IS ~黒き魔進~ (ふくちか)
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魔進降誕
始まり


宜しくお願いします


 

 

 

 

「……どうしてこうなった」

 

 

突然だが、俺は今誘拐されている。

姉の世界大会に無理矢理連れてこられたと思ったら、ドラマとかでよく見る変な薬を嗅がされ、気づいたら縛られてた。

 

何の大会かと聞かれたら、IS……正式名称『インフィニット・ストラトス』の大会、モンド・グロッソの決勝戦だ。

 

俺は留守番して友人の弾や数馬と遊んでいたかったが、渋る俺に構わず無理矢理連れてきやがった。

 

ハァ……、俺の人生って波乱万丈だよな……。

 

 

俺には姉の様に何か特筆するべき特徴が何もない。故に何時も比べられ、なじられ、虐められた。

 

やれ「それでも千冬様の弟なの?」とか、やれ「こんな問題も解けないのか」とか、やれ「劣等品」とか……もう数えきれないな。

 

ってか劣等品とか酷くね?俺は俺なのに、誰も俺を俺として見てくれない。

見てくれるのは、友人の弾や数馬……駄目だ数えるほどいないや。

 

姉も姉で、「お前なら出来る」だの、「何も言わなくて良い」だの録に俺の話を聞こうともしない。

 

故に俺は姉を無視し続けた。多分この大会に連れて来たのも、これを機に仲を直そうとか思っての行動だろうな。

 

ってかあの人がISなんて作らなかったら俺もこんな目には……、いやISが出来る前からもこんなことがあったからな。

 

 

 

 

「おい坊主、目を覚ましたか」

 

……と、色々考え事してたら目の前に黒い格好した如何にも「怪しい人です」なおっさんがいた。

 

それも数人。

 

「織斑千冬に優勝されちゃ困るんでな」

「家族を誘拐されたら、流石の織斑千冬も試合を放棄するはずだからな」

 

なんてどや顔で話してくるおっさん達にうんざりする。

 

とそこに、

 

「おい、大変だ!!」

 

また黒い格好したおっさんが慌てた様子で入ってきた。

何事かと思い耳を傾けたが、俺はその内容に

耳を疑った。

 

 

 

「織斑千冬が試合に出てるぞ!」

 

 

……は?

 

「何だと!?ちゃんと日本政府に伝えたのか!?」

「くそが!所詮は劣等品って事か!?」

「このやろぉ!!」

 

おっさん達はこの知らせに怒り狂ったのか、八つ当たりの如く俺を殴ってきた。

 

足で蹴られながら、鉄パイプで殴られながら、俺は頭の中で呟いた。

 

 

 

この世界は、残酷だ。

 

 

それは、俺の心が破滅した日だった

 

 

 

 

目の前のおっさん達はひたすら八つ当たりして気が済んだのか、俺の頭に拳銃を押し当てた。

俺は意識が朦朧とするなかで、おっさんの言葉を聞いた。

 

「あばよ、劣等品。恨むなら姉を恨みな」

 

そして、引き金が引かれた……

 

 

 

ドォォォォンッ!!

 

 

と思いきや、引かれる前に誰かが扉をぶち破って来たらしい。

 

 

「なっ!?奴等は!」

「逃げろ!アイツらだ!!」

「くそったれ!全部この坊主のせいだ!」

 

どうやらコイツらを追ってきたらしい。

 

 

あ……もう限界だ…。

ゴメン。弾、数馬……。

 

 

 

誰かが俺に近づく気配を感じたが、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

一夏side out

 

 

 

 

 

 

 

オータムside

 

今、私はある組織が現れたという情報を受け、ドイツに来ていた。

 

その組織の名は亡国機業(ファントム・タスク)

 

ISを違法的な事……例えばテロなんかに利用している悪どい組織だ。

 

私らはそういう風な、テロリスト等を鎮圧する組織なんだ。

 

 

 

……っと目標まで後少しだな。

 

 

私は目標の場所までたどり着くと、扉を蹴っ飛ばした。

 

 

「そこまでだ!亡国機業!」

「なっ!」

 

どうやら下っぱしかいない様子だな……。

だが、問い詰めれば奴等の構成が分かる筈。

私は部下に奴等の追跡を命じた。

 

 

すると、私の瞳にある少年が映った。

 

「なっ!こいつは……」

 

織斑一夏……スコールの資料通りなら今行われてるモンド・グロッソに出場してる織斑千冬の弟……。

 

多分織斑千冬の優勝阻止の為に誘拐したのか……。

だが、織斑千冬は大会に出てる。まさか!?

 

 

「おい!しっかりしろ!大丈夫か!?」

 

織斑一夏は酷い有り様だった。

 

体のあちこちから血を流し、今にも死んでしまいそうな体たらくなのは、医者じゃない私にも分かった。

 

「……取り敢えずは!」

 

私は出来る限りの応急措置を施し、織斑一夏をうちの企業に運んだ。

 

 

 

絶対、死なせやしねぇからな!!

 

 

 

オータムside out

 

 




IS ~黒き魔進~

一夏「俺は……誰だ……?」

スコール「私はスコール・ミューゼル」

オータム「アイツには、教えない方が良いのかもな……」


IS ~黒き魔進~ 『出逢い』


黒き追跡者はその瞳に何を写す………?


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『出逢い』

フォーミュラ・シンクロン『君もシンクロチューナーなのかい!?』
ドライブTF『お前誰だよ』


 

 

 

俺は……誰だ……

 

 

 

 

 

暗闇の中、一夏は自分に問い掛けながらその闇の中を歩いていた。

 

 

右も左も、上も下もない空間。

果たしてそこに出口があるのか?

 

 

 

 

いや、出口があったとしても自分には居場所がない。

 

自分は、家族に捨てられた。

 

 

今の一夏には姉である織斑千冬の顔すら思い出せないでいた。

 

更には、自分の名前すら。

 

そこでフッ、と自嘲気味に一夏は笑った。

 

最早誰かに必要とされてない俺が、名前を思い出してどうする?

 

もうこのまま一生この闇の中にいれば、俺は苦しまずに済むのでは?そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、天は一夏を見捨てなかった。

 

 

永久に続くと思われたこの闇に、一筋の光が現れたのだ。

 

 

一夏は、無意識にその光に手を伸ばした。

 

 

この光の先になら、一夏は新しい自分を見つけれる、そんな気がしたのだ。

 

 

 

 

 

 

そして、一夏はその光を掴んだ。

瞬間、一夏の視界が真っ白になった。

 

更に身体中を激しい痛みが襲い、一夏は悲鳴を上げた。

 

 

「っ……ぐぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

ハッと一夏は目を覚まし、起き上がる。

 

「俺は……」

 

包帯に包まれた右手を動かしながら、生きている事を実感する。

あれだけの痛みが襲ってきたというのに。

 

「よぉ、御早うさん」

 

と、呆然とする一夏に声を掛ける人物がいた。

視線を向けると、そこにはオレンジのロングヘアーの少し粗暴そうな女性がいた。

 

彼女はオータム。

一夏をここに運び込んだ張本人だ。

 

「ここは、一体……」

「うちの企業のメディカルルームだ。ま、そんなことはどうでもいい。お前、織斑一夏だな?」

「っ……織斑、一夏…………。それが、俺の名前なのか?」

「……は?」

 

初めて聞く、そんな反応を返す目の前の少年にオータムは目をぱちくりさせる。

 

「お前、まさか……」

「分からない……何も思い出せない……。自分の名前も、何もかも」

 

困惑した表情で一夏は顔を手で覆う。

その反応からして、嘘ではないとオータムは察した。

 

『厄介だな……記憶喪失か。スコールに何て言えば良いんだ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

オータムがこれからの事を考える一方で一夏は突然の頭痛に苛まれていた。

 

織斑一夏、正確には織斑という名字を聞いてからだ。

 

『織斑……俺は知っている…この名を……何故だ!』

 

その時、一夏の脳裏にある女性の顔が過った。

 

その女性は一夏を憐れむ様な顔で一夏を見ながら、

 

『ーー、お前は何故こんなにも何も取り柄がないんだろうな』

 

憐れみを込めた声音でそう呟いた。

 

 

 

ーーふざけるなっ!!

 

 

それを聞いた瞬間、一夏は怒りを爆発させた。

 

アンタは俺の事を知っていると言うのか!?

 

アンタは俺の何を知っていると言うんだ!?

 

何も知らない癖に、知っている素振りで俺を語るな!!

 

 

 

俺は、俺はーーーーっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……おいっ!」

「!」

 

怒りで頭が一杯になりかけたその時、一夏は肩を揺すられ、ハッと気がついた。

 

そこには、先程の女性ーー、オータムが心配そうに覗き込んでいた。

 

「どうしたんだ?急に黙り込んで」

「っ……スミマセン」

 

取り敢えずは謝罪をした。

 

「まぁ良いや、取り敢えず付いてこい。歩けるか?」

「いえ、大丈夫です」

 

だが、結局上手く歩けず、オータムに肩を借りたのは完全な余談である。

 

 

 

 

 

「入るぜ、スコール」

 

扉をノックした後、オータムは一夏を連れてある部屋に入った。

 

そこには、豊かな金髪に豊満な身体をもった美女が眼鏡をかけてデスクに向かっていた。

 

「その子は…………」

「例の子供だ。さっき報告した様に、記憶喪失なんだ」

 

と二人が話し込んでる最中、一夏は先程の女性に対して考察していた。

 

彼女は恐らく自分を知っているのかもしれない。

あの台詞は自分に向けたのだと。

 

と、次の瞬間、

 

「っ!」

「ほれ、ボーッとすんな!」

 

オータムに背中をどつかれ、一夏は前屈みに倒れそうになった。

 

衝撃に備えようと、一夏が目を瞑ると、自分が想像していたのとは、別の衝撃が来た。

 

「あら、駄目よオータム。この子は怪我をしてるのよ?」

「あぁ~、わりぃ。つい癖で……」

「っ!!」

 

何か柔らかい物が一夏の顔面を包んでいた。

それは先程の女性の豊満な胸だ。

 

「っ~~!」

 

それを認識した途端、一夏はバッとそれから離れる。

 

「す、スミマセン…………」

 

慌てて一夏は謝る。

だが、目の前の女性は微笑みながら、気にしてない事を伝える。

 

「良いのよ、気にしないで♪」

「はぁ……」

「それはともかく、先ずは自己紹介ね。私はスコール・ミューゼル、この企業、『フリーダム・スカイ』の代表なの。宜しくね♪」

「あ、はい。俺は……」

 

自分も自己紹介しようとするが、名前を思い出せない為、言い淀んでしまう。

 

 

「オータムから聞いたわ。あなた、記憶喪失なのよね?」

「……らしいです」

「それなら、思い出すまで別の名前を考えないとね」

「…………別に構いません」

「え?」

 

スコールとオータムは一夏を見やる。

一夏は悲しさを少し含んだ笑いを浮かべ、

 

「いつか俺の名前を思い出しても、もう俺に居場所はないんです。記憶はないのに、何故かそんなことは分かるんです。」

 

そう自嘲気に語った。

それを聞いたスコールは少し怒りながら一夏に尋ねる。

 

「…………本気で言ってるの?」

「ええ、助けてくれた事は感謝します。でももう良いんです。居場所がない俺なんか、名前があってもなくても変わらーー」

「それは違うわ」

 

スコールは一夏の言葉を遮りながら、こう述べる。

 

「人は誰でも、幸せを感じれる権利があるの。それは例え名前がない君でも、その権利がちゃんとあるのよ。私はそう思う」

「…………」

「それに君に居場所がないなら、私が君の居場所になる」

「!」

 

その台詞に一夏の表情が強ばる。

 

「もし君が記憶を取り戻しても、私は君の居場所であり続ける。約束するわ」

「…………何で、何で俺なんかの為に!」

「君は似てるの、私の弟に……」

 

スコールは慈愛の表情で一夏の頬を撫でる。

 

「だから放っておけないの。安心して、貴方は私が守るから……。だからそんな悲しい事は言っちゃ駄目」

 

最後には、一夏を優しく抱き寄せる。

一夏はその温もりに、涙した。

 

「こんな俺でも……幸せになっていいのか……?」

「えぇ、勿論」

「………っ!うぅ……」

 

だが、その涙は悲しさから来るものではない。

 

その顔にあるのは、間違いなく嬉しさだ。

 

 

 

「……うぅっ、よがっだなぁ~……」

 

その横では、オータムが涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……チェイス・ミューゼル?」

「うん、それが貴方の新しい名前よ」

 

あの後、暫くして落ち着いた一夏(とついでにオータム)は新しい名前を受け取った。

 

「ミューゼルって……」

「そう。チェイス、貴方は今から私の養子よ。だから一杯甘えても良いのよ♪」

「あ、はい……」

 

そう言って優しく微笑むスコールに一夏、改めチェイスは顔を反らして答えた。

 

「チェイス、貴方は暫く絶対安静だからちゃんと寝るのよ。分かった?」

「……あぁ」

 

若干過保護な感じを醸し出す養母にチェイスは苦笑いしながら、その部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「これで良いのよね?」

「……あぁ」

 

チェイスが去った後、スコールとオータムは会話をしていた。

内容はチェイスの事だ。

 

「まだアイツには、話さない方が良いと思うんだ……」

「そうね…………」

 

スコールは少し悲痛な面持ちでパソコンのモニターを見ていた。

 

そこには、一夏の経歴等が表示されていた。

そして、彼がどれ程の苦痛を味わってきたのかも。

 

「これを見る限りじゃ、織斑千冬はアイツの事を何にも理解してないんだな……」

「凡人の苦しみは、自分しか理解できない…悲しいわね」

 

オータムは千冬の保護能力の無さに少し憤り、スコールは本気でチェイスを心配していた。

 

 

『チェイス……これからは私、私達が貴方を守る。以前の様な思いはさせない』

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

スコール「これは私達が開発した、この世界を変えるためのシステム………」

オータム「チェイス、気分はどうだ?」

チェイス「これが、俺の新しい力………」

IS ~黒き魔進~ 「騎士から死神へ」

黒き追跡者はその瞳に何を写す………?






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『騎士から死神へ』

とりあえずヒロインはスコールさんとオータムさんは確定です


チェイスがスコールの養子になってから数ヶ月が経った。

 

怪我が完治した彼は、筋力トレーニングや運動を繰り返し、自身の肉体強化を図っていた。

 

更に、オータムと組み手を交わし、今やチェイスは一夏であった時よりも強くなっていた。

 

 

 

  

 

 

 

そんなある日の事。

チェイスは何時もの筋トレを終えて、フリーダム・スカイのISを試運転する部屋に来ていた。

 

 

「やぁチェイス君、お早う」

「お早う御座います」

 

目的はオータムの専用機を見るため。

前にダメ元で見せてほしいと頼んだ所、快く了解の意を伝えられた為、チェイスは来たのだ。

 

 

 

すると、オータムがハッチの向こう側から姿を現した。

 

「あれがオータムの……」

「そう、第二世代のIS。アラクネだよ」

「アラクネ……確かに蜘蛛らしい見た目だ」

 

成る程、とチェイスは感心する。

背中からは8本の独立した装甲脚を兼ね備えており、見た目は完全に女郎蜘蛛に相応しい。

 

とオータムはチェイスに気付き、笑顔で手を振って来た。

チェイスも苦笑いしながら手を振り返す。

 

「モテモテだねぇーチェイス君」

「……そんなことないですよ。俺なんかがモテる訳ないでしょう」

 

端正な顔つきなのにねぇ、と研究員は内心でぼやく。

 

と、ここでチェイスが調整が終わっていた量産IS、打鉄に少し触れていた。

 

 

「……これが、ISか」

 

だが次の瞬間、驚くべき事がチェイスに起こる。

チェイスが触れている打鉄が突然輝きだし、更に気づけばチェイスに装着されていた。

 

「な、な、な、何ですとぉぉ!!」

 

研究員は驚きの余り、腰を抜かしてしまう。

一方のチェイスは呆然としていた。

 

『何故、俺がISを……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、何とかオータムに解除方法を教えてもらい、チェイスは打鉄を元に戻した。

 

「しっかしビックリだぜ、まさかチェイスがISを動かすなんてよぉ」

「俺が一番驚いているんだが……」

 

取り敢えずこれからの事をどうするか、スコールの元に向かった。

(当然スコールの耳にも届いている)

 

 

「災難ね、チェイス」

「あぁ……」

 

スコールは労るような笑みでチェイスの頭を撫で、チェイスは溜め息を吐いた。

 

だがスコールは直ぐ様手を引っ込めて思案顔になる。

 

「もしかしたらチェイスなら……」

「どうか、したのか……?」

 

突然の思案顔にチェイスは首を傾げる。

それに内心悶えながら、スコールはチェイスを先導する。

 

「(あぁっ、可愛いわ……チェイス♪)チェイス、着いてきて」

「スコール……まさか……(今のチェイス、反則過ぎだろ!?あ、下着が……///)」

「(何だ、この寒気は……?)……わかった」

 

うっすら背中に寒気を感じながらも、チェイスはスコールの後ろを歩く。

オータムはどうやら心当たりがあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェイス、少し試したい事があるの」

「試したい事……?」

 

IS調整ルームに着いたスコールは一つの金庫を操作しながら、チェイスに語る。

 

鍵が電子音と共に解除され、スコールは中にあった物を取り出す。

 

「これを……」

 

スコールは取り出したそれをチェイスに手渡した。

 

「……これは?」

 

それは銀を基調とした拳銃の様なアイテムだった。

何処かバイクのハンドルを思わせ、所々に紫のラインが走っている。

だが拳銃と呼ぶには、異様に銃口が短い。

 

「ブレイクガンナー。男性でもISと互角に戦える事が可能な、ISを模して作った戦士に変身させるアイテム……そして、この世界を正す為の力」

「ブレイクガンナー……」

「だけど何故か、男性も私達女性も使えないの。理由は全く不明、だから封印してたの」

「そんなものを何故俺に……?」

 

男性も女性も使えない代物を何故自分に?チェイスはスコールの真意が読めなかった。

 

「私の勘が正しいなら、貴方はそれを動かせる……」

「勘、かよ……」

「大丈夫、私の勘は良く当たるの」

「それは本当だぜ、昔からスコールは勘が良いんだ」

 

少し腑に落ちないが、他ならぬスコールの頼み、チェイスが断る理由はなかった。

 

 

 

ISルームのカタパルトに立つチェイスは傍らにいるスコールの説明を聞いていた。

 

「起動方法は簡単よ。銃口を貴方の掌に押し付けるだけ」

「それだけで良いのか?」

「ええ」

 

取り敢えず言われた通りにチェイスはブレイクガンナーを握り、銃口を掌に押し付けた。

すると、何やらヘヴィな音楽が流れた。

 

「……!?」

「後は掌から離してトリガーを引くの」

「こうか……?」

 

上にブレイクガンナーを掲げ、トリガーを引いた。

 

 

すると、

 

 

《Break up……!》

 

 

エネルギーで出来たタイヤが現れチェイスを囲むと紫電が放出され、音楽と共にチェイスの姿がみるみる変わっていく。

 

 

そして最後に、タイヤがチェイスの体に合体する様に溶け込む。

 

 

 

「やっぱり……!」

 

 

スコールは感嘆の声を上げた。

 

 

 

 

 

そこには、異形な戦士がいた。

 

 

 

紫を基調とした装甲。

 

 

バイクのエンジン部を思わせる頭部。

 

 

鈍い光を放つオレンジの複眼。

 

 

 

全体的にバイクのエンジンを思わせるその姿は後に裏社会にとって「死神」と恐れられる事になる。

 

 

 

『……これが、俺なのか?』

 

自分の体や腕を確認するチェイス。

余りの出来事についていけてない様だ。

 

「チェイス、貴方にも貴方の取り柄が出来たじゃない」

『取り柄……』

「貴方はそれを身に纏えた。それは他の人には出来ない、それを動かせるのは世界に貴方だけよ!」

 

スコールはまるで自分の事の様に喜んでいた。

 

『スコール、所でこれの名前は……?』

「まだないわ。貴方が決めて良いのよ」

『名前……』

 

 

チェイスは暫くして顔を上げた。

 

 

『この姿での俺の名は、魔進……魔進チェイサー!』

 

 

黒き追跡者の誕生であった。

 

 

 

 

 

 

 

「チェイス、お前……それを動かせたのか!?」

『どうやらそうらしい……』

 

アラクネを纏いチェイスを待っていたオータムは驚きを隠さず、チェイスに声を掛ける。

 

『チェイス、気分は大丈夫?』

「大丈夫か?チェイス」

『ああ、問題ない』

 

軽く体を動かしながら、その性能を試す。

 

「よっしゃ!なら私がアンタの初陣を飾ってやるよ!」

『お手柔らかに頼むぞ』

 

オータムはブレードを展開し、チェイスに突っ込む。

チェイスはそれを腰を落とし構え、ブレイクガンナーで受け止める。

 

「やるじゃねぇか……!」

《break》

「は?」

『むうんっ!』

「あぐっ!」

 

ブレードの側面で銃口を押し、ブレイクモードに切り替え、ブレードを持った手を上に弾き、胴を殴り付けた。

想像以上の一撃にオータムの口から悲鳴が漏れる。

 

「なんつー威力だ……。受け続けたらヤバいな……!」

《gun》

『はっ!』

「うおっ!」

 

次にガンモードに切り替え、オータムに撃ちまくる。

 

「くそっ!」

 

それをオータムはサブマシンガンを展開、相殺する。

 

 

『そこまでよ』

 

 

 

とここでスコールからストップが掛かる。

 

 

『どうかしらオータム、チェイスの実力は?』

「とんでもねーぜ、日頃の成果が表れてるな!」

『お陰で使い方は大体分かった』

 

チェイスは魔進チェイサーの変身を解除する。

 

 

「スコール、後で話がある……」

「?ええ、分かったわ」

 

 

 

 

この後、チェイスのある発言にスコールはーーー。

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイサー『逃がさん……』

モブ「何だあのISは!?」

チェイサー『俺の名は、魔進……覚えておけ』


IS ~黒き魔進~ 『魔進 始動』



黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『魔進 始動』

お気に入りに加えて下さった皆様、ありがとうございます!


 

某国のとある研究所…………

 

「し、侵入者だ!」

「奴をISルームに近づけるな!!」

 

そこでは日夜ISに関する違法実験を行われていたが、この日に何者かの襲撃を受ける。

 

「死ねぇ!!」

 

ISを纏った部隊が侵入者に向けて一斉射撃を行うも、

 

 

 

 

《gun》

 

 

 

その者は、マシンガンから放たれた銃弾を容易く撃ち落とした。

 

「な、何ですって!?」

「こんなことって!」

『…………』

《Break》

 

唖然とする中、襲撃者は手元の拳銃を操作し、IS部隊に突っ込み殴り付ける。

 

そのスピードはハイパーセンサーを用いても、見切れない位、速かった。

 

「あぐぅ!」

「うごっ!!」

「がはぁ!……」

 

絶対防御をも越えるダメージに操縦者達は皆気を失う。

 

『…………』

 

 

襲撃者はそのまま進み、ある部屋のドアを殴って開いた。

 

 

『…………見つけたぞ』

「お、お前は!?」

 

その中にいた研究員は慌てふためくが、それに構わず拳銃を突きつける。

 

『研究所内のIS部隊は全て沈黙させた、今から俺の質問に答えろ。妙な真似をすれば……殺す』

「ふ、ふざけるなァ!誰が貴様の言うことなど!!」

 

研究員は手に持ったスイッチを押すと、その瞬間、爆発が起きた。

その研究員はISを解析して作ったスーツを着ていた為ダメージはなかった。

 

「ハハハ~!!ざまぁみ……」

 

襲撃者に対する罵りは、それ以上は出てこなかった。

 

 

何故なら、言い終わる前に眉間を目の前の無傷の襲撃者に撃ち抜かれたから。

 

 

 

倒れ伏し、そのまま動かなくなった研究員を無視し、襲撃者はモニター等もチェックする。

が、全て先の爆発で使い物にならなかった。

 

『……チッ、してやられたか』

『おいチェイス、そっちはどうだ?』

『駄目だ、データは全て吹っ飛んだ』

『そうか……じゃあ、また後でな』

『あぁ……』

 

襲撃者ーーーチェイス・ミューゼルは天井を壊し、其処から飛び去る。

 

 

 

 

 

 

後に生き残ったIS部隊はチェイスをこう呼んだ。

 

 

 

 

 

”黒い死神”ーーーと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェイスがこの様な裏仕事を養母であり、恩人であるスコールに頼んだのは数日前だった。

 

「スコール達の仕事は違法実験とかをしてる奴等を拘束するんだよな?」

「えぇ、そうよ」

「俺にその仕事を手伝わせてくれないか?」

 

チェイスのこの発言にスコールとオータムは目を真ん丸にする。

が直後、スコールは真剣な顔でチェイスに尋ねる。

 

「チェイス、私達の仕事は唯の仕事じゃないの。相手を殺す事だってあるし、自分の命が無くなる時もある……その手を血で染める覚悟があるの?私としては出来れば貴方にそんな道を歩んで欲しくないの……」

「…………俺の命はスコールに拾われた、だったらスコール達の為に死ねるなら本望だ」

「チェイスッ……」

「それに覚悟なら、ある。これに誓っても良い」

 

チャッ、とブレイクガンナーを懐から取り出す。

 

「俺にしかない取り柄で、スコールに恩返しが出来るし、オータムにも借りを返せる。そう考えれる限りは、心配はいらない」

「…………」

「勿論、死ぬつもりはないさ。こういう形以外で、ちゃんと恩を返したいからさ」

 

 

そしてその日から、チェイスは『フリーダム・スカイ』の実働部隊に配属された。

 

「良く考えると、チェイスが配属されたらあの子も喜ぶかもね」

「あの子……?」

「チェイスより前に拾った奴でな、そいつも男なんだよ。年もお前と近いし、仲良くなれるぜ、きっと」

「今は別任務でいないけどね」

 

 

 

そうして、今に至る。

 

 

 

 

「と言うわけだ、データは取れず終い……悪いな」

「すまない……」

「気にしなくても大丈夫よ、二人とも」

 

スコールは微笑みながら、二人を労る。

 

「それはともかく、チェイス」

「?」

「体に異変はない?」

 

心配そうに尋ねる。

若干過保護な養母に苦笑いしつつ、異常はないと答える。

 

「大丈夫だ、問題ない」

「そう……良かったわ」

 

そうして、チェイスを抱き寄せる。

仕事終わりには必ずされるこれに、チェイスは複雑な思いになる。

 

何せ抜群のスタイルを誇る絶世の美女であるスコールにハグされるのだ。

普通の男なら天にも昇る心地よさだが、チェイスにとっては、義理とは言え母親だ。

 

その様な感情を抱いてしまうが、相手は母親、そんなことは駄目だという葛藤が生まれてしまうからだ。

 

チェイスも立派な男なのだ。

 

『スコール、なげぇぞ!羨ましい……。私も負けねぇからな!』

『柔らかい、それに良い匂いだ……っていかん!相手は母親だぞ!』

 

オータムは羨ましそうに、スコールを見つめ、チェイスは何時もと同じく自分の煩悩と戦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同日同時間ーーー

 

「見つけたぞ!!」

「スコール・ミューゼルの事、洗いざらい吐いてもらうわよ!」

『悪いが、恩人を売る真似はしない』

「なっ!」

 

その者は目にも止まらぬスピードで、IS部隊を手に持った赤い矢の様な武器で彼女らを切り裂いて行く。

 

「きゃああ!!」

「くそッ!増援を……!」

『させるか!』

 

弓を引き、矢を空に向けて放つと、その矢は分裂し残った相手を撃ち抜いた。

 

 

 

『沈黙、完了っと』

 

 

すると、その者は何処かに連絡を入れる。

 

『僕だ……。あぁ、やはり日本政府の女性利権団体の連中だったよ。……大丈夫だよ、所詮機械に心を奪われた連中だからね。あぁ、今から帰投する』

 

その者は連絡を切ると、空へと飛び立つ。

 

 

『父さん……僕はこの力で、母さんを守り抜くよ、必ず!』

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

色川カイト「僕は色川カイト、宜しく、チェイス」

チェイス「友……俺にもかつていたと言うのか?」

オータム「良い友達だな、お前ら!」

IS ~黒き魔進~ 『友』

《メロンエナジーアームズ!》


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?



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『友』

連投で~す


でも4月からはこうもいかないんですよね…


「…………」

 

仕事が終わったチェイスは自室でベッドに寝転がっていた。

 

彼自身年頃の少年ではあるが、彼の部屋にはゲーム等の娯楽品が一切なかった。

 

あるのはデスクとブレイクガンナーの調整器具、ベッド位だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

と、ここで彼の部屋の扉をノックする音が聞こえた。

 

「空いている……」

 

チェイスは扉の向こう側の訪問者にそう答える。

すると扉が開かれた。

 

「初めまして、チェイス・ミューゼル君!」

 

そこには、自分と年が近い快活そうな少年がいた。

 

「お前は……?」

 

初めて来る同年代の来訪者に困惑する。

彼の部屋に来るのは大体スコールかオータムなので少し驚きも声に含まれていた。

 

「あぁ、僕の名前は色川カイト。宜しく!」

 

そう名乗った少年、カイトは握手を求めてきた。

 

 

 

 

 

「悪いね、急に呼び出して」

「構わない、どうせ暇だったからな……」

 

二人はあの後、軽い挨拶を済ませISアリーナに来ていた。

 

「それより、何故俺をここに……?」

「スコールさんから聞いたんだ。君は凄く強いってね、だから戦ってみたくなってさ」

「まさか、ISを……?」

「そんなのに乗ったりしないよ」

 

と、カイトは懐からドライバーの様な物を取りだし、腰に宛がう。

すると、ベルトが伸びてカイトの腰に巻き付いた。

 

そしてもう一つ、何やら錠前の様な物も取り出した。

 

 

「……じゃあ、行くよ?」

《メロンエナジー……》

 

低く抑揚のない音声が響くと、空中に何やら変な物体が現れた。

それは、果物のメロンに似ていた。

 

「…………?」

 

呆然と見守るチェイスに構わず、カイトは錠前をベルトの真ん中に装着し、錠を下ろした。

 

《ロック・オン……》

「変身……!」

 

そしてグリップを引き絞った。

 

《ソーダァ……》

 

何やら炭酸が弾ける音がしたと思うと、空中に浮かんでいた果物がカイトの頭に目掛けて落ちてくる。

 

《メロンエナジーアームズ!》

 

そう鳴り響くと、それはカイトの頭に被さった。

音楽が流れ、果物らしき物が展開し、次の瞬間には鎧となっていた。

 

「……!」

『どう?驚いた?』

 

目の前の戦士はチェイスにそう尋ねた。

当たり前だが、声はカイトの物だ。

 

『僕の父さんが残した物なんだ……。名前は斬月・真』

「斬月・真……」

『さぁ、君も速く』

「面白い……!」

 

チェイスは嬉しそうに笑い、ブレイクガンナーを取り出す。

 

「変身……」

《Break up!》

 

チェイスも同様に魔進チェイサーとなる。

 

 

カイト改め斬月・真は手に持った武器、ソニックアローを、チェイサーはブレイクガンナーをそれぞれ構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の瞬間、中央で白い武者と黒い死神が激突した。

 

『はぁ!』

 

斬月・真はソニックアローの弓を引き、矢をチェイサーに向けて放った。

 

『……ッ!』

《gun》

 

それをチェイサーは冷静に光弾で相殺する。

 

『やるね!だったらこれはどうかな!?』

 

斬月・真はソニックアローを天に向けて放った。

すると、矢が分裂し、チェイサーに襲い掛かった。

 

『……多いなッ!』

 

それを再び光弾で相殺しようとするが、いかんせん数が多いため、僅かに被弾してしまう。

 

『グッ!』

『もらった!』

 

怯んだ隙をつき、ソニックアローで斬りかかる。

 

『そう来るか……!』

《break》

 

チェイサーはブレイクガンナーをブレイクモードに切り替え、ソニックアローの刃をかわし、カウンターの一撃を胸に放つ。

 

『グァっ!……だけど只ではやられないよ!』

 

だが斬月・真は踏みとどまり、ソニックアローを空いた左手に持ち替えて、チェイサーを斬り払う。

 

『ガァッ……!』

 

チェイサーは斬られた部位を手で押さえる。

それを見逃す斬月・真ではなかった。

 

『隙だらけだよっ!』

『ちぃっ……』

 

チェイサーにジャンプで距離を詰めソニックアローで切り裂こうとするが

 

『何度もやらせるか…!』

《gun》

 

チェイサーはブレイクガンナーから放物線を描きながら光弾を放ち、斬月・真を怯ませる。

 

『うわっ!』

 

怯んだ隙にチェイサーは急上昇し、斬月・真の頭上を取り、

 

《bleak》

『はぁっ!』

『ぐぁぁ!』

 

ブレイクモードに切り替え、斬月・真を頭の上から殴り地面に叩き付ける。

 

 

 

『……っ!』

《メロンエナジースカッシュ!》

 

だが煙を突っ切ってオレンジ色の光波が様子を見ていたチェイサーに襲い掛かった。

チェイサーは警戒を解いてなかった為、直撃は避けられたものの少しダメージを受けてしまった。

 

『惜しいなー、隙を突いたつもりだったのにな~』

『倒れる寸前にエネルギーを貯めているのはばれているぞ』

『やっぱり……。死神の名に恥じない強さだよ』

『お前も中々出来るな…油断ができん』

『そう?それは嬉しいね』

 

言葉を交わしながらも斬月・真はメロンエナジーロックシードをベルト、ゲネシスドライバーから取り外し、ソニックアローにセットする。

 

《ロック・オン》

『これで決めるよ……!』

 

弓を引くと、エネルギーが高まり矢の一点に集中されていく。

 

『…………』

《Execution……!》

 

チェイサーも銃口を掌に押し付けて引き金を押し、必殺技の体勢に移る。

 

 

 

 

 

 

 

『終わりだ……!!』

《Full break!》

 

先に動いたのはチェイサーだった。

フルスピードでソニックアローを構える斬月・真に突っ込んでいく。

 

『勝つのは、僕だ!そのスピードでは躱せないだろう!』

《メロンエナジー!》

 

猛スピードにより黒い風になったチェイサーに狙いを定めてエナジーロックシードのエネルギーを貯めた矢を放った。

 

このスピードならば、他の物が視認しづらい程のものである(つまりカウンターに弱い)と予測した斬月・真の狙い通り、矢はチェイサーに命中した。

 

 

『ぐああッ!!』

 

その場で爆発が起こり、チェイサーの姿が見えなくなる。

 

『しまった!やり過ぎた……!チェイス君!』

 

まさか死んだのでは?そう思い、斬月・真はチェイサーに声を掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう終わったと錯覚したのか……?まだまだだ!』

『っ!?まさかっ』

 

煙を突き破り、そこから現れたのは、チェイサーだった。

だが所々、火花が飛び散っていた。 

 

『ムゥンッ!!』

『ガッ、ハァッ……!!』

 

完全に油断していた所への一撃を鳩尾に受けて、斬月・真は吹っ飛ばされ、アリーナの壁に叩きつけられる。

 

そして変身が解除されるのと、チェイサーが地面に倒れ伏すのもほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

 

戦闘が終わって、二人は大の字に寝転がっていた。

 

「イヤー強いね、チェイス君。完全に油断してたよ」

「お前もな……」

 

その顔は、晴れ晴れとしていた。

 

「これからは、仲間………友達として、宜しくね」

 

息を切らせながらカイトが言うと、チェイスは無言になる。

 

「友……?」

「……そうだよ?」

 

チェイスは頭を抑え、カイトに問い掛ける。

 

「俺に、友など必要ない……」

「…………いや、必要だ」

「必要では……」

「必要だ!」

「!」

 

声を荒げるカイトにチェイスは疑問を感じた。

何故、コイツは俺の事を気にしてるのか?と。

 

「スコールさんから、聞いたよ。君……記憶喪失なんだろ?」

「……あぁ」

「記憶がないのは、確かに辛いよね。でも、大切な友達の事とかも忘れちゃうのは、もっと辛い筈だよ」

「俺に、そんなものが……?」

「いるはずだよ。そして、今の君の新しい友達に、僕はなる」

「…………」

「一緒なら、きっと思い出せるよ。大切な友達の事とかさ……」

 

カイトの言葉にチェイスは苦笑いする。

 

「くくっ、とんだお人好しだな、お前……」

「チェイス君……?」

「……チェイスで構わん」

「え?」

「友同士は、そういう堅苦しいのは無しだと、聴いたが?色川」

「……君もだよ。僕もカイトで構わないよ、チェイス」

「……宜しくな、カイト」

 

 

そうして、二人は拳を合わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

チェイスにとって、初めての友。

この日を、チェイスは一生忘れる事はなかった。

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイス「ぐぅっ……!ぐああ!!」

カイト「君達は……まさかチェイスの?」

???「一夏、なのか!?」

IS ~黒き魔進~ 『過去の友』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『古き友』

因みに元々斬月・真を出す予定はありませんでした。
pixivのフォロワーさんのアイデアから生まれたのがカイト君です。




チェイスがカイトと戦って数日後、二人は休暇をもらい、外に出掛けていた。

 

理由は親睦を深める為らしいが、二人は戦って理解し合えた為、余り必要ないと内心思っていたが、それぞれの母に強く言われ現在に至る。

 

「ん~、どうする?チェイス」

「…………特にない」

 

何処に行こうか悩むカイトを他所に、チェイスはそう呟いた。

 

「……ゲーセンとか?」

「俺はそう言うのが分からん……」

「そうだよね、娯楽品一切ないもんね」

 

思い出したように、カイトは溜め池を吐く。

それを無視してチェイスは、先に歩く。

 

「ちょっ、ちょっと待ってよチェイス!」

 

カイトは慌ててそれを追った。

だがいきなりチェイスが立ち止まり、カイトは顔をぶつける羽目に。

 

「いって~……急にどうしたのさ」

 

チラッとカイトがチェイスの背中越しから覗くと、少し先に二人の少年が歩いていた。

 

年は自分達と近い様だ。

 

 

 

 

 

「ぐっ…………」

 

だがチェイスは突然小さい呻き声を上げ、頭を抑える。

 

「ど、どうしたの?彼らの事、知ってるの?」

 

チェイスの様子が少し違う感じになったのを察知したカイトは心配そうにチェイスに尋ねる。

 

「……問題ない……」

 

チェイスは無理矢理頭痛を抑え込み、前に進む。

すると、向こうの男子が立ち止まって、チェイスを凝視していた。

 

「?」

「……?」

 

カイトとチェイスが疑問に感じてると、二人の顔がみるみる驚愕に包まれていった。

 

「……一夏?一夏なのか!?」

 

赤髪でバンダナをした方の少年が、チェイスに近づき、驚愕を隠さず大声で尋ねた。

 

「……まさか、本当に一夏!?」

 

もう一人の少年も、驚きと喜びを交えた声でチェイスに近づく。

それに対し、カイトは疑問を抱く。

 

『どういう事だ?彼等は、チェイスを知っている?でも一夏って……?』

 

あれこれ模索していると、事態は急変する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぐぅっ!ぐ、ぐああああああああ!!」

 

チェイスは頭を両手で抑え、尋常ではない苦悶の叫びをあげる。

 

「チェイス!どうしたの、チェイス!?」

「お、おい一夏!!」

「だ、大丈夫か!?」

 

三人はパニックになってしまう。

だがチェイスは何とか立ち上がり、目の前の二人を見据え、呟いた。

 

「俺は…………お前たちを…………知っている、のか…………何故、お前たちが、俺の頭に…………!?」

 

途端、チェイスは倒れる。

カイトは慌ててチェイスに駆け寄る。

 

「チェイス!チェイス!…………気絶してる?でも何で……?」

 

直後、カイトは目の前の男たちを見る。

 

『彼等は、チェイスの事を一夏って呼んでた。つまり、チェイスの記憶に深く関わっている……ということか?』

 

取り敢えずカイトはその考えを頭の隅にやり、気絶したチェイスを担ぐ。

 

「お、おい!お前一夏を何処に……」

「今は話してる場合じゃないんだ。ゴメン……」

「……俺達も、手伝うか?」

「いや、大丈夫」

 

断りつつ、カイトは悩んでいた。

チェイスの記憶に関わってるこの二人を連れていくべきか。

 

少し悩んだ末、カイトはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、彼等を連れてきたのね」

「ハイ……スミマセン、スコールさん」

「大丈夫よ。彼等には、チェイスの事を知る権利があるわ」

 

あの後、チェイスは二人の少年ーーー五反田弾と御手洗数馬を連れて『フリーダム・スカイ』にチェイスを協力して運んだ。

 

「スコールさんは、チェイスの過去を知ってるんですか?」

「……ええ、一応はね」

 

スコールはチェイスが眠る部屋の前にいた弾と数馬に近づく。

 

「ごめんなさいね、お待たせして」

「い、いえ……」

「全然大丈夫です」

 

金髪の美女に話しかけられ、弾は緊張しながら返事を返すが、数馬は彼女をニュースで良く見るので、さして緊張した様子は見えない。

 

「私はスコール・ミューゼル。ここの社長、って言えば良いかしら?」

「五反田、弾です!」

「御手洗数馬です」

「弾君と数馬君ね。早速だけど、幾つか約束してほしいの」

 

スコールはドアノブを握りながら、弾達に告げる。

 

「今から話す事は、他言無用でお願いするわ。これは極秘事項なの、約束できるかしら?」

「……はい」

「……大丈夫です」

 

いきなりの事で少し同様しつつも、約束すると答える。

 

「OK……それじゃ、説明するわ」

 

ガチャリとスコールはドアノブを回し、チェイスがいる部屋の扉を開けた。

 

 

 

そこには、チェイスが苦しそうな表情を浮かべ眠っていた。

 

「コイツは、一夏、なんですか……?」

「…………そうよ、この子の本当の名前は織斑一夏。第二回モンド・グロッソで誘拐された、織斑千冬の弟……」

「「「!?」」」

 

スコールから告げられた事実にカイト達は驚愕する。

 

「やっぱり、一夏なのか……でも何で俺達の事を覚えてないんですか?」

 

数馬はスコールに尋ねた。

スコールは沈痛な面持ちでチェイスの頭を撫で、数馬の疑問に答える。

 

「この子はその時に受けた暴行、そして織斑千冬に見捨てられたショックで記憶を失ってるの……。俗に言う、記憶喪失……だから貴方達の事も覚えてないの」

「記憶、喪失……」

「そんな……」

 

記憶喪失という事実に二人は愕然とする。

 

「だけど、全てを失った訳じゃない……。断片的だけど、彼は過去の事を覚えてる。貴方達を見てチェイスが取り乱したのも、それが原因なの」

「じゃあ、思い出させる事も……?」

「可能よ」

「!本当ですか!?」

 

弾はスコールに詰め寄る。

そこには、純粋にチェイスを心配していると、感じ取れた。

 

「でも、逆に思い出さなくても、良いことだってある……。貴方達なら知ってる筈よ」

「…………」

「……そう、ですね」

 

その言葉に弾は押し黙り、数馬は苦々しい表情で呟いた。

 

「一夏は、千冬さんを越えようと必死に努力してた……。それなのに、周りの奴らは!」

「一夏を上っ面で判断して、咎めて、そして虐めてた……。千冬さんに少し劣ってる、ただそれだけで……!」

 

弾も数馬も拳を握り、悔しそうに呟く。

彼等は、一夏が必死に努力しているのを、いつも間近で見てきた。

だからこそ、彼等は一夏を全力で応援した。

 

そして、上っ面しか一夏を見ず、内面を知ろうとしない周りの人を憎んでいた。

 

それを見たスコールは少し微笑み、言葉を紡ぐ。

 

「思い出さなくても良いことがあっても、貴方達の事は、絶対に思い出させないとね」

「「え?」」

「この子は幸せだわ。こんなにも自分の事を考えてくれる人がいて。今は無理でも、明日、もしかしたら……ね?」

「スコール、さん……」

「なぁ弾……。今の一夏に俺達の記憶はなくても、今からでも、友達になれるよな?」

「…………あったり前だろ!今の一夏がチェイスって名前でも、俺達にとっては変わらねぇ!大切なダチだ!!」

 

そう熱く語る弾に反応したのか、チェイスが起き上がる。

 

 

「騒がしいぞ……何なんだ一体……」

「チェイス!大丈夫かい?」

「……あぁ、なんとかな」

 

カイトに答え、チェイスは弾達の方を振り向く。

 

「お前たちは……?」

「……俺は五反田弾!お前の友達だ!これから宜しくな、チェイス!」

「俺は御手洗数馬。弾と同じく、お前の友達だ。宜しく!」

 

そうして二人は拳を差し出す。

チェイスは呆然と二人を見ていたが、

 

「何故だろうな……。俺は、お前たちの事を、知っている気がする……。初めて会ったのにな」

「……もしかしたら、何処かで会ってるのかもな!」

 

涙を堪えながら、弾は何とか答える。

 

「こんな俺で良ければ、宜しく頼む。弾、数馬……」

「……!」

「何か懐かしいな、そう呼ばれるの……」

 

 

 

 

そうして三人は拳を合わせた。

 

 

『何処と無く、懐かしい感じだ…………悪くないな、こう言うのも』

 

誰に気づかれる事なく、チェイスは穏やかに微笑んだ。

 

 

 

この出来事を踏まえ、弾と数馬は『フリーダム・スカイ』に何時でも来れる許可が出された。

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

スコール「これは隠し通せないわね、もう……」

カイト「えっと、頑張れ?」

オータム「何かあったら、何時でも帰ってこいよ!」

IS ~黒き魔進~ 『入学前』



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『入学前』

チェイスは穏やかな顔で散歩をしていた。

 

初めて会った時は激しい頭痛に襲われたものだが、今では痛みをまったく感じない。

あるのは懐かしい友に会えた様な心地良さだった。

 

『こういうのも、悪くないな……』

 

 

 

 

 

 

 

 

ふとチェイスの目に、あるものが止まった。

 

それはIS、打鉄だった。

どうやら展示用らしい。

 

 

チェイスは直ぐに元来た道を引き返そうとした。

理由は分からないが、何やら嫌な予感がしたからだ。

 

だがそんなチェイスを仕組まれたと言っても良い様な出来事が襲い掛かった。

 

先ずはいきなり足元を魚を口に咥えたどら猫が通り過ぎた。

それに驚き足を退かした所に、向こうから大きい足音が聞こえてきた。

 

「こらーーーー!!!待ちなさい、この泥棒猫!!!!」

 

 

凄まじいパーマをかけたおばちゃんが物凄い形相で走ってきたのだ。

 

そのあまりの気迫にチェイスはたじろいでしまう。

 

 

だがたじろいだ方向が不味かった。

よりにもよってISが展示してある方に僅かだが、肩が触れてしまう。

 

その瞬間、打鉄は眩しく輝く。

 

 

 

 

 

 

気付けばチェイスはISを纏っていた。

チェイス自身は驚いてはいないが、駆け寄ってきた職員は驚きの声を上げる。

 

「君!大丈夫……って男がISを起動させてる!?」

「こ、これってIS委員会に報告しないと駄目だよね!?」

 

周りが騒然となる中、チェイスは内心溜め息をつく。

 

 

『どうしてこうなった……』

 

 

 

 

チェイスが世の不条理を嘆く中、空は相変わらずの晴天だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは隠し通せないわね…」

「すまん……」

 

溜め息をつくスコールにチェイスは頭を下げる。

 

「謝らなくても良いわ、何れはぼろが出ても可笑しくなかったもの」

「そう言ってもらえると助かる…」

 

面目ないと縮こまるチェイスの後ろから、オータムが声を上げる。

 

「けどどうすんだ?滅茶苦茶表騒がしいぜ」

 

フリーダム・スカイの表にはマスコミが大量に集まっていた。

 

「……もうあれしかないわね」

「まさか、スコール……」

「かなり不本意だけど、ね」

 

苦虫を噛み潰した表情でスコールはチェイスに、

 

「チェイス、IS学園に入学しなさい」

 

 

そう告げた。

 

 

チェイスは冷静にスコールの心情を察したのか多くは語らず、

 

「………あぁ」

 

短い返答で、肯定の意を伝えた。

 

「チェイス、本当に良いの?」

「寧ろIS学園の方が少しは安全だ…」

「へ?」

 

良く分かっていない様子のカイトにスコールは詳しく説明した。

 

「IS学園に入学すれば、あらゆる国家は干渉できないわ。つまり誘拐や人体実験の心配がないの」

「成る程…」

「家じゃ守りきれる保障もないからね。…不本意だけど、チェイスをIS学園に入学させる他ないわ」

 

スコールは心配そうにチェイスに近寄り、抱き締めた。

オータムもガシガシとチェイスの頭を撫でる。

 

「何かあったら必ず言ってね、チェイス。私たちは何時でも貴方の味方よ」

「でもたまには顔を見せろよ!」

「あぁ……俺は、幸せ者だよ」

 

気持ちよさそうに目を細めるチェイス。

 

『何だろう…スコールさんとオータムさんの後ろで龍と虎が睨み合ってるような……』

 

 

カイトは人知れず、冷や汗を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻ったチェイスは必要なものを鞄に詰めて、準備をしていた。

 

「やぁ、チェイス。お邪魔するよ」

「カイトか…」

 

大体準備が終わった所で、カイトが訪問してきた。

 

「どう?準備は」

「大体終わった」

「そっか」

「カイト、頼みがある」

「…珍しいな、君が頼みごとなんてさ」

 

珍しくチェイスが自分に頼みごとを頼んできたため、カイトは目を丸くしながらチェイスの言葉を待つ。

 

「弾と数馬の事、守ってやってくれ……」 

「………安心しなよ、君の友達は僕の友達だからさ」

 

コツンと拳を合わせる。

 

「感謝する……」

「良いよ、じゃお休み」

「あぁ……」 

 

カイトが去りチェイスは眠るため目を瞑った。

 

 

 

 

 

チェイスの寝顔には、不安が一切なかった。

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

山田真耶「これから宜しくお願い致しますね!」

織斑千冬「違う、お前は一夏だ…!」

チェイス「どいつもこいつも……」


IS ~黒き魔進~ 『入学』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?



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『死神対ズンボガンボ!?』

注意!

この話はネタバレがございます。
それが嫌な方はバック推奨です。


優「チェイス、数馬!」

 

数馬「どうした優?藪から棒に」

 

優「変な奴が暴れてるんだ!!」

 

チェイス「何……?」

 

数馬「まさか……!?」

 

優「あぁ、あの……………ズンボガンボだ!!」

 

数馬「何ィ!?こうなったら!」

 

《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

 

マッハ『先に向かうぜ!』

《ズーットマッハ!》

 

優「あ、ちょっと!ったく……ズンボガンボが強かったらどうすんだ!?」

 

百合「大丈夫です!ズンボガンボなんて雑魚です!タイプスピードで楽勝です!」

 

数馬「ガンボ?」

 

優「タイプスピードは高速移動が可能な平均的なバランスが取れたフォームだ!」

 

数馬「ズンボガンボ、ごほっ……」

 

優「何より相性のいいシフトカーが多い!」

 

数馬「あぁ、ズンボガンボ!」

 

優「ディメンションキャブ等のトリッキーなシフトカーも使いこなせる!」

 

弾「かっこいいじゃねーか!!」

 

百合「もしパワーの強い相手でもタイプワイルドで押し切っちゃいましょう!」

 

カイト「パワフル~!」

 

数馬「ガンボガンボ」

 

優「いや!もし相手がテクニシャン系だと言う可能性も否めない!」

 

数馬「ズンボ」

 

優「目には目を!タイプテクニックでもアリだ!」

 

数馬「ズンボにはガンボ」

 

百合「でも兄さん。ズンボガンボは二人一組だとも報告に上がってますが…」

 

優「いや、初耳だ」

 

数馬「ズンボ」

 

優「だけどこっちには仮面ライダーマッハ、数馬や皆もいるしな!」

 

数馬「初耳だ」

 

優「マッハはシグナルバイクを入れ替えて戦うんだ!」

 

数馬「ガンボォ!」

 

優「マガールで弾道操作、カクサーンなら大勢来てもOK!」

 

数馬「ズンボ?ガンボ?」

 

優「キケーンは………ぶっちゃけキラーだな、うん」

 

数馬「ガンボっ…!」

 

カイト「確かに」

 

百合「ドライブとマッハは黄金コンビ!ズンボガンボなんていちころです!」

 

マッハ『くそっ!逃げられたー!』

 

カイト「何してるのさ…?」

 

マッハ『だがアイツの強さは並大抵ではなかった。俺一人じゃとても……デッドヒートもないし』

 

ドライブ『何言ってんだよ!(俺なんてフォーミュラーもないんだぞ!)』

 

バロン『俺達も忘れんなよ!』

 

マリカ『私達が力を合わせたら!』

 

斬月・真『どんな相手にも勝てるさ!』

 

マッハ『皆…!そうだな!』

 

 

 

 

 

 

バロン『読者の皆様の暖かいコメントがある限り!』

 

ドライブ『俺達は走り続ける!』

 

マリカ『だからこれからも!』

 

斬月・真『暖かい御支援!』

 

 

『『『『宜しくお願いします!!!』』』』

 

 

魔進チェイサー『なぁ、一ついいか』

 

マッハ『何だ?チェイス』

 

魔進チェイサー『結局ズンボガンボって何なんだ?』

 

『『『『『…………………………………』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




数馬を剛みたいにしたらこうなりました、ごめんなさい!


