起きたら某邪神に憑依してた (パラボラ)
しおりを挟む
第壱話 始まりは合衆国
懲りずにまた新作です。アイディアがあふれてます。ドバドバです。
活動報告で書いたものとは異なり、まじこいです。
まじこい面白いですよね。作者は小雪が好きです。マシュマロは嫌いです。吐き気がします。
目が覚める。と同時に感じる違和感。
目を開けて周りを見る。
森だった。
「………は?」
思わずそんな声が漏れた。それも仕方ないと思う。
だって、ベッドで寝ていたと思ったら、いつのまにか森の中に寝ていました、なんて、どう考えてもおかしい。
誘拐か、とも一瞬思ったが、それなら建物の中にいるはずだし、何より20代ニート男を誘拐するやつなんている訳ない。いたらそいつはとんでもない変態だ。
とりあえず考えてばかりでは何もわからない。俺はやっと体を起こし、そして気づく。
これ、俺の体じゃない。
否、俺の体ではあるが……昨日までの俺の体じゃない。
俺は少し寒気がした。
一刻も早くこの状況を確認しなくては。
そう思い、まず俺は自分の手を見る。
そこにあったのは、脂肪のついた俺の手ではなく―――しわだらけの老人の手。
「…………」
なぜだ。
疑問しかわかない。
ニートとはいえ、まだ20代だぞ?なのになんで一晩でこんなのになってるの?
…まさか、顔までしわくちゃになってるのか…?
俺は急いで自分の顔が見られるようなところを探す。
そして、水場を見つけた。水面なら顔が映るだろう。
俺は、恐る恐る水面をのぞき込む。
そこにいたのは―――
すごく不安そうな表情を浮かべた、銀髪赤目の、十代ほどの少年だった。
◆◆◆
しばらく呆然としていたが、上空から聞こえる鳥の声で我に返る。
そして、この状況について考える。
考えた末に、あることを思い出す。と同時に気づく。
自分が寝る前に読んだ大好きな漫画。
『史上最強の弟子ケンイチ』という、格闘技を題材にしている漫画だ。
そして、その漫画の中に一人、ある登場人物がいた。
その名は、シルクァッド・ジュナザード。
拳魔邪神、という物騒な異名をもつ、作中最強の一人である。
彼は外道で、作品の途中で死んでしまった人物だったが、俺は、この登場人物を気に入っていた。
だが、重要なのはそんなことではなく、俺の今の外見が、そのシルクァッド・ジュナザードに酷似しているということである。
……どうしてこうなった。
俺は、ゲームやアニメなど、俗世に染まった自分の脳をフル活用し考える。そして思い出す。
…そういえば、これと同じような現象を見たことがある。いや、読んだことがあると。
それは、転生。
それも、元々存在する人物として転生する、憑依というものだ。
本来ならば、空想の話。しかし、それ以外に思いつかない。
だが、ここで疑問が生じる。
そもそも転生というのは、死んだ人間が新しい生を神様などの超常的な存在から授かる、という現象のはず。
しかし、俺は死んでない。
転生のいわゆるテンプレとは、誰かしらが死にそうになっているのを助け、その代わりに自分が死に、実はそれは運命ではなく神様などのミスで、お詫びに転生する、というパターンだ。
だが、俺は誰かを助けた覚えは無いし、そもそも外に出ない。
なので、俺はおそらく変則的な転生を経てここにいるんだろう。
まあ、転生自体はどうでもいい。いやどうでもよくはないが、今は置いておく。
ここがどこか。それが一番重要だ。
とりあえず、俺がジュナザードのように動けるのかどうかの確認も兼ねて、この森を抜けることにした。
◆◆◆
結果から言うと、俺の身体能力は正真正銘ジュナザードのものだった。
全速力で走ったら予想以上に速く、木に激突してしまった。が、別に何ともなく、逆に木が折れた。
ジュナザードマジパネェ。
それと、森を抜けたらそこは平原で、どう見ても日本ではなかった。日本にこんなところはない。少なくとも俺の知ってる中にこんな風景の場所はない。
とすると問題が一つ。
言語である。
俺は一応英語なら少しはわかる。だが、それも日本国内での話。ネイティブ英語は聞き取ることすら難しいため、あまり役には立たないだろう。
となると、さっさとこの国を出ないといけないわけだが…ここがどこの国で、どの方角に日本があるのかわからない。
どこの国かだけでも、確認しなければ。
アメリカを舞台にした映画などにある、右も左も荒野しかない、終わりの見えない道路をひたすら歩く。
幸い、このジュナザードボディは無尽蔵のスタミナを持っているため、体感で数時間歩いても息切れすらしない。
だが、終わりの見えない苦行というのは、昨日までヒキニートだった俺の精神に多大なダメージを与える。
もうそろそろ休憩したくなってきたとき、道路標識らしきものを見つけた。
俺は急いで駆け寄り、それを見る。
その標識は英語で書かれてあった。
これで決まりだ。
俺の今いるここは、アメリカ合衆国。英語圏の国は多くあっても、こんな景色はないだろう。
まあ、まだここがどの辺りなのかはわからないが。
そこで、まず俺は、ニューヨークを目指すことにした。
作者のこの作品での最大の失敗は、アメリカにいったことがないことです。
よければ感想、評価よろしくお願いします。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
第弐話 カリスマEX...?
