は守ってるから!!」

 

「制限速度は?!」

 

 どんどんシャウトしていく凪流。若干涙目。そんなに怖かったのか。悪いことした。

「ま、とりあえず約束の5分前にはついたじゃないか。」

 

「10分も短縮したのですか・・・。」

 

「君の師匠に不可能はない!」

 

「デュエル関係だけにしろその無駄なスペック!!」

 

「何言ってんの?ちゃんとデュエル関係じゃないか?」

 

「どこが?!」

 

「秘密(はあと)」

 

「死ね。コンクリ詰めにされるかサメに喰われろ。」

 

「ほんと酷い。師匠だよ?一応。」

 

 そう言った瞬間鼻で笑われた。どんどん遠慮が無くなってきたなぁ。こんな姿、彼女のファンクラブに見られたら幻滅されかねん。いや、大丈夫か。あいつらは罵ってほしい目的でファンクラブ結成されたんだったな。凪流は知らないけれど。

 

 因みにLDS兄姉たちにはそれぞれ学校内外問わずファンクラブがある。動機はどれも不純だったが。香澄はお姉さま的な人達が集まり、大牙にいたってはホモと腐女子がわんさかいたので絶対にあいつには知らせないと凪流と香澄と俺とで固い誓いが交わされた。香澄がその後しばらくは妙にあいつに優しくなったのを覚えている。強く生きろ、大牙。あとケツに気をつけろ。

 

 さらに言うなら俺にもファンクラブがあるらしいが、3人とも頑なに教えてくれなかった。1度だけ大牙が教えてくれそうだったのだが香澄に邪魔された。なぜかは分からん。俺も怖くなったので聞くのをやめた。大牙みたいにホモだらけだったら死ぬ、俺のメンタルが。

 

「それで、あれじゃない?香澄。」

 

「あ、ほんとですね。おーい、香澄ー!」

 

 呼んだ瞬間、向こうも気付いたのか手を振り返す。どうやら先に集合場所に来ていたようで、カードを物色していた。

 

「こんばんは、凪流。それに久しぶりね、菊。連絡の1本もよこさないとはいい度胸じゃない。」

 

「すいませんでした。」

 

 会って開口一番に開いた言葉が久しぶり、とかただいま、よりも謝罪の言葉が先になるとは・・・。

 

「あなたが帰ってきたのを知ったのが様子のおかしい妹からだった時は本気で殴ろうか悩んだわ。」

 

「勘弁してもらえませんか?」

 

 さっきからこの話題ばかり。横の凪流の目線もあるから胃が痛い。

 

「まあ、妹がそっちの塾に迷惑をかけたみたいだからお相子にしておきましょ。今回はね。」

 

「ああ、君の妹もいたね。覚えてるよ。いろんな意味で印象的だった。」

 

 あの随分とマニア受けしそうな格好。脚フェチの元の世界のクラスメイトなら歓喜してそうだったなぁ。俺にはそんな趣味ないけど。

 

 そして向こうから走ってくる音が聞こえる。時刻は4時1分。ギリ遅刻だな。

 

「わりい、遅れた!」

 

「天誅!!」

 

「グハァ!!」

 

 死んだ。これ以上ないくらい華麗に死んだ。一瞬の出来事だった。声が聞こえた瞬間、刹那的なタイミングで香澄の拳が大牙の鳩尾を正確に捉えた。一瞬だけその拳の軌道が見えたのだが、神がかっていたパンチだった。香澄は男女平等にその拳をふるうので、遅刻しかけた凪流が青い顔で見ている。因みに俺も1度だけ食らったが、胃液とかその他もろもろ全て吐き出しそうな感覚に襲われた。あれはやばい。でも、後で確認したら青あざ一つ出来ていなかったので加減しているんだろう。加減してあれか。

 

 因みに言うなら彼女が遅刻したことは1度もない。時間に厳しい性格なのだ。

 

「ナンマンダブナンマンダブ。」

と俺。

 

「ご冥福を祈ります、大牙。」

と凪流。

 

「奪衣婆に挨拶して来い。」

と香澄。奪衣婆って。三途の川まで行ってるじゃないか。

 

「し、死んでねえ・・・。」

 

 あ、良かった。生きてた。何発も食らってるせいか回復が早い。

 

「大丈夫ですか?大牙(バカ)?」

 

「大丈夫じゃない。食らったのは鳩尾なのになぜか肩や足も痛い。あとナチュラルにバカって言うな。」

 

「毎回毎回遅刻して香澄の制裁を食らうあなたにこれ以上の言葉はありませんね。」

「そういう凪流こそ今日は遅刻しかけてたがな。」

 

「ほう?詳しく。」

 

「それは言わないでください菊!!香澄も!!間に合ったんだからいいじゃありませんか!!」

 

「人のこといえねえじゃねえ・・・グフゥ!!」

 

 凪流にさらに追い打ちのように踏まれる大牙。蹲ってたのがついにうつ伏せに倒れる。

 

「って、菊じゃねえか!!目の死んだ弟から聞いたぞ!!お前、帰ったんなら連絡しろよ!!」

 

「それについてはホントすまん。って、なんでお前らの兄弟姉妹は全員目がしんでたりグロッキーになってんだよ!!」

 

 その瞬間、「え?」とでも言いそうな視線が3つ飛んできた。

 

「いや、魔法罠封じたうえで、モンスター効果無効の連続攻撃持ちのモンスターを2体並べられて何もできずに終わったらそりゃあそうなるわ。」

 

「聞いただけでもヤバそうなモンスターですね、シューティング・クェーサー・ドラゴン。エクストリオは聞いたことがありますが、そっちのモンスターは初めて聞きました。」

 

「素材の数だけ攻撃、モンスター、魔法、罠の無効。他にもあるの?効果。」

 

「あるよ?クェーサーが場を離れるとエクストラデッキからシューティング・スター・ドラゴンが出てくる。因みにそいつの打点は3300の連続攻撃可能、破壊効果無効にエンド時まで除外するだけで相手の攻撃を無効にする効果。ま、正規召喚でない限り場に戻る効果は使えないけどね。」

 

「「「うわぁ」」」

 

 またまた声を揃える3人組。仲いいな。

 

「そんなえぐいモンスターもいるのか・・・。」

 

「その代り、やはり召喚条件がネックですね。」

 

「出たら絶望だけどね。」

 

 そりゃあ、最強のシンクロモンスターの1体だからね。やはり重たすぎるが。原作効果に至ってはチューナーも素材の数でカウントするから最大5回攻撃で、ZONEのモンスターを殲滅したからなぁ・・・。

 

 あと、集いし願いは個人的にOCG化してほしかった。ザボルグとかで悪い事しかしなさそうだが。

 

「あ、そうだ。」

 

「「「ん?」」」

 

 大牙がなにか思いついたようだ。

 

「菊さぁ、今から時間あるのか?」

 

「あるよ?7時には晩飯だから帰らなければいけないけど。」

 

「なら、今から俺とデュエルしろ!」

 

 お、ラッキー。消化不良だったんだよねぇ。

 

「OK!受けて立つ!!」

 

 その瞬間、「はぁ」とため息が2つ聞こえた。

 

「全く、こいつらは・・・。いい加減デュエルから離れなさいって感じね。今日だってホントは菊のアメリカ大会のベスト4入りのプレゼントを買う予定だったのに・・・。」

 

「まあ、大牙と菊ですから・・・。プレゼントはまた買いに行きましょう?どうせ、彼が来ている時点でサプライズにはならなかったんですから。」

 

「そうね、そうしましょ。明日の試合終わりにでも集まって買いに行きましょうか。それよりも・・・。」

 

「はい?」

 

「どうしてあなた、彼のバイクの後ろに乗って来ていたの?今日はサプライズプレゼント買うために集まったのに意味ないじゃない。」

 

「あ・・・。」

 

「忘れてたわね、貴方。」

 

「すみません・・・。」

 

 向こうでは何か話しているようだが、こっちにはもう聞こえていない。

 

「いっくぜー!菊」

 

「おう!!来い!!」

 

「「デュエル!!」」

 

 今回は俺の先行。

 

「俺のターン、まずは手札からヘカテリスを捨てて効果発動!!デッキからヴァルハラを手札に加える。更におろかな埋葬を発動し、デッキから堕天使スペルビアを墓地に送る。そしてヴァルハラを発動!!ヴァルハラの効果で手札から堕天使アスモディウスを特殊召喚!アスモディウスの効果発動!!デッキから天使族モンスター、アテナを墓地に送る。カードを1枚伏せてターンエンド!!」

 ヘカテリス

 

 効果モンスター

 

星4/光属性/天使族/攻1500/守1100

 

自分メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。デッキから「神の居城-ヴァルハラ」1枚を手札に加える。

 

 神の居城-ヴァルハラ

 

 永続魔法

 

1ターンに1度、自分メインフェイズにこの効果を発動できる。手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する。この効果は自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動と処理ができる。

 

 堕天使アスモディウス

 

 効果モンスター

 

星8/闇属性/天使族/攻3000/守2500

 

このカードはデッキ・墓地からの特殊召喚はできない。1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。デッキから天使族モンスター1体を墓地へ送る。自分フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分フィールドに「アスモトークン」(天使族・闇・星5・攻1800/守1300)1体と、「ディウストークン」(天使族・闇・星3・攻/守1200)1体を特殊召喚する。「アスモトークン」は効果では破壊されない。「ディウストークン」は戦闘では破壊されない。

 

 

 KIKU

  手札5→1

 

「俺のターン、ドロー!!俺は手札からこいつを発動させてもらうぜ。」

 

「ああ、構わないよ?」

 

 

 

 

「発動!!次元の裂け目!!」

 

次元の裂け目

 

永続魔法

 

墓地へ送られるモンスターは墓地へは行かずゲームから除外される。

 

 

 え?

 

 え、ちょっと待って・・・。まさか・・・、次元剣闘獣?!墓地利用天使には相性最悪じゃねえか!!

 

「HAHAHA!!これが対お前用に作ったデッキ!!次元剣闘獣だ!!お前は墓地アド増やして戦うデッキが多いからなぁ!やっとこれでお前に勝てるぜ!!」

 

 うわぁ・・・と香澄と凪流がドン引きしている。まあ、メタはって更にあの顔は

なぁ・・・。素良さん張りの顔芸になってた。コラできそうなくらい。なんか腹立つ。

 

 

 

 さて、どうしたもんかなぁ・・・。

 




大牙「僕は次元の裂け目を発動!!」(院ゲス顔)

次元系はアカン、ほんまにアカン・・・。


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第6話

受験が忙しい・・・。

さらに更新遅くなります。申し訳ございません。

そしてまたまた少ないデュエル描写。閲覧注意です。


 

 

前回のあらすじ 主人公、(メタられて)死す。(嘘)

 

 あのデュエルから時は変わってレストラン。

 

 前方にあるものを直視しないように窓の外を見ながら食後のアイスティーを飲む凪流。

 

 斜め向かい側の物体を見ないようにしながら口直しのサイダーを飲む香澄。

 

 横の奴を嘲笑しながら元ジャックよろしく、珈琲を飲む俺。美味しい。

 

 そして、負けて全員にご飯を奢るはめになり、白く燃え尽きた大牙。安心しろ、俺はそこまで高いのたのんでないから。リゾットとドリンクバーだけだから。俺は。

 

 うん。なんだかんだいつもの光景だったりする。だって、最初は『大丈夫かな?』って見ていたアルバイトの店員さんが、『あ、またこいつか、不憫だな。』って目になっているし。この前なんかは励まされてたし。若干涙目になってた時は流石に俺が代わりに奢った。神でも見るような表情をされてなぜか涙腺がウルッときた。

 

「元気出せって、大牙。あれは俺の手札が悪かった。そうじゃなきゃあ普通にやられてたさ。そもそも、今回の終世デッキは打点高いの多いから剣闘獣じゃ厳しいところもあったんだし。」

 

 そう、元気づけようと思い声をかけても「うるせぇ・・・。」としか返ってこない。メタって負けたのそんなに悔しかったのか。

 

「やめときなさい、菊。」

 

 香澄がそう言ってきた。いや、でもここまで落ち込まれると流石に鬱陶し・・・じゃない俺の良心が痛むんだよ。ウソだけど。

 

「はあ・・・仕方ないわね。」

 

 お、何とかしてくれるのか?そう思って席を香澄と交代する。

 

 そして香澄は・・・そのまま大牙に拳を振り下ろした。鈍い音が店に響く。

 

「いつまでうじうじしてんのよ!!そんな暇あったら私たちにさっさと飯おごって次のデッキでも考えてなさい!!」

 

 殴った。これ以上ないくらいにバイオレンス。それが香澄クオリティ。

 

「香澄、やりすぎです。大牙の首から嫌な音がしました。」

 

「大牙が死んだ!!」

 

「「「「「この人でなし!!」」」」」

 

 店中から突っ込みが来た。ノリがいい。数名このネタが分かってないみたいだけど。因みに香澄や凪流は何度かこの店で同じことがあったため、ネタなのは理解している。

 さて、あの時のデュエルについて一応回想しておこうと思う。

 

 以下、回想

 

 次元の裂け目、発動後・・・。

 

「俺は更にブラック・ホールを発動する!」

 

「チェーンはない。アスモディウスは破壊後にトークンを生み出すが、次元の裂け目の効果で除外される為、トークンは生まれない。」

 

「俺は剣闘獣ラクエルを召喚しバトル!ダイレクトアタックだ!。」

 

 剣闘獣の流れは大体わかる。おそらく、ラクエルのダイレクトアタック後、ベストロウリィを召喚し、その効果でヴァルハラか伏せカードを破壊しようとしたのだろう。

 

 戦略的には悪くない。いや、初動としてはかなりいい方だ。だが、残念なことに・・・。

 

 このデッキ、『終世』には、かなり大量に蘇生カードが入っているのだ。つまり・・・。

 

「罠発動、リビングデッドの呼び声、対象スペルビア。チェーンは?」

「え」

 

「チェーンは?」

 

「あ、その、ないです。」

 

 このように、リビデが3積みされているのだ。光と闇の竜や死者蘇生、ソウチャも含めれば、蘇生カードが8枚入っていることになる。

 

 リビングデッドの呼び声

 永続罠

自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

「なら墓地からスペルビアを蘇生。スペルビア効果で墓地のアテナを対象、チェーンは?」

 

「ない・・・です。」

 

「なら、墓地からアテナを蘇生。チェーンは?」

 

「ない!!分かってんだろうが!!」

 

 うん、知ってた。でも、幽鬼うさぎやサイクロンがないとも限らないし。次元の裂け目があるからサイクロンは兎も角、幽鬼うさぎは多分入れてないだろうけど。

 

 堕天使スペルビア

 効果モンスター

 星8/闇属性/天使族/攻2900/守2400

このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、「堕天使スペルビア」以外の自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動できる。その天使族モンスターを特殊召喚する。

 

アテナ

 効果モンスター

星7/光属性/天使族/攻2600/守 800

1ターンに1度、「アテナ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する天使族モンスター1体を墓地へ送る事で、「アテナ」以外の自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を選択して特殊召喚する。フィールド上に天使族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、相手ライフに600ポイントダメージを与える。

 

「・・・カードを3枚伏せてターンエンド。」

 

「俺のターン・・・地砕き、チェーンは?」

 

「・・・ない。」

 

 地砕き

 通常魔法

相手フィールドの守備力が一番高いモンスター1体を破壊する。

 

「ならそのラクエル破壊で。2体でダイレクト。」

 

「うぎゃあーーーーーーーーー!」

 

 TAIGA

 

  4000→0

 

 因みに伏せは戦車と激流葬と神宣だったそうだ。危ない危ない、てか怖い。

 

 回想終了。

 

 まあ、その後のことについて特筆することはないだろう。精々、凪流と俺とで心を折りにきたり、今日負けたからお前奢りな、と香澄からの死刑宣告が打たれたくらいだ。

 

 つか、初手で次元の裂け目とブラホ、ラクエルに激流葬に戦車に神宣が初手に来ている剣闘獣によく勝てたな俺。普通なら負けてるわ。羽根箒とかない限り。まあ、神宣と地砕きじゃあ釣り合わないよな。無効にしてもライフ2000失うし、どうあがいても負けか。

 

「まあ、頑張れ。今回はまあ残念だったが、次があるじゃないか。」

 

「お前、さっき『ねえねえ、どんな気持ちどんな気持ち?メタ貼りに来て3ターン目で負けてどんな気持ち?あんなドヤ顔しておいてこのざまかよ!許してくださいってかぁ?許してやるよぉ!』とか言ってた人とは思えない台詞だな!!」

 

「悔しいでしょうねぇ。」

 

「テメェ!!」

 

「つか、半分は俺じゃねぇじゃん。『ねえねえ、どんな気持ち?』のくだりは香澄だし、俺は配慮して安いのを頼んだぞ?そこまで言われる筋合いはない。」

 

「お前はな・・・。でもさぁ・・・。」

 

 その瞬間、店員さんがやってくる。手に持ったお盆にはそれなりにボリュームのある2つのパフェ。

 

「お待たせしました。抹茶のパフェとベリーのパフェでございます。他にご注文は?」

 

 いえ、大丈夫です。と凪流が答える。

 

「では、伝票失礼します。ごゆっくり。」

 

 店員が去って行ったあとに残されたのは一枚の紙(死刑宣告)。ここのパフェは中々にいい値段がするため、そこに書かれた金額はゆうに樋口さんを超えている。流石に諭吉さんまではいかないが。

 

「まあ、お前ならDPで払えるんじゃないか?ユースの公式戦でかなりDP増えたんだろう?」

 

「買いたいカードを諦めればな。そこまで必要ではなかったし、組み込んだら面白そう程度だったんだから別にいいんだが、それなりに痛いんだわ。」

 

 成程、確かに痛いな。

 

 因みにDPとは、ユースやジュニアユース、ジュニアなどの公式戦で勝ったときにこの町から支給されるポイントである。負ければ、相手の戦績やレートに見合った額が引かれ、勝てばもらえる。ユースは1回につき2000から3000が平均的な額になり、それを利用して、DPの使用できる店で買い物が出来るのだ。ユースの公式戦となると、それなりに見に来る人がいる。そういう人に対して、塾の宣伝やその他いろいろなところでメリットが生じるのだろう、詳しくは知らないが。因みにDPを現金で買うことは出来ても、その逆は出来ない。端末から端末へ移すこともできないので注意が必要だ。

 

 更に言うならプロにDPは支給されない。その代りに口座にギャラが振り込まれる。結構な額になったので、この前、家にお金を入れようとしたら父さんに怒られた、自分で使いなさいって。俺からしたら親孝行させてほしい。貰ってばかりだから。この前も今着ているコートと手袋も、この前のアメリカ大会でのベスト4入りのお祝いに貰ったものだ。柚子や遊矢、権ちゃんも一緒になって選んでくれたらしくとても嬉しかった。一生モノの宝物である。

 

「因みに何買うつもりだったんだ?」

 

「それは秘密。面白くないからな。」

 

「ケチ。マゾ。ホモ。」

 

「だれがホモだ腹黒。老け顔。」

 

「言ったな、人が気にしている事を言ったな?この年で大卒就活生に間違われるの気にしてんだぞ?!よろしいならば戦争だ!」

 

「上等だこの野郎!表出ろボッコボッコにしてやる!」

 

「やめなさいアンタら、店に迷惑でしょうが。」

 

 その言葉で渋々おとなしくなる俺たち。確かに大人げなかった。でも老け顔は許さない。なんでだろう、精神年齢に比例して老けてんのかな?確かに精神年齢だけなら前の世界合わせて24だけど。でも心は永遠の18歳。おっさんくさい?言うな。

 

「うるさいですよ?大牙、菊。せっかくの抹茶パフェが台無しです。」

 

 そう言いながら彼女は抹茶パフェのアイスを頬張り、満面の笑みになる。そして見られてることに気づいた凪流はこう言った。

 

「何ですか、あげませんよ。私の戦利品ですから。」

 

「いや、勝ったの俺なんだけど。」

 

「冗談です。食べますか?口をつけていてもよければ。」

 

「いや、いいよ。甘いものはいい。珈琲ゼリーなら貰うけどね。」

 

「カフェイン取り過ぎじゃないですか?いっつも飲んでるじゃないですか。アメリカに行く前にお腹下したの知ってるんですよ?胃が荒れてるじゃないですか。」

 

「大丈夫大丈夫。これでも制限してるんだから。」

 

 ならいいです、と彼女が笑う。

 

「まあ、たしかに菊は珈琲しか飲まないわよね。喰種か何か?」

 

「俺、さっきリゾット食ってたよね?喰種じゃねえわ。」

 

「それでもいつも飲んでるじゃない。この前なんか珈琲豆の焙煎機買ってたし。」

 

「珈琲好きなんだよ。甘いものにも合う、食後の口直しにもなる。何より美味しい。これ以上ないくらい完璧じゃないか。」

 

「だからって、もう3杯目だろ?それ。」

 

 うるさいなぁ。まあ、前に胃が荒れたから心配してるんだろうけど、やめない。なぜなら好きだから。

 

 まあ、こんな感じの何気ない会話がいつものことだったりする。友人たちとの何気ない会話。そんな中、1通のメールが届いた。父さんからか。

 

「へえ・・・。」

 

「どうしたんですか?」

 

「遊矢君、あと1戦でジュニアユース出場だって。」

 

「へぇ、嬉しそうだね。」

 

「まあね。」

 

 実際うれしい。弟の成長を見ているみたいで。前の世界では一人っ子だったけど。

 

「まあ、俺の弟や香澄の妹、凪流の弟はもうとっくに資格満たしてるけどな。」

 

「LDSコースの首席だって?凄いね。」

 

「あなたが言うと嫌味にしか聞こえませんよ?」

 

「だな。」

 

「そうね。」

 

 そうなのかな?とは思ったが、確かに自分の勝率や経歴を鑑みればそうなのかもしれない。だが、向こうも本気で言っているわけでは無いので軽く流す。

 

 だけど、俺はこの時、軽く流さずに食いついてでもいいから会話を続けるか自分で変えるべきだったと、のちに思うことになる。

 

「そういえばさ、知ってるか?いや、間違いなく菊は知らないだろうけどさ。」

 

「何がですか?」

 

「それってあれ?『LDS襲撃事件』」

 

 え、それってあれか、黒咲の事件。

 

 因みに黒咲とは、ARC-Ⅴの世界において、多くの名言(迷言)を残した偉人である。まだアニメの放送が終了してないにも関わらず、『瑠璃?瑠璃なのか。どうしてここに?!まさか、自力で脱出を?!(無言の腹パン)』や、『貴様らからは鉄の意志も鋼の強さも感じない』と言ってLDS3人組に対しワンターンスリィキルゥを叩きこんだ。彼の使うデッキ、『RR』の展開力は、OCGでも中々に侮れないカード群だと思う。まあ、RRカテゴリ出現当時の環境ではネクロスHEROクリフォートシャドール、更にその後にはプトレマイオスの出現によりテラナイトが頭角を現してきた為、中々に凄まじい環境だったためにほとんど大会での出番はなく、ファンテーマの域を出なかったが。ネクロスHEROクリフォートシャドールの環境は中々に魔境だった。まあ、現在の某ドラゴン族カテゴリや混沌を彷彿とさせる『魔術師』に比べればなんてことはないが。あれはもはやエンタメではなくファンサービス(隠語)である。もしくは満足。次の制限で慧眼が制限になりますように。あと、ドクロバットとペンデュラム・コール。サーチが3種類ある時点でストラク後の結果は見えていた。買わなかったけど。アロマージ好きだったし。

 

「そうそう、それ。なんでもやられたのは、あのマルコ先生なんだってさ。後は制服組の誰からしい。」

 

「あのって?」

 

「香澄の妹の恩師なんです。」

 

「へぇ。でも、それなら犯人はかなり強いんじゃない?制服組って確かプロ集団だろ?超エリートの。しかももう一人はLDS講師。LDSの講師ってことは元プロだろうし。」

 

「・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・・覚えて、ないんですか?」

 

「・・・え?」

 え、何この反応。俺、何かしたの?

 

「・・・大会優勝賞品だった、『ヘル・ブランブル』と『スプレンディッド・ローズ』。香澄に協力することになって、結果的にあなたが蹂躙した大会の決勝戦、その対戦相手です。」

 

「え?でもあれはシンクロモンスターじゃん。なんであの当時のプロが、それもあの子の恩師だったら融合軸だろ?」

 

「あの大会、優勝者にはパックが贈呈されたじゃないですか。それ狙いだったそうですよ?ねぇ、香澄。」

 

「ええ、後で本人から聞いたわ。若干おびえながら『あの子、LDSじゃないのかい?』って聞かれたときは、『ああ、またか』と思ったわね。因みに準優勝で無事、パックを入手して狙いのカードを当てたものの、次の日のプロ大会であなたの名前を見て辞退したそうよ?」

 

「因みに狙いのカードは?」

 

「砂の魔女だって。」

 

「なんでさ・・・。」

 

 謎である。ハンバーガーよりは優秀かもしれないが。因みにあの時使ったのは植物繋がりで『メタビアロマージ(ベルガモットもいるよ)』である。ライオウと1回休み、王宮の牢獄で特殊召喚を制限し、ジャスミンのドローとライオウ、ガナンガのパーミッション。そしてローズマリーで殴るだけの簡単なお仕事。たまにベルガモットとウリアがなぜか出る。ネタ枠である。先手で回せれば基本的に何もできないことが多かったりするので実際コワイ。

 

「その次の試合もあのデッキでしたね。死者蘇生もローンファイアもないのになぜあんなに強いのか・・・。」

 

「強いわけじゃないんだけどね。相手の妨害メインで戦ってるからそう思うだけで。」

「いや、十分強い。バーンじゃないだけマシだがな。」

 

「4000ライフは少ないよねぇ。チェーンバーンに。」

 

「あれは止めなさい、本当にやめなさい。」

 

 この中だけで3名にトラウマを出したチェーンバーン。皆も4000ライフでやってみよう。友達からのリアルダイレクトアタックを受けること間違いなしだ。要するに殴られる。

 

「それでLDS襲撃事件がどうかしたの?」

 

「・・・なんでも、モンスターがアクションデュエルでもないのに実体化したらしい。現場にはまるで大きな鉤爪でえぐったような跡があったらしい。」

 

「へぇ・・・面白いわね。」

 

「面白くありませんよ、人が行方不明になってるんですから。」

 

「へぇ、でもどうして急にそんな話を?」

 

「いや、この話、LDSの一部では有名なんだがそれ以外にはあまり出回ってないからな。お前らに注意するように言おうと思ったんだが・・・杞憂だよな、どう考えても。」

 

 ああ、そりゃあ、なあ。香澄はそこらのやからにやられるような奴でも、おとなしくしているような奴でもないし、凪流はなんだかんだでその辺は大丈夫だろう。デュエルに関しても、フルアーマー聖騎士や植物シンクロが負ける姿は中々に想像しがたい。あれ、1番心配なの俺じゃね?

 

「いや、それはないな。」

 

「ないわね。」

 

「ないです。」

 

 心を読んだ皆の信頼がやばい。泣いていいよね。

 

 そしてこの会話の後、お開きになり俺と大牙で香澄を送り、凪流はバイクで俺が送ることになったので大牙は先に帰った。

 

 そして、ここだ。ここで凪流が少し歩きましょうとさえ言わなければ、俺が無理にでもバイクで早く帰らせていれば。

 

 俺と凪流の会話を聞きつけたやつが、来ることはなかったかもしれない。

 

「貴様もLDSか?!」

 

 LDS絶対殺すマン、出現。

 

 この場に前の世界の友人がいればこう言っていただろう。

 

 『フラグ回収、乙。』と。

 

 

 




メタビアロマージで友人と対戦している時の友人の反応。

友人「俺そのデッキ嫌い!!なんもできねぇ!!」

俺はお前のクラブレライロが嫌いだよ・・・。

ちなみにウリアはサイドで入れて見ると面白いです。ADSではよく使います。

・・・魔術師は死ねばいいと思う。


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第7話

またまた遅くなってごめんなさい。
受験が近いので今年はここまでになりそうです。
し、失踪はしないつもりですのでご勘弁を。

それはそうとPSYフレーム面白いですね、Ω高いけど。


前回のあらすじ フラグ回収、シスコンお兄ちゃん(無言の腹パン)出現。

 

 いや、どうしてこうなった。マジで。

 

 いや、たまたま通った路地に、たまたま居た黒咲さんがたまたま俺たちの会話を聞いて、襲い掛かった。多分こういうことだろうけど。

 

 よく考えればフラグ結構立ってたんだよなぁ。大牙の会話、凪流や俺なら大丈夫という信頼感、おまけに歩いて人の少ない通りに入るのフラグの3連コンボ。これで来ないなら世の中のフラグは全て折れている。

 

「どうした、ディスクを構えろ。それでもデュエリストか!」

 

 リアリストだ。

 

 いや、ふざけてる場合じゃないな、これ。最悪凪流や俺はここで『カード化』されてしまう。この時の黒咲さんはLDSの元社長にしてアカデミアのプロフェッサーである赤馬零王の息子、赤馬零児をおびき出すためにLDS関係者を次々に襲っていた。その時は確か負けた相手をカードに変える装置を使ってたはず。つまり、このデュエルを受けて負ければ・・・。

 

 俺は横の凪流を見る。彼女がカード化されることは避けたい。彼女が簡単に負けるとは思わないが、だからといって黒咲さんとRRデッキに勝てるとも思わない。

 

「デュエルですか?ならお受けしま」

 

 あっぶねぇ!!何してんのこの子!!明らかに怪しすぎる相手にデュエル受けてんじゃないよ!!普段おとなしいのに何でこういう時だけデュエル脳なの?!さっきLDS事件について大牙から話聞いてたでしょ!

 

「どうした!受けるのか!受けないのか!」

 

 うわぁ、なんか黒咲さんヒートアップしてない?凪流もなんか機嫌悪いし。いや、俺のせいか。受ける前に凪流の口塞いで若干羽交い絞めにしてるしなぁ。

 

「凪流。」

 

 仕方ないか。あんまり気乗りしないけど。

 

「お前、こっから逃げて警察呼んで来い。」

 

 へ?って感じに呆ける凪流。彼女に聞こえるくらいの、それでもって黒咲さんには聞かれない程度の声で続ける。

 

「多分、あれがLDS襲撃事件の犯人だ。」

 

 その言葉に驚いたような表情。いや、分かれよ、明らかに不審者だから。

 

「でも、もし違ったらどうするんです?」

 

「その時には警察官と相手に謝ればいいさ。時間稼ぎはするからその内に呼んできて。」

 

「でも!それじゃああなたが危険な目に「いいから、行って。」・・・分かりました。無茶はしないでください。」

 

 よかった、了承してくれた。これで最悪凪流だけは無事だ。

 

 後ろへ駆け出していく凪流。それを追いかけようとする不審者黒咲さん。

 

「ちょっと待ってもらおうか。デュエルしろよ。」

 

 それを俺が立ちふさがって妨害。

 

「どけ、さもないと貴様から「さもないと、何?」・・・チッ。」

 

 うん、このままだと最悪逃げ切られるな。向こうからしたらLDSでもない途中介入者の俺とのデュエルなんてメリットないし。

 

「なあ、不審者さん。いや、LDS襲撃事件の犯人さん、かな?間違っていたらごめんね?」

 

「何だ!」

 

 逃げようとする黒咲さん。ならば・・・。

 

「俺とデュエルしない?これでもLDSにはちょーっとだけコネがあるからさ。君の目的が何かは知らないけど、もしかしたら君の目的に協力できるかもよ?」

 

「何?!」

 

 よし、食いついた。

 

「・・・何が望みだ。」

 

「簡単なことさ。俺が勝てば君の目的を洗いざらい喋ってもらう。俺が負ければ君の目的に協力する。悪い話ではないと思うよ?」

 

「・・・いいだろう。」

 

 そう言ってデュエルディスクを構える黒咲さん。

 

「よし、交渉成立。始めようか。お兄さんのテストは荒っぽいからね、本気でかかってきなさい。」

 

 さて、デッキは・・・こっちでいいか。流石に墓地天使じゃあRR相手に初動が不安だし、事故の可能性が高いものをここでわざわざ使う必要ないしね。

 

「「デュエル!!」」

 

 デュエル開始ぃぃぃいいい!(磯野風)。

 

「先行は貴様からだ。」

 

「お、いいのかい。じゃあ俺のターン。魔法、ヒーローアライブ発動。デッキからE・HEROシャドー・ミストを特殊召喚する。特殊召喚時にシャドーミストの効果で『チェンジ』速攻魔法、マスクチェンジを手札に加える。カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 ヒーローアライブ

 通常魔法

自分フィールドに表側表示モンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動できる。デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 E・HEROシャドー・ミスト

 効果モンスター

星4/闇属性/戦士族/攻1000/守1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 KIKU

  手札5→3

 

「『チェンジ』速攻魔法だと?まあいい、俺のターン!ドロー。」

 

 どうやらチェンジ魔法を見るのは初めてなのか、どこか訝し気になっている黒咲さん。融合次元の人はHERO使わないのかな?

 

「俺はRR-バニシング・レイニアスを通常召喚、効果により手札からRR-トリビュート・レイニアスを特殊召喚!効果発動!デッキからRRカードを1枚墓地に送る!」

 

 RR-バニシング・レイニアス

このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに1度だけ発動できる。手札からレベル4以下の「RR」モンスター1体を特殊召喚する。

 

RR-トリビュート・レイニアス

「RR-トリビュート・レイニアス」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに発動できる。デッキから「RR」カード1枚を墓地へ送る。(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターンの自分メインフェイズ2に発動できる。デッキから「RUM」速攻魔法カード1枚を手札に加える。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「RR」モンスターしか特殊召喚できない。

 

「ならばそれにチェーンして、速攻魔法マスク・チェンジを発動!フィールドのシャドー・ミストを墓地に送り、M・HEROをエクストラから特殊召喚する!」

 

 これが、許されないHERO。マジでこいつデザインした奴出てこい。

 

「変身召喚!己だけが正義!M・HEROダーク・ロウ!ダーク・ロウが存在する限り、墓地に行くカードは除外される!さらに墓地に送られたミストの効果でデッキからエアーマンを手札に加える!」

 

 マスク・チェンジ

 速攻魔法

自分フィールドの「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを墓地へ送り、そのモンスターと同じ属性の「M・HERO」モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。

 

 M・HEROダーク・ロウ

 融合・効果モンスター

星6/闇属性/戦士族/攻2400/守1800

このカードは「マスク・チェンジ」の効果でのみ特殊召喚できる。(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手の墓地へ送られるカードは墓地へは行かず除外される。(2):1ターンに1度、相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた場合に発動できる。相手の手札をランダムに1枚選んで除外する。

 

 KIKU 4000→2000

  手札3→4

 

「なん・・・だと・・・?」

 

 誰かの霊圧でも消えたのか?いや、カードは除外されるけれども。

 

「・・・俺はRR-シンキング・レイニアスを墓地に送る、がダークロウの効果により除外される。だが、俺のターンは終わっていない。速攻魔法、スワローズ・ネストを発動!コストによりバニシング・レイニアスをリリース!」

 

「それにチェーンして永続罠、虚無空間を発動。お互いに特殊召喚できなくなる。」

 

「 」

 

 スワローズ・ネスト

 速攻魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する鳥獣族モンスター1体をリリースして発動する。リリースしたモンスターと同じレベルの鳥獣族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する。

 

 虚無空間

 永続罠

(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、お互いにモンスターを特殊召喚できない。(2):デッキまたはフィールドから自分の墓地へカードが送られた場合に発動する。このカードを破壊する。

 

 ・・・。うん、酷いよねコレ。だけども手札には次の展開が見えてるんだよなぁ、エアーマンもサーチしたし。つか、あのままだとカステルでダークロウ戻されたかも。ネスト使われて運が良かった。まあ、スワローズ・ネストがあるならそのまま展開するか、普通。いや、結果論だな。こんなこと考えても。

 

「・・・、バトル。」

 

「へ?」

 

「バトルだ、トリビュート・レイニアスでダークロウに攻撃!そして手札から速攻魔法発動、禁じられた聖槍!ダークロウの攻撃力は800ダウンする!」

 

 ガチカードじゃねぇか!黒咲さんそのカード入れてたんすか?!もっとロマン軸かと思ってた。失望しました那珂ちゃんのファンやめます。いや、別に失望なんかしてないけどさ。

 

 禁じられた聖槍

 速攻魔法

フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が800ダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

 KIKU 2000→1800

 

 破壊されるダークロウ。それに伴い虚無空間の自壊効果が発動し、破壊される。つか、ダメージの実体化ってこんなもんなのか?200しか削られてないからか?

 

「メイン2、トリビュート・レイニアスの効果でデッキから「RUM」魔法を手札に加える。RUM-ラプターズ・フォースを手札に加え、カードを1枚セット、ターンエンド。」

 

 KUROSAKI

  手札6→2

 

 うわぁ、更地にされた。まあ、手札は4枚、引けば5枚になる。何とかなるだろ。ただあの伏せ、出来れば禁じられたシリーズは嫌だなぁ、厄介だし。

 

 ・・・多分残った手札のどちらかはRUM。RUMをエクシーズのいない状況で伏せるわけがない。いや、ブラフかもしれないけどさ。兎に角警戒すべきはあのカード。

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 引いたカードは・・・、ミラクルフュージョン。神引き。

「通常召喚、E・HEROエアーマン!効果で手札に加えるのはE・HEROバブルマン!」

 

 E・HEROエアーマン

 効果モンスター

星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300

このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。●このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。●デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 黒咲さんは動かない。神宣とかではないのかな?もしかしてレディネス?ならば・・・。

 

「カードを3枚伏せて、手札のバブルマンの効果!手札がこのカードのみの場合、特殊召喚出来る!バブルマン特殊召喚!更に今伏せたE-エマージェンシーコールを発動、デッキからバブルマンを手札に加え、特殊召喚!」

 

 E-エマージェンシーコール

 通常魔法

デッキから「E・HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 E・HEROバブルマン

 効果モンスター

星4/水属性/戦士族/攻 800/守1200

手札がこのカード1枚のみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。この効果は自分の手札・フィールドに他のカードが無い場合に発動と処理ができる。

 

 それでも黒咲さんは動かない。なら大丈夫か。

 

「俺は3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ環境の大戦犯よ!星守の騎士 プトレマイオス!」

 

 召喚したのはランク4のなかでも一際ヤバいカード、プトレマイオス。

 

「俺はプトレマイオスの効果を発動、オーバーレイユニットを3つ取り除き、エクストラデッキからこのカードよりもランクが1つ高いモンスターをエクシーズ召喚扱いで召喚する!」

 

「何だと?!」

 

 黒咲さんも驚くぶっ壊れ効果、それがプトレクオリティ。

 

 星守の騎士 プトレマイオス

 エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/戦士族/攻 550/守2600

レベル4モンスター×2体以上

(1):このカードのX素材を3つまたは7つ取り除いて発動できる。●3つ:「No.」モンスター以外の、このカードよりランクが1つ高いXモンスター1体を、自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。●7つ:次の相手ターンをスキップする。(2):お互いのエンドフェイズ毎に発動できる。自分のエクストラデッキの「ステラナイト」カード1枚を選び、このカードの下に重ねてX素材とする。

 

「オーバーレイネットワーク再構築!現れろサイバー・ドラゴン・ノヴァ!そしてさらに再構築、サイバードラゴン・インフィニティ!!」

 

 俺が遊矢君に使ったトンデモカード、サイバードラゴン・インフィニティ。これをランク4で出せるようになった結果はお察しの通りだ。ランク4が出るデッキにはほぼ必ずこいつらとプレアデスが入っていた。元の世界では禁止になったカード。まあ個人的には禁止じゃなくてエラッタの方が良かった気もするが。ランクアップ先が制限されてないからあんな悲劇が起こっただけで。もしくは消費する素材を増やすとかデュエル中に1度とかつけるとか。混沌の黒魔術師みたいな良エラッタを期待します。ただし混沌帝龍、テメーはだめだ。もう1回出直して来い。

 

「インフィニティの効果でトリビュート・レイニアスを吸収する。」

 

「俺は罠カード天罰をを発動!手札を1枚切って効果を無効にし破壊!」

 

 チぃ、面倒な。せっかくのインフィニティが。つか、それエアーマンに使えよ、展開できなくなったから。いや、まあこれも結果論かもしれないけどさ。

 

 天罰

 カウンター罠

手札を1枚捨てて発動する。効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。

 

「・・・魔法発動ミラクル・フュージョン。墓地のシャドーミストとバブルマンを除外して、融合召喚!最強のHERO、E・HEROアブソルートZero!バトルだ!Zeroでトリビュート・レイニアスに攻撃!」

 

「グハァ!」

 

 KUROSAKI 4000→3300

  手札2→1

 

「ターンエンド。」

 

 ミラクル・フュージョン

 通常魔法

自分のフィールド・墓地から、「E・HERO」融合モンスターカードによって決められた 融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

 E・HEROアブソルートZero

 融合・効果モンスター

星8/水属性/戦士族/攻2500/守2000

「HERO」と名のついたモンスター+水属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードの攻撃力は、フィールド上に表側表示で存在する「E・HERO アブソルートZero」以外の水属性モンスターの数×500ポイントアップする。このカードがフィールド上から離れた時、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。

 

「俺のターン、ドロー!バニシング・レイニアス召喚!効果でトリビュート・レイニアスを特殊召喚し、効果によりRR-レディネスを墓地に送る!」

 

 バニシングにトリビュートってことはさっきのコストはRUMの方か。まあ、バニシングとトリビュートのどちらかか腐るかもしれないRUMならRUMを捨てるのは当然か。

 

「俺はバニシング・レイニアスとトリビュート・レイニアスでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!現れろ、恐牙狼 ダイヤウルフ!」

 

 恐牙狼 ダイヤウルフ

 エクシーズ・効果モンスター

ランク4/地属性/獣族/攻2000/守1200

レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体とフィールド上のカード1枚を選択して発動できる。選択したカードを破壊する。

 

 なんでそんなにガチなんですかねぇ、ちょっと。

 

「ダイヤウルフの効果発動!、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体とフィールド上のカード1枚を選択して発動できる。ダイヤウルフとZeroを破壊する!」

 

「破壊された時にZeroの効果が発動するが、意味はないな。」

 

「俺はターンエンド。」

 

 こんな時になんだが、楽しい。このデッキでダークロウに虚無空間、ZEROまでは兎も角、インフィニティまでもが突破されることは少なかった。しかも相手の墓地にはレディネス。次のターンで決着は不可能か。

 

「俺のターン!ドロー!罠発動リビングデッドの呼び声!墓地のエアーマンを蘇生させ、効果により2体目のエアーマンを手札に!更に召喚し効果発動!バブルマンを手札に加え、カードをセットしバブルマン特殊召喚!」

 

 この世界、エアーマン無制限なのよね。

 

「チィ、またエクシーズか!」

 

「その前に伏せたカードオープン「菊!!」・・・?!」

 

 声がした方向を向くと、凪流がいた。どうやら警察が来るまでの時間稼ぎは出来たらしい。まあ、今となってはどちらかというと決着をつけたいのだけど。

 

「・・・勝負は預けた。俺は行く。」

 

「・・・分かった。楽しかったよ、またやろう。」

 

 楽しかった。少なくともこっちのプロとやるよりは断然。流石は黒咲さん。

 

「・・・フン。」

 

 どうやらそれは向こうも同じだったらしい。彼のしぐさはどこか親しみを覚えた。もしかしたら彼もここ最近のデュエルはつまらなかったのかも知れない。だって『フン。』とか言いながら好戦的な顔を隠しきれてなかったから。今の俺みたいに。

 

 逃げていく黒咲。追いかけてもいいが、それだと凪流を家に送ることが出来ないので諦める。無茶して着いていく必要もない。非常に、非常に残念だけど続きは諦める。

「大丈夫ですか?!どこか怪我は?!なにもされてませんか?!」

 

「大丈夫、大丈夫だから服を脱がさないで。怪我どころか埃一つついてないから。」

 

「・・・良かった。」

 

 その場にへたり込む凪流。そんなに心配してたのか、悪いことしたなぁ。

 

「あ~、凪流。」

 

「・・・はい。」

 

「とりあえず、警察はあと何分くらいで着くの?事情が事情だから帰るの遅くなるかもしれないし、家族に連絡しないと。」

 

「警察は来ませんよ?」

 

 へ?

 

「いや、実は大通りまで出たのはいいんですが、電話はあなたに渡したカバンの中にあるのをそこで思い出しまして。辺りに警察がいないか探したんですが・・・。」

 

「途中で心配になって戻ってきたと。」

 

 コクリ、と頷く。そういやカバンはバイクに乗せたんだったな。

 

 でも呆れた、せめて凪流だけでも逃がそうと言ったのに戻ってくるなんて。誰かが保護してくれるのを期待してたのに。

 

「なあ、凪流。」

 

「はい。」

 

「近くの人に電話を借りる発想はなかったのか?」

 

「あ・・・。」

 

 こいつ・・・。気付かなかったのか。

 

「はぁぁああ。」

 

「ため息をつかないでください!!しょうがないじゃないですか!ずっと心配して他のことあまり考えられなかったんですから!!」

 

 うっ、そう言われると強く言えない。実際、デュエルした相手が全員行方不明じゃあそりゃあ心配するわ。

 

「さて、なら帰ろうか。もう時間も遅い。早く帰らなきゃ怒られるだろ?ほら、そんなとこで座ってないでさっさと立ちな。」

 

「それなんですが・・・。」

 

 ん?

 

「腰が抜けて、立てません。」

 

「・・・マジ?」

 

「マジです。」

 

 どうやら、よほど心配させたらしい。

 とりあえず、帰りにお詫びとして何か奢ろうと思った。

 

 

 

 

 

「あ、でもいくら腰を抜かしたからといってバイクで送っていかないでくださいね。しばらくバイクには乗りたくありませんから。」

 

 俺にどないせぇと?

 




黒咲さんかっこいいですね!!RR作ってないけどスリーブ買おうか悩んでます。

それはそうとこの前ショップの非公認で二位になり、800円の金券をもらいました。非公式とはいえ久々の大会で結果を残せてうれしかったです。

でも、帝と列車ドールは酷いと思うんだ。テラナイトにエクストラ封じとスキドレはだめだって・・・。


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第8話

祝、お気に入り1000人越え。
こんな受験ストレスと深夜テンションから出来た駄作をお気に入り登録してくださった皆様、本当にありがとうございます!
まだ受験が終わっていませんが、嬉しすぎて思わず次の話を書いてしまいました。「おい、勉強しろよ。」という遊星の声が聞こえてきた気がします(笑)。
まだまだ至らないところもあるこの小説ですが、どうぞよろしくお願いします。


 

 黒咲さんとの邂逅から数日経ち、遊矢君の最後の試合の日。

 

 私、柊菊は応援に行くことが出来ませんでした。orz。

 

 いや、仕方ないんだよ。まさかこの日にも予定が入るとか予想だにしていなかったし。まあ、急な話で仕方なかったんだけどさ。

 

 見たかったなぁ、遊矢君の試合。彼がペンデュラムしているところ、ビデオとあの日の対戦以外で見てなかったから。いや、まあ今回の話は半分自業自得だし、仕方ないんだけどね。

 

 ああ、憂鬱。

 

「おい、貴様のターンだ!それとも何も出来ないか?!」

 

 うるさいなぁ、こっちは機嫌が悪いんだよ。

 

「・・・はぁ。」

 

 ため息ついたら対戦相手がわめきだした。いや、俺の態度が悪いんだけど。でも、仕事でもない、完全なフリーの日にデュエルを強制されたらこうなると思うんだ。しかももう20回目だし、今日のデュエル。

 

 因みに現在俺のフィールドには封印されし左腕が団結の力装備の状態で残されているのみ、手札は・・・2枚。

 

「俺のターン。ドロー。手札からアームズ・ホールを発動し、デッキトップを墓地に送る。その後装備魔法、月鏡の盾を手札に加える。死者蘇生発動。対象は封印されし右腕。蘇生。そして月鏡の盾を装備。手札のモンスターを墓地に送り、クイック・シンクロンを特殊召喚。そして墓地のレベル・スティーラーをクイックのレベルを下げて特殊召喚する。」

 

「レベル・スティーラーだと?!そんなカードいつ墓地に送った?!」

 

「3ターン前のワン・フォー・ワンのコストだ。いくぞ、シンクロ召喚、ジャンク・ウォリアー。効果により、俺のフィールドに存在する右腕と左腕の攻撃力が加算されるが、左腕の攻撃力は現在2600だ。つまり・・・。」

 

 ジャンク・ウォリアーの攻撃力が5100まで上昇する。

 

「ばかな?!」

 

「そして、月鏡の盾の効果は戦闘する相手モンスターの攻撃力、もしくは守備力のどちらか高い方の数値分、攻撃力が加算される。バトルだ。右腕でテテュスに攻撃。右腕の攻撃力が上昇し、2500になる。」

 

 RYUGA 2700→2600

 

「左腕で創造の代行者ヴィーナスに攻撃。」

 

 RYUGA 2600→2200

 

 オネストはない、か。警戒して損した。

 

「ジャンク・ウォリアーでダイレクトアタック。スクラップ・フィスト。」

 

「うわああぁぁぁ!!」

 

 RYUGA 2200→0

 

 ソリッドヴィジョンが解除され、あたりの風景が体育館に戻る。

 

「ありがとうございました。」

 

「こちらこそありがとうございました!柊先輩!」

 

 ああ、憂鬱だ・・・。

 

 

 

 時を遡ること2日前。俺は学校の先生に呼び出された。

 

「3-I、柊菊です。」

 

 部屋の奥から渋い声が聞こえる。

 

「どうぞ、入ってください。」

 

「失礼します。」

 

 中にいるのは初老間近のおじさん。そして俺を呼び出した張本人。

 

「どうぞ、おかけください。柊プロ。」

 

「今は生徒なんですが?校長先生。」

 

 そう、校長に呼び出されたのだ。最初は昨日の黒咲のことがあったばかりだからその件かと思った。だが、話を聞くにどうも違うらしかった。

 

「では柊君。二日後に開催されるうちの高校のイベントについては知っていますか?」

 

「・・・部活動体験会でしょうか?年に何回か行われる中学生向けのイベントですよ

ね?」

 

 うちの高校で行われる部活動体験会。いわゆるオープンキャンパスの部活動メイン版とでも言うべきか。

 

「ええ、そうです。君にはそれに現役プロとして出てほしいんですよ。去年まではこの町に住むプロの方にお願いしていたのですが、去年からはあなたが入ってきましたから。まあ去年は残念ながらあなたの試合の関係上、その話が入ることは適いませんでしたから今年こそはと思いまして。」

 

 確かに、去年のイベント時は試合が入っていたなぁ。丁度日本ランクベスト20に入ったばかりで試合数がえげつないことになったの思い出した。

 

 あの時はやばかった。普通、プロの試合は1日に3回行われれば大会でもない限り多い方なのだが、あの時は1日10件がざらにあった。学校に顔を出さなければいけない分、延期も重なり1日20件の時もあり、休憩時間がほとんどなかったのを覚えている。なにしろ試合→会場を移動→試合のループが起こっていたのだ。あの時はマジで社蓄精神で働いて学校に行くことの繰り返しだった。公欠扱いにも限度があることをあの時初めて知ったなぁ。2ヶ月分も学校に行けていたのかすらあやしい。アメリカの大会参加中はホテルでのんびりもできたけど。

 

 因みにうちの学校はプロデュエリスト以外にもデュエリストアイドルやらなんやらが所属する特殊なクラスがあり、通常の学校とは少し異なる。なのでプロ試合が公欠扱いになったのだが、だからといって必要出席日数が減るわけでもない。公欠扱いでも足らない場合はテストや課題が追加されるシステムになっているのだ。

 

 でも無理だ。その日は遊矢の試合がある。1回目も2回目も見に行けなかったから今回だけはどうしても見ておきたい。断ろう。

 

「ですがすいません、その日は用事がありまして「課題をチャラにします。」・・・え。」

 

 いま、なんていった?

 

「タダでとは言いません。今まで参加していなかった公欠扱いの授業分の課題提出。それをチャラにしてあげます。提出期限は明日でしょう?渡したのは確か五日前。その間にあの量の課題を、ましてや昨日も試合に出ているのに終わってるわけはありませんよね?」

 

 まったくもってその通りである。五日前に学校に行ったとき、まだ辞書の方が少ないんじゃあないかという量のプリントを渡され、来週までだからなと言われたときの絶望感はやばかった。二日間かけて三分の一程度が終わり、昨日は試合で1日無くなり、ああ、もう無理だなと諦めていたところだった。

 

「いやはや、なにせ去年一昨年に渡しきれていなかった分までありますからねぇ、一応今年は仮進級扱いですが、今回提出できないとなると・・・。」

 

 やばい、道理で明らかに1年生の分のプリントが混じってるわけだ。つかそんなもんせめて去年渡せよ。

 

「渡す前に君のアメリカ行きが決定しましたし、君の住所に連絡しても連絡が尽きませんでしたから。」

 

 そうだったね畜生。そういえば書類上まだ前の家に住んでることになってたんだった。苗字変えたのも入学してからだし、よくよく考えりゃあまだこっちに申請してなかった。それで連絡がいかなかったと。こんなとこで申請を後回しにしていたツケが来るとは。いや、申請する間もなく試合に出ていたのが原因なんだけどさ。

 

「さて、提案です。」

 

 それは俺にとっての死刑宣告。

 

「1年生に戻るか、1日潰すか、どっちか選べやクソガキ。」

 

 校長の台詞じゃねぇ。ヤクザじゃねぇか。怖いんだよあんた顔いかついから。マジもんみたいだから。

 

 まあ俺に選択の余地はなかった。こうして今に至るのである。

 

 

「・・・でも、この量今日中に捌けはないだろう。」

 

 俺の前にはプロと試合できると聞きつけた中学生たちやこの学校の生徒たち。決闘部(と書いてデュエル部と読む)のデモンストレーションは毎年有名なのに加えて、俺のファンや今までに対戦したリベンジに燃える人まで来て収集がつかないことになってる。なんで参加型にしてるんだよ。しかも中々にキャラが濃い人たちまでいるので俺のテンションが追いつかない。さっきの子なんか見た目かわいい系美少年だったのにデュエル始めてから口調変わるし。オデノメンタルハドボドボダ。いや、体もぼろぼろだけどさ。

 

 『12時になりました。お昼休みに入ります。』

 

 やった、休憩だ。とりあえず飯だけ食べに行こう。正直疲れた・・・。

 

 食堂に向けて歩いていると声をかけられた。

 

「あら、菊じゃない。イベント終わったの?」

 

 ああ、今は君がオアシスに見えるよ、香澄。

 

「香澄、助けてくれ。もう俺は限界だ、後は頼む。」

 

「逃げるつもり?出席やばいんでしょ?」

 

「ああ、そうだったね畜生!もういいよ、全員チェーンバーンで相手してやる!」

 

「ヤクザ先生・・・じゃない校長先生に言われてビートダウン以外禁止なんでしょ?それしたらあとで説教されちゃうわよ。」

 

「チキショーーーーー!!」

 

 マジでやってらんねぇ。疲れた。ソリッドヴィジョンのデュエルってずっと立ちっぱなしだから疲れるんだよ。もう3時間立ち続けだぜ?!いくらデュエリストでもかなりきついわ。

 

「・・・ほんとに大丈夫?あんたがそこまで発狂してるの何気に始めて見るんだけど。」

 

「大丈夫じゃない。足の裏が痛い、腕が痛い、頭が痛い。ついでに心が痛い。」

 

「・・・ほんとに重症ね。」

 

 ええ、そうですよ。スタンディングデュエルってずっと腕構えてるようなもんだからかなり腕がつるんだよ。最初はいいけどぶっ続け3時間はやばいわ。部活かなんかか。いや、部活なんだけどさ一応。何だっけ、自分が所属してる部活?やべぇ、忘れた。

「あんたが所属してるのは決闘部と剣道部よ、大牙や凪流と一緒ね。」

 

「うん、ナチュラルに心読むのやめてくれないかな?そうだったね、剣道部も入ってたね確か。」

 

「忘れないでよ、そんな事。・・・仕方ないか、あんたほとんど学校に来てないしね。そうそう、思ったんだけど。」

 

 ん?

 

「ほら、あんたが食堂行ったら目立っちゃうでしょ。上の階の予備教室で休んでなさい。購買で何か買ってきてあげるわ。」

 

 おおお。その提案は疲れてる俺にとってはまさに神の啓示!

 

「神よ、感謝します。」

 

「誰が神だバカ野郎。ほら、ちゃっちゃと休んできなさい。」

 

「ありがとう香澄!今度なんか奢るよ!」

 

「なら、今度ケーキでも奢りなさい。私と凪流にね。」

 

 マジで助かった。今ならいくらでもこいつに奢れる自信がある。なんで凪流にも奢らなければならないかは分からないがまあいいか。ただし大牙、テメーはだめだ。

 

 さて、上の教室で香澄を待つとしようか。

 

 

 

 無事に昼飯を食べ終えて、試合を再開することになったんだけど・・・。

 

「なんでここにいるの香澄?」

 

「いや、最近あんたとはやってなかったと思ってね、たまにはいいじゃない。」

 

 ダメだった?と香澄。

 

「いや、いいんだけどさぁ。」

 

「ならさっさとかまえる!来いよベネット。武器なんか捨ててかかってこい!」

 

「野郎ぶっ殺してやる・・・って誰がベネットだよ。武器(デッキ)捨てたらだめだろ。」

 

「冗談よ。それより行くわよー。」

 

 ああ、でもお前なら・・・。

 

「「デュエル!!」」

 

 お前なら、このデッキ使ってもいいよね・・・?もう、ストレスが限界なんだ・・・。

 

「私のターン。カードを2枚伏せて手札抹殺を発動。2枚捨てて2枚ドロー!」

 

「5枚捨てて5枚ドローする。」

 

 初手から手札抹殺。嫌な予感しかしねぇ。

 

「私は伏せていた思い出のブランコを発動し、ギガプラントを特殊召喚!」

 

 早々にでた香澄のデッキのキーカード、ギガプラント。手間はかかるがかなり優良なモンスターだ。俺もアロマージや蠱惑魔なんかのデッキに投入していた。まあ、デッキの相性もあり早々にリストラされたが。

 

 思い出のブランコ

 通常魔法

(1):自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。

 

 ギガプラント

 デュアルモンスター

 星6/地属性/植物族/攻2400/守1200

このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。●1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。自分の手札・墓地から昆虫族または植物族モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

「伏せたスーペルヴィスを装備しギガプラントの効果発動!墓地に存在するローンファイア・ブロッサムを特殊召喚。効果発動しデッキから2体目のローンファイアを召喚。ローンファイアをリリースしデッキから2体目のギガプラントを召喚し、再度召喚!」

 

 スーペルヴィス

 装備魔法

デュアルモンスターにのみ装備可能。装備モンスターは再度召喚した状態になる。フィールド上に表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

 スーペルヴィスを装備したことでデュアル扱いになったギガプラントとローンファイアから出てきたギガプラント。奴の効果は正直チートもいいとこだ。毎ターン植物昆虫蘇生ってどうよ。でもなんで3体目のローンファイアをデッキから出さなかったんだろう。

 

「ギガプラントの効果により墓地のローンファイアを蘇生し、ローンファイアの効果でローンファイアをリリースし、スポーアを特殊召喚。さあ、行くわよ!!」 

 

 あ、これまずい奴。

 

「レベル6ギガプラントにレベル1スポーアをチューニング!!現れよ、邪竜星-ガイザー!!更に装備されていたスーペルヴィスの効果でギガプラントを蘇生!!」

 

 よ、良かったDDBじゃなくて。DDBなら多分終わってたな、このターンで。DDBがこの世界では手に入りにくくて本当に良かった・・・。

 

 邪竜星-ガイザー

 シンクロ・効果モンスター

 星7/闇属性/幻竜族/攻2600/守2100

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「邪竜星-ガイザー」の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードは相手の効果の対象にならない。(2):自分フィールドの「竜星」モンスター1体と相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。(3):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから幻竜族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

「墓地のローンファイアを除外してスポーアの効果発動!レベルを4にして特殊召喚!」

 

 あ、レベル10。ってことは・・・。

 

「レベル6ギガプラントにレベル4スポーアをチューニング、シンクロ召喚、神樹の守護獣-牙王!!」

 

 神樹の守護獣-牙王

 シンクロ・効果モンスター

 星10/地属性/獣族/攻3100/守1900

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードは、自分のメインフェイズ2以外では相手のカードの効果の対象にならない。

 

 出たよ耐性がめんどくさいモンスター2体目。

 

 「カードを1枚伏せるわ。私はこれでターンエンドよ!」

 

 KASUMI

  手札1

 

 フィールドには上級モンスターのギガプラントが1体。そしてシンクロモンスターの牙王が1体とガイザーが1体。この状況はかなりまずい。上級最上級モンスターあわせて3体のこの状況。先行でここまで展開するのは悪手だと思うが、何度かこいつにやったワンキル対策ならまあ納得がいくし、場持ちのいいモンスターだから次のターンまで残る可能性は高い。ギガプラビート相手に長期戦はまずいからだいたいワンキルかメタビを使ったせいか、これ以上ないくらいに展開してきた。牙王は兎も角ギガプラは処理しないと大変なことになりそうだ。

 

 いわば背水の陣みたいなもんである。・・・まあOCGならライトニングで即死ぬのだが。でも残念ながら

 

いかんせん『No』カテゴリは悪目立ちし過ぎる。出来れば使用は控えたい。原作のこともあるからどこまで世間影響するかわからないため今までもNoやシグナーのカード、三幻神などは一部を除き使用を控えてきたのだ、自重忘れたときもあったけど。こいつら便利だし汎用性高いからもっと使いたいんだけどなぁ。

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 それにしても、さっきのドローの時から思ってたのだが、この手札からみなぎる殺意の波動を感じる・・・。というか殺意しか感じない・・・。

 

「俺は六武の門を2枚発動。」

 

 きました鬼畜カード2枚・・・。何が酷いって?そりゃまあ、うん。察しろ。

 

 六武の門

 永続魔法

「六武衆」と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚される度に、このカードに武士道カウンターを2つ置く。自分フィールド上の武士道カウンターを任意の個数取り除く事で、以下の効果を適用する。●2つ:フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」または「紫炎」と名のついた効果モンスター1体の攻撃力は、このターンのエンドフェイズ時まで500ポイントアップする。 ●4つ:自分のデッキ・墓地から「六武衆」と名のついたモンスター1体を手札に加える。 ●6つ:自分の墓地に存在する「紫炎」と名のついた効果モンスター1体を特殊召喚する。

 

「さらに六武衆の結束を発動し、手札から真六武衆カゲキを召喚。召喚時効果で手札から六武衆の影武者を特殊召喚。召喚に成功したので武士道カウンターが門に4つづつと結束に2つ乗る。」

 

 六武衆の結束

 永続魔法

「六武衆」と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚される度に、このカードに武士道カウンターを1つ置く(最大2つまで)。また、武士道カウンターが乗っているこのカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っていた武士道カウンターの数だけデッキからカードをドローする。

 

 真六武衆-カゲキ

 効果モンスター

 星3/風属性/戦士族/攻 200/守2000

このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「六武衆」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。自分フィールド上に「真六武衆-カゲキ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で存在する限り、このカードの攻撃力は1500ポイントアップする。

 

 六武衆の影武者

 チューナー(効果モンスター)

 星2/地属性/戦士族/攻 400/守1800

自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体が魔法・罠・効果モンスターの効果の対象になった時、その効果の対象をフィールド上に表側表示で存在するこのカードに移し替える事ができる。

 

 さて、満足させてもらおうか。

 

「門の効果発動。フィールドの結束のカウンターと門のカウンターを2つづつ取り除きデッキから真六武衆キザンを手札に加える。そしてフィールドに六武衆が存在するので手札からキザンを特殊召喚。またカウンターが乗る。」

 

 効果モンスター

星4/地属性/戦士族/攻1800/守 500

自分フィールド上に「真六武衆-キザン」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。自分フィールド上にこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で2体以上存在する場合、このカードの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。

「そしてレベル3カゲキにレベル2影武者をチューニング、シンクロ召喚。真六武衆シエン!シエンの召喚に成功したのでカウンターが乗る。門の効果で門のカウンターを4つ取り除きキザンを手札に加える。もう一つの門のカウンターも取り除き、六武衆の師範を手札に。」

 

 真六武衆-シエン

 シンクロ・効果モンスター

 星5/闇属性/戦士族/攻2500/守1400

 戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」と名のついたモンスター1体以上

1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動する事ができる。その発動を無効にし、破壊する。また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を破壊する事ができる。

 

「結束の効果発動。このカードを墓地に送りカードを2枚ドロー。キザンを特殊召喚。カウンターが乗る。六武衆がフィールドにいるので師範は特殊召喚出来る。師範の召喚に成功したのでカウンターが乗る。」

 

 六武衆の師範

 効果モンスター

 星5/地属性/戦士族/攻2100/守 800

自分フィールド上に「六武衆」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。このカードが相手のカードの効果によって破壊された時、自分の墓地の「六武衆」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える。「六武衆の師範」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

 

「六武式三段衝を発動。相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する。」

 

 ネタ枠で入れたカードをここで引くとは・・・。因みにヤリザ殿も入ってたでござるが、手札抹殺で墓地に行ったでござる。

 

 六武式三段衝

 通常魔法

自分フィールド上に「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で3体以上存在する場合、以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。●相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。●相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを全て破壊する。●相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 さて、香澄よ。呆気に取られているお前にはこのセリフを送ろう。俺の大好きな某仮面ライダーの台詞を。

 

「さあ、お前の罪を数えろ。」

 

「あんたの方がよっぽど罪深いわ!!何よその展開!!インチキ効果もいい加減にしなさい!!」

 

 ブチ切れた、まあ仕方ないか。だがインチキ効果云々はお前が言うな。知っているんだぜ?お前が手札抹殺の時にローンファイアだけでなくグローアップ・バルブも墓地に送ってるの。

 

「知らん、そんなのは俺の管轄外だ。シエンで攻撃!!」

 

「聖なるバリア-ミラーフォースを発動!!」

 

 仕事しないことに定評のあるミラフォ。でも当たったら強いんだよなぁ。・・・当たれば。

 

「ところがギッチョン、シエンの効果により、ミラーフォースを無効にする!攻撃は続行!!」

 

「ミラフォ仕事しろおォォォーーーー!!」

 

 香澄の雄たけびがこだまする。 女の子がそんな声あげるんじゃありませんよ。まあ、これで伏せカードが無くなったわけで・・・。

 

「残りのモンスターで一斉攻撃!!」

 

「きゃああぁぁぁぁ!!」

 

 KASUMI 4000→0

 

 勝った、第三部、完!!