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IS学園編
『登場人物&用語解説』


此方には原作ヒロインは載せません。
後数馬のCVいないらしいので、適当に決めました。

因みに梶さんは私の好きな声優さんです
D×Dのイッセー等が印象的ですね


主要人物

 

 

「俺に過去はない……。だからこそ今を大切にしたい……」

 

チェイス・ミューゼル

 

年齢:16歳

 

CV:内山さんか上遠野さんかはお好みで

 

 

第二回モンド・グロッソに於いて誘拐された、織斑千冬の弟の織斑一夏。

だがその最中に記憶を失い、駆け付けたオータムに保護され、スコールの養子として引き取られる。スコールを本当の母の様に慕っている。基本無愛想ではあるが、気を許した友人には優しい(それ以外の人物にもそれなりには)。

戦闘力は原作の一夏より強くなり、今では千冬より強いかもと言うのは『フリーダム・スカイ』の中では専らの噂。

紆余曲折経てスコール達と恋人関係に。

学園祭にて記憶を取り戻したが、チェイスとして生きると決めている為、一夏としての顔は殆ど見せない。

 

 

 

 

「僕は絶対に許さない……。父さんを死に追いやった白騎士を!」

 

色川カイト

 

年齢:16歳

 

CV:保志総一朗

 

この作品のオリキャラ。

嘗ての白騎士事件で父の色川貴虎を失っている。

さらに自分の母親の色川ひよりを目障りに思った女尊男卑派の日本政府によってISで襲撃されたことにより、ひよりからゲネシスドライバーとメロンエナジーロックシードを受け取り、斬月・真に変身して日本政府と戦闘をしスコール達によって、母親のひよりと一緒に保護されたが、貴虎がISを反対していた事を知り女尊男卑や、ISをなくすためにスコール達と一緒に戦っている。

チェイスの初めての友人で、それが切欠で弾や数馬とも仲良くなった。

彼の使う斬月・真は元は貴虎が開発したもの。

 

容姿はヴァンガードに登場する石田ナオキの目付きを穏やかにし、髪色を緑にした感じ

 

 

 

 

 

 

「どんどん逞しくなってるわね、チェイス……。もうすぐで結婚……焦っちゃ駄目ね」

 

スコール・ミューゼル

 

年齢:不詳

 

CV:平野文

 

チェイスの養母で『フリーダム・スカイ』の代表。嘗てはモンド・グロッソにも出場した事があるほど、ISの技能は素晴らしい物。

今はISに乗っていないが、それでも組手でチェイスとカイトをまとめて倒す等、身体技能は衰えていない。

嘗てISの扮装によって弟を失っており、ISを少なからず憎んでいる。

チェイスを深く愛しており、彼の幸せを壊そうとする者は絶対に許さない。

念願叶ってチェイスと恋人同士になる。(尚ハーレムでも構わない姿勢)

 

 

 

 

 

「私はチェイスの姉みてーな物だ。弟の幸せを願うのは姉でも出来るぜ?」

 

オータム

 

年齢:20代後半

 

専用機:アラクネ

 

CV:西墻 由香

 

『フリーダム・スカイ』の実働部隊隊長でチェイスの姉貴分。

チェイスを保護したのも彼女であり、チェイスはそれも含めてオータムに感謝の念を抱いている。

ISの技能も高く、チェイス達の特訓相手も務めている。

チェイスと過ごすうちに彼の不器用ながらも優しい性格に惚れてしまい、度々スコールと激突する。

 

 

 

 

「チェイス!お前に何があっても、俺はお前の友達だからな!」

 

五反田弾

 

年齢:16歳

 

CV:保村真

 

チェイスが記憶喪失になる前、つまり織斑一夏の親友とも言える少年。

チェイスが一夏で記憶喪失という事実に最初は驚くも、自分にとっては今も昔も変わらないということで、改めて友達になった。

一夏の事を録に見ようとしない千冬を嫌っており、モンド・グロッソから帰ってきた千冬を怒りの余り殴った事も。

 

 

 

 

「チェイス、お前の好みの女の子って……誰だ?」

 

御手洗数馬

 

年齢:16歳

 

CV:梶裕貴

 

弾と同じく一夏の親友の一人。

チェイスの記憶喪失を知って驚くも、改めて友達になった。

一夏の努力を間近で見ている為、弾共々それを支えていた。

弾と同じ理由で千冬を嫌っている。

が、弾ほど沸点は低くなく、一応千冬の心情も察していた。

 

 

 

 

「俺、ギアが入ると性格変わるんだ」

 

立花(まさる)

 

年齢:16歳

 

CV:赤羽根健治

 

フリーダム・スカイに保護されてる少年。

臨海学校の際、チェイスと知り合い友となる。

白騎士事件によって両親を失い、それを起こした束を憎んでいるが、ちゃんとその罪を償わせると誓っている。

歴史好きで、更に戦闘になったりすると人が変わり、キザな台詞を吐くことも。(本人曰くギアが入る)

 

容姿はヴァンガードに登場する光定ケンジを髪色を黒にした感じ

 

 

 

「兄さん!少しは自重してください!」

 

立花百合

 

年齢:15歳

 

CV:牧口真幸

 

勝の妹で白騎士事件の際にフリーダム・スカイに保護される。

勝気だが、礼儀正しい性格。

束の事は、両親を奪ったとして嫌っている。

ギアが入った勝の貴重なストッパー役。

 

容姿はヴァンガードに登場する臼井ユリを少し幼くした感じ

 

 

 

用語解説

 

 

『フリーダム・スカイ』

 

この空の下、平等なる平和をモットーにする企業。

昨今のIS企業には珍しく、男女平等が基本で社内には男性職員も存在している。

ISが男性でも乗れる様に日夜研究実験を繰り返している。

IS委員会にとっては、目の上のたんこぶで何度か日本政府の女性権利団体と組んでIS部隊を送るも、全て返り討ちにあっている。

 

 

『ISコア消失事件』

 

ISが世に広まってまだ間もない頃に起きた事件。

467の内108のISコアが突如として行方不明になった。これについて、束や各国が総力を上げ捜索するもその内の1つも見つからなかった。

尚、何処かしらの国で起きた事件だが、その真相を知る人間は殆どいない。

 

 

 

 

 

 

 

『ライドスーツ』

 

フリーダム・スカイが開発した男性でも使える事をコンセプトとしたISを模したパワードスーツ。

ISのデータを転用しており、ハイパーセンサーも搭載、スラスター無しでも浮遊できる優れもの。

但し、シールドエネルギーが存在しない為、直接身体にダメージを感じる。(それを補う為、、ISより防御装甲が多い)

決定的な違いとして、コアを持たないと言うこと。それに代わり、コアの代理でもあるベルト等で起動及び装着する。

その為、破損しても修復をすれば幾らでも使える。(ISコアは篠ノ之束で無ければ作れないから)

 

 

 

 

 

 

魔進チェイサー

 

変身者:チェイス・ミューゼル

 

起動ツール:ブレイクガンナー

 

チェイスがブレイクガンナーにより変身した戦士。

ブレイクガンナーは攻撃にも使用でき、防御やスピード等も平均的なライドスーツ。

最初期に開発されたライドスーツではあるが、理由は不明だが何故か全く起動せず封印されていたが、チェイスが起動させた為、チェイスの専用機となる。

姿は原作チェイサーと変わらず、ドライブのシフトカーも使用可能。

カイト曰く「歩くバイクのエンジン」

 

 

 

 

チェイサーversionⅡ

 

変身者:チェイス・ミューゼル

 

起動ツール:マッハドライバー炎&シグナルチェイサー

 

マッハドライバーと魔進チェイサーから得られた稼働データを移植したシグナルバイク・シグナルチェイサーにより誕生した新たな魔進チェイサー。

魔進チェイサーの面影を残しつつ、その姿はよりヒロイックに。

魔進チェイサーデッドヒートで見受けられた問題点(余剰パワーの処理やスーツやチェイスへの負担等)も改善されており、同じマッハドライバーで変身するマッハと比べスピードには劣るものの(箒の紅椿にも若干劣る)、パワーはデッドヒートマッハ以上を誇る。

武装はブレイクガンナー及び斧型武装のシンゴウアックス。

以前同様バイラルコアによる武装も使用可能。

 

 

 

 

 

 

斬月・真

 

変身者:色川カイト

 

起動ツール:ゲネシスドライバー&メロンエナジーロックシード

 

カイトがゲネシスドライバーにメロンエナジーロックシードをセットして変身した戦士。武器はソニックアローという弓矢を使用し、遠距離戦の他、弓の弦の部分での接近戦もこなせる万能型。

嘗て色川貴虎が開発したプロトスーツ、斬月を更に発展させたライドスーツで、貴虎が死亡する前にひよりに託し、カイトに託された。その為、カイトにとっては父の形見とも言えるスーツ。

白のスーツにメロンを模した鎧を装着する。

この時メロンの鎧は空中で生成されてカイトの頭に被さる形で展開する。

チェイス曰く「前から見ても後ろから見てもメロン」

 

 

 

バロン

 

変身者:五半田弾

 

起動ツール:ゲネシスドライバー&レモンエナジーロックシード

 

弾がゲネシスドライバーとレモンエナジーロックシードで変身した戦士。武器は斬月・真同様ソニックアロー。後付け装備でバナスピアーとマンゴパニッシャー。

斬月・真のデータを元に作成されたライドスーツで、斬月・真より少し火力が高い。

見た目は原作鎧武のバロン。

尚、バナナではない。フルーツでも彼はレモンである。

 

 

 

マリカ

 

変身者:立花百合

 

起動ツール:ゲネシスドライバー&ピーチエナジーロックシード

 

百合がゲネシスドライバーとピーチエナジーロックシードで変身した戦士。

バロン同様斬月・真のデータを元に作成されたライドスーツで、女性が装着する為か、鎧が一回り小さい。

だがその分、スピードに優れる。

 

 

ドライブ

 

変身者:立花優

 

起動ツール:ドライブドライバー&シフトブレス&シフトカー

 

勝がドライブドライバーのアドバンスドイグニッションを回し、シフトレバーに変形させたミニカー「シフトカー」をシフトブレスにセットし、操作することで誕生する戦士。

見た目は本編と変わらず。

シフトカーを付け替えることで様々な攻撃が可能で、高速移動能力も兼ね備える。

武器は「ハンドルブレード」と「ドアガン」(命名:数馬)

因みにそれ以前にハンドル剣、ドア銃と命名したがスコールに却下された。

 

 

マッハ

 

変身者:御手洗数馬

 

起動ツール:マッハドライバー炎&シグナルバイク

 

数馬がマッハドライバー炎にシグナルバイクを装填し、変身することで誕生する戦士。

見た目は原作と変わらず。

シグナルバイクで右肩のシグナルコウリンを切り替え、戦う。

武器のゼンリンシューターで接近も遠距離もこなせる。

ドライブ同様高速移動能力を兼ね備え、ドライブのシフトカー、チェイサーのバイラルコアも使える。

 

 

 

 

 

 

 

 




此方は随時更新予定です


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『オリジナルバイラルコア』

オリジナルバイラルコアの紹介です

基本の3種は載せません
皆さんのアイデアも採用次第、此方に記載いたします

2015 12/29 追記


 

 

 

ビートルバイラルコア

 

武装:ホーンジャベリン

 

カブトムシの角を模した槍。高速で振動しており、それによりISの装甲も簡単に刺し貫く。

ファングスパイディーと違ってエネルギー波は飛ばせない為、完全近距離武装。

 

必殺技はエネルギーを切っ先に集合させ防御毎刺し貫くエグゼキューションビートル。

 

 

 

 

 

タートルバイラルコア

 

武装:シェルディフェンダー

 

亀の甲羅を模した楯。

防御の他、相手に投擲しての攻撃も可能。

更に粉砕されても、ボディに纏う事で防御スタイルに。

だが、どちら共に機動力は極端に下がる。

既存のIS武装はほぼ無傷でガード可能。

 

必殺技は受けたダメージを増幅させて纏めて撃ち放つエグゼキューションタートル。

 

 

 

 

 

シャークバイラルコア

 

武装:トゥースバンカー、ショックハンマー、セイバーソー

 

1つのバイラルコアで3つの武装に変化する変わり種。最初はホオジロザメを模した手甲として装備される(見た目は仮面ライダーアビスのアビスクロー)。

ブレイクガンナーの引き金を引く事で、シュモクザメを模したハンマー、ノコギリザメを模した棘の付いた剣に変化する。

3形態共に、高圧水流を操る。

 

必殺技は3形態共に高圧水流を纏う、撃ち放つのエグゼキューションシャーク。

 

 

発案者:pixivのフォロワーさん

 

 

 

 

 

カメレオンバイラルコア

 

武装:バイオワイヤー

 

見た目に変化はなし。

だがブレイクガンナーの引き金を引くと、10数分間はどのセンサーにも感知されない光学迷彩によって姿を消せる。(厳密には、周りの景色と同化してる)

更にブレイクガンナーから、象を引っ張っても切れないワイヤーを放つ。

こんな性能の為、ほぼ暗殺向けのバイラルコア。

(一応他形態と違い、ブレイクガンナーのモードは使用可能)

 

必殺技はバイオワイヤーにエネルギーを纏わせてありとあらゆる物を切断するエグゼキューションカメレオン。

 

 

発案者:ヴォルザさん pixivのフォロワーさん

 

 

 

 

 

ウルフバイラルコア

 

武装:プレデターネイル

 

手足の装甲にジャンクパーツで構成された鉤爪を装備。

各々のユニットは背部のホイーラーダイナミクスと直結しており、例え戦闘で折れたりしても、エネルギー供給により瞬時に再生可能。

身体能力を向上させる他、ウルフバイラルコアに組み込まれた闘争本能活性化装置『ビーストテンション』により、肉食動物同様に、獰猛な性格になる。

別に付けなくても良いのだが、「肉食なチェイスもカッコいいじゃない♪」(byスコール)との事。

 

必殺技はプレデターネイルにエネルギーを纏わせ、巨大化させたプレデターネイルで強引に切り裂くエグゼキューションウルフ。

 

 

発案者:ジーク・フリューゲルさん

 

 

 

 

 

ライオバイラルコア

 

武装:ライオブレストキャノン

 

上半身にジャンクパーツで形作られたライオンの顔を模したキャノン砲を装備。

背部のホイーラーダイナミクスから直接エネルギーを供給するので、弾切れによる心配ナシ。

ただしシェルディフェンダー以上に機動力がガタ落ちする。

 

必殺技は莫大なエネルギーを的に向けて撃ち殲滅するエグゼキューションライオ。

 

 

発案者:心を持った機械龍さん

 

 

 

これらのバイラルコアはAIによる意思を持ち、チェイスの言うことも聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




必殺技も追記しました


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『入学』

この段階ではチェイスは自分が過去千冬の弟と言うことを知っています。
ですが、記憶にはないままです。


チェイスは現在、IS学園の教室前で待機していた。

側にいるのは、この学園の(自称)用務員の轡木十蔵という男。

 

無論チェイスは彼がIS学園の運営者だと言う事は知っている。

 

すると、教室内が誰かの一喝で静まった。

 

「ではチェイス・ミューゼル君、ここで少し待っていてください」

「……あぁ」

 

何故チェイスが入学式に参列しなかったかの理由は、混乱を避けるためである。

 

 

 

 

 

一方、教室内ではーーー

 

「では今から転校生が来ます。皆さん、余り騒がないようにお願いします」

 

恐らくは例の男性IS操縦者だろう、と教卓に立つ織斑千冬は考えた。

だがその男子生徒の情報は教師陣には、全く公開されなかった。

更にはメディアやニュース等にも、顔出しをしていないのだ。

 

それがフリーダム・スカイの代表であるスコールの条件だったのだ。

 

女子生徒達も様々な思惑を抱えて、このクラス唯一の男子生徒を、

 

 

ある者は好奇心で、

 

ある者はその男子の性格を予想し、

 

またある者は自分達女性の権利を脅かす害虫と見下しながら、待っていた。

 

「それでは入ってきて下さい」

 

轡木が声を掛けると、その話題の転校生ーーーチェイスが扉を開けて入ってきた。

 

 

 

整った容姿、少し冷徹さを感じる目付き、十代の女子から言わせるとイケメンの部類に入る。

 

「「っ!?」」

 

だがチェイスの顔を見た瞬間、千冬ともう一人のある生徒は衝撃を受けた。

 

 

「それではチェイス君、自己紹介を」

「チェイス・ミューゼル……。趣味は体を動かすこと、嫌いな物は自分の考えを押し付ける者や女尊男卑等の下らん考えにとりつかれた者……以上だ」

 

淡々と自己紹介を終えたチェイスは指定された座席に座った。

 

「キャーーー!!」

 

「イケメン!それに凄いクール!」

 

「カッコいい~!」

 

「あの目で罵って欲しい!踏みつけて欲しい!」

 

当然騒ぎ出す生徒を、千冬は一喝する。

 

「し、静かにせんか!」

 

一喝しながらも千冬は未だに信じられなかった。

何故なら、その顔は紛れもなく弟の一夏だったからだ。

 

 

『な、何故一夏が……生きていたのか……!?』

 

そしてもう一人、篠ノ之箒もまた死んだと思われた幼なじみが現れた事に驚愕していた。

 

 

だがそんな二人を、記憶喪失のチェイスが覚えてる筈もなく、チェイスは教科書を読んでいた。

 

 

「ちょっと良いか?」

 

自己紹介が終わっての休憩時間、箒は意を決してチェイスに話しかけた。

 

久しぶりの幼なじみとの再開、生きていた云々はともかく、取り敢えずは再開の挨拶をすべき、そう思っての行動だったが……

 

「…………」

 

チェイスはそれを無視して教科書を読み耽っていた。

 

「お、おい!聞いているのか!?」

 

無視された事に腹を立てた箒は声を荒げるが、チェイスは尚も無視。

と言うよりチェイスは記憶喪失、つまり箒の事など記憶になく、答える義務も無いだけだが。

 

「……さっきから誰に話し掛けてる?もう少し静かに喚け」

「なっ!?」

 

漸く箒の方を振り向いたチェイスの顔は如何にもめんどくさい、と言った感じの表情をしていた。

 

「誰だと!?私の事を忘れたっ「だから誰に話し掛けてる……?お前の事など知らん」!」

 

突き放す様な語りに箒は石像の如く動かなくなった。

 

 

箒が正気になったのは、千冬に叩かれた時だった。

 

 

 

 

 

 

「はい、ここまでで分からない人はいませんか~?」

 

教科書を読みながら、このクラスの副担任である山田真耶は生徒全員を見渡して問い掛けた。

 

真耶の教え方は分かりやすく、まだ日の浅いチェイスでも良い教え方だと頷く程。

 

「ミューゼル君は大丈夫ですか?」

「……問題ない」

「そ、そうですか……」

 

素っ気なく答えるチェイスに真耶は苦笑いする。

 

「だがアンタの教え方は分かりやすい……それだけは言える」

「うん!山田先生の教え方、凄く上手!」

「え?そ、そうですか~?ありがとうございます~!」

 

チェイスから始まったこの言葉を切欠に、皆が真耶を褒め称える。

真耶は終始デレっぱなしだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして真耶の授業が終わって次の休み時間、

 

「ちょっと宜しくて?」

 

チェイスはまたもや別の人物に声を掛けられた。

 

「俺に何の用だ……セシリア・オルコット」

「まぁ、男の癖に私の名前をご存知ですのね」

 

明らかに見下したその声音にチェイスは溜め息を吐く。

 

「何ですの、その溜め息は?私に話し掛けられたのだからそれ相応の態度をーーー」

「俺の自己紹介を忘れたのか……俺はそんな馬鹿らしい考えに取り付かれた者が嫌いだと言ったはずだ」

「なっ!?」

「分かったらさっさと消えろ。目障りだ……」

 

ジャキッ、とブレイクガンナーを突き付ける。

 

「なっ……あ、貴方はーーー」

 

とここでタイミング良くチャイムがなった。

 

「ま、また来ますわ!逃げないことね!!」

『チッ、どいつもこいつも…………』

 

内心で舌打ちしながら、チェイスは席に座る。

 

 

早くもチェイスのストレスはマッハだった。

 

 

 

 

 

「さて、この時間はISの各種武装について説明する」

 

この時間は千冬が教卓に立っていた。

あの後、動揺はしたものの何とかそれを押し殺し、後で問いただす事を決めた。

 

『そう言えば、スコールが魔進チェイサーの武装を開発していると言ってたな……』

 

武装の事で今度チェイサーに搭載される武装を思い出したチェイスだったが、

 

「……っと、その前にクラス代表を決めねばならないな」

 

千冬のこの言葉で現実に戻される。

 

「クラス代表は学級委員みたいなものだ。学校行事のまとめ役をしたり、クラスを代表して戦ったりと……まぁ、クラスの顔だな」

 

千冬は一呼吸置いて、

 

「自薦、他薦は問わない。誰かいないのか」

「はいっ、ミューゼル君が良いと思います!」

「私も!」

 

ミューゼル、という名字に眉を寄せる千冬に構わず、生徒達はチェイスを推薦する。

 

「俺はそんなものやらない……」

「自薦された者に拒否権はない。腹を括れ」

 

言われ、即座に舌打ちする。

 

「そのような選出は認められませんわ! そんなわけのわからない不気味な男がクラス代表なんて、このIS学園での良い恥じさらしですわ。私はにそんな屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

と、ここでセシリアが立ち上がり抗議の声を上げる。

 

「実力からすればこのわたくしがなるのが必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!大体! 文化として後進的な国で暮らさなければ行けないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」

 

そこからはチェイスへの暴言に止まらず、日本への誹謗中傷になっていった。

周りが日本人だと言うことを忘れてセシリアは熱弁する。

が、当のチェイスはと言うとーーー

 

「…………」

 

興味無さげに数馬から借りたラノベを読んでいた。

 

「聞いていますのっ!?チェイス・ミューゼル!!」

「…………あぁ、それで?」

「なっ……」

「代表候補生とも有ろう者が他国の誹謗中傷とはな……。お前のその発言で日英戦争が始まると言っても過言ではない」

「!」

 

動揺するセシリアにチェイスは淡々と事実を述べる。

 

「お前はさっき言ったな?文化として後進的な国だと……。だがお前が使うISを産み出したのは、この国の女だ」

「……!」

「所詮は激情から出た言葉か……。お前の様な奴が代表候補生とは世も末だな……。それに担任が言ったはずだ、自薦他薦は問わない、と。ならお前が自薦すれば良いだけだろう。俺はどのみちやるつもりはない。織斑教諭、こう言うのは積極性がある者がなるべきだろう……?」

 

顔を青ざめたセシリアを放置しチェイスは千冬に振り向く。

 

「何処まで私をコケにするんですの……決めましたわ、決闘ですわ!!」

 

ビシッとチェイスを指差し、叩きつける様に声を上げる。

 

「断る……。お前と戦っても得るものはない」

「ふん、あれだけ大見得を切って逃げるのですか?所詮は男ですわね。どの様に育ったらそんな生意気な言葉を吐けるのですか?まぁ、貴方ごときを育てた人ですから、録でもない人物なのでーーーぐぅっ!?」

 

 

 

 

その言葉は長くは続かなかった。

 

 

何故ならチェイスがセシリアの胸ぐらを掴み、上に持ち上げたからだ。

 

「貴様、今何と言った……?何と言ったか聞いている……!」

「っ……!」

 

その殺気にセシリアは言葉も発せず、他の生徒や真耶、果ては千冬までもが凍り付いた様に動けなかった。

 

「そこまで決闘がしたいなら受けて立つ。後悔してもしきれん程の恐怖を教えてやる……!」

 

パッとセシリアを離しチェイスは席に戻る。

 

 

 

その後、正気を取り戻した千冬によって1週間後、代表決定戦を行うことになった。

 

 

 

 

 

放課後、チェイスは職員室にやって来た。

千冬にあの騒動の後、直接言われたから。

 

「……待っていたぞ、ミューゼル……いや、一夏」

 

職員室に入ると、千冬が仁王立ちしながらチェイスを待っていた。

 

「誰の事だ……?俺の名は」

「お前は織斑一夏だ……!私の弟の一夏なのだ!」

 

チェイスの言葉を遮って、肩を掴みながら語りかける千冬にチェイスは眉を寄せる。

 

「いい加減にしろ……」

「!」

 

ジャキッと、ブレイクガンナーを千冬の眉間に突き付ける。

 

「俺はチェイス・ミューゼルだ……。お前の様な姉など知らん。そんな事の為だけに俺を呼んだのか……?下らん」

「……違う。お前はそんな名前じゃない、お前は一……」

「いい加減に弟の死を受け入れろ……。俺にお前の弟を重ねるな」

「……!!」

 

千冬を一蹴すると、チェイスは職員室を出ていった。

 

「違う……お前は一夏だ……!一夏なのだ……」

 

取り残された千冬はぶつぶつとそれだけを繰り返し呟くばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

没シーン

 

「断る……。お前と戦っても得るものはない」

「ふん。あれだけ大見得を切って逃げるのですか?所詮は男ですわね。どの様に育ったらそんな生意気な言葉を吐けるのですか?まぁ、貴方ごときを育てた人ですから、録でもない人物なのでーーー」

 

 

その言葉は長くは続かなかった。

 

 

何故ならチェイスがブレイクガンナーでセシリアの横を撃ったからだ。

 

現に後ろの黒板からは小さい火花が飛び散り、セシリアの頬からは少し血が流れていた。

 

呆然とするセシリアに構わずチェイスはセシリアとの距離を詰め、

 

「…………ひっ!」

「貴様、今何と言った……?」

 

顎の下にブレイクガンナーを突き付けた。

絶対零度の殺気を至近距離で受け、更に顎の下に銃を突き付けられたセシリアは顔面蒼白になり、小さな悲鳴を漏らす。

 

「そこまで決闘がしたいなら受けて立つ。だが後悔してもしきれん程の恐怖を教えてやる……!」

 

銃を離し、チェイスは自分の席に戻る。

 

 

 

 

 

最初はこれで行こうと思いましたが、流石に不味いので書き直しました。

 

 

 




IS ~黒き魔進~

真耶「これがミューゼル君のIS……」

セシリア「勝てない……!」

チェイサー『お前もスクラップの仲間入りだな……』

IS ~黒き魔進~ 『怒れる死神』



黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『怒れる死神』

原作ヒロインは(多分)ヒロインにはなりません。

ワールドパージ編のセシリアの時の一夏の格好が完全に楳図かずお先生だった(驚愕)


クラス代表決定戦までの間、チェイスは何もしていなかった。

 

彼にとってセシリアとの決闘は、大切な家族のスコールやオータム、友のカイトや弾と数馬を馬鹿にした彼女への報復の気持ちが多い。

 

する事と言えば、彼女の専用機のデータを見て、どの様にボコろうか考えるだけだった。

 

 

 

更に言えば、彼女とチェイスの実力差は大きく、勝負になるか分からない、と先日カイトに言われたばかりだ。

 

序でに言うと、自分にしつこく剣道部への勧誘を続ける箒を文字通り締め上げたりしたことも追記しておく。

 

 

 

 

 

そして当日、

 

 

 

第一ピットにて、千冬、真耶、箒、そしてチェイスがいた。

 

セシリアはもうアリーナの上空にて待機していた。

 

「あの~、ミューゼル君、ISスーツは……?」

 

ISスーツを着ていないチェイスに、真耶が突っ込むが、チェイスは相変わらずぶっきらぼうに返事を返す。

 

「……問題ない」

 

懐からブレイクガンナーを取りだし、掌に押し付けると、待機音が流れ出し、千冬達は驚く。

 

「……変身」

《Break up!》

 

次の瞬間には、チェイスは魔進チェイサーに変身していた。

 

 

「これがミューゼル君のIS……」

「……」

「一夏……」

 

全身装甲の為に顔が見えないが、チェイスは上空に待機しているセシリアを睨み付け、

 

『チェイス・ミューゼル、魔進チェイサー……出る……!』

 

 

 

 

 

 

 

黒き魔進は今、蒼天の元に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、遅かったですわね。私に怖じ気づいて逃げ出したかと思いましたわ。それにしても……酷い外見ですわね、まさしくスクラップと言う言葉がお似合いですわ」

『…………』

 

全身装甲と言う今までにないISにセシリアは内心驚きながらも、自身を鼓舞する意味でチェイサーを挑発した。

 

無論、それをチェイサーは無視する。

 

その様子にセシリアは僅かに苛立つも、試合開始のブザーが鳴ったにも関わらずチェイサーを挑発する。

 

「今からチャンスを与えますわ。この勝負の結果は私が勝つことは明白の理。ここで泣いて土下座をすれば許さないこともーーーぐぅ!」

 

ペラペラ語るセシリアを無視し、ブレイクガンナーを発砲した。

セシリアは話を中断された怒りで肩を震わせる。

 

「あ、貴方ねぇ!人が話している時に発砲するなど……!」

『もう試合は始まってる……。それに関わらずペラペラ戯れ言をほざく貴様が悪い』

「なっーーー」

《Break》

 

そう言ってセシリアがライフルを構えるより速く、チェイサーはブレイクガンナーのモードを切り替えてセシリアに殴りかかる。

 

『遅い……』

「あぐぅ?!」

 

セシリアは一気に肺から空気が抜けていく感覚を初めて味わった。

それほどにチェイサーの一撃は強く、そして容赦なかった。

 

そんなセシリアに構わず、チェイサーは肘打ちでセシリアを宙に浮きあげ、頭上から殴り付けた。

 

『はぁっ!』

「きゃああああ!!」

 

セシリアは殴られた勢いに乗ってアリーナの地面に叩きつけられた。

何とか立ち上がったセシリアだが、

 

《gun》

 

チェイサーはブレイクガンナーから光弾を放ち、セシリアに容赦なく追撃する。

たったそれだけの短い時間にセシリアのシールドエネルギーはどんどん少なくなっていた。

 

「ぐぅっ!あぁっ!……よくもやってくれましたわね……!」

 

セシリアは立ち直り、腰に装着されたBT兵器、『ブルー・ティアーズ』を起動させる。

 

「さぁ、踊りなさい!私とブルー・ティアーズが奏でるワルツで!」

『…………』

 

そう言って畳み掛ける様にチェイサーに攻撃するも、チェイサーはそれを易々と避けていく。

 

『やはり偏向射撃(フレキシブル)を使っては来ない……面白くもないな』

 

偏向射撃が出来ないセシリアのビット攻撃は直線的過ぎ、更にライフルと同時に使用出来ない為、チェイサーにとってはこの攻撃は遅く見えてしまう。

 

「くっ!何故当たりませんの!?」

 

全くチェイサーに当たらない為、セシリアが苛立ちの声を上げる。

だが、そんな彼女を更に絶望が襲い来る事に。

 

「なっ!ティアーズが……!」

 

射撃の筋を完璧に見切ったチェイサーによって、ティアーズがどんどん撃墜されていってしまった。

驚愕に目を見開くセシリアは一種動きが止まってしまう。

 

 

 

だが、その一瞬が命取りだった。

 

4機のティアーズを破壊したチェイサーは此方を見て硬直しているセシリア目掛けて、ブレイクガンナーで撃ちまくり、更に接近してブレイクガンナーで殴りまくる。

 

「ああぁぁぁっ!!!」

 

装甲の所々に亀裂が走り、シールドエネルギーも100を切ったセシリアは悟った。

 

この者は自分がどれだけ撃ち込んでも、全く勝てない、と。

故に、自分はどれだけ強大な男に喧嘩を売っ

てしまったのか、激しく後悔し始めた。

 

『勝てる、訳がありませんわ……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この死神はそんな暇も与えない。

 

《Execution……!》

 

セシリアを完全に落とすべく、チェイサーはエネルギーを溜めながら、セシリアに接近する。

 

最早先程の銃撃で、ライフルと腰に残されたミサイルビットも破壊されている。

残された物は、自分の苦手な接近戦用のインターセプターだけだった。

 

最後にセシリアの瞳に写ったのは、自分に引導を渡すべく、その拳を向ける魔進チェイサーの姿だった。

 

セシリアは、後ろに鎌を持った死神がチェイサーに被って見えた。

 

《Full break!》

『沈め……!』

 

溜め込んだエネルギーを一気に放出し、セシリアに叩き込んだ。

 

 

当然セシリアは悲鳴を上げることすらままならず、アリーナに落下し気絶した。

 

 

そんなセシリアを一瞥する事なく、チェイサーはピットに戻った。

 

 

『つまらん……やはりオータムやカイトとの組み手が一番だな……』

 

 

 

 

 

 

一方、管制室では……

 

「す、凄いです~……」

「何だ、あの実力は……!?」

 

千冬と真耶がチェイサーの圧倒的なまでの実力に震えていた。(因みに箒は千冬が叩き出した)

 

『仮にも代表候補生のオルコットをノーダメージで……一夏、お前は一体……?!』

 

と、考察する千冬達の元にチェイサーが帰ってきた。

チェイサーは変身を解除しチェイスに戻ると、無表情で千冬に告げる。

 

「クラス代表はアイツにやらせろ……俺だとバランスが崩れるのはこれで明白だ……」

 

そう告げると、チェイスは管制室を出ていこうとする。

 

「ま、待て一夏!」

 

止めようとする千冬だったが、次の瞬間にはブレイクガンナーから煙が出ていた。

 

「何度言えば分かる……?俺はチェイス・ミューゼルだ。次に俺をその名で呼ぶのなら……教師と言えど殺す。覚えておけ……!」

 

頬から流れ出る血に触れ呆然とする千冬を睨み付け、チェイスは管制室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

「中国から……?」

『ええ、代表候補生が来るわ』

 

部屋に戻ったチェイスはスコールと通信をしていた。

 

「まさか、スパイの可能性も……」

『否定は出来ないわ、十分に気をつけてね』

「あぁ、分かってるよ」

『それと、今度魔進チェイサーの新しい追加武装をそっちに送るわ』

「感謝する」

 

通信を終えたチェイスはベッドに寝転がり、そのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、IS学園の整備室ではーーー

 

「彼、凄く強かった……」

 

眼鏡をかけたある生徒が黙々と何かを作っていた。

そして思い出すのは、さっきの一組のクラス代表決定戦の事。

 

「チェイス・ミューゼル……」

 

今期待の男性IS操縦者、そんな彼が代表候補生のセシリアを完膚なきまでに叩きのめした、その事実に彼女は驚愕した。

 

だが、同時にどうしてあんなに強いのか興味が沸いた。

 

「彼に聞けば、彼に教えを請えば、私も強くなれるかもしれない……」

 

水色の髪をしたその少女は、手にした写真を見詰める。

 

そこには少女に似たもう一人の少女が仲良さげに写っていた。




IS ~黒き魔進~

チェイサー『これが、新しい武装……』

???「教えて……!どうしたら、そんなに強くいられるの?」

???「初めまして、チェイス・ミューゼル君」

《Tune Chaser Spider!》

IS ~黒き魔進~ 『武装』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『武装』

この段階で基本3種のバイラルコアが登場します


クラス代表決定戦があった次の日。

 

「1年1組のクラス代表はオルコットさんに決まりました」

 

真耶が教壇にて朝一番にそうクラスの生徒に告げた。

 

「えーーーーっ!?」

「でも昨日勝ったのはミューゼル君じゃない!」

 

早速ブーイングの嵐が起きるが、千冬の一喝で静まった。

 

「ミューゼルに任せると全体のパワーバランスが崩れる。これはもう決定事項だ」

 

それを聞いて、全員がチェイスの方を見た。

 

代表候補性のセシリアを、無傷の上、完膚なきまでに叩きのめしたチェイス。

確かにあの実力だと不公平だな、と全員が理解した。

 

すると、

 

「織斑先生、山田先生、少し宜しいでしょうか?」

 

セシリアが立ち上がった。

 

「どうした、オルコット」

「この前のことを謝罪させてください」

「良かろう」

 

セシリアは教壇の前に移動して、全員に頭を下げた。

 

「皆さん、先日までのご無礼な発言の数々、本当に申し訳ありませんでした。このクラスの代表に就任致しましたが、私はまだまだ未熟です……。どうか皆さんの力を私にお貸し下さい!」

 

その言葉と態度に嘘偽りはないとこの場の全員が理解した。

故に、全員が拍手を送った。

 

「良いよ、過去の事だしね」

「セシリアさん、ちゃんとこうして謝ったしね!」

「私達の力で良ければいくらでも貸すよ!」

 

全員の惜しみない励ましに、セシリアは涙を堪え、

 

「はいっ!皆さんのご期待に応えられる様、全力を尽くしますわ!」

 

笑顔で答え、今度はチェイスの方へ向かった。

 

「その、み、ミューゼルさん……」

「何だ……」

 

ぶっきらぼうな返しに内心ドキッとしながらも、何とか言葉を紡ぐ。

あの一戦以来、チェイスに恐怖心を抱いていた彼女だが、この機を逃すと一生謝罪できないかもしれない。

それだけは避けたいセシリアは、この場で謝罪の弁を言う。

少なくとも自身を愚かしい思想から解き放ってくれた彼に対して、恐怖という感情だけで背は向けたくない。

 

「貴方のご家族を侮辱してしまって、本当に申し訳ありませんでした!」

 

物凄い勢いで、頭を下げた。

一方のチェイスはと言うと、

 

「別に構わん……」

 

そっぽを向き、セシリアにそう告げた。

予想外な返しにセシリアはポカンとする。

 

「……どうした」

「い、いえ!……怒って、ないのですか?」

「俺の気はもう済んでいる……、だから言うことはもうない。それだけだ……」

 

それはチェイスの本心だった。

 

「分かったら席に戻れ……」

「は、はいっ!」

 

だがやっぱりぶっきらぼうな言い方になってしまうチェイスであった。

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、この時間からは実践授業に入る」

 

白ジャージを着た千冬が生徒達にそう告げた。

 

「それでは、オルコットとミューゼル!前に」

「はい!」

「……」

 

千冬に指名され、セシリアは元気よく、チェイスは相変わらずの無言でそれぞれ前に立つ。

 

「2人とも専用機を展開しろ」

「ブルー・ティアーズ!」

「…変身」

《break up!》

 

それぞれ専用機を展開する。

矢張りと言うか、チェイサーが一番目立っていた。

 

「よし、そのまま飛べ」

 

指示通りに2人は上空に向けて飛んだ。

 

 

一番に着いたのはチェイサーで、その後に遅れてセシリアが到着する。

 

「速いですわね、ミューゼルさん」

『……』

「えっと……」

『機体性能の差だ……』

「そ、そうですか……」

 

会話がすぐに途切れ、セシリアは気まずくなる。

チェイサーはいつも通りだが。

 

「そのまま急降下して急停止をするんだ。地上との差は10センチだ」

「分かりましたわ。それではミューゼルさん、お先に」

 

そう言ってセシリアは地上に向けて急降下していった。

地上との誤差はゼロ。

 

「うむ、上出来だ。ミューゼル、次はお前だ」

『……』

 

チェイサーは無言で急降下。

セシリア同様、誤差はなかった。

 

この後、武装を展開するも、セシリアが千冬にダメ出しを食らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、チェイスは小さいアタッシュケースを持ってアリーナに向かった。

セシリアのクラス代表就任パーティーに呼ばれていたが、チェイスはそういったことが苦手な為、断った。

 

 

 

アリーナに着いたチェイスは早速魔進チェイサーに変身し、アタッシュケースを開いた。

中には、銀のミニカーらしきアイテムが3つ収納されていた。

 

そう、これこそがチェイサーの新しいツール、バイラルコア。

 

 

使い方に関しては先ほどスコールから聞いた為、チェイサーは躊躇なくその中の1つを取り出し、ブレイクガンナーの上にある『バイラルライディングパネル』にセットした。

 

すると、

 

《Tune chaser spider!》

 

そう音声が鳴ると、チェイサーの右腕に銀色の鉤爪が装備された。

 

『これが、チェイサーの新しい武装……』

 

そう呟き、チェイサーは鉤爪ーーーーファングスパイディーを見つめる。

 

『蜘蛛の爪か……悪くないな』

 

しばらくその場で振ったり、エネルギー弾を飛ばしたりして、一通り性能を確かめた。

 

 

気づけば、あたりは夕闇に包まれていた。

 

 

『今日はこのあたりにしておくか………だが』

 

何を思ったか、チェイサーは近くの物陰に向かってエネルギー弾を飛ばした。

 

『それで隠れているつもりか……?さっさと出てこい』

 

物陰に向かってそう問うと、そこから1人の生徒が飛び出してきた。

 

「ご、ごめんなさい……!だからもう撃たないで……」

 

眼鏡を掛け、水色の髪が内側に跳ねた少女ーーー更識簪は涙目でチェイサーに謝っていた。

と言うか、もう泣いていた。

 

それに何故か罪悪感を感じたチェイサーは武装を解除する。

 

『……更識簪。日本の代表候補生、だな…?』

「は、はい…」

『何故物陰から俺を見ていた…』

「じ、実は……貴方に聞きたいことがあって…」

 

涙を拭いながら、簪はチェイサーの質問に答える。

 

『……俺に?』

「この間のクラス代表決定戦……オルコットさんを倒した…」

『……仇討ち、か?』

「ち、違うの!ど、どうやったら、貴方の様に強くなれるのか、教えてほしいの!」

 

声を震わせながらも、簪は目の前のチェイサーに質問した。

チェイサーとしては、適当に答えて切り上げようとしたが、彼女の真剣な眼差しを感じ、口を開いた。

恐らくは超えたい目標があるのだろう、そう割り切って。

 

 

 

 

『人は何かを糧として初めて、強さを手に入れる……。俺はそう思う。……俺には、守りたい家族がいる。守りたい友がいる、それだけだ………』

 

そう答えると、チェイサーは変身を解き、アリーナを後にした。

 

 

「糧………」

 

アリーナに1人残された簪は、その言葉を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

部屋に向かい歩いていたチェイスは、いきなりまた物陰に向かってブレイクガンナーを発砲した。

 

「今度は誰だ………」

 

苛立ちを含んだ声音で呟き、もう一度引き金を引こうとすると、

 

「ま、待って!落ち着いて!」

 

物陰から、生徒が慌てながら飛び出てきた。

先ほどの簪と同じ水色の髪(こちらは外側に跳ねている)、制服越しでも分かるスタイルの良さ、1年とは違う色のリボン。

 

「……更識家17代目当主、更識楯無か」

「っ!?何でそれを…」

 

自分の正体を知っていることに、楯無は動揺する。

 

「事前に調査したまでだ。やはり干渉してきたな……何の用だ」

「…当然、さっきの事よ」

 

楯無は扇子を取り出し、口元を隠しながらチェイスの質問に答える。

その声音には、怒りが含まれていた。

 

「貴方さっき、私の妹の簪ちゃんに発砲したわね?どういうつもりかしら?人の妹を殺すつもり?」

「………職業柄、物陰から人を覗き見するヤツは大体怪しい者だからな。それに姉妹揃って覗き見が得意とはな……」

「なっ…」

「まぁいい、質問に答える。お前の妹だろうと俺の敵と判断すれば、容赦はしない………」

「っ!?」

 

その濃密な殺気に、楯無は動けなくなる。

少しでも動けば、殺される。といった感じだ。

 

 

 

とチェイスは殺気を収める。

 

「まぁそうならないとは思う……、それにただ相談事をされただけだしな。それとな…俺を付け回す暇があるなら、妹との仲を直す事を事を考えた方が良いと思うぜ」

「っ!」

「じゃあな……」

 

そう言ってチェイスは今度こそ部屋に向かい、歩みを進めた。

 

 

 

『彼の殺気、普通に暮らしていて出るものじゃない…!一体何者なの?!』

 

 

 

去りゆくチェイスの後姿を見ながら、楯無はチェイスという人間について考えを巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




IS~黒き魔進~


凰鈴音 「宣戦布告ってわけ」

チェイス「矢張り仕掛けてきたか……」

???「そんな、ありえない!」

IS ~黒き魔進~ 『不穏』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?



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『不穏』

鈴の登場です
因みに鈴は一夏と関わってないため、一夏の事を知りません。(ただし、噂では聞いている)


チェイスが新しい武装を手に入れた翌日、一年一組ではある噂で持ちきりだった。

 

「ねぇ知ってる、ミューゼル君。新しく転校生が2組にやって来るんだって!」

「………そうか」

 

クラスの女子が気軽に話すが、チェイスは相変わらず素っ気ない。

と言うより昨日スコールから聞かされて知っているから、リアクションを取る必要がないのだ。

 

因みにこの間の代表決定戦での実力から、普通はチェイスに恐れを抱く筈だが、チェイスは敵対しない人物に対してはぶっきらぼうながらも普通に接する為、クラスに馴染めている。

 

「あら、私の存在を危ぶんでの事かしら?」

「でも~、セッシーこないだミュー君に負けてたよね~?」

「の、布仏さん!」

 

腰に手を当てふんぞり返るセシリアに、クラスメイトの布仏本音が鋭く突っ込み、途端セシリアは慌てふためく。

 

とここでチェイスが本音に突っかかる。

 

「オイ、ミュー君とは俺の事か……?」

「うん、ミューゼルだからミュー君~」

「…………」

 

絶句したチェイスは無言で席に戻った。

 

教室には微妙な空気が漂っていた。

 

「ま、まーでも余裕でしょ!専用機を持ってるのは1組と4組だけだし!」

 

その空気を払拭すべく、クラスの女子が発言したとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その情報、古いよ」

 

扉付近から声が聞こえ、全員(チェイス除く)が振り向くと、ツインテールの小柄な女子が扉にもたれ掛かっていた。

 

「2組も専用機持ちが代表になったの、そう簡単には優勝はさせないわよ」

 

そう言うと、1組全員を指差して、

 

「覚えておきなさい!私の名は凰鈴音!今日は宣戦布告って訳」

 

そう言ってのけると、鈴は小さい胸を大きく張った。

唖然とする中、鈴はチェイスに目を止めると、チェイスに近づいた。

 

「アンタ……何処かで一度会ってる?」

 

急にそんなことを言い出した。

騒然とする教室内。(特に箒)

 

「…………人違いだ」

 

クラス中が見守る中、チェイスはいつも通りの抑揚で返した。

 

「……そうね。急にごめんなさいね」

 

 

そう言って、鈴は自分の教室に戻っていった。

 

 

『中国代表候補生、凰鈴音……。スパイと言う感じではない、か。だが油断は禁物だな……』

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、チェイスは屋上で寝転がっていた。

食事をしようにも、箒がしつこく付きまとってくるため締め上げ、食事をする気が失せた為、こうして昼寝をして気を紛らわそうと来たのだ。

 

「…………フゥ」

 

空を見上げながらチェイスはぼんやりとしていた。

ここにいると(主に千冬関連の)ストレスが消えていくため、チェイスはここが気に入っている。

 

 

 

 

 

「あれ?ミューゼル君……どうしたんですか?」

 

と、ここで自分を呼ぶ声が聞こえた。

チェイスが目を開くと、

 

「こ、こんにちは~……」

 

自分のクラスの副担任の山田真耶がにっこりと此方を覗き込んでいた。

 

「何故アンタがここに……?」

「今日は天気が良いから、外でお弁当を食べようかな~と思いまして」

 

そう言って、真耶は弁当箱を開けた。

そこには、彩りのオカズが輝いていた。

 

チェイスは無意識に唾を飲んでいた。

 

「ミューゼル君は食べたんですか?」

「……余り食事をする気分ではない」

 

そう言うと、チェイスは真耶の反対側に顔を背けた。

あんなに美味しそうなお弁当を見ていると、空腹が刺激されてしまうから。

 

 

 

 

ぐぅー……

 

 

とここでチェイスの腹が鳴った。

どうやら胃は限界らしい。

 

「あ、ミューゼル君!もしかして食べてないんですか?」

「…………問題はない」

「あります!」

 

珍しくムッとしながら真耶はチェイスを叱る。

 

「お昼をちゃんと食べないと午後の授業について行けませんよ!だからちゃんと食べないと!ミューゼル君は成長期なんですし……」

「…………分かった」

 

溜め息を吐いて、チェイスは懐から朝に一応作ったおにぎりを取り出した。(具は昆布)

 

「作ってるじゃないですか~。折角ですから一緒に食べましょう?ね」

「……拒否権は」

「放っておいたらミューゼル君食べるか分かりません!ここでです!」

 

信用ないなと思いながら、チェイスはおにぎりを頬張る。

ただし、そっぽを向きながら。

 

「…………」

『こうして見ると、年相応なんだな~。意外と可愛い、かも……って私のバカ!相手は生徒!生徒なんだから!……でもこう言うのも、悪くないかも』

 

そんなチェイスを真耶は微笑ましく見守りながら、弁当を食べていた。

 

真耶のチェイスに対する認識が少し変わった。

 

『怖い男の子』から『怖いけど年相応な所もある男の子』へとーーー。

 

 

 

 

鈴の宣戦布告から数日後、IS学園のアリーナではクラス代表マッチが行われていた。

 

今は決勝、セシリア対鈴の試合が始まっていた。

 

どちらも一進一退の攻防を繰り広げるが、チェイスにとっては生温く感じてしまう。

 

いつも死線をくぐり抜け戦ってきたチェイスには二人の戦いぶりが子供の遊戯に見えてしまうのだ。

 

だが、そんなIS学園に震撼が走った。

 

 

 

 

 

 

 

何と試合中に謎のISがアリーナに乱入してきたのだ。

更にアリーナへの入り口及び、客席の扉がロックされ出られなくなる。

 

当然パニックに陥る客席だが、チェイスは、

 

『やはり仕掛けて来たか……亡国機業かもしくは……変身』

《Break up!》

 

 

冷静に乱入者の正体を考察しながら、魔進チェイサーに変身する。

 

 

そして、アリーナの扉を強引に叩き壊した。

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、とある場所では……

 

「まさか、そんな……!?」

 

数々の機材が積み上げられたその部屋で、ある女性がモニターを見ながら驚愕していた。

 

「死神の正体が…………いっくんだったなんて……」

 

自分がよく知る人間が、ISに似たパワードスーツを纏っている姿。

 

「……これは調べてみる必要があるね」

 

元々その女性は噂の男性IS操縦者を見るためにゴーレムを送り込んだ。

 

あわよくば、殺すつもりでもあった。

 

 

 

だが、その正体が親友の弟にして、あの死神ーーー魔進チェイサーだったとは思っても見なかった。

 

「ゴメンね、いっくん……。でも、殺したりはしないから」

 

チェイスに記憶がない事を知らない彼女ーー篠ノ之束はほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイサー『この程度か……』

束「え……?」

鈴「アンタって、織斑一夏?」
 
《Tune chaser cobra!》

IS ~黒き魔進~ 『驚愕と正体』

チェイス「俺は…………」


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『驚愕と正体』

連投です。



「何なのよ、コイツ!?」

「わ、私に聞かないで下さい!!」

 

現在、セシリアと鈴はアリーナに乱入してきた異形のISーーゴーレムと対峙していた。

 

だが、驚異的な力を持つゴーレムによって二人は防戦一方な戦いを強いられていた。

 

現にシールドエネルギーは底をつきかけており、頭から血を流していた。

 

「私、もう、結構ヤバいんだけど……」

「それは、私も、ですわ……!」

 

 

そんな二人に構わず、ゴーレムは追撃しようと突っ込んでくる。

 

ここまでか、と思い目を瞑ると、

 

 

 

《gun》

 

何処からともなく紫の光弾がゴーレムに命中しゴーレムは立ち止まる。

 

何事かと三人が振り向くと、

 

 

 

 

そこには、黒い死神ーーー魔進チェイサーがいた。

 

「ミューゼルさん!?」

「アンタどうやって!?」

 

驚くセシリアと鈴の質問を無視し、チェイサーは二人に言い放った。

 

『コイツは俺が殺る……お前たちは退け』

「何言ってんのよ!」

「ここは協力して戦った方が!」

『そんな様でか?今のお前たちの状態では足手まといだ……』

「「うっ?!」」

 

手痛い言葉を頂き、セシリア達は言葉につまる。

 

『だが、その状態でも出来ん事はない……。お前たちは一般生徒の避難を誘導しろ。それぐらいは出来るだろう……』

「……分かりましたわ!」

「……死ぬんじゃないわよ!」

 

そう言うと、二人はアリーナの客席に飛んでいった。

 

 

『…………』

 

チェイサーがゴーレムを睨むと、それを敵意と感じ取ったのかゴーレムが攻撃を仕掛けて来た。

 

腕に装備されたレーザー砲をかわし、ブレイクガンナーで攻撃するも、その厚い装甲に阻まれる。

 

ならばと、チェイサーは、

 

《Break》

 

ブレイクモードに切り替え、ゴーレムの追撃をかわしながら、ボディに一撃叩き込んだ。

 

それに僅かながらに動きが鈍る。

 

 

それを見逃さずチェイサーはゴーレムを蹴っ飛ばす。

ゴーレムはそのまま壁へと追いやられる。

 

チェイサーは懐からバイラルコアを一つ取りだし、セットする。

 

《Tune chaser cobra!》

『ぶっつけ本番だが、実験の的になってもらうぞ……!』

 

右腕に今度はコブラを模した鞭、テイルウィッパーを装備する。

 

 

 

 

「速く、此方に来てください!」

「怪我はない?大丈夫?」

「は、はい!」

 

客席に戻ったセシリアと鈴は残された生徒の避難に明け暮れていた。

 

「避難誘導ご苦労様」

 

そう言って、セシリア達に人が近づいて来た。

 

「アンタは?」

「私は更識楯無。この学園の生徒会長よ」

「生徒会長……?」

「下級生が頑張ってんのに、私らがサボる訳にもいかないよね、フォルテ?」

「そうっすね~、めんどくさいとか言ってる状況じゃないし」

 

楯無だけでなく、後ろから上級生が二人出てきた。

 

「貴女達は……?」

「私はダリル・ケイシー。そしてこっちが……」

「フォルテ・サファイアっす、IS学園の2年っす!」

「で、セシリアちゃん、鈴ちゃん。貴女達、アリーナにいたはずよね?どうやってここに?」

「えっと、ミューゼルさんがアリーナに入ってきて、私達と戦闘を変わったんですわ」

「私たちに生徒達の避難誘導を任せてね」

「ミューゼル君が?」

「ミューゼルって、あの新入生の?」

「私も見てみたいっすよ~!ミューゼル君!」

 

なんて事を言ってると、

 

「お前たち、無事か?」

「オルコットさん、凰さん、お怪我は?」

 

千冬と真耶が現れた。

 

「はい、私達は無事ですわ」

「でもミューゼルが……私たちに変わって」

「……管制室でも見えた。奴め、止めても全く聞かなかった……」

「ですが、今はミューゼル君に任すしかないですよね……」

「……そう言う事だ」

 

苦々しい表情で呟く千冬と真耶。

 

 

「お、お姉ちゃん……」

 

すると後ろから楯無に声を掛ける人物が現れた。

 

「……簪ちゃん?」

 

楯無の妹の簪だ。

 

「け、怪我とかない!?大丈夫?」

「う、うん。こっちも避難誘導終わったよ……」

「そ、そっか。ご苦労様」

「お姉ちゃんも、大丈夫……?」

「え、ええ。無事よ」

 

何故不仲である簪が積極的に話し掛けてきたのか気掛かりだったが、それを頭の片隅へと追いやる。

 

だがそれでも少し嬉しさを感じていた楯無だった。

 

 

すると、セシリアがあることに気がついた。

 

「あのー織斑先生……」

「どうした?」

「何故篠ノ之さんの首を……?」

「中継室に向かってる所を引っ捕らえただけだ」

「「「「「…………」」」」」

 

ここにいる全員があ、コイツ馬鹿だと思った。

 

 

 

 

 

『行くぞ……』

 

そう言うと、チェイサーは腕を振るいテイルウィッパーをゴーレム目掛けて叩きつけた。

 

余り効いた様子は見せていないが、チェイサーの狙いは別にあった。

 

叩きつけた箇所、右腕にテイルウィッパーが巻き付いていた。

 

 

ゴーレムがそれに気付くよりも早くに、チェイサーはゴーレムの右腕を引きちぎった。

 

『まだだ……』

 

すると、今度は胴体に巻き付け、そのままゴーレムを振り回し、アリーナの地面に叩きつけた。

 

途端、ゴーレムから火花が飛び散る。

 

 

 

だが、チェイサーは追撃の手を緩めない。

 

《Tune chaser spider!》

 

即座にバイラルコアを入れ替え、ファングスパイディーを装備、そのままゴーレムに接近して、ゴーレムの左腕、両足を引き裂いた。

 

 

『……所詮はこの程度か』

《Tune chaser bat!》

 

ゴーレムを空中に蹴っ飛ばし、更に腕に蝙蝠を模した新たな装備、ウィングスナイパーを装備する。

 

《Execution!》

 

腕を失い、更にはスラスターを破壊されたゴーレムに最早逃げ場はなかった。

 

選択肢は、目の前の死神の処刑を受けるだけであった。

 

 

 

 

 

《Full break!bat!》

 

そのまま一気に溜め込んだエネルギーをゴーレムのコアに撃ち込んだ。

 

必殺の一撃、エグゼキューションバットを受けたゴーレムは大爆発を起こした。

 

 

 

『これは……亡国(ヤツら)ではないな……』

 

爆炎をその瞳に写しながら、チェイサーは踵を返した。

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

篠ノ之束は動揺していた。

まさか自分お手製のゴーレムがここまで無惨に破壊されるとは、思っても見なかったからだ。

 

「何なの、いっくんのこの強さ……?!こんなの、私の知ってるいっくんじゃない!」

 

束は今の一夏、チェイスに恐怖を抱いた。

 

 

 

 

 

あの後、チェイスは千冬によって事情聴取を受け、そのまま部屋に帰ろうとしていた。

 

「待ってたわよ、チェイス・ミューゼル!」

 

と、ここで鈴がチェイスの前に立ち塞がった。

 

 

「何の様だ……」

「話があるの。屋上に来てくれる?」

 

どうやら真剣な事らしい。

チェイスは断らずに鈴についていった。

 

 

 

「ゴメンね、疲れてるのに……」

「……あの程度、戦いの内に入らん」

「そ、そう……」

 

沈黙が支配する中、鈴が口を開いた。

 

「1つ、確認しときたい事があるの」

「……」

「アンタの本当の名前って、織斑一夏?」

 

チェイスの本当の名前を口にした。

そのまま鈴は黙りになる。

 

「……らしいな」

「……!」

「俺は、織斑一夏、らしい……。だが、俺にはその記憶が全くない。それに何故俺の名を知っている?俺は記憶が無くとも過去俺に関わった者を目にすると頭痛に襲われる……。だが、お前からは何も感じない……」

「そりゃそうよ。直接的に関わった訳じゃないもの。噂でアンタの名前を聞いただけ。……悪い意味で」

 

と言って、顔を背ける鈴。

だがチェイスには大方予想がついていた。

 

「……織斑千冬の面汚し、下らない罵詈雑言なのだろうな……」

「……そうよ。アンタ記憶が無いけど、取り戻したら、織斑一夏として生きるの?」

「……」

 

途端、黙りになるチェイス。

鈴は慌てながら、手を振る。

 

「べ、別に言わなくてもオッケーだから!」

「……俺は、記憶が戻っても、チェイス・ミューゼルとして生きる。そう決めている」

「……!」

 

チェイスはこのIS学園に来て、人前で初めて穏やかな顔を見せた。

 

「もう俺の手は、決して拭えない血で染まっているからな……。だから戻る気はない。それに……今が、チェイス・ミューゼルとして生きている今が凄く楽しいからな……」

「……そっか、それでいいんじゃない?」

 

そう言って、鈴はニシシと笑う。

 

「ゴメンね!時間取らせて!今度はアンタとも戦ってみたいわ!」

「……俺はオルコットの様に温くはないぞ」

「上等よ!」

 

そう言うと、鈴は屋上を後にした。

残されたチェイスはただ一人、暫く黄昏ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

真耶「今日は転校生を紹介します!なんと二人です!」

シャルル「君が、ミューゼル君?」

ラウラ「貴様とは、楽しめそうだな」

IS ~黒き魔進~ 『金と銀』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『金と銀』

あの二人の登場です


クラス代表マッチから翌日……

 

「今日は転校生を紹介します。なんと二人です!」

「「「「ええええええええええええええええええええええええ!!」」」」

 

朝の教室で真耶が笑顔で告げた発言にクラス中から大声が上がった。

無論、チェイスは事前に知らされた為、無言だったが。

 

「静かに!それでは入ってきてください!」

「失礼します」

「……」

 

途端にクラスは静まり返った。

何故なら、転校生の内の一人が「男」だったからだ。

 

「それでは自己紹介をお願いします」

「はい。フランスから転入してきたシャルル・デュノアです。ここに僕と同じ境遇の方がいると聞いてやって来ました。よろしくお願いします」

 

一瞬の沈黙。そして、

 

 

「「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」

 

歓声が爆発した。

チェイスは耳栓をしていたお陰で、何とか歓声を防いだ。

 

「二人目の男子、キターー!!!」

「金髪の王子様みたい!」

「ミューゼル君と違って守ってあげたい系の男子よ~!」

「我が生涯に、一片の悔い無し!!」

 

女子が思い思いにシャルルについて感想を叫ぶ。

その反応にシャルルもタジタジであった。

 

その中でチェイスは目の前のシャルルについて考えていた。

 

『アレでバレないと思ってるのか……?完全にクロだな……』

 

チェイスは確信した。

彼は女だと。

 

「あー騒ぐな、静かにしろ」

「み、皆さん!落ち着いてください~、まだ一人残ってますから~!」

 

千冬と真耶によって漸く静まる。

それを確認したチェイスは耳栓を外す。

 

「次はお前の番だ」

「はい、教官!」

 

 千冬にそう言われたその少女は、千冬に敬礼して返事を返す。

 

「教官はよせ。私はもうお前の教官ではない、お前の担任だ。織斑先生と呼べ」

「わかりました」

 

 千冬にそう返事を返すと、少女は教壇の前に出て自己紹介をした。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 簡潔にそれだけを言う。

その後何もないことに、皆唖然としていた。

(チェイスは無視)

それを見かねてか、真耶が話しかける。

 

「え、えーと、……以上、ですか? 」

「以上だ」

 

そう言って、ラウラはチェイスの方に向かって行き、

 

「貴様、織斑一夏か?」

 

チェイスの嘗ての名で呼んだのだ。

またか、とチェイスは溜め息を吐く。

「俺はそんな名前ではない……」

 

僅かながらに殺気を滲ませ、ラウラを一瞥した。

その殺気にラウラはたじろぐ。

 

「っ……!生意気な奴だ……!」

 

そう言って、ラウラは席に座る。

 

 

転校生の紹介を終えた後はすぐに授業に取りかかる。

 

「今日は4組と合同でISの訓練を行う! すぐに着替えて第二グラウンドに集合! 遅れた者は鉄拳制裁だ、分かったか。わかったならばとっとと急げ!」

 

 千冬が騒いでいる者達にそう言うと、皆脱兎のごとく凄い速さで移動を開始し始めた。

チェイスは普通に移動をしようと歩き始めたが、千冬に呼び止められた。

 

「ま、待て、ミューゼル。デュノアの面倒を見てやれ」

 

同じ”男子”であると言う事で、千冬はチェイスにそう言ったのだ。

 

「……分かった」

 

千冬の観察眼の無さに疑問を抱きつつ、取り敢えず了解の返事を返す。

 

「君がミューゼル君だね。初めまして、僕は……」

「……さっさと来い」

「えっ?きゃ!」

 

シャルルの自己紹介を打ちきり、チェイスはシャルルの手を強引に引っ張って行く。

 

 

しかし当然、その道中は楽ではなかった。

 

「転校生発見!」

「ミューゼル君と一緒よ!」

「者共、出逢え出逢え!」

 

さながら武家屋敷の様な感じになっているが、チェイスはシャルルを連れて女子の猛攻を掻い潜る。

 

「何でこんなに彼女達は騒いでるの?」

『自分でボロを出すスパイがいるとはな……』

 

明らかな失言を漏らしたシャルルをしかしチェイスは気にせず、更衣室に向かう。

 

「ここが更衣室だ……」

「き、君は着替えないの?」

「俺には必要ない……。それに俺の役目は終わった……」

 

そう言って、チェイスはグラウンドに向かう。

 

 

 

「本日から格闘、および射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

授業の内容を説明していく千冬。

と言っても既にそれらを抜群にこなすチェイスにとっては、聞く意味も無い話であった。

 

「あ、ミューゼル君……!」

 

と、ここで後ろからチェイスに話しかける人物がいた。

4組の代表の更識簪だ。

 

「ひ、久しぶり……」

「何の様だ……」

 

じろりと簪を睨み(チェイスはあくまで見詰めているつもり)、先の言葉を促す。

簪はその睨みに少し怯えるが、何とかチェイスに言葉を伝える。

 