いつも2000字くらいは書きたい。
突然だが問題だ。
Q. アメリカから日本まで、交通手段は何があるでしょう?
A. 飛行機とか船とか。
大多数がこう答えるのではないだろうか。
実際俺も最初は飛行機で日本に行こうと思っていた。
ジュナザードに憑依しているってことは、ここはおそらくケンイチの世界だろうから、裏闘技場的なものもどこかにあるだろうし、金銭面についてはそんなに心配してはいなかった。
だがしかし。
今の俺では飛行機どころか、船にすら乗れない。
何故か。パスポートがないからだ。
俺は外国に行ったことがないからあまり詳しくないが、空港とかで絶対にパスポートを見られるだろう。そうなると非常に面倒なことになる。
警察に捕まったとしてもこのグレート邪神様ボディがあるからなんとか切り抜けられる。だがその後の生活に確実に支障をきたす。
暴力は避けねばならない。
俺はジュナザードに憑依したが、精神面は一般人なのだ。
そうなると、公共のものは使えない。
...本当にどうしよう。
もしかしたら海を走って渡ることになるかもしれない。
出来るかわかんないけど。
◆◆◆
とりあえず、その辺の町に着いた。
え?ニューヨーク?無理、遠すぎ。俺の精神がもたない。
さっき地図見たけどね、俺全然違うところいたわ。
アメリカ広すぎ。舐めてた。
となると、ひとまずの目標がなくなったことになる。
次はどうしようか。
今の俺の状況をまとめると、
・無一文
・パスポートなし
・知り合いもいない
...どうしよう?
と、とりあえずは金を稼ごう。
お金じゃ買えないものもあるとか言ってる奴がいたが、今の俺の状況では金が一番大事だ。欲しいものは大体買える。
ではどうやって稼ぐかだ。
これはやはり元々のプラン通り、裏闘技場とかストリートファイトとかで稼ぐしかないな。
だが、一つ問題が。
俺は喧嘩すらしたことがない。
鍛えるにしても、かなりの時間がかかるし、そもそもどうやって鍛えればいいかがわからない。
素人の俺がやっても、せいぜい体を壊すくらいしか出来ないだろう。この体が壊れるかは知らないが。
それに、確かジュナザードが使っていたのはプンチャック・シラットというインドネシアの方の武術だったが、それを俺は使えない。まあ当たり前だが。
どうやらテンプレの憑依転生者たちとは違い、俺はジュナザードの記憶や経験というものを受け継いでいないようだ。殺人の記憶もない。あるのは、前の世界で生きていた俺自身の記憶だけである。
では、それらの問題を後回しにして行動することにしよう。しかしそうしてもまだ問題がある。
肝心の闘技場の場所がわからないのだ。
人に聞けばいい、と思うだろう。だがここはアメリカ。いうまでもなく公用語は英語である。
そして俺の英語力は53万...ではなく、たぶん5くらいである。ゴミめ。
言語の壁というのはなかなかに大きいのだ。
こんなことなら英会話教室にでも行けばよかったと思ったが、まさかジュナザードに憑依してアメリカで目覚めるなんて予想できるわけなかった。
こんな感じで、問題は山積みだ。泣きたい。
さて...どうしようか?