 

 俺が一人勝利の余韻に浸って≪答:コロンビア≫のポーズをとると香澄が対戦者側から走ってきた。手札の死者蘇生を握りしめて。てか最後の手札死者蘇生かよ、危ない危ない。次のターンで下手すりゃ負けてたな。

 

「何よそのデッキ!!何あのアドの取り方!!そんなデッキよく今日のイベントで使用許可出たわね!!」

 

 おいおい、何を言っているんだ?

 

「許可なんて出てないけど?」

 

「へ?」

 

 随分と間の抜けた返事が返ってきた。

 

「こんなデッキ、プロでもない奴にそうそう使うわけないだろ?お前だから使ったんだよ、お前だから。丁度いいデモンストレーションにもなったみたいだしね。」

 

 アリーナを見上げると見学席からの視線がやばいことになってる。皆ポカーンてなってヤンの。俺のせいだけどさ。まあ高校の部活のデモンストレーションでこの展開はないわなぁ。門はやっぱり1枚でちょうどいいです。こうなるから。

 

「じゃあそのデッキってプロ用の奴?」

 

「何言ってんだ。あたりまえだろ?お前ら相手ならこれくらいがちょうどいい・・・ってなんで嬉しそうなんだよ。」

 

 なんかキモイ。

 

「いや、ようやくあんたが私に本気出してくれるようになったなぁって思うとね。ほら、今まであんまり本気出されてた記憶ないからさ。」

 

 あ~成程。でも・・・。

 

「お前ら相手にはもうずいぶん前から本気用デッキ使ってるんだがなぁ・・・。」

 

「え、そうなの?」

 

 そうじゃないのにシャドールとか使いません。お前らエクストラデッキ大量に使うからネクロスは流石に自重したけど。

 

「そうなんだ~。これは皆に報告しないと。あんたも頑張りなさいよ~。」

 

 そして香澄はどこかに走っていった。

 

「・・・まあ、良かったのかな?さて・・・と。」

 

 香澄が行ったあと、俺は自分の前の列を見る。何人かがさっきのデュエルに引いたのか列からいなくなってたが、それでも多い。

 

 どうやら俺の仕事はまだまだ終わりそうにない様だ。

 

 

 

 

 『5時になりました。これにて舞網高校部活動体験会を終了します。』

 

「終わった・・・。地獄が終わった。」

 

 もう立つのが限界である。実質8時間もずっと立っていたわけだからいくらデュエリストでも限界である。でもここから歩いて帰らなきゃあならないんだよなぁ。

 

「いや、考えても仕方ない。帰ろう。」

 

 押し寄せるファンをよけながら荷物をもって校門まで歩く。この辺はマジⅣさんリスペクトっす。ああ、足が重い。

 

「お疲れさま。」

「お疲れさん。」

「お疲れ様です。」

 

 え?

 

振り向くと3人組がいた。てか大牙も凪流もここにいたんだ。剣道部の方に顔出してなかったからそっちだったのかな?決闘部には俺がいたから気付かないはずないし。

「いやさぁ、お前が帰るの待ってたんだよ。声かけようにもお前はファンやらなんやらに囲まれてたからな。仕方ないからここで待ち伏せしてた。」

 

 成程成程。それはそれは・・・。

 

「うむ、よきにはからえ。」

 

「ぶっ殺すぞ。」

 

 うん、やっぱりこいつをからかうのは愉しい。愉悦。

 

 まあ、大牙はいいとして・・・君らは?

 

「私たちはあんたにケーキ奢ってもらうために待ってただけよ。ね、凪流。」

 

「ええ、香澄。どうせなら駅前のあそこにしましょう。いつもよりもグレード高めで。」

 

 え、今から?・・・財布大丈夫かな?あ、ギリギリ足りそう。

 

「・・・お前たちとの友情には涙が出るよ。」

 

「あら、もっと感謝してもいいのよ?」

 

「嫌味が通じねぇ!」

 

 まあ、いいか。

 

 ・・・こいつらといるの楽しいし。ケーキくらい奢ろうじゃないか、それがたとえ1つ600円もするケーキだったとしても。駅前の方は本気で高いんだよなぁ。

 

「じゃ、そこにする?どうせだからそこで晩飯も食べちゃいたいんだけど。」

 

「何言ってんの?ケーキが晩御飯よ。」

 

「男の俺にはきついんで勘弁してください。」

 

「冗談よ。まあ、今日はいつもの喫茶店でも行きましょ?」

 

 あそこも何気に高いんだけど。

 

「・・・ドンマイ、菊。」

 

「・・・財布に金入ってたかな?軽いノリでかなり財布が軽くなりそうだ。」

 

「いざとなったら貸すぜ。」

 

「ありがとう大牙、今はお前の気遣いが身に染みるよ・・・。」

 

「やめろよ、きもい。」

 

 酷いやつだ。まあ、最悪ATMによればいいんだけどね。仮にもプロだからお金には余裕あるし。

 

「あ、でも・・・。」

 

 凪流がこっちをちらりと見る。ん?

 

「菊、今日って確か遊矢君の最後の試合の日じゃありませんでした?」

 

「うん、そうだけど。」

それがどうしたの?と聞く前に凪流が口を開いた。

 

「なら、もしかして家族で食べに行く予定とかあったんじゃ・・・。」

 

「・・・あ。」

 

 しまった。その可能性はまったく考えてなかった。慌てて携帯をみると着信が3人。父さんと柚子、それに遊矢君のお母さん。とりあえず父さんに連絡してみる。

 

「もしもし父さん?」

 

『ああ、ようやく終わったか菊。いまから権現坂君のところの道場に来れるか?』

 

「いいけど。道場ってことはもしかして最後の相手って権ちゃん?スマイリーさんも酷なことするねぇ。」

 

 だいぶぼやけて薄れてきた原作知識を引っ張り出して聞いてみる。

 

『ははは、まあね。今からご飯を食べに行くからお前も来なさい。とりあえず祝勝会だ。権現坂君もくるからさ。』

 

 やっぱりかと思って凪流たちの方を見ると全員行ってきなさいって顔をしている。本当にいいやつらだ。

 

 電話を切って凪流たちに謝る。

 

「ごめん、皆。またの機会でいいかな?」

 

 すると皆仕方ないって感じで、てかさっさと行ってこいって感じで送り出してくれた。

 

「行ってらっしゃい。そうですねぇ、埋め合わせとして私がユースで優勝して、その時の祝勝会は菊持ちで全額、それもお高いめのを奢ってくれるってのはどうです?」

 

「あ、俺もそれで。」

 

「私もね。だから気にせず行ってらっしゃい。」

 

「ワーオ財布が薄くなるね!ごめん、今度埋め合わせするよ!急ぐからこれで!」

 

 軽口を叩いて別れを告げた後、急いで道場に向かう。走ればなんとか20分くらいだろうか。足痛い。

 

 今思えば、ここでちゃんと原作を思い出すべきだったんだろう。

 

 ジュニアユースの大会であの事が起きて、ユースどころではないことを。

 

 その関係で大会が中止になることを、しっかり思い出すべきだったんだと思う。

 

 そうすれば・・・きっとあんなことにはならなかったと思うから。

 

 

 

 

 

 因みに、この後諸事情により俺はかなり遅れて道場につき、柚子にハリセンで叩かれることになったのは完全に蛇足である。頭いてぇ・・・。

 




それはそうとウィング・レイダーズが遂に発売されましたね。作者は学校の帰り道に2BOX買って、シングルも何枚か購入し、とりあえずRRは完成しました。超量も組んでみたいなぁ。


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舞網チャンピオンシップ、開催
第1話


お待たせしました、作者の現実逃避小説です←おい

それから今回デュエルはありません。考えてる時間なかった。

それから、大まかな大会の流れはほぼ同じですので、分からないところはアニメを見てください。


 なんでこんなことになったんだろう。

 

 いや、分かってるんだよ、それもこれも全てプロになったせいなのは。

 

 でもさぁ。

 

 まさかマイアミチャンピオンシップの解説役として出るとか。

 

 しかもそのせいで遊勝塾の面々とほぼ別行動とか、マジでやってらんねぇ。いや、実際に解説役つっても、メインでやるのは2次のバトルロワイヤルだけだから1次は少しだけ抜けれるんだけど。

 

 それでも、やっぱりジュニアユースの開会式のほうはアリーナ裏で見るしかないよなぁ。せっかくビデオカメラ新調したのに。

 

「どうしましたか?柊選手。」

 

「いや、何でもないですよニコさん。」

 

 いや、あるんだけど。てか早々に帰りたいんだけど。ああ、遊矢たちの姿をゆっくり観客席で見たかった。ニコさん、いい人なんだけどちょっと実況が真横でやられると・・・。ほら、うるさいんだよ。盛り上がっていた気分が一気に氷点下一歩手前になりそうなレベルで。

 

 いや、プラスに考えよう。

 

 そうだ、まず観客席よりも近くで遊矢たちを見ることができる。それに加えてやることといえば解説なんか効果の説明やプレイングに茶々入れるだけでいい。それに・・・俺の目的を考えると、スタッフとしてアリーナを自由に動き回れるほうが都合がいいかもしれない。

 

 なら仕方がない。甘んじてこの立場を受け入れよう。確か1回戦は柚子がストロングして百合になるんだっけ?もう10年ほど前のストーリーは思い出せないなぁ。てか、アニメのほうそこまで見てなかったし。素良の顔芸はニコニコで見たっけなぁ。

 

 さて、気持ちにひと段落つけたらトイレに行きたくなってきた。

 

「ニコさん、すいませんが少々席を外してもよろしいですか?」

 

「ええ、かまいませんよ。どうぞ。」

 

「すいません、開会式までには戻ります。」

 

 さて、トイレってどっちだったっけ?

 

   ◇

 

 トイレを済ませると、柚子からメールが来てることに気付いた。

 

 何々?『遊矢がいなくなった』?!

 

 いや、マジで?!何してんの遊矢?!

 

 ・・・たしか、この先遊勝塾の集まるとこだったよなぁ。ってあれ、遊矢君じゃないか?しかも揉めてない?あ、権ちゃんが行った。

 

 ああ、よかった。本番前に絡まれるとか、遊矢君なかなかにハードだなぁ。まあ、ジュニアユースすっ飛ばしてユースに出た時の俺ほどじゃないか。あの時は周りの視線が超痛かったなぁ。

 

 ん?なんかさっき絡んでた子、こっちに来てない?

 

「久しぶりだな、柊プロ。」

 

 ん?俺こいつに会ってたっけ?

 

「・・・ふん、テメェとは大会で会うことはないが、代わりにお前のかわいい妹たちに勝って、雪辱を晴らしてやる。」

 

 そういってどっか行っちゃったけど・・・。

 

「菊兄さん!暗黒寺は?!」

 

 遊矢、遊矢じゃないか!どうしてここに?って、たださっきの子を目で追ってたら気付いただけですね分かります。

 

 つか、それはそれとして聞きたいことが。

 

「遊矢。」

 

「何?」

 

「・・・さっきの子、誰?」

 

「・・・本気?」

 

「本気。」

 

 そう言ったらなんかため息つかれた。解せぬ。

 

「・・・最初にあった日、俺と柚子に絡んでいた暗黒寺を権現坂が止めに入っていたときに、兄さんが介入して撃退したことがあったじゃないか。」

 

 ああ、思い出した。スキドレ暗黒界の悲劇だ。いやぁ、まさかいくらスーパードロー型とはいえあそこまで1ターンに展開できたのはそうそうないよなぁ。個人的にはスーパードローよりもデーモン型や魔轟神型、もしくはデスガイドや魔サイ、オクトロスを組み込んだビートダウン型が好きなのだが、どうにも勝率が芳しくない。作っているとなぜか虚無やスキドレを張ってしまう。OCGではよくあること。

 

 まあ、思い出してすっきりしたところで。仕事しないと。

 

「じゃ、遊矢。頑張れよ。柚子と権ちゃんにもそう伝えておいてくれ。」

 

「え、菊兄さん!どこ行くの?」

 

 あれ、言ってなかったっけ?まあ、そのほうが面白そうだしいいか。

 

「ちょっと野暮用。試合は見てるから安心しな。」

 

 あ、時間やっべ。ニコさんとこに戻らないと。ニコさん、あんな感じだけど時間や約束事には厳しい人だからなぁ。プロになりたての頃はそりゃあお世話になりました。

 

 廊下、走って大丈夫かな?まあ、注意されたら歩こう。

 

 ん?あれ、零児君じゃない?こんなとこにいていいのかな?ってなんか小さい子もいる。まさか誘拐?!

 

「何してるんだい零児君?」

 

「・・・柊プロ。」

 

「・・・その呼び方やめてよ。」

 

 最近じゃぁクラスメイトまでそれで呼んでくるからオフの実感ないんだよねぇ。

 

「その子は?誘拐でもしたのかい?」

 

「・・・誘拐ではありませんよ。弟の零羅です。」

 

 あ、そういえばいたなぁ、弟君。CCCだっけ?あのデッキ使ってみたいよなぁ。若干だけど属性HEROやシャドールみたいな香りがプンプンする。

 

 てか、3年前に比べて本当につまんなくなったなぁ、零児君。昔はリアクションとか面白かったのに。今じゃあなんか余裕がないっていうか。誘拐犯扱いしたのに突っ込みがこんだけとか元関西人としてはなんか残念。

 

「あの・・・。」

 

 ん?何かな零羅君?

 

「柊菊さん・・・ですよね?」

 

「ああ、君には自己紹介してなかったね。初めまして、柊菊です。零児君にはお世話になってます。」

 

「うわぁ・・・本物だ・・・。」

 

 ん?目をそんなにキラキラさせてどうしたんだい?君も僕のファンになったのかな?

「あの・・・試合、よく見てます。あの・・・それで・・・えっと・・・。」

 

 ああ、人見知り激しいタイプなのかな?すごい挙動不審なんだけど。

 

「お。応援してます!が、頑張ってください!!」

 

 お、おおう。まさか本当にファンだったとは。でもいいのかい零羅君。横で君の兄が複雑そうな目で見ているよ。

 

「そ、それでは!」

 

 あ、逃げてった。ん?あれは確か零児君のお母さん。あ、後ろに隠れた・・・中島さんの。そこはお母さんの後ろに隠れてあげなさいよ。

 

「・・・驚きました。」

 

「ん?」

 

「零羅が、あんなにはっきりと誰かと会話するのは、初めて見ました。」

 

「・・・兄として複雑かい?」

 

「ええ、まぁ。」

 

 どうせなら自分のファンになってほしい。そういう思いがあるのはプロデュエリストにとっては絶対にある気持ちだから無理もない。だから零児君、そんな複雑そうな目で俺を見ないで。デュエルここでしないから。ぼそっと「今ここで倒せば・・・」とか「あのデッキなら・・・」とか言わないで。ほんとに。怖いから。つか君、隠れブラコンの気があるんだね。

 

「じゃあ、俺はここで。はやく行かないとニコさんに怒られちゃう。」

 

「ええ、それでは会場で。」

 

 ここは時間を盾にした逃走の一手だ。アラホラサッサー、ってこのネタ通じる人はなかなかの世代な気がする。

 

 さて、お仕事お仕事。若くして社畜の俺は馬車馬の如く働きますよーだ。・・・あんまり使わないから最近貯金が凄い額になってきているのは気のせいだと思いたい。どれだけ働いたんだろう。労働時間を考えるのが最近怖いです。

 

  ◇

 

 遊矢side

 

「はい、ありがとうございました榊遊矢君!!」

 

 スピーチが終わり、会場から拍手がなる。正直、初めてやったこともあってかスピーチの内容はほぼ思い出せないが、うまくいっていることを願うばかりだ。

 

 柚子も権現坂もなんだか笑っているみたいだ。笑われるの間違いでないことを祈るが、アユやフトシたちが嬉しそうに騒いでいるのを見るに大丈夫だったんだろう。・・・大丈夫、だよね?

 

「さて、それでは今大会のスペシャルゲストの紹介です!!」

 

 ニコさんがそう言ってアリーナの、俺たちが入場したほうの入り口とは正反対の入り口を指さした。スペシャルゲスト?もしかして・・・。

 

「それでは登場してもらいましょう!どうぞ・・・って、え?」

 

 そういって皆がニコさんの指さしたほうを見るが、誰も来ない。あれ、思い違いかな?

 

「どうしたんでしょうか?何かトラブルがってのわぁ?!?」

 

 いきなり何かがアリーナの会場から飛び出てきた!!あれは、ブラック・マジシャン?!それにあれは真紅眼の黒竜!他にも巨大ロボのようなカードやハンバーガーのようなモンスターまでやってきた。最後に出てきたのは綺麗な光を放つ竜。よく見ると兄さんが乗っている!

 

「飛翔せよ、スターダスト・ドラゴン!!」

 

 この声って?じゃあゲストってやっぱり!!

 

「ニコさーん、マイクくださーい!!」

 

「は、はい!!」

 

 ニコさんもこの登場は予想外だったようだ。まあ、想定内でも驚くよね。

 

 菊兄さんはマイクを受け取ると会場全体に声が響き渡るように叫んだ。

 

「Good morning everyone!! 本日はお集まりいただきありがとうございます!!皆さま、わたくしからのサプライズはいかがだったでしょうか?」

 

 どこかかしこからよかったぞーといった声が聞こえてくる。確かにすごかった。特にあの綺麗な竜の飛ぶ姿には感動を覚えた。

 

「それはよかった。ああ、自己紹介が遅れました、柊菊です。一応若輩ながらプロデュエリストを務めさせていただいてます。本日は、私柊菊が今大会の試合をニコさんと一緒に解説していきますので、どうかよろしくお願いします。」

 

 そういって兄さんはお辞儀をした。どことなく様になっていて、純粋にかっこいいと思った。のもつかの間、兄さんがにやりと笑う。あ、これダメなやつかも。

 

 俺が今までの経験から嫌な予感がしていたが、兄さんは続けた。

 

「それでは、ただいまより!!舞網チャンピオンシップを開催します!!」

 

 その瞬間、待機していたブラック・マジシャンと真紅眼の黒竜の攻撃が上に向かって放たれ、そこに向かって巨大ロボがハンバーガーを投げる。

 

「今だ、スターダストドラゴン!!シューティング・ソニック!!」

 

 その攻撃はちょうど投げられたハンバーガーとモンスターたちの攻撃と重なり合い、綺麗な花火になった・・・原材料がハンバーガーなので何とも微妙な気持ちにはなるが。

 

 だが、綺麗な花火には変わりがない。観客たちはよろこんでるし、主催者席にいる人たちも・・・赤馬零児以外は問題なさそうだ。赤馬零児だけはなんだか微妙そうな顔をしてるけど。俺と同じ結論に至ったんだろうなぁ。

 

 まあ、こんな感じだったが、舞網チャンピオンシップが開催された。

 

 とりあえず菊兄さんに話を聞きに行こう。柚子が隣ですごい顔してるのは気のせいだと思いたい。

 

   ◇

 

  菊side

 

 いろんな人に怒られた。まあ当然かもしれないけれど。

 

 人が頑張ってあれだけのモンスターを展開したんだからもう少し褒めてほしい。いや、ハンバーガーを花火にしたのは失敗だったかもしれないけど。仕方ないじゃないか。思いついたインパクトの強いキャラがあれだったんだから。思わず自分でもきたねぇ花火だって思ってしまったが。

 

 あ、ちなみにハングリーバーガーなんだが、攻撃力は変わらないのになぜか素材によって攻撃や破壊されるときのエフェクトが変わったりする。今回はその性質を利用してバグマンたちを素材にしてみた。結果、花火の尺玉代わりになったというわけだ。形はどこからどう見てもハンバーガーなのに実は火薬がふんだんに使われた花火玉。サプライズは無事成功したらしい。ちなみに巨大ロボはグレートマグナス。カタパルトタートルで射出してもよかったが、インパクト性重視で採用。まあ、実戦用のデッキではないのでスタッフさんに手伝ってもらったりはしたけど。スターダスト・ドラゴンは攻撃時のエフェクトが綺麗なのがこいつ以外に考えられなかった。後々の影響を考えはしたけど、マイナーカードと観衆たちが勘違いしてくれることにかけた。実際、スタッフもグレートマグナスは知らないみたいだったし。

 

 あと、遊矢たちにはかなり質問攻めされました。まあ、一応サプライズゲストだから秘密にしていたって言えば納得してくれたあたりもう少し疑ってくれてもいいと思う。信頼が痛い。ほんとは伝え忘れてただけなのに。

 

 閑話休題。

 

 実は今、何やかんやで今現在、病院にいます。

 

 まあ、原因は素良が入院したから。生ゲス顔をこの目で見ることができたのはOCGプレイヤーとしてかなりうれしい。まあ、現在安静中の素良君や遊矢には悪いから口に出さないし、これでも自分なりに心配はしているんだけど。

 

 だけどその肝心な素良君は病院から抜け出していたらしい。

 

 だからかな・・・。

 

 

 

「菊兄さんお願いだ。俺を乗せて素良のやつをバイクで追ってほしい!!」

 

 こんなことを遊矢にお願いされることになったんだと思う。




月光、面白そうですねぇ。天キあるので作ってみようか迷っています。

・・・まあ、受験が優先なんですけどね。


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第2話

注意 
今回、「月光黒羊」のペンデュラムに関する効果を抜きました。これはまだセレナがPカードを持っていないからと思ってください。のちに社長の手によってエラッタされるでしょう。

それはそうと最近Fate/GOにハマってます。無課金ですが運よくSSRのジャンヌが当たったから地味に少しづつやってたのですが最近孔明さんと玉藻がうちにやってきました。その前からいるオリオンさんも併せてSSR4枚になったぜやったね。まあ、うちにはアタッカーになるサーヴァントが居ないんですけどね・・・。だれかフレンドになってください・・・。
それにしてもどうしてうちに来るレアキャラはキャスターとアーチャーばかりなんでしょう?


 結論から言うと、俺がいた意味はほとんどなかった。

 

 精々が戦おうとする素良君を腹パンでおとなしくさせたと思ったらいつの間にか消えてるし、かといってなんか髪型がバナナでナスな彼らのデュエルを観戦してすげぇとか思ったら遊矢までシンクロしてハッスル(隠語)しちゃうしで、特に意味はなかった。

 

 結果として俺は、倒れた遊矢のタクシー替わりとなっただけでした、まる。

 

 まあ、遊矢が倒れた時はほんとにパニクったが、幸いにも柚子が取り乱した分冷静を保てたと思う。

 

 さて、遊矢が目を覚ますまで一緒に付いていたかったが、仕事もあって中々付きっ切りというわけにはいかず、ここ数日はほんとに落ち着かなかった。まあ、無事目を覚ましたみたいでほんとによかったと思う。

 

 それよりも火急だ。先ほど、ある人が命の危機にあると香澄から電話がかかってきた。俺自身は大して関わり合いがないのだが、だからと言ってその事態を知って見て見ぬふりはできない。バイクを飛ばせば一瞬なので、その人物の命が残っていることを祈ろう。

 

 10分ほどたっただろうか。目的の場所についた。もう扉の前から明らかに嫌な予感がするが、覚悟を決めなければいけない。SOSが来たのはこの先からなのだから。

 

 意を決して扉を開ける。中から若干黒い煙が出てきて、苦いにおいが充満する。くじけそうな心を保って、呼びかける。

 

「北斗君!!凪流!!無事か?!」

 

「き、菊さん、どうしてここに・・・。」

 

「しゃべるな北斗君!!この事態は香澄から聞いた!!凪流は!!無事か!?」

 

「ね、姉さんは台所に。」

 

 やっぱりか。この事態は一刻を争う。

 

「とりあえず北斗君は家の外に!!俺は凪流を!!」

 

「分かりました・・・。」

 

 ま、まさか帰国して1ヶ月でこんな事態に遭遇するとは・・・。とりあえず凪流を止めないと・・・。

 

 大急ぎで台所へ向かうとやはりそこに凪流がいた、エプロン姿で。

 

 ああ、お前は・・・。

 

「料理をするな凪流-----!!!」

 

「ひゃあぁ?!?!」

 

 驚くんじゃねぇ!!俺としてはこの現状ならぬ惨状に驚きだわ!!せめて換気扇回せや!!おかげで北斗君一酸化炭素中毒一歩手前!!

 

「どうしたんですか、菊。ここは私の家ですよ?」

 

「そうか、じゃあお前はいま何してた?」

 

「何って、料理ですよ。北斗の試合が見たいからって父さんも母さんも昨日の晩から働きづめですからせめて料理をと思いまして・・・。」

 

 そうか、お前はその黒い煙を放つ物体Xをあくまで料理と言い張るのか。

 

「ちなみに、何を作っているんだ?」

 

「見たらわかるじゃないですか。」

 

 分かるか。俺が見てるのは変わった形の炭だけだ。いや、この形は・・・魚の切り身だよな。もう原型ないからわからないけど。

 

「・・・魚のステーキか?」

 

「いえ、ムニエルです。」

 

 ムニエルはこんなに焦げねぇよ。炭じゃねぇか。バーベキューで使えそうですね。木炭の代わりとして。つか朝からムニエルとか重たいなオイ。

 

「なぁ、凪流。」

 

「なんですか?」

 

「ムニエルは強火でやるもんじゃないぞ?」

 

「え?」

 

 いや、それぐらい分かれ。

 

「でもこの前やったとき全然火が通らなかったのですが・・・。」

 

 それはじっくり焼かないからだよ。むしろ黒い煙を発生させてなお火を止めないお前の脳はどうなっている。

 

「・・・とりあえずこれは捨てよう。」

 

「え、もったいないじゃあないですか。」

 

 もったいないのはお前の使い方が悪かったせいですけどねぇ?!

 

 いや、いっそこれ食わしてみるか。

 

「凪流。口開けろ。」

 

「え?」

 

 とりあえずまだ切り身としてかろうじて残ってる部分を口の中に放り込む。瞬間凪流の顔色が悪くなった。そりゃあ比較的マシとはいえそこでも腸より苦そうですもんね。

 

「・・・捨てるぞ。」

 

「・・・ハイ。」

 

「・・・お前は換気した後北斗君を呼んで来い。玄関にいるはずだから。」

 

「・・・菊はどうするんですか?」

 

「後片付け。焦げだけでもフライパンから取っておくよ。」

 

 テプロン加工はダメになってるかもしれないがな。

 

「・・・ありがとうございます。」

 

「そう思うなら親から教われ。」

 

 3年前よりかはマシだから。見込みはあると思いたい。あの時は酷かった。今回がムドならあれはムドオン通り越して死んでくれる?って感じだった。間違いなくアリスが召喚されてただろう。残念なことに呪殺無効を持ってなかった俺らは速攻沈んだ。あの時ほど花村の気持ちが分かったことはない。

 

 それにしても、香澄の手が離せないからってまさか俺のほうに来るとは。こういうのはどっちかっていうと大牙の役目だと思っていた。まあ、大牙も香澄も今日試合だったはずだから来れないのは仕方ないか。

 

 さて、片付けよう。フライパン、汚れの貯蔵は十分か?!

 

  ◇

 

 さて、どうしましょう。

 

 いや、台所は片付いたんだよ。

 

「・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「菊・・・。」

 

「なに?」

 

「・・・朝ごはんどうしましょう。」

 

 いや、知るかよ。

 

 現在午前8時。今日の試合は9時半から北斗君のがあるらしいのでそれに間に合わせなければならない。北斗君か凪流のどちらかがバイクを持っていればここから少し離れたところにある朝からやってる定食屋に連れて行くところなのだが、歩いていけば間違いなく間に合わなくなる。

 

「姉さん、道のコンビニでなんか買っていくからいいよ。」

 

 いや、ここは・・・。

 

「なあ、凪流。」

 

「はい?」

 

「台所、借りていいか?」

 

「ええ、かまわないですが・・・。」

 

 そうか。とりあえず片付ける時に見た冷蔵庫には・・・。うん、これならいける。

 

「凪流、台所に来い。料理教えてやるから。」

 

「え?!菊が料理?!」

 

 失礼な。これでもアメリカでは自炊してたんだぞ。料理なんて基本レシピと家庭科の教科書通りにやっていけば簡単なんだから。

 

 さて、とりあえず白菜と豚肉を和風だし・・・はないから鰹節から取るか。そっちの用意もしないと。出し取ってる合間に卵を出して・・・ついでだから出し巻きに変更するか。 朝だから魚は・・・あ、みりん干しがある。これ焼けよお前は。じゃあこれグリルに突っ込んで、火にかけとこう。あ、沸騰しそう。急いで鰹節取り出して、っと。卵といたやつに出汁と水入れて。あ、凪流大根おろしは作れる?OKなら大根を皮剥いて、はい。これおろしてね。さて、じゃあ出汁取ったやつに白菜と豚肉入れて蓋をして、これは卵焼いてる合間にできるな。これならって凪流、白菜は強火でやっちゃダメ。水分飛ばしすぎて焦げるよお前なら。そうそうそんなことにならないだろうけど、お前ならやりかねない。失礼?朝の惨劇を見たらそんなこと言えないんだよ。ほら、北斗君困ってるじゃないか。出し巻き卵は・・・よし凪流お前やってみるか?こうやってこの卵をヘラを使って巻いていくんだ。そうそう、よし。そんな感じであと2、3回やってみ?その合間にみりん干しの方は・・・もうちょいかな?ならお米の方を盛り付けておこうかな。あ、凪流できた?ならそれを皿に盛り付けて・・・大根おろしもそれに盛り付けて、完成。あ、切ってなかったね。北斗君お願い。凪流は器取ってきて。白菜盛り付けるから。さてさて白菜は・・・出来てるね。じゃあこれ盛り付けて。あ、北斗君お皿持ってきてくれたんだ。ならコップとお箸用意して。俺の分?食べてきたからお茶だけ貰うね。さて、さすがにみりん干しもできたかな?うん、出来てる。朝だからこれぐらいでいいかな。

 

「さ、食べて食べて。」

 

「は、はい。」

 

「あ、ありがとうございます、柊さん。」

 

「菊でいいよ。今リンゴ剥いてるから食後にヨーグルトに入れて食べようか。シナモンもあるしね。」

 

 とりあえず食べてる合間に終わらせよう。何気に難しいんだよね、皮むき。大根とかならまだ楽なんだけど、リンゴみたいな球のやつは個人的にやりにくい。

 

「納得いかない・・・。」

 

 ん?もしかして不味かった?

 

「いや、美味しいです。それもかなり。」

 

「あ、ならよかった。」

 

「そうじゃなくて、どうしてこんなに料理できるんですか?!」

 

「なんでって言われても、うちの家父さん以外に作れる人いなかったから負担を減らすために遊矢の母さんに教わって。当時まだ小さかった柚子にご飯作らせるわけにはいかなかったから、自然に。最近は柚子も料理してるみたいだよ?お菓子作りが好きみたい。」

 

 だからかお土産にいくつか甘味料をあげたら喜んでくれた。まあ、本場のカナダ産メープルシロップとかそんなもんだけど。あれは美味しかった。

 

「まさか私よりも料理が出来るなんて・・・。」

 

 お前より出来ないやつのほうが少数派だよ。いや、あのスレッドの人間以外は、だな。あのスレッドの加害者はやばい。書かれてる料理もやばい。

 

「なんか納得いきません・・・。あ、美味しいこの白菜。」

 

「ほんとに、本当にありがとうございます柊さん。正直命をあきらめるかどうかの瀬戸際でした。」

 

 お、おう。そんなにか北斗君。

 

「・・・次からは母親についてもらうか、香澄か俺に頼ってくれよ凪流。」

 

 第二第三の被害者を増やすさないために。3年前のあの惨劇を忘れたか。D(誰が)D(どう見ても)B(ぶっ壊れ)ならぬD(誰が)D(どう食べても)B(爆死)なチョコレートを食わされた俺や大牙、そしてクラスのみんなに謝れ。

 

 俺の目が本気だったのだろう。彼女は素直に頷いてくれた。

 

「さて、ここにヨーグルトがあります。お好みでシナモンとお砂糖をかけて召し上がれ。」

 

「ううう、女子力で男に負けるなんて・・・。」

 

 まあ、俺は一応家事一通りできるから確かに女子力は高いかもしれないが。あ、流石に裁縫はキツイ。ボタン止めぐらいなら出来ないことはないが服を作るのは無理だな。

 

「あ、ありがとうございます柊さん・・・。ほんとに、本当に・・・。」 

 

 な、泣き出しちゃったよ北斗君・・・。ふ、不憫だ・・・。ま、まあ今朝からSOSメールを仲間に送ってたってことは多分覚悟決めてたんだろうなぁ。それが巡り巡って俺にまで回ってくると北斗君は思いもしなかっただろう。

 

 でも甘いよ北斗君、これでもマシになったほうだし。2年前の飯盒炊爨の時は香澄が横につきっきりになって被害を抑えにかかってたから。おかげでほとんど学校にいないせいで犠牲者として同じ班にされた俺と道連れにされてた大牙が苦労した。メインは俺が作って、大牙がサポートに入る形で作ったんだっけ。ああ、俺が作ると激辛になるからスパイスの加減は香澄がやったんだったな。

 

 んでちょっとした隙にチョコレート入れるとおいしいらしいからココア入れても大丈夫だよねみたいな感じでミロ突っ込もうとした凪流を止めるのに四苦八苦した覚えがある。いや、不味くはならないかもしれないけど普通入れないから。個人的にはチョコレートどころかハチミツもダメなのに。ちなみにハチミツ入れる派の香澄とはそれで少し揉めた。結果はあんたが作ったら辛すぎるってことで香澄が勝ったが。辛党の俺と大牙は不満だったなぁ。まあ、激辛派の俺が市販のルー以外にナツメグとカレー粉、鷹の爪にガラムマサラその他もろもろ突っ込んだので結果はマイルドな辛さになりました。香澄が辛いのダメなのをそこで初めて知ったなぁ。まあ、食べれない辛さではなかったみたいでよかったです。

 

「美味しい・・・。」

 

「姉さん、ドンマイ・・・。」

 

「いつか、いつか追い抜いてやる・・・。」

 

 追い抜くのはいいけど仕留めるに変わらないようにお願いします。切実に。

  

  ◇

 さて、無事に朝ごはんもすみ、会場まで北斗君と凪流と行動することになった。遊矢からは無事に試合が出来そうだと柚子からメールをもらった。いくら何でも倒れたんだから体調に異常はないか心配していたが杞憂だったらしい。そのことを凪流に話したらまだ弟が謝りに行ってなかったことを思い出して今北斗君がネチネチ責められてる。ごめん、北斗君。非力な私を許してくれ・・・。

 

 まあ、会場に入ったら凪流とはお別れなんだけどね。ジュニアユースとユースは会場は同じだけど場所が若干遠いし、ニコさんたちがいる控室はユースの試合場の真反対だから、会場に入ったら逆側に行かないといけない。

 

 まあ、そんなの関係なしに今はユースのところにいるんだが。いや、大牙や香澄に会いたくってさ。とりあえず全員3回戦まで勝ったから激励みたいな感じで。

 

「あ。」

 

 ん?どうした?

 

「いえ、ポケットの中になぜか弟のカードが・・・。」

 

「え?」

 

 見てみるとセイクリッド・プレアデスのカード。やっぱ強いよな、これ。てか大丈夫なのか?2枚以上持ってるだろうけど、1枚ないかあるかでセイクリッドはだいぶ違うぞ?

「ちょっとこれ、渡してきますね。」

 

「いや、今から言ってたらお前は今日の開会式に間に合わなくなるぞ?」

 

「かまいませんよ。必ず出る必要があるわけではありませんし。これを忘れて北斗が試合に負けるというのは忍びないですしね。」

 

 いや、そうかもしれないけどさぁ。あ。それなら。

 

「俺が渡してくるよ。それならお前も間に合うし一石二鳥だろ。」

 

「え?でも・・・。」

 

「お前が式に出れて、なおかつ北斗君にカードを返せるならそれに越したことはないだろ?それに、控室はジュニアユース側の方にあるからどのみち行かなきゃならないんだし。」

 

「なら、お願いしますね。」

 

「ん、了解。大牙と香澄に頑張れって伝えておいて。」

 

「あら、私にはないんですか?」

 

「もちろん、お前もさ。俺はお前らと遊矢達しか応援しないよ。それ以外にする気もないしね。」

 

「それはそれでどうかと思いますが・・・。」

 

「人なんてそんなもんさ。」

 

 そういって笑いあった後、とりあえずカードを受け取り北斗君のところまで走る。

 しばらく歩いただろうか。どこからか悲鳴が聞こえてきた。しかも、この声は・・・北斗君?!

 

 でも、この方角って確かアリーナから少し外れたところだよな?なんでまた?いや、考えてる暇はない。走って確認しなきゃ。

 

 ◇

 

 どうして、どうしてこんなことに・・・。

 

 最初は軽い気持ちだった。だから彼女にデュエルを挑まれたときも即座にOKした。幾分か訝しいところはあったけれど、これからの試合の準備運動ということで柊柚子からの試合を了承した。

 

 だが、結果はどうだ。正直楽な相手だとは思ってはいた。だが、この状況。切り札の攻撃力は無力化され、伏せは手札に戻され、もう打つ手はない。これは本当に柊柚子なのか?

 

 いや、カテゴリの違うカード、更には髪の色で彼女が柊柚子ではないことは途中からわかっいた。だがそれとこれとは話が別だ。今の状況、これは何だ。アクションデュエルでもないのにダメージがある?しかもこの痛みはまるで・・・。

 

 まるで、LDS襲撃犯じゃあないか。もしかしてこの子がマルコ先生を・・・?いや、あの傷跡とは攻撃の種類が違う。じゃあ一体何なんだ?一体こいつは何者なんだ?

 

「バトルだ!!月光舞猫姫でセイクリッド・プレアデスに攻撃!!」

 

「せ、セイクリッド・プレアデスの効果発動!!フィールド上のカードを1枚手札に戻す!これで月光舞猫姫はエクストラデッキに戻る!!」

 

「無駄だ!!墓地の月光紅狐の効果発動!!このカードを墓地から除外することで「ムーンライト」モンスターへの効果を無効にし、お互いに1000ポイント回復する!!」

 

 これで抵抗のすべを失った。1000ライフを回復したといっても、あの月光舞猫姫の効果で5000のライフは間違いなく消し飛ぶ。

 

 負けた・・・。

 

「月光舞猫姫は攻撃宣言時に100のダメージを与える!さらにこのカードは特殊召喚されたモンスターに2回攻撃できる!!これで終わりだ!!」

 

 2400の2回攻撃、それに合わせて200のバーンダメージ。ああ、ジャストキルだなと思った。場違いながらとは思うが。

 

 だが、デュエルが終わって冷静になって思ったことがある。

 

 (もしかして、俺もマルコ先生みたいに行方不明になるんじゃぁ・・・。)

 

 そう思った瞬間、急に背筋が凍った。さっきのダメージ。それも含めると最悪の創造しか浮かんでこない・・・。

 

「や、やめろ・・・。」

 

 思わずそう言ってしまった。

 

「・・・情けない。ほんとに貴様デュエリストか?」

 

 そう言ってくるが正直頭に入ってこない。頭の中は走馬灯のように駆け巡っている。

 

「まあいい。貴様はここで終わる。」

 

 そう言ってデュエルディスクを向けた。何をするつもりだろうか?でも、本能でわかる。あれからは逃げなくてはならない。

 

 思わず逃げ出した。追いかけてくる音がする。とりあえずこの先は大通りだ。急いで人目に付くところに出なきゃ・・・。

 

「往生際が悪いぞ!!」

 

 だが、逃亡空しいかな、アリーナから外れたこの路地で追い詰められた。

 

 ああ、ここで終わるのか。まだやりたいことがあったのに。負けたあいつらのためにも勝ち上がってやりたかった。どうせならこのままユースまで昇進して、あいつらに悔しい顔させてやりたかったなぁ・・・。姉さんはどうだろう。俺がいなくなっても気付くかなぁ。あれでいて天然だし。今日だって菊さんがいなかったらどうなってたか。そういえばあの人はいったいどうしてうちに来たんだろう。他にもいろいろ話してみたかったなぁ。なんせ現役プロだ。面白い話が聞けたかもしれない。

 

 そんなことばかり考えていたからか。もしかしたら祈りが通じたのかもしれないけれど。

 

 目の前に、あの人が現れた。

 

 現役プロ、アメリカのI2リーグベスト4。準決勝でのすさまじい試合から実質の世界2位とまで称されたプロデュエリスト。

 

「その子から手を放してくれないか?融合次元のデュエリスト。いや、オベリスク・フォースと称すべきかな?」

 

「何者だ!!」

 

 柊柚子によく似た少女が声を荒げた。

 

「通りすがりのデュエリストさ。覚えなくていい。」

 

 『軍師』柊菊。本人が立っていた。

 

「ふざけるな!!」

 

「ふざけてないさ。なんならかかってくるといい。俺が負けたなら俺もそこの彼もカードにしてくれてかまわないよ。」

 

 何を言っているんだこの人は?もしかしてこいつの正体を知っているのか?いや、それよりもカードにする?どういうこと?

 

「安心して、北斗君。助けに来た。まあ、詳しい話はこいつを倒してからでいいかな?」

「・・・随分となめられたものだな。いいだろう!!さっさと構えろ!!」

 

「ああ、その前に言っておく。」

 

 そう言って彼は、デュエルディスクにデッキを差し込んだ。

 

「本気でかかってきなさい。ライフを1たりとも削れると思うな。」

 

「フン、そんな強がりがいつまで通じるかな?」

 

 そう言って、互いに挑発しあう。あの雰囲気、間違いなく彼は本気だ・・・。

 

「「デュエル!!」」

 

 デュエルが始まり、あたりの様子がソリッドヴィジョンにより若干変わる。

 

「先行は譲ろうか?」

 

「そんな口車に乗せられるとは思うなよ?私は後攻を選択する!!」

 

「親切心だったんだがなぁ。俺は手札からPSYフレーム・サーキットを発動。」

 

 KIKU

  手札5→4

 

「更にカードカー・Dを召喚し、カードを2枚伏せる。カードカー・Dの効果で自身をリリースし2枚ドロー。同じくカードカー・Dの効果で強制的にエンドフェイズに入る。」

 

 カードカー・D

 効果モンスター

星2/地属性/機械族/攻 800/守 400

このカードは特殊召喚できない。このカードの効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。(1):このカードが召喚に成功した自分メインフェイズ1にこのカードをリリースして発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。その後、このターンのエンドフェイズになる。

 

 KIKU

  手札4→1→3

 

「私のターン!ドロー!手札の月光黒羊の効果発動!デッキから融合を手札に加える!」

 

 月光黒羊

 効果モンスター

星2/闇属性/獣戦士族/攻 100/守 600

(1):このカードを手札から捨て、以下の効果から1つを選択して発動できる。●「月光黒羊」以外の自分の墓地の「ムーンライト」モンスター1体を選んで手札に加える。●デッキから「融合」1枚を手札に加える。(2):このカードが融合召喚の素材となって墓地へ送られた場合に発動できる。「月光黒羊」以外の自分の墓地の「ムーンライト」モンスター1体を選んで手札に加える。

 

 SERENA

  手札6

 

「融合サーチか。優秀なカードだ。」

 

「言ってろ!!私は手札から月光白兎を召喚!自身の効果で「おっと、それにチェーンして手札のPSYフレームギア・γの効果を発動する。」なんだと?!」

 

 手札からモンスター効果だって?!

 

「こいつは通常召喚こそできないが、こいつの効果は相手がモンスターの効果を発動したとき、自分フィールドにモンスターが存在しなければ発動できる。その効果を無効にして破壊、更にデッキ、手札、墓地からPSYフレーム・ドライバーと共に特殊召喚できるカード。月光白兎を破壊し、デッキからPSYフレーム・ドライバーと手札のPSYフレームギア・γを特殊召喚。」

 

「く、だがまだ「更にこの時、フィールド魔法PSYフレーム・サーキットの効果発動。」相手ターンで発動だと?!」

 

「フィールドにPSYフレームモンスターが特殊召喚されたときにフィールドのPSYフレームでシンクロを行える。レベル6PSYフレーム・ドライバーにレベル2PSYフレームギア・γをチューニング!シンクロ召喚、PSYフレームロード・Ω!!」

 

 PSYフレームギア・γ

 特殊召喚・チューナー・効果モンスター

星2/光属性/サイキック族/攻1000/守 0

このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手モンスターの効果が発動した時に発動できる。手札のこのカードと自分の手札・デッキ・墓地の「PSYフレーム・ドライバー」1体を選んで特殊召喚し、その発動を無効にし破壊する。この効果で特殊召喚したモンスターは全てエンドフェイズに除外される。

 

 PSYフレーム・サーキット

 フィールド魔法

(1):自分フィールドに「PSYフレーム」モンスターが特殊召喚された場合に発動できる。自分フィールドの「PSYフレーム」モンスターのみをS素材としてS召喚する。(2):自分の「PSYフレーム」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、手札の「PSYフレーム」モンスター1枚を捨てて発動できる。その戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するため捨てたモンスターの攻撃力分アップする。

 

 PSYフレームロード・Ω

 シンクロ・効果モンスター

 星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。相手の手札をランダムに1枚選び、そのカードと表側表示のこのカードを次の自分スタンバイフェイズまで表側表示で除外する。(2):相手スタンバイフェイズに、除外されている自分または相手のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを墓地に戻す。(3):このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分または相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。そのカードと墓地のこのカードをデッキに戻す。

 

 KIKU

  手札3→2

 

「攻撃力2800か・・・。私は手札から死者蘇生を発動!!」

 

「その効果にチェーンしてΩの効果発動。このカードと君の手札を次の俺のスタンバイフェイズまで除外する。チェーンは?ないならチェーン3で仁王立ちを発動。まあ、このターンは意味のないものと思っていてくれ。」

 

 仁王立ち

 通常罠

「仁王立ち」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの守備力は倍になり、ターン終了時にその守備力は0になる。(2):墓地のこのカードを除外し、自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターン、相手は対象のモンスターしか攻撃できない。

 

「・・・いったい何がしたい。仁王立ちは自分フィールドのモンスター1体の守備力を2倍にし、そしてエンドフェイズ時に0にする効果だ。確かにΩに対して打った後エンドフェイズまでに除外すればデメリットを回避できる。だがこのタイミングで使えばただの意味のないカードでしかない!」

 

「その通りだ。だがこれはこれで考えがあるんだよ。」

 

「・・・まあいい。死者蘇生の効果で黒羊を特殊召喚。更に融合を発動!!手札の月光紫蝶と黒羊を融合!!」

 

 出る、彼女の切り札が!

 

「漆黒の闇に潜む獣よ!紫の毒持つ蝶よ!月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!月光舞猫姫!!この時黒羊の効果で墓地の白兎を手札に加える。更に墓地の紫蝶の効果発動!!」

 

 月光舞猫姫

 融合・効果モンスター

 星7/闇属性/獣戦士族/攻2400/守2000

「ムーンライト」モンスター×2

(1):このカードは戦闘では破壊されない。(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1にこのカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。このターン、相手モンスターはそれぞれ1度だけ戦闘では破壊されず、このカードは全ての相手モンスターに2回ずつ攻撃できる。(3):このカードの攻撃宣言時に発動する。相手に100ダメージを与える。

 

 まだ効果があったのか!!さっきはあれの手札誘発でやられたが、他にもあるとは・・・。

 

 「紫蝶は墓地から除外することで手札の月光モンスターを特殊召喚できる!手札から月光モンスターを特殊召喚!来い、月光蒼猫!!更に蒼猫の効果で舞猫姫の攻撃力を倍にする!」

 

 月光紫蝶

 効果モンスター

 星3/闇属性/獣戦士族/攻1000/守1000

「月光紫蝶」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分の手札・フィールドのこのカードを墓地へ送り、自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。手札から「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚する

 

 月光蒼猫

 効果モンスター

 星4/闇属性/獣戦士族/攻1600/守1200

「月光蒼猫」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、「月光蒼猫」以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで元々の攻撃力の倍になる。(2):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。デッキから「ムーンライト」モンスター1体を特殊召喚する

 

 まずい!!この攻撃が通れば菊さんは負ける!!

 

「バトルだ!月光舞猫姫でダイレクトアタック!!この瞬間、舞猫姫の効果により100のダメージ!!合計4900のダメージで貴様は終わりだ!!」

 

 舞猫姫の攻撃により土煙が沸き上がる・・・。そんな、あの菊さんが負けた・・・?

 

「ふん、あれだけ大口を叩いて所詮この程度とは、情けない。」

 

「おいおい、随分と酷い言い草じゃあないかい?まだデュエルは終わってないのに。」

 

「なに?!」

 

 菊さん!!よかった。でもどうして?

 

「俺が発動したのはさっきと同じPSYフレーム・γ。攻撃宣言時に100のダメージを与える効果を無効にし、そのカードを破壊したのさ。」

 

 KIKU

  手札2→1

 

「そんな、月光舞猫姫が!!」

 

「更にPSYフレーム・サーキットの効果で今現れたPSYフレーム・γとPSYフレーム・ドライバーをシンクロさせる。現れろ、メンタルスフィア・デーモン。」

 

 現れたのは悪魔のような姿をしたサイキック。香澄さんが使っていた時から思っていたがなんでサイキックなんだろ?見た目完全悪魔族なのに。

 

 メンタルスフィア・デーモン

 シンクロ・効果モンスター

 星8/闇属性/サイキック族/攻2700/守2300

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。また、サイキック族モンスター1体を対象にする魔法・罠カードが発動した時、1000ライフポイントを払って発動できる。その発動を無効にし破壊する。 

 

「・・・私はターンエンドだ。」

 

 SERENA

  手札6→1

 

「俺のターン、ドロー。この瞬間、さっきのターンに除外されたΩが帰還する。」

 

 KIKU

  手札1→2

 SERENA

  手札1→2

 

 すごい、あの攻撃をかわしたどころかもう破壊した。

 

「カードカー・Dを召喚してリリースし、2枚ドロー。ターンエンドだ。」

 

 KIKU

  手札2→1→3

 

 そんな、攻撃しない?!なんで?!

 

「・・・なぜ攻撃しない?」

 

「する必要性がなかったから。強いて言えばその蒼猫の効果を使わせたくなかったからかな。」

 

「成程、こいつの効果を知っていたか。」

 

 え?あのカードには他にも効果があるのか?!

 

「月光蒼猫は戦闘、効果で破壊されたときにデッキから月光モンスターを特殊召喚できる効果を持っている。だが何を警戒していた?」

 

「強いて言うなら蒼猫をリクルートさせてからの月光紅狐かな?あいつを融合素材にされたらΩはともかくとしてメンタルスフィアデーモンの攻撃力が0になってしまうから。手が無いわけでもないがリスクは減らすのが定石だろ?」

 

「成程、手の内はお見通しというわけか。」

 

 凄い、そこまで読んでいたなんて・・・。僕だったら間違いなく攻撃させていた。

 

「なら私のターンだな、ドロー。手札から融合回収を発動。墓地の融合に使用した融合と黒羊を手札に加える。」

 

 融合回収

 通常魔法

自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

 

 SERENA

  手札2→3→4

 

「ならΩの効果を発動。そっちの手札1枚とこのカードを「そんな効果は分かっている!!黒羊の効果でデッキから融合を手札に加え、白兎を召喚する!!」・・・まあ、いいか。遮ったのは君だからね。俺はちゃんと効果を説明しようとしたから、卑怯とは言うなよ?」

 

 SERENA

  手札4→3

 

 む、向こうはすごい剣幕だ・・・。まったく動揺していない菊さんもすごいが。

 

「その辺は香澄や君のお姉さんに鍛えられたんだよ。特にあのチョコレート事件でね。」

 

 心を読まないでください。というか姉さん、あれやっぱりあげたんですね・・・。人の性格まで変えるチョコレートって・・・。

 

「無駄話している暇があるのか?白兎の効果で墓地の月光舞猫姫を特殊召喚!白兎のもう一つの効果で、そのフィールド魔法と伏せカードを手札に戻してもらう。」

 

 これで菊さんは守る術を失った!!

 

「融合発動!!月明かりに舞い踊る美しき野獣よ!月光に映え躍動する兎よ!月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月光の原野で舞い踊るしなやかなる野獣!月光舞豹姫!」

 

 そんな、まだ切り札があったのか!!

 

 SERENA

  手札3→4→1

 KIKU

  手札3→5

 

「こいつは相手モンスター全てに二回攻撃できる!!今はその悪魔しかいないが戦闘破壊はできる!!行け、月光舞豹姫・・・どうした、なぜ攻撃しない!!」

 

 あれ、どうして攻撃しない?・・・いや、出来ない?

 

「・・・墓地の仁王立ちの効果さ。」

 

「何?あのカードがどうし・・・まさか?!」

 

 え、何がどうなっている?

 

「仁王立ちはこのカードを墓地から除外することで攻撃対象を1体のみにすることができる。少々特殊なんだが、この対象に選んだモンスターが場を離れた場合でもその効果は継続される。」

 

 成程、そうだったのか。相手も理解したようだった。苦々しい表情で声を荒げる。

 

「そうか、あのΩを対象に効果を発動していたのか!!」

 

「そういうこと。」

 

 成程、つまりこのターン攻撃はできないのか。それにしても中々に強力だな。採用も検討してみようか。

 

「あ、北斗君の場合は安全地帯をお勧めするよ。安全地帯は永続罠だからプレアデスでの使いまわしができるからね。同じ理由でデモンズ・チェーンも考えてみるといい。」

 

「だから心を読まないでください。」

 

「いや、君が読みやすいだけなんだけど・・。」

 

 え、嘘マジ?!

 

「いや、嘘。」

 

「菊さん?!」

 

「・・・貴様ら、随分と余裕だな。」

 

 ヒィ?!

 

「いやはや、なんせこのデッキはプロですら、泣いて許しを請う勢いでサレンダーしていくデッキだからね。存分に使える滅多にないチャンスだからついテンションが上がってしまうのさ。」

 

「・・・見たところ、そんなに強力な効果で統一されているわけでもないだろう。随分と貧弱なんだな、このスタンダードのデュエリストは。カードを1枚伏せてターンエンドだ。」

 

 SERENA

  手札1→0

 

「・・・好きなだけ言っておきなさい。」

 

 そのうち、このデッキの恐怖が分かるから。

 

 そうつぶやいたあの人は・・・。

 

「俺のターン、ドロー。スタンバイにΩが帰還。メインフェイズにフィールド魔法PSYフレーム・サーキットを再度発動。」

 

 実に、いい笑顔をしていた。

 

 SERENA

  手札0→1

 KIKU

  手札5→6→5

 

「バトルだ、PSYフレームロード・Ωで月光舞豹姫に攻撃。」

 

「相打ち狙いか、迎い打て!月光舞豹姫!!」

 

「いや、死ぬのはそっちだけさ。フィールド魔法PSYフレーム・サーキットの効果発動!!」

 

「何?!まだ効果があったのか!!」

 

 ほかに効果があったのか?!あのフィールド魔法強いな!!

 

「手札からPSYフレームと名のついたモンスターを墓地に送って、その攻撃力分、攻撃力をアップさせる。手札から攻撃力500のPSYフレーム・αを捨てて攻撃力を500アップ!!」

 

 KIKU

  手札5→4

 

 これでPSYフレームロード・Ωの攻撃力があの融合モンスターの攻撃力を完全に上回った!!

 

「だが、この瞬間罠発動!!月光輪廻舞踊!!モンスターが戦闘・効果で破壊されたときデッキから2枚の月光を手札に加える。デッキから月光白兎と月光紅狐を手札に加える。」

 

 月光輪廻舞踊

 通常罠

「月光輪廻舞踊」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。デッキから「ムーンライト」モンスターを2体まで手札に加える。

 

「・・・成程、手札に加えられたのならもうリクルートを警戒する必要はないな。メンタルスフィア・デーモンで月光蒼猫を攻撃。」

 

「月光蒼猫の効果でデッキから月光紅狐を特殊召喚。」

 

「だがこれでメンタルスフィア・デーモンの効果が発動。月光蒼猫の攻撃力、1600分ライフを回復。メインフェイズ2、手札から魔法カード強欲で謙虚な壺を発動。デッキから3枚めくり、その中の1枚を手札に加える。・・・ようやく来たか。」

 

 強欲で謙虚な壺

 通常魔法

「強欲で謙虚な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。(1):自分のデッキの上からカードを3枚めくり、その中から1枚を選んで手札に加え、その後残りのカードをデッキに戻す。

 

 何か引いたのか?

 

「俺はこのカードを手札に加える。」

 

 そう言って菊さんはカードを見せた。あれは・・・鳥?いや、烏か?

 

「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 KIKU 5600

  手札4→2

 

「私のターン、ドロー!!」

 

 SERENA

  手札2→3

 

「この瞬間、PSYフレームロード・Ωの効果発動。ゲームから除外されたカード1枚を墓地に戻す。仁王立ちを墓地へ。」

 

「「・・・は?」」

 

 え、仁王立ちってさっきのカードだよな。

 

「そしてΩの効果で手札1枚と一緒に除外。更に仁王立ちの効果でΩを対象として発動する。チェーンでDDクロウやエネミー・コントローラーなんかがあれば防げるが、どうする?」

 

「・・・チェーンはない。それよりもちょっと待て。まさかこれは。」

 

「ああ、お前は攻撃できないってのとほぼ同義だ。それがどうかした?チェーン処理、仁王立ちの効果を発動し、Ωが除外される。」

 

 どうもこうもないです。酷い、酷すぎる。実質バーンカードがなければ負け確定みたいなものじゃないか。

 

「・・・私は融合を発動。手札の月光紅狐とフィールドの紅狐で融合する。融合召喚、月光舞猫姫!!月光舞猫姫は戦闘破壊されない!!これで何とか・・・。」

 

「あ、激流葬で。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「どうした?笑えよ。」

 

 いや、無理です。ここまでひどいのか、軍師の本気は。

 

「・・・ターンエンド。」

 

「え?声が小さくて聞こえないな?」

 

「ターンエンドだ!!」

 

「知ってた。」

 

 SERENA

  手札0

 

 あ、悪魔だ。悪魔がここにいる・・・。煽らないでやってください。もう可哀想でしかない。自分がされた恐怖抜いても。

 

「俺のターン。ドロー。Ωがまた戻ってくる。」

 

 KIKU

  手札3

 

「・・・だがPSYフレームは通常召喚できないのだろう?なら次のターンで・・・。」

 

「そうか、次のターンに何ができるんだろうな。八汰烏を召喚しバトル。八汰烏でダイレクトアタック。」

 

 八汰烏

 スピリットモンスター

 星2/風属性/悪魔族/攻 200/守 100

このカードは特殊召喚できない。召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた場合、次の相手ターンのドローフェイズをスキップする。

 

「通常召喚できるモンスターも入っていたか。ック!!」

 

「Ωで攻撃はしない。エンドフェイズ、八汰烏は手札にもどる。さあ、よからぬことを始めようじゃあないか!!」

 

 菊さん、顔が怖いです。笑顔がトラウマになりそう・・・。でも八汰烏ってどんな効果だ?ネットで調べて・・・え?

 

 

 

 

  

 

   ◇

 

「社長。」

 

「どうした?」

 

「3時間前、強力な融合召喚反応を感知したのですが・・・。その時に。」

 

「何があった?」

 

「・・・これです。」

 

「これは?!」

 

 セレナ、スタンダードに来ていたのか!!それにどうしてあの人が・・・。

 

 ・・・ん?泣いてないか?

 

『・・・ヒック、ヒック。』

 

『どうした?まだライフは3000もあるじゃないか!!あきらめるな!あ、八汰烏召喚してダイレクト。これでまたドロー出来ないね。』

 

『やめてあげてください!!もう彼女のメンタルは0です!!止めさせたでしょう?!』

 

『・・・ターンエンド。』

 

『菊さん!!』

 

『・・・北斗君。』

 

『え?』

 

『精神攻撃は基本だよ?』

 

『ダメだこの人、早く何とかしないと・・・。』

 

『・・・わだじのだーん。』

 

「あ、Ωでその手札除外で。一応仁王立ちを戻して発動させておこうか。』

 

『いっそごろぜぇーー!!』

 

『菊さん!!』

 

 ・・・なんだこれは。いや、状況は分かる。だが・・・。

 

「・・・これは?」

 

「3回ほど融合反応を検知したので記録したのですが・・・。」

 

「どうやらデュエルしているようですが、なぜ彼女は泣いているのでしょう?」

「中島・・・。」

 

 そうか、中島はデュエリストではなかったな。優秀なやつなんだが・・・。そして報告してくれた彼女はそういえば元デュエリストだったな。だからこの惨さも分かるのか。

 

「・・・流石菊様。」

 

 前言撤回、このスタッフはそういえば菊先輩のファンだったか。ならむしろ受けてみたいのかもしれないな。あの人のファンクラブ全員、その・・・キャラが濃いから。

 

 

 

 とりあえず、今度セレナにあったら労わってやろう。同じデッキを受けた者同士、前よりは仲良くできるかもしれない。思い出したら胃痛が・・・。

 

 

 




 いやぁセレナは強敵でしたね(すっとぼけ)
 え?なんでこんなにいじったか?泣き顔ってそそりません?(手遅れ)
 感想待ってます!!(ついでに同志も)


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第3話

Fateの方、皆さまありがとうございます!!基本的に承認していますのでフレンドになってやってもいいぜという素敵な方は感想に書いてもらえればフレンド申請を送るのでよろしくお願いします。
 
それから、今回は短い上、デュエルシーンはありません。というか前回が長すぎたんだ。15800文字ってどういうことだ。2から3話分じゃないか。もしかしたらそのうち2話を前半後半で分けるかもしれません。その時はご了承ください。






 

 前回のあらすじ セレナちゃん号泣。八汰ロックは鬼畜過ぎたのだろうか・・・?

 

 

 

 バレットは考えていた。どうすればあの状況のセレナ様を助け出せるかと。

 

 というのも、最初にはぐれたときはあのセレナ様が追い詰められることはそうそうないだろうと考えていた。実際、彼女のデュエリストとしてのレベルはそこらのデュエリストどころか、オベリスクフォースを軽々と凌駕する。だからこそ、街中を駆け巡り、ようやく彼女を見つけたとき、目を疑った。

 

(あれは本当にセレナ様なのだろうか・・・?)

 

 号泣していた。とにかく号泣していた。小さかったころ、たまたま侵入してきた野良猫に可愛がろうと思ったのにも関わらず、おもいっきり警戒されて顔を引っ掻かれた時でさえまったく動じていなかったあのセレナ様が?!