「あれから、色々考えたんだ……。私の強さになる糧……。それがお姉ちゃんだって改めて気付けた……、今は無理でも、その思いを糧にして頑張って努力すれば、何時かは追い越せるって気付けたの……。だから、ありがとう!」

「俺は何もしてない……。そう気付いたのはお前自身だ」

 

そう言って、チェイスは前を向く。

これ以上の会話は必要ないと思ったからだ。

 

『そして何時か、ミューゼル君のいる高みに追い付ける…!』

 

簪がそう思っていると、

 

「今日は専用機持ちに戦闘を実演してもらう。オルコット、更識! 前に出ろ」

 

千冬にそう言われセシリアと簪は前に出るとISを展開した。

 

「それで相手は?更識さんでしょうか?」

「慌てるな、お前達。対戦相手は……」

 

そう千冬が説明しようとすると、上空から降下音が聞こえてきた。

 

「きゃぁあああああああ、ど、どいてください~~~~~っ!!」

 

真耶がIS『ラファール・リヴァイヴ』を装着した状態で落下してきた。

しかも落下地点が、丁度チェイスのいる場所なのだ。

当然、チェイスの周りにいた生徒は離れるが、

 

《Tune chaser spider!》

 

チェイスは冷静にバイラルコアをセットし、ファングスパイディーを展開。蜘蛛の巣を思わせるワイヤー状のネットで真耶を受け止める。

 

「あ、ありがとう、ございます!///(は、恥ずかしいです~!)」

「問題はない……」

 

そう言って、ファングスパイディーを消す。

 

「ではこれより、山田先生と候補生二人の模擬戦を実演してもらう。二人とも、山田先生はこんな感じだが、これでも元日本代表候補生だった優秀な人だ。あまり甘く見るなよ」

 

千冬がそう言うと、二人は気を引き締めて返事を返す。

そして三人による模擬戦が始まった。

模擬戦中に千冬がシャルルに真耶が使っているIS『ラファール・リヴァイヴ』について説明するように命じると、シャルルは丁寧に皆に聞こえるように説明し始めた。

 

 

模擬戦は真耶の勝利で幕をおろした。

 

 

 

 

そして昼休み、

 

「あ、ミューゼル君。ちょっと良いかな?」

 

昼食を食べ終えたチェイスは屋上に行こうとしたが、シャルルに呼び止められる。

 

「何の様だ……」

「よ、良かったら、この後、僕と模擬戦しないかい?」

「あぁ……」

 

別にする必要はなかったが、チェイス自身シャルルの実力を知りたかった為、了承する。

 

 

 

そして、アリーナで模擬戦を行った。

 

「つ、強いね。ミューゼル君……」

『(こんな物か……)』

 

結果はチェイスの勝利に終わった。

 

「ラピッド・スイッチで上手く行けると思ったんだけどな~」

『その程度でやられる程、俺は甘くない……』

 

すると突然、アリーナはざわめきに包まれた。

 

「ねぇ、ちょっと……見てよあれ!」

「あれってもしかしてドイツの……」

「第三世代型IS!? まだ本国でのトライアル段階って聞いてたけど……」

 

 騒ぎになっている方に一夏達は目を向けると、そこには黒いISをまとったラウラ・ボーデヴィッヒが立っていた。

 

「チェイス・ミューゼル、私と戦え!」

 

ラウラはニヤリと笑みを浮かべながら、チェイスに挑戦する。

 

「断る……と言えば?」

「貴様に拒否権はない。貴様の存在が、教官を弱くしている!だからこそ、消えてもらう!貴様は教官の弟なのだろう?」

「……下らん」

 

そう言って、チェイサーは踵を返す。

 

「い、いいのかい?」

『所詮は餓鬼の戯れ言だ……放っておけばいい』

 

その様子に、ラウラの低い沸点は限界を超えた。

 

「気に食わん!その態度……!ならば、戦わざるを得ない様にしてやる!」

 

そう言うと、ラウラはレールカノンをチェイサーに向けて放った。

レールカノンから放たれた光弾はチェイサーに向かって一直線に進んで行く。

シャルルは咄嗟にチェイサーを庇おうとするが、

 

《Tune chaser bat!》

 

その前にチェイサーはバイラルコアをセットし、ウィングスナイパーを装備。

即座に紫の矢を放った。

 

紫の矢は光弾を貫き、そのままラウラのレールカノンにヒット。

レールカノンは大爆発を起こした。

 

「なにっ!?」

 

ラウラは驚愕の眼差しで、チェイサーを睨む。

対するチェイサーは無言のまま、アリーナを出ていった。

 

 

 

そして、放課後。

真耶は夕食を食べようと食堂を訪れていた。

 

するとそこには、

 

「……ミューゼル君?」

 

何かを食べているチェイスがいた。

それも幸せそうな顔で。

 

「何を食べてるんですか、ミューゼル君?」

「っ!」

 

と、ここで漸く真耶に気付いたらしく、チェイスは珍しく肩を少し動かす。

 

「……み、見たのか…?」

「い、いえ!何を食べてるのかな~っと思いまして……コーヒーゼリー?」

 

チェイスの手の中には、小さいカップに入ったコーヒーゼリーがあった。

 

「もしかして、甘い物が好きなんですか?」

「……悪いか」

 

そう言って、チェイスは顔を反らす。

そんなチェイスに真耶の中の母性本能がくすぐられた。

 

「ううん、そんなことないですよ。寧ろ嬉しいです」

「……?」

「だってミューゼル君って、あんまり好みの物とか言わないじゃないですか。だから良くミューゼル君の事が分からなくて……」

「分からなくて良い……」

 

チェイスは席を立つ。

 

「でも、今日とこの間の出来事だけですけど、少しミューゼル君の事が分かった気がします」

「……そうか」

 

その言葉を聞き、チェイスは去って行った。

ちゃっかりコーヒーゼリーを持って。

 

「やっぱりミューゼル君、少し怖いけど、可愛い……///」

 

そんな事を呟く真耶だった。

 

 

 

部屋に向かってチェイスは歩いていると、何やら声が聞こえた。

 

気配を殺して、物陰から見ると、

 

「何故ですか!何故こんな所で教師など!!」

「私には私の役目がある、それだけだ」

 

ラウラが千冬にそう声を荒立てて叫ぶ。

 

「こんな極東の地で何の役目があるというのですか!お願いです教官、我がドイツで再びご指導を……ここではあなたの能力を半分も生かせません!」

 

それがラウラの願いである。

自身が崇拝する教官に国でもっと自分達を鍛えて貰いたい。それ自体は純粋に綺麗な願いではある。

だが、その後に出たのは周りの生徒への侮辱的な感情であった。

 

「この学園の生徒はISをファッションか何かと勘違いしている。教官が教うるに足りる人間ではありません!危機感が全く出来てない。そのような者達に教官の時間を割かれるなど……」

 

その言葉に千冬はついに我慢が出来なくなった。

流石にこの物言いは流石に不味かったのだ。

 

「そこまでにしておけよ小娘」

「っ……!!」

 

 千冬から発せられた怒気を感じてラウラは黙る。

その怒りが凄まじいことを感じて何も言えなくなってしまった。

 

「少し見ない間に随分と偉くなったな。十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

「わっ、わたしは……」

「寮に戻れ、私は忙しい」

「くっ……」

 

 ラウラは何も言い返せず、その場を逃げるように去った。

同じ様に、チェイスもまた去って行った。

 

『下らん妄執だな……』

    

そしてこの後、チェイスはーーー

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイス「それで満足か……?」

シャルル「そんな……!」 

ラウラ「チェイス・ミューゼル……絶対に許さん!絶対!!」

IS ~黒き魔進~ 『薄幸』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『薄幸』

この回はシャルロットが好きな人とラウラが好きな人は見ないことをお勧めします。


部屋に戻ったチェイスは、シャワーを浴びるべく、浴室に向かった。

 

脱衣場で服を脱ぎ、ブレイクガンナーを服の下に隠し、そのまま浴室に入って行った。

 

 

 

チェイスがシャワーを浴びている最中、クローゼットの中からシャルルが出てきた。

 

『これで漸く……ゴメンね、ミューゼル君』

 

罪悪感に駆られるが、シャルルの立場もこのままでは危ういのだ。

今日の今日まで、チェイスはシャルルに一切心を許さなかった。

親しくしようにも、冷たくあしらわれ、このままだと自分やデュノア社の立場が危険に晒される。

 

だからこそ、シャルルは強硬手段に出た。

 

チェイスがシャワーを浴びている最中にデータを盗もう、と。(それを実行しようにも、大体チェイスが先にシャワーを浴び終わっているから)

 

音を立てずに脱衣場に入り、服の下に置かれたブレイクガンナーを手に取ると、そのまま抜け出した。

 

 

早速シャルルはパソコンにブレイクガンナーを接続し、中にあるデータを閲覧した。

 

が、その中にはシャルルが期待する様なデータは全く無かった。

 

シャルルがISと信じているそれは、ISではないため、通常のISとはまるでデータが違うのだ。

更には稼働データらしき物も見当たらなかった。

 

『何これっ……絶対防御も、コアも存在しないなんて……!情報は、何処に……!?』

 

シャルルは更に焦り、稼働データを探そうと手を動かすが、夢中になるあまり、後ろから近づく者に気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

「……それで満足か?」

「っ!?」

 

後ろから不意に声を掛けられ、シャルルは凍りついた様に動けなかった。

 

恐怖に駆られながら後ろを振り向くと、

 

「み、ミューゼル君……」

「……」

 

チェイスが絶対零度の眼差しで、シャルルを見下ろしていた。

 

「……そこに隠れて俺のデータを盗もうとするとはな。余程焦っていたのか……」

「あ、あぁ……」

 

震えるシャルルを余所に、チェイスはパソコンからブレイクガンナーを取ると、シャルルの額に押し付けた。

 

「ひっ?!」

「今からお前の怪しい言動1つで、その額に穴が開く……大人しく俺の質問にイエスかノーで答えろ……」

 

その目は本気で自分を撃つ、そう語っていた。

故にシャルルは震えながら、首を縦に振った。

 

「お前の本当の名はシャルロット・デュノア……デュノア社社長の一人娘、目的は俺の専用車の稼働データ、或いは俺の篭絡……違うか?」

「…………なんだ、全部バレてたんだ」

 

ハハッ、とシャルロットは自嘲気味に笑った。

 

「お前の朝の言動でバレバレだかな……」

「そっか……。それで…君は僕をどうするの?学園と政府に報告して僕を追い出す?別にいいよ……会社は潰れるかもしれないし、僕の強制送還されるだろうけど……もうどうでも……」

 

シャルロットは諦めからそんなことを洩らす。

だが、チェイスはそんなシャルロットに怒りが湧いた。

 

「気に入らんな……自分の主張も出来ない程の弱虫だとは……虫酸が走る……!」

「……君に、君に僕の何が分かるのさっ!?君は強いからそんなことが言えるんだ!僕は君みたいに強くない……だからっ!!?」

 

途端シャルロットは頬に強い衝撃を感じ、ベッドに倒れた。

気付けば、目の前のチェイスが拳を握っていた。

 

要は殴られたのだ。

 

「何時までそんな甘ったれた事をほざく気だ……!お前は感情も主張もないロボットか……?」

「…………っ」

「この先お前がのたれ死のうが強制送還されようが俺の知った事ではない……だかな!最初から諦めの戯れ言を口にする奴は何時までたっても変われん!本当のお前はどうしたい……その運命に従って死ぬか……?」

「…………」

 

黙りなシャルロットを一瞥し、チェイスはシャルロットに生徒手帳を投げつけた。

 

「……これは?」

「読んでおけ……損はない」

 

そう言って、チェイスは部屋を出ていった。

 

 

その日、チェイスは外のベンチで一夜を明かした。

 

 

 

 

翌日、チェイスが部屋に戻ると、

 

「ミューゼル君、ありがとう……!」

 

シャルロットが目の下に隈が出来た笑顔でチェイスに礼を言ってきた。

 

「ミューゼル君が言いたかったのって、この『IS学園特記事項第二十一』のことだよね。ありがとう、教えてくれて」

「……そこから先を決めるのはお前だ」

 

そう言って、チェイスはシャルロットに湿布を差し出した。

 

「……これは?」

「貼っておけ……。それと……殴って、すまなかった……」

 

謝罪されている事に気付いたシャルロットは笑顔で、

 

「ううん、寧ろ感謝してるよ。あの時殴られなかったら、僕は僕じゃなくなってたと思うから……」

 

そう言いながら、シャルロットは頬に湿布を貼った。

 

「……そうか」

 

チェイスはフッと笑うと、食堂に向かった。

 

「あっ、待ってよミューゼル君!」

 

そう言って、シャルロットは笑顔でチェイスを追いかける。

その顔は、何処か憑き物が晴れた様な生き生きした笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終え、チェイスとシャルロットが教室に向かうと、

 

「デュノア君っ!」

「ミューゼル君!」

「「「「私とペアになって下さい!!」」」」

 

いきなりそう頼まれ、困惑する。

 

「えっと、何のペアかな?」

 

シャルロットが苦笑いで聞くと、女子生徒が1枚のプリントを渡してきた。

 

「学年別タッグマッチトーナメント?えーっと……来週から行われるのか……タッグの提出期限は、今週末……」

「だからっ!」

「私達と!」

「ペアになって下さい!!」

 

必死に頼み込んで来る女子達に、チェイスはいつも通り素っ気なく言い放った。

 

「すまん……俺はデュノアと組む」

「そう言う訳なんだ……ゴメンね」

 

シャルロットの正体はチェイスしか知らない。

そのため、他の人間と組むと、正体がバレる可能性が高い。

 

故にチェイスはシャルロットと組むことにしたのだ。

 

「なーんだ、残念……」

「でも他の女子と組まれるよりは……」

「夏コミの要素が増えるわ……!」

 

一部とんでもない事を呟きながら、女子の波は引いていった。

 

「ありがとう、ミューゼル君」

「……気にするな」

 

そう言って、チェイスは座席に座った。

その途中、ラウラに睨まれたが、チェイスはこれを華麗にスルーした。

 

そしてこの後、二人は戦闘の作戦を考え、チェイスはシャルロットの特訓を見て、未熟な部分を指摘したりした。

 

 

 

 

そしてタッグマッチトーナメント当日。

 

「一回戦はボーデヴィッヒさんとだね」

「……」

 

対戦表を見て、シャルロットはそう呟く。

 

「相手が誰でも、叩き潰す……」 

「アハハ……」

 

物騒な事を呟くチェイスにシャルロットは苦笑い。

 

「デュノア、お前は篠ノ之を殺れ……」

「えっ?」

「あの銀髪は、俺が潰す……」

「……因縁、かい?」

「…………」

「分かった、篠ノ之さんは僕が相手をするよ」

 

そして二人はカタパルトに立つ。

 

「変身……」

《Break up!》

「……行こうか、ミューゼル君」

『あぁ……』

 

二人はアリーナに向けて飛んでいった。

 

 

 

 

「1戦目で当たるとは、待つ手間が省けたな。これでやっと貴様を叩きのめせる」

「一夏っ!今日ここでお前の目を覚まさせてやる!」

『……』

 

いきなり此方に噛みついて来るラウラと箒だが、チェイスはこれを当然無視した。

 

「なんか向こう、余りコンビネーション出来そうにないね……」

『自己主張の激しい馬鹿二人だからな……叩くのは容易い』

「確かにそうかも……それにしても一夏って?」

『お前が知る必要はない……』

「……そうだね」

 

 

そうしている間に、試合のブザーが鳴り響く。

 

『手筈通りだ……任せた』

「OK!」

 

シャルロットは言われた通りに、チェイスに向かってきた箒を抑え込む。

 

「彼が相手じゃなくてゴメンね」

「っ!馬鹿にするな!」

 

箒とシャルロットが交戦し始め、チェイサーもラウラを撃つ。

 

「無駄だっ!」

 

ラウラはプラズマブレードで弾き、レールカノンをチェイサーに向けて放つが、

 

《Break》

 

ブレイクガンナーをブレイクモードに切り替え、光弾を掻き消した。

 

「ちぃっ!」

『……』

《gun》

 

舌打ちするラウラに対し、チェイサーはブレイクガンナーをラウラに向けて撃った。

 

「ふっ!」

 

だがそれをラウラはAICで止め、プラズマ手刀で掻き消す。

が、その間に、チェイサーは再び光弾を撃ち放った。

 

「はっ!そんな小細工が通用すると思ったか!」

 

ラウラはワイヤーブレードを展開し、光弾を相殺すべく向かわせるが、何と光弾の軌道が曲がり、全てラウラの手に命中した。

 

「がぁっ!……まさか、偏向射撃(フレキシブル)!?」

『俺が何時偏向射撃を使えないと言った……?』

《Break》

 

驚くラウラの隙を逃さず、チェイサーは一瞬でラウラの背後に回り、隙だらけの背中を殴った。

 

「ぐぁぁっ!!」

 

殴られたラウラはその勢いのまま、壁に激突する。

 

「おのれぇ!!許さんぞぉぉぉ!!」

 

だが即座に起き上がり、ワイヤーブレードをチェイサーに向かわせる。

 

《Tune chaser spider!》

 

チェイサーは冷静にバイラルコアをセットし、ファングスパイディーを装備。

ワイヤーブレードを弾き返し、ラウラの懐に潜り込み、袈裟斬りにした。

 

「がはっ!」

 

その一撃でシールドエネルギーが大幅に減少し、ラウラは悶え苦しむ。

だがチェイサーはそんなラウラを上空に蹴っ飛ばす。

 

《Tune chaser bat!》

 

今度はウィングスナイパーを装備し、落ちてくるラウラに矢を放ち、再びアリーナの壁に激突させる。

 

『まだだ……』

《Tune chaser cobra!》

 

再びバイラルコアを装填、テイルウィッパーを装備した。

そのまま起き上がろうとするラウラの体に巻きつけ、縦横無尽に叩き伏せた。

 

「ぐぁぁぁっ!!」

 

ラウラの機体の皹も激しくなっていき、更にシールドエネルギーは殆ど0に近い。

 

《Execution!》

 

そんな満身創痍のラウラに引導を渡すべく、チェイサーは必殺技を発動する。

 

『この程度か……沈め』

《Full break!cobra!》

 

ラウラに向けブレイクガンナーの引き金を引くと、テイルウィッパーが離れ、蛇の如くラウラに襲いかかった。

 

「くっ!何だこいつは!?」

 

ラウラはAICで必死に止めようとするも、激しく動き回るテイルウィッパーを抑えられず、そのまま攻撃を受け続ける。

 

「ガハァ!」

 

最後に鉄の尾で打ち飛ばされた先には、

 

 

 

 

 

 

『……』

「っ!」

 

ファングスパイディーを構えるチェイサーがいた。

 

「しまっ……!」

『フンッ…!』

 

紫紺のエネルギーを溜めたその鉤爪の一撃にラウラの専用機は限界を迎える。

 

「ーーーーっ!!」

 

声にならない悲鳴を上げながら、ラウラはアリーナの地面を転げ回る。

 

その時に、チェイサーの目が合った。

と言っても仮面越しだが、

 

『……っ!こいつ……!』

 

フルスキンで覆われて表情は伺えないが、その男はまるで自分を見ていなかった。

そこら辺にある石ころと同等に自分の事など、まるで眼中にない。

 

そう、敵としても認識されていない。

事実、彼から疲労をまるで感じなかった。

 

 

それが分かってしまった時、ラウラは願った。

 

『欲しい……力が!奴を、教官を弱くさせるこの男を、完膚なきまでに叩きのめす力が!!』

 

そして、不意にその声は響いた。

 

『求めますか……?この、最高で最低で最強の力が……?』

『力……!寄越せ!比類なき、最強の力をーーー!!』

『良いでしょう。やはり人間は、愚鈍で愚かで野蛮な種族ですね……だからこそ、楽しめる!』

 

そして、ラウラの意識はーーーー

 

 

「お疲れ様、ミューゼル君……?」

『……』

 

シャルロットは笑顔でチェイサーを労るが、チェイサーはまだラウラを睨み付けていた。

 

すると、ラウラが起き上がった。

 

「あああぁああぁあああああぁああああああああぁあああ!!」

 

突然絶叫し始めると、大破していたシュヴァルツェア・レーゲンが紫電を放ち始めた。

紫電が収まったかと思うとシュヴァルツェア・レーゲンは黒いどろどろとした泥のようになり、ラウラを包んで紫の鎧を纏った人型の何かに変わっていた。

 

その腕には、鋭い突起物が着いていた。

 

 

 

『……まさか!』

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、良いデータを期待していますよ……」

 

その様子を、緑の服を着て眼鏡を掛けた男が見ていた事に誰も気付かなかった。

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

ラウラ?「ぐおおおおっ!!」

チェイサー『……こんな物かっ!』

???「ほぉ、これは良い結果だなぁ……ーー」

IS ~黒き魔進~ 『死神VS鋼鉄の戦乙女』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『死神対鋼鉄の戦乙女』

『……』

 

チェイサーは目の前の異形を睨み付けていた。

 

「ミューゼル君、あれって……?」

『デュノア、お前は篠ノ之を連れていけ……』

「え?君は……」

『奴を、殺る……』

「そ、そんな!無茶だよ、ここは協力して……」

 

その言葉を遮る様に、チェイサーはブレイクガンナーでシャルロットの近くを撃った。

 

『2度は言わんぞ……』

「……分かったよ、気をつけて」

 

そう言って、シャルロットは箒を伴ってそこから去った。   

 

『恐らく……いや間違いない。奴等だ……!』

 

  

 

 

 

 

 

亡国機業(ファントム・タスク)!!』

 

 

 

 

 

 

『ぐおおおお!!!』

 

異形の化身は、咆哮を上げながらチェイサーに突進してきた。

 

チェイサーは構えるが、途端に異形の腕が輝きだした。

 

『あれは………っ!』

 

異形は一瞬にしてチェイサーの懐に潜り込み、その拳を放つが、チェイサーは上昇してそれを避ける。

 

『……速いっ!』

 

その速さに驚嘆する暇も与えないが如く、異形はチェイサーに向かって、なんと腕を伸ばし拳をぶつけた。

 

『………がっ』

 

その一撃を諸に受けたチェイサーは一瞬にして、アリーナの壁に叩きつけられる。

異形がさらに接近しようとするが、

 

 

 

『…………ぐっ!』

 

アリーナの瓦礫を異形に蹴飛ばし怯ませ、チェイサーは何とか起き上がる。

 

が、ISと違い絶対防御が無いため、痛みは残っていた。

 

『……これは、織斑千冬の零落白夜か……と言うことは、あれはVTシステムか』

 

そう的確に敵の攻撃を分析する中、異形は此方に気付き、再度向かってくる。

 

『あの一撃を何度も受ければ……死ぬなっ!』

《Break》

 

零落白夜の拳をかわし、ブレイクガンナーで異形の顔面にカウンターを与える。

 

途端、後ろの壁が崩れ去り、異形は吹き飛ばされる。

 

《Tune chaser spider!》

 

チェイサーはその隙にバイラルコアをセット、ファングスパイディーを装備して、異形に斬りかかる。

 

『ぐおおおお!!!』

 

異形はそれを手の突起で防ぎ、チェイサーを軽々と掴み上げる。

 

『なっ……!』

『ぐおおおお!!!』

 

チェイサーは地面に叩きつけられる。

その衝撃で、地面に巨大なクレーターが出来る。

 

『がっ……はぁ!!』

 

体中を駆け回る不快な衝撃を感じ、チェイサーは仮面の奥で顔を歪める。

 

『ぐっ……おおおおお!!』

 

途端、異形が何故だか苦しみ出す。

 

『……まさか!』

 

それを振り払うかの様に異形は、拳を振り上げるが、チェイサーは一か八かその拳に、エネルギーを集中させたブレイクガンナーを叩き付けた。

 

すると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼごぉぉおおお!!!

 

そんな音を立てながら、異形の拳は脆くも崩れ去った。

 

『ぐおおおお!!!』

 

苦痛を感じてる為か、異形は叫び声を上げる。

 

『やはり、ボーデヴィッヒが耐え切れてないな………!スコール…ありがたく使わせてもらうぞ!』

《Tune chaser beetle!》

 

チェイサーは新しくスコールから与えられたバイラルコアをセットする。

すると、カブトムシの角に似た槍が装備される。

 

『でやぁ!』

 

チェイサーは槍ーーーホーンジャベリンを振りかざし、異形の身を切り裂く。

 

『ぐおおおお!!!』

『……フン』

 

異形の切り口から露出したラウラの腕を掴み、強引に抜き取り、アリーナに投げ捨てる。

宿主のラウラを抜かれたことで更に苦悶の叫び声を上げるが、チェイサーは異形の身体に刺し、空に放り投げる。

 

《Execution!》

『はぁ!』

 

必殺技のエネルギーをチャージし、チェイサーも同じく飛び上がる。

すると、紫のエネルギーが足先に集中されていき、巨大な角を形成した。

 

《Full break!beetle!》

『ぜぁあああああ!!!』

『ぐおおおお!!!』

 

エグゼキューションビートル(キックversion)を放ち、異形に止めを刺した。

 

 

そのまま異形はアリーナの空中で大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、これだけ取れれば充分でしょう……」

 

その戦いを見ていた謎の青年は、消えるようにその場を去って行った。

 

 

 

『チェイス、本当に怪我はないの?』

「あぁ、問題ない……」

 

あの後チェイスは、千冬からの質問に応答した後で、スコールに連絡を取っていた。

 

『本当?無理してない?』

「……俺は嘘を付くほど器用じゃないよ、母さん」

 

スコールは苦笑いしながら、返事を返す。

 

「一応奴との交戦で取れたデータを送る……」

『……ありがとう、チェイス。何処か痛くなったら、直ぐに言うのよ?』

「あぁ、分かってるよ」

 

そう言って、チェイスは通信を切る。

 

『……そう言えば、新しくライドスーツが出来たとも言ってたな。どの様な戦士なんだろうな……』

 

チェイスはそう思いながら、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、とある場所では……

 

「お帰りブレン。どうだ、データは取れたか?」

「ええハート。お陰で新しい同士が誕生しますよ」

「そうか……」

「ですが、ISと操縦者を媒体にしたので不安定ではありましたが……」

「だがVTシステムという面白い物も見れた」

 

先程IS学園にいた眼鏡の青年は、目の前の真紅のコートを着こなした青年と話をしていた。

 

「革命の時は近いな……」

「……そうですね。この酷く醜く歪んだ世界を、リメイクする日は」

 

 

 

 

 

 

 

更に、とある別の場所では……

 

 

『もうしらを切るのも大概にしたら?』

「何!?」

『お前らが奴らと繋がってるの知ってるぜ』

「ならば、生かしておけんなぁ!!」

 

IS部隊がその二人に突撃するも、その内の一人が、

 

《ピーチエナジースカッシュ!》

『やぁ!』

「ぐああああ!!!」

 

桃色の斬撃で一掃し、

 

「し、死ねぇ!!」

 

残りの部隊が突撃するも、

 

《ヒッサーツ!フルスロットル!》

『でやぁぁぁ!!』

「ぎゃああああ!!!」

 

隣の赤い戦士の目にも止まらぬ一撃によって、返り討ちに合う。

 

だがその隙を突き、目的の人物は逃げていく。

 

 

『あっ!逃げられた……!もう、兄さんがモタモタしてるからだよ!』

『俺のせいかよ!……っつーか早く行くぞ。大騒ぎになっちまう』

 

そう言って、その場を去る二人に何者かが合流した。

 

『よーお二人さん』

『そっちはどうだい?』

『此方は逃げられてよ~』

 

3人のこれまた変わったスーツを着けた者達だった。

 

『此方もだ、ゴメン』

『ごめんなさい、兄が……』

『だから俺のせいにするなよ!』

『まぁまぁ』

『続きは帰ってからにしようぜ』

『そうだな』

 

そう言って、6人はその場を飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

真耶「あの~ミューゼル君。良かったら、選んでくれますか?……水着」

カイト「チェイス君の友達です!」
弾「同じく!」
数馬「例に漏れず!」

チェイス「お前ら……」

IS ~黒き魔進~ 『臨海学校 序章 』
 

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『臨海学校 序章』

シャルロットの再転入とラウラの謝罪は軽く流させていただきました
決してめんどくさいとかそう言う訳ではないですよ、良いね?

チェイス「へー(白目)」


タッグマッチトーナメントの騒動の翌日、シャルルが女として再転入を果たし一悶着あったが、チェイスは何処吹く風の様子。

 

更にラウラがチェイスに土下座をしてきたのは完全な余談だろう。

 

 

 

そして、現在チェイスは大型ショッピングモール「レゾナンス」に来ていた。

 

来た理由は来週から始まる臨海学校の準備の為である。

 

と言っても水着類を買うだけだが。

 

 

そんな訳で水着コーナーに足を踏み入れ様とすると、

 

「ちょっとそこの貴方!これ、元の場所に戻しなさい」

 

近くの女性水着コーナーにいた女性にいきなり命令された。

だがチェイスはそれを無視する。

 

「待ちなさいっ!男の癖に……!」

 

追いかけようとした女性に、何者かが足を掛けた為、女性は派手にスッ転んだ。

 

「あぐぅっ!」

「だっさい転け方ですね~」 

「……カイトか」

 

その正体はカイトだった。

後ろから更に弾と数馬も警官を連れてやって来た。

 

「お巡りさん、コイツです!」

「何度も突っかかろうとしてました!」

「アンタ、何度忠告したら分かるんだ……!もう逮捕だな!」

 

呆気なく御用となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故お前らがここに……」

 

久しぶりの挨拶も無しにチェイスはカイト達に尋ねた。

 

「イヤー夏も近いしね~、水着買っとこうかな~ってさ」

「そしたら馬鹿に威張り散らしてるオバサンがいたから」

「何だと思って見たらチェイスに怒鳴り散らしてるからさ」

 

それぞれ答える3人。

 

「所でチェイスは?珍しいじゃない、君がここにいるの」

「……臨海学校の水着を買いに来た」

「……一人でか?」

「……女子に水着を選ばせろと?」

「そうだったな……」

 

そんな事を話ながら、チェイスは適当に黒の水着を選択し、会計に向かう。

 

「はやっ!流石に適当過ぎじゃね……?」

「水着なんて何れも同じだろう……」

「いや、普通は魅せる物だよ?」

「カイト、それは女性にしか当てはまらない」

 

と、カイト達が選んでるのを眺めてると、

 

 

「あれ、ミューゼル君ですか?」

「……アンタは」

 

山田真耶がチェイスに近づいてきた。

 

「奇遇ですね~、ミューゼル君も水着を……ってもう買ったんですか?」

 

チェイスの手に握られてる袋を見て、感心の声を上げる。

 

「お待たせチェイス……ってそちらは?」

 

カイト達が真耶に気付き、チェイスに声を掛ける。

 

「ミューゼル君のお友達ですか?」

「……まぁ、そんな物だ」

「初めまして。ミューゼル君のクラスの副担任の山田真耶です」

 

丁寧にお辞儀をする真耶を見て、カイト達も慌てながら、

 

「は、初めまして!チェイス君の友達の色川カイトです!」

「五反田弾です!チェイスの友達やらせてもらってます!」

「同じく友達の御手洗数馬です!」

「……お前ら」

 

丁寧にお辞儀を返す3人に苦笑いする。

 

「良かった~、ミューゼル君ちゃんとお友達いるんですね~!」

「そりゃあいますよ!……でチェイス、学校で孤立とかしてないですか?」

 

いきなりオカンみたいな質問をする弾に溜め息を吐くチェイス。

だがそんなチェイスに構わず、真耶は語り出す。

 

「そんなことないですよ~!基本無口で無愛想ですけどちゃんと勉強もしてますよ♪」

「へ~、そうなんですか~」

 

カイトはにんまりしながらチェイスを見て、チェイスはその視線に小さく舌打ちする。

 

「後最近甘いものが好きだと言う事を知ったんですよ~!」

「そうなんですよ!コイツ結構甘いもの好きなんです!」

「オイ……!」

 

恥ずかしくなってきたチェイスは止めようとするも、話はどんどんヒートアップしていく。

 

「凄く強くて、無愛想だけどたまに年相応な面もある良い生徒ですよ~」

「そうですか~!これで安心してチェイスのお母さんに報告出来ます!ありがとうございました!」

「オイ、マジで言うのか……?」

「当然!」

「一番心配してたのスコールさん達だぜ?報告するのは当たり前だろ?」

 

そう言って、カイト達は帰っていった。

 

「賑やかなお友達ですね、ミューゼル君」

「賑やか過ぎる……」

 

頭を抱えるチェイスに真耶はクスッと小さく笑う。

 

「何が可笑しい……?」

「そう言う意味の笑いじゃないですよ」

 

そう言って笑う真耶にチェイスは首を傾げる。

 

「あ、そうだ!……ミューゼル君」

「……?」

 

顔を赤らめ、指をもじもじさせる真耶を待つチェイス。

 

「折角なんで良かったら水着を選んでくれますか……?」

「……俺は女が好む様な物は分からんぞ」

「大丈夫です!見て感想を言ってくれるだけで良いので!」

 

勢いよく迫る真耶にチェイスは少したじろぐ。

そして数秒考えて、

 

「……分かった」

「っ……!ありがとうございます!」

 

花が咲く様な笑顔でチェイスの手を握った。

いきなり手を握られたチェイスは少し動揺する。

 

「お、オイ……」

「あ!ごめんなさい……!」

 

そんな微妙な空気を醸し出しながら女性水着コーナーに移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうですか……ミューゼル君?」

 

真耶が試着室のカーテンを開けると、そこには水色のビキニを着けた真耶がいた。

抜群のスタイルを持つ真耶に良く似合っていた。

 

「……色は此方の方が良いと俺は思う」

 

そう言ってチェイスは黄色のビキニを手に取った。

 

「そ、そうですか?じゃあちょっと待ってて下さいね」

 

カーテンを閉め、暫くするとまたカーテンを開けた。

黄色のため、活発そうな印象になっていた。

 

「それで良いと思う……他はどうか分からんが」

「じゃあこれにしますね!」

 

真耶は早足で会計に向かって行った。

 

『スコール達以外の人物で、こんなに安らぐのは初めてだな……』

 

真耶の後ろ姿を眺めながら、チェイスはふと自分の心が安らいでいるのを感じていた。

 

選んで良かったかもしれない、そう考えるチェイスだった。

 

そしてこの後、チェイス御用達のコーヒーゼリーを真耶に奢るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして帰りのモノレール。

 

チェイスは穏やかな顔で眠っており、それを真耶が優しく見守っていた。

 

『ミューゼル君、やっぱり可愛いなぁ~……』

 

真耶は自分の胸に手を当てる。

心臓がいつもより速く鼓動を打っているを感じていた。

 

『やっぱり……好きになってる。ミューゼル君、ううん、チェイス君の事を……』

 

それを自覚すると同時に顔が赤くなる。

 

『これが、人を好きになるって事なんだ……』

 

胸が暖かくなる、そんな事を感じながら真耶はチェイスをじっと見詰めていた。

 

 

真耶は知らない。

 

チェイスがこんなに穏やかな顔を見せるのは、真に心を許した人物だけだと言う事を……。

 

 

 

 

 

 

 

フリーダム・スカイ社長室。

 

「本当に大丈夫なの?ーー」

『心配し過ぎよ。スコール』

 

スコールがとある人物とパソコンで通信をしていた。

 

『それにいざとなったら、貴方の愛しの息子が助けてくれるんでしょ?』

「それは、そうだけど……」

『大丈夫よ、スコール』

「……気をつけてね、ーー」

『ええ』

 

そう言ってスコールは通信を切断する。

 

『チェイスの臨海学校……何も起こらないと良いのだけれど』

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイス「新しいバイラルコア、か……」

オータム「新参者にチェイスは譲れねぇな!」

真耶「ミューゼル君は諦めません!」

IS ~黒き魔進~ 『一時の平穏』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『一時の平穏』

今回登場しているバイラルコアはpixivのフォロワーさんからいただいたアイデアを参考にしております


IS学園の1年生達は臨海学校の為、海に行っている。

 

ただし、ある一人を除いて。

 

 

 

 

 

 

「これが、新しいバイラルコアよ」

「……ありがとう」

 

チェイス・ミューゼルである。

彼は今、養母で上司のスコールから新しいバイラルコアを与えられていた。

 

チェイスがアタッシュケースを開けると、バイラルコアが2つ入っていた。

 

「これは……亀と鮫、か……?」

「ええ、鮫の方は少し変わり種よ。亀は防御用の武装になってるわ」

「そうか……」

「本当はテストしてから渡す方が良かったのだけれど……臨海学校があるしね」

「いや、構わない。実戦で慣らす」

 

バイラルコアを受け取り、チェイスは傍らに置かれたバイク―-―ライドチェイサーに跨がる。

 

「じゃあ、行ってくる……」

「ええ、気をつけてね」

 

スコールにサムズアップで答え、チェイスはライドチェイサーで走り去った。

 

 

 

 

 

一方、IS学園組はと言うと、

 

「本日からお世話になる旅館の方だ。皆、ちゃんと挨拶をしろ!」

 

「「「「「「はーーーーーーーい!!」」」」」

 

これからお世話になる旅館の女将に挨拶をしていた。

その元気な挨拶を聞いた女将は微笑む。

と、ここであり事に気づいた。

 

「そう言えば、噂の男性IS操縦者の方は?」

「すみません、少し遅れての合流になります」

 

と千冬は謝りながら、昨日の出来事を思い出していた。

 

 

 

「織斑教諭……」

「!な、何だミューゼル……」

 

昨日いきなり職員室、しかも敬遠されがちな自分の元にいきなりチェイスが現れ、千冬は動揺を隠せない。

 

チェイスはそんな千冬に構わず淡々と告げた。

 

「明日の臨海学校、俺は少し用事で遅れる……」

「な、何の用事だ?」

「企業の用事だ……。それ以上は言う必要はない……」

 

そう言ってチェイスは職員室を出て行った。

 

 

 

 

 

と昨日の事を思い浮かべていると、遠方からエンジン音が聞こえてきた。

 

全員が何事かと思いそちらを向くと、見慣れたIS学園の制服を着た何者かが黒いボディに紫のフレアラインの刻まれた前方の髑髏が特徴的なバイクでこちらに向かって来ていた。

 

その者は呆然とする皆を余所に、バイクを止めヘルメットを取った。

 

「……み、ミューゼル」

 

その者の正体はチェイスだった。

 

「お前、免許は……」

「政府からは公認されている、問題はない……」

「……取り敢えず着いたのなら挨拶をしろ」

 

千冬はチェイスを女将に向かわせるが、内心ハラハラしていた。

そして、いつも通りの素っ気ない挨拶をするなら、叩いてでも訂正させると意気込んでもいた。

 

「チェイス・ミューゼルです……。男が私一人で迷惑を御掛けすると思いますが、どうぞ宜しく御願い致します……」

 

そんな千冬の心配とは裏腹にチェイスは至極丁寧な口調で頭を下げ、挨拶をした。

女将はそんなチェイスに微笑む。

 

「ふふっ、丁寧な挨拶どうもありがとうございます。不便かも知れませんが、此方こそ宜しく御願いしますね」

 

女将もまた丁寧な返事を返した。

 

 

こうして、千冬達はチェイスの意外な一面を知ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「ミューゼル、お前の部屋だが……」

「その心配はないぜ、織斑千冬教諭」

 

千冬が部屋の事を言おうとすると、何者かがその言葉を遮った。

だがチェイスにとっては聞き覚えのある声だった。

 

「……オータム」

「ソイツは家のテストパイロットだ。安全上、私と同じ部屋に泊めさせてもらうぜ」

「貴様は……?」

「私はオータム。フリーダム・スカイの警備部隊隊長をやらせてもらってる者だ」

 

オータムは千冬に名刺を差し出し、千冬はそれを受け取る。

 

「仕事上チェイスの警備も任されてる。他の女の子が入ってきても困るからな」

「ならば教師との同部屋でも……」

「それだとコイツがゆっくり出来ねぇだろ?まぁ、チェイスの意見を聞いてから、だけどな」

 

そう言って、オータムと千冬はチェイスの顔を見る。

すると、時間を置かずにチェイスは答えた。

 

「俺としてもそっちの方が有難い……」

「だってよ」

「……分かった。ただしこれは授業の一環だ。下手な介入や詮索はしないでいただきたい」

「わーってるよ。あくまで私の仕事はチェイスの警備だからな」

 

そう言うと千冬は去って行った。

 

「何故お前がここに……?」

「スコールから頼まれてな。お前のバットバイラルコアの調整をな」

「……分かった」

 

チェイスは懐からバットバイラルコアを取りだし、オータムに差し出した。

 

「まぁ時間は掛からねぇから、お前は海行ってこい!」

「……あぁ」

 

チェイスは水着を取り出すと、更衣室に向かった。

 

『兎の事だ、恐らくこの臨海学校でチェイスに接触してくる……筈だからな』

 

バイラルコアを調整しながら、オータムはある女の事を考えていた。

 

 

 

 

「暑いな……」

 

チェイスは岩辺に座りながら、海を眺めていた。

周辺では、女子生徒達がワイワイ騒いでいる。

 

「ミューゼルさん……その、お願いがあって来ました」

「オルコットか…」

 

青いビキニに身を包んだセシリアが接近してきた。

 

「サンオイルを塗って頂けないでしょうか!?」

「……だとよ、凰」

「何でアタシに振るのよ!?」

 

近くにいたピンクのスポーツビキニを着た鈴当然は困惑する。

 

「近くにいたお前が悪い…」

「何処の蛇ライダーよ!?」

「女同士の方が良いだろ…」

「ハァ、分かったわよ…。行くわよ、セシリア!」

「そんなぁ……」

 

チェイスにバッサリ斬られたセシリアは涙目で鈴に引きずられていった。

 

 

 

すると、暫くしてチェイスに飛び掛かる人影が。

 

「よーっ!チェイス♪」

「っ……!オータム」

 

飛び掛かってきた人影の正体はオータムだった。

 

「ほい、これ。調整は済ませたぜ」

「感謝する……」

 

バットバイラルコアを受け取り、パーカーのポケットに仕舞った。

 

「ふふーん、どうよ!私の水着は?」

 

オータムは紫のビキニを纏っていた。

色っぽいオーラが漂っており、普通の男ならメロメロだが、チェイスは慣れている為あまり動揺もない。

だがスタイルの良さもあるので、チェイスは素直に褒める。

 

「似合っているぞ……」

「っ!へへっ、そっか……」

 

途端に乙女の表情になるオータムに苦笑いする。

 

「ミューゼル君、そのお姉さんは?」

「もしかして、ミューゼル君の恋人?!」

 

女子生徒達が近づき、オータムの事を聞いてきた。

 

「……俺には勿体ない位だよ。ましてや恋人なん俺では釣り合わん」

「……私は別に構わないぜ、それでも」

「…何か言ったか?」

「いんや、別に!チェイス、彼処の屋台で焼きそば買ってきてくれよ!」

「……分かったよ」

 

チェイスは財布を手に何故かポツンと立っている屋台に向かった。

何故ここに立っているのかは分からないが、怪しさマックスだった。

 

とりあえず向かうと、

 

 

 

「へい、らっしゃい!ご注文は……」

「……弾、何してる」

 

鉄板に向かって焼きそばを焼いていた青年は自分の親友の一人だった。

 

 

 

 

 

「あれ、チェイス。来てたんだ」

「お前ら……調べたな。この場所を」

 

カイトや数馬、それに見慣れない一組の兄妹も屋台裏から出てきた。

 

「貴方がチェイスさん?」

「お前達は……?」

「初めまして。私は立花百合です、スコールさんから貴方の事は聞いてますよ」

 

勝ち気な感じの少女が挨拶をしてきた。

 

「えっと、此方が兄の……」

「立花優。宜しく、チェイス!」

 

活発そうな青年が握手を求めてきた。

チェイスはそれに応じる。

 

「で、何故ここにいる?」

「や、小遣い稼ごうかな~って」

 

弾が引きつった笑いでそう言う。

その様子に若干違和感を覚えるが、取り敢えずは流しておくことに。

 

「……取り敢えず焼きそば2つ」

「2つも食うのか?」

「オータムの分だ」

「了解!」

 

既に焼いてあった焼きそばをパックに纏め、チェイスに差し出した。

チェイスは受け取って、袋を見ると、何故か3つ入っていた。

 

「……何故3つある?」

「山田先生の分だよ」

 

あっけらかんと告げる。

 

「ほぉ~弾にしちゃ気が利くな~」

「弾にしちゃってどういう意味だ!?」

 

聞き捨てならぬと弾は突っ込む。

 

「良いじゃん別に」

「良くねぇ!」

「山田先生の分はお代は要らないよ」

「……感謝する」

「あ、ミューゼル君……」

 

すると、ワンピースタイプの水着を着た簪がやってきた。

 

「更識……」

「へい、らっしゃい!」

「すみません、焼きそば二つください」

「毎度!ほら、チェイス!冷めるから速く持って行け!」

「……ミューゼル君の、友達?」

「…あぁ」

 

若干気まずそうに答える。

 

「お前は?」

「お腹空いたから、本音の分と……」

「はいよ!お待たせ!」

「ありがとう、ございます…」

 

勘定を終え、チェイスはオータム、簪は本音の元に戻って行った。

 

「上手く誤魔化せたか?」

「チェイスはカンが鋭いからな、もしかすると……」

「バレても、その時にはもう行動してるだろうさ」

「そうだな」

「……はい」

 

 

 

 

 

「で、姉貴とはどうなんだ…?」

「うん、今じゃ普通に会話出来るようになった。本当にありがとう」

「俺は何もした覚えはない…」

「ふふっ、じゃあね。ミューゼル君」

「あぁ」

 

そう言って簪は本音の元に戻った。

チェイスもオータムの元に急ぐ。

 

「オータム、買ってきたぞ……」

「お、サンキュー!」

 

チェイスはオータムに焼きそばを差し出すと、何処かに向かった。

 

「何処行くんだ?」

「少しな」

 

チェイスはビーチバレーをしていた真耶の元に、

 

「山田教諭……」

「み、ミューゼル君?」

 

焼きそばを差し出した。

 

「要らないなら、構わない……」

「い、いえ!貰います!」

 

真耶は嬉しそうに焼きそばを受け取る。

 

「じゃあ……」

 

焼きそばを渡すとチェイスはオータムの元に戻ろうとすると、

 

「ミューゼル君!一緒に食べませんか?」

 

真耶が笑顔で自分の横をポンポンと叩いた。

 

「人を待たせてる……」

 

チェイスはそう言うと、

 

「きゃっ!」

 

真耶の手を取り、歩き出した。

 

「向こうで、食べるんですか?」

「……あぁ」

 

オータムの元に戻ると、

 

「……チェイス、そのお嬢ちゃんは?」

「一応副担任だ……」

「その人は……?」

 

聞かれると、オータムはチェイスに腕を絡ませ、

 

「チェイスの恋人候補だ」

 

そう告げた。

 

「えっ!」

「嘘を言うな……」

 

動揺する真耶を尻目に、チェイスは腕を離す。

 

「連れねーな、チェイス」

「笑えない冗談だ……」

「本気なんだけどな……」

「何か言ったか?」

「別に!」

 

そんなやり取りを見た真耶はプルプル震えると、

 

「例えそうでも、私はチェイス君を諦めません!」

 

チェイスの反対側の腕に抱きついた。

 

「なっ!」

「ほぉ~、いい度胸じゃん」

 

ニヤリと笑い、オータムも腕に力を込める。

 

 

結局、チェイスは落ち着いて焼きそばを食べれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ(かなり時期はずれです)

 

「あら、シャルロットさんも?」

「うん、チェイスに貰ったんだ」

「律儀よね~アイツ」

 

2月14日のIS学園、そこではセシリアとシャルロット、そして鈴はチェイス・ミューゼルからチョコを貰っていた。

 

「アイツバレンタインの意味を間違えてるわね、絶対」

「まぁ、良いんじゃない?」

「そうですわよ、それに食べないと勿体ないですわ」

 

そう言って、3人が箱を開けると、絶句した。

 

 

『『『…………』』』

 

中には、チョコケーキが入っていた。

何故3人が黙りになったのか?

 

出来が酷い訳ではない。

寧ろとても上手に出来ていた。

 

それが逆に、女子としてのプライドを打ち砕かれた気がするのだ。

 

「美味しそう……でも」

「何か、負けた気がしますわ……」

「うん……凄い敗北感」

 

3人はズーンとした気持ちでチョコケーキを食べた。

 

味も期待を裏切らず素晴らしく、そこでまた敗北感を味わったのであった。

 

 

 

同じ頃、

 

「ミューゼル君、これって……」

「今日は、親しい者にチョコレート類の食べ物を渡す日だと、友から聞いた……」

 

それを聞いた簪は、カレンダーに目を向けた。

日付は2月14日、即ちバレンタインデー。

 

『ミューゼル君……間違ってないけど間違ってるよ』

 

簪はそう突っ込みたかったが、敢えて突っ込まないでおいた。

 

「あ、ありがとう……」

「……」

 

そうしてチェイスが去った後、簪は箱を開け、セシリア達と同じ敗北感を味わったのであった。

 

 

因みにスコールとオータムはチェイスの料理の腕を知ってるため、敗北感は味わなかった。

 

 

こうして、チェイスの勘違いによって、IS学園の女子のプライドは粉々に打ち砕かれていったのであった。

 

 

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

束「これが箒ちゃんの専用機!」

チェイサー『銀の福音……』
 
スコール「お願い、ナタルを、助けてあげて……!」

IS ~黒き魔進~ 『福音』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?



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『福音』

明日から出社なので、今日の間に出来るところまで投稿します。


合宿の2日目。

 

今日は丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。

 

特に専用機持ち達は大変な作業なのだ。

 

「篠ノ之、お前はちょっとこっちに来い」

「はい」

 

千冬に呼ばれ、箒は向かう。

 

「お前には今日から専用――」

「ちーちゃ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」

 

ずどどどど……!

 

千冬の声を遮り、何者かが砂煙を上げながら無茶苦茶な速度で此方に走ってきた。

 

臨海学校に乱入してきたのは、IS開発者である稀代の天才・篠ノ之束。

 

「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグしよう! 愛を確かめ――ぶへっ」

 

千冬に飛びかかった束をアイアンクローでキャッチする。

もちろん手加減なしで容赦なく。

 

「ぐぬぬぬ……相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」

 

束はアイアンクローから抜け出し、箒の方を向く。

 

「やあ!」

「……どうも」

 

二人のやり取りについていけない生徒達はポカーンとしていた。(案の定チェイスだけは無視していたが)

 

「束、自己紹介をしろ。困っているだろ」

「えー?じゃあ、私が天才の篠ノ之束さんだよー。終わりー!それはともかく、上をご覧あれ!」

 

束が直上を指すと、金属の塊が落下してきた。

 

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

 

金属の塊が開き、中から真紅の装甲に身を包んだIS『紅椿』が現れる。

 

チェイスは直ぐ様、魔進チェイサーのハイパーセンサーを気付かれぬ様に展開し、紅椿のスペックを確認した。

 

『データからして、恐らく既存のISではないな……。第3世代とは明らかに違うみたいだが……所詮はこの程度か…』

 

内心落胆するチェイスを余所に、箒はさっそく紅椿に乗り、束の元で最終調整を行う。

 

「って言うか篠ノ之博士の身内だからって専用機が貰えるの?」

「篠ノ之さん狡くない?」

 

とボソリと陰口を叩いた生徒に反応した束が、

 

「おやおや、有史以来人間が平等だった事は一度もないよ?凡人君」

 

と言った途端、その生徒は黙り込む。

その様子に満足そうな表情を浮かべた束に、

 

「この世界にその不平等をもたらしたのは、紛れもない貴様だがな……」

 

チェイスが束を睨みながら、そう呟いた。

 

「っ……!」

 

その視線に耐えられないのか、束はチェイスから視線を反らす。

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生っ!」

 

すると真耶が何やら慌てた様子で来ると、千冬と何か話をする。

途端、千冬の目付きが鋭くなる。

 

「全員注目! 現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること。以上だ!」

 

千冬の一声に女子達はざわめき立つが、千冬の一喝によって静まる。

 

「専用機持ち達は全員集合だ!篠ノ之、お前も来い!」

「はい!」

 

自信満々で返事をする箒に、チェイスは内心苛立つ。

 

 

『コイツ、浮かれてるな……。厄介な奴に厄介な物を渡してくれたな、あの天災は……!』

 

 

 

 

 

直ぐ様旅館の一番奥の宴会用の大座敷で専用機持ち達と教師陣が集められた。証明を落とした薄暗い室内に大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった。今回の作戦は、福音の沈黙及び同乗者の救出だ」

 

その言葉を皮切りに、全員が福音に対する意見を出し合う。

 

「イヤッホー! ここは私の出番だね!」

 

急に声が聞こえた為、全員が上を見上げると、天井から束の首が逆さに生えていた。

 

「束、ここは部外者は立ち入り禁止だぞ」

「まーまーちーちゃん!ここは断然!紅椿の出番なんだよ!!」

「何?」

 

千冬が疑問の声を上げると、束が作り上げた第四世代型ISの『展開装甲』と呼ばれる能力にセシリア達は唖然とする。

 

「展開装甲のスピードがあれば直ぐに福音に近づけるよ~!」

「でも篠ノ之さん一人では……。同行者は、一撃で福音を落とせる程の力を持った人じゃないと……」

 

シャルロットの言葉が終わると、全員の視線がチェイスに集中した。

当のチェイスは目を瞑って、話を聞いていただけ。

 

「ミューゼル、出来るか……」

「出来ん事はない…………だが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くのは俺一人で十分だ……」

「なっ!」

 

片目を開けてそう告げたチェイスに千冬達は驚きを隠せない。

そしてそれ以上にその返事に納得出来ない者がいた。

 

「何故だ一夏!私では不服だと言うのか!?」

 

そう、箒だ。

 

「そう言っている…。もっと解りやすく言えば……足手まといだ」

「何っ!?」

 

噛みつく箒にチェイスは冷めた目線で言葉を紡いだ。

 

「ならば貴様は今から人を殺せと言われて殺せるか……?与えれた拳銃で人の頭を撃ち抜けるか……?貴様は一生、その力や罪と向き合う覚悟があるのか?」

「……!」

「……まともに実戦経験のない貴様をこの作戦に投入する事自体可笑しな話だ。貴様と組まされるよりは、オルコットや凰、デュノアか更識との方がある程度の連携は取れる。ろくに力を持つ意味を考えない、与えれた専用機を新しい玩具の様に扱おうとする、そんな生半可な覚悟な貴様に今この場で戦う資格はない……!」

 

そこで言葉を切ると、チェイスは砂浜に向かって行った。

 

「この作戦は俺一人で行く……増援は無用だ」

 

最後に千冬にそう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

「変身……」

《Break up!》

 

ブレイクガンナーを起動し、魔進チェイサーへと変身した。

 

《Tune chaser bat!》

 

即座にバイラルコアを装填、すると背中に蝙蝠の翼が生えた。

 

『これが、ISのスラスターに当たる物か、オータムに感謝だな……』

『チェイス、聞こえる?』

 

すると突然、スコールから通信が入った。

 

『どうした……』

『福音のパイロット……ナタルを、助けてあげて!』

 

悲痛な叫びに、チェイサーは言葉を失った。

この様なスコールは、見たことがなかったからだ。

 

『知り合い、か?』

『IS学園の同期、と言った方が良いかしらね。彼女は福音を我が子の様に愛していたから……そんなナタルがISを暴走させるハズガないの!』

『まさか……外部から』

『ええ。恐らく……篠ノ之束か、或いは……』

『奴ら……亡国機業』

 

スコールは通信越しに頷いた。

 

『取り敢えずは、万全な状態で。相手は腐っても軍用IS、気を付けてね』

『あぁ、行ってくるよ。……母さん』  

『…………うん』

 

通信を切り、飛び立とうとすると、背中から声が掛けられた。

 

「ミューゼル君……」

『山田、教諭……』

「生徒の君に任せて、本当にごめんなさい!」

『……アンタのせいではない。それに謝らせるなら、政府だ』

「………頑張って、下さいね!」

 

真耶、スコールの声援を胸に秘め、チェイサーは黒い旋風となり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上で福音と激突した。

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

ブレン「あのISに仕込ませたウイルス……上手く馴染んでますね」

チェイサー『お前達は……?』

???『フルスロットル過ぎるだろー!!』

IS ~黒き魔進~ 『戦士 集結』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?  