◆◆◆
やあ。シルクァッド・ジュナザードだよ。
いろいろ考えながら適当に歩いてたら、なんか都会っぽい街に着いたよ。どこだろうね。
そんな感じで街に着いた。俺はどうやら想像以上に長く考え事をしていたらしい。気づいたら景色が変わってて驚いた。
まあいい、そんなことよりこの街だ。
かなりの都会...だと思う。アメリカの街の規模がわからないが、ここまで発展してる感じなら大丈夫だろう。
日本ではあまりないが、都会というところには必ずと言っていいほどに、闇が存在する。たぶん。
そして、このケンイチ世界の闇ならば、ストリートファイト的なのもやっているはず!きっと。
よし。まあ勝てるかどうかはやって見なければわからないが、やらないと何も始まらない。兎に角探してみよう。
......やっぱり邪神様凄いッス。
喧嘩したことなかった俺でも、適当に殴るだけで何連勝も出来ました。おかげで金ががっぽり稼げた。
それにしても、本当に裏闘技場があるとは。ただの漫画知識だったのに。それほど日本の漫画が正確だってことですねわかります。
さて、余るほどの大金は手に入れたが。
どうしようか、国籍取れるまでここにいようかな?
でも確か数年いないと取れないよな国籍って。長いな。
俺としてはさっさと日本に渡りたいんだが...
「___」
なんか英語で話しかけられた気がしないでもない。
だが残念だったな。俺に英語は通用しない。
日本語覚えて出直してこい。
「___!」
まだなんか言われてるな。面倒くせえ。
いいだろう、外国語でまくし立てられる日本の一般市民の気持ちを味わうがいい!
「あ、あの...なんでしゅか...?」
無理だった。3年くらい他人と話してなかったのがマズかったか。どもったし。噛んだし。
「なんだ、日本語話せるじゃねえか。」
見ると、そこには数人のメイドや執事を連れた、銀髪の東洋人と思われる男が立っていた。おそらく日本人だろう。
「...日本人ですか...?」
「ああ。俺は九鬼帝。九鬼財閥の総帥だ。お前、さっきあそこで闘ってただろ?たまたま俺も見てたんだよ。で、面白そうなやつだったから話しかけてみた。お前、名前は?」
やっぱり日本人か。それにしてもフレンドリーな人だ。俺は初対面の人にこんなに親しげに喋りかけられない、絶対。財閥ってことはかなり金持ちなんだろう。なんかそんな雰囲気が漂ってる。あとなんか威圧感的な何か。
名前を聞かれたので、とりあえず邪神様の名前を名乗ろう。
「......シルクァッド・ジュナザード。」
「そうか、ジュナザードか!よし、早速なんだがジュナザード。ーーー九鬼で働かないか?」
.........は?なにこれ、スカウト?ちょ、ちょっと待て。え?なぜ?財閥ってことはかなりの金持ちだよな。そんな奴がスカウト?ドッキリか?
ああ、ほら。メイドさんとか執事とかが動揺してるぞ。
ん?あれ、執事は全然動揺してないな。すごいなあの人。
「...働くって、どのように?言っときますけど、俺なんも出来ないですよ?」
「ああ、いいんだよ。俺はお前の武力を買ってるんだ。俺や、俺の子供の護衛をしてくれればいい。なに、簡単だ。お前の力ならな。」
...随分高く買われたな、邪神様ボディ。
それにしても、護衛か。あの後ろにいるメイドさんみたいな感じかな?
そういえば、九鬼財閥っていうくらいだから、日本にあるんだろうな。ならーーー
「わかりました。九鬼で働く事にします。」
「おお、そうか!じゃ、これからよろしくな!」
そう言って手を差し出してくる。握手、ということだろう。俺も手を出し、彼の手を握る。
こうして、俺は九鬼の従者となった。
帝の口調が一番難しかった。
前回あったのですが、作者の文は間違いや矛盾が多数あります。見つけたら修正しているのですが、もし見つけましたら感想欄にてお知らせください。
よければ、感想、評価お願いします。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
第参話 メイドは可愛い(世界の真理)
ちょっとずつ書いてました。キャラの口調で悩んでました。
ずいぶん長いこと待たせてしまいましたが、(待っていた人がいるのかわかりませんが)楽しんでいただければ幸いです。
何故気付かなかったのだろう。
九鬼帝という名を聞いたときに、わかっていなければならなかったのに...!