 

 そこまで考えてはたと気付いた。あのデュエルしている相手、その使っているモンスターを。

 

 八汰烏。低ステータスな上、スピリットなためエンドフェイズには手札に戻ってしまうモンスター。効果は強力だが使えない、そう判断され融合次元では見向きもされなかったモンスターだ。

 

 だが、現状は何だ?セレナ様の手札は1枚。フィールドは何もないが、手札が1枚でもあれば巻き返しのチャンスはある。なぜあそこまで泣いている?

 

「さて、そっちのターンだね。ドロー飛ばしてスタンバイ。Ωの効果で仁王立ちを除外から戻す。メインに入った瞬間、Ωチェーン仁王立ち。さて、君のターンだよ?」

 

 ・・・なんだこれは。

 

 仁王立ちの効果は優秀だ。融合次元でもときたま使われるカードの1枚だ。だが、あのΩとかいうモンスター。あれの所為でえげつないことになっている。つまりセレナ様はドローも、手札1枚を使うことも、攻撃することも許されないというのか。

 

 セレナ様が泣いてしまわれるのも無理はない。しかもあの青年、わざとデュエルを長引かせているのは明らかだ。セレナ様のライフは残り2200。あと1度あのΩの攻撃を受ければそれだけで終わってしまう。それなのに攻撃しているのはあの鳥のみ。彼はデュエルを利用して徐々に追い詰めていっているのだ。もはや外道である。

 

 これは乱入するべきか?タッグデュエルに持ち込めばセレナ様をお守りすることができるかもしれない。だが、なぜだろうか。彼に勝てるビジョンが考えられない。彼が伏せた3枚のカード、そしてあの手札。明らかに嫌な予感がしている。

 

 これはデュエリストとしての勘でしかない。根拠はない。だが・・・。

 

 そこまで考えて、バレットは行動に移すことにした。正直、これからの行動はデュエリストとしては許されないだろう。だが、これは任務だ。自分のプライドよりも優先させなければならない。

 

 彼は少女に向かって走る。横の少年がバレットの存在に気付いたがもう遅い。デュエル真っ最中の彼女を抱き上げ担ぎ、ビルの上を駆け上る。ふと気になって振り向いたが、どうやら彼は追ってくるつもりがないらしい。悠然とこちらを見上げ佇むその姿はまるで自分たちの存在など歯牙にもかけていないようだった。バレットは憤慨したが、今は一刻も早く彼女をここから離すべきだと自分に言い聞かせ逃走した。

 

「バレットか・・・?」

 

 走って逃げる最中、そう彼女が呼びかけるが声に力がない。仕方がないだろう、あんな一方的なデュエルを歴戦の戦士であるバレットですらほとんど経験したことがない。

 

「大丈夫です、セレナ様。あれは夢か何かだったんです。」

 

 そう彼女には言い聞かせることにした。もしこれが原因で彼女が融合次元に帰ってしまうことになれば必然的にバレットも帰ることになる。手柄を挙げたいバレットにとってそれだけは避けなければならない。だからこそ、あれは夢だと言い聞かせることにした。幸いにも彼女は泣き疲れ朦朧としている。デュエルディスクの力を応用して『もの忘れ』を発動する。仮にも女性にそのようなことをするのはバレットといえど気は引けるが、あの光景を思い出されるよりはいいだろうと思うことにした。彼は善人ではないが悪人ではないので自分に言い聞かせながら、カードを発動した。

 

「バレット・・・?何を・・・。」

 

「・・・今はお眠りください。」

 

 カードを発動し、セレナは眠りについた。彼女が次に目を覚ました時、あの悲劇は忘れていることだろう。

 

 まあ結局のところ、その行為は彼に再会することで無駄になってしまうのだが、それはバレットには関係ない話だ。

 

 

 

  ◇

 

 

 うわ、すげえ。ビルの壁ほぼ垂直に駆け上がっていた。あの図体でよくできるな。

 

 セレナだっけ?アニメそこまで見てなかったけど、柚子にそっくり融合使いってので思い出したが確かそんな名前だった気がする。まあ、デュエルディスクにも表示されてたから多分あってるだろう。

 

 まあ、その子がちょっとカード化なんてふざけたことを、友人の弟にしようとしてたから思わずこのデッキを使ってしまった。スピリットPSY、何度やってもえげつないよなぁ。スピリットモンスターはエンド時に手札に戻るからPSYと相性いいなぁ、とか思って作ったんだが、先輩の酒に絡まれ、酔った俺が暴走して酒癖の悪い人たち全員をこれでねじ伏せた結果、それを見ていたプロの先輩やマネージャー、挙句の果てにはスポンサーにまで使用を制限されたこのデッキをついつい使ってしまった。

 

 このデッキ、強いし趣味に合ってたからたまに使える機会がないかなとか思って持ち歩いていたが、まさか相手が泣いてしまうのは予想外だった。やりすぎたかなとは思うが、これに懲りて二度と彼女が他人をカードにしようと考えないようになってほしい。

 

 それはそうと、北斗君?なんでそんな目で見てるんだい?照れるじゃないか。

 

「・・・外道。」

 

 酷いなぁ。OCGならもっとひどい環境なんだよ?あれに比べればマシだって。

 

「・・・いえ、失礼しました。助けてくれてありがとうございます。」

 

 あ、ちゃんとお礼言ってくれた。なら助けた甲斐があったというものかな。

 

「あ、それはそうと実はこれを渡しに来たんだ。」

 

「え?」 

 

 とりあえず渡しておかなきゃね。元々こっちが目的だったんだし。

 

「君のお姉さんから渡されたんだよ。ポケットに入ってたんだって。」

 

「・・・菊さん。」

 

「なんだい?」

 

「これ、姉さんに使ってほしくて渡したんですよね。」

 

「え?」

 

 え、どういうこと?

 

「姉さんのデッキでも、このカードは使えますから。」

 

 そこまで聞いて気付いた。そういうことだったのか。

 

「ああ、餞別のつもりだったんだね。」

 

「ハイ。」

 

 なら、悪いことしたなぁ。あれ?

 

「なんか裏に貼ってある。」

 

「え?」

 

 北斗君が裏を確認する。俺も裏までは確認しなかったから気づかなかった。まあ、透明なスリーブに入ってたし感触ではわからないのは仕方ないんだが。

 

「・・・姉さんらしいな。」

 

「え?どれどれ。」

 

 メモには『私のことは気にしないで頑張りなさい。』って書いてあった。なんだ、気付いてたのか凪流。さすが姉弟だなあと思う。俺と違って血が繋がってるからなぁ、少し羨ましい。

 

「・・・頑張りなよ?」

 

「・・・そうですね。全力で、臨みます。」

 

「そうそう、あいつのことなんて心配するだけ無駄さ。」

 

 実際あいつは強い。特にあいつの切り札は決まってしまえばトリシューラでも出さない限りそうそう負けることはない。

 

「・・・菊さんは、姉さんが勝つと思いますか?姉さんの次の相手は去年の準優勝者なんです。そんな人に勝てるのかって。去年は姉さん、大牙さんに負けてベスト8で終わったから今年こそは勝って、夢だったプロへの最短切符を手にしてほしいんです。」

 

 ・・・そうか、北斗君は心配なんだね。姉さんの最後のチャンスだから。

 

 プロになるには、どこからかの企業のスポンサーを得なければならない。ベスト8やベスト16で終わったら企業からスポンサーを得るのは難しくなる。せめてベスト4にさえ入れればプロ試験の時にまだ目に入るかもしれないが、そうでなければたとえプロ試験に合格したとしても、スポンサーがつくのはかなり難しくなる。やはりそこで重要視するのは大会での実績だからだ。

 

 だが、凪流はその実績が足りない。高校1年の時にはベスト4に入っていたが、去年は大牙に負けてベスト8。プロになるには最高ベスト4だけでは少し心もとない。

 

「・・・だからって、大会ならマイアミチャンピオンシップじゃなくても」

 

「姉さんがなりたいのは、アクションデュエリストなんですよ。」

 

「・・・そうか、ならここが最後なわけだ。」

 

「ハイ。」

 

 アクションデュエルが盛んなのは、舞網市だけ。むしろ他の町ではアクションデュエルよりもスタンディングの方が戦略性があるからと人気だ。アクションデュエルの第一人者である遊勝さんの海外ツアーが実現さえしていれば話は違ったかもしれないが、残念ながらその前に彼は行方不明になってしまった。

 

 だから北斗君は姉に自分のカードを託そうとしたのだろう。自分の姉に、勝ってほしいから。プトレマイオスで出せるプレアデスなら、彼女のデュエルを有利にできるかもしれないから。

 

 自分のフェイバリットが、彼女をプロへ進ませられるかもしれないから。

 

「でも、これを言われちゃ何もできないですね。」

 

 どことなく笑みに力がない。でも、これだけは言わせてほしい。

 

「・・・北斗君、凪流は大丈夫だ。」

 

「なんでですか?」

 

 そんなの決まってる。

 

「彼女は、俺の弟子だぜ?去年の準優勝者?あいつがそう負けるわけない。なんせ・・・」

 

 俺の本気に勝ったのは、3人の中じゃあいつだけなんだから。

 

 そういうと目が点になるまで驚いた後、ほんの少しだけ笑顔が戻った。

 

「・・・ありがとうございます。」

 

「なに、これも先輩の役目さ。」

 

「・・・行ってきます。」

 

 そう言って彼はスタジアムに向かって走り出す。丁度のタイミングで、凪流からメールが届いた。

 

 『勝利!!菊は財布の心配でもしていてください。絶対奢らせますからね!!』

 

 しかもピース写真付き。あいつが送った写真の奥にはまだソリッドヴィジョンが消えてなかったのか聖騎士の姿が映っている。初手フルアーマーアルトリウスでも決めたか?まあ、北斗君。無駄な心配だったみたいだよ。

 

 とりあえず、返信しないと。文面はこれでいいか。あんまり長々と書くのは趣味じゃない。

 

 『了解、覚悟しておく。』

 




Fateのイベント、黒髭が安定すぎて夜中に爆笑しました。ディルムッドは説得力がありすぎて腹筋がやばいことに。

作者のバレンタイン?うちのクラスそもそも男子しかいないし学校以外にかかわりがそもそも皆無に近いのにどうしろと?仲のいい女子はいないことはないけれど、まず学校休みの日だし。

???「少年よ、これが絶望だ・・・。」


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第4話

ヤッターーー!!
Fate、ジャックが来たよーーーー!!やっと攻撃系宝具持ち!!オリオン?知らない子ですね。てか男性特攻の所為で若干使いにくいんだよなぁ。それに比べてジャックのクイック性能よ・・・。これでSSR5体になったけど友人に課金疑われたよ、やったね!!

あれ?遊戯王小説なのに前書きでFateのことしか話してないような。まあいいか。

そういえば、ヴェルズビュート、アークナイト再録!!嬉しいですねぇ。カステルは持ってましたがアークナイトもヴェルズビュートも持ってなかったので嬉しいです。そして何気に再録王ェ・・・。

それから注意、今回アニメオリカが大量に出ています。というかキャラ的に仕方がなかったんだ・・・。非力な私を許してくれ・・・。


 

「さーて始まりました第三試合、対戦は茂古田未知夫選手対志島北斗選手!!そして実況は引き続き私、ニコ・スマイリーと!!」

 

「皆さま遅れて申し訳ございません、解説の柊菊でお送りします。」

 

「はい、ありがとうございます柊選手!!それにしても遅刻とは珍しいですが何かありましたか?」

 

「いや、ちょっとファンサービスをしていまして、無碍にするわけにもいかず・・・。本当に申し訳ないです。」

 

「いえいえ、プロデュエリストともなるとよくあることです。あのストロング石島さんも同じようにファンを大切にしていましたので私は理解ある方ですが、あまりこういうことはしないようにお願いしますよ?」

 

「はい、申し訳ございません。」

 

 そう言って謝る菊さん。いや、あれをファンサービスと言ってはいけないだろう。そんなんだからあのファンクラブはあんなことに・・・いや、今は試合に集中しよう。決してあの悲劇を思い出したわけじゃない。うん、そうだ。あれは関係ない。

 

 試合を終えて急いで駆けつけてきた姉さんが心配している。え?目が死んでる?やだなぁそんなわけないじゃないかハハハ・・・。

 

 いや、今は気持ちを切り替えよう。せっかく姉さんが試合を早く終えて見に来ているんだ、情けないところは見せたくない。

 

「それでは登場してもらいましょう!!まずはLDS所属、志島北斗選手!!」

 

 姉さんが背中を押す。思わずこけそうになるが何とか体制を立て直した。文句の一つでも言おうと思って振り向く。

 

「姉さん・・・。」

 

「さっさと行ってきなさい。行っときますけど、私だけじゃなく菊も、あなたの友達も、そしてあなたがリベンジを果たしたいっていう遊矢君も見てるんですから、そんな情けない顔で行かないでくださいよ。ほら、もっと自信満々に。」

 

「・・・そうだね。」

 

 うん、さっきのことは今は忘れよう。俺はまだやらなければいけないことがある。この試合に勝って、あいつらの分まで頑張るんだ。

 

 そう思うと不思議と頭がすっとしてくる。姉さんは言いたいことを言い終わったのか観客席に戻っていった。あの様子だと様子がおかしいの、ばれてたのかな?ほんと姉さんにはかなわない。

 

 会場は熱気に包まれていて、1回戦の時にも2回戦の時にも思ったが気押されしそうな感じだったが、今なら全然大丈夫だと思えた。

 

「次は霧隠料理スクール所属、茂古田未知夫選手!!」

 

 対戦相手はなんていうか、優男風だった。こう、マダムファンが多そうな顔。不思議とオリーブオイルが似合いそうな感じがする。

 

「やあ、よろしく。いいデュエルにしよう。」

 

 そう言って握手を求めてきたので、それを返す。どこかでキマシタワーなんて声が聞こえたが、きっと幻聴だろう。そうに違いない。そう思わないといけない気がした。

 

「それでは参りましょう!!アクションフィールドセット!!」

 

 ≪アクションフィールドセット・荒野の決闘タウン≫

 

「皆さん、満足できるよう頑張ってください。」

 

 機械音声の後にそういう菊さんの声が聞こえたが、なぜだろう。全力で展開しなければならない気がしている。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが、モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い」

 

 向こうが口上を言う。正直考え事をしていて出遅れたが、続きを言わなければ。

 

「フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

 

「「デュエル!」」

 

 毎回考えるのだが、なぜこの口上を言わなければならないのだろう。正直趣味じゃないし、真澄みたいに自信満々に言うにしても少し恥ずかしいのだが・・・。

 

「僕の先行。」

 

 あ、先行取られた。まあ、早い者勝ちだから仕方がない。

 

「僕はCM ヒヨコムギを召喚。」

 

 出てきたのは随分と可愛らしいモンスター。・・・何かあるな。

 

 MITIO

  手札5→4

 

 CM ヒヨコムギ

 効果モンスター

 星2/地属性/天使族/攻 100/守 400

(1):このカードがフィールドから手札に戻った場合に発動できる。このターン、手札のこのカードを攻撃表示で特殊召喚する。

 

「更に手札から、A・ジェネクス・バードマンをヒヨコムギを手札に戻すことで特殊召喚する。この瞬間、ヒヨコムギの効果発動。ヒヨコムギは手札に戻った時に特殊召喚できる。」

 

 A・ジェネクス・バードマン

 チューナー・効果モンスター

 星3/闇属性/機械族/攻1400/守 400

(1):自分フィールドの表側表示モンスター1体を持ち主の手札に戻して発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。この効果を発動するために風属性モンスターを手札に戻した場合、このカードの攻撃力は500アップする。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 まずい、シンクロ召喚か!レベル2とレベル3、考えられるカードはいくつかあるが、もし最悪の相性を考えるなら・・・。

 

「僕は、レベル2、CM ヒヨコムギにレベル3、A・ジェネクス・バードマンをチューニング!!」 

 

 もしあれだとしたらこのデッキだとプレアデスだけでしか突破は難しいか。いや、まだそうじゃない可能性も・・・。

 

「シンクロ召喚、光を殲滅する闇の力、起動せよ!!A・O・J カタストル!!」

 

 出たよ畜生!!姉さんが出して毎回敗因になるA・O・J カタストル、光とは最悪の相性のカード!!

 

 A・O・J カタストル

 シンクロ・効果モンスター

 星5/闇属性/機械族/攻2200/守1200

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが闇属性以外のフィールド上に表側表示で存在するモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

 

「カードを1枚セット。僕はこれで、ターンエンド。」

 

 MITIO

  手札4→2

 なんでだよ、いったいどうしてこんなカードが出るんだよ!!料理塾のミッチーって言えばクックメイトと料理の腕で有名なあいつだろ?!調理器具ですか?調理器具なんですかこれは?!

 

「いやぁ、1ターン目からこれまたすごいモンスターが出ましたねぇ。」

 

「ええ。更に言えばカタストルが内包する効果は凄まじいですから、これは北斗選手は苦戦するかもしれません。」

 

「と、言いますと?」

 

「いえ、これ以上言うと北斗選手に有利になるかもしれないんですが・・・どうやら彼の顔からして知っているようですね。」

 

 ええ、知っていますよ。姉さんのデュエルではほぼ毎回エフェクトヴェーラーとアルトリウスでシンクロされますからね!!

 

「なら言わせてもらうのですが、カタストルの持つ効果は闇属性以外のモンスターと戦闘を行うと、ダメージ計算を行わずに破壊します。」

 

「な、なんと!!それでは・・・。」

 

「はい、これでセイクリッドお得意のビーハイブでの戦闘破壊は行えません。まあ、プレアデスで手札に戻してしまえばいい話なのですが、そう簡単にいくわけではありませんし。アクションマジックや手札誘発による妨害、更には相手の伏せカードまで警戒しなくてはならない。逆に向こうはプレアデスさえ止めてしまえば後はほとんど警戒するものはない。」

 

 会場が彼の解説に耳を傾ける。

 

「ですが、セイクリッド以外のエクシーズモンスターなら突破は難しくはないのでは。」

 

「あなたは貴重なエクシーズのカードをそう何枚も入手できると思いますか?」

 

「・・・いいえ。」

 

「たしかにニコさんの言うように相手を守備にして突破できるマエストロークや、火力で突破できるキングレムリンにカンゴルゴーム。除去を考えるならヴェルズビュートにダイヤウルフ、カステルなどあげればキリがないのですが、汎用性のあるエクシーズはプロでも入手が難しいですからね。あれらはカテゴリで統一されてるセイクリッドに比べて入手しにくいにもほどがあります。ですので少々難しいかと。」

 

「なるほど、確かにあれらのカードはそうそう見ませんが。」

 

「カタストルはエクシーズなどよりも以前に出たのであれらよりは比較的入手しやすいですが、それでも凄いレアカードですよ。今大会では早々見ないのではないですか?」

 

「確かに今大会ではユースを含めても彼の姉である凪流選手などの2、3人しか出していませんね。」

 

「その凪流選手は同じ学校の友人なんですが、友人の話によるとショップ売ってるようなパックや大会で貰えるパックの中からシンクロ、エクシーズ、融合のようなカードはカテゴリ用以外だと滅多に出ないそうです。大会用のパックの方が出やすいのは出やすいらしいですが、それでも難易度は高いみたいですね。」

 

「成程、学生からすれば確かに厳しい話ですね。あれ、でも菊さんは・・・。」

 

「自分は職業上、手に入りやすいですから。」

 

 そんな風にのんきに話してるけれど状況は変わらないんですよ、菊さん。確かに姉さんはあのカードの入手にかなりてこずったらしいけど、だからと言って今の状況が何が変わるわけどもなし。もっと突破できるようなヒントが欲しかった。

 

 いや、今は突破することだけ考えよう。気持ちを切り替える。

 

「僕のターン。」

 

 ドローしたのはセイクリッド・カウスト。これなら!

 

「僕はセイクリッド・グレディを通常召喚。効果で手札からセイクリッドを特殊召喚できる。効果で手札からセイクリッド・カウストを特殊召喚。」

 

 セイクリッド・グレディ

 効果モンスター

 星4/光属性/魔法使い族/攻1600/守1400

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札からレベル4の「セイクリッド」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 セイクリッド・カウスト

 効果モンスター

 星4/光属性/獣戦士族/攻1800/守 700

このカードはS素材にできない。(1):フィールドの「セイクリッド」モンスター1体を対象として以下の効果から1つを選択して発動できる。この効果は1ターンに2度まで使用できる。●対象のモンスターのレベルを1つ上げる。●対象のモンスターのレベルを1つ下げる。

 

「レベル4が2体・・・。」

 

 向こうがつぶやくがまだまだ終わらない!!

 

「おーと?!早速レベル4のモンスターが2体揃った!!これは来るか?!」

 

「いえ、まだですね。」

 

 そう、菊さんが言うようにまだやることがある!!

 

「僕はセイクリッド・カウストの効果を発動。グレディのレベルを1上げる。」

 

「おおっと?!レベルが変わったぞ?!これではエクシーズができないのでは?!」

 

「いえ、カウストの効果はあともう一回発動できますので、それによって・・・。」

 

「レベル5が2体・・・。」

 

 向こうも気付いたみたいだが、このタイミングでヴェーラー打たないということは妨害札はないと見た。

 

「僕はカウスト自身のレベルを5に変える。そしてセイクリッドの星痕を発動。」

 

 セイクリッドの星痕

 永続魔法

自分フィールド上に「セイクリッド」と名のついたエクシーズモンスターが特殊召喚された時、デッキからカードを1枚ドローできる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 これで準備は整った。

 

「僕はレベル5のセイクリッド・カウストとグレディでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5!セイクリッド・プレアデス!!」

 

 これが僕の切り札、セイクリッド・プレアデス!!

 

 セイクリッド・プレアデス

 エクシーズ・効果モンスター

 ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守1500

 光属性レベル5モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「おおっと?!北斗選手早々に切り札の登場だーーー!!」

 

 一気に歓声が沸き上がる。やはりこの瞬間は気持ちがいい。

 

「それだけじゃないですね。」

 

「と言いますと?」

 

「エクシーズ召喚に成功したので、先ほど発動した星痕の効果で1枚ドロー出来ます。もし手札が良ければさらに展開することも可能ですし、手札増強は次のターンの布石にもなりますから。手札の数だけ可能性があるのがデュエルモンスターズですからね。更に言うならこれでカタストルも除去できる。」

 

「成程、堅実な一手というわけですね。」

 

「ええ。セイクリッドは場合によっては手札消費が激しいですから、手札増強の手段である星痕を初手から発動できたのはかなり有利に思えます。ただし、あの伏せカード次第ですが。」

 

「そういえば随分と菊選手はセイクリッドについてお詳しいようですが、セイクリッドを持つ対戦相手にあたったことはありますか?」

 

「というよりは彼自身と対戦したこともあるくらいなんですが。まあ生半可なプロなら負けてしまうんじゃないかと思うくらいには彼の実力は高いです。」

 

「おお、菊選手お墨付きというわけですか!!それは期待できますね。」

 

「ただ・・・。」

 

「ただ?」

 

「CMを知っている人からすると一概にそう言い切れないんですよ。」

 

「ほお。」

 

「まあ、それはまたおいおい説明しておこうと思います。」

 

 解説は解説で盛り上がっているが、まずあれを対処しないと・・・。

 

「星痕の効果で1枚ドロー。そしてセイクリッド・プレアデスの効果発動!!オーバーレイユニットを一つ取り除くことでフィールドのカードを1枚手札に戻す!!」

 

 だが、伏せカードは何もなくカタストルはエクストラデッキに戻っていく。やはり妨害札ではないのか。・・・警戒しすぎた?

 

「バトルだ!!セイクリッド・プレアデスでダイレクトアタック!!」

 

 だけれど、その攻撃は茂古田には届かなかった。

 

「アクションマジック、回避を発動!!」

 

 アクションマジックを使われたか。出来れば早々にダメージを与えておきたかったんだけれど・・・。

 

「ターンエンド。」

 

 手札に妨害用のカードが来ない。だがプレアデスさえいれば十分。

 

 HOKUTO

  手札6→4

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 MITIO

  手札2→3

 さて、どう仕掛けてくる?何か手はあるか?!

 

「・・・僕は禁じられた聖杯を発動!!対象はプレアデス!!」

 

 禁じられた聖杯

 速攻魔法

(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時までそのモンスターは、攻撃力が400アップし、効果は無効化される。

 

 な、それはまずい!慌ててアクションカードを探すが、拾ったのはハイダイブだった。これを消費したうえでもう一枚のアクション魔法を探す時間はない。ならば・・・。

 

「僕はセイクリッド・プレアデスの効果発動!!その伏せカードを手札に戻してもらう。」

 

「かまわないよ。これでそのプレアデスのオーバーレイユニットは無くなった。モンスターをセット。カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 MITIO

  手札2→3→0

 

「おおっとぉ?!せっかくプレアデスを封じたのに何もしてこない!!これはいったいどうしたことかぁ!!」

 

 ・・・あの伏せカード、何かある。1枚はさっきのターンに伏せられたカード。そしてもう一枚は・・・。ダメだ、あのCMに相性のいいカードが思いつかない。だがあの自信満々な態度、おそらく攻撃反応型か召喚反応型の汎用カードのはず。

 

「僕のターン、ドロー!!僕はセイクリッドの星痕をもう一枚発動する。」

 

 HOKUTO

  手札4→5→4

 

 これでトレミスにしてから考えよう。幸いにも手札にはポルクスがいる。

 

「僕はプレアデスでオーバーレイネットワークを再構築!眩き光もて降り注げ!エクシーズ召喚!ランク6!セイクリッド・トレミスM7!」

 

 セイクリッド・トレミスM7

 エクシーズ・効果モンスター

 ランク6/光属性/機械族/攻2700/守2000

 レベル6モンスター×2

このカードは「セイクリッド・トレミスM7」以外の自分フィールドの「セイクリッド」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事もできる。この方法で特殊召喚した場合、このターンこのカードの効果は発動できない。(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分または相手の、フィールド・墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを持ち主の手札に戻す。

 

「おおっとぉ?!ここでプレアデスがさらに強大なモンスターに変わったぁ!!」

 

「更に手札消費を抑えたうえで手札を増強出来ましたので、アドバンテージ的に有利になりましたね。対戦する茂古田選手の手札は0。ここで一気に勝負を決めに行きたいところです。」

 

「これは決着も近いかぁ?!」

 

「トレミスの召喚に成功したとき、星痕の効果で2枚ドロー。」

 

 HOKUTO

  手札4→6

 

 さて、だけど手札には伏せを対処するようなカードは来なかった。だけどカウストが手札に来てくれたおかげでプレアデスが出せる。

 

「トレミスの召喚に成功したとき、星痕の効果で2枚ドロー。僕はセイクリッド・ポルクスを召喚。効果でもう一度通常召喚を行う。これでカウストを召喚し・・・」

 

「罠発動、激流葬!」

 

 よりによってそれか!!

 

 激流葬

 通常罠

(1):モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。フィールドのモンスターを全て殺処分(破壊)する。

 

「これで僕も君もモンスターは居なくなった。だけれど・・・。」

 

 フィールドを見ると1枚のカードが発動されている。

 

「その罠カードは?!」

 

「ああ、僕はこの食罪庫を発動していた!このターン破壊されたCMをこのカードの下に重ねる。食罪庫にいったモンスターの数、僕はRCMを手札に加えれる。さて、その手札にこのカードを破壊するすべはあるのかな?」

 

 食罪庫

 永続罠

(1):このカードは、このターン墓地へ送られた「CM」モンスターを全てこのカードの下に置いて発動する。自分はこのカードの下に置いたカードの数だけデッキから「CM」モンスターを手札に加える。 (2):自分フィールドのモンスターの数がこのカードの下に置かれたカードの数よりも多くなった場合、 自分フィールドのカードを全て破壊する。

 

 MITIO

  手札1

 

「・・・。」

 

 ない。さっきのドローでサイクロンあたりが来てくれれば最適だったのだが・・・。さり気にCMを殺処分(破壊)されたせいで手札も増やさせてしまった。

 

「・・・セイクリッドの超新生を発動。墓地のグレディとカウストを手札に戻す。このターンバトルは行えない。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 セイクリッドの超新生

 通常魔法

自分の墓地の「セイクリッド」と名のついたモンスター2体を選択して手札に加える。このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

 HOKUTO

  手札6

「僕のターン、ドロー。」

 

 MITIO

  手札1→2

 

「僕は手札からワンダー・レシピを発動!これの効果は食罪庫の下にあるカードの数まで手札からRCMを特殊召喚できる。そしてその後召喚した数×300のダメージを与える。」

 

 ワンダー・レシピ(アニメオリカ)

 永続魔法

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「食罪庫」の下に置かれたカードの数まで、 自分は手札から「RCM」モンスターを攻撃表示で特殊召喚できる。 その後、この効果で特殊召喚したモンスターの数×300ダメージを相手に与える。

 

「つまりさっき加えたカードを・・・。」

 

「そういうこと。」

 

「おおっとぉ?!まさかあのカードがこれへの布石になっていたのかぁ!!」

 

 解説も驚いているが重要なのはそこじゃない!問題はたとえそのRCMを破壊したとしても食罪庫の効果でまた手札にRCMが行ってしまうということ。簡易的なループか・・・。厄介な。

 

「僕は、RCM ナイト・ナポリタンを攻撃表示で特殊召喚!」

 

 RCM ナイト・ナポリタン(アニメオリカ)

 効果モンスター

 星8/地属性/天使族/攻 300/守 1100

(1):相手フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚された場合、 そのモンスター1体を対象として発動できる。 このカードを手札に戻す事で、その対象のモンスターを破壊する。 (2):1ターンに1度、自分フィールドの「RCM」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの元々の攻撃力はターン終了時まで倍になる。 この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

 出てきたのはナポリタンと騎士を合わせた随分とコミカルなモンスター。だが素の攻撃力は300。これなら食らってもまだ痛くはない。

 

「召喚に成功したので300のダメージを与える。」

 

 HOKUTO 4000→3700

 

 ・・・何もできない。アクション魔法は今は拾えない。手札にアクションカードは1枚しか持てないからだ。ハイダイブ・・・いらねぇ。

 

「バトルだ、ナイト・ナポリタンでダイレクトアタック!」

 

 糞、使うタイミングがなかった所為でアクション魔法が腐っている。これじゃあ他のアクションマジックを拾うことができない。手札に持てるアクション魔法の数は1枚まで。さっきプレアデスに使うべきだったか・・・。

 

 HOKUTO 3700→3400

 

「だがその程度、僕に言わせればダメージにもならない。」

 

「塵も積もれば山となる。僕はコツコツ行かせてもらうよ。料理に下準備は大切なんだ。僕はこれで、ターンエンド。」

 

 く、だが手札アドバンテージは僕にある。伏せた奈落の落とし穴はCMの攻撃力が低いために現在は腐っているが仕方がない。ブラフにはなるだろう。それに2回目のカタストルが来ないとも限らない。

 

「僕のターン、ドロー。」

 

 HOKUTO

  6→7

 

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、手札からセイクリッド・シェアトは特殊召喚できる。シェアトを守備表示で特殊召喚!」

 

 セイクリッド・シェアト

 効果モンスター

 星1/光属性/天使族/攻 100/守1600

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。また、1ターンに1度、このカード以外の自分のフィールド上・墓地の「セイクリッド」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードは選択したモンスターと同じレベルになる。フィールド上のこのカードをエクシーズ素材とする場合、「セイクリッド」と名のついたモンスターのエクシーズ召喚にしか使用できない。

 

「更に手札からカウストを通常召喚!カウストのレベルをカウストの効果で5に上げる。そしてシェアトの効果でカウストを選択。このターン、シェアトのレベルはカウストと同じになる。行くぞ、エクシーズ召喚!」

 

 これでもう一度バウンスしてやる。

 

「セイクリッド・プレアデス!」

 

「またまた北斗選手のエースモンスターが登場したーーー!」

 

「いや、これはまずい。」

 

 え?なんだって?だけどこれであのカードをバウンスすれば・・・。

 

「僕はRCM ナイト・ナポリタンの効果発動!このカードを手札に戻すことで召喚、特殊召喚したモンスターを破壊する!」

 

「な、プレアデス!!」

 

 思わず叫んだがもう遅い。プレアデスの口にスパゲッティが流れ込む。な、気持ち悪い・・・。コミカルな見た目に比べていともたやすく行われるえげつない行為に思わず呆気にとられてしまった。

 

「これは北斗選手、随分とまずいことになったぁーーー!」

 

「今のは残念ですね。というよりはプレイミスというべきですが。」

 

「プレイミスと言うと・・・?」

 

「RCMの破壊効果は決して召喚を無効にする効果ではありません。つまり、召喚自体には成功している。その着地時にナポリタンの効果が発動していますからプレアデスの効果をチェーン発動できたはずなんです。破壊されるのをあきらめて食罪庫をバウンスし、次のRCMを召喚させなくしたり、もしくはRCMをバウンスすることで不発にすることもできたはずなんです。RCMの手札に戻る効果はコスト扱いではないのでプレアデスであれを戻せばよかったのですが・・・。」

 

「成程、これは痛いミスだぞ北斗選手ー!!」

 

 成程、裁定は奈落と似たものなのか。ならばプレアデスでバウンスできた。それをしていれば今頃はもっと楽だったのに・・・。相変わらず手札に除去カードは来ない。そもそも自分は展開重視にしてたのでサイクロンもハーピィもぎりぎりまで積んでいなかった。これならもっと汎用カードを積むべきだったかとは思うがもう遅い。

 

「・・・星痕の効果で2枚ドロー。カードを伏せてターンエンド。手札制限で1枚捨てる。」

 

 HOKUTO

  手札7→5→7→6

 

 来たのは2枚目の奈落。これじゃああれは倒せない。

 

「僕のターン、ドロー。手札抹殺を発動!」

 

「このタイミングで手札交換?!」

 

「僕は手札を1枚捨て1枚ドロー。」

 

「僕は手札を7枚捨てて7枚ドロー。」

 

 ここで手札交換?する必要性はあまり感じないんだが・・・。

 

「ここで食罪庫の効果発動!墓地にRCMが行ったので手札にRCM プリンセス・プリンを手札に加える。」

 

 それでもいいのかよ・・・。

 

「RCM プリンセス・プリンを手札からワンダー・レシピの効果で特殊召喚!さらに300のダメージ!」

 

 HOKUTO 3400→3100

 

 RCM プリンセス・プリン(アニメオリカ)

 効果モンスター

 星6/地属性/天使族/攻 300/守 100

(1):相手フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚された場合、 そのモンスター1体を対象として発動できる。 このカードを手札に戻す事で、その対象のモンスターを破壊する。 (2):1ターンに1度、自分フィールドの「RCM」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力はターン終了時まで倍になる。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

 でたなRCM。もはやそのコミカルな見た目が悪魔にしか見えない。

 

「プリンセス・プリンでダイレクトアタック!」

 

 さっき拾ったアクション魔法は手札抹殺で墓地に行ってしまった。仕方がない。甘んじて受けよう。

 

 HOKUTO3100→2800

 

 この程度ならまだ・・・。

 

「そしてモンスターをセット。ターンエンドだよ。」

 

 MITIO

  手札0

 

「・・・俺のターン、ドロー。」

 

 HOKUTO

  手札6→7

 

「僕は神星なる聖域を発動。このカードが存在する限り光属性モンスターの効果は無効化されない。」

 

 神星なる聖域

 永続魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、光属性モンスターの効果の発動は無効化されない。

 

 ・・・手札が悪い。さっきの手札抹殺で墓地にカウストもティンクル・セイクリッドも行ってしまった。少なくともこのターンはプレアデス以外で凌ぐしかない。

 

「僕は手札からセイクリッド・シェアトを特殊召喚。」

 

「RCMの効果は使わない。どうぞ。」

 

 余裕だな。まあそれも仕方ないか。ならば・・・。

 

「ターンエンド。」

 

 HOKUTO

  手札5

 

「これは北斗選手、消極的なプレイング!だがシェアトの守備力はプリンセス・プリンよりも高い!これは耐え凌ぐつもりかぁ?!」

 

「おそらくそうでしょうね。先ほどの手札抹殺で捨てた手札を確認しましたが、どうやら何枚かのキーカードを捨てられたようです。これはどんどん流れが茂古田選手に行っているようですよ。対する茂古田選手は手札こそ少ないものの厄介な布陣を手に入れていますから。」

 

 大丈夫、手札はドローするカードだけなんだ。ならばシェアトを突破するのはアクション魔法でもない限り難しいはず。でも一番攻撃力のアップが強いハイダイブは僕が握っているから、あと残りわずかであろう攻撃力アップ系のカードを合わせたとしても突破されにくい・・・。最悪突破されたとしてもダメージは防げる。

 

「僕のターン、ドロー。」

 

 問題は、もし手札回復されたときの場合だ。

 

「僕は、伏せていたメタモルポッドの効果発動!このカードがリバースしたとき、互いに手札をすべて捨て、カードを5枚ドローする!僕は手札を1枚捨てて5枚ドロー。」

「・・・僕は手札を5枚捨てる。」

 

 MITIO

  手札5

 

 HOKUTO

  手札5

 

 やはり手札回復されたか・・・。だが高打点モンスターなら奈落で・・・。

 

「僕はハーピィの羽根箒を発動、そのカードを全て破壊する。」

 

 希望が刈り取られた。どこからか悔しいでしょうねぇなんて声が観客席から聞こえてくる。誰だ。

 

「さらにブラック・ホールを発動!」

 

 根こそぎ更地にされた。次のアクション魔法を探すが、流石にシェアトを守るカードはそうそう見つからない。シェアトは破壊されてしまった。これで僕のフィールドはがら空き。

 

「更に食罪庫の効果で手札にRCM プリンス・カレーとRCM キング・ハンバーグを手札に加える。」

 

 手札が減らない・・・。

 

 MITIO

  手札5→3→5

 

「さてお待ちかね、僕はワンダー・レシピの効果でRCM プリンス・カレー、RCM キング・ハンバーグ、RCM クイーン・オムレツを特殊召喚!そして900のダメージだ!」

 

「そうはさせない!」

 

 幸いにもここには・・・。

 

「アクション魔法、フレイム・ガード!効果ダメージを0にする!」

 

 RCM プリンス・カレー(アニメオリカ)

 効果モンスター

 星7/地属性/天使族/攻 300/守 1000

(1):相手フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚された場合、 そのモンスター1体を対象として発動できる。 このカードを手札に戻す事で、その対象のモンスターを破壊する。 (2):1ターンに1度、自分フィールドの「RCM」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの元々の攻撃力はターン終了時まで倍になる。 この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

 RCM キング・ハンバーグ(アニメオリカ)

 効果モンスター

 星10/地属性/天使族/攻 300/守 1300

(1):相手フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚された場合、 そのモンスター1体を対象として発動できる。 このカードを手札に戻す事で、その対象のモンスターを破壊する。 (2):1ターンに1度、自分フィールドの「RCM」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの元々の攻撃力はターン終了時まで倍になる。 この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

 RCM クイーン・オムレツ(アニメオリカ)

 効果モンスター

星9/地属性/天使族/攻 300/守 XXXX

(1):相手フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚された場合、 そのモンスター1体を対象として発動できる。 このカードを手札に戻す事で、その対象のモンスターを破壊する。(2):1ターンに1度、自分フィールドの「RCM」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの元々の攻撃力はターン終了時まで倍になる。 この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

 フレイム・ガード

 アクション魔法

 (1):効果ダメージを0にする。

 

 MITIO

  手札5→2

 

 悪夢か。悪夢なのか。これじゃあエクシーズ出来ない。全て手札に戻って破壊されるだけ。

 

「効果ダメージは防がれたか。だけどRCM プリンス・カレーとRCM クイーン・オムレツの効果は、このターンそのモンスターの攻撃を放棄することで自分フィールドのRCMモンスターの元々の攻撃力を倍にする。さて、そこにこのカードをトッピングしてみよう。料理は常に進化する!」

 

 見せたカードは進化する人類。まずいな、あれは元々の攻撃力を上げるカード。これが発動すれば・・・。

 

「進化する人類の効果で元々の攻撃力は1000になった。更にRCM プリンス・カレーとRCM クイーン・オムレツの効果発動!RCM キング・ハンバーグの攻撃力は4000になった。」

 

 進化する人類

 装備魔法

自分のライフポイントが相手より少ない場合、装備モンスターの元々の攻撃力は2400になる。自分のライフポイントが相手より多い場合、装備モンスターの元々の攻撃力は1000になる。

 

 まずいまずいまずい。

 

「行け、RCM キング・ハンバーグ!ダイレクトアタック!!」

 

 アクション魔法・・・あった!!幸いにも発動は間に合いそうだ。しかも2枚目まで!

 

「アクション魔法ティンクル・コメット!相手モンスターの攻撃力を1000ポイント下げて更に500のダメージを与える!そして!!」

 

 ティンクル・コメット

 アクション魔法

(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで1000ダウンし、相手に500ダメージを与える。

 

 ジャンプしてギリギリだが二枚目を取ることができた。これで何とか延命を・・・。

「エナジー・メイトを発動!自分は500ライフ回復する!」

 

 エナジー・メイト

 アクション魔法

(1):自分は500LP回復する。

 

 これでダメージは凌ぐことができた。ライフも僅かだが残っている。

 

 HOKUTO 2800→3300→300

 

 MITIO 4000→3500

 

「北斗選手アクションカードで何とか凌いだーーー!だがライフは風前の灯火!これは決まったかー?!」

 

「このターンで決めきれなかったか・・・。カードを1枚伏せて、ターンエンド。」

 

 MITIO

  手札1→0

 

 ・・・強い。セイクリッドの十八番である連続召喚を止められ、フィールドはがら空き。これで勝つのはかなり難しいだろう。

 

「柊プロはどうお考えですか?」

 

「そうですね、この状況は厳しいように思います。さっき言っていたCM相手に厳しいと言っていましたね。それは今みたいにRCMによるロックの影響を多大に受けてしまうからです。おまけに手札はさっきのメタモルポッドの所為でまたキーカードを落とされたようですからね。ただ・・・。」

 

「ただ?」

 

「あの場面でハーピィの羽根箒を打つのは自分では考えるところです。」

 

「というのは?」

 

「あの場面、北斗選手は伏せが埋まっていたのですが、それは逆に言えば魔法も罠もこれ以上使えないということです。それに分からなくなっていた伏せのうち1枚は更に前のターンから伏せられていました。」

 

「ええ、そうですね。」

 

「つまり、あのカードは発動タイミングを逃しているカードである可能性が出てくる。もちろんそうでない可能性は十二分にあります。ですが私の所見ですと少なくとも好きなタイミングに発動できるカードではなかったでしょう。何よりあの状況だとアクション魔法を発動どころか手札に加えることさえできなかったんですから。」

 

「そう言われると、確かにそんな気がしてきます。」

 

「これが普通のスタンディングデュエルならそうは言いません。むしろ最適なプレイングです。セイクリッドデッキですから、手札誘発のカードも限られますし。」

 

「なぜセイクリッドだと限られてくるんです?」

 

「プレアデスを出した方がバトルフェーダーなんかを入れるよりもよっぽど妨害になりますから。エフェクト・ヴェーラーなら最悪シンクロ素材にもできますから腐りにくいですが、バトルフェーダーや速攻のかかしを入れれるかと言われたら悩ましいところかと・・・。何より再利用しにくいですし、何でもかんでもデッキに入れていたらデッキが重くなっていきます。あとはオネストもありますが、モンスターをブラック・ホールで消せるならそれは除外しても大丈夫でしょう。」

 

「そういえば普通のデュエルだととおっしゃっていましたが、アクションデュエルだと何か違うのですか?」

 

「アクション魔法の存在が大きいからですね。あのカードはフリーチェーンで発動できますし、何よりもさっきみたいなスタンディングなら普通に止めをさせる状況まで追い込んでもアクション魔法で回避されてしまう、そんな事態が出てくるからです。ですから場を一掃したからって勝てるわけではなくなります。そうなってくると安心仕切って展開した場を崩されて逆転負け、なんていうケースも決して珍しくないんです。それはあなたが一番よく分かっているのでは?ストロング石島のマネージャーだったあなたなら。」

 

「成程、そういう考え方もあるんですね。いえいえ、私はデュエリストとしては3流もいいとこなので。」

 

 菊さん、確かにハーピィおかげで首の皮一枚繋がりましたよ。ブラック・ホールだけなら間違いなく負けていました。

 

 向こうは完全に余裕。こっちの苦しい状況が分かっているんだろう。

 

 だけど・・・負けられない理由がある。僕だって。

 

「僕のターン・・・。」

 

 負けたくないんだ。

 

「ドロー!!」

 

 HOKUTO

  手札5→6

 

 来たカードはさっき発動されたのと同じ、ブラック・ホール。これならあのRCMを突破できるだろう。だけど、あの伏せカード。もしカウンター罠なら・・・。それにたとえ破壊できても、あの罠でリカバリされてしまう。幸いにもサイクロンがある。これで様子を見てみるか・・・。向こうのデッキは食罪庫がキーになっている。破壊できれば希望も・・・。

 

「サイクロン発動!対象は食罪庫!」

 

 これが通れば・・・。

 

「罠発動、神の宣告!ライフ半分を払い魔法の効果を無効にし破壊する!」

 

 神の宣告

 カウンター罠

(1):LPを半分払って以下の効果を発動できる。●魔法・罠カードが発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。●自分または相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する際に発動できる。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。

 

 MITIO 3500→1750

 

 ・・・これなら、勝てるかもしれない!魔宮の賄賂ならともかく神の宣告でライフが半分になった今なら!

 

「魔法発動ブラック・ホール!!これで場のモンスターを一掃する!」

 

「クッ!まだそんなカードがあったのか!これは打つカード間違えたかな?だが食罪庫の効果で墓地に行ったRCM3枚の数までデッキからRCMを手札に加える!僕はRCM プリンス・カレーとRCM クイーン・オムレツ、RCM キング・ハンバーグを手札に!!」

 

 いや、たとえ手札に加えても・・・。

 

「このターンに決着をつける!」

 

「おおっとぉ?!北斗選手勝利宣言だぁ!!」

 

「まあ、このターンに決着をつけなければまたワンダー・レシピの効果で特殊召喚されてしまいますからね。このターンが勝負の分かれ道です。」

 

 そう、このチャンスを逃したらもう後はない。

 

「僕はセイクリッド・ポルクスを召喚!更に効果発動!効果で手札のグレディを召喚!更に手札のセイクリッド・ソンブレスをポルクスの効果で特殊召喚!ソンブレスの効果発動!墓地のグレディ一体を除外して手札にカウストを加える!」

 

 セイクリッド・ソンブレス

 効果モンスター

 星4/光属性/天使族/攻1550/守1600

「セイクリッド・ソンブレス」の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):自分の墓地の「セイクリッド」モンスター1体を除外し、自分の墓地の「セイクリッド」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのメインフェイズに発動できる。「セイクリッド」モンスター1体を召喚する。(3):このカードが墓地へ送られたターン、「セイクリッド」モンスターを召喚する場合に必要なリリースを1体少なくできる。

 

「アクション魔法発動!」

 

 このタイミングでアクション魔法?まずい、まさかそれを拾われたか?!

 

「コスモ・アロー。君なら知っているんじゃないかい?星の聖域が得意なら。あそこには確かこのカードがあっただろう?」

 

「相手が手札に加えたカードを墓地に送る・・・。」

 

「その通り。」

 

 コスモ・アロー

 アクション魔法

(1):通常ドロー及びカードをドローする効果以外で、相手がカードを手札に加えた時に発動できる。そのカードをお互いに確認し、魔法カードだった場合、そのカードを破壊する。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠カードを発動できない。

 

「な、なんと!!これは北斗選手の連続エクシーズ、それも切り札であるプレアデスへつながる道筋を封じられた!!」

 

「いえ、まだですね。確かにもうカウストはありません。ですが手札はまだ二枚ある。」

 

 ・・・そう、+まだだ!!

 

「手札を1枚伏せる。このカードは手札1枚の時に特殊召喚できる。」

 

「・・・?そんなカードセイクリッドにはありましたか?」

 

「いいえ。ですがこの条件で特殊召喚できるカードはあれですね。」

 

「あれ?」

 

 どうやら菊さんは分かったみたいだ。それもそのはず、これはさっき餞別だと言って彼がデッキから1枚抜いて渡してくれたカードなんだから。ゲン担ぎ目的でまったく使い道がないと思っていたけれど、まさかこんなタイミングで来るなんて思ってもしなかった。

 

「E HEROバブルマンを特殊召喚!!」

 

 E HEROバブルマン

 効果モンスター

 星4/水属性/戦士族/攻 800/守1200

(1):手札がこのカード1枚のみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。(2):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。この効果は自分の手札・フィールドに他のカードが無い場合に発動と処理ができる。

 

「な、なんだって?!」

 

「これは驚いたーーー!まさかのE HERO!!セイクリッドだけではなかったーーー!!」

 

「行くぞ、茂古田!僕はレベル4戦士族のポルクスとバブルマンでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 そしてこれは姉さんが託してくれたカード。さっきの試合の前渡された、姉のもう一つの切り札。自分は受け取り拒否しておいて、そのくせ渡しに来るなんてどうかと思うが、断ればあの人のことだから暴力に訴えかけてくるかもしれない。その辺は香澄さんと似ているんだよなぁ。

 

「光纏いて現れろ!闇を切り裂くまばゆき王者!エクシーズ召喚!H-C エクスカリバー!!」

 

 H-C エクスカリバー

 エクシーズ・効果モンスター

 ランク4/光属性/戦士族/攻2000/守2000

 戦士族レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。このカードの攻撃力は、次の相手のエンドフェイズ時まで元々の攻撃力の倍になる。

 

「エクスカリバーの効果発動!!エクシーズ素材を2つ取り除いて攻撃力を倍にする!」

 

 これでエクスカリバーの攻撃力は4000になった。だけどまだだ、ここまで来たんだ。精一杯やらせてもらおうじゃないか!

 

「僕はセイクリッド・グレディとソンブレスでエクシーズ召喚!セイクリッド・オメガ!」

 

 セイクリッド・オメガ

 エクシーズ・効果モンスター

 ランク4/光属性/獣戦士族/攻2400/守 500

 光属性レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。自分フィールド上の全ての「セイクリッド」と名のついたモンスターは、このターン魔法・罠カードの効果を受けない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 これなら、回避も受け付けない。エクスカリバーが失敗したときの保険だ。

 

「行け、エクス・・・カリバーーーー!!」

 

 エクスカリバーが持っていた大剣を振り下ろした。砂煙が上がる。これが通っていれば・・・やったのか?

 

 だけど、砂煙の中から出てきたのは無傷の茂古田。回避でも使われたか。だけどその時のためのオメガだ。

 

「いけ、オメガ・・・攻撃しない?」

 

 不思議に思うけど、向こうは動揺していない。

 

「そりゃあそうさ。今はメインフェイズ2なんだから。」

 

 なんだって?そんなはずはない。だって伏せカードはないじゃないか。ならばもう・・・いや、違う。アクション魔法だ。そして茂古田の言葉。そこから考えるに・・・。

 

「・・・大脱出。」

 

「正解。」

 

 大脱出、バトルフェイズを終了させるアクション魔法・・・。

 

「・・・ターンエンド。」

 

 伏せていたのはセイクリッド・テンペスト。いつもは心強いこのカードを引いたのを、今は恨めしく思った。

 

「僕のターン、ワンダーレシピの効果で手札からRCM プリンス・カレーとRCM クイーン・オムレツ、RCM キング・ハンバーグ、そしてRCM ナイト・ナポリタンを特殊召喚。」

 

 召喚成功時の効果で、僕のライフは・・・。

 

 せめてもの抵抗と思ってアクション魔法を探すが、どうやら先ほどのエクスカリバーの攻撃で所定の位置からずれたようだ。見つからない。

 

「・・・次は勝つ。」

 

「うん、またやろう。」

 

 その言葉と共に、RCM達から光があふれだし、僕を包み込む。

 

「ななななんと!!あの激戦を制したのは茂古田未知夫選手ーーー!!」

 

 ・・・ああ、悔しいなぁ。

 

 

 

  ◇

 

 さっきの試合、北斗君のデュエルは素晴らしかったと思う。あそこまで接戦だったデュエルは実はプロでもそうそうない。何よりアクション魔法がなかったらあそこまで追い詰められなかっただろうし。あれはアクションデュエルだからこそできた試合とでもいうべきかもしれない。

 

 それにしてもまさか本当にバブルマンを入れているとは。実は会場に着く前にパックを剥いていて、彼を会場に送るときに餞別に丁度いいからカードをあげようと思ったのだが、ものの見事にセイクリッドには入りそうにないカードばかり。かろうじて入ったのがあの強欲な泡男。OCGのあいつは効果発動条件が厳しいので強欲なのか謙虚なのか分からないが、まあ入らないわけじゃないだろうと思って渡してみたのだったが、まさかエクスカリバーになるとは。確かあれは凪流が持っていたはずだから彼女が渡したのかな?まああいつは弟思いだから不思議ではない。まあ、役に立ったんだから良かったよ。手札事故起こされたら気まずいし。

 

 そしてまあ、残念ながら彼は負けてしまった訳で、それでもなんか気になってしまったので様子を見に来たんだけど・・・。必要なかったみたい。

 

 だって、あそこに笑いあっている3人組がいるんだもん。わざわざ割って入る野暮な真似はすることもないでしょう。柊菊はクールに去るぜ・・・。

 

「あ、菊さん。」

 

 ・・・見つかっちゃったよ、見つかっちゃいましたよ恥ずかしい。

 

「菊さん、カードありがとうございました。」

 

 しかもお礼言われちゃったよ。いや、俺がやったのデッキバランス崩しただけだよ・・・。罪悪感パない。

 

「・・・残念だったね。」

 

「いえ、僕はまだまだ未熟だと思い知らされました。それであの、こんなこと頼める間柄でないのは承知しているんですが・・・。」

 

 ん?なんだい?こんなクズに何を頼もうと?

 

「・・・僕を弟子入りさせてくれませんか?!」

 

 WHAT?・・・おいおい。

 

「負けたくないんです。あの茂古田にもですけど、何よりあいつらにも、姉さんにも。今日の試合をして悔しかった。けど、楽しかったんです。僕はもっと強くなって、もっと楽しみたい。だからプロを、改めて目指すことにしました。」

 

 ・・・で、それとこれの関係は?

 

「菊さんは僕らとそう変わらない年齢でプロになったんですよね。なら、僕らにだって本当は出来たはず。それならいっそ、本人に教わればいいって。さっき姉さんに相談したら、本人に言ってみればいいと。」

 

「・・・アイツは。」

 

 多分、断らないとでも思ってたのだろう。俺があの時凪流に教えた時と同じだ。入学式、あいつは皆の前でデュエルして、接戦で負けて、それから俺に土下座してまで頼み込んだ。そんなことしなくてもデュエルくらい相談に乗っていたのに。

 

「北斗君、俺は今はともかくとして、一応遊勝塾の人間だ。」

 

 そういうと断られたと思ったのか少し残念な表情になった。

 

「だから、一度遊勝塾に遊びに来なさい。」

 

「え?」

 

「俺はほら、一応プロだからね。変にLDSに入り込んでスパイ容疑がかかりかねなかったりするんだよ。おまけに所属している塾も、さっき言った遊勝塾だったから余計に。」

 

 これは凪流達に会いにLDSを訪れたときにこれはほんとにあったことだ。プロになってすぐだった頃、まさか忘れ物を届けに行っただけで講師に警戒されるとは思ってもみなかった。まあ、顔見知りだった受付さんのおかげでその場はやり過ごせたが、だからって次も大丈夫かと聞かれたらかなり微妙だと言わざるを得ない。

 

「うちには遊矢達もいる。リベンジもかねてうちに遊びに来い。父さんならそんな細かいこと言わないだろうし、真澄ちゃんも連れてきてくれたら柚子が喜びそうだ。」

 

 遊勝さんのことがあった時、柚子と遊矢が多少なりとも人間関係に苦労したのは知っている。その関係で遊矢も柚子も、同学年のなかで休みの日に遊ぶ約束をするほどの友人は、実は少ない。いないわけではないが結構限られている。そんな中友人を増やしてほしいと思うのは、野暮な兄心だろう。

 

「たまに来る権ちゃんも刃君と仲がいいんだろう?ならLDSのない日を教えてくれれば俺が特別授業、君たち全員にしてあげるよ。」

 

 実際、俺が主導で行った凪流への特別授業は、エクストラレスの聖騎士の勝率を3割上げる結果に終わった。これは自分にとってそこそこ誇れることである。普通勝てないよ、シンクロエクシーズ抜きだとさ。どれだけきついかやってみるといい。まあ、最終的に妨害カードと、聖騎士からのカオスソーサラーでのパーミに変わったのは気のせいだろう。途中からワイアームも出るようになった。いや、出しやすかったんだよ、モルドレッド聖剣融合(竜の鏡で可)の3枚で出るから。

 

「というわけでどうだい?そこの君たちも。」

 

「・・・北斗がやるなら俺もやる。次はあいつ、勝俣や権現坂に目にもの見せてやりたいしな。」

 

「私も。柚子とは1勝1敗だから。次は勝ちたいんです。」

 

 ・・・目が本気で怖いよ真澄ちゃん。さすが香澄の妹だ。

 

 まあ、そういうことなら。

 

「じゃあ、これは俺の連絡先。そしてこっちは遊勝塾。あ、さっきも言ったように塾は変えなくていい。何かあったら遊びにおいで、みたいなものだと思ってくれ。それからカードについて急ぎ聞きたい場合は俺のメールアドレスを君たちの兄や姉から聞き出しといてくれ。」

 

 ・・・まあ、この子らがガチになれば俺も負ける気はするんだけど。弟子に下手すりゃ負ける師匠。弟子にする必要あるのだろうか。

 

 ・・・まあ、今はこの子らの笑顔が見れたし、いいことにするか。楽しそうだし、水を差すのも悪い。

 

 だからお願い凪流、香澄。柱の裏からそんな顔で俺に向かって威圧しないでくださいお願いします。ほら、弟子にしたよ?これで文句ないよね?

 

 弟子にするのはそれはそれでなんか複雑だから殴らせろ?・・・どのみちバットエンドだったんですね、分かります。てか大牙、見てないで助けてよ。え?自分がまきこまれるのはいや?薄情なやつめ。

 

 

 

 

 結局、ブラコンシスコンの友人二人に思いっきり腹パンされました。大牙、止めてくれよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジャガジャガー?タマゴング?ライオニオン?なにそれ美味しいの?てか作者の頭で全てのRCMの出番を作るのは無理だったんだ・・・。てか今回も長いな。2話どころか3話に分けても問題なかったんじゃ・・・まあいいか。そのうちこれも分けるかもしれません。ご了承ください。

それから、アニメオリカの所為で裁定が分からないカードがいくつもありましたので何か間違いがあったら報告お願いします。回避はたしか対象を取る効果だったような・・・それすらあやふやです。

感想、お待ちしてます!!


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第5話

大変長らくお待たせしました、紫苑菊です。
いやあ、受験やらバイトやらFGOやらですっかり遅くなってしまいました。まあ、受験はいろいろあって浪人することに決めたんですが。どうやらこのストレス発散現実逃避小説はまだ続くようです。
FGOはエドモン・ダンテスがほんとにかっこいいと思う。単発ガチャで出たときは小躍りしました。そして嬉しすぎて暗黒魔轟神作りました。関連性はない。ようつべにあるとある動画にFateネタいっぱいの暗黒魔轟神があったから作っただけで関連性はない。
それから、今回カードの効果を表記しませんでした。と、言うのも感想にカードテキストばかりで読みにくいという声を頂きました。試しにスマホ版で開いてみると読みにくいですし、言われてみれば調べればわかることも多いので今回は表記なしで書いてみました。書いた方がいいか、書かない方がいいか。それを感想に書いていただければ幸いです。


4/14 感想にあったボールスとガルドの効果処理を訂正しました。申し訳ございません。


 弟子が増殖しました。クリボーか。

 

 まあ、そんなことは置いておきましょう。今の俺にはどうでもいい。

 

 さて、周りを見渡してみましょう。

 

 なんということでしょう!そこにはオベリスクフォースの面々がいるではありませんか!!あたりには10名ほどのオベリスクフォース。そして囲まれている俺。どう見てもリンチされる未来しかありません本当にありがとうございます。どうしてこうなった。いや、まじで。

 

 こうなったら昨日から記憶をたどっていこう。あれは遡ること1日前・・・。

 

 

   ◇

 

 

「え?ちょっと待ってもう一度言って?」

 

「あなたは敵ですか?それとも味方ですか?柊プロ。」

 

「オッケーちょっと待て。どうしてそうなった。」

 

 試合が終わった後、呼び出されてきた控室で赤馬君に疑われました。

 

 いや、マジでどうして?

 

「・・・あなたが昨日セレナとデュエルした時の映像を見させてもらいました。」

 

 え?マジで?あ、でもあそこは赤馬コーポレーションが運営してるスタジアムだから監視カメラぐらいあって当然か。ならしらばっくれないや。

 

「うん、それで?」

 

「・・・デュエルの内容については触れるつもりはありません。重要なのはどうしてあそこにあなたが居たのかということです。」

 

 え?そんなことで?!まあいいや。

 

「偶然叫び声が聞こえたんだ。それで何やらよからぬ現場に出くわしてね。知り合いが襲われてるのを見て見ぬふりをするわけにいかないだろ?」

 

 これは事実だ。そこに嘘偽りはない。清廉潔白な俺が嘘なんかつくはずがないよ・だからそんなに疑わしそうに見ないでよ零児くん。

 

「ええ、そうかもしれません。なのでその場にいた他の人物に尋ねることにしました。」

 

「・・・あそこには北斗君が居たね。彼からかい?」

 

「ええ。」

 

 成程。でもだからと言って・・・。

 

「彼の話では、貴方は少々意味不明なことを言っていたらしいのですよ。」

 

「意味不明?」

 

 そんなこと言った覚えは・・・。

 

「『融合次元』『オベリスク・フォース』『カードにする』。これらの単語を、貴方は話していたそうですね?」

 

 ・・・あ。

 

「その単語を知っているのは今現在この世界で限るなら、貴方が相手したセレナと、そこからセレナを連れ去った護衛。そしてLDSの極一部の人間。そしてLDS襲撃犯の黒咲隼。そして私だけ。LDSの人間が貴方とアポイントを取った形跡はなく、黒咲が貴方にその話をしたかは確認済みです。セレナは外していいでしょう。貴方は彼女に会う前からそのことを知っていた。それに先ほど彼女に接触しましたが、『記憶にない』と言われました。」

 

 ああ、そりゃあそうだ。だってそこから聞いてないもの。アニメで見たんだもの。

 

「では、あなたはどこでそれを知ったのか。そこで私は最初、貴方が融合次元のスパイではないかと考えました。ですが、それはあり得ない。」

 

「ほう、そりゃあまたどうして?」

 

「貴方は少なくともこの次元に7年前にいたことは確認されています。戸籍もありましたし、何より貴方の公式戦のデータは7年前からLDSで保存されているからです。通常ならそのデータは3年ごとに更新されるので削除されるはずだったんですが、貴方の公式戦のデータがあまりにも偉業ならぬ異形でしたので、こちらに残っている限り保存していたからです。」

 

 え?そんなことしていたの?!

 

「これは正直、契約違反に当たります。その点は謝罪します。」

 

 いやまあ、それは別にいいんだけどさ。確か個人情報保護に関する規約で3年で削除されるようになってたはずだけど、それくらいなら実害はないし。

 

「なので、貴方がエクシーズ次元ではないことは確信しました。エクシーズ次元の人間が他の次元のことを知ったのはアカデミアが攻めてきてからのようです。黒咲に確認したので、これは間違いありません。」

 

 黒咲、何気に俺の逃げ道いっこ潰しちゃったよ。畜生。次はG積んでデュエルしてやる。エクシーズできない苦しみを味わうがいい。

 

「では、残るはシンクロ次元と融合次元。これのどちらなのかですが、これは正直どうでもいいです。」

 

「え?どういうこと?」

 

「黒咲曰く、シンクロと融合は手を組んでいると考えているようです。どうやら、誘拐事件があった時にシンクロを使う男が妨害に来たと。」

 

 え?そんなことあったの?もうだいぶ前のアニメだから思い出せないなぁ・・・。

 

「真偽は不明ですが、妨害したのなら何らかの協力関係にいるとみていいでしょう。つまり、貴方がエクシーズ次元の人間でない以上、シンクロか融合の人間である可能性がある。それに、身内の恥を晒すようですが、私の父がアカデミアに居ます。あの人は私がプロになる前に行方不明になりました。つまり、少なくとも7年前には融合次元のことを知っていたことになる。」

 

「・・・それで、俺が融合のスパイではないかと考えた。」

 

 まあ、その話を聞けばそうなるよね。

 

「最初はそうでした。」

 

 え?