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『戦士 集結』

福音戦です


チェイサーは現在、銀の福音と交戦していた。

 

福音は背中の両翼のウイングスラスターの砲門全てから光弾、更には背後の電極らしき物から高電圧を無差別に放った。

 

光弾にはさして驚かないが、チェイサーを驚かせたのは、

 

『どう言う事だ…こんな機能があるとは聞いてないぞ……!』

 

そう、背中の電極だ。

 

旅館で見た銀の福音に、こんな装備は見受けられなかったのだ。

だが、現在進行形で福音は本来ないはずの装備で、此方を攻め立てる。

 

光弾をブレイクガンナーで打ち消しつつ懐に潜り込もうとしても、福音は高電圧をその身に纏っている。

 

 

 

その為、直接干渉の攻撃を行えないのだ。

 

『あの電気に触れれば、恐らくこの姿と言えど唯では済みそうにない……っ!』

《Tune chaser bat!》

 

チェイサーはウィングスナイパーでの遠距離攻撃に打って出る。

紫紺の矢を連続で放つが、全て砲門から放たれる光弾で相殺されてしまう。

 

『ちぃ……!』

 

お返しとばかりに、福音は電撃をチェイサーに向ける。

すると先ほどまで細い線状だった電気は束ねられ、極太のレーザー砲となって襲い掛かる。

 

『っ!』

《Tune chaser turtle!》

 

不味いと判断したチェイサーは即座にバイラルコアをチェンジ。

亀の甲羅を模した盾、シェルディフェンダーを構え衝撃から身を守った。

 

『ぐぅ…………!!』

 

なんとかやり過ごすも、福音は次の攻撃態勢に移っていた。

『la……♪』

 

甲高いナノボイスと共に光弾が放たれようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それ以上はやらせないっ!』

《メロンエナジースカッシュ!》

 

何処からともなくオレンジ色の斬撃が放たれ、福音の攻撃を中断させる。

 

『助っ人に来たよ、チェイス!』

 

その人物は、チェイサーがよく知る人物の声だった。

 

『…カイト?』

『僕だけじゃないよ』

 

斬月・真が来た道を振り返ると、

 

『待たせたな、チェイス!』

『お楽しみは、これからだもんな!』

『一緒にひとっ走り付き合うよ、チェイス!』

『兄さん……少しは緊張感持ってくださいよ。相手は軍用ISなんですよ』

 

マントを着けた黄色の鎧の戦士、全体白一色でスカーフを靡かせる戦士、体にタイヤを着け赤を基調とした戦士、スーツ全体がピンク色で、どこか桃を思わせる戦士が駆けつけた。

 

マントの戦士を見たチェイサーは何かの電波を受信し、

 

『……バナナ?』

『バロンだっ!!寧ろレモンだよ!!』

 

そう尋ねるが、大声で否定される。

チェイサーはその声に驚きを漏らす。

 

『まさか……弾!?』

『おう!』

『そっちの白い戦士は…数馬か!?』

『ご明察だぜ、チェイス』

 

弾と数馬改めバロンとマッハはしてやったりとにやりとした。

 

『お前たちは、優と百合か……?』

『正解!』

『オータムさんとスコールさんに言われて来ました!』

 

優と百合ーー此方はドライブとマリカは力強く頷く。

 

 

『そうか……ありがとう』

 

チェイサーは斬月・真たちに礼を言う。

 

『君が素直にお礼を言うなんて珍しいな~。でも、礼はこのISを止めてからで!』

 

斬月・真はソニックアローを構える。

 

『ふっ……そうだな』

《Tune chaser shark!》

 

チェイサーは少し笑みを零すと、新たなバイラルコアを使う。

すると、荒々しいホオジロザメを連想させる手甲が装着される。

 

『おお、カッコいい』

『そんなもの後で沢山言え…………行くぞ!!』

『『『『『おうっ!!!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あのISに仕込んだウイルス、良い感じに馴染んでますね……』

 

それを遠くから、緑色の脳の意匠が伺える謎の異形が監視していた。

 

 

 

 

 

『そりゃ!』

『はぁっ!』

 

バロンと斬月・真が同時に矢を放つと、福音はウイングスラスターからの砲撃で掻き消してしまう。

 

『まだまだ!』

《タイヤコウカーン!スピンミキサー!》

 

ドライブはシフトカーを入れ替え、ミキサー車を思わせるスピンミキサーにチェンジ。

タイヤを高速回転させ、セメントをぶつける。

 

すると、福音の動きが僅かながらに鈍る。

 

『今だ、百合!』

『はい!』

《ピーチエナジ~スカッシュ!》

 

マリカがその隙を突いて、攻撃を仕掛ける。

 

『まだまだ続くぜ~!』

《ゼンリン!》

 

マッハが怯んでる福音にバイクを思わせる銃、ゼンリンシューターをぶつける。

咄嗟に福音は電気を纏い対処しようとするも、

 

『二度もやらせんっ!』

 

背後からチェイサーがトゥースバンカーから高圧水流を放ち、電極を破壊する。

 

『数馬!』

『ああ!』

 

ゼンリンシューターを力いっぱいにぶつけ、福音をブッ飛ばす。

 

《change hammer!》

 

チェイサーはブレイクガンナーの引き金を引くと、トゥースバンカーの形態が変わっていく。

変形が完了すると、今度はシュモクザメを連想するハンマーになっていた。

 

『はぁ!』

 

チェイサーは飛ばされてきた福音を殴りつける。

すると、急に全員の頭に謎の声が響く。

 

 

 

『マスターを……傷つける奴等は、許さない!!』

『!?』

『何だ、今の声は…!?』

 

その声に戸惑ってる間に、斬月・真たちの後方から、攻撃が飛んできた。

 

『うわ!』

『あぶねっ!』

『誰だ急に!』

 

バロンが叫ぶ中、チェイサーは舌打ちした。

そして、その者は姿を現した。

 

 

 

『何故貴様がここにいる…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠ノ之』

 

 

 

チェイサーの言葉通り、それは紅椿を纏った箒だった。

 

 

 

 

「一夏、そいつ等が首謀者か!?」

 

チェイサーの質問を無視し、箒は今にも飛び掛らん勢いでバロン達を睨む。

すると、千冬から通信が入った。

 

『ミューゼル、其方に篠ノ之はいるか?』

『どう言う事だ…?』

『すまん。少し目を離したら勝手に飛び出して行ったんだ』

『それはアンタの管理不届きだろ、完全に』

『………』

 

痛いところを突かれ、千冬は押し黙る。

チェイサーは時間の無駄と言わんばかりに通信を切る。

 

『貴様、その行動の意味を分かってるのか……?』

「…何のことだ?」

 

意味が分からない、と言った様子で聞き返す箒にチェイサーは頭痛を覚えた。

 

『貴様は本当の馬鹿だな……!』

「馬鹿だとっ!?」

 

馬鹿と言われた箒はチェイサーを睨むが、チェイサーはそれを無視し福音に向かっていく。

 

「無視するなァァ!!!」

 

その態度に激昂した箒は、あろう事かチェイサーを攻撃しようと刃を向けるが、

 

『!何してんだ!?』

 

咄嗟にバロンが羽交い絞めにする。

 

「離せ!」

『離したらまたチェイスを攻撃するだろ!チェイス、皆!この子は俺が抑えとく!速く福音を!!』

『頼むぞ、弾!』

 

箒をバロンに託し、チェイサー達は福音を攻撃する。

 

 

 

 

『LAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!』

 

すると怒り狂ったのか、福音は光弾を全方位に向けて放つ。

 

『な、何だ!?』

『もしかして………』

『苦しんでる……はっ!』

 

ドライブの目に突如映ったのは、船。

 

『何で船がここに!?』

『この辺りの海域は封鎖されてる筈です!』

『密漁船か………だとしてもっ!』

 

ドライブ、マッハ、マリカの三人は密漁船を庇い、攻撃を受ける。

 

『がああ!』

『くう!』

『ぐおぉ!』

『数馬!百合!優!……!』

 

マッハ達を心配するあまり、自身に攻撃が向かってきているのに気づくのが、遅れてしまう。

チェイサーは咄嗟に防御体制を取るが、

 

 

 

 

 

『どけ、チェイス!ぐあああああ!!』

『っ、弾!!』

 

バロンがギリギリのタイミングでチェイサーを突き飛ばし、福音の攻撃から身を守った。

 

『チェイス、俺たちに構うなっ!パイロットの人を、福音を助けろ!!!』

 

バロンの叫びに、

 

『……あぁ!!』

 

力強く答え、福音に向かおうとするチェイサーに、

 

 

「ふん、犯罪者を庇うからこんな目に合うのだ…!所詮はこの程度の実力なのだな!」

 

箒が恨めしそうに吐き捨てると、チェイサーは動きを止めた。

 

 

 

 

 

 

この女は何を言っている。

 

犯罪者を庇うからこんな目に合う?

 

俺の友を、貴様より確実に強い弾達を、この程度呼ばわり?

 

 

 

 

 

冗談ではないっ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『篠ノ之ぉぉぉぉ!!!!!!』

「がはぁぁぁ!!!!!!!!」

 

激情に身を任せ、チェイサーは箒を近くの孤島にブッ飛ばした。

 

 

『所詮貴様は、力を持つに値しない………!!』

 

気絶した箒に吐き捨て、チェイサーは改めて福音と対峙する。

攻撃を凌ぎ切ったバロン、マッハ、斬月・真、ドライブ、マリカがチェイサーの隣に並び立つ。

 

 

『弾、数馬、カイト、優、百合……行けるか?』

『『『『『もちコース!!』』』』』

 

なんとも気の抜ける返事だが、気合を入れなおし、福音と再び交戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイサー『これで、チェックメイトだ!!』

優「君に人の命を見捨てる資格なんてある訳ない!」

束「あれは……ISじゃない…!?」

IS ~黒き魔進~ 『決着』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『決着』

宇宙船で仮面ライダーチェイサーの全体像見ましたが………アレは正直微妙でした
皆さんはどうでしたか?


『Laaaaaaaaaaaaaa!!!!!』

まるで狂った機械のような叫びを上げながら、福音はウイングスラスターから光弾を放射する。

 

『そう何度も喰らうかよっ!』

《レモンエナジースカッシュ!》

 

バロンはゲネシスドライバーのシーボルコンプレッサーを一回押し込み、ソニックアローから斬撃を放つ。

 

『数馬!』

『OK!』

《シグナルバイク!シグナルコウカーン!カクサーン!》

『くらいなっ!!』

 

バロンの合図でマッハはマッハドライバーにシフトカーに似たシグナルバイクを装填、即座にゼンリンシューターをぶっ放す。

 

福音はそれを躱そうとするが、

 

『ほいっ!』

《カクサーン!》

 

マッハはマッハドライバーのブーストイグナイターを押すと、ゼンリンシューターから放たれた弾が拡散し、すべて福音に命中した。

想定外の攻撃に、福音は堪らず姿勢を崩す。

 

『今度は俺だ!』

《タイヤコウカーン!ミッドナイトシャドー!》

《シャッシャッシャドー!》

 

今度はドライブがシフトカーをチェンジ、タイプスピードシャドーになり3回シフトレバーを動かす。

すると、

 

 

『!!?』

『『『『『『行くぜ!』』』』』』

 

なんと6人に分身、それぞれ手裏剣状のエネルギー弾を投げて福音を攻撃。

福音はそれを掻い潜り上に逃げるが、

 

 

 

 

 

 

 

『それが狙いなのさ!カイト、百合!!』

『あぁ!』

《メロンエナジースカッシュ!》

『はい!』

《ピーチエナジ~スカッシュ!》

『『ダブルライダーキック!!!』』

 

そう、ドライブは態と福音を上空に誘い出したのだ。

まんまとそれに引っ掛かった福音は、予め上空に待機していた斬月・真とマリカの必殺キックを諸に受けてしまう。

 

『Gyaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!1』

 

それを喰らった福音は再び叫びを上げながら斬月・真とマリカに逆襲を仕掛けようとするが、

 

 

 

 

 

『いい加減に貴様も目を覚ませぇ!!』

『!?』

 

斬月・真とマリカの背後から現れたチェイサーは福音の搭乗者の心臓に当たる部分を殴る。

そのままチェイサーは、何と福音のコアの深部に意識を飛ばす。

実はブレイクガンナーには、他のISコアへのハッキング能力がある。

 

その為、ISの内部からISを破壊する事が出来るのだ。

だが、今回は破壊するためではない。

 

 

 

福音を救うため、内側から語りかける。

 

 

 

それが、チェイサー達が考え付いた作戦である。

 

『頼んだぜ、チェイス……!』

 

 

バロン達はチェイサーを信じるしかなかった。

 

 

 

 

 

『……………ここは』

 

チェイサーは目を覚ますと、そこは真っ暗だった。

まるで、嘗て自分が見た夢と同じ様だった。

 

チェイサーが暫くそこを歩いていると、

 

 

 

『うぅ、ひっぐ……』

『…?』

 

何処からか鳴き声が聞こえ、チェイサーは歩みを止めた。

 

『……こっちか』

 

鳴き声がした方に向かうとそこには、

 

 

『ごめんなさい、マスター……!ごめんなさい…!』

 

福音と同じ、真っ白なシャツを着て、背中に大きな翼を生やした少女が泣き崩れていた。

 

『お前が、福音の意志か……?』

『ひっぐ、貴方は、さっきの……』

『質問に答えろ…お前は福音か?』

『そ、そうです……』

 

まさかと思いチェイサーは屈んでその少女に問うと、少女はイエスと答えた。

 

『俺達はお前を殺しに来たわけじゃない。当然、お前のマスターにも何もしない……』

『でも、貴方達、攻撃してきた…。私にウイルスを仕込んだ、奴らの仲間なんでしょ!?』

『…どういう事だ?』

 

まだ自分を疑う福音が言った、”奴ら”。

チェイサーは、事情を聴くことに。

 

『昨日の深夜、緑の服を着て、眼鏡をかけた奴が、私のコアにウイルスを仕込んだんだ!その時は何ともなかったのに、今日の訓練中に、突然体がいうことを聞かなくなって、暴走したの………!』

『……やはり、亡国機業(ヤツら)の仕業か』

 

首謀者に察しがついたチェイサー。

福音はその様子に、ようやく悟った。

 

『えっ…じゃあ、本当に私を止めようと……?』

『最初からそう言っているだろ……』

『ご、ごめんなさい!!』

 

チェイサーはそう言ってため息をつくと、福音は慌てて謝る。

 

『あの時、お前の声が聞こえた。と言うことはだ………』

『はい。貴方方があの異物を破壊してくれたお蔭である程度制御が効いてきました。でも………うぅ!!』

 

すると福音は、急に頭を押さえ苦しみだす。

 

『どうした!』

『また、私の…しき、………って……う!』

『おいっ!どうし………ぐぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

福音に駆け寄ろうとするが、チェイサーは強烈な波動に、その場から追い出される。

最後にチェイサーの脳裏にある声が響いた。

 

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!』

『くっ……本気、なのか…!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐぁぁぁぁ!!』

『チェイス!!』

 

意識を強制的に追い出され、チェイサーは福音から弾かれる。

バロンは何とかチェイサーを受け止める。

 

『大丈夫か!?』

『あぁ、問題ない……』

『でも…』

 

マリカの言葉に釣られ、全員が福音の方を見ると、

 

 

『URIYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!』

 

奇声を発しながら、福音は全身から、電極を生やす。

その叫びは、明らかに苦しんでいる、それをバロン達は嫌でも理解させられた。

 

『ひでぇ……』

『何か、可哀相だ…!』

『早く助けないと!』

『あの状態だと、パイロットも危険です!』

『……』

 

そんな中、チェイサーはこの場にいない犯人に、怒りの炎を燃やしていた。

 

『許さん……許さんぞ、亡国機業!!』

《Tune chaser shark!change Saw!》

 

チェイサーはシャークバイラルコアを装填、直ぐに形態を切り替える。

するとトゥースバンカーは、ノコギリザメに似た棘が幾重も付いた剣に変化する。

 

『よし、迂闊に近づくと危険っぽいから…』

《ドライブ!タイプ・テクニック!》

 

ドライブはボディ用のシフトカー、シフトテクニックでタイプテクニックに変身。

ドライブTTは福音を解析する。

 

『あの電極が、福音を操ってる!あれをすべて破壊して、福音に決定打を与えれば、沈黙する!』

『よっしゃ!カイト、百合ちゃん!』

『『うん!(はい!)』』

《ロック・オン》

 

バロン、斬月・真、マリカはソニックアローに其々エナジーロックシードをセット、福音の攻撃を躱しながら矢を引き絞る。

 

『いけぇ!』

《メロンエナジー!》

 

先ずは斬月・真が必殺、ソニックボレーを拡散させながら放ち、一部の電極を破壊する。

爆炎を上げ、悶える福音に、

 

『もう一発っ!』

《レモンエナジー!》

『やぁっ!』

《ピーチエナジ~!》

 

立て続けにバロン、マリカのソニックボレーがヒットする。

 

『行くぜ、優!』

『おうっ!!』

《ヒッサツ、フルスロットル!》

《ヒッサーツ!フルスロットル!》

 

続いてマッハのゼンリンシューター、ドライブTTのドアガンによるダブル射撃が福音目掛けて放たれる。

福音はその場から退避するが、

 

『ほい!!』

『カクサーン!』

『曲がれ!』

 

マッハはシグナルカクサーンの力、ドライブは偏向射撃によって全弾命中させる。

これによって、福音のボディを蝕んでいた電極がほとんど消え知った。

 

『今だ行け!』

『『『チェイス!!!』』』

 

ドライブの言葉を皮切りに、バロン、斬月・真、マッハ、マリカがチェイサーを呼んだ。

 

 

 

 

『はぁぁぁぁ!!!』

 

チェイサーは棘の付いた剣ーーーーセイバーソーで福音を切り裂き、空中にぶっ飛ばす。

 

 

《Execution!》

 

チェイサーは仲間からの声援に機械音で返事に答え、福音目掛けて飛び上がる。

すると、チェイサーの右足に鮫状のエネルギーが構成される。

 

『…………』

 

とここでチェイサーは、先ほどの福音の言葉を思い出した。

 

 

 

『私はどうなっても良いの!!だから……だからマスターを、マスターを助けて!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

《Fuii break!shark!》

『ぜぁあああああああ!!!!!!』

 

魔進チェイサーの持てる全てのエネルギーを込めた渾身の一撃、エグゼキューションシャークを福音に放った。

 

『……La♪』

 

最後に福音は満足そうに鳴くと、粒子となって待機状態のネックレスに戻る。

チェイサーは落下しそうになったパイロットを抱きかかえる。

 

「あ、あり、がとう……」

 

パイロットはチェイサーにお礼を言うと、そのまま気を失った。

 

 

 

『此方ミューゼル、福音の沈黙に成功。これより帰投する……』

 

旅館で待機している千冬にそう告げると、チェイサー達は帰投した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに箒は、テイルウィッパーで逆さ釣りにして連れ帰った。

 

 

 

 

「ご苦労だった。……で彼らは?」

 

千冬はチェイスを労わると同時に弾達の所在を聞いた。(因みにセシリア達は自分の部屋に戻された)

チェイスは無言で担いでいた箒を布団に叩き落とし、

 

「入ってこい……」

 

襖に向かってそう呟くと、弾達が入ってきた。

 

「五反田、御手洗…!?」

「……」

「お久しぶりっすね…」

 

弾は無言で、数馬は苦虫を噛み潰した表情で会釈した。

 

「そいつらは……」

「俺の所属企業のテストパイロットだ…」

 

見られている以上仕方ないと、チェイスは隠さず言い切った。

 

「フリーダム・スカイの、テストパイロット……まさか!?」

「……つい最近発見されたばかりで、フリーダム・スカイで保護を受けている」

 

チェイスは真実と嘘を入り交えて、千冬に説明した。

 

「…成程」

「其方が構わないなら、2学期からでも入学させるぜ?」

「っ!……オータム」 

 

チェイスの後を引き継ぐように、オータムが入ってそう告げた。

千冬は突然の来訪に千冬は少し驚く。

 

「それはこいつ等も了承済みだぜ、一応な」

「……わかった。学園に戻り次第、上層部に交渉しよう」

 

と、弾達の入学の話が落ち着いた中、

 

 

 

「うぅ………」

 

箒が漸く目を覚ました。

 

「箒ちゃん!大丈夫……っ!」

「元はと言えば貴様がこいつに専用機なんて手に余る物を渡すからだ……」

 

駆け寄ろうとした束に、チェイスはブレイクガンナーを額に突きつける。

その絶対零度の殺気に束は動けなくなる。

 

「織斑教諭、そいつの罰はあるだろうな……」

「あ、あぁ。篠ノ之、お前の専用機は没収、そして夏休みの間、一切の外出を禁ずる」 

「そ、そんな!?」

「束、いくらお前でもこれに干渉するのは許さん」

 

千冬は箒から紅椿の待機状態である簪を取ると、オータムに渡す。

 

「……うん」

「っつー訳で、こいつは家で預からせてもらう。アンタの妹には、過ぎた玩具だ」

「か、返せっ!それは私の」 

 

立ち上がる箒の前に、優が立ち塞がった。

 

「どけっ!!」

「……力の重さを考えず、犯罪者だからと言う理由だけでその命を見捨てる………。そんな君に、専用機を持つ資格なんてないっ!!!」

 

そう叫ぶ優に続いて、チェイスも、

 

「これを期に考えろ。力を持つことの責任を……。今の貴様は我儘な餓鬼と一緒だ」

「っ!?」

 

チェイスにまで言われ、箒はその場に座り込む。

 

 

 

 

 

 

『いっくん達のIS、あれはほんとに、ISなの…!?』

 

箒を心配する一方で、チェイスたちの専用機に疑問を抱く束だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

弾「俺はあんたを絶対にゆるさねぇ!」

ナターシャ「本当にありがとう…!」

チェイス「泣くな…。泣いたら、アイツが悲しむ」

IS ~黒き魔進~ 『それぞれの夜』



黒き追跡者はその瞳に何を映す……?


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『それぞれの夜』

研修辛いっす………


福音の暴走鎮圧後、それぞれが思い思いに寛いでいる中、

 

「五反田、御手洗、少し聞きたいことがある。顔を貸せ」

 

弾と数馬は、千冬に呼ばれて浜辺に向かうことに。

呼び出された理由については、大体の察しが着いていた。

 

 

 

 

 

 

「疲れている所をすまない。だが…どうしても聞きたいことがある」

「……チェイスの事っすか」

「!………そうだ」

 

数馬が千冬の本題を当て、千冬は一瞬驚くも直ぐに頷く。

 

「チェイスは、奴は……私の弟の一夏なのか?」

 

口調をわずかに震わせながらも、弾と数馬に問いただした。

少しばかりの沈黙を破ったのは、弾だった。

 

「それを知って、アンタはどうしたいんだよ…?」

「決まっている!あの時の事を謝りたい!そして……もう一度、家族として、やり直したい…!」

「………そうか」

 

次に数馬が口を開いた。

 

 

「確かにアイツは一夏だ…。でも、アンタの願いは叶わないよ。千冬さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………何?」

 

千冬は、数馬の言葉を理解出来なかった。

 

一夏は、私の元に戻りたくないと言うのか?

 

何故?

 

ワタシハオマエノタッタヒトリノニクシンナノニ?

 

ワタシハオマエノアネナノニ?

 

「あのモンド・グロッソでの出来事だけが、一夏がアンタを見限った原因じゃない。その前からずっと、一夏はアンタを信じてなかった。何でか分かるか?」

「……」

 

沈黙する千冬に、今度は弾が捲くし立てる。

 

「やっぱ分かんないよな、千冬さん…。何でも分かった振りして、一夏の事まるで見てなかったもんな!アイツはアンタに追いつこうとして必死に努力した!!周りからアンタと比べられてなじられ、虐められても諦めなかった!!信じてなくても、肉親のアンタに心配かけまいと誤魔化し続けた!!体の傷が増えようが!!何されようが!!でもアンタは忙しいことを言い訳にアイツの、一夏の傷を見ようともしなかった!!悩みを知ろうともしなかった!!そんなアンタが今更家族に戻りたいだって……?あの時一夏を救えなかった癖に、都合良い事抜かしてんじゃねぇ!!!」

「!!」

 

その言葉を受け、千冬は頭を殴られたような衝撃を受けた。

それと同時に、モンド・グロッソを終え、日本に帰国した時の事を思い出した。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

帰国時、千冬は一夏を失った傷心のまま、家に帰ってきた。

道中、マスコミの取材を受けたが、千冬は怒鳴り散らして追い払った。

 

「………?誰だ」

 

玄関前に辿り着いた時、千冬は人の気配を感じた。

微かな街灯に照らされたその顔は、千冬のよく知る人物だった。

 

「五反田、御手洗…」

 

弾と数馬、千冬の知る限りでは、一夏と最も仲の良かった友人のはず。

そう思い、一夏の事を伝えようとした時。

 

「何で……、何で!!」

「グゥッ!!?」

 

肩を震わせていた弾に、顔面を思いっきり殴られた。

足に力を入れてなかった為、千冬は尻餅を付いた。

だが弾は、そんな千冬に構わず胸倉を掴む。

 

「何で、何で一夏が死ななきゃなんねーんだよ!!なんで一夏を助けなかったんだよ!?」

「………」

「何とか言えよ!!オイ!!!」

「弾落ち着け!千冬さん殴っても一夏は帰ってこないし、千冬さんも辛いんだぞ!!」

 

見かねた数馬が弾を羽交い絞めして止める。

だが、弾は尚も千冬に怒鳴り散らす。

 

「帰せよ…!俺達の親友を、帰せよ!!!」

「弾!!」

「何がブリュンヒルデだ…。家族一人守れずによぉ……!!アンタは、ただの人殺しだ!!」

「っ!」

「いい加減にしろ!!いくぞ!」

 

暴れ続ける弾を引きずりながら、数馬達は去って行った。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「あの時、一夏の誘拐を、日本政府は黙殺した。アンタを優勝させる為に」

「……」

「俺達もこの間、それを知った。アンタがあの後、表彰式ほっぽって誘拐場所に向かったのも知った」

 

今度は数馬が静かに語りだした。

千冬は、それを黙って聞いていた。

 

「…でも、弾の言うとおり今まで一夏を見てなかったアンタに、一夏は、チェイスは任せられない。理由はどうあれ、アンタは一度、一夏を見捨て、殺した」

「!」

 

数馬のその一言に、千冬の顔は強張る。

 

「アイツの事を今でも大切に思うなら、もう必要以上にチェイスに関わらないでほしい。それがアンタの為だ」

「どういう意味だ……?」

「アイツは………記憶喪失だ」

 

記憶喪失、という言葉に千冬は凍りつく。

 

「チェイスはもう、アンタの事をまるで覚えてないよ。一応自分の過去は知ったけど、チェイスはアンタに何の感情も抱いてない。それにもし記憶が戻っても、アイツはチェイス・ミューゼルとして生きる。そう決めてんだ」

「そ、そんな……」

 

千冬はガクリとひざを突いた。

そして、何時の日か職員室で言われたことを思い出した。

 

「いい加減に弟の死を受け入れろ……」

 

その言葉の意味を、ようやく理解した。

もう、自分の知っている一夏はいない、と。

 

 

「俺達が言えるのはこれだけだ」 

「…数馬は兎も角、俺はアンタを、絶対に許せねぇ……!それだけだ」

 

そう言って弾と数馬はその場を去った。

一人になった千冬は、声を押し殺して涙を流した。

 

 

 

 

 

 

弾と数馬が千冬に呼ばれ向かう頃、チェイスはと言うと。

 

「ふぅ………」

 

露天風呂に浸かり、疲れを癒していた。

カイトたちは既に入り終えて、熟睡している。

 

『奴らの行動、どんどん激しくなっている……』

 

奴ら、とは亡国機業の事だ。

 

『ボーデヴィッヒのVTシステム、今回の福音……何れも奴らが一枚噛んでるのは間違いない』

 

湯に潜りながら思案してると、突然何者かに頭を引き寄せられた。

驚く間もなく、気づけば顔面が柔らかいナニカに包まれていた。

 

「ごぼっ……!!」

 

息が続かなくなったチェイスは慌てて顔を浮上させる。

そして、その正体はチェイスの思いもよらぬ人物だった。

 

「ふふっ、驚かせてごめんなさいね」

「…スコール。何故ここに?」

 

それはスコールだった。

 

「あら?愛しい息子を心配しちゃ駄目?」

「……せめてタオル巻いてくれ」

 

鼻を押さえながらぼそりと呟く。

 

「それは兎も角、ナタルが貴方に御礼を言いたいらしくてね」

「?………!!」

 

首を傾げるチェイスだったが、次の瞬間には顔を入り口から慌てて反らした。

 

 

「こんばんは、チェイス君」

 

優しそうなハミングボイスを出し現れたのは、ナターシャ・ファイルス。

アメリカの国家代表にして、銀の福音のパイロット。

 

スコールと違いタオルこそ巻いてはいるが、逆にそのプロポーションを引き立たせており、チェイスは恥ずかしがる他なかった。

 

「私と、この子を助けてくれて、本当にありがとう」

 

チェイスの動揺を気にせず、ナターシャはチェイスに例を言う。

 

「……俺一人の力では出来なかった事だ」

「それでもよ」

 

ナターシャは優しく微笑む。

 

「……成る程な、ソイツが慕う理由も納得だ」

 

その微笑を見たチェイスは、福音が母と慕うのも最もだと頷いた。

 

「だから、これは御礼よ♪」

「!」

 

と、不意にチェイスの頬にに柔らかい物が触れた。

目の前では、ナターシャが恥ずかしそうに笑っていた。

 

「まさか……」

 

要はキスされたのだ。

呆然としながらも、何とか頭で理解した瞬間、チェイスは湯に半分潜る。

 

「ふふっ、スコールが惚れるのも無理ないわね」

「簡単には譲らないわよ?チェイスがハーレムを望むなら、それも良いけどね♪」

 

何やら火花を散らす二人に居心地が悪くなってきたチェイス。

すると、

 

 

「で、出遅れちゃいました!?」

「お前らだけずりーぞ!!」

 

タオルを巻いたオータムと真耶まで乱入してきた。

 

「!!」

「チェイスの一番はゆずらねぇ!!」

「わ、私も諦めません!!」

 

戦くチェイスに構わず、オータムと真耶も湯船にダイブする。

 

 

 

この後、チェイスが逆上せてしまうまでチェイス争奪戦は続きましたとさ☆

 

 

 

 

 

「いっくん達のISの情報は……」

 

その頃、束は福音と交戦していた魔進チェイサー達の映像から何とかデータを読み取ろうと、四苦八苦していた。

だが如何せんプロテクトが硬く、天才の束でも解析に大分時間が掛かった。

 

 

「………俺に、何の用だ?」

 

すると、束の後ろから声を掛ける人物がいた。

 

「待ってたよ、いっくん………」

 

それはチェイスだった。

あの後、逆上せたチェイスは何とか復活すると、束からの呼び出しがあった為、指定された岩場に向かった。

 

「先に言っておく……。織斑一夏は死んだ。ここにいるのはその残りカスだ」

「………」

 

明らかに束を拒絶するその眼差しに束は居たたまれない気持ちになった。

だがチェイスが一夏としての記憶が失われたーーそれだけでなく、千冬と比べられ、虐められた遠回しの元凶とも言える自分が何を語っても信じてもらえない。

 

そんな自分には、何も話してはくれないだろう、そう自覚した束は、

 

「そっか………。じゃあミューゼル君」

「………?」

「今の世界は、楽しい?」

 

震える声でチェイスに尋ねた。

一夏の時から、恐らくは今の世界を憎んでいたのかもしれない。

ならば今のチェイス・ミューゼルとしてはどうなのか?それが一番の気掛かりだった。

 

「……………………今の貴様が作ったこの世界は糞だ」

「……っ」

 

予想していた台詞に耳を塞ぎたかった。

だがそれは許されない。

 

自分はこの腐った世界の犠牲になった成れの果ての少年の言葉を聞かなければならない。

 

「だが………大切な友と生きる事が出来る。朧気だが、昔の俺は差別されて生きてきた。友と呼べる者も多くなかった。だが今は違う」

「………」

「友の、愛する者達の眩しい位に輝く笑顔、それを見れる意味では、この世界も………悪くはない」

「……………そっかぁ」

 

嘗ての一夏は、もういない。

 

だが目の前の少年は、嘗ての一夏の面影を残した少年は、生きている。

 

この世界を変えるため。

大切な人達を守るために。

 

「呼び出してゴメンね」

「………言っておくが、妹への干渉は」

「しないよ。私にも、やらなきゃいけない事が出来たしね」

「……そうか」

 

そう言って、チェイスはその場を後にした。

 

 

 

 

「……何これ?コアも、絶対防御も存在してないなんて!」

 

そして漸くプロテクトを破り、表示されるデータに束は驚愕した。

 

「これじゃあ、搭乗者は生身にダメージを……?!でも、鎧の下のスーツで最低限保護されてるんだ…」

 

 

 

 

 

 

ライドスーツの解析を急ぐ束は気づけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ………分かったぜ、ハート」

 

自らを監視していた謎の存在に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

セシリア「漸く夏休みですわね」

チェイス「夏休み、か……」

???『御機嫌よう、篠ノ之束博士。そしてさようならだ』

IS ~黒き魔進~ 『休暇』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『休暇』

今回はぶっちゃけタイトル詐欺です

後半重たいです


4/3 最後の文を少し増やしました


臨海学校での課程を終え、IS学園に戻ってきたチェイス達。

チェイスだけは唯一バイクだったが。

 

 

 

 

その翌日、夏休み前最後の集会が終わってすぐのHR。

 

「ご、五半田弾です!え~っと、宜しく!」

「御手洗数馬。趣味はエロゲ…ゴホン、ゲームだ。まぁ、宜しく」

「色川カイトです!好きな女の子のタイプは大人しめの女の子です!!」

「立花優です!好きな教科は歴史です!」

「立花百合です。兄さん共々宜しくお願い致します」

「「「きゃあーーーーーーーーー!!!!!!」」」

 

転入が決まっていた弾達は、2学期を待たずして入学する事になった。

当然、男子が一気に増えたため女子の脳細胞はトップギアだ。

 

「男子が増えた!!それも4人!!!」

「やった!日頃の行いが実ったからだわ!!」

「女の子の方も可愛い~!」

「2学期からの授業が楽しみ~!!」

「夏コミの材料が増えたわ……!あァ、濡れてきた…!」

『『『『『何だろう、この寒気は………』』』』』

 

最後にどこからか聞こえてきた発言で、一気に背筋が冷えた5人だった。

 

「本格的な授業に入るのは2学期になる。ちゃんと夏休みの間に参考書を読んでおけよ」

「「「「「はーい」」」」」

「皆さん。明日から夏休みですが各自羽目を外しすぎず、それぞれがIS学園の生徒という自覚をもって有意義に過ごしてくださいね!」

「「「「「はーーい!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

HRが終わって、弾達はチェイスの部屋に集まる。

 

「それでどうする?夏休み」

「パーッとバーベキューでもするか?」

「これがあるだろお前らは……」

 

チェイスが静かに参考書を指さすと、弾とカイトがげんなりと顔を崩す。

 

「えぇ~、後で良いよそんなの」

「今は夏休みの予定を立てることが大事だぜ!勉強なんて後回しだ!」

「………後で泣き言言っても知らんぞ」

 

チェイスは呆れた様にため息を吐く。

 

「まぁ良いじゃん。今日ぐらいさ」

 

数馬がポンとチェイスの肩を叩いた。

それにチェイスは苦笑いで答えた。

 

「それもそうだな……」

「勉強し過ぎでも、あんまりコンディション良くないからな」

「時たま遊んで、ちゃんと勉強、ですね」

 

優と百合も苦笑いでつぶやいた。

と、ここで、チェイスの携帯が鳴った。

 

「ん……」

「誰からだ?」

 

それは楯無からのメールだった。

 

 

「……悪い、明日は用事が出来た」

「えーっ?」

「何だ、デートか?」

 

驚くカイトと、ニヤニヤしながら尋ねる数馬。

 

「そうだと言ったら、どうする?」

 

だがチェイスはにやりとして、聞き返してきた。

予想外の返しに、全員が固まる。

 

「……どうした」

「や、お前が冗談言うなんてさ」

「…悪いか」

 

そっぽを向くチェイス。

それに一同大笑い。

 

「笑うなっ!!」

 

 

顔を赤くしたチェイスの叫びが部屋に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

「ない、ない!!」

 

何処かに存在する篠ノ之束のラボ、そこでは束が何かを必死で探していた。

 

「如何したのですか、束様」

 

すると、ラボの奥から一人の少女が現れた。

 

「あ、クーちゃん!大変なんだよ~!」

「大変?」

 

クーちゃん、と呼ばれた少女は首をかしげる。

彼女の名前はクロエ・クロニクル。

ラウラが普段隠しているのと同じ金色の瞳を持った少女だ。

 

「いっくんが使ってるあの銃みたいなのを複製出来たんだけど……」

「いっくん…?あぁ、チェイス・ミューゼルですか?」

 

実は束は臨海学校の際に、少しでも彼らの助けになろうとチェイスのブレイクガンナーを映像からではあるが複製に成功したのだ。

ただし、ライドスーツを実装していないガワだけの再現だが。

 

「けど?」

「それが見つからないんだよ~!!」

「……もしかして、泥棒?」

「クーちゃん、冗談は止してよ~。ここは束さんとクーちゃんしか場所を知らないんだよ?泥棒なんてそんな……」

 

 

 

ドォォォォォォォンッ!!!!

 

 

束が言い切る前に、外から謎の爆発音が聞こえた。

 

「何!?」

「束様、侵入者です!!」

 

クロエが慌てて束に伝えると、ラボの扉が強引に破られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『御機嫌よう、篠ノ之束博士。そして、さよならだ』

 

 

束とクロエの前に現れたのは、真紅の鬼に似た異形だった。

 

「何なのお前?コスプレ?だとしたら全然不細工だよ」

『フム。幼児的思考回路なのは、ブレンの調べ通りだな。お前が作ったゴーレムは悪いが全てお釈迦にさせてもらったよ』

「っ!?」

 

束は戦慄した。

自らが作った警備用ゴーレムは侵入者撃退プログラムを組み込んだ代物。

一機で一つの軍隊を壊滅出来るソレを全て退けた、と言ったのだ。

 

 

『さて、本題に入ろう……』

「っ、ぐぅ!」

 

真紅の異形は、束の首を締め上げ、持ち上げる。

 

「束様!!……っ!」

『おっと、動いてもらっては困りますね』

 

束を助けようと、専用機を展開しようとしたクロエだったが、背後から現れた脳の意匠が見られる緑の異形に止められ、何かをクロエの頭に注入した。

途端、クロエの体に強烈な痛みが襲いかかった。

 

「あぁぁぁぁっ…………!!!」

「クーちゃん!!お前、何したんだよ!?」

『何、俺の友達お手製の毒だ。あの娘が体内に医療用ナノマシンを宿した試験管ベビーでも、すぐに楽になれる』

「!!」

『心配するな。直ぐにお前も後を追うことになる』

「ぐぅ!!」

 

真紅の異形は腕に力を込め、束の首を強く締める。

束は苦悶の声を漏らした。

 

『そうだな、篠ノ之博士。死ぬ前に一つ良い事を教えよう』

「……っ?」

『何故絶対数が限られてるISコア、その内の108つが消えたのか……理由を知りたくないか?』

「まさか……っ」

『そう、俺達が盗んだのさ。とある国から貰い受けて、ね』

 

実は以前、467つ内の108つのISコアが行方不明になったのだ。

これに対し、各国は総力を挙げて捜索。勿論、束自身も捜索したが、結局見つからず、事件は迷宮入りとなった。

 

だからこそ、現在あるISは厳重な警備の元で使用されている。

コアが少ない以上、鎧だけ作っても仕方ないからだ。

 

『お前が生み出したコアは我らが有意義に使わせてもらったよ。この世界を、一度壊すためにね』

「!!」

『俺はね、博士。貴様が起こした白騎士事件を体験してるのさ』

 

そう、ポツリと語りだした。

 

『あの時、貴様は知る由もないだろうが、白騎士が往なしたミサイルの流れ弾が様々な人の命を奪っていった。貴様にとっては取るに足らない、虫けらの命かもしれんが……』

「……」

『俺にとっては大切な友達の命だった…!!』

「っ!」

 

すると、真紅の異形から蒸気が噴き出てきた。

 

『俺にとって最も大切な命が!!貴様らによって奪われた!!それに見向きもせず、貴様と白騎士…織斑千冬がのうのうと生きている……それが俺にとっては許し難い!!!』

「何っ、これ…!?」

『ふふ、全く。流石は稀代の天災だよ貴様は……。これ程自分を抑えらぬとは!!!』

 

辺りに体から湧き出た電流を無差別に飛ばし、機械類を破壊する。

 

『これ以上貴様にチョロチョロされると困るのでね……。あの世で貴様が奪った命達の呪詛の叫びを聞き続けると良い!!お前の親友もすぐに来るだろう、寂しがることはない』

「ちー、ちゃん……!」

『最後に、何か聞きたいことはあるかな?』

 

束は薄らと意識した。

もう、自分は助からないと。

 

「いっくん…の、誘拐は、お前……達が」

『あぁ。あわよくば彼女を弟の前で殺して、彼を引き込もうかと思ったが、結果、彼は政府に殺された。だが同時に、チェイス・ミューゼルとして生まれ変わった。織斑一夏としての記憶を引き換えに、ね。と言っても、貴様は知っているみたいだが』

「…!!」

『そう。貴様がISを産み出さなければ、彼は誘拐されることもなかった。下らない差別もない。だからこそ、俺はこんな矛盾だらけの世界を破壊する』

「………わ、私は…どうしてもいい、から……クー、ちゃん、だけは」

『……俺は貴様の頼みを聞く義理はないが、まぁいいだろう。ブレン、その娘の毒を解いてやれ』

『やれやれ。甘いお人だ』

 

溜息をつくと、緑の異形ーーーブレンはクロエの頭に手を置き、毒を抜き取る。

 

『ただし、暫くは動けませんよ』

『構わん。その娘は、俺達で預かる。さぁ、篠ノ之束。安らかに…………逝け』

 

真紅の異形は腕に力を込めた。

 

 

 

あぁ、こんなことになるなら、箒ちゃんと仲直りしておけば良かったなぁ。

 

ちゃんと、いっくんに向き合ってあげれたら良かったなぁ。

 

 

 

でも、一番はーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、束の意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの天災、篠ノ之束も終わりか……呆気ないな』

『ハートにかかれば、容易い事です』

『んで?その嬢ちゃんどうすんだ?』

『それは、ハートが決める事です』

 

 

 

 

直後、束のラボがあった場所で大爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃……

 

 

ピシィッ!

 

「……!」

 

自室にて謹慎している箒の戸棚に置かれた束との写真立てのガラスーーーー束の写っている位置に、皹が入った。

 

「………姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

楯無「ごめんね、ミューゼル君。つき合わせちゃって」

簪「頑張れ、お姉ちゃん!」

数馬「…なんで俺まで?」

IS ~黒き魔進~ 『逢瀬』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?



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IF 『覚醒のロード』

IFの物語です

ロード・バロンの洗練されたデザイン、結構好きですね


これは、もしもの物語………

 

 

 

だが、これは………

 

 

 

こことは別の世界で起きるのかもしれない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君は生まれ変わったんですよ。五反田弾君』

『歓迎しよう、新しい友達として!………………名は、ロード・バロン!!』

 

 

一瞬の悲劇から生まれた穢れし王。

 

 

 

『ぐっ………ウォォォオォオォオオオオ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『弾………何で、何で……!!?』

 

嘗ての友からの刃に倒れる、高速の戦士。

 

 

 

 

 

『父……さん……………』

 

偽りの一撃に散る月影の戦士。

 

 

 

 

『兄さん……絶対に、生きて下さい』

『百合ィィィ!!!』

 

嘗ての仲間の一撃に散った百華の女戦士。

 

 

 

 

『ゴメン、百合……約、束………守れねぇや………』

 

 

心のギアが止まり、走ることも止まってしまった戦士。

 

 

 

 

『優、カイト、百合、数馬……………俺は』

 

最後に残りし黒き追跡者ーーー

 

 

 

 

 

 

『弾………お前は俺が止める。止めなくてはならない!!』

『チェ、イス………ウォォォオォオォオオオオ!!!!!!』

 

 

そしてぶつかり合う、嘗ての友。

 

 

 

 

 

 

 

そして―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガッ、アァ……………………………ッ!?』

『許せ………………、弾ッ!!』

 

 

友を、仲間を、愛する者達を、全てを失った黒き追跡者は、

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウァァァアァァァァァア!!!!!!』

 

 

 

その世界で何を瞳に写す………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………はっ!」

 

真夜中、突然チェイスは目を覚ました。

 

「何だ、今の夢は…………?!」

 

夢の筈なのに、チェイスにはその感覚があった。

 

 

 

あの場に実際にいた様な―――――

 

 

 

亡国機業に改造された弾の成れの果て、ロード・バロンと対峙したのも、

 

 

 

 

 

そして―――――

 

 

 

実際に弾をその手で貫き、命を奪ったのも。

全てが、鮮明に、リアルに体感したかのような錯覚に見舞われた。

 

 

 

 

『あれは…………本当に夢なのか?』

 

 

普通なら夢だと片づけたいが、どうにも夢と割り切れないのだ。

 

 

『もしかすると、あの様な結末を迎える世界もあると言うのか……』

 

『平行世界―――――あれは、確かに俺だった』

 

『何かの暗示なのか?これは…………』

 

 

 

 

 

 

「これはあり得る可能性の世界の1つ。だが、世界は無数にある。それぞれ、あるべき未来を、結末を迎える」

 

 

足下に映る無数の地球、その場所に分厚い格好をした謎の男がいた。

 

 

「お前達がこれから見届ける結末は、星の数程結末の1つだ。だが、この世界の奴らの動き1つで、未来は幾つにも変わる………」

 

 

男が指差した場所に映るのは、魔進チェイサー達。

 

 

「まぁ、お前達がどんな結末を迎えるか、俺はただ、見守るだけだ」

 

 

男は、無数の植物の蔦と共に、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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『逢瀬』

夏休み編です


太陽輝く7月、IS学園では夏休みに突入しているこの日、チェイスはある人物と水族館前で待ち合わせしていた。

 

「お待たせ~、ミューゼル君」

 

その正体は、IS学園の生徒会長、更識楯無だ。

彼女の髪と同じ水色のサマージャケットに、胸元の開いたシャツ、そして同じく水色のミニスカートを着こなしていた。

 

「……どうかな?似合ってる?」

「………あぁ」

 

恥ずかしげに聞いてくる楯無に、チェイスは事も無げに似合ってる趣を伝えた。

 

「そっか……///」

 

途端、楯無の顔は真っ赤に染まった。

 

「………行くぞ」

 

そんな楯無に構わず、チェイスは楯無の手を握り、エスコートする。

 

「えっ、ミューゼル君?!」

「………逢瀬はこう言う事をするのが当たり前と聞いたが?」

 

いきなり手を握られたショックで気が動転する楯無だが、チェイスがそっぽを向いて言った言葉に自然と頬が緩んだ。

 

『もしかして、勉強してくれたの………?』

 

自分とのデートの為にうんうん唸るチェイスを想像すると、胸が高鳴った。

 

 

「そ、そうね!今日は一杯お姉さんを楽しませてね!!」

「………ふっ」

 

照れ隠しに言った言葉に、チェイスはただ微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~、ミューゼル君大胆~………」

「………あの~、更識さん。何で俺まで?」

「暇そうだったから……」

「それだけかよ………」

 

そんな二人をこっそりと後ろから見守る簪と数馬、そしてバイラルコア達だった。

 

「シャークの奴、水槽眺めてんな~………。あ、カメレオン!何処行くんだ!?おいィィ!ゴメン更識さん!後から合流しよう!」

 

新しく作られたカメレオンバイラルコアがするする人混みを通り抜けて何処かへ行ったため追いかける羽目に。

 

 

 

『数馬と簪、何してんだ………?』

 

勿論そんな二人に気づいていたチェイスだった。

 

 

 

 

「うわ~凄~い!」

 

大きな水槽にいる彩りの魚達に楯無は大興奮。

だがチェイスはと言うと、

 

「……………」

 

ナポレオンフィッシュと何故かにらめっこしていた。

 

「何してるの、ミューゼル君………?」

「因縁を付けられたから、睨み付けた……」

 

憮然とした態度で呟くチェイスに苦笑い。

 

「それに魚なんて食うだけだからな……」

「もう、ロマンがないんだから~」

 

食う事にしか興味ないチェイスには、魚の綺麗さがよく分からないのだった。

 

 

 

 

 

 

「ゼェ、ゼェ…………やっと捕らえた……!」

「……大丈夫?御手洗君」

 

やっとの思いでカメレオンを捕まえ息切れしている数馬に、水を渡す簪。

その傍らでは、バイラルコア達がピョンピョンはしゃいでいた。

 

 

 

 

 

「…………アイツ等」

 

ハァと溜め息を吐くチェイスの腹がぐぅーと鳴り響いた。

 

「…………お昼、食べよっか?」

「………すまん」

 

取り敢えず、昼食を食べる為、外に出る二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は、お姉さん弁当作ってきたんだ~」

 

楯無は鞄から弁当箱を取りだし、チェイスに差し出した。

 

「忝ない………」

 

チェイスはペコリと頭を下げて、弁当箱を受け取った。

中には、彩りのおかずが輝いていた。

 

「………いただきます」

 

丁寧に挨拶をすると、凄まじい勢いで弁当を食べる。

 

「よっぽどお腹空いてたんだ~」

 

楯無は水筒のコップにお茶を出して、チェイスの傍に置いた。

 

「………そう言えば、今日は何故俺を誘った?」

「え?」

 

お茶でご飯を流して、チェイスは気になった事を尋ねた。

 

「ん~、強いて言えば、お礼かな?」

 

楯無は少し間を置いて、そう言った。

 

「俺は礼を言われる様な事をした覚えはないぞ………」

「ううん。貴方の言葉のお陰で、簪ちゃんは前向きになったし、頻繁に私との模擬戦を申し込んで来たしね」

「俺は切欠を作ったに過ぎない。そうなったのはお前達が歩み寄ったからだ……」

 

そうぶっきらぼうに吐き捨てると、チェイスは再び食事に入る。

 

「どう。お味の方は?」

「悪くない……」  

 

それを聞いて満面の笑みを浮かべる楯無に、チェイスも微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イルカショーか~。行く?ミューゼル君」

「構わない」

 

昼食を食べ終え、二人はイルカショーを見に行く事に。

 

 

そしてこの後、チェイスがイルカと戯れたり、楯無と一緒に餌を上げたり、ぬいぐるみを買ってあげたりして、あっという間に夕暮れ時になった。

 

 

 

 

「今日はありがとう、ミューゼル君」

 

イルカのぬいぐるみを大事そうに抱えて、楯無は礼を言った。

 

「礼を言うのは俺の方だ……」

「え?」

「良い羽休めになった……ありがとう」

 

親しい者にしか見せない穏やかな顔で、楯無に逆に礼を言った。

その笑顔に、楯無の胸は大きく高鳴る。

 

「う、うん……///」

 

その顔を直視出来ず、楯無は顔を反らす。

だが、このまま終わってしまうのは嫌だと本能が叫んでいた。

 

「み、ミューゼル君。その………目、瞑ってくれる?」

「………?あぁ」

 

言われた通り、目を瞑るチェイス。

 

 

 

 

 

「…………………っ!」

 

暫くして、唇に柔らかい感触がした為、チェイスは驚いて目を見開いた。

すると、眼前には楯無の端正な顔が。

 

「………ん」

 

1分近いキスを終えるように、楯無は顔を離す。

 

「もう、目を開けちゃ駄目なのに……」

 

仕方ないと言った感じで苦笑いを浮かべる楯無。

対するチェイスは未だに状況が飲み込めていない様子だった。

 

「お前、今………」

「………後、これから二人きりの時は、刀奈………そう呼んでね」

 

耳元で囁く楯無にチェイスはぎょっとする。

 

「それは、お前の本当の名前か………」

「うん……」

 

暫くその場に佇んでいると、楯無の方からチェイスの手を引いた。

 

「さっ、行こ!帰るまでがデートよ!」

「お、おい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いのかい、更識さん。これで……」

「うん。お姉ちゃんの幸せは私の幸せだから」

「………チェイスの本命は」

「うん、分かってる。でも、それでもお姉ちゃんは諦めないと思う」

「………そっか」

 

  

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

???「約束通り、これは貰っていくよ」

チェイス「ただの泥棒、ではないと言う事か………」

ハート「まさか、な………」

IS ~黒き魔進~ 『怪盗 序』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『怪盗 序』

怪盗と言っても某ディエンドではございません


7月某日、とある博物館………

 

「逃がすなー!!追えー!!」

 

大量の警察の包囲網を颯爽と駆け抜ける者がいた。

白のシルクハットに同じく白のマントという奇抜な出で立ちのこの男は、最近世間を賑わしている怪盗だった。

 

 

「止まれ!怪盗ルパン!!」

 

警官が拳銃を向けて怒鳴るも、目の前の男ーーールパンは止まらない。

 

「くそったれぇぇ!!」

 

やけっぱちになった警官部隊がルパンに向けて発砲するも、

 

 

 

「………ふっ!」

 

ルパンはマントを翻すと、いつの間にか姿を消していた。

そこには無数の弾が落ちているだけだった。

 

「な、何だ今の……!?」

「今、時間がゆっくりになった様な……と言うより、重く感じた?」

「それより、ルパンは!?」

 

警官たちが血眼になって探すと、

 

 

 

 

 

 

「ふははは!!警察諸君!私はここだ!」

 

突如として嘲笑を含めた叫びが聞こえ、そちらを一斉に振り向くと、ヘリコプターから吊るされた縄梯子にぶら下がるルパンの姿が。

 

「る、ルパンです!!」

「おのれぇ、ルパン!!」

「君たちでは相手にならんよ!では約束通り、バラージの石は頂いていく!さらばだ!」

 

警察部隊を嘲笑いながら、ルパンは闇夜に姿を消した。

 

 

そして、翌朝の朝刊の一面は、

 

 

『鮮やかなる現代のルパン!警察をものともせず盗み出す!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、怪盗とかいるんだなぁ」

 

IS学園の寮部屋でニュースをぽけーっと見ながら、弾は呟いた。

 

「そういうのフィクションだけかと思ってたけどな~」

「でも以前も活躍してたらしいね、このルパンって怪盗」

 

弾のルームメイトのカイトは顔を拭きながら、洗面所から現れた。

 

「マジで?」

「と言っても僕らが生まれる前らしいけどね。母さんから聞いたんだ」

「ふ~ん。じゃあ結構お爺さんってことか」

「にしてはアグレッシブだけどね」

「確かに」

 

と言ってると、弾の携帯が鳴りだした。

 

「もしもし。……スコールさん?…はい、分かりました」

「どうしたの?」

「向こうに戻ってきてくれってさ」

「…?何だろう」

 

 

コンコン

 

「はい!……ってチェイス?」

「支度は出来たのか?」

「あぁ。俺は出来てるけど……」

「ちょっと待って!すぐ着替えるから!」

「まだ寝間着だったのか………」

 

結局優と百合、数馬も待たされ、全員遅れて到着する羽目に。

 

 

 

 

 

 

「遅かったわね。何かあったの?」

「全部カイトのせいなんです……」

「ホントにごめん……」

 

面目ないと縮こまるカイト。

 

「まぁいいわ。それより、今はこれよ」

 

スコールは今朝の新聞を机に置いた。

 

「…今日の新聞、ですか?」

「と言うより、ルパンに注目しろという事か…?」

「チェイス、正解よ」

 

スコールは懐から写真を取り出した。

そこには、ある男が写っていた。

 

「その人は?」

「ゾルーグ東郷。今世間を賑わしている、現代のルパンの写真よ」

「えっ、若っ!?」

「と言っても、これは15年前の顔写真。今はこんなに若々しくないはずなの」

「へぇ~、こんなにイケメンなんだな」

 

数馬と弾はまじまじと写真を見つめる。

 

「と、顔云々はここまでとして、皆この新聞はちゃんと読んだかしら?」

「……警官部隊が極端なまでの重加速のようなものを感じた」

「見たのか、チェイス!?」

「暇だったからな……」

 

驚く弾に事も無げに返すチェイス。

 

「そう。重加速というのは、普段と比較するとまるで時間が遅く感じる現象のことなの。これを引き起こすという事つまりは……」

「亡国機業が噛んでるかもしれん、という事か?」

「流石チェイス。呑み込みが早いわね」

 

チェイスの発言に頷くスコール。

 

「確かに、亡国機業の戦闘部隊も、重加速を引き起こしていたな……でも警官部隊が感じたのは、体の動作が遅くなるというよりは、体全体が重く感じたんじゃなかったっけ?」

「そう言えばニュースでも言ってましたね」

 

優と百合も自らの体験などで例を挙げていた。

 

「どちらにしても、ただの泥棒では無いという事だな……」

 

チェイスが言った言葉に全員の表情が引き締まる。

 

「ルパンは今夜も予告状を送ってきてるわ」

「じゃあ、そこで待ち伏せしてれば……」

「ルパンが何者か、分かるって訳だね!」

「決まりね。では、貴方達に仕事よ」

 

スコールの言葉に、全員がそちらを向いた。

 

「ルパンの捕獲、以上よ!」

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルパン……か」

 

とある場所にあるホテルの一室、そこではハートが新聞の一面を眺めていた。

 

「まさか、な…………」

 

そう思案顔で呟くハートだが、その顔は何かを確信したような雰囲気だった。

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイス「現れたな、コソ泥……」

弾「あれは、何で……!?」

ゾルーグ「ライドスーツを使えるのは君達だけではないのだよ」

IS ~黒き魔進~ 『怪盗 中』

《Lupin!》

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『怪盗 中』

これでpixivにある分は全て投稿しました

D×Dウィザード同様、チマチマ更新になります。


夜の7時、この時間は現代のルパンと呼ばれるゾルーグ東郷が予告状を某美術館に出した時間である。

 

美術館の周りは警官隊の厳重な包囲網で固めてあり、まさに蟻の子一匹入れない状態。

 

その美術館の外にて、チェイス達はルパンの出現を密かに待っていた。

 

「ホントに来るのかねぇ……」

「気長に待つしかないだろ」

 

弾と優はあんパンを食べながらボソリと呟いた。

 

「まぁ、こんだけの包囲網だと並の泥棒なら帰るけどな~」

「でもルパンは逃げないだろうね」

 

数馬とカイトもまた缶ジュース片手に見張っていた。

 

「でもワクワクしますね、刑事ドラマみたいで」

「………そうか?」

 

百合は百合で楽しそうに見張り、チェイスはそれに対し首を傾げる。

 

 

 

 

 

すると、

 

 

ジリリリリリリ!!

