霊感 (キサラギ職員)
しおりを挟む

1話

 俺には霊感があるという男がいた。彼はごく普通の一般人ではあったが霊感があるといって憚らなかった。彼は自分の霊感を試すためによくないことが起こったという村へと出向いて幽霊を見ようと思った。

 彼は用意周到な性格でありとにかく準備がよかった。テント、飯盒、衣服、懐中電灯、電池、その他必要なツール類を全て整えてから村に出向いたのだ。彼は朽ち果てた建物から少し離れたところにテントを張ると村中を撮影して回った。

 怪しいところはシラミつぶしだ! 井戸、墓、廃屋、切り株、神社の廃墟、川……ありとあらゆる霊的に臭いスポットを歩いて回った。

 だが、悲しいかな、数日間滞在しても幽霊とは遭遇できなかったため、肩を落として帰宅した。

 彼が帰った後で幽霊たちはほっと胸を撫で下ろしていた。

 

 「ああいうおのぼりさんがおいでなさるから恐ろしい」

 「そうよ。除霊師でも呼ばれたら村中片っ端から昇天させられちまう」

 「写真には写らなかっただろうな?」

 「あたぼうよ」

 

 写真に撮られると大挙として人が押し掛ける現代。幽霊にも自己防衛は必要である。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。