 

「ですが、貴方は融合次元のデュエリストであるセレナを倒し、志島北斗を助け出している。彼が襲われたのは人通りの少ない裏手でした。たとえ放置しても、目撃者は少ない。あの場合、もしあなたが融合次元の人間なら、助けに入らない判断をするはずです。態々助ける必要性がない。」

 

 あ、それでか。

 

「その行動があったせいで、分からなくなりました。貴方を拘束して脳から直接記憶を覗き見てもいいんですが。」

 

「おい。」

 

 なにそのマッドな考え。怖!!てかLDSの技術力どうなってんの?! 

 

「・・・貴方の場合、拘束する際に生半可な相手だと返り討ちに会いますし、私でも勝てる自信がありません。それに、貴方なら直接聞いた方が早いと判断しました。」

 

「ほう、そりゃあどうして。」

 

「態々危険を冒してまで人を助けるような人間が、ここで俺を襲って疑いを増やすようなことをする人間には思えないのがまず一つ。それから、貴方のデュエルディスク、それ旧型ですよね?それも随分昔の。」

 

「ああ、これ?レトロでいいでしょ。」

 

「それは古臭いの間違いでは?」

 

 ・・・言うねぇ。てか最近のディスク、無駄に高機能で使いにくいんだよ。

 

「それでは、人をカード化するデータを積み込むだけの容量がありません。なので、少なくとも今は安全だと判断しました。」

 

 え、そんなにこれ古いの?流石に買い替えようかな、7年間ずっとこれだし。電話機能ついてないんだよねぇ。まあアイフォンあるからいいんだけどさ。

 

「それでは、改めて聞きます。」

 

 そう言う零児君は、とても真剣だった。

 

「貴方は敵ですか?それとも味方ですか?」

 

 いや、これ味方ですって馬鹿正直に言っても通じないでしょう、扉の向こうから凄い威圧感を感じるんですがそれは。これ、適当に答えたら身柄をデュエルじゃなくてデュエル(物理)で拘束するやつですよね?!

 

 ・・・はあ、どうしよう。俺もオベリスク・フォースのことを思い出したのは、つい最近なんだが。ちょっと巻き込まれたときにあ、やばいやつだって思い出しただけなんだが。

 

 まあいい、彼に嘘は通じなさそうだ。下手に嘘をつくとさらに疑われる。それは正直避けたい。監視される生活なんて真っ平御免だ。

 

 ・・・仕方ない。本当のことを話そうか?

 

「零児君。」

 

「はい。」

 

「実はね・・・。」

 

 っと、そこで電話が鳴る。ああ、俺のではなく、零児君のである。うわ、覚悟してこれかよ。

 

「・・・すみません。」

 

「いや、出てくれていいよ。」

 

 とりあえず、何から話そう。いくら何でもショタ化したことを話すつもりはないし。どう言い訳したものか・・・。

 

「ああ、分かった。動画ファイルはこのケータイに。」

 

 どうやら電話が終わったらしい。今度はやけに神妙な顔だな。

 

「・・・どういうことですか?」

 

「ん?」

 

「どうして、あなたがオベリスク・フォースとデュエルしているんですか?」

 

 ・・・どうやら、知られてしまったらしい。

 

 そうなのだ。実は先日、ちょっとしたことで俺はオベリスク・フォースとデュエルしている。

 

 と、言うのも、部活動体験の時の話である。俺がとりあえず家に帰り、バイクで権ちゃんの道場に向かう途中。オベリスク・フォースを偶々見つけてしまったのだ。

 

 その時は3人だけだったのだが、どうやら何やら相談事をしていたらしいのだ。なぜかとっても目についた。考えてみてほしい。制服にマスク、そんな赤い彗星の青い番みたいな恰好でうろついているのだ。一瞬でオベリスク・フォースのことを思い出した。

 

 まあそんな恰好がふと目に留まったら、気になって仕方なくなる。思わず後ろからついていったのだが、まあ、うん。

 

 単刀直入に言おう。尾行がばれた。いや、足音をたてた俺が悪いんだけど。

 

 んで、とりあえず何もさせずにワンターンスリィキルゥすることで難を逃れたわけなんだけど。そのロスタイムが原因で柚子に叱られたんだけど、まあそれはいい。

 

 その後は変態たちがいきなり強制脱出装置(隠語)されたのか、居なくなってしまったのだけれど。

 

 あれ?でもあそこに監視カメラなんてなかったよね?

 

「周囲の目撃情報と、貴方がデュエルした倉庫の入り口付近にある侵入者防止用の監視カメラから、青い仮面の男たちと黒い服を着た青年がデュエルしているのは分かっていました。カメラの映像はピンボケしていたので解析に回していたのですが、まさかそれが貴方だとは思いもしませんでしたよ。」

 

 いや、心読まないでください。でも、そっか。あんなとこに監視カメラがあったのか。知らなかった。

 

「これで、ますますあなたには聞くことが出来ましたね。」

 

 俺はここから逃げたいです安西先生!え?諦めろ?そんなの俺の知ってる安西先生じゃない!俺の知ってる安西先生は、皆を笑顔にする・・・。

 

「さて、話を聞かせてもらいましょうか。」

 

 目が怖いよ零児君・・・。心の中でふざけたのは謝るから。

 

「・・・その、倒した仮面の男たちの会話を偶然聞いていたのさ。」

 

 うん、この設定で行こう。実際、アカデミアを倒したのは間違いなく自分なんだし、彼らから話を聞き出したことに・・・。

 

「そうですか、まあ貴方のことですから。」

 

 いや、それで通用するの?待ってよ、俺だからって何?!まあいい、疑われないならそれでいいや。

 

「うん、まあそういうことなんだ。あまりに怪しいからちょっと気になって話を聞こうとしたらデュエルを挑まれてね。ちょっと返り討ちにしただけだよ。そこで、次元戦争とアカデミアについて障りのところだけ聞いたんだ。」

 

 詳しいことは話さなくていいだろう。実際は話を聞く前に消えちゃったから聞く時間なかったけどね。

 

「なるほど、確かに辻褄が合うかもしれませんね。ですが、どうして彼らを怪しいと思ったんですか?」

 

「いや、怪しい仮面に見たことのない制服を着て、物陰でヒソヒソしていたらどこからどう見ても不審者にしか見えないから。しかも侵略とか物騒な言葉聞こえたらそりゃ怪しむでしょう。まあ、ゲームの話かもしれないし、声をかけようとしたら挑まれて仕方なくデュエル(高町式交渉術)したんだけどね。」

 

 ほんと、会話のキャッチボールしようぜって感じだった。あれじゃドッジボール通り越してバットでの殴り合いであると言える。

 

「・・・そうか、確かにあの格好は見つかれば不審者だったな・・・。」

 

 なんだよ、気付けよ。見慣れすぎて不審者であること気付かなかったのか?!

 

「いえ、何でもないです。ちょっと自分の感性がおかしくなっていたみたいで。」

 

「そ、そう・・・。」

 

 まさかそこまで見慣れていたのか?あれはどこからどう見ても不審者なんだけど・・・。

 

「まあ、それはともかくとして。」

 

 あ、流した。

 

「・・・貴方は味方ということでいいんですね?」

 

「いや、それはどうだろう。思想が真っ当なら協力することも吝かではないけど、そうじゃないなら別にどうでもいいし。」

 

「どうでもいい?」

 

 うん、どうでもいい。だってそれは俺に実害はないのだから。確かにあのオベリスク・フォースはエクシーズ次元を滅ぼしたのかもしれない。でも、この次元が同じ目にあうとは限らないじゃないか。それなら、いざ攻め込まれたときに返り討ちにしている方が俺はいい。だってまだ比較的平和的だし。

 

「だから、別にどちらでもいいんだよ。知り合いに危害が及ぶことが分かり切ってるならともかく、そうじゃないなら別に放置するのが俺の生き方だから。」

 

「・・・そうですか。なら、協力はしてもらえないんですね。」

 

「そういうことになるね。」

 

 何より、そんなことに巻き込まれたくない。たしか原作ではどうなるんだったけ?ほとんどうろ覚えな上に最初の方とデュエルシーンしか知らないことが多かったから分かんないや。そもそも5D's世代な俺は真面目に見てなかったし。こんなことなら見ておけばよかった。OCGは続けてたけどさ。

 

「残念です。貴方が協力してもらえるのなら心強かったのですが。」

 

「ゴメンね、わざわざ巻き込まれに行く趣味はないんだ。何より優先しなきゃいけない人がいるからね。」

 

「・・・榊遊矢と柊柚子ですね。」

 

「それと、遊勝塾にかかわる全ての人だ。」

 

 遊勝塾の人たちには、感謝してもしきれない。こっちに来て若干情緒不安定だった俺を気にかけてくれたのはあの人たちと、大牙、香澄、凪流ぐらいのものだった。他の人は雰囲気最悪だった俺に近寄ってこなかったし、教師ですら、触らぬ神に祟りなしといった感じで積極的に関わろうとしなかった。そんな俺を、面倒見てくれたあの人たちには恩返しをしないといけない。なら、そんなことにかかわるよりも彼らを守る方がいい。

 

「だから、俺は君にはずっと協力することはできないのかもしれない。まあ、君は後輩だから、俺にできる範囲でしてあげるよ。」

 

「・・・感謝します。」

 

 それでその日の会話は終了・・・だったんだけど。

 

 

   ◇

 

 ・・・どうしてこうなったんだろうねぇ。

 

 あたりには十人くらいのオベリスク・フォース。囲まれる俺。完全に警戒されてますね分かります。

 

 いや、あんなこと零児君に言っておいてなんだけどさ。まあ、2回戦の解説をしてると、オベリスク・フォースがテレビに僅かに映ったんだよ。何より最悪なのが、そのオベリスク・フォースの近くに遊矢君がいるってこと。あんな人をカードにするデュエルをいくら原作で主人公やってるからと言って、やらせたいとは思えない。止めに入りたくなった俺は解説の仕事をニコさんに押し付けて、ちょっとLDSに問い合わせてくるって嘘ついて抜け出した。

 

 んで、バイクを走らせて溶岩エリアまでは行ったんだよ。ただ・・・。

 

 バイクの進路にわざわざ入りに来ないでいただきたいなぁ。轢くよ?轢いちゃうよ?ブレーキかからなきゃ死んでたよオベリスク・フォース?!

 

 そこまでして妨害したいんですか?!答えろルドガー(関係ない)!

 

「一つ聞く。」

 

 なんですかマスク集団。アンブラルですか?マスカレードですかそれは?!古代の機械なんて事故率高いテーマでよく勝てますね貴方ら。フィールド魔法の裁定変わってから不憫でしかないしその点は同情しますけど、今は一刻も早くそこをどいてくださいお願いします!

 

「・・・数日前、アカデミアからスタンダードに送り込んだ斥候が僅か数時間で送り返されてきた。」

 

 どうでもいいよそんなこと!さっさとどけ!!

 

「そいつらの情報によると、戦ったのは黒い服に身を包んだ青年。戦いの中、わずかに写真を撮ることに成功。この写真の人物。柊菊、お前だな?」

 

 ・・・俺ですね、はい。間違いなく俺ですよ。でもさっさとどいてくださいよ。俺は大事な弟分(遊矢)義妹(柚子)、それに弟子みたいな子(権ちゃん)のサポートに行きたいんです!

 

「・・・その時のデュエルの様子から、私たちはお前をスタンダードにおける脅威とみなした。」

 

 ええ、そうですか・・・って、え?

 

「わずか先行1ターンで斥候を倒した男を警戒しないはずがないだろう。それに斥候は他にもいる。情報では、お前は強力なドラゴンをしたがえていたとの情報も上がっていた。」

 

 そこで取り出してきたのはスターダストとシューティング・クェーサー・ドラゴンの画像。どこから仕入れてきたんだよ・・・。

 

「さて、そんな相手だ。いくらこれだけの人数を相手にしても勝ち目があるとは限らない。」

 

 いや、流石に十人前後の数は無理ですって。図書館でも使わない限り。

 

「そこで先ほど、このようなものを用意させてもらった。」

 

 ・・・おい、アカデミア。どういうことだ。なんで凪流がそこにいる?

 

「こいつとデュエルしてもらう。負ければ当然カードにされるぞ。」

 

 ・・・脅したのか。

 

「その通りだ。詳しいことはそいつに聞けばいい。私たちはそれを見届けるためにここにいる。逃げれると思うなよ?その時はこの少女がカードにされるだけだ。」

 

「随分と趣味が悪いな、アカデミアってのは。」

 

「とれる手段は取らせてもらうさ。戦争ってのはそういうものだろう?卑怯ではある、不本意でもある。だが、これが一番確実だ。」

 

「見捨てるとは思わなかったのか?」

 

「これを見てもか?」

 

 次に取り出したのは、2枚のカードだった。それは、俺がよく知る人物で・・・。

 

「大牙、香澄・・・。」

 

「このデュエルを乗り越えられれば、素直に渡そう。まあ、乗り越えられれば、だがな。」

 

 そういうオベリスク・フォースの口元は酷くゆがんでいた。多分、向こうも本当はやりたくないのかもしれない。だが、周りのオベリスク・フォースはそうではないのか下卑た笑いを浮かべている。

 

「・・・菊。」

 

「凪流、どうしてこんなとこにいたんだよ。てか、お前らの実力で負けるほどの相手ってそうそういないと思うんだけど?」

 

「あなたじゃないんですから、5人に囲まれてデュエルさせられたらそりゃあ負けますよ、普通。貴方が異常なんです。」

 

 それは酷くないか?!流石に俺も5人以上でビートダウンで勝てって言われたら厳しいとは思うけど。

 

「その割には前に3対1でやった時に危なげなく勝ちましたよね?」

 

「あれはあのシャドールデッキだからできたんだって。そうじゃなかったら先行ワンキルしか無理だよ?」

 

「出来るんですか・・・。」

 

「ヴェーラー怖いけどね。」

 

 主に図書館とかに打たれるともうゲームにならないから。

 

「・・・デュエル、してもらいます。」

 

「うん。」

 

「・・・拒否、しないんですか?」

 

「する意味がない。」

 

 本当にそうだ。ここでデュエルを受けようが拒否ろうが、凪流も俺も無事では済まない状況なのは分かっている。

 

「・・・デュエル。」

 

「デュエル。凪流、もうちょっと明るく行こうぜ?」

 

「・・・この状況でよく言えますね。」

 

 それもそうだ。まあ、流石にこの状況じゃ、俺は無事にはすまないんだろうなぁ。

 

「・・・私は、手札から聖騎士モルドレッドを召喚します。」

 

 出たよデッキのキーカード。裏切りの騎士がデッキのキーカードで、肝心のアルトリウスが通常モンスターな所に嫌味を感じなくもない。

 

「手札から、聖剣ガラディーンをモルドレッドに装備。モルドレッドの効果は聖剣が装備されているときレベル5の闇属性になります。そしてもう一つの効果。デッキから聖騎士を特殊召喚して装備カードを破壊します。この効果でデッキから聖騎士ボールスを特殊召喚し、聖剣ガラディーンを破壊。」

 

 NAGARE

  手札5→3

 

 ・・・本気だなぁ。前はこいつが突破できない状況に追い込まれたんだったか。手札0フィールド0まで追い込んでラストターンに聖騎士伝説の終幕を引き当てやがった。まったく、その運命力が欲しくなるなぁ。

 

「墓地に行ったガラディーンの効果、1ターンに1度、破壊されたこのカードをフィールド上の聖騎士に装備しなおします。ボールスに装備。ボールスもモルドレッドと同じ効果を持ちます。レベルが5、闇属性に。そしてボールスのもう一つの効果でデッキから聖剣カードを3枚選択し、その中からランダムに手札に加え、残りは墓地に行きます。効果で、デッキから聖剣 EXカリバーン、天命の聖剣、聖剣カリバーンを選択。」

 

「右を選択。」

 

「では、残りは墓地に行きます。そしてサイクロンを発動し、ガラディーンは破壊します」

 

 NAGARE

  手札3→4→3

 

 これで、墓地には合計3枚の聖剣。そしてレベル4に戻ったモンスターが2体。来るぞ、遊馬!ってふざけてる場合じゃないな。

 

「・・・エクシーズ召喚。聖騎士王アルトリウス。アルトリウスの効果を発動します。召喚成功時、墓地の聖剣を3枚までこのカードに装備します。これの効果で、墓地の天命の聖剣、ガラディーン、EXカリバーンを装備します。」

 

 やばいって、完全態アルトリウス出ちゃったよ。対象にとれずに1ターンに一度戦闘も効果も破壊できないなんてさぁ。出しにくいけど、出たらもう手出ししにくくて仕方がない。

 

「手札のカリバーンをアルトリウスに装備。カリバーンの効果でライフを500回復します。ターンエンドです。」

 

 NAGARE 4000→4500

  手札3→2

 

 ・・・さて、フィールドはアルトリウスだけか。まだ何とかなるかな?

 

「俺のターン、ドロー。・・・モンスターをセット。ターンエンド。」

 

 KIKU

  手札6→5

 

 罠は伏せない。そもそもアルトリウスで割られるのが目に見えてる。

 

「・・・私のターン、ドロー。スタンバイにガラディーンの効果でアルトリウスの攻撃力は200ダウンします。更にカリバーンの効果を発動し、500回復。・・・レスキューラビットを通常召喚。」

 

 NAGARE4500→5000

  手札2→3→2

 

 出たよ初代クソうさぎ。ちなみに2代目は幽鬼うさぎ。初代はラギアと悪いことしかしなかった覚えがあるが、2代目はあらゆるデッキに入るんだよなあ。まあ、マッチ戦もないこの世界じゃ、あまり使われないんだけどさ。サイドの概念がそもそもないからね、こっち。

 

「召喚成功時にエフェクト・ヴェーラーの効果をレスキューラビットに対して発動する。」

 

「・・・チェーンはありません。」

 

 KIKU

  手札5→4

 

 ほんと、ヴェーラー様様。まあ、あと1ターン早く来てほしかった。初手に握っていたらアルトリウス妨害できたのに。

 

「・・・アルトリウスで伏せモンスターに攻撃。」

 

「セットされたのはガスタ・ガルド。こいつは墓地に送られると、デッキからレベル2以下のガスタモンスターを特殊召喚できる。召喚するのはガスタ・イグルを攻撃表示。」

 

 さて、ガスタお得意のリクルート戦術。・・・出来れば攻撃してほしいが、無理かなぁ。前に香澄相手にやった時に凪流居たから大体の効果は把握してるだろうし。

 

「レスキューラビットでガスタ・イグルに攻撃します。」

 

「・・・へ?」

 

 ・・・どういうことだ?今その状況で攻撃するのは愚策でしかないぞ?!

 

 KIKU 4000→3900

 

「・・・ガスタ・イグルの効果が発動する。チューナー以外のレベル4以下のガスタを特殊召喚する。ガスタの神榮 ピリカを特殊召喚。ピリカの効果で墓地のガスタ・ガルドを特殊召喚する。このターン俺は風属性モンスターしか特殊召喚できない。」

 

「・・・そんな効果が。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

 NAGARE

  手札2→1

 

 嘘だ。彼女は一度この光景を目撃している。なんせこのデッキはつい先日、皆と集まった時に使ったんだから。知らないはずも、覚えてないはずもない。

 

「・・・俺のターン、ドロー。」

 

 KIKU

  手札4→5

 

 何が目的だ?まあいい、このままシンクロして場を持ちこたえよう。

 

「・・・レベル3のピリカにレベル3のガルドをチューニング。シンクロ召喚、ダイガスタ・スフィアード。」

 

 こいつは戦闘破壊されないうえに、ダメージを全て押し付ける効果を持っている。更に・・・。

 

「墓地に行ったガルドの効果でガスタの希望 カムイを特殊召喚。更にスフィアードは特殊召喚に成功したときに墓地のガスタを一枚回収できる。ピリカを回収。」

 

 KIKU

  手札5→6

 

 ・・・スタダ立たせるか。

 

「ピリカを通常召喚。効果で墓地のガスタ・ガルドを吊り上げる。」

 

 ・・・ダメージを考えるならこれで自爆特攻なんだが、俺はそんなつもりはない。だって勝つ気なんてそもそもないんだから。俺が勝てば凪流がカードになってしまう。

 

「レベル2ウィンダとレベル3ピリカにレベル3ガルドをチューニング。シンクロ召喚、スターダスト・ドラゴン。緊急テレポートを発動し、ガスタの巫女 ウィンダを特殊召喚する。」

 

 ・・・これで、アルトリウスの効果は処理可能。まあ、問題は破壊までは出来ないことか。

 

「バトルフェイズに入る。」

 

「入る前に速攻魔法、ブレイクスルー・スキルを発動します。これでスフィアードの効果を無効に。」

 

 ・・・は?なんでこのタイミング?!攻撃宣言時に発動するか、そもそもスフィアードの出てくるタイミングで打てばいいのに。それが分からない凪流じゃない。絶対、態とだ。

 

「スターダスト・ドラゴンでレスキューラビットに攻撃。・・・カードを1枚伏せる。ターンエンド。」

 

 KIKU

  手札7→4

 

 NAGARE 5000→2800

 

 まさかとは思ってたけど。

 

「・・・凪流、お前もしかして。」

 

「私のターン!ドロー!スタンバイにガラディーンの効果で攻撃力は200ダウンします。カリバーンの効果を発動し、500回復!」

 

 NAGARE 2800→3300

  手札1→2

 

 遮られた。でも、あいつがあんなに声を荒げるってことは・・・。

 

「通常召喚、聖騎士の3兄弟!効果で手札の聖騎士アルトリウスを特殊召喚!更に私はアルトリウスと3兄弟でオーバーレイ、エクシーズ召喚H-C エクスカリバー!効果発動、H-C エクスカリバーのオーバーレイユニットを2つ取り除き、攻撃力を4000にします!」

 

 ・・・まずいな。凪流はわざと負けようとしている。ここでスフィアードに攻撃されたら・・・。

 

 NAGARE

  手札2→0

 

「更に私はアクションマジック、エクストリーム・ソードを発動!攻撃力を1000アップさせます、対象はエクスカリバー!」

 

 ・・・おいおい、マジでかよ。その本気他のデュエルで使ってくれ、飴ちゃんあげるから。

 

「バトルです、エクスカリバーでスフィアードに攻撃!」

 

「それは待ってもらおうか、速攻魔法、マスクチェンジ・セカンド!手札を1枚捨てて、スフィアードをM HEROに変身させる!スフィアードをリリースして、M HEROカミカゼに変身召喚!守備表示!」

 

「・・・攻撃対象を変更、スターダスト・ドラゴンを破壊します。」

 

 KIKU 3900→1400

  手札4→3

 

 さて、こいつも戦闘破壊されない効果を持っている。・・・凪流は間違いなく負けるつもりなのは理解できた。つまり、今からは自爆していく要因となりえるスフィアードの存在はほぼ無意味といっていい。勝つつもりはなかった俺にとって今の状況はきつすぎる。こんなことならさっさと自爆して負けておくべきだったか?まあ、今からでも出来ないことはないだろうが・・・。

 

「ターンエンドです。」

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 ・・・これは?!もしかしたら行けるかもしれない。ただ・・・邪魔なのはあのアルトリウスか。・・・いや、エクスカリバーがいる。こいつの攻撃力をアップさせるには・・・いや、無理だ。このデッキに攻撃力上昇のカードは入っていない。さっきのターンにアルトリウスの効果を使ってくれれば話は楽だったんだが・・・。

 

「・・・ターンエンド。」

 

 KIKU

  手札3→4

 

「・・・私のターン、ドロー。アルトリウスの攻撃力は200ダウンします。エクスカリバーを守備にしてカリバーンで回復。ターンエンドです。」

 

 NAGARE 3300→3800

  手札0→1

 

 ドローゴー状態か、正直助かった。アルトリウスも2900まで落ちている。まあ、戦闘破壊なんてそうそうできないんだけどさ。そもそもガスタは戦闘で破壊するようなカードは殆ど入らない。基本的にはシンクロでスフィアードを出して反射ダメージで勝つか、ガルドスの除去で殴る、もしくはマスクチェンジでカミカゼ出してちまちま殴るくらいしか勝つすべはないのだから。ごくまれにアクセルシンクロからのシューティングスターやクエン酸が出るが、そんなのは本当に稀だ。それに、今はたとえ出たとしても最悪もう一回エクシーズ召喚からのエクスカリバーで殴り倒されるだけである。シュースタはシュースタで完全態アルトリウスには攻撃力で負けるし。

 

「俺のターン、ドロー。・・・カミカゼを攻撃表示に変更する。カミカゼでエクスカリバーにアタック。」

 

「通ります。」

 

「なら、カミカゼの効果で1枚ドローする。カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 KIKU

  手札4→6→4

 

 カミカゼの攻撃力は2700。アルトリウスに装備されたガラディーンは攻撃力を200づつスタンバイに下げていく。つまり次のアルトリウスの攻撃力はカミカゼと同じ2700なんだが・・・そんなに甘くはないよな。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイにガラディーンの効果で200攻撃力が下がります。メインに入りカリバーンの効果を発動し500回復・・・。」

 

 NAGARE 3800→4300

  手札0→1

 

 凪流の手が止まる。

 

「どうした、さっさとしろ。言っておくがお前がわざと負けるようなら、こちらにも考えがあるからな。」

 

 そう言って、オベリスクフォースは香澄が封印されたカードに手を伸ばした。それを遮るように凪流は叫ぶ。

 

「分かっています!!アルトリウスの効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、場の聖剣の数まで魔法、罠を破壊します。対象はガラディーンとカリバーン、それと菊の伏せカード2枚!」

 

「伏せカードのうち一枚はサイクロンだ。これをチェーン発動してEX-カリバーンを破壊する。」

 

 これで、対象にはとれるようにはなったけど・・・。

 

「・・・チェーンはありません。ですが破壊されたガラディーンはもう一度アルトリウスに装備されます!これでアルトリウスの攻撃力は3500に!カリバーンの効果で500回復します。そして、墓地のEX-カリバーンをゲームから除外し、アルトリウスをランクアップさせます!」

 

 NAGARE 4300→4800

 

 エクスカリバーのいいところはそれだよな。破壊しても墓地で効果を発動できるってところ。他の聖剣とは違って、破壊されて真価を発揮できる。他の聖剣は破壊されにくいってだけで、サイクロンなんかで2回破壊されりゃあ終わりだけど、あれはそうはいかない。デッキによっては完全態降臨の特化のために3枚検討出来るくらいだ。・・・聖剣大安売り状態なのが若干ファンデッキとして辛いとこだけど。出来るならハイランダーにしたいけど、それじゃあ回らないんだよ。

 

 うん、こういうロマンより勝利なのがガチデッカー寄りの考えの欠点。そのせいでネタデッキが組みにくいんだ。

 

 ・・・現実逃避はこれくらいにしようか。厄介な聖騎士の登場だ。

 

「ランクアップ、エクシーズチェンジ!神聖騎士王アルトリウス!墓地の聖剣をアルトリウスの効果で再度装備!更に手札からギネヴィアの効果を発動し、装備します!」

 

 さて、効果は先ほどのあれとはまた違って厄介なんだよなぁ。ま、他のランクアップと違って蘇生制限を満たさないのだけれど。エクシーズ素材は・・・2つか。

 

「神聖騎士王の効果発動!オーバーレイユニットを一つ使い、フィールド上のモンスターを1体破壊します!対象はカミカゼ!」

 

「墓地のスキル・プリズナーの効果発動!」

 

「墓地から罠?!」

 

 お、まさか本当に言うとは。つかお前墓地から魔法使ってただろ。

 

「墓地のこのカードを除外し、対象はカミカゼ。このターン、こいつを対象にとったモンスター効果は無効化される。」

 

「でも、聖剣の効果は有効です!カリバーンの効果で500回復します!そしてカミカゼにアルトリウスでアタック!」

 

「ライフで受ける!」

 

 KIKU 1400→700

 NAGARE 4800→5300

 

「・・・カードを1枚伏せます。ターンエンドです。」

 

 NAGARE

  手札1→0

 

 いやあ、危なかった。つか、本気で殺しに来てない?いや、むしろ今は都合がいいんだけどさ。

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 KIKU

  手札4→5

 

 さて、さっきのカードを使う時が来た。まあ、その前に下準備。

 

「ガスタの神榮 ピリカを通常召喚。効果で墓地のガスタ・ガルドを特殊召喚。そしてシンクロしてダイガスタ・スフィアード。スフィアードの効果でピリカを手札に戻して緊急テレポートを発動。ガスタの希望 カムイを特殊召喚!」

 

 さて、こっちを通すためには、凪流のライフをせめて2700以下(・・・・・・)にまで持ってこなければならない。・・・ま、これならいけるか。

 

「ガスタ・イグルでアルトリウスに攻撃!」

 

「返り討ちにしなさい、アルトリウス!」

 

「ダイガスタ・スフィアードの効果!ガスタによる戦闘ダメージは相手が受ける!」

 

「きゃあああぁぁぁぁ!!」

 

 NAGARE 5300→2000

 

「カードを3枚セット!ターンエンド!」

 

 KIKU

  手札4→1

 

「スフィアードで攻撃しない!?」

 

 いや、そんなことすればお前だけ負けちゃうし。そもそも俺がこのデッキを選んだのはちゃんと理由があるんだよ?そんなことするわけないじゃん。

 

「・・・私のターン。ドロー。」

 

 だから、これを発動するのさ。

 

「その瞬間、このカードを発動する。破壊輪!」

 

「・・・え?」

 

 破壊輪。その効果は長い間OCGプレイヤーをやっているならご存じだろう。OCGではエラッタされていたが、今回使っているのもDDBと同じエラッタ前。その効果はなぜ作ったとでも言わんばかりの効果。何よりエラッタ前と違うのは・・・。

 

「対象はダイガスタ・スフィアード!」

 

 相手ライフが対象のモンスターより低いと発動できないとか、相手フィールドのモンスターしかできないとか、そんな制限が一切ないことだろう。

 

「お、おい。そのカードを使われたら俺らは・・・。」

 

 ちなみにこの世界ではこのカードで発生するエフェクトとそこからの危険性から真っ当な思考を持つデュエリストなら絶対使わない。自分も相手も爆発した余波に巻き込まれるだけでなく、周囲の人も巻き込んでしまうからだ。同じ理由でグレイモヤも危険性ゆえに敬遠されている。まあ、敬遠されているからと言って使えないわけじゃない。破壊輪はこの世界でも制限だけどね。

 

「・・・菊。」

 

 凪流が引いている。さっきまで泣きそうだった顔が一気に青ざめてる。ま、仕方ないけどね。凪流は俺と大牙がこれ使って入院したの知ってるし。俺、額に2針縫ったし。

 そもそも、俺は勝つ気なんてない。だからと言ってカードにされる気もない。なら、答えは簡単だ。引き分けを狙うしかない(・・・・・・・・・・・)。だから、ガスタ改め、引き分け特化型ガスタを使った訳だ。ネタデッキだけどね!回ってよかった。ほんとによかった。

 

 もちろんこのデッキの構築上自爆スイッチもギフトカードも、成金ゴブリン含め活路への希望などのドローカードも大量に入っている。それはもう、ガスタのカード抜いてエグゾ入るレベル。いや、入っていたんだけどまさかまったく引かなかったとは。呪われてんじゃない?もしくは俺が運命力が足りてなかったのか。

 

「お、おい何とかしろ女!さっさと伏せカードを使え!!」

 

 焦っても無駄無駄。さあ、オベフォの皆さんも道連れに・・・え?

 

「すいません、菊。さすがにそれを許すのは・・・。魔宮の賄賂を発動します。」

 

 ・・・え?

 

「なんちゅうもん伏せとんじゃおのれはァ!待てや、そこは一緒に死のうぜ的な所やろ?空気読んで一緒に自爆しようぜ凪流ェ!」

 

 そう叫んだ俺は悪くないと思う。

 

「いや、流石に危険すぎるので・・・。あと、爆発で怪我したくないっていうか、それならいっそカードにされた方がマシっていうか・・・。」

 

 さっきまでのシリアス返せやお前!俺必死でライフ調整してたんやぞ?!カリバーンで何度も何度も回復するからちょっと以上に大変やったんやぞ?!

 

「まあ、人質が居たので私も逆らえなかったのでと言うことにしてください。」

 

「なめんな!!」

 

 まあ、止められたのなら仕方ない。プランB。いや、本命のカード(・・・・・・)を使おうか。

 

「魔宮の賄賂の効果でドロー。そして罠発動!『ラストバトル!』!」

 

 まあ、本命がこっちでよかったというべきか、止められたのが破壊輪でよかったというべきか。

 

「対象はダイガスタ・スフィアード!『ラストバトル!』の効果でそれ以外のカード全てを墓地に送る!」

 

 これを発動すれば、破壊輪と過程は違えど同じ結果を得られる。確実性は、本当は破壊輪に落ちるけれど。なぜなら墓地に送られるのは神聖騎士王だから。神聖騎士王には墓地に送られると墓地の聖騎士を特殊召喚できる効果を持っている。それだけではない。もしそれとラストバトルの効果でレベル5のモンスターがそろったのなら、もう一度神聖騎士王で破壊されるのがオチでしかなかった。ランスロットはともかく、エクタードマリスは墓地セルフ蘇生できるから。でも、幸いだったよ。魔宮の賄賂のおかげ(・・・・・・・・・)ってのが複雑だけど。

 

「そんなカードがあったなんて・・・。」

 

「いや、この効果はここからが本番さ。」

 

 ま、OCGでは二度と陽の目を見ることはないだろうがな、リリーサーとの相性が酷すぎて。昔はジョウゲンと悪いことしかしなかったらしいけど。

 

「このカードは、選択したモンスター以外のお互いのカード全てを墓地に送った後、お前はデッキからモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚し、俺が選択したモンスターと戦闘を行う。この戦闘によって発生するお互いのプレイヤーへの戦闘ダメージは0になり、このターンのエンドフェイズ時にどちらかのプレイヤーのみがモンスターをコントロールしていた場合、そのコントローラーはデュエルに勝利する。まさしくラストバトルってわけだ。」

 

「・・・私のデッキの中で一番攻撃力の高いモンスターはランスロット。攻撃力は2000なのでダイガスタ・スフィアードは超えています。ですが・・・。」

 

「スフィアードは戦闘では破壊されない。」

 

「でも、神聖騎士王は問題なく除去できる。」

 

 凪流は、本命をそっちだと思い込んだみたいだった。

 

「成程、確かに強力ですね。それに、特殊勝利能力付。」

 

「ああ、この状況でお前が負けないようにする方法はほとんどないに等しい。」

 

「でもその肝心のランスロットだけではスフィアードを突破できない。」

 

「まあ、発動条件が残りライフ1000以下っていう厳しい条件があるんだがな。」

 

 まあ、そんな発動条件はOCG民なら普通にクリアしてくるんだけど。

 

「・・・ラストバトル!にチェーンし、ブレイクスルー・スキルをスフィアードに打ちます。そして私は、聖騎士ランスロットを召喚します。」

 

 ランスロットは召喚された瞬間、ダイガスタ・スフィアードに向かって走り出し、不意打ち上等とでも言わんばかりに斬りかかった。・・・どことなくバーサーカー染みてるのは気のせいだと思いたい。

 

「墓地のエクター・ド・マリスの効果!墓地の聖騎士アルトリウスと神聖騎士王アルトリウスをゲームから除外し、特殊召喚します!」

 

「でも、もう手札はない。」

 

「それは貴方も同じです。スフィアードが居ない今、マリスの守備力2000を破壊することも、自爆特攻してダメージを押し付けることもできない。それにエンドフェイズにあなたのラストバトル!の効果が適用される。私はターンエンド。これで次のターン・・・。」

 

 ははは、何勘違いしているんだ?

 

「俺のフィールドにモンスターは居るじゃないか。」

 

「何を言って・・・。」

 

 そこまで言って初めて凪流は気付いたらしい。俺のフィールドにいる1体のモンスターの存在に。

 

「ラストバトル!時に墓地に送られたガスタ・グリフの効果さ。デッキからガスタと名のついたモンスターを特殊召喚できる。これの効果で俺はガスタ・イグルを召喚したのさ。これで、このデュエルは決着だ。」

 

「何を・・・今、両方のフィールドにはモンスターが存在します。ラストバトルはどちらかにのみフィールドに存在していれば、特殊勝利するかもしれませんが今、私たちには両方のフィールドにモンスターが存在します。」

 

 そう、両方のフィールドに存在する。これが重要だった。凪流がエクター・ド・マリスを召喚するかどうかは賭けだった。だから、ラストバトル!の効果をあえて最後だけ教えなかった。・・・そうすれば、間違いなく凪流は負けに走っただろうから。

 

「ラストバトル!の解決時、両方にモンスターが存在する場合、そのデュエルは引き分けとなる。」

 

「へ?」

 

「助かったよ。これを突破されたら、もう俺には勝つ手段はなかった。ラストバトル!を発動すれば、間違いなくお前はブレイクスルー・スキルの効果を使う。だから本当は、イグルとかそのあたりのリクルートモンスターに使うつもりだった。でも、それをするともし万が一に手札にマリスがあった場合にランスロットをラストバトル!の効果で特殊召喚した後、アルトリウスをエクシーズ召喚されて効果で破壊。もうデッキにはガルドはいなかったから、多分それで負けていた。実際、手札に居たみたいだしね。」

 

 それを聞いて、真っ先にプレミがなかったかを確認する凪流。

 

「・・・ならやっぱり、あの破壊輪を発動させなくて正解だったんですね。」

 

「それがね、魔宮の賄賂でドローしたのがグリフだったんだよ。」

 

 あ、すっごい顔してる。まあ、そうなるよな。

 

「・・・運がないですね。」

 

「お互いね。あ、そうそう。衝撃に耐える準備(・・・・・・・・)をしておきなさい。」

 

 そういうと、凪流はきょとんとした顔になった。

 

「こんな強力なカードであるラストバトル!がどうして使われないと思う?もし、引き分けになった場合のリスクが高すぎるからさ。なんせ、ラストバトル!の効果で戦ったモンスター両方の合計分のダメージがあたりを巻き込むダメージエフェクトとして発動するんだから。」

 

 それを聞いて凪流の表情がピシッと固まる。

 

「・・・ちょっと待ってください。スフィアードとランスロットの攻撃力は互いに2000。つまり・・・。」

 

「みんなワンキルされるだけのダメージを受けるね。さて、エンドフェイズだ。大丈夫。逝くときは一緒だよ!」

 

 そこまで言うと、凪流は思いっきり息を吸い込み。

 

 掃き出し。

 

 叫んだ。

 

「嫌ですよ!どうしてそんないい話風になってるんですか!に、逃がしてください!い、いやだ!こんなので心中なんて嫌だーーーー!!!」

 

「ちょっと、そこはかとなく傷つくからその言い方やめろよ。」

 

「何考えてるんですかこのアンポンタン!私嫌ですよ!大牙や貴方みたいにあんな爆発起こして死にかけるの!」

 

 いや、あの事件は命に別状はなかったし精々気絶するくらいじゃない?打ち所が悪ければ死ぬかもしれないけど、それをしないために今のうちに身構えとけって忠告してあげてるんだから。

 

 あ、いつの間にかオベリスク・フォースの皆さんが逃げようとしてる。あはは、させないよ~?

 

「じゃ、凪流はマリスを盾にして防いでな。ラストバトル!起動!」

 

「嫌だああぁぁぁーーーーー!!!」

 

 ポチッとな。

 

 

 まあ、こんな感じで。

 

 

 無事?解決しました。やったねたえちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリアスが書きたかった。

シリアスが、書きたかった(・・・・・・)

どうしてこうなった。


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第6話

祝、ジャンヌ・オルタ実装!
自分は見事に爆死しました・・・。ま、まあカレスコ来たし。泣いてないし。・・・友人のポンポコ3連には笑いましたが。

それから、少しまた忙しくなりそうなのでまた更新が遅れるかと思います。模試もあるし大変すぎる・・・。

それから、モンスターや魔法などの記載についてですが、どうしましょう・・・、今回もなしでやっていますが、もし書いた方がいいなら、感想にでも書いてください。参考にさせていただきます。

4/15
煉獄の虚夢の効果にあるダメージ半減の効果を忘れていました。申し訳ありません。



 畜生、まさかこんなことになるとは!

 

 オベリスク・フォース、その第1隊を任されていた俺は思わず歯噛みした。簡単な任務のはずだったのだ。それが今、10人近くいた隊の面々の半分が気絶している。

 

 まあ、それも仕方がない。気絶した面々は爆心地に最も近かった。ライフが一瞬で消し飛ぶ衝撃を間近で受けたのだ、無理もない。彼らを責めるのは酷だろう。むしろ、責められるのは責任を負う立場にある俺の方だ。

 

 ・・・まあ、この件でたとえオベリスク・フォースの称号を剥奪されたとしても、それは罰だと思う。いくら向こうがから攻撃してきたとはいえ、友人を人質に、更にそれを利用して最重要注意人物に名前が挙がっていた男を葬るという外道にもほどがある計画を指揮したのだ。いくらこちらが大仰な大義を掲げたとしても、人としてのタブーに近い行為を行ったのだ。どんな天罰が下ったとしても、俺はそれを甘んじて受けるだろう。

 

 そう考えると、握りしめた手が緩む。部隊が瓦解しかけているのは、天の裁きのような気さえしてきた。

 

 ・・・あの女には悪いことをした。あの女を倒しきれないからと言って、いくらプロフェッサー直々の命令とはいえ、倒せた彼らの仲間を利用することで言うことを聞かせて、更には救いようがない状況、友人の命を自分で追い詰めなければならない状況に追い込んだ。謝れるなら謝りたいが、それを彼女が許す筈がない。それだけのことはしたつもりだ。

 

「・・・気絶した奴らを回収しろ。速やかに、だ。」

 

 俺は部下にそう命じた。後味は悪いが、あんな爆発を最も間近で受けたのはあの男だ。訓練された部下たちですら気絶するような爆発をその身に受けて無事なはずがない。自分の仕事は終わったのだ。残りは後始末のみ。あれはデュエルによる敗北ではないので強制帰還装置は働かない。彼らを回収するだけでも重労働になりそうだ。

 

 ・・・だが。

 

 運命は、あの男の手にあったのだろうか、爆煙の中で声をあげた私の手に、手錠のようなものが投げつけられた。

 

 その手錠には、太いワイヤーのようなものがつけられている。思わず出所に目をやると、人影が、煙の中からゆっくりと現れた。

 

「・・・ふう、うまくいって良かったよ。これを使うのは初めてでね。無用の長物と思ってバイクに突っ込んだままにしていたけど、まさか使うような状況になるなんて。」

 

 これをくれた先輩にはお礼をしないといけないな。そんなことを呟きながら出てきたのは紛れもなく、先ほどまで戦っていた、我らの策謀によって嵌められ、爆発によって少なくとも少なくない怪我を負っているはずの人物。

 

 このスタンダード次元において、最強クラス。そしてあのオベリスク・フォース屈指の実力者、紫雲院素良を以てして任務達成の最大の壁とまで称された人物。

 

 柊菊。スタンダード次元では『軍師』とまで称されるデュエリストが紛れもなくそこにいた。

 

「ん?どうして俺が無事なのか、不思議そうな顔をしているね?」

 

 彼はそこでポン、と手のひらを叩いた。

 

「次にお前は、『どうして貴様は無事なんだ!』と言う!」

 

「どうして貴様は無事なんだ!・・・ハッ!?」

 

 な、なんで俺が言いたいことを・・・?

 

「・・・まさか乗ってくれるとは思わなかったよ。」

 

 これはまさか、ジョジョは次元を超越したのか?なんて呟いてるが・・・。

 

 いやいやいや、まさか、あり得ない。

 

「いくらスタンダードの安全性が保障されたデュエルとはいえ、あの規模の爆発を受けて、無事で済むはずがない!」

 

「でも、事実ここにいるじゃないか。なら、それでいいじゃない。」

 

 言い訳あるか。

 

 そう思ったのが表情に出たのだろう。彼はため息を一つついて、説明してくれた。

 

「・・・種を説明するとね。」

 

 彼女のおかげなんだ。

 

 そう言ってその目線の先には・・・気絶している、自分たちが先ほど捕獲した女。だがその姿は、先ほどとは全く違って服は煤だらけな上に所々肌を切ったのか、傷が見える。

 

「俺のことなんか気にせずに自分のことを庇えばいいのに、こいつと来たらモンスターに命じて俺を守ることを優先させやがった。」

 

 な、そんなことをすれば!

 

「そう、彼女はさっきの爆発をその身に受けることになる。まあ、今回は俺のモンスターが彼女を守ったおかげで命に別状はないけど。」

 

 それを聞いて、少しだけ安心した。どうやら俺には悪人は向いてないらしい。今、任務が失敗してもなお、自分は彼らが無事だったことにどこか感謝しているのだから。

 

 ・・・この件が終わったらオベリスク・フォース辞めよう。少なくとも前線からは外してもらおうと決意する。

 

「さて、オベリスク・フォース。・・・懺悔の用意は出来ているか?」

 

 その瞬間、場の空気が少しだけ変わった。周りはかろうじて立てることのできたオベリスク・フォースが囲んでいる。いくら強いと言ってもこの人数なら倒すことが出来るだろう。

 

 ・・・なのに、なんでだろうか。まったく勝てる気がしない。まるで気迫に押されたような、心臓をつかまれたような感覚。

 

 こういう感覚は馬鹿には出来ないことを俺は知っている。エクシーズ次元侵略の時に嫌と言うほど思い知った。

 

「全員、退却!動けるものは気絶した奴を回収してこの次元から離脱しろ!」

 

 責任を負うことにはなるだろう。任務失敗の上に何の成果もなく逃げ帰る部隊。その責任者である俺の独断で行われたのならなおさらだ。だが、それでもいい。今は、ここから逃げる方が重要だと、俺は直観していた。

 

 だが、この世界は残酷らしい。

 

「無駄だよ。」

 

 奴は、俺の手錠と同じものを、彼の足元にいる動けなくなった部下達3人にもかける。

 

「・・・この手錠は特別製でね。デュエルで勝つしか、外す手段はない。」

 

「な・・・?!」

 

「しかも、負ければ電流が走り、相手のデュエルディスクを破壊する。出力をあげれば最悪感電死してしまう危険なシロモノさ。まったく、こんな時のために作られたとしか思えない性能だよね?」

 

 自衛のため、とか言って先輩がくれたものなんだけど、こういう時のためにあったんだね。そう言って笑う彼だが、こちらにとってはたまったものではない。なんせ、これではディスクに内蔵されている転移装置が使えないのだ。いや、使えることは使えるだろう。

 

 だが今、俺のデュエルディスクはあいつのデュエルディスクとつながっている。万が一、彼を融合次元に連れて行ってしまえばアカデミアそのものが壊滅してしまうかもしれない。それだけの実力が彼にはある。持ち合わせのデッキ、それだけであの危機的状況を最良の結果まで導いたのだ。あり得ない話だとは頭でわかっていても、このプレッシャーがそうはいってない。

 

 あの目を見たことがある。かつて隊員としてエクシーズ次元にいたデュエリストがしていた目と同じだ。刺し違えてもこちらを倒すという意思。事実、その時の戦いでこちらの部隊は全滅しかけたのだ。

 

 彼をアカデミアに招いてはならない。そう、判断した俺は部下に待機を命じる。状況は一転して最悪。こんな時、あの方が居ててくれれば、と思う自分がいるのが情けない。だが、あの方は現在極秘任務に向かっている。期待は出来ない。

 

「・・・随分と考え込んでいるみたいだね。チャンスをあげようか。」

 

 何?

 

「チャンスだよ、チャンス。今、君たちは半数が満身創痍ながらもたつことが出来ているみたいだし?いっそのこと全員でかかってきなさい。5、6人程度なら、どうにでもなる。」

 

 ・・・虚言、ではないのだろうな。それだけの実力があるのは、斥候の情報だけでも十分分かる。

 だが・・・この状況、他に選択肢はない。ならば・・・。

 

「いいだろう。お前たち、ディスクを構えろ!」

 

「「「「「ハ!」」」」」

 

 ここで戦う。たとえ負けることになったとしても、刺し違えても、ここで勝利する!

 

「・・・決まったみたいだね、先行は、どちらからにする?」

 

「俺が行きます!」

 

 そういったのは、部隊でも屈指の実力を誇る奴だった。確かにこいつなら、安定してターンを返してくることが出来るかもしれない。

 

「俺のターン!古代の機械猟犬を召喚!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 オベリスク・フォースA

  手札5→2

 

 初ターンとしては上々の滑り出し。それに部下からの合図で分かったが伏せた2枚は古代の機械閃光弾と俺たちの切り札を出すためのあのカード。出だしとしてはかなりいい。

 

「次は俺だ、ドロー!」

 

 次のターンも俺の部下だ。

 

「俺も、古代の機械猟犬を召喚し、ダイレクトアタック!」

 

 オベリスク・フォースB

  手札5→6→5

 

 古代の機械猟犬の攻撃で、ライフが削られる。何の抵抗もない?買い被りだったのか?

 

 KIKU 4000→3000

 

「この瞬間、手札のトラゴエディアの効果を発動する。」

 

 な、なんだと?!

 

「自分が戦闘ダメージを受けたとき、このカードは手札から特殊召喚できる。さらに、このカードの攻撃力は、手札の枚数×600となり、現在の攻撃力は2400となる。」

 

 KIKU 

  手札5→4

 

 ・・・これでは攻撃できない。俺たちのデッキに融合以外の方法であれを突破する手段はない。が、だからと言って基本バーン戦略の俺たちの融合モンスターがあれを攻撃力で突破するには少なくとも2回融合を重ねなければいけないだろう。このデッキは例外を除いて打点が足りないことが難点だな。

 

「・・・俺はカードを1枚伏せる。ターンエンド。」 

 

 オベリスク・フォースB

  手札5→4

 

「俺のターン、ドロー!。」

 

 次は俺だ。だが、手札にはこの状況を打破できるようなカードは入っていない。このターンでは、だが。

 

「俺も、古代の機械猟犬を召喚!更に効果発動!相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、600のダメージを与える!」

 

 だが、彼は身じろぎ一つしない。

 

 KIKU 3000→2400

 

「・・・カードを2枚伏せる。ターンエンドだ。」

 

 オベリスク・フォース隊長

 手札5→6→3

 

 だが、この先は・・・。

 

「俺のターン、ドロー。」

 

 ずっと俺たちのターンだ。先ほどの手札誘発カードには驚いたが、それはそれ。効果を止めるカードではないようだし、バーンを無効化できるわけではない。

 

「俺も、古代の機械猟犬を召喚する。ファイア!」

 

 KIKU 2400→1800

 

「カードを伏せて、ターンエンド。」

 

 オベリスク・フォースC

  手札6→4

 

「俺のターン、ドロー!古代の機械猟犬を召喚!効果発動!」

 

 KIKU 1800→1200

 

「カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 オベリスク・フォースD  

  手札6→4

 

「俺のターン、ドロー!古代の機械猟犬を召喚!効果発動!」

 

 KIKU 1200→600

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだ!さあ、貴様のターンだ!残り600のライフで何ができる!」

 

 オベリスク・フォースE

 手札6→3

 

 だが、何の反応もない。帰ってきたのは静寂のみ。その静寂が余計に不気味だった。

 

「俺のターン、ドロー。モンスターゲートを発動する。」

 

 KIKU

  手札5→4

 

 何?モンスターゲート?あれは博打性が高いカードのはず。そんなカードを使うデッキと言うことは、何が出てきてもかまわないというのか?!

 

「トラゴエディアをリリースし、発動。俺はデッキを捲っていき、通常召喚可能なモンスターが出たとき、それを特殊召喚する。さて、坊主めくりの時間だ。」

 

 そう言って、彼は一枚一枚カードを確認して、墓地に送っていく。その数は6枚。そんなに魔法や罠の多い構築なのだろうか。思わず不正を働いて欲しいモンスターが出るまでめくるのかと思った。だが、不正を行えばデュエルディスクが反応するはず。つまり、あれは不正ではなく正式な処理だということ。

 

「7枚目。カードガンナーを召喚する。」

 

 だが、出たのはレベル3のモンスター。・・・なにかあるな。

 

「俺はブラック・ホールを発動する。」

 

 かかった!俺はそう思った。この状況を打破するには全体除去しかない。だが、それこそが俺たちの狙いだった。おそらくあのカードガンナーは破壊されたときに効果を発揮するカードなのだろう。あいての思うとおりにさせるのは少々癪だが、まあ、切り札を呼べるのならこれくらいどうってことはない。

 

 このカードの効果により、フィールド上は消し炭となった。俺たち以外の、だが。

 

「フィールド上の、古代の機械猟犬が破壊されたことで、古代の機械再生融合は起動条件を満たした!自分フィールドの「古代の機械」モンスターが相手の効果でフィールドから離れた場合、そのモンスター1体を対象として発動し、その対象のモンスターが融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターである場合、その融合モンスター1体を自分のエクストラデッキから融合召喚扱いで特殊召喚する!現れろ、古代の機械混沌巨人!」

 

 俺が、いや俺たちが召喚したのはアカデミアの切り札、古代の機械混沌巨人。これを突破できるデュエリストは数少ない。魔法罠に対する耐性と4500の攻撃力、更には全体攻撃にモンスター効果を攻撃宣言時のみとはいえ無効化する効果!どこをとっても最強と言えるモンスター。それが・・・。

 

「6体、か。」

 

 そう、俺たち全員がこの効果を発動した。

 

「どうだ、攻撃力4500の魔法、罠耐性持ちモンスター!突破できるわけがない!」

 

「・・・破壊されたカードガンナーの効果でデッキから1枚ドロー。御託は済んだかい?」

 

 ・・・なんだと?

 

「俺は、手札から名推理を発動する。」

 

 KIKU

  手札3→4→3

 

 先ほどのモンスターゲートといいなんて博打カード!だが、そいつはレベルを当てればいい話。・・・だが、公開されているのはレベル3のカードガンナーのみ。レベル3を選ぶべきか、高レベルを警戒するべきか、それとも・・・。

 

「・・・レベル3を選択する。」

 

「そうか、なら効果を処理する。」

 

 また、大量のカードが送られた。今回は10枚も送られる。だが、奴はまだ不満げにカードを引き、モンスターを召喚した。

 

「俺が召喚するのは混沌の黒魔術師、レベル8だ。特殊召喚。」

 

 な、そいつは!

 

「罠発動、サンダーブレイク!手札を1枚墓地に送り、混沌の黒魔術師を破壊する!」

 

「だが特殊召喚には成功している。このカードが特殊召喚に成功したとき、墓地の魔法を一枚回収する。名推理を回収し、発動。さあ、もう一度宣言しろ。」

 

 ・・・どうするべきか。いや、悩んでいる場合じゃない!

 

「レベル8だ!」

 

 ここでもしもう一度混沌の黒魔術師のようなモンスターが召喚されたら、いくら混沌巨人が居たとしても最悪倒される可能性が出てくる。混沌巨人にはモンスター効果に対する耐性が存在しない。だからここでこれを宣言したのは悪くない判断・・・のはず。

 

「・・・出たモンスターはレベル8、混沌の黒魔術師。召喚はされない。」

 

 ・・・正解だった。だが、また大量のモンスターが墓地に行ったか。

 

「・・・ライフが足りないな。仕方ない。仕方がないのでこのカードを発動することにしよう。永続魔法、煉獄の虚無を発動する。」

 

 KIKU

  手札3→2

 

 永続魔法?一体どんな効果を・・・。

 

「このカードを墓地に送ることで、俺は融合召喚を可能にする。相手にのみモンスターが存在すれば、デッキからも素材を選択できる。」

 

 ・・・は?

 

「デッキのネヘモス、リリス、アドラメレク、シャイターン、ベルゼブル、アスタロスを墓地に送り、融合召喚。現れろ、レベル11インフェルノイド・ティエラ!」

 

 出てきたのは、悪魔。その姿は蛇を模した形に、禍々しい装飾品が飾られている。攻撃力は3400と驚異的だが、混沌巨人の4500にはかなわない。

 

「ティエラは融合素材の数で効果が変わる。素材は6体。よって2つの効果を得る。まず、お互いに・・・この場合は全員だな。エクストラデッキから3枚カードを墓地に送りさらにデッキの上から3枚墓地に送る。」

 

 ・・・エクストラ破壊にデッキ破壊か。少々痛いがこれくらいならどうってことはない。猟犬の融合モンスターは全て3枚積まれている。3枚程度では大した影響にはならないだろう。

 

「神秘の中華鍋を発動し、ティエラをリリース。そしてライフを守備力分回復する。3600回復。」

 

 KIKU 600→4200

  手札3→2

 

 そっちが狙いか!だが今更バーンなど必要ない!こっちには攻撃力4500の混沌巨人、それが6体もいるのだ!

 

「今、大丈夫だとか思ったか?」

 

 何?

 

「それは幻想だ。俺は墓地の光属性エルシャドール・ネフェリムと闇属性、暗黒火炎竜をゲームから除外する。」

 

 その召喚条件、まさか!

 

「混沌帝龍 -終焉の使者-を特殊召喚!」

 

 ・・・だがそいつの攻撃力は3000!突破は出来ない!

 

「ライフを1000支払い、混沌帝龍の効果発動。互いの手札、フィールドのカードを全て墓地に送り、送った枚数×300のダメージを相手に与える。」

 

「な、それでは!」

 

「今現在フィールド上には28枚。よって8400のダメージだ。お前らの負け、だな。」

 

 ・・・馬鹿な、フィールドを荒らすだけ荒らしただけでなく、8400のダメージ?!それを通す馬鹿がいるか!

 

「アクション魔法!フレイム・ガード!効果ダメージを0にする!」

 

 今ほど斥候の情報に感謝したことはない。そうでなければアクション魔法を拾うことすらしなかっただろう。部下はそんなものいらないと言って持たなかったが、自分が持っていて幸いした。ありがとう、アクション魔法。8400のダメージは絶対に受けたくない。もはや怪我とかで済むのかそれ。

 

「ほう、俺としてはここで終わると思ってたんだけどな。まあ、いい。これでフィールドには何もなくなった。」

 

  KIKU 4200→3200

 

 そうだ。先ほどまで居た混沌巨人はもういない。手札も、フィールドも焼野原。だが、それは向こうも同じこと。

 

「墓地の置換融合の効果を発動する。」

 

 何?!墓地から魔法だと?!

 

「このカードを除外し、インフェルノイド・ティエラを墓地からエクストラデッキに戻すことで1枚ドローする。・・・随分と運がいいみたいだな、俺は。」

 

 ・・・手札1枚。だが、嫌な予感しかしない。

 

「煉獄の虚無を発動。・・・そんな顔をするなよ。大丈夫、デッキ融合()出来ないから!」

 

 デッキ融合()?そしてその笑顔はやめろ!怖いどころの騒ぎじゃない!

 

「フィールド上のモンスターのレベル、ランクの合計が8以下の時、墓地のインフェルノイド2体をゲームから除外することで墓地のインフェルノイド・アドラメレクは特殊召喚できる。来い、アドラメレク!」

 

 先ほど出てきたモンスターとはまた違う、禍々しさを持つモンスター。だが、おかしい。攻撃力2800。それはいい。だが、なぜレベルは1なんだ?何より、そんなモンスターが墓地に言った形跡はなかった。名推理もモンスターゲートも引いたモンスターを特殊召喚するカード。つまり、あのモンスターは名推理の効果で特殊召喚されてなければいけないはずなのに!

 

「不思議そうにしているが、一応解説しておこう。インフェルノイドは例外を除き通常召喚できない。名推理やモンスターゲートで特殊召喚されるのは通常召喚可能なモンスターよって、彼らは大量に墓地に行った。レベルに関しては、煉獄の虚無の効果だね。」

 

 その永続魔法、融合以外に効果があるのか?!

 

「このカードが存在すると、場のインフェルノイドモンスターのレベルは1になる。」

 

 ・・・だが、レベルを下げて何の意味がある。いや、待て!インフェルノイドの特殊召喚条件、それはたしか・・・。

 

「そう、インフェルノイドはフィールド上のモンスターのレベル・ランクが9以上になると特殊召喚できなくなる。でも、このカードでレベルを変動させればそんなこと関係ないよね?」

 

 そういうことか!・・・いや、待て。これ不味くないか?

 

「ようやく気付いたかい?俺がなんであそこまで名推理やモンスターゲートを発動し、ティエラの効果でデッキからカードを墓地に送っていたその理由に!」

 

「・・・召喚条件の、コストにするため。」

 

「正解!なら、君たちには特大のファンサービスをしてあげよう!出てこい!インフェルノイド・アドラメレク!そしてベルフェゴル達!」

 

 墓地からよみがえったのは先ほどと同じモンスターと、それに付随したかのように現れた鎧を着た悪魔のようなモンスター。・・・俺たちの、負けか。手札は0。フィールドも0。残念ながら墓地誘発のカードなんて俺たちは握っていなかった。確かに大多数は次のターンまで生き残るだろう。だが、それで何ができる。彼のことだ、墓地誘発のカードも名推理で落としているに違いない。

 

「行け、煉獄の悪魔たち!そいつらを刈り取ってやれ!」

 

 俺の横にいた部下1人が倒れ、更に1人が攻撃を食らって満身創痍になる。

 

「攻撃宣言時、ベルフェゴルの効果発動!相手のエクストラデッキのカードを1枚除外する!ベルフェゴルは3体!3回分の効果をそれぞれ受けてもらおうか!」

 

 ・・・切り札であったはずの混沌巨人も、あれを突破できる攻撃力を持つ猟犬の融合態も除外されていく。

 

「ターンエンド!さあ、君たちのターンだ!」

 

 ・・・いや、あきらめるな!まだ希望はある!数少ない蘇生札を引けばいいだけの話!インフェルノイド、確かに強いが攻撃力で混沌巨人を超えることが出来るわけではない!・・・まあ、数枚手札から墓地に行って、確率はかなり低くなってはいるのだが。

 

 それでも、もし一人でも引くことが出来たのならば勝てるかもしれない。俺は部下にそう伝え、希望はあるいい、ドローを促した。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 一人目は・・・古代の機械蘇生。

 

「・・・カードを伏せる。」

 

 フィールド上にモンスターは居ない。1人目はほぼ間違いなく負けるだろう。あれでは何もできない。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 二人目は・・・よし!

 

「死者蘇生を発動!対象は古代の機械混沌巨人!」

 

「それにチェーンしてインフェルノイド・ベルフェゴルの効果を発動する。」

 

 なんだって?!

 

「このカードをリリースすることで相手の墓地のカードを一枚除外できる。対象は古代の機械混沌巨人。・・・どうする?」

 

「チェーンはない。」

 

「なら効果を処理し、混沌巨人を除外。対象を失った死者蘇生は不発となる。切り札をなくした気分はどうだ?さぞ悔しいでしょうねぇ。」

 

 ・・・何も。

 

 何も、出来ないのか・・・。

 

「俺のターン。ドロー。」

 

 絶望が伝染していく。勝てないと思い知らされたかのような。何人で挑んでも無駄だと言われたような気がする。俺が引いたのは、リビングデッドの呼び声。でも、これは対象を失ってやられてしまうだけ。

 

「カードを伏せる。ターンエンド。」

 

 部下のターン。どうやら部下も蘇生札を引いたらしい。なら、俺ができるのはせめてあの悪魔の数を減らすことだけ。

 

「リビングデッドの呼び声を発動する。」

 

「いいぞ、チェーンはない。」

 

 ・・・なんだって?

 

「古代の機械混沌巨人を特殊召喚。」

 

 ・・・俺が蘇生できても、今は俺のターンじゃない。攻撃は出来ない。

 

 だが、壁にはなる!これで少なくとも俺は耐えれることが出来るんじゃ・・・。

 

「俺は死者蘇生を発動します。対象は古代の機械混沌巨人。」

 

「ベルフェゴルの効果で混沌巨人を除外する。」

 

「・・・ターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー。・・・モンスターをセットし、ターンエンド・・・。」

 

 ・・・打つ手なし。だが、混沌巨人さえいればまだ何とか・・・。

 

「俺のターン、ドロー。バトルだ!」

 

 特殊召喚しないのか?まあ、あまり関係がないのかもな。また、1人倒れた。・・・また、エクストラのカードが減ったか。

 

「メイン2、墓地のアスタロスを除外し、ベルゼブルを特殊召喚する。そしてベルゼブルの効果発動。表側になっているカードを1枚手札に戻すことが出来る。対象は混沌巨人。」

 

 ・・・最後の砦が、亡くなった。これが破壊だったのなら部下の古代の機械再生で召喚できたかもしれない。だが、バウンスされたのなら、やれることはない。

 

 また、ターンが回ってくる。だが、俺たちに逆転は許されなかった。まるでいたぶられているかのように、ターンが回っていく。蟻が子供の気まぐれでその命を摘み取られるように。段々、じわじわと人数が減っていった。

 

「・・・俺のターン、ドロー。アドラメレク2体でオーバーレイ!ランク8神龍騎士フェルグラント!さらに手札からデカトロンを通常召喚し、デカトロンの効果でアシュメダイを墓地に落とす。これでデカトロンはレベル6になった。デカトロンとベルゼブルでシンクロ召喚!PSYフレームロード・Ω!」

 

 エクシーズにシンクロ。報告には聞いていたがやはり使うことが出来たか。まあ、いい。俺たちの最低目標は達成した。時間は稼いだ。悔いは残るが、ここが俺の終わりの場所だったと諦めるしかない。

 

 

 

 

 悪魔と騎士が俺の体を貫こうと動く。最後に見ることが出来たのは、悪魔の、モンスターの笑顔だけだった。

 

 




今回のぶっ壊れカードはこれだ!