 

けたたましいまでの警笛が鳴ったかと思うと、美術館に止めてあったパトカー数台が突如として爆発した。

 

「……!オイ、準備しておけ」

「~~~っ!(あんパン詰まった……!)」

「何してんだよ……」

 

あんパンが詰まって喉を叩く弾に嘆息しながら、数馬は缶ジュースを手渡す。

 

 

「………何か来る!」

 

そんな弾を無視し、何かが接近してきたのを感じたチェイス達は、茂みから飛び出した。

 

 

「………!」

「そこまでだ、コソ泥……」

 

黒いマントらしき物に身を包んだ人物の前に立ちふさがる。

 

「お前が……ルパンーーいや、ゾルーグ東郷だな!」

 

優はビシッと黒マントを指差し宣言した。

すると、黒マントは大きく笑いだした。

 

「フッフッフ、ハッハッハ!何故この場所に君達の様な子供がいるのかね?」

「惚けんな!質問に答えてもらうぜ……。アンタは亡国機業のメンバーか!?」

 

弾はゲネシスドライバーを装着し聞くと、黒マントは、

 

 

「ふむ、如何にも。私こそ現代のルパンーーゾルーグ東郷だ。君達はーーそうか、フリーダム・スカイのテストパイロットか」

「!何でアンタが知ってんだよ!?」

 

自分達の事を知ってるゾルーグに対し、戦慄する数馬。

だがその手にはシグナルバイクが握られており、準備は万端と言った所だ。

 

「事前に厄介な人材を調べるのが私の流儀でね。そして二つ目の質問だが………私は亡国機業に所属してはいない」

「そうか………。だけど、泥棒は警察に行ってもらうぜ」

 

優がドライブドライバーを操作しようとすると、

 

 

「悪いが君達の相手はまた次の機会だ………ハァッ!」

 

ゾルーグは掌から何やら波動をチェイス達に向けて放った。

 

「………!」

「何だ……コレ!?」

 

途端、チェイス達の動きが鈍くなった。

 

「な、シフトカーを装着してるのに、ただの重加速じゃないのか……!」

「重加速、か……。フフッ、では次なる運命の導きをお楽しみに……」

 

まともに動けないチェイス達を尻目に、ゾルーグ東郷は悠々と去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、逃げられたの……」

「すまない」

「謝らなくて良いわ。スーツ装着前にされちゃ、どうしようもないもの」

「それなんですけど……」

 

翌日、スコールにゾルーグを逃した事を報告すると、優が進言してきた。

 

「アイツの重加速……何か普通のと違ってた様な気がするんです」

「どういう事?」

「シフトカーを着けてれば、ある程度の重加速には対応出来るじゃないですか。それなのに、昨日は……」

 

思い出した様に数馬も、スコールに言い始めた。

 

「そういえば、俺もシグナルバイク持ってたのに、まともに動けなかったです………」

「……他に何か可笑しな事は感じなかった?」

 

スコールは急に何かを思い付いたかの様にチェイス達に聞いてきた。

 

「………体が重くなった。アレは重加速と言うよりは、重力を倍以上掛けられた様な感じだったな」

「………!まさか……」

 

チェイスの発言に、スコールはハッとなって急に考え込んだと思うと、

 

「チェイス、今からこの場所を調査してほしいの」

 

懐から紙を取りだし、チェイスに差し出した。

 

「………分かった」

 

受け取ったチェイスはそう言うと、社長室を後にした。

 

「今のは……?」

 

疑問に思った百合が聞くと、スコールは重々しく口を開いた。

 

 

「ゾルーグ東郷の拠点……その住所よ」

 

 

 

 

「………ここか」

 

チェイスはスコールから渡されたメモ用紙通り、ゾルーグ東郷の本拠地の住所に辿り着いた。

 

そこにあったのは、日本にあるには不自然な程大きい城だった。

 

「………」

 

チェイスは玄関の扉を開け、中に入った。

暫く歩いてるとーー

 

 

 

 

「……これは」

 

奥の部屋に、何やら棺桶の様な物が安置されていた。

 

「ZZZ……………!」

 

棺桶の蓋に書かれた文字を呟いた途端、背後から襲われかけるが、チェイスは即座に振り向き、対応した。

 

「ゾルーグ………!」

「ほぅ、私の城を無断で訪れる不届き者が来たかと思えば、昨日の……」

「……!ぐっ」

 

ゾルーグはチェイスの左脇腹に蹴りを入れるも、チェイスはそれを左手で防ぐ。

そして、その足を掴み、壁に投げ飛ばすも、空中で回転し、それを逃れる。

 

「良い身のこなしだ」

「………当時の顔のまま、か」

 

チェイスはゾルーグの顔を見て、そう吐き捨てた。

ゾルーグの顔は、写真の物と全く変わってないのだ。

 

「そうさ。本来の私はヨボヨボのお爺さんになっている。だがしかし!とある研究所から盗み出したこのサイバロイドボディーーーーZZZのお陰でね私は若返ったのだ!」

 

すると、ゾルーグはその身を機械的な異形へと変えた。

無骨なその姿だが、まるで隙を感じさせない。

 

 

そして胸に刻まれた、棺桶と同じ文字ーーーーZZZ。

 

「亡国機業のロイミュードボディと、同じ、なのか……!?」

「いや、これはその原型ーーーーつまりプロトタイプさ」

 

再びゾルーグに戻ると、意気揚々とチェイスに語り始めた。

 

「彼らは元々このサイバロイドボディに自らの脳を移植して、サイバロイド軍団を造り上げようとしていたが………それは叶わなかった。そんな馬鹿げた事をするためには、高度な医療技術等が必要とされる。そして何より!サイバロイドボディが生み出すパワーに脳が処理仕切れず、オーバーヒートを起こす!そして死んでしまうのだ……」

「貴様は、それを実行したのか……?」

「見ての通りだ。私は動かせた。見事、サイバロイドボディに選ばれたのだ!」

 

手をあげ、喜びを表現するゾルーグ。

 

「私はこの力によって全盛期以上の力を手に入れたのだ……!その私の野望はたった一つ!世界中のあらゆる美術品を手中に納める事だ!!」

「下らないな……」

「君には分からないだろうさ。美術品に込められた美しさを………」

「分かるつもりはない……。変身!」

《Break up!》

 

チェイスは即座に魔進チェイサーに変身、戦闘の体勢に入った。

 

「ほぅ、それがライドスーツか……」

「チェイス!」

「待たせたな!」

 

ライドスーツに嘆息するゾルーグ。

更にチェイサーの後ろから、弾達が入ってきた。

 

『お前ら………』

「ゴメン、ちょっと遅れた」

「一人なんて無茶だぜ」

「そうですよ!」

 

カイト、百合、優に言われ、チェイサーはかぶりを振った。

 

「ふぅん、役者は揃った様だね……」

「昨日みたいに行くと思うなよ!」

《レモンエナジー》

 

弾がレモンエナジーロックシードを解錠しながら宣言するがしかし、ゾルーグは突然高らかに笑いだした。

 

「フフフ、ハッハッハッハ!!」

「何が可笑しい!?」

「いや、失敬。本当に君達は私を追い詰めたつもりだから、つい」

『安心しろ。死なない程度にボコって、警察に突き出す………』

「ふっ、それが出来るのかね?」

 

ゾルーグは笑いやめると、懐から何かを取りだし、チェイサー達に見せ付けた。

 

『………それは!』

「何で、何でお前がそれを………!?」

 

それは、チェイサーの持つブレイクガンナーと全く似ていたのだ。

だがその色は、チェイサーの物と違い、派手な金色の装飾が成されている所だ。

 

「流石は天災、篠ノ之束博士の遺作だ。まぁ、スーツは私お手製だがね」

『……どういう意味だ!』

「ふっ………ライドスーツを使えるのは君達だけではないのだよ!」

 

そう叫ぶと、ゾルーグは銃口を掌に押し付けた。

 

《Lupin!》

 

そう機械音声がなり、待機音が流れる。

 

「変、身!」

 

ゾルーグが空中に向かって発砲すると、キラキラした宝石の様な物体が集まり、派手な変身音と共に、ゾルーグはその姿を変えた。

 

「そ、んな……!」

「バカな!」

 

漆黒のマントを翻し、頭部はシルクハットを思わせる。

そして斜め掛けされた宝石の付いたベルトらしき物。

 

 

まさに怪盗の名に相応しいその姿は、

 

 

 

 

 

 

 

 

『和が名は、仮面ライダーーールパン!!』

 

ルパンは弾達に振り向き、挑発するように指を動かす。

 

「上等だ、やってやるぜ!皆!!行くぞ!!」

「「「「「変身!!」」」」」

 

 

《シグナルバイク!ライダー!マッハ!》

《ドライブ!タイプ・スピード!》

《レモンエナジーアームズ!Fightpower!Fightpower!Fi-Fi-Fi-Fi-F-F-F-FFight!》

《メロンエナジーアームズ!》

《ピーチエナジ~ア~ムズ!》

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

ルパン『弱い!』

バロン『何だよ、コイツ………!』

マッハ『力の差が、大きすぎる……!』

IS ~黒き魔進~ 『完敗』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?



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『完敗』

ルパン無双です

後、お気に入り300件ありがとうございます。
これからも忙しいですが、頑張って投稿していきます!


『おおおっ!』

 

先ずは先手必勝とばかりに、バロンがソニックアローでルパンに斬りかかる。

 

『ふっ!』

 

だがルパンは窓を割り、外に出ることでそれを回避する。

 

『逃がすかってんだ!』

 

『喰らえ!』

 

ルパンの背中に向かってバロンがソニックアローの弓を、マッハはゼンリンシューターを放つ。

 

 

『甘い!』

 

《gun!》

 

ルパンはルパンガンナーの光弾で相殺してしまう。

だが、すかさずドライブTSがハンドルブレードで追撃する。

 

『はぁっ!!』

 

『ふん!』

 

ルパンもそれを腕でガードする。

それを見たドライブは、ハンドルブレードのハンドルを回す。

すると、ドライブの体が高速回転しだす。

 

 

 

その様はまさに車のドリフトだった。

ソレに僅かにルパンはガードを緩めてしまう。

 

《ターン!ドリフトカイテーン!》

 

『っ!』

 

『うりゃあぁぁぁっ!!』

 

ガードが緩くなった所を連続で四方八方から斬りつける。

 

『百合!!』

《ピーチエナジ~スカッシュ!》

 

『やあっ!』

 

怯んだ所を、マリカがソニックアロースラッシュを放ち、ルパンはソレをまともに喰らってしまう。

 

『ぬうっ!』

 

『まだまだ!』

 

土煙の中から今度は斬月・真が連続でルパンを斬り伏せる。

 

『でやっ!』

 

『………っ!』

 

その勢いで斬月・真はルパンをパンチで吹き飛ばす。

 

『……沈め!』

《Tune chaser spider!》

 

《Execution!Full break!spider!》

 

吹き飛ばされた先には、チェイサーがファングスパイディーを構え、紫紺のエネルギーをたぎらせ、ルパンをエグゼキューションスパイダーで凪ぎ払った。

 

凪ぎ払われた勢いに乗って、ルパンは壁に叩きつけられる。

 

 

『………何か、呆気ないな』

 

そうドライブがポツリと漏らすと、

 

 

 

 

 

『はぁっ!!』

 

何とルパンは瓦礫の中から立ち上がった。

その様には、余り堪えた様子は見られなかった。

 

『すまんね。この姿で戦うのは初めてなのだよ。だが………』

 

ルパンは掌を開いたり閉じたりして、チェイサー達を見据えた。

 

『漸くこのスーツに慣れてきたよ!これからが、本当の戦いと言うやつだ!』

 

ルパンは懐から、金色のバイラルコアーーーールパンブレードバイラルコアを取りだし、ルパンガンナーに挿入する。

 

《Tune!Lupin blade!》

 

ルパンガンナーは短剣の様な姿に変形した。

 

 

『さぁ、ここからが私のショータイムだ!』

 

 

 

 

 

 

 

『むぅん!』

 

さっきとは売って変わってチェイサー達に責め立てるルパン。

ルパンガンナー短剣モードを容赦なく振り立て、ドライブを切り裂いた。

 

『ぐわぁっ!』

『兄さん!』

『大丈夫だ!にゃろう!』

《タイヤコウカーン!マックスフレア!》

 

マリカが心配の声を上げるが、ドライブは立ち上がり即座にタイヤ交換、TSFにチェンジし、炎の弾丸を放つ。

 

『はっ!』

 

だがルパンはソレを回転し華麗に往なしてしまう。

そして、回転を止めると、そのままドライブとマリカに衝撃波を短剣から放出する。

 

『ぐああ!』

『きゃああっ!』

『優!百合ちゃん!くそっ!』

《レモンエナジースカッシュ!》 

 

吹き飛ばされるドライブとマリカを見て、バロンはソニックアロースラッシュをぶつけようと飛び掛かるが、

 

 

 

 

 

 

 

『はあっ……!』

 

ルパンは掌から謎の波動をバロンに向けて放つ。

すると、バロンは空中から勢い良く地面に叩きつけられる。

 

『な、んだ………これ…………!』

 

バロンは起き上がろうとするも、地面に張り付けられたかの如く、起き上がれない。

その隙にルパンはバロンを蹴り上げる。

 

『がはぁ!』

 

さっきとは違い簡単に地面から離れ、壁に激突した。

 

『弾!……この野郎!!優、借りるぞ!』

《シフトカー!タイヤコウカン!マゼール!》

 

怒ったマッハはドライブのシフトカー、スピンミキサーを装填、そのままゼンリンシューターをルパンに向けて撃った。

 

『その程度!』

 

ルパンはルパンガンナーの短剣で消そうとするが、直ぐ様マッハはマッハドライバーのブーストイグナイターを押す。

 

《マゼール!》

『っ!』

 

すると、ゼンリンシューターの光弾はセメントとなってルパンの動きを封じた。

 

『ほぅ、中々味な真似をするじゃないか……』

《メロンエナジースパーキング!》

『これを喰らっても余裕でいれるかいっ!?』

 

動きが出来ないルパンに向かって、斬月・真がエネルギーを集中させた無刃キックを放と

うとする。

 

更にそれに合わせて、

 

《ロック・オン》

『私も忘れないで下さい!』

 

ソニックアローにエナジーロックシードをセットし矢を引き絞るマリカ、

 

 

《ヒッサツ、フルスロットル!マッハ!》

『これでチェッカーフラッグだ!!』

 

それに続くようにマッハも、マッハドライバーを操作、空中に高く飛び上がり、高速で空中前転をしながら必殺キック、キックマッハーを放つ。

 

 

 

 

『ふふふっ………私の手を封じて安心するのは些か詰めが甘いね。……………かぁっ!!』

 

だがルパンは余裕の笑いを見せると、全身に力を入れる。

すると、先程と同じ衝撃波が放たれ、斬月・真とマッハはバロン同様地面に叩きつけられ、マリカは動きが鈍くなる。

 

『隙有りだ!』

《Ultimate!Lupin strike!》

 

ルパンセメントを砕くと、はルパンガンナーを操作し、短剣を輝かせると、目にも止まらぬスピードで斬月・真とマッハ、マリカを斬り伏せた。

 

そのスピードは、チェイサー、バロン、ドライブにも見えないほどに、速かった。

 

『が、はぁ………!』

 

『く、あぁ………!!』

 

『う、あぁ……!』

 

動きを止めたルパンは短剣の刃を撫で、

 

 

 

 

『チェック、メイトだ』

 

そう呟くと、爆発を起こし、3人のスーツが解除される。

 

『数馬ぁ!』

『ゆ、百合ィィィ!!』

『カイト…ッ!』

 

3人はそれぞれ大怪我を負ってその場に倒れ伏した。

 

『てめぇ!!よくも……よくも百合を!』

《ドライブ!タイプ・ワイルド!》

 

大切な肉親を倒され、怒りに燃えるドライブはシフトワイルドでタイプワイルドに変身、そのまま必殺技を発動する。

 

《ヒッサーツ!フルスロットル!ワイルド!》

 

『でやあぁぁぁ!!』

 

『怒りに我を忘れる………そんな単細胞では私には勝てん!』

 

《Ultimate!Lupin strike!》

 

『はぁぁぁぁ………!』

 

ルパンは怒りのワイルドロップを放つドライブTWを見て肩を竦めると、ルパンガンナーの銃口を押し、再び必殺技で迎え撃つ。

 

ルパンが低く唸ると、ルパンガンナーの短剣を模した巨大なエネルギーが発生する。

 

『………っ!』

 

『優、かわせぇ!』

 

『無駄だ!』

 

『ぐあああああっ!!!』

 

巨大な剣ーーーールパンフィニッシュを受けたドライブTWはスーツが解除され、優の姿に戻る。

 

『優ーー!!』

 

バロンが優に叫ぶも、優は反応しなかった。

 

 

『ふっ……………っ!』

 

ルパンガンナーをまるで血を取るかの様横に振るうと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガァンッ!

 

『……何!?』

 

『………もうその手には飽きたよ』

 

上から奇襲を仕掛けたチェイサーのファングスパイディーを、鉤爪の間に短剣の刃を滑り込ませる事で防いだ。

 

『ちぃ………!』

 

《Tune!chaser chameleon!》

 

舌打ちしながらも、即座にルパンから離れ、カメレオンバイラルコアを装填する。

すると、チェイサーの姿が、その場から消えた。

 

『ほぅ、ステルス能力か………』

 

『すげぇ………これなら!』

 

ルパン興味深そうに呟き、バロンが行けると確信する。

チェイサーはそのままルパンの背後に攻撃を仕掛けるも、

 

 

 

 

 

『……とぅ!』

 

何とルパンはその場からジャンプ、チェイサーの攻撃をまるで見えてるかの様にかわした。

 

『何………!?』

 

動揺するも、チェイサーは連続で攻撃するが、

 

『……………!』

 

それらを全てかわしきってしまい、最後には、

 

『………ふん!』

 

『……っ!?』

 

チェイサーのブレイクガンナーを受け止めてしまう。

 

『確かに姿は消えている、このルパンのセンサーにもまるで反応はない………だが!』

 

『………!』

 

ルパンは虚空に向かって、蹴りを放つ。

すると、その何もなかった虚空から、チェイサーが姿を現し、バロンに向かい、吹っ飛ばされた。

 

『チェイス………どわぁ!』

 

『それは普通の人間にした方が良い。今の私はサイバロイド、常人には見えない空気の動きが分かるのさ!』

 

『空気の、動き………!』

『そう!幾ら姿を消そうが、所詮君のソレはただ周りの景色に溶け込んでるに過ぎない!実体は存在し、動く度に空気は揺れる!君が何度も姿を消しても、私には全て分かる……………種明かしも済んだ所で、幕切れだ』

 

《Ultimate!Lupin strike!》

 

ルパンは再び短剣の刃を模した巨大なエネルギーを生成、狙いをチェイサーとバロンに定める。

 

『むあぁぁぁぁぁ!!』

 

『チェイス、避けろ!……っぐあああああっ!!!』

 

『弾……!ぐぅ!』

 

決まる直前に、バロンはチェイサーを突き飛ばし、被害を最小限に留めるも、大ダメージを負う。

だがその余波で、チェイサーは仮面を一部損傷してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

『………美しきかな友情愛!だが、実に愚かだ!』

 

ルパンの声を聞くまでもなく、弾までも倒れてしまう。

チェイサーは仮面の割れた隙間から、仲間達が負傷し、倒れ伏す姿を見てーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アァァァアァァァア!!!!』

 

半ば半狂乱でルパンに特攻する。

が、ルパンはこれを捌ききり、容赦なくチェイサーを痛め付ける。

 

『ぐぅ………がっ……………あがぁっ!』

 

全身を痛め付けられながらも、チェイサーはまた立ち上がり、挑もうとする。

 

『もう立たない方が良い。それに、人殺しは主義に反する』

 

『だ………まれぇ……!』

 

声が掠れながらも、チェイサーはバイラルコアをセットしようとするが、

 

 

 

 

 

 

『が………………』

 

その前に、ルパンの狙撃を受けてしまう。

胸の装甲を散らせながら、チェイサーのスーツも解除された。

 

『その様では、私は愚か、亡国機業にも勝つことは出来ん。ソレだけは、教えておこう………では、さらばだ!』

 

ルパンはマントを翻し、その場から悠々と立ち去った。

 

 

 

 

 

 

ルパンが立ち去って暫くのち、チェイスは目を覚ました。

 

「ぐっ……………はぁ、はぁ……!」

 

ボロボロの体を引き摺りながら、ブレイクガンナーを握り、負傷した弾達の元に向かう。

 

「………必ず、助ける」

《Tune!mad doctor!》

 

慌ててやって来たマッドドクターをブレイクガンナーに装填、そのまま銃口を弾達に押し付け、引き金を引いた。

 

「………んっ」

 

途端に弾達の傷は回復していった。

 

 

「……………………………っ」

 

その様に、チェイスは涙を流しながら、倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

この涙を、この敗北を、チェイスは胸に刻んだのだった。

 

 

 

 

 

今回は次回予告なしです

 

 

 

 




如何でしょうか?
ルパンガンナーの音声はYouTubeで聞いたものです。
特に必殺技がちょっと不明瞭ですが………間違ってたらスミマセン!
後、会話文を少し行を開けてみましたが、読みやすいでしょうか?

他の皆様の小説を読んでいると、大体開けてますので………


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『再戦 revenge』

久々の投稿ですが、私は生きてます!
タイトルがネクサスっぽいのには突っ込まないで下さい。

やっぱり休みは素晴らしいですね………!



 

 

 

「……………っ」

 

ルパンに敗れてから3日目の朝、チェイスは目を覚ました。

 

周りを見渡すと、そこは見慣れたフリーダム・スカイの治療室だった。

 

 

「俺は、確か………」

「目を覚ましたわね、チェイス」

「!………スコール」

 

声を掛けられてそちらを振り向くと、そこにはスコールがいた。

 

「助かった、のか………」

「後一歩オータム達が来るのが遅かったら、不味かったけどね」

「………皆は?」

 

一番気になるのは弾達の容態。

それを尋ねるが、スコールは悲しそうに顔を伏せた。

 

「貴方より良くないわ……。貴方がマッドドクターを使ってなかったら、恐らく………」

「………そうか」

 

チェイスは一頻り手を動かしていると、布団から立ち上がった。

 

「何処に行くの?」

「……決まってる。ヤツを、探す」

「駄目よ、止めなさい」

 

扉の前に立ち塞がったスコールは、毅然とした態度でチェイスを制止した。

 

「今、貴方には戦う為の力がない。死にに行く様な物よ」

「……魔進チェイサーのダメージレベルは」

「……………魔進チェイサーのスーツは他のと比べたら、ダメージレベルは低いわ。だけど、今の状態ではサイバロイドになったルパンには勝てない。貴方も体験したハズよ………!」

「………」

 

スコールが言っているのは、あの謎の力の事。

それを思い出し、チェイスは顔を歪める。

 

「アレは、対象の人物や物に掛かっている重力を倍に引き上げる重力操作。更に高速移動能力………。魔進チェイサーには、確かにアンチ重加速システムが搭載されてるけど、ルパンのは重加速じゃない。サイバロイド程のスピードは、出せないわ」

「………だが!」

「命を捨てる気なの!?」

「!」

 

スコールから発せられた大声に、チェイスは驚いた。

そこには、普段の彼女らしくない、悲しさを滲ませていた。

 

 

「………本音を言えば、もう貴方に辛い思いは味わって欲しくないの。こんな仕事にも巻き込みたくなかった。勿論弾や数馬、カイトに優に百合にも………だけど、貴方は一夏の時にも辛い経験をしてる筈、だからこそ、もう苦しませたくないの……っ!」

「………母さん」

 

スコールの想いを聞き、チェイスはつくづく自分は親不孝者だと自覚した。

 

だが、自分はーーーーーーーー

 

 

 

 

「母さん、行かせてくれ」

「……」

「母さんの気持ちは嬉しいよ……。でも、アイツに勝てない様じゃ、俺はこの世界を平等に戻せない……そして、大切な人達をも守れないんだ」

「……チェイス」

「確かに命は大事だ。でも、負けた………たったそれだけの理由で、逃げたくない。ここで逃げたら、俺はーーーー死ぬほど後悔する!……死ぬ事が怖くない訳じゃない。でも、出来るのに何もせずに、ただ歯痒い思いは……したくないんだ」

 

それだけ言うと、チェイスは病室を去った。

 

 

 

 

 

 

 

「……………バカな子。そんなこと言われたら、止められる訳ないじゃない……っ!」

 

チェイスが去った後の病室で、スコールは人知れず涙を流した。

だが涙を拭うと、スコールも病室を出た。

 

 

『結局………私も駄目な大人ね。だけど、これが、これだけが!』

 

 

 

 

 

 

『私に出来る唯一の事だから!』

 

涙を拭ったその顔には、もう迷いは見られなかった。

 

 

 

 

 

「……………皆」

 

その頃のチェイスは、弾達が眠る病室を訪れていた。

 

その顔は、全員どこか苦悶に満ちていた。

 

 

 

 

「……ゴメン、ゴメンなぁ………!」

 

ベッドのシーツを握り、チェイスは涙を流して謝罪した。

 

「俺が、俺がもっと強ければ………こんな事には!」

 

悔しさに負けそうになるが、それを何とか堪え、チェイスは全員を見渡した。

 

「………敵討ち、何て事をすれば怒るよな。特に弾、カイトは。………………だが、少しだけで良い。皆の力を………俺にくれ」

 

そう呟くと、チェイスは病室を後にした。

扉の前には、バイラルコアとシフトカー達がチェイスを待っていた。

 

「………お前ら」

 

チェイスを励ます様にピョンピョン跳ねる彼らを見て、チェイスは少しだがーーーー笑った。

 

「お前らも、ひとっ走り付き合うか………?」

 

そう言うチェイスの顔は、怒りではなく穏やかだった。

再びピョンピョンと跳ねるシフトカー達を眺めて、ポケットに手を入れると、

 

 

 

 

 

 

「………これは?」

 

何やら紙切れが中に入っていた。

 

 

 

内容はーーーーーーーー

 

 

 

『私の城にて待つ』

 

 

 

 

それだけが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

それから2日後、

 

「はい、これ」

「……すまない」

 

怪我がある程度回復したチェイスは、ゾルーグへのリベンジの為、修理が済んだブレイクガンナーを手渡された。

 

「一応、対サイバロイド用の細工は施してあるわ。………ちゃんと、無事に帰ってくるのよ」

「あぁ」

「チェイス、気張れよ!」

「分かってる……姉さん」

「っ!お前………」

 

らしくないチェイスの不意討ち発言に、オータムは顔を赤らめた。

それを見たスコールは態とらしく、頬を膨らませた。

 

「私には言ってくれないんだ……」

「ふっ………行ってくるよ、母さん」

「………えぇ」

 

それだけ伝えると、チェイスはライドチェイサーを吹かしてゾルーグの居城を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間程でチェイスはゾルーグの待つ城に辿り着いた。

 

「来たね、チェイス・ミューゼル君………お友達はいないのかね?」

「誰かのお陰でな………」

 

挑発混じりの発言にチェイスは痛烈な皮肉を込めて答えた。

それを見たゾルーグは、チェイスが怒りに支配されていない事を見抜いた。

 

「どうやら、お友達の敵討ち、と言う訳ではなさそうだね」

「………それもある。だがこれは俺のけじめだ」

「?」

 

ふっ、と笑うと、チェイスはブレイクガンナーを取り出す。

 

 

 

「お前を倒せない様では、この世界を元に戻すのは愚か、大切な人達の笑顔も守れん………!もう負けない、己の弱さにもだ!!」

 

そう力強く吼えると、チェイスはブレイクガンナーを押し付ける。

 

 

自分の弱さ、未熟さ、それらを教えてくれた目の前の男へのせめてもの礼として、自らのけじめの為にーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「変身!!」

《Break up!》

 

今、黒き死神ーーーー魔進チェイサーは再臨した。

 

「ふっ、良いだろう!ならば私も全力で答えよう!!変、身!!」

《Lupin!》

 

ゾルーグもまた、ルパンへと変身した。

 

 

 

 

『はぁっ!』

 

先ずは挨拶変わりにチェイサーはルパンの仮面目掛けてブレイクガンナーのパンチを放った。

 

『ふん!』

 

ルパンも負けじと、ブレイクガンナーを受け止めて、ルパンガンナーによるアッパーをチェイサーの下顎にぶつけようとする。

 

『………っ!』

 

チェイサーは冷静に左肘でガード。

そのまま右肘でルパンの腹にエルボーを叩き込んだ。

 

『ぐぅ………!』

 

ルパンは僅かに顔を歪めるが、直ぐ様チェイサーに蹴りを入れようとする。

だがチェイサーは体を捻り、それをかわす。

 

《gun》

『ぐぁ!』

 

体を捻りつつも、チェイサーはブレイクガンナーから光弾を放ち、ルパンを怯ませる。

 

《Tune!chaser spider!》

 

その怯んだ隙を見逃さず、チェイサーはファングスパイディーを装備。

ルパンを袈裟斬りにする。

 

『がはっ!』

 

そして、そのまま蹴りを入れて、ルパンを吹っ飛ばす。

 

『中々やるじゃないか!ならばこれはどうかなっ!?』

《gun!》

 

ルパンはルパンガンナーから光弾を放ち、更にそれを分散させる。

分散した光弾は、チェイサーへと襲い掛かる。

 

『……………はっ!』

 

だがチェイサーは搭載されたハイパーセンサーを活用し、光弾全てを打ち消す。

更にファングスパイディーの爪の間から、糸を放ちルパンを拘束する。

 

『むぅ………!蜘蛛らしい能力だね』

『どうした?あの能力は使わんのか………!』

『……お望みならば、たっぷりと味わうと良い!!』

 

ルパンはその体勢から重力波動を発生させる。

途端に、チェイサーの動きが鈍る。

 

『………っ!』

『さぁ、お楽しみは………これからだっ!!』

 

ルパンは縛られた姿でタックルを仕掛けた。

想定外の攻撃に驚いたチェイサーは、そのまま壁に追いやられる。

 

『ふんっ!はぁ!』

『ぐっ………がぁ!』

 

まともに動けないチェイサーはルパンの猛攻を受けるがままだった。

だからこそ、ルパンは気付いていなかった。

 

 

チェイサーの手が僅かに動き、尚且つその手元が輝いていることに。

 

 

 

『これで、フィニッシュだ!!』

 

ルパンはそのままエネルギーを込めたボディブローを叩き込んだ

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

『これで、何だって………?』

『ぐ、はぁ………っ!』

 

腹に襲い掛かった痛みに、ルパンはその場に蹲る。

だが、そのお陰でチェイサーへの高重力は解除された。

 

その隙を逃さず、チェイサーは手に持ったソレでルパンを凪ぎ払った。

 

『がはっ!そ、それは………!?』

 

チェイサーが手に持っていたのは、チェイサーの武装らしからぬ白い槍だった。

刀で言う鍔の部分には、皮らしき物が取り付けられており、何処と無く、果物のバナナを思わせる形状だった。

 

『俺の仲間の、ダチの力だ………!』

 

それは、弾が纏うライドスーツーーーーバロンに搭載された武器、バナスピアーだった。

 

 

 

 

 

 

魔進チェイサーを修理する際に、チェイスはある事をスコールに頼んだ。

 

それは、弾達の使う武装を魔進チェイサーに搭載してほしいと言う願いだった。

 

「俺一人では、ヤツには勝てない……。だから、弾達の武装と共になら、勝てるかも知れない」

 

それを聞いたスコールはバロン、斬月・真、マリカ、ドライブ、マッハの武装データ量子化して魔進チェイサーのデータ領域に保存。

 

これにより、チェイサーはバロン達の武装を使える様になったのである。

 

 

 

 

『俺は勝つ………コイツらと一緒に!!』

 

そう叫ぶと、今度はバロン、斬月・真、マリカの共通武装のソニックアローを展開。

直ぐ様矢による弾幕を展開した。

 

『面白い……!ホゥアァァァァ!!!』

《Tune!Lupin blade!》

 

ルパンも奇声を上げながら、無数の矢を全て短剣で掻き消した。

ソレにより、爆発が起き、煙が発生する。

 

『はぁ!』

『とぅ!』

 

だが二人はハイパーセンサーを使い、お互いの居場所を特定。

煙の中でチェイサーとルパンは互角の斬り合いを交わす。

 

『デャァ!』

 

ルパンは短剣をチェイサーに向けて、垂直に放つが、

 

『ふんっ!』

 

チェイサーは何と左手でそれを防ぎ、ルパンガンナー毎掴んだ。

痛みを無視し、チェイサーはルパンを引き寄せてソニックアローの刃で切り裂いた。

 

『ぐああ!』

 

斜めに斬られたルパンは苦悶の声を上げるが、直ぐ様高速移動を開始した。

それに対し、チェイサーは今度はハンドルブレードを展開。

ハンドルを回して、クラクションを押した。

 

《ターン!ドリフトカイテーン!》

『でゃぁぁぁっ!!』

 

高速回転しつつ、チェイサーは連続でルパンを切り裂く。

対するルパンは、不規則に動くチェイサーに全くダメージを与えれず、通常空間に引き戻された。

 

『………この間迄と、何かが違う!?』

 

この間の戦いとはまるで別人なチェイサーに困惑するルパンだったが、チェイサーはゼンリンシューターとドアガンによる2丁拳銃でルパンを撃ち据える。

 

『がはっ!』

《ゼンリン!》

『ぬぅ!』

 

ゼンリン部分を回転させての攻撃は腕でガードして凌いだ。

そして、そのままチェイサーを蹴飛ばした。

 

『がっ!』

『私にも意地がある!負けられんのだぁ!!!』

『っ!!』

 

ルパンは全身に力を入れて、先程とは比較にならないレベルの重力波動を放った。

 

『………ぐっ、あぁ!』

 

チェイサーは何とか踏ん張ろうとするも、耐えきれずに膝を付いてしまう。

既に周りの瓦礫等は高重力によって、押し潰されていた。

 

『ぬ、うぅ………!サイバロイドと言えど、これは形容範囲外、かっ!』

 

だが想像以上の重力に、ルパン自身もまともに動けずにいた。

それでもチェイサーに向かって確実に、歩を進めていた。

 

 

『………今しか、ない……っ!』

 

チェイサーはこの状況を打破すべく、ブレイクガンナーに魔進チェイサーの持てるエネルギーを全て溜めていく。

 

 

『………98、99、100!』

『このエネルギー………!何を、するつもりだぁ!?』

『ハァァァァァァッ!!!!!』

 

ルパンの疑問に答えず、チェイサーはエネルギーを込めたブレイクガンナーを大地に叩き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

巨大な衝突音が響き渡ったかと思うと、直ぐ様に沈黙がその場を支配した。

 

だが、そこにチェイサーはいなかった。

 

『……彼は、何処に………っ!!!』

 

ルパンが立ち上がった瞬間、凄まじい力で壁に叩き付けられた。

 

『な、にぃ………!?』

 

何とか瓦礫の中から立ち上がったルパンの視界に入ったのは、濃い黄色のハンマー状の武装ーーーーマンゴパニッシャーを構えるチェイサーだった。

 

それを見たルパンは、アレによって吹っ飛ばされたのだと、漸く気付いた。

だが、ソレ以上に解せない事があった。

 

『あの重力空間を、打ち破ったのか………!?』

『目には目を………重力波動には、重力波動……ってな』

 

これこそが、ルパンに対抗する為に搭載されたシステム。

これは、ルパンが扱う重力波動と同等の波動を発生させる代物で、更にチェイサーの意思によって威力を調整できるのだ。

 

 

今回は、ルパンが発生させた超重力空間を相殺するために発動したのだ。

 

『相殺、したと言うのか……!?あの空間を!』

『あぁ………お陰で、エネルギーは残り少ないが……貴様を倒すのには充分だ!』

『ふっ、面白い……!』

《Ultimate!Lupin strike!》

 

ルパンは高笑いすると必殺技、ルパンフィニッシュを発動する体勢に入った。

すると、短剣にエネルギーが行き渡り、巨大な刃が形成された。

 

『ならばこれを受けるが良い!!』

 

チェイサーに向けて、ルパンガンナーを振りかぶるが、

 

 

『言った筈だ。俺は一人で戦っていないと!』

『………!むぉっ!?』

 

その直前にシフトカー達による妨害で、ルパンの必殺技は不発に終わった。

 

『行くぞ……』

《Tune!chaser spider!》

 

チェイサーはバイラルコアを使い、ファングスパイディーを装備。

 

 

だがこれで終わりではない。

 

 

《Tune!chaser cobra!》

 

次にコブラバイラルコアを装填、テイルウィッパーも装備。

 

更にーーーー

 

 

《Tune!chaser bat!》

 

バットバイラルコアをも装備。

3つの武装は、新たなる巨大な武装を形成した。

 

『トリプルチューン……!!これが、今の俺の………………全て!!!!』

『っ!?』

 

チェイサーが腕を振るうと、目にも止まらぬスピードで鋼の鞭が振るわれた。

ルパンの視界にさえ映ることなく、ルパンは大ダメージを負う。

 

『がっ………!』

『えぁぁっ!!』

 

次に紫の矢を連続でルパンに射つ。

ソニックアローの一撃を越えるその威力はルパンガンナーで弾くのも、もはや容易ではなかった。

 

『ぐっ、何だこの威力は……!?』

『ゾルーグ。サイバロイドと言う機械の体を得た貴様からすれば、俺達人間は儚く、そして脆い。だが!』

 

今度は懐に入り込み、鉤爪部分でルパンに一撃叩き込んだ。

 

『機械とは違い、俺達は何度も経験し、成長していく!サイバロイドに魂を売ったお前は、もう成長が止まっていた!!だからこそ慢心し!俺の反撃を許した!!!』

 

そこから、チェイサーはアッパーで空中に叩き上げる。

 

『な………!?』

《Execution!》

『俺達は何度でも立つ!立ち上がる度に強くなっていく!!昨日の己を越えていく!!!』

 

チェイサーも同様に空中に飛び上がり、トライデントアームを構える。

すると、後ろからシフトカー達がエネルギー供給を行い、結果、凄まじい力が溢れてきた。

 

それはまるで、虹のようだった。

 

 

 

 

 

『ぜぁあぁぁぁぁぁっ!!!!!』

《Full break!spider cobra bat!!!》

 

七色の光を放ちながら、チェイサーは渾身の

トリプルエグゼキューションを撃ち放った。

 

『………………ふっ』

 

それを受けたルパンは、ただ静かにーーーー笑った。

 

 

 

 

 

 

空中から地上に着地したと同時に、チェイサーのスーツが解除された。

どうやら相当の負荷が掛かっていた様だ。

 

「………っ」

 

倒れそうになるが、何とか踏ん張った。

目の前には、紫電を放つルパンが。

 

『お見事、だ………チェイス・ミューゼル、君………』

「………俺の、俺だけの力ではない」

『………そう、か』

 

そう静かに言うと、ルパンは空を見上げた。

 

『もしかすると、私は………誰、か、に……止めて、もらいたかった、のかも、しれない、なぁ………』

「………」

『礼を、言おう……。ありがと、う……』

「俺は礼を言われる覚えはない……」

『ふっ……謙遜、するな。良い、か?亡国機業、の奴等も、私と同じだ………詰まり、人と、思う、な……』

「……分かっている」

『そう、か………!』

 

小さく笑うと、ルパンはルパンガンナーをチェイスに投げ渡した。

 

『それは、返そう………彼女は、君に渡そう、と、それを作ってた、様、だからね 』

「あの、天災が………」

『だが、もう……彼女、は………………』

「……?おい、それはどういう………」

 

チェイスが近付こうとすると、ルパンは片手で制止する。

 

『それは、君自身が、知らねばなら、ない………ふふ、最後に、楽しめ、た………』

「……!」

『さら………!……イ…・………ル……!』

 

それだけを言うと、ルパンは爆発を起こし、消滅した。

 

 

 

 

 

「………………」

 

チェイスは小さく頭を下げると、何も言わずその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

『サイバロイド………破壊する手間が省けたな』

 

ゾルーグの屋敷の屋根から一部始終を見ていたハートも、その場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

フォルテ「くぅ~、緊張するっす!」

ダリル「本当に可愛いなぁ~」

チェイス「何故だ……?」

IS ~黒き魔進~ 『逢瀬2』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?




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『逢瀬2』

ルパンどうすっかな……




 

「お待たせ~、二人とも」

「遅いっすよ、先輩!」

 

とある映画館の前、チェイスは無言で目の前の二人のやり取りを見ていた。

IS学園の二年生、フォルテ・サファイアと、三年生のダリル・ケイシー、チェイスにとっては先輩にあたる二人だ。

 

「ゴメンね、ミューゼル君。待たせちゃって」

「気にしてはいない…」

 

ダリルは謝罪するが、チェイスは大して気にしないので普通に返した。

その様子にダリルは少しホッと溜め息を吐いた。

 

「どうした…?」

「いや、嫌われちゃったらどうしようかな~って思っちゃって」

「ミューゼル君はそんな事で人嫌いになったりしないっすよ。ね?」

「あ、あぁ………それは兎も角、そろそろ上映時間だろう?」

「ハッ!急ぎましょ!!」

「ち、ちょっと!?早すぎっすよ~!」

「ふ……」

「?どうしたんすか、ミューゼル君」

 

小さく笑ったチェイスにフォルテが首をかしげて尋ねる。

 

「いや、何でもない……」

 

そんなフォルテに何でもないと答え、チェイスも走り出した。

 

 

 

 

 

今日見る映画は、題材が小説のラブストーリーだ。

 

年上の女性教師と近所付き合いの長い男子生徒の話で、チェイスも何度か原作を読んだ事がある為、知っている。

 

男子生徒は子供のころからその女性の事が好きだったが、女性の方はモテていた為に中々自分の想いを伝えられないでいた。

一方の女性も、その男子の事が気になっていたが、教師である為に告白出来ずにいた。

 

そして最後の章、卒業式の終わりに告白、目出度く結ばれると言ったハッピーエンドに終わる。

 

 

これを読んでいたオータムがすごく泣いていた為、読んでみた所、チェイス自身もハマってしまったのだ。

先日に二人にこの映画を見に行かないか?と誘われたときは密かに喜びを感じたりした。

 

そして座席はチェイスを挟んでフォルテとダリルが座るという、弾に殴られそうな構図だった。

チェイス自身あまり意識してはいないが。

 

『……居づらい』

 

とは言っても居心地は悪ったが。

何て事を考えてる内に上映が始まった。

 

「……」

 

内容は知っていた為、チェイスが懸念していた演技の方も杞憂に終わった。

それ程に、俳優達の熱演が光っていたのだ。

 

『悪くないな………』

 

穏やかな気持ちで見ていると、ラストシーンの最中。

 

『…っ!』

 

突然両腕を握られチェイスは肩をビクつかせた。

両隣を見ると、ダリルとフォルテが泣きながらチェイスの両手を握っていた。

 

『…こういう時は』

 

チェイスは二人の両手を優しく握り返した。

二人の手が少しビクッとなったが、直ぐに大人しくなった。

 

 

スクリーンの二人は校舎をバックにキスをした。

女尊男卑の連中が見たら騒ぐのは確実だが、そうではない人にとっては名作だと頷ける。

 

 

そしてスタッフロールが流れ、映画は終了した。

 

 

 

 

「久しぶりに映画で泣いたわ~」

「報われてよかったっすよ……ぐすっ」

「まだ泣いてるのか」

 

昼食の為に訪れたファミレスでの待ち時間、3人はさっきの映画の感想を語り合っていた。

 

「それにしても……」

「驚いたっすよ…」

「?」

「「ミューゼル君が手を握ってくれたことが!」」

「大声で言うな……!」

 

息を合わせてそう言う二人に、恥ずかしそうに顔を逸らす。

そんなチェイスを見て、二人はさらに微笑みを深くする。

 

「ほんっとミューゼル君って」

「可愛いっすねぇ~」

「うるさい……!」

 

と言ってる内に料理が運ばれて来た為、3人は食事に没頭することに。

だが途中でフォルテがチェイスの料理を勝手に食べたり、ダリルがチェイスにパスタを食べさせたりしたのは余談である。

 

 

 

 

 

「今日は楽しかった~!」

 

そして、レゾナンスで買い物を楽しんでいると、あっという間に夕暮れになり、3人はIS学園に帰ることに。

モノレールではしゃぐ二人を尻目に、チェイスは眠っていた。

 

「ミューゼル君、寝ちゃったっすよ」

「…こうして見ると、年下なんだなぁって実感するね」

「そうっすね…」

 

愛おしげにチェイスの頭を撫でながら、二人はチェイスの両頬にキスをする。

 

「今度は起きてる時に……ね?」

「ミューゼル君の唇……楽しみ♪」

 

そんな事が呟かれていたのは、チェイスは知らなかった。

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

真耶「行きますよ、ミューゼル君!」

チェイス「ちぃ…!」

IS ~黒き魔進~ 『訓練』

真耶「私、君の事が…!」



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『特訓』

山田先生可愛いなぁ…


そのおっぱいに顔を埋めた「死ね!」………


 

「はぁ!」

『くっ!』

 

IS学園のアリーナ、そこでは訓練機のラファールを纏った真耶と魔進チェイサーがぶつかり合っていた。

真耶は接近ブレードでチェイサーに斬りかかるが、チェイサーは腕の装甲でそれを防いだ。

 

『むぅん!』

 

チェイサーはブレードを腕で掴み、真耶の横腹にブレイクガンナーで一撃入れようとしたが、真耶は直ぐにチェイサーから離れたためその攻撃は不発に終わった。

空ぶった体勢のチェイサーに真耶は何と蹴りを放った。

 

「えい!」

『なっ…!』

 

完全に油断していたところに想定外の一撃をもらったチェイサーはアリーナの床にまで落とされた。

その隙に真耶はグレネードランチャーを展開し、チェイサーに向けて撃った。

 

《Tune!chaser bat!》

『…!』

 

だがチェイサーも負けじとウィングスナイパーでそれを相殺し、

 

《Tune!chaser beetle!》

『行くぞ…』

 

今度はホーンジャベリンを装備、爆発により生じた煙を利用し真耶に突貫した。

 

「甘いです!」

 

チェイサーの攻撃をある程度予測していた真耶はシールドでチェイサーの刺突を防ぎ、その場から離脱しつつアサルトライフルでチェイサーをシールド毎蜂の巣にした。

 

『ぬぅっ!』

 

チェイサーは弾幕を掻い潜ってホーンジャベリンに刺さったままのシールドを真耶のアサルトライフル目掛けて蹴っ飛ばした。

 

「ッ!」

 

勢いよく飛んできたシールドを何とか避けたが、

 

 

 

《Tune!chaser cobra!》

『シールドに気を取られたな……ッ!』

「え……?きゃぁ!!」

 

躱した隙を突き、テイルウィッパーを真耶の足に巻きつけていた。

真耶がはそれに気づくも既に遅しと言わんばかりにチェイサーは真耶を壁に叩きつけた。

 

「がはぁっ!」

《Execution!》

『終わりだ…!』

《Full break!cobra!》

 

テイルウィッパーを真耶に向けて解き放ち、シールドエネルギーをどんどん減らしていく。

 

「あぁっ!」

 

そしてそのままラファールのシールドエネルギーが尽き真耶の負けが確定した。

それと同時にテイルウィッパーも消えた。

 

『大丈夫か……?』

 

床にペタリと座り込んだ真耶にチェイサーは手を伸ばした。

 

「す、すみません……」

 

真耶はチェイサーの手を取り、立ち上がった。

だがここでアクシデントが起こった。

 

 

 

「きゃ!」

『ッ!』

 

勢いをつけて起こしたため、真耶がチェイサーに向かって寄り掛かってしまった。

チェイサーは慌てて踏ん張ろうとするも、重力法則には逆らえず、そのまま二人倒れこんでしまった。

 

で、今の状態はというと――――

 

「あっ………」

『……!』

 

チェイサーが真耶に押し倒されてるような体勢だった。

しかも装甲越しに真耶の豊満な胸の――と言ってもスコールより少し劣るが――感触が伝わり、チェイサーは仮面越しに顔を赤くした。(と言っても見えないが)

 

『お、おい……』

「………」

 

チェイサーがどもりながらも退くように言うも、真耶には聞こえていなかった。

と言うより、チェイサーを押し倒してるこの状態に混乱していたため、聞ける余裕がなかったり。

 

『ミューゼル君を押し倒してる…!?で、でもこれは事故で仕方ないから………!それより重くないかな?さっきの特訓で汗掻いちゃったし……あぅぅ、匂い伝わってる……!だけど私は教師で、ミューゼル君は生徒…!だけどこれは……』

『…い、おい!』

「…はっ!」

 

チェイサーが大声で言うと、真耶は漸く正気に返った。

自分の下ではチェイサーが呆れたように見上げていた。

 

「ご、ごめんなさいぃ!!」

 

真耶は慌ててチェイサーから離れた。

一方のチェイサーは普通な感じで立ち上がり、スーツを解除した。(内心ドキドキだが)

 

「いや、そこまで気にしてない……」

「あ、あの、私……」

「…そこまで重くはなかったから安心しろ」

 

真耶の言いたいことを何となく察したチェイスは大して重くなかったことを告げた。

それを聞いた真耶は直ぐに顔を真っ赤にした。

 

「寧ろ俺の方が謝らないといけない……強く引っ張らなければああならなかった訳だしな」

「……!」

 

先程の体勢を思い出し、真耶は頭から湯気を出した。

 

「それと、感謝する……」

「へ?」

「俺の特訓に付き合ってくれて…」

 

頭を下げてお礼を述べるチェイスにアワアワする真耶。

 

「べ、別に大丈夫ですよ!私は先生ですから!」

 

寧ろこうしてチェイスと一緒に居れた事が嬉しい、と心の中で呟く。

 

「礼代わりと言ってはなんだが、今日の飯は俺が奢る……」

「へ?!そんな…悪いですよ!」

「俺がしたいだけだ……」

 

渋る真耶を大して気に留めず、チェイスは昼に門前で待つと告げ、シャワー室に入っていった。

 

「これって………デート!?」

 

 

思わぬ形で訪れたそれに真耶は暫く身悶えしてその場から動けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

昼過ぎ、IS学園の門前――モノレール前だが――にて何時も通りの紫の服に身を包んだチェイスの元に、緑のサマーセーターに薄水色のプリーツスカートを着た真耶がやって来た。

 

「御免なさい、遅れちゃって……」

「いや、問題ない」

 

何時も通りの抑揚で返すと、チェイスと真耶はモノレールに乗ってチェイス行きつけのレストランに向かった。

実は、スコールとのデートで向かった場所で、チェイスのお気に入りの場所だ。

 

「何でも頼んでも構わないが、あまりに高すぎるのは……」

「だ、大丈夫ですよ。何かあったの?」

「……以前、弾とカイトの野郎がバンバン注文しやがってな」

「アハハ…」

 

苦笑いする真耶。

それに対し、チェイスは本当に嫌そうな顔だった。

 

なんて事を話しながら、真耶はカルボナーラを注文したが、チェイスは何も注文しなかった。

 

「ミューゼル君、注文は良いんですか?」

「既に食べた……元々はアンタへのお詫びとお礼だ。だから気にしないでくれ」

「むぅ…」

「何故むくれる?」

 

困惑気味のチェイスに答えず、真耶はそっぽを向いた。

 

「別に……って何時ものミューゼル君の態度ですよ」

「……そんなに可愛らしくはないと思うが」

「ミューゼル君は可愛いですよ」

 

男としては微妙な褒め言葉に、顔を顰める。

だが真耶はにこにことしながら、チェイスを見つめながら口を開いた。

 

「スコールさんやオータムさんもそう思ってるからミューゼル君を可愛がってるんですよ?」

「ふむ……よく分からん」

 

唸るチェイスを尻目に、真耶が頼んだカルボナーラが届いた。

 

「じゃあ、いただきますね。ミューゼル君」

「あぁ」

 

軽くフォークに巻いて一口食べる。

 

「…美味しいです~!」

「ここの料理は本当に美味いからな」

 

水を飲みながら、事も無げに呟いた。

 

 

 

真耶はあっという間にカルボナーラを平らげた。

 

「御馳走様でした!」

 

輝くような笑顔を見て、チェイスも自然とほほ笑んだ。

レストランを出た後、ショッピングに付き合ったりして、本当の彼氏彼女のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ミューゼル君ミューゼル君、今日はありがとう」

 

真耶をIS学園の向かうモノレールの送り、その前でチェイスにお礼を言う真耶。

 

「弾とカイトは、ちゃんと勉強してるのか?」

「ちゃんと週3日来てますよ」

「そうか……今日は楽しかった。じゃあ…」

 

立ち去ろうとしたチェイスだったが、ふと真耶に手を掴まれ、立ち止まる。

 

「?」

「ミューゼル君、ううん……チェイス君。私、君の事が……」

 

何とか自分の想いを告げようとするが、中々言葉に出来ない。

チェイスはそんな真耶をじっと見守っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私……君の事が好きなの!」

 

そう強く言い放つと、間髪入れず真耶はチェイスの唇を奪った。

突然のキスに、チェイスは体を強張らせた。

 

 

 

1分近いキスを終え、真耶は名残惜しそうにチェイスから離れた。

一方のチェイスは未だに混乱していたが、何とか言葉を紡ごうとした。

 

「………俺は、俺には」

 

だが、チェイスは彼女の想いには答えられない。

真耶がチェイスを好いているのと同じように、チェイスにも好きな人がいる。

答えようとしたチェイスだったが、真耶は人差し指でチェイスの口を閉じさせた。

 

「うん、分かってる。チェイス君が答えられないの、分かってるよ」

「なら、何故……」

「後悔したくないから……それと、チェイス君」

「?」

「一番はダメでも、一緒に置いてくれるなら、他の女の子がいても大丈夫だからね♪」

「……は?」

 

さらりととんでもない爆弾を投下し、真耶は嬉しそうにモノレールに乗っていった。

一方のチェイスは、その意味を理解したのか、頭を抱えていた。

 

 

 

「嘘だろ、オイ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――フリーダム・スカイ社長室。

 

「……彼に対抗するためには、これを完成させないとね」

 

スコールが何かの設計図を眺めながら、自作のドラゴンフルーツパフェを食べていた。

 

「…デッドゾーンには、デッドゾーン、か」

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

チェイス「気分転換に、どうだ?」

オータム「ひょ~、いい部屋!」

ナターシャ「来ちゃった♪」

IS ~黒き魔進~ 『息抜き』

スコール「貴方を愛してる……息子としても、異性としても」


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『息抜き』

ちょっとギリギリラインかも…


 

「息抜き……?」

「そ。息抜きだよ」

 

チェイスがポツリと呟いた言葉に頷くのは彼の姉の様な存在であるオータム。

そのオータムの手には、なにやらチケットの様な物が四枚握られていた。

 

見ると、温泉街の宿泊半額券だった。

 

「まだ夏休みだし、連中も目立った動きを見せてねぇからな。ここいらで羽を伸ばすのさ……それに」

「それに?」

 

オータムは溜め息を吐きながら、

 

 

「最近スコールが研究室から出てこねぇんだよ。アイツの為にもなって思ってたら数馬から貰ってな」

「ふむ………」

 

確かに最近のスコールは研究室で寝たり食ったりしていて結構疲れてるはず。

 

「分かった。母さんからは俺が話しておく…」

「サンキュー」 

「だが、後一枚は……?」

「あぁ、それは…」

 

すると、チェイスは突然後ろから誰かに抱き付かれた。

 

「!……アンタは」

「こんにちは、チェイス♪」

 

その人物は、アメリカ軍所属のISパイロット、ナターシャ・ファイルスだった。

身体に伝わる柔らかさにドギマギしながらも、チェイスはそれを感じさせない声音で問いかけた。

 

「何故アンタがここに……」

「休みがてらに観光でもしようかなって思ってたらオータムから温泉旅行に行かないかって誘われてね」

「成る程……じゃ、じゃあ俺はスコールに話してくる」

 

逃げるようにナターシャを引き剥がしてチェイスはスコールが篭っている研究室に向かっていった。

 

「ふふっ、可愛い♪」

「あんましからかうなよ?意外にチェイス、初心なんだからよ」

 

 

 

 

 

「スコール、いるか?」

 

チェイスが研究室に入ると、スコールはデスクに身体を預け、眠っていた。

 

「はぁ、本当に缶詰め状態だったのか………ん?」

 

スコールを起こそうと近づいたチェイスは机に置かれたシフトカーらしき物と、何やら設計図のようなものを見つけた。

 

「シフトカーと、ロックシードの図面か……?」

 

シフトカーの方は赤を基調としていたが、今までのシフトカーと違い横には白のシグナルバイクらしき物が取り付けられていた。

車というよりはサイドカーの印象を受けた。

 

そしてもう一方の設計図は、弾たちが使っているエナジーロックシードの図面だった。

 

「強化措置か……まぁ、この辺りで触れとかないとな」

 

若干のメタ発言を溢しつつ、チェイスはスコールの肩を揺さぶった。

 

「母さん、起きて」

「ん………、チェイス?」

 

若干の艶かしさを感じ、チェイスはドキッとしたが直ぐに我に返った。

 

「疲れてる所ゴメン…」

「ううん、どうかしたの?」

「……気分転換に、温泉旅行でもどうだ?」

 

チェイスは旅行券をチラつかせ、スコールに聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

数時間後―――――

 

「着いたわ」

「おぉ!」

「楽しみ~」

 

赤い車―――トライドロンに乗ったスコール達ご一行が先に目的地に着いていた。

遅れて、ライドチェイサーに乗ったチェイスが到着した。

 

「…熱気が凄いな」

 

4人がやってきたのは日本でも有数の温泉街だ。

様々な効能の温泉や何故かプールまで完備しているという一種の娯楽施設のような場所だった。

 

「さぁ、行こうぜ!」

 

オータムの元気な声につられ、チェイス達は宿泊施設に向かった。

 

 

 

 

「おぉ~、いい部屋だな!」

「景色が素敵ね」

 

部屋割りとしては、スコールとチェイス、オータムとナターシャという二組に分かれた。

 

「素敵ね、チェイス」

「あ、あぁ………」

 

嬉しそうに微笑むスコールを直視できずにチェイスは明後日の方向を見ながら返した。

 

『な、何故こんなに落ち着かんのだ……?!』

 

と言うより、この部屋割りになったときから、チェイスは全く落ち着けなかった。

チェイスにはそれが何だかまるで分からなかった。

 

だが、それは嫌と言うよりは嬉しいと言う感情だと言う事はチェイスは理解した、いやしてしまった。

 

『相手は……母親だぞ!それに………俺には、釣り合わん!』

 

親に向けてはいけない感情を抱いた自分を激しく自己嫌悪しながらチェイスは温泉に向かう準備をした。

 

 

 

 

「……」

 

その様子をスコールは何かを言いたげに見つめていた。

 

 

 

 

あの後スコール達は岩盤浴の為に別れ、チェイスは一人サウナで瞑想していた。

 

その中で思うのは、自分に好意を向けてくれる人たちの事。

 

『オータム、山田教諭、ナターシャ、刀奈、ダリル、フォルテ……』

 

実を言うと、チェイスは今思い浮かべた人物からの好意に少なからず気づいていた。(箒の好意はチェイスではなく、一夏に向けられてる物なのでスルー)

最初はただの自惚れかと思っていたが、この夏休みで―――IS学園に来る前から彼女達からの行動でそれが確信に変わった。

 

 

 

彼女達は、本気で自分を好いているのだと。

 

だがチェイスは、

 

『………俺は、誰かに愛される資格なんてない。だのに何故!』

 

その中でもチェイスは養母のスコールに抱いてはいけない感情を抱いていた。

最初は母として好きだった。

 

だが、触れ合っていく内に―――スコールを一人の人として、女として好いてしまった。

 

『俺は………どうすれば』

 

ブツブツと頭で呟くうちに、チェイスは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここは」

「起きた?チェイス」

 

チェイスが目を覚ますと、目の前に広がるのは心配そうなスコールの顔。

 

「母さん……何故?」

「覚えてねぇか?」

 

起き上がると、オータムがスポーツドリンクを差し出してきた。

それを見ると、チェイスは無性に喉が渇いてき、受け取って勢い良く飲んだ。

 

「でも驚いたわよ?チェイス、サウナで倒れてたから」

「?!」

 

ナターシャの発言でチェイスは目を見開いた。

じゃあ自分は………

 

「ま、逆上せてただけだったから良かったけどよ。冷や冷やしたぜ」

「すまん…………」

 

申し訳なくなり、チェイスは頭を下げた。

 

「気にすんなよ。後……」

「服はちゃんと着させてもらったから…」

「逞しかったわ……チェイス」

「ブッ!?」

 

気まずげに目を逸らす3人を見て察したチェイスはスポーツドリンクを吹き出した。

気管に入ったらしくチェイスは咳き込んだ。

 

「ゴホッ、ゴホッ!」

「だ、大丈夫!?」

「あ、あまり……」

 

自分のソレを見られたショックが意外にデカイチェイスは少し凹んでしまった。

 

「……そう言えば、今の時刻は?」

「もう夜だぜ?お前、相当気絶してたからなぁ」

「な…」

 

まさかと思い窓を見ると、すでに外は暗かった。

 

「まぁ、料理は一応取ってもらってるけどね」

「そうか…感謝する」

 

この後、料理を運んでもらい、チェイスは遅めの夕食をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食を食べ終わったチェイスは、部屋に備え付けられた風呂に浸かっていた。

何だかんだ言って、逆上せて気絶していたチェイスは温泉に浸かっていなかったので、仕方なく今日は部屋の温泉に入っていた。

 

 

「隣、良いかしら?」

「っ!?」

 

気を抜いていた所に行き成り背後からスコールの声がした為、チェイスの肩はビクッと跳ねた。

その様は、何時もの落ち着いている彼からは想像できない様な程だった。

 

「か、母さん…!?」

 

スコールはちゃんとバスタオルを纏っていたが、そのボディラインが逆に強調されており、今のチェイスには目の毒だった。

 

「…今日はありがとうね、チェイス」

「え…?」

「旅行に誘ってくれて」

「け、計画したのはオータムだ。俺は……何もしてないよ」

「………ねえチェイス」

「な、何だ?」

「今日の貴方、ちょっと様子が変よ」

「!」

 

チェイス自身、一番自覚している事を言われ、ドキッとした。

 

「何時ものクールさがないと言うか………何かあったの?」

「……絶対に、変だと思う」

「思わないわ。それに、聞いてみないと分からないし………さ、話して御覧なさい」

「………」

 

敵わないな、と内心思いつつ、チェイスは己の感情をポツリポツリと呟いていった。

 

「俺、IS学園に行ってから、いや、それ以前から……オータム達が俺に向ける感情が何なのか、何となく分かってた…」

「……」

「…最初はただの自惚れだと思った。だけど、彼女たちの行動を見て、俺はソレが本物の感情だと分かった」

 

「だけど、俺は………その全員の思いに答えられなかった」

「どうして?」

「俺には、別に好きな…愛してる人がいるから………でも、最低だよ、俺って」

 

 

 

「よりにもよって、自分の母親にそんな感情を抱いてたんだ……ッ!」

「!」

 

その事実にスコールは少し驚くが、チェイスはそれに構う事無く語り続けた。

 

「侮蔑してくれても良い……否定してもらっても良い…こんな血に塗れた俺が、自分の母親を、母さんを、異性として愛するなんて……馬鹿、だよな?」

 

もうチェイスは誰にでも良いから、この思いを否定してもらいたかった。

血に汚れた自分が、今更誰かを愛すことなんて出来ないと、言って欲しかった。

 

 

 

「聞いてくれて、ありがとう………ホンッと、最低だよ…俺は」

「……チェイス」

「?…………?!」

 

スコールに呼ばれて見ると、チェイスは抱きすくめられ、キスされていた。

 

「…………!」

「…ふぅ」

 

一分近いキスを終え、スコールは、静かに微笑んだ。

 

「気持ち悪いなんて………思ったりしない。私も…同じだったから」

「……!?」

「チェイス、愛してるわ。息子としても……一人の男としても」

 

チェイスは何を言われたか理解できなかった。

 

 

 

母さんが、俺を…………?