ここが『真剣で私に恋しなさい!』の世界であるという事に。
◆◆◆
どうも。ジュナザードだ。
今俺は九鬼の皆さんと一緒に飛行機ーーたぶんプライベートジェットーーに乗っている。
皆さんの威圧感がすごい。
おそらく、帝様が独断でスカウトした俺のことをまだ警戒しているんだろう。やっぱりプロなんだな。さすが従者。そこにしびれる憧れる。
それは仕方ないんだが、とにかく居心地が悪い。
仕事中私語をしないってのはわかるが、少しくらい話しかけてきてほしい。話しかけられても会話が続かないだろうけど。
ちなみに、俺はまだジュナザードの服のままだ。
九鬼の制服は日本に戻ったときにもらえるらしい。
それを聞いたとき、思わず『メイド服を着るんですか!?』とか言っちゃったけど、よく考えたら俺は執事服に決まってるよな。恥ずかしい。
そのおかげで少し俺に対する警戒がほんの少し緩んだ気がしたから、まあよかった。
それにしても、ここは『マジ恋』の世界だったのか。
ジュナザードに転生したからケンイチ世界だとばかり思ってた。
言われてみれば、闘ってたときとか観客の方からMOMOYOとかなんとか聞こえてきてたな。
その時は訳分からなかったからスルーしてたけど、そう考えてみるともしかしたら、俺が見落としていただけで他にもヒントはあったのかもしれないな。
『真剣で私に恋しなさい!』というのは、日本のPCゲームのタイトルである。
ケンイチ同様、武術が主な内容の作品だ。
ただ、ケンイチとは違って殺人などは起こらず、学園モノとでも言えばいいのか、日常的な雰囲気の作品だ。
俺はこの作品が大好きで、1日で全てのルートをクリアしたことがあるくらいだ。
そして俺が所属することになった九鬼。これは作中に登場する大企業であり、ストーリーにも頻繁に絡んでくる。
気づかなかったことが悔やまれる。
1ファンとして、すぐに気づくべきだった。ちくせう。
まあいい。これからはその九鬼の従者として、精一杯頑張っていく事にしよう!
そう決意したところで、飛行機の揺れが収まった。どうやら、もう日本に着いたらしい。長く考えごとをしてしまうのは俺の悪い癖だな。
◆◆◆
流されるままに空港から出ると何台か車が来ていて、少し恐怖を感じた。マフィアかと思った。
その車が全部九鬼の車だと言うのだから驚きだ。九鬼が大企業であることを改めて思い知った。
そして俺は車に乗せられた。これから川神に向かうらしい。
それにしても、相変わらず気まずい。今俺の隣に座っているのは金髪のメイドさん。リアルメイドマジ可愛い。
「なあ。」
おお!メイドさんが俺に話しかけてきてくれた!
ヤバい、興奮して呂律が回らない感じがする!
落ち着け、冷静になって返事をしろ、俺。
「...なんだ?」
俺のコミュ力の低さに泣いた。
メイドさんから話しかけられてそれだけしか返事出来ねえのか俺は!こんなことになるってわかってたらいろんな人と話し......てねえわ。うん、ないない。俺シャイボーイだから。
「その服...どっかの民族衣装なのか?」
......どうなんだろう。正直俺も知らん。言われてみればこの服って結構珍しいよな。シラットの道着的な何かなのか?
めちゃくちゃ気になってきた。
「...さあな。たぶんそうなんじゃないかな?」
こんな感じで大丈夫だろうか。なにせ前世では女の人と話すことなど母親以外になかったために、どう接していいのかがまるでわからない。
こんなことになるってわかってれば、もっと人と関わったのにな...
「さあなって...自分で着てるのにわからないのか?」
メイドさんに訝しげな目で見られる。
やめてくれ!そんな目で俺を見るな!
興奮するじゃないか!
このままでは俺の尊厳が危うい。
話題の転換をしなくては。
「そ、そういえば、お前の名前は?」
苦し紛れに言ったにしては上出来な気がする。
よくやった俺。
「ああ、そういえば名乗ってなかったか。ステイシー・コナーだ。これからよろしくな。」
......カメラはどこだ。
誰かカメラをくれ!早く!一秒でも早く!
まさか原作キャラだったとは。ヤベエ、心臓が破裂しそうだ。
そういや恥ずかしくてまともに顔見てなかったな。可愛いってのは察したが。ちゃんと見とけばよかった。
おっと、返事しないのはまずい。
「シルクァッド・ジュナザードだ。こちらこそ、よろしく。」
なんとかこれだけ言えた。もう俺死んでもいい。
「そうか。」
その後は、九鬼につくまでステイシーと色々話していた。
主に仕事だったり九鬼についてのことだ。
もちろん、その間ずっと俺の心臓は肋骨が弾け飛ぶんじゃないかと思うほど強く鼓動していた。
ここ間違ってるぞ!とか、このキャラこんなんじゃねーよ。などあれば感想にてお知らせください。
一応自分でも読み直してはいるのですが、至らない点が多々ありますので。
目次 感想へのリンク しおりを挟む