混沌帝龍 -終焉の使者-

効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上に存在する全てのカードを墓地に送る。この効果で墓地に送ったカード1枚につき相手ライフに300ポイントダメージを与える。

混沌の黒魔術師

効果モンスター
星8/闇属性/魔法使い族/攻2800/守2600
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地から魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができる。このカードが戦闘によって破壊したモンスターは墓地へは行かず
ゲームから除外される。このカードはフィールド上から離れた場合、ゲームから除外される。

 エルシャドール・ネフェリム
 融合・効果モンスター
 星8/光属性/天使族/攻2800/守2500
「シャドール」モンスター+光属性モンスター
このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。
(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「シャドール」カード1枚を墓地へ送る。(2):このカードが特殊召喚されたモンスターと
戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。そのモンスターを破壊する。(3):このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「シャドール」魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

エラッタ前だとここまで強力になるんですねぇ(白目)。一名コストになったけど。

 余談ですが、今回のデッキはファンカスノーレノイドならぬ、カオスノイドでした。名推理やモンスターゲートを阻害しない異次元の一角戦士や開闢などを入れて、ファンカスノーレギミックだけでなく混沌の黒魔術師で名推理使いまわしたり終焉でリセットして利できるデッキです。もちろん左腕も入っています。

え?名推理もモンゲも制限だって?知らん、そんなことこの小説では管轄外だ。


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第7話

 遅くなりました、第7話です。・・・デュエルはありません。おまけにちょっとシリアス。果たしてこれは遊戯王小説なのか?
 それから、青眼作りたくてシャイニング・ビクトリーズを友人と4パックずつ買いました。友人は外れたのですが、自分はクリスタルウィング(しかもシク)と賢士が出て、店で発狂しました。その後調子に乗って箱買って賢士外れたのはいい思い出。まあ、ホロのクリスタルウィングと下準備2枚出たからいいんだけどさ。亜白龍買わなきゃ(使命感)

 Fateは最近やる時間がなくてほったらかし。今からイベ進める(もうすぐ終わるのに)ので少なくとも3日は空くでしょう。イベ終わったら続き書きます。まあ、1話最低2週間かかる作者(しかもどちらかの作品のみ)なので気長に待ってください。


 ここは、どこだろうか。私は、いったいどうなったのだろうか。・・・菊は、どうなったのだろうか。目を覚ました私の頭は、そんなことばかり考えていた。

 

 ふと、右を見る。そこには使われた形跡のあるベットがある。左を見る。寝違えたのだろうか。首筋に妙な痛みを感じたが、そんなのは今はどうでもよかった。だが、そこには誰もいない。急に心細くなり、何でもいいから、誰かいる証拠が欲しかった。

 

「・・・目を覚ましたら、其処はどこかの施設でした。」

 

 こんなことを呟いてみる。普段なら、それに突っ込んでくれる気のいい友人がいる。だけど今はもういない。彼らは、私の目の前で・・・。

 

 ダメだ、あのことを思い出したら泣けてきた。私には、泣く資格なんてない。その友人たちを人質に取られて、菊とデュエルした。・・・いっそのこと、あそこで負けていたらどんなに楽だったか。

 

「残念だが、ここは雪国じゃなく病院で、お前は島村でも葉子でもないがな。具合はどうだ?凪流。」

 

 その声に私は振り返った。

 

「・・・菊、ですか。」

 

 今、貴方には会いたくなかった、と言うのが正直な私の心情だった。・・・あんなデュエルをした後。それも、彼を危険にさらすようなデュエル。

 

 いくら脅されていたからと言って私がしたことは許されるようなことじゃない。先ほど、私は大牙や香澄のために、菊をカードにしようとした。・・・もう、友達と思われてないかもしれないと思うと、胸が痛くなる。もう、4人で笑いあうこともなくなるのだと思うとやりきれない思いで一杯になる。

 

「・・・具合が悪いのか?今看護師を呼ぶから少し辛抱してくれ。」

 

 その優しい言葉に、泣きそうになる。ああ、どうして。

 

「凪流?」

 

 どうして、貴方は優しくしてくれるんですか?私は、貴方をある意味で殺そうとした。それなのに・・・。

 

「おい、大丈夫かよ。ちょっと待て、今先生呼んでくる。そしたら・・・?」

 

 気付いたら、私はどうやら彼の袖を掴んでいたらしい。彼は不思議そうにこちらを見ている。

 

「おーい?凪流さん?」

 

 だけど、今の私が彼に何を言えるのだろうか。

 

「凪流さん。」

 

 ・・・。

 

「凪流。」

 

 ・・・・・・・・。

 

「あの、痛いんですけど。ミシミシ言ってるんですけど。」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・。

 

「痛いって!マジで痛いから!離して!てか離せ!骨が!骨がミシミシ言ってるから!リアルに逝っちゃうから!」

 

 あ?え?あ、腕掴んだままだった。

 

「す、すいません菊。・・・大丈夫ですか?」

 

「お、おう。・・・触覚逝ってる気がするけど。」

 

 どうやら随分と強く握りしめてしまったらしい。

 

「・・・ごめんなさい。」

 

 自然と、口からこの言葉が出た。

 

「これ位どうってことない。気にするな。」

 

 いや、謝りたいのはそこじゃない。そこじゃなくて謝りたいのは・・・。

 

「・・・・・・ゴメン、ナサイ。」

 

「だから・・・凪流?なんで泣いてるんだよ。」

 

 気が付いたら、蹲って私は泣きじゃくっていた。謝ってすむことじゃない。それは分かっているのに、今の私は、拒絶されたらどうしようとばかり考えていた。もう、笑いあうこともない。きっとそうなる。今回の件で、私は間違いなく彼の友人という枠からは外れてしまうだろう。

 

 だけど、これだけはさせてほしい。謝罪だけは受け取ってほしい。・・・いや、受け取ってもらわなくてもいい。これは自己満足だ。欺瞞だ。

 

「・・・はぁ。」

 

 彼はため息をついて手をあげた。暴力を振るわれたって、私は拒絶しないだろう。それこそ、殺されそうになったってかまわないと思うくらいには抵抗しない自信はある。・・・まあ、やっぱりそこまでされたら流石に抵抗するかもしれないと考え直すあたり私らしいと言えばらしいのかもしれない。菊はそんなことしないとは思うけど。

 

「・・・てい!」

 

「痛い!」

 

 何しやがるこの真っ黒黒助!

 

「・・・色気ねぇ悲鳴。」

 

「・・・女子の頭に本気でチョップするやつがいますか?!あと、色気ないのは余計なお世話です。」

 

「そうか。まあ、女子力皆無だしな。しゃーない。」

 

「うるさい!掃除と洗濯くらいなら出来ます!」

 

「叫ぶなよ。ここ病院だぞ。ICUだぞ。寝てる患者さんや救急救命士の先生だっているんだからそう憤るな。」

 

「誰のせいだと・・・。」

 

 ほんとに、こいつと来たら。

 

「・・・落ち着いたか?」

 

 そこまでじゃれあって、ハッと我に返る。さっきまでの深刻な雰囲気・・・と言っても、私が勝手にそうしていただけだったみたいだけど・・・は無くなっている。

 

「・・・すいません、菊。落ち着いた・・・とはいえませんが、それでもとりあえずは大丈夫です。」

 

「そうか。・・・よかった。」

 

 そう言って、彼は私の横の椅子に座りこんだ。

 

「・・・何から聞きたい?」

 

「・・・香澄は、大牙は、どうなりました?」

 

 ・・・大事なのはそこだ。アカデミアによってカードにされた友人は、今はどうなったのだろうか。

 

「・・・お前が知ってる通りだ。カード化されたまんま。おまけに最悪なのがアカデミアによって大牙のカードも香澄のカードも持ち去られた。あいつらは現状、生死不明だよ。」

 

「そう、ですか。」

 

 夢じゃなかった。夢であってほしかった。そんな現実が私の前に改めて突きつけられる。

 

「ほかに聞きたいことは?」

 

「菊は、大丈夫でしたか?」

 

 食い気味に聞いたこの質問には驚いたようだった。

 

「お前、自分のことを心配しろよ。俺はこの通りお前の前にいる。無事なのは明白。」

 

「それでもです。」

 

 私は真剣だ。今の自分の現状なんか二の次でいい。

 

 その様子に、菊はため息をついた。

 

「・・・お前のおかげで、幸いにも無傷だよ。」

 

「嘘ですね。」

 

 嘘だ。そんなはずはない。あれだけの爆発を受けて、無傷で済むとは思えない。だけど、菊は苦笑いしてまだ言い続けた。

 

「本当だよ。」

 

「菊、知ってますか?貴方嘘をつくときに鼻に血管が浮かび上がるんです。」

 

 そう言ってやると、彼はため息をまたついた。

 

「そりゃあジョジョだろ。それも第3部。ひとつ言わせてもらうなら俺は4部と7部派でね。」

 

「貴方とは気が合いそうですね。私は4部一択です。仗助いいですよね。」

 

 そう言ってジョジョ談義に入るのもいいが、今はそれどころじゃない。

 

「でも、怪我してるでしょう?それくらいわかりますよ。」

 

 なんだかんだ、5年の付き合いになるんだ。それくらいは分かるつもりだ。

 

「・・・まったく、女は怖いねぇ。」

 

 ああ、やっぱりと言う気持ちが沸き上がる。正直、気の所為であって欲しかった。

 

「先に言っておくがお前の所為じゃない。怪我の件だが、腹に少し切り傷と火傷。腕に怪我。まあ、お前に比べれば軽傷だよ。お前は頭をぶつけたことによるものと、その前に受けたであろう打ち身。あの爆発に直接的なダメージとして巻き込まれたのは、結果としてはオベリスク・フォースの連中のみだ。」

 

 すまなかったな。そういう菊だが、その言葉が余計にこっちの胸に刺さる。私が、私たちがもっと強ければ。もしくはランサーズに勧誘されていい気にさえなっていなければ。

 こんなことには、ならなかっただろうから。

 

「・・・なんだよその顔は。」

 

 そういう菊だって、泣き笑いみたいになってるじゃないですか。

 

「泣いてねぇよ。お前に釣られそうになってるだけだ。」

 

 そういう割に、目から流れてますよ?涙が。

 

「・・・お前の顔よりは、マシになってることを願うね、俺は。」

 

「負けず劣らず、です。」

 

 そう言って、私たちは泣いていた。菊は鳴き声を押し殺して大牙や香澄の名前を呼んでいたし、私は・・・正直、何を言っていたのか分からないくらいに泣きじゃくっていた。多分だが、ずっと謝っていたような気がする。

 

 5分ほどだろうか、泣きつかれて、涙も出なくなってきた私に、いつの間にか泣き止んでいた菊が、水のペットボトルを差し出してきた。

 

「飲むか?飲みさしでよければ。」

 

「貰います。」

 

 水がおいしい。時間がたったのか、生ぬるいその水は、私の体にずしんと響いた。

 

「・・・他に、聞きたいことはあるか?」

 

 そう聞かれるが正直もう他に聞くことはない。と、言うよりかは思いつかないといった方が正しいが。

 

「・・・お前、家族に連絡したのかとか、そういうこと頭から抜けてないか?入院費のことだってそうだろ。」

 

 あ・・・。

 

「ちなみに、家族には俺から連絡してある。つっても面会時間過ぎてるし見ての通りここは大部屋だ。お前の母さんと父さんが来てたが、さすがに患者全員が寝る時間だし、家のことも仕事のこともある。医者が明日には目を覚ますって言ってたのを聞いて安心して帰っていったよ。明日朝また来るってさ。娘をよろしくなんて言われたが、どうしろっていうんだよなぁ。」

 

 え?もうそんな時間なんですか?

 

「今の時間、午前2時ジャスト。まったく、いくらなんでもこの時間起きるとか、正直ないんじゃないか?」

 

 そうなんですか・・・てっ、え?

 

「菊は何でここにいるんですか?!」

 

「大声を出すな。俺も入院してるんだよ。患者だからこの大部屋でお前と一緒だったんだ。」

 

 まあ、俺は幸いにも明日朝には退院できるくらいだけど。そういう菊は笑っていたが、やっぱり怪我していたんだと、気が沈む。

 

「・・・だから、お前の所為じゃないっていってるだろ?この怪我はオベリスク・フォースの攻撃を受けたときの怪我。ICUに運ばれるほどでもないのに心配性の医者が念のために検査するからって言って無理やり拘束されたからここにいるだけで、怪我自体はそこまで酷いものじゃないし、安心しろよ。」

 

「そうはいっても、やっぱり。」

 

「・・・たく、変な所で真面目だよなぁ。」

 

 誰に似たんだか、なんて言ってますがそのセリフはそっくりそのままブーメランだと思いますよ。なんだかんだ言って課題も学校も試合も真面目にやってるのを知らない人は学校にはいませんでした。そうじゃなきゃ先生だって、課題の量が多すぎるからってわざわざやらなくてもいい仕事の話を回して課題をチャラにしたりとかしませんよ。あれは貴方だからこそ出来たんです。

 

「なんだか変なことを考えられてる気がしたから、この話題はやめようか。」

 

 相変わらず感がいい。自分でも何となくブーメランだと思うところでもあったんですかね。

 

「・・・そのニヤニヤした顔はやめてほしいね。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

「・・・俺の負けでいいよ。」

 

 勝った。何に勝ったのかわからないけど勝った。久々に優越感を感じる。

 

「お前のは優越感じゃなくて愉悦感だと、俺は思うけどね。」

 

「何か言いましたか?」

 

「いんや、何にも。」

 

 なんだか失礼なことを言われた気がした。頭の中に中年麻婆神父が思い浮かびあがってくるのはなぜだろう。

 

「同類だからじゃない?」

 

「なら私の思考を読めるあなたも類友ですよ。」

 

「自覚あり。今更だね。」

 

 この野郎・・・。

 

「・・・さて、そろそろ寝て置け。疲れは早いうちにとっておく必要がある。」

 

「ちょっと待ってください。」

 

「?」

 

 わずかに付いていた明かりを消そうとする時に呼び止めた私を、菊は不思議そうに見ていた。

 

「・・・菊は、何も聞かないんですか?」

 

「聞いて欲しいのか?」

 

「いえ、不思議に思ったんです。」

 

 まあ、そりゃそうかと言った風に納得した彼は、スイッチを押そうと立ち上がった腰をまた椅子におろした。

 

「大体のことは、検討がついている。LDSのトップクラスの実力者を集めた対アカデミア精鋭チーム『ランサーズ』に入っていたんだろう?」

 

「知ってたんですね。」

 

 何となく、彼なら知っていてもおかしくないような気がした。

 

「俺も誘われた。その時に少々詳細を聞いていただけで、協力するつもりはないって断ったけどね。」

 

「・・・私たちはその話を聞いて、2つ返事で受けました。」

 

「それが普通だ。大半の人間が受ける話だと思うよ。街の人を守ってほしい、そのための力が君たちにはある。そうプロに言われて舞い上がらないデュエリストは少数だ。」

 

 そう言ってくれるのは何よりの救いだ。・・・彼は断っていたと聞いて少々思わないところがないわけでもない。

 

「アカデミアについては聞いてますか?」

 

「それについても知ってる。負けた相手をカードにする技術とはまた物騒だ。」

 

 やっぱりこの人は知っていた。何となく会話をしていてそう感じていたが、やはり正しかったようだ。

 

「貴方が言う通り、私たちはランサーズの一員でした。大会の途中、アカデミアの兵士たちが乱入してきたのは知ってますか?」

 

「気付いたよ。司会中にその映像が出て何事かと思った。急いで街中に出て柚子たちの安全を確保しようと出た矢先にお前と会った。」

 

 ああ、そうだったのか。それは・・・悪いことをした。

 

「・・・私たちは、大会出場者の最低限の安全を確保するために会場の中に潜り込みました。いくらジュニアユース有数の実力者と言えど、それこそさっきのように10人がかりで囲まれたら勝負にすらなりません。ジュニアユースの実力者がどこまで戦えるのか。そして生き残ったデュエリストの保護。敵の目的を達成させないように動く。この3つが私たちランサーズに出された使命でした。」

 

「だけど、お前たちは返り討ちにあった。」

 

「正確には、数人がかりでリンチされたといった方が正しいです。何人ものランサーズがそれで倒れる中、生き残ったのは私、香澄、大牙。他のランサーズの面々は、それぞれ分かれて行動していましたが、少なくとも私たちが居たエリアでのランサーズの生き残りは、私たちだけでした。」

 

 菊は私の話を黙って聞いている。彼に静かにされると、違和感を感じるのはなぜだろうか。

 

「そんな中、香澄が最初に倒れました。そして、それに気を取られた大牙が・・・。」

 

 ダメだ、思い出したらまた泣けてきた。目の前で友達がやられていく様は、いまだに脳裏にこびりついている。

 

「・・・辛かったな。」

 

 そう言って慰めようとしてくれるが、話はまだ終わっていない。

 

「・・・すいません、菊。貴方が襲われたのは私たちの所為でもあるんです。」

 

「え?」

 

 これには、流石に驚いたみたいだった。

 

「あの時・・・。私たちは、ここから抜け出せることが出来たら、菊にアメリカの大会のベスト4を祝ってプレゼントを渡そうって話をして、心を保とうとしていました。・・・大会が終わったら、ご飯でも食べに行こうって言ってましたよね。実は、その時に渡そうとしていたものがあったんです。」

 

 そう言って私は、ベットの横にあるカバンから箱を取り出して、菊に渡した。フライングだけど、一緒に買った香澄も大牙ももういないから、これでいいだろう。

 

「・・・その時の会話を、オベリスク・フォースに聞かれたんでしょうね。柊菊の名前を聞いたオベリスク・フォースの隊長は、明らかに顔色を変えて連絡を取っていました。・・・その後です。彼らがカードにされたのは。そして・・・。」

 

「人質に取られて、俺とデュエルするように強要された。」

 

 やはり、菊は頭が回る。話が早いのは、菊の長所の一つだろう。・・・それ以上に短所が目立つのは、彼らしいところだが。

 

「・・・ほんとは、皆で渡したかったのに。皆で買ったものだったから、集まって、笑いながら・・・。」

 

「・・・凪流。」

 

 でも、もう彼らはいない。彼らは、カードになってあいつらに・・・。

 

「なあ、一つ聞いていいか?」

 

「なんですか?」

 

 泣きそうになっていた私に菊は訪ねてきた。

 

「どうして、お前らランサーズに入ろうと思ったんだ?お前は・・・ともかくとして、なんだかんだ慎重派な大牙がそれに納得するとは思えなくってさぁ。」

 

 なんだ、そんなことか。

 

「大牙は反対派でしたよ。何も自分から死にに行くようなことをする必要はないだろうって。逆に香澄は肯定派でした。」

 

「ああ、目に浮かぶ。香澄は勝気な奴だからなぁ。」

 

 そうですね。そうでした。そして、私も・・・。

 

「でも、肝心のお前はどうだったんだ?」

 

「私も、肯定派でした。」

 

「それが意外だ。お前、生き死にとかかかるようなことに積極的にかかわる奴じゃないだろう?」

 

 ああ、確かにそうかもしれない。なんだかんだ言って、私は臆病だ。だけど、あの時は・・・。アカデミアについて。その話と、実際にその場にいた人、黒咲隼の話。そしてカードにされた人の実物。それらを見て、聞かされた私の心境は・・・。

 

「やっと、菊に並ぶことが出来る。」

 

「え?」

 

「やっと、菊に追いつけたんじゃないかって。そう思ったんです。」

 

 今まで私の中には、菊に対する劣等感があった。それは香澄も、大牙も同じ。そうじゃなきゃ、大牙があんなにあっさり香澄に説得されたりしない。なんだかんだ、大牙も頑固なのだから。

 

「どうしてそんなことを?」

 

「だって、悔しいじゃないですか。」

 

 今まで、勝てたのは数回だった。本気用じゃないデッキで数回。プロで使われるようなデッキで1回だけ。香澄と大牙は、1回勝てたならまだいいなんて言っていたが、そのデュエルを見返すと、勝てたのは菊がやったプレイミスの影響が大きかった。実力じゃなく、菊のミスで勝った。それでもいいじゃないかと思う私と、もっと全力の時に勝ちたいと思う私。そんな中に赤馬零児に勧誘された。その時、それでもいいじゃないかと思う私が、あれは実力だったんだと主張し始めた。

 

 その時、初めて自分のデュエルに自信が持てた。菊は、いつも褒めてくれた。危ない時もあったなんて言う割に、堅実に勝利を収めていく。私は、そんな人の弟子であることが誇らしくって。でも負担で。同級生の弟子であるということがたまらなく情けなくて。

 

 そんな中に褒められたら、舞い上がってしまった。我ながら、単純な人間だとは思う。でも、それでも。

 

 なんて言うか、私は・・・菊に、認めて欲しかったんだ(・・・・・・・・・・)。私が作り上げた、弟子と言う形でも友人と言う形でもない。ライバルとして、一人のデュエリストとして、認められてはいないような気がして。

 

 ・・・でも、結果は。

 

「そんなわけです。我ながら、馬鹿だとは思いますけどね。」

 

「ああ、馬鹿を通り越して愚かしいよ。」

 

 そこまで言いますか。まあ、理由が理由なんで仕方ないっちゃ仕方ないかもしれないですね。

 

「・・・お前らは十分に強いだろうが。」

 

「え?」

 

「一つ言わせてもらうがな、俺は試合なんかより、お前らのデュエルの方がよほど真剣に考えている。今のプロで活躍している半数のデュエリストは、エクストラのない、最近のシンクロもエクシーズもなかった時代のデュエリストたちだ。プロと言うだけあって、技術もデッキ構築力も、戦略性もお前らよりは高い。だけどな・・・。」

 

 そう言って、彼は私を元気づけるように優しい声で。

 

「いざとなった時の爆発力は、お前らの方がよっぽど気を抜けない。前にお前とやった時も、その隙を突かれて負けた。お前らは、もう十分なデュエリストだ。」

 

 まあ、一流とは言えないけどな。いや、それは俺もか。なんて冗談めかして言う彼は、目だけは真剣だった。

 

「・・・『この世の理不尽は当人の実力不足』。」

 

「え?」

 

「漫画のセリフだけど、今の俺らにはピッタリなセリフ。お前は実力が。俺は・・・お前らと関わろうとしていく力が、思考が、何もかも足りなかった。ただでさえ、デュエリストとしては二流なのに、こんなんじゃダメだよな。」

 

「いや、貴方が二流デュエリストなら私たちはどうなるんですか。」

 

 まったく、その二流に勝てない人たちの気持ちも考えてほしい。

 

「いや、俺の実力はデッキにおんぶにだっこされてようやくってところだ。」

 

 コンマイ語を習得しきれないデュエリストは半人前だよ。そういうが、コンマイ語って何だろう。

 

「なあ。」

 

「はい。」

 

「・・・悔しい、よな。」

 

「ええ、とっても。」

 

「なら、さ。」

 

 俺らで、大牙と香澄を取り返さないか?

 

 そう、冗談めかして。でも、顔は真剣に、そういう彼に、私は勢いよく返事した。

 

 

 

 余談だが、この声の所為で、私と菊は医者にこっぴどく叱られた。すいません、先生。

 

 

 

  ◇

 

 凪流との話が終わった後、俺は電話を、ある番号にかけていた。3コールもしないうちに、電話の主は応答する。

 

「そろそろかかってくる頃だと思いました。でも、病院からかけるのはちょっと感心しませんね。」

 

「やっぱり、君は知っていたんだね。零児君。」

 

「ええ、まあ。・・・彼女には、つらい思いをさせました。」

 

 彼女っていうのは、やはり凪流のことなんだろう。

 

「ねぇ、零児君。・・・カード化された香澄と大牙がどこに行ったのか、知っているかい?」

 

「いいえ。ですが、見当は付きます。」

 

「へぇ。してそれは?」

 

 まさか、もうHITするとは。

 

「・・・貴方は、あのカードを回収した人を知っていますか?」

 

「いいや?なんせ、ちょっと凪流に意識が行っている合間にそのカードも、アカデミアの兵士も居なくなっていたからねぇ。」

 

 強制帰還システムでも発動したのかと思っていたけど、違うのかな?

 

「・・・貴方が彼女に気を取られている時、あるデュエリストがその場にやってきて、彼ら全員を回収しました。一瞬の出来事で、監視カメラでも、僅かしか映っていません。」

 

「それで、カードは彼が持ち帰った。」

 

 そういうことなのだろうかと思ったが、どうやらそれは当たりらしかった。

 

「正確には、カードを持っていたオベリスク・フォースの隊員をと言うのが正しいです。・・・貴方に悟られないようにしていたのか、離れたところで気絶している面々のみを回収していきました。・・・これについては、後程写真をメールで送付しますので、確認してください。」

 

「残ったメンバーは?」

 

「貴方に手当てをしたメンバーに回収させました。」

 

「そいつから、アカデミアに行く方法を聞き出せるか?」

 

「・・・まさかとは思いますが、自分から攻めに、いや、取り返しに行くつもりですか?」

 

 まあ、そのつもりだった。最悪、俺だけでも。

 

「・・・無理です。」

 

「え?」

 

「オベリスク・フォースは、デュエルで負ける、もしくは捕らわれの身になるとデュエルディスクが作動して、元居た次元に強制送還されるシステムが存在します。」

 

 それについては知っている。問題は、どうして聞き出せないのかと言うことだ。

 

「貴方は、電車に乗っている人そのすべてが電車の仕組みをすべて答えられると思いますか?聞き出して得られる情報は、精々が次元の座標が限界でしょう。聞き出すよりも効率がいいのはデュエルディスクを解析することです。ですが・・・。」

 

「なんだい?オベリスク・フォースは捕らえた。なら、デュエルディスクのサンプルは十分にあるだろう。」

 

 そうだ、いくら数人回収できても、それ以上にサンプルは大量にある。なら・・・。

 

「・・・先ほども言いましたが、オベリスク・フォースはデュエルで敗北、もしくは捕らわれの身になるとデュエルディスクが作動して、元居た次元に強制送還されるシステムが存在します。」

 

「それはさっき聞いた・・・あれ?」

 

 なんだか、おかしくないか?

 

「気付きましたか?あなたが倒したオベリスク・フォースはデュエルで敗北しても強制送還されなかった。ではなぜか。」

 

「見当もつかないね。」

 

「・・・貴方が使ったモンスターですよ。より正確に言うなら、《インフェルノイド・ティエラ》と言った方が正しい。」

 

 は?あいつが?なんで?

 

「・・・貴方は気付いていませんが、あの時の融合反応は明らかに異常でした。」

 

「融合反応?」

 

 ちょっと訳分かんなくなってきた。

 

「簡単に言うなら、モンスターの召喚時に発生するエネルギーのことです。それらを我々LDSはそれぞれの召喚方式に当てはめて呼称しています。一般的な塾生のエネルギーを100とするなら、オベリスク・フォースは1000と思ってください。そして、700あたりから、現実に影響が出始め、モンスターが実体化します。先日の襲撃事件は、この仕組みを利用して襲い掛かっていました。」

 

「それで、俺のティエラは?」

 

「53万です。」

 

 フリーザかよ!高ッ!なんなの?星つぶすの?!

 

「冗談です。ただ、3500を超えたあたりから我々も電源をシャットダウンしに入ったので計算できていません。・・・あんなものポンポン召喚されたら、LDSの電力がストップします。」

 

 お、おう。なんか、ごめん。ティエラ、お前そんなに凄かったのね。中華鍋のコストにしてごめんなさい。今度はもうちょっと労わるよ、破壊輪がいい?

 

「まあ、その影響が、対戦しているデュエルディスクには影響したらしくて。デュエルが終わった後確認したところ、モーターが焼き切れていました。復活させるには、少々時間がかかりますし、データが飛んでいる可能性もあります。菊先輩の要望は、無理そうですね。」

 

「・・・なら、お前らはどうやって融合次元に乗りこむつもりだ?」

 

「さあ?それは言えません。貴方はまだ部外者だ。」

 

 ・・・そりゃ、そうだよな。味方じゃない人間に、それはできない。なら、部外者じゃなくなればいい。

 

「なあ、零児君。」

 

「はい?」

 

「・・・俺を、俺と凪流をランサーズに入れろ。」

 

「・・・彼らを取り返すつもりですか?」

 

 それ以外に何がある。

 

「危険が伴いますよ?」

 

「覚悟の上だ。」

 

「・・・彼女は、どうします?あんなことがあった後だ。こちらとしては無闇に犠牲者を増やすようなことは控えたいのですが。」

 

「実力のことなら安心しろ。彼女は・・・俺のライバルだ。実力に関しても、元々ランサーズのメンバーだから問題はないはずだ。」

 

「だが、彼女は負けた。」

 

「それは多数用にカスタマイズされていなかったからだ。彼女の対多人数用のデッキは、そりゃあ強いぞ。」

 

「・・・彼女をもう一度向かい入れるメリットは?」

 

「明日お前が選出したメンバーの誰か3人とデュエルさせろ。そうすれば、彼女の実力は分かるだろう?」

 

「・・・それは、どうでしょうか。」

 

 ん?ならどういうことなんだ?

 

「まあ、いいでしょう。貴方がこちら側として積極的に動くことをメリットとして捉えます。ただし一つ、仕事を依頼していいですか?」

 

「彼女の同行を許可してくれるなら、なんでも聞くよ。」

 

「今何でもって言いましたね?」

 

「・・・そのネタ挟むのはやめようか。」

 

「それは残念です。・・・仕事は、貴方なら簡単だと思いますよ?」

 

 へぇ?なんだろう。まあ、何でもどんと来い!

 

 その頼みごとを安易に聞き入れたことを、俺は数秒後に後悔することになる。

 

 アカデミアのデュエリスト、『セレナ』の保護。

 

 正直、気まずいんですけど・・・。八汰烏がトラウマになっていないことを切実に願う。

 

 

 

   ◇

 

 

「社長、よろしかったのですか?」

 

「なんだ、中島。」

 

 舞網市の中心にそびえ立つビル。赤馬コーポレーションの一室で、中島は上司である零児に、質問を投げかけた。

 

「柊菊のことです。彼は・・・いや、彼の父親は・・・。」

 

「諄いといったぞ、中島。彼とあの男の縁はすでに戸籍上からも消えている。それに、それを言うなら私はプロフェッサーの息子だ。家族だからと言って、『敵』と言うわけではないだろう。」

 

「それはそうですが・・・。」

 

 なおも食い下がる中島。それは、心の底から零児を心配しているが故の言葉。

 

「それに、彼を戦力に加えることが出来たのなら、それは大きなメリットだ。彼のネームバリューを存分に使うこともできる。彼はいまや世界的なデュエリストだ。」

 

「ですが、彼はまだ味方と決まったわけではありません。まだスパイの容疑は晴れていません。」

 

「それなら、なぜアカデミアは彼を始末しようとした?」

 

 その言葉に思わず詰まってしまう中島。だが、零児の次の言葉に驚くことになる。

 

「安心しろ。彼の実力はともかく、私も今は彼をあまり信用していない。彼には、防衛と言う面目で、この街に留まってもらうつもりだ。」

 

「え?」

 

 それは、先ほどの電話とあまりにも条件が違いすぎる。

 

「勘違いしていないか?私はランサーズに入れるとは言ったが、融合に攻め込むメンバーに彼を入れるとは言ってないぞ?」

 

 詭弁だろう。説明を要求する中島の思考を読み取った零児は言葉をつづけた。

 

「彼は嘘をついている。少なくとも、彼はアカデミアに出会う前からその存在を知っていたはずだ。」

 

「どうしてです?!」

 

「中島。アカデミアは教育されたデュエリストだ。斥候なら、斥候らしく隠密行動に長けてなければいけない。それなのに、プロとはいえ一般人の柊菊が、彼らの存在に気付くことが出来た。おかしいと思わないか?」

 

「偶然気付いたと、彼は証言していたのでは?」

 

「確かに、奴らは目立つ。だが、たとえ偶然見つけても、普通なら警察に連絡する。それなのに、彼はデュエルで殲滅するというやらなくてもいいことをわざわざやっていた。なぜか?」

 

 その言葉に、赤馬零児は一息開けて。

 

「彼は、アカデミアの存在をすでに知っていた。少なくとも、この数ヶ月よりも前に。」

 

「そんな馬鹿な?!」

 

「だが、これなら説明がつく。なぜ彼はわざわざ彼らを倒した?彼らが危険だと知っていたから。なぜ、監視カメラの映像ではアカデミアと会話した形跡がないのに彼らがカードにすることが出来ることを知っていた?なぜ、彼らが居なくなった時に彼はうろたえることなく何事もなく遊勝塾の面々と合流している?全て事前に知っているならまだ説明がつく。」

 

「なら彼を味方に引き入れる必要はない!むしろ余計にスパイの可能性が。」

 

「だが、彼は少なくともアカデミアではないだろう。」

 

 は?とでも言いたげに中島は口を開けた。零児は続ける。

 

「それならば、アカデミアがわざわざ危険を晒してまで志島凪流を利用するなんて回りくどいことをする必要はない。もっと単純に殲滅した方が、彼女レベルのデュエリストをわざわざカードにしないで捕獲するなんて、途中で抵抗されて倒されるリスクを背負う必要はない。」

 

 ただ殲滅するだけの方が手間は少ないうえ、襲撃されたときに人質が抵抗すれば、むしろ枷になる。そういう零児に、まだ食い掛る中島。

 

「だからと言って、敵ではないとは限りません!不確かなことが多い人間を、わざわざこちら側に引き入れる必要性はないではありませんか!黒咲の情報では、シンクロ次元の人間は、アカデミアと組んでいる。融合次元ではなく、シンクロ次元の人間かもしれない。何より、柊菊はシンクロについて、かのランク7位の冥界王ですら奴のシンクロを認めていた!シンクロ次元の人間なら、それも不思議ではない。」

 

「成程、シンクロ次元か。確かに、そうかもしれないな。」

 

「ならば!」

 

 中島に、首を横に振る。

 

「だが、本当にシンクロ次元の人間なのか?少なくとも、彼の公式試合は7年前から存在している。・・・部下の情報だと、確かにそれは柊菊本人のものだ。」

 

「この次元の人間が、寝返った可能性だって!」

 

「それは随分と嫌な発想だな。考えたくはないが、確かにその可能性だってある。」

 

 話を聞けば聞くほど、中島は零児が何を考えているのか分からなくなった。メリットよりも、デメリットの方が多すぎる。

 

「だが、それでも。」

 

 俺は彼を信じたい。そういう零児の目には、中島が仕えて、少なくとも年単位で見ていない、年相応の顔だった。

 

「それに、敵だったとしたらアカデミアが侵略してきたとき、わざわざあそこへ出向いたりしないだろう。・・・安心しろ。我々の肝心の計画にかかわるようなところには入れるつもりはない。我々が不在の間、ここの留守を任せる人員も必要だ。その人員に彼を入れれば、戦力としても、宣伝としても十二分に使うことが出来る。」

 

 ・・・確かに、今の私たちには宣伝することは重要だ。アカデミアの危険性を示唆すると同時に戦力の拡大を狙うことが出来る。何より、彼の弟分である榊遊矢以下数名をこちら側に引き入れやすくできるだろう。今の私たちには、戦力があまりに不足している。せめて、もっと効率的に戦力を増やすことが出来れば、彼を引き入れるリスクを減らすことが出来るのだが・・・。

 

「ですが、戦力ならユースをはじめとしたランサーズが・・・。幸い、何人かはまだ生き残って・・・。」

 

「一度死にかけたものがもう一度奮起して彼らに挑む。それを私に誘われただけの信念も覚悟も足りない子供が、それを実行できるのか?」

 

「それは・・・。」

 

「もし、今回の侵略を食い止めることが出来ることが彼らにできるのなら、彼らは戦う覚悟が出来るだろう。その覚悟は、実力よりも重要だ。」

 

 ・・・だが、彼らは少年だ。まだ子供だ。そんな彼らに、対アカデミアについての殿を任せなければいけないというのが、中島は心苦しかった。

 

「・・・彼らは、今回で少年から、戦士に変わる。中島、お前のその甘さはこれからは捨てろ。融合次元を倒すにはその甘さは弱みになる。」

 

 そういう零児に、父親に似てきたなと悲しくなる中島。

 

 ・・・せめて。

 

 せめて零児を含む少年たちが、カードにされることがありませんよう。中島はそう願うしかなかった。

 

 

   ◇

 

 

 月明かりが覚めていく中、黒咲はカードを眺めていた。

 

「あの時・・・。」

 

 思い出すのは、数日前のデュエル。あの時の感覚が、黒咲には残っていた。

 

「お前達を出していれば、話は違ったのだろうか・・・。」

 

 そこには、黒咲のフェイバリットとも言えるカード。RR-ライズ・ファルコン。そしてその進化形であるカード達。あのデュエルで、出すことなく終わっていたカード達が、そこにはいた。

 

「・・・いや、そうとは言い切れないのかもな。」

 

 だが・・・。そう思ってしまうのも、無理はない。あのデュエルで、黒咲は勝つこと

のみを優先し、効果の強いカードを出すことに専念していた。その方針は、アカデミアに攻められ、楽しむことではなく勝つことを優先していたことの名残だろう。

 

「・・・次は、こうはいかない。本当の俺のデッキを見せてやる。待っていろ・・・。」

 

 そこまで言って、名前を知らないことに気が付く。せめて名前さえ分かればリベンジの機会があるものを・・・。そう考えて、黒咲隼は目の前に改めて意識を向ける。そこには一人のデュエリスト。

 

「どうしたの?かかって来いよエクシーズの残党!」

 

 昨日の昼から、場所を変えてデュエルし続けているが、一向に決着がつかない。・・・まあ、途中で何度か互いに妨害を受けたのもあるが、それでも一晩使ってデュエルするとなると、集中力が切れてきても不思議はない。だから、こんな余計なことを考えてしまったのだろうか。

 

「行くぞ、アカデミア!」

 

 隣の相棒、RR-フォース・ストリクスは鳴き声を上げて自分と共に奮起する。その声を聴くと、自分の戦場はここなのだと思い知らされる。

 

 だが・・・。

 

 いつの日か、奴と殺意なくデュエルすることが出来る日を。その時は、決着を。

 

 最後のデッキトップにあったカードを思い出しながら、黒咲は戦いに戻った。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「本当に、出来るのでしょうか。」

 

 凪流は、病室の中でそう呟いた。あのデュエルの感覚が、いまだに自分の体の中に残っている。

 

 ため込んだ胃の中のものが逆流してくる。思わず吐きそうになる彼女だが、必死でそれを抑え込んだ。

 

「・・・やるしかない。」

 

 自分が、自分たちが蒔いた種をきっちり片付ける。それが、菊や皆にできる唯一の償いだ。そう凪流は考えた。

 

「・・・絶対に許さない。」

 

 その言葉に、自分の怨嗟を全て詰め込んで。

 

「駆逐してやる、アカデミアを!」

 

 彼女はその言葉を吐瀉の代わりに吐き出した。

 

 

 ・・・その言葉を病室の扉から聞いていた菊が「エレン?」と何とも閉まらないセリフをつぶやいたのは余談である。

 




 ・・・長くなったなぁ。知ってるか?これ作者の息抜きなんだぜ?

 それはそうとお気に入り数が1400を超えていてびっくりしました。これからも気長にお付き合いいただければ幸いです。


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第8話

めっちゃお久しぶりです。ジャンヌオルタ再ピックアップしてほしい紫苑菊です。もうこの小説の存在を忘れてしまった方は多いかと思います。まだ見ている方がいたらお付き合いくださいませ。

 それはそうと、ディアボリックガイ再録がようやく来ましたね!作者は友人と多々買いして行くつもりです。幸いにも友人はD・HERO。作者は堕天使(スペルビアとアスモ売らなくてよかった・・・。)を組む予定ですので何とかなりそうな気配が・・・。トライブフォースみたいにネクロスの奪い合いにならないことを祈るばかりです。魔界劇団?万が一揃ったらワンチャン作るかもね。



 随分とお久しぶりです、柊菊です。現在社畜としてアカデミアからセレナを保護しに舞網市をバイクで奔走中です。そして・・・。

 

「居たぞ!奴だ!」

 

「であえであえ!」

 

「奴をデュエルで拘束するのだ!お行きなさい!助さん角さん!」

 

「誰だ今のてやんでぇ口調の奴!あと水戸黄門みたいな奴!」

 

 なぜか俺がアカデミアに襲われてます。なして?なしてこうなったん?俺にかまわずにどっかいけよ!

 

 その前にアカデミアよ、名も知らぬ少年兵よ。キャラを統一しろ。

 

 まあ、それはそれとして挑まれたらワンキルしていくんですけどね。サモサモキャットベルンベルンDDBDDB射出射出ソルチャDDBDDB蘇生射出射出ゥ!アザッしたぁ!ふぅ、きたねぇ花火だ。けど、これ倒してもなんかゴキブリみたいに沸いてくるんだけど。ゴキブリ・・・G・・・増殖・・・。う、頭が。

 

 それにしても、さっき無線代わりのデュエルディスク奪って正解だった。だってさ・・・。

 

「オベリスク・フォース、至急エリアDへ!第4隊がやられた!第3隊と第5隊は至急エリアDへ増援!それから第6隊はアカデミア本部に連絡して増援要請!この際オシリスの奴らもラーの奴らも増援に来させろ!」

 

 うん、情報が筒抜けだね。まあ、無線奪ってるのが気付かれたらこうはいかないんだろうけど。

 

 つか、まだ増えんのかよ・・・。正直このデッキでワンキルきついんだけど・・・。

 

「こちら第3隊!目標は?誰にやられた?!」

 

「ただ今先行した第5隊が・・・ああ、また一人やられた!目標は1人!最重要注意人物、柊菊!レートは今回でA+からSSに格上げ!一刻も早く奴らを殲滅せよ!また、この先に同じく最重要注意人物、黒咲隼の存在を確認!」

 

 SSって、喰種か俺は。眼帯でもラビットでもないよ?!

 

「黒咲だと?!エクシーズの残党か!なぜスタンダードにいる?!」

 

「分からん!だがこれでハッキリした!奴らも下手をすればカード化の技術を得ている可能性がある!少なくとも、奴らも次元は超えることが出来るのはこれで証明された!慎重に事に当たれ!」

 

「黒咲の、残党の対処はどうする!」

 

「今回の責任者である紫雲院さんが対峙している!セレナの存在はこの先のエリア3で確認できたが・・・。」

 

 エリア3?火山エリアか?それとも遺跡エリア?この先ってことは遺跡エリアっぽいけど。

 

「なら、別ルートでエリア3に人員を向かわせる!SSの方は数人がかりで袋叩きに」

 

「それが出来ればやっている!奴め、正真正銘の化け物だ!第4隊は10人いたんだぞ?!なんで倒されている?!」

 

「知るか!だが幸いなことに本部が人員を向かわせた!こちらがセレナを、そしてターゲットを確保できるまででいい、時間を稼げ!」

 

 ・・・うわぁ、どうしましょ。そう言われて素直に相手するのも馬鹿らしいし・・・。てか、無線神だわ。無線信仰するわ。いや、無機物に信仰するのはそれはそれで嫌だな。でも聞こえてくる状況が笑えないんだけど。 ・・・とりあえず撒こう。

 

「目標、バイクを置いて逃走!方向は・・・エリア3!」

 

「なんだと?!至急奴を拘束、ないし足止めしろ!」

 

 ふはは、もう遅い。

 

「目標、建物の中に入りました!」

 

「何をする気だ?!」

 

 大惨事大戦だ、じゃなくて。ま、これで大丈夫でしょ。

 

 ・・・無線からも、特に気付かれてないみたいだ。よかった、ここで大牙がバイトしてて。

 

「・・・目標、見失いました!どうやら裏口から逃走した模様!」

 

「なんだと?!貴様、何をしていた!」

 

 裏口があることは大牙がバイト先から帰るときに迎えに行ってよく遊んでたから、場所は知っていた。まあ、自分が入ることになるとは微塵も思ってなかったけど。ついでにちょっとあるものを拝借。

 

「・・・しまった、閉じ込められた!」

 

 ・・・こいつら、ほんとに実戦経験豊富なエリートなのだろうか。エリート(笑)と化してるんだけど。すいません、店長さん。あとでカギ返しに行きます。

 

「・・・こうなったら!」

 

 無線なんかなくても聞こえる怒鳴り声が聞こえた。え、ちょっと待って。まさか・・・。

 

「古代の機械猟犬召喚!行け!」

 

 バリーンとガラス扉が割れる音がした。最後のガラスをぶち破りやがりました?!マジかよ、扉壊しやがった。・・・修理費はLDSに請求しよ。付けの領収書、ここに置いときますね。

 

「・・・遅かったか。」

 

 逃ィげるんだよぉ~!(ジョジョ風)いやぁ、アカデミアは強敵でしたね。

 

「こちら第3隊!目標が完全にロストした!奴が向かったのはエリア3!そっちの人員は一刻も早くセレナを確保してくれ!」

 

 いや、だから無線聞いてるんだって。場所教えてるようなものだから。まあ、このまま向かえばいいんだろうけど。

 

「待ちなさい。」

 

 え?

 

 そう思ったのもつかの間、周りに網が張り巡らされる。どうやら、俺の行動を縛るためのものらしい。

 

「・・・全く、こんな奴の時間稼ぎもできないのか、オベリスクフォースは。」

 

「仕方ないわ、姉さん。さっさと片付けてまたレジスタンス狩りに戻りましょう?」

 

 え?何この声。なんか幹部っぽい(小並感)。

 

「柊菊だな。私たちはタイラー姉妹。悪いが、プロフェッサーの命によりお前はここで倒させてもらう。」

 

「ルールはタッグデュエル。フィールドは共通。ライフも4000で共通。まあ、貴方は一人みたいだから関係ないでしょうけど。」

 

 え、展開がはやすぎてついていけない。だれか、だれかぁ!会話のキャッチボール出来る人いませんか?!

 

「ああ、逃げようとは思わないことだ。その網には私たちから逃げ出すと電流が流れる仕組みになっている。」

 

「アカデミア開発局の研究の賜物よ。名付けて電流網デスマッチ!」

 

 どこのプロレス?!だれか開発部に絆創膏持ってきて、人ひとり包めるくらいの。

 

「さて、拒否するならカードになってもらう。そうでないのならデュエルに負けて、お前はカードになる。」

 

「Death or Death。お分かり?」

 

 え、何その新手のハロウィン。せめてトリックであってほしかった。トリートないけど。お菓子なんてまったくもって持ってきてないけど。

 

「さて、デュエルを始めようか。」

 

 うわあ、急ぎたいんだけど。かつてないほどめんどくさそうな気配感じちゃってるんですけど。

 

 これあれだよ?デュエルって書いて殲滅って読むかリンチと読むか、そんなイントネーション含んでるよ。

 

「待て。」

 

 来ちゃったよ。またなんか来ちゃったよ。これ以上めんどくさいのがなんか来ちゃったよ。これ以上キャラ増やさないで?!切実だから!

 

「・・・お前は?!」

 

「誰かしら、姉さん。」

 

 え、あんたらも知らないの?てっきりそっちの上司かなんかかと思ったんですけど。俺会ったことないし。

 

「・・・悪いが、そいつに今消えてもらうわけにはいかないんでね。俺も加勢する。」

 

 いや、だからあんた誰なんですか。ナズェミテルンディス?!

 

「・・・俺は君の味方だ、安心してほしい。だが話はあとだ。先にこいつらを片付けたい。」

 

「・・・あんた、信用できるのか?」

 

「さあ、な。もしかしたら1対3になるかもしれん。」

 

 それなんてタッグフォース。CPUクソ過ぎる奴じゃないですかやだー。

 

「・・・先行はお前からだ。デュエルを始める。」

 

 いや、ちょっとお姉さん?疑問に持ちません?なんでデュエル続行しようとしてるんですか?!しかも先行。まあいいや。

 

「手札から3枚の方界カードを見せる。」

 

 ほんと、この効果インチキすぎる。

 

「手札から、暗黒方界神クリムゾン・ノヴァを特殊召喚。」

 

 これを見て、更に手札を除いた斜め後ろにいるなんかよくわからん奴が「あ。」てつぶやいたが、そんなのは知らん。

 

「そして流星方界器デューザを通常召喚。効果で方界合神を墓地に送る。」

 

 そしてその瞬間後ろの奴が顔を上にあげて空を仰いだ。おい、現実逃避するな。

 

「デューザをリリースすることで、方界獣ダーク・ガネックスを特殊召喚。更にデューザがフィールドから離れたことで墓地の方界合神の発動条件を満たした。このカードをゲームから除外することで手札のバスター・ガンダイルを特殊召喚。」

 

「ふん、攻撃力0のモンスターを召喚したところで何も変わらない。」

 

「いや、バスター・ガンダイルが手札から特殊召喚されたことでお前たちは800のバーンダメージを食らう。」

 

「何?!」

 

 残り3200。クリムゾンノヴァのあれと組み合わせてもちょっと足りないな・・・。別に多少残そうが何とかなるだろうが。

 

「・・・使うか?」

 

 そう言ってよくわからん男から渡されたのはアクションカード。・・・あ、ジャストキルなるか?

 

「手札からアクション魔法フレイム・ボールを発動。200のダメージを与える。」

 

「クッ、小癪な。」

 

「大丈夫よ、姉さん。この程度、次のターンで挽回出来るわ。」

 

 それが、そうでもないんだよなぁ。

 

「残念だけど、次のターンは存在しない。」

 

「何?」

 

「何言ってるのよ。まだ先行1ターン目よ?」

 

 先行だからって慢心するのよくない。

 

「エンドフェイズに入る。この瞬間、クリムゾンノヴァの効果が発動。お互いに3000のダメージを与える。俺たちのライフは4000、そっちは3000。・・・どうあがいても、俺らだけが生き残る。」

 

 これを聞いた瞬間、姉の方が焦り、妹の方が「え?うそでしょ?」とつぶやく。後ろの奴は「俺、いらなかったな」なんて呟いているが、知るかそんなもん。残念だけどこれ、デュエルなのよね。

 

「・・・さて、姉妹さん?懺悔の用意は出来ているな?」

 

 ちょっと待って、なんて妹らしき方が言っているがそんなのはしらん、管轄外だ。そもそもエンドフェイズに入った時点で効果処理は自動で行われる。

 

 クリムゾンノヴァの効果が発動し、エネルギーが爆発したかのように降り注ぐ。多少のダメージを受けるつもりだったが、後ろの奴がまたまた拾ったらしいアクション魔法、フレイム・ガードを発動したので、俺たちはライフ4000と無傷のままデュエルが終了した。

 

 ワンターンジャストキルゥ・・・。

 

「なん・・・だと・・・?」

 

 死神ですか?尸魂界に帰れ。俺は逃げる。

 

 とりあえずバイクのところまで戻ってヘルメットを被り、それに跨った後、俺は少しどうするか考えた。

 

 さて、どうするか。本当はセレナとやらを見つけなければならないんだけど、くだらないデュエルの所為で時間を取られた。もう、セレナは移動しているだろう。

 

「待ってくれ。」

 

「ん?」

 

 不審者 が なんだか こちらを 見ている。

 

 仲間 に しますか?

 

 ってふざけてる場合じゃないか。なんだか真剣そうだし。

 

「なんだ?忙しいから手短に。」

 

「・・・頼みがある。君が今追っているセレナについてだ。」

 

 なんだって?どういうこと?単刀直入過ぎてわかんない。とりあえず、彼をバイクの後ろに乗せて遺跡エリアで走り出す。

 

「それで、話ってどういうこと?」

 

「・・・いや、まず何から話すべきか。」

 

 いや、最初から離せよ。それもできれば簡潔に。

 

「そうだな、簡潔に言う。俺は融合次元の人間だ。だが、アカデミアの人間ではない。」

 

 何?!融合次元の人間ならアカデミアに属しているのではないのか?!

 

「次に、なぜ俺が、お前がセレナを追っていることを知っているのか。赤馬コーポレーションについては元々調べていた。その社長である社長の会話を盗聴しないはずがないだろう?」

 

 いや、そんなに堂々と犯罪カミングアウトされても。

 

「それで、きみがセレナを保護してくれることを知った。そこでコンタクトを取ることにした。そうしたらタイラー姉妹に襲われている君を見て、最初は君のデュエルを見させてもらうチャンスだと思ったんだが・・・。」

 

 だが?

 

「タイラー姉妹。まさか当て馬にすらならないとは思わなかったよ。流石に難易度が高すぎると思って介入しようと思ったんだが、まさか俺がアクションカードを探すための犬にしかならないとは・・・。」

 

 不思議とジグザグマを思い出した。特性、ものひろい。ふしぎなあめとか拾ってくれるから助かるんだよな。廃人プレイは向いていないことをあのゲームで痛感した。ヌオーとビーダルはトラウマ。はっきりわかんだね。

 

 遺跡エリアに入る。流石の俺もここでバイクを走らせることは出来ない。こんな瓦礫だらけの場所ではバイクは走れない。後ろの奴も素直に降りてくれた。

 

「と、いう訳で・・・。」 

 

 男は俺の腕に近づいて、そっと腕に手錠を嵌めて逆側を自分の手に・・・っておい。

 

「あのー、これ、なんですか?」

 

「手錠。」

 

「いや、それは分かってんですけど。俺が聞きたいのは決してこれがなんなのかってことじゃなくて、なんで俺がそれを嵌めてるのかってことなんですけど。」

 

「・・・さて、何から話そうか。」

 

 いや、何もどうもこうもないんだけど?!絶対これ逃げられないようにするためだよね?!

 

「いや、そういう訳ではないんだ。・・・ただ、君の実力が見たくて。」

 

「何一つ違わねぇじゃねぇか?!これあれだろ?!腕試しと言う名のデュエルを断られて逃げられないようにするための手錠だろ?!」

 

「お、なんだ話わかんじゃん。」

 

「なんで急にフレンドリィ?!マジフザけんなぁ!」

 

 ここまで突っ込みしたの何気に久しぶりな気がする。俺、どっちかっていうとボケ側の人間なんだけど。

 

「さて、じゃあ始めるか。」

 

「あんたどんだけマイペース?!唯我独尊と書いてゴーイングマイウェイって読む人間だよコレ!」

 

「おお、俺の座右の銘を知っているとは、何者?」

 

「余所者、もしくは他者だよこのクソ野郎!!手錠を外せ、何よりもまず手錠を外せ!そもそも手の自由がきかないからデュエルディスク弄れねぇよ!」

 

 あ・・・。ってつぶやく男からはなんだろう、そこはかとない天然な気配を感じる。

 

 いや、おそらくバカではない。むしろ、デュエルにおいてかなりの実力者ではないかと言う気がする。何となく、そんな気配と言うか雰囲気を持っているのだ。

 

 昔、プロデュエリストの先輩に聞いた話だが、何となく強い人はそういう雰囲気のようなものが出るらしい。今の今までそういう気迫のようなものが本当に存在するなんてまったく思っていなかったしそんな与太話まったく信じてなかったけれど。

 

 あ、ちなみにどういう訳かそういう気迫は俺には全く出てないらしい。プロランク50位以内に入っていれば大体感じるはずなのにおかしいなってその先輩は言っていた。まあ、元が若干オカルト信者入っている先輩の言っていることなので本当に信用できない。いやマジで。

 

 まあ、それはともかくとして、とりあえず手錠は外してもらえた。よかった。結構今の状況で手錠は洒落にならない。身動きが取れないといざと言う時に困る。

 

「・・・とにかく、デュエルしてくれないか?」

 

「理由は?」

 

「君を見極める。」

 

「なぜ?」

 

「・・・今は言えない。」

 

 ・・・普通なら、ここで断る。というか、メリットがない。

 

 

 だけど、なんでか。

 

 

 俺はこの人から、逃げ出してはいけない。そんな気がした。

 

 

 

「・・・10分。」

 

 向こうは、俺がこんなことを言い出したのを予想してなかったのだろう。酷く驚いた様子だった。

 

「10分だけ。それなら付き合う。」

 

「・・・感謝する。」

 

 そう言って、俺たちは向き合った。

 

 正直、余裕はない。時間的にも、精神的にも。今、俺の頭は連れ去られた友人のことで一杯だし、セレナを一刻も早く捕まえて融合次元に飛んでいきたい。

 

 だけど、ココだけはきっと避けて通れない。

 

 その予感は、実際当たっていたのだと思う。

 

 後になって言えることだが、このデュエルは柊菊にとって、間違いなく転機だった。

 

   ◇

 

「そんな・・・。」

 

 私、グレースはただただ、呆然と立ち尽くしていた。

 

 圧倒的なまでの力。そして先行にもかかわらず私たちを一方的に屠るだけの展開。淡々と効果だけを説明していく彼の姿に、私は心を打たれていた。

 

 先行ワンキルデッキが今までになかったわけではない。むしろ、そういうデッキで私たちに対処しようとしてきた敵は多かった。だが、そういう敵は大抵が自分のデッキに信念を持たず、唯々特化されたデッキを持っただけで、おまけに慣れないデッキを使ったせいで失敗していく。私たちは先行ワンキルのデッキを使う輩を見ても、また自爆かと肩を落としていた。

 

 だが、今の相手は違う。恐らく、あのデッキはバーンを主軸には考えていない。そうでなければ攻撃力3000のモンスターを出したりすることはないだろう。あの時、手札を見たときに僅かに悩んでいた。恐らく、狙いは他にもあったはずだ。展開は他にもあったはずだ。私には分かる。

 

 そう思い、デュエルディスクのログから、彼が使ったカードを調べる。そこで彼の狙いに行きついた。

 

 バスター・ガンダイル。破壊されたときに方界カードを手札に加えるカード。恐らく、本命はこれだ。3000の耐性持ちモンスターは早々突破できるようなものじゃない。おそらく、次のターンで破壊していたのはバスター・ガンダイルとダーク・ガネックスが限度だっただろう。あのまま行けば私たちのライフは200しか残らない。防御のことも考えると、破壊できるのはせいぜいがそのくらいだっただろう。私たちのデッキであれを倒しえるカードが入っていないわけではないが、すぐに対処できるものはない。

 

 私たちは、どうあがいても負けていた。その事実に行きついた瞬間、私の中の何かが弾けた。

 

「ッフフフフ。」

 

「ど、どうしたグレース。」

 

 やだ、何言っているの姉さん。わたしは普通よ?

 

そう、普通に、あの人のデュエルを見たくなっただけ。

 

あの人のデュエルを研究したくなっただけ。

 

あの人のデュエルを壊したくなっただけ。

 

「ねえ、姉さん。」

 

「な、なんだ?それよりも今のお前の顔、凄いことになってるぞ?」

 

 やだ、女の子に失礼しちゃう。姉さんも女の子なんだけど、たまにデリカシーがないのが難点よね。あと胸・・・は私も無かった。なんだかショック受けたなぁ、自分の言葉に。

 

 いや、そんなことはどうでもいいの。重要なのは。

 

「配属先って、申請したら変えられるのよね?」

 

「あ、ああ。直談判すれば変えられる・・・とは思う。」

 

「なら、こうしない?」

 

 私は、思い切ってその提案をすることにした。

 

「配属先、対スタンダード部隊に変えてもらおうよ。あのデュエリストに、目のもの言わせなきゃなんだか気が済まないわ。」

 

 多分、これで私の目的は達成できる。あのデュエリストに、後悔させてやる。

 

 待っていて、柊菊。

 

 私が、今から貴方を壊しに行きます。

 

「・・・ああ、これ、ダメな奴だ。」

 

 ほんと、姉さんは失礼ね。

 

 

   ◇

 

 妹が壊れた。まあ、いつものことではあるのだが。

 

 だが、あんなデュエルで満足しろと言うのも無理な話ではあったのかもしれない。妹は、デュエルに飢えている。自分を楽しませてくれる相手を、常に探している。

 

 そんな妹がようやく満足できるかもしれないと思った相手に、ターンを回されることなく終わってしまった。どんな気持ちだっただろう。どんな思いだっただろう。妹が、柊菊の資料と映像を見せられた時、どれだけ嬉しそうな表情だったのかを私は知っている。どれだけ今回のハンティングを待ち望んだのかを知っている。

 

 あれはいつだったか。仲のいい友人だった男に、妹を評して狂化スキルEXのバーサーカーだ、なんて言われたことを思い出した。

 

「ねえ、姉さん。」

 

「な、なんだ?それよりも今のお前の顔、凄いことになってるぞ?」

 

 多分、アカデミアで彼女を慕っている(中には本気で好きな奴もいた)奴には見せられない。それくらいには色気に満ちていて、そして狂気に満ちている。これは本当に私が知っているグレースなのだろうか。

 

「配属先って、申請したら変えられるのよね?」

 

「あ、ああ。直談判すれば変えられる・・・とは思う。」

 

 その先の言葉を、私は知っている。妹は間違いなく彼を追いかける。覇気のない、だがそれでいて矛盾するその強さを追いかけるのだろう。

 

「なら、こうしない?配属先、対スタンダード部隊に変えてもらおうよ。あのデュエリストに、目のもの言わせなきゃなんだか気が済まないわ。」

 

 許可を取ったのは私たちが二人一組(ツーマンセル)で動くデュエリストだからだろう。だが、こうなった彼女は間違いなく一人だろうが動こうとする。そういうやつなのだ、グレース・タイラーと言う人間は。

 

 だが、私にも気になったことがある。グレースは覚えていないかもしれないが、横にいたあの男。

 

 デッキの内容を私は見ることが出来なかった。かろうじて男と言うのは分かったが、ローブを着ていてその顔を見ることは出来なかった。

 

 だが、それでもなんだか懐かしい雰囲気があった。

 

 もしこの勘が正しいのならば、私は、あの男と戦わなくてはならない。

 

 あの裏切り者と、戦わなければならない。

 

 それが、裏切り者に対する、友人としての私の餞になることを祈って。

 

「グレース。」

 

「なあに?姉さん。」

 

 その時、デュエルディスクから光があふれだす。強制帰還システムが遅れながらも作動した。恐らく、あの最後の攻撃の時に僅かに機械がオーバーヒートを起こしたのだろう。

 

 デュエルディスクからはわずかに煙が出ている。・・・今更ながらよく生きてたな、私たち。

 

「                   」

 

 転移されながらも伝えたその言葉に。

 

 妹は、最高の笑顔で答えた。

 

 




 めっちゃ短くてごめんなさい。つか、最近ストーリー思いつかないんです。プロットとか作り直すべきなのかな?