 

 

「親子といっても、私達は本当の…親子じゃないけど、だからこそ、愛し合える」

「…」

「こんな事、気休めにしかならないけど……少なくとも、私は自分に嘘を付きたくないわ。それは、貴方も同じ事でしょ?」

「だけど、俺は……」

 

血に汚れてる、そう言い掛けたチェイスの口を塞ぐ様にスコールはチェイスの唇を奪った。

 

「…最初に言った言葉、覚えてる?」

「…?」

「私が、貴方の居場所になる……例え、記憶を取り戻しても、貴方の手がどんなに汚れてても、私は貴方を愛し続ける………」

「!」

 

この時、チェイスは久方振りに涙を流した。

悲しさでない、嬉しさで。

 

「母、さん……!」

「……もう一度、聞かせてくれる?」

「…………分かった」

 

 

 

 

風呂から上がった二人は、布団の上で正座をし、改めて自身の思いを伝える。

 

「俺は、貴女を……スコール・ミューゼルを、愛しています」

「私も、貴方を、チェイス・ミューゼルを、愛してます」

 

思いを伝え合った二人は、どちらからでもなく、唇を合わせた。

さっきとは違う心地よさに酔いしれるチェイスだったが、スコールはそんなチェイスを押し倒し、自身の舌を突き入れてチェイスのソレと絡めあった。

 

「んっ……母、さん」

「今は、母として見ないで……」

 

目を潤ませ、スコールは自身の浴衣に手をかけた。

 

「…スコール」

 

スコールの気持ちを察したチェイスは母の名で呼んだ。

そのまま、両手で彼女の頬を包んだ。

 

 

 

「チェイス…!」

「スコール」

 

 

 

明かりの元、二人は一つとなった。

 

 

 

 

 

 




今回は予告なしです


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『限界点』

漸くデッドヒート登場します!


 

「……………………朝か」

 

窓から差す日の光に照らされて、チェイスは目を覚ました。

時間を確認すべく、手を伸ばすと、

 

 

ふにょん

 

 

「んっ…」

 

チェイスの手に何やら柔らかい感触が広がり、更に艶かしい声が聞こえた。

 

「……?」

 

疑問に思い、少し強く手を動かすと、

 

「あっ……んん…!」

 

声は大きくなり、それは少し熱を帯びてきていた。

 

『まさか……』

 

チェイスは嫌な汗を流して体を起こすと、布団を取り払った。

そこには、

 

 

 

 

 

 

「はぁ……ふぅんっ………///」

 

顔を赤らめたスコールが一糸纏わぬ姿で横たわっていた。

チェイスの手に掴まれていたのは、スコールの豊満な胸だった。

 

「なっ…!」

 

バッとスコールから離れるが、ここでチェイスも自身の姿を見て驚愕した。

 

「な、何故……裸なんだ」

 

そう、チェイス自身も何も着ていなかったのだ。

混乱するチェイスだったが、直ぐ様思い出した。

 

「そうだ。俺は、昨日……」

 

昨夜は、養母であるスコールと交わり合い、そのまま寝たのだ。

その瞬間に思い出されるのは昨日の、いや数時間前の情事。

 

 

お互い獣の様に求め合い、想いの丈をぶつけ合った夜。

 

羞恥心も何もかも捨て去ったスコールはチェイスを激しく求め、チェイスもまたスコールに自分の想いを何度も解き放った。

 

 

それを思い出したチェイスは、柄にもなく顔を真っ赤にした。

すると、スコールが身動ぎしながら起き上がった。

 

「んん……チェイス、お早う」

「あ、あぁ……お早う、母さん」

 

何時も通りの挨拶をするが、スコールは不満そうに頬を膨らませた。

 

「もう……昨日言ったじゃない。二人きりの時は名前で呼んでって」

「す、すまない。まだ慣れなくてな……スコール」

 

苦笑いしながら改めて名前で呼ぶチェイス。

すると、スコールは少し顔を赤らめてチェイスを見詰める。

心なしか息も荒くなっている。

 

「ねぇ、チェイス……私ね、何故か身体が熱いの」

「そ、それは……何故だろうな?」

 

その言葉にドキッとしながらも何とか返す。

原因は自分、何てある意味自殺行為な真似はしない。

だがスコールは妖艶に微笑むと、チェイスに身体を擦り付ける。

 

「す、スコール?!」

「だから……し・ず・め・て?」

「や、もう朝だぞ…?」

「風呂場でなら大丈夫よ。それとも……朝の露天風呂で?」

「………………分かったよ」

 

溜め息を吐いて、チェイスはスコールをお姫様抱っこをして風呂場に連れていく。

 

 

 

そこから先は二人だけの秘密だ。

 

 

 

 

「よう、お二人さん」

「昨日はお楽しみだったわね?」

 

風呂場で情事を終えた二人は早速オータムとナターシャにからかわれた。

 

「まぁ、な……」

「ええ。存分にチェイスを味わったわ♪」

 

気まずそうに答えるチェイスと、実に楽しげに答えるスコールを見て、二人は溜め息を吐く。

が、次の瞬間とんでもない爆弾を投下した。

 

「けどこれで遠慮なくチェイスに迫れるな~!」

「私達、全く諦めないから。ね♪」

「!?」

 

その爆弾発言にチェイスは朝食を喉に詰まらせた。

 

「私もチェイスが望むなら、ハーレムでも構わないわ♪」

「か、母さん!」

 

更にスコールまで肯定的な発言をした為に、チェイスは無駄に顔を真っ赤にさせられた。

 

 

『だが全員の想いを受け止めるなら……俺は…』

 

だがほんの少しだけ、ハーレムを考えるチェイスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

束の間の旅行を終え2日後、チェイスはIS学園のアリーナにいた。

チェイスに相対するように、そこには優が立っていた。

 

「悪いねチェイス。付き合ってもらって」

「いや、構わない。そう言えば、弾達は?」

「弾とカイトならISの予習、百合と数馬はその付き添いだよ」

「アイツ等……」

 

勉強が嫌いな二人を思い浮かべ、チェイスは苦笑いする。

対する優も苦笑い。

 

「まぁ、あんな参考書の厚さを見たら嘆くのも仕方ないけどね」

「……分からんでもないな」

 

チェイスはそうぼやきながらもブレイクガンナーを構える。

 

「それは兎も角……スコールからの伝言だ。今から使うシフトカーはまだ試作段階だ。フルパワーで使うな…との事だ」

「あぁ、分かった……来い!デッドヒート!」

 

優が叫ぶと、何処からともなく赤いシフトカーがやって来て、優の手に収まった。

それは以前スコールが作っていた白のシグナルバイクが付いたシフトカーだ。

 

「でも、何でデッドヒートなんだ?」

「スコールが言うには、亡国機業のある男に対抗するためらしいが……」

「まぁ使ってみれば分かるか!じゃあ……」

「行くぞ…」

 

 

 

「「変身!!」」

《Break up!》

《ドライブ!タイプデッドヒート!!》

 

チェイスは魔進チェイサーのスーツを纏い、優は赤いエネルギーとタイヤエネルギーに包まれ、ドライブタイプデッドヒート(以下TDH)に変身した。

 

『うぉぉ!何かマッハっぽい…!』

 

ドライブTDHの言う通り、タイプデッドヒートはマッハのライドスーツを纏い、その上にドライブの通常形態に当たるタイプスピードの装甲が取り付けられている。

更に、左肩にはマッハに装備されているシグナルコウリンが設けられており、その中に書かれたメーターらしき物にも目を引く。

 

 

『いっくぜー!』

 

ドライブTDHは瞬間加速を使い、一気にチェイサーに接近。赤い蒸気を纏ったパンチを放った。

 

『ッ!』

 

チェイサーはそれを急上昇してかわすと、ドライブTDHはその場で身構えて力を込めた。

 

 

 

『ハァァァァッ……!オリャァッ!!』

 

何とドライブTDHはタイヤを模した赤いエネルギーを生成、それをチェイサーに向けて蹴っ飛ばした。

 

『なっ……ぐぁぁぁっ!!』

 

想定外の攻撃にチェイサーはかわす事が出来ず、直撃を許してしまう。

たったの一撃でチェイサーの装甲から煙が上がった。

 

『おぉぉぉぉッ!!』

《デッドヒート!》

 

ドライブTDHは接近しながらシフトブレスのブーストイグナイターを押す。

シフトデッドヒートのエネルギーが拳に行き渡り、そのまま連続でパンチを繰り出す。

 

《Tune!chaser turtle!》

 

それを見たチェイサーは直ぐ様立ち上がり、タートルバイラルコアを装填、シェルディフェンサーで正面から受け止めた。

 

『うらららららら!!!』

『ッ……何てパワーだ!』

《デッドヒート!》

『おおりゃぁぁっ!!』

 

更にだめ押しでブーストイグナイターを押し、フルパワーのストレートを放つと、シェルディフェンサーは粉々に砕け散った。

 

『なっ………』

『でゃぁっ!!』

『ぐぁぁぁっ!!』

 

驚いた隙に放たれた左ストレートを諸に喰らい、チェイサーはアリーナの端まで吹っ飛ばされた。

 

『……って、やり過ぎた!!チェイス、生きてるか~!?』

 

ドライブTDHは慌ててチェイサーに駆け寄る。

 

ドライブTDHが着くと、チェイサーのスーツが解除されており、チェイスに戻っていた。

 

「勝手に殺すな……!」

『良かった~……』

 

ホッと一息吐いて、ドライブTDHは変身を解除した。

優はシフトデッドヒートを繁々と眺める。

 

「凄いなー、これ……下手すると暴走するな」「まぁ、デッドヒートだからな……」

「使いどころ考えないとな…」

「……そうだな」

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

弾「もう夏休みも終わりか~……」

ハート「俺はハート。亡国機業のトップだ」

チェイサー『使わせて貰うぞ……!』

IS ~黒き魔進~ 『限界点VS限界点』

《Tune!chaser Dead Heat!》


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『限界点VS限界点』

漸くチェイス君達とハート様が邂逅します


最新話のハートも改造しときながら友達と呼ぶ辺り、結構ブッ飛んでるんだなと認識しました


 

『はぁ!』

『うおっと!?』

 

夏休みもいよいよ終わりに近づく中、IS学園のアリーナではバロンとマッハが特訓をしていた。

 

『行くぜぇ!!』

『っ!』

 

バロンはバナスピアーをコールし、マッハに鋭い突き攻撃を仕掛け、マッハはそれを何とかかわしていく。

 

『おりゃあっ!』

『甘いぜっ!』

『なっ!?ぐぅっ!』

 

バロンの放った刺突攻撃を見切り、マッハは僅かに体を浮かし、バナスピアーに手を掛け、カウンターの蹴りをお見舞いする。

予想外のカウンターにバロンは防げず、アリーナの地面に叩き付けられる。

 

『今度はこっちから行くぞ!』

《シグナルバイク!シグナルコウカーン、カクサーン!》

『ハッ!』

《カクサーン!》

 

倒れ伏すバロンに容赦なく、マッハはシグナルカクサーンの能力で拡散させたエネルギー弾を放つ。

 

『のぉっ!?殺られてたまるかぁ!』

 

対するバロンは弾丸の雨霰を掻い潜り、マンゴパニッシャーで弾いていき、その最中にゲネシスドライバーのシーボルコンプレッサーを一回引き絞った。

 

『喰らいやがれ!』

《レモンエナジースカッシュ!》

『うぃ!?ぬわぁぁぁぁっ!!』

 

エネルギーを込めたマンゴパニッシャーを振り回してマッハに向けて投げた。

油断しきっていた所への一撃を諸に受けて、マッハも地面に落ちる。

 

 

 

『いっちっち………!やってくれるな!』

 

マッハは即座に立ち上がるが、両者共に満身創痍の状態。

 

『これで、決めるか……!』

『へっ、上等…、恨みっこ無しだぜ!』

《レモンエナジースパーキング!》

《ヒッサツ、フルスロットル!マッハ!》

 

バロンはシーボルコンプレッサーを2回絞り、マッハはマッハドライバー炎を操作し、お互い足にエネルギーを集中させて飛び立つ。

 

 

『せいぃぃぃぃっ!!』

『でやぁぁぁぁっ!!』

 

キックマッハーとキャバリエンドがぶつかり合い、マッハとバロンはお互い弾き飛ばされる。

 

 

『うわぁぁぁっ!?』

『ぐぁぁぁぁっ!?』

 

地面に叩き付けられ、二人のライドスーツは解除される。

 

「いって~……引き分けか…」

「くっそぅ…!」

「おい、昼飯だぞ……」

 

悔しがっている弾と数馬に、弁当箱を抱えたチェイスが寄ってきた。

 

「お、チェイス!」

「サンキュー!」

「お礼なら布仏先輩に言え……」

「え、虚さんが?!」

 

生徒会で、二年上の布仏虚の名前を聞いた弾は嬉しそうに弁当を食べる。

 

「別にお前に作った訳では……」

「まぁまぁ良いじゃん。片思いの特権ってやつで」

 

チェイスは呆れながら突っ込むも、数馬に諌められる。

当の数馬は面白そうに弾を見ながら弁当を食べる。

 

「そう言えば、カイト達は?」

「カイトは用事。優と百合は勉強」

「偉いな~」

「お前も見習え、弾…」

「俺、勉強苦手だし……」

 

 

 

 

 

 

「楽しそうな会話だな。俺も混ぜてくれるか?」

「「「!?」」」

 

と、会話していると、チェイス達の後ろから

聞き覚えのない男の声が聞こえ、驚いて振り向いた。

 

「やぁ、世界初の男性IS操縦者の諸君」

 

そこには、真紅のコートを着こなした男がニコニコとこちらを見ていた。

 

「あ、アンタ一体……?」

「俺はハート。そうだな…………………

 

 

 

 

 

 

君達が追っている亡国機業のトップだ」

 

その男ーーーーハートが言ったとんでもない事実に、チェイス達は耳を疑った。

 

「なっ……亡国機業の、トップだと?」

「あぁ。そして、今日は挨拶に来たのさ。君達がどれぐらい強いのか………ね!」

 

ハートは立ち上がると、手を広げて低く唸りだした。

 

 

 

「むぅぅぅぅぅ………………くぁぁっ!!」

 

すると一瞬にして、ハートの体が機械染みた異形へと変貌した。

 

 

「か、変わった……?!」

『驚いたかい?亡国機業とは、機械人間ーーーー"ロイミュード"の集まりさ…』

「ロイ、ミュード……?」

『知っているのは、チェイス・ミューゼルだけの様だな……。だが厳密に言えば、"ISコアを心臓に埋め込み、身体をサイボーグにした人間"………だ』

「ISコアを心臓に!?」

 

驚愕する弾と数馬だったが、チェイスは一人ブレイクガンナーを構えていた。

 

「……弾、数馬、構えろ」

「…あ、あぁ!」

「こんなとこにノコノコ現れるって、飛んで火に入るなんとやらだぜ!」

《レモンエナジー》

『ふっ、ここにある監視カメラの全ては俺の仲間が細工を施してね、教職員には見えないし聞こえない。これで心置きなく君達と殺り合える、という訳だ』

「っ……!」

『怖じ気づいたかい?』

「…まさか!」

 

 

 

「「「変身!!」」」

 

 

 

《Break up!》

《レモンエナジーアームズ!Fightpower!Fightpower!Fi-Fi-Fi-Fi-F-F-F-FFight!》

《シグナルバイク!ライダー、マッハ!》

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

『うぉぉっ!』

『フンッ!』

 

先ずは先手必勝とばかりに、バロンがソニックアローで斬撃を見舞うが、ハートロイミュードはそれを空中に逃げることで回避する。

 

『隙だらけだ!』

『っ!』

 

お返しとばかりに、エネルギー弾を放とうとするが、

 

『させるか!』

《シューター!》

 

マッハのゼンリンシューターによってそれを相殺される。

 

『むぅん!』

『ははっ、良いコンビネーションだ!』

 

その隙にカメレオンバイラルコアで透明化したチェイサーが背後からハートロイミュードを殴り付ける。

が、それを探知したハートロイミュードは体を捻り、チェイサーの攻撃を避けた。

 

『かわした位でいい気になるなよ!』

《レモンエナジースカッシュ!》

『はっ!』

 

そこにバロンとマッハのコンビ攻撃が襲いかかり、

 

《Tune!chaser spider!》

『えゃぁっ!』

 

更に続けざまにチェイサーのファングスパイディーによる切り裂き攻撃で、二人の攻撃に体を向かわされる。

 

『ぐっ!』

 

前からの双撃は腕をクロスして防ぐも、チェイサーの攻撃によって地面へと落とされる。

 

マッハとバロンはそれを察知し、空中に逃げることで衝突を免れた。

 

 

『……やったか?』

『おい、フラグ』

 

バロンがボソリとフラグを建てたせいかどうかは分からないが、

 

 

 

『ぬぉぉぉっ!』

 

ハートロイミュードは瓦礫から立ち上がった。

 

『やはりあの程度では死なんか………』

『弾、お前のせいだぞ』

『お、俺!?』

『ハッハッハ!良い一撃だったぞ!しかし何だ。俺は空中戦が苦手でな~、それは君達も同じだろ?』

 

それを言われた3人は、無言で地面へと降り立った。

ライドスーツは基本、浮かぶことは出来るがあまり空中での戦いは向かないのだ。

 

『だったら、この土俵で貴様を倒す……!』

『ふむ、ここで倒されるのは出来ないからな……本気で行くか』

『はぁ?』

『見せてやろう、俺の怒り……………デッドゾーンを!!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………………………!!!』

 

ハートロイミュードは静かに唸ると、その全身から蒸気が噴き出し、アリーナの地面が凹んでいく。

 

『な、何だこのパワー……!?』

『これがデッドゾーン…………ISで言うところの単一能力(ワンオフ・アビリティー)、俺のISへの、この世界への怒りで生まれた力だ…!!』

『ISへの、この世界への怒り……だと?』

 

その言葉に反応するチェイサーだったが、ハートロイミュードが低く身構えた事でその思考を追いやった。

 

『行くぞ…………!』

 

ダッ、と駆け出したかと思うと、

 

 

 

 

 

『がっ………………!』

 

バロンとマッハが振り向いた瞬間に、チェイサーが殴り飛ばされていた。

 

 

 

 

ドゴォォォォォォンッ!!!!!

 

轟音を立てて崩れ落ちるアリーナの壁を見て、バロンとマッハの心に僅かに恐怖が走った。

 

『ちぇ、チェイスっ!!』

『見えなかった………何なんだよ?!』

『さぁ、次はお前達だ………!』

 

ダッと駆け出し、今度はバロンに掴み掛かった。

 

『っ!?』

『遅いっ!』

 

反応が一瞬遅れたバロンだったが、気付いた瞬間には、ハートロイミュードに首を掴まれていた。

 

 

 

『がっ、あぁぁぁっ!!!』

 

掴まれた手からスーツ越しでも感じる熱量に絶叫するバロン。

すると、ゲネシスドライバーから火花が散ったかと思うと、スーツが解除される。

 

『弾っ!?クソッタレェ!』

《ゼンリン!》

 

弾を解放させるべく、マッハはゼンリンシューターでハートロイミュードに殴りかかる。

 

『小賢しい!』

 

ハートロイミュードは弾を投げ捨てゼンリンシューターを体で受け止めた。

 

『なっ……!』

『どうした………それが全力でもあるまい!!』

『くっ!』

 

拳のハンマーを瞬時に避けると、そこにはクレーターが出来ていた。

 

『…!こうなったら……来い!デッドヒート!』

 

マッハと叫ぶと、赤いシフトカー……シフトデッドヒートがやって来て、マッハの手に収まった。

 

『何を見せてくれるんだ?』

『へっ、後悔しても知らねぇぞ……!』

《シグナルバイク・シフトカー!ライダー、デッドヒート!》

『うぉぉっ!!!』

 

赤いエネルギーフィールドに包まれると、マッハはドライブTSと混ざりあった様な姿ーーーーデッドヒートマッハに変身していた。

 

『ほぅ、その感じ……俺のデッドゾーンを擬似的に再現したのか』

『さぁ、これで五分五分だぜ……!』

 

そう呟くと、DHマッハは高熱を纏った連続パンチをハートロイミュードに放つ。

 

『うらぁぁぁぁっ!!』

『…………五分五分、だと?甚だしい!!』

『っ!』

 

だがハートロイミュードは呆れたように叫ぶと、DHマッハのパンチをいとも容易く受け止めた。

 

『その様な紛い物で、本当に俺のデッドゾーンに対向出来るとでも………見くびられたものだ!見ろ、これが真のデッドゾーンだっ!!』

『……………っ!!』

 

ハートロイミュードの思いに答えるように、全力から噴き出す蒸気が更に多くなる。

腕を掴まれたDHマッハは何とか逃げようとするも、ガッシリと掴まれているためどうすることも出来ない。

 

『こうなりゃ……一か八かァ!!』

《キュウニ、バースト!》

『無駄だぁ!!』

『おぉぉぉぉっ!!!』

 

空いた左手でブーストイグナイターを連打し超高熱を纏っての右ストレートでハートロイミュードに傷を負わせた。

 

『ぐぅ!だが、これで終わりだぁぁぁ!!』

『っ………………!!』

 

が、DHマッハはブッ飛ばされて、変身が解除される。

 

『ハァ、ハァ……!中々の一撃だったぞ、だが…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

《gun》

『ヌッ!?…………お前』

 

数馬が倒れたのを確認した矢先に、後ろから何者かの銃撃を受ける。

 

『まだ、だ……!』

 

そこに立っていたのは、魔進チェイサーだった。

 

『………数馬、借りるぞ』

 

チェイサーは足元に落ちていたシフトデッドヒートを拾うと、ブレイクガンナーのバイラルライディングパネルにセットした。

 

《Tune!chaser Dead Heat!》

『ぐ……………………ぬぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

赤い電気がブレイクガンナーから迸ると、チェイサー自身が赤いエネルギーフィールドに包まれ、その紫の装甲が赤く染まっていく。

 

 

 

 

『あぁぁぁっ!!!』

 

チェイサーはもがき苦しみながら、エネルギーフィールドを破り、その姿を現した。

 

『まさか、お前もデッドゾーンを……!』

『がっ、あぁぁぁっ!!!』

 

だが、チェイサーDHは膝を付いて息を荒げていた。

まるで、力を抑えきれないかのように。

 

 

『そうか………その奇妙なミニカーを使えはするが、そのスーツ自体がデッドゾーンの余りあるパワーを受けきれていないのだ!』

 

ハートロイミュードの言う通り、ブレイクガンナーによってシフトデッドヒートを使うことは可能ではある。

が、ブレイクガンナーで使えても、魔進チェイサーのスーツ自体、デッドヒートに対応出来るようにチューンアップされていないのだ。

 

それは、チェイス自身も分かっていた。

 

『それが、どうした……!』

 

だがチェイサーDHは痛みを無視してハートロイミュードに歩み寄る。

 

『止めておけ、それ以上はお前の体が持たん。俺でさえ未だに自我をデッドゾーンの圧倒的な力に流される事もあるのだぞ…………ましてや、初めて使ったデッドゾーンを、お前に乗りこなせると思っているのか!?その体で!!』

『知る、か………!ならば、俺の自我で、屈服させるのみ……っ!』

 

チェイサーDHはハートロイミュードにイグニッションブーストで近付くと、剥き出しになったハートロイミュードのコアをその手で直接握った。

 

 

『な、ぐぁぁぁぁっ!?』

『ぐぅぅぅぅぅぅっ!!』

 

同時に、高熱の余波がチェイサーに襲いかかり、スーツのあちこちから火花が飛び散る。

 

『貴様ッ………そんな真似をすれば、自分自身も吹っ飛ぶぞ…!』

『だったら………地獄まで共に落ちてもらおうか…っ!!おぉぉぉぉっ!!!』

 

チェイサーDHはハートロイミュードの言葉を切り捨てると、更に強く握り締めた。

 

『ぬぅあっ!?ふ、はは……!良いイカレっぷりだ!気に入ったぞ!魔進、チェイサー!!』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やれやれ、困ったリーダーだぜ』

 

余剰エネルギーによって爆発する瞬間、何者かの横槍でチェイサーDHは弾かれるようにハートロイミュードから離れた。

 

『ッ………!』

 

元々限界だったため、チェイサーDHは倒れ付し、そのまま動かなくなる。

そして、チェイスが気絶したのを確認したハートロイミュードは、横槍を入れた人物の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

『……イカロスか』

 

その人物は、ハートロイミュード同様機械染みた異形で、青を基調とした体と背中に生えた鋭い翼、そして隼の様な鋭い眼を持っていた。

 

『リーダー、遊びはお仕舞いだ。ブレンが怒ってるぜ』

『……まぁ、良い収穫もあったしな』

『やけに嬉しそうな顔だな』

『………あぁ』

 

ハートロイミュードとイカロスロイミュードは、ISアリーナのシールドを突き破り、その場から逃走した。

 

 

 

異変に気付いたIS学園の職員が駆け付けたのは、この数分後だった。

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

カイト「そんなことが…」

真耶「ミューゼル君は、無事なんですか……?」

スコール「………魔進チェイサーを、パワーアップさせる必要が、あるわね」

IS ~黒き魔進~ 『二学期』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『二学期』

チェイス君は既にオータムとナターシャさんの初めてを貰ってます


 

長いようで短い夏休みの終わったIS学園では、初日から授業が始まる。

 

だがその前に全校集会があるのだ。

 

 

 

「くそっ、何で初日から授業あんだよ……イテテ」

 

頭に包帯を巻いた弾は、体育館の中で痛みと戦いながら一人ぼやいた。

 

「やっぱりIS操縦者は多い方が良いからじゃないか?増やすって意味でさ、早めに覚えさせた方が良いだろうし」

 

同じく腕に包帯を巻いた数馬がそれに答えた。

カイトと立花兄妹は、申し訳なさそうに二人を見ていた。

 

「ゴメンよ。まさか亡国機業のボスと戦ってたなんて………」

「俺達だけでも気付けたら……」

「すみません…」

「良いって、もう気にすんなよ」

「誰だっていきなりボスが戦い吹っ掛けるなんて思わないしな」

 

等と話し合ってると、壇上に生徒会長の楯無が上がった。

 

「あの人……簪さんのお姉さんだ」

「ホントだ………生徒会長だったんだ」

「皆、おはよう。私は更識楯無。一学期はゴタゴタが続いて挨拶出来なかったけど、私がこのIS学園の生徒会長よ。今回話す内容は、今月に行われる学園祭ーーーー今回のみ特別ルールを取り入れるわ、その名も!」

 

壇上の巨大なスクリーンにチェイス達男子生徒の顔写真が映された。

 

『『『ええええええええ〜〜〜〜〜〜っ!?』』』

 

割れんばかりの叫び声に、ホールが冗談無く揺れた。

一方の弾達は耳を防げず、暫く動けなかった。

 

「静かに。学園祭では毎年各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行って、上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。しかし、今回はそれではつまらないと思い……上位の部活動に男子生徒諸君を強制入部させましょう!」

「「「「はぁぁぁぁぁぁあっ!!?」」」」

 

いきなり言われた弾達は、揃って反論の声を上げた。

まぁ、無理もないことだが。

 

 

「「「「「それ…凄く良いです!!!」」」」」

 

しかし体育館の女子達は満場一致で賛成、圧倒的な賛成数に弾達はぐうの音も出ない。

 

「ち、ちょっと待てよ!帰宅部っていうアレは無しなの!?」

「あのね、この問題は貴方達が部活動に入らないから苦情が殺到してるの。貴方達が部活動に加わってたら取り消せたけど……と言うか帰宅部なんてないわよ!」

「うぐ………!」

 

数馬の反論も楯無の正論に完封される。

 

「これも運命、なのか………?」

「ッつーかここにいないチェイスが怖い……」

「確かに……」

「アイツ怒るぞ、絶対…!」

「ハハ………」

 

早くも諦めた弾達は、チェイスの怒れる様を想像し溜息を吐いた。

それに対し、優の妹の百合は苦笑いを溢す他なかった。

 

 

 

『そう言えば、ミューゼル君がいないわね……この間の事が原因なの?』

 

楯無も笑顔で手を振りながら、何故かこの場にいないチェイスに思いを馳せていた。

 

 

 

 

 

 

 

一方のチェイスはと言うとーーーー

 

「はい、チェイス」

「あ、ありがとう……」

 

フリーダム・スカイの病室にて、スコールから手厚い看護を受けていた。

しかもミニスカナースのコスプレで。

 

「なぁ、母さ…スコール………俺は何時までこの上なんだ?」

「取り敢えず、一週間はベッドの上よ」

 

こうなった原因は、無論この間のデッドヒートだ。

魔進チェイサーのシステムにもダメージはあったが、それ以上にチェイスへのダメージが大きかったため、一週間近くは動いてはならない。

 

勿論、魔進チェイサーも暫くは使用禁止。

それも含めて無茶したために、チェイスはスコールに起きた時に物凄く怒られた。

 

「以前にも言ったわよね、あまり無茶はしないでって」

「あ、あぁ……」

「言っても聞かない様な悪い子には………」

 

スコールは妖艶に微笑むと、ナース服のボタンを外して胸を見せつけた。

 

「お仕置きが、必要ね♪」

「え………ま、待ってくれ。まだ体が…!」

「大丈夫、優しくするから…」

 

 

 

 

「ちょーっと待ったー!!」

 

何やらイケない雰囲気の中、何故か黒のナース服を着こなしたオータムがバン!と扉を開けて登場した。

 

「あら、オータム」

「チェイスの看病なら、私も混ぜてくれよ!」

「こ、この様でか………!?」

「心配掛けた分、ここは踏ん張り所だぜ?」

「そういうこと、ね?」

 

 

ここでチェイスは悟った。

あ、終わった……と。

 

 

 

 

そこから先はチェイス達のみぞ知る……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、本日の授業はここまでです!皆さん、あまり夜更かししてはダメですよ~」

 

真耶の号令によって、今日1日の授業は終わった。

弾達はこの後どうするかを話し合ってると、真耶が弾達の方に向かってきた。

 

「どしたんすか?山田先生」

「あの……ミューゼル君は無事なんですか?」

 

そう心配そうに聞いてきた。

先日にあったハートロイミュードの襲撃事件の際、傷付いたチェイスの介抱をしたのは真耶だった。

 

「あー………一応無事っちゃ無事ですよ」

「でも、まだ安静でいないと駄目らしいから、一週間は来られないですよ」

「そうですか………でも良かったぁ」

 

心から安堵した様な溜息を吐く真耶に、弾達も嬉しくなる。

 

「やっぱり山田先生は優しいっすね」

「そ、そうですか?」

「それはそうだろ。だって山田先生はチェイスの事ーーーー」

「い、言わないでください///!」

「ミューゼル君入院してるの!?」

「ってアンタ何処から現れた!?」

 

 

騒がしくもありながら、弾達は二学期初日の学園生活を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、スコールはと言うと……

 

「スコール、何でマッハドライバーもう一台作ったんだ?」

「敵は確実に強くなってるわ。それに……魔進チェイサー自体、プロトタイプよ」

「っ!まさか………」

「えぇ。チェイスの協力で戦闘データは取れたし、魔進チェイサーの………パワーアップに繋がると思ってね」

 

 

研究室にて、オータムととある会話をしていた。

 

 

 

 

 

 

そしてデスクには、黒いシグナルバイクとマッハドライバーが置かれていたのだった………

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

カイト「メイド喫茶か……」

弾「新しい力、試すか……!」

ハート「襲撃日はーーーーーーーーだ」


IS ~黒き魔進~ 『学園祭・序章』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『学園祭・序章』

今回結構ギリギリな描写ありです……

一度で良いからこういうシュチュエーションにエンカウントしたいっす

そしてPhenomenonさん、アイデアありがとうございました!!


二学期が始まって一週間、ようやく入院生活(一週間だけだが)を終えたチェイスが登校してきた。

 

「あ、ミューゼル君だ~!」

「久しぶり~!」

「あぁ……」

 

相変わらずの騒ぎっぷりに苦笑いしながら、チェイスは自分の席に腰掛ける。

 

「よー、チェイス!」

「もう大丈夫なのか?」

「あぁ、心配かけてすまない」

「僕らは良いからさ、後で山田先生と更識さんに謝っときなよ。すごい心配してたし」

「ダリルさんとフォルテさんにもな」

「分かった」

 

取り敢えずは、休んでいた分のノートを写し終え、セシリア達に挨拶をするのだった。

 

 

 

「弾……これを」

「え?」

 

早速の一時間目の授業後、チェイスは弾にとある物を手渡した。

 

「これは……!」

「スコールからのプレゼントだ。カイトと百合と兼用だがな」

「……そっか。サンキュー!」

 

この後は、何事もなく午前の授業を終えた。

食堂で楯無とダリル、フォルテに抱き着かれた事も追記しておく。

 

 

 

 

午後の授業は、学園祭の出し物を決める事になった。

が、出てきたのはどれもこれも似たり寄ったりな物ばかり。

 

 

『男子諸君とのポッキーゲーム』

『男子諸君とのツイスター』

『禁断のホスト☆クラブ』

 

 

勿論反対を受け、女子達はブーイングを漏らすも、全てチェイスが睨んで黙らせた。

 

 

「ならば、メイド喫茶どうだ?」

 

話が平行線を辿っていたところ、その案を出したのは、意外や意外ラウラだ。

 

「これならば、服などの調達も当てがあるし、人員的にも問題はないと思うのだが……」

「もしかして、あのお店もの事?ラウラ」

 

以前シャルロットとラウラはショッピングの際に、とあるメイド喫茶にてバイトを経験したため、そこの店長と顔なじみになっているのだ。

 

「メイド喫茶か……案外良いかも」

「それだったら、俺達男子は執事服着れば問題ないな」

 

カイトと数馬も賛成の意見を出し、残るチェイス達も「まぁ良いか」との事で、一年一組は「メイド&執事喫茶」に決まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後………

 

「行くよ、優!」

『来いよ、全て捌ききってやるぜ!』

《ドライブ!タイプ・テクニック!》

「嘘っ!?」

 

模擬戦にて、シャルロットのラピッドスイッチによる高速切替を、ドライブTTが全て捌ききった。

 

「あーもう!何で当たんないのよ~!」

『ふっ!はぁっ!』

 

鈴の甲龍による衝撃砲を華麗に舞いながらかわすマリカ。

 

「行くぞ、御手洗!」

『良いぜ!お嬢ちゃん!』

 

ラウラのワイヤーブレードの攻撃をゼンリンシューターによって弾き、合間を縫うように反撃に出るマッハ。

 

 

等と、一組の専用機持ち達が特訓をしていた。

 

 

 

更に別の場所では、

 

 

「今日こそ、勝つ…!」

「まだまだ負けないわ!」

 

更識姉妹がお互いに持てる全てをぶつけ合っていた。

 

 

 

 

 

 

《Tune!chaser hawk!》

 

少し離れた所で、修復を終えたチェイサーは今日新たに手渡されたホークバイラルコアを装填し、ボウガン状の武装ーーーースナイプアローをじっと見つめる。

 

更に複眼にはスコープらしきものーーーーホークアイスコープを装備されており、スナイパー感が出ているも、肝心のチェイス自身は射撃は苦手な部類だった。

 

『どうすれば良いのやら………』

「ミューゼル、さん?」

『オルコットか』

 

そんなチェイサーの元に近付いて来たのは、射撃の得意なセシリアだった。

 

「どうかなされたのですか?」

『新しい武装が出来てな………だが射撃は苦手な部類で、どの様な特訓をすれば良いか分からないんだ……』

「ミューゼルさん、偏向射撃を使えるのに?」

『アレは単に集中力の問題だ。慣れればお前も使える…』

「では差し支えなければ、私が特訓のお相手を努めさせていただきますわ」

『……感謝する』

 

セシリアはチェイサーを連れて、アリーナの端にやって来た。

そこには数個の的があった。

 

「あの的に向かって射撃の練習ですわ。最初は慣れなくても、やっていく内に体が覚えますわ」

『………』

 

無言で頷き、チェイサーはスナイプアローを的に向けて構える。

ホークアイスコープが的を赤いセンサーで捉えた瞬間にチェイサーはブレイクガンナーの引き金を引いた。

 

 

 

すると、凄まじいスピードで銀の矢が放たれ的を一瞬にして粉々に粉砕した。

 

「す、凄いですわ……!」

『いや、今のはコレのアシストのお陰だ……戦闘中は一々狙いを定めてる余裕はないからな』

「確かにそうですわね……でしたら、私の出来る範囲でお教え差し上げますわ」

『何から何まですまんな……』

 

この後チェイサーはセシリアに射撃のノウハウを学び、ある程度射撃の腕を向上させたのであった。

 

そのお詫びにチェイサーは偏向射撃のコツをセシリアに教えたのだった。

 

 

 

 

『何時でも良いよ、弾』

『おう!』

《ドラゴンフルーツエナジー!》

 

此方では斬月・真とバロンが何やら向かい合っており、バロンは今朝チェイスに手渡された物ーーーードラゴンフルーツエナジーロックシードを解錠した。

 

すると、上空にドラゴンフルーツらしき鎧が形成された。

 

《ロック・オン……ソーダァ!ドラゴンエナジーアームズ!》

 

力強い『ソーダァ!』音声と共に鎧が被さり、バロンは普段のレモンエナジーアームズではなく、ドラゴンエナジーアームズへと変身していた。

 

『おぉ………!スゲェパワーだ!』

『ひしひし感じるよ…!来なよ、弾!』

『行くぜぇ、カイト!!』

 

アリーナ上空にて、斬月・真とバロンDEAがぶつかり合った。

先ずはお互いにソニックアローでダメージを狙っていくも、バロンDEAの方が圧倒的に斬月・真を圧していた。

 

『な…なんてパワー……っ!』

『おりゃあぁぁぁっ!!』

『うわぁぁぁっ!!』

 

遂にごり押しに負けた斬月・真は後退させられるが、即座にバロンDEAが矢を放ってきた。

 

《メロンエナジースカッシュ!》

『おおっ!』

 

ソニックアロースラッシュで相殺するも、バロンDEAはその隙にドラゴンフルーツエナジーロックシードをソニックアローに装着していた。

 

《ロック・オン》

『上手くかわせよなっ……!』

《ドラゴンフルーツエナジー!》

『ッ!!』

 

赤黒い龍を模したエネルギーを纏い、矢は斬月・真に向かっていった。

が、斬月・真は何とかそれをかわしたが、その威力はアリーナの絶対防御を貫いていた。

 

『な………』

 

これにはバロンDEAもビックリ。

斬月・真は呆れながら、

 

 

『コレ、間違いなく人に向けたら駄目だね………』

『だな……』

 

そう呟いた。

 

 

 

 

夕方になり、特訓を終えた弾達は先に寮部屋に戻り、遅くまで特訓していたチェイスは一番最後にシャワーを浴びることに。

 

 

「………ふぅ」

 

頭から熱湯のシャワーを浴びて汗を流していると、突然後ろから誰かに抱きつかれた。

 

「!」

「ふふっ、隙だらけだったぞ?」

「何の冗談だ………更識」

 

 

 

正体は楯無だった。

楯無は笑顔で後ろからチェイスの顔を覗き込んでいたが、チェイスの背中の傷痕を見て顔を曇らせた。

 

「この傷………大分古いけど、何時からのなの?」

「恐らく、俺がまだ……織斑一夏としての記憶を持っていた時だろう。まぁ、チェイスとして生き始めた時の傷もあるが…って、いい加減に離れろ」

「………」

 

だが楯無は離れるどころか更に強くチェイスに抱きついた。

恐らくはISスーツを着ているのだろうが、そのせいで変な背徳感が沸くのを感じた。

 

「……ねぇ、ミューゼル君。ううん、チェイス」

「なん……っ!」

「ん……」

 

振り向いた瞬間、チェイスは楯無に唇を奪われた。

一瞬惚けるも、直ぐ様我に返り楯無を引き剥がそうとするも、楯無は一向に離れようとしない。

寧ろ楯無は自身の胸をグイグイと押し付けてくる。

 

 

『……不味いっ』

 

ここに来て、チェイス自身が反応してしまった。

何とか治めようとしたが、時既に遅く、チェイスのソレが楯無の下腹部に当たってしまう。

 

「あんっ…!」

 

艶かしい喘ぎ声を上げながら楯無はチェイスを解放した。

シャワーは未だに出っぱなしで、その熱気のせいか恥じらいか、楯無の頬は赤く染まり瞳は潤んで、しかしチェイスから目線を反らしていなかった。

 

「す、すまない、更識「刀奈」……刀奈」

「チェイス………お願い。私を、愛して?」

 

刀奈は上目遣いでチェイスに懇願する。

その手はチェイスのソレを擦っており、胸は変わらずチェイスの胸板で形を変えている。

 

「刀奈………俺には、一番に愛している人がいる。それでも…良いのか?」

「うん……でも、今だけは、私だけを…見てっ」

「………分かった。今だけは、お前だけを愛するよ」

「嬉しい………んぅっ」

 

腹を括ったチェイスは自ら刀奈の唇を奪った。

刀奈も嬉しそうに目を細めて、チェイスを迎え入れる。

 

 

 

 

その日、チェイスは刀奈の想いを受け入れ、スコールもそれを了承したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハート、今度は直接IS学園に殴り込みに行くそうですね」

「あぁ。襲撃日はーーーーーーーーだ」

「成る程。派手好きなアンタらしいな」

「ソレほどでもないさ………。さぁて、そろそろ戦乙女殿にはご退場願おうか」

 

とある場所に集まった亡国機業の幹部メンバー、ブレンとイカロス、そしてリーダーのハート。

 

 

 

そのモニターには、織斑千冬が写っていた。

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

カイト「お、お帰りなさいませ……!」

チェイス「別に構わんが…」

弾「アイツは……一夏じゃないよ」


IS ~黒き魔進~ 『学園祭』


黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『学園祭』

前半はほのぼのです


タイプトライドロン良いですね、他のシフトカー達の存在意義がないんじゃね?とか思ってはないですよ?


 

待ちに待ったIS学園の学園祭。

この日は全校生徒、そして教師陣も大忙し。

 

生徒ならばまだしも、外からの招待客もいるため、中々気を抜けない。

 

 

 

 

中でも一番忙しいのは、やはり男性生徒がいる一年一組のメイド&執事喫茶。

 

「お、お帰りなさいませ……お嬢様」

「優君、四番さんご指名です!!」

「はい、ドンペリ入りまぁす!!」

 

中々慣れないけどカイト、優男で人気のある優、そして何故か学園祭なのにドンペリとか叫ぶ数馬。

 

 

因みに弾は厨房、チェイスは普通に執事をこなしている。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様……って、母さん…………!」

「はぁい、チェイス♪」

 

丁寧な挨拶をするが、何処かで見たような雰囲気を醸している、と思って顔を上げると、その人物はスコールだった。

 

「馴染んでるようで何よりだわ」

「様子見で、来たのか………?」

「それもあるけど…………これを渡しておこうと思ってね」

「…………っ、これは」

 

チェイスはこっそりと渡されたソレを凝視する。

 

「多分使うのは学園祭が終わってからになると思うけど…………それと、篠ノ之さんはどちらに?」

「篠ノ之?…………ちょっと待っててくれ」

 

チェイスはスコールを席で待たせ、接客をしおえた箒に声を掛け、スコールの元に連れてきた。

 

「じゃあ、俺はこれで…………」

「ええ」

 

チェイスが離れると、箒は声を低くしてスコールに質問した。

 

 

「…………私に何か?」

「少し、貴女と話がしたくてね…………はい」

「っ!」

 

スコールは鞄から紅い簪を箒に差し出すと、箒は顔を強張らせた。

それは箒の為に束が作ったISーーーー『紅椿』の待機状態。

 

「何故、私にこれを………」

「………元々は篠ノ之博士が貴女の為に作った専用機。ならこれは貴女の物よ、それに…………私達は一時的に預かってただけだしね」

「…………ですが、私は」

「確かに貴女がしたことは誉められた事ではないわ…………。でも、その自覚があるだけでもまだましよ。今の貴女なら分かる筈よ、力を持つ意味を……………」

「…………」

 

無言になる箒。だがそれは数秒だけで、その直後に口を開いた。

 

「……まだ、良く分からないです。私が力を求めたのは、ミューゼル……一夏の隣に立ちたかったから。でも……それはただの依存だと…気付いたんです。そんな身勝手な理由で力を求めた、こんな私が………専用機を使う資格なんて、ないんですっ!」

「……………私はちゃんとソレを返したわ。これは、チェイスの頼みでもあるの」

「ミューゼルが?」

 

ええ、と頷いて箒を見るスコール。

 

「貴女への言動はまだキツいけど、今はそれだけ貴女を信用してる……ってこと。迷いがあるなら、動きなさい。そうすれば、自ずと答えは出てくるわ」

「………………」

「では、私はこれで…………」

 

スコールは静かに席を立ち、一組を後にした。

 

 

 

 

『ミューゼル………………』

「篠ノ之さーん!こっち手伝って~!」

「あ、あぁ!今行く!」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

「ふぃ~」

 

一方、弾は厨房で一息ついていた。

すると、一組の女子が弾を呼んだ。

 

「五反田君、女の子が呼んでるよ~」

「え…………あぁ!分かった、今行くよ!」

「此方は任せといて!」

「サンキュー!」

 

弾はエプロンを外して厨房の外に出ると、そこには弾と良く似た赤髪の勝ち気な女の子が仁王立ちで待ち構えてた。

 

「お疲れ、おにぃ!」

「よー蘭!良く来たな!」

「おにぃが招待したんでしょ?」

「そだったな」

 

彼女の名前は五反田蘭、弾の妹だ。

 

「しっかし凄いね、おにぃのクラス」

「だろ?」

「やっぱり男性生徒がいるクラスは人気…………ってあれ!一夏、さん?」

 

暫く眺めていたが、ふとチェイスに眼が止まり、驚愕する蘭。

実はチェイスがまだ一夏の頃、蘭は一夏によく世話になっていた。

 

それもあったために、蘭は一夏に惚れていた。

 

 

「おにぃ……………」

「アイツは…………一夏じゃないよ」

「っ……そう、だよね」

 

悲しそうに語る弾に、蘭も肩を落とす。

だが弾は寧ろ、妹を騙しているという罪悪感が大きい。

 

「…………どうする?」

「…色んな所あるし、見て回るよ」

「そっか」

「付き合ってよね、おにぃ」

「ハイハイ」

 

しょうがない、と言った感じに溜め息を吐き、弾は蘭と一緒に各教室の出し物を見て回った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふぅ」

 

昼休憩になり、チェイスはお茶を飲んで一息ついていた。

 

「お疲れ様です、ミューゼル君」

「山田教諭…………」

 

そこに真耶が労りに来た。

チェイスは少し驚くが、直ぐに微笑んで真耶の格好を誉める。

 

「似合ってるな、メイド服…………」

「そ、そうですか…?私には、あんまりだと思うんですけど……」

「そんな事はない。十分に綺麗だ」

「っ///ミューゼル君は、ズルいです…………」

 

真耶は顔を赤くしながらも、チェイスの横に腰掛けた。

そのまま手を握ってくるが、チェイスはそれを拒まないで、優しく握り返した。

 

「っ!///」

「もし良かったら…………この後一緒に回らない、 か?」

「ええっ!?」

 

まさかのチェイスからの誘いに、真耶は大いに動揺する。

 

「無理にとは言わないが…………「行きますっ、行きましょう!!」あ、あぁ…………」

 

大きく否定する真耶に少し気圧されるも、近くのクラスメイトに休憩に入る事を伝えると、宣伝も宜しく!という事で執事服で回ることに。

 

 

 

 

 

一旦外に出ると、

 

「あ、あの…………」

「?」

「無理だったら良いんですけど……今日一日は、私の執事になってくださいますか?」

 

顔を赤らめそうおねだりする真耶に、チェイスは苦笑いながらも、

 

 

「…………畏まりました、お嬢様」

 

真耶の手を優しく取りながら、そう言った。

 

「……やっぱり、ミューゼル君は優しいですね。私、そんなミューゼル君が、大好きですよ」

「っ!///」

 

感動したかの様に言う真耶の不意打ちに、チェイスも顔を赤くした。

 

「……そう言えば、夏休みに伝えてくれた想い…………俺には、一番愛する人がいる」

「スコールさん……ですね?」

「…あぁ。それでも大丈夫ならば、俺は…………

 

 

 

 

 

ちゃんと責任をとる」

 

まさかの告白に、真耶は顔を真っ赤にする。

だが直ぐに嬉しそうに笑うと、

 

 

「ちゃんと、幸せにしてくださいね…………」

 

 

チェイスの手を優しく握り返した。

 

 

 

 

 

余談になるが、この後楯無達に見られ、ダリルとフォルテにもなし崩しに告白され、チェイスは頭がパンクしかけながらも、肯定の意を返したとさ。

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

弾「これはっ………!」

千冬「お前は………」

ハート「さぁ、俺の挑戦…………受けてもうぞ」


IS ~黒き魔進~ 『襲撃』



黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『襲撃』

前半は普通ですが、後半から…………シリアスです


 

「……疲れた」

 

あれから真耶達の付き添いで様々な模擬店を回ったチェイスは、くたくたに疲れていた。

 

「お疲れチェイス。でも良い報いだよ」

「何怒ってんだカイト…………?」

「お前にゃ一生わかんねーよこのリア充が!」

「???」

「…もういーや」

 

投げやりに呟く数馬。

とは言え、もう夕方になっており、客も少なくなっている。

 

と言うか何故か教室にいるのはチェイス達男子だけだ。

 

「ボチボチ片付けかな……」

「いいえ、メインイベントはこれからよ!」

 

一組の扉を勢いよく開ける人物が現れた。

生徒会長の楯無だ。

 

「更識さん?」

「どういう意味っすか?メインイベントって」

「まぁまぁ、ついてきて!」

「おい、押すな…!」

 

あれやこれやと楯無に連れてこられたのは、IS学園の体育館。

そこでチェイス達は白い王子様風の衣装と王冠を手渡され、言われるがままに着替える。

 

「皆よく似合ってるわ~!じゃ、これからなんだけど………皆のアドリブに期待するわ!」

「お、おい!ちょっと!」

「何か嫌な予感が……」

 

取り敢えず舞台に上がると、それなりに観客も多く、どうやら劇でもやるらしい。

 

『それでは只今より、生徒会主催の劇『シンデレラ』をお送りいたします』

「シンデレラ………」

「似合わねぇ……特にチェイスが」

「殺すぞ、数馬」

「お、落ち着こうぜ、チェイス……」

「楯無さんかよ、ナレーション」

 

楯無のアナウンスから始まり、中央のチェイス達にスポットライトが浴びる。

 

『昔々、あるところにシンデレラという可愛い少女が住んでおりました』

 

ここまでは普通だった…………そう、"ここまで"は。

 

 

 

 

 

 

『否、それはもはや名前ではない。幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰燼を纏うことさえいとわぬ地上最強の兵士たち。彼女らを呼ぶにふさわしい称号……それが『灰被り姫(シンデレラ)』!!そして今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる。五人兄弟の王子の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女たちが舞い踊る!』

 

 

 

 

「………………は?」

「おかしいな、僕の知ってるシンデレラと何か違う」

「最近のシンデレラは物騒だなー」

「数馬、あからさまな棒読みは止めようぜ」

「…………何か、足音が聞こえるんだけど」

 

何処か変なナレーションを聞いて皆首を傾げるも、何やら大勢の足音が聞こえてきたのでそちらを振り向くと、

 

 

 

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

 

恐らくIS学園の女子生徒の殆どが、ウェディングドレスを纏い、剣やら銃やらで身を固めて男子達に襲いかかってきた。

 

「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」」」」」

 

驚くチェイス達であったが、女子生徒達は剣で斬りかかって来たり、遠距離から撃ってきたりと様々な方法で迫ってくる。

 

「ミューゼル君!」

「覚悟っす!」

「ぬぅ!」

 

チェイスはいきなりドレスを着たダリルとフォルテに襲われるが、何とかそれを往なしていく。

 

が、この二人だけで終わるはず無く、

 

 

「え~いっ!」

「っ!…………山田教諭?」

 

今度は後ろから真耶の追撃が襲い来る。

 

「ミューゼル君!何も言わずにその王冠を渡して下さい!」

「な、何故………?」

「こういう場所じゃなきゃ!」

「スコールさんに優勢に出れないっす!」

「だから……」

「「それを頂戴!(下さいまし!)」」

「!?」

 

突如、背後からビームと銃弾が撃たれた。

チェイスが振り向くと、そこにはセシリアとシャルロットが。

 

「オルコット、デュノア………お前らもか!?」

「そ、そうですわ!」

「僕らだってミューゼル君の事好きなんだから!」

「っ!」

 

まさかこんな場所で告白されるとは思ってなかったチェイスは驚きで動けなかった。

 

「「「「「覚悟!!」」」」」

「ちぃ!!」

 

結局チェイスは5人を始め、更に複数の女子に追い掛けられる事に。

 

 

 

 

『何でこういう時に参加できないの!?羨ましい~!!』

 

楯無は舞台裏でマイクを握り潰す勢いで握りながら悔しがっていたことを、チェイスが知る由もなかった。

 

 

 

 

 

「チェイス、爆発しろ!!ってうわぁぁぁ!!」

 

弾も弾で追い掛けられる中、必死に叫ぶ。

 

「俺には好きな人がいるんだぁぁぁぁぁ!!!」

『知るかぁぁぁぁ!!』

「知ってくれェェェェェ!!!」

 

だが景品である王冠を取れば男子と同室になる権利が得られる事で頭が一杯な女子達に通じるはず無く、血眼で弾を追い掛ける。

 

 

「御手洗君、もらったぁぁぁ!!」

「うぃっ!?」

 

数馬は真剣での一刀両断を何とかかわす。

 

「くっそー……こうなりゃ強引に振り切るしかねぇな!」

 

と言いながらマッハドライバーを腰に付けると、

 

 

 

 

『王子様はとある悪い魔女から、自らの剣を手に取ると電流が流れる呪いを受けてしまったのです!』

「は?……………ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

楯無のアナウンスを聞いてその意味を理解した数馬に強力な電流が流れた。

 

 

要するにISーーーーライドスーツも使えないのだ。

 

「数馬ーーっ!!」

「数馬が死んだ!」

「この人でなし!」

「い、生きとるわ……………!」

「だったら王冠を外せば………!」

 

何とか生きてる旨を伝える数馬を見て、別の場所で追い掛けられていた優は、王冠を外そうとした。

 

 

が、

 

 

 

『王子様にとって国とは全て。その重要機密が隠された王冠を失うと、自責の念によって電流が流れるのです!』

「え?………あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

外していた為に優も数馬同様に強力な電流を浴びてしまう。

 

「優ーーっ!!」

「優も死んじゃった!」

「この人でなし!」

「"も"って何!?俺、死んでねーから!!」

「勝手に、殺さないでくれよ……!」

 

フラフラと立ち上がりつつ、落ちていた武器で対応するが、いくら女子を倒しても、また次の女子が襲い掛かってくる。

 

 

 

『『『『『どうするよ、オイ!?』』』』』

 

 

5人の心が1つになったその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォォォンッ!!!