 それから、方界デッキなんですが殆ど使ったことがないので効果処理間違ってたらゴペンなさい。このネタが分かった人は多分作者とほぼ同じ世代。分からない人はコロコロの漫画なので調べてみてください。

 そして、グレースさんまさかのバーサーカーなりぃ。どうしてこうなった。ヤンデレの末に転身火生三昧とか言い出さないことを祈る。


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第9話

 パズドラとFGOが面白い。どんなに面白いかって?
 そうだなあ、少なくとも勉強の休憩時間を全部それに当てるくらいには面白いかな?
 何が言いたいかって?それはねぇ。

 遅れて申し訳ありませんでした(土下座)。


 

 気が付いたら、妹に似た女に背負われて、戦場を駆け抜けていた。

 

 紫雲院(アカデミア)に負けて、カードにされる直前、どうやらこの少女に助けられたらしい。半分意識がもうろうとする中、彼女に背負われて逃げる中でようやく意識が回復してきた。

 

 以前にも会った妹に似た女(ユートは柚子と呼んでいた)とは、顔つきや輪郭、服装は似ていたが髪の色が違う。

 

 背負われながら聞いたが、どうやら彼女は融合次元の人間らしい。それを聞いて、なんだか妹に裏切られたような、そんな不思議な感覚が胸の内をえぐった。

 

「とりあえず、ここから出る。私にもいろいろ聞きたいことがあるんだからな!」

 

 男勝りなそのセリフに、どう考えても真反対な性格の妹の影がちらつく。どうやら、この融合次元の少女の存在は俺にとって相当、胃にきていたらしい。あの紫雲院とのデュエルで追った怪我ではなく、胃袋や心臓が締め付けられていく感覚がある。

 

 だが、どうやらそういう訳にはいかないようだ。追ってきたのだろう、後方から紫雲院の気配がやってきている。それだけではなく、オベリスクフォースの連中もやってきていた。先ほど赤馬零児の部下である、日影と月影が時間稼ぎのために殿を引き受けたが、どうやらそれも突破されてしまったらしい。どちらにしろ、俺たち二人がここから逃げ切るのは不可能だ。

 

 ・・・一人なら、逃げ切れるか。

 

 片方が、殿を務める。そうすれば、共倒れは防げるだろう。となれば、誰がそれをやるか。

 

 彼女に任せる?無理だ。少なくとも俺にそんなことは出来ない。体力的にも、心情的にも。なら、俺がここで奴らを食い止める。 

 

 俺を置いていけ、そう言おうとした瞬間、後方から凄い音が聞こえてきた。

 

 おそらく、バイクの駆動音だろうそれは、一直線にこちらに向かってくるのが分かる。敵か、とも思ったが、今までアカデミアがバイクを使っているのを見たのは一度だけだった。だが、音が違う。奴が使っていた、どことなくハイテク染みた音ではなく、この音はもっと古い、近所に住んでいた兄貴分が使っていた聞きなれた音に近い。

 

 果たして、それはバイクだった。それも、どこか見た覚えのあるバイクだった。

 

 この世界、スタンダード次元に来てからバイクなど数えるほどしか見ていない。だが、あのバイクは最も印象に残っている。

 

 あの夜、対峙した男の傍らにあったバイク。あれと同じと言うことは、バイクに乗っているあの男は。

 

「・・・乗れ!この際3人乗りでもいい!」

 

 その男の声を聴いた瞬間、確信した。あの男だ。

 

 融合とエクシーズ、それらを難なく使いこなし、俺を追い詰めたあの男。LDS狩りの中、勝てなかった唯一の男。名前の知らない、あの男だ。

 

 ・・・なぜか、隣の少女は彼の声を聴いた瞬間、抑えていた震えが止まらないといった感じにおびえだし、涙目になった。思わず彼から彼女を庇うように前に出たが、そうした自分にもっと驚いた。どうやらこの少女を、俺は妹と重ねてみていたらしいことに気が付いた。

 

「どうした、さっさと乗ってくれ!」

 

「・・・そうはいかない。」

 

 ああ、そういう訳にはいかない。どうやら、バイクの方に気を取られすぎたらしく、俺たちの周りには既にオベリスク・フォースに囲まれていた。ざっと見ても十人。俺たちを逃がさない気なのだろう。

 

「・・・なら仕方がないな。」

 

 そう言って、奴はヘルメットを脱ぎ捨て俺に投げつける。さらに荷台にあった少し小さいヘルメットを、少女に被せる。

 

「君たちはそれに乗って逃げなさい。こんな奴らは俺一人で十分だ。」

 

「なッ?!」

 

 その言葉に、最も強く反応したのは少女だった。融合次元の、オベリスクフォースの実力をよく知っているのだろう。そして、これだけ囲まれた状況なら、一人では通常勝ち目がないことも察していたはずだ。

 

「・・・カードにでもなる気か?」

 

 思わずそう尋ねたが、サッサと行け、と言われる始末。だが、誰かをおいて俺が戦場を離れるわけにはいかないというと、困った顔をして、切り返した。

 

「だったら、その少女を安全な場所に送ってから、戻ってくれ。この先に、月影君がいる。それに・・・。可哀想に、震えてるじゃないか。」

 

 手をひらひらとさせながら、強者の余裕を見せつけるかのように奴は言った。

 

 ・・・その震える(怯えてる)対象は間違いなく目の前の人物()なのだが、それには気づかないのだろうか。

 

「まあ、別に戻ってこなくても構わない。今からやるのはただの憂さ晴らしなんだから。」

 

「憂さ晴らし?」

 

 憂さ晴らしとは、いったい何があったのだろうか。その疑問が顔に出ていたのだろう、奴は続けた。

 

「なあに、ちょっとデュエルで久々に酷い負け方をして、おまけにあんな言い草をされて、ちょっとイライラしているだけですよーだ。」

 

 デュエルで、負けた?

 

 俺は、その言葉を理解し、咀嚼するのに数秒かかった。到底、信じられない。あの時、あれほどのデュエルをした男が?一体、敵にはどんな化け物がいるのだろうか。

 

 その言葉に驚愕しているうちに、奴は俺たちから離れていく。そして、まるでここが舞台であるかのように、喜劇的に、叫んだ。

 

「お待たせしました!オベリスクフォースの皆様!今宵、と言ってももう朝ですがそれはご愛敬!今から行われるのは、私、柊菊のちょっとした憂さ晴らし!このデュエルは!貴方たちにターンが回ることなく終わるでしょう!」

 

 その言葉に、オベリスクフォースはディスクを構え。

 

 奴は、柊菊はデッキをセットし、

 

 デュエルは、1分とかからずに終了した。

 

 「俺は王家の神殿を発動し、手札の方界カードを見せて、クリムゾンノヴァの効果で特殊召喚する。カードを一枚伏せてターンエンド。」

 

 クリムゾン・ノヴァ。確か、随分と前のカードだったか。強力な効果を持つ代わりに、エンドフェイズに互いのプレイヤーに3000のダメージを与えるカード。確かに強力だが、これではダメだ。

 

 アカデミアは古代の機械猟犬を使う。もし、あのカードを2体召喚されればそれだけでライフが消し飛んでしまう。ノヴァは、『互いに』ダメージを与える。強大な力にはデメリットが生じるとはまさにこのことだ。相手にターンを回せば、ライフは1000。この時点で猟犬のいいカモだ。

 

 だが、あのカード。俺の予想が正しければ・・・。

 

「クリムゾンノヴァの効果が発動する。全員に3000ポイントのダメージ!」

 

 このタイミングだ。相手には妨害札はない。エフェクト・ヴェーラーだったか。スタンダードの人間が使っていたあのカードがあれば話は別だが。・・・いや、今はエンドフェイズだ。このタイミングでは、恐らくどうやってもこのカードは止められないだろう。

 

「王家の神殿の効果で、セットしたターンに罠カードを発動する!」

 

 やはり、と言うべきか。発動したカードがソリッドヴィジョンとなり、奴の手元に、一丁の銃が現れる。それをアカデミア達に向けたと同時に、何かのエネルギーが収縮していく。銃口が、赤く光った。

 

「地獄の扉越し銃の効果で、俺が受けるバーンダメージを、相手に押し付ける。」

 

 メギドラオンでございます、と奴は嘯いた。それと同時に、目の前は閃光で覆いつくされ、俺の意識は、そこでいったん途切れることとなる。

 

 ただ、一つだけ思ったのは。

 

 もしかして、この前のデュエルは、本気じゃなかったのかという疑惑だった。

 

 

   ◇

 

 

 間一髪、セレナ(と、ついでに黒咲)の保護に成功しました。ここまで、全速力でバイクを走らせた俺を褒めてほしい。

 

 心なしかセレナは震えているし、黒咲はぐったりしてるけど、ミッションは無事成功しているわけで。

 

 まあ、これでいいだろうと思いながら今絶賛逃亡中でございます。

 

 え?誰からって?そりゃあ・・・。

 

「待てェ!」

 

「そのバイク、トマレェ!」

 

「警察です!そこのバイク、止まりなさい!」

 

 絶賛、警察に追われています。

 

 いや、何とかアクションデュエルの範囲外に抜けたのはいいけど、其処の関所の警備員さんに通報されて、なんかどっかの犯人みたいな扱いになっています。

 

 いや、仕方ないんだけどね。だってはたから見たらバイクに、俺、黒咲(ぐったりしている)、セレナ(怯えてる)の3人乗りで乗っている状態。まあ、セレナはともかく、黒崎さんはノーヘルで傍から見ても死にかけてる状態で、通報されない方がおかしいの理解している。

 

 セレナはとりあえず柚子や凪流を乗せる時に使う予備を使わせたからいいんだけど、流石に黒咲さんの分はなかったし緊急事態だから合間に挟む形で乗せたのが悪かった。黒咲さんの長いコートがタイヤに巻き込まれないか心配している場合じゃなかった。

 

 ・・・さて、仕方ないからアクションデュエルのところまで戻るべきなのだろうか。

 

 そろそろ周りから奴をデュエルで拘束しろ!なんて発言が聞こえてきた。どこまで行ってもデュエルで構築されているのがこの世界。でも、いったいDホイールのないこのスタンダードでどうやってデュエルで拘束するのだろうか。

 

 ああ、サイレンが周りから聞こえてくる。間違いなく俺を取り押さえるためだろう。どうやら俺のデュエル人生はここでおしまいらしい。交通違反で捕まってプロを追いやられたとかかっこ悪すぎて笑えねぇ。いや、舞網市では絶賛スタンダード対融合の戦争が行われていて、プロとかどうこう言ってる場合ではないのだけど。

 

「ん?」

 

 ふと、気になって舞網市の方を見ると、すでにデュエルフィールドが消滅していた。どうやら、大会は終了したらしい。

 

 大会の終了。それは、融合次元の兵士たちが撤退していったということ。もう、大会を続ける必要はないのだろう。そうでなければあのダメージが実体化するフィールドを解除する必要はないわけだ。

 

「・・・戻るか。」

 

 このままいても警察のご厄介になるだけである。かつ丼の気分ではないので、出来れば警察の厄介になることは遠慮したいのだ、世間体的にも。

 

 ハンドルを切って、舞網市に急ぐ。急に曲がったせいか後ろの方から「グェ」とカエルがつぶれたような声がしたが気のせいだろう。俺は見ていない。黒咲さんが胃酸を吐きながら半分横ばいになりかけてセレナに支えられているところなんて見ていない。少なくとも、俺の運転の所為ではない。きっとそうだ。

 

「おい!頼むから少しスピードを下げてくれ!こいつが、こいつがやばい!何がやばいって吐きながら進んでるから道に吐しゃ物の道が出来てる!」

 

「・・・。」

 

 後ろでセレナが叫んでいるが、風の音とヘルメットの所為でよく聞こえない。そんな気がする。

 

「顔色がやばい!死ぬ!このままだとこいつが死んでしまうからさっさと緩めろ運転を!あと私も吐きそうだ!こんなのりものははじめてなんだ!」

 

 それはまずい、吐かれては困る。ので、なるべくスピードを早めて搭乗時間を少なくしようと決意した。スピードを上げる。

 

「今ギュイン!っていわなかったか?!すぴーどをあげるな!吐くぞ!わたしが!・・・おうぇ。」

 

 大丈夫、みんなそう言って吐かないから。凪流も柚子も吐かなかった。まあ、後ろに乗せてくれとも頼まれなくなったが。

 

 だけどまあ、こんな風に心の中でふざけていられたのも、あと少しかもしれない。

 

 この先の原作の展開は知らないが、いいことなんて起こらない。

 

 きっと、悲劇的なことや、絶望的なことがたくさん起こる。せめて、柚子たちを守れるようにはしないと。そうでなくても、あいつらが巻き込まれないようにしないと。

 

 『遊戯王ではよくあること』と言う格言を思い出しながら、何となく、そう思った。

 

 

      ◇

 

 朝焼けの中、消えていくソリッドヴィジョンを眺めながら、男は黄昏ていた。

 

 マグマがコンクリートに、氷山がビルやマンションに変わっていく。光の粒となって空へ登っていくその幻想的な風景は、男に感動をもたらした。

 

「綺麗だな、感動的だ。カメラがないのが悔やまれるよ。まったく、アカデミア製のディスクってのはどうしてこういうところだけ不便なんだろう。カード化なんて技術いらないから、カメラとかアプリとか、そういうところに容量を使ってほしいね。」

 

 そう言いながら、彼は足元にいる、気絶したアカデミア兵を次々とカード化させていく。中には命乞いをする兵士もいたようだが、彼の心は、まったく別のことで埋められていた。

 

 周りの全員をカード化させた男は、「妹にも見せたかったな」と呟く。

 

 男の思考回路は、ただ一人の人物の幸福を願って出来ている。男が感動したものは、その少女に見せたいと一番に思うくらいには、彼は兄であり変態(シスコン)であった。

 

「今頃、セレナはどうしてるかな。」

 

 男は、それが気がかりだった。アカデミアに教育された、世間を知らない少女。彼女がこれからどうしていくのかだけが、男の行動原理なのだからなおさらだ。

 

「大丈夫かなぁ。変な奴に挑みかかってないかなぁ?あいつ、昔から勝気だし。」

 

 男は彼女のお転婆の尻拭いをしていたころを思い出しながら、少女の身を案じる。だが、その点で言うなら、すでに手遅れと言うべきだろう。少し前に彼女はとある男につかみかかり、『PSYフレームスピリット~八咫烏仁王立ちを添えて~』なんて言う、ふざけてるとしか思えない名をつけられたデッキの面倒なロックを食らって精神的に追い詰められていた。

 

 幸い、お目付け役のバレットがそのあたりを『もの忘れ』で人為的に消し飛ばしたが、ただいま絶賛バイクによる乗り物酔いとそれに重なる胃痛(トラウマ(柊菊)が目の前によるもの)で記憶が思い出しかけている。彼女の胃と思考はズタズタだった。

 

「まあ、零児君もいるし、彼もいる。あの実力なら、セレナを守ってくれるだろう。約束もできたしね。」

 

 その「彼」が柊菊を指すのなら、間違いなく人選ミスである。トラウマそのものに護衛されるというのはいささかどころではない人選ミスである。

 

 だが、男はそれを知らないので、安心している。きっと、セレナがそこにいたのなら「止めてくれ!」と叫んだことだろう。

 

「いや、でもやっぱり不安だ。」

 

 前言を撤回しだす男。彼の声は、悲痛な叫びのようだ。

 

「どうして俺はあそこにいないんだ。ック!セレナの身を守れないなんて兄失格だ!」

 

 変態である。まごうことなき変態(シスコン)である。当人に言わせれば、変態と言う名の紳士だよ!とどこぞの変態熊と同じことを言いそうだが。

 

「・・・まあ、仕方ない。ほんっとうに仕方ないけど、俺にはやることがあるからね。」

 

 「セレナ、俺がいないからって寂しくならないかな?ああ、今すぐ会いに行きたい!やっぱり一度会っておくべきだったか?でも今会う訳には・・・。」なんて葛藤する変態。

 

 彼にとって幸いなのは、ここはビルの屋上で誰もおらず、なおかつ住人の殆どが大会会場であるスタジアムにいることだった。誰かいれば間違いなく「おまわりさん、こっちです」と言わんばかりに警察への通報があっただろう。

 

「それにしても、『スタンダードの俺』は随分と変な奴だったなぁ。『エクシーズの俺』も『シンクロの俺』も大概な気がするけれど。まったく、どこの『俺』もなんであんなにキャラが濃いのかねぇ。」

 

 ほかの誰よりも、貴方のキャラが濃いですと突っ込むことはない。お前よりキャラが濃いやつがいてたまるか、と言う意見もない。残念なことに、周りは無人なのである。本当に、残念である。

 

「『スタンダードの俺』か。」

 

 男は数分前のデュエルを思い出す。いい試合だった。一進一退、どちらが勝ってもおかしくない試合。だからこそ、男は不満だった。

 

「いやぁ、それにしても有意義だった。久しぶりに熱くなってしまったよ。」

 

 その言葉の割に、どこか不満げな言い方だった。

 

「流石は『俺』だ。だけど、あれはいただけない。」

 

 その発言は、間違いなく怒りを帯びている。

 

「まったく、あんな『誰かを模したデッキ』で勝てるなんて、少し甘いというほかないね。リアリストとしてならともかく、デュエリストとしては最低だ。全力で来いって言ったんだから『自分のデッキ』で挑むべきだろうに。」

 

 それなら結果は変わったかもしれないのになぁ、なんて呟いた彼は、そこではたと気が付いた。

 

「ん?そうなるとあれか?俺はあんな半端野郎にセレナを預けることになるのか?!ダメだ!やっぱり俺がセレナを守らなくては!あ、でもやらなきゃいけないことがあるし、やっぱり誰かに預けないと・・・。そうなると信用できるラインの実力はあいつになるし・・・。」

 

 葛藤する(バカ)。まあ、溺愛する妹を預けないといけない彼からすれば割りと仕方のないことかもしれないが。

 

「まあ、セレナは任せた。ほんっとうに仕方ないけどセレナは任せた。

 

 ・・・『俺達』の目的は一緒なんだから、頑張ってくれよ。」

 

 頼むよ、柊菊()。代わりに俺はお前の妹を保護してやる。

 

 そう言って、デュエルディスクを起動させる。画面には《Obelisk Force》と書かれていたが、それの下には《Resistance》とも書かれていた。迷わず《Obelisk Force》を選択する。

 

 その中には、いくつかの項目が並んでいた。《Dimension Move》と書かれた欄の《Synchro》を押す。すると、男の体が光に包まれた。

 

 そうして、彼はこの次元から姿を消す。

 

 残されたのは、風に吹かれながら宙を彷徨う、アカデミア兵のカードだけだった。

 

 

 




 


 今回の話
  セレナ「柊菊怖い。バイク怖い。」
  
  黒咲「本気じゃなかったのか(落胆)」

  菊(某エレベーターガール風味)「スティーラーは死んだし、変な奴には負けたし最悪。ちょっとアカデミア、サンドバックになれよ」

  ???「妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹妹。
      セレナセレナセレナセレナセレナセレナセレナセレナセレナ。」


 最近のちょっとした自慢

  FGO、アルジュナと嫁セイバーと槍トリアが当たったこと。そのあとバイクに轢かれかけました。幸福感が一気に覚めました。

 最近の遊戯王

  kozmo、最高に楽しい。何が楽しいって、友人の帝とインフェルノイドを一方的になぶれるのが楽しい。まあ、ガチじゃないデュエルならいまだに沈黙シャドールと暗黒魔轟神と聖刻アドバンス軸謎デッキ使ってます。

 10月からの禁止制限についてコメント

 スティーラー、逝くなぁ!お前が死んだら誰がジャンドとカオスゴッデスを介護出来るんだ!

 ジェスター・コンフィ「オレオレ。」
 ダーク・バグ「仕方ねぇなぁ。」
 ドッペル「やってやんよぉ。」
 
 ・・・なんだろう、この物足りなさは。
 
 余談ですが、スティーラーは我々の心の中とこの小説では永遠に生き続けるでしょう。悪いのはΩなんだよ!Ω禁止は泣くけどね!




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第10話


 今回、インフェルニティのリベンジ回となりました。インフェルニティガンの制限を無視していますが、この小説の中では制限がかかっていないと思てください。

 それはそうと、ついにデュエルリンクス始まりましたね!作者は1時間で飽きました!・・・ぶっちゃけ、シャドバでエイラビショップやらテンポエルフやら超越ウィッチやらで楽しんでいる方が遥かに楽しかったり。次はアグロネクロ作りたいです。コントロールロイヤルは死ね。メアリーコントロールが貴様の所為で勝率微妙なんだよ・・・。

 


 

   ◇

 

 柚子が行方不明になったと聞かされた時、目の前が真っ白になった。

 

 素良とのデュエルがソリッドヴィジョンが掻き消えたことで中断され、後からやってきた赤馬零児にそれを伝えられた時、頭の中で柚子との思い出が一瞬でフラッシュバックする。お節介やきな柚子の顔、悲しんでいる時の柚子の顔、起こっている時の顔。小さい時から一緒にいたからだろうか、その記憶は際限なく頭の中を巡っていく。

 

「君たちは選ばれたのだ!アカデミアに対する槍、ランサーズとして!」

 

 赤馬零児のその言葉を聞き終わると同時に、不思議と思い出が頭の中で途切れた。思わず目の前の男に殴りかかる。

 

 いつもなら、こんな感情的になった時は権現坂が止めてくれるんだけれど、その権現坂も、話のインパクトで動けないのか、止めることはなかった。これ幸いと思いながら拳にスナップを効かせて殴りかかる。だが、その拳は他でもない赤馬零児に止められた。

 

 「悔しいでしょうねぇ。」と頭の中で声が反響する。その言葉は果たして赤馬零児の言葉だったのか、それとも自分のなかで生まれた都合のいい幻聴だったのかは頭に血が上った今では判断できない。だが、どちらにせよやることは変わらない。今は目の前のいけ好かないやつ(赤馬零児)を泣くまで殴り掛かるだけだ。

 

 もう一度殴りかかろうと体を乗り出した時、遠くからバイクの駆動音が聞こえてくる。昨今の技術は素晴らしく、音の小さいバイクが主流となっている中、排ガスをまき散らすマフラーの音がするバイクに乗っているのはよほどのもの好きくらいだろう。

 そして、俺はその余程のもの好きに心当たりがあった。

 

 やはりというべきか、その時代遅れになってしまったバイクに跨っていたのは行方不明になった柚子の兄である菊兄さん。その後ろでグロッキーになっているのは黒咲と・・・柚子?!

 

「・・・こんなバイクがあるのだな。まさか警察を振り切るとは・・・。」

 

「大丈夫かい、黒咲。」

 

「・・・多少吐いたが、問題ない。それよりも問題は。」

 

 そう言って、黒咲は柚子の方を見た。だが、柚子にしては若干様子が違う。服装は同じだけど・・・。

 

「・・・・・バイクとは吐瀉物製造兵器だったのだな。べんきょうになった・・・。」

 

「あの虚ろな目をした、セレナとかいう少女ではないか?」

 

 セレナ?やっぱり柚子じゃないのか?兄さんもどこか柚子によそよそしいのはそれが理由か。

 

「・・・体調悪かったのかな?」

 

「目をそらすな。」

 

「おうぇぇぇぇ。」

 

「あ、吐きそう。」

 

「流石にトイレに連れてってやれ。その内吐くぞ、あれは。」

 

「そうさせてもらうか。」

 

 か、可哀想に。新たな兄さんの被害者だ。あの運転は頭がおかしくて、なんで事故をしないのか不思議なレベルだと遊勝塾ではそれなりに定評がある。柚子はもう慣れたのか、吐きそうになったりあんな風に体調を崩したりすることはない。ただ、目が死ぬだけで。

 ああ、そういえば兄さんが免許を取ったと言って柚子を乗せた日はあんな感じになっていたっけ。塾長にこっぴどく叱られていた兄さんを見たのはあれが初めてだった。

 

「スピード抑えたのになぁ。ほら、大丈夫かい?トイレがあっちにあるから。ついていこうか?」

 

「・・・いや、大丈夫だ。ひとりでいける。」

 

「そう?なら行ってらっしゃい。」

 

 そう言って、菊兄さんはセレナと呼ばれた少女を近くのトイレに案内していった。菊兄さんの方はすぐに戻ってきた。

 

「何があったんだい?」

 

 と言うが、お前が言うな!と突っ込みそうになった。顔を引きつらせているから、きっと権現坂も赤馬零児も俺と同じことを思ったに違いない。

 

 全力で場の雰囲気をぶち壊したその兄さんに、だがしかし誰も言うことは出来ない。なんだかんだで突っ込みづらい。どこから突っ込んでいいやらわからない。

 

 そのボロボロになった体から突っ込んだらいいのだろうか、解説の仕事はどうしたと突っ込んだらいいのだろうか、セレナというあの柚子に似た生者はいったい何者なのかとか、なんでここにいるんだよとか、いろいろ突っ込みたいことがありすぎて何を聞いたらいいのか分からない!

 

「・・・とりあえず、この状況については俺から話します。」

 

 権現坂、勇者だ。勇者権現坂だ。あの雰囲気全部スルーして説明し始める。

 

 融合次元の兵士が攻めてきて、その中に素良がいたこと。素良と黒咲がどこかに行って、素良が連れてきたらしい融合次元の兵士とデュエルしたこと。一夜をあかして柚子を探しに行ったけど見つからず、赤馬零児の話では柚子は行方不明になっていること。素良と再会して、デュエルをしたけど決着はつかないまま、つい先ほどどこかへ行ってしまったこと。

 

 長い二日間の内容を、権現坂は要所要所をとらえて説明していく。菊兄さんが柚子が行方不明になったと聞いたところで顔色が一瞬で変わったが、落ち着きを取り戻してゆっくりと話を聞いていた。

 

 だけど権現坂は、俺が融合次元の兵士を謎のドラゴン、『オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』を呼び出して倒したことは言わなかった。多分、権現坂もそこはうまくまとめることは出来なかったのだろう。それに、菊兄さんに伝えたくなかったのかもしれない。俺が、あのドラゴンでやったことが、今でも信じられないのだろう。なにより、俺自身も信じられない。だけど、エクストラデッキにカードが追加されている以上、本当なのだろう。

 

 すべての話を聞いた兄さんは、ただ、一言。

 

「そうか・・・大変だったね。」

 

 と、言って俺達二人を抱きしめた。

 

「よく帰ってきた。柚子については心配ない。俺が何とかする。」

 

 そういう兄さんに、きっと安心させるための言葉だったのだろうけれど、俺はそこに食い掛った。

 

「何とかするって、兄さん!何をするつもりなんだ!?」

 

 言ってから公開する。きっと、善意で言ってくれた言葉なのに、其処に食い掛っては、その気遣いを無用にしてしまうというのに。

 

「何とかするって言ったら、何とかするのさ。」

 

 でも、兄さんはそう言ってニコリと笑い、振り返って赤馬零児に頭を下げた。

 

「遊矢が殴りかかったそうだね。申し訳ない。」

 

 これには、赤馬零児も驚いたらしい。あの鉄仮面のような顔が驚愕に染まっていた。

 

「兄さん!どうして!」

 

「・・・冷静になれ、遊矢。悪いのは赤馬零児か?」

 

「そいつは柚子を見捨てた!柚子だけじゃない!他の参加者だって見捨てて・・・。」

 

「見捨ててなんかいないんだよ、遊矢。むしろ、よくやった方だ。」

 

「どうして?!」

 

 赤馬零児がデュエリスト達を見捨てたことには変わりがないだろうに、なんでそんなことを言い出したのか分からない。

 

「遊矢、今、この街にプロデュエリストが何人いるか知っているか?」

 

「そんなこと今関係ないだろ!」

 

「遊矢、頭をヒヤシンス。」

 

「なんのネタだよ一体!冗談なんか言ってられるか!」

 

 兄さんの一言が、余計に苛立たせる。いつもなら笑って流す冗談すらが不快に思えてきた。

 

「あ~、もう、仕方ないなぁ。一から説明してやるからちょっと待ってろ。」

 

 そう言って、菊兄さんは今や時代遅れになりつつある型の携帯を取り出した。

 

「はい、コレ。」

 

「うわぁ!っと。・・・なにこれ。」

 

 そう言って投げ渡したのは何かのPDF出力で出されたリストだった。あいうえお順に並ぶ名前の羅列。その中で、何十人ものの名前に二重線で名前を引かれて消されている。

 

「それが今、LDS所属のプロデュエリスト達。名前が消されているのは、止めた人たちだよ。」

 

 仮にもトッププロだからね、辞めたプロの情報まで入ってくるのさ、なんて言っているが、いまだに話は見えない。

 

「一か月ほど前か。LDS連続襲撃事件が発生した。犯人の実力は、LDSに所属するプロの実力をはるかにしのいでいると感じた彼らは、半数を残してフリーに転属していった。残ったプロも、遠征試合という名目でこの街に残るものはいなくなっていく。そんな中、今回の事件だ。LDSが対策しようがないのも仕方がない。」

 

「それでも保護に向かう人員位いるはずだ!」

 

「その人材として、ユースチームが派遣されたのくらい知ってるだろう?」

 

「それは・・・。」

 

 確かにそうだ。それを言われたら何も言えない。

 

「更に言うなら、柚子が攫われたとき、ユースチームはもう倒されていた。それは俺が確認している。」

 

「確認しているって・・・。」

 

「・・・ユースにはな、遊矢。俺がよく知っている奴らが居たんだ。」

 

 え?

 

「あいつらの実力は俺がよーく知っている。一人は刀堂大牙。優秀な剣闘獣使い。あいつのデュエルは、豪快でいて、そして堅実に盤面を整えていく。あいつとの長期戦は・・・俺はしたくないかな。実績として、過去にあったLDS内のプロ、生徒混合の試合で準優勝している。一人は光津香澄。植物族関係のカードを使うシンクロ、エクシーズ使い。あいつのデュエルはまだまだソリティアの使い方がなっていないけど、ある程度のレベルのプロなら倒せる。実際、過去の大会で何人もプロが出場する大会で優勝したこともある。あいつとデュエルするなら、妨害札を入れておかないと危険極まりない。一人は志島凪流。聖騎士使い。聖剣によるビート、耐性持ちアルトリウスを先行で立たせて耐久戦。そして安定したデッキ回転。あいつには一度負けたことがあってね、敵に回すと厄介ではある。」

 

 ・・・泣きそうになりながら、兄さんは一人一人のことを教えてくれた。あんな顔をした兄さんを、俺は初めて見た。

 

 兄さんが言っていた凪流さんについては知っていた。昔、柚子の家に行ったとき、菊兄さんと家の前で話していたことがある。随分と仲が良さそうだったので柚子と気になって聞いてみると、仲のいいクラスメイトの一人で、大切な弟子みたいなもの、って言っていた。珍しく照れていた様子に、柚子が調子に乗っていろいろ聞き出そうとしていたっけ。

 

 凪流さんは、大会でもトップクラスの実力を持っていることは知っている。去年、マイアミチャンピオンシップの試合がテレビで流れたとき、偶然にもその人の試合だった。前大会において、結果こそ出なかったけれど、それなりに注目されていたのを覚えている。兄さんの弟子だったというのは、後で知ったことだった。

 

「他にも、グレートモスを使うデュエリスト。ベン・ケイによるビートダウンを使うワンキル使い。帝使いの優勝候補もいたかな。・・・例外なく、アカデミア兵にやられていったよ。幸いにも、凪流と帝使い君、他、何名かは幸いにもカード化を免れたようだけれど。自分の身すら守れないデュエリストを巻き込んではいたが、LDSが出来る限りのことはやっていたわけだ。保護のためにないに等しい人材を引きずり出した訳だ。」

 

 だけれど、まだ納得がいかない。

 

「それでも・・・他に方法はあったはず・・・。そうだ!この街にいるプロに片っ端から声をかけていけば。」

 

「そんな思い付き、LDSが考えていないと思うかい?現在この街に滞在しているデュエリストは俺が知っているだけで10人。実際、何人かは声をかけたみたいだね。だけれど、誰も取り合わなかった。」

 

「どうして!」

 

「遊矢・・・。」

 

 いかにも残念そうに見られている。何が何だか分からない。

 

「・・・こんなSF染みた話、常識的に考えてそうそう信用できる話と思える?」

 

 ・・・。

 

 常識性を説かれた。間違いなく常識とかそういうものから外れかけている、頭のねじが一本外れているなんていわれる人に常識を説かれた!この人の常識は世間から外れているのに、その本人に常識を説かれるとは思っていなかった!なんだか悔しい。

 

 けど、確かに言われてみればそうだ。俺だって、ユートに会うまではまったく信じていなかったし、会ってからも事実が受け入れられずに黒咲に会おうとした。それを言われると仕方のないことかもしれない。

 

「LDSに責任はない。むしろ、彼らも被害者だ。・・・まあ、世間がそれで納得するとは思えないし、大方、今回の事件を利用して何かを考えているところだろうけどね。」

 

「・・・何かって?」

 

「・・・さあね。」

 

 ・・・何かを知っている。そんな風だった。

 

 だけれど、納得がいかない、整理がつかない気持ちが収まらない。心の底から、LDSを、許すことなんてできない。

 

「・・・整理がつかないんだろう?最もだ。零児君の言い方は、あまりにも被害者のことを考えてなさすぎる。不謹慎ではある。でもね、企業のトップとしてはああいうしかないんだよ。」

 

「でも!でも!」

 

「だからさ、遊矢。いい機会だからデュエルで決着をつけな。赤馬零児に、目に物言わせてやれ。」

 

「兄さんは、それで納得してるのかよ!柚子が行方不明になっても納得できるのかよ!」

 

「・・・納得はしてない。でも、LDSを責めても何も変わらないのは理解している。なら、LDSに取り入って、柚子を、友達を、融合次元から取り返す方が、まだ建設的じゃないか。だから、俺はここで赤馬零児とは事を構えない。俺の分までやって来い。」

 

 だけど、暴力はいけませんねぇ。そう言って言うだけ言った後、兄さんはセレナを迎えに行った。

 

「・・・榊遊矢。」

 

 赤馬零児がディスクを構える。言いたいことがあるならデュエルで語れと、奴の目が言っている。

 

 結果として、俺は負けた。

 

 でも、負けた後は不思議と前だけを向いていたように思う。

 

 

 ・・・待っていてくれ、柚子。今は赤馬零児に負けるような俺だけど、きっとお前を取り返しに行くから。

 

 

 

 

 

    ◇

 

 

 赤馬零児と榊遊矢のデュエルが終わって、その1時間後。

 

 LDS、その社長室の一室で、菊と赤馬零児は今後のランサーズと、柊柚子の安否について話していた。

 

「・・・じゃあ、柚子は融合次元にはいないんだ。」

 

「ええ。この動画で、妹さんはシンクロ次元の人間と共にどこかに消えている。その後、他の場所では彼女の姿を見受けられないことから推察するに、シンクロ次元に行っている線が濃厚です。」

 

 「ふぅん、そうか。」と言いながらも、菊は心底安堵したようだった。無理もない、と零児は思う。大方敵ではないシンクロ次元の人間と居る方が、融合次元に連れ去られたということよりも状況的にまだましだ、とでも考えたのだろう。

 

 そしてこのことは赤馬零児にとってもうれしい誤算だった。今、この段階で菊が感情的になって、ランサーズから抜けられることは、こちらにとって大きな痛手になる。LDSにとって、彼は重要な広告塔(客寄せパンダ)になりえるのだ。

 

 プロでも屈指の実力者が、戦争に第一線として活躍する。となれば、彼のファンである実力者や、彼の縁者、彼と親しいプロデュエリスト。そして何よりインダストリアル・イリュージョン社にも協力が要請できるかもしれない。

 

 更に言うなら、世間にこちらが正義である、大義はこちらにある、とアピールしやすくもなるのだ。レオコーポレーションの人間ではない、第三者が入るだけで、LDSだけが主張するSF染みた世迷い事から、現実味を帯びたアピールとなる。世間での重要度が一気に増すだろう。

 

 そのためにも零児は今、ここで彼と不和を作りたくはなかった。プロに入ってから何度も世話を焼いてもらった恩人と言うことを抜きにしてもだ。

 

「・・・まあ、理解したよ。そして、LDSとしては融合に攻め入るまでは俺はここにいてほしいわけだね。」

 

「ええ、シンクロ次元の人間に協力を得られ次第、融合次元に向かいます。なので、その時までこちらで万が一のための防衛に徹してほしいのです。」

 

 そう、その時まではここにいてもらう。マイアミチャンピオンシップの時の彼の行動から、もはや彼が融合の間者であるとも、シンクロの人間であるとも考えてはいない。もし間者ならセレナをここまで連れては来なかっただろう。

 

 『セレナの保護』を彼に頼んだのは、実はテストだった。彼が本当に間者であるのかどうか、見極めるための。その結果、彼は襲い掛かる敵集団をなぎ倒し、彼女をここまで連れてきた。

 

 これにより、零児の彼に対する疑いは無くなった・・・筈だった。

 

 彼の目の前に現れた謎の男。敵なのか、味方なのかはっきりしない男と、なぜか目の前の彼は親しげだった。それにより、またもや疑問が生まれる。せっかく払拭した疑惑が、ここにきてまた発生していた。

 

 なので、現状ここにいてもらう。融合次元への進行は、彼抜きで秘密裏に行う(・・・・・・・・・・)、というのが会長である零児の母と秘書の中島、そして零児の結論だった。

 

「・・・それについては留意した。それで、君の計画ではシンクロ次元の協力はどれくらいの期間で得られそう?」

 

 零児はこの質問に思わず舌打ちをしそうになった。あまりに交渉期間が長すぎれば、不審に思われるかもしれない。だが、短すぎれば、その間に融合次元に攻め入ることは出来ないだろう。

 

 今の菊は、零児含むランサーズにとって大きな不発弾だった。彼が本当にスパイだったのか、それとも味方なのか。あるいは、そのどれでもなかったのか。いつ爆発するかもわからない、爆発して何が出てくるのかもわからない。

 

 昔読んだ神話に、似たものがあったなと零児はふと思い出した。災いの女、パンドラが持っていたパンドラの箱。開けた中にはあらゆる災害が出てきたが、最後に残ったのは希望だった。

 

 果たして、彼を開けてもいいのか。そんな賭けを、零児は立場上取ることは出来ない。

 とりあえず、当初の予定である1ヶ月を半月ほど幅を伸ばして彼に伝えた。不確定だから何とも言えないが、と保険を添えて。

 

「・・・・・成程ねぇ。」

 

 思わず、背筋が凍った。まさか、今の嘘を見破られたのではないのではないかと錯覚させられた。

 

 そんなはずはない、と思いながらも疑念が拭えない。目の前の、ボロボロの人間一人が、とにかく不気味に思えてならない。

 

「まあ、いいや。それにしても、LDSも中々に強かだ。」

 

「え?」

 

「今日の、侵略戦争に関する演説だよ。」

 

 それは、先ほど流した融合次元の存在を知らせるために流した映像のことだろう。

 

 何が言いたいのだろうか、この人は。

 

「例えば、アカデミアの侵略を世間に発表したとする。今回に関しては試合撮影用の大量のカメラがあるから、信憑性に関してはいくらでも補填できるから、存在を疑われることはもうないだろう。

 

 と、なれば後は足りないものは人員。戦争をするにもなんにしても、まずは兵士と武器がいる。武器(カード)に関しては、いくらでも替えがきく。なら、あとは兵士だ。それも、良質な兵士。」

 

「待ってください、菊先輩!そんなことは!」

 

 無いわけではない、がしかし、それを認めてはどんな不和が起こるか分からない。それに、俺は。

 

 俺は、父みたいに兵士を使い捨てとも、思ったことはない。あくまで仲間として・・・。

 

 だが、彼は意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「零児君がそれをするとは思ってないよ。でも、君のお母さんはどうだろうね。」

 

「それは・・・。」

 

 ない、とは言えない。あの人が変わったかのように仕事に専念し、侵略のことが分かった時には、まるで目標(復讐の理由)が出来たかのように嬉々とした表情を浮かべていた。中島に言われるまで、自分が笑っていることに気付かなかったほどだ。

 

「リアルソリッドヴィジョンの開発で大きくなった企業、レオコーポレーション。その企業が成り立つ過程で、多くのデュエル関係の企業があの会社に(弱み)があるというのは有名な話だ。そんなレオコーポレーションが要請すれば、名のあるプロデュエリストが集まるだろう。」

 

 そんなことを言い出す菊先輩は、何故だかあの時の母を連想させた。目は爛々としていて、留まらない暴走特急を連想させる。

 

「正義がこちらにあるということを焦点に置いてスピーチをすることで、LDSはさらに塾生が増えるだろう。正義の使者(ヒーロー)を作り出すという名目の元、LDSは力を付けていくことが出来る。」

 

 ああ、母の策略は、やはりこの人にはバレていたのか。侮っていたとしか言えない。

 

「その、正義の使者に、『ペンデュラム』を操る遊矢、『LDS』トップである赤馬零児。そして・・・自分で言うのもなんだが、プロトップクラスの俺。これだけのネームバリューを持つデュエリストを集めたんだ。遊矢と俺に関しては、世間では海外でも注目されている有望株、企業側の注目は零児君。客寄せパンダにはもってこいだ。」

 

 そして、浅はかだった。時間がないとはいえ、この人を甘く見すぎていた。ここまでバレているとは思いもしなかった。ここまで直結的な表現をされるとは思ってもみなかったが。

 

 言葉を続ける先輩が、今度は一息置く。思わず、怒られると思って身構える。

 

「でもさぁ、名前を使うならせめて一言言ってよ!おかげでマネージャーと会長直々に怒られたんだからな?!」

 

 電話代がやばいんだけど?!と激昂する先輩に、今度は脱力させられる。確かに、今回の件は早急すぎて、インダストリアル・イリュージョン社相手にアポイントメントなどを取ることが出来なかった。仕方なしに実際に演説としては、プロとしての彼の名前は使わず、あくまで一市民の協力者として彼の名前は使ったが、やはりギリギリのラインだったのだろう。こちらにまで連絡は来ていないことから、あくまで菊さんの独断だった、ということにはなってはいるのだろうが・・・。

 

「まあ、いいや。インダストリアルイリュージョン社としての決定は、『当面の協力はするが、あくまでプロ個人の意見を尊重する』とのこと。協力者を積極的に送り込むことはしないけど、勧誘は自由。ただしプロの籍はこちらが持ってるから、どさくさに紛れて人員の補充は許さんぞってことだね。あとで社長と会長直々に、LDSの母体であるレオコーポレーションに連絡がいくんじゃないかな。」

 

 まあ、妥当なラインだろう。・・・だが、そんな重要なことをなぜそんなに軽く伝えるのだろうか。

 

「向こうも、俺が移籍しないか心配なんだねぇ。」

 

「菊先輩ほどのプロなら、不思議ではないかと思いますが。」

 

「・・・そう、かなぁ。」

 

 一気消沈したかのようなその声を、彼はよくする。

 

「・・・前から気になっていたんですが、貴方は自分を過小評価していませんか?」

 

 え?と彼は声を出した。そしてどこか戸惑っている。

 

「貴方の実力は、十分すぎるほどに強い。なのに、それを褒めるとなぜか何とも言えない表情をするので、少し気になりまして。」

 

「・・・ああ、そういうこと。」

 

 合点がいったとばかりに納得する。そして、少し考えた後、彼は口を開いた。

 

「・・・俺がプロでやったことなんか、ただのテンプレートなデッキ構築と、予習とメタだけだから。ある程度頭さえ回ればあんなデッキなんて誰でも回せる。」

 

「そんなことはありませんよ。」

 

「あるんだよ。」

 

 たかがデュエルだ。そういう彼の言葉は、プロとしての顔ではなく、先輩としての顔でもなく、彼の本音だった。

 

「デュエルなんて、たかがゲーム。プロだって、プロゲーマーの延長戦。そんな風に思ってたのになぁ。」

 

「・・・それは、俺も思っていました。2年前までは。」

 

「だよねぇ。・・・さっきなんか、よくわかんない男に説教かまされちゃったよ。」

 

「説教?」

 

 それは、あの映像に映っていた男のことだろうか。10分にも満たない時間、その中で先輩と男はデュエルをしていた。残念ながら、映像は途中で途絶えた(一時的に停電に陥った区域でもあったのでこれは仕方のないことだと諦めた)ので、その合間は観察することが出来なかったが、何かあったのだろうか。

 

「いやね?なんでも、『お前のデッキには、信念が宿っていない。そんな、相手を気遣っているデッキでは何もなすことは出来ない。お前が本当にやりたいデッキを使うべきだ。』とかなんとか。・・・まあ、趣味に合わない方界デッキを、使われたことを見抜かれたんだろうけど、なんだかムカつくなぁ。偉そうにそれだけ言ったら結果は見えてる、とか言って帰っちゃって。せっかく稀に見るいい勝負だったのに。」

 

 ・・・。

 

 その、内容に思わず納得していた。信念が宿らないデッキ。以前から彼のデュエルに感じていた違和感。デュエルをする時にたまに驚くくらい、苦々しい表情を浮かべることも。

 

 きっと、彼はデッキを信じていない(・・・・・・・・・・)のだ。デュエリストは普通、自分が作りあげたデッキを信じて、戦う。だからこそ、ピンチの時に逆転のカードを呼び寄せることがある。デッキを信じているから、どんな手札だって、展開することが出来る。それを楽しむのが、デュエルの本質だった。

 

 だけど、彼はそうではないのだ。数多のカードの中から最適化されたものだけを選び取り、それを組み立てることで無駄を無くしている。だが、それは言ってしまえばカードを信じたり、己の運に任せる、などということではない。完成されているのだから、ある程度何かを引いてもリカバリが効く。

 

 言ってしまえば、自分たちとは全く違うデッキの作り方。デュエルを楽しむのではなく、勝つために構築するデュエル。

 

 ああ、それは強いはずだ。なんせ、そこにあるのは自分のデッキではない、自分の意思もこだわりの欠片もないデッキ。勝つために洗練されたデッキなのだから。

 

「・・・俺には、その男が何を言いたいのか分かる気がします。」

 

「・・・本当に?俺にはさっぱり分かんない。」

 

 つまり、この人はデュエリストではなかった。この人は・・・。

 

 だが、それを証明するのにはまだ、何かが足りない。思わず、質問をぶつけてしまった。

 

「・・・貴方は、自分がデュエルをしていて楽しいと思ったことはありますか?」

 

「あるよ?遊矢や柚子、権ちゃん。それに、凪流や香澄、大牙とやってるときは最高に楽しいね。」

 

「そうではなくて、プロの試合の時です。その、今言ったメンバー以外と言い換えてもいい。」

 

「あるわけないじゃん。」

 

 仕事だよ?

 

 そう、言った。即答だった。そして同時に自分の考えが間違っていなかったことを知る。

 

「貴方は・・・。」

 

 思わず、感情的になってしまう。抑えろ、抑えろと念じても、内からあふれ出てくる。

 

「どうしたの?零児君。泣きそうな顔してるけど。」

 

「貴方は、デュエリスト失格です!」

 

 ぽかん、とした顔のこの人に、今だけは殴りかかりたくなる。

 

「デュエリストは、自分のカードを、デッキを、モンスターたちを信じて戦う!それなのに、完璧な相性だけで組まれた、ただただ強いデッキ?それだけならまだしも、それを欠片も信じずに戦う!そんなのはデュエリストじゃない!」

 

 そんなのは、そう、こう表現するべきだ。

 

「貴方は、ただのリアリストだ!」

 

 リアリスト。その言葉を聞いた瞬間、彼の顔が驚愕に染まる。知りたくはなかった。プロとして先輩と仰ぎ、一度は師事してもらったこともある。そんな人が、誰よりもデュエルが強い人が、誰よりもデュエルを楽しんでなかったのだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。だが、そんなことは関係ない。今だけは、彼の後輩として言いたいことを言わせてもらう。

 

「貴方のデュエルは、ただ、緻密に計算が練られただけの紙束に過ぎない!本当のデュエリストなら、強い弱いじゃなく、自分の好きなカードで強くあるべきだ!」

 

 そうだ。デュエリストなら守らなければならない、最初の一線。それが、この人にはない。

 

「答えてください、菊先輩!」

 

 胸倉をつかみ、顔を近づける。面食らったこの人に、言葉をぶつける。

 

「貴方はッ!私と最初にデュエルした時、楽しいと思いましたか?!」

 

 数秒、沈黙が来る。

 

「・・・楽しかったよ。」

 

「なら、あれは貴方のデッキでしたか?!」

 

 矢継ぎ早に質問をする。そうして、彼の本音を聞き出そうとした。そうすれば、きっと彼も答えてくれるだろうと思ったから。

 

「・・・ははは。」

 

 だけど、彼は乾いた笑いを吐き出した。

 

「・・・ふふふ。あは、ははははは。」

 

「何がおかしいんですか?!」

 

「・・・俺のデッキ?そんなわけないだろう。」

 

 やはり、そうだったのだ。彼のデッキを、彼の本当のデュエルを、俺は知らなかったのだ。

 

「あの時のデッキは、俺からすればネタの域にすぎないさ。ユベルに君は随分梃子摺っていたけれど、あんなのキラートマトが入るデッキで、コストとして少しレベルが高いモンスターが必要だったから入れただけのカードでしかなかった。」

 

「何を言って・・・。」

 

 あれが、ネタ?反射ダメージで返してくる、戦闘では破壊されない、効果破壊すれば次のユベルがやってくるのに?

 

「あのデッキは儀式デッキだった。儀式のキーパーツを揃えるまでの時間稼ぎ兼コスト。その程度のカードにどんだけ時間かけるんだよ。あの時は笑いそうだった。可笑しくって腹痛い。」

 

 ・・・あれが、コストでしかなかったというのか。あれより強い該当する儀式モンスター、一体切り札は何だったのか?

 

「ハンバーガー。」

 

 は?

 

「あれ、ハングリーバーガーデッキだった。」

 

 ハングリーバーガー。

 

 攻撃力2000、守備力1850。効果、なし。

 

 それのコストとしてあんなモンスターを採用しようとしたのか?

 

「観客に対する受け狙いさ。元々、あれは食材関連のカードを探している時にキラートマトを見つけて、それのリクルート範囲内でなおかつ一枚でバーガーが出せる程度に思っていたカードだった。手札に来てもコストにしてしまえばいい、程度のモンスター。・・・本当だよ?まあ、ガイウスデッキにあそこまで戦えたんだ。十分楽しめたと言っていいだろうね。」

 

「・・・なら、あのインフェルニティはどうなんです?!」

 

「俺はあれをインフェルニティなんて言わない。あのデュエルはインフェルニティの動きとは到底呼べないね。ミラージュも入ってない、ガンは1枚。ヘルウェイは2枚あったけど、俺が使うのはリベンジャー採用の方で、ビートルは趣味じゃなかった。あっちの方が安定感はあるはずなんだけど、不思議なことに事故ってしまったんだよねぇ。」

 

 あんなデュエル、インフェルニティ使いに失礼だ。ガンの使用制限もかかってないのにわざわざ一枚にしたら事故っちゃって。いっそ、ゴーズ抜かなくてよかった。その言い方に、思わずカチンとくる。

 

「・・・・。」

 

「納得がいかない?なら、インフェルニティ今あるからデュエルしようか?」

 

「え?」

 

「・・・あの時のペンデュラムスケール。あれ、バグでしょ?あのスケールが変わってなければ負けていたのかもしれないし、雪辱戦さ。・・・お望み通り、本気を見せてあげよう。」

 

 ・・・いいだろう。仮にもデュエリストだ。あそこまで言われて何も言い返せないのも癪だ。

 

「なに?ここではダメだったかい?なにか気に障るとか?」

 

 気にしている(ムカついている)のは貴方のその態度だ。場所は関係ない。

 

「そう、じゃあ始めようか。」

 

 だが、先輩はそんな毒をまったく気にせず、続きだとでも言わんばかりにディスクを構えた。

 

 出た目は3。菊先輩は4。先行は相手(先輩)から。

 

 そして、実質デュエルは先行で終わった。

 

「俺の先行。・・・手札から、増援を発動し、ダークグレファーを手札に加える。そしてそのまま召喚。チェーンは?」

 

「ないです。」

 

「では、ダーク・グレファーの効果を起動し、手札のヘルウェイ・パトロールを捨てる。デッキから闇属性モンスターを墓地に送りたい。」

 

 恐らく、エフェクトヴェーラーのようなカードを警戒していたのだろう。こちら側にアクションがあるか尋ねてくる。

 

「通します。」

 

 その言葉を聞いた先輩は、安心したような、それでいてがっかりしたような顔をした。

 

「なら、デッキからインフェルニティ・リベンジャーを墓地に落とす。手札断殺を打ちたい。」

 

「・・・いいでしょう。手札を2枚捨てます。」

 

「俺は手札を2枚捨てる。」

 

 捨てられたカードは・・・、まずいな。直感で判断できるほどに、見たくないカードだった。アレが来る(・・・・・)

 

「手札を1枚伏せる。ソウル・チャージを発動し、インフェルニティ・デーモンと、インフェルニティ・リベンジャーを蘇生する。特殊召喚したデーモンの効果、手札が0枚の時にインフェルニティカードを手札に加える。で、インフェルニティ・ミラージュを手札に加える。」

 

 前のデュエルの時にも出された、究極のシンクロモンスター、その一角。

 

「フィールド上の合計レベルは、9。グレファー、デーモン、リベンジャーでシンクロ。トリシューラ。零児君の墓地のアビス・ラグナロクと手札を1枚除外する。」

 

 ・・・やはり、出てきたか。残念ながら、妨害札(ヴェーラー)は手札にはない。なすすべなく消えていく2枚のカード。だが、このぐらいならまだリカバリが効く。

 

「そして、墓地のヘルウェイ・パトロールの効果で手札のインフェルニティ・ミラージュを特殊召喚。」

 

 インフェルニティの効果を、最大限発揮できる、ハンドレスの状態にあえて戻し、伏せていたカードを発動させた。

 

「伏せていたシンクロキャンセルを発動し、デーモン、リベンジャー、グレファーを蘇生。デーモン効果でインフェルニティ・ネクロマンサーを手札に加え、グレファーの効果でネクロを捨ててデッキからヘルウェイ・パトロールを墓地に落とす。」

 

 シンクロキャンセル。それは、シンクロモンスターをエクストラデッキに戻すことで、その素材になったモンスターをもう一度特殊召喚できるカード。滅多に使われないカードではあったが、場合によってはこのように素材になったモンスターの効果をもう一度発動できることが出来る。そしてなにより・・・。

 

「そして再度シンクロ召喚、トリシューラ。零児君の墓地のネクロスライムをゲームから除外して、手札も1枚除外する。」

 

  なにより、シンクロ召喚時の効果をもう一度発動できるのは何よりのメリットと言えるだろう。もう一度、絶対零度の龍が召喚される。これにより、墓地は無くなり、手札は3枚になった。

 

「ミラージュは手札が0枚の時にリリースすることで墓地のインフェルニティ2体を特殊召喚できる。デーモンとネクロマンサーを特殊召喚。」

 

 やはり、かなり強力な効果を内蔵していたようだ。これにより、またしてもデーモンの効果が発動する。

 

「デーモンの効果で、手札が0枚の時にサーチ、持ってくるのはインフェルニティ・ガン。ガンをセットしてネクロマンサーの効果。手札が0枚の時、墓地のインフェルニティを蘇生。対象はリベンジャー。」

 

 サーチしたけど、伏せればいいよね。みたいな軽いノリでまたハンドレスに戻る。今度はレベル8が出てくるらしい。

 

「特殊召喚したリベンジャーとネクロとデーモンでシンクロ。PSYフレームロード・Ω。」

 

 この瞬間、最大限に嫌な予感がした。あれだけは、早々に始末しなければならないという思いにとらわれる。

 

 背筋が凍る。体毛が逆立ち、逃げなければという思いに駆られていく。だが、どこにも逃げる余地はない。

 

「Ω効果、相手の手札一枚を次の俺のスタンバイフェイズまで一緒に除外する。」

 

 セレナとの闘いを見ていたから、あのモンスターの効果はよく知っている。だが、幸いにも仁王立ちは落ちていなかったらしい。なにより、早々に退場してくれたのはありがたい。ふう、と心を落ち着かせる。

 

 だが、それは地獄絵の始まり、ファンファーレに過ぎなかった。

 

「ガン発動。ガンを墓地に送ることで効果発動。インフェルニティを2体、蘇生できる。インフェルニティ・デーモン、ネクロマンサー。・・・ミラージュは墓地からの特殊召喚は出来ないからね、残念ながら。」

 

 以前のデュエルでも使われた、強力な蘇生魔法が芽吹き、またもやフィールドに2体、インフェルニティが揃う。・・・数秒前の嫌な予感はまだ終わっていなかったのだ。

 

「デーモン効果でガンサーチ。セットしてネクロ効果でリベンジャー蘇生。デーモン、ネクロ、リベンジャーでΩ。」

 

 まずい。

 

「Ω効果でその手札も除外。」

 

 まずいまずいまずい!

 

 だが、そんな心の声は空しく消えていくのみ。手札は、とうとう一枚にまで減ってしまった。だが、その手札も・・・。

 

「ガン発動。デーモン、ネクロ蘇生。デーモンでガンサーチ、セットしてネクロ効果リベンジャー。リベンジャー、デーモン、ネクロでΩ。」

 

 その最後の一枚も。先ほどと同じように、除外されるだけなのだろう。

 

「Ω効果で手札と除外。」

 

 ・・・手札が、無くなったな。

 

 だが、それでも地獄は終わらないのだ。

 

「ガン効果でリベンジャー、ネクロを蘇生。ネクロ効果でデーモン。デーモン効果で持ってくるのはミラージュ。デーモン、ネクロ、リベンジャーでシンクロ。ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン。」

 

 まだ、シンクロを呼び出すのか。もはや次のターン、Ωが戻ってくる時点でオーバーキルなのだが、それでは満足しないらしい。

 

「墓地の、ヘルウェイパトロールの効果を発動。除外して手札の悪魔を特殊召喚。ミラージュを特殊召喚。ミラージュ効果でデーモン、ネクロ蘇生。デーモン効果でデッキからインフェルニティ・バリアを手札に加える。バリアをセット。ネクロ効果でリベンジャー。デーモン、ネクロ、リベンジャーでシンクロ。」

 

 そして、何より不吉なカードが、目の前で召喚された。

 

「煉獄龍オーガドラグーン。」

 

 ・・・いまだに続く嫌な予感の正体は間違いなくコレ(・・)だろう。何か、嫌な力とでもいうような気を感じる。ただのソリッドヴィジョンのはずなのに、其処にはリアルソリッドヴィジョンを超える何かがあった。

 

「さらに、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果発動。墓地の闇属性、レベル6以下のモンスターを除外することで、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをそのモンスターと名前を同じにして、同じ効果を得る。」

 

 ・・・手札が無くなったから安心、ということではないらしい。墓地のモンスターを酷使し、再びあの悪魔が呼び寄せられた。

 

「俺は、ワンハンドレッドをインフェルニティ・ミラージュに変更し、ミラージュ扱いのワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをリリースすることでデーモン・ネクロを蘇生。デーモン効果でバリアを手札に加え、セットしネクロの効果で墓地のリベンジャーを蘇生し、シンクロ召喚。ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン。」

 

 おそらく、再び墓地に直行するであろうドラゴンが再びあらわれる。

 

「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果で墓地のミラージュを除外し、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをインフェルニティ・ミラージュにする。ミラージュ扱いのワンハンドレッド・アイ・ドラゴンをリリースして、デーモン、ネクロを蘇生。デーモンの効果でデッキから手札に加えるのはインフェルニティ・ブレイク。ブレイクをセット。ネクロ効果でリベンジャー蘇生して、シンクロ召喚。インフェルニティ・デス・ドラゴン。」

 

 再び現れたのは、不思議な形をした龍だった。だが、おそらくインフェルニティ、という名前から、何か手札が0の時限定の強力な効果を持っているとみていいだろう。

 

「これで、ターンエンド。・・・これで、満足したぜ。」

 

 そんだけ展開していればそりゃあ満足でしょうよ、という声をグッと飲み込み、現実逃避しかけたデュエルを再開させる。

 

「俺のターン、ドローします。」

 

 引いたのは、地獄門の契約書。デッキからDDモンスターを手札に加えることのできる優秀なカードだが・・・。

 

「地獄門の契約書を発動します。」

 

「オーガ・ドラグーンの効果、1ターンに一度、魔法、罠の効果を無効にして破壊する。」

 

「・・・・・。」

 

 黒咲とアカデミア(紫雲院素良)のデュエルで、『こんなのデュエルじゃない!』と大会で叫んでいた榊遊矢にこれだけは言いたい。そのセリフは今こそふさわしいと。

 

 これなら、まだX-セイバーによるハンデスの方がマシかもしれない。それくらいには全くリカバリが効かなかった。勝てると思っていた数分前の自分を殴りたい。

 

「・・・これなら、トリシュ3連打まではできたかな?やっぱりインフェルニティは難しい。トリシューラはやっぱり3枚積んだ方がいいね、うん。そうすると、やビートル積んだ方がいいのか?でも、ヘルウェイ対応してないしレベル2だからオーガ出しにくいし・・・。ブリュ経由させるか?でもそうなるとレベル6シンクロ入れなきゃならないからエクストラの枠がなぁ。」

 

 ちょっと何を言っているのか分からない。今ので全力じゃなかったら全力はいったい何なのか。

 

 ガンでデーモン蘇生してガンをサーチするのは、どう考えてもインチキだろう。

 

「そう思うだろう?だからあの時はガンを1枚しか入れていないタイプのデッキを使ったんだよ。慈悲だよ慈悲。」

 

 確かに、インチキ臭い。だけど、だからと言って、自分からデッキに制限を掛けたりするのはどうなのか。

 

「だって、そうでもしないと君たちとまともに戦えないから。」

 

 ・・・。

 

「今のデュエル、ダークグレファーにエフェクトヴェーラーを打っていたら俺はあそこまで展開することが出来なかった。手札断殺以降に握っていると仮定するなら、デーモンにヴェーラーを打っていたら、あそこまで展開されることはなかったし、幽鬼うさぎなら多分手札と墓地はもう少し残ったんじゃない?増殖するGなら、俺は手札を無闇に増やさないためにもターンを回さなきゃいけなかったし。」

 

「常に相手が手札誘発を持っているとは限らないでしょう。」

 

「でも、俺が求めるレベルはそのライン(・・・・・)だ。今回は、極端な例だけどね?俺が本当に使いたいデッキは、あれくらいに展開(満足)するデッキばっかりなんだよ。だけどそれを使うと、周りからなんて言われるかわかったもんじゃない。だから、使えない。」

 

「ですが、それではゲーム(遊び)として成立しないでしょう?そんなのは、デュエルじゃない。」

 

「デュエルだよ。カードとしてすでにデザインされていて、その範囲で使っているんだ。でも、使えば文句を言われる。だから俺は全力を出さない構築(・・・・・・・・・)にしているんだ。」

 

 でも。

 

 でも、そんなのは強者の傲慢だ。真剣にデュエルをしている相手に、失礼だとは思わないのか。

 

 そう言おうとして、続けられた言葉に何も言えなくなった。

 

「でもね、零児君。今みたいなデュエルを、みんなの前ですると、なんていわれるのか想像つくかい?」

 

「・・・。」

 

「外道って、そう呼ばれるのさ。」

 

 そこから話されたのは、彼がまだ中学生の時、榊遊矢が虐められていた時に自分の全力のデッキを使って追い返した後の話だった。

 

 虐めていた連中が、兄弟や友人を使って囃した噂。いや、噂と言うより事実なのだが、彼は一時期、人を叩き潰す外道デュエリストと呼ばれるようになった。

 

 自分は盤面を整え(楽しみ)、その後妨害して、相手に全力を出させる前に片付ける。あいつとやってもデュエルを楽しむことなんて出来ない。そんな風に噂をたてられ、彼は柊家にやってきた後に転校した先、その学校で孤立した。

 

 それだけならまだよかった。だけど、彼が庇った遊矢や柚子にまで飛び火し、孤立しかけたのだという。幸いにも、権現坂やいい友人に恵まれていた遊矢達や遊勝塾の被害は其処までではなかったのだが、だからと言ってその影響は無視できるものではなかった。

 その後、デュエルで全力を出すことは無くなった。全力を出せないから、デュエルに関する戦略を全て練り直した。

 

 その結果が、『軍師』と呼ばれる所以になったのだろう。相手のデッキを知り尽くして、妨害は最低限に。そしてある程度ターンをまたいでから止めを刺すようになった。彼はそう言った。

 

 ・・・多分。

 

 この人のデュエルは、俺達よりはるか高みにあったのだろう。だから、俺たちに、世間には、決して全力のデッキを使わなかった。そうしなければ、周囲と不和が生まれると知っていたから。

 

 だけど、その実力は決して隠せるものじゃなかった。手加減はしている。でも、手加減をしても勝ってしまう。態と負けようにも、デュエルの公式試合は後に公開されるとき、手札も映し出してしまう。変な負け方をすれば、周りから弾劾される。それはそれで不和が生まれると考えた。だから、デッキそのものを本当の実力の半分以下で構築するようになってしまったのだ、と彼は語った。

 

「俺だって、もっといろんなデッキを使いたい。でも、どれもダメなんだ。相手を殲滅するだけじゃない。後攻ワンキルが当たり前になる。そもそも俺にとって4000のライフは少なすぎるんだよ。」

 

「それは・・・。」

 

「・・・全力で相手をしたのは、さっき言ったメンバーだ。あいつら、ちゃんとまずい時に妨害してくるから手ごたえがあったし、遊矢達は何をしてくるか分からないから、三人とは別の意味で楽しめるし、何より俺の手の内を知っているからきちんと対処してくる。・・・まあ、遊矢達には本気っていうほど本気は出してないけれど。

 

 ・・・でも、今気づいたよ。確かに俺は全力でデュエルを楽しんだことなんて、ほとんどなかったのかもしれないね。」

 

 やっぱり、引退時かな?デュエルも。

 

 そういう先輩の目は、見たくもない現実に気付かされたような、そんな絶望感あふれる目だった。

 

 その目を見たとき、思った。もしかして、この人は。

 

「・・・もしかして、気付いていたんですか?」

 

「・・・まあ、ね。うっすらとだけど。」

 

 ああ、そうだったのだ。違和感の正体、そして矛盾。

 

 ・・・彼は、気付かないようにすることで、目をそらすことでデュエルを楽しんでいたかったのだ。

 

 周りと不和を作らない代わりに、自分のデュエルを、身勝手な自分を抑え込む。社会で生きる上で、それは仕方のないことだと諦めながらも、自身のやりたいことが出来ないから、楽しめない自分。そんな自分を、目をそらすことで抑え込み、自分はデュエルが好きなんだと思い込もうとしていたのだ。

 

「なあ、零児君。やっぱりゲームは趣味で終わらせておくだけでよかったんだよ。プロなんて碌なもんじゃない。」

 

 ・・・だから、こんな簡単なことも分からない。

 

 それは、その生き方は違うのだ。別に、そんなことをしなくてもいいということに気付いていない。

 

 そのことだけは、違うと伝えなければならない。プロとして、デュエリストとして、それだけは絶対に伝えねばならないのだ。

 

「別にいいじゃないですか、好きなようにやれば。」

 

「ハァ?」

 

 人の気も知らないで。そう、怒った眼をしている。

 

 ・・・でも、それは違うのだ。

 

「やりたいようにやる。遊びなんです、好きにやらないでどうします。」

 

「俺にとって、今のデュエルは仕事だ!遊びではできない!」

 

「元々、遊びのものを楽しまない!それこそがおかしいとは思わないんですか?!」

 

 う、と口を閉じる。そこに、ここぞとばかりに畳みかけた。

 

「貴方は、身勝手であるべきです。・・・もう少し、楽しんでもいいんですよ。だって、『やるときは真剣にやらなきゃ損。遊びも、仕事も、何もかも。』でしょう?」

 

 だって、これは。

 

「貴方が、プロに入るときに教えてくれた言葉です。」

 

 貴方が、プロになって最初に教えてくれたものなんだから。

 

 この人のことだから、深く考えずに言った言葉なのかもしれない。でも、それでもあの時の俺にはその言葉がとてもうれしかったのを覚えている。

 

 プロになった後、父の居所や何をしようとしているのかも判明し、俺は一時的にデュエルが出来なくなっていた。何をしても楽しくない無気力な状態に陥ったこともある。

 

 そんなときに何気に言われたこの言葉に、俺がどれだけ救われたかこの人は知らないだろう。だけど、それくらいこの言葉は俺にとって心に残る言葉だったのだ。

 

「『世の中には、幸も不幸もない。どう考えるかで、どうにでもなるものだ。』」

 

「え?」

 

「シェイクスピアの言葉さ。それを、俺風に解釈して、小中学生でもわかるようにと思って、ああ言ったんだ。。少しでも気が楽になるように、と思って言ったんだけど、俺が言われるとはつゆほども思っていなかったよ。」

 

 ・・・俺としては何気に言ったであろう一言を覚えていることに驚いている。正直なところ、悠々自適、悪く言えばどこかちゃらんぽらんなこの人のことだから忘れているのだと思い込んでいた。

 

 あと、この人がシェイクスピアを知っていたことにも少し驚きだった。

 

「・・・そうか、そうだな。『楽しまないと損』だった。今の今まですっかり忘れていたよ。」

 

 膝を手でパシパシと叩いて笑いだす先輩。

 

 でも、ようやく分かってくれたみたいだった。そう、どんなことだって、デュエルだって、心のどこかで楽しんでいないとダメなんだってことを・・・。

 

「じゃあ、もっと楽しい(エグイ)デッキを使うことにするよ!」

 

 よくなかった。ちっともよくなかった。

 

 綺麗に落ちがつくのはいいが、嫌な予感が満載する。

 

「え?だって楽しめって言ったのは零児君じゃないか。それってつまり、俺も満足して(楽しんで)いいってことだよね?」

 

 何かが違う。

 

「いやぁ、俺のデッキの展開力をサモサモキャットベルンベルンのレベルに落とすの凄い苦労してたんだよぉ。白黒ジャンドとか、シンクロダークみたいな展開をしても良かったんだけど、其処まで行くと流石に受けが悪くてさぁ。」

 

 サモサモキャットベルンベルン。前に先輩から聞いた、悪魔の呪文。サモンプリースト一枚と魔法カード2枚で出来る、簡単なワンキルの方法だった。ダーク・ダイブ・ボンバー1枚のスペックが破格なのだから2枚出せば確実に殺せるよね?とか言われたときは、何を言っているんだこの人とか思ったが、一度それをやられてから、その恐ろしさは十二分に知っている。そのレベルでも十分脅威な気がするのだが、どうやらまだあれは序の口だったらしい。割とやってられないレベルなのだが。

 

「あの時のジャンドだって、白黒入れた方が手札枚数安定するのに入れてなかったし、ライブラリアン2枚に抑えたりしてたし?全然満足できないよあんなのじゃ!

 ・・・いや、待てよ?ブリュ入るのならいっそフューチャーフュージョン入れて無限ループしても良かったんじゃね?彼岸パーツはどうだったかな?デスガイド制限かかってたっけ?征竜かかってないから全然何とかなるのは確認済み。なら、マスドライバーも確か制限かかってないし、イレカエルと鬼ガエルはどうだった・・・?」

 

 ぶつぶつと聞こえる声にものすごく不穏な気がするが、いくつか口出しをしておく。

 

「フューチャーフュージョンは制限ですが、マスドライバーなんてどうするんです?あとデスガイドは制限はかかってません。カエルは・・・すいません、把握してませんが制限だったかと。」

 

「ワンキルするんです。そうだなぁ、なら久しぶりに『ガエル』作るか?バジェ突っ込んで餅とマスドライバーの両方でキルできるようにすれば・・・。あ、あと零児君、終末の騎士はどうだった?」

 

「マスドライバーでワンキル?一体どうやって・・・。あと、終末の騎士はたしか制限かかってません。」

 

「だよな?!なら、いっそエクシーズ型でインフェルニティ作るか?ソウルチャージがライフ的に何度も使えないのが痛いが、まあリビデあるなら何とかなるか。あとは・・・あ。」

 

 ・・・なにか、ろくでもないことを思いついた予感がする。

 

「零児君、たしかランサーズには支給品として、いくつかペンデュラムカードを渡すんだよね?」

 

「え、ええ。」

 

「そのデータ、ちょっと見せてもらえない?」

 

 断る必要はないので、素直にデータを渡す。資料に目をやった先輩は、そこに書かれていた開発中のカードをいくつかピックアップして、尋ねた。

 

「このカード、俺にももらえないかな?遊矢にいくつかペンデュラムカード貰ってるから、それと組み合わせて使いたいんだ。」

 

 見せられたのはデニスと榊遊矢用に用意していた、ペンデュラムカード。そして、他のメンバーにも使えるようにと思って用意した、汎用性を重視して作ったペンデュラムカードだった。

 

「出来れば3枚づつ、最悪、これとこれと、あとこれは2枚でいい。可能かい?」

 

 それを見た瞬間、一瞬猿が高笑いする幻覚が見えたが、嫌な予感はそのままにして、質問に答える。

 

「ランサーズに支給するためのテストプレイという名目でなら、支給することは出来ますが、何をするつもりですか?」

 

「いや、ちょっと作りたいデッキがあるんだ。」

 

 トラウマ製造機(EMEm)を、ね?そういう彼の目は爛々と輝いている。なにか、やばいことを言ってしまったのだろうか。

 

「ありがとう、零児君!俺もなんだか吹っ切れたよ!そうだね、我慢なんてする意味なかったんだ。だって、君の言う通りゲームなんだから、楽しまないとおかしいよね?」

 

 俺は今絶賛後悔中です。あれよりひどい状況ってほとんどないと思うんですが。

 

「ああ、流石にあんなひどい展開(・・)を毎回することは出来ないって。」

 

 ・・・ただ、あれよりも制圧力(・・・)を持っているデッキはあるから、それを使おうと思って。そういう先輩に不安しか覚えない。

 

「・・・何をする気ですか?」

 

 

「え?秘密。でも、どうせならソリティア(満足)したいよね!」

 

 ・・・どうやら、俺はパンドラの箱を開けてしまったらしい。嫌な予感がヒシヒシとするのだが、よく考えたら、被害がオベリスクフォースに向くのだから放置しすることにした。こういっては何だが、しばらくあの人とデュエルしたくはない。なにか致命的な、デュエリストとしてのモチベーションとか自信とか云々すべて消失してしまいそうだ。

 

「・・・さて、俺の話はこれで終わりにして、だ。零児君、一つ隠してることがあるんじゃない?」

 

「え?」

 

 また、何かを言い出した。これもまた、嫌な予感がする。今朝、何気に点けたテレビの占いで最下位になっていたのを思い出した。アンラッキーアイテムは職場の先輩。アイテム?とか思ったが、意外なことに当たっていたんだなと思った。明日からは、見逃さないようにした方がいいかもしれない。

 

「零児君、君、さっき3年前に思い知ったって言ったよね?」

 

「ええ。」

 

「おかしいなぁ。3年前、かぁ。3年前、ねぇ。」

 

 何が言いたいんです、と言おうとして、気付いた。3年前と言えば、榊遊勝が行方不明になった年だった(・・・・・・・・・・・・・・・・)のだ。そして、榊遊勝はこの人の縁者であるということも!

 

「あれれ、おかしいなぁ。俺にとって3年前と言えば、ちょっとした事件があったはずなんだよ。」

 

 らしくないミスだ。しおらしい先輩が珍しいのと、半分徹夜で監視していたせいで、判断力が鈍ったのか。

 

「友達の、盟友のところにいくといったきり戻ってこない、榊遊勝が消えた年。あれも、3年前だったよねぇ?零児君?」

 

 伝えるつもりのなかった事実を、ここで伝えなければいけなくなった・・・!

 

「ちょおっと、お兄さんに話を聞かせてくれないかなぁ。」

 

「・・・分かりました。こうなれば分かっていることすべて洗いざらい、吐かせてもらいます。」

 

 こうなっては仕方がない。向こうは腹を割って自分のことを話してくれたのだから、諦めて俺も、自身の全てを話そう。俺が知る限りの全てを。

 

「・・・事は、7年前。貴方のお父様である、立浪山茶花。榊遊矢の父である榊遊勝。そして俺の父、赤馬零王。三人の研究『リアルソリッドヴィジョン』と目的であったそれをデュエルに導入する、『アクションデュエル』の実用化。全てはそこから始まりました。」

 

 

 そしてその結果を、俺は後悔することになる。

 

 

「貴方のお父様、立浪山茶花は、俺の父、赤馬零王の従兄弟です。」

 

 

 運命の歯車は、狂いだした。

 

 

 

「え?山茶花って名前なの?厨二?DQNネーム?あ、だから俺菊なんて名前なのか!くっそ中途半端なDQNネームつけるなら、それくらい開き直ってつけやがれや。」

 

「突っ込むとこるは其処ですか?!」

 

 ・・・本当に。

 

 本当にこの人は分からない。だけど、その言葉を聞いた時、いつもの先輩に戻ったみたいで、少し安心した。

 

 そして、その安心が幻想であったことを、俺はすぐに知ることになる。

 

 だけど、今はその安心が心地よかった。

 




 
 前書きで超越ウィッチと打とうとしたら、超嗚咽ウィッチになってた。ある意味間違いじゃない気がする。


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シンクロ次元?いいえ、融合次元です
第1話


FGO最高・・・。ソロモン無事クリアしました。最後はジャンヌが奮戦して粘りに粘ってくれました。

それはそうと、成金が再録。チキンレースも再録。ドロー暗黒界が安く作れますね。あとは精霊の鏡だけ。再録はよ。

あと、ブリュが解禁されてとてもうれしいです。作者のジャンドは白黒で復活し、カオスゴッデスが出しやすくなりました。米シクのゴッデスが欲しいです。作者のは日本版レリーフです。

※注意
  今回、かなり表現がきわどいものだったり、人によっては不快に思うかもしれません。ご注意ください。
 あと、言い忘れてましたが、私はHELLSING厨です。DRIFTERSも大好きです。豊久スリーブ予約しました。ゲンジバンザイ。

 サンジェルミ好きな人手を挙げて。キャラ的な意味で。


 アカデミアは、陸の孤島である。

 

 本土から隔絶された、兵士養成所アカデミア。プロフェッサーの指示の元、次元侵略の為に兵士を作り出す施設。次元戦争のその先にある、新たな世界のために身を粉にして戦場に出ていく兵士たちの拠点。

 

 それがデュエルアカデミア。

 

「あーあ、今日も大変だった。」

 

 オベリスク・フォース。アカデミアの中でも、所謂エリートと呼ばれる兵士集団に、自分は属している。

 

 アカデミアの訓練は、ただデュエルが強いだけではやっていけない。身体能力、思考能力、そして危機を突破するだけの応用力や機転を利かせるためにあらゆる訓練が強いられる。これは、誰でもクリアできるわけではない。逆に言えば、これをクリア出来たものだけが、オベリスクフォースに所属できるのだ。

 

「・・・いったい、どうやって素良はクリアしたんだよ。卒業ノルマ難しすぎるんだけど。」

 

 紫雲院素良。アカデミアのオベリスクフォースの中でも、いや、下手をすればアカデミアの中でもトップクラスに入るデュエリスト。数々のアカデミア生徒が挫折する中、悠々と試験をクリアしていった神童。聞けば、あの年でアカデミアの試験をクリアしたのは、彼を除けば僅か数人しかいないという。

 

 自分も、あいつのようになれないものかと必死に努力した。年下、それも遥かに幼く見える彼に負けるというのは、少なからずエリートへの道を順調に歩いていた自尊心を傷つけた。

 

 だが、あいつの実力を、おそらく同期の中で誰よりも知っている。だからこそ、いつしかあいつは自分のあこがれで、そして目標になっていった。

 

 もうすぐ追いつける、もうすぐあいつに追いつける。そう思うと、数か月前まで現実味のなかった目標に、少し手が届きそうな気がした。

 

 ふと、自分の手元を見る。卒業試験のためにクリアしなければならない課題が、まったく進んでいないことに気が付いた。どうやら頭に血が上りすぎて、目の前のことに集中できなくなっていたらしい。

 

 ついこの間、任務に行ってしまった目標を思い浮かべながら、滾って頭に上った血を収めるために、少し外に出ることにした。

 

 幸いにも、まだ外出許可時間内だ。もうあと1時間もすれば、自室のある寮は閉まってしまうが、その時間までに戻れば問題ないだろう。寮監に少し外出する旨を伝え、時間内に戻ってくるからと言って湾岸に行くことにした。

 

 海のほとり、そこに存在する灯台。そのふもとから見える海の景色は、灯台の光が反射して、どこか幻想的に見える。かつて、共に勉学に励んだ友人も、ココが好きだったな、なんて思いながら、高ぶる頭の血が冷えていくのを感じる。

 

 30分ほどたっただろうか。寮に戻ろうとすると、近くに人影があるのを見つけた。

 

 この時間にここに人が来るのは珍しい。ここの景色は綺麗だが、それを見に来る人間はごく僅かだ。寮から少し離れているのもあるが、何よりここは隠れた穴場のような場所で、今まで誰かに会ったことなど、この場所を教えてくれた明日香以外、誰もいなかった。

 

 少し興味がわいた。ここに来る人はどうやって知ったのだろうか。半分興味本位で近づこうとして、顔がギリギリ判別できるところまできて、それを後悔した。

 

 人影は、一人ではなかった。男女の二人組。もしかしたら、恋人かもしれない。だとするならば納得だ。恐らく、どちらかがこの光景を偶然見つけ、デートにでも誘ったのだろう。だったら邪魔するわけにはいかない。ここはクールに去るべきだ。

 

 そう思って踵を返し、足音を立てないようにゆっくりとその場を離れる。しかし、見てはいけなかったような気がして、動揺していたのか。階段で足を滑らせてしまった。

 

 あ、ヤバいそう思ったのもつかの間。衝撃に対応するために咄嗟に顔を庇う。

 

 だが、その衝撃は受けることがなかった。直前に肩を掴まれたらしい。顔の前で構えた腕が、行き場を無くす。

 

 つかんだのは、先ほどの男だった。少し肩で息をしている。どうやら走って肩を掴んでコケるのを防いでくれたらしい。

 

「大丈夫かい?」

 

「あ、はい。」

 

「・・・大丈夫そう、だね。」

 

 いやぁあ、よかったよかったと言って彼は手を放す。肩に会った圧迫感が無くなる。どうやらそれなりに強い力で掴んでいたようだ。

 

「痛くなかったかい?咄嗟のことで加減が出来なかった。」

 

「いえ、ありがとうございました。」

 

 あ、ならよかった。そう言って彼は安堵する。その笑みは、不思議と人を引き付ける綺麗な笑みだった。

 

 背格好は、明日香より少し高いくらいだろうか?大体170後半くらいだろう。身に着けた黒い服は、どこか夜の闇に溶け込んでいるようだ。

 

 近くに船がある。初めてここに来た時、乗ってきた船だ。本土との連絡船、そして新入生を迎え入れるのに利用される船。普段は本土にあるこの船がここにあるということは、この人は本土から来たのだろうか。

 

 新入生、というには年を取りすぎているし、何より時期が違う。なら、物資搬入の人だろうか。だが、後ろにいる少女はそうなると説明がつかない。搬入なんかの力仕事を任せるには、少々頼りなさすぎるように思う。

 

 不審に思っていると、向こうが頬を掻きながら、バツが悪そうに聞いてきた。

 

「ねえ、ココはアカデミアであっているかい?」

 

 これまたおかしなことを聞く。いくら本土の人間でも、ココがアカデミアであることぐらい知っている。何より、船に乗ってきたのならそれくらい分かっているはずなのに、なぜまたこんなことを聞くのだろうか。

 

 不審に思いながらも、質問には答えなければならない。少なくとも、悪い人ではなさそうだ。そう思っていた。

 

「え、ええ。ここはデュエル戦士育成施設、デュエルアカデミアです。」

 

「じゃあ、君はここの兵士というわけだ。」

 

「まあ、そういうことですね。」

 

 まだまだ見習の域は出ませんが、という言葉は胸の中にしまった。一人前に見られたい、という欲が出たからだ。

 

 だが、目の前の男はそれに納得した様子で、しきりにそうかそうか、と呟いていた。

 

 そして、どういう思考の一巡があったのだろうか。口を開いた。

 

「じゃ、ちょっと首置いて行ってくれ。」

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

「はい?」

 

 どういう思考の一巡をした。まったく訳が分からない。

 

「首置いてけ、首、置いてけ。アカデミアだろう?お前、アカデミアだよな?なあ、アカデミアだろ?」

 

 もう一度言う。どういう思考の一巡したんだお前。

 

 呆気に取られてもう訳が分からない。そんな中、また一人、今度は船の中から、後ろにいる少女よりも2、3歳ほど年上だろう少女、いや、女性が出てきた。

 

「菊、終わりましたよ。」

 

「ああ、お疲れ様。どうだった?融合次元のデュエリストとサシ(・・)で連戦した感想は。」

 

「5人までなら同時でもなんとかなる範囲かと思います。少なくとも、攻め入ってきたデュエリストの方が遥かに手強いですね。」

 

「そりゃあそうだ。アカデミアは攻め入られることは計算していない。彼らの今までの行動から考えるに先に攻め入るのが常套手段だ。

 

 なら、高い実力のものを攻めに回した方が効率がいい(・・・・・)。このアカデミアに残っている戦力は、総じてそこまでの戦力はないと思っていいかもしれないね。」

 

 攻め入ってきた?ということはもしかして、彼らは。

 

「で、本当にカードにしなくてよかったんですか?」

 

「別に構わない。今の俺らには、目撃者が必要になる。被害者が必要になる。戦力に数えなくてもいいような雑魚には、役割を与えてあげようじゃないか。見敵必殺(サーチ&デストロイ)には早すぎる(・・・・・・)。」

 

 間違いない。彼らは別次元の人間だ。それも、私たちと同じカード化の技術を持っている。

 

 ではなぜ攻め入ってきたのか。それが分からない。いや、そもそもどうやってこのアカデミアにやってきたというのか。

 

「・・・随分と不思議そうな顔をしているね、新兵君(・・・)。」

 

 新兵。そう言われて、なぜ、という言葉が私の口から出てくる。私は、この人に一切新人だとは、オベリスクフォース見習いだとは言っていない。飲み込んだ言葉は、吐き出されてはいない。

 

「簡単なことだ。攻め入られた、と自覚した瞬間から君の足は震えている。俺達の次元に侵略してきたアカデミアは、敵を見ただけで足を震えさせるやつは一人もいなかった。当たり前だ。その時すでに彼らは経験を積んでいたのだろう。

 

 だが、君の足は震えている。ならば恐らく、経験が浅いか、見習いか。

 

 ・・・見たところ、侵略に参加した兵士よりも、少々顔が幼い。だから、新兵。間違いはあるか?アカデミアの見習い君?」

 

 間違いはない。まともに敵と戦ったことはない。まだ、実習すら踏んでいない新兵だと見抜かれたことを否定しない私に、男は少し顔をしかめた。

 

「残念だ、非常に申し訳ないと思うよ。だけど、アカデミアであるのなら。俺達の敵であるのなら。君にはカードになってもらうしかない。

 

 たとえそれが、まだ兵士にもなっていない子供だとしても!

 

 たとえそれが、目の前で生まれたての小鹿のように震えている、か弱い少女(・・・・・)だとしても!

 

 例外はない。首を置いていけ。首を置いていけ(カードになれ)!」

 

 その言葉を言い放った瞬間、辺り一帯にオベリスクフォースが現れた。警報が鳴り響く。だれかが、ここに警邏を呼んだのだと理解できた。

 

「だから言ったじゃないですか。やっぱりあの船長たち、兵士を呼び集めた。」

 

「それでいいんだよ、凪流。さっき俺は目撃者が必要だ、といったが、あれは正確ではなかった。

 

 正しくは、目撃者は大量に(・・・)必要なのだ。見せしめは多い方がいい。被害者は多い方がいい。俺たちの脅威度を、より大きく伝えることが、重要なのだ!!」

 

 そうでなくては、俺たちの目的は達成できない。呟くように会話をするその声は、多分彼らの敵の中では、一番近くにいた私にだけ聞こえたように思えた。どうやらオベリスクフォースがここにやってきたのは敵の予想の範疇、いや、罠だったらしい。

 

 オベリスクフォースの隊長が、男に質問した。

 

「・・・何者だ、貴様ら。」

 

 その質問に、目の前の男は不気味な笑いと共に言い放った。

 

「アカデミアの、敵。それ以外に必要か?

 

 必要ならば宣誓しよう。我々はランサーズ!『Lance Defense Soldiers』!!我々の次元に侵略してきた不届き者どもを殲滅するためにここに来た!今から俺たちが行うのは、貴様らアカデミアに対する宣戦布告であり、戦の法螺貝だ!開戦の狼煙は貴様らが、俺達の次元で放った!

 

 よろしいならば戦争だ!自分たちだけがぬけぬけと生き残るとでも思ったか?!自分たちは侵略される側にならないとでも思ったか?愚か者どもめ!!俺たちはここに来た!貴様らの首を、根こそぎいただきに来た!貴様らが被害者になり、カードになり、糞尿を垂れ流して命乞いをする羽目になると、微塵も思わなかったか?

 

 目には目を、歯には歯を!ハンムラビ法典の掟を知っているか?やられたらその分だけやり返す。それは遥か昔からある道理だ!

 

 アカデミア兵士諸君!小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震える心の準備はOK?!」

 

「ディフェンスじゃなくてオフェンスなんですけど?!ディフェンス要素は?!」

 

 思わず突っ込んでしまった。ランスというか、もはやゲイボルグとか鉤付きの武器とかに近い何かである。

 

「知るか。俺ではなく貴様らのボスの息子に言え。あいつは賢いが、計画を守ることしか考えていない。父親を止めることしか考えていない。

 

 だが、俺は違う!俺の使命は、我らの平穏を穢す愚者共を、その肉の一片までも殲滅すること!エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!!」

 

 そんな彼に後ろの、おそらく彼の仲間であろう女性が、声をかける。

 

「あの、菊。セレナが引いてるんでそろそろそのキャラ止めませんか?」

 

「止めん!ここらで一発、強烈なインパクトを残しておけば、俺たちの本気具合を奴らは知るだろう。なら、出来るだけ鮮烈に!出来るだけ惨たらしく!全力を持って、彼らに脅威を与えなければならない!気力を削ぐのもまた兵法なり!」

 

 壊れている。なんか頭の大切な螺子が5、6本抜け落ちている。キャラ作っていてもやりすぎだろ、コレ。オベリスクフォースがドン引きしている。私もドン引きしている。後ろの、彼の仲間であろう二人もドン引きしていた。

 

 音楽の授業で、魔王という曲があった。今ならあの子供の気持ちがわかる。魔王が来る、魔王が来るよお父さん。

 

「さて、デュエルだ。貴様らもデュエリストの端くれなら、デュエルで死ね!言っておくが貴様らに退路はない。

 

 なぜなら、たとえここで逃げたとしても、いつかは貴様らを滅ぼすからだ。

 

 たとえ誰かが時間稼ぎをしたとしても、俺達にはかなわないということを思い知れ。そしてここで死ね、潔く死ね。黄泉路への先陣を切れ!もしかしたら、俺を倒せるかもしれないぞ。千に一つか、万に一つか。億か、京か。

 

 だが、貴様らはたとえそれが那由他の彼方でも、戦わなければならない!

 

 もし戦わないのならば、貴様らの大事な大事なプロフェッサーを、貴様らの目の前でカードにしてやろう。その後燃やしてやる。炭にしてやる。灰にしてやる。塵は塵に(Dust to dust)。貴様らのボスをゴミに、塵に還してやる。」

 

 その瞬間。

 

 その瞬間、オベリスクフォースの何人かが怯えたようにディスクを抱え、突撃していく。だが、そのディスクに、男が投げた輪っかがつなげられた。

 

「いいだろう!貴様らは誉れある黄泉路への先陣を遂に切った!ならば死ね!カードになれ(死ねぇ)!」

 

 そう言って、彼は。

 

 その3人を瞬殺し、カードに変えていった。目の前で起こった光景に、オベリスクフォースも、私も、ただただ呆気にとられるだけ。

 

「さあ、こいつらを倒すのに1分かかった!その合間に援軍の要請は出来たか?それともそれすらしなかったか?この場での貴重な戦力を、3人が稼いだわずかな時間で、それをただ見ていただけか?何でも構わないが、さっさと貴様らにはカードになってもらう!」

 

 中指を立てながら言い放ったと同時に、オベリスクフォース達は震えあがった。

 

「う、うわあああぁぁぁ!!!」

 

「に、逃げろおおぉぉぉ!!!」

 

「な、お前たち逃げるな!!」

 

 オベリスクフォースたちは逃げ出し、隊は瓦解。彼の異様な空気に押されたのか、同志がカードにされたのが止めになったのか。

 

 だが、男は逃げ出すオベリスクフォースに、まるで拳銃を突きつけるかのように、腕についているデュエルディスクを向けた。

 

「逃げるのか。それもいいだろう。だがな、忘れていないか?カード化の技術は貴様らが編み出した(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。そして、貴様らの技術には、デュエルから逃げ出した者を強制的にカードに出来るものだということを!」

 

「な、止めろ!そのボタンを押すんじゃあない!!」

 

 隊長が叫ぶ。だが、それで止まるとは思えない。

 

「いいや、限界だ!押すね!!」

 

 その言葉と同時に、最初に逃げ出したオベリスクフォースがカードにされる。叫び声と共にその場に残ったのは一枚のカード。

 

 泣いて許しを請う、兵士の姿が、其処にはあった。

 

「逃がしませんよ。」

 

 いつの間に後ろにいたのだろうか。カードに気を取られた隙に退路を塞いだのは、先ほど後ろにいた女性だった。もう一人の少女は、まだ男の後ろで・・・あれ、いない。

 

 いや、いた。女性の後ろで蹲っている。時折聞こえる「PSY怖い烏怖いPSY怖い烏怖い」とエンドレスに呟いている。オベリスクフォースもそれに気が付いたのか、なるべく視界に入れないようにしていた。

 

「ほら、セレナ。さっさとこの場の仮面変態集団を倒しますよ?敵は菊じゃないんですから、安心してください。」

 

「うう、なんだかよくわからないが、無性に怖いのだ。頭が痛いのだ。頭痛薬はないか・・・。」

 

「その原因はあとで〆ますから、今は目の前のことに集中してください。行きますよ?」

 

「あ、ああ・・・。」

 

 できれば今すぐに〆て欲しい。土下座でも何でもする。だから、今すぐに・・・。

 

 だけど、その懇願は、目の前の女性には効かないらしい。「どうしてあなたを守らなければいけないんですか?」というような目で見られた。

 

 それでも、一縷の望みをかけて女性に目で問いかける。どうやら根気で勝ったらしい。ため息をついて、オベリスクフォースを挟んだ側にいる、魔王に声をかけた。

 

「菊、流石に戦意を喪失した人たちをカードにするのは憚られるんですが。」

 

「ダメダメ、やりたいことがあるのと、ちょっと考えがあるから、殲滅してくれ。」

 

「ですが、流石に・・・。」

 

「お前がやりたくないならいいけど、どのみち俺がやるよ?それに、綺麗事でやっていける訳が無いじゃないか。戦争なんだぜ?」

 

「・・・とのことです。残念ですが、そんな捨て犬のような目で見てもダメですよ?助けませんよ?」

 

 チッ、やはりダメか。

 

 だが、この場を生き残るのには、彼女の協力が必須になるだろう。正直な話、目の前のオベリスクフォースはどうでもいいが、自分がカードにされるのだけは避けなければならない。

 

 こんなところで、躓いてなんていられないのだ。

 

「さて、十分に時間は与えただろう?さっさと始めようじゃないか。早く(ハリー)早く(ハリー)早く早く早く早く(ハリーハリーハリーハリー)!」

 

「う、うおおおぉぉぉ!!!」

 

「か、掛かれー!!」

 

「さあ、始めよう!破壊と暴力のパジェントを!!」

 

 ミツザネェ!と叫びたくなるが、そんなことは言っていられない。

 

 逃げるべきか、それとも彼らに襲い掛かるオベリスクフォースに交じり、物量作戦で押し切って倒すか。

 

 だけれど、その思いは肩に乗せられた手によって阻まれた。

 

「忠告しておきます。」

 

 そう言ったのは先ほど私が「助けて」と目で訴えていた、二人組の片割れである女性であった。

 

 彼女は、唯々やめておきなさい、と言い、三人のオベリスクフォースに向きなおる。一瞬思考停止し、乱入する機会を逃した私は、ただ彼女のデュエルを見ていただけだった。

 

「私のターン。聖騎士モルドレッドを召喚!!モルドレッドに装備魔法、天命の聖剣を装備します。モルドレッドは、装備魔法が存在している場合、効果モンスターとなり、レベルが5になり、闇属性に。そして、モルドレッドの効果を発動。デッキから聖騎士を特殊召喚し、装備しているカードを破壊します。特殊召喚するのは、聖騎士ボールス。破壊された聖剣は、聖剣自身の効果で場にいる聖騎士に装備されます。ボールスに装備。ボールスもモルドレッドと同じく、装備魔法が存在している場合、効果モンスターとなり、レベルが5になり、闇属性に。そしてボールスの効果で、デッキの聖剣を3枚選択し、その中からランダムに手札に加え、残りを墓地に送ります。選択したのは、聖剣EX-カリバーン、聖剣ガラディーン、そして聖剣を抱く王妃ギネヴィア。ランダムカットを機械に任せてもいいんですが、せっかくなんで、其処のあなた。」

 

 ちょっと早速何をやっているのか分からなくなってきたが、モンスターに装備魔法カードを装備させたことで、そのモンスターは効果を発揮したらしい。そして、そのモンスター効果で呼んできたモンスターに、聖剣をあえて破壊することで、もう一体の効果を発動させたということか。

 

 サーチと言ってもランダムなので、機械に任せるのが通例だが、彼女は、あえてそれをせず、相手の判断に任せた。

 

「・・・俺か?」

 

「ええ、貴方に決めてもらいたい。」

 

「それじゃあ・・・右のカード。」

 

「了解しました。・・・聖剣を抱く王妃ギネヴィアは、手札または墓地から、聖剣扱いとして聖騎士に装備されます。墓地のこのカードをモルドレッドに装備し、モルドレッドのレベルを5にします。」

 

 レベル5のモンスターが2体。ということはもしかして。

 

「私は、モルドレッドとボールスでオーバーレイ!二体の聖騎士でオーバーレイネットワークを構築!」

 

「エクシーズ召喚か!攻め入ったということは貴様らエクシーズの残党か!」

 

 だが、彼女はその言葉を無視した。オベリスクフォースはそれを無言の肯定と受け取ったようだが、近くにいる私には、それがただの無視であるように思えた。

 

「神聖なる円卓の王よ!今こそ降臨し、騎士道の名のもとに、尋常なる決闘を!エクシーズ召喚!ランク5!神聖騎士王アルトリウス!」

 

 出てきた騎士に、私は見惚れた。高貴な、そして神々しいまでの光。現れた騎士に、私の心は奪われた。

 

「神聖騎士王アルトリウスは、墓地の聖剣装備魔法を3枚まで装備できる!墓地のEX-カリバーンと、天命の聖剣を装備!更に手札の聖剣ガラディーンを装備!」

 

 現れた聖剣が、空中にファンネルのように漂っていく。そしてそのうちの一本を、アルトリウスが、顔の前に掲げ、主である彼女を守るかのように、其処に佇んだ。

 

「カイザーコロシアムを発動!私のフィールド上にモンスターが1体以上存在する場合、相手がフィールド上に出す事ができるモンスターの数は、私のフィールド上のモンスターの数を越える事はできません!このカードが発動する前にフィールド上に存在しているカードは、この効果の影響を受けませんが、他に出ているカードはないので関係はありませんね。」

 

 そこは、まさに一対一(サシ)の勝負をするにはうってつけの場所だった。コロセウムを彷彿とさせるこの戦場は、尋常な、正々堂々とした勝負を望むらしい。

 

「カードを一枚セットして、ターンエンドです。」

 

 まるで、倒せることが出来るなら倒してみろ、とでも言いたげに、アルトリウス(騎士王)はコロセウムの中心で唯々敵を待っていた。

 

「俺のターン、手札から、歯車街を発動し、歯車街を対象に、古代の機械射出機を発動!射出機の効果で歯車街を破壊し、デッキから、召喚条件を無視して古代の機械を特殊召喚する!」

 

「罠発動!虚無空間!このカードが存在する限り、プレイヤーは特殊召喚できません!」

 

 正々堂々とした、とか思った数秒前の私を殴ってやりたい。騎士道とかもはやかなぐり捨てていた。

 

 装備魔法で攻撃力を底上げし、特殊召喚を封じることで相手を制圧。さらにカイザーコロシアムの効果で、フィールドのモンスターの数を制限させた。

 

「・・・モンスターを伏せる。カードを二枚伏せてターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 一人目の手札には、あのカードを破壊する術はなかったらしい。

 

「なーんだ、まだやっていたのか、凪流。」

 

 え?

 

 気付いた時には、私の後ろに、あの男(魔王)がいた。いったい、いつの間に。

 

「魔王っていうのやめてくれない?可愛いアカデミア兵士さん?首を置いていく覚悟は出来た?」

 

 魔王じゃないか。紛れもない魔王じゃないか!何が違うんだ!

 

「失礼な。魔王モードはもう疲れたから終わりにしたんだよ。」

 

 もう、オベリスクフォースは殲滅し終えた(・・・・・・)んだから、その必要もないしね。

 

 その言葉を聞いた瞬間、気付いた。僅か数ターンの合間に、後ろのデュエルは終わっていた。私が気を取られていたのもあるが、いつの間にか彼らはいなくなっている。つまり、そういうことなのだろう。

 

 何が起こったのは気になるが私はもう今それどころじゃない。次は私の番になってしまった。目の前の人より、遥かに多くのオベリスクフォースと対峙していたというのに、目の前の人物はそれの消耗を微塵も感じさせない。私一人では、やられるのが落ちだ。

 

 そう考えた瞬間、私はデュエルディスクとデッキを地面に置いて、手を挙げた。

 

「何のつもりだい?」

 

「命乞いです。・・・私は、ここの生徒ですが、勝ち目のない試合はしない主義なんです。」

 

「じゃあ、ここでカードにされてもいいのかい?君は、デュエルを放棄した(・・・・・・・・・)。なら、カードにされる条件はクリアされている。」

 

「ですから、命乞い(・・・)だといいました。これは、抵抗しないという意思表示です。ここでカードにされるというなら、仕方がないですからカードになりましょう。」

 

 嘘である。そんなつもりは毛頭ない。だが、ここで消えるわけにはいかない。なら、答えは一つしかない。

 

「私を、買いませんか?」

 

 裏切り。ここで彼らの側につき、アカデミアを見限る。正直、未練という未練はアカデミアにはない。仲のいい友人は、『アカデミアの神隠し』の所為で、いつの間にか誰も居なくなっていた。私の数少ない知り合いである素良は、先日から連絡が取れずじまい。ここ数ヶ月連絡が取れないとなると、彼も消えているかもしれない。時たま起こる『アカデミアの神隠し』で、私がアカデミア側につく理由は殆ど希薄になっていたのだから、裏切ることに罪悪感はない。

 

「・・・君は何ができる?」

 

「そう言われると厳しいですが・・・。

 

 私はここの土地勘があります。貴方たちはどうやら別次元の人間ですから、この辺りのことはわからないでしょう?」

 

「成程、なら君が案内役になると。」

 

「ええ。」

 

「話にならないな。」

 

 ・・・やはりか。

 

「まず、一つ。そこにいる蹲って頭を抱えているのはセレナといって、この次元の人間で、俺たちにとって信用できる協力者だ。君よりも、遥かに信用できる協力者だ。彼女の協力がある限りは、土地勘云々の心配は俺達にはないだろう。

 

 二つ、俺たちがここに攻め入ったのは、君たちアカデミアのディスクを解析したときに、デッキ内容、手口、そしてここの地図を手に入れた(・・・・・・・・・・・)からだ。よって、万が一何かのトラブルがあったとしても、最悪道に迷ったり、攻め手に困ることもないだろう。

 

 そして三つ、アカデミアを裏切ろうとする君を、信用できる根拠と、メリットがない。」

 

 思っていたより最悪な状況だった。まさか既に裏切り者がいるとは思ってもみなかった。

 

 思考を止めるな、とにかく頭を回転させろ。生き残る術は・・・。

 

 そう思っていた矢先、彼は私の期待を良い意味で裏切った。

 

「ま、いいや。君にはあとで役立ってもらうことにする。ただ、デッキとディスクは没収させてもらおうか。」

 

 何を手伝わさせられるのか気になるが、助かることに越したことはない。

 

「凪流~。まだ~?」

 

「貴方みたいにポンポンポンポン倒せるわけじゃないんですから、黙ってくれません?!割と大変なんですからね?!」

 

「でも、カイザーコロシアムに虚無にアルトリウスでもう封殺しているじゃん。あとバトルフェイズ来るだけで倒せるだろう?」

 

「ええ、そうです、ね!!」

 

 特殊召喚が封じられたからと言って、効果が封じられたわけじゃない。実際、目の前の人は、何度もハウンドドッグの効果でバーンダメージを受けていた。

 

「ほらほら、負けちゃうよ?」

 

「うるさいですね!!私のターン!ドロー!スタンバイフェイズにガラディーンの効果で攻撃力が200下がります。アルトリウスの効果!オーバーレイユニットを一つ使い、アルトリウスの効果を発動!フィールドの古代の機械猟犬を破壊します!そして聖騎士トリスタンを通常召喚!」

 

 一人目の負けが確定した。残ったのは二人か。

 

「まあ、カイザーコロシアムの効果でフィールドに出すことのできるモンスターは2体までと限られているが、虚無空間で特殊召喚は出来ない。フィールドには伏せモンスターと、古代の機械猟犬がプレイヤーに1体ずつ。アドバンスのリリースにすれば、何とかなるかもしれないけど、天命の聖剣は装備モンスターの破壊を一度だけ無効にする効果がある。さらに、EX-カリバーンの効果で対象にとられない効果も付与されている。万が一、アルトリウスを破壊できても、アルトリウスは破壊されたとき墓地の聖騎士を1体特殊召喚できるから、次のターンもう一度アルトリウスをエクシーズ召喚されれば、また元の盤面に戻っていく。

 

 まったく、俺でもあれを突破するのは至難の業だよ。だれだあんなろくでもない盤面を作ろうと言い出した奴は。」

 

 なぜだろうか。言い出しっぺはこの人の予感がしてきた。

 

 そして、彼の言う通り、アドバンス召喚で出てきた古代の機械巨竜で、相打ちに持ち込もうとするアカデミア。しかし、天命の聖剣で破壊されなかったアルトリウスに、返り討ちに会う。このターン、もう一度破壊さえすれば何とかなったのだろうが、どうやらその術はないようだ。二人は諦め、ターンを譲った。

 

「あの場での最適解は、巨竜での攻撃対象をトリスタンにしていれば、そのターン展開できなくなっても、虚無空間は破壊出来た。残るライフは2800から1700になる。

 次の手番が、もし古代の機械猟犬の効果を発動した後、古代の機械魔神を特殊召喚できていれば、残りライフは風前の灯火。勝機はあった。・・・まったく、詰めが甘いな、凪流。一人を倒しきるのではなく、トリスタンでもう片方の猟犬を始末すればそんな心配をせずに済んだんだ。あやうく乱入するところだったよ?」

 

「・・・すいません。」

 

「まあ、結果論に過ぎないが、相手が突破してきた場合の対処は考えているのか?」

 

「大丈夫ですよ。手札にあれ(・・)が来ました。問題ありません。」

 

「・・・そうかい。なら、安心させて見せてもらうよ。こんなとこで負けているようじゃ、話にならないからね。」

 

 どうやら、残った手札には何やら対策があるらしい。そんな状況で、残りの二人を倒せるのだろうか。

 

 結局、彼らは負けた。残った三人は、女性の方ではなく、男性の方がカード化を行ったらしい。そのことで言い争いを彼らはしていたが、内容までは私の耳には入ってこなかった。

 

 目の前に落ちている・・・正確には、私が落としたデュエルディスクに目を向ける。そこにあるのは私のデッキ。アカデミアから支給されたものではなく、正真正銘唯一無二の私のデッキだった。命惜しさに手放したとはいえ、どうしても諦めきれない。

 

「菊、いくら何でも今のは酷すぎませんか?!命乞いをした相手に・・・!!」

 

「だから、戦争なんだから仕方ないだろう?やられないためにはやるしかない。」

 

「ですがこれは・・・!!」

 

 向こうはまだ言い争いをしているらしい。私はその隙に、デッキを手元にあったアカデミア支給の古代の機械デッキにすり替えた。幸い、常に予備として持ち歩いていたので、すり替える代わりのデッキには困らない。すり替えられたことに向こうは気付かないだろう。これで、スキを見て逃げ出すとき(・・・・・・・・・・・)、未練なく逃げ出せそうだ。

 

「・・・どうやら、着いたみたいだね。」

 

 え?と、振り向くと、後ろには大量のアカデミア兵士たち。

 

 ・・・いや、違う。あれはおそらくアカデミアではない。

 

 アカデミアは、一人を大隊長とした、一個小隊で行動する。そこから、三人組に分かれたのち、デュエルで各個撃破していく。それがアカデミアで最初に教わる戦い方だった。

 

 だが、目の前の集団は違う。よく見れば、全てがただの一兵だ。大隊長がいない。

 

 大隊長がいない状況で、私たちは行動しない、というより出来ない。そういう風に教育はされていないし、そういう指示を出されることはまずない。つまり、彼らは・・・。

 

「君たちが、零児君から派遣された、デュエリストでいいのかな?」

 

 その言葉に、彼らは頷いた。

 

 間違いない。彼らは、アカデミアの内部に潜入するつもりだ。何をする気なのかわかる。内乱(・・)を起こすのだ。

 

 内部から崩壊させるための布石として、彼らを送り込むのだ。

 

「さあ、始めようじゃないか。」

 

 魔王なんて生ぬるい。彼は、間違いなくアカデミアを、この融合次元を根こそぎ滅ぼさんと言わんばかりに。

 

 

 

 

「諸君、復讐を始めよう!」

 

 

 戦争を、宣言した。

 

 

 

   ◇

 

 

 アカデミアに菊が乗り込む2日前。

 

 赤馬零児は、胃痛で倒れかけていた。

 

 ・・・どうして、こんなことになったんだ。

 

 目の前の人物に、自分が知る限りの全ての真実は話した。

 

 父のコンピューター内部に入っていたデータ。赤馬零王の計画。3年前の、融合次元での出来事。榊遊勝の行方。そして、彼の父親が何者であったのか。

 

 全てを話した時の彼の反応は、やはりというか予想通りというか、怒りで満ち溢れた顔をしていた。

 

「へぇ・・・。零児君。いや、赤馬零児。君、そんな大事なこと隠して、俺の協力を持ちかけようとしていたとか、ちょっと虫が良すぎやしないかい?」

 

 いたって正論である。だが、こちらもなりふり構っていられなかったと言えば、とりあえずは理解してもらえたみたいだった。

 

「まあいいよ。ランサーズに入れてほしいって言ったのはこっちだ。たとえ、君から持ち掛けられた話が最初だったとしても、それは変わらない。俺はここは引いてあげようじゃないか。」

 

 嫌味たっぷりである。だが、文句は言えない。遺恨なく彼の協力を得ることに比べれば、そんなのは必要経費である。

 

「だから、零児君。あえて君にこう言うことにするよ。」

 

 そう、前置きをされた。つまり、失った信頼を取り戻したければ、言うことを聞いてくれ。そういうことだろう。

 

「・・・何がお望みですか?」

 

「アカデミアに先に攻め入りたい。」

 

 言われたことが、一瞬理解できなかった。なぜ、そんなことを言い出したのだろうか。

 

 この人は、無意味にそんなことを言い出す人ではない。感情で動いてはいるが、その実、合理性で出来ている人間だ。何か狙いがあるに違いない。

 

 問題は、それが何なのか分からないこと(・・・・・・・)なのだ。一体、何を考えているのだろうか。

 

 何事にも、理由がある。だけれども、彼の行動はそれが読めない。確実にアカデミアに対抗するには、勢力が足りない。スタンダードの人員だけでなく、他の次元の人間を用意して対抗しなければならないほどに。それくらいには、相手の実力も兵士の数も未知数なのだ。

 

「何が狙いですか?」

 

 そう言って返したことに、彼は驚いていた。

 

「・・・真っ先に反対されると思っていたんだけどねぇ。」

 

 何をいまさら。

 

「反対したところで無意味でしょう?貴方は、下手をすればそのまま単騎ででも特攻していくでしょう。それに、あなたは勝算がないことはしない人間だと、俺は思っていたんですが。」

 

「いや、まあ、勝算が無いわけじゃないんだけれど・・・。」

 

 だけれど?この人にしては歯切れが悪い。

 

「・・・そうだね、一から説明していこうか。

 

 まず、君の狙いは各次元。融合次元以外の人員を戦闘態勢に持っていくこと。そうしないと、いつ奇襲されて殲滅されるか分からない。スタンダードに至ってはそれは成功した。なら、次はシンクロ次元。もし、シンクロ次元の人間が、アカデミアについたのなら、スタンダードとエクシーズだけでは間違いなく対処できなくなるだろう。君は、それを警戒してシンクロ次元に行きたい。違うかい?」

 

 ・・・それを見破られるとは思っていなかった。

 

 その通り、シンクロ次元に行きたい理由はただ人員の確保というだけではない。融合次元とシンクロ次元、その二つが手を結ばないようにあらかじめコンタクトを取っておく。あわよくば、協力体制をつけて、融合次元への牽制にしたい。それが狙いだった。

 

「俺も、それについての重要さは理解している。だからこそ、最初はおとなしくここに居ようと思っていた。」

 

 そう。この人は最初、この場に留まることを肯定的に考えていた。だからこそ、俺はこの人に今の情報を与えたのだ。

 

「でも、流石に想像していたより状況が悪いねぇ。俺は、てっきり敵の総人数(・・・・・)にあたりをつけていると思っていたんだ。」

 

「それは・・・。」

 

 そう。俺達もそこは知りたかった。と、言うより最初は当たりをつけていたのだ。

 

 だが、一つの次元を、たった一つの軍団が滅ぼしえるなんて、早々できることじゃない。想像している人員より遥かに敵の数が多いかもしれない。

 

 そして、それは確信に変わった。いくら、重要人物の保護、もしくは奪取とはいえ100を超える人員(・・・・・・・・・)を易々とこちらに送ってくるなんて出来るのだろうか。

 

 そんなはずがない。少なくとも、敵の人員は万を超え、十万、もしかしたらそれ以上かもしれない。そこにシンクロ次元までもが敵に回れば手を付けることは出来ないだろう。

 

「それからもう一つ、謎がある。」

 

「もう一つ?」

 

アカデミアの兵士が戦う理由(・・・・・・・・・・・・・)

 

 ・・・。

 

「ずっと、不思議に思ってたんだ。どうして、彼らは戦っているんだろう。」

 

「彼らにとって、次元の統一が目的だ、と黒咲から証言を得ています。」

 

「そうだね。それに間違いはない。でも、ならなんで次元を統一しなければいけないのか(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。」

 

「次元を統一すれば、彼らにとって住みやすい次元になるそうですよ。」

 

「おかしいだろう?人が暮らせているんだ。住みやすいとかそういう問題の前に、普通に暮らせるならそれで人は満足するはずだ。

 

 尊厳が無くて飯があれば人は満足する。飯が無くても、尊厳があれば人は生きられる。なら、彼らには飯も尊厳もないのか?俺はそうは思わない。」

 

 どうして?と、それを問うのは野暮だろう。

 

 彼らは、よく鍛え上げられていた。その為には健やかに育つ(・・)必要があるだろう。それに彼らには、少なからず融合次元の人間である、という誇りもあった。

 

 なるほど、そういう見方からすれば確かにおかしいのかもしれない。

 

「更に言うなら、彼らの目的が、彼らだけが(・・・・・)選民的に優遇される生活を望んでいたとする。でも、それならとっくに目的は達成されてなければおかしい。

 

 既に、エクシーズ次元を滅ぼしているんだ。なら、その次元の人間を使えばいい。汚い言い方になるからあまり言いたくはなのだけれど、食欲を満たしたいなら彼らを農奴にすればいい。性欲を満たしたいのなら彼女らを情婦なんかにすればいい。尊厳欲は、下の立場が居る時点でとっくに達成されているだろう。そこは、彼らにとっては理想郷だ。

 

 だけど、そうはしなかった。彼らは、誰一人危害を加えることなくカードにしていったんだ。カードにしていた人間を、彼らに奉仕させればいいのに、そうしなかった。そうした方が、彼らは遥かに楽なのに、そうしなかった。

 

 なら、彼らの目的はなんだ?俺はそれが知りたい。そしてそれは、彼らに対する突破口になりえるかもしれない。」

 

 成程、そういう見方は自分にはなかった。やはりこの人は馬鹿ではない。目的がある。合理がある。道理がある。だが、多少殺伐としすぎているような印象も、偏っている印象もあるが。

 

「だから、俺たちはアカデミアに攻め入ろうと思う。攻め入るというよりは、潜入に近い。内部から彼らの情報を集める。情報は武器だ。必ず役に立つ。」

 

「潜入に失敗した場合、リスクが高すぎます。」

 

 そう言った瞬間、彼は笑い出した。何が可笑しいのか。

 

「リスクが高い?何を馬鹿なことを言っているんだ。

 

 その時は、俺や潜入した人間全員が捕虜になるだけだ。いや、あいつらはそれすらしない。多分、俺達がカードになるだけ(・・)だ。」

 

 だけ、と。彼はそう言い切った。随分と危ない土台。だけど、それに乗れるだけのものは作っている。

 

 だけど、それを許していいのだろうか。下手をすれば、彼ら全員を見捨てなければいけない選択を、するべきなのだろうか。

 

「・・・ですが、どうやって潜入します?」

 

「面白いものを見つけたんだ。ほら、コレ。」

 

 そう言って、彼が見せたのはアカデミア製のデュエルディスクだった。それも、恐らく上官クラスが持っているものだろう。今まで俺たちが回収したディスクとは、作りがわずかに違う。

 

「これの、ココの項目を見てほしい。コレ、多分彼らの個人IDだ。」

 

 そこには、まるで学生証のように顔写真と、個人ID。そして名前と階級が記されていた。

 

「多分、彼らはこれを使って裏切り者や潜入員を探り出していたんだろう。もし、ディスクの顔と、彼らの顔が一致しなければその時点で裏切り者。という具合じゃないかな?」

 

 それは分かっている。そんなのはとっくに解析済みだ。

 

「解析済みなら話は早い。それを偽造すればいい。」

 

「それは無理です。」

 

「え?」

 

 無理だ。そんなのは。

 

「このID。これは一度サーバー、つまりは大本のコンピューターを介して発行されたものです。ですから、そのサーバーそのものにアクセスしないことには新しいIDを作り出すことは・・・。」

 

「ならこの写真を入れ替えるだけでいい。」

 

「そんなことをしても、いつかはバレますよ?」

 

「バレていい。わずかな期間だけでもごまかせるならそれだけで情報は手に入るだろう。それに・・・。」

 

 それに、もしかしたら送り出した人員が、内部からの破壊工作を可能にしてくれるかもしれない。

 

 そう彼が言った瞬間。俺は彼を殴り飛ばしていた。正気なのか、この人は。

 

 ああ、確かにうまくいくかもしれない。でも、そんなことをすれば即刻そいつがスパイだとバレる。

 

 バレた人員がどうなるか。そんなことは分かり切っているだろう。この人は、人を捨て駒のように消費するやり方を提示してきたのだ。

 

「・・・君が殴った理由は分かっている。でも、誰かがやれば、それだけで救われる人間がいるだろう。その計画でうまくいけば亡くなっていた人間が、何人も救われるだろう。一人が犠牲になって二人が生き残れば勝ちだ。戦争なんてそんなものだろう。」

 

「人道に反する!少なくとも、俺はそれをやるつもりはありません!」

 

「もちろんだ。犠牲は少ない方がいい。だからこそ、このデュエルディスクは切り札になる。」

 

 ・・・は?

 

 どういうことなのだろうか。

 

「このデュエルディスク、負けた人員はある程度時間がたてば登録した座標に強制送還されるようになっている。このデュエルディスクは、その前にそのプログラムがおじゃんになってしまったものだけれど、それでもこれを直して、新たに組み込めばたとえ捨て駒になっていた人員でも、この場に戻ってくることが可能になるだろう。

 

 それがいかに有利なことか、君なら分かるだろう?」

 

 虚ろな目。虚ろな笑み。彼は、正しく壊れていた。

 

 恐らく、彼は誰よりもこの戦争という事実を重く受け止めたのだろう。そうでなければ、こんなことは言い出さない。戦略的、それでいて現実的で殺伐とした気配すら感じる。

 

 やはり、彼はリアリストなのだと、そう思わせた。

 

 そして俺は、この選択をしなければならないのか・・・。

 

「零児君。俺が君にするお願いは、人員を十人ほど用意して、アカデミアへ潜入する用意をしてほしいということだ。向こうについてからは、俺が何とかする。君はシンクロ次元に集中しろ。

 

 そっちはある意味、俺が行こうとするところよりも何が起こるか分からない。・・・君にはキツイ言い方になるかもしれないけど、こちらのことは気にするな(・・・・・・・・・・・・)。」

 

 それは、俺は知らなかったことにしろということだろう。部下が勝手にやったことだと。そう言うことにしろと。

 

 彼は、自分が汚れ仕事を負うつもりなのだ。そうはいかない。

 

「・・・そうはいきません。人員は用意します。事情も何もかもすべて話したうえで同意してくれる人員を探し出します。・・・貴方に追わせるわけにはいきません。

 

 セレナを連れて行ってください。彼女は融合次元の人間です。現地の情報は彼女が一番豊富です。戦略の足しになるでしょう。何より、貴方の隣が、彼女にとって一番安全だ。」

 

「そうかい。」

 

「ただし!」

 

 そう、ただし。

 

「内部破壊は、あくまで最終手段にしてください。私たちは一刻も早く、シンクロ次元との協力を得るために準備します。そうならないように事を進めます。・・・くれぐれも早まらないでください。

 

 状況は、まだそれをするまでに進行はしていませんから。」

 

「・・・留意した。」

 

 苦笑していた。そうだろう。俺だってこの決断は甘いと思っている。でも、やらなくていい残酷なことはしない。俺は、赤馬零王ではないのだ。彼のようにはならない。

 

 最初にアカデミアに言った日に、そう誓ったのだ。

 

「そうそう、ココの防衛の話だけど、代わりの人員は俺が用意するよ。とびっきりのを、だ。

 

 もう一つ。彼らにカードを支給するのなら、その調整のための準備期間を3日でいいから取りなさい。何ができるのかを理解している方が、その場で考えるよりも万倍はいいからね。調整には俺も手伝おう。

 

 そして最後に。」

 

 そう、前置きをして彼は。

 

「あの中に、裏切り者は間違いなくいる。覚悟しておいた方がいい。余計な忠告かもしれないけどね。」

 

 特大の爆弾を置いていった。

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 オマケ。アカデミア10人vs菊。

 

「俺は手札から竜の霊廟を発動。その効果でデッキから真紅眼の黒竜を墓地に送る。竜の霊廟は通常モンスターを墓地に送ると、デッキからもう一体別のドラゴンを墓地に送ることが出来る。巌征竜-レドックスを墓地に送る。そして手札抹殺を発動し、手札を3枚墓地へ。三枚ドロー。墓地のレドックスとブラスターを除外し、タイダルを特殊召喚。この時、除外されたレドックスの効果で、リアクタンを手札に。ブラスターの効果でブラスターを手札に加える。手札のリアクタンの効果を発動。地属性のグローアップ・バルブとこのカードを手札から捨てることでデッキからレドックスを特殊召喚。手札の風征竜-ライトニングの効果を発動。手札のブラスターとこのカードを手札から捨てて、デッキから嵐征竜-テンペストを特殊召喚する。テンペストとレドックス、レベル7二体でエクシーズ召喚、真紅眼の鋼炎竜。鋼炎竜の効果発動。エクシーズ素材を取り除き、墓地のレッドアイズを蘇生する。蘇生するのは真紅眼の黒竜。真紅眼の黒竜とタイダル。二体でエクシーズ、真紅眼の鋼炎竜。鋼炎竜の効果で破棄った素材の真紅眼の黒竜を特殊召喚。墓地のリアクタンとライトニングを除外し、墓地のテンペストの効果を発動。特殊召喚。黒竜とテンペストでエクシーズ、真紅眼の鋼炎竜。鋼炎竜の効果発動。真紅眼蘇生。墓地のグローアップ・バルブの効果発動。デッキトップを墓地に送りこのカードを特殊召喚。真紅眼とバルブでシンクロ。スターダスト・ドラゴン。エンドフェイズに超再生能力を発動。このターン手札から墓地に行ったドラゴン族の数×1枚ドローする。墓地に行ったのは手札抹殺で3枚。征竜の効果で3枚。よって6枚ドロー。手札からもう一枚発動し、更に6枚ドロー。手札制限で6枚捨てる。ターンエンド。」

 

「おい、そのモンスターの効果は・・・。」

 

「効果を使うたびに500のダメージを与える。つまり、一度効果を使えば1500のダメージ。全体破壊を持つブラックホールなんかで除去しようが、スターダスト・ドラゴンはカードを破壊する効果をこのカードをリリースすることで無効にする。

 ・・・更に言わせてもらうなら、これは|バトルロワイヤル形式だ。鋼炎竜のテキスト記載が『カードのコントローラー』とは記載されていないため、この場合、敵全員に1500ずつダメージが入ることになる。心してかかりたまえ。」

 

「ふざけんな!」

 

「実質2回の効果でそれを突破出来るわけないだろう!」

 

「簡単に出来るだろう。少なくとも俺は出来る。・・・それから、二回ではなく三回の間違いだ。」

 

「いや、三回目使ったら死んじまうだろ!」

 

「なら三回目で突破するといい。」

 

「・・・ブラック・ホールを発動。」

 

「スターダスト・ドラゴンをリリースして無効にする。」

 

「・・・モンスターをセットして、ターンエンド。」

 

「この瞬間、エンドフェイズ時にスターダスト・ドラゴンの効果で、自身を特殊召喚する。」

 

「ふざけるなぁ!突破できるわけないだろうがぁ!!俺のターン、モンスターをセットしてターンエンド!!」

 

「俺もだ!」

「俺も!」

「俺も!」

 

「そうして全員が回しても無駄だよ。手札にはシエンの間者、チューニングガム、が存在する。次のターン、手札のブラスターの効果で俺のスターダストを破壊し、チューニングガムを召喚。征竜の蘇生効果もしくは鋼炎竜でレベル7を特殊召喚し、ベエルゼをシンクロ召喚するとしよう。ベエルゼはバーンダメージを受けたときその数値だけ攻撃力をアップさせる効果があるが、それをお前らにシエンの間者で送り付ければ、一度でも効果を発動した瞬間におじゃんだ。あ、あと死者蘇生も握っています。12枚ドローすればそりゃあ引くよなぁ。」

 

「どうしろって言うんだ・・・。」

 

「笑えばいいと思うよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




菊「DRや多元魔導よりはマシだと思っている。」
凪流「持ってんの?!」

魔王版菊先輩は、某教授のだいだいみたいな感じか、ドリフターズ3巻の106ページの信長さんみたいな感じだと思ってください


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第2話

 どうも、お久しぶりです。最近FGOとFEヒーローズにはまってきた作者です。ルキナとエイリークが欲しい今日このころ。マルス、お前じゃないんだ、欲しいのはCV小林ゆうの方なんだ・・・。FGOは新宿のアーチャー当たらないし。アヴェンジャーとアサシンは来たけど。

 あ、小説ですが、なんかシリアスになってきました。あれ?こんな感じだったっけ?この小説。
 
 余談ですが、リンク召喚についてはこの小説で実装するつもりはありません。リンク召喚の所為でシンクロデッキが死んだ・・・。せっかくクリスタルウィングの米シク当たったのに・・・。



    ◇

 

 彼と出会ったのは、7年前だった。

 

 小学生のころだろうか、突然転校生が入ってくることになった。時期的におかしな時期だったからよく覚えている。6年生は終業式間近となり、5年生はその準備、そして予行演習でドタバタとしている時期だった。

 

「立浪菊です。よろしくお願いします。」

 

 それだけ言って、彼は言われたとおりに席に座り、言われたとおりに予行演習の準備に参加した。

 

 物珍しい時期の転校だったから、皆が不思議に思いながらもなんだかんだ受け入れていた。積極的に声をかけて、残りの一年間を一緒に過ごそうと仲良く声をかけに行った男子も居たし、それなりに気になったのか明るい性格の女子も、積極的に声掛けに参加していた。彼がそれを拒否するようなこともなく、特に何事もない、ごく普通の転校生として、彼はクラスになじんでいった。

 

 でも、それからわずか一ヶ月で終業式をむかえ、始業式が始まるころにちょっとした事件が起こった。

 

 事件が起こったのは、5月辺り。そのころに私たちが行うこと、それは授業でのデュエル実習だった。それも、ただの実習じゃない。ジュニアユースに向けての、アクションデュエルの実習だ。

 

 ジュニアコースでは、アクションデュエルが制限される。安全性の高い、スポンジ製のリアル・ソリッド・ビジョンを使用し、けがの無いように行う。だが、ジュニアユースに入ると、その内容はガラリと変わってしまうのだ。ジュニア用のスポンジ製から、鉄製、アルミ製、果ては羽毛までもが再現されるのが本来のアクションデュエル。ス安心安全な素材から、数多のモンスターと共に、文字通り地を這い空を舞う、まさしく美しい、魅せる、魅了するためのデュエルに変化していく。

 

 それを、安全に慣れていくための授業。だけど、問題はそこだった。彼のディスクだけが学校の最新式のリアル・ソリッド・ヴィジョンに反応しなかったのだ。

 

「先生、デュエルディスクが反応しません。」

 

「え?」

 

 だれかが、そう驚きを口にした。先生は、半ば分かっていたかのように代替機を持ってきて、彼に差し出した。

 

 でも、それを面白がった人間はもちろんいた。貸し出されたものは、私たちが使っているディスクよりも数段古いもの。そして、それが読み込んだものが使えないということは、彼のディスクはそれよりもさらに古い、もはやアンティークと言っても差し支えないようなものだ。それを面白がって、男子たちはそれをからかった。