 

 

 

体育館の外から爆発音が響き、全員の動きが固まった。

 

「な、何…今の?」

「花火……にしては大きすぎるよね?」

『今の方角は恐らく、ISの保管室……………まさか!』

 

周囲や客席にどよめきが走る中、チェイスは何やら嫌な予感を感じ取った。

 

「更識!専用機を使えば電流が流れる装置を今すぐ解除しろ!!」

『え、えぇ!分かったわ!』

 

楯無も何かを悟ったのか、ふざけ無しで装置を解除した。

 

「弾、数馬、優、カイト、百合!」

「「「「「おう(はい)!」」」」」

 

その場の弾達と客席にいた百合に呼び掛けると、全員ライドスーツを纏う。

 

 

『変身!!』

 

《Break up!》

《シグナルバイク!ライダー、マッハ!》

《ドライブ!タイプ・スピード!》

《レモンエナジーアームズ!Fight power!Fight power!Fi-Fi-Fi-Fi-F-F-F-F Fight!》

《メロンエナジーアームズ……!》

《ピーチエナジ~ア~ムズ!》

 

各々変身完了すると、体育館の外に向けて飛び出した。

 

『鈴さん、ラウラさん!ここは任せました!』

「よ、良く分かんないけど…」

「任されたぞ!」

『お願いします!』

 

マリカは一緒にいた鈴とラウラ、そしてセシリアとシャルロットに体育館の人達を任せる。

 

『山田教諭、ケイシー、サファイア、オルコット、デュノア……不用意に動くな』

「っ!」

「でもどうして!?」

「うちらも専用機持ってるし……」

『敵の狙いは恐らく、ISの破壊だ!専用機を持っているお前達も狙われる………外の奴等は俺達が片付ける!だから騒ぎが収まるまではここにいろ!良いな!?』

「わ、分かった!」

「気を付けてください!」

 

 

 

 

 

 

 

「止まりなさい!この怪物!」

『怪物ぅ?それはISに取り付かれたてめぇらだよ!おらぁぁぁっ!!』

 

教員用のISを纏った女性教師の銃撃の嵐に怯まず、ハンマーを模した異形ーーーークラッシュロイミュードは腕のハンマーを勢いよく振るい、女性教師に叩き付けた。

 

「がっ、ぁぁっ……!!」

 

絶対防御を無視して襲い来る痛みに顔を歪めると、クラッシュロイミュードは更に高熱を纏わせ、女性教師ごとISを破壊した。

 

『げっへっへ!俺のノルマは達成だな!』

 

 

 

 

 

 

 

「く、来るなぁぁぁ!!!」

『クククッ!今の俺の肉体は最高級!そんな玩具で壊せるかよ!』

「いやぁぁぁぁ!!」

 

別の方角では、複数の教師相手にたった一人で圧倒的戦闘力を見せつける、紫の手甲を着けた異形ーーーーアイアンロイミュード。

 

『はっはっはぁ!そんな玩具に盲信した事を悔やんで逝けェ!!!』

「か、体が………!」

「遅く、なってっ!?」

『えぁぁぁぁっ!!』

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

重加速によりまともに動けないところを、鈍く重いパンチを受け、ISは大破。

女性教師達はISから投げ出され、そのまま絶命。

 

 

その他にもIS学園保有の訓練用ISが、次々と亡国機業の機械生命体ーーーーロイミュードにより破壊されていく。

 

 

 

 

 

 

「くっ!一体何が………!」

 

その中で、千冬はそれらの事を対処しようと動くも、動けば動くだけ状況も悪化していく。

 

 

「分からないか?………IS学園はもう終わるのさ」

「っ!誰だ!?」

 

その時、後ろから聞き覚えのない男の声が聞こえ、千冬が振り向くと、そこには真紅のコートを着た男が千冬の眼前に仁王立ちしていた。

 

「俺はハート……………今このIS学園を侵攻している亡国機業のトップだ」

「…亡国機業!」

「さて、本題に入ろうか……………むんっ!」

「…っ!」

 

ハートはその体をロイミュードボディに変化させると、千冬にガントレッドを投げ渡した。

 

「これは……?」

『篠ノ之束の遺作だよ。名は"白式"…………嘗て貴様が乗っていたISーーーー"白騎士"のリニューアル品だ』

「っ…………待て、遺作だと?どういう意味だ!?」

『……篠ノ之束はもうこの世にいない。俺が、殺した』

「っ!?」

 

ハートロイミュードから告げられた事実に、千冬は激昂した。

 

「……貴様、よくも私の親友を!!!」

『…………たった一人の友を奪われただけでこの怒り様……。その怒りを貴様等にぶつけたい人間は、大勢いるというのに』

「何…!」

『嘗て貴様等が起こした、"白騎士事件"…………あれによって大勢の人間が死んでいる!!』

「なん…だと……!?」

 

そんな事はない、あの事件で死傷者は……

 

 

 

『あの日貴様が往なしたミサイルで、沢山の人間は死んでいる。そして、今尚後遺症で苦しむ人も大勢いる!それを知ろうともせずに、貴様等が平穏を享受している…………俺はそれが許せん!!そして、ISという玩具に、女尊男卑という下らん幻想に取り付かれたこの世界が!!俺は腹立たしくてならんのだ!!!』

 

ハートロイミュードの怒りを肌で感じた千冬は圧倒されていた。

この男の怒りは、言っている事はーーーー事実だと、千冬は感じ取った。

 

『…………だが、この怒りは試合でぶつけよう。織斑千冬、そのISを纏い、俺と戦え』

「………貴様が負ければ?」

『俺が負ければ亡国機業の負け、そして貴様が負ければIS学園の…………ISの負けだ』

「…………良いだろう、受けて立つ!」

 

 

千冬はガントレッドを嵌めると、ハートロイミュードを伴い、普段は使われていないアリーナへと向かって行った。

 

 

 

 

 

そして今、IS学園を守るため、壊すための決戦がーーーー

 

 

 

 

 

 

始まろうとしていた。

 

 

 

 

 




今回は予告無しです


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『混戦』

希望を潰すようで申し訳ありませんが、束さんは本当に死んでます。

何故なら初期案の時点で電子頭脳化という発想がなかったから(ry




 

チェイサー達が体育館を飛び出して数時間が経過した。

 

 

外からの轟音で混乱していた生徒達も、セシリア達代表候補生によって落ち着きを取り戻していた。

 

 

が、それは直ぐに破られる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガァァァンッ!!

 

 

『!?』

『IS、壊す…!』

『さぁーて、お前達は俺を楽しませてくれるかな?』

『壊す!壊す!げっへっへ!ISは全てスクラップだぁ!!』

 

 

体育館の扉が強引に破られ、クラッシュロイミュード、アイアンロイミュード、そして剣を持ったロイミュード、ジャッジ、そして複数のロイミュード部隊がそこから体育館の舞台に飛び込んできた。

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

「か、怪物!?」

「助けてーーっ!!」

 

途端に混乱にざわめく生徒達。

 

『うるせぇぞ餓鬼共!!』

 

その中の蝙蝠を思わせるバットロイミュードが銃口となってる指を向ける。

 

 

 

 

 

「そんな事、生徒会長の目の前でさせると思う?」

『ぐぎゃあっ!?』

 

だがバットロイミュードの死角から専用機、『霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)』を纏った楯無の蛇腹剣を喰らい、バットロイミュードは爆発した。

 

「……これ以上のIS学園での蛮行、この生徒会長、更識楯無が許さないわよ?亡国機業の機械兵士さん」

『はっ!ただの人間であるてめぇに、元人間の俺達が倒せるとでも!?』

「えぇ、勿論。ミューゼル君が言ってたわ、貴方達と戦うならば、貴方達を人間と思うな…………って」

『げっへぇ!スゲェ殺気だぁ!』

 

更識家当主として相応しい殺気は放つ楯無に、クラッシュロイミュードはおどけた口調で返す。

 

「皆!!今の内に舞台裏に避難しなさい!彼等の狙いはISを持った私だけだから!そうでしょう!?」

 

楯無は簪やセシリア達を庇うために、敢えて自分だけが専用機を持っていると嘘をついた。

 

『確かにそうだ…………だが、流れ弾に当たって死んでも、それはソイツの責任って事だ。革命に犠牲は付き物だからなぁ』

「っ………」

『フン、だがお前さんの心意気は気に入ったぜ?後ろの嬢ちゃん等を守るために見栄を張るなんてよ』

 

アイアンロイミュードの発言に楯無は顔を厳しくさせる。

 

 

 

 

「そんな犠牲…あっちゃいけない……!」

「簪ちゃん!?」

 

 

だがそんなアイアンロイミュードの言葉を否定したのは、打鉄弐式を起動させた簪だった。

 

「どうして!?隠れてなきゃ……!」

「お姉ちゃん、私も……私だってIS操縦者だもん!それを隠してお姉ちゃんが傷付くのを見守ったら、後悔するから……!だから、皆を、そしてお姉ちゃんも守るために、戦う……!」

「簪ちゃん……」

「そうですわ、楯無さん」

 

簪の言葉を皮切りに、セシリア達も次々とISを展開させる。

 

「っ、貴女達!」

「ただ受け身なのも、私の性に合わないしね!」

「ミューゼル君達も頑張ってるのに、代表候補生の僕らがサボってちゃ、ダメだからね」

「私にとって、彼女達は人としての楽しさを教えてくれた…………今ここで、その恩を返すとき!」

「…………で、箒。アンタはどうすんの?」

 

鈴は甲龍の武装である青龍刀、双天牙月を振り回して、後ろにいる箒に尋ねた。

 

 

 

 

「…………………私には、まだ戦う理由が見つからない。……だが、力があるのにそれを使わないで、ただ見守るのは、クラスメイトが傷付くのを見守るのは…………嫌だ!」

 

箒は決意の眼差しで、紅椿を展開する。

 

「私も戦う!戦いの先に、私の求める答えがあるのなら!」

「よくぞ言ったわ、箒!」

『…………篠ノ之束の妹か、面白い!』

 

ジャッジロイミュードは剣を構え、嬉しそうに言葉を震わせる。

 

『なら教えてやるよ……………てめぇらの正義が如何に脆いかを!』

『ISごと壊してやるぜぇーーっ!!』

 

アイアンロイミュードとクラッシュロイミュードも、戦闘体勢に移った。

 

「……あの紫の奴は、私がやる」

「だったら手を貸すよ、ラウラ」

 

アイアンロイミュードを見据えるラウラに、シャルロットが助太刀を進言した。

 

「これは私の戦いだ!お前を巻き込む訳には……………」

「そんなの関係ないよ。だって、仲間じゃない!…………それに、多分タイマンじゃ勝てないだろうし……ここはタッグ戦の方が良いだろうし、ね?」

「私もシャルロットちゃんの意見に賛成よ」

 

楯無もシャルロットの意見に賛成した。

 

「敵の力が未知数な以上、一対一は危険よ。それに、ラウラちゃんの能力は、タッグでこそ真価を発揮する………でしょ?」

「……確かに」

「なら私とセシリアはあのハンマーみたいな奴ね」

 

鈴とセシリアはクラッシュロイミュードを睨み付ける。

 

「…………篠ノ之さんは?」

「……私は、奴と戦う。奴も、それを望んでいる様だからな」

 

箒はそう呟くと、ジャッジロイミュードに単身向かって行った。

 

「ちょっと箒ちゃん!…………もう、仕方ないわね!だったら……」

「私とお姉ちゃんで、雑魚討伐………………」

 

更識姉妹は、亡国機業の下っぱロイミュードを相手取る事に。

 

 

「箒ちゃんには言いそびれたけど…………皆、深追いは禁物よ。そして…………死なないで!以上よ!」

「「「「「はい!」」」」」

 

 

各々戦うべきロイミュードを引き付け、学園を守るための戦いの火蓋が、今切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ…………以前にラウラが暴走した時の姿に似てる」

「……だからこそ、私は奴を倒す」

 

アイアンロイミュードを引き連れ、シャルロットとラウラは、体育館近くのグラウンドにて、アイアンロイミュードと対峙していた。

 

「じゃあ、アイツと戦うのを決めたのも、それが理由?」

「あぁ、奴は言わば力に驕れた私とも言える。奴を倒して、私は過去の自分を乗り越える!」

 

力強く宣言するラウラの言葉を聞いていたアイアンロイミュードは、やれやれと嘆息する。

 

『てめぇが俺を倒す…………?それは無理だな。何故なら、俺はてめぇらより強い!!』

「…………そうかな?思いは時として、物理的な強さをも上回るんだよ!」

 

近接ブレードを構えたシャルロットが、アイアンロイミュードの言葉を否定した。

ラウラはシャルロットを頼もしそうに見詰める。

 

「……私の背中、任せたぞ。シャルロット!」

「OK!」

『へん!なら……………………行くぜぇぇぇぇ!!!』

 

狂気に彩られた叫びを放ち、アイアンロイミュードは腕を伸ばして二人同時に攻め立てる。

 

「っ!」

「はっ!」

 

シャルロットは即座に盾を展開し防ぎ、ラウラは急上昇してそれをやり過ごす。

 

『あめぇんだよ!』

「っ!?」

 

だがそれを見越していたのか、アイアンロイミュードは伸ばした腕を屈折させ、拳をラウラにヒットさせる。

 

「ぐあっ!」

 

たったの一撃でシールドエネルギーを大きく消耗しながら、ラウラは地面に激突する。

 

『撃ち取ったりぃ!!』

「ラウラ!…っ!」

『次はてめぇだ!』

 

アイアンロイミュードは接近してシャルロットと肉薄しようとするが、シャルロットはそうはさせまいと近接ブレードを巧みに使い、アイアンロイミュードの接近を許さない。

 

『ちぃっ!!』

「そこっ!」

『ぬっ?………こんなもんかぁ!?』

 

シャルロットは自身の得意とする技能、高速切替を使い、アイアンロイミュードの隙を縫うようにアサルトカノン、『ガルム』で銃撃。

 

動きを止めることは出来たが、あまりダメージはない。

 

 

「まだだよっ!」

 

だがシャルロットは怯むこと無く、近接ブレードを再び展開し、アイアンロイミュードを切り裂く。

 

『効かねぇよ、そんなブレード!』

 

対してダメージを見込めない様子だが、シャルロットは不敵に微笑む。

 

「確かにそうだね…………でも、僕は一人じゃないよ?」

『あん?………………っ!』

 

シャルロットの言葉に疑問を抱くが、気付くとアイアンロイミュードは体の自由が利かなかった。

 

『な、んだ……………こりゃ!?』

「私が何時戦闘不能になったと言った?」

 

 

 

シャルロットの後ろで、手をアイアンロイミュードに向けて翳すラウラが、そこに立っていた。

 

『てめぇ、倒した筈じゃ…………!』

「私があの程度で倒れると思うな!シャルロット!」

「うん!」

 

シャルロットはアイアンロイミュードに向けて盾の裏に内蔵されたパイルバンカー、『灰色の鱗殻』をアイアンロイミュードの無防備な体に撃ち込んだ。

 

 

 

 

『がっーーーーーーーっ!!』

 

体に連続で杭を撃ち込まれ、アイアンロイミュードはあちこちから紫電が流れ出ていた。

しかも追い打ちでラウラのレールカノンの一撃も貰ってしまう。

 

 

シャルロットは、最後の一発を撃ち込むと、ラウラに近接ブレードを投げ渡した。

 

「ラウラっ!」

「任せろ!」

 

近接ブレードを手に掴み、ラウラは瞬間加速でアイアンロイミュードとの距離を一気に詰める。

 

「以前の私は、他人との関わりを拒絶し、全てを独りで成し遂げようとした愚かな女だった!だが今は違う!共に競い合う仲間と共に!お前達を、私達の平穏を脅かす悪を、討つ!!!でゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

『がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』

 

自身の専用機のエネルギーを込めた必殺の一撃に、アイアンロイミュードのコアに亀裂が走った。

 

 

 

 

『………へへっ、そうかい…。なら、絶対に立ち止まるな、よ…………最後にてめぇらと戦えて、良かっ…………た……………………………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亡国機業に…………………栄光あれ!!!』

 

 

そう手を広げ力強く叫ぶと、アイアンロイミュードは爆発を起こし、その場から消え去った。

 

「…………彼も、人だったんだよね」

「あぁ、だが…………立ち止まって詫びるよりも、進んで行った方が、奴も気分が晴れるだろう」

「……そうかもね」

 

罪悪感を拭いつつ、二人はその場に座り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おぉぉぉぉぉ!!』

 

此方はセシリア、鈴のコンビ。

だがクラッシュロイミュードのパワーに圧され、防戦一方な展開に。

 

「このままじゃじり貧よ!」

「ですがあれほどのパワーをまともに受けたら!」

「…………だったら、援護ヨロシクっ!」

「鈴さん!?」

 

そうセシリアに短く告げると、鈴は双天牙月を握り締め、クラッシュロイミュードと真っ向からぶつかる。

 

『ゲヘヘ!俺と真正面からぶつかるなんてよぉ!命知らずも良いとこだぜ!』

「だったらその命知らずのパワー、受けてみなさいっ!!」

『げっへっへ!!』

 

クラッシュロイミュードの両腕のハンマーと、鈴の青龍刀が火花を散らす。

が、やはり人間を辞めてるクラッシュロイミュードの方が、やや優勢だった。

 

『そんな貧弱な力で俺様に勝とうなど、三万光年速いぜ!』

「光年は時間ではなく距離ですわっ!」

『ブヘェ!』

 

セシリアが鋭い突っ込みと共にビットからビームを放ち、クラッシュロイミュードを怯ませる。

 

「隙ありぃ!」

 

その隙に鈴は機能増幅パッケージ、「崩山」により2門から4門に増えた龍咆から通常時の不可視の弾丸ではなく、赤い炎を纏った弾丸を放つ。

 

拡散衝撃咆となり破壊力が向上した龍咆をまともに全弾喰らい、クラッシュロイミュードは情けない悲鳴を上げる。

 

『ぐぇぇぇぇ!!!』

「きたねぇ花火、ですわね!」

 

追い打ちとばかりにセシリアも、夏休みの特訓のお陰でビットと他の兵器との連携が可能となったので、ビットとライフルの連続集中砲火により更にダメージを負う。

 

『ぐへぇ!こ、こうなったら……………おりゃぁ!』

「「っ!?」」

 

追い詰められたクラッシュロイミュードは、奥の手と言わんばかりに重加速を発生させ、二人はまともに動けなくなる。

 

セシリアは直前にビットからビームを撃つも、それは軽々しく避けられる。

 

 

『げっへっへ…………いてぇのは一瞬だから安心し…………………ぐぎゃあっ!?』

 

だが突然の背後からの一撃にダメージを受け、重加速が解除される。

それは当然、セシリアと鈴の解放を意味していた。

 

「まさかセシリア、アンタ…………」

「…何とか、上手くいきましたわ」

 

 

 

 

 

 

 

セシリアは先程撃ったビームを、"曲げた"のだ。

それは、先日にチェイスから教わった偏向射撃。

 

あれからチェイスの教えを受け、セシリアは何回かに一回の頻度ではあるものの、偏向射撃を使えるようになっていたのだ。(重加速はあくまで体の動作が鈍くなるだけであり、思考などのスピードが衰える訳ではない)

 

 

『ぐ、ぐおおっーーっ!!』

 

立ち上がり怒りの咆哮を上げるクラッシュロイミュードだが、鈴の衝撃咆によりコア周辺の障壁を崩され、更にセシリアのビット全てを一点に集中させた一撃によりコアを破壊され、断末魔を上げることなく爆死した。

 

 

 

「ふぅ………」

「やるじゃん、セシリア!」

「決まって良かったですわ…………」

 

ホッとしたようにセシリアはその場に座り込んだ。

 

「皆、無事かな…?」

 

鈴もセシリアの隣に座り込み、全員の安否を気遣った。

 

 

 

 

 

 

 

一方、体育館ではーーーー

 

『うおおっ!』

「っ……!」

 

スパイダーロイミュードの攻撃を超振動薙刀、『夢現』で防ぐ簪。

その高速振動を活かし、そのままスパイダーロイミュードの腕を切断。

 

『ぐぇぇぇぇ!!!』

「私の後ろには、守るべき人達がいるっ!守る物があってこそ、ヒーローは強くなる!」

 

更に背中に搭載された2門の荷電粒子砲、『春雷』でスパイダーロイミュードをブッ飛ばす。

 

「だから、私は挫けない…………お姉ちゃんや、皆がいるからっ!」

「……嬉しい事言ってくれるじゃない、簪ちゃん♪」

 

カッコよく決めた簪の後ろから、楯無が嬉しそうに抱きついた。

 

「お、お姉ちゃん?!」

「んふふ~!よーし、お姉さん張り切っちゃうぞ♪」

 

簪成分(by楯無)を補充した楯無は、意気揚々と下級ロイミュード軍団相手に向かって行った。

 

『相手は一人だ!やっちまえ!』

『『『『うぉぉぉぉぉっ!!!』』』』

 

息づくロイミュード軍団の期待を粉砕する様に、楯無は特殊ナノマシンによって超高周波振動する水を螺旋状に纏ったランス、『蒼流旋』を使い、次々と凪ぎ払っていく。

 

『ぐあっ!』

『ぶぉっ!?』

『げへぇ!?』

「たぁぁぁっ!!」

『『『『ウワァァァァァ!!!』』』』

 

更には蒼流旋に設けられた4門のガトリングガンにより蜂の巣にされる。

 

 

 

『な、なんて奴だ……』

『これが、更識楯無…………!』

 

何とか生き残ったロイミュード達の周りに、霧が立ち込めていた。

 

 

 

「残念。もう終わりの時よ」

 

楯無が不敵に微笑み、指パッチンをするのと同時に、 簪も打鉄弐式最大の武装、『山嵐』

から48発の独立稼動型誘導ミサイルを発射させた。

 

そして楯無の指パッチンが合図で、ロイミュードの周囲で水蒸気爆発攻撃、『清き情熱(クリア・パッション)』が起こり、その場の下級ロイミュード全てを一網打尽にした。

 

 

 

 

 

体育館の外、そこでは紅椿を纏った箒と、ジャッジロイミュードが剣を交えていた。

 

「はぁっ!」

『…!』

 

箒の雨月、空裂とジャッジロイミュードのブレードジャッジが火花を散らし、そしてまたぶつかる。

 

「……1つ、聞いて良いか?」

『?』

 

箒は一旦剣を下ろすと、ジャッジロイミュードに疑問を投げ掛けた。

 

「貴方の剣はとても真っ直ぐだ…………そんな剣を巧みに使う貴方が、何故亡国機業に?」

 

ジャッジロイミュードが放つ剣捌きは、剣道全国大会優勝者の箒ですら見惚れる程の物。

 

 

そんな彼が、何故亡国機業というテロ組織に荷担しているのが、箒には不思議でならなかった。

 

ジャッジロイミュードは少し間を置くと、箒の疑問に答えた。

 

『…………決まっている。ISという悪を、それに取り付かれた奴等を、この世から駆逐するため……俺が剣を振るうのは、ソレだけだ!』

 

 

それを聞いた箒は確信した。

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…………やはり貴方は、この間迄の私と同じだ!」

 

雨月をジャッジロイミュードに向け、自分が抱いた思いを吐き出した。

 

「悪を徹底して非難し、やり直させる権利すら奪い、見殺しにする…………以前の私と、全く同じ考えだ。だがっ!」

 

箒は接近してジャッジロイミュードに斬りかかる。

ジャッジロイミュードはそれを難なく受け止めるが、箒の力により徐々に圧されていた。

 

『っ!?』

「例えどんな悪人でも、更正の権利がある!それを奪う権利は、私にも!お前にも!あるはずがないっ!!」

『がっ!』

 

そしてとうとう箒の剣が、ジャッジロイミュードを捉えた。

雨月は刺突攻撃の際に、レーザーを放出する機能があるので、それによりジャッジロイミュードは腹部にダメージを負う。

 

「…………お前のその歪んだ剣では、誰も裁けはしない!その剣ーーーー今ここで折る!!!」

『舐めるなぁ!!』

 

ジャッジロイミュードは電気を刀身に纏わせ、箒を切り裂こうとするが、箒はなんと雨月と空裂を捨てると、それを片手で受け止める。

 

『っ!?』

「そんなお前に、革命と宣い犠牲を物ともしないお前達にーーっ!!」

 

箒は紅椿の要たる『展開装甲』を使い、両腕の装甲をエネルギーブレードへと可変させる。

 

 

 

 

 

 

「正義を語る資格なんて、ないんだーーっ!!」

『ぐぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

高エネルギーを纏ったブレードによる一刀両断で、ジャッジロイミュードのコアごと切り裂いた。

 

 

 

 

 

「………………これは、以前の私との、決別の戦いだったのやもしれないな」

 

 

 

爆炎を瞳に映しながら、箒は一息ついた。

 

 

『それに気付かせてくれて、ありがとう…………ミューゼル』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も予告なしです


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『白と赤』


今回はハート様とちーちゃんの決闘です







 

「……………………………」

『……………………………』

 

IS学園にある普段は使用されないアリーナ、その中央にて一組の男女が睨み合っていた。

 

 

女の方は、IS界で知らぬ者はいない『戦乙女(ブリュンヒルデ)』――――織斑千冬。

対する男の方は、テロ組織『亡国機業(ファントム・タスク)』のリーダー――――ハート。

 

 

千冬は親友の束が作ったIS、白式を纏い、ハートはその体をロイミュードボディに変化させている。

 

「………行くぞ、ハートッ!!」

『…来い、ブリュンヒルデ!!』

 

千冬は接近ブレード、『雪片弐型』を展開し、ハートロイミュードに急接近する。

対するハートロイミュードは、自らの腕で応戦する。

 

「…ッ!」

『ほぅ、中々の力だな!………だがっ!!』

 

ハートロイミュードは雪片の刀身を鷲掴むと、千冬をアリーナの壁に投げ飛ばす。

通常のISとは比べ物にならないパワーに千冬は驚愕するも、壁をけることで激突を回避し、再びハートロイミュードに接近する。

 

「はぁっ!」

『ぬぅ!』

 

首にあたるギリギリのラインを躱しきったハートロイミュードは真紅の放電を放った。

 

「ぐぅぅっ!!」

 

予想外の一撃に千冬は吹っ飛ばされるが、そこに瞬間加速を使ったハートロイミュードの拳までもが飛んできた。

だが千冬はそれを雪片で防ぐ。

 

「……ッ!何と言う衝撃だ」

 

地面を滑りながら、千冬はハートロイミュードと距離をとる。

 

『……どうした?何故使わんのだ……零落白夜を』

「………」

 

ハートロイミュードの言う通り、白式には単一能力『零落白夜』がある。

自らのシールドエネルギーをコストに相手のシールドエネルギーを打ち消し、相手側の絶対防御を強制発動させる代物。

 

この能力を駆使し、千冬はブリュンヒルデの称号を得た。

だがこの技には当然リスクもある。

 

 

シールドエネルギーを消費するという事は、防御を捨てるような物。

更に一発一発の消費が激しく、易々と連発はできない。

 

先の一撃を受け白式のシールドエネルギーは既に半分。

打てても一発が限界なのだ。

 

「………」

『出し惜しみをしていれば……死ぬぞ!』

 

ハートロイミュードはアリーナの地面を砕き、瓦礫を千冬へと向かわせる。

向かい来る瓦礫を躱しながら、千冬は決心した。

 

 

『そうだ…………私は、負ける訳にはいかん。束の為、この学園の生徒たちの為にも――――っ!』

 

千冬の決心を物語るかのように、雪片弐型が変形しエネルギーの刃を形成した。

その青白く美しい刀身を見て、ハートロイミュードは感嘆の息を漏らす。

 

 

『……美しい。だが儚い輝きだな。まるで、積もっても溶けてゆく雪の様だ』

「………貴様を斬るのに、ちょうど良い儚さだ」

『……………良かろうッ!』

 

ハートロイミュードも自身の肉体に力を込め、デッドゾーンを発動させる。

 

 

「…………これが、最後の一撃だ」

『…………ならばその一撃、打ち砕いてくれよう』

 

 

 

お互いに深く腰を落とし構えると、

 

 

 

 

 

 

 

「『――――――――死ねっ!!!!』」

 

 

 

 

 

 

 

白い騎士と真紅の鬼は、アリーナの中央にて激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

《Execution!Full break!bat!》

『ぐぁぁぁぁぁっ!!!』

 

千冬とハートロイミュードが激突するより少し前、チェイサーはエグゼキューションバットにより下級ロイミュードを殲滅していた。

 

『………!』

 

だが背後から何者かの攻撃が襲い掛かり、チェイサーは一息つく間もなくウィングスナイパーを構える。

 

 

 

 

 

『流石の反応速度ですね……チェイス・ミューゼル』

 

そこに現れたのは、緑を基調とした肉体に脳の意匠が見られる新たなロイミュード――――ブレン。

 

『貴様は………』

『私の名はブレン……以後お見知りおきを』

『…貴様らテロリスト相手に、以後などないっ!』

《Tune!Chaser spider!》

 

チェイサーはファングスパイディーを展開すると、ブレンロイミュードに斬りかかる。

 

『おっと。随分短期でガサツで乱暴な人だ』

『…!』

 

だがブレンロイミュードはそれをいとも容易く受け止めると、チェイサーに電撃を喰らわせる。

 

『ぐぁぁぁ!!』

『はははっ!こんな物ではないでしょう……?あなたの実力は!』

『舐めるなぁ!!』

『っ!?』

 

チェイサーは油断しているブレンロイミュードをファングスパイディーの糸で拘束する。

 

『……お返しだっ!!』

『ぐぎゃぁぁぁぁ!!!??』

 

先程の意趣返しとばかりに、チェイサーは電撃をブレンロイミュードに流し込む。

 

『ぐぅぅっ……………そ、ソード!』

『ヒャッハァーーーーーーー!!!!!』

 

悶え苦しむブレンロイミュードの呼びかけに応え、赤いロイミュード――――ソードが糸を断ち切った。

 

『少しはやってくれますね……魔進チェイサーよ。だが、』

『てめぇが死神か!?俺を楽しませてくれよぉー!!』

『ええい、被るな!………ですが、もうじきIS学園も終わりですよ。今、外れのアリーナにて織斑千冬とハートが戦っている………。分かりますか?貴方方の抵抗は無意味だ。ソード!』

『了解だ!』

 

ブレンロイミュードとソードロイミュードは結託してチェイサーに襲い掛かった。

 

『ちっ………!』

 

何としてもアリーナに向かいたいチェイサーだがこの二人も放っては置けない。

するとその時、

 

 

 

 

《タイヤコウカーン!フッキングレッカー!》

《シフトカー!タイヤコウカン!トラエール!》

 

後方から伸びたワイヤロープがブレンロイミュードの体に纏わり付き、さらに続け様にソードロイミュードに向けて放たれていた弾丸が鉄格子になり動きを封じる。

 

『な、何ですかこれはっ!!』

『何だってんだよー!?』

『今のは……』

 

 

 

 

 

 

 

『チェイス!ここは俺たちに任せて!』

『お前は織斑先生のとこに行け!』

 

現れたのはドライブTWRとマッハの二人だ。

 

『優、数馬…………頼む!!』

 

 

一先ずその場を二人に任せ、チェイサーは外れに佇むアリーナに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「『――――――――死ねっ!!!!』」

 

先ず千冬が動き、二重瞬間加速を使いあっという間に間合いに入り込み右腕を上げていたハートロイミュードの肉体目掛けて一閃する。

 

『――――――――――ッ!!!!!』

 

右腕が吹っ飛び、更に肉体には横一文字の傷跡が。

 

 

 

 

―――――勝った!

 

 

そう確信した千冬だった。が、

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………………見事だったよ、織斑千冬。だが、終わりだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ、はぁ……………!!!!!』

 

全速力で向かい外れのアリーナに辿り着いたチェイサーが見た物は、

 

 

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

片腕を失ったハートロイミュードと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ゴフッ」

 

白式の装甲ごと身体を残った片腕で貫かれ、血を吐く千冬―――――と言う光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

ハート『これで、俺達の望む革命に、近づいた……と言う訳だ』

ソード『そんなゴミ屑みてぇな女、いねぇ方が良いんだよ!!』

チェイス「………千冬、姉」

IS ~黒き魔進~ 『想い』

チェイサー『姉が犯した罪は……俺が償う!!』



《マッテローヨ!》




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『想い』

近所の映画館のドライブ公開日が15日と言う珍事



???「これが……絶望だ」


 

ハートロイミュードは千冬の体を貫いた腕を引き抜き、そして千冬は力なく倒れ伏す。

 

 

『ーーーーーーーーーッ!!!!』

 

声にならない悲鳴を上げながら、チェイサーは倒れ伏した千冬に駆け寄る。

 

「うっ………………」

『…しっかりしろっ!』

《Tune!mad doctor!》

 

マッドドクターで千冬の治療を試みるチェイサーだが、千冬の出血は止まらない。

 

『無駄だ………仮に助かったとしても、臓器を潰した。碌な生き方は出来ん……それに、この世界を歪めた元凶を助けて何になる?』

『………』

 

ハートロイミュードの言葉を無視して、チェイサーは千冬の治療を続ける。

 

 

『ひゃぁっはぁーーーーーー!!!』

『ぐぁぁ!』

『がぁっ!?』

 

その場に現れた乱入者――――ソードロイミュードはしがみ付いて来たドライブTWとマッハを薙ぎ払いながら現れた。

 

『……フン!』

『きゃあぁ!!』

『うぁぁ!!』

『がはっ…!』

 

更に立て続けに現れたイカロスロイミュードとバロン、斬月・真、マリカ。

彼らは地面を転がりながら変身が解除される。

 

『……皆っ!』

『そんな屑を助けて何になるんだよぉっ!!』

『ぐぁっ……!!』

 

不意打ち気味に襲い掛かって来たソードロイミュードの一撃を諸に受け、チェイサーは千冬から引き剥がされる。

 

更にソードロイミュードはあろう事か、瀕死の千冬の頭を踏みつける。

 

「うぅ………!」

『貴様…………その足を退けろッ!!』

『へん、やなこった。此奴のせいで俺達は地獄を味わったんだよ……こんな女、死んでも悲しむ奴なんざいねぇよ!』

『…ソード、その足を退けろ』

 

だがその下劣な立ち振る舞いに我慢できなくなったのか、ハートロイミュードはソードに命令を下した。

 

『あぁ?……アンタだって此奴が憎いんだろ?なのに何で止めんだよ?』

『……二度は言わんぞ』

『ちっ、ホラよ』

 

舌打ちしつつもソードは足蹴にして千冬を開放する。

 

 

這いながらも千冬を助けようとしたチェイサーだったが、

 

 

 

 

「…………………い、一、夏」

 

掠れ掠れの声で弟の名を呼ぶ千冬を見た瞬間、突如として激しい頭痛に苛まれた。

 

『ぐ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

「ち、チェイス……!?」

 

痛みと共にチェイサーの頭に流れ込んできたのは、数々の心無い罵倒の声だった。

 

 

 

 

 

――――何だ、あの世界最強の弟なのにこの程度かよ

 

 

 

――――何でこれ位の事が出来ないの?千冬様の弟でしょ?

 

 

 

――――お前の様な出来損ないが、姉貴みたいに強くなれる訳ねーよ!

 

 

 

――――ねぇ、何で生きてるの?貴方が生きてたら千冬様の面汚しなんだけど。

 

 

 

 

 

『何、だ………これは…!?これは、俺の………記憶、なのか?』

 

 

自問自答を繰り返すチェイサーの前に、一人の少年が立っていた。

 

 

その子供は、チェイスとそっくりな顔をしていた。

 

『お前は…………』

 

まさか…と、呟く前に少年は消え、チェイサーの目の前にはある光景が広がっていた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『一夏、向こうの柱まで競争だ!』

『待ってよー千冬ねえ!』

 

中学生ほどの背丈の女の子と、まだ背の低い男の子が、仲睦まじく駆けっこをしていた。

 

『はぁ、はぁ……千冬ねえ速いよー!』

『ふふっ、そんな弱音ばかり吐いててもダメだぞ。お前も何時かは大人になるんだからな』

『大人、かぁ………俺、おっきくなったら千冬ねえみたいなカッコよくて強い人になる!それで困ってる人達を助けていくんだ!』

『一夏………嬉しい事言ってくれるじゃないか!よしっ、今日の夕飯はコロッケだ!』

『やたーっ!!』

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

『…………………千冬、姉』

 

痛みが治まったチェイサーは、自然とその名を呟いた。

その声は間違いなく、織斑一夏その者だった。

 

「…ミュー、ゼル」

『…………俺は、如何やら本当にアンタの姉だったらしいな』

 

千冬を抱き起しながらそう言ったチェイサーに、千冬は自然と涙を零した。

 

「ほん、とうに…一夏、なのか?」

『…あぁ』

「……ごめん、なさい。お前の、痛みに、苦しみに、気づいてやれ、なくて…………」

 

掠れ掠れの声で千冬はチェイサーに謝罪した。

 

「そして…………この、世界を、歪めてしまって…私は、死んでも償えない事を、してしまった…」

『…その話は、アンタの傷が治ってから聞く。今は……ゆっくりお休み、千冬姉』

「いち、か………」

 

チェイサーは千冬を優しく寝かすと、駆け寄ってきたドライブTWとマッハに千冬を任せた。

 

『チェイス…お前、記憶が』

『……姉を、頼む』

『…………分かった』

《タイヤコウカーン!マッドドクター!》

 

チェイサーから返却されたマッドドクターを受け取り、ドライブTWDは千冬の治療に専念する事に。

 

 

 

千冬を託したチェイサーは手負いのハートロイミュード、イカロスロイミュード、ソードロイミュード、そして後からやって来たブレンロイミュードの前に立ちはだかった。

 

『チェイス・ミューゼル………』

『確かに俺の姉は、この世界を歪め、多数の人の未来を、友の家族の命を奪ったテロリストだ………』

『ハッ!何を今更……』

『だがそれでも』

 

ソードロイミュードの台詞を無視し、チェイサーは言葉を紡ぐ。

 

 

 

『俺は嘗て、この姉の背中に憧れ、追い求めた…………俺にとって、唯一の肉親だ』

 

 

 

『この先、姉が動けなくなるのなら………姉の、身内の罪は、俺も背負う』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『織斑千冬が、篠ノ之束が犯した過ちは――――俺が償うッ!!!』

 

 

 

そう力強く断言したチェイサーは、懐から今朝スコールから貰った“ソレ”を取り出した。

 

 

「!あ、あれは……」

『マッハドライバー!?』

 

それを見て一番驚いたのはマッハ。

そう、チェイサーの手には、マッハの起動ツールたるマッハドライバーが握られていた。

 

「もしかして………!」

 

カイトの言葉が続くより速く、チェイサーは腰にマッハドライバーを宛がう。

ハーネスが展開されると、チェイサーの腰回りの装甲もなくなった。

 

『ッ!うぉっ!?』

 

チェイサーがマッハドライバーを身につけた瞬間、黒い何かがソードロイミュードを襲った。

辛うじて躱したソードロイミュードがチェイサーを振り返ると、それはチェイサーの手に収まっていた。

 

『…………………………』

《シグナルバイク!》

 

シグナルライディングパネルに先程の黒い何か――――シグナルチェイサーを装填。

 

 

 

 

『例え悪人でも更生する権利がある…………だが、それを革命と言いその余地すら奪う貴様等を、俺は決して許さん!!変身!!!』

《ライダー!チェイサー!》

 

シグナルライディングパネルを倒すと、紫のエネルギーフィールドが形成。

包み込まれたかと思うと、魔進チェイサーの装甲が一瞬にしてパージされた。

 

『ぬぁっ!?』

『うわっ!?……チェイス、なのか?』

 

 

白銀を基調としたスーツを纏うその姿は、魔進チェイサーの面影は有るものの、まるで印象が違って見える。

 

 

よりヒロイック然としたその姿に、その場の全員が見惚れていた。

 

 

 

唯一人を除いては。

 

 

『見てくれが変わっただけじゃねーかぁぁ!!!』

 

ソードロイミュードだけは相変わらず好戦的な態度で飛び掛かった。

が、着地する寸前に、チェイサーに喉仏を掴まれ、苦しむ羽目に。

 

『が、ぁっ……!』

『このパワー……デッドヒート以上のパワーだな』

『ぐへぇ!!』

 

ソードロイミュードを地面に投げ飛ばし、改めて対峙すると、スコールから通信が入った。

 

『チェイス、聞こえる?』

『母さん……実は』

『それは後で聞くわ………今貴方が纏うライドスーツは、魔進チェイサーの発展型にして最終形態――――チェイサーVersion2。まぁ名称はチェイサーV2で構わないわ』

『軽いな、オイ……』

『それと、新しく武装も追加してあるわ。存分に振るいなさい!』

 

通信を終えると、チェイサーはデータ領域からその武装を呼び出す。

 

 

『…………奇抜すぎだろ』

 

それは歩行者用の信号機が取り付けられた大振りの斧で、見た目のインパクトの大きさにチェイサーも困惑した。

 

「スコールさんって、やっぱ独特のセンス持ってんなぁ……」

「ある意味、凄いです…」

「まぁ、車のドアの銃とか、ハンドルの剣とかだもんなぁ」

 

これには仲間たちも苦笑いを禁じ得ない。

 

『そんなふざけた武器で俺に挑もうってかぁ……ッ!』

 

大口を叩ききる前に、ソードロイミュードはシンゴウアックスにより切り裂かれていた。

 

『むぅんっ!!』

『ぐはぁ!!』

 

シンゴウアックスの一撃は凄まじく、ロイミュードボディでは比較的最新型の性能を誇るソードロイミュードですら手も足も出ずに追いつめられる。

 

『終わりの時だ………』

《ヒッサツ!》

 

頭部分のシグナルライディングパネルにシグナルチェイサーを装填し、持ち手のシンゴウプッシュボタンを押すチェイサー。

そしてそのまま斬りかかろうと振りかぶった瞬間、

 

 

 

 

《マッテローヨ!》

『………………は?』

 

信号ランプが赤に光ったかと思うと、いきなり待てと言われ、チェイサーは困惑する。

 

『……これは、待てば良いの、か?』

《マッテローヨ!マッテローヨ!》

『………』

 

赤ランプと睨めっこしながらそう呟くチェイサーにシステム音声が鳴り響き、チェイサーは突っ込むのを止めたと言わんばかりにシンゴウアックスを立てる。

 

「アッハッハッハッハ!!」

「すっげぇー!スコールさんのセンスマジスゲェ!!」

「フフッ…!」

『これは、流石に………なぁ?』

『イヤー、脱帽だわ』

 

呑気に笑う仲間を見て、

 

『笑うなッ!!!』

『ふざけてんじゃねぇ!!!』

『貴様は交通ルールをまもれぇ!!』

《gun》

『ぐああああ!!』

 

怒声を上げ、更には空気を読まずに特攻してきたソードロイミュードにブレイクガンナーの射撃を浴びせる。

 

 

《イッテイーヨ!》

 

その間にエネルギーチャージが終わったのか、ランプが緑に輝くと、チェイサーはシンゴウアックスを掲げ、今度こそ必殺技を発動する。

 

『でやぁぁぁぁっ!!!』

《フルスロットル!》

『グァァァァァァァッ!!!!!』

 

断末魔を上げ爆発するソードロイミュードに構わず、チェイサーは今度はシンゴウアックスをハートロイミュード目掛けて投げ飛ばした。

 

『ッ!!』

『ハート!』

 

そうはさせまいと、ブレンロイミュードが電撃でシンゴウアックスを弾く。が、

 

 

『その片腕も、貰って行く!!』

 

チェイサーは脳波信号でシンゴウアックスを自身の方へ引き寄せると、隙間を縫うようにして接近し、ハートロイミュードのもう片腕を切断した。

 

『ぐぅ……!!見事だな、チェイス・ミューゼル………』

『おらぁっ!』

『ぬぅ!』

 

もう一撃はイカロスロイミュードの突風に阻まれてしまい、後ずさる。

 

『だが、これで当初の目的は果たした……。ブリュンヒルデを失ったこの世界は、最早丸裸も同然。この場の戦いは、お前たちの勝ちだ………!イカロス!』

『っしゃぁ!!』

『っ!』

 

イカロスロイミュードは羽ファンネルの弾幕でチェイサーを足止める。

 

『待て!!』

 

だが、煙の先に、ハートロイミュード達はいなかった。

 

 

 

『………………………』

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『チェイス・ミューゼル……』

 

撤退したハートロイミュードは、心にある感情が湧き上がるのを感じた。

 

 

 

『奴ならば………』

 

 

 

 

それは――――喜びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

優「芳しくないみたい……織斑先生」

チェイス「すまなかった……カイト」

箒「姉さんの過ちは、私が背負うさ……お前が全部背負う必要はない」

IS ~黒き魔進~ 『事後処理』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?




チェイスが殺すのは更生の余地が無いほどの外道な悪人だけです。それ以外では殺したりはしません。



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『事後処理』

皆さんお久しぶりです

リアルが凄く忙しくて投稿する暇もありませんでした………(主に引越し作業とかで)


お蔭で職場から遠のくわ友達の家も遠のくわで………親マジ絶許


 

亡国機業との戦いは、(一応)IS学園側の勝利に終わった。

だが、IS学園が受けた被害は甚大であった。

 

 

学園の保有するISは、訓練機含めて破壊され、残ったのは各国の代表候補生と篠ノ之箒の専用機だけである事。

更には多数の教師陣の死傷者の数。

 

 

そして、一番の決定打は、

 

 

 

「…………どうなんだ?」

「……芳しくないみたい、織斑先生」

 

戦乙女(ブリュンヒルデ)――――織斑千冬の敗北だ。

あの後千冬はフリーダム・スカイへと運ばれ治療を受けたが、意識を取り戻さなかった。

 

「もう少し位置がずれていたら、助からなかったみたい……」

「…意識は、どうなんだ?」

 

弾が尋ねると、優はチラッとチェイスを見た後、重苦しそうに告げた。

 

「意識はない……だから自力で食事も摂れないし、全く動けない。でも、脳幹や臓器は正常に機能してるって………」

「それって…………」

「俗に言う…植物状態、らしい」

「そんな………そんな事って!」

 

悲痛そうに百合が叫ぶ。

だが当のチェイス本人は、何も言わずに背を向けた。

 

「……チェイス、お前」

「…………少し、風に当たってくる」

「お、おい!」

「止せ」

「数馬……」

 

引き止めようとする優を、数馬が制止する。

 

「一番辛いのは、チェイスなんだからよ……」

「…………」

 

何処か悲しさを漂わせるチェイスの背中を、カイトは静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「……篠ノ之、か」

「ミューゼル」

 

半壊した学園の屋上にチェイスが赴くと、そこには先客――――箒が佇んでいた。

 

「どうか、したのか?」

「…少し、風に当たりにな」

「そう、か」

「……そういうお前は?」

「…………見ていたんだ。姉さんが創り出してしまった世界を」

「?」

 

チェイスは訳が分からず首を傾げると、箒は腕に通した紐――――紅椿の待機状態を眺め、静かに呟いた。

だがその視線は、まるでこことは違う世界を見つめているようだった。

 

「…姉さんは、昔から宇宙について感心を持っていてな。私がまだ幼い時にも、頻りに宇宙について熱く語ってたよ」

「………」

「私には何の事だか分からなかったし、それに、姉さんは苦手だった。………だけど、その時の姉さんの顔は、紛れもない、“篠ノ之束”だったんだ。………多分、姉さんがISを産み出したのは、この広い空の向こう側を、もっと知りたかったからだろうな」

 

チェイスは、ただ黙って箒の話を聞いていた。

 

「だけど、姉さんが望んだ物とは違う形で、ISは世界に広まった……そればかりか、大勢の人々が苦しんだり、亡国機業の様な奴等まで生み出してしまった…」

「…そう、だな」

「……なぁ、ミューゼル」

「?」

「姉さんがやりたかった事は、ISが産まれたのは、間違いだったんだろうか?」

 

そう静かに、箒はチェイスに質問した。

数秒の沈黙の後、チェイスは口を開いた。

 

「………やり方は、間違っていた。だが、彼女のその真摯な思いは、本物だったと思う」

「………そう、か。ありがとう、ミューゼル」

「…まさか篠ノ之、お前」

「何となくだが、察しは付いてた………姉さんは、もうこの世にいないのだろう?」

 

そう真っ直ぐに此方を見詰める箒に隠し事は無駄だと悟ったチェイスは、

 

 

「……あぁ」

 

そう短く、肯定した。

 

「…すまなかった。篠ノ之、いや…………“箒”」

「!!」

「お前の姉さんを、束さんを助けてやれなくて」

 

チェイスはこの時、チェイス・ミューゼルではなく、織斑一夏として、箒に頭を下げた。

 

「…そして、お前の想いにも、気づけてやれなくて」

「いち、か……?」

「あぁ……でも、俺はもう戻れない。織斑一夏としては、生きれないんだ。だから、お前の想いには、答えられない」

「……………いや、もう良いんだ。私の好意は、ただの依存でしかなかった。それを、お前に教えられたから。だが……最後だけで良い、私の名前を、もう一回呼んでくれ」

 

チェイス――――否、一夏は、

 

「今までありがとな、箒」

 

昔と変わらない声音で、そう告げた。

箒は一瞬呆気に取られるも、直ぐにふわりと微笑むと、

 

 

「こちらこそな、一夏」

 

清々しい顔で、屋上を去って行った。

 

 

 

「………これで、良かったのかい?」

「…カイト」

 

暫く経って、屋上の物陰からカイトが出て来た。

 

「あぁ。俺が今更、過去に戻るなんて許されないからな」

「……」

「…すまなかった、カイト」

「へ?」

 

チェイスは今度はカイトに頭を下げた。

 

「俺の姉は、お前の父親を………許してくれなくても良い。俺の姉は、それだけの罪を犯したのだから」

「…………チェイス、頭を上げなよ」

 

カイトに言われ、チェイスが頭を上げると、カイトは静かに笑っていた。

 

「僕は、君に謝ってほしい訳じゃない。ちゃんと、織斑先生の言葉を、聴きたいんだ」

「……カイト」

「それにさ、ずっと思ってた。白騎士を憎んでも、父さんは帰ってこないって………。だから、僕は、君や織斑先生を憎まないし、恨まない事にした。全ては、亡国機業を倒してからってね」

 

それに、とカイトは続ける。

 

「友達を憎むなんて、ましてやその肉親を憎むなんて、出来ないしさ」

「………そう、か」

「それに、気になる事も出来たしね」

「どう言う事だ…?」

「……何れ話すよ。じゃ、また明日」

 

おやすみ~、と言ってカイトもまた去って行った。

 

 

「見守っていてくれ………姉貴」

 

拳を握り、眠り続ける千冬にそう言うと、チェイスはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

夜、IS学園。

 

 

『…………………フッ』

 

 

何者かが上空で佇んでいた事に、気付く者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「……よう」

「お早う、チェイス」

 

翌日、チェイスは学園の食堂にてカイトと会った。

 

「おはよー!ミューゼル君、色川君!」

「昨日の学園祭は盛り上がったよね~!」

「……は?」

 

女子生徒が放ったこの一言に、二人は違和感を覚える。

それもその筈、昨日は亡国機業が攻撃を仕掛けていたので、それどころではなかったのだから。

 

「な、何言ってるの?昨日は――――」

「ヤッホー、ミューゼル君♪」

「っ…更識」

「昨日の演劇はホントに素晴らしかったわ~!お姉さん感激!」

『おかしいぞ、まるで昨日の事件が、なかった事になっている……?』

 

 

 

「だーっ!だから昨日のバンドなんて知らないって!!」

「ってか昨日はそれどころじゃなかっただろ!?」

「え~、そうだっけ?」

 

さらに困惑した叫びを上げる弾と数馬まで合流した。

 

「おーチェイス!何か皆様子が変じゃね?」

「大声出さなくても分かる……」

「って言うか織斑先生が倒されたってのに………」

「どう言う事でしょうか……?」

 

 

だが次の瞬間、とある生徒からの言葉にチェイス達は耳を疑った。

 

 

 

「織斑先生って…………新任の先生?」

『!?』

 

 

 

「そう言えば今日一組に新しい副担任の先生が来るんだって~!」

「ホントに!?」

「どんな先生だろ~?」

 

雑談を繰り広げる生徒達を他所に、チェイス達の顔は深刻になる。

 

「どーなってんのさ!?何で皆昨日の事件知らないみたいに…」

「まるで、記憶が書き換えられたみたいです……」

「…篠ノ之!」

 

百合の言葉に何か感じたのか、チェイスは偶然通りかかった箒を捕まえる。

 

「…?どうした」

「俺の“名前”を知っているか……」

「知ってるも何も、チェイス・ミューゼルだろう?」

「……その紐は」

「昔姉さんに貰った物だが……どうかしたのか?」

「………いや、何でもない」

 

首を傾げつつ、箒は別の席に座った。

 

「恐らく……」

「恐らく?」

「俺達以外の全員、昨日の出来事とISに関する記憶が………無くなっている」

『…!!』

 

チェイスの語った推測に、五人の表情は凍りついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、とあるホテルの一室。

 

「IS学園の記憶操作………お前だな?」

『あぁ。だがこれにより、無関係の人達が血を流す事もない…それは君が望んでいた事だろう?ハート』

「恐ろしい力だよ全く――――――――フリーズ」

 

 

 

ハートが見詰めるモニターの中にいたのは、

 

 

 

「これで、私達の望む革命――――グローバル・フリーズが、実行に移せる」

 

 

 

国際IS委員会副長官――――真影壮一。

 

 

そしてその手には、血のように赤いISコアが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

チェイス「只事ではないな……」

カイト「って事は……IS学園だけが、ISに関する記憶を操作される?」

スコール「全世界のISが、一斉攻撃を……!?」

IS ~黒き魔進~ 新章:対亡国機業

『凍結』


『君達の父親は本当に優秀だったよ…いや、優秀過ぎたね』






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対亡国機業
『凍結』


次々と死んでいく…………メディック、お前まで!


ただし蛮野、テメーは逝ってヨシ。慈悲はない


「この度、IS……藍越学園の副担任として赴任します、ナターシャ・ファイルスです。宜しくね、皆♪」

「皆さん、ナターシャ先生は元女性軍人なんですよ~。失礼のないように、お願いしますね!」

『宜しくお願いしまーす!!』

 

先日の亡国機業の襲撃事件の騒ぎがまるで無かった事になったIS学園。

そして本日赴任したチェイスの恋人、ナターシャ。

 

「今、ナターシャさんISって言いかけたよな……?」

「もしかして、ISの事を覚えてるのでは…」

「…………後で聞いてみる」

 

そして唯一それらを覚えているチェイス達。

チェイスはそれを確める事にした。

 

 

 

 

「久しぶりね、チェイス♪」

「…元気そうだな、ナタル」

 

時間は経ち、昼休み。

チェイスは真偽を確める為に、ナターシャと共に屋上へと足を運んだ。

 

「……率直に聞くが、お前はIS、と言うワードを覚えているか?」

「えぇ。でも驚いたわ、急にこの学園の名前が変わってるもの」

 

ナターシャは手摺に凭れ掛かりながらチェイスの疑問に答えた。

 

「…?」

「私にはここがIS学園って分かってるけど、上官達はここを藍越学園って言ってたわ。それにーーーーここの教職員や生徒達、それに各国の代表候補生達の記憶からISに関する事柄全てが無くなってる」

「…………あぁ」

「…それともう一つ、IS委員会もこの事件を黙殺してる」

「!」

 

ナターシャから告げられた事実に、チェイスは顔を強張らせた。

それもその筈、かの女性権利団体も所属しているIS委員会が、ISを破壊されて黙っている訳がないのだ。

 

「何故、奴等までもが…」

「今回の事件を、彼等はまるで認識していない。恐らくは…………」

「上層部に、亡国機業の刺客がいる…か」

 

チェイスの挙げた可能性に、ナターシャは無言で頷く。

 

「これはスコールから聞いたのだけど……彼等はISに深い憎しみを抱いてる。だからこそ、IS学園からISに関する記憶を、何らかの力で操作。そしてその後は…………」

「ISの、破壊…………」

 

と、呟いた瞬間、屋上に弾が駆け込んで来た。

 

「チェイス、大変だ!奴等がドイツ軍のIS部隊を襲撃してるって!」

「…分かった。すまないナタル、午後の授業は」

「分かってるわ。真耶には私から伝えておくから」

「…………助かる」

 

一言礼を告げると、チェイスは弾と共に屋上を後にした。

 

 

「気を付けて、チェイス………………」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

同時刻、ドイツ。

 

 

 

「ハァ、ハァ………何なのだ、貴様等は!?」

 

ドイツ軍、シュヴァルツア・ハーゼは機械集団の襲撃を受けていた。

辛うじて立っているのは、シュヴァルツア・ハーゼ副官、クラリッサ・ハルフォーフ。

 

だがその専用機、シュヴァルツア・ツヴァイクの装甲には亀裂が走っており、SE残量も残り僅か。

 

「…ふむ、プロトタイプとは言えそれなりの出力だね」

「…!その、声は……っ」

「シーフ、片付けなさい」

『ヴァァァァァァ!!!』

 

謎の声の呼び掛けに応じるが如く吠えるのは、腕に鉤爪らしき装備が施された赤いロイミュード、シーフ。

 

「くっ……!黒ウサギ隊を舐めてもらっては、困るっ!?」

 

クラリッサはレールカノンによる砲撃を行おうとしたが、シーフロイミュードの鉤爪が心臓に食い込む様に刺さり、一瞬動きが止まってしまう。

 

だが次の瞬間、信じられない事が起こった。

 

シーフロイミュードが力一杯に腕を引っ張ると、それに吊られる様にして、シュヴァルツア・ツヴァイクがクラリッサの体から離れたのだ。

 

「なっーーーー!?」

 

ISを失った事により空中から地上に落下したクラリッサはその衝撃で気絶してしまう。

 

「…………ハッ!」

 

謎の人物は、手から冷気を放つと瞬く間にシュヴァルツア・ツヴァイクを粉々に破壊した。

 

「これで残るは、シュヴァルツア・レーゲンのみ………………ん?」

《メロンエナジースカッシュ!》

 

すると何処からともなくオレンジの光波が放たれるも、男はそれを容易にかわす。

 

「ほぅ、君達が噂の…………」

 

半壊した地に降り立ったのは、チェイサー達仮面ライダー。

 

『酷いです……!』

「やぁ、仮面ライダーの諸君。こうして会うのは初めてだね」

『……誰だ?』

 

見覚えがないのか、首を傾げるバロン。

だがチェイサーは顔を知っており、迷う事無く名前を言った。

 

『IS委員会副長官、真影壮一だな…………』

「如何にも」

『えっ!?IS委員会の副長官が、何でここに……っ!』

 

疑問に思ったのか、バロンがそう口にするが、彼の周りにいる下級ロイミュード、そしてシーフロイミュードを見て確信した。

 

『この事件は、まさかっ!』

「……そう、私達亡国機業が起こした物だ」

『っ!?』

 

真影の放った事実に、全員衝撃が走る。

 

『…………では、IS学園の全員の記憶を書き換えたのも、貴様か』

「あぁ。私の力だ…………っ!」

 

真影は静かに肯定すると、その肉体をロイミュードボディに変化させる。

その体は、まるで氷の様に、冷たく、そして恐ろしい形相。

 

 

『この肉体での我が名はーーーーフリーズ!』

『凍結の、ロイミュード…………』

 

チェイサー達は各々の武器を構える。

対するフリーズロイミュードは、ゆらりと手を翳す。

 

 

すると、その手からは強烈な吹雪が吹き荒れた。

 

『なっ、ぐぅ…………っ!』

『つ、つめてぇ……!』

『だ、だったらっ!』

《タイヤコウカーン!マックスフレア!》

 

ドライブTSはマックスフレアのシフトカーを装填し、炎を発生させる事で対抗しようとする。

が、吹雪の勢いは収まらず、逆にTSFの炎が弱まる始末。

 

『なっ、これでも駄目、かよっ……!?』

『どうした?それでも立花英介の息子かね?』

『っ!?』

『どうして、お父さんの名前を…………!?』

 

フリーズロイミュードが口走ったその名前に、ドライブTSFとマリカが動揺する。

 

 

『あぁ。彼はとても優秀な警察官だった…………いや、優秀過ぎたね。だからこそ我々の存在にいち早く気付いてしまい、寿命を縮めたのだからね』

『っ…………まさか、お前が!!』

 

 

 

 

 

『ふふっ。殺した人間でも、一応は覚えてるさ』

『っ………………!!!』

 

その一言で、ドライブTSFの中で、何かが切れた。

 

 

『アァァァァァァァッ!!!』

《ドライブ!タイプ・デッドヒート!》

《デッドヒート!》

 

怒りのままにタイプデッドヒートにチェンジ。

ブーストイグナイターを押して高温を放つと、そのままフリーズロイミュードに突進する。

 

『兄さん!!』

『優、落ち着け!』

『アァァァァァァァッ!!!』

『ぬぅ…!』

 

渾身の連続ストレートを何とかかわしたフリーズロイミュードは、全方位に吹雪を発生させる。

 

『っ、ぐぁぁぁぁ!!』

 

そのあまりにも強烈な一撃に、全員ライドスーツが解除されてしまう。

そしてそれは他のロイミュードをも巻き込んでしまい、シーフロイミュード以外全て爆散してしまう。

 

『……………君達は、ここで始末しよう』

 

手に光球を発生させ、止めを刺すべく迫るフリーズロイミュード。

 

 

 

『…致し方ない。トライドローン!』

『!?』

 

だがその寸前、倒れた優のドライブドライバーから声が響き、空中から両脇に赤と青のユニットが付いたトライドロンが駆けつけてきた。

 

「えっ!?」

「どうなってんだ…?」

『皆、早く乗りたまえ!』

「えっ、えっ!?」

『早くするんだ!』

 

言われるがままに、全員無理矢理トライドロンに乗り込むと、光弾を放ちながらフリーズロイミュードを牽制。

 

『ぐぅ…………!』

『さぁ、行こう!』

「アンタは、一体…………」

 

そのままトライドロンは空中へと避難し、フリーダム・スカイへと飛び去った。

 

 

『あの男、もしや…………』

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

「皆、大丈夫?」

「あぁ。だが、寒い……………」

 

何とかフリーダム・スカイへと戻ってきたチェイス達。

スコールからホットココアを受け取り、全員暖を取る。

 

「あぁ、生き返る…………」

「って言うかスコールさん。ドライブドライバーが喋ったんだけど、これって一体……」

「…優のドライブドライバーには、とある博士の意識がインプットされてるの」

 

 

『それが私と言う訳だよ、立花優君』

 

 

またもや勝手に喋ったベルトに、優はココアを吹き出す。

 

「ブッーーーー!?ゲホッ、ゲホッ………」

『おっと、驚かせてしまったね』

「で、貴方は一体……?」

『私の名前はクリム・スタインベルト。しがない研究者さ』

「とは言うけど、ライドスーツの基礎理学考案者で、私や亡国機業のハートの恩師よ」

 

 

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

 

 

 

 

 

 

スコールから告げられた衝撃の事実に、全員が驚きに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

スコール「本当に危ない時に、意識を目覚めさせるって」

ベルトさん『だが、憎しみだけでは、フリーズには勝てない。それは君や、百合が一番理解してる筈だよ』

優「俺は…………もう迷わない!行くぜベルトさん!!」
ベルトさん『OK!start your engine!!』

IS ~黒き魔進~ 『超加速』

赤き戦士は、憎しみの向こうに何を見る…………?