 

 じゃあ、それが問題だったのかというとそうではない。むしろ、彼はそれを自分で笑い話に変えていた。「あ、道理で使いにくいはずだわ。」なんて面白半分に言って、それでまた彼らの笑いを誘った。

 

 そう、そこで終わる話だった。

 

 それが面白くなかったのだろう。一人だけ、其のことで妙につついてくる男子がいた。それなりに有名な男子だった。実力もある、頭もいい。ただ性格、というよりは、空気が読めないのが少々玉に瑕な、そんな男子。

 

 悪い奴ではない。ただ、調子に乗りやすいタイプだ。それが元でよくケンカを起こしていた生徒だった。

 

 悪い奴じゃない。本当に悪い奴じゃない。でも、その男子は彼を授業中も少しずつ弄っていった。じゃれ合い程度のものだったし、それを彼も嫌がらなかったから助長したのだろう。もしかしたら、少々面白くなかったのかもしれない。自己顕示欲の強い子だったから。自分以外が目立っているのが少し気に食わなかったくらいの気持ちももしかしたらあったのかも。

 

 その男子は、彼の逆鱗に触れた。

 

 今思えば、どうして彼がキレたのかは分からない。キレた本人はそのことをなかったことにしたそうだったし、これの真相は闇の中だろう。

 

 まあ、そんな他愛もない喧嘩、私を含めた女子たちはそれを遠巻きに見ていたし、男子はそれを面白がって助長させていた程度の、本当に他愛もない喧嘩。でも、当然そんな喧嘩は先生が仲裁に入る。そして先生は、仲直りの意味も込めてデュエルでもしたらどうだと、ご機嫌取りにその二人をアクションデュエルの見本に抜擢した。

 

 子供がやることだ、大目に見て、仲直りに二人を遊ばせればそんな喧嘩なんか忘れて楽しむだろう。はたから見れば手に取るようにわかる先生の意図。それを理解したのかしないのか、彼は男子に、先生が目を離した時を見計らってこう言い放った。

 

「なあ、遊び(ネタ)本気(ガチ)、どっちがいい?」

 

 そう言って、彼は二つのデッキを持ち出した。本気のデッキと言ったほうは、何やら黒いスリーブがかかっている。何ならデッキを賭けたアンティでもいい。彼はそう言った。

 

「・・・上等じゃないか。」

 

 そう言って、男子はそれに乗るように本気の方を選択。でも、その男の子がそれを見ることはなかった。だって、彼はその本気だといったほうを早々に懐にしまい込んだから。

 

「お前相手に全力?出すわけないだろ。遊びで十分だ。」

 

 遊びさ、本気でやるわけないじゃん。彼はそう言って、貸し出された型番の古いデュエルディスクに差し込んだ。それだけ舐められたら、どんな人間だって怒る。実際、周りにいた彼に同情的だった生徒まで、彼に牙を向け始めた。

 

 だが、彼の言葉が正しかったことを、数十秒後には理解することになる。

 

「魔法発動、ダーク・フュージョン。手札ののカードを刈る死神と、ヴェルズ・ヘリオロープで融合する。出でよ、E-HEROダーク・ガイア。」

 

 現れたのは、攻撃力3330という、中途半端なステータスを持ったモンスターだった。先ほどから出てきていたのは、1950や、1610。そして、1380と中途半端なステータスを持ったモンスター達。成程、ネタとはこういうことを言っていたのかと即座に理解できた。

 

 だが、相手の場にはマグネット・バルキリオンがいる。攻撃力は3500。攻撃力の足りないモンスターを召喚しても意味はない。なにかのパンプアップをするのかと思ったが、そう言うそぶりは見せなかった。

 

「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 

「俺のターン、ドロー!マグネット・バルキリオンで攻撃!」

 

「罠発動、銀幕の鏡壁!このカードは、相手が攻撃してきたモンスターの攻撃力を半減させる!」

 

 そうか、銀幕の鏡壁。あれがあるから、あえて攻撃力の低いモンスターにしたのか。カウンターを仕掛けて、ダメージを増やすために。万が一、もっと攻撃力が高いモンスターを出されたりしても、このカードがあるのなら少なくとも一ターンは持つ。

 

 そして、相手のミスを誘発させたことで、心理的にも一歩上を行った。一瞬、そしてたったの一手。それだけで、状況は圧倒的に覆ったのだ。幸いにも、ダメージ自体はさっき彼が発動していた一時休戦の効果で守られていたが、がら空きのフィールドにそんなアドバンテージなどあってないようなものだろう。

 

「死者蘇生を発動!甦れ、マグネット・バルキリオン!守備表示!ターンエンド!」

 

 ああ、またバルキリオンがやられに行く。それが、私には理解できてしまっていた。

 発動するのは、次のターンにするべきだった。もしくは、あれを分解するべきだった。それが、理解できてしまう。守備表示で出したとしても、それをたやすく突破する何かを、彼は持っているのだ。それが、私にはわかった。

 

 だって、彼の顔は、あまりに余裕に満ち溢れていたのだから。

 

 ドローフェイズ、スタンバイフェイズ、銀幕が破壊され、メインフェイズ。彼は、二枚の魔法カードを発動した。

 

 振り出し。手札を一枚コストにすることで、フィールドのモンスターをデッキトップに戻す魔法カード。そして、もう一枚は・・・。

 

「本当のマグネット・バルキリオンの使い方を教えてやろう。ダーク・コーリング。ダーク・フュージョンで行う融合を、墓地と手札からモンスターを除外することで行う。融合するのは、墓地のダーク・キメラと手札コストで墓地に送った、俺のマグネット・バルキリオン。」

 

 融合するのは、さっきも出てきたダーク・ガイアだろう。そして、その攻撃力は3500と1610を合わせて、5110となる。

 

 また、中途半端な攻撃力を持ったモンスターだ。ここまでされたら、相手のデッキがどんなものなのか嫌でも理解できる。あれはたしかに、遊ぶための(ネタ)デッキだ。

 

「ダーク・ガイアで相手にダイレクト・アタック。攻撃宣言時、伏せカードオープン、収縮。」

 

 収縮、それは、攻撃力と守備力を半減させるカード。5110となった数値が、2555となった。ライフは4000から削られ、数値は1445となる。今までデュエルをやってきて、ライフがこんな数値になったのを見るのは初めて。まあ、その攻撃ももう一体のダークガイアで攻撃されて、消え去ることになるが。

 

 決着、それも圧倒的なものだ。片方のライフは一切削られず、それに対して相手側は終始かき回されて何もできずに終わっている。

 

 男の子は泣いていた。それでも、デュエリストとして言ったことは守ろうと、負けた子はデッキを彼に差し出した。それに対し、彼はすっきりしたからいい、と受け取りを拒否した。こっちも悪かった、という謝罪も含めて。

 

 ただ受け取りを拒否しただけならまだいい。だけど、彼の表情と、そして言動。まるで、敗者に興味ない(・・・・・・・)、だからデッキにも興味はないと言わんばかりのその様子。謝るからどこかに行ってくれとでも言っているかのようだった。

 

 その様子に、あの子は耐えられなかったのだろう。早々に涙を隠して、どこかに行ってしまった。先生も、その子を追いかける。この場には、先ほどのデュエルに圧倒されていた私たちと、張本人である、彼だけ。その彼は、何で逃げたのが分からない、といった風だった。

 

 その様子に、しびれを切らしたのだろう、また別の男児が一人、彼に突っかかっていった。

 彼の顔には覚えがある。刀堂大牙、大太刀堂という、ここから少し離れたところにある剣道道場の跡取り息子。本人も未だ1級でありながら、既に二段持ちの中学生を倒すくらいの実力者。私も少し剣道は齧ったが、彼の実力はかなりの物だった。

 

 あの様子、おそらく気付いたのだろう。彼が、対戦相手の事なんて途中から見ていなかった(・・・・・・・)ことを。あの様子、肝心の本人は気づいていないかもしれないが、あれは以下の面白い盤面を作れるか、という遊びになっていた。対戦相手なんか、デコイ同然に考えていたのかもしれない。そのことを言われて、ようやく彼は気づいたのだろう、彼はこういった。

 

「ああ、そういう風に受け取ったのか。悪いことをした。」

 

 何事もないように、彼はそう言った。

 

「ごめん、悪かった。いや、素直にすっきりしたからもういいよ、という感じで言ったつもりだったんだけど・・・。悪いことしたなぁ。」

 

 何事もなかったのよう。実際、その言葉でクラスの半分以上は納得していた。いや、それで納得しなかったのはおそらく私と、そして大牙。

 

「ごめん、刀堂。そんなつもりは本当になかったんだ。」

 

 そう言うが、とてもそれに納得できるとは思えない。彼のデュエルが、あの子のデュエリストとしてのプライドを著しく傷つけたのには変わらないんだから。

 

「あ~、俺、デュエリストじゃないからその辺分からないんだよなぁ。だって、これって所詮ゲームじゃん。こんなんで傷つくなんて思ってもなかったんだわ。」

 

 デュエリストじゃない。彼はそう言った。そうか、違和感の実態はそれだったのか。

 

「じゃあ、もしお前があんなデッキで遊ばれても、お前はなんも思わないのか!」

 

 大牙が激昂する。そう、彼のデュエルはまるで人を弄ぶようだった。それでいて、彼を見世物にするようなデュエル。エンターテイメントの皮を被った蹂躙劇。それがあのデュエルにふさわしい言葉だ。

 

「思わない。だって、こういうカードはこういう風に遊ぶためにできている。この盤面を突破できなかったのは、単に実力不足なだけだろ?それが嫌ならバックを破壊すればよかったし、モンスターの除去カードを積んでいたら普通に勝てる範囲だ。」

 

 大牙の異に、彼は反論する。実力不足。確かにそうかもしれない。勝てないものに挑みこんだ大馬鹿者。そんなものはただ負けに行くだけだ。

 

 互いが互いの言い分がある。片方は、デュエリストとして。そして片方は、ゲームプレイヤー(・・・・・・・・)として。それぞれがそれぞれの言い分がある。

 

 だけど、デュエルを見世物のようにし、うっぷんを晴らすために使ったのは、いくらなんでも許せるものじゃない。それは、大牙や私たち、デュエリストとしての気持ちだった。

 

「なら、せめて本気で相手をしてやれよ!」

 

「したじゃないか。攻撃力が5000を超えたモンスターも出したし、相手の切り札を迎撃もした。」

 

「そうじゃない!本気のデッキを使えと言ったんだ!」

 

「気分じゃないデッキを無理に使わせるなよ。遊びさ、いつもいつも本気でやるわけないじゃん。

 あ、それともお前が本気のデッキでやる?もっとひどいデッキになるだけだよ?」

 

「ああ、上等だ!やってやる!」

 

 そんな喧嘩をまた彼らは始め、そして、結果はお察しの通り。

 

「影のデッキ破壊ウイルス。そして闇のデッキ破壊ウイルスが2枚。3体のグラファをリリースして、相手の手札とフィールド、発動してから3ターンの間にドローした魔法、罠、そして守備力1500以下のモンスターを全て破壊する。さて、手札を見せてくれ。」

 

 手札には、魔法カードと彼が愛用している剣闘獣のカード。剣闘獣の殆どは、守備力が1500以下だ。残る手札は無い。策もない。墓地からモンスター効果を発動することもない。

 

 先攻一ターン目で3000のモンスターを3体並べたその手腕に、相手に抵抗させることなく倒すそのタクティクスは、明らかに私たちよりも遥かに上だった。

 

「デュエリスト?ゲームにプライドを乗せてどうする。そんなものに意味はない。より楽しんだほうが勝つのがこのゲームだ。そう、ゲーム(・・・)なんだ。楽しまなくてどうする。」

 

「・・・それで、相手が傷ついてもか?」

 

「だから、悪かったと言ってるだろ?空気を読まなかった俺が悪い。

 でも、まあ全力を出してこうなるんだから、全力を出さなくても同じ結果にしかならなかったとは思うけどね。」

 

 小学生が高校生に挑みに行っても当然勝てない。彼とのデュエルはそういうものなのかもしれない。私はこの時そう思った。

 

「それとも、切り札の攻撃力を2000のラインに下げて戦ったほうがよかったか?」

 

「・・・いや、分かった。もう何も言わねぇよ。」

 

 負けたやつが言っても、負け惜しみにしかならねぇからな。大牙はそう言って引き下がった。

 

 でも、このデュエルが噂になったのだろうか。彼と、彼の中のいい下級生に、中学生が挑みかかった。結果は彼一人に撃退されたが、その後は『外道』だの『鬼畜』だの、黒い噂が絶えることはなく、彼は孤立した。

 

 私には何もできなかった。お互いがお互いの言い分があったし、彼のやったことは褒められたものでは無かったが、それでもそこまで言われる理由はない。そう思っても、彼をかばうこともできずに、何事もなかったかのように過ぎていった。見かねた大牙が彼に突っかかり、そしてあっけなく撃退されることで彼との溝を埋めようとはしていたが、その努力も空しく、小学校は終わっていった。

 

 正直、もう会うことはないだろうと思っていた。中学校、それも受験して受かった学校で彼をもう一度見かけるまでは。

 

 てっきり、公立の学校に行くものと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。まあ、あんまりな噂の数々で、小学校からそのまま上がるには居心地が悪かったのかもしれないが。

 

 それに何よりも驚いたのは、大牙がいることと、その彼らがデュエルでの推薦入学だったことだ。そこまで仲がいいようには思っていなかったが、意外と馬が合ったのかもしれない。

 

 まあ、それはいい。正直、この時私は少し気まずいなぁくらいにしか思っていなかった。だって、この時の私には、もっと他に重要なことがあった。

 

 新入生交流会。そこで、何人かと組んでデュエルを行う。私は、そこでライバルである光津香澄に挑むつもりだったから。

 

 いい機会だった。ライバルである彼女に勝つ、いいチャンスになる。この際だから、白黒はっきりつけよう。そういうつもりだったし、向こうもそうだった。

 

 互いが互いのデュエルに燃えていて、他の事なんか目に入らない。そんな時だった。

 

 彼が、推薦代表ということで、全校生徒の前で上の学年の生徒とデュエルをすることになったのだ。

 

 うちの学校は、他の学校に比べて大分変わっている。この町に居を構えるからというのもあるのかもしれないが、他の学校に比べて、幾分かデュエルが重視される。恐らく、校長が元プロデュエリストというのもあるのだろう。若い頃はそれなりに名の売れた選手だったらしい。

 

 正直、その時はああ、また彼が勝つのか、くらいに思っていた。小学校の時点で、彼のデュエルは私の知る限りで最も強い。そんじょそこらのデュエリストなら赤子の手を捻るようなものだろう。

 

 そう、その時まではそう思っていた。

 

「俺は、天帝従騎イデアを召喚!さらに、イデアの効果で冥帝従騎エイドスをデッキから特殊召喚する!そして、二体を生贄に、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアをアドバンス召喚!」

 

 彼が使ったのは、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアを軸に、家臣を利用して回すタイプのデッキだった。よく考えられていて、それでいてハラハラする場面も演出していた。

 

 だけど、私にとっては予想外なことに、彼は一転して追い詰められている。頼みのヴァンプ・オブ・ヴァンパイアは破壊され、魔王ディアボロスとアサルトワイバーンの攻撃で、ライフは風前の灯となっていた。

 

「俺の手札は0!伏せカードは一枚と進撃の帝王、ライフも残りわずか!だけど、このドローでもし俺が逆転のカードを引くことが出来たのなら、面白いとは思いませんか?さあ、最後の運試しです、先輩!」

 

 ドローフェイズ。宣言した瞬間、先輩の魔王ディアボロスの効果でデッキトップは一番下に行く。下に言ったカードは妨げられた壊獣の眠り。さっきも彼は使っていたが、一度モンスターを一掃するカード。まさしく逆転の一手だっただろう。

 

 だが、彼はそんなことを気にも留めず、周りに見えるようにカードを引いた。それは、私たちにはあまり見覚えのない魔法カード。一瞬にして、皆の顔が落胆に変わる。だけど、彼だけは不敵に笑いだした。

 

「魔法カード、悪夢再び!墓地から守備力0のモンスターを2体手札に加えます。手札に加えるのは、ジェスター・コンフィとヴァンパイア・デューク!ジェスター・コンフィの効果は皆が知っての通り、手札から特殊召喚が出来ます!伏せたカードは死者転生!手札を一枚捨てることで、墓地のモンスターを手札に戻します。私が選択するのは、当然、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア!」

 

 だが、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアのレベルは7。ジェスター・コンフィを特殊召喚して、アドバンスを狙うにも、生贄が1体足りない。

 

「ジェスター・コンフィを特殊召喚。そして、墓地の、小人のいたずらを発動!」

 

「墓地から罠だって?!」

 

「小人のいたずら。先ほど使ったのは伏せてあった時の効果ですが、実はこのカードは墓地から除外することでもう一度同じ効果を使えるのです。互いの手札のモンスターのレベルを1下げます。よって、手札のヴァンプ・オブ・ヴァンパイアのレベルは6になる!これで、問題なくアドバンス召喚できる!出でよ、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア!」

 

 彼の切り札、いや、厳密にはあのデッキの切り札が、再び私たちの目の前に顕現した。美しい銀色の髪、スタイルの良いその美貌、ソリッドヴィジョンだというのに、その姿は私たちを虜にしていた。

 

「ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアの効果発動!魔王ディアボロスをヴァンプ・オブ・ヴァンパイアに装備し、その攻撃力をヴァンプ・オブ・ヴァンパイアに加算する!」

 

 攻撃力4800となった、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア。さっきはパンプアップにパンプアップを重ねた攻撃力4300となった魔王ディアボロスでようやく倒していたが、今の相手フィールドにあのヴァンパイアを超えるようなカードはない。

 

「いけ、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアでアサルトワイバーンに攻撃!」

 

「攻撃の無力化を発動!」

 

「いいや、残念ながら進撃の帝王の効果でアドバンス召喚されたカードは効果の対象にならず、効果で破壊されない!よって、攻撃は続行!」

 

 無力化のバリアを超えて、ヴァンプ・オブ・ヴァンパイアの攻撃が炸裂した。ライフが消えて、歓声が上がる。勝者は柊菊。いつの間にか、苗字も変わっていたことを初めてそこで知った。

 

 以前、小学校で見た時とは、はるかに別人だったと思えるデュエル。後で聞いたが、このために大牙に相談に乗ってもらい、魅せるためのデッキに調節していたらしい。仲良くなっているように感じたのは、そういうことだったのだ。

 

 まあ、つまり、なんというか。彼は、どんなデュエルでも出来てしまうのだろう。相手を蹂躙するデュエル、煽るようなデュエルから、魅せる、楽しむデュエルまで。

 

 私は、その時の衝撃が忘れられなかった。どう考えても絶望的な状況から、リカバリを聞かせてたった一枚から死に札となっていた死者転生をも活かして戦うデュエル。

 

 彼と同じように戦ってみたい、彼と同じように逆転してみたい。そう思えた。まるで、映画を見ているかのような、見事な逆転劇。私の心は震えた。

 

 その後、私は香澄とデュエルをしたが、正直上の空だったと思う。香澄には案の定ぼこぼこにされ、これではだめだと思った私は、彼に話を聞きに行くことにした。

 

「柊君!私に、デュエルを教えてください!」

 

「え、ちょっと待って状況が把握できない。ヘルプ!ヘルプミー大牙!」

 

 土下座した。開口一番に土下座した。正座した時点で若干嫌な予感はしていたのか、彼は顔を引きつらせていたが、そんなことは関係ないと言わんばかりに土下座した。

 

 女の子がーとかそんなプライドは一切なく、その時の私は無我夢中だった。騒ぎを聞きつけてやってきた香澄に頭を殴られるまで私は無我夢中で彼に頼み込んでたし、彼は半泣きになりながら了承していた。

 

「まさか授業開始初日にこんなことになるとは思いもしなかったよ・・・。また居心地悪くなる。」

 

 申し訳ない。確かに初日に女の子に土下座されたら彼も対応できないだろう。まあ、そんなことにはならないようで安心した。周りの目は、彼を同情的な目で見ている。

 

「いや、君の所為だからね?!」

 

 てへぺろ。

 

「ああ、不幸だ・・・。」

 

 失礼な、そんな某幻想殺しのセリフを吐かれるようなことはしてないと思う。

 

「してる。めっちゃしてるよ志島さん。」

 

「・・・すいませんでした。」

 

 まあ、いいけど。そう言って、彼は笑った。自然と出た笑みだったのだろう。小学校の頃は見たことのない笑顔だった。

 

「それで、志島さん。」

 

「凪流でいいです。師匠。呼び捨てでも構いません。」

 

「師匠は止めて。マジでやめて。・・・分かった、凪流さん。とりあえず・・・。」

 

 とりあえず、何だろう。なんでもやります。そういう気概で彼の目を見る。ゆっくりと、彼は指を黒板に向けながらこう言った。

 

「HR。もう始まってるから、席に戻ってくれる?」

 

 私は、赤面しながら席に戻った。

 

 

 

 

 こんなこともあったな、と私は空を見上げる。まだ日は上っているというのに、空はこんなにも赤い。燃えるような赤。いや、実際に燃えているのだが(・・・・・・・・)

 

「火はいいなぁ。心が穏やかになるようだ。燃えるよう、熱いよう。ははは、まるでアカデミアがゴミのようじゃないか!」

 

 ・・・さて、横にいるのは本当に彼なのだろうか。魔王の間違いではないのだろうか。

 

「・・・いくらなんでも、放火(・・)はやりすぎじゃないですか?最終手段は最後の最後までするんじゃないって赤馬零児にも言われてたでしょう?!」

 

「だから、最終手段なんだよ。最初で最後の手段(・・・・・・・・)。それがこれさぁ。」

 

「なら、せめて私にもやらせてください!あなただけがこんなことをする必要はない!さっきから、火をつけるのもアカデミアを撃退するのもカードにするのも、全部あなたがやっているじゃないですか!」

 

 そう、私はさっきから何も仕事をしていない。しいて言えば撃退に手を貸したくらいで、その他は何もしていない。

 

 アカデミアに侵入してから20日、やったことは本当にそのくらいだった。情報を手に入れるためにアカデミア兵に化けたわけではなく、作戦のために何かを実行したわけでもない。誰かをカードに変えたわけでもない。やっていることは、見つかったときに菊と一緒にアカデミア兵をデュエルで倒すことと、スパイとなった仲間と情報を連絡することくらい。菊みたいに、誰かをカードにしたり、こうやって火をつけるような直接的なことは、何もしていなかった。

 

「お前はそれでいい(・・・・・)。お前は、あいつらをカードから救い出すことだけ考えていろ。他のことは俺がやる。」

 

 そう言って、彼は何も教えてくれなかった。その姿が、まるで知っている菊がどこか遠くに行ったような感覚になる。それとも、私は始めから菊の事なんて何一つ分かっていなかったのだろうか。

 

「さて、アカデミアよ。刈られる側に回った気分はどうだ?」

 

 そう、高らかに笑う菊を見て。

 

 私は、何が正しいのかが分からなくなった。

 




短くてすいません、次は頑張ります(いつになるかは分からないけど)

誤字多くてすいません。報告助かってます。

ダーク・コーリングの効果を勘違いしていました。訂正しました。それに伴ってバルキリオンさんがかませだったり除外で素材になったり散々な結果に・・・。まあ、電磁石とかないと(あっても)出しにくいからね、仕方ないね。


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第3話

 1年以上お待たせしました。作者本人も話の展開を忘れている小説、再開です。生存報告がてらなので短いデスガ近いうちに続きを書けたらなぁ、と思います。


 昔から、菊が考えていることはよくわからない。だけど、本質を見抜く、と言うことに関しては人一倍だというのは知っていた。

 

 ハイスペックではあるがどこか抜けていて、でも、人のことをよく見ている。自分のことに関することだけは鈍い、というのが、私たち三人の共通の認識だった。

 だから、そんな菊に対しては、外堀を埋める、と言うやり方よりも、正面切って意見を言ったほうが話は早い。それも、私たちの共通認識の一つだった。

 

「ねえ、菊。」

「凪流、なに?」

 

 今、疲れているんだよ。とでも言いたげに、私を見た。そりゃあそうだろう。さっきまで、アカデミア内部から攻撃を仕掛けて、ほぼ半日間デュエルしっぱなしだった。あれで疲れない人はいない。

 

「聞きたいことががあります。」

 

 聞きたいこと、と言いつつ、実際には詰問に近いことは、すぐに察してくれたようだ。体をこっちに向けて、私の目を見る。

 

「どうして、こんなことをしたんですか?」

「こんなことって?アカデミアのあちこちに火をつけたこと?」

 

 そうだ。ここに来て5日目。菊は大きな行動に出た。

 

 この次元についてからは、菊は情報を集めることに焦点を置いていた。アカデミアがどうしてこんなことをしているのか、それが重要だ。そう言って、初日に手にいれた協力者、麗華という少女アカデミア兵の部屋を拠点に、潜入した仲間たちを使って情報を手に入れていた。

 だが、そんなのはすぐに無意味と化した。3日もすれば、代わり映えのしない情報しか手に入らない。それが丸一日続いた瞬間、菊は意を決したかのように仲間たちにこう言った。

 

「これ以上の潜入は無意味だね。」

 

 まさか、いきなりこんなことを言われるとは思わなかった私たちは、目を点にした。

 

「今まで手に入った情報、まとめたら必要最低限しか入っていない。

 

 1、アカデミアの目的は、次元を滅ぼすものでは無い。

 

 2、アカデミアはプロフェッサーの意の下に行動する。

 

 3、アカデミアの目的は、次元を統合するものであり、それは崇高なことである。

 

 4、次元を統合すれば、この世界のデュエルが数世紀分発展する。そのためのエネルギーは、他の次元から持ってこればこの次元が身を切るようなことはしなくて済む。

 

 5、必要なエネルギーは、デュエリストから集めることが出来る。そのエネルギー源を確保するために一度人をカードにすることで人員を確保するが、後で元に戻るからいいよね、ついでに記憶もあいまいだし無問題(モーマンタイ)無問題(モーマンタイ)。」

 

 こんな程度なら来る前からだいたい察しはつくし、新しい情報は4から5の、動機に関することだけだ。菊はそう言って、他に意見があるか周りに尋ねた。実際なかった。それ以上の情報は、誰も持っていなかったからだ。

 

「こんなことをいつまで続けても埒が明かない。それは全員の共通認識、そう思って差し支えない?」

 

 それもYesだ。全員が頷いた。

 

「なら、ここで一つ提案したい。」

 

 アカデミアに攻撃を仕掛ける。菊は、そう言ってセレナと、捕虜となった情報提供者の麗華を見た。

 

「彼女たちから手に入れた情報、そしてここの地図。何がどこにあるのかは大体が把握できたと言っていい。プロフェッサーの部屋の大まかな場所から、トイレまで。その中でも、一つ注目したいのがここだ。」

 

 菊が指さしたのは、食糧庫だった。

 

「アカデミアは、陸の孤島と言っていい。本土から離れたとこにある、兵士育成施設、軍人学校。その食糧を供給しているのは、僅かに3か所。一番大きい、中央の施設がここ。もう一つが西側にある予備のレーションの保管庫、港にある運搬用の倉庫。港の船から倉庫へ、倉庫から保管庫、そして中央施設へそれぞれ運搬される。」

 

 でも、ここ2日間はそれが滞てしまっている。

 それは、初日にここに来た時に、私たちが彼らをなぎ倒したからだ。

 

「といっても、明日には運航を再開、また食糧が供給される手はずにはなっている。それは、間違いないんだよね?」

「はい、同僚から聞きました。襲撃されたことは噂程度にはなっていますが、だからと言って特別な任務が課された、と言うことはありません。」

 

 少なくとも、私が知っている範囲でですが、と言ったのは麗華だった。

 

「それについては、君たちも大分察しているんじゃないかな?あれだけの事件、20人超ものの人員が行方不明だというのに、アカデミアは意に介していない。

 つまり、この問題をプロフェッサーは問題視していない。プロフェッサーが問題視していないということは、アカデミア兵士たちも問題視していない、と言うことに近い。」

 

 それは問題だ。菊はそう言った。

 

「だから、攻勢を仕掛ける。」

 

 その言葉に、私たちの反応はそれぞれだった。おじけづくものも居れば、まあ、そうなるな、と思っていたものも、むしろやる気になっている人もいた。

 

「食糧庫を焼く、少なくとも使い物にならなくしてやる。それと同時に、港も駄目だ。兵が逃げる。逃げ場はなくさねばならない。次元を超えれるのは、あくまで一等兵で、二等兵以下、訓練生までそうそう次元移動が出来ないことは把握済み。

 つまり、大半がこのアカデミアに残ることになる。レーションの保管庫はあえて残す。警備を向こうは固めるだろうし、何より死なれたら困る。疲弊をさせても、殺してはいけない。俺たちの目的はそこにはない。」

 

 目的はあくまでカードにされた人たちの奪還。それを交渉で手に入れるためには、相手をこちらのフィールドに引き釣り落とすしかない。そう言って、菊は私たちの顔を見た。

 私たちは反対した。焼く、つまりは放火。そんなことを許してはいけない。でも。

 

「じゃあ、これ以外にあいつらを速攻で戦いのフィールドに降ろせる?」

 

 どこまで言っても数は力。俺だって、大勢に挑まれたら何もできずに終わる。向こうの勝ち方は殲滅。殲滅っていうのは、数があってできるんだ。なら、その数を最も効率的に落とせる方法は?同じ殲滅か、青田刈りか、こうやって兵糧攻めして疲弊させるしかない。それは歴史が証明してる。数人で革命は無茶だ。

 

 そう言って、菊はこの作戦を実行した。私からすれば、顔を顰めながらもこの作戦に同意した協力者たちの存在が不思議でたまらなかった。

 

 だから、こうして直接聞いている。あの事件以降、菊への追手は日に日に増している。そのたびに返り討ちにして、その度に、例外を除いてカードにし返している菊が疲弊しているのは重々承知の上で、私は聞いていた。

 

「理由は3つある。

 

 1、彼ら協力者の大半は、俺たちと同じだから。

 

 2、俺が、疲弊が目的で、あくまで殺すつもりはないことと、その気になったら食糧を提供できる状況を作り出すことに同意したから。

 

 3、俺たちが問題視されていなかったから。」

 

 解説、いる?と私を見る。もちろん、と言うと、上を見ながら言葉を選ぶように話し出した。

 

「まず一つ。ここに来ている『協力者』だけど、赤馬零児が選んだ、と言うには少し違う。」

 

 少し違う?そう首をかしげると、ふっと笑って諭すように話し始めた。

 

「あんな事件の後にすぐ立候補する、っていう人間っていうのはね、俺たちと同じあの事件の被害者関係者ぐらいのもんだ。『仕事で仕方なく参加』なんて言うことを赤馬零児は望まない。最初の『ランサーズ』だって、勧誘こそしたものの、最後は参加者の意志で判断していた。

 

 大半の人間は最初の襲撃の痕でも、対岸の火事かなにかと思って何もしない。知り合いに被害者が出ても、自分じゃなくてよかった、と考えるのが普通だよ。そんな人間は、立候補すらまずしない。

 

 単に正義感に駆られた人間だけなら、最初は躊躇する。既に被害者が出ているのが現状だし、何よりそんな薄っぺらい人間は零児くんが切るだろう。なにより、俺は実力は除外して選んで構わない、って言っているしね。

 

 対岸の火事とは考えず、正義感に駆られた、なんていう理由じゃないなんて人間は、被害者の友人か、家族、恋人なんていう親しい関係くらいだ。そんな人間でも周りに諭されて参加しないことが多いだろうし、いくらかは数合わせが入っているかもしれないけど、それでも被害者関係者が多いっていうのは、最初から分かっていた。」

 

 実際、10人中7人はそうだったみたいだしね、と彼は言った。そのうちの何人かは私も知っていた。そうなれば多数決で有利に動けるのは、多数派(マジョリティ)である被害者側の人間の意見。

 

「被害を最小限にするっていうのは、少数派(マイノリティ)側への懐柔案。事実、俺も殺す気はないし、あくまで疲弊と、敵に自分たちが殲滅する側である、という認識から、自分たちにも大きい被害が出る相手、と認識させるのが狙いだから、そこはどうでもいい。

 一番怖いのは、敵が数に任せて襲ってくること。少しでも躊躇させておきたいから、時間稼ぎのつもりもあった。さっき言った問題視されていない、っていうのもここに繋がる。」

 

 それは、なんとなく理解した。でも・・・。

 

「それだけなら、他にも方法があったんじゃ。なにもこうしなくても。」

「早急な問題だった。

 なあ、俺が赤馬零児にした質問の話はしたよな?」

 

 それは、彼が言っていた『アカデミア兵はどうして戦うのか』という疑問の話だろうか。

 

「ああ。その話。実は、いくつか麗華ちゃんに話を聞いていた時に、面白い意見を彼女が言っていて、思わず納得したものがあるんだ。」

「へ?」

 

 そんな話、いつの間にしていたのだろう。

 

「彼女に、なんでアカデミアが戦うのか、って聞いてみたら、こういってたよ。『周りが戦ってるからじゃないですか?』だって。」

 

 ・・・は?

 

「周りが『アカデミアが正しい。』と言っている。団体における大多数が正しい、っていう考えは昔から変わらない。『アカデミアに入る』と言うのが至高、という世間の風潮から、『アカデミアは正しい』という考えにシフトしていく。その正しいアカデミアに教えられ、その指示に従っていればいい思いが出来るし、孤立もしない。」

 

 でも、それだけでこんな人道に反することをするだろうか。そんな理由で、人をカードにしたり、戦争まがいのことを起こすだろうか。

 

「俺もそう聞いたら、そう言ったことには、免罪符が出来るでしょう?だって。何でもかんでも指示されてやったんだから、私たちの所為じゃない(プロフェッサーが悪い)。それも全部上が悪いと考えるから。

 

 戦っていくうちに荒んだ心は、ゲームだと思い込むことで心の安寧を保ってたんじゃないかとも言ってたよ。そもそもアカデミア側が人員的にも有利だから、そう言ったことを考えてしまう心の余裕を、対象を必要以上に痛めつける、その上でカードにするだけで留めておくことで、罪悪感を少なくさせている、もしくは思い込む。そうなるように教育しているのがこの施設で、会わないと感じた人は、ひっそりと逃げていくんだって。」

「じゃあ、笑ってエクシーズ次元を攻撃したのは?」

「笑わなきゃやっていられないんだろうさ。そもそもがそう教育されて、世間もそれを望んでいる。見事なイワシの頭(トートロジー)だ。日本の戦後教育と同じだよ。

 間違いが正しい。周りもそう言っている。だから自分もそうする。罪悪感はゲーム感覚と免罪符で軽減。正しいことを言えば迫害。そうやって選ばれぬかれたのがアカデミア兵だ。一番戦いたくない、関わりたくない集団。

 

 でもね、そういうのは自分に被害がない一心で出来たものだ。なら、彼らに最も被害がある方法を取るしかない。なんで俺が、どうして、と思わせるには、疲弊させるしかない。

 

 そのうえで、最悪自分たちが被害者になるかもしれない、と思い込ませる。この火事は、恐怖、疲弊、疑念を表面化させる手になると思ったんだ。」

 

 事実そうなった。食糧はしばらくレーションだけになることをアカデミアは余儀なくされた。娯楽の一つ、味覚を潰され、おまけに敵が、自身の脅威が自分たちの中にいることが分かっている。不用意に人員を動かせば余計に事件が生まれるかもしれないから上は動きにくいらしい。

 そうした不平不満はひっそりと現れた。そのことは潜入した工作員からも聞こえているし、協力者であった麗華からも聞いている。

 

「だから、この事件を起こした。やり方が汚いのは自覚している。でも、リターンは大きかった。

 アカデミア兵の中で、プロフェッサーの意志を至高と思わない考えが表面化してきた。俺を狙う人員の質が下がった。これは、俺を狙うことにしり込みしている人間が増えているということ。つまり、滅私奉公するような行かれた教信者が、思ったよりも少なかったことを示している。なにより、上に対する不満が出てきた。これにより、ようやく俺たちを『殲滅対象』から『敵』にシフトした。」

 

 これで、ようやく『交渉』出来るかもしれない。

 

 そう言って、菊は寝そうになる。私としても聞きたいことはまだあったが、菊の体力を考えると、これ以上のことは聞けないとも思った。

 

 そんな時だった。

 

「いたぞ、こんなところにいるぞ!」

 

 倉庫の中にこの声が響いた。コンテナの中を改造したこの部屋を、どうやら敵が気付いたらしい。私たちのところに一直線に向かってくる。

 

「菊!敵に気付かれましたよ!」

 

 だから、さっきから話してるときにも思っていたんだけど。人が真剣な話をしているんだから・・・。

 

「さっさとそのソファから降りてください!」

「無理、動きたくない。」

 

 くそ、こいつ駄目になってやがる。このソファ、菊を駄目にしてやがる。

 

「・・・まさか、その体制の中迎撃するとか言わないですよね?」

 

 そのびっくりするくらいリラックスした姿で。ほら、敵さんも困ってますよ。めっちゃ戸惑ってますから。

 

「大丈夫、あのカード化システムは、こうやってデュエルディスクを向こうに向けていれば戦意あり、と認識して作動しないから。」

「だからってもうちょっと危機感を・・。」

「リクライニングデュエル、リラクゼーション!」

「それ絶対ふざけてますよね?!」

 

 まったく・・・。

 

 これで敵に負けていないんだから始末に置けない。菊の真意を聞けても、不安になるだけだったのが、何とも言えなかった。

 




実はヒロアカ一気見してドはまりして、そっち側の小説考えてたとか言えない・・・。


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第4話

|ω・`)コソ

||д・) ソォーッ…

||д・)っ『第4話』

|彡サッ!



   ◇

 

 菊兄さんが融合次元へ旅立った後、俺たちランサーズは、シンクロ次元へと向かうことになった。

 理由としては、シンクロ次元が、敵か否かの判別。敵でなかった場合は、融合次元へ攻め込むときの協力要請。味方の人数が足りてない今、戦力の補充と、それから現状の把握が必要、とのことだった。

 

『と、言っても多分本当の狙いは他にあると思うけどねー。』

 

 兄さんはこの侵略の前に行っていた合宿の時に、そう言って笑っていた。

 

『多分、融合次元とシンクロ次元の挟み撃ちに会いたくない、っていうのが本当のところだと思うよ?あの黒咲の言うことを信じるなら、融合次元とシンクロ次元は手を結んでいる。そんな中で、融合次元の動きだけ注視することは出来ないからね。』

 

 だから、融合次元ではなく、シンクロ次元に来るのだという。

 

『零児くんはシンクロ次元を敵でない、と感じているんだろう。それでもって、協力者を得られるかもしれない、と思っている。だから、柚子の捜索の件も含めて、こっちでの行動を優先した、っというところだろう。』

『でも、それって。』

『大丈夫、零児君は柚子のことを重要視しているよ。少なくとも、狙われている、と言うことには気づいている。』

『狙われている?!どうして?!』

『敵の動かし方が明らかだったからね。』

 

 そう言うと、兄さんは簡単なマップを俺のディスクに転送した。

 

『柚子がいたエリア、そこに敵の幹部らしき人物が、柚子と接触していた。デュエルのログもあるし、音声データも幸いなことに残っていた。でも、部下らしき人物は、こっちのエリアには来ようとせず、更に戦いはアクションフィールド内で行われた。

 これから何を読み取れるか分かる?』

 

 と、言われてもてもさっぱりわからない。

 

『陽動、だよ。』

 

 陽動。兄さんは確かにそう言った。

 

『兵の大半が、明らかにこのエリアを避けて動いている。つまり、部隊は二分化されていた。敵を倒す部隊と捕獲する部隊。そして、最優先で動いていたのが。』

『柚子の捕獲・・・?』

 

 そうだ。そう言って、兄さんは俺にもわかるように説明した。

 

『俺はあの日、アカデミアに攻め込まれた日に、俺と同じ顔をしたやつと戦った。そして思い出した。ユートのことを。』

 

 ユート。ダークリベリオン・エクシーズ・ドラゴンの持ち主。そして、あいつは俺の中にいる。それが、今回の戦いでなんとなく理解したことだった。

 

『俺と遊矢。ユートが言うには、柚子とおなじ顔をしたやつがいるはずだ。そしてそれは、このアカデミアの事とは無関係ではないんだと思う。

 柚子のそっくりさん、瑠璃だっけ?彼女もアカデミアに連れ去られた。柚子はアカデミアに狙われている。なら、シンクロ次元もおんなじ存在がいるはずだ。』

『それは・・・たしかに。』

『遊矢。一つ頼みがある。』

 

 そう言うと、兄さんは今までにない真剣な顔をした。

 

俺を探せ(・・・・)。俺の事だ。柚子に等しい存在がいるならきっと、力になろうとする。そうでなくても、仲間に引き入れろ。』

 

 それって。

 

『かなり無茶ぶりじゃない?仲間になる保証、ないんだろ?』

『大丈夫だよ。』

 

 だって、俺だぜ?そう言って、兄さんは笑った。

 

『俺は、大切な存在の為なら、どんなことだってやって見せるさ。』

 

 だから、遊矢。

 

『お前のターンだ。最低でもこのデッキに勝てないようじゃ、アカデミアには勝てないぞ。』

 

 兄さんは、この鬼畜な盤面(ランク4を3体と神の宣告3枚)を作り出してなお、勝てと言ってきた。

 

『同じ事すればお前も勝てるんだよ。』

 

 いや、大分ハードル高いんですが。

 

 

 

   ◇

 

「遊矢、何黄昏てるんだよ。」

「黄昏たくもなるんだよ、だって、この状況だぞ?」

「う、それは、すまん。」

 

 沢渡が謝るが、俺がしてほしいことはそんなことじゃない。これは多分、八つ当たりなんだとは思う。

 だって、そう言いたくなる気持ちは分かって欲しい。今現在、俺たちは・・・。

 

「なんでこんなことに?」

 

 刑務所の中にいる。なんかよくわからんが速攻でぶっこまれた。

 

「いや、でも狙いは遊矢だったんじゃ。」

「沢渡、何か言った?」

「あ、はいすいません。」

 

 なんか、性格変わった?あの合宿の時か?とぶつぶつ言う沢渡は無視し、ここで再会した権現坂に、ここがどういう場所なのか大まかに聞いてみた。

 沢渡め、そう思うならあの地獄の合宿を勝ち抜いてみればいいのだ。結局、1勝すらできずに終わる、あの鍛錬。終わった時の喜びようは、あの赤馬零児とすら喜び合えるものだったというのに。赤馬零児は準備がある、とかで少ししか参加できなかったみたいだが、その短いスパンでいじめ・・・もとい訓練された様子は、少し可哀そうだった。沢渡は、新しいデッキの動きを覚えるのが先決、とかで別の講義を受けていた。

 

『いや、プロが手の内を明かしながら訓練してあげてるんだから鬼畜も何もないと思うよ?』

 

 そう言う兄さんは少し加減を覚えてほしい。勝つ、と決めた時とそこそこで組んだ、時の差が激しすぎてついていけなかった。最低限の合格ラインをクリアした暁には『源氏万歳』としか言えなくしてやる、と言っていたのは決して比喩ではないと思う。 

 

   ◇

 

俺たちはここのボスの所に行くこととなった。ここを取り仕切る、徳松長次郎、通称『エンジョイ長次郎』とのデュエルで勝利した俺は、ここのボスであるデュエリストのところに連れていかれるのだという。

 

「ここの奴らは、俺が実質的に取り仕切ってるんだがな、あいつだけは別だ。」

 

 長次郎はそう言って、彼がどういう存在なのかを教えてくれた。

 

「少し前の話だ。ここのボスは俺だった(・・・・)。それがある日落ちてきたあいつがな。『ここのボスはどいつだ!』って道場破りみたいにやってきてな。俺はそいつに負け、ボスの座をそいつにくれてやった。だが、あいつはここの管理、なんて屁とも思っちゃいない。ここの奴らを落伍者、とよんで、自分は看守を脅したのか、この中に立派な基地を作って引きこもりやがった。」

 

 全く歯が立たなかったよ。そう言う長次郎の言葉を、今までの俺ならば、到底信じられなかっただろう。

 だが、今は違う。兄さんが言っていた。

 

『誰かを楽しませる、そういうことに主軸を置くデュエリストは多い。特に、お前の父さんみたいなタイプだな。

 だが、そいつらは勝利を二の次にしやすい。そう言うやつらは、俺みたいに、勝利を主軸に置くやつからすれば、カモ同然だ。むしろ、勝って当たり前、とすら思う。

 厳しいようだがな、遊矢。お前が言っているのはな、相手を、そして観客を楽しませるデュエルをした上で、確実に勝つ。そんな化け物を目指す、と言うことだ。お前はお前の父さんの真似は出来ない。するべきじゃない。だから、自分のなりたいものをちゃんと見ろ、見つけろ。』

 

 なんとなくわかる。兄さんがやったみたいに、相手に何もさせない盤面を作ることは出来る。だけど、それをせずに楽しむ道を作り、そして必ず勝つデュエリスト(ヒーロー)。俺がなりたいもので、そしてその道を進んで挫折したのが、きっとさっきの長次郎なのだ。

 ただ・・・。

 

『なりたいものを明確に。そうすれば。』

 

 そうすれば、俺のようにはならない。あの時の兄さんの顔だけが、いまでも忘れられない。

 

「お、そろそろだ。」

 

 どうやら、目的地に着いたらしい。『独房』『特別房』なんて言われているところにVIP待遇。話は聞いていたが、どうやらとんでもない『ろくでなし』らしい。

 

「おい、新入りで、そして俺に勝ったデュエリストを紹介しに・・・ておわぁ?!」

「おい、ノックもせずに入るんじゃねぇよ。つい手元がくるって投げちまったじゃねぇか、落ち武者。」

「落ち武者じゃねぇ!てか、テメェ何投げてくれてるんだ!」

「コントローラーだよ、見ればわかるだろ。手元にあったのがそれなんだよ、へっぽこ徳次郎。」

「コントローラーは、投げる、もんじゃ、ねぇ!徳松長次郎だ!テメェは年配者はうやまえ!」

「やだねぇ、過去にしがみつくデュエリスト。そんなもん落ち武者呼びで十分だし、何よりそんな奴の名前なんざ呼びたくはねぇ。」

「ぐッ・・・。」

 

 長次郎が言葉に詰まった。それを見計らったのか、彼は俺に近づいてこういった。

 

「やあ、ユーゴ・・・じゃなかった。榊遊矢、そしてユートだったか。そちらはお連れさんかな?」

「え?」

 

 この人、俺の名前を知っている?

 

「ああ、アニキから聞いてないのか?」

「いや、ちょっと待って、理解が追い付かない。」

 

 なんだ、ちゃんと説明してないのか。『融合』のやつ、適当なこと言いやがって。そう独り言ちた後、改めて自己紹介を、と彼は言った。

 

「俺の名は(はやて)。話は早いほうがいい。さっさとかいつまんで話してやるから、きちんと覚えろよ?」

 

 俺は、二度同じことは言わない主義なんだ。そう言って、颯さんは、『シンクロ』の兄さんは笑った。

 

 

 

   ◇

 

「行ったのか?」

 

「ああ、行った。ここに戻ってくることはねぇだろう。

 俺の知ることは全て伝えた。ロジェの事も教えたし、柚子の現状も伝えてある。

 やり残したことはもうないよ。」

 

「本当にいいのか?」

 

「くどいぞ?お前が提案したんだろ?つか、説明するならきちんと全部説明しろ。二度手間になる。そう言うのは、俺が一番嫌いなんだ。適当言いやがって。俺から遊矢に全部説明する羽目になったじゃねぇか。言葉が足りないにもほどがあんだよ。」

 

「・・・本当は、俺がするべきだ。」

 

「話聞いてた?言葉が足りないんだよ。まあでも、効率的にはお前が適任だ。結局、最終決戦は融合次元で行うんだろ?だったら勝手知ってるお前が行くべきだ。俺は大人しく吸収されるよ。」

 

「すまない。」

 

「よきにはからえ。・・・頼んだぜ、ユーゴとリンのこと。あいつらの子供の顔をを拝むのが、俺の楽しみなんだ。」

 

「俺もだ。だから、あいつの計画だけは止めなくちゃいけない。」

 

「オッケー、意見が一致した。さっさとやれよ。怖いんだぜ?これ。」

 

 

 

    ◇

 

 

「そろそろ、破壊活動にも限界があるな。」

「そう思うなら、菊。そろそろやめにしませんか?」

 

 私は、菊にそう提案した。彼の行為はこれで止まるものでは無いと知っているのに。

 でも、帰ってきた答えは意外だった。

 

「そうだな、もうやめよう。」

「え?」

 

 なんだよ、お前が言ったんだぞ?と彼は返すが、こちらの気持ちも考えてほしい。

 

「そろそろ、次の段階に行くべきだ。」

「次の段階?」

「ああ、第三フェーズだ。」

 

 一体何をたくらむというのか。

 

「なあに、やることは簡単だよ。」

 

 そう言うと、私の肩をぽん、っと叩いて。

 

「ちょっと俺が自首してくるだけだ。」

 

 

 

 

 その言葉の理解を、全私が放棄した。

 

 




シンクロ次元編、完!


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第5話

水着イベ最高。

武蔵最高。カーミラさん最高。沖田も、北斎も、乳上も、メルトも最高!

・・・あれ?誰か忘れてない?


 自首。意味、犯人が自ら犯した犯罪について、自発的に捜査機関に名乗り出ること。

 

 この場合、犯人は菊で、罪状はこの騒動の混乱を引き起こした張本人であることと、多数のアカデミア兵をカードにしたことだろう。名乗り出る調査機関、はこの場合、敵であるアカデミア、ということでいいだろう。

 

 ・・・うん。どうしてそうなった?

 

「つーわけで、とりま全員集めよっか。これからのことをあらかじめ伝えておかなきゃいけないしねー。」

「いやいやいや。」

「んん?なんかあった?」

 

 なんかあった?じゃないわ。そんな軽く答えるんじゃないわ。

 

「分かってる。説明が欲しいんだろ?それについてはもちろんする。だけど、全員に俺の意見を伝えなきゃいけない。だったら二度手間じゃないか。

 ある程度の概要は伝える。でも、説明、と言うことなら全員が揃うまで待ってくれ。」

 

 それは、・・・そうかもしれないが。でも。

 

「だから、とりま全員で集まるぞ。こっから先の方針が、それで決まるからな。」

 

 そういうことではないのだ。私が言いたいのは、説明してほしい、と言うことだけではないのだ。

 

 なんというか、どうしようもない不安が、私を襲った。菊の発言で、私の背筋が一瞬で凍った。

 

 もしかしたら菊は、なにかとんでもないことをしようとしているんじゃないか。そんな不安で胸がいっぱいになる。

 

 どうして私に話してくれないのか、私に話せばまずいことでもあるのだろうか。

 

 どうして、私を戦いの渦中に放り込もうとしないのか。私が、そんなに頼りないのだろうか。

 

 どうして、どうして、どうして。そんな気持ちで胸がいっぱいになる。

 

 でも、そうだ。私がやるべきことは、きっと。

 

 きっと、あなたを止める事なのかもしれない。私は、そう感じた。

 

    ◇

 

「アカデミアに、投降する。」

 

 菊の第一声はそこから始まった。

 

「どうして?!」

 

「そうだ、状況は圧倒的に有利だ!敵は混乱し、指揮系統は復旧作業に追われてててんてこ舞い。かなりの時間、潜入することが出来たし、なにより状況的に俺たちが紛れ込んでいてもほぼバレない。

 これ以上ないくらいにいい状況だ!その状況で降伏するなんて、俺は出来ない!」

 

 菊は、黙ってその意見を聞いていた。無理もない。私だってそう思う。伝達係としてやっていた仕事の際、彼らがうまく紛れ込んでいることも知っていた。

 皆が落ち着いたころを見計らって、菊が口を開いた。

 

「言い方が悪かった。降るのは俺だけだ。」

「それこそなんでだ!あなたは、お前は!この状況を誰よりも臨んだんじゃなかったのか?!」

 

 更に皆が殺気立った。これ以上、下手なことを喋ればそれこそ、菊が(・・)カードにされかねないほどに。

 

「落ち着いて聞いてくれ。今だからこそ、なんだ。」

 

 その発言に、今度こそ、今度こそ彼らは静まり返る。分かったのだ。菊が、何の考えもなしに言いだしているわけではないということを。

 

「・・・今のアカデミアは、手をこまねいている。俺たちの存在に、だ。」

 

 ああ、それはそうだ。ここ数日、下手をすれば数週間ほど、彼らは私たちの存在に手を焼いていた。

 

「まず、今まで潜入がばれなかった理由はなんだ?」

「それは。」

「相手に余裕がないから、ですか?」

 

 正解だ。菊は私にそう言った。

 

「相手には、余裕がない。正確には、心のゆとりがない。無理もない。食糧庫が焼かれ、あちこちではアカデミアの思想に疑問を持つ不穏分子が表層化した。食糧がギリギリの中で、俺たちが次に宿舎を焼き払ったことで、彼らは休息、安寧の時間すら失われた人間すらいる。」

 

 もっとも、これらは全て俺たちがやったことだが。そう菊は続けた。

 

「繰り返す。彼らには余裕がない。俺たちがやった、正確には俺がやったこと、と言うのは今や下級兵にすら伝わっている。明確な敵だ。目の前のことに取られて、内部に意識を割く余裕がない。だからこそ、一人一人のパーソナルチェックを行わず、目下の問題である、俺を始末しようと躍起になっている。全てではないが、これが今、君たちが潜入できている一因であることには間違いはない。」

 

 全ての人員が、菊の言葉に耳を貸し、研ぎ澄ませていた。一言一句漏らさぬよう。

 菊の怖いところはこういうところだ。至極真面目なことを話すとき、誰もが彼に耳を澄ませてしまう。注視してしまう。これは、一種のカリスマ、とでも言えばいいのだろうか。

 

「だが、問題が起きている。気付いたのは、二日ほど前だ。」

 

 二日前。そのことに、私は引っ掛かりを覚えた。確か、菊があれをしなくなったのも(・・・・・・・・・・・)

「現在、アカデミアは俺たちを問題視しないよう(・・・・・)にふるまっている。理由は簡単だ。オベリスクフォースでは、俺の相手が出来ない、と言うことを悟ったからだ。」

「なんで、そう思うんですか?」

「明らかに追手の質が下がったからな。」

 

 協力者の彼の発言に、間髪入れずに答えを返した。

 

「三日前まで、あいつらは躍起だった。俺に対しての追手は昼夜問わず行われ、流石の俺も消耗していた。一時期は姿を隠し、休息をとるか、何処かの部屋に陣取って、籠城するかまで考えたんだ。」

 

 実際、菊は疲れていた。あの人を駄目にするソファで、一日中寝転がっていたい、なんて話すくらいには。

 

「だが、二日前、追手の実力が明らかに下がった。」

 

 そのことに違和感は、確かに覚えた。このことには、私も同意できる。

 

「そこで、一度彼らの素顔を、こう、仮面をはぎ取ってみてみたんだがな。」

「どうなった?」

 

 ・・・このことは、私もあまり話したくない。敵の狙いは、明らかだったから。

 

「明らかに幼い(・・)、多分14歳前後の兵士だった。」

 

 それを言った瞬間、一部のメンバーから殺気立った。それもそうだ。だって、明らかな捨て石だったからだ。

 

「ガタイのいいやつを選んだんだろうな。一目見ただけじゃ分からなかった。あの仮面は、素顔を隠すにはちょうどいいからな。大方、表向きには俺を捕獲する動きを、内部に対してアピールしておきたかったんだろう。明らかな時間稼ぎだ。でも、それをする、と言うことは。」

「敵の何かしらの狙いが、佳境に入った可能性がある、と言うこと。」

「それだけじゃない。充分だった、というのもあると思うんだ。」

「充分。」

 

 ああ。だって。

 

「新米兵が居なくなるのと同時に、俺がどこにいたのか把握できるわけだからね。」

 

 それは、それは。

 

「捨て石、いや、それ以下だ。勝てるかもしれない、くらいで送り出すのと訳が違う。明らかに、そいつらの人生を蝕む。いや、もしかしたらそう言う認識すらないのかもしれない。

 そうだね、生贄だ。犠牲、と言い換えていい。本来両者は同じものだ。俺に対する、荒ぶる神様を鎮める生贄。」

 

 最低だとは思わない?その言葉で、全員が言葉を失った。アカデミアのやり口に、だけではない。その発想が出来てしまう菊にも、引いていたのだと思う。

 

「だから、いっそ荒ぶる神様として、出て行ってやろうじゃないか。」

 

 そして、その発想は、きっと。

 

「この状況は、潜入がうまくいく状況はこのままだときっと気付かない。上が冷静さを取り戻してしまう。心の余裕が出来てしまう。だから、その前に彼らの面前に、今まで見たいにひっそりと、ではなく大々的に出ていこうと思う。」

 

 きっと、私たちを御し伏せる。

 

「際限なく出てくる相手をまともに相手し続けるのは無理だ。少なくとも俺にはできない。俺にできないのなら、この中じゃ、誰にもできない。

 だから、あえて捕まる。それも、大々的に、そして捕まってやるんだ(・・・・・・・・・)、と、こちらには余裕があるように見せかける。仕方なしに捕まってやるんだ、と言う風に見せかける。捕まる瞬間に、相手の親玉を引っ張り出し、交渉のテーブルを用意させる。」

 

 交渉。それは、菊がたまにこぼしていた言葉だった。

 

「捕まる間は、おそらく俺は何もできない。その合間のことは凪流を主軸に、皆で相談しながら決めてくれ。なに、それでも君たちとコンタクトを取れるかもしれない。その時は、現状をうまく報告し、俺の提案をそちらに伝えるさ。」

 

 提案、とはずいぶん卑怯な言い方だ、と思った。この場で、もはや彼に逆らえることなどできやしない。

 

 彼の発言は、芯をとらえている。そのうえで、あえて大雑把に、阿呆でも分かるように話し、掌握している。

 

 そして、それに乗れるだけのテーブルは、用意してあるのだ。

 

 

 

「これが、俺の提案だ。なにか意見はあるかな?」

 

 

 

   ◇

 

 かくして、計画は成功した。彼は皆が集まるところに、それもプロフェッサーがいる正面に赴き、彼が捕まることで、その交渉のテーブルを用意した。

 

「このままいけば、俺も、お前たちもただでは済むまい。」

 

 いや、済まさない。彼の目がそう言っていた。

 

「停戦がしたい。そのための会席を設けろ。」

 

 そう言う菊に、誰も何も言えない。そう、あらかじめ知っていた私たち以外は。

 

「ふざけるな!!」

 

 そう叫ぶのは、オベリスクフォースの一員だった。いや。

 

「俺の仲間は、そいつにカードにされちまった!ディスクを放棄して、泣いて許しを乞うていた!横にいた俺が庇った。それなのに、お前は何と言った?!覚えているなら、答えてみろ!」

 

 あれは、私たちの仲間(・・・・・・)だ。

 

「・・・。」

「知るか、とでも言いたそうだな!それとも覚えていないのか?!だったら、俺が思い出させてやる!

 お前は、ただ『退け。』と言ったんだ。慈悲もなく、いや興味すらなく、俺をメッセンジャーにして、そいつをカードにしやがった!」

 

ああ、確かにその事件はあった。その時のオベリスクフォースは、本当のメッセンジャーはとっくにカードにされているが。この計画に邪魔だから、という、それだけの理由で菊がカードにした。

 

「お前は、今更停戦を望むのか?!そんなもの受け入れられるか!」

 

 だが、それでいい。嘘でも、それが真実に近い虚言で、彼らの憎しみを引き出す引き金(トリガー)になる。

 それを皮切りに、オベリスクフォースは一斉に怒鳴り声をあげた、咆哮を、慟哭を、そして怨嗟を。これを止めれるのは、たった二人。

 

 二人の首魁(プロフェッサーと菊)だけだ。

 

「だろうな。」

 

 よく通る声だ。プロで撮った杵柄だろうか。

 

「そうだな、もし、席を設けてくれるというのなら、この首を預けてやるよ(・・・・・・・・・・)

 2日だ。2日で全ての準備を済ませろ。その合間は、お前らの軍門に下ってやる。俺は、何もしない。これ以上、お前らをカードにすることはしないし、火をつけて回ったり、あちこちの機械を壊して回ったりしない。」

「何?」

「どうする?だめなら仕方ない。俺は破壊活動を続ける。ここにいる奴らを、出来る限りのやつらをカードにして、あのよくわからない機械の中に放り込まないぞ。ただ、お前らの目の前で燃やしてやるよ(・・・・・・・)。」

 

 その言葉で、恐怖を煽った。こいつならやる、という恐怖を与えた。それが、ハッタリであることを気取られないようにするために。

 

「・・・5日だ。」

「交渉はこれ以上は受け付けない。1日でやれ。」

「不可能だ!それだけの準備、とても・・。」

「交渉は受け付けない。俺は待たない。それまでの間、暴れてやろうか?出来る限りの人間をカードにする。これ以上言うなら、期間をさらに短くしてやる。」

「・・・5日だ。」

 

 それでも、プロフェッサーは交渉した。恐らく、多少がブラフであることを見抜いていたのだろう。

 

「2日。」

 

 だが、それでも菊は折れない。

 

「・・・・・・4日。」

「2日。」

「3日だ。2日での準備は、どうしても限界が出る。各部署や責任者を集めるには、3日以上の期間を必要とする。3日ですら急ピッチで行える、限界だ。」

「・・・いいだろう、3日だ。」

 

 そして、希望の期間を取りつけた。あらかじめ言っていた交渉の期間より少なめに言うことで意見を通りやすくするのは初歩の初歩だ。だけど、多分それだけじゃない。

 

「貴様の身柄は、捕獲させてもらう。いいな。」

「ああ、構わない。ああ、いい待遇を期待するよ。」 

 

 菊が近づき、プロフェッサーに耳打ちした。「なんてたって、俺は譲歩してやったんだからな。ほら、部下の前で恥をかかずに済んだだろう?」と、おそらく、彼はプロフェッサーにこう耳打ちした。

 こうすることで、敗北感を植え付ける。これで、すべては菊のペースだった。終始、菊のペースで行われた。普通ではありえない。恐らく、これはプロフェッサーと血縁がある、菊でしか行えないもの、なのだろう。

 

 だから、次だ。私たちは次の用意をする。そして・・・。

 

 私は、手元のデッキを見た。対アカデミア用に構築されたデッキを。とりあえず、基地に帰ったらこれを改造しなければならない。アカデミア用ではなく、菊と戦うために。

 

 いざと言うときは、私が止めなければいけないだろうから。

 

 

   ◇

 

「待遇、もう少しよくならないかねぇ?」

 

 今いる場所は、独房だった。こういう扱いをしないと、部下に示しがつかないのだろう。

 手枷はない。だが、護衛が付いている。恐らく、アカデミア兵が独断で俺を襲わないように、だろう。だが、甘いな、プロフェッサー。

 

「おい。」

「ああ。」

 

 その掛け声で、彼らは場所を離れた。彼らは多分、あえてさぼる気だ。協力ではなく、サボる。そうして、正当化することで、俺が襲われるように仕込むのだろう。

 

「まあ、いいんだけどね。」

 

 デッキはある。あらかじめ隠してある、本気用のデッキだ。後はデュエルディスクだが、まあ、これはなんとかなるだろう。その気になれば襲いに来た奴から奪えばいい。そのくらいの体力はある。

 

「おい、おい!」

 

 そんな俺に、声が聞こえた。どうやら俺を呼んでいるらしい。

 

「菊!菊だよな!」

「ああ、そうですよ。あんたは誰だ?こんなとこにいるってことは、ろくでもないヤツらしいが。」

 

 ああそうか、と彼はうなだれた。声からして男、と言うのは分かる。そして、おそらく40代くらいだろうか。

 

「ああ、お前までこんなところに来るなんて。すまない、すまない!」

「何が済まない、だよ。だれだあんた。」

 

 そう言うと、俺の事すらわからなくなったのか、と言う感じで、彼はショックを受けたようだった。だが、まあ、どうでもいい。あいつが誰であろうが、それはどうでもいい、と言うものだ。

 

「俺の名は、山茶花(さざんか)。立浪山茶花。」

 

 は?

 

「・・・大きくなったなぁ、菊。」 

 

 

 それは、たしか・・・。

 

 

 

 

 

 

「いや、誰だお前。」

「菊ぅ?!」

 

 いや、ほんとに誰だっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




武蔵来ました。刑部来ました。ナイチンゲールも来ました。カーミラ来ません。


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