《ドライブ!タイプ・フォーミュラー!》


※予告とは違う話になるかもしれないですが、予めご了承下さい


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『超加速』

ドライブが終わった………やっぱ一年見てると終わる時感慨深いですねー


 

「…………」

 

フリーダム・スカイの屋上、そこで優は自身の無力さに打ちひしがれていた。

 

「……クソッ!!」

 

脳裏に浮かぶのは、フリーズロイミュード――――真影壮一と、自分と百合の父、立花英介の変わり果てた姿だった。

 

『…優』

「………俺さ、ずっと、あいつを探し出して倒す…そう思って戦い続けてた。でも………勝てなかったっ!」

 

幼い頃より、父の敵を討つ。それを胸に今まで生きてきた。

だが、結果は――――惨敗だった。

 

「あいつは、フリーズは……俺の手で倒さなきゃならないんだ!!」

『……優』

「…何だよ、ベルトさん」

 

優は手に握ったクリムに目を向ける。

 

『私は君が感じた痛みや苦しみが分かるとは言わない。だが、復讐の為に戦うのは止めたまえ』

「っ!!アンタに、アンタに何が分かるんだよっ!?」

『自分の怨嗟の為に戦って、君の父上が喜ぶのかっ!?』

「…!!」

 

クリムの一言が胸に刺さり、動揺する優。

 

『それだけではない。復讐の為に戦うという事はだ……自分の命すらも顧みずに戦うのと同義だぞ!それで君が死んだとして、チェイスや百合達が喜ぶのかね!?』

「………」

『…私はこのベルトから君の事を見ていたが、君は復讐なんて似合わない優しい少年だ。そしてその優しさこそが、君のエンジンに火をつけるのだ』

「ベルトさん…………」

 

ベルトのモニターに笑顔を映すクリムに、優は隅に残っていた復讐心が氷解していくのを感じた。

 

「そう、かもね……父さんが、そんな事を望む訳、ないもんな」

『そう、その笑顔だよ!それが君に本来の原動力だ!』

「ハ八ッ!…ありがとな、ベルトさん」

『礼などいらないさ。私たちはバディだからね!』

 

 

「優、ここにいたのね」

 

 

と、クリムと優が打ち解けあうと、そこにスコールがやって来た。

 

「あ、スコールさん」

『どうしたんだね?スコール』

「クリム先生の資料を見ていたら、面白いシステムがあったから」

「これは…………!」

『ほう、成長したね。まさか君がこれをも作り上げるとは』

 

クリムが感慨深げに言うと、

 

 

 

「何時までも子供ではありませんよ、先生」

 

 

 

スコールは微笑みながら、恩師に自身の成長を伝えた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

一方、チェイスと百合は真影が出入りしていたと言う人里離れた研究所の調査に訪れていた。

 

「兄さん、大丈夫でしょうか……」

 

百合が心配げに呟く。

 

「……アイツなら、また立ち上がるだろう。それは、お前がよく知ってるんじゃないのか?」

「…そう、ですね。ありがとうございます、チェイスさん」

 

そう諭すチェイスに、百合は心配げな面持ちではあるが、笑顔を見せた。

 

 

 

「おやおや、侵入者がこんな子供とは……驚きだね」

「「!?」」

 

と、そんな雰囲気をぶち壊すようにして、スーツ姿の男――――真影が姿を現した。

 

「真影…!」

「やはりこの場所は、亡国機業の研究所なんですね!」

「如何にも。君達の後ろにも、その実験体がいるよ」

 

真影が杖でチェイス達の後ろを指すと、

 

 

 

『ヴぁああああああああ!!!』

 

ケージを突き破りながらシーフロイミュードが襲い掛かった。

 

「っ!……変身!」

《シグナルバイク!ライダー!チェイサ―!》

 

奇襲をかわしながらも、チェイスはライドスーツを展開。

チェイサーⅡに変身すると、シーフロイミュードと交戦を繰り広げる。

 

「チェイスさん!」

『百合!お前は真影を!!』

「…ハイ!変身!」

《ピーチエナジ~!ロック・オン…ソーダァ……ピーチエナジ~アームズ!》

 

マリカに変身した百合は真影目掛けて駆け出す。

 

「やれやれ………まぁ、暇潰しにはなるかな」

 

不敵に微笑むと、その肉体を変化させる。

駆け出すマリカに向けて、お得意の猛吹雪を放つ。

 

『くぅ!…まだ、まだです!』

 

強烈な一撃に屈しそうになるも、何とか踏ん張りソニックアローを引き絞る。

 

『たぁ!』

『っ!……流石は、立花英介の娘だね』

 

フリーズロイミュードは手に氷の剣を精製すると、マリカと切り結ぶ。

 

『はぁぁ!!』

『むぅんっ!』

 

 

 

一方のチェイサーⅡも、シンゴウアックスを振り翳す。

が、シーフロイミュードの鉤爪が伸びたかと思うと、一瞬にして奪い取られた。

 

『なん、だと……!』

『ヴぁああああ!!』

『ちぃ!』

《gun》

 

シンゴウアックスの一撃をかわしながら、ブレイクガンナーの射撃により一瞬怯ませる。

 

《Tune chaser beetle!》

 

その怯んだ隙を利用し、ビートルバイラルコアを装填。

ホーンジャベリンを駆使し、シーフロイミュードに確実に傷を負わせていく。

 

『はぁ!』

『グガァァ!!』

 

エネルギーを込めた刺突攻撃を食らい、シーフロイミュードは地面を転がる。

すると、転がりながらシーフロイミュードはその肉体を元の人間体へと姿を変えていった。

 

 

 

「ヴぅ………ヴぅ…!!」

『子供、だと…!?』

 

その正体は、黒の眼球に金の瞳、そして流れる様な銀髪が特徴の少女だった。

 

 

彼女の名はクロエ・クロニクル。

嘗て束が育てていた少女――――だがチェイス達がそれを知る由もなく、戦っていたロイミュードの正体が少女だという事実に驚愕していた。

 

 

『ふむ、まだ感情面での縛りが緩いか……イカロス!』

『っ!キャア!』

 

フリーズがそう叫ぶと、一陣の風とともにイカロスロイミュードが駆けつけた。

 

『ったくよ、人使いが荒いぜ?真影先生よぉ』

『すまないね。だが今は彼女をブレンの元へ』

『了解っと』

 

イカロスロイミュードは羽ファンネルを展開すると、チェイサーⅡ目掛けて一斉掃射した。

 

『むぅ!?』

《Tune chaser turtle!》

 

だが直撃する寸前にタートルバイラルコアの武装、シェルディフェンダーにより直撃は免れるものの、煙の中には既にイカロスロイミュードはいなかった。

 

『酷いです!あんな小さい子供まで利用するなんてっ!!』

『酷い?……ならば今のIS科学者達はもっと酷い!』

『がはぁっ!』

 

怒りをぶつけるマリカを、それ以上の気迫でたじろがせたフリーズロイミュードはチェイサーⅡ達に語り始めた。

 

『今も何処かで、幾千幾万の名もなき孤児達がIS実験により命を落としているのだ。それに比べて、私の実験は彼女一つで事足りた。犠牲という意味では、私の方がまだ優しいほうだとは思わんかね?』

『……例え一人で済んだ、だと?……真影!人の一生を踏みにじる行為を平然と行う貴様は、あまりに醜いっ!!』

《ヒッサツ!マッテローヨ!》

 

シグナルチェイサーをセットすると、腰を深く落としてシンゴウアックスを構えるチェイサーⅡ。

 

『そんな罪悪感は………立花英介を殺した時に捨て去ったよ!!』

《イッテイーヨ!》

『てあぁぁ!!』

 

超低温の猛吹雪を放ち、チェイサーⅡを凍て付かせようとするフリーズロイミュード。

だがチェイサーⅡはそれをギリギリでかわし、一瞬にしてフリーズロイミュードの懐に潜り込む。

 

『なっーーーー』

『ぜあぁぁあぁぁぁぁぁ!!!』

《フルスロットル!》

 

ほぼゼロ距離からアクロスブレイカーを叩き込んだ。

 

「がぁぁっ……!!」

《オツカーレ》

『チェイスさんっ!』

 

当然発動者のチェイサーⅡも無事で済むはずなく、スーツが解除されて地面を転がる。

慌ててマリカが駆け寄るが、

 

 

『ふふっ、見事だったよ………だが!』

『っ!?危ない!!』

 

突如煙から放たれた冷凍光線からチェイスを庇い、マリカも壁に叩き付けられる。

 

「百合!!…………!」

 

 

煙が晴れると、そこには

 

 

 

『だが、この私を倒すには、何もかも程遠い』

 

無傷のフリーズロイミュードがいた。

 

「な、に………!?」

『君達が今まで戦っていたのは、私の氷人形だよ』

 

フリーズロイミュードが自身の右隣にゆらりと手を翳すと、その場に氷の塊が現れ、更に一瞬の内にフリーズロイミュードの外観を形成した。

 

「!」

『さて、他の仲間達が駆けつける前に、始末させてもらおうか………』

 

フリーズロイミュードはそう言って、手に氷の塊を作り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待てよ」

 

と、その止めの一撃を制止する声が響いた。

 

『?………君は』

「兄、さん…………!」

「優………」

 

声の主は優だった。

その手にはドライブドライバーと青いシフトカーが握られていた。

 

『君か………』

「フリーズ。俺はアンタを倒す」

『フッ、復讐の為かね……?』

「…違うさ」

 

ドライブドライバーを腰に装着し、アドバンスドイグニッションを捻る。

 

「確かに今まではそうだった。でも……今は違う。お前によって、これ以上俺達と同じ悲しみを味わって欲しくないから!他の人達の平和を守る為に!もう誰一人、凍結させやしない!!!」

『良くぞ言った、優!』

「………ベルトさん、ひとっ走り付き合えよ!!」

『OK!Start your engine!』

 

青いシフトカーをシフトレバーに変形させ、シフトブレスに装填する。

 

 

 

 

 

 

「変身!!」

《ドライブ!タイプ・フォーミュラー!》

 

青いエネルギーフィールドに包まれ優の体に鎧が形成される。

変身が完了すると、両腕にタイヤが二つ付いた。

 

 

「な…!」

『何だ、その姿は!?』

『………さぁーて。追いつけるなら、追いついてみろ!』

 

腕を軽く鳴らすとドライブ・タイプフォーミュラー(以下TF)はフリーズロイミュード目掛けて一気に駆け出した。

 

『舐めるな!』

 

その動きを止めようと吹雪を放つが、

 

 

 

《フォー・フォー・フォーミュラー!》

 

ドライブTFは冷静にシフトレバーを三回動かした。

すると、ドライブTFのスピードが、肉眼は勿論、フリーズロイミュードですら追えないほどのスピードに。

 

『なっーーーー!!』

『隙だらけだぜ!!』

『ぐがぁぁぁぁ!!!』

 

ハンドルブレードとの併用で四方八方からフリーズロイミュードを切り裂き、ダメージを蓄積させていく。

ドライブTFは高速移動を終えると、痛そうに首を摩っていた。

 

『いって~。これG掛かり過ぎじゃね?あまり守られてないよ!』

『まぁ安心したまえ!フォーミュラーのアシストシフトカーも開発中だろうからね。それよりも!』

『あぁ。来い、トレーラー砲!』

 

ドライブTFの呼び声に答えるが如く、粒子が集まり、やがてそれはトレーラーを模した大型の大砲を形成した。

 

『フリーズ、いや――――真影壮一!呪われた過去と一緒に……振り切らせてもらうぜ!!』

《フォーミュラー砲!ヒッサーツ!フルスロットル!》

 

シフトライディングスロットにシフトフォーミュラーを装填。

更にコンテナ部分のシャッターゲートパネルにシフトスピード、シフトワイルドを装填。

 

 

ハーフミラーにFULLの文字が浮かび上がると、トレーラーキャノンにエネルギーがチャージされる。

 

『ぐ、うぅ…………!!』

『くらえぇぇぇ!!!』

《フルフルフォーミュラー大砲!》

 

必殺技、トレーラーインパクトはフリーズロイミュードが悲鳴を上げることも許さずに研究所を跡形もなく吹き飛ばした。

 

 

「………ふぅ~」

『Nice drive!』

「おうっ、イテテ………」

「やり過ぎだろ………お前」

「兄さん!!」

「イテテテ!良いじゃんか別にー!!」

 

 

この後、別の場所を調査していた弾達と合流した優達は、フリーズロイミュードを倒した喜びのまま、フリーダム・スカイへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

優達が去って暫らく後――――

 

 

『ぐっ!はぁ、はぁ…!!』

 

何と、フリーズロイミュードは生きていた。

何とか瓦礫を退かし、フラフラになりながらも立ち上がる。

 

 

『許さん、許さんぞ………立花優!!』

 

 

 

怒りに身を震わすフリーズロイミュードの肉体が、僅かに金色の光を放っていた事は、本人も気づいてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

チェイス「記憶が戻ってない……という事は」

ベルトさん『フリーズは、生きている!』

数馬「修学旅行か~」


IS ~黒き魔進~ 『旅行』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?


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『旅行』

久方ぶりの投稿です。お待たせしました


昨日movie大戦見に行きました……とりあえず、進兄さんおめでとう。そして末永く爆発して下さい


 

亡国機業の研究所での激闘を終えた翌日ーーーー

 

 

「おはよー、皆」

「おはよ……って!立花君、どうしたのその首!?」

 

朝一番に教室へと訪れた優は先日の戦いでの負担が祟り、首にコルセットを巻いての登校になり、教室中の女子に質問攻めに合った。

 

「イヤー、昨日チェイスにコンクリの上でパワーボム食らっちゃって……」

「オイ」

「お、落ち着けチェイス!」

「冗談なんだからほっとけって!それに一応怪我人だし!」

 

今にも掴み掛からんとするチェイスを慌てて抑える弾と数馬。

 

「すみませんチェイスさん。兄が……」

「……まぁ、大目に見てやるか。フリーズを倒したしな」

「うん。優スゴく嬉しそうだし」

 

後からやって来たカイトも同意する様に頷く。

と、ここで担任の真耶が教室にやって来た。

 

 

「皆さん、おはようございま~す!今日は、この時間を利用して一週間後の“藍越”学園の修学旅行の班決めを行いたいと思います!」

『!』

 

だが、フリーズロイミュードを倒したのにも関わらず未だに真耶が藍越学園と言った事に、チェイス達は驚きを隠せない。

 

「ち、ちょっと……どういうことなのさ!?フリーズは倒したんじゃないの!?」

「いや、確かに倒した筈だ……まさか!」

「まだ…………フリーズは生きている、と言うことか」

 

チェイスの言葉に、5人の顔が強張る。

 

「……修学旅行も、手放しで楽しめそうにないな」

「だね……」

「ミューゼル君達!私語は厳禁ですよ!」

『すみません』

 

そして、修学旅行の場所は古き良き古都、京都。

 

「……何故学校間での修学旅行先は山村美紗ばりに京都なんだ?」

「…………そのネタ分かる人どんだけいるんだろうか」

 

真剣に考え込むチェイスに数馬が小さくぼやく。

因みに班決めは、フリーダム・スカイのメンバーになった。

 

「そういやチェイス、新しいバイラルコア貰ったんだって?」

「あぁ」

 

弾の言葉に頷くと、チェイスは懐からバイラルコアを取り出した。

片方は狼で、片方はライオンの意匠が刻まれている。

 

「肉食動物で固まってるな」

「でもここのアリーナじゃ、使えないよな……」

「フリーダム・スカイで実験しますか?」

「数馬、優、モルモットになれ」

「「ヴェッ!?」」

 

微笑ましい会話をしつつ、チェイスは今度の修学旅行を楽しみにしているのだった。

 

 

 

 

『亡国機業…………例えお前達がどれだけ強大であろうとも、俺達は決して折れはしない…!』

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

亡国機業、メディカルルームーーーー

 

 

『ぬぅっ……………』

「手酷く殺られたな、フリーズ」

 

再生手術を終えたフリーズロイミュードをハートが見下ろしていた。

 

『ふふっ、何時に無く不機嫌だね。ハート』

「当然だ。お前……あの娘で実験をしていたのだからな」

 

ハートの顔は正に怒り一色。

だがフリーズロイミュードは動揺する事無く笑みを溢す。

 

『あの娘のお陰で我々の戦力も増加した。違うかね?』

「……………」

『まぁ、見ず知らずの人間を犠牲にしたくないその心は美しい。だが、何れはその心も捨てなければならない』

 

その言葉を最後に部屋を沈黙が支配する。

 

 

 

「ハート、フリーズ。例のものが完成しました」

 

 

そこへブレンが、タブレットを持って部屋に入ってきた。

 

『漸くかね』

「仕方ないでしょう。それに……まだ一つしか出来ていませんが」

「……ご苦労だ、ブレン。引き続き、作業を頼む」

「仕方ないですね……まぁ、他ならぬ貴方の頼みだ」

 

それだけを伝えると、ブレンは去っていった。

 

 

 

「後は………………超進化態(ファイナル・シフト)のロイミュードが5体、か」

『…………………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

チェイス「良い仏閣だな」

ドライブTF『新しいシフトカーか!』

ブレンロイミュード『今日は貴方に紹介したい人物がいるのですよ…………色川カイト』


IS ~黒き魔進~ 『古都での戦い』

斬月・真『お前は…………!?』


心を持った機械龍さん、ジーク・フリューゲルさん、アイデアありがとうございます!




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『古都での戦い』

最近バトライド・ウォー創生の為に買ったVitaですが、ガンダムと遊戯王TFSPにのめり込んでます。

遊戯王はリアルで使ってるのとほぼ一緒で変わらないですね(トリシュやクェーサーがないだけで)


修学旅行当日、チェイス達藍越学園を乗せたバスは古の都、京都へと向かっていた。

 

「楽しみだな~!修学旅行!」

「一杯美味しそうな物も~多そうだね~!」

「本音ちゃん食べることばっかだよ……」

 

楽しさに胸を膨らませる生徒達だが、チェイス達はそうもいかない。

何せ亡国機業は何時何処から襲ってくるか分からないのだから。

 

「とは言うけど、あんまり張り詰めても雰囲気悪いしね」

「まぁ警戒しながら楽しもうぜ、チェイス!」

「……」

「それにチェイス前から見たがってたじゃん。京都のお寺とか」

 

優が言うと、今まで仏頂面だったチェイスの顔に苦笑いが浮かぶ。

 

「……それもそうだな」

「そうそう!それに山田先生とのデートも行ってやらないと」

「最近忙しくて構ってないんだろ?だったらちゃんと可愛がって上げなきゃ」

「数馬さん、その言い方はどうかと……」

「…分かっている」

 

チェイスが溜め息を吐くと、バスは京都の宿前に到着していた。

荷物を下ろし、女将さん達に挨拶を済ませると、各々宛がわれた部屋に荷物を置きに行く。

 

 

先ずは弾と数馬。

 

「ちぇー、数馬とかよ」

「なら聞くけどよ弾。お前は女の子と一緒の部屋で寝れるか?」

「……無理だな。チェイスでもない限り」

 

 

 

次は優とカイト。

 

「おぉー、広いな~!」

『まさに絶景だね。流石古き良き京都!』

「優、観光の準備しなよ」

 

 

 

そして、百合は箒との相部屋。

 

「宜しく、立花」

「此方こそ、篠ノ之さん」

「う、うむ…………所で立花」

「?」

「お前は、カイトの事が好きなのか?」

「……もしかして篠ノ之さん、カイト君の事」

 

百合が驚きに包まれながら尋ねると、箒は恥ずかしそうに頷く。

 

「……私、別に好きな人がいますので、大丈夫ですよ」

「そ、そうか……」

「私に出来る事があれば、何でも協力します!篠ノ之さん……いえ、箒さん!」

「ありがとう、立花……いや、百合!」

 

 

 

そして、チェイスはと言うと…………

 

 

 

 

 

「…一人部屋か」

 

ハズレ籤を引いたのか、人数の都合か、一人部屋だった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「では皆さん、夕食までにはこの旅館に戻ってきて下さいね~!」

「それと、全員が藍越学園の生徒という自覚を持って行動すること。では、解散!」

『はーい!!』

 

そして、全員が思い思いの場所へと飛び立った。

 

「鹿に餌やりてーな」

「鹿は奈良だ」

「えっ!?( ; ゜Д゜)」

「じゃあお土産買うときにまた集合…ってことで!」

 

カイトと優は先に行ってしまった。

 

「じゃあ私は箒さんと約束があるので……」

「おう!……チェイスはどうする?」

「伏見稲荷に行く」

「う~ん、じゃあ俺達は…………弾!八坂神社行くぞ!」

「俺何処でも良いけどなぁ」

 

チェイス達も分かれて行動する。

 

 

 

 

 

 

 

「……凄い鳥居の数だな」

 

一人で伏見稲荷へと足を運んだチェイスは伏見稲荷の鳥居の多さに驚いていた。

だが臆する事なく鳥居へと踏み入れた。

 

 

 

「………………長い」

 

単調な道に少し疲れてきたのか、或いは飽きてきたのか、チェイスはそうぼやいた。

 

 

「だがこの古風な感じが俺は堪らなく好きだ………………そうは思わないか?チェイス・ミューゼル」

「ッ!?」

 

聞き覚えのある声がしたので、チェイスは驚愕しながら後ろを振り向くと、

 

 

「学園祭以来だな、チェイス・ミューゼル…………いや、仮面ライダーチェイサー」

 

 

そこにいたのは、亡国機業のリーダー、ハート。

以前チェイスや姉の千冬に両断された腕も、完璧に直っていた。

 

「貴様……何故ここに!?」

 

チェイスはマッハドライバーとシグナルチェイサーを構え、何時でも戦う準備をする。

 

「今この世界を守ろうと弓引くのはお前達だけ…………ならば、その不安要素を摘むのは…当然だろう?」

 

そう言うと、ハートはその肉体をロイミュードボディに変化させる。

 

『幸いここに人はいない……さぁ、存分に殺り合おうじゃないか!』

「…変身!」

《シグナルバイク!ライダー!チェイサー!》

 

紫のエネルギーフィールドに包まれ、チェイスはチェイサーⅡ、仮面ライダーチェイサーに変身した。

 

チェイサーⅡはシンゴウアックスを構え、臨戦態勢に。

対するハートロイミュードも、拳を握り締める。

 

 

『ッ!』

 

先に動いたのは、チェイサーⅡだ。

シンゴウアックスを振りかぶり、ハートロイミュードの体目掛けて一閃する。

 

『ふっ!』

 

だがハートロイミュードはそれを華麗に避けると同時に火炎弾を生成。

それを掴み、チェイサーⅡに直接ぶつけようとする。

 

『……!』

《Tune chaser wolf!》

 

それをハイパーセンサーで察知したチェイサーⅡはブレイクガンナーにウルフバイラルコアを装填、手足にジャンクパーツで構成された爪を装備し、バックステップで回避。

 

『ヴゥ………………グルァァッ!!』

 

チェイサーⅡは獣の様な唸り声と共に両手に装備された鉤爪、プレデターネイルでハートロイミュードのボディに切り込む。

先程とは段違いのスピードに対処できず、ハートロイミュードの体には大きな爪痕が。

 

『グッ!』

『グガァッ!』

『ガハッ!!』

 

更に回転しながら足に装着されたプレデターネイルも使い連続で切り裂く。

ハートロイミュードは苦悶の声を漏らしながら、距離を取る。

 

『…成る程。狼の反射神経に、人間の持つ闘争本能を活性化させるバイラルコアか!スコールめ…………中々面白い物を作る』

『…これで仕留めるッ!』

《Execution!Full break wolf!》

 

ブレイクガンナーを操作し、手足に紫のエネルギーを纏う。

そしてそれは刺々しくなり、まるでチェイサーⅡの手足が巨大な爪の様に見える。

 

『面白いッ…………かぁッ!!』

 

ハートロイミュードも望むところとデッドゾーンを発生させる。

高温の蒸気を放ちながら腕に力を込める。

 

『グルァァァァァァッ!!!』

『でやぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

紫紺の爪撃と赤熱の打撃がぶつかり合う寸前、

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォォンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

京都の各所から爆発音が轟いた。

 

 

 

『『ッ!?』』

 

その音に思わず動きを止める二人。

すると、チェイサーⅡに数馬から通信が入った。

 

『大変だチェイス!』

『数馬か!?何があった!』

『ボマーって言うロイミュードが、京都各所に爆弾を設置しやがったんだ!』

『何!?』

 

数馬からの情報に驚きを隠せないチェイサーⅡ。

だがそれは、ハートロイミュードも同じだった。

 

『まさか…………フリーズッ!?』

『そんで今の爆発で、親子連れが巻き込まれたんだ!』

『『!?』』

『子供の方は無事だけどッ……お母さんの方が意識が無いんだ!…………くそっ、邪魔だッ!!』

『…………今すぐ行く!それまで踏ん張ってくれ!』

『あんまり……遅くなるのはゴメンだぜッ!』

 

それだけ言うと、数馬は通信を切った。

 

《Tune chaser bat!》

 

チェイサーⅡは、ウルフバイラルコアを抜き、今度はバットバイラルコアを装填。

背中に蝙蝠の翼を生やす。

 

『悪いが……この対決は預けさせてもらう!』

 

それだけ告げて、チェイサーⅡは数馬が奮戦してる場所へと飛び立った。

 

 

『……………………………』

 

一方のハートロイミュードは、それを止める事なく、その場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『くそっ、退けぇ!』

《ゼンリン!》

『うおっと!』

 

先程チェイサーⅡと通信をしていたマッハは、目の前の元凶、ボマーロイミュードを相手に戦っていた。

だがマッハの方は、助けた親子連れを庇いながら戦ってるので、防戦一方だった。

 

『ヒャハハ!どうした、仮面ライダー?早く俺を倒さなきゃ、京都は火の海だぜ!』

『チィッ!それで無関係の人達が傷ついても良いってのか!?』

『俺は俺に与えられた仕事をこなしてるまでだ。それで何人傷つこうが知った事じゃねえ!』

『テメェ……ッ!』

『俺のノルマにはテメェ等を消すのも含まれてんだ。とっとと死ねぇ!!』

 

ボマーロイミュードは巨大な爆弾を生成すると、それをマッハに向けて投げ飛ばした。

 

『ッ!?不味いッ!!』

 

せめて親子を庇おうと前に立ち塞がるマッハ。

 

 

 

 

 

《ヒッサツ!フルスロットル・チェイサー!》

 

 

だが、マッハの後ろから爆弾に向けて紫の塊が飛び込んできた。

そのお陰で、爆弾はマッハや親子にぶつかる事なく爆散。

 

『えっ?』

『何ッ!?』

《Gun》

『うぎゃあっ!』

 

そして爆風から紫の光弾が放たれ、ボマーロイミュードは仰向けに倒れる。

 

『間に合った様だな…………』

『チェイス!』

 

その正体はチェイサーⅡ。

先ずチェイサーエンドで爆弾を破壊、そして即座にブレイクガンナー・ガンモードで射撃したのだ。

 

『他の奴等は?』

『先ず優が爆弾をタイプテクニックで解体してる。百合と弾は被害者の救援。カイトも同じく』

『そうか……数馬、お前はその人達を病院へ連れていけ!コイツは、俺が引き受ける』

『…………頼んだぜ!来い、ライドマッハー!』

 

マッハが叫ぶと、何処からともなく白いバイクーーーーライドマッハーが姿を現した。

そして傍らにはチェイスのバイク、ライドチェイサーも。

 

『チェイス、ライドチェイサー借りるぜ!』

『…乱暴に使うなよ』

『OK!合体だ!』

 

マッハの指示の下、ライドマッハーとライドチェイサーは変形しながら合体し、一台の車輌ーーーーライドクロッサーになった。

 

『さ、乗って!お母さんと君を病院へ連れていくから』

「…うん!」

 

ライドクロッサーが発車するのを見届けたチェイサーⅡは、改めてボマーロイミュードと向き合う。

 

『フフフッ、爆弾の解体なんて無駄だぜ!俺は設置した爆弾を任意のタイミングで爆発できんだよ!!』

『ッ!?』

『さぁっ、吹っ飛びな!!』

 

ボマーロイミュードが眼を光らせて手を仰ぐーーーーが

 

 

 

 

 

『…………?』

『あ、あれ?』

 

 

 

 

爆発は、しなかった。

 

『ど、どうなってーーーーぐぁっ!』

 

困惑するボマーロイミュードに巨大な火炎弾が襲い掛かり、ボマーロイミュードはブッ飛ばされる。

 

『爆弾なら』

『私達が解除させて貰ったよ!』

 

風と共に現れたドライブ・タイプフォーミュラー。

その腕のタイヤはオレンジ色のマックスフレアとは違った物を装着していた。

 

『優、ドクタークリム!』

『お待たせ、チェイス!』

『待たせて済まなかったね、チェイス』

 

ドライブTF01はトレーラーキャノンを構え、必殺技の体勢に。

 

『テメェか!俺の爆弾を解体したのは!!』

『あぁ、その通り!あ、チェイス!バイラルコア貸して!』

『…………ん』

 

チェイサーⅡから借り受けたウルフバイラルコアを、上部のシフトライディングパネルに装填。

更に続けざまにマックスフレア、シフトデッドヒートを装填し、エネルギーを集中させる。

 

《バイラル砲!ヒッサーツ!フルスロットル!》

《Tune chaser shark!Execution!》

 

そしてチェイサーⅡもシャークバイラルコアを装填、トゥースバンカーに水流を込める。

 

『『はぁぁぁぁぁぁっ…………でやぁぁぁぁぁぁっ!!!』』

《フルフルバイラル大砲!》

《Full break shark!》

『ウギャアアアアアアア!!!』

 

トレーラーインパクトとエグゼキューションシャークを同時に撃ち放つ。

炎と熱気を纏ったエネルギー状の狼と水流で形作られた鮫の同時攻撃を防げる筈もなく、ボマーロイミュードは爆散した。

 

『ふぅ~!』

『nice drive!』

『あ、これありがと』

『……おう』

 

これにて、亡国機業の京都爆発事件は、未然に防がれた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「ここには……誰もいないね。それに、確かチェイス達が元凶を倒したって言ってたし、大丈夫だよね」

 

カイトは逃げ遅れた人達を探して、京都の路地裏に訪れていた。

が、そこに人はおらず、爆発があった形跡もない。

 

 

大丈夫だろうと思い、ホテルに戻ろうとすると、

 

 

 

「会いたかったですよ…………色川カイト」

「ッ!…………ブレン」

 

カイトの背後から、眼鏡を駆けた緑の服を着た青年、ブレンが歩み寄ってきた。

 

《メロンエナジー……》

「何の様だ……!」

「まぁまぁ、そう焦らずに…………今日は貴方に会わせたい人がいましてね」

「何……ッ!?」

 

ブレンの背後から現れたのは、黒いスーツの男。

だがネクタイは着けておらず、胸ポケットには鮮やかな緑のポケットチーフが。

 

 

だが、カイトは信じられない面持ちで固まってしまう。

 

 

 

「お、お前は…………」

 

 

 

 

 

何故なら、その男はカイトの、

 

 

 

 

 

 

「父、さん…………!?」

 

 

 

 

 

 

 

死んだ筈のカイトの実の父ーーーー色川貴虎だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

斬月・真『どうして、父さんが……!?』

チェイス「まさか……ハートが?」

フリーズロイミュード『君はその優しさ、否…………甘さを捨てなければならない』


IS ~黒き魔進~ 『動揺』

黒き追跡者はその瞳に何を写す……?



ジーク・フリューゲルさん、アイデアありがとうございました!



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『動揺』

皆様、明けましておめでとうございます


今年も宜しくお願いします


 

 

「父……さん!?どうして父さんが!」

 

修学旅行に訪れた京都にて、色川カイトは絶対に有り得ない光景を目にしていた。

 

「…………」

 

彼の目の前に立ちはだかる人物は、本来死んだ筈の父、色川貴虎がいるのだ。

カイトの記憶が正しければ、彼はIS女性権利団体のIS部隊に襲われ、命を落とした筈。

 

「感動の再会ですね、色川カイト君…………ウゥ」

 

亡国機業の幹部、ブレンはハンカチを片手に涙ぐんでいた。

勿論、嘘泣きだが。

 

「……父さんに何をした!?」

 

だがカイトは油断せずにブレンを睨み付ける。

腰にはゲネシスドライバーを装着しており、何時でも変身出来る体勢に。

 

「おや、父上に会えたのに反応が淡白ですね」

「父さんは死んだ筈なんだ!どうせお前達が作ったロイミュードとかじゃないのか!?」

「…………フフフフ、フフハハハハ!アッハハハハハハ!!!クフフフフッ!!アハハハァ!!!」

 

だがブレンはカイトの怒り様を可笑しくて堪らないとばかりに笑いだした。

 

「何が可笑しい!?」

「アハハハァ…………ハァ、全く貴方は自分の父上が本物だと見抜けないほどお惚けで間抜けなアンポンタンだとは」

「……何?」

「貴方の目の前にいるのは、正真正銘本物の色川貴虎ですよ」

「っ!?」

 

その言葉に動揺を見せるカイト。

ブレンはそんなカイトの様子が面白い様で、笑いを堪えながらカイトの疑問を氷解させていく。

 

「まぁ、回収したのは死体ですがね。我々ーーーーもとい真影先生はそれを改造手術で再生させたのです。そして、起動したのが、先日のIS学園学園祭の時です。覚えてるでしょう?」

「………………あの時のッ!?」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

ブレンの話の通り、カイトは先日の学園祭襲撃事件の際、

 

『……………………』

「くっ!何者なのだ!?」

 

箒が謎のロイミュードに襲われてるのに遭遇していた。

 

『篠ノ之さん!』

 

斬月・真に変身したカイトはその戦いに割って入り、彼女を庇った。

 

「色川……!?」

『大丈夫かい、篠ノ之さん!?』

「あ、あぁ…………」

『お前、一体何者だ!?』

『……………………』

 

斬月・真が問い掛けるも、そのロイミュードは答えることなくその場から飛び去ってしまった。

 

「な、待て!」

『落ち着いて篠ノ之さん!今追って深手を負うわけにもいかないだろ!?』

「…………分かった」

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「まさか…………お前ら、父さんを!!」

「アッハハ!その通りですよ!真影先生は貴方の父上の戦闘技能を惜しんでロイミュードとして甦らせたのですよ!」

「……………………ッ!」

 

貴虎は顔色を変えることなく、その肉体を鋼へと変えた。

 

頭部には三日月の兜飾り、背部には巨大な2対の盾と両腕にも装備された大きさの異なる盾。

 

「さぁ、色川貴虎……シールド!息子との戦いで、貴方は覚醒する!」

 

ブレンの言葉に従い、シールドロイミュードはカイト目掛けて加速して腕を振るった。

 

「くっ!」

 

カイトはサイドステップで横に避けながらメロンエナジーロックシードをゲネシスドライバーに装着する。

 

《ロック・オン》

『…………』

「うわっ!」

 

今度はお構い無しに刺突攻撃を繰り出す。

それをカイトはマトリックスばりにかわし、シーボルコンプレッサーを引き絞る。

 

「ちぃ!変身!」

《ソーダァ……メロンエナジーアームズ…!》

 

何とかアームズを被り、斬月・真に変身。

踏み込んでソニックアローを横凪ぎに振りかぶろうとするが、貴虎の事を思うと腕が止まってしまう。

 

『ッ…』

 

だが、その隙を逃すシールドロイミュードではなかった。

 

『………………』

『がぁ!』

 

右腕のシールドで凪ぎ払い、斬月・真をぶっ飛ばす。

油断していた所に一撃食らい、斬月・真は苦悶の声を漏らす。

 

『くそっ!』

 

ならばと今度はソニックアローの矢を引き絞る。

 

だが、

 

 

 

『カイト。私は必ず、他の男性やお前が過ごしやすくなる様な世界を作る。それまで待っていてくれ』

『うん!』

 

 

 

 

幼い時の光景がフラッシュバックして、再び腕が止まってしまう。

シールドロイミュードはその隙に背部のシールドを飛ばし、切っ先のレーザーで斬月・真を撃ち抜く。

 

『ぐあああっ!!』

「クフフフフッ!どうしました、色川カイト?彼は貴方の父上とは違うと豪語していたではないですか!?」

『く、くそっ………』

 

父との思い出や体の事を思うとまるで何時もの様に戦えない自分が嫌になる斬月・真。

 

『………………ッ!』

 

だが、シールドロイミュードは動こうとはせずに、体が硬直していた。

 

「チッ、やはりまだ最終調整を終えてない状態では無理が掛かるか…………オートモード!」

 

舌打ちしながらブレンはタブレットを操作し、シールドロイミュードを遠隔操作する。

 

「色川カイト、何れは決着をつけさせてあげましょう!」

『な、待て…………ぐっ!』

 

追おうとするも、レーザー等のダメージで膝を付いてしまう。

その隙にシールドロイミュードとブレンは去ってしまう。

 

『………………クソォォォォッ!!!!』

 

 

誰もいなくなったその場所で、斬月・真の慟哭が木霊した。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「あ、カイト!」

 

宿泊先の旅館に一足先に戻っていた数馬達は、遅くに戻ってきたカイトに声を掛けた。

 

「遅かったじゃん。どうかしたのか?」

「……ううん、そんな事ないけど?」

「…………そうか」

 

少し気後れしながらも答えたカイトだが、数馬達は特に気にするでもなく流す。

 

「……カイト、何かあったのか?元気がないように見えるが…」

「や、ホントに何でもないよ。篠ノ之さん」

 

だが箒は何時ものカイトと違う風に感じたのか、箒が後で声を掛けるが、やはりカイトは何も答えない。

 

「……そうだ、カイト。お前を待ってた」

「へ?」

「一緒に山田先生達の説教を受けようぜ」

「あっ、色川君!待ってましたよ~!もう!爆弾テロ事件があるのに君達は戻ってないから……心配しましたよ!!」

『はい、すみません…………』

 

取り合えず、全員大人しく真耶の説教を受けた。

 

 

「そう言えば数馬、病院に送った親子連れは大丈夫だったのか?」

「……あぁ、女の子の方は大したこと無かったよ。ただ……お母さんの方が意識が戻らなくて」

「…………明日、訪ねてみるか」

「だな。俺達にも責任はあるし」

 

真耶と他教師の説教の合間に、明日の予定をコソコソ話すチェイスと数馬だった。

 

「……………………」

 

 

そしてその間も、カイトは上の空だった。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

そして翌日、京都の病院にて。

 

「「え!?手術をした!?」」

 

チェイスと数馬の叫びがハモり、病院に響いた。

が、他の患者達に睨まれ、自粛する。

 

「えぇ。先程終えましたよ」

「え、でも…………確か昨日、治療費が払えないから厳しいって言ってましたよね?」

 

数馬が昨日病院に運んだ際、親子連れはどうやらシングルマザーだったらしく、女手一つで子供を育てていたらしいが、どうにも治療費が賄えず、治療しても払えないと話された。

 

「いや、それがね。昨日そのお母さんの治療費を全額負担して下さった人が来たんですよ」

「……それって、その人が治療費全部払ったって事ですよね!?」

「えぇ。それにその人、治療費だけじゃなく、入院費まで払ってくれたんですよ。まさかここまでする人がいるんだなとビックリしましたよ」

「「………………」」

 

本当なのかと思ったのでその母親の入院してる病室に訪れると、

 

「あ、昨日の仮面のお兄ちゃん達!」

 

母親の側に座っていた女の子が数馬達に気付き、走り寄ってきた。

 

「や!お母さん大丈夫なのかい?」

「うん!さっきまでお昼ご飯食べてたよ!」

「……君のお母さんの為に、お金を出してくれた人の事、分かるかい?」

 

チェイスは普段恋人達にしか見せない優しい顔で尋ねる。

でないと、何時もの仏頂面では怖がらせてしまうからだ。

 

「んっとね、霧子がね、座ってるとね、真っ赤な服着たお兄ちゃんがね、ママの為にお金くれたの!」

「ッ!」

「チェイス、それって…………」

 

チェイスと数馬は心当たりがあるので、顔が強張る。

 

「それにね、そのお兄ちゃんがね、霧子の事励ましてくれたの!お母さんを大切にするんだよって言ってくれたの」

「…そっか。お母さんに宜しく言っといてな」

「じゃあな」

「うん!じゃーね!」

 

取り合えず二人は病室を後にする。

 

「…………恐らく、俺達が思っている奴だろうな」

「……だろうな~。あ、スミマセン!」

 

だが数馬はやはり信じられないのか、近くの看護婦に尋ねる事に。

 

「はい?」

「あっこの入院患者さんの治療費って、ホントに別の人が払ったんですか?」

「詩島さんですか?はい、そうですよ。赤いコートを着た人が全額負担して下さったんですよ」

「スッゴくイケメンの殿方でしたよ~」

 

最後の情報はいらなかったが、二人はこれで確信した。

 

 

 

「「ハート………………!」」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「ハート…………負傷した親子の為に、お金を出したそうだね」

「…………それがどうした」

 

IS委員会本部、真影の専用室にて、真影とハートが向かい合っていた。

 

「…何時も言ってるだろう。君のその優しさは、美点ではあるが必ず欠点になると」

「……だが、今回の貴様の独断で、大切な同胞が一人減った。それに、人間をまた勝手にロイミュードに仕立て上げたお前にどうこう指図される覚えはない」

 

お互いに皮肉を言い合い、再び睨み合う。

 

「フッ……勝手にロイミュードを動かしたのは謝るさ。だが、これだけは言わせてもらう。何れは、その優しさを捨てなければならない。絶対にね」

「……………………分かっているッ!」

 

吐き捨てる様に呟き、ハートは執務室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

優「何だよ、コレ……!」

真影壮一「全ては、特異体質の人間を調べる為さ」

ベルトさん『真影、お前のしている事は、悪魔の所業だ!』


IS ~黒き魔進~ 『超進化の輝き』


フリーズロイミュード『これで私は無敵の存在だ!世界中の全てのISの記憶を凍り付かせる……!』


ドライブTF・ベルトさん『「が………………ッ!!」』





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『超進化の輝き』

更新停滞、本当に申し訳ありませんでした………



さて……3月10日はまだかな?(チェイサーのダウンロード日)

フリーズの超進化、原作と少し異なります。


 

藍越学園の修学旅行も終え、再び平凡な学生生活が舞い戻ってきた頃、優はスコールからとある依頼を受け、都内の廃工場へと足を踏み入れていた。

 

「…言っちゃ悪いけどさ、こんな所に奴等の手掛りとかあるのかな?」

『だが我々に与えられた有益な情報だ。地道に探るしかあるまい』

 

何処か信じ難いかのようにぼやく優を、腰に巻かれたドライブドライバーことクリムが嗜める。

 

「でもニュースとかで報道されてるならまだしもさ、ソースが荒い映像だからなぁ…」

 

その依頼とは、最近共通点もない人間達がひっそりと消えてしまうと言う突飛な事件を探る事。

最初は信じても良いのかといぶかしんでいた優達だったが、ミッドナイトシャドーが廃工場に何者かが大きな荷物を担いで出入りしていたのを記録していたのだ。

 

『何を言う!君はシフトカーの事を信じてないのかい!?』

「いや、そうじゃないけどさ…………ほら、何もないじゃんか」

 

優の言う通り、中は廃材や錆びれた機械や工具だけだった。

 

『いや、そんな筈はない!映像を解析した結果、ここが一番怪しい場所のはず……』

「でも特に入り込んだ形跡は………寒っ!」

 

辺りを隈なく見渡しているとき、優はある一箇所から身も凍るほどの寒さを感じた。

 

『どうした、優?』

「や、何か寒くて………こっちからかな?」

 

寒さを感じた方へと歩を進めると、その寒気はどんどんと増していった。

 

「べ、ベルトさん………ここの気温調べてくれない?」

『OK。………どうも君が立っている一帯だけ気温が低いね。十月中旬にしては可笑しい気温の数値だ。優、そこの壁に触れてみろ』

「う、うん……冷たっ!?」

 

言われて一部の壁に触れてみると、鉄とは違う冷たさに驚く優。

 

「こ、これって………」

『恐らくは、氷の壁だ。氷を使って偽装していたのだろう』

「でも、誰がそんな事を……」

『奴しかいるまい。生きていればの話だがね』

 

クリムの言葉に、とある壮年の男の顔が脳裏を掠める。

 

「真影…!生きていたのか」

『どうする?スコール達に連絡するかね?』

「いや、先に中を探索してからのほうが良いと思う。…よし!そうと決まったら…」

 

優はドライブドライバーのイグニッションキーを回し、シフトブレスにシフトワイルドを装填する。

 

「変身!」

『ちょ、まsa……ドライブ!タイプ・ワイルド!』

 

ドライブTWに変身し、ショルダータックルでその壁を破壊する。

すると、壁はいとも簡単に砕け散ったが、地面に転がったのは、コンクリート片ではなく氷だった。

 

『やっぱり氷だった……』

『いよいよ怪しくなってきたな……行こう、優!』

『あぁ!』

 

気持ちを新たに切り替え、駆け出すドライブTW。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『な、何だよこれ………!?』

 

ドライブTWは戦慄した。

今彼の目の前には、夥しい数のカプセルが安置されていた。

 

が、カプセル自体はそこまでの問題ではない。

 

『中に、人間達が………!!』

 

カプセルの中には、老若男女問わず様々な人間が死んだ様に眠りについていた。

 

『これ、強引に出しちゃ、不味いよな…?』

『どのような装置かも分からない以上、下手に引き剥がすのはナンセンスだ』

『だよな……ここは、チェイス達の増援を待つしか『おやおや、また招かざる客か』………真影!!』

 

背後から響く声に、しかしドライブTWは慌てる事無く毅然と振り返る。

 

 

ドライブTWの目線の先には、フリーズロイミュードが佇んでいた。

そして背後には下級のロイミュードが複数体、そしてシーフロイミュード。

 

『やはり生きていたか…』

『当然。再生には時間が掛かったがね』

『答えろ…ここにいる人達を使って、何をしている!!』

 

ハンドルブレードを構え、静かな怒りを覗かせるドライブTWにフリーズロイミュードは言葉を濁す事無く答え出した。

 

『ここにいる人間は全て特異体質の人間でね』

『特異体質……?』

『言うなれば、私の記憶操作を受け付けない体質の持ち主だ』

『!?』

 

驚くドライブTWに構わず、フリーズロイミュードは続ける。

 

『だが私にはその人間達を見抜く術はなかった。だからこうして、実験で得ていたのさ。その特異体質すら上書きできるほどの力をね!』

『……腐ってやがる』

『真影!お前のしている事は、悪魔の所業だ!!』

 

同じ研究者として感化できないクリムは非難するも、フリーズロイミュードはただ笑うのみ。

 

『くっくっく…悪魔か。随分と言ってくれるじゃないか』

『…ここにいる人達にも、家族や、友達や、大切な人だっている筈だ!それを!どうしてそう簡単に踏みにじれるんだ!!』

『全ては革命の為だ。どんな研究にも、犠牲は隣り合わせだからね』

『………もうこれ以上!お前の手で人の記憶を凍りつかせる訳には行かない!!フリーズ、ここで……………倒す!!!』

《ターン!ドリフトカイテーン!》

 

力強く叫んだドライブTWはハンドル部を回転、ドリフトスラッシュでフリーズロイミュードに斬りかかる。

 

『させるかっ!』

 

がそれを黙って見過ごすはずもなく、後ろに控えていたコブラロイミュードが腕に増設されたマシンガンで横槍を入れる。

 

《Gun》

『ぐへぇ!』

『!………チェイス!』

 

だが、その横槍を防いだ人物――――チェイサーⅡがブレイクガンナーを構えて仁王立ちしていた。

 

『間に合ったようだな……雑魚は任せろ!』

『任せた!』

『小癪な!』

 

襲い掛かる下級ロイミュード、そしてシーフロイミュード相手にシンゴウアックスを振るうチェイサーⅡを尻目に、ドライブTWとフリーズロイミュードは移動、外にて氷の剣とハンドルブレードで切り結ぶ。

 

『ぬっ……以前より格段に強くなっている!?』

『当たり前だ!』

《タイヤコウカーン!ランブルダンプ!》

 

右腕にランブルスマッシャーを装備、タイプワイルドの豪腕を生かして積極的に攻め立てる。

 

『ちぃ!!』

『そんなチャチな氷の壁で、俺たちの勢いを止められると思うなよっ!!』

《ダン・ダン・ダンプ!》

 

シフトレバーを三回動かすと、ランブルスマッシャーが肥大化した。

 

『なっ――――』

『ぶっとべぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』

『ぐぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

驚きながらも氷の楯で防ごうと手を翳すフリーズロイミュード共々大きく吹き飛ばした。

 

『ぬぅ…私が、ここまで…………!』

『どんどん行くぜ!!』

《ヒッサーツ!フルスロットル!ダンプ!》

『来い!トライドロン!!』

 

ドライブTWDの呼び声に応じるかのように現れたトライドロンが高速で旋回、ドライブTWDはその旋回を利用して連続で蹴りを叩き込み、最後の一撃に脚にドリル状のエフェクトを纏ってワイルドロップを炸裂させる。

 

『がっ…………!!』

 

勢いよく地面に倒れたフリーズロイミュードは何とか立ち上がるも、次の瞬間には力なく倒れ伏し、動かなくなる。

 

『や……った…………!』

『優!君は今、過去に終止符を打てたんだ!』

『あぁ………やった、やったよ…父さん!』

 

安心から膝を付くドライブTWD。

 

『って、そうだ!チェイスの加勢に行かないと!』

 

今は仇敵を倒した喜びに浸っている場合ではない、と立ち上がりチェイサーⅡの加勢に向かおうと踵を返す。

 

『…その必要はないぞ』

『あっ、チェイス!』

 

工場の奥からシンゴウアックスを引き摺って現れたチェイサーⅡに安堵して近づくドライブTWD。

 

『…そう言えば、囚われてた人達は!?』

『安心しろ。母さん達が回収してる…今は病院だろうな』

『そっか…………これで、残る幹部は3人だな!』

 

 

 

 

 

 

 

 

が、その時、

 

 

 

 

 

『本当にそうかな?』

 

 

聞こえるはずのない声が、響いた。

 

 

 

『『『ッ!!?』』』

 

そんな筈はない、そう思いつつ振り替える二人の眼前には、

 

 

 

 

『私を倒し浮かれる君達の姿………お笑い種だったよ』

 

フリーズロイミュードが、そんな二人を嘲笑うかのように見下ろしていた。

 

『真影………!』

『感謝するよ…君のお陰で私の感情は最大限にまで高まった!!君達親子に与えられたこの屈辱感が………………私を進化させるのだァ―――――――!!!!』

 

そう高らかに叫ぶフリーズロイミュードの体からは、金色の燐光が溢れていた。

 

『何…!?』

『一体、何が………!』

 

 

 

 

 

『さぁ、とくとその目に焼き付けるがいい!!これが―――――――超進化の光だッ!!!!!!』

 

 

今や体外にまで放出されていた金色の燐光は、フリーズロイミュードの体に再び収まっていく。

光がやがて消え去り、そこにいたのは全身が金色に光るフリーズロイミュード。

 

『フハハハハハハハハハ!!!これで私は無敵の存在だ!世界中の全てのISの記憶を凍り付かせる……!』

『何を………!』

『超進化の露払いだ…………君達の存在を消し去ってあげようッ!!』

 

フリーズロイミュードは腕に力をこめると、特大なエネルギーの塊が生成される。

それを見た二人は悟った。

 

 

あれを受けたら、死ぬ―――――

 

 

 

 

 

『チェイスッ!!』

『ッ!!』

 

そう悟ったドライブTWDはチェイサーⅡを横へと押し退ける。

タイプワイルドのパワーによりチェイサーⅡは壁際にまでぶっ飛ばされる。

 

その際に

 

 

 

 

『…………ゴメン』

 

 

 

そう一言、聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた。

 

 

 

『ふあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』

『!!優ーーーーーーーッ!!!!!!!』

 

フリーズロイミュードの声を聞いてチェイサーⅡが駆け出した瞬間に、

 

 

 

 

 

 

 

『『が………………ッ!!』』

 

 

 

 

氷の破壊光弾が、ドライブTWDを、貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





IS ~黒き魔進~

百合「兄さん……いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

バロンLE『ぜってぇ許さねぇ!!』

フリーズロイミュード『これで、我々の計画は更なるステージに移る!!』

IS ~黒き魔進~ 『喪失』


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『喪失』

さぁ、のっけから重いですよ

そして短いです


 

 

その日、世界中の人間の記憶から、ISに関するキーワードが消えた。

 

 

理由は言うまでもない。超進化したフリーズロイミュードによる影響だ。

これにより、世界中の人間はISを認知できない様になってしまった。

 

 

 

そんな中、フリーダム・スカイは失意のどん底にあった。

 

「兄さん、兄さん…………うぅッ!!」

 

既に冷たくなって動かない立花優に、妹の百合は未だに泣き付いていた。

その周りには、チェイス達もいた。

 

が、百合に掛けるべき言葉が見つからず、立ち往生していた。

 

フリーズロイミュードが超進化したその瞬間に、優はチェイスを庇って、殺された。

特に、自身を許せないと感じていたのはチェイスだ。

 

泣いている百合を見ていたチェイスは、無言でその部屋を出ていった。

それを見て、弾は慌てて止めようと駆け寄る。

 

「おい、チェイス!」

「……離せ」

「何処に行く気だよ!?」

「決まっている。真影の所だ」

 

そう言い放つチェイスに、弾達は呆気に取られた。

 

「真影って……お前、居場所知ってるのか!?それに、アイツは世界の御偉方の一人なんだぞ!簡単に会えるか!」

「関係ない」

「関係ないって……」

「俺のダチを殺しておいて御偉方だと……?偉いのなら、何をしたって良いと言うのか!?」

 

チェイスは普段の冷静さも忘れ、激昂する。

呆気に取られた仲間達に構わず、チェイスはその場を出ていった。

 

それと入れ替わる様に、今度はスコールが入室した。

 

「スコールさん、チェイスが」

「分かっているわ。彼の気持ちは、理解できるから……」

 

スコールの目元は、真っ赤だった。

それは彼女も泣いていたと言う、動かぬ証拠。

 

スコールは優の遺体を見つめた後に、腰にまだ巻かれていたドライブドライバーに触れた。

 

優が死んだのと同時に、機能を停止してしまったドライブドライバーだったが、何故か優が死んだ後も外れないのだ。

 

だから仕方なく、こうして巻いたままなのだ。

 

 

『クリム先生………………』

 

ベルトを撫でていると、スコールは僅かに違和感を感じた。

撫でていた時に、僅かではあるが、優の腹周りがほん暖かくなったのだ。

 

『………………もし、ドライバーが外れないのが、クリム先生が原因だったら!』

 

スコールの中には、とある仮説が生まれていた。

 

それは、「優の心に、クリムはデータを融合させて仮死状態にし、優の命を繋ぎ止めてるのではないか?」と言う突拍子もないことだった。

 

だが、そう考えると、優の腰から何時までもドライバーが外れないのにも、理由がつく。

何せ、データと融合しているのだから。

 

『ベルトに人格データを写したり、やはり、貴方は飛び抜けた科学者ですね。クリム先生!』

 

スコールはシフトカー調整室に入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超進化おめでとう、フリーズ」

 

とあるビルの屋上。

 

そこにいたのはハートとフリーズロイミュード。

 

『フッ、これで我らの計画は現実味を帯びている。そうだねハート?』

「あぁ。その為に、幼い命が失われるのが痛いが…………全ては革命のためだ」

『君も迷いを振り切り始めた様だね…………フフフ』

 

 

 

 

《シグナルバイク!ライダー!チェイサー!》

 

 

が、そこへ乱入者が現れる。

チェイサーⅡだ。

 

『ハァァァッ!!』

 

シンゴウアックスを振りかぶり、フリーズロイミュードに襲い掛かるが、フリーズロイミュードはこれを難なくかわす。

 

『見つけたぞ…………真影ッ!!』

『ほう、これはこれは』

「チェイス・ミューゼル…………」

 

チェイサーⅡは怒りを隠さずにシンゴウアックスを振り回すと、再びフリーズロイミュードに向かって加速する。

対するフリーズロイミュードも小さく浮かび上がり、チェイサーⅡを迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




IS ~黒き魔進~

フリーズロイミュード『君では私を倒せない!』

百合「兄さん……帰って来て!!」

ハート「お前は……ッ!?」

IS ~黒き魔進~ 『再誕』

「もうお前には凍りつかない……絶対にだ!!」




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